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日本銀行当座預金
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1604.html
投稿者 中川隆 日時 2021 年 4 月 05 日 17:57:11: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 銀行準備制度「銀行は(発行した)預金貨幣の・%の日銀当座預金を保有しなければならない」 投稿者 中川隆 日時 2020 年 10 月 17 日 10:16:50)

日本銀行当座預金


日本銀行当座預金とは何ですか? 利息は付きますか?
教えて!にちぎん
https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/kess/i07.htm/


回答
日本銀行当座預金とは、日本銀行が取引先の金融機関等から受け入れている当座預金のことです。「日銀当座預金」、「日銀当預」などと呼ばれることもあります。

日本銀行当座預金の主な役割

日本銀行当座預金は、主として次の3つの役割を果たしています。

(1)金融機関が他の金融機関や日本銀行、あるいは国と取引を行う場合の決済手段

(2)金融機関が個人や企業に支払う現金通貨の支払準備

(3)準備預金制度の対象となっている金融機関の準備預金


準備預金制度
https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/seisaku/b33.htm/

日本銀行当座預金の利息
https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/seisaku/b37.htm/

日本銀行当座預金の残高等については、

「日銀当座預金増減要因と金融調節」
https://www3.boj.or.jp/market/jp/menu.htm

および

「業態別の日銀当座預金残高」
https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/index.htm/

をご覧ください。  

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コメント
1. 2021年4月20日 09:26:55 : fzZb06XXLw : bDI2N25GTEVHOFU=[25] 報告
04-20 中国でのビットコインの現在
2021/04/20




2. 中川隆[-5437] koaQ7Jey 2021年4月20日 09:31:44 : fzZb06XXLw : bDI2N25GTEVHOFU=[29] 報告
アメリカは具体的にどのように世界中のマネーを吸い上げているのか


3. 中川隆[-14225] koaQ7Jey 2022年1月13日 13:28:51 : 46PFDOQUKI : SS55N2NlU0xZMGc=[24] 報告
日本銀行
決済と銀行
第5章 決済と銀行

預金がおかねとして広く利用されている理由のひとつは、預金がいつでもおさつに換えて引き出せるからだと考えられます。

銀行は、中央銀行に預金口座(日本では、日本銀行当座預金 がこれに当たります)を持っていて、必要に応じていつでもおさつを引き出すことができます。銀行は、中央銀行当座預金と、人々から預かっている預金という2つのものを使って、中央銀行と私たちとの間におさつを行き来させています。
https://www.boj.or.jp/paym/outline/wkkey5.htm/


1.おさつと銀行
https://www.boj.or.jp/paym/outline/kg51.htm/

こんにち「おかね」として広く使われているのは、おさつと預金という2種類の決済手段です。私たちがおさつや預金を利用するとき、銀行と中央銀行がそれぞれの役割を果たしています。ここでは、銀行と中央銀行が決済の世界で果たしている基本的な役割について調べてみることにします。

おさつと預金との関係
まず、私たちが商店などでおさつを使って決済する場面を考えてみます。買い物をして、財布からおさつを取りだして商店に渡す。商店はこれを受け取ってレジの中に収める。このプロセスに銀行や中央銀行は関与していません。おさつを用いた決済は、銀行や中央銀行から切り離されて、支払人と受取人だけで完了できるのです。それでは、私たちが決済に使うおさつを手に入れたいと思った場合はどうでしょうか。

私たちは、おさつの形でおかねを受け取ることもありますが、銀行預金の形でおかねを受け取る場合も少なくありません。また取りあえず使わないおさつを銀行に持ち込んで預金にしておくので、決済のためにおさつが必要になったとき、私たちは多くの場合、預金を置いてある銀行から「引き出して」おさつを手に入れるのです。実際、預金がおかねとして広く利用されている背景のひとつは、このように預金がいつでもおさつに換えて引き出せるところにあると考えられます。もちろん、「いつでも」と言っても、預金をおさつに換えられるのは銀行の営業時間中に限られます。しかし最近では、夜おそくまでATMが使えるようになったりして、預金をおさつに換えられる時間はかなり長くなってきました。

預金は、それを預けてある銀行が倒産すると、おさつに換えることも出来なくなってしまう心配があります。ですから、ある銀行の安全性が疑わしくなると、人々はその銀行に預金を置くのをやめ、別の銀行に預金を移したり、おさつの形で持っていようと考えるようになります。この点、預金は、江戸時代の「両替屋包み」に似ています。「両替屋包み」(「包み金銀」とも呼ばれます)は、今日の銀行にあたる両替商が金貨・銀貨を紙で包んで封をして、その表面に金額を記したもので、封をされたまま流通していました。封を破って金貨・銀貨にバラしても使えるのですが、両替屋の面前で封を切らない限り、中身が足りなくても持ち主の責任とされたそうです。


「両替屋包み」は、両替屋が信用されていて、いざ包みを開けば中に正しい額の金貨・銀貨が入っていると信じられるからこそ、人々に受入れられたわけです。両替屋が信用できなくなれば、人々は包みを両替屋に持ち込んで封を切り、正しい額の金貨・銀貨を手に入れようとしたでしょう。預金も同じことで、人々はその銀行が信用できなくなれば銀行の信用という包み紙を破って、「中身」のおさつを手に入れようとすることになるのです。


おさつの旅
さて銀行は、私たちが引き出す場合に備えて、窓口やATMの中におさつを準備しています。このおさつを銀行はどこから手に入れるのでしょうか。銀行は中央銀行の本店や支店に出かけていって、自分が中央銀行に置いている預金を減らして同額のおさつを引き出すのです。おさつは、このように発行者の中央銀行から銀行を経由して個人や企業に渡ります。中央銀行は、個人や企業といったおさつのユーザーに直接おさつを供給することが基本的にありません。これは中央銀行に口座を持つのが銀行などに限られていて、個人や企業は中央銀行への預金をもっていませんから、直接中央銀行からおさつの形で引き出すということがないからです。銀行は、中央銀行に預けている預金と、人々から預かっている預金という2つのものを使って、中央銀行と私たちとの間におさつを行き来させているわけです。

私たちが銀行から引き出したおさつは、人々や商店などの間を転々と流通していきます。おさつを受け取った人や会社がそのおさつを銀行に持ち込んで、自分の預金口座に入金したり、別の人への振込を依頼したりすることで、おさつは銀行に戻ります。銀行は、持ち込まれたおさつを別の預金者がおさつを引き出しにきた時の払い出しに使うかもしれませんが、使わないおさつは中央銀行に運び込み、自分の中央銀行預金を増やしておくのです。

銀行がおさつを中央銀行に持ち込んで中央銀行への預金にしようとする事情はいくつかあります。ひとつは、多くの国に準備預金制度と言って、「銀行は自分が預かった預金の一定割合を中央銀行に預けねばならない」という決まり(法律)が存在することです。このため銀行は、手元に余っているおさつがあれば、これを中央銀行に持ち込んで準備預金の一部に充てようと考えます。また、あとでお話しするように、銀行は普通よその銀行との決済を行う時に、おさつではなく自分が中央銀行に預けている預金を用います。このことも、銀行がおさつを中央銀行に持ち込んで中央銀行への預金という形に変えておこうとする理由だと考えられます。

このようにして戻ってきたおさつを中央銀行はどうするのでしょうか。中央銀行は、銀行を通じて戻ってきたおさつ1枚1枚について、ニセ札でないこと、汚れたり破れたりしておらず引続き使用に耐えること、を確認します(こういう仕事を鑑査といい、鑑査には自動鑑査機と呼ばれる機械が広く利用されています)。使用に耐える本物のおさつは、引き出しにきた銀行への支払に充てられ、再び世の中を流通し始めます。一方、汚れたり破れたりしているおさつは中央銀行において処分され、代わりに中央銀行の金庫に備蓄してある新品のおさつが投入されていくのです。
https://www.boj.or.jp/paym/outline/kg51.htm/

4. 中川隆[-14222] koaQ7Jey 2022年1月13日 14:15:54 : 46PFDOQUKI : SS55N2NlU0xZMGc=[27] 報告
「日銀貸出金」とはその名の通り、日銀が民間金融機関に資金を貸し出すことです。 この貸し出しに使われる金利が「公定歩合」です。 貸し出しを増やせば日銀当座預金は増え、減らせば日銀当座預金も減ります。
公定歩合(こうていぶあい)
中央銀行が民間の金融機関に資金を貸し出す際の基準金利のこと。金融政策の基本的なスタンスを示す代表的な政策金利です。日本でも、規制金利時代には、預金金利などの各種の金利が「公定歩合」に連動していたため、「公定歩合」が変更されると、こうした金利も一斉に変更される仕組みになっており、日本銀行の金融調整に利用されていました。しかし、金利自由化で公定歩合と預金金利の直接的な連動がなくなったことで、政策金利としての役割を終えました。2006年に「公定歩合」から「基準割引率および基準貸付利率」に名称が変更され、基準貸付利率は短期の市場金利の事実上の上限としての役割を担うようになっています。
https://www.smd-am.co.jp/glossary/YST0533/


公定歩合
「公定歩合」とは、中央銀行(日本銀行)が民間の金融機関に、お金を貸し出す際に利用していた基準金利のことで、金融政策の基本的な方針を示す代表的な政策金利でした。

1994年の金利自由化まで、預金金利を始めとする様々な金利と連動していました。2006年に「基準割引率および基準貸付利率」と名称が変更され、現在は「公定歩合」という言葉は使われることがなくなりましたが、2001年に導入された保管貸付制度(金融機関からの申し出により日銀が資金を貸出しする制度)の適用金利としての役割を担っています。

以前は、日銀が公定歩合をコントロールすることで、景気政策を行っていました。公定歩合の引き上げは、銀行の貸出金利も引き上げになるので、金融引き締めの効果が期待できます。

一方で、公定歩合の引き下げは、銀行の貸出金利の引き下げにつながるので、低金利で企業が資金を調達できるため、消費活動が活発化し、経済活動の拡大を狙えます。特にデフレのときに行われていた政策のひとつです。

バブル期の日本では、金融引き締めのため1989年2.5%だった公定歩合の引き上げを段階的に行い、1990年代は6%台でした。バブル崩壊後は引き下げが続き、2001年には0.1%まで公定歩合の引き下げを行いました。

https://www.crowd-realty.com/glossary/ko/kouteibuai/50/#:~:text=%E6%84%8F%E5%91%B3.%20%E3%80%8C%E5%85%AC%E5%AE%9A%E6%AD%A9%E5%90%88%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E9%8A%80%E8%A1%8C%EF%BC%88%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%8A%80%E8%A1%8C%EF%BC%89%E3%81%8C%E6%B0%91%E9%96%93%E3%81%AE%E9%87%91%E8%9E%8D%E6%A9%9F%E9%96%A2%E3%81%AB%E3%80%81%E3%81%8A%E9%87%91%E3%82%92%E8%B2%B8%E3%81%97%E5%87%BA%E3%81%99%E9%9A%9B%E3%81%AB%E5%88%A9%E7%94%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%9F%E5%9F%BA%E6%BA%96%E9%87%91%E5%88%A9%E3%81%AE%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E3%80%81%E9%87%91%E8%9E%8D%E6%94%BF%E7%AD%96%E3%81%AE%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E7%9A%84%E3%81%AA%E6%96%B9%E9%87%9D%E3%82%92%E7%A4%BA%E3%81%99%E4%BB%A3%E8%A1%A8%E7%9A%84%E3%81%AA%E6%94%BF%E7%AD%96%E9%87%91%E5%88%A9%E3%81%A7%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82.,1994%E5%B9%B4%E3%81%AE%E9%87%91%E5%88%A9%E8%87%AA%E7%94%B1%E5%8C%96%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%80%81%E9%A0%90%E9%87%91%E9%87%91%E5%88%A9%E3%82%92%E5%A7%8B%E3%82%81%E3%81%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E6%A7%98%E3%80%85%E3%81%AA%E9%87%91%E5%88%A9%E3%81%A8%E9%80%A3%E5%8B%95%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82.%202006%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%80%8C%E5%9F%BA%E6%BA%96%E5%89%B2%E5%BC%95%E7%8E%87%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E5%9F%BA%E6%BA%96%E8%B2%B8%E4%BB%98%E5%88%A9%E7%8E%87%E3%80%8D%E3%81%A8%E5%90%8D%E7%A7%B0%E3%81%8C%E5%A4%89%E6%9B%B4%E3%81%95%E3%82%8C%E3%80%81%E7%8F%BE%E5%9C%A8%E3%81%AF%E3%80%8C%E5%85%AC%E5%AE%9A%E6%AD%A9%E5%90%88%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%AF%E4%BD%BF%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%8C%E3%80%812001%E5%B9%B4%E3%81%AB%E5%B0%8E%E5%85%A5%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E4%BF%9D%E7%AE%A1%E8%B2%B8%E4%BB%98%E5%88%B6%E5%BA%A6%EF%BC%88%E9%87%91%E8%9E%8D%E6%A9%9F%E9%96%A2%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E7%94%B3%E3%81%97%E5%87%BA%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8A%E6%97%A5%E9%8A%80%E3%81%8C%E8%B3%87%E9%87%91%E3%82%92%E8%B2%B8%E5%87%BA%E3%81%97%E3%81%99%E3%82%8B%E5%88%B6%E5%BA%A6%EF%BC%89%E3%81%AE%E9%81%A9%E7%94%A8%E9%87%91%E5%88%A9%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E5%BD%B9%E5%89%B2%E3%82%92%E6%8B%85%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82.%20%E4%BB%A5%E5%89%8D%E3%81%AF%E3%80%81%E6%97%A5%E9%8A%80%E3%81%8C%E5%85%AC%E5%AE%9A%E6%AD%A9%E5%90%88%E3%82%92%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E3%80%81%E6%99%AF%E6%B0%97%E6%94%BF%E7%AD%96%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82.

5. 中川隆[-14221] koaQ7Jey 2022年1月13日 14:21:20 : 46PFDOQUKI : SS55N2NlU0xZMGc=[28] 報告
日本銀行

以前の「公定歩合」は、現在、どのように位置づけられていますか?
https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/seisaku/b38.htm/


回答
かつて、日本銀行の主な金融調節手段は、オペレーションではなく、「公定歩合」により金融機関に貸出を行うことでした。また、規制金利時代には、預金金利等の各種の金利が「公定歩合」に連動していたため、「公定歩合」が変更されると、こうした金利も一斉に変更される仕組みになっていました。このため、「公定歩合」は金融政策の基本的なスタンスを示す代表的な政策金利でした。

しかし、1994年(平成6年)に金利自由化が完了し、「公定歩合」と預金金利との直接的な連動性はなくなりました。この連動関係に代わって、現在、各種の金利は金融市場における裁定行動によって決まっています。こうした状況のもと、かつての「公定歩合」は、現在、「基準貸付利率」と呼ばれ、「補完貸付制度」の適用金利として、無担保コールレート(オーバーナイト物)の上限を画する役割を担うようになりました。

基準貸付利率の推移等については、「基準割引率および基準貸付利率(従来『公定歩合』として掲載されていたもの)の推移」のページをご覧ください。

補完貸付制度
補完貸付制度は、日本銀行が予め定めた条件(貸付期間を1営業日とする等)に基づき、貸付先からの利用申込みを受けて、担保の範囲内で受動的に実行する貸付制度であり、2001年(平成13年)2月に導入されました。本制度の対象先は、銀行、証券会社といった金融機関のうち、貸付先となることを希望する先で、信用力が十分であると日本銀行が認めた先です。

本制度については、何らかの理由により、短期市場金利が本制度の適用金利(基準貸付利率)を超えて上昇した場合、対象先は、いつでもこれを利用できることが予め明確になっています。このため、結果的に、基準貸付利率が短期市場金利の上限を画するものと期待されます。

https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/seisaku/b38.htm/

6. 中川隆[-14218] koaQ7Jey 2022年1月13日 14:31:52 : 46PFDOQUKI : SS55N2NlU0xZMGc=[31] 報告
補完貸付の概要
2021年9月30日現在
日本銀行金融機構局
https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/len_a/opetori15.htm/

この資料は、日本銀行が「補完貸付制度基本要領」に基づいて行う補完貸付の概要を記載したものです。また、記載している内容は、今後変更することがあり得ますので、予めご承知おき下さい。

1. 貸付先
金融機関、第一種金融商品取引業者、証券金融会社、または短資業者のうち、貸付先となることを希望する先で、信用力が十分であると日本銀行が認めた先を貸付先とします(注)。

貸付先の承認は、原則として年1回の頻度で更新します。

(注)日本銀行では、ペイオフ全面解禁後の金融システム面への対応の一環として、2005年に補完貸付先の承認取消しにかかる予告措置を導入しています。同措置の概要については、「補完貸付先の承認取消しにかかる予告措置の概要 [PDF 343KB]」をご参照下さい。
2. 貸付店
日本銀行本店(業務局)または支店のうち、各貸付先が指定した店舗を貸付店とします。

3. 貸付期間
1営業日とします。

4. 貸付利率
基準貸付利率とします(注)。

(注)ただし、1積み期間に累計で5営業日を超えて貸付けを実行した場合、6営業日目以降は+2%の上乗せ金利を加えた利率を適用します(ただし、現在は、当分の間臨時措置として、この上乗せ金利を適用せず、すべての営業日を通じて基準貸付利率による利用を可能とすることとしています。)。
5. 担保
補完貸付にあたっては、日本銀行が適格と認める担保を予め受入れるものとします。

6. 貸付金額
貸付先が日本銀行に対して差入れている適格担保の担保価額の範囲内で、貸付先が希望する金額とします。

7. 実行方法
日本銀行は、貸付先から日本銀行が別に定める刻限までに借入申込みを受けた場合には、受動的に貸付けを実行します。

貸付けは、電子貸付の方式により行います。

日本銀行による貸付けの実行は即時処理により行います。また、貸付先から日本銀行への返済は翌営業日のコアタイム開始後速やかに行います。

https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/len_a/opetori15.htm/

7. 中川隆[-14217] koaQ7Jey 2022年1月13日 14:41:25 : 46PFDOQUKI : SS55N2NlU0xZMGc=[32] 報告
預貸率とは 預金から融資に回る割合
2021年10月2日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC015OC0R01C21A0000000/


▼預貸率 金融機関の預金がどれだけ貸し出しに回っているかを示す指標で、貸出金残高を預金残高で割って計算する。数値が高いほど融資が活発で、数値が低いほど融資していない預金が余っているといえる。金融庁の元地域金融企画室長の日下智晴氏は「『産業構造』『人口動態』『金融機関の競争』の3つの要素が預貸率を左右する」と指摘する。

経済が成長していた時期は企業や個人の資金需要が旺盛で、銀行の預貸率が100%を超えることもあった。全国は2001年3月末で87.0%あったが、バブル崩壊後の景気低迷などで低下が続き、21年3月末には58.1%まで落ち込んでいる。

足元の預貸率を地域別でみると、西日本が高い傾向がある。造船や海運業が集積する愛媛県に加え、新型コロナウイルス感染拡大前までインバウンド需要に沸いた沖縄県などがけん引する。一方で大都市近郊のベッドタウン地域は預金が過剰になりやすく、預貸率も低い。21年3月末の都道府県別の預貸率をみると、最も低いのは大阪府に隣接する奈良県の37.6%だった。東京都に隣接する埼玉県、千葉県、神奈川県もいずれも40%台にとどまり、全国平均を下回っている。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC015OC0R01C21A0000000/

8. 中川隆[-14214] koaQ7Jey 2022年1月13日 14:45:35 : 46PFDOQUKI : SS55N2NlU0xZMGc=[35] 報告
預貸率 よたいりつ
英語: Loan deposit ratio
分類: 指標
https://www.ifinance.ne.jp/glossary/finance/fin130.html


預貸率は、銀行において、預金残高に対する貸出残高の割合(比率)をいいます。

預貸率の算式

銀行の経営指標の一つで、銀行が集めた預金のどれだけが融資(貸出)に回っているかを示すものであり、例えば、預金が10兆円で貸出金が8兆円であれば、預貸率は80%となります。



預貸率の概念について
預貸率が預金残高に対する貸出残高の比率(%表示)をいうのに対して、一定期間中の預金の増加額に対する貸出の増加額の比率(%表示)を「限界預貸率」と言います。

・預貸率=貸出残高÷預金残高
・限界預貸率=貸出の増加額÷預金の増加額

また、昨今では、預貸率の低下により、債券等の有価証券での資金運用も大きく増加していることから、貸出残高と有価証券残高とを合算したものを預金残高で割った「預貸証率」も、同様の観点からよく用いられています。

一般に預貸率の低下は、経済面において、景気にも負の影響を及ぼすと言われ、実際にバブル崩壊後の日本では、銀行の預貸率の低下が企業活動を圧迫して、長期の景気低迷につながった一つの要因とされています。

◎預貸率が100%を割った場合、全体の貸出額が全体の預金額を下回っていることを意味する。

◎預貸率が100%を超えた場合、「オーバーローン」と呼ばれ、全体の貸出額が全体の預金額を上回っていることを意味する。

<預貸率の認識について>

・預貸率が100%超:資金調達が必要
・預貸率が100%未満:資金余剰が発生
・預貸率が低下:資金需要が低迷 or 貸出を抑制
・預貸率が増加:貸出が活発化

日本の預貸率の現状について
日本では、1990年代のバブル崩壊によって、企業の経営破綻が相次ぐなど不良債権問題が長く深刻化したため、銀行は貸し渋りや債権回収に走り、2003年に預貸率はついに100%を割り込みました。

その後も、企業が将来不安や安全策から借入を抑え、また個人(家計)も安全性の高い預金を積み増した結果、銀行の預貸率は、令和の今でも、100%を大きく下回って推移しています。

なお、銀行は、預貸率が低い場合、余った資金をうまく運用できなれば、収益を圧迫することになります。

https://www.ifinance.ne.jp/glossary/finance/fin130.html

9. 中川隆[-14212] koaQ7Jey 2022年1月13日 14:48:36 : 46PFDOQUKI : SS55N2NlU0xZMGc=[37] 報告
自己資本比率
英語: Capital ratio, Equity ratio
分類: 財務分析
https://www.ifinance.ne.jp/glossary/account/acc001.html#car2


自己資本比率は、「株主資本比率」とも呼ばれ、株式会社において、総資産(負債+純資産)に対する自己資本(純資産)の割合(比率)を示すものをいいます。

 自己資本比率=(自己資本÷総資産)×100

企業の財務体質の安全性を見る基本的な指標の一つで、また業種によってその水準が大きく異なることから、相対的にチェックする場合には、同業種の競合企業と比較するのがよいでしょう。

目次:コンテンツ構成

企業の自己資本比率について
銀行の自己資本比率について


企業の自己資本比率について
自己資本比率は、貸借対照表(B/S)の総資産に占める自己資本(純資産)の比率(%)で、一般的には高比率なほど健全な財務体質と言え、現在、数ある財務指標の中でも重要度の高いものとなっています。

自己資本比率の計算式

自己資本比率の自己資本
自己資本とは、資金調達を分類する概念では、企業の総資本のうち、資本主(出資者)に帰属する部分をいいます。現在、B/S上において、本用語は出てきませんが、通常、自己資本の認識として、以下の3つがあります。

(1)自己資本=純資産(「資産の部」と「負債の部」の差額)

(2)自己資本=株主資本+評価・換算差額等(その他の包括利益累計額)

(3)自己資本=株主資本(資本金、資本剰余金、利益剰余金 他)

この3つの中で、自己資本比率で用いられる自己資本の認識は、(1)の「自己資本=純資産」が一般的です。

自己資本比率の概念
企業の資金調達の源泉は、返済を必要としない「純資産」と返済を必要とする「負債」の二つに分けられ、通常、自己資本比率が高いほど、返済や金利負担のある負債が少ないことになるため、企業経営の安全度が高いと言えます。

 自己資本比率=(自己資本÷総資産)×100

一般に自己資本比率を高めるためには、分子(自己資本)において、税引き後利益の蓄積である「剰余金」を増加させるか、または分母(総資産)において、非効率な「資産」を圧縮するなどの施策が必要となります。

◎自己資本比率が高い場合は、B/S上の負債が少なく(外部依存度が低く)、過去の利益蓄積が多い。

◎自己資本比率が低い場合は、B/S上の負債が多く(外部依存度が高く)、過去の利益蓄積が少ない。

銀行の自己資本比率について
自己資本比率は、銀行業界においては、銀行業務の健全な運営を保つことを目的とした「自己資本比率規制」における指標で、上記の概念とは異なり、以下のようになっています。

国際統一基準(バーゼル3):2013年3月期から適用
海外営業拠点(海外支店または海外現地法人)を有する銀行(預金取扱金融機関)に対しては、国際統一基準である「バーゼル3」が適用され、達成すべき自己資本比率を8%以上と定めています。

銀行の自己資本比率(国際統一基準)の計算式

|普通株式等Tier1|
最も損失吸収力の高い資本(普通株式、内部留保等)をいう。

|その他Tier1|
優先株式等をいう。

|Tier2|
劣後債、劣後ローン等、及び一般貸倒引当金(信用リスク・アセットの1.25%が算入上限)等をいう。

|リスク・アセット|
資産の各項目に各々のリスクウェイトを乗じて得た額の合計額(信用リスク)、資産の市場変動リスク相当額(マーケットリスク)及び種々の事故リスク相当額(オペレーショナルリスク)の和をいう。

国内統一基準:2014年3月期から適用
海外営業拠点を有しない銀行(預金取扱金融機関)に対しては、国内基準が適用され、達成すべき自己資本比率を4%以上と定めています。

銀行の自己資本比率(国内統一基準)の計算式

|コア資本|
損失吸収力の高い普通株式及び内部留保を中心にしつつ、強制転換型優先株式や協同組織金融機関発行優先出資及び一般貸倒引当金(信用リスクアセットの1.25%が算入上限)等を加えたものをいう。

|リスク・アセット|
上記の国際統一基準と同じ。

https://www.ifinance.ne.jp/glossary/account/acc001.html#car2

10. 中川隆[-14180] koaQ7Jey 2022年1月15日 16:52:27 : GhTxcLiTVY : UmtDRE9QTUIzckk=[14] 報告
銀行券・貨幣の発行・管理の概要 : 日本銀行 Bank of Japan
https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/outline/index.htm/

銀行券の発行・流通・管理
日本銀行は、日本で唯一、銀行券を発行する発券銀行です。日本銀行は、皆さんが安心して銀行券を使えるよう、銀行券の安定供給を確保するとともに、銀行券の信認を維持するために、さまざまな業務を行っています。

銀行券の発行
日本銀行法では、日本銀行は、銀行券を発行すると定めています。銀行券は、独立行政法人国立印刷局によって製造され、日本銀行が製造費用を支払って引き取ります。そして、日本銀行の取引先金融機関が日本銀行に保有している当座預金を引き出し、銀行券を受け取ることによって、世の中に送り出されます。この時点で、銀行券が発行されたことになります。

銀行券は、さまざまな資金の受払いに利用可能な決済手段であり、特に小口資金のための受払いの手段として広く利用されています。銀行券には、銀行券を用いて支払いを行った場合、相手がその受取りを拒絶できないという、法貨としての強制通用力が法律により付与されています。

現在、日本銀行は、一万円券、五千円券、二千円券、千円券の4種類の日本銀行券を発行しています。

銀行券の流通
日本銀行が発行した銀行券は、その後、金融機関から預金を引き出した人々や企業の手に渡り、商品やサービスの購入などに利用されます。また、銀行券の一部は金融機関に持ち込まれ、預金として預けられます。

金融機関は、利用者への支払いに当面必要としない銀行券を、日本銀行の本支店に持ち込み、日本銀行当座預金に預け入れます。このように銀行券が日本銀行に戻ってくることを、銀行券の還収といいます。

日本銀行や金融機関は、銀行券が全国各地にくまなく行き渡るための流通拠点としての役割を果たしています。

銀行券の管理
金融機関を通じて銀行券が日本銀行の本支店に戻ってくると、日本銀行は、受け入れた銀行券の枚数を確認し、偽造・変造された銀行券がないか、厳重に真偽鑑定を行っています。また、損傷や汚染の度合いから再度の流通に適するかどうかも判別しています。日本銀行が行うこのようなチェックのことを鑑査といいます。日本銀行の鑑査によって選り分けられた、本物で再度の流通に適していると判断された銀行券は、再び金融機関に支払われていきます。

一方、鑑査の結果、流通に適さないと判断された銀行券は、復元できない大きさに裁断のうえ廃棄され、銀行券の一生を終えることとなります。銀行券の平均寿命は、一万円券で4〜5年程度、五千円券、千円券は使用頻度が相対的に高く傷みやすいため1〜2年程度となっています。

また、日本銀行では、本支店の窓口において、損傷した銀行券の引換えを行っています。

日本銀行券には、偽造・変造を防止するために、さまざまな偽造防止技術が施されています。日本銀行は偽造対策のため、外国の中央銀行との情報交換や共同研究などの国際的な取組みを行っています。

銀行券の発行、流通、管理の流れを示した図。詳細は本文のとおり。

貨幣の取扱い
貨幣は、日本銀行ではなく、政府が発行しています。貨幣は、独立行政法人造幣局が製造した後、日本銀行へ交付されますが、この時点で貨幣が発行されたことになります。

貨幣も銀行券と同様に、日本銀行の取引先金融機関が日本銀行に保有している当座預金を引き出すことを通じて、世の中に送り出されます。

https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/outline/index.htm/

11. 中川隆[-14091] koaQ7Jey 2022年1月23日 12:54:08 : SqaUv9RCQ6 : UGxERWhFLnBXOUE=[11] 報告
022年1月4日
日本銀行
当座預金取引の相手方一覧(2021年12月末・金融機関等コード順)

<銀行 123>
みずほ銀行 北國銀行 あおぞら銀行
三菱UFJ銀行 福井銀行 SBJ銀行
三井住友銀行 静岡銀行 北洋銀行
りそな銀行 スルガ銀行 きらやか銀行
埼玉りそな銀行 清水銀行 北日本銀行
PayPay銀行 大垣共立銀行 仙台銀行
セブン銀行 十六銀行 福島銀行
ソニー銀行 三十三銀行 大東銀行
楽天銀行 百五銀行 東和銀行
住信SBIネット銀行 滋賀銀行 栃木銀行
auじぶん銀行 京都銀行 京葉銀行
イオン銀行 関西みらい銀行 東日本銀行
大和ネクスト銀行 池田泉州銀行 東京スター銀行
ローソン銀行 南都銀行 神奈川銀行
みんなの銀行 紀陽銀行 大光銀行
UI銀行 但馬銀行 長野銀行
北海道銀行 鳥取銀行 富山第一銀行
青森銀行 山陰合同銀行 福邦銀行
みちのく銀行 中国銀行 静岡中央銀行
秋田銀行 広島銀行 愛知銀行
北都銀行 山口銀行 名古屋銀行
荘内銀行 阿波銀行 中京銀行
山形銀行 百十四銀行 みなと銀行
岩手銀行 伊予銀行 島根銀行
東北銀行 四国銀行 トマト銀行
七十七銀行 福岡銀行 もみじ銀行
東邦銀行 筑邦銀行 西京銀行
群馬銀行 佐賀銀行 徳島大正銀行
足利銀行 十八親和銀行 香川銀行
常陽銀行 肥後銀行 愛媛銀行
筑波銀行 大分銀行 高知銀行
武蔵野銀行 宮崎銀行 福岡中央銀行
千葉銀行 鹿児島銀行 佐賀共栄銀行
千葉興業銀行 琉球銀行 長崎銀行
きらぼし銀行 沖縄銀行 熊本銀行
横浜銀行 西日本シティ銀行 豊和銀行
第四北越銀行 北九州銀行 宮崎太陽銀行
山梨中央銀行 オリックス銀行 南日本銀行
八十二銀行 GMOあおぞらネット銀行 沖縄海邦銀行
北陸銀行 日本カストディ銀行 整理回収機構
富山銀行 新生銀行 ゆうちょ銀行


