メーソンの魔術的起源(Eliphas Levi)

 
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投稿者 SP' 日時 1999 年 11 月 03 日 09:22:54:

 以下『魔術の歴史』(エリファス・レヴィ著、鈴木啓司訳、人文書院)より。著者は1861年にメーソンに入会後すぐ脱会。(訳者あとがき)


 宗教改革の波がキリスト教社会の統一性を解体してまもなく、ヨーロッパでは《メーソン》の名で知られるカバラ的大結社が、突然世に現れた。この団体を研究する歴史家はその起源についてどう説明してよいのか分からぬというのが現状である。ある者はその母体を、ストラスブールの大聖堂を建立するときに結成された石工の自由組合であるとし、また他の者は、創始者をクロムウェルだとした。ただ、後者の場合、クロムウェルの時代の英国のメーソンの儀式が、このピューリタン的無秩序の扇動者〔クロムウェル〕に対して組織されたものである可能性はあまり問われなかった。この長いあいだ秘密にされいまだに謎に包まれている結社の、創立とは言わぬまでも少なくとも維持と方向づけをイエズス会の業績にする無知な輩もいる。この最後に挙げた矛盾した意見を除けば、先の意見はすべて折合をつけることができる。メーソンの同志はストラスブールの大聖堂の建設者たちからその名と技術の徽章を借りてきたのであり、彼らは過激な制度を利用しクロムウェルの専制に逆らって、英国で初めて公に結社を組織したのである。
 さらにつけ加えれば、彼らの手本はテンプル騎士団で、父は薔薇十字団、先祖はヨハネ派である。その教理はゾロアスターとヘルメスの教理であり、規則は段階的な秘儀参入、原理は位階制に則った平等と普遍的友愛である。彼らはアレクサンドリア学派の後継者で、古代の秘儀のすべてを受け継ぐ者である。また黙示録とゾハールの秘密を託された者でもある。彼らの信仰の対象は光で表現される真理である。彼らはあらゆる信仰を許容し、ただ一つの哲学のみを標榜する。そして、真理しか求めず、事実しか教えず、すべての知性ある者を徐々に理性へと導かんとする。
 メーソンの寓意的な目的は、ソロモンの神殿を再建することである。現実的な目的は、理性と信仰を融和させ社会の統一を回復すること、ならびに、学問と美徳に従って段階的な秘儀参入と試練を経て位階制を復権させることである。
 ご覧の通り、これらの思想と姿勢ほど美しく偉大なものはない。だが、あいにく、統一の教義と位階制への服従は一般のメーソンには残っておらぬ。やがて正統なメーソンに対立して、その分派が現れた。フランス革命の最大の惨禍は、このメーソンの分裂の結果なのである。
 フリーメーソンの同志には彼らの聖なる伝説がある。それは、キュロスとゾロバベルの伝説に補足されたヒラムの伝説である。
 以下がその内容である。
 ソロモンは神殿を建設する際、その設計を《ヒラム》という名の建築家に一任した。
 この建築家は仕事を秩序正しく進めるため、労働者を熟練の度合により三つの組に分けた。さらに、彼らを長所にそって使ったり、できた仕事に応じて報酬を払ったりするのに際し、多人数を見分ける必要があったため、ヒラムは徒弟、職人、親方の各階層に、それぞれ固有の合言葉と符牒を与えたのである。
 三人の職人がその資格がないにもかかわらず、親方の地位を狙おうとした。彼らは神殿の三つの表門で待ち伏せし、ヒラムが出てくると、職人の一人は彼を定規で脅しながら、親方の合言葉を教えるよう要求した。
 ヒラムは答えた。あなたが求めている言葉を私が授かったのは、かようにしてではなかった。
 職人は怒り、ヒラムを鉄の定規で打ち据え、最初の傷を負わせた。
 ヒラムは別の門のところへ走っていき、そこで二番目の職人にでくわした。やはり同じ要求、同じ返答があって、今度は曲尺で叩かれた。梃子だと言う者もいる。
 三番目の門には三番目の殺人者がいた。こいつは親方のヒラムをとうとう木槌で叩き殺したのであった。
 この三人の職人はそれから死体をがらくたの山の下に隠し、この即席の墓にアカシアの枝を植え、アベルを殺した後のカインのように遁走したのであった。
