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[経世済民133] 人口減少社会 価値観転換を 「私はエリートだから農協に落ち着いたのは忸怩たる思い」団塊ジュニアのしくじり人生 救いがない…? 就職氷河期世代は「尊厳」をこんなに奪われていた 増税で家計消費減、静岡県内10月景気調査 日本経済が停滞したのは、「無気力人間」が急増しているから 日本の生産性が低いのは、我々が「合理性」を憎んでいるから 伝説の香港大富豪、習主席との「長く特殊な関係」
人口減少社会 価値観転換を 

八木澤徹(日刊工業新聞 編集委員兼論説委員)

【まとめ】

・平成は格差による社会の分断を生んだ時代。

・高齢化比率上昇が多くの問題を生んだ。

・令和の時代からは成熟国家としての価値観の転換が必要。

天候陛下のご即位をお祝いする国民祭典と祝賀パレードが行われ、令和の時代がやってきたことを実感した。さて、令和の世はどんな時代になるのだろうか。

平成の時代、世界経済の急速なグローバル化は全世界に格差による社会の分断を生んだ。バブル崩壊後の日本でも、非正規社員の急増による中間所得層の地盤沈下を招き、戦後の「1億総中流社会」が崩壊した時代でもあった。

現在、4割に達する非正規社員の増加の要因は、円高による大企業工場の海外移転と新卒採用の縮小、それと専業主婦たちのパート労働市場への大量参入が挙げられる。「寿退社」や「出産離職」した女性が正社員として復帰する機会は少なく、子供たちの教育費で疲弊する家計を助けるためにパートとして働くことを余儀なくされていった。

加えて、就職氷河期に遭遇した「団塊ジュニア世代」がフリーター、ニート化していった。これは皮肉としか言えない。親世代の「団塊の世代」が子世代の就職機会を奪ったということだからだ。某元高級官僚による無職の40歳代の息子を殺害した事件は世間に襲撃を与えた。

リストラ時代でも労働組合によって正社員の既得権益は守られ、企業は雇用維持を名目に賃金抑制に舵を切ったことが今日の生産性低下を招き、人口減、デフレ経済の泥沼にはまってしまった。

高度成長期を支えた団塊の世代は2025年には75歳以上の後期高齢者となり、その子ども世代の団塊ジュニアも35年に65歳以上の前期高齢者となる。特に正規雇用比率、既婚率が低い団塊ジュニア世代の高齢化は日本経済に深刻な影響を与える。

▲写真 サラリーマン(イメージ)出典:Pixabay; mercado2

人口減少は最大のデフレ要因だが、人口の高齢化比率上昇はそれに拍車をかける。

社会保障制度改革の司令塔となる「全世代型社会保障検討会議」の議論が始まった。検討会議は「団塊の世代」が75歳以上となる2022年以降も見据え、70歳まで働ける制度を設けることや、年金受給開始年齢を70歳超まで拡大させることなどを検討する。

また、後期高齢者の医療費・介護サービス利用者負担を現行の1割から2割に引き上げることも検討する。

人口増を前提としてきた戦後の経済成長神話と社会保障制度はとうの昔に終わった。平成が団塊の世代の既得権を守るための30年だったとすれば、令和の前半の20年間は団塊の世代の年金を守るための時代になりかねない。人口ピラミッドが「たこつぼ」化しているからだ。

では、日本のこれからの国家像はどうあるべきなのだろうか。

江戸時代の日本は人口は3000万人程度で一定に推移している。しかも鎖国政策で貿易は制限されていた。その中で、浮世絵や歌舞伎、浄瑠璃、和算、からくり人形など世界に類を見ない文化芸術の爛熟(らんじゅく)期を迎えている。

人口減という「右肩下がり」の令和の日本に必要なのは、高度成長期の「夢をもう一度」ではなく、現実を見据えた成熟国家としての価値観の転換だと思う。

トップ写真:高齢者(イメージ)出典:Pixabay;pasja1000

タグ:デフレ, 人口減少, 八木澤徹, 団塊ジュニア, 正規雇用, 社会保障, 非正規雇用
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この記事を書いた人
八木澤徹日刊工業新聞編集委員兼論説委員
1960年1月、栃木県生まれ。日刊工業新聞社に入社後、記者として鉄鋼、通信、自動車、都庁、商社、総務省、厚生労働省など各分野を担当。編集委員を経て2005年4月から論説委員を兼務。経営学士。厚生労働省「技能検定の職種等の見直しに関する専門調査会」専門委員。


・主な著書


「ジャパンポスト郵政民営化40万組織の攻防」(B&Tブックス)、「ひと目でわかるNTTデータ」(同)、「技能伝承技能五輪への挑戦」(JAVADA選書)、「にっぽん株式会社 戦後50年」(共著、日刊工業新聞社)、「だまされるな郵政民営化」(共著、新風舎)などがある。

八木澤徹
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「私はエリートだから農協に落ち着いたのは忸怩たる思い」団塊ジュニアのしくじり人生
2019年12月2日(月)17時30分
印南敦史(作家、書評家)

16
2

Newsweek Japan

<私たちはどこで「しくじった」のか――。団塊ジュニア・氷河期世代の失敗を同世代が聞き取ったドキュメントから得るべき教訓>

『ドキュメント しくじり世代――団塊ジュニア・氷河期中年15人の失敗白書』(日野百草・著、第三書館)は、自身がその世代にあたる著者が、さまざまな境遇にある15人の同世代から話を聞き取ったドキュメントである。


 私達が団塊ジュニアと呼ばれ、そして後に氷河期世代と呼ばれて、どのくらいの時が経っただろう。
 若い若いと言われ続けた団塊ジュニアは、ついに社会的な区分で言うところの、中高年を迎えてしまった。
 昭和、平成、令和――すっかりおじさん、おばさんである。(3ページ「しくじり世代―いま、中年となって―」より)

言うまでもなく、激動する社会の渦の中で成長してきた世代である。1990年代前半にバブルが崩壊し、1995年1月には阪神淡路大震災が発生し、その2カ月後にはオウム真理教による地下鉄サリン事件が起こり、1997年には山一證券が破綻し......と、いま振り返ってみてもいろいろあり過ぎた時代だった。

その時期に10代を過ごした彼らが社会に出ると、既に就職氷河期。終身雇用神話の崩壊を眼前に突き付けられた初めての世代である彼らは結果的に、明るい未来を"約束されない"世代として生きていくことを義務付けられたのだった。


 私達は正社員かもしれない、非正規かもしれない、スーパースターとして大金を稼いでいるかもしれないし、いまだにフリーターやニート、引きこもりの境遇にあえいでいるかもしれない。病気で苦しんでいるかもしれないし、心を病んでいるかもしれない。アラフォーとなり、私達団塊ジュニアの格差も明確になりつつある。人によっては、残念ながらもう逆転には時遅し、かもしれない。(中略)私達は、仲間は、どこで「しくじった」のだろうか。(4〜5ページ「しくじり世代―いま、中年となって―」より)

エリートサラリーマンからテレビディレクター、バンドマン、劇団員、実家住まいのネトウヨまで、ここに登場する15人は職種も地位も境遇も多種多様だ。当然ながら生き方や考え方もそれぞれ異なっているが、ひとつだけ共通しているのは"しくじり世代"であることだ。

「夢がなければ続かない」「ほんと歴史の過渡期だった」
例えば高校卒業後に大手芸能事務所の芸人養成校へ進んだお笑い芸人は、一度もブレイクしたことがないが、「普通の社会人になるなら死ぬ」とまで断言し、フリーで芸人を続けている。

そこまでお笑いに執着するのは、「金持ちになりたい」という思いがあるからだ。彼によれば、野球選手や漫画家だと才能のあるなしが影響するが、お笑いには誰でもチャンスがあるというのである。だから自分のようなダメ人間でも、一攫千金が夢ではないという発想だ。


 ずっと六畳風呂なしのアパートに住んでますけど、独りでいると不安になります。このまま孤独死するんじゃないかって。スポットで派遣のバイトもやってるので生活の心配はないですけど、それだって海っぺりの倉庫で梱包詰めとか、住宅街の倉庫で保険会社や旅行会社のノベルティの袋詰めとか、正直終わってる仕事です。芸人としての夢がなければ続きません。(29ページより)

次のページストレス解消法は売れている芸人をネットで攻撃すること
そんな彼のストレス解消法は、売れている芸人をネットで攻撃することだ(もちろん匿名)。ちょっとでも何かあったら、全力で叩くという。「お互いやってること」だし、匿名だからやりたい放題なのだそうだ。


 若いし北大出てるし、元拓銀マンならなんとかなると思ったけど甘かった。あの頃は一度レールに外れると東大卒すら無理じゃないかって時代でしたよ。ほんと歴史の過渡期だったと思います。(90ページより)

こちらは北海道に生まれ、札幌の名門公立校から北海道大学?拓殖銀行というルートを進んできたエリート。拓銀の破綻後、信販会社、農協と職を転々としてきた。


 底辺の連中からしたらしくじってないと思うかもしれませんけど、私はエリートですから、やっぱり農協に落ち着いたってのは忸怩たる思いはありますよ。食うや食わずのアホ高卒やバカ専門出じゃないんだから。あのまま拓銀が存続してたらなあと思います。(91?92ページより)

今では「公務員になっていればよかった」と悔やんでいるが、あの頃拓銀に入れるような人間が公務員になるなんて、普通は考えないと断言する。


 俺たちの世代はどいつもこいつもろくでもない奴ばっかりだよね。団塊の悪口言ってるけど、俺達こそ日本のゴミだよ、ネットで悪口言ってるのも団塊ジュニアばっかりだっていうじゃない? 氷河期言い訳にしたクズ世代、全員死ねって感じ。そしたら俺も死ぬよ。(98ページより)

そう語るのは、20年も実家に引きこもってネットの世界に没頭している「子供部屋おじさん」。地元では神童と呼ばれ、県下一の公立高校に進学するも、大学卒業時に就職氷河期のあおりを受けることになった。

就職活動も全滅状態だったが、なんとか金融系の上場企業へ。ところがいわゆるブラック企業で、結局は辞職することになる。以来、ずっと実家に引きこもり、ゲームやアニメ三昧だ。


 地方のナンバースクールから名門大学に行ったらレールに乗って安泰だって俺の親はもちろん上の世代はみんな言ってたし、日本って国全体がそれを当たり前みたいに考えてた。それなのに俺たちの世代からは自己責任です弱肉強食ですって酷すぎる。(103ページより)

そう訴える彼にも、当然不安は訪れる。そんなとき、やはり行き着く先はネットだ。学歴系のネタサイトや掲示板に書き込み、暴れるのである。叩く対象は、主に"地元のバカなマンモス私立高校"や"底辺工業高校"出身者だ。彼らは(学歴で)自分に負けた連中だから容赦はしない。

次のページ自分の意思とは裏腹に「選ばれた世代」の一員となってしまった
被害者意識を身にまとっているだけでは何も解決しない
ここで挙げた3人は、あくまで一例に過ぎない。ずいぶん屈折しているなとも感じるが、自分の意思とは裏腹に「選ばれた世代」の一員となってしまったことは事実なのだから仕方がないのかもしれない。さまざまな境遇の中で、不器用にもがいているのだ。

つまり彼らはある種の被害者なのだが、その被害者にも考えるべきことがあると著者は指摘している。重要なのはこの点だ。


 氷河期世代と嘆くのも、氷河期のせいにするのも四十代となるともはや甘えでしかない。私達はすでにおじさんおばさんであり、子の父であり母であり、そうでなくとも社会を、家庭を、自身を引っ張っていかなければならない年齢である。それなのにいまだに小中学生気分で子供じみた趣味趣向に溺れ、子供じみた競争意識ばかりにうつつを抜かし、もはや引退したはずの団塊世代に八つ当たりを繰り返す駄々っ子おじさんとおばさんのままである。
 繰り返すが我々はもう四十代だ、もう残りの人生は半分あるかないかなのだ。時間はあるようでない、ないことをまず自覚しよう。(203ページ「おわりに――何者にもなれなかった私たち」より)

もちろん被害者ではあるのだろうが、被害者意識を身にまとっているだけでは何も解決しない。そもそも時間がなさ過ぎる。だからこそ、今からでも意識を変革すべきだという考え方である。

そして氷河期世代ではない人々にも、すべきことがあるだろう。彼らの現状を他人事として捉えず、自分事として受け止めることだ。

なぜなら他の世代の人々も、"たまたま"その世代から外れただけで、決して部外者ではないから。彼らと同じ目線で社会を見つめ直さない限り、何も解決することはない。自分の人生が時代に翻弄されることは、誰にでも、そしてこれからも、起こり得るのだ。


『ドキュメント しくじり世代――
 団塊ジュニア・氷河期中年15人の失敗白書』
 日野百草 著
 第三書館

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[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に「ライフハッカー[日本版]」「東洋経済オンライン」「WEBRONZA」「サライ.jp」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)をはじめ、ベストセラーとなった『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)など著作多数。


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増税で家計消費減、静岡県内10月景気調査 静岡経済研
南関東・静岡
2019/12/2 20:30
静岡経済研究所(静岡市)が発表した10月の県内景気ウオッチャー調査は、企業の景況感を示す現状判断指数(DI)は前回調査から2.7ポイント低下し34.2だった。増税で家計消費が大幅に悪化した。先行きの不透明感から、6四半期連続で景気の横ばいを示す50を下回った。

静岡経済研究所は静岡銀行系のシンクタンクだ(静岡市)

家計消費関連DIは6.5ポイント低い31.3だった。飲食店などではラグビーワールドカップで来客数が増加したといった声がある一方で、増税による買い控えや台風などの天候不良で客足が遠のいた。事業所向けビジネス関連は42.5で、受注量の減少が目立った。雇用関連(38.9)は6.4ポイント増加したが、求人数の減少で依然悪化が続く。

3カ月先の方向性を示す先行き判断指数は前回から2ポイント上昇の42.6だった。同経済研究所は、2020年6月末で終了するキャッシュレス決済時のポイント還元制度や7月の東京五輪など、景気に影響する節目の多い年明けに注目しているという。

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静岡県内の景況感、2期連続悪化 日銀6月短観
2019/7/1 19:44
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52869470S9A201C1L61000/


 

 

救いがない…? 就職氷河期世代は「尊厳」をこんなに奪われていた
絶望の質にも勝ち組と負け組がある
平岡 陽明小説家
プロフィール
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「ロスジェネ」とはなんだったのか? “40歳、フリーランスのライター、正規雇用なし、未婚”という就職氷河期ど真ん中経験者が何を失ったのかを描いた小説『ロス男』――。自身もロスジェネの著者、平岡陽明氏がこの世代について綴る。
就職氷河期世代が見た風景
私が2002年に就職したとき、父親世代にあたる団塊の人たちは、祭りのあとのような顔をしていた。二日酔いの朝と言い換えてもよい。「あー、終わっちまったか。楽しいといえば楽しかったけど、当分酒はいいかな」という、あの感じだ。

彼らは高度経済成長、バブル、ジャパン・アズ・ナンバーワンを駆けぬけ、「失われた10年」の後半を過ごしている最中だった。それがさらに何年も続くとも知らずに。

〔PHOTO〕gettyimages
おじさんたちの昔話は景気よかった。私は出版社の契約社員だったから、「本が飛ぶように売れた」「黙っていても広告が入った」「招待出張でファーストクラスに乗った」「銀座のクラブで飲んだ」といった類の話をよく聞かされた。

ひどいのになると、日曜に会社へ来て自分のクルマを洗車し、休日出勤手当4万円をもらっていたという。自宅のトイレをウォッシュレットに替えた代金を、会社の経費で落とした輩もいたらしい。当人から愚痴られたことがある。

「でも今は、会社が休日出勤するなって言うだろ。お前さんたち年俸制ケーヤク社員を休日に働かせれば、タダだから」。妙に蔑んだ目つきで、こちらに一ミリたりとも同情していないことが伝わってきた。

すでに、とてつもない社内格差ができていたのだ。世代格差が。われわれにとっては憎むべきブラック企業も、おじさんたちにとってはタカリ甲斐のある「優良企業」だったのだ。

ロスジェネが本当に奪われたもの
一説によると、先進国の人は年収900万円までは、収入と幸福度が同じカーブを描くらしい。つまり年収300万円の人が500万円になれば、きっちり200万円ぶん幸せを感じる。500万円が800万円でもそう。

ところが幸福度は900万円で頭打ち。その後は1200万になろうと1500万円になろうと、ほとんど変わらない。

たしかに日本で年収900万あれば、一通りのことはできる。マンションを借り、子どもを塾や習い事に行かせ、ほしい服を買い、外食し、たまには旅行し、頑張ればクルマだって持てるだろう。

900万と1200万の違いは、回転寿司と板前寿司の違い、ユニクロとZARAの違い、駅から徒歩10分と5分の違いに過ぎないのかもしれない。

何が言いたいのかと言うと、ロスジェネ世代も人生の一時期に年収900万を味わえれば、暴発せずに済むのに、ということだ。

消費とは自己表現である。アイデンティティの確立である。人は「何を買ってきたか」「何にお金を使っているか」でおのれを知る。おのれを確立する。そこで人と結びついたり、反発しあったりする。

ところが働き口を奪われ、低賃金にあえいでいると、ライフラインを確保することにしかお金を使えない。自己を確立できず、やりがい、生きがいを持てない。ないない尽くしだ。当然、自己評価は下がる。人付き合いも減る。ロスジェネが本当に奪われたのは、人間としての尊厳なのだ。

「こっちは余裕ないんだ」と犯人が叫んだというニュース。長らく引きこもっていた男が叫んだ「俺の人生、なんなんだ!」というセリフ。

長年にわたって充たされることのなかった承認欲求。尊厳を奪われたことに対する怒り。あきらめ。われわれはその陰惨な心の働きに陰々滅々となりながら、被害者の無念と地獄に思いを馳せる。そして心のどこかで「自分でなくてよかった」と安心していることに、軽い自己嫌悪を抱く。

それくらいしかできないのだ。ロスジェネたちの青春は過ぎ去り、壮年も過ぎ去りつつあるから。もう手遅れで、救いはないから。

人生に絶望したかった
絶望の質にも、勝ち組と負け組がある
もちろん「いい会社」で正社員になっても、「いい人生」が送れるとは限らない。

年収900万のために毎朝、満員電車にゴトゴト揺られ、会社でストレスフルな時間を過ごす。子どもの教育費のために小遣いは削られ、休日は混雑するショッピングモールでへとへとに疲れる。それなのに妻子の尊敬は得られず、子どもが思春期を迎える頃には、冷めたピザのような家庭になっている。

そんな人生が送りたかったのだろうか?

しかり。ロスジェネたちはそんな20代や30代を過ごしたうえで、人生に絶望したかったのだ。つまり絶望の質にも、勝ち組と負け組があるのだ。

いまロスジェネたちは、親世代がもらう膨大な年金と医療費を怨嗟しつつ、そこに依存し、やがて親たちを看取って、いよいよ一人ぼっちになっていく。また暴発する者も出てくるだろう。

そのたびに世間は暗い気持ちになるだろう。でもすぐに忘れる。なぜなら、人並の消費活動から見放され、自己を確立できなかった彼ら彼女らは「見えない者」だからだ。

社会政策はロスジェネたちの「失われた人生」を救うことはできない。救えるのは戦争か革命くらいだ。

ロスト・マンの言葉
ロスト・マンの言葉
私は20代後半、詐欺師まがいの人物が経営する会社で働いていた。給料は驚くほど低く、仕事は忙しかった。自分の若い時が奪われていく怒りと焦りに苛まれ、辞めることばかり考えていた。でも、いい転職先は見つからなかった。

あるとき、そんな不満を父と同い年のカメラマンに漏らした。すると彼は言った。

「でも俺たちの世代もタイヘンなんだよ。42、3歳で『いざこれから』って時にバブルが崩壊してさ。ちょうどローンで家を買って、子どもに教育費がかかる時だ。みんな人生設計が狂ったよ」

私はびっくりした。自分のことばかり考えていたから、親世代がそんな不遇感を抱えていたなんて知らなかったのだ。私の父も商売に失敗して、自宅を競売に掛けられたというのに。

そんな会話を交わした一年後、カメラマンは肝硬変で亡くなった。彼が42歳のときに離婚し、最後の20年間を失意のうちに過ごしたと知ったのは、葬儀のあとのことだった。彼もまたロスト・マンだったのだ。


https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64021

 

日本の生産性が低いのは、我々が「合理性」を憎んでいるからだった
こうして我々の国は貧しくなった
橘 玲作家
プロフィール
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日本の生産性は主要先進諸国のなかで最下位だ。なぜそこまで生産性が低いのか。新著『働き方2.0vs4.0』を上梓した橘玲氏は、日本が実は前近代的な身分社会だからだと喝破する。

主要先進国で最下位の生産性
平成もいよいよ終わりつつあるが、この30年間の変化をひと言でまとめれば「日本がどんどん貧乏くさくなった」だ。

国民のゆたかさの指標としては1人当たりGDP(国内総生産)を使うのが一般的だ。日本はバブル経済の余勢をかって1990年代はベスト5の常連で、2000年にはルクセンブルクに次いで世界2位になったものの、そこからつるべ落としのように順位を下げていく。

2017年の日本の1人当たりGDPは世界25位で、アジアでもマカオ(3位)、シンガポール(9位)、香港(16位)に大きく水をあけられ、いまや韓国(29位)にも追い越されそうだ。

主要7カ国(英・米・仏・伊・独・加・日)では首位から6位に転落し、かつては世界の15%を占めていたGDPも30年間で6%に縮小した。訪日観光客が増えて喜んでいるが、これはアジアの庶民にとって日本が「安く手軽に旅行できる国」になったからだ。

なぜこんなヒドいことになるのか。経済学的には、その原因は「日本の生産性が低いから」と説明できる。

経済成長に関する実証的事実を包括的に整理した研究によれば、第二次世界大戦後の米国の1人当たり経済成長率の8割は生産性上昇によって説明できる。また、各国間の所得水準のちがいの半分以上は生産性格差によって生じている。

生産性と賃金のあいだには頑健かつ強い正の相関関係があり、生産性の高い国ほど国民の平均賃金が高いし、生産性の高い企業に勤める従業員ほど賃金が高い(森川正之『生産性 誤解と真実』日本経済新聞出版社)。

事実(ファクト)を見るならば、日本の労働生産性はアメリカの3分の2しかない。OECD加盟国35カ国中20位、主要先進7カ国ではデータが所得可能な1970年以降、最下位がつづいている。

そうなると、当然のことながら、次なる疑問は「日本の労働生産性はなぜこんなに低いのか」になる。

日本人は合理性を憎んでいる
労働生産性が低いというのは、かんたんにいうと、過労死するほど働いていてもぜんぜん儲かっていないということだ。とりわけ日本は製造業に比べてサービス業の生産性が低く、たいして効率的とも思えないヨーロッパの国と比べても半分しかない。これは控えめにいっても驚くべきことだ。

私は日本人の「生産性」が低いのは、日本が「先進国のふりをした前近代的な身分制社会」だからだと考えている(詳細は新刊の『働き方2.0vs4.0』に書いた)。

会社嫌いなのに長時間働く
近代を理性=合理の時代だとすれば、前近代を支配しているのは直感(感情)=非合理だろう。そこで次のようにTweetした。


橘 玲
@ak_tch
「日本の労働生産性はなぜこんなに低いのか?」のTweetにたくさんのご意見をいただいていますが、私の仮説は、「日本人は合理性を憎んでいるから」です。体育会系の根性論が大好きで、「こうすれば経済合理的じゃないですか」というと炎上します。

10,781
14:59 - 2019年3月7日
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5,490人がこの話題について話しています
私にとってはこれまで何度も述べてきたことだが、驚いたことにこのTweetに200件ちかいコメントがついた。それも「炎上」ではなく、そのほとんどが「自分はこう考える」という意見だ。コメントをまとめたので実際に見ていただきたいが、参考になるものがたくさんあるだろう。

このまとめをつくったのは2週間ほど前だが、さらに驚いたことに、この短い期間に15万人が閲覧し、250件を超えるコメントが新たについている。

ここからわかるのは、多くのサラリーマンが職場の不合理で非効率的な慣行にうんざりしながら、それを変えることができないまま耐えているという現実だ。

〔PHOTO〕iStock
読解力・数的思考力、ITスキルのような仕事に必要な能力を測定するPIAAC(国際成人力調査)では、日本はOECDの参加24カ国中ほぼすべての分野で1位だ。それを考えれば、日本の労働者の能力が欧米に大きく劣っているとは考えにくい。

それなのになぜ日本人の労働生産性はアメリカ人の3分の2しかないのか。その理由は、日本の社会の仕組みや会社の働き方が間違っているからだろう。こうしてようやく安倍政権は、「働き方改革」「生産性革命」を掲げるようになった。

平成の「失われた30年」のあいだ、「知識人」もメディアもこの単純な事実(ファクト)をひたすら無視してきた。それは彼らが「日本人/男性/一流大学卒/正社員/中高年」という属性をもつ日本社会の主流派(マジョリティ)=「おっさん」で、社会の仕組みを変えると自分たちの既得権が脅かされることに気づいていたからだ。

その結果、「外国人/女性/高卒・中卒/非正規/若者」という少数派(マイノリティ)が犠牲にされることになった。平成のあいだに広がった「格差」は、この単純な図式でほぼ説明できるだろう。

会社嫌いなのに長時間働く日本人
「エンゲージメント」は、会社への関与の度合いや仕事との感情的なつながりを評価する基準だ。エンゲージメントの強い社員は仕事に対してポジティブで会社に忠誠心を持っており、エンゲージメントが低いと仕事にネガティブで会社を憎んでいるということになる。当然、社員のエンゲージメントが高い会社ほど生産性は高くなる。

近年になってエンゲージメントの重要性が認識されるようになって、コンサルタント会社を中心にさまざまな機関による国際比較が公表されている。

日本経済のもうひとつの「不都合な真実」は、ほぼすべての調査において、日本の労働者(サラリーマン)のエンゲージメントが極端に低いことだ。――世界22カ国のエンゲージメントレベルを評価した調査では、トップはインドの評価点25%で、メキシコが2位で評価点19%、アメリカは中間で評価点1%、日本は最下位で評価点はマイナス23%だった。

生産性の高い工場を海外へ
1人当たりの平均年間総実労働時間を見ると、1980年代の日本は2000時間を超えて先進諸国で圧倒的に長かったが、2015年には1719時間まで減少してアメリカ(1790時間)と逆転した。

それにもかかわらず、日本の15〜64歳の男性は世界でもっとも長時間労働をしている。なぜこんなことになるかというと、短時間労働の非正規雇用が増える一方で、そのしわ寄せが正社員の長時間労働とサービス残業につながっているからだ。

これをまとめると、日本のサラリーマンは世界(主要先進国)でいちばん仕事が嫌いで会社を憎んでいるが、世界でいちばん長時間労働しており、それにもかかわらず世界でいちばん労働生産性が低いということになる。これがかつての経済大国・日本の「真の姿」だ。

だがこの国ではこの30年間、右(保守派)も左(リベラル)もほぼすべての知識人が「アメリカ」や「グローバリズム」に呪詛の言葉を投げつけ、年功序列・終身雇用の日本的雇用慣行こそが日本人を幸福にしてきたとして、「(正社員の)雇用破壊を許すな」と叫びつづけてきた。事実(ファクト)に照らせば、こうした主張はすべてデタラメだ。日本的雇用=日本の社会の仕組みこそが、日本人を不幸にした元凶なのだ。

生産性が高い工場を海外へ移転
経済学者の深尾京司氏は、『「失われた20年」と日本経済 構造的原因と再生への原動力の解明』(日本経済新聞出版社)で次のような興味深い事実を指摘している。

1990年に存在した42.5万の工場のうち56%にあたる23.9万の工場が2003年までに閉鎖された。新設された工場は10.1万しかなく、結果的に工場数は28.6万へと1990年に比べて33%減少した。

次にこの工場を生産性で分類したところ、「生産性がもっとも低いグループ」では4.25万の工場のうち73%にあたる3.10万が消滅した。ここまでは誰もが当然だと思うだろうが、不思議なのは、「生産性がもっとも高いグループ」でも、4.24万の工場のうち47%にあたる2.00万が消滅していることだ。

生産性の低い工場が閉鎖され、生産性の高い工場が増えれば、国全体の生産性は上がる。ところが日本では、生産性の高い工場も同時に閉鎖されたためにこの効果がはたらかず、生産性が低迷したというのだ。

なぜこんなことになったのか。その理由は大企業が安価な労働力を求めて工場を海外に移転したことと、国内での生産拡大を子会社に移してリストラを進めたことだ。その結果、一部の製造業で生産性が高まったものの、その効果は全体には波及しなかった。

アメリカでは社歴の若いベンチャー企業が多くの雇用を創出したが、日本は開業率がきわめて低いため同様の効果はなかった。外資系企業は生産性が高いが、日本経済は対内直接投資が少なく、外資による雇用創出も期待できなかった。

ここから見えてくるのは、大企業は日本を見捨てて海外に出ていき、ベンチャー企業は育たず、外資系企業は日本に参入できず、結果として大企業のリストラと非正規への置き換えだけが進んだという残念な現実だ。

こうしてパイが縮小するなかでそれぞれの利害が対立することになり、日本はぎすぎすした社会になっていった。保守派やネトウヨ(日本人アイデンティティ主義者)は「韓国・中国」に罵詈雑言を浴びせるが、彼らがゆたかになったことと、自分たちが貧乏になったことはなんの関係もない。

若年男性へのシワ寄せ
正社員から排除された若年男性
経済学者の神林龍氏は、『正規の世界・非正規の世界』(慶應義塾大学出版会)で、通説とは異なり、「失われた20年」でも全体としては「正規」の割合は減っていないと指摘している。たしかに「非正規」は増えているものの、その割合は自営業者の減少とほぼ一致しているというのだ。

それと同時に、これも通説と異なって、20代の女性でも「正規」の割合は減っていない。たしかに90年代と比べると10ポイントちかく少なくなっているものの、これはバブル期にかさ上げされた分がなくなったからで、その比率は(もともと低いものの)80年代とほぼ同じなのだ。

