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マイナス金利の導入は日本のDOOMSDAYへの一里塚(カレイドスコープ)
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/186.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 3 月 01 日 02:12:00: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

マイナス金利の導入は日本のDOOMSDAYへの一里塚
http://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-4193.html
2016.03.01  カレイドスコープ


政府がつくった債務の対GDP比が、デフォルトしたギリシャより悪い日本。そんな国がマイナス金利を導入すると、2年後、3年後に何が起こるのか。
(この記事はメルマガ第146号の一部のみです)

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ここまで、長々と、「あなたの居場所にやって来るもの」について書きました。
じっと、同じ場所に立ち止まっていれば、こうした未来に、あなたは、すっぽり覆われることになります。

では、あなたは、「あなたの居場所にやって来るもの」から逃げるために、いったんは後退しますか? それとも、嵐の中を捨て身になって前身しますか?
それは、あなた自身が選択することなのです。

いよいよ終盤のプロセスに入った日銀と政府

さて、私たちは現実に戻りましょう。

まず、もう一度、「マイナス実質金利」について解説しておきます。
最近ですが、マイナス実質金利を関係に説明している動画がアップされました。
https://www.youtube.com/watch?v=PfsSl0xTJk8

ごく基本的なことなので、知っている人は、スルーしてください。

松田氏の解説では、マイナス実質金利の環境下でお金をそのままにしておくと、価値が減価し、それは実質的な増税と同じことになるので、「隠れ増税」と言っています。

本ブログやメルマガでは、これを「ステルス増税」と書いてきましたが、両方とも、同じ意味です。

中央銀行や政府は、名目金利を基準にして景気の先行きを発表します。
しかし、それが経済の実態を反映していないことは、実質賃金が4年連続で下がり続けていることを例に説明しました。

重要なことは、実質金利が、今後、どうなっていくか、なのです。それをあらかじめ予想して、預金などの購買力の減価を防ぐことが資産の防衛になるのです。

通常、預金には一定の利回りがつくので、わざわざ「プラス実質金利」とか「プラス名目金利」などと、頭に「プラス」とつけないのです。

A 実質金利=名目金利−(予想)インフレ率

しかし、今回のマイナス金利の導入によって、現在は、こうなっています。(下)
私たちは、「マイナスの世界」に暮らしているのです。考え方を逆転させなければならないのです。

B マイナス実質金利=マイナス名目金利−(予想)インフレ率

具体的な例を挙げると、こういうことです。

世の中、不景気で銀行から金を借りる会社や個人が、ほとんどいない。だから、さまざまな手数料と、企業などへの貸し出し金利で儲けている銀行は儲からない。

仕方がないので、銀行も預金者に対する金利を低くせざるを得ない。その金利はプラスの金利ですから、名目金利・年利0.1%であるとしましょう。
100万円を1年間預けても、金利はわずか1000円です。1年後に全額、引き出した時の受取額は100万1000円です。

さらに、2%のデフレが進行している過程での(予想)インフレ率は、(−)2%です。

これをAに当てはめてみると、以下です。

実質金利=0.1−(−2)=0.1+2

となって、実質金利は2.1%ということになります。

デフレが、マイナスのインフレであることを知らない預金者は、1年間、銀行に預けておいても、わずか1000円しか増えないと嘆きます。
しかし、実質的には、元本に対して2.1%分増えているので、1年後に全額、引き出した時の受取額は100万1000円で変わりませんが、いざ、それで物を買おうとすると、102万1000円分の買い物ができるということになります。

これは、目には見えないのです。

たとえば、1年前に欲しいと思っていた軽自動車が100万円で売られていました。
しかし、1年の間にデフレが2%進行して、100万円の値段で売られていた軽自動車は、98万円に値段を下げなければ売れなくなってしまったのです。

その預金者は、1年間、銀行に預けていたお陰で、2万1000円分、同じ軽自動車を安く買うことができるというわけです。これは、目には見えないのです。「目には見えない金利」のことを実質金利と言います。

反対に、マイナス金利が導入された場合を見てみましょう。それは現在です。

一般の預金者の預金には、まだマイナス金利は導入されていませんが、民間銀行が日銀に開設している当座預金には、−0.1%のマイナス名目金利がかけれられていますから、いずれは個人の預金にも「名目上」で反映されるでしょう。

マイナス名目金利は、−0.1%です。
現在は、食品を始めとして生活雑貨や日用品では物価が上がっています。
しかし、分かりやすくするために、便宜上、(予想)インフレ率を0%としましょう。つまり、1年後も、インフレ率は0%と予想するのです。

これを、Bに当てはめると、

マイナス実質金利=−0.1−0=−0.1

となって、実質金利はマイナスとなり、それは、マイナス実質金利で表されます。この場合、インフレ率はゼロですから、マイナス名目金利とマイナス実質金利は同じ−0.1%です。

その預金者が、100万円を銀行に1年間、預けておいて、1年後に全額、引き出した時は、−0.1%の金利が掛けられているので、受取額は99万9000円となって1000円減っています。

インフレ率が、−(つまり、デフレ)でもなければ、+(普通のインフレ)でもなければ、その軽自動車の値段は1年後も100万円で変わっていないので、買うためには、マイナス金利で目減りした分1000円だけを補てんすればいいのです。

マイナス実質金利は、このように見かけ上は、インフレが進行したように見える場合があります。

さて、日銀がマイナス名目金利を導入した本当の目的は、いったい何でしょう。知っている人は、おそらく銀行の上層部だけでしょう。

それは、日本の中流層のお金を引き出させて、資産に向けさせることです。
そのために、黒田総裁は、「マイナス金利の拡大」もありうる、と宣言しました。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201602/CK2016020302000255.html

つまり、現在、日銀の当座預金には−0.1%の金利がかけられていますが、これを将来は、−0.2%、−0.5%にするかも知れませんよ、と言っているのです。そうすれば、2%のインフレ目標は達成できると言っているのです。

10〜12月の実質GDPが速報値で、前期比0.4%減、年率換算では1.4%減と発表されました。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL15HOB_V10C16A2000000/

実質賃金が、減り続けている(購買力が低下し続けている)のですから、実質GDPが減るのは当然です。日本のGDPは内需が約80%、輸出入分が、20%前後を行ったり来たりしているのですから。

安倍政権のアベノミクスは、GDPの80%を占める内需の振興策をまったくといっていいほど行わず、経団連加盟企業の多くを占めている輸出型企業に対して優遇措置ばかり講じています。

しかし、トリクルダウンは起きなかったことが証明されてしまったのです。
アベノミクスが虚構と言うよりは、安倍政権が、お題目ばかり唱えていて、アベノミクスに息吹を与えるような政策ができなかったことによる失敗です。

実効のある内需振興策とは、安倍首相の祖父・岸信介がやったような中小企業に優遇措置を与えて、労働者の賃金を増やすことで達成されます。

それが、日本の中流層の足腰をしっかりしたものにして、彼らの購買力を高めてきたのです。

その結果、実質GDPを増やすことができるのですが、安倍政権は、景気浮揚政策とは、まったく正反対のことをやり続けているのです。

「旧・3本の矢」は、有名無実の中身が空(くう)であったことが判明しました。
そこで、安倍首相は、「新しい3本の矢」構想を発表しました。

「GDP600兆円を目指す」(http://jp.reuters.com/article/abe-idJPKCN0SF08T20151021)と、高らかに宣言したのは良いのですが、それは、数量ベースで生産を増加させることによってGDPを増やす内実の伴った産業振興策ではなく、相変わらず日銀の金融政策に頼っています。確実に失敗するでしょう。

それは、お店の売上がちっとも増えていないのに、鉛筆舐め舐めして、帳簿の数字を書き換えるようなものです。

日銀が果敢に国債を買い入れ、膨大な量の1万円札を印刷してもインフレにならなかったのですから、次はマイナス名目金利をいじくるはずです。

B マイナス実質金利=マイナス名目金利−(予想)インフレ率

マイナス名目金利のマイナス幅を拡大していけば、当座預金に塩漬けにされたままの莫大な現金は少しずつ外に出てくるでしょう。竹筒のところてん突きを、じわっと押し出した時のように。

しかし、安倍政権が、相変わらず実効のある経済振興策を一切やらないのですから、企業の資金需要は増えません。
当然、銀行は、だぶついた円の貸出先を見つけることはできないでしょうから、しぶしぶ資産に振り向けるしか手はなくなります。