 他方、ソロモンは、お抱えの建築家が帰ってこないので、九人の親方を捜しにやらせた。アカシアの枝に死体の在処を教えられ、彼らはがらくたの下から死体を引きずり出した。死体はそこに長いあいだ放置されていたため、彼らはそれを引き上げながら《マク・ベナシュ!》と叫んだ。これは、肉が骨から剥ぎ落ちることを意味する。
 ヒラムに最後のお別れが告げられると、ソロモンによって二十七人の親方が殺人者の捜索に送り出された。
 最初の者は洞窟の中にいるのを発見された。彼の傍らではランプが燃えており、足元には小川が流れ、そばには護身用の短剣が置いてあった。洞窟に侵入した親方は殺人者を認め、短剣を掴んで、《ネクム!》と叫びながら刺した。この言葉は復讐を意味するものである。殺人者の首はソロモンのもとに運ばれた。ソロモンはこれを見ると身震いし、殺人者を殺した親方に言った。此奴め、罰を下すのは私だということを知らなかったのか。これを聞いて親方たち全員が平伏し、熱心なあまりやりすぎたこの者のために王の赦しを請うた。
 二人目の殺人者は、彼に隠れ家を提供した男によって裏切られた。彼は燃える茨の近くの岩の中に隠れていた。その上には虹が輝いていた。彼のそばには犬が寝そべっていたが、親方たちは犬に気づかれぬようにして彼に近づき、捕まえて縛り上げ、イェルサレムに連行した。そこでこの者は極刑に処された。
 三人目の殺人者は獅子に殺された。彼の死体を手に入れるにはこの獅子を倒さねばならなかった。他の説では、彼自身が斧を振り回して親方たちに抵抗し、彼らはどうにかその武器を取り上げ、この者をソロモンのもとに連れていったとされる。王は彼に罪を償わせた。
 以上が第一の伝説である。そして、以下がその説明である。
 ソロモンは至上の学問と叡知の擬人化されたものである。
 神殿は真理と理性が位階制のもとに地上を支配することの実現と表象である。
 ヒラムは学問と叡知により強大な力に達した男である。
 彼は正義と秩序をもって支配し、各人にその果たした行いに従って報いる。
 秩序の各階層には、それ特有の知性を表す単語がある。
 ヒラムには一つの言葉しかない。だが、この言葉は三通りの違った方法で発話される。
 徒弟用のもの。彼らによって発話されると、それは自然を意味し、労働によって説明される。
 職人用のもの。彼らのもとでは思考を意味し、研究によって説明される。
 親方用のもの。彼らの口の端にのぼると、真理を意味し叡知によって説明される。
 この言葉は神を指示するのに用いられる言葉である。神の本当の名は言葉にできず伝達不可能である。
 かように、位階制には三つの段階がある。ちょうど神殿に三つの門があるように。
 光には三つの光線がある。
 自然には三つの力がある。
 これらの力は、一つにする定規と、持ち上げる梃子と、固定させる木槌によって表象される。
 叡知の位階的貴族制に対する野蛮な本能の叛乱は、次 々とこの三つの力で武装し、それらを調和から逸脱させる。
 典型的な三つの叛乱がある。
 自然に対する叛乱。
 学問に対する叛乱。
 真理に対する叛乱。
 それらは古代人の描く地獄において、ケルベロスの三つの頭によって表象されている。
 聖書においては、コラ、ダタン、アビラムによって表象されている。
 メーソンの伝説では、儀式によって異なる名で指し示される。
 最初の者は普通《アビラム》あるいはヒラムの殺人者と呼ばれ、定規で大親方を打つ。
 これは、法の名のもとに人間の情欲によって殺された正義の人の物語である。
 二番目の者は《メピボセテ》といって、これはダビデ王の玉座を狙った滑稽な不具者の名である。この者はヒラムを梃子あるいは曲尺で打つ。
 このため、人民の梃子あるいは狂った平等の曲尺は、大衆の手に渡って専制の道具となり、定規の場合よりも不幸なことに、叡知と美徳の王国を侵害するのである。
 《三番目の者》はついに木槌でヒラムの息の根を止める。
 野蛮な本能が暴力と恐怖の名のもとに知性を蹂躙して秩序を築こうとするときのように。
 ヒラムの墓の上に植えられたアカシアの枝は、われらの祭壇の上の十字架のごときものである。
 それは学問が滅びても生き残る学問の徴であり、また春が来ることを告げる若い枝である。
 人間がかように自然の秩序を乱したとき、神の意志が介入して秩序を回復させるのである。ちょうどソロモンがヒラムの死の敵を討ったように。
 定規で殺した者は短剣で死ぬ。
 梃子あるいは曲尺で打った者は法の斧のもとで死ぬ。これは王殺しに下る永遠に変わらぬ裁定である。
