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世界の富裕層がスイスに集まるワケ(写真=Thinkstock/GettyImages)
世界の富裕層がスイスに集まるワケ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160618-00000005-zuuonline-bus_all
ZUU online 6月18日(土)16時10分配信
英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票が実施される6月23日を間近に控え、各種発表される世論調査でも「離脱」と「残留」が拮抗。英国とEUの関係性の将来についての不透明感が増している一方で、微妙に前者が割合を高めつつあるように見える。
英国のEU離脱の懸念は市場にも影響。13日の東京株式市場では日経平均株価が582円18銭安と大幅に下落し、外国為替市場でも約1カ月ぶりに1ドル=105円台後半の円高ドル安水準となるなど、経済状況も離脱の懸念を強く反映するものとなっている。そんな中でスイスのプライベートバンクが支持されている様子で、にわかに注目が集まっている。
■Brexitで再評価される「金融センター・スイス」
スイスに再び注目するきっかけを作ったのは英国のキャメロン首相かもしれない。なぜかと言えば、金融センターだと目されてきた英国がEU離脱問題で揺れているからにほかならない。
同首相は1月に行った講演で、2017年までにEU離脱の是非を問う国民投票を実施することを明言した。キャメロン首相の演説はたちまち英国内外の波紋を呼び、英国(Great Britain)のEU離脱(exit)を意味する「Brexit(ブレグジット)」という言葉まで生み出されることになった。
「Brexit」論議の台頭とともに注目を集めているのは、グローバル経営コンサルティング会社であるボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が、「英国がEUを離脱した場合には、世界の富裕層が現金の一部をロンドンからスイスのプライベートバンクに移動する可能性がある」と指摘していることだ。
BCGによれば、UBSやクレディ・スイスをはじめとするスイスの銀行が抱える海外資産は推定で約2.3兆ドルに達するものだという。英国について、推定1.3兆ドルの海外資産を抱えるとみられる。
同国はシンガポールや香港とともに、海外資産管理にかかるスイスの重要なライバルだが、6月23日の国民投票でEU離脱が決定したとすると、英国からスイスに現金を移動させる富裕層も少なくないのではと見られているということだ。いわば「EU加盟国ではない英国は不安だから、代わりにスイスにしましょう」との考えが富裕層の間にあるのではないかという見方だ。
■日本の銀行と何がちがう?スイスでプライベートバンクが強い理由
世界の富裕層が節税対策にタックス・ヘイブンを利用している実態が「パナマ文書」によって続々と判明しているが、無数のペーパーカンパニーの設立にプライベートバンクがかかわっていたこともまた明らかにされている。
プライベートバンクとは、要は富裕層の資産を預かって運用し、資産の維持や形成、相続などの相談に乗ることで利益を得ている銀行のことだ。スイスを始め、アメリカやイギリス、フランス、ドイツなどの大銀行がプライベートバンキングのランキングでも上位に食い込んでいるのだ。
他方で、日本の銀行はいわゆる「護送船団方式」によって、独自性を出した各銀行の営業が妨げられていたこともあって、出遅れてしまっていた感も否めない。富裕層の個人のためのオーダーメイドサービスが生まれる素地ではなかったともいえよう。またプライベートバンクの重要な役割の一つが節税対策なのだが、日本の銀行は法律によって税金に関する相談を受けることを禁じられており、日本国内の銀行ではプライベートバンクも育ちにくかったといえるだろう。
一部の調査によると、顧客預かり資産で世界最大のプライベートバンクはUBSで、2位のモルガン・スタンレー、3位のバンク オブ アメリカ・メリルリンチと米国の2銀行が続く。さらに4位には、クレディ・スイスがランクインしており、スイスがここでも存在感を示している格好だ。
「永世中立国」に立地し、「銀行守秘義務」も法律で定められているなど、スイスのプライベートバンクは古くから世界中の資産を引き付けて来た。そうした歴史の中で培われてきた幅広い金融ラインアップと運用戦略が、絶大とも言える信用を築いて来たのだろう。
■富裕層に選ばれるスイスを支える歴史
地理的にヨーロッパの中央に位置していたスイス地域は、流通ルートの寡占化を狙うハプスブルク家と対立を深めていたが、13世紀末にはウーリ州などの3地域が自由と自治を守るための相互援助を誓約した。「原初3邦」の同盟が結ばれた8月1日は、スイス連邦の建国記念日となっており、まさにスイスの原点だ。
スイスを金融の中心地に押し上げたのは、同国を拠点とした「傭兵ネットワーク」が円滑な金融システムを必要としたからと言われる。
実際、スイス兵は精強で、かつてはヨーロッパ最強とされていたハプスブルク家の軍勢を壊滅させたという。その結果、スイスには各国から傭兵としての引き合いが押し寄せ、傭兵が欧州各地に広がった。傭兵は派遣先から給料の大半を母国の家族に送金しなければならず、ネットワークが拡大。さまざまな通貨で支払われる報酬を両替するために、為替も発達し、運用のニーズが金業やマーチャント・バンキングの発展を促したのだ。
つまり、金融センター・スイスの地位の確立にあたっては、スイスの他国よりも強力な軍事力や、傭兵稼業が必要とした金融ネットワーク、サービスが大きな役割を果たしたということだ。
ちなみに、スイスの中立が宣言されたのは17世紀の宗教戦争時代で、傭兵となったスイス兵同士が戦うことを嫌ってのことだったという。宗教戦争を通じて中立と独立を維持した功績を列強から評価された結果、スイスは神聖ローマ帝国からの完全な独立を国際的に承認され、「中立」を確立したという。
また1815年には周辺国がウィーン会議において『スイスの永世中立とスイス領土の不可侵性の承認と保証に関する文書』に署名し、スイスの「永世中立」は国際法上からも承認された。そして19世紀半ばにはインフラ整備を機に、現在のUBSの前身となる企業が生まれ、成長していくことになる。
■ 近年は信用の低下も……
2002年3月3日、半世紀以上にわたる躊躇の末に、スイス国民は国際連合加盟を承認した。この背景には、その数年前に出版された歴史家ジャン・フランソワ・ベルジエ氏らによる「ベルジエ・レポート」がある。
同レポートは、スイスが第2次大戦中に少なくとも2万人のユダヤ人の入国を拒否しただけでなく、ユダヤ人を直接ナチスに送還したことや、数百万フランもの資金が銀行に預けられたまま放置されていた事実を明らかにしていた。
「永世中立」の真価に疑問符が呈される一方で、スイスの金融機関はリーマンショック以降財務が悪化し、カタールなど中東の政府系ファンドから出資を受ける事態に陥っている。さらにはUBSがLIBORの不正操作に関わっていた事を認めて15億ドルの罰金を支払うなど、金融立国スイスはその根底に揺らぎを見せている。
「世界最大のタックス・ヘイブン」という汚名を返上すべく、国際的な金融の透明化を誓ったスイスは、今やプライベートバンク事業に対する世界的な圧力を意識せざるを得なくなっているのだと言えるのかもしれない。(ZUU online 編集部)
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