<信託銀行 11>
三菱UFJ信託銀行 日本マスタートラスト信託銀行 農中信託銀行
みずほ信託銀行 ステート・ストリート信託銀行 新生信託銀行
三井住友信託銀行 SMBC信託銀行 日証金信託銀行
ニューヨークメロン信託銀行 野村信託銀行

<外国銀行 50>
シティバンク、エヌ・エイ ビー・エヌ・ピー・パリバ銀行 ステート・ストリート銀行
JPモルガン・チェース銀行 オーバーシー・チャイニーズ銀行 中小企業銀行
バンク・オブ・アメリカ・エヌ・エイ ソシエテ ジェネラル銀行 韓国産業銀行
香港上海銀行 ユバフーアラブ・フランス連合銀行 彰化商業銀行
スタンダードチャータード銀行 DBS銀行 ウェルズ・ファーゴ銀行
バークレイズ銀行 パキスタン・ナショナル銀行 第一商業銀行
クレディ・アグリコル銀行 クレディ・スイス銀行 台湾銀行
ハナ銀行 コメルツ銀行 交通銀行
インド銀行(バンク・オブ・インディア) ウニクレディト銀行 メトロポリタン銀行
兆豐國際商業銀行 インド ステイト銀行 フィリピン・ナショナル・バンク
バンコック・バンク カナダ・ロイヤル銀行 中国工商銀行
ピーティ・バンクネガラインドネシア(ペルセロ)・ティービーケー ウリィ銀行 中國信託商業銀行
ドイツ銀行 アイエヌジー バンク エヌ ヴイ インテーザ・サンパオロ・エッセ・ピー・ア
ブラジル銀行 ナショナル・オーストラリア・バンク・リミテッド(銀行) 國民銀行
ユナイテッド・オーバーシーズ銀行 オーストラリア・ニュージーランド銀行 中国建設銀行
UBS銀行(ユービーエス・エイ・ジー) オーストラリア・コモンウェルス銀行 中国農業銀行
ニューヨークメロン銀行 中国銀行(バンク オブ チャイナ)


<信用金庫 247>
北海道信用金庫 東京東信用金庫 紀北信用金庫
室蘭信用金庫 東榮信用金庫 滋賀中央信用金庫
空知信用金庫 亀有信用金庫 長浜信用金庫
苫小牧信用金庫 小松川信用金庫 湖東信用金庫
北門信用金庫 足立成和信用金庫 京都信用金庫
伊達信用金庫 東京三協信用金庫 京都中央信用金庫
北空知信用金庫 西京信用金庫 京都北都信用金庫
日高信用金庫 西武信用金庫 大阪信用金庫
渡島信用金庫 城南信用金庫 大阪厚生信用金庫
道南うみ街信用金庫 昭和信用金庫 大阪シティ信用金庫
旭川信用金庫 目黒信用金庫 大阪商工信用金庫
稚内信用金庫 世田谷信用金庫 永和信用金庫
留萌信用金庫 東京信用金庫 北おおさか信用金庫
北星信用金庫 城北信用金庫 枚方信用金庫
帯広信用金庫 瀧野川信用金庫 奈良信用金庫
釧路信用金庫 巣鴨信用金庫 大和信用金庫
大地みらい信用金庫 青梅信用金庫 奈良中央信用金庫
北見信用金庫 多摩信用金庫 新宮信用金庫
網走信用金庫 新潟信用金庫 きのくに信用金庫
遠軽信用金庫 長岡信用金庫 神戸信用金庫
東奥信用金庫 三条信用金庫 姫路信用金庫
青い森信用金庫 新発田信用金庫 播州信用金庫
秋田信用金庫 柏崎信用金庫 兵庫信用金庫
羽後信用金庫 上越信用金庫 尼崎信用金庫
山形信用金庫 新井信用金庫 日新信用金庫
米沢信用金庫 村上信用金庫 淡路信用金庫
鶴岡信用金庫 加茂信用金庫 但馬信用金庫
新庄信用金庫 甲府信用金庫 西兵庫信用金庫
盛岡信用金庫 山梨信用金庫 中兵庫信用金庫
宮古信用金庫 長野信用金庫 但陽信用金庫
一関信用金庫 松本信用金庫 鳥取信用金庫
北上信用金庫 上田信用金庫 米子信用金庫
花巻信用金庫 諏訪信用金庫 倉吉信用金庫
水沢信用金庫 飯田信用金庫 しまね信用金庫
杜の都信用金庫 アルプス中央信用金庫 日本海信用金庫
宮城第一信用金庫 富山信用金庫 島根中央信用金庫
石巻信用金庫 高岡信用金庫 おかやま信用金庫
仙南信用金庫 にいかわ信用金庫 水島信用金庫
会津信用金庫 氷見伏木信用金庫 津山信用金庫
郡山信用金庫 砺波信用金庫 玉島信用金庫
白河信用金庫 石動信用金庫 備北信用金庫
須賀川信用金庫 金沢信用金庫 吉備信用金庫
ひまわり信用金庫 のと共栄信用金庫 備前日生信用金庫
あぶくま信用金庫 はくさん信用金庫 広島信用金庫
二本松信用金庫 興能信用金庫 呉信用金庫
福島信用金庫 福井信用金庫 しまなみ信用金庫
高崎信用金庫 敦賀信用金庫 広島みどり信用金庫
桐生信用金庫 小浜信用金庫 萩山口信用金庫
アイオー信用金庫 越前信用金庫 西中国信用金庫
利根郡信用金庫 しずおか焼津信用金庫 東山口信用金庫
館林信用金庫 静清信用金庫 徳島信用金庫
北群馬信用金庫 浜松磐田信用金庫 阿南信用金庫
しののめ信用金庫 沼津信用金庫 高松信用金庫
足利小山信用金庫 三島信用金庫 観音寺信用金庫
栃木信用金庫 富士宮信用金庫 愛媛信用金庫
鹿沼相互信用金庫 島田掛川信用金庫 宇和島信用金庫
佐野信用金庫 富士信用金庫 東予信用金庫
大田原信用金庫 遠州信用金庫 川之江信用金庫
烏山信用金庫 岐阜信用金庫 幡多信用金庫
水戸信用金庫 大垣西濃信用金庫 高知信用金庫
結城信用金庫 高山信用金庫 福岡信用金庫
埼玉縣信用金庫 東濃信用金庫 福岡ひびき信用金庫
川口信用金庫 関信用金庫 大牟田柳川信用金庫
青木信用金庫 八幡信用金庫 筑後信用金庫
飯能信用金庫 愛知信用金庫 飯塚信用金庫
千葉信用金庫 豊橋信用金庫 大川信用金庫
銚子信用金庫 岡崎信用金庫 遠賀信用金庫
東京ベイ信用金庫 いちい信用金庫 唐津信用金庫
館山信用金庫 瀬戸信用金庫 佐賀信用金庫
佐原信用金庫 半田信用金庫 九州ひぜん信用金庫
横浜信用金庫 知多信用金庫 たちばな信用金庫
かながわ信用金庫 豊川信用金庫 熊本信用金庫
湘南信用金庫 豊田信用金庫 熊本第一信用金庫
川崎信用金庫 碧海信用金庫 熊本中央信用金庫
平塚信用金庫 西尾信用金庫 大分信用金庫
さがみ信用金庫 蒲郡信用金庫 大分みらい信用金庫
中栄信用金庫 尾西信用金庫 宮崎第一信用金庫
中南信用金庫 中日信用金庫 高鍋信用金庫
朝日信用金庫 東春信用金庫 鹿児島信用金庫
興産信用金庫 津信用金庫 鹿児島相互信用金庫
さわやか信用金庫 北伊勢上野信用金庫 奄美大島信用金庫
東京シティ信用金庫 桑名三重信用金庫 コザ信用金庫
芝信用金庫


<協同組織金融機関の中央機関 4>
信金中央金庫 労働金庫連合会 農林中央金庫
全国信用協同組合連合会


<金融商品取引業者(外国法人である金融商品取引業者を除く) 33>
ナティクシス日本証券 UBS証券 水戸証券
ドイツ証券 BofA証券 東海東京証券
ソシエテ・ジェネラル証券 野村證券 むさし証券
BNPパリバ証券 SMBC日興証券 いちよし証券
バークレイズ証券 大和証券 極東証券
JPモルガン証券 みずほ証券 立花証券
ゴールドマン・サックス証券 岡三証券 光世証券
SBI証券 岩井コスモ証券 ちばぎん証券
日本相互証券 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シティグループ証券
しんきん証券 丸三証券 クレディ・スイス証券
セントラル東短証券 東洋証券 モルガン・スタンレーMUFG証券

<外国法人である金融商品取引業者 3>
クレディ・アグリコル証券 ナットウエスト・マーケッツ証券 HSBC証券


<証券金融会社 1>
日本証券金融


<短資会社 3>
東京短資 セントラル短資 上田八木短資


<資金清算機関 1>
全国銀行資金決済ネットワーク


<金融商品取引清算機関(金融商品債務引受業を行う金融商品取引所を含む) 3>
東京金融取引所 日本証券クリアリング機構 ほふりクリアリング


<銀行協会 33>
横浜銀行協会 山梨県銀行協会 香川県銀行協会
釧路銀行協会 長野県銀行協会 愛媛県銀行協会
札幌銀行協会 静岡県銀行協会 高知県銀行協会
函館銀行協会 名古屋銀行協会 北九州銀行協会
青森県銀行協会 京都銀行協会 福岡銀行協会
秋田県銀行協会 大阪銀行協会 大分県銀行協会
宮城県銀行協会 神戸銀行協会 長崎銀行協会
福島県銀行協会 岡山県銀行協会 熊本県銀行協会
群馬県銀行協会 広島県銀行協会 鹿児島県銀行協会
新潟県銀行協会 島根県銀行協会 沖縄県銀行協会
石川県銀行協会 山口県銀行協会 全国銀行協会


<その他 6>
CLS BANK International 日本政策投資銀行 国際協力銀行
商工組合中央金庫 日本政策金融公庫 預金保険機構

<合計 518>

https://www.boj.or.jp/paym/torihiki/ichiran.pdf

12. 2022年1月23日 12:58:32 : SqaUv9RCQ6 : UGxERWhFLnBXOUE=[12] 報告
日本銀行の当座預金取引または貸出取引の相手方に関する選定基準
公表1998年6月26日全面改正2019年3月31日改正2021年9月30日
日本銀行
https://www.boj.or.jp/paym/torihiki/touyo01.htm/


第1章 基本的事項

日本銀行の当座預金取引の相手方は、日本銀行に対して当座預金取引を開始したい旨を申出た者(以下「申出者」という。)のうち、次の条件を全て満たすものとする。

(1)申出者との当座預金取引開始が日本銀行法(平成9年法律第89号。以下「法」という。)第1条に定める日本銀行の目的の達成に資すること。

(2)申出者の業務および経営の内容ならびに事務処理体制に問題がないこと。

(3)申出者が金融機関等(法第37条に定める金融機関等をいう。以下同じ。)である場合には、法第44条に定める考査に関する契約の締結に応じること。ただし、申出者が金融機関等でない場合であっても、日本銀行が法第44条に定める考査に関する契約に準ずる内容の調査に関する契約を締結することが適当と認めるときは、これの締結に応じること。

(4)申出者が持株会社等(銀行持株会社、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第56条の2に定める金融商品取引業者等を子会社とする持株会社および前二者と同様の経営管理機能を有するその他の親会社のうち、本邦に所在し、考査に関する契約の締結先でない者をいう。)を有する場合には、次の条件を全て満たすこと。
イ.持株会社等が立入りを含む調査に関する契約を締結していないときは、これの締結に応じること。
ロ.申出者が「考査に関する契約書」(平成10年2月17日決定)第12条に定める守秘義務および持株会社等が申出者に対して負いうる守秘義務の一部解除に関する契約の締結に応じること。

(5)申出者が金融機関等であって、主要株主等(銀行法(昭和56年法律第59号)第2条第10項に定める銀行主要株主または金融商品取引法第29条の4第2項に定める主要株主のうち、本邦に所在し、申出者を連結子会社とするもの(考査に関する契約または調査に関する契約の締結先を除く。)またはその事業基盤の根幹部分を共有する等申出者の業務および財産に重大な影響を与える蓋然性があると認められるものをいう。以下同じ。)を有する場合には、申出者および主要株主等が、次の内容を骨子とする合意書の締結に応じること。
イ.日本銀行が、申出者の業務および財産の状況の把握に必要な限りにおいて、主要株主等に対し、報告または資料の提供を求めることができること。
ロ.イ.に伴い、申出者、主要株主等および日本銀行との間で、必要となる守秘義務の一部解除を行うこと。

1.(1)を踏まえ、日本銀行の当座預金取引の相手方の範囲を、次の各号に掲げるものとし、具体的には、当面、銀行、長期信用銀行、外国銀行支店、信用金庫、信用金庫連合会、信用協同組合連合会、労働金庫連合会、金融商品取引業者(金融商品取引法第28条に定める第一種金融商品取引業のうち同条に定める有価証券関連業に該当する業務を行う者に限る。以下同じ。)、証券金融会社、短資会社、資金清算機関、金融商品取引清算機関(金融商品取引法第2条に定める金融商品債務引受業を行う金融商品取引所を含む。以下同じ。)および銀行協会(集中決済制度(参加者の他の参加者に対する債権および債務を集中して決済する制度をいう。以下同じ。)の運営主体であって法人格を有するものに限る。以下同じ。)の中から、当座預金取引の相手方を選定するものとする。
イ.資金決済の主要な担い手
ロ.証券決済の主要な担い手
ハ.短期金融市場取引の主要な仲介者


1.(1)および1.(2)のうちの「経営の内容」(以下「経営内容等」という。)については、第2章に定める基準により判断するものとする。 ただし、申出者の母国の為替管理制度その他の制約から、申出者と母国との間の支払決済に支障がある、または支障が生じるおそれがある場合その他特段の事情により申出者と当座預金取引を開始することが適当でないと日本銀行が判断する場合には当座預金取引を行わないものとする。

なお、申出者が、第2章1.から5.までに掲げる場合の何れにも該当しないときの取扱いについては、日本銀行が別に定めるものとする。
日本銀行の当座貸越取引、手形貸付取引または手形割引取引の相手方は、日本銀行の当座預金取引の相手方である金融機関等のうち、当座貸越取引、手形貸付取引または手形割引取引を開始したい旨申出た者で、日本銀行が当該申出に応じることが適当でないと認められる特段の事情がないものとする。ただし、商業手形割引の取扱い停止に伴い、新たな手形割引取引の相手方の選定は、停止するものとする。
日本銀行の相対型電子貸付取引(電子貸付(手形または証書を用いることなく日本銀行金融ネットワークシステムにより行う当座貸越以外の資金の貸付けをいう。)のうち、貸出支援基金の運営として行う成長基盤強化を支援するための貸付けおよび貸出増加を支援するための貸付けならびに公開市場操作として行う貸付け以外の貸付けにかかる取引をいう。以下同じ。)の相手方は、日本銀行の当座貸越取引および手形貸付取引の相手方である金融機関等のうち、相対型電子貸付取引を開始したい旨申出た者で、日本銀行が当該申出に応じることが適当でないと認められる特段の事情がないものとする。


第2章 経営内容等にかかる判断基準
申出者(申出者が外国銀行支店である場合には申出者を有する外国銀行をいう。以下第2章において同じ。)は、別に定める場合を除き、申出者が既に初回の決算を行っている場合には、直前の決算(中間決算を含む。)期末の計数が、新たに営業を開始しようとする場合または初回の決算を行っていない場合には、開業後3年間の各決算(年度決算に限る。)期末の見込み計数が、次の1.から5.までに掲げる場合に応じ、それぞれに定める基準を満たしていることを要するものとする。このとき、外国法人である金融商品取引業者(以下「外国金融商品取引業者」という。)においては、在日拠点全体の合算の計数が、3.に定める基準を満たしていることを要するものとする。

なお、申出者が、組織再編(合併、会社分割、事業の全部譲渡またはこれらの組合せをいう。)により既存の当座預金取引の相手方の事業の全部を承継する場合(当座預金取引の相手方が外国金融商品取引業者である場合には、申出者が、当該外国金融商品取引業者の在日拠点の事業の全部を承継する場合を含む。)であって、申出者との当座預金取引の開始が、既存の当座預金取引の相手方との当座預金取引の継続と同視しうると日本銀行が認めるときは、本章に定める基準にかかわらず、要件を満たすものとして取扱うものとする。


1.申出者が銀行、長期信用銀行、信用金庫、信用金庫連合会、信用協同組合連合会および労働金庫連合会である場合

(1)自己資本の充実
イ.申出者につき、法令により定められた自己資本に関する水準(連結および単体の自己資本比率、資本バッファー比率ならびにレバレッジ比率のうち、法令により適用を受ける規制にかかるものをいう。以下同じ。)を満たすこと。
ロ.申出者が銀行持株会社を有する場合には、イ.に加え、当該銀行持株会社につき、法令により定められた自己資本に関する水準を満たすこと。
ハ.申出者が外国連結親会社(申出者を連結子会社とする外国法人であって、その母国において「自己資本の測定と基準に関する国際的統一化」(1988年7月バーゼル銀行監督委員会。以下「バーゼルI」という。)、「自己資本の測定と基準に関する国際的統一化:改訂された枠組」(2004年6月バーゼル銀行監督委員会。以下「バーゼルII」という。)または「バーゼルIII:より強靭な銀行および銀行システムのための世界的な規制の枠組み」(2010年12月バーゼル銀行監督委員会。以下「バーゼルIII」という。)に基づき定められた規制の適用を受けるものをいう。以下同じ。)を有する場合には、イ.およびロ.に加え、当該外国連結親会社につき、バーゼルI、バーゼルIIまたはバーゼルIIIに基づきその母国において定められた規制のうち、当該外国連結親会社が現に適用を受けるものにより算出された自己資本比率が、バーゼルI、バーゼルIIまたはバーゼルIIIのうち、当該外国連結親会社が適用を受ける法令が基づくものにおいて定められた水準を満たすこと。また、当該外国連結親会社の母国の法令により資本バッファー規制またはレバレッジ比率規制が適用される場合には、適用される規制にかかる比率が、母国の法令により定められた水準を満たすこと。
ニ.イ.からハ.までにおいて、資本バッファー比率が法令により定められた水準を満たさない場合であっても、その水準を満たすよう着実に改善すると認められるときは、イ.、ロ.またはハ.に定める資本バッファーの要件を満たすものとみなす。
ホ.イ.、ロ.またはハ.の要件を充足している場合であっても、その水準が一時的なものであると認められるとき、直前の決算期末以降の状況変化により信用力に問題が生じているとき、見込み計数が確実でないと認められるときその他信用力に問題があると認められる特段の事情があるときは、要件を満たすものとして取扱わない。

(2)流動性に係る健全性
イ.申出者につき、流動性リスク管理が適切でないと認められる特段の事情がないこと。
ロ.申出者につき、法令により流動性に係る規制(流動性カバレッジ比率規制および安定調達比率規制をいう。以下同じ。)の適用を受ける場合には、当該規制に関して、法令により定められた水準を満たすこと。
ハ.申出者が銀行持株会社を有する場合において、当該銀行持株会社につき、法令により流動性に係る規制の適用を受けるときは、ロ.に加え、当該規制に関して、法令により定められた水準を満たすこと。
ニ.申出者が外国連結親会社を有する場合において、当該外国連結親会社につき、その母国の法令により流動性に係る規制の適用を受けるときは、ロ.およびハ.に加え、当該規制に関して、母国の法令により定められた水準を満たすこと。
ホ.ロ.からニ.までにおいて、法令により定められた水準を満たさない場合であっても、その水準を満たすよう着実に改善すると認められるときは、ロ.、ハ.またはニ.に定める要件を満たすものとみなす。

(3)総損失吸収力および資本再構築力に係る健全性
イ.申出者につき、法令により総損失吸収力および資本再構築力に関する規制の適用を受ける場合には、当該規制に関して、法令により定められた水準を満たすこと。
ロ.申出者が銀行持株会社を有する場合において、当該銀行持株会社につき、法令により総損失吸収力および資本再構築力に関する規制の適用を受けるときは、イ.に加え、当該規制に関して、法令により定められた水準を満たすこと。
ハ.申出者が外国連結親会社を有する場合において、当該外国連結親会社につき、その母国の法令により総損失吸収力および資本再構築力に関する規制の適用を受けるときは、イ.およびロ.に加え、当該規制に関して、母国の法令により定められた水準を満たすこと。
ニ.イ.からハ.までにおいて、法令により定められた水準を満たさない場合であっても、その水準を満たすよう着実に改善すると認められるときは、イ.、ロ.またはハ.に定める要件を満たすものとみなす。
ホ.イ.、ロ.またはハ.の要件を充足している場合であっても、その水準が一時的なものであると認められるとき、直前の決算期末以降の状況変化により総損失吸収力および資本再構築力に問題が生じているとき、見込み計数が確実でないと認められるときその他総損失吸収力および資本再構築力に問題があると認められる特段の事情があるときは、要件を満たすものとして取扱わない。


2.申出者が外国銀行支店である場合

(1)自己資本の充実
イ.申出者につき、その母国においてバーゼルI、バーゼルIIまたはバーゼルIIIに基づき定められた規制の適用を受ける場合には、当該申出者が現に適用を受けるものにより算出された自己資本比率が、バーゼルI、バーゼルIIまたはバーゼルIIIのうち、当該申出者が適用を受ける法令が基づくものにおいて定められた水準を満たすこと。また、当該申出者の母国の法令により資本バッファー規制またはレバレッジ比率規制が適用される場合には、適用される規制にかかる比率が、母国の法令により定められた水準を満たすこと。
ロ.申出者につき、その母国においてイ.に定める規制が存在しない場合には、銀行法に準じて算出された当該申出者にかかる自己資本に関する水準が、銀行法により定められた水準を満たすこと。
ハ.申出者が外国連結親会社を有する場合には、イ.またはロ.に加え、当該外国連結親会社につき、バーゼルI、バーゼルIIまたはバーゼルIIIに基づきその母国において定められた規制のうち、当該外国連結親会社が現に適用を受けるものにより算出された自己資本比率が、バーゼルI、バーゼルIIまたはバーゼルIIIのうち、当該外国連結親会社が適用を受ける法令が基づくものにおいて定められた水準を満たすこと。また、当該外国連結親会社の母国の法令により資本バッファー規制またはレバレッジ比率規制が適用される場合には、適用される規制にかかる比率が、母国の法令により定められた水準を満たすこと。
ニ.イ.からハ.までにおいて、資本バッファー比率が法令により定められた水準を満たさない場合であっても、その水準を満たすよう着実に改善すると認められるときは、イ.、ロ.またはハ.に定める資本バッファーの要件を満たすものとみなす。
ホ.イ.、ロ.またはハ.の要件を充足している場合であっても、その水準が一時的なものであると認められるとき、直前の決算期末以降の状況変化により信用力に問題が生じているとき、見込み計数が確実でないと認められるときその他信用力に問題があると認められる特段の事情があるときは、要件を満たすものとして取扱わない。

(2)流動性に係る健全性
イ.申出者につき、流動性リスク管理が適切でないと認められる特段の事情がないこと。
ロ.申出者につき、その母国の法令により流動性に係る規制の適用を受ける場合には、当該規制に関して、母国の法令により定められた水準を満たすこと。
ハ.申出者が外国連結親会社を有する場合において、当該外国連結親会社につき、その母国の法令により流動性に係る規制の適用を受けるときは、ロ.に加え、当該規制に関して、母国の法令により定められた水準を満たすこと。
ニ.ロ.およびハ.において、法令により定められた水準を満たさない場合であっても、その水準を満たすよう着実に改善すると認められるときは、ロ.またはハ.に定める要件を満たすものとみなす。

(3)総損失吸収力および資本再構築力に係る健全性
イ.申出者につき、その母国の法令により総損失吸収力および資本再構築力に関する規制の適用を受ける場合には、当該規制に関して、母国の法令により定められた水準を満たすこと。
ロ.申出者が外国連結親会社を有する場合において、当該外国連結親会社につき、その母国の法令により総損失吸収力および資本再構築力に関する規制の適用を受けるときは、イ.に加え、当該規制に関して、母国の法令により定められた水準を満たすこと。
ハ.イ.およびロ.において、法令により定められた水準を満たさない場合であっても、その水準を満たすよう着実に改善すると認められるときは、イ.またはロ.に定める要件を満たすものとみなす。
ニ.イ.またはロ.の要件を充足している場合であっても、その水準が一時的なものであると認められるとき、直前の決算期末以降の状況変化により総損失吸収力および資本再構築力に問題が生じているとき、見込み計数が確実でないと認められるときその他総損失吸収力および資本再構築力に問題があると認められる特段の事情があるときは、要件を満たすものとして取扱わない。


3.申出者が金融商品取引業者である場合

(1)自己資本の充実

イ.申出者につき、金融商品取引法に基づき算出された自己資本規制比率が200%以上であって、かつ営業損益(申出者が既に初回の決算を行っている場合には、下半期の値とする。以下(1)において同じ。)の値が正であること。
ロ.申出者が特別金融商品取引業者である場合には、イ.に加え、「特別金融商品取引業者及びその子法人等の保有する資産等に照らし当該特別金融商品取引業者及びその子法人等の自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準を定める件」(平成22年金融庁告示第128号)に基づき算出された連結自己資本規制比率が200%以上であって、かつ当該申出者およびその子会社等にかかる連結営業損益の値が正であること。
ハ.申出者が川上連結先(特別金融商品取引業者であって、その親会社が最終指定親会社であるものをいう。以下同じ。)である場合には、イ.およびロ.に加え、当該申出者の親会社につき、「最終指定親会社及びその子法人等の保有する資産等に照らし当該最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準を定める件」(平成22年金融庁告示第130号。以下「川上連結告示」という。)第2条および第3条に基づき算出された連結自己資本規制比率、資本バッファー比率ならびにレバレッジ比率が法令により定められた水準を満たし、かつ当該申出者の親会社およびその子会社等にかかる連結営業損益(以下「川上連結営業損益」という。)の値が正であること。
ニ.川上連結告示第4条に基づき算出された連結自己資本規制比率が200%以上である場合には、ハ.の要件のうち、川上連結告示第2条および第3条に基づき算出された連結自己資本規制比率が法令により定められた自己資本に関する水準を満たすものとみなす。
ホ.申出者が外国金融商品取引業者である場合において、当該申出者につき、その母国においてバーゼルI、バーゼルIIまたはバーゼルIIIに基づき定められた規制の適用を受けるときは、イ.、ロ.およびハ.に加え、当該申出者が現に適用を受けるものにより算出された自己資本比率が、バーゼルI、バーゼルIIまたはバーゼルIIIのうち、当該申出者が適用を受ける法令が基づくものにおいて定められた水準を満たすこと。また、当該申出者の母国の法令により資本バッファー規制またはレバレッジ比率規制が適用される場合には、適用される規制にかかる比率が、母国の法令により定められた水準を満たすこと。
ヘ.申出者が外国連結親会社を有する場合には、イ.、ロ.、ハ.およびホ.に加え、当該外国連結親会社につき、バーゼルI、バーゼルIIまたはバーゼルIIIに基づきその母国において定められた規制のうち、当該外国連結親会社が現に適用を受けるものにより算出された自己資本比率が、バーゼルI、バーゼルIIまたはバーゼルIIIのうち、当該外国連結親会社が適用を受ける法令が基づくものにおいて定められた水準を満たすこと。また、当該外国連結親会社の母国の法令により資本バッファー規制またはレバレッジ比率規制が適用される場合には、適用される規制にかかる比率が、母国の法令により定められた水準を満たすこと。
ト.ハ.、ホ.およびへ.において、資本バッファー比率が法令により定められた水準を満たさない場合であっても、その水準を満たすよう着実に改善すると認められるときは、ハ.、ホ.またはヘ.に定める資本バッファーの要件を満たすものとみなす。
チ.イ.またはロ.に関し、申出者が既に初回の決算を行っている場合において、直前の決算期末における自己資本規制比率が140%以上200%未満の場合であっても、申出者が川上連結先またはグローバルなシステム上重要な銀行(法令(外国連結親会社にあっては、その母国の法令)により資本バッファー規制の適用を受ける先に限る。)の連結子会社であって、自己資本規制比率が200%以上に着実に改善すると認められるときは、当該直前の決算期末における自己資本規制比率が200%以上であるとみなす。ただし、申出者が外国連結親会社を有する場合には、当該外国連結親会社が日本銀行に対し、自己資本規制比率を200%以上に着実に改善させる旨を約したときにのみ、この取扱いを行う(当該外国連結親会社の信用力に問題がある場合には要件を満たすものとして取扱わない。)。
リ.イ.またはロ.に関し、申出者が既に初回の決算を行っている場合において、直前の決算における営業損益の値が正でない場合であっても、申出者を支配している会社(申出者の議決権の過半数を実質的に所有している会社または議決権の所有割合が50%以下であっても、高い比率の議決権を有しており、かつ、申出者の意思決定機関を支配している会社をいう。以下「支配会社」という。)が日本銀行に対し、取引開始後営業損益の値が安定的に正となるまでの間、イ.またはロ.に定める自己資本規制比率を常に200%以上に維持する旨(以下「自己資本規制比率維持」という。)を約したときは、当該営業損益の値が正であるとみなす。ただし、当該支配会社の信用力に問題がある場合にはこの取扱いを行わない。
ヌ.イ.またはロ.に関し、申出者が既に初回の決算を行っている場合において、直前の決算期末における自己資本規制比率が150%以上200%未満の場合であっても、直前の月末における自己資本規制比率が200%以上であって、その支配会社が自己資本規制比率維持を約したときは、当該直前の決算期末における自己資本規制比率が200%以上であるとみなす。ただし、申出者がこの要件を充足している場合であっても、当該支配会社の信用力に問題があるときはこの取扱いを行わない。
ル.イ.からハ.までにおいて、申出者が新たに営業を開始しようとする場合または初回の決算を行っていない場合には、その支配会社が自己資本規制比率維持を約すること(当該支配会社の信用力に問題がある場合には要件を満たすものとして取扱わない。)。
ヲ.イ.からヘ.まで(ニ.を除く。)の要件を充足している場合であっても、その水準が一時的なものであると認められるとき、直前の決算期末以降の状況変化により信用力に問題が生じているとき、見込み計数が確実でないと認められるときその他信用力に問題があると認められる特段の事情があるときは、要件を満たすものとして取扱わない。


(2)流動性に係る健全性

イ.申出者につき、流動性リスク管理が適切でないと認められる特段の事情がないこと。
ロ.申出者が川上連結先である場合には、その最終指定親会社につき、流動性に係る規制に関し、法令により定められた水準を満たすこと。
ハ.申出者が外国金融商品取引業者である場合において、当該申出者につき、その母国の法令により流動性に係る規制の適用を受けるときは、ロ.に加え、当該規制に関して、母国の法令により定められた水準を満たすこと。
ニ.申出者が外国連結親会社を有する場合において、当該外国連結親会社につき、その母国の法令により流動性に係る規制の適用を受けるときは、ロ.およびハ.に加え、当該規制に関して、母国の法令により定められた水準を満たすこと。
ホ.ロ.からニ.までにおいて、法令により定められた水準を満たさない場合であっても、その水準を満たすよう着実に改善すると認められるときは、ロ.、ハ.またはニ.に定める要件を満たすものとみなす。


