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マルクス史観はどこが間違っていたのか?
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/775.html
投稿者 中川隆 日時 2019 年 12 月 29 日 12:58:53: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 新自由主義を放置すると中間階層が転落してマルクスの預言した階級社会になる理由 投稿者 中川隆 日時 2019 年 4 月 16 日 11:09:23)

マルクス史観はどこが間違っていたのか?

2019年12月29日
20世紀を駆け抜けたフェミニスト田中寿美子さん
https://sicambre.at.webry.info/201912/article_52.html


 検索していて見つけた、表題の記事が興味深かったので、以下に備忘録として引用します(段落ごとに1行空けました)。


 田中さんの前半生、特に1945年の敗戦までは、夫稔男に導かれて社会主義活動家としての人生だった。戦前から戦後にかけて、女性史・女性論に取り組んだ女性たちのほとんどが、社会主義婦人論をベースに、物事を考え、運動にコミットしてきた。田中さんも、その一人であり、原始共産制から古代奴隷制、封建社会、そして資本主義社会へと、生産力の発展を原動力として人類史は推移し、その過程で、階級社会と女性差別が同時に発生したとする史的唯物論に基づく歴史観を前提として、階級社会を廃絶し、社会主義ないし共産主義社会の実現と共に男女差別も解消すると考えてきた。

 田中さんは、この社会主義婦人論を基に、フェミニズムの思想と運動にコミットしてきた。ところが、戦後、ボーヴォワールの『第二の性』などを読んだり、生物人類学者アシュレー・モンタギューの『女性、このすぐれたるもの』を翻訳したりする中で、社会主義婦人論の公式に疑問を持ち始めたようだ。1954年にアメリカのブリンマー大学に留学し、本格的に文化人類学を学んだことで、いよいよその思いが強くなったようだ。

 当時、社会主義婦人論の聖典とされた、エンゲルスの『家族・私有財産及び国家の起源』(1884)が定式化した乱婚→プナルア婚→対偶婚→単婚(一夫一婦婚)という家族進化論は、スイスの文化人類学者J.J.バッハホーヘンの「母権制」論や、アメリカの人類学者ルイス・H.・モルガンの著書『人類の血族と婚姻の諸体系』(1970)や『古代社会』(1877)に依拠していた。

 バッハホーヘンの「母権制」論は、家父長制社会成立による「女性の世界史的敗北」以前の古代社会で、女性が母性を持つ存在として、宗教的祭祀のみならず世俗的にも支配的な力を発揮したという論で、後に実証的にはその存在を否定されたものの、フェミニズムやユング派の精神分析等に大きな影響を与えた仮説である。モルガンは、インディアン社会(特にイロクオイ族)の研究を基に、人間社会の発展を、野蛮→未開→文明の3段階で説明する進化論的人類学を展開し、「アメリカ合衆国の人類学の父」とも呼ばれる人である。もっとも、このモルガンの議論は、ヨーロッパ白人文化の優位性を立証するものとして、後のアメリカ政府によるインディアン同化政策にも影響を与え、「科学的人種差別主義」とも呼ばれている。

 マルクスやエンゲルスが、史的唯物論を定式化した19世紀は、進化論が風靡していた時代であり、彼らは人類の歴史は進化してきたし、今後も進化し続けると考える中で、資本主義社会ないし階級社会を、人類史のある発展段階の一つにすぎず、やがて資本主義が崩壊し、階級のない社会、差別のない社会が到来するとの未来像を描くことができたともいえる。

 しかし、20世紀に入ると、世界各地でのフィールドワークが盛んに蓄積される中で、マリノフスキーやラドクリフ=ブラウンの機能主義人類学やレヴィ=ストロースの構造主義人類学が台頭し、「未開社会」にも、それぞれ一定の規範や諸制度が機能する文化や構造があるのであり、西洋社会の方が優れているとか、進んでいるとは一概に言えないとして、従来の西洋中心主義を批判する声が高まっていくことになる。後に女性学の「ジェンダー」概念生成に大きな影響を与えたマーガレット・ミードの『3つの原始社会における性と気質』(1935)、『男性と女性』(1949)なども、こうした人類学研究の地図の塗り替え作業の一環として位置づけることができよう。以上、素人の特権で、人類学の歴史を大雑把に単純化してまとめてみた。

