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「オバマの時代」とは一体なんだったのか? 「核兵器なき世界」構想がもたらした大いなる逆説 次期政権に受け継がれるリスク
http://www.asyura2.com/16/kokusai13/msg/768.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 5 月 16 日 17:15:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

           プラハで行った「核兵器なき世界」演説の様子〔PHOTO〕Flickr / Some rights reserved by adrigu


「オバマの時代」とは一体なんだったのか? 「核兵器なき世界」構想がもたらした大いなる逆説 次期政権に受け継がれるリスク
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48623
2016年05月16日(月) 佐藤丙午 現代ビジネス


文/佐藤丙午(拓殖大学教授)


■オバマ政権の外交・安全保障政策


2016年5月のG7伊勢志摩サミットの訪日の際、オバマ大統領が現職の大統領として初めて被爆地広島を訪問することが発表された。今回の訪問は、原爆投下に対する謝罪ではなく、政権当初より掲げてきた「核兵器なき世界」に向けた一連の政策を象徴するものとして、その政策が必要となった出発点を確認する作業となるだろう。


オバマ政権の外交・安全保障政策の8年間の評価には、肯定的なものと否定的なものとが交錯している。その成果と評されるものが、2009年4月にチェコの首都・プラハで行った「核兵器なき世界」演説である。


過去の米政権で安全保障政策の中枢を担った「四賢人(ジョージ・シュルツ、ウィリアム・ペリー、ヘンリー・キッシンジャー、サム・ナン)」の核兵器廃絶を求める主張などに基づき、それまでの米国内の思潮を背景に、オバマ大統領は核兵器廃絶の必要性を訴えた。


演説では、自身の生涯で核兵器廃絶が実現されることはないとの予想を踏まえつつ、核廃絶は世界に核兵器を生み出し、最初に使用した国家として国際社会を「核兵器なき世界」に導くための行動を起こす「道徳的な責任」を有すると表明したのである。


この演説の後、核軍備管理・軍縮は大きく進展した。米ロ間では新START条約が合意され、配備される戦略核弾頭数は、両国共に1550発に制限された。


また、2010年の核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議では最終文書の採択に成功している(GWブッシュ政権の下で実施された2005年の会議では採択に失敗)。


この最終文書には、核軍縮に向けた具体的措置(包括的核実験禁止条約=CTBTの早期批准、透明性の向上などの措置)が盛り込まれたほか、核不拡散と原子力の平和利用を推進する上で、安全保障上の考慮を反映した管理強化措置が合意された。


■なにも貢献せずにノーベル平和賞受賞


国連では2009年9月にオバマ大統領を議長とする安全保障理事会で核軍縮に関する史上初の理事会が開催され、「核兵器なき世界」を目指すとした安保理決議1887が議決された。


さらに、2010年以降、2年ごとに核セキュリティ・サミットが開催され(2010年はワシントンDC、2012年はソウル、2014年はオランダ、2016年はワシントンDC)、核セキュリティと高濃縮ウラン(HEU)の管理強化が規定された。


オバマ政権は安全保障政策における核兵器の役割の低減に関する問題を提起し、米国自身、2010年の核態勢見直し(Nuclear Posture Review: NPR)で具体的な方針を示している。


それによると、米国は核兵器の根本的な役割を自国、同盟国、パートナー国に対する核攻撃の抑止とし、それらの重要な国益を防衛するための極限の状況(extreme circumstances)で核兵器の使用を考慮する、としている。


さらに、非核手段による攻撃を抑止する際の核兵器の役割を、単一目的(sole purpose)に限定しないが、低減させることを表明している。ただし、NPTに加盟し、核不拡散の義務を遵守する非核兵器国に対しては、消極的安全保証を約束するとしている。


クリントン政権の時代にも課題となり、ブッシュ政権の下で核兵器の大幅削減を実現した、生物化学兵器に対する核兵器の報復的使用の禁止については、オバマ政権はブッシュ政権の運用政策の方針を継承し、一定の留保の下、通常兵器で破滅的な反撃を加えると表明している。


NPRでは、核兵器の役割低減に向けた具体的措置を表明している。たとえば、核実験を実施せず、CTBTの批准を追求すること、新核弾頭を開発しない、その代わり、核弾頭の安全性・確実性・効果性を確保するため、寿命延長プログラム(LEP)の実施などが表明されている。


NPRの内容は、2013年6月に発表された核運用政策(Nuclear Weapons Employment Strategy of the United States)で、戦略計画レベルに反映されることになった。


