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「定年」は延長するより、この際廃止すべき理由(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/16/hasan112/msg/335.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 8 月 24 日 11:21:35: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

個々の社員の能力を考慮せずに、一律に「定年」の制度を適用することは、一種の「悪平等」であると同時に、社員を雇う企業の側から見ても損失のはず


「定年」は延長するより、この際廃止すべき理由
http://diamond.jp/articles/-/99715
2016年8月24日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員] ダイヤモンド・オンライン


■年金財政の持続性を理由に出てきた
 ドイツ連銀の69歳定年論

 ドイツ連銀が、将来的に、法定定年を69歳まで延長すべきだと提言して話題になっている。

 ドイツ連銀は、公的年金財政の長期的持続性のために定年延長が必要だとの理由を挙げているが、高齢者は投票率が高いこともあって、「年金」は政治に大きく影響する話題だ。ドイツでも、政治家は連銀の提言を批判している。

 日本はドイツよりもさらに平均寿命が長い国なのだから、たとえば年金の支給開始年齢は、ドイツよりももっと高くていいはずだ。もともと、保険としての年金は「結果的に予想以上に長寿となった少数の人」の生活費を、多数の加入者達が共同で支える仕組みに本質があるので、年金の受け取り始めはもっと高齢でもいいはずだ。

 仮に、ゼロから社会保障制度を作っていいならば、社会的な制度設計としては、長生きリスクのために今よりももっと高齢から支給される公的年金と、自助努力のための制度との両方でバランスを取るのがスマートだろう。支給開始年齢を引き上げた公的年金は、保険料も積立金も、現状よりは大幅にスリムなものになる。

 また、安倍政権は、日本の成長率を底上げするための施策、いわゆる「成長戦略」の一部として、高齢者の労働参加を挙げているのだから、公的年金にあっては年金支給開始年齢引き上げ、そして、雇用にあっては定年の引き上げは、自然な政策だと思われる。

 ただし、公的年金支給額の実質的な削減が、有権者の抵抗を誘発しやすい問題であることは、日本でも、基本的には諸外国と同じなので、年金制度のリフォームは簡単ではない。

■定年制度は年齢による差別
 本来は定年廃止が「正義」

 さて、年金の支給開始年齢と企業のいわゆる「定年」とは内容が全く同じな訳ではないが、「年齢」を判断基準としてお金が払われたり、雇用が打ち切られたりする点は同じだし、もちろん、制度として両者には関連がある。多くの人にとって、定年と年金支給開始の間に無収入な空白期間ができると辛い。

 さて、どうするのが正しいか、という「正義」と「狭義の経済合理性」の観点からの理想論で答えを出すとするなら、企業の「定年」は、廃止するのが正しいだろう。

 そもそも、「定年」という制度は、年齢による「差別」であるから廃止すべきだ、という議論を正面から撃破することが難しい。

 現在、会社によって制度は色々だろうが、概ね60歳が「定年」で、社員が望むなら65歳まで「継続雇用」(年収は大きく減るが、仕事は与えられる)が可能だというくらいの会社が多いだろうか。

 とはいえ、2人の社員を比べた場合、59歳と60歳でも、あるいは64歳と65歳でも、前者の方が仕事がよくできて有能だというケースは少なくあるまい。こうした状況にあって、個々の社員の能力を考慮せずに、一律に「定年」の制度を適用することは、一種の「悪平等」であると同時に、社員を雇う企業の側から見ても損失のはずだ。

■多くの企業経営者にとって
 「定年」という制度は合理的

 そもそも、企業は、社員に対して、社員の「年齢」には関係なく、社員の企業への貢献や能力を個々に判断して、雇用の有無と報酬を決めることがローコストでできるなら、それが経済的には最も「合理的」だろう。

 しかし、まず、多くの企業の経営陣は、そのための社員の評価を、雇用の可否や報酬の多寡を個別に決めて、個々の社員に納得させる材料を持つに足るほど十分丁寧には行っていないのが現実だ。

 経営に余裕のある会社・組織にあっては、原則として「同期」の社員を同等に扱いつつ、その中で相対的に評価の差をつけるような、システマティックではあるが、雇われる側から見ると、ずいぶん簡素で失礼な人事管理が行われている。

