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経済思想としてのアベノミクス論  「量的・質的金融緩和」のドル円への影響
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/475.html
投稿者 eco 日時 2013 年 4 月 06 日 14:25:21: .WIEmPirTezGQ
 

(回答先: インフレ目標政策は万能特効薬か? 通貨供給はマネーストックやインフレに直結しない 日銀の金融緩和意欲は通貨の供給量で判断 投稿者 eco 日時 2013 年 4 月 05 日 02:23:59)

 
溜池通信vol.516 Biweekly Newsletter April 5, 2013 双日総合研究所 吉崎達彦

 経済思想としてのアベノミクス論 1p
<今週の”The Economist”誌から>
”Can India become a great power?” 「インドは超大国になれるか」 7p
<From the Editor> 日銀のレジームチェンジ 8p
**********************************************************************************

 経済思想としてのアベノミクス論

アベノミクス論争はなおも活況を呈しています。筆者も先週3月29日のテレビ朝日『朝まで生テレビ〜激論!アベノミクスは日本を救うか?!』に出演したり、文春新書『アベノミクス大論争』や日経プレミアPLUS『日本経済の行方』1に登場したりしております。
本号では、普段あまり触れられない側面、経済思想としてのアベノミクス論に光を当ててみました。金融緩和という「ハト派」の経済政策が、外交・安保では「タカ派」と呼ばれる安倍政権で行われている。日本における経済政策の「保守―リベラル」の構図は、海外から見るとややユニークなのですが、これを説明するには尐し過去に戻ってみる必要がありそうです。
●温故知新〜アベノミクスの源流を問う
以下は過去に日経に掲載された評論記事である。どこが変だか、お分かりだろうか。
コラム@.アベノミクス再起動を 「改革と成長」志高く
アベノミクスがめざすべきは志の高い経済政策だろう。グローバル経済の恩恵を受けるだけでなく、その規範となる経済こそ実現しなければならない。
コラムA.買われぬアベノミクス
円安はなおも続き、輸出への恩恵を手放しで喜べる段階ではなくなってきた。迫力を欠く「アベノミクス」に内外の投資家が愛想を尽かせば、日本の地盤沈下が進みかねない。
コラムB.アベノミクス成功の鍵
安倍政権の経済政策は成長路線である。これは内閣の布陣から明らかだ。
1 http://honto.jp/netstore/pd-book_25576556.html 「スマホ世代のマガジン型新書」だそうです。
2
これらの見出しは、今朝の朝刊に載っていたとしても異和感なく受け止められるかもしれない。しかるに上記の3本の記事は、今から6〜7年も前に書かれたものである。それぞれの掲載日は以下の通り。
@ 日本経済新聞朝刊2006年12月25日(核心=論説主幹 岡部直明)
A 日経金融新聞2007年6月20日(ベンチマーク=編集委員 菅野幹雄)
B 日経金融新聞2006年10月31日(複眼独眼=匿名コラム)
多くの日経読者にとって、これらの記事は完全に忘却の彼方であろう。しかるに、第1次安倍内閣においても「アベノミクス」という言葉は使われていたのである。
もちろん、ここで使われている言葉の意味は現在のそれとは微妙に違う。上記@、Aの記事の中で、当時の大田弘子経済財政担当相がそれぞれ下記のように語っている。
「これまでは日本経済の負の遺産を取り除く改革だったが、これからは新しい可能性を切り開くための改革だ」
「改革はやはり着手して十年くらいかかる。(小泉時代に)前半の五年が終わり、後半の五年が始まる。難しいものばかりが残っています」
つまりこのときの「アベノミクス」とは、小泉改革を継承する存在であった。すなわち、公共投資を切り詰めて財政支出を減らし、規制緩和を進めて成長力を高める「構造改革」路線を意味していた。当時の日経記事をさらに検索してみると、どうやら中川秀直幹事長がこの言葉を売り込んでいた痕跡がある2。しかるに今のように定着することはなく、読者の記憶からも抜け落ちていったのであろう。
この時期の「アベノミクス」には、金融政策はほとんど含まれていない。例えば上記@の記事は、アベノミクスが目指すべき方向として「税制改革」「財政再建」とともに、「金融政策は日銀に任せる」ことを挙げている。その上で、「独立した中央銀行を持つことは成熟した民主主義国の基本である。政治の介入は信用を低下させる」と指摘している。良くも悪くも、当時の経済論壇における多数派の意見であったと言えるだろう。
ただし日本経済はその後、2008年に国際金融危機の荒波に呑みこまれてしまうし、2009年には民主党政権が誕生する。2011年には東日本大震災もあった。この間に構造改革は後戻りを余儀なくされ、それと同時に「骨太の方針」や「経済財政諮問会議」などの政策ツールも表舞台から姿を消した。突如として2012年秋に大復活を遂げた「アベノミクス」には、こんなプロローグが隠れていたのである。
2 日経金融新聞「安倍政権のツキ試す市場」(2006年10月13日)など。
3
●経済政策〜「豪華三点セット」の誘惑
かくして「アベノミクス」という言葉は、中身を変えて2012年秋の日経紙上に再登場することになる。日経テレコンで確認したところ、「アベノミクス」を大きく見出しに使った記事の端緒は11月26日朝刊の「核心」欄で、「アベノミクスいま再び 金融緩和だけが売り物か」(滝田洋一編集委員)である。
同記事によれば、自民党は安倍氏が総裁に就く前の8月末の「日本経済再生プラン」で既に「政府・日銀の物価目標(2%程度)協定の締結」を盛り込んでいるし、民主党の前原誠司経済財政担当相が日銀総裁と結んだ合意文書にも同様の発想がある。さらに、日本維新の会の「維新八策」の中には、手っ取り早い成長促進策として金融政策が前面に押し出されている。総選挙の公示日を翌週に控えて、「保守勢力の結節点は金融緩和」というのが同コラムの見立てであった。
ところが2012年末に安倍政権が誕生してからは、「アベノミクス=三本の矢」という説明がなされるようになる。ここで財政政策と成長戦略が加わるのである。結果としてアベノミクスとは、狭義ではデフレ脱却を目指す大胆な金融政策であるが、広義では安倍政権の経済政策全般を指し、@大胆な金融政策、A機動的な財政政策、B民間投資を誘発する成長戦略、というパッケージを意味することとなる。
まとめると、以下の3通りのアベノミクスが存在することになる。
 アベノミクス’06:小泉政権を継承する構造改革路線
 アベノミクス’12:大胆な金融緩和
 アベノミクス’13:三本の矢(金融緩和、財政出動、成長戦略)
思うに「三本の矢」というのは、批判を浴びにくい上手な表現である。第一生命経済研究所の熊野英生氏は、「アベノミクスは和洋中・豪華ディナーセットのようなもの。誰でも好みの料理がひとつは入っているから反論しにくい」と評している。なるほど、リフレ派は日本銀行のレジームチェンジに拍手を送り、ケインジアンは補正予算の成立に満足し、新古典派は成長戦略が入っていることで自らを納得させている。世にいうアベノミクス論争とは、ほとんどがリフレ政策の是非をめぐるものであって、この「三本の矢」が間違っているという声は筆者も寡聞にして聞いたことがない。
他方、こんな風に経済政策を「ごった煮」にするのがいいことなのか、という素朴な疑問が浮かんでも不思議はない。お手軽なイチャモンをつけるならば、「アベノミクスには理念がない」という便利な常套句がある。安倍首相ご自身の思考の変化を「ぶれた」と批判するのは適当ではあるまいが、意味が3通りもある「アベノミクス」という言葉に経済思想としての筋が通っているとは言い難いであろう。
4
●経済思想〜保守とリベラルの交錯
この経済思想の問題は、今までほとんど指摘されてこなかった。しかるに改めて考えてみれば奇妙なことではないだろうか。外交・安保政策ではタカ派と呼ばれる安倍政権が、なぜ経済・金融政策ではハト派となるのだろう。
例えばアメリカでは、ポール・クルーグマン教授のようなリベラル派の経済学者がアベノミクスを絶賛している。考えようによっては、不思議な現象である。クルーグマン教授が、去る1月13日にニューヨークタイムズ紙に寄稿した”Japan Steps out”(一歩抜け出した日本)というコラムでは、安倍首相は”dismal orthodoxy”(陰鬱なる正統派経済学)を打ち破る者として評価されている3。
その上で、”Now, people who know something about Japanese politics warn me not to think of Mr. Abe as a good guy. His foreign policy, they tell me, is very bad,”(日本の政治に詳しい連中は、安倍氏をいい奴だと思うなよ、と警告してくれる)と付言している。察するにリベラル派のお仲間がやってきて、「アベはタカ派だぞ」と囁いてくれたらしい。ただし”But none of that may matter.”(それとこれとは別)というのが同教授の結論となっている。
党派色が強まっている今のアメリカでは、どうしてもこの手のイデオロギー的な視点がつきまとう。なぜなら超保守派のティーパーティ(2012年の共和党大統領候補者で言えばロン・ポール氏)などが唱える金融政策は、「米連銀の廃止」や「金本位制への回帰」である。量的緩和政策や、それを主導するバーナンキ議長は厳しく批判されている。
なんとなれば、それは政府が必要のない人たちまで助けることを意味するからだ。それは「小さな政府」の理想に反するし、国民の自立心を失わせる恐れがある。さらに言えば、彼らはややこしい政策自体を嫌う。経済は自然に任せておくのが一番だというのがアメリカにおける保守思想である。安倍首相が大胆な金融緩和を唱えていることは、彼らの目には「アベの保守主義はいかがわしい」と映っているかもしれない。
逆にクルーグマン教授のような純正リベラル派からすれば、失業を解決する機会があるというのに、政府がそれをしないのは許せないということになる。ケインズ曰く“In the long run, we are all dead.”(長期的に言えば、われわれは皆死んでしまう)。だからこそ、目の前の経済をよくするために全力を尽くす必要があり、そうでないなら政治家やエコノミストは不要だということになる。
それではアベノミクスはリベラルな経済政策なのだろうか。ところが安倍内閣は、生活保護の給付水準を切り下げる構えである。これは「最初に自助、次に共助、最後に公助」という自民党の理念に基づくものであり、明らかにリベラルな発想ではない。というより、これを聞いたらクルーグマン先生が目を白黒させるかもしれない。
3 http://www.nytimes.com/2013/01/14/opinion/krugman-japan-steps-out.html
5
●DNA〜歴史的な経緯による「ねじれ」
実は日米の経済政策の発想には、根本部分に「ねじれ」があるらしいのだ。すなわちわが国では、保守政党はかならずしも「小さな政府」ではなく、拡張的な経済政策を採ることが多かった。自民党も小泉政権以前は、基本的にケインズ政策の党であった。逆に革新政党の方が、緊縮的な財政金融政策を是とする傾向がある。
このことは戦前の政友会と民政党の時代に源流を求めることができる。戦前の二大政党は以下のような対比があったという4。
 政友会:国権派、皇室中心主義〜地主など地方名望家が基盤〜積極財政、対中強硬策
(古くて腐敗気味のイメージ)→自民党の前身?
 民政党:民権派、議会中心主義〜都市ブルジョアジーが基盤〜緊縮財政、対中不干渉
(新しくて清潔なイメージ)→民主党の前身?
民政党は浜口雄幸首相の時に金解禁に踏み切り、深刻なデフレを招いてしまった。そして1931年(昭和6年)末に政権交代が行われる。新たに登場した政友会の犬養内閣は、高橋是清を蔵相に指名する。ここから「積極財政、国債の日銀引き受け、金解禁停止(円安容認)」という「昭和版・三本の矢」=高橋財政が始まるのである。
あらためて経済思想の図式に当てはめると、リベラルな民政党が緊縮政策に傾きがちで、保守の政友会が拡大気味の経済政策を得意としていた。そういう伝統が日本政治のDNAに流れていて、今回もそれが発露されたと考えると分かりやすい。民政党は官僚終身者が多く、理屈っぽいところがあった。金解禁政策などは典型的な理屈倒れであった。逆に政友会は党人派が多くて柔軟であった。同時にプロ・ビジネス、もしくは財界寄りで実体経済を身近に感じるところがあったから、結果を出すためには何でもやった。確かに高橋是清翁が今日生きていれば、「アベノミクスなんて当り前じゃないか」と言いそうである。
要するに日本の経済政策の対立軸は、米国式の保守対リベラルとは尐々違っている。おそらく右が現実的で左が理想的という、戦前の二大政党のエートスが今も受け継がれているのであろう。
そうだとしたら、「アベノミクス」に理念や経済思想を求めることはあまり意味がない。わが国の保守政党の経済政策は、高橋財政の昔から良く言えば現実主義、悪く言えばご都合主義であった。金融政策の議論は理屈っぽく、得てして神学論争の迷宮に立ち入ってしまうのだが、安倍政権が目的としているのは正しい経済理論ではなく、強い日本経済であろう。そのように考えると、「アベノミクス」という言葉につきまとう怪しげなイメージがかなり払拭されるのではないだろうか。
4井上寿一学習院大学教授『政友会と民政党』(中公新書)を参照。
6
●実体経済〜企業マインドはなおも慎重
さて、アベノミクス効果にマーケットは反応し、消費者の気分も幾分明るくなった。問題は実体経済の動きである。これについては、3月29日の鉱工業生産と、4月1日の日銀短観を見る限り、あまり楽観しない方がよさそうに思える。1-3月期の日本経済は確かによかったが、4-6月期も順調に行けるかというと、尐し慎重に見ておくべきだろう。
* 2月の鉱工業生産は、もともと前月比+5.3%の予測であったところが、ふたを開けてみたら▲0.1%だった。このところ、生産予測調査が何度も下に外れている。昨年12月も事前の予測は+6.7%だったのに、結果は+2.5%だった。1月の予測は+2.6%だったけれど、確報では+0.3%となっている。統計を作成する経済産業省が前のめりになっているのか、あるいは調査を受ける製造業の現場が楽観的になり過ぎているのか。
* データの細部を見ると、出荷は増えているし、在庫も順調に減っている。ちなみに3月予測は+1.0で、4月予測は+0.6%である。何とかこのまま生産が改善し、実体経済も順調に回復してもらいたい。ただし、円安でも2月の実質輸出は良くなかったし、1月の機械受注も悪かったから、足元の設備投資はあまり動いていない様子である。 * 3月日銀短観は、新聞の見出し的には「製造業景況感が改善」「大企業3四半期ぶり」「円高修正・株高で」(以上、4月1日の日経新聞夕刊から)であった。しかし、@業況判断の数値は市場コンセンサスよりも低く、A中堅・中小の製造業にいたっては前回調査よりも悪化しており、B設備投資計画は全産業で前年比マイナスである。手離しで歓迎できるような内容ではなかった。
* そんな中で、大企業・製造業の想定為替レートが85.22円になっている。円高に泣かされてきた経営者としては、今の90円台のレートは素直に信じがたいのであろう。それでも経常利益予想はかなり高く、このまま円安が定着すればさらに上方修正もあり得る。企業マインドはまだおっかなびっくり、ということになのであろう。
こうなると、いちばん頼りになるのは公共投資である。補正予算で積んだ10兆円の予算のうち、2012年度内に使ったのは1兆円のみだそうなので、9兆円を使い残して新年度を迎えている。2013年度の景気を支える虎の子の9兆円と言えるかもしれない。
「なんだ、結局は財政支出かよ」と思うと、アベノミクスの値打ちが下がるような気がするかもしれない。しかし、これこそ「三本の矢」の強みであり、節操のない経済思想のご利益というものだ。経営者のものの見方は、マーケットや消費者よりも慎重である。企業マインドが本当に改善して、実体経済を浮揚していくかどうか。アベノミクスは、とりあえず日本経済の「気分」は変えたが、「実態」の変化はまだまだこれからというのが、2013年度第1週時点の評価となるだろう。


7
<今週の”The Economist”誌から>
”Can India become a great power?” Cover story
「インドは超大国になれるか?」 March 30th 2013

* 新興国の右代表とされる中国とインド。”The Economist”誌は、インドが超大国になるには戦略思考が足りないという。ちょっと「褒め殺し」のようにも見える論説です。
<要約>
米国とのG2論は時期尚早であったにせよ、中国が超大国の仲間入りすることを疑う者はいない。インドもその同類として語られる。10億を超える人口、経済の可能性、貿易量、そして軍事力まで。嫌々ながらではあるが、国連安保理の5か国はインドの常任理事国入りを支持している。しかし中国台頭は所与として、インドのそれは未知数ではないか。
インドは超大国として、より多くのことができるはず。経済力で中国に务るとはいえ、ソフトパワーに優れる。民主主義、法の支配と人権にコミットし、テロとの戦いでも最前線にいる。海外への人材流出も多い。多くの点で西側的価値を共有している。自信に満ち、文化も豊かだ。常任理事国になれば、圧政を弁護したり擁護したりしないだろう。中国やロシアと違って血にまみれていない。グローバルコモンズを防衛する絶好の位置にある。
ところがインドの潜在力は顕在化していない。安全保障政策を追求する文化を欠いているのだ。軍事予算は急拡大し、2020年には世界第4位となる見込みだが、インドの政治家や官僚は戦略を示さない。外交官の数は人口500万人のシンガポールと同じである。軍隊の指揮系統は政界や官界とはまったく別物で、国防省は慢性的に人材不足である。
国内の経済開発を優先するために、仕方がない面はある。賢明にも軍を政治から遠ざけてもいる。しかるにネルー主義の残滓がある。国内では社会主義路線を放棄したのに、外交では独立後66年もたつのに、西側は信用できないと非同盟主義を貫いている。
パキスタンや中国との限定的な戦闘はあっても、慎重に対応してきた。古い領土問題はあっても、火を点けることは稀だ。トラブルを求めないのがインドの良いところである。
隣国パキスタンは不安定で、核を持ち、テロもあり、軍も不穏である。しかるにインド政府の対応は定まらない。先方が電撃作戦を計画しているのに、貿易量増大による関係改善を望んでいる。カシミール問題を鎮め、パキスタン文民政府を支援すべきだ。先方は政権移行期だが、シン首相は次期指導者を訪問してこのプロセスを支援してはどうだろう。
軍拡を進め、インド洋をも望む中国は別種の脅威である。中国の意図は不明確だが、他の隣国と同様に神経をとがらせるべきだろう。インドはまたエネルギー供給にも脆弱だ。
インドは地域における自らの進路を形成すべきである。戦略を真剣に扱い、外交スタッフを3倍増し、政治家と協働できるプロの防衛相と統幕スタッフが必要だ。国営の防衛産業に外資と民間企業を参入させることも。さらに充実した海軍を擁し、世界で最も混雑する航路の海上安全の守護者となり、超大国としての責任を担う意思を示すべきだ。
8
何より時代遅れの非同盟思想を放棄すべきである。2005年の米印原子力協定以来、インドは西側を向いていた。国連で米国に同調し、イラン産原油を買わず、アフガンでNATOに協力した。ただしこっそりと。インドが転換を明示し、西側の同盟に参加すれば、地域にも世界にも良いだろう。アジアで民主主義を広げ、中国に国際基準を守らせられる。中国を敵に回すかもしれないが、自国の短期的利益を越えて考えるのが超大国である。
インドが超大国になるのは疑問の余地がない。問題はその気持ちがあるかどうかだ。


<From the Editor> 日銀のレジームチェンジ

昨日(4月4日)発表された黒田・日銀新体制による金融政策の大転換に対し、とりあえずの感想を書いておきます。
第1に「恰好が良い」。
3月20日の総裁就任後、最初の金融政策決定会合で市場の予測を大きく上回る「異次元の金融緩和策」を提示。まさに「白(川)から黒(田)へ」のレジームチェンジ。市場の期待値を上げて、なおかつサプライズを与えました。リーダーはまさにかくあるべし。この鮮やかな手際は、髭のないバーナンキか、それとも頭髪のあるバーナンキか。
第2に「思い切りが良い」。
戦力の逐次投入を避けるために、任期の冒頭からあらゆる手段を投入。しかも「2年以内に2%の物価上昇」を実現するために、「マネタリーベースを2年で倍増」「国債のデュレーションも2倍に」という目標と手段のわかりやすさ。市場とのコミュニケーション能力では「白よりも黒」に軍配が上がるでしょう。
第3に「段取りが良い」。
9人の政策委員会は今回の決定をほとんど満票で支持。白川総裁時代と同じ6人の審議委員も一部を除いて賛成に回り、黒田新総裁は委員会内のリーダーシップを確立した形。(TPP交渉参加もそうでしたが、安倍政権はこの手の段取りの良さが目立つ。民主党政権の手際の悪さにイライラした3年間の後では、これがまことに心地よく感じられます)。
ということで、「満額回答」と評するほかありません。とはいえ、もともとの金融緩和に対する懐疑派の一人としては、以下のような繰り言も付け加えたくなるところ。上で持ち上げた3点それぞれについての懸念です。
第1に、日銀総裁の任期は5年もある。今日の時点のカリスマを果たして向こう5年間続けられるのか。「始め良ければすべてよし」であればいいのだが。
第2に、リーマンショックや東日本大震災の経験から言うと、「いざというとき」の手段が残っていないことに対して不安が残る。
第3に、記者会見時のフリップまで用意していたのは、事前準備の行き過ぎかもしれない。つまり金融政策決定会合が形骸化(1回目から?)していたのではないか。
9
以上は「ないものねだり」というものでありましょう。ということで、このレジームチェンジが成功すること(この問題に関する過去の筆者の見解が間違っていたこと)を切に祈るものであります。
* 次号は4月19日(金)にお届けする予定です。
http://www.sojitz-soken.com/jp/send/tameike/pdf/tame516.pdf

 


 


BTMU FX Weekly Global Markets Research  

1.今週のトピックス
(1)「量的・質的金融緩和」のドル円への影響と今後のポイント

量的緩和の効果

日本銀行は、3日から4日にかけ、黒田総裁の下では初となる政策委員
会・金融政策決定会合を開催。消費者物価の前年比上昇率2%の物価安定
の目標を、2年程度を念頭に早期に実現するため、「量的・質的金融緩和
の導入」を決定した。既に既報の通り、「資産買入等の基金」を通常の国
債買い入れ枠に吸収するなど、大幅な制度変更を行った。また、買い入れ
る国債の残存年限も、全年限を対象とした。この結果、平均残存期間は、
現状の「3年弱」から「7年程度」へと大幅な延伸が図られる。そのほか、
ETF、REIT の買い入れも拡大するとされており、文字通り、量的、質的
な緩和の強化を行った。今回の決定内容は、レジームチェンジの程度や拡
大される金額のいずれも、市場の予想を大幅に超えていた。発表直前まで、
92 円台後半で推移していたドル円は、翌政策発表直後より急騰し、翌5
日に一時「97円台」を回復している。
こうしたなか、円安期待が高まっている。BTMU FX Monthly4月号(3
月31日発行)では、第2四半期(4〜6月)の予想レンジとして、「90〜
100円」を掲げているが、現時点では、以下の2点を理由に修整を見送る。
まず、当方の想定よりもやや早いタイミングで、米国の経済指標が強弱ま
ちまちとなりつつあり、為替市場におけるドル高の勢いが鈍っていること
だ。次に、強烈な金融緩和に対する「円安」の初期反応も、次第に落ち着
きを取り戻すと考えられることだ。
ところで、足もとでは株価の大幅な上昇を促すなど、今回の「量的・質
的金融緩和」は好意的に受け止められている。ドル円にとっても、強い下
支えとなることが期待されよう。ただ、より長い視点では、以下の3点に
留意が必要となってくるだろう。
まず、中央銀行の国債買い入れに一定の歯止めをかける目的の「銀行券
ルール」が、一時適用停止とされた点だ。昨秋時点で、既に日銀が保有す
る長期国債の残高が、銀行券残高を上回っており、形骸化していたともさ
れる。ただ、従来以上に、長期国債の買い入れが財政ファイナンスではな
いという、継続的な説明が必要となろう。
次に、いずれ日銀の資産劣化を警戒する声が、強まるかも知れない。今
回は、ETFやREITといったリスク資産の拡大を図るほか、保有国債の平
均残存年限も前述の通り、大幅な長期化を行うためだ。

2
さらに、そもそもマネタリーベースの拡大が、本当にデフレ払拭へと波
及するのか、注目される。日本では、2001年から2006年、世界で初めて
量的緩和を導入したが、その効果に対し、評価は割れている。例えば、黒
田総裁は、決定会合後の記者会見で、今回の緩和が実体経済へ波及する経
路として、@長めの金利や資産価格のプレミアムへの働きかけ、Aリスク
資産運用や貸し出しを増やすポートフォリオリバランス効果、B市場・経
済主体の期待の抜本的転換、という3つを挙げた。ただ、貸出の増加が期
待される、Aのポートフォリオリバランス効果に関しては、第1図の通り、
必ずしもそうした効果があったのか不明瞭だ。また、かねてより当方が指
摘の通り、マネタリーベースの拡大と「円安」との間に、必ずしも明確な
相関は認められない。時間の経過とともに、市場の注目はこうした点に移
っていくだろう。
もっとも、前回(2001年から2006年)の量的緩和期と比較すると、当
時、最大でも35兆円程度であった日銀の当座預金残高は、現在、既に47
兆円を数え、これを2 年後には90兆円へと拡大される見込みだ。前回の
量的緩和とは、規模が全く異なっている。このため、過去の経験則にあま
りとらわれるのも得策ではない。結局、重要となってくるのは、黒田総裁
が掲げた「市場・経済主体の期待の抜本的転換」を喚起することができる
かどうか。引き続き、黒田日銀の手腕にかかってこよう。

第1 図:民間銀行の資産構成の変化
(資料)内閣府「平成17年、経済財政白書」より作成

3
(2)「テール・リスク」ではなく「景気」次第のユーロ相場

リセッションが続くユーロ圏
主要国の企業景況感指数も軒並み低調
ECB は当面利下げの選択肢を意識した様子見

イタリア、そして、キプロスと、ユーロ情勢に対する関心事が「政治」
や「政策」に集中しているが、改めてユーロ圏の経済指標に目を向ければ、
ここ暫く著変なし、の状況にある。即ち、発表される指標が総じて不冴え
であることに何ら変わりなく、リセッションが続いていること、及び、長
期停滞からの脱却目処が立ち難い状況にあることが自明だ。GDP との相
関が高いことで知られるユーロ圏PMI総合指数は、14ヶ月連続で拡大縮
小の分岐点である50 を下回り推移中。4 日(木)発表の3 月分改定値は
46.5(2月分47.9)と、昨年10月以降の持ち直し傾向が頓挫したことを明
確に示している。
主要国の直近のビジネス信頼感指数を見ても、牽引役のドイツではifo
指数が予想外の低下となったほか、ドイツとの景況格差拡大が懸念される
フランスのINSEE サーベイはほぼ横ばいに、そして、これらに対し先行
性が高いとされるベルギー中銀の企業景況感指数は2009年9月以来の低
水準へ改めて落ち込んでいる。ECB は3 月7 日の前回理事会で四半期毎
のスタッフ見通し(下表)を発表し、成長率、インフレ見通しともに下方
修正しているが、その後発表された経済指標は、今週3日発表のユーロ圏
3 月分CPI(前年同月比+1.7%)も含め、慎重なスタッフ見通しを裏付け
るものばかり、となっている。

第1表:欧州中銀による3ヶ月毎の「スタッフ見通し」 2013年3月発表 (前年比、%)
2012年実績2013年2014年
見通しレンジ見通し中心値前回比修正幅見通しレンジ見通し中心値前回比修正幅
実質GDP成長率▲0.5 ▲0.9-▲0.1 ▲0.5 ▲0.2 0.0-2.0 1.0 ▲0.2
消費者物価上昇率(HICP) 2.5 1.2-2.0 1.6 u.c. 0.6-2.0 1.3 ▲0.1
(資料)ECBスタッフ・マクロ経済見通しより三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

さて、こうした状況下で4 日(木)に開催された4 月のECB 定例理事
会は、大方の予想通り、据え置きの結果となった。しかし、注目されたド
ラギ総裁による定例会見の内容は、景気への配慮が目立つものに。インフ
レが抑制されている一方で、景気は下振れリスクに晒されていること、特
に中小企業向けの信用状況が依然厳しいことなどに言及し、「金融政策は、
必要とされる期間、緩和状態を続ける」方針が示された。キプロス問題に
ついては、特に目新しい発言はなし。いわゆるベイルイン(預金者を含む
債権者の債権放棄による救済)の形を取った今回措置を、キプロスに限定
的な対応だとするEU当局の見解を繰り返していた。

4
ユーロ相場は金利差との高い相関関係を継続中
「ユーロのことはユーロ相場にきけ」

当方では、ユーロ圏の経済情勢、特に、主要コア国であるフランスの停
滞や年後半の回復が展望できない全般の情勢に鑑みて、第2四半期中を目
処にECB が追加利下げに動く可能性は依然として高い、と見ている。し
かしその一方で、キプロスなどユーロ圏加盟の小国群から、ユーロ圏全体
を揺るがすような真性の危機が発生する可能性はさして高くないとも考
えている。ユーロ圏が現在抱える本質的且つ深刻な課題は、「テール・リ
スクの回避」云々よりも、やはり、「成長力の回復」にあろう。
そして、ユーロ相場が下落していることの本質も、実は景気要因にある、
と見て良さそうだ。第2図の通り、今年1月末以降のユーロドル相場の下
落は、米独金利差との高い相関関係を急回復しつつ進行してきた。一般的
にはイタリア政局やキプロス救済のみを材料にユーロが嫌気された印象
が強いが、実は、セオリー通りに金利差、即ち、対米景気格差に連れてい
るのが目下のユーロ相場、というわけだ。このことは同時に、イタリアや
キプロス情勢の流動化にも関わらず、ユーロ相場の下落が一定の穏当な
ペースを維持していることを、説明してもいる。

第2図:ユーロドル相場に対する感応度


かねて指摘(BTMU FX Monthly 4月号、BTMU Focus 2013年3月18日
号)の通り、南欧やキプロスがそれぞれ多くの火種を抱えていると同時に、
これらの問題を通じてEMUの構造的弱点が露呈され、市場心理が改めて
不安定化していることは事実であり、ユーロにとって大きな懸案材料だ。
しかし、その一方で、ユーロ加盟の特に小国群が抱える問題とそれが引き
起こすダメージがやや過大評価されている印象も否めない。国際政治学者
でユーラシア・グループ代表のイアン・ブレマー氏がキプロス問題を「で
っち上げの危機=phenomenon of manufactured crisis(ロイター通信社との
3月27日付けインタビュー/訳語もロイター通信社)」と呼んでいたが、
現在のユーロ情勢について懸念すべきは、テール・リスクを高める真性の
危機発生やその拡散と言うよりも、景気低迷が長期化していることそのも
のにある、と考えている。「市場のことは市場にきけ」と言う相場格言を
「ユーロのことはユーロ相場にきけ」と置換すれば、金利差=景気格差と
の相関関係を急回復しているユーロ相場の動向それ自体が、「テール・リ
スクよりも景気が大事」というシグナルを発しているように思われる。
シニアアナリスト(ロンドン駐在) 武田 紀久子
2013年4月4日15時脱稿


6
(3) RBAの変化は僅か

今回もほとんど変わらない声明文
利下げ休止宣言の可能性
豪ドル高で緩和スタンス維持

豪州準備銀行(RBA)は2 日、金融政策を決める理事会を開催し、政
策金利を3.00%に据え置いた。昨年11月に25bpの利下げを実施して以来、
今回で四回連続の据え置きとなった(第1図)。前回は声明文の内容はお
ろか、文章もほとんど変化がない点を指摘したが、今回も世界的なリスク
認識の部分などで僅かに前向きな変化があったほかは、内容に変化はみら
れなかった。RBA はこれまでの利下げの効果が出てきており、現行の金
利水準は十分に景気刺激的と判断している一方、豪ドルが歴史的な高水準
を維持していることには引き続き不快感を持っているということだろう。

第1図: 豪州政策金利推移
(資料)豪州準備銀行より三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

今回、市場の注目点は「緩和余地あり」とする文言を外すかどうかにあ
った。前回3月会合までですでに三回連続の据え置きであって、実質的に
利下げ局面は終わっているとの解釈が広まっている。3 月に公表された2
月の豪雇用統計が市場予想を大幅に上回る内容であったこともあり、いよ
いよ「緩和余地」文言撤回による利下げ局面休止「宣言」が飛び出すとの
見方まであった。確かに、今後、豪州経済を取り巻く環境が一段と改善し
た場合に、見込みのない「利下げ余地」文言を残すことは任期が延びたス
ティーブンス総裁名で出される声明文の信頼性を損ねることになりかね
ない。よって次回以降、利下げ余地文言が外れる可能性もなくはない。
もっとも当方は、RBA にとって目下の悩みはインフレではなく豪ドル
高であり、さらなる上昇を招きかねない利下げ休止宣言は当面回避すると
みている。そもそも、「緩和余地あり」とする根拠はあくまで国内の需要
を支援するためとなっているものの、実際には、資源投資ブームのピーク
アウトが迫るなかで非資源セクターを苦しめる豪ドル高の抑制を主眼と
していると言えよう。ギラード首相は4日の講演で「ユーロ導入前のドイ
ツマルクのように、通貨高は必ずしも障害にならない」と発言し、豪ドル
高が先進国のなかで相対的に高い成長を続ける対価であるとの認識で、通

