数年前の記事ですが、トリチウムの危険性についてわかりやすく説明しているので、
引用します。

--------(引用ここから)----------------------------------------------

「トリチウムの危険性について考える　〜ちくりん舎学習会より〜」
（ちくりん舎ニュース　2016/10/27 第４巻（第12号））
http://chikurin.org/wp/wp-content/uploads/2017/01/12-2.pdf
http://chikurin.org/wp/wp-content/uploads/2017/01/12-3.pdf

　フクイチ事故後の廃棄物の中であまり大きく報道はされていませんが、極めて危険な、そして処理がやっかいなトリチウムという放射性ごみがあります。 このトリチウムとはどんなものか、そしてどのように危険なものか、その現状は？ という問題意識に立って学習会を行いました。その内容を簡単に報告します。

＜どれくらいのトリチウムがフクイチにあるのか＞

　2014 年 3 月時点での東電の推計では、フクイチ事故時に総量 3,400 兆ベクレルのトリチウムが原子炉内に存在していたとされています。このうち汚染水タンクには 830 兆ベクレル、建屋内に50 兆ベクレル、トレンチに 46 兆ベクレル、その他が 2､ 500 兆ベクレルです。
　汚染水問題でタンクにある 830 兆ベクレルが注目されていますが、これはどのくらいの量かと言うと、原発事故前に東電が保安規定で定めていた年間の放出管理基準値 22 兆ベクレルから見ると40 年分にあたり、フクイチの過去の実績 2 兆ベクレルと比べると、約 400 倍（＝ 400 年分）にも上ります。フクイチの場合は事故による放出ですが、通常運転中にも排出されており、全国の各原発では年間数 10 億から 50 兆ベクレルの多量のトリチウムが環境中へ放出されています。
　一方、使用済み核燃料を処理する青森の六ケ所再処理工場では、2008 年度では約 360 兆ベクレルが放出されました。

＜トリチウム（記号 T）とは＞

　私たちの身の回りにある放射能を出さない水素（軽水素 H）は、原子核の陽子が 1 個のみなのに対し、トリチウムは、陽子が 1 個と中性子 2 個で構成されており、重量は水素の約 3 倍あり三重水素とも呼ばれます。
　軽水素は安定的で崩壊しませんが、トリチウムは不安定で、崩壊するときは中性子が電子を 1 個放出して（β線を出し）陽子に変わり、ヘリウム3 という原子に変わります。半減期が 12.5 年の放射性同位体です。
　トリチウムは、原子炉内でウランやプルトニウムが 3 つに分かれる三体核分裂反応によって生じます。また、重水素、リチウム、ボロンなどの軽い元素と中性子の反応によっても生じます。原子炉内で生じたトリチウムは燃料棒に蓄積され、事故や再処理などで燃料棒が破壊されると外部に放出されます。
　トリチウムの化学的性質は水素原子と変わりなく、どこでも通常の水素と.き換わります。たとえば、酸素と結合した場合は、通常の水 HHO（=H2O ）からトリチウムを含む HTO となります。有機高分子化合物中の水素と置き換わると、有機結合型トリチウム OBT となって長く体内にとどまり、大変危険です。細胞の構成要素、特に遺伝子情報を担う DNA 中の水素とも置き換わるので、DNA をはじめ細胞が損傷されます。
　事故を起こした福島原発では、化学的性質が水と同じであるため ALPS（多核種除去装置）でも除去できず、現時点では汚染水タンクに貯まり続け、廃棄方法が問題になっています。

＜トリチウムの危険性を過小評価する ICRP＞

　この厄介なトリチウムの危険性が過小評価されていることについては多くの指摘がありますが、過小評価の根本に ICRP の線量係数（人体への影響を示すとされる数値）があります。
　ＩCRP の線量係数では、トリチウムの人体への影響をセシウム 137 の 100 〜 1000 分の 1 と見積もり、これに基づいて過大な排出基準を定めています。 トリチウムの危険性を警告する研究結果を以下に整理ました。

�@有機トリチウム (OBT) と細胞組織

（伊方原発反対 1 万人委員会のチラシ）
＊ヒトの細胞は 6 ミクロンか 10 ミクロンの大きさで、その内部にある核小体などの重要な小器官はすべて 1 ミクロン以下の有機化合物で構成されている。「体の中に入ったトリチウム (HTO) は、体の組織に均質的に影響を与える」とする ICRP の仮定は、細胞構成器官に取り込まれた有機トリチウム (OBT) の存在を無視する誤った仮定の上に立っている。
＊またトリチウムが放射するベータ線エネルギーの飛程距離が 0.1 ミクロンであっても分子を破壊するのに十分な射程距離にある。
＊このように ICRP は電離放射線の影響を細胞レベルで把握しようとしないという点で非科学的アプローチを行っている。

