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転機に立つ日米安全保障体制 日本周辺パワーバランスの変化と安保体制のあり方(JBpress)
http://www.asyura2.com/16/warb19/msg/118.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 11 月 02 日 09:07:40: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

タイのコラート空軍基地で行われた中国とタイの合同軍事演習で飛行する、中国人民解放軍の「殲10(J-10)」戦闘機〔AFPBB News〕


転機に立つ日米安全保障体制 日本周辺パワーバランスの変化と安保体制のあり方
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48256
2016.11.2 矢野 義昭 JBpress


 同盟関係の運営においては、潜在敵国との相対的なバランス・オブ・パワーの推移を見通すことが同盟の信頼性を維持するためには不可欠である。

 日米同盟の今後のあり方を検討するうえでも、米国との対決姿勢を強めている中露との軍事的なバランス・オブ・パワーの変化を見通す必要がある。

■1. 最後まで米国優位だった冷戦時代の米ソ核戦力バランス

 冷戦時代は米ソ間で、いわゆる「恐怖の均衡」が成立していた。お互いに、仮に相手国から戦略核の奇襲攻撃を受けても、生き残った核戦力で報復すれば、相手国に国家として存続の危機をもたらすことができる能力を、米ソともに持っている状況、いわゆる「相互確証破壊」が成立していたとされている。

 しかし、その実態は米側の圧倒的優位であった。

 冷戦初期には、ソ連の周辺の米同盟国の基地に展開された米戦略空軍の中距離爆撃機と、米本土の長距離戦略爆撃機の数と行動半径は、ソ連の爆撃機戦力を圧倒していた。また、ICBM(大陸間弾道ミサイル)でも、米側はソ連を質量ともに圧倒していた。

 ソ連のSSBN(弾道ミサイル搭載型原子力潜水艦)は、母港を出るとすぐに米側の攻撃型原潜に追尾され、あるいは西側の対潜作戦網に捉えられて、万一の時にはいつでも撃沈できる状況に置かれていた。それに対し、ソ連側が米国のSSBNをとらえることは、冷戦末期まで遂にできなかった。

 唯一、ソ連のSSBNが安全に行動できたのは、オホーツク海であった。そのため、冷戦間、北海道の道北と道東は、西側の対ソ戦略上極めて重要な地位を占めていた。

 オホーツク海に突き出た道北と道東は、日本にとっては固有の領土であり、何としても護持しなければならない主権の一部である。それと同時に、西側の世界戦略上も、ソ連の戦略核報復力を封じるために死守すべき要域であった。

 逆にソ連側にとっても、対米核報復力であるSSBNの安全を確保するためには何としても奪取しなければならない要域であった。

 このため、陸上自衛隊は北海道に戦車などの重戦力を集中し、航空自衛隊も千歳、三沢に主力戦闘機を配備してソ連軍の奇襲に備えていた。また、海上自衛隊も宗谷海峡や千島列島の間を縫って行動するソ連潜水艦の動向を常に追っていた。

 このように、日本は冷戦期にソ連SSBN封じ込めに極めて重要な役割を果たしていた。この日本の貢献は、西側全体にとっても対ソ戦略上極めて重要な価値を有していた。

 冷戦は大国間の戦争を経ることなくソ連崩壊により終った。自衛隊も戦うことはなかったが、抑止力として西側の戦いなき勝利に大きく貢献した。

 冷戦期における軍事的側面から見た日米安保体制の本質的な意義は、このオホーツク海のソ連SSBNの封じ込め態勢にあったと言え、NATO(北大西洋条約機構)のバレンツ海正面以上の戦略的価値を持っていた。

 日米間では、1965年以降日本側の貿易黒字が定着して通商・経済摩擦が激化し、そのうえ日米安保体制は片務性を抱えていた。それにもかかわらず、日米安保体制が揺るがなかったのは、このような核戦略態勢上の死活的な利益を日米が共有していたからにほかならない。

