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ソニー SS-R10 _ 史上最高の静電型スピーカーだったんだけど…
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/950.html
投稿者 中川隆 日時 2019 年 5 月 24 日 07:31:54: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 伝説の静電型スピーカー QUAD ESL57・ESL63 投稿者 中川隆 日時 2017 年 2 月 10 日 20:25:45)


ソニー SS-R10 _ 史上最高の静電型スピーカーだったんだけど…

ソニーのスピーカーの最高傑作 SS-R10

そして、1996年ソニー創立50周年に発表されたのがこちら、

SS-R10

当時のソニー社長、大賀典雄氏の希望によって約四年前から着手されたフルコンデンサースピーカー。(大賀氏はクォードESLや、マーチンローガンを愛用されてたそうです。)

フルコンデンサーに依る3way式スピーカー。コンデンサー式スピーカーの問題点を徹底して克服しようと開発された意欲作です。

コンデンサー式の最大の弱点である低域の再生音圧をウーファーユニットを上下、前後で片側で計4枚使用し(38cmウーファーの7個分の面積)量感豊かな低域を実現しています。
http://www.hifido.co.jp/merumaga/kyoto/130412/index.html



▲△▽▼


SONY SS-R10
※受注生産品(左右1セット) ¥3,000,000(2台1組、1996年頃)
https://audio-heritage.jp/SONY-ESPRIT/speaker/ss-r10.html


フルコンデンサー型を採用したRシリーズのフロア型スピーカーシステム。

SS-R10は3ウェイ設計となっており、全帯域にコンデンサー型ユニットを採用しています。

このコンデンサー型ユニットには、ソニーのスピーカー技術の他に、コンデンサー型マイクロホンで培った薄膜技術やテレビの高電圧での高度な絶縁技術が投入されています。

セットの表面から見ると、ウーファー、ミッドレンジ、トゥイーターそれぞれ上下に2ユニットずつ使用した6ユニット構成に見えますが、実際には8ユニット構成となっており、ウーファーは上下とも2組のユニットが重ね合わされた2重構造4ユニットとなっています。これにより、ウーファーとしてのドライブ能力を高め、コンデンサー型では困難であった量感豊かな低域を実現しています。

低域には270x570mmのコンデンサー型ウーファーを4ユニット、中域には70x500mmのコンデンサー型ミッドレンジを2ユニット、高域には25x500mmのコンデンサー型トゥイーターを2ユニット搭載しています。

これらのユニットには家庭用ラップの約1/10の重さしかない6μm(6/1,000mm)の振動膜を使用しています。そのため、スピーカー動作中の前後の空気層の実効的な質量と比較しても極めて軽く、しかも全面が駆動されため際立って優れた音の分解能を持っています。

コンデンサー型で必要な昇圧用トランスには、容量的に十二分に余裕を持たせた大型で高音質なものを採用しています。さらに、電気的に信頼性を上げ、さらに振動に対しても強くするため、バイアス回路とともにエポキシ樹脂で封入されています。

また、ネットワーク部も高音質部品で構成しただけでなく、本体とは別ボックスにすうrことで振動防止と相互の電磁的な影響を遮断しています。


機種の定格

方式 3ウェイ・8スピーカー・コンデンサー方式・フロア型

ユニット
低域用:27x50cmコンデンサー型x4
中域用:7x50cmコンデンサー型x2
高域用:2.5x50cmコンデンサー型x2

定格インピーダンス 4Ω

実効周波数帯域 35Hz〜40kHz -10dB
クロスオーバー周波数 600Hz、4kHz

定格入力 50W(8Ω)
最大入力 100W(8Ω)

出力音圧レベル 80dB/W/m(2.83V)

推奨アンプ 100W〜200W(8Ω)

電源 AC100V、50Hz/60Hz
消費電力 20W

最大外形寸法
(専用中継ケーブル突起含む) 本体:幅805x高さ1,545x奥行525mm
    パネル部厚み:150mm(グリル含む)
ネットワークボックス:幅785x高さ230x奥行290mm

重量
本体:約76kg(グリル含む)
ネットワークボックス:約18kg

付属 スパイク
本体・ネットワーク間の中継ケーブル
電源ケーブル(プラグアダプター付き)
https://audio-heritage.jp/SONY-ESPRIT/speaker/ss-r10.html



▲△▽▼


DYNA-HAL -音の細道(27)

第一章『 It's a SONY 』

 1995年8月7日午前11時。既に、この時間でも思わず立ちくらみを覚えるほどの熱暑が東京の街並みをすっぽりと飲み込んでいた。先週は家族を引き連れて伊豆高原で夏休みを取っていたこともあり、品川駅前に降り立つと夏の日差しにつき物の騒々しい蝉の鳴き声が幻聴となって蘇ってくるようだ。目指すは五棟のビル群からなり約1,500人が勤務するというソニー株式会社の芝浦テクノロジーセンター、同社のオーディオ部門が研究開発を行っている本拠地である。

3年前のオーディオフェアーで参考出品された同社のコンデンサー型スピーカーが今年いよいよ製品化されるということで、ある事情も手伝って一般公開の前に単身で聴きに行くことになったのである。

早速受付で記名をして外来者用の名札を付け試聴室に向かう。そこで同社のホームAV部門オーディオ二部・商品設計二課の茶谷郁夫課長、道下政美係長、佐藤浩氏、国内営業部オーディオ営業部付きの山本順光氏という皆様にお出迎え頂いた。実は、この日に丁度ご不在であった同課のもう一人のスタッフである佐藤和浩氏が、前述の「ある事情も手伝って」という経緯の張本人なのである。お陰様で私が開催している毎月の試聴会は大変ご好評を頂いており、回を重ねる毎に皆様のご支持を頂き愛好家の輪が広がっているのである。この案内状の発送部数も年内には一千部に達する拡大を見せている。昨年からだったろうか、熱心に毎月この試聴会に通ってこられた青年が、この佐藤和浩氏だったのである。名前よりも先に顔を覚えてしまった私が、ある日話しかけてみたらソニーでスピーカーを作っているというではないか。しかも、海外のハイエンドオーディオに対しての知識と情報、そして何よりも、それらの外国製品に対する理解を私以上に持っておられる。「こんな人が作っているスピーカーだったら、是非聴いてみなくてはいけない。」と思ったのである。これまでにも、海外メーカーのトップの人達に出会うたびに、その人となりを見て、その会社が作り出す製品に対して信頼感と期待感を膨らませてきた。そんな私にとって、この佐藤和浩氏との出会いは、まさにソニー製オーディオコン
ポーネントの再評価をするきっかけとなってくれたのである。

