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北朝鮮が核実験とミサイル発射を繰り返す理由 その背景にある核戦略と核戦力レベル(JBpress)
http://www.asyura2.com/16/warb18/msg/765.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 10 月 05 日 00:19:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

北朝鮮東部・元山で開幕した「元山国際友好航空祝典」で、展示飛行を行うヒューズ社製のヘリコプターMD500を見る兵士(2016年9月24日撮影)〔AFPBB News〕


北朝鮮が核実験とミサイル発射を繰り返す理由 その背景にある核戦略と核戦力レベル
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48032
2016.10.5 矢野 義昭 JBpress


 今年9月9日、北朝鮮は5回目の核実験を強行した。今年に入り北朝鮮は20回以上も各種ミサイルの発射試験を繰り返している。

 明らかに北朝鮮の核兵器とミサイルの開発は加速している。国際的な制裁が強まり、体制内での相次ぐ粛清、経済困難が伝えられるなか、金正恩指導部はなぜこのように核とミサイルの開発配備を急ぐのか?

 その背景には、金正恩独裁体制の存続と国内外での威信の確立、対米・対中交渉材料など、様々の政治的外交的な思惑があるとみられる。しかし、最も本質的な動機として、核戦力の軍事戦略上からみた他に代えがたい価値を北朝鮮指導部が極めて深刻に認識しているということがある。

 核戦力は、北朝鮮の自主独立路線を安全保障面から担保する決定的手段である。核保有国が採り得る核戦略にはそのレベルに応じていくつかの段階がある。現在の北朝鮮の核戦力のレベルはどの段階にあり、またどのような核戦力の水準を目指しているのであろうか。

■1 核実験に成功する以前の段階

 核戦力のレベルとして最も低い水準は、まだ核実験には成功していないが、潜在的には核兵器開発の能力を持っているとみなされている段階がある。それにも2通りのケースがある。

 まず、核開発の潜在的能力はあるが、核開発の兆候もなく、政治的な意思決定もされていないとみられている段階である。現在の日本はこのような国に該当する。

 この段階では、国際的には警戒されても、核開発疑惑を招くには至らず、制裁を受けることはない。ただし、核兵器開発の意思はなくても潜在能力があれば、相応の外交的、政治的な抑止力にはなり得る。

 軍事的には即時に有効な抑止力として機能はしないが、数か月から数年以内に核保有が可能とみなされていれば、開発能力はないとみなされているよりも、全般的な抑止効果は作用する。

 北朝鮮の場合、朝鮮戦争中に米国から核恫喝を受けた経験を契機として、核関連技術の蓄積に乗り出している。戦争中の1952年に、中国は北朝鮮に放射性物質を手渡し、中ソ両国は北朝鮮の兵器開発を含む核技術研究に協力している。

 この頃は、東西両陣営内部の核拡散が密かに進行しており、まだ核拡散阻止に向けての国際的な圧力は希薄であった。

 ソ連のドブナの連合核研究所では、1950年代初期に950人の中国人とともに数十名の北朝鮮の科学者と技術者が派遣され、核研究のための学術と実務の訓練を受けていた。

 朝鮮戦争休戦後フルシチョフが登場し、ソ連は核ミサイルを重視する戦略を明確にし、米ソの核ミサイル戦力拡張競争がし烈になった。キューバ危機で屈辱をなめたソ連はブレジネフ体制のもとで、戦略核ミサイルの本格的増強に乗り出した。

 他方では1968年に核不拡散条約(NPT)が署名開放され、五核大国以外への核拡散阻止の国際レジームが固まった。

 同年、金日成は、「米本土を攻撃する手段として、核兵器と長距離ミサイルを自力生産せよ」との内部指示を出している。金独裁体制のもと、核ミサイル開発の意思はNPTに抗うように北朝鮮内部では明確に示されていた。