政権初期に表明した「核兵器なき世界」構想により、オバマ大統領は2009年にノーベル平和賞を受賞した。もちろん受賞には、ノーベル平和賞に付きまとう政治的思惑の存在を否定することはできない。


しかし、この受賞に関連して興味深かったのは、米国内のみならず、国際社会でも聞かれた批判――核廃絶に対して実質的な貢献を「まだ」行っておらず、願望を演説で表明しただけでノーベル平和賞を受賞した――である。


実はこれこそ、オバマ政権の外交・安全保障政策に対する交錯した評価の本質なのではないだろうか。


■不明確だった短・長期目標の因果関係


オバマ大統領は米国内および国際社会の潜在的な願望を理解し、それを踏まえた政治的な方向性を提示することに長け、その政治的アピールの実施に成功した。


確かに、「核兵器なき世界」演説に対しては、米国が核軍縮に向けた大目標を提示した点に国際社会の評価が集まった。実際には、米国はその世界を実現するための方策や優先順位、またタイムラインを明確に提示せず、核兵器の存在に安全保障を依存する各国の政治的状況への対応は、実務的作業の中で対応されるべきものとなったのである。


一般的に、政治目標の追求という意味で、長期目標と短期目標とが別個の論理で構成されるとき、歴史を紐解くと、カーター政権期の人権外交などのように、それが政治的混乱の発生原因となる例が数多く見られる。


オバマ大統領の「核兵器なき世界」構想の特徴は、構想が理想とする世界を実現するには、米国および既存の核兵器国と核兵器保有国(インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮)が核兵器を放棄するという重い決断を下す必要があるのに対し、政策の焦点分野として核セキュリティと核不拡散が提起されていた点にある。


構想における長期目標と短期目標の因果関係は明確ではなく、短期的措置を積み重ねた結果が長期目標の実現になるのか、長期目標を実現する過程で短期目標を実現することが不可欠なのか、それとも、長期目標と短期目標との間に相関関係がないのか――オバマ大統領の演説及びその後の行動や発言では明らかではない。


また、「核兵器なき世界」に向かうための必要な措置として、今後何が具体的に必要なのか、という問題も語られていない。


■プラハ演説を振り返ってみると……


ここで、2009年4月の発言を振り返ってみよう。


オバマ大統領は、核実験の禁止と核の闇市場の根絶を挙げ、特に核不拡散の重要性を強調している。そして、必要な措置として、国家安全保障戦略における核兵器の役割の低減(戦略核弾頭と備蓄の削減に関するロシアとの交渉の開始)、NPTの強化(核軍縮と、平和的原子力エネルギー活用における拡散リスクの削減、罰則の強化)、そしてテロリストに対する核の拡散防止(核物質の安全管理)を主要なものと規定している。


前述のように、これら措置のいくつかは政権の下で実施された反面、核実験の禁止を国際法的に担保するCTBTは未批准状態にあるなど、オバマ政権の下でも実施されていない措置もある。


これらを俯瞰して気が付くのは、オバマ政権の外交・安全保障政策における「核兵器なき世界」構想の重要な点は、政権前半期に不拡散と核セキュリティ問題を中心に重点的に政策措置が実現され、第二期以降の措置としては、イランの核問題に関する包括的共同作業計画(JCPOA:Joint Comprehensive Plan of Action)以外に目立った成果がない点である。


JCPOAの成立についても、米国内ではイランの将来の違反行為に対する抑止措置がないことと、中東の戦略環境の下で、米国はイランに対する政治手段を実質的に喪失することへの批判も根強い。


つまり、不拡散問題での成果が他の政策分野に悪影響を及ぼすという古典的な問題の発生が予想されるため、個別の政策措置を一つの政策分野で評価できないという問題から逃れられないのである。


これは、核軍縮でも顕著に見られる。米国が20世紀以降リベラル国際主義に基づいて国際秩序の構築を重ね、安全保障面でも米国の安全保障上の関与と再確証を前提に多国間及び二国間関係が構築されている中で、その前提となる核兵器の存在およびその意義を、ただ大統領個人の信念によって変更することが、米国の歴史や同盟国との信義の中で適当なのかという問題は、指摘され続けてきた。


もちろんオバマ大統領は、核抑止の意義を否定しないと繰り返し表明してきたし、それは現実の軍事態勢や、同盟国との核協議の中で証明されてきた。


そうなると、「核兵器なき世界」を長期目標として掲げることと、自国や同盟国等を核抑止で防衛するという戦略構想は両立しうるのか、という問いに行き着く。


そして、もし両立するのであれば、どのくらいの期間両立し、両立しない状況が到来した瞬間には何が起こるのか、という新たな問題にも直面する。


■未完の構想だった


オバマ大統領は、核兵器への依存を下げた状態での国家及び国際安全保障を担保することは、通常兵器などの核兵器以外の手段の活用によって対処可能と結論付けている。


しかし、核兵器の効果を知る国家からは、米国の核抑止の後退を、自身の核兵器取得によって補うのではないか(米国側から見た場合に、核拡散ということになる)との意見も根強い。


