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命を賭して悪の帝国と闘ったサダム・フセイン (小沢先生もこれ位カッコ良ければなあ)
http://www.asyura2.com/09/reki02/msg/298.html
投稿者 中川隆 日時 2010 年 2 月 18 日 21:54:31: 3bF/xW6Ehzs4I
 

(回答先: 小沢一郎先生は政治家の鑑 投稿者 中川隆 日時 2010 年 2 月 15 日 21:46:52)


巨悪の根源、アメリカにノーを突き付けたフセイン


こんなことを書いても、「独裁者の下、秘密警察だらけのイラクで、まさか?」と思う人も多いと思うけれど、イラクに行く度に、世界の中で、こんな平和で美しい都市があり、苛酷な条件下でも、こんなに優しい人々がいるのだ、「生きていてよかった」と逆にこちらが励まされることが多い。

六月十七日の朝日朝刊に「米大統領、フセイン大統領暗殺容認」の記事が出ていた。声高にテロ撲滅を叫び、テロ支援国とかってに決めた国々を核攻撃で脅している本人が他国の指導者の暗殺を命じている。まるでブラックジョークであるが、そんな大統領に忠誠を誓い、共同軍事行動に踏み込もうという首相がいるなら、その顔を見たいものだ。

 筆者の考えでは、アメリカはフセイン大統領を亡き者にしようと焦っていることは間違いないが、アメリカに楯突くイラク国民をジェノサイドしてしまおうと目論んでいることもまた事実である。

今、週刊『金曜日』に本多勝一氏が連載で書いているように、あの湾岸戦争で、アメリカは、電力や貯水場などの生活に重要なインフラの破壊に重点におき、非戦闘員、とりわけ、女性や子供を標的にした学校、病院、シェルターなどをピンポイント爆撃したのも、地球の寿命ほど長く放射能の被害をもたらす劣化ウラン弾を投下したのも、そうしたフセイン大統領と一体となってアメリカに反抗するイラク国民自体の絶滅を目指してためであろう。

第二次大戦中の沖縄戦や、東京大空襲はじめ日本本土の焦土化作戦、広島、長崎への原爆の投下もさらに、ベトナム戦争、アフガン空爆その他の第三世界への干渉戦争は、兵器産業や巨大石油資本の営業部のブッシュ政権が受け継いでいる伝統的覇権主義の発露であろう。


筆者がバグダードの国際連帯会議に出席していた五月一日には、フセイン大統領が昨年出版し、ベストセラーとなった小説『ザビーバと王』が、パレスチナ生まれの詩人アディーブ・ナシールにより戯曲として脚色され、ラシード劇場で上演されていた。フセイン大統領はさらに小説を二つ、『難攻不落の砦』と『男たちと都会』も発表している。

 何はともあれ、西欧のメディアで描かれているサダム・フセイン像と大分違う。

 大統領の誕生祝いに参加した青年男女、市民の表情は、複雑な国内の宗派、民族の相違を克服して、幼稚園から大学まで無料、医療費もほとんど国庫負担、住居その他民生の向上に力をそそぎ、今日、アメリカに膝を屈しない国にまで育て上げたことへの感謝の気持ちを伝えようという熱気がうかがわれていた。そして、イラクに対するアメリカの不当な抑圧政策のへの怒りがその心の底にマグマのように燃えているからであろう。

 筆者が感銘しているのは、発展途上国では類のない児童文化の育成に力を尽したり、識字運動への熱意で、ユネスコから過去に二回も表彰されている。

 実は、この先頭に立ったのは外ならぬサダム・フセイン大統領である。それは何故か。それは、生まれた時にすでに父親は他界しており、はじめ小学校にも満足に入れなかった幼い日の悔しさがあるようだ。その背景に苛酷なイギリスの植民地政策があった。彼の貪欲な読書欲、そして祖国再興への使命感は、イラク人に共通する国民性であろう。
http://www.kokuminrengo.net/old/index.htm


悪の帝国と戦うサダム・フセイン

アメリカは世界最大の対外債務国で、恒常的経常赤字は対外債務を限りなく増大させ続けるから、アメリカは常に赤字補填を続けなければドル崩壊、経済破綻に陥る。自分の借金が自分で払えなければ他人に払わせるしかない。自力(経常黒字)で赤字補填ができないアメリカにとって生存の道は二つ。

一つは、金融戦略で金利と為替戦略を駆使しながら黒字国の資金をアメリカへ誘導すること。もう一つが、世界のドル市場化である。つまり、ドルを世界貿易の決済通貨化すること。1971年8月15日のニクソンショック(ドルと金との交換性を廃止)以来、ドルの信認が落ち続けたところへ、2000年からアメリカより大きいヨーロッパ経済圏でユーロが基軸通貨になりつつあった。

そこへ追い討ちをかけるように同年11月、フランスのシラク大統領がサダム・フセイン前大統領と結託して、イラクの原油決済通貨を従来のドルからユーロに転換させることに成功した。これをきっかけとしてOPEC諸国にドルの危機感が広まり、中東産油国は原油決済通貨を続々とユーロに切り替え始めた。だから2000年はアメリカにとって、まさにドル崩壊の危機に瀕した年であったのです。

ドルが国際貿易や原油決済通貨ならば、世界は決済通貨としてのドルを買わざるを得なくなる。アメリカにしてみれば、世界の貿易決済のおかげで借金返済のために乱発する赤字債権(印刷の時点では無価値の紙切れ)が売れる(現金になる)ことになる。つまり、アメリカの恒常的双子の赤字補填のもう一つの方法は、ドルを国際決済通貨にして赤字米国債を世界中に買わせること。

2000年のユーロ国際化の発足と同時に、EU首脳(シラク)は頭脳を使ってユーロ市場を拡大し、ドルを危機に追い込んだと言えます。追い込まれたアメリカは頭脳で対抗できなかったから、(9.11を演出して)武力で失地(イラク)回復をせざるを得なかったのです。EUの頭脳的先制攻撃に対して、アメリカは(下手な言い訳をしながら)武力で反撃したのがアフガン、イラク戦争なのです。

かくして米国は歴史始まって以来経験したことのない局面に入ることになる。負債を他国に転嫁することが出来ず、留まることをしらぬように見えさえするドル安の連続という局面である。

実際、97年までは年間1000億ドルだった経常赤字が、それ以降は年間コンスタントに4000億ドル超に達している。もしこの事態を避けようとするのであれば、米帝はイラクを撤退せずにその石油利権を握り締め、石油戦略によって基軸通貨国の地位を守る以外にない。
http://www.geocities.jp/voiceofarab/05030819.htm

今こそ合州国の正体直視を  本多勝一

この一文が出るころ、アメリカ合州国の体制主流は、イラク侵略を開始または開始寸前にあるだろう。

 国連安保理外相級会合に米英ら3国が今月7日提出した修正決議案は、国連安全保障理事会で11日に採決にかけられる見通しだが、ここで否決されても、合州国は単独で開戦・侵略に踏み切る構えである。

 あたりまえだ。アメリカ合州国の歴史は、こういうことの連続の末に今日の地球史上最強・最悪の帝国となった。ワシントン初代大統領以来の二百余年間は、手段を選ばぬ詐欺・脅迫・テロ・虐殺による侵略史にほかならぬ。そのことはこれまで機会あるごとに触れてきたが(注)、目前でまたしても超大軍事力によって同じことが強行されようとしている今、「正確な合州国史」にうといままその正体に気付かぬ例が多い日本人のためにも、このさい改めて正面から指摘しておきたい。

 ただし、こんどのイラク侵略が開戦されてもされなくても、これはコロンブス以来のヨーロッパによる世界侵略500年史の中で、ベトナム戦争とともに画期をなす歴史的事件となるかもしれない。

米西戦争などで世界制覇競争に勝った合州国は、それまでに北米大陸での先住民族侵略をウンデッドニー虐殺によって終了していたが、以降そのままハワイ・グアム・フィリピンへと「西部へ西部へ」を進めた。朝鮮戦争につづくベトナム戦争で、合州国軍隊はワシントン初代大統領以来初の敗戦を喫したものの、侵略のための巨大軍需産業や体質に傷はつかなかった。その成りゆきとしてのイラク戦争(12年前も今回も)である。ところが、合州国の正体に気づき始めた人々の世界的盛上りによって、開戦寸前での中止か、開戦してもベトナム以上の反戦の広がりで帝国の没落となるかもしれない。この500年来の画期をなすゆえんである。


合州国は“民主主義”をタテマエにしている。実態はともかく、民意を完全・明白に無視した侵略は支持されない。そこで開戦のとき必ずといえるほど使われるテこそ、相手が先に攻撃したとみせかける捏造事件である。これは先住民族への侵略以来イラクまで一貫してきた。

戦艦メーン号爆破事件(米西戦争)をみよ。トンキン湾事件(ベトナム戦争)をみよ。真珠湾(太平洋戦争)をみよ。その他その他。

これを書いている9日の朝日放送(サンデープロジェクト)は、イラクのクウェート侵入(これも裏に合州国あり)にさいして、イラク兵が乳児を哺育器から出して次々と放り投げた様子をクウェートの少女に証言させたこと、これが繰り返し放送されて世論を憤激させ、開戦に有利になったこと、ところが後に、この少女は駐米クウェート大使の娘で、証言は捏造だったこと等を放映した。

 こんどはどんな捏造が、いいように操作されるマスコミによって“報道”されることだろうか。

 開戦寸前の今、このテーマは「未完」としておく。
http://www.kinyobi.co.jp/KTools/fusoku_pt?v=vol451

第一次湾岸戦争時の「ナイラ証言」と「油まみれの水鳥」

アメリカ政府もメディアも、イラク攻撃の世論作りのために露骨な捏造と情報操作をおこなった。世界が、みごとに嵌められてしまった。

「ナイラ証言」というのは、完璧な捏造であることがはっきりしている。ナイラというクウェートの少女が、米公聴会で「イラクの兵士がクウェートの産院の乳飲み子を保育器からだし、次々と床に叩きつけて殺したのを見た」と涙ながらに証言した。

しかし、後にこの少女は、駐米クウェート大使の娘で、ずっとアメリカにいたことが分かった。つまり、証言は真っ赤なウソだった。この証言は、アメリカの広告代理店がシナリオを作り演出したものだった。リハーサルもきちんとしていた。もちろん、スポンサーはアメリカ政府以外にない。ただし、捏造がニューヨークタイムズで暴かれたのは、1年3ヶ月後のことだ。

この「ナイラ証言」が出るまでは、アメリカの世論は反戦が多数を占めていた。しかし、この証言で世論は一気に会戦へと転じた。周到に準備された、たったひとつの捏造が、世論を完璧に逆転させてしまった。しかも、素人の少女のウソ泣きによって。


クウェートから逃げてきたとされる少女の証言だ。そのクウェート人少女は、アメリカ議会の公聴会でこう証言した。

「サダム・フセインの軍隊が病院に乱入して、保育器から赤ん坊を取り出し、床に叩きつけて殺した。私はこの目で目撃した」

 と、少女は涙を流しながら証言した。

 ところが、この公聴会での少女の証言は、真っ赤なウソだった。
 事前にアメリカの広告代理店が綿密なシナリオをつくり、何度もリハーサルをした上での証言だった。当の少女が後に暴露した。

湾岸戦争のときの「油にまみれた水鳥」の映像

 石油の海と化した波打ち際に、全身石油まみれの真っ黒の水鳥が弱々しく立っていた。いや、呆然と立っていたといった方がいいかもしれない。

 当時、メディアはサダム・フセインの「環境テロ」だと大騒ぎした。フセインがわざと油田の油を海に「放出」していると報道された。

環境は破壊され、海の生物が犠牲になっていると。油にまみれた水鳥の映像は、大きな訴求力を持った。水鳥の映像は世界中をかけめぐり、繰り返し放映された。世界中がフセインを「狂気の極悪人」として認識した。このたったひとつの映像が、永遠にフセインのイメージを世界に決定づけたのだ。

 しかし、あの映像はヤラセだった。

 まず原油が海に流れたのは、米軍の爆撃機がイラクのタンカーを撃沈したからだ。アメリカは自分の爆撃の結果を、フセインの環境テロにすり替えたのだ。そしてメディアは、タンカーから流出した油の映像に、水鳥の映像を付け加えて、効果を高めた。日本のメディアは、その映像がおかしいと知りながら、アメリカの大本営発表に沿った報道をした。

 水鳥の命をダシに、イラク市民は爆撃された。
 クジラの命をダシに、日本が爆撃されたら、日本人は納得できるだろうか。


サダム・ フセインが自国民(クルド族)に化学兵器を浴びせた想像を絶する暴君だというイメ−ジを与える宣伝キャンペ−ンがあげられる。私自身もそう信じ込まされていたし、長い間彼のことを何をしだすかわからない怖い存在だと思っていた。

しかし、これもアメリカの巧妙な宣伝が成功したに過ぎない。イラン・イラク戦争の期にイラク領のハラブシャで、イラクとイランとが互いに化学兵器を使い合ったのは確かだが、クルド人を殺した毒ガスはイラン側が所有するシアン化物だった、当時イラクの毒ガスは、マスタ-ドけいのどくがすであっっという。
   検診したトルコの医者が証言している。

しかし、スタンフォ−ド大学フ−バ−研究所特別研 究員松原久子も「アメリカは戦争を望んでいた」(文芸春秋一九九一年五月号)と題した寄稿文でこのことはっ きり書いているが、これに対する反証は出されておらず、今では 定説となっているのである。湾岸戦争後に、米軍は、降参したイラク軍のクウェ−ト陣地に少しでも化学
兵器が残っていないかと躍起になって捜したというが、ついに化学兵器は少しも見当たらなかった。イラクは国家存亡と岐路に立たせられたあの湾岸戦争でも科学兵火は使っていなのである。

http://www.freeml.com/ctrl/html/MessageForm/chance-forum@freeml.com/6841/;jsessionid=0m2cs06w21

悪魔化されるサダム・フセイン

米国は、報道機関の助けを借り、戦争を国民に納得させようと、サダム・フセインを悪魔のような人物に仕立て上げた。イラン・イラク戦争の期間は米国とイラクの問に緊密な外交、経済、軍事の協力があったが、戦争が終って数年すると、サダム・フセインは突然、「ヒットラーより悪い」独裁者となった。

 個人的中傷のほかにも様々な宣伝が行われた。その最初は石油だった。一九九〇年九月十一日、ブッシュは「あまりにも重要な資源をあまりにも残忍な人間に支配させておくことは、許容できるものではなく、今後も許容されない」と述べた。それでも、米国のかなりの人々がこれに同調しなかった。同年十一月十四日付け 「ニューヨーク・タイムズ」 は米政府の新たなアプローチを次のように報じている。

  ホワイトハウスのスピーチ・ライターがブッシュ大統領の湾岸政策について、明瞭に、そして一貫して理解を得られるよう紹介することができず、その結果、本国民の支持をつなぎとめておくことができそうにないことに、(中略)ベーカー国務長官は怒りをつのらせていると言われている。

 湾岸戦争が始まった八月以降、戦闘部隊派遣を正当化する大統領の理由は、「死活的利益」が危機に瀕していることから始まり、侵略による損害を見過ごしてはならない、サダム・フセインはヒットラーより悪い、に至るまで実に網羅均である。

……

 このため、ベーカーは失業という新たな恐怖を持ち出した。「湾岸危機を米国民の生活水準レベルで話すならば、それは雇用問題だと言わせていただきたい。なぜなら、西側の経済的生命線(石油を支配するある国により、さらに言えば、ある独裁者により、世界の経済が不況へと転落すれば、米国民に失業が生まれるからだ)とベーカーは語った。サダム・フセインは今度は、湾岸での米国の支配強化に対してだけなく、米国経済のさらなる悪化に関連しても、非難されるようになった。ただし、米国の景気が実際に悪化するのは、湾岸戦争が終った後のことである。


最も人々の注意を引いて話題となった虚報は、「保育器の報道」である。一九九〇年十月十日、人権に関する議会コーカスにおいて「ナイラ」とのみ紹介された十五才の少女は、イラク兵士が嬰児を保育器から取り出して、「冷たい床の上に置き去りにして死なせる」のを目撃したと主張した。この話は、戦争に向けて突き進むブッシュ政権によってすぐさま利用された。ブッシュはこの話をいくつものスピーチで繰り返し引用し、このようにして三百十二人の赤ん坊が死んだと訴えた。アムネステイー・インターナショナルも一九九〇年十二月十九日のリポートで、この話は真実だと報告した。

 戦闘が終ってみると、保育器の話はまったく信用できないことが分かった。時がたつにつれ、国家安全保障会議や議会で証言を行った証人は、姓名も身分も偽っていたことが判明した。姓名がイサハ・イブラヒムで、身分が軍曹とされた人物は、イブラヒーム・ベハベハニという矯正歯科医だった。先の十五才のナイラという少女は、証言では残虐行為の行われた時に病院でボランティアとして働いていたと言ったが、実は、駈米クウェート大使の娘だった。これらは、十月十日の議会コーカスを、主催した者にとって、既知の事実だったのである。

 アムネステイー・インターナショナルは一九九一年四月、保育器の話を真実とした報告を撤回した。ミドル・イースト・ウォッチは一九九二年二月、保育器の話はイラク軍による大量レイプや拷問と同じく、「明らかに戦時の宣伝工作」である、とするリポートを発表した。

今回の開戦前の国連査察結果からも、ここに抜粋しましたラムぜー氏の見解のごとくに、「イラクの核兵器保有」は、ブッシュ(父子)の捏造である事が判りました。

そして、「保育器の報道」についても、最近ではテレビ放送で、自由クウェート市民との団体が、アメリカの大手広告代理店「ヒルトン&ノートン」に依頼して「駐米クウェート大使の娘」ナイラと名乗らせ作成した「宣伝工作」であったと放映されていました。

ビアーズ次官は完成したばかりの政府広報誌「イラク 恐怖から自由へ」を紹介した。「1988年3月16日、イラク北部の町ハラブジャで、イラク軍の毒ガスにより5000人のクルド住民が死んだ」という内容で、イラク攻撃への支持を訴える意味を込めて、世界中に配布されている。

 冊子には、赤ん坊を背負ったまま道端に倒れる女性や、息絶えた子どもたちの写真が多い。「我々が発信する情報は心を打つ物語でなければ」と次官は言う。ハラブジャ事件にはブッシュ大統領もしばしば言及、「自国民を毒ガスで殺した非道なフセイン政権」の象徴となっている。

 しかし、この事件には実は謎が多い。当時、米中央情報局(CIA)のイラク担当だったステファン・ペレティエ氏(米国の陸軍戦争大学元教授)は「毒ガスはイラクではなくイランのものだった」と主張する。当時はイラン・イラク戦争のさなかで、犠牲者はイランしか持たないシアン(青酸)ガスで死んだ兆候を示していた、というのだ。


 元教授によると、ハラブジャを現地調査した国防総省の情報機関は90年春、部内報告として、クルド人殺害はイランのガスによるものと結論付けていた。ところが、連邦議会の調査委員会は「イラク軍がマスタードガスと神経ガスでクルド人10万人を殺した」と発表し、イラク虐殺説が広まったという。

だが、密室ではなく戸外に散布したガスで一度に10万人も殺せるのか――。首をかしげる専門家も少なくなかった。その後、広報誌のように「5000人」という死者数が多用されるようになったが、昨年10月のCIAの報告書は死者を「数百人」と記し、宣伝用の数字(5000人)と大きな食い違いを見せている。

テレビ放送でも、多くの評論家は、この事実に全く触れずに、“毒ガスを同国民であるクルド人に使用し虐殺した、極悪人のフセインを追放すべし!”と声高に語り、アメリカのイラク侵攻を支持しています。



「多数のメディアが、繰り返し強調する事例はまず疑え」
ということだ。

ソビエト連邦=共産主義=世界の脅威

サダム・フセイン=大量破壊兵器=世界の脅威

タリバーン=原理主義=世界の脅威

「アル・カイーダ」=テロリスト=911、疸阻菌、ロンドン爆破=世界の脅威
・・・etc.


ソビエト連邦も、フセインも、タリバーンも世界の脅威ではなかった。
意図的に強調されてきたにすぎない。
「アル・カイーダ」は実際に存在するのかどうかさえ怪しい。
本当の世界の脅威とは、常套的に情報操作し、平気で他国を爆撃するアメリカ合州国自身ではないのか。


──大量破壊兵器とアルカイダ──

 今回のイラク戦争でも、このウソによるイメージ戦略は大いに発揮された。

 イラク戦争開戦の最大の理由は、
「大量破壊兵器の存在」「フセインとアルカイダのつながり」
 だった。

 この二つの「事実」が、世界中のメディアを使って大宣伝された。狂人フセインを打倒しなければ、世界の安全は脅威に晒される、というように。フセインは世界の脅威、世界の敵になった。すでにフセインのイメージは10年前に定着している。

しかし、「大量破壊兵器の存在」も「アルカイダとの関係」も、ウソだった。

http://blog.goo.ne.jp/leonlobo/c/9596a99dfeb4a0daf5a852d62ea14fa5

マスコミ業界の世界的な中心地であるアメリカでは、マスコミは、開戦後に戦争に協力するだけでなく、政府による戦争開始の策動に協力してきた。アメリカのジャーナリズムの賞として世界的に有名なものに「ピューリッツァ賞」があるが、この賞を作ったジョセフ・ピューリッツァは、1898年にアメリカとスペインの戦争(米西戦争)が始まる原因を作った人である。

 米西戦争は、当時スペイン領だったキューバに停泊中のアメリカの戦艦メーン号が何者かによって爆破沈没され、これをピューリッツァの新聞「イブニング・ワールド」などのアメリカのマスコミが「スペインの仕業に違いない」と煽り、開戦に持ち込んだ戦争である。メーン号が沈没した理由が、故障による自損事故だったことは、後から判明した。

 この米西戦争開始の経緯を見ると、アメリカのマスコミが政府の肝いりで「イラクは大量破壊兵器を持っているに違いない」と煽って開戦に持ち込み、後で、実はイラクは大量破壊兵器を持っていなかったことが分かったという、105年後の2003年に起きたイラク侵攻と、ほとんど同じであることが分かる。

 ピューリッツァとその後の同志たちが巧妙だったのは、自分がやっていた扇動ジャーナリズムを、洗練された知的で高貴な権威あるイメージに変えることを企図し、成功したことである。ピューリッツァは、ニューヨークのコロンビア大学に巨額の寄付を行い、ジャーナリズム学科を創設した。今では、コロンビア大学のジャーナリズム学科は、ジャーナリズムを学ぶ場所として世界最高の地位にあり、ピューリッツァ賞は、世界最高の賞となっている。「ジャーナリスト」は、世界中の若者があこがれる職業になった。

 しかし米西戦争からイラク侵攻まで、「人権」などの一見崇高なイメージを使って敵方の「悪」を誇張し、自国にとって有利な戦争を展開することに協力しているアメリカのマスコミのやり方は、巧妙さに磨きがかかっただけで、本質は変わっていない。
http://tanakanews.com/g0725media.htm


ウンデッドニー以来…… (本多勝一)

 アメリカ合州国が、一方的な「ブッシュの戦争」でアフガニスタン空爆を続けている。予測されていたとおり、一般住民に多数の死傷者が出た。そして、そんなことは一切おかまいなく空からの無差別虐殺をつづけるであろうことも、予想通りである。なぜか。

 合州国の「はじまり」から点検してみられよ。この国は500余年前の「コロンブスの大虐殺」で始まる。すなわち南北アメリカ両大陸(および付属諸島)の、何千万人とも知れぬ先住民族たちの、おそらく人類史上最大の悲劇の始まりである(注1)。合州国に直接関連するものとして、北米の先住民族が最近までにどんな虐殺をされてきたかは、日本人による世界に誇れる報告『アメリカ・インディアン悲史』(藤永茂・朝日新聞社・1972年)がある。

 ワシントン初代大統領時代から強行された侵略は、最後の組織的虐殺「ウンデッドニー」で一応終るものの、そのわずか10年後(1900年)、フィリピンを侵略した米軍による「10歳以上すべて」の全男女が、ルソン島・サマル島で大虐殺された。のちの日本占領軍司令官マッカーサーの父親たるアーサー=マッカーサー将軍の命令だ。この虐殺軍の指揮官たるや、なんと米本国でのベテラン対先住民戦闘兵自身だった。つまりアメリカ先住民大虐殺の歴史は、アジア人大虐殺へと直結する(注2)。

 息子のマッカーサーを最高司令官とする米軍は、東京大空襲や広島・長崎への明白な無差別大虐殺を、「真珠湾」への“反撃”として強行する。真珠湾は軍事施設だけを目標としていたが、東京や広島・長崎等は住民の生命そのものが目標である。

 その5年後、朝鮮戦争が始まる。そこでの米軍による住民大虐殺については、たとえば松本昌次『朝鮮の旅』での「信川大虐殺」などで明らかだが、つい最近も「老斤里大虐殺」が暴露された(注3)。

 朝鮮での終戦後10年と経たぬうちに、ベトナム戦争への米軍介入だ。ソンミ事件その他、アメリカ先住民大虐殺と全く同じ無差別婦女子大虐殺が、カウボーイ米兵らによって“楽しく”行なわれた。

 ベトナム戦争終了26年後の今、父親ブッシュによるイラク戦争(湾岸戦争)を経て息子のブッシュが、国連を無視してアフガニスタンに開戦した。ウンデッドニー当時の大統領と現在のカウボーイ父子大統領とで認識に基本的違いがない以上、非白人で異教徒住民への無差別爆撃(虐殺)は当然である。良心的アメリカ人は、あくまで非主流だ。

 ここまで書いた直後、ミニコミ誌『シサム通信』10月号が届いた。その中から、アフガニスタンで長年医療活動をして今回脱出した中村哲医師の言葉――「一連の動きを見て思うのは、西部劇の続きである。勇敢な白人がバッタバッタとインディアンをなぎ倒していく。」


<注1>たとえばラス=カサスの『インディアス破壊を弾劾する簡略なる陳述』(石原保徳訳・現代企画室)などに詳しい。

<注2>詳細は拙著『アメリカ合州国』(著作集12巻=朝日新聞社)収録の「マイアミ連合からベトナムまでの合州国の道程」参照。

<注3>1950年7月に韓国・忠清北道老斤里で避難民数百人を米兵が無差別射殺。AP通信が一昨年9月に報道。
http://www2.kinyobi.co.jp/old/fusoku_oldf/386

こんな事態が許されるのでしょうか!?

ラムゼー氏の著書を見るまでは、イラクのクウェート侵攻の非は、イラクそしてその独裁者フセインに在ると信じ込んでいましたが、ラムゼー氏は、このイラクのクウェート侵攻はアメリカによって仕掛けられた罠であった事を示してくれます

その罠は、イラン・イラク戦争で疲弊し復興を図るイラクに対して、(アメリカの差し金で)クウェートは石油の過剰な増産を企て国際的な石油価格の暴落を図り、イラクの石油からの利益を削減させた上、イラク油田の盗掘等を行いイラクを徹底的に痛みつけ、イラクがクウェートに善処を請うと、イラク、クウェート、サウジアラビア、UAEによる四ヵ国の石油相会議の席上では、クウェートのサバハ外相は“(イラクに)対応するつもりはない。(中略)気に入らないことがあるなら、イラクはクウェートの領土を勝手に占領すればいい。(中略)我々は米国を引き入れる”とのも発言しています。

そして、当時のブッシュ(父)大統領は“警告も挑発もなくイラクはクウェートに侵攻した” と述べたというが、フセインはこの会議で(イラク軍のクウェート国境への集結の前日)は、“話し合いでイラクを守れないなら、事態を正しく立て直し、かつ奪われた権利をその持ち主に返還するために、何らかの有効な手段が講じられなくてはならない。全能の神よ、我々は忠告を与えたことを覚えておいてください” と語りクウェートに警告を発していたことが紹介されています。

中東で戦争を望んでいたのはイラクではなく、米国の巨大勢力だった。つまり、巨額な予算を維持したい国防総省、中東への武器販売と国内の軍事契約に依存する軍需産業、原油価格に対する支配力強化と利益の増大を望む石油公社、ソ連の崩壊を米軍の中東常駐の絶好の機会と考え、石油資源の支配により巨大な地政学的勢力を二十一世紀に向け構築しようとするブッシュ政権だった。


国防総省の課題は、拡張よりも再建に腐心するイラクを、どうしたら米国の軍事介入を正当化できる行動に駆り立てることができるか、であった。このような危機的状況を創り出すため、国防総省はクウェート王族との特別な関係に頼ろうと考えた。

イラクがイランとの戦いに没頭している最中、クウェートは国境を北方に移動させ、ルメイラ油田の中の九〇〇平方マイルを占拠した。クウェートはこれに加え、米国から供与された傾斜穿孔技術により、イラク領土内に間違いなく位置するルメイラ油田から盗掘を行った。イラン・イラク戦争が最高峰に達した時、イラクの石油輸出能力は低下したが、クウェートは盗掘したイラクの石油をイラクの消費者に売りつけて大いに儲けた。

クウェートは戦争期間を通じ、イラクに三百億ドルを貸与したが、その大部分はクウェート自身がイランから直接的脅威を感じた後のものだった。戦争が終ると、クウェートの指導者はイラクに返済を求めたが、イラクは戦争により八百億ドル以上の被害を受けていた上、クウェートの身勝手な行動で石油価格が引き下げられていた。

イラクにとって債務の即刻返済は不可能だった。

一九八八年から九〇年にかけ、米国防大学の研究が予想した通り、イラクは外交によりクウェートとの紛争解決に努力した。一方、クウェートは、情報筋のすべてが認める通り、一貫して傲慢で非妥協的だった。


サダム・フセインはバグダッドで開催されたアラブ連盟首脳会議で次のように述べた。

戦争は通常、「軍隊の越境、破壊行為、殺人、クーデター支援により遂行される。(中略)そして、現在行われていること(クウェートの石油政策)はイラクに対する戦争である」。

一九九〇年六月、イラクはアラブ数ヵ国に外交使節を派遣し、原油価格の若干の引き上げを可能にする新たな生産割当を訴えた。クウェートはこの生産割当を拒否したが、さらにイラク、クウェート、サウジアラビア、UAEによる首脳会談の開催というイラク提案まで拒絶した。

 七月十日、前記四ヵ国の石油相会議がやっと開催され、原油価格の漸次引き上げが可能となる生産割当が決められた。ところが、翌日、エミールと会談したクウェート石油相は、原油生産を十月まで大幅に引き上げると発表した。

サダム・フセインは、クウェートと米国がイラク経済の破壊を共謀していると公然と非難し、「話し合いでイラクを守れないなら、事態を正しく立て直し、かつ奪われた権利をその持ち主に返還するために、何らかの有効な手段が講じられなくてはならない。全能の神よ、我々は忠告を与えたことを覚えておいてください」と語った。イラクの戦闘部隊がクウェート国境に結集し始めたのは、この翌日である。

 言い換えるなら、イラクは、経済戦争が仕掛けられていると認識しており、事態はそれほど深刻だ、と警告したのである。ブッシュ大統領は八月八日の声明で、警告も挑発もなくイラクはクウェートに侵攻したと述べたが、これは真っ赤な墟である。

http://members.jcom.home.ne.jp/u33/i%20think%20030322.htm

1990:米国の承認の下、クウェートに侵攻。

米国の承認?

1990年7月25日、勢いに乗る独裁者は、米外交官で駐イラク大使のエイプリル・グラスピーとバグダッドで会談。サダムがグラスピーに、イラク石油のちょっとした首長権限をめぐってクウェートに攻撃を仕掛ける際に、アメリカが反対するかどうか確認したところ、このアメリカの使者はこう語った:

「私たちに意見などありません。(国務長官の)ジェームズ・ベイカーが私を寄越したのは、指示を確認するためだけです。それはつまり、クウェートはアメリカと連合関係にないということです。」

サダムは彼女の発言を録音していた。グラスピーは、1991年の議会証言で、父ブッシュがイラクのクウェート侵攻を承認したと世界中の外交官が見なすことになる録音について、その信憑性を否認できなかった。

http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2004/04/the_best_democr.html

湾岸戦争はアメリカが仕掛けた罠だった

1991年1月17日、湾岸戦争が始まった。しかしながら、軍事偵察衛星から送られてくる写真から、米ソはイラクがクウェートに攻め込む何日も前から、フセインの軍隊の大規模な移動と、クウェート国境への集結を確実に把握していたことが、関係者の証言で明らかになっている。1990年7月20日に打ち上げられたソ連製スパイ衛星「コスモス2086」が、突然軌道を変え、侵攻直前のクウェート上空を集中的に飛行していたことが、徳島市の「民間・人工衛星追跡組織(LAT)」の調査によって明らかにされた。(1990年10月23日付け「朝日新聞」による)

 他国の衛星の位置を確認しているアメリカが、このソ連衛星の動きを察知していたのは確実で、つまり、「奇襲」とされるイラク軍の侵攻を事前に知っていたことになる。

 もし、アメリカが本気でイラクのクウエート侵攻を沮止しようとするならば、第7艦隊をペルシア湾へ向かわせ、イラクへ警告を発せば、良いことだ。そうすれば、湾岸戦争は回避されていた。

 また、当時のイラク駐在のグラスピーというアメリカ女性大使が、フセインの国家再建努力を褒めて、「アメリカはイラクの行動には関心がない」と言ったのだ。


さらに、国務省の中東専門家であるジョン・ケリー国務次官補が記者会見で「クウェートが攻撃されてもアメリカにはクウェートを助ける責任がない」と公言したのだ。

 さらには、1989年、クウェイト国家公安局長がCIAを「極秘」に訪問し、「非公式会談」を行なっている。

「イラクの経済情勢の悪化を利用して、イラクがわが国との国境を画定しようとするよう仕向けることが重要である、との点で米側と一致した。CIAは、彼らがふさわしいと考える圧力のかけ方を説明し、こうした活動が高いレベルで調整されることを条件に、両国間の幅広い協力関係をつくるべきだと詳述した」ケネディ政権の報道官で、ABCテレビ欧州中東総局長ピエール・サリンジャー他による「湾岸戦争 隠された真実」で、アメリカとクウエートの密約文章の中身をこう紹介している。

 という訳で、フセインはまんまとアメリカが仕掛けた罠にハマったのだった。

http://www.election.co.jp/column/2001/k20011121.html

イラクの湾岸戦争をテレビ報道を見ていて、イラクがクウェ−トに侵入し破壊している様子が映し出されていましたが、その裏にはアメリカのCIAの情報工作があり最初イラクのクウェ−ト侵略を容認した節がある。

 それを、鵜呑みにしたサダム・フセイン大統領がアメリカの思う壺にはまり、悪者にされてしまったのである。

 イラク人の破壊よりも、アメリカの爆撃機の破壊のほうが本当は多大だったのです。

私達は、日本が真珠湾攻撃をしましたが、アメリカは、その情報を先に知っていて、日本の攻撃を口実に日本に宣戦布告してきました。

 時代が変わっても、アメリカのやりかたは、同じなのです。

クウェ−ト(親米政権)は隣のイラクの原油盗掘を行い、また、クウェ−ト人は周辺の貧しいアラブ人を労働者として酷使し、大きな利益を得ていた。これにイラク(フセイン)が抗議したが無視。このため、イラクはクウェ−トを攻撃、占領した。

 クウェ−トは欧米に支援を要請。米を中心とする多国籍軍が編成され、ハイテク兵器を駆使した大攻勢が行われ、一瞬でイラク軍は粉砕され約30万人が戦死しイラクは敗北した。放射能汚染を招くウラン弾頭も使われ、死者の半数は民間人であった。また、国連の降伏勧告を受け入れ、イラクに戻る途中の無抵抗のイラク軍に対し、米軍は隊列の前後の集団を攻撃し足止めした後、「動くもの全て」を対象とした大殺戮を行い、約1万人のイラク兵を全滅させた。イラクへ向かう道路には死体が累々と並び、「死のハイウェイ」と呼ばれた。これらの行為に対し、イスラム勢力の中ではテロによるアメリカへの報復を叫ぶ者も多かった。
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/5930/newpage117.htm


湾岸戦争はアメリカなどの、軍需産業を持った多国籍企業という死の商人によって仕組まれた戦争だった。

フセインに資金を送り続けたのはイタリアの銀行であり、化学兵器を造らせてきたのはドイツやソ連であり、原子炉とウランは堂々とフランスから売却され、スーパーガンはイギリスから輸出され、アメリカは資金援助を行ないイラクを戦争ができる国に育ててきた。フセインに戦争させるという作戦を実行してきたのが、この軍需産業ファミリーだ。

[『国連 死の商人』(P.34)、広瀬隆(1992)、八月書館]

世界を飛び回って多国籍企業が操る「影の政府」の意思を世界に伝えて回ったベイカー・アメリカ元国務長官。ユーゴ内戦の国連事務総長特使であり、かつ、アメリカ第2位の軍需産業ゼネラル・ダイナミックスの重役であり、かつ、大マスコミのニューヨークタイムズの重役であるサイラス・ヴァンス。他のイラク在住外国人が足止めをくらったときに、イラクのフランスに対する30億ドルという借金をたてにフランス人のみを脱出させたミッテラン・フランス大統領。

僕たちが新聞やニュースで知ることのできる彼らの肩書きは、長官や大臣や、代表といった平和的なもので、人殺しを職業とする兵器工場の経営者という素性がどこにも書かれていない。ところが原爆・水爆・ミサイル・戦闘機から地雷まですべてを造り、ゲリラ戦の特殊部隊を生み出す戦慄すべき国際グループというのがこの一族の正体だ。

[『国連 死の商人』(PP.36-42)、広瀬隆(1992)、八月書館]


また、この一族の系図は、軍需産業とアメリカ、イギリス、フランスといった多国籍軍の中核をなした各国の政府や、国連、マスコミが一体である証拠だ。近代の戦争はすべて彼ら「影の政府」が仕組んだものだ。

そして湾岸戦争直前の1990年、世界の軍需産業が不況にあえぎはじめていた。その軍需産業の不況を打破するために、多国籍軍が湾岸戦争を引き起こし、大量の兵器を消費して儲けようと企てた。

また、軍需産業とアメリカ政府とのつながりは、現在ますます強まっており、クリントン大統領の閣僚の多くが、多国籍企業の重役出身である。
例えば、現在アメリカの国務長官のクリストファーがいる。彼がクリントン大統領から指名されたとき、潜水艦用の核ミサイル、「トライデント」や、湾岸戦争で使われたステルス戦闘爆撃機をはじめとする軍用機を数多く製造したアメリカ第3位の軍需産業ロッキード社の現役重役だった。

アメリカ大統領直属の情報機関、CIAの長官であるジェイムズ・ウールジーは、アメリカ国防総省との取引額第8位のマーティン・アリエッタ社の重役だった。この会社が生産していたトマホーク巡航ミサイルも湾岸戦争で有名になった。

さらに、クリントン政権は各軍需産業から政治献金を受け、彼らに操られていることがこの面からもわかる。ゼネラルモータース、GTE、テクストロン、グラマン、ゼネラルダイナミックスといった軍需産業がクリントン政権やアメリカ議会議員に政治献金をしていることが明らかになっている。

このようにアメリカは軍需産業のために政治を行なうような仕組みになっている。それがアメリカが世界各地で戦争を勃発させている理由である。

湾岸戦争で多国籍企業は国連を思いのままに操りイラクを世界から孤立させた。そしてこの国連ビルがそびえるマンハッタンの土地を寄贈したのはアメリカ最大の財閥ロックフェラー財閥だった。文字どおり、国連はアメリカの多国籍企業の手のひらの上にある。

また、多国籍企業は、新しい国連事務総長に、ガリを送りこんだ。ガリは、「影の政府」の方針を決定するダボス会議のメンバーである。

http://yiori.tripod.com/aum_related/aum1.txt

湾岸戦争でボロ儲け

……ブッシュ政権の重要ポストにエネルギー業界出身の者が数多くいることにある。……テキサスの石油及び天然ガス会社こそが、ブッシュ・ジュニアの選挙戦の最初の協力者グループだったからだ。……

 副大統領ディック・チェイニーからして、石油産業関連のサービス会社では世界第二位のハリバートン社を長い間経営していた。チェイニーは大統領選を機に同社を離れた。

 すべての諜報機関を統括する安全保障の最高機関、国家安全保障会議の責任者であるコンドリーザ・ライスは、シェブロン社で九年間を過ごした。この巨大石油企業で、一九九一年から二〇〇一年一月まで社外重役を務めていたのだ。……

 W・ブッシュの親友でもある商務長官ドナルド・エバンスは、エネルギー長官のスペンサー・エイブラハムと同様に、天然ガス及び石油を扱うトム・ブラウン社の社長として、それまでの経歴のほとんどを石油業界に捧げてきた。経済問題担当の商務副長官キヤサリン・クーバーは、世界的企業エクソン社のチーフエコノミストであった。

 さらに大臣官房にも似たような経歴の者たちがたくさん見られる。……


投資資産管理会社カーライル・グループの投資財団は、その顧問として、元アメリカ大統領のジョージ・ブッシュまたは、その息子の現大統領ジョージ・W・ブッシュを取り巻く多くの人物を擁している。

 取締役会は特に、ブッシュチームの有力者たちで構成されている。たとえば、ジョージ・ブッシュ政権時の国務長官だったジェームズ・A・ベーカー三世、ロナルド・レーガン大統領時代に国防長官を務めた、フランク・C・カールッチ(CIA副長官も務めた)。一九八九年から一九九三年までジョージ・ブッシュ大統領の下で行政管理予算局長官だったリチャード・G・デーマン、そして同じく父ジョージ・ブッシュ時代のホワイトハウスの首席大統領補佐官ジョン・スヌヌである。……

 アメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュは、一九九〇年から一九九四年まで、カーライル・グループの子会社の一つケイタレア社の取蹄役会のメンバーであった。……

 ジョージ・W・ブッシュが一九八六年から一九九三年まで役員を務めたテキサスの石油会社に、……

 だから、ジョージ・W・ブッシュが経営していた別の有限会社二社(アルバスト79とアルバスト80)の資本の中に、テキサスの大物財界人ジェームズ・R・バスの名があっても不思議ではない。……

 ジョージ・W・ブッシュが設立したこの二つの企業は、その後ハーケン・エナジーと合併し、一連の株式取引は、その痕跡さえ見えなくなってしまった。

 ブッシュ・ジュニアは、七八年石油探査会社アルバスト・エナジーを設立。しかし、八六年ハーケン・エナジーに吸収され、ブッシュは役員に就任した。

注 カーライル・グループ:投資資本百二十億ドル。……未公開企業の株式を購入して転売し、米国最大の兵器メーカーを傘下に収め、通信分野の会社を多く持つ。サウジ政府の金融アドバイザーでもある。

アメリカが掲げる「イラク解放」とは、極端にいえば西洋が非西洋の文明を叩きのめし、自分たちの「正義」を押しつけるプロセスに他ならない。しかも、今回の攻撃でアメリカが得るであろう利益は莫大なものだ。新兵器の実験と旧式兵器の在庫処分によって軍需産業が潤い、戦後復興にはアメリカ企業が次々と参入してくる。イラクの地下に眠る世界第2位の埋蔵石油の利権も、優先的に確保するつもりでいる。ロッキード・マーチン社は、今年1月から3月期の売り上げが昨年に比べて18%増加したといい、インフラ復旧事業ではベタテル社が800億円あまりのプロジェクトを受注し、油田の復旧作業はハリパートン社やブーツ&クーツ社などのテキサス系の企業が引き受けている。

 だが、これに至るまで、イラク国民の上には爆弾が降り注ぎ、民間人は3000人近く、イラク軍人は数万人が亡くなった。アメリカ軍の戦死者とは比べ物にならない数だ。イラクの人々を殺すことでアメリカが利益を得る……この構図は、かつて東洋の解放を唱えた岡倉天心が述べた、「西洋の栄光は東洋の屈辱」そのものではないか。とりわけブッシュ政権は、多くの高官たちが、戦争で利益を得る大企業の顧問などを務める「利権屋集団」だ。
この最も基本的な点を忘れ「力こそ正義」という論理に傾けば、力のない人々が絶望的な行動に出ることは避けられない。テロを防ぐどころか、全世界にテロが広がっていくだろう。大義も正義もない、今回のイラク侵略に対しては、きちんと批判の声を上げ、決してアメリカを許してはならない。

http://members.jcom.home.ne.jp/u33/i%20think%20030813ttnt.htm

ブッシュがサダムよりひどいわけ

教育システムの機能が失われたこと。2005年に国連が行った調査では、高等教育機関の84%が「破壊されたか、ダメージを受けたか、略奪をうけたか」している。

イラクの知的蓄積は、何千人もの大学関係者やそのほかの専門家が国外に脱出したか、イラクで謎のように誘拐されたり暗殺されたりしたことで、さらに弱体化した。また、そのほかに、数十万人、もしかすると100万人近い教育を受けた中流階級の活発な人々が、ヨルダンやシリア、エジプトに逃れた。多くが、殺害脅迫を受けたあとで国外に逃れたのである。

「今や、私は一人きりです」と、ある中流階級のスンニ派アラブ人は言う。彼も、国外に出る決心を固めた。「政府はありません。政府からは何の保護も受けられません。誰でも家にきて、私を捕まえ、殺してゴミ捨て場に投げ込むことができます」[1]。

機能していた医療体制が失われたこと。人々の健康が失われたこと。腸チフスや結核のような致命的な伝染病がイラク全土に広まっている。イラクの病院と保健センター・ネットワークは、かつては中東で賞賛の対象だったが、今や、戦争と略奪により大きな損害を受けている。国連の世界食料計画(WFP)は、イラクの子どもたちのうち40万人が「危険なまでにタンパク質が不足して」苦しんでいると報じている。栄養失調や予防可能な病気----これらは12年にわたり米国が課した経済制裁のために以前から問題だったが----が、とりわけ子どもたちの間で増えている。貧困と混乱により、きちんとした食生活や医療を手に入れることがさらにいっそう難しくなったためである。

手足を失ったイラク人は何千人もいる。米軍が落としたクラスター爆弾の不発弾が地雷となって、それにより手足を失った人も多い。様々な人権団体が、クラスター爆弾を、民間人とりわけ子どもたちに対して無差別に被害をもたらす残酷な兵器であると非難している。

米軍の大砲から発射されて爆発する劣化ウランの粒子はイラクの空中を漂い、人体に吸い込まれて永遠に内部被曝を続ける。また、水や土地、血液、遺伝子を汚染し、体に異常を抱えた子どもたちを作る。2003年春、戦闘時の数週間に、劣化ウランを含む弾頭を搭載したA10「戦車破壊」機は、30万発以上を発射した。

そしてまた、ナパームの使用。白燐兵器の使用。

米軍は、病院も攻撃した。米軍が公式発表する犠牲者数と矛盾する米軍攻撃の犠牲者数を病院が発表しないようにするためである。それまで、病院は犠牲者数を発表する習慣だった。

数多くの家が米軍に押し入られ、男性たちは連れ去られ、女性たちは侮辱され、子どもたちはトラウマを抱えることとなった。多くのこうした家族は、米軍兵士たちが家族の金を盗んでいくと述べている。イラクは、裸にして調べられるという屈辱的な扱いを受けている。

イラクの古代遺産----人類の過去に関する世界に残る最大のアーカイブかも知れない----も、破壊され略奪されているが、石油施設を防衛するのに忙しい米軍は、遺産の保護など行わない。

ほとんど無法の社会。イラクの法体制は、政治的領域を除くと、以前は中東で最もめざましい、世俗的なものだった。それが今や大混乱状態にあり、宗教法がますます広まっている。

かつて広まっていた女性の権利は、今や様々な領域で様々に適用される過酷なイスラム法のもとで巨大な危機に晒されており、その危機は高まっている。今日では、イラクのシーア派宗教支配層の中には、腕を露出したり男友達とピクニックに行ったりという理由で女性に身体的攻撃を加えることを容認するような人々もいる。

短パンで表に出る男性も嫌がらせを受けることがあり、短パンをはいて外で遊ぶ子どもたちも同様である。

セックス目的の人身売買は、以前はほぼまったく存在しなかったが、今や重大な問題となっている。

ユダヤ教徒、キリスト教徒をはじめとするムスリム以外の人々は、サダムの世俗政権下で享受していた安全のほとんどを失い、多くの人が移住した。

米軍やイラク新政府が運営する強制収容監獄の中では、様々な拷問と虐待が行われている----身体的なもの、心理的なもの、感情的なもの、苦痛や屈辱、侮辱を与え、精神を崩壊させたり、死や自殺に至らしめたりといった拷問と虐待で、人権の破滅地帯となっている。

5万人以上のイラク人が米軍侵略以来、米軍によって投獄されたが、そのうち何らかの犯罪で有罪とされたのは、ほんのごくわずかである。

米軍当局は、サダム・フセイン政権下で人々に恐れられていた治安サービスの要員たちを雇い入れて情報収集活動を拡大し、レジスタンスを根絶しようとした。

失業率は約50%と推定されている。

アメリカ合衆国占領当局は、当初、バアス党政府職員や兵士の大量解雇を実行した。のちに、必死に仕事を求める多くの人々が、占領と関係がある汚れた職に就き、誘拐されたり殺されたりといった大きな危険に身を晒さざるを得なくなった。

生活費は急上昇し、収入は急落した。


イラク北部のクルド人たちは、アラブ人を追放した。アラブ人たちは、イラクのそれ以外の地域でクルド人たちを追放した。

多くの人が、バアス党員であるという理由で、自宅から追放された。米軍兵士たちがこうした追放に参加したこともある。

米軍兵士たちは、仲間の一人が殺されたという理由で激怒し、家を破壊するといったこともある。

米軍兵士たちは、探している人物を見つけられないときに、そこにいる人間を誰彼かまわず連れ去ることがある。夫が出頭するまで妻が拘束されたりする。これは、ハリウッド映画によりナチスのとりわけ悪辣な高位としてアメリカ合衆国人の心に刻み込まれていた行為だったはずであり、また、民間人に対する集団的懲罰として、ジュネーブ条約で禁止されている行為である。

住宅地に爆撃攻撃が続けられることで、数え切れないほどの家や仕事場やモスクや橋や道路や、現代の文明生活に必要なあらゆるものが破壊された。

ハディーサ、ファルージャ、サマラ、ラマディ・・・・・・米軍が無差別破壊と殺人、人類と人権に対する攻撃を行った場所として、汚名を帯びて伝えられる地名である。

安全な飲み水、効果的な汚水排水機能、安定的な電力供給などは、すべて、全体として侵略前よりもひどい状態にあり、摂氏45度にもなる気温の中で、人々に継続的な困難を強いている。この悲惨な状況に追い打ちを欠けるように、人々はガソリンを買うために熱気の中で一日中待たなくてはならない。その理由の一つは、イラクの主要収入源である石油の生産が、侵略前の半分以下になっていることにある。


1991年、湾岸戦争の際、米軍は、上下水道システムをはじめとするイラクのインフラを意図的に破壊した。2003年までに、イラクの人々は、破壊されたインフラの主要部分を相当までに修復していた。アメリカ合衆国政府が新たな爆撃をイラクに加えたのは、そのときである。

内戦、「死の部隊」、拉致、自動車爆弾、強姦が毎日毎日起きる。・・・・・・イラクは地上で最も危険な場所になった。米軍兵士と私営治安企業は何度も人々を殺しては、遺体を路上に遺棄しておく。米軍が訓練したイラク軍と警察部隊は、さらに多くの人を殺し、ゲリラも多くの人を殺す。暴力とセクト的基準を持った新たな世代がまるごと育ちつつある。これは、将来永年にわたり、イラク人の心理状態を毒することになるだろう。

米国諜報部と軍事警察は、しばしば、ゲリラをスパイするという条件で、危険な犯罪者を釈放する。

様々な理由で抗議を行う人々が、米軍兵士に撃たれたことも何度かある。

何度も、米軍は、アルジャジーラ・テレビの記者を殺し、怪我を負わせ、投獄し、アルジャジーラの事務所を閉鎖し、いくつかの地域から閉め出した。占領当局が、アルジャジーラの報道を気に入らなかったためである。

新聞も、記事にした内容を理由に、閉鎖させられた。

ペンタゴンは、イラクのメディアに金を払ってプロパガンダ目的の記事を報道させている。

それでも、実際、自由がイラクを席巻している----巨大多国籍企業は、公益を守る法律や環境規制、労働者保護規制に邪魔されることなく、イラクの資源と労働力から略奪できるものをすべて略奪している。このところの流行は、私営化、規制撤廃、そしてハリバートンをはじめとする西洋企業の「お気に召すまま」である。イラク人のビジネスは、能力がないわけではないが----それは1991年の米軍による爆撃以降、イラクのインフラを立て直したことに示されている----、ほぼ完全に閉め出されている。


それにもかかわらず、アメリカ合衆国の行為によって改善されたイラク人の生活領域を一つとして挙げることは難しいにもかかわらず、イラクが話題に上り、私が話している相手がイラクにおける米軍の政策を擁護する議論のネタ切れを起こすと、少なくともそのとき、相手は私に次のように聞く。「一つ教えてくれ。サダム・フセインが失脚してうれしいか?」 

私は「いや」と答える。

その相手は「うれしくないのか?」と聞く。

私はさらに「うれしくない」と答える。どうか教えて欲しい。膝が痛くて病院に行ったら、外科医が足をまるごと切り落としてしまったとする。誰かに、「膝の痛みがなくなって、うれしいでしょう?」と聞かれたら、どう思うだろうか? 確かに、イラクの人々には今や、サダムの問題はない。

実際のところ、サダムを支持していたイラク人は少なくなかった。


ちょうど、日本がかつて行ったと同様の、あからさまな侵略と不法占領。そして、イラク人ゲリラの立場がどうであれ、また、侵略者がどのような口実をつけようと、侵略に同調する観点から抵抗者を「テロリスト」と呼ぶのは、ナチスがフランスのレジスタンスを「テロリスト」と呼んだのと、同じことになります。
http://asyura2.com/0601/war83/msg/802.html


他国を侵略し、統治することは、高まる住民の反感を計算すればコストのかかる事業である。それを判っていて,イラクを侵略するネオコンには、はじめからその損害をカバーしてあまりある目標があった。それが世界最大の埋蔵量を持つと言うイラクの豊富な石油資源である。(現在はサウジアラビアが世界一とされているが,未探査地域を入れればイラクが世界一)

 つまり,ネオコンとかシオニズムにとっては,その土地の住民、パレスチナ人,イ
ラク人などはっきり言って彼等にとっては「おじゃま虫」なのだ。文明とか人間の尊
厳などは,利潤の妨げにこそなれ,終局的には一文の価値もないのである。
 
 占領に反抗する人々は「邪魔者は殺せ」と情け容赦なく,高度に発達した大量破壊
兵器を使い,半減期に45億年も要する劣化ウランを惜しみなく投下してイラク人、
パレスチナ人を虐殺していく。劣化ウランの凄惨な後遺症については,アメリカ本国
でさえ,ひた隠しにされている。これは,正にモロッコの知識人エルマンジェラ教授
の言う如く、湾岸戦争以来のアメリカの対イラク戦争は「文明と野蛮」の戦いに他な
らない。

 正直いって筆者は,パレスチナの地に人工的に「イスラエル」を造成したときから,
そしてイランイラク戦争,湾岸戦争と続くイラクの弱体化が進んでいく中で,特上の
アメリカ帝国主義(とシオニズム)の本質からいって、領土拡張と資源収奪のために
は,頑強に抵抗する民族はジェノサイドするしかないという政策を遂行していくだろ
うと見ていた。


イラク国民のジェノサイドが目標

 筆者の考えでは、アメリカはフセイン大統領を亡き者にしようと焦っていることは
間違いないが、アメリカに楯突くイラク国民をジェノサイドしてしまおうと目論んで
いることもまた事実である。

二〇〇二年に週刊『金曜日』に本多勝一氏が「“悪の枢軸”イラクに行く」で書いていたように、あの湾岸戦争で、アメリカは、電力や貯水場などの生活に重要なインフラの破壊に重点におき、非戦闘員、とりわけ、女性や子供を標的にした学校、病院、シェルターなどをピンポイント爆撃したのも、地球の寿命ほど長く放射能の被害をもたらす劣化ウラン弾を投下したのも、そうしたフセイン大統領と一体となってアメリカに反抗するイラク国民自体の絶滅を目指していたためであろう。

 これは,今回のイラク戦争直後にアメリカ軍が主導して、イラクの大学,研究所,
美術館などを重点的に略奪,破壊してまわったことにも現われている。ネオコン以外,
イラク人の生活,教育,文化をを破壊し、2度と立ち上がれない民族にしていまうこ
とを喜ぶ国はもちろんイスラエルである。


マキャベリが『君主論』を著した16世紀はじめには、その国の富を吸い上げ
るには国民が必要だった。しかし石油というイラクの富は、国民がいないほうが
もっと値打ちが上がる。国民など石油会社が原油を汲み上げる邪魔になるだけだ
ろう。

石油を搾り取り、OPECを弱体化し、イスラエルが周辺アラブ諸国と戦
うのを助けるのが動機なら、イラクを壊滅状態にして二度と立ち上がれないよう
な計画を立てたはずだ。そしてもしそうだとしたら、ブッシュ政権はまだまだ破
壊を進めるだろう。抵抗がもう数か月続けば、アメリカ国民はとどめを刺す心の
準備ができるかもしれない。


アメリカがイラクにとどまり続けて遂げられるのは、完全破壊という目的だけ
だろう。イラクはアメリカのもとでは立ち直れない。マキャベリの慧眼。イラク
国民はここまで痛めつけられてしまった以上、アメリカも、その傀儡(かいらい)
もけっして受け入れまい。復興には巨額の費用と債務帳消しが必要だから、アメ
リカ(ないしその傀儡)政府のもとでは立往生するしかない。

イラクを破綻国家にして、そこから石油を搾り取るほか、アメリカが達成できる目標は考えられない。そんな政策を追求すれば、アメリカと世界の関係がどうなるかは容易に想像がつく。しかし、最初からこういう計画だったとしても驚くにはあたらない。帝
国主義的な野望を公言してはばからないブッシュ政権なら、いかにもやりそうな
ことだ。  
http://asyura2.com/0311/war43/msg/426.html

イラクの子供たちを殺し続ける「史上最悪のゴミ」 田浪 亜央江

  今年4月から5月にかけて、現地滞在2週間という短い日程でしたが、イラクをはじめて訪問する機会を得ました。ジャーナリストの本多勝一さんの通訳として同行したのです(※1)。

  1991年の湾岸戦争から11年あまりが過ぎました。当時、アメリカは、イラクのフセイン大統領をヒトラーになぞらえ、イラクを攻撃しフセインを打倒することは「正義のための戦い」である、とアメリカは宣伝しました。
仮にフセインが「中東のヒトラー」であっても、彼の支配する国に住む「普通の」人々が攻撃され、殺されるいわれはない、という当然の理届は顧みられませんでした。

  湾岸戦争で、12万5千人から15万人のイラク兵が死に、さらに空爆で、15万人の民間人が死んだと推定されています(対して、「多国籍軍」の中心的立場にいたアメリカ軍の死者は148人でした)。

今回の訪問のメインは、湾岸戦争による被害を調べることです。バグダード市内の病院を二つ、南部のバスラという都市の病院を二つ訪問しました。
お医者さんたちが異口同音に言われたことをまとめると、次のようなことになります。

  湾岸戦争が終わつて2、3年たってから、癌や白血病の患者が増えはじめた。それまで見たこともないような、奇形も出てきた。死産や、無脳症など手のつけられない状態で生まれてくる子どもも増えた。
ただでさえこれまでの医学的知識では対応できないのに、基本的な薬や医療器具が、経済制裁のため入ってこないので、座視するしかない。
イラクの医者が海外で研修を受ける道も、事実上閉ざされている。
下痢や風土熱など、薬さえあれば普通は助かる病気さえ、薬がないため子どもが苦しんでいるのを見ているしかない・・・・・・・・。

さらに私が愕然としたのは、経済制裁の影響のすさまじさです。
思い出していただきたいのですが、湾岸戦争が始まる前、武力行使に反対して、「話し合いや経済制裁で、イラクをクウェートから撤退させるべきだ」という論調がありました。
しかし空爆もひどいですが、経済制裁もつくづく残酷です。そして経済制裁はいまだに続き、病院を機能不全にしているのです。

  経済制裁の影響で死んだイラク人は150万人にのばり、そのうち70%が5歳未満の子どもだと言われています。
私が見た赤ちゃんの一人は、高熱が出ているのに全く治療も受けられず、ただ酸素を送られてハーハーと苦しんでいました。私たち大人の世代が、こんな状態を作りだしてしまったのです。

  お医者さんの一人は、「アメリカはこうやって、イラクの子どもたちを殺し続けている。これは新しいタイプの戦争なのです」と言つていました。
しかし、私たちの手も、汚れていることを確認しないわけにはいきません。日本政府は多国籍軍支援として、90億ドルを支払いました。
当時は1ドルおよそ130円でしたから、なんと1兆1千7百億円、しかも後に円安で目減りした分の補填分700億円を追加で出しているのですから、計1兆2千4百億円。
単純計算で、日本人一人あたり1万円づつ、イラクに対する戦争のためにお金を出したことになります。日本が出したお金なくては、あの戦争はできなかったのです。

http://www2u.biglobe.ne.jp/~GOMIKAN/sun2/sun32g.htm

そしてイラク人絶滅作戦へ  

今年4月のファルージャでの戦闘。米軍は民家、病院、車輌を狙って、通常爆弾、クラスター爆弾、ミサイル、迫撃砲で攻撃。さらに、戸外の住民や救急車を狙ってライフル狙撃を実行。これらの行為で数百人が死亡しています。(成澤宗男「ファルージャ 血の真実」週刊金曜日04.4.30)

 湾岸戦争中の91年2月13日、米軍はバクダッド市街地の市民防空壕を2発のミサイルで攻撃。非戦闘員約1500人が犠牲となっています。ここは数週間にわたって上空偵察が行われていて、施設が非戦闘員によって利用されていることは確認できていました。(ラムゼー・クラーク「ラムゼー・クラークの湾岸戦争―いま戦争はこうして作られる」地湧社 1994)

 湾岸戦争時、米軍は1月18日に、ミサーンのアルアマーラ幼稚園を爆撃。同20日、バスラのパレスチナ小学校、同22日、ニネヴェのアルタヒーラ小学校、同23日、ティカールのアルダホフ小学校・・・というように、小中学校や幼稚園への「ピンポイント爆撃」は、明らかになっているだけで9回に及びます。このほか、大学や国際会議場、繊維工場など民需施設も次々と標的になりました。(本多勝一「非常事態のイラクを行く」朝日新聞社 2002)

 米政府は絶対に認めませんが、日本やベトナムで行ったのと同様の無差別攻撃がイラクでも行われたのは、疑いようのない事実です。

イラクでの民間人の犠牲は「不可抗力」などでは断じてありません。91年の湾岸戦争でも、去年のイラク戦争でも、ハイテク兵器を用いて、精密に、計画的に、民間人の殺傷が行われていることは、多くの証拠が示しています。


アメリカは今、このイラクが再び立ち上がり、「アメリカの中東支配の憲兵」イスラエルを脅かす科学技術国家に返り咲くことを恐れて、悪の枢軸の筆頭ととして、イラク現政権を転覆しようとさかんに公言し始めている。もちろん、サウジアラビアに次いで豊富なイラクの石油資源(世界の埋蔵量の一一・六%)の支配がその目標であることは言うまでもない。

 この原稿を書いている六月十七日の朝日朝刊に「米大統領、フセイン大統領暗殺容認」の記事が出ていた。声高にテロ撲滅を叫び、テロ支援国とかってに決めた国々を核攻撃で脅している本人が他国の指導者の暗殺を命じている。まるでブラックジョークであるが、そんな大統領に忠誠を誓い、共同軍事行動に踏み込もうという首相がいるなら、その顔を見たいものだ。

 筆者の考えでは、アメリカはフセイン大統領を亡き者にしようと焦っていることは間違いないが、アメリカに楯突くイラク国民をジェノサイドしてしまおうと目論んでいることもまた事実である。

今、週刊『金曜日』に本多勝一氏が連載で書いているように、あの湾岸戦争で、アメリカは、電力や貯水場などの生活に重要なインフラの破壊に重点におき、非戦闘員、とりわけ、女性や子供を標的にした学校、病院、シェルターなどをピンポイント爆撃したのも、地球の寿命ほど長く放射能の被害をもたらす劣化ウラン弾を投下したのも、そうしたフセイン大統領と一体となってアメリカに反抗するイラク国民自体の絶滅を目指してためであろう。

第二次大戦中の沖縄戦や、東京大空襲はじめ日本本土の焦土化作戦、広島、長崎への原爆の投下もさらに、ベトナム戦争、アフガン空爆その他の第三世界への干渉戦争は、兵器産業や巨大石油資本の営業部のブッシュ政権が受け継いでいる伝統的覇権主義の発露であろう。

http://www.kokuminrengo.net/2002/200207-inter-ab.htm

湾岸戦争が終わって10年、今またイラクへの米英軍の攻撃が繰り返されるなか、当時米英軍が使った劣化ウラン弾によりイラクの子どもたちの健康に異変が起こっている。
 湾岸戦争後、白血病、ガン、奇形などが多発しイラクの病院は子どもたちであふれかえっている。

急増する子どもたちの白血病に対応するため1993年にはバクダッドの2つの小児病院に白血病専門病棟ができた。
 その一つのマンスール病院を訪ねた。’98年5月に訪問した時に撮った入院患者の写真を持っていくと「この子も、この子も亡くなった」と医師たちは平然と言う。死が日常化している。この病院では「毎日4〜6人の子どもが亡くなって行きます。湾岸戦争前の10倍です。白血病患者は10倍になっています。白血病になれば殆どの子どもが死んでしまう。
 こうした異変の原因が「湾岸戦争当時代使われた劣化ウラン弾によるものだ」と医師の誰もが言う。


ファアアの大きく膨れた、お腹に針を刺すと苦痛に耐えかねた少女の悲鳴が廊下に響きわたった。
(バクダッド・マンスール病院小児科白血病専門病棟)


兄から弟に、その友人に受け継がれた教科書はボロボロになり、ビニールのカバーが着けられていた。経済制裁の影響は学校教育に大きなダメージを与えている。(バスラの小学校)

http://www.morizumi-pj.com/iraq/iraq1/iraq.html

住民虐殺とクラスター爆弾の村  クルジア村
 
 「バリ、バリ、バリ、バリ、バババババババーン」アリ・フセイン・ムハンマッド(6)くんは母親と一緒に畦道の用水路に倒れ込んだ。顔面に何か熱いものを感じた。しかし、何が起こったのかわからなかった。手をつないでいた母親も腰を撃たれ動けなくなっていた。彼の記憶ではついさっき、自宅から西に向かって叔父、叔母、母親、いとこ、など近所の親戚と一緒に、総勢20人が一列になって畦道を逃げていたのだ。

 アリは暗闇の迫る用水路の中で次第に記憶も遠ざかっていった。気づくとあたりは真っ暗になっていた。 近くでうめき声が聞こえていた。ショックで何が起こったのかわからず、痛みを感じたか感じなかったのかさえ覚えていない。 翌日までその場でじっと隠れていた。「米軍ヘリはヤシの木をかすめるように飛んできた。米兵には女、子ども、年寄りだとすぐにわかったはずだ。なのに銃撃した。翌日明るくなるまで、誰も助けに行けなかった。付近には米軍がいるので、近づくことが出来なかった。奴らは動くものは何でも撃ってきたから」とヤシの林に隠れて事件を見守っていた住民は怒りを露わにした。


この村に展開していたイラク軍に対して米軍は多連想ロケット砲で発射するクラスター爆弾を大量に使った。いまだにクラスター爆弾の子爆弾が不発弾としてたくさん残っており、畑仕事中に爆発して犠牲者がでている。不発弾の大量に残っている畑に連れていってもらった。ヤシの林もクラスター爆弾があたって所々葉がへし折れている。案内してくれたヤシッルさん(19)はクラスター爆弾の危険を知らず拾い投げ、落ちたところで爆発し大けがをした。今も、破片が体に残っている。

 畑の畦道の草むらの中に直径4,5センチの灰色の円筒形の金属製筒が見つかった。先端には白いプラスティック製のリボンがついている。
 4月にバグダッドの住宅地で私が見たものとは一回り小さい。一度見つけると次々と見つかる。畑の中には半分埋まってしまったり、プラスティック製のリボンだけ地表にでているもの、土の中に埋まってしまっているものもある。

 米軍は戦争が終わってしばらくしてからこの村にやってきてクラスタ−爆弾の調査をした。しかし、不発弾の落ちている畑をビニールテープで囲い意味不明な張り紙をして帰ってしまった。その後何もしてくれない。

 住民たちは危険を承知で畑や住宅地に落ちているクラスター爆弾の子爆弾を拾い集めた。しかし、今も爆発による被害は続いている。たくさん落ちてる畑は耕作放棄せざるを得ないと嘆いていた
http://www.morizumi-pj.com/iraq/iraq5/07/iraq5-07.html


アメリカは、劣化ウランの人体毒性を知りぬいていた

1 1943年に、マンハッタン計画に携わっていたグローブス将軍に、3人の物理学者が、劣化ウランの特性をもとに、「知られずにこと撒くことができ、かつ防毒マスクでも防げない」劣化ウランを有用な兵器として用いるよう進言している。

2 1993年8月に米国エリックシンセキ将軍が作成した書面に、国防副長官が陸軍に対し、劣化ウラン弾の危険性・劣化ウラン兵器を扱う兵士への注意やケア・汚染された兵器のクリーンアップを指示したと明確に記載されている。

3 1994-5年に、国防総省劣化ウランプロジェクトの責任者であったダグ・ロッキー教授は、2と同じ目的のためにそのプロジェクトが結成されたが、「米兵への危険性を除去できないが故に2度と劣化ウランを使うな」との勧告を出し、劣化ウラン弾が爆発したときの危険性を知らせるビデオを造って提出したところ、無視されプロジェクトを解散させられたと証言している。

4 これまで、アメリカ政府は、公式には劣化ウラン弾の危険性を否定しているが、その陰でアメリカとイギリスの海軍はすでに劣化ウラン弾の使用を中止したという。


5 EU議会の付託によってつくられた第一線の科学者30名によるECRR(ヨーロッパ放射線リスク検討委員会)が、7年間の調査のうえ2003年1月に、長期・慢性的な内部被曝がもたらす影響の評価に、原爆のような短時間での急性の外部被曝の影響から機械的に推論する従来の方法論の欠陥を指摘し、1945年から89年までに核実験や原子力利用と事故がもたらした放射能汚染によって6500万人が死亡しているとし、低量放射能の人体への汚染の危険性が極めて高いことを明らかにした。続いて世界20カ国から200名が参加した2003年10月のハンブルグ国際会議において科学者が一致して出した声明では

「ウラン酸化物の微粒子による被爆がもたらす健康障害については動かし難い証拠が存在している」として、イラクなどでの被害実態が述べられている。

すなわち、従来は低レベル放射能が、人体への貫通力がないことを理由として一般にはその危険性が否定されてきたが、超微粒子の低レベル放射能がひとたび人体に入った際の体内での放射能リスクの高さはいまや、科学者の間で常識となっていると言える。

これは、茨城県のHPでも「α線を出す物質が体内に入りますと体内組織に大きな影響を与えるため危険度が大きくなります」と言っていることからも分かる。低量放射能の危険性を低く見ている2001年4月WHO報告は、現地調査をせずに出されているもので、現在では通用しない。

5 以上の通り、アメリカは(湾岸戦争時もそうであるが、)どんなに少なく見ても、アフガン・イラク戦争時は確実に人体毒性を知り抜いたうえで劣化ウランを使用した。

劣化ウランは違法な大量破壊兵器

アメリカは、広島・長崎―ベトナム枯葉剤に続き、三度、人体毒性を知りつつ、劣化ウラン弾=違法な大量破壊兵器を大量に使用した。03年12月のベトナムツアーで思わず「アメリカは人類の敵だ」と参加者が叫んだこともよく分かる。日本政府は、ベトナム戦争でも湾岸戦争・イラク戦争でも全面的にそのアメリカに隷従している。
http://www1.ocn.ne.jp/~mourima/uran.html

 

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コメント
 
01. 中川隆 2010年2月18日 23:20:16: 3bF/xW6Ehzs4I

湾岸危機を起こしたのはイラクだが、湾岸戦争を起こしたのはアメリカだということをぜひ憶えておいてもらいたい。その当時バグダットのアメリカ女性大使がサダム フセインに取り入り、「アメリカはイラクのあらゆる行動に関心を持たないだろう。」と告げたことが゛、すべての引き金だったのである。それまでアメリカはイラクに膨大な軍事兵器を輸出しており、宿敵イランに対峙させてきた。そのアメリカがフセインの行動に無関心を装うというお墨付きを与えた以上、「イラン・イラク戦争 1980〜88年」で抱えた膨大な借金を、豊かなクウェートを手に入れれば帳消しにできると考えるまで、時間はかからなかった。実は前々からそれを考えていたからこそアメリカはフセインに対し、クウェートへの侵略をやりやすくしたのが真相である。

 以前からイラクとクウェートは国境線の問題でもめていた。クウェート自体民主主義国家ではなく、王族がほとんどすべての富を支配する独裁国家である。アメリカが過敏に反応する民主主義国家圏への進攻ではない以上、アメリカ大使の言葉どおり、大目に見てくれるだろうと踏んだフセインは、自国の誇る陸軍の精鋭部隊をクウェート国境へと移動させたのである。1990年8月2日、湾岸危機が発生したが、アメリカのフセインに対する態度は豹変し、イラクを「世界の悪者」扱いにした上、フセインとの対話はあり得ないとまでつっぱねたのである。

 これで、フセインには自分とイラクを世界の恥さらし者にして軍を引くか、戦争を起こすかの二つの選択しかなくなってしまった。イラクは面子の上で戦争に踏み切るしかないと読んだ「シークレット・ガバメント」は、罠にかかったフセインに対し、ほくそえんだに違いない。この戦争で、「シークレット・ガバメント」は膨大な兵器収入を確保できるばかりか、戦争終結後の湾岸諸国に巻き起こる兵器購入の注文を手中にしたも同然だった。また、日本を含む自由諸国から膨大な援助金を取りたてて、産軍複合体の収益にまわすことができる。

 ここで言う軍産複合体とは、石油、報道、証券、通信、警察、NASA、FBI、CIA、NSAなどアメリカにおけるトップクラスの企業及び団体等のことであり、これらのほとんどが「シークレット・ガバメント」に関係している。特にNASAは表向き「アメリカ航空宇宙局」などと称しているが、「アメリカ軍航空宇宙局」の間違いである。他国の宇宙飛行士を乗せて表向き良いイメージをアピールしているが、そのなかでやっている実験などNASAがとっくに実験済みなのが現状である。それが、イラクに許された年間30万バーレルもの石油収入から、戦争賠償金を国連に支払わせ、そのほとんどを戦争によって荒稼ぎしたアメリカが、受け取っている。しかも禁輸解除停止案が廃案になっても、アメリカは損をしないしくみにもなっている。実にアメリカに都合のいい戦争だ。目下アメリカは、1998年頃を目標に再び湾岸で大戦争を起こす根回しを行っている最中である。

 これを作成している1998年2月、毎日のように関連のニュースがテレビでながれている。しかし「シークレット・ガバメント」は、禁輸措置で苦しむイラクの民間人を何とか救いたいという、善良な人々や運動、ボランティアの人たちの博愛的な行動でさえ平気で踏みにじってしまう。それすらも戦略として組み込んでいる。今アメリカはイラクに対して圧力をかけているが、今回大戦争を引き起こさせる国はイラクではない。おかしいと思われることだが、イラクは餌なのだ。その餌でなにを釣るのかというと、イスラムの雄といわれるペルシア、すなわちイランである。日本ではあまり話題にのぼらないが、アメリカによる全面禁輸措置の影響でインフレにもかかわらず着々と軍備を整えている。

http://elbaal.hp.infoseek.co.jp/naw-necro.htm

サダム・フセイン元大統領、イラク国民に「共存」の道促す
2006年12月28日 09:45更新

イラク元大統領サダム・フセイン被告は、イラク国民らに同じ兄弟同士として共存の道を摸索し、米軍などのイラク駐在多国籍軍に対しても、憎しみをもたないように促した。このメッセージは27日、インターネットサイトに掲載された。

元イラク大統領サダム・フセイン被告がバグダッドでの裁判中答弁している。2006年1月29日(AP通信)。
イラク最高裁判所はその前日26日にサダム・フセイン元大統領の死刑判決を支持し、30日以内に絞首刑を執行すると宣言した。

 サダム・フセイン元大統領の弁護人Issam Ghazzawi氏はヨルダンでのAP通信の取材に対し、インターネットサイトに27日掲載されたフセイン被告の声明は正真正銘の本人が綴ったものであると述べた。このメッセージは11月5日にイラク法廷にて、フセイン元大統領が1982年に148人のシーア派イスラム教徒を殺害を命令した件で死刑判決を言い渡された際に綴られたものであるという。

 フセイン元大統領は、メッセージの中で、イラク国民らに対し、憎しみの感情を捨てるように促し、

「憎しみは人の冷静さを失わせ、人を盲目にし、あらゆる選択肢を考慮する道を閉ざさせる。イラクを攻撃した他国民に対しても憎しみを持たないようにしてほしい」

と述べた。スンニ派とシーア派イスラム教徒との間で長らく生じている紛争に対しても、

「神があなたがたに愛と許し、共存の模範を示す能力を与えていることを忘れないように」

と共存の道を摸索するように促した。また自身がイラクのために命を捧げるとし、

「ここに、私は我が魂を神にささげる。もし神が望むならば、神は我が魂を殉教者の魂と共に天に導くであろう」

と述べた。

イラクでフセイン番組が開始- 2009.12.08 11:00

コメント(11) 先月27日は、イスラム教の宗教的祝日である犠牲祭(イード・アル・アドハー)の今年の初日にあたった。その日、イスラム圏では「サダム・フセイン」テレビチャンネルが放送開始されたという。

イラクのサダム・フセイン元大統領は06年に死刑判決を受け、そのわずか4日後に死刑が執行された。死刑執行日がその年の犠牲祭初日と重なったことで、当時は死刑自体への非難とともに、イラク国民やフセイン支持者の感情を逆なでしかねない執行日選びに世界中から疑問の声が上がっていた。それから約3年、今年の犠牲祭初日を迎えたイラクのテレビにフセイン氏が再び登場した。

「サダム・フセイン」チャンネルのトップと名乗るモハメド・ジャブーア氏はアメリカAP通信に対してこう語ったという。「フセイン氏が率いていたバース党からの資金援助は一切受けていない。チャンネルの視聴対象はフセイン氏統治時代を懐かしむアラブ諸国の人々だ」。しかし、チャンネルの資金源や発信地については固く口を閉ざしたそうだ。


22 + 2:国連な成しさん[age] /06/16 04:03 ID:???
フセイン拘束半年、裁判開始見通し立たず (部分)

 旧イラク情報機関幹部は「治安が絶望的に悪化する中で、フセイン復帰待望論が
高まっている。公開すれば、各地の支持者が暴動を起こすことは確実」と話す。
また、フセイン政権の支配政党バース党の元幹部は「フセインは米国や周辺国に
関する機密事項を多く知っており、米国なども結局、公開には反対するはず」と語る。
 今回のアラウィ首相の発言は、赤十字国際委員会が、フセインの訴追や釈放など
法的地位の明確化を求めた直後に出された。このバース党元幹部は「暫定政権が
主権移譲をアピールしようとしたのだろう。本音では裁判を先延ばししたいはず」と見る。
(読売新聞)[6月15日23時26分更新]

26:国連な成しさん[age] /06/20 00:46 ID:???
>>22
やっぱりあるんだ。フセイン待望論。
ネタじゃなくて。


27:国連な成しさん[age] /06/20 11:42 ID:???
フセイン政権時代に比べて、イラク人の生活は悪くなる一方だからな。
フセイン政権時代を懐かしむ奴が増えるのは当然。


28:国連な成しさん[age] /06/21 02:35 ID:???
戦争していないときは、平和だったもんな、イラク。
よくあれだけの国を治めていたもんだよ。
フセインとバース党は。



02. 中川隆 2010年2月18日 23:36:17: 3bF/xW6Ehzs4I

【4月8日 AFP】イラクでフセイン(Saddam Hussein)政権が崩壊した2003年4月9日から、まもなく丸5年が経過する。元大統領を支持するスンニ派の人々は、その最後の演説を今でも鮮明に覚えているという。

 演説は、政権崩壊直前にバグダッド(Baghdad)のスンニ派地区アダミヤ(Adhamiyah)にあるアブハニファ(Abu Hanifa)モスクの前で行われた。フセイン元大統領がピックアップトラックに乗って現れたとき、モスクではちょうど正午の礼拝が行われていた。「大統領が外にいるぞ」と誰かが叫び、皆が一斉に外に出た。

 200人の群衆を前に元大統領は「約束しよう、米国を打ち負かしたあとには輝かしい未来が待っている」と力強く演説した。そばには、次男クサイ(Qusay Hussein)氏、ボディガード1人、そしてスルタン・ハシム(Sultan Hashim al-Tai)元国防相が立っていた。クサイ氏は2003年7月、米軍に殺害された。ハシム元国防相は、1988年のクルド人大虐殺を指揮したとして死刑判決を受けている。

「あの演説は今でも映画のワンシーンのように思い出せる。サダムはわたしの血の中に生きている」と、元教師のアブ・リマ(Abu Rima)さん(65)は喉を詰まらせながら語った。「サダムを見たのは初めてではなかったが、わたしは彼のもとへ駆け寄り、握手を求め、胸や肩にキスをした。そばにいた女性に『お疲れのようですわ』と話しかけられたサダムは、『わたしは疲れを知らない人間だ。神のご加護によりイラクは勝利する』と答えた」

 別の男性は、「サダムはやつれていたが、カリスマ性は失っていなかった。あの演説には大いに興奮させられた。米国を負かしてやる!と祝砲を撃ちたくなったほどだ」と語った。

 この演説の数時間後、米軍戦車がモスク前の広場になだれ込んで元大統領の銅像を倒し、その頭部を群衆が踏みつけた。フセイン政権崩壊のシンボルとなった1シーンだ。

■サダムは今でも「英雄」

 先のアブ・リマさんは、フセイン元大統領は米国人に殺害された「殉教者」だと断言する。「米国が悪の同盟国どもと手を組まず、単独で攻撃を仕掛けてきたら、われわれが勝っただろう。米国に引き換え、サダムの勇気といったらなかった! 何しろ、米軍のヘリがサダムをとらえようと頭上を飛んでいる最中に演説を行ったんだ」

 元大統領が逃走する様子を目撃した人もいる。それによると、最後の演説を行った2003年4月9日の夜はアダミヤのモスクに潜伏。翌10日の朝6時に、アラブの民族服姿でボートに乗ってチグリス川(Tigris river)対岸のカジミヤ(Kadhimiyah)地区に渡り、行方をくらました。

 そして8か月後の同年12月13日、故郷ティクリート(Tikrit)近郊で身柄を拘束され、2006年12月30日、人道に対する罪で処刑された。

■「サダム時代は平和だった」

「昔のほうがよかった」というのが、アダミヤ地区の住民の口癖だ。「サダム時代には宗派間抗争などなかった。今ではシーア派武装組織と国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)から身を守るため、若者までが銃を持ち歩かねばならなくなった」

 同地区では現在、数百人規模のスンニ派元武装集団が米軍の支援も受け、自警団を組織している。

「この地区は最後まで米軍の支配を許さなかった場所。戦いは終わっていない。いつかはわれわれが勝つ」とアブ・リマさんは語った。(c)AFP/Jay Deshmukh
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2375119/2804508


AFP通信によると、26日に死刑判決が確定したイラク元大統領サダム・フセイン(69)は27日、獄中からイラク国民あてに、

「神が望むなら、私は真の殉教者に列せられることになろう」

との声明を発表した。

死刑を受け入れる用意ができていることを示したものだ。判決は年明けにも執行される見通しが強いことから、フセインの事実上の遺書となる可能性がある。

フセインは声明で、激化する宗派抗争などに言及、

「イラクの敵、侵略者、そしてペルシャ人が、あなたたちに憎悪のくさびを打ち込んだもの」

と断じ、米国やイランを激しく非難。その上で、

「信仰深き国民よ、私は別れを告げる。私の魂は神のもとへ向かう」

と述べ、最後は

「イラク万歳。イラク万歳。パレスチナ万歳。聖戦に万歳。神は偉大なり」

と結んだ。
http://blog.livedoor.jp/onisoku/archives/51377317.html

イスラム教シーア派住民148人を虐殺した「人道に対する罪」で死刑が執行されたわけだが、はたしてそれが良かったのか?