それにもかかわらず若い女性の「非正規」が大きく増えたのは、それまで「無業者」だった層からの流入で、専業主婦が働くようになったことでほぼ説明できる。

ただし、これは通説がすべてまちがっているということではない。

ゼロ年代の日本の労働市場では、20代男性で「正規」が減って「非正規」が大きく増えた。これは日本企業が、中高年正社員の雇用を守るために新卒採用を抑制したことを示している。それと同時に目を引くのは、バブル崩壊直後の1990年代前半から「無業者」の割合が大きく増えていることだ。

〔PHOTO〕iStock
「無業者」には失業者(働く意思があり求職活動をしている者)も含まれるが、それ以外は「働く意思はあるが求職活動はしていない者」か「働く意思もない者」だ。

平成の日本の重要な変化を挙げるとするならば、そのひとつは「働かない若い男」がものすごく増えたことだろう。彼らは怠けているわけではなく、その多くは以前なら「正社員」として企業に所属できただろうが、バブル崩壊の直撃を受けたことで労働市場から排除されたのだ。

ここで挙げた調査は2007年のもので、それからすでに10年以上が経っている。

内閣府は3月26日、「40〜64歳のひきこもり状態の人が全国に61.3万人いる」と発表した。2015年度に実施した調査では15〜39歳の「若年ひきこもり」は54.1万人と推計されたから、中高年のひきこもりは若年層を上回ることになる。

「就職氷河期」と新卒が重なったロスジェネ世代の多くがすでに40代に達していることを考えれば、この結果に驚きはない。20代や30代で「無業」だった者にとって、40代になって働きはじめるのはきわめて困難だろう。

平成の日本は経済成長(生産性向上)よりも正社員の雇用を優先し、合理性を憎んであらゆる「改革」を頑強に拒んだとことでどんどん貧しくなっていった。その結果、職場は不合理なパワハラやセクハラの温床となって、サラリーマンは会社を憎み、仕事に疲弊し絶望している。しかしそれでも彼ら/彼女たちはまだマシで、その背後には膨大な数の「無業者」がいる。

元号が令和に変わって、私たちはいよいよこの不都合な現実を突きつけられることになるだろう。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64021


日本経済が停滞したのは、「無気力人間」が急増しているからだった
出世意欲ナシ、自己研鑽もしない
諸富 祥彦心理学者
明治大学文学部教授プロフィール
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周囲の効率も下げる「無気力人間」
あなたの周囲に「やる気のない人たち」はいるだろうか。そう、いつもため息ばかりついていて、「あーぁ、なんでこんな仕事やらなくちゃいけないんだよ……」と愚痴ばかりこぼしている。そんな無気力な人間たちのことだ。

そんな人間ならいくらでもいる、と思ったら、あなた自身も注意が必要だ。なぜなら、愚痴とため息ばかりのやる気のない人たち=「無気力人間」は、その人みずからの人生をダメにするばかりでなく、その周囲の人たちからも意欲を奪い、無気力化させ、毒を吐きまくることで、メンタルヘルスを悪化させるからだ。

無気力人間たちの吐く見えない毒ガスの影響は、あなた自身にも悪影響を与えずにはいられない。無気力人間は、自分自身をダメにするばかりか、周囲の人間もダメにし、そこで巻かれたネガティブな毒ガスの影響で、さらに無気力人間が増産されていく。無気力人間を作り出すのは、周囲の無気力さに他ならない――そんな無気力の悪循環がここ最近になって、あらためて注目されている。


直近のベストセラー本『Think CIVILITY(シンク シビリティ) 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』(クリスティーン・ポラス・著、夏目 大・翻訳)では、こうした無気力人間のことを「無礼な人」という表現を使って、こう指摘する。

無礼な職場では、半分の人がわざと手を抜く。
無礼な人は同僚の健康を害する。
無礼さは顧客の体験を壊す。
無礼な人はまわりを攻撃的にする。

ここで言う「無礼な人」とは、単に礼儀をわきまえない人、という意味ではない。いつも不機嫌そうにしていて、人をちっともリスペクトせずに、見下し、悪口ばかり言っている。人の話にきちんと耳を傾けようとしない。そんな「害をまき散らしている人」のことである。

日本“一人負け”の実態
実際、他者をリスペクトしない雰囲気の中では仕事の効率は下がる。同書においては、大学生を対象に行なった実験で、貶める発言を受けたグループはブレインストーミングで思いつく創造的なアイデアの数が39%少なくなった、とか、単語の並べ替え作業の段階で無礼な言葉を見ていた被験者は、順に思い出すテストの成績は86%も悪くなり、数学の問題では43%もミスが増えた、といったデータも紹介している。

一方で、笑顔が絶えず、お互いを尊重しあえ、お互いの話に耳を傾ける職場では生産性は向上するとも指摘している。

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日本が世界で“一人負け”の実態
そこで気になるのが、日本の実態だ。総合人材サービス、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームである株式会社パーソル総合研究所は、日本を含むアジア太平洋地域(APAC)14の国・地域における就業実態・成長意識についてインターネット調査を実施し、国際比較により「日本の就業意識の特徴」を明らかにしている。

そこで明らかになったのは、仕事に対する意欲の低い“無気力人間集団”である日本の姿である。

・日本では積極的な管理職志向がない人は78.6%にものぼる。日本人は出世意欲が最も低い。

・勤務先以外での学習や自己啓発について「特に何も行っていない」が46.3%で、14の国・地域で最も高い。2位のニュージーランドと比べて24.2ポイントも差があり、日本人は断トツで自己研鑽していない。

・今の勤務先で働き続けたい人の割合について、日本は52.4%で最下位。一方で、日本の転職意向は25.1%でこちらも最下位。日本人は、今の会社を勤め続けたいとそれほど思わないが、積極的な転職も考えてない。日本は転職後に年収が上がった人の割合が43.2%と最も低い。日本以外はいずれも6割以上が上がっている。

以上の数字だけを見ても、まさに日本だけ“一人負け”と言ってもいい特異な数字が出た調査結果である、と同報告書は指摘している。

「学習性無力感」
それはそうだろう。転職しても年収が上がらないのなら、転職なんてしたくない人が増えるのは自然の道理である。しかし、同じ職場に留まったからといって、そこで努力すれば出世できるというわけではない。40代にもなれば勝敗はほぼ決まっている。こんな社会で出世意欲を保てるはずもない。

つまり、日本社会は「自分で自分の人生を切り拓くのが難しい社会」になってしまっている。自分の努力によって仕事の能力を磨き、そこで得たスキルによって会社での出世を目指したり、転職によってキャリアップで年収を上げるのが困難な社会である。そんな社会の中では、自己研鑽を何も行っていない人の割合が世界的に見てダントツトップになるのも道理である。

「学習性無力感」の恐怖
この悲惨な日本社会の現状を、心理学的に捉えると、学習性無力感(Learned helplessness)が蔓延した社会、ということになる。

学習性無力感とは、1967年にマーティン・セリグマンらが提唱したもので、長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象である。要するに「どうせ、何をやっても無駄だ」という絶望にも似た感覚に襲われてしまう。

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今の日本がまさしくそうだ。スキルアップして転職したからといって年収アップは望めない。かといって、今の職場にいても新たな上昇が望めるわけではない。できるのは、大きな問題を起こさず、摩擦を回避して、ぶうたれながら現状を維持することだけ。

無気力で、自分を磨かず、陰で人の悪口を言いながら、ただ日々のことをこなすだけ。そんな人に周囲を取り囲まれていたら、どんな人だって無気力人間になってしまう。そして無気力人間は、その近くにいる人も無気力化させてしまう。今、あなたも、愚痴や陰口をこぼしながら、あなたの側にいる人を無気力人間と化しているのかもしれない。


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編集部からのお知らせ!

年収500万円以上の30代独身男性は「普通の男」じゃないんです(三島 光世) @moneygendai
三島 光世
40歳のやくざライターは「暴排条例は完全に人権蹂躙」だと言った(平岡 陽明) @gendai_biz
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知的に見えて実は幼稚…夫の「静かなモラハラ」に気づかぬ女性の悲劇(谷本 惠美) @gendai_biz
谷本 惠美

40歳のやくざライターは「暴排条例は完全に人権蹂躙」だと言った
「ロスジェネ」は何を失ったのか
平岡 陽明

貯金ゼロ、明日の生活も苦しい…「中年フリーター」の救済策はあるか
就職氷河期世代の支援を考える
小林 美希

毎日1200人減少…日本を襲う「出生数ゼロ」という深刻すぎる危機
「無子高齢化」を考える
前田 正子

山本太郎が語る「無年金の氷河期世代を救わなければ、未来はない」
厚労省は、まるで「他人事」だが…
時任 兼作

なぜ「高学歴なのに一度も働いたことがない未婚女子」になるのか?
一方で「パワーカップル」家庭を築く強者も
前田 正子

日本の生産性が低いのは、我々が「合理性」を憎んでいるからだった
こうして我々の国は貧しくなった
橘 玲

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67406?page=3


 


トップニュース2019年12月2日 / 11:09 / 9時間前更新
特別リポート:
伝説の香港大富豪、習主席との「長く特殊な関係」
Tom Lasseter Farah Master Clare Jim Keith Zhai
6 分で読む

[香港 27日 ロイター] - 1993年1月、ふくよかな頬と豊かな黒髪が目立つ、野心に富む39歳の中国共産党幹部が香港を訪れた。彼は、自らの地盤である二級都市・福州への投資を募る狙いで、立ち並ぶ輝かしい高層ビルのなか、香港の富裕層の面会を求めた。それが習近平氏だった。

その年8月、習氏は地元で1人の来客を迎えた。香港で最も著名な大物で、優れたビジネス手腕から香港では「超人」と称される李嘉誠氏が福州を訪れたのだ。このときの写真を見ると、習氏は笑顔を浮かべつつ、花束を手にした李氏の隣を歩いている。背景には李氏を歓迎するメッセージが書かれた大きな横断幕が見える。

その当時、1989年の天安門事件の余波が残るなかで、中国政府は不振に陥った経済のテコ入れに必死だった。国家の指導部も各省の有力者たちも、中国本土における開発プロジェクトに李嘉誠氏の資金を呼び込み、その知名度にあやかろうと熱心に働きかけていた。それも、今は昔である。

習氏は今や、台頭する富裕大国として香港を支配下に収める中国の独裁的指導者だ。91歳になる李嘉誠氏の歓心を買おうと努めるどころか、中国政府は、反抗的な香港において同氏が責任を果たしていないと長々と論難している。

中国共産党は、この夏に始まった香港の抗議行動に、地元の有力者らが一致して対抗することを期待していたが、李氏は公平に双方に自制を求めただけだった。ある修道院に対してオンライン動画で送ったコメントのなかで、李氏は指導部に対し、若い抗議参加者に「人道的に」対応するよう求めている。

こうした李氏の態度に対する反応は激烈だった。党中央法務委員会は、「犯罪行為を匿い」「香港が底知れぬ深淵に落ちていくことを座視している」と李氏を公然と批判している。中国政府寄りの姿勢を取る香港のある労働組合は、フェイスブックに李氏を「ゴキブリの王」と揶揄する記事を投稿し、太った昆虫に同氏の顔写真を合成した画像を添えた。

中国政府を後ろ盾とする香港行政府が街頭に出た抗議参加者を厳しく取り締まる一方で、ほとんど表面化はしないものの、もう1つ別の統制強化も進んでいる。香港の有力者の影響力を抑えようとする中国政府の動きだ。

李氏をはじめとする香港の大物たちは、第二次世界大戦後における製造・不動産・金融を通じた香港の経済発展の流れを汲んで、長年にわたって実権を握ってきた。だが、2012年に中国共産党総書記に就任した習氏の台頭は、その状況を根本的に変えてしまった。ビジネス関係者やアナリストらは、香港の著名な資本家が批判を浴びたことで、新たな力関係が珍しく公然と披露されたと見ている。

李氏をはじめとする香港の有力者は政府の意向を汲んで、天安門事件以来、中国共産党の支配に対する最も深刻な挑戦となっている抗議行動を異口同音に非難しなければならない、という明確なメッセージだ。

最近の混乱の引き金となった撤回済みの逃亡犯条例案は、香港から中国本土への犯罪容疑者の引き渡しを可能にする内容だった。香港弁護士会の声明によれば、同条例案は、資産差し押さえの手段も規定していたという。これが成立していれば、香港の有力者も、習氏の反腐敗キャンペーンのなかで資産を没収されていった中国本土の富裕層と同じ運命にさらされていたことになる。

逃亡犯条例案に対する抗議行動が盛んになってからまもなく、香港富裕層の一部に、資金を香港以外の地域に移す、あるいはそれを可能とするような口座を開設する動きが見られたことを、合計数千億ドルの資産を管理するプライベートバンク関係者6人が明らかにしている。

<李氏の人生を左右した歴史の荒波>

ここ数カ月、李氏に対して非常に厳しい批判が浴びせられているが、こうした不和が突然に生じたわけではない。抗議活動が香港を揺るがす前から、李氏はすでに中国との経済的な絆を弱めつつあった。

21世紀を迎えた時点で、李氏にとっての本丸であるハチソン・ワンポアは利益の多くを香港・中国本土から得ていた。利払い・税引前利益全体の56%に上った。だが、昨年はこの比率が14%にとどまった。2015年以降、李氏が支配する企業グループは、世界各地で合計700億ドル以上もの企業買収に関与している。

李氏に関わる5億ドル以上の規模の投資案件についてロイターが分析したところ、香港・中国本土での投資額は10億ドルに満たなかった。

李氏の広報担当者は、こうした数値に関する質問に対して、ハチソン・ワンポアは1990年代末から2000年代初めにかけて海外での大型買収を進めており、「こうした多角化に伴って地理的な比率が変化した。とはいえ、中国本土と香港でも成長を続けている」と答えている。

さらにこの広報担当者は、2015年のグループ再編に伴い、現在のハチソン・ワンポアに関しては、地元での収益の比率が低下していると説明した。

李氏の巨大企業グループの元マネージング・ディレクターであり、大富豪である李氏を数十年にわたって知るサイモン・マレー氏は、巨額の事業利益を中国の直接の勢力圏の外に移していけば中国本土の当局者を怒らせるリスクがある、と語る。

「そもそも香港にいる人間なら誰しも、中国本土がどう考えるかという点にも注意を払うものだ」とマレー氏は言う。「先方との人脈を築いておかなければ、資産を没収される恐れがある」

現役を引退した李氏にとって、中国政府との対立は劇的な変化である。1970年代末から2000年代初めにかけて中国を指導したケ小平、江沢民両氏のもとで、李氏は数十年にわたって声望を得てきた。英国からの返還後、香港統治の準憲法となっている香港基本法を起草する委員会にも参加し、最初の行政府を選ぶ機関にも名を連ねた。

李氏の生涯を左右してきたのは、香港、そしてその境界に巨大な姿を横たえる中国の歴史の荒波である。彼は1928年に河川沿いの都市、潮州市に生まれた。幼少時、中国南部のこの街は、日本軍による空襲の標的となった。12歳のときに学校を辞め、家族とともに海岸に沿って南に逃れ、当時英国の植民地だった香港にたどり着いた。

香港は1941年に日本に占領された。占領中は食糧不足、栄養失調、病気に悩まされた。香港にたどり着いてまもなく、父親は結核のため命を落とした。「15歳にもならないうちに、李氏の肩には家族を養う責任がのしかかった。彼はプラスチック貿易の会社に仕事を見つけ、1日16時間働いた」

<伝説の成功者>

1993年に習近平氏が香港を訪問した後、李氏は当時習氏が首長となっていた福州市を訪問し、著名人として歓待を受けた。大富豪であった李氏は福州市の再開発プロジェクトに関与し、地元メディアの報道によれば、習氏と共に起工式に参加して礎石を据えたとされている。

その当時、李氏は中国において並外れた影響力を持っていた。香港返還から約2カ月後の1997年9月、中国は過去最大の株式公開を間近に控えていた。香港とニューヨークでの上場を準備していた国営電気通信企業、中国電信である。

だがぎりぎりになって、同社の上場を支援していた香港の有力者グループが、域内を混乱に陥れていた金融危機のために怖じ気づいてしまった。彼らは、1年間の株式保有を義務づける協定について再交渉を求め、さもなければ完全に手を引くと主張した。株式公開まで、わずか数週間しか残されていなかった。

李氏は中国の官僚、銀行関係者を香港の自分のオフィスに招いた。同席した銀行関係者によれば、彼は「契約書にはすでにサインしており、それを遵守する」と話したという。この銀行関係者によれば、李氏はさらに、必要とあらばもっと多くの株式を購入すると申し出たという。

李氏は、その後、膨大な数の中国国有企業が上場によって数十億ドルを調達する先例となった中国電信の株式公開を救うことになった。トレードマークの大きな黒縁の眼鏡とともに、李氏が伝説的な香港ビジネスマンとなった瞬間と言えよう。

<中国本土と香港への投資を縮小>

習氏が実権を握ってから、中国政府は香港に対する強硬な方針を採用した。中国政府は2014年の白書において、香港が現在享受している自治は自明のものではなく、中央指導部の許可により条件付きで与えられたものだと述べている。そして李氏自身にも、中国国営メディアからの批判が降りかかるようになった。

2014年末から2015年初頭にかけて、李氏は香港で登記していたハチソン・ワンポアともう1社を、ケイマン諸島で設立した企業に統合した。李氏を中心とする経営陣は、この改革は、「合理化・事業継承計画の一環」であると話している。

2015年9月、こうした動きが報じられたのに続いて、李氏は中国本土のメディアから、愛国心に欠けていると厳しい批判を浴びた。中国共産党の主力機関紙である人民日報は、李氏について「物事が順調なときは喜んでその恩恵を受ける」のに、厳しい時期には頼りにならない、と評するコメントをソーシャルメディアに投稿した。

だがこの時期にも李氏が支配する企業は、海外企業の株式に何十億ドルも注ぎ込む一方で、香港と中国本土では縮小を続けた。この傾向は今もペースダウンしていない。

2015年以降、李氏の企業は、カナダ、イタリア、オーストラリアといった国で総額700億ドル以上の企業買収に関与してきた。しかし同じ時期、中国本土と香港における5億ドル以上の規模の企業買収は、香港を本拠とする運輸企業を他の2人の投資家との共同出資により8億4800万ドルで買収した1件だけにとどまっている。

さらに同じ時期、李氏は香港・中国本土の4企業から総額110億ドル以上の投資を引き揚げている。ロイターは、金融データサービスのディーロジックの数値を元にこれらの数値を計算した。データには李氏の企業による5億ドル以上(債務を含む)の取引案件が含まれている。

中国共産党が香港の有力者らに求めているのは投資だけではない。香港にある大手中国国有企業の上級幹部によれば、習近平氏と香港エリート層のあいだで2017年に行われた会合で、習氏が述べた指示は曖昧さのないものだったという。この会合には李氏も出席していた。

この幹部は、「習氏のメッセージは非常に明確だった。香港財界と有力者は社会的な責任を担う必要があり、中央政府が香港社会の安定を維持することを支えなければならない、ということだ」と語る。

<一握りに富が集中>

抗議行動が香港を揺るがすなかで、こうした中央政府の期待はますます緊急性を増している。

著名な財界人で、林鄭月娥(キャリー・ラム)香港行政長官の経済顧問を務めるアラン・ジーマン氏によれば、中国当局者は、香港では富が一部に集中していることが不満の大きな原因であると考えるようになったという。ジーマン氏は、英国統治時代に遡る土地競売制度によって、少数の人間が市場を独占することが可能になっており、他の誰も入札に参加できないレベルまで価格が上昇してしまっている、と話す。

こうした仕組みによって住宅価格は非常に高いままとなり、家族は狭小な住宅に押し込められ、快適な住まいへの引っ越しは困難な状況だ。

デベロッパーもようやく理解するようになった、とジーマン氏は言う。同氏によれば、香港企業ニューワールド・ディベロップメントは、保有する土地のうち300万平方フィートを、低所得者用住宅のために確保すると発表した。

1997年に英国が香港を中国に返還した際、両国は、香港が半世紀にわたり、独自の憲章に基づいて高度の自治を享受することに合意した。香港のビジネスマンたちは、つい最近まで、中国が完全な統治権を手にする期限である2047年は遠い先のことのように思えた、と話している。

だが、中国政府が強引な方針をとるようになって、事情は一変した。香港の有力者たちの注意を喚起したのは、2017年に中国生まれの富豪・肖建華氏が失踪した事件であるという。同氏が最後に目撃されたのは、正体不明の男たちに伴われ、頭部を覆われた状態で車椅子に乗せられて香港の高級ホテルを離れる姿だった。

プライベートバンク関係者は、逃亡犯条例案が新たなショックを与えたと話す。あるフィナンシャル・アドバイザーはロイターに対し、6月から8月にかけて、香港の有力者の1人が地元のシティバンク口座からシンガポールに1億ドル以上の資産を移転させる取引に関わった、と語った。

だが、中央政府からの圧力が高まっても、李氏はまだ中国共産党に恭順の姿勢は見せていない。

李氏はロイターへの書簡のなかで、「私くらいの年齢になると、雑音をやり過ごすコツが分かってくるものだ」と書いている。「組織的な動きかどうかは知らないが、根も葉もない言葉や文章での攻撃には慣れてしまった」

(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/hongkong-protests-tycoons-idJPKBN1Y30F5

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/756.html

[政治・選挙・NHK267] 日本の奇妙な右傾化 なぜポピュリズムが台頭しないか 歴代最長の安倍政権は一体いつ終わるのか? あえて憲法改正に踏み込まない「政権維持術」  世界のポピュリズム、勢い続く? 庶民の不満根深く
日本の奇妙な右傾化 なぜポピュリズムが台頭しないか
北海道大学教授 吉田徹
2019/11/23付
今を読み解く

ポピュリストは内外に敵を作りナショナリズムを鼓舞する=イラスト・よしおか じゅんいち
 
ポピュリズムとは、一般市民の意志を無視する政治・経済・文化エリートを道徳的に批判するカリスマ的リーダーによる政治のことだ。だからポピュリズムは民主的な側面を持つ一方、特定の価値体系を持たない「薄いイデオロギー」だともされる。

他方、2世紀以上にわたって人類を突き動かしてきたのは「厚いイデオロギー」たるナショナリズムだ。フランス革命に続く国民国家形成と民主化運動、様々な帝国の崩壊、戦後の脱植民地化、東西ドイツ統一など、ナショナリズムは世界史の原動力となってきた。

自国民を鼓舞
ならば、なぜポピュリズムとナショナリズムは相性が良いのか。トランプやプーチンから新興国の強権主義的な指導者まで、ポピュリストと称される指導者たちは、内外に敵を作り、自国のナショナリズムを鼓舞してきた。

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ナショナリズムとは「ネイションを関心事項の中心に位置づけ、その繁栄を追求しようとするイデオロギー」と定義するのは、アントニー・D・スミスによる『ナショナリズムとは何か』(庄司信訳、2018年・ちくま学芸文庫)だ。すなわち、ナショナリズムとは宗教、言語、習慣、エスニシティ、領土、国家に基づくアイデンティティー、それに基づく自治や統一を希求する運動でもある。

それゆえ、経済・社会的グローバル化が進む世界で、ポピュリズムがナショナリズムと結託するのは、自然である。経済的相互依存と移民による人口動態の変化は、2度の世界大戦と福祉国家によって完成したネイションに基づく人々のアイデンティティーを脅威に晒(さら)す。だから、現在のポピュリズムは「戦後」という、かつてなく豊かで平等だった時代への後ずさりを試みる政治でもある。

ナショナリズムを「愛国」と読み替えた将基面貴巳『愛国の構造』(19年・岩波書店)が跡付けるように、国民に基づくナショナリズムが所与のものとして捉えられるようになったのは、19世紀後半以降のことだ。それ以前、人々のアイデンティティーの源泉は常に流動的であり、愛国の対象も、市民の集合体、君主や藩主に対する忠誠などに向けられ、その主体も教会や原住民などだったりした。

日本のナショナリズムも愛国と切り離されて誕生したとするのは、異才・橋川文三『ナショナリズム』(15年・ちくま学芸文庫)だ。彼は、近代日本のナショナリズムが、吉田松陰等を感化した水戸学と、本居宣長に端を発する国学が天皇制を頂点とした政体のもと社会の平等を達成する手段として用いられ、市民間の平等意識に基盤を置くものではなかったと論じる。

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「奇妙」な現代日本
思想家ルナンによる1882年の演説は、国民とは「犠牲の感情によって構成された大いなる連帯心」でもあると、その作為の正の側面を強調していた。山崎望編『奇妙なナショナリズムの時代』(15年・岩波書店)が指摘するように、こうしたナショナリズムによる包摂と平等の論理を持たずに、内部の敵を排除することだけを目的に没落に怯(おび)えるマジョリティーに支えられる現代日本のナショナリズムは、確かに「奇妙」に映る。

田辺俊介編著『日本人は右傾化したのか』(19年・勁草書房)による社会調査では、権威主義や愛国主義といった「右傾化」現象は、過去10年間に観察されていない。嫌韓・反中意識の広がりや若年層の保守的志向にすぎない。ナショナリズムが国民アイデンティティーや自治を求めるのであれば政治参加の向上をもたらすはずだが、それも見られない。

かくして、作為なきナショナリズムに覆われる日本には、他国と比べて本格的なポピュリズムも台頭しない。自分たちの共同体はかくあるべしという欲求なくしてナショナリズムもポピュリズムも生まれようがない。その事実に私たちは、喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか。そのことを自省する時間は、まだ幾ばくか残されているのかもしれない。

[日本経済新聞朝刊 2019年11月23日付]

愛国の構造
著者 : 将基面 貴巳
出版 : 岩波書店
価格 : 5,170円 (税込み)

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日本人は右傾化したのか: データ分析で実像を読み解く
著者 : 田辺 俊介
出版 : 勁草書房
価格 : 3,300円 (税込み)

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ビジネス書などの書評を紹介


歴代最長の安倍政権は一体いつ終わるのか? あえて憲法改正に踏み込まない「政権維持術」――文藝春秋特選記事
これが“平成30年間の政治改革”の帰結だ
「文藝春秋」編集部2019/12/01
source : 文藝春秋 2019年12月号

genre : ニュース, 政治, 社会

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「文藝春秋」12月号の特選記事を公開します。(初公開 2019年11月24日)

 11月20日、安倍首相の通算在職日数が、桂太郎(2886日)を抜き、歴代1位となった。なぜ「歴代最長政権」となり得たのか。政治学者の御厨貴氏と片山杜秀氏は、次のように分析する。

新元号「令和」を解説する安倍首相 ©共同通信社
新元号「令和」を解説する安倍首相 ©共同通信社
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「前の民主党政権よりいい」「他に人がいないから」
御厨 安倍さんは、1年しか続かなかった第1次政権で失敗して、その後、民主党政権から政権を奪い返して首相に返り咲きました。これが安倍さんの強み。自民党議員にとって、安倍さんは今でも政権を奪還してくれた恩人なんです。

 世論調査を見ても、安倍政権の主要な支持理由は、「前の民主党政権よりいい」とか「他に人がいないから」。安倍さんを熱烈に支持していたり、安倍さんによってこの国が変わると期待しているわけではない。ただ、この「他よりマシ」というのは、なかなか渋い(笑)。

片山 むしろ長続きの理由になっているわけですね。

御厨 あまり熱烈ファンがつくと、一時は良くても覚めたら、あっという間に風向きも変わる。

本当に憲法改正まで踏み込む気はあるのか?
 御厨氏が「長きがゆえに尊からず」と言うように、その長さだけで政権評価はできない。安倍政権は、どんな実績を残し、今後、どんなレガシーを遺すのか。

御厨 5年後か10年後か、「安倍政権とは何か」という座談会をやったら、「目立った業績はないのに、なぜこんなに続いたのか」と、答えに窮するのではないか。むしろ“これといったこと=リスクを伴うこと”をやらないから、これだけ続いているという不思議さがある。

 その意味では、安倍政権の至上課題は本当に「憲法改正」なのか。口ではそう言っていても、本気で考えているようには思えない。最初はやるかやらないかも曖昧で、「96条の手続きだけ変えればいい」と言ってみたり、「9条に1項を加えればいい」と言ってみたり。

御厨貴氏 ©文藝春秋
御厨貴氏 ©文藝春秋
片山 真面目に考えていない雰囲気があります。

御厨 安倍さん自身が、「憲法改正一つに絞ったら、危ない、政権はもたない」と感じているのでしょう。しかも憲法改正は、最後に「国民投票」という高いハードルがある。

片山 そこでしくじったら、さすがに総辞職するしかありませんね。

御厨 憲法改正を国民投票にかけるには、この国の国家像のようなものも語らなければなりませんが、そうすると、「他よりマシ」で支持していた層は離れてしまうでしょう。

片山 「やります、やります」と言い続けながら、本気ではやらないままでいるのが、政権を維持するには一番いいのでしょうね。

次のページこれが“平成30年間の政治改革”の帰結だ

「憲法改正の実現こそ安倍政権の悲願」という安倍政権のコアな支持層からの声もあるが、実際は、「政策の実現」よりも、「政権の維持」が自己目的化しているかのようだ。

片山 「生前退位」に消極的だったはずの安倍政権も、最終的には「令和改元」をうまく利用したわけですね。「厳しい寒さの後に咲く梅の花のように」などと首相みずから新元号の解説までして、この改元が安倍政権の継続に寄与してしまった面があります。だとすると、安倍政権は一体、いつ終わるのか。

御厨 それこそ天皇陛下ではないけれど、安倍さん自身が辞めると言わない限りは続くのでしょう。

即位礼正殿の儀で万歳三唱をする安倍首相 ©AFLO
即位礼正殿の儀で万歳三唱をする安倍首相 ©AFLO
これが“平成30年間の政治改革”の帰結だ
 では、なぜこんな事態に至ったのか。

御厨 振り返ってみると、今の安倍政権の“永続化”は、この平成30年間の「政治改革」とも大いに関係しています。

片山 「政治改革」が目指したのは、「二大政党制」と「官邸主導」ですね。平成初期の1994年に、中選挙区に代わって小選挙区制が導入されます。そこで有権者は、マニフェストや公約の達成度を見て「次はこちらにしよう」などと投票することが期待され、政権の方も、3、4年で政策を実現するために、従来の官主導の調整型政治ではなく、むしろ官邸主導で官僚にプランを降ろしていくことが期待されました。

片山杜秀氏 ©文藝春秋
片山杜秀氏 ©文藝春秋
御厨 まさにそうした改革が、橋本内閣の行革以来、平成期を通じて積み重ねられてきたわけですが、良くも悪くも、その帰結が今の安倍政権であるわけです。

片山 建前としては「二大政党による政権交代」を目指していたのに、民主党が悪かったのか、そもそも日本の政治風土と合わなかったのか、あるいは何か別のやり方をすべきだったのか、「二大政党」はいまや影も形もありません。残ったのは、強力な「官邸主導」の長期政権だけです。

「歴代最長政権」も、何も安倍さんや菅さんが一代で築いたものではなく、冷戦終結後の小沢さんや政治学者も含めたさまざまなアイデアを今の政権が独り占めした結果に見えてきます。

御厨 悲しいかな、これが“平成30年間の政治改革”の帰結です。しかも今のところ、他に代替物が見当たらない。今の政権は、もう何もしないで自動的に回っているようなものです。

出典:「文藝春秋」12月号 
出典:「文藝春秋」12月号 
「親アベ」でも「反アベ」でもない視点から「歴代最長政権」の実態を看破した両氏の対談「安倍政権は『桂園時代』に似ている」の全文は、「文藝春秋」12月号および「文藝春秋digital」に掲載されている。
https://bunshun.jp/articles/-/15987

 

世界のポピュリズム、勢いは続くのか? 