(3)総損失吸収力および資本再構築力に係る健全性

イ.申出者につき、法令により総損失吸収力および資本再構築力に関する規制の適用を受ける場合には、当該規制に関して、法令により定められた水準を満たすこと。
ロ.申出者が最終指定親会社を有する場合において、当該最終指定親会社につき、法令により総損失吸収力および資本再構築力に関する規制の適用を受けるときは、イ.に加え、当該規制に関して、法令により定められた水準を満たすこと。
ハ.申出者が外国金融商品取引業者である場合において、当該申出者につき、その母国の法令により総損失吸収力および資本再構築力に関する規制の適用を受けるときは、イ.およびロ.に加え、当該規制に関して、母国の法令により定められた水準を満たすこと。
ニ.申出者が外国連結親会社を有する場合において、当該外国連結親会社につき、その母国の法令により総損失吸収力および資本再構築力に関する規制の適用を受けるときは、イ.からハ.までに加え、当該規制に関して、母国の法令により定められた水準を満たすこと。
ホ.イ.からニ.までにおいて、法令により定められた水準を満たさない場合であっても、その水準を満たすよう着実に改善すると認められるときは、イ.、ロ.、ハ.またはニ.に定める要件を満たすものとみなす。
ヘ.イ.、ロ.、ハ.またはニ.の要件を充足している場合であっても、その水準が一時的なものであると認められるとき、直前の決算期末以降の状況変化により総損失吸収力および資本再構築力に問題が生じているとき、見込み計数が確実でないと認められるときその他総損失吸収力および資本再構築力に問題があると認められる特段の事情があるときは、要件を満たすものとして取扱わない。


(4)市場における取引規模

イ.申出が営業開始日の1年3ヶ月後の日の属する月以降(当該月を含む。)に行われた場合
申出者が当座預金取引開始を日本銀行に対し申請した日の属する月(以下「申請月」という。)の前々月から起算した過去1年間の月平均公社債売買額(先物、オプション、現先取引および金銭を担保とする債券貸借取引によるものを含む。以下同じ。)が、既存の当座預金取引先である金融商品取引業者につき同じ方法により算出した公社債売買額の下位20社の平均値(億円未満四捨五入。以下「平均値」という。)を上回ること。ただし、申出者がこの要件を充足している場合であっても、その水準が一時的なものであると認められるときは、要件を満たすものとして取扱わない。
ロ.申出が営業開始日の3ヶ月後の日の属する月以降(当該月を含む。)1年2ヶ月後の日の属する月以前に行われた場合
営業開始日の属する月の翌月から、申請月の前々月までの間の月平均公社債売買額、および申請月の前月から営業開始月の1年後に相当する月までの間の月平均公社債売買額の見込み計数の加重平均が、平均値を上回ること。ただし、申出者がこの要件を充足している場合であっても、その水準が一時的なものであると認められるときまたは当該見込み計数が確実でないと認められるときは、要件を満たすものとして取扱わない。
ハ.申出者が新たに営業を開始しようとする場合または申出が営業開始日の2ヶ月後の日の属する月以前に行われた場合
営業開始日の属する月の翌月から1年間の月平均公社債売買額の見込み計数が、平均値を上回ること。ただし、申出者がこの要件を充足している場合であっても、当該見込み計数が確実でないと認められるときは、要件を満たすものとして取扱わない。

4.申出者が資金清算機関および金融商品取引清算機関である場合

(1)自己資本の充実
申出者がその業務を健全に遂行するに十分な水準の自己資本を有していると認められること。ただし、申出者がこの要件を充足している場合であっても、その水準が一時的なものであると認められるとき、直前の決算期末以降の状況変化により信用力に問題が生じているとき、見込み計数が確実でないと認められるときその他信用力に問題があると認められる特段の事情があるときは、要件を満たすものとして取扱わない。

(2)流動性に係る健全性
申出者につき、流動性リスク管理が適切でないと認められる特段の事情がないこと。

(3)集中決済制度の安定性および効率性
次の条件が全て満たされること。

イ.申出者の運営する集中決済制度の決済の全部または一部が日本銀行に開設する当座預金口座を介して行われること。
ロ.申出者の運営する集中決済制度の決済の全部または一部を、申出者が日本銀行に開設する当座預金口座を介して行うことが、金融機関の間で行われる資金決済の安定化および効率化に資すると日本銀行が認めること。


5.申出者が銀行協会である場合

(1)自己資本の充実
申出者につき、資産の総額から負債の総額を控除した金額が正であること。ただし、申出者がこの要件を充足している場合であっても、その水準が一時的なものであると認められるとき、直前の決算期末以降の状況変化により信用力に問題が生じているときその他信用力に問題があると認められる特段の事情があるときは、要件を満たすものとして取扱わない。

(2)流動性に係る健全性
申出者につき、流動性リスク管理が適切でないと認められる特段の事情がないこと。

(3)集中決済制度の安定性および効率性
次の条件が全て満たされること。

イ.申出者の運営する集中決済制度の参加者であって他の参加者に自己の債権および債務の決済を委託していないものの全てが、日本銀行と当座預金取引を行っていること。
ロ.申出者の運営する集中決済制度の決済を、申出者が日本銀行に開設する当座預金口座を介して行うことが、金融機関の間で行われる資金決済の安定化および効率化に資すると日本銀行が認めること。


https://www.boj.or.jp/paym/torihiki/touyo01.htm/

13. 2022年1月23日 12:59:39 : SqaUv9RCQ6 : UGxERWhFLnBXOUE=[13] 報告

質問
日本銀行には誰が預金口座を開設していますか?


回答
日本銀行に預金口座を開設している先は、主として金融機関等です。このほか、国、外国の中央銀行や国際機関などが預金口座を開設していますが、個人や一般企業からの預金は受け入れていません。

これは、日本銀行の預り金業務の主な目的が、わが国の中央銀行として、銀行その他の金融機関の間で行われる決済の円滑の確保を図ることにあるからです。

当座預金取引の相手方の範囲
日本銀行の当座預金取引の相手方は、日本銀行が選定します。その範囲は次のとおりです。

(1)資金決済の主要な担い手(銀行、信用金庫、外国銀行支店、協同組織金融機関の中央機関、資金清算機関、銀行協会など)
(2)証券決済の主要な担い手(金融商品取引業者<証券会社、外国証券会社>、証券金融会社、金融商品取引清算機関)
(3)短期金融市場取引の主要な仲介者(短資会社)
なお、現在、個別の信用協同組合、労働金庫、農業協同組合などは日本銀行の当座預金取引の相手方となっていません。ちなみに、これらの金融機関は会員のための組織という性格が強く、主要な資金決済手段である為替取引が、業法上、任意事業と位置付けられています。日本銀行は、現在、それぞれの中央機関と当座預金取引を行っています。

https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/kess/i08.htm/

14. 2022年1月24日 06:36:40 : 0ZgG7Lev5Y : NEJNVjVPL3B6Skk=[21] 報告
2022/1/24
日銀当座預金は引き出せる 
https://green.ap.teacup.com/pekepon/2787.html
 

■ 「日銀当座預金引きだし」についての日銀の説明 ■

当ブログのコメント欄で「日銀当座預金は引き出せない」「日銀当座預金は市場に流通しない」などの書き込みがありますが、これは明らかに間違え。

下記は日銀のホームページからの引用です。

お札はどのようにして日本銀行から世の中に送り出されるのですか?(日銀ホームページより)
https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/money/c03.htm/


銀行券(お札)は、個人や企業への支払いに必要な分を用意するため、金融機関が日本銀行当座預金から引き出して、日本銀行の窓口から受け取ることによって世の中に送り出されます。これを「銀行券の発行」といいます。

その後、実際に、個人や企業の方々が金融機関から預金を引き出して銀行券を入手し、財(モノ)・サービスの購入や税金の納付といった様々な目的に銀行券が利用されていくことになります。


■ 日銀当座預金とは現金である ■

日銀当座預金は金融機関が引き出そうとしたら、即座に引出しに応じる必要があります。

1)銀行は預金(現金)の一部を準備預金として日銀当座預金として預ける
2)銀行は預金者の引出し要求に応じて現金を預金者に支払う
3)銀行の手持ち現金が枯渇した場合、準備預金を引き出して現金化して預金者に支払う

日銀当座預金を銀行が引き出した時点で「現金」となります。

マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」

マネタリーベースは日銀が経済に供給する「リアルなお金」なので、日銀当座預金が引き出し要求に応じる場合は「現金」として金融機関に支払われます。

銀行券・貨幣の発行・管理の概要(日銀ホームページより)
https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/outline/index.htm/


日本銀行法では、日本銀行は、銀行券を発行すると定めています。銀行券は、独立行政法人国立印刷局によって製造され、日本銀行が製造費用を支払って引き取ります。そして、日本銀行の取引先金融機関が日本銀行に保有している当座預金を引き出し、銀行券を受け取ることによって、世の中に送り出されます。この時点で、銀行券が発行されたことになります。

■ 日銀当座預金が引き出せなければ公共事業費を政府は支払えない ■

MMTの序段は次の様に説明されます。

1)政府が国債を発行する
2)金融機関などが国債を購入して代金を支払う
3)日銀当座預金で、金融機関の口座から政府の口座に支払われる

4)政府が公共事業を発注してその代金を受注業者に支払う

4)をもう少し細かく解説します

A)政府が受注業者の口座を持つ金融機関の日銀当座預金に政府の日銀当座預金から支払う
B)金融機関は受注業者の口座に該当金額を記入する(現金での支払い義務が生じる)

政府は受注業者の保有する民間銀行の口座に直接支払う事は出来ないので、日銀当座預金を通じて民間銀行に支払いを代行させているのです。

国庫制度の概要財務省ホームページより
https://www.mof.go.jp/policy/exchequer/summary/index.htm


財務省ホームページより

国庫金とは

 国庫に属する現金のことです。
 国庫金には、国が所有する現金(預金を含む)のほか、国が法令又は契約に基づき一般私人等から提出され一時保管している現金(保管金、供託金)や、公庫から国庫に預託された業務上の現金(公庫預託金)も含まれます。
 一方、地方公共団体や独立行政法人等に属する現金は国庫金には含まれません。
 国庫金は、会計法第34条、予算決算及び会計令第106条の規定により、日本銀行に政府預金として預けられています。

国庫金は日銀当座預金に預けられていますが、財務省の説明でも「国庫金は現金」と明記されているので、日銀当座預金は現金と同じものだという事が分かります。


■ MMT支持者の一部の勘違い ■

MMT支持者の一部に「日銀当座預金は引き出せない」という誤解があるのは、「民間の銀行が公共事業の受注者や年金の受け取り者の口座に代金を記入した時に信用創造が発生する」と勘違いしているからでは無いか?

1)政府が民間に国債を売却して民間の現金を政府の日銀当座預金の国庫として保管する

2)事業受注代金の支払いや、年金支払いの要求に応じて、支払い対象者が口座を保有する
  民間銀行の日銀当座預金に、政府の日銀当座預金から支払う

この状態では、民間の現金と政府の現金のやり取りだけなので、プライマリーバランスは保たれますが、マネタリーベースは増えません。信用創造は働きません。


複雑になるので、次の記事で、主流派経済学とMMTの違いを考察します

https://green.ap.teacup.com/pekepon/2787.html

15. 2022年1月24日 08:06:00 : 0ZgG7Lev5Y : NEJNVjVPL3B6Skk=[22] 報告
2022/1/24
主流派経済学とMMTの違いは金利が内生か外生かの違い 
https://green.ap.teacup.com/pekepon/2788.html


前の記事はマネタリーベースの拡大と投資マネー (人力でGO 2022.01.13)のコメント欄で「日銀当座預金は引き出せない」というコメントが寄せられたので、その誤解を解くものでした。


今回は、MMT的な通貨論と、主流派的な通貨論の何が違うのかを考察してみます。


■ 「通貨の価値を担保するもの論」は無意味 ■

MMT系の方々が主流派経済学を否定する場合、「金属通貨」の否定から入ります。

「通貨が何故価値を持つのか」というそもそも論は昔から有りますが、金兌換制度では「通貨は金に交換出来るから価値がある」とされていました。

しかし、「金に何故価値があるのか」と聞かれたら答えに窮します。「昔からそうだった」、或いは「金は希少故に価値が有る」としか答えられませんが、これは価値の答えとしては不十分です。むしろ、「金は通貨として流通するから価値がある」と答えた方が分かり易い。

ニクソンショックで金兌換制度が中止されてからも通過の価値は失われませんでした。人々は変らずに通貨(お金)を求めました。

一般的に考えれば「モノを買う為にはお金が必要」だから人々は通貨を欲します。従来の経済学では通貨は「交換」と「価値の保存」に便利だから価値が認められると説明されました。通貨はモノを買う喜びと、お金を貯める喜びを私達に与えてくれます。

ところが、MMT派の方々は「通貨の価値は、その通貨でしか納税出来ないから確保される」と説明します。・・・ハアァ??って感じです。だって、納税義務を負わない人もお金を欲するではないですか・・・。

尤も、通貨を利用する時に人々は「通貨の価値」などを考える事は一切ありあせん。支払い手段がそれしか無く、便利だから使っているに過ぎない。


要はMMT派の人達が、主流派経済学を否定する「未だ金属通貨に固執するのか」という批判は、批判にもなっていない。「通貨はモノが買えて納税も出来る便利なツール」としてしまえば
MMT派も主流派も「そだねぇー」って言ってオシマイ。

■ 国債(政府の負債)が通貨を生む事を主流派経済学者も否定しない ■

MMT派が次に主流派経済学を否定する方法は、「通貨は国債発行で生まれる」という事を会計学的に示す方法です。しかし、先の記事で書いた様に、プライマリーバランスが保たれている状態では日銀の信用創造は働かないので、国債を発行しても通過は生まれません。

日銀の信用創造が働くのは、日銀が国債を市場で民間から買い入れた時点です。


1)日銀が市場から国債を買い入れる
2)日銀は国債を購入した相手先の日銀当座預金に買い入れ額を記入する
3)日銀当座預金に記入された金額は現金と同じ性格を持つ
4)日銀当座預金は現金と同様に日銀の負債

MMTでは、「日銀(中央銀行)は政府の子会社だから、日銀の保有する国債は政府の資産である」と説明されます。

中央銀行は法律で政府から直接国債を買い入れる事を禁じられていますが、市場から間接的に国債を買い入れても、結果は同じです。

政府が国債を発行して、中央銀行が現金化する

これは分かり易く言えば・・・次と同義です。

政府が約束手形を発行して、政府の子会社である中央銀行が現金を発行して政府に支払う


日銀が直接的に国債を引き受けようが(財政ファイナンス)、間接的に国債を市場から購入しようが(隠れ財政ファイナンス)、日銀は信用創造によって通貨(現金)を作り出している事になります。

MMTが主張する「政府の債務が通貨を生む」という主張は、財政ファイナンス的な状況においては主流派経済学的にも否定は出来ませし、現実的に彼らはこれを否定いていません。


■ 外生的通貨供給説(主流派経済学) ■

主流派経済学とMMTの差は、通貨供給が内生的(ベースマネーの増加がマネーサプライの増加に必ずしも直結しない)のか、通貨供給が外生的(ベースマネーの供給がマネーサプライの増加を促す)のかの違いです。

主流派経済学の教科書では、銀行の信用創造(マネーサプライ)は次の様に説明されます。

1)預金者が現金を銀行に預ける
2)銀行は準備預金(今は10%)を中央銀行の当座預金に預けて、残りの90%を貸し出せる
4)銀行から90万円駆り出されたお金は、経済活動の結果銀行に90万円よきんされる
3)銀行は9万円を準備預金し、89万円を貸し出す
4)この繰り返しで100万円の預金は900万円の信用創造を生む

この信用創造の元になる100万円の現金は中央銀行の供給したベースマネーです。主流派経済学者はこのベースマネーを調節する事で、銀行の信用創造をコントロールして経済(インフレ率)をコントロール出来ると主張しています。これを外生通貨供給説と呼びます。

「外生」とは「外生変数」の略で、任意にコントロール出来る変数の経済用語です。主流派経済学では政府支出や、マネタリーベースは政府や中央銀行が任意にコントロールされるので「外生関数」と考えます。

外生的通貨供給説(主流派経済学)とは、マネタリーベースを任意にコントロールする事でマネーサプライをコントロールするという考え方です。


実際の金融政策でのマネタリーベースのコントロールは次の方法で行われます。


1)中央銀行がある金利でコール市場など短期に市場に資金を供給する
2)コール市場の金利を資金需要に見合った金利にする事で銀行間の資金調達を活性化する


以前は中央銀行が日銀当座預金の金利操作(公定歩合)によって、市場の資金の放出と吸収を行っていました。しかし、近年は市場原理を重視して、コール市場で超短期金利を操作しています。


■ ゼロ金利下では資金需要の枯渇によってマネタリーベースがコントロール出来ない ■

金利が正常に作用する時には、通貨供給は「外生的」です。民間の資金需要があるので、資金需要に応じた金利にコール市場金利を操作すれば、マネーサプライは適切な水準に調節され、結果的にインフレ率を適正範囲内に誘導する事が可能でした。(可能だと信じられていた)

ところが、「資金需要が極端に低い状態=コール市場金利がゼロ金利」では、中央銀行の金利操作は働きません。資金需要を生もうとしても、ゼロ金利より下は存在しないからです。この状態ではマネタリーベースの拡大が出来ませんから、通貨の外生的な供給が不可能になります。

そこで主流派経済学者が導入したのが「量的緩和=非伝統的金融手法」です。

ゼロ金利下では短期金利操作で資金需要が増えないので、国債やその他の資産を中央銀行が直接買い入れて、金融機関の当座預金に現金を積む事で、マネタリーベースを強引に拡大する政策です。

ところが、実体経済が冷え切っている場合、金利と投資のリスクバランスが崩れているので、民間金融機関は貸し出し先を拡大する事が難しい。一方で、中央銀行の当座預金に金利が付く状態では、ゼロリスクで金利収益が得られるので、金融機関は中央銀行の当座預金に資金をブタ積みして、ゼロリスクで収益を上げようとします。

主流派経済学者の一部(リフレ派)はリーマンショック後に、「量的緩和でマネタリーベースを拡大すれば実質金利が下がり資金需要が復活する」と主張し、政策が実行されましたが、これは失敗に終わります。資金需要を「外生的」にコントロールする事が出来ない事が証明されました。


■ MMTではマエネタリーベースは内生的と考える ■

MMT(現代貨幣論)では貨幣供給は内生的と考えられています。内生変数は任意に操作できない変数です。

民間の資金需要が枯渇して金利がゼロに張り付いた状態では、中央銀行がマネタリーベースのマネタリーベースの操作が機能しません。

そこで、財政支出によって直接的に市場にお金を注入するというのが、MMT派の主張です。政府の財政支出の極端な例は「直接給付」です。お金を欲しくてもお金が無い人に直接お金を配れば消費を活性化し、経済も活性化します。

これは当たり前の事なので、主流派経済学者の中でもブランシャールやサマーズは「政府はもっと財政赤字を拡大すべき」と主張しています。

プリンストン大学のシムズが、「物価水準の財政理論(FTPL,Fiscal Theory of the Price Level)」として体系化しています。

ゼロ金利の制約に直面した状況で金融政策が有効性を失う場合は、インフレを生むように意図した追加財政が代役となり得る。その場合の追加財政は、将来の増税や歳出削減で賄うことを前提にした通常の財政赤字ではなく、インフレでファイナンスされた財政赤字だとする考え方。ゼロ金利下では金融政策によって物価を上げる効果は小さいため、財政政策の拡大によって意図的にインフレを起こし、債務の一部を増税ではなく物価上昇で相殺させると宣言することで人々のインフレ期待を高める。

これをして、MMT派の主張と、主流派の主張の差が無くなった様に錯覚する人も居ますが、キーポイントはインフレ率(金利)が外生的か、外生的かという点です。

■ 金利を外生的(政府がコントロール出来る)と考えるMMT ■

通貨が外生的か内生的かという議論は、ケインズ派と古典派や新古典派経済学(主流派)の間では古くからある論争です。

しかし、ゼロ金利下では通貨は内生的という事は主流派経済学者も認めています。マネーサプライによって通貨が生み出されるというのは、金利が正常に働く状態で観測されるのであって、ゼロ金利下ではこれは観測し難い。

ではゼロ金利下ではMMTが全面的に正しいのかと言えば、問題は金利の捉え方にあります。

MMT派は財政支出を拡大して仮にインフレの兆候が表れたら、財政支出を減らせばインフレ率の上昇を抑える事が出来ると主張します。これはインフレ率は「外生変数」で政府が任意にコントロール出来ると言っているに等しい。

「金利がゼロであるならば、統合政府の負債は無限に持続可能」(極論ですが)と考えるMMTでは、財政拡大によって金利がコントロール出来ない状態は想定していないし、そうなると理論そのものが崩壊します。


一方、主流派経済学者は財政支出によって金利が上昇して、政府支出の増大はインフレによってファイナンスされると考えています。(いわゆるインフレ税)

この場合インフレ率は政府にコントロール出来ない「内生的」と考えられています。


■ インフレ率の上昇と国債の持続可能性、或いはインフレ税 ■

MMT的な財政拡大が継続する条件は「金利<名目成長率」である事です。これが崩れると、財政赤字が急拡大して、財政は発散します。

1)何等かの原因で金利が上昇し始める
2)国債金利は市場金利の最低金利と連動する
3)市場金利以下の金利の国債を保有する事で金融機関には含み損が発生する
4)金融機関が国債を売却して損失を最小に抑えようとするので、
  国債価格が下落(金利上昇)する

5)新発国債と借換債の金利が上昇する
6)ある金利を越えると、国債の利払い費が雪だるま式に膨らみ始める
7)赤字国債の発効量が膨大になり市場で国債が消化出来ずに国債金利の上昇が止まらなくなる

ここまで行くと、日銀は直接国債を政府から購入して国債金利を抑え込む必要が生じます。所謂「財政ファイナンス」です。

ここまで酷い事にならないまでも、財政拡大がインフレ率の上昇を生むならば、金利が引くい預金(国民の資産)の価値が減少して、国の負債は実質的に減少します。国民は増税される事無くとも、インフレ税を国家に払う事になります。


■ アメリカの直接給付は明らかにインフレを生み出した ■

コロナショックは経済と財政の実験場でもありますが、アメリカの直接給付は、明らかに消費を活性化させ、アメリカのインフレ率は7%台に跳ね上がっています。

但し、コロナによる供給制約もインフレの要因に含まれるので、消費がどの程度インフレ率を引き上げたのかは、経過を見る必要があります。

一方、日本では、コロナ給付は貯蓄されたと言われています。これはちょっと間違った言い方で、我が家を始め一般的な家庭では、それなりに消費に回ったと思われますが、その先でお金は企業の内部留保や、企業が支給した給与からの預金に変わった。

日本でもインフレ率は高まっていますが、その原因は原油高に代表される輸入物価の上昇。アメリカのインフレ率が高まった事で、内外金利差から円安傾向になるので、輸入インフレはさらに加速しそうです。

コロナ給付や、コロナ後の経済の活性化を見込んだインフレなので、短期的なインフレ率の上昇で再びインフレ率が下がれば問題有りませんが、インフレ率の上昇が継続し続けると、中央銀行の緩和的金融政策は持続不可能になります。

FRBは量的緩和の縮小や、利上げを匂わせています。


これによって、財政のアンバランス化よりも、資産バブルが崩壊する方が圧倒的に早く訪れます。リーマンバブル、コロナバブルが崩壊する。


主流派とMMTのどちらが正しかったのかという決着以前に、経済の崩壊によって、この論争はウヤムヤにされる可能性が高いと私は妄想しています。

https://green.ap.teacup.com/pekepon/2788.html

16. 2022年1月24日 09:52:23 : 0ZgG7Lev5Y : NEJNVjVPL3B6Skk=[23] 報告
外生的貨幣供給論・貨幣数量説と内生的貨幣供給論について教えてください
質問日:2009/01/15


ベストアンサーに選ばれた回答
端的に言うと、マネーサプライがベースマネーの増減と比例するのか、銀行の貸出によるのかという議論です。

一般的な金融の教科書で書かれているのが外生的貨幣供給説です。
銀行は預金を貸出し、その金が銀行に戻ってくるたびに貸出すわけですが、預金準備を日銀の当座預金におく必要があるので徐々に貸し出す金が減っていきます。
例)ベースマネーが100円、預金準備率が10%のとき
100円預金→90円貸出→90円預金→81円貸出→81円預金→…
といった感じで、もとのベースマネーが信用創造されて出回ります。日銀がベースマネーを増やすことで、上記の例の100円の部分を増え、マネーサプライが増えることになります。注意すべき点は例にあるように、銀行には無限の貸出機会があるということです。

内生的貨幣供給説はいわゆる日銀理論です。
マネーサプライの増減はベースマネーではなく銀行の貸出行動によるというものです。この理論では銀行は貸出機会が有限です。
ベースマネーを増やしても銀行が貸し出さないとベースマネーが信用創造されてマネーサプライになることはないという考えです。
You can lead a horse to water, but you can't make him drink.
金利の引き下げも、ベースマネーの増加も貸出をしやすくすることにはなりますが、強制することはできません。

https://finance.yahoo.co.jp/brokers-hikaku/experts/questions/q1322229343

17. 2022年1月24日 10:02:12 : 0ZgG7Lev5Y : NEJNVjVPL3B6Skk=[24] 報告

名古屋女子大学 紀要 63(人・社)51〜63 2017
外生的貨幣供給論の非現実性
――初期のイングランド銀行券に注目して――
金井 雄一
名古屋女子大学紀要 第63号(人文・社会編)
file:///C:/Users/777/Downloads/kojinjinbun63_51-63.pdf


1 問題の所在

 資本主義経済下の貨幣を巡って、貨幣は経済の外から増減させうるとする外生的貨幣供給
論(以下では外生説)と、貨幣は経済の内において生成・消滅するとする内生的貨幣供給論
(以下では内生説)とが長く対立してきた。両者間の論争は、既に18世紀のスチュアート(J.
Stuart)によるヒューム(D. Hume)批判において確認できるが、その後も地金論争、通貨論争、
さらに近年のマネーサプライ論争等々と、幾度も蒸し返されてきている。各論争の基盤にあっ
た現実の経済問題の違いを反映して当事者の主張の力点は必ずしも同一ではないため、外生説
的見解としては物価・正貨流出入機構論(貨幣数量説)、地金主義、通貨原理、マネタリズム等々
が出現したし、内生説的見解としては流通必要量説、反地金主義、銀行原理、「日銀理論」1)等々
が対抗することになったが、そこで議論されていることに本質的な違いはない。外生説と内生
説の対立は、スチュアート『経済の原理』2)の刊行から数えると、約250年間続いてきたわけ
である3)。
 この対立が一向に決着しない理由は、両説の信用創造論を見れば分かる。まず外生説の信用
創造論は、本源的預金(あるいは中央銀行の貨幣供給増加分)がそれを受け入れた銀行によっ
て(払戻し準備として一部を残した上で)貸し出され、それが支払いに使われ、その受取人に
よって他の銀行に預金され、その預金がまた貸し出され…、という過程の連鎖によって預金が
増えていくというものである。すなわち、準備率の逆数倍の預金が形成されるという、フィリッ
プス(C. A. Phillips)の貨幣(信用)乗数アプローチに基づくものである4)。それゆえ金融政
策については、「ハイパワード・マネーの供給量が増加すると、その増加したハイパワード・
マネーに貨幣乗数をかけた金額だけマネーサプライの増加が起こる」5)との認識を基に、中央
銀行は「ハイパワード・マネーをコントロールすることによってマネーサプライをコントロー
ルすること」6)ができると主張する。
 これに対して内生説の方は、既にどこかに存在している貨幣が銀行に集められて貸し出され
ていくという外生説的な把握とは異なり、銀行の信用供与は自己宛て債務の創出によって行な
われると捉えている。「貨幣がまずあって、それが貸借されるのではなく、逆に貸借関係から
貨幣が生まれてくる」7)。手形交換所や日銀ネットのような金融機関間の決済システムが形成
されていれば、貸出によって設定される預金は帳簿上の名目的存在に留まらず、実際に支払い
手段として機能できる預金通貨になる。それゆえ、「銀行が貸せば、というより貸すときにのみ、
それと見合いに預金ができる」8)、換言すれば「貸出をすることによって、貸出の元手になる


資金が信用機構の中に新しく生まれ」9)る、と捉えるのである。したがって、中央銀行がベー
スマネー(ハイパワードマネー)の増減を通じてマネーストック(マネーサプライ)10)をコン
トロールできるとは考えない。マネーストックは市中銀行の信用創造によって形成されるので
あり、ベースマネーはそれを受動的に反映するだけであると主張するのが内生説である。
 以上から分かるように、外生説と内生説の論争が繰り返されるのは、端的に言えば、ベース
マネーがマネーストックを規定するのか、それとも逆なのか、この問題に決着がつかないか
らである。そのことを具体的に示すため、事例として近年の日本で見られた現象を取り上げよ
う。まず「量的緩和政策」が始められた2001年から数年間を見てみると、図1が示すように、
ベースマネーは大きく変動しているのにマネーストックはあまり変動していない。したがって
ベースマネーの増減によってマネーストックを増減させるという外生説は成立しないと主張で
きそうであるが、マネーストックがそれほど変動しないのにベースマネーは変動するという事
態は、ベースマネーはマネーストックの結果であるという内生説をも否定しているように思わ
れる。もっとも、ベースマネー増加の内訳を確認してみると、図は控えるが、発券高は増えて
おらず、金融機関が日本銀行に置く預金(日銀当預)が膨張している。日銀当預は1990年代に
は3〜5兆円程度であったが、2002年頃から10兆円を超すようになり、03年には20兆円台、04
年には30兆円台になり、14年の年末には170兆円を超え、16年3月には258兆円になった11)。こ
こで、GDPが現在と大きく違わない時期に金融機関間の決済は5兆円程度の日銀当預によっ
て無理なく行なわれていたことを想起すると、この膨大に増加した預金通貨はほとんど動いて
いないと言えそうである。そしてそうであれば、日銀はベースマネーをみずから増加させえな
いのだから貨幣供給は内生説的に認識されるべきであるとなろう。ただし、その論証には預金
通貨の流通速度を正確に測定する必要がある。貨幣の流通速度としては「マーシャルのK」の
逆数があるが、それはここで必要な預金通貨の短期的流通速度ではない。つまり、預金通貨の
短期的流通速度は当面得られないとすると、外生説と内生説の対立はベースマネーやマネース
トックの変動分析によっては決着しないと言わねばならないのである12)。蒸し返される論争に
決着をつけるには、何か別のアプローチを考えねばならないと思われる。

図1 ベースマネーとマネーストックの変動(対前年比)
出典)日本銀行ホームページ、時系列統計データ検索サイト。
注)「ベースマネー」として表示されているのは、日銀券発行高、貨幣流通高、日銀当座預金の合計額(日銀統
計では「マネタリーベース」と呼ばれている)。