 北朝鮮の潜在的な能力は、明確な政治的意思のもと、1950年代初期から人材の育成、技術の蓄積など、着実に高まっていた。

 1975年頃から核兵器やミサイルの開発に不可欠の「磁気測定装置」が、数度にわたり日本から北朝鮮に不正に輸出された。この頃から、核とミサイルの開発が本格化したとみられる。

■2 疑惑はあるが核実験に成功していない段階

 もう1つの潜在能力の段階として、まだ核実験には成功していないが、何らかの核兵器開発の兆候と意思があるとみなされているケースがある。

 この場合は、特にNPT加盟国に対しては、条約違反との理由で、またNPT非加盟国でも、国際的な核拡散阻止の立場から、外交的な孤立、経済制裁、時には先制空爆などの軍事的制裁を受ける可能性が高まる。

 それに対する独自の核抑止力はまだ伴っていないため、軍事的にも外交的にも最も脆弱になるが、そのために体制崩壊に至った例はある。

 例えば、イラクのサダム・フセインは1990年に核開発疑惑を持たれていた段階でクウェートを侵略して、翌年1月からの湾岸戦争を招いた。その結果、密かに進めていた核開発計画の放棄を余儀なくされたが、その後も核開発を密かに進めているとの疑いが2003年1月のイラク戦争開戦理由の1つになった。

 イラクが核兵器開発の能力を持っていることは証明されなかったが、同年3月フセイン政権は打倒され、サダム・フセインは逮捕、その後処刑された。

 これに恐れをなしたリビアのカダフィは2003年3月から英国と接触を始め、パキスタンなどの支援を受けて進めていた核開発計画を暴露し、同年12月には全面放棄を公表した。しかしカダフィはその後、アラブの春による政権崩壊後の混乱の中で殺害された。

 またイラクは1981年に建設中の原子炉を、シリアは2007年に北朝鮮の支援を受けて建設中の原子炉を、イスラエル空軍の空爆により破壊されている。

 イランの核兵器開発疑惑に対しては、米国のバラク・オバマ政権下で一応の妥結に達したが、イランの核兵器開発の潜在能力を遺しているとして米議会でも大統領選挙でも争点の1つとなっている。

 これらの事例から明らかなように、核兵器開発を密かに進めているのではないかとの疑惑を受けながらも、核実験に成功して核兵器保有の能力を実証するには至らない段階が、既存の核兵器保有国はじめ国際社会の各種制裁をも最も受けやすく、脆弱な段階となる。

 北朝鮮自身も核開発疑惑を受けた段階で、米国との間で戦争の一歩手前まで行った経験を持っている。

 1993年、北朝鮮は核兵器開発疑惑を受けIAEA(国際原子力機関)が特別査察を要求したことに反発しNPTからの脱退を宣言した。これに対し米国は、軍事行動により北朝鮮の核開発能力を制圧することを検討し、軍事的緊張が最高潮に達した。

 この時は、金日成自らが事態打開に動いた。1994年7月の金日成とジミー・カーター元大統領会談を契機に、黒鉛減速炉の軽水炉への転換、重油の支援などを交換条件として、北朝鮮が核開発を凍結することで合意が成立し、一応軍事的危機は遠ざかった。

 ただし、それにより北朝鮮が核兵器開発を放棄したわけではないことは、その後の経緯からも明らかである。

 『朝鮮中央通信』は北朝鮮が4度目の核実験を強行した2日後の今年1月8日、「正義の水爆は我々の誇りである」とする論評を配信し、その中で国際社会の圧力で核開発を放棄したイラクのフセイン政権とリビアのカダフィ政権について「制度転覆を企図する米国と西側の圧力に屈し、あちこち引きずられ核開発の土台を完全に潰され、自ら核を放棄したため破滅の運命を避けることができなかった」と言及している(辺真一『コリア・レポートofficial site』、2016年1月25日)。