長続きする安倍政権 景気が追い風

世界を悩ます異常気象 それでも温暖化対策が滞る理由

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「東京五輪は失敗だった」 オリンピアンが断じる理由

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https://style.nikkei.com/article/DGXKZO52498110S9A121C1MY5000?

世界のポピュリズム、勢い続く? 庶民の不満根深く
2019/8/5
ニッキィの大疑問

トランプ米大統領は政権発足時とほぼ同じ水準の支持率を維持している(G20大阪サミットで記者会見したトランプ米大統領)
トランプ米大統領は政権発足時とほぼ同じ水準の支持率を維持している(G20大阪サミットで記者会見したトランプ米大統領)
米国や欧州を中心に、ポピュリズム(大衆迎合主義)が広がっているわ。経済格差の拡大や移民・難民の増加が影響しているみたいだけど、まだ勢いは衰えていないようね。世界の混乱は続くのかな。

世界中を揺さぶっているポピュリズムの現状と行方について、西山夏さん(53)と熊沢靖子さん(47)が小竹洋之編集委員に聞いた。

――なぜポピュリズムが広がっているのですか。

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千葉大学の水島治郎教授はポピュリズムを「人民の立場から既成政治やエリートを批判する政治運動」と捉えています。歴史的に繰り返されてきた潮流ですが、2016年を境に再び勢いを増してきました。英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決め、米国の大統領選でトランプ氏が当選した年です。

米欧では経済格差の拡大や移民・難民の増加に悩む庶民が少なくありません。ところが既存の政治家は富裕層や大企業の意向に左右され、グローバル化の痛みにあえぐ人々に寄り添ってきませんでした。長く置き去りにされてきた庶民の不満や怒りがついに爆発し、そこにつけ込む扇動家の躍進を許したのです。

ポピュリズムは米欧だけでなく、フィリピンやメキシコ、ブラジルなども侵食しています。排他的な通商・移民政策や強権的な政権運営に傾く右派のポピュリズムが優勢ですが、バラマキ色の濃い公約を掲げる左派のポピュリズムの伸長も目立ちます。

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ちょっとウンチク
――世界を主導する米国の変質は特に深刻なようです。

米国では上位1%の高所得層が富の4割を握り、全人口の0.01%にすぎないエリートが大口献金で政治を支配しています。白人の人口比率は今後30年以内に5割を割り込み、ヒスパニック(中南米系)やアジア系の存在感が一段と高まります。そんな国のかたちにいら立つ庶民が既存の政治家に「NO」を突きつけ、異端児のトランプ氏に変革を託したといえます。

米投資会社社長のJ・D・ヴァンス氏は16年の著書「ヒルビリー・エレジー」で、中西部や南部の取り残された白人労働者階級の窮状を描きました。トランプ氏はこうした庶民のための政治を訴え、「米国第一」の看板を掲げて民意をつかんだのです。

たとえ民意の反映であっても、内向きの経済・外交政策が米国のためになるとは思えません。主要国との貿易戦争や中南米・アジアの移民制限は、経済成長の基盤を損ないます。環太平洋経済連携協定(TPP)や温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱で、国際的な地位の低下にも拍車がかかるでしょう。国内がトランプ派と反トランプ派に割れ、社会の分断が深まっているのも心配です。

――トランプ氏は再選されるのでしょうか。

各種世論調査の平均支持率は40%台前半で、17年1月の政権発足時とほぼ同じ水準です。共和党の支持者に限れば80〜90%を維持しており、20年の大統領選で再選を果たす可能性は十分にあります。

民主党の大統領候補争いでは、中道派のジョー・バイデン前副大統領が優勢です。ただ存在感を増しているのは左派の候補者で、庶民受けする国民皆保険の導入や公立大学の無償化を訴えています。巨額の国費が必要なのに、責任ある財源を示してはいません。次の大統領選は、右派と左派のポピュリズムの戦いになるかもしれません。

――世界のポピュリズムを抑え込めますか。

5月の欧州議会選では、EU懐疑派の極右勢力などが躍進しました。英国では強硬なEU離脱派のジョンソン新首相が、問題をこじらせる可能性があります。グローバル化や既存の政治、エリート支配への反感を原動力とするポピュリズムの根は深いといわざるを得ません。

ポピュリズムの封じ込めは簡単ではありません。経済成長や技術革新の促進、所得再分配や安全網の強化、教育や職業訓練の充実といった包括的な対応が必要です。政治資金や選挙制度の改革なども組み合わせ、庶民の不満や怒りを和らげるべきでしょう。


https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2Fcontent%2Fpic%2F20190805%2F96958A88889DE6E5EBE3E5E5EBE2E0EBE2E5E0E2E3EBE2E2E2E2E2E2-DSXKZO4790017029072019EAC000-PB1-2.jpg?auto=format%2Ccompress&ch=Width%2CDPR&ixlib=php-1.2.1&w=630&s=adfd14c318d6b0d7b5a396313cd44b08
ちょっとウンチク
異端への渇望、断てるか

米著名投資家のレイ・ダリオ氏らが2017年に試算したポピュリズム指数。先進国の値は1930年代の水準まで上昇していたという。偏狭なナショナリズムのせいで悲惨な世界大戦に至った歴史を繰り返すのか。マクロン仏大統領が右派のポピュリズムの台頭を憂い、「古い悪魔がよみがえりつつある」と警告するのも無理はない。

トランプ米大統領のような扇動家の罪は重い。だがポピュリズムの病根は、現状の打破を望む民意にある。経済、人種、政治などを巡る庶民の不満や怒りを解きほぐさない限り、トランプ氏的な異端への渇望を断ち切れないのではないか。(編集委員 小竹洋之)

■今回のニッキィ
西山 夏さん 会社員。週2回程度、ストレッチやヨガに励む。始めたのは5年ほど前で、健康維持が主な目的だが「通う頻度を増やし、姿勢が良くなりました。体だけでなく、心も軽くなります」
熊沢 靖子さん 不動産会社勤務。6月、10年ぶりにソウルへ旅行した。カフェなど写真映えする光景を撮影して楽しんだ。「政治問題などはあるのでしょうが、出会った韓国の人に助けられました」
[日本経済新聞夕刊 2019年7月29日付]

※「ニッキィの大疑問」は原則月曜掲載です。

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https://style.nikkei.com/article/DGXZZO47917790Z20C19A7000000?



http://www.asyura2.com/19/senkyo267/msg/774.html

[自然災害22] 砂漠で多発する鉄砲水!温暖化が中東にもたらす脅威 米北東部など暴風雪、4000便超に影響 NYは非常事態宣言 よくある間違い)寒波や大雪は温暖化していない証拠 鉄砲水58人死亡インドネシア「死海」付近で子どもら20人死亡
国際報道2019 

砂漠で多発する鉄砲水!温暖化が中東にもたらす脅威


2019年11月28日(木) 午後10:00〜午後10:40(40分)

映画「インディー・ジョーンズ/最後の聖戦」の撮影地として有名なヨルダンの世界遺産「ペトラ遺跡」。この遺跡がある地域で年11月、観光客47人が鉄砲水に巻き込まれる災害が発生した。国連によると、中東各地でこの10年、鉄砲水の発生が急増していて、しかも地球温暖化による乾燥で地表面の砂が固まり、水がしみ込まなくなった事が原因だとわかってきた。
https://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=200&date=2019-11-28&ch=11&eid=12847&f=3039

鉄砲水で58人死亡 インドネシア
2019.3.17 19:26国際アジア
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インドネシアで16日発生した鉄砲水の被災地域=インドネシア・ジャヤプラ近郊(同国の国家災害対策庁提供)
インドネシアで16日発生した鉄砲水の被災地域=インドネシア・ジャヤプラ近郊(同国の国家災害対策庁提供)
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 インドネシア東部パプア州の州都ジャヤプラ近郊で16日、豪雨による鉄砲水や土砂崩れが発生し、国家災害対策庁によると、少なくとも58人が死亡、74人が負傷した。当局が救助活動と被害の全容把握を急いでいる。

 同庁のストポ報道官によると、鉄砲水で少なくとも家屋350戸が損壊し、多くの住宅が浸水。避難した住民は約4千人に上った。州都近郊センタニにある空港にも水や土砂が流れ込んだ。 救助活動に当たっていた軍の兵士は17日、倒壊した住宅の中から生後5カ月の赤ん坊を救出した。

 インドネシア各地ではほぼ毎年、豪雨による洪水や鉄砲水などで犠牲者が出ている。(共同)
 
中国が空母4隻目の建造凍結、電磁カタパルト導入も断念 

https://www.sankei.com/world/news/190317/wor1903170013-n1.html


ヨルダンの「死海」付近で鉄砲水 子どもら20人死亡
イスタンブール=渡辺丘 2018年10月26日23時38分

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写真・図版ヨルダンの死海付近で26日、鉄砲水に襲われた現場で生存者を捜す部隊=ロイター

 ヨルダンの観光地の死海付近で25日、大雨の影響による鉄砲水が発生し、ロイター通信などによると、学校の遠足中の子どもら少なくとも20人が死亡した。観光地をバスでめぐっていた子ども37人と教員7人らが流されたといい、犠牲者の多くは14歳以下だったという。ほかにも負傷者や行方不明者がおり、死者は増える可能性がある。

 世界で最も低い地域にあり、体が浮くことで知られる死海は観光客に人気だ。だが、乾燥した気候や深い渓谷の地形から、鉄砲水の影響を受けやすいという。

 今回、学校の遠足で、悪天候から立ち入りが禁じられていた地域に立ち入った可能性があるという。ヨルダン当局は大規模な救助や捜索をし、死海の対岸のイスラエルもヘリコプターを派遣した。(イスタンブール=渡辺丘)

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「何も隠すことない」強気だったサウジ、事件に誤算あり
https://www.asahi.com/articles/ASLBV4RQ2LBVUHBI01B.html

 

ヨルダンのペトラ遺跡で鉄砲水、12人死亡 行方不明者の捜索続く
2018年11月11日 11:42 発信地:アンマン/ヨルダン [ ヨルダン 中東・北アフリカ ]
 
洪水が起きたヨルダンのマアーンで、被害状況を確認する住民。国営ペトラ通信提供(2018年11月10日公開)。(c)AFP
 
洪水が起きたヨルダンのマドラで行われる捜索・救助活動。国営ペトラ通信提供(2018年11月9日公開)。(c)various sources / AFP
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【11月11日 AFP】ヨルダンの救急当局は10日、同国の人気観光地ペトラ(Petra)遺跡やその周辺で9日に発生した豪雨による鉄砲水で、これまでに12人が死亡したと発表した。

 民間防衛当局の報道官が国営テレビに語ったところによると、歴史ある町マダバ(Madaba)では少女1人が行方不明となっており、捜索活動が続けられている。

 政府報道官によると、この水害で3762人の観光客が避難を余儀なくされた。国営テレビによると、赤い峡谷の町ペトラと隣接するワディムーサ(Wadi Musa)の砂漠では、浸水深が4メートルに達した場所もあった。

 1985年に国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産に登録されたペトラ遺跡は人気観光地で、毎年多くの観光客が訪れる。(c)AFP
https://www.afpbb.com/articles/-/3197098

 

 
ワールド2019年12月3日 / 07:41 / 8分前更新
米北東部など暴風雪、4000便超に影響 NYは非常事態宣言
Reuters Staff
1 分で読む

[ニューヨーク 2日 ロイター] - 米北東部を含む全米の広い範囲で2日、暴風雪など大荒れの天気となり、ニューヨークやボストン、ワシントン、シカゴ、サンフランシスコ、フィラデルフィアの各空港を中心に4000便を超える空の便に影響が出た。

ニューヨーク州のクオモ知事は非常事態を宣言。ニューヨーク市のデブラシオ市長は「特に北部の地域ではこれから12ー20センチの積雪が予想される」として警戒を呼び掛けた。

国立気象局(NWS)では、ニューヨークやペンシルベニア州、ニュージャージー州北西部、コネティカット州、マサチューセッツ州、バーモント州南部、ニューハンプシャー州南部、メーン州の各地域でさらなる積雪が予想されるとした。
https://jp.reuters.com/article/usa-weather-snow-idJPKBN1Y62G5

 

【よくある間違い】寒波や大雪は温暖化していない証拠
2016年01月24日 気候変動 地球温暖化 異常気象 北極圏 ジェット気流
気候変動による温暖化が進み、2年連続で地球の平均気温が観測史上最高記録を更新しても、冬に寒波に襲われて大雪が降ると、「地球温暖化は嘘」「地球は寒冷化している」と言い始める人が後を絶ちません。

現在(2016年1月23日)、米東部から北東部にかけて、冬のストーム「ジョナス」による暴風雪に見舞われ、ワシントンD.C.では40センチ、ニューヨークでは60センチを超える積雪によって、空と陸の交通が乱れています。

では、この「ジョナス」のような冬の嵐の原因は気候変動にあるのでしょうか?答えは「いいえ」です。これまでに何度も述べてきたように、特定の極端な気象現象の原因を気候変動による温暖化であると断定することは不可能です。でも、だからといって冬の嵐が温暖化していない証拠なのか?というと、答えはもちろん「いいえ」です。今は冬です。温暖化が進めば気温の低い日は減少する傾向にありますが、それでも冬になれば雪を降らせる程度に寒い日はやってきます。

それでは、気候変動が「ジョナス」に影響を与えているのでしょうか?答えは「(高い確率で)はい」です。しかも、温暖化が進むほど暴風雪のような気象現象は起こりやすく、そして勢力が大きくなりやすいのです。

まず、気温が上昇することによって、大気がより多くの水蒸気を含むようになります。気温が1℃上昇すると、大気に含まれる水蒸気の量は7%増加します(Trenberth 2011)。大気がより多くの水蒸気を含むと、その水蒸気はどこかに雨や雪として降ります。

アメリカ大気研究センターの気候科学者であるケビン・トレンバース氏は、米東海岸の大西洋沖の海面温度が平年よりも1.7℃以上高いために大気中の水蒸気が10%から15%多くなっていると見られ、このうちの約半分は人為的気候変動の影響によるものと指摘しています。

Observed Change in Very Heavy Precipitation.jpg
全米各地域における、1958年から2012年にかけての極端な降雨現象(最も極端な上位1%の降雨現象)による降水量が変化した割合
Credit: 米国気候変動研究プログラム

また、米国気候変動研究プログラムによる2014年版全米気候評価報告書によると(上図参照)、米東海岸、特に北東部における、温暖化が顕著になってきた1958年以降の極端な降雨現象によって降水量が大幅に増加しており、その影響で冬には暴風雪のような気象現象で降雪量が多くなっているとみられます。

Jet Stream.jpg
通常よりも大きく蛇行したジェット気流
Credit: NASA

さらに、北極圏の温暖化が他の中緯度地域と比較して2倍の速さで進み、極地域と中緯度地域の気温差が小さくなっていることが原因で、本来は北極の寒気団を極地域に閉じ込める役割を果たしているジェット気流のスピードが落ち(気温差を坂だと想像してみて下さい。坂の角度が大きければ大きいほど速度が増し、坂の角度が小さくなれば速度は落ちます)、南北に伸びて大きく蛇行し、その谷に低気圧が、尾根に高気圧が位置する傾向が見られます(Francis & Vavrus 2015)。そして、ジェット気流の速度が遅いために、高気圧も低気圧も長い時間をかけて進むため、ある地域に長時間停滞することになります。

今回の「ジョナス」のようなストームは、通常よりも温度が高くなっている海水からより多くの水蒸気を以前よりも長い時間をかけて蓄えた大気が、ある場所に以前よりも長い時間をかけて大量の雪を降らせることになるのです。

もう少し気温が高ければ雨になり、もっと気温が低くなれば空気が乾燥するために大雪が降ることはないのですが、温暖化によって大気がちょうど雪を降らせやすい状態になっていることも原因のひとつです。温暖化が進むことで平年よりも暖かい冬が多くなるのですが、それがより冬の嵐による暴風雪を起こしやすくさせているという研究結果があります(Changnon et al. 2006)。この研究によると、1901年から2000年までのデータを調べたところ、その間の1月から2月にかけてアメリカで起こった吹雪のうち、71%から80%が平年よりも暖かい冬だった年に起こっており、将来的にはさらに暴風雪が増えると指摘しています。

つまり、暴風雪をもたらす冬の嵐が起こるのは、温暖化していないからではなく、地球温暖化によってより暴風雪のような気象現象が起こりやすくなっているのです。

【あわせて読んでほしい記事】
◆ 北極の温暖化と中緯度地域における極端な気象現象の関係

【参照】
Changnon, S. A., Changnon D., and Karl T. R. (2006). Temporal and Spatial Characteristics of Snowstorms in the Contiguous United States. J. Appl. Meteor. Climatol., 45, 1141–1155. doi: http://dx.doi.org/10.1175/JAM2395.1
Francis, J., & Vavrus, S. (2015). Evidence for a wavier jet stream in response to rapid Arctic warming. Environ. Res. Lett., 10(1), 014005. doi:10.1088/1748-9326/10/1/014005
Karl, T. R., J. T. Melillo, and T. C. Peterson, Eds., (2009). Global Climate Change Impacts in the United States. Cambridge University Press, 189 pp. [Available online at http://downloads.globalchange.gov/usimpacts/pdfs/climate-impacts-report.pdf]
Trenberth K (2011). Changes in precipitation with climate change. Climate Res 47:123–138. doi: 10.3354/cr00953
Climate Change Impacts in the United States|U.S. National Climate Assessment U.S. Global Change Research Program http://nca2014.globalchange.gov/
http://beyondclimate.org/article/432943632.html
 
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/786.html

[経世済民133] 補正予算に「学校でパソコン1人1台」計上?与党の10兆円要求で「ハコを埋める」動き IMFによる日銀の金融政策への提言 IMF「消費税引き上げ論」真水「10兆円財務省の絶妙対応 ECB総裁、物価安定に「断固」取り組 ブラジルとアルゼンチンの鉄鋼・アルミ関税を復活 ドル軟調ISM予想外に低下 米オンライン支出、過去最高の94億ドル
補正予算に「学校でパソコン1人1台」計上?与党の10兆円要求で「ハコを埋める」動き


上野 泰也
みずほ証券チーフMエコノミスト
2019年12月3日
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つくば市立竹園小学校の授業風景。教育現場ではタブレットの導入も進んでいるが……(写真:つのだよしお/アフロ)
 2019年度の補正予算案を「10兆円規模」とするよう、自民党の二階幹事長と世耕参院幹事長が強く主張している。11月19日の党役員連絡会で二階氏が「補正予算は10兆円であるべきだ」と述べると、地元が同じ和歌山県の世耕氏が「参院としても幹事長の方針に沿って議論を加速させる」と同調した。
 連絡会の終了後に二階氏は、財務省主計局幹部に電話で「補正は10兆円だ。分かったな」と指示したという(24日付、時事通信)。ある自民党議員は「幹事長2人が同時に同じことを言うというのは、間違いなく政府側が(発言を)振り付けている」と話したという(23日付、朝日新聞)。
 国の一般会計の補正予算が10兆円を超えた例としては、直近では12年度がある(うち公共事業費等は4兆7516億円)<図1>。
■図1:一般会計補正予算(2000年度以降) 公共事業費等とそれ以外

注:補正予算が複数回編成された年度は合算している。
(出所)参議院予算委員会調査室「財政関係資料集」

[画像のクリックで拡大表示]

 世耕氏は11月22日、アベノミクスの3本の矢のうち、第2次安倍内閣発足直後の経済対策を除いて「第2の矢(機動的な財政政策)は放たれてこなかった」と主張。19年度補正予算が「アベノミクスの総決算的な位置づけ」になるとした(22日付、ロイター)。
「10兆円の年度内消費は無理」
 だが、年度末までの時間が限られている中、19年度補正にあまりに多い額を計上することには、本来は無理がある。財務省内には「真水(国による直接の財政支出)10兆円を年度内に消化するのは無理だ」(幹部)と困惑する声があるという(23日付、時事通信)。
 また、自民党内では財政健全化を重視する傾向がある岸田政調会長が、記者団に対して「公共事業だけでも4兆円を超える額を目指さなければいけない」としつつも(25日付、読売新聞)、周辺には「10兆円の根拠が分からない」と漏らしたという(23日付、時事通信)。
 政府は19年度補正予算案と20年度当初予算案について、両者を一体的にとらえて編成する「15カ月予算」とする方針を打ち出している。また、財政投融資を積極活用する方向で調整が進んでいるもようであり、「3兆円超」という具体的な金額やその使途も報じられている(成田空港の3本目の滑走路建設や既存の滑走路の延伸、関西空港へのアクセスが便利になる鉄道新線「なにわ筋線」の整備、新名神高速道路の4車線から6車線への拡張など)。
 翌年度分の借換債の前倒し発行という、国債発行における一種の「貯金」が50兆円超という膨大なものになっている上に、日銀の異次元緩和が「悪い金利上昇」を完全に封じ込めていることから、債券市場では今回の経済対策などに伴う国債増発の動きは、ほとんど材料視されていない。
次ページ災害復興も歳出計上の「要因」に
 しかしながら、債券市場によるチェックがない中で、財政規律が相当緩んでしまっていることを、筆者は憂慮している。「金額ありき」的に財政出動の規模が決まってしまってから、案件をかき集めて「ハコの中身を埋めていく」というのは、過去に何度も見られたことなのだが、明らかに妥当な手法ではない。ムダな案件が混じりやすくなる。
 とはいえ、国家公務員は政治に従わなければならない。19年度補正予算案を真水で10兆円規模にすべきだという与党からの強い要請を受けて、防災・減災目的の公共事業の積み増し以外に何をいくらまで計上することができるのか、財務省は頭を悩ませているのではないか。
 経済対策を具体化するものとして編成された大型補正の直近の事例が、すでに触れた12年度の補正予算である。このときの補正予算全体の財政支出は13兆1054億円で、うち「日本再生に向けた緊急経済対策」に伴う財政支出は10兆2815億円だった。この10兆円強という数字が、与党からの今回の要求で大きな根拠になっていると考えられる。
災害復興も歳出計上の「要因」に
 そして財務省が当時作成した「平成24年度補正予算の概要」によると、上記の内訳は、@「復興・防災対策」<東日本大震災からの復興加速、事前防災・減災など>(3兆7889億円)、A「成長による富の創出」<民間投資の喚起による成長力強化、中小企業・小規模事業者・農林水産業対策、日本企業の海外展開支援など、人材育成・雇用対策>(3兆1373億円)、B「暮らしの安心・地域活性化」<暮らしの安心、地域の特色を生かした地域活性化、地方の資金調達への配慮と緊急経済対策の迅速な実施>(3兆1024億円)である。それに公共事業などの国庫債務負担行為2530億円を加えたものが10兆2815億円である(四捨五入の関係で端数は一致せず)。
 ここで注意すべきは、上記の数字は一般会計の補正予算に計上されたもの(7兆9946億円)以外、特別会計・財政投融資分も含んでいるという点である。具体的には、復興関係経費3177億円、次年度の復興財源の追加1兆2685億円、財政融資の追加4028億円などである。
次ページ教育現場の状況が分かっているのか
 では、19年度補正予算案はどうか。政府(財務省)が10兆円規模という与党の要求をはねつけるとは考えにくい。12月上旬ごろに経済対策が打ち出され、その具体化を主な⽬的として編成される19年度補正予算案は、20日ごろに20年度当初予算案と同時に決定されるとみられるが、12年度のときと同様、「経済対策に関する全体の財政支出は10兆円規模になった」という説明がなされるのではないか。
 東日本大震災からの復興という、12年度にあった一般会計・特別会計への多額の歳出計上につながった要因とは規模感が異なるものの、今回は大雨・堤防決壊などを引き起こした大型台風襲来が要因ということになるのだろう。
 また、3兆円超という大規模な財政投融資の活用、具体的には空港の滑走路増設や高速道路の車線拡大が、今回は報じられている。これも経済対策関連の措置として位置付けられる可能性が高い。
教育現場の状況が分かっているのか
 そうした中で出てきたのが、読売新聞が11月27日朝刊の1面トップで報じた、全国の小中学校に高速・大容量通信を整備した上で、児童・生徒に1人1台の学習用パソコンかタブレット端末を無償で配備する方針を政府が固めたという記事である。遅くとも24年度までに実現を目指し、総事業費としては4000億〜5000億円を見込み、うち19年度補正予算案には1500億円超を盛り込む方向だという。
 この政府のアイデアは突っ込みどころが満載であるように思う。いくつか挙げてみよう。
• ・教育現場の側でパソコン・タブレット活用準備は早期に十分整うのか。IT(情報技術)リテラシーが不十分で、SNS(交流サイト)にさえ不慣れな教員は今なお少なくないと聞く。
• ・そうしたIT機器は、陳腐化が速く、壊れやすく、子供にとって重量が重い製品であることは考慮に入れているのだろうか(買い替えの時期や予算措置をどうするか、故障時の対応はどうか、学校に置いておくのか家に持って帰るのか)。
• ・ゲーム関連を含めて、どこまでアプリのダウンロードを可能にするのか。そして、誰がその使用状況や通信費用を管理監督するのか。
• ・パソコンからスマートフォンと若者の使う機器が移行しつつある状況はどこまで勘案されているのか(パソコンを持たずにスマホですべてを済ませる大学生の増加が最近話題になっている)。
 以上のほかにも論点は数多い。要するに、「パソコン1人1台」プランの拙速な補正予算案への計上に、筆者は反対である。この話は、教育現場の現状などを踏まえた熟議を経て、事前にしっかり準備を整えてから、手堅く進めていくのが妥当ではないか。


伝説の設計者叫ぶ「ハチヤ、今すぐこいつを飛ばそうぜ!」


細川昌彦の「深層・世界のパワーゲーム」
補足解説2:誤解だらけの「韓国に対する輸出規制発動」

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https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00122/00046/?P=3&mds


 

IMFによる日銀の金融政策への提言
久保田博幸 | 金融アナリスト
12/2(月) 9:53

IMFのクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事(写真:ロイター/アフロ)

 国際通貨基金(IMF)は25日、日本経済について分析した2019年の報告書を公表した。この「2019年対日4条協議終了にあたっての声明」のなかで、日本銀行の金融政策に関わる提言があり、少なからず日銀の政策に影響を与えうる可能性もあるため、確認してみたい。

 物価安定目標をレビューするとして、物価安定の目標に合致したインフレ水準の再評価を実施しうる。さらに、日銀は物価安定目標達成が中長期的なものであることを強調しつつ、インフレ目標を幅で提示することで政策の柔軟性を高めることを検討しうるとある。

 これは日銀の物価目標に対して柔軟性をもたせるべきとするものである。金融政策の柔軟性を取り戻すためには、物価目標の柔軟性は欠かせない。今回IMFからこの提言があったことにより、物価目標を修正させやすくなる可能性も出てきたのではなかろうか。

 報告書では、金融政策実行を強化するとして、日銀は、現在の「二つの柱」政策戦略を、インフレ予測ターゲティング(IFT)の採用によって強化することも検討できるだろうとある。

 さらに、金融市場と国民とのコミュニケーションをさらに改善するとして、日銀の政策ガイダンスは日本国債買い入れの量的なガイダンスをやめること、マネタリーベースからオーバーシュート型コミットメントを切り離すことで簡略化されうるとある。

 これも現在の日銀の政策の矛盾点となっており、国債の買入における保有残高の増加額年間約80兆円をめどという数値は有名無実化している。すでに政策目標を量から金利に修正している以上、量的なガイダンスをやめる必要はあり、やめることで市場が動揺するとは思えない。また、マネタリーベースからオーバーシュート型コミットメントを切り離すことも必要となる。これでかなりすっきりしたかたちとなる。

 イールドカーブ・コントロール枠組みを調整するとして、日銀は金融緩和政策の長期化が金融機関の収益性に与える影響を緩和するために、残存期間が比較的長い国債の購入を抑えつつ、イールドカーブ・コントロールにおいて利回り0%の目標値を設定している対象を10年物国債から、満期のより短い国債に変更し、国債のイールドカーブをスティープ化することができるとある。

 これも日銀が検討していることのひとつとみられるが、たとえば長期金利の目標を10年国債の利回りから5年国債の利回りに変更することで、10年国債の利回りを自由化させ、利回りを上昇させられるものなのか。やや疑問は残るが、現在の政策の持続性を優先させるのであれば、これも検討事項となりうる。個人的には長期金利コントロールそのものをやめるべきと考えているが。

久保田博幸
金融アナリスト
フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。


「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。
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https://news.yahoo.co.jp/byline/kubotahiroyuki/20191202-00153292/


 

 
IMFの「消費税引き上げ論」と真水「10兆円」の補正予算浮上…財務省の“絶妙”な対応 (1/2ページ)
高橋洋一 日本の解き方 
 

IMF・ゲオルギエワ専務理事(AP)IMF・ゲオルギエワ専務理事(AP)
 国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は、日本の消費税率について「2030年までに15%、50年までに20%へ増税する必要がある」との見解を示した。

