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「生活保護なめんな」ジャンパーが冒涜したもの 何が問題か。そもそも不正受給は多いのか(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/180.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 1 月 21 日 13:45:17: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 


「生活保護なめんな」ジャンパーが冒涜したもの 何が問題か。そもそも不正受給は多いのか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50761
2017.01.20 大西 連 NPO法人もやい理事長  現代ビジネス


■「生活保護なめんな」ジャンパーの衝撃

1月17日に小田原市の生活保護の担当職員が「生活保護なめんな」と書かれたジャンパーを着て、生活保護を利用している人の家を訪問などしていたことが明らかになった。

ジャンパーの背面には「我々は正義だ」「不当な利益を得るために我々をだまそうとするならば、あえて言おう。クズである」などの文章が英語で書かれているそうだ。

報道によれば、いまから10年前の2007年に、小田原市で生活保護費の支給を打ち切られた男が市職員3人を杖やカッターナイフで負傷させる事件があり、当時の生活保護担当職員らが事件後、不正受給を許さないというメッセージを盛り込み、このジャンパーを作った。その後、担当になった職員らが自費で購入。これまで64人が購入し、現在は在職中の28人が所有しているという。

新聞、ネット記事だけではなく、NHKなどのニュースでも取り上げられたこの小田原市の「生活保護なめんなジャンパー」だが、筆者もこの問題について、市職員がこういったジャンパーを着て生活保護家庭に訪問していたことなどを批判するツイートしたところ、

「不正受給を許さないのは当たり前」
「ジャンパー以上に許せないのは不正受給者」
「本当に困っている人を守ろうとしてやったこと」

などの反応があった。




ちなみに、ここでの論点は「不正受給がいいか・よくないか」ではない。当然ながら、不正受給は違法行為であり、内容によっては詐欺罪などに問われることもある。なので、不正受給はよくないし、なくさなければならないものだ。これは大前提の話である。

ここで重要なのは、@小田原市の職員が10年前に職場の連帯感を高めるために(報道によれば)、職員が自主的に製作し、着用していたということ。そして、Aそのメッセージがはいったジャンパーを着て、実際に地域で生活している生活保護利用者の自宅を訪問していた、ということである。

このことの一体何が問題なのか。

■不正受給は本当に多いのか

まず、@に関しては、例えば、エンブレムも某国の有名サッカークラブのものをパクったようなものだし(筆者はそのクラブのファンなので憤慨している)、背面に書かれた文言も某有名アニメにでてくる悪役のセリフをもじったような内容のものであることなど、そもそもこういったジャンパーを職場の内輪のノリで作製したということ自体、正直かなりダサい。

以前に問題視された「福祉川柳事件」を思い出す。

※福祉川柳事件とは、1993年に生活保護を担当する職員などで組織された「公的扶助研究全国連絡会」の機関誌で、生活保護担当職員などの川柳を掲載したが、その内容が生活保護利用者への悪感情をうたったものもあり批判を受けた事件

そして、Aについては、多くの生活保護利用者が地域で生活しているなかで、そのジャンパーで訪問することの意味、である。生活保護制度は、誰でも困ったら利用できる制度ではあるものの、あまりいいイメージで語られることは少ない。

メディアやネットなどでも、必要な人を支援している制度として認識されている一方、「怠けている人がいる」「税金で養っている」などの心ない意見が出されることも多い。

後述するが、多くの人が望まずに、やむにやまれぬ事情を抱え、生活保護制度を利用しており、そういった誤解や偏見の目を恐れて、また、自ら生活保護を利用していることを恥ずかしく思ってしまい(スティグマ性=恥の意識、負の烙印などとも言う)、周囲の目を気にしている人も多い。

そういった状況で、このジャンパーを着て訪問すれば、近所の人に生活保護利用者であるとわかってしまう恐れもあり、プライバシーの配慮がない行為だと言える。

また、実際に訪問される生活保護利用者の立場になったらどう思うだろうか。

例えば、税務署の職員が「税務署なめんな!」「不当な利益を得るために我々をだまそうとするならば、あえて言おう。クズである」と書かれたジャンパーを着て、自宅や会社に訪問にきたらどうだろう。

もちろん、百歩譲って、脱税の疑いがあるところへの訪問ならまだわかるが、確定申告しただけの各家庭への訪問だったら──。

生活保護利用者は法律で最低でも半年に一度は訪問を受けることになっており、何ら後ろめたい事情がない生活保護利用者もこのジャンパーを着た職員の訪問を受けるのである。

税務署でなく労基署などほかの官公署でもかまわないわけだが、行政職員が日常的にこのようなメッセージがかかれた恰好をして、しかも自宅訪問をする。そして、そのことを周囲の人に「見られる」可能性があるというのは、あまりにも配慮不足と言える。