 田中さんが留学した1954年は、ミードがコロンビア大学で教鞭をとり始めたことに象徴されるように、当時のアメリカは、進化主義ではない新しい人類学が幅を利かせていた時期であった。田中さんがイロクオイ族に関心を持ったきっかけは、たぶんモルガン→エンゲルスの言及の故ではないかと推測するが、しかし、これら先住民の文献を実際に読むに当たっては、動機はともかくとして、従来の進化主義的、発展段階論的人類学ではなく、機能主義的人類学の視点で読み解いた可能性が強い。田中さんはイロクオイ族の研究を論文にまとめ、帰国に際して送ったはずが、なにかのまちがいで、結局日本に届かなかったと、後に口惜しがっていた。だから、内容についてはついにわからずじまいだが。

 少なくとも、田中さんが母権制の存在を疑い、エンゲルス流の婚姻や家族の発展段階論の公式に疑問を抱いたことは疑いない。帰国後、加藤秀俊と共訳で、マーガレット・ミードの『男性と女性』を出版(1961)し田田中さんは、文化人類学を通じて、フェミニズム思想の新たな根拠づけを模索しようと考えたようだ。

 田中さんは、たまたま、中部スマトラのミナンカバウ地方に、母系制氏族が残っていることを知り、1956年暮れに、戦後まだ国交が樹立していなかったインドネシアのスマトラ島に、日本人として初めて入る機会を得て、現地で聞き取り調査を実施し、その報告を『婦人問題懇話会会報』(17号、1972)や、著書『パラシュートと母系制』(1986)に発表している。

 田中さんは、女性が男性を支配したとされる母権制の存在は否定しつつ、しかし、母系相続と母方居住制から成る母系社会では、女性が財産権とある程度の自由裁量権をもち、家父長制社会の女性たちに比べ、尊重され、自信を持って生活している事実を掘り起そうと考え、議員を辞めたら、本格的に母系社会の研究をしたいと常々話しておられた。実際には、療養生活のため、新たな研究をすることはできなかったが、ミナンカバウで出会ったジュスマ・マンシュルさんの伝記をどうしてもまとめたいということで、文化人類学者でミナンカバウに詳しい前田俊子さんの協力を得て、人生最後の著作『ジュスマ・マンシュルさん物語』を1991年に上梓した。ジュスマさんは、戦争中に、勤めていた百貨店からスマトラに派遣された日本人女性で、ミナンカバウの男性と結婚し、敗戦後もそのまま現地に留まった人である。

中略

 田中さんは自分とほぼ同世代(4歳年下)の社会主義活動家であり、かつ在野の人類学者でもあるリードさんに、親近感を持ったようで、ランチの間中、熱心に質問し、議論をしていた。残念ながら英語が苦手な私は、会話の内容についていけず、帰国して1年後に出版された邦訳本や、田中さんが月刊『ペン』(1974年10月号)に書かれた文章「ニュー・フェミニスト運動の展開―家族・性の抑圧からの解放」から、リードさんの思想の概要を知ったという体たらくであった。

 だが、今読み返してみると、田中さんがリードさんに傾倒した理由が、わかるような気がする。社会主義の公式論に疑問を抱いていた田中さんは、この頃、すでにアメリカのベティ・フリーダンやケイト・ミレット、イギリスのジュリエット・ミッチェルなどの著作を読んだり、婦人問題懇話会などを通じて、日本のウーマン・リブにも関心を示していた。しかし、家族からの解放や性の解放に問題を焦点化するラジカル・フェミニストたちに対しては、「女性の経済的独立、育児の共同化、家事の社会化」等がなければ「完全な性の自由を得る」ことはできないのであり、「現在、性の自由を主張し実行できる人たちは、底辺の婦人労働婦人たちではなくて、エリートの人々あるいは中流以上の経済力のある人たちなのである」と違和感を示し、資本主義体制の変革抜きに女性の解放はありえないとの立場を表明する。