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貨高を容認する姿勢を示した。しかし、貿易加重平均レート(TWI)も直
近高値を伺う勢いとなった。2月のG20以来、為替と金融政策を結びつけ
ることはより難しくなったものの、日銀が「異次元」の金融緩和に踏み切
るなど、他国が緩和姿勢を続けている以上、RBA としても緩和スタンス
は維持するつもりなのではないか。


利下げ効果は出てきているが

さらに、小売売上高の増加などにみられるように、家計部門には利下げ
効果が出始めていると言えそうだが、企業部門の景況感はまだ改善の余地
がある(第4 図、第5 図)。よって、RBA が今すぐに「次の一手は利上
げ」と市場が連想するような政策判断を下すと、資源投資頼みの経済シス
テムから脱却を模索する流れの腰を折ることになりかねない。こうした背
景に鑑みれば、やはり目先、利下げ休止宣言に踏み切る理由は少ないと言
えよう。

アナリスト 井野 鉄兵


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(4) 霧の晴れない世界経済

市場はリスクオンで盛り上がっても実態経済の回復は弱い
財政の緊縮が経済活動の重し
低下しない不確実性指数

欧州経済が厳しい状況を脱せられそうにないことに議論の余地は乏し
い。しかし、ここへきて発表された米国のISM 製造業景気指数、中国の
製造業PMI 指数と軟化をみた。米国は財政の崖を越え、雇用増加も定着
してきたし、中国も回復しているという話題は、各市場にリスクオンの流
れをつくっていたが、ここへきて、やや雲行きが怪しい。景気後退が見込
まれるわけではないが、勢いがないのである。主要国で強い金融緩和政策
がとられているのに、スピードが出ないのはなぜか、悩ましい問題といえ
る。悩ましさの根源はふたつある。
第一は、財政の緊縮である。財政の緊縮は、経済活動を押し下げるとこ
ろがあるが、その影響を深刻に考えない見方があった。乗数が低いという
議論であるが、財政緊縮の乗数は、相応に大きく、経済活動を抑制してし
まっている。
@ 公的債務の対GDP比率が、一定限度(90%)を超えると、経済活
動の停滞が起きるが、その要因として、クラウデイングアウトが
注目された。政府債務の膨張が止まれば、民間に資金が流れ、そ
れが経済活動を押し上げるので、緊縮するほど緊縮の悪影響は小
さくなるはずという見解である。これに強烈な金融緩和が加わっ
ているわけだが、それでも、弱い回復しか得られてないのが、現
実である。
A 財政緊縮をして金利が下がれば、その国の通貨安となって景気が
刺激されるという道筋も勘案された。ところが、主要国どこでも
低金利となって、通貨の下落による景気刺激の効果も得られにく
くなっている。余談だが、通貨安誘導を近隣窮乏化というならば、
財政緊縮に熱心な国こそが、その問題を引き起こしているという
考えもできるはずである。
第二は、経済の先行きへの不確実性が大きいと感じられていることであ
る。第1 図は、米国、欧州、中国の経済政策不確実性指数
(注)
のGDP 規
模による加重平均の推移をみたものである。サブプライム問題からリーマ
ンショックに至るグローバル金融危機、欧州債務危機と続いて、不確実性
指数が上昇してきた。危機は、ここへきて収束をみているところがあるが、
不確実性指数の数字は下がっていないことになる。将来に自信が持てない
9
と、投資も雇用もなかなか増やさず、それでは、人々も消費をしない。日
本の停滞をもたらした動きが、世界でも起きていることになる。
(注)経済政策不確実性指数は、Economic Policy Uncertainty によって作成され、
http://www.policyuncertainty.com に掲載されている。
第1図: 米欧中の経済政策不確実性
(資料)http://www.policyuncertainty.com/index.html

危機一段落でも、不確実性は下がらず

この不確実性が強いということの実態経済への影響力は、かなり、パワ
フルである。図は、世界景気の月次指標として注目されるオランダ経済政
策分析局による世界の貿易の集計の数字について、トレンドからの乖離を
みたものである。経済政策の不確実性が強いと、貿易が萎縮する傾向が見
える。それは、経済活動の拡大の重石になっている。

第2図: 経済政策不確実性と世界貿易
米中欧加重経済不確実性指数〈左目盛〉
貿易量のトレンドからの乖離〈右目盛〉
(資料)http://www.policyuncertainty.com/index.html、オランダ経済政策分析局のデータより三菱東京
UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

不確実性が強いことの経済への悪影響はパワフル

経済の活性策は、先行きの経済への見通しを少しでも明瞭に描けるよう
な政策をとることにありそうである。財政は緊縮しなければならず、通常
型の金融緩和策は使い果たされた今日、将来への展望の明瞭化への働きか
けという財政負担が小さい対応に関心が向くのではないだろうか。今般の
期待への働きかけ重視の日本銀行の政策発動は、その嚆矢かも知れない。
シニアマーケットエコノミスト 鈴木 敏之

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(5)「量的・質的金融緩和」直後のテクニカル分析
4日の日銀金融決定会合における政策変更を受けて、ドル円相場は本稿
執筆時点までに4 円以上上昇した(第1 図)。3 月12 日に直近の高値で
あった96.71円まで上昇したあとは調整気味となっていたが、大幅に反発
して97 円台を示現した。これまで当方は、テクニカル分析の観点では、
中長期的な上昇トレンド入りしたことを指摘してきたが、本稿では簡単に
足もとまでの状況確認と、目先のチャートポイントを確認する。

第1図:ドル円日足

まず、短期的には3月12日に96.71円を示現した後、4日まで3週間程
度の調整局面となっていた。今次中長期上昇局面入りした10 月以降、終
値ベースでは一度も割り込んでいなかった一目均衡表「基準線」を下回っ
たことで、次なる下値目処であった65 日線、一目均衡表「雲」上限(92
円台半ば)まで押される格好となっていた(第1表)。さらに、一目均衡
表では、3日時点で「基準線」と「転換線」がデッドクロスしていた。こ
れまでの上昇トレンドを支えていた「買い三役」の状態が崩れたうえに、
「遅行線」の日々線接近、日々線の「雲」接近と、一目均衡表上は一挙に
下落局面入り確認が近づいている局面だった。
ただ、結果的に中期的な移動平均線である65日線、「雲」上限はサポー
トとして機能した。「三役」が総崩れの可能性はひとまず回避され、両線
が今後のサポートとして期待できるものとなった。

久々の大陽線出現
実は調整拡大の可能性があった

3月12日の96.71円を一旦上抜けた今、上値目処は2009年8月7 日の
97.79 円となる。その上は同年6 月5 日の98.90 円、同年5 月7 日99.80
円、同年4 月6 日101.45 円と続く(第2 図)。フィボナッチ数列による
高値→安値の戻りの観点では、「2002 年高値→2011 年安値」の戻りでと
ると38.2%が98.19 円、これまでみてきた「2007 年高値→2011 年安値」
の戻りでみると半値が99.73円となる。また月足一目均衡表「雲上限」が
100.19 円である(第3 図)。90 円大台後半から100 円の世界はそれなり
に超えなければならないポイントが多いと言えよう。
アナリスト 井野 鉄兵


2.来週の相場見通し
13
(1) ドル円:「ドル高」要因休止中も、ドル円じり高か
今週のドル円は94.28で寄り付いた。日銀の金融緩和強化への期待や実
需の円売り需要により、ドル円は下支えされた。ただ、3月下旬以降、予
想を下回る米経済指標が散見されたことから、ドル円の下値不安も意識さ
れ、しばらくは94 円挟みの取引が続いた。ただ、1 日に発表された米製
造業ISM景況指数は51.3となり、景気判断の分水嶺「50」こそ上回った
が、前回実績(54.2)や事前予想(54前後)を大幅に下回った。このため、
ドル売りが優勢となり、2 日にかけてドル円は92 円台半ばまでずるずる
と下落した(週間安値92.57)。その後は、予想を上回る米製造業受注(2
日)で93円台を回復、一方、予想を下回るADP雇用統計(3日)を受け、
米10 年債利回りも1.8%を割り込んで低下すると、ドル円も93 円台を割
り込むなど、日銀の金融政策決定会合にかけて、概ね93 円絡みで動意を
失った。
4日に発表された、日銀の新しい「量的・質的金融緩和」では、既報の
通り、枠組みの変更や買い入れる国債の増額の程度など、いずれの点にお
いても、市場予想を遥かに超える強烈な金融緩和策と受け止められた。こ
のため、ドル円は直後より急騰。翌5日には、3月12日の高値(96.71)
をあっさり上抜けし、2009年8月以来初めて、97円台を回復した(執筆
時点の高値は97.20)。米国では、週間新規失業保険申請件数が増加する
など、労働市場の改善ぶりに陰りもみられており、ユーロドルが1.29 台
を回復した通り、為替市場でのドルの値動きは寧ろ不冴であった。このほ
か、翌5日の株式と債券相場はいずれも上昇。日経平均が2008年8月以
来となる13 千円台を回復したほか、国債の利回りも長期債が軒並み急低
下。10年債が0.3%台前半まで、20年債が1%割れ目前まで、また30年債
も、1.1%を割り込むなど、いずれも過去最低を更新しており、利回り曲
線が平坦化する形となった。
ドル円の力強い上昇には本来、良好な米経済指標などに裏打ちされた米
債利回りの上昇を伴う「ドル高」と、日本の貿易赤字の定着や金融緩和強
化による円安期待といった「円安」という二つの要因が必要であるとして
きた。その際、既存の材料で到達し得る最高点として「100円到達」の可
能性が視界に入る、としてきた(3月15日号「100円到達の可能性も、定
着には時期尚早か」、3 月22日号「ドル円、100円到達の可能性(そのA))。
その点、米経済指標の強弱にまちまち感がみられており、米債利回りも
10年債でみて1.7%台半ばまで低下している。現在、ドル高の要因は、ほ
とんど効力を発揮しておらず、「休止中」だ。今週の92円台から97円台

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までのドル円急騰劇も、「円安」要因だけによるものと言えよう。それだ
け今回、打ち出された日銀の「量的・質的金融緩和」は、そもそも高まっ
ていた期待を更に上回り、円安期待に強く働きかけていると言える。
今回の金融緩和策を受けて、来週も株式や債券相場は落ち着きどころを
探る展開となろう。ドル円にしても、まだ完全に価格に織り込んだわけで
はないだろう。市場では、改めて円安期待が高まっている。かねて指摘の
通り、本邦の貿易赤字に示されている通り、実需の動向も、円売りが優勢
な地合いだ。このため、来週のドル円は前述の通り、「ドル高」要因休止
中ながらも、じり高に推移し、上値をうかがう展開が予想される。
もちろん、それには「ドル高」要因が「ドル安」要因へと変容し、ドル
円の足を引っ張らないことが必要であり、米経済の先行きに対する警戒が
必要だ。当方は、第2四半期後半より、ドル円の下押し要因として米経済
指標の下ブレを想定してきたが、足もとでは早くも、そうした動きがみら
れている。このため、3 月分の米雇用統計の結果が注目される。5 日の東
京時間正午時点では、非農業部門雇用者数の変化に関して、前月比プラス
20万人前後が予想の中心となっている。これを多少、下回る程度ならば、
ドル円への影響も限定されようが、10 万人台前半ともなれば、さすがに
ドル円の続伸を阻むだろう。もっとも、単月の雇用統計だけでそこまで地
合いが急変するとも考えにくい。押し目も限られるのではないか。
ドル円:95.00〜98.50
チーフアナリスト 内田 稔

15
(2) ユーロ:下押しリスクを孕みながらも一旦安定化へ
今週のユーロドル相場は下げ一服となったものの、不冴えな経済指標の
発表もあって、上値の重い展開が続いた。イースター休暇に絡みやや薄商
いの中、日本、英国、そして、欧州中央銀行の金融政策発表を前にした手
控え感も強かった。2 日に発表された2 月のユーロ圏失業率は12.0%と、
1 月の失業率が速報値の11.9%から12.0%に修正されたため、前月からは
横ばいではあるものの、過去最悪を記録。今週は3 月分ユーロ圏PMI 改
定値も発表され、PMI 総合指数は46.5と速報値から変わらずだったが、2
ヶ月連続での悪化となった。牽引役として期待されるドイツでも、同PMI
総合指数が50.6(速報値51.0、2月分53.3)と下方修正され、前月から大
幅に低下。ユーロ圏全体の回復期待を後退させる失望の結果となっている。
4 日のECB 定例理事会では、大方の市場予想通り、政策金利が0.75%
に据え置かれた。理事会後の会見でドラギ総裁は、2013 年下半期には回
復に向かうとしていたユーロ圏経済は、下振れリスクが大きいと発言し、
金融緩和継続の方針を明示している。3日に発表されたユーロ圏消費者物
価指数(速報値)は、前年比1.7%上昇と2010年8月以来の低水準を記録。
同会見でドラギ総裁も確認した通り、インフレ率は概して安定しており、
市場の追加利下げ期待も継続している。
過去2 週間、市場を揺さぶってきたキプロス情勢だが、IMF は3 日、
同国支援に関して基本合意に達している。南欧諸国の国債相場への悪影響
も、これまでのところ、概ね限定的であり、キプロス・ショックにもひと
まず一巡感が見受けられる。「次元の異なる金融緩和」に踏み切った日銀
の判断を受けて、グローバルな流動性環境も緩むことが期待され、下方リ
スクを孕みながらも、来週のユーロ相場は、やや持ち直し、安定化を見込
む。
ユーロドル:1.2650〜1.3050 ユーロ円:122.00〜128.00
Currency Analyst, Lee Hardman
2013年4月4日ロンドン時間15時脱稿


16
(3) 豪ドル:豪州も雇用統計に注目
今週は、イースター休暇明けの2 日に豪州準備銀行(RBA)が金融政
策の据え置きを決めた(トピックスご参照)。一部観測のあった緩和余地
文言の削除も見送られたものの、豪ドル相場の反応は限られた。
対ドルでは、最大の貿易相手国である中国の経済指標が強く、前週に続
いて1.05台を試す展開となったが、またも同水準目前で反落。4日には一
時1.04を割り込んでいる。4日に発表された2月の小売売上高が前月比+
1.3%と予想を上回る強い内容であったにも関わらず、豪ドルは弱含んだ
格好だ。このまま1.04台で引けとなると、二週連続で1.05に届かないこ
ととなる。「ダブルトップ」の形状であり、数週間単位で下落基調となる
可能性をみておく必要があろう。
他方、対円では日銀の「量的・質的金融緩和」導入を受けて、97 円絡
みから2008 年8 月以来の100 円に到達、5 日は本稿執筆時点までで一時
101円台まで上伸した。なお、対ドルのほか対ユーロでもやや弱含んでい
るが、対円の上昇に連れるかたちで、前週に28 年ぶりの高値を更新して
いた貿易加重平均レート(TWI)は、ふたたび高値更新を伺う水準まで上
昇している。
来週は11日に3月分の豪雇用統計が発表される。2月分は雇用者数7.5
万人増と、およそ13 年ぶりの増加幅となっていた。統計サンプル入れ替
えの影響も取り沙汰されており、RBA も経過を見守るというスタンスと
なっている。このまま雇用情勢が強いとの判断に至れば、RBA は見通し
を上方修正する可能性があり、そうなると利下げはますます遠のき、豪ド
ル押し上げ要因となる。ただ、本稿執筆時点の市場予想は先月の反動も見
越してか0.75 万人の減少が中央値となっている。予想通りのマイナスと
なれば、素直に豪ドルの下げ要因として作用しよう。
対ドル:1.0300〜1.0500 対円:98.00〜102.00
アナリスト 井野 鉄兵
17
(4) 人民元:人民元は政治イベントを控え最高値更新を予想
今週の中国人民元は連日上昇し、2 日には2005 年の事実上切り上げ実
施以来の高値となる6.1986 を示現した。中国人民銀行が設定する対ドル
基準値も6.2586 と過去最高値を更新している。3 日には基準値が6.2609
へ設定されたことを受けて6.20台へ軟化したが、基準値比0.9%を超える
上昇となるなど人民元需要の強さが窺えた。4、5日は清明節により休場。
再開は8日となる。中国人民銀行が基準値を引き上げた背景には人民元相
場の流動性の低下も挙げられよう。昨年末はドル買い人民元売りの担い手
が乏しいなか、人民元の買い気配が一日の変動幅上限(+1%)に張り付い
たまま、取引が成立しにくい状態が続いていた。1月後半以降、変動許容
幅の上限で膠着する状況は解消されたものの現在でも上限付近での小動
きが続いており、中国人民銀行はこうした状況を打開するべく基準値の引
き上げに動いたとみられる。
1 日に発表された3 月の製造業PMI は新規受注、新規輸出受注が牽引
し、50.9 と前月の50.1 から改善した。同日発表されたHSBC 製造業PMI
改定値も51.6(前月:50.4)となり、製造業活動が改善傾向にあることが
示された。一方、足もとで問題視されている不動産価格の上昇に関しては、
3 月30、31 日に北京、上海、重慶、天津などの直轄市が住宅購入に関す
る地方版細則を打ち出している。国務院は、各直轄市、計画単列市、チベッ
ト・ラサを除く省都に対して、第1四半期中に年間の新築住宅価格抑制目
標や細則等を制定することを求めている。中央・地方が政策を連続して打
ち出すことで不動産価格を抑制する構えだ。
4月中旬にはケリー米国務長官の訪中や、米財務省が半期に一度議会へ
提出する為替報告書の公表も控えている。過去数年の為替報告書発表前の
人民元相場動向を見ると、2012 年5 月時は欧州債務問題への懸念が強ま
るなか下落しているものの、概ね1 ヶ月前から2 週間前に約0.5%人民元
高に動いている。また、2012 年9 月にクリントン前国務長官が訪中した
際にも人民元の上昇がみられたことから、当面人民元相場は基準値の高め
誘導のもと、堅調な推移が続きそうだ。来週の人民元相場は堅調に推移し
最高値を更新するとみている。
ドル人民元:6.1750〜6.2200 人民元円:15.30〜15.80
アナリスト 関谷 菜摘


http://www.bk.mufg.jp/report/bfrw2013/

 


 

内外経済の中長期展望 2013-2030年度

三菱総合研究所
2013.4.5

プレスリリース

株式会社三菱総合研究所(代表取締役社長:大森京太、東京都千代田区永田町二丁目10番3号)は、2013-2030年度の内外経済の中長期展望に関するレポートをまとめました。

要 旨

 【日本経済】
わが国では、人口減少や経済の新陳代謝の低さが中長期的な活力の阻害要因として指摘されて久しいが、必要な改革や調整が先送りされてきた。その結果、企業や家計の成長期待が低下し、投資や消費活動の停滞を招いた面がある。現状の延長では、中長期の持続可能な成長力(潜在成長率)は今後も低下傾向を辿ることが予想される。
しかし、今後の政府の政策実現力や企業・国民の取り組み次第で成長力を底上げし、一人当たりの所得水準を引き上げる余地はある。折しも2012年末の政権交代後、新政権の経済政に対する期待から、金融市場では円安・株高が進んだほか、企業や家計のマインドも好転している。震災復興を確実に進めるとともに、次の5つが実行に移されれば、“前向きのサイクル”が回転し始め、期待が実体へ変化し、ひいては持続的成長につながる可能性は高い(1%程度の成長力引き上げが可能)。
量と質の両面からの労働力の底上げ:女性、高齢者層の労働参加率の引き上げ余地は大きい。また、若年層の就労支援やグローバル人材育成に向けた教育改革などを通じ、「未来への投資」を増やすべきである。
新陳代謝の向上による生産性上昇:規制・制度改革により、資本や労働の新規産業や成長市場へのシフトを促し、イノベーション創出や生産性向上につなげていく必要がある。
国内市場の構造変化への適応:潜在的な供給力の向上に呼応するかたちで需要の拡大を図るには、市場の構造変化に対する企業努力が望まれる。ニーズの変化に適応した財やサービスの提供が進めば、需要が喚起されるとともに、国民の「生活の質」も改善する。
国際競争環境の整備とグローバル需要の取り込み:中間層拡大や都市化が進むアジア市場でも、近い将来、高齢化、環境、食料・エネルギー制約が大きな課題となることが予見される。先行する日本への期待は大きいが、それを発揮するためには、企業の努力を後押しする国際競争環境の整備も欠かせない。
財政再建と世代間格差の是正:成長力引き上げと需要拡大という両輪を回し続けるには、社会保障費の抑制による財政健全化が不可避である。若い世代が将来への自信を取り戻すためにも、社会保障改革を通じ、世代間格差を是正していく取り組みが求められる。
 【海外経済】
米国は、住宅バブル崩壊後の構造調整に進展がみられ、安定成長を続ける見通しが高まった。シェール革命が経済・外交面で大きな強みとなり、今後のグローバル・パワーバランスにも影響を及ぼそう。一方、欧州は債務危機の影響から、当面低成長を余儀なくされるが、14年以降、緩慢な回復を見込む。ユーロ圏の統合深化の動きは続くであろう。
新興国では、中間層の拡大や都市化の進展を背景に、経済・市場規模の拡大が予想される。アジア各国、とりわけ中国が構造問題やリスクを克服して安定成長を続け、かつアジア太平洋地域の経済連携を進めることができれば、アジアに巨大な経済圏が誕生しよう。ただし、いずれの国についても、構造問題を克服できず、「中進国の罠」に陥る可能性には留意が必要だ。
予測の概要
 【日本経済の中長期予測】
中長期的に持続可能な成長力を示す潜在成長率は、30年度に+0.4%程度へ低下の見込み。実質GDP成長率(年度平均)は、 11-15年度+1.0%、16-20年度+0.9%、21-25年度+0.6%、26-30年度+0.6%と予測。
名目GDP成長率は、11-15年度+0.6%、16-20年度+1.2%、21-25年度+1.2%、26-30年度+1.6%と予測。
一人当たり実質GDP成長率は、11-15年度+1.2%、16-20年度+1.3%、21-25年度+1.2%、26-30年度+1.2%と予測。
 【成長シナリオの中長期予測】
労働力の強化や規制改革などの成長戦略を実行した場合、12-30年度平均の潜在GDP成長率は+1.4%と1%程度上昇するとの結果が得られた。
成長シナリオの下での一人当たりの潜在GDP成長率は+2.0%程度となろう。
 【財政の中長期予測】
「14年4月に5%→8%、15年10月に8%→10%」の消費税率引き上げを前提にしても、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の20年度の黒字化は見込めない。また、債務残高(国・地方合計)は、30年度に対GDP比率で280%(1,700兆円)程度に達する見込み。
消費税のみで債務残高を安定させる場合には、20%程度までの増税が必要となる。
長期金利の前提は、30年にかけて2%台半ばと緩やかな上昇を想定。ただし、想定対比+1%上昇するだけでも、30年時点の国債利払い費は約15兆円増加することになり、財政赤字や債務残高の見通しは金利次第で大きく変動する。
 【海外経済の中長期予測】
11-15年:米国はバランスシート調整進捗やシェール革命により回復テンポを高めると予想。欧州は14年頃から持ち直しに向かうが、緊縮財政により低成長に止まる見込み。新興国経済は堅調な成長持続を予想。実質GDP成長率は、米国+2.3%、欧州(EU27カ国)+0.7%、中国+8.1%、インド+5.9%と予測。
16-20年:欧米経済は回復を続け、11-15年対比やや高めの成長を見込む。新興国では中国の成長率が低下し、インドの成長率との逆転を予想。実質GDP成長率は、米国+2.4%、欧州+1.3%、中国+6.7%、インド+7.8%と予測
21-25年:欧米および中国は労働力人口の鈍化・減少により、成長率は緩やかに低下。米国+2.2%、欧州+1.2%、中国+5.9%、インド+6.4%と予測。
26-30年:中国の総人口がピークアウトし、同国成長率は4%台へ。米国+2.0%、欧州+1.1%、中国+4.5%、インド+5.4%と予測。

http://www.mri.co.jp/NEWS/press/2013/2045562_2312.html


 


「漂流」のすすめ 東レ経営研究所 増田 貴司
地域の産業振興策として、従来は「効率的な生産拠点の整備」を目指すこと
が多かったが、今後は「環境変化に柔軟に対応できる産業集積の構築」が重要テーマとな
ろう。そのためには、特定の企業や業種に依存せず、地域の特性や資源を組み合わせて独
自の強みを築くこと、多様なネットワークを形成し、業際化や連繋を促進すること、など
の方策が考えられる。
http://www.tbr.co.jp/pdf/column/clm_a137.pdf


Weekly Market Focus(2013年4月5日)〜異次元緩和が消化され、本邦長期金利は居所を探る展開を予想
掲載日:2013-04-06 発表元:三菱東京UFJ銀行
http://www.bk.mufg.jp/report/mksc2013/market_2013_14.pdf  

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コメント
 
01. 2013年4月06日 14:58:50 : xEBOc6ttRg

深尾光洋の金融経済を読み解く

4月5日 日銀の量的・質的緩和の効果とリスク


日銀の量的・質的緩和の効果

 日銀の発表によれば、4月4日に発表された量的・質的緩和政策による長期国債の買い入れ額は、2012年末から2014年末までの2年間で、約100兆円になる(注:日本銀行「量的・質的緩和の実施について」、2013年4月4日)。これは、日本政府(中央政府、地方政府、社会補償基金の合計)が同じ2年間に発生させると予想される財政赤字を上回る金額であり、巨額の財政赤字が継続するにもかかわらず日銀以外が持つ国債を買い上げる形になる。また、買入対象となる国債も従来の満期3年以下から、満期40年ものまでの全てとなる。この買いオペは、長期金利を低く維持する効果があるだろう。

 相対的に高めの金利であった長期国債を日銀が買い入れ、その代わりに補完当座預金制度により金利0.1%が付されている日銀当座預金を同じ金額供給することにより、民間金融機関は平均運用利回りの低下に直面することになる。これは、民間金融機関に対して貸し出しを拡大するインセンティブになるだろう。

 また、中央銀行のバランスシートの拡大率(金融緩和姿勢の代理変数)を材料にして為替相場の動向を占うことが投資ファンドで流行っていることから、今回の日銀の政策で日銀のバランスシートの拡大率が連銀や欧州中央銀行(ECB)よりも高くなることは円安に寄与する可能性がある。

目標達成時の量的緩和コスト

 将来量的緩和を巻き戻すために、買い取った国債を市場で売却することを考えると、今回の措置は日銀に相当のコストを課す可能性が高い。日銀は今後買い入れる国債の平均残存期間を6-8年程度にすると発表しているため、2014年末における日銀が保有する国債の平均残存期間は7年弱になるだろう。インフレ目標が達成でき、消費税の効果を除いて2%の消費者物価インフレ率になった場合、国債金利の平均水準は少なくとも3%程度になると予想される。このため、国債価格下落による日銀の損失は、20兆円前後にも達すると考えられる(注:量的・質的緩和の中間地点である2013年末の国債残高140兆円x7年x2%)。この程度の損失であれば、短期金利が2%、長期金利が3%になった時点に予想される現金需要であるGDPの1割の50兆円程度と比較すれば、日銀の収益力で概ね吸収できるという計算になると考えられる(注:過去のマネタリーベースと金利の関係をみると、名目金利が2−3%であればマネタリーベースの需要はGDP比9%程度である)。仮に売りオペによる損失で、日銀の総資産の時価額がマネタリーベースよりも20兆円少なくなる債務超過に陥っても、残っている純資産規模が30兆円程度あれば、平均運用利回り2%で年間6000億円の運用利回りを得ることが出来るため、年間2000億円程度の日銀経費を賄っても4000億円程度の利益を計上できる。この利益により、日銀は徐々に債務超過を解消できるだろう。

 目標を達成できた場合のリスクは、第一に政府の利払い負担が急増すると見込まれることである。政府純債務は、2014年末にはGDP比150%程度に達すると見込まれるため、政府債務の平均金利が2%上昇すると、政府の利払い負担増加はGDP3%にも達する。これは、消費税増税5%による歳入増加のGDP比2.5%をも上回る。利払い負担は国債が満期となり借り換えが行われるに従って徐々に増加するものではあるが、政府に対する信用を維持するためには、日本政府は財政再建へのロードマップを年内にも公表し、かつ着実に実行する必要がある。インフレ目標が達成できれば、日銀による金利政策は、その効果を回復する。政府が財政再建のために歳出削減や増税を行っても、日銀が金利を低めに維持することによって景気を刺激し続けることで、景気の大幅な後退を避けることができるようになる。また、これこそがインフレ目標を達成する最大の目標であると言える。

 第二に、国債価格の大幅な下落で、日銀だけでなく民間金融機関が巨額の損失を被ることである。金利が2%上昇すると、銀行部門全体でみて国債価格の下落により12兆円程度の含み損失を抱えることになる。特に長期国債を多く持つ一部の地域金融機関に対しては、公的資本の注入が必要になる可能性もある。

目標が2年で達成できない場合のリスク

 以上で目標が達成できる場合のリスクを検討したが、筆者は、日銀が今後2年間でインフレ率を2%に引き上げることが出来る可能性は一割以下だろうと判断している(注:今年1月の本コラムを参照されたい)。仮にインフレ目標が達成できない場合には、日銀が今回発表した極めて早いペースで、自らのバランスシートをさらに拡大していく可能性が高い。仮に2016年まで同じペースで国債を買い進んだ場合に、日銀の長期国債保有額は、2012年末の89兆円から、2016年末には290兆円に達する。その段階で、仮にインフレターゲットが達成されるか、あるいは日本政府の信用が喪失して金利が3%上昇すると、日銀の損失は最大で60兆円(290兆円x7年x3%)にも達する。こうなると、日銀は持っている長期国債を全て売却しても、過剰なマネタリーベースを回収することができなくなる。その場合には、日銀は政府から国債の売却損失の補填を受けるか、あるいは預金準備率を大幅に引き上げて、銀行に強制的にマネタリーベースを持たせることで対応する必要が生ずるだろう。後者の場合には、民間銀行は強制的に超低金利の準備預金を保有させられることにより、実質的に課税されることになる。また、金利上昇に伴う政府の利払い増加と、民間金融機関の国債価格下落損失も、重要な問題となるだろう。

(2013年4月5日)

(日本経済研究センター参与)
http://www.jcer.or.jp/column/fukao/index470.html

 


2013年夏のボーナス予測〜前年比+0.7%と、小幅増加に転じると予想

〜 発表日:2013年4月4日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 新家 義貴(TEL:03-5221-4528)
エコノミスト 星野 卓也(TEL:03-5221-4526)

○民間企業の2013年夏のボーナス支給額を前年比+0.7%(支給額:36万1千円)と予測する。2012年冬のボーナスは前年比▲1.5%と減少したが、今夏には増加に転じる見込みである。ボーナスの増加は、2010年夏以来6季振りのことになる。
○昨年末以降の景気回復や円安効果により企業収益が持ち直しつつあることや、企業の景況感が改善していることなどが背景にある。政府による賃上げ要請が一部影響した可能性もあるだろう。
○もっとも、ボーナスの増加率は小幅なものにとどまる見込みである。増加は大企業が中心になるとみられ、中小企業では目立った改善が期待できないことがその理由だ。中小企業は内需に依存する度合いが大きいため、大企業と比べて円安の恩恵を受けにくい。実際、日銀短観でも、大企業の業況が改善する一方で、中小企業の改善は遅れている。雇用者の大半は中小企業に属しているため、中小企業での改善がみられなければボーナスの明確な改善は難しい。「一時金満額回答」など、今夏のボーナス大幅アップを示唆する報道が目立ったが、実際の増加率は報道から受ける印象ほどにはならない可能性が高い。
○賃金の大半を占める所定内給与の改善がみられない点も懸念材料である。春闘で妥結されたのはあくまで「一時金」の増加であり、ベースアップまで踏み込んだ企業は限定的だった。企業の景況感は改善しているものの、人件費の恒常的な負担増につながる月例給与の引き上げについては、企業は慎重姿勢を崩していない。当面、家計の所得増は限定的なものにとどまる可能性が高いだろう。
○だが、こうした家計の所得回復の遅れをもって、景気の先行きに悲観的になる必要はない。賃金や雇用は景気の遅行指標であり、景気回復の初期局面で改善が鈍いことは自然である。景気回復が持続すれば、家計にはいずれ恩恵が波及するだろう。今冬のボーナスでは、年度前半の企業収益回復を反映する形で増加率が高まることが予想され、賃金にも徐々に回復感が出てくるものと思われる。
○今夏の国家公務員のボーナスは前年比+2.0%を予想する。ただしこれは、平均年齢の上昇により平均支給額が増加して見える影響が大きい。また、昨年夏のボーナスが、復興財源捻出の一環として前年比▲9.2%の大幅削減になっていたことを考えると、水準は低いままである。
○総務省は、地方公共団体に対して、地方公務員についても国家公務員に準じた給与削減を2013年7月以降に実施することを要請している。実施要請は7月以降であるため、6月に支給される今夏のボーナスにはほとんど影響がないだろう。また、7月以降の削減についても強制力はなく、引き下げの判断・額は地方公共団体に任されている。対応は自治体によって分かれる可能性が高く、不透明感は強い。

出所)厚生労働省「毎月勤労統計」より第一生命経済研究所作成
(注)1.民間企業は従業員規模5人以上、パートタイム労働者含むベース
2.支給対象者数:民間企業=ボーナス支払い時期の常用雇用者数×支給対象従業者割合
3.支給総額:一人当たり支給額×支給対象者数
4.前年比の増減率は、実額から計算した場合と一致しないことがある。

http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/rashinban/pdf/et13_006.pdf