フセイン政権下では、教育と医療は無料。中東諸国のなかで進学率も高く、暮らしは豊かだった。閣僚にキリスト教信者を据えるなど、他のイスラム諸国よりもある意味政教分離が進んでいたのだ。

自由があるが、貧しく、死と隣り合わせの生活と、自由がないが豊かな生活。究極の選択だと思う。

「神は偉大なり。この国家は勝利するだろう。パレスチナはアラブのものだ」

彼の最後の言葉だ。
http://anarchist.seesaa.net/article/30632764.html


永遠の生を手に入れたサダム・フセイン 06年12月30日

レルネット主幹 三宅善信


▼明白な『ジュネーブ条約』違反

  2006年12月30日は、私にとって忘れられない日になってしまった。イラク共和国の前大統領サダム・フセイン(Saddam Hussein)氏が、マリキ政権が行ったでっち上げ裁判による不当判決の僅か四日後に処刑されてしまった。あまりの性急な展開に、ブッシュ政権は「イラク政府独自の判断だった」と責任回避の言い訳をしたが、一週間後に始まる合衆国の連邦議会を前に、イラク戦争で「良いところなし」のブッシュ政権を支援(貸しを作る)するためのマリキ政権のサービスであると言われてもいたしかたあるまい。「現場の宗教家」として、死ぬほど忙しい年末年始の時期ではあるが、いくら忙しくともまだ死んでいない私は、殺されたフセイン氏へのレクイエムの意味も込めて、ここは一筆啓上せざるを得ないだろう。


フセイン最期の日
今から三年前の2003年12月14日、バグダッド陥落後、国内を逃亡中のフセイン大統領を捕縛した(公表した)後、アメリカ政府はフセイン氏を「戦争捕虜である」という名目で、イラク国内某所の米軍基地内へと囲い込んだ。しかも、アメリカを中心とする「有志連合」(註:この戦争は、国連安保理のお墨付きを得ていない「私闘」である)と、イラク政府との間で、戦争の国際法的終結を意味する「講和条約」が結ばれていないということは、法的にはまだ「戦争状態」であるということである。それ故、米兵たちがイラク国内を勝手に彷徨(うろつ)き回って、捜査令状もなしにイラクの一般市民を逮捕したり、刃向かう者を射殺したりできるのである。まさに「戦時」だから通る理屈で、「平時」なら立派な犯罪行為だし、そもそもこのような案件は「警察マター」で、軍隊の出る幕ではない。

であるとしたら、フセイン氏に対して「死刑判決」を出しているマリキ政権に対して、自らが「保護(註:逮捕拘束という行為は、ある意味では捕虜・被告が私的な復讐の対象とならないように、公権力によって保護されている状態とも言える)」していたはずのフセイン氏を差し出す行為は、みすみす生命が脅かされることが明白な相手に「戦争捕虜」を差し出すことであり、戦時の捕虜の取り扱い方法を規定した『ジュネーブ条約』の精神に反している。仮に、戦勝国たるアメリカ軍がフセイン氏を「戦犯」という形で裁いて「死刑」判決を出した場合でも、『ジュネーブ条約』第101条にあるように、判決後6カ月以内は「執行」してはいけないことになっている。

にもかかわらず、21世紀入ってからブッシュ政権が行った2度の戦争はいずれも、捕虜の取り扱い方法については、キューバのグアンタナモ米軍基地内に裁判を受けることを許されずに数年間留置されて(当然、ジュネーブ条約の「違反行為」も行われている)いるアフガン戦争の捕虜や、イラクのアブグレイブ捕虜収容所(元刑務所)内での米軍関係者によるイラク人捕虜への拷問や虐待が問題視されているように、とてもとても「圧政国家の虐げられた人民を解放する」という表向きの大義名分とは別の原理で行われていることは明白である。私は、これまでにも、ブッシュ政権による2003年の3月イラク侵略戦争開戦以来、数多くの作品を発表して、問題提起を行ってきたが、ここではそれらの紹介だけに留めて、本日の結論を急ぐが、時間に余裕のある人は今一度読み直ししていただければ幸いである。

03年03月03日発表『桃太郎バグダッドへ征く』
03年03月23日発表『これがアメリカの常套手段だ』
03年04月04日発表『キムとサダムの神隠し』
03年03月03日発表『自由の代償としての文化破壊は許されるか』
03年11月24日発表『イラク派遣を前にシベリア出兵を検証せよ』
04年04月09日発表『アラブ百年の信頼をフイにしてはならない』
04年04月28日発表『フセインは偉大なり』
06年11月28日発表『イラク戦争解決の鍵はイスラエルにあり』

▼「都合の悪い過去」を葬りたいだけ


弁舌爽やかなサダム・フセイン“被告”
  今回の「死刑執行」に対しては、今後も各方面から多くの批判が巻き起こるだろうが、この報せを耳にして真っ先に思ったことは、「勝者が敗者を裁く」という60年前の「極東軍事裁判(東京裁判)」の図式から何らの進歩が見られないことが情けなかった。見方によっては、形だけでも各国から判事が審理に参加した東京裁判よりもさらに前近代的な「魔女裁判」並みの法廷劇であった。「この裁判を認めない」というフセイン氏の陳述が示すとおり、2005年10月19日に開始されたバグダッドでの特別法廷は、始めからフセイン氏を「罪人」に仕立て上げるために設定された実にお粗末なものであったが、その圧倒的に不利な状況下においてもフセイン氏は実に果敢に戦って、もし、裁判の中身が一言一句編集されずそのままテレビ中継されていたら、教養のある多くの人からは「フセイン勝利(=無罪)」と推定するに足りうる中身であったであろう。さすが長年一国を率いてきた指導者だと思った。

  それに引き替え、マリキ政権側が用意した判事たちは、いかにも狡猾そうな顔をした男たちであった。検事には大量の文書資料を持ち込むことを認めながら、法定内でメモを取る紙すら持つことが許されなかったフセイン氏は、手のひらをメモ代わりにして、相手の重要な科白を記録に留めるというパフォーマンスまでやってのけた。第一、独裁者として権力を恣(ほしいまま)にしていた頃と比べて、フセイン氏の顔は柔和かつ聡明な「ええ顔」に急激に変化していった。それと引き替え、ラムズフェルド前国防長官やブッシュ大統領、あるいはマリキ首相の顔は、いかにも品のない「悪人顔」である。


四面楚歌でもこの笑顔

フセイン氏を「人道に対する罪」を犯した犯罪人として裁くには、なんといっても、イラン・イラク戦争末期の1988年に、自国民であるクルド人を大量虐殺したこと(註:イランとの戦時下におけるフセイン政権への抵抗活動が、「利敵行為」と見なされて、クルド人数千人が化学兵器によって虐殺されたとされる事件)に対して裁くべきであろう。ところが、実は、イラン・イラク戦争中は「イラン憎し」で凝り固まるアメリカのレーガン政権が、フセイン政権に対して総額297億ドル(三千数百億円以上)にもおよぶ巨額の武器援助を行い、いわゆる「クルド人虐殺事件」に対しても、レーガン政権はこれを黙認した。

また、1983年12月19日には、レーガン大統領の特使としてドナルド・ラムズフェルド(ブッシュ政権の国防長官)がバグダッドを訪問して、フセイン大統領と90分間にもおよぶ「友好的な会談」を行なう。などと言ったアメリカにとっても「都合の悪い過去」の問題が白日の下に曝されることになり、それを恐れたブッシュ政権は、フセイン統治下のすべての悪業を処断することよりも、アメリカにとって関係のない「小さな事件」でフセイン氏を葬り去って、同時に、自らの「都合の悪い過去」も歴史の闇に葬ろうとした。

  もちろん、フセイン政権がイランやクエートに対して行った戦争は、犠牲者の数こそ多かった(註:対イラン戦争のイラク人犠牲者は30万人とも言われる)かも知れないが、これはことの善悪は別として、「主権国家対主権国家」間の“正統な戦争”であり、このことを裁いたら、アメリカをはじめ世界中のどの国も今後、「国権の発動」たる戦争ができなくなってしまうので、口をつぐむのは当然である。そこで、「フセインの悪政」の中では比較的“微罪”な、しかも、どの外国にも迷惑がかからない1982年にイラク中部のドゥジャイル村で起きたシーア派住民148人を殺害したとされる事件が俎上に乗せられた。

この事件は、ドゥジャイル村で起きたフセイン大統領の暗殺未遂事件への報復(註:アジアの伝統的社会では、支配者に楯突く「お尋ね者」と「義賊」と見なして、村挙げて匿うということはままある。だから、いつまで経ってもビン・ラディンも捕まらないのである)として、多くの村人が殺されたとされる事件である。しかし、本件に関する裁判では、公判期間中にもかかわらず、アブドルラフマン裁判長が「殺人者サダムは…」(本来なら「被告人サダムは…」と言うべき)と思わず口走ってしまったように、はじめから、フセイン氏を犯罪者に仕立て上げ、スケープゴート(生贄の山羊)しようと仕組まれた見え見えの三文芝居で、仮にも国民から選挙で選ばれた国家元首だった人物が屠られたのである。本件は、まさに「21世紀の人類史の汚点」として将来振り返られることになるであろう。


▼サダム・フセインは二度死ぬ

  実は、フセイン氏は、生涯に二度「死刑判決」を受けている。今回は、本当に執行されてしまったが、バース党(註:汎アラブの民族社会主義を標榜する世俗主義政党。シリアやイラクで長年政権を握る。イスラム原理主義とは激しく対立する)がイラクで政権を奪取するプロセスにおいて、一度「死刑判決」を受けている。エジプトのナセル革命に触発されて1957年にバース党に入党したフセイン氏は、1958年に王制(註:英国の傀儡と言われたハーシム王家=ヨルダンの王室と同流)を打倒して共和制を施行した軍人出身のアブドル・カセム政権の転覆を狙ったが失敗(1959年)。一度目の「死刑判決」を受けたが、なんとかエジプトに逃れることができた。この頃のフセイン氏の人生は、日本を舞台にあの丹波哲郎も出演した『007は二度死ぬ(007 You Only Live Twice)』ばりの活劇であったと言えよう。自国での難を逃れるためにエジプトへ一時退避して体勢を立て直すというストーリーは、あの預言者アブラハムやイエスと同じ構図である。よくよく考えてみれば、羊飼いの家に生まれたフセイン氏は、この世に生をうけた時には既に父親は他界していたし、ユダヤ・キリスト・イスラム教的世界においては、後々大化けする「劇的要因」はあったのかもしれない。

  若き日のフセイン氏は、ナセル治下のエジプトでは大いに触発されたことであろう。20世紀の前半の中東地域というのは、欧米列強の力を借りて数百年続いたオスマン帝国のくびきから解放されて各国が国民国家を樹立した時代であったが、それは同時に、欧米列強の搾取を受けることになる傀儡政権(ほとんどは王制)下での民族自決ということを意味した。これらの状況を最初に打破していった(註:スエズ運河の国有化を狙って英仏と戦った)のがナセル大統領であり、この時期、ナショナリズムの高揚したエジプトにおいて、フセイン氏は欧米列強とも対抗しうる汎アラブ民族主義思想を吸収していったに違いない。

  フセイン氏は、エジプトでの数年の滞在の後、1963年に故国イラクへと帰還した。しかし、その後も順調に権力の頂点に上り詰めて行ったのではない。ちょうど東京でアジアで初めてのオリンピックが開催されていた1964年10月に逮捕され、二年間の獄中生活の後、脱獄。1968年のバース党によるクーデターに参画し、国権の最高機関となった革命指導評議会(RCC)の副議長に就任した。その後、アフマド・アルバクル大統領の下で実力を身につけ、1973年には国軍最高司令官に就任。膨大な富をもたらす石油事業の国有化を断行。イラクナショナリズムの高揚と共に、国民から圧倒的な支持を集めた。そして、1979年、アルバクル大統領の引退を受けて、遂にイラク共和国大統領・RCC議長・バース党総裁職を三位一体で兼任するイラクの最高指導者の地位に就いたのである。

  確かに、フセイン氏は「独裁者」であったが、これは何も彼独自の「悪逆的な資質」から来たのではなく、この地域の政治的指導者は皆、程度の差はあれ「独裁者」であった(註:エジプトのナセル大統領とその後継者ムバラク大統領、リビアのカダフィ大佐、シリアのアサド大統領父子、サウジアラビアのサウド家の歴代国王、イランのパーレビ皇帝等)。というか、そうでなければ「治まらない」この地域の歴史的社会的事情によるものである。それどころか、欧米先進国と比べて“遅れた”地域である中東において、イスラム教を政治から切り離すという「世俗化」政策を推進することにより、女子教育の推進や女性の社会的権利確立に尽力した功績によって、ユニセフから表彰されているくらいである。


▼中東で最も欧米型に近かったフセイン政権

  しかも、イラク国民を、ユダヤ教やイスラム教の成立より遥か以前から栄えていた古代メソポタミア文明を継承した「世界に冠たる民族」として鼓舞し、ハンムラビ王(在位BC1792〜BC1750年:都市国家バビロンの王家に生まれ、強国のシュメールやアッカドを破り、メソポタミアを統一し、バビロニア王国の建国者となった。人類最古の成文法である『ハンムラビ法典』の制定者として有名)や、ネブカドネザル2世(在位BC605〜BC562年:新バビロニア王国第二代国王。アッシリア帝国やエジプトを破り、中東の覇者となる。BC597年にユダヤ王国を滅ぼし、国王はじめ遺臣たちを首都バビロンへ連れ去ったことは「バビロン捕囚」として歴史に名を留める)と並ぶ民族の英雄としてフセイン氏を特別の存在としていった。事実、共和国防衛隊(註:装備や志気の劣る徴兵制の国軍とは別に組織されたバース党員やフセイン氏と同郷のティクリート出身者からなる志願制のイラク最強部隊)には、イスラム教国には珍しく「ハンムラビ師団」(機械化歩兵師団)や「ネブカドネザル師団」(自動車化歩兵師団)といった「異教徒」風のネーミングがされていた。

  われわれ日本人も含めて、「政教分離」の原則が当然のこととなっているフランス革命に始まる西欧型近代国家(註:西欧型国家でも中世以前は政教一致型が一般的であった)に暮らす人々にとって、むしろ「政教一致」が当然のこととなっているイスラム型近代国家のあり方を理解することは容易ではない。もちろん、政教一致の中世期においては、西欧社会と比べてアラブ世界のほうが遥かに科学文明も社会制度も発達していたが、産業革命を経て近代国民国家が成立するプロセスにおいて、西欧(その延長であるアメリカも)社会は、キリスト教会の世俗権力への介入を排することによって政教分離の原則を確立し、その後の飛躍的な社会発展を遂げた。一方、中東のアラブ社会においては、政教分離の原則を確立できなかったばかりに、中世期のアドバンテージを一挙に失い、欧米列強の「草刈り場」と成り下がってしまったことは逃れようもない文明史的な事実である。

  オスマン帝国崩壊後のトルコは、政教分離を国是に据え、EU加盟(欧州の一部になること)を国家目標として長年取り組んできて、一定の成果を挙げている。同様に、社会を欧米化させることによって近代化を図ったイランは、隣国イラクでフセイン氏が大統領に就任した同じ1979年に、パーレビ皇帝を追放し、ホメイニ師率いるシーア派イスラム革命を実施し、イスラム原理主義国家の道を選んだ。もちろん、メッカとメディアのイスラム教二大聖地(あとの一箇所はエルサレム)の守護者を自認する独裁国家サウジアラビアの国境は、スンニ派の原理主義であるワッハビズムであり、その同じ流れの中にビン・ラディン氏がいる。

  スンニ派・シーア派を問わず、これらの政教一致の原理主義国家は、おそらくこれから50年はもたないであろう。世界において、影響力を与えることができる「しかるべき存在」として生き残るためには、ことの善し悪しは別として、いったんは、政教分離を制度保証した近代国民国家の段階を経ることなしにはあり得ないであろう。そして、フセイン大統領率いるイラク共和国は、四半世紀にわたってこのことを成し遂げようとした、中東地域では希有の存在であった。フセイン氏を処刑してしまった今日、国民国家としての求心力はなくなり、ムクタダ・サドル師率いるシーア派(マリキ首相もシーア派)とフセイン時代に権力の中枢にいたスンニ派との間において、際限ない闘争(完全に「内戦」化してしまっている)が続けられるであろう。もちろん、この結果は、当初ブッシュ政権がイラクにもたらそうとした「民主主義体制」でないことは言うまでもない。


▼殉教者フセイン

しかし、このように書いてくると、読者の皆さんの中には、「(日本の多くの政治家のように)フセイン氏は無信仰な人間であった」と勘違いする向きがあるかもしないが、それは大間違いである。彼自身は、敬虔なイスラム教徒であった。フセイン氏の偉いところは、彼自身の信仰心と国家の政治的運営を別のものとして捉えることができたことである。これは、大多数の国民がイスラム教徒の地域の国家にとって、大変難しいことである。なぜなら、イスラムという宗教(というよりは、社会システム)自身が、社会制度としてのイスラムを保証しないと成り立ちにくい宗教だからである。考えても見て欲しい。例えば、日本の社会において、「お祈りの時間が来たから」と言って、流れ作業の工場で、ある労働者が職場を離れるということは許されないであろう。また、ラマダーンで断食している人の隣の部屋では酒呑んで大宴会が行われているということも当然のことである。すなわち、宗教として占有率が高くならないと、その全たきシステムが作動しないからである。そういう宗教が支配的な地域において「政教分離」が実施できたのである。素晴らしい資質であると言えないだろうか。ひとつ例を挙げると、周辺のアラブ諸国や国内の熱心なイスラム教徒への配慮を示して、黒・白・赤の三色旗の中に「???? ????(allahu akbar=神は偉大なり)」とアラビア語で入れさせることによってバランスを取っている。


イラク国旗、中央の三つ星の間に
「神は偉大なり」と記されている


  フセイン氏自身のムスリムとしての信仰心は、その波瀾万丈の人生の最期の段階において証明された。絞首刑に処せられるその瞬間、フセイン氏は「アッラーの他に神はない。ムハンマドは神の預言者である」というイスラム教徒の信仰告白を唱えながら縊(くび)られたのである。しかも、若い頃からの汎アラブ主義の精神に則り、自らのいのちが尽きようとしているその瞬間にも、「弱者」であるパレスチナ人に対する連帯(「神(アッラー)は偉大なり。イラク国民は勝利する。パレスチナはアラブのものだ」)を呼びかけて…。百点満点である。人間今から絞首刑に処せられるというその絶体絶命の場面において、あれだけ毅然とした態度でおられたのは、サダム・フセインという人物が本物の傑物だからである。

  それに引き替え、マリキ政権の死刑執行人たちの下卑なこと…。しかも、あろうことか、イスラム教徒にとっては人生の一大事である聖地メッカ巡礼(ハッジ)の最終日に行われる「犠牲祭(イードゥル・アドハー)」の当日にフセイン氏への死刑を執行したのである。この犠牲祭の日には、たとえメッカに巡礼(註:サウジ政府が許可=ビザ発給している巡礼者数は百数十万人。全世界のイスラム教徒は十数億人)できなくても、世界中のイスラム教徒がその昔、「唯一神(ヤハウェ=アッラー)」の召し出しに応じて、メソポタミアの都市国家ウルから発って、エジプト経由で「約束の地」カナン(現在のパレスチナ地方)へと移住したユダヤ・キリスト・イスラム教共通の先祖と目されるアブラハム(アラビア語ではイブラヒーム)が、その「唯一神」への信仰の真っ直ぐさを証明するために、年老いてからやっと授かることのできた跡取り息子のイサク(アラビア語ではイスマイル)を惜しげもなく、生贄(いけにえ)に差し出そうとしたところ、唯一神はアブラハムの信仰心を祝して、息子の代わりに山羊を生贄として受け取ったという故事に基づく宗教行事である。この日一日だけで、何千万頭という山羊が全世界で屠(ほふ)られるので、山羊にとっては一大「受難の日」であるが…。

  こうして、あろうことか「犠牲祭」の日に、処刑されたフセイン氏の物語は、アラブ世界において、これから先百年以上にわたって伝承されていくことであろう。まさに、サダム・フセインをアラブの同胞を守るために“悪の帝国”であるアメリカという“異教徒”と戦って殉教した英雄として拡大再生産されてゆくのである。この日、イラクに派遣されているアメリカ軍兵士の犠牲者数が3,000人を超えた。この数は、「9.11米国中枢同時テロ」事件の犠牲者数よりも多い。読者の皆さんはこの事実をどのように解釈されるか…。最後に、フセイン氏の事実上の遺言となった11月5日付の獄中からの書簡の内容がBBCによって公表されているので、その邦訳を紹介しておく。あたかも12月30日の犠牲祭の日に、自らが処刑されることを知っていて、イエスのように、その刑死を、人々を救済するための「神への贖(あがな)い」と位置づけることを意図したようにも読める。イラクの人々に、否、アラブ全体の人々の心に百年先まで残る楔(くさび)を打ち込んだのである。ある意味、サダム・フセインは「永遠の生」を手に入れたとも言えよう。


(イラク国民の)皆さんは、あなたがたの兄弟であり指導者である彼(サダム・フセイン)が(獄に繋がれているにもかかわらず)意気軒昂であること、彼が暴君(ジョージ・W・ブッシュ)に屈服しなかったこと、そして彼を愛する者たち(イラク国民)の願い通りに剣と旗を掲げ続けたことを既に知っている。 このことはあなた方が兄弟・息子(イラクの同胞)に、あるいは指導者(フセイン)に求めたことであり、またあなた方の将来を導く者は同じ資質を備えるべきである。

  ここに私は自らの魂を生贄として神(アッラー)に捧げ、もし神が私の魂を殉教者たちとともに天国に送られるのなら、私はそれを喜んで受け入れるし、あるいは神がそれを延期されるのなら、私は神の意志に従うつもりだ。

  神は、あなた方が愛と許しと兄弟的な共存の体現者となるよう励まされてきたことを忘れてはならない。 私があなた方に「憎悪してはいけない」と呼びかけるのは、憎悪は人が公正であることを妨げ、あなた方を盲目にして思考する道を閉ざし、バランスのとれた思考と正しい選択をさせなくするからである。

  私はまた、あなた方に私たちを攻撃した諸国の国民を憎んではいけないと呼びかける。 政治的指導者(ブッシュ米国大統領やブレア英国首相等)とその国民(米国人や英国人等)を区別することが大切だ。 あなた方は、侵略国の国民の中にも侵略に反対してあなた方の戦いを支持する者が大勢いたこと、しかも、その中のある者はサダム・フセインを含む拘束者の法的弁護活動を志願までしてくれたことを心に留めておくべきである。

  誠実な国民の皆さん。 私はあなた方に別れを告げるが、私は慈悲深き神(アッラー)とともにあり、神は避難を求める人々を支援し、誠実で正直な信徒を決して裏切ることはない。

  神(アッラー)は偉大なり。 神は偉大なり。 イラク国民万歳。 戦い続ける偉大なる国民万歳。 イラク万歳、イラク万歳。 パレスチナ万歳。 聖戦と聖戦をたたかう戦士(ムジャヒディン)万歳。

イラク共和国大統領 サダム・フセイン


『賛美の生贄と祈り』 モーツアルト作曲『レクイエム』より

賛美の生贄と祈りを
 主よ、あなたに私たちは捧げます。
 彼らの魂のために
 お受け取りください。
 今日、私たちが追悼する
 その魂のために。
 主よ、彼らの魂を死から生へとお移しください。
 かつてあなたがアブラハムとその子孫に
 約束したように。

http://www.relnet.co.jp/relnet/brief/r12-219.htm


03. 中川隆 2010年2月20日 20:09:23: 3bF/xW6Ehzs4I

イラク戦争の背景

東北学院大学講師・世界キリスト協議会前中央委員
川端 純四郎

 ご紹介いたします。
 先生は1934年のお生まれです。東北大学文学部に学ばれ、博士課程を終えられてから、ドイツのマールブルグ大学に入学されました。帰国後、東北学院大学教員として35年間お勤めになりました。その後ひきつづき講師として、現在も勤務されています。一貫して平和、人権、政治改革の活動に積極的に関わっておいでになりました。
 「9条の会」の講師団メンバーとしても、全国を股にかけて講演なさっており、昨年は1年間で80回以上の講演会を開いておられます。
 先生は今朝8時前に仙台を発ち、はるばる鋸南町においで下さいました。今日の講師としてほんとうにふさわしく、よいお話をうかがえると思います。早速、先生からお話をうかがいたいと思います。 先生、どうぞよろしくお願いいいたします。
                                        安藤

 みなさん、こんにちは。 安房郡の水清き鋸南町に伺って、こうしてお話できることをありがたいと思っています。初めておうかがいしました。木更津まで来たことはあるのですが、今日、電車で君津を過ぎたらとたんに山が美しくなり、あそこまでは東京郊外のなんとまあみっともない風景でしたけれど、あそこから南に来ると一気にほんとうに昔のよき日本の風景がよみがえってくるようでした。ほんとうに嬉しく思いました。

 いま、「さとうきび畑」の朗読と、合唱団のコーラスをお聞きしたのですが、どちらも聞いていて涙が出ました。
 私は、戦争に負けた時小学校6年生でした。仙台で敗戦を迎えましたが、仙台も空襲で全滅いたしました。街の真ん中にいましたから、もちろんわが家も丸焼けでした。忘れられない思い出があります。街の真ん中の小学校でしたから、同級生が一晩で8人焼け死にました。隣の家の、6年間毎日いっしょに学校へ適っていた一番仲の良かった友達も、直撃弾で死にました。今でも時々思い出します。
 今このような歌を聞くと、どうしてもその人のことを思い出します。思い出す私の方はもう70になりますが、記憶に出てくるその三浦君という友達は、小学校6年生のまま出てきます。どうして小学校6年で人生を終わらなければいけなかったのか、生きていてくれたらいろんな事があったのに、と思います。戦争なんて二度としてはいけない、というのが一貫した私の願いです。
 私は牧師の家に生まれました。父はキリスト教の牧師で、教会で生まれ教会で育って、讃美歌が子守歌でした。牧師の中には戦争に反対した立派な牧師さんもおられたのですが、私の父のような多くの普通の牧師は、政治や社会に無関心で魂の救いということしか考えていませんでした。で、私もその親父に育てられましたから、大学を出、大学院に入って博士課程までいって、ずっとキルケゴールや実存哲学という、魂だけ見つめているような学問をやっていて、政治とか経済、社会とかは25歳までいっさい関心がありませんでした。

 25歳の時チャンスがあって、ドイツ政府の招待留学生となってドイツヘ勉強に行くことになりました。1960年のことでした。1960年にドイツへ行ったというだけで、どんなにノンポリだったか分かります。安保改訂問題で日本中が大騒ぎの時、それを尻目に悠々とドイツ留学に行ったのです。幸か不幸かまだ世界は貧しくて、飛行機などというものは贅沢な乗り物で、まだジェット旅客機機はありませんでした。プロペラ機でヨーロッパヘ行くには途中で何遍も何遍も着地し、給油して、今のようにノンストップでシベリヤを越えて、などというのは夢のような話でした。しかもベラ棒に高いのです。船の方があの頃はずっと安かったのです。特に貨物船に乗せてもらうと飛行機よりずっと安いのです。そこで一番安いのを探して、5人だけ客を乗せるという貨物船をみつけました。

 その船で神戸を出航し、インド洋からスエズ運河をぬけ、地中海を渡ってイタリアのジェノバに上陸。そこから煙を吐く蒸気機関車でアルプスを越えて、ドイツのマールブルクという町に着きました。
 実は、飛行機をやめて船で行ったということが、私の人生を大きく変えることになりました。あの時もし飛行機で行ったなら、私は一生、世間知らずの大学に閉じこもって勉強だけしている人間で終わった、と思います。

 ところが船で行ったおかげで、しかも貨物船に乗ったおかげで、私は途中のアジア・インド・アラブの国々をくわしく見ることができました。まっすぐ行けば船でも二週間で行くそうですが、何しろ貨物船ですから、途中港、港に寄って荷物を下ろし、また積んで、一つの港に4日から5日泊まっているのです。おかげでその間、昼間は上陸してそのあたりを見て歩き、夜は船に帰って寝ればいいのですから、東南アジアからアラブ諸国をくまなく見て歩きました。
 1ヵ月かかりました。神戸からジェノバまでのこの船旅。その時見たものが、私の人生を変えたのです。何を見たかはお解りですね。アジアの飢えと貧困という厳しい現実にぶつかったのです。

 降りる港、港で、ほんとうに骨と皮とに痩せせこけた、裸足でボロボロの服を着た子供達が、行く港も行く港、集まって来るのです。船の事務長さんに、「可哀想だが、何もやっては駄目だよ。1人にやると収拾がつかなくなるよ」と言われていました。だから心を鬼にして払いのけて通り過ぎるのですが、その払いのけて通り抜ける時に触った子供の肩、肉などなんにもない、ただ骨と皮だけのあの肩、あの感触が、今でも時々蘇ってきます。
 船に帰って、眠れないのです。明日も、あの子供たちに会う。どうするか。私が考えたことは、「神様を信じなさい。そうすれば救われます」と言えるか、ということでした。
どんなに考えたって、言えるわけがありません。飢えて捨てられた孤児たちに、こちらは着るものを看て、食うものを食っておいて、「神様を信じなさい、そうすれば救われます」などとは、口が裂けても言えないと思いました。牧師館で生まれて、キリスト教しか知らずに育って、キリスト教の学問をして来て、それではお前キリスト教って何なのか、25年お前が信じてきたキリスト教とは、飢えた子供たちに言えないようなキリスト教なのか。とれが私の考えたことでした。
 もし言えるとしたら、ただ一つしかない。そこで船を降りて、服を脱いで、子供たちに分けてやって、食っているものを分けてやって、そこで一緒に暮らす、それなら言える。言えるとしたら、それしかありません。言えるじゃないか、と自分に言い聞かせました。

 それなら、船を降りるか──。くやしいけど、降りる勇気がありませんでした。折角これからドイツヘ勉強に行くという時、ここで降りて、一生インドで暮らすのか、一生アジアで暮らすのか、どうしてもその気にならないのです。
 ですから理屈をこねました。
 「降りたって無駄だ。お前が降りて背広一着脱いだって、何百人人もいる乞食の子に、ほんの布切れ一切れしかゆきわたらないではないか。自分の食うものを分けてやったって、何百人もの子供が1秒だって、ひもじさを満たされる訳がないじゃないか。お前が降りたって無駄だ。それは降りたという自己満足だけで、客観的にはあの子らはなんにも救われない。」
 「だから降りない、勇気がないのではなく、無駄だから降りない。」と自分に言い聞かせるのです。でも、降りなければ「神様を信じなさい」とは言えません。言えるためには降りなければならない、しかし降りても無駄なのだ。
 堂々巡りです。寄る港、寄る港でこの間題に直面しました。毎晩毎晩同じ問題を考え続けて、結局、答えが見つからないまま、閑々として港を後にしました。、出港の時、あの子たちを見捨て自分だけドイツへ行くことに、強い痛みを感じました。これは永く私の心の傷になって残りました。
 このようにして初めて、世の中には飢えた仲間がいるという、当然分かっていなくてはいけない事実に、何ということでしょう、25にもなってやっと気づいたのです。飢えた子供たちがいる、それを知らんぷりしてドイツに行くのか、お前が降りてあの子たちと一緒に暮らすことはあまり意味ないかも知れない、しかしやっぱり船を降りないのだとしたら、せめて世の中に飢えた子供なんか生まれないような社会を作るために、自分で何かしなければいけないのではないか。ただ魂の中だけに閉じこもっていていいのか。
 これが、私がヨーロッパヘ行く1ヵ月の旅で考えたことでした。

 ドイツヘ行って、宗教の勉強をしました。ブルトマンというドイツの大変偉い先生の所に1年いて、いろいろ教わりましたが、結局、私の結論としては、実存哲学だけではだめだということでした。自分が自分に誠実に生きる──これが実存的、ということですが、それだけでは駄目だ。自分が生きるだけでなく、みんなが人間らしく生ることができるような世の中になるために、自分にできる何か小さなことでもしなければいけない。
 こう思うようになって、日本に帰ってきたのです。

 それじゃあ、世の中で、そのように飢えて死ぬような子がいなくなるような社会とは、どうすれば出来るのか。これはやっぱり、飢え、貧困、戦争、差別、そういうものが生まれる原因が分からなければ、除きようがありません。原因を勉強しなければいけない。そのためには社会科学を勉強しなければいけない。特に経済学を勉強しなければいけない──。
 ドイツヘの留学は、大学院の途中で行きましたので、帰国して大学院に復学しました。幸い東北大学は総合大学ですから、中庭をへだてて向こう側が経済学部でした。帰ってきた次の日から、私は、経済学部の講義を経済原論から、授業料を払わずにもぐりで、後ろの方にそっと隠れてずっと聞きました。

 それからもう45年になりますが、ずっと宗教哲学と経済学と2股かけて勉強してきています。今日も、多少経済の話を申し上げるわけですが、やっぱり自分がクリスチャンとして、今もクリスチャンであり続けていますが、同時に、自分の救いということだけ考えていたのでは申し訳ないと思うのです。現実に飢えて死ぬ子がいるのです。ユネスコの統計によると、毎日2万人の子が栄養不足で死んでいるそういう世の中、このままにしておくわけにはいかない、自分でできることは本当に小さいけど、その小さなことをやらなかったら、生きていることにならない──。そう思って45年過ごしてきたわけです。

 キリスト教の中でずっと生きていますので、一般の日本の人よりは外国に出る機会が多いと思います。特に世界キリスト教協議会という全世界のキリスト教の集まりがあります。その中央委員をしていましたので、毎年1回中央委員会に出かけて、1週間か2週間会議に参加しました。世界中のキリスト教の代表者と一つのホテルに缶詰になり、朝から晩までいろいろと情報交換したり論議したりします。そのようなことを7年間やりましたので、世界のことを知るチャンスが多かったと思います。それを辞めてからも、自分の仕事や勉強の都合で、今でも毎年二週間ぐらいはドイツで暮らしています。そうしていると、日本ってほんとうに不思議な国だということが分かってきました。

 日本にいるとなかなか分からないのです。島国ですし、おまけに日本語という特別な言葉を使っています。他の国との共通性がない言葉です。ヨーロッパの言葉はみんな親戚のようなものですから、ちょっと勉強するとすぐ分かります。一つの言葉の、ドイツ弁とフランス弁、ベルギー弁、オランダ弁というようなものです。日本で言えば津軽弁と薩摩弁の違い程度のものです。津軽と薩摩では、お互いに全然通じないとは思いますが、それでも同じ日本語なのです。ヨーロッパの言葉とはそういうものです。ですからお互いに何と無く外国語が理解できるというのは、別に不思議なことではないのですね。ですから、自分の国のことしか知らないという人は、非常に少ないのです。
 新聞も、駅に行けばどんな町でも、ヨーロッパ中の新聞が置いてあります。ドイツのどんな田舎町へ行っても、駅にいけばフランスの新聞もイタリアの新聞も売っていますし、それを読める人がたくさんいるのです。そういう社会ですから、日本人とはずいぶん違います。自分の国を客観的に見られる。他の国と比べて見ることができるのです。

 日本にいると比べられません。そのうえ、日本はマスコミが異常です。ワンパターンのニュースしか流しません。ヨーロッパではいろんなテレビがあって、テレビごとに自由な報道をやっています。バラエティー番組のようなものがなくて、ニューハ番組が充実しています。きちんとした議論をテレビでやっています。ですから日本にいるよりは、比較的自分の国の様子を客観的に見られることになります。ドイツに行く度に、日本とは不思議な国だなあと思うのです。

 例えば、もうだいぶ前、バブルの頃です。日本のある有名なモード会社がミラノに支店を出しました。そしてマーケティング調査をしました。どんな柄が流行っているか、アンケートを集めそれを整理するために、イタリア人女性3人雇ったそうです。アンケートの整理をしていたら5時になりました。あと少ししか残っていなかったので、日本ならの常識ですから、「あと少しだからやってしまおう」と日本人支店長は声をかけました。ところがイタリア人女性3人は、すっと立って「5時ですから帰ります」と言って出て行こうとしました。思わず日本人支店長は怒鳴ったのだそうです。「たったこれだけだからやってしまえ」と。途端にこの日本人支店長は訴えられました。そして「労働者の意志に反する労働を強制した」ということで、即決裁判で数万円の罰金をとられました。

 これがヨーロッパの常識です。つまり9時から5時までしか契約していないからです。5時以後は命令する権利はないのです。9時から5時までの時間を労働者は売ったんであって、5時以降は売っていないのですから、自分のものなんです。会社が使う権利はありません。当たり前の話です。
 その当たり前の話が日本では当たり前ではないのです。残業、課長に言われたので黙ってやる。しかもこの頃は「タダ残業」ですからネ。本当にひどい話です。常識がまるで違うのです。あるいは有給休暇。ドイツのサラリーマンは年間3週間とらねば「ならない」のです。3週間休まなければ罰せられます。日本は有給休暇など殆どとれません。ドイツでは取らないと罰せられます。ですからどんな労働者でも3週間、夏はちゃんと休んで、家族ぐるみイタリアへ行ってゆっくり過ごしてきます。有給になっているからです。或いは日本では1週間40時間労働です。ドイツはもう随分前から36時間です。土日出勤などありえない話で、日本のように表向き40時間労働でも、毎日毎日残業で、その上休日出勤、日曜日には接待ゴルフなど馬鹿なことをやっています。接待ゴルフなど、ドイツには絶対ありません。日曜日は各自が自由に使う時間で、会社が使う権利はないのです。
 そういうところもまるで常識が違います。或いは、50人以上だったと思うのですが、50人以上従業員がいる会社、工場は必ず、労働組合代表が経営会議に参加しなければいけないことになっています。そんなことも、日本では考えられないことです。ですから配置転換とかもとても難しいし、労働者の代表が入っているから、簡単に首は切れません。

 そういういろんな面で、日本の外に出てみるとびっくりするようなことが山ほどあります。日本という国は、高度に発達した資本主義国の中で例外的な国なのです。資本主義が発達した点では、アメリカにもフランスにもドイツにも負けないのですが、資本主義が発達したにしては、労働者が守られていない。或いは市民の権利が守られていない。会社の権利ばかりドンドンドンドン大きくなっているのです。それが日本にいると当たり前のように思われています。外国で暮らしていると、日本は不思議な国だと分かります。特にこの数年それがひどくなってきているのではないでしょうか。
 私たちの暮らしは、戦後50何年かけて、少しずつよくなってきました。例えば年金なんかも少しずつ整備されてきた。健康保険制度も整備されてきた。介護保険も生まれてきた。或いは、労働者も土曜日チャンと休めるようになってきた。ところがこの数年、それが逆に悪くなつてきています。年金は削られる一方、介護保険料は値上がりする、労働者は首切り自由でいくらでも解雇できる。労働者を減らすと政府から奨励金が出る。タダ残業はもう当たり前・・・。

 特にこの数年、構造改革という名前で、日本の仕組みが変わってきています。いま申し上げたように、戦後50年かけてみんなで、少しずつ少しずつ作ってきた、いわば生活の安心と安全を守る仕組み、そういうものが今はっきり壊されかかっているのではないでしょうか。
 小泉首相という人は「自民党をぶっ壊す」といって当選したのですが、この4年間を見ていると、あの人は自民党を壊したのではなく「日本を壊した」のではないかと思われます。これまで日本が戦後50年かけて作ってきた社会の仕組みが、バラバラにされているのです。フリーターとかニートがもう30%でしょう。そうなると当然、この人たちは生きる希望がありません。お先真っ暗。いまさえよければ、ということになる。ですから若者が当然刹那的になる。人生の計画なんて立たない。今さえよければということになっていきます。
 昔なら10年に1回あるかないかのような犯罪が、いま毎日のように起きています。私は仙台にいますが、この正月には赤ん坊の誘拐事件で一躍有名になってしまいました。あんなことが日常茶飯事として起こっています。栃木県で女の子が山の中で殺された事件は、まだ解決されていませんが、こんな事件が今は「当たり前」なのです。世の中がすさんできて、何が善で何が悪なのか、みんなに共通な物差しというものがなくなったというふうに思われます。
 そのような世の中の変化、私は多分、「構造改革」というものがその犯人なのだ、と思っています。

《逆戻りの原因はアメリカの変化》

 その構造改革というのは、どこから来たのか。もちろんアメリカから来たのです。アメリカが変化した、日本はそのアメリカに右ならえをした、それが構造改革です。

 それでは何が変わったのか、これが一番の問題です。この変化の行き着くところが、憲法改悪です。
 社会の仕組み全体がいま変わろうとしているのです。憲法も含めて。いったい何がどう変わるのか。いったいどういう構造をどういう構造に変えるということが構造改革なのか。そこのところがアメリカを見ればよく分かってきます。アメリカがお手本なのですから。

 アメリカはソ連崩壊後変わりました。ソ連とか東ドイツは自由のないいやな国でした。昔1960年に西ドイツヘ留学した折、東ドイツへ何回か行く機会がありました。ふつうはなかなか行けないのですが、幸いキリスト教国なので、ドイツのキリスト教はしっかりしていまして、東ドイツと西ドイツに分裂しても、教会は分裂しなかったのです。東西教会一つのまんまです。ですから、教会の年1回の大会には、西で開く時は東の代表がちゃんと来たし、東で開く時は西の代表が行けたのです。ですから一般の人の東西の往来が難しかった時でも、キリスト教の人だけはかなり自由に行き来ができました。
 私も連れていってもらって、何回か東ドイツへ行って見ました。ご存じのように自由のないいやな国でした。ですからソ連や東ドイツが崩壊したのは当然だし、いいことだと思います。しかしソ連や東ドイツが100%悪かったかというとそんなことはありません。良い部分もありました。何から何まで全部ひっくるめて悪だったというのも間違いです。基本的に自由がない。ですから、ああいう国は長くは続かない。これは当然そうだと思います。滅びたのは当然だと私は思います。

 しかし同時に、良い面はなくしては困るのです。良い面は受け継がなければいけません。最も目につくのは女性の地位でした。これは立派なものでした。いまの日本なんかより遥かに進んでいました。男女の平等が徹底的に保障されていました。専業主婦などほとんど見たことがありません。だれでも自由に外に出て、能力に応じて働いていました。それができるような保障が社会にあるのです。文字通りポストの数ほど保育所があって、子供を預け安心して働きに出られるようになっていました。同一労働同一貸金の原則はきちんと守られていて、女性だから賃金が低い、女性だからお茶汲みだけなどというようなことは一切ありませんでした。これは凄いなと思いました。あれは、日本はまだまだ見習わなければいけないことです。
 もう一つ私がびっくりしたのは、社会保障です。私が初めて東の世界を見たのは、何しろ1960年の頃のことです。日本はまだ社会保障がない時代でした。いま若い方は、社会保障はあるのが当たり前と思っておられる方も多いと思いますが、そんなことはないのです。日本は1972年が「福祉元年」といわれた年です。それまでは、福祉はなかったのです。大企業とか公務員だけは恩給がありましたが、商店の経営者とか家庭の主婦なんか何もありませんでした。健康保険も年金も何もありませんでした。72年からようやく国民皆年金、国民皆保険という仕組みが育ってきたのです。

 もともと資本主義という仕組みには、社会保障という考えは無いのです。自由競争が原則ですから、自己責任が原則です。老後が心配なら、自分で貯めておきなさい。能力がなくて貯められなかったら自業自得でしょうがない。こういうのが資本主義の考え方です。労働者が、そんなことはない、我々だって人間だ、人間らしく生きていく権利がある。だから我々の老後をちゃんと保障しろと闘って、社会保障というものが生まれてくるのです。自然に生まれたのではありません。
 労働者が団結して闘って、止むを得ず譲歩して社会保障が生まれてくるのです。資本主義の世界で最初の社会保障を行ったのはビスマルクという人です。ドイツの傑物の大首相といわれた人です。ドイツの土台を作った人ですが、この首相の頃、何しろマルクス、エンゲルスの生まれた故郷ですから、強大な共産党があり、国会で100議席くらいもっていました。そこで、ビスマルクが大弾圧をやるのです。社会主義取り締まり法という法律を作って共産党の大弾圧をし、片方では飴として労働者保険法という法律で、労働者に年金を作ります。世界で初めてです。辞めた後年金がもらえる仕組み、病気になったら安く治してもらえる仕組みを作った。こうやって鞭と飴で労働運動を抑えこんでいったのです。

 社会保障というのは、そうやって労働者の力に押されてやむを得ず、譲歩として生まれてくるのです。放っておいて自然に生まれてくるものではありません。
 そこへ拍車をかけたのが、ソ連や東ドイツです。ソ連や東ドイツヘいってみて、1960年の時点なのですから、日本にまだ社会保障などなかった時、そう豊かではなかったのですけれども、老後みながきちんと年金をだれでも貰える、そして、病気になればだれでも、医者に行って診察を受けて治療を受けられる。これにはほんとうに驚きました。これが社会主義というものかと、その時は思いました。ただ自由がないのです。例えば、牧師さんの家に泊めてもらうと、こちらがキリスト教徒ということが分かっていますから、牧師さんも信用して内緒話をしてくれるわけです。外国から来る手紙はみな開封されていると言っていました。政府が検閲して開封されてくる。だから、「日本へ帰って手紙をくれる時は、気をつけて書いてください。政府の悪口など書かれると私の立場が悪くなるから。手紙書くときは開封されることを頭に入れて書いてくれ。」というふうに言われました。こんな国には住みたくないなと思いましたけれど、同時に社会保障という点では驚きました。こういうことが可能な社会の仕組みというのがあるんだなあ、とこう思ったのです。

 その後、スターリン主義というものによって目茶苦茶にされていくのですが、私の行った頃はまだ、東側の社会保障がある程度きちっと生きていた時代です。こうして、ソ連や東ドイツが社会保障というものを始めると、資本主義の国もやらざるをえなくなってきます。そうでないと労働者が、あっちの方がいいと逃げ出してしまいます。ですから西ドイツが一番困りました。地続きですから、何しろ。ですから、東に負けないだけの社会保障をしなければならなかったのです。そうすると、自由があって社会保障があるのですから、こっちの方がいいということになります。いくら向こうは社会保障があっても自由がないのです。こうして西ドイツは大変な犠牲を払って、社会保障先進国になってきました。そのことによって、東ドイツに勝ったのです。
 実際西ドイツの労働者は、別に強制されたわけではありません。自主的に西ドイツを選んだのです。ですからあのような東西ドイツの統一も生まれてきたのです。

 つまり資本主義の国は、ひとつは自分の国の労働者の闘いに押されて。そこへもってきて、ソ連、東ドイツの社会保障という仕組みの外圧で、それに負けるわけにいかないものですから、そういう力があって、社会保障というものを造り出していくのです。しかし社会保障というものは莫大な財源がかかります。

《社会保障をやめて小さな政府へ──構造改革の中身(1)》

 いま日本政府は社会保障をどんどん削っていますけど、それでも国家予算の中で一番多い費目は社会保障です。大変な財源が必要なのです。そこで資本主義の国は、新しい財源を見つける必要ができてきます。
 そこで見つけたのが2つ。1つは累進課税です。それまでの資本主義にはなかった、累進課税という新しい仕組みです。つまり収入の多い人ほど税率が高くなるという仕組みです。日本でも1番高い時は1980年代、1番大金持ちはの税率75%でした。ですから、年収10億あれば7億絵5千万円税金にとられたのです。今から考えれば良く取ったものです。今は35%です。大金持ちは今ほんとうに楽なのです。35%ですむのですから。年収10億の人は3億5千万払えばいいのです。昔なら7億5千万取られたのです、税金で。「あんまり取りすぎではないか、これは俺の甲斐性で俺が稼いだ金。それを取り上げて怠け者のために配るのか。」と彼らはいいました。
 そうすると政府は、「いやそういわないでくれ。そうしないと、資本主義という仕組みがもたない。だから体制維持費だと思って出してくれ。そうでないと社会主義に負けてしまう」と言って、大金持ちからたくさん取ったのです。大企業も儲かっている会社からたくさん税金取った。法人税もずっと高かったのです、以前は。こうやって大金持ち、大企業からたくさん取る累進課税で一つ財源を作ったのです。

 もうひとつは、企業負担です。サラリーマンの方はすぐお分かりですが、給料から社会保障で差し引かれますね。そうすると、差し引かれた分と同額だけ会社が上乗せするわけです。自分が積み立てたものが戻ってくるだけなら、貯金したのと同じです。労働者の負担する社会保障費と同額だけ会社も負担しているのです。倍になって戻ってくるから、社会保障が成り立つわけです。
 これも資本主義の原則からいえば、おかしいことです。いまいる労働者の面倒を見るのは当たり前です。会社は労働者がいるから成り立っているのですから。だけど、辞めてからは関係ないはずです。契約関係がないのですから。辞めた人が飢え死にしようがのたれ死にしょうが、会社の責任ではないはずです。
 だけども一歩ふみこんで、それでは資本主義の仕組みがもたないから、労働者が辞めた後まで面倒みてくれ、そこまで企業負担してくれ、そうしないと資本主義がもたないから、ということになります。

 こうやって、社会保障というものが資本主義の国で成り立っているのです。これは、ただの資本主義ではありません。資本主義の原則に反するような累進課税とか、企業負担というものを持ち込んで、社会主義のよいところを取り入れた資本主義です。これを「修正資本主義」と呼びました。
 資本主義の欠点を修正して、社会主義に負けないようないい仕組みに造り直した資本主義ということです。学者によっては、資本主義の経済の仕組みと社会主義経済を混ぜ合わせた「混合経済」と呼ぶ人もいます。所得再配分機能を政府が果たすということです。もちろん修正資本主義というものは、このような良い面だけではなくて、公共事業という名前で国民の税金を大企業の利益のために大々的に流用するというようなマイナスの面もあることも忘れてはなりません。
 しかし、ともかくこうやって、西側の世界は、自由があって社会保障がある、そういう社会に変わっていくのです。そのことで東に勝ったのです。ところが、そのソ連と東ドイツが居なくなったのです。

 その前にもうひとつ。先進資本主義国というのは或る一種の傾向として、労働者が闘わなくなってきます。これは先進資本主義国の宿命のようなものです。つまり資本主義国というのはご存じのように、地球上の大部分を占めている低開発諸国、貧しい第3世界といわれた世界から、安い原料を買ってきてそれを製品にして高く売っています。そして差額、莫大な差額を儲けている。超過利潤と呼ばれています。だから遅れた国は働けば働くはど貧しくなるのです。一生懸命働いてコーヒー豆作っても、それを安く買われてチョコレートやインスタントコーヒーなどの製品を高く買わされるのですから、結局差額だけ損をすることになります。
 この20年、先進国と遅れた国の格差は開く一方、全然縮まらない。地球上の富を先進国が全部集めちゃって、とびきりぜいたくな生活をやっています。ですから先進国の労働者にも、当然そのおこぼれの分け前に預かるので、低開発国の労働者にくらべれば、ずっと豊かになります。豊かにれば闘わなくなってしまいます。その上、それを推し進めるようなありとあらゆる謀策が講じられているのです。

 資本主義というのは、物を売り続けなければなりたたちません。売ったものをいつまでも使われていたのでは、資本主義は成り立たないのです。早く買い換えてもらわなければなりません。いま、日本の車はよく出来ているので、30年は楽に乗れるのに、30年乗られたら日本の自動車会社はみな潰れます。3年か5年で買換えてもらわなれりばいけません。買い替えてもらうには、自分の車は古いと思ってもらう必要があります。ですからコマーシャルで、朝から晩まで何回も、「あんたは古い、あんたは古い。こんないい車ができてます。こんな新しい車が出ましたよ。もっといいのが出ましたよ」と宣伝して洗脳しいるのです。だから3年も乗ると、どうしても買換えざるをえない心境に引き込まれてしまいます。全てのものがそうです。まだまだ使えるのに新しいものに換えてしまう。そういう仕組みができているのです。
 そうしないと、資本主義はもちません。ですから労働者はどうなるかというと、「次、この車に買換えよう、次、パソコンこっちに買換えよう、次、今度はデジタルテレビに買換えよう、じゃあセカンドハウス、つぎは海外旅行・・・」。無限に欲望を刺激され、自分の欲望を満たす方に夢中になって、社会正義とか人権とか考えている暇がなくなっていくのです。

 いま日本の大部分がそうですね。「もっといい生活を」ということだけ考えています。ほかの人の人権だの社会正義なんて見向きもしない。見事に資本の誘惑にひっかかってしまいます。
 もちろん、欲しいからって、お金がなければ買えません。家がほしい、車がほしい、パソコンほしい・・・。それが、実はお金がなくても買える、なんとも不思議な世の中です。ローンというものがあるのですね。

 フォードという人が見つけたのです。それまでは、「つけ」で何か買うなどということは、労働者にはありませんでした。労働者が「つけ」で買ったのはお酒だけです。酒飲みはお金がなくても飲みたいのです。だから酒屋だけは「つけ」がありました。大晦日に払うか払わないかで夜逃げするかどうかもあったでしょうが、今は家を「つけ」で買う、車を「つけ」で買う、なんとも奇妙な世界になってきました。これをフォードが始めたのです。それまでは、自動車というのは大金持ちのものでした。フォードが、あのベルトコンベアーというのも発明して、大量生産を始めたのです。そうなれば、大量に売らなれりばなりません。大量に売るためには労働者に買ってもらわなくてはなりません。でも労働者にはお金がないのです。そこで、ローンという、とんでもないものを考え出したのです。ローンなら金がなくても買えるんですから、みんな買う。当然な話です。

 そりゃあ豊かなのに越したことはありません。マイホームが欲しくなる。ですからみんなローンで買う。そして「マイホーム」という感じになるのです。でも本当はマイホームではありません。あれは銀行のものです。払い終わるまでは、所有権は銀行のものです。銀行から借りてローン組んだだけなんです。こうして次々と新しいものを買わされていく。そのローンは多くの場合退職金を担保に組みます。一度退職金を担保にローンを組んでしまったら、ストライキはできなくなります。会社と闘って退職金がすっとんだら終わりなのです。家も途中でおしまいになってしまいます。ですから、ローンでマイホームが変えるようになってから労働運動は一気に駄目になりました。みんな闘わない、会社と喧嘩したくない、というふうになります。これはもちろん、向こうは計算済みのことです。
 ですから、高度に発達した資本主義社会というのは、労働者が、ある程度ですが、豊かになり、そして、このような消費社会に組み込まれてしまって、身動きができなくなるのです。

 こうして、いま日本では労働組合も、労働運動もストライキもほとんど力を失いました。そうなれば、政府は社会保障なんて、何も譲歩する必要がはありません。労働者が必死になって運動するから、止むを得ず健康保険とか年金制度とかやってきたのであって、労働者が闘わなければ、その必要はないのです。いま、どんどん社会保障が悪くなってきています。次から次から悪くなる。20年前だったら、いまのように社会保障が悪くなったらたちまち、大ストライキが起こりました。しかし今は何も起きません。労働組合が弱体化している、労働運動が骨抜きという状態です。
 そこへもってきて、ソ連や東ドイツがいなくなったのです。こうなればもう社会保障をやる必要はありません。社会保障は止めます、修正資本主義は止めます、ということになるわけです。修正資本主義にはいろいろな意味があるのですけど、一つの特徴は、大金持ちや大企業からお金を取って、弱い立場の人たちに配るところにあります。所得再分配と言われる働きです。だから政府は大きな政府になります。こういう仕組みが修正資本主義で、いろんなマイナス面もあるのですが、プラスの面も大いにあります。

 この仕組みをやめる、というのが今のアメリカです。もう政府は面倒みません、自分でやりなさい、と自由競争に戻る。自由競争一筋。これが、ソ連が崩壊した後に新しくなったアメリカの仕組みなのです。そして、それに日本が「右へならえ」ということなのです。

 それに対してヨーロッパは、アメリカのいうことを聞かず、「われわれはこれからも、社会保障のある資本主義でいきます。むき出しの裸の自由競争には戻りません」。これがヨーロッパなのです。なぜヨーロッパがそういえるかというと、労働運動が強いからです。先進資本主義国なのになぜ労働運動が弱くならないのか。これはこれで時間をかけて考えなければならない問題なのですが──。

 現実の問題として強い。ヨーロッパだって大企業は社会保障を止めたいにきまっています。しかし止めると大騒ぎになります。労働者が絶対に言うことを聞きません。だからやむを得ず守っているのです。企業負担もうんと高いです。日本の会社の倍以上払っています。ですからトヨタ自動車もフランスに、フランス・トヨタを作っていますけど、日本トヨタの倍以上払っています。それでも儲かっているのです。
 ですから、ヨーロッパでも、社会保障は少しずつ悪くなってきてはいますが、日本に比べれば遥かに違います。このようにして、ヨーロッパはアメリカと別の道を進み始めました。アメリカは剥き出しの資本主義に戻りますが、ヨーロッパは修正資本主義のままでいこうとしています。
 しかし、それでは競争で負けます。アメリカや日本は企業の社会保障負担がうんと減っていますから、利潤が増えています。ヨーロッパは高い社会保障負担でやっていますから、儲けが少ないのです。そこで競争しなくてすむようにEUいうものを作って、枠を閉ざしちゃいました。アメリカや日本の会社がヨーロッパに来るときは、ヨーロッパ並みの負担をしなければ、EUには入れません。だからEUの中でやっている時には、日本にもアメリカにも負ける心配はないのです。
 そういう仕組みを作って、アメリカとは別の道を進み始めました。そのためにユーロという別のお金も作りました。イラク戦争で表面に出てきたのですが、イラク戦争がなくても、ヨーロッパはアメリカとは別の道を進み出していました。もう2度とアメリカとは一緒にならないでしょう。

《規制緩和とグローバリゼーション − 構造改革の中身(2)》

 もう一つ、ソ連、東ドイツ崩壊の結果、アメリカが大きく変化したことがあります。それは何かというと、大企業・大資本を野放しにしたことです。
 ソ連がいる間は、大企業や大資本に、「あなた達は資本主義なんだから儲けたい放題儲けたいだろうけど、それをがまんしてください。あなたたちがやりたい放題にやったら、他の資本主義国はみんな負けてつぶれてしまう。アメリカの資本と競争できるような資本などどこにもありませんから。そうなれば、ソ連の方がましだということになる。だから、やりたい放題は抑えてほしい」と言ってその活動を制限してきました。
 具体的に何を抑えたかというと、為替取引を規制したのです。これが一番大きな規制です。いまではもう、中央郵便局へ行って「ドル下さい」といえば、すぐドルをくれます。「100ドル下さい」といえば「ハイこれ1万2千円」。ユーロでも、「下さい」といえば「100ユーロ・ハイ1万4千円」とすぐくれます。でもこれはごく最近のことです。それまでは、外貨・外国のお金は、日本では勝手に手に入りませんでした。お金を外国のお金と取り替える、つまり為替取引は厳重に規制されていて、個人が勝手にはできなませんでした。外国旅行に行くとか、何か特別な理由が認められた時しか、外国のお金は手に入りません。いまは何も制限ありません。自由にだれでもいつでもできます。理由など聞きませんから、100ユーロとか千ドルくださいと言えば、そのままくれます。これが為替取引の自由化というものです。これがなかったのです。ソ連が崩壊するまでは、アメリカも厳重に規制していました。それをとっぱらったのです。理屈っぽく言えば、資本の国際移動が自由にできるようになったということです。こうして、アメリカの巨大な金融資本が、世界中を我が物顔にのし歩く時代が来るのです。

 もうソ連も東ドイツもなくなったのですから、「いや永いことお待たせしました。今日からもう儲けたい放題儲けていいですよ。やりたい放題やっていいですよ」ということになったのです。これが規制緩和とことです。規制緩和ということは要するに、大資本が野放しになったということです。そうなったらどうなるか、世界第2の経済大国といわれる日本でさえ、全然太刀打ちできません。アメリカの巨大資本、金融資本・銀行ですね。日本の銀行とは勝負になりません。ボブサップと私が裸で殴り合ぅようなもので、一コロで殺されてしまいます。
 それでもやれというなら、ボブサプは手と足を縛ってもらって、目隠ししてもらって、こちらは金槌でも持たしてもらって、それでやっと勝負になるのです。今まではそうだったのです。それを全部外して自由にする、無条件で自由競争にするというのです。負けないためには、相手に負けない位大きくなるしかないですから、合併、合併、合併。あっという間に30ほどあった都市銀行が3つになってしまったのです。UFJとか「みずほ」とか、元何銀行だったか覚えておられる方おられますか。すぐ言えたら賞金をさし上げてもよろしいのですが、まず、言える方おられないでしょう。合併、合併であっという間に3つになりました。3つにになってやっとなんとか対抗できるというくらいにアメリカの巨大銀行というのは大きいものなのです。それでもダメで、長銀はのっとられてしまいました。北海道拓殖銀行も山一証券ものっとられてしまいました。次々とのっとられています。
 ついこの間は青森県の古牧という温泉がのっとられまし。広くていい温泉なんですけど、驚いたことにゴールドマンサックスでした。世界最大のアメリカの金融投資会社、ハゲタカファンドの代表のようなものです。これがどうして古牧温泉なのかと思ったのですが、テレビで放送していました。古牧だけではありません。他に28ケ所、超有名温泉みんな買い占めちゃったのです、ゴールドマンサックスが。どうするかというと、従業員みんな首切っちゃってパートにして、腕利きのマネージャーを送り込み、部屋をヨーロッパ、アメリカ向きに整備しなおして、欧米からの観光客をワーツと呼ぼうという作戦なんですね。儲かるようにして高く売るのです。ゴールドマンサックスが経営するのではありません。いま赤字の会社を買い取って、儲かるように造り直してすぐに売っちゃうのです。これが投資銀行のやっていることです。確かに、いわれてみればそのとおりで、日本の温泉ほどいいものはありません。知らないだけで、こんないいものは世界中どこにもありません。だから日本の温泉の良さが分かったら、おそらくヨーロッパ、アメリカからごっそり観光客が来ると思います。そこにゴールドマンサックスが目をつけたのですね。そして近代経営やって外国人が来て楽しめるような設備に変えて、世界中にジャパニーズスパーなんていって売り出す気なのですね。ですから、そのうち皆さんも温泉にいらっしやるとみんな英語で案内され、アメリカのお湯の中に入ることになってしまいます。

 アッという間に日本はアメリカ資本に乗っ取られようとしています。去年のホリエモン合併もそうです。今年から商法改正(改悪)して、乗っ取りを認めるということになったのです。株の等価交換、面倒な仕組みですから詳しいことは申し上げませんが、アメリカ株1億ドル分と日本の株1億ドル分を、等価父換していい、こういっているんです。ところが、アメリカの株の値段が高いのです。ですから1億ドルといっても、株の数からすると、例えば千株位しかない。日本は株が安いですから、同じ1億ドルで1万株位あるのですね。そうすると、千株と1万株で取り替えますから、あっという間にアメリカは大株主になってしまう。この等価父換を認めると、日本の大企業全部乗っ取られてしまう。
 そこで、日本の優良企業が狙われています。超優良企業を株式等価交換で、簡単にアメリカが乗っ取ることができる。今年からそれが可能になるはずだったです。それで去年、実験をやったのですね。ホリエモンにやらせてみたのです。ホリエモンはアメリカのリーマン・ブラザースから借りてやったのです。で、出来そうだなと分かったので、アメリカはお金を引き上げてしまいました。ホリエモンに乗っ取られては困る、いずれ自分が乗っ取るのですからネ。最後の段階で資金引き上げましたたから、ホリエモン降りる外なかった、多分そういう仕組みだったのではないかと思います。
 今年から自由に、日本中の会社をアメリカが乗っ取れるはずだったのですが、あのホリエモン騒動のおかげで日本の大企業が震え上がり、政府に泣きついて、「なんとか商法改正を見送ってくれ」と。それで見送りになりました。ですから、ちょっと一息ついているのです。今年すぐ、乗っ取られるというわけではありません。でも、いつまでも見送りというわけにはいかないでしょう。2・3年後には解禁。そうなれば、日本はほぼアメリカ資本に支配される、ということになるでしょう。

 日本ですらそうなのですから、まして、フィリピンとかタイとかいう国はたまったものではありません。あっという間に乗っ取られてしまいます。アメリカに勝手に経済的属国にされてしまう。それに対して、いやそんなの困るから、アメリカ資本が自分の国の株を買うことを法律で禁止する、というようなことをやろうとすると、アメリカはそれを認めないのです。グローバリゼーションだから地球はは「一つ」だというのです。いくら規制緩和しても相手国が法律で規制してしまったら終わりです。ですから、自分の国だけ勝手に現制することは認めません、地球はひとつですよ、グローバリゼーションですよ、ときます。フメリカの大資本が地球上のどこの国でもアメリカ国内と同じ条件で商売できるようにする、これがグローバリゼーションです。いやだと断ると制裁を加えられます。
 クリントン大統領の時は経済的制裁だけですんだのですが、ブッシュになってから、軍事的制裁になりました。いうことを聞かないと軍事制裁だぞという、これがネオコンという人たちの主張です。イラクを見ればみな震え上がるでしょう。ですから、アメリカの言いなりにグローバリゼーションで国内マーケットを開放して、アメリカ資本に全部乗っ取られてしまう、というのがいま着々と進行しているのです。

《アメリカの孤立》

 そこでどうなったかというと、ヨーロッパと同じように、「そんなの困る。自分の国の経済の独立は自分たちで守りたい」という人たちが手を繋いで、「アメリカに支配され引きずり回されないように、防波堤を作ろう」という動きが始まりました。だいたい5・6年前からです。アセアン(ASEAN東南アジア諸国連合)の動きが始まりました。5つの国です。インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン。元来はアメリカが造らせた組織だったのですが、いつのまにか自主独立を目指す組織に成長しました。
 手を繋ぎ、アメリカに引きずり回されないように、アメリカの資本が勝手に入ってこないように、自分たちの経済は自分たちでやりましょう、と。ところが、ASEANが束になったってアメリカにはとてもかないません。そこで、知恵者がいました。アセアンだけではかなわないので、中国と手を繋いだのです。「アセアン、プラス中国で、アジアマーケットを作り、アメリカにかき回されないようにしよう」しようというのです。確かに、中国が入ったらアメリカはうかつに手が出せません。しかし中国だけ入れると、反米色があまりにも露骨ですから、「アセアン、プラス・スリーでいきましょう。アセアン+日本+韓国+中国、でいきましょう」ということになります。日本はアメリカの51番目の州だといわれているのですから、日本が入れば、アメリカも安心します。

 EUのように、アセアン+スリーで、自分たちの経済は自分たちでやれるように、アメリカに引きずり回されないような自立したアジアマーケットを形成することが目標です
 ただひとつ、日本が具合が悪いのです。日本はそのスリーに入っているのですが、(アセアンの会議に)行く度に「アメリカも入れろ、アメリカも入れろ」というのです。アセアン諸国はアメリカから自立するために作っているのですから、「アメリカを入れろ」といわれたんじゃあ困るので、結局日本は棚上げになってしまいます。実際にはアセアン+中国で、経済交流が進んでいます。いずれ2010年には、東アジア共同体・EACというものを立ち上げる、という動きになっています。
 そうなってくると韓国が困りました。日本・アメリカ側につくのか、中国・アセアン側につくのかで、2・3年前から中国側に大きく傾いています。留学生の数を見ると分かります。中国の北京大学には世界中の留学生が集まります。21世紀は中国と商売しなければメシが食えなくなることが分かっていますから、将釆、中国語がしゃべれる人が自国のリーダーになり、中国の指導者に友達がいないと困ります。それには北京大学に留学するのが一番いいのです。あそこはエリート養成学校です。この前行った時聞いてみたのですが、入学試験競争率5千倍だそうです。超難関です。大学の構内を歩いて見たのですが、広い敷地に6階建てのアパートが36棟ぐらい建っていて、みな学生寮です。全寮制。そばに教職員住宅があって、朝から晩まで共に暮らしながら勉強しています。授業は朝7時からです。ものすごく勤勉に勉強しています。35年間私は大学の教員でしたが、愛すべき怠け者の学生諸君を教えてきたわが身としては、「あ、これはかなわないなァ、20年もしたら──」と思いました。向こうは国の総力を上げて次の時代の指導者を養成しているのです。日本はもう全然、ニートとかフリーターとかいって、若者の気迫がまるでレベルが違います。これは置いていかれるな、という気持ちになりました。このように世界中の国が、いま一流の学生を北京大学に送り込んでいるのですが、去年、北京大学留学生の中で一番数が多いのが韓国なのです。
 おととしまで韓国の学生は殆どアメリカヘ行っていました。去年あたりから中国へ変わったようです。つまり韓国は、21世紀の自国は、アメリカ・日本ではなく、中国・アセアンと組むことで繁栄を図りたい、と向きを変えたということです。
 それに拍車をかけたのが小泉首相の靖国参拝。これで韓国は怒っちゃってあちらを向いた。そうなると、アセアン、中国、韓国と繋がって、日本だけはずされてしまった、という状況がいま生まれつつあります。

 さらに中国は、数年前からいま、「ふりん政策」を国の方針としています。フリンといっても男女の不倫ではありません。富、隣。隣の国を富ます、隣の国を豊かにする──富隣政策です。隣の国と仲良くする。中国だけ儲けたのでは相手に恨まれてしまいます。英語では「ウィン、ウィン」(win-win)というようです。どっちも勝つ、中国も儲けるけど相手も儲けるような関係を必ず作っておく、ということが基本政策です。
 つまりアメリカは、やっとソ連を倒したと思ったら、今度は中国が出てきたのですから、中国を目の敵にしているのは当然です。中国にすれば、アメリカにやられないためには、単独では対抗できませんから、周りの国と手をつなぐ、ということです。

 アメリカは修正資本主義を止めて自由競争の資本主義に戻りました。その結果大企業・大資本は野放しになりました。そのためにアジアにそっぽを向かれることになりました。アメリカにはついていけない。アメリカに勝手にされては困る。もちろんアメリカと喧嘩をしては駄目ですが、自分の国は自分の国でやれるようにしなければならない──、というふうに変わったのです。

 そして最後に、3年前から南米が変わりました。ようやく日本でも報道されるようになりましたからご存じと思います。ただ日本のマスコミはちょっとしか書きませんから、気づいておられない方もおありかと思います。南米がものすごい勢いでアメリカ離れを始めたのです。

 今まで200年、南米はアメリカの裏庭といわれていました。アメリカはやりたい放題やっていました。チリは世界一の銅の産出国ですが、このチリの銅はすべて、アナコンダというアメリカの銅会社が一手で採掘していました。だからいくら掘ってもチリは豊かにならない。アメリカのアナコンダだけが儲かるのです。
 ブラジルは世界一の鉄の産地です。これもみな掘っているのは欧米の会社で、いくら掘ってもブラジルは豊かにならない。ベネズエラは世界第五位の産油国です。これもみなアメリカの石油資本が持っていく。
 こういう国はこれまで軍事独裁政権でした。政治家は、自分の国の資源をアメリカに売り渡し、自国の国民の反発は力で抑えつけ、莫大なリベートを貰って自分たちだけベラボウな贅沢をしてきました。これがアメリカと南米のパターンだったのです。

 それが、3年ほど前から、「おかしいではないか。やっぱりベネズエラの石油はベネズエラ人のものだ。石油を掘ったら、ベネズエラが豊かにならないとおかしいではないか。いくら掘ってもアメリカだけ儲けるのはおかしい。石油をアメリカの石油会社から取り上げて、ベネズエラで掘ることにしよう。国有化しよう」というような政策を訴える大統領が、当選するようになりまし。この3年間で、南アメリカは80%が、このような自主独立派の大統領になりました。アメリカ資本に任せず、自国の経済は自分でやろうという政策を掲げた大統領が、次々と当選したのです。
 いまでは、南アメリカでアリカの言いなりというのは、多分コロンビアしかないと思います。あとは殆どみな、自分の国は自分でやりましょというふうに変わってきました。ベネズエラのウゴ・チャベスという人がそのチャンピオンです。ご存じですね、時の人です。アメリカはそのチャベスの当選を必死になって妨害したのですが、結局ダメでした。チャベスが圧倒的多数で選出されました。その彼の言い分がふるっているのです。
 「失礼にならないようにアメリカから遠ざかりましょう」というのです。いきなり遠ざかったのではゴツンとやられますから、アメリカを怒らせないように、喧嘩しないように、少しずつ「小笠原流」で遠ざかって自主独立に向かいましょうというのです。
 これがいま世界の合言葉です。「失礼にならないようにアメリカから遠ざかる。」日本もそうしなければいけない、と私は思っているのですが。絶対にやりません。

 こうやってアメリカは、ソ連や東ドイツがなくなってから、修正資本主義をやめて、いまの言葉でいえば「新自由主義」という仕組みに代わりました。日本はそれに右ならえしたのです。いま申し上げたように、このアメリカの新自由主義経済に無条件で追随しているのは、日本しかありません。あとはみな、「失礼にならないように」距離をおきました。日本だけが無条件でついていきました。だから「ポチ」だといわれるのですネ、確かにポチと言われてもしょうがないほど、無条件でついていきます。それは恥ずかしいことですが、日本が追随していく。これが構造改革なのです。修正資本主義経済から新自由主義経済に変わるということです。簡単にいえば、弱い人の面倒を政府が見るような仕組みから、もう弱い人の面倒は見ませんという仕組みに、変わっていく──。これが構造改革です。

 だから、社会保障はどんどん悪くなる。自由競争で勝ち組と負け組がある。中には1千万ぐらいのマンション買って落ち着いているのもいる。片方には、国民健康保険料さえ払えなくて医者にも行けない。そういう人がもう全国で膨大な人数出てきている。まさに格差社会です。
 どんどんその格差が広がっています。金持ちからお金を取って弱い人の面倒を見る、というのが修正資本主義なのですが、それを止めてしまいました。野放しなのです。強い人はますます強くなり、弱いものは負けたら自己責任なんですよ。こういう仕組みにいま変わったのですね。
 それがいいか悪いか、止むを得ないのかどうかは、いろいろな立場によって考えが違うのですが、事実はそうなったのです。
 しかしヨーロッパは別の道をとっています。このように別の道もありうるというのも事実なのです。ヨーロッパのように社会保障を止めない資本主義もあり得るのです。
 日本の場合、アメリカほど徹底していませんが、流れとしては「政府はもう弱い人の面倒は見ません」、という方向に大きく動いています。

《憲法改悪の要求》

 こうして、アメリカは新自由主義経済で自国の企業を野放しにして、それを世界中に押しつけようとしたのですが、意外に抵抗が大きかった。ヨーロッパはいうことを聞かない。アジアも聞かない、南米も聞かない。これでは困るので力づくで押しつける。こういうことになるのですね。力づくで押しつける時に、最大の目標・ターゲットはもちろん中国です。やっとソ連を倒して、21世紀はアメリカが王様になれると思ったら、中国が巨大な国になってきて、アレリカの前に立ふさがっいます。このままではアメリカは王様ではいられません。中国を抑え込むことが21世紀へ向けてのアメリカの最大の長期的課題になっています。しかし戦争はできません。中国と戦争したのでは共倒れになります。唯一の道はエネルギーを抑えることです。

 ネオコンという人たちの書いた文章を読むと、非常にはっきり書いてあります。21世紀にアメリカが世界の支配権を握るには、中近東の石油を抑えなければならないというのです。中国は石油の自給ができません。どんどん石油を輸入していますが、殆どいま中近東から輸入しています。アメリカが中近東の石油を抑えれば、中国はアメリカのいうことを聞かざるをえなくなる。当然でしょうね。
 世界一の産油国サウジ・アラビアはすでにアメリカ側の国です。そこで第二の産油国であるイラクをアメリカは分捕りたいのですが、その理由がありません。そこでアメリカは「大量破壊兵器、テロ応援」という嘘をつきました。プッシュ大統領も、ついにウソであったことを認めました。
 ではなぜイラク戦争をやったのか。本当の理由はまだ公表されていません。しかしネオコンという人たちの文章を読むと、明らかに「石油を抑える。抑えてしまえば中国は言うことを聞かざるをえない」。ここに本当の理由があったことは明白です。そうだとすれば、恐ろしい話ですが、(次に)絶対にイランが狙われます。
 世界第1の産油国サウジアラビアは、昔からアメリカの同盟国です。第2位のイラクは抑えてしまいました。そしてイランは第3位の産油国です。ここを放っておいたのでは意味がないのです。中国はいくらでもイランから石油の輸入ができます。どうしてもイランまで抑えなければならないというのは、アメリカでは、いわば常識です。どんな新聞雑誌でも次はイランだということが堂々と語られています。
 ライス国務長官も3日前、「今イランに対するは軍事力行使の予定はない」と言っていました。「今は」です。イランは核開発やっているというのが理由です。たしかに妙な国ですが、しかし別に悪い国ではありません。あのあたりでは1番民主的な国です。曲がりなりにも選挙で大統領を選んでいますから。女性はみな顔を出していますし、大学へもいっています。イランは近代化した国なのです。サウジアラビアなどの国に比べたら、ずっと民主的な近代国家です。イスラム教のお妨さんが、選挙で選ばれた大統領より偉い、というのだけが変ですが、全員がイスラムですから、他国がとやかく言うことではないです。
 ですから、イランが悪魔の国というのは嘘なのです。イラクがそういわれたのも同じで、要するに悪魔の国と誤解させて、戦争しかけてもやむを得ないと思わせるための宣伝が行われているのです。

 イランはイランで、自分で自分他ちの国を近代化していけばいいのであって、核兵器持つなといっても、隣のパキスタンもインドも持っているのです。こちらのイスラエルもです。イランだけ持つなといっても、聞くわけありません。イランに持たせたくないのなら、「俺も止めるからあんたも」と言わなければなりません。「俺は持っている。お前だけ止めろ」と言ったってイランが聞くわけありません。そんな理屈が通るはずがないのです。実に馬鹿な理屈です。本当にイラクに核開発をやめさせたいのなら、イギリスもフランスもアメリカも 「先ず自分が止める、だからお前も止めろ」と言うしかありません。お前だけ持つなと言って、聞くと思う方がどうかしています。核開発は現在の大国の論理では抑えられません。イランに言わせれば、「イラクがなぜあんなに簡単に戦争しかけられたかといえば、核兵器を持っていなかったからだ。持っていたら恐ろしくてとても戦争なんか仕掛けられない」ということになります。だからイランはいま核開発を急いでいるのです。核兵器を持たないとアメリカに攻められるから。そう思い込んでいるのです。

 そう思わせるようなことをアメリカはやってきたのですから、イランに核兵器開発を止めさせるためには、イラクから撤収して、中東の平和は中東に任せる、という姿勢を示すしかありません。自分がイラクを分捕って居座ったままで、イスラエルやパキスタンやインドの核兵器には文句をいわずイランにだけ、というのは通じない理屈です。実にゆがんだ国際常識というものが罷り通っている、と思います。

 もしアメリカがイランまで分捕ってしまえば、サウジアラビア、イラン、イラクと合わせて、世界の石油の70%ぐらいになるはずですから、中国はアメリカのいうことを聞かざるをえなくなります。だからつぎはイランだというのが、ネオコンの論理です。
 ただ問題は、イランに戦争を仕掛けるとしても単独ではできなません。兵隊がたりない。徴兵制ではなく志願兵制度ですから。いま、ありったけの兵隊さんがイラクに行っています。あれ以上いないのです。だからハリケーンが来ても出せなかったのですね。そうすると、イランに出す兵隊なんていないのです。そこで、アメリカの右翼新聞の社説など、堂々と書いています。「イラクにいるアメリカ軍でイランを乗っ取れ。カラッポになったイラクの治安維持は、日本にやらせろ」と。
 アメリカの論理から言えばそうなるのでしょう。自衛隊にイラクの治安維持をといいますが、実際は内乱状態ですから、今も毎日アメリカ兵は毎日5人位殺されています。そんなこと引き受けたら、自衛隊員何人死ぬか分かりません。第一そんなことは、憲法9条があるかぎりできないのです、絶対に。憲法があるおかげで、自衛隊はイラクにいますけれども、ピストル1発撃つことができないのです。憲法9条第2項というのがあるのです。自衛隊は戦力ではない・交戦権はないとなっていますから、不可能なのです。だから給水設備備を作るとか、学校修理とか、そういうことしか出来ません。これじゃあアメリカから見れば役に立たないのです。

《平和憲法こそ 日本生存の大前提》

 そこで、「9条2項を変えて、戦争ができる自衛隊になってくれ」というのがアメリカの強い要求なのです。みんな分かっています。言わないだけです。日本の新聞記者も知っています。しかし、「9条変えろ」がアメリカからの圧力、と書くと首になるから書かないだけです。でも誰も知っています。アメリカのに戦争に参加しなさい、という強い圧力がかかっているのです。
 ここのところをよく見極めておくことが必要です、「9条を守る」ということは、「アメリカの言いなりにならぬ」ということと一つ、なのです。
 アメリカと喧嘩しては駄目ですから、「失礼にならないようにアメリカから遠ざかる」のが何よりも大切です。仲良くするけれども言いなりにはならない、ということです。ところが、憲法が危ないという、この危機的な状況にもかかわらず、国内で労働運動が弱体化していますから、ストライキも起きない。大きなデモも起きない。大反対運動も起きない──。という状況です。

 ではもう駄目なのでしょうか。そうではないと思います。それには日本の国内だけではなく、世界に目を向ける、アジアに目を向けるこちとが必要のです。ご存じのように、これからの日本は、中国と商売せずには、生きていけなくなりま。いま、大企業だけですけど、多少景気がよくなってきています。全部中国への輸出で持ち直したのです。中国マーケットがなくなったら日本経済はおしまいだ、ということは誰も分かってきています。
 お手元の資料の中の(貿易額の)丸い円グラフは、2003年のもので少し古いのですが、アメリカ20.5%、アジア全体で44.7%、つまり日本にとって一番大事な商売の相手は、アメリカではなくてアジアなのです。
 アジアと仲良くしなかったら、経済が成り立たないところへ、いま既にさしかかっているのです。左隣の棒グラフは2004年ですが、左上から右に折れ線がずうっと下がってくる。これが日本とアメリカの貿易です。点線で右へずうっと上がっていくのが中国との貿易。遂に去年(2つの折れ線が)交差し、中国との貿易の方がアメリカとの貿易額より多くなりました。しかも鋏状に交差していますから、今後この2つは開く一方になってきています。
 つまり、あと2・3年もすれば、日本は中国との商売なしには生きていけない、ということが国民の常識になるということです。いま既に、中国を含めたアジアが、日本の一番大事なお客さんなんです。仲良くしなければいけません。一番大切なお客さんの横っ面ひっぱたいたんじゃ商売は成り立ちません。
 靖国参拝などというものは、一番大事なお客さんの横面ひっぱたくと同じことなのですから、個人の信念とは別の問題です。小泉首相は総理大臣なのですから、個人の心情とは別に日本の国全体の利益を考えて行動しなければいけません。それは総理大臣の責任だと思います。その意味でアジアと仲良ぐできるような振舞いをしてもらわなければ困るのです。

 もう一つ。アメリカとの商売はこれからどんどん縮小していきます。それは、ドルというものの値打ちがどんどん下がっていくからです。これはもう避けられません。
 昔はドルは純金だったのです。1971年まで、35ドルで純金1オンスと取り換えてくれました。だからドルは紙屑ではありませんでした。本当の金だったのです。
 われわれのお札はみな紙屑です。1万円なんて新しくて随分きれいになりましたけど、綺麗にしただけちょっとお金がかかって、印刷費に1枚27円とかかかると聞きました。27円の紙がなぜ1万円なのか。これは手品みたいなものです。あれが5枚もあるとなかなか気が大きくなるのですが、本当は135円しかないのです。それが5万円になるのは、法律で決めているのです。日銀法という法律で、こういう模様のこういう紙質のこういう紙切れは1万円、と決められている。だから、あれを1万円で受け取らないと刑務所に入れられます。法律で決まっているからです。ですから日本の法律の及ぶ範囲でだけ、あれは1万円なのです。その外へ出ると27円に戻ってしまいます。
 金と取り換わらないお札というのは、簡単にいえばその国の中でしか通用しません。他の国へ行ったら、その国の紙屑と取り換えなければ通用しません。ところが、ドルだけは世界で通用しました。純金だからです。

 ところが、1971年にアメリカはドルを金と取り換える能力を失いました。ベトナム戦争という馬鹿な戦争をやって莫大な軍事費を使ったのです。背に腹は代えられなくてお札を印刷し、航空母艦を造ったりミサイル、ジェット機を作ったりしたのです。そのために、手持ちの金より沢山のお札を印刷しちゃったのです。
 その結果、アメリカは、ドルを金と取り換える能力を失ったのです。そこで、71年8月15日、ニクソン声明が出されました。「金、ドル交換停止声明」です。あの瞬間にドルも紙屑になったのです。ドルが紙屑になったということは、ドルがアメリカの国内通貨になったということです。
 ところが、問題はそれ以後なのです。世界で相変わらずドルが適用したのです。皆さんも海外旅行へ行かれる時は、大体ドルを持って行かれますね。どこの国へ行っても大丈夫なのです。金と取り換えられないお札が何故世界で適用するかは本当に不思議で、経済学者にとって最大の難問なのです。いろんな人がいろんな答を言っていますけど、あらゆる答に共通しているのは、ひとつは「アメリカの力の反映」だから、ということです。

 つまり、日本が自動車を作ってアメリカヘ売ります、ドルを貰いますネ。日本は損をしているのです。自動車という貴重なな物質がアメリカへ行って、紙屑が返ってくるのですから。物が減ってお札だけ増えると必ずバブルになります。
 バブルの犯人はそこにあるのです。日本が輸出し過ぎて貿易黒字を作り過ぎているのです。だから日本は、アメリカに自動車を売ったら、「純金で払ってください」と言わなければなりません。ところがそう言うと、ジロッと睨まれてお預けになってしまいます。日本には米軍が5万人います。「アメリカのドルを受け取らないとは、そんな失礼なこと言うなら、在日米軍クーデター起こしますよ」、これで終わりなのです。黙って受け取ってしまう。だから日本は無限に物を提供し、無限に紙屑をもらう。こうしていくら働いても日本人の生活はよくならないのです。しかもその紙屑でアメリカの国債を買っています。アメリカに物を売って、払ってもらった代金をアメリカに貸している。言ってみればツケで輸出しているようなものです、現実に。アメリカにいくら輸出しても日本は豊かにならない仕組みになつています。

 2週間前に『黒字貿易亡国論』という本が出ました。有名な格付け会社の社長さんですが、「貿易黒字を作るから日本は駄目なのだ」、ということを詳しく論じたたいへん面白い(文芸春秋社の)本です。確かにそうだと思います。だからドルは、本当は受取りたくないのです。みんな紙屑なんです。だけど受け取らないと睨まれる。アメリカの軍事力が背景にあるのです。
 その力をバックにして、紙切れのお札を世界に通用させている。例えていえば──餓鬼大将が画用紙に絵をかき1万円と書いて鋏で切り、これ1万円だからお前のファミコンよこせ、とこれを取り上げる──のと同じです。いやだと言ったらぶん殴るのです。怖いから黙って渡して紙屑もらうことになります。その紙屑で、他の人から取り上げればよいのです。「お前のバイクよこせ、よこさなかったらいいつける」。「あの人、あんたの紙屑受け取らない」、するとガキ大将が釆て、ゴツンとやってくれる──。餓鬼大将の力の及ぶ範囲ではそれが通用するのです。露骨にいえば、ドルがいま世界に適用しているのは、そういう仕組みが一つあります。
 もう一つは、ソ連の存在です。もし紙屑だからアメリカのドルを受け取らないといったら、アメリカ経済は潰れます。アメリカが潰れたらソ連が喜ぶ。だから紙屑と分かっていても受け取ってきた。ソ連に勝たれては困るから──。
 これも確かに一理あります。ということは、ソ連がいなくなって、紙屑は紙屑だということがはっきりしてきたのです。今まではソ連がいるために、紙屑なのに金のように適用したが、今や「王様は裸だ」というのと同じで、「ドルは紙屑だ」といっても構わない時代です。

 ともかくドルが危ないのです。私が言ってもなかなか信用してもらえませんが、経済誌『エコノミスト』、一流企業のサラリーマンなら必ず読んでいる雑誌すが、これの去年9月号が中国“元”の特集でした。その真ん中へんに「プラザ合意20年」という対談がありました。その中で、榊原英資さんは「5年以内にドル暴落」と言っています。
 榊原さんは大蔵省の元高級官僚で日米為替交渉の責任者を10年やりました。円・ドル問題の最高責任者だった人です。「ミスター円」といわれていました。通貨問題に最も詳しい現場の責任者です。停年で大蔵省をやめて今は慶應大学の先生になっています。この人が「5年以内にドルが暴落する」、つまりドルが紙屑だということが明らかになる日が近いと言っているのです。

 ソ連がいる間は隠されていたのですが、いまはもう、ドルは紙屑だから受取りたくないという人たちが増えてきています。これまでは世界通貨はドルしかなかったので、受け取らなければ商売ができなかったのですが、今ではユーロという代わりが出来てしまいました。ドルでなくてユーロで取引する国が増えてきています。そしてユーロの方が下がりにくい仕組みになっています。ドルは下がるのです。
 なにしろアメリカは、永いことドルが世界通貨ということに慣れてきました。だから自動車が欲しければ日本から自動車買って、アメリカは輪転機を回せばよいのです。紙とインクがあればいいのですから。ほかの国はこんなことできません。自動車が欲しければ、一生懸命働いて何か輸出し、その代金で輸入しなければならないのです。アメリカ以外の国は全部そうやっているのです。

 輸入は輸出と一緒です。輸入するためには輸出しなければなりません。ところがアメリカだけは輸出しないで輸入ができるのです。ドルという紙切れが世界通貨ですから。極端に言えば、欲しい自動車や石油を日本やアフリカなどから買って、紙とインクで支払う。実際そうして世界の富がアメリカに集まったわけです。
 71年以降の30年間、この仕組みのために、世界中にドルが溢れ出ました。ドルがどんどん増えますから、当然値打が下がります。こうしてドル下落傾向。(資料の一番下のグラフがそうです。円が上がっていく様子、為替取引だから短期的には上下しますが、長期的には間違いなく円高。ドルがドンドン下がるのは確かです。)これがあるところまでいくと、ガクッと下がります。
 あるところまでいくと、「ドルは信用できない、下がる通貨は持っていたくない」となります。ですからドルを受け取らない、ユーロか何か、別な、下落しない通貨でなければ受け取らないということが出てくる。そうなるとドルは暴落します──。榊原氏がそういっているのです。

 ヨーロッパはユーロでいくでしょう。アジア経済圏はなんといったって元です、中国の。中国は賢いですから、元を押しつけないで、何かアジアの新しい通貨を作るかもしれません。しかし元が中心になることは間違いないでしょう。ドルはアメリカでしか使われなくなる。そうすると、今まで全世界で使われていたドルが、みんなアメリカに集まって来るわけですから、アジア、ヨーロッパで使われいていたドルがみな戻ってきて、簡単にいえばドルの値打が3分の1に下がることになります。
 アメリカの生活は大きく収縮します。一家で3台自動車持っていた家は1台に。1台持っていた家は止めなくればならなくなる、ということです。
 アメリカ経済の収縮。これは大変恐ろしい話なのです。世界経済が大きく収縮し、日本経済は大きな打撃を受けます。しかし避けられない動きなのです。いつのことか分からないが、そう遠くない将来にドルの信用がドンと落ちていく。結果として日本がアメリカにだけ頼っていたら、大変なことになります。
 いまのうちに、アメリカに輸出してドルをもらったらユーロに代えておいた方がいい。ユーロの方は下がらないからです。EUという所は、国家財政が赤字だと加盟できないことになっています。赤字だと穴埋めにお札を出すので乱発ということになって下がるのです。だからユーロは一応下がらない仕組みになっています。乱発できないようになっているのです。ドルは短期的に持つのはかまわないが、3年、4年と長期的に持っていると下がってしまいます。それならユーロにしておいた方がいいとか、これから生まれるかもしれないアジア通貨にしておいた方がよいとかいうことになります。世界の大企業や国家が、決済のために多額のドルを持っていますが、これがユーロに切り替えられるとなると、ドルはもう世界通貨ではなくなります。

 そうなると、アメリカだけに依存している国は、大変苦しくなります。21世紀の日本を考えた時、アメリカと仲良くするのは大切ですが、しかしアメリカ一辺倒では駄目な時代になっているのです。アジアと仲良くしなければいけません。
 しかしアジアと仲良くするのには、無条件ではできません。なぜなら、60年前、アジアに戦争を仕掛けて大変な迷惑をかけた。その後始末がちゃんとできていないのです。仲良くするするためには、60年前のマイナスを埋めるところから始めなければいけません。別に難しいことではないのです。「あの時はごめんなさい。2度とやりませんから、勘弁してください」。これで済むわけです。
 問題は、「2度とやりません」が、信用してもらえるかどうかです。信用してもらうための最大の決め手が「憲法第9条」です。憲法9条第1項、第2項がある限り、日本は2度と戦争はできません。イラクの状態を見ても、自衛隊は鉄砲一発撃てない。(世界中)みんなが見ています。この憲法9条第1、第2項がある限り、日本は戦争はできません。だから安心して日本と付き合うのです。
 もし日本が憲法9条を変えて、もう1回戦争やりますということになったら、アジアの国々は日本を警戒して、日本との付き合いが薄くなってしまいます。いま既にそうなりつつあります。小泉首相は靖国に何度も行く。自民党は憲法9条を変えることを決め、改憲構想まで発表した。アジアの国々は用心します。「そういう国とは、あまり深入りしたくない」。

 小泉首相は「政冷、経熱」でいいじゃないか、といいます。政治は冷たくても経済では熱い関係というのでしょうが、そんなことはできません。中国と日本の経済関係はじわっと縮小しています。統計でもそれははっきり出ている。
 おととしまで中国の貿易のトップはアメリカでした。次が日本、3位はEU。これがひっくり返ってしまいました。去年はトップはEU、2位アメリカ、3位日本です。明らかに中国は日本との商売を少しずつ縮小させている。その分EUに振り替えています。

 去年5月、ショッキングなことがありました。北京・上海新幹線という大計画をEUに取られました。北京〜上海って何キロあるのでしょう。日本の本州より長いのではないでしょうか。このとてつもない計画があって、去年、まだ予備調査の段階すが、日本は負けました。ドイツ、フランスの連合に取られました。予備調査で取られたということは、本工事は駄目ということです。中国にすれば、日本にやらせるのが一番便利なのです。近いですし、新幹線技術も進んでいます。まだ1度も大事故を起こしたことがありません。ドイツもフランスも、1回ずつ大事故を起こしたことがあります。技術からいっても資本からいっても、日本にやらせれば一番いいのに、日本が負けました。明らかに政治的意図が働いたと思われます。日本との関係を深くしたくない。いざという時、いつでも切れるようにしておく。いざというとき、切れないようでは困る。そういうことではないでしょうか。

 いまのままアメリカ一辺倒でいいのでしょうか。私は長島さんをよく思い出します。後楽園での引退試合の時、最後に「読売ジャイアンツは永久に不滅です」といったのです。永久に不滅どころか、去年のジャイアンツのサマといったらもう、見ていられない。アメリカもそうなるのではないでしょうか。小泉首相は「アメリカは永久に不滅です」と、いまもいっているのですが、そうではないのではないでしょうか。
 アメリカにさえ付いていれば、絶対大丈夫という時代は終わったのです。アメリカとも仲良くしなければいけませんが、しかしアジアとも仲良くしなければいけない、そういう時代がいま来ているのです。仲良くするのには、憲法9条を守ることが大前提です。これを止めてしまったら、アジアとは仲良くできません。

 憲法9条は、日本にとって“命綱”です。いままでは、憲法9条というと、「理想に過ぎない。現実は9条で飯食えないよ」という人が多く、中には鼻で笑う人もいました。しかしいまは逆です。9条でこそ食える。9条を変えたら、21世紀日本の経済は危ないのです。
 憲法9条を守ってこそ、この世紀の日本とアジアとの友好関係を守り、日本も安心して生きていけるのです。こういう世の中をつくる大前提が憲法9条です。憲法9条は美しいだけではなく、現実に儲かるものでもあります。そのことがやっと分かってきました。

 奥田経団連会長は、去年までは小泉首相を応援して靖国参拝も賛成だったのですが、そんなこといってたらトヨタは中国で売れなくなります。そこで今年の正月の挨拶でついに、「中国との関係を大事にしてほしい」と、向きが変わりました。
 財界が、中国と仲良くしなければ自分たちは商売ができない、となってくれば、日本の政治の向きも変わるだろうと思います。あと3年たてば多分、これは日本の国民の常識になってきます。中国と仲良くしないと経済が駄目になる。それは中国のいいなりになることではないのです。良くないことはきちんという。だけど敵にするのではなく、仲良くする。でなければ、日本の経済は成り立たない。これがみんなの常識になってくるでしょう。

 これまで60年、アメリカベったりだったから、アメリカから離れたら生きていけないと皆思ってきました。しかし現実の数字はそうでなくなっています。一番大事な経済の相手は、もうアメリカではなくアジアなのです。これに気づくのにあと2・3年かかるでしょう。これが世論になれば、もう、憲法を変えるなどということは、絶対にできません。
 しかし、この3年の間に、国民の世論がそのように変わる前に、憲法が変えられてしまったら、どうにもなりません。
 あと3年、必死の思いでがんばって、子供たちに平和な日本を残してやるのが、私たちの務めだと思います。そう思って、私も必死になってかけ回っています。あと3年ぐらいはまだ生きていけるだろうから、なんとしても3年間は9条を守るために全力をつくしたいと決心しています。

 ありがたいことに、9条を変えるには国民投票が必要です。国会で決めただけでは変えられません。国民投票で過半数をとらないと、憲9条は変えられないのです。逆にいえば、これによってこちらが憲法9条を守る署名を国民の過半数集めてしまえばいいことになります。住民の過半数の「9条を守る」署名を3年間で集めてしまう。そうすればもう、変えることは不可能になります。
 そうすれば、子供たちに憲法9条のある日本を残してやれます。2度とアジアと戦争する国にならないようにして、そしてもし長生きできれば、新自由主義という方向、つまりアメリカ言いなりではなく、もっと自主的な経済ができるように、せめてヨーロッパのような修正資本主義、ルールのある資本主義の仕組みにもう一度戻すこともできるでしょう。

 日本中で、飢えている人、因っている人、貧しい人が、それでも人間らしく生きていけるような、最低限の保障ができる、生きる希望が出る──。そういう社会にすることが大切なのだ、と思います。これは長期的展望です。簡単にはできません。一度、新自由主義になってしまったので、10年位かかるでしょう。国民が賢くなって、正しい要求を政府につきつけていかなければいけません。その中心になる労働運動の再建が必要です。
 結局国民が主権者なんですから、国民の願いがかなうような、そういう日本に作り替えていきたいなと、そういう道を進んでいきたいなと思います。

 鋸南町は合併を拒否なさったというので、日本でも有数な自覚的な町といえます。合併するとまず住民自治がダメになります。大きくなるということは、住民自治が駄目になることでもあります。住民が主人公になる町こそ大切。ぜひこの美しい山と海と禄のある町で、1人1人が主人公であるような地域共同体というものを、みんなが助け合える町になることを私も希望して、講演を終わらせていただきます。

http://kyonannet.awa.or.jp/mikuni/siryo/2006/kawabata-kouen060114.htm


04. 中川隆 2011年12月21日 22:11:22 : 3bF/xW6Ehzs4I : MiKEdq2F3Q


新自由主義拡大が頓挫     2011年12月19日

 アメリカが大ウソをついてひき起こし、9年にも及んだイラク侵略戦争は、敗北に終わった。無差別虐殺や廃虚のなかから決起した、独立と自由を求めるイラク人民の抵抗斗争によって、イラク駐留米軍の大半は今年末をもって撤退せざるをえなくなった。アメリカ支配層は、イラクの恒久占領によって中東一極支配の拠点をつくり、イラクに風穴を開けて、新自由主義グローバル化を中東全域に拡大することをもくろんだが、失敗に終わった。

 2003年3月、ブッシュ前政府はイラク政府に対し、「大量破壊兵器の保有」「テロ組織支援」という口実で、国連の決議さえとれずに、イラク侵略戦争を開始した。「有志連合」と称して欧州諸国をはじめ37カ国をこの戦争に動員した。小泉政府も、アメリカの指図で自衛隊を初めて戦場に送った。

 アメリカ支配層は、1991年に米ソ二極構造が崩壊したのち、世界一極支配の野望をたくましくして、「民主化」と「市場経済」を旗印に東欧諸国やロシアに勢力を拡張した。抵抗するものは、旧ユーゴのセルビアのように空爆など武力によって征服し、各国に親米欧政府をでっちあげた。

 このグローバル市場化の流れに最後まで抵抗した地域の一つが、中東アラブのイラクやシリア、イランなどであった。アメリカの軍産複合体を基盤とする中枢は、そのうちの一国を足がかりに周辺地域全体に、いわゆる「民主化」と新自由主義の波を広げることを構想していた。

 その「モデル国家」としてイラクを選んでいた。世界第3位の石油埋蔵量のほか、アラブ地域の中心に位置し、米軍基地を置いて中東全体ににらみをきかせるのに好都合だった。1991年の湾岸戦争でイラクに「侵略者」の烙印を押し、その後の執ような大量破壊兵器の査察で、イラクの軍事力は解体同然だったという条件もあった。

 アメリカ中枢部では、ペンタゴンを軸に湾岸戦争をモデルに研究会を重ね、91年2月の「砂漠のあらし」を再現するための訓練・演習を米軍にやらせ、戦争プランを練り上げ、その日を待っていた。ブッシュ前政府は内外の反対や慎重論を蹴って、その単独行動主義を存分に発揮して、イラク戦争を発動した。

 アメリカは1970年代から、中南米や東欧、ロシアなどに勢力を拡張するのに

「衝撃と恐怖―迅速な支配達成のために」

と呼ばれる手法を使ってきた。それは、既存の国家を丸ごと消し去り、新たな国家をうち立てるという「究極のショック療法」を駆使することだった。


 米軍はイラク侵略を始めると、1日でトマホーク380発以上を発射した。ちなみに湾岸戦争の時は5週間で約300発だった。イラク軍との戦斗がおこなわれた3月20日から5月2日までのあいだに、米軍はイラクに3万発以上の爆弾を投下し、2万発の精密誘導巡航ミサイルを発射したが、それは過去に発射されたミサイル総数の実に67%に相当するものだった。


アメリカに刃向かうものは皆殺しにする


というメッセージを込めた実験であった。


イスラム教スンニ派の拠点であったファルージャに対する2度の包囲・「掃討」作戦、ナジャフでのシーア派民兵に対する包囲攻撃も残酷きわまりないものだった。

ファルージャでは、何重にも包囲したうえで米軍機が無差別爆撃をやり、地上では米兵が民家をしらみつぶしに回って、抵抗するものはその場で射殺する。約1カ月の「掃討」で8000人もの市民が犠牲になり、街のサッカー場が墓場になった。

これも、「衝撃と恐怖」でイラク人民の抵抗意識をうちのめすことに眼目があった。


 アブグレイブ収容所などでの捕虜(実際は一般の住民)に対する殴打から電気いすなどありとあらゆる拷問、なかには変態的な人倫にもとる責め苦なども、同じ目的であった。これも、恐怖感を持たせる心理作戦の一環だった。

 100万人殺し難民300万人 残したのは破壊だけ


 アメリカの侵略で、イラク人約100万人が死亡し、300万人が傷つき、300万人が難民となった。あるイラク人は「米国が残したものは、破壊された国だけ。彼らは近代的な学校も工場も残さなかった。逆に、何千何万の孤児と未亡人を残した」と語っている。

 おもな国庫収入源である石油生産量は、今夏でも日産250万ヲと戦前水準と変わらない。電源の復旧も進まずいまだに断続的停電が続いている。失業率は政府発表で15%、総人口の4分の1が貧困ライン以下の生活を強いられている。

 オバマ大統領は先日の演説で

「独立し、安定し、自立した国家、イラクをあとにする」

と言った。またも大ウソである。

イラクにはシーア派、スンニ派、クルド族とあるが、貧困と不公平が憎悪を募らせ、宗教間、民族間の衝突があいついで、数年前には内戦状態に陥った。この原因も、占領当初にクルド族に自治区を認めて、米国が石油権益を握ろうと取引した結果である。イラク政府がシーア派主導であるなかで、最近、スンニ派にも自治区設立の動きが出ている。しかも、シーア派主導の政府はアメリカのかいらい色が強い。今はイランの影響が強くて、シリア問題などでアメリカのいいなりにはなっていないが、イラクの独立に命を賭けるようなことはない。今後、政治、宗教、民族間の衝突が激化しないとはいえない。


 イラク人民は、原爆以外のあらゆる兵器によるショック攻撃を受けながら、決して屈服することはなかった。アメリカの戦争目的が占領であり、植民地化であることが明確になるなかで、反米武装組織が次次に生まれ、米軍や「有志連合」軍と果敢にたたかった。悠久の歴史を持つイラク人民が、不屈の民であることを侵略者に思い知らせたのである。

 オバマが米軍撤退を公表した14日、首都西部の都市ファルージャ市の中心広場では、米軍叩き出せの集会・デモがおこなわれた。

「われわれは自由になった」

「ファルージャは抵抗の炎」

と大書した横断幕やプラカードを掲げ、「抵抗」「抵抗」とスローガンを連呼した。


 イラク人民のたたかいは、アメリカ支配層がイラクに「衝撃と恐怖」を与え、新自由主義経済への風穴を開けようとしたことも挫折させた。

 イラクには石油のほかに、奪い取れる経済的果実は山ほどあった。

当初アメリカはミサイル攻撃などで首都などが破壊され、イラク軍も無力となった時点で、さっさとイラクの国家資産をベクテルやエクソン・モービルなどアメリカの企業に売り払おうとしていた。

 戦前のイラク経済は、国営石油会社をはじめ200社にのぼる国営企業によって支えられており、セメントや紙から食用油に至るまで、主要な食料と原材料のすべてが国営企業で生産されていた。占領当局はまず、

国営企業200社をただちに民営化すると発表。

次に法人税を一律15%へ引き下げ、

外国企業がイラクの資産を100%保有することを認めたり、

投資家がイラクで上げた利益を100%無税で国外に持ち出せる、再投資の義務もない

などの優遇策をとった。


 チェイニー副大統領(当時)がかつてCEOだったハリバートンは、米軍基地建設や運営、道路管理から害虫駆除、映画館などを一手に引き受け、ボロもうけをした。

 だが、アメリカや一部欧州の外国企業がイラクにどっと群がるなか、200社の国営企業は慢性的な停電で稼働停止状態であった。

また、外資企業はイラク人労働者でなく外国人労働者を好んで雇用した。

さらに、

セメントもより高い価格で外国から輸入したり、

イラク中央銀行が国営企業に融資するのを禁止したりした。


 帰還兵85万人が失業中 米国内でも


 アメリカはイラク戦争にのべ150万人の米軍将兵をかり出した。戦死者は4500人、負傷者は3万2000人余りに達した。帰還兵の過半数を占める85万人は失業中だし、負傷者や心的外傷を持つ人は就職もできない。彼らの医療・看護費は、総額1兆jと試算されており、オバマが毎年7000億jの軍事費削減をしても間に合わない。

 イラクとアフガンの戦費は、政府発表で8500億j、学者の試算では3兆jにのぼる。巨額の戦費はアメリカ財政危機の元凶であり、金融資本救済とあいまって現在のデフォルト寸前の財政危機を招いている。

もともとイラク戦争をやった一つの狙いは、過剰生産恐慌を背景に、ITや住宅などバブルを連発してきたアメリカの危機を戦争で打開することだった。

これも結果はドル乱発で日本など他国を犠牲にして金融資本主義を維持することにきゅうきゅうとする事態となっている。

http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/irakusenryousiltupaisibeigunteltutai.html


05. 中川隆 2012年9月30日 23:28:50 : 3bF/xW6Ehzs4I : HNPlrBDYLM

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2011年10月1日土曜日

米国にとって鳩山由紀夫とフセインとカダフィは同じ極悪人


アメリカにとって、イラクのサダム・フセインとリビアのカダフィ大佐はアメリカに敵対する極悪人のような存在だった。そして、実はアメリカの目で見ると日本の鳩山由紀夫氏もまったく同列の極悪人に見えていた可能性がある。

確かに強面(こわもて)のフセインとカダフィに比べて、我らが鳩山由紀夫氏はどこか頼りない印象でもあるが、アメリカは外見で彼らを見ているのではない。思想と行動で彼らを見ている。

そして、アメリカは彼らに共通項を見出し、明確に敵として認識した可能性が高い。


白アリに国家を食い荒らされているアメリカ

「強いドル」とはアメリカの政治家がよく口にするセリフである。アメリカにとっては世界を支配している象徴が基軸通貨としてのドルであり、決済手段としてのドルである。

ところが、2008年9月15日のリーマン・ショック以降、アメリカは目に見えるほどのスピードで急激に衰退が顕著になってきていて、それと平行して基軸通貨としてのドルの信認が揺らいでいる。

アメリカは、本当ならば2008年のリーマン・ショックでグローバル経済は破綻してもおかしくないような崖っぷちにまで追い込まれた。必死に破綻を回避して現在に至っているが、世界がアメリカを見る目がどんどん厳しくなってきている。