■2. 急激な中国の核ミサイル戦力の増強と米中パワー・バランスの変化

 中国は1964年10月、東京オリンピックの最中に核実験に成功し、その後、ミサイル開発と核開発を国力を挙げて進めた。文革の混乱もその進度に影響を与えていない。

 核とミサイルの開発は1980年代には一応の水準に到達し、水爆の弾頭を備えた各種のミサイル、爆撃機および実戦配備には程遠かったがSSBNの開発にも一応成功した。しかし中国の核戦力の規模はまだ小さく、質的にも米ソにとり脅威となる水準ではなかった。

 このような状態は、1990年代中頃まで続いた。その頃までは、米国が先制奇襲すれば、一方的に中国の戦略核戦力を壊滅できるとみられていた。

 当時、中国の持つ米本土攻撃が可能な戦略核戦力は、竪穴のサイロに配備された約17基のICBMしかなく、米軍の優れた精密誘導爆撃能力を使えば、核弾頭を使用するまでもなく、すべての中国のICBMを破壊できるとみられていた。

 しかしこのような状況は、1990年代後半から中国が本格的な核戦力の増強近代化に乗り出したことにより、一変した。

 中国は、1989年以降2010年を除き、連続して毎年2桁のペースで軍事費を増額してきた。中国の戦略核戦力の近代化は、この軍事費の急増に支えられて、1990年代後半から目を見張る進歩を遂げている。

 特に、車載型移動式、潜水艦搭載型の核ミサイルが増え、先制攻撃から生き残る残存能力が向上した。また、ミサイルの精度が向上して射程が伸び、弾頭も多弾頭でかつ個別誘導が可能になるなど、破壊力も向上している。

 2007年に公表された米国の戦略研究機関の見積もりによれば、当時、もしも米中間で戦略核の応酬が行われた場合の双方の被害は、中国側が先制に成功した場合は、米側の損害が4000万人に対し中国側は2600万人程度になるとされている。

 その理由は、米国が中国に比べ、都市人口の比率が高いこと、米側の核弾頭は軍事目標を優先的に攻撃するために、威力が比較的小さいものが多いことなどによる。

 また2007年当時、米側が先制攻撃に成功しても、中国の核戦力の残存報復力が向上し、1990年代までのように、一方的に中国の核戦力を破壊することはすでに困難になっていた。

 その後も中国の核戦力の近代化と増強は進んでいる。長らく実戦配備段階に達していなかった潜水艦発射型の弾道ミサイルが実戦配備されるようになった。地上発射のICBMもさらに移動化され長射程、多弾頭化が進み、中国独自のGPSの部分運用が始まったこともあり、精度が大幅に向上している。

 現在では、中国が先制に成功すれば、米側の損害は約5000万人に達するともみられている。米側が先制したとしても中国の残存報復能力はさらに上がっており、予想される米側の損害も増加しているとみられる。

 このように、米中間の戦略核戦力のバランスは、米ソ、米露間のように、双方共倒れの確証破壊状態に近づいていると言える。

 財政面でも、米中の軍事費の逆転が迫っている。米国は、約20兆ドルに上る巨額の財政赤字を抱えており、国防費も2023年頃までに大幅削減を迫られている。その間の研究開発や装備の調達に使える予算は、米国の戦略国際問題研究所の見積もりによれば、総額5500億ドル程度にとどまるとみられている。

 他方の中国は、過去10年間で約4倍に名目の公表軍事費を増額させている。習近平中央軍事委員会主席は、「強軍」を掲げ、そのために必要な国家資源は保証するとしている。仮に主席が交代しても共産党独裁体制が維持される限り、今後も経済成長以上の速度で軍事費は伸び続けるであろう。

 「新常態」のもと、中国のGDP(国内総生産)成長率は今後低下するであろう。しかし、成長率が5%程度に低下すると仮定しても、軍事費は年率7%以上で伸び、今後10年間で少なくとも倍増することが予想される。

