http://www.asyura2.com/25/warb26/msg/234.html
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田中宇の国際ニュース解説 無料版 2025年7月15日 https://tanakanews.com/
■Perplexity AI要約
シリア新政権の実権を握るHTSとその指導者シャラアは、筆者によればイスラエルの傀儡である可能性が高い。他の専門家に同様の指摘は見られず、証拠は明示できないが、中東各地の説明しがたい動きの背後にイスラエルの影響力が感じられるとしている。イスラエルは、HTS支持などを通じてトルコやアゼルバイジャンの台頭を促し、中東や中央アジアで覇権を拡げている。また、クルド人勢力への支援打ち切りやアルメニアへの態度転換もイスラエルの戦略変化と解釈。かつての米英中心の単独覇権体制が崩れ、多極型の国際秩序の中で、イスラエルが独自の黒幕的影響力・覇権を拡大していると論じる。
■全文
アルカイダからの派生組織HTSの頭目であるアハマド・シャラアが大統領をしている新生シリアは、イスラエルの傀儡国だろうと私は考えている。
私は中東関連の情報を毎日漁っているが、私以外にシャラアやHTSの政権がイスラエルの傀儡だろうという指摘は見たことがない。イスラエル傀儡説は、私だけが言っていることだ。
私自身、確たる証拠を提示できるわけでもない。世の中から見ると「隠れ多極主義」などと同様に「田中宇の妄想・思い込み」だろう。
https://www.zerohedge.com/geopolitical/us-ends-foreign-terrorist-designation-syrias-hts-nearly-2-months-after-trump-met-its
US Ends Foreign Terror Designation On Syria's HTS, Nearly 2 Months AFTER Trump Met Its Leader
だが私から見ると、シリア内戦に負けてトルコ監視下のイドリブで蟄居していたシャラアのHTSが、わずか2週間でアサド政権を倒してシリアの政権をとった裏には、どう考えてもイスラエルがいる。
HTS決起の黒幕は、トルコでなくイスラエルだ。トルコは、あんなに見事に隠然とやれない。イスラエルは米英の諜報界に入り込んで握っているが、トルコは米英諜報界の傘下にいる。イスラエルの諜報力は、トルコより2段ぐらい格が上だ。
なぜ突然HTSが強くなってシリアを政権転覆できたのか、合理的な解説記事を見たことがない。この「説明のなさ」や、イスラエルがHTSを隠然と傀儡化している点そのものが、イスラエルの強さを示している。
https://www.timesofisrael.com/syria-willing-to-work-with-us-on-return-to-1974-disengagement-deal-with-israel/amp/
Syria says willing to work with US on return to 1974 disengagement deal with Israel
イスラエルがHTSを使ってシリアを政権転覆していく流れの中で、それまでシリアの制空権を持っていたロシアは、あっさりと、しかも隠然と、イスラエルにシリアの制空権を譲った。このロシアの動きも、HTSがイスラエルの傀儡であることを物語っている。
イスラエル(リクード系)は隠れ多極派なので、以前からプーチンに、米英諜報界から盗んだ重要情報を流している。だからプーチンはイスラエルが大好きで、一緒に多極化を進めている。
もう一人イスラエルが大好きなトランプが、プーチンとこっそり仲良しなのは当然だ。米露イスラエルは協力し合って多極化を進めている。
https://www.atalayar.com/en/articulo/politics/israel-intends-to-include-lebanon-and-syria-in-the-abraham-accords/20250630155341216405.amp.html
Israel intends to include Lebanon and Syria in the Abraham Accords
コーカサスでもイスラエルは、支援する先をアルメニアからアゼルバイジャンに鞍替えし、ナゴルノカラバフ紛争での勝者をアルメニアからアゼルバイジャンに変えさせた。ショボい独裁国だったアゼルバイジャンは、急に国際政治力をつけた。
アルメニアは、アゼルバイジャンよりも強くて優秀な国なのに、何の理由もなくナゴルノカラバフを放棄してアゼルバイジャンに明け渡し、その上でアゼルバイジャンと和解した。
この不可解・奇妙な展開について合理的に解説している記事を、マスコミでもオルトメディアでも見たことがない。
https://tanakanews.com/250702armenia.htm
コーカサスをトルコに与える
私から見ると、これらの事態は、不可解さ、説明のなさも含め、イスラエル臭がプンプンする。近現代の世界において、イスラエル(ユダヤ人)は、報道や解説(や捏造や歪曲や陰謀論扱い)を担当してきた。
イスラエルは、それっぽいウソの解説を作って流布して人類を軽信させることもできたはずだが、なぜかそれをやっていない。わかる人にはわかるように、痕跡を残しているのか。
アングロサクソンは、ウソの解説を作って流布させたがる。イスラエルは違う。もっとぶっきらぼうだ。
https://www.ynetnews.com/article/rkxzrkeugg
Israeli, Syrian officials to meet during al-Sharaa visit to Baku