人々による賃金の現実の見方と理想
2013年4月4日
調査本部 主席研究員 市川 正樹
最近、賃金引上げを発表する企業が相次いでいる。従業員が目覚ましい成果をあげたから、ということからでは決してなさそうである。

人々は賃金などについて、現実と理想をどのように考えているのだろうか。多少データは古くなるが、基本的な点にはあまり変化がないと考え、下図の世論調査によって見てみる。

やはり成果をあげた人が現実には高い地位と多くの報酬を得ているとみている割合が半数程度である。年齢の高い人が得ているとする割合は5年間で減少した一方、努力をした人が得ているとする割合は増加している。しかし、いずれも実績をあげた人とする割合に比べれば水準はかなり低い。なお、誰でも同じくらいに得ているとする人はほとんどいない。

図表にはないものの、平成19年の結果を男女別・年代別に見ると、男性では実績をあげた人が得ているとする割合は40代が最大で57.1%で、それより若手の30代の54.7%や、20代の53.0%の方が低い。50代も52.6%と若手と同じような水準である。一方、年齢の高い人が得ているとする割合は20代が17.2%、30代が20.7%、40代が15.3%、50代が10.2%とあまり差はなく、若い世代の年功への不満はそれほど目立たない。女性についても、同様の傾向がある。

一方、理想となると様子は一変する。下図のように、努力をした人が地位と報酬を得るべきであるとする割合が過半数で圧倒的多数を占め、それも5年間で増加している。現実には実績をあげた人が得ているとする割合が5年間で増加しているのに反して、理想は逆だったわけである。実績をあげた人が得るべきであるとする割合は平成19年では3割を切っている。年齢の高い人が得るべきであるとする人は、ほとんどいない。なお、平成19年は、男女とも、どの年代でも、努力をした人が得るべきであるとする割合が、実績をあげた人とする割合を上回る。

以上は、極めて日本的な結果なのかもしれない。必ずしも成果があがっていなくとも、努力をした人が高い地位と多くの報酬を得ることは人々に受け入れられやすい。ただし、努力もせず、当然成果もあがらず、単に年齢が高いからと地位と報酬が高いことは、ほぼ否定されるであろう。

一方、経営者の側は、成果だけでなく努力も認めないと従業員の意欲が失われかねないことも考慮する必要があるのかもしれない。成果主義にまつわる問題点は、その解釈の違いも含めいろいろ指摘されているところである。成果一辺倒ではなく努力も認めることが、トッププレイヤーでなくてもがんばる層の厚さ、チームワークの良さ、裏方に徹してサポートする者の活躍、短期的でなく長期的な目標へのチャレンジ、などにつながり、それらはもともと日本の強みだったのかもしれない。

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http://www.dir.co.jp/library/column/20130404_007012.html


 

 

マイナビバイト アルバイト時給調査 2013年3月調査
調査サマリー

3月の全国平均時給は、1,008円(前月1,018円、前年同月1,068円)で前月から10円減少、前年同月から60円減少しています。 

調査対象 --- 2013年3月1日〜2013年3月31日にアルバイト情報サイト「マイナビバイト」に掲載された求人情報から
人材系企業を除いた求人情報
調査件数 --- 43,445件
http://saponet.mynavi.jp/baitojikyu/index.html


 
バーゼル銀行監督委員会による「バーゼル規制枠組みの実施に向けた進捗状況に関する報告書」第四版の公表について
2013年4月5日
日本銀行

バーゼル銀行監督委員会は、4月4日、「バーゼル規制枠組みの実施に向けた進捗状況に関する報告書」(原題:Progress report on implementation of the Basel regulatory framework)の第四版を公表しました。

詳細につきましては、以下をご覧ください。

「バーゼル規制枠組みの実施に向けた進捗状況に関する報告書」第四版(原文<国際決済銀行ウェブサイトにリンク>)

This report provides the adoption status of Basel II, Basel 2.5 and Basel III regulations for each Basel Committee1 member jurisdiction as of end-March 2013. It updates the Committee’s previous semi-annual progress reports published in October 2011, April 2012 and October 2012.2
In 2012, the Basel Committee adopted the Regulatory Consistency Assessment Programme (RCAP) to monitor progress in introducing regulations, assess their consistency and analyse regulatory outcomes.3 Regarding the consistency of implementation, the Committee recently published the assessment report on Singapore’s implementation of Basel III based capital regulations, following a similar assessment of Japan, and preliminary assessments of the European Union and the United States. The reports are available at the website of the Bank for International Settlements.4 Currently, assessments of China and Switzerland are underway, and assessments of Australia, Brazil and Canada will commence in 2013.
Regarding the regulatory outcomes, the Committee published its first analysis on the measurement of risk-weighted assets for trading book assets in January 2013. A report on risk-weighting of banking book assets is expected to be published in the coming months.
The attached tables focus primarily on the status of adoption of the risk-based capital requirements by the Committee member jurisdictions. The Committee intends, going forward, to expand the adoption monitoring to other Basel III components, including the Liquidity Coverage Ratio, capital charges for global and domestic systemically important banks and the leverage ratio. For jurisdictions that are not members of the Committee, the Financial Stability Institute of the Bank for International Settlements published in July 2012 the results of its survey on Basel III’s adoption status

Scope
The Basel III framework builds upon and enhances the regulatory framework set out under Basel II and Basel 2.5. The tables herein therefore review members’ regulatory adoption of Basel II, Basel 2.5 and Basel III.
• Basel II, which improved the measurement of credit risk and included capture of operational risk, was released in 2004 and was due to be implemented from year-end 2006.6 The Framework consists of three pillars: Pillar 1 contains the minimum capital requirements; Pillar 2 sets out the supervisory review process and Pillar 3 corresponds to market discipline.
• Basel 2.5, agreed in July 2009, enhanced the measurements of risks related to securitisation and trading book exposures.7 Basel 2.5 was due to be implemented no later than 31 December 2011.
• In December 2010, the Committee released Basel III, which set higher levels for capital requirements8 and introduced a new global liquidity framework.9 Committee members agreed to implement Basel III from 1 January 2013, subject to transitional and phase-in arrangements.
In November 2011, G20 Leaders at the Cannes Summit called on jurisdictions to meet their commitment to implement fully and consistently Basel II and Basel 2.5 by end 2011, and Basel III, starting in 2013 and completing by 1 January 2019. In June 2012, G20 Leaders at the Los Cabos Summit reaffirmed their call for jurisdictions to meet their commitments. This message was reiterated in Moscow in February 2013 by the G20 Finance Ministers and Central Bank Governors.

Methodology
The data contained in this report are based on responses from Basel Committee member jurisdictions. The following classification is used for the status of adoption of Basel regulatory rules:
1. Draft regulation not published: no draft law, regulation or other official document has been made public to detail the planned content of the domestic regulatory rules. This status includes cases where a jurisdiction has communicated high-level information about its implementation plans but not detailed rules.
2. Draft regulation published: a draft law, regulation or other official document is already publicly available, for example for public consultation or legislative deliberations. The content of the document has to be specific enough to be implemented when adopted.
3. Final rule published: the domestic legal or regulatory framework has been finalised and approved but is still not applicable to banks.

4. Final rule in force: the domestic legal and regulatory framework is already applied to banks.
In order to support and supplement the status reported, summary information about the next steps and the implementation plans being considered by members are also provided for each jurisdiction.10
In addition to the status classification, a colour code is used to indicate the implementation status of each jurisdiction.
http://www.bis.org/publ/bcbs247.pdf
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130405a.htm/


02. 2013年4月06日 15:50:04 : xEBOc6ttRg
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2月の経常収支は4ヶ月ぶり黒字転

2013/04/06 (土) 12:00


先週は、日銀金融政策決定会合をうけて
ドル円が一時97円台までつけるなど急速な円安進行が進み
大きく盛り上がった外国為替市場。
今週も円がらみの動きへの注目は続いています。

もっとも、日本がらみのイベントとしては、
8日(月曜日)の2月の国際収支と、3月の内閣府景気ウォッチャー調査
11日(木曜日)の2月の機械受注が注目される程度で
指標動向というよりも、
2009年8月以来、3年8ヶ月ぶりに97円台をつけ
今後は、どこまで円安のトレンドが続くのか、
実需筋の動きなども含め、売買動向が注目されているといった印象。

とはいえ、動きのキッカケになる可能性があるだけに、
上記指標を確認してみましょう。

まず、2月の国際収支ですが、
経常収支は4ヶ月ぶりに黒字転換となりそうです。
今のところの事前予想は4500億~4700億円程度の黒字見込み。
季節要因的に赤字が増えやすい年末年始が過ぎたことで
ようやくの黒字転換となります。

貿易収支は、既に先月発表されている通関ベース貿易収支が
2月としては過去最大規模となる7775億円の赤字を記録したように
国際収支ベースでも8ヶ月連続となる赤字見込みとなっています。
しかし、円安の影響もあって所得収支が前年比で2桁の伸びが期待されており
経常収支全体では黒字回復という見込みです。
もっとも、前年同月は1兆1778億円の黒字を計上しており、
予想の4500億円程度の黒字は、2月としては相当少ない黒字額。
予想以上に黒字が減っているようだと、円安基調が更に強まる可能性があります。

同じ日の14時に発表される景気ウォッチャー調査は
前月、現状、先行きの判断が共に節目となる50を越える好数字となりました。
現状判断DIは、4ヶ月連続の上昇で、ようやく節目の50を越えてきた格好で
購買欲の改善や受注増加などがみられます。
アベノミクスによる景気マインドの上昇が
実体経済に影響を及ぼし始めて来ているという数字になりました。
今回も、こうした流れが続き、
現状、先行き共に50を越えてこれるかがポイントです。

前回、前月比13.1%減と、二桁の減少を記録した機械受注は、
今のところの予想が6.9%増と、持ち直しが期待されています。
前回が、これまでの好調分の反動で一気に落としたため
今回は調整の動きが入るという見方です。
企業マインドの改善が続く中、予想程度の持ち直しは織り込まれていますが
振れが大きい指標だけに、
前回同様マイナスを付けるなどの動きがみられた場合は要注意でしょう。

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クロトンの金融政策はバーナンキ議長の焼き写し?

2013/04/06 (土) 11:54


 ウォールストリート・ジャーナルが5日付の社説で、黒田総裁を「日本のバーナンキ議長」と評したと報じられています。

 クロトンがバーナンキ?

 それだけ世界的に見ても注目されているという証でしょう。

 

 いずれにしても、これだけ黒田総裁の存在がクローズアップされると、これからはアベノミクスというよりも、クロトンをもじって、クロトノミクスという言葉がもてはやされるようになるかもしれません。

 では、クロトノミクスとは何か?

 クロトノミクスとは、量的・質的金融緩和策の別名。

 クロトノミクスはどのようなメカニズムでマイルドなインフレを起こし、デフレから脱却させることが可能なのか?

 ここで少し貴方に質問をしてみたいと思います。

 大胆な金融政策を打つと、例えば2%程度のインフレが何故起きるようになるのか?

 如何です?

 私の想像ですが、リフレ政策を支持する多くの方は、世の中に出回るお金の量が増えれば、インフレになるのは当然ではないか、と考えると思うのです。

 世の中に存在するモノやサービスの量が一定である一方で、お金の量が増えれば、お金の量が増えるに応じて商品の価格は上がる筈だ、と。

 そういう考え方を貨幣数量説という訳です。

 では、クロトンこと黒田総裁もマネーを大量に市場に放出すれば、物価が上がるのは当然だということで、ガンガン長期国債を購入するというのか?

 もし、そうであれば、非常に分かり易い。そう言った考えが正しいかどうかは別にして、非常に分かり易い。

 今まで日銀がやってきたことが非常に生温いと批判する人々の多くは、多分、そのような考え方をしていると思うのですが、如何でしょう?

 話は本線に戻りますが、では黒田総裁は、どういうメカニズムでマイルドなインフレを起こすというのか?

 もちろん彼の主張はもう既にご承知のように、今後2年間に渡って大量に長期国債を買い上げることが中心になっており、従って、それに応じてマネタリーベースが大量に供給されることになるのですが‥

 では、マネタリーベースが増大すれば、即インフレが起きると言うのか?

 でも、彼の主張はそんなに単純ではないのです。

 彼が持っていたフリップには次のように書かれてあったのです。

 1.長めの金利や資産価格のプレミアムへの働きかけ

 2.リスク資産の運用や貸し出しを増やす
   ポートフォリオリバランス効果

 3.市場・経済主体の期待 の抜本的転換
 

 何のことがお分かりになります?これだけでは、何が何だか分からないと思います。そこで、彼が記者会見で述べたなかから、大切な箇所を抜き出してみました。

 「金融市場調節の操作目標としては、マネタリーベースが一番適切だろうと考えました。それから、マネタリーベースは、端的に言うと、日本銀行の出す通貨、お金という意味でも分かりやすく、学界でも一番よく知られている指標ではないかと思います」

 「長めの金利をさらに下げていく、あるいは資産価格のプレミアムに働きかけていくことによって、より十分あるいは迅速に資金需要に対応できるようになり、その結果、これまでよりも、当然、資金需要が出てくるわけです。このような形で、かなり直接的にイールドカーブ全体を下げ、リスクプレミアムを縮小していく効果があります」

 「また、こうしたことを通じ、金利が下がり、リスクプレミアムが下がっていけば、投資家や金融機関、あるいは企業や個人などの主体は、他のポートフォリオに資産をシフトしていくわけです。そのようなポートフォリオがシフトしていく先には、色々な資産、例えば、株や外債やその他たくさんあると思いますし、一部の経済学者には、直接的に投資や消費に――特に投資に――シフトしていくという議論をする方もおられます。従って、ポートフォリオ・リバランス効果というのも、かなり期待できるのではないかと思います。その上で、市場・経済主体の期待に影響が出てくると、物価がこれまでよりも上がっていくという見方が出ます。今後、物価が 2%程度上がっていくと見込まれた場合には、設備投資や住宅投資、その他の投資の需要も増えてくることになります」

 さあ、如何でしょう? これで黒田総裁がどのようなことを考えているの分かったでしょうか?

 彼は、世の中に出回るお金の量が増えれば、即インフレになるなんてプリミティブな議論は展開しないのです。

 彼の主張を非常に単純化すれば次のようになるのです。

 長期国債をガンガン買う。

 そうすると、長期金利が下がる。長期・中期も含め、金利全体が下がる。

 そして、長期国債を買うと同時に、株や不動産を買う。

 そうすると、株や不動産の価格が上る。

 こうしたことの結果、投資家は、国債への投資から、株や不動産、或いは貸出などへ投資をシフトする。

 で、そうした変化が起これば、企業や家計の予想に変化が起こり、経済活動が活発となり、インフレが起きる、と。


 お分かりになりましたか?

 ところで、皆さんのなかには、マネタリーベースが2年間で倍増する訳だから、だったら、それだけでインフレが起きると何故言わないのかと不思議に思っていらっしゃる人も多いと思うのです。

 でも、言っときますが、確かにクロトンはマネタリーベースを2倍にすると言ってはいるのですが、実際に世の中に出回る日銀券の量は、たった3兆円しか増えないとも言っているのですよ。

 まあ、いいでしょう。

 いずれにしても、では、このクロトンの考えは、オリジナルなものなのでしょうか?

 それとも、これまで先人たちが言ってきたことをいろいろと取り入れた結果なのでしょうか?

 どう思います?

 実は、クロトンのこのアイデアは、バーナンキ議長が2012年8月31日にジャクソンホールで行った講演の内容とほぼ同じものなのです。

 このブログでもその講演の内容を訳して紹介したのですが‥憶えていますか?

 憶えていないですよね。

 では、大事なところを再現してみましょう。

Balance Sheet Tools

In using the Federal Reserve's balance sheet as a tool for achieving its mandated objectives of maximum employment and price stability, the FOMC has focused on the acquisition of longer-term securities--specifically, Treasury and agency securities, which are the principal types of securities that the Federal Reserve is permitted to buy under the Federal Reserve Act. One mechanism through which such purchases are believed to affect the economy is the so-called portfolio balance channel, which is based on the ideas of a number of well-known monetary economists, including James Tobin, Milton Friedman, Franco Modigliani, Karl Brunner, and Allan Meltzer. The key premise underlying this channel is that, for a variety of reasons, different classes of financial assets are not perfect substitutes in investors' portfolios. For example, some institutional investors face regulatory restrictions on the types of securities they can hold, retail investors may be reluctant to hold certain types of assets because of high transactions or information costs, and some assets have risk characteristics that are difficult or costly to hedge.

「雇用の最大化と物価の安定という連銀の使命を達成する手段としてバランスシート政策を使用するに当たり、FOMCは、特に長期国債、或いは政府機関債の取得に焦点を当てた。そうした債券は連銀法によって購入が許されているものである。そうした債券の購入を通して経済に影響を与えることができると信じられているメカニズムは、所謂ポートフォリオを通じたものである。そうした考えは、ジェームズ・トービン、ミルトン・フリードマン、フランコ・モジリア二、カール・ブランナー、そしてアラン・メルツアーなどの著名なマネタリストのアイデアが基になっている。この効果の重要な前提は、異なった金融資産は、投資家のポートフォリオ上、完全な代替資産にはなり得ないということである。例えば、ある機関投資家が彼らが保有することのできるある種の証券について法的な規制がかかったとするならば、個々の投資家はその種の資産を保有することを躊躇するようになるかもしれない。というのも、取引コストや情報コストがかかるからである。そして、ある資産はリスクを負うようなり、そのリスクをヘッジすることは難しいかお金がかかるようになる」

Imperfect substitutability of assets implies that changes in the supplies of various assets available to private investors may affect the prices and yields of those assets. Thus, Federal Reserve purchases of mortgage-backed securities (MBS), for example, should raise the prices and lower the yields of those securities; moreover, as investors rebalance their portfolios by replacing the MBS sold to the Federal Reserve with other assets, the prices of the assets they buy should rise and their yields decline as well. Declining yields and rising asset prices ease overall financial conditions and stimulate economic activity through channels similar to those for conventional monetary policy. Following this logic, Tobin suggested that purchases of longer-term securities by the Federal Reserve during the Great Depression could have helped the U.S. economy recover despite the fact that short-term rates were close to zero, and Friedman argued for large-scale purchases of long-term bonds by the Bank of Japan to help overcome Japan's deflationary trap.

「資産の不完全な代替性が意味するところは、個人投資家が入手できる様々な資産の供給に変化が現れるということは、そうした資産の価格や利回りに変化をもたらし得るということである。こうして連銀が、例えば住宅ローン抵当証券(MBS)を購入すれば、価格が上がり、利回りが低下することになろう。さらに、投資家はMBSを連銀に売却し、その代り他の資産を入手することによって彼らのポートフォリオには変化がもたらされるので、彼らが購入する資産の価格は上がり、その利回りは同様に低下するであろう。こうた措置により利回りが低下し、そして価格が上がることによって金融市場は緩和され、経済活動は刺激される。こうしたロジックに従い、トービンは大恐慌の際の連銀による長期債券の購入が米国経済の回復に貢献したと示唆する。当時、短期金利はゼロに近くなっていたという事実に拘わらずである。フリードマンは、日本銀行による長期国債の大規模な購入がデフレの罠から抜け出すのに貢献すると論じた」

Large-scale asset purchases can influence financial conditions and the broader economy through other channels as well. For instance, they can signal that the central bank intends to pursue a persistently more accommodative policy stance than previously thought, thereby lowering investors' expectations for the future path of the federal funds rate and putting additional downward pressure on long-term interest rates, particularly in real terms. Such signaling can also increase household and business confidence by helping to diminish concerns about "tail" risks such as deflation. During stressful periods, asset purchases may also improve the functioning of financial markets, thereby easing credit conditions in some sectors.

「大規模な資産購入策は、金融市場や広い意味の経済に違ったチャンネルを通じても影響を及ぼし得る。例えば、彼らは、中央銀行が以前よりもさらに緩和策を取るという姿勢を市場に示すことができると言う。そして、そうすることによって投資家の金利見通しを引き下げることとなり、また長期金利―特に実質金利ベースでみて―に下押し圧力をかけることになる。そうしたシグナルはデフレなどのテールリスクについての懸念を弱め、家計や企業の自信を回復させることにもなる。金融危機の局面では、資産の購入が金融市場の機能を正常化させ、そしてそれによって融資条件が緩和されることにもつながるであろう」

With the space for further cuts in the target for the federal funds rate increasingly limited, in late 2008 the Federal Reserve initiated a series of large-scale asset purchases (LSAPs). In November, the FOMC announced a program to purchase a total of $600 billion in agency MBS and agency debt. In March 2009, the FOMC expanded this purchase program substantially, announcing that it would purchase up to $1.25 trillion of agency MBS, up to $200 billion of agency debt, and up to $300 billion of longer-term Treasury debt. These purchases were completed, with minor adjustments, in early 2010. In November 2010, the FOMC announced that it would further expand the Federal Reserve's security holdings by purchasing an additional $600 billion of longer-term Treasury securities over a period ending in mid-2011.

「フェデラルファンズ・レートの目標値の引き下げ余裕が少なくなるなかで、2008年後半、連銀は、大規模な資産購入策(LSAPs)に着手することにした。11月、FOMCは、総額6000億ドル上るに住宅ローン抵当証券と住宅機関債の購入を発表した。2009年3月、FOMCは、この計画を大幅に拡大した。つまり、1兆2500億ドルの住宅ローン抵当証券と、2000億ドルの住宅機関債と3000億ドルの長期国債を購入することとしたのである。こうした措置は、若干の調整はあったものの、2010年初めには完了した。2010年11月、FOMCは、長期国債を6000億ドル分を2011年央までに追加的に購入することにより連銀の証券保有高を引き上げると発表した」

About a year ago, the FOMC introduced a variation on its earlier purchase programs, known as the maturity extension program (MEP), under which the Federal Reserve would purchase $400 billion of long-term Treasury securities and sell an equivalent amount of shorter-term Treasury securities over the period ending in June 2012. The FOMC subsequently extended the MEP through the end of this year. By reducing the average maturity of the securities held by the public, the MEP puts additional downward pressure on longer-term interest rates and further eases overall financial conditions.

「おおよそ1年前、FOMCは、償還期間延長策(MEP、ツイストオペ)を導入した。これにより連銀は、4000億ドルの長期国債を購入し、そして同額の短期国債を2012年6月までの間、売却することになった。FOMCは、その後、MEPを今年の末まで延長した。一般の投資家が保有する証券の平均償還期間を短くすることにより、MEPは、長期国債の利回りにさらなる下押し圧力をかけ、そして金融市場を緩和することになる」

How effective are balance sheet policies? After nearly four years of experience with large-scale asset purchases, a substantial body of empirical work on their effects has emerged. Generally, this research finds that the Federal Reserve's large-scale purchases have significantly lowered long-term Treasury yields. For example, studies have found that the $1.7 trillion in purchases of Treasury and agency securities under the first LSAP program reduced the yield on 10-year Treasury securities by between 40 and 110 basis points. The $600 billion in Treasury purchases under the second LSAP program has been credited with lowering 10-year yields by an additional 15 to 45 basis points. Three studies considering the cumulative influence of all the Federal Reserve's asset purchases, including those made under the MEP, found total effects between 80 and 120 basis points on the 10-year Treasury yield. These effects are economically meaningful.

「バランスシート政策はどれほど効果的であるのか? 大規模資産購入の4年近い経験で言えることは、研究の成果通りの結果が現れたということである。総じてみれば、連銀の大規模資産購入は、相当に長期国債の利回りを低下させたと。例えば、研究の結果、最初の大規模資産購入計画に基づいて行われた1兆7000億ドルの長期国債と住宅機関債の購入の結果、10年物国債の利回りは40〜110ベーシスポイント低下させた、と。そして、第二次の大規模資産購入計画に基づいて行われた6000億ドルの長期国債の購入の結果、10年物国債の利回りは15〜45ベーシスポイント低下した、と。MEPを含むこうした連銀の資産購入による累積的な効果は、10年物国債の利回りを80〜120ベーシスポイント引き下げたことになる。こうした効果は経済的に大変意味のあるものである」

Importantly, the effects of LSAPs do not appear to be confined to longer-term Treasury yields. Notably, LSAPs have been found to be associated with significant declines in the yields on both corporate bonds and MBS. The first purchase program, in particular, has been linked to substantial reductions in MBS yields and retail mortgage rates. LSAPs also appear to have boosted stock prices, presumably both by lowering discount rates and by improving the economic outlook; it is probably not a coincidence that the sustained recovery in U.S. equity prices began in March 2009, shortly after the FOMC's decision to greatly expand securities purchases. This effect is potentially important because stock values affect both consumption and investment decisions.

「重要なことは、こうした大規模資産購入の効果は、長期国債に限られないということである。例えば、社債や住宅ローン抵当証券の利回りも大きく低下していることが確認されている。特に、最初の購入策の際は、住宅抵当証券や住宅ローンの金利の大幅な低下がみられている。大規模資産購入策は、株価にも好影響を与えるように見える。恐らく貸出金利を引き下げる効果と経済見通しを改善する効果があるからであろう。FOMCが資産購入計画を大きく拡大することに決定した後の2009年3月に米国の株価が回復しだしたのは偶然の出来事ではないであろう。この効果は、株価が消費と投資の意思決定に非常に影響することから、大変重要なのである」

 
 ねえ、考え方の骨格は全く同じと言っていいでしょう。

 但し、バーナンキ議長は、自らの政策を大量の資産購入策と呼んだのに対して、クロトンは、マネタリーベースを政策目標とする量的・質的金融緩和と呼ぶだけの違いなのです。

 ともに共通する大量の長期国債の購入と平均残存期間の長期化。

 そして、両者とも、大量の長期国債の購入によって長期金利の低下が促される、と。そして、長期金利の低下が促されるので、投資活動が活発になるであろう、と。

 しかし、クロトンは大切なことを忘れてしまっているようなのです。

 それは、米国においても、そうした超緩和策を採用した結果、米国の長期金利はむしろ上昇に転じているという事実なのです。

 つまり、日本においても、米国を真似した政策を採用すれば、いずれ長期金利の上昇が起こるであろうということです。

 だって、人々がこれから先インフレが起きるであろうと予想するようになるのだったら、お金を貸す人々はインフレ率に応じて金利を上げようとするのは当然であるのですから。
klug


03. 2013年4月06日 22:35:34 : mHY843J0vA
竹中平蔵、アベノミクスを語る
竹中平蔵・慶応義塾教授に聞く
2013年4月6日

円安株高に支えられ、好スタートを切った安倍政権。政府の産業競争力会議の議員を務める慶応義塾大学の竹中平蔵教授に、アベノミクスについて尋ねた。

──安倍内閣は幸運ともいえるスタートを切りました。

いやいや、違うと思いますよ。これは安倍晋三首相が見事に期待の変化を作り上げたのだと思う。それを幸運だと言う人がいるが、それは本質を見誤っている。

これは故・速水(優)元日本銀行総裁に教わったのだが、鴨長明の『方丈記』の中に、景気とは「空気の景色」という説明が出てくるそうだ。まさしく、景気は「気」から。経済学的にはエクスペクテーション(期待)だ。それが今高まっている。それを高めたのは安倍首相の功績だ。

──アベノミクスをどう評価していますか?

3本の矢の考え方は極めて正しい。問題は、それをどこまで実行できるかに尽きる。次の日銀総裁に黒田東彦(はるひこ)・アジア開発銀行総裁を充て、1本目の矢は放たれた。2本目の矢も、短期的な財政拡大を一応果たした。

ただ、2013年度の基礎的財政収支(税収と国債費を除く歳出の差)の赤字は国内総生産(GDP)比で6.9%に達する。政府の目標どおり、20年度までにこの赤字をゼロにするなら、単純計算でも今後7年間、毎年1%ずつ改善していく必要がある。歳出削減であれ、増税であれ、それだけの負荷を毎年かけるのは大変なこと。中長期の財政再建シナリオがまだ見えていないし、シナリオをいつ示すのかもわからない。

3本目の矢に至ってはまだ形が見えていない。過去7年間に、成長戦略は七つ作られた。今回は日本経済の景色を変えるという、本当の意味での画期的な成長戦略を作れないと、8年目に8本目の成長戦略ができました、で終わってしまう。今夏の参議院選前までにどこまで示せるか、それがまさに問われている。

──成長戦略については、民間委員の意見が分かれているとの指摘が出ています。

民間委員だけでなく、霞が関や政治家の中にもどうしたらいいか、異なった意見がある。成長戦略の議論には、企業により多くの自由を与える構造改革の議論と、政府が民間部門にできるだけ多くのカネをつける産業政策の議論の二つがある。両者とも必要だが、あくまで前者にウエートがあって初めて後者も生きる。


竹中平蔵(たけなか・へいぞう)
慶応義塾大学教授 グローバルセキュリティ研究所所長
1951年生まれ。一橋大学卒業後、日本開発銀行、大蔵省主任研究官、ハーバード大学客員准教授などを経て現職。2001〜2006年、小泉内閣において 経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣などを歴任。ワールド・エコノミック・フォーラムのファウンデーション理事会メンバー。アカデミーヒルズ理事長、公益社団法人日本経済研究センター研究顧問、(株)パソナ取締役会長、(財)森記念財団都市戦略研究所長などを兼務。経済学博士。
──構造改革は何が焦点ですか?

たとえば、10年前にツイッターのようなものが出てくることを予測した人がいますか? どこに、どんな技術があるかわからないから、全面的な規制改革が必要になる。いろんな人に、いろんなチャレンジができるような仕組みを作っておく必要がある。それがあるからイノベーションが生まれる。

──規制改革では、労働市場改革にどこまで踏み込むかも注目されています。

国が抱えており、民間にやらせていない部分を解き放つことがすごく重要だ。たとえば、(一時休業などをした企業に賃金の一部を支給する)雇用調整助成金。本来なら、職業訓練を受けて、新しい職場に移って、経済成長していく分野にリソースを振り向けていくべきなのに、政府が補助金を出して抱え込んでいる。解雇規制も変えるべきだ。解雇規制を変えるというと、労働者をどんどんクビにしていいのか、という極端な議論をする人があるが、これは趣旨を歪めている。

──日本の財政再建は針の穴に糸を通すような難しさがあります。

奇策はない。ただ、一つだけ希望があるとすれば、デフレを早く克服し、名目成長率が3〜4%に達すれば、税収はものすごい勢いで増えていく。景気の回復局面では、名目GDPが1%増えると、税収は3〜4%増える。それがうまく続けば、財政再建につながる可能性はないわけではない。

01年に私が「骨太の方針」(毎年6月ごろにまとめる経済財政政策の基本方針)を作ったときに何を考えたかというと、当時の財政赤字がGDP比で5.5%だった。それを10年かけて解消するなら、GDP比の負荷は毎年0.5%で済む。ところが、今回はその倍の1%の負荷を毎年かけないと20年度までに赤字はゼロにならない。私がもし今後の財政再建計画を作るなら、20年度までの財政再建目標の達成時期を延長する。

──財政赤字を減らすには増税か歳出削減しか選択肢はなく、いずれにしても国民の痛みを伴います。

増税しても問題は解決しない。歳出をこのまま放っておくと、社会保障費が毎年1兆円ずつ増えていく。まず必要なのは歳出の抑制だ。(消費税率を10%に引き上げる)増税プランは、今ある赤字を補うためのもの。これでは消費税を30%にしても足りないし、国民は納得しがたい。

日本の社会保障は年金と医療、介護に非常に偏っており、若い世代の社会保障は圧倒的に劣っている。つまり、税と社会保障の一体改革ではなく、労働市場と教育と社会保障の一体改革を進めるべき。女性が働きやすくするために、労働市場の仕組みも変えていく必要がある。

今の年金制度は、問題はあるけれども、ひととおりのことはやっている。ところが、若い世代への社会保障は、日本は欧州の3分の1から4分の1にすぎない。ここにおカネを使うための増税なら、私は賛成だ。経済を強くする、サプライサイドを強くするような社会保障改革。今の改革にはその視点が欠けている。

──金融政策について伺います。黒田新総裁になっても、日銀の打てる手は限定的ではないですか?

それを考えるのが金融政策の専門家としての中央銀行だ。中身の政策手段は、独立した中央銀行としてやってもらいたいということに尽きる。ただ、私は、政策というのはつねにオーソドックスであるべきだと思っている。つまり、マーケットから国債を買い、マネーを増やして、その効果を見ながら(マネーを)コントロールしていく。まずは当たり前のことをやってみるということだろう。

──日銀副総裁に就任する岩田規久男氏は今後2年で2%のインフレを実現できると言っています。実現可能ですか?