このような、@、Aともに、福祉行政に携わる立場としては、あまりにも当事者の権利やプライバシーに対しての配慮が欠けたことであると言えよう。

そのことだけでも、この小田原市のジャンパーについては、すぐさま市長が謝罪したように、不適切な行為だったと言える。

とはいえ、多くの人は、ここまでの内容を読んでも「そうはいっても、言葉は悪かったかもしれないが、『不正受給はよくない』ではないか」と思うかもしれない。

もちろん、「不正受給」は違法行為なので、なくしていかないといけない。しかし、その「不正受給」の実態については、言葉以上にはあまり知られていない。

生活保護の「不正受給」は本当に多いのか、以下解説したい。

■そもそも「不正受給」とはなにか

さて、そもそも生活保護の「不正受給」とは何なのであろうか。

生活保護では、「不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせたもの」があったときの費用徴収や罰則の規定を定めている(生活保護法78条)。

生活保護制度は、収入や資産が生活保護基準を下回った場合に利用できる制度である。なので、当然ながら、実際に収入の多寡や資産の有無などについて詳細を福祉事務所(各自治体の担当窓口)に申告し、福祉事務所はそれを調査して、保護の可否を判断する。

そして、生活保護利用中に就職が決まるなど、収入の変化があれば、それをその都度、福祉事務所に申告し、支給される金額や支援内容を福祉事務所が判断し、状況に合わせて自立に向けて支援していく。

いわゆる「不正受給」とは、この福祉事務所への収入の申告や、資産の有無などについて虚偽の申告をすることを言う。悪質な場合は、詐欺罪などに問われることもあるし、不正に受給した金品は返還を求められることはもちろん、1.4倍の金額まで徴収することも法律的には認めている(同78条)。

また、何らかの事情があり急迫な状態(緊急で一時的に)で資力(収入や資産)がある状態にもかかわらず生活保護を利用した場合は、こちらはいわゆる「不正受給」ではなく、費用の返還として扱われる(同法63条)。

このように、法律の枠組みとしては明確に「不正受給」と「費用返還」にわかれている。虚偽の申告をした場合は「不正受給」。収入や資産はあるが事情により保護を利用した場合は「費用返還」。

しかし、この実際の現場での運用は、明確に見極められないものも多い。

■不正受給の実態──申告と無申告のあいだ

総務省が平成26年8月に発表した「生活保護に関する実態調査」報告書によれば、2011年度の不正受給の総額は約173億円である。173億円と聞くと多いように思うかもしれない。しかし、生活保護費全体は約3兆7000億円なので、金額ベースでは0.47%である。

では、「不正受給」の内容はどのようなものだろうか。

同報告書によれば、2012年で「稼働収入の無申告」が46.9%、「稼働収入の過少申告」が10.6%、「各種年金等の無申告」が20.8%となっている。要するに、働いた金額をちゃんと申告しなかった事案が約6割、年金等をもらえるのに申告しなかった事案が約2割、ということである。

そして、保護開始の月に不正受給があったのは11.4%であることから、生活保護を利用中に収入の増加があったが適切に申告しなかった、といった内容が約9割にのぼることがわかる。

また、「不正受給」が発見された契機の統計をみると、担当職員の「関係機関への照会・調査」が88.9%、「通報・投書」が5.6%であり、そのほとんどが担当職員からの「関係機関への照会・調査」であることがわかる。そして、稼働収入に関しては課税調査、年金などの調査は担当職員による発見が最も多いことも明らかになっている。

このように、「不正受給」のないようが「稼働収入」にまつわるものであれば、課税調査をすれば発見でき、「年金」などにまつわるものであれば社会保険事務所など、担当職員が調査や照会をおこなえば発見できるものがほとんどなのだ。

■ケースワーカーはこんなに多忙

生活保護の担当職員は生活保護利用者の支援をおこなう司令塔の役割を担う。生活保護利用者はさまざまな困りごとを抱えている場合が多い。

たとえば、生活保護世帯の約半分を占める「高齢世帯」では、医療機関と連携したり介護サービスを適切に利用できるような支援も必要だ。また、約3割の「傷病・障害世帯」に対しては、こちらも医療機関と連携したり、障害福祉サービスの活用について関係機関と調整する必要もある。

約6%〜8%の「母子世帯」へは、親だけでなく子どもに対しても総合的に支援をおこなっていく必要があるし、16〜18%の「その他世帯(働ける年齢層)」の人たちには就労支援を丁寧におこなっていくことが求められる。

このように、まさに「支援の司令塔」として、金銭の給付の窓口であるという大きな責任と、各関係機関への調整など、総合的な役割を担うのである。非常に重要で、かつ、生活保護利用者にとってはまるで生殺与奪の権をもっているかのような重責なのである。

しかし、だ。

厚生労働省は生活保護の担当職員のなかで支援を担当する「ケースワーカー」について社会福祉法で定める一人あたり80世帯を標準数としている。

つまり、一人のケースワーカーが80世帯を担当するのが「標準」である。高齢世帯、傷病・障がい世帯、母子家庭、就労支援を必要とする世帯を80世帯受け持つのである。しかも、法律上、半年に一度は訪問が必要だ。正直、かなりの激務であろう。