それに、今回のスピーカーの開発に当たられた4名のうち3名が、佐藤和浩氏の27歳を筆頭に30代前半と大変若い技術者であるということにも関心が持たれた。この随筆でも過去に何回か触れたように、私は日本メーカーの設計者に対して次のような要望を持っている。

「海外製品に対しての広い視野と最新の情報を取り込み、家庭用の再生装置として現代の日本人が求める感性を理解し、これらの時代的な変化を察知して海外製品との共存共栄出来る音質表現を模索して欲しい。」

こんな私の身勝手な言い分に答えてくれそうな期待感が、佐藤和浩氏との会話のなかで次第に高まってきたのである。


第二章『ソニーというオーディオ企業』

 これは意外と知られていない事実なのだが、昭和40年頃まで、マッキントッシュ、トーレンス、オルトフォン、KLH、といった海外のオーディオ製品を日本に紹介し販売していたのは、他でもないこのソニーだったのである。また、よく笑い話しとしてお話するのだが、私も仕事がら様々な職種のお得意様がある。しかし、この世の中の数ある職業の中でも、この職種の人達だけはお付き合いがないというものがある。それは、「政治家とヤクザ」である。従って、その多くの顧客の中には、古くからお付き合い頂いているソニーの社員も多い。

その方々に、以前から伝統的に共通していることが一つある。トヨタ、ニッサンといった自動車業界では考えられないことだが、こと高級オーディオに関してはソニーの自社製品を使っている人は皆無といってもよいくらいにお目にかかったことがない。

もっとも、日本の他メーカーでも、オーディオを趣味にしている人々は大同小異の傾向である。「趣味は趣味、仕事は仕事」と割り切って考えられており、自分の金で自分の好きな音を楽しみながら仕事にも反映させていく、という「音の勉強に対する自己投資」という解釈もあってよいと思う。もちろん、日本の大手メーカーの社員もサラリーマンである以上は、自社製品で認めるものがあっても高くて手が
出ないという現実的な選択も大いにあると思う。

さて、今回のソニー製フル・コンデンサー型スピーカーの開発は、当時は取締役社長であり、現在は取締役会長に就任された大賀典雄氏の希望によって約四年前から着手された。

その大賀氏も前述の例にもれず、英国のクォードESL、現在では米国マーチンローガンのコンデンサースピーカーを愛用中ということである。

大賀氏ご自身は、声楽でバリトンを歌うことでも知られており、当然オーケストラを中心としたクラシック音楽の再生音には強い関心を持たれていた。

採算ベースだけを考えて商品化を行う、そんな姿勢が日本企業の習性であると思ったら大間違い。音楽とオーディオに対する情熱が今回のようなプロジェクトを発進させたというのは、むしろ海外メーカーのトップが決断するモノ作りの本能に近いものを感じるところがある。

その大賀氏から直接の命題を仰せ使ったのが、ホームAV部門オーディオ二部・商品設計二課の課長であり主任研究員の前田敬二郎氏であった。しかし、大変残念ながら白血病に犯された前田氏は、昨年志し半ばにして遂に帰らぬ人となってしまったのである。

その意志と熱意を継いで、先にご紹介した同課の茶谷氏をはじめとする皆さんが、ソニー株式会社の創立50周年モデルとして完成にこぎつけたのである。

ちなみに、1996年5月7日がソニー株式会社の創立50周年記念日であり、今年の秋から発売するモデルをその記念碑としていくという事である。

さて、茶谷氏にソニー・フルコンデンサーの開発意図が、従来からあった他社のコンデンサースピーカーに対して、どの様なところにあるのかを聞いてみた。


「大変単純な目標ですが、なかなか実現出来なかった課題です。

ハイブリッド構成(低音再生にコーン型のダイナミック型スピーカーを組み合わせる方法)に頼らず、全帯域を文字通りフル・コンデンサーで再生するというものです。

しかし、誤解のないようにお願いしたいのはソニーが手がけたからと言って、コンデンサー型の原理から発祥する再生音圧の限界点を飛躍的に向上させた、という様な型破りでオーバーなものではありません。むしろ、コンデンサー型の原理には忠実に従いシンプルな構成によって、従来の完成度不満を感じるフルレンジ・コンデンサー型、あるいはハイブリッド構成のコンデンサースピーカーでは満足出来ない
、そんな人々のために開発したものです。」


なるほど、お話を耳で伺いながら、すでに私の目はフル・コンデンサーの実物に吸いつけられていた。

第三章『正攻法の選択が生んだ奇手』

 高さが2メートル近くある物が多い海外製のプレーナー型スピーカーの大きさから比べると、ソニーのフル・コンデンサーは明らかに日本的サイズである。横幅も800ミリ程度、高さも1,535ミリ、と私の胸元くらいでほとんど威圧感はない。正面から見て、トゥイーターが取り付けられている内側は垂直にカットされているが、外側は上に向かって幅が狭くなる片側が丸くふくらんだ台形をしている。私が聴かせて頂いた試作機はラワン合板で出来ており、厚み0.5ミリのウォールナット仕上げのツキ板で覆われていた。ただし、ユニットが取り付けられている55ミリもの厚みを持たせた長方形の板材は合板だが、このラウンドしている外側の湾曲部分は無垢材から削り出している。最終的にはラワン合板にするか、もう一つの素材候補である米松合板を採用するかどうか、今後決定されるということだがウォールナット仕上げの外観には変更はない。

さて、肝心なユニットだが、独立した3ウェイ構成のすべてに化学的な分類でいう、ポリエチレン・テレフタレートと呼ばれる6ミクロンの超薄膜が採用されており、音響工学的に言って相当面積に存在する空気の質量よりも軽い素材であるという事だ。この処理方法は企業秘密ということで教えてはもらえなかったが、フィルムの厚みの100分の1の厚みで、特殊な導電材を化学処理してコーティングしている。

ちなみに、他社の場合には8ミクロンから16ミクロン程度の薄膜を使用しているものが多い。また、これに施す導電材も多くは酸化錫などを含む導電塗料をスプレーで吹いて塗布するような原始的な手法をとっているところもあり、時には薄膜自体の質量よりも重たい層になっているものもあるようだ。

ユニットは縦方向に長い長方形で、各帯域が上下に一対ずつ6個が取り付けられている。トゥイーターは幅二五ミリで高さが500ミリ、ミッドレンジは幅70ミリで高さが500ミリ、ウーファーは幅270ミリで高さが500ミリ、というのが1ユニットの振動面積で、これが縦方向のインライン状に二列並んでいる。

