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≪報道しろ≫「TPPは悪い協定」増税反対のスティグリッツ教授が明言!「米国では批准されない… 政治板リンク
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/629.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 3 月 17 日 21:53:00: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

≪報道しろ≫「TPPは悪い協定」増税反対のスティグリッツ教授が明言!「米国では批准されないし、新たな差別を生み出す」

http://www.asyura2.com/16/senkyo202/msg/898.html
 

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1. 2016年3月18日 02:02:26 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[302]

積極的な成長戦略とマイナス金利政策が重要=岩田・元日銀副総裁

[東京 17日 ロイター] - 日本経済研究センターの岩田一政理事長(元日銀副総裁)は17日、首相官邸で開かれた第2回の国際金融経済分析会合で、日本にはまだデフレのリスクが残っているとし、積極的な政府による成長戦略と日銀によるマイナス金利政策が重要との認識を示した。

会合では来年4月からの消費増税に関して話はしなかった、という。会合後に記者団に語った。

岩田氏は、年明け以降、世界的な株安など金融市場が不安定化している背景について、米国の景気後退リスクの高まりや、中国など新興国経済の減速、原油安などによるハイイールド債価格の下落、欧州の銀行セクターなど金融リスクなどを会合で指摘した。

そのうえで、日本にはデフレのリスクが残っているとし、デフレから脱却するには景気に中立的な実質利子率である自然利子率を現在のマイナス0.7%程度からプラスに転換することが重要と指摘。成長戦略の強力な推進で人口減少に歯止めをかけ、潜在成長率を高めることが不可欠と語った。

加えて、インフレ期待はゼロ%近辺に低下しているとし、日銀がマイナス金利政策をしっかりやって名目金利を押し下げることが必要と主張。仮に金融政策だけでデフレから脱却するならば、マイナス金利幅は現在マイナス0.7%程度の自然利子率に相当するところまで引き下げていくことが求められる可能性がある、との見解を示した。

(伊藤純夫)
http://jp.reuters.com/article/iwata-idJPKCN0WJ1OR



経済分析会合、米教授「持続可能な財政政策を」 増税時期議論せず

[東京 17日 ロイター] - 政府は17日、世界経済について有識者から意見を聞く第2回の国際金融経済分析会合を開いた。会合に招かれたデール・ジョルゲンソン米ハーバード大教授は「世界経済は急速なペースで成長を続けている」と指摘した。

焦点の消費税率引き上げの是非をめぐっては、「時期についての議論はなかった」とした上で、持続可能な財政政策の必要性を強調した。

会合後に記者団の取材に応じた。ジョルゲンソン氏は、消費税の議論があったかとの問いに対し「異なる文脈での議論はあった」と語った。「生産性を刺激することが必要であり、投資から消費へと税負担をシフトさせることが重要だ」と述べ、法人税減税と消費税増税には肯定的な見方を示した。

2017年4月に消費税率を10%に引き上げるべきかどうかについては、議論がなかったことを明らかにした。

同じく会合に招かれた岩田一政・元日銀副総裁は、日本にはまだデフレのリスクが残っているとし、積極的な政府による成長戦略と日銀によるマイナス金利政策が重要との認識を示した。

3回目の会合は22日、ポール・クルーグマン米プリンストン大名誉教授を招いて開かれる。

(梅川崇、伊藤純夫)
http://jp.reuters.com/article/jorgenson-idJPKCN0WJ1P3


インタビュー:NISA、恒久化含め検討必要=自民・金融調査会長

[東京 17日 ロイター] - 自民党の根本匠・金融調査会長(元復興相)は17日、ロイターのインタビューに応じ、非課税期間が投資開始から最長5年、口座開設の期限が2023年末までとなっている少額投資非課税制度(NISA)について、恒久化を含めて検討する必要があるとの見解を示した。

同調査会は、成長企業へのマネー供給や家計のポートフォリオ・リバランス促進に向けた議論を行っている。NISAの扱いも含めた結論は、今年6月をめどに取りまとめられる政府の成長戦略に盛り込まれる方向だ。

2014年の制度開始以来、NISAの口座開設数は1000万口座に迫り、NISA口座を通じた買い付け総額は6兆4465億円に達した(昨年12月末時点の速報値)。

しかし、非課税期間が投資開始から5年のため、5年経過時には新たなNISA口座に移行するか、NISAではない課税口座に移す必要がある。口座開設が2023年末までということもあり、証券業界からは制度の恒久化を望む声が出ている。

根本会長は、家計の資産形成や日本経済への成長資金の供給拡大の観点から「恒久化を含めて検討する必要がある」と述べた。

また、上場株式の相続税評価が時価の100%を基本に行われるのとは対照的に、土地(公示地価の80%程度)や建物(建築費の50−70%)は、価格変動リスクを踏まえた評価方法になっている。このため資産ごとに違う評価方法が、投資行動を歪めているとの懸念が、有識者を中心に出ている。

根本会長は「例えば高齢者が相続税対策として、上場株式を売却してその資金を節税のためにアパートに振り向けるなど、投資家の資産選択にゆがみが出て、ポートフォリオ・リバランスを阻害しているのではないか」と疑問を呈した。

そのうえで、相続税の強化によって投資家の資産選択にかなりゆがみが出てくる点や、「貯蓄から投資」を促進するといった政策目的を複合的に考え、工夫する必要があるとした。ただ、税制改正のためには「かなり詰めた議論が必要だ」と話した。

さらに根本会長は、日銀のマイナス金利政策でイールドカーブが押し下げられており「健全な資産運用のために、ポートフォリオ・リバランスがより大事な局面になっている」と指摘した。

*内容を追加して再送します。

(和田崇彦 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/interview-nemoto-idJPKCN0WJ17Msp=true


Business | 2016年 03月 18日 01:13 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
英中銀が金利0.5%に据え置き、EU離脱懸念がポンド圧迫と指摘

[ロンドン 17日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)は17日、全会一致で政策金利を過去最低の0.5%に据え置くことを決定した。資産買い入れプログラムの規模も3750億ポンドに据え置いた。

欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票を6月23日に控え不透明性が漂っていることや、成長鈍化懸念によってポンドが打撃を受けたとの認識を示した。

また、政策金利が今後2年で上昇する公算が大きく、利上げ開始後は緩やかなペースになるとの見方をあらためて示した。

英経済は過去数年間で急速に回復したものの、昨年後半は成長が鈍化。最近の各種統計でも年初以降の経済は不安定な状況が続いている。

中銀当局者は「EU離脱の是非を問う国民投票に関する不透明性が高まっているもようで、そうした不透明性がポンド安の大きな引き金になっている可能性が高い。それはさらに短期的に消費者の支出決定をある程度遅らせ、総需要の伸びを下押しする恐れもある」と述べた。

今回の金利据え置き決定は前月に続き全会一致によるもの。マカファーティー委員は前回、従来の利上げ主張を撤回している。
http://jp.reuters.com/article/boe-rate-idJPKCN0WJ2CD


スイス中銀が金利据え置き、デフレ加速を予想

[チューリヒ 17日 ロイター] - スイス国立銀行(中央銀行)が17日、主要政策金利を据え置いた。原油安や世界成長鈍化に伴い、デフレの加速を予想した。

中銀預金金利はマイナス0.75%に、3カ月物LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の誘導目標はマイナス1.25─マイナス0.25%に維持した。据え置きは市場の予想通り。

中銀は声明で「世界経済の見通しは過去数カ月間で若干悪化し、国際金融市場は依然として振れが大きい」と指摘。「世界中で製造業や貿易の動向がなお弱く、一段の原油価格急落につながった」と分析した。

2016年のインフレ率予想は、マイナス0.5%からマイナス0.8%に引き下げた。

2017年も0.3%から0.1%に引き下げた。中銀のインフレ率目標(ゼロ━2%)の下限ぎりぎりの水準だ。2018年は0.9%と予想した。

スイスフランは「大幅に過大評価されている」として、必要に応じて為替市場に介入する姿勢をあらためて示した。

中銀のジョルダン総裁は、スイス放送協会(SRF)の取材に「追加措置の可能性を排除しない」と言明。「ただ今の時点で、包括的な分析を行った結果、現在の金融政策が適切と判断し、当面維持するのが望ましいと結論付けた」と述べた。

中銀は、2016年の成長率予想について、昨年12月時点の約1.5%から、1─1.5%に修正した。

*内容を追加します。
http://jp.reuters.com/article/snb-idJPKCN0WJ147

インドネシア中銀が金利を6.75%に引き下げ、追加緩和には慎重

[ジャカルタ 17日 ロイター] - インドネシア中銀銀行は17日、政策金利のBIレートを0.25%ポイント引き下げ、従来の7%から6.75%とした。利下げは大半のアナリストの予想通りで、今年に入り3度目。低迷する経済の底上げを狙う。

翌日物預金ファシリティー金利(FASBI)も5.00%から4.75%に、貸出ファシリティー金利も7.50%から7.25%に、それぞれ引き下げた。

ロイターが22人のアナリストを対象に行った調査では、13人が25ベーシスポイント(bp)の利下げを予想していた。

中銀は、今回の利下げで緩和サイクルが終了したわけではないとの考えを示唆する一方、次の行動については慎重を期すと表明。現時点では市場への政策効果波及が焦点になるとした。

OCBCのエコノミスト、ウェリアン・ウィラント氏は「容易な緩和はこれで終わった」と指摘。利下げ局面が終了したわけではないものの「利下げ余地は足元一段と限られており、中銀は今後一層慎重になるだろう」と述べた。

2月のインフレ率は前年比4.42%と1月から上昇したものの、依然中銀目標である3─5%の範囲内で推移している。
http://jp.reuters.com/article/indonesia-rate-idJPKCN0WJ1IA

米新規失業保険申請件数は26.5万件、前週から小幅増も底堅さ示す

[ワシントン 17日 ロイター] - 米労働省が発表した12日までの週の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は前週比7000件増の26万5000件となった。5カ月ぶりの低水準となった前週から増加に転じたものの、労働市場が引き続き底堅く推移している状況を示唆する水準にとどまっている。

市場予想は26万8000件。前週は25万9000件から25万8000件に修正された。

申請件数は雇用市場の引き締まりを示す30万件の水準を54週連続で下回っている。これは1973年以来の長さとなる。

週ごとの変動を均して雇用情勢をより正確に反映するとされる4週移動平均は750件増の26万8000件。

今回の申請件数に関するデータは3月の米雇用統計の調査期間に含まれる。2─3月の調査期間に申請件数の4週間移動平均は5250件減少しており、3月統計では雇用者数がさらに増加することが見込まれる。
http://jp.reuters.com/article/us-jobless-claim-idJPKCN0WJ20A