アメリカは2011年7月に累積債務の上限引き上げ問題に紛糾して、危うく国家破綻(デフォルト)する寸前にまで追い込まれた。

オバマ政権はタイムリミットぎりぎりの段階で何とかそれを回避したが、赤字削減学が低いとして今度は米国債の格下げで市場を動揺させることになった。

家の中で白アリが見つかると、その家の柱は食い荒らされて脆弱になっている可能性がある。

今のアメリカは莫大な負債という白アリに国家を食い荒らされている。

その結果、州財政が破綻していく問題であったり、失業率が高止まりしている問題であったり、FRBが莫大な不良債権を抱えて身動きできなくなっている問題であったり、米国債が格下げされる問題が、次から次へと噴出しているのである。

それぞれの問題を応急処置のように対処しても、もう間に合わないところにまで来ている。

そして、これらの出来事のひとつひとつが、ドルの衰退を示唆するものになってしまっている。

アメリカが覇権国家でいられたのは、世界で唯一ドルを印刷できる国だからである。ドルが信用されなくなってしまうと、アメリカは死ぬ。

だから、必死になってドルの価値を守るしかアメリカは生き残れない。

ドルを守る=ドル防衛のために、アメリカは何だってするだろう。死に物狂いになって、ドル離れを食い止め、ドルの前に立ちふさがる敵は徹底的に破壊しようとするはずだ。

「基軸通貨としてのドルを守るためにアメリカは死に物狂いである」という姿をまず、私たちは切実に意識しないとならない。


ドル防衛のために何でもするアメリカ


通貨基軸としてのドルの信頼低下

アメリカは大きな問題を抱えており、世界中がそれを認識している。その結果起きているのが米国債とドルの信頼低下である。

特に、通貨基軸であるドルはここ数年でどんどん価値を減退させており、それが日本では円高ドル安として認識されている。

実は、このドルの信頼低下がすべての問題を引き起こしているのである。

今までドルに変わる通貨基軸などないと世界は認識していた。しかし、今では世界中が「アメリカが国家破綻したらドルが紙切れになってしまう」という危惧を持っている。

国連までもが、米ドルが通貨基軸としての信認を失ってグローバル経済そのものがリクスにさらされているという見方を表明している。2011年5月25日のことだった。


国連が米ドル信頼の危機を警告、今年の日本の成長率予測を引き下げ

国連は25日、昨年12月に出した「世界経済情勢と見通し2011」の中間見直しを発表し、米ドルの主要通貨に対する価値が下がり続ければ、米ドルに対する信頼の危機、さらには米ドルの「崩壊」が起こりかねないと警告した。

中間報告は、主要通貨バスケットに対するドル相場が1970年代以来の水準に低下したことを挙げ、このトレンドの一因に、米国とその他主要国との金利差、米の公的債務の維持可能性に関する懸念の高まりがあると指摘。

「(予想される)外貨準備の一段の価値低下が起これば、それをきっかけに準備通貨としての信頼の危機が生じ、国際金融システム全体がリスクにさらされる」とした。

IMFと言えば、2009年3月25日、ドミニク・ストロスカーン(Dominique Strauss-Kahn)専務理事はこのようなことを言っていた。

「米ドルに代わる新たな基軸通貨の創設に関する議論は合理的であり、今後数か月以内に実施される可能性がある」「新たな基軸通貨について議論することは全く道理にかなっており、数か月以内に協議が行われるだろう」

2008年 リーマン・ショック、アメリカ経済崩壊
2009年 ストロスカーン、米ドル以外の基軸通貨示唆
2010年 ギリシャ危機、勃発
2011年 5月、ストロスカーン、レイプ疑惑で逮捕

ここで覚えておきたいのは、ドミニク・ストロスカーン氏は明確に米ドルに変わる基軸通貨が必要だと主張していたことだ。アメリカにとってストロスカーンは、「とんでもない男」に見えていたに違いない。

アメリカの見方は2011年5月に世界が共通認識することになった。ストロスカーンは「レイプ魔だった」のである。


レイプで逮捕されたドミニク・ストロスカーンIMF専務理事


アメリカの決死のドル防衛

ドルの通貨基軸としての地位が揺らいでいるのが今のアメリカの状況である。

アメリカの当面のライバルになるのはユーロだが、このユーロは実は2006年には紙幣供給量がドルを超えており、アメリカにとっては非常に危険なライバルになった。

ユーロ紙幣は2002年に紙幣の流通を開始しているのだが、イラクのサダム・フセイン政権は石油の決済をドルからユーロへ変更すると言い始めてアメリカと鋭く対立するようになり、崩壊していった。

1999年 決済用仮想通貨としてユーロ導入
2000年 フセイン、石油の通貨をユーロに変更
2001年 アメリカ9.11同時多発テロ事件
2002年 1月1日ユーロ紙幣流通開始
2003年 フセイン政権、崩壊


アメリカの敵として葬られていったサダム・フセイン

中東GCC(湾岸協力会議)でも、原油のドル決済をやめて、中東独自の通貨「カリージ」を作って、それで決済をする方向が2008年あたりに決定した。

しかし、そのあとにアメリカと鋭く対立するようになり、2009年にはドバイ・ショックで中東湾岸諸国が危機に陥っていった。そして今、湾岸諸国は通貨どころか、国家存続の危機に立たされている。

2008年 リーマン・ショック
2008年 GCCによる中東独自通貨の導入決定
2009年 ドバイ・ショック
2010年 アメリカによるカリージ延期要請
2011年 中東諸国、暴動・デモで全面崩壊

アフリカでもドルに変わる通貨としてアフリカ共同体の共通通貨をアフリカ連合が画策していた。特に中心となったのがリビアのカダフィ政権である。

しかし、これもカダフィ政権が崩壊したことによって恐らく延期、もしくは中止になっていく可能性もある。

2002年 アフリカ連合(AU)発足
2008年 リーマン・ショック
2009年 AU総会議長にカダフィ大佐就任
2010年 アフリカ共通通貨構想の現実化
2011年 1月、北アフリカ諸国、次々と崩壊
2011年 8月、リビアのカダフィ政権、瓦解


アフリカ共通通貨を主張していたカダフィ大佐


イランは2007年にやはりフセイン政権と同じく石油の決済をドルからユーロへと変更している。

しかし、アメリカはイランを厳しい経済制裁を2007年に課して、事実上、イランの石油が国際市場で販売できないようにしてしまっている。

ユーロ決済云々の前にイランは石油販売ができないのである。イラン攻撃についてはずっとアメリカで検討されていたが、いまだそれは行われていない。

イランは強国であり、いったん攻撃となるとアフガンやイラクのようにすぐに終わらない可能性がある。しかし、アメリカはそれをする計画を立てていた。

ところが、2008年9月にリーマン・ショックが起きて、もうアメリカはそれどころではなくなった。

2005年 アフマディ・ネジャド政権発足
2007年 石油決済をドルからユーロへ変更
2007年 アメリカによるイラン経済制裁
2007年 イランの石油は国際市場では販売禁止
2008年 アメリカ、イラク攻撃を計画
2008年 リーマン・ショック。アメリカ経済危機

イランは首の皮一枚で生きながらえている。偶然にそうなったのか、それとも最後の手段で残しているのかは分からない。


アメリカにとって非常に危険な男、イラン・アフマディネジャド大統領


日本が沈んで行った理由

ちなみに、共通通貨についてはアジアでも検討されていて、これを強力に推進しようとしていたのが鳩山由紀夫氏だった。


鳩山代表、「アジア共通通貨」を提唱

次期首相候補の鳩山由紀夫(Yukio Hatoyama)民主党(DPJ)代表が、10日発売予定の月刊誌「Voice」で、アジア地域の経済的および政治的な連携強化に向けた、アジア共通通貨の創設を提唱した。

出版社から入手した論文によると、鳩山氏はアジア共通通貨について、世界的な金融危機が将来起きた場合の衝撃を回避し、地域の政治的対立を軽減することに役立つと述べた。さらに、鳩山氏は、アジア地域において経済協力と安全保障のルールをつくりあげていくべきだと述べた。

もし、アジアに共通通貨ができあがったら、アジアの経済規模からしてドルの通貨基軸としての地位は完全に崩壊してしまうのは間違いない。

これはアメリカにとっては非常に危険な動きだった。端的に言うと、アメリカにとって、鳩山由紀夫はフセインやカダフィと同じくらいの極悪人だったことになる。


アジア共通通貨を提唱した鳩山由紀夫

そのせいなのかどうかは知らないが、結果的に言うと、アジア共通通貨を提唱した日本は現在、崩壊の危機に瀕している。

2008年 リーマン・ショック、アメリカ経済危機
2009年 鳩山氏、アジア共通通貨創設を提唱
2009年 民主党政権発足
2010年 鳩山由紀夫氏、失脚
2011年 東日本大震災、福島原発爆発

もちろん、2011年の東日本大震災、福島原発爆発は「偶然」起きた災害なのでアメリカが関係しているわけではない。アメリカは「トモダチ」作戦で助けてくれたではないか。

しかし、この震災によって、もはや日本はアジア共通通貨どころではなくなってしまったのは確かだ。

ちなみに、「ドル基軸通貨見直し論」は中国からも出てきている。これは周小川人民銀行(中央銀行)行長が2009年3月23日に「国際通貨システムに関する考察」と題する論文を発表したものが下敷きになっている。


周小川論文の波紋、中国から「ドル基軸通貨見直し論」
周小川人民銀行(中央銀行)行長は、3月23日、人民銀行のホームページに「国際通貨システムに関する考察」と題する論文を発表した。この内容は、ドルを国際基軸通貨とする現行の国際通貨システムには欠陥があり、ドルの代わりに国家主権を超越した新基軸通貨を創造すべきであり、当面はIMFの特別引出権(SDR)を活用すべきというものであった。

この論文に対し、英国タイムズは、「中国のドルに対する挑戦である」と論評し、米国オバマ大統領は、「私は(新たな)基軸通貨を創造する必要があるとは考えない」と反発した。しかし、国連の専門家チームのリーダーでノーベル経済学賞の受賞者でもあるスティグリッツは、これを支持している。

何度も言うが、ドルが基軸通貨でなくなった瞬間にアメリカは崩壊する。したがって、中国が「敵」になるのであれば、アメリカは容赦なく中国を破壊して回るだろう。


中国の将来にとても危険な発言をしていた周小川氏

アメリカが最終的に中国を破壊するのは、可能性としてゼロではない。中国がどのように破壊されるのかは、日本にとっては他人事ではないのは言うまでもない。(日本が完全に破壊され、二度と復活できない暗黒時代が来る)

アメリカが必死になってドル防衛をしている姿が世界中のあちこちで見て取れる。

ドル通貨基軸を揺るがす最大のライバルがユーロなのだとすると、当然今回のユーロ崩壊劇もアメリカの謀略が裏にあると考えていいだろう。

ギリシャの累積債務問題は、元はと言えばゴールドマン・サックスがギリシャ政府にアドバイザーとして入り込んでから始まったとも言われている。

ユーロが安定すると常にギリシャ危機が再燃する仕掛けになっていく。格下げのタイミングも絶妙だ。

最終的にユーロはどうなっていくのか。ユーロがドルを揺さぶる潜在的な危険性を持つ限り、ユーロの将来は極めて暗いと言ってもいいのではないだろうか。

なぜか。アメリカがそれを許さないからである。
http://www.bllackz.com/2011/10/blog-post.html


2011年10月24日月曜日


カダフィが死んで高笑いするヒラリーと八方美人外交の日本


欧米はアジア・アフリカを侵略し、植民地支配し、その富を奪うことで豊かになったという歴史がある。つまり、暴力で豊かになってきたという歴史が刻まれている。

暴力と成功体験がリンクしているのである。だから、根本的なところで暴力的であることが悪いとは思っていない。特にアメリカは建国史から暴力にまみれているのでそういう傾向が強い。

もちろん、暴力的であることが世界に支持されるとはアメリカも思っていないので、そこでアメリカが取ってつけた錦の御旗が「正義」である。どこかの国を「悪」に仕立て上げて、「悪を倒す」という名目で暴力を振るいに行くのである。


来た、見た、死んだ

なぜ暴力を振るうのかというと、そこの土地の指導者をいいように操ってその国の国富を収奪するためだ。だから、アメリカは「いざとなったら暴力がモノを言う」ことを否定していない。

その体質は、今回のリビアのカダフィ大佐が血まみれになって引きずり回されて殺されたのを見て、ヒラリー・クリントンがカエサル気取りで大喜びするのを見ても分かる。


"We came, we saw, he died"
(アメリカは来た、見た、カダフィは死んだ)

そういって、ヒラリー・クリントンは自分がプロポーズされたかのように屈託なく喜び、心から笑っているのが分かるはずだ。

別に私もカダフィが死んで悲しいとも思っていないが、これほどまで単純に喜べるわけでもない。

むしろ、これからリビアは収拾がつかない混乱に陥ることになるのは分かっている。喜ぶべきものではないはずだが、アメリカの戦略が一歩進んだことに、ヒラリーも喜びを隠せなかったのだろう。


捕獲され、死にゆくカダフィ大佐の最期の姿


カダフィが死んだと聞いて、心から喜ぶヒラリー・クリントン

何度も書いているが、アメリカは国家戦略の中に暴力を埋め込んでおり、世界中のどこの国も、アメリカの暴力から逃れられない。

言うことを聞かない国は叩きつぶせ(米軍)
相手が悪ならば、自分はそれ以上の悪になれ(CIA)
叩きつぶせないなら手を結べ(米政権)


アメリカの暴力哲学

アメリカの暴力哲学は歴史上、ほぼ一貫して行われていることは誰でも知っている。そもそも世界最大の軍需産業はすべてアメリカに集中している。

ロッキード・マーチン、ボーイング、レイセオンを筆頭として、そこにぶら下がる無数の企業がアメリカを支えている。

ノースロップ・グラマン、ユナイテッド・テクノロジー、ゼネラル・ダイナミックス、ハネウェル、アライアント、ロックウェル・コリンズ、L3コミュニケーションズ。

これらの企業はアメリカの雇用を支えると同時に、多くの政治家を排出して、アメリカの暴力を支えている。だから、アメリカの政治が暴力と縁が切れないのは当然のことである。

雇用を支える必要があるから、暴力は正当化される。その暴力正当化の歴史が長かったので、それがアメリカのDNAになっているとも言える。

だから、アングロサクソンがアメリカ大陸に「侵略」して、ネイティブ・アメリカン(インディアン)を根絶やしに侵略し、虐殺し、絶滅品種に追いやったのは「正当化」される。

また、日本に原爆を落として一瞬にして20万人の人々を焼き殺したのも「正当化」されている。

ベトナムではナパーム弾、絨毯爆撃、枯葉剤と、おおよそ考えられる非人道的な皆殺し作戦を実行していた。

湾岸戦争では劣化ウラン弾を使用して現地を放射能まみれにした。すべて「正当化」されていて謝罪の言葉は聞いたことがない。

また、イラク・アフガン・パキスタンで、大量虐殺が発生していても、それが正義のためであると喧伝された上に「正当化」されている。これらの国の市民が誤爆や誤射で何人死のうが同じだ。

ヨーロッパのほうも南米やアフリカを激しく収奪してきた。現在のアフリカの問題、中東の問題、イスラエルの問題は、すべてイギリスやフランス等が種をまいたと言っても過言ではない。

リビアの空爆はNATO軍が行った。多くの市民が死んでいったが、ここでの暴力は「正当化」されている。カダフィの死も、アメリカの正義戦略の中で行われて目的が達成された。

ヒラリー・クリントンの高笑いは、アメリカの暴力がまたひとつの国を崩壊させたという満足感の現れである。


リビアの反政府軍はアメリカのカダフィ排除戦略に乗っている。


混乱がさらなる不安定化を加速

欧米の強みは経済力だが、逆に欧米の弱味もまた経済力だ。金融立国としてレバレッジを効かせたアメリカ、イギリス、ユーロ圏がその逆流で次々と破綻の危機に瀕するようになっている。

グローバル経済が立ち行かなくなると、ノルウェーやイギリスではすぐに暴力が国内で引き起こされた。アメリカでは格差に対する怒りの表明として、「ウォール街を占拠せよ」というデモが行われて拡散している。

チュニジア、エジプト、リビア、シリア、イエメン、ソマリアと北アフリカ・中東も激変の中にある。剥き出しの暴力が、今まさに行使されている。

中国は軍拡の真っ最中であり、ベトナム・フィリピン・日本・台湾と、次々と問題を引き起こすようになった。

世界の秩序が崩壊している。それは収まるのではなく、むしろ拡散していく方向にある。不安定がじわりじわりと拡散している。この世界的不安定が平和をもたらすことはあり得ない。

不安定になれば、混乱が生じ、その混乱がさらなる不安定化を加速させていく。

結論から言うと、これは世界が治安に問題を抱えるということである。さらに具体的に言うと、やがて暴力の蔓延する壮絶な時代がやってくるということでもある。

貧困者は、既存の社会システムや政治や人間関係、そして外国諸国に不満や憎悪を抱く。だから、それらを破壊してしまいたいという欲求に突き動かされる。

デモの多発、そして政治に対する不平不満の爆発は、誰もその裏に何があるのか気がつかないが、明確に「貧困」が広がっていることが起因となっているのである。

日本もそうだ。長かった成熟時代が終りを告げて若者たちはこれからさらなる貧困に落ちるしかない。それがやがて暴力を産み出すことになぜ誰も気がつかないのか。

暴力の時代は、これからなのだ。これは必然であると覚悟したほうがいい。世界であらゆる対立が今後は爆発的に増えて行くことになる。


ギリシャの暴動は、ほとんど内乱になっている。


日本のデモとは様相が違いすぎるのは見て取れる。
イギリスもフランスもドイツもデモが起きるとこのようになる。


日本もこのようになることはないと断言できるのだろうか?


昨今のデモの多発が意味するもの

こういった暴力に向かいつつある世界の動向を見ながら、ふと日本を振り返ると、やはり日本も徐々に世界の不安定化・暴力化に呼応していることが見て取れる。

これは国民の国・官僚に対する不信から端を発しており、それがデモという形で目に見えるようになってきている。

日本政府は、今のところ異常なまでの八方美人外交を維持していることは国民の誰もが気がついている。

政治家は対立を恐れ、中国や韓国やロシアに国土の侵害を受けても、まったく強硬姿勢が取れない。対立・暴力という選択肢は、あらかじめ排除されているところに日本の外交の異常性がある。

本来であれば強硬姿勢を取らなければならないところで妥協してしまっており、それがますます問題をこじらせる。

企業・政治・メディアの上層部が、わざと韓国や中国に利することをしていることも大きな問題として存在しているのは確かだ。

2011年10月19日に、野田首相が韓国の李明博大統領と会談し、両国の通貨スワップの限度額を5兆円に拡大することも、韓国を利する行為だとして国民の大反感を買っている。

「韓国のために、700億ドル(約5兆3600億円)もの我々の血税が使われるのか。これをなぜ、震災復興のために使わないのだ!」

日本国民の激しい怒りが沸騰しているが、この怒りがまったく政治に届かないのである。

今まで、あまりにも国民が平和主義を唱え過ぎて、政治家がぬるま湯に浸っているのも一因にあるのかもしれない。

しかし、「このまま平和主義でいると、尖閣諸島も竹島も盗られてしまう」と国民は思うようになり、同時に平和主義の限界に気がつくようになった。

これから時代が平和に向かうのであれば、平和主義もひとつの生き方なのかもしれない。

残念ながら時代はそちらの方向には向かっていない。むしろ、その逆になる可能性が高い。

平和ではなく、混乱の時代が来る。

国民が暴力に目覚めていけば、そのうちの政治家にも暴力の矛先が向かっていくのは分かりきっている。日本でもいずれは時代が変わる可能性がある。

世界が暴力に巻き込まれていこうとしている今、日本だけが平和主義でいられるはずもない。昨今のデモの多発がそれを暗示している。

暗澹たる時代だと言えばそうなのだが、世界の暴力化・日本の暴力化はむしろこれからが本番である。

それを見越して、もう一度これを読んで欲しい。(金融崩壊に危険な災害。危ない時代になったときの助かり方)

(1)今が正常だと思い込まない。
(2)非常時には他人を助けようとしない。
(3)みんなと同じ行動をしようとしない。

長い秋の夜は、これからの生き残りを考えるのに相応しい季節だ。


フジテレビの韓国偏向報道に抗議するデモ


中国の尖閣諸島問題に抗議するデモ


TPP反対のデモ


脱原発を推進する人たちのデモ
http://www.bllackz.com/2011/10/blog-post_24.html


06. 中川隆 2013年5月29日 06:48:34 : 3bF/xW6Ehzs4I : W18zBTaIM6

米国はイラク侵攻に際し、道路、パイプライン、空港、送電網、公共施設などを重点的に爆撃し、復興計画を巨大な国家プロジェクトに仕立てた。

USAID(米国国際開発庁)が行った第一回目のイラク復興の入札にはケロッグ・ブラウン & ルーツ、ルイス・バーガー、パーソンズ、ワシントンなど政権と緊密な企業群が参加し10億ドルの業務を受注するが、開戦前からベクテル、フルーア、ハリバートンの各社は強力なロビー活動を推進し、2009年から2002年の間に約300万ドルの献金を行っている。

2003年、一連の戦争特需により4−6月期の米国GDPは前期から3.3%上昇、軍事費は45.8%増加し、ロッキード・マーティンは前年比18%増、ノースロップ・グラマンは同57%増、IBMは同10%増を記録した。

またマクダネル・ダグラス、ゼネラル・ダイナミクス、ロックウェル・インタナショナル、ボーイング、ユナイティド・テクノロジー、ゼネラル・エレクトリック、ウェスティング・ハウス、ハネウェルなど軍事企業はいずれも湾岸戦争以来の売上を達成。

さらに2004年、ジョージ・ブッシュはイラク対策費として870億ドルの補正予算を要請するが、フランスのル・モンド紙は復興予算総額を5600億ドルと見積もった。

イラクの原油埋蔵量は世界第2位と推定されているが、開戦前は経済制裁によって日量280万バレルの原油生産に止まっていた。しかし今後は日量600万バレルに増産される予定であり、さらに未開発の油田を採掘すれば日量800万バレルを突破し、サウジ・アラビアを抜いて世界第一位の産油国になると予測されている。イギリスのフィナンシャル・タイムス紙は、ハリーバートンが原油の採掘事業を独占し、シェブロンなどがその売買を行うことなどから、イラク戦争そのものが米国による経済行為であると批判したが、これに対し米国は「機密保安のため国内企業を優先する」と釈明した。

 

2004年、さらに米国はイラク国内法を改正し、公営企業の民営化に着手する。セメント工場、化学肥料プラント、燐酸や硫黄の鉱山、医薬品工場、航空会社などおおよそ産業主体となる企業群が対象となり、同時に資本規制を撤廃したため、イラクの公共資源は一挙に外資に売却された。また税制改革により進出企業はイラク国内での納税義務を回避し、本国に100%利潤を送金することが合法となる。一連の政策により失業者は70%以上に達し、困窮した国民は抵抗運動に参加するが、多国籍軍はこれをテロ行為とみなし、大規模な掃討作戦を展開した。

経済学者ジョセフ・スティグリッツは、イラク戦争による日本国の負担は30兆円を突破していると推計しているが、100兆円規模となる米国債などのドル建て資産が軍事費へ転化されていたことから、この間の円高による為替損40兆円を合算し、総計70兆円規模の負担であるとの見方が強い。
http://p.booklog.jp/book/69838/page/1699199


Whose Crisis, Whose Future?  2013/04/28

世界のトレンドとは福祉国家と石油経済の解体だ。

イラクと日本国においては、同期して市場原理主義に社会改変されているのだが、前者は戦争装置によるハードな改革であり、後者はメディア装置によるソフトな改革であると言えるだろう。

GHQによって精神解体された我々は、イスラムのように超越者を裏づけとする絶対のエートスを持たない、いわば空洞化した精神の民族なのであり、侵略集団は激しい暴力を起動することなく、情報統制と衆愚政策によって統治可能であると判断している。

石油経済とは、原油の決済代金を公共福祉や社会整備事業に投入する共生的な社会システムであり、フセイン政権は独裁と批判されながらも中東トップレベルの教育、医療、食料政策を施していたのだが、それはレーガノミクス以降の米国を遥かに凌ぐ高度な水準であったわけだ。

占領統治下におけるイラクでは「ワシントン・コンセンサス」が強行され、それは民営化、自由貿易、資本規制撤廃、福祉・医療・教育の削減という略奪スキームの発動であるのだが、国家議会から地方議会にいたるまで閣僚や議員は米軍による任命制であるため、民意が反映される余白は皆無に等しい。

バグダッドの陥落直後から、米国はシンクタンクとともにイラクの公営企業売却を策定したのであり、彼らが企業価値を高めるため従業員を大量解雇したところ失業率は70%近くに跳ね上がり、そのうえ入札から国内事業者を締め出し、主用200社の大半を欧米資本に落札させた挙句、破壊したインフラや公共施設の復旧事業を、ベクテルなど米国企業が全面的に独占したわけだ。あらゆる爆撃が、それを目的として周到に計画されていたことは語るまでもない。

構造改革により関税障壁を撤廃したところ、周辺国から安価な工業製品が流入したため国内生産者は壊滅状態となり、そのうえ劣化ウラン弾により放射線由来の疾患が爆発的に増加するなか、無料医療と食料配給を廃止し国民を絶望させるのだが、彼らはこの渦中さらに原理主義を推進し、多国籍企業がイラク国内で得る投資利潤100%の本国送還を合法化したのである。

占領軍は復興とセキュリティの応負担を事由として、20兆円分の原油を確保したとみられているのだが、さらに彼らは「新石油法」の制定によってシェル石油やブリティッシュ・ペトロリアムが恒久的に売買益を得る制度を確立したのであり、つまるところ一連の行動は公共資源と経済市場の略奪を目的とした戦争行動に過ぎなかったわけだ。

ハリー・バートン、ロッキード・マーティン、KPMG、RTI、パーソンズなどを筆頭とする多国籍企業群の株価が暴騰し、そのステークホルダーである当時の閣僚らは莫大なインセンティブを確保したのであり、それは軍事という米国本質の体現であり、いずれの時代においても戦争が最も金になるビジネスであるという、普遍事実の証明なのだろう。

陰謀論と一蹴されがちなのだが、経済現象から帰納すれば、9.11とは明らかにイラク攻撃を目的としたフィクションなのであり、それはアラモ砦、メイン号事件、真珠湾、トンキン湾、ルメイラ油田など、資本帝国が人類史に創作する虚構劇のひとつに過ぎないのだと思う。

メディアは侵略行動に抵抗するイラク市民をテロリストであると文脈化しているのだが、鎮圧には5万人の民間兵力が投入されているのであり、つまりブラック・ウォーター社などの傭兵による殺戮が横行しているのであり、すでに様相は「国家VS国民」ではなく「市場VS国民」なのであり、本質とは激化する資本と人間の二項対立なのだろう。

イラクと日本国はグローバル資本が欲望する地球最後のフロンティア(新世界)であるのだが、壮絶な新植民地主義の暴力に飲み込まれ、すでに解体の途上にあることは明白であり、イラク戦争と小泉政権がシンクロし、両国がグローバリズムによって平準されたことは偶然ではなく、それは新しい世界秩序形成にむけたアジェンダ(予定表)に他ならない。

この前提において、TPP加盟とは我々の体系がプランテーションとして確立される終局的フェーズを意味するのであり、米国の対日戦略が全領域的に完成し、それを触媒とする多国籍企業が絶対者として君臨することを示唆するのであり、すなわち今後100年以上におよぶ日本民族の奴隷化と同義である。
http://alisonn.blog106.fc2.com/blog-entry-423.html


07. 中川隆 2013年9月09日 14:16:21 : 3bF/xW6Ehzs4I : W18zBTaIM6

松本 潤一 ・ 名古屋大学大学院

米国のシリアへの軍事介入問題の背景には、米国の経済的利益と真っ向から対立するアサド政権と、それを擁護するロシア・中国という構造があるが、この記事からはそれが完全に欠落している。

どこの誰が書いたのかと思ったら、「英エコノミスト誌」だそうだ。
意図的に書かなかったとしか思えない。

イラク戦争の時もそうだが今回のシリア問題も、化学兵器など大義名分に過ぎない。考えてみれば当然で、銃の掃射による虐殺と化学兵器による虐殺に差があるとは思えないし、そもそも内政干渉だ。

他国の内政問題に介入するほど、米国は暇人ではない。

真の理由はドルの基軸通貨としての地位を維持するためであって、それを裏付けているのは石油取引のドル決済だ。

フセインはそれを拒否したから潰された。

アサド政権も石油取引をドル以外の通貨で行おうとしている。

ドル石油体制が一度崩壊すると、少なくともドルが唯一の基軸通貨ではなくなり、世界最大の赤字国家にも関わらず、基軸通貨ゆえに保たれているドルの信頼が揺らぐ。(ユーロはユーロ内のみの基軸通貨)

ドルの信頼が揺らげば米国は超大国・覇権国家の地位を維持できない。

だから本当に使用されたかどうか怪しい化学兵器を口実にして、執拗にアサド政権をつぶそうとするし、ロシア・中国がアサド政権を支援するのも、米国覇権を終わらせてそれぞれが覇権国家になりたいからだ。

イラク戦争の時とは違い、リーマンショック後の米国は、もはや中東とアジアで両面作戦を展開できるほど力が残っていない。だから本当に米国を駆逐できるかもしれないと思い、中露とも躍起になって対抗している。

ロシアは中東から米国を駆逐したいから、できれば軍事介入を制止したいし、介入してきたらシリアの側に立つだろう。

中国はアジアから米国を駆逐したいので、中東に介入して欲しいと思っていて、できるだけ長期化して欲しいと思っている。

だからいざ米国が介入すると、裏で積極的にシリアを支援するだろう。

となるとこの問題はこれまでの中東問題よりも、長引く&拡大する可能性がかなり高い。


08. 中川隆 2013年12月29日 09:48:18 : 3bF/xW6Ehzs4I : 2D6PkBxKqI

サダム・フセイン  裁判で述べた言葉 2005年12月
http://www.youtube.com/watch?v=PudoIlLvpCU

サダムフセインのジョーク
http://www.youtube.com/watch?v=y_Iq3r-TZbM


09. 中川隆 2015年3月04日 21:43:10 : 3bF/xW6Ehzs4I : b5JdkWvGxs

もっとも残酷残忍な国は? 2015-02-18

 この見出しを見て、これまで私のブログを読んで下さっている皆さんは、「このブログの筆者は米国だと言いたいのだな」とお考えになるでしょう。ピンポン!です。

 私は九州大学教養部に奉職中、1959年、シカゴ大学物理学科からの招待で渡米して2年を過ごし、その直後に、サンホゼとボルチモアに計1年半ほど滞在し、1968年にはカナダに移住してしまいました。私は、その頃までは、米国という国は色々の意味で良い立派な国だと思っていました。ところが、それから約半世紀後の今では、米国は建国以来一貫して極めて残酷残忍な国家であると、私は考えています。日本には米国に好意を持っている人々が沢山おいでですから、この老人の考え方に不快感を覚える向きも多いでしょうが、私とて好きでこうなったのではありません。十分の理由があってのことです。否定の余地のない事実の数々を学び知ったことで、この考えにならざるを得なかったのです。

 刃物で人の首を刎ねたから残酷残忍というのは如何なものでしょうか。日本でも昔はよくやりましたし、フランスはその技法で歴史的にとりわけ有名です。Point-blankで射殺するのは残酷残忍ですが、高空の無人機から狙い撃ちするのは人道的ですか?

 2013年8月30日付のブログ記事『もう二度と幼い命は尊いと言うな』で、私は、

「8月21日、シリアの首都ダマスカスの近くの反政府軍の支配地区に対してロケットによる化学兵器(毒ガス)攻撃が行なわれ、多数の一般市民が殺されました。死者数は初め約1300人と発表され、現在では数百人とされています。」

と筆を起こし、

「今回の毒ガス使用が米欧の直接軍事介入の口実として行なわれたと私が確信する理由」

を述べました。幸いにも、ロシアの外交的努力のおかげで、米欧の直接軍事介入は阻止されましたが、シリアのアサド政権打倒を目指す米国は、代理戦争の形態であらゆる汚い手段を用い、とうとうイスラム国という恐ろしい擬似国家まで生み出してしまいました。

 シリア紛争がシリアの一般国民に与えている被害は甚大です。国連難民高等弁務官事務所の2014年3月の発表では、

「シリア紛争が始まってから3年が経過し、家を追われた人の数は900万人を超えた。シリアはまさに世界的に最も多くの難民、避難民を出す国になってしまった。シリア周辺国で難民登録を行った、もしくは難民登録待ちのシリア難民の数は256万人を超える。またシリア国内で避難を強いられている国内避難民の数は、650万人を超えている。難民、国内避難民を合わせた数は、シリア紛争開始前のシリア全人口の40%にあたり、そのうち約半分が子どもである。」

となっています。死者は10万人を優に超えていると推定されます。

 シリアで起こっている事態については、各国政府筋、シンク・タンク、専門家、論客などのあらゆる見解や分析が世に満ち満ちていますが、我々一般庶民にとって最も基本的な設問は

「米国がシリアの政権変革(regime change)を行おうとしなかったらどうなったか」

ということでなければなりません。“歴史的に現実に起こったことを、起こらなかったら、と仮定する議論は馬鹿げている”と言わないでください。クレオパトラの鼻の話ではないのです。イラクにしろ、リビアにしろ、シリアにしろ、もし、米国がそれぞれの国の政権を、武力を行使して、変えようとする行為に出なければ、百万のオーダーの庶民が戦火に殺され、千万のオーダーの庶民が難民化することはなかったのです。

イラクとシリアの国内でクルド人たちがひどい扱いを受けていたのは事実です。彼らが反政府行動に出たのも当然です。しかし、いわゆる北米インディアンの人々も同様の取り扱いを米国国内で受けています。けれども、米国と違い、イラクもリビアもシリアも、遠くの国に出かけて行って、内政に干渉し、武力で政権変革を試みるようなことは何もしていませんでした。国内では、国民はそれなりに一応平和な日常生活を営んでいました。いま私の思いは特にリビアの人たちの上にあります。「カダフィが生きていた頃は良かったなあ」というのがリビアの大多数の人たちの痛切な思いであるに違いありません。

 「もっとも残酷残忍な国は?」という設問に戻りましょう。

前掲の2013年8月30日付のブログ記事で、私は、毒ガス(サリン)を使ってシリアの一般庶民数百人を殺戮したのは反政府勢力側であり、その背後には米国があると判断しました。

毒ガス使用からわずか10日後の時点での、ズブの素人の断定でしたが、それから2年半後の現在、私の断定が正しかったと考えられる十分の理由があります。当時オバマ政府は、アサド政権側が行った確かな証拠を持っている、と言っていましたが、提出されてはいません。

もし世界に提示できる確たる証拠があれば、それを口実に、米国は、今からでも、リビアを破壊し尽くしたと同様の猛爆を、国連を操作して、シリアのアサド政権に対して開始し得るのです。勿論、そんなもののある筈はなく、むしろ、オバマ大統領の手元には、使用されたサリンの出所などについてのはっきりした資料があるのだろうと、私は推測します。

 ブログ記事のはじめの部分に引いたワシントン・ポストの8月23日付の記事を再録します。そのフォト・ギャラリーには、白布に包まれた幼い子供たちの死体が魚河岸の魚のように並べられた写真があります。他の写真の多くも子供の犠牲者の様子を撮ったものです。ご覧になって下さい。

http://www.washingtonpost.com/world/national-security/in-syria-chemical-attack-allegations-us-and-allies-push-for-immediate-probe/2013/08/22/00f76f2a-0b6f-11e3-8974-f97ab3b3c677_story.html?wpisrc=nl_headlines

これらの子供たちは、米国が打倒したいと考えるアサド政権に対する空爆を開始する口実を捏造するために殺されました。この国家的行為とイスラム国の誘拐殺人行為とどちらがより残酷残忍でしょうか。

 ここで、私としては、何度でも申し上げておきたいことがあります。どこからやって来たのかわかりませんが、「一つの命は、どれも同じく、一つの命だ」という片言のような言葉が私の心の中に住み着いています。“いたいけない子供だから”とか“愛くるしい少女だから”という気持ちを私は持ちたくありません。偽の証拠の捏造する目的で、誰が殺されても、私は同じように憤りを感じます。

 2002年4月、ベネズエラでクーデターが起こり、ウゴ・チャベス大統領は反乱軍側に拘束され、大統領の座から追われましたが、47時間後には、貧困層大衆のチャベスに対する圧倒的支持の表明と軍部内の大統領支持勢力によって、クーデターは失敗に終わりました。このベネズエラ政府転覆の試みの背後に米国の手が働いていたことは否定の余地がありません。

 先週木曜日2月12日に現ベネズエラ大統領ニコラス・マドゥロは,新しいクーデター計画を阻止したと声明を出し、政府が把握した計画の詳細を発表しました。今回も米国のバックアップがあったことは見え見えです。クー実行の予定日は2月12日でした。このクーデター挫折のニュースは日本では殆ど報じられなかったようですが、十分の関連情報がネット上で入手可能です。

 計画の残忍性の点で、2月12日に行われる筈であった暗殺計画の標的の中に、マドゥロ大統領と政府の高官の他に、反政府側の何人かも含まれていたことに、私は特に注目します。

 2002年4月のクーデターの際、4月11日の午後、チャベス政府側が反政府のデモ隊に向けて発砲して十数人が射殺され、約60人が負傷したと報じられ、これがクーデターの決定的瞬間になったというのが、ニューヨークタイムズなどの主要メディアの主張したところでした。

しかし、その後、反政府デモ隊に発砲し、残忍な殺戮を行ったのは、政府側ではないことを証拠付ける映像の存在が確かめられ、殺戮は反政府側の自作自演であったことが判明しています。今回の、失敗に終わった政権乗っ取り計画で、反政府側の人間も暗殺の対象になっていたという事実は、前回と同じような偽りのストーリーのでっち上げの計画が事前に組まれていた証拠だと思われます。

米国のネオコン金融経済システムにべネズエラを組み込むという政策の実行のためには、その手先となって動いている人間たちでも、利益があれば、暗殺して省みないというのは、これぞ冷酷残酷残忍の極みと言うべきではありますまいか。

 言うまでもありませんが、もし米国の残酷性を思想的問題として本格的に論じるとするならば、第二次世界大戦での米国空軍の日本に対する空爆の問題を正面に据えなければなりません。これは、日本軍の行為についての反省、あるいは、米国の原爆使用の是非の問題と一応切り離して、考察すべき問題、考察可能の問題です。核抑止力の思想の中核とも深く結びついた問題です。いつの日か、この問題と対決したいと思っています。
http://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/3c0b797a4727fc9dc5279fd9a8cf04b5


10. 中川隆 2015年3月12日 17:47:57 : 3bF/xW6Ehzs4I : b5JdkWvGxs

なぜ「正義の味方」は、暴力と破壊を生み出す元になるのか? 2013-08-01
http://www.bllackz.com/?m=c&c=20130801T1443000900

「正義を強調すればするほど、世の中は悪くなる」と言えば、驚く人もいるかもしれない。しかし、それは事実だ。

もし、あなたがそれを知らなかったとしても別に驚く必要もない。なぜなら、それはわざと気が付かないように教育されて来たからである。

子供の頃から「正義のために悪を滅ぼす」ことを強調する馬鹿げた漫画やドラマや映画を見てこなかっただろうか? 今もそんなものを見ているのではないだろうか?

これは、子供に「正義のために悪を滅ぼすのは徹底的に正しい」という刷り込みを行うものでもある。子供の頃から、そんな刷り込みがなされている。

テレビが為政者の都合の良いものを垂れ流しして国民を洗脳しているのはよく知られている。

日本だけではない。アメリカでは特に、正義のヒーローが崇拝されていている。なぜ、政府は「正義のために悪を滅ぼす」ようなワンパターンを延々と国民に見せているのか。

暴力が正当化され、暴力が崇高なものになっていく

政府が国民に「正義のために悪を滅ぼす」ようなストーリーを崇拝させているのは、裏の意味がある。政府は、いずれ国民に「国のために戦わせる」必要があるからだ。

そのためには、国民が「正義のために悪を滅ぼす」という行動や思考に慣れていなければならない。国が「正義のために」と言えば、国民は無意識に「悪を滅ぼす」と条件反射で思うようにしておかなければならないのである。

それが完成すれば、国は「正義」を強調するだけで、国民を無意識に暴力に駆り立てることが可能になる。それを徹底的に行っているのが、アメリカであると言える。

正義を強調すると必然的に二元論に行き着く。

つまり、「正義の側」と「正義ではない側」とに二分する。水と油のように、それはくっきりと別れ、違う世界になる。

二元論に陥ると、どうなるのか。相手を受け入れる余地が、完全になくなってしまうのだ。相手は悪なので「滅ぼす対象」となるのである。

自分が正義の側に立っていると思うと、必然的に相手は「正義でない側=悪」というシンプルな構図に行き着く。

自分が正義だと強調すればするほど、対立する相手が完全なる悪になってしまう。

(1)私は正義だ。
(2)私と敵対する相手は悪だ。
(3)悪は倒さなければならない。
(4)相手を滅ぼすのは正当な行為だ。

自分が正義の側にあると思えば思い込むほど、正義のために相手を破壊しようという動機(モチベーション)が上がっていく。

暴力が正当化され、暴力が崇高なものになっていく。あるいは、相手(悪)を破壊することが、使命感溢れる行為へと祭り上げられる。

現場では残虐な殺戮行為が起きているのだが、それが思想的には正しいものへとなっていくのである。

正義を強調することによって、暴力が崇高なものになっていく。


このような二元論を好むのがアメリカという国

このような二元論を好むのがアメリカという国である。アメリカは自らを正義だと主張し、そして自分たちに挑戦してくる国を「正義に挑戦してくる国」だと見なす。

正義に挑戦してくる国というのは、当然「正義ではない国」という二元論が働くので、「敵対国は悪だ」という思想になる。

食い詰めたイギリス人(白人)がアメリカ大陸に渡ったとき、その大陸にはすでにネイティブ・アメリカン(先住民)たちが住んでいてひとつの文化を築きあげてきた。

しかし、白人たちは彼らが野蛮人であり、このような野蛮人を駆逐するのは正義だと思い込んだ。

つまり、自分たちのほうに正義があり、あちらは正義ではないという二元論に囚われた。

そこで何が起きたのか。

白人による先住民の大虐殺である。自分たちは正義であり、正義を脅かす先住民は「悪の権化」であり、それは徹底的に駆逐されなければならないと考えたのである。

正義の名のもとに大量虐殺が起きて、それが正当化された。

アメリカはこの二元論を第二次世界大戦にも応用して、自分たちは正義の側にあり、日本は「悪の権化」であると徹底的な刷り込みを国民に行なって、「正義と悪」の戦いに昇華させていった。

真珠湾攻撃はアメリカが日本を追い込んで「行わせた」という歴史が明るみになって来ているが、それは日本を「悪」にして、自分たちを「悪を懲罰する国=正義の国」という大義名分に必要なことだったのだ。

日本を壊滅させるのは正義であり、原発二発を落とすのもまさに正義の行使だったのである。

ソ連との冷戦もまたそうだった。アメリカ国内では資本主義が「正義」であり「正当」であり「正しいもの」だったので、それに挑戦してくる共産主義は「悪」であり、「悪魔」であり、「邪悪なもの」だった。

そして、悪と対抗するために、核爆弾を作って作って作りまくって世界を何回も破滅させることができるまでにそれを備蓄した。世界を破壊する兵器は「正義のため」に作られた。

そのとき、アジアでは共産主義が浸透し始めていたが、アジアを共産主義から守るのは「正義」だったので、アメリカは共産主義=悪からアジアを守るという名目でベトナムに介入した。

アメリカはベトナムに上陸して、傀儡政権を打ちたて、北部を絨毯爆撃し、ナパーム弾で森を焼き、農地を焼き、人を焼き殺し、枯葉剤をばら撒いてベトナム女性が産む子供を奇形児だらけにしたが、それは何のためだったのか。

すべては、正義のためだったのである。

戦争にもルールがあったはずだ。たとえば、非戦闘員を殺してはいけない、捕虜を殺してはいけないというルールである。

アメリカは原子爆弾で日本の非戦闘員を焼き殺し、ベトナムでナパーム弾や枯葉剤をばら撒いてルール無視の戦闘を行なってきた。

正義の名のもとに、それが行われた。

ベトナムが絨毯爆撃されたのも、正義のためだった。


正義とは胡散臭いものであり、一方的なもの

やがてその正義はさらに暴走していく。アメリカは2001年以降にイスラム国家のいくつかを「悪の枢軸国」と吐き捨てて、イラクが大量破壊兵器を持っていないというのに戦争に突入していくのである。

イラクは大量破壊兵器を持っていなかったが、アメリカは大量破壊兵器を持っていた。

レイセオン社の製造したパトリオット・ミサイル(愛国者爆弾)はイラク国民の土地で炸裂して非戦闘員であるはずの女性や子供たちが次々と死んでいった。

無人機爆撃、劣化ウラン弾、バンカーバスター。イラクではあらゆる大量殺戮兵器が投入されて、今や累計で100万人もの人たちが死んだとされている。

正義を強調すればするほど相手が悪になる。そして、そこから悪を倒せという暴力が生まれる。正義が暴力を産み出す。

だから、逆説的な話になるが、正義を強調しないほうが余計な暴力を産み出さないという言い方もできる。

正義を強調する人、正義というものが頭にある人は、自分や自分の属している社会を正義と見なし、それ以外を悪と見なす二元論に囚われる。

「どちらが正義か?」という問いは、どちらの立場に自分が立つかによって違ってくる。立場が違うと、それが正義にもなるし、悪にもなる。

すべては立場の問題だ。

イラク戦争は、アメリカは正義でイラクは悪だという論理で行われた。


正義という言葉は悪用されやすく、人々は騙されやすい

アメリカ人は先住民を大虐殺しても野蛮人を殺すのが正義だったと胸を張っている。日本に原爆を落として女性や子供を虐殺しても正義だと胸を張っている。

イスラエル人はパレスチナ人を大虐殺しても、パレスチナ人はテロリストだから自分たちに正義があると主張して胸を張っている。

パレスチナ人は自分たちの闘争を先祖代々の土地を奪ったイスラエル人と戦うのは正義の戦いだと主張して胸を張っている。

かつてキリスト教徒が十字軍を作ってキリストと敵対する宗教を悪と決めつけて異教徒を殺戮して回ったが、その殺戮を正義だと胸を張っていたのである。

同じことはイスラムが布教していく中でも見ることができる。オスマン帝国がキリスト教もユダヤ教も弾圧して迫害していく歴史はヨーロッパ人は今でも知っている。

オスマン帝国はイスラムを正義と見なし、その他を悪と見なしたのである。

しかし、私たちは冷静な目で歴史を振り返ると、正義を主張していた国や宗教や人たちには特に正義の根拠も何もなく、ただ自分たちの立場を正当化しているだけだというのが見えるはずだ。

正義を強調している人は、暗に自分の立場が有利になるように正義を利用しているわけで、単なる利己主義者、利益誘導者だということもできる。

正義という言葉は悪用されやすく、人々は騙されやすい。あまりにも内容のない正義が多いので、もう正義という言葉は信用しないほうがいい。

タチの悪い国、タチの悪い人たちがいる。彼らは、意図的に二元論で集団を分離し、暴力を正義と結びつける。しかし、誰もその深層に気がつかない。騙されるのである。

騙されないためには、私たちも自衛する必要がある。

まずは正義という言葉が「騙しのひとつ」であることに気がつくべきだ。

正義とは胡散臭いものであり、一方的なものであり、信じるに値しないと思うくらいで釣り合いが取れる。正義はどこにもない。正義の名のもとに行われた暴力なら、どこにでもある。

家族や友人を殺された人たちにとって、相手は正義の味方ではない。二元論の中では、正義という言葉自体が騙しの言葉である。
http://www.bllackz.com/?m=c&c=20130801T1443000900


11. 中川隆 2015年12月06日 14:46:07 : 3bF/xW6Ehzs4I[1094] : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw

トルコのロシア爆撃機撃墜事件とその石油利権がらみの背景について 2015年11月30日

国際政治事件の背景に石油利権がもとに起きているISがらみのトルコとロシア間事件の背景の黒幕組織について考察します。

トルコ政府がロシアの爆撃機が領空侵犯したとして、撃墜した上パラシュート降下中に一人を地上から射殺したと報じられている。勿論双方の発表は異なっているので、これはプーチン側の発表である。しかし、同時に映像も公開されている。確認できるのは、パラシュート降下中の飛行士を地上から射殺していることであり、これは国際法違反である。ゆえに、領空侵犯したから国際法に基づき撃墜したとの弁は、わずか17秒の領空侵犯があったから撃墜した(こんな短時間にパイロットが軍からの判断指示を受けるの無理!待ち構えていた筈だ)との言い訳とともに信憑性に問題がある。


衝撃ロシアプーチン側が真実を語っていると思われる。

少しずつ真実が分かってきてトルコ側は窮地に陥りつつある。しかし、日本の公式メディアであるNHKは、両者をいまだどちらが真理かは判定付かずの立場で、それぞれ政府の言動を報じているに過ぎない。


■NHKニュースWEB
ロシア トルコに経済制裁の大統領令
11月29日 5時39分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151129/k10010323131000.html

今回も石油利権が絡んでいる。ISの資金源は石油であり、その闇ルートの石油を世界に流通させている石油メジャーが存在する。

衝撃IS⇒トルコ石油公社⇒(米)エクソン・モービルと(英)ロイヤル・ダッチ・シェルが購入・流通元

背後の黒幕は、米国ロックフェラー一族の石油企業と英国ロスチャイルド一族の石油企業と言う事になります。

 財閥の要請どおりに動くのは、米オバマ大統領も同じですから背後に米英有りという事です。(これは、大統領選に巨額の資金が必要な事からそのスポンサーの思惑通りに政治を行うと言う宿命が米大統領には付きまとうからです。米大統領のスポンサーはロックフェラー財閥です。昨日NHKでも夜9時から放送していたようですが・・・)

以下それを明らかにしているメルマガを紹介します。
以下転載 


(No.177)
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鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編
中東で起きている壊滅的な暴力の陰に潜む巨大な存在を見よ
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現在、中東で暴力が吹き荒れているが、ISISの資金源は石油の闇売りであると言われている。ISISは石油を盗削して、それをトルコに闇ルートで売り、トルコがそれを国際市場に流していたとされる。

これを暴露したのがロシアのプーチン大統領である。

2015年11月24日、トルコはロシアのスホイ24戦闘機を撃ち落とした。ロシアが石油施設やタンクローリーを片っ端から空爆で破壊するので、トルコの石油闇ビジネスが危機に瀕するようになったからだ。

2015年11月25日、プーチン大統領は次のように述べた。

「ISISは石油の密売から得られた数億ドル、あるいは数十億ドルという莫大な資金を有している」

そして、ロシアのマスコミが補足するように、その石油密売の黒幕は、トルコのエルドアン大統領の息子であるビラル・エルドアンが支配する石油会社「BMZ」が関わっていると詳細を発表した。

これにエルドアン大統領は激怒して、ロシアに「恥を知れ」「トルコはISISの石油と関わっていない」と激しく抗議した。


▼ ISISの陰にトルコ。そして、トルコの裏側にいる者
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しかし、そう言っている矢先に大統領の息子ビラル・エルドアンがISISの幹部とにこやかに会食している現場写真が出回ってエルドアン大統領は窮地に陥る。

その結果、2015年11月28日には、「今回の事件で、本当に悲しんでいる。起きなければ良かった」と一気にトーンダウンしていった。

衝撃ISISが大量の石油を売りさばき、それを備蓄し、国際市場に売るには、もちろんテロリスト単独ではできない。その裏には国家が絡んでいたのは明白だ。それがトルコであることを、ロシアのプーチン大統領は暴露した。

さらにロシアは、ISISに関わっているのがトルコだけでなく、他にもあることを示唆している。

衝撃トルコで石油を掌握しているのは国営石油企業TPAO(トルコ石油公社)である。この「TPAO」と提携関係を結んでいるのが、イギリスのロイヤル・ダッチ・シェルと、アメリカのエクソン・モービルである。矢面に立っているのはトルコだが、このトルコの裏側にいるのが米英の巨大石油企業だ。石油業界を掌握しているのは、今でも「スーパーメジャー」と呼ばれる4つの企業である。

(米)エクソン・モービル
(米)シェブロン
(英)ロイヤル・ダッチ・シェル
(英)BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)

衝撃エクソン・モービルとシェブロンは、ロックフェラー一族の石油企業、ロイヤル・ダッチ・シェルとBPはロスチャイルド一族の石油企業となる。

つまり、どういうことなのか?

▼ 否が応でも「スーパーメジャー」の標的になる
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ISISはシリア・イラク一帯を超暴力で石器時代にまで文明を退化させた。シリア・イラクの人々はインフラも崩壊し、仕事もなく、日常的に暴力が吹き荒れる地で崩壊した建物に潜んで生活している。

さらに、絶望してヨーロッパ方面に難民として溢れ出しているが、他国で福祉にすがって生きなければいけないわけで、言ってみれば極貧の流浪者である。

中東地域からはいくらでも石油が噴き出るので、本来であればシリアもイラクも豊かな国々となって、アメリカやヨーロッパの国民よりも豪奢で安楽な生活を送ってもおかしくなかったが、そうなっていない。

その理由は、石油や資源のある国は、「スーパーメジャー」が石油利権を奪うために、戦略的に国家混乱を引き起こしているからだとしか言いようがない。

衝撃石油のあるすべての国家は、否が応でも「スーパーメジャー」の標的になるのである。

サウジアラビアのように、スーパーメジャーに従順な一族は保護される。たとえば、サウジアラビアのサウド一族のように、徹底的にスーパーメジャーに従順な一族は安泰だ。

しかし、スーパーメジャーに反旗を翻すカダフィ大佐やサダム・フセインのような存在は存在そのものが排除される。

サダム・フセインもカダフィ大佐も石油を掌握した後、ドル通貨基軸からも離脱しようとユーロ決済での取引をするようになった。

しかし、そうやってアメリカやアメリカを支配するスーパーメジャーの支配下から逃れようとした人間は独裁者だろうが何だろうが、容赦なく叩き潰されるのである。

石油は現代文明を回す「血液」であり、私たちは石油で築かれた文明で生活している。逆に言えば、この石油を支配することによって「地球」そのものを支配することができるということになる。

▼ 中東で起きている破滅的な事件の本質とは?
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1990年代以降の人間の歴史は、そのまま石油の歴史だ。それは現代文明が石油によって成り立っているからだ。そして、その石油は、すでに石油は1990年代に「スーパーメジャー」4社ががっちりと掌握している。

・・・・中略・・・・・・

台頭するようになった各国の政府系石油公社がスーパーメジャーのくびきから逃れようとすると、凄まじい力で叩き潰されていく。こうした状況は、あと数十年変わることなく続く。

スーパーメジャーというのは、歴史すらも変えていく恐ろしいほどのパワーを持ち合わせているのである。

私たちは、中東で起きている破滅的な事件で「暴力」に目を奪われてしまう。しかし、その物事の本質はそこではない。私たちは、中東で起きている壊滅的な暴力の陰に潜む、「スーパーメジャー」という巨大な存在を見なければならない。

衝撃ISISの資金源やトルコ政府の密売事件を見ても分かる通り、中東一帯で起きているのは、実際には「石油」を巡る経済的事件である。歴史の裏には石油がある。
http://open.mixi.jp/user/29150853/diary/1948251485


12. 中川隆[1094] koaQ7Jey 2015年12月25日 10:44:02 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[478]

地球上の石油を掌握しているのは、スーパーメジャーと呼ばれている4社の石油企業である。

エクソン・モービル(ロックフェラー系)
シェブロン(ロックフェラー系)
ロイヤル・ダッチ・シェル(ロスチャイルド系)
BP(ロスチャイルド系)


この4つの多国籍企業は地球を覆い尽くして石油を支配しており、すべての国で隠然たる力を持つ。

東南アジアにもこの4つの企業が複雑に入り込んでいるのだが、エクソンは「エッソ・グループ」として東南アジアに潜り込み、シェブロンは今後「スター・ペトロリアム」としてタイにコミットすることになる。


文明の血液である石油。石油がなくなると現代文明も終わる。この石油を掌握しているのはスーパーメジャーと呼ばれている4社の石油企業である。この4つの多国籍企業がすべての国で隠然たる力を持つ。


絶対に自らが表に立たないようにする戦略を採る

欧米のスーパーメジャー4社は、実はタイでも東南アジアでも中東でも中南米でも、その国のエネルギー産業に君臨することができるだけのパワーと財力があるのだが、もちろんそんなことは決してしない。

なぜなら、その国のナンバーワンのエネルギー企業になってしまうと「欧米がエネルギー企業を使って国を植民地にしている」という批判が必ず湧き上がるからである。

2008年頃、中国のペトロチャイナがアフリカ・スーダンで石油事業を一手に引き受けたところ、ダルフールの虐殺者に手を貸していると大批判が巻き上がったことがあった。

実のところ、全世界に網を張っているのは中国よりもスーパーメジャー4社の方なのだが、スーパーメジャー4社は実に巧妙に「君臨」を避けて実体を隠しており、その国のエネルギーを制していても、絶対に自らが表に立たないようにしている。

タイではエクソンとシェブロンの2社が深くエネルギー分野にコミットしているのだが、常にシェアはPTT(タイ石油公社)に取らせて自分たちは陰に隠れている。

エクソン・モービルは「エッソ」というブランドで2位、シェブロンは今後「スター・ペトロリアム」という名前でタイのエネルギーに食い込むことになる。

つまり、石油事業ではスーパーメジャーが二位と三位のシェアを持っており、しかもその両者は巧みに名前を隠してタイ国民にアメリカがエネルギー支配をしていると気付かないようにしているのである。

スーパーメジャー4社は200ヶ国以上の国、要するに地球上のありとあらゆる国家に入り込んでエネルギー支配をしているのだが、それがまったく問題にならないのは、自分たちの名前がそこに出てこない戦略を採っているからである。

誰も気付かない中で、エネルギーによってほぼ地球を制覇しているのがスーパーメジャー4社であり、その支配の構図は文明が終わるまで変わらない。


タイではエクソンとシェブロンの2社が深くエネルギー分野にコミットしているのだが、常にシェアはPTT(タイ石油公社)に取らせて自分たちは陰に隠れている。
http://www.bllackz.net/blackasia/content/20151225T0304390900.html


13. 中川隆[1217] koaQ7Jey 2016年1月18日 22:07:31 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[956]

2016-01-18
ベネズエラが国家崩壊の危機に直面し、経済緊急事態を宣言


2016年1月15日、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が「経済緊急事態」を宣言する騒ぎとなっている。ベネズエラはもう国家崩壊寸前であり、どうにもならないところにまで追い込まれてきている。

ベネズエラがこのようになったのは、原油価格の暴落に原因がある。ベネズエラは産油国であり、輸出の95%を石油に頼っている国である。

つまり、この国の浮沈は石油価格にかかっていたわけで、石油が暴落したらこの国も危機に陥る構造だったのだ。原油価格は2014年の半ばから怒濤の如く暴落するようになっており、今もまだその傾向が続いている。

ベネズエラの国内経済は大混乱し、インフレ率は2015年で210%を記録していた。食料も、衣料品も、日用品も不足して、人々は何も買えない状態に陥ってしまった。

そのためにベネズエラ政府は国営スーパーで配給制を始めるようになったが、それでも物資が手に入らず、反政府デモも過激になっている。


ベネズエラの輸出が、ほぼ石油しかないのであれば、この国が立ち直るのかどうかは石油価格がどう推移するかで決まる。

石油価格が持ち直さないのであれば、政権が変わったところでベネズエラが正常化する要素はまったくない。

悪いことに石油価格はさらに落ち込んでいる。

2015年はベネズエラにとって最悪の年だったが、2016年も最悪が継続するということであり、これがマドゥロ大統領の「経済緊急事態」の宣言につながっている。

ベネズエラ政府には、もう打つ手はない。インフレ率はさらに上昇し、このままでは2016年のインフレ率は300%を超えて400%に跳ね上がるのではないかとも予測されている。

ベネズエラの失業率は2012年までは7%で推移していて、これも決して低い数字ではないが、現在はもうそれどころではなく、2015年は14%に達していたはずだというのがIMF(国際通貨基金)の予測だ。

経済停滞と、物不足と、失業と、インフレが同時に起きているわけで、これは典型的な「スタグフレーション」である。

様々な局面の経済状況の中で、最悪の局面を示しているのが、この「スタグフレーション」であるのは言うまでもない。

少し考えればそれがどれほどひどい状況なのか想像できるはずだ。何しろ仕事がなくなって、モノもなくなって、かろうじて手に入るモノは今までの3倍も4倍も高い価格が付いているのだ。

手に入らないのは贅沢品のようなどうでもいいものではない。牛乳、米、肉、卵、野菜、果物、コーヒー、洗剤、トイレットペーパーのような、日々暮らす上で大切なものである。

ベネズエラでは新聞社や出版社も続々と廃刊に追い込まれているのだが、これは弾圧の結果そうなったわけではない。その前に印刷するための「紙」が手に入らなくなってしまったからである。


劣悪な状況になってしまっているベネズエラ国内

現在のベネズエラはこの最悪の経済状況に追い込まれて、しかも改善の余地がない。改善どころか石油価格がより下落している2016年はもっとひどいことになる。

すでにベネズエラという国に見切りをつけて周辺国に脱出する国民も多く、すでに150万人以上もの国民がベネズエラから逃げ出したとも言われている。

中には、着の身着のまま、一文無しで逃げ出す国民もいると言われているが、逃げ出しているベネズエラ人の多くは富裕層である。大半のベネズエラ人は逃げ出す金も余裕もなく、国内にとどまるしかない。

仕事もなく、食べるモノもなく、金もないので、犯罪率も急上昇している。

中南米はもともと犯罪率は高い地域として知られているが、ベネズエラも例に漏れず、今では世界最悪と言われているホンジュラスを超えるのではないかと言うNGO団体もある。

ホンジュラスを超える治安悪化なら、世界最悪の部類であると言っても過言ではない。(行ったら殺される。手の付けられない無法地帯、ホンジュラス)

公務員や警察も困窮しているので汚職や賄賂が蔓延して、腐敗が広がっており、それがベネズエラの治安をより悪化させているとも言われている。

石油依存から脱却して、国内の産業を多角化するという政策は長期的な施策であり、急場をしのぐ政策にはなり得ない。

そもそもこの産業の多角化もベネズエラは難しいと言われている。なぜなら、ベネズエラは主要な産業を前チャベス大統領が次々と国有化してしまっていたからだ。

国有化して政府が価格統制しようとしていたのだが、これがベネズエラの産業を停滞させる原因となった。

ベネズエラが95%もの石油依存になってしまったのは、非効率な国営企業で企業の競争力は削がれたからである。

アメリカに挑戦する国家を世界から一掃する

ベネズエラのチャベス大統領は2007年に石油事業を完全に国有化するため、アメリカのエクソンモービルを追い出して石油合弁資産を奪い取ってしまった。

そして、ベネズエラは石油価格の決済をドル建てを止めるべきだと2007年11月17日のOPEC(石油輸出国機構)で主張し、ドル通貨基軸からの脱却を訴えた。

それは、南米からアメリカを追い出し、中国やロシアと組むことによってアメリカの覇権を奪い取ろうとするチャベス前大統領の試みのひとつだった。

ベネズエラは反米国家としてロシアや中国やブラジルと共にアメリカ包囲網を作ろうとしていたのだ。

しかし、アメリカはドル通貨基軸に挑戦する国や人間を、絶対に許さない。「ドル通貨基軸」こそがアメリカの覇権の中核(コア)だからである。

その結果、どうなったのか。2011年になるとチャベス大統領は癌になり、「自分が癌になったのはアメリカの陰謀だ」と叫びながら2013年に死亡し、ベネズエラ政府は石油暴落によって国家崩壊寸前にまで追い込まれている。

エネルギーを握ることによってアメリカのドル通貨基軸に挑戦しようとしてきた国のすべては、2014年7月から始まった原油価格の大暴落によって国家存続を脅かされるようなダメージを受けている。

2016年に入ってから、ロシアも、ブラジルも、ベネズエラも、中国も、片っ端から経済危機に直面している。

そして、ここ数年、ドル建ての決済から逃れようとしていたサウジアラビアもまた追い詰められはじめた。(原油安に追い詰められていくサウジアラビアと激震する世界)

石油価格の下落は、アメリカに挑戦する国家を世界から一掃する役割を果たしている。

これらの国家が崩壊すれば、もちろんドル通貨基軸は守られ、欧米のスーパーメジャー(エクソンモービル、ロイヤル・ダッチ・シェル、BP、シェブロン、トタル、コノコフィリップス)が全世界を支配することになる。
http://www.bllackz.com/?m=c&c=20160118T1921460900


14. 中川隆[1500] koaQ7Jey 2016年2月13日 12:01:42 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[1370]


2016-02-10
アメリカの都合の良いように、反米国家が窮地に落ちている

世界中の株式市場が変調しているが、これに対して今さら意外感を持つ人はいない。

中国が変調を来したということは2015年6月のバブル崩壊からすでに分かっている。2016年1月になるとさらに怒濤の下げとなって世界中が巻き込まれた。

2016年の変調は今も続いており、それがヨーロッパの株式市場や日本の株式市場にも波及している。

中国が変調を来しているので、全世界の株式市場が不安定になり、その結果、グローバル・マネーが安全を求めて日本の円に逃避している。

マイナス金利導入は中途半端だったので、他の通貨よりも円の方がまだ安全だとグローバルマネーは判断しており、それが急激な円高となって襲いかかった。

日本株式市場が連日のように価格を崩しているのは、日本企業も中国市場に関わっていた企業も多いということや、急激な円高も重なっているからだ。

日本人には投資家が少ない上に、闘志(アニマル・スピリッツ)がない投資家が多いので、株価が下がると蒼白になってみんな尻尾を巻いて逃げ出す。それで実体以上の下げとなる。

需要は減ったのに供給が増えた石油価格

中国経済はその成長の過程で石油をがぶ飲みしてきた。中国の成長が止まったことによって石油価格の需給関係は壊れ、石油価格の暴落は今も止まっていない。

石油が下がれば下がるほど、エネルギー価格に依存していた新興国が窮地に追いやられるようになっており、2016年はベネズエラが巨大な経済崩壊を起こすのではないかと言われている。

ベネズエラは経済が停滞しているにも関わらず、インフレが進んでいるという典型的なスタグフレーションの状態となっているが、もう誰もベネズエラを助けられない。

もしベネズエラが助かるとしたら「石油価格が上昇すること」しかないが、いつ石油価格が上がるのかは今のところ誰にも分からない。

この石油価格の暴落の直撃を受けているのは、ブラジルもロシアもサウジアラビアも同様である。

石油価格が暴落するのであれば、減産して石油価格を吊り上げればいいだけだが、それがそう簡単にいかない。なぜなら、産油国は石油価格の下落分を、さらに大量の石油を輸出することでカバーしようとしたからだ。

つまり、価格が下がったから、さらに大量の輸出をして利益を確保しようとして、ますます自分の首を絞めることになっているのである。

すべての産油国がそうしたチキンレースに乗った結果、需要は減ったのに供給が増えるという馬鹿げたことになって、新興国が崩壊の危機に瀕している。

2016年はいよいよ正念場に来ている。こうしたエネルギーに依存した新興国の経済はもう政府が支えきれないところにまで到達しつつあると言っても過言ではない。

これらの産油国は、エネルギー価格を武器にしてアメリカに挑戦しようとしていた反米国家である。反米国家は今や虫の息にまで追い込まれたと見ていい。


現在は、反米国家が崩壊の危機に瀕している

2015年はドイツにとっても最悪の年だった。VWグループはディーゼルエンジン不正問題が発覚して売上は急減速し、企業が存続できるかどうかの瀬戸際にまで追い込まれた。

VWグループは中国で販売を増やすことによって危機を乗り越えようと画策したが、2015年後半からは中国がバブル崩壊を起こしているので危機打開にはつながらない可能性がある。

VWグループを金融面で支えているのはドイツ銀行だ。

そのドイツ銀行もまた無謀な経営によって破綻の危機に瀕している。このドイツ銀行が破綻したらドイツの中枢が崩壊するも同然になるので、ドイツ政府は絶対に破綻を座視することはない。しかし、生きながらえても低迷を余儀なくされる。

ユーロ圏は移民・難民の問題で激震しているが、2016年に入ってからドイツでも反難民・反移民の気運が人々の間から大きなうねりとなって湧き上がっている。

能天気な人道主義で難民を100万人以上もドイツ国内に受け入れたメルケルは、ドイツ人から総スカンを食らい、支持率は30%台にまで落ち込んでしまった。

EU(欧州連合)はユーロによってドル通貨基軸に挑戦しようとしたが、その中核となっているドイツが崩れたらユーロの権威も崩れていくことになる。

親中派のマスコミやジャーナリストは、ドルが崩壊すると朝から晩までわめき立てているが、現実を客観的に見れば分かる通り、崩壊の危機に瀕しているのはむしろ中国の元や、ユーロ通貨の方である。

アメリカが崩壊の危機に瀕しているのではなく、反米国家が崩壊の危機に瀕している。ロシアが、ブラジルが、ベネズエラが、中国が、ドイツが国家的な危機に瀕している。

ドルが崩壊するどころか、今や世界中が自国通貨よりもドルが欲しいと言う状況になっている。


アメリカに賭けるのは、別に悪い選択肢ではない

今までのグローバル経済は「中国は成長する」という方向でコンセンサスができていた。しかし、もうそのコンセンサスは2015年の中国バブル崩壊と共に砕け散った。

中国の時代はもう終わった。同時に、中国が次の時代の覇権国家になるという馬鹿げた妄想も終わった。

ジョージ・ソロスは「このままでは中国は経済崩壊し、第三次世界大戦が起きる」と予言めいた発言をしているのだが、中国はそうなってもおかしくないほど追い詰められている。

(ソロス予言「中国は経済崩壊し、第三次世界大戦が起きる」)
http://www.bllackz.com/?m=c&c=20150818T1710510900

反米新興国も軒並み破綻危機に見舞われ、EUもその中心となっているドイツが激しい動揺を見せることによってユーロ圏そのものがバラバラになりかねないほどの危機に直面しつつある。

そんな状況の中で、グローバル経済を俯瞰すると、最も有利な立場にあるのは、どう見てもアメリカであるとしか言いようがない。

もちろん、アメリカ企業もまたグローバル経済の変調に巻き込まれて売上も利益も落としているのだが、反米国家が国家存続の危機にまで落ちているのに較べれば、いかに足元がしっかりしているのかが分かる。

今追い詰められているのは、反米国家である。窮地に追いやられて通貨の信頼をなくしているのは、反米国家の方であり、アメリカのドルではない。2016年に危機に落ちるのはアメリカではなく、反米国家である。

アメリカは2015年からドル通貨基軸に挑戦しようとしていた国家を軒並み撃破することに成功している。

それがアメリカの陰謀だったのか、「たまたま」だったのかは誰も知る由もないが、今のところ、アメリカの都合の良いように反米国家が窮地に落ちているというのは事実だ。

中国やロシアやドイツに賭けるのは疑問だが、アメリカに賭けるのは、別に悪い選択肢ではない。長期的に見ても、アメリカはまだまだ有望だ。


グローバル経済の総本山、ニューヨーク株式市場。中国やロシアやドイツに賭けるのは疑問だが、アメリカに賭けるのは、別に悪い選択肢ではない。長期的に見ても、アメリカはまだまだ有望だ。
http://www.bllackz.com/?m=c&c=20160210T1819190900


15. 中川隆[1645] koaQ7Jey 2016年2月24日 11:48:53 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[1561]
世界を死の経済で支配する悪の帝国

Paul Craig Roberts 2016年2月22日
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/02/post-c25c.html

わたしのアーカイブには、読者にジョン・パーキンスの重要な本『エコノミック・ヒットマン』をご紹介するコラムが一つか二つある。EHMというのは、開発途上国指導者に、経済計画や巨大な開発プロジェクトを売り込む工作員のことだ。ヒットマンは、国家政府に、プロジェクトの資金調達をするためにアメリカの金融機関か膨大な金額を借りれば、国の生活水準が上がると説得するのだ。借り手は、プロジェクトで、国内総生産と税収が伸び、そうした成長で融資を返済できるようになると請け負われる。

ところが、計画は、債務国が元本と利子が支払えないように、恩恵を過大評価するようしくまれている。パーキンスが書いている通り、計画は“歪曲した財政分析、膨張した見積もり、粉飾決算”に基づいており、もし欺瞞が効かない場合には、話をまとめるため“脅しと賄賂”が利用される。

詐欺の次の段階は、国際通貨基金IMFの登場だ。IMFは債務国に、それで、その国の債権者に返済するための金をIMFが貸して、信用格付けを救ってやると言うのだ。IMF融資は支援の一種ではない。国家の銀行に対する債務を、IMFへの債務に置き換えるだけなのだ。

IMFに返済するため、国家は緊縮政策計画を受け入れ、国有財産を民間投資家に売却することに同意よう強いられる。緊縮政策は、IMFに返済するために使われる、社会年金、社会福祉、雇用や賃金や、経常余剰の削減を意味する。民営化は、IMFに返済するため、石油、鉱物や公的インフラを売却することを意味している。協定は通常、国連で、アメリカと同じ意見で投票し、アメリカ軍事基地を受け入れる合意を押しつける。

時として、一国の指導者は計画や、緊縮政策や民営化を拒否することがある。もし賄賂が効かない場合、アメリカは略奪プロセスの障害を排除する暗殺者、ジャッカルを送り込む。

パーキンスの本は大評判になった。貧しい国々に対して役立ちたいというアメリカ合州国の態度が、諸国を略奪するための仕組みの単なる口実に過ぎないことを示している。パーキンスの本は百万部以上売れ、73週間も、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー・リストに留まった。

14の新たな章と、2004-2015年のヒットマン活動リスト30ページを加えて、改訂版が刊行された。パーキンスは、彼の暴露にもかかわらず、状況は更に悪化して、欧米自身内に広がっていることを示している。アイルランド、ギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリアとアメリカ合州国自身の国民が、今やヒットマン活動によって略奪されている。

パーキンスの本は、邪魔になる他の国々に加えるとどまるところを知らない暴力においてのみ、アメリカが“例外”であることを示している。新たな章の一つは、この島を、そこからワシントンが、中東、アジアやアフリカの言うことを聞かない国々を爆撃が可能な空軍基地に転換できるようにするための、イギリスとワシントンによる、ディエゴ・ガルシア住民の、違法で非人道的な立ち退きを暴露すると脅したセーシェル大統領のフランス=アルベール・ルネの話だ。ワシントンは、セーシェル大統領を殺害するために、ジャッカルのチームを送り込んだが、暗殺者はしくじった。一人を除いて全員逮捕され、裁判を受け、処刑や投獄の判決を受けたが、数百万ドルの賄賂をルネに渡して、釈放させた。ルネは状況を理解し、従順になった。

旧版で、パーキンスは、パナマの言うことを聞かない大統領オマール・トリホスと、エクアドルの言うことを聞かない大統領ハイメ・ロルドスを処分するのに、ジャッカルが、どのように飛行機事故を仕組んだかという話を語っている。ラファエル・コレアがエクアドル大統領になると、彼はエクアドルで山積している違法な債務の一部の支払いを拒否し、アメリカ合州国の中南米最大の軍事基地を閉鎖し、搾取的な石油契約の再交渉を強い、中央銀行に、アメリカ銀行に預金してある資金を国内プロジェクトに使うよう命じ、ワシントンの中南米に対する覇権的支配に常に反対している。

コレアは自らを打倒か暗殺の標的にしてしまった。ところがワシントンは、外国権益より、ホンジュラス国民の利益を優先する政策の、民主的に選ばれたホンジュラス大統領マヌエル・セラヤを軍事クーデターで打倒したばかりだった。改革派大統領に対しする続けて二つの軍事クーデターは目立ってしまうという懸念から、コレア排除をするのに、CIAはエクアドル警察に頼った。アメリカ陸軍米州学校卒業生に率いられ、警察はコレア打倒に動いたが、エクアドル軍の力にはかなわなかった。しかしながら、コレアは状況え理解した。彼はアメリカ石油会社に対する政策を変え、エクアドルの熱帯雨林の巨大な区画を、オークションで、石油会社に売り渡すと発表した。パーキンスが関係していた、エクアドルの熱帯雨林と先住民の保護のために働いている組織、フンダシオン・パチャママを、彼は閉鎖した。

世界銀行が支援している欧米の銀行は、石油や製材企業より悪辣な略奪者だ。パーキンスは書いている。“過去三十年間で、世界で最も貧しい60か国が、5400億ドル融資の元本と利息で、5500億ドル支払ったが、その同じ融資にいまだに、5230億ドルも債務がある。この負債に対する返済の経費は、これらの国々が医療や教育に使っているよりも多く、毎年外国援助で受け取る金額の20倍だ。更に、世界銀行プロジェクトは、地球上で最も貧しい国民の一部に計り知れない苦難をもたらしたのだ。過去十年間だけでも、そうしたプロジェクトは推計340万人を強制退去させた。これらの国々の政府は、世界銀行プロジェクトに反対する人々を打擲し、拷問し、殺害した”

パーキンスは、ボーイングがワシントン州の納税者をいかに略奪したかを説明している。製造施設を他の州に移すため、ロビイスト、賄賂と脅迫を活用して、ボーイングは、ワシントン州l議会に、大企業への優遇税制措置をさせるのに成功し、87億ドルも、医療、教育や他の社会福祉から、ボーイングの金庫に向けさせた。企業が恩恵を得られるよう莫大な助成金を法制化するのは一種の「レント搾取」だ。

今やアメリカ国民の略奪に向かっている悪の帝国のためのヒットマンとしての自分の役割に、パーキンスは罪悪感を持っており、いまでも苦しんでいる。償うためにできる限りのことを彼はしたが、搾取の体制は何層倍にもなり、余りにありきたりで、もはや隠す必要もなくなったと彼は報じている。

パーキンスは書いている。

“このEHM体制の大きな変化は、現在は、アメリカ合州国や他の先進国でも活動しているという点だ。至るところにいるのだ。しかも、こうした手段のそれぞれには極めて多様な変種がある。何十万人ものEHMが世界中に散財している。彼らは本物の世界帝国を生み出した。彼は公然でも、陰ででも活動している。この体制が余りに広く、深く確立されているので、仕事を進める当たり前のやり方となっており、大半の人々にとって気がかりなものでなくなっている。”

国民は雇用の海外移転と借金で酷く略奪されているので、消費者需要は利潤を支えられない。その結果、資本主義は、欧米自身を搾取する方向に向かっている。抵抗の増加に直面して、EHM体制は“愛国者法、警察部隊の軍事化、多様な新たな監視技術、占拠運動への潜入と妨害、民営刑務所の劇的拡大”で武装するようになっている。民主的プロセスは、最高裁判所のシチズン ユナイテド対連邦選挙委員会判決や、他の裁判所の裁定、大企業が資金提供する政治活動委員会や、1パーセントから資金提供されているアメリカ州議会交流協議会ALECのような組織によって、覆されてしまった。多数の弁護士、ロビイスト、戦略家 賄賂を合法化するために雇われており、売女マスコミは、だまされやすいアメリカ人を、選挙は本物で、民主主義が機能しているのを表しているのだと説得すべく残業している。

2016年2月19日、OpEdNewsの記事で、マット・ペッペは、アメリカ植民地プエルトリコは、外国債権者を満足させるため酷使されていると報じている。

空港は民営化され、主要道路はゴールドマン・サックスのインフラ投資ファンドが組んだコンソーシアムによる40年リースで民営化た。プエルトリコ国民は、税金で作られたインフラを利用するのに今や私企業に金を払っている。最近、プエルトリコの消費税は6.4%から、11.5%に上がった。消費税の上昇は、インフレ上昇と等価で、実質所得の減少という結果になる。

現在、資本主義とギャング行為の唯一の違いは、資本主義は、ギャング行為を合法化するのに成功したおかげで、マフィアよりも有利な商談をまとめられることだ。

パーキンスは、悪の帝国が世界を“死の経済”で支配していることを示している。彼は“死の経済を葬り、生の経済を誕生させる”ため“我々には革命が必要だ”と結論づけている。政治家、ネオリベラル経済学者や売女マスコミからは何の助けも期待してはならない。

Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼 の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOSTが購入可能。

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2016/02/22/the-evil-empire-has-the-world-in-a-death-grip-paul-craig-roberts/


16. 中川隆[2699] koaQ7Jey 2016年6月01日 10:31:45 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2967]


製品の開発力も生産力も放棄したアメリカの支配層は通貨を発行することだけで生きながらえている。

そのため、ドルは基軸通貨であり続けねばならないのだが、それに挑戦する動きも出て来た。

例えば、2000年にイラクのサダム・フセイン政権は石油取引の決済をドルからユーロに変更する姿勢を見せ、その2年後にはマレーシアのマハティール・ビン・モハマド首相(当時)が金貨ディナールを提唱、リビアのムアンマル・アル・カダフィも金貨ディナールをアフリカの基軸通貨にして石油取引の決済に使おうとしている。


 すでにロシアや中国はドル決済をやめつつあるが、数年前からEUでも金をアメリカから引き揚げる動きがあった。例えば、オランダ中央銀行によると、アメリカに預けている金塊のうち122.5トンをアムステルダムへ移動させ、オランダで保管する金塊は189.9トン、アメリカが同じく189.9トン、カナダ122.5トン、イギリス110.3トンになった。


 ドイツの場合は1500トンの金塊を引き揚げようと計画したが、アメリカに拒否されてしまう。そこで2020年までにアメリカとフランスから合計674トンを引き揚げることにし、2013年1月にその計画を発表した。1年あたり84トン強になるが、実際に取り戻せたのは37トン、そのうちアメリカからは5トンだけだったという。結局、ドイツは引き揚げ計画を断念したようだ。


 ドイツの引き揚げ断念はスイスの動きと関連しているとする説もある。11月30日にスイスでは住民投票が実施され、(1) スイス中央銀行は、国外に保管している全ての金準備をスイスへ持ち帰る、(2) スイス中央銀行の全資産の20%を金準備とする、(3) スイス中央銀行の金準備の売却を行わない、の是非が問われる。


 金準備を全資産の20%まで引き上げるためには1500トンの金を5年以内に購入する必要があり、国外に保管されている金は2年以内にスイス国内へ引き揚げなければならなくなる。ドイツの引き揚げ計画を上回るインパクトだ。


 アメリカが公的に保有していたはずの金はどこかへ消えたという疑惑がある。2001年9月11日にも消えた金塊が話題になった。ちなみに、アメリカがリビアを攻撃した理由は保有する金143トンと石油利権だったことを暗示するヒラリー・クリントン宛ての電子メールが公表されている。


 本ブログでは何度も書いてきたが、1960年代にアメリカの経済は破綻し、1971年にリチャード・ニクソン大統領はドルと金の交換を停止すると発表した。この決定でブレトン・ウッズ体制は崩壊、1973年から世界の主要国は変動相場制へ移行する。

 基軸通貨を発行するという特権で生きながらえるしかなくなったアメリカは発行したドルを回収する仕組みを作っていく。そのひとつがペトロダラーだ。人間社会は石油に支えられていることに目をつけ、産油国にドル以外の通貨で決済させないように求め、そこで貯まったドルでアメリカの財務省証券や高額兵器を買わせて回収しようとしたわけだ。


 その代償としてニクソン政権が提示したのは、サウジアラビアと油田地帯の軍事的な保護、必要とする武器の売却、他国からの防衛、そしてサウジアラビアを支配する一族の地位を永久に保証するというもの。1974年に調印、これと基本的に同じ内容の取り決めを他のOPEC諸国もアメリカと結んだという。(Marin Katusa, “The Colder War,” John Wiley & Sons, 2015)


 ザキ・ヤマニ元サウジアラビア石油相によると、1973年に「スウェーデンで開かれた秘密会議」でアメリカとイギリスの代表は400パーセントの原油値上げを要求したという。1973年5月11日から13日にかけてビルダーバーグ・グループが実際に会議を開いていた。値上げを要求した中心人物はヘンリー・キッシンジャーだ。


 しかし、懸念材料がなかったわけではない。当時のサウジアラビア国王、ファイサル・ビン・アブドル・アジズはPLOのヤセル・アラファト議長を支えていた人物で、アメリカに従属しているとは言い難かった。その懸念材料が消されたのは1975年3月のこと。国王の執務室で甥のファイサル・ビン・ムサイドに射殺されたのだ。


 この甥はクウェート石油相の随行員として現場にいたのだが、この人物の背後にはイスラエルの情報機関モサドが存在していたという。ジャーナリストのアラン・ハートによると、この人物はギャンブル好きで、多額の借金を抱えていた。そこへ魅力的な女性が現れて借金を清算、その上でビン・ムサイドを麻薬漬けにし、ベッドを伴にしたりして操り人形にしてしまったという。(Alan Hart, “Zionism,” World Focus Publishing, 2005)


 その後のサウジアラビア国王は親米派が続く。そうした国王のひとりが戦闘機の購入に関する特使として1978年にアメリカへ送り込んだ人物が29歳だったバンダル・ビン・スルタン。その後、1983年から2005年まで駐米大使を務め、05年から国家安全保障会議事務局長、12年から14年にかけては総合情報庁長官を務めた。イスラエルと接触、アル・カイダ系武装集団を操っていたとも言われている。ブッシュ家と親しく、「バンダル・ブッシュ」とも呼ばれている。


 ドルを現実世界から吸い上げる仕組みとして投機市場も機能している。1970年代に新自由主義が世界へ広がり、金融規制が大幅に緩和されていき、投機市場は肥大化する。アベノミクスで供給された資金も大半は投機市場へ流れ込んだはずだ。現実世界でカネが溢れればハイパーインフレになるが、投機市場ではバブルになる。そのバブルの後始末を押しつけられるのも庶民だ。


 資金が投機市場へ流れ込むパイプの整備も1970年代に進み、ロンドンを中心とするオフショア市場のネットワークができあがる。ロンドンを軸にして、ジャージー島、ガーンジー島、マン島、ケイマン諸島、バミューダ、英領バージン諸島、タークス・アンド・カイコス諸島、ジブラルタル、バハマ、香港、シンガポール、ドバイ、アイルランドなどが結びついている。こうした仕組みによって巨大資本、富裕層、犯罪組織などは資金を隠し、課税を回避することが容易になり、庶民の負担が増えることになった。


 しかし、2010年にアメリカでFATCA(外国口座税務コンプライアンス法)が発効してから状況が大きく変化したようだ。この法律によってアメリカ以外の国の金融機関はアメリカ人の租税や資産に関する情報をアメリカ側へ提供する義務を課されたのだが、その一方でアメリカは自分たちが保有する同種の情報を外国へは提供しないことになっている。アメリカはFATCAによってタックス・ヘイブンになった。


 そうした状況の変化を受け、ロスチャイルド家の金融持株会社であるロスチャイルド社のアンドリュー・ペニーは昨年9月、サンフランシスコ湾を望む法律事務所で講演した中で、税金を払いたくない富豪は財産をアメリカへ移すように顧客へアドバイスするべきだと語っている。


 新たなドル回収システムを作り上げたと言えるだろう。
http://www.asyura2.com/16/hasan109/msg/323.html


17. 中川隆[3154] koaQ7Jey 2016年7月05日 12:29:20 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[3501]

《櫻井ジャーナル》2016.07.04


 西側支配層の内部で次期アメリカ大統領としてヒラリー・クリントンが内定したという話が流れたのは昨年6月のことだった。

この月の11日から14日かけてオーストリアでビルダーバーグ・グループの総会が開かれ、彼女の旧友として知られているジム・メッシナが出席していたことから生じた噂だ。

今年6月9日から12日にかけてドイツのドレスデンで開かれた会合にはヒラリーと同じ好戦派のフィリップ・ブリードラブ前SACEUR(欧州連合軍最高司令官)が参加している。


そのヒラリーに対する逆風がここにきて強まっているように見える。

FBIは7月2日、彼女から公務の通信に個人用の電子メールを使った件に絡む問題で3時間半にわたって任意の事情聴取したという。

すでに彼女は2万通とも3万通とも言われているメールを消去、捜査妨害や機密文書の違法な扱いなどが指摘され、逮捕されても不思議でないと言われているのだが、FBIの動きは緩慢で、有力メディアも寛大な姿勢を見せてきた。

 消去したメールについてヒラリーは私的な通信だと説明してきたのだが、彼女の側近であるヒューマ・アベディンはスケジュールに関するメールを「機密書類入れ」に入れ、消去する準備をしていたと証言しているという。スケジュールは公的な記録であり、残しておかなければならない。ヒラリーの弁明が崩れたと言える。

 こうしたことが実際に行われていたことよりも、ヒューマ・アベディンがこうした証言をしたことに驚く人は少なくない。彼女は1996年にインターンとしてヒラリーのそばで働き始め、現在に至るまで信頼された側近として働いてきたからだ。ヒラリーは切り捨てられたのかもしれない。

 ヒューマの母、サレハはムスリム同胞団の女性部門を指導、父親のシードはアル・カイダと関係していると主張する人もいる。後にヒューマはヒラリーの友人でネオコンのアンソニー・ウィーナーと結婚した。

 ムスリム同胞団は1954年にエジプトのガマール・アブデル・ナセルを暗殺しようとして失敗、それ以降、エジプトでは非合法化されたが、このときにメンバーを保護したのがサウジアラビア。そのサウジアラビアの国教がワッハーブ派だ。その結果、ムスリム同胞団はワッハーブ派の影響を強く受けることになる。

 サウジアラビアは1970年代の末、ズビグネフ・ブレジンスキーのプランに従って戦闘集団を編成するために戦闘員を雇った。その多くがサラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団で、サウジアラビアの情報機関、総合情報庁長官を務めていたタルキ・アル・ファイサルが責任者だった。その下で戦闘員を集めていた人物がオサマ・ビン・ラディンだ。

 ヒューマと同様、ヒラリーに大きな影響を及ぼしてきた人物がマデリン・オルブライトとビクトリア・ヌランド。オルブライトはズビグネフ・ブレジンスキーの弟子で、ビル・クリントン政権では当初、国連大使だった。ヌランドは後にウクライナでのクーデターに深く関与したネオコン。国務次官首席補佐官としてクリントン政権入りした。結婚相手はネオコンの中核グループの所属するロバート・ケーガンである。

 消去された分も含め、ヒラリーの電子メールをロシア政府は持っていると言われているが、容易にハッキングできる状態だったことから少なからぬ個人、組織、国がそのメールを持っていると言われている。その中にはイスラエルも含まれているだろう。

 ヒラリーはユーゴスラビアに対する先制攻撃だけでなく、リビアやシリアへの軍事侵攻にも深く関与、リビアからシリアへ戦闘員や武器を移動させる工作に関する情報も持っていた可能性が高い。リビアやシリアへの軍事侵攻ではアメリカ/NATOがアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を使っていることも熟知、クリストファー・スティーブンス米大使がベンガジの米領事館で殺された背景も知っているはずということも本ブログでは何度か指摘した。

 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された10日後、ウェズリー・クラーク元SACEURはペンタゴンで、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺がイラク、シリア、イラン、レバノン、リビア、ソマリア、スーダンを攻撃するプランを立てていると聞いたという。その10年前、国防次官だったポール・ウォルフォウィッツはシリア、イラン、イラクを5年で殲滅すると口にしたともクラーク元SACEURは語っている。

 1980年代にはアメリカ政府の内部でイラクをどうするかで揉める場面があった。ネオコン/シオニストがサダム・フセインの排除を主張したのに対し、ジョージ・H・W・ブッシュ副大統領、ジェームズ・ベイカー財務長官、ロバート・ゲーツCIA副長官は彼を仲間だと認識していたことから対立が生じたわけだ。この当時、アメリカの一部勢力はイラクへ武器を密輸、それを反フセイン派が暴露している。いわゆる「イラクゲート事件」だ。

 1990年8月にイラクが石油を盗掘していたクウェートへ軍事侵攻、91年にはアメリカ軍を中心とする軍勢がイラクへ攻め込んでいる。このとき、ジョージ・H・W・ブッシュ政権はフセインを排除しなかった。そこでネオコンは怒り、シリア、イラン、イラクを殲滅するというウォルフォウィッツの発言につながったわけだ。

 ネオコンがフセイン体制を倒したがった最大の理由は、ヨルダン、イラク、トルコの親イスラエル国帯を作り、シリアとイランを分断することにあった。イラクを破壊した後にシリアのバシャール・アル・アサド政権の打倒に執着しているのは、パイプラインの問題のほか、シリアのアサド体制を倒してイランを孤立させることにある。これはイランを敵視するサウジアラビアにとっても好ましいプランだった。

 ヒラリーやネオコンはソ連の消滅でアメリカは「唯一の超大国」になったと認識、誰も自分たちに逆らわないというところから思考は始まる。1991年にイラクを、また99年にユーゴスラビアをそれぞれ攻撃した時にロシア軍が出てこなかったことから、それ以降も出てこないと思い込んだようだ。こうしたことはヒラリーのメールからもうかがえる。

 アメリカの傀儡だったボリス・エリツィンからウラジミル・プーチンへ大統領が交代しても変化はないと考えたのだろうが、実際は違った。その変化にネオコンは対応できないでいる。軍事的な威嚇でロシアや中国を屈服させようとしているが、無理だ。

 しかも、その様子を見てアメリカ離れが起こり始めている。Brexitの結果もそのひとつの表れだと見る人もいる。トルコ外相は同国のインシルリク基地をロシア軍が使う可能性に言及した。(注)この基地は2011年春からシリア侵略の拠点で、反シリア政府軍の戦闘員を訓練、その教官はアメリカの情報機関員や特殊部隊員、イギリスとフランスの特殊部隊員だと言われている。その基地をロシア軍が使う意味は小さくない。こうした変化にアル・カイダ系武装集団やダーイッシュが「派遣切り」を懸念、反応している可能性もある。

(注)4日の報道でインシルリクの話が外相の発言として出てきたが、数時間後、外相はこの発言を否定。誤報だったのか、アメリカからの圧力が訂正の原因なのかは不明。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201607040000/


18. 中川隆[3514] koaQ7Jey 2016年8月05日 07:40:29 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[3869]

 シリアでは2011年3月から戦闘が始まっているが、これはリビア、イラク、アフガニスタ、ユーゴスラビアなどと同じように侵略戦争。1980年代からネオコン/シオニストはイラクのサダム・フセイン政権を倒して傀儡体制を樹立、シリアとイランを分断して潰すという戦略を立てていた。その当時、イラクをペルシャ湾岸産油国の防波堤と認識していたアメリカ支配層の一部、つまりジョージ・H・W・ブッシュやジェームズ・ベーカーはネオコンやイスラエルと対立、それが原因で「イラクゲート事件」が浮上している。

 ブッシュが大統領だった1990年8月にイラク軍がクウェートへ軍事侵攻、91年1月にアメリカ軍を中心とする連合軍がイラクを攻撃している。いわゆる湾岸戦争だ。この戦争でネオコンはフセインを排除するつもりだったが、ブッシュ大統領はその前に停戦、怒ったポール・ウォルフォウィッツ国防次官は、5年以内にイラク、イラン、シリアを殲滅すると口にしていたとウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官は語っている。

 イラクがクウェートを侵略したのは、クウェートによる石油盗掘問題のもつれから。その直前にアメリカ政府はイラク軍がクウェートへ侵攻することを容認するかのようなメッセージを出していたが、これは罠だった可能性がある。そのとき、PLOのヤセル・アラファト議長やヨルダンのフセイン国王はフセインに対して罠の疑いがあると警告したのだが、フセインはそれを無視して攻め込んだ。

 軍事侵攻を受け、アメリカ下院の人権会議で「ナイラ」なる少女がイラク軍の残虐性を涙ながらに告発、アメリカで好戦的な雰囲気を高めることに成功したが、この「告発劇」はPR会社のヒル・アンド・ノールトンが演出したもので、主演の少女はアメリカ駐在クウェート大使の娘。つまり、全くの作り話だった。

 この時以来、ネオコンはイラクを乗っ取るチャンスを待っていた。そして2001年9月11日がやってくる。その日、ニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、ジョージ・W・ブッシュ政権はすぐにアル・カイダの犯行だと断定する。本ブログでは何度も説明したように、アル・カイダは戦闘員の登録リストにすぎず、そうした武装集団は存在しない。

 攻撃の翌日、ホワイトハウスでの会議に臨んだ対テロ担当のリチャード・クラークを待ち受けていたのは予想に反し、イラク攻撃をめぐる議論だった。どのような口実でイラクへ攻め込むかということだ。そして「大量破壊兵器」を理由にして攻撃することに決まった。イラクが「大量破壊兵器」を保有していないことを知っているブッシュ・ジュニア政権はそれを前提にした攻撃プランを作成、簡単に決着はつくと考えていたようだ。