このウーファーは両チャンネル合わせて単純計算すると、38センチ口径のコーン型ウーファー七個分に相当する振動面積を持っていることになる。

コンデンサー型であるので、これらの面積の振動膜を固定極が一定のギャップをもって挟む事になる。この固定極となる黄銅製パンチング・メタルは琺瑯のような表面仕上げがなされ、外界との環境的な絶縁によってシステムからのノイズ発生を絶つという大きな役目を負っている。


クォード社のESLは梅雨時にはジーというノイズが発生してしまい、製造元もそれを認めているが対応は不可能とされていた。

米国のマーチンローガンも、エアコンの風を直接受けるとコンディションが損なわれるという。

まず、国産である以上は自国の気候風土による環境変化に十分な配慮をしたというのは、当然でありながら大変難しい課題をクリヤーしたということで評価に値する。私としても、安心して販売出来るものであるのは大変ありがたいことだ

そして、3ウェイ構成のクロスオーバー周波数は、下から600Hzと4キロHzに設定され、オクターブ当たりマイナス18デシベルというスロープ特性を持つネットワークで帯域分割されている。

凝っているのは各帯域の高電圧バイアスの設定である。

トゥイーターは2,000ボルト、ミッドレンジは4,000ボルト、ウーファーは8,000ボルト、と帯域によってバイアス電圧を独立させているのである。

しかも、固定極と振動膜のギャップも、トゥイーターでは前後の片側に0.3ミリずつ合計0.6ミリ、ミッドレンジは一ミリずつ合計二ミリ、ウーファーは5ミリずつ合計10ミリ、受持ち帯域別の細分化が行われている。

この配慮によって高域の再生帯域は、一枚の振動板で駆動されるコンデンサー型では至難の技とされている40キロHzまで確保されているのだ。


さて、この様な概要をご理解頂いたあとで、このソニーが開発したフル・コンデンサーの面目躍如たる最大の特徴が、独自の低域再生法にある事を特筆しておきたい。

一般的に言って、ダイナミック型スピーカーの振動板のように大きな振幅が得られないため、中・高域に対して低域の再生音圧が低下し低能率となってしまう

そこで、どうしても低域の再生音圧を高める、ということがシステム全体の能率の向上のために必要となってくる。

更に、コンデンサー型スピーカーで超低域まで再生帯域を拡大しようとすると、必然的に次のような問題に直面する事となる。

まず、一般的なコーン型のウーファーに対して、振動板の質量が比較のしようがないくらいに極小であること。これは、オーディオ信号に対するトランジェント(過渡特性)が大変素晴らしく向上するというコンデンサー型最大の利点を生むが、低域再生に関してはそれ自身のエフゼロ(最低共振周波数の意・単純に言えば低域の再生限界として理解しても間違いではない)を引き下げることが難しいという相反する一面がある。

そこで、多くのプレーナー型の場合には、低域ユニットの振動面積を 大きくして低域の再生音圧を引き上げようとし、同じに音響的な負荷(アコースティック・インピーダンス)を大きく取ることによって低域再生の限界点を引き下げようとする。

ちなみに、一般的な箱に取り付けられたダイナミック型スピーカーの場合には、ユニットの後方に存在するエンクロージャーの容積や、バスレフポート、パッシブラジエーター、バックロードホーン、などの手段によってエフゼロを調整することが可能であり、低域の再生レベルもエンクロージャーの助けを借りることが出来るので小型化しやすい。反面、エンクロージャーの設計が独特の個性となって特有の質感を演出してしまう点が、以前から箱の音として指摘されている問題点となっている。

それでは、単純に言ってコンデンサー型をはじめとするプレーナー型スピーカーは、ひたすら低域ユニットの振動面積を大きくしていけば良いのかというと、当然ながら家庭用としての大きさの許容範囲もあり、いくつかの課題も発生してくる。これは他社のコンデンサー型スピーカーにも共通することだが、ソニーのフル・コンデンサーの場合にはウーファーの動作を高い周波数に向かって、オクターブ当たりマイナス18デシベルというスロープ特性で中・高域をカットしながら600Hz以下を再生させようとしている。音波の波長が3.4mもある100Hzや倍の6.8mもある50Hzは、単純に言って1秒間に振動膜が100回50回と前後に振動するわけだ。そして、仮に600Hzの音を例に上げれば、波長が0.56m程度で、文字通り1秒間に600回振動しなくてはいけない。

低域再生を重視して振動面積を増やすということは、目標とした特定の帯域だけを再生するならばよいのだが、前述の数値を例に上げれば、ひたすら振動膜を大きくしていった反作用として600Hzの再生に肝心なトランジェントが伴わず、正確な倍音の表現に支障をきたす事となってしまう簡単な実験で、団扇をゆっくりと大きな振り方であおぐ分には抵抗は感じないが、同じ振り方で激しく高速であおごうとすると強い空気抵抗を感じるのと同じ理屈だ。また、低域の楽音でもオルガンやコントラバス、ウッドベースのように継続した音波を比較的ゆったりと発するものと、キックドラムやエレクベース、シンセサイザーによるプログラムを打ち込んだ鋭い立上りの低音など、低域の再生には倍音を多く含んでいるがゆえに、重厚な脈動感を捕らえるべきスピード感も求められるのである。こうした難関をクリアーするために、ソニーが採用した手段とは何か。両チャンネルの振動板の裏表を合計すると38センチ口径のウーファー七個分に相当する振動面積を持たせてしまった、幅270ミリ高さが500ミリの振動膜を内蔵するアッセンブリーを何とそっくりもう一つ貼りあわせる形で後方に取付けダブルウーファーとしてしまったのだ。

正面から見ると1枚に見えるウーファーの振動膜が、その後にちょうど1センチの間隔を隔ててもう一つの振動膜があり、同一ユニット二つが抱き合せに取り付けら
れている形だ。このシステム全体で使用されているウーファーの振動板は全部で8枚ということになり、この一対の振動膜は外界とは小さな通気孔で結合された空気層を挟んでおりパラレルで同相駆動されている。誤解のないように念を押すが、この通気孔はバスレフのような低域輻射を意図したものではない。航空機に乗せて輸送を行う際、気圧変化によって振動膜が破れないようにと単純な理由からである。話しをもとに戻すと、プレーナー型の場合には前述の音響抵抗の考え方として当然振動膜の後方にも空気が存在しており、振動板の負荷としては前後両方を考慮しなくてはならない。リスナーの眼前にある振動板から聴こえてくる音も、実は前後両方の負荷によって得られた低音を聴くことになる。

しかし、手前側の振動板の後方にあるはずの負荷が見かけ上無くなるために、先程の団扇の例で言えば高速で振り回しても空気抵抗を感じない状況が得られる
というわけだ。従って、同面積で振動板が一枚だけの場合に対して、約6デシベルの再生音圧の向上を実現させた。

