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トランプ大統領の「安保タダ乗り論」にどう対処すべきか トランプ大統領を待つ米国分断社会の板挟みという茨の道    
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 11 月 10 日 21:03:08: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

ロシアから見た「正義」 “反逆者”プーチンの挑戦
【第29回】 2016年11月9日 北野幸伯 [国際関係アナリスト]
トランプ大統領の「安保タダ乗り論」にどう対処すべきか

トランプ大統領誕生で株価は下落、為替も円高が進むなど、市場は 「トランプリスク」に怯えている。日本は、トランプ大統領とどのように渡り合っていくべきだろうか? Photo:AP/AFLO
ヒラリー・クリントンとの激戦を制したドナルド・トランプ。数々の暴言で知られるトランプだが、間もなく日本の同盟国・米国の大統領になる。この事実を私たちは受け入れ、未来に目を向ける必要がある。今回は、「日本は、トランプとどうつきあうべきなのか?」を考えてみよう。

なぜ、泡沫候補が
勝利できたのか?

日本に対しても、「もっと金を出さなければ、米軍を撤退させる」「日本が核を保有することは悪いことではない」とトンデモ発言を繰り返し、日本人と日本政府を困惑させてきたトランプ。まず、当初「愉快候補」「泡沫候補」と思われていたトランプが、なぜ勝利できたのかを考えてみよう。

1つ目の理由は、「グローバル化」への反発である。

「超富豪が世界を牛耳っている」というと、「陰謀論」と捉える人が大半だろう。しかし、近年「本当にそうなのではないか?」という事実も出てきている。なんと、「世界の大富豪上位62人の資産と、下位36億人の資産は同じ」だというのだ。CNN.co.jp1月18日から。(太線筆者、以下同じ)

<オックスファムは今週スイスで開かれる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に向け、米経済誌フォーブスの長者番付やスイスの金融大手クレディ・スイスの資産動向データに基づく2015年版の年次報告書を発表した。
それによると、上位62人と下位半数に当たる36億人の資産は、どちらも計1兆7600億ドル(約206兆円)だった。>

<また、上位1%の富裕層が握る資産額は、残り99%の資産額を上回る水準にあるという。>(同上)

上位1%の資産は、残り99%の資産額より多い!そして、同報告書によると、格差はますます拡大し続けている。

・62人の超富豪と、貧しい36億人の資産は同じ。
・上位1% の資産は、残り99%を超える。
・貧富の差は、ますます拡大している。

このような世界の現状は、陰謀論者でなくても「おかしい」と思うだろう。米国でも、そう考える人が増えた。

ところで、「グローバル化」と「貧富の差の拡大」は、どう関係があるのだろうか?ここでいう「グローバル化」とは、「人、モノ、金の移動が自由になること」を意味する。たとえば、「金の移動」が自由になり、世界の大企業や大富豪たちは、普通にオフショアを利用している。つまり大富豪は、合法的に「税金をほとんど払う必要がない」のだ。

一方で、「人の移動の自由化」により、たとえば米国に貧しい国からの移民が殺到している。労働市場に安い労働力がどんどん供給されるため、元から住んでいた人たちの賃金は安くなり、職を失う人も多い。

しかし、「労働力が安くなること」を、大企業は歓迎する。今回の大統領選で、こうした「行きすぎたグローバル化」に反対の声を挙げた候補が2人いた。1人は、民主党でヒラリーを追いつめた社会主義者サンダース。もう1人は、共和党のトランプだ。

トランプ自身は大富豪だが、移民の規制を明言するなど、「反グローバル化」「米国第一主義」を掲げている。

トランプが勝利した2つ目の理由は、「ISによるテロが頻発していること」だ。

2014年8月、オバマは「イスラム国」(IS)への空爆を開始した。苦境に立たされたISメンバーたちは、難民に混じって欧州に逃れ、その後世界に散らばっていると言われている。たとえばドイツだけで15年、100万人以上の難民がシリア、イラク、アフガニスタンなどから来た。そのうち何人がISメンバーなのか、把握できない(誰も、「自分はISメンバーです」と宣言してやってこない)。

トランプは15年12月、「イスラム教徒の入国を完全に禁止しろ」と発言した。理由は、「誰が普通のイスラム教徒で、誰がISメンバーなのか分からないから」だ。政治家もメディアも「差別だ!」とひどく反発したが、米国民からは、「その通りだ!」という声が上がりで、支持率は下がらなかった。

トランプ当選の最大の理由
FBIはなぜヒラリー捜査を再開したのか?

