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自己資本を食い潰す「潤沢な」株主利益還元の罠…過度のROE経営が企業を滅ぼす(Business Journal)
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/751.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 3 月 23 日 06:41:55: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

自己資本を食い潰す「潤沢な」株主利益還元の罠…過度のROE経営が企業を滅ぼす
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14355.html
2016.03.23 文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授 Business Journal


 前回は、ROE(自己資本利益率:後述参照)の分子となる当期純利益について述べましたが、今回は分母となる自己資本に関して2つのポイントを紹介したいと思います。まずはROE改善に関連する「割り算の罠」。次に、自己資本がパラメーター(「媒体変数」が正しい和訳ですが、そのまま「パラメーター」で良いと思います)となるエクイティ・スプレッド(ROEと株主資本コストの差)と残余利益(エクイティ・スプレッドと自己資本の掛け算)という財務指標のどちらを重視すべきかについて考察していきます。

 ROEが重視される昨今、その分母となる自己資本は「ROEを悪化させる邪魔者」のような扱いを受けているような印象がありますが、本稿で、実は企業価値創造の源泉であるという当たり前のことを再認識していただきたいと思います。

●自己資本の基礎知識

 ここで自己資本の基礎知識をおさらいしましょう。まずは、自己資本は財務諸表のどこを探せばよいのでしょうか。貸借対照表を見ても「株主資本」や「純資産」はありますが、残念ながら「自己資本」は見当たりません。

 そこで、決算短信の1ページ目を見ると、連結財政状態の参考として数値が掲載されています。この数値が、自己資本比率や自己資本利益率(ROE)の算出に利用されています。ではこの数値がどのように計算されているかというと、貸借対照表の純資産の部にある「株主資本合計」に「その他の包括利益累計額合計」を足し合わせます。または、純資産合計額から「新株予約権」と「少数株主持分」を差し引くことによっても計算が可能です。

 次に自己資本の変動要因についてですが、連結株主資本等変動計算書を見ればよく理解できます。議論を単純化するために「その他の包括利益累計額合計」の項目を無視すると、当期純利益、配当、そして自己株式の取得が自己資本の三大変動要因となります。当期純利益は自己資本を増加させ、配当及び自己株式の取得が減少させることになります。ですから、昨今の株主還元政策の強化は、当期純利益による自己資本増加の影響を軽減することが目的のひとつだと考えられます。

 たとえば、金属加工機械大手のアマダの「利益100%還元」では、当期純利益の全額が、配当もしくは自己株式の取得により株主に還元されることになり、「その他の包括利益累計額合計」の項目を無視すると、自己資本に変化はありません。

●自己資本の水準についての企業と投資家の認識のギャップ

 自己資本が「ROEを悪化させる邪魔者」のような扱いを受けている印象があることは前述の通りですが、これをデータに基づいて検証してみましょう。

 平成26年度生命保険協会調査に「自己資本の水準についての認識」というアンケート調査があり、非常に興味深い結果となっています。結論からいえば、投資家が自己資本の水準が余裕のある水準(言い換えれば、多すぎる水準)と考えている一方で、企業は適正な水準と考えている、ということです。つまり、伊藤レポートやメディアのトーンは、投資家の意見を反映したものだといえるでしょう。「手元資金の水準についての認識」というアンケート調査もあり、自己資本の水準に関する調査と同様の結果となっています。

 また、「手元資金の使途として望ましいもの」というアンケート調査もあり、両者とも「成長に向けた投資資金」という回答が6割を超えていますが、興味深いのは、「財務安定化のための手元流動性確保」と回答する企業が2割ほど存在する一方で、投資家は5%弱にとどまることです。手元資金は、投資家にとっては財務安定化のための「死に金」にすぎないということでしょう。

●自己資本の水準に関しては投資家と企業の利害が合致することはない

 投資家にいわせれば、日本企業の現在の状況は、企業がリスクを回避するために無駄な自己資本や手元資金を抱えて資本効率性が悪化している、ということになるのでしょう。

 では、企業が投資家の意見を鵜呑みにして実行に移すとどうなるでしょうか。つまり、自己資本も手元現金も最小限に抑えて経営するということです。確かに効率的に思われますが、企業は逆にリスクを取りにくくなるはずです。もちろん、リスクを取らなければ企業価値が創造されないという点に関しては、企業も投資家も意見は同じですが、リスク許容度が両者では大きく異なるのです。

 というのも、投資家は基本的に分散投資を行うため、ある企業のリスク投資が大幅な損失につながったとしてもポートフォリオ全体のパフォーマンスには大きな影響はありませんが、企業はそうはいきません。企業が倒産すれば社員は多くを失うことになります。ですから、リスク投資が失敗し大きな損失となったとしても、それをカバーできるバッファ(余裕幅)が必要であり、まさにその役割を自己資本が果たすのです。失敗しても会社は磐石であるという安心感がなければ、リスクなど取れはしないのです。