可能でしょうね。ある程度の時間差はあるでしょうが、可能です。しっかりとした金融政策を行い、人々の期待を変えていけば実現できる。

──マネーを増やしさえすれば、本当に物価が上がるのでしょうか。

まあ、見ていればいいではないか。同じような批判は過去にもあった。不良債権処理はみんなに不可能だと言われたが、実現した。経済は中期的にはセオリーどおりに動く。もちろんタイムラグはあるけれども。

(撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2013年3月23日号)


04. 2013年4月07日 14:51:45 : rPtZjJ34SI
2013年 4月 07日 11:25 JST
日本の資金が外債に流入―欧米国債利回り低下

By MIN ZENG AND CYNTHIA LIN

 日銀が先週決定した金融緩和策の影響が世界の債券市場に及んでいる。投資家は利回りの高い商品を求めて動き回り、米国や欧州では国債利回りが低下した。

 フランスでは5日、国債需要の高まり価格が上昇(利回りは低下)、10年物と30年物の国債利回りは過去最低を更新した。ドイツ連邦債30年物利回りは昨年7月以来最低となった。英国の30年債利回りは昨年8月以来、最低水準を記録した。

 米国では5日発表の3月の雇用統計が予想を下回ったことから、国債需要が一層強まった。10年物と30年物の米国債利回りは4カ月ぶりの低水準となった。

 日銀の金融緩和策の目玉の1つは国債の買い入れの増額。日銀は毎月の新規国債発行額の約7割に相当する国債を買い入れることになり、投資家に衝撃が走った。

 日銀の発表を受けて、日本の国債価格は上昇、長期債は0%近辺の史上最低利回りを更新した。年金基金から保険会社、個人に至るまで日本の投資家は現在、より高い利回りを求めて外国債を買っている。

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Bloomberg News
金融市場に火をつけた黒田日銀総裁。日本経済も点火できるか?

 CIBCワールド・マーケッツ・ジャパンで資本市場取引担当エグゼクティブ・ディレクターの大江一明氏によると、ほとんどの機関投資家は「中央銀行には逆らうな」という格言に従って、外国の資産や米国債に資金をシフトさせているという。

 BNPパリバ(ニューヨーク)の国債取引部門のトップを務めるケヴィン・ウォルター氏は5日のアジア取引時間には、今年第1四半期には静かだった日本の投資家が大量に10年物と30年物の米国債を買ったという。

 米国みずほ証券(ニューヨーク)の国債トレーダーのリチャード・ブライアント氏は日本時間の4日夜、同社では「10人以上の日本の資産運用担当者」が米国債を買っていたと述べた。円建て商品以外にはあまり手を出さない新たな市場参加者もいたという。

 買いが集まったのは償還期間が最長の30年国債だ。5日の30年米国債利回りは2.867%で、日本の30年国債の利回り(1.2%)よりはるかに高い。日本の年金基金や生保は長期債務に見合う信用力の高い資産を必要としているため、米国債に引きつけられている。

 資金のほとんどは米国債など格付けが最上位の証券に流れ込んでいるが、リスクの高いスペインやイタリアの国債の利回りも低下した。スペインやイタリアの財政は不安だが、利回りは魅力的で、日本の投資家にとっては分散投資の対象となっている、と一部の市場関係者は指摘している。

 日本の投資家が目を付けている投資先は他にもある。RBSセキュリティーズ(コネティカット州スタンフォード)の米国債ストラテジー部門のトップ、ウィリアム・オドネル氏は日銀の金融緩和策で日本の株価が上昇したことから、一部の日本の投資家は日本国債から株に乗り換える可能性があると話した。

 しかし、為替の動きを見ると、海外投資のほうが有利だ。ドルとユーロが対円相場で上昇し続ければ、海外の債券のほうが円換算での利回りは高い。今年に入ってから円は対ドルで12%以上、対ユーロで10%以上下落している。

 インベスコ投信投資顧問の社長兼最高経営責任者(CEO)のアレックス・サトウ氏は年金に加え、個人投資家も海外に目を向けているという。「円安がさらに進むと考えているのではれば、海外の国債への投資を増やすいい機会だ」とサトウ氏は話している。


2013年 4月 06日 16:23 JST
日銀緩和策の評価は時期尚早=渡辺元財務官

By ALEX FRANGOS

 【香港】元財務官の渡辺博史氏は5日、日銀の新たな金融緩和策の有効性や緩和策発表後の円安傾向について判断するには時期尚早だと述べた。

 渡辺氏は日銀が今週決定したマネタリーベースの倍増などの大規模な金融緩和策について、「大きな一歩」「勇敢な新しい世界」と評価する一方、「注意する必要がある」と述べた。渡辺氏は今回の金融緩和策が為替、債券、株式市場でポジティブに受け止められたからといって、長期的にインフレを抑制し、成長を促進するということにはならないと指摘した。

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渡辺元財務官
 渡辺氏は現在、国際協力銀行の副総裁を務めている。新経済思想研究所(INET)の会議に出席するために訪問中の香港でコメントした。

 渡辺氏は米国の一連の金融緩和策のうち最初の2回について、市場の当初の反応は大きかったものの、その後、「効果が衰えた」として、日本の新たな金緩和策については6カ月後にその効果を評価する必要があると述べた。

 渡辺氏は日本政府が今年2月に黒田晴彦氏を日銀総裁に指名するまで、総裁候補の一人とみられていた。黒田氏も財務官経験者。

 渡辺氏は過去数カ月にわたって対ドル相場で円安傾向が続いていることで、日本の製造企業が事業の海外移転を考え直すようになったと述べた。渡辺氏によると、1ドル=85円の円高だった時には、「国内に製造を残す理由はなかった」と述べた。

 円安になると日本企業の海外での購買力が低下するが、渡辺氏は円安傾向になっても日本企業の国際投資は阻害されないとの見通しを示した。また、渡辺氏は日本企業がインドや中国の巨大な消費者市場、さらに北米の安価なエネルギーに刺激され、こうした地域に投資するだろうと述べた。

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主要中銀の金融緩和に拍車―FRBとECBに続き日銀も積極推進へ
 現在の1ドル=90円台後半の円相場については「定着している」としたが、「3桁は長くは続かない」と述べ、1ドル=100円に円安が進んでも一時的な動きになるとの見方 を示した。

 渡辺氏は日本企業が投資先として、シェールガス革命によるエネルギーコストの低下と北米への輸送コストの高さを理由に北米に目を向けるだろうと述べた。

 渡辺氏は「こうした分配シフトは既に始まっている」と述べ、北米のエネルギー部門に日本企業が既に投資していることを指摘した。

 中国については、日本企業は同国への投資を続けるが、中国の消費者向けの製品の製造は東南アジアにシフトするとの見通しを示した。

 日本のエネルギー需要は原子力から天然ガスに移っており、日本は供給断絶のリスクを低減するため、供給源の多様化を目指している。

 渡辺氏は名古屋の工業地帯がカタール産のガスに大きく依存していると指摘、「ホルムズ海峡で異変が起きれば大きな影響を受ける」と述べた。

 渡辺氏によると、日本企業はカナダ・バンクーバーの天然ガス輸出処理拠点の支援を目指しているという。


2013年 4月 06日 10:14 JST
円債市場、日銀の緩和を受け乱高下

By ELEANOR WARNOCK

 【東京】5日の日本の現物と先物の国債市場は、日銀の金融緩和策発表を受けて激しい値動きとなった。

 指標10年物国債利回りは、市場の期待ほど日銀が緩和しないと読んでいた空売り筋が買い戻しに走ったため、ここ最近の最低記録を更新する0.315%まで低下した。

 しかしその後、一部の投資家が利益確定売りに出たことから利回りは再び上がり始め、0.62%まで急上昇した。ディーラーらは、ヘッジファンドが大量の国債を売ったために、投資ポートフォリオリスク管理の観点から国内銀行が1兆円の国債売却を余儀なくされたとみている。

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Zuma Press
日銀本店

 東京証券取引所は国債先物が基準値を超える値動きとなったため、2008年以来初めて売買を一時停止したが、売買停止はこの日だけで2回におよんだ。

 こうした激しい動きは、バブルが崩壊する前1980年代後半に市場が見せた反応に似ているとみる向きもある。

 日銀は4日、向こう2年間で長期国債の保有残高を昨年12月末時点の89兆円から190兆円まで倍増し、緩和策の一環としてあらゆる満期の国債を買い入れ対象にすることを発表して市場を驚かせた。今まで日銀が買い入れ対象とする国債は3年物までに限られていた。

 SMBC日興証券のチーフ債券ストラテジスト、末沢豪謙氏は、日銀が国債買い入れを増やすと言っていたことを実行しただけだと指摘。その上で、現時点で国債を買い入れているわけではないために国債先物価格が急落し、加えて1日から新年度が始まったばかりという季節要因もあって、激しい買いの動きは出ないだろうとの見方を示した。

 同氏は、日銀が買い入れる価格水準と投資家が希望する購入価格水準とに大きな開きがあるため、市場の値動きは今後激しさを増すとみており、国債を買うのは日銀だけだろうと指摘した。

 ある市場関係者によると、日銀の決定は市場の予想を超えたため、この日の激しい値動となったが、数日以内には収まるとみられている。


05. 2013年4月08日 23:22:01 : xEBOc6ttRg
国債相場、混乱は長期化も 金融緩和の「副作用」に懸念
2013.4.8 21:08
 新たな金融緩和強化に基づく日銀の国債買い入れが始まった8日、国債先物相場は急上昇し、東京証券取引所は混乱を抑えるために売買を一時停止する「サーキットブレーカー」を発動した。売買停止後は、買いの勢いがやや一服。長期金利の指標である新発10年債の利回りは前週末終値に比べ0.010ポイント低い(価格は上昇)0.520%だった。大規模緩和の「副作用」が出た格好で、市場関係者からは相場の乱高下は長期化するとの見方も出ている。

 「不安定化した債券相場は、市場を人為的に操作しようとする日銀の手法に対する警告だ」

 「壊れた債券市場」という衝撃的な題名のリポートを出したみずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストはこう話す。中長期的には、国債消化が円滑に行われる安心感が、財政規律の緩みにつながる懸念についても警鐘を鳴らす。

 サーキットブレーカーは、金融緩和強化が決まった翌日の5日に続く発動だった。この時は買い注文が殺到し、長期金利が過去最低の0.315%に低下した後、0.620%まで上昇。乱高下により、売買は2度中断された。

 新たな金融緩和で日銀が予定する購入額は、毎月の国債発行額の約7割に相当する規模。「影響の大きさを市場がはかりかねているようだ」と指摘する市場関係者もいる。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジストは、「日銀のオペレーション(公開市場操作)の内容などを見極め、適正水準について市場参加者のコンセンサスができるまで、値動きの荒さは続くだろう」と、相場が落ち着くまで時間がかかるとみている。

 また、SMBC日興証券の末沢豪謙チーフ債券ストラテジストは「資産価格と実際の国力との差が大きくなれば、いつかはそれが修正される」と、実体経済に波及しなければバブル景気の再来になりかねないとの見方を示す。その上で、政府に対し、成長戦略や財政健全化への取り組みなどを求めている。

 それでも、日銀の金融緩和は円安株高を進めており、高く評価する市場関係者が多い。金利下落は住宅などへの投資拡大につながる一方、投資家の国債の持ち高を減らし、他の資産にシフトさせる期待もある。株や不動産などの資産価格の押し上げ要因となり、デフレ脱却を後押しする。

© 2013 The Sankei Shimbun & Sankei Digital


 


2013年 4月 08日 22:01 JST 更新
国債信用上は「ポジティブ」=日銀の新たな緩和―ムーディーズ 

 米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは8日、日銀が打ち出した新たな量的金融緩和策に関し、日本国債の信用評価上は「ポジティブだ」とする一方、日本経済再生に向けては「構造問題の解決にはならない」との見解を示したリポートを発表した。 

[時事通信社]


 


06. 2013年4月09日 00:12:28 : xEBOc6ttRg
本格始動するアベノミクス
一歩たりとも間違いが許されない綱渡り
2013年04月09日(Tue) Financial Times 

 日本は20年間ためらった後、ついに経済の綱渡りに挑み始めた。これは大胆であり、かつ必要な取り組みだ。綱渡りにはリスクもあり、日銀は少しぐらつきながらその第一歩を踏み出した。

 新総裁の黒田東彦氏が率いる日銀は先週、大規模な量的緩和プログラムを新たに打ち出した。安倍晋三新首相の経済対策「アベノミクス」を初めて実行に移した格好だ。

正しい診断書と正しい治療法


世界で最も難しい経済問題の解決を目指す安倍首相〔AFPBB News〕

 アベノミクスの目標は、世界で最も難しい経済問題を解決することにある。

 実のところ、日本は3つの経済問題を抱えている。これらは互いに絡み合っており、1つだけ切り離して対処することが不可能な均衡を生み出している。

 3つの経済問題とは、デフレ、低い経済成長率、そして財政赤字への構造的な依存である。

 安倍氏を見ているとわくわくするのは、彼が正しい診断書と正しい治療法を手にしているからだ。デフレには金融緩和で対処する。民間需要の回復への道筋をつけるために財政支出を増やし、後でこれを引き締める。そして構造改革を進めて経済成長率を引き上げる、というのがその骨子だ。

 これらを一度に、精力的に、そして必要な時間を十分にかけて実行すれば、日本経済は今の停滞から抜け出せるかもしれない。

日本が歩まねばならない狭い道

 15年前、10年前なら、いや5年前でも、このような施策が成功するチャンスはあっただろう。しかし年を追うごとに、一方ではデフレが続いたり、他方では債務危機が発生したりしたことで、日本が歩まねばならない道の幅は狭くなってしまった。

 これはアベノミクスを試みない理由にはならない。試みなければ惨事は避けられない。日銀のこれまでのためらいが本当に腹立たしいのは、そのためだ。しかし、ミスは許されない。

 その理由の1つはデフレ期待の根深さに求められる。物価下落の罠から脱出しようという過去の試みはいずれも、消費者がデフレ期待にどれほど強く捕らわれているかを示す結果に終わっている。

 2005年を思い出してほしい。円相場は1ドル=118円というレベルにあり、現在の97円よりかなり円安だった。日経平均株価はこの年だけで40%上昇して1万6194円に達した(現在は1万2833円)。

 日本以外の国々は好景気に沸いていたし、当時の小泉純一郎首相は選挙で構造改革を訴えて再選された。日本経済はそれでも持続的なインフレには戻れなかったのだ(確かにこれは、日銀がその後に利上げを行ったためでもある)。

 日本のトレンド成長率は、人口が高齢化するにつれて低下している。また苦しい時代が何年も続いたことで、国内総生産(GDP)比の純公的債務残高は135%に上昇した。日銀がこれから取る行動はすべて、信用できる財政政策と矛盾しないものでなければならない。

理想的とは言えない日銀の第一歩


日銀は規模の面ではいいスタートを切った〔AFPBB News〕

 こうした懸念を考慮すると、日銀が先週踏み出した第一歩は理想的なものではなかった。

 黒田氏は今回、大規模かつ従来型の量的緩和(QE)策を国債市場で打ち出した。株式や不動産の購入額も増やす計画で、こうした施策を物価上昇率が2%に達するまで続けると公約している。

 規模の面ではいいスタートを切ったと言えるが、目に見える結果が出てこなければ人々の期待は変わらない公算が大きいし、巨額のQEも銀行システムに潜む罠に捕らわれる可能性は残る。

 政府が財政赤字を出し続ければ、国債を買っている日銀はリスクにさらされることになる。さらに、QE自体には構造改革を促す効果はない。前日銀総裁の白川方明氏は慎重ではあったものの、構造改革を熱心に促そうとしたのは適切だった。

 日銀が次に取るべき施策は実物資産の――特に株式の――購入を大幅に増やすことだろう。具体的には、銀行と事業会社が持ち合っている株式を買い取ればよい。安倍氏と黒田氏は、日銀への株式売却は義務だと日本企業に告げるべきだ。

 このようにして株式の持ち合いを解消すれば、競争も促されるだろう。納入業者に自社の株式を5%保有されているということがなければ、その納入業者からほかの業者に乗り換えることは容易だからだ。

 また持ち合いを解消すれば、銀行が株式市場から受ける影響も小さくなるだろう。日銀のキャッシュは事業会社に直接流れるし、そこで配当を支払うよう圧力をかけておけば、株主にもキャッシュが流れる。

 さらに、日銀の国債購入の態勢と財政政策の進捗とをリンクさせておけば、安倍氏の側にも財政に対する有用な緊張感が生まれるだろう。


8日には一時、1ドル99円台まで円安が進んだ〔AFPBB News〕

 安倍氏はまた、株高と円安が政策発動の余地を作り出している間に結果を出さなければならない。といってもそれは、同氏から統治の権限を奪う無用な政治的痛みを意味するものではない(日本の首相のイスは壊れやすいのが常だ)。

 経済面の成功で得られた政治資本はほかのことには使わず、経済面での次の成功を手に入れるために使うことをはっきり示すべきだ、という意味だ。

 消費税率の引き上げ(現行の5%を2〜3年以内に10%に引き上げることになっている)は、予定通り実施すべきだ。これによる財政引き締めの効果をほかの施策で短期的に緩和することがあったとしても、引き上げの延期などはすべきでない。

 貿易の環太平洋経済連携協定(TPP)には参加すべきだし、日本の女性が仕事と子育てを両立できるよう支援する政策も自民党内の保守派の意向に関係なく推進すべきである。日銀いじめはアベノミクスの中でも容易な部分だった。今後は安倍氏がもっと難しいことに取り組む様子を見たいところだ。

破綻を経験することなく問題を解決する最後のチャンス

 もし経済統計が日本と同様な数字を示している国があったら、恐らくその国はとっくに危機に陥っているだろう。

 しかし、日本には目を見張る強さがあり、それゆえに脱出する道が残されている。世界トップクラスの輸出企業と巨額の貯蓄、そして社会に連帯感もあるこの国では、困難な改革も常に可能なのである。

 日本が破綻を経験することなく経済問題を解決できるチャンスは、今回が恐らく最後だろう。いよいよ綱渡りが始まった。人々は固唾を飲んでこれを見守っている。一歩たりとも間違いは許されない。

By Robin Harding

 

 
 


日本経済:アベノミクスの評価
2013年04月09日(Tue) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年4月6日号)

新首相のもと、経済状況は好転し始めている。

 東京の富裕層向けの自動車ショールーム、ナツメ青山では通常、1年にベントレー、フェラーリなどの高級車が300台ほど売れる。「今年は400台から450台売れると期待しています」と語るマネジャー、小熊健一氏の表情は明るい。小熊氏はこれも、首相に就任した安倍晋三氏の経済政策のおかげだと考えている。

 日本の株式市場は、安倍首相が率いる自民党が権力の座に返り咲く見込みがはっきりした2012年11月以降、40%以上上昇した。10兆円という、目が飛び出そうな額の財政刺激策は日本の建設会社を元気づけている。

日本のアニマルスピリッツを復活させられるか


 4月4日、日銀はデフレに終止符を打つべく、2年以内にマネタリーベースを2倍にする手を打つと宣言した。円安(円は安倍首相の発言で下落した)は輸出価格を下げて、苦境にある製造業の救いとなった。

 安倍政権下で初の発表となる3月の日銀短観調査では、製造業者の景況感が3四半期ぶりに改善した(図参照)。

 しかし、安倍首相が今後、日本企業に長い間欠けていたアニマルスピリッツを蘇らせると結論づけるのは早すぎる。

 ロイターが2月に行った調査では、85%の企業が2013年は給与を据え置くか削減する計画だと回答していた。手取り収入の重要な一部を占めるボーナスは、統計が始まった1990年以降の最低水準にある。

 企業が設備投資や昇給に消極的では、10年以上続いている物価下落を終わらせ、日本経済を再び2%のインフレ率にもっていくという安倍首相の計画は頓挫しかねない。3月29日に発表された2月の鉱工業生産指数は、予想外の停滞を示した。低迷する中国経済の需要減少が主な原因だ。

 4月1日に発表された短観でも、大半の企業は将来について悲観的だった。発表当日の1日、東京株式市場は2%下落した。

 しかしその翌日、安倍内閣は日本の電力産業を改革する大胆な計画を承認した。日本の電力市場は地域ごとに電力会社が独占しているために、料金が高止まりしている。安倍首相は電力会社の発電部門を送電部門から分離して、電力の小売り分野の競争を促進したい考えだ。

 国会の承認が得られれば、これは、電力部門では1950年代以来初の重大な改革になる。企業と消費者が受ける恩恵は大きい。日本の電力料金は近隣の韓国の3倍だ。しかし、この改革には障害が立ちはだかることが予想される。電力会社は政界に激しく圧力をかけている。


安倍内閣の支持率は上昇し続けている〔AFPBB News〕

 「今の政府に対する期待は大きいが、景気回復が自律的なものかどうか、見極めているところだ」。自動車産業に精密工作機械を供給する企業、西島のエリアマネジャー、西島寛氏はこう語る。

 安倍首相の円安政策のおかげで、同社製品は海外で価格が安くなっている。

 しかし西島氏は、安倍首相にも国外の情勢はどうすることもできないと指摘し、「今の世界経済は極めて不透明なので、我が社はこれまでの計画を変更しないつもりだ」と述べた。

 安倍首相にとって気がかりなことに、このような心情は大勢を占めていると思われる。さらに7月に予定されている参議院選挙までは好転しそうにないと語るのは、物流会社のDHLサプライチェーン社長の河村修一氏だ。7月の選挙後には、自民党が衆参両院を掌握する可能性がある。

 「多くの人が安倍首相に驚いていると思う。我々が考えていたよりも安倍首相はよくやっている。しかし、議会がバラバラの方向に引っ張られているようでは、経済は本格的には動き出さない」と、河村氏は話す。

 同氏によれば、多くの日本企業は、首相が自由貿易圏を目指す環太平洋経済連携協定(TPP)に日本を参加させられるかどうかも見極めようとしているという。自民党の有力な支持基盤である農家は、200人とも言われる自民党議員とともに、TPP加盟反対の態勢を固めようとしている。

農家を窮地に追い込むことへの恐れ

 日本の内閣府のまとめによれば、TPPへの参加により10年間でGDPを3.2兆円、率にして0.7%押し上げることが可能だという。農業団体の反対活動に打ち勝ち、参院選に勝利すれば、「アベノミクス」の定着を示すのにプラスになるだろうと、日本最大のインターネット小売企業、楽天の社長を務める三木谷浩史氏は予想する。

 三木谷氏は安倍首相の財政刺激策と金融緩和を高く評価しているが、本当の試金石は「国家成長戦略」を生み出せるかどうかだと考えている。

 三木谷氏によると、国家成長戦略とは、改革と規制緩和、そして政府主導の産業政策を意味する。安倍首相が医薬品などのオンライン販売のさらなる拡大を許可することを、三木谷氏は望んでいる。その措置が「とてつもない効率性」を生み出すという(そして恐らく、楽天のようなインターネット小売業者にとって恩恵となるだろう)。

 しかし、ここでも首相は、従来の自民党の支持基盤である日本の強力な医療系団体の圧力にさらされることになるだろう。

国家主義的な本能は封印?


安倍首相は8月に靖国神社に参拝するか?〔AFPBB News〕

 さらに気がかりなのは、筋金入りの国家主義者である安倍首相が、戦争責任の謝罪を撤回し、戦犯が祀られている靖国神社に8月に参拝するかもしれないとほのめかしていることだ。

 これは日本の最大の貿易相手国である中国を刺激するだろう。日中間の貿易は、既に小さな島々を巡る争いのあおりでダメージを受けている。

 三木谷氏は、安倍首相が経済界のために自らの国家主義者的な性向を封印すると予想する。「安倍首相はもっとそつがないし、賢明な人物だ」というのだ。では、改革についてはどうか? 「安倍首相は改革に成功すると思う。問題は、安倍首相がどのくらい妥協しなければならないか、という点だ。どんな場合も妥協はつきものだからだ」


 


07. 2013年4月09日 00:22:51 : xEBOc6ttRg
【第271回】 2013年4月9日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長]
リスクテークを促す中央銀行
海図なき国債買いオペの行方
 本誌を書店で読者が手にしている頃には、黒田東彦総裁率いる日銀は国債買い入れ拡大を中心とする「量的・質的に大胆な緩和策」を開始しているだろう。合議制ゆえに4月4日の金融政策決定会合で合意に至らない政策があったとしても、今月26日の会合では導入が決定されるだろう。

 これまでの日銀もかなりの額の長期国債を購入してきた。年間購入額は、政府の新規国債発行額に匹敵する規模だった。日銀がさらに大規模に長期国債を購入すると、市場で国債が不足して、長期金利が一段と低下する可能性がある。そうなると、預金の多くを国債投資に振り向けていた日本の銀行は、深刻な利鞘縮小に直面する。

 追い詰められた銀行は、期間収益を確保するために、これまでよりも長い期間の国債を購入するか、あるいは外債など他の資産へと運用をシフトさせる必要が生じる。つまり、日銀による国債購入策は、金融機関をムチで叩いて、より大きなリスクを取るように促す政策だといえる。FRBなど他の先進国の中央銀行も同じようなことを行っているが、これは妙な話だ。

 金融危機以降、米ドット・フランク法を代表とするように、世界中の金融規制当局は金融機関にリスクを取らせない規制を新たに生み出してきた。それなのに、中央銀行は超緩和策によって「資産をリバランスさせてリスクを取れ」とムチを振り回している。方向性がちぐはぐなのだ。

 かつてポール・ボルカー元FRB議長は「これまでの金融イノベーションは、金融機関が規制や税金を逃れるためのものであり、消費者や経済に恩恵をほとんどもたらしていない」と述べた。規制でがんじがらめになっている今の金融機関が中央銀行に「もっとリスクを取れ」と事実上圧力をかけられたら、規制の網をかいくぐる“イノベーション”を開発するところが自然と出てくるだろう。当局が捕捉できない新たな金融リスクが世界中で生まれる恐れがある。

 長期国債をオペで大量に購入して長期金利を押し下げる政策を継続して行うと何が起きるのか、実は世界の中央銀行は十分な知識と経験を有していない。FRBが典型だが、目先の景気刺激効果だけに目を奪われている。

 BIS(国際決済銀行)幹部のフィリップ・ターナー氏が2月に発表した論文はそのリスクに警鐘を鳴らしている。金融機関をより大きな金利上昇リスクにさらす問題、出口政策の困難さ等々、「あまりに難しくて、思わず無視したくなるような問題がいくつもある」。同氏は大規模な国債購入策は、「海図なき領域」だと指摘する。

 (東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)


 


【第259回】 2013年4月8日 広瀬 隆雄
「日本の金融緩和は米国の3倍もパワフルだ」
ジョージ・ソロスが日銀の采配を高く評価するワケ
日本国債よりも株や外国債券に投資のチャンスが広がる!
【今回のまとめ】
1. ジョージ・ソロスは財政ファイナンスを肯定している
2. 財政ファイナンスとは中央銀行が新発債を直接買い入れることを指す
3. 財政ファイナンスが「禁じ手」なのは一度はじめると病みつきになるため
4. これからは預金や日本国債はダメ。株や外国債などにシフトせよ
5. 欧州は日本の二の舞を演じている
6. ECB(欧州中央銀行)は金融緩和の余地があるのに緩和していない。ユーロがそれほど下がっていないのはそのため

「新しい経済学」を考えるための会議

 4月4日から7日にかけて、香港でアイネット(INET: Institute for New Economic Thinking)のカンファレンスが開催されました。

 アイネットとは、現在の世界が直面する経済問題に対して、真に役立つ指針を提供する新しい経済学を構築するために設立された機関です。

 その運営資金はあのジョージ・ソロスを座長とする篤志家から出ており、研究開発費の援助、学生に対する奨学金、市場関係者からのアドバイス、カンファレンスなどを通じて、開かれた学びとコラボレーションの場を提供することを目的としています。

元「金融の番人」からの大胆な提言

 今年のカンファレンスで基調演説を行ったのは、英国のFSA(Financial Services Authority、金融サービス機構。金融サービス全般を監督する官庁、日本の金融庁に相当)の元長官、ロード・ターナーでした。 

 その演説は、これまでタブーとされてきた財政ファイナンスを積極的に奨励する、型破りなものでした。

 財政ファイナンスとは、日本銀行などの各国の中央銀行が、新発債を直接買い入れることを指します。なおソロスは、ターナーの主張を自らの信念に理論的な裏付けを付与するものとして全面的に支持しています。

 ターナーは「財政ファイナンスはこれまで各国の中央銀行が行ってきたQE(量的緩和政策)やLTRO(3年物流動性供給オペ)などと理論的にはほとんど差異はない」と主張しています。

「モルヒネ」は「緩慢な死」よりマシ

 それにもかかわらず財政ファイナンスがとりわけ「危ない」とタブー視されるのは、その経済学上の運営・管理のむずかしさ故ではなく、むしろ政治的な理由によると彼は主張します。

 つまり、いちど財政ファイナンスを始めてしまうと、国民はそれのもたらすモルヒネ注射のような気持ちの良さの虜になってしまい、止めなければいけない時期が来ても、今度は「なぜ止めるんだ!」という意見が強くなって止められなくなってしまう、そこが「危ない」というわけです。

 こうした点で、ターナーは財政ファイナンスの孕んでいるリスクを決して軽く見ているわけではありません。

 しかし、日本が過去25年間辿ってきた「緩慢な死」への道を歩むよりは、リスキーでもこれを試してみる価値はあるというわけです。

「禁じ手」OK時代の資産運用

 4月4日に発表された日銀の緩和政策は、日銀による新発債の買い入れもそのスコープの中に含められていたので、いよいよ財政ファイナンスという「禁じ手」が始まったと考えていいと思います。

 月々7兆円という金額は市場が予想していたよりも多いものでした。この点についてソロスは、「買い入れ額は米国のFRBのペースとほぼ同じだが、アメリカ経済の方が日本より3倍大きいことを考えると、今回の日本の買い入れプログラムは3倍パワフルだ」とコメントしています。

 私の考えでは、日本のGDPに対する国債流通量(下図の棒グラフの赤い部分)はアメリカのそれよりも遥かに多いので、その分、買い入れプログラムも大きくする必要があると思います。


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日本国債や預貯金から株や外国債へとお金が動く

 ソロスは今後のシナリオについて、デフレが解消すると人々は日本国債の僅かな利回りでは満足しなくなるので、より有利な投資対象に向けてお金が動き始めるとしています。

 また、人々が「円安基調が定着する」と考え始めると海外投資を加速させる可能性も指摘しています。

 それは言い換えれば、これまで日本国債や預金といった、極めて保守的な投資対象に眠っていた資金が、よりハイリスク・ハイリターンな様々な資産へと飛び出してゆくことを意味します。日本株もそのようなお金の行き先でしょうし、外国債券や外国株式もしかりです。

欧州は日本の二の舞になる?