先日、トルコからの分離独立を目指して武装闘争(テロ活動)してきたクルド人の組織PKKが、武装放棄を宣言した。今後は民主的な政治闘争だけをやっていく。
これは昨秋からの動きだが、なぜPKKが武装放棄するのか、納得できる解説記事がない。これも、イスラエル臭がする。
https://www.atalayar.com/en/articulo/politics/peace-with-the-pkk-in-turkey-could-be-getting-closer/20250706160000216503.amp.html
Peace with the PKK in Turkey could be getting closer
クルド人は、トルコ・イラク・イラン・シリアに分断されて、各国で少数勢力として抑圧され、各国のクルド人は分離独立運動を、政治的・軍事的に続けてきた。
これまで単独覇権体制を保持してきた米英(イスラエル)は、中東を弱い状態にして支配し続けるために、PKKなど各国のクルド人の組織を支援して分離独立運動を扇動し、それを弾圧するトルコ・イラク・イラン・シリアを非難・制裁して弱めてきた。
イスラエルは、米英覇権勢力の一部として、米英の代理として各国のクルド人勢力を支援してきた。
https://www.nytimes.com/2025/07/11/world/middleeast/pkk-turkey-conflict-arms-peace.html
Kurdish Fighters Burn Weapons in Step Toward Peace With Turkey
しかし近年、米英が(リクード系など隠れ多極派の策略によって)自滅させられて覇権が弱まり、中露BRICSが台頭して覇権構造が多極化した。
イスラエルは米英覇権の維持に協力する策から、多極型の世界で中東の覇権国になる策に転換した。その前にイスラエルは、覇権運営機関である米英諜報界に入り込んで乗っ取り、米英が持っていた中東覇権を自分のものにしている。
その流れの中でイスラエルは、クルド人を使って中東を弱体化・分断支配する米英式の覇権策をやめようとしている。
イスラエルは、アルメニアへの隠然支援をやめることで、アルメニアがアゼルバイジャンに譲歩せざるを得なくなる事態を作った。同様にイスラエルは、PKKへの隠然支援をやめることで、PKKが武装放棄してトルコ敵視をやめざるを得なくなる事態を作ったと考えられる。
シリアでも、クルド人はイスラエルからの支援を打ち切られ、クルド民兵団(YPG)はイスラエル傀儡のHTS政権の軍門に下った。
https://news.antiwar.com/2025/07/02/report-israel-syria-talks-propose-us-troop-deployment-to-territory-israel-captured-in-southern-syria/
Israel-Syria Talks Propose US Troop Deployment To Territory Israel Captured in Southern Syria
私は以前、シリアを傀儡化したイスラエルが、シリアの南部から、東部のクルド人地域へと伸びる回廊状の地域を支配して、クルド人をテコ入れしてトルコやイランやイラクに対抗させる「ダビデ回廊」を作る構想が出ていると書いた。
今回のイスラエルの動きは、ダビデ回廊の話と正反対の方向だ。イスラエル軍は、ドルーズ派を守る名目でシリア南部に駐留しているが、そこからクルド地域の方への進出はしていない。
ダビデ回廊の話は具現化していない。あの話は、目くらましてとして流されたのかもしれない。
https://tanakanews.com/250420israel.htm
米国の中東覇権を継承するイスラエル
アゼルバイジャンとクルドの事態からうかがえるのは、イスラエルが、トルコと、トルコ系のアゼルバイジャンをテコ入れして、中東から中央アジアに覇権拡大したいトルコ勢力の黒幕になろうとしていることだ。
中央アジアのウズベキスタン、トルクメニスタン、カザフスタンなどはトルコ系の民族だ。トルコは冷戦後しばらくの間、中央アジアのトルコ系諸国との関係を強化する覇権拡大策を試みていた。
911後、中露が結束して中央アジア諸国を取り込んで上海協力機構を作り、中央アジアが中露の傘下に入る傾向を強めたため、中央アジアでのトルコの影響力は下火になった。
イスラエルは今回、トルコとアゼルバイジャンを強化し、トルコが再び中央アジアに覇権拡大するように仕向けている。イスラエルは、中央アジアに覇権拡大するトルコの黒幕になることで、中央アジアに覇権拡大しようとしている。
そもそも覇権とは黒幕的な、隠然とした国際影響力の拡大だ。トルコを使わず、イスラエル自身が覇権拡大すれば良いのに、と思う人は、覇権とか諜報とかが持つ意味合いがわかっていない(私自身、わかっていないけど)。
イスラエルは、米英諜報界で集めた情報を(選択的に)トルコに与え、見返りにトルコは覇権拡大した中央アジアの情報をイスラエルに与える。
中央アジアには、すでに中露が覇権を持っている。そこにトルコ(やイスラエル)が入っていくと、潰し合いの覇権争いになるかといえば、そうでもない。中露は、話し合いながら相互乗り入れして影響力を行使している。そこにトルコ(やイスラエル)が入っていく。
https://korybko.substack.com/p/whyd-erdogan-decide-to-expand-turkiyes
Why’d Erdogan Decide To Expand Turkiye’s Sphere Of Influence Eastwards?