新規国債を買い入れて高く売る、というモデルは最初のうちだけで、すぐに崩れますから、国債は買いづらくなります。

しかし、国債とは、好んで民間銀行が買っているのではなく、日銀からの“指令”によって買わされているので、今後も仕方なく銀行は買い入れるでしょう。これは、規模を縮小した量的金融緩和です。

まず、民間銀行は、有望なアセットに投資するはずです。
それを、マスコミが大々的に報じると、次に個人の預金者が同じように預金を引き出して、少しずつ投資に振り向けるはずです。

しかし、政府は新規国債を増発しなければ、資金を調達できないのです。国債を喜んで買う銀行は少なくなるので、自ずと指標である10年国債の金利は上昇していきます。

おそらく、オリンピックがやってくる2020年の前に、国債の利払い増の負担に耐えられなくなった政府は、白旗を上げてしまう可能性が出てきました。

これが、「マイナス実質金利」が仕掛ける罠なのです。まさしく、マイナス金利は「両刃の剣」なのです。

残念ながら、「マイナス実質金利」は目で確認することができないので人々は、自分が陥穽に落とされても気が付かないのです。資産バブルが崩壊するまでは・・・

(これは、全文の4分の1程度です。全文はメルマガでお読みください)

 

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コメント
 
1. 2016年3月01日 02:34:59 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[325]

マイナス金利政策で凍りつく短期市場、1カ月先の金利も見極めきれず
2016/02/29 16:29 JST

    (ブルームバーグ):日本銀行がマイナス金利政策を発表してから1カ月が経過したが、イールドカーブの起点となる無担保コール翌日物は、黒田東彦総裁らの描いていたほどの金利水準には至っておらず、市場規模も大幅に縮小している。

日銀当座預金の一部に対するマイナス0.1%の金利の適用が始まった16日。金融機関同士が取引をする無担保コール翌日物金利は前日までの0.07%付近から一気に0.00%まで低下した。しかし、システム対応の問題や顧客の預金動向が見極めにくくなったことなどを背景に実際の取引は低迷し、コール市場の取引残高は25日時点で4兆5107億円と過去最低を記録している。マイナス金利政策導入が発表された1月29日に比べると約8割の大幅減だ。
17日からは外国銀行が無担保コール翌日物で10年ぶりにマイナス金利の取引を始め、その後一部の国内銀行も加わったが、日銀が当座預金の一部に設定した新たな金利水準までには達していない。国債市場では、新発5年物利回りがマイナス0.265%を付けるなど、追加利下げまで織り込むような水準まで低下。一方、債券の相場変動率(ボラティリティ)は急上昇している。
1カ月先の1年物円金利スワップ取引を行う権利を売買するスワップションでは、変動金利のLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)6カ月物と固定金利のスワップレートを交換する取引のオプションプレミアムが高止まりしている。市場関係者が1カ月後の短期金利の水準を見極めきれていないことの表れだ。
バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、「LIBORはゼロ%からマイナス0.1%の間のどこかで落ち着くとみているが、正直な話どこになるか分からず、不確実性の高まりにスワップションが反応している」と指摘。「無担保コールやGCレポのレートが日銀の意図した通りに下がっていないことが一因だ」と言う。
日銀の木内登英審議委員は25日、鹿児島市内の会見で、コール市場やレポ市場の縮小について、「何か起こった時に金融機関が流動性を確保するのが難しいという点で問題」と指摘。短期金利の水準については、「イールドカーブの起点が定まらないとイールドカーブ全体が不安定になるのは当たり前」と述べ、債券市場全体がボラタイルな状況にあるとの見方を示した。
日銀は1月の金融政策決定会合で、金融機関が日銀に預ける当座預金に3階層を設け、政策金利残高と呼ぶ部分にマイナス0.1%のペナルティーを課すことを決めた。日銀の試算では、同残高は当初10兆円程度に上る見通しだ。
東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは、「全く新しい制度になるので過去の資金繰りの経験則が使えず、なおさらコンサバティブになる」と言い、「いずれマイナス0.1%よりましなマイナス金利で運用するだろうが、活発にと言うより少しずつ」になるとみる。コール市場で主要な資金の出し手だった生命保険会社や損害保険会社、投資信託はマイナス金利のコール取引をせず、生損保はわずかでもプラス金利が残る普通預金に資金を滞留させていると言う。

付利マイナス0.1%が先走り
日銀がマイナス金利導入を発表した直後から債券相場は一段高となり、10年までの国債利回りがマイナスに沈んだ。その買い圧力は利回りがプラスになっている10年超の超長期債にも広がり、ほぼ全ての期間で過去最低利回りの更新が相次いだ。債券のボラティリティは2013年以来の水準まで一時急上昇した。
岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、「翌日物はお茶濁し程度のマイナス金利にしかなっておらず、日銀が意図した0.2%の付利引き下げのインパクトは出ていない」と指摘する。一方、「3月の国債大量償還と決算を控え、慌てて債券を買う動きになりやすい」と言う。
また、メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、「短期金利はまだゼロ%なのに、日銀当座預金の一部に設定したマイナス0.1%が先走り過ぎている」半面、長期金利の指標である10年国債利回りがマイナス水準に落ち着くのか懐疑的な見方を示している。

取り手にも出し手にもなり得る
ペナルティーを課される初回の政策金利残高の2月分は、準備預金の積み期間(2月16日−3月15日)の最終日にかけて明確になる見込みだ。22日には国債償還で金融機関に大量の資金が戻り、年度末は政府から支払われる資金も膨らむため、金融機関がマイナス金利でも市場で資金を放出する意欲は高まる。バークレイズ証の押久保氏は、「翌日物は今の水準でしばらく小康状態が続くが、国債償還以降はマイナス0.05%程度までは低下する」と予想している。
日銀が公表した業態別当座預金残高によると、1月の当座預金実績にマイナス金利を適用した場合の政策金利残高は参考値で23兆円程度。市場では、日銀が試算した当初額の10兆円程度を超えた巨額の資金の流れに注目が集まっている。
セントラル短資総合企画部の佐藤健司係長は、日銀の参考値によれば、ゆうちょ銀行や信託銀行は高水準の政策金利残高を恒常的に抱えるとみられ、コールやレポで資金を放出する可能性が高いと言う。地方銀行はゼロ%のマクロ加算残高に算定される貸出増加支援オペに参加してきた上位行ほど政策金利残高までの積み上げに余裕があり資金の取り手になりやすく、都市銀行は国債償還や年金払いなど季節的な資金需給の変動に影響を受けやすい業態なため、資金の出し手にも取り手にもなり得るとみている。
「日本は季節ごとの資金需給の振れが大きく、資金の出し手と取り手がかなり変化する可能性があり、日銀が政策金利残高をきめ細かくコントロールでもしない限り、翌日物が安定する水準を予想することは非常に難しい」と佐藤氏は言う。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 船曳三郎sfunabiki@bloomberg.net; Tokyo Chikako Mogicmogi@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:崎浜秀磨ksakihama@bloomberg.net 山中英典
更新日時: 2016/02/29 16:29 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O34X0Q6K50YC01.html




倉都康行の世界金融時評
時代は「ニュー・アブノーマル」へ次なる出動は「財政」か「ヘリコプター」か?

2016年3月1日(火)倉都 康行


「ニュー・アブノーマル」の時代に入ったとするニューヨーク大学のノリエリ・ルービニ教授(写真:ロイター/アフロ)
 日銀が導入したマイナス金利は、その発表後に円高・株安が進行したこともあって、すこぶる評判が悪い。メディアは、マイナス金利に対するネガティブな論調で溢れている。マイナス金利で先行している欧州市場でも、同政策の人気が高いとは言い難い。

 日欧ではそれぞれ、マイナス金利は債券市場機能を破壊し、銀行システムを不安定化させ、通貨切り下げ競争を促し、人々の現金選好度を強め、投資心理は逆に減退する、といった批判が目立っている。スウェーデンやデンマーク、そしてスイスなど欧州諸国の中銀が続々とマイナス金利を導入した狙いはユーロに対する通貨切り下げであったが、ECBが参戦したことで、その趨勢に歯止めが掛からなくなっている。

 ECBや日銀のマイナス金利導入は、量的緩和の限界という見方を強めたことで、政策評価が一層低下してしまった。特に日銀に関しては、昨年12月の「補完措置」が市場の失望を買ったばかりであり、マイナス金利が「切羽詰まった苦肉の策」と見做されて、リベンジ失敗との印象をも付け加えてしまった。