 米国防総省は、2014年の中国の国防費を約1650億ドルと見積もっている。中国の2015年の公表国防予算は約8869億元で、前年比10.1%増となっている。なお、中国の国防予算には、武器の輸出入代金、研究開発費、施設建設費などが含まれておらず、国際標準では公表額の2倍程度の額になるとみられている。

 以上の前提で予測すれば、中国の軍事予算は2024年頃には公表額で約3300億ドル、それまでの約10年間の累積予算額は約2兆5000億ドル、国際標準の額に換算すれば約5兆ドルになる。

 中国の国際標準に基づく軍事予算は、総額も内訳も不明である。しかし、中国軍の場合は徴兵制のため人件費比率は米軍よりも低く、装備品調達と研究開発費の比率は米軍よりも高いとみられる。

 米国の場合、2013年度国防省費目別予算の総額は、作戦行動費2727億ドルを除くと、3412億ドルとなる。そのうち、装備品調達費は1085億ドル、研究開発費は697億ドル、計1782億ドルとなり、総額の52.2%に上る。なお、人件費は1491億ドル、43.6%を占めている。

 仮に中国の軍事予算も米国と同程度の比率と仮定しても、装備品の調達や研究開発に軍事予算の半額を配分でき、今後約10年間で総額2兆5000億ドル、同時期の米軍の4倍以上の予算を投入できることになる。

 すなわち、米中の軍事力の増強近代化のため投入できる予算は、近い将来逆転する可能性が高まっており、中国軍の質的向上の速度が米軍に迫り、2020年代には追い越す可能性が高い。

 このように、米軍事力の中国軍に対する長期的な格差縮小は避けられないとみられる。さらに、ロシアが米国との対決姿勢を強めている。

 ウクライナではロシアの後押しを受けた非正規軍が分離独立の武力闘争を続けており、欧米とロシアの関係は悪化している。半面、ロシアは中国が主導するアジアインフラ開発銀行に参加し、最新鋭の戦闘爆撃機、大型ジェットエンジン、対空ミサイルなど中国に輸出する武器の質を高めており、対中接近姿勢を強めている。

 このような中露2大核大国の接近が、対米核戦略面でも進んでいくとすれば、米国にとり深刻な脅威となる。核大国は、万一の核戦争に備えるための核作戦計画を作成し、その中で核攻撃目標をリストアップしている。

 もしも中露間で、自国の核作戦計画では、相互に攻撃目標から外し、他方で、中露ともに米国とその同盟国に核攻撃目標を集中することに合意すれば、米国は中露双方に対する2正面作戦を強いられることになり、米国の核戦力バランスが極めて不利になる。米国の対中、対露抑止力は低下する。

 逆に中露の対米抑止力は高まる。このようなバランス・オブ・パワーの変化が、南シナ海で中国が、ウクライナでロシアが、力を背景とした現状変更を強行している背景にあるとみるべきであろう。

■3. 高まる中国の「接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略」の脅威

 米国は、中国による「近海」に対する戦略を「接近阻止・領域拒否(Anti-access/Area Denial)」と呼んでいる。

 その実態は、中国本土のミサイル基地、戦闘爆撃機と近海の艦艇、潜水艦などに配備された、核と非核の濃密な各種のミサイル網である。これらのミサイルの集中攻撃に連携し、特殊部隊の攻撃とサイバー攻撃が奇襲的に相手国にかけられるとみられている。

 すでに中国の本土とその周辺の海空域には、射程が4000キロ以下1000キロ以上の戦域ミサイルが600〜700発程度配備され、日本、台湾、フィリピンなどの第1列島線上の諸国と東シナ海、南シナ海を覆い、一部はグアムを狙っているとみられている。

 さらに、台湾の対岸には射程が1000キロ以下の移動式の短距離ミサイルが約1200基以上配備されている。これらの短距離ミサイルは与那国島、石垣島などを射程下に入れている。移動式で射程も伸び精度も向上しており、近く沖縄本島も攻撃可能になると予想されている。