消費増税
 こうした発言については日本の財務省の影響が大きいことはこれまでにも本コラムに書いてきたが、この時期に出てくる背景は何だろうか。

 専務理事の来日は、IMF協定第4条の規定に基づき、加盟国と毎年定例的に行っている経済に関する審査「4条協議」に合わせたもので、協議の終了と対日報告書の発表を受けて記者会見した。

 対日4条協議はIMF代表団が協議相手国を訪問し、経済・金融情報を収集するとともに、その国の経済状況および政策について政府当局者等と協議する。筆者も、現役官僚のときに協議に参加したこともある。日本側は財務省、内閣府等の課長補佐レベルの実務担当者が中心であるが、IMFの副専務理事、理事や事務局への出向者も多い財務省が日本側をリードし対応していた。

 対日報告書はIMFのものだが、日本政府、特に財務省の意向が盛り込まれることもしばしばだ。IMFとしても、日本政府の意に反することをあえて盛り込むのは政治リスクもあるので、日本政府の抵抗のないものを採用しがちだ。財務省も、あえて外圧を使ってでも消費増税を打ち出すのがいいと考えているフシもある。その結果、対日報告書に消費増税が盛り込まれることとなる。今回の専務理事の発言も、これまでと同じ背景だろう。

 なお、日本のマスコミが「ワシントン発」としてIMFのニュースを流すときは、IMF理事室がソースであることが多い。そこでは財務省からの日本人出向者が勤務しており、日本語で対応してくれるので、英語に不慣れな日本人駐在記者に重宝されている。

 今回の専務理事の発言も財務省からのレクの結果だろうが、今は補正予算で「真水」10兆円という意見が、自民党と公明党から出ている。

 自然災害が相次ぎ、予備費の枠では抜本的な対応ができないことも理由の一つだが、本コラムでも指摘したように国土交通省の公共投資の採択基準が時代に合わなくなっていることもある。つまり、公共投資の費用便益基準の算出に必要な将来割引率が4%と高すぎるのだ。これを15年も見直さなかった国交省の怠慢もある。この見直しが大型補正予算を後押ししている。

 市場金利はマイナスなので、絶好の将来投資機会という主張に財務省は防戦一方だ。冒頭のようなIMF専務理事の発言を利用したいと思っても不思議ではない。さらに、補正予算は今の臨時国会ではなく、年明けの通常国会冒頭という時間延ばし戦術もありだ。後は、来年度予算との取引で沈静化を図るのだろう。

 もっとも、来年の通常国会冒頭での補正予算は、安倍晋三政権にとっては衆院解散の絶好の口実にもなりうるので、財務省の対応は政治的には絶妙だといえる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/191130/dom1911300002-n2.html


 

ラガルドECB総裁、物価安定に「断固」取り組む決意表明−議会証言
Piotr Skolimowski
2019年12月3日 3:47 JST
戦略見直し、インフレや気候変動も対象に−ラガルド氏
ECBの緩和的な政策姿勢、「変わりはない」と言明
欧州中央銀行(ECB)はユーロ圏の物価安定回復に「断固として」取り組むと、ラガルド総裁が表明。近く開始する戦略見直しでは、インフレや気候変動など幅広く対象にすると強調した。

Christine Lagarde
ラガルドECB総裁
  ラガルド氏はECB総裁として初めて欧州議会で証言し、「ECBの緩和的な政策姿勢は景気回復期に内需を押し上げる大きな力になった。この姿勢に変わりはない」と述べた。ECBは12日に、ラガルド体制初の政策委員会会合を開く。

  ラガルド氏は戦略見直しについて臆測で話すべきではないとし、どれだけの時間がかかりそうか見通しを示すことは控えた。「徹底的な分析とオープンな姿勢という2つの原則によって導かれるだろう」と発言。助言や情報を提供する団体や人々の幅を広げる可能性を示唆した。

  ECBの超緩和的な政策には副作用があると認め、見直しではECBが制御可能な事象に長期トレンドがどのように作用するのか、よりよい理解が得られるよう努めると語った。

原題:Lagarde Says ECB Will Be ‘Resolute’ on Inflation Mandate (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-02/Q1W83WDWRGG101?srnd=cojp-v2


 


 

サイバーマンデーの米オンライン支出、過去最高の94億ドルへ−アドビ
Spencer Soper
2019年12月3日 7:00 JST
前年比19%近い伸びとなる方向−NY時間午前9時時点で4.73億ドル
ブラックフライデーの米オンライン販売は過去最高の74億ドルだった
米国の消費者による2日のサイバーマンデーの支出額は、過去最高の推計94億ドル(約1兆240億円)に上るペースにあり、既に堅調なホリデー商戦に弾みを付けている。

  アドビによれば、ニューヨーク時間午前9時(日本時間同午後11時)時点の消費者によるオンラインショッピングは4億7300万ドルで、前年比19%近い伸びとなる方向にある。午後10時から午前2時の「小売りのゴールデンアワー」は特売品を手に入れようと買い物客が競うため、当日の売上高の3割を占めるという。

  アマゾン・ドット・コムなど大手電子商取引プラットフォームが売上高の急増から最も恩恵を受けるとアドビは分析した。

  アドビによると、これまでの売れ筋は、玩具では新作映画「アナと雪の女王2」やテレビアニメ「パウ・パトロール」関連商品、電子機器ではサムスン製テレビやアップルのノート型パソコン、アマゾンの音声アシスタント、アレクサ搭載のスマートスピーカー「エコー」など。

  感謝祭の翌日の金曜日ブラックフライデー(11月29日)の米オンライン販売は過去最高の74億ドルだった。米国の1日当たりのオンライン販売額としては2018年のサイバーマンデーの79億ドルに次いで過去2番目の大きさだった。アドビ・アナリティクスを用いオンライン小売業者上位100社のうち80社を対象に実施した調査結果で明らかにした。

原題:
Cyber Monday Shoppers Are Expected to Spend Record $9.4 Billion(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-02/Q1WILCDWLU6R01?srnd=cojp-v2


トランプ氏、ブラジルとアルゼンチンの鉄鋼・アルミ関税を復活
Adveith Nair
2019年12月2日 21:14 JST 更新日時 2019年12月3日 1:10 JST
中国に大豆を輸出する両国、トランプ氏は通貨「切り下げ」を批判
米鉄鋼メーカー、株価急伸−AKスチールは一時8%高
トランプ米大統領はブラジルとアルゼンチンの鉄鋼・アルミニウムに対する関税を直ちに復活させると、2日にツイッターで発表した。

  大統領は両国が自国通貨切り下げで米国の農民に不利益をもたらしていると批判。米金融当局に金融政策を緩和するよう重ねて呼び掛け、貿易問題と米金融政策批判を関連づけた。

  大統領はツイートで、ブラジルとアルゼンチンが「甚だしい規模で自国通貨の切り下げを行ってきた。これは米国の農民にとって不利だ。従って、両国から出荷される全ての鉄鋼とアルミニウムに対する関税を直ちに復活させる」とした。

大豆輸出国
  関税復活は米中の貿易摩擦において、米国に代わって中国に大豆など農産品を輸出する2国への報復に相当する。2020年に大統領選挙を控え、支持層の柱である農家を意識した格好だ。

  ブラジルのボルソナロ大統領はこれを受けて、経済閣僚と話してから対応したいと発言。「必要とあればトランプ氏に話をすることは可能だ。私には対話の経路が開かれている」と続けた。

  トランプ氏は米金融政策当局に対する批判を再び展開。「金利を引き下げ、金融政策を緩和し、各国が自国通貨切り下げによって米ドルの強さを利用することができないようにするべきだ」と主張。「これでは米国の製造業者と農家が公平に製品や農産物を輸出するのが極めて難しい。利下げして緩和しろ!」と続けた。

 

  2日のニューヨーク株式市場でAKスチール・ホールディングスは急伸し、一時8%高。USスチールは4%近く上昇した。

原題:Trump Ties Brazil, Argentina Steel Tariffs to U.S. Farm Woes (3) (抜粋)

(関税の背景や鉄鋼メーカーの株価を加えます)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-02/Q1VUW9T1UM0X01


ドル軟調、米ISM製造業が予想外に低下−円は上昇
Susanne Barton
2019年12月3日 6:36 JST 更新日時 2019年12月3日 7:00 JST
2日のニューヨーク外国為替市場では、ドルが主要10通貨の大半に対して下げた。米国の製造業活動が4カ月連続で縮小したことが指標で示され、同国景気見通しに対する懸念が再燃した。円は11月中旬以来の大幅上昇。米中両政府が貿易協議で合意に至ることができなければ、トランプ大統領は対中関税を引き上げるというロス米商務長官の発言が材料視された。

ニューヨーク時間午後4時44分現在、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.3%低下と、10月中旬以来の大きな下げ。100日移動平均線も11月22日以降初めて下回った。同指数は先週、一時10月11日以来の高値水準に達する場面があった。11月の月間上昇率は1.1%と、7月以来の大きさだった
米供給管理協会(ISM)が2日発表した11月の製造業総合景況指数は48.1と、市場予想に反して低下。前月は48.3だった。統計発表後、ドルは下げ幅を拡大。ユーロ圏や中国の製造業データは市場予想を上回ったが、対照的な内容となった
ジェフリーズの外為責任者ブラッド・ベクテル氏は、「弱い」米ISM製造業指数を受けて「米金融当局は間違いなく慎重姿勢を維持する」と述べた
ロス商務長官は12月15日より前に中国との交渉で合意に至らなければ、対中関税は予定通り引き上げられるとFOXビジネス・ネットワークに対して述べた。トランプ氏はそれより前、アルゼンチンとブラジルの鉄鋼・アルミニウムへの関税を復活させると発表。両国が自国通貨切り下げで米国の農民に不利益をもたらしていると批判した
円は対ドルで0.5%高の1ドル=108円98銭。アジア時間には一時109円73銭と、5月30日以来の安値をつけていた
ユーロは対ドルで0.6%上昇し、1ユーロ=1.1079ドル
IHSマークイットが発表した11月のユーロ圏製造業購買担当者指数(PMI)改定値は46.9。依然として活動縮小を示しているが、3カ月ぶりの高水準となった
ポンドは対ドルで0.2%高の1ポンド=1.2944ドル
原題:
Greenback Underperforms as U.S. Manufacturing Ebbs: Inside G-10(抜粋)

(市場関係者の見方を追加し、相場を最新にして更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-02/Q1WK6SDWLU6A01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/758.html

[国際27] クリスマスの日に弾劾されるトランプ大統領 金氏は「ロケット好き」北朝鮮、米に改めて譲歩要求 日韓に駐留費負担増を要求 フランスが報復、対仏関税導入なら 対トルコ制裁を検討 ロシア製ミサイル購入 ブラジル中国に接近も 中国との貿易合意期限はない 対中関税発動なら 米株3日続落 ドル下落 米日産16%減
クリスマスの日に弾劾されるトランプ大統領

4日から下院司法委員会公聴会、ホワイトハウスは臨戦態勢
2019.12.4(水)
高濱 賛
アメリカ?政治

11月30日、報道陣を前にドナルド・トランプ大統領弾劾手続きについて説明するジェリー・ナドラー米下院司法委員会委員長
ギャラリーページへ
マンハッタン舞台に因縁の対決
 米下院司法委員会(ジェリー・ナドラー委員長=民主党ニューヨーク州選出)によるドナルド・トランプ米大統領に対する弾劾審議が12月4日から始まる。

 下院情報特別委員会(アダム・シフ委員長=民主党カリフォルニア州選出)による「ウクライナゲート疑惑」審理を受けて弾劾決議権を持つ司法委員会が最終判断を下す。

 余談だが、ナドラー氏とトランプ氏には因縁がある。40年前に遡る対決だ。

 ナドラー氏がニューヨーク州下院議員の時だった1980年代、トランプ氏がナドラー氏の選挙区だったマンハッタン・ウエストサイドの土地を買い占め、「テレビ・シティ」建設を計画していた。

 これに地域住民は猛反対した。ナドラー氏は住民の反対を代弁してトランプ氏と激しく渡り合った。

 トランプ氏の周辺には怪しげなカネも飛び交ったとも言われている。

 結局、この対決の軍配はナドラー氏に挙がった。建設計画は断ち切れとなった。

 それ以後、トランプ氏はことあるごとにナドラー氏を「太っちょのジェリー」と罵ってきた。顔を見るのも嫌な存在かもしれない。

https://www.washingtonpost.com/politics/ive-been-battling-nadler-for-years-feud-between-trump-democrat-rooted-in-decades-old-new-york-real-estate-project/2019/04/08/1c848f7e-57af-11e9-a047-748657a0a9d1_story.html

 そして2019年末、そのナドラー氏が下院司法委員長としてトランプ氏を弾劾に追い込もうというのだ。

 シフ下院情報特別委員会委員長は当初、マイ…
 シフ下院情報特別委員会委員長は当初、マイク・ポンペオ国務長官らトランプ政権高官や大統領の個人弁護士として「ウクライナゲート疑惑」の中心的人物、ルーディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長の召喚を試みた。

 だが、トランプ大統領は大統領特権を行使して政府高官をはじめ関係者の証言を拒んできた。

 ナドラー委員長もトランプ政権高官らの証言を強く要求している。一方で、4日からの公聴会では「大統領弾劾の憲法上の根拠」を議題に著名な法学者4人を招いて弾劾の法的正当性を質す。

 その質疑応答をテレビ中継することで「米国民に弾劾の意味を知ってもらう」のだという。4日の証人は以下の通りだ。

●ノア・フェルドマン教授(ハーバー大学法科大学院)

●パメラ・カーラン教授(スタンフォード大学法科大学院)

●マイケル・ゲーハート教授(ノースカロライナ大学法科大学院)

●ジョナソン・ツゥ―レイ教授(ジョージワシントン大学法科大学院)

https://www.axios.com/house-judiciary-impeachment-hearing-witnesses-26694a26-41b8-4ca7-8ab1-39dca3dbf516.html

 民主党としては、公聴会での質疑応答を踏まえて12月第2週までに弾劾決議案を可決・成立させ、下院本会議に送付し、25日のクリスマスには下院本会議で同決議案を賛成多数で成立させる方針だ。

トランプ大統領に捺される烙印…
 下院が現職大統領を弾劾するのは、1869年のアンドルー・ジョンソン第17代大統領、1989年のビル・クリントン第42代大統領に次いで今回は3回目。

 ジョンソン、クリントン両大統領はともに上院で放免されている。

(リチャード・ニクソン第37代大統領は下院司法委員会が弾劾決議案を可決、成立させた段階で辞任している)

トランプ大統領に捺される烙印
 下院の弾劾決議を受けて上院は年明け第2週から「弾劾裁判」(Impeachment Trial)を行う。下院決議の是非を問う審議で上院議員の3分の2の賛成で可決・成立する。

 だが上院は与党共和党53議席、民主党47議席(無所属2議席を含む)と、共和党が多数を占めており、「多勢に無勢」。下院で成立した弾劾決議案が上院で承認される可能性はゼロだ*1。

*1=筆者は、弾劾を決めるのは下院であり、上院はそれを承認あるいは放免するという認識に基に執筆している。

 トランプ大統領には弾劾されない「安全弁」があるわけだ。

 弾劾の動きを定点観測してきた米主要紙の記者は4日から始まる弾劾心理の意義について筆者にこう指摘する。

「確かに上院の壁でトランプ氏は弾劾を免れるが、下院から『弾劾に値する大統領』と烙印を捺される政治的インパクトは計り知れないものがある」

「対外的にも極めてまずい状況になる。信用度はがた落ちだ。そのことを知らないトランプ氏ではない。いくら口では民主党の党利党略だと嘯いても『烙印』がついて歩く」

 一応「安全弁」を保証されているトランプ大統領は、こうツイートしている。

「民主党は歴史上最も馬鹿げた弾劾に向けた公…

「民主党は歴史上最も馬鹿げた弾劾に向けた公聴会を開く」

「(ウクライナ大統領との電話会談の)会話録を読んでみろ。何も悪いことはしていないし、話してもいない!」

「急進的な左派が我が国の価値を低下させている」

「(下院司法委員会の)公聴会は北大西洋条約機構(NATO)首脳会談と同じ日程だ」

 ツイッターを見る限り、トランプ大統領は強気の姿勢を崩していない。

 アフガニスタンへの電撃訪問に次いでNATO首脳会談出席のため2日訪英している。英国には2日から2日間滞在し、エリザベス女王とも会見する。

 トランプ氏としては弾劾騒ぎを撥ね退け、大統領選での再選に役立つ外交ショーを演出したいところだろう。

 だが12日に総選挙を控えている英国にとっては「厄介者のトランプ」(英メディア)は歓迎すべき賓客ではなさそうだ。

 英メディアはトランプ訪問を冷ややかな目で見ている。

「カネ、カネ、カネ」
 下院司法委員会の公聴会が4日から始まれば、テレビ局は生中継するし、ニューヨーク・タイムズをはじめとする主要紙やネットメディアは公聴会での審理を克明に報じるのは必至だ。

 主要紙の報道はどちらに転んでもトランプ大統領に好意的なものにはなりそうにない。

 そうした中で、トランプ大統領の強気の姿勢とは裏腹にホワイトハウスも与党共和党も臨戦態勢を敷いている。

 政権内部からの政府高官によるリークを警戒している。これ以上「ホイッスルブローワー」(内部通報者)が出ればトランプ大統領にとっては致命傷になりかねない。

 世論操作にも力を入れている。

 トランプ大統領と共和党は巨額のカネを使って世論操作に乗り出しているのだ。

 トランプ共和党は10月1日以降、民主党の弾劾の動きを激しく批判するテレビ広告を全米規模で展開、その額はすでに680万ドルに上っている。今後さらに増えそうだ。

(民主党もこれに負けじとトランプ弾劾の正当性を訴えるテレビ広告を流しているが、使ったカネは共和党の7割の470万ドルにとどまっている)

 また、トランプ陣営ではすでに来年2月2日のアメフトのスーパーボウル中継(フォックス・ニュース)の主要スポンサーになる話も進んでいるようだ。

(2019年のスーパーボウルをテレビで観戦した人の数は9820万人だった)

 トランプ陣営はTV広告に加えてネット広告…

 トランプ陣営はTV広告に加えてネット広告に200万ドルを投じて「反弾劾キャンペーン」も繰り広げている。その大半はフェイスブックだ。

 2016年の大統領選の際に売り出した「MAGA」(Make America Great Again)キャップで味を占めたのか、弾劾にちなんだTシャツを制作、発売中だ。


トランプ陣営が制作・販売しているTシャツ
ギャラリーページへ
 商品として売りながら民主党の弾劾工作を批判する世論を形成しようという狙いだ。

 そのロゴは「Bull-Schiff」や「Bull」の後に下院情報特別委員会のシフ委員長の似顔絵。

 同委員長は、トランプ大統領に対する弾劾追及の急先鋒。

 前者は卑語「Bullshit」(でたらめ)のShitに発音の似たSchiff(シフ)をひっかけている。似顔絵はどちらかというと首の長いシフ氏を茶化している。

 もう一つ売り出されているTシャツは「Where's Hunter?」

 共和党が下院情報特別委員会に証人喚問させようとしていた民主党大統領候補のジョー・バイデン前副大統領の息子ハンター氏のことを皮肉ったものだ。

 トランプ陣営によると、2つのTシャツの売れ行きは上々だという。

 12月は、攻める側にとっても守る側にとってもクリスマスそっちのけの、戦いの30日間になりそうだ。

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ニクソン氏と同じ道辿るか、トランプ大統領
高濱 賛
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58467?page=6

 

ワールド2019年12月3日 / 18:12 / 13時間前更新
北朝鮮、米に改めて譲歩要求 「クリスマスプレゼントは米国次第」
Reuters Staff
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[ソウル 3日 ロイター] - 北朝鮮の外務省は3日、米国が「敵視政策」を撤回する期限である年末が近づていると改めて警告し、年末にどんな「クリスマスプレゼント」をもらえるか決めるのは米国政府だと主張した。朝鮮中央通信(KCNA)が声明を伝えた。

同国のリ・テソン外務次官(米国担当)は、米国が対話継続を訴えているのは「北朝鮮を交渉のテーブルに縛り付け、国内政治や米大統領選に利用する目的だ」と批判。

「わが国は、自らとってきた重要なステップを覆さないために最大限の忍耐をもって最善を尽くしてきた」としたうえで、「このあとどうするかは米国が選択することであり、クリスマスプレゼントに何を選ぶかは米国次第だ」と語った。

北朝鮮は年末までに非核化交渉で譲歩するよう米国に要求しており、3回にわたる米朝首脳会談にもかかわらず交渉はほとんど進展していない。
https://jp.reuters.com/article/northkorea-usa-idJPKBN1Y70VO

ワールド2019年12月4日 / 00:52 / 5時間前更新
米大統領、金氏は「ロケット好き」 日韓に駐留費負担増を要求
Reuters Staff
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[ロンドン 3日 ロイター] - トランプ米大統領は3日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を信頼していると述べた上で、「ロケットを打ち上げるのが好きなようだ」と話した。

トランプ氏はロンドンで開催中の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席中。記者団に対して「だから、彼(金委員長)をロケット・マンと呼んでいる」と語った。北朝鮮が非核化に応じると期待していると述べた上で、「いずれ分かるだろう」と指摘した。

北朝鮮は先週、「超大型多連装ロケット砲」の実験の一環で日本海に向けて飛翔体2発を発射した。北朝鮮は米国に対し年末までに交渉姿勢を柔軟化させるよう求めており、時期が迫っていることを警告する狙いだと捉えられている。

外交筋によると、英独仏の要請により、国連安全保障理事会が4日に非公開で開催され、北朝鮮の先週の飛翔体発射について協議される見込み。15カ国で構成される安保理は2006年に北朝鮮の弾道ミサイル使用を禁止した。

北朝鮮はこの日、米国が翌年に大統領選挙を控えているため、非核化協議を長引かせていると非難した。

トランプ氏はこのほか、韓国と日本の米軍駐留費について両国の負担を増やす交渉を進めていると指摘。トランプ氏によると、韓国は昨年、米国による「防御」への負担を5億ドル近く増やすことに合意した。米国はさらなる負担増加を望んでいると述べた。

韓国に米軍を駐留させることは米国の安全保障の理にかなっているかどうかとの記者の質問に対して「議論の余地がある。私はどちらの道でも良い。どちらでも議論できる」とした。「ただ一つ言えることは、もし米軍を駐留させるのであれば、より公平な負担分担にするべきだ」とも述べた。
https://jp.reuters.com/article/usa-northkorea-trump-idJPKBN1Y71XJ


 

 

フランスが報復の意向、米が対仏関税導入なら−デジタル課税巡り
William Horobin、Jenny Leonard、Laura Davison
2019年12月3日 20:31 JST
米国の反応、同盟国にふさわしくない−仏経済・財務相
米USTRはオーストリアなど3カ国のデジタル課税調査開始も検討
フランス政府は、大手IT企業などに対する同国のデジタル課税に米国が対抗措置を導入する場合、欧州連合(EU)として報復すると表明した。米国はこのデジタル課税が米企業に差別的な税制だとして、仏産品約24億ドル(約2600億円)相当への報復関税を検討すると発表していた。

  フランスのルメール経済・財務相は3日、ラジオ番組で米国の反応について「同盟国としてふさわしくない。米国の主要同盟国の1つであるフランスや、より広く言えば欧州に対して、フランスが米国に期待する行動ではない」と述べ、「米国が新たに制裁を科すのなら、EUは報復に出る用意がある」と言明した。

  米通商代表部(USTR)は2日、「フランスのデジタル課税は米企業に対し差別的だ」と指摘した。対仏関税は意見公募期間が来年前半に終了してから実施される見通しで、対象となり得る輸入品リストにはスパークリングワイン、チーズ、ハンドバッグ、化粧品などが挙がっている。

  ライトハイザーUSTR代表は、オーストリアとイタリア、トルコの3カ国のデジタル課税についても、調査を開始するかどうか検討していることを明らかにした。この数時間前、トランプ大統領はブラジルとアルゼンチンから輸入する鉄鋼・アルミニウムに関税を課す方針を表明していた。

原題:France Vows to Retaliate Over $2.4 Billion U.S. Tariff Threat(原題)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-03/Q1XJ7WT1UM1001?srnd=cojp-v2


 

 
トランプ氏、マクロン氏のNATO発言に「ひどい暴言」と厳しく批判
Justin Sink、Helene Fouquet
2019年12月4日 3:45 JST
米仏首脳会談、トルコやNATO巡り意見が対立
マクロン氏の「脳死状態」発言に言及、トランプ氏は「危険」と警告
フランスのマクロン大統
フランスのマクロン大統 Photographer: GUILLAUME HORCAJUELO/AFP
トランプ米大統領とフランスのマクロン大統領は3日、訪問先のロンドンで米仏首脳会談を行った。両首脳は記者団を前に、トルコや北大西洋条約機構(NATO)など複数の問題で意見の対立をあらわにした。会見の数時間前にはトランプ大統領がNATOを巡るマクロン氏の発言を「ひどい暴言だ」と批判していた。

  トランプ大統領はかつて就任後初の公式晩さん会にマクロン大統領を招待するなど両国関係は緊密だったが、この日の両首脳のやりとりは米仏間に亀裂があることを明確に示した。

米仏首脳会談後、記者会見するトランプ米大統領とマクロン仏大統領Source: Bloomberg)
  米仏首脳会談は、今年70周年を迎えるNATOの首脳会議に合わせて開かれた。初めは見解の相違を落ち着いて説明していた両首脳だったが、米主導の連合軍がシリアで拘束する過激派組織「イスラム国(IS)」戦闘員をフランスが「誰でも好きなのを連れて帰ったらいい」とトランプ氏がマクロン氏に話すと、マクロン氏は「真剣になるべきだ」と返答。同氏がシリア領内のクルド勢力攻撃とロシア製ミサイルシステム配備でトルコを批判すると、トランプ氏はトルコをかばった。

  トランプ氏は首脳会談が行われる前に、マクロン氏がNATOは「脳死状態」にあると表現したことについて「非常に無礼だ」と話し、同氏の発言は「極めて危険」でフランスが「離脱する」ことさえ想像し得ると語った。

  さらに「NATOは偉大な目的を果たしている」と述べ、マクロン氏の発言はフランス以外のNATO加盟「28カ国にとってひどい暴言だ」と非難していた。

原題:Trump Turns Against Macron and His ‘Very Nasty’ Attack on NATO(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-03/Q1XPS9T1UM1A01?srnd=cojp-v2

ワールド2019年12月4日 / 03:02 / 5時間前更新
米大統領、独仏など欧州同盟国を非難 「脳死」発言や防衛費で
Reuters Staff
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[ロンドン 3日 ロイター] - トランプ米大統領は3日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に先立ち、マクロン仏大統領のNATO「脳死」発言について「非常に不快」と述べたほか、防衛費が少なすぎるとしてドイツを非難した。

NATO首脳会議出席に向けロンドンを訪れたトランプ大統領は、NATOが「脳死状態」としたマクロン大統領の発言について「非常に、非常に不快な発言だ」と記者団に語った。

一方、マクロン大統領は同日、自身の発言を固持し、NATOは核となる目的を明確にすべきと主張。加盟国のトルコを取り上げ、テロリズムの定義にさえ同意できていないと指摘した。

トルコはシリア侵攻でテロ組織と見なすクルド人勢力の民兵組織、人民防衛部隊(YPG)掃討作戦を実施し、複数のNATO加盟国が批判。トルコのエルドアン大統領は3日、トルコがテロリストと見なす組織をNATOとしてテロリスト組織と認定しなければ、バルト諸国防衛計画に反対する方針を示した。

カナダやオランダの首脳らは同日、NATO改革に向けた独仏の提案を支持した。

トランプ大統領はまた、欧州諸国がNATOの防衛費を十分負担していないと指摘。「(米国が)NATOや通商面で利用されるのは不当であり、許されない」とし、航空宇宙分野や欧州の「デジタル課税」などあらゆる欧米間の紛争について言及した。

さらに、防衛費の支出目標である国内総生産(GDP)比2%達成を巡り、ドイツなどが「義務を怠っている」として批判した。
https://jp.reuters.com/article/nato-summit-idJPKBN1Y72A3


 

 


ワールド2019年12月4日 / 01:12 / 6時間前更新
トランプ氏、対トルコ制裁を検討 ロシア製ミサイル購入で
Reuters Staff
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[ロンドン 3日 ロイター] - トランプ米大統領は3日、トルコによるロシア製の地対空ミサイル「S400」の購入を巡って、トルコへの制裁措置を検討していると明らかにした。

トランプ氏は記者団に対し「(トルコへの制裁を)現在検討しており、協議しているところだ」と表明。その上で「周知の通りトルコは当初、米国製の地対空ミサイル『パトリオット』を購入したがっていた。それなのにオバマ前政権はトルコの購入を認めず、トルコが他のミサイルを購入する段になって慌てて動きだす始末だった」と語った。
https://jp.reuters.com/article/nato-summit-trump-turkey-idJPKBN1Y71ZV


 

トップニュース2019年12月3日 / 17:37 / 14時間前更新
焦点:ブラジルのボルソナロ政権、米の追加関税で中国に接近も
Reuters Staff
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[ブラジリア 2日 ロイター] - トランプ米大統領が突如打ち出したブラジルからの鉄鋼・アルミ輸入への追加関税導入は、同国のボルソナロ大統領が目指す米政府との関係強化に打撃を及ぼし、中南米随一の経済国ブラジルが通商分野で米国の最大の競合相手である中国との距離を縮める可能性もある。

トランプ氏は2日、ブラジルとアルゼンチンから輸入する鉄鋼とアルミに追加関税を課すと表明。寝耳に水の両国は慌てて説明を求めた。

ボルソナロ氏は昨年の大統領選でブラジル経済における中国の影響力拡大に警鐘を鳴らし、「ブラジルのトランプ」と呼ばれて勝利した。大統領就任後にはトランプ氏寄りの姿勢を一層強める一方、中国に対する批判は封印し、ブラジルにとって最大の貿易相手国である中国に対して現実的なアプローチを取った。

トランプ氏の追加関税表明はボルソナロ氏の米国への思いが届かなかったことを示唆しており、ボルソナロ氏の両面作戦は片方しか機能しなかった様相が濃くなっている。

米国とは対照的に、かつてとげとげしかったボルソナロ氏と中国の関係は改善し、ブラジルが先月行った沖合油田の開発権入札は、中国企業が落札して救いの手を伸ばすなど、具体的な成果が出ている。