 


ヘッジファンド、2015年は清算本数が新規設定を上回る−市場混乱で
2016/03/18 01:15 JST

    (ブルームバーグ):2015年に清算されたヘッジファンドの本数は、2009年以来で初めて新たに設定されたファンド数を上回った。ヘッジファンド・リサーチ(HFR)のデータが示した。変動性の高い市場環境の中でヘッジファンド業界が世界的に縮小した。
15年10−12月(第4四半期)に清算されたファンドは305本で、前年同期の257本を上回った。昨年全体では清算が979本、新規設定が968本だった。HFRが17日データを公表した。
投資家に資金を返還したヘッジファンド会社には、コマック・キャピタル(ロンドン)やフォートレス・インベストメント・グループが含まれる。フォートレスでは23億ドル規模のマクロファンドが損失を出し、清算された。
HFRの指数によると、15年のヘッジファンド運用成績は平均でプラス1.1%。HFRのケン・ハインツ社長によると、顧客の投資資金は記録的水準に伸びたにもかかわらず昨年のファンド数は純減だった。「新規のファンド設定に向けた競争環境は引き続き極めて厳しい」という。
2009年は清算が1023本、新設が784本だった。
原題:More Hedge Funds Shuttered Than Opened in 2015 on Market Turmoil(抜粋)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O46TX66K50XW01.html

日本郵政G:ベースアップ見送り−マイナス金利政策が影響
2016/03/18 00:00 JST

    (ブルームバーグ):日本郵政グループは2016年の春季労使交渉で、正社員のベースアップ(ベア)を見送ることなどで労働組合と妥結した。日銀のマイナス金利政策が業績に影響を与える可能性があることなどが理由。
日本郵政Gの正社員数は22万4000人。ベアを実施しないのは3年ぶりとなる。日本郵政の志摩俊臣人事部長は17日夜の会見で、「マイナス金利政策が金融2社に大きな影響を及ぼす可能性がある」とし、「ベアをやるような明るい材料はない」と組合側に回答したと説明した。
民営化を進める日本郵政は貯蓄から投資を促す安倍政権の下で、傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命とともに昨秋上場。今回はその後、初めての春闘だった。2月に導入されたマイナス金利政策はゆうちょ銀が保有する国債金利の低下などを通じてグループの収益を圧迫する要因となっている。
3年ぶりのゼロ回答
日本郵政Gは14年、15年と2年連続でベア1000円を実施していた。16年はベアは見送るが、昨年11月の株式上場実現への貢献を考慮し、夏季一時金に特別加算として8000円を上乗せする。日本郵政の労働組合は月額6000円から2万円の賃上げを要求していた。
4月に日本郵政社長に就任する長門正貢氏(ゆうちょ銀行社長)は16日の会見で、マイナス金利政策の影響について、他の銀行と変わらず、オルタナティブ投資の機会も十分あることなどから限定的であり、対処できるとの認識を示した。
日本郵政グループが2月12日に発表した連結決算(4月ー12月)は純利益が3831億円と前年同期比で5.3%減少した。また通期の純利益見通しは3700億円と前期比23%の減益を見込んでいる。
英文記事: Japan Post Declines to Raise Worker Pay Amid Negative Rates (1)

日銀レートチェック実施せず、相場の動きの要因調査=関係筋

[東京 17日 ロイター] - 17日の外国為替市場のドル/円の動きについて、日銀は背景にあった要因について市場関係者に事情を聞いたものの、特にレートチェックは行なっていないことが同日、関係筋の話で明らかになった。

この日はドル/円が短時間に大きく動いたことを受け、日銀がレートチェックを行なったとの報道が出た。これについて関係筋はロイターに対し、レートチェックではなかったとし、日銀は相場の動きの背景にある要因について質問していたと述べた。

この日の取引でドル/円は一時110.67円と、2014年10月以来の安値に低下した後、約1分という短い時間で111.70円まで回復した。

こうしたなか、日経とウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が日銀がレートチェックを行なったと報じていた。
http://jp.reuters.com/article/boj-frx-idJPKCN0WJ2BJ

ドルが対円で急反発、日銀による介入は確認できず

[ロンドン 17日 ロイター] - 17日午後の外国為替市場で、一時110円台に下落していたドルが約1円急反発した。急速に地合いを戻したのは、米市場が動き出した直後。市場では日銀による介入警戒感が高まっている。

市場では日銀がレートチェックを行なっていたとのうわさも出ていたが、ロイターが取材した複数のトレーダーは、日銀がレートチェックを行なったか、もしくは直接介入を行なったかは、確認できないとしている。

日本の銀行のトレーダーは「実際に介入が行なわれていれば、相場はこれよりかなり大きく動いたはずだ」としている。

ドル/円は一時110.67円と、2014年10月以来の安値に低下。その後、約1分という短い時間で111.70円まで回復した。ただ前日比ではまだ0.8%低い水準にある。
http://jp.reuters.com/article/forex-dollar-yen-idJPKCN0WJ1ZI

「世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」」
「ゾンビ企業」解体が招く“600万人失業”「鉄鋼」「石炭」に対策費1000億元も焼け石に水か

2016年3月18日(金)北村 豊


全人代で李克強はゾンビ企業の処理を重点活動に挙げたが、前途は厳しい(新華社/アフロ)
 2016年3月5日の午前9時、北京市の中心にある“天安門広場”の西側に位置する“人民大会堂”で、中国の国会に相当する「第12期全国人民代表大会第4回会議」(以下「全人代」)が、3月16日まで12日間の日程で開幕した。当日、全人代の開幕が宣言された直後に、最初の発言者として登壇した“国務院(日本の内閣に相当)”総理の“李克強”は、約2時間をかけて“政府工作報告(政府活動報告)”を読み上げた。その内容は、(1)“2015年工作回顧(2015年の活動の回顧)”、(2)“十三五(第13次5か年計画<2016〜2020年>)”時期における主要目標と重点施策、(3)“2016年重点工作(2016年の重点活動)”の3項目で構成されていた。

「余剰生産」と「ゾンビ企業」に対処せよ

 李克強が発表した政府活動報告の中で、内外メディアが最も着目したのは“化解過剰産能(余剰生産能力の解消)”と“積極穏当処置僵屍企業(ゾンビ企業を積極的かつ穏当に処置する)”であった。それは、李克強が、上述した(3)2016年の重点活動の中で言及したもので、「今年重点的に取り組む8分野の活動」の2番目の分野として提起した「供給側の構造性改革を強化し、持続的成長エンジンを増強する」の中に次のように言及されていた。

 余剰生産能力の解消とコストの低減とその効果の増大に注力する。鉄鋼、石炭などの困難な業界の余剰生産能力を除去し、市場のひっ迫性、企業主体、地方の構成、中央の支持を堅持し、経済、法律、技術、環境保護、品質、安全などの手段を運用して、厳格に生産能力の新たな増大を抑制し、断固として後れた生産能力を淘汰し、整然と余剰生産能力を除去する。合併・再編、債務再建あるいは破産・清算などの措置を講じ、“僵屍企業(ゾンビ企業)”を積極的かつ穏当に処置する。財政、金融などの支援政策に万全を尽くし、中央財政は1000億元(約1兆8000億円)の特別奨励補助資金を手配し、その重点な用途を職員の配置転換に置く。総合的な措置を取り、企業取引、物流、財務、エネルギー使用などのコストを低減し、企業が関与する勝手な諸費用の徴収行為を断固止めさせる。

 さて、中国語の“僵屍(jiangshi)”とは「硬直した死体」を意味し、かつて香港映画で一世を風靡した「僵屍(キョンシー)」が飛び跳ねていたのは、彼らが硬直した死体でありながら、長い年月を経ても腐ることなく、動き回ることができた妖怪であったからにほかならない。キョンシーは、何らかの力で死体のまま蘇った人間の総称であるゾンビ(zombie)と似たような存在と言う事ができるので、メディアは“僵屍企業”を「ゾンビ企業」と名付けたのだった。

 それでは、中国のゾンビ企業とは何を指すのか。1月29日付の“中国共産党新聞網(ニュースネット)”は『経済発展のがんであるゾンビ企業を断固えぐり取れ』と題する記事を掲載したが、同記事はゾンビ企業を次のように説明していた。

【1】ゾンビ企業とはすでに発展と競争の能力を喪失した企業を意味する。これらの企業は生産停止あるいは生産休止の状態にあり、庶民の呼び方では“半死不活(息も絶え絶え)”の企業である。全体的に見て、大部分のゾンビ企業は“国有企業”である。これら企業の生産と経営は市場の発展法則から著しく逸脱し、主として政府の輸血などの非市場要素に頼って生命を維持している。それはまぎれもなく、これらゾンビ企業の背後に財政資金の支援があるからである。たとえ生産能力が余剰な状況の下にあろうとも、彼らはゾンビのように息も絶え絶えの状態で生存している。今やゾンビ企業はありふれた存在であり、決して珍しいものではなく、程度の差はあるものの中国各地に存在する。

【2】市場経済の環境下では、市場があれば競争があり、競争があれば生死がある。この過程の中で、企業の生死存亡はごく当たり前のことである。ゾンビ企業の存在は市場の機能発揮に極大な損害をもたらすばかりか、国家資源の浪費、公平な競争の市場秩序を破壊し、市場メカニズムの正常な運行に深刻な影響を与え、政府に持続的な重荷をもたらす。また、長期的に見れば、ゾンビ企業は全国の経済構造調整に影響を与える障害物でもある。

鉄鋼、石炭、セメント、ガラス、造船

 ゾンビ企業の大部分が国有企業というのであれば、そこに含まれる業界は何なのか。それは、過大な余剰生産能力を持ち、膨大な在庫を抱え、すでに生産停止あるいは生産休止の状態にあり、連年の赤字にあえぎ、政府の補助金や銀行からの借入によって辛うじて経営を維持している業界であり、その主体は、鉄鋼、石炭、セメント、ガラス、造船などの業界である。

 これら業界のうちで余剰生産能力が最も深刻なのは、鉄鋼と石炭の2業界である。全人代の開幕に先立つこと1か月前の2月初旬、中国政府“国務院”は李克強総理の承認を得て、2つの意見書を配布した。それは、『鉄鋼業界の余剰生産能力を解消し、苦境を脱却して発展を実現することに関する意見』(以下「鉄鋼業界意見書」)と『石炭業界の余剰生産能力を解消し、苦境を脱却して発展を実現することに関する意見』(以下「石炭業界意見書」)であった。この2つの意見書を念頭に国務院総理の李克強は、3月5日の全人代開幕直後の「政府活動報告」の中で余剰生産能力の解消とゾンビ企業の処置に言及したのだった。

