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大英帝国の歴史に照らせば、EU離脱は「創造的破壊」の始まりだ 悲観論が強まっているが…(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/16/kokusai15/msg/795.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 10 月 27 日 07:59:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

              メイ首相〔PHOTO〕gettyimages


大英帝国の歴史に照らせば、EU離脱は「創造的破壊」の始まりだ 悲観論が強まっているが…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50062
2016.10.27 笠原 敏彦ジャーナリスト 毎日新聞編集委員・元欧州総局長 現代ビジネス


イギリスの欧州連合(EU)離脱は何をもたらすのか。

6月の国民投票からほぼ4ヵ月。イギリスは単一市場から完全撤退するとの見方が強まり、経済的な視点から悲観論が強まっている。

それでも、筆者には、イギリスのEU離脱はコントロール不能となったグローバリゼーションに軌道修正を迫る「創造的破壊」となる可能性を秘めているように思えてならない。

■ハードか、ソフトか

まずは、離脱をめぐる最新の動きを押さえておこう。

メイ英首相は10月2日、保守党の年次党大会で来年3月までにEU基本条約(リスボン条約)50条に基づき離脱を通告すると表明した。

通告後、両者は2年を目処に交渉に入るが、離脱(Brexit、ブレグジット)をめぐる最大の焦点は、イギリスが「移民管理」と「単一市場へのアクセス」のどちらを優先するかに絞られてきた。

離脱派にとっては、移民の入国を制限する権限を取り戻すことは譲れない一線である。なぜなら、国民投票が離脱の結果となったのは、EUが2000年代に入って東欧へ拡大し、イギリスへの欧州労働移民が2015年までの11年間で300万人へと3倍に急増し、国民の不満が高まったからという経緯があるからだ。

一方で、EUはイギリスに対し、人、物、カネ、サービスの「4つの移動の自由」という欧州統合の基本理念で譲歩する姿勢は一切見せていない。

このため、イギリス国内では、移民管理が認められないなら単一市場から撤退すべきだという「ハード・ブレグジット(強硬離脱)派」と、単一市場に残ることを最優先すべきだとする「ソフト・ブレグジット(穏健離脱)派」の見解が鋭く対立しているのである。

国民投票で問われたのは離脱の是非であり、離脱の在り方までは聞いていない。離脱派はまとまりのある組織ではなかったため、離脱への青写真も示されていない。

メイ首相は党大会の演説でこの点に触れ、「我々は移民管理について自分たちで決める。移民管理を再び放棄するためにEUを離脱するわけではない」と述べ、移民管理を優先する姿勢を初めて明確にした。

これに呼応するかのように、トゥスクEU大統領は10月13日、「ハード・ブレグジットに代わる唯一の現実的な道は残留しかない」と語り、「移民管理」と「単一市場」のどちらを取るのか、イギリスに二者択一を迫った。

離脱交渉の行方をめぐっては、EU側が“超高額の慰謝料”を突きつけ、イギリスが離脱できない状況がずるずると続くというような予測も出ている。しかし、現状を見る限り、双方の交渉姿勢は単一市場からの撤退へ収斂しつつあると言えるだろう。

■二つのシナリオの損得勘定

ここで簡単に、イギリスの選択肢が単一市場、関税同盟からの完全撤退に絞られつつある事情を説明しておきたい。

EUの単一市場と関税同盟は完全には一致せず、関税同盟には非EU加盟国のトルコなどが参加している。そのどちらかに残ろうとする場合、損得勘定はどうなるのかということである。

シナリオ@「EUから離脱して単一市場に残る」 → 単一市場のルールは適用されるが、新たなルール作りには参加できなくなる。ノルウェーなど非EU加盟国で単一市場に参加する国の例に従えば、EUへの拠出金を支払い続け、労働者の自由な移動も受け入れなければならない → 離脱の意味がない

シナリオA「単一市場からは撤退するが、関税同盟には残る」 → EU域外の国々との自由貿易協定(FTA)締結などイギリス独自の通商政策が取りにくくなる → 離脱のメリットがほとんどない

こう見ると、トゥスクEU大統領が言うように、イギリスにはEUを離脱して単一市場からも撤退するか、その撤退を望まないなら、考え直してEUに残留するか、そのどちらかの道しかないように思えてくるだろう。

■悲観論へのギモン

メイ首相が強硬離脱も辞さない姿勢を示したことを受け、通貨ポンドは10月初めに31年ぶりの安値を記録した。将来への懸念から、銀行や企業が海外脱出準備を進めているという報道も目にする。

イギリスのEU離脱は悲観的なシナリオで語られがちだが、こうした見方は離脱の一側面しか見ないものである。

例えば、イギリスには日本の主要自動車メーカーが工場進出しており、離脱すれば、EU域内への輸出には10%の関税がかかるようになると懸念されている。一方で、離脱決定後、ポンドはドルとユーロに対し15%前後も下落。イギリス経済自体は輸出部門などが好調で株式市場は史上最高値に迫る騰勢が続いているのが現状である。

具体的な事例を見ても、日本のソフトバンクはイギリス進出を強化している。同社は7月に英半導体開発大手ARMを約240億ポンド(3.3兆円)で買収すると発表した。日本企業による買収額としては過去最高という。

この発表を受け、ハモンド財務相は「外国企業にとってイギリスが投資先としての魅力を失っていないことを示した。イギリスは開かれている」と語っている。

ソフトバンクは10月14日には、サウジアラビアとともにハイテク企業への投資を目的として最大10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」をイギリスに設立すると発表している。