トランプ氏がボルソナロ氏を繰り返し袖にしたことで、ブラジルが中国との間でより長期的で一貫性を持った、円滑な関係の構築に向かうのではないかとアナリストはみている。

ピーターソン国際経済研究所の上級研究員、モニカ・デ・ボレ氏は「中南米における中国の経済的な影響力の増大を懸念するなら、追加関税導入はどう考えても逆効果だ」と述べた。

コンサルタント会社コントロール・リスクスのディレクター、トマス・ファバロ氏は、トランプ氏との関係強化を目指したボルソナロ氏の取り組みは弾みが付いていないが、中国政府はブラジルとの戦略的な付き合いではるかにオープンな姿勢だと分析。「中国が政治的な違いを越えて、自分たちをブラジル政府の安定的な同盟国に位置付けようとしているのは明白で、こうしたメッセージはブラジルに十分届いていると思う」と述べた。その上で、トランプ氏の追加関税導入表明で「ボルソナロ氏が中国との関係強化に進むのではないか」と予想した。

<常に変わらぬ友好関係>

米国とブラジルが進める自由貿易協定を巡る協議に、追加関税がどう影響するかは見極めていく必要がある。

ボルソナロ氏がトランプ氏や米国に寄せる気持ちは習近平国家主席や中国への気持ちよりもずっと強い。しかしボルソナロ氏の10月の訪中や習氏の先月のブラジル訪問で中国との関係は改善している。

また、トランプ氏が来年の大統領選で敗北すればボルソナロ氏に批判的な民主党候補が次期大統領に就く可能性がある一方、習氏は当面、国家主席の座に留まりそうだとアナリストはみている。

ブラジルが先月実施した沖合油田の開発権入札では、ブラジル国営石油会社ペトロブラス(PETR4.SA)以外の応札は中国海洋石油(CNOOC)(0883.HK)と中国石油天然気勘探開発(CNODC)の2社だけだった。

ブラジルと中国は昨年の貿易高が過去最高の1000億ドルに達し、関係の緊密化は必然でもある。中国はアフリカ豚コレラの流行で国内の豚飼育頭数が減少し、ブラジルからの豚肉輸入を増やしている。今年はブラジルの食肉加工工場45カ所に新たに輸出ライセンスを発行した。

ブラジルのジェトゥリオ・ヴァルガス財団のオリバー・ステンケル教授は「米国とブラジルの関係は危うくなっている。米国がブラジルから得られるものは多くないと理解し始めたからだ」と述べた。

ボルソナロ氏は近く、中国は何があっても変わらない友好国だと認めざるを得なくなるかもしれない。ボルソナロ氏の環境政策に懸念を抱く一部欧州諸国と同じように、米国もブラジルに背を向けつつあるからだ。

ボルソナロ氏は2日、トランプ氏に追加関税の見直しを求める考えを示し、「われわれの主張に耳を傾けてくれると確信している」と述べた。

しかし今のところ、トランプ氏が耳を傾けそうな兆候は乏しい。ボルソナロ氏は1月の大統領就任以来、トランプ氏に秋波を送り続けてきたが、見返りはほとんど得られていない。

ブラジルは先進国で構成される経済協力開発機構(OECD)への加盟を求めているが米政府の反応は冷たい。ボルソナロ氏はエタノールや小麦の貿易などの分野で米国の要求を飲み、ブラジル軍が懸念を示したにもかかわらず米軍基地の受け入れを検討している。

しかし米国は、9カ月におよぶ話し合いとボルソナロ氏からトランプ氏への直訴にもかかわらず、ブラジル産牛肉に対する禁輸措置を続けている。

中国がブラジルと米国の間のこうした摩擦に注目しているのは間違いない。

ブラジリアの外交筋は「追加関税を導入すれば他の陣営に付け込まれる隙が生まれる」と話した。

(Jamie McGeever記者)
https://jp.reuters.com/article/us-tariff-brazil-analysis-idJPKBN1Y70S8


 

トランプ氏、中国との貿易合意「期限はない」−大統領選後でも良い
Derek Wallbank、Jordan Fabian
2019年12月3日 19:44 JST 更新日時 2019年12月4日 5:00 JST
トランプ氏は合意を急がない姿勢、数週間内の第1段階合意に疑問符
12月15日が来ても変わらなければ対中関税の計画進める−ロス長官
トランプ米大統領は3日、中国と貿易合意に至るのが1年後になっても構わないとの姿勢を示唆した。数週間内の第1段階合意に疑問符が付いた。

  トランプ大統領は訪問先のロンドンで記者の1人から、中国との貿易協議で年内に第1段階の合意取りまとめを見込んでいるかと問われ、「期限はない」と発言。

  「中国との合意を大統領選挙後まで待つのは良い考えだと思う。しかし中国はいま合意することを望んでいる。合意が適切なものとなるかどうか見てみよう」と述べた。

Trump Says ‘I Have No Deadline’ on China Trade Deal
中国との貿易合意に期限はないと話すトランプ氏(3日、ロンドン)Source: Bloomberg)
  長期化する米中通商対立に早急に終止符を打つ考えがないことをトランプ氏が示唆したことを受け、欧米株式相場は総じて下落。米国は12月15日に対中追加関税を発動する予定になっているが、それまでに歩み寄りがあるとの投資家の期待は後退した。

  ロス米商務長官は3日、テレビ局CNBCに対して、15日の期限が来ても何も変わらなければ、中国製品に追加関税を課す計画を実行すると述べた。

  同長官は「事態打開のチャンスは常にある」とも指摘、双方の協議は続いていると述べたが、特に重要な会合は予定されていないと話した。通商面では中国に対する「さらなる手段」を米国は保持しているとも語った。

関連ニュース
中国、近くブラックリスト公表と示唆−貿易合意への障壁

原題:Trump Sees No Deadline for China Deal, Prefers It Post-Election(抜粋)

Trump Downplays Urgency for China Deal as Trade Risks Roar Back(抜粋)

U.S. to Levy Dec. 15 China Tariffs If No Deal Reached, Ross Says(抜粋)

(第4段落に株式相場の動き、5段落以降にロス長官の発言を追加して更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-03/Q1XN0O6KLVR501?srnd=cojp-v2

 
ワールド2019年12月4日 / 00:17 / 4時間前更新
対中通商合意「大統領選後も」、トランプ氏が長期戦示唆
Reuters Staff
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[ロンドン 3日 ロイター] - トランプ米大統領は、中国との通商交渉合意に期限はないとし、来年11月の大統領選挙後まで待った方が良いかもしれないと述べた。米中通商問題の早期解決に向けた期待が後退したことで、オフショア市場で人民元相場が10月以来の安値を付けた。

北大西洋条約機構(NATO)首脳会議のためロンドンを訪れている大統領は記者団に対し、「期限はない。ある意味で選挙後まで待った方が良いのではとも思う。彼らは現段階での合意を望んでいる。うまく合意できるかどうか、いずれ分かる」と述べた。

その上で「中国との通商合意は、私がディール(取引)を行いたいか、行いたくないかの1点にかかっている。現在、中国とは極めてうまくやっており、ほんの少しペンを動かし署名するだけで、一段とうまくやることができる」とし、「中国は代償を払っている。中国は過去57年で最悪の状態になっている。どうなるか様子を見てみよう」と述べた。

実際、中国では米国との貿易戦争の影響で製造業が低迷し、中国国家統計局が10月に発表した第3・四半期の国内総生産(GDP)は前年比6.0%増と、伸び率は1992年の四半期統計開始以来の最低水準となった。

トランプ氏は9月にも、来年の選挙前の合意は必要ないとの見解を表明。この日は中国に一段の圧力を掛けた格好となった。

トランプ氏のこの日の発言後に、ロス商務長官はCNBCテレビとのインタビューで、米中通商協議に関して大統領の目標は変わっていないとした上で、トランプ氏は妥結に向けた時間的制約を感じていないという認識を表明。1560億ドル分の中国製品への追加関税発動期限が15日に迫っていることについて、協議が著しく進展するなど発動を見送る実質的な理由がない限り追加関税は予定通り発動されると語ったほか、米中交渉は実務者レベルでは継続する見通しだが高官協議の開催は全くめどが立っていないことも明らかにした。

トランプ氏の発言を受け中国人民元相場が下落。オフショア市場CNH=EBSで1ドル=7.0695元と、10月25日以来の安値を付けた。

このほか、株式から安全資産とされる債券に資金が流れ、米株式市場でS&P総合500種.SPXが一時1.22%下落したほか、米10年債US10YT=RR利回りは約1.7%と、約1カ月ぶりの水準に低下した。

トランプ大統領は2日、ブラジルとアルゼンチンから輸入する鉄鋼とアルミニウムに直ちに関税を課すと表明。両国の意図的な通貨切り下げで米農業部門が圧迫されているとの考えから報復措置を打ち出したものとみられる。

このほか米通商代表部(USTR)は同日、フランスのデジタルサービス税が米IT(情報技術)企業を不当に差別しているとして、シャンパン、ハンドバッグ、チーズなどフランスからの24億ドル相当の輸入品に最大100%の追加関税を課す可能性があると明らかにした。

米ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の中国経済専門家、スコット・ケネディ氏は「こうしたことすべてがトランプ政権の信頼性を損ねている。ただ、どちらの側にも信頼性を巡る問題は存在している」と述べた。

*内容を追加しました。
https://jp.reuters.com/article/china-us-idJPKBN1Y71TA

 


 

迫る期限、米政権が対中関税発動なら何が起きるか−市場参加者の見方
Eric Lam、Gregor Stuart Hunter
2019年12月4日 4:22 JST
米中貿易合意を巡るトランプ大統領の直近の発言は過去最高値付近にある株式相場に冷や水を浴びせ、重要な期限が迫っていることを思い起こさせた。
  トランプ氏は2日、ブラジルとアルゼンチンの鉄鋼とアルミニウムに対する関税を復活させ、フランスにはデジタル課税への報復関税を検討する意向を表明。さらに米中合意を急がない考えを示唆した。トランプ政権は15日までに合意できなければ中国からの輸入品1600億ドル(約17兆3700億円)相当に15%の関税を課す方針で、その期限が近づいている。
  「15日に予定されている関税が発動されるなら、市場のコンセンサスには大きな衝撃になる」とマニュライフ・インベストメント・マネジメントのグローバルマクロ戦略担当マネジングディレクター、スー・トリン氏は語った。
  15日に対中関税が発動された場合の市場の反応について、市場関係者の見解は以下の通り。
「先行きは暗い」
  ディープブルー・グローバル・インベストメントの韓同利最高投資責任者(CIO)はブルームバーグテレビジョンのインタビューで、対中関税発動なら「リスクオフ一色になるのは間違いない」と予想。「1−2カ月の短期では先行きは暗い」と述べた。

来年に期待
  2019年も暮れに近づき、米中合意の見通しがますます遠のく中で、投資家はややリスクオフ姿勢を取るべき時期だろうと、スタンダード・チャータードのプライベートバンク部門チーフ投資ストラテジスト、スティーブ・ブライス氏はブルームバーグテレビジョンで述べた。
  「最善のシナリオでも来年初めまでずれ込みそうだ」とし、投資家に対する助言としては「恐らく株式へのエクスポージャーをやや縮小するべきだろう。相場を後追いする段階では全くない。ただ、向こう数週間で5−7%下がる場合には、それを検討する」と語った。
  ブライス氏は長期では引き続き楽観的な見方を保っている。「米中はある種の合意を結ぶ。これが不確実性を後退させ、世界経済を良い方向へと後押しする」とみる。
楽観は後退
  JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル市場ストラテジスト、ケリー・クレイグ氏は、まだ署名されていない貿易合意の見通しを市場がすでに織り込んでいることが大きな懸念だと指摘する。
  クレイグ氏はブルームバーグテレビジョンで「貿易合意を巡り、すでにかなりの楽観が醸成されている。今後数カ月にわたり相場を圧迫するだろう」と発言。「一方でこれらの不確実性の一部を実際に打ち消すような世界経済の改善をさらに目にする必要がある」と続けた。
安値を拾え
  週初の株安を買いの好機と捉えた向きもすでにいる。
  シンガポール銀行の投資戦略責任者、エリ・リー氏はブルームバーグテレビジョンで、南米と欧州に対する米政権の関税圧力は中国との貿易合意を前に、「タリフマン」としてのトランプ氏の印象を強める取り組みである公算が大きいと分析。
  「経済は極めて微妙な状況にあり、関税が発動されればリセッション(景気後退)リスクは大きく跳ね上がる。2020年大統領選に差し掛かる中で、そういった状況に追いやることはホワイトハウスも望まないだろう」と語った。
「動きの激しい日」
  当初の反応として、一部の市場は大きく揺れ動くかもしれないと、ペッパーストーン・グループの調査責任者、クリス・ウェストン氏は顧客向けリポートで指摘した。
  同氏によると、S&P500種株価指数は2%前後下落し、人民元やオーストラリア・ドル、韓国ウォンなどの通貨が動く公算が大きい。ただ、そう遠くない時期に反騰局面が訪れそうで、特に2020年の交渉再開で合意した場合にはそうなるだろうという。
原題:
What Happens to Markets If Dec. 15 China Tariffs Kick In (2)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-03/Q1XV79T0G1KZ01?srnd=cojp-v2


ワールド2019年12月4日 / 01:12 / 6時間前更新
トランプ政権、ファーウェイの米金融システム排除を一時検討
Reuters Staff
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[ワシントン 3日 ロイター] - 米トランプ政権が今年に入り、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]を米金融システムから排除する案を検討していたことが、3人の関係者の証言で明らかになった。

この案はファーウェイを財務省の特別指定国?と禁?対象者リスト(SDNリスト)に追加するもので、最終的には見送られたものの、今後の行方次第では再び検討される可能性があるという。

関係者2人は、SDNリスト追加案について、米国家安全保障会議(NSC)内で検討されたが、米ドルでの取引を事実上禁止する措置であることから、最終手段との認識があったと証言した。

またある関係者は、当局者らが作成した文書に基づき、同案が省庁間で何回も議論されており、実施の動きは確実にあったと指摘した。ただ最終的には、輸出管理規則に基づく禁輸措置などの方が好ましいという結論に至ったという。

ファーウェイは今年5月、安全保障上の理由で、米政府の許可なく米企業から部品などを購入することを禁止する「エンティティーリスト」に追加された。

ファーウェイからのコメントは得られていない。米財務省の報道官は報道内容の事実確認を含めコメントしないとした。

SDNリストに追加された個人や企業は、米国市民や米国企業との貿易や金融取引が禁止されるほか、在米資産も凍結される。
https://jp.reuters.com/article/huawei-tech-usa-treasury-idJPKBN1Y71ZL


 

 

ビジネス2019年12月4日 / 06:57 / 38分前更新
米株3日続落、米中通商合意への期待が後退
Reuters Staff
4 分で読む

[ニューヨーク 3日 ロイター] - 米国株式市場は3営業日続落して取引を終えた。トランプ米大統領やロス米商務長官の発言を受け、米中貿易摩擦の早期緩和に向けた期待が後退した。

主要株価3指数はいずれも先週付けた最高値から一段と押し戻された。ダウ工業株30種.DJIは10月8日以来最悪のパフォーマンスとなった。

先週は米中の「第1段階」の通商合意が近いとの期待が株価を押し上げてきたが、この日はトランプ大統領が、中国との通商交渉合意に期限はないとし、来年11月の大統領選挙後まで待った方が良いかもしれないと発言。ロス商務長官も、12月15日に発動予定の中国製品への追加関税について、協議の大きな進展など、発動を見送る理由がない限り、実施は予定通りと述べた。

また、フランスのルメール経済・財務相は3日、米国がフランス製品に対する追加関税を検討していることについて「受け入れられない」と発言、仏をはじめ欧州連合(EU)は報復する用意があると述べた。

貿易動向に敏感な半導体株が売られ、フィラデルフィア半導体指数.SOXは1.5%下落した。

S&P総合500種.SPXの主要11セクターでは9セクターが下落。アップル(AAPL.O)とインテル(INTC.O)の下げが重しとなった。

エネルギー株.SPNYや金融株.SPSYのほか、貿易動向に敏感な工業株.SPLRCIなどの下落率が大きかった。

終値 前日比 % 始値 高値 安値 コード

ダウ工業株30種 27502.81 -280.23 -1.01 27501.98 27524.74 27325.13 .DJI

前営業日終値 27783.04

ナスダック総合 8520.64 -47.34 -0.55 8460.72 8523.98 8435.40 .IXIC

前営業日終値 8567.99

S&P総合500種 3093.20 -20.67 -0.66 3087.41 3094.97 3070.33 .SPX

前営業日終値 3113.87

ダウ輸送株20種 10499.29 -235.56 -2.19 .DJT

ダウ公共株15種 850.67 +4.79 +0.57 .DJU

フィラデルフィア半導体 1665.71 -26.04 -1.54 .SOX

VIX指数 15.93 +1.02 +6.84 .VIX

S&P一般消費財 943.85 -9.63 -1.01 .SPLRCD

S&P素材 369.22 -2.48 -0.67 .SPLRCM

S&P工業 670.19 -7.45 -1.10 .SPLRCI

S&P主要消費財 634.57 -1.16 -0.18 .SPLRCS

S&P金融 489.21 -6.53 -1.32 .SPSY

S&P不動産 236.00 +1.74 +0.74 .SPLRCR

S&Pエネルギー 424.81 -6.68 -1.55 .SPNY

S&Pヘルスケア 1141.25 -2.38 -0.21 .SPXHC

S&P通信サービス 176.54 -0.15 -0.08 .SPLRCL

S&P情報技術 1508.54 -12.90 -0.85 .SPLRCT

S&P公益事業 317.48 +1.58 +0.50 .SPLRCU

NYSE出来高 9.07億株 .AD.N

シカゴ日経先物12月限 ドル建て 23135 - 195 大阪比 <0#NK:>

シカゴ日経先物12月限 円建て 23135 - 195 大阪比 <0#NIY:>
https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPKBN1Y72N9

 


ドル下落、貿易協議の懸念増大−米国債利回り急低下
Alyce Andres
2019年12月4日 6:44 JST 更新日時 2019年12月4日 7:04 JST
3日のニューヨーク外国為替市場では、ドルが主要通貨の大半に対して下落。貿易問題への懸念が強まり、米10年債利回りが日中取引ベースで一時、8月中旬以来の大きさで低下した。逃避通貨は大幅に上昇した。

ニューヨーク時間午後4時48分現在、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.1%低下。トランプ米大統領は中国と貿易合意に至るのが1年後になっても構わないとの姿勢を示唆した。ドル指数は3営業日続落。ショートカバーが入る中、ドルは人民元に対しては上昇
主要10通貨の中で円やスイス・フランなどが堅調さを示した。ロス米商務長官は、15日の期限が来ても何も変わらなければ、中国製品に追加関税を課す計画を実行するとCNBCに対して発言。米国株は下落した
ポンドは上昇。対ドルで0.4%高の1ポンド=1.2996ドル。英総選挙を控えた世論調査の一つで、与党・保守党が野党・労働党に対するリードを広げたことが分かった
ドルは円に対して0.3%安の1ドル=108円63銭と、4営業日続落。一時は108円48銭と、11月22日以来の安値をつけた
ドルは対スイス・フランで0.4%安。2日には0.9%下げていた。対ユーロではほぼ変わらずの1ユーロ=1.1080ドル
原題:
Dollar Ebbs as Treasury Yields Slump on Trade Fears: Inside G-10(抜粋)

(相場を最新にして更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-03/Q1YEXHDWRGG001


 

米自動車販売:11月は日産16%減、年末商戦の追い風吹かず-ホンダ好調
Chester Dawson
2019年12月4日 5:32 JST
11月の米自動車市場では、大半のメーカーがブラックフライデー商戦によって販売を押し上げられたもようだ。各社は大量の旧モデルを売りさばくため、過去最高水準の値引きを実施した。こうした中で日産自動車は販売台数が前年同月比15.9%減と振るわなかった。

  調査会社LMCオートモーティブとJDパワーの推計によれば、11月の乗用車・ライトトラックの合計販売台数は季節調整済み年換算(SAAR)で1750万台。前年同月は1740万台だった。両社は2019年は約1710万台となり、20年は1680万台に落ち込むと予想している。

  JDパワーが先週示した推計によると、自動車メーカーはディーラーが抱える旧モデルの在庫削減を図り、11月にインセンティブ(販売奨励金)を1台当たり4538ドル(約49万円)と約12%引き上げた。4500ドルを上回るのは初めて。

  こうした実質的な値引きに加え、今年は感謝祭の祝日が月末に近く、各社が月間目標達成に向け力を入れたことから、ここ数年のブラックフライデーとしては車の売れ行きが特に良い商戦になったと、調査会社エドムンズはみている。

  日産の11月販売台数は3カ月連続の減少。7月以降初めて10万台の大台を割り込んだ。同社で最も売れ行きの良いスポーツタイプ多目的車(SUV)「ローグ」は、25.5%減少。クロスオーバー車「ムラーノ」とピックアップトラック「フロンティア」も2桁のパーセンテージで減った。セダン「アルティマ」は37%増加した。

  ホンダは11%増の13万3952台。SUVとライトトラックが好調だった。売れ行きトップのクロスオーバー車「CR−V」は過去最高の月間販売台数を記録。小型の「HR−V」は2倍余り増えた。ピックアップトラックの「リッジライン」は31%増えた。

Inside Automobility LA Ahead Of Los Angeles Auto Show
ホンダ「CR−V」2020年モデル
  トヨタ自動車は9.2%増の20万7857台。主力のコンパクトSUV「RAV4」が26%増加し、全体をけん引した。中型ピックアップトラック「タコマ」とセダンの「カムリ」「カローラ」も販売が伸びた。

Inside Automobility LA Ahead Of Los Angeles Auto Show
トヨタ「RAV4プライム」2021年モデル
原題:
Black Friday Can’t Spare Nissan From 16% Drop: Auto Sales Update(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-03/Q1YAAJDWLU6F01
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/838.html

[経世済民133] トランプ政権の通商協議、ゴール見えない主要国との交渉 リスク高まる市場に備えよ 株大幅続落 円高、債券反発 米仏「チーズ戦争」、デジタル課税改革の前途にも暗雲 トランプ時代の安全保障、NATOが迫られる戦略再構築 米ウイグル人権法案可決−中国政府当局者を制裁対象、中国は警告 米巨大モール、時代に逆行
トップニュース2019年12月4日 / 16:48 / 2時間前更新
焦点:
トランプ政権の通商協議、ゴール見えない主要国との交渉
Reuters Staff
2 分で読む

[ワシントン 3日 ロイター] - トランプ氏は2016年の米大統領選で、通商政策を大幅に見直し、拡大を続ける米貿易赤字を削減すると約束した。ところが現在、米国の貿易相手上位10カ国のうち韓国以外とは、協定が発効していない。日米間の第1弾の通商協定は2020年1月に発効するが、それ以外の国・地域との間では協議の先行きが不透明で、新たな通商協定締結の見通しが立たない状態だ。

米国と主要貿易相手の通商協議の進捗状況をまとめた。

<中国>

かつては米国にとって最大の貿易相手だったが、米国との貿易摩擦が1年5カ月にわたり続いている。トランプ氏は3日、中国との通商合意について「期限はなく」、来年の大統領選の「後まで待つという考え」が良いと思うと発言し、株価が急落した。

中国が米国にとって最大の貿易相手だった2018年には、米国の財の貿易に占める中国の比率は15.7%だった。その後、米中間の貿易は大幅に減少。中国は今年1─9月に米国の貿易全体に占める割合が13.5%となり、順位がメキシコ、カナダに次ぐ第3位となった。

<メキシコとカナダ>

トランプ政権は18年にメキシコ、カナダの両国と北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を行った。

しかし、NAFTAを見直した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)は、まだ米議会で批准されていない。議会民主党はUSMCAについて、労働者の保護を強化し、薬価下落につながるような変更を盛り込むよう求めており、1兆2000億ドル規模の自由貿易圏は、先行きが見通せない。

<欧州連合(EU)>

トランプ氏はEUから輸入される自動車に最大25%の関税を課す考えを示唆してきた。期限を過ぎても導入の有無を決めていないが、交渉に弾みが付かなかったことから、計画自体は撤回していない。

この案件とは別に米通商代表部(USTR)は2日、世界貿易機関(WTO)がEUによる欧州航空大手エアバスへの補助金はルール違反だと改めて認定したことを受けて、EU製品に対する追加関税を検討すると発表。

フランスのデジタルサービス税への報復措置として、チーズやハンドバッグ、シャンパンなどフランスからの輸入品24億ドル相当の課税リストを公表した。

EUは米国にとって18年の最大の輸出市場で、米国からの輸入は財が3190億ドル、サービスが2560億ドルだった。EU加盟国のうちドイツ、フランス、英国、イタリアの4カ国は、いずれも18年に米国の貿易相手上位10カ国に入っていた。

<日本>

トランプ氏と安倍晋三首相は9月、通商協定の最終合意を盛り込んだ共同声明に署名した。日本は牛肉や豚肉など米農産物、約70億ドル相当について日本市場へのアクセスを改善し、米国は引き換えに日本製の一部工業製品の関税を引き下げる。

この「第1弾」の通商協定は4日、参院で承認され、日本側の批准手続きが完了。日米間の協定は2020年1月に発効する。

しかし、米国の財の対日貿易赤字の最大要因である自動車は、継続協議となった。米国の財の対日貿易赤字は年初来で670億ドル。

安倍首相は、日米間の協議が2020年に再開しても、米国が自動車の関税を引き上げることはないと断言している。だが、トランプ氏は関税引き上げの可能性を排除していない。

<インド>

米国は7月、インドを一般特恵関税制度(GSP)の適用から除外し、約56億ドル相当の輸出が影響を受けた。米国とインドは、インドが電子商取引に対して新たに導入した規制や、米国製医療機器などの製品に対する貿易障壁を巡って対立している。

こうした課題を解決し、インドが農産物やオートバイ、工業製品などに課している高い関税の一部を引き下げる話し合いは、これまでのところ実を結んでいない。

<韓国>

トランプ政権は昨年、韓国と進めていた自由貿易協定(FTA)の再交渉で合意した。トランプ政権にとって内容がまとまり、実行に移された唯一の通商協定。合意によると、米国は韓国製ピックアップトラックに課している25%の関税の撤廃時期をこれまでの2021年から41年に延長し、韓国は米国からの乗用車輸入に対する規制の一部を緩和する。
https://jp.reuters.com/article/trump-trade-factbox-idJPKBN1Y80H7


 


 

リスク高まる市場に備えよ、いつもと異なる手法で
JPモルガン
Sarah Ponczek
2019年12月4日 17:16 JST
• テクノロジーと金融、エネルギーセクターを勧める
• 自社株買いと配当を含めた総リターンとクオリティーに注目すべきだ
2020年は一筋縄ではいかない年になるとJPモルガン・アセット・マネジメントはみている。貿易摩擦が続く公算が大きく、経済成長も弱いままで、米大統領選挙もある来年をにらみ、同社は投資家に防衛策を講じる準備をするよう助言している。
  JPモルガン・アセットは来年の投資見通しで、米経済がリセッション(景気後退)に陥る可能性は低いが、「下振れリスクが形成されつつある」と指摘。ブルームバーグが同見通しの写しを確認した。同社は通常とは異なる防衛策を勧め、一般的に安全だとされる不動産や公益株、消費関連株ではなく、テクノロジーと金融、エネルギーセクターを勧めている。
 

  グローバル市場ストラテジストのデービッド・レボビッツ氏は電話インタビューで、「混乱のせいで経済は地政学的なタイプの、明確に捉えにくいリスクの影響を受けやすい状態が続くだろう」と述べ、米中貿易交渉と英国の欧州連合(EU)離脱に触れた。「今年の市場を波立たせたこれらの多くは、解決されない可能性が高い。 20年にリセッションを引き起こしはしないだろうが、リスクだ」と語った。
  JPモルガン・アセットは、ボラティリティーに対して防衛しながら株価上昇の恩恵を得るために、投資家は自社株買い戻しと配当を含めた総リターンとクオリティーに注目すべきだとしている。 割高になっている債券代替銘柄は勧めず、「防衛に徹して公益株や消費関連に集中するのを避けることで、もう少しの株価上昇を捉えることができる」と説明した。
原題:
JPMorgan Says Get Used to ‘Muddling’ Market at Risk of Flare-Ups(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-04/Q1Z3RFT1UM1001?srnd=cojp-v2

 

ビジネス2019年12月4日 / 15:43 / 3時間前更新
日経平均は大幅続落、米株安や円高嫌気もTOPIXは底堅い
Reuters Staff
2 分で読む

[東京 4日 ロイター] - 東京株式市場で日経平均は続落した。米中通商協議に対する不安がより高まったことで前日の米国株式市場が下落したほか、外為市場でドル/円が108円台半ばまで円高に振れたことが嫌気され、売り優勢で始まった。その後は、手掛かり材料難から模様眺めとなり、2万3100円台でもみあい。一方、TOPIXはマイナスながらも底堅く推移した。東証1部の売買代金は2兆0673億1100万円で2兆円台を回復した。

3日の米国株式市場ではトランプ大統領やロス商務長官の発言などが嫌気され、3営業日続落となった。円高進行に加え、取引時間中に米下院がウイグル族の扱いを巡り中国高官への制裁を要求する法案を可決したこともネガティブ材料になった。

日経平均は朝方から大きく下げて始まり、下げ幅は一時300円を超えた。一巡後は押し目買いが入って下げ渋った。買い材料に乏しい中、後場は2万3300円台半ばから後半で小動きとなった。

中盤から下げ渋りについては「前場のTOPIXが0.5%超安だったので、日銀が後場に上場投資信託(ETF)買いに入るのではないか。今週は中間配当を再投資に回すのがピークとされているため、押し目買いも入っているだろう」(岡三オンライン証券・チーフストラテジストの伊藤嘉洋氏)との声が聞かれた。

TOPIXは続落となったものの、「日経平均が1%以上値下がりしたのに対して0.2%の下げにとどまり、その点から相場の基調は強い」(国内証券)との見方もあった。

東証33業種では、電気・ガス業など13業種が値上がりし、証券業など20業種が値下がり。個別では、輸出関連株に安い銘柄が目立つ中、トヨタ自動車(7203.T)が堅調なほか、富士通(6702.T)が上場来高値を更新した。

