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「参院選はSNSの影響が出やすい」有権者動向を研究してきた政治学者が解く根拠 注目の人 直撃インタビュー
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/374235
2025/07/04 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し
井田正道(明治大学政治経済学部教授)
井田正道氏(C)日刊ゲンダイ
参院選が3日公示された。石破政権が非改選を含めた過半数を維持できるのかが焦点ではあるが、先の東京都議選で自公は敗れ、一方で、国民民主党や参政党が議席を獲得するなど新興政党の伸長も見られた。有権者の意識にどのような変化が起きているのか。昨年来、選挙におけるSNSの影響も無視できなくなっている。長年、有権者動向を研究してきた政治学者に聞いた。
◇ ◇ ◇
──参院選の前哨戦とされた都議選の結果をどう見ましたか。
これまでも都議選と同じ年や翌年に国政選挙がありましたが、選挙の時期が離れると、必ずしも結果が反映されてきたわけではありません。しかし、今年は12年に1度の都議選の1カ月後に参院選がある年で、距離がすごく近い。過去のケースでは、都議選の結果が参院選に似たような形で反映されています。都議選での自民党惨敗の影響は参院選にも確実に及ぶと思います。
──都議選で注目されたポイントは?
老舗政党の退潮ですね。老舗の定義を結党して半世紀以上経っている政党とすると、自民党、公明党、共産党。いずれも議席を減らしています。特に、自民、公明、共産が根を張っていた城東地区(東京東部)で力が相当弱まっています。これは有権者と政治家の距離が遠くなったからでしょう。マンション建設で新住民が増え、地域密着型の議員との接触が希薄になり、日頃の人間関係で投票行動が決まるという従来のスタイルが崩れています。
──都議選では「都民ファーストの会」が第1党になりましたが、参院選で都ファの票はどこへ行くと思われますか。
割れるのではないでしょうか。都ファは小池都知事がつくった地域政党ではあるけれど、中核的に選挙運動をやってきたのは旧民主党系の人だったりする。右や左の明確なイデオロギーがある政党ではないので、調査すると支持層は国民民主党と近い中道保守がコア層なんです。ただ、それはあくまでコア層であって、より保守的な層や、より革新的な層にも広がっていく。そういう政党なので、国民民主だけでなく、立憲民主党や自民への投票もあるでしょう。
──都ファの候補がいないことが、参院選では自民にプラスに働く?
ある程度、自民に入れる人はいる。ですが、問題は都議選の結果が全国で知られ、それ自体が影響を及ぼしていることです。小泉農相効果で石破政権や自民は少し支持率を戻しましたが、それを帳消しするにあまりあるマイナスの影響を、都議選結果はもたらし得る。
──昨年来、「SNS選挙」という言葉もできました。有権者の意識はどう変化していますか。
有権者と政治家の距離感は、物理的なものと心理的なものを分けて考える必要があります。「直接あの人を知っている」という意味では距離が遠くなっている。しかし、SNSによって心理的な距離感はむしろ近くなったと感じる人も増えています。直接会わなくても対話しているような疑似体験ができるようになった。トランプ米大統領がSNSを活用するのも、メディアを介さず国民に直接メッセージを届ける手法です。有権者は政治家との距離感で3つか4つの層に分かれ、昨年の都知事選での石丸現象や兵庫県知事選での斎藤現象は、心理的距離が近いと感じる層が積極的にSNSで発信し、選挙結果に影響を与えたということだと思います。
──SNSを通じて選挙が「推し活」になっている現象もあります。
そうですね。かつての保守・革新といった政治的イデオロギーの対立軸が崩れてきています。特に50代前半以下の世代で顕著です。例えば、私たち60代では、国民民主は中道か中道保守と位置づけられますが、減税政策では立憲よりも自民から遠い。争点によって政党との距離感が変わり、何を重視するかで有権者の投票行動も変わる。平気で軸をも超えてしまう。
──イデオロギーによる対立軸ではなくなっている。