孫正義社長のこうした投資判断は、イギリスのEU離脱に対する悲観論がいかにバランスを欠いたものであるかを示していると言えないだろうか。

■イギリスの強み

イギリスの将来像を考える際、避けるべきはステレオ・タイプ的な見方である。

離脱決定を捉えて「保護主義」「内向き」と評する声があるが、これは当たらない。アメリカ大統領選でクリントン候補とトランプ候補がともに環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に反対しているのとは別次元の話である。

イギリスの強みは「開かれた社会・経済」であり、このスタンスが大きく揺らぐことは今後もないだろう。

なぜそう言えるのか。その根拠としては、メイ政権が発足後、原発新設計画に中国国営企業の参入を認める事業計画を追認したことを挙げるだけで十分ではないだろうか。安全保障と密接に関わる原子力部門に中国を参加させるというのは他の先進国では考えられないことである。

イギリスは、国家の最重要インフラ部門でさえ海外資本に委ねる国だ。金融街シティの強さも、米ウォールストリートや、問題があるとは言え、タックスヘイブン(租税回避地)として知られる旧植民地や王室属領の海外金融ネットワークに支えられたものであり、他の金融センターが簡単に追随できるものではない。

移民管理も、これまでの寛容すぎた政策への反動と見るべきであり、EU域内からの自由な労働移民の流れを制限しようというものだ。

■「ブレグジットは孤立主義ではない」

それでは、イギリスはどこへ向かおうとしているのか。

イギリス国民のEU離脱という選択を、短期的な経済的利益を超えたより本質的な政治的選択として捉えるなら、その展望は違って見えてくるはずだ。

メイ首相は「一部の特権階級だけが甘い汁を吸う社会はだめだ。すべての人に機能する国家を築く」と訴えるとともに、EU離脱決定を「静かな革命」と位置づけ、より幅広い資本主義社会の改革を目指す路線を打ち出している。

メイ首相の政治スタンスは社会政策的にはリベラルで、経済面では介入を辞さないという姿勢に見える。近年のイギリスの首相にはなかったタイプである。

その一方で、メイ首相は「開かれた経済」へのコミットメントも示し、「我々がEU離脱後に築くイギリスは、グローバル・ブリテンになる」と強調している。

こうした姿勢は離脱キャンペーンを主導したボリス・ジョンソン外相(前ロンドン市長)も同様であり、「ブレグジットは孤立主義ではない。欧州だけでなく、より積極的に世界と関わっていくことになる」と訴えている。

つまり、EUの枠から外れることで、各国とFTAなどで経済関係を結び直し、イギリスが外交・通商政策で独自に国際社会との関係を強めていくという方針である。

当然ながら、こうした政治家の発言をそのまま受け止めることはできない。それでも、イギリスの現状は、リーマン・ショックの反省も踏まえ、1980年代のサッチャー革命以降続いてきた「市場原理主義」的社会の修正期に入ろうとしていると見るべきだろう。

■「創造的破壊」を繰り返してきた歴史

世界を見渡すと、グローバル化に伴う格差拡大や中間層の縮小でどこの国も民主主義が機能不全に陥っているのが実情である。アメリカ大統領選での「トランプ現象」や欧州各国でのポピュリスト政党の台頭はその象徴として語られている。

グローバリゼーションが行き詰まりを見せる中で、どこの国も展望なき国際潮流を反転させる新たな国家統治モデルを示せていない状況はまさに危機的である。

そして、ユーロ危機から今も脱出できず、難民問題やテロの脅威を前に無能さをさらけ出しているEUはまさにジリ貧状態である。

国民の安全と福祉を守れなければ、国家は正当性を失う。EUに残留することは、多国籍企業を中心とした大企業の利益とは言えるのかもしれない。しかし、国民の福祉も含めた国益にとって「正しい選択」と言い切れるのだろうか。

* * *

イギリスは創造的破壊を繰り返して進歩してきた国だ。

歴史を紐解けば、議会制民主主義の確立を導いた名誉革命(1688年)、近代工業社会への扉を開いた18世紀からの産業革命、第二次大戦後の「揺りかごから墓場まで」の福祉国家構築、新自由主義経済のサッチャー革命……。

現状が行き詰まったとき、「創造的破壊」が社会を新たな次元へ導いてきたことは歴史の示すところである。

フランスの著名な学者、エマニュエル・ドット氏は、イギリスのEU離脱決定とアメリカでの「トランプ現象」の同時進行について読売新聞(6月28日)のインタビューでこう語っている。

“17世紀以来、知的・科学的・経済的発展の推進力だったアングロサクソン世界は今、何かを産み落とそうとしている。それは確かだ。だが、それが何か、見当がつかない。「予言者」であることはますます難しい。だが、私は生来の楽観主義者だ。英国人、米国人が忌まわしい何かを作ることは想像しがたい”

米英両国の“異変”を受け、国際的なエスタブリシュメント層からもグローバリゼーションの現状に警鐘を鳴らす声が出始めている。

国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事や欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁、トゥスクEU大統領らが異口同音にグローバル化がもたらす格差の是正などにもっと注意を向ける必要性を訴えている。

イギリスのEU離脱は、現状の単なる破壊なのだろうか。それとも、グローバリゼーションの創造的破壊の始まりなのか。注目していきたい点である。
 

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コメント
 
1. 2016年10月27日 15:21:16 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[3040]

ただし不必要なインフレや産業衰退を招いた結果

経済全体として、多くの労働者や大衆にとっては、

創造のプラス効果よりも、破壊のマイナス効果の方が、遥かに大きくなる

しかし反欧州心理の満足が優先するなら、それは自業自得だから、問題はないだろうw


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