更に、前述の課題点の逆説的な効用を生み出しており、何と30Hzを余裕を持って下回る超低域までのエクステンションと、ミッド・バス帯域に十分なトランジェントを与えることに成功しているのである。もちろん、この抱き合せとなった一対のユニットの微妙にして完璧なエフゼロ調整は、この手法を駆使する上で欠かすことの出来ない条件となっている。

それでは、各ユニットごとのエフゼロは、前述の面積と音響インピーダンス以外の条件では、一体何によって決定されるのか。それは、コンデンサー型の場合、少なくとも振動膜のテンション(貼り付けるときの張力の調節)によって左右されることが多い。テンションを強めて張っていくと高域の再生には有利になるがエフゼロも上昇する。テンションを緩めていくとエフゼロは低下するが、度が過ぎると振動膜が不規則な動きを始めて変調歪が増加してしまう。

言うまでもなく、この調整も高精度のうちに処理されているという。そして、振動膜二枚を擁する片側上下二つのウーファーには、このエフゼロを更に拡散させる効果を狙ってユニークな使い分けがなされている。通常、パワーアンプから出力されたオーディオ信号は、スピーカー内臓のネットワークを通過して各帯域に分割される。コンデンサー型の場合は、この後で高圧バイアス回路であるトランスを経由して固定極に電位変化をもたらすことになる。

この際、トランスのインダクター成分と振動板の前後に存在するキャパシタ
ー成分を応用した共振回路に、トランスからの出力に対して抵抗をシリーズで挿入することによって定数の変化を与え、ネットワーク以外のハイカット・フィルターを下側のウーファーにかけている。

この作用によって、2本のウーファーは異なる高域特性を持つことになり、スタガー動作をするように下側のウーファーを駆動している。この工夫によって、エフゼロの4オクターブから8オクターブ上に発生する周波数特性の谷を埋めることが可能となり、120Hzから240Hzに相当する低音楽器群の充実した再
生を実現している。このエフゼロと逆特性となる気になるインピーダンス・カーブだが、簡単な話アメリカのアヴァロンと大変酷似しているそうだ。

つまり、30Hzから40キロHzにわたって所々に緩やかな起伏はあるものの、ほぼ平坦であり大きな山谷はなく、最低でも3オームを維持しているとの事だ。パワーアンプからすれば、仕事のしやすい相手であることは間違いない。

思えば、英国のクォード社が世界初のフルレンジ・コンデンサー型スピーカーを発表したのが、何と私がこの世に生まれた1957年である。これから数年の後、第二章の冒頭でご紹介したようにソニーは海外のオーディオ製品を輸入し始め、KLHなどを参考としながらコンデンサー型スピーカーの開発をしていた。

同時期には、国内メーカーのいたるる所で同様な取組みがなされ、スタックスは自社ブランドでの製品化に成功した。

しかし、ソニーを含むその他のメーカーは商品化の容易さから、ダイナミック型のスピーカー作りに移行し、コンデンサー型の研究開発を断念していたのだ。

この、ソニーにおける昭和40年前後のコンデンサー型スピーカーの研究論文は現在も同社に保管されている。30年後の現在においても、立派に今回の製品化につながる基礎研究の土台となっていたことをお知らせしておきたい。

創立50周年を迎えようとするソニー株式会社の30年前の悲願が、私と気さくに語らうような若者たちの手によって完成される。そんな、日本人の手になるソニーのフル・コンデンサーを、私の手によって皆様にご紹介したい。こんな気持ちを、私の職性と性格からお察し頂ければ何よりである。

第四章『設計者の本領』

 お通し頂いた試聴室は、おおよそ四〇畳程度はあろうかという大きめの部屋である。

スピーカー後方の壁面から1.5メートルほど手前に、そのフル・コンデンサーが1セットだけ置かれている。

床には結構毛足の長い絨毯が敷き詰められており、私が話す肉声の帯域はライブであるが、壁二面が二重のカーテンで覆われていることもあり、低域と高域の両端ではかなり吸音されているのが一聴してわかった。

スピーカー本体は試作を繰り返してきた末の物であろうか、ユニットの周辺部にはケーブルも露出しており悪戦苦闘の後がうかがえる。その各ユニット周辺の後側は、分厚い板材がえぐり取られており後方への放射がスムースに拡散されるように配慮されていた。後日うかがってわかったことだが、このスピーカー本体のパネルそのものは、開発当初に作られたものをユニットの開発を行いながらずっと使い続けてきたもので、量産に当たっては更に改善された本体パネルを採用するということであった。つまり、この日聴かせて頂いたのは、現時点における試作過程の最新の姿であり、ユニットの開発の最終段階のもので、これから最終的な仕上げに向けて変更点が多々残された状態ということだ。

さて、過去の経験から、ここをコンデンサー型で聴いてみたいという曲で、聴きなれているCDを持参してきた。私が日頃聴いているシステムを意識してご用意頂いたものか、

マークレビンソンのプリアンプとクレルのパワーアンプ、
そしてソニーのCDP−R10のペアでセッティングされている。


まず、弦楽器を中心としたクラシックで聴き始めた。ハッと思い付いた第一印象は、「アレッ試作段階の割には、落ち着いているじゃないか。」と思われるほど、既に感性の領域といっもよい安定感が感じられるのだ。この感想を裏付けるものとして、各ユニットのつながりに誇張感や強調感と言ったアクセントは皆無であり、楽音の質感を大変自然に表現しているのである。コンデンサー型以外の動作原理の
物も含めて、ダイポール型の放射パターンを持つスピーカーを一つの集合体として考えて、過去に聴いた何種類かのプレーナー型スピーカーで見受けられた、ヒステリックにけばだつような印象がないのである。

「これは長時間聴いてもいいなァ。安心して聴ける。」

これが、大貫妙子のヴォーカルを聴きはじめるころになると確信に変わる。イントロでのウッドベースがふくらみもせず、見事にコントロールされている。この曲は
ちょうどジェネシスVで聴いたときに膨張したウッドベースとなり、サーボコントロールアンプのパラメーターを変更した経験のあるサンプルとして記憶に新しい演奏だ。「コンデンサー型にあって重量感とスピード感の両立か。ウーン、何だか期待出来そうだな。」と、後ろで控えているソニーの社員の皆さんに気どられまいと、口元が緩んでしまう表情を見られないようスピーカーに顔を向けたまま聴き続けた。

