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コラム:サウジとロシアの石油増産凍結は「穴だらけ」(ロイター)
http://www.asyura2.com/16/hasan105/msg/631.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 2 月 17 日 19:10:40: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

 2月16日、主要産油国4カ国の増産凍結合意は穴だらけだ。写真はドーハで会見するサウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相(2016年 ロイター/Naseem Zeitoon)


コラム:サウジとロシアの石油増産凍結は「穴だらけ」
http://jp.reuters.com/article/column-saudi-russia-oil-idJPKCN0VQ03H
2016年 02月 17日 10:57 JST


[シカゴ 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - サウジアラビアやロシアなど産油国4カ国の増産凍結合意は穴だらけだ。原油生産を1月の水準にとどめることで意見の一致をみたが、ロシアとサウジの生産量は既に最高水準に近い。しかもイランは長年にわたった経済制裁が解除されて増産を望んでおり、合意に参加しないかもしれない。

16日に発表された合意は、ことほどさように大したものではないが、それでも資金面でのひっ迫ぶりを映している。原油価格は2014年半ばから70%も下落し、大手産油国は四苦八苦している。

今回の協議にカタールとともに参加したベネズエラのような弱小産油国は、減産を強く求めてきた。

現在の原油供給量を考えると、今回の合意はいかにも踏み込みが浅い。サウジの1月の原油生産量は日量1020万バレル強と、過去最高だった昨年6月の同1060万バレルをわずかに下回る水準にすぎない。一方でロシアの生産量もソ連崩壊後の最高水準に達している。

合意は今回の話し合いに参加していない産油国の参加を条件としている。

最大の課題はイランだ。生産量は核開発に絡んで経済政策を受ける前の水準をなお日量100バレル下回っている。国際市場に復帰し始めたばかりのイランが自主的な増産凍結に同意する可能性は低い。

ロシアとサウジがなにがしかの合意に達したという事実は、一定の前進の兆しではある。合意が伝わると北海ブレント原油が一時6%上昇したのはそのためだろう。もっともブレント原油はその後下げに転じたのだが。

サウジのヌアイミ石油相は記者団に対して、増産凍結は「一連の取り組みの始まりだ」と述べた。今回の合意は、今後のより大きな取り決めに向けた外交面での作業の始まりといった位置付けがせいぜいのところではないだろうか。

●背景となるニュース

*ロシアとサウジアラビアは原油生産を過去最高に近い1月の水準で凍結することに合意した。複数の石油相が16日明らかにした。

*イランなど他の主要産油国の参加が条件。イランは今回の協議には加わっておらず、長期間にわたる経済制裁が解除され、原油生産を増やそうとしている。

*ロシアとサウジが増産を凍結したとの報道を受けて、北海ブレント先物 LCOc1はいったん6.4%高の1バレル=35.55ドルを付けたが、その後は下げに転じた。

 