 確かに、既存の金融システムが収縮すれば逆効果となる可能性は否定出来ない。そもそも為替対策に過ぎないマイナス金利が度を超せば、副作用も起きるだろう。2%のインフレ率目標にマイナス金利を使うことへの説得力も乏しいし、量的緩和政策との整合性も疑わしい。

 だが、日銀がマイナス金利の導入を決定したことで、世界のGDP(国内総生産)の約25%を占める日欧諸国がマイナス金利の世界となっている。これはもはや、マイナーな金融現象とは言えない。そんな状況を見ていると、単なる金融政策批判に止まっていてはまずい、という気もしてくる。

米国もマイナス金利を検討か

 米国は一線を画しているが、今後の経済情勢次第では、FRB(米連邦準備理事会)もいずれ同様の政策を検討する時期が来るかもしれない。イエレン議長は先月の議会証言で、実施するかどうかは別問題として、2010年に一度検討したことのあるマイナス金利政策を再度協議する準備がある、との姿勢を見せた。筆者は来年あたり、景気後退に怯える米国がマイナス金利を検討する可能性もあるのではないか、と思っている。

 確かにマイナス金利は異様な政策であり、とても正常には見えない。だが、中国懸念という恐ろしい材料を背景にデフレ色の強まってきた世界経済が、そうした異常な政策を要請せざるを得ない時代に入ったのかもしれない。

 結果的に、日本はスイスに次いで2番目となる「長期金利マイナス国」になったが、そんなマイナス金利に覆われた債券市場は、長期不況構造に陥った現代経済における必然的な市場の姿であるようにさえ思われる。金融市場にはマイナス金利反対論が圧倒的に多数のようだが、筆者はマイナス金利を受け容れざるを得ないと感じている。

 但し、マイナス金利には銀行の貸出を増やして家計や企業の投資行動を活性化させる効果がある、といった理論家や政治家の唱える理想的シナリオは早々には実現しそうにない。マイナス金利は実に革命的な劇薬であり、金融リテラシーの変革を加速する潜在性はあるが、保守的思考に染まった社会では、短期的にはマネーに対する考え方は変わらないだろう。

 日銀は今後、一層のマイナス幅拡大に向かいそうだが、そんな状況ではタンス預金が更に増えてしまう可能性もある。ECBが500ユーロという高額紙幣廃止を検討し始めたのは、表向きはマネー・ロンダリングや過激派テロ組織の資金源になるような犯罪防止だとされているが、その本音は人々の現金保有意欲を低下させることではないか、と勘繰る向きさえある。妙な世界になったものだ、とつくづく思うが、現代社会はどこでどう狂ってしまったのだろうか。

「ニュー・アブノーマル」な時代へ

 2007〜8年の金融危機を経た世界経済は「ニュー・ノーマル」と呼ばれる時代に入った。米国の大手資産運用会社ピムコの経営陣らが作り出したその表現は、金融緩和の下でもなかなか需要が伸びず危機以前の成長率が戻らない状況で、非伝統的な金融政策の積極化が正当化される時代を指したものである。資本市場では債券も株もどちらも上昇するという奇妙な現象が続いたが、それもまた市場の「ニュー・ノーマル」である、と捉えられていた。

 だが、大恐慌のような景気底割れは回避されたとはいえ、従来の景気サイクルが示してきたような高い成長率は戻ってこなかった。低成長構造が長期化する中で、中央銀行は緩和拡大を余儀なくされ、通貨切り下げに走る国が現れ、債務不安から機動的な財政支出が阻まれ、各国では保護主義的なナショナリズムが台頭し、政治の舞台ではポピュリストが暗躍するようになった。だが何年経っても一般国民の所得は増えない。

 「ニュー・ノーマル」は、結局のところ実体経済にはそれほどプラス効果をもたらさなかった。それどころか、新興国経済の不振や先進国の格差拡大など、負の遺産を生んでしまった、とも言える。資本市場の虚構も、案の定2016年早々にガラガラと崩れてしまった。「ニュー・ノーマル」と認識されてきた昨今の実体経済と資本市場は、どちらもその計算違いに気付いたのである。だが次の一手を考える余裕はまだない。そんな絶望感や閉塞感が、マイナス金利に対する不満になって表れているようにも見える。

 いま、世界が直面しているデフレ傾向や資源安、低成長構造などの現象、そして実体経済と資本市場の不自然な乖離は「ニュー・アブノーマル」の時代を反映しているのだ、とニューヨーク大学のルービニ教授は描写している。世界に広がるマイナス金利もまさに「ニュー・アブノーマル」な世界の一現象であろう。

 市場を見渡せば、日欧市場でマイナスの利回りになっている債券がゴロゴロしている。国債だけでなく、社債の中にもマイナス金利が散見される時代であり、いまや世界で約7兆ドルの債券がマイナス利回りとなっている。その額は今後益々増えていくだろう。中央銀行の積極的な緩和政策が促した「債券市場革命」は、インフレ期待ではなくむしろ低金利が進行する景気後退ムードを加速している印象すら受ける。

 非論理的で不健全なマイナス金利は永続せず一時的な現象に終わる、との見方もあるが、百戦錬磨の欧米機関投資家らも、そんな「ニュー・アブノーマル」が何時まで継続するのか、答えを持ち合わせずに途方に暮れている。

 因みにJPモルガンは、日欧の中銀に続いてFRBや英中銀が将来的にマイナス金利を導入するシナリオも有り得るとして、そのマイナス金利の極限はなんとECBで4.5%、日銀は3.45%、英中銀は2.7%、FRBは1.3%などと予想している。まさに「ニュー・アブノーマル」に相応しい、眩暈がするような見通しである。

プラス面もあるマイナス金利

 マイナス金利が、金利収入で商売をしている銀行への猛烈な逆風になることは誰の目にも明らかだ。日本でもマイナス金利導入以降、銀行株の急落に見られるように銀行経営を巡る話題が花盛りになっているが、より深刻なのはマイナス金利の悪影響が著しい欧州の銀行である。

 先月はクレディ・スイスやドイツ銀行など欧州大手銀行への業績悪化懸念が生じ、その株価の急落に「欧州版のリーマン・ショックか」といった信用不安が台頭する騒ぎになった。ドイツ銀行が既発の偶発転換社債の利払いが出来なくなる、という噂が市場を駆け巡り、中国不安や原油安に加えて、欧州銀行の経営問題が新たな市場不安材料に押し上げられてしまったのである。

 そもそも金融危機以降の大手銀行の経営環境は、規制強化や利鞘縮小、資金需要低迷、市場取引減少、訴訟コスト急増など、逆風だらけとなっていた。昨今の銀行界では、米国のエネルギー関連企業への融資焦げ付き懸念、デフレの欧州経済情勢における不良債権増といった新たな問題も生まれ始めている。

 そして、金利面における銀行経営の厳しさは更に加速しそうな気配である。欧州では先月、スウェーデン中銀が政策金利をマイナス0.35%からマイナス0.50%に拡大、ECBは今月の理事会で同様にマイナス金利幅を拡大する可能性が高い。先月利上げを行った米国でも、既に軌道修正の観測が高まっており、段階的利上げによる銀行の利鞘拡大期待は急速に後退している。現時点での日本の銀行収益悪化は限定的と見られるが、マイナス金利が適用される当座預金の領域が拡大されるにつれ、欧州と同様の問題が指摘され始めるだろう。

 市場不安を払拭するために、ドイツ銀行は債券買い戻しを発表して潤沢な手許流動性を懸命にアピールし、同国のショイブレ財務相は「ドイツ銀行の財務は健全だ」と火消しに回らざるを得なくなった。同行が第二のリーマン・ブラザーズになるとは思えないが、水面下で信用不安の種が撒かれ始めていることには、注意を払っておく必要がある。マイナス金利では、銀行より生保などの機関投資家の方が深刻な問題を抱えてしまったように見える。

 無論、マイナス金利にはプラス面もある。カネを借りる人にとって新規借り入れや借り換えなどには有利な展開になる。中期的には株式や不動産などへの投資妙味が増す可能性もある。いずれ、既存の銀行経営にチャレンジする新興金融企業も出てくるだろう。個人的には、そうした風向きには少なからぬ期待感を抱いている。最近流行のフィンテックは、そんな金融革命の土壌になるかもしれない。日本政府もゼロ金利という無利息国債の発行で、新しいビジネスを後押しするくらいの知恵を絞るべきだろう。