 従来、第2砲兵と呼ばれていた核と非核の戦略ミサイル部隊は、習近平政権のもとでも重視されており、軍改革では「ロケット軍」に格上げされた。2015年の『中国の軍事戦略』では、第2砲兵については、特に「遠中距離の正確な打撃能力の向上」が重視されている。

 これは、米空母など洋上の大型移動目標に対して、精度の高い核、非核の弾頭を集中し、空母などの機能を奪い、3000〜4000キロのかなたから、それらの接近を阻止し、さらに約1700キロ以内に近づけば、それより中国領に近い領域内への侵入を拒否しようとする戦略方針を示している。

 このような侵入を拒否する海域とみられているのが、東シナ海と南シナ海である。これらの海域は、習近平政権が唱える発展戦略「一帯一路」の航路帯「一路」が走る、中国にとり生命線とも言える戦略的要域である。

 中国の「近海防御」戦略とは、米側が見る「A2/AD」戦略とほぼ同一と言え、「一帯一路」発展戦略を安全保障・軍事面で支える周到な国家戦略である。そのように見れば、中国が力を背景として強行した南シナ海の軍事基地化も、東シナ海での尖閣諸島領有の主張とそのための威圧行動も今後やむことはないとみるべきであろう。

 さらに注目されるのは、習近平政権の軍改革である。習近平は中央軍事委員会主席を兼ねており、軍全体の最高指揮権と統帥権を一手に集中している。習近平は、「中国の特色ある強軍(建設)の道を歩む」ことを要求している。

 組織改革面では、従来の7個軍区は戦略正面に従い5個戦区に再編されることになった。米軍に倣い、各戦略正面を担当する統合軍単位に再編され、司令部組織が簡素化され、習近平中央軍事委員会主席が直接各統合戦区を指揮する態勢がとられるようになったと言える。

 また、兵員30万人を削減することが表明されているが、その主体は、地上軍、指揮幕僚組織、兵站部隊などとみられる。実戦力が低下するとは言えず、むしろ、余った人件費が研究開発費に転用され、ロケット軍、海空軍など、兵員の量よりも人と装備の質が重視される軍種が、今後より重点的に整備されるであろう。

 習政権は、軍改革により、東シナ海と南シナ海での「近海防御」戦略、さらにはインド洋から西太平洋などの「遠海」での行動が、より効果的効率的に遂行できるような態勢づくりを目指していると言えよう。

 ミサイル戦力を担うロケット軍の隷下には、大学、研究機関などが含まれている。また、宇宙開発やサイバー戦を担当するとみられる「戦略支援部隊」が創設された。

 中国の軍事戦略では、民間力の活用、軍民の融合が重視されている。今後、中国は、ミサイル、航空宇宙、サイバーなど、知識集約型の先端分野に、民間力も動員しつつ、軍事力建設、特に研究開発の重点を指向するであろう。

■4. 米国の直面する矛盾と対策

 米国は現国際秩序に挑戦する「修正主義国家」としてロシア、イラン、北朝鮮、中国を挙げており、IS(イスラム国)などイスラム過激派勢力も脅威とみている。中でも中露両国について、アシュトン・カーター米国防長官は、今年2月「最高の能力を持つ敵」と述べている。

 米国にとり最大の脅威対象国は、今ではロシアになっている。2015年に米統合参謀本部が出した『国家軍事戦略』では、クリミアや東部ウクライナでのロシアの軍のみならず非国家主体も使った侵略行為を、脅威度も蓋然性も中間的な「ハイブリッド型脅威」の典型として挙げている。

 戦略環境認識でも、ロシアが第1に挙げられている。その理由は、クリミアや東部ウクライナなどの近隣地域でしばしば他国の主権を侵害し、力を行使して目標を達成しようとしていることにある。また、ロシアは米国を破壊できる核能力を保有している唯一の国である。