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コメント
 
1. 2016年2月17日 20:53:56 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[279]
アングロ・アメリカン、今求められるのは「行動」
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アングロ・アメリカンのマーク・カティファニCEO PHOTO: BLOOMBERG NEWS
By
HELEN THOMAS
2016 年 2 月 17 日 14:09 JST
 鉱山で使われるミル(粉砕機)は、鉱石をすりつぶしたり、押しつぶしたり、割ったりして細かくする。
 英鉱業大手アングロ・アメリカンは自社の事業をこのミルにかけようとしている。同社は既存事業の約65%の売却または打ち切りのほか、大規模な人員・コスト削減を計画している。投資家にとって、これはやむを得ないことだが、再び激しい失望を味わう恐れもある。
 アングロのリストラは、数十年とはいかないまでも、数年に及んでいる。その成果はいくつかある。3年前に就任したマーク・カティファニ最高経営責任者(CEO)によると、従業員1人当たりの生産量は2012年以降で27%増加。一方で単位コストは同程度減少し、資産ポートフォリオも30%減った。
 アングロは16日、2016年通期の営業利益を19億ドル増やすための新しい計画を発表。これにより、昨年12月の投資家会合以降、資源価格がやや持ち直していることも追い風となり、16年のフリーキャッシュフローが黒字になるとの見通しを示した。資源価格が今の水準から10%下落しても、16年通期のEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)は42億ドルになると見込んでおり、これは市場予想を上回る。
アングロ・アメリカンの株価
 ただアングロの計画は、追加の経費削減と、年内に30億〜40億ドルの資産を売却する計画を除けば、昨年12月時点とほとんど変わっていない。アングロの株価を1月につけた安値から80%近く押し上げた投資家にとって、これは当てにならない楽しみだ。市場はアングロの経営基盤の強化と株主価値の向上につながる純負債の大幅な削減を待っている。
 フリーポート・マクモランなどの同業他社が目覚ましい成果を挙げている中で、アングロは本当はじっと困難に耐え抜く決意を変えておらず、株主割当増資を避け、中核資産の売却を渋っているように見える。
 ある意味で、これは重要な資産を守り、市況サイクルの底で価値を損ねたくないという素晴らしい意欲の表れかもしれない。しかし、アングロは今後も、迅速に行動することができず、市況回復を待ったり願ったりするのではなく市況低迷に打ち勝とうとするほどの勇気もないという状況が続くのかという疑念は残る。
 銅、ダイヤモンド、プラチナ関連のより良質な資産に集中するというアングロの計画は理にかなっている。だが最近のアングロの株価動向は同社の意思よりもマクロ経済要因によるところが大きい。16日のロンドン株式市場で株価が一時急落したことからも分かるように、今本当に重要なのはただ一つ、行動だ。
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FRBの量的緩和第4弾、市場は頼りにしているか
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金価格は今年14%上昇しているが、中銀の信頼度を測る指標としては完璧とは言えないPHOTO: NEIL HALL/REUTERS
By
JAMES MACKINTOSH
2016 年 2 月 17 日 12:50 JST
 中世の教会が免罪符の販売を取り締まるようになって以降、信仰心に値段を付けることは難しくなった。中央銀行の場合はそれほど難しいことではない。 世界の主要中銀に対する信頼度は毎秒算出されており、15日にはトロイオンス当たり約1209ドルを付けた。
 金価格は中銀の信頼度(あるいは、信頼の欠如度)を測る指標として完璧というには程遠い。だが、年初来で14%高という状況は、今年の市場混乱を招いた原因としてよく挙げられる「投資家の不信」の正しさを裏付けている。投資家は現在、中銀関係者が自分のやっていることを分かっていないのではないかと不信を強めている。
 その裏付けとなる証拠はかなり説得力があるようだ。投資家の不信が最もはっきりと表れているのが為替相場と銀行だ。銀行はマイナス金利を大半の顧客に転嫁できず苦境に立たされている。
 為替は(中銀の)思惑通りの動きを見せていない。マイナス金利を導入した国の通貨は通常、保有する妙味が薄れることで相場は下落する。ユーロ圏、日本、スイス、スウェーデン、デンマークの中銀がマイナス金利に熱を上げているのは理由の一つがこれだ。
 ところが、日本銀行が1月末にエコノミストらの意表を突いてマイナス金利を初めて導入した際、円相場が弱含んだのはたった1日だけで、その後はマイナス金利導入前よりも円高が進んだ。ドルに対しては現在、導入前の水準を4%上回っている。
 スウェーデンも先週、同じ問題に直面した。スウェーデン国立銀行(中央銀行、リクスバンク)は主要政策金利をマイナス0.5%へ引き下げた。引き下げ幅は予想を上回ったが、スウェーデンクローナはむしろ上昇し、翌朝までに利下げ前の水準を上回った。
 いずれのケースも、投資家がマイナス金利の景気刺激効果を考慮する以上に、マイナス金利自体を警戒していることがうかがえる。その一因はマイナス金利が金融機関に及ぼす影響にある。欧州ではこれが特に顕著だ。債券保有者が企業のデフォルト(債務不履行)増加を懸念する中でも、銀行は顧客にマイナス金利を転嫁することができず、利益率が低下している。
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【上】NYMEX金先物(黄色)、KBWナスダック銀行株指数(薄灰色)、ユーロStoxx銀行株指数(灰色)、TOPIX銀行株指数(紫色)の騰落率【下】TOPIX銀行株指数(3カ月足)
 中銀が景気下支え役として信頼されていれば、融資需要の高まりや不良債権の減少によりマイナス金利が銀行利益に及ぼす影響は十分に相殺されるはずだ。銀行株の動きは正反対のことを示している。
 日本では、銀行株がこの3カ月で40%余り値下がりし(15日は9%近く上昇)、3カ月間の下落率としては1983年以降で3番目の大きさとなった。バブル崩壊後の1990年代初頭とリーマンショックに見舞われた2008年に次ぐ下げを記録した。
 欧州中央銀行(ECB)が3月に預金金利のマイナス幅をさらに拡大する可能性を強く示唆している欧州でも、銀行は苦戦している。ユーロ圏の銀行株は3カ月間の下落率が33%程度に達し、共通通貨ユーロ誕生以降で5番目の大きさとなった。特に深刻な打撃を受けているのがドイツ銀行で、同行の1年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)はリーマンショック直後よりも危機的な状況にあることを示唆している。
 こうした状況を踏まえ、もう望みを捨てて金を買うしかないと考えたとしても、それは仕方のないことだ。しかし、紙幣はしょせん紙という金本位制支持者が好む「中銀の信頼喪失」説はさておき、これにはもっと微妙な理由がある。
 その一つは、市場を乱高下させている原因がほかにもたくさんあることだ。リセッション(景気後退)懸念の高まり、中国不安、原油採掘会社や鉱業会社の債務の積み上がりなど事欠かない。
 もう一つは、中銀の政策手段全体が信頼を失ったというより、マイナス金利の効果があまり信頼されていないことが背景にあると思われることだ。
 大々的に報じられる割にマイナス金利の効果が薄いのは、その引き下げ幅に問題がありそうだ。中銀の金利操作は通常0.25%単位で行われるが、マイナス金利の引き下げ幅はそれよりも小さい0.1%〜0.15%となっている。
 中銀がマイナス金利の大幅引き下げには及び腰だということを投資家はかぎ取っている。マイナス金利は(理論的にはいくらでも引き下げられるが)実務的には下限が存在するほか、中銀から新たな政策手段が打ち出される兆しもないためだ。
 それでも、望みはまだある。15日の東京株式市場は急反発し、東証株価指数(TOPIX)は8%高と1986年以降で5番目の上昇率を記録した。同日発表された日本の国内総生産(GDP)や鉱工業生産、さらに中国の貿易統計が予想外に弱かったことには反応薄だった。かつては悪材料が出ると、日銀が追加緩和に動き、株価は大きく回復するという連想が働いた(株価が再び上昇したからといって、それが買い場となるわけではないので要注意。TOPIX 上昇率1〜4位のケースでは総じて一時的な反発だったことが判明している)。
 政界で非伝統的な金融政策への反対論が高まったとしても、中銀関係者は無視する可能性がある。例えば、日銀の黒田東彦総裁は緩和手段に限りはないと強調している。だが、米連邦準備制度理事会(FRB)が行動するには、昨年末に引き上げたばかりの政策金利を引き下げるという屈辱を味わう必要がある。そのため、FRBが支援に乗り出す可能性は以前よりも低くなっている。
 FRBのイエレン議長は先週、議会証言に臨んだが、市場に安心感をもたらすことはできなかった。FRBの介入を市場の安全網(いわゆるイエレン・プット)とみなしている投資家からすれば、これは混乱がもっと拡大しなければFRBは動かないと示唆しているようなものだ。
 それでもなお、中銀が不安に駆られた市場を救ってくれると期待している投資家は、中銀がデフレと闘うための最終兵器、すなわち「紙幣印刷機」を持っていることを忘れてはならない。言うまでもないが、懸念されるのはゼロ同然のインフレ率が急激かつ過度に上昇することだ。FRB前議長のベン・バーナンキ氏が2002年の有名な講演で語ったように、「印刷機の例は、その妥当性がいずれはっきりするはずだと安心できよう。資金を十分に供給すればデフレはいずれ必ず反転する」。
 市場は状況をよく把握する前にパニックに陥りやすい。こうした不安が続けば、中銀はいずれ強力な政策手段を打ち出し、信頼度は強引に回復させられるだろう。本当に懸念されるのは、FRBが量的緩和第4弾(QE4)に踏み切るまでに、投資家がいったいどれほどの資金を失うかということだ。
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http://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AG212_MACKIN_16U_20160215150623.jpg 