 この論評にあるとおり、北朝鮮としては、核を放棄したサダム・フセインやカダフィの末路が示す教訓から、金正恩体制の存続さらには金正恩自身の身の安全のためにも、決して核兵器を放棄してはならないと肝に銘じているとみるべきであろう。

■3 核実験に成功、数発の核爆弾を保有している段階

 次の大きな節目となるのは、初めて核実験に成功して、核兵器保有の実力があることを実証した段階である。

 ただしこの段階は、核兵器保有のレベルでは最も低い段階であり、初めて核爆発実験に成功したものの、備蓄された核爆弾はまだ数発以下しかなく、依然として核大国の軍事的な制圧行動に対し脆弱である。

 しかし、この段階になると核弾頭の投射手段がなくても、特殊部隊や民間船舶、地下道などで密かに持ち込むことは不可能とは言えない。

 相手国の近隣の敵対国や破綻国家、テロリストに譲渡することもできる。核拡散防止上はむしろ、この破綻国家やテロリストなどへの2次拡散の阻止が国際社会の安定化のためには重要である。

 北朝鮮と韓国の間のDMZ(非武装地帯)を超えて、秘密の地下トンネルが多数韓国側により発見されている。北朝鮮が、未発見の地下トンネルを使い、韓国側の地下に核爆弾を持ち込むといった破壊活動も不可能ではない。

 また特殊部隊を使い陸路から車両で、あるいは海路から民間貨物船などを利用し持込むのも不可能とは言えない。

 したがって、核実験を成功させるだけでも、かなりの抑止力にはなりえる。特に、少数の核兵器の所在を秘匿するのは容易であり残存性が高いことから、核兵器を持たない国に対しては、決定的な残存報復力として侵略や報復を抑止するための効果的な兵器となり得る。

 米国の同意を得ていない韓国単独の北進や先制攻撃に対しては、北朝鮮の核兵器は少数であっても保有しているだけで十分な抑止力になり得る。ただし、米国が韓国に対する北朝鮮の通常戦力による攻撃、あるいは核恫喝に対し、自らが北朝鮮に対し核攻撃も辞さないとする、核の傘の提供に踏み切ることに対する抑止力にはなり得ない。

 なぜなら、この段階では、核兵器の小型化、軽量化はまだ不十分で、仮に米大陸に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)を北朝鮮が保有していたとしても、搭載はできないと考えられるためである。

 またこの段階では一般に、投射手段の開発配備も不十分で、信頼性のあるICBM戦力を保有していない場合が多い。

■4 核の傘の信頼性を低下させることのできる段階

 後述する、核大国の核攻撃を直接抑止できる最小限抑止段階に至る前に、日本や韓国のような米国の核の傘(拡大核抑止)に依存する米同盟国に対して、核攻撃または核恫喝を賭けた場合に、限定的とはいえ米国を直接核攻撃できる能力を持つことにより、日韓など同盟国に対する米国の核の傘の信頼性を低下させることのできる段階がある。

 現在の北朝鮮の核戦力レベルはまさにこの段階にある。

 拡大抑止の信頼性を低下させるためには、北朝鮮が保有する核投射手段を発達させ、韓国や日本が核抑止力を依存している米国の本土を直接攻撃できるICBMや潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を保有する必要がある。

 この段階に至れば、米国が韓国や日本を北朝鮮の核脅威から守るために、自国本土の都市住民が北朝鮮の核脅威に晒される危険を犯すかのということに対する疑念、いわゆる「拡大抑止の信頼性低下」という問題が生じてくる。

 現在の北朝鮮は、この米本土とグアムなどの海外領土を直接攻撃できる投射手段の開発配備に全力を挙げているようにみえる。

 今年に入り、北朝鮮は核開発と同時に、米本土に届く射程を持った宇宙ロケットと称するテポドン2改良型ICBM、グアムの米軍基地を狙った中距離弾道ミサイルのムスダン、固体燃料を使用したSLBMなどの各種弾道ミサイルの開発配備を加速させている。他方で北朝鮮は、先制核攻撃の可能性を否定している。