 しかし、大量破壊兵器をイラクが保有していなくても簡単に戦争は終結しないと考えたのが統合参謀本部。リチャード・チェイニー副大統領やドナルド・ラムズフェルド国防長官たちと将軍が対立、開戦は約1年延びたと言われている。言うまでもなく、将軍たちの見通しが正しかった。

 恐らく正規軍を投入したイラクでの戦法を反省したネオコンは昔の手口を使う。つまりズビグネフ・ブレジンスキーが1979年に始めたゲリラ戦だ。パキスタンの情報機関が主体となる武装勢力を選定、サウジアラビアが資金と戦闘員(大半がサラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団)を供給、イスラエルも協力した。サウジアラビアの情報機関、総合情報庁長官を務めていたタルキ・アル・ファイサルの下で戦闘員を集めていた人物がオサマ・ビン・ラディンだ。

 そのアル・カイダ系武装集団をリビアやシリアに投入、リビアではNATOが空爆、地上ではアル・カイダ系のLIFGが政府軍と戦い、ムアンマル・アル・カダフィ体制を倒すことに成功したが、シリアでは失敗する。NATOを介入させるために偽情報を流したが、その事実が発覚、化学兵器の使用を宣伝したが、それも嘘だということが明らかになってしまった。しかも、地中海方面から発射したミサイルが海中へ落下している。

 この軍事侵略をアメリカの支配層は「独裁者に自由と民主主義を求めて人民が武装蜂起した」と宣伝してきた。途中、嘘だと言うことは次々と明らかにされたが、西側の有力メディアは事実を無視してプロパガンダに徹している。そのメディアを信奉、「造反有理幻想」の中に浸り、侵略軍を「反体制派」と呼んでいる人がまだいるようだ。

 アメリカにもマーチン・デンプシー元統合参謀本部議長やマイケル・フリン元DIA局長のように、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュを手先として使うことの危険性を認識し、バラク・オバマ政権の方針に批判的な人もいるが、ヒラリー・クリントンを含む好戦派は意に介していない。現在、威シリアのバシャール・アル・アサド体制を倒し、イランを攻撃したいと考えている。安倍晋三首相はその好戦派と同じことを叫んでいるだけである。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201608050000/


19. 中川隆[3567] koaQ7Jey 2016年8月09日 05:33:34 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[3931]

ネオコンが有力メディアを押さえ、宣伝に利用していることは広くしられているが、そのひとつがニューヨーク・タイムズ紙。イラクを先制攻撃する雰囲気作りのため、偽情報を盛んに流していたひとりは同紙のジュディス・ミラーだった。

この人物は第101空挺団に「埋め込まれた」、つまり支配層から認められた記者。

化学兵器、細菌兵器、核兵器に関する極秘施設に関する情報を流し、サダム・フセイン政権が生体実験を行っていると伝えていたが、全て嘘だった。

 アメリカは巨大金融資本が支配する国で、戦争ビジネスはその下に位置し、宣伝部門が有力メディアだ。

現在、TPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)の3点セットで巨大資本が国を支配するファシズム体制へ移行しようとしているが、その新体制も「嘘の帝国」であることに変わりはなく、事実を語ることは反逆と見なされるだろう。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201608090000/


20. 中川隆[3636] koaQ7Jey 2016年8月18日 10:40:49 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[4015]

 1980年代からネオコン/シオニストやイスラエルはイラクのサダム・フセイン体制を倒すべきだと主張していた。

イラクに傀儡政権を樹立させれば、ヨルダン、イラク、トルコの親イスラエル国でイランとシリアを分断することができると考えたからである。

すでにイラクを破壊、今はシリアを侵略している。

 欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の最高司令官を務めたことのあるウェズリー・クラークによると、1991年に国防次官だったポール・ウォルフォウィッツがシリア、イラン、イラクを殲滅すると口にしていたという。そうした発言の背景には、そうしたネオコンの戦略があったということだ。

「アラブの春」、「民主化」、「人権」などは侵略を正当化するために掲げた中身のない看板にすぎない。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201608170000/


21. 中川隆[3648] koaQ7Jey 2016年8月19日 06:51:06 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[4027]

2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃される。いわゆる「9/11」だ。

その攻撃をジョージ・W・ブッシュ政権は「国家安全保障上の緊急事態」だと判断、「テロリズムの阻止と回避のために必要な適切な手段を提供することによりアメリカを統合し強化する2001年法(愛国者法)」(注)が出現した。

(注)「Uniting and Strengthening America by Providing Appropriate Tools Required to Intercept and Obstruct Terrorism Act of 2001」のイニシャルをとってUSA PATRIOT Act

 この法律は340ページを超す代物だが、それを議会は1週間で承認、強制収容所の建設を推進する国家安全保障省の「エンド・ゲーム計画」も成立している。愛国者法案を大多数の議員は読んでいなかっただろう。こうしたことが可能だったのは、少なくとも13年という準備期間があったからにほかならない。

愛国者法は軍事侵略と表裏一体の関係にある。2001年9月12日、つまりニューヨークとワシントンDCが攻撃された翌日、ホワイトハウスでは会議が開かれている。その会議に出席したひとり、テロ担当のリチャード・クラークによると、そこで話し合われた議題は9/11についてではなく、イラク攻撃だった。

 攻撃の直後、ブッシュ・ジュニア政権は詳しい調査をしないで「アル・カイダ」が実行したと断定していたが、アル・カイダ系武装集団を弾圧していたイラクを攻撃する口実をどうするかと話し合っていたわけだ。

 そこで決まった口実が「大量破壊兵器」。イラクがそうした兵器を保有していないことを知っているブッシュ・ジュニア政権は大量破壊兵器による報復がないことを前提にした攻撃プランを作成した。簡単に決着はつくと考えていたようだ。

 当初、アメリカ政府は2002年の早い段階に攻撃するつもりだったようだが、統合参謀本部の反対で約1年間、開戦の時期が延びたと言われている。戦争の理由がなく、作戦が無謀だと考えたようだ。最近、明らかになったコリン・パウエル国務長官(当時)のメモによると、2002年3月28日にトニー・ブレア英首相はパウエルに対し、アメリカの軍事行動に加わると書き送っていた。この時、すでにブレアは開戦に同意している。

 アメリカ政府が攻撃しようと考えていた国はイラクだけでなかった。9/11から10日後にペンタゴンを訪れたウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺ではイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランを先制攻撃する計画ができあがっていた。

このうち、シリア、イラン、イラクの3カ国は1991年の段階でポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)が5年で殲滅すると口にしたという。

 そしてアメリカは侵略戦争を始めるが、シリアとウクライナで躓く。特にシリアではロシアが軍事介入、アメリカの好戦派が手先として使ってきたアル・カイダ系武装集団などを攻撃、アメリカのプランは崩れてしまった。

アメリカが中国とロシアを相手にした戦争を始めたと認識した中国はシリアで軍事訓練を始めるという。核戦争で脅せば中国やロシアでも屈服するとネオコン/シオニストは考えていたようだが、完全に誤算だった。


 アメリカはすでに戦争を始めている。今のところ戦闘の中心は傭兵が行っているが、好戦派はアメリカ/NATO軍を直接、軍事介入させようとしてきた。それを何とか回避させてきたのがロシアのウラジミル・プーチン大統領である。

アメリカの大統領選挙で共和党候補のドナルド・トランプが予想外の善戦をしているひとつの理由は、少なからぬアメリカ人がこうした事実を知り始めていることにあるだろう。ヒラリー・クリントンが大統領になった場合、最悪の事態、つまりロシアや中国との全面核戦争を覚悟しなければならない。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201608190000/


22. 中川隆[3685] koaQ7Jey 2016年8月21日 04:19:09 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[4067]

イランとアメリカは第二次大戦まで親密な関係だったが、大量の石油が発見された事が、両国の関係を対立的にした。

アメリカとイギリスは1950年代、イランの石油利権を手にしようと画策し、激怒したイラン側は石油会社を国有化した。


すると米英は大使館を通じてイランのテロ組織を支援し、テロや暴動、反政府運動を起こして政府転覆を図った。

この手口はアメリカに反抗した全ての国で実施され、最近ではウクライナで政府転覆、シリアなどでの反政府運動を支援した。

イラン側はさらにアメリカに対して敵意を燃やし、反資本主義や反米運動に火をつけてしまった。

イランの石油利権で絶縁した両国

要するにイランとアメリカの関係悪化は100%アメリカが悪いのだが、そうは思わないのがアメリカ人です。

自分が悪くても相手が悪いし、相手が悪ければ当然相手が悪いと言うのがアメリカ外交で、イランを「民主主義の敵」だと批判しました。

これにはアメリカが創設した「イスラエル」と周辺諸国の戦争も関係していて、欧米諸国が支援するイスラエルと、アラブ諸国は中東戦争を戦っていた。


そして米ソ冷戦の最中だったので、ソ連はアメリカに対立する国に、武器などを援助していた。

1979年に反米、反資本主義を唱えるホメイニ氏がイランでイスラム革命を起こし、アメリカと絶縁しました。

この時アメリカは武器を輸出する契約をイランと交わして、代金前払いで受け取っていたが、武器を渡さずお金を返さなかった。


これも契約の経緯を見ると、やはり100%アメリカが悪く、少なくとも受け取った代金は返すべきだった。

イランは最近になって国際司法裁判所に提訴し、両国は代金4億ドルと利息13億ドルの支払いで和解していました。
http://thutmose.blog.jp/archives/65145950.html


23. 中川隆[3908] koaQ7Jey 2016年9月06日 16:54:52 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[4294]

2016.09.06
人権も司法手続きも無視して殺戮を続ける米大統領がフィリピン大統領との会談を取り消した茶番


アメリカを中心とする反中国同盟に参加しているはずのフィリピンだが、同国のロドリゴ・ドゥテルテ大統領とバラク・オバマ大統領との関係が険悪化、予定されていたラオスでの会談が取り消されたとローターの記者がTwitterに書き込んでいる。引き金はフィリピン政府が進めている「麻薬戦争」にあるようだ。

 ドゥテルテが大統領に就任したのは6月だが、この人物は前任者のベニグノ・アキノ3世とは違い、アメリカの言いなりになっていない。中国を敵視する政策も軌道修正、話し合いを進めている。国内では麻薬業者の摘発に力を入れ、司法手続きを無視する形で400名以上の容疑者をすでに殺害、逮捕者は約4400名にのぼるという。選挙で公約した麻薬撲滅を実践しているのだが、その遣り方に対する批判が国連から発信され、ドゥテルテ大統領は反発していた。

 オバマ大統領との会談に先立ち、ドゥテルテ大統領は記者からオバマ大統領に麻薬取引の容疑者を殺害していることをどのように説明するかと問われ、オバマは「自分を何様だと思っているのだ。私はアメリカの操り人形ではない。主権国家の大統領であり、フィリピンの人びとに対してのみ、説明責任がある。」と応じていた。

 アメリカ人は自分たちが特別な存在であり、何をやっても許されると考えていると批判されているが、司法手続きを無視した殺害はオバマ政権が公然と実行してきたこと。無人機(ドローン)は殺害の道具だ。しばしば一般市民を殺害している。

 本ブログでは何度も書いてきたが、アメリカでは1997年にマデリーン・オルブライトが国務大臣に就任して以来、偽情報でターゲットを悪魔化しながら軍事侵略を進め、破壊と殺戮を繰り返してきた。ジョージ・W・ブッシュが大統領に就任した2001年の9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されると、この攻撃に無関係だったイラクを先制攻撃している。その時に攻撃の口実に使われた大量破壊兵器の話も嘘だった。

 攻撃の直後、詳しい調査が行われていない段階でブッシュ・ジュニア政権は「アル・カイダ」が実行したと断定、「アル・カイダ」のメンバーで旅客機をハイジャックしたことになっているモハメド・アッタがチェコのプラハでイラクのエージェントと会ったとする情報も流れたが、この情報は間違っているとチェコの情報機関は認めている。イラクのサダム・フセイン政権は「人権無視」でアル・カイダ系武装集団を弾圧していた。

 イラク攻撃は「9/11」と無関係で、ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、1991年の段階でネオコン/シオニストのポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)はイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていた。湾岸戦争でアメリカがサダム・フセインを排除しなかったことに怒っての発言だったようだ。

 アメリカの支配層は自分たちにとって都合の悪い体制を破壊し、その国の人びとを虐殺している。そこに「正当な手続き」などはない。アメリカ自体の歴史も先住民の虐殺から始まっているわけで、人権を口にするなどおこがましいのだ。

 麻薬取引に関しては、CIAが深く関与していることが明らかになっている。ベトナム戦争の際には東南アジアの山岳地帯、いわゆる黄金の三角地帯で栽培されるケシを原料とするヘロイン、ニカラグアの革命政権を倒す目的で始めた秘密工作ではコカイン、アフガニスタンでの戦争ではパキスタンとアフガニスタンにまたがる山岳地域で栽培されるケシを使ったヘロイン生産、いずれもCIAが関係している。アメリカでは麻薬取引を取り締まったロサンゼルス市警の捜査官が司法省によって警察から追放されている。

 この取り引きをテーマにした連載記事をサンノゼ・マーキュリー紙のゲイリー・ウェッブは1996年に書いているが、それが話題になるとロサンゼルス・タイムズ紙、ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙を含む有力メディアから事実を無視した激しい攻撃を受け、新聞社から追放され、自殺に追い込められている。(こうしたアメリカの有力紙ブランドを有り難がるのは愚の骨頂ということ。)

 1998年にCIAの監察総監室はこの問題に関する報告書(IGレポート)を公表、ウェッブの記事が正しいことが確認されたが、有力メディアはこのレポートを無視、自分たちの記事を訂正せず、行為を謝罪していない。アメリカの政府機関が麻薬取引に手を出しているとは言えないのだろう。麻薬取引がアメリカの世界戦略と結びついていると言え、そのアメリカの政府が展開してきた「麻薬との戦争」はインチキだということでもある。

 現在、アメリカ政府は中国を封じ込めるための枢軸として日本、フィリピン、ベトナムを考え、そこへ韓国、インド、オーストラリアを結びつけようとしている。その一角を占めるフィリピンがアメリカから自立する意思を示しているわけで、何らかの工作で従属させようとする可能性はあるだろうが、アメリカの支配力が衰えていることも確かだ。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201609060001/


24. 中川隆[3973] koaQ7Jey 2016年9月11日 07:19:22 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[4365]

 ズビグネフ・ブレジンスキーもアメリカが地球規模の帝国ではなくなったと認めているように、アメリカを「唯一の超大国」と位置づけるネオコン/シオニストの世界制覇計画は破綻、軌道修正すべきだと考える人がアメリカ支配層の内部にもいるようだが、ネオコンを含む好戦派は1992年の初めに作成された世界制覇計画を諦めていない。この計画は国防総省のDPG草案という形でまとめられ、作業の中心には国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツがいた。

 その前年、この人物はシリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると口にしていた。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官の証言だ。1991年1月にアメリカ軍を中心とする連合軍はイラクを攻撃したが、ネオコンの思惑とは違い、サダム・フセインを排除せずにジョージ・H・W・ブッシュ政権は停戦してしまった。それに怒ったウォルフォウィッツはイラクなど3カ国の殲滅を口にしわけだ。

 西側の政府やメディアが描いてきたストーリーは、独裁者に虐げられていた民衆が蜂起したというもの。ドラマやプロレスで好まれる典型的なパターン。虐げられた人びとが革命で救済されのは必然だと信じる人びとにとっても魅力的である。そのストーリーをアメリカの支配層は侵略や略奪を正当化するために使っている。事実を検証するならば、シリアの戦乱は侵略だということがわかる。決して「革命」でも「内戦」でもない。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201609100000/


25. 中川隆[4316] koaQ7Jey 2016年10月05日 05:04:45 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[4725]

2016.10.04
偽情報を作成、流布するため米国防総省は英国の広告会社へ5億ドル以上を支払って戦争を正当化

 アメリカの国防総省がプロパガンダのため、イギリスの広告会社ベル・ポッティンガーに5億4000万ドル(約550億円)を支払ったと伝えられている。

偽情報を流し、侵略戦争に人びとが賛成するように誘導することが彼らの仕事だ。

 昔から情報機関が行っていることだが、3種類のプロパガンダを実行している。

第1(白色)は発信源を明示したもの、

第2(灰色)は発信源を明示しないもの、

第3(黒色)は事実に反する発信源を示すもので、偽映像の制作も含まれている。


シリアでダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記する)が登場した際、斬首など残虐な場面が流れたが、すぐにフェイクだと指摘されていたことを思い出す。

 広告会社が戦争への道を切り開く宣伝を行ったことで有名な例は、1990年8月にイラク軍がクウェートへ攻め込んだ後にアメリカ下院の人権会議(公的なものではない)における少女「ナイラ」の「証言」だろう。


Faked Kuwaiti girl testimony
https://www.youtube.com/watch?v=LmfVs3WaE9Y


 その「証言」によると、アル・イダー病院でイラク兵が赤ん坊を保育器の中から出して冷たい床に放置、赤ん坊は死亡したという。

いかにイラク軍が残虐かを彼女は涙ながらに訴えた。心を動かされた人も少なくないだろう。

が、この「証言」には大きな問題があった。

「証言者」は駐米クウェート大使の娘で、現場にはいなかったのである。
広告会社ヒル・アンド・ノールトンの書いたシナリオに従って作り話をしたのである。

迫真の演技だったが、そこに事実はなかった。
そして1991年1月にアメリカ軍を中心に編成された連合軍がイラクを攻撃したわけだ。


 この戦争は3月まで続くのだが、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領は排除しないまま停戦、ネオコン/シオニストは激怒する。ネオコンの中核グループに属すポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)はその時、シリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると口にしたという。これは欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の元最高司令官、ウェズリー・クラークの話だ。

 1991年12月のソ連が消滅、翌年の初めにはアメリカ国防総省でDPGの草案が作成されている。アメリカを「唯一の超大国」になったと位置づけ、新たなライバルの再登場を阻止すると宣言している。潜在的ライバルと想定されているのは、旧ソ連、西ヨーロッパ、東アジア。エネルギー資源が存在する南西アジアも注目地域だと考えれている。

 当時の国防長官はリチャード・チェイニー、次官はポール・ウォルフォウィッツで、文書の作成はウォルフォウィッツが中心になっていたことから、このDPG草案は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。

 この世界制覇プランができると、西側支配層の傀儡であるボリス・エリツィンがロシアで独裁体制を強化、国民の資産を略奪してくが、それと同時にNATOを東へ拡大して支配地域を広げていく。これはロナルド・レーガン政権の約束に反する行為だが、アメリカ支配層は約束を守らない。

 NATOを拡大するだけでなく、既存の国を破壊しはじめ、ユーゴスラビアが最初のターゲットになった。アメリカ支配層の働きかけもあり、1991年6月にスロベニアとクロアチアが独立を宣言、同年9月にマケドニアが、翌年の3月にはボスニア・ヘルツェゴビナが続き、4月になるとセルビア・モンテネグロがユーゴスラビア連邦共和国を結成し、社会主義連邦人民共和国は解体された。

 さらに、コソボのアルバニア系住民が連邦共和国から分離してアルバニアと合体しようと計画、それをNATOが支援する。この活動を主導したイブラヒム・ルゴバ率いるLDK(コソボ民主化連盟)は非暴力で、セルビア側も事態の悪化を懸念して運動を許していた。1991年から92年にかけてLDKは地下政府を創設して選挙も実施しているが、セルビアの治安当局はこれも許容している。

 1992年2月にフランスで和平交渉が始まり、セルビア側はコソボの自治権を認め、弾圧もやめることで合意、交渉はまとまりかけたが、平和的な解決を望まないNATOはセルビアが受け入れられない条件を出した。つまり、車両、艦船、航空機、そして装備を伴ってNATOの人間がセルビアを自由に移動できるという項目が付け加えたのだ。つまり、セルビアをNATOは占領、支配するということだ。(David N. Gibbs, “First Do No Harm”, Vanderbilt University Press, 2009)

 この条件をセルビア政府が受け入れられなかったのは当然。日本の外務省などは「セルビアがNATO軍のコソボ展開を受け入れず決裂」したと説明している。アメリカの属国の官僚はこうした言い方をする。

 1994年になると、アル・カイダ系の武装集団がアルバニアで活動を開始、ボスニアやコソボにも手を広げる。アメリカが傭兵を投入して戦乱を広げ、軍事介入しやすい環境を作り始めたわけだ。中東や北アフリカでもアメリカ支配層は基本的に同じ手口を使っている。

 先制攻撃を正当化するために西側は軍事的な緊張を高めるだけでなく、セルビアを悪魔化するプロパガンダを開始した。そのキーワードに選ばれたのは「人権」。有力メディアだけでんかう、投機家のジョージ・ソロスと関係がある人権擁護団体のHRWもプロパガンダに参加する。(この辺の事情は拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』に記載してある。)

 そうした宣伝の背後には、ドール米上院議員と密接な関係にあるアルバニア・ロビーが存在、コソボ紛争の宣伝戦で中核的な役割を果たしたのはルダー・フィンという広告会社である。(David N. Gibbs, “First Do No Harm”, Vanderbilt University Press, 2009)コソボのアルバニア勢力は1992年10月に同社と契約を結んでいる。(Diana Johnstone, "Fools' Crusade," Monthly Review Press, 2002)

 当初、ビル・クリントン政権はコソボに興味を持たず、1995年にデイトンで和平交渉が行われた際にもコソボに関心を示していない。この態度はLDKのルゴバを窮地に追い込み、KLA(コソボ解放軍、UCKとも表記)の台頭を招いた。この武装勢力は1996年2月にコソボの北部にいたセルビア人難民を襲撃することから活動をスタートさせた。(Gregory Elich, 'The CIA's Covert War,'CovertAction Quarterly, April-June 2001)

 クリントン政権はユーゴスラビアに対する軍事介入に消極的だったが、ネオコンは諦めない。例えば、クリントンが大統領に就任した1993年の9月、彼らはボスニアへの軍事介入を求める公開書簡を発表、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載されている。

 その書簡に署名した人物には、イギリスのマーガレット・サッチャー元首相、アメリカのジョージ・シュルツ元国務長官、フランク・カールッチ元国防長官、ズビグネフ・ブレジンスキー元国家安全保障問題担当大統領補佐官、ポール・ニッツェ、ジョージ・ソロス、ジーン・カークパトリック、アルバート・ウールステッター、ポール・ウォルフォウィッツ、リチャード・パールが含まれている。(Wall Street Journal, September 2, 1993)ネオコンのオンパレードだ。

 西側の有力メディアや「人権擁護団体」はセルビアを攻撃するキャンペーンを展開するが、アメリカ政府は動かない。状況が変化したのは、国務長官がクリストファー・ウォーレンからマデリーン・オルブライトへ交代した1997年1月から。ウォーレンは戦争に消極的だったが、オルブライトは逆だった。このオルブライトを国務長官にするよう働きかけたのはヒラリー・クリントン、つまりビルの妻だとされている。

 そして1998年にモニカ・ルウィンスキーのスキャンダルが浮上、ビル・クリントンは身動きのとれない状態になる。この年の秋にオルブライトは空爆を支持すると表明、1999年3月にNATO軍は偽情報に後押しされる形でユーゴスラビアを先制攻撃した。

 決して親セルビアとは言えないヘンリー・キッシンジャーでさえ、1998年10月から99年2月までの期間における停戦違反の80%はKLAによるものだと語っている。(David N. Gibbs, “First Do No Harm”, Vanderbilt University Press, 2009)西側メディアが盛んに宣伝していた人権話も嘘で、NATOには先制攻撃する正当な理由はなかった。

 その後、ウォルフォウィッツ・ドクトリンを作成したグループには好都合なことに、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、国内のファシズム化、国外での軍事侵略が始まる。途中、グルジア(ジョージア)の南オセチアへの奇襲攻撃でロシアが予想以上に強いことが判明、その後はアル・カイダ系武装集団など傭兵を前面に出すようになった。

 シリアでのプロパガンダはシリア・キャンペーンなる団体が中心的な役割を果たしている。この団体と連携している白ヘルの主要な資金源でアルUSAIDはCIAの資金を供給する機関として設立された。シリア・キャンペーンは白ヘルと同じように国連や赤十字を敵視、シリアに飛行禁止空域を作るように要求している。つまり、シリア上空はアメリカ軍とその同盟軍のみが飛行、ダーイッシュやアル・カイダ系武装集団を空爆するロシアやシリアの飛行は禁止させるべきだというわけだ。そうしたことを強行すれば、ジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長が上院軍事委員会で語ったように、ロシアやシリアと戦争になる可能性が高い。

 シリア・キャンペーンを創設したのはパーパスという広告会社だとされている。そうした関係からか、シリア・キャンペーンのプロジェクト・ディレクターをしているアンナ・ノランはパーパスの上級戦略担当だった人物。

 そのパーパスはアバーズというキャンペーン会社からスピンオフしたようだが、そのアバーズはリビアに飛行禁止空域を設定するように主張していた。その結果、NATOの空爆とアル・カイダ系武装集団の地上戦(イギリスなどが特殊部隊を潜入させていたが)の連係プレイでムアンマル・アル・カダフィを倒し、「テロリスト」が跋扈する破綻国家を作り上げた。

 2001年9月11日以降、西側メディアはプロパガンダ機関化が急速に進み、「報道」は嘘で溢れている。その中から事実を探し出すのは至難の業だ。そうした状況を作り出した原因は、現代人の大半は騙されたがっていることにあるとも指摘されている。広告会社は人びと、特に「リベラル」や「革新」に色分けされている人びとが好む話、居心地良く感じる幻想を作り、プロパガンダに利用、効果を上げている。そもそも、支配層と本当に対立するような主張をしたくない人が大半だろう。西側の有力メディアを有り難がっている人は、肩書きや経歴が何であれ、信用しないことだ。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201610040000/


26. 中川隆[4387] koaQ7Jey 2016年10月09日 06:46:23 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[4797]

2016.10.08
米の石油生産量が減少しているようで経済の先行きは暗く、支配層の利益を守るため強引なことも


 アメリカの石油生産量が減少しているようだ。2015年6月のピーク時は日産960万バーレルだったが、今年は9月9日時点では11%減の日産850万バーレル。原油価格の大幅な値下がりで生産コストの高いシェール・ガス/オイル業界が壊滅的なダメージを受けているはずでこうしたことも影響しているだろう。

 原油価格の下落を仕掛けたのはアメリカとサウジアラビアだと言われているが、サウジアラビアの経済も危機的な状態。政府から巨大建設企業へ支払われるべきものが支払われず、兵士や労働者の中には賃金を7カ月にもわたり、受け取っていない人もいるという。この兵士はインド、パキスタン、スリランカの出身者が多く、労働者の大半も出稼ぎ。賃金の支払いは国際問題につながる。

 石油に依存しているサウジアラビアだけでなく、アメリカも経済基盤は弱く、現在の状態が続けば遠くない将来に崩壊する。アメリカの場合、ベトナム戦争の終盤、1971年にリチャード・ニクソン大統領はドルと金の交換を停止すると発表、73年から世界の主要国は変動相場制へ移行しているが、この段階でアメリカ経済は身動きのとれな状態になっていたと言える。

 基軸通貨のドルを発行する特権を利用、生き延びるしかなくなったのだが、単純に大量発行すればドルの価値が暴落、ドルは基軸通貨の地位から陥落してしまう。そこで考えられたのがペトロダラーの仕組みだった。

 アメリカは産油国に対して決済をドルにするように求め、集まったドルでアメリカの財務省証券や高額兵器などを購入させ、だぶついたドルを還流させようとしたのだ。このシステムでは、例えば、石油が欲しければドルの発行量を増やし、産油国へ流れたドルを回収するだけのこと。日本や中国が財務省証券を大量に購入してきたのも同じ理由だろう。一種のマルチ商法だ。

 その代償としてニクソン政権がサウジアラビアに提示したのは、同国と油田地帯の軍事的な保護、必要とする武器の売却、イスラエルを含む中東諸国からの防衛、そしてサウジアラビアを支配する一族の地位を永久に保障するというもので、この協定は1974年に調印されたという。これと基本的に同じ内容の取り決めを他のOPEC諸国も結んだという。

 1970年代に始まったドル回収システムのひとつは投機市場の拡大。現実世界に流通するはずのドルを投機市場へ流し込もうということだ。そのために規制緩和が推進され、「金融ビッグバン」ということになる。新自由主義をアメリカやイギリスの支配層が拡大させた一因はそこにあるだろう。

 アメリカに限らず、資本主義世界の巨大企業はため込んだ儲けを社会に還流させようなことはしない。そこで「カネ余り」になり、経済活動は行き詰まる。その滞留した資金の受け皿として投機市場が用意され、「バブル」になる。

 投機市場では実際に流れ込んだ資金量を遙かに上回る数値が表示され、大儲けした気になる人もいるが、それは幻影にすぎない。市場へ流入する資金量が減れば相場は下がり、幻影は消えていく。例えば、2008年9月にリーマン・ブラザーズが破産法第11条(日本の会社更生法、あるいは民事再生法に相当)の適用を申請、つまり倒産したのもそうした結果だ。

 通常はそれで幻影が消え、本来の姿が現れるのだが、この時、アメリカの当局は「大きすぎて潰せない」として巨大金融機関を救済、「大きすぎて処罰できない」ということで責任者が適正に処罰されることはなかった。現実を幻影に合わせることにしたのだが、それには資金が必要になる。当然、尻ぬぐいは庶民に押しつけられた。

 新自由主義の仕組みは残り、同じことを繰り返すことになる。安倍晋三首相は日銀の黒田東彦総裁と組んで「量的・質的金融緩和」、いわゆる「異次元金融緩和」は推進、資金を世界の投機市場へ流し込んだが、目的は投機市場へのテコ入れ。日本経済を立て直すことなど不可能だ。これは政府も日銀も承知しているだろう。

 投機市場へのテコ入れにはETF(上場投資信託)やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も利用され、庶民がリスクを負うことになった。大損することは最初から見通されていたはずだ。

 アメリカにしろ、日本にしろ、支配層が目指している方向は一貫している。世界を支配し、富を独占することだ。国という仕組みは庶民の意思も反映されるようになっているので、彼らは破壊したがっている。ファシズムを欧米の巨大資本が支援していた理由もそこにある。

 フランクリン・ルーズベルト大統領は1938年4月29日、ファシズムについて次のように語っている。

「もし、私的権力が自分たちの民主的国家より強くなるまで強大化することを人びとが許すなら、民主主義の権利は危うくなる。本質的に、個人、あるいは私的権力をコントロールするグループ、あるいはそれに類する何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」

 1932年の大統領選挙でウォール街はハーバート・フーバー大統領の再選を目指していた。この人物はスタンフォード大学を卒業した後、鉱山技師としてアリゾナにあるロスチャイルドの鉱山で働き、利益のためなら安全を軽視するタイプだったところを見込まれて「出世」している。(Gerry Docherty & Jim Macgregor, “Hidden History,” Mainstream Publishing, 2013)

 ところが、このフーバーが1932年の大統領選挙でニューディール派のルーズベルトに負けてしまう。そこで、JPモルガンを中心とする巨大金融資本は1933年から34年にかけて反ニューディール派のクーデターを計画している。バトラーの知り合いで、クーデター派を取材したジャーナリストのポール・フレンチによると、彼らはファシズム体制の樹立を目指すと語っていたという。この計画はスメドリー・バトラー海兵隊少将らが議会で証言で明らかになっている。

 このJPモルガンは日本の支配層とも深い関係がある。切っ掛けは関東大震災。復興資金を調達するため、日本側はJPモルガンに頼り、それ以降、日本の政治経済はこの金融機関の影響下に入ったのだ。

 1932年にジョセフ・グルーが駐日大使として日本へ来るが、この人物のいとこはジョン・ピアポント・モルガン・ジュニア、つまりJPモルガンの総帥と結婚している。それだけの大物を送り込んできた理由のひとつは対日投資にあるだろう。グルーは日本軍が真珠湾を攻撃した後も日本に滞在、1942年に帰国する直前、岸信介からゴルフを誘われている。(Tim Weiner, "Legacy of Ashes," Doubledy, 2007)

 JPモルガンと最も近い関係にあった日本人は井上準之助と言われている。三井財閥の大番頭を務めていた団琢磨はアメリカのマサチューセッツ工科大学で学んだ人物で、アメリカの支配層と太いパイプを持っていた。

 新自由主義に食い荒らされた国々は死が間近に迫っている。支配層はその国を放棄し、直接投資に乗り出そうとしている。そして考えた仕組みがTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)の3点セット。これは明らかにファシズムであり、第2次世界大戦の前から彼らが目論んでいたことだ。

 この長期計画を巨大資本が放棄するとは思えない。安倍晋三政権の動きを見ていると、強引にヒラリー・クリントンを大統領にさせ、屁理屈を使って3点セットを実現するとアメリカ側から言われているようにも思える。

 金融システムを巨大資本が支配する仕組みがアメリカに出現したのは連邦準備法が制定された1913年だが、これにはJPモルガンの創設者であるジョン・ピアポント・モルガンが関係している。

 ニッカー・ボッカー信託が破綻、その救済をモルガンが拒否したことから連鎖倒産が始まって相場が暴落、それを口実にしてセオドア・ルーズベルト大統領が国家通貨委員会を設立、巨大金融機関の代表がジキル島にあるモルガンの別荘に集まって秘密会議を開催、そこで連邦準備制度の青写真が作り上げられたのだ。この法律によってアメリカの通貨政策は民間の銀行が支配することになり、ドルが基軸通貨になってからは、そうした銀行を世界の金融を支配することになる。

 ドルが基軸通貨でなくなると、この仕組みが破綻してしまう。そうした動きの震源地は中国とロシアであり、その意味でもアメリカの巨大資本は中国やロシアを破壊しようと躍起になっている。アメリカの軍部は懸念しているようだが、ヒラリーの周辺にいるネオコンたちはロシアとの核戦争を辞さないという姿勢だ。彼らがその意味を理解しているかどうかは不明だが。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201610080000/


27. 中川隆[4554] koaQ7Jey 2016年10月22日 12:35:07 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[4965]

ヒラリーの戦争犯罪 Paul Craig Roberts 2016年10月20日

2016年10月20日の今日は、アメリカのオバマ大統領と、ヒラリー・クリントン国務長官が組織し、解き放った勢力によるムアマル・カダフィ虐殺五周年だ。 CBS“ニュース”での大喜びで笑いながらの殺人女の振る舞いを思い出して頂きたい。“来た、見た、彼は死んだ。”
https://www.youtube.com/watch?v=Fgcd1ghag5Y


ムアマル・カダフィは、世界で最も進歩的な指導者だった。

カダフィは、リビアの石油の富を、リビア国民のために使っていた

彼は、宮殿ではなく、立派なテントではあるが、テントで暮らしており、アメリカ政府の中東同盟国である、サウジアラビアや、産油首長国支配者一族につきもののヨーロッパ高級車や他のあらゆる身の回り品のコレクションを持っていなかった。

リビアでは、教育、医療と、電力は無料だった。ガソリンは事実上無料で、一リットル、14セントで売られていた。子どもを産んだ女性は、現金の助成金を貰い、カップルが結婚すると現金の助成金が貰えた。リビアの国営銀行は、無利子で融資し、農民には無償で開業資金を供与した。
http://www.globalresearch.ca/libya-ten-things-about-gaddafi-they-dont-want-you-to-know/5414289 
連中が、人々に知って欲しくないカダフィに関する10のことがら(英文)

カダフィがアメリカ政府から自立していたことが彼の没落をもたらしたのだ。若い頃のカダフィの目標は、アラブを、欧米の略奪に抵抗できる一つの圏に組織することだった。いらだった彼は、汎アフリカ主義に向かい、アメリカのアフリカ軍に参加するのを拒否した。彼は、アフリカ人をアメリカの金融覇権から解放するはずの、金本位のアフリカ通貨を導入したがっていた。

カダフィは、中国のエネルギー企業に、リビアのエネルギー資源を開発させており。、地中海でのロシアの存在で、既に腹を立てているアメリカ政府は、今や中国の存在にまで直面することになったのだ。アメリカ政府は、カダフィは、まずい連中と付き合っているので、退陣させるべきだと結論を出した。

アメリカ政府は、傭兵を編成し、連中を、シリアでと同様“反政府派”と名付け、リビア政府にけしかけた。カダフィ軍が勝っていることが明らかになると、アメリカ政府は、うぶでだまされやすいロシアと中国の政府を騙し、国連で、NATOによって、リビア領空に飛行禁止空域を設定することを認めさせた。飛行禁止空域の建前の目的は、やってもいなかった、カダフィによる民間人攻撃を防ぐためということだった。本当の理由は、主権国家のリビア空軍が、地上の軍隊を支援するため、自分の領空を使えなくするためだった。Onceだまされやすいロシアと中国が、安全保障理事会の議決で拒否権を行使そこねると、アメリカとNATO自身が決議に違反して、カダフィの軍隊を攻撃するために欧米の空軍力を用いて、紛争を、CIAが組織した傭兵に有利にした。カダフィは捕らわれ、残虐に殺害された。かつて繁栄し、成功していた社会だったリビアが、それ以来、混乱状態にあるが、それは、オバマ政権が望んでいたものだ。

サダム・フセインについて語られ、現在、シリアとロシアについて語られているウソと同様に、カダフィとリビアについては、あらゆるウソが語られた。

イギリス議会報告は、欧米の人々は、リビア破壊に対する支持を得るためのウソを各国政府から吹き込まれ、リビアは、カダフィが欧米の覇権にとっての障害と見なされていたがゆえに破壊されたと、明白に結論付けている。
http://www.globalresearch.ca/libya-war-was-based-on-lies-bogus-intelligence-nato-supported-and-armed-the-rebels-british-parliamentary-report/5547356?utm_campaign=magnet&utm_source=article_page&utm_medium=related_articles

彼女の監督下で準備されたこの戦争犯罪のかどで、ニュルンベルク裁判時の法律において、彼女が有罪であることについて、殺人女に質問した売女マスコミは皆無だ。殺人女を支配している巨大な政治力を持ったひと握りの集団と、連中の手先の売女マスコミは、この戦犯を次期アメリカ大統領にするつもりなのだ。
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/10/post-5564.html


28. 中川隆[4622] koaQ7Jey 2016年10月24日 19:56:10 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[5033]


“連中”は本当に、ドゥテルテ大統領殺害を試みるだろうか?
2016年10月17日 Andre Vltchek

New Eastern Outlook


歯に衣着せぬフィリピン大統領、ロドリゴ・ドゥテルテは、今頃、帝国の権威ある秘密永久暗殺対象者リストに載った可能性がきわめて高い。

暗殺対象者リストは実に長大だ。ここ数十年、リストはずっと長いままだ。数がわからなくなったり、混乱したりしかねない。一体何人が標的にされ、密かに殺害されたのだろう? 彼らの一体何人が実際に死んだのだろう?

暗殺対象者リストは、まるで輝かしい世界指導者のカタログのようだ。ごく一例をあげればパトリス・ルムンバ(ザイール)から、モハンマド・モサデク(イラン)、ウゴ・チャベス(ベネズエラ)、スカルノ(インドネシア)、ジュベナール・ハビャリマナ(ルワンダ)、サルバドール・アジェンデ(チリ)から、ムアマル・カダフィ(リビア)、オマル・アル=バシール(スーダン)や゛フィデル・カストロ(キューバ)に至るまで。

直接、暗殺された人もあり、打倒された‘だけ’の人々もあり、ごく少数の‘著名’指導者だけが実際生き抜くことに成功し、権力の座に止まっている。

彼らのほぼ全員、良く似たいくつかの大罪をおかしていた。こうした罪には、自分の国と国民のきわめて重要な利益を擁護すること、多国籍企業による抑制なしの天然資源略奪を認めないことや、帝国主義の原則への抵抗が含まれている。帝国を批判するだけでも死罪に値することも多い。

ドゥテルテ大統領は、上記のこれらのあらゆる恐ろしい犯罪をおかしている。彼は‘告発の通り有罪’のように見える。彼は何も否定していない。彼に対し告発されている罪を誇りにしているようにすら見える。

‘彼は人生に飽きたのだろうか?’と疑問を抱くむきもある。‘彼は正気を失っているのだろうか? 彼は死ぬ覚悟ができているのだろうか?’

彼は、英雄、新たなアジアのウゴ・チャベスなのだろうか、それとも、抑制の利かないポピュリストに過ぎないのだろうか?

彼は確かに多くのものを危険にさらしている、あるいは彼は、断固あらゆるものを危険にさらしているのかも知れない。彼は今、欧米政権から見て、最も許し難い罪をおかしているのだ。彼は、帝国とその組織(国連、NATOやEUを含む)を公然と侮辱している。彼は連中を軽蔑さえしている!

‘しかも悪いことに、彼はおしゃべりしているだけではない。彼は断固たる行動をしている! 彼はフィリピンの貧しい人々を助けようとしていて、共産主義者や社会主義者といちゃつき、それに加え、彼は基本的に、中国とロシア両国に支援を求めている。

火花が散っている。時折、オバマや法王や、アメリカやEUや国連のような個人や組織が、くたばれと言われたり、ろくでなしや、売女の息子と命名されたりする!

しかもフィリピン国民は、これを完全に喜んでいる。ドゥテルテは、僅差で選挙に勝ったのだが、彼の最近の支持率は、急上昇し、びっくり仰天の76%だ。もし‘民主主義’というものが、本当に‘人々による支配’(あるいは、少なくとも、人々の意志を反映すべき)ならば、全て、まさに、全てが、今のフィリピンのようにあるべきではないかと主張する人々もいる。

*

(フィリピン大学ディリマン校)のアジア研究講師、エドゥアルド・クリマコ・タデムは、ドゥテルテの‘大統領らしからぬ’演説や、“市民的、政治的人権問題を否定的に評価している”点には批判的ながら、他の面における彼の実績には明らかに感心している。私宛の最近の手紙で、彼はこう書いている。

“他の面で、積極的な構想が進められています。農業改革、社会福祉や開発や、反貧困対策の閣僚に、共産党党員を任命したのは良いことです。他の左翼や進歩派の人々が、他の労働、文部、厚生、科学や、環境の閣僚になっています。より重要なのは、土地配分を前進させ、契約労働を終わらせ、広く手を差し伸べ、キューバの医療制度に学び、巨大採掘企業による環境上破壊的な事業を抑制する積極的な計画が行われていることです。更に、CPPと、MILF/MNLFそれぞれとの和平交渉も復活し、最初の一歩を踏み出したのは良いことです。

独自の外交政策が発表されており、彼以前の大統領連中とは違って、ドゥテルテはもはや、アメリカや欧米列強にぺこぺこしない。彼は中国との関係も修復しており、南シナ海における領土紛争の解決で、違った、それほど喧嘩腰でないやり方をしている…”

ワシントン、ロンドンと東京からすれば、こうしたことは全て‘悪’、極端な悪だ。このような振る舞いは、必ずや人目をひき、処罰なしには済まない!

今回は、ほぼ即座に、帝国の反撃が行われた。

2016年9月20日、インターナショナル・ビジネス・タイムズはこう報じた。

“フィリピン政府は、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領に対するクーデターが画策されていると主張し、政権は画策容疑者を取り締まり中だと述べた。政府の広報担当官は、ニューヨーク在住のフィリピン系アメリカ人の一部が、かんに障る大統領を打倒する計画を立てていると述べた。

策謀の容疑者や計画を明らかにはせずに、フィリピン政府の大統領報道官マーティン・アンダナルは、こう述べた。ドゥテルテに対して陰謀を企んでいるこうした連中は“良く考えるべきだ… ‘アメリカ合州国内の信頼できる筋から、私は情報を得ている。我々は氏名は分かっているが、公表したくない。我々はこれを深刻に受け止めている。我々はこれを調査中だ,’”と、政府職員は述べた。

クーデター、暗殺策謀。Softクーデター、hardクーデター: ブラジル、アルゼンチン、ボリビア、ベネズエラ、シリア、ウクライナ、リビア、パラグアイ、ホンジュラスやスーダン、アフリカの半分… 全てわずか過去数年の間に…そして今、フィリピン? ブラボー、帝国は加速している! 帝国の人殺しの労働倫理は、明らかに進歩している。

*

ドゥテルテ大統領はこの全てを理解している。前述の通り、彼は既に、オバマ大統領を‘ろくでなし’、‘売女の息子’と呼び、最近は‘彼は地獄に堕ちる’と示唆している。

これは“セニョールW”としても知られているジョージ・W・ブッシュについて、ウゴ・チャベス大統領がいつも言っていたことより強烈だ。多くの中南米専門家によれば、チャベス大統領は、彼の率直さ、帝国や帝国主義全般に対する敵意ゆえに、自らの命を支払わされる結果になった。

帝国は、己の醜悪な姿を見せる鏡をつきだす連中を決して許さない。帝国は、不服従や反抗心ほんのわずかな兆しがあれば、容赦なく殺害する。帝国のプロパガンダ機関で右腕のマスコミが、常に適当な説明と正当化をひねり出してくれる。しかも、北アメリカとヨーロッパの国民は全く無頓着で、洗脳されていて、受け身だ。こうした人々は、犠牲者を守らず、自分の狭い利益しか守らない。特に、もし犠牲者が、どこか遙か彼方の‘被差別民’が暮らす国の人であれば。

偉大なインドネシアのスカルノ大統領は (何よりも)公にアメリカ大使に向かってこう叫んだかどで打倒され潰された。“あなた方の支援などまっぴら御免だ!” …そして、もちろん、彼の国民の利益を、帝国から守ったかどで。アフリカ人が、植民地開拓者連中を有り難く思う理由はないと大胆にも言ったがために、パトリス・ルムンバは暗殺された。

ドゥテルテは、それよりすごいことを言っている。彼は辛辣だが、そうなる無数の理由があってのことだ。アメリカ合州国は、百万人以上のフィリピン人を殺害しているが、その大半が、19世紀末と二十世紀始めのことだ。近年の歴史で、アメリカは、かつては誇り高く有望だった国を、アメリカ政府の気まぐれにひたすら頼り、いいようにされる、屈辱を与えられた半植民地に変えた。資本主義で、全くの親米のフィリピンは、インドネシアのような‘破綻国家’、社会的災厄、知的に荒廃した土地となった。

*

ドゥテルテ大統領は、志を同じくする知識人や官僚の固く決心した閣僚を実現することに成功した。

RTは最近こう報じた。


“時として、ボスの発言の火消し役をしている、ドゥテルテの外務大臣、ペルフェクト・ヤサイが、フェースブックに、“アメリカ は我々を失望させた”と題する声明を発表し、その中で、彼は“我々が永遠にアメリカに感謝すべき無数のことがある”が、アメリカは、決して、完全にフィリピンの独立を尊重したことがない。”と述べている。

“1946年7月4日に、独立を宣言して以来、フィリピン人は、自決と統治に対して十分訓練を受けてきたのに、アメリカ合州国は、本当に独立して、自由を得ることができない茶色の舎弟として、依存と服従へと我々を押さえ込む、目に見えない鎖に我々をつないだできた”と外務大臣は声明で述べている。”

ドゥテルテと彼の閣僚が絶えず悪魔化され、笑い物にされる欧米の主流マスコミで、このような発言が、報道されることは実にまれなことだ。

フィリピンに関する最近の記事見出しは下記の通りだ。

‘ プレイボーイの大物アントニー・モイニハンの麻薬売買をしている娘がフィリピンで射殺された’ (デーリー・メール)。

‘生きた男を、クロコダイルの餌にしたかどで、非難されているフィリピン大統領’ (ヤフー・イギリス & アイルランド・ニュースによるJournal.ie )

‘特報 -ドゥテルテの麻薬撲滅戦争で、現地住民が暗殺対象者リスト作成を支援’(ロイター)

‘ドゥテルテは司法職員を殺害したと、殺し屋がフィリピン上院議員に語る’(AFP)

社会的公正のための戦いについては皆無だ! 欧米帝国主義に対する戦いについては皆無だ。

麻薬撲滅戦争…

そう、多くのフィリピン人は‘死体が山積み’なのを心から懸念しており、現政権のやり方は、余りに手荒で、耐えられないほどだと定義することが可能かも知れない。

しかし、状況はさほど単純ではない。ここはヨーロッパではない。ここはアジアwith 独自の文化的力学や問題を抱えた。フィリピンで、犯罪率は、アジア太平洋の他のどの国でもほとんど見られないほどの異様な高さに達している。犯罪の多くが麻薬に関係している。だから人々は本当にうんざりしている。彼らは断固たる行動を要求しているのだ。

長年、ドゥテルテは、ミンダナオ島の都市、ダバオの市長をつとめていた。ダバオは、犯罪と同義語だった。暮らすのには大変な場所で、多くの人が、統治するのはほぼ不可能だと言っている。

ドゥテルテ氏は正直だ。もし彼が‘十戒を守っていたなら’長年、ダバオ市長を勤めることはできなかったことを彼は公然と認めている。おそらく、誰にも無理だったろう。

彼の人権実績に対する批判に対し、彼は実に敏感だ。国連や、EUや、アメリカなど、どこからのものであれ、彼の反応は極めて反抗的で、いつも同じだ。“くたばれ!”

そして、欧米でいつも報じられるのはこのことだ。

しかし、ロドリゴ・ドゥテルテが、いつもこう言って続けることは省かれている。

人権について私にお説教か? 最近のイラクや、リビアやシリアを含め、世界中であなた方が殺害している何百万人もの人々についてはどうなのだ? あなた方が殺害したフィリピン国民はどうなのだ? 毎日、警官に虐殺されているあなた方の自国民、アフリカ系アメリカ人はどうなのだ?

彼は欧米の偽善に対する深い反感を隠そうとはしていない。何世紀も、アメリカ合州国とヨーロッパは、何百万人も殺害し、大陸を丸ごと略奪しておいて、他の国々を評価し、批判し、偉そうに命令する権利を保持している。直接、あるいは国連のような連中が支配している機関を通して。またしても、彼の答えは明らかに、スカルノ風だ: あなた方など御免だ! あなた方の支援など、まっぴら御免だ!!”

だが、ニューヨーク・タイムズやエコノミストでこういう話題を読むことは決してない。‘麻薬撲滅戦争’の話題だけ、‘無辜の犠牲者’と、そしてもちろん‘独裁者’ドゥテルテの話題だけだ。

*

状況は急速に進展している。

最近、ドゥテルテ大統領は、‘フィリピン水陸両用上陸演習’(Phiblex)と呼ばれている軍事演習の中止を命じた。演習は、10月4日に始まり、一週間以上続く予定だった。約1,400人のアメリカ人と、500人のフィリピン人兵士が、南シナ海の紛争になっている島嶼に危険なほど近い海域で、軍事演習に参加した。

数人の主要なフィリピン人知識人によれば、アメリカは、常に中国に敵対し、挑発して、地域における攻撃的な帝国主義的野望に、フィリピンを利用し続けてきた。

ドゥテルテ政権は、欧米離れをし、一層中国寄りにすると決意している。フィリピンと中国が、予見しうる将来に、全ての意見の相違を解決できる可能性は極めて高い。つまり、もしアメリカを外して、よせつけずにいれば。

中国に対する善意を実証するため、また新たな自立の道を示すべく、マニラは、アメリカ合州国との28件の年次軍事演習全てをキャンセルすることも計画している。

ドゥテルテ大統領は、一体何が危機に瀕しているかは十分承知している。大統領の座について、100日を記念して、彼はいくつか激しい演説をし、欧米が彼を大統領の座から排除しようとして、彼を殺害さえする可能性もあることを認めた。

“私を追い出したいのか? CIAを使いたいのか? おやりなさい… どうぞご自由に。どうでも良い! 私が追い出される? 結構。(もしそうなら)それも私の運命だ。運命は余りに多くのものをもたらす。私がもし死んだら、それも私の運命だ。大統領は暗殺さされるものだ。”

そう。大統領たちは暗殺されることが多いのだ。

しかし、最近では世界中の国々が続々と反帝国主義連合に参加しつつある。なんとか克服している国もある。不安定化させられたり(ブラジルのように)、経済的に混乱させられたり(ベネズエラのように)、完全に破壊されたりしている(シリアのように)国もある。ロシアから中国、朝鮮民主主義人民共和国やイランに至るまで、反抗的な国々は、欧米政府プロパガンダとマスコミによって、ことごとく悪魔化されている。

しかし世界はもううんざりしているように見える。帝国は崩壊しつつある。帝国はパニックになっている。帝国は益々多くの人を殺害しているが、勝利してはいない。

フィリピン人も、この同盟に参加しようとしているのだろうか? 大統領に就任して、わずか100日で、ドゥテルテ大統領は覚悟を決めたように見える。もう隷属はしない! 戻ってくるな!

彼は生き残るつもりだろうか? 彼は今の路線を続けるつもりだろうか?

実際、彼は一体どれほど強靱なのだろう? 帝国と対決するには、鋼の神経が必要だ! 無数の複雑な暗殺策謀、巧妙なプロパガンダ作戦や、策略を生き抜くには、人は少なくとも不死身でなければならない。こうしたもの全てに対し、彼は覚悟できているのだろうか? 彼は覚悟しているように見える。

彼の国のエリート連中は、完全に欧米に寝返っている。インドネシアや、かなりの程度、タイやマレーシアの連中同様に。

これは困難な闘いになるだろう。すでにそうなっている。

だが国民の大多数は彼を支持している。現代史で初めて、フィリピン国民が、自らの運命を、自らの手で決める好機を得る可能性があるのだ。

そして、もし欧米が、マニラから溢れ出るものが気に入らなかったら? ドゥテルテ大統領は気にしていない。逆に質問する項目をたっぷり用意したと彼は宣言している。そして、もし、欧米がそれに答えられなかったら。

“もし連中が答えることができないなら、売女の息子よ、うせろ、けだもの。今度は蹴るぞ。私を怒らせるな。連中が私より賢明なはずがない、本当だ!”

十中八九、連中はそうではない。連中は彼より賢明ではない。しかし連中は絶対に遥かに冷酷で、遥かに残忍だ。

連中は彼の何を非難しているのだろう?‘麻薬撲滅戦争’で、約3,000人を殺害したことだろうか?

欧米(最近フィリピンでは、多くの人々が‘売女の息子’連中と呼んでいる)は、第二次世界大戦終結以降、世界中で一体何人の命を奪っただろう? 4000万人、それとも5000万人? 数え方次第だ。‘直接’か‘間接’。

帝国は、ほぼ確実に、ドゥテルテ大統領を殺害しようとするだろう、それも近い内に、ごく近い内に。

生き残る為、前進し続ける為、戦い続ける為、虐待され、搾取されてきた彼の国を守る為に、彼は十戒の全てを永久に絶対に忘れなければなるまい。
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/10/post-5cb0.html


29. 中川隆[4727] koaQ7Jey 2016年10月29日 06:32:24 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[5139]

 2011年3月にアメリカをはじめ、イスラエル、サウジアラビア、トルコなど外国のシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒したい勢力が侵略戦争を始めた当初、ダニー・デイエムなるシリア系イギリス人が「アサド政権による弾圧」を発信、それを西側の有力メディアは垂れ流していたが、この仕組みは2012年3月に破綻する。「シリア軍の攻撃」を演出する様子を撮した部分を含む映像がインターネット上へ流出、西側メディアの伝えていた「報道」が嘘だということを多くの人が知ってしまったのだ。現在、SOHRと手を組んでいるのは「白ヘル」だ。

 イドリブの攻撃に関し、ロシアのビタリー・チュルキン国連大使は西側の主張を否定している。国連の呼びかけに応じ、18日からロシアやシリアの航空機はイドリブから10キロメートル以内の空域を飛行していないというのだ。ロシア国防省は問題の日にアメリカのUAV(ドローン)のプレデターが飛行していたと主張、その事実は記録されているとしている。ロシアが上空から撮影した写真によると、学校の屋根に損傷は見られず、爆撃によるクレーターもないようだ。

 1991年12月にソ連が消滅、翌年の2月の世界制覇プラン(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)を作成してから、アメリカの支配層は有力メディアに偽情報を広めさせながら軍事侵略を繰り返してきた。ユーゴスラビアやアフガニスタンは人権、イラクは大量破壊兵器、ウクライナ、リビア、シリアは民主化だが、いずれも侵略を正当化するための口実に使われただけだ。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201610280000/


30. 中川隆[4753] koaQ7Jey 2016年10月30日 06:11:09 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[5167]

シリア空爆で破壊された学校の写真は「偽物」 ロシア外務省 2016年10月29日


シリアの反体制派が支配する北西部イドリブ県ハス村で、空爆を受けて破壊された学校の教室(2016年10月26日撮影)。(c)AFP/Omar haj kadour

【10月29日 AFP】ロシア外務省の報道官は28日、

シリアの反体制派が支配する同国北西部イドリブ(Idlib)県の学校が空爆されたとして発表された写真を専門家が鑑定したところ、写真は偽物だという結果が出たと述べた。

国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)は、この空爆により児童22人が死亡したと発表している。

 露外務省のマリア・ザハロワ(Maria Zakharova)報道官は、フェイスブック(Facebook)への投稿で

「シリア・ハス(Hass) 村での写真を分析した専門家によれば、実際には学校に対する空爆はなく、犠牲者も出ていないということが判明した。写真はコンピューター・グラフィックによるものだ」

と述べた。

 また露国防省のイーゴリ・コナシェンコフ(Igor Konashenkov)報道官も27日、ロシアの無人機が撮影した写真では、空爆を受けたとされる学校の屋根に被害はなく、周辺エリアに空爆の跡はみられなかった上、「その日はロシア軍の戦闘機は1機もその地域に進入していない」と述べた。

 ユニセフは26日、シリアのイドリブ県ハス村の学校が空爆され、児童22人と教員6人が死亡したと発表していた。(c)AFP


31. 中川隆[4804] koaQ7Jey 2016年11月04日 14:29:35 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[5218]

見えざる政府の内実:戦争、プロパガンダ、クリントン & トランプ
2016年10月27日 John Pilger www.johnpilger.com
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-f084.html


アメリカ人ジャーナリスト、エドワード・バーネイズは、現代のプロパガンダを発明した人物と言われることが多い。

歪曲とごまかしの婉曲表現として、“広報活動”という言葉を創り出したのは、心理分析の先駆者、ジーグムント・フロイトの甥、バーネイズだった。

1929年、ニューヨークのイースター・パレードで、タバコを吸って、女性の喫煙を推進するよう、彼はフェミニストを説得した。これは当時異様なことと見なされていた行為だ。フェミニストの一人、ルース・ブースは“女性たちよ! もう一つの自由のたいまつに火をつけよう! 性的タブーと戦おう!”と宣言した。

バーネイズの影響力は広告を遥かに超えて広がった。彼の最大の成功は、アメリカ国民を、第一次世界大戦という大虐殺に参戦するよう説得した彼の役割だ。彼は言った。秘訣は、“国民にはそうと気がつかせぬまま、彼らを我々の意志に従って支配・統治”するため、国民の“同意をでっち上げる”ことだ。

彼はこれを“我々の社会における本当の支配力”と表現し、それを“見えざる政府”と呼んだ。

現在、見えざる政府は、一層強力となったが、ほとんど理解されていない。ジャーナリスト兼映画制作者という経歴上、今ほど、我々の暮らしの中に植えつけられ、まかり通っているプロパガンダを私は聞いたことがない。

二つの都市を想像願いたい。

二つの都市は、それぞれその国の政府軍に包囲されている。二つの都市は、人々の首を斬るなどの恐ろしい残虐行為をする狂信者連中に占領されている。

だが、ここには極めて重要な違いがある。一方の包囲は、政府軍兵士は、彼らの戦闘や空爆を熱心に報じる欧米の従軍記者連中によって、解放者として描かれている。こうした英雄的兵士が、勝利のVサインをしている写真が一面に掲載される。一般市民の死傷者については、ほとんど触れられない。

二つ目の都市で - すぐ近くの別の国で - ほとんど全く同じことが起きている。政府軍が同様な狂信者連中に支配されている都市を包囲している。

違いは、この狂信者連中は“我々”アメリカ合州国とイギリスに支援され、補給され、武器を提供されていることだ。連中には、イギリスとアメリカが資金を出したメディア・センターまである。

もう一つの違いは、この都市を包囲している政府軍兵士は悪者で、一つ目の都市で良い兵士がしていると全く同じこと、都市を攻撃し爆撃しているかどで非難されているのだ。

混乱されたろうか? そうではないだろう。プロパガンダの本質である基本的な二重基準はそういうものだ。もちろん私は、アメリカ合州国とイギリスに支援されたイラク政府軍による現在のモスル包囲と、ロシアに支援されたシリア政府軍によるアレッポ包囲のことを言っている。一方は善だ。もう一方は悪だ。

ほとんど報道されないのは、もし2003年に、イギリスとアメリカ合州国がイラクを侵略していなければ、この二つの都市が狂信者連中に占領され、戦争で荒廃されてはいなかっただろうことだ。あの犯罪的行為は、現在、シリア内戦に関する我々の理解を歪めているプロパガンダと、驚くほどよく似たウソを根拠に始められたのだ。

このニュースを装った絶え間ないプロパガンダさえなければ、醜悪なISISや、アルカイダや、ヌスラ戦線や、その他諸々の聖戦ギャングなど存在せず、シリア国民は、今のように、自分たちの命のために戦ってはいなかった可能性がある。

2003年に、BBC記者連中が続々とカメラに向かって、後に世紀の犯罪となったものに対し、ブレアは“潔白が証明された”と我々に語ったのを覚えている方々もおられよう。アメリカのテレビ局も、ジョージ・W・ブッシュに、同じ潔白証明をした。フォックス・ニューズは、コリン・パウエルのでっちあげを紛らすために、ヘンリー・キッシンジャーを担ぎだした。

同年、侵略直後、ワシントンで著名なアメリカ人調査ジャーナリスト、チャールズ・ルイスのインタビューを撮影した。私は彼に質問した。“もしも世界で最も自由なマスコミが、後になって粗雑なプロパガンダだったことが判明したものに、本気で異議申し立てをしていたら、どうなっていたでしょう?”

もし、ジャーナリスがきちんと仕事をしていれば“アメリカが、対イラク戦争をする必要がなかった可能性は非常に大きい”と彼は答えた。

これは衝撃的な発言で、私が同じ質問をした他の有名なジャーナリストたちも、CBSのダン・ラザー、オブザーバーのディビッド・ローズや、匿名希望のBBCジャーナリスやプロデューサーたちも同意していた。

言い換えれば、ジャーナリスたちが、きちんと仕事をしていれば、拡声するのでなく、プロパガンダに異議を申し立てし、調査をしていれば、何十万人もの男性、女性や子供たちは、今も生きていて、ISISもなければ、アレッポやモスル包囲もなかったはずなのだ。

2005年7月7日のロンドン地下鉄での大惨事もなかったはずなのだ。何百万人もの難民の奔流もなかったはずなのだ。惨めな難民キャンプもなかったはずなのだ。

昨年11月、パリでテロの惨劇が起きた際、フランソワ・オランド大統領は、シリアを爆撃するため、即座に航空機を送り込み - 更なるテロが続いているが、フランスは“戦争状態”にあり“容赦はしない”と言ったオランドの大げさな言葉に対する予想通りの産物だ。国家による暴力と、聖戦の暴力は、お互いを餌にして、続いているという真実を語れる勇気を持った国家指導者はいない。

ソ連の反体制派詩人、エフトシェンコは言った。“真実が沈黙に置き換えられる時”“沈黙はウソだ。”

対イラク攻撃、対リビア攻撃、対シリア攻撃は、こうした国々の指導者たちが、欧米の傀儡ではないがゆえに起きた。サダムやカダフィの人権実績は全く無関係だ。彼らは、そいれいに従わず、自国の支配を引き渡そうとしなかったのだ。

セルビア占領と、市場経済への転換を要求する“協定”への署名を拒否すると、スロボダン・ミロシェビッチにも同じ運命が待っていた。彼の国民は爆撃され、彼はハーグで起訴された。こういう独立は、許しがたい.

ウイキリークスが暴露している通り、シリア指導者バッシャール・アル・アサド2009年に、カタールからシリアを経由して、ヨーロッパに向かう石油パイプラインを拒否して初めて、彼は攻撃されるようになったのだ。

その時以来、CIAは、現在、モスルの人々を留め置き、東アレッポの人々を人質にしている狂信者連中と同じ聖戦狂信者を使ってのシリア政府打倒を計画してきた。

一体なぜこれがニュースにならないのだろう? 元イギリス外務省幹部Carne Ross、対イラク経済制裁運営責任者の、私に言った。“ジャーナリス連中は、秘密部分を削除した諜報情報というエセ事実を提供してやるか、締め出すかだ。これが、効くのだ。”

アメリカとイギリスが何十億ドルもの兵器を売っている、欧米にとっての中世のお客様、サウジアラビアが、余りに貧しく、最良の時期ですら、子どもの半数が栄養不足だったイエメンを、現在破壊している。

極貧の村や、結婚式や葬儀に対し、サウジアラビアが使っている“我々の”爆弾による大規模爆弾攻撃をYouTubeで見ることができる。

爆発は、小型原子爆弾のように見える。サウジアラビアの爆撃手は、イギリス人将校と並んで働いている。これは夕方のニュースにもならない。

オックスフォード、ケンブリッジ、ハーバード、コロンビア大学で立派な教育を受け、BBC、ガーディアン、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストでの素晴らしい経歴を持った連中が、我々の同意を画策する時に、プロパガンダは最も効果的になる。

こうした組織は、リベラルなマスコミとして知られている。連中は自らを、見識ある、進歩的な時代精神道徳の擁護者を装っている。彼らは人種差別反対で、フェミニズムを支持し、性的少数者を支持している。

そして、連中は戦争を愛している。

フェミニズムを語りながら、生存権を含め、無数の女性たちの権利を無視する飽くことを知らない戦争を支持しているのだ。

2011年、当時は現代的な国家だったリビアが、ムアマル・カダフィが、自国民に対する大量虐殺をしようとしているという口実で破壊された。あれは絶え間のないニュースだった。しかも、証拠は皆無だった。結局はウソだった。

実際、イギリス、ヨーロッパとアメリカ合州国が、アフリカ最大の産油国リビアで“政権転覆”と称するものを望んでいたのだ。アメリカ大陸における、カダフィの影響力と、何よりも、彼が自立していることが許しがたい.

それで、彼は、アメリカ、イギリスと、フランスが支援する狂信者連中に、背後を、ナイフで刺されて、殺された。彼の陰惨な死を、カメラの前で“来た、見た、彼は死んだ!”と叫んで、ヒラリー・クリントンは喝さいしていた。

リビアの破壊は、マスコミの勝利だった。陣太鼓が叩かれる中、ジョナサン・フリードランドは、ガーディアンにこう書いた。“リスクは極めて現実的ではあるが、介入の正当性を裏付けるものは強力だ。”

介入 - 何と礼儀正しく温和なガーディアン用語だろう。リビアにとって、本当に意味するものは、死と破壊なのに。

NATO自身の記録によれば、NATOは、9,700回の対リビア“攻撃出撃”を行い、そのうち三分の一以上が、民間施設を標的にしていた。武器には、ウラン弾頭のミサイルもあった。ミスラタやシルテの瓦礫や、赤十字が発見した集団墓地の写真をご覧願いたい。国連児童基金UNICEFは、殺害された子どもに関して“彼らの大半は十歳未満だ”と報じた。

直接の結果として、シルテは、ISISの首都になった。

ウクライナも、もう一つのマスコミの勝利だ。ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストやガーディアンなどのリベラルなご立派な新聞や、BBC、NBC、CBS、CNNなどの主要放送局が、新たな危険な冷戦を受け入れるべく、視聴者を条件付ける上で、極めて重要な役割を演じた。

2014年のウクライナ・クーデターは、実際には、ドイツとNATOに手助けされた、アメリカ合州国の仕業なのに、ウクライナでの出来事は、全てロシアによる悪意ある行為として、事実を歪曲して報じられている。

こうした現実の逆転が余りに蔓延しているために、アメリカが、ロシアを軍事的に威嚇しても、ニュースにならない。昔の冷戦時代、子どもの私が教えられて育ったのと同じ、組織的な中傷、脅威キャンペーンに隠されてしまうのだ。またもや露助が、エコノミスト誌が、悪魔として描いた新たなスターリンに率いられ、我々を攻撃しにやってくるのだ。

ウクライナに関する真実の抑圧は、私が覚えている限りで、最も徹底的な報道管制の一つだ。キエフでクーデターを画策したファシストは、1941年のナチスによるソ連侵略を支援した連中と同じ穴のムジナだ。ヨーロッパでは、ファシストや、反ユダヤ主義の勃興を、散々恐れているはずなのに、ウクライナのファシストについて触れた指導者はいない。ウラジーミル・プーチンを除いては、しかも、彼は数に入らない。

欧米マスコミの多くが、ウクライナのロシア語話者住民を、決して、ウクライナ国内での連合化を求め、自分たちが選んだ政府に対して、外国が画策したクーデターに抵抗しているウクライナ人としてではなく、モスクワの手先として、彼ら自身の国にいる外国人であるかのように描き出そうと懸命に努力した。

まるで、戦争屋の同窓会で、気軽に賢さを張り合っているかのようだ。

ロシアとの戦争煽り立てているワシントン・ポストの太鼓持ち連中は、サダム・フセインは、大量破壊兵器を保有しているというウソを広めたのとまったく同じ編者たちだ。

我々大半にとって、アメリカ大統領選挙戦は、ドナルド・トランプが極悪人役を演じるマスコミによる見せ物だ。

だがトランプが、ワシントンの権力者に嫌われているのは、彼の反抗的な振る舞いや発言とは、ほとんど無関係な理由からだ。ワシントンの見えざる政府にとって、予測のつかないトランプは、アメリカの21世紀計画に対する障害なのだ。

これは、アメリカ合州国の優位を維持し、ロシアを、できれば、中国も支配下におくためだ。

ワシントンの軍国主義者連中にとって、トランプの本当の問題は、正気な時には、ロシアとの戦争を望んでいないように見えることだ。彼はロシア大統領と戦うのではなく、交渉をしたがっている。中国の主席と話し合いたいと彼は言っている。

ヒラリー・クリントンとの最初の討論で、トランプは、紛争で、最初に核兵器を使用することはしないと約束した。彼は言った。“決して私は先制攻撃はしない。核戦争が起きてしまえば、おしまいだ。”こういうことはニュースにならない。

彼は本気で言っているのだろうか? 誰にもわからない。彼は、よく矛盾したことを言う。だが、トランプが、誰がホワイト・ハウスにいようと、アメリカ合州国を運営している壮大な国家安全保障機構が維持している現状にとって、深刻な脅威と見なされているのは明らかだ。

CIAは彼の敗北を願っている。ペンタゴンも彼の敗北を願っている。マスコミも彼の敗北を願っている。彼自身の党さえ、彼の敗北を願っている。核武装したロシアと中国と戦争をする用意ができていることが明白なクリントンと違い、彼は世界支配者にとって脅威なのだ。

彼女は良く自慢するが、クリントンにはスタイルがある。実際、彼女の実績は証明済みだ。上院議員として、イラクでの大虐殺に賛成した。2008年に、オバマに対抗して立候補した際には、イランを“完全に消し去る”と脅した。国務長官として、彼女は、リビアとホンジュラスの政府破壊に共謀し、中国攻撃の手筈を整えた。

彼女は、ロシアとの戦争になる直接的な挑発である、シリアでの飛行禁止空域を支持すると誓っている。クリントンは、私の人生の中で最も危険なアメリカ大統領になる可能性がある -そこで卓越する競争は激しいが。

何の証拠も無しに、トランプを支援していて、彼女のメールをハッキングしたと、彼女はロシアを非難している。ウイキリークスが公開した、これら電子メールで、クリントンが裕福で強力な連中に対する非公式な講演で言っていることと、彼女が公に語っていることとが真逆なのがわかる。

これこそが、ジュリアン・アサンジを黙らせ、脅すことが極めて重要な理由だ。ウイキリークスの編集者として、アサンジは真実を知っているのだ。懸念しておられる方々に申しあげておく。彼は健在で、ウイキリークスは、フル回転している。

現在、第二次世界大戦以来、アメリカが率いる軍隊の最大の増強が進行中だ。カフカスで、東ヨーロッパで、ロシア国境で、そして中国が標的である、アジアと太平洋で。

大統領選挙サーカスが、11月8日のフイナーレに近づく中、このことをお忘れなく。もし、勝者がクリントンになれば、古代ギリシア劇の合唱隊のような無分別な評論家連中が、彼女の戴冠式を、女性にとっての偉大な前進だと慶賀するだろう。クリントンの犠牲者、シリアの女性たち、イラクの女性たち、リビアの女性たちに触れるものは誰もいるまい。ロシアで行われている民間防衛訓練に触れるものは誰もいるまい。エドワード・バーネイズの“自由のたいまつ”を思い起こすものは誰もいるまい。

ジョージ・ブッシュの大統領報道官が、かつて、マスコミを“共謀実現者”と呼んだことがある。

マスコミのおかげで可能になったウソで、大変な苦難をもたらした政権の幹部によるこの発言は、歴史の警告だ。

1946年、ニュルンベルク裁判の検事は、ドイツ・マスコミについてこう言った。“あらゆる大規模侵略の前に、彼らは敵を弱体化させ、心理的に、ドイツ国民を、攻撃に備えさせるよう計算された報道キャンペーンを立ち上げていた。プロパガンダ体制で最も重要な武器は日刊紙とラジオだった。”
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-f084.html


32. 中川隆[4863] koaQ7Jey 2016年11月08日 07:46:01 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[5285]

2016.11.08
自衛隊の部隊が派遣されているジブチと南スーダンは米国がアフリカと中東を侵略する拠点になる


 ジブチへ日本政府は約47億円をかけて拠点基地を2011年に建設、南スーダンには陸上自衛隊・中央即応集団を派遣している。ジブチの拠点を防衛省は来年、拡張するという。そのジブチと南スーダンは、アメリカがアフリカや中東を侵略する拠点にしようとしている国。資源を略奪するために破壊と殺戮を繰り広げる足場にしようというわけだ。

 2007年にアメリカはアフリカ大陸を担当する統合軍のAFRICOMを創設しているが、その目的は言うまでもなく、アフリカを侵略して支配することにあった。当然、アフリカ諸国は反発、AFRICOMは司令部をドイツに置かざるをえなくなり、ジブチはアメリカ軍の橋頭堡的な役割を果たすことになる。

 アメリカ軍をアフリカ諸国が拒否できた一因は、リビアに君臨していたムアンマル・アル・カダフィにある。彼は自国を自立させるだけでなく、アフリカを独立させようとしていた。そうしたプランの一環としてドル体制からの離脱を目指し、金貨ディナールをアフリカの基軸通貨にしようとしていた。

 アメリカが2011年にリビアを攻撃した際、リビアは143トンの金を保有していたと言われている。WikiLeaksが公表したシドニー・ブルメンソールからヒラリー・クリントンに宛てた電子メールによると、アメリカがリビアを攻撃した理由は、その金143トンと石油利権だったことを暗示している。

 伝えられるところによると、バラク・オバマ大統領にリビア攻撃を強く迫ったのは3人の女性、つまり国務長官だったヒラリー・クリントン、そしてサマンサ・パワーとスーザン・ライスだ。クリントンはカダフィが惨殺されたことを知らされ、「来た、見た、死んだ」と口にして喜んでいる。

 アメリカがAFRICOMを創設する前年、2006年3/4月号のフォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号は、キール・リーバーとダリル・プレスの論文を掲載した。その中でふたりはロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できると主張している。この雑誌は外交問題評議会が発行、アメリカ支配層の意思を何らかの形で反映していると言える。

 また、2007年3月5日付けのニューヨーカー誌に掲載されたシーモア・ハーシュの記事によると、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3カ国が秘密工作を開始、そのターゲットはシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラだとしている。

 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、1991年に国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると語り、2001年9月11日に世界貿易センターと国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されて10日後には統合参謀本部でイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランを先制攻撃する計画ができていると聞いている。この計画を作成したのはドナルド/ラムズフェルド国防長官の周辺だ。

 イラクはアメリカ軍主導の連合軍による先制攻撃で破壊、シリア、イラン、レバノンに取りかかっていたということだろうが、同じ頃、アメリカはエチオピア軍にソマリアを侵略させている。2011年にはリビアとシリアを傭兵(アル・カイダ系武装集団)に侵略させている。

 スーダンでは内戦が1983年から2005年まで続き、11年に南部が独立している。この戦乱は石油が原因だった。1974年にアメリカの巨大石油会社シェブロンがスーダンで油田を発見したのだ。1990年代の終盤になるとスーダンでは自国の石油企業が成長してアメリカの石油企業は利権を失っていき、中国やインドなど新たな国々が影響力を強めていった。

 南部ではSPLM(スーダン人民解放軍)が反政府活動を開始するが、SPLMを率いていたジョン・ガラングはアメリカのジョージア州にあるフォート・ベニングで訓練を受けた人物。結局、南部は独立に成功した。国境の周辺に油田があるのは必然だ。

 スーダン西部にあるダルフールでも資源をめぐる戦闘が2003年から激化した。当初、欧米の国々は南スーダンの石油利権に集中、ダルフールの殺戮を無視していたが、ネオコンはダルフールへ積極的に介入した。その資源に目をつけた隣国チャドの政府が反スーダン政府のJEM(正義と平等運動)へ武器を供給したことも戦闘を激化させる一因。チャドの背後にはイスラエルが存在していると生前、リビアのムアンマル・アル・カダフィは主張していた。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201611070000/


33. 中川隆[4939] koaQ7Jey 2016年11月14日 19:06:23 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[5362]

1991年12月にソ連が消滅した段階でネオコン/シオニストはアメリカが唯一の超大国になったと認識、服わぬ国々は脅し、それでも屈服しなければ軍事的に破壊してしまうという戦略を立てた。ソ連消滅の直前、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)は5年から10年でイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしたという。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官の話だ。
 2001年9月11日以降、アメリカではネオコンが主導権を奪い、ウォルフォウィッツたちが描いた世界制覇プランを推進していく。クラーク元司令官によると9/11の10日後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では攻撃予定国リストが作成されていた。そこにはイラク、シリア、イランのほか、レバノン、リビア、ソマリア、スーダンが載っていたという。

 ところが、21世紀に入るとロシアでウラジミル・プーチンを中心とするグループがロシアを再独立させ、ネオコンが描く世界制覇プランの前提条件が崩れてしまう。それでもプランを推し進めようとした結果、ロシアや中国を核戦争で脅すという事態になる。そうした動きの最前線にいたのがヒラリー・クリントンだ。

 その一方、軍や情報機関の内部でもロシアとの核戦争は避けるべきだと考える人びとがいる。マーティン・デンプシー元統合参謀本部議長やマイケル・フリン元DIA局長はその典型例。クリントンの電子メールをリークした人物は電子情報機関NSAの内部にいると推測する人もいた。こうした人びとの存在はクリントンが大統領選で敗れた一因だろう。

 しかし、クリントンを担いでいた勢力のネットワークは強力。すでにジョージ・ソロスはカラー(パープルらしい)革命を始めている。そうした人びとはロシアとの関係修復にも抵抗、場合によってはシリアへの本格的な軍事介入を強行するかもしれない。「アメリカの関東軍」であるNATOは懸念材料だ。

 アメリカでは「トランプ暗殺」の噂も流れているが、実際に殺さなくても何らかの形で排除し、ペンス副大統領を昇格させるということは想定できる。これはアメリカ支配層の常套手段だ。そこで、ペンスが注目されている。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201611140001/


34. 中川隆[5002] koaQ7Jey 2016年11月17日 14:10:08 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[5429]

ヒラリー・クリントンとは誰か
  ーーアメリカ大統領選挙を目前にして
 国際教育総合文化研究所 寺 島 隆 吉  2016年11月2日付

 
 アメリカの選挙情勢は11月8日の投票日を目前にしながら混沌としています。
 というのは、オバマ大統領や民主党幹部・特権階級だけでなく金融街や大手メディアからも圧倒的な支援を得ながらも、世論調査ではヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏の支持率は拮抗しているからです。

 トランプ氏は共和党幹部からもアメリカの財界・支配層からも支持や援助を得ていないにもかかわらず、そして大手メディアから袋叩きにあいながらも、拮抗状態なのです。
 たとえば、民主党のヒラリー女史は、10月19日に行われた最後のテレビ討論に出演しましたが、直後におこなわれたCNNテレビおよび世論調査機関ORCの調べでは、クリントン女史が勝ったと答えた回答者は52%、反対にトランプ氏が上まわったと答えたのは39%に留まっていました。

 ところがワシントン・タイムズ紙は、最後のテレビ討論に関する緊急調査で、同討論会で共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏がライバルのヒラリー・クリントン氏に圧勝したと報じているのです。

 同紙はサイト上で討論後に「最後の討論会、勝ったのはどっち?」という質問をおこなったのですが、討論の終了直後、トランプ氏には77%または1万8290票だったのに反し、ヒラリー女史には4100票または17%しか集まりませんでした。

 その後しばらく経つと状況はさらに変わり、10月20日の日本時間14時35分にはトランプ氏3万2000票(74%)クリントン氏9000票(21%)となりました。

 ワシントン・タイムズは米国で最も著名かつ保守的な編集方針で知られていますから、新聞社のバイアスがかかっているのかも知れませんが、それにしても、トランプ氏は圧倒的な支持を得ているのです。

 さらに、米国大統領選挙まであと16日という時点(10月23日)でのロサンゼルス・タイムズの世論調査では「トランプ支持44・4%、ヒラリーン支持44・1%」という結果でした。

 ご覧のとおり、共和党トランプ氏と民主党ヒラリー女史の支持率は、ほぼ拮抗しているのです。

     *

 さらに、もうひとつ面白い情報があります。「Sputnik日本」(10月28日)は、イギリス高級紙インデペンデントからの情報として次のような記事を載せているのです。

 ニューヨーク大学のヘルムト・ノーポース教授は、自分の作った米大統領選結果予測モデルによると勝利するのは共和党のドナルド・トランプ候補であることを明らかにした。インデペンデント紙が報じている。

 ノーポース教授の開発した選挙結果予測モデルは1992年から今までの米大統領選挙の予測を2000年の一度を除いて全て当てている。モデルは2000年は民主党の勝利を予測したが、実際はフロリダ州の浮遊票を集め、共和党のジョージ・ブッシュ氏が当選した。

 さて今回だが、このモデルの予測ではプライマリーでより見事な演説を行なった候補者が勝利する。ノースポース氏の見解では、プライマリー(予備選)で勝利を収めたのはトランプ氏で、このことから選挙で勝利する確率は高い。

     *

 トランプ氏は共和党幹部からもアメリカの財界・支配層からも支持や援助を得ていません。にもかかわらず、そして大手メディアから袋叩きにあいながらも、なぜこのように選挙で勝利する確率が高くなっているのでしょうか。

 それはヒラリー女史とトランプ氏の論争が進めば進むほど、ヒラリー女史の本性が民衆に分かり始めてきたことです。

 すでに民主党内の予備選でさえ、社会主義者を自称するバーニー・サンダース氏に追い上げられて、一時はサンダース氏が勝利するかも知れないと言われていたことすらあったのですが民主党幹部の裏工作、大手メディアの加勢で何とか乗り切ることができました。この間の事情を櫻井ジャーナル(2016年6月17日)は次のように書いています。

 ところで、民主党幹部たちが昨年5月26日の時点でヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆する電子メールが公表されている。本ブログでは何度か取り上げたように、昨年6月11日から14日にかけてオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合にヒラリーの旧友であるジム・メッシナが参加、欧米の支配層は彼女を大統領にする方向で動き出したと言われていたわけで、この電子メールの内容は驚きでない。

 この内定を揺るがしたのがサンダース。急速に人気を集め、支持率はヒラリーと拮抗するまでになった。ただ、そうした動きが現れる前に選挙人登録は終わっていたため、支持率が投票に反映されたとは言い難い。例えば、4月に投票があったニューヨーク州の場合は昨年10月9日までに民主党と共和党のどちらを支持しているかを登録しておかないと予備選で投票できず、投票できなかった人が少なくない。

     *

 このニューヨーク州の事態については長周新聞2016年5月4日で、私は「続・世界に恥ずべきアメリカの選挙制度」と題して既に拙論を載せてあったのですが、サンダース氏の進出を阻止する動きがもっと露骨になったのはカリフォルニア州の予備選でした。

 それを櫻井ジャーナルは上記に続けて次のように書いています。

 支持政党を登録していなくても投票できるカリフォルニアで予備選が行われる直前の世論調査ではサンダースがクリントンをリード、幹部たちを慌てさせたようだ。民主党支持者ではサンダースが57%、クリントンが40%、無所属の人ではそれぞれ68%と26%だとされている。

 そうした状況の中、予備選の前夜にAP通信は「クリントン勝利」を宣告した。「スーパー代議員(上位代議員、あるいは特別代議員と訳されている)」の投票予測でクリントンが圧倒し、勝利は確定しているというのだ。この「報道」がカリフォルニアにおける予備選でサンダースへの投票を減らしたことは間違いないだろう。

 カリフォルニア州の場合、本ブログではすでに紹介したように、投票妨害とも言えそうなことが行われていたという。政党の登録をしなかった人びとはサンダースを支持する人が多く、民主党の登録をしている人はヒラリー支持者が多いが、登録しているかしていないかで投票用紙が違う。

 投票所によっては投票用紙を受け取ろうとすると、政党無登録の人には予備選に投票できない用紙を自動的に渡す投票所があったという。投票するためには民主党支持変更用紙を要求しなければならない。予備選に投票するにはどうすべきかと尋ねられた係員は、政党無登録の人には民主党用の用紙は渡せないと答え、民主党支持変更用紙のことには触れないよう指示されていたケースもあったようだ。


     *

 こうした動きのなかで、突如、サンダース氏は選挙戦から降りると宣言し、勢いを増しつつあった支持者の運動や願いを裏切り、あろうことか「ヒラリー女史こそ大統領としてベストの候補者だ」という演説までもするようになりました。

 ではサンダース氏が今まで言ってきたこと、「ヒラリー女史はウォール街と一心同体であり富裕層の代弁者だ」という言はどこへ行ったのかと、支持者たちはやりきれない思いをしたに違いありません。

 ヒラリー女史および民主党幹部とサンダース氏の間に、裏でどんな取引があったのか分かりませんが、とにかくヒラリー女史はこうして無事に予備選をくぐり抜け、本選に挑むことができるようになりました。

 しかし相手は共和党のなかでさえ評判の悪いトランプ氏ですから、ヒラリー女史は本選では楽勝となり、「アメリカ史で初めての女性大統領」という栄冠を難なく手にすることができると思われていました。

 ところがウィキリークスがヒラリー女史や民主党幹部の裏舞台を暴露し始めた頃から雲行きが怪しくなってきました。

 元共和党政権の経済政策担当の財務次官補のポール・グレイグ・ロバーツは自分のブログ(2016年10月5日)で、それを次のように書いています。

 「…。彼女は、ウォール街・巨大銀行・軍産複合体の巨大な政治力を有するひと握りの連中、および外国利益の集団によって買収されている。その証拠は、クリントンの1億2000万ドルという個人資産と、2人の財団の16億万ドルだ。ゴールドマン・サックスは、講演で語られた智恵に対して、ヒラリーの3回の20分講演に、67万5000ドルを払ったわけではあるまい。…」

*Washington Leads The World To War
「世界を戦争へ導くワシントン」

     *

 上記で登場するゴールドマン・サックスは、2008年の世界金融危機の震源地のひとつとなった世界最大級の投資銀行です。そのように世界経済を破壊した機関で講演すること自体が問題ですが、その謝礼も私たち凡人の想像を絶する金額です。

 かつて私が大学教授として60〜90分の講演をしても、その謝礼は3〜5万円でしたから(ときには全く無料のものもあります)。ところがヒラリー女史は、そこで20分の講演を3回しただけで、67万5000ドル(約7000万円)の謝礼です。つまり、1回20分で約2300万円もの大金がもらえるのですから、いかに破格の謝礼であるかがよくわかるはずです。

 だからこそ、世界金融危機につながった住宅ローン担保証券の不正販売を巡る事件は、ゴールドマン・サックスから誰一人として刑務所に送られたものはなく、2016年1月に制裁金等33億ドルと借り手救済金18億ドルの和解金で決着してしまったのでしょう。世界最大級の投資銀行としては、おそらく、全くの端金(はしたがね)だったに違いありません。

 かつて民主党の支持基盤のひとつは労働組合だったのに、夫のビル・クリントンが大統領だったときにNAFTA(米国、カナダ・メキシコ3カ国による域内貿易自由化取り決め)によって、大企業がメキシコなどの国外へと移転して、労働者の多くは仕事を失いました。その結果、多くの労働組合が縮小・解体され、民主党は新しい財政基盤を必要とするようになりました。

 民主党が、労働者や一般民衆ではなく、財界や金融街に頼らざるを得なくなった物質的基盤は、このようなところにあります。自ら墓穴を掘ったと言うべきかも知れません。

 NAFTAを通じてビル・クリントンが追求した新自由主義政策は、貧富の格差を広げましたから、勤労者や貧困者から見れば、民主党というのは共和党と何も変わらない政党になったわけです。(日本の民進党と自民党も、全く同じ流れです。)

     *

 このような貧困化しつつあるアメリカ民衆の不満を代弁したかたちで登場したのが、民主党ではバーニー・サンダース氏であり、共和党ではドナルド・トランプ氏でした。しかし先述のとおり、サンダース氏は支持者を裏切るかたちで選挙戦から身を引きました。しかしトランプ氏の場合、共和党の幹部・特権階級からの妨害をものともせず進撃しつつあります。

 そして、かつては黒人票は民主党のものと思われていたのに、トランプ氏は着実に黒人票をも獲得しつつあるようです。とくに貧困層の黒人は、ヒラリー女史に見切りをつけ、トランプ氏に流れているようです。最近それを象徴する事件がありました。

 映画産業で有名なハリウッドの大通りには、有名スターの名前が入った星形メダルが埋め込まれた街路「ウォーク・オブ・フェイム」があるのですが、そのひとつにトランプ氏の名前が刻み込まれています。

 ところがヒラリー女史の支持者が、この刻み込まれたトランプ氏の名前をツルハシで破壊する事件が起きました。それにたいして今度は、この刻み込まれたトランプ氏の名前を守ろうとして座り込む女性が現れました。

 しかし、ここにもうひとつの事件が起きます。この座り込んでいた一人の黒人女性(しかもホームレスの老いた黒人女性だった)にたいして、なんとヒラリー女史支持者たちが罵詈雑言を浴びせかけ、彼女の衣類などが入っていたカートを彼女もろとも引っくり返して足蹴にする事件が起きたのです。そのうえ、なぜトランプを支持するかを書いた彼女のビラやポスターをずたずたに引き裂くようすがユーチューブに載せられたのでした。

 RT(2016年10月29日)の記事によれば、そのポスターのひとつには「オバマはクリントン一家に恩義を感じて我々黒人どもをバスの下に投げ込んでいる」といった文句が書かれていたそうです。

*Violent crowd attacks, insults homeless woman guarding Trump's Hollywood star
「暴力的群衆が、ハリウッド大通りに刻まれたトランプ氏の名前を守る女性を、襲ったり辱めたりした」

     *

 ロサンゼルス・タイムズは、今やカリフォルニア州立大学[全部で二三校から成るが全体でひとつの大学機構]の学生の、10人に1人がホームレスだと報じ(2016年6月20日)驚かされましたが、このような事態を生み出した民主党の特権階級にたいする怒りが、ホームレスの老いた黒人女性を上記のような行動に駆り立てたのではないでしょうか。

 「アメリカ史上、初の黒人大統領」と持てはやされる人物を頭(かしら)にいだく民主党政権が貧富の差を拡大させ、黒人どころか白人のホームレスまでもアメリカ全土に広がりつつあるのですから、実に皮肉と言えば皮肉です。

     *

 このような事態を考えると、社会主義者を自称するサンダース氏が選挙戦から落馬した現在、共和党から出馬したトランプ氏がアメリカ民衆の怒りを一身に背負うことになってきたことは、ある意味で当然のこととも言えます。

 これを裏書きするような象徴的な爆弾が、映画監督マイケル・ムーアによって投げつけられました。ムーアと言えば、映画『華氏九一一』やアメリカ医療を鋭く告発した映画『シッコ』などで有名ですが、そのムーア監督が、今度はトランプ氏を題材とした映画『トランプ・ランド』をつくりました。その映画上演会のため訪れたオハイオで彼は次のようなスピーチをして聴衆を驚かせました。

 「トランプ氏に投票する人たちは、必ずしもそんなに彼が好きなわけではありませんし、必ずしも彼の意見に同意しているというわけでもありません。彼らは必ずしも人種差別主義者ではありませんし、白人の肉体労働者でもありません。じっさい彼らはかなり礼儀正しい人たちです」

 「ドナルド・トランプ氏はデトロイト経済同友会にやって来て、フォード社の経営陣の前に立ってこう言ったのです。『あなた方がデトロイトでやろうと計画しているように、これらの工場を閉鎖してメキシコで建て直すつもりなら、そしてそこで生産した車をアメリカに送り返すなら、私はそれらの車に三五パーセントの関税率をつけるつもりだ。そうすれば誰もそれらを買わないだろう』」

 「それは、驚くべきことでした。政治家の誰も、共和党員であれ民主党員であれ、これまでに誰もそんなことを、これらの経営陣に言ったものはいません。それは、ミシガン州、オハイオ州、ペンシルバニア州、ウィスコンシン州の民衆の耳には実に心地よい調べだったでしょう。 Brexit の諸州、つまりアメリカから脱出しようとする大企業の存在する州では、民衆は同じ思いで聴くでしょう」

 「トランプ氏の言っていることが本気かどうかは、ここではあまり関係がありません。なぜなら、それは傷ついている人々が聴きたいと思っていたことだからです。だからこそ、あらゆる打ちのめされて役立たずになり忘れさられた一般労働者、いわゆる中流階級の一部を成す人々のすべてが、トランプ氏を好きになるのです」

 「トランプ氏は、そのような人たちの待ち望んでいた人間火焔瓶・人間手榴弾なのです。彼らは、自分たちから生活を盗み奪った組織や機構に、それを投げ込むことができるからです」

 「そして11月8日は選挙の投票日です。民衆・勤労者は仕事を失い、銀行によって家を差し押さえされ、次にやってきたのが離婚。今や妻と子供は去って自分のところにはいない。そして車も回収・没収。彼らは何年ものあいだ本当の休暇をとったことがない。くそにもならないオバマケア(医療保険改革法)ブロンズプランは、お先真っ暗。この保険では解熱剤すら手に入らない。要するに彼らは持てるもの全てを失ったのです。民衆の手に残されたものがひとつだけあります。それをもつには一セントのお金すら必要ありません。それは合州国憲法によって所有が保証されているからです。それが投票権です」
 
*Michael Moore just gave the most convincing speech for Trump
「マイケル・ムーアが、今までのなかで最も説得力のある演説をトランプ氏のためにおこなった」

     *

 ムーア監督のスピーチは、まだ続いているのですが長くなるので、翻訳はここで止めます。

 ただスピーチの最後が、「トランプが選ばれれば、人類史に記録された最大の『くたばれ、この野郎』になること間違いなしです。勤労大衆にはさぞかし気持ちのよいことでしょう」で結ばれていることだけを紹介しておきます。

 今までサンダースを支援していたムーア監督が、ことここに至って、このようなスピーチをせざるを得なくなった悔しさがにじみ出ているようなスピーチではありませんか。

 ゼネラルモーターズの生産拠点の一つであったミシガン州フリントで生まれたムーア監督が、故郷フリントの自動車工場が閉鎖され失業者が増大したことを題材にしたドキュメンタリーの名作『ロジャー&ミー』をつくっているだけに、この無念さはひとしおだったことでしょう。

     *

 さて、このようなトランプ氏の動きに対してヒラリー女史はどのように対応したでしょうか。

 最初は財界寄りの政策でしたがサンダースの打ち出す政策が民主党の若者や貧困層の支持を得て自分が劣勢になりそうなのに気づいて、TPPなど民衆の生活を破壊する政策に反対を表明するように変わってきました。

 しかし最近のウィキリークスが暴露したところによると、「政治家は表の顔と裏の顔があるのは当然だ」とする意見を彼女は身内のものに漏らしています。さらに予備選では「左寄りの政策を掲げても本選では右に戻せばよい」とも語っています。

 もっと恐ろしいことには、RT(2016年10月29日)の記事によれば、彼女は『Jewish Press』というユダヤ人のための週刊紙のインタビューで、「パレスチナの選挙に裏工作をしてファタハを勝たせるべきだった、そうすればハマスの一派が勝利することはなかった」とすら述べています。

*Clinton bemoans US not rigging 2006 Palestinian election in newly-released tape
「クリントンは、新しく公開されたテープ録音のなかで、2006年のパレスチナにおける選挙で不正操作しなかったことを、嘆いている」