 少ない自己資本で積極的にリスクを取るというのは、机上の計算では素晴らしいリターンを生み出すのでしょうが、現実はそううまくはいかないものです。

 そもそも最適な自己資本水準というものは誰にもわかりません。投資家は自己資本水準をもっと下げろとは言いますが、彼らもいくらにせよとは言えないのです。もちろん、統計分析によってそれなりの水準が把握できるかもしれませんが、それが正しい保証は何もありません。このように正解がない状況では、米投資家ウォーレン・バフェットが「margin of safety(安全余裕率)」と呼ぶように、だいたいこの程度が適正かもしれないが、念のためある程度バッファを上乗せしておこう、ということになります。こうした行動は至極当然のことですが、このバッファに対する認識が企業と投資家で異なるだけの話なのです。投資家は自分の都合でいろいろと言ってきますが、企業は企業の都合で意思決定すればよいのです。自己資本の水準に関して、両者の利害が合致するなどということはあり得ないのです。

●「割り算の罠」には高ROEを目指す企業が陥る

 さて、次に今回のテーマのひとつである「割り算の罠」について考えていきましょう。「割り算の罠」とは、ROE算出式の分子である当期純利益の拡大ではなく、分母となる自己資本の圧縮によってROE改善を狙うことです。これまで自己資本の圧縮を求める投資家の要求について述べてきましたが、まさに彼らの要求と合致したアプローチといえます。

 厳しい競争環境下において、営業利益率を改善しながら売り上げを高めて当期純利益を拡大するのは容易なことではないため、特に高いROE目標を設定する企業ほど「割り算の罠」に陥る可能性が高まります。もちろん、無駄な自己資本を株主に還元することは正しい行動ですが、前述のように適正な自己資本の水準がよくわからないのに、無駄な自己資本の水準がわかるはずがないのです。

 そこで、適正な自己資本の水準を予想当期純利益とROE目標から逆算することになれば、「割り算の罠」に陥ることになります。企業は、ROE目標が実現できる自己資本の水準になるまで自社株買いを行い続けることになるのです。

 こうした行動を高く評価する投資家もいるようですが、企業が本来取るべき行動は、そこまでしてROE目標を達成するよりも、ROE目標を現実的な水準に引き下げることなのです。自己資本を圧縮してROEを高めたところで、自己資本を無限に圧縮し続けることはできないため、ROEの改善は一過性のものにすぎません。

 そもそも企業価値が将来生み出されると期待されるキャッシュフローの現在価値であるとすれば、自己資本を圧縮したところでキャッシュフローが拡大することもないため、ROEが改善したとしても企業価値創造を伴うことはないのです。また、自己資本を圧縮し続ければ、前述したバッファが縮小するためリスク耐久度が減少し、リスク投資も実行しにくくなります。これでは企業価値創造どころの話ではなく、縮小均衡へ突き進むことになってしまいかねません。

●残余利益が縮小均衡への防波堤

 結局、「割り算の罠」の問題が生じるのは、割り算に基づくパーセントベースの指標で企業を相対的に評価しようとすることが原因です。企業価値にせよ、時価総額にせよ、絶対額で測定されるものであることを考えれば、パーセントベースの指標の大小を議論したところで必ずしも有効とは限りません。たとえば、ROEが5%の大企業が15%のベンチャー企業を買収することは、企業価値の差を考慮すればたやすいことなのです。

 そこで、縮小均衡を回避すべく絶対額ベースの指標として提案したいのが残余利益の活用です。残余利益は、エクイティ・スプレッドに自己資本を掛け合わせて算出されますので、まずはエクイティ・スプレッドの説明をします。

 エクイティ・スプレッドは前出の伊藤レポートで紹介されたこともあり注目されています。この指標は、ROEと株主資本コストの差であり、エクイティ・スプレッドがプラス(マイナス)、つまりROE>株主資本コスト(ROE<株主資本コスト)であれば企業価値が創造(破壊)されていることを意味します。

 なぜならば、株主資本コストは投資家が要求するリターンであるため、ROEが株主資本コストを上(下)回れば、投資家の期待に応えた(応えていない)ことになるからです。しかし、エクイティ・スプレッドの欠点は、パーセントベースの指標であり、企業が絶対額としてどの程度の価値を創造したのかは示してくれないことです。また、ROEがパラメーターとなるため、結局のところ、自己資本を圧縮してROEを高めることによりエクイティ・スプレッドを改善しようとする「割り算の罠」の問題は解決されないままなのです。

 そこで出番となるのが残余利益です。残余利益は、以下の公式が示すように、エクイティ・スプレッドに自己資本を掛け合わせるため絶対額ベースの指標であり、創造された企業価値の額を測定します。