外生的貨幣供給論の非現実性――初期のイングランド銀行券に注目して――
 そこで着目したいのが、金融論における「古くて新しい問題」13)、すなわち資本主義の金融
システムにおいては「預金が先か、貸出が先か」という問題である。伝統的な問いの端的な表
現が誤解を招く恐れもあるので念のため敷衍すれば、「預金が先」とは、銀行業務の出発点は
受信であって「銀行は預金を受け入れてそれを貸す」という見解であり、「貸出が先」とは、
出発点は与信であって「銀行が貸出をするので預金が生まれる」という見解である。ここから
分かるように、預金先行という主張は外生説であり、貸出先行という主張は内生説である。と
すれば、外生説と内生説の対立を預金先行論と貸出先行論の対立に置き換えて、後者の対立に
決着をつけられないかと考えてみるというアプローチは、検討に値するのではないだろうか。
 そこで、「預金が先か、貸出が先か」であるが、史実としては、流通金属貨幣が預金されて
貸し出される場合(預金が先)も、預金口座に記帳された貸与額から引き出された貨幣が預金
される場合(貸出が先)も、共に否定できない。すなわち、どちらが先かは歴史的に決定する
ことはできない14)。しかも、そもそも外生説と内生説の対立は資本主義における金融システム
をいかに理解すべきかを巡るものであり、事態の歴史的生成順序の問題ではない。では、歴史
の実証的検討は何の意義も持たないのだろうか。
 実は、問題を銀行券と預金の関係に限定するならば、歴史的事実の解明にも意味が出てくる
可能性がある。銀行券と預金の関係の最も常識的な理解は、「貨幣が先で信用が後」と考える
通説に沿って、まず銀行券が流通し、それが銀行に預金され、それを銀行が貸し出すというも
のであろう。しかし本当にそうだろうか。金融論における「古くて新しい問題」を問い直す意
義は、まさにここにある。銀行券が発行されて流通し始め、それが銀行に預けられるようになっ
て預金が生成したのか。それとも、預金が生成し、その預金の預り証あるいは支払い指図証等
が生まれて流通し始めていったのか。言い換えれば、銀行券流通による決済が普及した後に預
金通貨振替による決済が始まるのか、それとも預金通貨振替による決済が普及した後に銀行券
流通による決済が始まるのか。このような視点から歴史を見たとき、もし銀行券が預金からし
か生まれていないとすれば、それは単なる史実には留まらない意味をもつ。つまり、銀行券と
は信用関係の形成なしに生まれえないものであり、経済の外から恣意的に増減させうるもので
はない、ということになるだろう。
 以上の次第で、外生説と内生説の対立をまず預金先行論と貸出先行論の対立に置き換えて考
察しようとした本稿は、それをさらに「銀行券が預金されたのか」対「預金が銀行券を生んだ
のか」に置き換えて考察することになった。外生説・内生説の対立決着を目指す本稿が、なぜ
初期のイングランド銀行券の検討を試みるのかも、古い歴史的事象の確認が極めて現代的な意
義をもつ課題であることも、理解されたと思う。本稿は、およそ外生説的な認識は成立する筈
がないことを提示しようとするものであるが、現時点では未だ予備的考察に留まるものである
ことをお断りしておかねばならない15)。
2 預金に対する預り証の付与
 イングランド銀行創立に際して出された勅許状(Charter)が署名された1694年7月27日の
午後、同行の最初の理事会(Court of Directors)が開催されるが、真っ先に議論されたのは、
ランニング・キャッシュ(running cash)と呼ばれていた当座預金に対して預り証を付与する
方法についてだった16)。理事会は、長い議論の後に三つの方法が実施されるべきであると決議
し、31日の理事会でも同じ内容を確認した。三つの方法とは以下である。
〈1〉持参人に対して支払われる、また裏書によって譲渡されうる、ランニング・キャッシュ手形(running cash note)17)を与える。
〈2〉勘定が記入される帳簿(Book)または文書(Paper)を保存する。
〈3〉勘定口座手形(accomptable note ※綴りは元資料のまま)を与える。
 〈1〉は、一部分のみを現金化して受け取り、残額は残しておくということも可能なものだっ
た。また〈3〉は、イングランド銀行が引き受ける手形を振り出すことができるというもので
ある。容易に推測しうるように、三つの方法のうち〈1〉が後世の一覧払兌換銀行券の原型に
なるものであるが、ここで忘れてならないのは、このランニング・キャッシュ手形はイングラ
ンド銀行にその意思さえあれば「発券」できるものではなく、預金取引があって初めて発行さ
れるという点である。この手形は預金から独立には存在できず、預金口座と結びついたものな
のである。
 さて、三つの方法を決定した理事会は同じ7月31日の午後、これに伴って必要となるランニ
ング・キャッシュ手形の印刷について決議する。日付欄、金額欄などを空白にした様式である。
現物はイングランド銀行博物館の展示や各種印刷物の写真などによって今日でも見ることがで
きるが、ここには、後世に作成されたイングランド銀行の文書18)の中に再現されているもの
を掲げておこう(資料1)。「枠は印刷されている。日付、名前および金額は手書きである」と
の説明が付されているが、イングランド銀行がジョン・ライト氏または持参人に200ポンドを
支払うことを約束する、1699年に発行された手形である。この手形にも既に、今日のイギリス
で流通しているイングランド銀行券に今もなお印刷されている「私は□□ポンド(額面)の金
額を持参人に要求あり次第支払うことを約束します」という一文と同じような文言が入ってい
る。
 たまたま資料1の金額には端数がないが、ランニング・キャッシュ手形は預金の受領証とし
て発行されるものである以上、金額に端数が付いている場合も少なくなかった19)。しかし、名
義人だけでなく持参人にも支払われ、また一部を現金化した後に残額を保持することも可能
だったこの手形は、他の手形類が比較的早期に使われなくなっていくのとは違って広く普及
していった。「イングランド銀行紙券の初期の諸形態の内で唯一生き残ったのはランニング・
キャッシュ手形だった」20)のである。そして、「完全には印刷されていない、しばしば半端な
資料1 ランニング・キャッシュ手形(再現)
出典)BoE Archive: ADM6/77.
注)英語の綴りは原資料のまま。
........1699 .....
No.163
I promise to Pay to Mr.John Wright -------- or Bearer
on demand the Summe of Two hundred pounds
London the 23rd day of January 1699.
£200
For the Governor and Company
of the Bank of England.
Joseph .........
出典)BoE Archive: ADM6/77.
注)英語の綴りは原資料のまま。


外生的貨幣供給論の非現実性――初期のイングランド銀行券に注目して――
金額で作成されたこれらの紙券が、徐々に流通し始めた。…(中略)…人々は、もともと価値
のある金貨や銀貨よりもむしろ、払い戻す約束が書かれている1枚の紙の方を好んだ」21)とい
うわけである。
 流通し始めたこの紙券は、預金者本人ではなく流通を経た後に持参人に対して支払われると
いう場合があったとしても、預金に対して発行されたものである。銀行券とは本来そういうも
のであるとしたら、それを一般的な通貨として経済に投入されうるものとして理解して良いの
だろうか。ランニング・キャッシュ手形は預金すなわち信用関係形成に伴って生まれ、それが
なければ生まれなかったものなのである。
3 清算簿
 すでに述べたようにランニング・キャッシュ手形は一部のみの払い戻しを受けることができ
たのであるが、そういう扱いを可能にするためにイングランド銀行では清算簿(Clearer)と
いう帳簿が作成されていた。全部あるいは一部が支払われていない手形についての記録である。
これもまたランニング・キャッシュ手形とは、したがって銀行券とは、そもそもいかなるもの
だったのかを良く理解させてくれるものなので、注目しておきたい。
 資料2は、1697年3月26日から1722年6月26日までの記録が載っている、現存する最も古い
清算簿22)から12頁の一部分を抜粋したものである。左から4つの欄は、未払いのランニング・
キャッシュ手形の発行日付、それが記録されている帳簿の番号、記録されている頁、通し番号
であり、それに次いで預金者(手形名宛人)、預金額が記されており、一番右の欄がここで注
目しようとしている支払い記録である。
 資料2の預金者欄二人目 Badmering 氏の場合を例にとると、清算簿から分かるのは以下の
ことである。1701年10月7日に84ポンド5シリング8ペンスが預金され、それに対して発行さ


資料2 清算簿(一部抜粋)
出典)BoE Archive: C96/211.
注)英語の綴り等は原資料のまま。
発行日付 頁 預金者 £ s d 支払日付 £ s d
出典)BoE Archive: C96/211.
注)英語の綴り等は原資料のまま。
(1701年)
Oct. 7. 53 596 153 Tho. Clarke 100 − − 1702. Oct. 9. 100 − −
− − 599 51 Jn. Badmering 84 5 8 1704. Oct. 20. 34 5 8
1705. Ap. 26. 30 − −
1705. Aug. 31. 20 − −
84 5 8
Oct. 8 − 609 86 John Dillingham 80 − − 1702. Sep. 30 80 − −
− − 610 129 Jn. Holditch 18 5 6 1702. Decem. 7. 18 5 6
Oct. 10 − 637 96 Jam Brailsford 190 14 4 1703. July 7. 141 13 4
Sep. 8. 49 1
190 14 4

れた手形は51という通し番号を付けられて、第53番帳簿の599頁に記録された。その手形は、
その後1704年10月20日に34ポンド5シリング8ペンス支払われ、残る50ポンドの内30ポンドが
翌05年4月26日に、20ポンドが8月31日にそれぞれ支払われて、全額が決済された。イングラ
ンド銀行と預金者の間のこうした信用関係(貸借)の生成・消滅に伴い、01年10月7日にラン
ニング・キャッシュ手形が生まれ、05年8月31日にそれが消滅したわけである。
 なお、先にランニング・キャッシュ手形は端数が付いている場合も少なくなかったと述べた
が、資料2からその一端が確認できるだろう。また、名宛人ないし持参人に一度で全額が支払
われない場合が珍しくないことも、資料2から伺えよう。ランニング・キャッシュ手形が裏書
譲渡によってどの程度流通したのかは清算簿からは分からないが、資料2にある5例を見る限
り、1701年10月に発行されたランニング・キャッシュ手形は1705年8月までに決済されている。
もっとも、長期間にわたり決済されないままのものもあったようである。たとえば、1764年10
月1日から1828年1月10日までの清算簿23)は、額面別に作成されていて、左から発行日、転
記される前の清算簿の頁(フォリオ)、通し番号、名宛人、額面が記されているが、1791年に
発行された10ポンド券が並ぶ頁に、10ポンドが消され7(ペンス)と記録されている券がある。
そしてこの券は、さらに次の清算簿(1880年−1958年)24)においても依然として7ペンスが未
払いとして記載されているのである。
 いま述べた次の清算簿とは、「目録」の「解説」(本稿の注22)を参照)において「見たとこ
ろ1880年の残高計算のために用意されたもの。1909年から若干の支払い数値あり」と記されて
いるもので、表紙には「第7番清算簿の摘要(Abstract of No7 Clearer)」25)の文字がある。
おそらく「第7番清算簿」から未払い分が残っているものだけを抽出したのであろう。この清
算簿には発行日、転記される前の清算簿の頁(フォリオ)、通し番号、額面の4欄しかなく、
1764年10月から1794年9月に発行された未払の手形(銀行券)が10,15,20,25,30,40,
50,100,200の各額面別に記録されているのであるが、ところどころに「支払済み(Paid)」
の文字と日付が朱書きされて、通し番号と額面に朱の抹消線が引かれている券がある。したがっ
て、たとえば1793年3月13日に発行された10ポンド券3枚が1910年9月15日に支払われたこと
が分かるし、1772年10月3日発行の20ポンド券が1909年4月20日に支払われたことも分かる。
20世紀になっても18世紀に発行した未払手形が決済される、ということもあるのが銀行券なの
である。
 上記の清算簿には1794年9月までに発行された未払券が記載されていたが、それに続く94年
10月からを記録する清算簿(1794年10月1日−1926年8月18日)26)は10ポンドのみで1巻になっ
ている。そこにはこの時期の清算簿ならではという内容があるので見ておくことにしたい。こ
の巻は様式も変わり、全てが10ポンド券であるから額面欄はなく、上段に発行日付、下段に通
し番号が書かれているだけになっているのだが、通し番号の両側に「終了(STOPPED)」の
朱印が押されている券がときおり現れる。そして、巻末に償却済み銀行券の一覧表が付けられ
ている(資料3参照)。したがって、一覧表に記載されている券の清算簿の頁(フォリオ)へ
戻ると、そこに「終了」の朱印が押された同一券がある筈なので、両者を照合して確認できる
のである。償却済み一覧表には誰に支払われたかも記録されており、また、清算簿には表示さ
れていない終了日付も分かるので、各券の「寿命」も分かる。
– 57 –
外生的貨幣供給論の非現実性――初期のイングランド銀行券に注目して――
 いま見てきた清算簿(1794年10月1日−1926年8月18日)に続く次の清算簿(1926年8月19
日−1936年10月19日)27)にも償却済み銀行券の一覧表が付されている。その表の「被支払人」
欄にはバークレイズ銀行やロイズ銀行、さらにはスイス銀行やフランス銀行なども登場するよ
うになって興味深いが、たとえば1927年3月17日発行の10ポンド券(番号94971)が29年2月
2日に支払われている等、1920年代にも銀行券の償却が行なわれている記録が何件も見られる。
 要するに、清算簿などというものを必要とするのが銀行券なのである。銀行券とは、それが
清算簿を必要とするものであったという点のみからでも経済の外から恣意的に増減しうるもの
ではないと言わねばならないが、さらにその清算簿の記録内容からは、経済の内において何ら
かの信用取引が行なわれた日に生まれ、その信用関係が消滅した日に消えていくものであるこ
とが明らかにされていた。すなわち、銀行券は内生説的に把握されるべきであることが語りだ
されていた。そしてそれは、イングランド銀行創設時のみではなく、1920年代においても同じ
ように起こっていたのである。
4 額面の印刷
 ここまで述べてきたようにランニング・キャッシュ手形の金額欄は手書きであったが、実は
金額の印刷が検討されるのは意外に早く、イングランド銀行創設の翌年1695年5月1日の理事
会においてである。理事会はその日、持参人に支払う手形の様式を新たに決め、AからGまで
の7つのアルファベット文字を割り当てた、5、10、20、30、40、50、100の各ポンド、計7
種の印刷をそれぞれの枚数も含めて指示した28)。もっとも、このいわゆる「飾り文字付き手形
(“Lettered Notes”)」は「1695年の6月13日から8月14日まで発行された」29)ものの「成功し
なかった」30)。偽造されていたことが数か月後に判明し、回収されてしまったのである。
 「飾り文字付き手形」回収後は行なわれていなかった金額の印刷が再び始まるのは1725年で
ある。この年、イングランド銀行の理事会は20、30、40、50、100の各ポンド用の銅版準備を
命じている。それは、「ヒルトン・プライス氏が彼の『ロンドン銀行家ハンドブック』の中で『お
そらくこれまでに知られている中で最初の印刷された銀行券(Bank Notes)』」だったと述べ
ている、チャイルド銀行(Messrs. Child & Co.)の最初の印刷された券(1729年)より4年も


資料3 償却済み銀行券の一覧表(一部抜粋)
出典)BoE Archive: 13A 123/1
清算簿の頁 発行日付 通し番号 終了日付 被支払人
7 20 September 1798 9982 17 October 1798 Mr. Dunn
8 3 January 1799 2338 7 March 1799 Mr. Hunt
8 18/19 January 1799 8727 4 March 1799 Mr. Jones
8 8 April 1799 2960 28 October 1799 Mr. Wallace
9 3 September 1799 2066 15 November 1799 Wright & Co.
9 18 September 1799 8786 15 November 1799 Wright & Co.
9 20 December 1799 1765 19 March 1800 Mr. Hall
10 24/25 June 1800 9307 24 September 1800 Esdaile & Co.
10 4 July 1800 6632 12 September 1800 Lefeire & Co.
11 29 November 1800 1400 1 January 1801 Mr. Parkin
出典)BoE Archive: 13A 123/1


早い」31)ものだった。ただし、「額面が印刷されるようになった時でさえ、預金の正確な額を
示すため預金受領係は手形に手で記入できた。この慣行は18世紀の遅くまで続いた」32)。つまり、
実際にはいろいろな場合があったようである。「(知られている限りでは)金額が(部分的に)
印刷されている、現存する最も初期の券は1736年7月28日のそれである」が、「二十(Twenty)」
が印刷され、それに続いて「五ポンド(Five pounds)」と手で書かれているその券は、1847
年に提示され支払われている。さらに、「五十(Fifty)」が印刷され、それに続く「ポンド」
の語は手で書かれている1748年1月20日付けの券も現存している。そして、初めに流通に入っ
た銀行券の額面は10ポンド、15ポンド、20ポンド、25ポンド、30ポンド、50ポンドであり、そ
れ以外の各額面の最初の発行日は以下のとおりである。5ポンド:1793年4月5日、200ポン
ド:94年10月11日、100ポンド:94年10月24日、300ポンド:95年1月10日、500ポンド:95年9
月19日、1ポンド:97年3月2日、2ポンド:97年3月4日、1000ポンド:1802年10月1日33)。
 ともあれイングランド銀行が発行する持参人払いの手形は金額が印刷されているものになっ
ていき、次第に今日の銀行券へと進化していくのであるが、本稿「2」・「3」で述べたことが
ここでも銘記されねばならない。ランニング・キャッシュ手形(銀行券)はイングランド銀行
の業務に伴って発行されるのであり、イングランド銀行に提示すると持参人に支払われる紙券
が先に存在していて、それを用いて業務が行なわれるということではない。たとえ額面金額が
印刷済みとなっても、それによって手形(銀行券)が先に存在するようになったわけではなく、
それは単なる紙片であって、特定の取引=信用関係が形成されて初めてイングランド銀行の債
務として発行される、すなわち経済の中へ出ていくのである。経済の外から「通貨として経済
へ投入する」などということができるものではない。
5 まとめ
 ランニング・キャッシュ手形すなわち後のイングランド銀行券は、預金の預り証であり、部
分的に決済可能なので清算簿を必要とし、額面が印刷されるようになったと言っても、先に銀
行券があってそれで業務を行なうというわけではなく、業務が行なわれるのでその中から生ま
れるというものだった。銀行に債務を生じさせる信用取引なしに銀行券が出回り、その既にど
こかにあった銀行券が預金される、ということは起こりえない。信用関係の形成が先である。
銘記されるべきは、「発券」は信用取引なしに行なえることではないという点である。そのこ
とは、経済活動の外から貨幣量を増減させうるとする外生説的見解は銀行券に関しては成り立
ちえないことを示しているのではないだろうか。
 ところで、本稿はイングランド銀行が創立早々に預金の受領証について検討したところから
考察を始めたが、では、同行への預金はなぜ行なわれるのであろうか。この点に関して想起さ
れるべきはゴールドスミス(goldsmith)である。既に先行研究が明らかにしているように34)、
ロンドンではイングランド銀行創設に先立つ17世紀半ば頃から、元来はその名のとおり金細工
商であったゴールドスミスが金貨の保管のみでなく両替、為替業務も営み、さらに預金を受入
れて預り証を発行し、支払い・決済業務を担うようになっていた。預金者に渡されるゴールド
スミス手形(goldsmith note)は裏書譲渡可能な持参人払手形として預金からの支払いに使用
され、また転々と流通するようにもなっていたのである。しかも、当時ロンドンにあったとい
われている数十行ほどのゴールドスミスは、その内の有力2行に勘定を開設していた。つまり、
ゴールドスミス手形を用いた預金通貨振替決済が普及していたのである。そして、研究史が指
摘しているように、イングランド銀行のランニング・キャッシュ手形はそのゴールドスミス手
– 59 –
外生的貨幣供給論の非現実性――初期のイングランド銀行券に注目して――
形を受け継いだものであり、したがって、同行へ預金が行なわれるのは、あるいは同行がそれ
を見越して真っ先に預金受領証について検討したのは、預金通貨振替決済の普及が前提にあっ
たからなのである。
 こうして我々は、銀行券が預金から生まれたということだけではなく、預金通貨振替決済が
展開していることが預金を生む、したがって銀行券を生む、という点も確認できる。ランニン
グ・キャッシュ手形普及の前提に預金通貨振替決済の展開があった。銀行券は、預金受領証と
してだけでなく支払指図証として重要な意義があったのである。預金が先に生まれ、銀行券は
「預金残高を増減するための手段」35)として現れるのである。この点もまた、銀行券の本質的
性格を浮彫にして、銀行券の内生性への理解を深めるであろう。
 もっとも、ここには未だ課題が残っている。上に引用した「預金残高を増減するための手段」
という銀行券の規定は初期の銀行券についてではなく、実は現代の日本銀行券について述べら
れているものである。しかし、言うまでもなく今日の銀行券は特定の預金口座と一体化してい
るものではない。それゆえ、初期の銀行券については本稿が示してきたような預金預り証や支
払指図証としての規定を納得できるとしても、現代の銀行券については直ちにそれを受け入れ
ることは難しいかも知れない。しかし、特定の預金口座と一体化してないということは、信用
関係の形成なしに「発券」されるようになったことを意味するものではない。中央銀行は、不
換制下の今日においても、金融機関との間での取引なしに「発券」することはできない36)。す
なわち、しばしば言われる「銀行券の増刷」などということはできることではない。銀行券は
何らかの信用関係が形成されなければ生まれないという点を忘れてはならないのである。もっ
とも、外生説へ陥らないためには、すなわち本稿の主張がさらに説得力を増すためには、次の
課題が果たされねばならないだろう。
 本稿で検討した時期の銀行券は、やがて、特定の預金口座あるいは特定の信用取引との結び
付きを次第に希薄化して言わば無因証券化していくのであるが、その過程を正確に解明する必
要がある。それをしないと、今日の銀行券が本質的には初期の銀行券と依然として同じもので
あるということが忘却されてしまうのである。実は、為替手形については同様の問題が既に論
じられてきた。為替手形は、その振出しをもたらした特定の為替契約と一体であった筈なのに、
次第に元契約から離れて譲渡可能な証券となっていき、イギリスにおいては17世紀中頃になる
と、為替手形所持人は元の取引に存在した債権債務関係とは全く別の権利を持つことが認めら
れるようになったのである37)。つまり、為替手形はある特定の取引があって初めて生まれるも
のでありながら、その原取引から独立した支払い手段になっていったのである。この為替手形
の場合を参考にしつつ、銀行券についても、それが原預金口座等との関係が薄れていく過程を
明確に解明せねばならない。それによって、たとえ今日では見えにくくなってはいても、銀行
券は信用取引からしか生まれないことが認識され、銀行券の内生性への理解が深まると思われ
る。
 本稿は外生説と内生説の対立を「銀行券が預金されたのか」対「預金が銀行券を生んだのか」
に置き換えて、つまり「銀行券流通決済から預金振替決済へ」(外生説)対「預金振替決済か
ら銀行券流通決済へ」(内生説)に置き換えて考察しようとした。そして、初期のイングラン
ド銀行券の検討を通じて銀行券の本来の姿を改めて確認し、外生説的な認識の成立は難しいこ
との提示を試みたわけであるが、未だ課題は残った。現代の金融政策を的確に評価するために
は避けられないその課題に、引き続き取り組みたい。


Summary
The controversy over money supply by the exogenous theory and the endogenous theory
has continued for many years since the mid-18th century. This means that we have to find
a way to settle the dispute other than an econometric approach, which could not resolve the
controversy. This paper suggests that giving the nature of bank notes some consideration
from a historical perspective contributes toward settling the controversy. If bank notes
were not born without the formation of a credit relation(deposit dealing), we just have to
recognize that bank notes were born endogenously.


付記:本研究は日本学術振興会・科学研究費(研究課題番号15K03574)の助成を受けたもの
である。



1)「日銀理論」という表現については、岩田[1992]ならびに翁[1992]を参照。また両者の論争については、
古川[1994]、建部[1994]を参照。
2)Steuart[1767].
3)各論争については個々に研究が蓄積されており、また諸論争を見渡して理論史的に考察する研究も少なく
ないが、後者の最近のものとして平山[2015]がある。なお、金融論の教科書には貨幣(信用)乗数アプロー
チが圧倒的に多く見られるが、イングランド銀行が近年、明確に内生説的な説明をし始めているのが注目
される。Cf. McLeay et al.[2014a]; do.[2014b]. この論文については斉藤[2015]が的確な解説をしている。
4)フィリップスの信用創造論については、古川[2014]が「彼の考え方は問題をいたずらに複雑化させ, 間違っ
た方向に議論を誘導する結果に終わった」(39頁)と指摘している。また吉田[2003]は、「準備があって
信用創造が始まるのではなく、準備は後から求められる。フィリップス流の乗数論的信用創造論は逆立ち
した議論である」(35頁)と述べている。横山[2015]84頁も参照。
5)岩田[1993]、59頁。
6)岩田[1993]、B頁。
7)西川[1984]、94頁。横山[1977]、外山[1980]、板倉[1995]、も参照。
8)横山[2015]、31頁。
9)板倉[1995]、xi頁。
10)貨幣供給量については従来「マネーサプライ」と表現されてきたが、日本銀行は2008年から統計において「マ
ネーストック」と表記している。本稿でも以下では特に断らない限り「マネーストック」を使用する。
11)日銀当預の激増の裏側には日銀の国債購入=保有額の激増(2005年1月の94兆円から2016年3月の349兆円
(長期国債のみでは303兆円へ)がある。大量の国債を購入しても市場への日銀券供給は実現せず日銀当預
の増加をもたらしたのみだったので、2016年2月から日銀当預の内の政策金利残高にマイナス金利を付す
政策が始まったわけである。
12)金井[2015]14−17頁を参照。
13)建部[2005]、45頁。この問題を取り上げている近年のものを二〜三挙げておく。
田中[2011]、濱田[2014]、山口[2015]。
14)貨幣が生成した後にその貸借が始まるという常識的な理解に対して、歴史的には債権債務関係が先に生じ、
その記録や清算などのために観念的計算貨幣が登場したという見解(筆者は便宜的に信用先行説と呼んで
いる。金井[2015]参照)があるが、本稿がここで「どちらが先かは歴史的に決定することはできない」
と述べているのは、信用先行説の否定ではない。既に金属貨幣が流通し、商品交換を媒介しているような
社会においては、金属貨幣の預け入れとその貸し出しも、与信によって創出された預金からの金属貨幣引
出しも共にある。そういう意味で預金先行か貸出先行かについては史実からは決着をつけられないということであり、金属貨幣が信用に先行して登場する場合もあったという主張をしているわけではない。いず
れにせよ、本稿で検討されているのは貨幣の生成過程ではない。
15)周知の如くイングランド銀行に関しては多くの研究が蓄積されており、同行の初期の銀行券に関して言及するものも少なくないので、本稿は以下から多くの教示を得ている。

Andréadès, translated by Meredith
[1931](町田・吉田共訳、1971年);Feavearyear[1931](一ノ瀬・川合・中島訳、1984年);Mackenzie
[1953];Coppieters[1955];Clapham[1958]( 英 国 金 融 史 研 究 会 訳、1970年 );Richards[1958];
Morgan[1965](小竹豊治監訳、1992年);Giuseppi[1966];ヤッフェ、三輪訳[1965];田中[1966];
楊枝[1982];楊枝[2004]。ただし、イングランド銀行の初期銀行券を外生的貨幣供給論の歴史実証的否
定という視点から検討した先行研究は管見の限りではないため、本稿は、本稿の見解と先行研究の関係を
示す研究史整理を「問題の所在」において行なっていない。
16)Cf. Bank of England Archive(以下BoE Archive):G 4/1, pp.1-4.
17)7月31日の決議では単に「手形」と記されているが、その決議が同一の内容であると認めている27日の決
議には「ランニング・キャッシュ手形」と記されている。Cf. BoE Archive: G 4/1.
18)BoE Archive: ADM 6/77. 表紙に「Bank Notes ‐ General 1901-1965」と記されているこのファイルに1
番目の文書として、上端に「PRIVATE AND CONFIDENTIAL.」と記されている以外にはタイトルらし
きものの無い6ページのものが収められているが、その3ページ目から5ページ目に「MEMORANDUM
ON BANK OF ENGLAND NOTES.」と題された3ページの文書が挿入されており、その3ページの文書
の末尾に「経理局長室(Chief Accountant’s Office) 1901年11月」との記載がある。
19)イングランド銀行創設時の元帳(General Ledger)には顧客別の出入金記録がある。Cf. BoE Archive:
ADM 7/1; ADM 7/2; ADM 7/10; C 98/2512; C 98/2513; C 98/2514; C 98/2515.
20)Anon.[1969]p.212.
21)Keyworth (Bank of England Museum Booklet)[2003]p.2.
22)BoE Archive: C 96/211. イングランド銀行文書室の「目録(Catalogue)」には各資料について「解説
(Description)」が付されているが、C 96/211の「解説」に「最も古い現存する『清算簿』」との記述がある。
23)BoE Archive: C 96/214.
24)BoE Archive: C 96/215.
25)「7番清算簿」というのは、一つ前の「1764年10月1日から1828年1月10日までの清算簿」(C 96/214)を指す。
したがって、ここで言っている「次の清算簿」(C 96/215)は、C 96/214の摘要なのであり、それゆえ共に
1764年10月〜の未払手形(銀行券)を対象にしているのである。
26)BoE Archive: 13A 123/1.
27)BoE Archive: 13A 123/2.
28)Cf. BoE Archive: G 4/2, pp.18-19.
29)Richards[1958], p.163.
30)BoE Archive: ADM 6/77.
31)Ibid.
32)Keyworth (Bank of England Museum Booklet)[2003]p.2.
33)BoE Archive: ADM 6/77.
34)Cf. Andréadès, translated by Meredith, C.[1931](町田・吉田共訳、1971年);Feavearyear[1931](一ノ瀬・
川合・中島訳、1984年);Clapham[1958](英国金融史研究会訳、1970年);田中[1966];楊枝嗣朗
[2004].なお、ゴールドスミスに関しては以下も参照。The National Archives: C 6/405/23; C 11/112/30;
C 107/112.
35)木下[2015]、25頁。
36)少なくともイギリスの実態においては、金本位制下においてさえ、たとえば金準備増加時に銀行券流通が
減少するなど、銀行券量は金準備額に規制されず、銀行券は内生的に供給されていたことについては、金
井[1989]、金井[2004]を参照。
37)Cf. Rogers[1995](川分訳、2011年).