     *

 このようにヒラリー女史は、他国の選挙に干渉して傀儡(かいらい)政権をつくることを何ら悪いことだと思っていないのです。

 2014年のウクライナ政変では、彼女の盟友であるヌーランド国務次官補が、米国ウクライナ大使と一緒になって反政府デモに加わり、デモ参加者にお菓子を配って歩いている光景が堂々とテレビ画面に登場していますが、これほど露骨な内政干渉はないでしょう。

 (ロシアの外務省高官や在米大使館員が、ニューヨークその他のデモや集会、座り込みテントに参加して、差し入れなどすれば、アメリカがどんな態度をとるか。想像してみればすぐ分かることです。)

 ところがトランプ氏との論争になると、ヒラリー女史は、政策をめぐる論争はほとんどやめてしまい、「トランプ氏はプーチンの操り人形だ」とか「ウィキリークスによるヒラリー関係のメール暴露は、プーチンがアメリカのコンピュータに侵入してウィキリークスに渡したものだ」といった主張を繰りかえすだけになってしまいました。政策論争ではトランプ氏と争っても勝ち目がないということを自ら認めたに等しいでしょう。

 それどころか、自分が国務長官として公的なメールサーバーを使うべきだったのに、私的サーバーを使って外部から侵入しやすくなったことにたいする反省もありませんし、その漏れた国家的重要機密情報が、リビアのアメリカ大使館に勤務する大使その他の職員をイスラム原理主義者による死に至らしめる結果になったかも知れないのに、そのことにたいする反省もありません。

 もっと奇妙なのは、このように私的サーバーを使って最高機密情報を漏らした当人は、FBIから訴追されることもなく堂々と選挙に出馬できているという事態です。イラクにおける米軍の悪事を暴いたマニング上等兵が牢獄につながれ元情報機関職員だったスノーデンが亡命に追い込まれたのとは、天と地の違いです。「悪いやつほどよく眠る」の典型例と言うべきかも知れません。

     *

 ここまでは、ドナルド・トランプ氏と比較しながら、アメリカの国内政策を中心にして「ヒラリー・クリントンとは誰か」を論じてきたのですが、以下では外交政策をとりあげてヒラリー女史の問題点を探ってみたいと思います。

 しかし、これを論じていると長大なものになる予感がするので、今回は幹の部分だけを紹介して詳しくは次回に譲りたいと思います。

 それはともかく、ヒラリー女史とトランプ氏の外交政策における最大の違いは、ロシアとどう対峙するかという問題です。いまアメリカはシリアにおける内戦をどう解決するかという点で、ロシアと鋭く対立しているからです。

 いまヒラリー女史がシリア情勢で強く主張しているのは「リビア内戦時と同じようにシリアにおいても飛行禁止区域をもうけるべきだ」ということです。その理由としてあげられているのが、「ロシア軍とシリア政府軍がシリア第二の大都市アレッポを無差別に爆撃し一般市民からたくさんの犠牲者が出ているから」という口実です。

 これにたいしてトランプ氏は次のように主張しています。

 「アメリカは他国に内政干渉したり政権転覆に手を出すべきではない。国内には問題が山積していて他国に手を出す余裕などないはずだ」

 「今はロシアと手をつないで、『アルカイダ』『イスラム国』といったテロリスト=イスラム原理主義者集団をシリアから追い出すべきだ」

 これに関してロシアもシリア政府も、「リビア内戦時と同じようにシリアにおいても飛行禁止区域をもうけるべきだという主張は、シリアをリビアと同じような混乱に陥れ、シリアを破壊・解体して、さらに死傷者と難民を激増させるだけだ。休戦地帯をもうけろと言う主張は、テロと戦うという名目でアサド政権をつぶそうとする隠れ蓑にすぎない」と反論しています。

 この飛行禁止区域の設定については、ロシアもシリア政府も次のように主張し、アメリカの要求をきっぱりと退ける姿勢を示しています。

 「アレッポの東部地区を占拠して一般市民を『人間の盾』としながら休戦協定を無視してアレッポの西部地区の一般市民を無差別に攻撃しているのは、むしろ反政府勢力のほうだ。しかも彼らはアメリカの主張する『穏健派』どころか、『アルカイダ』『イスラム国』の一派であり、シリアには『穏健派』など存在しない」

     *

 ですから、このまま緊張状態が続けば、アメリカ軍とロシア軍との直接的な戦闘になり、いつ世界大戦になるか、いつ核戦争になるか分からない情勢です。トランプ氏は「『アルカイダ』『イスラム国』といった過激なイスラム原理集団をつくり出したのは、アメリカなのだから、そのような政策から手を引くべきだ」と言っているのですから、今までの感覚でアメリカを見ていたひとたちは頭が混乱するかも知れません。

 というのは、従来の図式からすれば、民主党=リベラル=ハト派であり、共和党=保守派=タカ派なのに、ヒラリー女史の方がトランプ氏よりはるかに好戦的だからです。それに反してトランプ氏は、ロイター通信(2016年10月25日)によれば、「ヒラリー氏が大統領になれば第三次世界大戦になりかねない」と主張しています。

 これはトランプ氏の単なる選挙戦術のようにもみえますが、同じ警告はあちこちから聞こえてきます。

 すでに前半で紹介したように、元共和党政権の経済政策担当の財務次官補だったポール・グレイグ・ロバーツは自分のブログ(2016年10月5日)で、下記のような「戦争に導くワシントン」という記事を書いています。

*Washington Leads The World To War
「世界を戦争へと導くワシントン」

 またイギリスの保守的高級紙と言われるインデペンデント紙(2016年10月25日)も次のような論文を載せています。

*Could Hillary Clinton start a world war? Sure as hell she could? and here's how
「ヒラリー・クリントンは世界大戦を始める可能性があるか、確かにそうだ。それはこうして始まる」

 どちらかというと今まではトランプに批判的だったインデペンデント紙がこのような論説を載せるようになったこと自体が、現在の情勢がいかに緊迫しているかをしめすものではないでしょうか。

     *

 もっと驚いたことには、調べてみると既に四月の時点で、クリントン氏の自叙伝の著者ディアナ・ジョンストン氏は、イタリアのイオ・ジョルナーレ紙のインタビューで、「クリントン氏の大統領選の勝利は、第三次世界大戦の勃発も含め予想外の結果をもたらす可能性がある」と語っているのです。

 RTの記事(2016年4月29日)によると、ジョンストン氏は次のように語っています。

 クリントン氏がまだ国務長官に在任していた頃、押しの強い外交政策を掲げていた。クリントン氏はアメリカのイラク侵攻及びリビアでの戦争参加を支持し、そして現在はシリアのバッシャール・アサド大統領に反対する姿勢を支持している。これに加え、クリントン氏は反ロシア的見解に固執している。世界は不安を呼び起こすような選挙公約を掲げるクリントン氏の「積極的な活動」に対して用心するべきだ。クリントン氏は外交の代わりに軍事力を用い、あらゆる事件が第三次世界大戦を引き起こしかねないほどにNATOを強化するつもりである。

     *

 このように、今まさに世界はアメリカ大統領選挙を前にして「伸るか反るか」の曲がり角に来ているのです。にもかかわらず、アメリカや日本の、リベラルを自称する知識人も大手メディアも、「アメリカ史上、初の女性大統領」という殺し文句に惑わされて、現在の深刻な事態が見えなくなっているように思われます。

 しかし現在の事態の深刻さを理解してもらうためには、ヒラリー女史が国務長官だったときだけでなく、それ以前に外交政策で彼女が何を主張し、どのような行動をとってきたかを、もっと詳しく説明する必要があります。
http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/hirarikurinntontohadareka.html

ヒラリー・クリントン・とは誰か 下 ーーアメリカ大統領選挙を目前にして
国際教育総合文化研究所 寺 島 隆 吉   2016年11月4日付


 
 私は前回の論考「ヒラリー・クリントンとは誰か」(11月2日号)を次のように結びました。

 「このように、今まさに世界はアメリカ大統領選挙を前にして『伸るか反るか』の曲がり角に来ているのです。にもかかわらず、アメリカや日本の、リベラルを自称する知識人も大手メディアも、『アメリカ史上、初の女性大統領』という殺し文句に惑わされて、現在の深刻な事態が見えなくなっているように思われます。

 しかし現在の事態の深刻さを理解してもらうためには、ヒラリー女史が国務長官だったときだけでなく、それ以前に外交政策で彼女が何を主張し、どのような行動をとってきたかを、もっと詳しく説明する必要があります。とはいえ、すでに長くなりすぎていますので、これについては、次回の論考に譲りたいと思います。」

 そこで今回は、ヒラリー・クリントンなる人物が、アメリカの国務長官として何をしてきたかを、まず調べてみることにします。

    *

 さて「国務長官」というと、まるでアメリカの国内行政における最高責任者のように聞こえてきますが、実は日本の「外務大臣」にあたる外交政策の責任者です。
 アメリカの「防衛省」は、今は「防衛総省」(別名ペンタゴン)と言っていますが、かつては「戦争省」と言っていました。

 日本では「陸軍省」と誤訳(意図的?)されていますが、第2次大戦が終わる前までの正式名称は、「United States Department of War」すなわち「アメリカ戦争省」でした。

 まるで外国にたいして侵略戦争をし続けてきたアメリカの歴史を象徴するような名称ですが、アメリカにとって軍事力による外交=戦争は、内政よりも重要な「国務」であったからこそ、「外務省」を「国務省」(United States Department of State)と名付けたのかも知れません。

 アメリカ軍人として伝説的な英雄スメドレー・バトラー将軍は、退職したあと自分が軍人として果たしてきた役割を振り返って『戦争はペテンだ』という著書を著し、そのなかで、右のような事情を、次のように述べています。

 「私は、大企業、ウォール街、銀行、お偉方の用心棒として時を過ごした。
要するに私は資本主義に奉仕する恐喝者でありギャングの一員だった」

「私はウォール街の利益のために中米の六つの共和国の略奪を手伝った。恐喝の記録は長い」

「ギャングの親玉アル・カポネがやれたのは、せいぜい三つの地区のボロ儲けの口を操っただけのことだ。私なんか3大陸を操ったんだ」
(『肉声でつづる民衆のアメリカ史』上巻442頁)


 このスメドレー将軍のことばは、アメリカ外交の本質を赤裸々に暴露しているのではないでしょうか。

    *

 それはともかく、ブッシュ氏が大統領になったとき、「9・11事件」を口実にアフガニスタンを爆撃し、それをイラクへの侵略戦争に拡大したのですが、それでもアメリカによる戦争は中東の小さな範囲にとどまっていました。ところがオバマ大統領とヒラリー国務長官のもとで、戦火は一気に地中海沿岸の北アフリカ(リビアの内戦)や東ヨーロッパ近辺(ウクライナやシリアの内戦)にまで拡大しました。

 それどころか、今まではブッシュ大統領が表立って手出しをしなかった中南米にまで手を出してクーデター工作をおこなうようになりました。このような戦争やクーデターの拡大に深く関わってきたのが、ヒラリー国務長官でした。

 いま深刻な人道危機をもたらしているシリアの内戦について、ヒラリー女史が「リビアと同じような飛行禁止区域をもうけるべき」だと強く主張していることは前回の拙稿で紹介したとおりです。

 アサド政権の要請でロシアが本格的にイスラム原理主義集団の掃討作戦に乗りだし、彼らの拠点を空爆し始めてからは、ダーイッシュ(今まではISISとかイスラム国と呼ばれていた)などのイスラム原理主義集団諸派は、負け戦です。

 サウジを中心とする湾岸諸国が資金と人員を供給し、アメリカやNATO諸国が(さらにイスラエルも)裏で、武器や特殊部隊を派遣して軍事訓練をしてきたにもかかわらず、この状態なのです。

 アメリカの基本戦略は、あくまでアサド政権の転覆です。そのためにはロシア軍の空爆をやめさせる必要があります。ロシア軍の空爆はアサド政権の正式な要請によるものですから、国際法に則った行為ですが、イスラエルやNATO諸国(トルコも含む)のシリア領内における空爆は領空侵犯になりますから、どうしてもリビアの時と同じような「飛行禁止区域」の設定が必要になります。

 これを強く主張しているのが、先述のとおり、ヒラリー女史です。

 しかし、ロシアは安全保障理事国ですから今のままでは国連の許可を得ることができません。残された道は、偽の人道危機をつくりだして、「ロシア軍やアサド軍は民間人を無差別に殺傷している」とか、「彼らは化学兵器を使っている」とかの口実で、世論を喚起して彼らを押さえ込む以外にありません。

 他方、ロシアの主張は次のとおりです。

 「リビアでは『独裁者カダフィが自国の民衆を無差別に爆撃して大量の死傷者を出している。だから飛行禁止区域を』という口実で、カダフィはイスラム原理主義集団と戦う手段を奪われてしまった。その結果、何が生まれたか。国土の荒廃と大量の難民だった。同じことをシリアでも繰りかえすつもりか」
    *
 シリアになだれ込んでいるイスラム原理主義集団は、サウジを中心とした湾岸諸国からだけでなく、ロシアのチェチェンや中国の新疆ウイグル地区といったイスラム教徒が多い地域からも流入してきています。彼らはロシアや中国を不安定化させる勢力としてCIAが以前から訓練してきた勢力だと言われています。

 ですから、シリアが内戦で崩壊した場合、そこで勝利したイスラム原理主義集団は、次の攻撃目標として、ロシアや中国に還流し、ロシアや中国を不安定化させることに最大の精力を注ぎ込むことになるでしょう。

 今やEUとアメリカに対抗する勢力として経済的にも軍事的にも対抗する大国になりつつある動きを、アメリカとしては何としても阻止しなければなりません。

 BRICsという興隆しつつある経済共同体の中心がロシアと中国だから、これはなおさら、アメリカにとっては放置できない事態です。

 だからこそ、ロシアと中国を不安定化させることが必要なのです。

 かつて中東一円からイスラム原理主義集団(ビンラディンもその中の一人でした)をかき集めてソ連をアフガニスタンに引きずり込み不安定化し崩壊させた方法を、シリアでもやろうというわけでしょう。

    *

 しかし、これはロシアや中国にとっても座視できない重大事です。

 ロシアと違って、中国は表立ってシリアに味方しては来ませんでしたが、最近、中国も、アサド政権を支えるために、裏で大きく動きはじめていると言われるのも、このような情勢から見ると当然のこととも言えます。

 ですから、ヒラリー女史が「シリアに飛行禁止区域を!」と大声で叫び、「ロシアやシリアが言うことをきかないのであれば軍事力の行使もいとわない」と主張することは、世界大戦になることを意味します。

 この戦いは、NATO諸国やサウジなどの湾岸諸国と一緒になって、アメリカが、ロシア=シリア=イラン=中国といった勢力と、軍事力で戦うことになるからです。

 前回の論考で述べたことですが、イギリスの高級紙インデペンデントだけでなく、ヒラリー女史の自叙伝を書いたディアナ・ジョンストンなどが、イタリアの新聞インタビューで

「クリントン氏の大統領選の勝利は、第3次世界大戦の勃発も含め予想外の結果をもたらす可能性がある」

と語っているのも、このような背景をふまえてのことだと、私は理解しています。

    *

 ここで、もうひとつ考えておかねばならないことは、ロシアの軍事力はシリアにおける原理主義集団との戦いで明らかになったように、通常兵器ではアメリカ軍をはるかに凌駕しているということです。

 ですから、アメリカ軍がロシア軍や中国軍と戦って本気で勝つつもりならば、残されている手段は核兵器による先制攻撃しかありません。

 しかも集団的自衛権でアメリカに縛られることになった日本も、否応なしに、この核戦争に巻き込まれるかも知れません。

 しかし、いったん核戦争が起きれば、生き残れる国はほとんどないでしょう。今は、それほど深刻な事態なのです。

    *

 話が少し横道にそれたので、クリントン女史に話を戻します。

 ロシアはヒラリーの主張する「飛行禁止区域の設定」について、「シリアをリビアのように破壊して、再び大量の死傷者を出し、EU全土を更なる難民であふれさせようとするのか」と怒っているわけですが、このリビア内戦にヒラリーは、どのようにかかわっていたのでしょうか。

 2016年10月20日は、リビアの元首だったカダフィ大佐が、アルカイダの一派に惨殺されて5周年になる日でした。

 カダフィが殺されたとき、ヒラリー女史は国務長官として、NATO軍のリビア攻撃を指揮・監督する立場にいたのですが、カダフィ惨殺の報が届いたときCBSのインタビューの中で

「来た・見た・死んだ」"We came, We saw, He died"

と、身振り手振りをまじえて、嬉しげに言っています。

 この言葉は、共和制ローマの将軍カエサル(日本ではシーザーとして知られている)が言ったとされることば「来た・見た・勝った」をもじったものですが、その嬉しげに語っている映像がユーチューブに流れ、ヒラリー女史の冷酷さ・好戦性を浮き彫りにするものとなりました。

    *

 では、リビアとはどのような国で、カダフィとはどのような人物だったのでしょうか。

 元財務省高官(財務次官補)で、かつウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者だったポール・グレイグ・ロバーツ氏は、このカダフィ惨殺五周年の日に、自分のブログで、それを次のように書いています。

 「ムアマル・カダフィは、世界で最も進歩的な指導者だった。カダフィはリビアの石油の富をリビア国民のために使っていた。

 彼は宮殿ではなく、立派なテントではあるが、テントで暮らしており、アメリカ政府の中東同盟国であるサウジアラビアや産油首長国支配者一族につきものの、ヨーロッパ高級車や他のあらゆる身の回り品のコレクションを持っていなかった。

 リビアでは、教育・医療・電力は無料だった。ガソリンは事実上無料で、1リットル14セントで売られていた。子どもを産んだ女性は現金の助成金を貰い、カップルが結婚すると現金の助成金が貰えた。リビアの国営銀行は無利子で融資し、農民には無償で開業資金を供与した。」


*Hillary's War Crime
「ヒラリーの戦争犯罪」

    *

 ロバーツ氏はこれらの事実を、グローバル・リサーチという独立メディアに載せられた「リビア:知られては困る、カダフィに関する10の事実」という小論に依拠しながら書いているのですが、日本では全く紹介されていない事実ばかりです。

 このロバーツ氏が依拠した小論には、カダフィが計画していた世界最大の灌漑施設の地図も載せられていて、驚かされました。カダフィの言う「緑の革命」は単なる夢想ではなかったのです。

 しかし日本で紹介されているカダフィ像は、アメリカ政府から流れてきた情報にもとづいた「自分の国民を冷酷に支配する独裁者」という悪魔化されたものばかりでした。


*Global Research
"Libya: Ten Things About Gaddafi They Don't Want You to Know"
「リビア:知られては困るカダフィ10の事実」

    *

 では、上記のような理想国家をつくろうとしていたカダフィ政権を、なぜアメリカとNATOは倒そうとしたのでしょうか。それをロバーツ氏は、先の引用に続けて次のように書いています。

 「カダフィがアメリカ政府から自立していたことが彼の没落をもたらしたのだ。若い頃のカダフィの目標は、アラブを欧米の略奪に抵抗できる一つの連合に組織することだった。

 それが思うように進展しないことにいらだった彼は、汎アフリカ主義に向かい、アメリカのアフリカ軍に参加するのを拒否した。また彼は、ドルではなく金をもとにしたアフリカ統一通貨を導入ようとした。そうすればアフリカをアメリカの金融覇権から解放できるからだ。

 カダフィは、中国のエネルギー企業にリビアのエネルギー資源を開発させた。以前から地中海におけるロシアの存在に腹を立てていたアメリカ政府は、今や中国の存在にも向き合わねばならなくなった。だからアメリカ政府は結論を出した。カダフィは悪い連中と付き合っているので退陣させるべきだと。」

    *

 私は今まで、アメリカとNATO軍によるカダフィの追放は、リビアの石油が目当てだとばかり思ってきたのですが、実はもっと深い理由があったのです。「ドルによる世界支配」を維持し、「中国のアフリカ進出」を阻止することが、カダフィ追放の真の理由だったのです。

 では、何を口実に、どのような手段で、カダフィを追放するか。それがアメリカにとって次の問題になります。米軍が直接、アフリカに乗りだしてリビアを破壊するのでは、世界の世論はもちろんのこと、アフガン戦争やイラク戦争に嫌悪感が強くなっているアメリカの世論も賛成しないでしょう。ではどうするか。それをロバーツ氏は先のブログで次のように説明しています。

 「アメリカ政府はイスラム原理主義者を使って傭兵を編成し、シリアと同様、連中を『反政府派』と名付け、リビア政府にけしかけた。

 カダフィ軍が勝っていることが明らかになると、アメリカ政府は、初心(うぶ)で騙(だま)されやすいロシアと中国の政府を罠(わな)にかけ、国連でリビア領空に飛行禁止空域を設定することを認めさせた。それを実行するのはNATO軍だ。

 飛行禁止空域の口実は、カダフィによる民間人攻撃を防ぐためということだった。しかしそれは嘘だった。本当の理由は、主権国家のリビアが自分の領空を使えないようにして、傭兵と戦っている地上軍をリビア空軍が支援できないようにするためだった。

 ロシアと中国がこれに騙されて、安全保障理事会の議決で拒否権を行使しそこねると、今度はアメリカとNATO自身が、決議に違反してNATOの空軍力を用いてカダフィ軍を攻撃した。こうして戦局はCIAが組織した傭兵に有利になった。

 カダフィは捕らわれ惨殺された。それ以来、かつて繁栄し成功していた国家リビアは混乱・混沌の極みだ。それは、オバマ政権が望んでいたものだ。」

    *

 ところが今やイギリスでは議会による調査報告書が、「カダフィが欧米の覇権にとっての障害と見なされていたがゆえにリビアは破壊された」と明白に結論づけているのです。だからこそ、ロバーツ氏は上記のブログを次のように締めくくっているのでしょう。

 「注目すべきなのは、ニュルンベルク裁判をもとにした国際法では、彼女が有罪であることは明らかなのに、この戦争犯罪について、この「殺人婆」(killer bitch)に質問したマスコミは皆無だということだ。

 なぜなら、この戦争はヒラリーが国務長官の職に就いているときに、彼女の監督下で準備されたものだからだ。

 もうひとつ注目すべきなのは、この「殺人婆」を所有している巨大な政治力を持ったひと握りの集団オリガーキーと、連中の手先である「売女マスコミ」 (presstitute=press+prostitute)は、この戦犯を次期アメリカ大統領にするつもりだということだ。

 この「殺人婆」や「売女マスコミ」という言葉づかいのなかに、元アメリカ財務省高官だったロバーツ氏の憤りが伝わってくるような気がします。

 ヒラリー女史にたいする怒りもさることながら、ロバーツ氏の大きな怒りは、トランプ叩きに終始しているアメリカの大手マスコミにも向けられているのです。

 それにしても、実名で公けにしているブログなのに、よくぞここまで大胆に言い切れるものだと、その勇気に感心・感動しました。日本の元政府高官に、このようなひとはいるのでしょうか。私は寡聞にして知りません。

    *

 以上で「シリアに飛行禁止区域を!」と主張するヒラリー女史の冷酷さ・好戦性が少しは分かっていただけたかと思いますが、これだけでは、リビア空爆の残酷さや戦犯性が今少し伝わりにくいように思いますので、そのようすを物理化学者・藤永茂氏のブログ「私の闇の奥」から引用して紹介したいと思います。

 このブログの日付は「2011年8月31日」となっています。カダフィが惨殺されたのは10月20日ですから、そのことを念頭において読んでいただければと思います。

 「いま、リビアについての我々の関心は(好奇心は)、カダフィが何処でどのようにして捕まり、どのように処分されるかに釘付けにされているようですが、我々の本当の関心は、今回のリビア内戦でNATOが何をしたか、何をしているかに集中されるべきだと私は考えます。

カダフィの政府軍による大虐殺からリビア国民を守るという名目の下に開始されたNATOによるリビア空爆は、想像を絶する物凄さで行なわれました。8月23日のNATOの公式発表によると、過去5ヶ月間にNATO空軍機の出撃回数は2万回を超えました。1日あたり130回の物凄さです。

 対地攻撃を行なった戦闘爆撃機が1機に複数の爆弾や誘導ミサイルを搭載しているとすると、正確激烈な破壊力を持った数万の爆弾やミサイルがリビアの人々の上に降り注いだことになります。

 リビアの人口約650万人、人口的には福岡県と佐賀県を合わせた位の小国です。ミサイルの標的が戦車であれ、輸送車両、船舶であれ、カダフィの住宅であれ、放送局、大学であれ、無人ではない場合が普通でしょうから、多数の人間が殺傷されたに違いありません。8月上旬に、NATO空爆による死者2万という報道がちらりと流れたことがありましたが、あり得ない数字ではありません。

 しかも、NATOの反政府軍支援は空爆に限られたわけではありません。大型ヘリコプターなどによる兵器、弾薬、物資の補給も行なわれ、地上でも多数のNATOやCIAの要員が間接的に参戦した模様です。しかし、こうしたNATOの活動の具体的報道は殆ど完全な管制下にあります。

 これだけの規模の軍事暴力が、国際法的には全く合法性のないままで(UNの決議内容をはるかに超えて)、人口数百万の小独立国に襲いかかったのです。まことに言語道断の恐るべき前例が確立されました。カダフィと息子たちの今後の命運など、この暴虐行為の歴史的意義に較べれば、3面記事の値打ちしかありません。」

    *

 これを読んでいただければ、ロバーツ氏が先に、「注目すべきなのは、ニュルンベルク裁判をもとにした国際法では彼女が有罪であることは明らかなのに、この戦争犯罪について殺人婆(killer bitch)に質問したマスコミは皆無だということだ」と言っていたことの意味が、改めてよく理解できるのではないでしょうか。

 そして、満面に笑みを浮かべて「来た・見た・死んだ」と言ったヒラリー女史にたいして、ロバーツ氏が悪罵を投げつけたくなった理由も。

    *

 それにしても、藤永氏は1926年生まれですから、2016年11月の現在で、氏は90歳前後のはずです。

 九州大学やカナダのアルバータ大学で教鞭を執っていた一流の物理化学者でありながら、老体にむち打ちつつ、NHKや朝日新聞などの大手メディアが目をつむって通り過ぎている事実を掘り起こし、上記ブログを通じてそれを私たちに伝える仕事を続けておられます。

 唯々(ただただ)、頭が下がります。

    *

 ところでリビアの事態は、単にカダフィの惨殺に終わったわけではありませんでした。

 前述のとおり、この戦争は全土を瓦礫に変え、「リビアの民主化」どころか大量の死者と難民をうみだしただけでした。そしてリビアはいまだに混沌の極致にあります。

 そのうえ今度は、このような惨劇をシリアに輸出しようとしているのがヒラリー女史なのです。

 それは単に彼女が「シリアにも飛行禁止区域を!」と叫んでいるからだけではありません。リビアで使ったイスラム原理主義集団を、実際にシリアに輸出しようとしてきたのが、ヒラリー女史を外交政策の責任者とするアメリカだったからです。

 この間の事情を櫻井ジャーナル(2016年8月20日)は次のように伝えています。

 「カダフィ体制が倒された直後、リビアのベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられ、その映像がユーチューブにアップロードされた。その事実をイギリスのデイリー・メイル紙でさえ、伝えている。リビアを侵略した軍隊は空がNATO軍、地上はアル・カイダ系のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)だった。

 リビアを破壊した後、侵略軍はリビア軍の倉庫から武器/兵器を持ち出してトルコへ運んでいる。勿論、戦闘員も同じように移動した。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、輸送の拠点になったのはベンガジにあるCIAの施設。輸送にはマークを消したNATOの輸送機が使われたとも伝えられている。

 運び出された武器/兵器の中に化学兵器も含まれ、これをシリアで使い、政府軍に責任をなすりつけてNATO軍が直接、シリアへ軍事介入する口実にしようとしたと言われている。」

    *

 これを読むと、リビアから傭兵集団が兵器もろともトルコを経由してシリアに輸送されていることが分かります。しかも輸送の拠点になったのはベンガジにあるCIAの施設で、輸送にはマークを消したNATOの輸送機が使われたというのですから、二重の驚きです。というよりも二重の犯罪と言うべきかも知れません。それはともかく、櫻井ジャーナルの説明は次のように続いています。

 「そうした武器や戦闘員の輸送をアメリカ国務省は黙認した。2009年1月から13年2月まで国務長官を務めたヒラリー・クリントンもこの工作を知っていたはず。

 しかも、クリントンの部下にあたるクリストファー・スティーブンス大使は2012年9月10日、CIAの武器輸送担当者と会談、その翌日には武器を輸送する海運会社の人間と会っている。勿論、武器はトルコ経由でシリアの侵略軍へ渡される手はずになっていた。

 その9月11日にベンガジのアメリカ領事館が襲撃されてスティーブンス大使が殺されている。リビア議会が首相を指名する前日だ。その2カ月後にCIA長官を辞めたデイビッド・ペトレイアスはヒラリーと緊密な関係にあることで知られ、このルートからもシリアでの工作を知らされていたはずだ。」

    *

 これを読むと、アメリカ大使館や領事館はCIAの拠点になっていることがよく分かります。日本のアメリカ大使館や領事館も同じ機能を果たしているのでしょうか。

 しかし、ここでもっと重大なのは、その領事館が襲撃されてスティーブンス大使が殺されていることです。ヒラリー国務長官が公的なメールサーバーを使わずハッカー攻撃に弱い私的メールを使ったことが、大使殺害につながったかもしれないのです。

 あるいは、うがった見方をすればこのような極秘事項を手配した人物だけに、それを外部に知られては困るから、密かにテロリスト=傭兵集団に頼んで大使を消してもらったのでしょうか。

 櫻井ジャーナルはこれについては何も述べていないのですが、この私の仮説が正しければ、これほど身の毛のよだつ話はないでしょう。櫻井氏は、これに続けて次のように述べているだけです。

 「クリントンは戦争犯罪人と言われても仕方のないようなことをしてきたわけだが、欧米の支配層はクリントンを支持してきた。投機家で体制転覆に多額の資金を提供してきたジョージ・ソロスも支援者のひとり。

 この支配層は軍事的に世界制覇を進めるだけでなく、巨大資本が国や国際機関を支配する仕組みを作り上げようとしている。それがTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、そしてTiSA(新サービス貿易協定)の3点セットだ。」

    *

 ヒラリー女史の好戦性、あるいはヒラリー女史が大統領になると、なぜ第3次世界大戦になる危険性があるかは、以上の説明で、かなり分かっていただけたのではないかと思います。

 しかし彼女の好戦的履歴は、このリビア爆撃にとどまるものではありません。

 とはいえ本稿もすでにかなり長くなってきていますので、以下ではその略歴だけを紹介して、この論考を閉じたいと思います。以下の引用は先の櫻井ジャーナル(同日付け)からのものです。

 「ウィキリークスによる電子メールのハッキング情報が続いている。今回は投機家で体制転覆に多額の資金を提供してきたジョージ・ソロスだ。

 彼がターゲット国の体制を転覆させるために使っているオープン・ソサエティ基金もハッキングされたという。そうした電子メールの中には、ソロスがヒラリー・クリントンに対してユーゴスラビア=アルバニア情勢に対する対処の仕方をアドバイスするものがある。そのメールが書かれたのは2011年1月24日で、国務長官だったクリントンはソロスのアドバイスに従って動いたようだ。

 ヒラリー・クリントンは夫が大統領だった1990年代、マデリーン・オルブライト(国連大使から国務長官)やビクトリア・ヌランド(国務副長官の首席補佐官)と連携して政権をユーゴスラビアに対する先制攻撃へと導いているが、その背後にソロスがいたということだろう。国務長官に就任したオルブライトが主導する形で1999年3月にNATO軍は偽情報で環境作りをしながらユーゴスラビアを先制攻撃、ひとつの国を破壊した。」

    *

 上記に登場するマデリーン・オルブライトとビクトリア・ヌランドという二人の女性は好戦的人物として有名ですが、この2人を、戦争にあまり乗り気ではなかった夫のビル・クリントンに紹介し強引に新しい国務長官や国務副長官の首席補佐官に据え付けたのも、ファーストレディだったヒラリー女史だったと言われています。

 ですから、彼女のタカ派ぶりは、ここでみごとに発揮されていると言えます。

 櫻井ジャーナルの叙述は、さらに次のように続いています。

 「2003年11月にはジョージア(グルジア)で「バラ革命」、04年から05年にかけてはウクライナで「オレンジ革命」があり、新自由主義体制になった。

当然、一部のグループが不正な手段で国民の財産を奪って莫大な富を築き、その後ろ盾になっていた西側の巨大資本も利益や利権を手にした。こうした「革命」でもソロスはスポンサーとしての役割を果たしていた。

 言うまでもなく両国の庶民は貧困化、そうした状況への怒りからソロスたち西側の富豪や巨大資本にとって好ましくない方向へ動いた。そこで仕掛けられたのがウクライナ首都キエフのクーデター。

2014年2月22日、ネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)を主力とするグループがビクトル・ヤヌコビッチ大統領を暴力的に排除している。そのクーデターを現場で指揮していたのがヌランド国務次官補だった。クリントンは2013年2月に国務長官を辞めているが、ヌランドは彼女の同志だ。」

    *

 私は「バラ革命」や「オレンジ革命」のニュースを聞いたとき、旧ソ連圏の東ヨーロッパで、新しい民衆運動が起きているものと信じていました。

 しかし今から考えると、実に巧妙に仕組まれた「偽の民衆革命」だったのです。これは一種のクーデターでした。

 しかも、このクーデターは東欧だけにとどまりませんでした。ヒラリー国務長官のもとで、クーデターは中米にまで飛び火していました。あの悪名高いブッシュ大統領ですら、やらなかったことです。以下の櫻井氏による説明は次のようになっています。

 「クリントンが長官に就任したのはバラク・オバマが大統領に就任した2009年1月のことだが、その年の6月にホンジュラスで実行されたクーデターでクリントンは黒幕的な役割を果たしたと言われている。約100名の兵士が大統領官邸を襲い、マヌエル・セラヤ大統領を拉致し、コスタ・リカへ連れ去っている。

 現地のアメリカ大使館は国務省に対し、クーデターは軍、最高裁、そして国会が仕組んだ陰謀であり、違法で憲法にも違反していると報告している。つまり、クーデター政権には正当性がないと明言した。

 このクーデター政権は翌2010年、最初の半年だけで約3000名を殺害したとも報告されている。そのクーデターの背後にクリントン長官がいたということだ。」

    *

 以上で櫻井ジャーナルからの引用を終えます。まだまだヒラリー女史の好戦性・冷酷さを示す事例に事欠かないのですが、長くなりすぎていますので、ひとまずここで筆をおきます。今のアメリカ情勢を理解する一助にしていただければ幸いです。

 ただ一つだけ付け加えておきたいことがあります。それはアメリカの民衆が、知れば知るほどヒラリー女史に嫌気がさしているのに、他方の大手メディアがトランプ叩きに終始しているという事実です。

 これでは、アメリカ民衆は「どちらがワルとして我慢できるか」という選択肢しか残されていないことになります。これはアメリカ史上、最悪の大統領選挙と言えるでしょう。

 ただ私たち日本人に一つだけメリットがあるとすれば、今までアメリカは理想の国、民主主義のモデル国だと思われていたのに、それは虚像に過ぎなかったことが、この選挙戦を通じて見えてきたことではないでしょうか。
http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/hirarikurintontohadarekage.html


35. 中川隆[5006] koaQ7Jey 2016年11月18日 08:48:16 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[5433]

2016.11.18
米と露で新自由主義派が力を失いつつある兆候が見えるだけに、形勢逆転を狙って暴走の可能性


 アメリカの次期政権の閣僚人事をめぐり、共和党内で「内紛」が勃発していると伝えられている。これが事実なら、ビル・クリントン政権の終盤から始まった軍事侵略、ジョージ・W・ブッシュ政権から始まったファシズム化という「2本柱」の政策が何らかの形で変化する可能性があるだろう。

 勿論、ドナルド・トランプ次期大統領は支配層の一員であり、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と緊密な関係にあるカジノの経営者シェルドン・アデルソンを最大のスポンサーにしているわけで、フランクリン・ルーズベルトやジョン・F・ケネディのような政策を推進するはずはない。が、ヒラリー・クリントンならやりかねなかったロシアとの核戦争を避けることは期待できる。

 1991年12月にソ連が消滅して以来、ネオコン/シオニストをはじめとするアメリカの好戦派は脅して屈服させるという戦術を続けてきた。かつてのライバルだったソ連の残映であるロシアの大統領はアメリカ巨大資本の傀儡であるボリス・エリツィンが君臨、アメリカは唯一の超大国になったという判断だったようだ。

 そうした判断に基づき、1992年2月には国防総省のDPGという形で世界制覇プランを描き上げ、潜在的なライバルが実際のライバルに成長しないように手を打つことにする。そして1992年2月、国防総省のDPGという形で世界制覇プランが描かれた。

 潜在的なライバルが実際のライバルに成長しないように手を打つということで、潜在的ライバルと想定されたのは旧ソ連、西ヨーロッパ、東アジアの国々。エネルギー資源が存在する南西アジアも注目地域だと考えられている。

 旧ソ連から西ヨーロッパにかけての地域ではカラー革命で傀儡政権を樹立、ユーゴスラビアを先制攻撃で破壊したNATOは東へ向かって支配地域を広げ、ロシアとの国境は目と鼻の先。ミサイルを配備し、軍事的に圧力を加えている。

 欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の最高司令官だったウェズリー・クラークによると、1991年にポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)は、シリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると口にしたという。実際、2003年にイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒した。今でも破壊と殺戮は続いている。イラクを攻撃する際、アメリカ政府は「大量破壊兵器」を口実にしたが、これは嘘だった。

 2001年9月11日にアメリカで世界貿易センターや国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたてから10日後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では攻撃予定国のリストが作成されている。いずれの国も9月11日の攻撃とは無関係。その国とは、イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランだ。

 イラクを攻撃する際にはアメリカ軍が乗り出しているが、その後、傭兵を使い始める。1970年代の終盤、ズビグネフ・ブレジンスキー国家安全保障担当補佐官が考えた作戦に基づいて編成されたサラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団を中心とする武装勢力をソ連軍と戦う傭兵部隊として使い始める。

 イラクでの戦乱が続く中、2007年にシーモア・ハーシュはニューヨーカー誌で、アメリカ(ネオコン)、イスラエル、サウジアラビアは手を組み、シリアやイランをターゲットにした秘密工作を開始、ヒズボラが拠点にしているレバノンを攻撃すると書いている。さらに、イランにもアメリカの特殊部隊JSOCが潜入して活動中だとされている。

 その秘密工作が顕在化したのが2011年春。北アフリカで発火した「アラブの春」だ。おそらく「プラハの春」をイメージとして取り入れたのだろうが、リビアやシリアではサラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団、つまりアル・カイダ系武装集団を使った軍事侵略にほかならなかった。侵略の主体はアメリカ、イスラエル、サウジアラビアだが、さらにフランス、イギリス、カタールといった国々が加わる。シリアではトルコやヨルダンも参加した。

 このシステムはリビアのムアンマル・アル・カダフィ政権が倒されるまでは機能したのだが、シリアで躓く。リビアでNATOとアル・カイダ系武装集団の連携が明白になり、シリアではロシアがNATOの軍事介入を止めたのである。

 本ブログでは何度も書いていうるように、2012年8月までにアメリカ軍の情報機関DIAはシリアの反政府軍がサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIを主力としているとホワイトハウスに報告、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとも伝えた。

 その当時、バラク・オバマ政権はバシャール・アル・アサド政権の打倒を最優先、「穏健派」を助けるとしてアル・カイダ系武装集団を支援していた。自分たちが侵略に使っている傭兵なわけで当然だが。

 アル・カイダ系武装集団のAQIにしろ、アル・ヌスラにしろ、ファテー・アル・シャム(レバント征服戦線)にしろ、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)にしろ、アメリカをはじめとする侵略勢力の傭兵にすぎないのだが、そうした傭兵部隊を危険だと考える人物がアメリカ軍の幹部や情報機関の内部に存在しているようだ。

 例えば、2011年10月から15年9月まで統合参謀本部議長を務めたマーティン・デンプシー大将や12年7月から14年8月までDIA局長を務めたマイケル・フリン中将はそうした軍人であり、ヒラリー・クリントン関連の電子メールをリークしたのはNSAの人間ではないかとも言われている。

 こうした人びと以外にも、ロシアとの核戦争も辞さないという狂気について行けないと考える人は増えているようだ。デンプシーの後任議長であるジョセフ・ダンフォードは交代当時、好戦派と見られていたのだが、クリントンらが主張していたシリアでの飛行禁止空域設定には消極的。ロシアとの核戦争に発展する可能性が強いからだ。

 かつて、日本では「関東軍の暴走」で破壊と殺戮の泥沼から抜け出せなくなった。現在のアメリカにも関東軍と似た軍事組織が存在する。NATOだ。NATOの暴走はありえる。

 フランクリン・ルーズベルトが1932年の大統領選で勝利した直後、JPモルガンをはじめとする巨大金融資本は反ニューディール派のクーデターを計画した。これは海兵隊のスメドリー・バトラー少将らの議会における証言で明らかにされた。現在の巨大資本が似たようなことを考えても不思議ではない。

 このクーデター計画が失敗に終わった後、ルーズベルトは第2次世界大戦の終盤までウォール街にメスを入れることができなかった。ドイツの降伏が確定的になってからメスを入れようと動き始めたようだが、1945年4月にルーズベルトは急死、巨大資本がホワイトハウスで主導権を奪還している。

 似た構造が現在のロシアにもある。アメリカの巨大資本とつながる新自由主義派が今でもロシアの経済部門を支配しているのだ。政府でも首相、金融相、経済開発相というポストをおさえていたのだが、アレクセイ・ウルカエフ経済開発相が逮捕され、ウラジミル・プーチン大統領によって解任された。この動きも西側支配層は恐れているだろう。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201611180000/


36. 中川隆[5043] koaQ7Jey 2016年11月20日 10:37:00 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[5471]

2016.11.20
傭兵部隊などを使って軍事侵略したり露と核戦争するべきでないとする人物を強硬派と呼ぶメディア


 ドナルド・トランプは主導権を維持しているようで、ヒラリー・クリントンを担いでいた勢力はカラー革命を目論んでいる可能性が高い。こうした勢力はトランプに「ネオ・ナチ」で白人至上主義者だというタグをつけ、ウラジミル・プーチン露大統領に対する敵視を隠していない。来年1月に予定されている大統領就任式を正常な形で行わせないようにしようという呼びかけもなされている。

 クリントンを大統領に就任させようとしていた富豪、例えばジョージ・ソロス、その息子のジョナサン・ソロス、あるいはトム・ステイアーたちは11月13日から3日間、ワシントンDCのマンダリン・オリエンタル・ホテルで非公開の会議を開いた。トランプ政権を乗っ取る動きも見られるが、今のところ成功していないようで、旧ソ連圏で実行されてきた「カラー革命」や中東/北アフリカで展開された「アラブの春」と同じことをアメリカでも目論んでいるようだ。

 ヒラリー・クリントンを担いでいた好戦派は1999年3月にNATO軍を使ってユーゴスラビアを先制攻撃、ひとつの国を破壊した。ビル・クリントン政権の2期目が始まった1997年1月に国務長官が戦争に消極的なウォーレン・クリストファーからズビグネフ・ブレジンスキーの教え子でヒラリー・クリントンと親しい好戦派のマデリーン・オルブライトに交代したことが攻撃の背景にある。

 この時に国防副長官の首席補佐官だったビクトリア・ヌランドは2013年から14年にかけてウクライナでクーデターを現場で指揮していた。クーデターが始動したのは2013年11月21日。キエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で約2000名の反ヤヌコビッチ派が集まったところから始まる。

 それから間もない12月13日、ヌランドは米国ウクライナ基金の大会で演説、ソ連が消滅した1991年からウクライナへ50億ドルを投資したと発言している。その際、彼女の背後には巨大石油企業シェブロンのマークが飾られていた。

 東部や南部で支持されて大統領に就任したビクトル・ヤヌコビッチの打倒をキエフ周辺の親EU派が目論んだのだが、EUは話し合いでの解決を模索する。そうした動きに怒ったのがヌランドで、ジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使との電話会談で「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」という言葉を口にしている。

 この発言は何者かが盗聴、2月4日にインターネット上へアップロードされて発覚した。その会話の中でふたりは「次期政権」の閣僚人事について話し合っていた。政権の打倒が見通されている。ヌランドが高く評価していたアルセニー・ヤツェニュクはクーデターの後、首相に就任した。

 その後、キエフはヌランド好みの暴力に支配される。広場ではネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)のメンバーが棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始め、2月中旬には2500丁以上の銃が持ち込まれ、狙撃も始まった。

 それでもヤヌコビッチ大統領と反政府派の代表は一旦、平和協定の調印にこぎ着けるのだが、その直後に狙撃は激しくなり、「西側」の政府やメディアはヤヌコビッチ側が黒幕だと宣伝。そして23日の憲法を無視した解任につながる。

 その2日後にキエフ入りしたエストニアのウルマス・パエト外相は反ヤヌコビッチ派で医師団のリーダー格だったオルガ・ボルゴメツなどから聞き取り調査をする。その結果を26日にEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話で報告したのだが、それによるとスナイパーは反ヤヌコビッチ派の中にいるというものだった。

 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」としたうえで、「新連合はもはや信用できない」としている。それに対し、アシュトンは「議会を機能させなければならない」と応じた。つまり、事実を隠して嘘を突き通せということだ。

 ウクライナをネオ・ナチが支配する3年前の春、リビアとシリアに対する侵略戦争が始まっている。その展開は本ブログで何度も書いてきたので、今回は割愛する。

 リビアでムアンマル・アル・カダフィ政権が倒された翌年、2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIAはシリア情勢に関してホワイトハウスに報告している。その中で、シリア政府軍と戦っている武装集団はサラフ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIが主力だとしている。西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとも伝えた。

 その報告では、アメリカ政府が方針を変えなければ、シリア東部にサラフ主義の支配地が作られるとDIAは予測していたが、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になる。

 AQIにしろ、アル・ヌスラにしろ、アル・カイダ系武装集団の主力メンバーはサラフ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団で、その背後にはサウジアラビア王室が存在している。このサウジアラビアがアメリカやイスラエルと手を組み、サラフ主義者やムスリム同胞団を使ってシリアやイランの政権やヒズボラを倒そうとしているとシーモア・ハーシュはニューヨーカー誌の2007年3月5日号に書いている。

 リビアでNATO軍とアル・カイダ系武装集団との連携が伝えられたが、その後に新たなタグとしてダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)が登場してくる。そのダーイッシュを作る手助けをアメリカがしたと米空軍のトーマス・マッキナニー中将は2014年9月にテレビで発言した。

 また、その年にマーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で発言、同年10月にはジョー・バイデン米副大統領がハーバーバード大学で中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると語り、2015年にはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官もアメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたと述べている。

 トランプが安全保障担当補佐官に選んだマイケル・フリン中将は2012年7月から14年8月までDIA局長を務めていた。つまり、ダーイッシュの勢力拡大を予測していた報告が作成されたのはフリンが局長だった時代であり、オバマ政権とアル・カイダ系武装集団やダーイッシュとの関係を熟知しているはずだ。

 フリンはデンプシー大将と同じようにアル・カイダ系武装集団やダーイッシュを危険であり、ロシアと連携すべきだと考えていた。今でも同じだろう。トランプの発言はそうした考え方と合致している。

 逆にクリントンの周辺はアル・カイダ系武装集団/ダーイッシュやネオ・ナチを手先として使って破壊と殺戮を繰り返し、ロシアや中国を屈服させようと軍事的な圧力と強めて核戦争の危険性を高めている。

 日本やアメリカのメディアなどではクリントンでなくトランプを強硬派だと表現する。クリントンの周辺にいる好戦派が手先として利用している武装集団に対する攻撃を強行する勢力だということなのだろう。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201611200000/


37. 中川隆[5091] koaQ7Jey 2016年11月23日 12:22:54 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[5523]

2016.11.23
米政府の政策はサラフ主義者の勢力を拡大させると警告してもフリンが反イスラムだとは言えない


 最近は知らないが、以前はカネ絡みの怪しげな仕事を始めるとき、ネズミ講やマルチ商法などの会員名簿を入手するところから始めていた。「被害者」の名簿が「顧客」の名簿になるのだ。それほど欲望の力は強く、何度でも騙されるということ。同じことが報道の世界でも起こっていて、何度でも騙される人が少なくない。いまだにアメリカの有力メディアを信仰しているのだ。

 かつて、西側の有力メディアは事実の中に嘘を混ぜて情報操作していたのだが、21世紀に入ると「報道」のほとんどが嘘になってしまった。日本のマスコミだけが「大本営発表」的なことを行っているわけではない。事実をチェックしていれば、そうしたことは誰でもわかるはずだ。

 西側の支配層が情報操作に力を入れてきたことは本ブログで何度も指摘してきた。ベトナム戦争で報道統制を強化しなければならないと考えた彼らは1970年代の後半から内部告発しにくい仕組みを作り、気骨ある記者や編集者を排除、その一方で規制緩和を進めてメディアを寡占化させた。

 ソ連が1991年12月に消滅した後、アメリカの支配層は残された「雑魚」を潰しにかかるのだが、その基本プランが1992年2月に国防総省のDPGとして作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリン。当時の国防長官はリチャード・チェイニー、次官がポール・ウォルフォウィッツ。そのウォルフォウィッツがネオコン仲間のI・ルイス・リビーやザルメイ・ハリルザドと一緒に書き上げたのだ。ちなみに安倍晋三や石原慎太郎のような日本の政治家を操っているのはリビーだと言われている。

 日本の政策もウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づいて作られるようになるが、そのメッセンジャーとして働き、日本を戦争へと導いてきた人物がジョセフ・ナイ、リチャード・アーミテージ、マイケル・グリーン、パトリック・クローニンたちだ。

 アメリカの支配層は手始めに旧ソ連圏への影響力を強め、とりあえずユーゴスラビアを解体しようとする。そこで西側メディアは「人権」キャンペーンだ。侵略を破壊を正当化するために「人権」というタグ、御札を使っただけで、西側メディアが人権を尊重しているわけではない。このキャンペーンには広告会社が深く関与、偽情報を発信していたことは本ブログや拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』(三一書房)でも指摘した。

 当初、ビル・クリントン政権はこうしたキャンペーンに動かされなかったが、クリントン大統領自身がスキャンダルで攻撃されて手足を縛られたような状態になり、2期目には戦争へと向かう。その象徴が1997年1月から国務長官を務めることになったマデリーン・オルブライト。この人事はヒラリー・クリントンの働きかけで実現したとされている。

 ジョージ・W・ブッシュが大統領に就任した2001年の9月11日、ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、人びとは思考停止状態になる。そうした状況を利用し、ネオコンは国内のファシズム化を推進、国外では侵略戦争を始める。

 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官によると、9/11から10日後までにドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では攻撃予定国リストが作成されていた。そこに載っていた国は、イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイラン。(3月、10月)

 9/11の際、ブッシュ・ジュニア政権は「アル・カイダ」が実行したと宣伝したが、その証拠は示されていない。それどころか内部犯行説が支持者を増やしているようだ。ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺と似た展開だ。アフガニスタンやイラクも9/11には無関係だった。

 そうしたこともあり、アメリカ政府はイラクを先制攻撃する口実として「大量破壊兵器」を持ち出し、すぐにでも核攻撃されるかのように宣伝していたが、これは攻撃前から嘘だと指摘されていた。

 その後、2011年2月にリビアで始まった戦争ではアメリカ/NATO、ペルシャ湾岸産油国、イスラエルがアル・カイダ系武装集団のLIFGと連携していることが明確になり、シリアでも次々と西側の政府や有力メディアが主張していた話が嘘だと判明していく。ウクライナのクーデターでも偽情報が流されていたことは本ブログでも繰り返し、書いてきた。

 侵略勢力はリビアを破壊して破綻国家にした後、シリアへの侵略戦争を続けている。その手先がアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)だということは本ブログでも指摘してきた。そのメンバーにはチェチェンや新疆ウイグル自治区などから来ている人もいるが、主力はサラフ主義者やムスリム同胞団。

 バラク・オバマ政権や西側メディアはシリア侵略を正当化するため、侵略軍を民主化を求める人民軍として描く。これが嘘だということは現地からの情報ですぐに判明、現地を調査した東方カトリックの修道院長は反政府軍のサラフ主義者(ワッハーブ派)や外国人傭兵が実行したことを確認、その報告がローマ教皇庁系のメディアに掲載された。その中で、「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」と語っている。

 侵略戦争が始まった翌年、2012年の8月にアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)はシリア情勢に関してオバマ政権へ報告しているが、その中でシリア政府軍と戦っている主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・ヌスラ)であり、西側、湾岸諸国、そしてトルコが支援していると書いている。アメリカ政府が方針を変えなければ、シリア東部にサラフ主義の支配地が作られるとも予測していた。DIAはアメリカ政府がサラフ主義者の勢力を拡大させてシリアを孤立させようとしていると見ている。この報告書が作成された当時のDIA局長がマイケル・フリンだ。

 DIAの予測はダーイッシュという形で現実になった。退役後、2015年8月にフリン中将はアル・ジャジーラの番組へ出演、司会者からサラフ主義者の勢力拡大を見通していたのになぜ阻止しなかったのかと詰問される。それに対し、自分たちの役割は正確な情報を提供することであり、政策を決定はバラク・オバマ大統領が行うのだとフリンは答えた。オバマ政権の決定がダーイッシュの勢力を拡大させたというわけだ。

 DIAが報告書を書いた2012年には、アメリカの情報機関や特殊部隊がヨルダンの北部に設置された秘密基地で戦闘員を軍事訓練、その中にはダーイッシュに参加する人も含まれていたとされている。

 そしてダーイッシュは2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧した。モスル制圧の際にトヨタ製の真新しい小型トラックのハイラックスを連ねてパレード、その様子が撮影されて世界に配信されている。

 アメリカ軍はスパイ衛星、偵察機、通信傍受、人からの情報などでダーイッシュの動きを把握していたはず。当然、ダーイッシュの部隊が小型トラックでパレードしていることを知っていただろうが、何もしていない。多くの人びとにダーイッシュの存在を知らせたかったのではないかと疑惑を持つ人は少なくないだろう。

 こうした展開の中、フリンはオバマ政権と対立、2014年8月7日にDIA局長を辞め、退役している。ズビグネフ・ブレジンスキーが1970年代の終盤に編成、オバマ政権も育てたサラフ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団を中心とする武装勢力を危険な存在だとマーチン・デンプシー統合参謀本部議長(2011年10月から15年9月)も認識、シーモア・ハーシュによると、デンプシーは2013年秋からアル・カイダ系武装集団やダーイッシュに関する情報を独断でシリア政府へ伝え始めたという。デンプシーが議長を辞めた直後、ロシア軍はシリア政府の要請で空爆を始めている。

 オバマ政権はアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュを手先として利用してきた。最近はアル・カイダ系武装勢力も「穏健派」扱いしているが、フリンはデンプシーと同じように、そうした武装集団を危険だと考えている。

 ナチスを批判する人を反ドイツと呼ぶことが間違いであるとの同様、アル・カイダ系武装勢力やダーイッシュを敵視することが反イスラムを意味するわけでないことは言うまでもない。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201611230000/


38. 中川隆[5145] koaQ7Jey 2016年11月26日 13:03:13 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[5579]
2016.11.26
ダーイッシュを手先と考えるオバマやクリントンと対立していたフリンにイスラエル人脈が取り憑く


 今年のアメリカ大統領選挙で「有力候補」とされたのは民主党のヒラリー・クリントンと共和党のドナルド・トランプだった。有力メディアはクリントン優勢を伝えていたものの、選ばれたのはトランプ。権力内の力関係に変化が起こった可能性がある。

 この国では支配層につながる人物でなければ「有力候補」になることは困難で、両者ともそうした背景はある。クリントンはロッキード・マーチンの代理人とも呼ばれ、戦争ビジネスとは深い関係にある。夫のビル・クリントンだ大統領だった時には政府内へ引き込んだ友人にはズビグネフ・ブレジンスキーの教え子だったマデリン・オルブライトやネオコンのビクトリア・ヌランド。後に側近中の側近と言われるようになるムスリム同胞団と緊密な関係にあるヒューマ・アベディンと知り合ったのもその時だった。

 また、投機家でソ連/ロシアの体制転覆を目論んできたジョージ・ソロスのハッキングされた2011年1月24日付けの電子メールによって、国務長官時代のヒラリー・クリントンがアルバニア情勢に関してソロスからアドバイスを受け、その通りに動いたことが判明している。ソロスは巨大金融資本の手先であり、そうした勢力からクリントンは操られていると言える。

 タイムズ・オブ・イスラエル紙によると、トランプに対して最も多額の寄付をした人物はシェルドン・アデルソン。アメリカのラス・ベガスとペンシルベニア、東南アジアのマカオとシンガボールでカジノを経営、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と緊密な関係にある。第2位はロシア系ユダヤ移民の息子であるバーナード・マーカスだ。

 もっとも、クリントンにもユダヤ系の富豪から高額の寄付を受けている。上位5位まではユダヤ系だ。つまり、ドナルド・サスマン(2080万ドル)、JBとマリー・カトリン・プリッツカー(1500万ドル)、ハイムとチェリル・サバン(1250万ドル)、ジョージ・ソロス(1180万ドル)、そしてS・ダニエル・エイブラハム(960万ドル)だ。そのほかフィルムメーカーのスティーブン・スピルバーグ、ファッション・デザイナーのラルフ・ローレン、Facebookのダスティン・モスコビッツなども高額寄付者である。

 しかし、ロシア外務省の広報担当を務めているマリア・ザハロワは11月13日に放送された番組の中で、アメリカの大統領選挙でトランプが勝利した理由をユダヤ人の資金だと語っている。9月にニューヨークで会ったユダヤ系の人物から、自分たちはヒラリー・クリントンに寄付しているが、その倍をトランプに提供していることを明らかにしたというのだ。

 アデルソンと緊密な関係にあるネタニヤフの父親はポーランド生まれのベンシオン・ネタニヤフ。学生時代からゼエブ・ウラジミール・ジャボチンスキーの「修正主義シオニスト世界連合」で活動、後にジャボチンスキーの秘書になっている。1940年にジャボチンスキーは死亡したが、ベンシオンはその後もニューヨークで活動を続け、コーネル大学やヘブライ大学の名誉教授になった。ベンヤミンも父親と同じように、ジャボチンスキーの思想を受け継ぎ、「大イスラエル」を目指しているようだ。

 トランプ政権で安全保障担当補佐官に就任する予定のマイケル・フリン中将がDIA局長だった2012年8月、DIAは反シリア政府軍の主力がサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIで、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとする報告書を作成している。

 つまり、アメリカの政府やメディアが言うところの「穏健派」などは存在しないということ。「穏健派」の支援とはサラフ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団を中心とする武装勢力を支援することを意味し、その勢力はシリア東部にサラフ主義の支配地を作りあげるとDIAは予測していた。実際、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になっている。退役後、この問題をアル・ジャジーラの番組で問われたフリン中将は、ダーイッシュの勢力が拡大したのはオバマ政権が決めた政策によると語っている。

 シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すとシリアはリビアのような破綻国家になり、「過激派」が支配するようになると懸念していたのはフリンだけでなく、統合参謀本部議長だったマーティン・デンプシーも含まれていた。

 こうした軍人のオバマ大統領に対する反抗は2013年に始まっているようだが、11年10月にアル・カイダ系武装集団のLIFGとNATOが連携してリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制を破壊、カダフィを惨殺した直後から武器や戦闘員をアメリカ政府はシリアへ移動させている。カダフィ殺害をCBSのインタビュー中に知らされたヒラリーは「来た、見た、死んだ」と口にし、喜んでいた。

 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、輸送の拠点になったのはベンガジにあるCIAの施設。そうした事実をアメリカ国務省は黙認そ、輸送にはマークを消したNATOの輸送機が使われたとも伝えられている。運び出された武器/兵器の中に化学兵器も含まれていたようだ。こうしたことをDIAは熟知していただろう。

 デンプシーらの反抗が始まる2013年の9月、ネタニヤフ首相の側近と言われているマイケル・オーレン駐米大使(当時)はアサド体制よりアル・カイダの方がましだとエルサレム・ポスト紙のインタビューで語っている。この時点ではイスラエル政府とデンプシーたちは対立関係にあった。

 オバマ大統領の方針と対立したフリンは2014年8月にDIA局長を辞めざるをえなくなって退役、デンプシーは15年9月に議長の座を降りた。シーモア・ハーシュによると、デンプシーは退役の直前、8月に自分がロシアのワレリー・ゲラシモフ参謀総長と接触していたことを明らかにしている。シリア政府ともパイプがあったようだが、デンプシーの退役でこのパイプはなくなり、その直後にロシア軍はシリア政府の要請の基づいて空爆を始めた。

 アメリカ軍の幹部には大まかに行って2種類のタイプが存在する。戦争ビジネスと結びつき、退役後に巨万の富を手に入れようとする人びとと、そうしたつながりを持とうとしない人びとだ。当然、富を求める軍人は支配層の意向に沿った言動をするわけだが、そういう軍人ばかりではない。デンプシーやフリンの背後にはそうした軍人や情報機関員が存在しているのだ。

 そのフリンは今年、「ラディカル・イスラムとその同盟者」との戦いをテーマにした本を出しているのだが、共著者であるマイケル・リディーンを問題にしている人もいる。この人物はイスラエルの情報機関と緊密な関係にあると言われ、1970年代の半ばにイタリアのイル・ジョルナレ・ヌオボ紙でジャーナリストとして働いていた際には「アカの脅威」を盛んに宣伝していた。

 当時、イタリアの情報機関SISMIのエージェントだったフランチェスコ・パチエンザとリディーンは親しくしていたが、そのパチエンザによると、リディーンもSISMIのエージェント。Z3という暗号名を持っていたという。1980年のアメリカ大統領選挙ではジミー・カーターの再選を阻止するため、盛んにスキャンダルを流していた。(Edward S. Herman & Noam Chomsky, "Manufacturing Consent," Pantheon, 1988)

 パチエンザは非公然結社P2と結びつき、グラディオと呼ばれるNATOの秘密部隊でも活動していた。1960年代から80年代にかけてグラディオは「極左」を装い、爆弾攻撃を繰り返していたことが知られている。この秘密部隊が存在することは1990年にイタリア政府も公式に認めている。

 トランプの周辺を取り巻くイスラエル人脈はアデルソン、ネタニヤフ、リディーンだけではない。娘のイバンカ・トランプが結婚したジャレド・クシュナーの父親は不動産デベロッパー、つまりドナルド・トランプの同業者だが、ニューヨーク・オブザーバー紙の所有者でもある。この新聞は親イスラエル派として有名だ。

 本ブログでは何度か指摘したが、イスラエルのネタニヤフ政権は今年に入ってアサド大統領を排除するという方針を止め、ロシアに接近しているように見える。その結果としてフリンともつながったのだろうが、イスラエル政府はデンプシーやフリンを取り込もうとしているとも考えられる。トランプが大統領に就任した後、ソロスたちはパープル革命を始める可能性があるが、政権内で対立が起こるかもしれない。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201611260000/


39. 中川隆[5194] koaQ7Jey 2016年11月30日 05:35:30 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[5628]

2016.11.30
シリア侵略計画が失敗に終わりそうで、戦争犯罪的な行為はサウジに責任が押しつけられる可能性


 シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すという計画は風前の灯火だと言えるだろう。シリア侵略勢力に属していた国々のうちイスラエルやトルコはすでにロシアへ接近、アメリカではロシアと手を組むべきだと主張するドナルド・トランプが次期大統領に選ばれている。バラク・オバマ米大統領やヒラリー・クリントンの周辺、あるいはサウジアラビアやカタールなどは窮地に陥った。中でもペルシャ湾岸の産油国は難しい局面に立たされたと言えるだろう。トランプの言動を考えると、サウジアラビアは2001年9月11日に実行された攻撃の責任が問われることも考えられる。

 シリア侵攻の背後にはアメリカ、イギリス、フランス、サウジアラビア、カタール、トルコ、イスラエルなどの国々が存在、アル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)が手先として戦ってきた。こうした武装勢力の主力はサラフ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団だ。

 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、ネオコンのポール・ウォルフォウィッツがイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしたのは1991年のこと。この年の1月16日にアメリカが主導する連合軍はイラクへ軍事侵攻、2月末に停戦するが、国防次官だったウォルフォウィッツはそれが気に入らなかった。

 ウォルフォウィッツたちネオコン/シオニストは1980年代からサダム・フセインを排除したがっていたのだが、ジョージ・H・W・ブッシュ政権はフセインを排除せずに戦闘を終結させてしまい、ネオコンを激怒させたのである。そしてウォルフォウィッツの発言につながった。

 1991年はソ連が消滅した年でもある。7月にイギリスのロンドンで開かれたG7の首脳会談で西側の首脳はソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領に対して新自由主義経済、いわゆる「ピノチェト・オプション」の実施を要求、それに難色を示したゴルバチョフは排除されることになる。

 言うまでもなく、ピノチェトとは1973年9月11日にチリで民主的政権をクーデターで倒したオーグスト・ピノチェトを指している。その軍事クーデターを操っていたのはヘンリー・キッシンジャーだ。

 クーデター後、ピノチェトはシカゴ大学のミルトン・フリードマン教授の「マネタリズム」に基づく政策を導入、大企業/富裕層を優遇する政策を実施した。その政策を実際に実行したのがシカゴ大学のフリードマン教授やアーノルド・ハーバーガー教授といった経済学者の弟子たち、いわゆる「シカゴ・ボーイズ」である。

 具体的な政策としては、賃金は引き下げ、労働者を保護する法律を廃止、労働組合を禁止、つまり労働環境を劣悪化、1979年には健康管理から年金、教育まで、全てを私有化しようと試みている。国有企業の私有化とは国民の資産を略奪することにほかならず、安倍晋三政権が執着しているTPP(環太平洋連携協定)と基本的に同じ。実際、安倍政権はその方向へ向かっている。

 西側支配層はゴルバチョフに替わる選択肢を持っていた。ボリス・エリツィンだ。1991年7月に彼はロシアの大統領に就任する。

 その一方、ゴルバチョフの政策をソ連解体の策謀と考えるグループは「国家非常事態委員会」を組織、8月に権力の奪還を狙うものの、失敗する。その目論見を利用して主導権をを奪うことに成功したのがエリツィン。1991年12月8日に彼はベラルーシにあるベロベーシの森で秘密会議を開き、国民に諮ることなくソ連からの離脱を決めた。いわゆる「ベロベーシ合意」だ。12月21日にはCIS(独立国家共同体)が発足、ソ連は消滅するのだが、この過程に国民の意思は反映されていない。

 会議に出席したのはロシアからエリツィン大統領とゲンナジー・ブルブリス国務大臣、ウクライナからレオニード・クラフチュク大統領とビトルド・フォキン首相、ベラルーシのソビエト最高会議で議長を務めていたスタニスラフ・シュシケビッチとバツァスラフ・ケビッチ首相。会議を主導したのはロシアのブルブリスだと言われている。

 ソ連の消滅によってアメリカの支配層はアメリカが唯一の超大国になり、その超大国を支配している自分たちが世界を支配するというストーリーを考える。そこで1992年2月に国防総省のDPGとして世界制覇プロジェクトを作成する。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンで、旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジアなどの潜在的なライバルを潰し、膨大な資源を抱える西南アジアを支配しようと計画している。

 こうした計画はビル・クリントン政権で塩漬けになるが、本ブログで何度も書いているように、ヒラリー・クリントンが政権の内部に引き込んだマデリーン・オルブライトやビクトリア・ヌランドが軌道修正、つまり戦争へと導いていく。オルブライトはズビグネフ・ブレジンスキーの教え子であり、ヌランドはネオコンだ。

 ビル・クリントン政権が侵略戦争へ進み始めるのはオルブライトが国連大使から国務長官に異動した1997年1月が大きな節目だった。なお、ヌランドは国務副長官の首席補佐官を務めていた。

 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されると、ホワイトハウスでネオコンなど好戦派が主導権を握る。攻撃の10日後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では攻撃予定国リストが作成され、そこにはイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランが載っていたとクラーク元欧州連合軍は語っている。

 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが2007年3月5日付けのニューヨーカー誌に書いたレポートによると、アメリカ/NATO、ペルシャ湾岸産油国(サウジアラビアやカタール)、イスラエルは遅くとも2007年にシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作を始めていた。その手先はサラフ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団だ。

 アル・カイダ系武装集団やダーイッシュが「独裁者に虐げられた人民」でないことはアメリカ支配層に属す人びとも認めている。例えば、2014年9月に空軍のトーマス・マッキナニー中将はアメリカがダーイッシュを作る手助けしたとテレビで発言、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で発言、同年10月にはジョー・バイデン米副大統領がハーバーバード大学で中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると語り、2015年にはクラーク元欧州連合軍最高司令官もアメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたと述べている。

 そして2015年8月、マイケル・フリン元DIA局長はアル・ジャジーラの番組へ出演した際、ダーイッシュが勢力を拡大できたのはバラク・オバマ政権の政策があったからだと指摘している。言うまでもなく、フリンはドナルド・トランプ大統領の安全保障担当補佐官に内定している。オバマ大統領、そしてオバマ政権で国務長官を務めたヒラリー・クリントンにとって嫌な人事だろう。

 そうした中、サウジアラビアの責任を問う話が流された。例えば、今年1月には侵略戦争の旗振り役を演じてきたニューヨーク・タイムズ紙もサウジアラビアがシリアの反政府軍の資金源だとする記事を掲載した。9/11にサウジアラビアが関与しているという話も流れている。

 アメリカの支配層がイスラエルの責任を問うとは考え難く、サウジアラビアは全ての責任を押しつけられる可能性もある。が、そうなると世界有数の油田国が不安定化してしまう。目先の個人的な利益を優先、アメリカの好戦派に従ってきた日本の支配層は日本を東アジアで孤立させ、破滅の瀬戸際に立たせた。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201611300000/


40. 中川隆[5275] koaQ7Jey 2016年12月05日 05:00:16 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[5710]

2016.12.05
イスラエルからトルコへ大使が赴任、ネオコンが描いた中東を制圧する計画は崩壊しつつある


 イスラエルからトルコへエイタン・ナエーが大使として着任した。大使赴任は6年ぶりのことだ。6月下旬にトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はイスラエルとの和解を発表、その発言が形になったといえるだろう。6月下旬にエルドアンはロシアのウラジミル・プーチン大統領に対し、ロシア軍機の撃墜を謝罪、7月13日にはトルコの首相がシリアとの関係正常化を望んでいることを示唆している。

 現在、西側ではドナルド・トランプ政権がイランを攻撃するというような話が流れているのだが、イラン、イラク、シリアを殲滅すると1991年に話していたのはポール・ウォルフォウィッツ。当時、アメリカの国防次官だった。翌年の2月にウォルフォウィッツを中心にして、国防総省のDPG草案という形で世界制覇プランが作成された。

 1993年1月から2001年1月までのビル・クリントン政権でネオコンはホワイトハウスの主導権を失い、政府内で活動していたのはヒラリー・クリントンが引き込んだ人びとだけだった。そこで、外部で提言をしているのだが、そのひとつが1996年の「決別」。作成したのはネオコンのグループで、中心はリチャード・パールだった。ここでもイラク、イラン、シリアは敵視されている。

 2000年にネオコン系シンクタンクのPNACはウォルフォウィッツ・ドクトリンをベースにして「アメリカ国防の再構築」を作り上げている。執筆人にはウォルフォウィッツのほか、ロバート・ケーガンやI・ルイス・リビーなどネオコンのメンバーが名を連ね、翌年から始まるジョージ・W・ブッシュ政権はその計画に沿った政策を実行した。

 2003年にアメリカ政府はイラクを先制攻撃、サダム・フセインを排除した。イラクに存在しないことを知っていた大量破壊兵器を口実に攻め込んだのである。1991年にウォルフォウィッツが口にしたことを実行したわけだ。

 21世紀に入るとロシアでウラジミル・プーチン大統領が国を食い物にしていた腐敗勢力(西側では民主派とか呼ばれた)の摘発を開始、少なからぬ富豪がロンドンやイスラエルへ逃れた。その結果、イスラエルはそうしたオリガルヒの大きな影響を受けるようになってしまう。そのオリガルヒはイギリスのロスチャイルドや投機家のジョージ・ソロスと深い関係にあり、そうした勢力の影響がイスラエルで強まったとも言えるだろう。

 アメリカではソロスやロスチャイルドと親しいことで知られているヒラリー・クリントンが2009年1月から13年2月まで国務長官を務めているが、その間、アル・カイダ系武装勢力など傭兵を使ってリビアやシリアを2011年春から侵略し、リビアでは2011年秋にムアンマル・アル・カダフィが殺害された。リビアは現在、破綻国家だ。

 2012年からアメリカ、サウジアラビア、イスラエルを中心とする侵略勢力は武器/兵器や戦闘員をシリアへ集中させる。シリアのバシャール・アル・アサド体制を倒した後はイランを潰す予定だったが、この計画はイスラエルの治安機関シン・ベトのユバル・ディスキン元長官や対外情報機関モサドのメーアー・ダガン元長官から反対されている。

 それでも2013年9月には駐米イスラエル大使だったマイケル・オーレンがバシャール・アル・アサド体制よりアル・カイダの方がましだと語っている。オーレンはベンヤミン・ネタニヤフ首相の側近で、この発言は首相の意思でもあると考えられた。その当時、アメリカではマーティン・デンプシー統合参謀本部議長やマイケル・フリンDIA局長はアル・カイダ系武装集団を危険だと考え、シリア政府と接触していたと言われている。

 モサドやシン・ベトはリクードと関係が深いはずで、本来ならネタニヤフ首相と対立することは考え難い。「元長官」でもそうだろう。対立が生じていたとするなら、そうした関係を壊すほどの存在がネタニヤフの背後にいたということだろう。今年に入り、その存在の力が弱まってきた可能性が高い。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201612030001/


41. 中川隆[5456] koaQ7Jey 2016年12月14日 15:37:57 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[5892]
2016.12.13
シリアで政府軍と戦っているのはアル・カイダ系武装集団やダーイッシュであり、反体制派はいない


 シリアで政府軍が戦っている相手に「反体制派」というタグをつけているマスコミが存在する。かつて、日本のアジア侵略を「大東亜共栄圏」を建設するためだと主張した人たちがいるが、それと同じようなものだ。

 リビアやシリアで体制転覆を目指して戦っている集団が「反体制派」でないことは戦闘が始まった2011年春の段階で指摘されていた。シーモア・ハーシュなどが何年も前から予告していたことが引き起こされたのだ。

 2012年8月にはアメリカ軍の情報機関DIAが反シリア政府軍の主力がサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIであり、そうした勢力を西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとバラク・オバマ政権に報告している。その結果として、シリアの東部分にサラフ主義に支配された地域が作られるとも警告、それはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実のものになった。この報告書が書かれた当時のDIA局長がトランプ政権で安全保障担当補佐官に就任する予定のマイケル・フリン中将だ。

 こうした武装勢力の戦闘員は武器/兵器と同じようにシリアの外から入った。リビアのムハンマド・アル・カダフィ体制が倒された後、戦闘員や武器/兵器をアメリカなどはシリアへ移動させたが、その拠点になったのがベンガジのアメリカ領事館だったことは本ブログでも紹介した。そこが2012年9月11日に襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使も殺された。領事館が襲撃される前日、大使は武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っている。

 サラフ主義から現在のタクフィール主義者は生まれた。この人びとはタクフィール(背教徒宣告)して人を殺す。2012年6月にエジプト大統領となったモハメド・モルシはシーア派へのタクフィールを許可、シリア侵略を後押しした。この許可はイラン侵略も視野に入っているのだろう。

 こうした侵略の背後にはネオコンの世界制覇戦略がある。ソ連消滅後、アメリカが唯一の超大国の超大国になり、その超大国を自分たちが支配していると認識した彼らは世界制覇プランを描き上げたのだ。1992年2月にポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)たちが作成したDPGの草稿がそのプラン。「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。

 ソ連の消滅は西側支配層の傀儡だったボリス・エリツィンたちが仕掛けた。この事実は本ブログでも何度か指摘している。2度とソ連のようなライバルが出現しないように、彼らは旧ソ連圏のほか西ヨーロッパ、東アジアなどが成長しないような方策をとろうとし、力の基盤になるエネルギー源が地下に存在する西南アジアを支配しようと考えた。

 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、DPGが作成される前の年にウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていている。ソ連が消滅する前から彼らは世界制覇の野望を持っていたわけで、ソ連消滅はそうした野望を顕在化させることになった。

 しかし、このプランはジョージ・H・W・ブッシュ大統領が再選に失敗、ビル・クリントンが大統領に就任したことでお蔵入りになる。それを蔵から引きずり出したのがファースト・レディーだったヒラリー・クリントン。彼女と親しいマデリーン・オルブライトが国連大使から国務長官へ異動した1997年1月のことだ。そして1999年3月、NATOはユーゴスラビアを先制攻撃した。ちなみに、オルブライトはズビグネフ・ブレジンスキーの教え子。ヒラリーのもうひとりの友人、ビクトリア・ヌランドは当時、国務副長官の首席補佐官を務めていた。

 本ブログではすでに書いたことだが、ウォルフォウィッツをはじめとする好戦派はユーゴスラビアを破壊、解体するため、ウォルフォウィッツ・ドクトリンが作成された直後からプロパガンダを始めている。例えば、ニューズデイのボン支局長だったロイ・ガットマンは1992年8月、ボスニアで16歳の女性が3名のセルビア兵にレイプされたと書いているのだが、これは嘘だった。この嘘を広めた功績で、後に彼はピューリッツァー賞を受賞している。

 2003年3月にアメリカ政府が始めたイラクへ侵略戦争も嘘を広めることから始めた。この時は偽情報を発信する目的で国防総省の内部にOSP(特殊計画室)が作られた。その室長に選ばれたエイブラム・シュルスキーはシカゴ大学でウォルフォウィッツと同じ教授について博士号を取得している。ふたりはネオコン仲間だ。

 1990年代からアメリカの侵略戦争に広告会社が深く関与してくるようになったことも本ブログで書いてきた。偽情報の作成と流布は彼らにとって御手の物だ。そうした偽情報をアメリカなど西側の有力メディアは垂れ流し、アメリカの政府や議会はそうした嘘を暴くメディアやサイトに「偽報道」というタグをつけ、検閲しようとしている。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201612130001/


42. 中川隆[5625] koaQ7Jey 2016年12月23日 12:21:28 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[6062]

シリア的捏造:誰が、いかに、何のためにシリア紛争について偽情報を流しているのか? 2016年12月15日

インターネットの発達とともに、実際の情報とウソとの区別が、より難しくなってしまった。

スプートニクは、誰が何のために、シリアに関する偽情報を流しているのかを明らかにするため、複数の専門家に話を聞いた。

中東の安全保障問題の専門家でメディア分析を得意とするダニー・マッキー氏は、欧米マスコミによるシリア紛争の報道に対する自らの見解を示し、次のように指摘した-

「大量処刑や民間人への攻撃といった西側マスメディアが伝える情報のすべては、1枚の写真あるいはビデオによってさえ確認されていない。 プロパガンダ戦争が続いている。常にアレッポでは、それが特に激しかった。しかしシリア軍がこの町で勝利した事は、欧米マスメディアの主張の基盤を足元から崩し、彼らが作り出した民主主義リベラル勢力としてのシリアの穏健派在野勢力のイメージを木っ端みじんに吹き飛ばした。」

アレッポにおけるシリア政府軍に対する情報キャンペーンの枠内で、一部のマスコミそしてソーシャルネットワークの人気ページなどは、パレスチナ・ガザ地区の写真や、2014年2015年といった過去の写真を使い、それらを『平和に暮らす一般市民を迫害するアサド体制の獣のように残酷な軍隊』の行動ぶりを裏付けるアクチュアルな証拠として発表した。」

なお解放されたアレッポの実際の状況について、従軍記者のカメル・サカー氏は、次のようにレポートしている-

「私は、人々をテント村に移動させるための、よく組織された作業を目にした。必要不可欠なあらゆるもの、輸送手段、食料、薬品、負傷者に対する医療援助、それらはすべて提供されている。

多くの住民は、戦闘員が組織した食料の独占について証言した。それによって最も必要な物の値段が20倍にも高騰したという。

こうした事は、アレッポの状況に関する国連や人権団体すべての報告書が嘘であることを意味している。

国際的な人道組織は、アレッポの住民を全く助けていない。助けているのはシリア政府でありシリア軍であり、ロシアの軍人達だ。私自身、町に人道援助物資を運び込み、それを人々に分ける彼らのトラックを目にした。」
https://jp.sputniknews.com/politics/201612153138145/


43. 中川隆[5648] koaQ7Jey 2016年12月24日 09:11:10 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[6087]

 ロシアと中国とが強く結びつく原因を作ったのはバラク・オバマ政権。中国に対する挑発をオバマ政権も続けていたが、それ以上に中国を警戒させたのはウクライナ、リビア、シリアに対するアメリカの侵略行為だ。リビアの場合、中国が関係を強めていたアフリカを植民地化することが目的。

アフリカの自立で中心的な役割を果たしていたのがリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制だ。

そうした政策の一環として、カダフィはドル決済を止め、金貨ディナールをアフリカの基軸通貨にしようとしていた。

 シリアでもリビアと基本的に同じことをアメリカ支配層は行っている。

シリアとリビアで違うことはロシアの対応。シリアではアメリカ/NATOが制空権を握ることを許していない。

 アメリカ軍の情報機関DIAは2012年8月に政府へ提出した報告書の中で、シリアにおける反乱の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団)だと指摘、オバマ政権が政策を変えなければシリア東部にサラフ主義の支配地ができると警告していた。アル・カイダ系武装集団の中心もサラフ主義者やムスリム同胞団であり、その背後にはサウジアラビアなどペルシャ湾岸の産油国が存在する。この報告書が作成された当時のDIA局長がマイケル・フリン中将。その予測はダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実になった。

 退役後の2015年8月、フリン中将はアル・ジャジーラの番組に出演、サラフ主義者の勢力拡大を見通していたのになぜ阻止しなかったのかと詰問する司会者に対し、自分たちの役割は正確な情報を提供することであり、政策を決定はバラク・オバマ大統領が行うのだと答えている。オバマ政権の決定した政策がダーイッシュの勢力を拡大させたというわけだ。

 シリアでの戦闘が進むにつれ、各国の特殊部隊やトルコ軍の将兵だけでなく、チェチェンなどカフカスの周辺や新疆ウイグル自治区などから戦闘員が入り込んでくる。中国にとってもシリア情勢は重要な問題になり、戦闘に関係していった。

 こうした軍事的な理由だけでなく、アメリカ主導で西側がロシアに仕掛けた経済戦争が切っ掛けになってロシアと中国は急速に関係を深めている。東アジア、東南アジアで中国の輸送ルートをアメリカは断ち切ろうと目論んでいるが、それもロシアと中国を接近させる一因になっている。ネオコンはロシアや中国を攻撃しているつもりで、アメリカの足下を崩している。

 こうした状況の中、ロシアに秋波を送り、中国に肘鉄砲を食わせても、この両国を引き裂くことはできないだろう。ロシアの経済分野ではアメリカ支配層に従属している人が少なくないようだが、ロシア全体を動かすほどの力はなくなっているように見える。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201612230000/


44. 中川隆[5689] koaQ7Jey 2016年12月26日 16:07:51 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[6130]

2016.12.26
オバマ大統領は国防授権法の中に言論の自由を破壊する条項を入れ、ファシズム体制を強化して去る


バラク・オバマ大統領が12月23日に署名した2017年国防授権法(NDAA)には言論統制の強化を合法化する条項があり、アメリカはますますファシズム化が進むことになるだろう。アメリカ下院は政府や有力メディアが伝える「正しい報道」に反する「偽報道」を攻撃する手段になる法律を11月30日に可決、12月8日は上院が対偽情報プロパガンダ法を通過させている。ロシアや中国などからの「プロパガンダ」に対抗するアメリカの同盟国を助けることが上院を通過した法案の目的だが、それがNDAAに組み込まれたのだ。

 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカでオバマ政権や有力メディアが宣伝している「偽情報」や「偽報道」とは、自分たちにとって都合の悪い情報を意味しているにすぎない。自分たちが発信してきた「偽情報」や「偽報道」の効果がないことに慌て、言論統制を強化しようとしているにすぎない。

 1992年にネオコンは世界制覇のプロジェクトを作成、その翌年に大統領となったビル・クリントンはそのプロジェクトを始動させない。そこで有力メディアはユーゴスラビアを先制攻撃させるために偽情報を流しはじめ、99年にNATO軍はユーゴスラビアを全面攻撃した。その間、メディアはクリントン大統領をスキャンダルで攻撃している。

 ユーゴスラビアに関する偽報道を広める上で活躍したひとりがニューズデイのボン支局長だったロイ・ガットマン。ボスニアで16歳の女性が3名のセルビア兵にレイプされたと1992年8月に書いているのだが、これは嘘だったことが判明している。この嘘を広めた功績で、後に彼はピューリッツァー賞を受賞した。

 この人物、今年12月にも偽情報を記事にしている。ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を作ったのはシリア政府であり、「アル・カイダ」を操っているのはバシャール・アル・アサドだというのだ。この記事もすぐ嘘だとばれる代物だが、ピューリッツァー賞を信奉する人には効果があるかもしれない。

 ところで、クリントン政権がユーゴスラビアを軍事介入する方向へ舵を切るのは1997年1月のこと。ズビグネフ・ブレジンスキーの教え子で、ファースト・レディだったヒラリー・クリントンと親しいマデリン・オルブライトが国務長官に就任してからだ。

 イラクを先制攻撃する際に言われた大量破壊兵器が嘘だったことは後に発覚、その事実はジョージ・W・ブッシュ政権の閣僚も認めざるをえなくなっている。この時、イギリスのトニー・ブレア政権が侵略を正当化する偽情報の流布に果たした役割も判明している。

 リビアやシリアへの軍事介入を正当化するために宣伝された民衆弾圧も嘘。シリアの場合、アメリカなど西側は当初、シリア系イギリス人のダニー・デイエムが使ってシリア政府の弾圧を宣伝していたが、彼のグループが「シリア軍の攻撃」を演出する様子を移した部分を含む映像がインターネット上に流出、嘘が発覚した。次に化学兵器の使用を西側は主張したが、これも嘘がすぐに発覚する。

 ビル・クリントン政権、ジョージ・W・ブッシュ政権、バラク・オバマ政権、いずれも偽情報を流しながら世界に戦乱を広め、破壊と殺戮で人びとを苦しめてきた。その手先として偽報道を繰り返しているのが西側の有力メディアにほかならない。その嘘が余りにも露骨になって信じる人が減少、そこで言論統制の強化だ。

 第2次世界大戦が終わった直後からアメリカの支配層が組織的な報道コントロールを目論んでいたことは本ブログでも紹介した。いわゆるモッキンバードだ。その中心人物は戦争中から破壊活動を指揮していたウォール街の弁護士でもあるアレン・ダレス、その側近でやはりウォール街の弁護士だったフランク・ウィズナー、ダレスの側近で後にCIA長官になるリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだ。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979)

 日本ではウォーターゲート事件でリチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込んだことから「言論の自由」を象徴するイコンとして崇められているワシントン・ポスト紙だが、情報操作に深く関与していたのだ。

 ウォーターゲート事件の取材で中心的な役割を果たしたカール・バーンシュタイン記者は1977年に同紙を辞め、その直後に「CIAとメディア」というタイトルの記事をローリング・ストーン誌に書いている。それによると、400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)

 1970年代の有力メディアには気骨のある記者や編集者がまだいたが、それでも情報機関にかなり浸食されていた。現在では露骨なプロパガンダ機関にすぎないのだが、それでもイコンとして扱いたがる人がいる。日本のマスコミは駄目だが、アメリカのニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙はすばらしいというわけだ。そうした西側メディア信奉者は国際情勢に目を向けたがらない。結局、日本の支配層を操るアメリカの支配層が描く幻影を受け入れることになる。


 言論統制の強化を後押しする記事をワシントン・ポスト紙が掲載したのは11月24日。政府や有力メディアが伝える「正しい報道」に反する「偽報道」を攻撃する手段になる法律が報道の2日前に下院へ提出され、30日に可決された。彼らはトランプを攻撃するだけでなく、巨大資本による支配システム、つまりファシズム化を実現するための体制を立て直そうとしている。そうした人びとが受け入れる幻影を流しているアメリカの有力メディアの「報道」に反する情報を封印しようというのが今回の法律だ。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201612260000/


45. 中川隆[5763] koaQ7Jey 2016年12月30日 15:10:30 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[6204]
2016.12.30
有力メディアで情報操作できない米国が世界で孤立、オバマ大統領は真珠湾で安倍首相と同盟を宣伝


バラク・オバマ大統領はアメリカを孤立させてホワイトハウスを去ることになった。アジアの東側では属国だったはずのフィリピンが離反してベトナムも後を追い、西側ではアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を傭兵として利用した侵略戦争はシリアで破綻、ネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)を利用したクーデターで実権を握ったウクライナは破綻国家になっている。

 シリア情勢について12月20日にロシア、イラン、そしてトルコがモスクワで話し合っているが、アメリカは相手にされていない。これまでネオコン/シオニストなどアメリカの好戦派は停戦を手駒の態勢立て直しに利用するだけで、真剣に戦乱を終結させようとはしてこなかった。アル・カイダやダーイッシュを危険だと考える将軍たちが統合参謀本部から排除されただけでなく、問題を外交的に解決する姿勢を見せていたジョン・ケリー国務長官はオバマ大統領から無視されていた。ケリーの外交を露骨に妨害していたのがネオコンでヒラリー・クリントンと親しいビクトリア・ヌランド国務次官補だ。

 2014年2月4日の時点で政権転覆後の閣僚人事をめぐってヌランドはジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使と電話で話し合っていたが、その中で彼女はがEUに対して「くそったれ」という言葉を浴びせた。外交を否定する流れの中でのことだ。そのヌランド、そしてヒラリーにズビグネフ・ブレジンスキーの弟子だと言われているオバマ大統領が引っ張られたのは当然かもしれない。

 ウクライナでヌランドと同じようにクーデターを煽っていたネオコンのジョン・マケイン上院議員は2013年5月、シリアへ違法入国して後にダーイッシュのトップとして登場するアブ・バクル・アル-バグダディと会っている。

 その3カ月後、シリアの首都ダマスカス近郊が化学兵器で攻撃され、西側の政府や有力メディアはシリア政府軍が使用したと宣伝、リビアと同じようにNATO軍が軍事介入する口実にしようとした。

 ところが、攻撃の直後にロシアのビタリー・チュルキン国連大使は反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾したと国連で説明、その際に関連する文書や衛星写真が示されたとジャーナリストがフェースブックに書き込んでいる。化学兵器とサウジアラビアを結びつける記事も書かれた。

 すぐに現地を調査したキリスト教の聖職者マザー・アグネス・マリアムはいくつかの疑問を明らかにした。例えば、攻撃のあった午前1時15分から3時頃(現地時間)には寝ている人が多かったはずだが、犠牲者がパジャマを着ていないのはなぜなのか、家で寝ていたなら誰かを特定することは容易なはずであるにもかかわらず明確になっていないのはなぜなのか、家族で寝ていたなら子どもだけが並べられているのは不自然ではないのか、親、特に母親はどこにいるのか、子どもたちの並べ方が不自然ではないか、同じ「遺体」が使い回されているのはなぜか、遺体をどこに埋葬したのか、などだ。(PDF)

 12月になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。また、国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。

 また、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、トルコ政府の責任を追及している。化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでダーイッシュが調合して使ったというのだ。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられていた。

 NATO軍の軍事侵攻が決定的であるかのように「報道」していた西側の有力メディアの宣伝がピークに達したのは9月3日。この日、地中海からシリアへ向かって2発のミサイルが発射されたのだ。このミサイル発射はロシアの早期警戒システムがすぐに探知、その事実が公表されるが、ミサイルは途中で海へ落下してしまう。

 シリア政府軍の残虐行為を口実にして本格的な軍事介入を目論んだアメリカ/NATOだが、これは失敗に終わった。その翌年、売り出してくるのがダーイッシュだ。2014年1月にファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にモスルを制圧したのだが、その際、トヨタ製小型トラック「ハイラックス」の新車を連ねた「パレード」を行い、その様子が世界に伝えられた。当然、アメリカの軍や情報機関は偵察衛星や無人機で監視、通信傍受や人間による情報活動などで情報を集め、武装集団の動きを知っていたはずだが、黙認している。

 西側の有力メディアを使って偽情報を流し、幻影を事実だと人びとに信じ込ませてから軍事侵略して破壊と殺戮を繰り広げるというパターンはシリアで挫折した。そのシナリオ作成にはアメリカの広告会社が関与しているのだろう。

 そうした作戦を破綻させる上で中心的な役割を果たしたのがロシア。そのロシアを攻撃するため、アメリカのオバマ政権や有力メディアは「偽報道」だとするキャンペーンを展開中だ。「リベラル」だとされ、「言論の自由」を象徴する存在だと日本では見なされているニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙も有力メディアに含まれている。

 日本の大手マスコミが支配層の宣伝機関にすぎず、信頼できないことは少なからぬ日本人が知るようになった。人びとの心を操る仕組みとして機能しなくなりつつあると言えるだろう。

 そうした中、日本のマスコミを罵倒した上で、ニューヨーク・タイムズ紙などアメリカの有力メディアを持ち上げる人たちがいる。そうしたアメリカの有力メディアが信頼されなくなっているのだが、日本ではそうした認識がまだ薄いようで、日本のマスコミに替わる情報操作の手段として利用されているようだ。

 しかし、アメリカでは有力メディアと手を組んでロシアを攻撃しているオバマ政権に対し、選挙にロシアが介入したとする証拠を見せろという要求が強まっているようだ。第2次世界大戦直後にイタリアで行われた選挙から始まり、アメリカ政府は外国の選挙へ頻繁に介入してきたわけで、オバマ大統領たちの主張は滑稽なのだが、自分たちが行ってきたことを相手が行っていると宣伝するのもアメリカが頻繁に使う手口だ。

 アメリカが孤立してきた一因は、こうした事実が広く知られるようになり、人びとが辟易していることにあるだろう。オバマ大統領は自分たちが孤立していないことをアピールする必要がある。安倍晋三首相はハワイの真珠湾を訪れ、「日米同盟」を宣伝したというが、それだけオバマ大統領が追い詰められているということでもあるのだろう。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201612300000/


46. 中川隆[5791] koaQ7Jey 2017年1月01日 06:41:50 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[6233]

2017.01.01
ロシアとトルコが主導してシリアの停戦が実現、その間にロシア大使が殺され、シリアで貯水池に毒

ロシアとトルコは12月29日にシリアにおける停戦で合意した。イランも合意文書の作成に参加、シリア政府や反シリア政府の7組織(戦闘員総数約6万人)も署名、国連もこの合意を認めたようだ。今月に入り、カタールはシリアへの侵略戦争から離脱、平和交渉にはエジプトも加わると見られている。

 しかし、アル・カイダ系武装集団(AQI、アル・ヌスラ、ファテー・アル・シャム/レバント征服戦線と名称を変更したが、その実態は同じ)やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)は参加していないようだ。アメリカ、フランス、イギリス、サウジアラビアも停戦には参加していないが、そうした勢力が雇ってきたのがアル・カイダ系武装集団やダーイッシュである。

 停戦の話し合いが進んでいた12月19日にアンカラでトルコ駐在のアンドレイ・カルロフ露大使が射殺され、28日と29日にはダマスカスのロシア大使館が攻撃された。話し合いを妨害するつもりだったのだろうが、成功していない。その間、23日にオバマ大統領はシリアの「反対者」への武器供給を認める法律に署名した。アル・カイダ系武装集団やダーイッシュに対する支援を次期政権に押しつけるということだろう。

 ロシア系のメディアRTによると、ダマスカスに給水している貯水池にディーゼル燃料や毒が混ぜられ、24日から使用できない状態になっているという。一方、アレッポではダーイッシュが水を止めた。この地域ではダーイッシュやアル・カイダ系武装集団を支援するためにアメリカを含むNATO諸国やイスラエルの情報機関員が活動してきたと言われている。シリアのバシャール・アル・アサド体制を倒すために侵略戦争を始めた国々の一部は離脱したが、残った勢力は形振り構わず、和平への道を破壊しようとしているようだ。

 これまで戦争を煽ってきたアメリカなど西側の有力メディアにとっても状況は厳しい。シリアに平和が訪れて調査が進めば、自分たちがアメリカ政府の宣伝を垂れ流してきたことも発覚してしまう。「本当のこと」を伝えず、「権力者の代弁」を繰り返すそうしたメディアを無批判に信じてきた、あるいは信じた振りをしてきた人びとも責任を免れない。

 自戒を込めて書くのだが、多くの人は自分が望む心地よい情報を信じたがる。目先の個人的な利益を考えれば、どのような体制であろうと体制派である方が得であり、体制派であることを正当化する情報を欲しがることになる。有力メディアの重要な仕事は、そうした情報を流すことにある。

