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量的追加緩和の中身を嗅ぎ取る市場参加者(会社四季報オンライン)
http://www.asyura2.com/16/hasan107/msg/651.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 4 月 20 日 02:02:20: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

          日銀は4月に行われる金融政策決定会合で追加緩和に踏み切るのか…(撮影:尾形文繁)


量的追加緩和の中身を嗅ぎ取る市場参加者
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160419-00114421-shikiho-bus_all
会社四季報オンライン 4月19日(火)21時46分配信


 日銀が何かしようとしている……これ、間違いない(ような気がする)。まどろっこしくなったが、日銀の次の追加緩和策は、ETF買い入れ枠のさらなる増額ではないか? と一部の市場参加者は嗅ぎ取っているように思われるのだ。

 広く知られていることだが、前場の東証株価指数(TOPIX)が一定の下落率(その下落率は買い入れ枠の状況に応じて調整していると推測される)になると、日銀が後場にETFの買い入れを行っている。2014年10月の“バズーカ2”のタイミングで、年間の買い入れ枠は3兆円まで拡大された。

 日銀のETF買い入れは、短期的な利益を狙う“トレード(買ったらすぐに売る)”ではないため、1年間で買う3兆円はそのまま「3兆円の買い越し」になる(売り0円に対して買いが3兆円のため)。これが、昨年の外国人売りまくり相場において、株価維持策(PKO)の役割を相当に発揮したことは以前の本コラムで触れた通りである。

 日本株の下支えに多大なる影響を与える日銀のETF買い。実施したかどうかは日銀のホームページで毎日公開されている。

 4月から「設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するためのETF」(以下:新型ETF)という項目が追加された。これは、昨年12月に日銀が出した「補完措置」での決定事項だ。4月からこれまでのETF買いとは別に新型ETFを3000億円買い入れる、と発表したことに基づく。

 新型ETFを運用会社が組成するまで、日銀では代替でJPX日経400型のETFを買うとしている。この新型ETF買い入れで実際に買っているのは当面、JPX日経400型のETFなのだ。

 そして、買い入れ履歴のデータを見てわかるように……4日以降、先週15日まで10営業日連続、この新型ETFを毎日12億円ずつ買っているのである。従来型のETFは4日以降、1回当たり333億円買っている(右上グラフ)。この買いが執行されたのは4回で、いずれも従来通り、前場にTOPIXが下落した日だった。少なくとも、従来型のETF買いと新型ETF買いでは、買い入れ発動のルールが異なっていると推測できる。

 ちなみに、日銀の1回当たりのETF買い入れ額は毎月変更されている。これは残りの消化枠の関係で調整が入っているためと想定される。これまでも月が替わって2営業日目から買い入れ額が変更されていた(初日に新しい月の買い入れ方針を決める決議を行い、その次の営業日から新しい方針で動いているためか)。4日というのは4月の第2営業日である。つまり、4月からの新方針が4日に適用されたと考えることができる。

■ 「PKO」とは異なる“斬新な試み”

 話しを戻そう。この新型ETFだけ毎日買っている……これは、日銀のこれまでのスタイルとは明らかに異質の斬新な試みであるのだ。中央銀行が自国の株式市場に手を入れるという、世界でも類を見ない試みをしてきた日銀ETF買いはこれまで「PKO」だった。「前場に一定の下落率になった場合」というルールの下、粛々と執行されてきたわけで、これは紛れもなく「PKO」である。ところが、この新型ETFを毎日買うという行動に関しては到底、「PKO」とは言えない行動なのだ。

 例えば、新型ETFだけを買った12日。前場のTOPIXの騰落率は1.49%の上昇だった。にもかかわらず買っていた。続く13日も2.43%のプラス。文句なしの大幅高にもかかわらず買っていた。

 そして、14日。この日も2.08%の値上がり。完全に地合いなどお構いなしで買っているのである。TOPIXが前場に上がっていた日のETF買いというのは、過去に1度もなかった事例だ。

 こうした日銀の行動は、市場関係者に「次の追加緩和策の内容はETF買い入れ枠増額では?」との連想を抱かせるのに十分だろう。例えば、3000億円買うという新型ETF。そもそも、毎日買うことを前提にしていたとすれば、次のような計算になる。4月から12月末までの残り9カ月の営業日は185営業日。これを日数で按分すると、「3000億円÷185営業日=16.2億円」だ。毎日買うことを決めて動いても、1回当たり16.2億円のペースで買えるわけだ(現状はそれよりも少ない買い入れ額だが……)。

 この毎日買う、というやり方のバックテストを新型ETFで実行しているとすればどうだろう? 4月に量的・質的な追加緩和に踏み切り、残りの買い入れ枠をジャスト5兆円へ拡大したとしよう。この場合は「5兆円÷165営業日(5〜12月末)=303億円」となる。従来型ETFの現在の1回当たり買い入れ枠に近い金額であり、1日当たりのマーケットインパクトを考慮しても、この程度なら問題ないと解釈できるかもしれない。

 米コロンビア大学で14日、黒田日銀総裁が講演した。この場で「必要だと判断すれば躊躇なく刺激策を追加する」と発言していた。その後、先週末の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で円売り介入に各国の理解を得ることはできず、為替は再び円高方向へ傾こうという兆しをみせている。

 17日にカタールのドーハで開かれた産油国の会合では原油の増産凍結で合意できず、同価格も下落に転じそうな兆しを漂わせてきた。こうした中で控える来週27、28両日の日銀の金融政策決定会合。何かあるのでは? これを嗅ぎ取る市場参加者が多いのは当然だ。

 新型ETFを毎日買っていることから「ETF買い入れ枠の増額あるのでは?」と期待を膨らませている投資家はかなりいるのではないか? その有無こそ、次回会合の“分水嶺”になりそうである。

 (おしまい)

 ※株式コメンテーター・岡村友哉
株式市場の日々の動向を経済番組で解説。大手証券会社を経て、投資情報会社フィスコへ。その後独立し、現在に至る。フィスコではIPO・新興株市場担当として、IPO企業約400社のレポートを作成し、「初値予想」を投資家向けに提供していた。

