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韓国へのTHAAD配備に中国が横槍を入れる理由 日本のXバンドレーダーともデータリンク、対中包囲網の形成に
http://www.asyura2.com/16/warb17/msg/689.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 5 月 10 日 00:14:20: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

韓国・烏山空軍基地で公開された地対空誘導弾パトリオットPAC3の発射機(写真右奥、2006年10月14日撮影、資料写真)。(c)AFP/JUNG YEON-JE〔AFPBB News〕


韓国へのTHAAD配備に中国が横槍を入れる理由 日本のXバンドレーダーともデータリンク、対中包囲網の形成に
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46757
2016.5.10  阿部 純一 JBpress


 来る5月末、伊勢志摩サミット開催の後にオバマ米大統領が被爆地・ヒロシマを訪問することが決まったという。実現すれば米大統領として初めてのヒロシマ訪問である。

 北朝鮮の核実験で朝鮮半島の緊張が高まり、かつNPT(核不拡散条約)体制下で核兵器保有を公式に認められている米露英仏中の5カ国のうち、唯一中国だけが核軍縮の世界的潮流に逆らい核戦力の拡充に努めているという北東アジアの現実に鑑みて、オバマ大統領のヒロシマ訪問は中国、北朝鮮に対するアイロニカルなメッセージとなるかもしれない。

 とはいえ、ヒロシマへの原爆投下についての米国人の心情は複雑だ。非戦闘員である一般市民を大量虐殺した原爆投下は、国際法に照らしても正当化しうるものではない。それを米国は、「太平洋戦争を早期に終結させ、日本への本土上陸作戦を実施した場合に生じたであろう日米双方の人的犠牲を回避することができた」というロジックで正当化してきた。

 はたしてオバマ大統領はヒロシマ訪問で同じロジックを繰り返すのだろうか。それとも、原爆投下に伴う多大な犠牲者への道義的責任に言及するのだろうか。いずれにせよ、米国の「良心」が問われることになる。

■北朝鮮の核兵器開発を許したオバマ政権の「無為無策」

 2009年9月、就任1年目のオバマ大統領は、プラハで「核なき世界の実現」を希求する演説を行い、その意思への期待からノーベル平和賞が授与された。しかし、その期待は現在までのところ何ら成果を伴っていないと言ってよいだろう。

 もちろん、2015年7月、イランの核開発を制限する合意が形成され、イランに対する制裁解除ができたことを成果とすることは可能かもしれない。しかし、その合意がイランの核開発に完全な歯止めをかけるものとなっていないのは事実であり、将来的にこの合意がイランの核武装を完全に防ぐ保障にはなりえない。

 オバマ政権が成果を生んでいない端的なケースが北朝鮮の核兵器開発である。オバマ政権下における2009年、2013年、2016年の3回の核実験(これまでの核実験は計4回)に加え、それに合わせて長距離弾道ミサイルの発射実験も行ってきた(北朝鮮は人工衛星打ち上げを主張)。

 北朝鮮は一連の核実験によって核弾頭の小型化を図り、その一方で長距離弾道ミサイルの発射実験の目的は射程を伸延することにあり、現在では北米まで到達する能力を持ちつつあると評価されるまでになった。オバマ政権の「無為無策」が生んだ結果である。

■韓国の非核化にもかかわらず北朝鮮は核開発に邁進

 北朝鮮が行った2016年1月6日の水爆実験と称する4回目の核実験の結果、韓国で噴出したのが「核武装論」である。

 韓国における「核武装論」には歴史的経緯がある。朝鮮戦争が1953年に停戦となった以降も、北朝鮮の大規模通常戦力に対抗し抑止するため、韓国駐留米軍は戦術核兵器を韓国内に配備してきた。しかし、ベトナム戦争末期の1970年代半ばになると、米国のベトナムからの撤退がいずれ在韓米軍の撤退に連動することを恐れた当時の朴正熙政権は独自の核武装を模索し、それを察知した米国がストップをかけたという事実がある。

 その一方で1990年代初めには、米軍が韓国に戦術核を配備していることを認め、その撤去を実施した。それまで米国は在韓米軍の戦術核配備について「否定も肯定もしない」政策をとっていた。しかし、北朝鮮が自らの核兵器開発を正当化する理由に、韓国における米軍の戦術核の存在を指摘していた。また米ソ冷戦の終結に伴い、戦術核兵器の撤廃が米ソで合意されたことも、その背景にある。

 こうして実現した「韓国の非核化」という状況下で、かつ北朝鮮の核武装を米国が強く懸念していたにかかわらず、北朝鮮が核開発に邁進したのは、韓国との経済格差が歴然としてきたことによる。

 しかも、1990年にはソ連が、1992年には中国が韓国と国交を樹立し、北朝鮮が後ろ盾と頼んできた両大国がいわば裏切る形となり、結果的に孤立感を深めた事実がある。

 かかる逆風下のもとでコストのかかる通常戦力整備で太刀打ちできないことを自覚した北朝鮮が、相対的に安価な核兵器開発で抑止力を確保する選択をしたのはむしろ当然であった。