 それでは2つの意見書には何が書かれていたのか。その要点は以下の通り。

(1)鉄鋼業界意見書:
 2016年から開始し、ここ数年来推進して来ている後れた鉄鋼生産能力除去の基礎の上に、5年の期間内に粗鋼生産能力をさらに1億〜1.5億トン削減する。また、5年の期間内に、鉄鋼業界の合併・再編を実現して実質的な進展を図り、産業構造の最適化、資源利用効率の向上、生産能力利用率の適正化、製品品質とハイエンド製品供給能力の向上、企業業績の好転、市場予測の好転を図る。  

(2)石炭業界意見書:
 2016年から開始し、3〜5年の期間内に、石炭業界は生産能力を5億トン前後削減し、再編により生産量を5億トン前後削減する。この比較的大幅な石炭生産能力の圧縮、石炭生産量の適度な削減により、石炭業界の過剰生産能力を効率よく解消させ、市場の需要・供給の基本的バランス、産業構造の最適化、構造転換とグレードアップの結合により実質的な進展を図る。

180万人の配置転換と不満解消に1000億元

 中国の公文書は、1つの文章の中で「読点(とうてん)」を多用することにより、いくつもの事柄をだらだらと羅列する傾向があり、日本語に翻訳する際には骨が折れる。上記意見書の原文もその類だが、その要点を端的に言えば、鉄鋼業界は5年以内に粗鋼生産能力を1億〜1.5億トン削減するし、石炭業界は3〜5年以内に過剰生産能力を5億トン前後削減し、産出量を5億トン前後削減するということである。

 全人代初日に行われた政府活動報告の中で、李克強総理が過剰生産能力の解消とゾンビ企業の処置に言及すると、国際ニュース通信社の「ロイター」は、中国共産党指導部に近い複数の情報筋から聴取した話を引用して、2〜3年以内にゾンビ企業から500万〜600万人の国有企業職員が削減されると報じた。一方、2月25日に記者会見を行った「中国工業・情報化部」副部長の“馮飛”は、中国政府が工業企業構造調整特別奨励補助資金の設立を決定し、2年間に1000億元を支出して、主として石炭と鉄鋼の過剰生産能力とゾンビ企業を処置すると述べた。また、「中国人力資源・社会保障部」は2月29日付で、国有企業の削減予定人数は180万人で、その内訳は石炭業界が130万人、鉄鋼業界が50万人であると発表した。

 “中国国家統計局”のデータによれば、中国の石炭業界と鉄鋼業界の合計職員数は1200万人であるから、180万人は全体の15%に相当する。180万人もの国有企業職員が人員整理で削減されれば、大量の失業者が発生することは否めない。そうなれば、人々はそれに反発して抗議デモを行うだろうし、不満のはけ口を暴力に求めて、社会不安が引き起こされる可能性は高い。そうした人々の不満を配置転換によって抑制するための資金が1000億元の特別奨励補助資金であり、それが全人代の「政府活動報告」の中で李克強が言及したものだった。

 世界鉄鋼協会(World Steel Association、略称:worldsteel)の統計によれば、2015年の粗鋼生産量(Crude Steel Production)は、全世界の総計が16.23億トンであったのに対して、中国は8.04億トンで、全体の49.5%を占めて、世界一だった。中国の粗鋼生産量は2014年には8.23億トンだったから、2015年は2.3%減少したことになる<注1>。一方、中国の資料によれば、中国の2015年における粗鋼生産能力は11.7億トン、粗鋼生産量は8.05億トン、粗鋼見かけ消費量(生産+輸入−輸出)は7.04億トンであったから、粗鋼生産能力利用率は68.8%、粗鋼の過剰生産量は1.01億トンとなっている。なお、中国の粗鋼生産能力は2003年には約3億トンに過ぎなかったが、その後急拡大を続け、2012年には10億トンを突破したのだった。

<注1>2015年の粗鋼生産量の世界第2位はEUの1.66億トン、第3位は日本の1.05億トン。
 また、石炭に関する“中国科学院予測科学研究中心(研究センター)”の統計によれば、中国の石炭生産量は2013年の39.74億トンをピークに、2014年には38.74億トン、2015年には37.58億トン(予測)と減少しており、2016年には36億トンになると予測されている<注2> 。中国では国内の景気低迷に加え、経済構造の転換および大気汚染防止の影響を受けて、2015年における国内の燃料炭市場は疲弊し、石炭価格は30%近く値下がりした。このため、石炭業界は大量の在庫を抱え、利潤は大幅に低下し、多数の石炭企業が苦境に陥り、現在に至っている。

<注2>中国の石炭生産量は世界一だが、世界第2位の米国の2015年の石炭生産量は約9億トンで、1986年以来の最低水準だった。
世界8位「武漢鉄鋼集団」も妙手なし

 さて、“武漢鉄鋼(集団)集団”(以下「武漢集団」)は、上述したworldsteelの「2014年主要鉄鋼企業生産量ランキング」で世界第8位(33億トン)にランクされる中国の国有企業であり、“中央企業”<注3>の1つである。その武漢集団の“董事長(理事長)”である“馬国強”は、3月10日午前中にニュースサイト“人民網(ネット)”が放映した『第13次5か年計画に頑張る新国有企業との対話』と題する番組の中で、「武漢集団は現在職員の配置転換を行っており、半数以上の職員は今後鉄鋼業務に従事することはない」と述べた。

<注3>“国務院国有資産監督管理委員会”が直接監督・管理する大規模国有企業。
 馬国強は、「生産能力を削減するという大前提の下、我々はすでに8万人の職員全員が製鉄や製鋼に従事することはできないという共通認識に達している。3万人の職員だけが製鉄、製鋼に従事できるというのであれば、4万人あるいは5万人の職員は別の活路を見出さねばならず、武漢集団は現在それをやっている」と述べた。

 馬国強の発言は、上述した2月の鉄鋼業界意見書、2月29日に中国人力資源・社会保障部が発表した、国有企業の削減予定人数は鉄鋼業界が50万人、さらに李克強も言及した1000億元の特別奨励補助資金を踏まえたものだった。1958年に操業を開始した武漢集団は、1949年の中華人民共和国成立後に建設された最初の大型鉄鋼企業で、長期雇用の労働者は7万〜8万人で、最大時には10万人にも及んでいた。

 番組のキャスターが「生産能力削減の過程の中で、どのように職員を配置するのか」と問いかけたのに対して、馬国強は次のように応じた。

 武漢集団は次のような方法で職員の配置転換を行おうとしている。

【1】法定退職年齢<注4>まで5年以内の職員は、もしその当人に労働能力が無い、あるいは働く意向が無いなら、職場を離れて退職を待っても良い。

<注4>法定退職年齢は、一般労働者:(男)満60歳、(女)満50歳、特殊環境下の肉体労働者及び身障者:(男)満55歳、(女)満45歳。
【2】武漢集団の傘下にはいくつかの非鉄鋼産業があるので、一部の職員を受け入れることが可能。

【3】地方政府と共に職員を雇用してくれそうな外部の企業に照会し、職員の新たな職場を探す。

 上記の【1】は法定退職年齢まで5年以内の職員で、労働能力が無い者と労働意欲の無い者には、最低水準の給与を払うから退職年齢になるまで自宅待機しろという意味かと思える。それにしても、鉄鋼生産量世界第8位である武漢集団の理事長たる馬国強が、4〜5万人もの職員の配置転換に当たって、ありきたりの方法しか述べることができず、何らの具体策も提示できないとは、開いた口が塞がらない。これは恐らく、鉄鋼業界の他社も石炭業界の各社も推して知るべしと言えるのではないか。

切り捨て人員、ゾンビ化して反旗?

 こんな調子では、鉄鋼業界と石炭業界の180万人の配置転換が順調に行われるとは考えられないし、ましてや彼らを含むゾンビ企業から削減される500万〜600万人の労働者にまともな配置転換がなされるとはなおさら考えられず、彼らは失業するしかない。そうだとすれば、特別奨励補助資金の1000億元は、彼らの生活費の一部に充当されるだけで、配置転換の目的に使われることはないだろう。

 中央政府の役人が机上で考えた過剰生産能力の削減とゾンビ企業の処置のしわ寄せをまともに受けるのは一般労働者である。切り捨てられた彼らがゾンビとして復活し、大挙して反旗を翻さない限り、中央政府の役人も企業の経営陣も、誰一人として政策の失敗を疑わないのが、中国の悪しき伝統なのである。

このコラムについて
世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/101059/031600043/?ST=print

中国不動産市場:誰がためにバブルは膨らむ
2016.3.18(金) The Economist 

(英エコノミスト誌?2016年3月5日号)

中国、建築「模型」業界も縮小傾向に
中国広東省深センにある建築模型製作会社「キャニオン・モデル」の製作室(2015年4月23日撮影)。(c)AFP/FRED DUFOUR〔AFPBB News〕
中国の大都市では住宅価格が高騰しているが、大半の地域は供給過剰に苦しめられている。

?中国の金融センターである上海は、家を買おうとするよそ者には優しくない。独身の非居住者は不動産の購入を禁じられている。既婚者は歓迎されるが、地方税を2年間納めている者と、購入代金の3分の1近くを現金で支払える者に限られる。


?上海と比べると、中国北部最大の都市、瀋陽ははるかに優しい。ここでは誰でも住宅を買うことができる。

?もっとも、その効果はほとんどない。瀋陽より5倍高い上海の住宅価格はこの1年間で20%上昇したが、瀋陽の住宅はじりじりと値下がりしている。

?バブルを膨らませずに経済成長を促進したい政府にとって、この二極化は悩みの種だ。

?裕福な都市とそうでない田舎との住宅価格の差は、ほかの国でもおなじみの問題だ。例えばロンドンとリンカーンシャー、ニューヨークとネブラスカを見ればいい。

?しかし、中国の差はこれらの上を行く。

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[あわせてお読みください]
中国のゴーストタウンで見た官製バブルの成れの果て (2015.12.9 川島 博之)
異様な光景に絶句、若者が逃げ出す中国の田舎町 (2016.2.10 川島 博之)
一掃できるのか?中国でうごめく「ゾンビ」 (2016.3.17 柯 隆)
崩壊しそうでしない中国経済の不思議 (2016.3.4 柯 隆)
中国の産業:ゾンビたちの行進 (2016.3.3 The Economist)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46372