※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。

岡村 友哉

 

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コメント
 
1. 2016年4月20日 02:32:43 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[333]

円の上昇抑えるにはヘリコプターマネーが必要−GCI
Chikako Mogi、小宮弘子
2016年4月19日 17:50 JST

  日本銀行は円の上昇に歯止めをかけるため来週の会合で、いわゆる「ヘリコプターマネー」とマイナス金利のさらなる引き下げを組み合わせればよいと、ヘッジファンドのGCIアセット・マネジメントの岩重竜宏チーフFXストラテジストが指摘した。今月27、28日の決定会合でそのような政策を打ち出せば当面は1ドルが110円を上回る円安に持って行くことができるが、その後は過去40年のテクニカルトレンドに沿って上昇し、約5年の間に75円に向けて円高が進むと同氏は予想した。ロンドン時間19日午前8時38分現在は1ドル=109円05銭。
原題:Helicopter Money Needed to Stem Yen Gain, GCI Asset Says: Chart(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-19/O5VGD76K50XS01

 
ロシア経済を惨事から救った中銀総裁:プーチンの右腕
2016.4.20(水) The Economist (英エコノミスト誌?2016年4月16日号)


ロシアのWTO加盟式典で演説するエリビラ・ナビウリナ経済開発大臣(当時)。 Photo by United States Mission Geneva via Wikimedia Commons, under CC BY 2.0
ロシア経済はひどい状況にあるが、エリビラ・ナビウリナはもっとひどい事態になるのを防いだ。

?エリビラ・ナビウリナ氏が資本主義に初めて触れたのは、大学で受けた「西側経済理論批判」という名の講義でのことだった。現代の中央銀行家としては異例のスタートだ。そして今日、ナビウリナ氏はまた別の矛盾を体現している。


?ロシア経済はもう何年も前から汚職や一部の企業・個人の利権に足を引っ張られているうえに、最近は西側諸国による経済制裁や主要な輸出産品の石油とガスの値下がりにも見舞われている。ところが、ロシア中央銀行(CBR)はテクノクラートの有能な政策立案のモデルになっている。ナビウリナ氏が総裁に就任した2013年以降、CBRはロシア経済が――今でもひどい状況には違いないが――さらにひどいトラブルに陥ることを防いできたのだ。

?穏やかな話し方をするナビウリナ氏は裕福な家の生まれではない。母は工場の従業員で、父はお抱え運転手だった。しかし同氏はもう何年も前から、ロシアの市場経済への移行という乱気流の中心に身を置いている。

?ウラジーミル・プーチン氏は2000年に大統領に就任した際、1990年代のカオスと決別すると大見得を切った。ところがエフゲニー・ヤシン元経済相によれば、こと経済に関しては「プーチンにこれといったアイデアはなかった」。

?そのためプーチン氏は、オーソドックスなものの見方をするプロ集団に経済政策を一任。ナビウリナ氏はその集団のメンバーで、2000年には副経済相、2007年には経済相を務めた。このときの経験が経済学に対する自分のアプローチに「最も大きな影響を与えた」と同氏は言う。


?石油価格が下落し世界中が停滞した2008〜09年の金融危機では、ロシア経済が逃げ足の速い外国のヘッジファンドや個人投資家に依存していたことがあらわになった。

?これらの投資家が資金を引き揚げる中、CBRは通貨ルーブルの買い支えを試み、ほんの数カ月で2000億ドルを超える外貨準備を失った(図参照)。ロシア全土で貸出が減少し、2009年には国内総生産(GDP)が8%も縮小した。

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オバマを驚愕させたプーチンのシリア撤退 (2016.3.22 渡部 悦和)
シリアでの漁夫の利を密かに愉しむロシア (2016.3.3 W.C.)
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新時代に突入した米国・ロシア・中国の軍事競争 (2016.2.25 渡部 悦和)
油価下落で最大の試練を迎えたプーチン大統領 (2016.1.28 杉浦 敏広)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46640


 

ゴールドマン:収入急減をコスト削減で補う、追加カットも−株価上昇
Dakin Campbell
2016年4月20日 01:40 JST

ダウ平均で今年のパフォーマンス最悪銘柄が反発
収入は第1四半期としてはブランクファインCEO就任来の低水準

ダウ工業株30種平均構成銘柄の中で年初来パフォーマンスが最悪となっていたゴールドマン・サックス・グループの株価が19日上昇した。同日発表した1−3月(第1四半期)決算で収入は急減したものの、アナリスト予想以上にコストを減らした。必要なら追加削減する姿勢も示している。
  ハービー・シュワルツ最高財務責任者(CFO)はアナリストとの電話会議で、「第1四半期の業績は良くはなかったが、結果として報酬と手当ての費用が前年同期比で40%減った」と説明。「われわれは株主であり、株主に期待される行動を取る」と言明した。
  大手米銀の中で最後に決算を発表したゴールドマンだが、ライバル同様に収入減をコスト削減で補った。ロイド・ブランクファイン最高経営責任者(CEO)は債券トレーディングの低迷期を乗り切ろうとしているが、1−3月の収入は第1四半期としては就任来の10年間で最低だった。
  第1四半期の純利益は11億4000万ドル(約1250億円、1株当たり2.68ドル)と、前年同期の28億4000万ドル(同5.94ドル)から減少。ブルームバーグがまとめたデータによると、優先株関連の利益を除いた1株利益は2.32ドル。ブルームバーグの調査に答えたアナリスト23人の予想平均は2.48ドルだった。収入は前年同期比40%減の63億4000万ドルとなり、アナリスト予想平均の66億9000万ドルに届かなかった。  
  エバーコアISIのアナリスト、グレン・ショア氏は「忘れてしまいたい四半期だ」とし、株主資本利益率(ROE)6.4%は「ゴールドマンらしくない」と論評した。
  営業費用は29%減の47億6000万ドルと、アナリスト4人の予想(49億9000万ドル)を下回った。報酬と手当ての費用として割り当てた26億6000万ドルもアナリスト予想の29億2000万ドルを下回った。収入に対する割合は42%で変わらず。報酬外費用は6%減り、約7年ぶりの低水準となった。  
  ブランクファインCEOはここ数年で最大のコスト削減に乗り出した。サポートスタッフの一段の削減や顧客へのサービスに直接結びつかない航空運賃やホテル代金、接待費用の節約、人員補充の見送りなどの節減策を取っていると、事情に詳しい関係者が先週述べた。セールスの資料やパンフレットの印刷代も節約しているという。
  株価はニューヨーク時間午前10時55分現在、2.4%高の162.84ドル。
  