 論客で知られるミネアポリス連銀前総裁のコチャラコタ氏は、マイナス金利はFRBの最強兵器になる潜在力を持っている、と述べている。確かに、実体経済に殆ど影響しないまま財政ファイナンスへと一直線に突き進む量的緩和に比べ、マイナス金利政策の方が人々のマネー意識を高め、銀行システムの変革を加速させるという意味で、劇薬効果はあるように思われる。

 だが、それらは飽くまで中期的な期待論に過ぎない。足許の実体経済を考えれば、金融政策の限界は明らかである。仮に米国までマイナス金利へと向かい始めたとしても、それは再び不動産バブルを生むだけの結果に終わる可能性は否定出来まい。

 日本経済も10〜12月はマイナス成長となり、今年の見通しもさほど芳しくない。中国経済の乱流に巻き込まれるリスク・シナリオは「健在」である。安倍政権は「日本経済は順調だ」と壊れたテープレコーダーのように繰り返しているが、「量的緩和がダメならマイナス金利で」といったその場しのぎの金融政策だけで需給ギャップを埋めるという甘い発想は、どこかで止めなければなるまい。

財政政策の検討を促すOECD

 先月、経済協力開発機構(OECD)は、昨年11月に3.3%と発表したばかりの世界経済成長見通しを、一気に3.0%へと引き下げた。米国の成長見通しを2.5%から2.0%へ、ドイツを1.8%から1.3%へとそれぞれ0.5%の大幅下方修正を行い、日本も個人消費の低迷を背景に1.0%から0.8%へと見通しを引き下げている。公的機関の予測モデルは、市場変動リスクを取り込むのは得意ではないようだ。

 だが今回のOECD報告は、そうした景気下振れの分析よりも、各国に対して金融政策に過度に傾斜しないように、と財政政策の検討を促していることの方に注目すべきだろう。確かに「ニュー・ノーマル」においては、金融政策への傾斜と財政支出の凍結というアンバランスな経済対策が主流となっていた。年初来の市場の不安定さの底流に、その政策的不均衡がもたらした脆弱性を読み取ることはさほど困難ではない。

 各国が相次いで導入した金融政策は徐々に「時間を買う政策」から「期待に賭ける政策」へと変質し、「インフレ目標」は「株式市場安定化目標」にすり替わっていった。それが「ニュー・ノーマル」から「ニュー・アブノーマル」への転換を促したようにも見える。だが、そこから脱出するための財政政策出動も容易ではない。

 米国は当面、大統領選を控えて財政出動はタブー視されようし、消費税増税をコミットしている日本には全く財政政策の余裕がない。財政優等生のドイツには一縷の期待もあるが、現時点ではその財布の紐を緩める意思はなさそうに見える。欧州には依然として財政不安への後遺症が残っている。

 中国は得意のインフラ投資で財政余力をアピールしようとするだろうが、それも鉄鋼やセメントなどの過剰在庫処理程度の効果しかないだろう。同国には一段の金融緩和の余地はあろうが、それを前面に打ち出せば、投機筋の人民元売りに火をつけるだけの結果になりかねない。G20財務相・中央銀行総裁会議では、金融政策への過剰な依存を修正し、通貨切り下げ競争を回避する方向性が打ち出されたが、結局は他に手立てがなく、各国の金融緩和が更に加速する可能性は否定出来ない。

次は「ヘリコプター・マネー」か

 一方で、世界最大のヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエイツ」の創設者であるレイ・ダリオ氏は、顧客向けレターの中で、中央銀行の量的緩和やマイナス金利などの非伝統的政策は既に限界に達しており、次段階として直接家計に紙幣を配布する「ヘリコプター・マネー」を検討せざるを得なくなるだろう、と述べている。英国で昨年、英中銀が直接インフラ投資の資金を支援する「準ヘリコプター・マネー」の議論が話題になっていたことを思い出す。

 「ニュー・アブノーマル」における処方箋は、財政出動なのかもしれないし、ヘリコプター出動なのかもしれない。それに加えて可能な限りマイナス金利を拡大させていく、という政策総動員の日が来ることも有り得よう。明確な将来像は見えないままだが、唯一言えそうなことは、金融政策の正常化や金融緩和の出口戦略といった「ニュー・ノーマル時代の正論」の出番はどんどん遠ざかっていくだろう、という見通しのみである。

このコラムについて
倉都康行の世界金融時評

日本、そして世界の金融を読み解くコラム。筆者はいわゆる金融商品の先駆けであるデリバティブズの日本導入と、世界での市場作りにいどんだ最初の世代の日本人。2008年7月に出版した『投資銀行バブルの終焉 サブプライム問題のメカニズム』で、サブプライムローン問題を予言した。理屈だけでない、現場を見た筆者ならではの金融時評。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/230160/022500010/?ST=print



「上野泰也のエコノミック・ソナー」
「俺たちの太郎」、またも麻生節炸裂!日銀にキビシイ指摘「金はある、需要がない」

2016年3月1日(火)上野 泰也


(写真:ロイター/アフロ)
 日銀がマイナス金利を導入したことにより、銀行・信用金庫や生命保険会社など国内の機関投資家の運用難は、格段に厳しいものになった。預金の多くをマイナス金利にはできない一方で、競争激化から貸し出しの金利はさらなる低下が避けられず、国債などによる余剰資金の運用利回りもどんどん下がっている。

 ベースの収益が細り続けると、いったい何が起きるだろうか。金融システムが円滑に作動しなくなるリスクは小さくない。

 ここで出てきた「運用難」という言葉が債券市場で聞かれ始めたのは、1990年代の半ばだったと記憶している。それから20年ほどの月日が経過した今日、円の金利水準は「虫眼鏡の世界」、さらには未踏の領域である「マイナスの世界」へと、足を踏み入れた。

「景気減速の前触れとは全然思わない」

 そういった重苦しい雰囲気の中で、ほっと一息つくことができるネタをしばしば提供してくれるのが、「俺たちの太郎」こと麻生太郎財務相の発言である。

 長期金利に関連した「麻生節」は、当コラムで以前に一度ご紹介したことがある(2014年6月24日配信「麻生節炸裂! 長期金利の謎を解く『オレ様の経済学』!?」参照)。ここでは、最近の閣議後記者会見の中で飛び出した発言を、時事通信の詳報からいくつか紹介したい。

◆1月29日 〜 原油安を引き合いに出しながら「景気減速の前触れとは全然思わない」

(この日の朝方に発表された鉱工業生産速報が前月比▲1.4%、家計調査・実質消費支出が前年同月比▲4.4%になるなど、生産や消費が停滞していることを示すような数字が相次いでいるが、これらの指標は景気減速の前触れとはとらえられないか、との問いに)

「全然思いませんね。雇用統計やら失業率やら、みんな順調に上向いているし、少なくとも経済で見れば、石油が(1バレル当たり)110ドルから30ドル切る…。きょう、いくらになった。28ドルくらいになったか。28ドルぐらいになったか、ドバイは。いくらになっている、きょう」

「こないだから、こういうときは、そういう質問をするときは調べて聞くと教えてあげただろうが。恥をかくから、よく調べてから聞いた方がいい。28ドルぐらいか何かになっているだろ。米国産標準油種(WTI)は少し上がっていると思うけども」

「総じて雇用は悪くないし、米連邦公開市場委員会(FOMC)のイエレン(議長)のところもそのままにしてありますし、(中略)ハードランディングでクラッシュするということのないようにみんなしている、気を使っている、お互いに連絡、取り合っているということを意味しているので、(中略)急に悪くなっているという話では全然ないと思いますね」

「灯油の値段も知らないのか、みんな」

「今、灯油いくらだ。灯油って、リッターいくらだ。話にならないな、これは。家庭環境について麻生さんは全く詳しく知らないとか言って、灯油の値段も知らないのか、みんな。はい、終わります」

◆2月2日 〜 日本経済は「金がなくて需要がある」のでなく、「金はあるが需要がない」

(日銀のマイナス金利が銀行経営にどのような影響を及ぼすか、との問いに)

「過去70年間、敗戦後71年間でマイナス金利をやったことは歴史的にはないから、いろんな初めてのことが起きるので、いろいろな未経験の領域みたいなことをやっておられるので、いろいろ不安定な感情的なものも分からないことがないとは思うが」

「少なくとも金融機関に対して、過度な圧迫というようなことがないということで、過度な金融機関に圧迫があると、いわゆる金融仲介機能と、いわゆる銀行が企業に対する仲介するとか融資するとかそういった機能に衰えが出る(中略)、今回のを見れば、一律にマイナス金利するなんて言っているんじゃなくて、内容をよく読んでないと、そういうこと言うので(後略)」

