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Re: 「勝者の蹉跌」を「第2の敗戦」にしないために 投稿者 あっしら 日時 2002 年 7 月 29 日 17:32:04:

(回答先: これからの日本の行方はイバラの道。それでも進むしかありません。 投稿者 匿名希望 日時 2002 年 7 月 29 日 05:27:24)

貴殿のようなキャリア官僚が希有な存在ではなく、それなりのキャリア官僚は、国家政策立案担当者としての気概を持って仕事に励んでいると信じています。
キャリア制度をそのまま是認するわけではありませんが、どういう制度であれ、量で質を補うことはできません。質で量を補い切ることもできませんが、量は量で補えます。

率直に言って、さすがに日本のというか財務省のキャリア官僚だと感じています。
実に失礼な表現になりますが、豊富な知識をベースにご自身の思考力で現実を捉えられ、それを基に政策立案業務を行われていることにある種の安堵感と大いなる期待感を抱いています。

貴殿との論議を通じて今感じているのは、統治機構と国民の間の“架け橋”として存在するメディアのふがいなさです。
統治機構に位置する人とこういうやり取りが出来る機会は稀で、国民は、メディアや国会中継を通じて統治者の考えを知ることしかできません。
メディアは、統治機構から情報を収集するとしても、自分の思考力で現実と政策の整合性をチェックし、自分の論理で記事にする能力を問われています。
レクチャーやプレスキットを切り貼りして記事を書くというレベルでは、インターネット時代においては存在意義がありません。それならば、生のまま直接提供してもらったほうがずっと役に立ちます。01年度と01年度第4四半期のGDPデータに関する報道も、報道内容に依拠するより、生のデータをじっくり考える方がずっと日本経済の現実と先行きがみえるものです。
(悪く言えば、メディアは、特権とタダで入手した情報を紙や電波にのせて有料(CM含む)で配布して稼ぐ存在になってしまっています)

メディアの政権・政治家・官僚に対する批判は意義があると思っていますが、読者の不満意識にただのっかるものであったり、批判のネタを海外の論調の知識(そのような論調のベースにある世界観を抜きにした)に依存しているようでは、一利はあるとしても、害の方が大きいと考えています。

付け加えると、ごく一部の人を除けば、メディアで自説を語っている経済評論家や経済学者も、一利はあるとしても害の方が大きい存在になっています。(不十分な説(理論)でも、自分自身が真摯に考えた結果であれば、それはそれで良しだと考えていますが、知識の切り貼りでは存在意義は希薄になります)

日本のみならず世界そのものが歴史上未踏の経済状況に踏み込んでいるのですから、既存の知識を手がかりとして有効に活用するにしても、自分の思考力で現実世界を解釈しなければ有効な策を生み出すことはできません。


もう一つ率直に言えば、自説のある部分が政策として採り入れられることは、あるとしてもしばらく先になるだろうと考えています。

個人や企業は、自分が生き残ること、自分ができるだけ有利な経済条件を手に入れることを第一義に考えます。だからこそ、近代経済全体そして日本経済はここまで到達したとも言えます。
自説が、現在の経済段階では、企業も資産家も一般勤労者も揃ってより有利な経済条件を手に入れる唯一の政策であるとしても、個々の経済主体が目に見える損得で物事を判断するという習性に抗うことは困難だと思っています。

貴殿ならご理解いただけると思いますが、自説は、まさに究極の“企業優遇政策”であり“金持ち優遇政策”です。(近代国民経済は、経済主体(企業)の発展なくして、発展することはできません)

資本制経済システムがここまで社会の隅々まで浸透した国民経済においては、低所得者や非就業者に通貨を一時的に分配したとしても、必ず経済主体(企業)に戻ってくるものです。逆に、経済主体が何かに備えるという名目であっても後生大事に余剰通貨を保有していれば、備えた事態に遭遇したり、経済主体の地位から脱落することになります。
(預金や株価を考えればわかるように、そのような余剰通貨の維持自体が危ういことにもなります)

だからと言って、経済社会の血液である通貨をとにかく流すことに意義があると野放図な金融政策を採れば、バブルの形成と崩壊につながるだけです。

余剰通貨は、資本化しない限り、経済的に意味のあるものにはなりません。
しかし、資本化(=供給体制)しても、需要がおなじであったり減少していく経済状況であれば、破棄される資本に転落してしまいます。
新たな資本化はイコール需要増加ですが、他の資本が減少したり、所得が現在の状況で貯蓄に回される割合が増加すれば、その効果は打ち消されてしまいます。