原題:Goldman Counters Revenue Plunge With Cost Cuts, Shares Climb(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-19/O5W19ISYF01Y01

 
ECBの資産買い入れ、融資への効果は薄い=調査

Business | 2016年 04月 19日 20:57 JST

[フランクフルト 19日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)が19日発表した調査結果によると、ECBの資産買い入れプログラムが銀行の利益に打撃を加える一方で、融資環境を緩和する効果は薄いか縮小していることが分かった。

ユーロ圏内の銀行141行を対象に3月に調査した。資産買い入れプログラムをめぐり、ECBのドラギ総裁に対する批判が強まる可能性がありそうだ。

調査によると、同プログラムの結果、3月までの6カ月で半数をやや上回る銀行が融資基準を緩めたと回答。これは昨年10月時点の調査とほぼ変わらない割合だ。

資産買い入れプログラムにより、適用金利といった融資に課される条件は緩和されたもののの、効果はこれまでの調査時点に比べ弱まったもようだ。

また、各行は同プログラムの結果として、純利ざやが縮小していると回答した。

銀行の81%はECBのマイナス金利の結果として純金利収入が減少したと報告した。

<住宅ローン審査を厳格化>

調査では、ユーロ圏の銀行が住宅ローンの審査基準を厳格化していることが分かった。第2・四半期もこの傾向は続く見通しだという。

調査によると、内部基準を厳しくしていると答えた銀行は4%純増した。融資に対しより詳しい審査を求める欧州連合(EU)指令が背景とみられる。銀行のリスク許容度がやや低下していることも一因。

国別で見ると、基準を厳しくしたのはオランダとドイツで、イタリアとスペインでは緩和された。
http://jp.reuters.com/article/ecb-banks-lending-idJPKCN0XG0TQ


Business | 2016年 04月 20日 00:43 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス

米3月住宅着工8.8%減、許可件数は1年ぶり低水準

[ワシントン 19日 ロイター] - 米商務省が19日発表した3月の米住宅着工件数(季節調整済み)は年率換算で前月比8.8%減の108万9000戸と、昨年10月以来の低水準となった。市場予想の117万戸を下回った。

2月の数字は117万8000戸から119万4000戸に上方修正された。

建設許可件数は前月比7.7%減の108万6000戸で、昨年3月以来1年ぶりの低水準となった。内訳は、一戸建て住宅が1.2%減。2月は8年超ぶりの高水準をつけていた。集合住宅は18.6%急落。5戸以上の集合住宅は2013年8月以来の低水準に落ち込んだ。

3月の住宅着工件数の弱含んだことは、住宅市場の減速を示唆する。第1・四半期に経済成長が停滞したことを示す企業支出や貿易、小売売上高の統計内容とも合致する。

ドル高や軟調な世界需要が輸出の重しとなり、米経済にとって大きな打撃となっている。原油安はエネルギー企業の利益を圧迫し、これらの企業は投資計画を大幅に削減してきた。

第1・四半期国内総生産(GDP)の現在の市場予想は、下限が年率0.2%増。昨年第4・四半期GPDは1.4%増だった。

それでもなお、住宅市場の基調は依然底堅い。好調な雇用市場で若年層の雇用機会が増え、独立して世帯を構える人が増えているからだ。

市場で最も大きなシェアを占める一戸建て住宅の着工は、3月は9.2%減の76万4000戸と昨年10月以来の低水準だった。4地域全てで落ち込み、住宅建設が最も多い南部では4.9%減少した。

変動が大きい集合住宅は7.9%減の32万5000戸だった。

統計発表後、ドルはユーロに対して下落した。米国債はほぼ横ばいだった。
http://jp.reuters.com/article/march-ushousing-starts-idJPKCN0XG246

 

Business | 2016年 04月 20日 00:53 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
英国民投票めぐる先行き不透明性、すでに経済の重し=中銀総裁

[ロンドン 19日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)のカーニー総裁は19日、6月実施の欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票の結果をめぐる先行き不透明性が高まっていることがすでに英経済の重しになっているとの認識を示した。

同総裁は議員に対し、国民投票をめぐるリスクには英国の経常赤字、不動産市場、金融市場の流動性に対する圧力が高まることなどが挙げられるとし、EU全体にマイナスの影響も及ぶ可能性もあると指摘。

「こうしたリスクのうち一部はすでに具現化し始めている可能性がある」と述べた。
http://jp.reuters.com/article/brexit-carney-idJPKCN0XG257



Business | 2016年 04月 20日 00:56 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス

米ゴールドマン第1四半期は40%減収・利益半減、市場混乱響く

[ 19日 ロイター] - 米ゴールドマン・サックスが発表した第1・四半期決算では、市場変動が債券トレーディングと投資銀行業務に影響し、利益がおよそ半減したほか、収入は約4年ぶりの水準に落ち込んだ。

主力事業が全般的に精細を欠き、40%の減収となった。

第1・四半期の株主資本利益率(ROE)は6.4%と、前年同期の14.7%から低下した。ROEは通常、少なくとも10%の水準を確保すべきとされており、ゴールドマンが直面する課題の大きさを浮き彫りにした。