〈資料〉
Bank of England Archive
ADM 6/77 The Issue Department: Bank Notes − General
ADM 7/1 Banking Department General Ledger(1695−1698)
– 62 –
名古屋女子大学紀要 第63号(人文・社会編)
ADM 7/2 Banking Department General Ledger(Supplement)
ADM 7/10 Banking Department General Ledger(1 Sep 1725−31 Aug 1732)
C 96/211 Bank Notes(Clearers): Clearing Note Book(26 Mar 1697−26 Jun 1722)
C 96/214 Bank Notes(Clearers): Odd Sums Ledger(1 Oct 1764−10 Jan 1828)
C 96/215 Bank Notes(Clearers): Abstract of No7 Clearer(1880−1958)
C 98/2512 Drawing Office: Customer Account Ledger A-Z(Aug 1694−Dec 1694)
C 98/2513 Drawing Office: Customer Account Ledger A-Z(Dec 1694−Feb 1695)
C 98/2514 Drawing Office: Customer Account Ledger A-K(Mar 1694−May 1695)
C 98/2515  Drawing Office: Customer Account Ledger L-Z(Mar 1694−May 1695)
G 4/1 Court of Directors: Minutes(27 Jul 1694 〜 20 Mar 1695)
G 4/2 Court of Directors: Minutes(27 Mar 1695 〜 14 Jul 1697)
13A 123/1 Bank Notes(Clearers): £10 Clearer(1 Oct 1794−18 Aug 1926)
13A 123/2 Bank Notes(Clearers): £10 Clearer(19 Aug 1926−19 Oct 1936)
The National Archives
C 6/405/23 Dickenson v Lindsey. Plaintiffs: Richard Dickenson mariner of London.
C 11/112/30 Lake v Hales. Document type: two bills and three answers.
C 107/112 Re Vyner, bankrupt: Papers relating to Sir Robert Vyner, goldsmith: London.
〈文献〉
Andréadès, A., translated by Meredith, C.[1931]History of the Bank of England, London(町田義一郎・吉田啓
一共訳『イングランド銀行史』日本評論社、1971年 ※仏語版原著は1904年刊).
Clapham [1958]The Bank of England: A History, vol.1: 1694−1797 (英国金融史研究会訳『イングランド銀行 そ
の歴史1』ダイヤモンド社、1970年)
Coppieters, Emmanuel[1955]English Bank Note Circulation, The Hague.
Feavearyear, Albert[1931]The Pound Sterling: A History of English Money, revised by E. Victor Morgan, 2nd
ed., Oxford,1963(一ノ瀬篤・川合研・中島将隆訳『ポンド・スターリング ― イギリス貨幣史』新評論、
1984年).
Giuseppi, John[1966]The Bank of England, London.
Keyworth, John (Bank of England Museum Booklet)[2003]The Bank of England £5 Note ― a brief history,
London.
Mackenzie, A. D.[1953]The Bank of England Note, Cambridge.
McLeay, Michael et al.[2014a]‘Money in the modern economy: an introduction’, Bank of England Quarterly
Bulletin, Vol. 54 No.1.
 ―  [2014b]‘Money creation the modern economy’, Bank of England Quarterly Bulletin, Vol. 54 No.1.
Morgan, E. Victor[1965]A History of Money, London(小竹豊治監訳『貨幣金融史』慶應通信、1992年).
Richards, R. D.[1958]The Early History of Banking in England, London.
Rogers, James Steven[1995], The early history of the law of bills and notes : a study of the origins of Anglo-American
commercial law, Cambridge(川分圭子訳『イギリスにおける商事法の発展 ― 手形が紙幣となるまで ― 』
弘文堂、2011年).
Steuart, James[1767]An Inquiry into the Principles of Political Economy(An Inquiry into the Principles of Political
Economy, 4vols. ed. by A. S. Skinner, London, 1998.)
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file:///C:/Users/777/Downloads/kojinjinbun63_51-63.pdf

18. 2022年1月24日 10:04:11 : 0ZgG7Lev5Y : NEJNVjVPL3B6Skk=[25] 報告
リンク
https://www.bing.com/search?q=%E5%A4%96%E7%94%9F%E7%9A%84%E9%80%9A%E8%B2%A8%E4%BE%9B%E7%B5%A6%E8%AA%AC&cvid=18ab232001b247c7ade0a2d5f4f55270&aqs=edge..69i57&FORM=ANCMS9&PC=SCOOBE&ntref=1
19. 2022年1月24日 10:07:26 : 0ZgG7Lev5Y : NEJNVjVPL3B6Skk=[26] 報告

商品貨幣論および外生的貨幣供給説の誤り −『マンキュー マクロ経済学』を例として−
シェイブテイル&朴勝俊
2020 年 3 月 18 日
https://economicpolicy.jp/wp-content/uploads/2020/03/How-Mankiw-is-wrong.pdf


1. はじめに
大学で用いられているマクロ経済学の教科書は、ほとんどが「商品貨幣論」と「外生的貨幣供給
説」に立っています。これらの考え方は、貨幣量は有限であり、預金の結果として貸出が可能となる
(言い換えれば家計の貯蓄が企業や政府の債務を支える)という間違った議論につながります。現
在の主なマクロ経済理論が現実をうまく説明できないのは、この 2 つの考え方に立脚しているから
だと考えられます。
本稿では、まず 2 節で商品貨幣論の代表として、大学等で広く使われている教科書のひとつで
ある『マンキュー マクロ経済学 I 入門編(第 3 版)』(マンキュー 2011)に記された貨幣進化説を確
認し、3 節で商品貨幣論と信用貨幣論の違いを押さえた上で、4 節以降では、『マンキュー マクロ
経済学 II 応用編(第 3 版)』(マンキュー 2012)に示された、バランスシートを用いた信用創造の説
明を批判的に検討し、その誤りを明らかにします。
2. マンキューの教科書における貨幣の進化
マンキューの教科書の「入門編」では、貨幣の進化について次のように書かれています。
---------------------
貨幣の諸機能をよく理解するには、貨幣のない経済(物々交換経済)を想像してみればいい。
貨幣のない世界で取引が成立するには、(ちょうどよい場所でちょうどよいときに)2 人の人間が互
いに相手の欲しい物をもっているという希な偶然、すなわち欲求の二重の一致(double coincidence
of wants)が必要である。物々交換経済では、単純な取引しか行えない。
貨幣を使うと、もっと間接的な取引が可能となる(以下略)。
第 2 次世界大戦中のナチの捕虜収容所では、独特の商品貨幣が使われていた。捕虜たちには
赤十字から食料、衣服、タバコなどさまざまな物資が供給されていた(中略)。最終的に「通貨」にな
ったのはタバコであった(以下略)。
どんなに原始的な社会であっても、何らかの形の商品貨幣が出現して、交換が簡単になること
は驚くにはあたらない。人々は金のような内在的価値を持った商品貨幣であれば、喜んで受け取
るからである。しかしながら、不換紙幣の出現を説明するのは少し難しい。どうして、人々は内在的
価値をまったくもたないものを価値あるものとして扱うようになったのだろうか。
商品貨幣から不換紙幣への進化を理解するには、人々が金を詰め込んだ鞄を持ち歩いている
経済を創造してみればよい。そのような経済では、商品の購入が決まったら、買い手は金の適量を
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2
はからなければならない。そして売り手が金の重量と品質に納得してはじめて、売り手と買い手の
取引が成立するのである。
政府の貨幣システムへの介入の初期段階は、人々の取引コストを引き下げるものであっただろ
う。金そのものを貨幣として使うと、純度と重量の確認に手間がかかるので、取引コストが高い。そう
したコストを節約するために、政府は一定の純度と重量を持った金貨を鋳造する。金貨の価値が一
般に知れわたれば、金の延べ板よりも使いやすくなる。
次の段階では、政府は民間から金を受け取って、代わりに金証書(金兌換紙幣)を発行するように
なる。兌換紙幣は、一定量の金との交換が政府によって補償されている(以下略)。
最後の段階では、金による価値補償がいらなくなる。兌換紙幣を金に換える人がいなくなれば、
金との交換補償が放棄されても誰も気にしなくなるだろう。交換の際に紙幣を皆が受け取り続ける
限り、紙幣には価値があり、貨幣としての役割を果たす。このような経緯を経て、商品貨幣のシステ
ムから不換紙幣のシステムへと、ゆっくりと進化してきたのである(マンキュー 2011、pp.110-112)。
-----------------------------
ここでははっきりと、貨幣のない物々交換経済を創造するところから話が始められていますが、こ
れは「商品貨幣論(theory of commodity money)」に立つ教科書の常套的
じ ょ う と う て き
な説明です。物々交換は
「欲求の二重の一致」という問題のために不便であり、まもなくある商品が貨幣の役割を果たすよう
になり、やがて金がその商品の頂点の位置に立ち、政府が貨幣を鋳造し、そこから兌換紙幣そして
不換紙幣へと貨幣が進化するというストーリーです。まだ「入門編」においては、銀行預金などの
「信用貨幣(credit money)」の発生が十分に説明されていませんが、貨幣量の指標であるマネーサ
プライ(日本でマネーストックと呼ばれるものと同じ)の説明が行われ、そこには「要求払い預金」や
「貯蓄性預金」が貨幣に含まれるべきであると述べられています(マンキュー 2011、p.116)。
銀行が貸出しの連鎖を通じて、現金の何倍もの預金通貨を創り出してゆく仕組みについては、
「応用編」(マンキュー 2012)の第 7 章で論じられています。ただし、「信用創造」は英語の money
creation の訳語であるため、日本語の教科書に「信用創造」という用語が出てくるからといって、そ
のことによって、マンキューが貨幣を「信用(credit)」として捉えていたということはできません。
次節では、商品貨幣論と信用貨幣論について比較検討を行います。
2. 商品貨幣論と信用貨幣論
前節で見たように、マンキューのものをはじめとするマクロ経済学の主な教科書では、主に商品
貨幣論に基づいた経済理論の説明が行われています。商品貨幣論では、貨幣はあくまでも商品
が姿を変えたものという立場をとっています。
それに対する信用貨幣論では、貨幣とは誰かが負債を負った時に、同時に生じる信用(債権)だ
という立場を取ります(図表 1)。
とはいえ現代ではどちらの論でも、銀行(中央銀行と民間銀行)によって信用創造が行われるとい
う理解は共通しています。
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3
主な違いは、商品としての貨幣が預金されてはじめて貸出
か し だ し
が可能となると考えるのか、貸出がお
こなわれた結果として預金が創造されると考えるのか、という点です。前者の立場は「貨幣外生説」
あるいは「外生的貨幣供給論」とよばれます。これは、商品としての貨幣の量は金融取引の「外で」
決まっているという意味です。それに対して後者の立場は「貨幣内生説」あるいは「内生的貨幣供
給論」とよばれます(ラヴォア 2008, p.77)。金融取引の内部の働きの結果として貨幣の量が決まると
いう意味です。
図表 1 商品貨幣論と信用貨幣論の比較
商品貨幣論 信用貨幣論
貨幣の本質 貴金属など商品の一種 貸借関係から生まれる「信用(債権)」
根拠 アダム・スミスの神話 歴史および現代の貨幣分析
信用創造 外生的貨幣供給論 内生的貨幣供給論
銀行の意義 預金から貸出する 貸出が預金を生みだす
経済学派 新古典派系および、ポスト
ケインズ派以外のケインズ派
MMT を含むポストケインズ派
出典: 筆者作成
実は、商品貨幣論の常套的な説明は事実ではなく、物々交換の神話に基づいています(グレー
バー 2016、第二章)。これはアダム・スミスの『諸国民の富(国富論)』によって広められたものです
(スミス 1959 [1776]、第 1 編)。そのため、本稿ではこれを「アダム・スミスの神話」と呼びます。
世界で最初の鋳造金貨は、紀元前 600 年頃のリュディア王国(現在のトルコあたり)のものとされ
ています(グレーバー 2016、p.337)。それよりも古い時代にはおカネがなかったので、商品貨幣説
の神話では、まず物々交換がされていて、そのうち取引の媒介をするのに便利な特定のモノ(貝殻
や貴金属など)が利用されるようになり、それが現在のような貨幣(硬貨や紙幣)へと進化し、銀行
や信用が発展したとされています。マンキューの教科書(上記の引用箇所)でも、このような説明が
行われています。
しかし、1776 年以降、宣教師や冒険家、植民地の行政官たちはスミスの本を片手に世界中に散
らばりましたが、物々交換の国を発見することはありませんでした。人類学者のキャロライン・ハンフ
リーは「物々交換経済について純粋で単純な事例が記述されたことなどない。物々交換から貨幣
の発生についてはなおさらである。入手可能なあらゆる民族誌が、そんなものは存在していなかっ
たことを示している」と結論づけました(Humphrey 1985、訳文はグレーバー 2016、p.46 より引用)。
つまり、物々交換が貨幣の起源であるとする商品貨幣論には歴史的、人類学的な根拠がみつかっ
ていないのです。
それに対して、信用貨幣論はどうでしょうか。実は、損害や罪を償う義務という意味を含む債務
は、人類数千年の歴史があります。グレーバーによれば、「信用制度や借用証(tabs)さらには経費
勘定(expense accounts)さえも、現金よりもはるかむかしから存在していた。こういった事象はほとん
ど文明と同じぐらい古い」のです(グレーバー 2016、p.30)。
商品貨幣説を真っ向から否定し、古代からの歴史に基づいて「信用のみが貨幣である」、「信用
は現金よりはるかに古い」として、信用(債権)こそが貨幣発展の起源であると喝破した最初の人物
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が、ミッチェル・イネスという人物です。イネスが 1913 年に発表した論文は、ケインズの書評によっ
て酷評されました。当時はまだ、ケインズ自身が新古典派の経済学者であり、商品貨幣論に立って
いたためです。しかしイネスの論文の歴史的記述に触発され、ケインズは古代バビロニア等の貨幣
研究を進め、ついには鋳造貨幣以前に物々交換がなされていたことを否定し、「貸出や契約を表
示する計算貨幣の導入が、新に未開社会の経済状態を変化させた」と論じるに至るのです(古川
2018)。
イネスを源流とする信用貨幣論は、歴史的・考古学的な事実とも合致し、現在の貨幣制度の記
述としても適切です。しかも、商品貨幣論に立った経済理論や、それに基づく財政破綻論の誤り
を、大きく修正する基盤となりうるものなのです。
とはいえ、大学で現在教えられているマクロ経済学は、この信用貨幣論に立っていません。主な
教科書がいまだに、商品貨幣論に立っているからです。その代表が、広く使われているマンキュー
の教科書と言えるでしょう。
4. マンキューによる「信用創造」の説明
マンキューの「応用編」では、信用創造の説明がいわゆる「預金又貸し説」によって行われていま
す。「第一銀行」が現金を預かり、その大部分を誰かに又貸しし、その誰かが現金を「第二銀行」に
預け、「第二銀行」がさらにその大部分を誰かに又貸しし、その誰かが「第三銀行」に現金を預け
る、という連鎖を、バランスシートを用いて説明しています。
この教科書では、他の多くの教科書とは異なり、珍しくバランスシートを用いた図解がなされてい
ます(図表 2)。マンキューが示したバランスシート(貸借対照表)は、この 4 枚だけです。ここでは、
銀行は預け入れられたおカネの 20%を手元に残して 80%を貸し出すものとして、数値例が作られ
ています(現実の日本の準備預金率は 1%程度かそれよりもはるかに低く設定されています)。
図表 2 マンキューが信用創造の説明に用いた貸借対照表
(1) 第一銀行の貸借対照表(A)
資産 負債
準備 1000 ドル 預金 1000 ドル
(2) 第一銀行の貸借対照表(B)
資産 負債
準備 200 ドル
貸出 800 ドル
預金 1000 ドル
(3) 第二銀行の貸借対照表
資産 負債
準備 160 ドル
貸出 640 ドル
預金 800 ドル
(4) 第三銀行の貸借対照表
資産 負債
準備 128 ドル
貸出 512 ドル
預金 640 ドル
出典: マンキュー(2012)、pp.235-237
注:それぞれの表の表題に含まれる(1)〜(4)および(A)と(B)の記号は筆者による追加。
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ところで、図表 2 では銀行が預金者から預かった現金は、バランスシート上の資産として「現金」
ではなく「準備」(中央銀行に預けられる準備預金のこと)と記されていますが、図解においては、中
央銀行のことは一切明示されていません(マンキュー 2012、pp.235-237)。このことは後述のよう
に、マンキューが銀行と中央銀行の間の取引の実務を、十分に理解していなかった可能性を示唆
しています。
(1)では、第一銀行は家計から現金 1000 ドルを預かり、これを準備として保有します。預かった預
金の 100%を準備として保有せねばならない「100%準備銀行」の場合、貸出を行うことはできませ
ん。
(2)では、第一銀行は準備預金率 20%のもとで、預金の 80%ぶん(800 ドル)を貸出に回します。
(3)では、借入者が第二銀行にこの 800 ドルを預け入れることで(あるいは借入者が支払った 800
ドルの受取人が預金すれば)、第二銀行に 800 ドルの預金が発生し、さらに第二銀行はこのうちの
80%(640 ドル)を貸出に回します。
(4)では、借入者が第三銀行にこの 640 ドルを預け入れることで、第二銀行に 640 ドルの預金が
発生し、さらに第二銀行はこのうちの 80%(512 ドル)を貸出に回します。
かれは「準備・預金比率(reserve-deposit ratio)、rr」という指標を用いて、この連鎖が無限に続く
ことによって、
本源的預金=1000 ドル
第一銀行貸出=(1-rr)×1000 ドル
第二銀行貸出=(1-rr)2×1000 ドル
第三銀行貸出=(1-rr)3×1000 ドル
:
:
マネーサプライの総量={1 + (1-rr) + (1-rr)2 + (1-rr)3 + ・・・}×1000 ドル
=(1/rr)×1000 ドル ---(式 1)
という式を導いていますが、これはこの手の教科書ではおなじみの「預金又貸し説」の公式であり、
日本の公務員試験の問題にもよく登場するものです。彼が設定した rr は 20%ですから、簡単な計
算でマネーサプライの総量は 5000 ドルにふくれあがります(マネーサプライは、マネーストックと同
じ意味です)。
さらに、マネーサプライの定義式(M=C+D)と、マネタリーベースの定義式(B=C+R)を設定しま
す。M はマネーサプライ、C は現金通貨、D は預金(要求払い預金)、B はマネタリーベース、R は
準備預金、です。R/D は先出の準備・預金比率(rr)に相当し、C/D は現金・預金比率(cr)となりま
す。以下、これらの定義式を用いて計算をすすめると、
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𝑀
𝐵
=
𝐶 + 𝐷
𝐶 + 𝑅
=
𝐶/𝐷 + 𝐷/𝐷
𝐶/𝐷 + 𝑅/𝐷
=
𝑐𝑟 + 1
𝑐𝑟 + 𝑟𝑟
− − − (式 2)
𝑀 =
𝑐𝑟 + 1
𝑐𝑟 + 𝑟𝑟
𝐵 = 𝑚𝐵 − − − (式 3)
∆𝑀 =
𝑐𝑟 + 1
𝑐𝑟 + 𝑟𝑟
∆𝐵 = 𝑚∆𝐵 − − − (式 4)
となります。式 4 は、マネタリーベースが ΔB だけ増加すると、その m 倍にあたる ΔM だけマネ
ーサプライが増加することを意味しています。m=(cr+1)/(cr+rr)を貨幣乗数(または信用乗数)
と言います。
さて、人々が一切現金を保有しない場合には、cr=0 となりますから、
𝑐𝑟 + 1
𝑐𝑟 + 𝑟𝑟
=
1
𝑟𝑟
− − − (式 5)
ですから、この時の貨幣乗数は、式 1 のものと一致することになります。準備・預金比率が 0.2
ですから、マネーサプライは 5 倍になるわけで、本源的預金が 1000 ドルなら、マネーサプライ
は 5000 ドルになります。なるほど、どちらのアプローチでも結果が一致するように見えます。結
果的には図表 3 のようになるという話です。
図表 3 マンキューの信用創造の結末(間違い)
中央銀行の貸借対照表
資産 負債
準備 +1000
現金 −1000
全ての銀行の連結貸借対照表
資産 負債
準備 1000 ドル
貸出 4000 ドル
預金 5000 ドル
出典: マンキュー(2012)、第 7 章を参考に筆者作成
でも、ここには間違いが含まれています。図表 2 で示されたマンキューの数値例では、マネーサ
プライは 5000 ドルではなく、4000 ドルにしかならないので、両者の結果は一致しないのです。
正しくは、図表 4 のようになります。マンキューが見落としていたのは、家計が最初に現金を手放
すという点です。つまり、図表 2-(1)で、最初に現金 1000 ドルが預け入れられた時に、現金は使え
なくなっていたのです。ですから、5000 ドルの預金が生まれたとしても、使えるマネーストックは預
金の 5000 ドルから現金を差し引いた 4000 ドルにしかなりません。そして、これがちょうど借入の
4000 ドルと釣り合っているのです(バランスしています)。
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図表 4 マンキューの)信用創造の結末(正しい)
中央銀行の貸借対照表
資産 負債
準備 +1000
現金 −1000
全ての銀行の連結貸借対照表
資産 負債
準備 +1000
貸出 +4000
預金 +5000
全ての家計の連結貸借対照表
資産 負債
現金 -1000
預金 +5000
借入 +4000
出典: マンキュー(2012)、第 7 章を参考に筆者作成
とはいえ、式 1 の欠陥は分かりましたが、式 2 から式 5 までの展開には誤りはありません。ここか
ら生じるマネーストックの差は、どのように解釈すればよいのでしょうか。次節で、より詳細にバラン
スシート展開を行って検討してゆきましょう。
5. マンキューのバランスシートを詳細に検討する。
<100%準備銀行>
まず、図表 2 の第 1 段階で、「100%準備銀行」に言及されていたことをご確認ください。100%
準備銀行は仮想的な制度ですが、負債側にある預金と同じだけの準備を確保しないといけないの
で、貸出ができなくなります。なお、マンキューは「銀行が受け入れてはいるが貸し出さない預金
は、準備(reserves)と呼ばれる)」(p.234)としていますが、これは間違いです。準備とは正確には、銀
行が預かった現金を中央銀行の当座預金に換えたものです。
家計が 100%準備銀行預金を預け入れた時のバランスシートの変化(BS 変化分)は、筆者独
自の「取引図」でみると、図表 5 のとおりです。バランスシートは、ある主体の中では資産と負債が
必ずバランスしなければなりませんし、異なる主体間の取引では、同じ項目が、資産と負債の両側
に同じ符号で現れるか、資産か負債の一方の側に別の符号で現れるか、していなければなりませ
ん。図表 5 では、家計の資産として現金が減って預金が増え、第一銀行の負債として預金が増
え、預かった現金はすぐに準備に換えたことになります。マンキューの図表では、家計が明示され
ていなかったので、家計の現金の減少を見落としたと考えられます。
図表 5 「100%準備銀行」の預金受入れ
出典:マンキュー(2012、pp.234-235)の記述に基づき筆者作成
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さて、この図でマネーサプライとは何かと言えば、それは家計部門(無数の家計)が保有する現
金と預金の合計です。銀行が預かった現金や、それを準備に換えたものは、マネーサプライには
含まれません(日本銀行調査統計局 2019、p.2−1)。ですから、現金が減った分だけ預金が増え
たということは、マネーサプライに変化がないということを意味します。
ここで、マンキューの 100%準備銀行モデルに、中央銀行を明示しましょう。マンキューは「準備」
という用語を用いているので、中央銀行の存在を前提としているはずだからです。第一銀行(銀1)
が、家計(民間人α=民α)から預かった現金を、中央銀行の当座預金としての準備に換えたとい
うことは、図表 6 でより正確に表現できます。
図表6 中央銀行を導入した 100%準備銀行モデル
中銀 民α 銀1
A L A L A L
(1)民αが銀 1 に 現−1000 現+1000 預+1000
現金預入 預+1000
(2)銀 1 が現金返還 現−1000 現−1000
準備獲得 準+1000 準+1000
(1)+(2) 現−1000 現−1000 準+1000 預+1000
準+1000 預+1000
MS 変化 ±0
出典:マンキュー(2012、pp.234-235)の記述に基づき筆者作成
注: 準は準備、現は現金、貸は貸出、預は預金、借は借入、A は資産、L は負債を意味する。
図表 6 を各ステップに分けて見てゆきましょう。
(1)真ん中の家計(民α)は、タンス預金していた現金を第一銀行(銀1)に預け入れ、預金を得ま
す(資産側 A [Asset]の変化)。一番右の銀 1 では資産側(A)に現金が、負債側(L [Liability])に預
金が発生します。
(2)銀1は、中央銀行(中銀)に現金を持ち込んで準備に換えます。中銀では、現金は負債扱い
ですから、負債側(L)の現金が減って準備が増えたということになります。
ここで再度、マネーサプライとマネタリーベースの定義を確認します。全ての非金融の民間人の
資産(民αの A)に含まれる預金と現金の合計がマネーサプライです。そして、マネタリーベースは
中央銀行の負債側(中銀の L)にある、準備と現金の合計です。図表 6 に現れるのは BS の変化
分だけです。したがって預金変化分と現金変化分が相殺されてマネーサプライ(MS)の変化はゼ
ロ、準備変化分と現金変化分が相殺されてマネタリーベースの変化もゼロ、となっています。
<部分準備制度>
続いてマンキューは「部分準備制度」の説明に移ります。部分準備制度のもとでは、銀行は負債
側の預金の一定比率(数値例では 20%)を、資産側の準備として保有せねばなりません。ですか
ら、準備率が 20%であれば、現金 1000 を受け入れて準備 1000 を獲得した場合、その準備のうち
200 は貸し出すことができず、800 だけを貸し出すことができます(図表 2-(2))。
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準備は、一般人が使うことができない「銀行ネットワーク」内のおカネですので、マンキューが「第
一銀行は 1000 ドルの預金のうち 200 ドルだけを準備として保有し、残り 800 ドルを貸し出すことと
なる」(マンキュー2012、p.236)と説明しているのはやや粗雑ですが、結果的には間違っていません
(図表 7)。
図表 7 第一銀行貸出の詳細な過程
中銀 銀1 民β
A L A L A L
(c)民βが銀 1 から借入 貸+800 預+800 預+800 借+800
(d)民βの現金引出に 準−800 準−800
銀 1 が応じる 現+800 現+800
現−800 預−800 預−800
現+800
(c)+(d) 準−800 貸+800 現+800 借+800
現+800 準−800
マネーサプライの変化 +800
出典: 筆者作成
注: 準は準備、現は現金、貸は貸出、預は預金、借は借入を意味する。
(c) 最初の預け入れをした家計(図表 6 の家計、民α)とは別の、民間人β(民β)が第一銀行(銀
1)から 800 ドルの借り入れを行います。この時、民βのバランスシートには、資産側(A)に預金(預
+800)と、負債側(L)に借入(借+800)が発生します。逆に、銀1のバランスシートには A に貸出
+800 と、L に預金+800 が発生します。この段階では、現金の移動はなく、いわゆる万年筆マネ
ー(またはキーストロークマネー)で、預金通貨の形で貸し付けが行われます。銀行は無からおカネ
を創ることができる、というのは、まさにこの部分です。
(d) 民βは銀 1 に対して、現金の引き出しを求めます。銀 1 は中央銀行との間で、準備と現金の
交換を行います。民βに対して、預金と引き換えに現金を渡します。
(c)と(d)を通算すると、民βは借入 800 ドルを現金の形で得たことになります。他方、銀 1 は貸出が
800 増え、準備が 800 減ることになります。中央銀行は負債のうち、準備を 800 ドル減らして現金ド
ル増やします。最終的にはこの過程で、貸出によってマネーサプライが 800 だけ増加し、それが現
金の形をとっていることが分かります。
図表 4 と図表 7 を通算すると図表 8 のようになります。当初の預け入れではマネーサプライは変
化しませんが、第一銀行貸出の結果として、マネーサプライが 800 増えています。民間に流通する
現金は 200 ドルだけ減り、準備が 200 ドル増えています。マネタリーベースに変化はありません。
同様に、第二銀行(銀 2)による信用創造(図表 2-(3)に相当するもの)を図表 9 として表示し、第
三銀行(銀行 3)による信用創造(図表 2-(4)に相当するもの)を図表 10 として表示します。いずれ
の場合も、貸し出しが行われた時点で信用創造が行われ、マネーサプライが増加していることが分
かります。また、中銀の負債としての現金がだんだんと減少し、準備に変わってゆくことが分かりま
す。
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同様に第四銀行、第五銀行・・・・と、無限の連鎖が続くと、最終的に 5000 ドルの預金が生まれ
ます。
最終的には図表 4 と同じ状態になります。最終的には 4000 ドルの借入が行われ、(当初の預金
1000 ドルも含めて)5000 ドルの預金が生まれますが、現金が 1000 ドル失われたことによって、
4000 ドルだけがマネーサプライとなるのです。
図表 8 当初の預け入れと第一銀行貸出を合算した結果
中銀 民α 銀1 民β
A L A L A L A L
(a)+(b) 当初
の預け入れ 現−1000 預+1000 準+1000 預+1000
準+1000 現−1000
(c)+(d) 第一 準−800 貸+800 現+800 借+800
銀行貸出 現+800 準−800
(a)+(b) 準+200 貸+800 預+1000 現+800 借+800
+(c)+(d) 現−200 準+200
MS の変化 ±0 +800
出典: 筆者作成
注: 準は準備、現は現金、貸は貸出、預は預金、借は借入を意味する。
図表 9 第二銀行による信用創造
中銀 民β 銀2 民γ
A L A L A L A L
(e)民βが 現−800 現+800 預+800
銀 2 に現金預入 預+800
(f)銀 2 が現金返還 現−800 現−800
・準備獲得 準+800 準+800
(e)+(f) 現−800 現−800 準+800 預+800
準+800 預+800
MS 変化 ±0
(g)民γが銀 2 から借入 貸+640 預+640 預+640 借+640
(h)民γの現金引出に 準−640 準−640
銀 2 が応じる 現+640 現+640
現−640 預−640 預−640
現+640
中銀と銀 2 の通算 BS 現−360 準+160
準備率 20%を満足 準+360 貸+640 預+800
出典: 筆者作成
注: 準は準備、現は現金、貸は貸出、預は預金、借は借入を意味する。
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図表 10 第三銀行による信用創造
中銀 民γ 銀 3 民δ
A L A L A L A L
(i)民γが銀 3 に 現−640 現+640 預+640
現金預入 預+640
(j)銀 3 が現金返還 現−640 現−640
・準備獲得 準+640 準+640
(i)+(j) 現−640 現−640 準+640 預+640
準+640 預+640
MS 変化 ±0
(k)民δ銀 3 から借入 貸+512 預+512 預+512 借+512
(12)民δの現金引出に 準−512 準−512
銀 3 が応じる 現+512 現+512
現−512 預ー512 預−512
現+512
(11)+(12) 準−512 貸+640 現+512 借+512
現+512 準ー640
MS 変化 +512
中銀と銀行 2 の通算 BS 現−488 準+128
準備率 20%を満足 準+488 貸+512 預+640
出典: 筆者作成
注: 準は準備、現は現金、貸は貸出、預は預金、借は借入を意味する。
<実際には信用創造は準備預金の金額に制約されない>
ここまでは、銀行は誰かから預かった現金を、別の人に又貸ししているというかたちで説明をし
てきました。一般に、マンキューをはじめとするほとんどのマクロ経済学の教科書がこの「預金又貸
し説」をとっています。しかし現実には、銀行は借り入れた現金を貸付に回しているのではありませ
ん。むしろ、現金や準備を持っていなくても、融資を行うことができるのです(図表 11)。
図表 11 現実の銀行の貸出
出典:横山(横山 2015, pp.110-113)の記述に基づき筆者作成
第一銀行はある企業に対して、無から「キーストロークマネー」によって 100 ドルの貸出を行い、
預金 100 を与えます。企業には資産として預金が、負債として借入が発生します。ここで、第一銀
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行は預金の 20%にあたる 20 ドルの準備を保有する必要が生じますが、それは事後的に調達すれ
ばよいのです。他の銀行から準備を借りることもできますし、中央銀行から準備を借りることもできま
す(図表 11 は中銀から借りる場合です)。他の銀行から準備を借りた場合は、銀行システム全体の
準備の金額は変わりませんが、中央銀行から借りた場合は、準備が増えることになります。
全ての銀行が全体として 4000 ドルの貸出をして 4000 ドルの預金を生み、中銀から準備を 1000
ドル借りることになった場合、図表 12 のようになります。図表 4 と似ていますが、少し違います。ま
たこれも、式1や式 3 を用いて計算されるように、マネーサプライが 5 倍になっているわけではあり
ません。マネタリーベースは 1000 ドル増えていますが、マネーサプライは 4000 ドルしか増えてい
ないのです。
図表 12 全ての銀行が事前に信用創造を行いあとで中銀から準備を借りた場合
中央銀行の貸借対照表
資産 負債
中銀貸+1000 準備 +1000
全ての銀行の連結貸借対照表
資産 負債
準備 +1000
貸出 +4000
中銀借+1000
預金 +4000
全ての家計の連結貸借対照表
資産 負債
預金 +4000 借入 +4000
出典: 筆者作成
<貨幣乗数が正確な意味を持つ場合とは>
では、貨幣乗数が正確な意味を持つ場合とは、どのような場合でしょうか。言い換えれば、実際
に式 1 の結果と式 3 の結果が一致し、マンキューの言うような信用創造がどちらの式で見ても正し
くなるのはどのような場合でしょうか? それは、政府によって現金が追加的に家計に与えられる場
合に限られます。例えば、政府(中央銀行を含む政府)がある個人に、なんらかの理由で 1000 ドル
の現金を与えるところから出発したとしましょう(図表 13)。
図表 13 政府から家計に現金が与えられた場合
政府(中央銀行を含む)の貸借対照表
資産 負債
@現金 +1000
@純資産−1000
A現金 -1000
A準備 +1000
全ての銀行の連結貸借対照表
資産 負債
A現金 +1000
A現金 -1000
A準備 +1000
B貸付 +800
C貸付 +640
D貸付 +512
E :
A預金 +1000
B預金 +800
C預金 +640
D預金 +512
E :
全ての家計の連結貸借対照表
資産 負債
@現金 +1000
A現金 -1000
A預金 +1000
B預金 +800
C預金 +640
D預金 +512
E :
@純資産+1000
B借入 +800
C借入 +640
D借入 +512
E :
出典: 筆者作成
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図表 13 は次のような過程を表しています。
@政府がある家計に現金で賞金 1000 ドルを与える。政府の純資産は減り、家計の純資産は増
える。
Aその家計が現金を銀行に預け、銀行がそれを中央銀行で準備に換える。
B第一銀行が 800 ドルの貸付を行う。借入人はこの預金を第二銀行に送金し、準備も第一銀
行から第二銀行の所有となるが、中央銀行の準備の総額と、全ての銀行の準備および預金の総額
は変化しないので記さない。
C第二銀行が 640 ドルの貸付を行う。以下Bと同様。
D第三銀行が 512 ドルの貸付を行う。以下Bと同様。
E 以下同様
この貸付の過程が無限に続くと、最終的には図表 14 のようになります。結局は 4000 ドルの貸付が
行われて 4000 ドルの預金が生まれ、当初の預金 1000 ドルと合わせて 5000 ドルがマネーサプラ
イとなります。また、家計には 1000 ドルの純資産が生まれていますが、政府(中央銀行を含む)に
は純負債が発生しています。
式 1 と式 3 が同じ意味を持つのはこのように、政府が最初に(負債を負うか資産を減らす形で)
貨幣を発行するケースに限られます。マンキューは図表 2 をもって、式 1 を説明する数値例とした
のですから、ここに一つ目の明らかな誤りがあるのです。
図表 14 政府から家計に現金が与えられた場合(最終形)
政府(中央銀行を含む)の貸借対照表
資産 負債
準備 +1000
純資産 −1000
全ての銀行の連結貸借対照表
資産 負債
準備 +1000
貸出 +4000
預金 +5000
全ての家計の連結貸借対照表
資産 負債
預金 +5000 純資産 +1000
借入 +4000
出典: 筆者作成
6. マネタリーベースはマネーサプライを生まない(マンキュー第 2 の誤り)
マンキューのテキストでは、マネタリーベースが増えるとマネーサプライが増える、という間違った
因果関係が、明確に、繰り返されています。例えば 1 式に相当する数式を示した直後の「準備 1 ド
ルごとに 1/rr ドルの貨幣が生まれるのである」(マンキュー2012、p.237)という記述や、3 式に相当
する数式を示した直後の「マネタリーベース 1 ドルは、m ドルの貨幣を生みだす」(同 p.239)という
記述、あるいは「中央銀行から民間が国債を買うときには、中央銀行が支払う金額がマネタリーベ
ースの増加となり、マネーサプライの増大をもたらす」(同 p.240)という箇所がそれです。
マンキューが、マネーサプライはマネタリーベースの m 倍になると考えたことは、第 2 節で紹介し
た「外生的貨幣供給論」につながります。マネタリーベースは政府が決める値なので、その m 倍に
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あたるマネーサプライも、政府によって決められた値となり、いわゆる「外生変数」となるという話で
す。この外生的貨幣供給論に則って、教科書的な IS-LM モデルなどが導かれます。
しかし、外生的貨幣供給論は誤りであり、正しいのは内生的貨幣供給論に基づく信用貨幣論で
す。マネタリーベースが増えてもマネーサプライが増えないということは、2013 年以降の安倍政権
のもとで行われている量的緩和政策によって、マネタリーベースが増やされても、それに応じてマ
ネーサプライがほとんど増えていないことから、誤っていることが明らかです。
式 2 を再掲して、これに基づいて考えましょう。
𝑀
𝐵
=
𝐶 + 𝐷
𝐶 + 𝑅
=
𝐶/𝐷 + 𝐷/𝐷
𝐶/𝐷 + 𝑅/𝐷
=
𝑐𝑟 + 1
𝑐𝑟 + 𝑟𝑟
− − − (式 2[再掲])
現在の日本のような状況は、B が増加しても M がほとんど増加していないことを意味しています。
この式を用いて説明するならば、現金・預金比率(C/D=cr)を一定(例えば 0.1)として、準備・預金
比率(R/D=rr)がどんどん増加する(0.2, 0.5, 0.8, 1 と増えてゆく)状況を考えるとよいでしょう。これ
は、準備が増えても貸出が増えないのと同じことです。
cr=0.1, rr=0.2 のとき、m=(0.1+1)/(0.1+0.2)≒3.67 倍
cr=0.1, rr=0.5 のとき、m=(0.1+1)/(0.1+0.5)≒1.83 倍
cr=0.1, rr=0.8 のとき、m=(0.1+1)/(0.1+0.8)≒1.22 倍
cr=0.1, rr=1.0 のとき、m=(0.1+1)/(0.1+1)≒1 倍
このように、rr が高まるのにつれて貨幣乗数(信用乗数)が低下することになります。rr が 1 になっ
たとき、準備と預金の金額が一致することになりますが、この時には「100%準備預金制度」と同様の
状態になります。
マンキューの誤りは、マネタリーベースが増えればその数倍だけマネーサプライが増えるとしたこ
とです。これは、銀行が準備預金制度のもとで許される限りの貸付をしようとすれば、それに応じる
借り手が必ず存在すると、想定していたことを意味します。マンキューがマクロ経済や貨幣の研究
をしていた頃は、借入需要が旺盛で、銀行も準備を最小限にとどめてできるかぎりの貸出を行って
いたため、この理論が実際をうまく説明できているように見えたのかもしれません。
しかし現在では、不況が続くなかで借り手が十分に存在せず、銀行は資産のかなりの部分を貸
出ではなく、法律で求められる以上の準備(超過準備)で保有するようになってきています。このよ
うな場合には、マネーサプライは借入需要によって決まることになります。つまり、図表 13 や図表
14 の一番右の表に記された「借入」こそが、マネーサプライの量を決定づけるものなのです。
また、マンキューが誤謬に陥った原因には、準備とは何かを正確に把握できていなかったこと
と、マネーサプライの世界とマネタリーベースの世界が全く別の世界だということを、認識しそこなっ
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ていた可能性が考えられます。これは「第一銀行は 1000 ドルの預金のうち 200 ドルだけを準備と
して保有し、残り 800 ドルを貸し出すこととなる」という乱暴な記述に現れています。
ここまでを小括するならば、マンキューが依拠する外生的貨幣供給論は誤りであり、これに基づく
IS-LM モデルなどの各種マクロ経済モデルの説明力も、極めて限定的なものに留まるということで
す。
7. 現金についての留意事項
本節は、現金とは何か、マネーサプライとマネタリーベースに含まれる現金はどう違うのかについ
て、補足説明を行いますが、これは別段マンキューの誤りを指摘するものではなく、比較的些末な
問題です。
改めて式 2 を再掲しますと、マネーサプライとマネタリーベースには、現金として同じ C が用いら
れています。
𝑀
𝐵
=
𝐶 + 𝐷
𝐶 + 𝑅
=
𝐶/𝐷 + 𝐷/𝐷
𝐶/𝐷 + 𝑅/𝐷
=
𝑐𝑟 + 1
𝑐𝑟 + 𝑟𝑟
− − − (式 2[再掲])
しかし実際には、マネーサプライに含まれる現金は、非金融部門で流通する現金のみです(これ
を Cc とします)。銀行が預金の引き出しに備えて保有する現金は、マネタリーベースには含まれま
すが、マネーストックには含まれません(これを CB とします)。だとすれば、非金融部門の現金・預
金比率 cr は(Cc/D)と書き換える必要が生じます。
𝑀
𝐵
=
𝐶𝐶 + 𝐷
𝐶𝐶 + 𝐶𝐵 + 𝑅
=
𝐶𝐶/𝐷 + 𝐷/𝐷
𝐶𝐶/𝐷 + 𝐶𝐵/𝐷 + 𝑅/𝐷
=
𝑐𝑟 + 1
𝑐𝑟 + 𝐶𝐵/𝐷 + 𝑟𝑟
− − − (式 6)
このように、式 2 と式 6 には若干の違いが生じます。ただし、銀行が資産として現金を全く保有せ
ず、準備預金に換えて保有する場合には、式 2 と式 6 は全く同じになります。
8. 結論
一般的なマクロ経済学の教科書の代表例であるグレゴリー・マンキューの教科書は、商品貨幣論
と「預金又貸し説」に基づく素朴な貨幣観(外生的貨幣供給論)に基づいています。彼がバランス
シートを用いて示した数値例は、彼自身のマネーサプライの式の数値例になっていません。彼の
数値例は、「マネーサプライの総量=(1/rr)×1000」の式に合致せず、また「M=m×B」の式にも相当
していません。
その理由は、彼の不十分なバランスシートと本文の粗雑な記述を見る限り、
(1)「本源的預金」と呼んだものの元となる現金の発生を見落としていること、
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(2)準備は非金融の一般人が使えないおカネだということを理解できていない可能性、
および中央銀行、銀行、非金融の一般人のバランスシートを同時に把握しないことによって、
(3)マネタリーベースとマネーサプライがバランスシート上で明確にとらえられておらず、準備とマネ
ーサプライが別の世界の貨幣であるということが理解されていない可能性、
さらには、
(4)ある部門のバランスシート項目の変化が必ず他の部門で同様の項目の(資産・負債が逆の、ま
たは符号が逆の)変化をもたらすことが把握できず、検算が十分にできていない可能性、
が考えられます。
現実の日本のデータが如実に示しているように、「M=m×B」の因果関係を B から M の方向にと
らえて、準備預金を増やせばマネーストックが増えるというのは誤りです。マネーストックを増やすた
めには、政府が負債を負う形で貨幣(現金か預金)を創造してこれを非金融の一般人に手渡すか、
十分な借入の需要が存在して実際に貸付が行われるようになることが必要となります。このことは、
商品貨幣論に対する信用貨幣論(内生的貨幣供給論)の正しさの傍証となっています。
外生的貨幣供給論が間違いだとすれば、それに基づく IS-LM モデルなどの標準的な経済モデ
ルの説明力が否定されます。むしろ、政府や民間非金融が借入を行うことによって貨幣を増やし、
経済にテコ入れできる可能性に、明かりが灯されることになるのです。これは、日本のような長期停
滞経済から脱却する道が、まずもって政府支出の増加であるということを示唆しています。
参考文献
グレーバー、デヴィッド(2016)『負債論 貨幣と暴力の 5000 年』(酒井隆史 監訳、高祖岩三郎、
佐々木夏子 訳)以文社
スミス、アダム(1959 [1776])『諸国民の富(一)』岩波文庫
日本銀行調査統計局 (2019) 『マネーサプライ統計の解説』2019 年 10 月
https://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/data/exms01.pdf
古川顕(2018)「イネスとケインズの貨幣論」『甲南経済学論集』、58 巻 3・4 号、pp. 47-94
マンキュー、グレゴリー(2011)『マンキューマクロ経済学1 入門篇(第 3 版)』(足立英之、地主敏
樹、中谷武、柳川隆訳)、東洋経済新報社
マンキュー、グレゴリー(2012)『マンキューマクロ経済学 II 応用篇(第 3 版)』(足立英之、地主敏
樹、中谷武、柳川隆訳)、東洋経済新報社
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横山昭雄(2015) 『真説 経済・金融の仕組み』日本評論社
ラヴォア、マルク(2008)『ポストケインズ派経済学入門』(宇仁宏幸訳)、ナカニシヤ出版
Humphrey, Caroline (1985) “Barter and Economic Disintegration”, Man, No. 20, pp. 48-72