 木槌で勝利した者は己が悪用した力の犠牲となり、獅子に押しつぶされる。
 定規による殺人者は、彼自身の明かりとなるランプと、彼が喉を潤す泉によって告発される。
 すなわち、犯した罪と同等の刑が下されるのである。
 梃子による殺人者は、番犬が眠り込んだように警戒が疎かになったとき捕まえられる。そして、共犯者によって引き渡される。なぜなら、無秩序は裏切りの母だからである。
 木槌による殺人者を貪り喰う獅子は、オイディプスのスフィンクスの姿形の一部である。
 そして、この獅子に打ち勝つ者は、その威厳においてヒラムを嗣ぐにふさわしい者となろう。
 腐乱したヒラムの死体は、形は変わるが精神は残ることを示している。
 最初の殺人者の傍らを流れていた泉の水は、自然に対する罪を罰した大洪水を思い起こさせる。
 二番目の殺人者の発見に導いた燃える茨と虹は、思考に加えられた危害を告発する光と生を表している。
 最後に、打ち倒された獅子は物質に対する精神の勝利と、力が知性に最終的に服従することを表しているのである。
 統一を祭る神殿を建てる精神の作業の初めから、ヒラムは何度も殺され、そのたびに甦る。
 彼は猪に殺されたアドニスであり、テュポンに殺されるオシリスである。
 彼は追放されたピュタゴラス、バッカスの巫女たちに引き裂かれるオルフェウス、ネボ山の洞窟に捨てられたモーセにして、カイアファス、ユダ、ピラトに殺されるイエスである。
 故に、真のメーソンとは、ヒラムの計画に従ってあくまでも神殿を建てようとする者たちのことなのである。
 以上が、メーソンの大いなる中心伝説である。他の伝説もこれに劣らず美しく深遠であるが、その神秘は公表すべきでないと考える。われわれは神と己の仕事を通じてしか秘儀参入を受けておらぬが、高等メーソンの秘奥はわれわれの秘奥だと看做している。沈黙を強いる知識の段階まで努力の甲斐あって到達した者としては、誓い以上に確信の念によってこの結社に参加していると思っている。学問は徳高きことを要求する位の高さである。われわれは薔薇十字の王冠の名誉を穢すことがあってはならぬ。われわれもまたヒラムの復活を信じているのである。
 メーソンの儀式は秘儀参入の伝説の記憶を伝え、同志のあいだにそれを保存することを目的としている。
 おそらく次のような問いが発せられるであろう。メーソンがかくも崇高で聖なるものであるならば、なにゆえ教会から追放されあれほどたびたび断罪されたのかと。
 この質問には、メーソンの分裂と世俗化に触れることですでに答えた。
 メーソンとはグノーシスなのである。そして、偽のグノーシス派のせいで真のグノーシス派は断罪されたのである。
 真のグノーシス派が身を隠さざるをえなかったのは、光が怖かったからではない。光は彼らが望んでいたもの、探していたもの、崇めていたものである。
 彼らは聖性を穢す者、すなわち、偽の解釈者、中傷家、愚かな笑みを湛えた懐疑主義者、そしてあらゆる信仰と倫理の敵を恐れたのである。
 もっとも、今日では、自分をフリーメーソンだと思っている者の大半が、自分たちの行っている儀式の意味を知らず、秘儀の鍵を見失ってしまっている。
 彼らはもはや自分たちの象徴図も理解できず、ロッジの絨毯を飾る象形文字の徴にも何も読み取ることができぬ。
 これらの図表と徴は、絶対的にして普遍的な学問の書物を構成する諸頁なのである。
 それらの頁はカバラの鍵の助けを借りて解読することができる。ソロモンの鍵を所有している秘儀参入者には、そこに書かれていることはすべて明らかなのである。
 メーソンは穢されたのみならず、ジャック・ド・モレーの復讐を企てる者と、テンプル騎士団の異端事業の継承者らの隠然たる影響力のもとに、秩序を破壊する陰謀の隠れ蓑と口実にさえ利用された。
 ヒラムの死の敵を討つかわりに、彼を殺した者どもの敵が取られたのである。
 アナーキストらは定規と曲尺と木槌を再び取って、その上に、自由、平等、友愛と書き込んだ。
 すなわち、貪欲への自由、低級のなかの平等、破壊のための友愛である。
 これが、教会がいままで正当に断罪し、これからもつねに断罪しつづける者どもである。(p394-401)



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