 ソロスは敢えてリスクを取りに行っている日銀の今回の采配を高く評価しています。それと同時にEUの経済政策は「日本の失われた25年の二の舞だ」と酷評しています。

 欧州ではリーマンショックの後、ギリシャ危機が起こりました。この問題を解決するためのEUの処方は、各国政府になるべく財政を切り詰め、実質的な賃金の切り下げによる競争力の回復を強要するものでした。

 一方、レバレッジを下げてリスク回避するために欧州の金融機関はバランスシートの圧縮を進めました。その結果、流動性はリーマンショック前に比べて71%も減少しました。しかも資本フローの実に52%を公的資金が占めるようになったのです。


 これは中小企業などの借り手からすれば、急にお金が借りにくくなったことを意味します。またECBなどの公的主体は、もっと果敢に流動性の枯渇に対して取り組む余地があることを示唆しています。

依然ユーロ高が続きやすい局面に

 このことはFXの投資戦略という観点からすればユーロを巡る金融政策は依然、引締め的すぎることを意味し、より大胆な緩和政策を打ち出した日本よりも通貨高(ユーロ高)になりやすいことを示唆しています。

 ただ、実際のところ下の失業率のグラフに見られるように欧州の景気は凄く悪いわけですから、ECBはそろそろ次の一手を打ち出さないといけない瀬戸際に来ているのです。


 当面はそのあたりのニュースがユーロの水準を決めることになると思います。

 

【第64回】 2013年4月9日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]
黒田日銀に二つの当然、二つのサプライズ
 黒田日銀の「量的・質的金融緩和」は強烈なデビューだった。この日銀砲の威力はすさまじく、株価は安値から500円以上高くなり、為替も瞬時に2円50銭以上円安にふれて結局5円程度も円安になり、債券は長期金利が前日比0.125%低い(価格は高い)0.425%と過去最低を更新した。世の中の雰囲気を「オセロゲーム」のように一気に変えた。

マネタリーベース2倍は当然

 黒田日銀の今回の決定について、筆者にとって二つの当然と二つのサプライズがあった。

 まず、当然の一番目は、黒田日銀のとった政策だ。黒田日銀は、インフレ2%を2年間で達成するために、マネタリーベースを2倍にするという。

 このマネタリーベース2倍に世間は驚いているが、日銀発表文では、マネタリーベースを138兆円→270兆円とするので、これを1年分でみれば70兆円程度の増加になる。

 筆者は1月23日付け本コラムで、「60〜80兆円のマネタリーベースの増加が必要になる」と書いているが、ほぼ同じ数字だ。岩田規久男日銀副総裁とは、デフレ問題について十数年来同じ意見をもっており、デフレ脱却のためにはどのような金融政策が必要かをこれまでも議論してきた。その一つが量的緩和によってマネタリーベースを増加させることで、そのためには年間どのくらい増やせばいいのかを具体的に議論してきた。

 筆者の1月23日付け本コラムでは、過去のマネタリーベースとインフレ予想率との関係から算出しているが、名目成長率と金融緩和との関係を示す「マッカラム・ルール」からも一定の仮定をおけば算出でき、両者は似たり寄ったりの数字になる。数学の定理で別々の証明法を用いて示すように、専門家であれば、一つの結論を出すために、複数の事実や理論を使えるものだ。

 当然の二番目は、事前リークがなかったことだ。これまでの白川日銀では、地ならしといわれるマスコミへの事前リークが横行しており、政策決定会合の前には、ほとんど決定内容がだだ漏れ状態だった。ところが、黒田日銀ではそうしたことがほとんどなかった。これは、当然のことであるが、いままでは当然のことが行われていなかった。

世間が驚いたことに驚いた

 二つのサプライズというと、一番目は6人の日銀審議委員すべてが先月と意見を180度変えて、黒田総裁に従ったことだ。6人の審議委員のうち何人かは意見を変えると思っていたが、全員が変えるとは思いもよらなかった。まるで、黒い駒を指したら、次々に白が黒にかわる「オセロゲーム」のようだ。白の白川日銀を一気に黒の黒田日銀に変えた黒田総裁のリーダーシップに脱帽だ。ここまでトップを入れ替えただけで、見事に意見が変わるのをみたら、やはりトップは重要ということがあらためて実感できた。

 二番目は、世間のエコノミストといわれる人たちが黒田日銀の決定内容に驚いたのに、筆者は驚いた。黒田総裁や岩田副総裁が、猛烈な量的緩和を行うのは目に見えていた。岩田副総裁は、マネタリーベースとインフレ予想の関係を専門家らしく数量的に述べていた。であれば、この程度の金融政策の内容は驚かない。この内容に、素人が驚くのは無理もないが、専門家であるエコノミストが驚いてはいけない。何も定見のない人たちであることが露見したではないか。

 このうち、審議委員6人すべてが「改宗」したのは、これまでの白川日銀が何だったのかと思ってしまう。もちろん、筆者は今回の黒田日銀の決定を高く評価しているので、「改宗」はいいことだと思うが、それにしても6人も同じ考えなら、なぜもっと早くできなったのだろう。

 いくら白川日銀で執行部3人の意見が強くても、6人いれば、もっと大胆な金融政策が行えたはずで、そうすればもっと早く、今のような「期待にあふれている経済」が実現できたはずだ。

 6人の審議委員は、インフレ目標2%のためには、いくら金融緩和すべきかが、具体的にわからない人たちなのだろう。もしわかっていれば、もっと前に提案していたはずだ。わかっていないから、黒田執行部の案に対抗できずに、全員賛成したのだろう。

審議委員は執行部のイエスマンか

 6人の審議委員とは何だろうか。民主党の一部からは、もっと早くやってくれれば良かったのにと怨み節も聞こえてくる。彼らは、安倍晋三首相や山本幸三氏らを除く自民党よりも、はるかにデフレ脱却に熱心であったので、審議委員の変節をいぶかしがっている。

 かつてバーナンキFRB議長が筆者に「政策変更するのは大変で、辛抱強く説得したり、審議委員の入れ替えを待たなければできない」と語った。バーナンキは、持論であるインフレ目標の導入に、途中にリーマンショックが挟まったものの、6年間も辛抱した。政策決定会合の審議委員は金融政策の専門家のはずで、専門家は簡単に他の人の意見に左右されないから専門家なのだ。

 ところが、日銀の審議委員は執行部のイエスマンなのだろうか。それはそれでやはり筆者にとっては驚きである。専門家には他人が折伏できない何かがあるものだ。日銀組織にはまだまだ不思議なことが残っていそうである。


 

 

緊縮の最大の被害者は子供

2013年4月9日(火)  サイモン・ジョンソン

米連邦政府の歳出削減を巡り共和党、民主党が妥協しなかったため強制削減が発動した。しわ寄せは弱者である貧しい子供にいく。教育の機会を逃せばその影響は生涯に及ぶ。国の最大の資産は人的資本。その価値を考えるなら、累進課税強化に踏み切るべしと説く。

 エコノミストが「財政再建」を議論する時、あたかも抽象的で複雑な目標であるかのように語ることが多い。だが実際には、問題は至極簡単で、問題の核心は財政赤字削減策の痛みを負うのは誰か、という点に尽きる。

 誰かの税金を引き上げるか、歳出を削減するか、あるいはその両方を行う以外に道はない。「財政再建」は専門用語であり、緊縮財政は常に所得分配の問題に行き着く。


3月から実施された連邦政府の一律歳出削減によって、貧困層の子供に対する教育の機会や医療保険の予算が大幅に削減されつつある(写真:Landov/アフロ)
緊縮の影響は最も貧しい子へ

 欧州の多くの国は当然、既にこの点に気づいている。今や米国が気づく番だ。米国の現状から判断する限り、緊縮財政の影響を直接的に最も被るのは、自分で自分を守ることが最も難しい人々、つまり貧しい子供たちだ。

 例えば、3月にスタートしてしまった歳出の強制的な一律削減措置は既に、就学前児童の教育を支援する「ヘッドスタート(低所得層の就学前児童に対して、十分な学習環境や栄養・健康環境を提供し、就学援助することを目的としたプログラム)」に悪影響を及ぼしている。

 米国の著名コメディアン、ジミー・キンメル氏が最近、自分が出演するテレビのトーク番組で、米国人がいかに財政問題について無知であるかを揶揄したところ、視聴者に大受けした。だが、この問題は同時に実に悲しむべきことでもある。一部の人の生活に及ぼすその影響が、極めて深刻だからだ。

 今の財政路線でいくと、約7万人の子供がヘッドスタートの恩恵を恐らく受けられなくなる。しかも、栄養不良の幼児を支援するプログラムやヘルスケア関連予算については、さらなる大幅な削減が計画されている。

 最も衝撃的なのは、下院で過半数を占める共和党が直近の予算案に盛り込んだ、低所得者向け医療保険「メディケイド」に関する劇的な削減計画だ。

 下院予算委員会のポール・ライアン委員長は、主にメディケイドの大幅な予算削減によって、向こう10年間に財政均衡を目指す予算案を提出している。

 メディケイドでカバーされる全人口のほぼ半分は、子供である。財政再建の痛みを低所得家庭の子供たちに負わせるなどということがあっていいのだろうか。

進めるべきは累進課税の強化

米国における格差は金融危機を経て一気に拡大した――米国における所得層別の実質所得の伸び

 エコノミストで米カリフォルニア大学バークレー校の教授、エマニュエル・サエズ氏の優れたウェブサイトに掲載されているデータによれば、1993年から2011年までに、人口の下位99%の所得層の平均実質所得は5.8%増加しただけなのに対し、上位1%の所得層では実質所得が57.5%も増加したという。実に上位1%の人々が、この間の所得成長全体の62%を手にしたわけだ(上表参照)。

 その原因の一端は、この数十年にわたり高学歴=高所得という構図が急速に高まったことにある(一般的に高卒以下の学歴しか持たない人の所得見通しは明るくない)。

 このことからも、課税制度の累進性を強める必要があることは明らかだ。増税分は民間部門では不十分な公共財への投資、具体的には低年齢の子供に対する教育や、予防医学などへの投資によって、小児ぜんそくをはじめとするありふれた疾病のために教育に支障が生じる事態を最小限に抑えるための手段を講じるべきである。

 こういうふうに考えてみてほしい。過去数十年間、多くの家族が合理的な生活手段が得られ、子供たちに明るい未来が開けていると思えた地域に住むことを選択し、職業を選んだ――。しかし、こうした判断の多くは間違いであったことが判明している。

「米国民は本来、平等だったはず」

 最大の原因は、情報技術(コンピューターやその使用方法の進化)が中間層の仕事の多くを奪ったことにある。貿易のグローバル化が加速したことも、こうした傾向に拍車をかけた。

 加えて米コロンビア大学のティル・フォン・ウェヒター准教授が論文で指摘しているように、両親の失業状態が長引くと、その子供たちは長期にわたって著しく悪影響を受ける。

 家族に人生のスタートを切る手助けをしてもらえない子供たちは、支援を受ける権利がある。だが、米国はそうした支援を提供してこなかった。

 2016年の大統領選における共和党候補の本命と見られているジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事も最近、まさしくこの点に触れている。

 全米最大の保守系団体が主催する保守党政治行動会議で、「(この国では)もし貧困家庭に生まれたり、両親が大卒でなかったり、父親の顔を知らずに育ち、英語が母国語でなかったりすれば、人生において不利な状況に立たされてしまう(本来、米国民は平等なはずなのに…)」と演説で語ったのだ。

 既に計画されている予算削減が、所得分布の下位の人々に特に厳しい影響を与えることを考えると、米国が今後支援を提供することはなさそうだ。

 米国はもちろん、やろうと思えば簡単に事態を是正できるはずだ。というのも、巨額の財政赤字は、富裕層と上位中間所得層に有利な減税策が取られたこと、財源の裏づけがないままにメディケア給付を処方薬にまで拡大したこと、2度にわたる外国との戦争、そして何より銀行制度が野放しにされたことにより、実体経済が著しい動揺に見舞われ、歳入が大きく落ち込んだことによるからだ。

子供の将来が国の将来を決める

 今日の子供たちは、こうした政策の間違いに何ら責任はない。ヘッドスタート計画から弾き出されつつある就学前児童は、こうした混乱が生じた時には、まだ生まれてもいなかった。

 貧しい子供たちに緊縮財政の影響を負わせることは公正でないだけでなく、経済的にも問題だ。エコノミストは、国の「人的資本」などと小難しい専門用語を使って説明するが、要するにこの言葉が意味するところは、国民はみんな、健康で教育を受けている必要があるということだ。

 筆者が最近、議会証言で指摘したように、十分な教育を受けなければ、将来の仕事の見通しは暗く、家族を持っても家計は厳しく、ひいてはその子供も十分な教育が受けられないという堂々巡りに陥ることになる。

 仮に刑務所に入るなどという回り道をすれば、悪循環から抜け出すのはさらに難しくなる。残念ながら、権力を持つ立場にいる者の中に、こうした状況を心に留める者はいなさそうだ。

 だが、彼らは事態を直視すべきである。初めて海外旅行をした時に、放置されて栄養不良で無教育な子供たちを見て、その国が今後50年間で世界最大の経済大国の仲間入りをする公算が大きいと考えるだろうか。そんなことはあり得ないだろう。

国内独占掲載:Simon Johnson © Project Syndicate

サイモン・ジョンソン

サイモン・ジョンソン氏はMITスローン経営大学院教授で、ピーターソン国際経済研究所のシニア・フェロー。IMFでチーフ・エコノミストを務めた経験を持つ。
Prospect誌は、同氏を「金融危機に臨む頭脳トップ25」の1人に選んだ。経済(及び経済学)が今どこに向かっているのか、を読み解く最も影響力のある人物との定評がある。
共著書にWhite House Burning: The Founding Fathers, Our National Debt, and Why it Matters to Youがある。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130405/246219/?ST=print


  


「首相指示」乱発の舞台裏

動き出した成長戦略

2013年4月9日(火)  安藤 毅

安倍晋三政権の「第3の矢」と国内外から注目される成長戦略。議論の過程で目につくのが各省庁への首相指示の乱発だ。戦略策定を待たずに進む政策も出始めたが、先行きに懸念も。

 第2次安倍晋三内閣が4月4日で発足から100日目を迎えた。日銀総裁人事やTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加表明といった難題もクリア。経済政策上の焦点は金融緩和、財政支出に次ぐ「第3の矢」の成長戦略策定に絞られてきた。

 政府は6月の取りまとめに向け産業競争力会議が経済財政諮問会議などの政府会議と連携しながら作業中。議論の過程で特に目立つのが安倍首相による指示の多さだ。

 1月23日の第1回産業競争力会議から2日後の日本経済再生本部で、早々と規制改革など10項目の政策の具体化と推進を関係閣僚に指示。その後も主要会議が開催されるたびに、安倍首相が政策の深掘りを関係閣僚に指示する場面が相次いでいる。

 「小泉純一郎元首相時代の諮問会議や民主党政権時代と比べても、首相指示の頻度はかなり多い。“安売り”を続ければ、安倍さんや首相官邸の求心力が低下しかねない」。安倍首相に近い議員らからこんな懸念も出ているが、成長戦略作りに関わる政府関係者は“乱発”の狙いをこう語る。

 「やるべき課題は分かっているのだから、各省庁を早く動かすことの方が大事。支持率が高い安倍首相の指示の意味は重い。これからもどんどん、指示を出してもらうつもりだ」

「六重苦」対応を優先

 この場合の「やるべき課題」とは日本企業が直面するいわゆる六重苦の解消を指す。円高、外国に比べ高い法人税、自由貿易協定の遅れ、厳しい労働規制、環境規制、電力不足(エネルギーコスト上昇)の6項目がそれだ。

 プロビジネス(企業活動重視)の姿勢を鮮明にする安倍政権。成長戦略の取りまとめを待つまでもなく、首相指示をテコにまずは経済界が求める課題の解決を急ごうという狙いだ。

 例えば、エネルギー政策では原子力発電所の稼働停止に伴うエネルギーコストの上昇が日本経済の関門になっている。この点に関し安倍首相は施政方針演説で「安全の確認された原発は再稼働する」と明言。電力会社が求める石炭火力発電所の新増設は、環境影響評価(アセスメント)手続きの明確化と迅速化を進めることが決まった。

 地球温暖化対策に関しても、民主党政権が掲げた2020年の温暖化ガスの排出量を1990年比で25%削減する目標を見直し、実現可能な内容を検討する。

 雇用制度では雇用調整助成金を段階的に削減し、これを財源に転職支援サービスを拡充したり、ハローワークが持つ求人情報を民間に開放したりすることなどが固まった。TPP交渉参加など重要な経済連携交渉も動き出している。

 「議論を始めた1月とその後の風景の違いを見てほしい。既に戦略は実行段階にある」。安倍首相の周辺は自賛する。

 もっとも一見迅速な政府対応は各省庁が「できることしかやらない」危険性もはらむ。医療機関の株式会社参入など民間議員が求めたテーマで関係省庁が反発するケースが相次いでいる。

 電力会社の送配電部門を切り離す発送電分離に向けた電力システム改革では「2015年通常国会に提出」としていた法案の当初案が自民内の議論で「提出を目指す」に弱められた。賛否が分かれる規制改革などのテーマによっては自民内の抵抗が強まるのは必至だ。

 アベノミクスの先行きを占う「第3の矢」。その成否は政府・与党が改革姿勢を共有し、政策実行の速度を維持できるかにかかっている。


安藤 毅(あんどう・たけし)


 



08. 2013年4月09日 11:06:06 : xEBOc6ttRg
2013年 4月 09日 08:38 JST
日銀の金融緩和策の影響、欧州や新興国にも wsj
By JESSICA MEAD AND NEELABH CHATURVEDI

 日本の投資家は日本銀行の金融緩和策を受けて世界的に高利回り探しをしており、これが金融市場全般に波紋を呼んでいる。

 影響は特に欧州で顕著で、フランスからトルコに至る債券市場の相場は、日銀が大胆な資産購入計画を発表した先週4日以来上昇している。

 日本の投資家は、日本国債よりも高い利回りを探しており、欧州の国債市場を物色している。日本国債は日銀の緩和策を期待して数週間上昇、利回りが低下したためだ。

 多くの日本の投資家はまた、ドルに対して4年ぶりの安値に落ち込んだ円への投資も減らそうとしている。金融緩和は通貨安につながるとみているからだ。金利の低下で通貨を保有する魅力が減るためだ。

 トレーダーやアナリストによると、日銀が先週発表した金融緩和策は非常に大規模であったため投資家が驚き、日本の一部の資金運用者は円建て債を売って、比較的利回りの高い他通貨建て債券を買った。

 ここ数日間に恩恵を被ったのはフランス、オランダ、オーストリア、それにベルギーだ。この4カ国での債券利回りで見た借り入れコストは8日に過去最低水準に低下した。

 スペインの2年物国債の利回りは2010年10月以来の最低となった。イタリア国債利回りは2月の議会選挙前の水準に下がった。同議会選の結果、同国政治は行き詰まり状態に陥り、国債相場は急落していた。

 日本の投資家からの需要に加えて、日本からの刺激が浸透していく中で資産を買いあさろうとするファンドマネジャーの広範囲な買いがこれらの市場を押し上げている、と指摘した。

 欧州での相場上昇は、中欧や東欧諸国のリスクが高めの国債やこれらの地域の多くの通貨にも広がっている。

 JPモルガン・チェースによると、日本の投資家による今年の海外債券の買い増し額は最大450億ユーロ(5兆8000億円)に上ると見られる。JPモルガンは、日銀は日本政府の新規国債発行額の1.6倍も購入すると予想。これは投資家が日本国債を売却してその資金で別の資産を購入することを促すとみられる。

 日本の投資家は、財政、政治面で依然として強い逆風を受けている国々に参入している。フランス政府は先週末、今年の財政赤字削減目標は達成できない公算が大きいとの見通しを示した。イタリアでは、議会選挙から1カ月以上たつのに政権が発足できていない。

 JPモルガンのストラテジストは調査ノートで、日本の投資家はフランスやベルギーなどのユーロ圏の高利回り国への投資を続けると予想した。

 イタリアの10年物国債利回りは8日、前週末比0.17ポイント低下して4.28%となった。10年物日本国債の利回りは0.015ポイント下がって0.515%となっている。

 JPモルガン・アセット・マネジメントの国際債券部門のトップ、ニコラス・ガートサイド氏は、こうした買いでもっと利益を被っているのが新興市場の債券かもしれないと述べた。同社は債券に約1480億ドルを投資している。

 ガートサイド氏は「利回りは相対的に依然かなり高く、一部の市場では実質利回りはプラスになっている」とし、「通貨上昇の見通しも需要を押し上げている」と話した。

 JPモルガン・アセット・マネジメントは日銀の金融政策決定会合の前からスペイン、イタリア、フランス、メキシコ、それにトルコの債券に投資しているが、ガートサイド氏は、今ではこれらのポジションに一段と確信を強めていると述べた。同氏の日本ポートフォリオも、日本国債が上昇を続ければ、利益を生むことになる。

 あまり保守的でない日本の投資家がこの1年ほどの間に買っているトルコ国債も8日に上昇した。ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(ロンドン)の新興市場ストラテジスト、イラン・ソロト氏は「トルコ市場は、トルコリラの安定を反映して、最も人気のある投資対象の一つだ」と指摘し、「リラのレンジは小さく、トルコ中央銀行の政策は比較的予想しやすい」と話した。


2013年 4月 08日 16:27 JST
【オピニオン】日銀による危険な賭け

By KEN COURTIS

 4月4日、日本銀行は2014年末までにマネタリーベースを倍増させることを目的とした大規模な金融緩和政策を発表した。日銀に紙幣増刷を始めさせるという公約を掲げて昨年与党に返り咲いた自民党の支持者はこのニュースに喝采を送った。しかし、インフレ率を急激に上げ、円の価値を下げ、さらに多くの債務を抱えるという日本政府の景気対策は日本だけでなく、他国にまで波及し得るかなりのリスクを伴っている。

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Xinhua/ZUMAPRESS.com
黒田東彦日銀総裁
 日本政府が宣言している目標通りにインフレ率が相当な幅で上昇した場合、当然ながら金利も上昇することになる。ここで問題となるのは、国家予算の4分の1がすでに債務返済に消えているということ、そして来年末には公的債務残高が対国内総生産(GDP)比で250%に達するということである。ただでさえ膨大な政府債務残高の金利負担が増大すれば、日本の財政にとっては大打撃となるだろう。

 次の数字で考えてみてほしい。日本の消費者物価上昇率が、安倍政権が目標に設定した2%という水準に達すると、10年物国債の金利は現在の0.50%から2.5%以上に上昇する可能性がある。5倍になった金利の影響で日本政府の平均資金調達コストが増加し始めると、大蛇のような債務返済が国家予算のほぼすべてを飲み込んでしまうだろう。さらに言えば、金利2.5%の環境下で政府債務残高を対GDP比250%という水準を維持しようとするだけでも、日本の名目GDPの年間成長率は6.25%でなければならない。インフレ率2%で調整した実質GDP年間成長率ならば4.25%でなければならない。

 実質GDP成長率4.25%は理論上考えられないこともないが、われわれが生きている間に日本で継続的に実現されることはまずないだろう。

 ところが、日銀の今回の政策がもたらす不安は深刻な財政問題だけではない。高インフレ率、高金利は日本の金融機関にとっても悲惨な状況を生み出すだろう。

 1980年代の資産バブルが崩壊して約20年、日銀は量的緩和の世界チャンピオンとなった。日銀は日本の金融機関に潤沢な超過準備を供給、金融機関はそれで国債を購入した。

 今日、日本の金融機関のバランスシートに計上されている保有国債の総額はGDP(約540兆円)の約80%に上る。自民党のインフレ率引き上げ策がさらなる赤字財政と共に実施されると、日本の国債市場は大幅に下落し、日本の金融機関のバランスシートは急激に悪化するだろう。これは1990年代の二の舞である。その結果、過去数年間の欧州債務危機が軽傷に思えるほど重篤な金融機関の救済や国家債務再編を経験することになるだろう。

 4日の発表では、日銀が数兆円規模の社債購入を続けることも確認された。自民党――日銀の独立性が強すぎると考えてきた人たちだが――は、その金額を拡大したがっているという。さらに自民党内には、日銀が今後最大100兆円の海外資産を買うべきだという議論もある。これは米連邦準備理事会(FRB)の今年の購入予定額とほぼ同額となる。

 そうした資産購入の目的の1つには円の価値の引き下げがある。しかし、世界経済に追加で100兆円の流動性を注入することは、実体経済に吸収されない超低金利マネーのプールが大幅に拡大されることにもなる。そのマネーの多くは最終的に、株式、高利回り債、新興市場の不動産、貴金属といった資産市場にどっと流れ込むだろう。つまり日本は、世界的な資産バブルへの資金供給においてFRB、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)の仲間に加わることになるのだ。

 緩やかなデフレから急激にインフレへ移行することで、日本は広大な金融不安のリスクにさらされることになるだろう。にもかかわらず、日本政府は扉を開いてそのリスクを受け入れようとしている。日本の経済規模や財政赤字の大きさ、日本の金融システムが世界の市場といかに緊密にかかわっているかを思うと、日本政府の戦略は世界中の人々に恐ろしい結果をもたらし得る。

(筆者のケン・コーティス氏はスターフォート・ホールディングスのマネジングパートナーであり、アジア、欧州、南北アメリカの複数の企業の取締役も務めている。ゴールドマン・サックス・アジアの元副会長)

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ドル99円台、行き過ぎた円高是正の過程=財務相
2013年 04月 9日 09:43


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[東京 9日 ロイター] 麻生太郎財務相は9日朝の閣議後会見で、外国為替市場で円相場が対ドルで99円台へ下落したことについて、行き過ぎた円高が是正される過程にあるとの認識を示した。

財務相は円相場について「為替の話等々は私から発言することはない」としながらも「少なくともリーマンブラザーズ(ショック)の前は1ドル=108円ぐらいだった。あの頃は貿易収支、経常収支ともに大黒字。しかし今は赤(字)という状況を考えて、今の情勢は、行き過ぎた円高が是正されつつある過程」と述べた。

韓国の玄オ錫(ヒョン・オソク)企画財政相が8日、日本の金融緩和策の成功を期待すると述べると同時に、このような量的緩和の波及効果を世界的に協議する必要があるとの考えを示したことには「日銀の政策など日本の政策はデフレ不況からの脱却のためにやっている、ということはモスクワ(で行われたG20)で説明し、その時に理解が得られたと思っている」と表明。「円安になっているのはその(政策の)結果論、付随して起きた話であって、目的はデフレ不況からの脱却だ」との考えを重ねて示した。

(ロイターニュース 基太村真司;編集 田中志保)


白井委員、月5兆円以上の国債購入など提案=3月日銀会合議事要旨
2013年 04月 9日 09:34

[東京 9日 ロイター] 日銀が9日に公表した3月6、7日開催の金融政策決定会合の議事要旨で、2つの国債買い入れ方式(基金・輪番)の統合と無期限の国債買い入れ(オープンエンド)の前倒しを提案していた白井さゆり委員が、毎月少なくとも5兆円程度の国債買い入れを提案していたことが分かった。白井委員の提案は1対8の反対多数で否決された。

同会合は白川方明前総裁の任期中最後の会合となった。日銀は景気判断を3カ月連続で上方修正した。


銀行ストレステスト、金融システムの耐久性改善に寄与=FRB議長
2013年 04月 9日 10:11

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[ストーンマウンテン(米ジョージア州) 8日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は8日、FRBが行った銀行のストレステスト(健全性審査)によって米金融システムの耐久性が改善したとの見解を示した。

議長は米銀行セクターの現状と金融危機以降の2009年のひどい状況を対比させ、経済成長にとって信用が重要であることを踏まえると、セクターの回復はより広範な景気回復にプラスだと指摘。

米アトランタ地区連銀が主催した金融安定に関する会合で、「米銀行システムの耐久性はそれ以降大きく改善している。ストレステストのより徹底した活用や精度向上に加え、規制当局が銀行による資本増強計画策定プロセスの有効性により重点を置いたことが、この改善にある程度寄与した」との見解を示した。

議長は直接、米経済や金融政策の見通しについて言及しなかったが、超緩和政策を続けている理由を示唆し、「4年前と比べて経済は非常に強くなっているが、状況は明らかに依然としてわれわれ全員が望む水準に程遠い」と語った。

また、米金融機関は資本増強を通じてバランスシートを拡大したが、短期資金への依存が過度に大きい金融機関がまだ多く、問題が生じる可能性が若干あると警告。

「流動性、資金調達面ではある程度の持続的な改善が依然として必要だ。特に規制当局は引き続きホールセール・ファンディングへの依存低下を促す」と述べた。

ストレステストについては、経済が改善しても満足してしまわないよう、厳しいシナリオを維持すべきだと指摘した。

FRBのストレステストの内容が十分に厳しいものとなっていないとの批判が一部であり、金融機関はFRBの手法を完全には理解できていないとの不満を挙げていた。

バーナンキ議長は方法についてあまり詳細を提供しすぎると、金融機関の内部統制的なリスクマネジメント体制を弱体化させる結果につながるとの見方を示した。

金融危機時に、FRBは迫っている危機的な状況を見逃し、過度なリスクを取っていた金融機関に寛大な対応をし過ぎたと批判された。

質問への回答の中で、バーナンキ議長は金融改革は過度にコストがかかり、厄介なものとなっているという見方を否定。危機によって、改革の必要性が明らかになったと述べた。

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主要先進国の緩和政策、すべての関係国に有益=米FRB議長
2013年 04月 9日 09:18

[ワシントン 8日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は8日、世界の主要先進国の緩和的な金融政策は全般的にすべての関係国にとって有益だとの見解を示した。

議長は「大半の主要先進国は緩和的な金融政策を実施している。差し引きすると相互に建設的だ」と述べた。


米住宅市場はバブル化の恐れ−コロニー・キャピタルク

  4月8日(ブルームバーグ):米投資会社コロニー・キャピタルの創業者であり会長のトム・バラック氏は、米住宅価値が過大評価される恐れがあると指摘した。低水準にある借り入れコストのほか労働市場の改善が需要を押し上げていることなどを理由に挙げた。
バラック氏は8日、ブルームバーグ・ドーハ・カンファレンスのインタビューで、「資産バブルは確実にある。資産バブルは成長がないときには必要だ」と述べた上で、「新築住宅に関して言えば、建築業者が多数の住宅用地を購入する。従って次は土地ブームになるだろう」と続けた。
米金融当局は住宅ローン担保証券(MBS)の購入を通じて借り入れ金利の押し下げを図り、景気を刺激している。当局の刺激策を受けて、住宅購入需要は拡大し、在庫水準は低下している。先月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合では毎月850億ドルの資産購入策を維持する方針が決定された。  
全米20都市を対象にした1月の米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)/ケース・シラー住宅価格指数 は2006年6月以来で最大の伸びを記録した。JPモルガン・チェースは先月、2013年の住宅価格の上昇率見通しを7%と2倍以上に引き上げた。一方、バンク・オブ・アメリカ(BOA)は住宅在庫不足と買い手の需要増を背景に8%の上昇を予測している。
コロニー・キャピタルなど一部投資会社は住宅価格が2006年7月にピークをつけて下落して以降、住宅を購入している。コロニーは購入後の住宅を賃貸物件として貸し出す計画で、これまでに物件購入資金として22億ドルを調達した。     
バラック氏は、「昨年は住宅の実質価値が上昇したことによって、借り換えが可能となった」と指摘、「そうなれば主婦は冷蔵庫の買い替えに後ろめたさがなくなる。お父さんたちは自動車を購入しようとする。誰もが明るい気分だ。ただし金融当局がコンピューターで数字を変えている以外、現実に何も起きてはいないのだ」と述べた。
原題:Colony Capital’s Barrack Sees Bubble in U.S. HousingMarket (2)(抜粋)

更新日時: 2013/04/09 01:24 JST

サマーズ元米財務長官:米国は健全な成長へ−黒田日銀を評価

  4月6日(ブルームバーグ):サマーズ元米財務長官は米経済が今年も来年も健全な成長を遂げると予想し、3月の米雇用統計で雇用創出の伸びが鈍化したことについて「パニックになる必要はない」と述べた。
サマーズ氏はブルームバーグテレビジョンが週末放送する「ポリティカル・キャピタル・ウィズ・アル・ハント」に出演し、今年の米経済成長率が2.5%を超え、来年は3%を上回る成長となる「公算大」だと述べた。
労働省が5日発表した3月の非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比8万8000人増と、9カ月ぶりの低い伸びにとどまったほか、ブルームバーグのエコノミスト調査での最も悲観的な予想をも下回った。
サマーズ氏(58)は、景気の「基本的な勢い」は引き続き「失業ギャップを埋めるペースで拡大している」と語った。
同氏は欧州に触れ、キプロス救済をめぐる混乱が長引く悪影響を及ぼす恐れがあると警告。「キプロス問題の対応がまずく欧州で大きな不安感が生まれてしまったようだ。懸念すべきことだと思う」と述べた。
一方、日本銀行の黒田東彦総裁が今週打ち出した大規模な緩和策については、15年に及ぶ日本のデフレを終わらせるための「大胆な実験」だと称賛。「ここ数カ月の日本の株式市場や期待に実証されているように、これまで行ってきたことに対し前向きな評決が下されていると言うべきだろう」と言明。その上で、日銀の新たな政策の有効性が明確になるのには時間がかかると指摘した。
「過去の無責任なマクロ経済政策においては最初の数カ月は非常に素晴らしい恩恵を生み出し、その後に問題が生じることがよくあった」と話した。
原題:Summers Sees 2013 Growth Healthy With No Need to Panic onJobs(抜粋)
更新日時: 2013/04/06 17:49 JST

2013年 4月 08日 18:48 JST
日本の金融緩和に対処するための3つのヒントwsj

By ALEX FRANGOS

 日銀が先週発表した異次元の量的・質的金融緩和を受けて、日本の預金者や銀行、投資家がブラジル国債やタイ株式といった高利回りの投資先を求めて円を海外に流出させるのに伴い、アジアや新興諸国に資金が大量に放出される可能性がある。


European Pressphoto Agency
経済学者のバリー・アイケングリーン氏
 割安な日本の資本を確保するというのは受け手にとっては良いニュースのように聞こえるが、速すぎるペースでの多すぎる資金はインフレや不動産バブル、各国通貨の上昇といった問題を招きかねない。また、資金が急速に流出する場合には、経済的なむち打ちのような症状を起こしかねず、企業や消費者への信用供与が突然厳しくなる可能性もある。

 経済学者で為替の専門家であるバリー・アイケングリーン氏は、どのように対処したらいいかについて、各国中銀当局者にいつくかのヒントを示している。カリフォルニア大学バークレー校の教授である同氏は5日、香港で開かれたインスティチュート・フォー・ニュー・エコノミック・シンキング(INET)の会議に出席した際に、ウォール・ストリート・ジャーナルに対し以下のような見解を示した。

1)(やっと)日銀が積極的な姿勢になったことに拍手

 アイケングリーン氏は「アジアの他の諸国は自分たち自身に問うてみる必要がある。円安で近隣諸国にやや不利益が生じるにしても、日本がリセッション(景気後退)から抜け出せずにいるほうがいいか、日本が再び景気拡大を始めるほうがいいか」と語る。

2)資金の流入と円安による輸出競争力の喪失に対処する

 「日本の近隣諸国は用心としての金融統制を厳格化できる。住宅市場の頭金や担保要件に関して香港方式の政策を導入できる。輸出セクターへの影響について懸念するのであれば、それを乗り切る資金を提供できるだろう。個別の副作用に対処した上で、日本に必要なことをさせるほうがいい」

3)歳出のペースを落とす

 「諸国が積極的にすべきことは――米国人がこんなことを言う皮肉は分かるが――財政政策に一層依存することだ。つまり、巨額の資本流入を受ける側であれば、財政政策の引き締めにより、内需や国内のインフレ、国内不動産、国内の金利などに対し、下向きの圧力をかけられる。資本流入といった世間一般の人の懸念から程遠いことに対応して財政政策を引き締めることは政治的には容易なことではないが、解決策の一部となり得る。チリのような諸国は資本流入に対しこうしたことを行っている」

異次元緩和に凝らした「配慮」−−次の注目は「波及ルートの説明」−−13年4月8日

主任研究員 愛宕伸康

【「『量的・質的金融緩和』の導入について」の読み方】

 日銀は4月3、4日に開催された金融政策決定会合で、「量的・質的金融緩和」を導入した。打てる手はすべて盛り込み、緩和規模も市場予想を大きく超える、まさに「異次元」なものとなった。会合直後に発表されたステートメントにも工夫が施されている。