次に、これもジェネシスVの試聴で使った曲で、オルガンのスタッカートとメッゾソプラノのデュオによる壮大な空間表現を聴く。

「ウン、これはジェネシスVの勝ちだな。でも、待てよ。去年のテクニクスのように部屋とシステムが変わってから、あれほど評価が変わってしまった事もあった。こいつを私のフロアーに持ってきたとしたら、果たしてどんな可能性を見せてくれるんだろうか。」色々と考えをめぐらせているうちに二七曲も聴いてしまった。量産に向けた最終試作を九月末頃には間に合わせるという営業の山本氏の力強いご返事を頂き、お礼を申し述べて炎天下の品川駅へと向かったのである。

あれから一週間後の8月13日、九州に出張しておられた佐藤和浩氏が私の元を訪ねてくれた。お気の毒なことに、製品の仕上げに向けてのツメで夏休みも返上だということだ。さすがにソニーの本拠地に乗り込んでいった日は、いつものペースで好き放題の注文を付けるのも憚られたが、自分のホームグラウンドでは遠慮なく設計者本人である佐藤和浩氏に私の所感をぶつけることが出来た。

「コンデンサー型で一番おいしいはずの、あの余韻が少なかったよ。」

「ええ、そうなんですよ。吸音性が高いあの部屋の特性なんですよ。
いつだったか、違う所で鳴らしたら高域が出過ぎたのに驚いたくらいです。あの試聴室も改装する必要があると思っています。」

と、佐藤氏は即答。

「低域のズーンと余韻を引くはずのキックドラムがドシッで終わってしまって、あっさりし過ぎだったけど。」

と、私は続けてきいてみた。

「それも承知しています。パネル構造の本体が強度不足なのが原因です。
あの日お聴かせしたのは三年間使い込んできた初期型の試作パネルなんで、量産モデルは大分強度を高めた設計になっています。」

なるほど。「ユニットの固定極に対しては、企業秘密という琺瑯のような絶縁処理がされていますね。外側から手で触れても安心ですが、振動板と向き合う内側はどうなっていますか。」

と、見えない所も聞いておきたかった。

「よくぞ聞いてくれました。これがコンデンサー型として最も他社に誇れる点なんです。
クォードの場合には固定極が剥き出しになっているので、バイアス電圧や増幅した音楽信号電圧の絶縁は振動膜と固定極の間にある空気の絶縁耐圧に依存しているわけです。従って、湿度の影響によって空気自体の絶縁耐圧が下がると放電現象が起きて、ノイズが発生してしまうんです。

そこで、我々はバイアス電圧など高電圧の絶縁を空気層に頼らずにすむよう、固定極全体に絶縁処理を施したんです。

この固定極は一枚一枚2万ボルトの耐圧検査をしていますので、万一固定極と振動膜が接触してもスパークを起こす心配はありません。

ほんとうに、ここまで来るのに苦労したんですよ。」

苦労したということを明るく楽しそうに語られてしまうと、こちらもつられて笑みが漏れてしまう。でも、これが趣味であるオーディオ製品を設計する人々には大切な事だと思う。作っている本人が喜びと生き甲斐を感じながら作り上げたもので
なければ、使う方にも大切なそれらの気持ちが伝わるはずがない。

でも、人情だけでは商品評価は出来ないぞ、と心を鬼にして次ぎの質問。

「クォードもマーチンローガンも、その固定極のパンチングメタルの穴の大きさは均一みたい。
振動板を前後に挟んでいるパンチングメタルは、振動板に対してアコースティック・インピーダンスとして一種の負荷となっているはずだね。とすれば、この穴の大きさによってユニットのエフゼロが変化しちゃうんじゃないかな。
これって問題にならないの。」

「川又さん、鋭いご指摘ですね。それって確かに問題になるんですよ。
特に、ウチの場合は3ウェイですから、帯域別に穴の大きさを変えているんです。トゥイーターが一番小さい穴で、ミドからウーファーへと大きくなっているんです。これも、手間暇かけてコンピューターを使ってシミュレーションを繰り返したり、厚みは同じで穴の大きさが何通りもあるパンチングメタルを何枚も作って、きちんとユニットとして組み立てて試聴を繰り返したんですから、明確な根拠として自信のある音に仕上げてきたつもりです。

エッ、他社はどうかって?  
理由は色々あるんでしょうが、皆さん同じ穴の大きさの一枚パネルを使ってますね。」

顔で楽しそうに話されると、よけいに自信として受け取れてしまうのが不思議な佐藤氏のキャラクターである。お若いのに大した説得力だ。

「トゥイーターをインライン状に上下1メートルに渡って配置してある割には、水平方向の指向性が狭く感じられたのはなぜ。」

と、続けた。

「それはトゥイーター自身の振動板の幅が音圧を求めた関係で広い事と、最大の原因はミッドレンジのユニットとの間隔が広過ぎることにあります。

このトゥイーターの幅も六種類くらい、長さも同程度の種類を試作して、全部聴きながら決定したバランスなんです。

アポジーのリボントゥイーターのように細くしたいのですが、コンデンサー型はリボン型とは違い振動膜の全周を固定しているため、あまり幅を狭くすると実際の面積比以上に可動部分が減ってしまい能率が低下してしまうんです。

だから、カット・アンド・トライで実際に作ってみないと結論が出なかったんです。

それから、ミッドレンジとの間隔も、設計仕様では改めてありますからご心
配なく。」

と佐藤氏の解答。

「振動板の面積に対して、アポジーのバッフルデザインは小さな面積だね。
それに、トゥイーターの内側にあるバッフル板の末端も細い上にラウンド加工されてるね。
高域の拡散がきれいになされるような配慮はどうだろうか。」

と、私も他社比較を交えながら、ここぞとばかりに質問を繰り返す。

「確かに望ましい処置です。しかし、川又さん。アポジーのパネル構造が強度的に如何なものかはご存じでしょう。私は、それを配慮した上でパネルのバッフル効果とのバランスを図りながら、最終的には最大限の強度を持たせるつもりです。」

と、勉強の跡が見えるスキのない解答だ。私も勉強という意味では、ひけをとらない数のコンポーネントを聴いてきたつもりだ。ハイ・スピードとして印象付けられる物もあったので。

「ダイナミック型の場合には当然ボイスコイルがあって、特異なインピーダンスカーブもあるよね。インピーダンスが周波数によって変化するということは、均一な電流を送りこむことが難しいということでパワーアンプの力の見せどころとなるわけだ。でも、スピーカーの電気的な特性はその動作原理において、正確な波形電送を行うためのハイスピード化につながるものがあると考えているんですが、いかがですか。」

