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第6回 SBI登場で露呈した、ホリエモンの負け戦も「想定内」 (2005/03/30)
http://www.asyura2.com/08/senkyo56/msg/537.html
投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 08:06:52: Dh66aZsq5vxts
 

(回答先: 第5回 浮き彫りになったアメリカ金融資本“むしりとり”の構図 (2005/03/25) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 07:51:20)

第6回 SBI登場で露呈した、ホリエモンの負け戦も「想定内」 (2005/03/30)
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050330_horiemon/

2005年3月30日

 前回の記事をアップしてから、月刊誌の連載(文芸春秋「私の東大輪」)の仕事をこなさなければならなかったので、こちらの関係の仕事からは離れていた。

 その間にニッポン放送問題では、ソフトバンクグループの投資会社ソフトバンク・インベストメント(SBI)が登場して、ニッポン放送が保有するフジテレビの株式35万株すべてを、5年間にわたって借り受けることになったという驚くべき事態の展開があった。

 これによって、ニッポン放送の所有していたフジテレビ株(発行済み株式の13.88%)の議決権はすべてSBIに移るから、それを目当てにニッポン放送乗っ取りをたくらんでいたライブドアは、まさにトンビにアブラアゲをさらわれた図になり、なんのために800億円も借金してニッポン放送株を買い占めたのか、全く訳がわからないことになった。

 堀江社長は平静を装っているかに見えるが、実際は茫然自失というところだろう。

 3月28日も、29日も、堀江社長は記者の前に姿を現さないで、記者対応をしたのは、広報部の女性だけという事態が、堀江社長のショックの大きさをよく物語っている。

 

インターネットと親和性悪いラジオというメディア
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 これぞ究極のクラウン・ジュエル作戦というか、焦土作戦である。はじめの頃は、フジ・ニッポン放送グループ側の防衛作戦が論じられるとき、クラウン・ジュエル作戦(焦土作戦)の対象として話題になっていたのは、もっぱら、ニッポン放送の子会社のポニーキャニオン(売り上げがニッポン放送より大きい)を切り離すという程度のことだった。

 しかし、考えてみればニッポン放送株買占めで堀江社長が最大の狙いとしていたのは、ニッポン放送でもなければ、ポニーキャニオンでもなく、ニッポン放送が持っていたフジテレビそのものの株だったのだから、それをよそに移されてしまったら、ニッポン放送を乗っ取った意味がないということになる。

 もちろん堀江社長は、フジテレビ株がもっぽらの狙いでニッポン放送を乗っ取ったなどとはおくびにも出さず、ニッポン放送の本来の事業面で、ライブドアと提携してもらうのが目的だといっているが、それは口先だけであって、誰が見ても本来の狙いは、ニッポン放送が持つフジテレビの株だろう。

 テレビのパワーと比較すると、いまやメディアとしてのラジオのパワーはきわめて小さなものになっている。

 ラジオを日常的に聞いている人の大部分は、昼間は手を放せない仕事をしている人(よそ見をしていてはできない仕事、つまりテレビを見ていてはできない仕事)をしている人で、具体的には車の運転手、商店あるいはさまざまな労働現場でシンプルに働いている人たちであり、夜はそれに加えて、勉強をしているフリをしたい受験生などにかぎられるというのは、誰でも知っていることだ。

 「国民生活時間調査」によると、いまやラジオを聞く人は、国民の15%程度しかおらず、聞く時間も一日平均20分程度でしかない。それに対して、テレビは90%以上の人が視聴し、それに費やす時間も一日平均4時間近いのである。影響力の大きさにおいて、テレビは圧倒的である。そのような比重の低下を反映して、昨年ついにラジオの広告費売り上げはインターネットの広告費売り上げを下まわってしまっている。

 

next: ライブドアのお荷物になったニッポン放送
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050330_horiemon/index1.html

ライブドアのお荷物になったニッポン放送
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 堀江社長はこれからの時代、最も有効なメディアはインターネットであり、従来のメディアはインターネットと融合しないと生き残れない時代になったというのが持論で、ニッポン放送を乗っ取ったのも、ラジオとインターネットが結んでシナジー効果を出すのが目的といっているが、これはあんまり本気と思えない。

 メディアの中でも、ラジオほどインターネットとの融合に不適当なものはないからだ。ラジオはそもそも手が放せない、目を使わなくてよい仕事をしている人の「ナガラ聴取のための」メディアだから、手と目を必要とするインターネットと組み合わせることが一番難しいメディアなのである。

 そんなことは堀江社長もわかっているだろうに、ニッポン放送にとっても自分のところと組むほうが企業価値を高めるとさかんに主張し続けているのは、そう主張して裁判に勝った以上、そういい続けなければならないからそういっているだけだ。

 本心はフジテレビ株を手放したニッポン放送にはほとんど魅力を感じてないはずだ。だから、これからもしばらくはニッポン放送がSBIに株を貸したことの不当性を、経営陣に追及するなどの抵抗を続けるだろうが、勝ち目がないとなったら、買い占めた株に若干の色を付けて買い戻してもらえたら、手じまうのではないか。