【第2回】 2016年3月17日 山田吉彦
“南シナ海は、20兆円の貿易圏である。”今、中国が狙っているもの

テレビ、新聞で連日報道されている「南シナ海問題」。いったい何が起こっていて、何が問題なのかを「経済」の視点からも見ていきましょう。「海と経済」の第一人者であり、新刊海から見た世界経済』 『完全図解の著者である山田氏に聞いてみました。
南シナ海で今、
何が起こっているのか?
2015年、中国の習近平国家主席は、 「南シナ海の島々は古代から中国の領土だ。主権を守るのは中国政府が果たすべき責務である」と述べています。また、中国軍の幹部は、「南シナ海は、2000年以上の昔から中華民族が漁業を営み生活してきた中国の海である」と主張しています。
 習主席は、就任以来、海洋進出を続けていますが、周辺国の中国への反発は高まる一方です。
2015年、中国は、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島海域に7つの人工島を建設しました。このことは、 フィリピンやベトナムなど周辺国に脅威を与えているだけではなく、自由航行を脅かすものとしてアメリカや日本も警戒しています。
オバマ大統領は、2015年9月に行われた米中首脳会談において、南シナ海における国際法の順守と航行の自由の確保を習主席に求めましたが、彼は 「自国の固有の領土である」と一蹴しました。
そこでアメリカは、国際法の順守を中国に求めるために、アメリカ第七艦隊所属のイージス駆逐艦「USSラッセン」を派遣します。そして、中国が造成した人工島周辺を哨戒しました。国連海洋法条約では、「通航は、沿岸国の平和、秩序または安全を害しない限り、無害とされる」と定めています。無害通航権といわれるもので、仮に領海であっても中国はアメリカ軍艦の航行を妨げることはできません。 
しかし 中国は、「アメリカの行為は、沿岸国の平和に脅威を与えるものであり無害通航を逸脱している」と主張しています。
独自の領海線を主張する中国
複数の国が管轄権の主張をしている海域内に強引に人工島を作ることは、「力による現状の変更」であり許されません。中国は、 南シナ海を包み込むように「九段線」という線引きを行い、その内側を中国の領海であると主張しています。下記の図を見て下さい。
中国独自の領海線、「九段線」
この結果、東南アジア諸国との緊張が高まっています。 
緊張が高まる
中国と東南アジア諸国
国連海洋法条約では、沿岸から最大12海里が領海として認められますが、海域全体を領海とすることは許されません。しかも、 九段線の内側には、フィリピン、ベトナム、台湾などが領有権を主張し実効支配している島々が存在しています。領有権問題が起きている島の多くは、元は日本が管理していた島々であり、第二次世界大戦後、日本が放棄したことにより、沿岸国が、我先にと実効支配に動き出し領有権を主張するようになりました。
中国は、1974年にはベトナム戦争末期、ベトナムから米軍が撤退した隙に、南ベトナム軍と交戦し、パラセル(西沙)諸島を占領することに成功しました。さらに1988年にはスプラトリー諸島に侵出し、ベトナム軍とジョンソン南礁で衝突しています。 
また、1995年には、フィリピンから米軍が撤退した機会に、同国が領有権を主張しているミスチーフ礁を占領しました。ミスチーフ礁は中国の軍事拠点になっています。 
 中国に脅威を感じた東南アジア諸国は、2002年、ASEANの会議に中国を招聘し、「南シナ海における関係国の行動宣言(DOC)」を締結しました。DOCには、有事の際は武力による威嚇や武力に訴えることなく、平和的手段により解決し、無人の島嶼(とうしょ)に新たに人員を常駐させないことなどの規定があります。
しかし、この 宣言には法的拘束力もなく、中国は実質的に黙殺している状況です。2012年には、フィリピンが領有権を主張するスカボロー礁も軍事占領しています。中国は、DOCも独自の解釈をし、人工島の造成などの強硬策を推進しています。
このように緊張が高まっていますが、 日本が輸入する原油の8割は、この南シナ海を通過しています。また、タイ、ベトナム、シンガポールなどの国々との貿易で、南シナ海を通航する貿易額は、輸出入合わせて20兆円。南シナ海は、アジア経済の大動脈なのです。

http://diamond.jp/articles/-/87991

 

中国で原油生産減少、それでも価格は上昇しない理由
改革が生み出す大量の失業者、中国経済はさらに停滞?
2016.3.18(金) 藤 和彦
米国務長官、中国の南シナ海「軍事拠点化」を批判
世界の原油約3分の1の輸送航路となっている南シナ海の西沙諸島・永興島に中国が新設した三沙市(2012年7月27日撮影、資料写真)。(c)AFP〔AFPBB News〕
2016年2月の中国の原油輸入量は前年比19%増の3180万トンとなり昨年12月に次ぐ高い水準となった。全体の輸入額が前年比14%減と大幅に落ち込んだにもかかわらず、である。

その大きな要因として、原油価格下落により民間製油企業がロシアからの輸入を増大させたことが挙げられる。加えて、筆者は国内で生産される原油量が減少していることが影響しているのでないかと考えている。

「延長油田」「勝利油田」で生産を削減

2月半ばから、中国メデイアはこぞって「原油価格下落で国有石油各社の油田が大きくコスト割れし、操業を相次いで停止している」と報じていた。

例えば2月22日付「証券日報」によれば、陝西省にある「延長油田」では開発の一部を断念するとともに、大幅なリストラを実施されることが決定された。延長油田は生産コストが1バレル=70ドルに及ぶため、今年の原油生産量を昨年の1240万トンよりも約20万トン減産し、油田開発に従事していた人員も45%削減すると言われている。延長油田は高油価の下、この10年で大きく生産を伸ばしてきたが、米国のシェール企業と同様に高コストが災いして厳しい状況に直面している。

中国2大国有石油企業の1つである中国石油化工集団(SINOPEC)も、2月に入り山東省にある「勝利油田」で最も生産効率の低い4つの鉱区(全体で70鉱区)の操業を停止することを明らかにした。昨年(2015年)は92億元(約1590億円)超の巨額の赤字となり、今年1月だけでも29億元の赤字が出ているからだ。

勝利油田と言えば、黒竜江省の大慶油田に次ぐ生産量を誇り(年間約2500万トン)、操業年数も大慶油田に次いで長い。大慶油田から派遣された技術者により1962年に発見された勝利油田は1964年から本格的な生産が開始され、2010年頃から渤海海域にまで鉱区を拡大した。2014年まで毎年黒字を計上していたが、昨年は創業以来初の赤字に転落した。

勝利油田でこのような措置が採られても2億元分の赤字しか解消できないため、今後さらなるリストラが実施される可能性が高い。

寄る年波には勝てなかった「大慶油田」

中国最大の国有石油企業である「中国石油天然ガス集団」(CNPC)も生産量の削減を進めている。3月6日、CNPC生産経営管理分門のトップは「今年の国内原油生産量の目標は前年比2.9%減の1億800万トンだ」と発言した。

すでに昨年は、自社が所有する中国最大の「大慶油田」の生産量を150万トン削減している。大慶油田と言えば、建国以来の経済成長を支えた「屋台骨」と言っても過言ではない。

大慶油田で原油の生産が始まったのは1960年。1976年に年間5000万トン(日量100万バレル)の水準に達し、以来、2002年までの27年間、年間生産量5000万トンを維持し続けた。その後の12年間も4000万トン台を続けてきたが、昨年ついに4000万トン割れとなった。国内の原油生産量のシェアはかつては40%を超えていたが、現在のシェアは約20%である。

一時期はその躍進ぶりから「工業は大慶に学べ」とのスローガンにもなったほどだったが、寄る年波には勝てなかったようだ。昨年夏頃から関係者の間では、「大慶油田の寿命がいよいよ終わりに近づいている」ことが周知の事実となっていた。油層への水圧入(水攻法)を長年多用したため原油の含水率が増え、現場労働者からは「採っているのは水ばかり」と嘆きの声が聞かれるようになった。

CNPCは「今年以降は年平均約130万トンずつ減らしていき、2020年には3200万トンまで落とす」との方針を示しているが、「新しい技術が開発されない限り、大慶油田は年間2000万トンの生産を維持するのも困難だ」との指摘もある。

今なお中国のエネルギー戦略上大きな価値を有する大慶油田の生産が失速するようなことがあれば、今年から実施される第13次5カ年計画は見直しを余儀なくされるだろう。

原油価格は再び軟調に推移する

中国国内の油田の採算ラインは1バレル=約50ドルとされており(3月16日付ブルームバーグ)、業界関係者は「このまま原油価格が長期的に低迷する場合、生産が停止される油田はさらに増えるだろう」と予測する。

そうした状況の中、中国国内の原油生産量低下は「過剰供給により原油価格暴落を招いた国際市場にとって良い知らせかもしれない」との見方が出てきている。

だが、はたして原油価格は上昇するだろうか。

3月11日、国際エネルギー機関(IEA)は「原油価格が底を打った可能性がある」との見解を示した。だが昨年1月の見通し(2015年末から2016年初旬にかけて供給過剰は解消する)が見事に外れたことに留意すべきである。原油価格急落以降、底入れを指摘した市場関係者は何人もいたが、これまでのところ予想が的中した者はいない(3月14日付ブルームバーグ)。

3カ月ぶりの高値を付けていた原油価格は、3月14日にイラン政府が生産量を経済制裁前の水準(日量400万バレル)に回復させる意向を示したことから反落した。市場関係者が一縷の望みを託していたOPEC加盟国と非加盟国との会合も、3月20日から4月に延期されてしまった。2月のイランの原油生産量は1997年以来の伸びを示し、OPEC諸国とロシアの間での歩み寄りも見られないなど、悪材料に事欠かない。

何よりも原油価格上昇の障害となっているのは、2014年以降積み上がった約10億バレルの過剰在庫である。この過剰在庫があるため、米国で少々ガソリン在庫が減少したとしてもすぐに元の価格水準に引き戻されてしまうのだ。

価格が上昇したらしたで原油生産が増加するので、市場のリバランス(再均衡)が遅れるだけである。ゴールドマンサックスが「偽りの反発」と称したように、筆者は原油価格は再び軟調に推移することになるだろうと見ている。

経済構造改革で原油価格はさらに下落?