 そして、アメリカで「社会主義政党」を名乗ってリブ運動に参加しているのは「リードさんたちのSWP(社会主義労働者党)のグループが一番目立ったものである」として、リードさんの議論に注目するわけである。田中さんに言わせれば、リードさんは、「資本主義は女性抑圧の物質的基礎」とする一方で、「フェミニスト運動は社会主義革命の欠くべからざる部分」と位置づける、アメリカの数少ない社会主義フェミニストであった。

 リードさんが、モルガン―エンゲルスの母権制論をそのまま支持していることについては、田中さんは、当時の文化人類学の成果を受け入れて、母権制と母系制を区別しなければいけないとしつつ、「母権制があったからなかったからということで、女性の権利や解放は否定されるべきではない」と主張。中絶の合法化や、無料の24時間託児所、家事の社会化等、「資本主義下の改良闘争の重要性」を説くリードさんたちの運動に共感を示したのであった。

 1970年前後から、マルクス主義をベースにしつつ、新たなフェミニズム理論を模索する動きが欧米各地で開始されるが、リードさんもそうしたマルクス主義フェミニストの先駆者の一人であったといえる。田中さんは、この後、議会活動等、現実の政治活動に忙しく、フェミニズム思想の新たな展開にどこまで目配りできたかは不明である。けれども、1970年代初頭に、少なくとも、当時最先端のフェミニズム思想に積極的に接触し、社会主義婦人論の公式から自由に、自分なりのフェミニズムを模索していた事実は特筆に値する。


 社会主義者の田中氏が第二次世界大戦後、エンゲルス流の婚姻や家族の発展段階論の公式に疑問を抱いていった、と述べられていますが、教条主義的解釈に安住することをよしとしない、田中氏の意欲的な姿勢が窺えます。エンゲルスはバッハホーヘンやモルガンの研究に依拠しましたが、モルガンの議論に「科学的人種差別主義」につながる側面があった、との指摘は重要だと思います。ただ、第二次世界大戦後に田中氏が新たな人類学として学んだマーガレット・ミードにしても、その後に批判されています。ラジカル・フェミニストに対する田中氏の批判は、現在でも通用するというか、現在の日本のフェミニズム的言論への重要な示唆になっているように思います。まあ、この問題は優先順位がさほど高いわけではなく、私の理解が浅いことはとても否定できませんが、今後も少しずつ調べていきたいものです。
https://sicambre.at.webry.info/201912/article_52.html  

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コメント
1. 中川隆[-6986] koaQ7Jey 2021年3月01日 16:40:26 : 9ah5GoqAQI : Q2hDSm1RZmd6VXM=[6] 報告
ピーター・ターチンの革命理論

最悪の2020年、次に起きる大事件とは?米抗議デモを的中させた専門家の警告=高島康司
2020年6月29日
https://www.mag2.com/p/money/935567


10年前から2020年の米国が混乱状態になることを予測し、見事に的中させた歴史学者ピーター・ターチンの最新の発言を紹介したい。氏は歴史には明らかに再帰的なパターンが存在していると発表している。今後の米国抗議デモの行方と、ひいては世界経済がどう動くのかを見通す参考になるはずだ。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)


すでに科学的に予見されていた2020年の内乱

今回はすでに10年前から2020年のアメリカが混乱状態になることを予測し、見事に的中させた歴史学者ピーター・ターチンの最近の発言について紹介したい。

ピーター・ターチンについては、当メルマガでトランプが大統領になった少し後に書いた2017年5月の記事でも紹介した。この混乱した状況のなか、ターチンが新たな記事で興味深い予測をしている。過去のメルマガの記事も参照しながら、見てみることにする。