 高まるロシアの脅威に対抗するため米国は、旧東欧諸国やバルト3国に対する地上戦力や戦闘機の配備など、欧州へのコミットメント再保証のための予算を3倍に増加させるといった措置をとっている。

 なお、中国については、「国際安全保障上の偉大なパートナーとなることは歓迎する」としつつも、力を背景とする南シナ海での国際法に反した行動により、アジア太平洋での緊張を高めているとして、次等の脅威と位置づけている。

 このように、すでに米軍は欧州正面でのロシアの脅威に対処することを最優先している。アジア太平洋重視、リバランシング継続は、オバマ政権の方針であり、上記の『国家軍事戦略』でも継続するとされているが、次期大統領以降も維持されるかは、不透明になっている。

 なお、前述した国防予算削減について、近年は経済成長により削減圧力は緩和されている。2017年度の国防総省の国防予算案では、海外緊急作戦予算を除く基本予算は、5239億ドル、前年度比1.9%の微減となった。

 しかし、見送られた財政赤字削減幅は後年度に先送りされることになり、2018年度以降の国防費の大幅削減は不可避の状況になっている。特に、テロとの戦いで生じた傷病帰還兵に対する医療保障、恩給などの将来費用が増大し、研究開発・調達予算に制約を及ぼすことになるとみられる。

 米国は、A2/AD戦略の脅威に対して、米国は「エアー・シー・バトル(海空戦闘)」概念を提唱し、対抗しようとしている。

 この概念は、海空主体の統合戦力により、まず海空域での優勢を取り戻し、その後A2/AD網に穴を開けて反攻しようとする作戦概念である。

 エアー・シー・バトル構想では、地上軍は、特殊部隊など少数の精鋭部隊を敵の防空網の間隙から、特殊作戦用のヘリなどで送り込み、敵のミサイル基地、指揮組織などの要点を、一撃して破壊し、速やかに離脱するといった運用が想定されている。

 しかし、エアー・シー・バトル構想には、(1)中国側に先制の誘因を与えるおそれがあること、(2)陸軍の役割を軽視していること、(3)洋上での通商を保護できないといった問題点がある。

 前述した装備品調達・研究開発予算の制約を前提とした最適戦略には、(1)アジア太平洋など特定正面を重視した戦略、(2)世界的なISR(情報・警戒監視・偵察)網を展開しておき脅威を早期に察知し、米本土からの超音速ステルス機による戦略爆撃などにより迅速に制圧できる態勢を維持するグローバル戦略、(3)歩兵など軽戦力を主にして世界の安定化を重視する戦略という、3つの選択肢がある。

 それらのうち、(1)では、中露の他の正面での挑戦に対応できず、(3)は、中露の脅威を過小評価しており、軽戦力主では両国の覇権拡大に対抗できないという問題点がある。

 (2)のグローバル戦略を実現するために今提唱されているのが、「第3のオフセット(相殺)戦略」である。

 第1のオフセット戦略は、冷戦初期のソ連の膨大な通常戦略を核戦力により相殺したこと、第2は、ソ連の核戦力を冷戦末期に精密誘導兵器と情報化の優越により相殺したことを指している。

 第3のオフセット戦略では、「人間と機械の協働および戦闘チーム化」と民間との連携を重視している。先端的な軍事技術、特にグローバルな精密測位技術、大型無人潜水艇、高速打撃兵器、様々の武器を搭載できる武器庫用航空機の開発配備が重視されている。

 アジア太平洋正面では、太平洋に展開する米空軍力の強靭化を重視している。そのため、統合防空ミサイル防衛力を整備するとともに、グアムの米空軍基地を重点とし、格納庫などの抗たん化、航空機の分散、滑走路の緊急時復旧能力の強化、「F-22ラプター」を大型輸送機で前方に推進するラピッド・ラプター構想などを進めるとしている。

 しかし、前述したように米国単独では、第3のオフセット戦略に必要な、新装備の研究開発、戦力整備、前方展開基地の確保、兵站支援などに限界がある。このため米国は、同盟国などとの関係強化、特に日豪韓とのこれまでの安全保障面での協力の枠組みの強化、ASEAN(東南アジア諸国連合)、インドとの信頼醸成などに力を入れている。