実際に、中国国内の原油生産の減少は、これまでのところ市場関係者の間では材料視されていない。3月8日に中国の原油輸入量が大幅に増加したことにも、市場は関心を示さなかった。

むしろ中国の全体の輸入額が大幅に減少したことにネガテイブに反応した。つまり、中国のマクロ経済の動向のほうが原油価格への影響が強いと考えられる。

中国では過剰な供給を是正するため大幅な経済改革が予定されており、今後500万人以上の失業者が発生するとの観測が出ている(2016年3月2日付ロイター)。これに加えて原油安という前例のない圧力に直面している巨大国有石油企業が、コスト割れ生産を回避する動きを本格化させれば、失業者はさらに増大するだろう。

石油企業のリストラの悪影響は既に出ている。3月6日付日本経済新聞は「大慶油田がある黒竜江省大慶市で2015年のGDPが3000億元(約5.3兆円)と前年に比べて27%減少した」と報じた。大慶油田の生産量がピーク時に比べて約3割減少したことが、黒竜江省が30年ぶりのマイナス成長になった原因である。

中国の石油産業の設備投資が大幅に減速すれば、米国の場合と同様に景気への大幅下押し圧力となり、地域経済はもとより中国の経済全体に悪影響を及ぼすことになる。原油生産量の減少によるマクロ経済への悪影響を考えれば、原油価格は今後上昇するどころかむしろ下落する可能性の方が高いのではないだろうか。

中国はますます南シナ海を死守するようになる

国内の原油生産の減少がもたらす中国のエネルギー安全保障政策に与える影響も気になるところである。

中国の原油生産量は1960年以降着実に増加してきたが、需要量の伸びがはるかに上回ったために1993年に原油の純輸入国になった。その後もこの傾向が続き、今年の原油の輸入依存度は62%にまで上昇している。

輸入される原油の8割以上はマラッカ海峡を経由して南シナ海を通過する。そのため、中国の指導者たちはエネルギー供給の脆弱性に頭を抱えている。

大慶油田など既存油田が減産する中で原油生産量年間2億トン台を維持できたのは、西域の陸上油田や海洋油田の存在が大きかったからだ。だが前述したとおり、延長油田など生産コストが高い西域の陸上油田は減産する事態に追い込まれている。

中国国内の原油確認埋蔵量は25億トン(約185億バレル)であり、可採年数は約12年と言われている。中国当局は、シェールオイルなど非在来型の原油生産量を2030年までに年間5000万トンに増やして既存油田の枯渇に備えようとしているが、コスト高や技術的な困難性からその実現はおぼつかない。

残された選択肢は海洋油田である。国有企業である「中国海洋石油総公司」(CNOOC)は、1990年代から南シナ海東部および西部地域で生産を開始しており、今後は大水深油田の生産を積極化する姿勢を打ち出している。

3月13日、中国の最高人民法院(最高裁)は、海洋権益やそのほかの核心利益を守るため、周辺海域の領有権問題を扱う独自の「国際海事司法センター」を設置すると発表した。シーレーンの確保や国内原油の確保の観点から見ても、中国は米国を排除してでも南シナ海を死守する姿勢をますます強めていくのではないだろうか。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/46356 

 


 

陳言の選り抜き中国情報
2016年3月17日 陳言 [在北京ジャーナリスト]
富豪の数が米国を超えた中国“階層固定化”の危うさ
今年の中国国会(全人代と政治協商会議)は、かなり真面目な報道が多かった。例年なら、現代の“お姫様”(国の元指導者の令嬢)が超有名な海外ブランドを身に纏い、人民大会堂をファッションショーのようにメディアに登場するシーンは、今回はすっかり消えた。腐敗一層運動によって、少なくともそれが許されなくなっている。


ただし、富の集中は、今の中国ではまったくテンポを緩めたわけではない。国会開会期間の2週間ほど前、2月24日に毎年発表を続けている「胡潤富豪ランキング」というものがあるが、今年は世界の富豪と比較した「胡潤世界富豪ランキング」として発表された。

それによれば、グレーターチャイナ地域でランク入りした富豪が568人と初めて米国の535人を上まわり、資産10億ドルを保有する億万長者が世界で最も多い「富豪国家」となった。なかでも北京は億万長者100人を抱える「富豪の都」の誉れに浴し、その人数は昨年より32人も増えている。

中国で毎年注目を集める
「富豪ランキング」

このランキングは、日本ではまったく無名に近いが、中国では轟々たる名声を挙げている。

1970年生まれのイギリスの会計士・胡潤(Rupert Hoogewerf)は、中国語勉強のために中国に来たが、ここで一大ビジネスチャンスを発見した。経済成長のなかで、多くの中国人にとって、隣の人がどのぐらい豊かになっているのか興味津々だったのだ。

胡潤は、会計士の資格を持ち、財務データを見る能力があった。中国人富豪ランキングを作ったら注目されて有名になると思い、1999年に新聞を100紙以上集め、その調査結果を公表した。初めての「胡潤富豪ランキング」だった。

だが真の富豪の資産がその年にかならずしも報道されるわけではなかったので、ランキングに載らない富豪が不満に思い、抗議に来ることが続いた。これは若き胡潤の思うツボであって、富豪たちに財産状況を根掘り葉掘り聞く。そうして毎年ランキングを更新し、公表してきた。

納税金額などの公的なデータだけで富豪ランキングを作るのではなく、胡潤の独自調査によって作られるので、富豪の入れ替わりは激しかったが、2010年以降は徐々に中国におけるニューリッチはほぼ網羅されるようになっているという。

超金持ちになる理由はいろいろとあり、すべてが合法的とは言えず、ランキングに入ってから逮捕された「富豪」も相当いた。

中国の経済規模が大きくなり、世界的大富豪もここから輩出するようになり、2016年2月には、つい上述した「胡潤世界富豪ランキング」が発表されるに至ったのだ。

経済規模ではアメリカの3分の2なのに、富豪の数はアメリカより多い。もちろん財産の絶対量は、中国のほうが歴史が浅く、アメリカの富豪の比ではないが、数では勝っている。これに対して、中国の普通の市民は喜びを抱くよりも、むしろ危機感を感じている。

今年ランキングが発表されると、中国のマスコミはさっそく胡潤の弾きだした数字を報道した。すると多くのネットメディアで大量の「ツッコミ」が生まれ、「富豪嫌い」の色彩を帯びた言論が盛んにシェアされた。

統計データを見てみると、北京のGDP成長率は2015年では6.9%で、前年比0.4ポイント下落した。中国全体の成長率も改革開放以来最低の6.9%で、これも0.5ポイント下落している。

こうした経済の低成長下で、富豪の総数と富豪の資産増加率が膨れ上がっている(北京における資産10億ドル以上の富豪数の増加率は30%を超えている)という事実から、ネットユーザーにとっては怒りを買う存在とされた。多くのネット言論は、富豪の資産増加に対して、本来自分にもたらされるべき分が「非情な富者」に奪い取られた、という論調だ。

改革開放で階層の流動化が進み
富豪たちが生まれた

富豪ランキングの発表から数日たって、「階層の流動化と固定化」の話題が学識者の間でも論じられるようになった。

階層が固定化された社会では、強者は常に強く、弱者はいつも弱く、富者はどこまでも富者であり、貧者はいつまでも貧者であり、富豪層がランクから滑り落ちることはなく、草の根層はどれほど努力しようとも貧者としての「宿命」を突破することは難しい。これに対して「階層の流動化」がある社会では、富者はもとより各種テコの調整で「リスクヘッジ」が可能であり、貧者はみずからの努力と才覚によって命運を変える機会を得ることができる。

中国の改革開放におけるもっとも大きな社会的進歩のひとつとして、毛沢東時代の「階層の固定化」を打ち破り、草の根層にみずからの努力で命運や地位を変える道筋と踏み台を提供したことがあげられる。これらの道筋や踏み台は、優秀な人材の優先採用、公平な競争で大学合格者を決める統一試験、個人経営者と中小企業の生存と発展を奨励する政策、そして各種の「(客観化された)固定目標」を標準尺とするふるい分けのメカニズムである。

1999年から始まった胡潤の富豪ランキングは、大多数の中国の億万長者が無一文から身を起したことも伝えているが、このことはまた改革開放以来の「階層の流動化」が中国の社会にいかに変化と活力、安定、繁栄をもたらしたかの証明でもある。

一方で、近年の中国社会に潜む「富豪嫌い」の感情には、根深いものがある。既得権益の受益者たちは、各種の手段、ルートを通じて「階層の流動化」を阻み、たとえば「素質教育」推進という口実で普通教育を疎かにし、改革やイノベーションの名のもとに資源独占の「裏工作」をし、税制や福祉制度の改革を妨害・歪曲することから、国際社会では普遍的に採用されている富の分配や社会矛盾の緩和を促す「テコ」は、中国においてはその作用を果たすのが難しくなっている。

中国が「富豪の国」になり、北京が「富豪の都」になったことを心底喜んでいるのは、おそらく利益に浴することのできるごく少数の人たちだけだろう。これはもとより当たり前のことで、健全な社会においては合法的な方法で「発家致富(お家を起こして富者になる)」で成功をおさめることは奨励されるべきことである。

しかし、いままでの中国国会では、“お姫様たち”がテレビカメラの前で、普通の人の数年分の年収にあたる外国ブランドの服を着て闊歩し、より多くの私腹を肥やそうとするような発言をしては、大多数の人に不愉快や不公平を感じさせていた。今年はそれは全くなくなったが、「胡潤世界富豪ランキング」が一石を投じた。社会の雰囲気としては、非常に嫌な感じだ。

中国において、社会の不安定要素を発生させないためには、「階層の流動化」をより活発にしなければならない。しかし、今の北京、上海、深センでは住宅は異常なほど値上がりし、企業を起こして社会のために物やサービスを提供していく道は、塞がれていると多くの人は感じている。このような大都会にはとても住めないし、起業もできない。先に土地や住宅を手に入れたものが金持ちになり、後からやって来る人は、どんなに頑張っても追いつかなくなる。

今年の「胡潤世界富豪ランキング」は、ここ数年来「階層の固定化」現象がじわじわと進行し、「流動化」への道が狭くなってきていることを、冷たい数字の羅列を通して明確に語っている。これは、たいへん憂慮すべき事態と言えよう。
http://diamond.jp/articles/-/88050


 



山田厚史の「世界かわら版」
【第105回】 2016年3月17日 山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
米大統領選で自壊し始めた「強者のためのTPP」
環太平洋経済連携協定(TPP)が、各国の批准を前に、失速し始めた。「21世紀の経済ルールを描く」と主導してきたアメリカで鮮明になっている。オバマ大統領は残る任期で批准を目指すというが、肝心のTPP実施法案の成立は絶望視されている。


大統領候補の指名レースで、「TPP賛成」だった共和党のルビオ候補が地元フロリダで負け、撤退を表明。TPPを担ぐ候補は1人もいなくなった。トップを走るトランプ候補は「完全に破滅的な合意だ」と歯牙にもかけない。民主党ではオバマ政権でヒラリー・クリントン候補が「反対」を表明。追撃するサンダース候補はTPP批判の急先鋒だ。