 ところで、アメリカが中東に破壊と殺戮を広めたのは2003年にイラクを先制攻撃してから。その際、大量破壊兵器が口実に使われ、今にもアメリカが核攻撃されるかのような話が流された。当時からそうした情報が嘘だと指摘されていたが、今では決定的。嘘を発信していた人びとも嘘を認めている。が、アメリカ人の53%は発見されなかった大量破壊兵器がイラクにあったと今でも信じているらしい。有力メディアの偽報道はバカにできないようだ。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201701010000/



47. 中川隆[5844] koaQ7Jey 2017年1月03日 07:36:02 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[6286]

1999年にアメリカのビル・クリントン政権はNATOを使ってユーゴスラビアを先制攻撃し、2001年9月11日の世界貿易センターや国防総省本部庁舎(ペンタゴン)に対する攻撃を利用してジョージ・W・ブッシュ政権はアフガニスタンやイラクを先制攻撃した。いずれも西側の有力メディアに偽情報を広めさせての侵略だった。

クリントン大統領は軍事介入に消極的。そのクリントンを攻撃するキャンペーンをネオコンや情報機関と関係の深い富豪は展開した。

ホワイトハウスでの影響力が弱まったネオコンは「民間人」としてイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対して強硬策を求める。

1996年にリチャード・パールを中心とするネオコンのグループは1992年2月に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリン(DPGの草稿)をベースとする提言「決別」をネタニヤフ首相に対して送っている。

その中にはイラクのサダム・フセイン大統領排除も含まれていた。

この提言が送られた一因は、ネオコンがネタニヤフの政策に不満を抱いていたからだろう。

 そして1997年1月に国務長官がウォーレン・クリストファーからマデリーン・オルブライトへ交代した時から政権が好戦的になる。ちなみに、オルブライトはズビグネフ・ブレジンスキーの教え子で、その当時からヒラリー・クリントンと親しい。国務長官の交代はヒラリーが夫であるビルに求めたと言われている。そして1999年のユーゴスラビア攻撃につながった。

 ブッシュ・ジュニアの後、アメリカ大統領に就任したバラク・オバマはアメリカ軍の直接的な軍事介入は行わなかったが、2011年春からアル・カイダ系武装集団を使った侵略を始める。彼の師もオルブライトと同じようにブレジンスキー。そのブレジンスキーがジミー・カーター大統領の国家安全保障担当補佐官として1970年代の終盤に始めた手口をまねたとも言えそうだ。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201701030000/


48. 中川隆[6009] koaQ7Jey 2017年1月12日 09:38:27 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[6453]

 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後、アメリカでは国内のファシズム化が進み、国外では侵略戦争を始めた。その攻撃から10日後、ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官はペンタゴンで、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺がイラク、シリア、イラン、レバノン、リビア、ソマリア、スーダンを攻撃するプランを立てていると聞いたと語っている。こうした国々は9/11と無関係だ。そしてイラクが攻撃される。

 2003年3月にアメリカ主導の連合軍がイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒しただけでなく、社会基盤を破壊し、100万人とも推計されている人びとを虐殺している。例えば、2006年10月に出されたイギリスのランセット誌によると、2003年3月から06年7月までの間に65万4965名以上のイラク人が死亡(Gilbert Burnham, Riyadh Lafta, Shannaon Doocy, Les Roberts, “Mortality after the 2003 invasion of Iraq”, The Lancet, October 11, 2006)、またイギリスのORB(オピニオン・リサーチ・ビジネス)は2007年夏までに94万6000名から112万人、NGOのジャスト・フォーリン・ポリシーは133万9000人余りが殺されたとしている。

 この侵略戦争は2002年に始められる予定だったと言われている。当時の統合参謀本部で反対意見が多く、約1年間遅くなったという。大量破壊兵器の話が嘘だということは軍の内部でも常識、つまり戦争に大義はなく、作戦も無謀だったからだ。

 そうした状況の中、戦争を始めるために重要な役割を果たしたのがイギリスのトニー・ブレア政権。2002年9月に「イラク大量破壊兵器、イギリス政府の評価」というタイトルの報告書、いわゆる「9月文書」を作成したのだ。これはメディアにリークされ、サン紙は「破滅から45分のイギリス人」というセンセーショナルなタイトルの記事を掲載している。

 コリン・パウエル国務長官が絶賛したこの報告書は大学院生の論文を無断引用した代物だとされているが、別に執筆者がいる可能性もある。その文書をイギリス政府はイラクの脅威を強調するため改竄したことも明らかになった。

 ブレア政権はイラクが45分で大量破壊兵器を使用できると主張していたが、開戦から2カ月後にこの主張をBBCのアンドリュー・ギリガンがラジオ番組で否定する。さらに、彼はサンデー・オン・メール紙でアラステアー・キャンベル首席補佐官が情報機関の反対を押し切って「45分話」を挿入したとも主張している。2004年10月に「45分話」が嘘だということを外務大臣のジャック・ストローも認めた。

 トニー・ブレア英首相は2002年3月の時点でアメリカによるイラク侵攻に参加することを決めていたことが今ではわかっている。パウエルが2002年3月28日に書いたメモの中で、ブレア首相はアメリカの軍事行動に加わると書かれていたのだ。このメモが書かれた1週間後、米英両国の首脳は会談している。イギリスはアメリカの好戦派にとって便利な同盟国だ。

 9/11の2年前、アメリカはNATOを使い、ユーゴスラビアを先制攻撃して破壊した。ユーゴスラビアに関しては1990年代の前半から攻撃を正当化するために偽報道が繰り返されていた。その時のキーワードは「人道」だ。

 ユーゴスラビアが攻撃された1999年、アメリカ陸軍の第4心理作戦群の隊員が2週間ほどCNN本部で活動している。アメリカ軍のトーマス・コリンズ少佐(当時)によると、派遣された隊員は放送局のスタッフと同じように働き、ニュースにも携わったという。(Trouw, 21 February 2000)この時からCNNは「戦意高揚」のための宣伝機関としての色彩を強めていく。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201701120000/


49. 中川隆[6267] koaQ7Jey 2017年1月23日 20:29:02 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[6719]

2017.01.23
TBSがシリア大統領をインタビュー、日本にも主権国家へ内政干渉する権利はないと釘を刺される


TBSがシリアのバシャール・アル・アサド大統領にインタビューしたようだ。シリアでは今でも戦闘が続いているが、勿論、これを「内戦」と呼ぶことはできない。この戦乱に「大統領退陣を求める反体制派のデモ」など事実上、無関係である。本ブログでも再三にわたって指摘しているように、ネオコンのポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)がイラク、イラン、そしてシリアを殲滅すると口にしたのは1991年、26年前のことだ。

 サダム・フセイン体制を倒すため、アメリカがイラクを先制攻撃したのは2003年3月。2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後の好戦的な雰囲気を利用、大量破壊兵器という偽情報を広めながらのイラク侵略だった。

 2007年になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュはニューヨーカー誌にアメリカ、サウジアラビア、イスラエルが中東で秘密工作を始めていると書いている。シリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラがターゲットで、その手先はサラフ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団。アル・カイダ系武装集団の主力でもあるが、「アル・カイダ」が9/11を実行したとジョージ・W・ブッシュ政権は宣伝していた。

 そして2011年春にリビアとシリアで戦乱が始まる。ハーシュが書いたように、その黒幕はアメリカ、サウジアラビア、イスラエルで、そこにフランス、イギリス、トルコ、カタールなどが加わった。

 NATOとアル・カイダ系武装集団が連携していることはリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制が倒される過程で明確になった。2011年10月にアメリカなどがリビアの「レジーム・チェンジ」に成功した後、アメリカが武器/兵器と戦闘員をシリアへ移動させたことも明らかになっている。カダフィ体制が倒された直後、反カダフィ勢力の拠点だったベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられ、その実態を少なからぬ人が理解した。(YouTube、デイリー・メイル紙)

 この段階で9/11は「アル・カイダによるアメリカに対する攻撃」というストーリーは破綻しているのだが、勿論、西側の政府、有力メディア、リベラル派などはそうした事実を認めたがらない。

 リビアでカダフィ体制が倒されると、戦闘員は武器/兵器と一緒にトルコ経由でシリアへ入る。その拠点になったのはベンガジにあったCIAの施設で、アメリカの国務省は黙認していた。その際、マークを消したNATOの輸送機が武器をリビアからトルコの基地まで運んだとも伝えられている。

 ベンガジにはアメリカの領事館があるのだが、そこが2012年9月11日に襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使も殺された。領事館が襲撃される前日、大使は武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っていたとされている。ということは、スティーブンスの上司にあたるクリントン長官も承知していた可能性が高い。2012年11月にCIA長官を辞めたデイビッド・ペトレイアスはヒラリー・クリントンと緊密な関係にある人物で、このルートからもシリアでの工作を知らされていたはずだ。

 アル・カイダ系武装集団から派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)はアメリカが監督する中で編成されたことをアサド大統領はTBSのインタビューで指摘し、デリゾールを攻撃しているダーイッシュをアメリカが止めようとしていないと語った。

 デリゾールでは昨年9月17日、攻勢の準備を進めていたシリア政府軍をアメリカ軍が主導する連合軍は2機のF-16戦闘機と2機のA-10対地攻撃機で攻撃、90名とも100名以上とも言われるの政府軍の兵士を殺し、28日には2つの橋を、30日にも別の橋2つをそれぞれ爆撃して破壊、政府軍の進撃を止めようとした。17日のケースでは、空爆の7分後にダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始していることから、アメリカ軍はダーイッシュと連携していたと見られている。

 TBS側は西側の政府や有力メディアが繰り返してきた根拠のない話をシリア大統領にぶつけていただけで、中身のあるインタビューだったようには思えない。アサド大統領からは日本が侵略勢力側だと指摘され、主権国家であるシリアの内政に介入する権利はないと釘を刺されている。なお、シリアで消息を絶った安田純平については、拘束したアル・ヌスラ(アル・カイダ系武装集団)はトルコ政府の指揮下にあり、トルコに尋ねるべきだと答えている。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201701230000/


50. 中川隆[6510] koaQ7Jey 2017年1月31日 16:58:43 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[6964]

 キッシンジャーはネルソン・ロックフェラーと親しいことで知られているが、デイビッド・ロックフェラーと親しいズビグネフ・ブレジンスキーもアメリカが地球規模の帝国ではなくなったと認めるようになる。アメリカを唯一の超大国と位置づけ、潜在的なライバルを単独で先制攻撃するとした1992年2月のDPG(通称ウォルフォウィッツ・ドクトリン)を軌道修正しようとしているように見える。

 このドクトリンは名前の通り、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)が中心になって作成され、その後もネオコンの基本戦略になってきた。このウォルフォウィッツが1991年の段階で、シリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると口にしたという。欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の最高司令官だったウェズリー・クラークがそのように話している。

 クラークによると、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたてから10日後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では攻撃予定国のリストが作成され、イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランが載っていたという。

 2003年3月にジョージ・W・ブッシュ大統領は国防総省内の反対意見を押し切り、約1年遅れでイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒した。その後も軍事作戦は続き、破壊と殺戮は今でも続いている。

 そして2007年、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュはニューヨーカー誌で、アメリカ(ネオコン)、イスラエル、サウジアラビアは手を組み、シリアやイランをターゲットにした秘密工作を開始、ヒズボラが拠点にしているレバノンを攻撃すると書いた。イランにもアメリカの特殊部隊JSOCが潜入して活動中だとしている。

 そうした秘密工作は「スンニ派過激派」つまりアル・カイダ系武装集団の勢力拡大につながるとハーシュは指摘するが、サウジアラビアなどは「スンニ派過激派」をイランよりましだとしている。少なくともその後にネオコンも同じ考え方をするようになった。

 ネオコンは1980年代からイラクのフセイン体制を倒すべきだと主張していたが、それはヨルダン、イラク、トルコの親イスラエル国帯を築いてイランとシリアを分断、両国を倒す、あるいは弱体化するためだった。ジョージ・H・W・ブッシュなど石油資本に近いグループはフセイン体制をペルシャ湾岸の産油国を守る防波堤と位置づけていたので、ロナルド・レーガン大統領の時代にはネオコンと対立している。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201701310000/


51. 中川隆[6662] koaQ7Jey 2017年2月12日 10:00:57 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[7122]

2017.02.12
ネオコンのエイブラムズを国務副長官にする話は消えたようだが、トランプの娘のラインは残る


エリオット・エイブラムズを国務副長官にするという話はドナルド・トランプ大統領が拒否したようだ。前にも書いたようにエイブラムズはネオコンの中心グループに含まれている人物で、イラン・コントラ事件(イランへの武器密輸とニカラグアの反政府ゲリラに対する違法な支援)にも連座している。

 とりあえずネオコンの影響力がこれ以上強まることは避けられたが、影響を受けていないわけではない。トランプの娘、イバンカが結婚したジャレド・クシュナーはニューヨーク・オブザーバー紙を発行しているオブザーバー・メディアの創業者で、現在は大統領の顧問を務めている。ジャレドの父親であるチャールズもトランプやジャレドと同じ不動産開発業者で、現在は大統領の上級顧問だ。チャールズの両親はナチスによるユダヤ人迫害を経験しているとも言われている。こうした背景があるため、クシュナー親子は親イスラエルで、ネオコンに近いとも考えられる。

 ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の出現と勢力拡大をDIAが2012年の時点でバラク・オバマ政権に警告していたことは本ブログで紹介してきたが、その当時のDIA局長、マイケル・フリン中将は昨年、選挙キャンペーン中に「ラディカル・イスラムとその同盟者」との戦いをテーマにした本を出しているのだが、問題は共著者のマイケル・リディーン。この人物はイスラエルの情報機関と緊密な関係にあると言われ、1970年代の半ばにイタリアのイル・ジョルナレ・ヌオボ紙でジャーナリストとして働いていた際には「アカの脅威」を盛んに宣伝していた。

 当時、リディーンと親しくしていたイタリアの情報機関SISMIのフランチェスコ・パチエンザによると、リディーンもSISMIのエージェント。1980年のアメリカ大統領選挙ではジミー・カーターの再選を阻止するため、盛んにスキャンダルを流していた。パチエンザは非公然結社P2と結びつき、グラディオと呼ばれるNATOの秘密部隊でも活動していた。(Edward S. Herman & Noam Chomsky, "Manufacturing Consent," Pantheon, 1988)

 トランプ政権内でクシュナー親子を含む人びとはイランを敵だとしている。テロリズムの黒幕だというのだが、フリンはその黒幕がサウジアラビアだということを熟知しているはず。アル・カイダ系武装勢力やダーイッシュのような存在を本気で潰すつもりなら、サウジアラビアを相手にしなければならないが、トランプを支える柱のひとつで石油産業もそれは受け入れられないだろう。

 イランを潰すとポール・ウォルフォウィッツは1991年の時点で口にしていた。その当時、国防次官だったウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを5年から10年で殲滅すると言っていたのだ。

 その年の1月16日にアメリカが主導する連合軍はイラクへ軍事侵攻、2月末に停戦するのだが、その際にサダム・フセインをジョージ・H・W・ブッシュ政権は排除しない。それが不満でウォルフォウィッツはそうした発言をしたようだが、その際、彼はアメリカが何をしてもソ連は動かないと信じることになる。

 ソ連消滅後、ウォルフォウィッツを含むネオコンはロシアに対して同じ見方をするようになる。「唯一の超大国」になったアメリカが軍事侵略してもロシアは傍観すると信じたのだ。それだけに、2015年9月末にロシア軍がシリアで空爆を始めたことがショックだっただろう。

 そうした思い込みに基づき、1992年2月には国防総省のDPG草案として世界制覇計画を作成した。ライバルだったソ連が消滅した後、残された雑魚を整理し、潜在的なライバルを潰すことを決めたのだ。これがいわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンである。

 2001年9月11日の攻撃を利用し、その攻撃とは無関係のイラクをジョージ・W・ブッシュ政権は先制攻撃、今度はフセインを排除した。当初、2002年には攻撃したかったようだが、統合参謀本部の反対で約1年間遅れたと言われている。

 イラク攻撃の口実に使われたのは「大量破壊兵器」。アメリカをはじめとする西側の有力メディアは攻撃を後押しする報道を続けたが、中でもニューヨーク・タイムズ紙のジュディス・ミラーは有名。偽報道を続け、イラク国土を破壊、約100万人とも言われるイラク人を殺す道を整備したのだ。

 2005年にミラーはニューヨーク・タイムズ紙を辞めてからFoxニューズで働き、政策研究マンハッタン研究所なるシンクタンクの特別研究員になるが、この研究所の共同創設者のひとりはウィリアム・ケイシー。1981年1月から87年1月にかけて、ロナルド・レーガン政権でCIA長官を務めた人物だ。

 その後、ミラーはニュマックスなるメディアで働くようになる。このメディアを創設したのはクリストファー・ルディーで、資金を提供したグループにはケイシーのほか、メロン財閥の中心的な存在で情報機関と密接な関係にあり、ビル・クリントン大統領を攻撃するキャンペーンのスポンサーでもあったリチャード・メロン・スケイフも含まれていた。ルディーはスケイフの下で働いていたことがある。

 ネオコンのネットワークは政府内だけでなく、議会、有力メディア、あるいはハリウッドにも張り巡らされ、その背後では巨大金融資本や戦争ビジネスが蠢いている。ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺されて以降、この仕組みには向かった大統領はいない。

 コンドリーサ・ライス元国務長官はFOXニュースのインタビューで、控えめで穏やかに話すアメリカの言うことを聞く人はいないと語ったが、世界にはアメリカを快く思っていない人は少なくないということだ。各国の首脳たちはアメリカのカネに目が眩んでいるのか、暴力を恐れている。そうした中、公然とアメリカ支配層をロシアのウラジミル・プーチンは批判、ロシア軍の戦闘能力が高いことも見せつけた。アメリカ国内からプーチンと手を組もうと考える人が出てきても不思議ではない。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201702110001/


52. 中川隆[6918] koaQ7Jey 2017年3月02日 19:17:24 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[7380]
2017.03.02
世界制覇を今でも目指す米国の勢力はウクライナで攻勢を強め、シリアでの巻き返し図る(その1)


ロシアのビタリー・チュルキン国連大使が急死して8日後の2月28日、国際連合ではシリアに対する制裁を強化するように求める決議がロシアと中国の拒否権で阻止された。勿論、大使の死でびびるような2カ国ではない。この決議はアメリカ、イギリス、フランスが提出したもので、これらの国々はOPCW-UNの報告書を根拠に、2014年と15年にシリア政府軍が塩素を使用したと主張している。

 しかし、この報告書が示している根拠、証拠は信頼度の低いもの。その根拠薄弱な話を西側支配層の配下にある有力メディアがその中から都合の良い部分を都合良く解釈し、大声で叫んでいる。つまり、いつものパターンだ。

 シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すためにアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)をシリアへ侵入させ、破壊と殺戮を繰り広げてきた国はアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタール、イスラエルなど。今回、決議を提出した3カ国も含まれている。

 1991年にポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)はシリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると口にしたと欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の元最高司令官、ウェズリー・クラークは語っているが、その中で最初に破壊されたのはイラク。大量破壊兵器という偽情報を有力メディアに広めさせ、2003年3月に配下の国々を従えて軍事侵略したのである。

 シリアでの戦闘は2011年3月に始まっている。リビアで似たことが始まった翌月のことだ。両国でも侵略勢力は偽情報の流布に力を入れてきた。そうした偽情報を発信していたひとつが2006年にイギリスで設立された「SOHR(シリア人権監視所)」。そこから出てくる話を西側のメディアや「人権擁護団体」は垂れ流してきた。

 SOHRは設立当時からCIAやイギリスの情報機関MI6が背後にいると指摘されていた。アメリカの反民主主義的な情報活動を内部告発したエドワード・スノーデンが所属していたブーズ・アレン・ハミルトン、プロパガンダ機関のラジオ・リバティが存在しているとも言われている。

 内部告発を支援しているWikiLeaksが公表した文書によると、SOHRが創設された頃からアメリカ国務省の「中東共同構想」はロサンゼルスを拠点とするNPOの「民主主義会議」を通じてシリアの反政府派へ資金を提供している。2005年から10年にかけて1200万ドルに達したようだ。

 こうした工作が始まった直後、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは2007年3月5日付けニューヨーカー誌で、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの「三国同盟」がシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始した書き、その中心にはリチャード・チェイニー米副大統領、ネオコン/シオニストのエリオット・エイブラムズ国家安全保障問題担当次席補佐官、ザルメイ・ハリルザド、そしてバンダル・ビン・スルタンがいると書いている。

 ハーシュの記事に登場するバリ・ナスルはサウジアラビアについて「相当な金融資産があり、ムスリム同胞団やサラフ主義者と深い関係がある」としたうえで、「サウジは最悪のイスラム過激派を動員することができた。一旦、その箱を開けて彼らを外へ出したなら、2度と戻すことはできない。」と語っている。

 このナスルはジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院のディーンで、CFR(外交問題評議会)の終身メンバー、つまりアメリカ支配層の一員だ。そのナスルもムスリム同胞団やサラフ主義者、つまりアル・カイダ系武装集団を使う危険性を警告していた。

 2011年10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制は倒され、カダフィ自身は惨殺された。NATOの航空兵力とアル・カイダ系のLIFGの地上部隊が連携しての攻撃だった。政権が崩壊した直後にベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられたている。その映像はYouTubeにアップロードされ、デイリー・メイル紙も伝えていた。リビアでの任務が終わったアル・カイダ系武装集団の戦闘員は武器と一緒にシリアへ移動していく。

 その後のシリア情勢に関するホワイトハウス向けの報告書をアメリカ軍の情報機関DIAは2012年8月に作成している。その中で反シリア政府軍の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIであり、そうした勢力を西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているしていた。バラク・オバマ政権が主張するところの「穏健派」は事実上、存在しないとしているわけだ。

 また、オバマ政権が政策を変更しなかったならば、シリアの東部(ハサカやデリゾール)にはサラフ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告、それはダーイッシュという形で現実のものになった。この報告書が書かれた当時のDIA局長がトランプ政権で安全保障担当補佐官に就任する予定のマイケル・フリン中将だ。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201703010000/


53. 中川隆[6938] koaQ7Jey 2017年3月03日 20:09:20 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[7400]
2017.03.03
世界制覇を今でも目指す米国の勢力はウクライナで攻勢を強め、シリアでの巻き返し図る(その2)


DIAの報告書が作成される3カ月前、2012年5月にシリア北部ホムスで住民が虐殺され、西側の政府やメディアは政府軍が実行したと宣伝し始めるのだが、その話は矛盾点が多く、すぐに嘘だとばれてしまう。

 現地を調査した東方カトリックの修道院長は虐殺を実行したのは反政府軍のサラフ主義者や外国人傭兵だと報告、その内容はローマ教皇庁の通信社が伝えた。ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙も、キリスト教徒やスンニ派の国会議員の家族が犠牲になっていると伝えている。

 その修道院長は、「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」と語っていた。

 この当時、西側の有力メディアが盛んに登場させていた情報源のひとりがシリア系イギリス人のダニー・デイエムなる人物。シリア政府の弾圧を訴え、外国勢力の介入を求める発言を続けていた。

 ところが、しばらくするとダニー・デイエムのグループが「シリア軍の攻撃」を演出する様子を移した部分を含む映像がインターネット上に流出してしまう。彼を使っていたメディアは反省するかと思いきや、そんなことを気にする様子は見られず、堂々とプロパガンダを続けている。つまり確信犯だ。

 デイエムの正体がばれ、ホムスでの虐殺を政府軍に押しつけることに失敗した侵略勢力は政府軍が化学兵器の使用したという宣伝を開始する。2013年3月にシリア政府は化学兵器を反政府軍が使ったと発表、それに対して反政府軍も政府軍が実行した主張する。

 これについてイスラエルのハーレツ紙は攻撃されたのがシリア政府軍の検問所であり、死亡したのはシリア軍の兵士だということから反政府軍が使ったと推測、国連独立調査委員会メンバーのカーラ・デル・ポンテも反政府軍が化学兵器を使用した疑いは濃厚だと発言した。

 その5カ月後、つまり2013年8月にダマスカスの近くで化学兵器が使われ、西側の政府や有力メディアはシリア政府が実行したと叫びはじめ、シリアに対する軍事侵攻を正当化しようと宣伝をはじめる。

 それに対し、攻撃の直後にロシアのチュルキン国連大使は反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾したと国連で説明、その際に関連する文書や衛星写真が示されたとジャーナリストがフェースブックに書き込んでいる。

 それだけでなく、メディアも化学兵器とサウジアラビアを結びつける記事を掲載、すぐに現地を調査したキリスト教の聖職者マザー・アグネス・マリアムはいくつかの疑問を明らかにしている。

 例えば、攻撃のあった午前1時15分から3時頃(現地時間)には寝ている人が多かったはずだが、犠牲者がパジャマを着ていないのはなぜか、家で寝ていたなら誰かを特定することは容易なはずであるにもかかわらず明確になっていないのはなぜか、家族で寝ていたなら子どもだけが並べられているのは不自然ではないのか、親、特に母親はどこにいるのか、子どもたちの並べ方が不自然ではないか、同じ「遺体」が使い回されているのはなぜか、遺体をどこに埋葬したのかといった疑問を発している。(PDF)

 12月になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。また、国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。

 また、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、トルコ政府の責任を追及している。化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでダーイッシュが調合して使ったというのだ。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられている。

 その後、アメリカなどシリアのアサド政権を転覆させて傀儡体制を樹立させようしている国々は「化学兵器」に執着しているようだ。新たな侵略のシナリオを思いつかないのだろう。

 2015年9月30日にシリア政府の要請に基づいてロシア軍がシリアで空爆を始めると戦況は大きく変化、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュは崩壊寸前だと言われている。アサド体制の打倒を目的にしていたアメリカ軍などとは違い、ロシア軍は実際にそうした武装勢力を攻撃したからだ。司令部、戦闘部隊、兵器庫だけでなく兵站線を叩き、盗掘した石油を輸送するタンカーも破壊してきた。シリア侵略を目論んだ勢力は何が何でも戦争を継続したいはずだ。平和が訪れたなら、自分たちの行為を隠しきれなくなる。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201703030000/


54. 中川隆[7072] koaQ7Jey 2017年3月12日 13:47:53 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[7538]
2017.03.12
14年前の3月に米軍は偽情報を口実にしてイラクを先制攻撃、中東/北アフリカを破壊と殺戮の地に

2003年、今から14年前の3月20日にアメリカ軍はイギリス軍などを引き連れてイラクを先制攻撃、中東から北アフリカにかけての地域を戦乱で破壊と殺戮の地にした。この地域に存在する自立した国を破壊しようという人びとは現在でも侵略戦争を続けている。

 2006年10月にイギリスの医学雑誌「ランセット」はジョンズ・ホプキンズ大学とアル・ムスタンシリヤ大学の共同研究による調査報告を掲載、それによると、2003年3月から2006年7月までの間に65万4965名以上のイラク人が死亡、そのうち60万1027名は暴力行為(要するに戦闘)が原因だという。イギリスのORB(オピニオン・リサーチ・ビジネス)は2007年夏までに約100万人が殺されたという調査結果を公表している。

 イラク攻撃を推進していたのはネオコンと呼ばれる親イスラエル派で、その中心グループに属すポール・ウォルフォウィッツは1991年にイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしている。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官が2007年に語っている。(3月、10月)1991年当時、ウォルフォウィッツは国防次官を務めていた。

 1991年12月にはソ連が消滅、ネオコンたちはアメリカが「唯一の超大国」になったと思い込み、目前に「パクスアメリカーナ」の時代があると認識、自立した「雑魚」を潰しにかかる。その基本プランが1992年2月に国防総省で作成されたDPGの草案。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。

 ソ連の消滅で世界は平和になると思った人びとは冷戦の構造を見誤っていたということである。武力による世界支配というアメリカ支配層の野望をソ連の存在が押さえ込んでいたのだ。実際、アメリカ支配層がソ連に圧勝できると考えたとき、全面核戦争の危機が高まった。そうした時期のひとつが1960年代の前半だ。

 アメリカの統合参謀本部(JCS)が1949年の段階に作成された研究報告で、ソ連の70都市へ133発の原爆を落とすということが書かれている。1954年にSAC(戦略空軍総司令部)が作成した計画では、1954年にSAC(戦略空軍総司令部)は600から750発の核爆弾をソ連に投下、118都市に住む住民の80%、つまり約6000万人を殺すことになっている。そして1957年初頭には、300発の核爆弾でソ連の100都市を破壊するという「ドロップショット作戦」が作成された。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012)

 テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授によると、1960年10月から62年9月までJCS議長を務めたリーマン・レムニッツァーやSAC司令官だったカーティス・ルメイを含む好戦派は1963年の終わりに奇襲攻撃を実行する予定だったという。その頃になればアメリカはICBMを配備でき、しかもソ連は配備が間に合わないと見ていたのだ。そのために偽旗作戦のノースウッズも作成されたが、この目論見はジョン・F・ケネディ大統領によって阻止された。

 ウォルフォウィッツ・ドクトリンは2001年9月11日の攻撃で一気に動き出す。ネオコンの基本戦略はシリアとイランを分断することにあり、そのためにイラクのサダム・フセインを排除して親イスラエルの傀儡国家を成立させようとした。その口実に使われたのが大量破壊兵器。

 実際はそうした兵器をイラクが保有、あるいは開発している事実はなかったのだが、西側の政府や有力メディアは偽情報を盛んに流す。そうした中でもニューヨーク・タイムズ紙のジュディス・ミラー記者は目立った。その偽報道が露見すると彼女は同紙を2005年に辞めるが、07年には政策研究マンハッタン研究所へ迎え入れられ、08年にはFOXニューズに入る。2010年にはケイシーの家族やリチャード・メロン・スケイフという富豪が支援していたニューズマックスへ移籍した。また、偽報道の功績からか、CFR(外交問題評議会)のメンバーにもなっている。つまり、支配層から仲間として迎え入れられている。

 CFRが発行している雑誌、フォーリン・アフェアーの2006年3/4月号にアメリカはロシアや中国との核戦争で圧勝するとする論文が掲載された。これを書いたのはキール・リーバーとダリル・プレスで、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できるとしている。アメリカの好戦派は1960年代と似た心理になっていたと言えるだろう。

 これに対し、ロシアはシリアで自分たちの軍事能力をアメリカに見せつけた。通常兵器での戦闘ならアメリカはロシアに負けると考える人は少なくない。歴史的に見てアメリカ軍が勝ったのは先住のインディアン、すでに国力が衰退していたラテン・アメリカのスペイン軍、そして日本くらいだろう。核兵器を手にして自分が世界の支配者になったと思ったようだが、ベトナムでもイラクでも勝てていない。シリアではアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)などワッハーブ派/サラフ主義者を主体とする集団、ウクライナではネオ・ナチを使って侵略戦争を繰り広げている。現在、ロシアや中国を軍事的に挑発しているが、通常兵器では勝てない以上、アメリカは核兵器に頼らざるをえない。2003年の先制攻撃によって、私たちはそうした世界に突入してしまった。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201703120000/


55. 中川隆[7142] koaQ7Jey 2017年3月17日 18:56:37 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[7613]
2017.03.17
逃げ場を失ったダーイッシュの指揮官たちを米軍がヘリコプターで救出しているとイラン系メディア

 アメリカ、サウジアラビア、イスラエルを中心とする国々がリビアやシリアで始めた侵略戦争の傭兵グループ、つまりアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)は崩壊寸前にあるようだ。西側の有力メディア、「人権擁護団体」、あるいは国連などは侵略軍を攻撃しているシリア政府軍やロシア軍などを激しく批判しているが、戦況を変えることは難しいだろう。

 そうした中、アメリカ軍はイラクのモスルやシリアのデリゾールでダーイッシュの指揮官たちをヘリコプターで救出しているとイランのメディアは伝えている。ここにきて侵略軍は逃げ場を失っているので、そうせざるをえないのだろう。

 アル・カイダについてロビン・クック元英外相はCIAから軍事訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルだと説明している。アル・カイダはアラビア語で「ベース」を意味し、「データベース」の訳語としても使われているようだ。なお、クックはこの指摘をした翌月、保養先のスコットランドで心臓発作に襲われて死亡している。享年59歳だった。

 こうした訓練は1970年代の終盤にジミー・カーター政権の大統領補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーが考えた戦略に基づいて始められた。アフガニスタンの武装集団とCIAを結びつけたのはパキスタンの情報機関ISI。資金を提供し、サラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団を中心とする戦闘員を送り込んだのがサウジアラビア。アメリカはTOW対戦車ミサイルや携帯型のスティンガー対空ミサイルを提供、戦闘員を訓練していた。こうした構図の戦闘は1989年2月にソ連軍が撤退するまで続いた。

 2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された直後にジョージ・W・ブッシュ政権は証拠を示すことなく、アル・カイダという名前を「テロの象徴」として使い始める。その組織を率いているのがオサマ・ビン・ラディンだというのだが、この主張を嘘だとクック元英外相は2005年に指摘したわけだ。

 その翌年、フォーリン・アフェアーズ誌(CFR/外交問題評議会が発行)の3/4月号にロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できるとするキール・リーバーとダリル・プレスの論文が掲載された。ロシアや中国の反撃を恐れる必要はないという主張だ。当然、この論文はロシアや中国の人びとが読むことを念頭に置いて書かれたわけで、アメリカのすることの口出しするなという恫喝だったのだろう。

 その一方、2007年3月5日付けのニューヨーカー誌には、アメリカがイランとシリアを標的にした秘密工作を開始、イスラエルとサウジアラビアが参加していると調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが書いている。

 この工作を作成するにあたって中心的な役割を果たしたのはリチャード・チェイニー副大統領(当時。以下同じ)、ネオコンのエリオット・エイブラムズ国家安全保障問題担当次席補佐官、ザルメイ・ハリルザド、そしてサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン国家安全保障問題担当顧問(元アメリカ駐在大使、後に総合情報庁長官)だという。ビン・スルタンはアル・カイダ系武装集団を動かしていた人物だ。

 2007年には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュがニューヨーカー誌に興味深い記事を書いている。アメリカ、イスラエル、サウジアラビアがシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作を始めたというのだ。

 その記事の中で、ジョンズホプキンス大学高等国際関係大学院のディーンで外交問題評議会の終身メンバーでもあるバリ・ナスルの発言を引用している。「サウジは相当な金融資産があり、ムスリム同胞団やサラフ主義者と深い関係がある」としたうえで、「サウジは最悪のイスラム過激派を動員することができた。一旦、その箱を開けて彼らを外へ出したなら、2度と戻すことはできない。」と指摘している。

 そのサウジアラビアの国王がアジア大陸の東岸に現れた意味は重い。彼らが見せびらかす札束の向こう側には地獄が存在している。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201703170000/


56. 中川隆[7296] koaQ7Jey 2017年3月23日 21:05:51 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[7768]

2017年03月17日 米メディアを支配しているのは。。。

非常に長い記事ですのでかなり端折りました。

この記事の重要な点は、CIAがアメリカの主要メディアの全てを支配し、情報を操作・管理しながら、米国民だけでなく日本や世界の人々を騙してきたということです。アメリカの主要メディアはCIAのプロパガンダ・マシーンです。そしてアメリカのメディアの口パクでしかない日本のマスコミも同様にCIAから許可を得た記事やニュースしか報道できないようになっているのでしょう。CNNのニュースをそのまま報道しているのですから。。。

アメリカの主要メディアを支配しているのはユダヤ資本であり、CIAですから、NSAと同様にCIAもユダヤ資本(NWOの重要メンバー)に支配された機関ということになります。

CIAと呼ばれる極悪犯罪組織がアメリカの諜報機関として世界中で様々な犯罪を行ってきたのです。CIAは諜報機関などと呼ばれるような集団ではなく、秘密の犯罪組織です。
http://www.thedailysheeple.com/american-corporate-msm-is-merged-with-cia-and-has-been-since-the-1950s_032017 


(概要)3月16日付け


1940年代後半から1950年代前半にかけて、CIAのオペレーション・モッキングバードと呼ばれる秘密プロジェクトムが実行に移されました。その目的は、アメリカのメディアを支配し影響力を与えることで米国民が入手する情報や評論の全てを操作・統制・支配できるようにするためです。


この秘密プロジェクトは国家安全保障会議で考案されフランク・ウィスナー氏によって実行に移されました。

ウィスナー氏はワシントン・ポストのフィリップ・グレアム氏をメディア界におけるプロジェクトのトップに任命しました。また1950年代前半にはウィスナー氏はニューヨーク・タイムズ、ニューズウィーク、CBSを含む多くのメディア関係者を支配するようになりました。

1953年から1961年までCIA長官を務めたアレン・ダレス氏は1951年にCIAに加わりオペレーション・モッキングバードの主要作戦部員となりました。


1953年以降、メディアを支配するプロジェクトはCIA長官のアレン・ダレン氏が監督することになりました。当時、CIAは既に25社以上の新聞社と通信社に影響力を与えていました。


このプロジェクトは現在まで続いています。

メディアを通して報道されるニュースの全てがCIA及び関連の政府機関よって作成されたものです。つまり現在も主要メディアはCIAが作成する偽のニュースを報道するCIAのプロパガンダ・マシーンででり続けているということです。
報道を行ってきたということです。

CIAが完全に支配しているのは主要メディアだけではありません。彼等は芸能界も支配しています。

アメリカの主要メディアはCIAのアジェンダに沿った偽のニュースを報道するこどでCIAのプロパガンダを行っています。例えば、ブッシュ政権はジャーナリストにお金を払って反キューバの記事を書かせました。


テレビに出演したドイツのジャーナリストであり政治科学の専門家(Dr.Udo Ulfkotte)は、彼の名前で諜報機関が書いた記事を寄稿するよう命令されたと告白しました。命令に従わなかったDr.Ulfkotteは職を奪われました。彼によれば、アメリカとドイツのメディアは共に連携してヨーロッパやロシアで戦争を勃発させるための報道を行っています。彼等は反ロシアのプロパガンダを行いドイツだけでなくヨーロッパ中の人々を騙しています。


2014年に明らかになったことは。。。多くのジャーナリストが定期的にCIAから情報を受けとったり、CIAのイベントに参加したり、ジャーナリストが書いた記事をCIAに手渡しCIAに情報を加えてもらったり書き直してもらたりしているということです。

例えば、ロスアンゼルス・タイムズのリポーターも自分たちが書いた記事をCIAに確認(修正)してもらった後に報道します。

ペンタゴンも情報作戦行っています。2006年から、米軍の全部隊、師団、兵団は国内メディアを通して独自の心理作戦を実行してきました。このような軍事活動は、ラジオ局やニュース・ウェブサイトなどに資金を提供している国務省の報道キャンペーンと関連しています。

イギリスでは、国防省のDirectorate of Targeting and Information Operationsが、ベッドフォードシャーのDefence Intelligence and Security School の心理作戦のスペシャリストと連携してプロパガンダを行っています。

2013年に、CIAとワシントンポストの繋がりが明らかになりました。アマゾン及びワシントンポストのオーナーであるジェフ・ベゾフ氏はアマゾンのクラウド・テクノロジーのインフラに関してCIAと取引を行いました。つまりワシントンポストはCIAのプロパガンダのための報道を行っているのではないかと疑われるようになりました。

つい最近、トランプ大統領の国家安全保障担当補佐官だったマイケル・フリン氏が辞任に追い込まれましたが、これもCIAがメディアを使って反フリン氏の情報操作を行った結果です。

全ての主要メディアがフリン氏を辞任に追い込むためにヒステリックな報道をしていました。

また、フリン氏の会話を最初にリークしたのはワシントンポストでした。ワシントンポストはCIAの命令通りに情報をリークするはけ口なのです。

さらにフリン氏に対する攻撃はトランプが大統領になる前から始まっていました。オバマ政権が残りわずかになったころ、CIAのブレナン長官とクラッパー国家情報長官が大統領選中にロシアがハッキングをして情報をリークしたと騒ぎ立て、フリン氏がロシアと繋がっていることは国の安全を脅かすものだとフリン氏を非難した人物です。
http://blog.livedoor.jp/wisdomkeeper/archives/52004444.html


57. 中川隆[7387] koaQ7Jey 2017年3月28日 11:56:36 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[7865]

2017.03.27
NATOがシチリア島を拠点として実施した艦隊演習「ダイナミック・マンタ」の目的は何か?(1)


NATOは地中海で艦隊演習「ダイナミック・マンタ2017」を3月14日から24日にかけて実施した。参加国はアメリカ(駆逐艦、潜水艦)のほか、カナダ(フリゲート艦)、フランス(駆逐艦、潜水艦)、ドイツ、ギリシャ(フリゲート艦、潜水艦)、イタリア(駆逐艦、潜水艦)、ノルウェー、スペイン(タンカー、フリゲート艦、潜水艦)、トルコ(フリゲート艦、潜水艦)、イギリス。水上の艦船が10隻、潜水艦が9隻、さらにP-8Aポセイドン(哨戒機)やヘリコプターも投入されたという。演習の拠点はシチリア島の東岸にあるカターニアのアウグスタ基地とシゴネラ基地だった。

言うまでもなく、シチリア島は地中海の真ん中にある要石的な存在であり、古代から戦争の舞台になってきた。北アフリカとヨーロッパをつなぐ中継地点であり、中東を睨む位置にもある。ここにきてロシア軍は中東での軍事的な存在感を強め、アメリカ/NATO、イスラエル、サウジアラビアなどの侵略戦争を妨害している。そうした動きも意識しているだろう。

2011年春にシリアやリビアで侵略戦争が始まり、同年10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制はNATO軍とアル・カイダ系武装集団LIFGなどの連携で倒され、その際にカダフィは惨殺されている。そのことをCBSのインタビュー中に知らされたヒラリー・クリントンが「来た、見た、死んだ」と口にし、喜んぶ光景はインターネットで今でも見ることができる。

その直後、反カダフィ勢力の拠点だったベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられ、その映像がYouTubeにアップロードされ、イギリスのデイリー・メイル紙も伝えていているが、そのベンガジにあるCIAの施設を拠点にして戦闘員や武器/兵器がトルコ経由でシリアへ運ばれている。輸送にはマークを消したNATOの輸送機が使われたともいう。

2012年になるとアメリカの情報機関や特殊部隊がヨルダンの北部に設置された秘密基地で戦闘員を軍事訓練、その少なくとも一部はダーイッシュに合流していると報道された。トルコと同じようにヨルダンにはシリアへの侵入ルートがあると言われている。

その年の5月にはシリアのホムスで住民が虐殺され、西側は政府側は実行したと宣伝しはじめるのだが、現地を調査した東方カトリックの修道院長も反政府軍のサラフ主義者や外国人傭兵が実行したと報告、「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」と書いている。現地で宗教活動を続けてきたキリスト教の聖職者、マザー・アグネス・マリアムも外国からの干渉が事態を悪化させていると批判、ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙も、キリスト教徒やスンニ派の国会議員の家族が犠牲になっていると伝えていた。

そうした中、2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIAは政府向けの報告書を作成した。反シリア政府軍の主力はサラフ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIであり、アル・ヌスラはAQIの別名だと指摘している。つまりバラク・オバマ政権が主張するような「穏健派」は存在しないということであり、そうした武装集団は西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているともしている。さらに、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告していた。CIAの工作を警告しているともとれる内容だ。

その報告書が出た翌月、2012年9月11日にベンガジのアメリカ領事館が襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使も殺される。領事館が襲撃される前日、大使は武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っていた。スティーブンスもCIAの秘密工作に加担していたわけだ。大使の上司にあたるクリントン国務長官(当時)も当然、知っていたはず。

当時のCIA長官、デイビッド・ペトレイアスはクリントン長官と近い関係にあり、この人脈からもクリントンは工作に関する情報を得ていた可能性が高いが、このペトレイアスは領事館襲撃の2カ月後、2012年11月にCIA長官を辞任した。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201703270000/


2017.03.28
NATOがシチリア島を拠点として実施した艦隊演習「ダイナミック・マンタ」の目的は何か?(2)

2013年3月にシリア政府は反政府軍が化学兵器を使ったと発表、反政府軍も政府軍が実行した反論するのだが、これについてイスラエルのハーレツ紙は、攻撃されたのがシリア政府軍の検問所であり、死亡したのはシリア軍の兵士だということから反政府軍が使ったと推測している。また、国連独立調査委員会メンバーのカーラ・デル・ポンテも反政府軍が化学兵器を使用した疑いは濃厚だと発言していた。

8月になるとダマスカス郊外のゴータで政府軍が化学兵器を使ったアメリカ政府は宣伝し始めるのだが、ロシアのビタリー・チュルキン国連大使がアメリカ側の主張を否定する情報を国連で示し、報告書も提出している。

チュルキン対しが示した情報には、反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、毒ガス攻撃を受けたとされるゴータで着弾していることを示す文書や衛星写真が含まれていたようで、その後、国連内の雰囲気が大きく変化したという。

12月に調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍がサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があると指摘している。また、国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授は、化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないというのだ。シリア政府軍が化学兵器を使ったという口実でアメリカはシリアへ軍事侵攻しようと目論んだが、この口実は崩壊したわけだ。

2013年1月30日に行われた4機のイスラエル戦闘機がシリアを攻撃しているが、その8日前、アビブ・コチャビAMAN(イスラエルの軍情報部)司令官はワシントンで攻撃計画を説明、同じ時期にイスラエル政府は安全保障担当の顧問、ヤコフ・アミドロールをロシアへ派遣して攻撃を通告していたとも言われている。2013年5月や14年12月にはシリア領内で大きな爆発があった。まるで地震のような揺れがあり、「巨大な金色のキノコに見える炎」が目撃された。爆発の様子を撮影したCCDカメラに画素が輝く現象(シンチレーション)も見られた。

2013年8月下旬にはNATOもシリアを攻撃する姿勢も見せ、9月3日には地中海の中央から東へ向かって2発のミサイルが発射されている。ロシアの早期警戒システムはミサイル発射をすぐに探知、2発のミサイルは海中に落ちた。その直後、イスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だと発表したが、事前に周辺国へ通告されてはいない。ジャミングで落とされたのではないかとも見られている。アメリカがイランと交渉するポーズを見せるのはそれ以降で、同年11月のイラン核開発に関する中間合意につながっている。

その当時、アメリカ政府はシリア近くの基地にB52爆撃機の2航空団を配備し、5隻の駆逐艦、1隻の揚陸艦、そして紅海にいる空母ニミッツと3隻の軍艦などの艦船を地中海に配備していたが、それに対抗してロシア軍は「空母キラー」と呼ばれている巡洋艦のモスクワを中心に、フリゲート艦2隻、電子情報収集艦、揚陸艦5隻、コルベット艦2隻がシリアを守る形に配置したと報道されている。地中海にはアメリカ軍、ロシア軍、中国軍の艦船が集結し、軍事衝突に発展しても不思議ではない状況にあったのだ。

シリアに対する直接的な軍事侵攻に失敗したネオコンなどアメリカの好戦派はソチ・オリンピックに合わせ、ウクライナでクーデターを実行、2014年2月23日にビクトル・ヤヌコビッチ大統領を憲法を無視する形で解任している。

中東では2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にはモスルを制圧。この集団はアル・カイダ系武装集団から派生、後にダーイッシュ、IS、ISIS、ISILとも呼ばれるようになる。DIAの警告が現実化したわけだ。

その際にトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねてパレード、その後継を撮影した写真が世界規模で流れたが、それをアメリカ軍が黙認した。スパイ衛星、偵察機、通信傍受、人から情報でアメリカの軍や情報機関は状況を把握していたはず。アメリカ政府を疑惑の目で見ている人は少なくない。

ダーイッシュによるモスル制圧から2カ月後の8月、サラフ主義者の支配国が出現する可能性を指摘した報告書が作成された当時のDIA局長、マイケル・フリン中将は退役に追い込まれた。

2011年10月から統合参謀本部議長を務めていたマーティン・デンプシー大将もアル・カイダ系武装集団などを危険視していたが、2015年9月25日に退役して好戦派が後釜にすわる。その3日後にロシアのウラジミル・プーチンが国連で演説、オバマ米大統領が自分たちに従えと威嚇したのに対し、プーチン露大統領は「自分がしでかしたことを理解しているのか?」とアメリカを公然と批判した。ロシアがシリアでアメリカの手先であるアル・カイダ系武装集団やダーイッシュを空爆しはじめたのは演説の5日後だ。

この空爆でシリアの戦況は一変、政府軍が優位になり、侵略軍は崩壊寸前だ。アメリカは新たな戦闘集団を編成しようとしているとも言われているが、劣勢は否めない。そうしたロシア側の作戦の一環として昨年、ロシア海軍の重航空巡洋艦(空母)クズネツォフ提督を中心とする艦隊がシリア沖に派遣された。ロシア海軍は潜水艦を重視しているので、NATOによる今回の軍事演習が潜水艦をターゲットにしているのは必然だ
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201703280000/


58. 中川隆[7402] koaQ7Jey 2017年3月29日 08:24:02 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[7881]
地中海の東岸、エジプトからギリシャにかけての地域に大量の天然ガスが存在している。2009年に発見されたのだが、USGS(アメリカ地質調査所)の推定によると9兆8000億立方メートルの天然ガス、そして34億バーレルの原油が眠っているという。

シリアは1991年の時点でネオコンが殲滅すると宣言していた国であり、リビアはアフリカを自立させようとしていた国。

こうしたことから侵略され、リビアのムアンマル・アル・カダフィは倒されたのだが、この資源も「アラブの春」を引き起こした一因であり、イスラエルがガザ攻撃を激化させたのもそのためだと考える人もいる。


以前から、イスラエルにはシリアを経由し、トルコへパイプラインで運ぼうという計画がある。シリアのバシャール・アル・アサド体制がすぐに倒れていればイスラエルにとって問題はなかったのだろうが、ロシアの介入でその目論見は狂った。シリアの体制を転覆させるために送り込まれたアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)は敗走している。新たな戦闘集団をCIAは編成しているとも言われているが、厳しい状況だ。アサド政権と話をつけるため、ロシア政府に接近したようにも見える。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201703270000/


59. 中川隆[7496] koaQ7Jey 2017年4月03日 16:51:36 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[7980]
2017.04.03
フリン中将は免責を条件に上下院の情報委員会で証言すると提案、秘密情報の発覚を議員は恐れる


免責を条件にマイケル・フリンは上院と下院の情報委員会で証言すると提案しているという。フリンは理由にならない理由で今年2月に国家安全保障担当補佐官を辞任、2014年8月にはアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)をバシャール・アル・アサド政権を打倒するための手先として使っているバラク・オバマ政権と対立してDIA局長を解任されている人物だ。

フリンは退役後の2015年8月、アル・ジャジーラの番組に登場し、ダーイッシュが占領地を拡大できたのはオバマ政権の政策によると語っている。フリンがDIA局長だった2012年8月に作成されたDIAの報告書は、シリアで政府軍と戦っている勢力の中心をサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・ヌスラというタグをシリアでは使っていたが、実態はAQIと同じだとしている)、つまり「穏健派」は存在しないとしたうえで、オバマ政権の「穏健派支援」が続けば東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配国が作られる可能性があると指摘していた。

この警告通り、2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にダーイッシュはイラクのファルージャやモスルを制圧している。このとき、アメリカ軍はダーイッシュの制圧作戦、示威行進を黙認していた。ファルージャやモスルが制圧された2カ月後にフリンがDIA局長の職を解かれた理由は改めて言うまでもないだろう。

アル・ジャジーラの番組でフリンがオバマ政権の政策に触れることができたのは、2012年の報告書がすでに情報公開法に基づいて明らかにされ、秘密でなくなっていたからだ。職務上、機密情報を知りうる立場にある人物が機密情報を明らかにすることは禁じられている。

当然、フリンはオバマ、ヒラリー・クリントン、CIAなど情報機関などロシアとの関係を悪化させようとしている勢力にとって都合の悪い情報をまだ持っているはずだが、それらを口にすれば刑事罰が待っている。それがネオコンをはじめとする好戦派を守っているのだが、もしフリンが免責を認めえられたなら、アメリカの支配システムを揺るがす事態に発展しかねない。裏取引か脅しか、何らかの手を講じた上でなければ、上院や下院がフリンの提案を受け入れることはないだろう。議会は難しい決断を迫られていると見ている人もいる。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201704030000/


60. 中川隆[7555] koaQ7Jey 2017年4月06日 13:54:56 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[8040]

偽ニュースと偽TV専門家に苦しめられているアメリカ
Wayne MADSEN 2017年4月3日 Strategic Culture Foundation
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2017/04/tv-0b0e.html

最近、アメリカ上院情報特別委員会が、一部、ロシアが2016年選挙中にアメリカ合州国に対する大規模な“偽ニュース”キャンペーンを始めたという非難に向けた聴聞会を行った。代替の外国ニュース情報源が、アメリカ国民に人気があるのは、ロサンゼルスとニューヨークに本社を構える“娯楽情報”産業が、膨大な量の“まやかしニュース”をアメリカで、24時間、7日間たれ流して、アメリカのニュース視聴者を“白痴化”した後の現象であることを指摘する必要がある。

ロシア・トゥディ(RT)、中国のCCTV、アル・ジャジーラ、中南米のテレスールや、イランのPress TVが、アメリカ合州国に登場するやいなや、環境に適応できないハリウッド・スター連中に関するすっきりなしの子供だましではなく、本当のニュースを報道することで、彼らはあっと言う間に人気を得た。2001年9月11日のテロ攻撃以降、多くのアメリカ人は、外国ニュースが、ペンタゴン、中央情報局(CIA)や外交問題評議会のレンズを通して浄化されているのにうんざりしていたのだ。

多くのアメリカ人が、テレビを、RTやアル・ジャジーラや他の国際衛星ニュース・ネットワークに切り替え始めるやいなや、ニュースを装ったプロパガンダを行うのになじみがある当時の国務長官ヒラリー・クリントンなどのアメリカ政治家や、マスコミ内の連中の傀儡連中がアメリカ人を狙った“外国プロパガンダ”に文句を言いはじめた。アメリカ諜報機関のニュース操作者連中から見れば、“外国プロパガンダ”という表現は、“ラテン語の“プロパガンダ”という言葉は、アメリカの奥地に住む白痴化されたアメリカ人が理解するには難しすぎるので、現在は偽ニュース”に変更されている。

ロシアとトランプ政権を一挙に悪者扱いするため、CIAと国家安全保障局は、何人かの元職員に、テレビ、ラジオやツィッターにうってでて、ロシア政府とのつながりとされるものと、2016年選挙運動中、ロシアが指揮する“偽ニュース”アラシやボットに頼っていたかどで、トランプをこき下ろすのを認めている。CIA、NSA、国家安全保障会議や他のアメリカ諜報機関が、元職員や退職者にマスコミへの出演を奨励しているのは、アメリカ諜報界の狙いを推進するためだ。CIAの現場工作員はウソをつくように訓練されているのだ。ところが、ロシア、トランプ、外国ロビイストや他の“悪魔連中”についてわめき散らす、こうした偽プロパガンダ流布者を出演させれば満足のアメリカ・マスコミは、この事実を無視している。

MS-NBCが、アメリカ海軍在職中の最高職位が上級上等兵曹だった人物を“アメリカの諜報専門家”としているのは最大の欺瞞だ。この人物はあらゆる諜報情報にアクセスできていたかのように振る舞っているが、NSAのアラビア語専門家としての現役軍務でも許可されていなかったはずだ。下士官兵で、将校ではない上級上等兵曹も、少なくともMS-NBCプロデューサーにとって、二つ星や三つ星将官と比肩するものだったのだ。これは商業マスコミで、軍や諜報分野におけるわずかな経験を持った人々がどれだけ不足しているかの一例に過ぎない。

CNNが雇っている別の諜報“専門家”は、2001年初め、CIA湾岸問題局からジョージ・W・ブッシュの国家安全保障会議に転任させられていた。ところがトランプ ホワイト・ハウスに対する“ロシアの影響力”を激しく非難して胸を叩いている“専門家”は、サウジアラビアや湾岸諸国の金が、2001年初めと中頃、後に9/11攻撃をすることとなったアルカイダ・テロリスト集団への資金提供に使われていたことを確かめることができなかった。

フォックス・ニューズは、CIA後の自慢できることは、ニューヨークを本拠とするホスト、ドン・アイマスやグレッグ・“オピー”ヒューズやアンソニー・カミア (“オピー & アンソニー”)などの“過激発言をする”ラジオディスクジョッキー番組出演だという元CIA作戦職員“専門家”を起用している。この元CIA職員は、トランプの“ロシア問題”を、すべて元国家安全保障顧問マイケル・フリンになすりつける主要な発言者で、フリン最大の“犯罪”は、以前のロビーイング関係に関して、マイク・ペンス副大統領に正直に言わなかったことだと主張している。こうした偽情報流布の専門家者の念頭にあるのは、ペンスのような元インディアナ州ラジオ・トークショーの不気味なホストにウソをつくのは“犯罪”と同類だということだけかも知れない。

マイケル・モレル代理CIA長官や、ジョン・マクラフリンやマイケル・ヘイデンCIA・NSA長官や、CIA総合弁護士ジョン・リゾを含む元アメリカ諜報機関高官連中は、テレビに進んで出演し、トランプや彼の幹部を、ロシアとの接触で嘲笑している。これは、アメリカ
諜報権力過去にはなかった政治問題化の新たな高まりを示している。トランプ ホワイト・ハウスに対する厳しい報復を呼びかける連中の出演を進んで受け入れるあらゆるテレビ局に押し寄せることで、こうした諜報機関の陰の権力構造メンバー連中は、アメリカ政権に対する“陰の政府”の陰謀という主張を産み出しているのだ。

これらやらせ諜報専門家の口から語られる“ロシア”、“中国”、“ロシア銀行”やトランプ ホワイト・ハウスの脅威にまつわる延々と続く呼吸亢進は、CIA、NSA、国家情報長官事務所や、アメリカ・サイバー軍内部の情報工作組織が指揮しているものだ。これら専門家に、CIA、NSAや他の機関に“買収されている”議員連中が加わったプロパガンダに過ぎない。この連中には下院情報特別委員会筆頭理事アダム・シフ下院議員、上院情報特別委員会院長のリチャード・バー上院議員、上院情報特別委員会有力メンバーのマーク・ウォーナー上院議員、アリゾナ州のジョン・マケイン上院議員、サウスカロライナ州のリンジー・グラハム上院議員、カリフォルニア州のダイアン・ファインスタイン上院議員やオレゴン州のロン・ワイデン上院議員などがいる。

60年以上のCIAの歴史は、CIA偽情報・プロパガンダ工作を推進するよう仕組まれたニュース操作の例に満ちていることからして、CIAが突然“偽ニュース”を懸念するように改宗したのはお笑い種だ。CIAのモッキンバード作戦は、偽情報を広めるため、主要アメリカ新聞、放送局や雑誌出版社内に、CIA諜報機関の出先を作り出すことが狙いだった。そうすることで、この機関が、イラン、グアテマラ、シリア、英領ギアナ、イラク、ラオス、トーゴ、南ベトナム、ブラジル、ボリビア、インドネシア、ドミニカ共和国、ガーナ、カンボジア、チリ、オーストラリア、チャド、スリナム、グレナダ、フィジー、ブルキナファソ、パナマ、ガンビア、ルワンダ、ハイチ、ネパール、タイ、ホンジュラス、パラグアイ、リビアやウクライナの政府を転覆させてきたのを隠蔽するため、CIAは偽ニュース記事を作り出した。ジョン・F・ケネディ大統領に対する1963年クーデターも、このリストに加えることが可能だ、ケネディ暗殺を共謀した連中の一部が関与した1972年ウォーターゲート作戦は最終的にリチャード・ニクソン大統領を退陣させるよう仕組まれていた。

アメリカの諜報社会は、アメリカ合州国で、もう一つのマッカーシー時代を画策しているのだ。1955年に、反共産主義運動家ロバート・ストラウスツ・ヒュープが設立した、CIAとつながっている海外政策調査研究所で現在働いている、新たに作り出された“サイバー・セキュリティー専門家”元であるFBI職員クリント・ワッツは、2016年選挙におけるロシアの“干渉”に関する最近の上院情報特別委員会聴聞会で最重要証人だった。ジョセフ・マッカーシー上院議員やストラウスツ・ヒュープの1950年代の反ロシア・プロパガンダをオウム返しにして、ワッツはこう主張した。“2015年末から2016年頭まで、ロシアの影響を受けた体制が、大統領選挙結果に影響を与えようとして、話題やメッセージを押し出し始めた . . . ロシアによる公然のマスコミ言論と、非公然のアラシは、クレムリンに対する敵対的見解を持った政界内両派の競争相手を脇に追いやることを狙っていた”。

ワッツは、上院情報特別委員会メンバーのマルコ・ルビオ上院議員に、ルビオもそうした標的の一つだったと言った。ワッツは、マイアミ男娼としてのルビオのいかがわしい過去や、彼とマイアミのオンライン・ゲイ・ポルノ写真商売人とのつながりは全てロシアの“あらし屋”による産物だと全国に信じさせようとしたのだ。だが、ルビオの汚点は、上院議員の自業自得で、“ロシア”や他の外国のせいにできるものではない。1963年夏、彼のキューバ人の父親が、ニューオリンズで、リー・ハーヴェイ・オズワルドと一緒に活動していたことに関して、決して率直とは言えないテキサス州選出のテッド・クルス上院議員にも同じことが言える。

要するに、トランプとロシア“偽ニュース”に関する議会調査と、商業マスコミによる過剰宣伝報道など、すべてたわごとだ。偽ニュースで、何か教訓を得たいのであれば、CIAや、モッキンバード作戦や、この機関の“壮大なワーリッツァー”プロパガンダが、たわ言を言って、しっぽを振るマスコミに与えていた歴史を何かお読み頂きたい。

記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2017/04/03/america-plagued-with-fake-news-and-fake-tv-experts.html


61. 中川隆[7563] koaQ7Jey 2017年4月06日 18:45:29 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[8048]
2017.04.06
またシリアで化学兵器が使われ、化学兵器を廃棄済みのシリア政府を西側は批判する合唱を始めた


シリアのイドリブで政府軍が化学兵器を使ったと西側の政府や有力メディアが再び叫んでいる。2013年にアメリカ/NATOは同じことを主張し、自らが軍事侵攻しようと目論んでいるが、このときは西側の嘘が明らかにされたこともあり、失敗に終わった。ここにきてドナルド・トランプ政権はネオコン色が強まっているが、それにともない、昔のシナリオを持ち出してきた可能性がある。

シリア政府は化学兵器の使用を否定、ロシア国防省は反政府軍の武器庫を通常の兵器で攻撃、その武器庫に保管されていた化学兵器が破壊されて環境中へ毒ガスが流れ出たと説明しているようだ。前回の化学兵器騒動の際、西側が侵略する口実をなくすため、ロシア政府が主導してシリア軍が保有していた化学兵器は全て処分した。現在、持っているのは反政府軍(アル・カイダ系武装集団やダーイッシュ)。ムアンマル・アル・カダフィ体制が倒された後、アメリカ/NATOなどがリビアからシリアへ化学兵器を持ち込んだほか、トルコが提供したとも言われている。

2013年の化学兵器使用は3月と8月の2回。3月はアレッポで使われ、シリア政府はすぐに調査を要請、西側の政府やメディアは政府軍が使ったと宣伝した。そのとき、アメリカのジョン・ケリー国務長官がイラン側との秘密交渉を始めている。そうした動きをネオコンたち好戦派は嫌っていた。

この攻撃について、イスラエルのハーレツ紙は状況から反政府軍が使ったと分析、国連独立調査委員会メンバーのカーラ・デル・ポンテも反政府軍が化学兵器を使用した疑いは濃厚だと発言している。

3月の攻撃に関する国連の調査が始まる中、8月21日にはダマスカスの郊外が化学兵器で攻撃された。例によって西側の政府やメディアはシリア政府軍が使ったと宣伝、NATOを軍事介入させようとするが、現地からそうした宣伝を否定する情報が流れていた。

今年2月20日に心臓発作で急死したロシアのビタリー・チュルキン国連大使は当時、アメリカ側の主張を否定する情報を国連で示して報告書も提出している。その中で反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾していることを示す文書や衛星写真が示されたとジャーナリストがフェースブックに書き込んでいる。

そのほか、化学兵器とサウジアラビアを結びつける記事も書かれ、10月に入ると「ロシア外交筋」からの情報として、ゴータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話が流れた。

12月になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。

また、こうした化学兵器の使用について、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、トルコ政府の責任を追及している。化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)が調合して使ったというのだ。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられている。

今回も西側の政府やメディアはシリア政府が化学兵器を使用したと批判しているが、そうした宣伝記事を書いているひとり、ニューヨーク・タイムズ紙のマイケル・ゴードンはアメリカがイランを先制攻撃する前、ジュディス・ミラーと一緒に原爆話を流していた人物。ミラーは現在、CFR(外交問題評議会)のメンバーであり、ゴードンは軍事担当記者として「活躍」している。ふたりともアメリカ支配層の覚えがめでたいようだ。ゴードンはウクライナの問題でもロシア軍が軍事侵攻したという偽情報を流している。

日本にはこうしたアメリカの有力メディアを有り難がっている人が今でもいるようだ。おそらく確信犯であるだろうマスコミはともかく、ほかの人びとはいい加減、目を覚ましてもらいたいものである。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201704060000/


62. 中川隆[7577] koaQ7Jey 2017年4月07日 14:03:22 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[8062]

2017.04.07
バノンをNSCから排除したトランプ政権は親イスラエル派で固められ、ネオコンの好戦的戦略へ回帰


ドナルド・トランプ大統領は4月5日、首席戦略官のステファン・バノンをNSC(国家安全保障会議)から追い出した。メディアからは「極右」のタグをつけられていたが、そうしたタグが当てにならないことは言うまでもない。これまでバノンはグローバル化、つまり資本の移動制限をなくし、生産拠点を労働環境の劣悪、つまり生産コストが安い国々へ移動させてきた勢力を批判、こうした主張が支配層から嫌われる原因になっていた。「極右」というタグで何かを理解した気になるのは危険だ。

トランプ政権ではロシアとの関係正常化を訴えいてたマイケル・フリン国家安全保障担当補佐官が2月13日に辞任、その一方でネオコンとの関係を強めているようだ。例えば、イスラエルと緊密な関係にあり、ロシアへの憎悪を剝き出しにしているニッキ・ハーレーを国連大使に据え、筋金入りの親イスラエル派でヨルダン川西岸への入植を支援してきたデイビッド・フリードマンをイスラエル駐在大使に指名した。

そうした中、シリアではイドリブで化学兵器が使われ、アメリカ、イギリス、フランス、イスラエルといった国々は調査もしない段階でシリア政府を激しく罵倒、ハーレー大使は国連に対し、アメリカの命令に従わなければ単独行動に出ると脅した。これは1992年2月に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリンの考え方だ。本ブログでも紹介したが、少し前に新たな戦闘集団をCIAは編成しているという話が流れていたが、そうした動きと今回の化学兵器の問題は関係しているかもしれない。

現在、流れている未確認情報によると、4月2日頃、トルコからシリアのハマへ向かった車列があり、そこには対戦車ミサイルTOWのほか、ガスマスクを含む化学戦用の防護服が積まれていたという。その途中、イドリブに立ち寄り、そこの武器庫に保管されていた化学兵器を積み込んでハマへ向かい、そこで使用する予定だったともされている。

ロシアの説明では、その武器庫をシリア軍が空爆したとしているが、シリア軍は爆発に自分たちは無関係だと主張、現場を飛んだ航空機は爆発後に派遣した偵察機だけだとしている。こうしたことも含め、詳しい調査が必要なのだが、アメリカなど西側の支配層としては、調査が進む前にシリア政府やロシア政府の悪いイメージを作り上げたいのだろう。

何か衝撃的な出来事が引き起こされ、調査しない段階で事件のシナリオを宣伝、人びとを守るという口実で軍事侵攻し、ターゲットになった国を破壊し、人びとを虐殺するということをアメリカの支配層は繰り返してきたが、今回もそうしたことを目論んでいるように見える。

ユーゴスラビア、南オセチア、アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、ウクライナなど、アメリカの主張はいずれも嘘だということが後に判明している。判明した時には破壊と殺戮が進み、取り返しはつかない。そうしたことを経験しながらアメリカの新たな嘘に乗る責任は重い。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201704060000/

2017.04.07
アメリカの支配層は東アジアも中東も戦争で破壊と殺戮を繰り広げようとしている
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201704070000/

ヒラリー・クリントンが2013年にゴールドマン・サックスで発言:朝鮮がミサイル開発を進めたなら中国へアメリカはミサイルの標的にする。中国を標的にするため、朝鮮にミサイル開発を進めさせるとも聞こえる。


イラクを先制攻撃する口実にするため、アメリカの有力メディアは「大量破壊兵器」という嘘を広めた。そうした記事を書いたひとり、ニューヨーク・タイムズ紙のマイケル・ゴードンは調査もせず、シリア政府が化学兵器を使用したとする話を垂れ流し。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201704070000/


2017.04.07
西側の政府や有力メディアが情報源にしているSOHRや白ヘルは米英情報機関やアル・カイダと連携
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201704070002/


シリアのイドリブで化学兵器が使われ、多くの住民が殺されたという話の出所は「西側御用達」の白ヘルと「SOHR(シリア人権監視所)」のようだ。白ヘルの責任者であるラエド・サレーはアメリカへの入国を拒否された人物で、創設者のジェームズ・ル・メジャーはイギリスの元軍人で、傭兵会社のブラックウォーター(後にXe、さらにアカデミへ名称変更)で働いていたことがあり、アメリカ政府やイギリス政府から資金が提供されている。

2016年4月27日、アメリカ国務省の副スポークスパーソンだったマーク・トナーは白ヘルがUSAIDから2300万ドル受け取っていることを認めている。またSOHRは2006年にイギリスで設立された小規模な「団体」で、設立当時からCIAやイギリスの情報機関MI6が背後にいると指摘されていた。この白ヘルがアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)と緊密な関係にあることも有名だ。(例えば、ココやココやココ)

白ヘルの「医療行為」に疑問を表明している医師もいる。もし生きている人間に行ったら殺してしまうようなことをしているというのだ。2013年の時にも言われたが、アメリカなどの支援を受けたアル・カイダ系武装集団は子どもを拉致、それを犠牲者に仕立て上げている疑いもある。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201704070002/
ヒラリー・クリントンが2013年にゴールドマン・サックスで発言:朝鮮がミサイル開発を進めたなら中国へアメリカはミサイルの標的にする。中国を標的にするため、朝鮮にミサイル開発を進めさせるとも聞こえる。


イラクを先制攻撃する口実にするため、アメリカの有力メディアは「大量破壊兵器」という嘘を広めた。そうした記事を書いたひとり、ニューヨーク・タイムズ紙のマイケル・ゴードンは調査もせず、シリア政府が化学兵器を使用したとする話を垂れ流し。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201704070000/



63. 中川隆[7588] koaQ7Jey 2017年4月08日 00:00:13 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[8075]

2017.04.07
米支配層はオバマ政権の時代から化学兵器使用の濡れ衣をシリア政府へ着せて侵略を狙ってきた
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201704070003/

シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すため、シリア国内で化学兵器を使用し、その責任をシリア政府になすりつけて軍事侵略を正当化しようという偽旗作戦をバラク・オバマ政権が許可したとイギリスのデイリー・メール紙が報道したのは2013年1月29日のことだった。

3月中旬になると、アメリカ、イギリス、フランスが反アサド軍の戦闘員を集め、ヨルダンで訓練していると報道されているが、その直後の3月19日にアレッポで化学兵器が使用されたと言われている。

ところが、その5日後になるとイスラエルのハーレツ紙は化学兵器を使ったのは政府軍ではなく反政府軍だった可能性が高いと報道、5月になると攻撃を調べていた国連の独立調査委員会のメンバー、カーラ・デル・ポンテも政府軍でなく反政府軍が使用した可能性が高いと発言する。それほど3月の偽旗作戦は稚拙だったということだ。

最初の攻撃から5カ月後、8月21日にダマスカスに近いゴータで再び化学兵器が使用され、アメリカをはじめとする西側の政府や有力メディアはシリア政府に責任をなすりつける宣伝を展開したが、29日にはサウジアラビアが化学兵器を反政府軍に提供したと報道されている。

その間、ロシア政府はロシアのビタリー・チュルキン国連大使は反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾したと国連で説明、その際に関連する文書や衛星写真が示されたとジャーナリストがフェースブックに書き込んでいる。このチュルキンは今年2月20日、心臓発作で急死している。

その後も調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュ、あるいは国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授たちがアメリカ政府の主張を否定する報告をした。

ハーシュのレポートによると、マーチン・デンプシー議長時代の統合雄参謀本部やマイケル・フリン局長時代のDIAはアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を危険な存在だと認識、そうした勢力を支援していたオバマ政権と対立していたことも明らかにしている。そのフリンは2014年8月7日、デンプシーは15年9月25日に任を解かれた。

ネオコンなど好戦派は軍を押さえ込み、ロシアとの戦争へ驀進している。すでにアメリカはドルという基軸通貨を発行する特権で生きながらえている状態で、そのドルを支える仕組みに組み込まれているサウジアラビアは石油価格の下落や侵略戦争の泥沼化で財政は厳しい状況になっている。このまま進めばアメリカにしろサウジアラビアにしろ、支配システムが崩壊するのは時間の問題になっている。19世紀にイギリスは経済の破綻を中国への軍事侵略(アヘン戦争)で何とか乗り切ったが、アメリカも同じことを目論んでいるのだろう。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201704070003/


64. 中川隆[-7823] koaQ7Jey 2017年5月01日 14:43:00 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]

阿修羅管理人に投稿・コメント禁止にされましたので、本日をもってこのスレは閉鎖します

参考に、僕が阿修羅原発板で反原発派の嘘とデマを明らかにした為に、阿修羅で投稿・コメント禁止にされた経緯を纏めました:

これが阿修羅に巣食う電通工作員
http://www.asyura2.com/11/kanri20/msg/603.html#c73


65. 中川隆[-7537] koaQ7Jey 2017年5月22日 17:32:01 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]

初めて実行員が暴露した、アメリカの国際陰謀・工作秘史 - YouTube 動画
https://www.youtube.com/watch?v=BhfCgO0ItY8


初めて実行員が暴露した、アメリカの国際陰謀・工作秘史 2012-06-03
http://ameblo.jp/135215/entry-11267992911.html


「国家を征服しその国民を例俗化するためには、二つの方法がある。
 一つは武力であり、もう一つは負債である。」


◇途上国を食い物にするアメリカ◇


歴史上で初めての、真にグローバルなこの帝国を築いてきたのは、私たちエコノミック・ヒットマンです。・・・

・・・そして、私たちはそのために、あらゆる手段を講じているのです・・・

しかし多分、もっとも一般的な方法は、まず原油のように米国企業が携わる資源を膨大に保有する国を見出す方法だと思います。そして、世界銀行かその関連機関から、膨大なローンをその国のためにアレンジするのです。

しかしその資金が、実際にその国に行くことはありません。かわりに、電力施設、工業団地、港など、インフラ整備と言う名目で我々の大企業に行き着くのです。その国の本の一部の富裕層と、アメリカのいくつかの大企業を潤すプロジェクトにです・・そして大多数の国民は無視されながらです。

しかし、国民とこれらの国には、莫大な債務が残るのです・・・それも絶対に完済できない額の債務です。でも支払いが行き詰まるのは、この計画の一部分なのです。
そして時を見計らって、エコノミック・ヒットマンが再び伝えに行くわけです。しかし今度は、貴方の国は多額の債務を負っていますね・・・このままでは、完済は不可能ですから原油を売りませんか?我々の企業に超特価でね、とです。

ほかにも、アメリカの軍事基地を作らせてくれとか、軍隊をイラクのような戦争地域に送って一緒に戦ってくれとか、国連の決議でアメリカ側についてくれとか、電力会社や水道や下水システムを民営化して米国企業や国際企業に売却してくれとか・・・ですから本当にマッシュルームのように出来ることがひろがっていって、これが世銀やIMFの典型的なやり方なんです。


可哀想な話ですが、貧しい国はこうして借金漬けにされ、返済することも出来なくなる・・・

そして次には借金のリファイナンスを持ちかけられて、さらに大きな金利を要求される。

そして次には融資条件や良いガバナンスという名のもとに、公益事業会社を含むさまざまな社会サービス、時として教育制度、刑罰制度、保険制度などを外国企業に売却することを要求されるのです。ですからもう2重、3重、4重のぼったくりの仕組みなのです。


イラク 2003

イラクは、このシステムがどのように機能するかを説明するためには最もよい事例です。

最初に私のようなエコノミック・ヒットマンが先人として政府を買収するために送り込まれ、巨大な負債を負わせ、これをレバレッジにして国全体乗っ取る計画を実行します。しかし、もし私たちがパナマのオーマー・トリホスやエクアドルのハイメ・ロルドスのケースで失敗したように買収に失敗すれば、次のステップとしてジャッカルが送り込まれます。

ジャッカルは政権を転覆させるか暗殺を実行し、新政権を打ち立てます。新政権は、刃向かえば何が起こるか知っているので、政策はすべて変更されるのです。
イラクの場合、この二つのステップで失敗してしまいました。エコノミック・ヒットマンはサダム・フセインを買収することが出来なかったのです。

私たちは何とかフセインを買収しようと、あらゆる手を尽くしました・・・サウジアラビアのお受けが受け入れたディールと同じようなディールをもちかけましたが、フセインは拒否しました。

すると次にジャッカルが送り込まれました。しかし、フセインの警備隊はとても優秀で、暗殺も失敗に終わりました。

何といっても、フセインは以前、CIAのエージェントでしたからね・・前イラク大統領の暗殺のために雇われていたのです。失敗しましたが。だから彼は私たちのやり方を熟知していたのです。


それで1991年、アメリカは軍隊を送り込みました。そしてイラク軍を破壊しました。この時点で、私たちはフセインが擦り寄ってくると考えていました。

抹殺することも可能でしたが、私たちはそれを望んでいませんでした。フセインは言うなれば私たちにとって都合のいい「強い男」のタイプで、国民やクルド人をうまくコントロールし、イラン人を国境内に封じ込め、アメリカのために原油を掘り続けてくれると考えていたからです。

そして、フセインの軍隊を破壊したので、今度は交渉にのってくると思ったのです・・・。

そして90年代、再びエコノミック・ヒットマンが送り込まれた。しかし成功することはありませんでした。もし成功していたなら、フセインはまだ大統領だったでしょう。彼が欲しただけジェット戦闘機もアメリカは売っていたでしょうし、その他にも何でもです。しかし失敗に終わりました。

そしてジャッカルもまたフセイン暗殺に失敗したのです。すると再び軍隊が送り込まれました。しかし今回は、計画の全工程を完全執行するために、フセインを葬り去り、この過程で、さまざまな利益の厚い建設案件を得てです。

私たちが破壊した国を、私たちが再建する事業を得たのです。大きな建設会社の所有者にとってはこの上ない話でした。

このようにイラクでは三つのステージがありました。エコノミック・ヒットマンが失敗し、ジャッカルが失敗し、そして最終手段として軍隊が送り込まれたのです。


このように、我々は帝国を築いていきました。とても巧妙に、秘密裏にです。
過去における定刻はすべて武力によって築かれました。


そして人々は皆、自分たちが帝国を築いていることを知っていました。イギリス人、フランス人、ドイツ人、ローマ人、ギリシャ人、そして彼らはみんな誇りを持っていた。

文明や宗教などを広めるなどのエクスキュースが何かしらあったからです。そして彼らは意識的に行っていたのです。


でも、我々は知りません。アメリカにいるほとんどの人は、この禁秘のアメリカ帝国が他国からの搾取によって得た利益で生きていることを全く知りません。
しかし以前にも増して、今日に至ってはとくにそうなのです。


帝国があるのなら、誰がその皇帝なのかということになります。それはアメリカ大統領ではありません。皇帝は選挙によって選出されるのではなく、人気もなく報告もしないのです。

だから大統領ではありません。


しかし、皇帝と同じ役割を果たしているものがあります。私はそれをCorporatocracy と呼んでいます。Corporatocracyとは大企業を動かしている個人の集団で、実質的にこの帝国を動かしている人たちです。


メディア企業を直接保有したり、広告主として圧力をかけることにより、メディアをコントロールし、企業献金や、企業収益を原始とした個人献金を通してアメリカのほとんどの政治家をも支配しています。


彼らは選挙によって選ばれるわけではなく、人気もなく、誰かに報告するわけでもありません。しかも、このピラミッドの頂点の人たちは、あるときは企業で働いていたり、あるときは政治家になったりして、外からではいったい誰のために働いているか判断できません。

ですから、例えばある時はハリバートンのような巨大建設会社の社長だった人が、次の瞬間アメリカの副大統領になったりします。そしてその政権の大統領が石油関連事業に携わったりして、これは民主党でも共和党でもまったく同じことなんです。

まるで回転ドアで前に言ったり後ろに行ったり・・・。

そしてある意味では、政府の政策は企業によって実行されることもあるため、私たちの政府が何をやっているかが見えないこともあるのです。しかも、その政策とは、もともとこのCorporatocracyによって策定され、政府によって提案されて政府の政策となったものなので、この関係は非常に心地いいものもあるのです。

これは陰謀論の類のものではありません。

集結して陰謀を企てる必要はないのです。彼らはただ、同一の前提の元に行動しているだけです。

そしてその前提とは、企業は、社会、環境コストを顧みることなく、その利益の最大化を最優先に追求しなくてはならないということなのです。
http://ameblo.jp/135215/entry-11267992911.html


66. 中川隆[-6507] koaQ7Jey 2017年9月04日 04:06:54 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]

貧しいほど独裁求める? 英研究チームが発表 世界で調査  朝日新聞


 経済的に不安定な人は、他人の言うことに耳を傾けない独裁的な政治家を支持しがちになる――。英国の研究チームが、世界の14万人へのアンケートを分析した論文を、米科学アカデミー紀要に発表した。
 チームは2016年の大統領選を前にした米国の750人を調査。トランプ氏はクリントン氏より「独裁的」とみる人が多く、貧困率や失業率が高い地域に住んでいる人ほど、トランプ氏に投票すると答えた。

 米国以外でも同じかどうかを確かめるため、69カ国の13万8千人を調べた。失業率が高い地域の人ほど、「議会や選挙を気にしなくてもいい強い指導者」を好んだ。「人生を自分でどれだけコントロールできているか」を自己評価した点数が低い人ほど、強い指導者を求めていた。

 チームはこの結果について、「世界の有権者が独裁的な指導者を選び続けるわけを説明するものだ」と考察している。(小宮山亮磨)


67. 中川隆[-5903] koaQ7Jey 2017年11月14日 07:37:53 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]
2017.11.14
スウェーデンが逮捕令状を取り消してもアッサンジの軟禁を続ける英国当局は重要電子メールを消去


そのWikiLeaksを2006年に創設したジュリアン・アッサンジは2010年からイギリスのロンドンにあるエクアドル大使館から外へ出られない状態が続いている。2012年にはエクアドル政府がアッサンジの亡命を認めたが、スウェーデンの要請に基づき、アメリカやイギリスが逮捕する構えだからだったからだ。そのスウェーデンは今年(2017年)5月に捜査を終了させ、逮捕令状も取り消したが、今でも軟禁状態は継続している。アメリカやイギリスの姿勢が理由だ。

この件でイギリスとスウェーデンの当局は当然、連絡を取り合ってきた。2010年と11年に​イギリス側はスウェーデンがロンドンでアッサンジから事情聴取することを断念させたことがここにきて判明、しかも重要な電子メールは消去されていた​。イギリスの検察は何も悪いことをしていないと開き直っているようだ。

ブラドリー・マニング(現在の名前はチェルシー・マニング)特技兵の持ち出したアフガニスタンやイラクおける戦争に関する資料をWikiLeaksが公開したのは2010年7月。その中には​米軍のAH-64アパッチ・ヘリコプターが上空から非武装の十数名を射殺する様子を撮影した映像​が含まれ、(日本ではどうだか知らないが)世界に衝撃を与えた。殺された人の中にはロイターの取材チームに参加していた2名も含まれている。映像を見る限り、間違いで攻撃したのではない。

内部告発者だということが突き止められたマニングは軍事法廷は2013年に懲役35年を言い渡したが、今年1月にバラク・オバマ大統領が刑期を軽減、5月に釈放された。

アメリカ政府はマニングの告発資料が公表された直後からアッサンジを刑事事件の容疑者として扱いはじめ、公表の翌月にはスウェーデンでレイプ事件の容疑者として取り調べを受けている。ふたりの女性がスウェーデンの警察に出向き、アッサンジにHIVの検査を受けさせられるかと相談したのだという。この訴えを受けて逮捕令状が出され、スウェーデンのタブロイド紙が警察のリーク情報に基づいて「事件」を報道して騒動が始まる。

ところが、翌日には主任検事のエバ・フィンが令状を取り消した。レイプした疑いがあるとは認めなかったのだが、9月1日にこの決定を検事局長のマリアンヌ・ニイが翻して捜査を再開を決め、9月27日にアッサンジはスウェーデンを離れた。ニイが逮捕令状を請求したのは11月のことだ。

メディアは容疑をレイプというショッキングな表現を使っていたのだが、実際は合意の上で始めた●行為におけるコンドームをめぐるトラブルのようで、しかもアッサンジ側は女性の訴えを事実無根だとしている。

被害者とされる女性はアンナ・アーディンとソフィア・ウィレンのふたりなのだが、アーディンは「不実な男」に対する「法的な復讐」を主張するフェミニストで、ふたりの女性と同時につきあう男を許さないという立場。しかも彼女のいとこにあたるマチアス・アーディンはスウェーデン軍の中佐で、アフガニスタン駐留軍の副官を務めた人物だという話が出てきた。

しかし、最も驚かせた事実は、​彼女が反カストロ/反コミュニストの団体と結びついている​ということ。この団体はアメリカ政府から資金援助を受けていて、CIA系の「自由キューバ同盟」と関係がある。彼女自身も国家転覆活動を理由にしてキューバを追放された過去があるようだ。彼女がキューバで接触していた「フェミニスト団体」は、CIA系のテロリスト、ルイス・ポサダと友好的な関係にあるとも言われている。

2010年9月19日にスウェーデンでは総選挙が予定されて、フレデリック・レインフェルト首相が率いる与党は苦戦が予想されていた。このレインフェルトがコンサルタントとして雇っていた人物はジョージ・W・ブッシュ米大統領の次席補佐官を務めた​カール・ローブ​だ。その選挙の結果、レインフェルトは2014年まで首相を務めることができた。

本ブログでは何度も指摘してきたが、アメリカは侵略戦争を始めるために偽旗作戦を仕組むことが少なくない。例えば、2003年のイラクに対する先制攻撃もそうだった。ジョージ・W・ブッシュ政権は大量破壊兵器を口実にしていたが、これは嘘。この主張を裏付ける証拠は存在せず、その主張を否定する証言、分析は存在していた。

イラク戦争の際、アメリカの情報機関や軍は収容所を設置、そこでは拷問が行われて死者も出ていた。イラクにあったアブ・グレイブ刑務所の実態も写真付きで明らかにされ、​刑務所の管理責任者だったジャニス・カルピンスキー准将はイスラエルから来たという尋問官に会ったとも話していた​。アブ・グレイブでの拷問を明るみに出したジャーナリストの情報源も、イラクにイスラエルの情報機関員がいることを確認したという。

歴史を振り返ると、情報と資金が流れて行く先に権力が生まれ、存在することがわかる。情報と資金を握った人間、あるいは勢力が支配者になるとも言えるだろう。支配者が「秘密保護」を主張、タックスヘイブン/オフショア市場を整備する理由もそこにある。逆に、民主主義を実現したいなら、公的な情報の全面公開とタックスヘイブン/オフショア市場の禁止は不可欠だ。

そうした意味で、支配者たちが隠す情報を明らかにする内部告発者の存在は重要であり、その内部告発を支援するWikiLeaksのような活動も必要だが、日頃、支配者たちが作った枠の中で「右」だ「左」だと言い合っている人々にとって、枠からはみ出た事実ほど目障りなものはないだろう。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201711140000/


68. 中川隆[-5886] koaQ7Jey 2017年11月16日 14:08:15 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]
2017.11.16
偽旗作戦に失敗、ダーイッシュは壊滅、クルドは思惑通り動かず、サウジとイスラエルが正体を現す
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201711150000/


中東で新たな戦争が勃発すると懸念する人が少なくない。言うまでもなく、その震源はアメリカ、イスラエル、そしてサウジアラビア。特にイスラエルとサウジアラビアの動きが注目されている。

ジョージ・W・ブッシュ政権は統合参謀本部の懸念を振り切り、アメリカ軍を中心とする連合軍を編成して2003年3月にイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒した。その後も破壊と殺戮は続き、今も終わっていない。

2006年10月にイギリスの医学雑誌「ランセット」が掲載したジョンズ・ホプキンズ大学とアル・ムスタンシリヤ大学の共同研究による調査報告によると、2003年3月から2006年7月までの間に65万4965名以上のイラク人が死亡、そのうち60万1027名は暴力行為(要するに戦闘)が原因だという。イギリスのORB(オピニオン・リサーチ・ビジネス)は2007年夏までに約100万人が殺されたという調査結果を公表している。イラクに親イスラエル体制を築くというプランAは達成できなかったが、「石器時代」にするというプランBは実現したと言えるだろう。

調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが2007年3月5日付けのニューヨーカー誌に書いたレポートによると、​アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟がシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作を開始​している。この作戦は1991年にポール・ウォルフォウィッツが口にしていたプランに符合する。イラクは破壊したので、次はシリアとイラン、そのイランの影響下にあるヒズボラということだ。(​3月​、​10月​)

工作の中心にはリチャード・チェイニー副大統領(当時。以下同じ)、国家安全保障担当副補佐官のエリオット・エイブラムス、イラク駐在のアメリカ大使で記事が出た直後に国連大使に就任したザルメイ・ハリルザドといったネオコン、そしてサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン王子がいた。

バンダル・ビン・スルタンはブッシュ家と緊密な関係にあり、「バンダル・ブッシュ」と呼ばれているほどだ。そのビン・スルタンも今年(2017年)11月4日からサウジアラビアで始まった粛清で拘束されたと伝えられている。その前、6月21日にはCIAとの関係が深いムハンマド・ビン・ナーイフも皇太子の座を追われている。

2003年にフセイン体制を破壊したブッシュ政権はイラクに親イスラエル体制を築こうとするが、失敗してしまう。その一方でイランとイラクが接近していく。

また、フセイン時代、イラク政府はアル・カイダ系武装集団を人権無視で取り締まっていたが、フセイン後のイラクではそうした武装集団が跋扈するようになる。AQI(イラクのアル・カイダ)はそうしたグループ。その後、AQIは弱小グループを吸収してMSC(ムジャヒディーン会議)を編成、2006年にはISI(イラクのイスラム国)の創設が宣言された。2010年5月からアブ・バクル・アル・バグダディがISIを率いている戦闘の地域をシリアへも拡大させた後、名称はダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)と呼ばれるようになった。

2011年2月にリビア、そして3月にシリアを三国同盟を中心とする勢力が侵略を開始、その手先としてアル・カイダ(CIAの訓練を受けたムジャヒディンの登録リスト)系武装集団が使われた。その中心メンバーはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団である。

その年の10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制が倒され、カダフィは惨殺された。その際、NATOと​アル・カイダ系武装集団LIFG​との連携があからさまになる。体制崩壊の直後、反カダフィ勢力の拠点だったベンガジの裁判所にアル・カイダの旗が掲げられたのだ。その映像は​YouTube​にアップロードされ、イギリスの​デイリー・メイル紙​も伝えている。

カダフィ体制が倒された後、侵略勢力は戦闘員と武器/兵器をシリアへ運ぶが、その拠点になったのベンガジのアメリカ領事館。2012年9月11日にその領事館が襲撃されてクリストファー・スティーブンス大使が殺されている。サラフィ主義者とムスリム同胞団の対立が関係しているとする情報もある。

リビアからシリアへの輸送工作の拠点がベンガジにあるCIAの施設で、アメリカ領事館も重要な役割を果たしていた。2012年9月10日にはクリストファー・スティーブンス大使がCIAの工作責任者と会談、その翌日には海運会社の代表と会っている。その直後にベンガジの領事館が襲撃されて大使は殺された。その当時、CIA長官だったのがデイビッド・ペトレイアスで、国務長官がヒラリー・クリントンだ。

襲撃の前月、​アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団を中心に編成された戦闘集団だと指摘する報告書をホワイトハウスに提出​している。報告書の中で、東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告されていた。この警告は2014年、ダーイッシュという形で現実になるが、報告書が作成された当時のDIA長官がマイケル・フリン中将である。

マイケル・フリンはドナルド・トランプ政権で国家安全保障補佐官に就任しするものの、2月13日に辞任させられた。ネオコンをはじめとする好戦派に嫌われた結果だが、その一因は2012年の報告書にあるだろう。

三国同盟を中心とする侵略勢力はシリアへもリビアと同じように直接的な軍事介入で体制を潰そうとする。そこで「政府軍による住民虐殺」や「化学兵器の使用」といった偽情報を流すがロシア政府によって直接的な軍事介入は阻止され、2015年9月30日からはシリア政府の要請でロシア軍が介入、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュを本当に攻撃する。その1年前からシリア政府の承諾を得ないまま空爆を始め、インフラを破壊、反政府軍を支援していたアメリカ軍とは根本的に違った。

アメリカはデリゾールでの戦闘にアル・カイダ系武装集団やダーイッシュの戦闘員を集中させるため、イラクのモスルやシリアのラッカなどからデリゾールへの移動を黙認してきたことは本ブログで何度も指摘した。​西側支配層の宣伝機関に堕しているBBCもこの事実を認める報道​をしている。アメリカとヨーロッパとの間で利害が衝突しはじめているようにも見える。

ここにきてアル・カイダ系武装集団やダーイッシュは壊滅寸前。そこでアメリカは侵略の手駒をクルドへ切り替えようとしたが、思惑通りには進まなかったようだ。そこでサウジアラビアやイスラエルの姿が浮上してきた。両国の政府高官は頻繁に行き来しているようで、AFPによると、今年9月にモハメド・ビン・サルマン皇太子もイスラエルを秘密裏に訪問したとイスラエルの高官は語っている。トルコ政府によると、アメリカ軍はシリア北部に13基地を建設済みで、​ジム・マティス国防長官はダーイシュを口実にしてシリア占領を続ける意思​を示している。

イスラエルとサウジアラビアだけでイランやヒズボラとの戦争を始めることは難しいと考えられ、アメリカを引き込もうとしているはず。マティスの発言はイスラエルやサウジアラビアの意向に沿うものだと言えるだろう。サウジアラビアで粛清が始まる数日前、ドナルド・トランプの義理の息子にあたるユダヤ系のジャレッド・クシュナーがサウジアラビアを訪問した事実も興味深い。世界はサウジアラビアとイスラエルの動向に注目している。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201711150000/


69. 中川隆[-5793] koaQ7Jey 2018年1月28日 19:07:34 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]
2018.01.28
シリア侵略に失敗した米国は新たな武装集団を編成中だが、それに反発したトルコが軍事作戦


ここにきてアフガニスタンでアル・カイダ系武装集団やダーイッシュの攻撃が激しくなっているともいうが、​本ブログでも指摘​したように、ロシア軍の攻撃で敗走していた戦闘員をアメリカの軍や情報機関は救出、その一部をアフガニスタンへ運んだと報道されている。アフガニスタンには希少金属が存在、しかも近くを中国が推進する一帯一路のうち、陸のシルクロードが通っている。資源を支配し、中国の戦略を壊すために傭兵を使うことになるのだろう。

アメリカの好戦派は遅くとも1970年代の終盤からイスラエルやサウジアラビアと手を組み、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とする戦闘集団を編成している。CIAから訓練を受けた戦闘員のリストがアル・カイダだということは本ブログで再三再四書いてきた通り。リビアやシリアへの侵略でもそうしたリストを利用して編成された戦闘集団が利用されてきた。ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)もそうした集団だ。

しかし、2015年9月30日にシリア政府の要請で軍事介入したロシア軍によって壊滅的な打撃を受け、アメリカは新たにクルド勢力を利用して戦闘集団を編成、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュの生き残りが合流している。そうした戦闘集団の一部でアメリカは国境治安軍を編成する意向のようだが、そこへ1万から1万5000名の元ジハード戦闘員が参加しているとも伝えられている。

1980年代にアメリカのネオコン(シオニスト)はイラクのサダム・フセイン体制を破壊するべきだと主張、この体制をペルシャ湾岸産油国の防波堤だと認識していた非ネオコン派(ジョージ・H・W・ブッシュ、ジェームズ・ベイカー、ロバート・ゲイツなど)と対立している。ネオコンの戦略はイラクに親イスラエル派の傀儡体制を樹立、トルコ、イラク、ヨルダンの親イスラエル国帯を築いてシリアとイランを分断するというものだった。

フセイン大統領もそうした視点からイランと戦ったが、湾岸産油国は戦費について考慮しようとしなかった。しかもイラクとクウェートは石油採掘をめぐって対立、交渉が進展しないことに業を煮やしたイラクは1990年8月にクウェートへ軍事侵攻した。その直前、アメリカ政府は軍事侵攻を黙認するかのようなサインを出していたが、翌年1月にアメリカ軍主導の軍隊がイラクへ攻め込んでいる。

ここまではネオコンと非ネオコンの間に対立はなかったようだが、ブッシュ大統領はサダム・フセイン体制を倒さないまま停戦しています。そこで起こったのがポール・ウォルフォウィッツ国防次官などネオコン。そしてウォルフォウィッツの口からイラク、シリア、イランを殲滅するという言葉が出てくる。

ネオコンに担がれたジョージ・W・ブッシュ大統領(HWの息子)は2003年3月にイラクを先制攻撃してフセイン政権を倒し、フセイン本人は処刑した。次にシリアへ攻め込むのはネオコンの戦略だが、ここでロシアが立ち塞がったわけだ。シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すためにアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟を中心とする勢力が送り込んだ傭兵部隊は崩壊、新たな手先としてクルドを軸にした戦闘集団を編成中だが、そのプランをトルコ政府が叩いている。

シリア政府はクルドをシリア人だとしてトルコの軍事攻撃を非難しているが、ロシア政府は黙認している。裏で話が付いている可能性があるだろう。イラクのクルドはムラー・バルザニとマスード・バルザニの親子によって支配されてきたが、ムラーはイスラエルの情報機関、モサドのオフィサーだと言われる人物。イラクのクルドは遅くとも1960年代からイスラエルの影響下にあった。マスードも同じだろうと見られている。

そのマスードが主導してイラクのクルド組織は昨年(2017年)9月25日に独立を問う住民投票を実施、圧倒的な90%以上が賛成したとされているが、重要な油田があるキルクークが反マスード派クルドとイラク軍によって制圧されてしまい、破綻した。シリアのクルドもアメリカへの従属で意思が統一されていない可能性がある。イラクで反マスード派クルドがアメリカやイスラエルに反旗を翻した理由のひとつは油田を押さえても石油を消費国へ運び出すことが困難だということにある。シリアでも状況は同じだ。クルドの一部はトルコの攻撃を押さえるようにロシアへ働きかけているとも伝えられている。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201801280000/


70. 中川隆[-5582] koaQ7Jey 2018年2月27日 10:30:01 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]

アメリカをはじめとする西側の政府や有力メディアは嘘の上に嘘を重ねてきた結果、ストーリーに整合性を持たせることが不可能になったようで、ありえない話を平然と繰り返すようになってきました。

第2次世界大戦で日本が降伏してから1年近くを経た1946年8月、伊丹万作は「戦争責任者の問題」と題した文章の中で、戦争が本格化すると「日本人全体が夢中になって互に騙したり騙されたりしていた」と指摘、「このことは、戦争中の末端行政の現れ方や、新聞報道の愚劣さや、ラジオの馬鹿々々しさや、さては、町会、隣組、警防団、婦人会といったような民間の組織がいかに熱心に且つ自発的に騙す側に協力していたかを思い出してみれば直ぐに判ることである」と書いています。似た状況になっていないでしょうか?