レーガノミックスと言われたサプライサイド&規制緩和政策の失敗は、このような経済論理を軽く見ていたことに拠ると考えています。
金融資本や新規経済主体(オーナー)は、貸し出しを増加してそれがきちんと回収できたり、投資した通貨を株式を高値のうちに売却することで利益を得るとしても、国民経済は、その分傷つくことになります。(現在米国で進行している経済状況も同じです)

貯蓄が投資に回らない、すなわち、貯蓄=投資ではなく貯蓄>投資である経済状況を、出来うる限り貯蓄=投資に近づける政策を採らない限り、とりわけ日本、そして先進国全体が経済的苦境を乗り越えることはできません。
そして、貯蓄>投資という経済状況が長期化することでいちばん大きな打撃を受けるのは、金融資本です。
(バブル形成も貯蓄=投資に近づける政策の一つですが、その代償の大きさは既知です)

先ほど、自説のある部分が政策として採り入れられることは、あるとしてもしばらく先になるだろうと書きましたが、ずっと先ではなく、しばらく先と書いたのは、それなりの根拠があるからです。


>優良企業の多くはグローバルな競争を展開しており、国民経済に資する為に自社のコ
>スト競争力を犠牲にするような選択はしないでしょう。

>かつてヘンリー・フォードが、自社製品である自動車の普及を図るため、(顧客とな
>りうる)従業員の賃金を大幅に上げ、成功したという伝説があります。今ほど世界の
>グローバル化が進んでおらず、有力な競合相手も存在しなかった古き良き時代のおと
>ぎばなしだと言えるでしょう。

このまま歴史が刻み続けられていけば、世界=先進諸国は、まもなく「同時的デフレ不況」に見舞われます。
預言者ではないので正確な時期を特定することはできませんが、現在既に進行中で、明確に意識され始めるのは、今年の末から来年の初めではないかと考えています。
(それについては、「一時的なもの」であるとか、「インフレ抑制は好ましい」とかの言説も出てきて、重要視されないとも思っています)

まさに、良きにつけ、悪しきにつけ、「グローバル経済」なのです。

世界最大規模の輸入額を誇る米国経済が失速すれば、同じ輸入額でもより量の多い輸入が行われるか、輸入額が減少しても出来るだけ量が減らない輸入が行われるようになります。
わかりやすく言えば、質より量の輸入が行われるようになり、国民経済内で生産できるものはできるだけ輸入を排除しようと言う動きが強まります。

さらに、米国経済が輸入を維持するためには、経常収支の赤字を埋めてくれる資本収支の黒字が必要です。しかし、米国経済の失速はドルの還流を減少させるので、輸入額相対が縮小せざるを得ません。

ドイツの産業のように、限られた需要層向け耐久消費財や特化した生産財の輸出比率が高いのであればそれほど影響を受けませんが、高品質普及品のウェイトが高い日本は、深刻な影響を受けます。(ドイツ経済は、そのような特質を持っていながら、国際競争力を高めるためと称して国外に製造拠点を移していることで低迷を続けています。VWを東欧を安く生産してドイツに持ってきても、製造拠点が移転したためにドイツでそれを購入できる人が相対的に減少しているため販売不振になってしまうという論理です)

端的に言えば、日本経済は、低中品質普及品の輸出で国民経済を牽引している中国の影響を強く受けることになります。(もちろん、日本の経済主体のなかでも、中国向け生産財の輸出増加でメリットを受けたり、中国を製造拠点にしている企業の収益が増加するという側面はあります)

日本企業は、このような状況のなかで、中国経済の発展のために日本経済のみならず自分自身を犠牲にするのかという選択を必ずや迫られることになります。

中国は、市場主義に移行しても、統制経済であることや自国第一主義(愛国主義)であることは変わっていません。
外資や輸入財に依存しているのも、自立的な近代国民経済を確立するための過程的手段として位置づけられているものです。
通貨(外貨)的に問題がなくなれば自国の経済主体で生産活動を行いたいと考えているし、技術水準を高めることで解決できるものは自国で生産できるようになりたいと考えています。

中国企業が日本企業に本格的にキャッチアップすれば、叩き出すというあこぎなことはしないとしても、日本企業の中国内活動に対して、陰に陽に風当たりが強くなります。(欧米のブランド品製造拠点のほうがまだ優遇されるでしょう)