3つ目、最大の理由は、大統領選直前にヒラリー・クリントンの汚職疑惑に関心が集まったことだろう。

ビル・クリントンが大統領を引退した01年、ヒラリーはニューヨーク州上院議員になった。2人は同年、慈善団体「クリントン財団」を立ち上げている。

政府の汚職を研究する「政府アカウンタビリティ研究所」(GAI)のピーター・シュバイツァー会長は15年5月、「クリントン・キャッシュ」という衝撃的な本を出版した。全米でベストセラーになったこの本によると、クリントン夫妻は、以下のような構図で金儲けをしていたという。

1.ビル・クリントンが、外国政府、企業の要望を聞き、上院議員(後に国務長官)ヒラリーに、それを伝える。
2.ヒラリーは、政治力を行使し、外国政府、外国企業の願いをかなえる。
3.外国政府、外国企業は、見返りとして、ビル・クリントンに高額の講演料を支払うか、あるいは「クリントン財団」に多額の寄付をする。

「クリントン・キャッシュ」によると、その「黒い収入源」は、カザフスタン、ロシア、インド、アフリカ、中東、南米と、世界中にひろがっている。「クリントン財団」の汚職疑惑については、FBIも捜査している。ウォール・ストリート・ジャーナル10月31日付を見てみよう。

<クリントン財団の捜査に関する証拠の強さに上級幹部らが繰り返し疑問を投げ掛け、多岐にわたる取り組みを縮小しようと試みていたことが新たに分かった。一部の関係者によれば、この一件の追及を制限するよう捜査員たちに命じていた。同財団への捜査は、金融犯罪などの有無を見極めるために1年以上前に始まった。>

この記事は、1.クリントン財団に金融犯罪の疑いがあり、FBIが捜査していること2.FBIの上層部は捜査に乗り気でないこと、を示している。

しかし、上層部が乗り気でなかったはずのFBIは、なんと大統領選挙直前に、「メール問題」「クリントン財団問題」の捜査を再開し、ヒラリーのイメージに決定的打撃を与えた。

捜査再開の理由についてFBIは、ヒラリーの側近フーマ・アベディンと、その夫アンソニー・ウィーナー元下院議員のパソコンから、私用メール問題に関係のある可能性があるメールが「新たに65万通見つかったから」と説明している。

しかし、ロシアでは、「ヒラリーのあまりにひどい汚職に耐えかねたFBIが、彼女の支持率を下げるために、わざと選挙直前に捜査を再開した」とみられている。

真相は分からないが、実際に支持率は下がり、トランプは勝利した。

米軍駐留費全額負担と在日米軍撤退は
どちらが日本にとっておトクか?

次に、「トランプ新大統領と、どう付き合うべきか?」を考えてみよう。トランプは、さまざまな暴言を吐いているが、日本がらみで大問題になったのは、2つである。

1.日本がもっと金を出さなければ、在日米軍を撤退させる可能性がある。
2.日本の核武装を容認する。

要するに、トランプは「日本がもっと金を出せば、在日米軍は留まる」ということを言いたいのだ。そうなれば、日本が核武装する必要もなくなる。つまり、日本にとって、トランプ問題は「在日米軍に残ってもらうために、もっと金を出すべきかどうか?」という話に集約される。

これを検討する前に、「そもそも日本には脅威が存在するのか?」を考えなければならない。

真っ先に思い浮かぶのは、北朝鮮だろう。そして、中国。毎度同じことを書いて申し訳ないが、中国は12年11月の時点で、ロシアと韓国に、「反日統一共同戦線」の構築を提案している。そして、「日本に放棄させるべき領土」には、北方4島、竹島、尖閣に加えて、沖縄も入っている。中国は、「日本には尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない」と宣言しているのだ。さらに同国は、「反日統一共同戦線には、米国も引き入れなければならない」としている。

つまり、中国が尖閣、沖縄を奪うのは「既定路線」であり、米軍が撤退すれば、必ず侵略を開始するだろう。結局、日本の選択は2つしかない。

1.トランプの求めに応じて、米軍駐留費用をもっと払う。
2.米軍に出ていってもらい、自分の国は自分で守る。

「独立国家としての理想」は、いうまでもなく「自分の国は自分で守ること」だろう。しかし、そうなると、巨大な中国に対抗するために、「防衛費増加」を避けて通ることはできない(ストックホルム国際平和研究所のデータによると、中国の軍事費は15年、2150億ドル。日本は409億ドル。その差は、実に5倍以上である)。