ターチンは、ロシア生まれだが、1977年、父がソビエトを追放となったため、アメリカに移り住んだ人物である。現在はコネチカット州のコネチカット大学の教授で、生態学、進化生物学、人類学、数学を教えている。

1997年まで主要な研究分野は生態学であったが、現在は歴史学の研究が中心になっている。

歴史学ではこれまで、ヘーゲルやマルクスなど歴史の統一的な法則性の存在を主張する理論はあったが、そうした法則性にしたがって歴史が動いていることを証明することはできなかった。つまるところ歴史とは、それぞれ個別の背景と因果関係で起こった個々の事件の連鎖であり、そこに統一した法則性の存在を発見することはできないとするのが、現在の歴史学の通説である。

しかしターチンは、生態学と進化生物学の手法、そして非線形数学という現代数学のモデルを適用することで、歴史には明らかに再帰的なパターンが存在していることを発見した。

近代以前の帝国のパターン

そのパターンは、人口数、経済成長率、労働賃金、生活水準、支配エリートの総数などの変数の組み合わせから導かれる比較的に単純なパターンであった。ターチン教授はこれを、ローマ帝国、ピザンチン帝国、明朝などの近代以前の大農業帝国に適用し、そこには帝国の盛衰にかかわる明白なパターンが存在することを明らかにした。

詳しく書くと長くなるので要点だけを示すが、そのパターンとは次のようなものだ。

まず初期の帝国は、人口が少なく、未開拓地が多い状態から出発する。しかし、時間の経過とともに経済発展が加速すると、人口は増加し、未開拓地は減少する。それと平行して支配エリートの人口も増加する。この拡大が臨界点を越えると、帝国は分裂期に入る。

まず、人口の増加で労働力人口は急速に増加するため、労賃は下落する。さらに各人に与えられる土地も減少する。そのため、生活水準は低下し、これを背景とした社会的不満が高まる。

他方、支配エリートの数の増加は、すべての支配エリートに割り振られる国家の主要なポストの不足を引き起こす。これはエリート間のポストを巡る熾烈な権力闘争を引き起こす。この状態を放置すると、国内は支配層の権力闘争と農民の度重なる反乱により、帝国は衰退してしまう。

これを少しでも回避するためには、人口が増加した国民に十分な生活水準を保証するだけの土地を与え、また支配層には国家の十分なポストを与えることができるように、帝国を戦争を通して外延的に拡大し、新しい領地を獲得しなければならない。

だが、この外延的な拡大の勢いよりも、人口の増加と生活水準の低下、そして支配層のポストが不足するスピードが速ければ、帝国の分裂と崩壊が進む。

このようなサイクルだ。

歴史は、多様な出来事が複雑に絡み合った織物のように見えるが、実際は比較的に単純なパターンとサイクルが主導していることが明らかになった。ターチンは、こうした歴史的なサイクルが近代以前のどの帝国にも存在したことを証明し、大変に注目された。


現代アメリカの内乱のパターン
しかし、ターチンが注目されたのはこれだけではない。いまターチンは、近代以前に存在したようなパターンとサイクルが、近代的な工業国家である現代のアメリカにも適用可能であるかどうか研究している。研究は2010年に始まり暫定的な結果が発表され、大変に注目されている。

なかでももっとも注目された論文は、「平和研究ジャーナル」という専門紙に2010年に寄稿された「1780年から2010年までの合衆国における政治的不安定性のダイナミズム」という論文である。2017年4月には、この論文を元にして「不和の時代(Ages of Discord)」という本として刊行された。

この論文でターチンは、アメリカが独立間もない1780年から、2010年までの230年間に、暴動や騒乱などが発生するパターンがあるのかどうか研究した。すると、アメリカでは、農業国から近代的な工業国に移行した19世紀の後半からは、約50年の「社会的不安定性」のサイクルが存在していることが明らかになった。

暴動や騒乱が発生し、南北戦争のような本格的な戦争を除くと、アメリカで内乱が多発した時期がこれまで3つ存在した。1871年、1920年、1970年の3つである。

これをグラフ化したのが以下の画像だ。ぜひ見てもらいたい。

200630_us2020

明らかにこれらの年には、社会で見られる暴力は突出していることが分かる。

社会的不安定の原因
その原因はなんだろうか?