https://economicpolicy.jp/wp-content/uploads/2020/03/How-Mankiw-is-wrong.pdf

20. 2022年1月24日 10:12:01 : 0ZgG7Lev5Y : NEJNVjVPL3B6Skk=[27] 報告
内生的貨幣供給の功罪
2019年02月26日
https://ameblo.jp/sorata31/entry-12442794398.html

今回のコラムはMMTを解説する予定でしたが、その前に「内生的貨幣供給論」の解説を行います。

(「内生的貨幣供給論」はMMTの基盤の一つとなっています。)

「内生的貨幣論」はMMTだけでなく、ポスト・ケインジアンの中で広く論じられている理論です。

今回は、内藤敦之「内生的貨幣供給理論の再構築―ポスト・ケインズ派の貨幣・信用アプローチ」から、「内生的貨幣論」を紹介します。

(なおこの本は、L..ランダル・レイの議論の紹介が多く、MMT/現代貨幣論という言葉こそ出ていませんが、表券主義という言葉でJGPを含むレイの現代貨幣論の一部を解説しています。)

「内生的貨幣供給論」とは何か?
簡単に言えば「需要に応じて貨幣が供給されるという考え方を軸に、貨幣経済の姿を描く理論」です。

現代の内生的貨幣供給論には主に3つの派閥があります。

・ホリゾンタリズム(カルドア、ムーアなど)

・ストラクチュラリズム(レイ、ポーリンなど)

・サーキュレイショニスト(ブールヴァ、ラヴォワ、ロションなど)

ここではこの3つの派閥の説明は、議論が細かくなりすぎるため行いません。

なお、現代的な内生的貨幣供給論は、カルドアに始まる、とされています。

「内生的貨幣供給論」と対立する概念に「外生的貨幣供給論」があります。

この両者の違いを見ていきましょう。

そもそも貨幣供給が内生的、外生的とはどういった意味なのでしょう?

貨幣供給が内生的というのは、「銀行と民間という経済の『内部』の貸借で『貨幣(銀行貨幣)が生まれる』」、というものです。反対に貨幣供給が外生的というのは、「銀行と民間という経済の『外部』である中央銀行が『貨幣を生み』、それを銀行と民間の内部に供給する」、というものになります。

「内生的貨幣供給論」vs「外生的貨幣供給論」
内生的貨幣供給、外生的貨幣供給という概念自体は20世紀以前の古典派の時代から存在しています。

銀行学派が内生的貨幣供給を、通貨学派が外生的貨幣供給をそれぞれ主張し、対立していました。


 もう少し詳しく両者の理論を見てみましょう。

 「内生的貨幣供給論」は「銀行の貸出ありき」です。

銀行が民間に貸出を行った結果、預金(マネーストック)が創造されます。そして民間が銀行から借入れた預金を返済すると、預金(マネーストック)は消滅します。

銀行は貸出を行って預金を創造した後、預金額に応じた一定の額を中央銀行の当座預金に預けること(準備預金制度)が義務付けられてます。私の準備預金についてのコラムでも解説した通り、準備預金は貸出の後で銀行が用意すると想定されています。銀行は、保有現金か、インターバンク市場から掻き集めるか、中央銀行に借入れすることで、準備預金を用意します。すなわち、貸出(マネーストック)の増加に応じて、受動的に準備預金(ベースマネー)を用意することになります。このときの準備率やインターバンク市場の金利や借入れの利子率は中央銀行により「外生的」に決定されます。

 なお、「内生的貨幣供給論」は「信用貨幣説」と密接な関係があります。

(「信用貨幣説」については以前のコラムで解説しました。)

信用貨幣論では貨幣供給は内生的となるため、中央銀行は貨幣量を直接操作することは出来ません。

 一方、「外生的貨幣供給論」は、「中央銀行の意志ありき」です。

中央銀行が銀行に、買いオペや貸出などで銀行の準備預金を供給すると、銀行はそれに応じて民間への貸出を拡大できます。そして売りオペや貸出の返済などで準備預金を削減すると、銀行は貸出を縮小します。すなわち、中央銀行がベースマネーの量を制御することによって、マネーストックの量をも制御できるという理論です。(もっと簡単に言えばベースマネーの量とマネーストックの量は比例するため、ベースマネーの量を制御することでベースマネーの量を決めることができる。)

 なお、「外生的貨幣供給論」は「商品貨幣説」と密接な関係があります。

(貨幣の供給が商品と同様に、供給者が外生的に制御可能と考えるためです。)

なぜ量的緩和(QE)は目標達成できなかったか?
これは内生的貨幣供給論から簡単にわかるでしょう。

内生的貨幣供給論によれば、中央銀行は貨幣(マネーストック)の量を直接制御できないからです。

日本で量的緩和が行われる以前、マネーストックを巡って、岩田規久男ら経済学者と翁邦雄ら日銀職員との間で論争が有りました、

翁邦雄らの理論は日銀理論と呼ばれるもので、これは「日銀はマネーストックの量を制御できない」という「内生的貨幣供給論」と同様の理論と言えます。

「内生的貨幣供給論」は、「馬を水辺に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」という比喩で表現されることもあります。

内生的貨幣供給の功罪
 内生的貨幣供給のもとでは、銀行はアニマル・スピリッツを発揮し、企業に融資を行います。

企業側からみると、企業はアニマル・スピリッツを発揮して投資を決意、投資計画を作成した上で、銀行へ借入れを申し込みます。この投資計画では、銀行貸出の利子率を上回る利潤を獲得することが必要になります。

 こうして銀行から貸出を受けて始めて、貨幣が銀行貨幣(銀行預金)として創造されます。

企業は投資計画に従って投資し、生産を拡大していきます。

こうしたアニマル・スピリッツの発揮による預金の創造と投資・生産の拡大は、資本主義が爆発的に発展した理由のひとつとして挙げられています。

これが内生的貨幣供給の「功」の部分になります。

 内生的貨幣供給の「罪」の部分は、金融が不安定になることです。

経済が調子の良いとき、銀行はリスクを過小に見積もり貸出することがあります。(マネーストック増加)

ここで何らかのショックが起きたとき、そのリスクは拡大します。

それに反応して投資家らが資産を売却し、資産の価値が暴落していきます。

そうなると、投資家や銀行が債務超過になり、破綻に追い込まれてしまいます。

これがいわゆる金融危機であり、ハイマン・ミンスキーの唱えた「金融不安定仮説」です。

(金融危機を説明するハイマン・ミンスキーの「金融不安定仮説」はストラクチュラリズムに大きな影響を与えています。)

 こうした金融危機に対して、銀行の預金準備率を100%にすることで銀行の貸出を抑制して金融危機を防ぐ、「ナローバンク構想」が持ち出されています。

しかし、これは先に述べた、企業と銀行のアニマルスピリッツの発揮を抑制するものです。

資本主義の成長も抑制されることになるでしょう。

内生的貨幣供給と国債発行
 最後に、「内生的貨幣供給論」と国債発行の関係の解説をしたいと思います。

ここでは、建部正義「国債問題と内生的貨幣供給理論」の議論を紹介します。
(なお、ここで議論する国債はすべて自国通貨建ての国債になります。)

政府が新規国債を発行して財政支出を行う場合、次のステップを踏むことになります。

@銀行が新規国債を購入すると、銀行保有の日銀当座預金が、政府が開設する日銀当座預金勘定に振り替えられる
A政府は、たとえば公共事業の発注にあたり、請負企業に政府小切手によってその代金を支払う
B企業は、政府小切手を自己の取引銀行に持ち込み、代金の取立を依頼する
C 取立を依頼された銀行は、それに相当する金額を企業の口座に記帳する(ここで新たな民間預金が生まれる)と同時に,代金の取立を日本銀行に依頼する
D この結果、政府保有の日銀当座預金(これは国債の銀行への売却によって入手されたものである)が、銀行が開設する日銀当座預金勘定に振り替えられる

この後、銀行は戻ってきた日銀当座預金でふたたび政府の新規国債を購入することができます。
このループを図にしたものが下図になります。(中野剛志氏が作成した図になります。)


一般通念とは逆に、銀行は民間からの預金で国債を購入するわけではありません。銀行は政府の発行した国債を購入することで、預金が生み出されます。「預金を資金源として国債発行する」のではなく「国債発行で預金が生まれる」のです。

 それ故、「内生的貨幣供給論」の立場では国債発行量に資金的限界はありません。
政府は財源を気にせず国債を発行でき、銀行はいくらでもそれを購入することができるのです。
(実際には国債発行を大量に行うと、需要と供給の関係が崩れインフレ率が向上していきます。)
このことは今の日本のようなデフレ経済にとって大きな利点と言えるでしょう。

以上で「内生的貨幣供給論」の解説を終わります。

https://ameblo.jp/sorata31/entry-12442794398.html

21. 中川隆[-14085] koaQ7Jey 2022年1月24日 10:17:13 : 0ZgG7Lev5Y : NEJNVjVPL3B6Skk=[28] 報告
貨幣負債論(信用貨幣論)について
2019年01月29日
https://ameblo.jp/sorata31/entry-12436111979.html

今回のコラムでは「貨幣負債論(信用貨幣論)」について解説します。

今回のコラムの発端は、「進撃の庶民」様のコメント欄における論争で「貨幣負債論」「租税貨幣論」「MMT」の特徴解説を依頼されたことになります。

今回はその第一弾として「貨幣負債論(信用貨幣論)」を、中野剛志『富国と強兵』、デヴィッド・グレーバー『負債論』、フェリックス・マーティン『21世紀の貨幣論』から紹介します。

ではまず「貨幣負債論(信用貨幣論)」とは一体何なのでしょうか?

『富国と強兵』では、イングランド銀行の機関紙(2014年春号)に掲載された解説記事『現代経済における貨幣:入門』から次のように引用しています。

「今日、貨幣とは負債の一形式であり、経済において受け入れた特殊な負債である。」

この引用から筆者は

「貨幣を一種の負債とみなす貨幣観を『信用貨幣論』と言う。」と定義しています。

この「負債」と「信用」とはどういった関係なのでしょうか?

『富国と強兵』ではこの答えを簡潔にまとめています。

「『負債』とは、言うまでもなく『信用』の対概念であり、AのBに対する負債は、BのAに対する信用である」

本書では更に続けて、学者の言葉を引用しています。

ケインズに影響を与えたA・ミッチェル・イネス: 

「貨幣とは信用であり、信用以外の何物でもない。Aの貨幣はBのAに対する負債であり、Bが負債を支払えば、Aの貨幣は消滅する。これが貨幣の理論の全てである。」

社会学者ジェフェリー・インガム:

貨幣とは「計算貨幣の単位によって示された信用と負債の社会関係。」

こうして本書では「貨幣が負債の一形式であるというのは以上のような意味においてである。あらゆる貨幣が負債なのである。」と結論しています。

では、そもそも、「負債」、「信用」とは何なのでしょうか?

まず「負債」について見ていきましょう。

『負債論』では、まず「義務」と「負債」の違いを確認し、そこから「負債」を定義づけ、「信用」や「貨幣」との関連を示唆しています。

「ただの義務、すなわちあるやり方でふるまわなければならないという感覚、あるいは誰かに何かを負っている[借りがある]という感覚、それとの負債との違いは正確に言えばなんであろうか?」
「負債と義務の違いは、負債が厳密に数量化できることである。このことが貨幣を要請するのである。」

「貨幣とは負債はまったく同時に登場している。」

人類最初期の文書であるメソポタミアの銘板に「記録されていたのは、信用による貸借、神殿による支給の配分、神殿領地の地代、穀物と銀それぞれの価格などである。おなじく、モラル哲学の最初期の文章のいくつかは、モラルを負債として想像すること、つまりそれを貨幣という観点から想像することが何を意味するのか、についての考察である。」

「したがって、負債の歴史とは必然的に貨幣の歴史なのである。」

まとめると、「負債」とはすなわち「数量化した義務」であり、歴史上、「貨幣」と同時に登場した、ということになります。

「このことが貨幣を要請する」とはどういう意味でしょうか?

単純に解釈すると、負債という存在があったから貨幣が必要になった、となります。

負債という概念が先にあるのです。貨幣はその後すぐに誕生したということになります。

この『負債論』での「負債」の説明は、『富国と強兵』で引用されたイングランド銀行の機関紙の説明

「今日、貨幣とは負債の一形式であり、経済において受け入れた特殊な負債である。」
と同じです。

なお、「貨幣が負債である」というのは、貨幣の発行者から貨幣を見たときの記述です。

貨幣の保有者から見ると「貨幣は債権(資産)」になります。

この「貨幣は発行者にとって負債で、保有者にとっては資産」というのは、MMTにおいては定義になっています。

次に「信用」とは何なのでしょうか?

『富国と強兵』では負債について、以下の指摘をしています。

「負債とは、現在と将来という異時点間の取引によって生じるものであるが、将来は不確実であるから、負債はデフォルト(債務不履行)の可能性を伴う。」

「信用」とは「負債」の将来のデフォルトの可能性を勘案して決断されます。

このお客なら将来ちゃんとお金を払ってくれるだろうと。

この将来は一時間後でも構いませんし、数日、数ヶ月、数年でも構いません。

実際、わたしたちは、料理店で提供された料理を食べた後に、決済しています。

これはお店がわたしたちを信用して料理を提供し、わたしたちは発生した負債を食べた後に決済します。

また、お店と客の信頼関係によっては、ツケ払い、つまり将来のいつかの時点での決済、を許可している場合もあります。

食事に限らず、実際の財・サービスの交換には時間差があります。

例えば家のローンなどは、購入から返済までに数十年単位でかかります。

この時間差が生む不確実性を容認するのが「信用」なのです。

『富国と強兵』では、イングランド銀行の解説からこのように引用しています。

「貨幣は、この信頼の欠如という問題を解決する社会制度である。」

「負債」と「信用」の意味、そして貨幣との関係はこれで判りました。

次に、「貨幣が負債である」ことの正しさを、以下の2つの観点から確認します。

@会計上正しいこと

A歴史的に見ても正しいこと

@会計上正しいこと
これは実在する貨幣発行者のバランスシート(貸借対照表)を見れば、すぐにわかります。

わが国の国定貨幣である日本銀行券は日本銀行によって発行されていますので、日本銀行のHPからバランスシートを探してみましょう。

以下のPDFは、日本銀行のHPに掲載されている、2018年度の日本銀行の財務諸表になります。

https://www.boj.or.jp/about/account/data/zai1805a.pdf

このPDFに貸借対照表が掲載されており、その負債の部の先頭に「発行銀行券」と記載されています。

日本銀行の「発行銀行券」といえば「日本銀行券」のことです。

なお、資産の部にも「現金」とありますが、その額は「発行銀行券」よりずっと少ないため、自ら発行した日本銀行券を回収して保有している、と解釈することができます。(これは誤りです。詳細はコメント欄で。)

まとめますと、日本銀行から見ると発行した「日本銀行券」は紛れもなく「負債」であり、日本銀行自身が「日本銀行券」を持つと「資産」ということになります。

(勿論これは相殺が可能ですが、相殺が必然というわけではありません。)

しかしこれだけでは、会計学上で(発行者にとって)貨幣を負債としていることは解っても、それ(貨幣を負債とする)が妥当なのかまでは判りません。

この妥当性をAで検討していきましょう。

A歴史的に見ても正しいこと
歴史学上、貨幣がどの年代に発見されたか?

これは古代メソポタミアです。

そしてこの古代メソポタミアでは、既に信用取引が一般的な決済方法でした。

例えば、彼ら古代メソポタミアの民は、居酒屋の支払いを毎回ツケ払いしていました。

居酒屋のオーナーからすると、お客を相当「信用」しないとできない行為です。

そして飲んだ客は、膨らんだ「負債」を後でまとめて、自分で収穫した農産物などで払う、というような行為が一般的であったようです。

古代メソポタミアから発掘された銘板にはこうした信用取引の記録が大量に残されています。

そして将来の支払い義務が記された銘板は、貨幣として流通していました。

(この銘板の持ち主に誰々がどれだけの支払い義務を負っているか、が記された銘板です。)

つまり、この銘板を保有するということは、銘板に記載されている支払額と同額の資産を保有するということになります。

これは現代で言えば、企業の発行する約束手形が流通するようなものです。

まさに、古代メソポタミアでは負債としての貨幣が流通していた、ということになります。

『21世紀の貨幣論』には、古代メソポタミアでは「現存する証拠資料の示すところであれば、ほとんどの取引が信用(クレジット)を基盤としていた。」と記載されています。

一般的な経済学では、物々交換経済→貨幣経済→信用経済へと発展していったと記述されていますが、人類学者の長年に渡る調査によると「物々交換経済から貨幣に発展した例は、いかなる社会にも見当たらなかった」そうです。

物々交換は部族と部族の間の取引のように、信用できるかわからない相手との取引など、限定的には見られたそうですが、決して主流にはなりませんでした。

人類学者が調査した社会の中には、古代メソポタミアのように最初から信用取引が発達していた社会が有りました。

例えば、有名なヤップ島の話です。

ヤップ島では発見当時、主要な生産物が3つ(魚、ヤシの実、唯一の贅沢品であるナマコ)しかありませんでした。あとは家畜にブタがいる程度です。

物々交換をするのにこれ以上最適な社会を探し出すのは難しいでしょう。

しかし、彼らはフェイという代用貨幣(トークン)を使って、現代的な信用取引をしていました。

『21世紀の貨幣論』から引用してみましょう。

「ヤップの島民は魚、ヤシの実、ブタ、ナマコの取引から発生する債権と債務を帳簿につけていった。債権と債務は互いに相殺して決済をする。決済は一回の取引ごと、あるいは1日の終わり、一週間の終わりなどに行われる。決済後に残った差額は繰り越され、取引の相手が望めば、その価値に等しい通貨、つまりフェイを交換して決済される。」

これは実に現代的な信用経済です。

実際、今の日本にもこれと同様のシステムが存在しています。

日本の金融機関が日銀を介して行っている、即時グロス決済と時点ネット決済です。

一回の取引ごとに行われる決済が即時グロス決済、ある時点で行われる相殺決済が時点ネット決済です。

ヤップ島では決済後に残った差額はフェイを交換しますが、これは日本では決済後の銀行間での日銀当座預金の残高の移動に相当します。

また、このフェイの交換というのも、あくまで「所有権の交換」であって「所有の交換」ではなかったそうです。

そのため、既に所有権が移ったフェイが相手に渡されること無く、今までどおり庭に置かれているという状態でした。

実際にフェイを所有する必要はないのです。

そのため、かつて海に沈んだフェイが、現在は誰も見たこともないのにその存在を信じられており、これも財産として数えられていました。

これがフェイが代用貨幣(トークン)である所以です。

「ヤップ島のマネーはフェイではなく、その根底にある、債権と債務を管理しやすくするための信用取引・清算システムだったのだ。」

と、『21世紀の貨幣論』には記載されています。

人類学者が調べたのは、古代メソポタミアやヤップ島だけではありません。

様々な時期の様々な社会を調べました。

長年の調査の結果に対する人類学者や一部の経済学者の同じようなコメントが、『21世紀の貨幣論』に長々と記載されていますが、その結論部を抜き出します。

「21世紀初めには、実証的証拠に関心を持つ学者の間で、物々交換から貨幣が生まれたという従来の考え方はまちがっているというコンセンサスができあがっていた。経済学の世界ではこれは珍しいことである。人類学者のデビッド・グレーバーは2011年に(引用者注:2011年は『負債論』のこと)次のように冷ややかに説明している。
『そうしたことが起きたという証拠は一つもなく、そうしたことが起きなかったことを示唆する証拠は山ほどある。』」

貨幣は物々交換から生まれたものではありませんでした。

そうすると、貨幣は何から生まれたのでしょう?