現在、日本の防衛費はGDPの約1%、約5兆円である。これは、世界レベルで見ると例外的に少ない。米国の軍事費は15年、GDP比で3.32%。日本が米国並みの軍事費を目指せば、防衛費は年間16兆円となり、現状の5兆円+11兆円増となる。そこまで極端でなくても、GDP比2%ぐらいは、当然必要になってくるだろう。そうなると防衛費は倍増するので、年間5兆円増となる。

はたして日本国民は、「防衛費を年間5兆円増やすこと」に賛成するだろうか?財政面を考えても、おそらく無理だろう。では、トランプの要求に従って「米軍駐留費用」を増額すると、いくらかかるのだろうか?

実をいうと、日本は既に「米軍駐留費用」の約75%を負担している(そのことを知ったトランプは、「日本はそんなに払っているのか!」と驚いたという)。

防衛省によると、平成28年度の「在日米軍関係経費」は、5566億円となっている。これで75%ということは、100%負担すると年間7421億円が必要となる。

7421億円−5566億円=1855億円。

トランプから、「100%日本が負担しろ!」と言われ、それを実行すると、年間1855億円の負担増となる。一方、米軍に出ていってもらって完全自主防衛にし、防衛費を現在のGDP1%から2%にすれば、年間5兆円の負担増だ。どちらに経済合理性があるかは、明らかではないだろうか?

トランプの言動から読み取れる性格
「負けず嫌い」をうまく活用すべき

トランプとは、どんな男なのだろうか?今までの発言からはっきり分かる特徴が2つある。

1.民族主義的である。
多民族国家である米国で、「民族主義」という用語は適切ではないかもしれない。トランプ風にいえば、「米国第一主義」となる。

2.なんでも「損得」「お金」で判断する。
資本家、経営者としては当然かもしれない。このことは、日本、韓国、サウジアラビア、NATO諸国などに、「もっと金を出せ!」と要求していることから明らかだ。

BBCニュース11月2日付は、「ドナルド・トランプ氏の頭の中」という記事の中で、8つの特徴を挙げている。

1.過去について話すのが好きではない
2.けんかが好き
3.失敗を受け入れるのが嫌い
4.自分の名前が記事になるのが大好き
5.良い政治家は良いセールスマンだと考えている
6.自分は正直だから騒ぎになると考えている
7.パットが上手(らしい)
8.スキーの名人を良く思っていない、自分より上手いと見せつけられるのも嫌い

トランプの過去のインタビューを分析して書かれたこの記事からわかるのは、「異常なまでに負けず嫌い」であるということだ。もっとも興味深いのは、「8」だ。

<8. スキーの名人を良く思っていない、自分より上手いと見せつけられるのも嫌い。
本を書くにあたって、ダントニオ氏はトランプ氏の元妻イバナさんにも取材した。付き合い始めて間もなくコロラド州にスキーをしに出かけた時のことを、イバナさんは話した。
イバナさんがスキーが得意だと知らなかったトランプ氏は、先に斜面を下ってから恋人に「こっちだよ、ベイビー、こっちだよ」と呼びかけたという。
そこでイバナさんは「空中で回転したんです。2回、くるって。彼の前で2回。そしてそのまま遠くまで滑って行った」。
「ドナルドは激怒して、スキーを外して、シューズも外して、レストランまで歩いて行ってしまった。我慢できなかった。まったく我慢できなかったんです」>
(BBCニュース11月2日)

恋人が自分よりスキーがうまいのが、我慢できない!その後の態度は、まるで子どものようだ。日本は、こういうトランプの特徴を知り、うまく付き合うべきだ。安倍総理はトランプに会ったら、「私も日本国民も、米国が世界のリーダーで居続けることを望んでいます」と言おう。トランプは、きっと喜ぶだろう。

続いて、「しかし国際社会は、米国が世界のリーダーで居続けるとは思っていないようです。ほとんどの米国の同盟国が警告を無視して、中国主導のAIIBに参加したことからも、それは分かります。世界は、中国が世界のリーダーになると思っているみたいですね」と言う。すると、トランプの負けず嫌いに火がつき、「どうすれば中国に勝てるだろうか?」と考えはじめることだろう。

