
※2025年7月26日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
改めてどうにもならない自民党 反省も下野もせず党内抗争のグロテスク
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/375300
2025/07/26 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し
権力闘争がお家芸(左から麻生氏、菅氏、岸田氏)/(C)日刊ゲンダイ
続投宣言の首相にも呆れたが、ここぞとばかり、石破おろしを仕掛ける連中もロクでもない輩ばかり。国民から見放された政党が比較第1党を盾にしがみつき、権力闘争の醜悪さに国民は唖然だ。とっとと下野し解党するのが憲政の道。
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誰の目にも明らかなくらいグロテスクになってきた。「石破おろし」をめぐる自民党内の権力闘争のことだ。
参院選大敗で執行部の責任や石破首相(党総裁)の退陣を求める地方組織は、25日時点で9道県連となった。25日は党青年局も執行部に「けじめ」を要求。参院選の総括をした後に責任を取るよう申し入れた。両院議員総会の開催に必要な所属国会議員3分の1超の署名も集まったらしく、「石破包囲網」は確実に狭まっている。
参院選で石破は、自ら定めた低めの「必達目標」を達成できなかった。それなのに執行部が誰も責任を取らないのはおかしいし、首相自身が潔く辞めるのが筋だ。退陣論を封じ込めるための投開票当日の続投宣言にも呆れるしかない。
しかし、である。激化するこの石破おろし政局は、仕掛ける連中もロクでもない輩ばかりだから醜悪なのだ。
下劣なメンツが蠢く
大新聞は連日、舞台裏の動きを詳報。前述した署名集めの中心になっているのは、旧安倍派、旧茂木派、旧二階派、麻生派の中堅・若手議員。背後には、旧安倍派の萩生田元政調会長の影がちらつく、という。
23日に行われた石破と麻生、菅、岸田の首相経験者3人との会談の中身についても、各紙が「出席者の話」として同じような内容を報じている。麻生が「石破首相では選挙に勝てないという民意が示された」と切り出し、岸田も「今後どうするのか、具体的な道筋を示すべきだ」と迫り、菅は「党の分裂は避けないといけない」と発言したという。こんなディテールが一斉に表に出てくるのは、首相経験者の誰かが臆面もなくベラベラしゃべっているということだ。
その麻生は、旧安倍派の世耕前参院幹事長と会談。「ポスト石破」へ意欲を見せる高市前経済安保相は、旧安倍派の西村元経産相と会談。そして、世耕、西村、萩生田、松野前官房長官の旧安倍派「4人衆」は昼会食で今後の政局をめぐり意見交換したという。
旧安倍派の派閥パーティー裏金事件の全容解明は一切やらないのに、復権のための謀議には精を出す。こんな下劣なメンツが蠢く石破おろしだから、醜悪にならざるをえないわけだ。
大新聞の“誤報”が石破の意地に火
もっとも、反石破連中の思惑ありきの言動を垂れ流す大新聞もどうかしている。23日には毎日新聞が「石破首相 退陣へ」と速報。読売新聞は「号外」まで刷って「退陣へ」と打った。石破本人が否定しても意に介さず、翌24日朝刊の1面はデカデカと大見出しだった。
「『退陣不可避』と報じたところもあったが、それは石破首相が置かれた厳しい状況を表すもの。一方、『退陣へ』というのは首相本人の意思があってのこと。読売や毎日は『対外的にはまだ辞めると言えないから』と解説しているが、完全否定する首相とのギャップがありすぎる。まるでフィクション記事みたいだ」(マスコミ関係者)
「読売は反石破と一緒になって退陣への流れをつくろうとしているのか。政治家の観測気球やリークを記事にするのは政治部がよくやる話ではあるが、号外まで出すとは……」(永田町関係者)
政治記者歴半世紀以上の政治評論家・野上忠興氏も「即座に否定されるような号外は、いまだかつて見たことがない」と仰天し、「出処進退は自ら決めることなのに、新聞辞令で誰かがつくろうとしていると石破首相が見れば、逆に『辞めない』と意地になるだろう」と話す。実際、石破は一部周辺に「行きつくところまで行くほかない」と怒りをたぎらせているという。