 なお、欧州正面のロシアの脅威への対応が世界戦略上も重視されている。そのため、小規模空軍基地への基盤の分散、緊急時に戦闘/爆撃機を空輸により展開する「ラピッドX」構想などが進められている。

 しかし以上のような戦略には、同盟国の防衛をどうするのかという大きな問題点がある。米国自身の防衛は、大洋を隔てたかなたにある同盟国に直接兵力を配備しなくても、技術的には可能かもしれない。しかし、同盟国の防衛は、それぞれの国が自ら担わなければならなくなる。

 米国が、ミサイル脅威を避けて、一時安全な米本土近くに退避し、その後海空戦力を主体に統合戦力を再編して、海空優勢を奪還し、それからでなければ同盟国に対する増援はできない。

 それまでの間、同盟国は自力で侵略国の奇襲とそれに続く大規模な侵略を阻止し、国土と国民を守り続けなければならない。その期間は、米国の戦略国際問題研究所などの見積もりでは、1か月半程度に及ぶとも予想されている。

 特に地上戦については、終止を通じ、同盟国自らが担わなければならなくなる。

 そのことはすでに現在のイラク、アフガンの戦いでもみられる。イラク、アフガンでは、米地上軍が戦闘の表に立つことを避け、米軍は現地政府軍を「支援し及び補完する」にとどまっている。具体的には、米軍は、同盟国軍に情報を提供し、その作戦に助言を与え、部隊を訓練し、補給を支援するにとどまる。

 なお、この「支援しおよび補完する」という表現は、2015年4月に改定された日米防衛協力に関する新ガイドラインでも、日本有事の際の米軍の役割として明示されている。日本有事の防衛は、「自衛隊が主体的に行う」ことになっており、日本の安全保障は対米依存から自立防衛への転換を迫られている。

■まとめ(わが国の対応)

(1)米中の北東アジアをめぐる覇権争奪の行方と日本としてのカウンターバランシングの必要性

 米中の北東アジアをめぐる覇権争奪の様相は今後激化すると予想される。米国の予算の制約、欧州・中東重視政策への転換、内向きの国内世論などの動向から、米国は中国と同盟国の紛争に際し、南シナ海、尖閣を死活的利益とはみず、介入しない可能性が高まっている。

 中国にとっては、マラッカ海峡から南・東シナ海はエネルギー輸入、貿易にとり死活的に重要なシーレーン帯である。地政学的、歴史的にも長期には中国の力を背景とした既成事実化の黙認という方向になる可能性が高い。

 その際、日本としては尖閣諸島、南西諸島については、独力でまず守り、万一侵略された場合は、自力で奪還することが求められるであろう。統合機動防衛力を実のあるものにし、水陸両用作戦能力も向上させねばならない。

 平和安保法制が成立し、日米間の協力体制について、平時、グレーゾーン事態、日本有事を通じて、より多角的な機能についてグローバルな協力が可能になったことは、抑止力、対処力向上に大きく寄与したと評価できる。

 ただし、他方では日本有事の作戦行動は自衛隊が主体的に行うとされるなど、日本の責任も大きくなっている。これまでのように、米軍の早期来援と反攻による国土回復を期待することは、もはやできなくなっている。

 日本は、1か月半以上の期間、独力対処が必要になってくる。

 そのためには、独自のISR能力と情報分析能力、人事・兵站面での予備確保と継戦能力、戦略輸送能力とそれを掩護する戦略防空能力、弾道ミサイル防衛能力、米軍を含めた基地・駐屯地の警護と機能維持、主要装備品、弾薬等の備蓄と緊急時増産能力、サイバー戦能力などの整備に、国を挙げて本格的に取り組まねばならない。それができなければ、「見棄てられるおそれ」が現実のものになるであろう。