普通株主帰属の純利益は前年同期比56.3%減の12億ドル(1株当たり2.68ドル)となった。前年同期は27億5000万ドル(同5.94ドル)だった。

トムソン・ロイター・エスティメーツのまとめたアナリストの1株利益予想は2.45ドルだった。

純収入は40.3%減の63億4000万ドルとなり、2011年第3・四半期以来の水準に落ち込んだ。

ブランクファイン最高経営責任者(CEO)は声明で、ほぼすべての部門が向かい風にさらされたことを明らかにした。

債券・通貨・コモディティーのトレーディング収入は47%減の16億6000万ドルで、総収入に占める割合は26.2%。金融危機前の40%には及ばない水準。

通常なら同行の強みである株式トレーディング収入は23%落ち込んだ。

投資銀行部門の収入は23.2%減の14億6000万ドル。

ただハービー・シュワルツ最高財務責任者(CFO)はアナリストとの電話会議で「市場はぜい弱なもようだが、第1・四半期に影響を与えた要因は後退している感触がある」とし、現在の市況に関しやや明るい見方を示した。その上で株主へのリターンを最大化するため「必要なあらゆること」を行う意向を示した。

費用削減策を進める中、営業費用は28.7%減の47億6000万ドル。社員給与に絡む費用が26億6000万ドルと、40.3%減少したことが寄与した。

給与以外の費用は5.6%減の21億ドル。訴訟や規制関連の引当金が減少したことで、7年ぶりの低水準となった。

米国株式市場午前の取引で、ゴールドマン・サックスの株価は2.0%高で推移。年初からは約12%下落している。
http://jp.reuters.com/article/goldmansachs-results-idJPKCN0XG1H1


ゴールドマン・サックス、1-3月期は60%減益
By JUSTIN BAER AND PETER RUDEGEAIR
2016 年 4 月 19 日 21:08 JST

 米金融大手ゴールドマン・サックス・グループが19日発表した1-3月期(第1四半期)決算は、不安定な金融市場が主要部門の打撃となり、純利益が前年同期比で60%減少した。

 1-3月期の純利益は11億4000万ドル(約1200億円)、1株利益は2.68ドル。前年同期はそれぞれ28億4000万ドル、5.94ドルだった。

 収入も63億4000万ドル(前年同期は106億2000万ドル)と落ち込んだ。

 トムソン・ロイターがまとめたアナリスト調査では、1株利益が2.45ドル、売上高が67億3000万ドルと予想されていた。

 ロイド・ブランクファイン最高経営責任者(CEO)は「1-3月期の業況は幅広い困難を伴い、ほぼ全ての部門が逆風を受けた」と述べた。

 投資銀行部門の収入は前年同期比23%減の14億6000万ドル。前期比では5%減少した。

 ゴールドマン・サックス全体の営業費用は前年同期比29%減の47億6000万ドルとなった。
https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-MW772_0302ru_M_20160302163311.jpg

 
中国への見方を大きく変えた米国、日本は再評価
2030年のグローバルトレンドと日米の対中国戦略
2016.4.20(水) 渡部 悦和
南シナ海航行の空母乗艦=中国を強くけん制−米国防長官
南シナ海を航行中の米空母ジョン・C・ステニスに乗艦したアシュトン・カーター米国防長官(右から3人目、2016年4月15日撮影)〔AFPBB News〕
 2016年は米国の大統領選挙の年であり、年初からワシントンDCに所在する多くの安全保障関係のシンクタンクが、台頭する中国にいかに対処すべきかに関する論文を矢継ぎ早に発表している。

 例えば、CSIS*1の“Asia-Pacific Rebalance 2025”、CSISとSPF USA*2共同の“The U.S.- Japan Alliance to 2030:”、ランド研究所の“The Power to Coerce”、元太平洋軍司令官デニス・C・ブレア大将のAssertive Engagement:AN UPDATED U.S.-JAPAN STRAREGY FOR CHINA(主張する関与:最新の米国及び日本の対中国戦略)などである。

 これら著名なシンクタンクの中から何人かは新大統領のスタッフとして新政権に参加することになるであろう。米国のシンクタンクにとって選挙の年は大いに活躍すべき年であり、各研究者にとっても個人としての将来がかかった重要な時期である。

1 停滞期に入る中国

 各シンクタンクの報告書を読みながら思うことは、中長期的な世界の動向特に中国の将来を予測することがいかに難しいかということである。2014年頃まで、中国の目覚ましい国力の上昇と米国の相対的な国力の低下が常識とされ、2030年頃には中国の国力が米国の国力を追い越すとまで予想されていた*3。

 しかし、2015年6月に始まった上海株式市場の暴落をはじめとして、最近明らかになってきた中国の経済的な不振は深刻なものであり、著名な投資家ジョージ・ソロス氏は、2016年1月のダボス会議において、「中国経済のハードランディングは不可避だ。予測を口にしているのではない。今それを目撃しているのだ」と発言して中国政府の激しい反論を受けた。

 中国政府の反論にもかかわらず、中国は今ハードランディング中であるという意見や中国崩壊論を唱える専門家が特に日本では増えてきた。

 中国崩壊とまではいかなくても、「中国経済は2014年から一貫して悪化していて、その状況は日本のバブル崩壊に似ていて、2016年の中国経済は間違いなく深刻な試練の年となろう。中国は長期停滞の10年、長い冬の時代に入っている」と主張する有名な専門家*4もいる。

 私は中国崩壊論には与しないが、中国は日本の「失われた20年」のような停滞期に入っていると思う。同じ主張を南カリフォルニア大学のダニエル・リンチ准教授がしている。

 彼は、フォーリン・アフェアーズ(FA)に掲載された「中国台頭の終焉」*5という論考で次のように主張している。

 「中国の株式市場の不調、会社の赤字増大、外貨準備高の流出は中国の経済的な不振を示す。中国共産党は、経済不振の深刻さを認識しているが、経済不振は中国崩壊まではいかない。中国崩壊をソ連崩壊と同列に考えることは適切ではない」

 「日本の1990年からの失われた20年のようなものである。日本は、株バブルと不動産バブルの崩壊によりデフレ・スパイラルに陥ったが、日本が崩壊したとは表現できないように、中国の崩壊とは表現できない」