東証1部の騰落数は、値上がり1170銘柄に対し、値下がりが866銘柄、変わらずが121銘柄だった。

日経平均.N225

終値      23135.23 -244.58

寄り付き    23186.74

安値/高値   23,044.78─23,203.77

TOPIX.TOPX

終値       1703.27 -3.46

寄り付き     1695.73

安値/高値    1,691.15─1,703.33

東証出来高(万株) 108504

東証売買代金(億円) 20673.11

米下院、ウイグル人権法案可決−中国政府当局者を制裁対象に
Daniel Flatley
2019年12月4日 9:27 JST 更新日時 2019年12月4日 10:36 JST
新疆ウイグル自治区の少数派イスラム教徒を支援する内容
中国外務省は対抗措置を講じるとの声明を発表
Police officers patrolling in Kashgar, in China’s western Xinjiang.
Police officers patrolling in Kashgar, in China’s western Xinjiang. Photographer: Greg Baker/AFP via Getty Images
米下院本会議は3日、中国・新疆ウイグル自治区の少数派イスラム教徒に対する人権侵害を巡り中国政府当局者に制裁を科す法案を賛成407、反対1の圧倒的多数で可決した。これを受け、中国外務省はさらなる対抗措置を講じるとの声明を発表した。詳細は示していない。

  同法案は9月に全会一致で上院を通過したウイグル族人権法案を修正したもの。採決前に中国共産党機関紙・人民日報系の新聞、環球時報は、中国政府は米企業の制裁につながり得る「信頼できないエンティティー」のリストを公表する可能性があると警告していた。先週には、トランプ大統領の署名により香港人権法が成立している。

  環球時報の胡錫進編集長は3日のツイートで、米当局者へのビザ(査証)発給が制約されたり、新疆ウイグル自治区への立ち入りが禁止されたりする可能性があると指摘した。

  中国は香港人権法への報復措置として、米国の非政府組織(NGO)の一部に制裁を科し、米海軍艦船の香港寄港を当面禁止した。

  人権侵害で中国政府当局者を制裁対象にする法案は議会で超党派の支持を得ている。超党派の支持を得る法案はまれであり、このためトランプ大統領はジレンマに直面する。議会に反対して有権者の支持を失うこともできないが、署名をすれば年内の中国との第1段階合意の可能性がさらに後退する可能性があるからだ。

  下院法案には、ウイグル族抑圧の責任を負う中国当局者への制裁を米大統領に義務付ける条項のほか、ウイグル族や中国市民の通信や動向を制限したり偵察するのに使われ得る機器の輸出規制などが加えられた。

原題:
U.S. House Votes to Sanction Chinese Officials for Rights Abuses(抜粋)

(中国側の反応などを追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-04/Q1YORZDWX2PS01?srnd=cojp-v2


ワールド2019年12月4日 / 10:33 / 1時間前更新
米下院がウイグル人権法案可決、中国「重要分野での協力に影響」と警告
Reuters Staff
2 分で読む

[ワシントン 3日 ロイター] - 米下院本会議は3日、中国政府が新疆ウイグル自治区で少数民族ウイグル族などイスラム教徒を弾圧しているとして、トランプ政権に強硬な対応を求めるウイグル人権法案を407対1の圧倒的賛成多数で可決した。

中国外務省は、同法案は重要分野における米中の協力に影響を及ぼすと指摘した。

上院が9月に可決した同様の法案を修正し、より強硬な内容にした。具体的には、共産党政治局委員で同自治区の党委員会書記を務める陳全国氏を制裁対象に指定するようトランプ大統領に求めている。成立すれば、政治局委員の制裁指定は初めてとなる。

法案は上院での承認とトランプ氏の署名を経て成立するが、ホワイトハウスはトランプ氏が署名するか、拒否権を発動するか明らかにしていない。

トランプ氏は前週、香港の反政府デモを支援する「香港人権・民主主義法案」に署名し、中国の猛反発を招いたばかり。

ウイグル人権法案はトランプ氏に対し、イスラム教徒への弾圧を非難し、新疆ウイグル自治区の北西部にある大規模な収容施設の閉鎖を呼び掛けるよう求めた。

また、トランプ氏に、法成立後120日以内に弾圧に関与した当局者のリストを議会に提出し、グローバル・マグニツキ―法に基づき制裁を科すよう要求。同法は査証(ビザ)の発給停止や米国内の資産凍結の根拠となる。

法案はさらに、ポンペオ国務長官に対し、自治区の再教育・強制労働施設に収容されている人数を推計するなど、弾圧の実態を報告するよう要求。顔・声認証技術など、個人の監視に利用可能な製品の中国への輸出も事実上禁止している。

一方、中国外務省は声明で、ウイグル自治区の問題は内政問題だとし、米国に間違いを正し、法案の成立を阻止するよう求めた。状況に応じてさらなる対応を取る方針も示した。

中国はこれまで一貫してウイグル族の人権侵害を否定しており、収容所は職業教育訓練センターだと主張。陳氏が制裁指定された場合は「相応の」報復措置を取ると警告してきた。

アナリストは、ウイグル人権法案が成立した場合、中国政府は香港人権法案の時よりも強硬な対抗措置を取る可能性があると指摘。ただ、中国によるウイグル族の扱いに批判的なポンペオ国務長官を含む米政府高官の査証発給制限には及ばないとの声も一部である。

米戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家、クリス・ジョンソン氏は、中国側はこれまで、米中関係全般の悪化と通商問題とを分けて考える傾向にあったが、ウイグル人権法案が成立すれば境界線がさらにぼやける恐れがあると指摘した。

<米中通商交渉に影響も>

中国政府のスタンスに詳しい複数の関係筋はロイターに対し、ウイグル人権法案の可決で米中の緊張が高まり、「第1段階」の通商合意の成立が危ぶまれる恐れがあると指摘。対中追加関税の発動期限が迫っており、米中の緊張が一段と高まりかねないとの見方を示した。

ある中国政府当局者は匿名を条件に、「鉄が熱いうちに」合意に至る道筋を見つけなければ、合意成立までに非常に長い時間がかかる可能性があると指摘。

別の中国当局者も匿名を条件に、米政府が今月15日に対中追加関税を発動すれば、中国も報復関税を発動すると予想。そうなれば米中交渉に深刻な悪影響が出るとの見方を示した。

在中国の米大使館はロイターに対し、中国が対抗措置を講じる可能性について憶測はしないと表明。「中国が恣意的に拘束している人々を直ちに全員解放し、2年以上にわたって新疆の自国民を脅かしている過酷な政策を中止することを引き続き求める」とコメントした。

中国外務省の華春瑩報道官は4日の会見で、ウイグル人権法案可決が米中通商協議に影響を及ぼすかとの質問に対し、米中の重要分野での協力に影響を及ぼすとの見解を示した。

中国として対抗措置を検討しているかとの質問には、中国の利益を損ねる者は「相応の代償」を払うことになると述べたが、具体論には踏み込まなかった。
https://jp.reuters.com/article/usa-china-xinjiang-idJPKBN1Y805A


 


コラム2019年12月4日 / 13:58 / 4時間前更新
コラム:米仏「チーズ戦争」、デジタル課税改革の前途にも暗雲
Liam Proud
3 分で読む

[ロンドン 3日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ブルーチーズの代表格とされるロックフォールの生産者は、来年起こりそうな米国とフランスの「チーズ戦争」を含めた両国の貿易摩擦の多くの犠牲者の1つにすぎない。対立がもたらす災厄は収まる気配は見えず、さらなる経済的被害が生じる可能性があり、それが大手IT企業に対する各国の課税制度を世界的に見直す動きの足を引っ張るのは必至だろう。


米通商代表部(USTR)は2日、フランスのシャンパンや、ロックフォールほか約20種類のチーズなど240億ドル相当に100%の報復関税を課す可能性があると表明した。トランプ大統領が不満を向けているのは、フランスのマクロン大統領が7月に導入したデジタルサービス税だ。フランス国内で生じた売上高に3%の税率を適用する制度について、米企業だけを不当に狙い撃ちしているとトランプ氏はみている。

確かにトランプ氏の言い分にも一理はある。デジタルサービス税は「デジタルインターフェース」と「ターゲット広告」によって生み出された売上高が対象で、マクロン氏は年間5億ユーロの税収を期待している。だからグーグルの親会社アルファベット(GOOGL.O)やフェイスブック(FB.O)をはじめとする米大手IT企業が、その大部分を負担することになる。フランス財務省は、米国以外の企業も課税対象になると主張はできるが、ルメール経済・財務相がデジタルサービス税は、グーグル、アップル(AAPL.O)、フェイスブック、アマゾン(AMZN.O)のいわゆる「GAFA」への課税だと繰り返し発言している事実からすると、説得力は薄れてしまう。

米仏両国はどちらも互いに引き下がりそうにはない。トランプ氏は、表面上同盟関係にある相手にも平気で懲罰的な関税を発動してきた「実績」があり、まさに昨年、欧州連合(EU)向けに鉄鋼・アルミニウム関税を課した。USTRがフランスのデジタルサービス税を公式に差別的と認定している以上、トランプ氏が何らかの措置を講じない方がおかしいだろう。同様に、マクロン氏とルメール氏は、大手IT企業をたたくことで政治的な得点を稼いでいる。2人とも、フランス国内で評判が悪いトランプ氏の脅しに屈したとみられるような行動は絶対に取れない。

こうした状況は、デジタル時代に向けて法人課税ルールを世界全体で見直そうという、経済協力開発機構(OECD)が主導している野心的な取り組みの前途に暗雲をもたらしている。OECDのパスカル・サンタマン租税政策・税務行政センター局長はこれまで苦労を重ねて、フランスと米国を同じ立場にとどめられるような方向で議論を進めてきた。おおまかに言えば、現在アイルランドなどの租税回避地に流出しているIT事業の利益の一部に対して主要国の課税権限を強めるという計画だ。だが米国とフランスが貿易面で対立を抱えながら、一方で友好的に新たな課税ルールの詳細を打ち出すとは想像しがたい。つまりチーズ戦争の最大の犠牲者は、賢明な課税ルールということになるだろう。

●背景となるニュース

*米通商代表部(USTR)は2日、フランスからのシャンパン、ハンドバッグ、チーズといった輸入品240億ドル相当に最大100%の報復関税を課す可能性があると表明した。

*USTRは、フランスが新たに導入したデジタルサービス税は米企業を差別的に扱っており、広く普及している国際課税ルールと矛盾するとともに、グーグル親会社アルファベットやフェイスブック、アマゾンなどの米企業に異例なほど大きな負担を強いると結論づけた。

*フランスのマクロン大統領は7月、国内で一定のデジタルサービスを提供して生まれる売上高に3%の税率を適用する法案に署名した。課税は今年1月1日にさかのぼって適用される。

*フランスのルメール経済・財務相と、ムニューシン米財務長官はデジタル分野の国際課税ルール策定の一環として話し合いを続けている。今年8月には、フランスのデジタルサービス税と、経済協力開発機構(OECD)を通じて新たにまとめられる課税制度の差額分を、フランス政府が米企業に還付するという妥協案が成立した。ただトランプ大統領はこの案に対する正式な支持を表明していない。

12月3日、ブルーチーズの代表格とされるロックフォールの生産者は、来年起こりそうな米国とフランスの「チーズ戦争」を含めた両国の貿易摩擦の多くの犠牲者の1つにすぎない。写真はロンドンで会談するトランプ米大統領(右)とマクロン仏大統領。代表撮影(2019年 ロイター)
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/france-us-breakingviews-idJPKBN1Y80AX

 


 
コラム2019年12月2日 / 09:09 / 1日前
コラム:トランプ時代の安全保障、NATOが迫られる戦略再構築
Peter Apps
3 分で読む

[ロンドン 28日 ロイター] - トランプ政権発足からまもなく3年が経過する米国について、同盟関係にある欧州各国はどのように感じているのだろうか。

米国の核抑止力に依存することについて、このほどドイツ国民に聞いた調査が1つ参考になる。このほかにも、実情がより鮮明に分かるデータがいくつかある。

<中国やロシアは懸念だが>

ドイツのケーバー財団が公表した世論調査によると、米国による「核の傘」に引き続き頼ることに賛成した人は22%にとどまった。40%は英国、または、より可能性が大きいフランスから新たな核の傘を提供してもらう取り決めを結ぶべきだと答えた。

ドイツが安全保障を核兵器に依存するのをきっぱりやめるべきだとしたのが31%。残る7%は、つい最近まで考えられもしなかった選択肢、つまり独自の核武装を唱えた。

この結果からうかがえるのは、外交政策を巡る欧州各国の国民の意見の食い違いが、歩み寄るのがおそらく不可能なほどまで拡大しているということだ。

全体として、ドイツ人も他の欧州の人々も、中国の台頭やロシアのプーチン政権との摩擦を含め、足元の世界の動きを好ましく思っていないのは明らかだ。基本的には、欧州は外交政策でより一致して行動することが望まれている。

だが、現在の各国指導者らがそれを実現するという期待は、人々の間にほとんど見受けられない。外交政策における優先順位付けという面でも、一般的な人々の間のコンセンサスは、あったとしても至極ぼんやりしたものであることが多い。

フォンデアライエン次期欧州委員長は11月27日、欧州が世界秩序形成に関与できるよう積極的に行動すると約束した。とはいえ、大国の指導者、特にドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領は、この積極的行動の意味合いを巡って「同床異夢」の関係にある。

欧州市民は温暖化と移民問題を最大の懸案とみており、各国政府や欧州連合(EU)に取り組んでほしいと願っているものの、具体的な方法を巡る見解の相違は非常に大きい。

フォンデアライエン氏自身、恐らく記憶にある限りで最も両極化している欧州議会に直面し、その議会の承認を獲得するため、せっかく選んだ欧州委員候補3人を差し替えざるを得なくなった。

<米国に負けない孤立主義>

ブリュッセルに拠点を置くシンクタンク、欧州外交評議会(ECFR)が9月に発表した世論調査では、EUが解体した場合の損失について、米国や中国のほか、新たに台頭しつつある地域大国に対抗する力を持つ「欧州ブロック」を生み出す機会が失われる、との声が多く挙がった。

その一方で、EU加盟国では40%以上が今後10─20年のうちにEUがばらばらになる可能性があると回答。およそ3分の1は、現加盟国間で抜き差しならない対立が起きてもおかしくない、とみている。

ケーバー財団の調査でも、ECFRの調査でも、欧州の安定にとって、もはや米国が最大の保証人として信頼されていないことが分かる。混乱して多極化が進む今の世界において、とりわけ通商問題で欧州の利益を代弁してくれるのは、各国政府ではなく欧州委員会およびEUだと、人々はみなしている。もっとも、イタリアなどでは自国政府とEU、双方の政策担当者への強い不信感を示す結果となった。

欧州諸国と米国の関係については、ドイツ人の87%が、トランプ氏が再選すれば独米関係に「かなり」もしくは「非常に」マイナスだと答えた。それでもある面では、欧州の政治情勢は、トランプ氏に負けないぐらいの孤立主義に親近感を示している。

ECFRが調査したポーランド以外の全ての欧州大陸の国々では、米国とロシアもしくは中国の対立の際には、中立を維持するべきだとの意見が圧倒的多数、もしくは多数を占めた。

<欧州だけで協力模索>

こうした姿勢は、北大西洋条約機構(NATO)を根本から揺さぶることになる。NATOを巡っては、大統領再選を目指すトランプ氏が米国の負担に不満を表明し、フランスのマクロン氏は「脳死」の様相が強まっていると警鐘を鳴らす。

その中でNATOは12月、会議を開く。特にフランスは、NATOの枠組み外で欧州がより緊密に防衛協力するべきとの主張を展開している。だが、ドイツからは消極的な支持しか得られていない。

ドイツが軍事費をNATO目標である国内総生産(GDP)の2%に引き上げるには、国民の理解が必要になるが、ECFRの調査では、「国防費拡大」に対する賛成は40%にとどまった。

ロシアへの金融制裁強化には相当な支持があったが、プーチン大統領を抑制したり封じ込めたりするため、軍事行動を取るべきだとの声はずっと少ない。イランの抑止政策についても、金融制裁と外交的な取り組みに幅広い支持が集まった。

米国でトランプ大統領が再選されるか、孤立主義の色合いがもっと強い民主党政権が誕生するか、いずれにしても、追い詰められた欧州は、否が応でも世界をどうしていきたいのかを巡って合意形成しなければならなくなる。

失敗すれば、せっかくのチャンスを逃すことになる。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

https://jp.reuters.com/article/column-peter-apps-idJPKBN1Y30E3
 


債券は反発、米中懸念再燃でリスク回避−あすの30年入札に警戒感も
三浦和美
2019年12月4日 15:51 JST
債券相場は反発。トランプ米大統領の発言を受けて米中通商協議の先行き懸念が再燃し、リスク回避の動きに伴う債券買い圧力が強まった。一方、あすの30年利付国債入札に対する警戒感から相場の上値は限定的となった。

新発10年債利回りは前日比1.5ベーシスポイント(bp)低いマイナス0.04%、一時はマイナス0.06%に低下
新発30年債利回りは1bp低い0.43%。0.415%まで買われて始まった後、30年債入札を翌日に控えた売りで低下幅を縮小
長期国債先物12月物の終値は19銭高の152円73銭。取引開始後に153円06銭まで上昇したが、その後は伸び悩み
市場関係者の見方
パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長

米中通商協議はもともと第1段階の合意がとっくに終了しているはずのところがここまで遅れており、まだまだ前途多難
欧米市場の金利急低下を受けて、円債も先物中心に買い戻しが優勢
ただ、入札を控えた30年セクターにはヘッジ売りが入っている上、15日の対中関税発動が延期される可能性も残されており、ここからロングで攻めるには怖さがある
長期国債先物12月物の日中取引推移
背景
トランプ大統領は3日、中国と貿易合意に至るのが1年後になっても構わないとの姿勢を示唆。これを受けて、3日の米10年債利回りは10bp低い1.72%程度で終了
この日の東京株式相場は続落。日経平均株価は1.1%安の2万3135円23銭で引けた
30年債入札
5日に実施、発行予定額は7000億円程度、64回債のリオープン発行
バンクオブアメリカ・メリルリンチの大崎秀一チーフ金利ストラテジスト
今週の10年債などここ最近は弱い入札が続いており、あすの30年債入札も警戒せざるを得ない
利回り水準的にはそんなに低いわけではないが、あえて入札でリスクを取って買う動きは見込みにくい
備考:過去の30年債入札の結果一覧
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
-0.160% -0.150% -0.040% 0.275% 0.430% 0.460%
前日比 -0.5bp -1.5bp -1.5bp -1.5bp -1.0bp -1.0bp

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-04/Q1Z49MT0AFB501


 


 
コラム2019年12月4日 / 11:18 / 7時間前更新
コラム:遊園地主体の米巨大モール、時代に逆行 集客力に不安
Jennifer Saba
3 分で読む

[ニューヨーク 2日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米ニュージャージー州では、時代に逆行するようにショッピングモールに一層力を入れる動きが進行しつつある。同州に建設された巨大モール「アメリカンドリーム」は、まるでドバイにある方がぴったりな、目がくらむほどの大がかりな仕掛けが施された幾つかのテーマパークを備えている。期待されているのは、これらの施設が来場者を増やしてくれることだ。ただ小売市場がインターネットへと急速に移行している以上、集客面で力不足かもしれない。

アメリカンドリームは完成まで相当な曲折があった。当初「ザナドゥ」の名称を冠したプロジェクトとして始まり、一時は破綻に直面。その後現在米財務長官のスティーブン・ムニューシン氏やコロニー・キャピタル(CLNY.N)のトム・バラック氏ら数多くの支援者を得て、2011年にはミネソタ州とカナダで巨大モールを運営するトリプル・ファイブが事業を買収し、これまでの多過ぎるほどの経験を踏まえて小売業の比率を減らせるだろうと算盤をはじいている。

トリプル・ファイブはそのために、アメリカンドリームの総面積300万平方フィートの55%をテーマパーク用地として確保した。整備されたのは「スポンジ・ボブ」のジェットコースターや、スキー場、スケートリンク、ウォータースライダーなどだ。さらに親に落ち着いて買い物をしてもらうためのベビーシッターから、しばしば渋滞が発生する高速3号線を通る車ではなく、ヘリコプターを利用してもらうための着陸拠点まで用意されている。いずれも、アメリカンドリームに年間で4000万人を集めることが狙いだ。

しかし残りの45%を占める宝飾品販売のティファニー(TIF.N)と百貨店サックス・フィフス・アベニューといった小売店が開店するのは来年3月以降になる見通し。つまり各店舗は、1年で最も大事な年末商戦の機会を逃してしまう。米小売業界自体、足場が不安定で、ティファニーがLVMH(LVMH.PA)への身売りに合意し、サックスを所有するハドソンズ・ベイ(HBC.TO)が物言う株主から経営改革を迫られている。もう1つのテナントとして誘われていた百貨店バーニーズ・ニューヨークは11月に破綻し、わずかな金額で売却されてしまった。それだけに、年末商戦に間に合わないというのは何ともタイミングが悪い。

一方、ネットで買い物をする人は増え続けている。モルガン・スタンレーの見積もりでは、11月第1週から第3週までの小売店の客足は前年比30%近く減少した。これは感謝祭とその翌日のブラックフライデーが今年は11月の3週目で、昨年は4週目だったというカレンダー要因が影響した。もっとも直近でこうした状況になった2012年と13年を比べると、客足は15%の減少にとどまった。

ソフトウエアのアドビは、今年の年末商戦期間を通じて、売上高の伸びは実店舗をネットが上回る公算が大きいとみている。そうした流れからすれば、モールは「ドリーム」どころか「悪夢」の様相が濃い。

●背景となるニュース

*アドビの見通しでは、米国では12月2日のサイバーマンデーのネット売上高は過去最高の94億ドルに達しそうだ。年末商戦期全体では前年比14%増と、実店舗を含む全体で予想される売上高伸び率の4%を上回るだろうという。

*アメリカンドリームでは、「ドリームワークス・ウォーター・パーク」という新たな施設が近く始動する。10月25日には、「ニコロデオン」のテーマパークやスケートリンクが営業を始め、12月上旬にはスノーパークも開業予定。サックス・フィフス・アベニューとティファニー、H&Mの開店は来年3月となる。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/breakingviews-american-dream-shopping-ma-idJPKBN1Y70DC
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/762.html

[経世済民133] 日銀の政策達成にコミュニケーション改革必須 マイナス金利は有害、重大な欠陥3点 

国内ニュース2019年12月4日 / 18:16 / 17分前更新
アングル:日銀の政策達成にコミュニケーション改革必須
Reuters Staff
2 分で読む

[東京 4日 ロイター] - 日銀の金融政策に対する国民の理解度が過去最低となっている。日銀の調査によると、7割超の人が、日銀が積極的な金融緩和を行っていることすら知らない。量的・質的金融緩和は「期待」に働きかける政策だが、調査結果を見る限り、政策は国民に行き届いていない。専門家からは、政策効果を高めるためにも抜本的なコミュニケーション改革が必要との声も出ている。

<日銀の政策、「関心なし」「聞いたことがない」>

「物価目標2%を理解してもらうのは最終ステージで、まずは何をしているのかを理解してもらうところから始めたほうがいい」──。こう話すのは、日銀出身で野村総合研究所主席研究員の井上哲也氏だ。

日銀が四半期に1回実施している「生活意識に関するアンケート調査」(2019年9月調査)によると、日銀が消費者物価の前年比上昇率2%を物価安定の目標として掲げていることを知っている人は22.7%で、過去最低を更新した。

積極的な金融緩和を行っていることを知っている人も24.2%にとどまり、回答者の7割超は「見聞きしたことはあるが、よく知らない」か「見聞きしたことがない」という状況にある。

そもそも、日銀の活動に「関心がある」人も24.2%と少なく、一方の「関心がない」は44.0%との結果も出ている。(6月調査)

関心がない背景には、金融・経済のわかりにくさもあるようだ。日銀の説明はわかりやすいかとの問いに対して、「わかりやすい」と答えた人はわずか5.8%で、「わかりにくい」は53.8%に達している。

わかりにくい理由を問うと、「日銀について基本的知識がない」という回答が44.2%、次いで「金融や経済の仕組み自体がわかりにくい」が41.2%、「日銀の説明や言葉が専門的で難しい」が40.2%と続いている。

さらに4番目の理由として「そもそも日銀の説明を見聞きしたことがない」が28.6%に上ることも見逃せない。

日銀は2019年に金融政策に関連する講演・挨拶だけでも26回(12月4日現在)行っており、これに年8回ある金融政策決定会合後の総裁会見や国会における説明などを入れると、「説明責任はそれなりに果たしていると言える」(市場関係者)。

それもかかわらず、3割弱が日銀の説明を聞いたことがないと回答している現状は、コミュニケーションの仕方に改善の余地があると言えそうだ。

<必要なのは国民目線に合わせたコミュニケーション>

日銀はこれまで市場やメディアとの対話を重視してきたが、情報の伝達ルートが多様化する中で、ひとつのルートだけでは国民に情報が届きにくくなっている。このため、さまざまなルートを用いた、国民の目線に合わせた直接対話がこれまで以上に重要になっている。

金融機関や金融リテラシーを研究している桃山学院大学経済学部の北野友士准教授は、イングランド銀行(英中央銀行)の取り組みが参考になるのではないかとみている。

イングランド銀行は、1)意思疎通(コミュニケーション)、2)会話(カンバセーション)、3)教育(エデュケーション)──の3つのルートによる家計への働きかけを強めており、視覚的にわかりやすい情報発信をしたり、「関係者がラジオ番組に出て、一般リスナーからの質問に答えたりしている」という。

北野准教授は「こうした取り組みは非常に大事で、結局、金融の専門家ではない人が実際に行動してくれないと、物価安定の目標は達成できない」と指摘する。

日銀も手をこまねているわけではない。日銀の業務などについて説明する出前講義を行ったり、SNS(交流サイト)を活用したりしているが、国民との直接対話という点では欧米に見劣りする。米国は「Fedリッスンズ」と呼ばれるイベントで国民との対話を続けている。

井上氏は、日銀の政策委員が全国で実施している金融経済懇談会のあり方を見直すべきと提言している。「現在の懇談会の参加者は地銀の頭取や地元産業界のトップだが、主婦に参加してもらうとか、地元大学を訪れ学生と対話をするとか、地場の中小企業従業員と話をするとか、あり方を見直したほうがいい」。

非伝統的な政策においては、国民の理解度が重要な鍵を握る。北野准教授は「インフォームド・ディシジョン、情報に基づき意思決定をしていくことの重要性をもう少しきちんと教えていかなければいけない」と、金融リテラシー教育の必要性も指摘した。

志田義寧 編集:田中志保
https://jp.reuters.com/article/boj-comunication-idJPKBN1Y80YZ


 


マイナス金利は有害−PIMCOが批判陣営に加わる、重大な欠陥3点
Piotr Skolimowski
2019年12月4日 16:11 JST
デンマークでは小口の顧客にコストを転嫁する銀行が増える
かつての禁じ手が標準になるかも可能性もある
債券ファンド大手の米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)が、マイナス金利政策には効果より弊害の方が大きいと指摘するグループに加わった。

  PIMCOは3日公表したリポートで、マイナス金利の重要な欠陥を3つ挙げた。第1は銀行の収益性を圧迫し、貸し付けを減らす結果になる可能性があることで、第2は市場のリターンを押し下げ固定給付を提供する年金基金と保険会社にとって「深刻な難題」なることだ。貯蓄者が貧しくなっているように感じる「幻想」を生み出し消費を抑制することが3番目の問題点だとしている。

関連ニュース
ECBのマイナス金利、ユーロ圏財務相の批判強まる−関係者

ドイツの銀行が水門開く−マイナス金利が全預金者の足元に忍び寄る

   マイナス金利を採用している欧州中央銀行(ECB)と日本銀行にはかねてから、こうした批判が向けられているが、1兆9000億ドル(約206兆円)を運用するPIMCOの指摘には重みがある。 ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)もマイナス金利政策を「失敗した実験」と呼んだ。

Less Than Zero
Five central banks have negative interest rates


Source: ECB, SNB, Riksbank, Danmarks Nationalbank, BOJ

  PIMCOのポートフォリオマネージャー、ニコラ・マイ、ぺダー・ベックフリス両氏は、「マイナス金利政策の意図せぬ結果は既に顕著だ。これ以上実行する余地はあまりない」とコメントした。

  PIMCOは、銀行では「重大なトラブルが水面下で醸成されている」とも分析。また、リターンを高めるために流動性の低い資産に投資家が目を向けることが、年金基金にとって特に危険だとし、不安定化したり、義務付けられている一定水準の支払いができなくなったりした場合に資本注入の必要性が生じる可能性などに触れた。


  預金者の懸念も増している。政策金利がマイナス0.75%のデンマークでは、リテール(小口)の顧客にコストを転嫁する銀行が増えており、かつての禁じ手が標準になるかもしれない。PIMCOによると、「一部の国で家計貯蓄率が上昇した兆候がある」という。

原題:
Pimco Joins Chorus of Negative Rate Detractors as Backlash Grows(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-04/Q1Z1OOT1UM0X01


 



http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/763.html

[国際27] 中村哲さん 聴診器をスコップに替えて アフガンに緑の奇跡 アフガンで銃撃され死亡 「恐怖政治は虚、真の支援を」
中村哲さん 聴診器をスコップに替えて アフガンに緑の奇跡
(18年のインタビューを再掲)
生活
2019/12/4 17:44日本経済新聞 電子版
保存 共有その他
中村哲さんは2018年、日本経済新聞のインタビューに応じ、自身の人生について語りました。謹んでお悔やみ申し上げ、18年10月21日付 NIKKEI The STYLE「My Story」の記事を再掲します。
アフガニスタンで30年以上、医療・農業支援に取り組む中村哲さんは不器用な人だ。愚直で寡黙、困難に背を向けることを潔しとしない自称「古い日本人」。干ばつに苦しむ人々を放っておけず聴診器をスコップ…

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52952760U9A201C1000000/?n_cid=DSREA001


 

 


 
中村哲医師、アフガンで銃撃され死亡 現地で人道支援
中東・アフリカ 社会・くらし
2019/12/4 17:35 (2019/12/4 17:58更新)
 