1991年12月にソ連が消滅し、ロシアが西側巨大資本の属国になるとアメリカの好戦派は自分たちが冷戦に勝利し、アメリカが唯一の超大国になったと認識、世界制覇に向かって侵略戦争を始めました。そのプランが1992年2月に作成された国防総省のDPG草案、いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンです。


その戦争はユーゴスラビア解体から始まり、旧ソ連圏をカラー革命で制圧、ウクライナをクーデターで手に入れ、自立の道を歩み始めていたリビアを無法地帯に変え、そしてネオコンの予定通りにイラクを破壊、シリアを侵略、そしてイランを脅していますが、最終目標はロシアでしょう。イギリスの世界制覇計画を引き継いだアメリカはロシアを支配することが世界制覇のカギを握っていると考えています。


おそらく、1991年12月の時点でアメリカの好戦派は世界制覇をほぼ実現したと考えたでしょうが、21世紀に入ってロシアは再独立、ネオコンの作成した日程表の通りにはいかなくなっています。それを元に戻すためにはロシアを屈服させるか破壊するしかありません。そのためにはロシアの戦略的パートナーになった中国も屈服させるか破壊する必要があります。


アメリカはすでに経済活動が破綻、基軸通貨であるドルを発行する特権を利用、それを循環させる仕組みを作り上げて支配システムを維持しています。この循環システムが機能しなくなればアメリカの支配システムも機能しなくなりますが、ロシアと中国はドルを基軸通貨の地位から引きずり下ろそうとしているように見えます。


それに対し、アメリカの支配層は巨大資本が国を支配する体制を築こうとしています。そうした体制を実現するために持ち出されたのがISDS(国家投資家紛争処理)条項で、それを含むTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)の3点セットを彼らは簡単にあきらめないでしょう。実際、安倍晋三政権はTPPに固執しています。


巨大資本のカネ儲けにとって労働者の権利は不必要なわけで、安倍政権が「働き方改革関連法案」を成立させて裁量労働制を拡大、つまり労働環境の劣悪化を図るのは必然だといえるでしょう。そうした政策を後押ししてきたのが日本のマスコミでした。マスコミの姿勢は一貫しています。私的権力が国を上回る力を持つ体制を築く、つまりファシズム化の推進です。


そうした方向へ世界を導くため、日本を含む西側の有力メディアは幻影を映し出してきましたが、それも限界が近づいています。インターネット上で検閲が強化されているのはそのためでしょう。世界は岐路に立っています。未来を切り開くためには事実を知ることが必要です。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201802270000/


71. 中川隆[-5449] koaQ7Jey 2018年3月11日 10:23:40 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]
2018.03.10
イラクで破壊と殺戮を始めたときと同じように嘘でシリアを破壊しようと必死の侵略勢力(その1)

​ダマスカスを砲撃する拠点になってきた東グータで政府軍の制圧作戦が進んでいる。アメリカ国務省のヘザー・ナウアート報道官は2月上旬にシリア政府軍が化学兵器を使用したと主張、それを口実にしてアメリカ、イギリス、フランスはダマスカスを空爆する姿勢を見せていたが、アメリカ国防省のダナ・ホワイト報道官はそうしたことを示す証拠を見たことがないと発言、ジェームズ・マティス国防長官は化学兵器を政府軍が使ったとするNGOや武装勢力の主張を裏付ける証拠は確認していないとしている。


シリアの戦闘に関して西側メディアがしばしば情報源として利用するNGOはSOHR(シリア人権監視所)やシリア市民防衛(白ヘル)。


SOHRはラミ・アブドゥラーマン(本名オッサマ・スレイマン)なる人物がイギリスで個人的に設置した団体で、スタッフはひとりだと見られている。その情報源は不明だが、シリアで戦争が始まった2011年にスレイマンはシリア反体制派の代表としてウィリアム・ヘイグ元英外相と会っていると報道されている。米英の情報機関と連携しているとする人もいる。


白ヘルは元イギリス軍将校のジャームズ・ル・メシュリエによってイギリスで創設された団体。この人物は傭兵会社のブラックウォーター(後にXe、さらにアカデミへ名称変更)で働いた経験がある。


白ヘルのメンバーを2013年から訓練しているのはイギリスの安全保障コンサルタントだというジェームズ・ル・メスリエだが、白ヘルなる団体を立案し、動かしているのはシリア・キャンペーンなる団体。この団体を立案したのは広告会社のパーパス。この会社はアバーズというキャンペーン会社からスピンオフしたのだという。


そのアバーズはリビアに飛行禁止空域を設定するように主張、その主張が実現してアメリカ、イギリス、フランス、サウジアラビア、カタールなど侵略国連合は制空権を握り、NATOの航空兵力とアル・カイダ系武装集団の地上軍による連携でムアンマル・アル・カダフィ体制を倒し、事実上、国を消滅させてしまった。


西側の有力メディアが伝える​白ヘルの姿は演技​にすぎず、現地の住民は白ヘルが彼らを助けているという話を否定、​赤新月社(西側の赤十字に相当)のメンバー​は白ヘルが東アレッポにいなかったと語っている。白ヘルがアル・カイダ系武装集団と一心同体の関係にあることも報告されている。


2011年3月にシリアで戦争が始まった当時から政府軍と戦っているのは外国から侵入した傭兵。雇い主はアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟にイギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、パイプラインの建設をシリアに拒否されたカタール、そしてトルコだ。


シリアより1カ月早く戦争が始まっていたリビアも構図は基本的に同じで、その年の10月にムアンマル・アル・カダフィ体制が倒されると、リビアからシリアへアル・カイダ系の戦闘員が武器/兵器と一緒にシリアへ運ばれている。そうした工作の拠点になっていたのがベンガジにあったCIAの施設で、アメリカ領事館も拠点のひとつだった。工作の黒幕はCIAと国務省ということだが、当時のCIA長官はデイビッド・ペトレイアスであり、国務長官はヒラリー・クリントンだ。


ネオコンは遅くとも1991年にイラク、シリア、イランを殲滅すると口にし、2001年9月11日の攻撃から10日ほど後にはリビアも攻撃予定国リストに載っていた。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官が2007年に語っている。(​3月​、​10月​)
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201803090000/


イラクで破壊と殺戮を始めたときと同じように嘘でシリアを破壊しようと必死の侵略勢力(その2)


​イラクを先制攻撃したときは大量破壊兵器という作り話を口実にし、シリアやリビアを侵略したときはカダフィやバシャール・アル・アサドという独裁者が民主化運動を暴力的に弾圧、内戦が始まったと説明していた。


そうしたストーリーを最もらしくする話を流していたのがシリア系イギリス人のダニー・デイエムやSOHR(シリア人権監視所)の情報だが、デイエムの発信する情報のいかがわしさは2012年3月1日に発覚している。この日、​ダニーや彼の仲間が「シリア軍の攻撃」を演出する様子が流出​したのだ。つまり彼の「現地報告」はヤラセだった。


2011年3月にそうした市民の蜂起があり、多くの人々が殺されたという西側の政府や有力メディアの宣伝を否定する人もいた。例えば、2010年からシリアで活動を続けているベルギーの修道院の​ダニエル・マエ神父​もそうした蜂起はなかったと語っている。


2012年5月にホムスで住民が虐殺されるると、反政府勢力や西側の政府やメディアはシリア政府軍が実行したと宣伝、これを口実にしてNATOは軍事侵攻を企んだが、宣伝内容は事実と符合せず、すぐに嘘だとばれてしまう。その嘘を明らかにしたひとりが現地を調査した東方カトリックの修道院長だった。


その修道院長の報告をローマ教皇庁の通信社が掲載したが、その中で反政府軍のサラフィ主義者や外国人傭兵が住民を殺したとしている。その修道院長は「​もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。​」と語っている。また、現地で宗教活動を続けてきたキリスト教の聖職者、​マザー・アグネス・マリアム​も外国からの干渉が事態を悪化させていると批判していた。シリアにおける住民殺戮の責任を西側の有力メディアも免れないと言っているのだ。


アル・カイダ系武装勢力の存在を否定できなくなると、バラク・オバマ政権は「穏健派」を支援していると主張するのだが、アメリカ軍の情報機関DIAもこれを否定する報告を2012年8月にホワイトハウスへ提出している。​反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIであり、オバマ政権が主張するところの「穏健派」は事実上、存在しない​というわけだ。


また、オバマ政権が政策を変更しなかったならば、シリアの東部(ハサカやデリゾール)にはサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告、それは2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実のものになった。この報告書が書かれた当時のDIA局長がマイケル・フリン中将だ。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201803100000/


イラクで破壊と殺戮を始めたときと同じように嘘でシリアを破壊しようと必死の侵略勢力(その3)


​DIAが穏健派の存在を否定する報告をホワイトハウスに出した2012年8月、バラク・オバマ大統領はNATO軍/アメリカ軍による直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だと宣言している。


2012年12月になると国務長官だったヒラリー・クリントンがこの宣伝に加わり、自暴自棄になったシリアのバシャール・アル・アサド大統領が化学兵器を使う可能性があると主張する。翌年の1月になると、アメリカ政府はシリアでの化学兵器の使用を許可、その責任をシリア政府へ押しつけてアサド体制を転覆させるというプランが存在するとイギリスのデイリー・メール紙が報道した。


そして2013年3月、ダーイッシュがラッカを制圧した頃にアレッポで化学兵器が使われ、西側はシリア政府を非難したが、この化学兵器話に対する疑問はすぐに噴出、5月には国連の調査官だったカーラ・デル・ポンテが化学兵器を使用したのは反政府軍だと語っている。この年には8月にも化学兵器が使用され、アメリカは9月上旬に攻撃すると見られていたが、地中海から発射されたミサイルが海中に墜落、軍事侵攻はなかった。その件も、シリア政府が化学兵器を使用したことを否定する報道、分析が相次いだ。


コントラの麻薬取引を明るみに出したことで有名なジャーナリスト、​ロバート・パリー​によると、4月6日にポンペオCIA長官は分析部門の評価に基づき、致死性の毒ガスが環境中に放出された事件にバシャール・アル・アサド大統領は責任がなさそうだとトランプ大統領に説明していたと彼の情報源は語り、その情報を知った上でトランプ大統領はロシアとの核戦争を招きかねない攻撃を命令したという。6月25日には調査ジャーナリストの​シーモア・ハーシュ​もパリーと同じ話を記事にしている。化学兵器の使用にアサド政権は無関係だとするCIAの報告は無視されたということだ。


アメリカが化学兵器の話を持ち出すたびに嘘だということが指摘されてきたが、それでも繰り返すのがアメリカの支配層。それを信じる人がいるとするならば、思考力がないのか信じたいという欲求がよほど強いのだろう。


ところで、グータにいる戦闘集団はいくつかのグループに分かれているようだ。これは侵略の黒幕になっていた国が2015年9月30日にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入してからバラバラになってきた影響である。主なものはトルコやサウジアラビアを後ろ盾とするアーラー・アル-シャム、アル・カイダ系のアル・ヌスラ、カタール、サウジアラビア、トルコ、アメリカを後ろ盾にしていたFSA(自由シリア軍)。本ブログでは何度も書いてきたが、アル・カイダとは、​ロビン・クック元英外相が指摘​したように、CIAから軍事訓練を受けたムジャヒディンのコンピュータ・ファイルだ。


これまでアメリカ軍はシリア政府軍が要衝を攻略しそうになると攻撃、2月前半にはロシア人傭兵を空爆で殺している。ロシアの正規軍を攻撃すると反撃が予想されるため、傭兵に的を絞ったようだが、その月の下旬にはロシア軍の地上部隊がシリアへ入り、グータ攻略戦に加わっているとする情報もある。グータでアメリカ軍の動きが見られないのはそうした影響かもしれない。


今年3月1日、​ウラジミル・プーチン露大統領がロシア連邦議会で行った演説​もアメリカに対するプレッシャーになっている可能性もある。その演説でプーチン大統領は、ロシアやその友好国が存亡の機を招くような攻撃を受けた場合、ロシア軍は反撃すると宣言したのだ。原子力推進の低空で飛行するステルス・ミサイル、海底1万メートルを時速185キロメートルで航行、射程距離は1万キロに達する遠隔操作が可能な魚雷、マッハ20で飛行する大陸間ミサイルRS-26ルビエシュを含む兵器で反撃すると宣言、レーザー兵器の存在も明らかにした。ロシアの反撃をアメリカの防空システムは阻止できず、アメリカ本土も安全ではないことを示したのである。アメリカには自分たちが攻撃されることはないと思い込んでいる人がいるようで、そうした人々に目を覚まさせることもプーチンは狙ったと見られている。


イラクを破壊するために大量破壊兵器という作り話を利用したように、化学兵器を利用してアメリカ、イギリス、フランス、サウジアラビア、イスラエルなどがシリアに対する本格的な軍事侵略を始めた場合、ロシア軍は地球規模の反撃に出る可能性がある。勿論、イランが攻撃された場合も同じだ。(了)
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201803100001/


72. 中川隆[-10488] koaQ7Jey 2018年4月19日 10:44:51 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-11248]
後戻り不可能な非核化 2018-04-18

トランプ大統領は、昨日、米朝首脳会談に先立ち、「極めてハイレベル」の直接対話を既に開始したことを明らかにしました。


 ところで、先日のシリアへの軍事攻撃決断には、新たに国家安全保障問題担当の補佐官に就任したジョン・ボルトン氏が影響を与えたと言われています。


 ボルトン補佐官といえば「超タカ派」として有名ですが、核・ミサイル開発を止めようとしない北朝鮮に対し「先制攻撃」を唱えています。


 日本のマスコミは、米朝首脳会談開催について、
「これで北朝鮮が非核化し、平和が来る」
 的な、まさにお花畑の報道を繰り返していますが、現実がそれほど甘いはずがありません。

 そもそも、北朝鮮が核を「放棄」するなど、到底、考えられません。また、なぜトランプ大統領がこのタイミングで、ボルトン氏を大統領補佐官に据えたのか。


 先日の、チャンネル桜の討論、


【討論】激変する世界の真実[桜H30/4/7]
https://youtu.be/16qNbZU3yuc
 
 で、西岡先生が解説して下さいましたが、アメリカは北朝鮮に対し「リビア方式」の核放棄を要求すると考えられています。


 と言いますか、新補佐官のボルトン氏が、かねてから北朝鮮に関し「リビア方式」による非核化を唱えてきたわけです。


 2003年、リビアのカダフィ大佐は、アメリカおよびイギリスとの秘密交渉を経て、核を含む大量破壊兵器の放棄を宣言。IAEAの核査察を受け入れ(西岡先生によると、CIAやMI6も受け入れたそうです)、核開発関連の全ての情報を公開。弾道ミサイルも廃棄しました。


 まさに「後戻り不可能な非核化」ではあったのですが、アラブの春を経て、カダフィ大佐は欧米が支援する反政府勢力に殺害され、リビアは大混乱に陥ります。


 北朝鮮の労働新聞は、
「米国の誘惑と軍事的恐喝によって銃床を下ろすことが、どれほど残酷な結果を招くかはイラクとリビアの悲劇的現実が物語る」
 と、指摘しています。


 カダフィ大佐の最期を知る金正恩が、「リビア方式」の核放棄に応じるとは、到底、思えません。逆に、アメリカ側は「後戻り不可能な非核化」以外は受け入れないでしょう。


 今後数か月で全てが決まる可能性が高いわけですが、事態が「朝鮮半島の安定」に落ち着くことは、まずありないと感がるべきです。
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12369259341.html


73. 中川隆[-13607] koaQ7Jey 2018年9月05日 13:04:52 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-18232] 報告

 NATO軍が1999年にユーゴスラビアを空爆する前には人権侵害、イラクを攻撃する前には大量破壊兵器といった作り話が流され、リビアやシリアでは民主化運動という偽情報が宣伝された。当然、西側の有力メディアもこうした嘘を熟知していたはず。そして化学兵器話。この嘘を使う理由は、今のところ、そのストーリーが最も効果的だと考えているからだろう。


 西側で生活している人びとにとってアメリカは支配者であり、アメリカに逆らうと不利益を被る。目先の利益を考えれば、「賢い人」はアメリカに従う。そこで、アメリカに従うことを正当化する理由を求め、そうしたものがあれば飛びつく。そのひとつが化学兵器話だ。


 もしアメリカの支配層が敗北を認め、世界制覇プランを放棄した場合、自分たちが戦争犯罪人として処罰されると恐れている可能性はある。


 ロバート・マクナマラとカーティス・ルメイは第2次世界大戦の終盤、日本の67都市を焼夷弾で焼き尽くした作戦を作成した空軍の中心メンバー。マクナマラは大戦後、フォード自動車の社長を経て1961年から68年にかけてアメリカの国務長官を務めた。ルメイはSAC(戦略空軍総司令部)を経て1961年から65年にかけて空軍参謀長を務めている。マクナマラによると、ルメイは自分たちが行った空爆について、戦争に負けたなら戦争犯罪人として処罰されると語っていた。


 1991年12月にソ連が消滅すると、ネオコンをはじめとするアメリカの好戦派は自国が冷戦に勝利し、唯一の超大国になったと認識して侵略戦争を始めた。冷戦の終結で平和な時代になると考えた人びとは冷戦の本質を見誤っていたのだ。


 ユーゴスラビアから始まり、アフガニスタンやイラクを軍事侵攻、リビア、シリア、ウクライナはアル・カイダ系武装集団やネオ・ナチを傭兵として使ってアメリカは侵略してきた。ジョージアによる南オセチアへの奇襲攻撃はアメリカとイスラエルが黒幕だ。


 こうした侵略を正当化するため、有力メディアを使って偽情報を流してきたが、本ブログでも説明してきたように、その嘘は見え見え。アメリカの好戦派はマクナマラやルメイと同じことを考えているだろう。つまり、負けるわけにはいかない。負けるなら人類も道連れだと考えている可能性は小さくない。(了)
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201809040000/

74. 中川隆[-13622] koaQ7Jey 2018年9月07日 18:35:24 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-18307] 報告

2018.09.07
シリアでの戦争を「内戦」だと言い張る侵略勢力(その1)



 ある国のあり方を決めるのは基本的にその国の国民であるべきであり、他の国が別の国のあり方を強制するべきでないとされている。内政不干渉の原則だが、それを理解できない人たちがいる。その代表格がアメリカの支配層だ。自分たちを特別の存在だと信じている。


 自分たちの意に沿わない体制、政権をあらゆる手段、つまり買収、恫喝、宣伝、要人暗殺、経済戦争、クーデター、軍事侵略などによって倒してきた。シリアもそのターゲットのひとつ。そうした事実を誤魔化すための呪文のひとつが「内戦」にほかならない。

 アメリカ支配層の中でも特に侵略志向の強い勢力がネオコン。1970年代半ば、ジェラルド・フォード政権の時代に台頭した親イスラエル派なのだが、台頭の背景にはキリスト教の一派が存在していた。イエスの再臨を実現するためにはイスラエルの存在が不可欠だと信じる福音主義者(聖書根本主義者)だ。

 ネオコンは1980年代からイラクに親イスラエル政権を成立させようとしていた。そのためにサダム・フセインを排除しようとする。彼らにとって1990年8月のイラク軍によるクウェート侵攻は願ってもないチャンスだったはずだ。

 その年の10月、イラクに対する攻撃を正当化するため、アメリカ下院の人権会議でイラク軍の残虐性をひとりの少女「ナイラ」が証言した。アル・イダー病院でイラク兵が赤ん坊を保育器の中から出して冷たい床に放置、赤ん坊は死亡したと涙を流しながら訴えたのだが、この話には大きな問題があった。この「ナイラ」はアメリカ駐在のクウェート大使の娘で、イラク軍が攻め込んだときにクウェートにはいなかったのである。この証言を演出したのは広告会社のヒル・アンド・ノールトン。これ以降、侵略の下地を作るため、アメリカ支配層は広告の手法を盛んに使い始めた。

 こうした工作が功を奏し、アメリカ主導軍は1991年1月にイラクへ軍事侵攻する。ネオコンはフセインを排除できると喜んだのだが、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領は排除しないまま停戦してしまう。その決定を知ったネオコンは怒るが、そのひとりが国防次官だったポール・ウォルフォウィッツ。彼はシリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると口にしたという。これは​欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の元最高司令官、ウェズリー・クラークの話​だ。


 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され(9/11)、人びとが茫然自失の状態になったことを利用してジョージ・W・ブッシュ政権は攻撃と無関係なアフタにスタンとイラクを先制攻撃した。

 アフガニスタンは石油のパイプライン利権が関係していたが、イラクは1991年の段階でネオコンが決めていたターゲット国。現在、アメリカ支配層がアフガニスタンに執着している理由のひとつは中国が進める一帯一路を潰すことにある。

 9/11から10日ほど後、クラークは統合参謀本部でイラクを攻撃するという話をスタッフから聞く。その6週間ほど後、国防長官の周辺で攻撃予定国のリストが作成されていたことをやはり統合参謀本部で知らされている。そこに載っていた国はイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイラン。いずれも911とは無関係の国である。リストのトップに書かれているイラクは2003年3月に先制攻撃された。(​3月​、​10月​)(つづく
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201809070001/

75. 中川隆[-13629] koaQ7Jey 2018年9月08日 08:02:59 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-18328] 報告

2018.09.08
シリアでの戦争を「内戦」だと言い張る侵略勢力(その2)


 1991年はCIA人脈がKGBの中枢と手を組み、ソ連でクーデターを成功させた年だ。これは本ブログでも書いたことがある。ハンマー作戦だ。その勢力に操られたボリス・エリツィンは1991年12月にソ連を勝手に消滅させてしまった。


 ソ連が消滅したことでネオコンたちはアメリカが唯一の超大国になったと認識、自由に世界を侵略できる条件が整ったと考え、単独行動主義へ傾斜、国連を無視するようになる。そして​1992年2月、国防総省のDPG草案という形で世界制覇プランを作成​した。旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジアなど潜在的なライバルを押さえ込むと同時にエネルギー資源を支配しようと考えた。中国が残された中の国で最も警戒するべき対象と考えられたことから、東アジア重視が打ち出される。


 このプランはウォルフォウィッツ次官を中心に作成されたことからウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれているが、その基本的なアイデアは国防総省内部のシンクタンク、ONA(ネット評価室)で室長を務めていたアンドリュー・マーシャルが考えたと言われている。冷戦時代、マーシャルはソ連の脅威を誇張した情報を流してCIAの分析部門と対立していた人物で、ソ連消滅を受けて中国脅威論を叫び始めた。

 ブッシュ・ジュニア政権の終盤、アメリカ支配層の想定と違ってロシアの軍事力が強いことが判明、バラク・オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を出してムスリム同胞団を使った侵略計画を承認した。そして「アラブの春」が始まる。

 この計画に基づき、2011年2月4日にNATOはカイロでリビアとシリアの体制転覆に関する会議を開き、2月15日にはリビアで侵略戦争を開始、3月15日にはシリアでも体制転覆を目指して戦争を始めた。この侵略戦争でアメリカ、イスラエル、サウジアラビア、イギリス、フランス、トルコ、カタールが地上兵力として使ったのがムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中心とするジハード傭兵である。その後、様々なタグがつけられるが、基本構造に変化はない。

 シリアを侵略する口実として「民主化運動の弾圧」が掲げられていたが、2010年シリアで活動を続けているベルギーの修道院の​ダニエル・マエ神父​は住民による反政府蜂起はなかったと語っている。したがって、政府による弾圧もなかった。これは現地を取材したジャーナリストも指摘している。


 「民主化運動の弾圧」という幻影を信じさせるために使われたのがシリア系イギリス人のダニー・デイエムやSOHR(シリア人権監視所)。その話に飛びつき、アメリカの侵略を受け入れた人もいるようだ。

 ところが、デイエムの発信する情報が信頼できないことを示す映像が2012年3月1日にインターネット上へアップロードされた。この日、ダニーや彼の仲間が「シリア軍の攻撃」を演出する様子が流出したのだ。つまり彼の「現地報告」はヤラセだった。

 2012年5月にシリアのホムスで住民が虐殺されるると、西側の政府やメディアはジハード傭兵と同じように、シリア政府軍が実行したと宣伝する。これを口実にしてNATOは軍事侵攻を企んだものの、宣伝内容が事実と符合せず、すぐに嘘だとばれてしまう。その嘘を明らかにしたひとりが現地を調査した東方カトリックの修道院長だった。

 現地を調査した​ローマ教皇庁のフランス人司教​は侵略軍のサラフィ主義者や外国人傭兵が住民を虐殺したと報告、それを教皇庁の通信社が伝えた。その司教は「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」と書いている。

 また、現地で宗教活動を続けてきたキリスト教の聖職者、​マザー・アグネス・マリアム​も外国からの干渉が事態を悪化させていると批判していた。シリアにおける住民殺戮の責任を西側の有力メディアも免れないと言っているのだ。(つづく)
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201809080000/

76. 中川隆[-13641] koaQ7Jey 2018年9月08日 12:47:08 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-18361] 報告
2018.09.08
シリアでの戦争を「内戦」だと言い張る侵略勢力(その3)



 アル・カイダ系武装勢力による殺戮と破壊を否定できなくなると、バラク・オバマ政権は「穏健派」を支援していると主張しはじめる。が、これはアメリカ軍の情報機関DIAによって否定された。


 ​DIA​が2012年8月にホワイトハウスへ提出された報告の中で、オバマ大統領の主張を否定したのだ。反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIだとしている。


 しかも、オバマ政権が政策を変更しなかったならば、シリアの東部(ハサカやデリゾール)にはサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるともDIAは警告、それは2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実のものになった。この報告書が書かれた当時のDIA局長がマイケル・フリン中将だ。

 ダーイッシュは2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧、その際にトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねてパレードしている。そうした動きを当然、アメリカ軍は偵察衛星、偵察機、通信傍受、地上の情報網などでつかんでいたはず。ところが傍観していた。こうした展開になったことからフリンDIA局長は他の政府スタッフと激しく対立したようで、その年の8月に退役を強いられる。

 フリンは2015年8月に​アル・ジャジーラの番組​へ出演、司会者からダーイッシュの出現について質問され、自分たちの任務は提出される情報の正確さをできるだけ高めることにあり、情報に基づく政策の決定はバラク・オバマ大統領が行うと答えている。つまり、オバマ政権の決定がダーイッシュの勢力を拡大させたというわけだ。


 アメリカ自身やイスラエルについては言及していないものの、ジハード傭兵をサウジアラビアやカタールなどが雇ってきたことはアメリカの政府高官や軍人も認めていた。

 例えば、2014年9月、空軍の​トーマス・マッキナニー​中将はアメリカがダーイッシュを作る手助けしたとテレビで発言、​マーティン・デンプシー​統合参謀本部議長(当時)はアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で発言、同年10月には​ジョー・バイデン​米副大統領がハーバーバード大学で中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると語り、2015年には​ウェズリー・クラーク​元欧州連合軍最高司令官もアメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたと述べている。


 そしてオバマ大統領は2015年に戦争体制へ入る。上院軍事委員会で直接的な軍事介入に慎重な姿勢を示していたチャック・ヘーゲル国防長官とマーチン・デンプシー統合参謀本部議長を追い出したのだ。ヘーゲルは2015年2月に解任、デンプシーは同年9月に再任拒否されている。

 その直後、9月30日にロシア軍はシリア政府の要請を受けて軍事介入、それ以降、ジハード傭兵の占領地は急速に縮小していく。おそらく2015年の後半にオバマ政権はアメリカ主導軍にシリアを侵略させるつもりだったのだろうが、これはロシア軍の介入で難しくなった。

 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカ政府が軍事侵攻を正当化する口実として化学兵器を言い始めたのは2012年8月。シリアに対する直接的な直接的な軍事介入のレッド・ラインは生物化学兵器の使用だと宣言したのだ。DIAがホワイトハウスへ報告書をだしたのと同じ月だ。

 2012年12月になるとヒラリー・クリントン国務長官がシリアのバシャール・アル・アサド大統領は化学兵器を使う可能性があると語り、13年1月29日付けのデイリー・メール紙には、オバマ政権がシリアで化学兵器を使ってその責任をアサド政権に押しつけようとしているとする記事が載る。イギリスの軍事関連企業ブリタム防衛の社内電子メールに、そうした作戦をオバマ大統領が許可したという記述があるというのだ。(同紙のサイトからこの記事はすぐに削除された)

 2013年には3月と8月に政府軍が化学兵器を使ったという話が流れるが、いずれ無嘘であることがばれている。これは本ブログでも何度か書いた。9月の上旬にアメリカ主導軍はシリアに対するミサイル攻撃を始めた可能性が高いのだが、これは失敗に終わった。ECM(電子対抗手段)が使われたと言われている。

 そして登場してきたのが「残虐性」を誇示するダーイッシュ。そのダーイッシュを叩くという名目でアメリカ軍はシリア政府の承認を受けずに空爆を開始、シリアのインフラを破壊、後にシリア政府軍に対する攻撃も始めた。ロシア軍が介入するまでの約1年間、ジハード傭兵の支配地は拡大していった。

 ところが、ロシア軍の介入で戦況は一変。昨年(2017年)7月、ダーイッシュの問題に関するアメリカの大統領特使、​ブレット・マクガーク​はイドリブについて、9/11からアル・カイダの最も大きな避難場所だと表現している。このイドリブをアメリカ支配層は死守しようとしている。


 ジハード傭兵が敗走する中、アメリア軍はユーフラテス川の北側に軍事基地を次々と建設、今では20カ所を上回っている。最近も油田地帯であるデリゾールで新しい基地を建設していると伝えられた。アメリカ、イギリス、フランスの軍隊は地上部隊をシリアへ入れて占領している。これは本ブログで繰り返し書いてきた。

 シリアで続いている戦争はアメリカなどの国々による侵略であり、「内戦」ではない。この戦争を「内戦」と呼ぶことは侵略戦争を支援することに等しい。かつて日本の東アジア侵略を「大東亜共栄園の建設」という名目で正当化していたが、それと大差はないと言える。


 アメリカとクルドとの関係には不明な点があるのだが、少なくとも当初、アメリカ支配層はクルドを使い、シリアの北部地方からイラクやイランにかけての地域に「満州国」を建設しようとしていた。アフリカや中東における略奪なしに欧米は「文明」を維持できない。(了)
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201809080002/

77. 中川隆[-13644] koaQ7Jey 2018年9月11日 18:23:35 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-18436] 報告

2018年09月11日
リアル過ぎてドラマに出来ないストーリー / 9/11の不都合な事実

テロで儲けたユダヤ人
Homeland 3Homeland 2

(左: 『ホームランド』で主役を果たしたダミアン・ルイストクレア・デインズ / 右: 『ホームランド』でCIA局員を演じた二人)

  今世紀に作られた映画やTVドラマでは、テロリズムを扱った作品が本当に多い。前世紀ではソ連のスパイが定番の悪役となっていたが、冷戦終結後、ロシア人の悪党に代わって中東アジアのテロリストが代表的な悪役となった。以前、当ブロクで紹介したアメリカの人気TVドラマ『ホームランド(Homeland)』には、狡猾なムスリム・テロリストが現れ、憎いアメリカを標的とする破壊活動が描かれている。9/11の同時多発テロを経験した西歐系アメリカ人は、容姿の違うアラブ人やパキスタン人に恐怖を覚え、テロを未然に防ぐためなら少々手荒な処置もやむを得ないと考えるようになった。それゆえ、テロリストに敢然と立ち向かうジャック・バウアーを描いたドラマ、『24』などがヒットするのだろう。

  第8シーズンを迎えようとする『ホームランド』も同じで、元CIA局員のキャリー・マセソンが米国で起こるテロに対処すべく、獅子奮迅する姿が描かれている。そして、彼女と一緒にテロを食い止めようとするのは、CIAの上級局員たるサウル・ベレンソンで、ユダヤ系アメリカ人という設定の諜報局員には、イスラエルに住む妹がいた。主人公の「キャリー」を演じるのは『ターミネーター3』にも出演したクレア・デインズ(Claire Danes)で、「サウル」の役を演じるのはユダヤ人俳優のマンディー・パティンキン(Mandy Patinkin)である。彼は大ヒットTVドラマの『クリミナル・マインド』でFBIのプロファイラー役を務めた男優だ。

Claire Danes 1Mandy Patinkin 2Murray Abraham 2

(左: クレア・デインズ / 中央: マンディー・パティキン / 右: マレー・アブラハム)

  このドラマには、もう一人CIAの上司が登場し、それが極秘作戦(black op / clandestine operation)を担当する「ダール・アダル」というベテラン局員である。彼はイスラエルの諜報機関「モサド」と連携し、何とか口実をもうけてイランを攻撃しようと謀っていた。このあたりは実にリアルだ。モサドと蜜月のCIA局員がイスラム教徒を利用して国内テロを画策し、アメリカの世論を騙し、嫌がる議会を反イラン制裁へと導くのは現実的に有り得る。CIA局内で隠然たる権力を誇る「ダール」役には、シリア系俳優のマレー・アブラハム(F. Murray Abraham)が起用されていた。フィクションのドラマと実際の政治を保守派のアメリカ人が眺めれば、深い溜息をついて陰鬱な気分になるだろう。例えば、国務省や諜報機関に目を向ければ、矢鱈とユダヤ人が多い。とりわけ、中東アジアを担当するのはユダヤ系の専門家で、彼らは合衆国よりもイスラエルの国益を優先する。あいつも此奴もユダヤ人じゃ、誰が愛国者で誰が売国奴なのかさっぱり判らない。

Paul Wolfowitz 1Richard Perle 2Eliot Cohen 1Elliot Abrams 1

(左: ポール・ウォルフォヴィッツ / リチャード・パール / エリオット・コーエン / 右: エリオット・アブラムズ )

  日本でもよく知られているポール・ウォルフォヴィッツ(Paul Wolfowitz)やリチャード・パール(Richard Perle)、エリオット・コーエン(Eliot A. Cohen)、エリオット・アブラムズ(Elliot Abrams)はユダヤ人で、彼らが推進したイラク戦争はアメリカではなくイスラエルの安全を図る戦争だった。民間部門で活躍するネオコンにもユダヤ系がウジャウジャいて、例えば、マイケル・ラディーン(Michael Ledeen)やウィリアム・クリストル(William Kristol)、ロバート・ケイガン(Robert Kagan)などが直ぐに思い浮かぶだろう。他にもたくさんいて、長老格のヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger)や国土安全保障省の元長官マイケル・チャートフ(Michael Chertoff)、戦略論の研究家エドワード・ルトワック(Edawrd N. Luttwak)、トランプの娘婿ジャレッド・クシュナーと個人的に親しいアブラハム・バーコウィッツ(Avraham Berkowitz)などである。このバーコウィッツはトランプ大統領の特別顧問を務めてて、彼の従兄弟であるハワード・バーコウィッツ(Howard Berkowitz)は、全米にその名を轟かすユダヤ人団体「AIPAC」の元総裁だ。アメリカの中東アジア外政は、連邦議会の関与も大きいが、実際は有力なユダヤ人によって牛耳られている側面が否めない。

Michael Ledeen 1Michael Chertoff 1Edward Luttwak 3Robert Kagan 1

(左: マイケル・ラディーン / マイケル・チャートフ / エドワード・ルトワック / 右: ロバート・ケーガン)

テロ攻撃で幸運を摑んだユダヤ商人

  スパイ作戦や戦争を主題とするTVドラマでは、ムスリム・テロリストが米国や歐洲で殺戮事件を謀るのが定番だけど、実際はユダヤ人組織が無知なイスラム教徒を嗾(けしか)けて、大小のテロを実行させていると考えた方がいい。歐米の民衆は遠く離れた中東での戦争に消極的だから、身近で爆弾テロとか銃撃事件が起きないと、積極的に戦争を支持しないという性質がある。だから、モサドは米国籍を持つアラブ人とかパキスタン人に資金を流してテロ組織を育成し、時期を見計らって国内テロを実行するよう操作する。もちろん、現場で殺人を犯す下っ端は「聖戦」気取りで、誰に操られているのか分からないし、「操られている」ことにすら気がつかない。諜報機関の世界では、「バカを利用する」のは基本中の基本である。馬鹿真面目に「ジハード」を信じている実行犯は、裏で糸を引くのが誰なのかを知らないので、何処から観ても真剣なテロを起こす。被害者の歐米人もアホだから、実行犯組織の本体を調べずに「アラブのテロリストどもを叩き潰せ !」と熱狂する。漁夫の利を得るのは歐米とイスラエルに住むユダヤ人。これを暴く者は「反ユダヤ主義者」のレッテルを貼られて社会的に抹殺されてしまうのだ。

  公式見解によれば、9/11は「モハメット・アタ」の一味によって起こされたとなっている。が、どうも腑に落ちない点が多い。テロ事件の科学的解明が無いことも変だが、ワールド・トレード・センター(WTC)の崩壊で大儲けしたラリー・シルバースタイン(Larry Silverstein)に疑惑の目が向けられないのも妙だ。このユダヤ人不動産業者は、9/11テロが起きる約二ヶ月前の2001年7月26日、フランク・ローウィ(Frank Lowy)の「ウェストフィールド(Westfield Corporation)」社と一緒にWTCを99年間も借りるリース契約を結んでいたのだ。ちなみに、パートナーになったローウィはオーストリア出身のユダヤ人と言われているが、生まれはチェコスロヴァキアで、幼い頃はハンガリーのゲットーに住んでいた。やがて彼はフランス経由でパレスチナに移り、ユダヤ人の準軍事組織である「ハガナ(Haganah)」に属するようになって、1948年のアラブ・イスラエル戦争で奮闘したそうだ。つまり、筋金入りのシオニストといううわけ。

Larry Silverstein 5WTC 0001Frank Lowy 1

(左: ラリー・シルバースタイン / 中央攻撃を受けたWTC / 右: フランク・ローウィ)

  この武闘派ユダヤ人はオーストラリアに移住すると、如何にもユダヤ人らしく頭角を現すようになり、ショッピング・センターを世界的に展開手する「ウェストフィールド・コーポレーション」を運営するようになった。そして、彼はオーストラリアの中央銀行にあたる「オーストラリア準備銀行(Reserve Bank od Australia)」の理事長に就任する。また、彼はビジネスだけではなく、教育や慈善活動にも精を出し、大量のお金をばらまくことも忘れなかった。このオーストラリア・シャイロックは、カルフォルニア州にある「ユダヤ教大学(University of Judaism)」の理事長を務めたし、「オーストラリア・サッカー連盟(Football Federation Australia)」の会長まで務めていたのだ。大富豪となったユダヤ人が次に目指すモノは「名誉」で、歐米には札束で獲得できる「称号」がいくらでもある。ローウィは
慈善活動に1,000万ドル以上も注ぎ込み、3,000万ドルを以て「ローウィ国際政策研究所」を設立したかと思えば、「ローウィー癌研究センター(UNSW Lowy Cancer Research Center)」に1,000万ドルを寄付したという。こうした「慈善活動」が評価されて、卑しいユダヤ商人は英国の女王陛下からナイトの称号までもらう身分になった。英国のアングロ・サクソン民族がどう思うか分からないけど、英国の王室はお金に弱いから、金貨をちらつかせるユダに躊躇なく貴族の称号を与えてしまうのだ。(こんな薄汚い「称号」を持つユダヤ人貴族より、少年ジャンプの読者投票で一位になる漫画家の方がよっぽど偉い。)

Lewis Eisenberg 1(左 / ルイス・アイゼンバーグ )
  テロ事件が起きるちょっと前にWTCビルを借りるなんて妙だけど、この契約を仲介したのは、かつて「ニューヨーク・ニュージャージー港湾公社(Port Authority of New Nork and New Jersey)」の総裁を務めていたルイス・アイゼンバーグ(Lewis Eisenberg)であった。このユダヤ人元総裁は、競争相手の「ヴォルナド不動産トラスト(Vornado Realty Trust)」が高値をつけたにも拘わらず、そのリース契約を斥け、シルバースタインとウェストフィールドに賃貸の鍵を渡したのである。アイゼンバーグとシルバースタインは同じ穴の狢(ムジナ)で、彼らはユダヤ人で組織される「ユナイテド・ジューイッシュ・アピール(United Jewish Appeal)」という慈善団体で指導的立場にあったのだ。そして、シオニストのシルバースタインは、この組織の傘下にあるニューヨーク支部で会長を務めていたことがある。アイゼンバーグも負けず劣らずのシオニストで、アメリカの政治家が平伏す最強のユダヤ人団体「米国イスラエル公共問題委員会(AIPAC)」の副総裁を務めたこともある人物だ。彼はゴールドマン・サックスの元重役で、以前は民衆党支持者であったが、共和党リベラル派に潜り込み、大口献金者になっていた。

Ronald Lauder 1Josephine Esther Lauder 4Joseph Lauder 1

(左: ロナルド・ローダー / 中央: ジョセフィン・エスター・ローダー / 右: 夫のジョセフ・ローダー)

  ちなみに、港湾公社が所有していたWTCビルを民営化するにあたり、その音頭を取っていたのは、ジョージ・パタキ州知事に仕えていたユダヤ人ビジネスマン、ロナルド・ローダー(Ronald Lauder)ときている。彼は有名化粧品会社の「エスティー・ローダー(Estée Lauder)」を創設したジョセフ・ローダー(Joseph Lauter / 後にLauderと改名)とその妻ジョセフィン(Josephine Esther Mentzer)との間に生まれた次男だ。裕福なユダヤ人家庭に育ったロナルドは、レーガン政権でヨーロッパ担当の国防次官補になり、その後、駐オーストリア大使に任命された人物である。彼は政界を引退後、慈善活動にも力を入れ、ウィーンに「ローダー・ビジネス・スクール」を建てていた。このビジネスマン大使も強硬なシオニストで、世界ユダヤ人会議(World Jewish Congress)の総裁を務めており、イスラエルのテレビ局「チャンネル10」を買収した豪商としても有名だ。(それにしても何で、こうも凄い連中が9/11に係わっているのか不思議である。) 彼も有力な人脈を広げるユダヤ人で、娘のジェーン・ローダーは、FRBの常任理事となったケヴィン・ワーシュ(Kevin Warsh)に嫁いだ。この婿殿は元「モルガン・スタンレー」の社員で、ブッシュ大統領の経済政策顧問を務めていたという。そのお礼なのか、ブッシュ大統領はケヴィンをFRBのメンバーにしてあげたというのだ。

Jane Lauder 1Kevin Warsh 2

(左 : ジェーン・ローダー / 右: ケヴィッン・ワーシュ)

  とにかく、WTCの長期賃貸を取りつけたシルバースタインに、とてつもない「幸運」が舞い込んできた。他のアメリカ国民にとって、9/11テロは「悪夢」以上の惨劇であったが、シルバースタインにとっては宝籤以上の吉報である。というのも、ビルに突撃した二機の旅客機が、まるで金の卵をくわえるコウノトリみたいに思えてくるからだ。シルバースタインは1億ドルの賃貸契約を結んだが、テロ攻撃の損害を受けたお陰で、保険会社から約40億ドルの保険金が下りたのだ。さらに、彼が所有していたWTC第7ビルも「被害」に遭って全壊したので、8億6100万ドルの保険金を手にすることができたという。WCT7の崩壊は特に有名で、単なる飛び火による「火災」なのに、一瞬で崩壊したから皆驚いた。あの程度の火災であっけなく崩壊するんなら、大火災を起こした日本の「ホテル・ニュー・ジャパン」だって瞬く間に大崩壊したはずである。(これは永田町にあったホテルで、1982年すなわち昭和57年に起きた事件である。) WTC-7が崩れ去る映像を目にした建築家や科学者は、悉く「計画的破壊(controlled demolition)」と評し、物理学では説明できない「崩壊」に唖然としていたそうだ。BBCの女性レポーターはもっと凄くて、倒壊の約30分前にビルの全壊を報道してしまったのだ。たぶん、BBCの誰かが台本を読み間違えて、本番でドジを踏んだのだろう。やはり、人間が行うことなので、皆が脚本通りに動くとは限らない。

WTC building 7 BBC newsWTC Building-7

(左: 事前に崩壊を報じてしまったBBCのレポーター / 右: 一瞬で崩壊した第7ビル)

  高額な保険金を手にしたシルバースタインは本当にラッキーだった。なぜなら、昔に建てられたWCTビルにはアスベストが使われており、法的にその除去が命じられていたので、彼は2億ドルの修繕費を払わねばならなかったが、旅客機が突っ込んでくれたので、その手間が省けたというわけ。シルバースタインにとってアスベストは時限爆弾のようなものであったが、テロリストが爆破してくれたので、有害物質はコンクリートの粉塵と共に空中に消えていったのだ。

  ところが、シルバースタインはこれで満足しなかった。なんと、彼は保険金の倍額を要求したのである。というのも、テロ攻撃は二つ起きたからだ。つまり、WTCビル1に1機が激突し、WCTビル2にも別の飛行機が突入したので、35億ドルの保険金を二回払えと訴えていたのである。もう、ヴェニスのシャイロックも舌を巻くほどの強欲者だ。しかも、シルバースタインはハイジャックに遭ったアメリカン航空とユナイテッド航空に対しても11億ドルの損害賠償を求めていたのである。結局、裁判では9,510万ドルの賠償金で和解となった。これだから、濡れ手で粟のシルバースタインが、更地になった現場に新たなビルを建設できても不思議ではない。

  シルバースタインが起こした訴訟で注目すべきは、この裁判が陪審員不在の法廷だったことで、そこに君臨したのがアルヴィン・ヘラースタイン(Alvin Hellerstein)判事であったことだ。彼もユダヤ人で、これまた熱心なシオニスト。親爺と同じ法律家になったアルヴィンの息子ジョセフは、父の妹、つまり叔母と一緒に米国からパレスチナのユダヤ人占領地区に移住したというから、相当な変わり者というか、骨の髄までシオニストなんじゃないか。さらに興味深いのは、このアルヴィンとジョセフの親子は、かつて有名なユダヤ系法律事務所の「ストルック&レヴァン(Strook & Levan)」に属していたことだ。ユダヤ人のモーゼスとソロモンのストルック兄弟は、共同で法律事務所を構え、同種族のピーター・レヴァン(Peter I. B. Levan)を迎えて社名を変更した。ちなみに、この「ストルック&レヴァン」は長いこと米国におけるロスチャイルド家の代理を務めていたそうだ。

Alvin Hellerstein 2WTC 004Benjamin Netanyahu 1

(左: アルヴィン・ヘラースタイン / 中央: 崩壊したWTCビル / 右: ベンジャミン・ネタニヤフ)

  日本のマスコミは伝えていないが、このシルバースタインは、9/11の前からベンジャミン・ネタニヤフ首相と昵懇で、イスラエルの「ハーレッツ(Haaretz)」紙によると、毎週日曜の午後に必ず電話を掛ける仲であったそうだ。でも、どうしてイスラエルの首脳が頻繁に一般ビジネスマンと話していたのか不思議だが、よほど「込み入った問題」が二人の間にはあったのだろう。筆者には何の相談か分からないが、たぶん相当厄介な問題を抱えていたんじゃないか。もしかして、「WCTの第7ビルも一緒に吹っ飛ばしてくれないか?」と頼んでいたとか。実際、シルバースタインはビルの爆破解体を臭わす発言をしていた。だから、もし前もってWCT7に爆薬が仕掛けられていたとしたら、その所有者は何らかの交渉で「許可」を出していた、という可能性が高い。(シルバースタインは「WTCの第1と第2ビル、プラス第7の“セット”じゃなきゃ、取引に応じないぞ」、とゴネたんじゃないか。というのも、緻密な計画を立てたテロ組織が、“わざわざ”物議を醸すような第7ビルの「爆破」をしでかすとは思えない。)

アメリカの不幸で踊るイスラエル人

  9/11で忘れてはならないのは、イスラエルが事前にこのテロ攻撃を知っていたことである。事件当日、ニュージャージ州のリバティー・ステイト・パークで、飛び跳ねて喜ぶ男達がいた。彼らはWTCビルに旅客機が突っ込こむ光景を見てはしゃいでおり、対岸で炎上するビルを撮影していたという。この欣喜雀躍ぶりを近くのアパートに住む中年女性が発見し、双眼鏡を持ち出して眺めたそうである。踊り狂う男達を不審に思った目撃者は、ベルゲン郡警察に電話し、通報を受けた警察署は直ちにパトカーを出動させたという。しかし、記録映画を撮影し終わった連中は、早々に現場を後にしていた。残念 ! 悪い奴は手際が良くて、逃げ足も速い。ところが、午後3時過ぎ頃、パトカーに乗っていたスコット・デ・カルロ(Scott de Carlo)巡査は、東ラザフォードの通りで不審な白いバンを発見し、職務質問をかけて乗っていた男達5名を逮捕した。

  連行された男達は、皆イスラエル国籍のユダヤ人で、名目上は「イスラエルからの観光客」となっていた。また、彼らが運転していたバンは、「アーバン・ムーヴィング・システムズ(Urban Moving Systems)」という運輸会社が所有する車輌だった。この会社は労働ビザを有するイスラエルからの留学生をよく雇っていたそうで、捕まったユダヤ人たちもここで働いていたそうである。拘束された者のうち、シヴァンとポールのカーツバーグ(Sivan and Paul Kurtzberg)兄弟はモサドのエージェントで、「アーバン・ムーヴィング・システムズ」はモサドのフロント・カンパニー(front company)、すなわち工作員が隠れ蓑に使う偽装会社であった。さらに驚くのは、社長のドミニク・スーター(Dominik Suter)はアメリカ国籍を持つユダヤ人で、匿名の送金者から多額の資金をもらっていたのだ。しかし、海外からの送金なので、誰が振り込んだのかFBIでも判らない。FBIから尋問を受けたスーターは間もなく釈放されてしまい、身の危険を察知したのか、彼は9月14日にアメリカを去り、さっさとイスラエルへ逃げてしまった。

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(写真 / 拘束された「イスラエルの踊るユダヤ人」 )

  残りの三人、オマー・マーマリ(Omer Marmari)とオデド・エルナー(Oded Ellner)、ヤロン・シュメル(Yaron Shmuel)は下っ端の協力者で、モサドの正式エージェントではないらしい。正体がバレた連中は帰国後、イスラエルのテレビ番組に出演し、自分達の目的はテロ事件のドキュメンタリー・フィルムを製作することにあった、と述べていた。でも、アメリカの一般国民が知りたいのは、「なぜイスラエルの観光客が前もって飛行機の突入を知っていたのか?」ということである。普通の人間がテロ攻撃の時間と標的を事前に、しかも正確に知っているなんて有り得ない。どうしてイスラエルからの「観光客」が、FBIやCIA、NSAも摑めなかった情報を入手できたのか? また、どうしてFBI長官とブッシュ大統領は、この不審なユダヤ人どもを釈放したのか? テロ計画を事前に知っていた外国人なら、最重要参考人と指定され、厳しい尋を受けるはずだ。それなのに、無罪放免なんて、おかしいじゃないか! たとえイスラエル政府から釈放要求があっても拒否すべきだろう。そもそも、アメリカ合衆国は曲がりなりにも、最強の軍隊を有する独立主権国家のはず。なぜ、イスラエルの恫喝に屈服したのか? もし、日本人観光客がテロ情報を事前に掴んでいたら、日本政府が何と言おうとも絶対に釈放されないぞ。

  世間には「秘密結社イルミナティーの仕業だ」とか、「ユダヤ教徒の世界支配だ」と陰謀論を叫ぶ評論家がいるが、こんなのはお金儲けのために娯楽を提供する売文業者で、真摯な研究者ではない。本当に9/11テロを解明したい者であれば、ビルの倒壊を科学的に検証したり、証拠隠滅を謀った人物を調べるはずだ。WTC7の倒壊は本当に不自然だし、WTCの第1ビルと第2ビルの鉄骨を、早急に支那へ売却したブッシュ大統領は、物的証拠を湮滅した犯罪者である。FBI捜査官や裁判官、科学者はもちろんのこと、田舎の保安官だって唖然とするだろう。アメリカの一般国民は政府とマスコミが流す映像だけを目にして、「ムスリム・テロリストの犯行だ」と決めつけるが、実際のテロ行為には不審な点が多く、政府の調査も杜撰であった。しかし、脳天気なアメリカ国民は、ハリウッド映画だけを観て「戦争とテロの時代」を実感するだけで、自分の頭で考えようとはしないのだ。


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(左: 貪欲なユダヤ人を描いた風刺画 / 右: 米国のユダヤ教徒)

  確かに、『ホームランド』を始めとするTVドラマは所詮「娯楽作品」に過ぎない。しかし、一般人への影響は絶大だ。アメリカの世間がイメージする「テロリスト」は、中東アジアからやって来る兇暴なイスラム教徒で、その背後で糸を引く巨大な組織ではない。ドラマの中ではイスラエルが米国の同盟国で、CIAとモサドが一致協力してイラン人やアラブ人のテロ組織と闘っている。例えば、モサドの局員はCIAやMI6のスパイと情報の交換をして、歐米諸国に潜むアフリカ系テロリストやイランのスパイを摘発し、ユダヤ人が歐米の平和に多大な貢献をする、といったシナリオが多い。しかし、現実を見渡せば、ムスリム・テロの脅威はイスラエルにとって好都合となっている。歐米諸国の対テロ政策は、イスラム諸国に囲まれるイスラエルを支援する形になっており、イスラエルの敵が“そのまま”歐米諸国の敵にもなっているのだ。しかも、歐米諸国で要職に就くユダヤ人の官僚や議員、諜報員は、人々をテロから守る正義の味方で、自己犠牲をも厭わないヒーローになっている。

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(左: イスラム過激派のテロリスト / 右: ムスリムの兇悪犯)

  西歐人にはある一つの重大な思考が抜け落ちている。歐米で作られる映画やTVドラマには、西歐人やその軍隊を唆して対テロ戦争に駆り立てる狡猾なユダヤ人は絶対に描かれない。アメリカやブリテン、フランス、オランダで起きるテロ事件が、実はモサドの“仕込み”なんていうシナリオは御法度。西歐人に恨みを抱くイスラム過激派に資金を流し、頃合いを見計らって爆破テロを仕組むモサド局員がいたら、本当にリアルだけど、「現実的」過ぎるから絶対に駄目。なぜなら、歐米の一般人が「そうだよなぁ、全部じゃないけど、幾つかのテロ事件は、ちょっと怪しいぞ」と勘づくからだ。9/11テロも同様で、アラブ人テロリストの犯行を描く映画は公開されたけど、モサドが暗躍する作品は一つも無かった。映画なんて所詮フィクションなんだから自由に脚本を書いて、イスラエルのモサドと米国のユダヤ人がチェイニー副大統領を中心とするアメリカ・チームと共謀して、9/11テロを計画したという物語もあっていいはずだ。日本人の漫画家なら思いつく筋書きなのに、なぜかハリウッドの脚本家は考えない。おそらく、何人かは居たのかも知れないが、仮に脚本を提出しても全部“ボツ”だろう。アメリカには「藝術の自由」があっても、一部の「自由」は検閲と圧力で潰されてしまうのだ。

  日本人は政治プロパガンダと聞けば、ナチスのヨゼフ・ゲッペルスを思い出してしまうが、米国にはこの宣伝大臣よりも遙かに優秀な宣伝部門があるのだ。ハリウッドの洗脳映画は官製ではなく、民間の娯楽作品であるから我々に判らないだけで、冷静に考えてみれば、個別的かつ自主的に作られる洗脳フィルムは本当に怖い。なぜなら、我々は役所から押しつけられたのではなく、自ら進んで劇場に赴き、お金を払って映画を観ているからだ。一般の観客は「洗脳」とは気付かずに、ある特定のイメージを植え付けられ、思考の枠組みまで変更されている。大衆操作は政治討論番組とかニュース番組よりも、アクション映画とかスパイ小説を通してなされると考えた方がよい。

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(左: ギデオン・ラフ / 中央: ハワード・ゴードン / 右: マンディー・パティンキン )

  いま人気となっている『ホームランド』は、元々イスラエルで放送されたドラマ『戦争捕虜(Hatufim)』のアメリカ版で、原作者は元イスラエル軍兵士のギデオン・ラフ(Gideon Raff)である。これをユダや系アメリカ人のハワード・ゴードン(Howard Gordon)が筆頭プロデューサーとなり、ユダヤ人俳優のパティンキンが“アメリカ”のヒーローを演じている、という塩梅(あんばい)だ。率直な日本人だと「イスラエルの宣伝映画じゃん!」と口にしてしまうが、西歐系女優のクレア・デインズを主役にして誤魔化しているから、米国では「プロパガンダ作品」との位置づけではない。「外見」さえ整えておけば、「中身」はどうだっていいのだ。日本人だって鯛の身が入っていないのに、鯛の形をしているから「たい焼き」と呼んでいるじゃないか。ハリウッド映画だって同じ理屈だ。しかし、「西歐系俳優を用いているから、ユダヤ人映画じゃない」と言われても、いまひとつ納得できない。こうした「大人の事情」は、子供電話相談室に尋ねても、誰も答えてはくれないだろうなぁ。
http://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68732542.html
  

78. 中川隆[-13641] koaQ7Jey 2018年9月15日 08:50:39 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-18547] 報告
2018.09.15
米政権はイランの石油輸出を止めようとしたが、中国とインドが買い続けて失敗



 アメリカのドナルド・トランプ政権はイランの現体制を破壊しようとしている。ロスチャイルド資本と関係の深いネオコンにしろ、ウラジミール・ジャボチンスキーを祖とし、ベンヤミン・ネタニヤフにつながるリクードの人脈にしろ、この点は同じだ。

 イランでは1979年にイスラム革命で王制が倒され、その年の11月に「ホメイニ師の路線に従うモスレム学生団」を名乗るグループがアメリカ大使館を占拠、機密文書を手に入れる一方、大使館員など52名を人質にとる。

 その翌年はアメリカで大統領選挙が行われた。現職だったジミー・カーターはパレスチナ人に近すぎるとして親イスラエル派に嫌われ、反カーター・キャンペーンが展開されていたのだが、52名の人質が選挙前に解放された場合、カーターにとって追い風になって再選の可能性があった。

 そこでロナルド・レーガンやジョージ・H・W・ブッシュを支援していた共和党のグループはイスラエルのリクード政権と手を組み、人質の解放を遅らせようとする。この工作は成功し、人質が解放されたのはレーガンの大統領就任式の当日、つまり1981年1月20日のことだった。

 この工作でイランの革命政権ともパイプができ、アメリカからイランへ武器が密輸される。この密輸の儲けがニカラグアの反革命ゲリラ支援に使われ、この工作が発覚してから「イラン・コントラ事件」と呼ばれるようになる。

 この工作の背後にはズビグネフ・ブレジンスキーが始めたアフガニスタンでの秘密工作があった。ソ連軍をアフガニスタンへ誘い込み、サウジアラビアが雇い、送り込んできたサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心に編成した傭兵部隊と戦わせるという内容で、これは成功した。

 アフガニスタンでの工作資金を捻出するためにCIAはヘロインを売る。そのため非合法のケシを栽培する中心地は東南アジア(黄金の三角地帯)からアフガニスタンとパキスタンの山岳地帯へ移動した。中米における工作ではコカインが使われている。

 イスラム革命の翌年、1980年の9月にイラク軍がイランの南部を攻撃してイラン・イラク戦争が始まった。イラクのサダム・フセインはCIAの手先として権力を握った人物で、アメリカ支配層の要請を受けての行動だったのだろう。この戦争でイランはアメリカから武器を調達する必要に迫られ、イランとアメリカとの関係が接近する。

 イラン・イラク戦争は1988年8月に終了、その翌年にイラン大統領となったのはハシェミ・ラフサンジャニ。この政権は新自由主義化を進め、私有化や貿易の自由化を推進した。その結果、少数の大金持ちと多くの貧困層を生み出すことになる。

 当然、イランの庶民は激怒、マフムード・アフマディネジャドが2005年の大統領選で勝利した。新大統領はこうした状況を変えようと試み、まず欧米の金融資本と結びついたパールシヤーン銀行にメスを入れようとしたのだが、成功しなかった。この勢力に西側は期待しているのだろう。

 ハサン・ロウハーニ大統領は西側から「穏健派」、つまりラフサンジャニに近い人物だと見られていたが、西側の思惑通りには動かなかった。そこでトランプ政権による「制裁」につながる。

 イランでは1951年にムハマド・モサデク首相がイギリス系のAIOC(アングロ・イラニアン石油)の国有化を決める。この会社を通じてイギリス支配層はイランの富を盗んでいた。1950だけでAIOCが計上した利益は1億7000万ポンド、そのうち1億ポンドをイギリスへ持ち帰っている。AIOCの筆頭株主はイギリス政府で、発行済み株式の約半分を保有していた、つまりAIOCの利益がイギリスの財政を支えていたのである。イラン国民はほとんど利益を受け取っていない。

 そこでイラン政府はAIOCの国有化を決めたのだが、それに対してイギリス政府はアメリカ支配層の力を借りてクーデターを実行、モサデク政権を倒しているが、その際に米英側はイラン政府が石油をオープン・マーケットで売却することを阻止、イランは経済的に追い詰められた。そこでソ連に接近するのだが、この商談はクーデターで成功しなかった。

 トランプ大統領はこの「成功体験」を再現しようとしたのだろうが、イランの石油の約6割を買っているという中国とインドがアメリカの命令に従わない。イランの石油輸出による収入は今年3月に比べて7月は6割増になっているという。アメリカが仕掛けた経済戦争は裏目に出たようだ。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201809150000/

79. 中川隆[-13468] koaQ7Jey 2018年10月03日 11:08:21 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-18973] 報告
マスメディアを押さえたアメリカ金融資本には どんな正義の味方でも絶対に敵わない


2018年09月21日
フェイク・ニュースは当り前 ?! / ヤラセが氾濫するマスメディア(前編)
http://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68733946.html

ドラマ仕立ての報道番組

 今月、池上彰の報道バラエティーが炎上していた。というのも、“物知り博士”の池上氏が、他人の意見を拝借(窃盗)したのに、「自分の知識」や「自分の意見」と称して放送していたからである。しかも、番組に「子役」を呼んできて政治を語らせる、という「演劇」まで披露していたのだ。建前上、出演した子供たちは「一般の子供」となっていたが、ネットの人々が「劇団に所属する子供」であることを発見し、それを暴露したから話題となってしまった。まぁ、池上彰とタッグを組んだフジテレビがやることだから、「ヤラセ」が混じっていても不思議じゃないだろう。前科のあるテレビ局だから、「またかぁ !」と思った人も多いんじゃないか。でも、子供を利用して偏向・宣伝番組を作るなんて、根性が腐っているというか、吐き気がするほど卑劣である。普段は「公正中立な報道」を掲げているくせに、「内緒で子役を使った仕込み」なんて随分と阿漕(あこぎ)じゃないか。企画立案者や台本の指導者は表に出てこい ! 局のオフィスに隠れているとは狡いぞ。

  ドナルド・トランプが大統領になって、日本でも「フェイク・ニュース」という言葉が広く世間に知れ渡るようになった。フジテレビばかりでなく、NHKやTBS、テレ朝、日テレがプロパガンダ放送局なのは、もはや周知の事実。いまさら驚くことでもあるまい。ただし、驚くのは地上波しか見ない「情報弱者」である。毎月お金を払って下らない記事を読んでも苦にならない老人とか、学生運動が懐かしい左翼教師が既存のマスメディアを支えているのだろう。こうした主要メディアが生存できるのも、日本人に「大企業信仰」があるからだ。多くの人々が、中小や個人の情報提供者は怪しいと考えるが、東京の一等地に本社を構える巨大メディア企業なら大丈夫、と思っている。大学教育を受けた者でさえ、どんな人間が放送するニュースを選び、どんな風に伝えるのかを考えない。暢気な大衆は、テレビ局のディレクターとか新聞社の編集者が、どんな思想を持っているかに興味が無いのだ。支那人の料理店なら、重金属まみれの上海蟹とか、正体不明の化学調味料、危険な輸入食材を使っているので、お客は入店前に心構えというか、一種の覚悟と用心ができている。

  しかし、テレビ局の番組や学校の教科書は疑われず、そのまま信用されてしまうのだ。一般の日本人は、局内に真っ赤なプロデューサーがいるとか、教科書会社に共産党シンパの執筆者がいるとは思わない。日常生活なら、顔も名前も知らない人を信用するなんて有り得ないが、マスコミの人間なら信じてしまうのだ。なら、テレビ局の制作者は他人を無条件で信用するのかといったら、そんな事は無い。例えば、彼らは風俗店に行くと、商品の女をじっくり吟味して、料金と容姿を秤にかける。ついでに、「性病は無いのか ?」と確認するほど用心深い。高級官僚ならVIP専用の「エスコート・サービス」に招待されるから、安心して高品質の女性を選ぶ事ができる。怪しい情報を掴まされるのは、貧乏で無知な庶民だけ。マンネリの「水戸黄門」とか水谷豊のドラマ「相棒」をボケ〜と観るオっさんやオバちゃんたちは、マスコミにとって格好のターゲットになる。

視聴者を欺くニュース報道

Anderson Cooper 2( 左 / アンダーソン・クーパー)
  日本のテレビ局による印象操作や大衆扇動は、時たま社会問題となるが、歐米諸国の情報操作もけっこう酷い。例えば、CNNのシリア報道では見事な「演劇」があった。CNNにはアンダーソン・クーパー(Anderson Cooper)という看板キャスターがいて、彼がアンカーを務める報道番組「360°」がある。丁度、シリアの内戦が始まった頃、戦場からの「ライブ中継」があって、ダニー・ダエムというシリア系リポーターが現地特派員となっていた。彼は砲撃や銃撃が飛び交う戦場を背景に、シリアの現状をリポートしていたのだが、それが映画セットのスタジオで行われていたのだ。(Patrick Henningsen, "WAR PROPAGANDA : Staged Media Reporting from Syria : Fabricating the News", Global Resarch, March 12, 2012) 番組の中では、クーパー氏がダエム記者と中継を結び、リアル・タイムで戦況を尋ねていた。そして映像の隅には、燃え上がるクルマとか、爆発の様子がワイプで流れていたのだ。こうした臨場感溢れる報道を目にすれば、アメリカの視聴者は固唾を呑んでリポーターに耳を傾けるはずだ。

Danny Dayem 3Danny Dayem CNN 1


(左: ダニー・ダエム / 右: CNNでリポーターを務めていたダニー )

  ところが、この撮影現場の映像がネットに流れてしまい、ヤラセの「演劇」という事がバレてしまった。本番前のシリア人ダニーはスタッフに向かって、「おい、まだ効果音の用意ができないのかよ?!」と愚痴をこぼし、「もう寒くて指が冷えちゃうよぉ〜」とボヤいていた。本当の「戦場」にいるような雰囲気を作るため、撮影スタッフは“それらしい”爆発音や雑音をチェックしており、ダニーは暗闇の中でスタンバイ。現在位置が発覚しないよう、本番の「中継映像」はとても暗く、ダエム記者の顔だけにライトが当たっており、何処に居るのか判らない。ただ、ものすごい爆音がするから、視聴者は戦場の近くに居るものと錯覚していたそうだ。クーパー氏の質問に答えていたダエム記者は、400m先の場所で殺された民間人の遺体を回収した、と述べていた。しかし、戦場に居なかった人間が、どうやって遺体を引き取ってきたのか? 彼は別の撮影場所で演技をしていただけなのに、シリア人の死体をどうやって発見したのか、まことに不思議である。

Brian Williams 1( 左 / ブライアン・ウィリアムズ)
  NBCの看板キャスターであるブライアン・ウィリアムズ(Brian Williams)氏も、些細な「嘘」がバレて恥をかいた。彼が戦場となったイラクに赴き、米軍のヘリコプターに乗った時、「攻撃を受けた」と話してしまったのだ。ウィリアムズ氏の「ナイトリー・ニューズ」の視聴者は、番組のアンカーマンが危機一髪だったと知って驚いたが、そうした砲撃は無かった事が後になって明らかとなった。(Rory Carroll, "NBC suspends Brian Williams for six monthsover Iraq helicopter story", The Guardian, 11 February 2015) たぶん、ウィリアムズ氏は戦火ををくぐり抜けた勇ましい特派員と自慢したかったのだろう。まさか、「米軍にしっかりと守られて何事も無く安全に取材を終えました」じゃ武勇伝にならない。やはり、映画並みの激しい戦闘シーンで、生死を賭けた報道でなきゃ「特集」にならない、と思ったのだろう。「NBC News」のデボラ・ターネス(Deborah Turness)社長は、ウィリアムズ氏の「ホラ話」を謝罪し、彼を六ヶ月の停職処分にすると発表した。まぁ、高給取りのウィリアムズ氏にとって半年間給料がでなくても困ることはなかろう。それよりも、経歴に「法螺吹き」が記載されたことの方が痛いはずだ。

  アメリカのメディアがちょくちょくフェイク・ニュースを流すことは、もう広く世間に知られるようになったが、英国のBBCも印象操作を行っていたという。例えば、BBCはシリアのホウラで大量虐殺があった、と怒りの報道を行ったが、その時に使われた「写真」は、2003年にイラクで撮影された写真であったのだ。(Hannah Furness, "BBC News uses Iraq photo to illustrate Syrian massacre", The Telegraph, 27 May 2012) 世界的に有名な「ゲッティー・イメージ」社で写真家を務めるマルコ・ディ・ラウロ(Marco di Lauro)氏は、夜中の3時頃自宅に戻り、BBCのウェツブ・ページを開いて記事を読もうとした。すると、そのフロントページにはシリアに関する報道があり、掲載されていた写真は彼が2003年に撮ったものであったのだ。ラウロ氏は椅子から転げ落ちるほどビックリしたという。彼は何で昔に撮った写真が使われているんだ、と驚いた。天下のBBCが、写真の出何処を調べずに掲載するなんて信じられない。BBCの広報係は間違った映像であると認め、公式に謝罪したが、本当に「単なるミス」だったのか怪しい。もしかしたら、シリアのイメージダウンを謀るため、わざと衝撃的な写真を用いたのかも知れないのだ。歐米のメディアは、アサド政権の打倒を支援していたから、残虐な映像を利用して世論を操ろうとした疑いがある。

BBC fale photo 1(左 / 床に置かれた遺体を跨ぐ少年)
  アメリカ人やイギリス人ばかりでなく、日本人の我々はもっと注意せねばならない。なぜなら、日本のマスコミは歐米の報道を検証もなしに“そのまま”輸入する癖があるからだ。遠い外国の悪党に騙される危険性は常にある。特に、地上波テレビのワイドショーなどは、「米国のCNNが報じた映像です !」とか、「英国BBCの報道によりますと・・・」、「権威あるニューヨーク・タイムズの調査では・・・」と述べて、いかにも正確な報道であるかのように伝えるけど、裏で誰が動いているのかは明かさない。「権威」に弱い日本人は、有名な大手メディアの報道だと頭から信用し、そっくりそのまま鵜呑みにする。また、日本のテレビ局は民衆のこうした性格を判っているので、歐米のリベラル・メディアと組んで印象操作を画策する。反日報道を趣味にするニューヨーク・タイムズ紙と朝日新聞との癒着は悪名高い。アメリカは多少なりとも保守派の力が強いので、色々なインターネット・サイトが暴露記事を流してくれるけど、日本の保守系メディアは弱小だから、ボンクラな評論家とか内向き志向の知識人をコメンテーターに迎えるだけで、無難な話題に終始する。まぁ、低予算のインターネット番組だと難しいのかもね。
http://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68733946.html

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2018年09月24日
ペンタゴンが発注したプロパガンダPR / ヤラセが氾濫するマスメディア(後編)
http://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68734067.html


ニュース報道の製造?

  戦争ニュースには報道規制と世論操作が付き物だ。アメリカ軍にはかつて苦い経験があった。ベトナム戦争の時、米軍が報道規制を敷かなかったので、敵軍の銃弾に斃れる兵隊や大怪我を負って担架に載せられる兵卒の映像が、連日のように流され、アメリカの輿論は一気に反戦ムードに包まれてしまったのだ。なにしろ、自分の大切な息子や夫、恋人が片腕をなくしたり、失明や火傷、半身不随の姿で帰国すれば、帰還兵を迎える家族は心臓が潰れる思いだろう。民衆政国家は、怒りで開戦に踏み切るが、泥沼の消耗戦には堪えられない。アメリカの国防総省が検閲をしなかったばかりに、民間のジャーナリストが勝手に彼方此方で取材を行い、どんどん悲惨な映像を本国に送ってしまった。彼らは国益よりも視聴率を優先し、銃後の国民に与える影響なんかお構いなし。だから、ペンタゴンはやりたい放題の報道を許してしまったベトナム戦争を反省し、ペルシア湾岸戦争の時には、徹底した報道規制を加えたのである。

  世論操作のための政治プロパガンダと言えば、1991年の湾岸戦争が直ぐに思い出される。歴史に名を残したいジョージ・H・W・ブッシュ大統領が、石油メジャーとイスラエルの国益を忖度し、国内で心理戦を仕掛けた可能性は高い。(開発を続ける独裁者が君臨し、統一されたイラクは、「大イスラエル構想」にとって邪魔な存在だった。) 1990年10月、ナイラ・アッ=サバーハ(Nayirah Al-Sabah)というクウェート人少女が、合衆国議会の公聴会で衝撃的な事件を述べた。彼女の証言によれば、クウェートの病院に銃を持ったイラク兵が雪崩れ込み、保育器の中にいた赤ん坊を取り出し、冷たい床に放置して死に至らしめた、というのだ。この証言を千載一遇のチャンスと捕らえたPR会社の「ヒル&ノールトン(Hill & Knowlton)」は、彼女の話を各メディアに流し、これを受け取ったテレビ局はこぞって少女の話を放送していた。

Nayirah 1George Bush 2

(左: ナイラ・アッ=サハーバ / 右: ジョージ・H・W・ブッシュ )

  しかし、ナイラの話は著しく事実を歪めた偽証だった。彼女は実際にイラク兵の横暴を目撃したのではなく、単なる噂話を述べただけで、真実ではなかった。クウェートが解放された後、ニューヨーク・タイムズ紙のジョン・マッカーサー記者がこのヨタ話を嗅ぎつけ、ナイラがクウェート大使サウド・アッ=サバーハの娘であると暴露したから、アメリカの輿論はホワイトハウスの戦争目的に疑念を抱き始めたのである。また、「ヒル&ノールトン」はクウェート大使館が大金を使って雇った宣伝広告会社であることも判明し、ナイラ証言の流布が戦時プロパガンダであったこともバレてしまったのだ。ただし、湾岸政争の時、イラク兵が病院の医療器具を強奪したことは確かなようで、その時保育器も一緒に盗んだから、新生児を入れる保育器が無くなって困ったというのが、どうも事の真相らしい。ナイラはその話に尾鰭をつけて証言したというのが本当のところだろう。ここで注目すべきは、彼女は「宣誓」の下で証言したのではない、という点だ。宣誓証言でなければ偽証罪に問われる危険性が無いので、“いいかげん”な噂話でも気楽に陳述できる。彼女は「何人の赤ん坊」が死んだのかは述べなかったが、渡された台本には「15名の新生児が亡くなった」と書かれていたそうだ。

  ジョージ・ハーバート・ブッシュの嫡男ジョージ・Wは、9/11テロを口実にイラク戦争を起こしたが、このドラ息子も政治プロパガンダを用いていた。ペンタゴンはPR会社の「ベル・ポティンガー(Bell Pottinger)」を5億4千万ドルで雇い、偽のテロリスト・ビデオを作るよう依頼したそうだ。(Crofton Black, Abigail Fielding-Smith and Jon Ungoed-Thomas, "Lord Bell ran $540m covert PR ops in Iraq for Pentagon News", The Sunday Times, 2 October 2016) 「ベル・ポティンガー」社はアルカイーダに関するビデオ映像を制作し、それがあたかもアラブ系のテレビ局から流れてきた映像のように見せかけていた。また、制作スタッフは低品質の爆撃映像を収録し、ニュース映像のように偽装したし、軍が襲撃した建物の中で「演劇」を撮影し、それをアルカイダが作った「宣伝ビデオ」と称して放映したそうだ。「ベル・ポティンガー」の元社員であったマーティン・ウェルズ(Martin Welles)氏によると、社員は特別な指示を受けて映像を作成し、だいたい10分くらいの「作品」に仕上げたらしい。

Martin Wells 1(左 / マーティン・ウェルズ )
  英国の「ベル・ポティンガー」社は合同心理戦部隊(Joint Psychological Operation Task Force / JPOTF)の下で動いていたという。米国の法律は、政府が自国民に対してプロパガンダを仕掛けぬよう禁止しているので、ペンタゴンはそれを回避すべく、外国の会社を利用したのである。つまり、英国のPR会社が“勝手”に作った映像を流すぶんには構わない、ということだ。契約期間は2007年から2011年までで、この宣伝活動はホワイトハウスとデイヴィッド・ペトレイアス将軍(Gen. David Petraeus)が非公式に承認した作戦であったらしい。また、ペンタゴンは2009年、PR会社の「レンドン・グループ(The Rendon Group)」を雇い、従軍するジャーナリストを監視させ、軍隊にとってポジティヴな報道かどうかを査定させていたそうだ。さらに驚くべきことだが、2005年には、ワシントンに本部を置くPR会社の「リンカン・グループ(The Lincoln Group)」を雇って、イラクに関する新聞記事を流通させたという。しかも、その記事は米軍が書いたものであった、というから唖然とする。("Pentagon paid PR firm $ 540m to make fake terrorist videos", Middle East Monitor, October 2, 2016) もう八百長というか、捏造のオンパレードだ。一般のアメリカ人がどう考えるか分からないが、日本人はこれを「ヤラセ記事」と呼ぶ。

白人を「黒人」にする広告

a-112(左 / 赤い丸で囲まれた人物が被害者の生徒 )
  アメリカの偽造・捏造は民間にも蔓延(はびこ)っており、そこに人種が絡んでいるからタチが悪い。フランスのリヨンに「エミール・コール」という私立学校があって、最近、米国のロサンジェルスに分校を建設することになったという。そこで、生徒募集の広告を作ったのだが、そこに掲載した写真に問題があった。フランス人生徒の集合写真に黒い“修正”が加えられており、数名の白人生徒が「黒人」にされていたのだ。(Adrien Giraud, "Accusée de , l'école Émile Cohl supprime la publication d'une photo promotionnelle ratée", Rue89Lyon, 10 septembre 2018) アントワン・リヴィエール(Antoine Riviére)教頭は、意図的な操作を否定し、被害を受けた生徒に謝罪した。これはカルフォルニアのコミュニケーション部門が勝手にしでかした事で、フランスの本校は知らされていなかったようだ。アメリカ支部のスタッフは、デジタル加工で白人生徒の顔を黒くし、「人種的多様化」を演出することで、アメリカ人生徒にアピールしたかったのだろう。つまり、白人ばかりの写真だとアメリカの有色人生徒が集まらないから、「多民族のクラス」を捏造して、好感を持たれるよう画策したのだ。

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(写真 / 「黒人」にされた白人生徒たち )

  さぁ〜すが、アメリカのリベラル派は人種主義を解っている。黒人は黒人に対して共感し、黒人がいる学校に興味を持つという訳だ。ということは、白人生徒は白人生徒のクラスを好み、白人の学校を選んでもいいとなる。もし、黒人生徒が人種偏見を持っていないのであれば、フランス白人ばかりのクラスでも気にしないはずだが、左翼的アメリカ人は「黒人は黒人に惹かれる」と解っていたので、あえて危険を犯し、写真に修正を加えていたのだろう。結局、リベラル派は心の底で人種主義を信じていたのだ。それにしても、「黒い顔」にされたフランス人生徒は気の毒だ。まさか、宣伝用に撮った写真に「修正」が加えられていたなんて、想像していなかったのである。

  我々の身の回りにはフェイク・ニュースや詐欺的宣伝が本当に多い。偏向報道や捏造映像は問題だが、省略報道も赦せない。CNNは「報道しない自由」を行使して、事件のキー・ポイントを伝えなかったことがある。少し前に、米国のニューメキシコ州で子供を虐待する親が逮捕されるという事件があった。主犯格のルーカス・モーテン(Lucas Morten)とシラジ・イブン・ワハジ(Siraj Ibn Wahhaj)は、タオス郡にある建物の中に、1歳から15歳までの子供11名を監禁し、水や食事を与えず衰弱させたという。ワハジはまた、ジョージア州に住む3歳の息子アブドゥル(Abdul Ghani Wahhaj)を拉致したことで指名手配されていたそうだ。建物の中には子供達の他に、三名の女性がいて、監禁された子供達の母親であった。タオス郡の警察が建物の中に突入したとき、ワハジはAR15ライフルと弾倉5個、拳銃4丁で武装していたそうである。子供達が閉じ込められていた部屋の中はとても不潔で、幼い被害者らは、かなり衰弱していたようだ。(Ann Claire Stapleto, Susannah Cullinane and Holly Yan, "Five charged with child abuse after 11emaciated children found in trailer", CNN, August 6, 2018)

Lucas Morten & Siraj WahhajSiraj Wahhaji arrested women

(左: ルーカス・モーテン / シラジ・イブン・ハラジ / 右 3名: 捕まった容疑者の女性たち )

  CNNの報道だけを聴いたアメリカ人は、異常な精神を持った大人による拉致監禁事件とだけ考えるだろう。しかし、この報道には肝心な点が抜け落ちていたのである。警察に保護された13歳の少年は、ブルックリン在住のイマム(イスラム教の指導者)であるワハジの息子で、父親から武器の扱い方や戦闘用格闘技を習っていたのだ。つまり、「ジハード(聖戦)」の訓練を受けていたという訳。というのも、ワハジは危険思想の持ち主で、彼の父親は1993年に起きたWTCビルの爆破に何らかの関係を持っていたのだ。そして、彼は別の息子にも「非イスラム信徒」への戦い方を教えていたそうだ。CNNの記者は地元警察の保安官ジェリー・ホグリーフ(Jerry Hogrefe)から事情を聴いていたのに、記事にはこの事実を載せなかった。たぶん、イスラム教徒への偏見に繋がると判断したのだろう。だが、事件をどう判断し、どんな解釈をするのかは一般国民の自由である。報道機関が予めニュースを検閲し、“調理”された事件内容を流すのは情報操作に他ならない。小規模な保守系メディアがバラしたから、一般のアメリカ人は事件の真相を知り得たのだが、もしインターネットが普及していなければ、事件は闇に葬られたはずだ。リベラル・メディアというのは番組内で綺麗事を口にするが、舞台裏では汚いことを平気で行う情報統制機関である。

Siraj Wahhaj & son Abudul.2Siraj Wahhaj compound 3

(左: 救出されたアブドゥル・ワハジ / 右: 子供達が監禁されていた建物)

  大手メディアというのは膨大な取材費を有し、世界各国に特派員を派遣できるから、様々な特集で視聴者を魅了できるが、その本質は世論操作にある。有名テレビ局だからといって、信用度が高いとは限らない。むしろ、世論操作が巧みで、狡猾な仕掛けで視聴者を騙す巨大組織と思った方が無難だ。脳天気な一般人は、どのように操られたのかが分からないから自覚が無い。日本の学校でマスコミの「闇」を教えないのは、案外、教育界とマスコミが共犯関係にあるのかも知れないぞ。両者を繋ぐ「赤い絆」といっても、山口百恵のドラマとは違うからね。(分からない人はインターネットで調べてください。)
http://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68734067.html

80. 中川隆[-13416] koaQ7Jey 2018年10月07日 05:34:34 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-19057] 報告

2018.10.07 追い詰められるアメリカ


 かつてリチャード・ニクソンは世界を自分たちが望む方向へ導くため、人びとにアメリカは何をしでかすかわからない国だと思わせるべきだと考え、またイスラエルのモシェ・ダヤン将軍は狂犬のようにならなければならないと語ったと言います。

 「触らぬ神に祟りなし」と思わせようということでしょうが、そうした「神」に対して下手に出たところ、つけあがって手に負えなくなりました。こうした「神」が支配する体制で官僚と呼ばれる神官たちは支配を正当化するために神話を作り出し、信徒たちは自分たちの信仰を正当化するため、「民主」、「自由」、「人権」といった実態の伴わない空疎な呪文を唱えています。

 この神国にはソ連というライバルが存在したのですが、そのソ連が1991年12月に消滅すると、その神官たちは世界をカルト化するために侵略戦争を計画します。それがウォルフォウィッツ・ドクトリンだということは本ブログで繰り返し書いてきました。

 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官によりますと、ソ連の消滅が見通されていたであろう1991年にアメリカの国防次官だったポール・ウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていました。

 ウォルフォウィッツたちネオコンは1980年代からフセイン政権を倒してイラクに親イスラエル体制を樹立させ、シリアとイランを分断して個別撃破するというプランを立てていました。すでにサウジアラビアはイスラエルの影響下にあり、イラク、シリア、イランで「レジーム・チェンジ」に成功すれば中東全域を支配できるというわけで、それはエネルギー資源の独占につながります。

 ウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づく侵略戦争が本格化する引き金になった出来事が2001年9月11日に引き起こされます。ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州のアーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)に対する攻撃です。

 その後、この攻撃に無関係だったアフガニスタンとイラクを先制攻撃、ジョージアを使って南オセチアを奇襲攻撃して失敗、正規軍の戦闘でロシア軍に勝つことは難しいと考えたのか、バラク・オバマ政権はジハード傭兵を使って2011年春にリビアとシリアへの侵略戦争を始めます。

 アメリカの支配層が中東からアフリカにかけての地域で侵略戦争を始めた理由は石油をはじめとする資源を支配するためでした。アフガニスタンでは殺戮と破壊が続き、イラクのサダム・フセイン体制はアメリカ主導軍による先制攻撃で破壊され、リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制はジハード傭兵とNATO軍の連合軍によって倒されました。その次がシリアですが、この国は屈服せず、イランやロシアの支援を受けて侵略軍を追い出しつつあります。1990年代のロシアは米英巨大金融資本の属国でしたが、21世紀に入って再独立、急速に国力を回復させたのです。

 ジハード傭兵とは1970年代の終盤、ジミー・カーター政権の国家安全保障補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーが考えたサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団のメンバーを主力とする傭兵たちで、アメリカから武器/兵器の提供を受け、CIAから軍事訓練を受けてきました。そうした訓練を受けたメンバーのデータベースがアル・カイダです。アメリカの軍や情報機関はチェチェンや新疆ウイグル自治区の出身者も傭兵として使っています。

 少し前からアメリカ軍はジハード傭兵の幹部をヘリコプターなどで救出、一部はアフガニスタンへ運び、一部はユーフラテス川の北を支配しているクルド勢力に合流させたと言われています。イドリブにはアメリカ系の傭兵が残っているようですが、その他の地域で救出されなかった戦闘員は切り捨てられたか、欧米以外を後ろ盾とする戦闘集団である可能性があります。

 脅して屈服させるというアメリカ/NATOやイスラエルが使ってきた戦術の限界が見えています。これまではロシア政府が巧妙に回避してきましたが、それを「弱さの証拠」と考えている可能性が高く、軍事的な緊張を緩和されようとするとは思えません。

 しかし、こうしたアメリカ/NATOやイスラエルの姿勢は自らを孤立化させることになりました。そうした動きは中東だけでなく、東アジアでも見られます。朝鮮半島の問題ではロシア、中国、韓国が主導権を握り、朝鮮を巻き込んで緊張緩和の方向へ引っ張っているように見えます。アメリカ支配層は追い詰められているのです。

 そうした中、9月17日にはシリア沖でロシア軍の電子情報支援機IL−20が撃墜されました。その原因を作ったとしてイスラエル軍をロシア政府は厳しく批判、これまでイスラエル政府に配慮してシリア軍へ提供していなかった防空ミサイルS-300をシリア側へ引き渡しています。さらに、自動化されたコントロール・システムをシリアの防空部隊司令部へ提供、航空機の衛星ナビゲーション、搭載されたレーダー、通信システムをジャミングするともしています。事実上、シリア上空を飛行禁止空域にしたわけです。

 アメリカは支配力を回復しようと軍事力を使い、威嚇するだけでなく破壊と殺戮を繰り返し、ドル支配を利用して経済戦争を仕掛けています。先住民の殲滅から始まったアメリカの歴史は血塗られています。

 ロシアが再独立した結果、恐怖が和らぎ、冷静に国際情勢を観察する人が増えてきたようです。冷静に見ると、アメリカは醜悪で貧弱だということがわかります。そうした実態を知る人が増えたなら、アメリカの支配力は急速に低下するでしょう。アメリカは追い詰められています。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201810070000/

81. 中川隆[-13354] koaQ7Jey 2018年10月13日 10:54:41 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-19150] 報告

2018.10.13
フェイスブックのアカウント削除は巨大米資本による言論統制の一環
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201810130000/


 アメリカで中間選挙の投票日が近づく中、​フェイスブックは500ページ、251アカウントを削除​、​批判​されている。削除されたアカウントの中には有力メディアの偽情報を指摘してきたものも含まれ、私企業による言論統制にほかならない。この検閲にはNSC(国家安全保障会議)でサイバー問題の責任者を務めた経験があるナサニエル・グレイチャーが加わり、ツイッターも同調している。


 フェイスブック、ツイッター、グーグル、ユーチューブといったインターネットの巨大企業はNSAやCIAといったアメリカの情報機関と連携していることが知られている。NSAはイギリスの電子情報機関GCHQとUKUSA(ユクザ)を編成、そこにはカナダ、オーストラリア、ニュージーランドのアングロ・サクソン系諸国の情報機関も参加している。この5機関の中心は言うまでもなくNSAとGCHQで、他の3機関はその下で活動、各国政府を監視する役割も担っている。

 アメリカでは1970年代に入って情報機関による秘密工作が問題になり、75年1月には上院で「情報活動に関する政府工作を調査する特別委員会」が、その翌月には下院で「情報特別委員会」が設置された。委員長は上院がフランク・チャーチ、下院がルシアン・ネッツィ(後にオーティス・パイクへ変更)だったことから、それぞれチャーチ委員会、パイク委員会と呼ばれている。日本では1973年3月に聴聞会がスタートした上院外交委員会の多国籍企業小委員会をチャーチ委員会と呼ぶが、これは日本独特の風習。

 アメリカの巨大金融資本は第2次世界大戦後、情報をコントロールするためにモッキンバードと呼ばれるプロジェクトを始動させた。その中心にはアレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、そしてフィリップ・グラハムがいた。

 ダレスはOSS(戦略事務局)とCIA(中央情報局)で中心的な役割を果たし、ウィズナーはダレスの側近として破壊活動を指揮していた。このふたりはOSS長官だったウィリアム・ドノバンと同様、ウォール街の弁護士。ヘルムズは母方の祖父がBIS(国際決済銀行)の初代頭取、そしてグラハムの義理の父は世界銀行の初代総裁。

 ワシントン・ポスト紙はウォーターゲート事件でリチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込んだが、その取材で中心になったのはカール・バーンスタインとボブ・ウッドワード。同紙へ入る少し前までウッドワードはONI(海軍情報局)の将校で、ジャーナリストとしては素人に近かった。「ディープスロート」という情報源を連れてきたのはウッドワードだったが、取材は事実上、バーンスタインが行ったと言われている。

 そのバーンスタインは1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、ローリング・ストーン誌に「CIAとメディア」という記事を書いている。CIAが有力メディアをコントロールしている実態を暴露したのだ。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)

 当時のメディアには気骨ある記者や編集者がいて統制の間隙を縫って権力犯罪を明らかにしていたが、CIAと有力メディアが連携していたことも事実なのだ。議会の委員会もこうした事実を知っていたが、記者、編集者、発行人、あるいは放送局の重役から事情を聞いていない。当時のCIA長官、つまりウィリアム・コルビーやジョージ・H・W・ブッシュたちから調査をやめるように働きかけられたことが影響したと言われている。

 それでも議会や一部ジャーナリストの調査を懸念した支配層は報道統制を強化するためにメディア支配の規制を緩和、アメリカでは1983年には50社が90%のメディアを所有していたのに対し、2011年になると90%を6社が支配している。それでも検閲しきれなかったインターネットに対する統制を始めたわけだ。ウィキリークスやアレックス・ジョーンズに対する言論弾圧はその序章だったと言えるだろう。

82. 中川隆[-13509] koaQ7Jey 2018年11月07日 07:10:44 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-20215] 報告
2018.11.07
フェイク・ニュースを発信する米有力メディアへの信仰を捨てられない人びと
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201811050000/


 アメリカの支配層はフェイク・ニュースで人心を操作している。その重要な道具が有力メディアだということは言うまでもない。日本にはアメリカの有力メディアを「言論の自由」の象徴だと錯覚、崇拝している人もいるようだが、実態はプロパガンダ機関、つまりフェイク・ニュースの発信源だ。

 第2次世界大戦が終わった直後に情報をコントロールする目的でモッキンバードというプロジェクトが始められたことは本ブログでも繰り返し書いてきたが、1991年12月にソ連が消滅した後、西側ではあからさまな偽情報が伝えられるようになった。これはウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づくネオコンの世界制覇計画と連動している。

 有力メディアが戦争熱を煽るが、1993年にアメリカ大統領となったビル・クリントンは戦争に消極的。そうしたこともあり、この年の9月2日には有力者の公開書簡がウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載された。署名した有力者にはイギリスのマーガレット・サッチャー元首相、アメリカのジョージ・シュルツ元国務長官、フランク・カールッチ元国防長官、ズビグネフ・ブレジンスキー元国家安全保障問題担当大統領補佐官、ポール・ニッツェ、ジョージ・ソロス、あるいはネオコンとして知られているジーン・カークパトリック、アルバート・ウールステッター、ポール・ウォルフォウィッツ、リチャード・パールが含まれていた。その後、クリントン大統領はスキャンダルで苦境に陥る。

 クリントン政権が好戦的な方向へ開示を切ったのは、ヒラリー・クリントンの友人でブレジンスキーの教え子でもあったマデリーン・オルブライトが国務長官へ就任した1997年1月以降。オルブライトは1998年秋にユーゴスラビアへの先制攻撃を支持すると表明した。