 このような動きには、日韓など米国の同盟国に対する米国の核の傘の信頼性を揺るがし、米国と同盟国を分断することによって、朝鮮半島有事における在日・在韓米軍基地への米軍の展開と軍事介入を阻止しようとする狙いがあるとみられる。

 核兵器の先制使用の否定は、まだ北朝鮮の核戦力が対米最小限抑止の段階に達していないため、米国による核先制攻撃の可能性を封じることが目的とみられる。それと同時に、日韓に対する核恫喝、核攻撃の能力は十分に保有していることから、核先制使用の否定は米国を安心させ、日韓と米国の分断をより容易にするための戦略とも言える。

 現在の北朝鮮が、米本土や海外領土を攻撃できる核戦力の実戦配備に力を入れているのは、米国を直接攻撃できる戦力を持たない限り、米国は自国への直接の核報復を恐れることなく、北朝鮮の南進に対し先制核攻撃を含めて報復攻撃を行うことができ、核の傘の信頼性は維持されるためである。

 そうであれば、まだ数少ない核投射手段や核兵器関連施設を米軍の精密空爆などにより破壊される恐れは残り、北朝鮮としては、十分な対米抑止力を持ったことにならない。

 この脆弱な時期をできる限り早く乗り越えて、少なくとも日韓に対する米国の拡大核抑止の信頼性を揺るがすことのできる能力を実証する必要があると、金正恩以下の北朝鮮指導部が認識していることが、北朝鮮の異常なまでの核とミサイル開発の加速化の背景にあると言えよう。

 このような自国の安全保障に対する根本的な不安感が解消できない限り、今後とも現在のような異常なまでの核とミサイルの開発配備のテンポは続くとみなければならない。北朝鮮指導部が対米抑止について真に安心感が持てるようになるのは、単に米国を攻撃できるという段階ではなく、更に次の最小限抑止段階に達した段階であろう。

■5 最小限抑止の段階

 次の節目となるのは、いかなる核大国に対しても、その核大国の攻撃から一定数の核戦力を残存させることができ、残存した能力で相手国に報復し、「許容しがたい損害」を与えうる核戦力レベルの「最小限抑止能力」を保有する段階である。

 「許容しがたい損害」について、明確な定義はないが、メガトン級の核爆弾で敵国の都市を攻撃し、その人口の数分の1程度に損害を与えられる規模の残存報復力を持つものとされ、一般にはメガトン級核爆弾200〜300発程度の水準とみられている。

 現在の核保有国では、中英仏各国がこの戦力を保有している。イスラエルもこのレベルに近いとみられ、印パ両国はまだこの水準には達していないが、パキスタンは核爆弾を増産しており今後このレベルを目指す可能性がある。

 核爆弾の原料となる核分裂物質には、プルトニウム(Pu239)と高濃縮ウラン(U235)がある。北朝鮮の核分裂物質の保有量について、今年9月時点のジーグフリード・ヘッカー(Siegfried S. Hecker)は、以下のように見積もっている。

 プルトニウムについては、生産炉の稼働率、能力などから、年間6kg、現在の保有量は32k〜54kg程度。高濃縮ウラン(HEU)については、確定することが難しいが、ヨンビョンのウラン濃縮施設のみで生産されている場合は現在約150kg、別に地下の秘密生産施設がある場合には約300k〜400kgに上るとされている。総合的には、今年末までに核爆弾20発分、その後年間7発ずつの核分裂物質が増産されると見積もられている。

 なお、北朝鮮専門のシンクタンク「38ノース」は昨年、政治的意思、経済力、技術力の確保、核実験の回数、ウラン濃縮工場が別に地下にあるか否か、その稼働率、パキスタン、イランなど外国の支援が得られるかなど、各種の条件に応じて、北朝鮮がプルトニウムとHEUを合わせ、2020年までに、何発程度保有できるかを見積もっている。