アフガニスタンで医療や灌漑(かんがい)事業などの人道支援に取り組む非政府組織(NGO)「ペシャワール会」(福岡市)の中村哲医師(73)が4日、現地で銃撃され、死亡した。ペシャワール会が明らかにした。

アフガニスタン東部ナンガルハル州の報道官によると、中村さんのボディーガードや運転手ら5人も死亡したという。

ペシャワール会によると、現地時間の同日朝、東部の都市ジャララバードから灌漑用水事業の現場に向かう途中で、乗っていた車両が銃撃を受けた。中村医師は右胸に銃弾を受け、病院に搬送される際は意識があったという。

中村医師はペシャワール会の現地代表のほか、PMS(平和医療団・日本)の総院長を務める。2003年から深刻な干ばつで苦しむアフガニスタン東部のナンガラハル州で用水路建設を開始。年間の半分以上は現地に滞在し、農業振興に取り組んでいた。

【関連記事】 聴診器をスコップに替えて 中村哲さん、アフガンに緑の奇跡
反政府武装勢力のタリバン関係者は4日、日本経済新聞の取材に「今回の日本人の攻撃には関与していない」と語った。ただアフガニスタンにはタリバンのほか、過激派組織「イスラム国」(IS)など20強のテログループが活動しているとみられ、地域情勢が不安定になっている。

菅義偉官房長官は4日の記者会見で、アフガニスタンで医療活動などに取り組む中村哲医師が現地で銃撃されたことを受け、外務省に領事局長をトップとする対策室を、在アフガニスタン日本大使館に現地対策本部をそれぞれ設置したと明らかにした。「さらなる情報収集をしている。誰から銃撃されたとの情報はまだ得ていない」と語った。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52949440U9A201C1MM8000/


 

アフガニスタンでNGOの車両襲撃 中村哲医師含む6人死亡
2019年12月4日(水)17時52分

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アフガニスタン・ナンガラハル州の都市ジャララバードで、非政府組織(NGO)の車が襲撃を受け、ピースジャパンメディカルサービス(平和医療団日本)総院長の中村哲医師など6人が死亡した。写真は中村医師が乗っていた車の壊れた窓。アフガニスタンのジャララバードで撮影(2019年 ロイター/Parwiz)

アフガニスタン・ナンガラハル州の都市ジャララバードで4日、非政府組織(NGO)の車が襲撃を受け、ピースジャパンメディカルサービス(平和医療団日本)総院長の中村哲医師など6人が死亡した。

同州の当局者が明らかにした。犯人は逃走し、犯行声明は出ていない。

中村医師はアフガニスタンで灌漑(かんがい)や農業の復興作業を支援してきた。


[ロイター]
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/12/ngo6.php


 

故・中村哲医師が語ったアフガン「恐怖政治は虚、真の支援を」

治部 れんげ
2019年12月4日
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 アフガニスタンで支援活動を長年続けてきた中村哲医師が12月4日、現地で銃撃を受けて亡くなりました。謹んでお悔やみ申し上げ、2001年10月22日号『日経ビジネス』の記事を再録いたします。


中村哲医師(写真:AP/アフロ、2008年8月撮影)
 米軍によるアフガニスタンへの報復攻撃が続く中、一般市民はどんな状況なのか。パキスタン北西部の都市ペシャワールを本拠地に、アフガン東部で18年間にわたり医療活動を続けている、非政府組織「ペシャワール会」の現地代表・中村哲医師に現地の様子やタリバン政権の実態について聞いた。中村医師は米ニューヨークのテロ事件直後にアフガン入り。10月13日現在一時帰国中だが、今月中に再度ペシャワール入りする予定である。

市民は北部同盟を受け入れない
 今、アフガニスタンの市民は思ったより冷静です。首都カブールと北部のジャララバードにある会のオフィスから毎日2回連絡がくるので、日本にいても状況はつかめます。会はカブール市内に5カ所の診療所を運営していて毎朝8時に朝礼をしていますが、空爆の後も変わっていません。

 日本の報道で一番伝わってこないのが、アフガンの人々の実情です。北部同盟の動きばかりが報道されて、西側が嫌うタリバン政権下の市民の状況が正確に伝わらない。日本メディアは欧米メディアに頼りすぎているのではないか。

 北部同盟はカブールでタリバン以前に乱暴狼藉を働いたのに、今は正式の政権のように扱われている。彼らが自由や民主主義と言うのは、普通のアフガン市民から見るとちゃんちゃらおかしい。カブールの市民は今、米軍の空爆で20人、30人が死んでも驚きません。以前、北部同盟が居座っている間に、内ゲバで市民が1万5000人も死にましたから。

 今もてはやされている北部同盟の故マスード将軍はハザラという一民族の居住区に、大砲や機関銃を雨あられと撃ち込んで犠牲者を出した。カブールの住民の多くは旱魃で農村から逃げてきた難民。22年の内戦で疲れ切っていて、「もう争いごとは嫌だ」と思っている。

 逆に言うと、厭戦気分が今のタリバン支配の根っ子にあると思います。各地域の長老会が話し合ったうえでタリバンを受け入れた。人々を力で抑えられるほどタリバンは強くありません。旧ソ連が10万人も投入して支配できなかった地域です。一方で市民は北部同盟は受け入れないでしょう。市民は武器輸送などでタリバンに協力しています。北部同盟に対しては、昔の悪い印象が非常に強いですから。

 タリバンは訳が分からない狂信的集団のように言われますが、我々がアフガン国内に入ってみると全然違う。恐怖政治も言論統制もしていない。田舎を基盤とする政権で、いろいろな布告も今まであった慣習を明文化したという感じ。少なくとも農民・貧民層にはほとんど違和感はないようです。

女性の「隠れ通学」を黙認
 例えば、女性が学校に行けないという点。女性に学問はいらない、という考えが基調ではあるものの、日本も少し前までそうだったのと同じです。ただ、女性の患者を診るために、女医や助産婦は必要。カブールにいる我々の47人のスタッフのうち女性は12〜13人います。当然、彼女たちは学校教育を受けています。

 タリバンは当初過激なお触れを出しましたが、今は少しずつ緩くなっている状態です。例えば、女性が通っている「隠れ学校」。表向きは取り締まるふりをしつつ、実際は黙認している。これも日本では全く知られていない。

 我々の活動については、タリバンは圧力を加えるどころか、むしろ守ってくれる。例えば井戸を掘る際、現地で意図が通じない人がいると、タリバンが間に入って安全を確保してくれているんです。我々のカバー領域はアフガン東部で、福岡県より少し広いくらい。この範囲で1000本の井戸があれば40万人程度は生活ができると思います。

次ページ禍根残す日本の対テロ法
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 国連が描く難民救済のシナリオは、米軍の報復攻撃によってパキスタンに移動してきた段階で助ける、というもの。だが、中村医師は「難民化を食い止めることが何より重要」と主張する。

 カブール市の人口は約100万〜150万人。平均して3〜4割は慢性の栄養失調で、放っておくと死にそうなのが1割くらい。だからこの1割、15万人が緊急食料援助の対象です。

 カブールは標高1500〜1600mで、11月下旬〜2月が冬。雪に閉ざされるので冬ごもりします。食料を蓄える見通しがなければ、当然、難民化して動かざるを得ない。これから3〜4カ月を無事に過ごせる状態にすれば、移動すらできない貧しい人も助かります。

禍根残す日本の対テロ法
 米国の食料投下は全く役立っていない。日本時間の10月12日夜に聞いた話によると、現地の人は気味悪がって食べずに、集めて焼いたそうです。タリバンが焼いた場合も、民衆が自発的にやった場合もある。例えば干し肉が入っていたら、豚肉の可能性もあるので、イスラム教徒は食べられない。

 本当は小麦を送るのが一番いいんです。今行われていることを総じて言うと、イスラム社会の都合や考えを無視して、西欧社会の都合が優先されている。ものすごい運賃をかけて物を送ったり、自衛隊を出すかどうかで大騒ぎして、結局役に立っていない。

 あちらの慣習法で大切なのが、客人歓待。ビンラディンもいったん客人と認めたからには、米国だろうと敵に客人を渡すのは恥、と考えるんです。

 嘘みたいな話ですが、1億円もあればカブールの人が全部助けられる。我々が今回やる緊急の食料援助プロジェクトで試算すると、1家族10人が3カ月の冬を越すのにたったの6000円で済む。これで急場をしのいでいるうちに、国連などが動き出すはずです。

 こんなふうに死にかけた小さな国を相手に、世界中の強国がよってたかって何を守ろうとしているのでしょうか。テロ対策という議論は、一見、説得力を持ちます。でも我々が守ろうとしているのは本当は何なのか。生命だけなら、仲良くしていれば守れます。

 だから、日本がテロ対策特別措置法を作ったのは非常に心配です。アフガンの人々はとても親日的なのに、新たな敵を作り、何十年か後に禍根を残します。以前は対立を超えてものを見ようとする人もいましたが、グローバリズムの中で粉砕されていく。危険なものを感じます。

中村 哲(なかむら・てつ)氏
非政府組織「ペシャワール会」現地代表。1946年福岡県生まれ、九州大学卒。自身はクリスチャンだが「アフガン人は全く気にしない」という。

「ペシャワール会」とは
 中村哲医師が現地代表を務める非政府組織「ペシャワール会(PMS)」は18年間、パキスタン北西部とアフガニスタン東部にまたがって医療活動を続けてきた。

 現在、パキスタンの都市ペシャワールの基地病院を本拠地に、パキスタン側に3カ所、アフガン側に8カ所の医療施設を持つ。スタッフは日本人7人、現地人220人で、貧困層を対象に年間20万人以上を診療している。

 中村医師は1984年に、キリスト教系の医療団体から派遣され、ペシャワールでハンセン病の治療に当たっていた。彼の現地での活動を支援しようと、福岡市の有志が結成したのがペシャワール会だ。現在4000人の会員からの寄付金で成り立っている。

 PMSは昨年夏から、井戸掘り事業も手がけている。昨年の大旱魃で、全国民1500万〜2200万人のアフガン国民のうち、被災者1200万人、400万人が飢餓に瀕したためだ。同会は、医療以前に水の確保が急務と考え、アフガン東部の660カ所の作業地で550カ所の水源を確保、30万人の離村・難民化を食い止めた。

 米国の攻撃で海外の援助団体が引き揚げてしまったため、中村医師は「既に巨大な難民キャンプ状態であるカブール市内で、10万〜15万人がこの冬を越えられずに餓死する」と判断。会では総額6000万円弱の緊急食料援助プロジェクトを開始した。

 PMSの活動は、中村医師の著書『医は国境を越えて』『医者 井戸を掘る』(ともに石風社)で詳細が分かる。
 
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https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00059/120400219/?P=2&mds



http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/840.html

[経世済民133] 中高年のひきこもり61万人の衝撃。誰がどう救う? みずほ早期退職開始−50歳以上規模定めず 銀行の人員削減、年初から世界で7万人超−欧州が大半 ヤクザの子「資本の格差」という宿命 「半分グレてる」どころでない、変容する「半グレ」ヤクザになった理由
中高年のひきこもり61万人の衝撃。誰がどう救う?

松本 健太郎
株式会社デコム データサイエンティスト 
2019年12月4日
1 80%全5086文字
 公的統計データなどを基に語られる“事実”はうのみにしてよいのか? 一般に“常識“と思われていることは、本当に正しいのか? 気鋭のデータサイエンティストがそうした視点で統計データを分析・検証する。結論として示される数字だけではなく、その数字がどのように算出されたかに目を向けて、真実を明らかにしていく。
※文中にある各種資料へのリンクは外部のサイトへ移動します
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 長期化する中高年のひきこもり、通称「8050問題」(80代の親がひきこもり状態にある50代の子の面倒を見ている問題)に注目が集まっています。2019年1月には札幌で、82歳の母親と自宅にひきこもる52歳の娘が遺体で発見されました。死因は寒さと栄養失調による衰弱死でした。
 そんな中で、19年3月に内閣府から発表された「生活状況に関する調査(平成30年度)」において、40歳から64歳までの中高年層のひきこもりが全国で推定61.3万人いると推定され、大きな話題をよびました。
 報告書によると、「全国の市区町村に居住する満40歳から満64歳の人たち4235万人」から層化2段無作為抽出法によって選ばれた5000人のうち、回答を回収できた3248人中47人(約1.45%)が、この調査におけるひきこもりの定義に該当すると分かりました。
 約1.45%に4235万人を掛けると61.3万人になります。100人の中高年がいれば1人はひきこもり、という衝撃的な結果です。
 ちなみに、この調査で定義するひきこもりは「自室からほとんど出ない」「自室からは出るが家からは出ない」「ふだんは家にいるが近所のコンビニなどには出かける」という“狭義のひきこもり”に加えて「ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する」という“広義のひきこもり”も含みます。ただし「現在、なんらかの仕事をしている」「身体的な病気がキッカケで現在の状態になった」「専業主婦・主夫だけど、最近6カ月間に家族以外とよく会話した・ときどき会話した」人たちは除かれます。
 過去2回行われた、ひきこもりに関する調査(平成22年の若者の意識に関する調査、平成28年の若者の生活に関する調査)は、15歳から39歳までを対象にしており、これまで中高年層のひきこもりの実態は謎のままでした。過去2回の調査を読むと30代の「ひきこもりの長期化」が顕著に表れており、実態解明は急務だったと言えるでしょう。
 しかし、この調査に対して「3000人に聞いただけで中高年のひきこもりが60万人なんて拡大解釈過ぎる」「たった1%なんて誤差みたいなものでいい加減」という意見もあるようです。果たしてそうなのでしょうか?
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標本調査をちゃんと知ろう
 確かに、日本中全ての住居に対して調査すれば、正確なひきこもりの実態が分かります。こうした方法を「全数調査」と言います。5年に1回行われる国勢調査や経済構造統計(経済センサス)が該当します。
 全数調査は間違いなく正確ではあるのですが、大変な手間と膨大な費用がかかります。ちなみに10年に行われた国勢調査の費用は約650億円でした。そこで、全体から一部の人を抽出する「標本調査」という方法が選ばれます。今回の「生活状況に関する調査(平成30年度)」も4235万人から5000人を抽出している標本調査です。
 標本調査は、全数調査のデメリットである「手間と費用」を軽くしてくれる代わりに、メリットである「正確さ」の精度が落ちます。全数調査を行えば得られたはずの結果に対し、標本調査で得られた結果との差分は間違いなく発生します。その差を「標本誤差」と言います。標本誤差の幅は、以下の表で示したように抽出した人数(表中の「n」)が大きいほど狭まります。
標本数などによって標本誤差の幅は変わる

出典:内閣府「生活状況に関する調査」

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 上の表は、標本数によって95%の確率で生じる標本誤差の幅を示したものです。これを見れば分かるように、n=3000人に聞いた場合、ある質問に対してAと答えた割合が10%なら、全数調査をすれば得られたはずの結果に対して95%の確率で±1.1%の誤差が生じるのです。
 計算式は単純です。1.96×√{p×(1-p)÷n}で求まります(1.96は定数)。今回は3248人に聞いてひきこもりの比率が1.45%なのですから、1.96×√(0.0145×(1-0.0145)÷3248)=±0.41%の誤差が生じます。
 つまり4235万人のうち約1.45%(±0.41%)が広義のひきこもりなら、実態の数は44.0万〜78.8万人程度だと考えられます。
 ただし、標本誤差は「全数に聞いたのと同じぐらい、抽出した標本に特徴がよく表れている」という前提条件があります。例えば渋谷の街角で20代100人に聞いたからといって、それが20代全員を代表する意見とは限りません。そこで全数から標本を抽出するには、最初に紹介した「層化2段無作為抽出法」をはじめとする様々な手段が用いられます。
 全数と標本の話は、よく味噌汁に例えられます。味噌汁の味を知るのに、全てを飲むのは大変です。だから、おたまで少しだけすくって味見をします。これが標本調査です。ただし、全体をよくかき混ぜないと、すくう場所で味が変わってしまいますよね? 「よくかき混ぜる」ことが前提条件です。
 標本調査についてもっと詳しく知りたいと思われた方は、総務省統計局「統計学習の指導のために(先生向け)」の標本調査に関するWEBページをご覧ください。
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内閣府は何もするつもりがない? それとも…
 ようやく明らかになった中高年のひきこもりに対して、内閣府はどのような対策を取ろうとしているのでしょうか? それは、調査目的を読めば分かります。一部を引用します。
(略)40 歳以上でひきこもり状態にある者の状況等について把握することで、子供・若者がひきこもり状態となることを防ぐために必要な施策や、ひきこもりの長期化を防ぐための適切な支援を検討するための基礎データを得ることを目的とする。
 私自身、この一文を読んでハッとしました。目的は「子供・若者のため」であり、40歳以上のひきこもり状態にある人たちの支援のためではないのです。
 そもそも中高年層のひきこもりの実態を調べる法律や根拠はないのです。以前から行われている「ひきこもり対策推進事業」は、法的なよりどころを「子ども・若者育成支援推進法」に求めています(参照)。過去2回のひきこもりに関する調査も、この推進法第17条によるものです。
 ひきこもりを支援するために全国各地に設けられている「ひきこもり地域支援センター」も、年齢制限が課せられている例が少なくありません。例えば東京都では、訪問相談の対象を「義務教育終了後の15歳からおおむね34歳まで」と区切っていました。19年の6月になってようやく、東京都も「義務教育終了後の15歳以上」に変更され、35歳以上でも利用できるようになりました。
 「ひきこもり対策推進事業」によると、中高年層のひきこもり対策は生活困窮者自立支援制度が該当するようです。19年6月には、厚生労働省から各地方自治体の生活困窮者自立支援制度主管部(局)長宛に「ひきこもりの状態にある方やその家族から相談があった際の対応」に関する通知が出ています。要は「関係各位と連携してちゃんとケアしてね」ということらしいです。
 しかし、生活困窮者自立支援の目的はあくまで「自立の支援」、つまり「就労」です。しかし、さきほど紹介した"広義のひきこもり"の方たちの「ひきこもりの状態になったきっかけ」は、その大半が「仕事」なのです。様々なつらい経験を乗り越えて再び就労するとなると、1年以上の時間軸で考えねばならないでしょう。それに、ひきこもりの方々の支援に必要なのは「就労」でしょうか? まずは、社会との接点を回復し、健やかな日常を通じて、社会を担う一員になることが必要ではないでしょうか。なんでもかんでも「就労」に落とし込んでしまうのがいいこととは思えません。
ひきこもりの状態になったきっかけ

出典:内閣府「 生活状況に関する調査(平成30年度)」(単位:人、複数回答)

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次ページ8050問題に20年後はない
 生活困窮者自立支援という名目の場合、他にも気になる点があります。法律によると「生活困窮者」とは経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなる恐れのある者を指します。しかし、"広義のひきこもり"の方たちが暮らし向きをどう思っているかをみると、全員が全員、困窮しているとは言えないのです。困窮していなければ、支援を受けられないということにならないでしょうか? あるいは困窮していないのに支援を受けていると、周囲から批判にさらされないでしょうか?
“広義のひきこもりの“人たちは家の暮らし向きをどう思っているか

出典:内閣府「生活状況に関する調査(平成30年度)」

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 これは仮説に過ぎませんが、生活困窮者自立支援という名目では、中高年層のひきこもりを支援する枠組みのままでは限界が生じるため、「まずはどれくらいの人数がいるかを明らかにしよう」と考えたのかもしれません。そこで、行政を含む関係各位が知恵を絞り、「子供・若者のため」という建前で40歳以上のひきこもり状態の可視化に挑まれたのではないか、と私は考えています。
 だとしたら、本来なら政治家がこのボールを拾って「中高年層のひきこもり支援のために包括的な法整備をしようよ」と号令をかけるべきです。しかし、今どなたが、どの政党がこの問題に興味をもたれているのでしょうか。
8050問題に20年後はない
 ものすごく当たり前ですが、現時点で、8050問題に直面しているほとんどの親と子には20年後はありません。大半の親が亡くなる可能性が高いからです。普通に考えれば、100歳の親が70歳の子どもの面倒を見続けることがそうそうあるとは思えません。しかし、戸籍上でならどうでしょうか。本来は死亡している90歳、100歳の親が戸籍上は同居し70歳の子どもの面倒をみているということは起こりえます。親1人子1人の家庭で親が亡くなった場合、死亡届が出されない可能性があるからです。
 先ほどの内閣府の「生活状況に関する調査(平成30年度)」によれば、"広義のひきこもり"の方たちのうち、「生計を立てているのは主に誰か」を調べたところ、3分の1は父か母になっています。父母の持つ資金は年齢から考えれば「年金」か「貯金」でしょう。
“広義のひきこもり”の人たちの家の生計を主に立てているのは父親か母親

出典:内閣府「生活状況に関する調査(平成30年度)」

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 親の死亡が明らかになれば生計の源が絶たれます。死亡届を出すメリットと、死亡届を出さないメリット、その両者をてんびんにかけたとき、後者が選ばれる可能性は否定できません。
 10年に年金不正受給問題が発覚して以降、いわゆる「高齢者所在不明問題」には厚生労働省が中心となり対応に当たっています。調べてみると11年2月に「昨年夏に把握した所在不明高齢者事案に関するその後の状況」が発表されて以降、5回の調査結果が報告されています。しかし15年12月の「年金受給者の現況確認の結果と差止め等の状況について」を最後に、報告は止まっています。
 果たして、こうした形でこの調査を止めて止めてしまっていいのでしょうか? 15年以降も年金の不正受給事件は発生しています。18年4月には父の年金を止められたら生活できないことを理由に遺体を放置し、年金を詐取したとして板橋区に住む女性が逮捕されています。ちなみに15年の「年金受給者の現況確認の結果と差止め等の状況について」では、調査時に75歳以上の方で、市町村が健在と確認できなかった 7207人を調べたところ、死亡が233人、行方不明が89人いたとしています。
 20年代、8050問題の当事者が「死亡届を出したら生きていけない」という理由でやむにやまれず犯罪に手を染める可能性は大いにあります。しかもそれは年に5件、10件というレベルではないでしょう。19年3月の調査結果からすると月に40件、50件のペースで発生してもおかしくないのです。さらに、今後、中高年のひきこもりが増えていけばなおさらです。
 厚生労働省では「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」と題した検討会において、複合的な課題に一元的に対応できる自治体窓口の創設など「断らない相談支援」の必要性を強調した中間報告がまとめられました。今後、財政支援も含めて検討されるようです。
 あの家にはひきこもりがいるらしい。子どもさん、なかなか顔を見ないよね。そんな噂話一つが、社会復帰を困難にすることもあるでしょう。そんな彼らに付き添い、盾になって守る行政、政治家、市民がいれば、8050問題はここまで深刻にならなかったのではないかとも考えています。

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コメント2件
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ねぎぼうず
全数調査をすれば得られたはずの結果に対して95%の確率で±1.1%の誤差が生じる
むちゃくちゃな説明ですね。「データサイエンティスト」を語るお方なのに... 基本中の基本が説明できないとは。文章全体の信頼がなくなります。
2019/12/04 06:24:27返信いいね!

ダメおやじ
痴呆公務員
不登校や引きこもり経験者の「両親が私を信じて見守ってくれたから、立ち直れた」というインタビューを良く聞きますが、親が見守った結果、立ち直ることなく中高年になってしまった人の話は聞くことが出ませんね。
このバイアスがかかった情報で(相談に行っても「子供を信じて見守ろう」しか言われない)、不登校や引きこもりの子供をただ見守るだけの親がなんと多いことか。残念です。
2019/12/04 07:10:12
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00067/112000017/?P=5


みずほ証券、早期退職を来年1月開始−50歳以上、規模定めず
中道敬
2019年12月3日 18:26 JST 更新日時 2019年12月3日 20:20 JST
みずほフィナンシャルグループ傘下のみずほ証券は来年1月、早期退職希望者の募集を開始する。対象者は条件に応じた割増退職金を受け取る。規模は決まっていない。
  広報担当の丸山敦史氏によれば、募集は50歳以上63歳以下の社員が対象。定年後も視野に入れた社内外でのキャリア形成支援のために従来の制度を見直した。
  丸山氏は「人員削減を目的とする制度ではまったくない」とした上で、「定年後も長年にわたり仕事をするのが当然のこととなりつつある状況を踏まえ、ベテランの社員に対して社内外を含めた柔軟かつ多様な選択肢を提供していきたい」と述べた。
  みずほ証券は2024年3月期までに国内外合算の経常利益で前期(19年3月期)比2.7倍の1000億円、リテール預かり資産残高で同25%増の50兆円を目指している。飯田浩一社長はブルームバーグとのインタビューで、法人・リテールともに顧客本位の商品提案ができる態勢が整ったと、目標達成への自信を見せていた。
  みずほ証のウェブサイトによると、3月末時点の従業員数は7541名。国内259拠点、海外10拠点を持つ。
(更新前の記事は対象者の年齢を訂正済みです)
(従業員や拠点数を追加します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-03/Q1XIWAT0AFB601?srnd=cojp-v2

銀行の人員削減、年初から世界で7万人超−欧州がその大半
Nicholas Comfort
2019年12月4日 1:01 JST
欧州の銀行で人員削減が加速している。マイナス金利や景気減速で域内の銀行はコスト削減を余儀なくされている。世界の各銀行が年初から発表した人員削減は7万3000人を超えるが、その大半は欧州に集中している。
  イタリアの銀行ウニクレディトは3日、約8000人の人員削減計画を発表した。同行の新たな4年計画の一環だ。各銀行が発表した人員削減は今年に入り世界で7万3400人。このうち86%が欧州となっている。
Job Losses
European banks have disclosed the higher number of targeted job cuts

Source: Company filings in 2019
  通商を巡る国際的な対立が輸出主導型の欧州経済を直撃しているほか、マイナス金利が銀行の融資収入を一段と圧迫していることから欧州の銀行で弱さが目立った。
原文:Global Bank Job Cull Exceeds 70,000 in 2019 With UniCredit Cuts(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-03/Q1XTGMT1UM1601?srnd=cojp-v2


「半分グレてる」どころでない、変容する「半グレ」
従来の視点ではとらえ切れなくなった犯罪者集団
2019.12.4(水)
廣末 登
時事・社会
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*写真はイメージです
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(廣末登・ノンフィクション作家)

 暴力団の勢力が衰退するとともに、半グレによる事件が増えているように思える。暴力団というオオカミが、暴力団排除条例(暴排条例)で身動きが取れないため、半グレという野良犬の活動領域が拡がった。とりわけ、オレオレ詐欺の火付け役は半グレであった。

 溝口敦氏の著書『詐欺の帝王』をみると、当時は半グレ予備軍のチーマー等が様々な詐欺に関与していた様子がうかがえる(文藝春秋、2014年)。このチーマーやカラギャン(カラーギャング)、暴走族などの不良が、やがて「半グレ」とカテゴライズされていった。

半グレとは何者なのか
 石垣島に半グレが進出し、繁華街で悪質な客引きや店舗への脅迫が相次いだ2019年9月、琉球新報は、同月14日の新聞紙面で、半グレを以下のように定義している。

<半グレ 暴力団などに所属せずに犯罪行為を行う集団。元暴走族や同じ出身地域の先輩後輩でつながるメンバーで構成されている。違法賭博や特殊詐欺などの犯罪行為で資金を得ているとみられる。得た資金で合法的に会社経営を行っているグループもいるとされる。暴力団と一般人の中間を意味する造語で「半分グレてる」や黒と白の間を意味する灰色(グレー)などが命名の由来とされている>

 この琉球新報による半グレ定義にケチをつけるつもりは筆者には毛頭ない。しかし、十把一絡げ的な「半グレ」というネーミングが、「半グレについて何だかわかりにくい感」を作り出している。だから、今年7月に放送されたNHKスペシャル『半グレ 反社会勢力の実像』が、制作者の意図から離れ、彼らを若い視聴者に宣伝する結果となったのかもしれない。

 実際、他のメディアでもこの番組に登場した「半グレ」について、「高級ブランド品で固めた自身のコーデや毎晩飲み歩く派手な姿を(インスタに)投稿し続ける・・・『今風』で、不良漫画から飛び出してきたようなアウトローといった印象を視聴者はもったはずだ」と述べられている(NEWSポストセブン 8月17日付け記事)。

半グレの定義を整理する…
 筆者から言わせると、「半グレ」は半グレに非ず。彼らは「グレグレ」「全グレ」であり、れっきとした犯罪・非行的集団である。

「半分カタギで、半分犯罪者」などという輩は存在しない。オレオレ詐欺やアポ電強盗が「ハーフクライム」なら、「フルクライム」とは余程凶悪な「強のつく」犯罪しか残らなくなってしまう。それならば、路上で殴打した、女性にわいせつな行為をした等は犯罪の内に入らなくなってしまうのか。そんな道理が通るはずがない。犯罪に「半分」も「全部」もない。故意または過失によって他人に何からの損害を与える行為は、全て不法行為であり、れっきとした犯罪なのである。

 暴力団の取材を重ねるうち、昨今の裏社会に言及する上では、半グレのことも避けて通れなくなってきた。現時点では学術的な研究ではないので、以下では、筆者がインタビューした限定的な範囲で半グレの実態を要約し、筆者なりの見解を述べたいと思う。

半グレの定義を整理する
 半グレという用語が定着したのは、ノンフィクション作家の溝口敦氏が、新書で『暴力団』(新潮新書、2011年)を著し、半グレについて言及した頃からではないかと考える。溝口氏は、同書の第六章 代替勢力「半グレ集団」とは――において、半グレを次のように解説している。

「半グレとは暴力団から距離を置くものであるといいます。その理由は、暴力団に入るメリットがなくなったからです。若い暴力団員が貧しくなり、格好良くなくなりました。暴走族を惹きつける吸引力を無くしています。暴走族としても、今さら暴力団の組員になっても、先輩の組員がああいう状態では、と二の足を踏みます……暴力団に入ると不利なことばかりですから、わざわざ組員になって、苦労する気になれません。それより暴走族のまま、『先輩――後輩』関係を続けていた方が気楽だし、楽しいと考えます」

「彼らがやっているシノギは何かというと、たいていのメンバーが振り込め詐欺やヤミ金、貧困ビジネスを手掛け、また解体工事や産廃の運搬業などに従っています。才覚のある者は、クラブの雇われ社長をやったり、芸能プロダクションや出会い系サイトを営んだりもしています」