「俺は予想屋やっているんじゃないからね」

「いずれにしても金融庁として、そういったような内容なので、金融機関というのは、今のような状況においては、金はある、需要がないというのが日本の経済であって、金がなくて需要があるなんていう状況じゃないから、(中略)われわれとしてもそういった状況にあるかないか、各金融機関の内容をよくモニタリングしていかなくてはいけないということなんだと思いますけどね」

(不動産王ドナルド・トランプ氏が仮に米国の大統領になった場合、オバマ政権後の米国の対日政策の変化で警戒すべき点や今から予想されることは何があるか、との問いに)

「俺財務大臣やっているんで、予想屋やっているんじゃないからね。間違いないでもらいたい。どこか飲み会の質問ならともかくも、財研(財務省記者クラブ)の記者で公式の席で、他国の大臣が他国の大統領についてのいろんなことを言うことはありませんから」

◆2月16日 〜 市場が「激しく上下、左右に」動いている

(政府として16日からのマイナス金利にどのような効果を期待しているのか、との問いに)

「世界的にリスクの回避に向かって市場がいろいろ動き回っている。激しく上下、左右に動いていることは確かなんだと思うが、政府として、これに対してすぐ右往左往するということではなくて、G7(先進7カ国)とか、その他いろいろな国際社会との連携というものをきちんとしながら、こういったものに対応していこうと思って、民需主導というものの、いわゆる好循環の確立というものに向けてしっかりと動いていきたい、動いていかないといけないところなんだと思っている」

「世界的にリスクが激しく上下、左右に動いている」

「その(マイナス金利の)効果については、短期とか長期とか、日本の金利の曲線、通称、業界で言うイールドカーブというやつだが、こういったものが全体にわたって引き下げられる、長短両方共ね、そういったものが引き下げられるということによって、いわゆる消費とか、投資にプラスに働くということだろうし、資産の運用の変更というものを、現預金、預貯金に偏っている日本の場合は、金融資産1360兆円のうち880兆円ぐらいは現預金だという話だから、そういったものに、経済の拡大というものにプラスになる効果を期待されているんだろうと思うし、われわれもそういった出てくることを、期待をしているところではある」

「少なくとも新しい政策を取り入れたら、すぐ2日で3日でというような短期でものを見ているというのは、デイトレーダーならともかく、普通の人なら、もう少し対策が出たらその効果が出るまでは少々、時間を持って見守っていくという姿勢が必要なんじゃないですかね」

 2月16日の発言のうち、「世界的にリスクの回避に向かって市場がいろいろ動き回っている。激しく上下、左右に動いていることは確か」というくだりについて、筆者は考えさせられた。

 相場が激しく「上下」に動くというのはわかるが、同時に「左右」にも動くというのは、どういうことを指しているのか。いろいろ考えてみたのだが、理解不能である。そのすぐ後に出てくる「右往左往」という表現とリンクして言ってみただけなのだろうか。それとも、日銀がマイナス金利の導入によって金融緩和を「三次元」にしたと説明していることが麻生大臣の頭にあったため、ダイナミックな表現になったのだろうか。

 これより前、2016年2月2日の上記発言の中で麻生氏は、日本経済の実情を的確かつコンパクトに描写した。「金がない、需要がある」のでなく、「金はある、需要がない」というのである。

 エコノミストの一人として、この指摘に筆者は全面的に賛成である。人口減・少子高齢化が首都圏よりも先行して進んでいる地方圏を中心に日本の金融機関がいま直面している問題の本質は、これである。

 とすると、日銀がマイナス金利を導入してまで金融緩和を一段と強化しても、景気に対する刺激効果は乏しいというのが、素直な結論になるはずである。だが、おそらく財務大臣あるいは副総理という立場ゆえに自ずとブレーキがかかり、そこまで踏み込んだ発言を麻生氏は行っていないのだろう。