こういう流れが始まると同時に、ロシアがアフガニスタンのタリバン政権を世界で最初に正式承認した。
ロシアは、中央アジアからアフガニスタン、パキスタン(もしくはイランとインド洋)を経由して、インドまで石油ガスを送るパイプラインを作りたい。
ロシアを皮切りに今後、中国やイランやパキスタンや印度やアラブ諸国(や米欧)も、タリバン政権を正式承認していくだろう。
これらの周辺諸大国は、潰し合うのでなく、協力もしくは錯綜しつつ、中央アジアやアフガニスタンに影響力を行使していく。これが多極型世界の世界秩序の流儀になる。
https://www.zerohedge.com/geopolitical/russias-formal-recognition-taliban-comes-crucial-time-broader-region
Russia's Formal Recognition Of The Taliban Comes At A Crucial Time For The Broader Region
イスラエルは、アゼルバイジャンやトルコをテコ入れして中央アジアに覇権拡大しているのと同時に、UAEやサウジアラビアをテコ入れしてアフリカなどに覇権拡大している。
UAEは、イスラエルと組むことで国際的な影響力が大幅に強化された。UAEの兄貴分であるサウジは、イスラム世界の盟主なので、まだイスラエルと正式な国交を結べないが、間接的・非公式に、イスラエルとの関係を深めている。
イスラエルは、UAEとサウジをテコ入れしたのと同じ戦略として、アゼルバイジャンとトルコをテコ入れし、中東とその周辺への影響力(覇権)を強化している。
イスラエルがアゼルバイジャンやトルコにテコ入れするのは、イランを包囲するためだという説がある。私は、その説を採らない。
イランを包囲・封じ込め・弱体化する策は、単独覇権体制を維持する英米の戦略だ。マスコミ権威筋や軽信者たちは、いまだに単独覇権が世界を席巻しているかのように錯覚し続けているが、世界はすでに多極型だ。
イスラエルがイランを弱体化する策は、先日の12日間の攻撃で終わったと考えられる。弱体化したイランは、イスラエルに報復して倒そうとしていない。イスラエルにとって、イランの脅威はかなり下がった。
イスラエルはイランを政権転覆して潰すのでなく、多極型世界の不文律に従って、イランと共存していくと考えられる。そのために、まずイランを攻撃して弱体化させたのだろう。
https://www.zerohedge.com/geopolitical/syria-wants-lebanons-tripoli-swap-israel-held-golan-heights
Syria Wants Lebanon's Tripoli In Swap For Israel-Held Golan Heights
このテーマでは、まだまだ書くべきことがある。ガザの話も書いてない。今回の記事も、まとまりがない。
もともと書きたかったのは、イスラエルがシリアからゴラン高原を奪ったまま、代わりにレバノン北部を奪ってシリアに与えるという、大英帝国顔負けのとんでもないことをやろうとしている、という話だったが、そこに至る導入部だけで今回は長くなってしまった。今回はもういいやという気持ちになっているので、改めて書く。
https://www.newarab.com/news/syria-eyeing-tripoli-parts-lebanon-peace-israel
Is Syria demanding Tripoli and parts of Lebanon in exchange for peace with Israel?
この記事はウェブサイトにも載せました。
https://tanakanews.com/250715israel.htm
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