 私は、ダニエル・リンチ准教授の意見に賛成である。

 一方、中国の李克強首相は、中国経済のハードランディングを否定し、政府発表の経済成長率6.5%以上の達成に自信を表明しているが、世界の専門家の評価との乖離は大きい。

 そもそも中国の経済に関する予測が難しいのは中国の各種データが信頼できないことに大きな原因がある。李克強首相自身、遼寧省の党委員会書記の時代に自国のデータが信用できないから、李克強指数を信頼していたと言われている。

 中国政府が発表するデータを信用しない専門家は、独自のデータで分析し、その分析結果は中国経済の未来に関して悲観的であるケースが多い。

 いずれにしろ、対中国戦略を構築するためには、中国の将来像を予想しなければいけない。本稿においては、米大統領選挙の年の12月に国家情報会議(NIC)が発表する「GLOBAL TRENDS」およびデニス・ブレア元大将(かつて国家情報長官であった)の中国分析を参考にして議論を進めることにする。

*1=戦略問題研究所(CSIS:Center for Strategic and International Studies)

*2=笹川平和財団USA(SPF USA:Sasakawa Peace Foundation USA)

*3=米国国家情報会議(NIC: National Intelligence Council)、“GLOBAL TRENDS 2030”

*4=田中直毅、「中国大停滞」、日本経済新聞出版社

*5=Daniel Lynch、“The End of China’s Rise”、 Foreign Affairs、January 11 2016

2 GLOBAL TRENDS 2030

 「GLOBAL TRENDS」は、米国のインテリジェンスの英知を集めて作成され、大統領選に勝利した次期大統領に提出されるもので、最新のものは4年前に発表された「GLOBAL TRENDS 2030」である。

 2012年末に公表されたGLOBAL TRENDS 2030は、「2030年において米国は、かつての覇権国からトップ集団の1位にとどまる」と指摘し、「圧倒的な力を背景に世界を同一の方向に向かわせてきた覇権国が存在しない2030年の世界」になると指摘している。

 そして、米国に関するシナリオとして、楽観シナリオ「再成長する米国」と悲観シナリオ「没落する米国」を提示しているが、現時点の米国の姿は「再成長する米国」であろう。

 また、各国の国力の比較予測を実施し、各国の国力を算定する2つのモデルの中で4変数モデル(GDP=国内総生産、人口、軍事費、技術投資の4つが変数のモデル)では、2030年頃に中国が米国を抜き、2048年頃にインドが米国を抜くと予測している。

 また、7変数モデル(GDP、人口、軍事費、技術投資、健康、教育、統治の7つが変数のモデル)では2042年頃に中国が米国を抜くと予想している。図1は4変数モデルでの予測を示している。

図1「主要国の国力の推移」(出典:GLOBAL TRENDS 2030)
 以上の予測は4年前に発表されたのであるが、現時点でこれを評価すると、適切な分析だと評価できる部分と明らかに不適切な分析結果であると言わざるを得ないものが混在している。

 まず、「2030年において米国は、かつての覇権国からトップ集団の1位にとどまる。圧倒的な力を背景に世界を同一の方向に向かわせてきた覇権国が存在しない2030年の世界」という予測は適切であると思う。

 しかし、4変数モデルでの予測である「2030年頃に中国が米国を抜き、2048年頃にインドが米国を抜く」という分析結果を信じる者は現時点では少ないであろう。

 4年前の中国に関する予測は右肩上がりの破竹の勢いの中国であったが、今や中国は深刻な経済的危機にあり、長期停滞の冬の時代に入るとすれば、米国の国力が中国に抜かれることはないであろう。米国が2030年においてもトップ集団の1位であり続けるであろう。

 GLOBAL TRENDS 2030の一部の結論、特に米国の国力の過小評価に当初から反論してきた専門家はいた。例えば、米ハーバード大学のジョセフ・ナイ特別功労教授は早い時期から米国の没落というシナリオに対して反対し、米国の強靭さを主張してきた。

3 GLOBAL TRENDS 2035

 今年12月に発表される予定の「GLOBAL TRENDS 2035」の一端を知るためには、米国国家情報会議(NIC)のホームページ*6にアクセスするとよい。以下に示す4つのシナリオを知ることができる。

 筆者が最近ハーバード大学で出会ったNICの専門家は以下のように話していた。

 「GLOBAL TRENDS 2035では図1のように主要国の国力の推移を定量的に明示することはしない。GLOBAL TRENDS 2030で提示した図1の妥当性に対する多くの批判があり、各国の国力を定量的に算出し提示することのリスクは大きい」

 「中国の各種データを信頼することができないにもかかわらず、それを使用せざるを得ないという点も大きな問題である」

 NICのホームページによると、GLOBAL TRENDS 2035のシナリオは4つであり、On the Brink(崖っぷち)、Hot & Cold(暑さ寒さ)、Trial & Error(試行と錯誤)、Feral Dogs(野生の犬)だという。非常に分かりにくい奇をてらったシナリオの表題ではあるが、その概要は以下のとおりである。

●On the Brink(崖っぷち)シナリオ:[大国間の紛争シナリオ]

 大国間における地政学的な競争が先鋭化し、各国政府は、攻撃的に影響圏を拡大しようとし、国家間紛争の可能性が高まる。しかし、紛争のエスカレーションのリスクや広範囲に拡大する分裂のリスクが、信頼醸成措置の構築を促すことになるかもしれない。

 このシナリオの戦略環境は、大国間の絶え間のない経済的・政治的・安全保障上の競争により、平和と戦争の崖っぷち(on the brink of peace and war)にある。

●Hot & Cold(暑さ寒さ)シナリオ:[気候変動の影響シナリオ]

 一連の不吉な天候予測、実際の悪天候に起因する事案および病気の発生が、これにいかに対処するかをめぐり国家間に深刻な不和を煽ることになる。場合によっては、自然災害や病気の発生が国際的な協力や対処メカニズムの発展を助長することもある。