 1998年10月にクリントン大統領はリチャード・ホルブルックをユーゴスラビアへ派遣、コソボから軍隊を引き揚げなければ空爆するとスロボダン・ミロシェビッチ大統領を脅し挙げた。ミロシェビッチは10月の終わりに撤退計画を発表しているが、アメリカ支配層は空爆へ突き進む。

 コソボにあるユーゴスラビアの警察署で45名が虐殺されたという話が1999年1月に流されるが、これは嘘だった。死者が出たのは警察側とKLA(コソボ解放軍、UCKとも表記)との戦闘の結果で、その様子はAPのテレビ・クルーが撮影していた。

 偽情報の発信源であるウィリアム・ウォーカーはアメリカの元エル・サルバドル駐在大使。大使時代の1989年にエル・サルバドルではカトリックの指導的立場にあった司祭6名とハウスキーパーやその娘がエルサルバドル軍によって殺害されたが、この事件に関する調査をウォーカーは妨害している。教会が脱出させようとした目撃者にウォーカーたちは接触し、証言内容を変えなければエルサルバドルに送り返すと脅したのだ。そして1999年3月、NATO軍はユーゴスラビアに対して全面攻撃を加えた。

 なお、1999年3月にクリントン大統領を追及していた検察側の中心的な証人が反クリントン・キャンペーンを展開しているグループからカネを受け取っていることが判明、検察側が偽証工作を行った疑惑も出て来た。(Murray Waas, 'Behind the Clinton cocaine smear,' SALON, March 26, 1998)

 2003年3月にジョージ・W・ブッシュ政権はイラクを先制攻撃するが、その口実にされた「大量破壊兵器」の話が嘘だということはブッシュ政権の閣僚たちも認めている。その嘘でイラクは破壊され、100万人程度の市民が殺されたと推測されている。

 バラク・オバマ大統領が2011年にアル・カイダ系武装勢力(サラフィ主義者やムスリム同胞団が中心)を使ってリビアやシリアへの侵略戦争を開始、リビアではNATO軍がその武装勢力を空爆で支援した。この辺の事情は本ブログで繰り返し書いてきたので、今回は割愛する。この侵略戦争では人権や民主といったタグが使われたが、いずれも嘘だった。

 オバマ政権は2013年から14年にかけてウクライナでクーデターを実行している。その手先になったのはネオ・ナチ。民主的に選ばれた政権を暴力的に排除、今でも破壊と殺戮を続けている。このクーデターをロシアからの侵略だと宣伝してきたのも西側の有力メディアだ。

 リビアのムアンマル・アル・カダフィは8カ月ほどで倒されたが、シリアのバシャール・アル・アサド政権は倒れない。オバマ政権が直接的な軍事介入の準備を整えた2015年にロシア軍がシリア政府の要請で介入、アメリカなど侵略勢力の手先になっていたアル・カイダ系武装勢力やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)の支配地域は急速に縮小、アサド政権の打倒は無理な状況になっている。

 アメリカ支配層は富を独占するために破壊と殺戮を繰り返し、その実態を隠すためにフェイク・ニュースを流し、その嘘を暴く情報を「フェイク・ニュース」だと攻撃してきた。事実をチェックすれば有力メディアの嘘はすぐわかるのだが、権威好きの人びとには有力メディアのフェイク・ニュースは効果的なようだ。

 アメリカの支配層にはビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ、ドナルド・トランプといった歴代大統領も含まれている。支配層には一種の派閥があり、今は対立が激しくなっている。オバマやヒラリー・クリントンを担いだ勢力はトランプやウラジミル・プーチンを悪役に仕立て上げ、自分たちは善人づらしているが、フェイク・ニュースという点ではこの反トランプ派の方があくどい。

 こうした反トランプ派の有力メディアが展開してきたロシアゲートは証拠が示されていない。単なる言いがかり。いや、証拠はそれがフェイク・ニュースだということを示しているのだが、アメリカの有力メディアを崇拝している人にはその実態が見えていない。

 第2次世界大戦後、そうしたフェイク・ニュースをつかった人物がアメリカで猛威を振るった。その人物とは上院議員だったジョセフ・マッカーシー。その背後にはFBI長官だったJ・エドガー・フーバーがいた。「マッカーシー旋風」はマッカーシー上院議員だけで行ったわけではない。

 フーバー長官は映画の影響力を認識、ハリウッドの情報収集と弾圧を展開する。そのときに手先になったひとりがロナルド・レーガン。後のアメリカ大統領だ。ハリウッドはカリフォルニア州にあるが、1943年から53年にかけてカリフォルニア州知事を務めたのが後にジョン・F・ケネディ大統領暗殺に関する委員会の委員長に就任するアール・ウォーレン。その関係でフーバーとウォーレンは関係が深かった。言うまでもなく、現在のハリウッドは支配層の宣伝機関、偽情報の発信源にすぎない。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201811050000/

83. 中川隆[-13655] koaQ7Jey 2018年11月19日 19:33:41 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-20911] 報告

【討論】中東情勢の真実2018 Part2−トランプと中東戦略の行方[桜H30-11-17] - YouTube 動画
https://www.youtube.com/watch?v=UGgHTO15YJ8


2018/11/17 に公開

◆中東情勢の真実2018 Part2−トランプと中東戦略の行方

パネリスト:
 加瀬英明(外交評論家)
 山正之(コラムニスト)
 田中宇(国際情勢解説者)
 藤和彦(経済産業研究所上席研究員)
 馬渕睦夫(元駐ウクライナ兼モルドバ大使)
 宮崎正弘(作家・評論家)
 吉川圭一(グローバル・イッシューズ総合研究所代表)
司会:水島総

84. 中川隆[-13733] koaQ7Jey 2018年11月30日 06:44:43 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-21442] 報告
2018.11.29
外部で発信される嘘を伝えるという米有力メディアの手法(1/2)


 イギリスのガーディアン紙が伝えたポール・マクフォートとジュリアン・アッサンジが何度か会ったとする記事は信憑性が薄く、同紙の信頼度をさらに低めることになっているが、アメリカの有力メディアはその報道を伝えるという形で宣伝を展開している。

 そうした報道/プロパガンダで作り上げたイメージを使い、アメリカ支配層はアッサンジを逮捕させ、アメリカで刑務所へ入れてしまおうと考えているのかもしれない。

 西側の有力メディアは偽情報を伝える際、一種の濾過システムを利用してきた。例えばシリアでの戦争では当初、シリア系イギリス人のダニー・デイエムやSOHR(シリア人権監視所)を情報源として使った。間違っていても責任はデイエムやSOHRという構図だ。

 実際、デイエムの発信する情報が信頼できないことが2012年3月に発覚する。この人物を中心とするグループが「シリア政府軍の攻撃」を演出する様子が流出してしまったのだ。つまり「ヤラセ」が発覚した。

 アメリカ、イスラエル、サウジアラビア、イギリス、フランス、トルコ、カタールといった国々がシリアやリビアに対する侵略戦争を始めたのは2011年春だが、その何年も前から順部は始まっていた。

 中東で侵略戦争を本格化させたのはジョージ・W・ブッシュ政権。2003年3月のイラクに対する先制攻撃が始まりだ。そのときに倒されたサダム・フセイン体制はスンニ派。戦争を主導したネオコンは親イスラエル体制を築く予定だったのだろうが、実際はイラクの多数派であるシーア派が実権を握り、イランと結びつく。

 そこで、2007年初めにブッシュ政権は中東政策の方針を大きく変更しているという。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、​シリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラを最大の敵だと定め、スンニ派の過激派と手を組むことにした​のだ。

 スンニ派の過激派とはサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とするジハード傭兵で、その中にはフセイン体制の将兵も含まれていると言われている。(つづく)
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201811290000/


2018.11.30
外部で発信される嘘を伝えるという米有力メディアの手法(2/2)


 2009年1月に大統領はバラク・オバマへ交代になるが、そのオバマは10年8月にPSD-11を出し、ムスリム同胞団を主力とする体制転覆プロジェクトを始める。それが2011年春に顕在化したわけだ。リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制が2011年10月に倒れると傭兵や武器/兵器はシリアへ運ばれた。翌年に入ってシリアでの戦闘が激化したのはそのためだが、デイエムの嘘はばれてしまった。

 そこで現れてきたのがSCD(シリア市民防衛)、いわゆる「白いヘルメット」だ。この団体は2014年10月に創設されたことになっているが、前年のはじめにはジャームズ・ル・メシュリエが訓練を始めている。この人物はイギリス軍の元将校で、傭兵会社のブラックウォーター(後にXe、さらにアカデミへ名称変更)で働いた経験がある。

 西側では「善玉」として描かれるSCDだが、その実態はアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)の医療部隊。SCDとジハード傭兵のメンバーは重なっている。

 こうした個人や団体だけでなく、イギリスのトニー・ブレア政権もアメリカ支配層の侵略戦争を実現するため、偽情報を発信してきた。その一例が2002年9月にイギリス政府から発表された「イラク大量破壊兵器、イギリス政府の評価」、いわゆる「9月文書」だ。作成された文書はすぐにリークされ、イギリスのサン紙は「破滅から45分のイギリス人」という扇情的タイトルの記事を掲載した。

 アメリカのコリン・パウエル国務長官も絶賛していたが、これはある大学院生の論文を無断引用したもの。内容もイラクの脅威を正当化するために改竄されていたことが後にわかる。

 この文書が作成される半年前に​パウエルが書いたメモ​の存在が判明している。その中で、ブレア首相がパウエルに対してイギリスはアメリカの軍事行動に加わると書かれている。つまり開戦の1年前にでブレアは開戦に同意していた。ブッシュ政権は当初、2002年春に攻撃を始める予定で、その攻撃にイギリス軍も参加すると言うことだ。

 しかし、アメリカの統合参謀本部の内部では反対が強く、開戦は延期された。当初からイラクは2001年9月11日の攻撃に無関係で、大量破壊兵器を保有していないことをアメリカ軍はCIAと同様、熟知していたはず。イラクに対する戦争攻撃には「大義」がないということだ。しかもネオコンの立てた計画は無謀で、戦争の泥沼化は不可避だと判断されていた。

 そうした反対の結果、半年から1年ほど開戦が遅れた可能性が高い。そしてブレア政権の報告書は発表された。開戦を正当化するために作成されたと考えるべきだろう。

 そして2003年3月にアメリカやイギリスはイラクを先制攻撃するが、BBCのアンドリュー・ギリガンは5月にラジオ番組に登場、「9月文書」は粉飾されていると語る。サンデー・オン・メール紙では、アラステアー・キャンベル首席補佐官が情報機関の反対を押し切って「45分話」を挿入したと主張した。

 ギリガンがこの話を語って間もなく、彼の情報源が国防省で生物兵器を担当しているデイビッド・ケリーだということがリークされる。実際、2003年5月にギリガンとケリーはロンドンのホテルで会っていた。

 そのためケリーは7月15日に外務特別委員会へ呼び出されるのだが、その2日後に死亡する。公式発表では「自殺」ということになっているが、疑問は多く、今でも他殺説は消えていない。

 その後、「9月文書」が正しくないことはイギリスの外務大臣だったジャック・ストローが認めているが、その嘘を伝えたBBCでは粛清があり、執行役員会会長とBBC会長が辞任、ギリガンもBBCを離れた。政府に屈服したBBCはそれ以降、単なるプロパガンダ機関になる。

 アメリカの有力メディアは外部の個人や組織が流した情報を伝える傾向が強まっているように感じられる。支配層の好戦派にとって都合の良い話、つまり嘘を伝える役割を負っている彼らだが、その責任を回避するため、こうした手法を採用しているのかもしれない。(了)
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201811300000/

85. 中川隆[-13191] koaQ7Jey 2019年1月05日 20:16:03 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-22219] 報告

[馬渕睦夫さん][今一度歴史を学び直す] 6-7-
石油目的のイラク戦争と東欧のカラー革命「アラブの春」の実態 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=9ayQK3ht6yM&list=PLSdGrK6XTr5iYvuiF_2TQaKUPeOMoJiPT&index=7&app=desktop

86. 中川隆[-10709] koaQ7Jey 2019年4月18日 09:25:34 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[1344] 報告
米NYタイムズ、嘘報道でイラク戦争起こし多数の犠牲者…嘘のロシア疑惑で政権批判も
https://biz-journal.jp/2019/04/post_27535.html
2019.04.17 文=木村貴/経済ジャーナリスト Business Journal


イラク戦争(2003年4月12日)(写真:ロイター/アフロ)


 2016年の米大統領選でトランプ陣営がロシア政府と共謀して得票を不正に操作したという「ロシア疑惑」は実際にはなかったことが、モラー特別検察官の捜査によって結論付けられた。2年以上にもわたって大手メディアが振りまいてきたロシア疑惑報道は、フェイク(偽)ニュースだったわけである。

 バー米司法長官は3月24日、ロシア疑惑について捜査結果の概要を公表した。モラー特別検察官の捜査で、トランプ大統領の選挙陣営がロシアと共謀した疑惑を裏づける証拠は見つからなかった。
 
 2017年5月にモラー特別検察官による捜査が始まってから、今年3月末で22カ月。実際には2016年10月、米国土安全保障省が大統領選挙においてサイバー攻撃による妨害が行なわれていたことを認める声明を出し、ロシア疑惑に火がついた。この間、実に2年以上にもわたり、メディアは洪水のように大量のロシア疑惑報道を流してきた。大半はトランプ氏側を「クロ」と決めつける内容だ。

 しかし、それらの報道は、前回の本連載でも指摘したように、いずれも根拠に乏しいものだった。ワシントン・ポスト、CNN、NBC、ABC……。米国を代表する大新聞やテレビが誤報や問題のあるニュースを連発した。それにもかかわらず、トランプ陣営がロシアと共謀したという疑惑そのものは、あたかも事実であるかのようにメディア上で語られてきた。

 今回の捜査結果によって、大手メディアが争って伝えてきたロシア疑惑そのものに証拠がなかったことが明らかになった。報道機関の存在意義すら問われかねない、由々しき事態といわざるをえない。一体なぜ、このような事態を招いてしまったのだろうか。

■政府の情報に頼りすぎる危険

 米メディアが振りまいたロシア疑惑報道を読んで気づくのは、その大半が情報源を政府関係者に頼っている点だ。記事によって「米当局者によれば」「行政当局者によれば」「捜査当局者によれば」などと多少の違いはあるものの、いずれも行政・司法などの政府関係者が情報源であることに変わりはない。

 大手メディアの強みは、政府上層部に太いパイプを持つことにある。政府上層部が握る重要情報をいち早く入手することによって、小規模のメディアやフリージャーナリストなどに書けない記事を書くことができる。

 けれども大手メディアのこの強みは、逆に弱みにもなりうる。政府上層部が意図する情報操作に利用されかねないからだ。政府の意図に気づいても、日頃の貸し借りから拒否はしにくい。記者によっては、むしろみずから進んで協力することで、情報源とより親密な関係を築こうとする者もいるだろう。

 政府によるメディアを利用した情報操作といえば、頭に浮かぶのは、2003年に始まったイラク戦争である。

 イラク戦争開戦の根拠とされたのは、イラクのフセイン政権が大量破壊兵器を保有しているという主張だった。開戦に先立ち、当時ニューヨーク・タイムズのジュディス・ミラー記者は、この主張を肯定する多くの記事を執筆した。

 米同時テロから1年後、2002年9月8日付の1面トップで、ミラー記者は同僚記者と連名で「フセインは原子爆弾の部品調達を急いでいる」との記事を書いた。イラクが原子爆弾製造に向け、ウラン濃縮用の遠心分離機に使われる特殊なアルミニウム製チューブを購入しようとしているとの内容で、「大量破壊兵器の決定的証拠はきのこ雲になるかもしれない」と危機感を煽った。

 同日、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官、ライス大統領補佐官がそれぞれ違うテレビ番組に出演し「フセインが大量破壊兵器を保有しているのは間違いない」と強調。3人はそろって、「証拠」としてミラー記者が書いたニューヨーク・タイムズの記事に言及した。さらに数日後、ブッシュ大統領が国連総会で演説し「イラクは高強度アルミ製チューブを購入しようとしている。核兵器入手に躍起になっている動かぬ証拠」と断じる。

 しかし今では周知の事実だが、大量破壊兵器は結局、発見されなかった。アルミ製チューブも従来型ロケット砲用との見方が有力になった。ニューヨーク・タイムズは2004年5月、編集局長の見解として「2001年以降のイラク報道は問題含み」と認め、具体例として12本の記事を挙げた。このうち10本はミラー記者が単独か連名で書いた記事だった。

 ニューヨーク・タイムズは少なくとも結果として、多数の犠牲者を出したイラク開戦のお先棒を担いだ格好だ。こうした事態を招いたのは、戦争正当化に向けて世論を誘導したい政府高官のほか、フセイン政権の転覆を願う亡命イラク人の情報に頼りすぎたからだ。

 イラク開戦時の報道のあり方を問う新作映画『記者たち』(ロブ・ライナー監督)のなかで、ニューヨーク・タイムズを退社したミラー元記者のテレビインタビューの様子が流れる。その中でミラー氏はこう発言する。「政府の情報は誰も疑わないわ」。

 政府権力に対峙するジャーナリストの心構えとしてあまりにもナイーブと言わざるをえないが、実際にはミラー氏の言うとおり、イラク開戦当時、『記者たち』で描かれるナイト・リッダー社を除き、政府の主張に疑義を申し立てるメディアはほとんどなかった。けれどもその後、大量破壊兵器が存在しないことがわかり、メディアは政府の情報に頼りすぎる危険を学んだはずだった。

■ジャーナリズムの敗北

 ところが今回のロシア疑惑で、ジャーナリズムの世界でイラク戦争の教訓がまったく生かされていないことが明らかになった。大手メディアの記者たちは、情報機関との対立も辞さないトランプ大統領を排除したい政府関係者の情報に頼りきり、ロシアとの共謀という嘘の物語を垂れ流し続けたのだ。

 米コラムニストのマット・タイービ氏は「ジャーナリズムの敗北という点では、大量破壊兵器はロシア疑惑に比べれば小さなもの」と述べる。ロシア疑惑の誤報や誇張の規模は大量破壊兵器に関する報道をはるかに上回るうえ、報道機関が事実と虚構の区別という役目を忘れ、一方の勢力に肩入れする存在に変貌してしまったからだ。「大量破壊兵器で報道機関の評価は傷ついた。もし状況を変えなければ、ロシア疑惑でその評価は崩れ去るだろう」とタイービ氏は警鐘を鳴らす。

 だが実際には反省の機運は乏しい。ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストは昨年、ロシア疑惑報道により、報道の世界で最高の権威とされるピュリッツァー賞を受賞しているが、これを返上するという話は出ていない。

 米大手メディアの報道を鵜呑みにしてきた日本のメディアも責任は免れない。大手の論調に批判的な独立系メディアに目配りする努力がもっと必要だし、伝えた内容が誤っていたなら、読者に対する説明責任があるはずだ。ほおかむりを決め込めば、タイービ氏が指摘するように、報道機関としての評価を失うことになるだろう。
(文=木村貴/経済ジャーナリスト)

<参考文献>
牧野洋「イラク戦争に火をつけた『大量破壊兵器』スクープは『御用記者』の誤報だった」現代ビジネス
Matt Taibbi, It's official: Russiagate is this generation's WMD - Hate Inc. - Substack

87. 中川隆[-10582] koaQ7Jey 2019年4月26日 14:45:16 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[1491] 報告
『記者たち 衝撃と畏怖の真実』 ロブ・ライナー監督
長周新聞 2019年4月25日

 ロブ・ライナー監督が制作したこの映画は、2001年9月11日、アメリカで発生した同時多発テロ以後、アフガニスタン、イラク戦争へと突き進むアメリカ政府の動きに疑問を持ったナイト・リッダー社の記者たちが粘り強い取材を重ね、「イラクが大量破壊兵器を保持している」という政府の大がかりな嘘を暴いていった実話だ。急激に戦争へと世論が煽られるなかで、記者たちが孤立し葛藤しながらも真実を報じ続けた様子を、当時の実際の報道映像をまじえながら描いている。9・11以後の米国メディアの検証を通じて、ジャーナリズムのあり方を投げかける作品だ。

 副題の「衝撃と畏怖」とはアメリカのイラク侵攻の作戦名である。同時多発テロ以後、アメリカ国内では貿易センタービルが崩落する映像がくり返し放映され、愛国心が称揚される異様な空気のなかでブッシュが発する「テロとの戦い」に向けて世論が急速につくられていった。首謀者としてイスラム系テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビン・ラディンが浮上し、テロ発生直後の10月7日にはビンラディンを匿っているアフガニスタンへの空爆を開始、同月26日には米国愛国者法が成立する。

 そうしたなかで、31の地方紙を傘下に持つナイト・リッダー社のワシントン支局長であるジョン・ウォルコットのもとに、ブッシュ政府がアフガンだけでなくイラクに侵攻しようとしているという情報が入る。事実を確認するため、取材を命じられた国家安全保障担当の記者ジョナサン・ランデーと外交担当の記者ウォーレン・ストロベルは、安全保障や中東問題の専門家、国務省、国防総省などの政府職員、外交員らに地道に取材を重ねる。丹念な取材を続けるなかで、ビンラディンとイラクのサダム・フセイン大統領がつながっている証拠はなく、むしろ専門家は否定していること、にもかかわらずアメリカ政府がイラクとの戦争を画策していることが明らかになっていく。

 ナイト・リッダー社はそれらを発信していくが、政府の思惑に乗ってニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなど主要紙をはじめ多くのメディアで、9・11テロ事件の背後にイラクがいるとする報道や、大量破壊兵器を製造しているとする報道が急増していき、イラク戦争開戦前年の2002年秋にはニューヨーク・タイムズが、イラクが核製造部分の密輸を加速させているとするスクープを報じる。濃縮ウラン製造のためのアルミ管の密輸をヨルダンで食い止めたという政府高官の発言を報じたもの(後に「アルミ管記事」として物議を醸す)だ。新聞報道と同日朝にチェイニー副大統領補佐官がNBCの番組に登場し、続いてライス国家安全保障担当補佐官が同様にテレビ番組でこの報道を裏付ける発言をするなどし、「イラクが大量破壊兵器を保有している」という嘘が、真実としてアメリカを覆った。のちにこの情報は政府関係者がわざとリークしたものであることが明らかになった。

 大手メディアが政府情報を無批判に垂れ流し、怒濤のように嘘が氾濫するなかで、ナイト・リッダー社の記者たちは真実を探求して地道に取材を続け、記事を書き続ける。「われわれの読者は基地がある町にいる。もしすべてのメディアが政府の広報になるならやらせとけ。われわれは子どもを戦場に送る親たちの味方だ」「政府がなにかいったら必ずこう問え“それは真実か”」。そう檄を飛ばすウォルコット支局長。

■真実の報道を貫いたことで集まる重要告発

 政府を批判する記事を書き続けるナイト・リッダー社の記者たちは、政府中枢からの情報を得ることはできない。彼らが取材していったのは政府組織や軍の末端職員たちや専門家などだった。だが、そんな彼らのもとに、大義なき戦争に突き進もうとする政府に憤りを持つペンタゴンをはじめ政府組織の末端職員らから告発が寄せられる。秘密の戦略室があり、そこでは先に描いたシナリオに沿って都合のいい情報を集めてくるという、情報収集の原則に反した活動がなされていること、イラクの核査察では「駱駝(ラクダ)のケツの穴まで探した」が、大量破壊兵器など発見されなかったこと−−。こうした義憤に燃える人人の告発にもとづいて取材を進め記事を発信し続ける。

 しかし、傘下の新聞社に記事の掲載を拒否されたナイト・リッダー社はなすすべを失い、しだいに孤立していく。身内からも裏切り者呼ばわりされ、「自分たちの報道は間違っているのか」と葛藤しながらも、4人は理解ある家族に支えられながら、記者魂を奮い起こして取材を続けていくのである。

 映画では実録映像をまじえて、当時のアメリカ国内がイラク侵攻一色に染まっていたわけではないことを伝えている。2002年10月に対イラク武力行使容認決議を採択した米議会では、ヒラリー・クリントンらが賛成演説をする一方で、民主党長老のロバート・バード議員が、嘘の情報で開戦したベトナム戦争で多くの命が犠牲になった悔恨から、渾身の反対演説をする様子や、イラク開戦に反対する大規模なデモがおこなわれた映像も映し出される。

■ジャーナリズムの役割を問う

 アメリカは2003年3月20日、イラク侵攻を開始した。「数日で終了する」とうそぶいて。だが、同年5月にブッシュ大統領が原子力空母エブラハム・リンカーン艦上で「任務完了」の横断幕を掲げ、イラク戦争の戦闘終結宣言をおこなった後もイラクの戦況は泥沼と化し、多くのイラク市民、アメリカ兵が犠牲になった。本作に登場する元陸軍兵士の若者も9・11後、愛国心から両親の反対を押し切って19歳で志願し、イラク派遣からわずか1週間で爆発物によって下半身が麻痺した。彼の「なぜ戦争を?」という問いかけは、この戦争で犠牲になったすべての人人の問いかけでもある。

 後にナイト・リッダー社が当時配信した内容はすべて事実であったことが明らかになり、ニューヨーク・タイムズなどメディア各社は謝罪することとなった。映画からは、政府の嘘を覆すことができず、イラク開戦を阻止できなかった一種の無力感も伝わってくるが、戦争という局面にさいしてジャーナリズムが真実にどう向き合うのかを改めて問いかけている。政府の広報機関になり下がったメディア各社が、「取材する」という基本的な作業すらせず根拠のない嘘情報を垂れ流していったさまは、権力者にいかに情報を与えてもらうかを競い、飼い慣らされている今日の日本の報道のあり方と重なる。

 映画のラストでいくつかの数字が示される。

▼現在までの戦費 2兆j
▼アメリカ兵の犠牲者 3万6000人
▼アメリカの攻撃で犠牲 になったイラク市民 100万人
▼大量破壊兵器 0

 地道にみずからの足を使って取材し、権力者の嘘を暴き、権力の横暴を批判するというジャーナリズムが果たすべき役割の重大さを投げかけている。

https://www.chosyu-journal.jp/review/11546


88. 中川隆[-9848] koaQ7Jey 2019年6月05日 18:23:26 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[2587] 報告


 米中貿易戦争の本質は宗教戦争 2019年06月05日
http://tokaiama.blog69.fc2.com/blog-entry-766.html

 1970年代のはじめ、吉祥寺の物部長興邸で、岡村昭彦の私的な講演会が行われた。

 内容は、主に、岡村がベトナム戦争の現地取材で体験した、さまざまのエピソードが主体だったと思う。

 私は、講演の最後に、岡村に対して、「歴史と戦争の本質は何か?」
 と尋ねると、岡村は、即座に「宗教だ」と答えた。

 ベトナム戦争や中東の激戦地を、砲弾の降り注ぐなかで取材して歩いた岡村昭彦の総括的結論が「宗教」だった。
 これは重い言葉だった。半世紀近くを経て、私は、世界史における流動性の本質を考える上で、「何が世界を動かしているのか?」という問いに対し、やはり「宗教」それも「旧約聖書である」と答えることにしている。

 私が当時、信奉していたマルクス主義、唯物弁証法は「存在が意識を規定する」を絶対不動の社会原理として示していたから、この理論からすれば、世界を動かすのは「経済」、つまり物質的豊かさを求める人々の葛藤であると考えねばならなかったのだが、戦場を駆け巡った岡村の直観は、人間社会における宗教による意思を歴史の動力であると示したのだ。

 トランプがアメリカ大統領でいられる最大の理由=力は、アメリカにおける「福音派」と呼ばれるキリスト教勢力の存在である。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E9%9F%B3%E6%B4%BE

 2011年現在、全世界のキリスト教徒のうち13.1%が福音派とされ、2004年現在、アメリカ合衆国の全人口の26.3%が福音派であり、22%がカトリック、16%がプロテスタントであると上のリンクに記載されている。
 つまりアメリカ最大の宗派であり、共和党の支持母体であることが知られている。トランプの予想外の当選も、福音派の総力を挙げた応援が理由だった。

 昔から、ずいぶん保守的な思想で固められていて、「キリスト教原理主義」と評されることもある。  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E6%95%99%E6%A0%B9%E6%9C%AC%E4%B8%BB%E7%BE%A9

 ニクソン大統領を焚きつけてベトナム戦争で大規模な北爆を後押ししたことでも知られるし、現在、アメリカの一部州では強姦されて妊娠した胎児でも、堕胎をすれば医師と妊婦ともに重罪になる法案が福音派の運動によって通ったばかりで、まるでイスラム教原理主義に対抗するかのように、過激な人権否定主義に走っている。
  https://www.bbc.com/japanese/48277708

 https://toyokeizai.net/articles/-/282862

 これはアラバマ州だが、米最高裁の判事は、トランプ政権によって保守強硬派が多数を占めるようになっったので、この堕胎禁止令が米全土に拡大するのも時間の問題であろう。

 アメリカという国は、建国当初から、原理主義的なキリスト教徒が支配する国であった。
 メイフラワー号に乗って新天地に移住した欧州清教徒=ピューリタンたちの本当の正体は、実は、欧州で反ユダヤ運動による「ボグロム」=大殺戮の恐怖から逃れようとした「キリスト教徒のフリをしたユダヤ教徒」であったと指摘されている。
 https://inri.client.jp/hexagon/floorA4F_ha/a4fhc100.html

 http://www.kanekashi.com/blog/2017/10/5492.html
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%80%E3%83%A4%E7%B3%BB%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA

 そういう視点でアメリカ史を見ると、建国から一貫してアメリカの支配権を確保してきた保守系アメリカ人の大半が、実はユダヤ教徒ではないかという疑いさえ芽生える。
 プロテスタントを名乗るモルモン教とかエホバ派でさえ、その教義は旧約聖書の原理主義に近く、よくよく調べてみればユダヤ教と言っても差し支えない内容である。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%AB%E6%97%A5%E8%81%96%E5%BE%92%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E6%95%99%E4%BC%9A

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%9B%E3%83%90%E3%81%AE%E8%A8%BC%E4%BA%BA

 もちろん福音派の教義も、明らかに新約聖書より旧約聖書を重視していて、戒律重視主義であり、これもプロテスタントではなくユダヤ教・律法主義に近いものである。
 したがって、アメリカの思想的背景として君臨し続けてきた福音派キリスト教は、イエスキリストのように人間愛を説いて人を許す前に、旧約聖書におけるレビ記に描かれた懲罰殺人を推進する勢力になっていて、アメリカにおける戦争や死刑制度、あるいは原爆投下にいたるまで、実は旧約聖書の解釈による正当化が主流になっている。
 https://www.biblegateway.com/passage/?search=%E3%83%AC%E3%83%93%E8%A8%98+20&version=JLB

 トランプは大統領に就任してから、際だった親イスラエル政策を次々に実現している。
 https://www.asahi.com/articles/ASL585D55L58UHBI027.html

 米大使館のエルサレム移転まで実現し、とうとう、アメリカ大統領として「嘆きの壁」まで参拝することで、イスラエルに対し、永遠の連帯を表明した。
 次に行うのは、エルサレム第三神殿の建立支援ではないかと囁かれているが、これは、イスラム聖地の破壊を伴うことから、やれば必ず第三次世界大戦を引き起こすとも言われている。

 そこでトランプは、福音派どころか、本当は完全なるユダヤ教徒ではないかとの噂が強まってきた。
 https://toyokeizai.net/articles/-/173824

 実は、本当の「ユダヤ人=ユダヤ教徒」の定義は、「母方の血胤」であって、父系ではないため、表向きの相続関係では分からない。「母の血を継ぐ」というユダヤ人の定義を調べるのは困難であって、したがって「隠れユダヤ人」という一群の人々が登場することになる。
 例えば、オバマ前大統領もスエーデン人の母が、チェイニー元副大統領の親戚のユダヤ人なので、ユダヤ人ということになる。
 https://plaza.rakuten.co.jp/realityofusa/diary/200912260000/

 トランプも表向きの系図からユダヤ人であるかを知るのは困難だが、大統領就任後の行動は、文句のないユダヤ教徒である。娘婿のクシュナーも敬虔なユダヤ教として知られていて、イバンカもユダヤ教に改宗している。

 福音派の別名は、クリスチャンシオニストである。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%AA%E3%83%8B%E3%82%BA%E3%83%A0

 上のリンクに書かれているように、最大の教義は、アブラハムの行った神との契約を守るということであり、旧約聖書に描かれた「シオンの地に帰還」する契約を実現することである。
 だから理不尽な、パレスチナ先住民への弾圧、権利破壊をアメリカが率先して支援してきたのである。
 つまり、福音派はユダヤ教徒シオニストと100%同じと断言してもよい。なんで、福音派がユダヤ教を名乗らないのか不思議なほどだ。

 以上の背景から、中国との経済戦争を俯瞰してみると……。

 中国に対する、徹底的ともいえる憎悪に満ちた経済弾圧の本当の理由は何か? それは4400万人(一説によれば7000万人)といわれる中国キリスト教徒への残酷な弾圧の現実である。

 https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2019/01/0116.html

 https://www.nicovideo.jp/watch/so27443332

 https://blog.goo.ne.jp/jiuhime007/e/d46d3eb9de3babf710c7911bc5f47285

 https://www.epochtimes.jp/2018/09/36159.html

 中国国内にも福音派系列の教会も多く、アメリカ人にとって実感の薄い法輪功への臓器強奪弾圧よりも、2018年に、キリスト教会の強制取り壊しが習近平政権によって大規模に行われたことへのショックの方が大きい。
 ここで、「習近平憎し」の感情的共有が大規模に成立したのである。

 現在の米中貿易戦争の焦点は、ファーウェイによる5G戦略の封じ込めが争点になっていると報道されているのだが、実は、本当の理由は、習近平がキリスト教弾圧を行ったことが原因である可能性が高いのだ。
 以下は、昨年末、中国内キリスト教信者が数百名も行方不明になっているとの報道だが、これも、法輪功同様、施設に収容されて臓器の摘出売買施設に送られて殺害され、中国共産党幹部の利権に寄与した可能性が高い。
 https://www.youtube.com/watch?v=qAgSzmJK1E0

 このニュースが、アメリカのキリスト教徒たちを決定的に立ち上がらせた可能性が大きいと私は思う。福音派だけでなく、すべての宗派を含んでだ。
 宗教的なアイデンティティは、イスラムにおける「ジハード=聖戦義務」がそうであるように、ときには戦争の直接の原動力になってしまう。

 https://www.youtube.com/watch?v=okn3vhkm4co

 正直、5G利権をファーウェイから剥奪するというトランプ政権の方針は、アメリカ国民にとって馴染みの薄い問題で、なぜなら、すでにアメリカの下層大衆は、中国の安価商品によって生活の大部分を依存するようになってしまっているからである。
 これに25%関税をかければ、それはアメリカ下層大衆の必需物資を極端に値上げさせ、生活に打撃を与えることになり、トランプ政権の方針は歓迎されない。

 しかし、習近平政権がキリスト教会を中国全土で破壊したというニュースは、もの凄いインパクトを持ってアメリカの下層大衆を刺激している。
 「こんなことをする習近平政権は地球から追放すべきだ」という具体的な世論が拡大しているのだ。

 つまり、世界の政治的現実は、実は宗教的問題によって大きく規定されている。
 トランプの活動は、トランプ個人の思いつきよりも、背後の福音派の政治的利害に規定されていて、またユダヤ教徒の利害に規定されている。
 中国が、キリスト経への弾圧をやめない限り、もはや米中戦争は避けられないかもしれない。

 当座は、表向きレアアースの資源戦争という形をとるが、これも中国の敗北は確実なので、最後には、南シナ海や東シナ海で軍事的衝突が始まるに違いない。
 中国が他国との争いで、戦争にまで進まなかったことは一度もない。

 そして、中国は、建国以来の経済破綻に堕とされる。こうなると、落としどころとしては、中国国家の分割(例えば8地区)と独立ということになるかもしれない。


http://tokaiama.blog69.fc2.com/blog-entry-766.html

89. 中川隆[-8997] koaQ7Jey 2019年7月19日 04:35:54 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[3702] 報告
2019.07.18
SMAPの元メンバーを番組に出さなかったTV局は元所属事務所に屈したということ

 ​公正取引委員会はジャニーズ事務所に対し、独占禁止法違反につながるおそれがある行為をしたとして「注意」した​と伝えられている。2016年12月に解散したSMAPのメンバーだった稲垣吾郎、香取慎吾、草薙剛の3人を番組などへ出演させないよう、テレビ局などに圧力をかけた疑いがあるのだという。

 言うまでもなく、こうした話はしばしば聞く。マスコミを含む芸能の世界の「秩序」、あるいは「しきたり」を乱す人間は制裁されるということだ。

 そうしたことは芸能界に限った話ではないと言う人もいるだろう。確かにその通りで、「国策」に異を唱える人が社会的に不利益を被ることは公然の秘密だ。若者がものを言わない一因である。

 芸能界の暗部に触れたことで訴えられ、敗訴した人物が存在するが、そうした人びとより過激なことを書いていながら訴えられていない人もいる。2代目松浦組元組長で大日本新政會総裁の笠岡和雄だ。彼は自著『狼侠』(大翔、2017年)の中で芸能界を中心に腐敗しつつある日本の実態を明らかにしている。

 笠岡は芸能界における番組出演に関する圧力だけでなく、麻薬の蔓延、そして殺人依頼を受けた経験を明らかにした。しかも、そうした実態を知っているはずの国税、検察、警察、そして裁判所も見て見ぬふりだという。そこまで日本は腐敗しているとうことだろう。

 構造的な問題も指摘している。笠岡によると、1992年に暴対法が施行された後、テレビコマーシャルで荒稼ぎするための会合がバリ島で開かれたとしている。出席したのは芸能界からK社長など、広域暴力団のT組長など、右翼団体のE会長、そして広告代理店のCM担当役員たちだったというのだ。

 テレビ広告を出すような企業のスキャンダルを調べ、右翼団体や総会屋を使って脅し、広告代理店が芸能界の某人物につなぐ。いわゆる出来レースなので脅しは止まるのだが、その代償として特定の芸能事務所に所属するタレントを使ってCMを流さなければならなくなる。スキャンダルを作り出す仕組みも存在していると言われている。

 この仕組みの核は広告代理店だろう。テレビをはじめ、マスコミの収入に対する大きな影響力を広告代理店は持っている。マスコミへの影響力という点で、広告代理店は融資という切り札を持つ銀行と双璧をなしている。

 国際的に見ると、広告代理店は1990年代から政治との結びつきを深めている。例えばイラク軍がクウェートへ軍事侵攻した後の1990年10月、アメリカ下院の人権会議でイラク軍の残虐性をひとりの少女「ナイラ」が証言している。アル・イダー病院でイラク兵が赤ん坊を保育器の中から出して冷たい床に放置し、赤ん坊は死亡したと訴えたのだが、この話は全てが嘘だった。この証言を演出したのが広告代理店のヒル・アンド・ノールトン。証言した少女はアメリカ駐在のクウェート大使だった人物の娘で、イラク軍が攻め込んだときにクウェートにはいなかった。

 ジョージ・W・ブッシュ政権はプロパガンダに広告代理店を使っている。例えば、「アフガニスタン再建グループ」の一員としてアメリカ大使にアドバイスしていたジェフ・ラリーはヒル・アンド・ノールトンの元重役であり、ドナルド・ラムズフェルド国防長官のスポークスマンになったビクトリア・クラークも同社の出身だ。(Solomon Hughes, “War On Terror, Inc.”, Verso, 2007)

 クラークは「埋め込み取材」を考え出し、広告の専門家やロビーストたちと秘密裏にこの戦争に関するプランを検討している。その結果、アメリカの大衆に納得させるためには、「アル・カイダ」のような正体不明の存在でなく、具体的な国と結びつける必要があるということになった。そこで考え出されたのが「悪の枢軸」、つまりイラン、イラク、朝鮮の3カ国だ。

 また、コリン・パウエル国務長官が次官に据えたシャルロット・ビアーズは「マディソン街の女王」と呼ばれる人物で、ふたつの大手広告会社、オグルビー・アンド・マザーとJ・ウォルター・トンプソンのトップになった経験の持ち主。

 ビアーズの手法は「単純化」と「浅薄化」。イラクへの先制攻撃をアメリカ政府は「イラクの自由作戦」と命名したが、これもビアーズのアドバイスに従っている。小泉純一郎も同じ手法を採用し、効果的だった。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201907180000/

90. 中川隆[-10539] koaQ7Jey 2019年10月27日 07:08:42 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[2330] 報告

【令和元年秋 特別対談】伊藤貫氏の警告、
パックス・アメリカーナと中華思想の間で摩滅する「商人国家日本」[桜R1-10-26] - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=wxQ7ZQtTSxs

ゲスト:伊藤貫(国際政治アナリスト)
聞き手:水島総

91. 中川隆[-13752] koaQ7Jey 2020年2月16日 20:28:46 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-335] 報告
『イラク 米軍脱走兵、真実の告発』 著 ジョシュア・キー
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4772604235/ref=dbs_a_def_rwt_hsch_vapi_taft_p1_i0


書評・テレビ評2020年2月16日

 アメリカが2003年にイラク侵攻を開始したときの大義名分は「イラクは大量破壊兵器を隠し持っている」「今こそサダム・フセインを倒してイラクに民主主義をもたらす」であった。ところがそれらはすべてでっちあげであり、アメリカの侵略であったことが明白な事実となっている。本書はあの時、ブッシュ大統領が掲げたイラク戦争開戦の大義を信じ「イラクの自由作戦」に参加した米軍兵士による告発本である。

 1978年生まれのジョシュア・キーは幼少期、義父が母親に暴力を振るうような家庭環境で育った。救いは優しい祖母、そして朝鮮戦争に兵士として派遣された経験を持つ祖父から、「無防備な人を攻撃することは悪いことだ」と教えられて育ったことだ。

 彼は20歳前後で結婚し2人の子どもに恵まれるが、経済的な困難に直面し家族を養うために新兵募集センターのドアを叩くことになった。新兵募集センターでは、リクルーターが「軍事基地での生活は安全で、どんなアメリカ人労働者も満足できる清潔できちんとした住宅に住むことができる。基地では家賃は無料だ。そして家族全員が総合的な健康保険に入れるし、大学の授業料は援助が受けられる」「遠方に送られることはない。戦闘などはさせない」といった。

 だが2003年3月、彼が最初に送られたのはイラクだった。彼は本書のなかでこう記している。「戦場には行きたくなかったが、つまるところ、テロをぶちのめしてアメリカを守る仕事を子どもたちの世代にやらせてはいけない、これは今自分がやるべき仕事だと考えた」と。

 イラクに行く前の訓練中、米兵らはイラク人のことを「砂漠のニガー」と呼び、イスラム教徒はみなテロリストで、唯一の解決法はできる限り多くのイラク人を殺すことだと思い込まされた。米兵が連日イラクでやったことは、テロリストを捕まえ、テロ活動の証拠を見つけると称した「家宅捜索」だった。家族の寝込みを襲い恐怖に陥れるために一晩に1軒、多いときで4軒の家を急襲する。米兵は徐々に盗み、殺し、レイプなど好き放題におこなうようになっていく。

 そして来る日も来る日もイラク人の家からは何一つ出てこないのに米兵は何もしていない男たちを拘束し、家の中を荒らし回る。その様子を怒りのこもった目で見つめる無抵抗な女子どもたち。彼は「一体われわれ米兵は何をしているのだろうか」と疑問を抱き始める。

 ある日、アメリカ軍に対する印象を激変させる出来事が起きる。錯乱状態の米兵たちが、イラク人の切断された頭部を笑いながら蹴飛ばしていた。明らかにおもしろがってやっている。この時の状況をこう記す。「狂気のサッカーゲームだ。ぼくは凍りついた。自分の目が信じられなかった。しかし確かに見たのだ」「ぼくがかろうじて保っていた国家に対する信頼の糸を断ち切り、戦場で持つべき信念を打ち砕いた。ずっとぼくたちアメリカ人は世界の正義を守る立場にいると信じてきた。しかし、このとき、イラクでわれわれがしていることのいかがわしさを思い知ったのだ」と。正常な感覚を喪失して殺人マシーンへと変貌していく仲間たち、そして自分。さらにイラク人による暴動も頻発し、常に緊張状態が続き見えない敵に狙われているような恐怖感を抱いていく。

目の前で殺された少女

 彼は警護のなかでわが子と同じくらいのイラク人の少女と出会う。食事もろくにできない貧しい少女にフェンス越しに食べ物をあげるようになる。それは殺伐とした戦場での心安まるひとときになっていた。

 その日もフェンス越しに食料を渡したとたん、自分の目の前で少女の頭が銃で吹き飛ばされる。罪のないイラク少女がまた米兵仲間によって銃殺されたのだ。そのような経験をくり返すなかで、イラクの人たちの平穏な日々を踏みにじり何の罪もない人々の生活や命を破壊しているのが自分たち米軍であり、「アメリカこそテロリスト」であることを思い知っていく。

 6カ月余りのイラク滞在ののち、2週間ほど本国へ帰還したとき彼はイラクには戻らないことを決断する。脱走は銃殺に値することを覚悟しつつ、家族を守るためにカナダに逃亡する。「ぼくはアメリカ軍から脱走したことについて、絶対に謝罪しようとは思わない。ぼくは不正義から脱走したのであり、それは進むべき正しい道だった。謝罪すべきことがあるとすれば、ただひとつ、それはイラクの人々に謝罪するしかない」と。

 アメリカで貧しい家庭で育った若者たちが、経済的援助などをチラつかされて軍隊に誘導されて戦場に送り込まれ、殺人マシーンへと変貌させられていった事実が実体験としてなまなましく記されている。そしてイラク帰還米兵は2014年段階で1日に22人、1年に約8000人がみずから命を絶っている。

 イラク戦争に賛成を表明し自衛隊を派遣したのが日本であり、その後もアメリカの侵略戦争に積極的に加担してきた。

 今年に入り、安倍政府は中東地域に自衛隊をあいついで派遣した。アラブ諸国側から見ればアメリカ戦略下のもとでの明白な軍事行動に他ならず、アメリカへの盲従がいかに日本と世界の平和を脅かすものであるか、それを改めて考えさせられる一冊である。
https://www.chosyu-journal.jp/review/15903

92. 中川隆[-13425] koaQ7Jey 2020年2月27日 17:29:11 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[75] 報告
2020.02.27
中東にNATO軍が登場することで情勢に変化はあるのか?

 アメリカ軍の中で中東、エジプト、アフガニスタンにかけての地域を担当しているのは中央軍だが、その中央軍に替わってNATO軍が入ってくるという話がある。イドリブの情況を見ていると、トルコがNATO加盟国として動き始めたように感じられる。NATOの登場がトルコをロシアやシリアから引き離すことにつながるという見方もある。

 中東地域の要石をアメリカはイラクだと考えている。1980年代からネオコンはイラクに親イスラエル体制を築いてシリアとイランを分断、それぞれを個別撃破しようと考えていた。ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官によると、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官は1991年にイラク、シリア、イランを殲滅すると語っている。(​3月​、​10月​)

 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された10日後、イラクを攻撃することが決まったと元同僚から聞かされて驚いたクラークは数週間後、イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランを破壊すると知らされたという。クラークも統合参謀本部の元同僚も理由はわからなかったという。こうした中東からサハラ以北のアフリカに対する侵略戦争は始まった。

 その侵略戦争にはアメリカのほか、サウジアラビア、イスラエル、イギリス、フランス、カタール、トルコなどが参加、2016年にカタールとトルコは離脱していた。そのトルコがNATOの登場で再び侵略国側に戻るかどうかが注目されている。

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202002270000/

93. 中川隆[-13594] koaQ7Jey 2020年3月22日 12:29:20 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[1310] 報告
1980年代にシオニストの一派、ネオコンがイラクのサダム・フセイン体制を倒して親イスラエル体制を築くべきだと主張した理由はシリアとイランを分断することにあった。バラク・オバマ政権のネオコンがウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを実行したのはロシアとEUを分断することにあった。

 本ブログでは繰り返し書いてきたが、海賊を使い、制海権を握っていたイギリスはユーラシア大陸の周辺部を支配、内陸部を締め上げるという長期戦略を持っていた。それを継承したのがアメリカで、ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」もこれに基づいている。

 締め上げるための弧の西端はイギリスだが、東端には日本がある。米英の戦略にとって日本が重要な役割を果たしていることは明白だ。弧を成立させる上でスエズ運河は不可欠であり、弧の上にイギリスがイスラエルとサウジアラビアを作り上げたのも偶然ではないだろう。日本の近代史を理解するためには米英の長期戦略を理解する必要があるとも言える。

 米英の戦略に対し、内陸部の国は鉄道をはじめとする交通手段の建設で対抗しようとしてきた。その一例がシベリア横断鉄道であり、最近の例ではロシアが進めているパイプラインが交通手段の建設、そして中国の一帯一路(BRIとも表記)。アメリカがアフガニスタンに執着している一因は一帯一路を潰すことにある。

 そうしたロシアや中国の交通手段やパイプラインの建設はユーラシア大陸の東部と西部を結びつけることが重要な目的。今のところ、東の果てはウラジオストックや上海だが、朝鮮半島を南下して釜山まで延長する計画がある。日本の利益を考えればこの計画に乗るべきなのだが、アングロサクソンに従属することで地位と富を築き、維持している日本の「エリート」は拒否する。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202003220000/

94. 中川隆[-13054] koaQ7Jey 2020年4月21日 17:32:12 : 0mSWXSkwek : Lmc3M2g0VW5abnM=[7] 報告
2020.04.21
COVID-19を口実に進められる社会の収容所化はネオコンの戦略に合致している

 ワシントン・ポスト紙でコラムニストを務める​マーク・スィースン​によると、中国にCOVID-19(新型コロナウイルス)の感染拡大の法的な責任があるのだという。アメリカ人が監禁状態になり、失業者が増え、死人が出ているのは中国のせいであり、アメリカの貧弱な社会システムとは無関係だというわけだ。

 戯言なのだが、この戯言を書いた人物は戯言を作り出すことを生業としてきた。1995年から2001年にかけてジェシー・ヘルムズのスピーチライターを務めた後、ジョージ・W・ブッシュ政権で国防長官に就任したドナルド・ラムズフェルドの主任スピーチーライター、そして後にブッシュ大統領のスピーチを書いていたチームに加わった。ヘルムズはジョン・ボルトンの後ろ盾でもあった。

 2009年1月にブッシュがホワイトハウスを去ると、スィースンはネオコン系のフーバー研究所やAEIのフェローになり、2010年3月からはワシントン・ポスト紙のコラムニストだ。

 ワシントン・ポスト紙を「言論の自由の象徴」と考える人が日本には少なくないようだ。ウォーターゲート事件の影響だろうが、この事件を取材したことで有名な元ワシントン・ポスト紙記者のカール・バーンスタインによると、アメリカの有力メディアとCIAは緊密な関係にある。400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)

 メディアをコントロールするプロジェクトをCIAが始めたのは第2次世界大戦が終わって間もない頃。デボラ・デイビスによると、1948年頃からモッキンバードと呼ばれる情報操作プロジェクトが始められている。アメリカの有力メディアに「リベラル派」とか「左翼」と呼べるようなものは存在しない。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979)

 こうした工作はアメリカ国内に留まらない。ドイツの有力紙、フランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)の編集者だった​ウド・ウルフコテ​によると、ジャーナリストとして過ごした25年の間に彼が教わったことは、嘘をつき、裏切り、人びとに真実を知らせないことで、多くの国のジャーナリストがCIAに買収されているとしている。

 彼が告発を決意したのは、人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開、人びとをロシアとの戦争へと導き、引き返すことのできない地点にさしかかっていると感じたからだという。2017年1月、56歳のときに彼は心臓発作で彼は死亡した。

 言うまでもなく、ブッシュ政権はイラクを先制攻撃してサダム・フセイン政権を倒したが、その攻撃を正当化するため、ブッシュ政権はイギリスのトニー・ブレア首相の協力を得て大量破壊兵器に関する偽情報を広めた。その偽情報の流布に果たしたマーク・スィースンの役割は軽くない。

 アメリカ主導軍はイラクを侵略したわけだが、その結果、100万人を超すとイラク人を殺したとも推計されている。例えばアメリカのジョーンズ・ホプキンス大学とアル・ムスタンシリヤ大学の共同研究によると、2003年の開戦から2006年7月までに約65万人のイラク人が殺されたと結論、イギリスのORBは2007年夏までに94万6000名から112万人が死亡、またNGOのジャスト・フォーリン・ポリシーは133万9000人余りが殺されたとしている。

 その後、バラク・オバマ政権はジハード傭兵を使った侵略に切り替えたが、戦争自体は現在も継続され、中東から北アフリカにかけての地域は破壊と殺戮でこの世の地獄と化している。スィースンはその責任を感じていないようだ。そのスィースンは、つまりネオコンはCOVID-19の問題で中国を誹謗中傷している。

 ネオコンは1991年12月にソ連が消滅した際、アメリカは唯一の超大国になり、世界制覇は間近に迫ったと考えた。ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官によると、当時の国防次官でネオコンの大物として知られるポール・ウォルフォウィッツは1991年にイラク、シリア、イランを殲滅すると語っている。(​3月​、​10月​)

 その当時はジョージ・H・W・ブッシュが大統領で、ウォルフォウィッツの上司にあたる国防長官はリチャード・チェイニー。1992年2月にこの人脈は国防総省のDPG草案という形で世界制覇プランを作成した。いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」で、ソ連のようなライバルが出現することを阻止、力の源泉であるエネルギー資源を支配しようという内容だった。

 ネオコンが潜在的なライバルとして最も警戒した国は中国。そこで東アジア重視が打ち出される。必然的に日本の戦略的な役割は重くなり、アメリカの戦争マシーンに組み込まれていく。それがナイ・レポート以降の動きに反映されている。COVID-19を口実として進められている収容所化もそうした戦略の延長線上にある。

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202004210000/

95. 2020年7月21日 09:48:49 : NKWW1U9Yak : NU9jdXVOR0hvSFE=[1] 報告

2020.07.21
支配者の操り人形にすぎないコリン・パウエルを善人視する愚

 ニューヨーク・タイムズ・マガジンのライター、​ロバート・ドレイパー​が書いたイラク戦争に関する著作『開戦へ』が7月28日に出版される。その本に関する記事を筆者自身がニューヨーク・タイムズ・マガジンに「コリン・パウエルはまだ答えを求めている」というタイトルで書いた。


 パウエルはジョージ・W・ブッシュが大統領に就任した2001年1月から05年1月まで国務長官を務め、その間、03年2月に国連の安全保障理事会でイラクが大量破壊兵器を保有していると主張している。その翌月にアメリカ軍はイギリス軍など従属国の軍隊を引き連れてイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒した。それ以降、中東から北アフリカにかけての地域は破壊、殺戮、略奪が続いている。


 国連でパウエルがプレゼンテーションした9日後、UNMOVIC(国際連合監視検証査察委員会)のハンス・ブリックス委員長とIAEA(国際原子力機関)のモハメド・エルバラダイ事務局長が同じ場所に登場、調査は継続中で、大量破壊兵器の存在を示す証拠は見つかっていないと発言している。これを聞いたパウエルは激怒したというが、勿論、イラクに大量破壊兵器は存在しなかった。パウエルは間違っていたのだ。


 そのパウエルはイラクへの軍事侵攻に反対していたとドレイパーは主張しているが、ブッシュ政権が戦争を始めても辞任していないと指摘されている。退任したのは2年後だ。


 そもそもイラクでアメリカ政府が何をしようとしているかをパウエルは知っていたはずだと1991年から98年までUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めた​スコット・リッター​は書いている。パウエルは1991年、UNSCOMを情報収集の道具として使うために米軍のエリート部隊員をCIAの特別行動部門へ編入することを止めさせたという。そこでリッターは1991年から96年までCIAの部隊と行動をともにすることになった。この事実をイラク側はつかんでいただろう。


 リッターによると、パウエルはCIAの特殊工作グループがイラクに存在し、サダム・フセインを殺害することをアメリカの大統領が認めていたことを知っていたという。


 1991年には国防次官だったネオコンのポール・ウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると語っている。これは統合参謀本部のスタッフを経て欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官になるウェズリー・クラーク大将の証言。(​3月​、​10月​)


 1991年12月にはソ連が消滅、翌年の2月にはウォルフォウィッツを中心にして国防総省のDPG草案という形で世界制覇プランが作成された。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。2001年9月11日以降、アメリカの戦略はこれに基づいて決められてきた。1995年2月にジョセイフ・ナイ国防次官補が発表した「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」はこの戦略に日本を組み込むための指針だ。


 ウォルフォウィッツと同じようにネオコンの中心グループを形成していたリチャード・パールやダグラス・フェイスたちは1996年に「決別(A Clean Break: A New Strategy for Securing the Realm)」という文書を公表した。ベンヤミン・ネタニヤフに対する戦略の提言である。


 ネオコンがネタニヤフに対して提言したということは、シオニストという共通項はあるものの、ネオコンとネタニヤフは別の派閥に属していることを示している。ネオコンはロスチャイルドを象徴とする富豪グループと近い関係にあるが、ネタニヤフは「修正主義シオニズム」の祖であるウラジミル・ジャボチンスキーの系列。ベンヤミン・ネタニヤフの父、ベンシオンは1940年にアメリカへ渡り、ジャボチンスキーの秘書になった人物だ。


 その文書の中で、イスラエルはトルコやヨルダンと手を組み、シリアを包囲して弱体化、イラクのサダム・フセインを排除すべきだとネオコンは主張している。イラクに親イスラエル体制を樹立してトルコ、イラク、ヨルダンの親イスラエル国帯を形成、シリアとイランを分断し、最終的にイランの現体制を倒すべきだとしている。UNSCOMを巡るCIAの動きもネオコンの戦略と無縁ではないだろう。


 フセイン排除は1980年代からネオコンが主張していたことで、フセインをペルシャ湾岸産油国の防波堤だと認識していたジョージ・H・W・ブッシュやジェームズ・ベイカーたちと対立していた。ロナルド・レーガン大統領の時代に機密情報の暴露合戦が始まり、イラン・コントラ事件やイラクゲート事件が明るみに出ている。


 ところで、パウエルはアフリカ系軍人としては異例の出世を遂げた人物。その謎を解く鍵はベトナム戦争時代にあるとも言われている。彼は1968年に第23歩兵師団の将校として南ベトナムへ入っているが、2004年5月にCNNのラリー・キング・ライブに出演した際、その師団がソンミ村で住民を虐殺、後で自分も現場へ入ったと語っている。


 虐殺は1968年3月に南ベトナムのカンガイ省ソンミ村のミライ集落とミケ集落において引き起こされた。アメリカ軍によると、犠牲になった村民の数はミライだけで347名、ベトナム側の主張ではミライとミケを合わせて504名だされている。


 この虐殺は従軍記者や従軍カメラマンも知っていたのだが、報道していない。事件が広く知られるようになったのは、兵士の告発を知り、取材したシーモア・ハーシュの書いた記事をAPが配信してからだ。


 記者やカメラマンはこの虐殺を報道しなかっただけではない。似たようなことが繰り返されていたのだが、全て隠したのである。本ブログでは繰り返し書いてきたように、ソンミ村での虐殺はCIAと軍の特殊部隊が行っていた住民皆殺し作戦、フェニックス・プログラムの一環だったのだ。


 このプログラムを現地で指揮した経験のあるウィリアム・コルビーはCIA長官時代に議会でこれについて証言している。彼自身が指揮していた「1968年8月から1971年5月までの間にフェニックス・プログラムで2万0587名のベトナム人が殺され、そのほかに2万8978名が投獄された」と明らかにしている。解放戦線の支持者と見なされて殺された住民は約6万人に達するという推測もある。


 こうした作戦には兵士からの告発があったが、ジャーナリストの故ロバート・パリーらによると、パウエルはこうした兵士の告発を握りつぶし、上官が聞きくない話は削除する仕事をしていたという。その仕事が評価され、出世したとも言われている。パウエルを「良いアメリカ人」だと言うわけにはいかない。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202007210000/

96. 2020年8月24日 08:03:02 : RyOSypPQPV : NHo0VFdSS2Q4Qlk=[6] 報告
2020.08.24
心理操作が切り開く殺戮と破壊への道
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202008240000/

 コマーシャルの目的は、商品を買いたいという心理を引き起こすことにある。そうした商品の中には戦争も含まれている。人びとが戦争を望むように仕向けるわけだ。心理操作の「民間委託」とも言えるだろう。


 民間企業が心理操作で戦争への道を演出した一例は、1990年10月10日にアメリカ下院の人権会議という非公式の集まりで行われた「ナイラ」なる女性の証言。クウェートの病院で働いていた看護師を名乗り、イラク兵が保育器を盗んで多くの赤ん坊を殺したなどと主張、好戦的な雰囲気を作り出す一因になった。


 この「証言」を演出したのはヒル・アンド・ノールトンというアメリカの広告会社で、雇い主はクウェート政府。イラク軍の残虐行為を涙ながらに語った少女はアメリカ駐在クウェート大使だったサウド・アル・サバーの娘、ナイラ・アル・サバーだった。勿論、イラク軍がクウェートへ攻め込んだ当時、ナイラは現場にいない。


 この嘘を真に受けた「善良なる市民」はイラクへの先制攻撃を後押しすることになり、子どもを含むイラク人が殺されることになる。2006年10月にイギリスの医学雑誌「ランセット」はジョンズ・ホプキンズ大学とアル・ムスタンシリヤ大学の共同研究による調査報告を掲載、それによると、2003年3月から2006年7月までの間に65万4965名以上のイラク人が死亡、そのうち60万1027名は暴力行為(要するに戦闘)が原因だという。イギリスのORB(オピニオン・リサーチ・ビジネス)は2007年夏までに94万6000名から112万人が、またNGOのジャスト・フォーリン・ポリシーは133万9000人余りが殺されたとしている。


 ソ連が消滅した直後の1992年2月、アメリカ国防総省ではDPGが作成された。国防次官だったポール・ウォルフォウィッツが中心になって書き上げたことからウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。


 ライバルのソ連が消えたことでアメリカは唯一の超大国になり、単独で行動できる時代が到来したとネオコンは考えた。そうした状態を維持するため、ソ連のようなライバルが再び出現することを阻止しようとしたのだ。潜在的なライバルとしてネオコンが想定したのは旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジアなど。特に重要視したのは中国だ。力の源泉であるエネルギー資源を支配するため、南西アジアも重視された。


 ネオコンはまずユーゴスラビアの解体し、セイルビア勢力を弱体化させようとする。1990年代の前半からアメリカの有力メディアやジョージ・ソロスと関係が深いHRW(ヒューマン・ライツ・ウオッチ)は偽情報を広めながらユーゴスラビアへの先制攻撃を主張していたが、ビル・クリントン政権は戦争に消極的。状況が変化したのは国務長官がクリストファー・ウォーレンからマデリーン・オルブライトへ交代した1997年からだ。


 NATOは1999年3月にユーゴスラビアへの軍事攻撃を開始、4月には空爆でスロボダン・ミロシェビッチの自宅を破壊、5月には中国大使館も爆撃されている。いうまでもなく、多くの建造物が破壊され、多数の市民が殺された。この戦争からコソボ紛争も生まれる。コソボの反セルビア勢力が宣伝のために雇った会社がルダー・フィンだ。


 有力メディアや広告会社はターゲットを悪霊化する仕事をしているわけだが、実際に事件を引き越すこともある。例えば、1985年にイスラエルの情報機関、モサドは「偽装テロ」を実行している。アキレ・ラウロ号事件だ。


 イスラエルの情報機関ERD(対外関係局)に所属していたアリ・ベン-メナシェによると、工作にはモハメド・ラディ・アブドゥラなる人物が利用されている。この人物はヨルダン軍の大佐だったが、ヨルダン軍によるパレスチナ人虐殺に反発、ロンドンへ移住していた。そこで一緒にビジネスを始めたアンソニー・ピアソンはイギリスの特殊部隊SASの元将校で、イスラエルともつながっていたころからラディはモサドに操られることになる。


 イスラエルの命令はラディを介してアブル・アッバスなる人物に伝えられる。アッバスはシチリア島のドンから資金を得ていると思っていたようだ。そのアッバスが編成したチームが客船のアキレ・ラウロ号を襲撃したのだ。この襲撃はイスラエルにとって格好の宣伝材料になった。


 アメリカやイスラエルは「ジャーナリストの死」を求めることがある。その犠牲者になった可能性があるひとりが2012年8月にシリアのアレッポで殺された​山本美香​。彼女は反政府軍(実態はアル・カイダ系武装集団)のFSA(自由シリア軍)に同行して取材していたようだ。


 シリアを取材する記者の多くはトルコから密輸ルートを使い、シリアへ入国しているようなので、それだけでも危険が伴う。しかもFSAはジャーナリストの死を望んでいる節がうかがえる。


 イギリスのテレビ局、チャンネル4のケースも山本の場合と似ている。チャンネル4チームの中心的な存在だった​アレックス・トンプソンによると、彼らは反政府軍の罠にはまり、危うく政府軍から射殺されるところだった​という。取材していたチームを反政府軍の兵士は交戦地帯へと導き、政府軍に銃撃させるように仕向けたというのだ。​イギリスやドイツなどの情報機関から政府軍の位置は知らされているはず​で、意図的だったとしか考えられない。トンプソンたちは危険を察知して逃げることに成功したが、危うく殺されるところだった。今回のケースを彷彿とさせる。


 2012年12月には、NBCニュースの取材チームが同じシリアで拉致され、5日後に解放されるという出来事があった。チームのひとりで主任外国特派員の​リチャード・エンゲルは翌年4月号のバニティ・フェア誌で政府軍と連携している武装勢力が実行したと主張​したが、後にその主張を取り下げ、反シリア政府軍につかまっていたと認めている。


 実は、​エンゲルらが解放された直後から、拘束したのは反シリア政府軍ではないかという報道もあった。​エンゲルも自分たちが携帯していたGPSでNBCの幹部が拉致を察知、その場所が反政府軍の支配している地域であることも認識していたというのだ。しかも拉致したグループと救出したグループの指揮官は一緒。つまり、バニティ・フェア誌の記事は「誤解」ではなく、嘘だった可能性が高いということだ。

 アメリカやイギリスの支配者にとって都合の悪い誰かを批判していた人物が死亡した場合、その誰かが殺したに違いないと単純に叫ぶべきでないということでもある。

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202008240000/

97. 中川隆[-11240] koaQ7Jey 2020年9月21日 12:59:53 : LRsxCcIg7A : TDBiLmtTMHg5Wlk=[22] 報告
2020.09.21
西側の情報操作システムを揺るがせたアッサンジを厳罰に処そうとする米英

 ウィキリークスの中心的な存在だったジュリアン・アッサンジにアメリカは懲役175年を言い渡す可能性がある。そのアメリカへアッサンジを引き渡す法的な手続きがイギリスで進められている。その法廷で裁判長を務めているのがエマ・アーマスノット。この人物の素性が注目されている。本人が軍産複合体や情報機関と緊密な関係にあるだけでなく、夫のジェームズも戦争ビジネスにつながっているからだ。

 アッサンジをアメリカの当局が秘密裏に起訴したのは2011年初めにだと言われている。ウィキリークスは内部告発を公表する支援活動をしてきたが、これはジャーナリズムの役割と重なる。

 ウィキリークスが公表した情報の中でアメリカの支配者を最も怒らせたものはイラクへの先制攻撃や占領政策に関する情報だとも言われている。その中には​2010年4月に公開されたアメリカ軍のAH-64アパッチ・ヘリコプターによる非武装の一団に対する銃撃​が含まれているはずだ。これは2007年7月にバグダッドで引き起こされた出来事だが、その銃撃でロイターの特派員2名を含む非武装の十数名が殺されている。

 日本ではさほど大きく取り上げられず、勘違いで銃撃したと「解説」するマスコミもあったが、実際に公表された映像を見たなら、そうした戯言は言えないはずだ。アメリカの本性と直視することができないのだろう。アングロ・サクソンの支配者がコントロールしている天皇制官僚システムという枠組みの中から踏み出したくないのだ。

 ジャーナリストのむのたけじは1991年に開かれた「新聞・放送・出版・写真・広告の分野で働く800人の団体」が主催する講演会の冒頭、「ジャーナリズムはとうにくたばった」と発言(むのたけじ著『希望は絶望のど真ん中に』岩波新書、2011年)、マサチューセッツ工科大学のノーム・チョムスキーはそうしたマスコミを「プロパガンダ工場」と呼んだ。

 全くその通りなのだが、チョムスキーはアメリカの支配システムの根幹を揺るがすような情報に切り込まない。例えばジョン・F・ケネディの暗殺や2001年9月11日の世界貿易センターや国防総省本部庁舎への攻撃。ケネディ暗殺はリー・ハーベイ・オズワルドの単独犯行であり、911はアル・カイダの犯行だという非科学的な話を受け入れている。こうした非科学的な話に納得せず、疑問を表明する人びとにつけられるタグが「謀略論者」だ。その一方、根拠や証拠を示すことなく、アメリカにとって都合の良い話を西側の有力メディアは流し続ける。

 西側の支配者が人びとに信じさせたい偽情報を拡散させる仕組みが有力メディア。1970年代の後半から西側では気骨あるジャーナリストを排除し、メディア支配の規制を撤廃して寡占化を進められてきた。情報を操作、言論を統制する仕組みの強化だ。そうした情報操作、言論統制の仕組みを揺るがせたのがウィキリークスである。言論の自由に関心を持っていながらアッサンジの問題に関心を持たないということはありえない。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202009200000/

98. 中川隆[-10861] koaQ7Jey 2020年10月14日 08:56:05 : qeoz4h8Nwg : dm1xMUg1aTVyQWc=[6] 報告
2020.10.14
巨大資本を後ろ盾とする親イスラエルで戦争に賛成する政治家のみが許される米国
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202010140000/

 アメリカの次期大統領を決める選挙の投票が11月3日に予定されている。現職で共和党のドナルド・トランプと民主党のジョー・バイデン前副大統領が争っている。いずれの政党とも巨大資本を後ろ盾とする親イスラエル。パレスチナでの破壊と殺戮を止める気配はない。そのようなことをすれば候補者にはなれないだろう。

 前回の大統領選挙でトランプの相手はロシアを核戦争で脅していたヒラリー・クリントン。バラク・オバマの政策を引き継いだのだが、彼女は上院議員の時代から戦争ビジネスをスポンサーにしていたことで知られている。それに対してトランプはロシアとの関係修復を訴えて勝利したのだが、1カ月ほどで方針を変えている。それを象徴する出来事がマイケル・フリン国家安全保障補佐官の解任だ。

 昨年の段階ではTPP(環太平洋連携協定)に反対し、銀行業務と証券業務を分離させて投機を抑制していたグラス・スティーガル法を復活するべきだと主張、イラクなど中東における戦争に反対していた民主党のタルシ・ガッバード下院議員のような候補者もいたが、そうした政治家は排除されるのがアメリカの仕組みだ。

 ガッバードは大学を卒業した後、2002年から04年にかけてハワイ州下院の議員を務め、04年7月から12カ月間、州兵としてイラクに派遣されている。最初は医療部隊に所属、そのあと兵站部門で働いた。2006年に帰国してからダニエル・アカカ上院議員の下で働き、13年から下院議員を務めている。イラク戦争の実態を彼女は自身の目で見ていた。

 しかし、その仕組みが崩れかかったことがある。2000年にも大統領選挙があったが、その前年に実施された世論調査では出馬の意思を示していなかったジョン・F・ケネディ・ジュニア、つまりジョン・F・ケネディ大統領の息子が共和党や民主党の候補者を5ポイントほどリードしていたのだ。

 もしケネディ・ジュニアが立候補したなら、投票数でトップになる可能性は高い。そこで選挙人が投票結果に拘束されるのかどうかという点が議論された。選挙人が別の候補者に投票することは可能なのか、不可能なのかということだ。アメリカの大統領選挙は候補者本人に投票するのではなく、選挙人を選ぶからだ。アメリカの大統領選挙が機能不全に陥る可能性すらあった。

 そうした懸念を吹き払う出来事が追ったのは1999年7月16日。ケネディ・ジュニアが操縦する単発のパイパー・サラトガが墜落したのである。目的地であるマサチューセッツ州マーサズ・ビンヤード島へあと約12キロメートルの地点でだった。本人だけでなく同乗していた妻のキャロラインとその姉、ローレン・ベッセッテも死亡している。

 いくつかの点から操縦ミスで落ちた可能性は小さい。例えば、墜落した位置から考えて、パイパー機は自動操縦で飛んでいた可能性が高いからだ。しかも墜落の3週間前にケネディは左足首をけがしていたので副操縦士を乗せていたはずだとも言われている。実際、7月上旬にカナダまで飛んだときには副操縦士を同乗させていた。

 また奇妙なことに搭載されていたボイス・レコーダー、DVR300iに何も記録されていなかった。この装置は音声に反応して動く仕掛けになっていて、直前の5分間を記録する。

 墜落現場の特定に時間がかかりすぎているとする指摘もある。緊急時に位置を通報するためにELTという装置も搭載されていたのだが、墜落から発見までに5日間を要している。日本航空123便より酷い。ともかくジョン・F・ケネディ・ジュニアは2000年の大統領選挙に出馬することはできなくなった。

 結局、大統領に選ばれたのはジョージ・W・ブッシュ。ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺に絡み、CIAの責任者としてFBIの文書に名前が出てくるジョージ・H・W・ブッシュの息子だ。大統領に就任した年の9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、人びとがショックを受けている間の憲法を無視する愛国者法が制定された。

 2003年にはその攻撃と関係のないイラクをアメリカ軍は従属国の軍隊を率いて先制攻撃、サダム・フセイン体制を破壊、フセイン本人は処刑されたが、多くのイラク市民も殺されている。

 例えば、2006年10月にイギリスの医学雑誌「ランセット」はジョンズ・ホプキンズ大学とアル・ムスタンシリヤ大学の共同研究による調査報告を掲載、それによると2003年3月から2006年7月までの間に65万4965名以上のイラク人が死亡、そのうち60万1027名は暴力行為(要するに戦闘)が原因だという。イギリスのORB(オピニオン・リサーチ・ビジネス)は2007年夏までに94万6000名から112万人が死亡、またNGOのジャスト・フォーリン・ポリシーは133万9000人余りが殺されたとしている。

 このイラクに対する侵略戦争を上院議員だったバイデンは熱心に支持し、ブッシュ政権の方針に賛成していた。実業の世界にいたトランプも戦争に賛成している。アメリカとイギリスは侵略戦争を正当化するために大量破壊兵器の存在と脅威を宣伝したが、作り話だったことが後に判明した。その作り話を広めるために有力メディアが果たした役割も大きい。こうした政治家やメディアはアメリカを「民主主義国家」だと主張している。

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202010140000/

99. 2020年10月19日 08:37:02 : wkiRvIykcQ : aFFBREwzUFlhM28=[4] 報告

2020.10.19
ナゴルノ・カラバフでの戦争でトルコのエルドアン政権が倒される可能性
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202010180000/


 9月27日にアゼルバイジャンがアルメニアを攻撃、ナゴルノ・カラバフで戦争が始まった。アメリカやロシアは静観の構えだったが、10月16日にロシア軍がカスピ海で軍事演習を行い、注目されている。トルコはシリアやリビアで手先として使ってきたジハード傭兵をナゴルノ・カラバフへ移動させているが、これはロシアを刺激しているだろう。

 アゼルバイジャン側にはトルコが存在、配下の戦闘員やF-16戦闘機を送り込んでいると伝えられているほか、アゼルバイジャンへはイスラエルがドローン(無人機)など武器/兵器を提供、​ネゲブにあるイスラエル空軍の基地にアゼルバイジャンの輸送機が着陸​するところも目撃された。

 2011年3月に始まったシリアへの侵略戦争にトルコも参加、トルコにある米空軍インシルリク基地は攻撃の拠点になっていた。そこで反シリア政府軍を編成、訓練していたが、教官はアメリカの情報機関員や特殊部隊員、イギリスとフランスの特殊部隊員だった。

 トルコは物資の供給拠点でもあり、そこからシリアへ兵站線が延びていた。プレスTVの記者セレナ・シムはトルコからシリアへ戦闘員を運び込むためにWFP(世界食糧計画)やNGOのトラックが利用されていることを裏付ける映像を入手したと言われているが、2014年10月19日に「自動車事故」で死亡している。MIT(トルコの情報機関)から嫌がらせを受けていたこともあり、事故にトルコの政府機関が何らか形で関係していると疑う人もいる。

 当時、​イラクの首相だったヌーリ・アル・マリキ​はペルシャ湾岸産油国がダーイッシュを支援していると批判、​ドイツのDW​もトルコからシリアへ食糧、衣類、武器、戦闘員などの物資がトラックで運び込まれ、その大半の行き先はダーイッシュだと見られていると伝えている。

 そうしたトルコだが、シリアでの戦争が長期化、トルコの経済は悪化してレジェップ・タイイップ・エルドアン政権の足下が揺らぐ。アメリカのバラク・オバマ政権が好戦的な陣容に変える中、2015年9月30日にはシリア政府の要請でロシア軍が介入、トルコを含む侵略国が編成していたアル・カイダ系武装集団、あるいはダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)の支配地域は急速に縮小していく。

 2016年6月にトルコ政府はロシアとの関係修復に動く。エルドアン政権は2015年11月にロシア軍機を自国の戦闘機に撃墜させているが、ウラジミル・プーチン露大統領にその撃墜を謝罪したのだ。アメリカがトルコでエルドアンを排除するためにクーデターを試みたのはその翌月のことだ。

 その後もエルドアンをアメリカは排除しようとしているだろう。サダム・フセインと似た状況にあると言う人もいる。シオニストの一派であるネオコンは1980年代からフセインを排除しようとしていたが、権力の座につけたのは、若い頃にCIAの手先として働いていたからだ。自国でのクーデターだけでなく、シリアでのクーデターに強力、イランと戦争している。

 イランとの戦争はアメリカの意向を受け、ペルシャ湾岸の産油国を守るために行ったとフセインは認識していたが、膨らんだ債務や国民の犠牲に対する補償がなく、クウェートとは両国の国境近くにあるルマイラ油田をめぐって対立する。イラクはクウェートが領土を侵し、盗掘していると疑ったのだ。実際、盗掘していたと言われている。

 イラクはクェートへの不満を募らせ、CIAは1988年の段階でイラクがクウェートへ軍事侵攻すると予想している。ところがジョージ・H・W・ブッシュ政権はイラクの軍事的な動きに無関心であるかのように装う。(Jonathan Cook, “Israel and the Clash of Civilisations”, Pluto, 2008)

 例えば、1990年7月にアメリカ国務省のスポークスパーソンは記者団に対し、アメリカはクウェートを守る取り決めを結んでいないと発言。サダム・フセインと会談したエイプリル・グラスピー米大使は、ブッシュ大統領の指示に基づいてアラブ諸国間の問題には口を出さないと伝えている。

 また、約3万人のイラク軍がクウェートとの国境近くに集結したことを受け、26日の会見で記者からアメリカ政府がイラク側に抗議したかどうかを質問された国務省スポークスパーソンは、そうした抗議に気がつかなかったと答えている。さらに、下院ヨーロッパ中東小委員会で、アメリカは湾岸諸国と防衛条約は結んでいないとジョン・ケリー国務次官補が語っている。

 こうした動きに不審を抱いたひとりがPLO議長だったヤセル・アラファト。アメリカ支配層の少なくとも一部がフセインを罠にかけようとしていると疑ったのだ。そこでバグダッドへ飛び、フセインに対し、挑発されてもクウェートを攻撃するべきでないとアドバイスしている。アラファトはクウェートへも行き、ジェッダでイラクとの金銭的な問題を解決するように提案するが、クウェート側は聞く耳を持たなかったという。ヨルダンのフセイン国王もアラファトと同じ懸念を抱き、ジェッダで首脳会談が開かれる前日、アラファトと同じことをクウェートの代表団に話したが、やはり聞く耳を持たなかったようだ。(Alan Hart, “Zionism: Volume Three,” World Focus Publishing, 2005)

 イラクとクウェートの交渉ではクウェートの外相がイラクの代表を挑発、そして8月2日にイラク軍がクウェートに軍事侵攻した。アラファトやフセイン国王が懸念したように、イラクはアメリカの罠にかかってしまったと言えるだろう。トルコのエルドアン政権も罠にかけられようとしているのではないか考える人もいる。トルコを従属させられれば、アメリカの中東戦略は容易になるだろうからだ。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202010180000/

100. 中川隆[-10557] koaQ7Jey 2020年10月27日 19:36:40 : XYjGIan8nE : ZnYwN282UHQyaEE=[20] 報告
ワクチンの接種を認めさせることを含む宣伝に力を入れている​WHOはヒル+ノールトン・ストラテジーズ(2011年までの社名はヒル&ノールトン)という広告会社と契約​している。

 ヒル&ノールトンはイラクへの軍事侵攻を正当化するための偽情報を広めたことで知っている人も少なくないだろう。イラクのサダム・フセイン体制を悪霊化するため、1990年10月10日にアメリカ下院の人権会議という非公式の集まりで行われた「ナイラ」なる少女の証言を同社は演出する。

 この少女はクウェートの病院で働いていた看護師を名乗り、イラク兵が保育器を盗んで多くの赤ん坊を殺したなどと主張、好戦的な雰囲気を作り出す一因になった。少女は涙ながらにイラク軍の残虐行為を語ったのだが、実際は看護師でなく、アメリカ駐在クウェート大使だったサウド・アル・サバーの娘、ナイラ・アル・サバーだった。イラク軍がクウェートへ攻め込んだ当時、ナイラが現場にいなかったことは言うまでもない。

 しかし、この嘘を真に受けた人びとはイラクへの先制攻撃を後押しすることになり、子どもを含むイラク人が殺されることになる。この戦争は2003年のアメリカ主導軍によるイラク侵略につながり、2006年10月にイギリスの医学雑誌「ランセット」はジョンズ・ホプキンズ大学とアル・ムスタンシリヤ大学の共同研究による調査報告を掲載、それによると、2003年3月から2006年7月までの間に65万4965名以上のイラク人が死亡、そのうち60万1027名は暴力行為(要するに戦闘)が原因だという。イギリスのORB(オピニオン・リサーチ・ビジネス)は2007年夏までに94万6000名から112万人が、またNGOのジャスト・フォーリン・ポリシーは133万9000人余りが殺されたとしている。こうした殺戮、破壊、占領、略奪への道を開いたのがヒル&ノールトンだった。

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202010270003/

101. 中川隆[-10112] koaQ7Jey 2020年11月07日 06:48:27 : rBzhPMJiBc : eXgyN1czclhOai4=[5] 報告
2020.11.06
イスラエルを後ろ盾とするブレア英首相は偽文書で米国のイラク先制攻撃に協力
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202011060001/

 イスラエルを後ろ盾と手するトニー・ブレアは1997年5月から2007年6月までイギリスの総理大臣を務めているが、その間にアメリカは国内におけるファシズム化と国外における侵略戦争を本格化させた。強大な私的権力が地球を支配する「新世界」の実現に向かって進み始めたのである。

 歴史の流れを見ると、世界制覇のプランは19世紀にイギリスで考えられ、社会の収容所化は第2次世界大戦の直後からアメリカで始められているのだが、そうした計画がジョージ・W・ブッシュがアメリカ大統領に就任した直後から加速度的に進み始めたのだ。

 そうした動きの背景には1991年12月のソ連消滅があり、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された出来事が引き金になったと言える。

 ブッシュ政権は2001年に攻撃したのは「アル・カイダ」だと調査もせずに断定したが、この主張に疑問を持つ人は少なくない。旅客機の突入で強靱な高層ビルが爆破解体のように崩壊したという説明に説得力がなく、状況証拠は爆発物が仕掛けられたことを示している。攻撃を受けていない7号館(ソロモン・ブラザース・ビル)の崩壊は南北タワーの崩壊より奇妙だ。

 その出来事の直後、公式的な説明に疑問を表明した建造物の専門家がいた。ABCのジョージ・ステファノポラスからインタビューで、「​イラクは世界貿易センターを崩壊させなかった。イラクではなかった。ほかの連中だ。その連中が誰なのかを私はわかっていると思っている。あなたもそうかもしれない。​」と語っている。その専門家とは、当時はデベロッパーだったドナルド・トランプである。

 その際、トランプは1993年2月にノース・タワーの地下2階にあった駐車場が爆破された出来事を引き合いに出している。その爆破でコンクリートの床が破壊され、4階層に渡って幅30mの穴が空いているが、それでもビルはびくともしなかったと指摘、軽量化のために脆弱な構造の旅客機が突入しても崩壊しないと主張したのだ。燃料が燃えても鉄骨が溶けるようなこともない。

 爆破説が出た直後、爆弾を仕掛けるためには工事が必要であり、気づかれるはずだと反論する人もいたが、実際、大規模な工事が行われている。1994年から2000年にかけて世界貿易センターではエレベーター・システムを改修、96年から2000年にかけては新しい治安システムを導入するための工事が実施されているのだ。

 また、サウス・タワーにオフィスがあったフィデュシアリー・トラストのスコット・フォーブスによると、攻撃直前の9月8日から9日にかけて動力が落ち、50階から上は電力の供給がなくなるということがあったという。その影響で監視カメラやドアのセキュリティ・ロックも機能しなくなり、修理するために多くの技術者がタワーに出入りしていたという。ビルを倒壊させるために何らかの工作をするチャンスは十分にあったということだ。

 しかも、ブッシュ政権が犯人だとした「アル・カイダ」なる武装集団は存在しない。これは本ブログでも繰り返し書いてきた。2001年6月から04年6月までイギリス外相を務めたロビン・クックが05年7月にガーディアン紙で書いたように、​アル・カイダはCIAの訓練を受けたムジャヒディンの登録リスト、つまりジハード傭兵の名簿​。そのリストに登録する戦闘員をリクルートすることがオサマ・ビン・ラディンの仕事だったのである。

 オサマ・ビン・ラディンは自分たちが攻撃したのではないと語っていたが、ビン・ラディンは腎臓病を患い、人工透析が必要だったのだが、フランスのル・フィガロ紙によると、2001年7月4日から14日にかけて彼はドバイのアメリカン病院に入院している。ジャーナリストのティエリー・メッソンによると、彼は2001年12月15日に死亡したという。

 2001年の終わりにビン・ラディンは死亡している可能性が高いのだが、バラク・オバマ政権は2011年5月2日にパキスタンのアボッタバードでアメリカ海軍の特殊部隊NSWDGが彼を殺害、死体は空母カールビンソンから海に葬られたと主張している。殺害や埋葬の目撃者は見当たらず、勿論、死体もない。

 アメリカは2011年春からイギリスやフランスなどと共同でリビアやシリアへの戦争を始めていた。その時に地上軍として使ったのがムスリム同胞団やサラフィー主義者(ワッハーブ主義者やタクフィール主義者と渾然一体)を主力とするジハード傭兵の戦闘部隊。アル・カイダ系の戦闘集団とも言える。

 リビアではアル・カイダ系武装集団の地上軍とNATOの航空兵力の連携が機能し、2011年10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制が倒されたが、その際にNATO軍とアル・カイダ系武装集団LIFGの連携が明らかになってしまう。カダフィ体制が倒された直後、反カダフィ勢力の拠点だったベンガジの裁判所にアル・カイダの旗が掲げられたのは象徴的な出来事だった。(​ココ​や​ココ​)もしオサマ・ビン・ラディンが生きていることになっていたら、話題になっただろうが、その時点で象徴は消されていた。

 トランプに限らず、2001年9月11日の攻撃にイラクが関与していないと考える人は少なくなかった。そこでブッシュ政権は「大量破壊兵器」の宣伝を繰り返したが、これも嘘だった。

 その嘘を裏づける証拠だとされる「イラク大量破壊兵器、イギリス政府の評価」というタイトルの報告書をブレア政権は2002年9月に作成、メディアに流された。それをサン紙は「破滅から45分のイギリス人」というタイトルの記事にしている。その半年前、​ブレア首相はアメリカのコリン・パウエル国務長官に対し、アメリカの軍事行動に加わると書き送っている​が、この段階では統合参謀本部の内部にも反対者がいて、戦争を始められなかった。そこで開戦を後押しする何かが必要だったのである。

 この報告書をパウエル国務長官は絶賛したが、大学院生の論文を無断引用した代物で、信頼できるものではなかった。しかもイギリス政府はイラクの脅威を強調するため、イギリス政府は改竄する。その改竄をBBCのアンドリュー・ギリガン記者は2003年5月にラジオ番組で明らかにし、サンデー・オン・メール紙でアラステアー・キャンベル首席補佐官が情報機関の反対を押し切って「45分話」を挿入したと主張した。

 ギリガンの情報源がイギリス国防省で生物兵器を担当しているデイビッド・ケリーだということが7月9日にリークされるが、実際、2003年5月にギリガンはケリーとロンドンのホテルで会っていた。

 ケリーは7月15日に外務特別委員会へ呼び出され、17日に死亡する。公式発表では「自殺」ということになっているが、疑問は多く、今でも他殺説は消えていない。公式発表では手首の傷からの大量出血や鎮痛剤の注入が原因で、自殺だとされているが、手首の傷は小さく、死に至るほど出血したとは考えにくいのだ。

 しかもケリーは右肘に障害があり、右手でブリーフケースを持ったりドアを開けたりすることができなかった。1991年12月に落馬、骨折したことが原因で、携帯していた折りたたみ式ナイフの刃を研ぐことも難しかったと言われている。手首を切ったとされるナイフからも、死体の横に転がっていた錠剤が入った瓶からもケリーの指紋は検出されていない。また救急救命士によると、ケリーの左の手首には乾いた血がこびりついているだけで傷は見えなかったという。死体を発見した捜査官のグラハム・コーも大量の出血はなかったと証言している。自殺説への疑問を列挙していくときりがない。(Miles Goslett, “An Inconvenient Death,” Head of Zeus, 2018)

 しかし、ブレア首相から調査委員会の委員長に指名されたブライアン・ハットンは検死報告を無視、大量の出血があったと主張している。そのハットン委員会の結論には疑問があるのだが、その検証をするために必要な検死解剖の報告書や現場の写真を含む事件に関する全てのファイルを70年間秘密にすると委員会は秘密裏に決めている。(Miles Goslett, “An Inconvenient Death,” Head of Zeus, 2018)

 ブレアの協力もあり、ネオコンが1980年代から主張していたイラクのサダム・フセイン体制を破壊するという計画に向かって米英は動き始めることができた。イラクに親イスラエル派を樹立させることには成功していないが、シリアとイランを殲滅するというプランは実行しつつある。そのプランの実現を妨害しているロシアをネオコンは憎み、核戦争で脅してきた。

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202011060001/

102. 中川隆[-8469] koaQ7Jey 2021年1月08日 16:16:41 : BBvn1aJu7g : Q0NCdzYvcHFWaWM=[14] 報告

2021.01.08
バイデンの大統領就任式にカーター夫妻が欠席する意味
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202101080000/

 アメリカの上下両院合同議会は1月7日にジョー・バイデンが次期大統領になることを確認した。就任式は1月20日に開催される予定だが、この式に第39代大統領のジミー・カーターと妻のロザリンは欠席する。

 ジミーは96歳、ロザリンは93歳。ふたりとも年齢を考えると不思議ではないのだが、2017年1月に行われたドナルド・トランプの大統領就任式には出席している。招待に対し、折り返し出席の返事を出した唯一の元大統領だった。トランプの式ではクリントン夫妻だけでなく、トランプと同じ共和党のジョージ・W・ブッシュもしばらく検討の期間をおいてから出席を決めている。

 バイデンの周辺には戦争やカネの臭気が充満している。彼の移行チームには戦争ビジネスやネオコンと関係の深いCSIS(戦略国際問題研究所)やCNAS(新しいアメリカの安全保障センター)といったシンクタンクが深く関与、国務長官にはCSISのシニア・フェローだったアントニー・ブリンケン、国防長官にはレイセオン重役で元米中央軍司令官のロイド・オースチンが就任する予定。情報長官に指名されたアブリル・ヘインズはバラク・オバマ政権でCIA副長官や国家安全保障副補佐官を務め、「血まみれジーナ」とも呼ばれているジーナ・ハスペルCIA長官と親しいと言われている。国務次官はウクライナのクーデターでネオ・ナチを現場で指揮していたビクトリア・ヌランド。しかも「ミスター・モンサント」と呼ばれている元アイオワ州知事のトム・ビルサックが農務長官に指名された。

 偽情報でユーゴスラビアを悪魔であるかのようなイメージを作り上げた上で同国を先制攻撃したビル・クリントン、やはり偽情報を広めた上でイラクを先制攻撃し、中東で戦争を始めたジョージ・W・ブッシュ、ムスリム同胞団やワッハーブ派を戦闘員として使って戦乱を中東から北アフリカにかけての地域に広げ、ドローン(無人機)による暗殺を繰り返し、ウクライナではネオ・ナチを使ったクーデターで合法政権を倒したバラク・オバマ。

 ジミー・カーター政権ではオバマの師と言われているズビグネフ・ブレジンスキーが国家安全保障補佐官としてアフガニスタンで秘密工作を始め、殺戮と破壊を始めた。この工作でブレジンスキーが手先の戦闘員として使ったのがムスリム同胞団やワッハーブ派だ。

 カーターはデイビッド・ロックフェラーとズビグネフ・ブレジンスキーに目をつけられ、日米欧三極委員会に加わることになった人物だが、核兵器の拡散に反対していたほか、イスラエルへ完全には服従しようとしせず、国連安保理の242号決議に基づいてパレスチナ問題を解決しよう考えていた。

 1977年4月までイスラエルの首相を務めた労働党のイツハク・ラビンは包括的和平に賛成、PLOのアラファト議長も不公平であることは飲み込んで242号決議に基づく和平を実現したいと考えていたが、イスラエルで1977年に実施された選挙でリクード(軍事強硬派)が勝利、メナヘム・ベギンが首相に就任したことで計画は壊れた。

(Alan Hart, “Zionism Volume Three,” World Focus Publishing, 2005)

 パレスチナ人の権利も尊重しようとしたカーターはシオニストから激しく攻撃されることになる。そうした攻撃で重要な役割を果たしたひとりがマイケル・リディーンだ。1980年の大統領選挙でカーター大統領を中傷、攻撃する記事をアメリカのニューリパブリック、イギリスのナウ!、あるいはフランスのレクスプレスなど親イスラエル派のメディアに書いている。

 ナウ!とレクスプレスを所有していたのは、世界でも屈指の大富豪だと言われるジェームズ・ゴールドスミス卿。石油会社BRISA(ベイシック・リソーシズ・インターナショナルSA)」の会長としても知られていたが、この会社はIOR(宗教活動協会/通称バチカン銀行)の不正融資事件に絡んで倒産したアンブロシアーノ銀行と関係があった。

 リディーンはカーター大統領の弟、ビリーとPLOとの関係を問題にした。リビアから秘密裏に5万ドルを受け取り、PLOのヤシル・アラファト議長と会談したというのだ。ビリー・カーターは一連の記事を事実無根だと否定していたが、プロパガンダの影響は大きかった。

 リディーンへ情報を提供していたイタリアの情報機関SISMIはイラク攻撃の下地作りにも登場する。イラクがアフリカのニジェールからイエローケーキ(ウラン精鉱)を手に入れようとしているという偽情報を流し、すぐにでもイラクがアメリカを核攻撃するかのような幻影を描き出し、先制攻撃も止むなしという雰囲気を作り出す上で重要な役割を果たしたのだ。

 イタリアの週刊誌​パノラマの記者エリザベッタ・ブルバ​に電話が掛かり、電話の相手はサダム・フセインとアフリカでのウラン購入を結びつける情報が存在すると話した。その情報源は彼女が以前から知っている人物で、イタリアの情報機関と関係があると推測されていた。書類を受け取ると、パノラマの編集長カルロ・ロッセラはアメリカ大使館に持ち込むように指示。その書類はCIAローマ支局長を経由してワシントンに渡り、イラクを批判する材料として使われることになった。

 結局、カーターは再選されなかったが、その後も個人的に世界的な緊張緩和に努力、イスラエルの核兵器についても語っている。彼によるとイスラエルが保有する核兵器の数は150発だ。(BBC, May 26, 2008)

 なお、1986年10月にサンデー・タイムズ紙が掲載したモルデカイ・バヌヌの内部告発によると、イスラエルが保有している核弾頭の数は150から200発。水素爆弾をすでに保有、中性子爆弾の製造も始めていたという。中性子爆弾は実戦で使う準備ができていたとしている(使われた可能性がある)。

 イスラエルの軍情報機関ERD(対外関係局)に勤務、イツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めた経歴を持つアリ・ベンメナシェによると、イスラエルが保有する核兵器の数はふたりの示した数より多い。1981年に時点でイスラエルがサイロの中に保有していた原爆の数は300発以上で、水爆の実験にも成功していたという。(Seymour M. Hersh, "The Samson Option", Faber and Faber, 1991)

 言うまでもなく、バイデンはイスラエル、あるいはイスラエルを隠れ蓑に使っている私的権力に従属している。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202101080000/

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