 まず「分かりやすさ」への配慮が随所にうかがえる。「期待」の重要性を重視する黒田日銀の最大のこだわりと言える部分だ。「2倍」というシンプルなキーワードで大胆さを強調し、ステートメントの文章も断定口調で簡潔である(一つの文章が2行、多くて3行以内)。さらに、リスクや構造問題などに対するコメントがほとんど盛り込まれなかった。例えば、「金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し・・・」、「デフレからの脱却には、急速な高齢化のもとでの趨勢的な成長率の低下という、長期的・構造的な課題への取り組みが不可欠である」は追加緩和の際の常套句となっていた。賛否はあろうが、「期待」に働きかける上で冗長と判断されたのであろう。

 また、「出口」と財政ファイナンスと受け取られないためへの配慮も見受けられる。「(物価安定の目標が)安定的に持続するために必要な時点まで継続する」との時間軸は、緩和効果を高める狙いと同時に「出口」への配慮という意味もある。財政ファイナンスについては、そのための防波堤だった「銀行券ルール」を「廃止」ではなく「一時停止」としたほか、「財政ファイナンスではない」と明記。前者は「出口」を意識しているともとれる。

【「物価安定の目標」実現の鍵は賃金が握る】

 さて、次に注目されるのは26日の展望リポートだろう。今回、「現時点で必要な政策を全て講じた」(4日の総裁記者会見より)のだから、14年度の消費者物価(消費税率引き上げの影響を除く)の見通しは2%に相当近いものになるはずだ。また、緩和効果の波及ルートについても分かりやすい説明が求められる。数量方程式だけでは説明できない。

 波及ルートに関しては、やはり企業部門の回復が家計部門へ波及するかどうかがポイントだろう。日経センターでは5日に公表した「国際比較で見る日本のデフレの背景」と題するリポートで、賃金の重要性を強調している。そのポイントはこうだ。@日・米・独・韓のいずれも賃金と物価の相関が高く、賃金上昇率の高い順に物価上昇率も高い。A日本では、景気後退期は賃金を引き下げ景気拡大期は非正規を中心に雇用を拡大させるため、賃金には「上方硬直性」がある。Bデフレ脱却のためには企業が賃金を継続的に引き上げることが必要で、そのためには持続的な経済成長への期待が高まるような成長戦略が重要。

 以上の大胆な金融政策が奏効し実際に長期デフレから脱却できれば良いのだが・・・、来週は「物価安定の目標」を実現する上で不都合な事実を紹介しよう。
http://www.jcer.or.jp/angle/index4577.html


09. 2013年4月10日 09:55:00 : xEBOc6ttRg

景気上昇は短命に終わる可能性も

アベノミクスの中間評価

2013年4月10日(水)  小峰 隆夫

 安倍政権が発足して以来というもの、株価が上昇し、円安が進み、企業マインドが改善するなど、経済に上向きの動きが続いている。結果を見る限り、これまでのところ安倍政権の経済政策は大成功だと言える。

 こうした経済の好転をもたらしたのが、安倍政権の一連の経済政策「アベノミクス」だといわれている。では、そのアベノミクスなるものは何か、それは本当に効果を上げているのか、そしてその政策の先行きに懸念すべき点はないのか。以下で、アベノミクスの中間評価を試みよう。

中間評価の視点

 最初にいくつかの点を断っておこう。

 アベノミクスについては、賛成論と反対論が入り乱れている。特に、金融政策については、思い切った金融緩和によってデフレから脱却できるとする、いわゆる「リフレ派」は、アベノミクスの効果に大きな期待を寄せ、反リフレ派の議論を批判している。一方、反リフレ派も、さまざまな角度からリフレ派の議論を批判している。

 こうした議論を横で見ていると、私などは「よくそんなに断定的に言えるものだ」と感心してしまう。私自身は、一言で言えば、「まだよく分からない面が多く、評価を下すのは早い」と考えている。その理由としては次の2点がある。

 第1に、アベノミクスそのものの実態が不明である。

 アベノミクスはいわゆる3本の矢、「大胆な金融緩和」「機動的な財政運営」「民間投資を促進する成長戦略」からなると説明されている。

 しかし、これらアベノミクスとされるものは多様なパッケージであり、その内容が理論的・体系的に示されているわけではない。成長戦略のように、まだその内容が示されていないものもある。したがって、「アベノミクスに賛成か反対か」を問われても、ほとんどの人は「よく分からない」か「ある部分は賛成だがある部分は反対」となるはずだ。

 第2に、その効果は全く不透明である。3本の矢のうち実際に矢が放たれたのは「機動的な財政運営」と「大胆な金融緩和」であり、「成長戦略」は現在検討中である。

 また放たれた矢も、まだ飛び出したばかりであり、的に当たるかはよく分からない段階である。機動的な財政運営のうち、2012年度の補正予算は既に決定し動き始めているが、13年度予算の執行はこれからだ。金融政策についても、4月4日に新体制下で最初の政策方針が決まったばかりで、これもその効果が現れるのはこれからだ。

 こうして実体もその効果もまだ不明である段階から、激しく賛否を戦わせてもあまり生産的だとは思えない。リフレ派も反リフレ派も、できるだけ早くデフレ状態から脱却し、経済成長を通じて国民生活を豊かなものにしていこうとする最終目標は同じなのだから、お互いに相手を攻撃するよりは、両者の共通点を探り、長期的な観点から望ましい政策の方向を考えるのが適当だと思う。

 そこで、以下の私の中間評価では、賛成か反対かの議論を展開するのではなく、「これならリフレ派も、反リフレ派も納得するのではないか」という現段階での常識的な見方を提示してみたい。

アベノミクスと景気

 安倍政権の発足後、市場は円安、株高へと変化し、景気好転ムードが高まっている。アベノミクス支持派は、これこそがアベノミクスの効果であり、これを機に日本は失われた20年から脱却できると主張する。これに対して、反対派は、もともと円安・株高になる局面にあった、または、必ずしも市場の動きは実態に沿ったものではないとしている。

 これについては、私は「安倍政権発足後、経済主体のマインドは好転し景気が上昇に向かっていることは事実だが、2014年度には反転して後退局面に入るリスクがある」と考えている。この見方に反対する人は少ないのではないか。

 安倍政権発足後、まず、市場が反応し、円高、株安が進行し、その後長期金利も低下するという理想的な展開になっている。こうした中で、企業や家計のマインドも改善していることは事実である。この段階では、まだ現実の経済には特に変化は起きていないわけだから、これが「アナウンスメント効果」であることは間違いない。

 では何をアナウンスしたことが雰囲気を変えたのか。多くの人は大胆な金融緩和をアナウンスしたことが影響したと考えているようだが、私は、政権が「成長志向、企業志向、物価上昇志向、公共投資増額志向」を明確に示したことが大きかったと考えている。すなわち、民主党政権時代は、特に初期の段階では「成長より幸福」「企業より生活」「反公共事業」を強く志向した。選挙の結果だから文句を言うわけにはいかないが、経済を知る多くの人々は「それで本当に大丈夫なのか」という不安を覚えていたのだと思う。それが安倍政権になって一転、強い成長志向を示したのだから、その転換効果は大きく、これがマインドを大きく変えたのではないか。

 マインドだけではなく、実際に景気は良くなっているようだ。第1線エコノミストの将来予測を定期的に調査している「ESPフォーキャスト調査」(日本経済研究センター、2013年3月)によると、「既に景気の谷を過ぎた」と考えているエコノミストが34人、「過ぎていない」はゼロであった。またほとんどのエコノミストが、その谷は2012年11月だったと答えている。つまり、まさに安倍政権が発足してから、日本経済は景気の上昇局面に入ったとする考えが多数派となっているのである。

 成長見通しも上方修正されている。同じくESPフォーキャストによって、エコノミストの2013年度成長率(実質)の平均予測を見ると、2012年11月の時点では1.4%だったのが、2013年3月には2.2%へと高まっている。

 こうして、日本経済は安倍政権の発足とちょうどタイミングを合わせて景気上昇局面に入ったように見える。しかし、次のような点で、この景気上昇には一時的な要因が作用していることに注意する必要がある。

 第1に、そもそも2012年の落ち込みは一時的なものだった。2012年の4月頃から景気が後退局面入りし、秋口以降その落ち込みが大きくなったのは、エコカー減税がストップしたことや、日中関係の悪化で対中国輸出が大幅減となったことが影響していた。これらの後退要因はいずれも一時的・限定的なものだから、その影響がなくなる2013年には、景気がある程度持ち直すことは想定内のことであった。

 第2に、消費税率の引き上げを控えた駆け込み需要がある。2014年4月には消費税率が5%から8%に引き上げられるので、特に年度後半には前倒し需要が出るだろう。中でも金額の大きい住宅や自動車についてはかなりの駆け込み需要が見込まれる。

 第3に、2013年は公共事業の増加がかなり経済を押し上げるだろう。既に政府は、1月に決定した緊急経済対策で5.2兆円の公共投資を追加し、2014年度の政府予算案でも、前年度当初予算比15.6%増の公共投資予算を計上している。公共投資の波及効果は小さくなっているといった議論もあるが、これだけの規模で支出を増やせば、直接的な効果だけでもかなり成長率を押し上げるはずだ。

 こうした一時的要因は、現段階では景気を下支えしているが、それが消えた段階で今度は景気の下押し要因となる。となると、問題は2014年度だということになる。消費税増税前の駆け込み需要は、要は需要の前倒しだから、2014年4〜6月期には大きな反動減が見込まれる。また、一方で財政再建の要請がある中で、これだけの水準の公共投資を維持することは困難だから、2014年度の公共投資は減少することになるだろう。ESPフォーキャスト調査でも、2014年度の成長率予測の平均は0.3%と大きく落ち込む姿となっている。

 現在の景気上昇は短命に終わる可能性があるということである。

大胆な金融緩和をどう評価するか

 「リフレ派」「反リフレ派」の間で激しい論争があるのが、第2の矢「大胆な金融緩和」についての評価である。リフレ派は、デフレは貨幣的な現象であるから、インフレ目標を設定し、適切な金融政策さえ行えばデフレから脱却できると主張する。一方、反リフレ派は、金融政策のみでデフレから脱却するのは困難であり、むしろインフレや財政規律の喪失などの副作用を招くとする。

 こうした点について私の見解は次の4つに整理できる。これについても、多くの人はあまり異論はないのではないか。

 第1に、インフレ目標については、2%のインフレ目標を設定すること自体に違和感はないが、2%という目標を硬直的に考えないよう注意すべきだ。

 インフレ目標自体は、中央銀行の独立性を担保する手段として、多くの国で行われていることである。また、「2%を目標にする」という点についても、物価にはもともと1%程度の測定上の上方バイアスがあるとされているから、ある程度の余裕を含めて2%というターゲットを掲げることは自然である。

 しかし、「何が何でも2%にする」という硬直的な姿勢にはリスクがある。例えば、金利の低下は、一般物価よりも資産価格に敏感に影響するので、物価が上がる前に資産価格が上昇する可能性がある(現に株価は上昇している)。現段階での株価・地価がバブルだとは言えないが、将来仮に、物価が2%になる前に資産価格がバブル的な上昇を示すようなことになったら、それを抑えるために金融緩和の程度を弱める必要が出てくるかもしれない。

 また、仮にエネルギー価格が急騰して,消費者物価が4〜5%上昇するといった事態になった時、2%に向けて金融を引き締めると、実体経済が相当大きく落ち込むことになりかねない。2%を目標としつつも、弾力的に政策を運営していくことが必要である。

 第2に、金融政策の役割は重要だが、金融政策だけで「失われた20年」から脱却することは難しく、成長戦略との連動性が重要であり、政府の責任も重い。

 デフレからの脱却、経済の活性化に金融政策が大きな役割を果たすことは間違いない。平時の経済政策の基本的な枠組みは、財政政策は中長期的な健全性を保つようにし、政策的なマクロパフォーマンスのコントロールは、できるだけ金融政策を使うことが適当である。また、2000年8月のゼロ金利政策解除のように、日本銀行の判断ミスがあったという有力な指摘があることも事実だ。しかし、特に、金利がほぼゼロとなった段階では、金融緩和の力だけで民間投資を呼び起こすことには限界がある。やはり、政府の手による規制緩和などの成長促進策が欠かせない。

 第3に、「大胆な金融政策」が効果を発揮する可能性はあるものの、前例に乏しく、「期待」という実体不明なものに働きかけようとしているので、そもそもその効果については不透明な面が大きい。

 日本銀行は黒田総裁の新体制下で、4月4日の金融政策決定会合で、マネタリーベースの大幅増加、国債、リスク資産の買い入れの大幅増加など思い切った金融緩和策を打ち出した。黒田総裁は、その効果の波及ルートとして「資産価格の上昇」「金融機関が手元資金の増加をリスク資産投資や貸出に向けるというポートフォリオ・リバランシング効果」「物価上昇期待の高まり」という3つをあげた。このうち、資産価格への効果は、あったとしても、いつまでも資産価格が上昇し続けることはないのだから、それによって持続的な成長を図るのは難しい。また、ポートフォリオ・リバランシング効果は、これまでも金融緩和の中でほとんど効果を発揮してこなかったので、さらにベースマネーを追加しても効果が現れるかどうか疑わしい。

 結局のところ、期待できるのは「期待」だけということになる。確かに、日銀が断固として2%の物価上昇目標を追求するという姿勢を貫けば、民間経済主体も2%程度の物価上昇期待を抱くようになる可能性はある。それに応じて円安も進行する可能性がある。ただ、「期待」は人々の気持ちの問題なのだから、それが動くかどうかは何とも不確かだ。

 第4に、いかにしてデフレから抜け出すかを考える場合には、抜け出した時に、出口で混乱を招かないよう細心の注意が必要である。

 特に問題となるのは財政との関係だ。デフレから脱却するめどが立ち、本当に物価上昇期待が高まると、当然長期金利は上昇するだろう。すると、金融機関が保有する国債が値下がりして、金融機関の財務体質が悪化する。また、国債の利払いが増えるから、財政再建と矛盾する事態となる可能性がある。この時これを防ごうとして、日本銀行が長期国債を買い続けると、今度はこれが「財政ファイナンス」と見なされ、国債の信用が揺らぐ可能性がある。当然のことであるが、デフレからの脱却を考える一方で、財政の再建戦略を実行していくことが必要である。こうした観点からも、私は、財政の再建を「第4の矢」として考えるべきだと思っている。

第2の矢と第3の矢について

 第2の矢、機動的な財政運営は、要すれば公共投資の増加策である。この点の評価については、既に本コラムで3回にわたって述べているので詳しくは繰り返さない(「私はなぜ公共投資主導型の経済政策に反対するのか」上1月16日、中1月30日、下2月13日を参照)。要は、効果が小さく副作用が大きく、さらには時代の流れに逆行しているということである。

 第3の矢の「民間投資を促す成長戦略」は現在議論が繰り返されているところだ。

 以上をまとめると、第1の矢の「大胆な金融緩和」は成功するかもしれないが、失敗のリスクもかなりある。第2の矢の「機動的な財政運営」はやらない方が良かった。第3の矢の「成長戦略」は策定中だ。そして本来合わせて考えられるべき第4の矢の「財政再建」はまだ無視されている段階だ。

 アベノミクスの評価が定まるのはまだまだこれからである。

(次回は成長戦略について議論します。掲載は4月24日の予定です)


小峰 隆夫(こみね・たかお)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130408/246305/?

【第108回】 2013年4月10日 週刊ダイヤモンド編集部
黒田日銀初会合で超サプライズ
政策委員会に生じる“不協和音”
大胆な緩和策を志向する黒田東彦・日本銀行総裁の下、初の金融政策決定会合が開かれた。資産買い入れ基金の枠組みが「複雑でわかりにくい」との認識を示していた黒田総裁は基金の廃止を有言実行、“レジームチェンジ”の追加緩和に踏み込んだ。その裏では、政策委員会に“不協和音”が流れていた。


3年以下の国債を日銀に買い占められつつある市場では、利ざやを確保すべくリスクの高い長めの国債を購入していくべきか、どの機関投資家も頭を悩ませる。日銀が10年以上の超長期国債の購入増額を実施してくることも織り込まれ、長期金利水準も急低下した
Photo:REUTERS/AFLO
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?一つの提案が、日本銀行の政策委員会メンバー(総裁、2人の副総裁、6人の審議委員)の間に妙な“しこり”を残している。

?それは3月7日、白川方明・前総裁体制下で行われた最後の金融政策決定会合で、白井さゆり審議委員が示した新たな“追加緩和策”だった。

「あの提案は実に不愉快だった。ただのスタンドプレーだ」

?別の審議委員は、近しい関係者にそう不満をぶちまけた。

?この委員が激怒するのも無理はない。白井委員が提案したのは、(1)残存3年以下の国債が対象の資産買い入れ基金と、超長期国債まで購入する国債買い入れオペ(成長通貨供給オペ)との統合、(2)基金を通じた「無期限緩和方式」の国債買い入れ(2014年導入予定)の前倒しの二つだ。

?つまりこれは、黒田東彦・新総裁が言及する「大胆」な緩和策と同じ内容だ。「彼女は早くも黒田さんに鞍替えしたと評判ですよ」と、ある政府高官は揶揄する。

?9人の政策委員会メンバーの中でも誰の提案が実現するかは、市場の関心事でもある。それだけにある委員OBも、「自分が注目を浴びたいとの“色気”を出しただけ」と手厳しい。

?というのも、黒田氏の総裁人事が国会で提示される前から、実は他の複数の委員も今後は(1)の「基金の廃止・統合」が緩和の選択肢と認識していたからだ。2月会合の議事要旨でも統合について議論されたことが判明したばかりか、3月会合でも「さらに論点整理がなされた」(関係筋)最中だった。

?しかし統合に際しては、クリアしなければならない問題がいくつか残り、3月会合時点では難しいとの総意が形成されつつあった模様だ。にもかかわらず白井委員が先走って提案したため、表向きは「8対1で否決」とのシグナルだけが市場に発せられた。

?つまり、方向性としては統合を支持していた委員すら、いわば「反対させられた」格好なのだ。ここで反対したのに、わずか1カ月後の会合で手のひらを返して賛成に回るのは難しくなる。

?ところが、である。かくして4月3〜4日に開かれた黒田新総裁下の初会合は、ふたを開けてみると一転、基金の廃止・統合に踏み切った。市場はお祭り騒ぎの反応を見せ、東京外国為替市場は円が1ドル=95円まで下落、日経平均株価は272円上昇した。

「無期限緩和」に潜む
際限なしの国債購入リスク

?さらに今回、日銀は「大胆」かつ「次元の違う」緩和策に踏み出した。購入対象国債の残存期間は、基金を通じた「3年以下」から、基金廃止に伴い「40年債を含む全ゾーンの国債」にまで拡大。これにより、保有国債の平均残存期間は3年弱から7年程度になる。

?また、(2)の「無期限緩和方式」の国債買い入れ前倒しも実施。国債購入ペースは毎月約4兆円から7兆円へと増額した。

「なんでここまで……これじゃ僕らの仕事がなくなりますよ」

?株式・為替市場とは裏腹に、債券市場関係者の表情は暗い。それもそのはず。毎月の国債発行額は約10兆円。これに対し、日銀がその実に7割もの国債を市場から吸い上げていくのだから、市場の役目はほぼなくなる。日銀は市場価格で購入するとはいえ、既に財政赤字の穴埋め(財政ファイナンス)と言えなくはない規模だ。

?実際、緩和策の発表後には、10年物金利がとうとう0.5%を割り込み、過去最低の0.43%すら突破。歴史的な低水準を記録した。

?あわてたのはメガバンクや地方銀行などの機関投資家だ。1〜2月に立て始めた運用の年度計画では、10年物金利が0.75%、これがだいたい1年後に1%程度まで上昇すると想定していた。

?ところがわずか1カ月後、実際にはこれが大きく低下し、計画が狂ったのだ。20年物金利ですら約1.89%→1.13%まで下がり、計画の練り直しを余儀なくされた。

?日銀が進める大胆な国債購入の弊害はこれだけではない。

「無期限緩和方式」の場合、国債残高が積み上がっていったとしても、毎月の購入ペースを緩めるだけで「引き締めに転じた」と見られかねない。言い換えれば、国債購入に際限がなくなるリスクをはらむのだ。

?2年後にインフレ目標2%を達成するなら、“出口”はすぐそこと言えるはず。しかし黒田総裁は現時点で「出口を検討するのは時期尚早」との見方を示している。

?少なくない市場関係者が首を傾げているのは、金融政策は9人の多数決で決まるはずなのに、黒田総裁が今会合前の2日、衆議院予算委員会において基金の廃止・統合を「断言」していたことだ。

?その断言にひれ伏すかのような決定内容。委員会は、はたして黒田総裁になびいてしまったのか。「スリーピングボード復活」──。市場からは、そんな不安の声も湧き上がり始めた。

?(「週刊ダイヤモンド」編集部?池田光史)
http://diamond.jp/articles/-/34410


【第275回】 2013年4月10日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
黒田日銀の「目標株価」を推測する
大胆な緩和の発表は上首尾だったが
総裁会見で「最大の驚き」は……。

?4月4日、日銀は、黒田東彦総裁が「これまでと次元の違う」と表現する大胆な金融緩和政策を発表した。

?発表された緩和策のメニューは、マネタリーベースの2年での2倍増、購入する国債の年限長期化、ETF(上場型投資信託)、J-REIT(不動産投資信託)の買い入れ保有額のそれぞれ2倍増など、内容的には市場の予想の範囲だが、いずれも規模が期待値を下回らないことと、一度に全ての政策を揃えたことで、総合的には強いインパクトを持つ政策パッケージになり、資本市場には「猛烈」と言っていいくらいの効果が表れた。

?週が変わっても効果は持続し、株価は1万3000円台に、ドル・円の為替レートは99円に乗った動きになっている(4月9日、午後現在)。

?過去の日銀の悪癖の1つである「戦力の逐次投入」から決別し、「市場の失望」を避けた、上首尾の発表だった。

?あえて違和感を言うなら、白川前総裁時代に、白川総裁の政策におおむね賛成してきた政策委員6人が、今度は簡単に新総裁・副総裁の路線に賛成したことに、ある種の不思議を感じるが、専門性や一貫性よりも「空気を読む」ことが大事なのが日本の組織であり、これには悪い面も良い面もある。

?今回は「結果オーライ」なので、彼らの存在意義や一貫性については問うまい。お歴々の「柔軟性」を評価しておこう。

?ところで、政策が発表された4月4日、筆者の驚きは、政策よりも黒田総裁の記者会見の発言にあった。

?黒田総裁は、記者会見の席で、日本の現在の株価は安すぎる、と言った。直接的に株価水準に言及したわけではないが、内容的には間違いなくそう言ってのけたのだ。

株式のリスクプレミアムを指す?
気になる黒田総裁の発言内容

?筆者が注目した黒田総裁の発言は、ETFとJ-REITの買い入れ額の根拠について訊かれた質問に対する答えだ。日本銀行のホームページに掲載されている「総裁記者会見要旨」(4月5日付け)から引用しよう。

「ご承知のように、ETFは、株式をバックにしていますので、ある意味では、潜在的にもの凄く巨大な市場です。そこで、今のリスクプレミアムの状況をみると、まだまだ圧縮できる余地があるということで、ETFの保有額を2倍以上増やそうと決めたわけです」と黒田総裁は答えた。

?文脈上「リスクプレミアム」は、株式のリスクプレミアムを指すとしか考えられない。先の発言は、わかりやすく言い換えると「現状の株価は安すぎるので、ETFを買って株価上昇を目指すことにした」となる。

「リスクプレミアム」とは、リスク資産(この場合株式)のリスクを負うことに対して、投資家が求める追加的な利回りのことだ。

?たとえば、リスクなしの確定利回りの運用に1%の利回りがあるときに、株式投資にはリスクがあるので、期待値としては6%の投資利回りが欲しいと投資家が思う場合、6%−1%=5%の差は、リスクを負担するために追加的に期待したい「リスクプレミアム」だという意味になる。

?リスクプレミアムは株価にどう影響するか。

?たとえば、リスクを全て配当する会社があり、この会社が毎年1株当たり100円の純利益をずっと稼ぐと想定されているとしよう。上記の状況で、投資家が要求する投資利回りが6%(リスクプレミアムは5%)だとすると、将来の利益を投資家の要求利回り(割引率)で現在の価値に引き直して、無限の将来の分まで合計した値は、「100÷0.06」で計算でき、答えは1666.6……になる。この場合は、1667円が適正株価となる。

?ここで、リスクプレミアムが5%から3%になるとしよう。すると、割引率は1%+3%=4%となる。このケースで、適正株価を計算すると、100÷0.04で計算でき、2500円となる。仮に、リスクのない資産の利回りが1%のときに1株当たり利益が100円の株式に対するリスクプレミアムをゼロまで圧縮できると、適正株価は1万円になる。

?つまり、将来の利益や無リスク資産の金利が何らかの数字に決まると(当然、何らかの前提条件はあるはずだ)、株式のリスクプレミアムが変化するということは、株価の変化と直接的に対応している。これは、将来の利益がどのように変化すると予想されていても同じことだ。

?つまり、「株式のリスクプレミアムを圧縮する」とは、「株価を上げる」と言っていることに等しいのだ。これを、日銀総裁が言うのだから、驚いた。

コメントするのは不適当なのか
日銀と株価の「不幸な関係」

?実は、長年にわたって日銀は、株価の高低の適否に関して、組織として明確な意見を述べることがなかった。その始まりは、筆者の記憶によると、1986年だ。当時、日本では1980年代後半の大バブルの立ち上がりの時期だった。

?1986年は、前年のプラザ合意による円高の影響を意識した日銀の金融緩和(公定歩合が4回下がった)を受けて、株価が大幅に上昇したが、このとき、日銀が株価に対して発した警戒的なコメントに対して、証券界を中心とする経済界から強い反発が起こった。

「日銀は株式のプロではないのに、株価にコメントするのは不適当だ」、あるいは「株価が上がって、せっかくいいムードなのに、水を差すとはいかがなものか」といった、日銀としては反論しにくい批判を受けた。

?これに対して日銀は、それ以降、株価(特に水準)には組織の立場では直接言及しなくなった。日銀の金融研究所のレポートや、日銀マンが外部に書く原稿で、「個人の立場による意見だ」と断った上で慎重に株価を論じるものはあったが、総裁を含む日銀幹部は、時々の株価が「高い」とも「安い」とも言わなくなって年月が過ぎた。

?また、1987年、1988年と2年間続いた金融緩和状態が、地価と同時に株価の大バブルを招く原因になった面があり、この間の金融政策に対して失敗だったという見解を持っていれば、株価について言及することが自らにとって不都合だという意識が「無謬」を旨とする(?)日銀にはあったかも知れない。

日銀が株価に言及しないのは
不自然でもあるし不幸なこと

?一方、株価は景気や物価の影響を受けるし、株価自体が景気・物価への影響を持つ。日銀が株価に言及しないことは、不自然でもあるし、日本の経済にとって不幸なことだった。

?いずれも、「間違いかも知れないが」という前フリを付けた上で、「株価が高すぎる(低すぎる)のではないかということに対して懸念を持っている」、あるいは「株価はおおむね適正水準にあると思っている」と率直に述べてもいいのではなかろうか。

?将来、株価に対して日銀が示す判断が誤りだったとわかる可能性はもちろんある。その場合は、後日に率直に認めたらいいし、日本銀行のコメントを信じて損をした投資家がいるとしても、それは投資家本人の責任だという原則を確立・確認しておけばいい。

?もちろん、日銀の政策や組織として示す見解が、株価操作自体や、そのことによる私的な利益を目的としたものであってはならない。以前、個人的に株式を保有したまま総裁に就任した福井俊彦元総裁のようなケースは、即刻懲戒免職にするのが適当だ。

記者の質問はアマイ!
黒田総裁にもっと突っ込むべき

?さて、せっかく黒田総裁が実質的に株価水準に言及してくれたのだから、記者は「リスクプレミアム」について、もっと突っ込んで質問すべきではなかったか。彼らは、せっかくのチャンスを逃したと言えよう。

?記者会見の席にいる記者なら、たとえば次のように訊いてみたい。

「総裁がおっしゃったリスクプレミアムは現在具体的にいくらで、これはどの程度の水準が適当とお考えなのか、お聞かせください」

「リスクプレミアムが圧縮されるとは、将来の利益その他に対する予想が変わらなくても、株価が上がることを意味します。これが圧縮される余地がある、ということは、現在の株価は安すぎるというご見解なのでしょうか」

「総裁が想定される適正なリスクプレミアムに対応する株価水準について、お聞かせください」

?日銀ないし黒田総裁が、何の株価モデルも具体的なリスクプレミアムに対する特定もなく、「リスクプレミアムはまだまだ圧縮できる余地がある」として、これに働きかける政策を採るというなら、これは無責任だと言えよう。記者が臆する必要はない。

?率直に言って、為替レートと並んで株価は、「アベノミクス」の初期の重要な波及経路の1つであり、黒田氏個人も組織としての日銀も、為替レートや株価の具体的な水準を意識していないなどということは「考えられない」。

?では、黒田総裁は、どのくらいの株価が適正だと考えているのか、大雑把に推測してみよう。

長期的には2%くらい圧縮できる?
黒田総裁の意中の株価を推測する

?記者会見前日の4月3日の株価は日経平均で1万2362円(端数切り捨て)だ。これに対して、東証一部の今期予想利益に対するPER(株価収益率)は21.5倍だ(利益予想は日本経済新聞。4月4日朝刊による)。この株価に対する利益の利回りは、PERの逆数だが、4.65%である。

?株価を将来の利益の割引現在価値だと考えた場合、利益成長率の見通しや金利の影響を受けるが、「これらを一定として」、将来の利益を割り引く利回り(「割引率」。投資家の株式に対する要求リターンだ)に含まれる「リスクプレミアム」が変化すると、それは、益利回りの変化に全て反映するはずだ。

?黒田総裁の考える「リスクプレミアム圧縮の余地」が、どのくらいの大きさなのかはご本人から聞かないとわからないが、仮にこれが1%だとすると、益利回りは3.65%、2%だとすると2.65%ということになる。

?計算上の株価は、「リスクプレミアム1%の圧縮」に対して日経平均は1万5749円、「リスクプレミアム2%の圧縮」に対してなら2万1691円となる。さて、彼はどのくらいを見ているのだろうか?