●Trial & Error(試行と錯誤)シナリオ:[非国家主体の影響シナリオ]

 各国政府が経済的および政治的な諸問題を抱えている場合、各種の非国家主体(ビジネス・エリート、宗教グループ、犯罪シンジケート、過激主義者)が政府の中核機能を支配するために最新の技術を利用し、政府の形を変化させ多様な政府を作ることがある。

 多くの政府が、直面する諸問題に効率的に対処するために、そして公私のパートナーシップを通じた社会的刷新を実現するために、政府の伝統的な役割を個人やNPOに喜んで譲ることになる。

●Feral Dogs(野生の犬*7)シナリオ:[長い期間の低成長やゼロ成長の影響シナリオ]

 長い期間の低成長やゼロ成長が、世界の多くの地域で政治的な不安定さを増大させ、能力がある諸国を内向きかつ防衛的にさせ、より狭量なより分割された世界を作り出す国家主義的および重商主義的政策を採用させる。

 この時代を切り抜け、必要な経済的・政治的改革やロボット、バイオテクノロジー、3Dプリンターなどの新たなビジネス分野を追求する国々は、長期的に維持可能な経済パフォーマンスを達成するかもしれない。

*6=https://nicglobaltrends.tumblr.com/post/141610120692/with-every-global-trends-the

*7=野生の犬は、痩せて、いつも獲物を狙って牙をむき出しにしているイメージである。

4 デニス・ブレア論文の中国認識と日米共通の対中国戦略

 本稿の冒頭で紹介した各種論文の中でブレア論文「主張する関与:最新の米国および日本の対中国戦略」を取り上げる。

 ブレア氏は、太平洋軍司令官や国家情報長官(2009年1月29日〜 2010年5月28日)を歴任し、特に国家情報長官の時にはGLOBAL TRENDSを指導する立場であった。現在69歳で日本のシンクタンクSPF USAの会長および最高経営責任者(CEO)である。

 筆者も何度かブレア氏と話す機会に恵まれたが、優れた安全保障の専門家である。ブレア氏は、米国の同盟国としての日本の重要性を理解したうえで、日米共通の対中国戦略を構築すべきであるという立場をとっている。

 ブレア論文の際立った特徴は、日米同盟関係を背景として日米共通の対中国戦略を提唱した点にある。

●ブレア論文の結論

 ブレア氏は、論文の結論として、米国と日本の共通の対中国戦略は「主張する関与(Assertive Engagement)*8」であるべきだと主張している。

 ブレア氏によると、日米の従来の対中政策が、中国の直接的侵略に対する軍事的抑止を維持しつつ、共通の経済的および外交的利益を促進するものであったが、その戦略は中国の活動に対して日米両国の国益を擁護するには不十分である。

 対中国政策に関しては、「関与とヘッジ」(Engagement and Hedging)という表現を使用する人が多く、ブレア氏の案も「関与とヘッジ」ではあるが、従来のような温厚な関与ではなく、より押しの強い自己主張の強い関与「主張する関与」である。

 この「主張する関与」では、中国とは協調をしつつも、双方の利害が対立する場合には公正で平和的な妥協を鍛造する(筆者注:forgeという単語が使用されているが、鉄(中国)をたたいて妥協策を作り上げるイメージである)ことにより日米の国益を擁護すると主張している。

●「主張する関与」の背景としての対中国認識と戦略の一端

 まずブレア論文が結論とした「主張する関与」が導き出された背景となっている、2030年までを見通した中国の未来に関する予測について説明する。

図2「中国に関する将来予測」(出典:ブレア論文“Assertive Engagement”)
 図2は、中国の国力(経済力、軍事力など)と対外姿勢が将来に向けていかに変化するかの予測であり、X軸は対外姿勢が消極的であるか攻撃的であるかを示す。Y軸は国力が弱くなるか強くなるかを示す。

 中国の将来は、白紙的には4つのシナリオ、「強くて攻撃的(Powerful and Aggressive)」、「強くて友好的(Powerful and Benevolent)」、「弱くて攻撃的(Weak and Aggressive)」、「弱くて内向き(Weak and Inward Looking)」が考えられる。

 GLOBAL TRENDS 2035の関連で言えば、「強くて攻撃的」な中国は「On the Brink(崖っぷち)シナリオ」に、「弱くて攻撃的」な中国は「Feral Dogs(野生の犬)シナリオ」に関連している。

*8=Assertive Engagementの訳について:英語のassertiveには、「断言的な」、「言い張る」、「自己主張の強い」などの意味があるが、本稿においては「主張する関与」と仮訳をしておく。

 以下に4つの白紙的なシナリオと最終的に対中国戦略を構築する際に前提となる基本シナリオを提示する。

●シナリオ1:「強くて友好的」な中国

 このシナリオは日米にとって好ましいシナリオである。中国経済は新常態に上手く移行し、短中期的に5〜7%の経済成長率を達成する。

 国内的に安定し、対外的にも米国、日本、欧州と協調する。東シナ海・南シナ海の領土問題でも平和的解決を模索し、サイバー空間での情報窃取を慎み、世界の諸問題の解決に積極的に関与する。

●シナリオ2:「強くて攻撃的」な中国

 このシナリオは日米にとって最も危険で困難なシナリオである。中国経済はほぼ完全に市場経済に移行し、5〜7%の経済成長率(少なくとも日米よりも3〜4%高い成長率)を達成する。

 国内の企業が有利になるように外国企業の中国での活動を制限し、海外では重商主義的な政策をとる。国防費を増大させ、2030年には米国の国防費に迫る。

 その経済力・軍事力を活用し、中国共産党の独裁、台湾統一、チベット・新疆の統治、東シナ海・南シナ海の領土問題の要求実現をアグッレシブに追求する。日本周辺で大規模な軍事演習を実施する。