言うまでもなく負債と信用の関係から貨幣は生まれたのです。

最後にハイマン・ミンスキー(師はシュンペーターとレオンチェフ、MMTerのランダル・レイは弟子)の言葉でこの記事を締めくくります。

「誰でも貨幣を創造できる。」「問題は、その貨幣を受け入れさせることにある。」

これは「誰でも負債(借用証書)を創造できる」「問題は、その負債(借用証書)を受け入れさせることにある。」と言い換えることができます。

本当に誰でも貨幣(借用証書)を作れるのかというと、企業は手形という借用証書を発行できます。

また、個人でも小切手という借用証書を発行することができます。

『21世紀の貨幣論』には2001年のアルゼンチンでの金融危機で実際に起ったことが記載されています。

政府は銀行システムの流動性を維持するために、銀行預金の引き出しを厳しく制限しました。

お金が突然なくなるという緊急事態において、代替貨幣(トークン)が自然発生的に生まれました。

州や市はもちろん、スーパーマーケットチェーンまでが独自の借用書を発行し始め、借用書はまたたく間に通貨として流通するようになりました。

このように本当に「誰でも貨幣を創造できる」のです。

では「誰でも貨幣を創造できる」のなら、なぜ、国定貨幣がその国内の最大の主流通貨として流通しているのでしょうか?
https://ameblo.jp/sorata31/entry-12436111979.html

22. 中川隆[-14082] koaQ7Jey 2022年1月24日 10:21:18 : 0ZgG7Lev5Y : NEJNVjVPL3B6Skk=[32] 報告
日本の準備預金制度について
2019年01月18日
https://ameblo.jp/sorata31/entry-12433564528.html

このブログは誤解されがちな思想を解説するブログになります。

記念すべき初回の記事は、某所で話題?になっている準備預金制度の解説となります。

============================================================================

準備預金制度は、一般的に、銀行が預金者の引出しに応じるため中央銀行(日本では日銀)にお金を預けておく制度と理解されています。

が、しかし、日本の準備預金制度の詳細は、ほとんど解説されることがないため、あまり知られていません。

日本銀行や市中銀行に関する書籍でも、数行触れられていればラッキーという有様です。

そこで今回は、あまり知られていない日本の準備預金制度の解説をします。

日本における準備預金制度は、1957年に「準備預金制度に関する法律」という法律で施行されました。

以下のサイトに法律原文が記載されていますが、書かれていることが難しく、一般人にはイマイチわかりません。

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=332AC0000000135&openerCode=1

日本銀行も解りにくいと思ったのか、この法律の解説記事を出しています。

http://www3.boj.or.jp/josa/past_release/chosa195706i.pdf

今回の解説は、この日銀の解説記事の要点を掻い摘む形で、日本の準備預金制度を紹介していきます。

@法律の目的
準備預金制度は各国で施行されていますが、その目的は大きく2つあります。

『預金者保護』と『通貨調節手段』です。

『預金者保護』というのは、預金者の引出しに応じるための支払準備金を中央銀行に強制的に預け入れさせる、というものです。

もう一方の『通貨調節手段』は、後述する「準備率」を上下させることで、銀行の信用創造機能を通して、市場での資金需給を調整する、というものです。

準備預金制度は歴史的には『預金者保護』として生まれましたが、

諸外国では『通貨調節手段』として準備預金制度を設けている国が多く、

『預金者保護』と『通貨調節手段』の両方を目的としている国も存在するようです。

日本ではどうかというと、準備預金制度を『通貨調節手段』を目的として整備しました。

『預金者保護』が目的ではないのです。
実際、法律の目的が記されている第1条にも「通貨調節手段としての準備預金制度」と記載されています。
そのため、制度の名前も、『預金者保護』を意味する「支払準備制度」という名前を避け、「準備預金制度」という名前になっています。

ただし、現在は、日本含め世界各国で『通貨調節手段』の意味合いは薄くなっています。

短期金融市場を通して通貨調節をするようになっていったためです。

A日銀当座預金
中央銀行の当座預金口座とは、市中銀行などの金融機関や政府が日本銀行に開設が義務付けられている口座のことです。

当座預金なので基本的には無利子になります。

銀行が日銀当座預金口座から引き出すと、同額の現金、つまり日本銀行券が銀行に供給されます。

この日本銀行券の供給は、発券とも言われています。

これは日本銀行券は、日銀の外に出ることで初めて、紙幣に記載されている額の価値を持つからです。日銀の中にいる間は、日本銀行券は価値を持ちません。複雑な偽造防止処理を施されたただの紙切れです。

ちなみに、日銀当座預金と日本銀行券を合わせて「ベースマネー」と呼ばれています。


さて、この日銀当座預金には3つの役割があるとされています。
  (1)金融機関が他の金融機関・日本銀行・国と取引を行う際の「決済手段」
  (2)金融機関が個人や企業などの顧客に支払う現金通貨の「支払準備」
  (3)準備預金制度の対象となっている金融機関の「準備預金」

準備預金制度は、(3)の市中銀行などの特定の金融機関が日銀当座預金へ一定金額預ければならない制度、ということになります。

この一定金額、つまり日銀に預け入れる最低金額のことを、「法定準備預金額」「所要準備額」と呼び、実際に預け入れている金額を「準備預金」と呼びます。

B準備率
市中銀行等の金融機関が預金額の「一定比率」以上の金額を日銀当座預金に預け入れるというのが準備預金制度ですが、この比率が「準備率」「法定準備率」「預金準備率」です。

この法律において、準備率の最高限度は10%であり、これを越えることはできないとされています。

その一方で、準備率の最低限度は定められていません。先述したように、準備率の最低限度は『預金者保護』の意味を持つものと考えられるものだからです。

現在の準備率は1991年に設定されたもので、0.05%〜1.3%となります。

(金融機関の種類や預金等の種類によって数値が変わります。

定期預金など安定的な預金に対しては数値が低く設定されています。)

具体的な数値は日銀のHPに記載されています。

https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/reservereq/junbi.htm/

C準備預金の二つの期問

さて、準備預金の金額はどのように計算されているのでしょう。

実は、準備預金を計算するには二つの計算期問があります。

1つ目の計算期間は、準備預金額を計算する期間です。

ある月(仮に1月とします)の毎日の終業時における預金残高に、その時の準備率をかけた額の合計をその月の日数で割ります。つまり、毎日の預金残高×準備率の平均です。

2つ目の計算期間は、預け金額の計算期間、つまり、1つ目の計算で得られた金額を維持しなければならない期間です。

この期間は当月(1月)の16日から1ヶ月間(2月15日)とされています。

ただし、毎日この準備金を厳格に維持する必要はなく、16日からの1か月間の平均額として充たされていれば良い、とされています。

上述の説明は日銀の紹介記事に解りやすい図があるので、下図にこれを掲載します。

D預け金の額が不足した場合の措置
市中銀行が預け金額を維持できなくても、即座に法律違反になるわけではありません。

ちゃんと救済措置が用意されています。

この場合、市中銀行は、不足額に対し一定比率をかけた金額を期日(3月15日)までに日銀に納めればよいのです。日銀はこの金額を期日(4月15日)までに納めます。

これまた、日銀の紹介記事に解りやすい図があるので、下図にこれを掲載します。

まとめ
3行でまとめます。

・日本の準備預金制度は『預金者保護』ではなく『通貨調節手段』。

・銀行は預金額に準備率(現在は1%前後)をかけた金額を、後日の指定された期日の間(その月の半月後から1ヶ月間)、日銀当座預金に預けなければならない。

・たとえ準備金が維持できなくても、救済措置が用意されている。

これで日本の準備預金制度の解説は以上になります。

読者様にとって、少しでもためになる知識になれば幸いです。

(了)
https://ameblo.jp/sorata31/entry-12433564528.html

23. 2022年1月24日 11:20:43 : 0ZgG7Lev5Y : NEJNVjVPL3B6Skk=[34] 報告
「租税貨幣論」概論
2019年02月12日
https://ameblo.jp/sorata31/entry-12439405717.html

今回のコラムは「租税貨幣論」と「債務ヒエラルキー」の解説になります。

前回の「貨幣負債論(信用貨幣論)」と同様、「進撃の庶民」様のコメント欄における論争で「貨幣負債論」「租税貨幣論」「MMT」の特徴解説を依頼されたことが今回のコラムの発端となります。

それでは、前回に引き続く第二弾、「租税貨幣論」(とおまけで「債務ヒエラルキー」)を、MMTの入門書である、L.ランダル・レイの「現代貨幣論」から紹介します。

「租税貨幣論」とは、税の存在こそが国定通貨を流通させるという理論です。

一般的には、税金には4つの機能があるとされています。

@公共サービスの費用調達機能

A所得の再分配機能

B経済への阻害効果

C景気の調整機能

今回はこのどれにも触れません。

(次回のMMTの解説では、このうちのいくつかについて触れることになります。)

つまり一般的に言われている税の機能以外にも、税には特別な機能がある、というのが「租税貨幣論」の主張になります。

不換通貨の流通
人類は、歴史を遡ると、金、銀、銅といった貴金属を通貨にしていました。

数十年前までの金本位制の時代には、貴金属ではなく紙幣を通貨にしていましたが、その通貨には「ゴールド」という貴金属の裏付けがありました。

その時代の通貨は、「貴金属」という人類史上その価値が高水準で推移してきた「モノ」に交換することが出来ました。

また現在でも「ドルペッグ」といった、特定の通貨に固定(裏付け)された通貨があります。

しかし、日本を含む先進国の通貨は、このような裏付けのない「不換通貨」が主流です。

しかも、「不換通貨」には貴金属のような内在的な価値はありません。

しかし現実に、貴金属による裏付けも内在的価値もない「不換通貨」で商取引が行われています。

コンビニやスーパーでの買い物も「不換通貨」で支払うことが一般的です。

最近ではキャッシュレスで「紙幣」や「硬貨」を使う人々が少なくなりつつありますが、このようなキャッシュレスも「不換通貨」に裏付けられています。(Tポイントなどの通貨での支払いについては後述します。)

なぜ裏付けのない通貨が流通するのでしょう?
この疑問に対する一つの回答として、「法律で決まっているから」というものがあります。

しかし、歴史的には、法律で通貨の種類を決めても、民間においてその通貨での支払いを拒否されることはもちろん、政府への支払いを拒否する例があったそうです。

これでは、「法律で決まっているから」、というのは回答になりそうにありません。

もう一つの回答として、「信頼」- 誰かしらがそれを受け取るという期待 - があります。

あなたは、他の人がその通貨を受け入れるだろうということを知っているので、あなたはあなたの国の通貨を受け入れるだろうという理屈です。

しかしこれは、哲学で言うところの無限後退にあたります。

確かに、通貨の流通は確かに「信頼」で成り立っている部分があります。

しかし、それだけでは、裏付けのない通貨がその国の主流の通貨として流通しているという現状を十分に説明できません。

それでは一体何が主流の通貨となる決め手なのでしょう?

税が貨幣を駆動する
「税金その他の政府への支払い義務」
以下では簡単のために、政府と呼ぶときは、特別な断りがない限り、統合政府のことを指します。

政府は、「どの通貨で、納税およびその他の政府への支払いができるのか」を決めることが出来ます。

その他の政府への支払いというのは、罰金や手数料といったものを指します。

ここで政府は、政府自身が発行する通貨(「日本銀行券」や「日銀当座預金」、「硬貨」など)を「納税に使用できる通貨」に指定できます。

このような通貨を、以下では「国定納税通貨」と呼ぶことにします。

なお、「国定納税通貨」は私の造語です。(レイ「現代貨幣理論」に適当な言葉がなかったためです。)

税金の未払いには罰則があります。

政府がこの罰則を確実に執行する力を持っていれば、

民間はこの罰則を回避するために、指定された通貨を取得して納税に使う必要があります。

つまり、政府は納税義務を民間に課すことができ、義務の不履行に対する罰を執行できる能力を持っていれば、民間の納税通貨に対する需要が確実になります。
言い換えると、民間には納税義務があるので、「国定納税通貨」に対する貨幣需要が生まれるのです。

納税は税務署でもできますが、大半の納税は銀行経由で行われています。

納税者の預金口座から納税額分の預金額が引かれると同時に、銀行の日銀当座預金から政府の日銀当座預金へ納税額分の準備預金が移動します。

このとき銀行の純金融資産は変化しません。

(銀行の負債となる銀行預金と資産となる日銀当座預金で相殺されます。)

銀行は、納税者と政府の仲介者となるわけです。

納税者は納税に使ったっ通貨、つまり国定通貨を他の目的に使用することが出来ます。

政府硬貨や日本銀行券を使って、国内で買い物をすることが出来ますし、住宅ローンなどの民間債務の支払いに充てることも出来ます。

民間企業同士の取引に使うことも出来ます。

使用せずに貯金しておくことも可能です。

ですが、国定通貨のこのような使用法はあくまで派生的なもので、本来は政府への納税のためでした。

民間から政府への納税に先立って、政府は国定納税通貨を民間に供給する必要があります。

先に民間に供給しておかなければ、民間は国定納税通貨を取得できないからです。

国定納税通貨の供給手段には、政府支出や買いオペなどがあります。

政府は税金その他の政府への支払いが、政府自身が発行した通貨で行われる場合、この通貨での支払いを拒むことは出来ません。

自身で発行した借用書に対して対価(納税などの支払い義務の解除)を支払えないということは、デフォルトになってしまうからです。

これは民間からすると、国定納税通貨は政府への支払いとして確実に受領される通貨として保証されることになります。

このことが、民間が国定納税通貨を保有し流通する最大の動機になります。

このように、通貨に確実な使い途があることを、MMTでは通貨の「最終需要」と呼びます。

後述しますが、「最終需要」はどの通貨にも存在し、通貨ごとにその中身は異なります。

国定納税通貨には、「租税」という「強制力を伴った」確実な「最終需要」があるが故に、その国の主流の通貨として流通するのです。

以上が「租税貨幣論」の概論になります。

おまけとして、「租税貨幣論」と関係が深い「債務ピラミッド」という考え方にも簡単に触れておきます。

「債務ピラミッド」には現状いろんな表現(「債務ヒエラルキー」「決済ヒエラルキー」など)がありますが、これらは全て同一の概念です。

前回のコラムでも最後に触れましたが

レイの師であるハイマン・ミンスキーは「誰でもお金は発行できる」「問題は受け入れられるかどうかだ」と言いました。

前回のコラムで説明した通り、通貨とは負債であり、負債とは数値化した義務です。

そして義務は、きっかけさえあれば、誰もが他人に負わせることが出来ます。

しかし債務者はその義務を無視することが可能です。

したがって、債務者にとってその義務を履行するメリットや、その義務を無視したときのデメリットがあれば、債務者がその義務を履行する動機になります。

「租税貨幣論」では納税しなかった時の罰が、債務者が納税義務を履行する動機になりました。

義務を履行するメリットや義務を無視したときのデメリットが、その通貨の「最終需要」となります。

通貨には色々な種類がありますが、その通貨が流通するか(通貨の受け入れやすさ)は「最終需要」によって決まります。

これはヒエラルキー構造を成しており、これを説明するのが「債務ピラミッド」になります。

「債務ピラミッド」の構成
「債務ピラミッド」は以下のような構成でなりたっています。

頂点には統合政府が発行する通貨(「日本銀行券」「日銀当座預金」等)があります。(政府のIOU)

頂点から二番目には銀行通貨(銀行預金など)が位置します。(銀行のIOU)

三番目には銀行以外の金融機関の発行する通貨、負債。(金融機関のIOU)

そしてその下に、会社等が発行する手形などが位置します。(会社のIOU)

底辺は個人が発行する借用書です。(個人のIOU)

統合政府が発行する通貨がピラミッドの頂点にあるのは、前述した通り、「租税」という「強制力を伴った」確実な「最終需要」があるためです。

その国の殆どの場所で決済できるので、その国の主流の通貨としてとして流通します。

対して、底辺の個人が発行する借用書は確実な「最終需要」が殆どないため、通貨としてはとても狭い範囲でしか流通しません。

「債務ピラミッド」には、下位の負債を上位の通貨で必ず決済できるという特徴があります。

まず、銀行による貸付は「日本銀行券」で決済することが出来ます。

銀行以外の金融機関の負債は「日本銀行券」や「銀行通貨」で決済することが出来ます。

手形も「日本銀行券」や「銀行通貨」、銀行以外の金融機関が発行する通貨で決済することが出来ます。

とは言え、ピラミッドの低い位置の負債への決済は、普通、銀行のIOUを使用します。

そして銀行は、政府のIOU(日銀当座預金)を使用して、自分のIOUを精算します。

ここでも銀行は、債務者と債権者の仲介者となるわけです。

もちろん銀行の純金融資産は変化しません。

その逆、上位の負債を下位の通貨で決済すること、は納税の例のように可能ではありますが、以下で示すように必ず決済できるとは保証できません。

Tポイントのようなポイントや電子マネー、暗号通貨も債務ピラミッドのどこかに位置します。

どこに位置するかはその通貨の信用度、言い換えると「最終需要」の確実さによって決まります。

例えば暗号通貨は、どこかの国の債務ピラミッド上位の通貨に交換できるだろうという「信頼」が「最終需要」となるため、ピラミッドの比較的低い位置になります。

上位ヒエラルキーの通貨に交換できるという「信頼」がなくなると、その暗号通貨の価値は暴落します。

したがって、現状の暗号通貨が主流の通貨に取って代わるということは有り得ません。

(暗号通貨に現状以上の「最終需要」が与えられると話は変わってきます。)

最後の個人が発行する借用書ですが、「現代貨幣論」では思考実験として「家族通貨」という通貨を考察しています。

親が子供に家の仕事をさせることで、子供に家族通貨を支払います。

ここで親は子供に納税義務を課します。家族通貨を子供から徴収するのです。

もし納税されなかった場合に罰を与えるとすると、子供は一生懸命働くでしょう。

これは政府と民間の関係と同じであることがわかります。

以上が「債務ピラミッド」の概要です。

次回は、本丸「MMT」とは何ぞや?の解説になります。

追記
「租税貨幣論」で注意すべきことがいくつかあります。

まず、「増税すると経済が拡大する」と言う理論ではないことです。

「租税貨幣論」はあくまで、納税の機能がしっかり働いていれば貨幣が流通する、という話です。

課税額の大小の話ではないのです。

また、「納税の機能がしっかり働かない場合はどうなるの」という疑問が出てくるかと思います。

発展途上国では、脱税や納税回避が横行しており、納税の機能がしっかり働いていません。
ギリシャもその典型です。
そうなると、「高い財政赤字の割に高インフレを招く」ことになります。
通貨が政府に回収されないと生産物の供給量以上に民間に通貨がダブつき、高インフレになります。

現在の日本とは真逆の状態です。

高インフレの状態では、公共事業や防衛装備などの購入はさらなるインフレの上昇を招き、結果として、財政出動による経済発展は困難になります。

このことをMMTでは「国内政策空間」の余地が減少する、と言います。

納税の機能がしっかり働かないと、経済成長を目指す政府にとっては「八方塞がり」になります。

(了)
https://ameblo.jp/sorata31/entry-12439405717.html

24. 保守や右翼には馬鹿し[120] lduO54LiiUWXg4LJgs2Ubo6tgrU 2023年4月10日 17:19:00 : dF0mNGROAc : Y2NOOW5zUUlNbUU=[1] 報告
人力
10時間前
777 さん

日銀の当座預金の内訳で、圧倒的に多いのは都市銀行で、
188兆円、地方銀行68兆円、外国銀行36兆円となっています。その他準備預金制度適用先が117兆円ですが主にゆうちょ銀行でしょう。

超過準備の内訳は都市銀行が181兆円、外国銀行が38兆円となっています。

私も鍛冶屋さんに先日指摘されるまで気付かなかったのですが、都市銀行の「所要準備額」は5.57兆円で、準備預金率は2〜0.05%とかなり低い。ネットで言われる10%は昔の数字か、或いは分かり易い様に10%としているだけの様です。

日銀当座預金が超過準備で一杯という報道がされますが、むしろ法定準備が低い率に設定されていると言った方が正しいのかも知れません。
https://blog.goo.ne.jp/ponpoko2022/e/9ac1b3c03b23ee0ed884cba3c7ac8d11


人力
2023年4月7日
鍛冶屋。さん

さて、日銀の当座預金の利子ですが、現在は超過準備の一部に0.1%の金利が付いています。日銀の説明によれば、コレは短期金利の最低金利に揃うのだそうです。

銀行は日銀に当座預金を預けていますが、短期金利が当座預金の金利を超えたら、日銀当座預金を取り崩します。金利が正常に機能する世界では、超過預金は本来非常に少ない量になる。

では、超過準備に大量の資金がブタ積みされた状態で、短期金利が2%程度に上昇したらどうなるか?当然、銀行は超過準備を取り崩して貸出に振り向ける。この状況は、インフレ率が上昇して、日銀がコール市場金利の誘導目標を2%に引き上げた事を意味します。

日銀はコール市場の金利を引き上げて市場から資金を回収しようとするのに、銀行は日銀当座預金を引き出してコール市場などを通じて資金供給量を増やそうとします。市場の資金量が増えればインフレが加速するので更に金利が引き上げられる負のスパイラルが発生します。

コレを防ぐには日銀当座預金の超過準備の金利を短期金利の誘導目標に引き上げる方法が有効です。ですから金利上昇局面で当座預金金利が上昇すると考える人達が、日銀が金利払いで経営状態が悪化するという予測をしています。

多分FRBはズルいので、金利を引き上げながら超過準備金利を据え置いているのでは?結果的にインフレ対策で金利を上げるポーズだけして市場の資金量が急激に減らない様にしていると思われます。(妄想)2018年も金利引き下げの前に、コッソリ量的緩和をやって市場のショックを吸収していましたから。ECB も日銀も似た様な事をしていると思います。インフレファイターのポーズをとって、一方で供給サイドの蛇口は開けておく。

結果は、短期金利の上昇というよりは、裏口の通貨供給量が減った時に市場に変化が現れる。要はバブル崩壊のタイミングは、金利だけ見ている一般投資家には分からない。

鴨は逃がさない様にしないとね。

人力
2023年4月7日
鍛冶屋。さん

10年以下の日本国債金利が連動するのは、オーバーナイトの超短期金利ですが、日銀はこの金利の上限を0.25%にコントロールしています。インフレ率の上昇が限定的なにhlんでは、インフレ率を気にせずにジャンジャン資金をコール市場に流し込めます。日本国内の資金需要は低調なので、この資金は為替市場でドルに変わって世界市場の最後の貸し手となっています。

ここまでは理解出来ますか?

「今、何%ですから?」というご質問は、この構造を理解した上で発せられるべきです。

一方、日銀は長期金利のコントロールに手を焼いています、。海外のファンドの売り圧力で長期国債金利が上昇して長期金利の上限を引き上げています。コレは金利の低い長期国債を保有する金融機関の含み損を拡大しますが、異次元緩和によって金融機関は国債の残存年数を大幅に縮小しています。満喫保有を前提にしている生保各社は金利上昇の影響は受け難い、。(直評価の第一生命は別ですが)

まあこんな状況ですが、日銀が短期金利の上限を段階的に引き上げる事態になれば世界はパニックになります。

意外な事に、日銀は最悪のタイミングで資金供給を絞るクセがあります。日本のバブルにトドメを刺した「総量規制」や、サブプライムショックの遠因となった「量的緩和の縮小」です。

「今金利は何%なの?」というのは愚問で、「いつ日銀は、とんでも無いタイミングで金利を上げるの?」というのが、このブログ的には正しい質問です。

…あ、ちょっと777さんみたいな書き方になっちゃった。

人力
2023年4月7日
このブログでは、リーマンショック以降、ドル基軸体制が崩壊する未来を色々と妄想して来ましたが、国内しか見ていない日本のリフレ派やMMT支持者とは、最初から議論が全く噛み合いません。

彼らはドル基軸体制や資産市場の崩壊を前提としない国内だけの話に終始し、私は終始、ドル基軸体の崩壊を前提に未来を占っているのだから、議論が噛み合うはずがありません。

巨大地震の発生を前提にした話と、巨大地震など存在しないとする人が、ビルの構造設計の議論をしている様なものです。

シリコンバレー銀行の破綻以降、ドル基軸体制の崩壊が、当然の様に話題になる様になりましたが、私にとっては10年以上夢想した光景が現実になっているだけ。

だから、このブログもある意味ネタ切れなのですが、崩壊後の世界を夢想する楽しみをAIの急速な進歩が提供してくれました。

幸い、投資とは無縁なので、仕事が無くなる覚悟程度しか崩壊に備える事はありませんが、できる事なら特等席で歴史の大変換点を見物したい。その為に10年以上掛けて作った物見台がこのブログです。

鍛冶屋。さんをはじめとするコメント欄の常連さん達と、歴史的なスペクタクルをワイワイと見物する。そんな場所を御用意したので、どうか皆さん最後までお付き合い下さい。
https://blog.goo.ne.jp/ponpoko2022/e/9ac1b3c03b23ee0ed884cba3c7ac8d11

25. 保守や右翼には馬鹿し[121] lduO54LiiUWXg4LJgs2Ubo6tgrU 2023年4月11日 08:43:15 : VePyq3D6DJ : TG1tZHVKd0FDU1k=[1] 報告
日銀当座預金は引き出せる・・・日銀のホームぺージに書いてある
2023-04-11
https://blog.goo.ne.jp/ponpoko2022/e/2ffdca54a8c42226b82ddc06446ca5a0


日銀ホームぺージより

日本銀行当座預金とは何ですか? 利息は付きますか? : 日本銀行 Bank of Japan
https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/kess/i07.htm


■ 銀行は日銀当座預金を引き出せると「日銀のホームページ」に買いてある ■

鍛冶屋さんや、余計なおせっかい(笑)さんから、「日銀当座預金は銀行が自由に引き出したり出来ない決済用の口座だ」とのご指摘を頂いたので、日銀のホームページを掲載します。

「銀行券(お札)は、個人や企業への支払いに必要な分を用意するため、金融機関が日本銀行当座預金から引き出して、日本銀行の窓口から受け取ることによって世の中に送り出されます。これを「銀行券の発行」といいます。

その後、実際に、個人や企業の方々が金融機関から預金を引き出して銀行券を入手し、財(モノ)・サービスの購入や税金の納付といった様々な目的に銀行券が利用されていくことになります。」

■ オペレーションの決済口座としての日銀当座預金 ■

日銀当座預金が引き出せないというMMT界隈の誤解は、「お金は国債発行から生まれる」という事に必要以上に意味を見出すMMT信者が、日銀当座預金の機能がオペレーションの決済口座であるという点しか見えなくなった結果では無いかと妄想しています。(誰かの誤解が拡散したのでは?)

日銀はかつては銀行に資金を直接融資して市中の資金量をコントロールしていました。こと時の金利を「公定歩合」と呼び、市中金利もこれが基準になっていました。不景気の時には公定歩合を下げて、民間の資金需要を拡大し、不景気の時には公定歩合を下げて景気の過熱やインフレを防いだ。しかし、これだと金利決定権を持つ中央銀行の意向によって景気が左右され過ぎる。そこで、市場原理で金利が決定される様に制度改革されます。

中央銀行の金利の誘導目標は、オーバーナイトのコール市場の金利となります。日銀が直接オーバーナイト市場に資金を供給するのではなく、日銀が銀行との間で国債や社債などを売買する「オペレーション」によって、銀行の資金量をコントロールして、間接的にコール市場の資金量を調整して金利を誘導しています。

■ 日銀当座預金の超過準備には金利が付く ■

日銀ホームページより

補完当座預金制度は、日本銀行が受け入れる当座預金等のうち、いわゆる「超過準備」に利息を付す制度です。2008年(平成20年)の制度導入以降、長らくプラスの金利が適用されていました。その後、2016年(平成28年)1月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」が導入されたことにより、「超過準備」部分を含め、日本銀行当座預金は3階層に分割され、それぞれの階層ごとにプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利が適用されることになりました。

この文章から、「日銀当座預金の超過準備はゼロ金利が基本」との勘違いが生じている様ですが、基本的には超過準備の金利はオーバーナイトのコール市場金利に合わせて調節されます。

「FRBの利上げ」とうのは、コール市場への資金供給量の減少によるコール市場金利の上昇という形を撮りますが、通常は市場に国債や社債を打って銀行の資金を回収する「売りオペ」市場から資金を回収します。しかし、国債価格や社債価格が下落している状況(金利は上昇)で、「売りオペ」は実行が難しい。国債金利が上ってしまうからです。

そこで、FRBは現在、FRB当座預金の準備預金金利をコール市場金利に揃えて上げる事で、「利上げ」を行っています。ゼロリスクで金利が得らるので、銀行はFRBの当座預金に余剰資金を預けます。

日本では長らく市場金利が「ゼロ金利」だったので、日銀当座預金の超過準備の金利は本来「0」であるべきですが、日銀はバブル崩壊で傷んだ銀行のバランスシートを改善させる為に、超過準備に0.1%の利付けをしていた。金融機関は民間に融資するよりも日銀当座預金で0.1%の金利を得る方が低リスクで儲かると判断して、ブタ積を増やしました。

しかし、異次元緩和で、超過準備にマイナス金利を導入した事で、銀行はブタ積を続けると損になるので、超過準備を引き出して、民間に融資する様になります。

■ 日銀は直接金融機関に融資もしている ■

日銀はオペレーションの他に直接金融機関に資金を融資をしています。日銀は国債や社債の担保を取って、民間銀行に融資も行います。コール市場の資金量が少なく、資金調達が難しい時など、コール市場の誘導目標の金利で資金を融資します。期間は5年などと長期の場合もある様です。金融機関が国債を保有しているのは、利益の他に、日銀融資の担保の意味合いもあるのです。

この他、コール市場金利が急騰した場合や、円高が加速した時や、コロナ危機で市場の流動性が著しく低下した時には、日銀は銀行への直接融資を拡大します。直近では「コロナオペ」があります。ゼロ金利で100兆円規模の貸し出しを行いました。これは融資なので、後から銀行から回収します。(現在倒産や廃業が増えているのは、コロナオペの融資で生き残ったゾンビ企業が、融資を返済できずに潰れています)

■ 日銀は円高対策で融資する事もある、そして銀行の運用先は海外? ■

下は2012年12月21日の日経新聞の記事

「日銀は20日、民間への融資を増やした銀行に無制限で資金を供給する新しい貸出増加支援制度を創設すると正式に発表した。年間15兆円規模の供給量を見込んでいる。海外向けの融資も制度の対象とし、日銀から得た円資金をドルなどに転換する動きが進むことで、円高是正効果を見込んでいるのが特徴だ。

白川方明総裁は20日の記者会見で「成長力の強化につながる民間の前向きな資金需要を最大限サポートする」と狙いを述べた。

新制度は、金融機関が民間への融資を増やせば増やすほど日銀から低利で資金を得られる仕組み。日銀は事実上のゼロ金利政策を敷いているが、企業の設備投資などが落ち込んでおり、実体経済にマネーがまわっていない。銀行が新制度を使って積極的に融資先を掘り起こすようになれば、前向きな民間投資が促されるとの考えがある。

新制度では年0.1%で最長4年まで借り換えが可能。資金供給の総額の上限は決めず「無制限」とする。貸出期間は2013年1月から14年3月までの15カ月間で、四半期に1回の頻度で実施し、1回目の融資は13年6月ごろとする。

供給額は四半期ごとの金融機関の融資残高が、基準時点とする今年10〜12月期と比べてどれだけ増えたかを算出して決める。日銀によると、最近1年間の金融機関の貸出増加額は全体で約15兆円で、新制度で同額規模の資金供給ができる見通し。

新制度では外貨建てや海外企業向けの貸し出しなど、幅広い融資先を支援制度の対象と認めた。白川総裁は「邦銀の国内融資の伸び率は前年比1%程度だが、海外向けは2割も増えている」と述べ、むしろ海外融資を後押しする色彩が強い。

新制度で海外融資がさらに増えれば、日銀から得た円資金を売ってドルなどの外貨を買う動きが進み、結果として円高を是正する効果があるためだ。外資系金融機関を通じてヘッジファンドなど向けに資金が流れ、低金利の円を元手に高金利通貨などに投資する「円キャリー(借り入れ)取引」が活発化し、一段の円安を促すとの指摘もある。

ただ「海外の金融機関を取り巻く規制環境は厳しい。リスクを伴う融資を積極的に増やすのは難しく、円高是正効果は限られる」(バークレイズ銀行の山本雅文ディレクター)と指摘する声もある。」

上の記事で金利が0.1%なのは、日銀当座預金の金利に合わせたからです。

1)日銀が民間企業に融資する

2)民間企業は海外に融資する

3)円売りドル買いが高まるので、円安に誘導する

要は日銀が「円キャリートレード」を推奨しているのです。

■ 日銀融資が海外融資に使われるのに、銀行が日銀当座預金から引き出した資金を海外融資に使えない訳が無い ■

ほとんどラノベのタイトルの様な小見出しになってしまいましたが・・・銀行が日銀から受けた融資は「他人資本」です。これを民間の銀行は海外の融資先に融資出来ます。融資先とは企業だけでは無く、銀行も含まれます。仮にアメリカの銀行に融資した場合、アメリカの銀行はファンドなどで資金を運用するので、日銀マネーは海外市場を拡大する役割を負います。

日銀に借りたお金ですら海外融資出来るのですから、銀行が日銀から引き出した資金が海外融資に使えない訳が無い。銀行が日銀から引き出した資金の中には、銀行勘定で「自己資金」に相当するものがあれば、それは米国債投資などの直接投資にも使えます。