TPPは2月4日に各国が署名した。この日を起点に、2年以内に加盟国が国内手続きを終えれば、その60日後から発効する。手続きが終わらない国があっても、6ヵ国以上が手続きを終え、それらの国のGDPを足し合わせ全体の85%を超えれば発効となる。

ということは経済規模が大きい米国と日本の手続き完了が不可欠なのだ。どちらかが批准にしくじればTPPは成立しない。

米国のグローバル資本に
ハイジャックされたTPP

「TPPはアメリカの国益につながる戦略的経済連携」と日本では理解されてきた。シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリという「4つの小国」が自国にない産業を補い合う経済連携だったTPPにアメリカが目をつけ、「アジア太平洋市場」を自分のルールで作ろうとしたのがTPPだ。

「ここでTPPは変質した。投資と金融サービスが新たに盛り込まれ、グローバル資本によるルール作りが前面に出るようになった」

協定文書の分析をしている和田聖仁弁護士は指摘する。

小国連合だったTPPはアメリカにハイジャックされ、針路が変わった。操縦桿を握るのはアメリカ発のグローバル資本である。

「米国でTPP交渉を担当するのは通商代表部(USTR)。ここは商務弁護士の巣窟でアメリカに都合のいいルール作って世界で覇権を目指す戦略的部門です」

日本の通商関係者はいう。

TPP交渉は分野が広く、専門性が要求される。USTRの職員だけではカバーできない。企業や業界のロビーストや弁護士が加わって協定の骨格作りが進められた、という。

協定書は英文で5500ページある。運用を左右する付属文書を合わせるとA4版用紙で数10センチになる膨大な協定だ。

交渉は戦争と同じで、総力戦になった。軍隊に当たるのが交渉スタッフだ。アメリカには百戦錬磨の弁護士がうなるほどいる。しかも英語による交渉。「戦闘能力」で小国は歯が立たない。

2国間協議が並行して行われ、TPPは安全保障や援助も含めた総合的外交力が交渉に反映する。アメリカが決めた骨格に各国の事情をどこまで反映するかの交渉となった。

大統領選で火がついた
強者支配の象徴・TPPへの反発

アメリカの都合が優先されるTPPなのに、なぜアメリカで評判が悪いのか。ここにTPPの本質が滲み出ている。

「アメリカ」と一言で語られるところに盲点がある。アメリカの誰が利益を得るか。アメリカ内部でも利害は錯綜している。

オバマ政権で国務長官を務め「賛成」のはずだったヒラリーが「反対」に回った最大の理由は、労働組合がTPPに反対しているからだ。自由貿易は外国製品の流入を招き労働者から職場を奪う。1980年代に日米摩擦が吹き荒れたころと同じ論理が持ち出された。当時「雇用の敵」は日本製品だった。今は中国、韓国などアジアからの輸入が心配されている。

もう一つ異なる変化が起きている。米国資本のグローバル化である。

自動車ビッグ3の筆頭ゼネラルモーターズ(GM)が存亡の危機にさらされた80年代は、米国の企業と労働者には日本メーカーという「共通の敵」がいた。今は違う。グローバル化した資本は、本国で勝てない、と見れば外国に投資して生産を行う。

資本は逃げることができる。労働者は取り残され、雇用を失う。グローバル化は、資本には都合がいいが、ローカルで生きるしかない労働者には迷惑である。民主党は労組を支持基盤にしている。不満を吸収し支持を広げたのがサンダースだ。「TPPは1%の強者が世界を支配する仕組み作りだ」と訴えた。

アメリカは訴訟社会だ。高給を食むローファーム(企業弁護士事務所)の弁護士はアメリカのエスタブリッシュメントの象徴でもある。彼らはクライアント企業の要請を受け「TPPのルール作り」の素案を書く。

アメリカ政府はグローバル資本の利益を推し進める舞台装置になっている。

商売はうまくても民間企業のできることには限界がある。グーグルやアマゾンが強くても自力で他国の法律や制度を変えることはできない。外交や政府の出番だ。米国の政治力がなければ他国の市場をこじ開けることはできない。

アメリカの参加で、投資と金融サービスがTPPの主題となった。背景には、成長市場で儲けを狙うグローバル資本がいる。この構造は、本連載バックナンバー「TPP幻想の崩壊が始まった。交渉停滞、困るのは誰か?」などで触れているので端折るが、グローバル資本が先導するTPPという構造は、混戦模様の大統領選挙で炙り出されたのである。

政界で大きな顔をしている政治家が、社会の一握りでしかない強者と結びついていることに有権者は反発し、TPP論議に火がついた。

政治をカネで買える国・アメリカで
有権者の反乱が起きている

米国はカネで政策が買える国である。政治献金は政治家に直接手渡せないが、日本の政治資金団体のような組織を介せば、「無制限」に政治家は献金を受けることができる。「スーパーPAC」と呼ばれる政治献金の自由化が2010年から始まった。この制度で、業界団体は堂々と政治家の買収を行うようになった。オバマ大統領が菅直人首相(当時)にTPP参加を求めたのは2010年だった。

米国議会では民主党も共和党も評決に党議拘束はない。議員が自分の判断で賛否を決める。そこで暗躍するのがロビイスト。選挙にはカネがかかるのはいずこも同じ。スーパーPACを媒介して「政策とカネのバーター」が行われる。銃乱射が社会問題になっても、銃規制ができないことが物語るように「政治とカネ」は米国民主主義の恥部となっている。

大統領選挙の裏テーマは「金持ちに支配される政治」への反乱だ。

共和党のトランプ氏もサンダース氏も企業献金を受けていない。これまでの大統領選挙では、産業界やユダヤ人団体など強者からの支援なしに出馬できなかった。資産家であるトランプ氏、市民から小口の献金を集めるサンダース候補の登場が、タブーを破る論戦を生んだ。

製薬会社が強者の象徴として矢面に立っている。「国民は満足な医療を受けられないのに、製薬会社は高価な薬品を売りつけ大儲けしている」と製薬会社はやり玉に挙がった。ファイザーを始めとする米国の製薬業界は豊富な資金力を使い、TPPを動かす有力ロビー団体だ。交渉の最終局面でも知的所有権問題で、新薬特許の有効期限を長期化するよう圧力をかけ続けた。

今やTPPは「既存政治の象徴」になった。共和党で本命視されたルビオ候補は「TPP賛成」で票を減らしている。民主党はもともとTPPに懐疑的だったが、共和党は賛成だった。ところが選挙戦で評判の悪いTPPを前面に掲げることができなくなった。

オバマ大統領は、TPP実施法案で共和党に協力を求めたが、上院の実力者・マコーネル共和党院内総務は、大統領選挙前に法案を議会に出すことに反対した。

態度を決めかねていた末に「反対」を表明したヒラリー候補は苦しい。「無理して反対と言っているだけだ」とサンダース候補に攻められ「反対」を強調するようになった。

米国では政治家は発言への責任を問われる。当選して大統領になっても簡単に手のひらを返すことはできないだろう。足元の民主党が「TPP反対」を鮮明にしている。

国際社会で力が衰えたアメリカは、国内では政治家の在り方が問われ始めた。「ワシントン・コンセンサス」と呼ばれていた政権とグローバル資本の特殊な関係に有権者が疑問を抱き始めた。「ウォール街を占拠しよう」という運動はその一端だろう。

既存の政治が自分たちの方を向いていないと気づき始めた民衆が、TPPの胡散臭さにも気づいたのである。

TPPは「成長戦略の要」とする日本
何を得て何を失ったのかの検証が重要だ

日本はどうか。政府は4月1日、TPP関連法案を閣議で決定した。4月中に国会で審議し、法案を通す構えだ。米国で「反市民的」と見られ始めたTPPが日本では、「成長戦略の要」として吹聴されている。

秘密交渉ですべての資料が非公開とされ、協定全文が「公表」されたものの膨大かつ専門的で読めるものではない。議員や専門家が調べても、細部は分かっても全貌は掴みづらい。。政府は都合よい試算を示すだけで、全体像を分かりやすく国民に示す気はない。国民や国会の無理解をいいことに形式的な審議で国会を通してしまおう、という魂胆だ。

メディアの動きも鈍い。情報や解説を役所に依存している。TPPで得をするのは誰で、損をするのは誰か。農業の問題はいろいろ議論されたが、農業はTPPの中心テーマではない。

誰が得をするのか、を探るなら、TPPを推進したのは誰かを見れば分かることだ。

米国の「TPP交渉推進企業連合」に参加するグローバル企業が旗頭である。これらの企業が何を求め、どれだけ実現されたのか。その結果、日本でどんな変化が起こるのか。将来に向けていかなる布石が打たれたか。

日本に限って言えば、米国の年次改革要望書に沿った市場開放要求がTPPの骨格になっている。ではその見返りに日本は何を取ったのか。防戦を強いられ、大幅に譲歩した農業分野の陰で、日本は何を失ったのか。その検証が必要だ。米国と同じように、日本のグローバル企業は途上国で活動の自由を広げただろう。しかしアメリカ市場では乗用車の関税撤廃が30年後になったように、抑え込まれた分野は少なくない。

政府がやりたがらないなら、国会とメディアの出番だが、一部を除いて無気力さは目を覆うばかりだ。このことは改めて書く。

アメリカでは、強者に丸め込まれる政治に有権権者の怒りが爆発した。TPPまで問題にされた。「21世紀の経済ルール」というもっともらしい表書きの裏に「強者による市場支配」が潜んでいることに市民が気づき始めた。日本はまだそこに届いていない。

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田中均の「世界を見る眼」
【第54回】 2016年3月17日 田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
トランプvsクリントン米国民が望むのは孤立主義か世界のリーダーか
泡沫候補が有力になった訳
怒りや不満に応えるポピュリズム


米国民の選択は、世界にも日本にもこの上なく大きな影響を及ぼす(写真はホワイトハウス)
3月15日のミニ・スーパーチューズデーを終え、米国大統領選予備選挙の帰趨が見えてきている。民主党についてはヒラリー・クリントン元国務長官が民主党候補者として選出されることがほぼ確実となっている。

一方、共和党については不動産王、ドナルド・トランプ氏の躍進が止まらず、今後はトランプ氏が最終的に代議員の過半数を得て勝ち残るか、あるいは過半数を得る候補者がなく7月の共和党大会での決着(ブローカード・コンベンション)が図られることになるのか、二つのシナリオに絞られてきた。