?仮に、「『まだまだ』というくらいだから、長期的には2%くらい圧縮できると思っているのではないか」と考えるとすると、上記で計算した株価2万1691円は、現在の予想利益に対してPERで37.7倍になる。そして、利益予想が上方修正されるなら、まだまだ上値があり得る、という景気のいい話になる。

?株価がここまで来るようなら、資産効果(資産価格上昇で消費や投資が増える効果)もあろうし、物価も上がるのではないか、という気持ちになる人も多かろう。

?黒田総裁の「まだまだ圧縮できる余地がある」をどの程度と見るか、また、そもそも黒田総裁の見解をどう評価するか(信じるか否かも含めて)は読者次第だ。もちろん、株式投資における損得の全責任は投資家自身にある。

http://diamond.jp/articles/print/34443

【第324回】 2013年4月10日 
「異次元の金融緩和」で景気と生活はどうなる
――第一生命経済研究所主席エコノミスト 永濱利廣
黒田日銀の金融政策は「異次元」と表現されるが、実はグローバルスタンダードな金融政策だ。期待に働きかけることで、円安、株高が実現し、企業業績の回復、賃金上昇へとつながっていく。2〜3年でデフレは終わり、日本経済は復活するだろう。

「異次元の金融政策」とは
実はグローバルスタンダードな政策

「異次元」と形容される金融政策の中身をみると、既に米国や英国で行っていることと大きく変わらず、異次元という印象は受けない。要はグローバルスタンダードな金融緩和をするという内容である。


ながはま・としひろ
第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト。1971年生まれ。栃木県出身。早稲田大学卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。95年第一生命保険入社。日本経済 研究センターを経て第一生命経済研究所経済調査部へ異動。研究員、主任エコノミストを経て、08年より現職。主な著書は『日本経済のほんとうの見方、考え方』『中学生でもわかる経済学』『スクリューフレーション・ショック』『男性不況』など。
?具体的に見ると、まずは「マネタリーベース・コントロールの導入」。これまで、日銀が「無担保コール翌日物」(=金利)としていた金融市場調整の操作目標をマネタリーベース(量)に変更するというものである。

?次に「長期国債買い入れの拡大と年限長期化」。買い入れ国債の平均残存期間(償還までの期間)を9年とするFRB(米連邦準備制度)と比べると、日銀は3年弱と短かったため、長期国債買い入れの対象を広げ、買入の平均残存期間を現状の3年弱から、国債発行残高平均並みの7年程度に延長するというものである。

?3つ目が「ETF、J-REITの買い入れ拡大」。FRBはリスク資産である住宅ローン担保証券の購入を危機回避のために、2008年に始めたQE1(金融緩和)から導入している。FRBに比べると、日銀のリスク資産購入も量が足りないとし、ETFとJ-REITをそれぞれ年間約1兆円、300億円ずつ買い入れることとした。

?最後に、時間軸に関する表現を見直した。日銀は、物価安定の目標をCPI(消費者物価指数)前年比2%としているため、これを安定的に持続するために質的・量的金融緩和を必要な時点まで継続するとした。

?その他、質的・量的金融緩和に伴う対応として、今後は資産買入等の基金を廃止し、長期国債買入れを輪番オペと統合する。また、大規模なマネタリーベースの供給を円滑に行うために銀行券ルールも一時適用停止し、市場参加者との対話を強化するとした。

「異次元の金融緩和」で
景気が良くなるメカニズム

?日銀では上記のような政策を実施しようとしているが、これらによってどういう形で景気が良くなっていくのかを見ていきたい(図表1)。

?2年で2%のインフレ目標や2年で2倍の量的緩和という政策を打ち出すことで、まずインフレ期待が生まれる。インフレ期待とは、人々が「これから物価や株価が上がりそうだ」と予想することである。

?今回の異次元緩和の場合、期待に働きかけて景気を良くしようとしている。すると「円の価値が下がって景気がよくなる」と考える人が増え、円を売ったり、株を買う人が増えることで、実際に円安・株高になる。今回の金融政策決定会合時も、緩和の内容が発表された瞬間から円は安くなり、株は上がりだした。

?これは、日銀が打ち出した異次元の緩和が、多くの市場参加者の予想を上回ったからに他ならない。しかし、よく考えてみると、実際には日銀はまだ何もやっていない。にもかかわらず持続的に円安・株高が進んだのは、インフレ期待のなせる技である。


?このように為替が円安になると、儲かる企業が増えてくる。特に輸出関連の企業は、国内で作ったモノが海外で安く売れるようになるため、多くのモノが売れるようになる。さらにこれまでは安い輸入品に価格面で負けて、国内で売れなかった商品も、円安になることで輸入品の価格が上がるため、相対的に価格競争力がついて国内でも売れるようになる。

?こうした産業を国内代替産業と言い、国内で部品を作っている中小企業や農業などが典型例である。また、株が上がれば企業の財務状況が改善し、資金調達を行いやすくなるため設備投資もしやすくなる。

?家計でも、実際に株を持っている人の保有資産が増えるため消費を増やすことができるだけでなく、株を持っていない人も株が上がると財布の紐が緩くなり、消費を増やすことが、株価と消費者心理のデータの関係で明らかである。つまり、円安・株高になることで、企業も家計も需要を増やす。

?このように、経済全体で需要が拡大すれば、企業が儲かり、そこで働いている人の収入が増える。収入が増えれば、今までより多くのモノを買う。モノがたくさん売れるようになると、物価が上がる。異次元の金融緩和では、こうしてデフレ脱却を狙っている。

2〜3年でデフレは終わり
日本経済は復活する

?仮に異次元の金融緩和が成功して景気が回復したとしても、企業ばかりが儲かって生活が少しも楽にならないようでは何の意味もない。家計の収入が増えないかぎり、デフレから脱却することはできないからである。

(1)給料は3種類あり、それぞれ伸びる時期が異なる

?給料には三つの種類がある。いわゆるサラリーマンの場合、まずは所定内給与がある。これは毎月定額で受け取っている給料のことで、いわゆる基本給・能力給・家族手当等である。次に所定外給与、つまり残業代である。そして最後が特別給与、つまりボーナスのことである。これらのうち、最初に増えるのは残業代である。まず、昨年11月に野田前首相が解散を宣言して以降、市場では一気に円安・株高が進んでいる(図表2)。


?一方、図表3は過去の日経平均株価と企業の売上高の関係を時系列で見たものである。これを見ると、株価と企業の売上高が密接に連動しており、株価が上がってから概ね1四半期遅れて企業の売上高が伸びる傾向を見て取ることができる。今回の株高は昨年11月後半から始まっているため、過去の実績から考えると、今年1〜3月期の決算では、業績が好転する企業が数多く現れると予測できる。


?株も上がり企業の業績も良くなると、次に増えるのが残業代である。企業の売上が伸びれば、それまで以上に仕事が増えて忙しくなる。すると、企業で働いている人達は、それまでと比べて長い時間働かなくてはならない。つまり、残業しなくてはならない人が増える。残業が増えれば残業代がつくので、まずはここが増える。

?残業代に関しては、過去のデータから、企業の売上の伸びから1〜2ヵ月ほど遅れて伸びることが確認できる(図表4)。つまり、株が上がって1四半期で売上が伸び、それから1〜2ヵ月遅れて残業代が増える。過去のトレンドを踏襲すれば、今回の円安・株高の効果で、今年の春頃には残業代が増えるはずである。


?仕事が忙しくなって残業を増やしても、人手は限られているため、さらに仕事が増えると、それまでの人員だけでは対応できなくなる。そこで、企業は新たな働き手として非正規雇用者を増やして対応する。過去の企業売上と雇用者数の推移を見ると、売上が増えてから、概ね1四半期後に雇用者数が増える(図表5)。今回の場合、今年4〜6月期頃には雇用者の増加がはっきりと現れてくると考えられる。


?このように、残業代が増え、これまで職にあぶれていた人が働けるようになるのが、異次元緩和の恩恵の第1波である。

(2)やがてボーナス、そして基本給が上がる

?次に増えるのはボーナスである。ボーナスは春闘をはじめとした労使間協議を経て決まる。その際の交渉のベースとなるのは、前年度の業績である。大手コンビニ各社や自動車メーカー等、既に企業業績の上ブレが明らかになっている企業は、経営者側がボーナスについて満額回答を出しているため、早い企業では今年夏のボーナスが増えるところもある。それ以外の企業も、今年度は全体の企業業績で大幅増益が見込まれるため、遅くても来年夏のボーナスは増額される企業が増えるのではないか(図表6)。


?最後に上がるのが所定内給与。所定内給与というのは通常固定給で1度決めてしまったらなかなか減らすことができないため、景気回復が持続し、経営者が先行きに自信を持てないと上がらない。

?図表7は、企業の売上高と所定内給与の推移を見たグラフである。2002年からは、戦後最長の景気回復期間(いざなみ景気)に入っているが、所定内給与が増え始めたのは2005年になってからである。つまり、景気が回復し企業の売上が増えてから所定内給与が増えるまでには3年かかった。景気が良くなっても企業は給料を上げない、という主張が一部にあるが、過去の実績を見ると、3年程度経てば企業も安心し、所定内給与を上げる流れが見られる。


?前回と同じパターンで給料が上がるとすれば、今回も3年ほど景気回復が持続すれば2016年頃から所定内給与が増えてくるのではないかと予想できる。ただし、2005年の段階では、日本はまだデフレから脱却できていなかった。それでもある程度の期間、持続的に業績が回復すれば所定内給与を上げる企業が出てくることを、2005年の例は示唆している。

?今回のアベノミクスでは、デフレからの脱却を目標にしている。デフレを脱却するためには家計の給料が増えなくてはならない。そのため、政府も財界に対して、業績の改善した企業には積極的に賃金を上げるよう要請を強めていることからすれば、過去のケースより早い段階、すなわち2015年あたりで、所定内給与を上げる企業が増えてくるのではないかと期待している。

(編集部からのお知らせ)
アベノミクスが日本経済にどのような影響を与えるかについては、永Mさんの近著『図解 90分でわかる! 日本で一番やさしい「アベノミクス」超入門』 〈東洋経済新報社〉もご参照ください。
http://diamond.jp/articles/print/34444

JBpress>海外>Financial Times [Financial Times]
利回り求めて西を目指す日本の投資家
米国とユーロ圏、「アベノミクス」の波及効果に期待
2013年04月10日(Wed) Financial Times
(2013年4月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


ユーロ圏と米国の債券投資家は、ジャパンマネーの流入に期待している〔AFPBB News〕

 ユーロ圏と米国の債券投資家は、力強い仲間ができたと考えている。利回りに飢えた日本の投資家である。

 日銀が量的緩和を全面的に採用してマネタリーベースの積極的な拡大に乗り出したことを受け、米国とユーロ圏の債券市場はここ数日、目に見えて元気になっており、価格が上昇して利回りが低下している。

 10年物米国債の利回りは年初来で最も低い水準にあり、8日にはフランスとオーストリアで国債の指標銘柄の利回りが過去最低の水準に到達した。ドイツ、オランダ、フィンランドの国債利回りもそれぞれの過去最低水準に近づいている。

 こうした西側諸国の債券市場の動向は、日本の機関投資家が利回りの比較的高い外債を買うと見込んだトレーダーやヘッジファンドの売買を反映したものだ。その背景には、日銀が日本の国債市場の力学を劇的に変えたことがある。

日銀の新政策で国内市場が激変

 日銀の黒田東彦総裁は先週、新しい金融緩和策を発表した際に、日本国債とほかの資産を隔てている「リスクプレミアム」を圧縮することが日銀のゴールの1つだと述べた。つまり、日本国債の利回りを魅力的でなくなるレベルまで引き下げ、投資家がほかの資産――株式、不動産、外国債券など――を買わざるを得ないようにする狙いだ。

 発行済みの日本国債の35%を保有していると見られる日本の保険会社や年金基金がこれにどう反応するかは非常に重要だ。バンクオブアメリカ・メリルリンチのアナリストらの推計によれば、もし保険会社や年金基金の資産の5%が外債に移されれば、米国債の需要はざっと1000億ドル増加する公算が大きいという。

 日銀は新しい金融政策プログラムにより、日本国債の買い入れ額を2倍に増やす。毎月の国債発行額の70%相当を購入することになるため、これまで最大の買い手だった日本の銀行や証券会社、年金基金が買える国債は比較的少なくなる。

 日銀はまた、日本の多くの機関投資家に好まれている残存期間の長い債券も購入し、買い入れる債券の平均残存期間を2倍に延ばす方針だ。

 「現在の相対バリュエーションを考えれば、日銀の金融緩和は世界の債券市場、特に米国債市場に大きな波及効果をもたらすと我々は見ている」。バークレイズ証券のアナリスト、森田長太郎氏はこう指摘する。

 それほどの規模の国際分散投資が行われる見通しは、円安がどこまで進むか、そして国内株式よりも外債の方が有望だと日本の投資家が判断するか否かに左右される。

日本が中国を抜き、世界最大の米国債保有国になる可能性も

 主要先進国の債券市場で「高利回り債券」としての存在が際立っているのは米国債だ。

 10年物米国債の利回りは現在1.70%。英国、ドイツ、スイス、そしてオランダの10年債利回りよりも高く、日本のそれ(0.5%)に比べれば3倍以上だ。この利回りの高さに加え、米ドル相場が最近反発していることも魅力の1つになっている。

 「米国債は今や高利回り債券だ」。RBSセキュリティーズのストラテジスト、ウィリアム・オドネル氏はこう言ってはばからない。「米ドルも上昇傾向にある。少しでも高い利回りを追求する動きが世界全体に広がっている中で、米国債は価格の面で比較的魅力的な、投資資金の避難場所になっている」

 もし今後数カ月のうちに日本勢が米国債の大量購入に乗り出せば、日本は中国を抜いて世界最大の米国債保有国になる可能性もある。最新の公式統計によれば、中国は米国債を1兆2600億ドル保有しており、日本が1兆1100億ドルでこれに続いている。

 日本では新年度が始まっており、米国債や米ドルに資金を多めに振り向ける新しい資産配分をファンドマネジャーや投資家がどれぐらい早く決断するかが重要なポイントになっている。これは主に円相場に左右される。

カギを握る円相場

 先週には1ドル=93円を下回っていたドル円レートは8日、99円台に突入した。この急激な円安は、日本の資産が高利回りの外債に分散投資されるペースを加速すると見られている。

 ドイツ銀行のストラテジスト、ドミニク・コンスタム氏は「日本円が急落すると本気で思ったら、投資家はその分早く資産を分散するだろう」と言う。

 ノムラ・セキュリティーズの金利戦略部門責任者、ジョージ・ゴンサルベス氏も「アキレス腱は日本円だ」と指摘する。

 「要するに、日銀の日本国債買い入れのせいではじき出された日本の債券投資家はもっと保守的な投資先を選ぶだろうし、米国債のような中核的な債券市場にとどまり続けると我々は考えている。米国債なら流動性があるし、米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和による買い入れのせいでボラティリティー(変動性)も低い」

 先週発表された3月の雇用統計は市場を失望させる内容で、これが差し当たり、FRBが今夏から国債買い入れのペースを緩めようとするとの見方を抑え込んだ。

分散投資はもう終わった?

 外国からの米国債購入需要が今後数週間強まるとの見解が投資家の間に見られる中で、日本の投資家が国内債券から外国資産に資金を分散させる動きは既に昨年後半に目に見えて加速していたと注意を促す向きもある。

 「考え方としては正しいし、ヘッジファンドもこれに乗っているわけだが、心配なのは、資産分散の取引の大部分はもう終わってしまったかもしれないということだ」。前出のコンスタム氏はそう指摘する。

 同氏によれば、ドイツ銀行のモデルで試算したところ、10年物日本国債の利回りが0.35〜0.40%前後になる時に釣り合う10年物米国債の利回りは1.60%だという。これでは、現在の水準より大幅に低いとは言えない。またこのモデルからは、日米の国債利回りの差は既にフェアバリュー(妥当な値)に比べて20ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)縮小していることがうかがえるという。

 「このモデルによれば、資産分散がこのところ大幅に進んだことを考慮しても、米国債利回りが大幅に低下することは正当化しにくい」とコンスタム氏は述べている。

By Michael Mackenzie and Jonathan Soble
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37551


節電目標、今夏全国で回避へ…関電・九電も余力
読売新聞 4月9日(火)7時6分配信
 政府は、節電の数値目標を今夏は全国的に設定しない方向で検討に入った。

 関西電力大飯原子力発電所(福井県おおい町)が昨年7月以降、安定的に稼働している上、火力発電所の出力量が積み増され、ある程度の供給力を確保できる見通しとなったためだ。

 ただ、大飯原発以外の原発再稼働が困難な中で、火力発電所のトラブルなどで電力不足に陥る恐れもあるため、政府は、企業や家庭に対する節電要請を行う方針だ。大飯原発も9月には定期検査に入って稼働を停止するため、電力不足が解消されたわけではない。

 電力各社は9日に開かれる経済産業省の有識者会議で、今夏の電力需給見通しを示す。この中で、最大電力需要に対する供給余力(供給力が需要を上回る比率)が、昨夏に電力不足に悩んだ関西電力と九州電力でそれぞれ3%、3・1%となり、安定供給に最低限必要とされる3%を確保できることになった。

最終更新:4月9日(火)7時6分

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<夏の電力>7社節電目標回避へ 関電・九電は供給なお不安(毎日新聞)21時37分
震災後初…今年夏の節電に数値目標なしへ映像(テレビ朝日系(ANN))19時4分
電力各社、安定供給の見通し=今夏、政府の節電要請見送りへ(時事通信)18時21分
8月の電力余力、3〜9%…9月は平均5・8%(読売新聞)18時7分

中国インフレ指標、緩和政策継続の余地:識者はこうみる
2013年 04月 9日 12:37 JST
[北京 9日 ロイター] 中国国家統計局が発表した3月の消費者物価指数(CPI)伸び率は前年比2.1%で2月の同3.2%から鈍化、生産者物価指数(PPI)伸び率もマイナス幅が拡大した。景気支援に向け、政策当局に金融緩和を継続する余地を与える内容となった。

市場関係者の見方は以下の通り。

●CPI上昇率は年央まで3.0%下回って推移か

<バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(香港)の中国担当チーフエコノミスト、TING LU氏>

2月のCPIが前年比3.2%上昇し、1月の2.0%から大幅に伸びが加速したことを市場は過度に懸念していた。このため、3月の数字はインフレ懸念と金融引き締め懸念の緩和につながるはずだ。

インフレ圧力が高くなく、成長の勢いが強くなく、外部環境が引き続き不安定ななか、ここ1カ月で聞かれた金融引き締めの要請は時期尚早だったことが分かった。

われわれはCPI前年比上昇率が年央まで3.0%を下回る水準で推移し続けると予想する。2013年下半期と2014年については、市場はインフレ率自体の上昇に加え、供給減による豚肉価格の上昇リスクなどのインフレ要因を警戒するだろう。

●2月のインフレ圧力は一時的だったことが確認された

<JPモルガン・チェース(香港)の中国担当チーフエコノミスト、HAIBIN ZHU氏>

消費者物価指数(CPI)の伸びが減速したのは食品価格の上昇鈍化が主因。2月のインフレ圧力が一時的なものだったことが確認された。

これはよいニュースだ。インフレ率が低下すれば、政策当局者が金融の状況の引き締めを開始するのではないか、との投資家の警戒感が大幅に後退することになるだろう。われわれは、CPIは今年、緩やかな上昇トレンドが続き、伸び率はおよそ3.2%になる、と予想している。

●インフレは目先の懸念材料ではない

<HSBC(北京)の中国担当エコノミスト、SUN JUNWEI氏>

今回のデータは、インフレが予想よりも落ち着いていることを示す内容となった。中国のインフレの状況が引き続き良好であり、向こう数カ月も比較的穏やかな状態が続く可能性が大きいことが示唆されている。

われわれは、インフレ見通しが引き続き良好だと考えている。全体の需要の状況を踏まえると、中国経済は回復しているものの、そのペースは依然、非常に緩やかだ。つまりインフレは目先の懸念材料ではない。

第852回】 2013年4月10日 週刊ダイヤモンド編集部
株価上昇で2兆円超の含み益
棚ボタに笑う日本生命の株保有

株高で2兆円超の含み益を得た日本生命に、他生保からはため息が漏れる
Photo by Toshiaki Usami
?3月29日に昨年度の最終取引日を迎えた東京株式市場。日経平均株価は1年間で23%上昇し、リーマンショック前の2007年度末とほぼ同水準まで回復した。

「株は怖い」──。そう口では言いながら、この誰も予期しなかった株高に笑いが止まらないのが、株式を大量保有する保険業界だ。大手生損保だけで、計7兆円に迫る株式含み益がもたらされたからだ。

?とりわけ“棚ボタ”が大きかったのは日本生命保険だ。他の大手生損保、例えば、東京海上日動火災保険が1兆3000億円程度、明治安田生命保険が1兆1300億円の含み益なのに対し、日本生命だけが2兆1300億円と、頭一つ抜け出している。

?さかのぼること半年前。逆に、日本生命は低迷する株式市場に最も苦しみあえいでいた。中間決算では3479億円という巨額の評価損を計上。これは、他の大手生保のそれを合わせた額より1200億円以上も多かった。

?背景にあるのは、業界の流れに逆行した日本生命の高い株式保有額。株式などのリスクを厳しく見積もる新しいソルベンシー・マージン規制の導入で、他の大手生保が、この5年で保有株式を簿価で5〜7割まで削減する中、日本生命だけがほぼ横ばいで持ち続けている。

「日本生命ほどの体力があれば、当然、株も持ちたい」とライバル生保はうらやむが、半年前には当の日本生命も「苦しいピッチング」(日本生命幹部)と嘆いていた。

?ただ、しょせん株は水物。しかも今後、より厳しいソルベン規制導入が予見される中、株式保有を続けることのデメリットも顕在化する。日本生命には、痛し痒しの状況が続く。

?(「週刊ダイヤモンド」編集部?宮原啓彰)
http://diamond.jp/articles/-/34119

勝間和代のクロストーク:feat.瀧波ユカリ/104 アベノミクス、どう乗り切る?
2013年04月03日


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 今回のテーマは「アベノミクスと家計の関わりを考えよう」です。

 アベノミクスというと、日銀に金融緩和を求めたり、公共投資にお金を回したりして経済成長を目指す??というイメージがありますが、正直、私たちの家計にどんな影響があるのか、ピンと来ていない方も多いと思います。

 また、デフレ脱却をうたって物価上昇を目指すアベノミクスに対し「物価が上がっても賃金が上がらないのでは」と心配している人もいるでしょう。

 しかし私は「経済成長は家計にプラス。必要以上に恐れないで」と訴えたいと思います。

 安倍晋三首相が経団連など経済3団体に従業員の賃金を上げるよう求めた結果、今年の春闘では経営側からの満額回答が増えました。景気回復は遅かれ早かれ、賃金に反映されるでしょう。

 塩漬けになっていた株式や投資信託も、ずいぶん値を戻してきたと思います。一方で、金利はさほど上がっていないため、住宅ローンの負担などはそれほど増えていないと思います。

 単に受け身になることなく、この大変動を乗り切るためには、どのように家計を防衛すればいいでしょうか。私は「堅実な金融投資」「賃金上昇の交渉」「小さな物価変動に一喜一憂しない」の3点を勧めたいと思います。

 最初の「堅実な金融投資」ですが、すでに住宅ローンを持っている方は、家を買うことですでに投資をしているので、そのままで大丈夫です。預貯金のように、金利がほとんどつかない資産しかない人は、一定の金額を毎月積み立てる堅実な形の投資や、職場の年金の振り分け先の見直しなどを考えてみてはどうでしょうか。

 2番目の「賃金」については、従業員が経営側に対し、もっと強く賃上げを主張する必要があります。デフレの時代が長かったので、企業はまだ十分に立ち直っていないかもしれません。しかし、緩やかな物価上昇に合わせて、緩やかな賃金上昇を求めていかないと、家計は物価上昇に対抗できません。

 3番目の「それでも物価変動に一喜一憂しない」ことも、大事なポイントです。デフレ脱却でようやく経済が成長し、税収が増える兆しが出てきた時に、値上げで身近な支出が増えたことを気にして「やはりデフレ時代の方が良かった」と思ってしまえば、経済成長は再び止まってしまいかねません。

 経済成長の兆しが見えてきたこの春、どうやって家計防衛を行っていくべきなのか。私の意見だけではなく、皆さんの知恵をぜひ聞かせていただきたいと思います。どのような家計防衛を意識しているか、教えてください。(経済評論家)

 ◇円安、株価上昇続く

 安倍政権が発足した昨年12月26日の円相場は1ドル=85円台でしたが、4月2日には1ドル=92円85?86銭(午後5時現在)まで円安が進行。日経平均株価も2日の終値は1万2003円43銭と、政権発足時から1800円近く上がりました。一方、円安で輸入小麦や食用油などに値上げの動きもあります。

 ご意見を毎日jpで受け付けています。9日までに書き込まれた中から勝間さんが選んだご意見を、次回ご紹介します。詳しくは、下のURLにアクセスしてください。

………………………………………………………………………………………………………

 ご意見は毎日jp(http://mainichi.jp/feature/katsuma/)まで。次回は17日掲載。来週は「毎日ぶっちゃけ堂よ」です。

「ヌスラ戦線はアルカイダ系」=シリア過激派−イラクの系列組織が確認
 【カイロ時事】イラクで活動する国際テロ組織アルカイダ系武装組織「イラク・イスラム国」は9日、インターネット上に音声メッセージを掲示し、内戦が続くシリアの反体制イスラム過激派「ヌスラ戦線」が系列組織であることを初めて認めた。AFP通信が伝えた。(2013/04/09-16:17)

自爆テロで15人死亡=最大規模の爆発−シリア首都
 【カイロ時事】内戦が続くシリアの首都ダマスカスで8日、自動車を使った自爆テロとみられる爆発があり、国営通信によると、15人が死亡、53人が負傷した。
 国営通信は「テロリストの犯行」と伝えており、アサド政権打倒を目指す反体制武装組織の仕業とみられる。現場は中央銀行などがあるダマスカス中心部。ロイター通信によれば、2011年3月の反体制運動開始後、最大規模の爆発だった。(2013/04/08-21:54)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013040900629


 


社会に満足」5割超、景気回復感広がる 内閣府調査

 国民の間で景気回復感が広がっていることが、内閣府が30日付で発表した「社会意識に関する世論調査」でわかった。安倍政権の経済政策「アベノミクス」による株高などを反映しているとみられる。

 調査は今年1〜2月、20歳以上の1万人を対象に実施。6091人から面接で回答を得た。

 「日本で良い方向に向かっている分野」(複数回答)を聞くと、「景気」が昨年同時期の調査の1・6%から11%に、「経済力」は1・8%から5・2%に増加。逆に「悪い方向」では、「景気」が58・7%から36・1%に減った。

 「現在の社会に全体として満足しているか」との問いには、「満足」(53・4%)が「満足していない」(46・1%)を上回り、質問を始めた2009年以来、初めて逆転した。「国を愛する気持ちの程度」は「強い」が58%で過去最高だった。

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街角景気、過去最高に並ぶ=5カ月連続で改善―3月
時事通信 4月8日(月)17時0分配信
 内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査によると、3カ月前と比べた街角の景況感を示す現状判断DI(指数)は、前月比4.1ポイント上昇の57.3となり、5カ月連続で改善した。2000年1月の調査開始以来、06年3月と並び過去最高の水準。円安・株高で家計や企業の心理が上向いていることに加え、14年4月に予定されている消費増税を控え、住宅などに駆け込み需要が生じていることも寄与した。
 2、3カ月先の見通しを示す先行き判断指数は0.2ポイント低下の57.5と、5カ月ぶりに悪化した。円安による輸入価格上昇や電気料金値上げなどの懸念が出始めている。水準は過去最高だった2月に次いで2番目で、景気の基調判断は「持ち直している」に据え置いた。
 現状判断では、家計、企業、雇用の3分野全てで指数が上昇。先行き判断では、雇用は上昇、家計は横ばい、企業は低下した。 

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最終更新:4月8日(月)23時29分


コラム:「アベノミクス」が求める原発再稼働
2013年 04月 8日 15:09 JST
By Christopher Swann

日本は、原子力発電にもう一度チャンスを与える必要がある。安倍晋三首相が進める経済政策「アベノミクス」で円安が進み、東日本大震災以前でさえエネルギー需要の80%以上を輸入に頼っていた日本では、電気代が今後さらに上昇するからだ。

野田佳彦前首相は2012年9月、反原発世論に押される形で、2040年までに原発稼働をゼロにするとの目標を掲げた。その後、12月に政権に返り咲いた安倍首相には、世論を再び逆回転させたいという思惑が見え隠れする。実際問題として、アベノミクスが成功するには、原発再稼働は欠かせない要素なのだ。

米エネルギー情報局(EIA)によると、日本の総発電量に占める原子力依存度は、1987年から2011年までは平均30%で推移してきたが、福島第一原発事故後の定期点検による相次ぐ稼働停止の影響で、2012年には2%にまで低下した。

一方、世界原子力協会(WNA)によれば、日本の2012年の液化天然ガス(LNG)輸入額が前年比25%増の660億ドル(約6兆5000億円)に上るなど、エネルギー輸入コストは急拡大している。そして、関西電力と九州電力は5月1日から家庭向け電気料金を引き上げるなど、30年以上ぶりの抜本的な値上げに踏み切る。

アベノミクスは為替を円安方向に誘導し、インフレをもたらすことを狙いとしている。しかし、エネルギーコスト、とりわけ電気代が急騰すれば、企業や消費者を直撃し、安倍首相が望む経済成長はいとも簡単に押しつぶされてしまうだろう。

福島第一原発事故の前、日本政府は原発依存度を5割近くに引き上げることを望んでいた。原発依存度5割を再び掲げるのは、人類史上最悪の原発事故の1つを経験した国にとっては過酷な選択だろう。

ただ、政策立案者たちは2011年以前、原発産業に対する支持を何とか得てきた。広島と長崎に原爆を落とされたという国家的トラウマがあったにもかかわらずだ。2010年までは、日本は米国やフランスに次ぎ、世界第3位の原発大国だった。

もちろん、地震と津波によって引き起こされた福島第一原発の事故は、原発に対する信頼に大きな打撃を与えた。また、株式市場の巨人だった東京電力が準国営ゾンビ会社に転落するなど、原発の経済的リスクも明らかにした。

一般的な日本国民にとって、原発の危険はそれに見合う価値があると納得するには多くの時間が必要だろう。しかし、日本経済復活を目指すアベノミクスは、原発再稼働抜きでは行き詰まる可能性があるのだ。

(5日 ロイター)

コラム:ソロスチャート愛好者がけん引した円安、暴走リスクも
2013年 04月 9日 15:06 JST
田巻 一彦

[東京 9日 ロイター] 外為市場では、100円目前まで円安が進展している。黒田東彦日銀総裁が決断した「量的・質的金融緩和」の効果がさく裂した結果だが、米欧などの海外投資家が「ソロスチャート」的なわかりやすさに反応しやすいことを財務官経験者である黒田総裁が、強く意識した結果ではないかと指摘したい。

ただ、この先に予想される「Jカーブ効果」で貿易赤字が予想以上に膨らむと、想定外の円安加速に結びつくリスクもある。期待に働きかける手法には、市場の暴走を誘発する副作用もある。

<マネタリーベース2倍に反応した海外勢>

5日に発表された3月米雇用統計は、事前予想を下回る弱い結果だった。本来ならドル売り材料と意識され、対ドルで円安の勢いは弱まると見られていたが、現実は大幅な円安進行となった。市場では要因をめぐって様々な観測が交錯したが、最大の原因は4日に発表された「黒田緩和」だ。中でも強烈な効果をもたらしたのが、マネタリーベースは2年間で2倍に、というターゲットだ。2012年末の138兆円の残高を14年末に270兆円へと増加させるという動きをグラフ化して、記者会見で提示。急激に増加している部分を指さして、黒田総裁は「ここが異次元緩和」と指摘した。

海外勢には、マネタリーベースの残高に反応しやすいというトラックレコードがある。特に為替面では、ジョージ・ソロス氏が作成した「ソロスチャート」が有名で、過去の円高局面をうまく説明できると市場関係者に理解されてきた。ソロスチャートは、日本のマネタリーベース/米国のマネタリーベースで得られる数値を時間の経過とともにグラフ化したもので、この動きがドル/円のトレンドと似ていると、海外勢の中では"愛好者"が多かった。

<黒田総裁は海外勢の動向を先読みしていた可能性>

「黒田緩和」をソロスチャートに当てはめると、急速な円安が現実に展開される──という発想が、足元の外為市場で急速に広がったようだ。米欧の投資家の中には、「わかりやすさ」に力点を置いて実際の投資行動に結びつけているケースが多い。マネタリーベースの増大が通貨の減価に結びつくというロジックは、足元の外為市場では、多数説を形成している。

この点を黒田総裁は、明快に認識していたのではないか。財務官として通貨変動コントロールの最前線にいた経験が、「黒田緩和」のプレゼンテーションに遺憾なく発揮されていたとみていいだろう。

<円安を静観する米当局、広がる容認観測>

また、急速な円安の進展に対し、米当局から懸念や批判などのメッセージが出ていないことも、金融政策の発動を通じた円安は当面容認されるのではないか、という見方に力を与えている。米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は8日、世界の主要先進国の緩和的な金融政策は全般的にすべての関係国にとって有益だとの見解を表明。大半の主要先進国は緩和的な金融政策を実施している。差し引きすると相互に建設的だ」と述べ、「黒田緩和」への直接的な批判を避けている。

ただ、ソロスチャート的な発想が"万能"と見るのは、早計だ。まず、ソロスチャート自身、最近の為替動向を正確には示していないという理由で、ベースマネーから超過準備額を控除して作成する「修正ソロスチャート」が、より有効性を示していると市場関係者の中で認識されている。単純なマネタリーベースの比較では、正確な予測はできないということだろう。

また、経済が活発になり、銀行貸し出しが増加し、投資家がリスクを取って様々な経済活動に力を入れ始めると、日銀の供給したマネーは、マネタリーベースにとどまっていない。東海東京証券・チーフエコノミスト、斎藤満氏は「トランスミッションメカニズムが働き始め、資金が海外のアセットへと流出を加速すると、円安が急速に進展するだろう。だが、その時はマネタリーベースは増加から減少へ転じている可能性がある。マネタリーベースと通貨変動は、全く別の動きを見せる可能性がある」と指摘する。

<貿易収支が赤字基調の下での円安、市場の過剰反応を誘発するリスク>

当面、日本のマネタリーベースの急増を材料に、外為市場では円安が進むだろう。黒田総裁が2年間で2倍の残高にすると明言した結果、ドル/円が100円近辺で安定するという仮説の蓋然性は、かなり低くなったのではないか。市場では、105円から110円まで円安が進むとの推計も出てきた。

ここで私が懸念するのは、110円近辺で円安が止まらなくなるリスクだ。円安の進展は、基調的に貿易赤字となってしまった日本にとって、一段の赤字膨張リスクを突き付けることになる。貿易赤字が年間13兆円を突破するなら、経常収支は年間で赤字に転落する可能性が高まる。そこまで見通している市場参加者は、現在のところ少数派にとどまっているが、Jカーブ効果が本格的に出てくると、貿易赤字の急拡大が現実味を帯びるだろう。

そうなると、市場は過剰に反応し、円安がさらに進む事態も予想される。行き過ぎた円安は、株安につながりかねない。こうした潜在的副作用の面についても、政府・日銀は今のうちから検討を進め、リスク対応を適切に実施してほしい。



10. 2013年4月10日 16:40:39 : xEBOc6ttRg
インタビュー:日銀緩和は狙い通り、円安進行に懸念も=岩田元副総裁
2013年 04月 10日 14:02 JST
[東京 10日 ロイター] 岩田一政・日経センター理事長(元日銀副総裁)はロイターのインタビューに対し、黒田東彦日銀総裁のもとで実施された「異次元緩和」の狙いは長期金利の

大幅低下に伴う機関投資家のマネーシフトにあり、狙い通りの効果が早くも表れていると指摘。

それに伴って期待インフレ率の上昇による実質金利低下で実体経済にも波及が期待できると評価した。新たにマネタリーベースを目標に据え270兆円の残高を目指す点も、名目GDP3