「川又さんのおっしゃるハイスピードの概念というのは、判り易くていいですね。ダイナミック型は振動板の質量や箱の存在から、本当の意味でのトランジェントを探り出すのは大変な事だと思います。コンデンサー型の場合には、それらはないわけですから反応の速さは比較のしようがないくらいです。しかし、もっと簡単に言えば、コンデンサー型は音波を発生させるために電流を流す事を必要としない、という概念こそが大切なことなんです。振動膜上に均一に分布させた電荷に対して、固定極より昇圧した音声信号を与えることによって振動膜を駆動するコンデンサー型の原理は周知の所でしょうが、最も肝心なことは、コンデンサー型では電流を流してはいけないということです。

放電という電流が流れる現象が起きれば、音になるどころかトラブルの原因になるだけです。

一口にコンデンサー型の電気的特性を語ればこんな感じかな
でも、パワーアンプに優秀なものを望むという点ではダイナミック型と同じですね。」

淀みなくお話になる佐藤氏は、総合メーカーであるソニーの社員でありながら、今回のフル・コンデンサーに合わせるべきアンプには、自社製へのこだわりは持っていないようだ。

「スピーカーの位置や角度で音質表現が変化しやすいですね。言い替えれば、リスナーとスピーカー、そしてルームアコースティックを考慮した上でのセッティングが必要だと思うね。私が出掛けていってやるのももちろん可能だけれど、ソニーとしてはどう考えているのかな。」

と、実際に販売した場合の納品面で考えられる営業的な問いかけもした。

「ご指摘の通り、セッティングは非常にデリケートな問題です。数年先はわかりませんが、しばらくの間は我々の設計チームがお客様のご自宅までセッティングに伺う事が必要だと考えています。」

なるほどね。私の知りえる限りの技術的知識をもとに投げかけた質問に対しても佐藤氏の解答は、ご苦労と実践のもとに得たノウハウを根拠としており、お茶を濁す程度の回避的な解答ではなく明確で納得の行くものが即答でポンポン返って来る。

ジム・ティールのようなエンジニアが会社の代表者としてスポークスマンを兼ねているのとはひと味違って、まさに日本人設計者の本領発揮とも言うべき爽快さである。この日もあっという間に一時間以上も話し込んでしまい、つい足止めをしてしまったようだ。これから何処へいくのかと尋ねたら、

「これからS君の家へ行って、川又さんが売ったジェネシスVを聴きに行くん
ですよ。」

と、私のフロアーで同僚の道下氏と待合せをしてS氏のお宅へ向かっていった。
佐藤氏と旧知の間柄であるS氏も私のお得意様の一人であり、佐藤氏ご本人も当フ
ロアーでお買物をして頂いている関係なのである。夏休み返上でフル・コンデンサーの仕上げに取組み、週末の休みにも友人の自宅へ聴きに行く。なんと、勉強熱心なことかと感心してしまった。

確か、老子であったと思うのだが、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」と言う格言がある。佐藤氏の場合には、海外のハイエンドに対して「敵を知る」というよりは、お友達感覚で敵と仲良くなってしまうようだ。敵視するよりも、その方が相手の音という性格をよく理解出来るのもうなずける。

「私が付けた注文にも、こんな人が答えてくれるのだったら納得出来る。これから一体どんな素晴らしい音に仕上がるのだろうか。そして、それは私のソニー観を根底から変える作品となる事だろう。」

と、私の期待は更にふくらんでいく。意外にも、オーディオに深い根を持っていた
世界企業のソニー株式会社、その社風とも言うべき人材育成と30年に渡る基礎研究の成果として、間もなくソニー本来のオーディオとして開花しようとしている。
                                    【完】
http://www.dynamicaudio.jp/audio/5555/7f/oto/oto27.html

▲△▽▼

SS-R10
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥1,500,000(1台)
http://knisi2001.web.fc2.com/ss-r10.html

1996年に,ソニーが発売したスピーカーシステム。ソニーとしてはSS-GR1以来の高級スピーカーシステムで,ソニーのような大手メーカーとしてはきわめて珍しい(というより前例のない)エレクトロスタティック・スピーカーシステムでした。

エレクトロスタティック型は静電型,コンデンサー型などとも呼ばれ,超軽量な振動膜が静電応力によって振幅する構造となっており,分割振動が無く,低歪,平坦な位相,高速応答を実現できるなど,スピーカー技術者にとってもある意味理想の方式といわれています。高音域用ユニットとしては古くから製品が作られていましたが,全帯域をエレクトロスタティック型で再生するフルカバーシステムとなると,難しい面もあり,これまでもQUAD、 MARTIN LOGANなど,海外のメーカーを中心にいくつかのブランドに限られ,少数派となっていました。

そして,国内ではスタックスがすぐれた製品を作っていました。そんなエレクトロスタティック型(ソニー自身はコンデンサー型と称していました。)のフルカバーシステムに,大メーカーであるソニーが挑戦し,ユニットの基礎研究から数え,6年間の歳月をかけて研究し,完成させたのがSS-R10でした。

エレクトロスタティック型では,1ユニットでフルレンジをカバーすることも可能で,1ユニット構成のシステムが主流ですが,振幅の大きな低音域の再生に問題が生じたり,そうした低音域の再生に主眼を置くために高音域の再生にしわ寄せがくるという問題点がありました。特に,高域再生においては,平面波であるがゆえに,指向性がレーザー光線のようにビーム状になり左右のスピーカーの正面中央から少しでも聞き手がずれたり頭を動かすと音像が結ばなくなるなどの現象も大きな問題点としてありました。

そこで,SS-R10は,高域の指向性をビーム状から脱却させ,極力リスニングエリアを広げるために,3ウェイ構成をとっていました。ユニット構成は,上下に2ユニットずつ配した3ウェイの6ユニット構成に見えますが,実際には8ユニットという構成で,ウーファーに4ユニット,スコーカーに2ユニット,そして,トゥイーターに2ユニットとなっていました。ウーファーが4ユニット構成になっているのは,上下とも2組のユニットが組み合わされているためで,こうすることでウーファーとしてのドライブ能力を高め,量感のある低音を実現しようとしたものでした。


ユニットの振動膜は,家庭用ラップフィルムの1/10の重さしかない厚さ6μmで,振動膜の前後の空気層の実効的な質量と比較しても充分に軽く,全面駆動により際立ってすぐれた音の分解能を可能にしていました。

ユニット1枚の高さは500mmで共通となっており,ユニット1枚の幅は,ウーファーが270mm,スコーカーが70mm,トゥイーターが25mmで,一般的なユニットの3ウェイスピーカーシステムと水平方向の指向性パターンは近いものとなっていました。振動膜の表面には,導電性ポリマーを化学的に形成する加工がされており,

振動膜の母体は透明であるが,加工後も淡く色をまといつつも透明なものとなっていました。振動膜を挟む穴の開いた電極の母体は真鍮で,その表面を絶縁のためのエポキシが包んだ形になっていました。