「こういうシノギに暴力団の後ろ盾がある場合もあるし、ない場合もあります。ですが、ほとんどのメンバーはない方を選びます。下手に暴力団を近づけると、お金を毟られるだけですから、できるだけ近づけたくないのです」と。

 この本を溝口氏が執筆していた時期、すなわち、2010年11月には、市川海老蔵殴打事件が六本木で発生した。実行犯は関東連合と呼ばれる半グレ集団である(当時)。彼らは、東京の六本木に活動拠点を置く、暴走族・関東連合のOBからなるグループである。


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 この事件以降、「半グレとは暴力団なの?」というような感じで、世間の注目が集まった。その時、世間の疑問に答えたのが、溝口敦氏の『暴力団』だった。

半グレの種類…
 この半グレという不良集団は、以降、勢力を伸長させ、様々な問題を起こしている。筆者が2014年に助成金をもらって、暴力団離脱者の研究を行った時も、関西で様々な半グレと袖ふれあった。そして、2018年から2019年にかけて、福岡県更生保護就労支援事業所の所長として、老若男女の刑余者と接し、時代の流れの中で、半グレというものが、溝口敦氏が紹介した当時の姿とは異なってきているのではないかという疑問を有するに至った。

半グレの種類
 昨今、マスコミや新聞に書かれている「半グレ」像が、どうもズレているような気がする。10代の不良も、20代の青年も、40代の元暴も一緒くたにして、半グレと括るのは、ちょっと乱暴であり、大雑把すぎるのではないかという考えに至った。

 筆者が様々なフィールドにおいて面談し、見聞きした範囲から、半グレとは少なくとも以下の4パターンが存在するのではないかと考える。@旧関東連合や怒羅権(ドラゴン)に代表される筋金入りの半グレ(現在は30代から40代の年齢)。Aオレオレ詐欺の実行犯(これは、昨今では暴力団の手先となっているケースが多いと聞き及ぶ)。B正業を持つ半グレグループ。C元暴アウトロー、4パターンである。

 最後の元暴アウトローは、暴力団を離脱したものの正業に就けず、違法なシノギで食いつなぐ者だ。

@関東連合や怒羅権に代表される半グレに関しては、これは暴力団になるのはちょっと面倒くさいが、十代の頃の暴走族やグレン隊の非行集団の仲間関係を引きずり、どちらかというと、暴力団に近い「準暴力団」的な活動(ミカジメや薬物関係、債権回収など)をシノギとしている集団。先述の溝口敦氏のいう「半グレ」がこれにあたる。

Aに関しては、(少し反社がかった)一般人の若い人。カネが欲しく、真っ当に働きたくないが、暴力団や@カテゴリーの半グレにもなりきれない集団。年齢的にも10代から20代前半位の構成員で、比較的若い集団である。この集団が暴力団の走狗となってオレオレに加担する傾向がある。現在、筆者が保護観察などで扱う少年の多くが、このパターンである。

 ただし、このカテゴリーは、@カテゴリー「半グレ」の実行部隊として使嗾されるケースがあるようだ。@カテゴリーの構成員から「誰かこのシノギやる奴いないか」と言われ、「オレらがやります」といった具合でシノギの実行を請け負い、犯罪で得たカネの一部を上納する。もし、そのシノギでしくじったら、トカゲの尻尾切りで、逮捕、即退場となる使い捨てにされるグループ。業界では、彼らのことを「つまようじ」と呼ぶむきもある。先が曲がったら捨てようか――という、消耗品的な人材だからだ。

 2019年11月10日の静岡新聞に、<詐欺「受け子」枯渇か 外国人や女性、少年に移行 警察の包囲網強化で人材、資金不足>という見出しの記事が掲載された。この記事によると、「静岡県内で発生した特殊詐欺事件で『受け子』と呼ばれる現金やキャッシュカードの受け取り役が最近、首都圏の若者から、被害者の近隣などに住む少年や女性、外国人に移行する傾向が強まっている。背景には県警などの包囲網の強化で詐欺グループが人材と資金の不足に陥り、コストの削減を図りながら組織末端の『受け子』を賄う窮状が透けて見える・・・他県警が逮捕した受け子らに行った調査では、半数以上が約束された報酬を受け取っていないと回答。詐欺グループが末端を軽視している実情が浮き彫りになった」とあり、この最新の記事をみても、筆者の分類が肯定されている。

半グレについて真剣に調査・研究する時期にき…
Bこれは、上記2つに比較すると、マトモな半グレといえる。正業を持っている集団。あるいは、地下格闘技のような団体に所属し(していた)、ITベンチャーの若い社長などのボディーガード的な役割から、徐々にIT関係に詳しくなり、ビットコインのような取引、アダルトサイトの運営などで食っている小集団を指す。ただし、彼らは、「地下格闘技」などを通じて、@カテゴリーの半グレにもなり得る集団といえる。

C最後の元暴アウトローは厄介な存在である。近年、暴排条例の影響により、暴力団離脱者は増加傾向にある。しかし、職業社会に復帰して更生する人数は僅少だ。社会復帰できなかった、暴排条例の元暴5年条項で暴力団員等とみなされ、行き場のない彼らは、結局、覚せい剤の売買や闇金、オレオレ詐欺、下手をすると@カテゴリーの半グレの配下となったりして、悪事を重ねることになる。

 このCカテゴリーの半グレ=元暴アウトローがなぜ厄介かというと、それは犯罪のプロである暴力団に所属していた過去があるからである。彼らは、そこで蓄積された人脈や知識を有するがゆえにプロの犯罪者といえる。

 警察庁によると、2015年に離脱した元組員1265人のうち、その後の2年間に事件を起こし検挙されたのは325人。1000人当たり1年間に128.5人。これは全刑法犯の検挙率2.3人と比べると50倍以上になる。元暴のアウトロー化を否定できない現実がある。

半グレについて真剣に調査・研究する時期にきている
 こうした性質が異なるグループを、十把一絡げにして「半グレ」とカテゴライズするから、一般の人には、どうも分かりにくい。反社集団としての対策も、@からCでは、それぞれ異なったものとなる筈である。

 溝口敦氏が「半グレ」という用語を用いた2011年、この年には全国で暴排条例が施行され、「反社」カテゴリーに含まれる裏社会への風当たりは強まった。そして、暴力団が旧来のように公然とシノギができないことから、半グレは様々な形をとって違法なシノギを行う人間を吸収してきた。

 さらに、筆者が得た数々の証言では、暴力団と半グレのシノギは共有され、短い期間で、違う形態へと変異している。特殊詐欺ばっかりをマークしていると、その裏では違うシノギが新たに顔を出すというように、シノギは変化し続けているのである。

 安心・安全な社会について考えるのであれば、いま、このタイミングで、新たな裏社会の住人として暗躍する「半グレ」について、真剣に調査・研究すべきではないだろうか。

 元暴アウトローを生む現状、半グレのシノギの実態などに関する詳細は、筆者が来年の陽春の刊行を目処に、半グレ・メンバーの声をリアルに紹介する新刊を準備中であるので、ご期待頂きたい。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58443


彼らがヤクザになった理由
過酷な環境にいた少年たちを、社会は本気で救おうとしたのか
2018.12.10(月)
廣末 登

大阪・道頓堀の繁華街
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 筆者は、2003年から今日まで、ヤクザについて犯罪社会学というツールを用いて研究を続けてきた。その中で、過去100人以上のヤクザ(元ヤクザ、親分や元親分)、姐さん(組長や若中の妻)などに話に耳を傾けてきた。そして、彼らの声を、書籍として紹介するという形で、世に出してきたわけである。

 ページ上に活字で残されたヤクザたちの声というものは、よく書店で見掛ける「大組織を束ねる名が知れた大物」ではない。彼らの多くは、市井、すなわち、我々の生活空間で生き、子育てをしつつも、ヤクザとして何らかのシノギをして、細々と生きている人々である。2018年9月3日、AbemaTV(アベマTV)が企画したヤクザの日スペシャルで、「ヤクザの年収はどの程度か」と、スピードワゴンの井戸田潤氏から質問された。筆者が回答した年収額は、スタジオの出演者には衝撃的だったようである。

 ヤクザのイメージは、良かれ悪しかれマスコミによって作られている。その中で取り上げられる彼らは、ビッグショットであり、金回りが良さそうに見えるかもしれない。しかし、我々一般人でも、給与はピンキリである。自営業者でも、蔵が立つような者も居れば、春の確定申告に備えて、領収書をかき集める者もいる。表の社会も裏の社会も人間の営みであり、得てして同じようなものである。しかし、彼らの生い立ちは、我々には想像もできないほど悲惨な例が多い。今回は、ヤクザになる以外に、生きる道がなかった人たちの人生行路につき、読者の皆様にお伝えしたい。

生まれながらに背負っているもの
 人は誰しも生まれながらに背負っているものがある。それは両親から受け継ぐものが多い。

 しかし、それは、子どもの時分には、さほど重たいものではないかもしれない。だから、平均的な家庭で育った人は、昼は学校に行き、放課後は友人と遊び、帰宅して風呂に入った後、家族と食事をしてテレビを観るというありふれた日常を経験している筈である。クリスマスには、枕元にプレゼントが置かれていた記憶もあるだろうし、正月には両親や祖父母からお年玉をもらって、好きなものを買いに行った思い出もあるのではないだろうか。これが、一般的な少年時代であろう。

 では、ヤクザの人たちはどうであったか。

 一言でいえば、規格外である。クリスマスも、盆も正月もなく、常に腹を空かせ、生きることに必死であった。総じて厳しすぎる少年時代を経験している。

 筆者が取材した元ヤクザの中でも記憶に刻まれている人がいる。それは、彼らが経験した少年時代の過酷さゆえである。以下、どん底の代表格2名を紹介したい。

小学校4年生でゴミ箱を漁って飢えをしのぐ
 一人は拙著『ヤクザの幹部やめて、うどん店はじめました』(新潮社)の主人公、中本氏である。彼は小学校の4年生の時に両親が失踪し、市場のゴミ箱を漁って飢えをしのいだという。近所の人が両親の失踪に気づいて、親戚筋を探し出して預かってもらったものの、そこでの生活は野坂昭如の作品『火垂るの墓』の清太と節子を彷彿とさせる。親戚の家に住んでいながら、トイレですら屋外でさせられている。寝室も当てがわれず、廊下で寝た。たらい回しにさせられた親戚の家で、モノが無くなったら本人が疑われた。あげくの果てには、親戚の叔母ちゃんの目が悪くなったら「お前のせいだ」とまで言われ、いわれのない非難を受けている。

『ヤクザの幹部をやめて、うどん店はじめました。ーー 極道歴30年中本サンのカタギ修行奮闘記』(廣末登著、新潮社)
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 当時「腕白でもいい、逞しく育ってほしい」という丸大ハムの宣伝が流れていたが、彼の場合は腕白などという上品なレベルではない。まさにサバイバルな少年時代であった。学校には行っていたのだから、本来であれば学校の先生が気付かないといけない訳だが(毎日、同じ服を着て登校しているから、彼の置かれている窮状に気づかないはずは無い)、中本氏は「何も言われなかった」と回想している。

 最初に就職した先は床屋。ここでは坊主の駆け出しで、月の給料は3万円であったという。筆者と、中本氏は、少し年齢が違うが同じ世代を生きている。筆者が中卒で世に出た頃の時給は450円だったと記憶するから、朝から晩までこき使われて月給3万円は、修行中とはいえ、割に合わない。

 そんな時、銭湯に行った時、溝下親分と出会い、彼の中でヤクザへの憧れが花開いていった。彼が理想とする男というロールモデルに出会ったからである。以降、彼はひたすら男道に生きようと研鑽努力を重ね、指定暴力団の専務理事にまで登り詰める。一体、ヤクザのサブカルチャー以外で、彼の能力を磨く場所があったであろうか。現在、繁盛うどん店を切り盛りする中本氏の人格を磨き上げたものは、決して清い水だけではない。水質の清濁を問わず、日夜磨かれ続けた結果の現在である。

小学生の妹を妊娠させた義父…
小学生の妹を妊娠させた義父
 筆者が主に取材をするのは関西方面である。理由はいろいろあるが、地元で取材をすると、狭い街なので何かと面倒であるということと、九州ヤクザは口が重たいというのが主たるものである。

 2014年、西成の一角で取材した一人のヤクザの人生は、鮮烈に筆者の記憶に刻まれている。なぜなら、彼は筆者と同級生であるが、彼の少年時代は、壮絶という言葉では表現できないものであったからである。拙著『ヤクザになる理由』(新潮新書)に収録されている中から抜粋して「生の声」紹介する。

「おれの家は、オヤジが指名手配犯やったんですわ。せやから、あちこち逃げ回る生活でしたんや。おれが小学校に上がる前の年に関東で死にまして、オカンはおれを連れて、郷里(の西成)に帰ってきたんです。そんとき、オカンの腹には妹がいてましたんや。

 帰郷して直ぐに、オヤジの友人いうんがなんや世話焼く言うて、家に出入りし、そんうちにオカンと内縁関係になりよりました(義父になった)。おれとしてはどうということは無かったんですが、おれが小学一年の時に起きたある事件――言うてもしょうもないことですわ――をきっかけに、虐待が始まったとですわ(ある事件とは、アイスクリームばかり食べる彼を窘めた義父にヤマを返したこと)。

 まあ、殴る、蹴るの虐待の毎日ですわ。こっちは子どもですやん、手向かいできんかったですわ。それからですよ、路上出たんは。

 まあ、小学校低学年ですやろ、公園のオッちゃんらのタンタン(焚き火)当たりたいですが、怖いやないですか。で、あるとき、気づいたんですわ。こん人らが飲みよる酒(ワンカップ)持っていったら仲間に入れてもらえんちゃうかとね。子どもの手は、自販機に入りますから、相当抜いて持っていきましたわ。案の定、オッちゃんら喜びはって『若! 大将!』とか呼ばれて仲間になってましたわ」

『ヤクザになる理由』(廣末登著、新潮新書)
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 彼は小学生の頃からスリの常習犯でもあった。小学校四年生の時には、同じような境遇の仲間を組織して電車専門スリ団を結成して新聞にも載ったほどである。子供の頃は野宿か児童相談所、教会の養護施設のどこかに居たという(この養護施設は、現在でも西成の三角公園前に存在する)。

「そないな生活のなか、初めて遊園地や動物園に連れて行ってくれたんは、近所のアニキでした。この人は、筋金入りの不良やってましたんやが、おれら子どもには優しかったんですわ。アニキに連れて行ってもらった動物園、生まれて初めて見るトラやキリン……今でも鮮明に覚えてますわ。いい時間やった。

 おれもこのアニキのようになっちゃる思うて、不良続けよったある日、まあ、いつものように年少(少年院)から出て、妹の通う小学校に行ったんですわ。すると、担任が「おまえの妹はここに居らんで」言うて、児相(児童相談所)に行け言うとですわ」

 妹は小学校5年生なのに妊娠していた。相手は彼に虐待を繰り返していた、オッちゃんだった。

「もう、アタマの中、真っ白ですわ。出刃持って家に帰りましたら、ケツまくって逃げた後やったです。あの時、もし、そのオッちゃんが家に居ったら、間違いなく殺人がおれの前歴に刻まれとった思います。

 ヤクザになったんは、それから数年してからです。動物園とかに連れて行ってくれたアニキと、久々に街で会いまして、『おまえ、どないしてんのや』言うんで、『まあ、不良やっとります』言うたんです。そしたら『そうか、ブラブラしとんのやったら、おれんとこ来い』と言うてくれました。

 それからですわ、ヤクザなったの。『よし、おれはアニキだけ見て生きてゆこう。アニキ立てるんがおれの仕事や』と、決心しましてん。アニキと看護婦の嫁さん、それとおれの3人での生活がはじまったんです」

 筆者が出会った時、彼はアニキの死を転機としてヤクザから足を洗っていた。しかし、世間の暴排の風は余りに強く、日雇いですら居場所を見いだせなかった彼は、アウトローに身を落としていた時期であった。以後、紆余曲折を経て、現在は元の組織に戻ったと聞いている。筆者は、その方がいいと思う。彼らのような経験をしてきた人でも受入れてくれる、居場所を与えてくれる社会は、まだ現在の日本には少ない。そうであれば、細々とでもヤクザとして仲間と寝食を共にする日々の方が幸せであろう。そのような観点から、三代目山口組二代目柳川組組長・谷川康太朗氏の言葉を、社会学的に捩ると「ヤクザは哀愁の共同体」であるといえるのかもしれない。

安心、安全、そして「健全な」社会へ…
安心、安全、そして「健全な」社会へ
 暴排の嵐が吹き荒れる現在、ヤクザは反社会的集団と烙印を押され、辞めても「元暴5年条項」に基づき、5年間は銀行口座すら作れないことは前回の記事(「辞めるも残酷、残るも地獄──平成ヤクザの現在(いま)」https://post.jbpress.ismedia.jp/articles/-/54645)で紹介した。もっとも、東京都や福岡県の社会復帰協議会では、暴力団離脱者の「元暴5年条項」解除に向け、改善の方向を模索しているが、自治体ごとの温度差は否定できない。

 そうした中、世間のヤクザ観は、暴排条例制定というターニングポイントを経て、大きく変わった。ヤクザであることは自己責任であると断罪され、排除された結果、社会的孤立を招く時代である。 

 しかし、それでいいのかと、筆者は社会に問いたい。暴力団構成員、暴力団離脱者が、生まれた時から「おんどりゃあ、はんどりゃあ」と泣いて、暴力をふるっていただろうか。彼らが十数年かけて発達する中で、家族社会、近隣社会、交友と、様々な社会的諸力を受けて、暴力団加入に至っているはずである。例えるなら、人生とは様々な要因によって縒り合されたロープのようなものである。そして、その始点は、家庭である。先に紹介した事例のように、家庭に問題があって、ヤクザに進むしか選択肢がなかった人たちもいる。彼らは人生のスタート時点から放置され、過酷な人生を歩まざるを得なかった社会的被害者とみることもできよう。

「いやいや、そうした家庭に生まれても真っ当に生きている人もいる」というむきもあるかもしれない。それは、家庭に問題があったけれども、その後、発達の中で、近隣、交友、学校社会などの何れかの時点で「いい出会い」という幸運があったからではなかろうか。

 一般化するつもりはないが、筆者が取材してきたヤクザの人たちは、生まれた時から「重すぎる何か」を背負って生きていかなくてはならない境遇にあった。彼らの過酷な生い立ちを一顧だにせず、非難し、排除することは簡単である。しかし、国が再犯防止推進計画を策定し、オリンピックに向けて、安心、安全な社会を世界にアピールするのであれば、元ヤクザの人たちも社会の仲間として受入れ、やり直すチャンスを与える度量と理解を日本社会に期待する。世界に安心、安全そして健全な日本をアピールするために。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54882


ヤクザの子が背負う「資本の格差」という宿命
格差のタマゴ――見えない「2つの資本」という不平等
2019.1.7(月)
廣末 登
生活・趣味

非行に走る子は社会的資本や文化的資本の貧しい家庭で育っているケースが多い(写真はイメージです)
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 前回、『彼らがヤクザになった理由――過酷な環境にいた少年たちを、社会は本気で救おうとしたのか』と題した記事を書いたところ、読者の方から、多くの示唆に富むご意見を頂いた。まさに賛否両論であったが、良くも悪くも、ヤクザの問題が「対岸の火事ではない」と感じて頂けたことは、筆者として嬉しい限りであった。そこで、紙幅の都合上書けなかった部分につき、今回、補足をしたいと思う。


福岡少年院(法務省ホームページより)
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 ここ数年前から、「格差」というワードが頻出するようになった。一億総中流と言われた時代に生まれた筆者からすると、格差社会というものは社会の機能不全であり、何らかの処置を施す必要性を痛感する。そうしないと、様々な格差が、いわば肌の色のように世代から世代へと受け継がれる可能性が否めないからである。

『ヤクザになる理由』(廣末登著・新潮新書)
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 そう感じるのは、とりわけ筆者の職業から日々思い知らされるからである。筆者は、ノンフィクション作品や社会病理研究のため、大阪の西成のドヤ(簡易宿泊所)を拠点に取材をしている。さらに、地元の福岡県では、少年院在院者などに対して更生保護就労支援を行っている。関西では、元暴や姐さんと言われる方々のお宅にお邪魔し、福岡では非行少年の家族と接触している。実際、多くの家庭を見てきたわけであるが、残念ながら拙著『ヤクザになる理由』(新潮新書)で指摘した非行深化の要因が、肯定される結果となっている。

格差のタマゴ
 子は親の背を見て育つという。カエルの子はカエル。これらは至言であると、この年になってつくづく実感するようになった。その理由につき、あれこれ考えた結果、筆者は「人生とは様々な要因が縒り合されたロープに例えられる」と主張してきた。そして、「その始点は家庭である」とも述べた。

夏目漱石や芥川龍之介という資本
 では、家庭のもつ何が、ロープの長さや太さを変えるのかというと、それは家庭の文化が内包する「資本」である。資本というと、金銭、財物的な発想をしがちであるが、本稿で述べたいのは、社会的資本(正しい役割を学ぶ人とつながる機会)と、文化的資本(感性を育てる学びの機会)についてである。どちらも目で見えるものではない。しかし、これらは、人の人生を大きく左右し、人生において様々な制約を生む、何なら「格差」のタマゴともいえる生来的な要因なのである。

お金に代えられない2つの資本
 非行少年やヤクザの家庭に生まれた人たちは、小さい頃から社会的資本や文化的資本が貧しい家庭で生育してきている。この社会的資本とは、親の人的なネットワークや信用であり、親自身はもとより、子どもの友人や付き合う人、所属するグループを方向付けることになる。カエルの子はカエルであり、付き合う友人もカエルになるということである。

 次に、文化的資本であるが、これは、社会的資本以上に大切であると考える。簡単にいうと、家庭に活字の本があるかどうか、クラッシック音楽などのCDがあるか、子どもの頃から博物館や美術館、音楽会に連れて行ってもらったかどうかである。このような資本は、目に見えないが、子どもの感性を刺激し、後年になって教養として表出する。したがって、文化的資本を利用、消費することは、高等教育や高い文化水準との係わりを容易にするといえる。

夏目漱石や芥川龍之介という資本
 この文化的資本に関してもう少し触れたい。筆者の例で恐縮であるが、家庭はとても貧しかった。だからテレビというものがない。仕方ないので、幼稚園児の頃から夏目漱石の『坊ちゃん』を、小学校低学年では芥川龍之介の『羅生門』などを読んでいた。むろん、意味はよく分からない。読めない漢字は親にルビを振ってもらっていた。音楽は聴いていないので音感が無い。絵画などもサッパリ分からないから、東京でデザイナーとして働いている時は、恥ずかしい思いをした。ただ、そうはいっても、現在、本を書いたり、雑誌記事を書いたりと、文章で僅かばかりの小銭を稼げるのは、子どもの頃に読んだ、漱石や芥川龍之介のお陰であろう。

ママ、面会に来て
 さらに言うと、小学校から中学、高校とマトモに行っていない筆者が、27歳から大学に入ったのも、33歳で大学院に進学したのも、子ども時代に、家庭内文化によって植え付けられた価値観ゆえであろう。何も、大学に進学しなくとも、普通の生活はできるにもかかわらず、回り道をしたわけである。当時は、意識しなかったが、十代でグレてろくに勉強もしなかった筆者が、いわゆる「学び直し」出来たのは、家庭の文化的資本のお陰であり、それが如何に重要か、お分かり頂けると思う。

ママ、面会に来て
 筆者は『組長の妻、はじめます。:女ギャング亜弓姐さんの超ワル人生懺悔録』(新潮社)という本を2017年に執筆した。この時の取材対象は、現役ヤクザの姐さんであり、一児の母である。旦那さんの組長は、赤落ち(刑務所に入ること)して、不在であったから、姐さんの家庭は、姐さんママ友の集いの場と化していた。ちなみに、彼女たちの大半は大学(刑務所のこと)経験者である。

『組長の妻、はじめます。:女ギャング亜弓姐さんの超ワル人生懺悔録』(廣末登著・新潮社)
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 大体、ヤクザは子ども好きである。彼女たちが集まると、少子化という現実がにわかに信じがたい。3LDKの部屋は、子どもの遊技場になり、泣いたり喚いたり、走り回ったりという修羅場と化す。夜も遅くまで寝ないで騒いでいるので、脳が発達するか心配になったものである。

 そのような子どもたちを見ていて思うことは、「モッタイナイ」である。筆者が観察する限り、幼児である彼らは無垢そのものであるが、既に、この段階でヤクザのサブカルチャーに染まり始めている。たとえば、子どもを同伴して、近所に買い物に行くと、柵があればその後ろに回り「ママ、面会に来て」と言う始末である。あるいは、「ヤクザの子や、弾いてまうぞ」という決めゼリフを口にする。姐さんたちは笑えるかもしれないが、普通の親ならドン引きしてしまうだろう。そして、おそらく我が子に耳打ちすると思う……「あの子と遊んじゃだめよ」と。

 一方、家庭の中を見渡して、童話集や、百科事典、文学小説などというものは存在しない。散乱しているものは、実話誌の類や、テレビ番組雑誌くらいであるから活字に親しむ機会は少ない。むろん、クラッシック音楽なぞ耳にする機会もなく、カラオケに行って、ママ友が熱唱するド演歌を耳にする程度である。これが、彼らの家庭が有する文化的資本の程度である。組長クラスですらこれであるから、組員のそれは容易に察することができる。

 子どもは、周囲にいる大人の行動や態度から日々学習する。周囲の大人が口にする何気ない言葉、行動、態度を、子どもはよく観察している。そして、それを愚直に内在化させてゆき、朱に染まるのである。この組長の妻、家庭に出入りする姐さんたちは、子どもに優しい。しかし、彼女たちの振る舞い、行動、会話からの学習が、我々の一般的な社会で「プラスに評価される」かというと、決してそうしたレベルにはない。それは残念ながら、その子らが生まれ落ちた家庭が有する資本の質であり、運命的に与えられた人生のスタート地点なのである。

社会で育てる
 ちなみに、姐さんや組長は、自らの家庭の主がヤクザであるから、子どもにヤクザ渡世を継いでもらいたいとは考えていない。よく、筆者に対して「この子には真っ当になってもらいたい。ちゃんとした学校に行って、いい会社に就職してもらいたい」と、しんみりと口にしていた。

 そうした場合、筆者は最低限、次のように助言している。「まあ、今のうちに活字に慣れることですよ。そのためにも、毎晩、寝る時間には、お母さんが童話を呼んであげるといい。そして、子どもが字を読める年齢になったら、今度はお母さんに読んでねと、活字を通して言葉のキャッチボールをしなさい。ただし、これは毎日必ずやって下さいね。習慣というものは恐ろしいものです。これを継続すれば、きっといい結果が出てきますから」と。

 残念ながら、筆者が推奨した幼児教育は履行されておらず、小さな暴れん坊将軍たちは、腕白に育っている。

中流階級のモノサシ
 アメリカの社会学者が「中流階級のモノサシ」という概念を指摘した。これは、学校や職場の中で学生や従業員を評価する際に用いられるものである。もちろん、学力テストという評価手段とは別物であり、普段の行いを、このモノサシに照らして評価するということである。我が国では、それは「内申書」「勤務態度」などという形で、教員や上長によって行われる。ここで、一定以上プラスに評価されるためには、その評価者と同等、あるいはそれ以上の資本を有する家庭の薫陶を受けている必要がある。

 社会的・文化的資本に恵まれなかった子どもが、一流の大学に進み、一流の企業に就職したという例を、筆者は知らない。資本が欠乏した家庭で育った子どもの最盛期は、中学時代ではないかと思う。ここまでは、腕っぷしが強い、抜け目がないなどの地アタマがあれば、ガキ大将として、なんとか人の上に立てる。しかし、彼らは、十代の半ばに、最初の社会の壁に直面する。それが高校受験である。教養も知識も持たず、先生の評価が高くない彼らには、この壁は超えることは至難である。受験とは、社会における篩であり、試験を経てホワイトカラー、ブルーカラーが選り分けられる。

 結果、ヤクザの子どもたちは、否応なく「人生で成功するチャンスのない細い道」に追いやられることとなるのである。そうすると、彼らは資本の再組織化をはかり、道徳や順法精神という資本の基盤は軽視され、彼ら独自のルールで、以前とは異なった形で資本が再構築される。たとえば、中卒で解体や土工のテゴ(見習い)をしても大手企業の年収はとても得ることが出来ないが、薬物を売買するネットワークを構築すれば、若くして大手企業の給与に匹敵する稼ぎを可能とするのである。

社会で育てる
 一昔前、昭和の時代は「お出かけは、ひと声掛けて鍵掛けて、向こう三軒両隣」などという牧歌的な地域社会が存在した。ここでは、親が共働きで子どもの世話が疎かになると、隣近所のオッチャンやオバちゃんが、親の役目をある程度肩代わりしていたものである。そうすると、家庭に不足する資本を、他の家庭から補うチャンスもあったわけであるが、現代社会でそれは望むべくもない。

 地域社会が機能せず、隣人は何する人ぞという時代、家庭は閉鎖的社会となり、家庭の資本の質が、子どもの人生を左右する度合い、人生において様々な制約を生む「格差」のタマゴの存在が明らかとなっているように筆者には思えるのである。

 暴力団排除だ、半グレが新たな脅威だと慌てふためき、場当たり的な対策を講じるのは根本的解決にはならない。青少年の厳罰化など論外である。格差対策こそ長い目で見た時に最も有効な対策ではないか。彼らは、筆者から見ると社会の被害者であるように見える。生きんがため、見下されないため、カネを得るためには、非合法なシノギをするしかない。それは、選択肢が限られたチャンスの無い細い道に追いやられた結果であるように思える。

 このような時代だからこそ、子どもは社会全体で育てないといけない。ましてや少子高齢化時代、子どもは社会の宝である。しかし、現実はどうか。「格差」「貧困」というワードが、度々紙面に登場しているにもかかわらず、為政者が格差対策に本腰を入れて乗り出す気配はない。オリンピックの成功に、国家の威信が掛かっていることは、百も承知、二百も合点である。しかし、わが国の将来を考えるとき、門地を問わず全ての子どもたちの格差解消への努力、教育格差の解消への試みは、何にも増して有効な未来への投資となるのではなかろうか。

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