(2)わが国とアジア太平洋諸国との連携強化

 長期の日米対中(あるいは中露、中露朝)の対峙になった場合、米国は損害を回避し安全な後方で再編するため、日本、台湾、東南アジア諸国の周辺海空域からアラスカ、ハワイ、グアム、豪州にまで後退する可能性もある。

 それに備え、東アジアの中露朝の脅威を受けている諸国は、互いに連携しバランス・オブ・パワーを維持・回復する必要がある。

 そのための具体的な施策としては、平時からの、要人の相互訪問など信頼醸成措置、情報交換、秘密保護協定・物品役務相互提供協定の締結、共同演習、国連平和維持活動・国際平和協力活動などでの協力を推進しなければならない。

 将来的には、アジア太平洋版NATO(北大西洋条約機構)のような域内の集団自衛体制または中露を含めた域内の集団安全保障体制の構築も検討する必要が出てくるであろう。

(3)米国、周辺諸国などとの協力の深化

 米国とは「第3のオフセット戦略」に関連した両用品を含む防衛装備の共同研究開発、技術移転・導入などで協力することが差し当たり求められるであろう。

 それに呼応して、今年の『防衛白書』でも強調されているように、日本側でも、防衛装備・技術に関する諸施策を通じて、国際的な協力態勢づくりが進められている。米国とはもちろんだが、欧州諸国とも共同研究開発を進めることがますます求められるであろう。

 日本から東南アジア、インド、豪などへの装備移転、能力構築支援も重要になる。これら諸国との、防衛装備の共同研究開発、共同訓練・演習、ISRの展開と情報交換、相手国周辺領域における警戒監視、弾道・巡航ミサイル防衛システム、対空・対艦ミサイル・レーダの配備、共同哨戒、海上輸送護衛、海空基地の防護での調整と協力、能力構築支援などが必要になる。

(4)死活的に重要だが時間がかかる台韓との連携

 隣国の台湾・韓国との連携は本来、わが国にとり安全保障上死活的問題のはずだが、豪、東南アジアなどと同様の協力レベルに達するには国際情勢の成熟が必要であり、時間を要する。

 このため、協力を可能にするための外交的な努力、信頼醸成がまず必要である。台湾の蔡英文政権とは、両用技術、装備の供与を含めた非公式レベルで最大限の協力と支援を実施することが望ましい。日本版の台湾関係法の制定も検討しなければならないであろう。

 韓国とは中朝露の脅威に対し、日米韓が連携し、ISR、海空域、サイバー空間を含めた、三国間の面的な安全保障協力体制を構築しなければならない。まず軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結が必要であろう。
 

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コメント
 
1. 2016年11月02日 10:16:12 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[3104]

何度も言っているように、当面は、中国の膨張は止めようがないし

米国も頼りになどならない

変に楯突くよりは、内部崩壊するまで、諦めて搾取されるしかないだろうなw


2. 2016年11月02日 12:36:32 : Rp92hiAgJc : itINPEozk5E[3]
まだ化石思考で軍事予算をせしめるつもり。しかしウクライナ、クリミア、シリアでアメリカの軍事力が必ずしも優位ではないことが明らかになった。

3. 2016年11月03日 13:19:07 : eei2j6vqJs : OQWBlhXLH88[91]

>>1. 2016年11月02日 10:16:12 : nJF6kGWndY
>何度も言っている
>諦めて搾取されるしかない

お前は何を馬鹿なこと言って笑ってられるんだ? 

日本のバカウヨがのさばって恥も外聞もない。

震えて笑ってろよ。顎の骨を外したろか?

何が搾取されるだよ、理由を言え。馬鹿もんが!



4. 2016年11月04日 19:25:36 : 15lng7bsSw : GHTelca29wA[8]
ロシア、中国、日本で極東の安全保障体制を構築することになる。
安倍晋三では無理。
日本の行政機関(自衛隊、警察)も頭の中身を入れ替えないと相手にされないよw。

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