エレクトロスタティック型スピーカーには,エンクロージャーが必要でないため,エンクロージャーの影響を受けず原理的に素直な音質が実現できます。反面,ほとんどただのパネルという形状のため,強度がとれにくく,たわみが生じる可能性があったり,振動の基点の強度が弱くなるなどの弱点がありました。

そこで,SS-R10ではパネルの強度を飛躍的に高めていました。パネル部は,米松を6センチ厚の合板にしたものを使用し,ねじりやたわみに強いきわめて強固なものとし,聴感上のS/N比も大きく上がっていました。

6cmという厚みは,ユニットに厚みに対してかなりの厚みになるため,開口部の凹みが大きくなり,空洞の共振等,音の拡がりへの影響の可能性も出てくるため,角を滑らかに削り取るなど念入りに加工されていました。

また,フレームにあたる米松製パネルは,響きの良さから選ばれたということでした。


エレクトロスタティック型スピーカーの発音原理は,電極と振動膜とにバイアス電圧をかけ,そのうえで電極にトランスによって昇圧された音楽信号を流すと,電極の電圧が変化し,振動膜を動かすことになるというもので振動膜の前後にある電極が,振動膜を挟んでプッシュプル動作で振動膜を駆動することで正確で繊細な音の再生が可能となっていました。2枚の電極に振動膜が挟まれた状態が,コンデンサーの構造そのものであることから,日本ではコンデンサー型とも呼ばれ,ソニー自身もSS-R10をコンデンサー型スピーカーシステムと称していました。

こうした動作原理であるため,エレクトロスタティック型は電源が必要で,本体後部についたボックスの内部には,電源トランス,保護回路,バイアス回路,信号トランスが内蔵されていました。電源トランスは,ウーファー用,スコーカー用,トゥイーター用独立で3個搭載されており,歪み感が少ないためついパワーを入れがちになりやすいエレクトロスタティック型ゆえ,トゥイーターにのみ保護回路が内蔵されていました。フロント面下部の通常緑のLEDが保護回路が動作すると赤に変わるようになっていました。バイアス回路は,ウーファー,スコーカー,トゥイーター,それぞれ独立で,スコーカー用,トゥイーター用は基板を共有し,ウーファー用は専用基板になっていました。音楽信号を昇圧する信号トランスも容量的に充分余裕を持った大型のものがそれぞれ独立で搭載されていました。基板はガラスエポキシ基板で,各部品を付けた後,信号トランスも含めてエポキシ樹脂を充填して密閉した構造になっていました。これは高電圧を扱う回路やパーツをホコリや湿気から隔離し防振するためでした。


ネットワーク回路は,高電圧部の影響を排除するために,本体とは別ボックスとされていました。パーツは高品質なものが厳選され,負荷抵抗は耐入力を上げるため大型のものが採用され,フィルムコンデンサーも大容量のものが採用されるなど,各パーツ類はいきおい大型のものになり,相互干渉させないように余裕をもって配置するため,ネットワークボックスも非常に大きなものとなっていました。ネットワークボックスと本体とを接続する付属ケーブルは,接続コネクターに,PA用のパワーアンプとスピーカーの接続に使用されるスピコンが使用され,信頼性を高めていました。

以上のように,SS-R10は,ソニー初の,そして唯一のエレクトロスタティック型のフルカバーシステムとして, 高い完成度を実現していました。それまで存在していた同方式のスピーカーシステムに比べ,正攻法で高い技術レベルをもって完成したシステムとなっていました。それまでのものと比べ使いやすさは高められていたとはいえ,音圧レベルが80dB/W/mと低く,パワーアンプもある程度以上のものが必要とされ,ドライブ感や迫力を求めると難しさはあるものの,晴れ晴れと澄みきった音場感や繊細で歪み感のない音は独自の魅力をもつもので,こうしたスピーカーを大メーカーであるソニーが作ったこともある意味驚異的であったと思います。

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

名演奏に接したときの感動にも似た心の解放感。
フルコンデンサー型,SS-R10。
あくまでも上質のリアリティを求めた
細部にわたる入念な作り込みが,
その存在を忘れさせるような
自然な音場空間を生み出します。


◎全帯域でコンデンサー型ユニットを使用した
 3ウェイ構成のスピーカーシステム

◎2重構造のウーファーにより
 低域も量感豊かに再現できます

◎極薄の振動膜が生み出す優れた音の分解能

◎キャビネット・レスによる素直な音質

◎細部にわたって高音質優先設計
http://knisi2001.web.fc2.com/ss-r10.html

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2011年 07月 08日
DVDシアターとハイエンドオーディオ
https://freeuniv.exblog.jp/15083176/


コンデンサー型スピーカーとは、静電力を利用して、振動板を駆動するスピーカーで静電型スピーカーとも呼ばれている。2枚の振動板を 向かい合わせ直流電圧をかけてやると極同士がひきつけあう。一方を堅い物質、もう一方を薄い柔らかい物質(振動板)にする。

ここにアンプからの音声電流を 流すとスピーカーの振動板として機能する。 この形式をシングル型と呼ばれるが、固定板と振動板の間は極めて薄く大きな振れ幅はとれないことからツィーターとしてしか利用できない。

実際のコンデンサースピーカーは2枚の固定極の間に振動板をはさむ形のタイプのものが主流である。この方式をプッシュプル型と呼ぶが、こちらのほうが大きな振れ幅をとれるので、フルレンジ・ウーファーとして利用が可能になる。

わたしは、これをWプッシュにして効率を稼ぎサッカーボールのような球面体の無指向性の点音源と、天井・壁・床の六面全体に平面パネルのスピーカーを配置したオーディをルームを作ったことがあります、

その素晴らしさは言葉で表現するのは難しい、だが実物をお聴きになれば驚愕されることは間違いないと思います。残念なことに震災でなくしてしまったのですが、最近、それを復活してみたいと思い有志を募って、ハートクイエク 仙台 BASE CAMPで音楽を聞くアメニティーとしてコンデンサー型スピーカーを作るプロジェクトを立ち上げたいと思います。

完成したモノをお聴きになれば、大面積のスーパーウーファーから重低音がふわっと圧力として感じる感覚、歪の少ない中高音、感動すること間違いなし。16Hzから20kヘルツを超える周波数範囲を二つの点音源のスピーカーと大規模な平面音源で構成するコンサートホールが出来上がります。