 


ボラティリティー上昇に賭けるヘッジファンド
ヘッジファンド運用会社チューダー・インベストメントを創設したポール・チューダー・ジョーンズ氏。同社もボラティリティーの上昇に備えている


By LAURENCE FLETCHER
2016 年 2 月 17 日 16:06 JST

 この数年間、ヘッジファンドは金融市場の変動がより大きくなることに賭けて資金を失ってきた。現在、そうした取引が利益を上げる兆候を示している。

 今年に入って株式市場が急落する中、シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX、恐怖指数)が急上昇した。これにより、市場がストレスにさらされる局面で価値が上昇することに賭ける、株式やその他証券のオプションを購入しているファンドには利益がもたらされた。

 運用資産総額768億ドルの英ヘッジファンド会社マン・グループがコンピュータープログラムを用いて運用しているテール・プロテクト・ファンドは今年の勝ち組の1つだ。昨年9月までの3年間に平均で年率11%近く下げてきた同ファンドの価格は、年初から2月12日までに9.3%も上昇している。

 米国に拠点を置くフォーラム・アセット・マネジメントのグローバル・オポチュニティーズ・ファンドも大きなリターンを上げている。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認したところによると、「資産価格のボラティリティーをうまく利用しようとする」同ファンドは、1月に29.8%の急騰を示した。同ファンドは昨年も大きなリターンを上げたが、その前の3年間はマイナスリターンだった。

 ただ、すべてのヘッジファンドが今年の市場のボラティリティーの恩恵を受けたわけではない。ヘッジ・ファンド・リサーチによると、年初から2月11日までのヘッジファンドの平均リターンはマイナス4.8%だった。銀行株などが急落していることもあり、株式ファンドの下落幅が特に大きかった。

 ヘッジファンド会社フローリン・コート・キャピタルの最高経営責任者(CEO)で、かつてはマン・グループのAHL部門(運用資産179億ドル)の最高リスク管理責任者(CRO)を務めていたダグラス・グリーニグ氏は「環境が変わった」と話す。

 同氏は「中央銀行の当局者らに世界経済不均衡を円滑に管理するツールや政治的支援があるのか、もう分からない。ボラティリティーはすでに高まっているが、ここ数年と違ってすぐには元に戻っていない。これは、ボラティリティーの上昇に賭けているファンドにとっては望ましいことだ」と指摘する。

 もう何年もの間、市場のボラティリティー上昇に賭ける持ち高(市場のボラティリティー水準と関連付けたオプションや金融商品の買いから証券の下落に賭けることまでいろいろなものが含まれる)では、総じて成果が得られなかった。

 中国の景気減速からギリシャの債務危機、中東情勢の緊張まで、悪いニュースが多かったにもかかわらず、市場のボラティリティーは低いままの状態が続いた。急上昇することがあっても、中央銀行による流動性供給策が金融市場の防波堤となり、すぐに低下してしまうことが多かった。

 CBOEのデータによると、ボラティリティーの上昇で利益を上げるファンドのリターンは過去4年間、マイナス1%となっている。市場の極端なストレスを利益につなげようと、それ以上に積極的なポジションを取るファンドのパフォーマンスはさらに悪く、同期間の平均リターンはマイナス34%だった。

 CBOEのデータによると、これとは対照的に、ボラティリティーが低水準にとどまることに賭ける正反対のポジションは4年間で23%のリターンを生み出すなど、運用担当者にとってずっと有利な取引となってきた。

 ヘッジファンドはボラティリティーが高まらない方に賭けることで利益を上げてきた。カリフォルニア州に拠点を置く運用資産100億ドル超のファンド・オブ・ヘッジファンズ、パシフィック・オルタナティブ・アセット・マネジメント(PAAMCO)のポートフォリオマネジャー、サム・ディートリック氏はその理由を「少なくとも米国では株式のボラティリティーの高まりが短命に終わってきた」からだと説明した。