 最も好条件の場合は、核爆弾100発分程度、中位水準で50発程度、地下工場がなく稼働率が低く、核実験も2020年までに1〜2回程度しかできず、外国の支援がないなどの最悪の条件下で、20発分程度の核分裂物質を生産保有できると見積もっている。

 今回のヘッカーの見積もりでは、2020年までに50発程度の、中位水準が実現するものと予想していることになる。

 国際制裁が続き厳しい経済状況の中、HEUの地下生産工場は稼働しているものの稼働率は高くはなく、核実験は年に1回程度行われ、パキスタン、イランなどとの協力も限定的ながら継続するという状況が続くとの予想に立っている。

 北朝鮮の核開発が最も順調に開発が進んだとしても、2020年に100発程度と見積もられることから、その後さらに100〜200発を増産できるのは、年間10〜20発の生産規模として2030年頃になると予想される。

 北朝鮮が最小限抑止段階の核分裂物質を保有できるのは、2030年以降になるであろう。

 投射手段について「38ノース」は、中位水準の場合、2020年頃には次のようになると予想している。

 北朝鮮は、現在の開発配備のテンポを継続し、戦域では多くの海上配備のKN-01海上発射巡航ミサイルと短距離のKN-02短距離巡航ミサイルを基礎とする、艦艇または潜水艦搭載型の巡航ミサイルと弾道ミサイルが配備される。

 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)は緊急時作戦能力を持つかもしれない。地上では、ムスダンが作戦可能となり、より射程の長いKN-02短距離弾道ミサイルが現在のスカッドを補完するために配備されるであろう。

 さらに北朝鮮が、米日韓の戦域用ミサイル防衛システムに対抗するためのシステムの配備を決定する可能性もある。その場合、ノドンなどのミサイルに、おとり用としてロケット推進の矢弾を搭載し、飛行試験をする必要があるかもしれない。

 大陸間の脅威もさらに高まり、KN-08ICBMは、現在の緊急用発射基地から作戦用兵器となり、テポドンICBMは、より残存性の高い強化型のサイロに配備されるであろう。

 このように中位水準でも、戦域においても大陸間においても、核投射手段は向上し、最大数の100発程度の核弾頭を投射するために必要な多種多様な手段を北朝鮮は保有できるとみられる。投射手段について、最小限抑止段階に達するのは核分裂物質の生産よりも早く、制約にはならないとみられる。

 以上からみて2030年頃までは、北朝鮮は数百発レベルの最小限抑止段階には達しないとみられる。

 そのため北朝鮮は2030年頃までは、最小限抑止段階を目指し、核兵器とミサイルの実戦配備を国家安全保障上の最優先課題として、国力を挙げて取り組んでいくものと予想される。

■6 確証破壊段階

 最小限抑止段階の次に、相手国から先制核攻撃を受けても、残存した報復核戦力により相手国の産業の3分の1から4分の1、人口の4分の1から5分の1程度を破壊できる能力となる「確証破壊」段階がある。

 この段階に北朝鮮が達するのは容易ではない。山がちとはいえ国土が狭隘なため、射程が7000〜8000キロ程度の信頼のおけるSLBMを3〜4隻の静粛な原子力潜水艦に計百基以上配備しなければ残存報復核戦力は保障されないであろう。現在の英仏並みのSLBM戦力が必要になる。

 しかしSLBMの戦力維持には、英仏すら技術力と財政力に困難を感じており、北朝鮮がその水準の戦力を配備し運用することはできないとみられる。

 また、東西の二正面に海域が分断され、黄海側は中国の領海に近く浅いため潜水艦の配備には適さない。また東海、西海ともに米韓の対潜作戦の脅威にさらされている。これらの悪条件から、SLBMを残存報復核戦力の柱とすることはできない。