日本の経済主体を親身にサポートするのは、日本国以外にはないのです。

そうなることを期待しているわけではないのですが、「世界同時デフレ不況」は、日本が政策や経済価値観を軌道修正する絶好の機会になると考えています。

企業も、グロバール経済であることを前提にしながらも、本拠地である日本経済に目と軸足を移さざるを得なくなると考えています。

(奥田経団連会長は、夏期セミナーで、日本の人口減少問題などを取り上げて税制が変更されないのであれば、本社の海外移転も考えざるを得ないという趣旨の発言をしていましたが、強気に言えば「どうぞお好きに移転なされば」と言いたいし、理性的に言えば「日本にいる方がなんにしろずっとお得ですよ」と言いたいし、感情的に言えば「トヨタをはじめとする輸出企業の多くは、輸出振興策・外資に対する直接投資規制・優先的融資・教育振興などの国策に拠ってここまでこれたのではないか。トヨタのために道路や高速道路を造ったとか、トヨタが持ち続けた旧住友銀行への怨念を国民が持つようになるとは言わないが」と言いたい)


今後1、2年に起きる「世界同時デフレ不況」であれば、もっとも高い耐性を示すのは、国際競争力を維持しながら余剰通貨に恵まれている日本経済です。

「世界同時デフレ不況」の時期に合理性のある経済・通貨政策を打ち出せば、経済団体や諸企業を含めた幅広い層に理解が得られる可能性が高いと考えています。(甘いですかね(笑))


>中国が供給拠点としてのプレゼンスを増大させる中、日本の産業空洞化問題が指摘さ
>れ始めています。現状では賛否両論分かれていますが、この問題は放置すると日本経
>済にとって大変大きな災厄となり得ます(10―30年のタームで)。地理的条件からして
>も、先進国で最も甚大な被害を被るのは日本です。不釣合いに低い水準で米ドルに
>ペッグする現行の中国の通貨政策に対しては、そろそろ関係諸国との連携を強化した
>対応を練る時期に来ています。

前半部分に対する考えは既述していますので控えます。

「不釣合いに低い水準で米ドルにペッグする現行の中国の通貨政策」は、日本を中心とした先進諸国に打撃を与えるのみならず、中長期的には、中国自身にも打撃を与えます。

中国のせいではなく先進諸国の余剰通貨問題が主要な要因ですが、「世界同時デフレ不況」は、「世界の工場」としての中国の役割が高まったことにより起きるという側面もあります。

自国通貨安ということは、国際競争力を高めると同時に、財を安く輸出する=「労働価値」を安く流出させることを意味します。

自国の労働成果を安く売り、外国の労働成果を高く買うことになるので、「働いても働いても残るお金が少ないという状況」と「外から買う財がえらく高いという状況」になります。
そして、通貨的に国際競争力が維持されていると、国際競争力の真の源泉である「労働価値」の上昇を遅らせる働きをします。13億人という人口を抱えている中国であればなおさらです。

日本経済に打撃を与えないためにも、「世界同時デフレ不況」を深化させないためにも、そして、中国経済のためにも(付け加えればアジア諸国のためにも)、「不釣合いに低い水準で米ドルにペッグする現行の中国の通貨政策」を改め、変動相場制に移行しなければならないと考えています。


私の予測が当たるか当たらないかは別として、貴殿が、いつかはやって来る日本及び世界の経済変動に備えて、政権及び国会議員、そして、国民及び経済主体に幅広く受け入れられる政策を準備されることを切に期待しています。


しつこい念押しで恐縮ですが、富裕者や高額所得者への増税ではなく減税という政策や低中所得者への増税(公的負担増)政策、そして、利益に対する課税である法人税の無意味な減税政策は、絶対に「デフレ不況」を緩和することができず、逆に悪化させるものであることを申し添えます。
もちろん、そのような政策が財政危機の緩和に貢献することもありません。

そのような誤った政策を実施すれば、必ずや、「勝者の蹉跌」が「第2の敗戦」になってしまいます。

政策軌道修正に残された猶予期間は、2ないし3年です。


お忙しかったり、諸事情があれば、レスはことさら求めていませんのでこのまま放置してください。

私も、大変有意義な機会を持てたことをうれしく思っております。ありがとうございました。


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