予備選前には泡沫候補と見なされ、常識では考えられない過激な主張を掲げてきたトランプ氏がかくも有力となったのは何故なのだろうか。クリントン氏が無名のバーニー・サンダース上院議員に苦戦を強いられたのはどのような理由なのか。予備選を通じて浮かび上がってきた米国政治の趨勢を理解し、米国が大統領選挙で何を選択しようとしているのか解き明かそう。

トランプ氏のキャンペーンで最も強烈な印象を与えているのは、多くのアメリカ人の持つ不満に真正面から向き合い、これに極めてアメリカ的で短絡的な回答を与えていくという分かりやすさである。

“米国の労働者が不法移民に職を奪われているのだとすれば、彼らを国外退去させよう。不法移民の流入を阻止するためにメキシコとの国境にメキシコ側の負担で壁を建設させよう。イスラム過激派のテロを防止するためには当面イスラム教徒の入国を拒否しよう。テロリストには拷問も必要だしその家族を殺害することも許される”

もちろん、トランプ氏はこれらが現実の政策としては成り立たないことが分かっているはずであろうし、米国民もトランプ氏を好ましい大統領候補と考えている訳でもない。3月3日〜6日に行われたNBC/WSJ調査によれば、トランプ氏を積極的に評価する人は25%、消極的に評価する人は61%で主要な候補者に比べ最も低い評価となっている。しかし予備選挙の中では同氏の優位は動かない。

これは、トランプ氏に対する積極的な支持というより、アメリカ人の持つ不満や憤りの強さを同氏への投票で示しているのではないのだろうか。この不満や怒りといったものは、民主党の予備選挙でもサンダース氏が善戦している最大の要因なのではないのだろうか。

トランプ氏を支持するのはブルーカラー白人層で、サンダース氏を支持するのは高学歴若年白人層であると言われるが、サンダース氏の場合、同氏の掲げる理念的なリベラリズムが現状の不満の強さを示していると見ることができる。いずれにせよ両者とも、現実的な政策を掲げるというよりポピュリズム的な選挙戦を行っていると言うことはできよう。

拡大する所得格差と政府への不信
高まる“アウトサイダー”への期待

ではトランプ現象の背景を織りなしている、アメリカ人が持つ怒りや不満は何なのだろうか。

従来、大統領選挙の決定的要因は経済、なかんずく失業率の高さであると言われ続けてきた。現在、失業率は2009年の10%から2015年の5%と、米国では極めて低い水準へと大幅に改善しており、数字上は失業が米国人の怒りや不満の要因とは考えがたい。ところが近年所得の不均衡が拡大し、労働者レベルの生活水準が停滞している。

FRBの発表によれば、2013年までの過去3年で上位10%の所得区分の人々の所得は10%向上しているが、下位20%の所得区分の人々の所得は8%下降している。これが大衆の不満の最大の要因であると言われることが多い。所得格差拡大の原因を移民や外国の通貨・貿易政策に求めて批判を展開するトランプ氏や、ウォール街を非難し所得再配分政策を掲げるサンダース氏が喝采される理由の一つなのだろう。

アメリカ人の怒りの要因として次に挙げられるのは、いわゆる「ワシントン・インサイダー」に対する強い嫌悪感である。これは裏返せばアウトサイダーに対する期待となる。米国の数年前のテレビドラマ「ハウス・オブ・カード」が高い視聴率を上げたが、まさにここで描かれているのが、ありとあらゆる権謀術数を使い、殺人まで犯して下院院内幹事から大統領に登り詰める男の物語であった。米国人がワシントンを見る目はこのドラマに象徴されている。

ピュー・リサーチ・センターの調査によれば、共和党支持者の89%、民主党支持者の72%が政府を信用しないとし、ギャラップ社の調査によれば60%のアメリカ人は政府が権力を持ちすぎていると感じている。

現にこれまでの大統領選挙でも、実は多くのアウトサイダーが結果的に大統領に当選してきた。ジョージア州知事であったカーター大統領、カリフォルニア州知事であったレーガン大統領、アーカンソー州知事であったクリントン大統領、テキサス州知事であったジョージ・W・ブッシュ大統領など、近年はむしろインサイダーよりアウトサイダーの方が多い。

トランプ氏はまさにあらゆる意味でアウトサイダーである。不動産王と言われる同氏は政治家であったことは一度もなく、実業家として財産を築いてきた。大統領選挙では多大のキャンペーン費用を必要とするが、トランプ氏の場合は選挙費用を他人に依存する必要はない。資金を受け取ることにより生ずるしがらみがないというわけである。また公職にあったものはその時代のスキャンダルに怯えるが、民間人としてのトランプ氏はスキャンダルを恐れなくて済むということなのかもしれない。

クリントン氏が苦戦を強いられている最大の理由の一つは、自身がワシントン・インサイダーそのものであるという点である。世論調査でもクリントン氏を信用しないという人は約6割に達する。国務長官時代に私用メールアカウントで機密を扱ったのではないかという捜査が行われているが、このメール問題でも、同氏は真実を述べていないのではという疑いの目で見られている。

失われつつある政党アイデンティティ
共和党主流派は明らかに反トランプ

このような予備選挙を通じて、共和、民主両党双方で伝統的なアイデンティティが失われつつあることも指摘されている。米国の共和党・民主党の二大政党制は英国の保守党・労働党の二大政党制と並び、比較的各党のアイデンティティが明確であった。

共和党は小さな政府、政府の介入を最小限にした自由な市場体制、プロビジネス、家族・宗教などの伝統的価値、国家安全保障の重視を標榜し、より富裕な層が支持母体であった。一方民主党は、リベラルな価値、大きな政府による所得再配分政策、人権・環境等の重視を標榜し、支持母体も労働組合を主体とする労働者層に求めてきた。

トランプ氏は共和党の従来のアイデンティティに沿った候補ではない。むしろ、より大きな政府の介入を示唆し、宗教・家族など伝統的価値を前面に出すわけではない。

共和党の主流派と言われる人たちは明らかに反トランプである。100名を超える有識者がトランプ氏の大統領選出に反対する公開書簡に署名した。例えば日本でもよく知られたアーミテージ元国務副長官(ブッシュ政権時)は、トランプ氏やクルーズ氏が共和党大統領候補になり、クリントン氏が民主党候補になったならばクリントン氏に投票すると宣言している。共和党の一体性は失われている。

他方、民主党にしても党内の統一が図られているとは考えがたい。サンダース氏の主張は中道に変化してきた民主党の主流とは反する原理主義的なものであり、クリントン氏もそれに影響を受けざるを得なくなっている。

一方、民主党の予備選挙で明確に表れているのは、理念的なサンダース氏を支持するのは白人若年層であり、クリントン氏は黒人・ヒスパニック・アジア系と言ったマイノリティの人口層に強いという構図である。結果的には、民主党にあってはこのような伝統的な民主党支持基盤の下で党の結束が図られるということなのかもしれない。

過渡期にある国際社会の中で
国民はどんな米国を望むのか

このようなアメリカ人の怒り・不満や共和・民主両党の変質と並び、大統領選の大きな背景をなすのは国際環境の変化であり、米国の地位の変化である。実はこの選挙で問われているのは、国民は国際社会の中でどのような米国を望むのか、ということなのではなかろうか。これまでの大統領選挙でも、国際社会の大きな変動期には従来とは異なるタイプの大統領が選ばれてきた。

カリフォルニア州知事を務めはしたが元々ハリウッド俳優であったレーガン氏が大統領選で勝利したのには、強い米国が切望されたことが背景を織りなしていた。当時、イラン革命で米国大使館員が人質に取られた事件や、ソ連のアフガニスタン侵攻等、冷戦がピークを迎え、ひ弱なアメリカに対する強いフラストレーションが渦巻いていた。ジョージ・W・ブッシュ大統領が演出したのは、米国一国になろうとも世界の警察官としての役割を果たすという姿であった。

ブッシュ大統領の後、オバマ大統領が選ばれた背景には、長く続いたイラクとアフガニスタンでの二つの戦争を終わらせ、ピーク時には約16万人に達した米兵を撤退させて、戦争をめぐり分裂した米国を人種も含めて融合させたいという国民の大きな意思が働いたのであろう。

現在国際社会は、そして米国の役割は、やはり大きな過渡期の中にあると言っても過言ではない。国際社会の構造も、先進民主主議国と新興国の力のバランスが変化し、とりわけ中国の台頭は目覚ましい。ウクライナ、シリアをはじめ色々な地域での紛争や衝突が数多く発生している。果たして米国の指導力はどう変化していくべきなのか。

クリントン氏は国務長官を務め国際関係に精通しており、おそらくオバマ大統領との対比ではより積極的な外交安全保障政策を展開していくと見られている。一方トランプ氏が描くのは国益第一で国内志向の強い、むしろ孤立主義的な米国なのだろう。ある意味対照的な米国の姿である。大統領選挙は米国民にこの選択を突きつけているのかもしれない。

大統領選挙は今後どのような形で終焉していくのだろうか。共和党や民主党のアイデンティティは変わっていくのだろうか。そして、米国民の選択は国際社会で指導力を増す米国を生み出すのか、それとも孤立主義的な米国を生み出すことになるのであろうか。日本への影響もこの上なく大きい大統領選挙から目が離せない。
http://diamond.jp/articles/-/88052

 
2016年3月17日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長]
「一物一価の法則」はもう古い?刻一刻と価格が動く世界の到来

米ウォルト・ディズニーは、米国内のテーマパークにおいてチケット価格に新システムを導入。1日チケットの価格を繁閑に合わせて3段階に設定したPhoto:REUTERS/アフロ
米サンディエゴのパブ、ティプシークロウは、ビールの価格が銘柄別に客の需要によって刻々と変化するシステムを導入している。

店内の大スクリーンに、まるで株価か為替のように、ビールの現在の価格と変化率が表示されている。人気のあるビールは価格が上がるが、客はそれを見ながら「安いからこっちにしてみようか」などと考えながら注文する。

消費者の行動を集めたデータを用いて、アルゴリズムで需要の強弱やライバル企業の動向を判断しながら自社の販売価格を頻繁に改定していく手法をダイナミックプライシングという。以前から航空券等では使われていたが、最近の米国では前述のように適用範囲が拡大している。

インディアナポリス動物園では、入園料が繁閑に合わせて8〜30ドルで変化する。ミシガン州のスキー場の入場料も10ドル程度から30ドル超まで変動する(米紙「ウォールストリート・ジャーナル」)。