実際、どの政党が保守か革新かという調査をすると、共産より維新を革新とする人も多い。「政治的意味空間」と言いますが、この空間の把握の仕方が多様化しています。政治的な空間で、どの党とどの党が対立し、どの党が近いかという見方が一律ではないんです。特にポスト55年体制に新しく有権者になった世代ですね。1990年代半ばに20歳になった、現在50歳前後を境に政治の見方が変わっています。この世代は政党が次々とできては消える時代を経験しているため、政党に対する認識が固定化していません。50歳前後を境に世代間ギャップがあります。
既存政党エリート層に対する反発で新党に期待
都議選は惨敗(C)日刊ゲンダイ
──20代、30代の政治意識についてはどうですか。
比較的保守的で、現状を一気に変えることに抵抗感がある。しかし、だからといって「自民党万歳」ではない。その世代の支持率は国民民主が高いのですが、それは戦略勝ちで、「手取りを増やす」「103万円の壁」など若い人や現役世代に特化した訴えをアピールした結果です。これまで若い人向けのアピールを優先する政党がなかったので、彼らの心を掴んだ。加えて、若い人はリーダーシップが強い方に惹かれるんです。20代の自民支持が上がったのは中曽根政権と小泉政権と第2次安倍政権でした。その意味では、いまの国民民主は玉木代表の看板で持っているところがあり、若い人が強いリーダーシップを感じているのではないか。一方、調整型の立憲・野田代表のようなタイプや自民党でいえば岸田前首相や石破首相には惹きつけられないんだと思います。
──有権者の政治に対する意識が多様化していくから多党化するのでしょうか。
職業構造や階級構造は非常に複雑化しています。当然、人々の要求するものも多様化し、それに応える政党が細分化していくわけです。最初にお話ししたように、政治家と会って直接要望を伝えることが減り、距離感が開いていく。もちろんSNSで要望を伝えることはできますが、政治家の側も、それが本当に有権者の求めていることかどうかよく分からなくなり、混乱しているように思います。人々のニーズの多様化に政治が追いついていかない時代に入ってきてもいます。
──今度の参院選も多党化により票が分散する?
参政党が都議選で3議席取るとは、ほとんどの人が予測していなかった。しかも、2位や3位など上位で当選しています。その都度、有権者が反応する相手が変わるので、そこは全く読めません。
──何が起きているのだと思われますか。
ポピュリズムの範囲かなという気はします。定義が難しいのですが、一つは既存のエリートに対する不信感。それが米国ではトランプ現象、欧州でも同様の現象が出てきている。日本でも与野党問わず既存の政党エリート層に対する反発を抱いている人が新しい政党に期待するような、ポピュリズム的な要素はあると思います。直接的要因はインフレ、それとグローバル化。文化の問題に焦点を置いた人が意外に健闘している現状がある。
──新興政党の伸長も有権者の意識の変化の一環でしょうか。
有権者が変わったというより、SNSやインターネットで情報環境が変わったんだと思います。かつては組織がないと、選挙運動をやっても砂に水をまくようなものだったのですが、ネット社会になり、多くの人に見てもらえるようになった。この情報環境の変化が大きい。「ある界隈では有名な人」というのが増えている気がします。都議選では1人区の千代田区で無所属候補が都ファと自民を破った。「都議会のドン」と呼ばれた自民の内田茂さんがずっと勝ち続けてきた選挙区ですよ。あれはもう、私にとっては最大の驚きでした。
──参院選ではSNSの影響がより大きくなりそうですか。
SNSが特に選挙結果に影響を及ぼしやすい条件の一つは、選挙運動期間が長いことです。参院選は17日間と長く、週末が2回あるので影響が出やすい。また、有権者と政治家の距離が遠いほどSNSの影響力は増します。何らかの「波」が起きるかもしれません。
(聞き手=小塚かおる/日刊ゲンダイ)
▽井田正道(いだ・まさみち) 1960年、東京都生まれ。早稲田大商学部卒、明治大大学院政治経済学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は計量政治学(選挙分析、政治意識・世論研究)。近著に「日本の選挙と有権者」。
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