 北朝鮮にとり現実的な選択肢は、核戦力の一部はSLBMに配備しつつも、山がちの地形を利用して、サイロ式のICBMと車載式のムスダン改・中距離弾道ミサイル、ノドン後継型、スカッド後継型などを主体に、多様で残存性のある核戦力を保有することであろう。

 北朝鮮が多様な陸上配備型の核ミサイル戦力の整備を急いでいるのは、その国土地形に適した核戦力体系を念頭に開発を進めていることを物語っている。

■7 核戦争戦勝戦略の段階

 最も高度な核戦力レベルとして、現実の核戦争を想定し、その中でも戦い続け勝利できる核戦力レベルがある。この段階では、先制核攻撃からも残存して任務を遂行できる編成装備の部隊を訓練し展開できるだけでは不十分である。

 核作戦を指揮統制するためには、核攻撃にも耐えられる国家レベルから第一線部隊に至る指揮統制・通信・コンピューターシステムの整備、指揮権継承態勢の確立、一部の核作戦指揮権の現場指揮官への委任、戦術核戦力の整備と核弾頭の前線配備、核弾頭等と核作戦発動システムのセキュリティ確保などが必須の機能になってくる。

 しかしこれらの機能、特に指揮権の継承や移譲など独裁体制にはそぐわない施策を必要とし、また第一線部隊の兵員に至るまで、厳正な規律、高度のセキュリティ態勢と訓練水準が要求される。

 金正恩独裁下の北朝鮮で、このような態勢をとることは、単に経済的、技術的に困難なだけではなく、政治的にも不可能と思われる。

 したがって、北朝鮮がいまの独裁体制のままで、核作戦にも勝利できるような最高度の核戦力の段階に達することは不可能であろう。

 金正恩は経済建設と核開発の並進路線を掲げているが、核兵器とミサイル戦力は、米中核大国に依存することなく、独立主権を維持するための抑止力の切札として、今後とも国力を挙げて最優先で整備されるであろう。

 しかし、現在の北朝鮮の核戦力のレベルでは、核実験に成功したものの最小限抑止段階に到達するには十数年を要し、先制攻撃に対して依然として脆弱な段階にある。

 このため、北朝鮮は核実験と投射手段である各種ミサイルの開発と実戦配備を急ぎ、今後も核実験や各種ミサイルの発射試験を加速させるものとみなければならない。
 

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コメント
 
1. 2016年10月07日 09:07:55 : LY52bYZiZQ : i3tnm@WgHAM[-7981]
3本の坑道で動き=北朝鮮核実験場−米研究所

2016年10月07日 07:24 発信地:米国
時事通信

http://www.afpbb.com/articles/photo-slide/3103542?pno=0#/0
3本の坑道で動き=北朝鮮核実験場−米研究所 韓国・ソウル、北朝鮮が行った核実験について伝えるニュースを視聴する市民たち(2016年9月9日撮影、資料映像)。(c)AFP/JUNG YEON-JE

〖10月7日 時事通信社〗米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院の米韓研究所は6日、北朝鮮が先月5回目の核実験を実施した豊渓里の核実験場の最新の人工衛星画像を公開し、南北と西側の3本の坑道で人や車両などの動きが見られると明らかにした。同研究所は「核実験後のデータ収集や新たな実験の準備を含む幾つかの目的があるようだ」と分析した。

 1日に撮影された画像によると、5回目の実験が行われたとされる北側坑道の入り口近くにトラックのような大型車両が確認され、大きな幕が駐車場を覆っていた。また、新たな掘削が始まった兆候はないものの、何らかの物質が施設の横に置かれている。

 西側坑道や南側坑道の周辺でもトロッコや小型車両、人の集団のようなものが見られた。坑道の保守点検を行っている可能性があるという。(c)時事通信社

http://www.afpbb.com/articles/-/3103542


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