 マイナス金利について麻生氏の本音のトークを、いずれ聞いてみたいものである。

このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー

景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/022500034/?ST=print



中国、石油がリスクオフムードを転換させる時が来た
G20で中国危機封じ込めが見えてきた、人民元維持、資本規制、財政拡大が鍵に
2016.3.1(火) 武者 陵司
2月26〜27日、中国・上海でG20の財務相・中央銀行総裁会議が開かれた
 2月26、27日の上海G20はリスクオフムードを一変させる画期となるだろう。「最近の市場は世界経済の実態を反映していない、市場安定のために政策手段を総動員する」との声明は、各国の当局が市場を売り崩す投機家に対して、一致して対峙する姿勢を鮮明にした。
 財政政策の活用など新機軸も盛り込まれた。具体策に乏しいとの批判はあるが、それは違う。通貨の安定とともに資本移動の監視・規制強化を容認する姿勢を鮮明にしたことにより、焦点の中国の政策自由度は大きく高まる。「過度の変動や無秩序な動きは経済及び金融の安定に対して悪影響を与えうる」との声明の含意は大きい。
 通貨の競争的切り下げの回避、人民元の価値維持という大義名分のためには、中国は躊躇なく資本規制に踏み込むだろう。これで中国は国際金融のトリレンマから逃れることができ、投機筋の人民元売りは経路を絶たれることになる。
 ジョージ・ソロス氏が「中国のハードランディングは不可避」と発言し、人民元や香港ドルなどのアジア通貨売りを宣言したことにより、中国危機の焦点が人民元と外貨事情にあることが鮮明になったが、今後事態は安定化していく可能性が高まる。
 2014年6月から2016年1月末までの19か月累計で、中国の外貨準備高は7600億ドル(3.99兆ドル−3.23ドル)と著しく減少した。これに同期間の推定経常黒字額4000億ドルを加えると、合計で1.1兆ドル以上の巨額資本が中国から流出したことになる。この急減する外貨準備、急増している資本流出、人民元の先安観に歯止めをかけること、それが焦点であったが、歯止めがかかるという可能性が出てきた。そうなると中国は財政と金融政策の総動員により、経済成長の立て直しも可能となる。中国発国際金融危機の可能性は(将来は別として当面は)著しく小さくなったといえる。
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石油価格底入れのコンセンサス形成、石油が悪役から善玉へ
 原油情勢も世界的リスクオフムードを一変させる要素となるだろう。
 第1に原油価格に底入れの気配が鮮明になった。回復のペースに強弱はあるものの、今後現在の30ドル/バーレル以下に下落をすると予想する専門家は見当たらなくなっている(図表3)。ペースはともかく今後の石油価格上昇は、産油国、資源企業のリスクを軽減するものとして、市場にとって好材料となるだろう。
 第2に消費国にとって原油価格の下落の恩恵がこれから顕在化することも大きい。図表4に見るように、原油価格下落が先進国経済に対するプラス要因として顕在化するには18カ月のタイムラグが必要である。2014年夏場からの石油価格暴落の恩恵が今ようやく米国の家計に及び始めたところである。ガソリン価格下落による余剰が次の支出にまわり始める局面に入った。
 2014年夏場以降今日まで、原油価格下落はもっぱらマーケットにとってマイナス要因であった。産油国・資源企業の収入減、産油国による世界的リスク資産・株式売却、産油国・資源国の通貨下落というマイナス要素のみがクローズアップされ、大きくリスクオフムードを高める原因となってきた。しかしこれから石油がリスクオンの推進役になる。産油国・資源企業の収入の底入れと消費国の需要増というダブルのプラス効果が市場のムードを一変させるだろう。
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懸念一掃、年初のリスクオフムードは一変へ
 年初の世界的な株式大暴落により、人々はリーマンショック級の深刻な経済金融危機がやってくるという恐怖におののいた。上海総合インデックスは昨年の高値から49%下落、次いで香港のハンセン指数が36%、ドイツDAX指数30%、日経平均は28%下落と日独は中国・香港に次ぐ大暴落になった。このような日本、ドイツや中国の株価の動きは明らかにリーマンショック並みであった(もっともアメリカのダウ工業株指数は15%安とリーマンショック並みというにはほど遠い安定ぶり)。2016年の世界リセッションシナリオ、あるいは中国発の国際通貨危機シナリオが織込まれたのである。
 しかし当面、その可能性は著しく低くなったと思われる。米国経済が堅調でリセッションに陥る可能性は考えにくいこと、中国の危機封じ込め策が奏功し人民元暴落と世界金融危機は回避されること、この2つが見えてくれば日経平均は現在の1万5000〜1万6000円というレベルから鋭角上昇し、短期間に1万9000〜2万円の急落前の水準に戻るのではないか。G20が主張するように今のマーケットは過剰にリスクを織り込んだが、中でも中国売りの代替手段として過剰に売り込まれた日本株は大きく戻る可能性があるのではないか。
 リバウンドはドル/円についても言える。人々の為替相場コンセンサスが円安から円高へ大きくシフトしたが、それを正当化するファンダメンタルズの変化があったのか疑わしい。金利差でみても、景況格差(10〜12月日本のGDPがマイナスに陥った)で見ても、中央銀行の姿勢(マイナス金利導入の日銀と利上げ路線にある米国FRBの姿勢)を見てもすべては米国優位であり、ドル高要因である。
 にもかかわらず、なぜ急に円高予想になったのか。その理由はパブロフの犬、つまり条件反射だったと思われる。
 過去20年において世界の景気悪化時、あるいは世界の金融不安時、セーフヘイブン(危機の時の避難先)としていつも日本円が買われてきた。リスクオフの局面では決まって日本円が買われる、それは論理上の因果関連ではなく、そうした癖がマーケットに定着してきたということである。今回も中国発の金融危機、アメリカのリセッションという不安心理がかき立てられ、リスクオフの時代だ、危機の時代だと想定されると自動的に円が買われているということになったのではないか。ということは、危機シナリオが否定されリスクオンムードになれば、自動的に円安ドル高基調に戻る、と考えられる。
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決定的プラス要因、米国信用状況
 このように考えるとやはり米国の経済の確かさが鍵となるが、その検証にあたって米国の信用事情に多くのポジティブ要素が満ちている、ことが特筆される。
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 第1に、信用循環がまだ拡大途上にあることが指摘される。多くの悲観論者は2015年の12月のFRBによる9年ぶりの利上げにより信用が徐々にタイト化し、それが原因となって景気循環が息切れをすると考える。しかし図表7により過去50年間の米国のクレジットサイクル(実質債務成長率)の推移を見ると、まだ信用息切れにはほど遠いことが分かる。過去「1」の付く年が底、つまり1971年、1981年、1991年、2001年、2011年が信用のボトムであった。ということは次の信用循環のボトムは2021年、あと5年先であり、今の時点で信用拡大が止まってしまうというのは過去の規則的な循環から見てかなり無理がある。
 過去の規則性、経験則のみならず貸し手の事情、借り手の事情も信用拡大の持続性を正当化している。貸し手の事情とは中央銀行がインフレの心配により信用の蛇口を閉めること、市中銀行がバランスシート上の不安から与信を絞ることであるがそのような状況にないことは明白である(図表8)。
 借り手の事情という点では、借入れ能力が空前の高水準にあることが指摘される。借入れ能力を示す指標としてインタレスト・カバレッジ・レシオ(営業利益を利払い費用で割った倍率)を見ると、営業利益が過去最高で、金利が過去最低であるので、この倍率は過去最高である。つまり企業の借入れ能力はかつてないほど良好な状態にあるわけで、借金返済どころか、むしろ有利に借金をして、自社株買い、企業買収、投資など、様々な財務活動を積極化するべき環境にある。
 このように信用循環を過去の経験的なサイクル、貸し手の事情、借り手の事情という観点から検証すると、アメリカの経済は信用収縮からリセッションに陥るなどということは考えにくいということが分かる。これはリーマンショック時と今日との決定的な違いである。
 またエネルギー関連企業の財務体質悪化、エネルギー関連企業の破綻、エネルギー関連融資の不良資産化等が金融不安連鎖をもたらす懸念も語られているが、それも誇張された見方である。
 それは米国社債のリスクプレミアム、換言すれば企業の倒産確率から類推できる。図表9は1919年から2016年までのアメリカのトリプルB格付け社債のリスクプレミアムの推移である。リスクプレミアムはリーマンショック時には1929年の大恐慌の時よりも上昇したがその後急低下し、このところリバウンドしたとはいえ、過去の平均的な水準にとどまっていることが分かる。
 以上のような金融環境においてはリスクオン、株高が整合的であるのは、図表10の米国2年、10年債利回り格差と株価(S&P500)推移を見れば明らかであろう。過去株式の急落、暴落は金融引き締め、利上げにより長短金利が逆転(逆イールド化)した時1997年、2000年、2006年に起こったが、今のイールドカーブは逆イールドにはほど遠いことがわかる。
 それにしても、このような信用状況の下であるにもかかわらず、なぜ仕掛け的な売り、リスクオフが見事に成功してきたのだろうか。それは、今のマーケットではかなりの市場参加者が中央銀行を小馬鹿にし、何やっても無理、中央銀行ができることはなくなったと、中央銀行に刃向ったポジションを取ろうとしているためであろう。本当にそうだろうか。米国の市場には "Don’t fight theFed" という金言、つまり中央銀行がやろうとしていることに逆らったら負けるという金言があるが、それはいつでも世界のどの市場にも(もちろん現在の日本においても)貫いている金言である。なぜなら中央銀行は結果責任を負い、それを実現するための無限の弾薬を持っている主体だから。傍観者、無責任の評論家や投機家とは違うのである。
 年初の世界金融市場を支配したリスクオフムードはリスクオンへと、いったん大きく転換するのではないか。
(*)本記事は、武者リサーチのレポート「ストラテジーブレティン」より「第157号(2016年2月29日)」を転載したものです。
(*)投資対象および銘柄の選択、売買価格などの投資にかかる最終決定は、必ずご自身の判断でなさるようにお願いします。本記事の情報に基づく損害について株式会社日本ビジネスプレスは一切の責任を負いません。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46199 


中国人民銀、預金準備率を引き下げ−景気てこ入れ策を強化 (2)
2016/03/01 01:09 JST

    (ブルームバーグ):中国人民銀行(中央銀行)は、市中銀行に課す預金準備率の引き下げを決めた。株式相場下落と通貨安の中で景気てこ入れ策を強化する。
人民銀が29日ウェブサイトに掲載した声明によると、預金準備率は3月1日から0.5ポイント引き下げられる。大手銀行の準備率は17%となる。公開市場操作による銀行間市場の金利低め誘導と流動性注入などの景気刺激から、より伝統的な金融緩和に回帰する。
人民銀の周小川総裁は先週、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議開幕前に上海で、必要ならば追加行動が可能と強調していた。また、楼継偉財政相は経済の構造改革を支えるために財政赤字を拡大させると述べた。
HSBCホールディングスのアジア経済調査共同責任者のフレデリック・ニューマン氏は「中国当局は政策措置によって成長を安定させるというG20での約束を実行した」とした上で、預金準備率引き下げは「資本流出に歯止めを掛けることに成功したとの当局の認識を示唆する。1月には流出加速の懸念から明示的な金融緩和を遅らせていた」と解説した。
ブルームバーグ・インテリジェンスの推計によれば、預金準備率引き下げによって金融システムに約6850億元(約11兆7900億円)が注入される。中国からの資本流出が最近数カ月に記録的なペースとなったことを受け、人民銀は人民元相場の安定に取り組んできた。準備率引き下げは銀行の融資余力を高め資本流出の穴を埋めるのに役立つ。
中国の7日物レポ金利に基づくオフショア市場の金利スワップは29日遅くに全ての満期について低下した。
信達証券の陳嘉禾ストラテジストは「優良株は経済との連動が強いので明日の市場で上昇するかもしれない」と話した。
人民銀はウェブサイトに掲載した声明で、預金準備率引き下げの目的について、安定的かつ適正な与信拡大を促すことと、供給サイドの構造改革に適した金融環境の創出にあると説明した。
原題:China Adds Support for Slower Economy With Reserve Ratio Cut (3)(抜粋)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3B0DZ6K50YK01.html


Business | 2016年 03月 1日 00:56 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス

 中国自動車市場、今年6%拡大 第4四半期に加速=独自動車連盟

[フランクフルト 29日 ロイター] - ドイツ自動車工業連盟(VDA)は29日、中国の自動車市場は2016年は

6%拡大するとし、12月に示した予想の2%から上方修正した。第4・四半期の販売加速が予想されるためとしている。

VDAのウィスマン会長は声明で「中国の乗用車市場は10月以降ギアが高速に切り替わっている」とした。

VDAはまた、米市場の小型自動車の販売台数が今年は1750万台と、前年の1744万台から増加すると予想。世界的

な自動車販売台数は2%増の8000万台になるとの見方を示した。
http://jp.reuters.com/article/china-auto-market-idJPKCN0W222Y