�Aマウス実験から見たトリチウムの危険性（斎藤眞弘 京都大学名誉教）

＊トリチウムがトリチウム水として体内に摂取された場合には、トリチウムが体内の特定の場所に集まることはない。
＊トリチウムが生物の体内で、特定の場所に集まりやすい性質を持つ有機化合物に結合している場合は別。たとえば、DNA の材料であるチミジンに結合したトリチウムは、細胞増殖が盛んで、DNAが次々に合成されている骨髄、胃腸管、脾臓などに集まりやすい。
＊妊娠マウスにトリチウム水を摂取させると、胎児中の脂肪組織にトリチウムが取り込まれる。

�B気体 ( 水蒸気 ) でのトリチウム取り込みの危険性
（放射線医学総合研究所 / 監修『人体内放射能の除去技術』）

＊放射性物質は正常な（傷などがない）皮膚からは侵入できないとされているが、蒸気あるいは液体のトリチウムやヨウ素な)は、例外的に正常な皮膚からすみやかに体内に侵入する。
＊トリチウムの内部被曝は吸入被ばく（皮膚・肺）と経口被ばくに分類され、吸入被ばくの場合は、トリチウム水蒸気のうちの 2/3 が肺から、1/3 が皮膚から体内に吸収される（ 2014 年 3 月 4 日トリチウム研究会 主催：日本原子力学会）。

�C低濃度のトリチウムの人間への影響

＊ごく低濃度のトリチウムでも人間のリンパ球に染色体異常を起こさせることが報告されている。 （放医研 中井斌遺伝研究部長他 1974 年）
　トリチウム水では 0.001μci/ml（マイクロキュリー / ミリリットル）以上の濃度で染色体異常の発生率が高くなる。
・トリチウムチミジンではさらに発生率が高くなり、トリチウム水に比較して誘発効果は約 100 倍高い。 (0.00001μci/ml で染色体異常発生率が上る )
・現在の原発の排水濃度限度トリチウム水：60,000 Ｂ q/L ( ≒ 0.0016μci/ml)有機結合型トリチウム：40,000Bq/L( ≒ 0.0014μci/ml)
＊トリチウムによって誘発される染色体異常は、そのほとんどが染色体分体型の切断であ。（ダウン症候群、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病などが染色体異常により誘発されることが知られている）

�D飲料水基準

　右上の表は、飲料水におけるトリチウム基準の国際比較。国によって100〜10,000の幅があるが、日本には基準がない。
　このように、研究者の間ではトリチウムの様々な危険性が指摘されているにもかかわず、トリチウムの内部被ばく問題が一般的に取り上げられることはほとんどありません。ちくりん舎では、今後もトリチウムについての学習会を進めていきたいと考えています。
　なお、今回の学習には以下のテキストを主に使いました。
1) 伊方原発反対 1 万人委員会チラシhttp://hiroshima-net.org/yui/1man/index.cgi?page=1
2) 遠藤順子、山田耕作、渡辺悦司「放射線被曝の争点――福島原発事故の健康被害は無いのか」（緑風出版刊、渡辺悦司・遠藤類子・山田耕作著）
3）週刊東洋経済 2016 年 4 月 23 日号

--------(引用ここまで)----------------------------------------------

すでに1970年代にはごく低濃度のトリチウムが人間のリンパ球に染色体異常を
起こすことがわかっていたということです。

加圧水型原発は大量のトリチウムを放出しますが、玄海原発、泊原発周辺で
白血病が多発しているのはおそらくトリチウムが原因でしょう。

トリチウムが危険となると、それを放出する原発や再処理工場などが
稼動できなくなります。

原子力ムラにとっては死活問題なので、安全だ、問題ないと必死で繰り返すわけです。

しかし科学的事実は隠蔽できません。

（関連情報）

「『トリチウムは極めて危険　官僚はウソをつくな！』　多核種除去設備等処理水の
公聴会で西尾正道先生が怒りの発言」　（拙稿　2018/9/3）
http://www.asyura2.com/18/genpatu50/msg/278.html

「トリチウムは低濃度でも染色体異常起こす!! （とある原発の溶融貫通(メルトスルー)）」　
（阿修羅・赤かぶ　2013/9/16）
http://www.asyura2.com/13/genpatu33/msg/584.html

「トリチウムの人体への影響を軽くみてはならない　（河田昌東　VIDEO NEWS）」
(拙稿　2021/4/19)
http://www.asyura2.com/20/genpatu53/msg/476.html

「玄海原発（佐賀県）周辺は「白血病」患者が全国平均の１１倍も多い 」
（阿修羅・てんさい（い）　2020/2/3）
http://www.asyura2.com/09/genpatu6/msg/396.html

「原発の北海道泊村の、肺炎がん心不全が2倍3倍4倍の死因構成比の異常偏倚／
岐阜県八百津町も（jp.dgfreakと東海」　（阿修羅・琴姫七変化　2018/3/6）
http://www.asyura2.com/17/genpatu49/msg/488.html
　

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