ターチンによると、近代の工業国家は前近代の農業帝国に比べて、経済成長のスピードが極端に速いので、人口の増加とそれによって発生する労賃の低下、生活水準の低下、エリートのポストの不足などにははるかに容易に対処することができるという。

その結果、これらの要因が深刻な社会的不安定性の原因となることは、かなり緩和される。

だが、これらの要因が近代工業国家でも作用し、社会的不安定性の背景となっていることは間違いないとしている。

アラブの春におけるエジプトの例
最近、これをもっともよく象徴しているのは「アラブの春」ではないかという。

たとえば、エジプトのような国は年5%から6%の経済成長率を維持しており、決して停滞した経済ではなかった。

しかし、出生率は2.8と非常に高く、また生活水準の上昇に伴って高等教育を受ける若者の人口が大きく増大したため、経済成長による仕事の拡大が、高等教育を受けた若者の増加スピードに追いつくことができなかった。

その結果、高い教育を受けた若年層の高い失業率が慢性化した。これが、アラブの春という激しい政治運動を引き起こす直接的な背景になった。

格差の固定と現代アメリカの不安定
これとほぼ同じような要因の組み合わせが、やはりアメリカの社会的不安定性の50年サイクルにも当てはまるとターチンは主張する。

人口数と高学歴者の数が増加していても、高い経済成長が続き、生活水準の上昇、ならびに高学歴者の雇用数が増大している限り、社会は安定しており、社会的な騒乱はめったに発生しない。どんな人間でも努力さえすれば、社会階層の上昇が期待できる状況である。

しかし反対に、格差が固定化して、政治や経済のシステムが一部の特権階級に独占された状況では、たとえ経済が成長していたとしても、社会階層の上昇は保証されない。格差とともに社会階層は固定化される。すると、たとえ高等教育を受けていたとしても、期待した仕事は得られないことになる。

このような状況が臨界点に達すると、社会的な暴力は爆発し、多くの騒乱や内乱が発生するというのだ。

新しい記事でも予測
そして、今回の新型コロナウイルスのパンデミックが発生した後に書かれた論文、「コロナウイルスの長期的な影響」では、社会不安が爆発する危険性はさらに高まったとして、次のように書いている。
※参考:Long-Term Consequences of Coronavirus – Peter Turchin(2020年4月20日配信)

「合衆国に関する国内対立の私の予測はどちらかというと暗い。アメリカの政治エリートは自己中心的で、分断していて、いつも内輪もめが絶えない。だから私は、これから膨大な数のアメリカ国民は、それこそ、底が抜けてしまったかのような状態に陥るはずだ。

一方、政府財政は破綻の危機に直面しつつ、支援は大企業に限定されるだろう。その結果、格差のさらなる拡大と政権への国民の信頼感の完全な低下、そして社会不安の激増、エリートの間の激しい闘争が起こる。そして、私が予測のために使っている構造的な人口モデルのあらゆる負の側面が、アメリカで爆発するだろう。私はこの否定的な予測が間違っていることを心から望む」。

ターチンは歴史学者なので大袈裟な表現はしない。この論文の表現も比較的に抑制的だ。だが、「私が予測のために使っている構造的な人口モデルのあらゆる負の側面が、アメリカで爆発する」とは、要するに内乱の発生の警告である。

ターチンが2010年に最初に予測したことが、まさに目の前で起こりつつあるのではないか?