日本最大のリスクは、米国抜きで日中戦争になることである。そうなれば尖閣は、ほぼ確実に奪われる。

日中戦争を回避するもっとも簡単な方法は、払う金を増やしても日米同盟を強固に保つこと。そしてトランプに、「対中国バランシング同盟」を主導してもらうことだ。日本が考えなければいけないのは、トランプの強大なエネルギーを、正しい方向に向けることなのだ。
http://diamond.jp/articles/-/107231


 

山田厚史の「世界かわら版」
【第122回】 2016年11月10日 山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
トランプ大統領を待つ米国分断社会の板挟みという茨の道

トランプ大統領の行く手には分断社会の修復や外交・内政のリストラという困難な仕事が待つPhoto:REUTERS/AFLO
一年前は「泡沫候補」だった。ドナルド・トランプは共和党の予備選挙で弾みをつけ、まさかの勢いで第45代米国大統領の座を射止めた。不動産王といっても政治は素人。「床屋談義」のような型破りな発言で大衆を煽る政治家が世界のリーダーになる。「世界の保安官にはならない」という本人に、その自覚はあるだろうか。トランプの登場は、アメリカが「超大国」から「一つの大国」に降格する始まりとなるだろう。「アメリカ支配」を前提に保たれてきた世界秩序に激震が走る。

強者の論理の行き着く先が
弱者のトランプ支持だった

トランプを勝たせたのは分断されたアメリカ社会に漂う不機嫌な気分ではないか。既存の政治家による支配を覆さなければ偉大なアメリカは戻ってこない、と不安を抱える白人層の郷愁に訴えた。底流には中産階級の崩壊がある。

内陸部の工業地帯では工場労働者の職場が脅かされ、都市部でも企業のリストラで中間管理職が減る。雇用の構造は一部の知的職業と、その他大勢の安い労働に分極化している。大学を出ても安定した仕事を確保するのは至難の業だ。工場のラインで働けば家族が養えて郊外に戸建て住宅、という暮らしも難しくなっている。資本が国境を自由に軽々と超えるグローバル化、機械がとって代わる技術革新、そして労働コスト切り詰めに熱心な経営者。資本にとって効率的であることが人々の不安を煽っている。

安倍首相は「日本は世界一企業が活動しやすい国を目指す」と言ったが、アメリカこそ「企業が活動しやすい国」である。移民が自己責任で築いた国、規制を嫌い、効率を重視し、小さい政府で企業の利益を妨げないことを大事にしてきた。

経済学でいう「合成の誤謬」がアメリカで起きている。それぞれの企業が最適とする効率化を進めてきた結果、企業の外に非効率(失業)をまき散らし、貧困の放置や治安の悪化が社会を劣化させた。

小さい政府は社会的弱者に冷たい。豊かな国を標榜しながら国民皆保険さえない、社会分断が顕著な国となっていた。金持ちは高い塀を巡らし銃を持った警備員が常駐するゲーテッドハウスに住み、貧乏人を寄せ付けない分断社会が広がっている。

アメリカは州単位で設けられている消費税も低い。政治家は減税に力を入れるが財政赤字は膨らんでいる。その財政の多くが軍事費に注がれ、社会を安定させる「富の再配分」には回らない。

強者の倫理は政治にも貫かれている。典型が「青天井の企業献金」である。政治献金は「表現の自由」であり規制を受けない、という理屈で米最高裁は「献金の自由」を認めている。

一方、共和党も民主党も議会での投票に党議拘束がない。上院議員も下院議員も、個人の責任で法案の賛否を決めることができる。

重要法案は企業や業界が雇うロビイストが原案を書き、議員への多数工作をする。決め手は政治献金である。有力議員はロビイストや業界と結びつき、社会のルール作りの背後には巨大資本や業界が控えている。議会が法律を起案する米国では、力のない庶民や貧者は議会で多数工作をすることはできず、声は政治に反映されない。政治から排除された弱者が受忍限度を超えたのが今回の選挙ではないのか。

冷戦崩壊、グローバリズムで
アメリカの統治システムがおかしくなった

強者の国にアメリカがのめり込むきっかけはソ連崩壊だった。対峙する勢力が消え、国内で反体制運動が起きるリスクは払拭された。世界がまるごと市場経済になり、国境を越えた資本の動きは活発になり、冷戦崩壊と共に米国は世界を一極支配する超大国となる。