■韓国にとって不要とは言えなくなってきたTHAAD

 結局、米国は90年代から現在に至るクリントン、ブッシュ・ジュニア、そしてオバマ政権の3代にわたり、四半世紀近く北朝鮮の核開発に注視しつつ、有効な歯止めをかけられずにきた。

 無為無策を継続してきたオバマ政権としては、同盟国・韓国で勢いを増す「核武装論」を押さえるためにも、かねてより韓国に提案してきた「終末高高度ミサイル防衛システム」(THAAD)の配備を強力に進める動きが出てきた。

 韓国にはすでに局地ミサイル防衛システムであるパトリオットPAC3が導入済みであるが、広いエリアをカバーすることはできない。しかもPAC3で迎撃に失敗すればなすすべがない。THAADなら北朝鮮の短距離ミサイルの「スカッド」から中距離ミサイルの「ノドン」まで広いエリアで対応でき、高高度迎撃に失敗しても戦略的要所であればPAC3がバックアップできる。

 韓国では当初、北朝鮮が同胞である我々を核攻撃するはずがないという楽観論があり、さらに北朝鮮の核とミサイルは日本向けだという論調もあって、日本防衛のためであるなら韓国は協力する必要がないからTHAAD配備は不要だという議論があった。これは、1950年に勃発した朝鮮戦争が北朝鮮による韓国武力制圧の試みであった事実を忘れた議論にすぎないが、韓国ではそれなりに世論の支持があったと言われ、楽観的な雰囲気が支配的であったとされる。

 しかし、北朝鮮が核実験を重ね、弾道ミサイル開発も継続するとなれば、さしもの韓国でさえも北朝鮮の軍事的脅威に備えざるをえないことになる。

■THAAD配備は南シナ海をめぐる対中包囲網に

 このように韓国で米国のTHAAD配備受け入れの流れが出てきた時に、中国が横槍を入れてきた。

 もともと中国は東アジアへの米国の弾道ミサイル防衛システムには懸念を示してきた。だから中国の米国による韓国へのTHAAD配備反対は決して新しい動きではない。しかし、米ソ冷戦末期もそうであったように、米国の開発したミサイル防衛システムは核抑止を安定させる「相互確証破壊」、つまり核戦争が「共倒れ」になるがゆえに相互抑止が成立するという前提を突き崩す要因になりうることから、当時のソ連の激しい反発を招いていたし、現在もロシア、中国が執拗に反対している。

 中国の習近平主席はオバマ大統領との3月末の「核安全サミット」での首脳会談で、米国による韓国へのTHAAD配備は「中国の戦略的利益を損ねる」という言い方をした。

 中国が韓国へのTHAAD配備に「反対」する理由は、現在の東アジアでの情勢に照らせば、核抑止力のバランスだけにとどまらず、もっと広い意味で理解しなければならないだろう。というのも、韓国へのTHAAD配備が中国の核戦力や核戦略に直接的な制限を加えるものではないからだ。

 中国が北米大陸を直接攻撃できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)すなわち「東風5」や「東風31A」といったミサイルを迎撃する能力は、韓国配備のTHAADにはない。しかも、中国が吉林省通化に配備している朝鮮半島や日本に照準を合わせている中距離弾道ミサイル「東風21」はTHAADシステムを構成するXバンドレーダーで捕捉できるが、飛翔途中のミッドコースにあるミサイルを迎撃する能力がTHAADにはない。だから、韓国配備のTHAADが中国の核攻撃力を抑止する要素とはならない。

 しかし、韓国に配備されるTHAADシステムに含まれる探知距離1000キロメートルを超えるXバンドレーダーは、日本の青森県と京都府や、グアム島に設置されているXバンドレーダーとデータリンクされるし、米海軍や海上自衛隊が運用する、ミサイル防衛能力を持つイージス艦のレーダーとも連動するだろう。

 要するに、韓国へのTHAAD配備は、韓国が日本との安保協力に消極的であろうがなかろうが「日米韓の安全保障協力の強化」につながることになる。換言すれば、それが北東アジアにおける対中包囲網を形成し、日米の海上戦力の連携は東南アジア諸国との防衛協力につなげることで南シナ海をめぐる対中包囲網にもなりうる。

 そうした事態の進展を睨んで中国が「戦略的利益を損ねる」と考えているとすれば、最近、豪州が次世代潜水艦導入をめぐり日本の「そうりゅう」型ではなくフランスの通常動力潜水艦を選択したという事例は、(どこまで中国が豪州に影響力を行使したかは分からないが)日米を中心とする対中包囲網形成の動きに「一矢を報いた」ということもできよう。

■アジアからの米軍の影響力排除を目指す中国

 2015年末、中国は「巨浪(JL)2」潜水艦発射弾道ミサイル(SLMB)を搭載した「晋(JIN)」級ミサイル原潜の哨戒パトロールを開始したと伝えられる。最近では南シナ海でMIRV(複数個別目標再突入弾頭)を備えたとされる「東風(DF)」41 ICBMの発射実験を実施したと報じられている。また、フィリピンに近いスカボロ礁での人工島建設の動きも伝えられている。

 アジアからの米軍の影響力排除を目指す中国の動向は活発化しており、ますます東アジア・西太平洋での米中の角逐が熾烈になっている。こうした状況下で日本の安全保障政策も正念場を迎えることになるのは間違いない。


 

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