 ニッポン放送の株を持ったまま、あくまでニッポン放送の経営に参画しようとしても、社員たちから総スカンを食らい、ニッポン放送にはこれまで労働組合がなかったのに、労働組合を結成してまで抵抗しようとしている現状を見ると、堀江社長があくまでニッポン放送に乗り込んで、経営権を握り、業務命令を次から次に連発して、抵抗する社員をライブドアとの連携に協力させようとしても、労働争議が頻発して、目的を全く達せないで終るだろう。そうなると、乗っ取ったニッポン放送もお荷物になるばかりということになるから、少しでも金になるなら手放すはずである。

 

勝負がついた「ライブドアvs.フジテレビ」の攻防
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 3月28日発売の『日経ビジネス』児玉博「堀江貴文は挑発する」の中に、乗っ取りがうまくいかなかった場合、ライブドアに経営危機が訪れるのではないかと問われて、「だって、うちは実体がないんだからさ、リスクなんてないよ」と答えたという話を読んで、ああ、この人は負け戦に終る場合をちゃんと想定しているんだなと思った。負け戦は、引き際が大切で、下手に頑張り続けるとどんどん傷を深くして、致命傷を負うことになる。堀江社長はこれまで、負け戦で下手な頑張りを続けて失敗したことも、頑張って盛り返したことも、両方の体験がある。堀江社長がいつまで頑張るかは、どちらの体験の学習効果がより強く出るかということと、ライブドアの体力がどれだけ持つかということにかかるだろうが、いずれにしてもそう長くは続くまいと私は見ている。もちろん、とんでもない妙手、奇策が出てきて大勢をひっくり返せば別だが、基本的には勝負がついたのではないか。敵対的TOBが難しい最大の理由は、この辺にある。

 企業というものは結局人間の集団だから、相手の同意なしに乗っ取った場合、その業務内容がマンパワーに依存する部分が大きければ大きいほど、それを最終的成功に導くことは難しい。乗っ取ったあとに社員の協力が得られないと、その企業を活かして用いることができない。その企業活動をより高め、より多くの利潤を生み出すという乗っ取り本来の目的を達することができない。

 その企業がメーカーであれば、その企業の本体部分は工場の工場設備にある。社員の協力が得られなかったら、協力しない社員のクビを全部切って、従順な社員を新規雇用ないし再雇用して、彼らの力で工場設備を動かせば、前と同じものが作れる。もちろん、そんなことをしたら、深刻な労働争議を覚悟しなければならないが、とりあえずそういうことは考えに入れずに、論をすすめると、こういう場合は、働いている人間はいくらでも代替可能であるということだ。

 

next: 敵対的買収でメディアは乗っ取れない
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050330_horiemon/index2.html

敵対的買収でメディアは乗っ取れない
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 デパート、スーパーなどの小売業も、マンパワーに依存することころが大きい職業だが、この場合もほとんど代替可能な人間の使い方しかしていないから、人を替えても同じ商売ができるし、同じ結果が期待できる。

 しかし、メディアの場合は、そうはいかない。それは簡単には代替がきかない技量を持った人々の集まりである。企業の本体部分は、そのような技量の集積そのものの中にあるといってよい。つまり人を替えたら、同じものができないのである。違うものができてしまう。新聞社なら、企業の本体は印刷機にあるわけではない(いざとなったら紙面として完成したフィルムの版を全部別の印刷会社に持ち込んで、別の印刷機で刷ることだってできる)。むしろ、新聞社の本体は紙面の中身を作る取材記者群と取材した材料を料理して紙面を作っていく編集者群のほうにある。

 テレビなら、スタジオ設備や、電波発信などの設備に本体があるのではなく、それらの設備を利用して、コンテンツを作りだす人々の集まり(記者、ディレクター、番組スタッフ、技術スタッフ)のほうである。

 このような意味で、メディアは乗っ取りが一番難しい企業なのである。これまでも、メディアの乗っ取りあるいはその試みがなされたことは度々あるが、成功例は少ない。特に敵対的買収では成功例が少ない。いま述べたような理由で、企業の本体部分がそこに現に働いている人々のマンパワーそのものの中にあるため、企業は株主のもの(だから株式の主要部分が株主を変えたら、新しい株主のもの)という資本主義の常識が簡単には通じないからである。

 もう一ついっておけば、今回起きた、SBIのようなところが突然参入してきて、そちらにニッポン放送が問題のフジテレビの株を全株貸し与えてしまうというようなことが起きたのも、敵対的なTOBがもたらした弱さといえる。

 これは一種の侵略戦争に対する防衛戦争だから、戦争中の敵に対しては何でもありの原則に従って起きたことであって、もし友好的なTOBだったら、こんなことは、友に対する裏切り行為になるから、絶対起きなかっただろう。それどころか、すでにニッポン放送の社内には、次期権力者になることが確定している堀江社長に対してゴマをする連中が大挙して出現してきて、早くも終戦直後の日本のような状態(マッカーサーと占領軍に対してゴマをする連中がドドッと増えて、その後の占領政策はきわめてスムーズに進展した)になったにちがいない。

 それに対して、このまま堀江社長が乗り込むと、太平洋戦争後の日本占領ではなく、イラク戦争後のイラクのような状況になる恐れが多分にあると思う。一般論として、敵対的TOBは、事後の事態収拾がむずかしいのである。

 

立花 隆

 評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。

 著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
 

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