英銀バークレイズ:東京で解雇した従業員の割増退職金を引き上げへ
2016/03/01 00:00 JST

    (ブルームバーグ):英銀バークレイズが日本株ビジネスからの撤退に伴い退職する従業員への割増退職金(パッケージ)の条件を引き上げたことが、複数の関係者への取材で明らかになった。1月に約80人の東京で働く社員を解雇してから、上乗せを提示したのは初めて。
関係者によれば、バークレイズ証券は先週から今週にかけて日本株のアナリストやセールス、トレーダーらと3度目の個別面談を実施していて、これまでのおよそ2ー7カ月の割増退職金に新たに3カ月を付与する案を示した。
日本株ビジネスの撤退に伴い1月21日に退職を勧告された従業員のほとんどは、パッケージの額があまりに低いとして同意していなかった。今回提示された新条件でも、ほとんどの社員と合意に至らなかったもよう。外国銀行従業員組合連合会によれば、日本で展開する外資系金融機関のパッケージは直近2年では12カ月から36カ月で、平均は約2年分だという。
外銀連の杉本和幸書記長はブルームバーグの取材に対し、「バークレイズの割増退職金は日本でのこれまでの事例と比較しかなり低いと言える」と話し、特に「会社都合の撤退や閉鎖などの場合ではなおさらだ」と指摘した。
ジレンマ
1月21日午前7時半、バークレイズ証券の中居英治社長は、東京の本社ビル31階のホールに関連する従業員を集め、同業務から撤退することを伝え、デリバティブ、プライムサービス、電子取引にフォーカスすると表明した。
バークレイズではアジア太平洋の業務縮小に伴い約230人を削減、豪州、台湾、韓国、マレーシアから撤退する計画が21日までに明らかになっている。また複数の関係者によれば、投資銀行業務では全世界で1000人規模の人員を削減する見通しだ。
退職勧告を受けた従業員は、今後よりよい条件を引き出すために、時間をかけて会社側と交渉したいという半面、新たな職場を見つけ1日も早く勤務を開始しなくてはならず、ジレンマに陥っているという。
バークレイズの成松恭多広報担当はパッケージの詳細や、現在の交渉についてコメントを控えた。
英文記事:Barclays Said to Boost Severance Offer for Fired Tokyo Employees
記事についての記者への問い合わせ先:東京 日向貴彦 thyuga@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Marcus Wright mwright115@bloomberg.net 持田譲二, 中川寛之
更新日時: 2016/03/01 00:00 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3ANLC6S972801.html




アルゼンチン、ヘッジファンドと債務問題で決着−46.5億ドル支払いへ
2016/03/01 01:14 JST
    (ブルームバーグ):アルゼンチンは国債デフォルト(債務不履行)から15年に及ぶ法的係争を経て、債務再編の受け入れを拒否していた債権者との間で問題決着に原則合意した。
ポール・シンガー氏率いるヘッジファンドのエリオット・マネジメントなど「ホールドアウト」と呼ばれる債権者団に対し、アルゼンチンは46億5000万ドル(約5250億円)を支払うことになった。これは判決で認められた総額(元利含む)の約75%に相当する。裁判所が任命した仲裁人のダニエル・ポラック氏が29日に文書で発表した。アウレリアス・キャピタル・マネジメントなどを含む債権者団はこのほか、法定外での和解として訴訟費用なども受け取る。
原題:Argentina Reaches $4.65 Billion Debt Deal With Main Holdouts(抜粋)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3BFRBSYF01X01.html



「家の寿命は20年 消えた500兆円のワケ」
フィンテックならぬ不動産テック、破壊者の横顔_空気を読まないパワーが業界を揺るがす

2016年3月1日(火)玉置 亮太

 不透明で非効率な商慣行が横行する不動産業界に、デジタルの力で新風を吹き込もうとする破壊者たちがいる。彼らの名前は「リアルエステート(不動産)テック」。不動産にIT(情報技術)を組み合わせ、これまでの常識にとらわれない新しい不動産サービスを生み出す。そんな新興勢力が相次いで登場している。

 「日本の不動産業界はガラパゴス状態だ」。こう語るのは求人情報サイトを運営するリブセンスの芳賀一生新規事業本部プロジェクトリーダーだ。芳賀氏は同社が2015年8月に始めた不動産サービス「IESHIL(イエシル)」を率いる。


リブセンスの芳賀氏。「日本の不動産業界は米国の20年遅れ。将来世代がより良い家を選べるようにしたい」と語る
 芳賀氏の言うガラパゴス状態とは、不動産関連情報の透明性の違いを指しての発言だ。日本の不動産業界における物件情報は、「レインズ(不動産流通標準情報システム)」を通じて閲覧できるが、同システムを利用できるのは不動産業者のみ。しかし米国では、MLSというシステムに全米の不動産業者が物件情報を登録。それを一般に公開している。

 不動産会社は情報を抱えているが、売買の主体者であるはずの消費者は情報に乏しい。交渉の材料を持たない消費者は業者のいいなりになるしかなく、不信の芽が生まれる。結果として、長い目で見れば業界そのものにもマイナスとなりかねない。不動産業界が抱える問題構造の根底にあるのが情報の非対称性だ。

 イエシルは、そんな状況に風穴を開けようと始まった。売買や賃貸の履歴など、3000万件のデータを同社が収集。独自に分析して、マンション価格を1部屋単位で推定、サイト上で公開している。現在は東京23区のマンション4万2000棟が対象で、順次広げる。


リブセンスの「イエシル」。サイト経由で専門家によるアドバイスを受けられるサービスも提供
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街の実力までもガラス張りに

 リブセンスがガラス張りにしようとしているのは不動産の相場情報だけではない。現在、準備を進めているのが物件の総合的な資産価値を推し量るレーティング(評価)サービスだ。物件周辺の施設の充実度、治安、地盤情報など、「地域の生活利便性に関する八つの項目を基に、物件を評価する」(芳賀氏)。例えば買い物や保育環境、病院施設が整っているか、犯罪の発生頻度、地価や人口の推移、災害時の安全性などを示す。

 物件が位置する街の実力までもガラス張りにして、消費者が物件の魅力を総合的に判断できるようにしようというものだ。「不動産は家や土地といった実体を持つ商品だが、本質は情報で選ぶ商品。物件そのものの不具合はもちろん、周辺の環境など現在は住んでみなければ分からないことが多すぎる。価格だけにとどまらない情報サービスを提供することで、より多角的に物件を選べるようにする」。芳賀氏はレーティングサービスを提供する狙いをこう語る。

 評価に使うのは、官公庁や公共機関が提供する、オープンデータと呼ばれる公的なデータだ。地域別の人口統計や公示地価、路線価、景気指数、学区の情報、犯罪や事故の統計など。現在、オープンデータの提供元である総務省などと協議している。

「反発は覚悟の上」

 ただ、低い評価を付けられた地域の不動産業者や自治体にとっては、魅力に乏しいと宣告されたに等しい。増田寛也元総務相ら民間有識者でつくる日本創成会議が2014年、人口減少などで将来に消滅する可能性がある都市を発表した際には、名指しされた自治体が猛反発した。一企業のサービスとは言え、リブセンスのレーティングも同様な反発を引き起こしても不思議ではない。

 芳賀氏は「反発は覚悟の上」と意に介さない。「便利で使いやすいサービスならば、結果として消費者の支持が付いてきて市場が形成されるはずだ」。

 むしろ「海外のネット企業が、市場性ありとみて同様なサービスを投入することの方が脅威だ」と強調する。「海外企業は良くも悪くも空気を読まないで、斬新なサービスを投入する。そして気がつけば市場を根こそぎ持って行く。こんなことがこれまで何度となく繰り返されてきた」。リブセンスとして不動産サービスに参入する背景には、こんな問題意識もあるという。「日本企業は規制や周囲の目を気にして、斬新なサービスを投入することへ及び腰になっているのではないか」。

囲い込み、オトリをあばく

 同じ不動産会社が、売り主と買い主の両方から手数料を受け取るため、他の不動産会社からの物件照会を門前払い。売り主の利益代表として最も高く買ってくれる相手を見つける努力を怠り、自社で見つけた買い主以外とは取引できないようにする――。不動産業界に根強く残るとされる悪弊、「囲い込み」だ。