経済にも国境がある国民国家が終わり、巨大資本が新市場や安い労働力を求めて世界を自由に飛び回るグローバルな経済がやってきた。

経済強者は米国政府を使って他国の市場をこじ開けるようになった。日米構造協議や環太平洋経済連携協定(TPP)などが分かりやすい例だ。企業では他国の法律を変えられない。米国政府の外交力で他国に制度を変えさせる。米国の資本は海外で稼ぎを増やす、というシステムが広がったのが21世紀だ。

モノづくりから金融へと産業の主力が変わる。製造業も自前で工場など持たず、海外で安い生産者に生産を委託し、特許など知的財産で稼ぐ。雇用は米国で生まれず、職場は機械やコンピュータに置き換わり、中間層は細る。「ジャンクビジネス」と呼ばれる配達、清掃、小売りというマニュアル化された低賃金労働ばかりが増えた。一つの仕事で暮らせない。いくつも仕事を持って不安定な暮らしを続ける人が増えている。

こうした傾向が顕著になったのはビル・クリントンが大統領になったころからである。

リベラルな大統領として政権を奪取したものの94年の中間選挙で敗れると、ネオリベラリズム(新自由主義)を標榜して、競争原理と効率化を左派から推進する政治へと舵を切った。金融業者の牙城であるウォール街と政治都市ワシントンを結ぶ「ワシントンコンセンサス」と呼ばれる権力システムが形成された。

新自由主義は英国でも労働党のトニー・ブレア首相が旗を振り、日本では小泉構造改革となって世界に広がる。怒涛のような金融資本主義の進展は、米国を史上最強の経済と言われるほど押し上げたが、リーマンショックで金融バブルが弾けた。

銀行やGMなど大企業は公的資金で救済されたが、経済破綻で被害を受けたのは庶民であり社会的弱者だ。1%の富者と99%の貧者という「格差」が社会問題となった。

多くの有権者は、アメリカの統治システムがおかしくなった、と感じている。

8年前、オバマが大統領になったのも、有権者の「異議申し立て」だった。理想主義を掲げるオバマに期待が集まったが、現実の政治の中で理想は霞み、無力感が残った8年間だった。トランプはその反動である。「既成の政治家はみなクズだ」といわんばかりの攻撃で庶民の政治不信の受け皿となった。

政治に満たされない人々の憤懣に火をつけたが、本人は明確な指針を持っているとは思えない。大統領になれば選挙用の極端な言動は薄まるだろうが、米国をどこに導くかは定かでない。

ヒラリーが負け「強者」も
戦略見直しを迫られる

トランプが勝ったが、敗者はヒラリー・クリントンだけではない。ホワイトハウスに強い影響力を持ってきた「経済強者」は戦略の立て直しを迫られるだろう。

今回の大統領選は対立の構図まで変えた。民主党と共和党の戦いは、「ラベルは違っても中味は同じボトル」と言われていた。

「民主党が労働組合寄り」とか「共和党は小さな政府」などと言われるが、どちらも基本的には、金融、軍事、ハイテク、化学・薬品など米国を基盤とする多国籍企業とつながりが強い。

巨大資本との対決を鮮明にしたのは民主党の予備選でヒラリーと戦ったバーニー・サンダース候補だった。格差問題や巨大企業の政治支配を批判し善戦した。

トランプ支持はこの潮流と重なっている。大富豪であり、自前の資金力で選挙資金を賄えるトランプは、巨大企業に依存せず選挙戦を戦えた。だからこそ「既存政治家」を罵倒することができた。

ヒラリーは豊富な選挙資金を集め、有利な戦いと見られていたが、資金の多くは後に利害が絡む「企業献金」と見られている。夫のビルが設立したクリントン財団が政治献金の受け皿であることはメディアが指摘している。

大統領になるにはカネがかかる。若者に担がれたサンダースはネットで少額の寄付を集めキャンぺーンを展開した。トランプは自前。企業からのカネに頼るヒラリーは「既成政治」を引きずる候補者だった。