自民党お家芸の党内抗争。だが、衆参両院で少数与党に陥落するほど有権者から「ノー」を突き付けられている状況下で、何をやっているのか。どうにもならない政党だと、ますます失望が広がるだけだろう。
裏金と旧統一教会の連中が吠える石破おろしに「どの口が」
厚顔すぎる旧安倍派(左から世耕氏、西村氏、萩生田氏)/(C)日刊ゲンダイ
「参院選敗北の責任論でいえば、石破首相は国民に『党内野党だったから、石破さんなら政治を、自民党を変えてくれる』という期待感を持たせたのに裏切った。しかし、石破首相だけの責任かといえば違う。党内抗争でいま『石破辞めろ』と言っているのは、裏金問題や旧統一教会問題で当事者だった旧安倍派の連中が多く、国民はそれを知って『どの口が』と呆れている。マトモなことを言っているのが、復党したばかりの鈴木宗男さんというのが自民党の国民感覚とのズレを象徴しています」(元経産官僚の古賀茂明氏)
今回の参院選。一度は落選を覚悟し、政界引退を表明しながら、自民比例のラスト1議席で当選を決めた鈴木宗男がさっそく脚光を浴びている。石破退陣論が吹き荒れる中で、擁護論を展開。娘の貴子衆院議員が党青年局の一員として石破に「速やかな退陣表明」を求める傍らで、宗男はこう言ってのけた。
「全国を歩いていて『裏金のけじめがついていない』と厳しい声があった。誰も責任を取っていない。明確な責任を取らん連中が、石破さんに反発するのはすり替えの議論だ」
宗男の“ド正論”は25日も炸裂し、「数千万円をもらっておいて何の罰も受けていないことに国民は怒っていた。裏金をもらった議員が何もなかったように執行部を批判しているが、こういうのを許せば党が持たない」などと言いたい放題だ。
石破がやるべきは、国民が期待した「政治とカネ」にメスを入れることだった。アベノミクスの副作用による超円安と超物価高への対策を打って、国民生活を楽にすることだった。党内基盤の弱さから、内輪の論理で金権腐敗を温存し、円安物価高も放置し、世論の支持を失った。もっとも、それは詰まるところ、世論が石破を否定したというより、自民党政権そのものの否定だ。
自民党は丸ごとジ・エンド
「失われた30年と言われ、最後の10年は安倍、菅、岸田政権だった。彼らが続けてきたアベノミクスが失敗に終わったのです。アベノミクスをもてはやした自民党支持者でさえも、さすがに何かおかしいと気づいた。デフレと言われ、インフレになればバラ色みたいな説明をされてきたけれど、やっとインフレになったと思ったら、それに見合うように賃金が上がらず、生活が苦しくなった。これまで自民党が言ってきたことは嘘じゃないか、と気づいたわけです。日本が没落国家であり、成長できなくなっていることも共通認識として国民に広がっている。そんな中で『賃上げ』を叫んでも『本当にできるの?』と誰もが懐疑的です。自民党の大敗には、そうした構造的な問題が批判の根底にある。つまり、自民党は丸ごとダメだったんじゃないのという話なのです」(古賀茂明氏=前出)
気づいてないのは能天気な自民党議員ばかり。貧しいニッポンにおとしめたくせに、懺悔もせず、今まで通りでいられるはずがない。石破おろしの連中は「石破退陣が『党再生』につながる」と主張するが、石破が辞めたって、高市や小泉進次郎農相に代わって、麻生、菅、岸田がキングメーカーじゃ、古い自民党のまま。党再生なんてない。
国民から見放された政党が比較第1党を盾にしがみつき、権力闘争。おめでたいにもほどがある。とっとと下野し、解党するのが憲政の道だ。前出の野上忠興氏が言う。
「結党以来、不祥事のたびに『党再生』を誓うが、党をつくり直すという発想じゃないから、しがらみを引きずって権力維持に固執してきたのが自民党です。衆参の選挙で少数与党になっても反省なく、もはや末期症状。派閥も解消したことですし、下野して解党して政界再編して、しっかりした保守政党をつくり直した方がいいんじゃないか」
石破の退陣いかんにかかわらず、自民党はジ・エンドに向かっている。
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