米ウォルト・ディズニーのテーマパークでも、来客数の増加が見込まれる日は入場料が上昇することになった。例えば、フロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールドにあるマジックキングダムは、これまでの105ドルから、ピーク期間は124ドルへ引き上げられた。ハリウッドのユニバーサル・スタジオも2月から入場料が大きく変化するようになった(米ブルームバーグ)。

ダイナミックプライシングを採用する企業の最大の動機は、販売額を伸ばしたいという点だ。成功例も多々あるが、人気があまりないアメリカンフットボールチームの場合、観戦チケット価格が低迷し、やめてしまったケースもある。

最も積極的にダイナミックプライシングを活用しているのはインターネット業界だ。アマゾンなどのEコマース(電子商取引)は、需要を見て価格を刻々と変化させている。配車サービスのUberの乗車料金も同様だ。ただし、災害などで需要が急増した際に、「人が困っているときに価格をつり上げるのか」との批判が湧き起こった。非常時には価格上昇を抑制する設定が必要になる。

米国では最近、大手デパートのコールズなどの小売店でもダイナミックプライシングを導入するケースが見られる。しかし、Eコマースに押されている実店舗がそれを始めても、アマゾン等との激烈な価格競争の中では、価格はなかなか引き上げられないようだ。

米国のコア消費者物価指数(総合から食品とエネルギーを除いた指数)前年比は2.2%まで上昇してきているが、衣料や耐久消費財は価格下落(デフレ)が続いている。大和証券キャピタル・マーケッツ・アメリカの小売りアナリスト玉田かほり氏の最近のレポートによると、「モノ消費からエクスぺリエンス(体験)消費へのシフト」が米国で話題の的となっている。

モノよりも貴重な体験に米国の消費者は価値を見いだしている。そういった状況でダイナミックプライシングを導入すると、一部のブランド力があるものを除けば、モノの価格には下落圧力が加わりやすくなり、人気のあるサービスの価格は上昇するようだ。

こういった動きはこれから日本にも押し寄せてくるだろう。その場合、取り立ててブランド力がないモノの価格はこれまで以上に上がりにくくなると予想される。「エクスぺリエンス消費」に対応できる品目を、企業がどれだけ提供できるかが重要になってくると考えられる。

(東短リサーチ代表取締役社長加藤 出)
http://diamond.jp/articles/-/87829

 


同時選勝利を目論む安倍首相、障害は首相自身

2016年3月18日(金)The Economist


 安倍晋三首相が前回、総選挙に踏み切ったのは、2012年に首相に就任してからわずか2年後のことだった。即座に解散総選挙を決めた安倍首相の目は、野党陣営の混乱ぶりと、議席数を増やすチャンスをとらえていた。
 それでも安倍首相は「公約の重大な変更について国民の信を問う」という大義名分のもとにこの選挙を進めた。経済が停滞するのに鑑み、以前から決まっていた消費税引き上げを延期すると決断したからだ。選挙は自民党の圧勝に終わった。そして今、国民の信を問う必要がある重要政策が再び浮上すると思われる。


2014年11月18日、安倍首相は、消費増税を先送りした。再び同じことはできるのだろうか(写真:ロイター/アフロ)
 日本経済が一向に回復の兆しを見せない中、安倍首相がまたしても消費増税を先送りする可能性があるのだ(現時点では2017年4月に8%から10%に引き上げることが予定されている)。決断のタイミングは、日本が議長国を務める5月のG7(先進国首脳会議)を終えてからになるだろう。前例に従うならば、この問題に関して解散総選挙を行わないわけにはいかない。6月か7月には参議院選挙が予定されている(参院議員の半数が改選される)。安倍首相はおそらくこれに合わせて総選挙の日程を決めるだろう。

原発、安全保障、スキャンダル

 自民党の中にはより早い時期の総選挙を望む者もいる。安倍首相の運が尽き果てないうちに、急いで済ましてしまいたいのだ。現在、安倍政権の前には様々な困難が立ちはだかっている。最大の懸念は経済だ。個人消費の冷え込みを受け、2015年10〜12月期の日本経済は年率換算で1.1%縮小した。日本銀行(日銀)は1月、マイナス金利政策を打ち出して需要の喚起を図ったが、その狙いとは裏腹に株価は下落し、円高が進んだ。

 遅かれ早かれ日本の有権者は、停滞する経済への不満を安倍首相にぶつけることになる。同首相は経済建て直しを約束していたのだから。

 国民の支持を得られていない政策は他にもある。安倍首相はそれらに対する制裁をまだ受けていない。原子力発電所の再稼働はその一つだ。5年前のこの時期に発生した福島第1原発のメルトダウンという最悪の事態を受け、日本の原発はすべて運転を停止していた。

 昨年成立した新たな安全保障関連法について、多くの専門家がこれを違憲だとしている。この法律は海外でこれまでより幅のある行動を日本に許すもので、多くの日本人が不快に感じている。

 ただでさえこうした不満が渦巻いているところに複数の与党議員が不祥事を起こした。1月には安倍首相の側近だった甘利明経済再生担当相 が政治献金疑惑をめぐって辞任した。また、男性国会議員として初めて育児休暇をとると宣言して話題を集めていた議員が、妻の妊娠中に他の女性と不倫関係にあったことが発覚。それ以来、安倍政権の支持率は50%を下回っている。

安倍首相が進める改革は十分か

 消費税に関しては、2014年に行われた最初の増税(5%から8%)が個人消費に打撃を与えた。安倍首相の経済アドバイザーを務める本田悦朗氏 は、安倍首相が経済を回復させるべく広く取り組んでいる政策について国民の信頼を失いたくないなら、今度の引き上げを延期することが不可欠だと話す。

 3年間にわたって大がかりな金融緩和を行った今でもコアインフレ率はゼロに近く、日銀が目標に掲げる2%には程遠い。労働組合の幹部たちでさえ、大幅な賃上げを要求してはいない。そして銀行が貸出によって得られる利ざやは相変わらず圧迫されている。こうした状況はすべて、安倍首相が約束する「賃金・消費・投資の増加による好循環」を脅かすものだ。こうした状況下で夏の選挙に臨んだ場合、有権者が安倍政権に投票するかどうかは疑問だ。

 日本経済の自由化を進めるべく安倍首相は一層努力すべきだ、と考える人は多い。例えば、労働市場を徹底的に改革する。非正規労働者は低賃金に甘んじており、個人消費の足かせとなっている。これを改善するためのもっと強力な政策を打ち出すこともできる。だがある政府官僚によると、踏み込んだ改革計画が発表される予定は当面ないという。

冴えない民主党

 一方、中道左派政党の野党・民主党は総選挙に向け候補者の擁立に奔走している。だが確固とした足掛かりは築けそうにない。世論調査によれば民主党の支持率はわずか10%にすぎず、哀れなほどの水準にとどまっている。これに対して自民党の支持率は4割にのぼる。

 民主党は消費増税の2度目の延期を取り上げ、アベノミクスの失敗がその原因であると追求する構えだ。だが普通世帯を取り巻く困難な状況を考慮し、増税の延期そのものには反対しないと思われる。

確かな憲法を求める安倍首相

 衆参ダブル選挙を実施することの是非を考えるにあたり、安倍首相は自らの夢の実現につながる大勝利が可能かどうかを検討することになる。安倍首相の夢、それは憲法改正だ。その中心にあるのは、1940年代後半に進駐軍が策定した平和憲法を書き換えたいという思いである。

 安倍首相はこうした改正が必要となる理由について、次のように説明している。あの悲惨な戦争から70年が過ぎた今、日本はもはや、時代遅れの平和主義によってがんじがらめにされる必要はない。日本を取り巻く環境は日増しに危険度を増しているのだから――。

 日本で憲法を改正するためには、衆参両院のそれぞれで議員の3分の2以上が賛成し、国民投票で半数以上の賛成票を得る必要がある。自民党とその連立相手である公明党は、衆議院では議席の3分の2以上を確保している(475議席中325議席)が、参議院においてはかろうじて過半数を超える程度である(242議席中136議席)。

 安倍首相が参議院で議席数を増やすことは可能かもしれないし、右派の小政党、おおさか維新の会の協力も期待できる。それでも憲法を改正しようとすれば、日本の平和主義を誇りに思う国民の多くが大きな警戒心を抱くだろう。つまり、選挙での勝利を願う安倍首相にとって、憲法改正の取り組みについて嬉々として話すその性向が最大のリスクとなるのだ。

c 2016 The Economist Newspaper Limited.
Mar 12th 2016 | TOKYO | From the print edition, All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。

このコラムについて
The Economist

Economistは約400万人の読者が購読する週刊誌です。
世界中で起こる出来事に対する洞察力ある分析と論説に定評があります。
記事は、「地域」ごとのニュースのほか、「科学・技術」「本・芸術」などで構成されています。
このコラムではEconomistから厳選した記事を選び日本語でお届けします。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/031600069/?ST=print


 


国連の幸福度報告書、トップはデンマーク 日本53位
CNN.co.jp 3月17日(木)11時16分配信

(CNN) 国連の「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」は16日、世界の幸福度に関する2016年版の報告書を発表した。幸福度が高い国としてはデンマークが1位で、昨年トップだったスイスは2位に下がった。

4年前から発表されている同報告書で、デンマークがトップに立つのは3回目。16年版の3位以下にはアイスランド、ノルウェー、フィンランドが続いている。

6〜10位はカナダ、オランダ、ニュージーランド、オーストラリア、スウェーデンだった。

経済大国の中では米国が13位、ドイツが16位に入ったが、英国は23位にとどまり、日本は53位、ロシアは56位、中国は83位と振るわなかった。

153位以下にはベナン、アフガニスタン、トーゴ、シリアが連なり、最下位はブルンジだった。

経済、政治情勢が悪化したギリシャ、イタリア、スペインや、政情不安のウクライナなどは順位を下げている。
上位の国には平均余命が長い、社会福祉が充実している、人生の選択肢が幅広い、汚職が少ない、社会の寛容度が高い、1人当たりの国内総生産(GDP)が高いなどの特徴があった。

アイスランドとアイルランド(19位)はともに金融危機で経済的な打撃を受けたにもかかわらず、幸福度に大きな変化はなかった。両国に共通しているのは高度な社会福祉制度だ。

報告書の執筆者は「経済成長ばかりに注目するより、豊かで公正、持続可能な社会を目指すべきだ」と主張している。

格差の小さい国は大きい国に比べて幸福度が高いこと、05〜11年と12〜15年のデータを比べると幸福度の不平等さは大半の地域で拡大する傾向にあることも分かった。

幸福度の平等さでトップに立ったのは、「国民総幸福量(GNH)」の指標で知られるブータンだった。

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最終更新:3月17日(木)18時53分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160317-35079688-cnn-int


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