豊富な政治キャリアを誇っても庶民には雲の上の人で親しみは感じられない。米国社会で支配層を象徴する「エスタブリッシュメント」の象徴にヒラリーはなってしまった。

政治家として基盤を固めるには経験を積み政財界に人脈を作ること、というのがこれまでの常道だった。その構造が変わったのである。夫と共に創った財団を足場にしたヒラリーは社会の末端から起こる変化を感じ取れなかった。

サンダースと指名を争い、トランプに敗れたヒラリーは「ホワイトハウスを操る富者」と共に敗れたのである。

仕事は外交・内政のリストラ
ホテル拡大路線のようにうまくいくか

対決の構図は共和党vs民主党ではない。エスタブリッシュメントvs政治不信。それが今回の戦いだった。時代の勢いに乗って接戦を制したトランプが真価を問われるのはこれからだろう。

大統領になったことを一番驚いているのは本人ではないか。「反既存政治家」で接戦を制したが大統領になる準備はできていない。

ウォールストリート・ジャーナルは「保守派が現実的な問題として懸念しているのは、トランプ氏が候補者であった時と同じように大統領就任後も行き当たりばったりで、公約通り政治を変えらえないことである」と指摘した。選挙がもたらした社会の分断やエスタブリッシュメントとの軋轢は、トランプ大統領の足かせになるだろう。

庶民感情に寄り添うか、多国籍企業と妥協するか。どこかで迫られるに違いない。

ビジネスマンの感覚で「アメリカの利益」を貫こうとすれば多国籍企業と手を握ることはできるが、その場合、支持してくれた白人層を裏切ることになる。資本に国境はないが、国家は今も国境の中だ。トランプはどんなスタンスを取るのだろうか。

「世界の保安官はしない」という姿勢はビジネスマンにありがちな「費用対効果」の考えが基調にあるのだろう。軍隊を中東に派遣してでも石油を確保する時代は終わった。膨大な費用がかかる軍事派遣はソロバンに合わない時代だ。各国は米国の軍事力を当てにして防衛計画を立てている。

米国にその財力はもうない。世界秩序を維持する最後の暴力装置という役割から徐々に手を引くことになるだろう。すでにオバマの時代にそれは始まっていた。

誰が大統領になろうと回ってくる役割だろう。手を付ければ国防総省、国家安全保障委員会、つながっている軍事産業や諜報機関の権益構造に触れることになる。

トランプの仕事はビジネスの世界で成功した拡大路線とは逆だ。外交・内政のリストラである。気まぐれで、悪たれをつく気性が、厳しい撤退作戦に耐えられるだろうか。
http://diamond.jp/articles/-/107173  

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コメント
 
1. 2016年11月10日 21:06:58 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[3207]

>中国が尖閣、沖縄を奪うのは「既定路線」であり、米軍が撤退すれば、必ず侵略を開始する 、日本の選択は2つしかない。
1.トランプの求めに応じて、米軍駐留費用をもっと払う。
2.米軍に出ていってもらい、自分の国は自分で守る。


いや、尖閣と沖縄を中国に渡すという手がある

沖縄人も、米軍や本土を嫌っているから、それが一番簡単で、摩擦もないだろう


2. 2016年11月10日 22:11:23 : 0CejVRban6 : urcdmA9xc1s[863]
ここは米軍からの、日本独立を画策するべきでしょう。
チャンス到来です。

3. 2016年11月10日 22:38:26 : ojQkVIETNg : Tlc27cEQvdw[4]
トランプ氏に対してアメリカ追従派日本人が
如何ほど説明したとしても、現実に存在する

基地の過重な負担を隠し通す事は出来ない。
追従派の言葉を聞き飽きた米市民層が自分の

事として沖縄県民の後押しを買って出て支援を
し始めるのは火を見るよりも明らか。


4. 2016年11月10日 23:56:02 : vTYEtTd4cc : iFsRUROyKqQ[210]
>>2さんに賛成。
でもこの国の国民や国会議員に真の独立を目指す覚悟ってものはあるのだろうか?
与党も野党も現実この問題から逃げている。
憲法9条ひとつとっても変えられない。
与党はアメリカにベッタリ依存気質だし野党は平和憲法守れで思考停止しているし。
今回の選挙結果で一番注目していたのはTPPなんかではなくこの件だったんですよ。

5. 2016年11月11日 17:55:58 : HjCHbiL9yc : r66eSYUSdgw[133]
現在でも防衛費はかなりの額になっている。米国が要求したら、その中から支払えば十分であろう。もちろん、国内向け防衛予算は急減するが。

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