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「共産主義国家」の破綻原因 − 所有形態や計画経済にあらず − 投稿者 あっしら 日時 2002 年 9 月 28 日 00:02:53:

このボードで3週間ほど前まで「共産主義国家」の行き詰まりや破綻の要因について論議が行われていた。

そこで展開されていた内容が従来的思考の枠組みを超えていないと思われるので、簡単ながら持論を提起したい。


いわゆる「共産主義国家」は市場原理が貫徹している「近代経済システム」を基盤としており、「資本主義国家」と異なるのは、所有形態と経済価値観だけである。

「共産主義国家」は、鉱工業など近代産業の生産手段と土地が国家所有ないし集団所有である。
そして、そういう所有形態であることを認める経済価値観が経済的平等主義である。

しかし、これらの条件が「共産主義国家」の経済的行き詰まりや破綻の要因ではない。

日本を考えればわかるように、近代産業の生産手段が私的所有であるということは事実ではあっても、経営及び事業活動は雇われ人たちが行っている。

思考実験をするならば、日本国民に近代産業の生産手段の私的所有権を分配して、歴史的現実と同じ経営者が同じ報酬条件で経営を行っても、パフォーマンスにそれほどの違いがなかったのではないかという設問ができる。
(私的所有権の分配は、法的規定だけでいいし、果実は税負担の軽減であってもいい。それでも私的所有であることに変わりはない)

それに対しては、それならソニーやホンダは出現しなかったのではないかという反問も出るだろう。

しかし、井深氏や本田氏が会社の支配権である株式の保有量やそれがもたらす果実にこだわって事業にいそしんだと判断するのは失礼だと思われる。
彼らに“アイデア”や“夢”を実現する手段を提供し、それが経済価値を生み出すものであれば多額の報酬を与えるという条件であっても、同じパフォーマンスを発揮したと考えるほうが妥当性は高いだろう。
より言えば、“アイデア”や“夢”を実現する手段を提供しただけでも、同じパフォーマンスを残した可能性もある。

さらに言えば、“アイデア”や“夢”を実現する手段を提供する仕組みと事業化サポート制度があれば、現実のなかでは埋もれていった物づくりの才覚者が、ソニーやホンダに劣らないパフォーマンスを発揮した可能性さえある。
資金調達能力や商才に欠けていたが故に、ソニーやホンダになれなかったケースは多いはずだ。

物づくりと資金調達能力や商才は別次元のものである。
生産手段から遠ざけられ、資金調達能力や商才がなければ物づくりの才能が発揮できない「資本主義国家」のほうが、社会の活力を削いできた可能性が高いのである。

まず、破綻要因としての所有形態は的外れである。
経済的平等主義が経済発展を遅らせた可能性は否定しないが、それがそれほど深刻な打撃を与えたとは思えない。(最近話題の青色ダイオードを開発した中村氏も、失礼ながらしがないサラリーマン開発者である)

そうなると、残る要因は、市場原理と競争原理ということになる。

最初に書いたように、「共産主義国家」も、計画経済だと言われるが、社会的分業と通貨を媒介とした交換という市場原理を基礎とした市場経済システムである。

あのような計画経済になった最大の要因は、後述するように、戦時体制国家だからである。
計画経済自体は、日本でも米国でも企業ベース及び国家ベースで行われており、「共産主義国家」はそれを国家機構がやっていたに過ぎないものである。
平時であれば、国家機構の計画立案担当者が商才に長けているかどうかの問題になるが、戦時であれば、商才とは無関係の判断が横行することになる。
(日本や欧米諸国も、第二次世界大戦中は巨大な計画経済国家であった)

競争原理については、私的所有が認められていなくとも、いかようにもインセンティブを付けられるものであり、ソ連も、戦時体制を強化するためであったが、試行錯誤的に模索した。
平時体制で経済的平等主義さえ脱却すれば、優れた経営者や開発者そしてデザイナーなどに高額報酬を提供することは可能である。
(利潤の必要がない分、優れた活動力を有している人を優遇することができる)


【「共産主義国家」が破綻した要因】

● 資本主義の“悲惨”原因を労働者からの搾取と認識

 マルクス資本論の「剰余価値説」を真理と考えたことから、労働者から搾取しなければ豊かな経済社会が築けるという錯誤に陥った。
(利潤の源泉は貿易黒字もしくは通貨的“富”の移転である。近代経済学もこの論理がわかっていないから現状の日本経済に対応できない)


● 自国の経済制度が資本主義であることの無理解

 資本の増殖を通じて人々の経済条件が向上していくという「国民経済の論理」に規定されていることを認識できず、“搾取”がなくなれば経済条件が改善されるとノーテンキに考えた。


● “戦時体制国家”を「共産主義国家」と錯誤

 革命干渉戦争→対独戦争→冷戦と、ソ連が生まれて崩壊するまで戦時体制であったからやむを得ないことであるが、「資本主義国家」でも統制経済に移行する戦時体制をあたかも共産主義(社会主義)的経済体制と錯誤した。
 「共産主義破綻」の最大要因は、この“戦時体制”の継続で厖大な資源(人及び財)が浪費されたことである。そして、“戦時体制”が、国民抑圧を必要とし正当化するものとなった。(米国でさえ、第二次世界大戦中は、言論統制や日系人強制収容所送りが行われた)

 国家が経済活動を統御することが当然と考えられ軍備に資源を最優先することがもっともだと認められる“戦時体制”だったからである。
 「共産主義国家」が“平時体制”であれば、商才に乏しい官僚が資源の配分を行う愚ははるか昔に吹っ飛んでいたであろう。計画経済に破綻要因があったのではなく、根源的には、“戦時体制”であったことで軍需優先の資源配分が行われたことが破綻要因である。

 ソ連や中国が、軍事のために消費した厖大な人的活動力や資源を民生用に振り向けていれば、違った歴史過程になっていたはずである。


● 資本主義先進諸国からの経済封鎖

 戦時体制でないとしても、日本や欧米諸国との経済関係が極めて制限されたものであれば、近代的経済成長を遂げることはできない。
 戦後日本経済が歩んできたように、当初は先行している国民経済から生産財を輸入し、それで生産した財を輸出し、徐々に自前で最先端の生産財を生産できる歴史過程を歩んでいれば、資源大国であるソ連は、名実ともに米国と並ぶ大国になっていたはずである。

 私的利潤を必要としないだけ、ソ連のほうが優位に経済競争を勝ち抜いていたと推測する。

このような意味で、米国が取り続けたソ連敵視政策と対共産圏貿易制限政策は、「共産主義国家」を政治体制に縛り付け交易条件的に経済成長を阻止した“大ヒット政策”と言える。

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