 ところが最近、そうした傾向が覆されてきたと同氏は言う。銀行株などが急落した2月11日、VIX指数(恐怖指数)は28を上回り、近年でも有数の高水準に達した。

 CBOEのデータによれば、ボラティリティーの上昇に賭けてきたファンドは1月に平均で2.2%のリターンを上げ、それ以上にアグレッシブなポジションを取っているファンドのリターンは3.5%だった。一方、ボラティリティー低下に賭けていたファンドのリターンは1月にマイナス0.8%と、2カ月連続のマイナスに沈んだ。

 ただ、一部の有名ファンドはボラティリティーの上昇に備えている。S&PキャピタルIQのデータによると、チューダー・インベストメント、ルネッサンス・テクノロジーズ、イオニック・キャピタル・マネジメントなどは過去1年間、市場のストレスが高まるとリターンが上がる「VXX」と呼ばれるボラティリティー商品のポジションを積み上げてきた。

 フォーラムのバクラモフ氏は投資家向けニュースレターで、「世界の金融市場では、ボラティリティーが高い状態が数年続くだろう」と述べている。

 同氏はまた、相場の下落や経済成長の鈍化を受け、中央銀行が「より積極的な」金融政策を実施するため、市場では「調整の波が続く」だろうと指摘する。

 ロンドンに拠点を置くヘッジファンド会社36サウス・キャピタル・アドバイザーズのコヒヌール・コア・ファンドも、1月には大きなリターンを上げた。関係者によると、同ファンドは過去4年間のうち3年間でマイナスリターンとなっていたが、1月には7.8%のリターンを上げた。同社の広報担当者はコメントを差し控えた。

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米住宅市場、投資家の現金買いで新規住宅取得困難に
フロリダ州オーランドで物件を探しているオースチン夫妻は今年初め、全額現金決済の投資家に負けた

By JOE LIGHT
2016 年 2 月 17 日 14:39 JST

 米国で住宅バブルがはじけた際、投資家は賃貸に出したりすぐに転売益を稼いだりできる割安物件を利用しようとして、差し押さえ物件や担保割れの任意売却物件に群がった。

 こうした簡単に利益の上がる状況はいまは無くなったが、投資家は全額現金決済というかたちで地方の住宅市場に食指を伸ばしている。こうした投資家と競合する初めて住宅を購入する人々にとって、これが悩みの種になっている。

 オースチンさん夫妻は今年初め、フロリダ州オーランドの物件で全額現金の買い手に負けた。夫妻は初めて自宅を買おうとして、いまも物件を探している。夫人は、「とても残念だった。あの家にしようと心に決めていたのに。現金で買う人が出てきて足をすくわれるなんて、考えたこともなかった」と語った。

 住宅バブルの間は、低利の住宅ローンに引き寄せられた投資家が、住宅価格を記録的な高値に押し上げた。そのバブルがはじけ、銀行が保有する幾多の不動産を転売したり貸したりするために、現金取引を持ち掛ける投資家が登場した。

 差し押さえ危機が緩んだとみられる都市の不動産業者は、投資家の対象が、銀行が保有する物件から通常は一次購入者の対象となる昔ながらの低価格物件に移動して競合していると言う。オーランド地区不動産協会のリサ・フォード事務局長によると、30万ドル未満の物件であれば、少なくとも1件の現金決済取引との競合を覚悟する可能性がある。

 不動産情報会社コアロジックの最新資料によると、オーランドでは昨年10月、39%の物件が全額現金決済だった。これは前年同月比5.6%減だが06年よりも23ポイント高い。フロリダ州ではマイアミやウエスト・パームビ−チでも現金決済率は下がっているが、まだ約半数の物件が現金決済で販売されている。


オースチン夫妻はまだ物件を探している。夫人は「現金で買う人が出てきて足をすくわれるなんて、考えたこともなかった」と言う。


 一部のエコノミストや不動産仲介業者は、住宅市場は不安な変遷をたどりつつあると言う。差し押さえ開始率は危機以前の水準まで下がったが、現金取引と一部の都市での投資家需要は過去の水準を大幅に上回ったままだ。このため、数少ない物件に多くの買い手が競合するため、低価格の住宅を購入することは難しくなっている。

 コアロジックによると、昨年10月に投資家向けに販売された住宅の割合は全米の25%を占めた。2012年につけた過去最高の32%から下がったが、住宅バブルとその崩壊以前の2000年の水準をまだ8ポイント上回っている。

 一方、全米不動産協会(NAR)によると、昨年12月に販売用住宅供給戸数は179万戸に減少し、現行の販売ペースでの在庫率は3.9カ月分と、正常な市場の目安となる6カ月分を大幅に下回った。

 低価格物件を中心とする買い手にとっては、厳しい状況になっている。NARによると、14年12月から15年12月までの1年間に、差し押さえ物件の売却が減ったこともあり、10万ドル(約1140万円)未満の物件は11.1%減少した。NARのチーフエコノミスト、ローレンス・ユン氏は「住宅供給は減りつつあるが、投資家需要は無くなっていない」と語った。

 今後1年で住宅価格は落ち着くとみているエコノミストは多い。また、一部の投資家は転売益を稼ごうとするよりも、賃貸物件の需要を長期的に見込んでいる。全米各地で、賃貸住宅市場は盛り上がっている。国勢調査局が1月に発表した昨年10-12月期の賃貸物件空き家率は7%で、過去10年間で最低に近く09年につけた11.1%のピークから下がっている。中心賃料は850ドルと、前年同期比で11%上がった。