おそらくこの関係を理解するオバマ大統領は、「核兵器なき世界」構想と、具体的な政策的措置を切り離し、完全に別個に追求すべきものと捉えている。それゆえに、政権前半で国際社会の長期目標に対する関心の高まりに応え、その効果を見て政治的信任を得た後は、構想の実現とは直接的に関係がない、実務的な政策措置に集中していったのであろう。


つまり、「核兵器なき世界」構想は、未完の構想であり、核兵器の廃絶や核軍縮への関与は不完全さを当初より包含していたか、我々が最初から「核兵器なき世界」構想の本質を無視もしくは誤解していたのでは、との考えに行き着く。


特に後者に関して、この構想が核軍縮よりも緊急性が高く短期目標として対処する必要がある核不拡散と核セキュリティを重視しており、現実にもそれら措置が実現していった。そのことを考えると、「核兵器なき世界」構想は手段であって目的ではなかったとする解釈には説得力がある。


『Foreign Affairs』の2015年9/10月号で同誌のギデオン・ローズ編集長はオバマ大統領を「保守的な気質を持った理想主義的なリベラル」と評している。この評論には頷ける部分が多く、他の外交・安全保障政策分野でのオバマ大統領の実際的な志向を見ていると、規範や理念さえも政策実現のための手段として扱う姿勢が目立つ。


「核兵器なき世界」構想は、核の災禍に対する普遍的な問題意識から出発したのには間違いないが、どの時点からかオバマ大統領は政治的手段以上の意義を付与しなくなったように見える。


そのような背景があるため、2015年のNPT運用検討会議では核軍縮領域での妥協を排し、核兵器の非人道性をめぐる市民社会を中心とした運動や核兵器禁止条約に対しては、冷静な対応を行っているのであろう。



■次期政権にどう引き継がれるのか


最後に、「核兵器なき世界」に真摯に取り組む立場にとって、不都合な問いを考えてみよう。果たして、オバマ大統領の構想は、核軍縮を進めることに貢献したのだろうか。


2015年のNPTや核兵器禁止条約をめぐる議論を見ていると、核兵器国と非核兵器国の分断は拡大し、相互に妥協不可能な領域に近づいているのではないかという疑念を持つ。


もしそうであれば、この構想は国際社会に不必要な期待を抱かせ、実現不能な「夢」に関与させることで、核軍縮を実際的には不可能にし、核拡散を誘発させかねないものということになる。


これはオバマ大統領が望んだものではないことは間違いないと信じるが、オバマ政権後の「核兵器なき世界」構想の具体的な措置がないまま次期政権に構想が手渡されると、違った形で利用されるリスクがあることもまた間違いないと感じるのである。


その意味で、オバマ大統領が広島で発出するであろうメッセージが、この構想の次期政権以降での価値を左右することになるのであろう。


佐藤丙午(さとう・へいご)
拓殖大学国際学部教授。1966年、岡山県生まれ。博士(法学/一橋大学)。防衛庁防衛研究所主任研究官、拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。この間、経済産業省産業構造審議会貿易経済協力分科会安全保障貿易管理小委員会委員、外務省参与等も務める。国際安全保障学会理事、日本安全保障貿易学会会長、一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員。専門は国際関係論、安全保障、アメリカ政治外交、軍備管理。共著に『日米同盟とは何か』(中央公論新社)、『21世紀の国際関係入門』(ミネルヴァ書房)。


 

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コメント
 
1. 2016年5月16日 18:19:14 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[1498]

オバマの理想は悪くは無かったが、日本国憲法の前文みたいなものだったということだ


現実の人間というものは、利己的で、他人を信じず、

監視がなければ、平気で暴力や悪をなす

無関係な他人のために犠牲になろうという人などほとんどいない

つまり現実が見えておらず、理想実現のための有効な戦略もなかったということだ



2. 2016年5月16日 18:54:44 : EYCSp0M8Tw : qnio2lBwNco[80]
脳内お花畑みたいな理想は、世の中が余裕のある時にしか相手にされない。
状況が厳しくなって、自分の身を護るのが精いっぱいの時代には、そんなものは鼻で笑われる。そういうことだ。
米の凋落と中の増長に世界が振り回されている。

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