 さらにインドとの国境問題で拡大要求をし、インド洋での支配的な海洋パワーになることを追求する。

 サイバー攻撃を強化し、中国主導の経済的および軍事的な地域組織を構築し既存の国際組織に対抗する。世界の紛争地帯において中国の国益を追求する。気候変動などの国際的課題に対し自国の国益を優先する一国行動主義的な政策を追求する。

●シナリオ3:「弱くて内向き」な中国

 このシナリオは、中国の1975年から2000年までの状態と同じであり、日米ともに中国に脅威を感じないシナリオである。

 新常態の経済への移行に失敗し、せいぜい2〜3%の経済成長率であり、国内問題(経済不振に伴う不満など)の処理に追われ、国防費も経済成長率の低下とともに削減せざるを得ない状況になる。

 国内的にはメディア・インタ−ネットの統制を強化し、共産党への反対意見を押さえつけるが、東シナ海・南シナ海の領土問題やインドとの国境問題での対外姿勢をソフトにする。国際的な機関や地域的な機関への関与を減じ、世界の紛争地域への介入を避ける。

●シナリオ4:「弱くて攻撃的」な中国

 このシナリオにおける中国の将来は、輝きを失った成長(2〜3%以下)と国内の困難な諸問題に伴う社会秩序の維持に汲々とした状態である。

 共産党の権力を維持するために、国内の諸問題を米国および日本の責任であると非難する。チベットと新疆に対して過酷な対応をし、国粋主義的な論理に基づき領土問題などにおいて攻撃的な対外政策をとる。

 中国政府は、自国の弱さを認識しているため、日本や米国との全面戦争を求めはしないが、戦争一歩手前まで挑発を繰り返す。

 台湾、東シナ海・南シナ海、インドとの国境において挑発的だが制限された行為で緊張を高める。世界の諸問題の解決において、日米の国益を棄損するような挑発的で愛国主義的な政策を採用する。

●対中国戦略を構築するための基本シナリオ

 白紙的にはメリハリの利いた上記4つのシナリオが考えられるが、日米共通の対中国戦略構築のための基本的シナリオは以上4つをミックスしたものとして考える。

 その基本シナリオによると、中国共産党の権力掌握は継続し、その経済成長率は3〜4%であり、中国が世界一の経済大国である米国を凌駕することはない。国防費の増加率は、現在のレベルを維持する可能性はあるが、現在の10%の伸び率から3〜4%の伸び率に低下する。

 結論として、図3の濃い小さな楕円が示す基本シナリオに基づいた位置にある将来の中国を前提として対中国戦略を考える。なお、大きな楕円は基本シナリオの振れ幅を示すが、「強くて攻撃的」なシナリオに近づいてくる。

図3「中国に対する日米同盟戦略「主張する関与」」(出典:ブレア論文“Assertive Engagement”)
 次いで、中国に対していかに対処するかの選択肢であるが、ブレア氏は図3に示す4つの選択肢を提示している。

 つまり、「外的バランシング(External Balancing)」、「内的バランシング(Internal Balancing)」、「制度への取り込み(Institutionalization)」、「安心の保証(Reassurance)」である。

●「外的バランシング」とは、中国の影響力に対抗するために日米が他の国々と協力するか、中国と対立する他の国々の能力強化を手助けすること。例えば、日米が、インド、オーストラリア、南西アジア諸国と協力することである。

●「内的バランシング」とは、日米のそれぞれの国の政治的・軍事的能力を増強することにより、中国の影響力を相殺し、その侵略を抑止・撃退すること。例えば、防衛費の増加、在日米軍を作戦コマンドに格上げすること、民間飛行場を軍民共用にすることなどである。

●「制度への取り込み」とは、中国と協力的でウィンウィンの経済的関係を促進することである。中国のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)加入やアジアインフラ投資銀行(AIIB)への日米の協力などである。

●「安心の保証」とは、軍事的及び外交的措置で、共通の課題解決のために中国の協力を促進することである。例えば、中国と共同して人道的支援や災害派遣演習を実施することである。

 図3は、中国の将来の動向に応じて、「制度への取り込み」や「安心の保証」も活用されるが、主として外的バランシングと内的バランシングが多用されることを示す。

 なお、内的バランシング、外的バランシングという用語は国際政治のバランシング理論の中で普通に使われている用語である。

 簡単に表現すると、自らの努力(防衛費の増加、安全保障法制の整備、経済成長など)で対処する「自助」と同盟国や友好国との協力により対処する「共助」という表現になる。内的バランシングが自助であり、外的バランシングが共助である。

 公助が存在しない国際システム(アナーキーな国際システム)において、自らの安全確保のためには自助努力が前提であり、自助だけでは足りないところは周辺諸国との協力による共助で対処することになる。

 通常は、日米同盟によるバランシングは外的バランシングに分類されるが、ブレア氏は、日本と米国が共同して中国に対処することを強調するために、日米によるバランシングを内的バランシングで説明している。

 この点はブレア論文の「日米共同の戦略」という特徴がよく出ている。なお、ミアシャイマー教授は、「外的バランシングは、脅威を受けた側の国々がまとまって防御的な同盟を結成し、危険な敵を封じ込めることであり、二極化した世界だけに起こる」と主張している*9。

●「主張する関与」の5つの政策

 ブレア氏が提唱する「主張する関与(Assertive Engagement)」の5つの政策であるが、詳しくは次回のリポートで報告する。

●中国に対するより統合された米国および日本の戦略
●より強い米国および日本の経済
●中国との現実的な経済関係
●より強力な日米協同の軍事力
●東シナ海および南シナ海における中国の侵略への対処

*9=ジョン・ミアシャイマー、「大国政治の悲劇」、P223、五月書房

結言

 中国が現在陥っている経済的危機の深刻さは、GLOBAL TRENDS 2030で予想された中国の破竹の勢いの国力の増強が実現しないことを意味する。

 様々な中国に対するシナリオを紹介してきたが、私の中国に対する評価は「手負いの龍」のイメージである。

 経済的苦境にある手負いの熊であるロシアがクリミア併合やシリアでの軍事行動などの問題行動を引き起こしているように、手負いの龍である中国も攻撃的な対外政策をとる可能性がある。