そして、都市部などでは一人当たり120世帯以上を担当することもある。人を支援する仕事は、生身の人間同士のぶつかりあいであり、事務的にすまない感情のすれ違いや消耗もあるだろう。

また、ケースワーカーを担当するには、社会福祉法にもとづけば、社会福祉主事という資格(任用資格)をもたねばならないとされている。しかし、先述した総務省の報告書によれば、約26%が未取得で生活保護のケースワーカーを担っているという。

もちろん、資格や担当世帯数で、実際の支援の質や内容が決まるわけではない。とはいえ、一つの目安としては、人の命を預かる仕事を専門の勉強をしていたわけではなく配置されて担当する職員が多いこと、また、どんなに優秀な職員でも120世帯以上の一人ひとりのさまざまなニーズにあった支援の調整ができるのか……やはり真剣に考えなければならない問題である。

せめて、担当世帯数が標準レベルまでにできるように、人員の増加をおこなうことが急務であろう。そして、福祉を専門とする職員の配置などもおこなっていくべきである。

そして、先述したように、「不正受給」を防ぐこと、発見することも、ケースワーカーはじめ担当職員の役割である。

支援の質をあげること、人数を増加することは、実際の支援も手厚くなれば、不正をただすことにもつながっていく。

■故意なのか過失なのか

とはいえ、現在の生活保護行政が、職員数やケースワーカー業務の多忙さなどに問題があるにしても、今回のジャンパーの件などは言語道断と言えるだろう。

先ほどから紹介している「不正受給」だが、多くを占める「稼働収入の無申告・過少申告」「各種年金等の無申告」は、正直に言って、故意から申告しなかったのか、過失で申告しなかったのか、判断が難しい場合が多い。

テレビなどで報道されるような悪質な事例は実際には例外的なものであり、不正受給と判断されたケースのなかにも、故意か過失かの判別がつかない場合も多い。

たとえば、「稼働収入の申告漏れ」に関しても、申告を間違えておこなってしまった事例や、生活保護制度の仕組みをきちんと理解しない状況で起きてしまった事例など、現場で支援に携わっているとさまざまなケースに立ち会うことがある。

いわゆる「不正受給」は、それこそニュースになるくらい珍しいものである、ということは間違いないだろう。

■北風と太陽

生活保護行政は「我々は正義だ」「不当な利益を得るために我々をだまそうとするならば、あえて言おう。クズである」というジャンパーを着ても、決してよくはならないだろう。

また、その感覚で支援をしても、生活保護利用者の信頼を得ることはできないだろう。そして、生活保護利用者の状況を想像する力もない人たちが、彼ら・彼女らの支援調整の責任者であったことにおそろしさすら感じる。

「不正受給」は防ぐべきだし、撲滅していくべきだ。しかし、その一番の方法は、担当職員を増やし、専門性を高めていくことでもある。

生活保護利用者が地域の適切な行政サービス、支援機関で生活を支えてもらうことができるように、また、働ける状況の人が支援を利用して就職したり、経済的に自立できるように支援していくためにも、彼ら・彼女らを支える生活保護担当職員の責任や役割はとても大きく、かつ重い。

そして、実際に、全国で熱心に、真摯に現場で生活保護利用者を支えている人はたくさんいる。今回のジャンパーをめぐるこのニュースは、彼ら・彼女らを冒涜することでもある。

生活保護の「不正受給」は金額ベースで約0.5%である。その割合をより小さくするためには、ジャンパーを着るのではなく、一人ひとりの生活保護担当職員がより丁寧な支援をおこなうこと、そういった職員の体制をより拡大していくことが必要だ。

昨今、不正受給対策として警察官OBを窓口に配置する政策をとっている自治体もある。警察官OBの職員は窓口での威圧効果はあるかもしれないが、支援のプロではないし支援はできない。そして、紹介したように最初の窓口での不正受給は11.4%と少なく、結果的には警察官OBの天下り先にしかならず、効果は低い。

「不正受給」への対策、生活保護行政について、これまで通りジャンパーのような「北風」でいくのか、より効果的な「太陽」でいくのか。これを機に、議論がより活発になることを願っている。


              
6人に1人が貧困――。著書『すぐそばにある「貧困」』は、生活に困窮してしまった人たちの人生や支援現場での葛藤をありのままに描いた衝撃のノンフィクションだ



 

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コメント
 
1. プラネット[1] g3aDiYNsg2KDZw 2017年1月23日 07:00:22 : McvmSrqMAE : GrOyn2fBsvA[3]
自然界に生活保護などない。
自然の中で動物は、死ね一瞬まで稼ぐしかない。
なぜ、人間だけが生活保護があるのか。
他の動物が、生活保護があることを聞いたらあきれかえる。
他の動物は、自分にも生活保護を受けたいと声を大にして要求する。

自然中で生かされている人間だけが、生活保護があるなど
生活保護制度はとんでもない悪法。
自然の法則から逆行している生活保護を即刻廃止すべきです。


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