最新記事「2020」
さらに、このような全米規模の抗議デモの拡大が止まらなくなったいま、ターチンは新しい記事を6月1日に自身のサイトで発表した。それは「2020」という刺激的な題名の記事だった。その記事でターチンは次のように言う。
※参考:the_2020 – Peter Turchin(2020年6月1日配信)

「2010年に私が2020年頃にアメリカ国内で内乱が発生すると予測したのは、当時の政治情勢の分析に基づくものではまったくなかった。どの社会にも社会の回復力を損なう不安定要因が存在する。それらは、1)貧困と格差、2)エリートの権力闘争、3)政府機関の機能不全の3つである。これらの変数を数値化し、私は「政治ストレスインデックス(PSI)」という指標を作った。

2010年当時、この「PSI」がアメリカとヨーロッパでは急速に上昇しており、2020年には危険な状態になることを示していた。それが予測の根拠であった。

動画で公開されたジョージ・フロイド氏の殺害の場面は大変にショッキングで、激しい怒りが込み上げてくる。これは当たり前の感情だ。警察のこの行動に怒らないものはいない。この事件は、抑圧された社会的ストレスが爆発する噴火口になったのだ。

2020年になったいまでも「PSI」は上昇するばかりだ。下がる気配はまったくない。新型コロナウイルスのパンデミックは、この上昇をさらに加速させている。ということは、ジョージ・フロイド氏への怒りがきっかけで始まった今回の抗議デモが、たとえ収まったとしても、新たな出来事が契機となり、社会不安は一層激しくなることが予想される」。

以上である。

ターチンは「PSI」は西欧でも上昇しており、アメリカと同じく西欧も激動の時期に入ったので、今後アメリカと同じような状況になるだろうともしている。

イゴール・パナリンの予測
さらにターチンだけではない。2020年代と特定されているわけではないが、将来のアメリカの分裂を予想しているもう1人の専門家がいる。現在、ロシア外務省外交アカデミーの教授を努めるイゴール・パナリンの予測だ。

1998年、もともとkGB出身だったパナリンはロシア連邦保安庁から得た機密性の高いデータに基づき、2010年頃にアメリカは6つに分裂するという予測を発表した。これは大手経済紙の「ウォールストリート・ジャーナル」に取り上げられ、ちょっとした評判になった。

パナリンがいうには、今後アメリカは経済崩壊や極端な格差などが原因となり、富裕な州と貧困な州との間に深刻な対立が生じ、次第に富裕州が合衆国の連邦から離脱することで、アメリカは6つの地域に分裂するとした。

他方パナリンは、アメリカの分裂はロシアの勢力を拡大させるのでよい面もあるが、ユーゴスラビア型の内戦を伴う分裂になると、その世界的な影響力は図り知れず、ロシア経済にも相当なダメージがある。そのため国際社会は協力し、チェコスロバキア型の秩序ある平和的な分裂を実現できるように努力しなければならないとした。

アメリカは分裂に進んでいる?
このような予測であったが、もちろん2010年にアメリカの分裂は起こらなかった。だから、この予測がまったく無意味であったかといえばそうではないだろう。

2007年にサブプライムローンの破綻が引き金となり、深刻な金融危機が起こった。その影響でアメリカ経済は、2008年と2009年は実質的にマイナス成長となり、国内経済は大変に混乱した。

そのような状況を受け、2009年には米政府の横暴に抵抗し、地域共同体と国民の自立を主張して200万人をワシントンに結集した「ティーパーティー運動」や、2011年には格差に反対して全国に拡大した「オキュパイ運動」などが燎原の火のように拡大した。

もちろんこれらの運動で、アメリカは分裂こそしなかったものの、かつてないような政治的対立が生まれた。これはまさに、2010年ころに経済崩壊から分裂に至るとしたパナリンの予測に近似した展開であった。そうした意味では、評価する声も大きい。

一方パナリンは2010年に、これでアメリカの矛盾は解決されるどころか、予測が発表された1998年よりももっと深刻になっているとし、分裂の火種はさらに大きくなっていると発言していた。そして、時期は明示できないものの、将来アメリカは分裂する可能性は高いとした。

そして、いま我々は2020年の大混乱を目の前にしている。

これは、やはりターチンが予想する大混乱や、パナリンの予想するアメリカの分裂に向かって進んでいる可能性を示唆してはいないだろうか?

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