 ダニエル・リンチ氏が「中国台頭の終焉」で指摘するように、「中国台頭の終わりは、日本の台頭の終わりが日本のエリートたちを傷つけた以上に中国共産党を傷つけるであろう。国粋主義的な軍人や野望に満ちた外交の戦略家たちは強圧的で不快な外交政策に明らかに関心を持っているが、それらの政策により中国の状況を支え切れるものではない」のである。

 一方、中国の台頭以降、世界の日本に対する注目度は極度に低下していたが、最近発表された論文などに共通的に見られるのが、米国の対中国戦略において日本を高めに再評価する動き、日米同盟を再評価する動きである。

 この日本に対する評価の上昇と中国に対する評価の低下は注目すべき現象であることを強調したい。

 かかる状況下でいかなる対中戦略を構築するかが私のテーマである。幸いにもワシントンDCに所在するシンクタンクが対中国戦略に関して各種の提言をしている。

 本稿では主として、デニス・ブレア大将の論文を中心に記述してきたが、次回はブレア論文の細部とともに、各シンクタンクが提唱する対中国戦略について、本稿の続編として記述してみたいと思う。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/46626


中国は南シナ海を「死の海」にするつもりか
世界の海洋科学者が懸念、サンゴ礁を破壊し魚を殺す埋立工事
2016.4.20(水) 古森 義久

南シナ海・スプラトリー諸島のジョンソン南礁で中国が進める工事を写した写真。フィリピン外務省提供(撮影日不明)。(c)AFP/DEPARTMENT OF FOREIGN AFFAIRS (DFA) 〔AFPBB News〕
4月中旬、米国議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」は、「南シナ海での中国の人工島建設による海洋環境の損害」と題する調査報告書を発表した。同委員会は報告書で、中国当局によるスプラトリー諸島(南沙諸島)の7カ所の埋め立てがサンゴ礁と漁業資源に重大な被害を与え、国際法にも違反すると警告している。 
米国はこれまで中国の南シナ海における一方的な膨張に対して、安全保障や軍事、外交の観点から非難してきたが、環境破壊の観点からの批判は珍しい。 
各国の海洋科学者が問題視
米中経済安保調査委員会は、米中経済関係が米国の国家安全保障に与える影響について調査し、米国議会や政府に政策勧告することを主任務としている。その一環として中国の安全保障上の行動と米国への影響を分析する作業も続けてきた。 
今回、同委員会は南シナ海問題について初めて環境保護という見地から言及した。 
同報告書によると、「国際社会は、南シナ海での中国の行動について主権、安全保障、地政学などという問題として焦点を当ててきた。だが最近、各国の海洋科学者やフィリピン政府はこの問題を環境保護、特に生物学上の多様性やエコロジーの観点からも捉えるようになってきた」という。 
南シナ海の状況を環境問題の見地から問題視する学者として名前を挙がったのは、米国のサウスフロリダ大学のフランク・マラーカーガ―教授、マイアミ大学のジョン・マクマナス教授、フィリピン海洋科学研究所のエドガルド・ゴメス名誉教授などである。報告書では彼らの見解を参考資料として引用していた。 
重金属、石油、化学性物質が海中に
中国当局は2013年12月から2015年10月までの間に南シナ海のファイアリークロス礁など計7カ所の海域で埋め立て工事を行い、広さ合計13平方キロメートルに及ぶ人口島を造成した。 
報告書は、その際の各海域で砂や砂利を集めサンゴ礁の上に積むという浚渫作業が大規模な自然環境破壊をもたらしたと指摘する。 
環境破壊の具体的な要素については、以下のように述べている。 
・世界的にも自然資源の豊かな南シナ海では合計571種のサンゴが生息し、そのうち333種類はスプラトリー諸島海域に存在する。そのうちの13平方キロメートルの海域のサンゴ礁が、中国の埋め立て工事の浚渫作業で破壊された。
・この種の浚渫作業はサンゴ礁の近くの土砂や砂利を除去するだけでなく、礁湖(環礁に囲まれた海面)や礁原(サンゴ礁の平坦部分)の生態系も破壊してしまう。浚渫で生まれる土砂や堆積物の渦はサンゴ礁を傷つけ、成長に必要な日光を遮断する。
・その種の沈殿物は、埋め立て工事に使用される船舶や施設から出る重金属、石油、その他の化学性物質と混ざり合って海中で広がり、渦のようになって海洋生物を脅かす。
・浚渫に使う土砂や砂利は、現地の環礁や諸島とは離れた海域から調達してきた可能性もある。中国が秘密裏にしているため真相は不明だが、土砂や砂利を失った環礁では生態系の完全な回復に10年から15年を要するようになる。
・スプラトリー諸島は魚の宝庫としても知られているが、浚渫工事と埋め立てによる土砂や砂利の渦、そしてサンゴ礁の上の堆積物が、そこに生息してきた魚類を殺したり、外洋へ追いやることになる。サンゴ礁を離れた魚のほとんどは他の大きな魚の餌食となる。
・サンゴ礁に生息した魚類は、埋め立てで隠れ場所を奪われて減少する。サンゴ礁の魚類を食用にしてきたベラ類やハタ類なども数が減っていく。スプラトリー諸島のこうした魚類の減少は、南シナ海全体の漁業資源の減少につながる。
・スプラトリー諸島のサンゴ礁で産卵する魚類も多かったが、人工島建設でそれらの魚類が減り、南シナ海沿岸全体の漁業の衰退につながる。漁業への影響の大きさを中国政府の海洋研究機関に問い合わせたが、回答は得られなかった。
中国の行動は国連海洋法の規定に違反
報告書は以上のような考察に基づき、中国当局の南シナ海での行動について「国連海洋法の『沿岸国はそれぞれの海洋の環境を保護する義務を有する』という規定に違反する」と厳しく断じている。 
日本側としても、こうした環境保護や自然資源保護の観点からの批判を踏まえ、中国の無謀な行動をもう一度糾弾するべきだろう。 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/46639


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