 ロサンゼルス郊外に住む投資家、ダニエル・ブラウン氏は、カンザスシティーやシカゴ、クリーブランド、デトロイト、ピッツバーグなど全米の都市で不動産仲介業者と会い、投資機会を探っている。同氏は15年1月に初めて米国で住宅を購入したが、いまでは75戸分60件の物件を保有している。ブラウン氏いわく、「平均的な普通の都市では(住宅価格は)上がり下がりがあるものだが、そこにいる大半の人々はどこか住む場所が必要だ。そして次の年も、まだどこか住む場所を必要とするだろう」。

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宝くじ大当たりで近隣住民に破産急増なぜ?
米論文によると、宝くじの当せん金が1000ドル増えるごとに、当せんから数年にわたって近隣住民による破産申請が2.4%増加していた

By BEN LEUBSDORF 
2016 年 2 月 17 日 14:01 JST

 あなたが宝くじに当たったら、近隣住民の家計が危険にさらされる可能性がある。

 米フィラデルフィア連邦準備銀行が今月発表した研究論文によると、宝くじの高額当せん者が出ると、その近隣住民の間で破産が急増することが分かった。隣人の幸運を目の当たりにした人々が自分たちも資産を増やさなければならないと感じて、支払い能力を以上の消費を行った可能性があると論文の執筆陣はみている。

 論文を執筆した経済学者のスミット・アガワル、ビャチェスラフ・ミケッド、バリー・スコニックの3氏は「収入格差が引き金となって、比較的収入の少ない人々が豊かな隣人に負けていないところを示そうと、より多くの(無形ではなく)有形の商品を消費している」と指摘。この傾向が「持続不可能な追加的借り入れにつながり、最終的に経済的な困窮や破産を招く能性がある」という。

 アガワル氏はシンガポール国立大学教授で、ミケッド氏はフィラデルフィア連銀のペイメント・カード・センターに勤務している。スコニック氏はアルバータ大学教授。研究はカナダのある州(どの州かは明らかにされていない)の行政データに基づくもので、フィラデルフィア連銀の研究報告書に掲載された。

 アガワル氏らがごく狭い地域(平均で13世帯)での過去10年間の宝くじの当せんと破産申請を分析したところ、当せん者の近隣住民に経済的な影響が及んでいることが明らかになった。分析の対象としたのは宝くじに1回当せんした人の近隣住民で、当せん者自身が破産申請したケースは含まれていない。当せん金の額が決まっているものや当せん金が極端に高額な宝くじも除外した。

 その結果、宝くじの当せん金が1000ドル増えるごとに、当せんから数年にわたって近隣住民による破産申請が2.4%増加していたことが判明した。アガワル氏らによると、こうした傾向は収入が低い地域と収入格差が大きい地域で特に顕著だという。

 誰かが宝くじに当たったからといって、どうしてその1、2年後に近所の人が破産する羽目になるのだろう。アガワル氏らは財産で引け目を感じた人たちが借りた資金で派手な消費を行う可能性があるとの見方を示している。しかし、借金はいずれ返済する必要があり、経済的な困窮や破産を招く可能性がある。

 アガワル氏らの分析によると、宝くじの当せん金が少ない場合と多い場合では、当せん金が多いほうが、破産した近隣住民ははるかに多くの「目に見える資産」(車、バイク、住宅など)を保有していた。現金や年金など「目に見えない資産」にはこのような違いは見られなかった。

 つまり、誰かが高額の宝くじに当せんすると、近所の人は見えを張りたいがために車を買ったり家を改築したりして、破産する可能性が高くなるということのようだ。

 執筆陣はこの論文が「所得格差と経済的な困窮に因果関係があることを示す証拠」だとしている。

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FX Forum | 2016年 02月 17日 18:57 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:遠のく円安回帰、ドル110円割れに現実味=内田稔
三菱東京UFJ銀行 チーフアナリスト
[東京 17日] - 長らく下値目途とされた115円をあっさりと割り込み、110.99円まで下落したドル円相場は、そう簡単にドル高円安トレンドへ戻ることはないだろう。むしろ、従来にも増して円高への警戒が必要だ。

なぜなら、速度や値幅を増幅したのが投機筋だとしても、ドル円下落(円高)の根幹にあるのは、日本の経常黒字拡大や実質金利上昇といった歴然たる円高要素と考えられるためだ。つまり、投機筋の円買いは、こうしたファンダメンタルズ面での円高要因を見込んだ上で仕掛けられたとみた方がいい。

また、米国経済の減速を見越したドル安色もここから強まる可能性が低くない。昨年、すでにほとんどすべてのクロス円が下落したが、今年はいよいよ本丸とも言えるドル円においても、2012年暮れに始まった上昇トレンドが転換点を迎えた可能性が高い。

<実効性ある国際協調は期待薄>

今月下旬に、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を控えていることもあって、こうしたドル円急落に対する国際的な協調を期待する声は高まっている。実際、11年3月、東日本大震災後のドル円急落の場面でも、円急騰を投機の象徴とみなし、主要7カ国(G7)は協調して円売り介入を実施し、一定の効果を得た。急激な資本流出入に翻弄される新興国にとっても、投機的な動きを封じ込めるメリットは小さくない。