■ MMT信者は日銀のホームページを読んで基本を勉強しよう ■

今回はコメント欄に頂いた「日銀の当座預金は引き出せない」というご意見に対して、日銀のホームぺ―ジを参照しながら、回答致しました。同時に「日銀当座預金に金利は付かない」というご意見に関しても回答いたしました。

日銀のホームページは、詳しく分かり易く解説されているので、本当に便利です。ただ、最近の記述は「マイナス金利」がベースになっているので、金融が正常化(プラス金利)になった時のオペレーションや、当座預金の金利に関しては、金融調節機能の全体像を把握していないと理解出来出来ないかと思います。

MMT信者の方は、他人をバカ呼ばわりする前に、日銀のホームページを読んで、少し基本を勉強されては如何でしょうか。
https://blog.goo.ne.jp/ponpoko2022/e/2ffdca54a8c42226b82ddc06446ca5a0

26. 保守や右翼には馬鹿し[124] lduO54LiiUWXg4LJgs2Ubo6tgrU 2023年4月13日 07:09:38 : 0xFq7oNS8I : STUzUThjRmpnOXc=[3] 報告

人力
日銀当座預金の役割は

1)準備預金
2)銀行間決済
3)銀行が国債やその他資産を日銀と売買する為の口座
4)銀行が日銀当座預金を引き出して現金化

銀行同士の決済は1億円以下のものは営業終了後に一日分をまとめてお互いの差額のみ決済しますが、日銀当座預金間で数字が動くだけです。この時に資金が足りなければ、コール市場で資金を調達します。コール市場金利は、日銀のオペレーションによる資金量の市中の資金量の調節によって目標金利に誘導されます。買いオペで資金が潤沢に供給される場合はコール市場金利は下がり、ゼロ金利になる。

日銀当座預金の総量は増減しあすが、その要因は以下の3っつ。

(1)日本銀行券の発行残高の増減(銀行券要因)
(2)財政の対民間収支の揚げ・払い(財政等要因)
(3)日本銀行の信用供与・吸収

「当座預金を引き出す」というのは(1)に相当します。
銀行が日銀当座預金を現金で引き出せば日銀当座預金が減り、現金を預け入れれば日銀当座預金は増えます。

銀行が現金を必要とするのは、年金の支給や、預金者の引出しに応じる時です。一方、現金が銀行に入って来るのは、納税や預金があった時。これらがバランスしていれば、銀行は手持ち現金のやりくりで日銀当座預金を引き出したり、預け入れしたりする必要は有りませんが、年金支給日などは手持ち現金が薄くなるので、日銀当座預金を引き出して現金を補充します。

現金は個人の決済手段としては非常に便利で、現金を手渡すだけで決済が完了します。双方が口座を開設して資金をやり取りする必要は有りません。現在ではクレジットカードや電子マネーが普及したので、現金決済の必要性は減りましたが、一昔前までは、買い物などの個人の小口決済の手段は現金が主流でした。銀行は預金口座を通じて、現金の仲介機能も果たしています。

現金(日銀券)はマネタリーベースなので、銀行の信用創造で作る事は出来ません。銀行の信用創造は、確かに「万年筆マネー」で適当な準備預金を日銀当座預金に置いていれば、銀行が融資先の通帳に金額を書き込むだけで生み出せますが、融資された相手が現金でこれを引き出す事も有ります。(多額の現金を持ち歩くのは危険なので普通はあまり有りませんが)

ベースマネーは国債や短期政府証券やその他の資産を日銀が買い入れた時に生まれますが、資産の売り方の日銀当座預金に有る時は単なる数字です。しかし、これを銀行が引出した時には現金になります。

日銀当座預金は日本で活動する海外の銀行も口座を開設していますが、当然銀行間の融資の決裁も日銀当座預金を通じて行われます。海外銀行は円を調達する場合、日本の金融機関から融資という形で借りる方法と、コール市場で調達する方法、為替市場で調達する方法などが有りますが、一番金利負担の少ない方法を選ぶ。

銀行は日銀当座預金を自由に使えるので、コール市場で運用した方が金利が得られる場合は、コール市場に資金を流します。コール市場は銀行間の取引なので、現金は動かずに、日銀当座預金間の数字のやり取りで決済が完結します。

私も書き方が悪く、「日銀当座預金を引き出して外国銀行にお金を貸す」様な書き方をしましたが、実際には日銀当座預金の数字が書き換えられるだけです。

外国銀行の日銀当座預金は、その銀行の資産となるので、当然自由に使えます。日本株を買う事も、日本の不動産に投資する事も出来ます。日銀当座預金は日本の証券会社や海外の投資銀行も口座を開設しています。外国の銀行や投資銀行は、一々現金決済をする事無く、日銀当座預金を通じて日本の銀行と決済が可能です。


人力
余計なおせっかい人 (笑) さん
マネタリーベースは日銀当座預金と現金の合計なので、ご存じの様に銀行の信用創造では増えません。マネタリーベースが増えるのは、日銀が資産を市場から購入した時です。ご指摘の様に、現金(日銀券)は日銀の小口の借用書で、これが何故価値を持つのか正確に説明出来る人は皆無だと思いますが、現金は個人の小口の決済手段として、手渡すだけで決済が終了するので、非常に便利です。
https://blog.goo.ne.jp/ponpoko2022/e/2ffdca54a8c42226b82ddc06446ca5a0

27. 保守や右翼には馬鹿し[127] lduO54LiiUWXg4LJgs2Ubo6tgrU 2023年4月14日 09:04:08 : hqC5yAv54c : L1lENGV3WDUyMHM=[2] 報告

人力
日銀当座預金は現金で引き出せます。だって、日銀のホームページにそう書いてあります。

日銀の超過準備の利付けはマイナス、ゼロ、0.1%に現状分かれていますが、マイナス金利適用ヲ銀行が嫌うので、資金を多く日銀当座預金のにブタ積みしている銀行は、マイナス金利適用分を、プラス金利枠が余っている銀行に貸して利鞘を稼いでいると詳しいページに書かれていました。資金需要を多く抱える銀行に、資金需要が乏しい銀行の資金を流すシスレムで、その為にコール市場金利が0.1%の日銀の当座預金金利の影響を受けるのだとか。

日銀当座預金金利が市中金利に連動して上がるかですが、FRBの政策を見ればわかる様に上がります。コレは量的緩和で資金が市中にジャブジャブの時は、売りオペで資金を回収できないからだそうで、コレはもっと突っ込んで書くと、「量的緩和でバブル化した市場を抱えた経済で、池の鯨化した中央銀行が売りオペをやるとバブルが崩壊する」と言った方が分かりやすい。コレが私たちが最初から言っている「量的緩和に出口は無い」という理由です。

FRBは2018年に利上げと引き締めを断念しましたが、この時はジャンク債市場が崩壊寸前だった。市場が売り圧力を高めてFRBはこれに屈した。利下げが出来たのはインフレ率が低かったからで、現在とは状況が異なります。インフレの芽は早めに摘まないとインフレが加速して金利上昇で信用収縮が発生しますが。コレでバブルが崩壊するので、ECBもFRBも利上げせざるを得ないのです。

日本人は大人しいのでインフレに静かに耐えますが、欧米で高インフレが続くとデモが過激化して暴動に発展する。
https://blog.goo.ne.jp/ponpoko2022/e/2ffdca54a8c42226b82ddc06446ca5a0

28. 保守や右翼には馬鹿し[133] lduO54LiiUWXg4LJgs2Ubo6tgrU 2023年4月20日 11:04:47 : ksghPK0nWQ : Nm9MZEJ0QUJpNFU=[1] 報告
これでなっとく金融調節 | 大和総研
https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/financial/intro-mtcontrol/index.html

中央銀行の金融政策は、様々な経路を通じてお金の流れや経済に影響を与え、私たちの生活に深くかかわっています。 リーマン・ショック以後、金融政策は複雑化し、中央銀行は未踏の領域に足を踏み入れています。中央銀行の業務で、一般に注目されるのは金融政策運営ですが、その効果は金融システムを介して伝播します。金融政策を理解するためには、金融システムに影響を及ぼす金融調節を理解するのが一番の近道です。 「これでなっとく金融調節」では、金融調節の解説を通じて、変容する中央銀行の役割を紐解いていきたいと思います。


2021年10月25日 これでなっとく金融調節
中央銀行による非伝統資産の買入れ
https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/financial/intro-mtcontrol/20211025_022605.html


金融調節から非伝統的金融政策を考えるB
2021年02月25日 これでなっとく金融調節
量的緩和政策下の金融調節
https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/financial/intro-mtcontrol/20210225_022118.html


金融調節から非伝統的金融政策を考えるA
2020年12月10日 これでなっとく金融調節
ゼロ金利政策が金融調節に与えた影響
https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/financial/intro-mtcontrol/20201210_021957.html


金融調節から非伝統的金融政策を考える@
2020年11月25日 これでなっとく金融調節
金融調節を支える常設ファシリティ
https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/financial/intro-mtcontrol/20201125_021898.html


オールド・ノーマルの金融調節C
2020年11月11日 これでなっとく金融調節
オペレーションからわかるシグナル
https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/financial/intro-mtcontrol/20201111_021882.html


オールド・ノーマルの金融調節B
2020年10月28日 これでなっとく金融調節
準備預金制度と日本銀行当座預金
https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/financial/intro-mtcontrol/20201028_021856.html


オールド・ノーマルの金融調節A
2020年10月14日 これでなっとく金融調節
銀行の資金の過不足と日本銀行当座預金
https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/financial/intro-mtcontrol/20201014_021803.html


オールド・ノーマルの金融調節@
2020年09月30日 これでなっとく金融調節
金融調節とは何か?
https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/financial/intro-mtcontrol/20200930_021788.pdf

29. 中川隆[-12632] koaQ7Jey 2023年4月21日 06:30:27 : 7fOrfQmazI : ZlF2UEVsOUo5NHc=[4] 報告
MMT派の信用創造理解:その貢献と限界
February 8, 2022
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3919

筆者は、1月18日に自民党の財政政策検討本部[1]の会合に出席し、信用創造の仕組みについて報告した。MMT(現代貨幣理論)に近い参加者が多いとされる同本部で、3年前に執筆したレポートで筆者が「通説よりも実態に即したもの」と評した[2]MMT派の信用創造論について解説したことになる。筆者の基本的な理解は3年前から変わっていないが、今回はバランスシート(以下、B/S)を図式化したTバランスを使って説明したので、ずっと理解し易いものになったと思う。なお、この会合では、必ずしもMMT派の主張ではないが、日本国内に拡がっている「日銀が国債を買入れれば、国債の償還負担はなくなる」という誤解を正す説明も行なった。こちらもTバランスを使うことで明快に説明できるからである。以下では、この時の筆者の説明について、解説を加えながら紹介し、読者の理解に資することとしたい。

・信用創造の理解:貸出の場合
・信用創造の理解:国債購入の場合
・日銀による国債買いオペの場合
信用創造の理解:貸出の場合
まず、信用創造がどのように行なわれるかだが、普通は預金ないし現金(マネタリーベース)を元手に銀行が貸出を実行することで信用創造がスタートすると考えられている。しかし実際には、MMTが主張するように、「銀行が貸出を実行すると、直ちに同額の預金が生れる」のであり、事前に預金や現金を用意することは必要でない。一般の人には不思議に思われるかも知れないが、銀行員なら貸出とは「借り手の預金口座に貸出額に等しい預金を書き込む」ことに他ならないことを知っている筈だ。この時、銀行のB/Sがどう変化するかと言うと、資産サイドで貸出が、負債サイドでは預金が同額増加しており、B/Sの左右は事前にも事後にもバランスしていることが分かる(図表1)。一方、銀行が原資としての預金や現金を必要とするのは、貸出先の企業が支出を行なうと預金が自行から他行へ流出するからである。その場合の不足資金は通常、市場(日本ではコール市場、米国ではFF市場等)で調達される。これは、MMT派の源流とされるハイマン・ミンスキーが「銀行は、まず現金を手に入れてそれを財源にする貸手ではない。まず貸出を実行して、その後の預金の流出分を賄うため、現金を手に入れるのである」と述べている通りだ[3]。こう考えると、MMT派の信用創造論は従来「信用貨幣論」、「内生的貨幣供給論」などと呼ばれてきたが、「与信先行論」と捉えるのが適切ではないか(この場合、従来の通説は「現金先行論」となる)。

(図表1)信用創造:貸出の場合

出所)筆者作成。以下同

一方、MMTの限界は、3年前のレポートでも指摘した通り、会計論(簿記)に終始していて価格(金利)や均衡の概念を欠くため、どれだけの貸出が実行されるか決定できない点にある。MMT派はしばしば「貸出はどれだけでも行える」などと主張するが、営利企業である銀行が際限なく貸出を実行することはあり得ない。貸出には預金コストのほか、審査費用や貸倒れなどに伴う与信費用が掛かる。これらの費用負担は貸出額が大きいほど重くなるので、限界費用曲線は右上がりになるだろう。そうすると、初級のミクロ経済学で習うように、貸出金利=貸出の限界費用となる点で銀行の利潤は最大となるから、その点で貸出量が決まるのである(図表2・左)。

(図表2)金利と貸出量の決定

この点を理解すると、金融政策が貸出量に影響を与える仕組みも分かる。日銀が短期市場金利を引上げれば、貸出の限界費用曲線が上にシフトするため、貸出量は減少する(図表2・右)。この図では貸出市場を完全競争と見做して貸出金利を水平としたが、貸出市場が不完全競争なら貸出金利は右下がりになるので[4]、短期市場金利が上昇すると、貸出金利が上昇して、貸出量は減少するだろう。

このように、MMT派の信用創造論は銀行貸出の実態を捉えており、MMTが与信先行の信用創造論を再興した意義は大きいと考えられる。しかし、金融界では以前から教科書流の信用創造ではなく、与信先行の方が常識だった。融資の実務に携わる人から見れば、貸出実行に現金が要らないのは当たり前だからだ。実際、筆者が日銀入行後に最初に習ったのも、与信先行の考え方だった[5]。ただし、筆者らは上述の貸出金利・貸出量の決定理論と組み合わせる形で、貸出市場を理解していた[6]。

ここで、この与信先行論と通説である現金先行論の対立が「異次元緩和」の評価とも大きく関係していることを指摘すべきだろう。1990年代前半には、上智大学教授(当時)の岩田規久男氏と日銀調査統計局課長(当時)の翁邦夫氏の間で岩田・翁論争[7]が戦われたが、その根底にあったのもこの違いだった。翁氏が当時のマネーストック減少の原因を「不動産バブル崩壊に伴う銀行貸出の減少」に求めたのに対し、岩田氏は「日銀がマネタリーベースを増やせば、マネーストックは幾らでも増やせる」と主張したのだった。この岩田氏の主張が、後に日銀副総裁に就任して「マネタリーベ−スを大幅に増やせば、短期間に2%インフレを達成できる」とした「異次元緩和」の考え方に繋がっていくことは見易い。しかしこの時も、筆者を含めて日銀OBの多数派は「異次元緩和」に懐疑的だったし、金融界の実務家の間でも「そんなことをしてもブタ積みが増えるだけで、貸出は増えない」という見方が多かったと記憶している。

さらにもう一点、全ての経済学者が教科書的な信用創造論を信奉していた訳ではないことも指摘しておきたい。金融実務をよく知る学者には、与信先行の理解が存在していたのである。その代表が故・池尾和人教授だ。教授は、著書の中で、「まず与信ありき。貸出とは、貸出額に相当する金額を預金口座に記入することに過ぎない。したがって、紙とインクさえあれば、銀行はいくらでも貸出を実行できる」と述べている。典型的な与信先行論であり、これは同教授が異次元緩和の実効性に懐疑的であったことと、完全に符合する[8]。

信用創造の理解:国債購入の場合
次に、銀行が国債を購入する場合を考えてみよう(図表3)。この時、銀行が国債を購入した段階では、@銀行の資産サイドで国債が増える一方、支払いに使った日銀当座預金が同額減少するため、家計や企業からの預金に変化はなく、信用創造は発生しない。しかし、政府が国債発行で調達した資金を使うと、Aその代金は家計や企業の預金の流入するため、(銀行部門全体としては)同額の日銀当座預金が増える。この2段階を通じてみると、銀行のB/Sの資産サイドでは国債保有が増加し、負債サイドでは家計や企業の預金が増加するという形で、貸出の場合と同様に信用創造が行なわれることになる。

(図表3)信用創造:国債購入の場合

しかし、Tバランスだけでは銀行がどれだけ国債を購入するか決定できないのは貸出の場合と同じである。銀行の国債購入量は、国債金利と機会費用(短期金利の予想平均)+リスク・プレミアムの比較で決まる。もう少し詳しく言うと、銀行が求める10年国債の利回りは、今後10年間の短期金利の予想される平均値に資金を固定することに伴うリスク・プレミアムを加えたものになる。リスク・プレミアムは国債購入量が増えるほど大きくなるので、国債利回り=短期金利予想+リスク・プレミアムの所で国債購入量が決まる(図表4・左)。

(図表4)国債購入量の決定

以上では、個々の銀行の国債購入を考え、国債需要曲線と国債金利の交点で国債購入額を求めたが、代わりに市場全体の国債需要曲線と垂直の国債供給の交点で、国債金利が決まると考えることもできる。国債需要曲線は右上がりだから[9]、MMT流の信用創造の見方に立っても、国債の供給が増えれば国債金利は上昇する。また、金融政策の影響を考えると、日銀が短期金利を引上げたり、将来の短期金利上昇の予想を示したりすると、国債需要曲線が上にシフトするため、国債金利は上昇する(図表4・右)。

このように、金融政策は(ゼロ金利の場合を除き)貸出市場にも国債市場にも大きな影響を与え得る。近年、金利のゼロ制約もあって金融政策が限界に直面する中、MMT以外の主流派経済学者も財政政策の重要性を強調するようになってきている。ただ、MMT派との大きな違いは、インフレ時には(増税ではなく)金融引き締めを行なうべきだと考えている点にある[10]。ここで注意すべきは、これらの違いは信用創造のメカニズムをどう捉えるか(現金先行vs与信先行)ではなく、価格(金利)や均衡の概念を明示的に考えているか否かによるという点である。

日銀による国債買いオペの場合
次に、日銀が国債買いオペを行なう場合を考えてみよう。国債買いオペは、証券会社などを通じて事業会社が保有する国債を買入れることもあり得るが、日本では国債の大半が金融機関に保有されているため、日銀が銀行から保有国債を買入れるケースを想定しよう。その場合、結論から言えば、買いオペによって直ちに信用創造が起こることはない。と言うのも、国債買いオペで生じるB/Sの変化は、@民間銀行の資産側で国債が減って、日銀当座預金が増えることと、A日銀の国債保有と当座預金受け入れが同額増えること、の2つだけである(図表5)。家計や企業の預金が増えることはない=信用創造は起こらないということである。

(図表5)日銀の国債買いオペの場合

もちろん、近年の量的緩和政策(日銀の「異次元緩和」を含む)のように、国債買いオペが極めて大規模となり、銀行部門全体が保有する国債のストックが大きく変化するような場合は、前述のメカニズムを通じて国債金利=長期金利が低下する。そうなると、長期金利の低下が銀行の貸出意欲を刺激して、2次的に貸出が増加して信用創造が行なわれることも考えられる。ただ、これはかなり複雑なプロセスであり、簡単なTバランスで分析できるものではない。

最後に、B/S分析の応用として、「日銀が国債を買い入れれば、政府+日銀の統合B/Sから国債が消えるので、国債の償還負担は無くなる」という誤解について一言したい。これは全くのトンデモ話であり、金融市場分析を専門とするエコノミスト、アナリストにはすぐ誤りが分かるが、そうでない一般の人には(後述の理由から)大変分かりにくい誤解である。このため、経済人やマスコミ関係者と話をすると、予想以上に多くの人が惑わされていると感じる(実際には、「そんな筈はない」と思いつつ、どこが間違っているのかよく分からず、困っている人が多い)。しかし、統合B/Sをきちんと理解すれば、正しく理解できるので、少し詳しく説明しよう(以下、図表6 を参照)。

(図表6)日銀の国債買いオペと政府+日銀統合B/S


日銀が国債買いオペを行った時、政府+日銀の統合B/Sがどう変わるかと言うと、資産サイドに変化はないから、負債サイドで国債だけが消えるということはあり得ない。実際に負債サイドで起こるのは、国債の減少と同額の日銀当座預金が増えるということである。ここまでは極めてシンプルだが、問題は「日銀当座預金とはどういうものか」理解している人が極めて少ない点にある。

まず、銀行員なら殆ど誰もが「貸出とは何か」知っているが、日銀当座預金について実感を持って理解しているのは、ごく少数の資金セクションの経験者だけだろう。しかも困ったことに、(日銀に限らず)中央銀行当座預金の性質は10年余り前に一変してしまったのだ。以前は、中央銀行当座預金の大部分は法定準備預金であって、これには銀行券と同様に利子は付されていなかった。ところが、リーマン・ショック後の量的緩和を実行するため、FRB(連邦準備制度理事会)が法定準備を上回る当座預金に短期市場金利を付けるようになり、これに各国が従ったため、性質が変化したのだ。実際、現在の日銀当座預金の総額は約500兆円だが、そのうち法定準備預金は約12兆円に過ぎない[11]。ところが、金融論の教科書で中央銀行当座預金に触れる場合は、その殆どが当座預金=無利子を前提に書かれており、現実とは乖離してしまっているのである。

しかし、統合政府の観点からみれば、日銀当座預金の経済的性質を理解するのは難しくない。統合政府の短期債務で短期市場金利が付されるのだから、それは短期国債に他ならないということである。つまり、日銀の国債買いオペで起こるのは、統合政府の債務が長期国債から短期国債に置き換わるということであり、国債の償還負担が無くなる訳ではない。むしろ、以下の2点に注意が必要になる。まず第1に、現状はゼロ金利ないしマイナス金利だから日銀当座預金への付利を気にする必要はない[12]が、金利がプラスに転じれば、統合政府に利子負担が生じるということである。実際、米国ではFRBが近く利上げを行うと予想されているが、具体的には当座預金に付される金利を引き上げることで利上げが行われるのである。第2に、日銀オペによって統合政府の債務構成は短期化していることである。政府は30年債、40年債といった超長期債の発行を増やしており、それらの金利負担は市場金利が上昇を始めても暫くは増えない筈である。しかし、現実には日銀がその一部を短期国債に置き換えてしまっているため、統合政府でみると早めに金利負担が増えることになる。これは、35年固定の住宅ローンを変動金利に乗り換えるようなものであり、今のような超低金利局面では、政府債務を金利上昇に対して脆弱なものにすることを意味する。

[1] 自民党には現在、財政政策に関して「財政健全化推進本部」と「財政政策検討本部」の2つの本部があるが、後者はMMT論者の西田昌司参院議員が本部長(最高顧問は安倍晋三元首相)を務め、積極財政派が多いとされる組織である。

[2] MMT(現代貨幣理論):その読解と批判 : 富士通総研 (fujitsu.com)。ただし、当時も今も「インフレにならない限り、財政赤字には問題はない」、「インフレになったら、税金を増やせば良い」といったMMTの主張には賛成できない。

[3] ランダル・レイ『ミンスキーと「不安定性」の経済学:MMTの源流へ』、2021年、白水社から引用。ミンスキーの著書には『ケインズ理論とは何か』、2017年、岩波書店などがある。

[4] 貸出市場には地域的な分断があり、かつ銀行と企業の間の顧客関係も存在するため、不完全競争と考えるのが自然である。

[5] 筆者が習ったのは、後に日銀考査局長、ちばぎん総研社長などを務めた横山昭雄氏の著書『現代の金融構造』、1977年、日本経済新聞社だった。同氏は、その後同様の考え方を 『真説:経済・金融の仕組み』、2015年、日本評論社でも示している。

[6] 図表2の原型は、後に日銀金融研究所長、同理事、野村総研理事長などを務めた鈴木淑夫氏が『金融政策の効果:銀行行動の理論と計測』、1966年、東洋経済新報社で示したものである。

[7] 岩田規久男『金融政策の経済学:「日銀理論」の検証』、1993年、日本経済新聞社。翁邦夫『金融政策:中央銀行の視点と選択』、1993年、東洋経済新報社。

[8] 前者は『現代の金融入門(新版)』、2010年、ちくま新書からの引用であり、同氏の「異次元緩和」への懐疑論は『連続講義:デフレと金融政策』、2013年、日経BP社に示されている。

[9] 正確には、所与の価格でどれだけの数量を需要するかを示す需要曲線ではなく、所与の数量に対しどれだけの価格を求めるかを示す逆需要曲線である。

[10] 主流派経済学者の低金利下での財政政策の考え方については、ブランシャールの説明が最も広く受け入れられている。Olivier Blanchard,“Public Debt and Low Interest Rates”, 2019, American Economic Review、―,“The Mayekawa Lecture: Fiscal Policy under Low Interest Rates”, 2021, Monetary and Economic Studiesを参照。

[11] 中央銀行が当座預金(したがってマネタリーベース)の規模を大幅に拡大できたのは、超過準備への付利を行った結果である。こう考えると、安易に使われる「お札を刷る」といった表現にも注意が必要である。銀行券に付利が行われない限り、莫大なお札を刷っても、それが国民に受け入れられるとは限らないからだ。つまり、お札を刷って数百兆円の国債を買い入れることはできない。

[12] 2016年のマイナス金利政策導入後、現実の日銀当座預金にはマイナス、ゼロ、プラス金利と複雑な階層構造が設けられているが、これらの詳細はここでの議論の本質に関係しない。

https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3919

30. 保守や右翼には馬鹿し[138] lduO54LiiUWXg4LJgs2Ubo6tgrU 2023年4月25日 07:00:13 : 5A1eYpHRSU : R3lJTXBHYjROV2s=[1] 報告
■ 金融機関の間の決済は、日銀当座預金間の決済で現金は使われない ■

先ず私の間違いですが、「銀行は日銀当座預金を引き出して投資出来る」は現実には「銀行は日銀当座預金を使って投資出来る」というのが正しい。

金融機関の間の決済を現金で決済していたら、現金輸送車が走り回って大変な事になります。そこで、金融機関が保有する日銀当座預金間で決済が行われます。当然私もこの事は知っていますが、ついつい「預金を引き出して」と書いてしまったので、現金決済をする様な誤解を与えたと思います。これは私が「日銀当座預金を使って」と訂正させて頂きます。

■ 日銀当座預金は引き出せない? ■

上記を巡るやり取りの中で、「日銀当座預金は引き出せない」との発言がお二方からあり、777さんと私は「日銀当座預金を銀行は現金で引き出せる」と反論しました。

日銀当座預金が現金で引き出せなければ、国民は現金を受け取る事が出来ないので、銀行は日銀当座預金を現金化出来ます。直近では鍛冶屋。さんは「銀行のカウンターを現金が通貨したら日銀当座預金として扱われる」という表現に変更された様です。まあ、これ以上議論しても押し問答となるので、この問題は、読者の皆様が判断されれば良いかと思います。

■ 銀行が預金(他人資本)をで購入できる有価証券はリスクの低いもののみ ■

この点は私も曖昧に議論を進めてしまいましたが、銀行は間接金融の担い手として、預金を主に貸出で運用しています。これが7割と言われています。貸出の他の預金運用として、日銀当座預金で金利を稼いだり、有価証券で運用したりもします。但し、預金で運用できる有価証券はリスクの低いものが中心となり、直ぐに現金化出来る流動性の高い資産である事が求められます。日本国債や地方債などが中心です。

■ 銀行は経営の健全性の為に自己資本を有し、それを運用している ■

銀行は株式を売買したり、米国債を購入したり、更にデリバティブを購入したりしていますが、これらのリスク性の高い運用は、自己資本で行っています。銀行は預金の貸し倒れに備えて、自己資本を保有しています。自己資本は主に株式発行によって増やす事が出来ます。現在はBISの規定により、国債業務を行う銀行は、自己資本比率(自己資本/預金)が8%以上である事が求められます。国内業務だけであれば、自己資本比率は4%以上となります。

銀行は自己資本を様々な方法で運用して利益を上げています。米国債投資や、リスクの高い米国のローン担保証券(CLO)なども保有していますが、有価証券などのリスク性資産は、そのリスクに応じて係数が投資額に掛けられます。自国国債はリスク0とされ、保有自国国債の全額を自己資本に計上できますが、他国国債などは為替リスクやデフォルトリスクなどを加味して係数がが決められます。

前回の議論で、「銀行が米国債を買う」などのケースでは、銀行は自己資本でこれを購入します。自己資本は信用創造で作り出す事は出来ません。銀行は株式発行などで現金を調達して自己資本を増やします。銀行はこの他に社債などを発行して資金を調達しますが、社債は負債なので返済義務があります。

日本では銀行業務と証券業務は法律で区分されています。法改正で銀行は50%以上出資する子会社で証券業務を行える様になりましたが、銀行本体が証券業務を行う事はできません(国債などの公債を除く)。銀行窓口で投資信託などが販売されていますが、基本的には証券会社の販売代行で、手数料ビジネスです。

■ 無節操な自己勘定取引が引き起こしたリーマンショック ■

この様に、銀行の投資リスクは適性にコントロールされる事が求められます。ハイリスク・ハイリターンな冒険的な投資で失敗して自己資本を減らすと、保有資産の含み損が膨らんだり、預金引き出しが大幅に増えた時に債務超過に陥る危険性があるからです。銀行は資金流通や金融仲介機能という公の性質を持った業態なので、簡単に倒産する様な運営は法律が禁じていますし、金融庁が監視しています。

リーマンショックの際には、アメリカの銀行は自己資本を使った取引(自己勘定取引)を大幅に拡大して、様々なデリバティブを購入したり、大きなレバレッジを掛けるハイリスクなヘッジファンドに投資をしたりしていました。その結果、市場価格が大幅に下がった時に、ほぼ全ての銀行が債務超過に陥りました。この反省カラ、ボルガールールによって、アメリカの銀行の自己勘定取引は大幅に規制されました。(トランプがだいぶ緩和しましたが)

■ ゆうちょ銀行や農林中金は「異常」な銀行 ■

この様に、銀行が扱う預金(他人資本)の運用には、大きな制約が掛かっていますが、このルールが適用されない金融機関が日本には2社存在します。ゆうちょ銀行と、農林中金です。

ゆうちょ銀行は「銀行」と名付けられていますが、その実態は証券会社や投資銀行に近い。ゆうちょ銀行は他人資本である貯金を融資する事が禁じられています。そこで米国債やその他の有価証券で運用しています。

農林中金はもっと不思議な銀行で、農業者や漁業者から預かったお金を銀行同様に融資出来ますが、さらに預かったお金を米国債投資やジャンク債投資で使う事も出来ます。

現在、世界の金融界は、この2社が次のシリコンバレーバンクとなるのでは無いかと警戒しています。リスク管理が杜撰だからです。

■ 「金貸し業」から「総合金融業」に変化が求められる銀行 ■

日本は従来、企業が銀行融資で運転資金を調達する「間接金融」が盛んでした。しかし、社債や株式発行などで資金調達する企業が増えて来ると、従来の間接金融の役割は小さくなります。実際に銀行の貸出量は年々減っています。

一方で、銀行は自己資本のリスク運用を拡大しています。銀行は金融を通じて利益を上げる「総合金融業」に変化をしていますが、証券会社との垣根は低くなっています。

私は素人なので、コメント欄で色々勉強させて頂いています。まあ、MMTに関しては、もうどうでも良いかなと思っています。視点は新鮮ですが、支持する方の多くは積極財政でもっとお金が欲しい、税金を払いたく無いという方が多い。要は自民党の利権に連なる人と、生活が苦しいネトウヨ層が、MMTを支持しています。最近の財政拡大の免罪符として機能していますが、インフレ率が高まれば、MMTは忘れ去られる。

本日は、最近の議論を、私なりにまとめてみました。
https://blog.goo.ne.jp/ponpoko2022/e/154d6f5550dc827a725431e1a37d68ca

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