【公式】
残余利益=(ROE−株主資本コスト)×自己資本

 ここでポイントとなるのは、公式を見ればわかるように、自己資本を圧縮してROEとエクイティ・スプレッドを高めたとしても、掛け算のパラメーターとなっている自己資本が縮小してしまうため、ROEとエクイティ・スプレッドの改善ほどには残余利益が改善することはない、ということです。それどころか、後述するように、エクイティ・スプレッドがプラスである限り、自己資本は大きければ大きいほど残余利益は拡大するのです。

 つまり、残余利益という絶対額ベースの指標に基づけば、自己資本はまさに企業価値創造の源泉なのです。日本の優良大企業には有利だと考えられます。ROEやエクイティ・スプレッドというパーセントベース指標の改善にフォーカスを当てすぎると、このような企業価値創造の基本すら忘れ去られてしまいかねないのです。

●企業価値創造の2つのアプローチ

 残余利益の公式から企業価値を創造するためには、2つのアプローチがあることがわかります。エクイティ・スプレッドで勝負するか、自己資本の規模で勝負するかです。

 前者は、IT系企業に、後者は大企業に適切なアプローチです。IT系企業は、物理的な資産が少ないため、少額の自己資本で経営をすることが可能です。ですから、高ROEを実現することも可能であり、高エクイティ・スプレッドで自己資本の規模をカバーして企業価値を創造することになります。実際、IT系企業にはROEが40%を超えるような企業も多く、まさにエクイティ・スプレッドで勝負していることがわかります。

 一方の大企業は、低エクイティ・スプレッドを自己資本の規模でカバーして企業価値を創造することになります。たとえば、エクイティ・スプレッドがたったの0.1%であっても自己資本が10兆円あれば、残余利益は100億円となります。自己資本の圧縮によるROE改善を投資家に求められるのは大企業が多いでしょうが、エンゲージメントの際に残余利益の概念を持ち出せば、過度な自己資本圧縮の要求に対してNOと言うことも可能なのです。

 もちろん、どちらのアプローチであっても、企業は自己資本を「成長に向けた投資資金」として活かし、キャッシュフローや利益を成長させなければなりません。これが大前提であり、この前提が当てはまらない場合には、株主還元により自己資本を圧縮しなければなりません。なお、株主還元政策に関しては、今後本連載でテーマとして取り上げる予定です。

●大企業は株主資本コストの算出がカギとなる

 前述の通り、ROE>株主資本コスト(ROE<株主資本コスト)であれば企業価値が創造(破壊)されているという判断になるため、株主資本コストの算出が特に大企業にとって重要になります。というのも、IT系企業のようにエクイティ・スプレッドで勝負する場合は、ROEは大幅に株主資本コストを上回っていると想定されますが、わずかなエクイティ・スプレッドを多額の自己資本でカバーする大企業の場合には株主資本コストの算出がかなり重要になります。仮に株主資本コストを実体よりも低(高)く見積もれば、実際は企業価値を破壊(創造)しているのにもかかわらず、創造(破壊)していると誤った判断をしかねないのです。

 そこで、株主資本コストの算出に関しては次回に紹介しますが、今回はエクイティ・スプレッドを把握するためのショートカットを紹介します。詳細な解説は省略しますが、このショートカットはPBR(株価純資産倍率)をベースに判断するシンプルなアプローチです。

 PBRが1以上(以下)であれば、エクイティ・スプレッドがプラス(マイナス)、すなわちROE>株主資本コスト(ROE<株主資本コスト)というものです。株式市場の評価であるため、実績ではなく予想ベースであり、また市況によって変動することにはなりますが、エクイティ・スプレッドを大雑把に把握するには便利です。

 東証一部のデータを見ると、ここ数年PBR1割れ銘柄の比率は4割から5割で推移をしており、まずはROE>株主資本コストを実現することが優先されるべき企業が多いのが実情です。これでは投資家に自己資本圧縮を要求されるのも無理はありません。PBR1割れ企業は、自己資本を「成長に向けた投資資金」として活かす、という大前提に沿って当期純利益やキャッシュフローを拡大させなければなりません。それが実現できれば、PBR1超え銘柄となるでしょうし、不可能であれば相変わらずPBR1割れ銘柄のままです。投資家の要求通り、株主還元政策を強化して自己資本を圧縮しなければなりません。

 以上、自己資本比率について述べてきましたが、次回は株主資本コストについて考えていきましょう。 

(文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授)  

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コメント
 
1. 2016年3月23日 08:24:42 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[315]

大企業の内部留保への政治的圧力が高まり、具体的な懲罰策が決まれば、本来は必要のない株主還元や、非効率で過剰な投資、国内への利益還元の遅れや海外への流出は増えざるえなくなる。
その結果は、国内産業の衰退と雇用の悪化という形で国民に跳ね返ってくるだろう。

2. 2016年3月23日 11:51:17 : 6jC6Ok4X3M : r9HiorRuc1w[160]
まず自社株買いを禁止しろ。

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