ただ、各国の思惑は交錯し、足並みがそろう可能性は低い。例えば、一部でささやかれる協調円売り(ドル買い)介入など考えにくい。なぜなら、ドル高の結果、製造業がダメージを受けている米国にとって、足もとの緩やかなドル安に特に違和感はなかろう。多くの新興国にとっても、ドル独歩高の裏で進んだ自国通貨の急落が、輸入インフレ圧力の高進や対外債務の返済負担増という二重苦をもたらしてきた。円高が加速したと言っても、異次元緩和後の大幅な円安をみてきた後だけに、あくまでもこれまでの反動といった日本固有の問題としか映らないだろう。

また、資本規制を強化するといっても、特別引き出し権(SDR)構成通貨入りを決めた中国にとって資本規制緩和は唯一残された宿題だ。国の威信にかけて、SDR入りに逆行する資本規制強化を回避する可能性が高い。実際、中国人民銀行の周小川総裁は、厳しい資本規制は不要との立場を示している。国際協調と言っても、実効性のあるコンセンサス形成は容易ではないだろう。

<揺らぐ「緩和=通貨安」の方程式>

そうなれば、市場はますます日銀の追加緩和への期待を高めよう。特に、マイナス金利付き量的質的金融緩和は、これまでの量と質の2次元に、金利を加えた3次元だ。欧州中央銀行(ECB)が3月に何らかの追加緩和策を講じた場合、少なくとも市場は日銀のゼロ回答を受け入れられないだろう。戦力の逐次投入を嫌うはずの黒田総裁の下であっても、今後、日銀による追加緩和の発動頻度が高まる可能性に身構える必要はありそうだ。

とはいえ、マイナス金利は、少なくとも現時点で円安に波及していないどころか、円高を招いた。期待インフレ率は低下し続けており、かえって実質金利は上昇。また、円の名目金利が非常に低いため、金利低下余地は限られる上、金利低下に対する円相場の感度も鈍い。

加えて、気掛かりなのは、その理由がどうであれ、昨年12月の補完措置や1月末のマイナス金利決定のいずれも、日銀が動いた後、意に反して円高が進んだ値動きを、市場が目の当たりにしてしまったことだ。昨年、幅広い通貨に対して円高が進んだ通り、マネタリーベースの拡大が、機械的に円安をもたらすわけではない。重要なのは、「日銀が動けば、為替は円安」との期待感だったはず。その点、次回の追加緩和後の為替相場の値動きは、極めて重要と言えるだろう。

<ドル円のストライクゾーンは105―110円>

仮に、国際協調が不発に終わり、金融緩和の効果に疑念が生じれば、ドル高円安期待は一層後退し、ドル円の下落不安は高まろう。今年に入って、投機筋の持ち高はすでに円ロングへと転じた上、通貨オプション市場のリスクリバーサルも、ドルプット円コール高を示している。

また、円安の一因でもあった非居住者の本邦株式投資は、昨年暮れから売り越しが目立つ。ここまでのドル円の下げ足が速かったため、しばらくの間、自立的な反発も想定されはするが、多くの市場参加者の相場観や水準観は、大幅な修正を余儀なくされたとみられる。

115円を上抜けすると、次第に戻り売り圧力は強まると考えられ、120円の大台回復が遠くかすむ。当方が試算する日米実質金利差から割り出すドル円のストライクゾーンは、105―110円圏。ドル高円安期待が大きく後退した今、ドル円相場がこの水準への引力に抗うことは容易ではないだろう。

しかも、昨年にならえば、2月から4月にかけ、配当金などの集積である第1次所得収支の黒字が、月間約2兆円に迫る規模となる。需給面では、依然ドル円への下押し圧力が加わりやすく、110円割れも現実味を帯びる。

唯一、こうしたドル安円高圧力に対抗し得るのが、マイナス金利に後押しされる日本発の対外証券投資フロー。もちろん為替ヘッジなしのオープンだ。ただ、大方の円安予想に反し、ドル円が大幅な値崩れを起こした局面で、渾身のドル買い円売りを行う投資家は、決して多くないだろう。

*内田稔氏は、三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチのチーフアナリスト。1993年、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、国内外で一貫して外国為替業務に携わる。J-money誌の東京外国為替市場調査ファンダメンタルズ分析部門では2013年、14年と個人ランキング1位。
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-minori-uchida-idJPKCN0VQ0SM


 

FX Forum | 2016年 02月 17日 12:40 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:マイナス金利、20の疑問(下)=河野龍太郎氏
河野龍太郎
河野龍太郎BNPパリバ証券 経済調査本部長
[東京 17日] - 黒田日銀はどこまでマイナス金利を拡大するのか。マイナス金利政策は日本経済にいかなる影響を与えるのか。パート1に続き、疑問に答える形で日銀の金融政策のリスクを分析する。

――関連記事:マイナス金利、20の疑問(上)=河野龍太郎氏

<マイナス金利政策が消費増税先送りを助長する恐れ>

Q11)さらなる付利引き下げのタイミングは。

日銀は当面、マイナス金利政策導入の市場への浸透度合いやその副作用を見極めようとする。よほどのことがなければ、次回3月の決定会合で追加緩和に向かうことはないだろう。

しかし、筆者は、国際金融市場の動揺がいずれ追加緩和を余儀なくさせると考えている。仮に国際金融市場が小康を得るなら、国内均衡の観点から利上げが必要と考える米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めに向かうだろうから、安定してもそれは一時的で、動揺はすぐに再燃する。ドルベースの過剰債務、過剰ストックを抱える新興国や資源国は、ドル金利の上昇には耐えられない。中国についても米国の利上げがもたらす、さらなるドル高には耐えられない。