市販されていた製品

QUAD ESL63

昔はコンデンサ型スピーカーも多く市販されていたようだが現在はほとんどなく、据え置き型スピーカーとしてはイギリスのQUAD(クォード)が有名です。


ユニットの仕様

1.形式:エレクトロスタティック(静電型)スピーカー:中高域エレメント×2/ベースエレメント×2許容入力:55V

2.出力音圧レベル:86dB/2.83Vrms

3.定格インピーダンス:8Ω

4.外形寸法:670(W)×940(H)×315(D)mm

5.重量:20.5kg


視聴してみたが能率が低い(このサイズでで86dbしかない)アンプの出力が小さいのかと思うほどである。これはもしかしたらコンデンサー型に特有のバイアス電源の問題かもしれない、もっと高い電圧にしてはどうだろうか。ユニットパネルに時間差をつけて電気信号を流すことで、点音源的なものを狙っていると書いてあったが、やはり平面波的な音の出方である。音は全体のバランスとしては低域が弱く感じ、ジャズやポップスより、弦楽器を中心としたクラシック系の室内楽が得意だと感じた。魅力的な製品ではあったが静電型は導電方に較べて迫力に欠ける、もう少し大出力の出せるものが必要だと感じました。このほかにもマーチンローガンなどいくつかのメーカーがありましたが何れも似たような性能でした。

最初に手に入れたのがSTAXのELS8X

https://freeuniv.exblog.jp/iv/detail/?s=15083176&i=201107%2F08%2F25%2Fe0197725_1552924.jpg


日本のSTAXも昔は多くの据え置き型コンデンサー型スピーカーをだしていましたが、現在はヘッドフォン専用メーカーとなったようです。
このスピーカーではもつぱら、室内楽を中心に聞いていましたが、低音不足のためピアノなど100Hz以下の音を再生するにはもっと大きな振動版が必要だと感じウーハーをつくってみようと思ったのがきっかけです。電極にはパンチメタルを使い、振動幕には東レのルミラーという10μm厚さのポリエステルフィルムを使用して幅900mm高さ1800mmの平面パネルを8枚製作し両脇に配置して利用しました。この効果は絶大でした、一般に静電式の物は低音が出ないと通説になっていますが,そのようなことはありません、それなりの設計をすれば、目的に見合ったものが作ることが出来ます。その後パネルの枚数が次第に増えて天井周辺の壁総てから音が出るような、残教室になり、コンサートホールのデーターを基にDSPを利用してディレーをかけて効果を加えることにしました。

さらにバイアス用の高圧電源を5000Vにしたり、駆動用にアンプに高耐圧のオペアンプ(PA-85)などを利用して直流から再生できるものにしました。そして、最後に作ったのがサッカーボールと同じ5角形の組み合わせでステレオ用の点音源として2個を製作したシステムが完成しました。

これによって、満足できるシステムと成り1990年にスタートしたフルスクラッチのオーディオシステムが出来上がり、いろんな人たちが来ては素晴らしいと感動してくれました、友人の中にはCDの販売をしている大型店舗で試聴用に設置したり、建設会社に勤めている研究者からは会議室のスピーカーとして利用したいなどの申し入れなどがありました。このようにして完成したシステムは市販品とはまるで異なるものが作れるということが実証できました。結果としてSTAXのELS8Xはお役ごめんとなりました。

その後、SONYから SS-R10という型番で、受注生産品(左右1セット)¥3,000,000(2台1組)、1996年頃まで販売していた記憶があります。既に自作のものが格段に優れたものであったので興味の対象にはなりませんでしたが価格の凄さに驚きました、そしてある日シャープの研究所長がやってきて技術を公開してほしいということから駆動用のアンプを作ってもらったりいろんな形で協力した時代がありました。

https://freeuniv.exblog.jp/iv/detail/?s=15083176&i=201107%2F08%2F25%2Fe0197725_15524667.jpg


SS-R10の概略はフルコンデンサー型を採用したRシリーズのフロア型スピーカーシステム。SS-R10は3ウェイ設計となっており、全帯域にコンデンサー型ユニットを採用しています。このコンデンサー型ユニットには、ソニーのスピーカー技術の他に、コンデンサー型マイクロホンで培った薄膜技術やテレビの高電圧での高度な絶縁技術が投入されています。

セットの表面から見ると、ウーファー、ミッドレンジ、トゥイーターそれぞれ上下に2ユニットずつ使用した6ユニット構成に見えますが、実際には8ユニット 構成となっており、ウーファーは上下とも2組のユニットが重ね合わされた2重構造4ユニットとなっています。これにより、ウーファーとしてのドライブ能力 を高め、コンデンサー型では困難であった量感豊かな低域を実現しています。低域には270×570mmのコンデンサー型ウーファーを4ユニット、中域には70×500mmのコンデンサー型ミッドレンジを2ユニット、高域には25×500mmのコンデンサー型トゥイーターを2ユニット搭載しています。これらのユニットには家庭用ラップの約1/10の重さしかない6μm(6/1,000mm)の振動膜を使用しています。そのため、スピーカー動作中の前後 の空気層の実効的な質量と比較しても極めて軽く、しかも全面が駆動されため際立って優れた音の分解能を持っています。コンデンサー型で必要な昇圧用トランスには、容量的に十二分に余裕を持たせた大型で高音質なものを採用しています。さらに、電気的に信頼性を上げ、さらに振動に対しても強くするため、バイアス回路とともにエポキシ樹脂で封入されています。また、ネットワーク部も高音質部品で構成しただけでなく、本体とは別ボックスにすうrことで振動防止と相互の電磁的な影響を遮断しています。

コンデンサースピーカーは典型的な全面駆動型スピーカーで、動電型のような局在駆動型に比べ振動板に剛性を必要とせず、強度 さえ保てれば、いくらでも薄くて軽い膜が振動板に使えるので、分割振動も起こらずいわば理想的なスピーカーとなる可能性を秘めている。が、しかし、


(1) 高音で鋭い指向性が生じる。

(2) 背面圧の回り込みによる低音の減衰を防ぐのが難しい。

(3) パルシブな低音によって生じる反作用力による有害な振動が生じる

(4) 低音で振幅が大きくなり、振動板が極板に近づくと非直線性が大きくなり歪みが生じる。

(5) 我が国のように湿度が高い環境ではスパーク放電により振動板膜が損傷しやすい。

(6) これらの欠点を克服しようとするとかなり高価になる。


といった、致命的とも言える欠陥があるのであまり普及してない。

しかし、一度その音を聴くと後へは戻れないという人もいるようで、中高音域の音のクリアさは抜群との評判である。私自身、その昔、スタックスのELS-8Xを使ったことがあり、そのクリアな音に魅せられ、その後この欠陥を克服したシステムとして完成させました。
https://freeuniv.exblog.jp/15083176/


 

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