%達成に必要な額と見合っていると分析、緻密な計算が働いていることが想像できるとした。ただ1ドル100円を超えて円安が進行して交易条件が悪化すると、08年と同様に景気後退に

陥る可能性を懸念。円安頼みの2%物価上昇には限界があるとした。

<黒田総裁の主導と、審議委員の危機感が背景に>

今回、就任間もない黒田総裁が短期間のうちに市場期待を上回るほどの「異次元緩和」を実現できたことには、驚きの声も少なくない。日銀副総裁を経験した岩田氏は、日銀の政策決

定が従来「カタツムリよりのろい」という人もいたと自嘲する一方、今回は「黒田総裁のリーダーシップ」に加えて、これまでデフレ脱却に失敗してきた各審議委員が「今までと同じやり方をしてい

てはその存在意義が疑われるという危機感もあっただろう」とみている。

<マネタリーベース270兆円の根拠>

岩田氏は、異次元緩和の最大の特徴は「マネタリーベースを目標額とした点にある」とし、その理由として、マネタリーベースがデフレ脱却のメルクマールとなる名目GDPと関係が深い点を利用

したものとみている。2014年のマネタリーベース残高を270兆円とした背景についても、「現在、マイナス1.4%の名目GDP成長率をプラス3%程度に引き上げるために、どの程度のマネタリ

ーベースが必要か、という考え方」からきていると指摘。緻密に計算された残高であり、それがたまたま現状の2倍という説明しやすい数字になったとみている。

また、そこから割り出された月額7兆円の国債買い入れの規模についても、「これまで白川総裁時代の国債購入の4兆円に加えて、それ以上の規模とするための上乗せ分1兆円、さらに従

来の償還分2兆円を足し算すると、ほぼ7兆円となることとも整合的だ」と分析。黒田総裁の「2倍」というキーワードで、あたかも偶然に揃ったそれぞれの数字にも、根拠があると説明する。

<狙いはマネーシフト、実質金利下げ実体経済刺激>

こうした大規模緩和をデフレ脱却につなげる波及ルートについて、岩田氏は「黒田総裁の狙いはこれによりポートフォリオリバランスを促すことにある」と指摘。

「これまで日銀が買っていた国債は3年程度の期間のものまでだったが、より長い期間の国債まで買うことになり、保険会社や年金などが他の資産を買わざるを得なくなる。それにより、資産

市場を通じた効果が大きくなる。株価や為替への効果はすでに大きく出ており、期待インフレ率が上がれば、実質金利が低下することにより、実体経済へも波及することが期待される」と説明

実際、すでに生保など機関投資家は、国債では運用利回りからの妙味が出ない状況に陥り、運用方針を見直しつつある。外債投資へのシフトが進めば一段と円安が進行し、輸入物価の

上昇ルートによる値上がりが広がる可能性がある。また、内外の投資家による日本株投資に伴う株価上昇で、資産効果により消費が刺激され、需給ギャップ改善ルートも働き始める兆しが

出ている。

<100円超す円安は交易条件悪化招く>

ただし、円安の進行は両刃の剣でもある。岩田氏は、行き過ぎた円安は輸入物価上昇による所得の海外流出という、「交易条件の悪化」を招くことを懸念する。すでに3月日銀短観では

、企業の販売価格の見通しが上昇しており、これが期待インフレ率を表す一方で、仕入れ価格上昇がこれを上回っていることから、「交易条件(輸出1単位で輸入できる量)が悪化している

ことがみてとれる。これはあまりいい状況ではない」と指摘。

過去には、新興国の成長を背景に日本経済が長期間景気拡大を続けていたにもかかわらず、円安と食料・エネルギー市況の上昇がじわじわと首を絞め、08年2月からはリセッションに陥っ

たと分析している。「今、1ドル100円程度までなら、それほど影響は大きくならないが、120円程度まで円安となると、自国経済を健全なものに保つためにどこかで円安を止めた方がいいと

いう議論が出てくるだろう」と見込んでいる。

<2年で2%は現実的ではない>

こうした副作用も考慮すると、岩田氏は「2%の物価目標は望ましい」一方で、2年でこれを目指すことは現実的ではないとみている。

「これまで日銀はゼロ金利解除、そして量的緩和解除でデフレ脱却に失敗した。最大の理由は1%程度という物価目標が低すぎたため。日本の消費者物価は上方バイアスが1.5%程度

あり、実際の物価下落幅は、消費者物価指数が示すより一段とマイナス幅が大きい。目標は2%とすることはデフレ脱却のために必要であり、中長期目標としても正しい」と指摘。しかし、「2

年で達成するとなると、持続的に物価を2%上昇させるために、毎年4%もの需要超過が必要になり、無理がある」ことに加えて、景気刺激や輸入物価上昇という効果のある円安進行も「

毎年期待することは現実的ではない」という。さらに「円安が持続的に進行すれば交易条件の悪化というマイナス面も大きくなる」と警戒感をにじませた。

また、仮に物価が2%に近づいた際の緩和終了への出口戦略について何も示されていないことへの批判の声が上がっていることについて、岩田氏は「先に出口に言及すると、効果は小さくな

ってしまう。黒田総裁が出口について語らないということには、いろいろな意味があるのだと思う」との見方を示した。

*インタビューは9日に実施しました。

(ロイターニュース 中川泉;編集 田中志保)
http://jp.reuters.com/article/idJPTYE93902X20130410

黒田日銀の異次元の政策は「意味のある大きな試み」−日銀OBも評価
  4月10日(ブルームバーグ):日本銀行元理事の平野英治トヨタフィナンシャルサービス副社長は8日、ブルームバーグ・ニュースのインタビューで、黒田日銀が打ち出した最初の一手につい

て「リスクを挙げれば山ほどある」ものの、経済再生に向けて楽観的な絵を描けるところまでこぎ着けたという点で「意味のある大きな試みだ」と評価した。
同氏は「アベノミクスや黒田東彦日銀総裁がやろうとしていることを狭い意味の金融政策に限定して考えると、本質を見失うのではないか」と話す。「日本にとって一番大事なのはアベノミクス

の3本目の矢である成長戦略だが、それを実現するには高い支持率に支えられた強い内閣が必要だ。黒田日銀がアベノミクスを支える大きな役割を果たしているのは事実であり、そういう脈

絡で評価できる」という。
平野氏は一方で、「アベノミクスの最大の弱点は、先行き景気が回復すれば、金利に上昇圧力が高まり、国債は売られることだ」と指摘。「そういう状況になった時、日銀が国債を買っても長

期金利の上昇は止まらないかもしれない。むしろ日銀が買えば買うほど、財政ファイナンスの疑念を高め、さらに売り込まれるというリスクがある」と語る。
日銀は4日、黒田総裁の下で初めての金融政策決定会合を開き、2年程度を念頭に置いて消費者物価 の前年比上昇率2%の「物価安定目標」をできるだけ早期に実現すると表明。

そのための手段として、マネタリーベースを目標として、保有する長期国債や指数連動型上場投資信託(ETF)を2年間で倍以上に拡大することを決定した。
OBにとっても分かりにくかった
平野氏は「日銀のこれまでの政策はOBにとっても分かりにくかった。昨年2月に公表した1%の『物価安定のめど』にしても、政策を変えたのか、変えなかったのか、よく分からなかった」と話す。

その上で今回の決定について「マネタリーベースを目標とすること自体にあまり意味はないが、普通の人々への分かりやすい情報発信は極めて大事であり、デフレ不況を克服するという強い意

志は明確に伝わった」と語る。
さらに、「金融政策の物価への波及経路は結局よく分からないことが多い。そういう意味では思い切ったことをやる価値はある」と言明。「これによってアベノミクスがうまく作動して経済の改善が

進めば、企業や家計は投資や消費にお金を回す気になる。政府と黒田日銀がそういう環境を作ろうしていることは意味のある大きな試みだ」という。
平野氏は「アベノミクスの誕生によって、期待が先行して円高の修正と株高が進んだ。その延長線上で黒田日銀が期待を上回る金融緩和を打ち出したことで、期待がつなぎとめられた」と指

摘。「これによって、1年前には考えられなかった楽観的なシナリオを描こうと思えば、描けなくもないところまできた」と話す。
楽観的なシナリオとは
平野氏のいう楽観的なシナリオとは、「この先、高い支持率が維持されることを背景に、6月に環太平洋連携協定(TPP)参加を含む経済改革の本丸を打ち出せる。その先に参院選があり

、ねじれ現象が解消すれば、強い内閣が実現する素地が整う。8月にはそこそこ高い4−6月成長率が出て、消費税率引き上げにゴーサインを出せる。世界経済に明るい雰囲気が出てく

れば、6月に打ち出す経済改革、さらには中長期的な財政再建に向けた道筋がつけられるかもしれない」。
半面、このシナリオは当然、多くのリスクを伴うと平野氏は指摘する。中でも最大のリスクは長期金利 の上昇だ。楽観シナリオを維持し続けるには、実のある成長戦略が打ち出されること、さ

らに、信頼に足る財政再建の道筋が示されることの2つがどうしても必要だという。
特に財政再建の道筋は「最大の支出項目である社会保障費をいかに抑制するかが一番大きな課題だが、社会保障費の受給者は高齢者であり、その政治的パワーは大きいので一番難し

い」と懸念。「彼らに納得してもらいながら財政再建の道筋をつけるにはどうしたらよいか。これが最大の焦点であり、高い支持率に支えられた強い内閣は、今後の財政、成長の問題を進めて

いく上で最大の鍵だ」という。
計算するだけなら誰でもできる
平野氏は「日銀も成長戦略が重要だと主張し続けてきたが、物事には順序がある。社会保障費をどれくらい削る必要があり、どれくらい増税をすればよいか、計算するだけであれば誰でもで

きる」と指摘。「どうやってそれを実現するのかが現実的には重要であり、それをアベノミクスでやろうとしているのではないか」と語る。
その上で「辛うじて描くことができる楽観シナリオは穴だらけであり、難しいことは分かっているが、だからと言って、昨年11月ごろまでの政策の延長線上でデフレ不況から脱却ができたのか、と言

われると、大きな疑問がある」と言明。その意味で、アベノミクスとその1本目の矢である大胆な金融緩和は「試す価値のあることを試しているのではないかという印象を持っている」としている。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 藤岡 徹 tfujioka1@bloomberg.net
更新日時: 2013/04/10 09:38 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MKXO8T6TTDSJ01.html

2013年 4月 10日 09:11 JST
日銀、大胆な緩和策のあとは一休みか―効果見極めで

By TATSUO ITO

 【東京】アナリストや日本政府当局者は9日、日本銀行は黒田東彦総裁の下で前任者の白川方明氏の時代よりも次の手を打つまで時間を置く公算が大きいとの見通しを示した。これは

大胆な金融緩和策がデフレ脱却の闘いで成果を上げられるかどうか見極めなければならないためだ。

 日銀はこれまでの徐々に緩和をしていく政策から大きくかじを切り、これが今度は何をするのかという思惑をなくすのに役立った。一方で、日銀がいつまで様子見を続けるかは円安が持続す

るかどうかにかかっている、とアナリストらは指摘する。

 浜田宏一内閣官房参与(米エール大名誉教授)は、黒田氏が大胆な措置を取ったことを称賛するとともに、日銀が変わったとの見方に同意した。浜田氏は、日銀の政策で円相場が下

落し、株価が上昇したことからみて、今やこれらの措置が実体経済に伝わるかどうかを見極める時だと指摘した。

 同氏は最近、「日銀政策がモノやサービスの価格、それに消費と投資に影響するかどうか見極める必要がある」とし、年末までに雇用情勢に大幅な改善が見られるだろうと付け加えた。また

、効果がなければ、日銀はもっと多くの資産を買うことができるとしている。

 こうした状況から、3月の全国消費者物価指数が引き続きマイナスになり、2%の物価上昇目標の実現が遠くても、4月26日の日銀金融政策決定会合で追加的な緩和策が取られると

予想する日銀ウオッチャーはほとんどいない。

 ある政府当局者は先日の緩和策を行き過ぎだと言う人はいるかもしれないが、これが不十分だとは決して言えないとし、このため、円安傾向が続く限り、日銀が比較的長期にわたって政策

を維持しても驚くには当たらないと付け加えた。

 白川総裁の下で日銀が一連の緩和策を取った背景には政治的圧力もあった。しかし、安倍晋三首相が黒田氏を総裁に起用したあとは、日銀と政治家との間に緊張の兆候は見られな

い。安倍首相は白川氏の政策を批判していた。

 黒田総裁は先週の記者会見で、日銀は必要な「調整」があればちゅうちょせずに行うとして、一段の緩和措置を取る可能性を除外しなかった。

 同総裁は先週の金融政策決定会合で前例のない一連の緩和策を決めて、日銀の伝統的な慎重なスタンスに新たな息吹を吹き込み、2%の物価目標を2年以内に実現するために必

要な全ての措置を取ったと強調した。

 黒田総裁の明確なメッセージで補強された日銀の大胆な政策によって、円の対ドル為替相場はアジア市場で1ドル=100円近くにまで下落し、日本株も底堅く推移した。

 日銀は新政策で、銀行システムと経済界への資金供給量を倍にするために、月間の国債買い入れ規模をこれまでの3兆8000億円から7兆5000億円に拡大する。この買い入れ額は、

新規に発行される国債の約70%を日銀が市場を通じて購入することを意味する。これだけの規模の購入は、日銀は政府債務をファイナンスしているとの懸念に加えて、日銀にとってまた別

の問題を提示する可能性がある。

 三井住友アセットマネジメントのチーフエコノミスト、宅森昭吉氏は「その効果への期待は大きいが、日銀のやり方は若干強引だ」と指摘した。民主党の玉木雄一郎・衆議院議員も市場と

同様の懸念を抱いており、国会で、国債市場でのプレゼンスを強めている日銀は「市場の機能をゆがめる」恐れがあると述べた。

 日銀は今回の規模の大きさを考慮して、政策決定会合があった日に、政策をよく理解してもらうために民間エコノミストを日銀本店に招くという異例の措置を取った。これに参加したあるエコ

ノミストは「部屋は40人から50人のエコノミストでいっぱいで、一部の人は予備の椅子に座るほどだった」と話した。その上で、こうした会合を開くことは、日銀当局者が新政策は急進的だと見

ており、市場の反応を気にしていることを示している、と述べた。日銀はさらに11日にも市場参加者を招いてその政策を説明する計画だ。


http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323366004578413290171927884.html


2013年 4月 10日 13:31 JST
円安では解決しない日本の製造業の課題

 1ドル=100円の水準は日本が抱える問題に対する万能薬ではない。

 安倍晋三首相が金融と財政の景気刺激策を後押しし始めてからの円の下落スピードは驚異的だ。ほんの最近の昨年11月初旬には、円は1ドル=80円前後で取引されていた。

 円の下落に伴い、海外での稼ぎを円換算すれば日本の製造業者の収益性が向上することになろう。さらに期待されているのは、安い円が日本の輸出業者の競争力向上だ。地域的なラ

イバルである …

2013年 4月 09日 13:37 JST
日本の金融緩和策は競争的通貨安を招く=中国輸出入銀行会長
記事

 【中国海南省・博鰲(ボーアオ)】中国の政策銀行、中国輸出入銀行の李若谷・董事長(会長)は8日、円安誘導を目的とした日本の大規模な金融緩和策は世界中で新たな競争的

通貨安を招く恐れがあるとの見方を示した。

 李氏は博鰲アジアフォーラムで演説した際に、「日本の真の課題は流動性が不足していることではない。日本経済の競争力が低下した原因は同国の金融政策ではなく産業政策だ。日

本の大規模な金融緩和策がデフレ退治に …

2013年 4月 09日 10:55 JST
日銀の金融緩和は「リスクの高い実験」―ソロス氏が警告

 米国の著名投資家ジョージ・ソロス氏は8日、中国海南島で開催されている「ボアオ・アジアフォーラム」で講演、日銀が決めた大胆な量的金融緩和について、「リスクの高い実験」と評し、

強い懸念を表明した。

 ソロス氏は、流動性の巨額の供給を受けてインフレが誘発され、金利は押し上げられ、国債の発行コストが膨らみ、持続不可能な水準になる恐れがあると述べた。そのため、これまで日本

の政権は、経済低迷を受け入れてきたと指摘した。

 しかし、安倍晋三首相は日本経済の「緩やかな死」を受け入れようとせず、量的緩和で賭けに出た。ソロス氏は、ほぼすべての先進国が同じように金融緩和に向かう「極めて危険な状態

にある」と警告、金融政策の協調がなかった1930年代の再現となりかねないと指摘するとともに、「競争的な通貨切り下げは経済の破滅をもたらす恐れがある」と訴えた。

 ソロス氏は米経済については、政治的には膠着状態に陥っているものの、強気の見方を示した。同氏は「驚くべきことに、米国は先進国で最強の国として浮上している」とし、ドルは最強通

貨となっていると強調した。その理由として、シェールガス革命や量的金融緩和などを挙げ、これらの要因が組み合わされ、「歳出の強制削減による財政面の緊縮効果を圧倒している」と述

べた。

 同氏はまた、共和党は歳出の強制削減で行き過ぎてしまったと断じ、共和党も民主党も穏健路線に戻るだろうとの予想を明らかにした。

 中国経済に関しては、世界経済のエンジンではあるが、馬力は米国の消費者よりも小さいと指摘、「そのため世界経済は冴えないのだ」と語った。その上で、中国の現在の輸出・投資主導

の成長モデルでは、銀行の不良債権を膨らませることになると懸念を表明し、「現在の成長モデルでは1、2年間は続くとしても、10年間は持たない」と警告した。

 ソロス氏はさらに、消費主導型経済への移行は簡単ではなく、成長が鈍化すれば消費者は慎重になるため、「中国経済はハードランディング(硬着陸)に見舞われる恐れがある」と語った。

また、中国では規制の弱い投資ファンドなど影の銀行が急成長していることを挙げ、高リスク・高金利のサブプライムローンで経済危機を引き起こした米国の住宅市場と「気がかりな類似性」

があると指摘した。同氏は、中国の指導部には「バブルを初期の段階で徐々に小さくしていく技量がある」としながらも、既得権益保有者は改革を阻止する力を持っていると、慎重な見方も

明らかにした。

 為替市場については、日本が大胆な量的緩和を志向し、英国が積極的な緩和を始めた昨年末以降混乱状態となっているとし、円とポンドの下落が「欧州のリセッション(景気後退)を悪

化させる」公算が大きいとの見通しを示した。今後1年間については、動揺が続き、ユーロが「嵐の目」となるだろうと予想した。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323366004578411433262299510.html

ブログ:異次元緩和という「呪文」
2013年 04月 9日 12:05 JST
竹本 能文

黒田日銀が4日、異次元緩和を打ち出した。決定会合後には材料出尽くしで円高が進むとの見方も多かったなかで、円安・株高を演出したのだから、初戦は成功と呼んでいいのではない

だろうか。

ただ、日銀の新政策はわかりくい点も多い。マネタリーベースを2年で2倍に増やすと、なぜ2%の物価上昇率が達成できるのか、納得がいく説明は打ち出されていない。

ひとつの仮説として副総裁の岩田規久男氏が提唱してきたリフレ理論が柱になっているのではと考えられる。「中央銀行のデフレ脱却に向けた姿勢」を明確にし、当座預金残高を増やせば「

マネタリーベースの変化とその方向」が予想インフレ率を変化させるというものだ。

岩田氏は副総裁就任直前の講演会でも改めて自説を強調。昨年2月に日銀が事実上1%の物価目標「目途」を導入した「バレンタイン緩和」や、昨年11月に安倍晋三・自民党総裁

が強力な金融緩和案を打ち出した後に、ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が示す予想インフレ率が顕著に上昇した点を実例として挙げた。昨年6月から11月のデータからは、日銀の当座

預金が10%増えると予想インフレ率が0.44ポイント上昇するとの試算を公表していた。

安倍首相の金融政策観に強い影響を与えてきたとされる、みんなの党の渡辺喜美代表や、元日銀審議委員の中原伸之氏らリフレ派の論客も、現在50兆円強の当座預金残高を年末

まで100兆円に引き上げることで期待に働きかける量的緩和政策の再導入を強く訴えてきた。日銀の今回の決定では2012年末の当座預金残高は107兆円に膨らむ見通しとなっており

、これら首相周辺の意向は尊重されたようにもみえる。

4日の決定会合後の記者会見で黒田東彦総裁にリフレ理論を全面的に採用したのか質問してみたところ、以下のような回答だった。

「今回の措置は、量的・質的な金融緩和だ。もちろん量的な緩和という面では、バランスシートであれ、マネタリーベースであれ、当座預金であれ、すべてを大幅に拡大するわけで、金融市場

調節の操作目標としてマネタリーベースを採っていく。他方、質的な緩和も大幅に進める。これは、長期国債の全ゾーンを買い入れ対象とし、しかも、買い入れの平均残存期間を現状の3年

弱から7年程度へと倍以上にする、さらにETFやREITも大幅に買い入れを拡大するということで今回の措置には量的・質的の両面がある」

軸足は量だが質も重視ということだろうか。量や質が物価にどう波及するかは説明がなかった。

これはあくまで一つの仮説だが、黒田総裁としては長年リフレ理論に反対してきた日銀の立場も慮(おもんばか)り、リフレ転換について玉虫色の表現で示唆するのにとどめたのではないだろう

か。

白川方明・前総裁は審議役時代の討論会で、日銀に対して大胆な金融緩和を打ち出して期待に働きかけるべきとのリフレ派に対して、「日銀は呪文を唱える機関ではない」と一蹴してい

る。「政権が変わったので呪文機関になりました」とは言えないということだろうか。

(東京 9日 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/jp_blog/idJPTYE93801Q20130409



11. 2013年4月10日 16:44:28 : xEBOc6ttRg
TOPIXが6連騰、資源や鉄鋼、銀行上げ目立つ−市況高、業績期待 (15:33)

東京株式相場はTOPIX、日経平均株価とも年初来高値を更新し、TOPIXはことし初の6日続伸となった。国際商品市況の上昇を受け石油・石炭、商社など資源関連株が高く、鉄鋼株は東証1部の業種別上昇率トップ。貸し出し増加への期待が広がった銀行株も買われるなど、業績への期待感も全体を押し上げた。

ドル・円が99円前半、大台前に円安一服−100円は「時間の問題」の声も (15:30)
台湾の中国信託:東京スター銀買収へ、6月の合意目指す−関係者 (13:30)

円安・株高は足踏み、成長戦略で前向き投資促すか焦点に
2013年 04月 10日 16:24

日経平均反発、終値ベースで年初来高値を更新
ローソン14年2月期は5.7%営業増益予想、過去最高益更新へ

[東京 10日 ロイター] ドルは100円、日経平均は年初来高値を前に足踏みしている。黒田日銀による「異次元緩和」の余韻は残っているものの、債券から株式、国内から海外といった大きなマネーシフトは確認されておらず、様子見ムードが強まってきた。

マネー循環で重要なカギを握る銀行貸出は徐々に増えているが、設備投資などにはまだ向かっていない。6月発表予定の成長戦略で企業に前向きな投資を促すことができるかがアベノミクスの大きな勝負となる。

<鈍い銀行貸出>

日銀が新しく政策目標に置いたマネタリーベースは日銀が供給する通貨の量だ。世の中に資金が回るには、金融機関がマネタリーベースをもとに企業や個人などに資金を貸し出したり、リスク資産に投資する必要がある。長期国債を大量に購入し国内金利を低下させることで、金融機関に貸出や投資を促すことが黒田日銀の「量的・質的金融緩和」の大きな目的だ。マネーが金融機関内や円債市場にとどまっていては2年で2%の物価目標達成は難しい。

日銀が10日発表した3月の銀行・信金による貸出平均残高は前年比1.6%増の466兆7225億円と伸び率は2009年8月(同1.8%増)以来3年7カ月ぶりの高さだった。だが、マネタリーベースは昨年12月以降、2桁増加が続いているにもかかわらず、貸出増は1%台とマネーの「染み出し」はまだ限定的。市場では「貸出が伸びればアベノミクスは本物になる」(国内信託銀行)と期待は大きいが、増加は17カ月連続で、政策を好感して企業の資金需要が増加したかどうかは不明だ。

3月の貸出は大手行による電力会社やM&A(合併・買収)、REIT(不動産投資信託)など不動産関連貸出が中心で、設備投資といった直接的な事業拡大の資金ニーズはまだ小さいとみられている。3月日銀短観では、大企業・全産業の2013年度の設備投資計画は前年比2.0%減とマイナスだ。企業が潤沢な現預金を保有しているという事情を差し引いても、「設備投資など事業拡大に向けた資金需要は依然として弱い」(外資系証券銀行担当アナリスト)という。

三井住友アセットマネジメント・チーフエコノミストの宅森昭吉氏は「企業に前向きな投資を促せるような成長戦略を打ち出すことができるかが安倍政権の大きな課題だ。お題目だけではなく、既得権益に切り込むような規制改革を実施し、これならば市場が拡大すると企業が信じ、貸し出しなどマネーが動くか注目される」と指摘している。

<容易ではないポートフォリオ変更>

米債券運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)のビル・グロース最高投資責任者は8日、ツイッターで、日銀の金融緩和を受けて日本の投資家が利回りの高い海外の金融商品に投資すると予想、米国債への投資比率を今年最高水準に引き上げた。国内機関投資家が低金利の国内運用環境を嫌い、海外に資金をシフトさせることへの期待も高まっている。

ただ国内大手の金融機関がポートフォリオの配分を大きく変えるのは容易ではない。外債投資には為替リスク、株式には元本リスクがある。リスク資産の比率を下げるために奮闘努力してきたこれまでの姿勢を転換するには「大きな社内調整が必要になる。それは短時間では難しい」(国内銀行・資金運用担当者)という。

3月の貸出資金吸収動向では実質預金とCDが前年比3.4%増と貸出の1.6%を上回る伸びを示した。銀行が貸し出す量よりも入ってくる預金の方が大きい状況だ。ドイツ証券チーフ金利ストラテジストの山下周氏は「3月分を見る限り、預金と貸出の開き(預貸ギャップ)はむしろ拡大しており資金余剰の状況が強まっている。銀行の主要投資ゾーンである中期の金利がやや上がっているが、銀行のキャッシュをつぶすニーズは存在する。中期の金利が上がることには限界がある」との見方を示している。

<ドル/円と日本株は上値重い展開>

日経平均は反発したが、取引時間中の年初来高値1万3331円39銭に接近すると上値が重くなる展開が続いた。短期的な過熱感が強いほか、北朝鮮のミサイル発射や核実験実施も警戒されている。「指数は上昇しているが、アルゴリズム取引が中心で力強さは乏しくなっている。企業決算を見極めたいとの海外勢が多い」(大手証券トレーダー)という。

ドルも100円を手前にして99円付近で足踏みが続いている。みずほ証券・シニアマーケットアナリストの青山昌氏は100円を付ける可能性はあるとしながらもドル高/円安の動きはそろそろ一服するとみている。「例年、米国は春先から景気が弱くなると言われているが、今年はこれに緊縮財政の影響が加わる。来月くらいから経済指標で明らかになってくるとみており、そうなればドル買いはいったん止まらざるを得ないだろう。相場は5月くらいから転機を迎える可能性が高い」と述べている。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 宮崎大)


焦点:欧州株、米FRBの資産購入規模縮小なら値下がりの恐れ
2013年 04月 10日 15:32 JST
[ロンドン 9日 ロイター] 今年の欧州株は、市場で懸念されている米連邦準備理事会(FRB)による資産購入(量的緩和=QE)の規模縮小が現実化すれば、期待されたような2桁の上昇から、2008年以降で最悪の値下がりへと一転する事態にさらされている。

FRBが先行する形で世界的に中央銀行の資金供給が急増して株価を支え、欧州株は数年来の高値に押し上げられた。しかし2月以降、FRB当局者からよりタカ派的な発言が出てきたことで、一部の市場参加者は早ければ今年半ばにもQEが縮小すると予想するようになった。こうした観測だけで株価は動揺を見せており、先行き大きく値下がりする恐れがあることが浮き彫りになった。

米金融政策が転換する可能性を市場が最初に感じたのは、2月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の内容からだった。これを受けてユーロSTOXX600種指数.STOXXは1.5%下落し、市場はまだQEという安定化装置をはずされる準備ができていない事実がはっきりした。

その後も複数のFRB当局者がQEの規模縮小の可能性に言及し、今月3日にはサンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁が、景気回復の勢いが続けば今年夏にもQEの縮小開始もあり得るとの見方を示した。

同総裁の発言が飛び出すと2月のFOMC議事録公表後と同じように、欧州株では金融.SX7Pと資源.SXPPの下げが約2%と最もきつくなった。食品・飲料.SX3Pといったディフェンシブ銘柄でさえ、約0.6%の値下がりとなった。

こうした株価の不安定さからすると、いったんFRBによるQEの巻き戻しが始まれば、欧州株は今年11%上昇するというロイター調査におけるコンセンサスも台無しになりかねない。

資産運用会社アルトナ・ウェルスの創設者、リー・ロビンソン氏は「現時点では出口計画は存在しない。(しかし)各中銀がQEを打ち切ればすぐに、長期金利は150─200ベーシスポイント(bp)上昇し、株価は20%下げるだろう」と警告した。

中銀が以前に打ち出したQEを巻き戻した際にも欧州株は金融危機以降で最低のパフォーマンスを記録しており、それが再現されるとみられる。

モメンタム・インベストメンツのファンドマネジャー、ジェイミー・クレンプスター氏は「QEの縮小に至るまでには、途方もないほどの周到な対話が必要になる。決して市場を驚かせてはいけない。中銀がもし、ある出口計画を考えていて、それが市場の降り込でいる姿から大きくかけ離れているとすれば、そうした状況に中銀が気が付かなければならない」と指摘する。

<今年後半の金融引き締め織り込みも>

米国の政策担当者は、インフレ率が2.5%を上回る恐れがない限りは、失業率が少なくとも6.5%まで低下してから景気支援策を解除する方針だ。

こうした中でFRBが年末までに金融政策の正常化に取り掛かるかどうかは、金利上昇が債券価格にもたらすリスクと緊密に関係しており、バランスシートに積み上がった資産を売却する必要性とともに、株式にとっては中期的な試練になるだろう。

モルガン・スタンレーのストラテジスト、ニール・マクリーシュ氏によると、過去の「伝統的な」金融政策のサイクルでみると、利上げが始まった1984年、1994年、2004年の株価の天井から底までの下落率は平均11%だった。

同氏は「当面の金融政策は引き締めより緩和の可能性が大きい。とはいえ、成長率が上向いて世界的に流動性が現在の想定より早く吸い上げられるとの懸念が高まれば、市場は今年後半の金融引き締めを織り込み始めるかもしれない」とみている。

(David Brett記者)

ドル99円前半、日銀「異次元」緩和は実効性見極める段階に
2013年 04月 10日 15:55 JST
[東京 10日 ロイター] 午後3時のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点に比べ若干ドル高/円安の99円前半。北朝鮮に対する警戒が強まる中で、方向感に乏しい展開となった。市場では、日銀「異次元」緩和を好感した円売りはひとまず終わり、今後は実効性を見極める段階に入るとの見方が出ていた。

<実際のマネーの動き確認へ>

ドル/円は98.91─99.37円のレンジで取引された。北朝鮮に対する警戒が強まる中で、積極的な取引は限られた。

前日は99.67円と4年ぶりの高値を付けたものの、海外市場ではにわかロングが一気に振り落され、98円半ばまで下落した。ただ、その水準では急速に買い戻されるなど、底堅さも目立った。

FXプライム取締役の上田眞理人氏は「98円以下にビッドが増えてきているようだ。ドル/円のポテンシャルは依然上方向とみているが、現状では、100円を突破する力がない」との見方を示した。

北朝鮮をめぐる地政学的リスクが高まれば、100円に到達する可能性があるものの、「100円を付けたあとは、一種の達成感が広がり、ドルの上昇は一服するだろう」とみている。

市場では「日銀『異次元』緩和を受けたファーストリアクションは終わった。今後はお金が流れ始めたり、海外に向かったり、実際のマネーの動きを確認する段階で、それが確認されるまでは上昇余地は限られるのではないか」(大手邦銀)との見方が広がっている。この関係者は「アンケート調査等でも明らかなように、経営者は100円超を望んでいる感じでもない。100円を大きく超えてガンガン買っていくような雰囲気もなく、100円台ではいったん利食いの動きが強まりそうだ」と口を揃えた。

かぎを握るのは、国内投資家の運用資金が海外に向かうかどうかだが、「現場に一定の権限があるところは、一部動いていたようだが、大きな変化は出ていない」(大手邦銀)という。

ただ、先行きについては「生保の運用計画はそろそろ出始めるが、多少は海外に向かわざるを得ないだろう。現在は為替の方向も含めて幹部に説明がしやすい」(別の大手邦銀)との声が出ていた。

米債券運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)は、「トータル・リターン・ファンド」(PMBIX.O)(運用資産2890億ドル)で3月に米国債・米国債関連証券への投資比率を前月の28%から33%に引き上げた。

同社のビル・グロース最高投資責任者は、日銀の金融緩和を受けて日本の投資家が利回りの高い海外の金融商品に投資すると予想、投資家は米国債を購入すべきだとの認識を示した。

(ロイターニュース 志田義寧)


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