一方、FRBが完全に利上げを中断することがあるとすれば、それは、米国経済が後退リスクに直面するケースである。中国の人民元問題は落ち着くかもしれないが、今度は米国の後退リスクそのものが国際金融市場の新たな動揺を招く。

いずれにせよ、円高圧力が一段と高まれば、政権からプッシュされ、副作用が大きい政策しか残っていないとしても日銀は静観するわけにはいかないだろう。不確実性は大きいが、今年6月会合で付利を20ベーシスポイント(bp)引き下げてマイナス0.3%へ、来年にも20bp引き下げてマイナス0.5%にすると予想している。

Q12)効果不足を理由にマイナス金利を中止することはないのか。

その可能性は小さい。リフレ派の論理からすれば、円高になり、株価が下落しているのは、副作用のせいではなく、金融緩和が足りないからということになるはずである。「効果が現れないのは、金融緩和が足りないから」というのが、彼らの口癖だった。もし黒田日銀体制の考え方がリフレ派理論に基づくものなら、付利の引き下げは効果が現れるまで継続されるだろう。

結局、量的・質的緩和(QQE)と同様、大きな効果が得られないまま、その限界に達するのではないか。もちろん、日銀がリフレ派に占拠されていないとしても、大衆民主主義の下で、中央銀行は有効な手段が尽きてしまったとは簡単には言えないから、副作用が多少大きくても、限界まで政策が追求される可能性が高い。

ただ、副作用は決して小さくないのだから、政策に限界はないと強弁するのではなく、中央銀行は魔法の杖を持っていないと、そろそろ真実を語るべきだと筆者は考えるが、どうだろう。

Q13)さらなる付利下げは賛成票を得られるか。

1月会合での決定は、5対4というギリギリの票決だったが、マイナス金利導入に反対した委員のうち、白井委員は3月末に、石田委員は6月末に任期満了を迎える。意見の多様性を求める委員会制の本来のあり方からは望ましいとは言えないが、政治的には黒田総裁を支持する人が後任に選ばれるのだろう。

ただし、石田委員はいわゆる「銀行枠」であって、後任もメガバンク出身者だとすれば、その委員が銀行業績に悪影響をもたらすさらなる付利の引き下げを積極的に支持するとは考え難い。次回以降の票決は6対3となるのだろうか。あるいは、銀行枠が一時凍結されるのだろうか。

Q14)どこまで付利を引き下げるのか。

上述したように、マイナス金利は、金融機関の収益にダメージを与え、信用仲介機能を毀損する恐れがあり、マイナス幅が大きくなればその危険性は高まる。また、あまり大幅なマイナスにすると、現金保有を助長するに終わり、金利押し下げ効果が減殺される。現金への選好が強まれば、強い景気抑制効果が現れる。このため、中央銀行は、付利をどこまでも引き下げられるわけではない(理論上、制約の1つは現金にマイナス金利が付かないことである)。

日銀は1月末の政策決定に際し、自らがまとめたQ&A方式の文書で、スイスがマイナス0.75%、スウェーデンがマイナス1.1%、デンマークがマイナス0.65%まで引き下げていることを紹介し、少なくともマイナス1%程度までの引き下げ余地があることを匂わせた(2月11日にスウェーデンはマイナス1.25%への引き下げを決定している)。

しかし、欧州中央銀行(ECB)の大規模緩和によるユーロ安・自国通貨高に翻弄される周辺の小国と、経済規模が大きく、かつ実質実効為替レートが歴史的低水準にある日本とを同列に扱うべきではない。日銀が深いマイナス金利へと踏み込んで行けば、通貨戦争を激化させる恐れがある。うまく行く場合でも、結局、国際資金フローに大きな歪みをもたらし、金融的不均衡が蓄積されるリスクがある。

Q15)黒田日銀総裁のサプライズ重視策は有効か。

黒田総裁はサプライズを好む。しかし、理論的にサプライズを重視する政策は、政策の予見可能性を低下させ、資産市場のボラティリティーを高め、政策効果を削ぐため、全くの逆効果である。

1980年前後にマクロ経済学を学んだ政策当局者の一部に、「合理的期待」の政策インプリケーションを誤って解釈し、事前に織り込まれた政策は効果がなく、サプライズ政策のみが有効と勘違いする人が存在していた。事前に織り込まれる過程で、政策効果が広がり、政策実行の際には、すでに全てが資産市場に織り込まれているのを効果がないと勘違いしたわけである。

実際には、政策当局が政策ルールを明確にした上で、景気物価の情勢判断や見通しを示し、それを元に市場が政策当局の意図を的確に読み取り、将来の政策経路が資産価格に織り込まれれば、政策効果をより高めることができる。逆に中央銀行総裁の発言を信頼しない人が増えれば、政策効果は減殺される。

Q16)マイナス金利導入の財政への影響は。

上述したように、マイナス金利導入の実体経済へのプラス効果は、極めて限定的だが、1つ確かな効果は、政府の借入コストを一段と引き下げることである。

2月9日に10年国債金利は初のマイナス圏に突入し、政府にとって追加的な借入コストはゼロないしゼロ未満という状態になった。議会制民主主義の下で、政治的な財政膨張が生じた場合、唯一の膨張の歯止めになるのは長期金利の上昇だが、日銀の極端な金融緩和でこうした警報装置は全く機能しなくなっている。政府の資本コストがゼロ以下まで限界的に下がったことで、政治家は財政に対する市場からの信認と好意的に受け止め、結果的に財政規律はますます弛緩するだろう。