 この囲い込みを打破しようとしたベンチャーがいる。イタンジが手掛ける、「囲い込みチェッカー」だ。昨年5月に提供を開始。当初は無料だったが、利用者が多く8月からは一回3000円と有料化した。


イタンジの「囲い込みチェッカー」。当初は不動産会社からの反発もあったという
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 利用者はイタンジのウェブサイトに物件情報を入力し、調査を依頼する。依頼を受けたイタンジは、同担当者による覆面調査を実施。該当の物件の募集状況を調べる。利用者が物件情報を入力してから、1営業日以内に判定結果を知らせる。

 同社の「異端」なサービスはこれにとどまらない。その名も「オトリ物件チェッカー」というサービスも昨年実施した。賃貸物件が対象のサービスだ。不動産会社が客寄せのために、実在しない物件を賃貸情報Webサイトに掲載。問い合わせしてきた客に「もう埋まってしまいました」などと回答し、ほかの物件を紹介するという「おとり行為」を調べる。

「AI営業マン」でオトリ撲滅へ

 「消費者が自ら情報を探せるようにして業者との情報格差を縮め、不動産業界全体の健全化に貢献したい」。伊藤嘉盛社長は、両サービスを投入した狙いをこう語る。「業界と対立する意図はない」と伊藤社長は強調するものの、業界で暗黙のうちにまかり通っていた悪弊に切り込むサービスだけに不動産会社からの反発もあったという。


イタンジの伊藤社長。「人間とAIの分業体制で不動産会社の仕事をサポートする」
 いま、同社が力を注いでいるのがAI(人工知能)の活用だ。この2月に提供を始めたのが、AIを使って不動産会社の賃貸物件営業を支援するサービスだ。

 「○○マンションの○○号室、まだ空いてますか」「はい、空いています。入居日はいつごろをご希望ですか」。消費者はスマートフォンを使い、チャットツール「LINE」の要領で問い合わせのメッセージを送ると、不動産会社から答えが返ってくる。

 ただし、答えているのは人間ではなくAIだ。人間と違って年中無休で働き続け、回答までに時間もかからない。

 「AI営業マン」の働きで、賃貸仲介の悪弊である「おとり行為」にブレーキをかけられるのではないかと、同社は期待する。不動産会社がおとり行為に手を染める大きな動機が、顧客を一人でも多く呼び込むこと。ただ、「不動産営業の現場は人手不足で満足に顧客対応ができていない。当社の調べでは、問い合わせをしてきた顧客の6割が来店に至らず離脱している」(伊藤社長)。

 AIで現場を省力化できれば、顧客獲得コストの抑制につながる。結果として、おとり行為に手を染めるインセンティブを減らせるというわけだ。

 良い意味で空気を読まず、既存秩序の破壊を恐れない。それが長い目で見れば業界を健全化し、発展につながる。青臭いと言われようと、彼らは止まらない。ITの力で不動産ビジネスを変える、不動産テック企業の台頭が業界を揺るがしつつある。

このコラムについて
家の寿命は20年 消えた500兆円のワケ

「住宅は資産」。その思い込みをあっさりと覆すデータがある。1969年以降、500兆円を超える国民の住宅資産がひっそりと消え失せている。この国における、住宅とは単なる消費財にすぎないのが実情だ。新築購入直後から急速に価値が下落し、「20年でほぼゼロ」になる業界慣行が、住宅品質の価値を認めないいびつなマーケットを生んだ。人生最大の買い物を胸を張って「資産」と呼べるようになる日は来るのか。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/021800009/022900006/?ST=print


2016年02月29日(月) 真壁 昭夫
米経済に「持ち直しの兆し」は本当か?

【PHOTO】gettyimages
まだら模様の回復
最近、米国の経済指標に強めの数字が出ており、再度、年内の米利上げ観測が高まりつつある。たとえば鉱工業生産、耐久財受注、10〜12月期のGDP(国内総生産)成長率の改定値は予想を上回った。そうした経済指標を反映して、年初来からの景気後退の懸念がやや薄くなっている。

ただ、昨年12月の利上げ時点に比べると、世界経済の状況は大きく変化している。原油価格の急落を受け、産油国のソブリンウェルスファンドの資産売却は世界の金融市場を不安定にさせている。

また、6月23日の国民投票で、英国のEU離脱(Brexit)の懸念が高まるなど不安定要素は増えている。その中で米国の利上げが適切なのかどうか、FRBはこれまで以上に慎重な判断を求められる。

各米国経済指標をみると、堅調なものが多い。特に、鉱工業性差や耐久財受注という製造業に関する指標の反発は、先行きへの懸念を食い止める材料になっている。

昨年10月以降、ISM製造業景気指数が50を下回り、米国の製造業の景況感悪化への懸念が高まった。それだけに、生産活動に回復の兆しが出始めていることは、米国経済の回復が続き、緩やかな利上げが進むという見方をサポートする材料になるといえる。

これまでの米国経済は川上の製造業が弱い一方、川下の非製造業が比較的堅調だった。それが、ここへ来て非製造業の景況感は少しずつ弱含みになりつつある。2月のサービス業PMI(購買担当者指数)は、景気の強弱の節目と言われる50を下回った。1月のISM非製造業景気指数は50を上回ったものの、前月からは低下した。

昨年来の経済指標を冷静に見ると、米国の景気は強弱混合の状況にある。取り敢えず企業の経営が前向きであれば、緩やかな回復が続くという見方はサポートされやすいだろう。しかし、米国の企業業績はエネルギーや機械を中心に悪化が目立つ。そのため、米国経済の下振れリスクも高まっている可能性がある。

英国の「EU離脱」というリスクも
年初来、世界の金融市場は原油価格の下落や、中国経済への懸念を背景に不安定になっている。すでにFRB高官は金融市場の不安定な動きが実体経済に悪影響を与えないか注視するという見解を示している。そして、徐々にFRBの関係者は景気に対する懸念を強めている。

一例をあげると、セントルイス地区連銀のブラード総裁は12月の利上げ、その際に公表された金利見通しが市場の混乱につながったという見方を示している。そのほかにもFRB理事らは、海外の市場混乱を受けて米国の金利が長期的に低位に推移する可能性を認識しており、金融政策は慎重に運用されるべきとの考えを示し始めた。

また、英国がEUからの離脱(Brexit)を模索し始めるなど、国際金融情勢の不透明感は増している。すでに英ポンドは離脱による影響への懸念から対ドルで下落している。FRBが利上げはデータ次第だというスタンスをとっていることもあり、短期的にはドル高が進みやすい。

ただ、さらなるドル高は米国の景気回復を圧迫する恐れがある。そのため、米国の金融政策はデータ次第とは言いづらくなっている。FRBがこれまで以上に慎重に金融政策を運営する可能性も高まっていると考えられる。そのため、米国経済の先行き、ドルの動向は慎重に見る必要があるだろう。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48047

政府・日銀、円売り介入せず…11日の相場急落
読売新聞 2月29日(月)20時36分配信

 財務省は29日、1月28日から2月25日までの為替介入額がゼロだったと発表した。

 2月11日に対ドルで円相場が急落した際、政府・日本銀行が円売り介入に踏み切ったとの観測が市場に広がったが、実際には介入はなかった。

 日本時間2月11日午後9時20分過ぎから数分間で、円相場が1ドル=111円40銭前後から1ドル=113円台に急落し、介入観測が広がった。この急落の原因は判然としないが、ヘッジファンドの投機的な動きが引き起こしたとの指摘がある。

 財務省はほぼ1か月ごとに外国為替市場への介入額を公表している。欧州の財政危機などを背景に円相場が急騰した2011年11月を最後に介入は行われていない。

【関連記事】
東京円は11銭安
東京円71銭安、1ドル=112円87〜89銭
東京円5銭安、1ドル=112円16〜18銭
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東京円74銭高、1ドル=112円13〜15銭
最終更新:2月29日(月)20時37分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160229-00050115-yom-bus_all



2. 2016年3月01日 12:49:23 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[878]

>政府は新規国債を増発しなければ、資金を調達できないのです。国債を喜んで買う銀行は少なくなるので、自ずと指標である10年国債の金利は上昇

相変わらずバカなやつ

金利が上昇したらマイナス金利は解消する


>オリンピックがやってくる2020年の前に、国債の利払い増の負担に耐えられなくなった政府は、白旗

さらにアホだな

既発債の金利負担は変わるわけないだろ

それに日銀の緩和もある


そもそも金利(インフレ)上昇が進んで出口になるなら、結構なことだ

しかし、こういうゴミは尽きないなw


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