成長期待の低下から資本コストが低下しても民間支出は簡単には刺激されないが、便益を受ける世帯と返済を負担する世帯が異なる公的支出の場合、決定主体である政治は資本コストの低下に敏感に反応する。世界経済の先行きへの下振れリスクが大きく高まっていることを大義名分に、10%への消費増税(17年4月)が再度先送られる可能性も十分に考えられる。

金利が上がるリスクがますます小さくなったと判断されれば、人々に痛みをもたらす増税は、政治的に先送りされやすい。QQEに続き、マイナス金利政策を採用したことが、またしても消費増税の先送りを助長する恐れがある。

Q17)マイナス金利政策は「金融抑圧」の一形態か。

日本経済の最大の問題は、人口動態に根差した公的債務の膨張である。人口ボーナス時代に作られた財政制度、社会保障制度の改革が人口オーナス時代になっても先送りされているから、財政赤字(構造的財政赤字)が改善しないのである。

安倍政権は、増税や社会保障関係費カットなどの財政調整ではなく、成長を高めることで公的債務問題を解決することを志向しているが、現実には潜在成長率を大幅に引き上げるのは困難であり、安倍政権の掲げる2%の潜在成長率の達成は現実的ではない。

筆者は、アベノミクスの帰結は、その意図は別として、金融抑圧に堕し、インフレタックスによる公的債務の圧縮につながると考えていた。ただ、当初からそのリスクを意識してはいたが、外部環境の悪化で、当面はインフレの引き上げが困難になっている。しかし、インフレがさして嵩(こう)じなくても、金利が一段と低下すれば、公的債務の負担は軽減できる。結局のところ、公的債務がこれだけ膨張している中で、財政調整を選択せず、インフレタックスによる実質的な公的債務圧縮も困難なら、金利をさらに引き下げるしかない。

つまり、今回の日銀によるマイナス金利の決定は、金融抑圧政策の文脈の中で、捉えておく必要があるだろう。財政調整が選択されず、過大な公的債務が存在する中で、グローバルな環境がインフレ的である場合にはインフレタックスによって、グローバル環境がデフレ的である場合にはマイナス金利によって、実質公的債務負担が削減されていくということなのだろう。

<ソフトランディングにはG4による第2プラザ合意が不可欠>

Q18)各国からの批判が日銀追加緩和のハードルにならないのか。

一段の付利下げのハードルとなり得るのは、米国や中国などからの日銀の実質的な円安誘導への批判の高まりかもしれない。もし、世界経済全体のソフトランディングを図ろうとするなら、FRBが利上げを当面中断する一方、日銀やECBも追加緩和を控え、ある程度の通貨高を受け入れることが望ましい。

しかし、ECBも3月に追加緩和に向かうことがほぼ確実な情勢であり、近い将来、そうした国際協調政策が採られる可能性は高いとは言えない。

むしろ、筆者が強く懸念しているのは、日銀やECBのマイナス金利政策の追求が中国の人民元の大幅切り下げを誘発することである。中国政府は、日銀やECBが通貨戦争を激化させた結果、自らが人民元の大幅切り下げに追い込まれたと主張するのではないか。

Q19)国際協調政策は機能しないのか。

世界経済のジレンマは、米中の二大経済大国が自国の国内均衡を優先した政策を追求すると、国際経済や国際金融市場に大きな緊張ないし大きな動揺をもたらすことである。

国内均衡を目指し米国が利上げを続ければ、バブル崩壊による過剰債務を抱える新興国、資源国の調整は困難を極め、同時にドル高進展が人民元問題を深刻化させる。国内均衡を目指し中国が人民元の大幅切り下げを行えば、世界経済に大きなデフレ圧力を撒き散らす。ソフトランディングを図るのなら、第2プラザ政策として日米欧中の「G4」による国際協調政策が不可欠である。

具体的には、前述したように、1)FRBの利上げの中断、2)日銀とECBの追加緩和の自制と、ある程度の通貨高の甘受、3)中国の人民元の大幅切り下げ回避と資本規制のもとでの緩やかな人民元切り下げ、4)追加財政による通貨高の悪影響の吸収、などが協調政策として必要となる。

ただ、対外要因で国内政策を縛られることを各国の中央銀行は強く嫌う。よほどの大混乱が事前に生じなければ、国際協調政策は実現しないのではないか。国際協調政策が取られる蓋然性は30%程度にとどまると考える。

Q20)国際協調政策の副作用は。

仮に国際協調政策が採用される場合、世界経済がソフトランディングに向かうとしても、それで全ての問題が解決されるわけではない。国内均衡と矛盾した政策が取られることで、米中では新たな不均衡が生じるリスクが高い。

世界的にディスインフレ傾向にあることを前提にすると、米国では緩和継続による過剰流動性が株式市場、住宅市場に流れ込み、新たなバブルが生まれる可能性がある。日欧のマーケットでもそうした動きが観測される可能性がある。

中国については、追加財政で景気が支えられるとしても、それによって資源配分が歪み、潜在成長率の低下に歯止めがかからない恐れがある。人民元の大幅切り下げを回避するための資本規制も、当然にして市場規律を損なう。

マクロ経済のボラティリティーを抑えるべく、ソフトランディングを志向することは政策的に妥当だが、あくまで時間を買うに過ぎない。国際協調政策を模索する動きも出てきたが、ソフトランディングを好感し各国の株価が上昇すれば、政策当局がそれに慢心して必要な改革が進まず、中長期的にはさらに大きな問題を抱え込むのがこれまでの経験だったことを肝に銘じておくべきだろう。

*河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-ryutaro-kono-boj-idJPKCN0VQ07O


 


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