 しかし、会社の経営陣から見るなら、「定年」という制度は人事の失敗に対する時間はかかっても確実なリカバリー策であり、また、社員個別に対する細やかな人事評価と個々の条件交渉には多大な手間がかかる(即ちコストもかかる)のでやりたくない、第一、自分にその能力はないというのが実感ではあるまいか(経営陣がそこまで謙虚で客観的なら、むしろ立派だが)。

 加えて、ある社員について、会社側が「彼(彼女)は当社には必要ない」という確たる判断を持ったとしても、この社員を退職させる「コスト」があまりにも大きい場合、この社員を定年まで雇い続ける方が、強引に退職させようとするよりも、合理的な場合がある。

 現在、会社にお勤めの読者の多くは、「定年がなくなったら、あの人も、あの人も(共に身近な高齢社員)、ずっと会社に残るのかぁ。それでは、組織が停滞してたまらないな…」という「実感」を持たれるのではないか。何十年か後には、おそらくご自身がそう見られる対象になるはずなのだが、制度・経営・人事のやり方を現在のままにして「定年」を廃止した場合に起こりそうなことに対して、この実感は大きくはズレていないと思われる。

■老後にいくら必要か?
 現役時代に貯蓄すべき額

 仮に「定年」が廃止されたとしても、何歳まで働くかは、もちろん個人の自由だ。少々余裕を持って老後を「95歳まで」と考えて、老後の生活を現役時代の生活の70%の生活費で暮らしたいと思う場合に、現役時代の可処分所得の中からどれだけ貯蓄が必要なのかを、先週の本欄でご紹介した「人生設計の基本公式」(老後の要求生活費に対して必要な現役時の貯蓄率を求める計算式)で、ざっと計算してみよう。

 仮に大学卒業の23歳から働き始めるとして、年金をゼロ、スタート時の金融資産もゼロとし、定年(リタイアする年齢)が60歳、65歳、70歳とすると、現役年数はそれぞれ37年、42年、47年であり、「必要貯蓄率」は41.9%、34.1%、27.9%、となる。これらが、若者が時々言う「年金離脱」の場合に必要な老後への備えの目安だ。

 仮に読者がサラリーマンで厚生年金に加入していて、厚労省が言うように所得代替率(現役時の収入に対する年金給付の比率)が本当に「50%」あるとした場合に、年金保険料以外に貯蓄しなければならない必要貯蓄率を概算すると、定年60歳、65歳、70歳に対して、必要貯蓄率は、12.0%、9.7%、8.0%となる。

 これをもう少しリアルに所得代替率「40%」で計算すると、18.0%、14.6%、12.0%となる。何れも、現役時代の可処分所得の中から貯蓄に回さなければならない比率だ。

 なお、厚生年金がなく、国民年金だけの自営業者の場合、これらの数字では、全く足りないので、注意されたい。また、ここでいう老後生活が「現役時代の7割」というのは、現役時代の実質可処分所得の平均の7割(よく稼ぐ人はそれなりに、稼がない人もその人なりに)であり、資産については、インフレ率並みに運用されているという前提に立っている。インフレに追い着く程度であれば、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)並に力んでたくさんリスク資産を持つ必要はないが、せっかく資産をため込むのであるから、少々運用に関心を持つのが良いだろうと申し上げておく。

 さて、大雑把な数字を計算してみて、以下のようなことが言えると思う。

(1) 個人は仮に70歳まで働くとしても、現役生活を通じて可処分所得の概ね1割以上は貯蓄しないとまずい(逆に、先に挙げた数字程度に備えておくなら、「老後不安」を持つ必要はない!)。

(2) 公的年金がどの程度頼りになるかで、個人に必要な備えは大きく変わる。当たり前だが、年金制度は大切だ。

(3) 働く期間を調整することで、老後の備えに対する「圧力」を調節することができる。「定年延長」ないし「定年廃止」は個人にとって大きな安心材料だ。

■高齢者の労働参加を促進する上でも
 定年廃止・柔軟化を目指せ

 さて、定年の延長ないし廃止には、制度と企業経営の側に幾つかの大きな改革が必要だが、高齢者の労働参加を促進する上でも、日本の企業社会は、定年を延長するだけでなく、「廃止」する方向に向かうのが、正しくもあり、経済効率上好ましくもあるのではないだろうか。

 併せて、公的年金を、支給開始年齢を上げつつ、制度としてもっとスリムなものにするリフォームすることが可能だろうし、これに伴って、年金制度を通じた「世代間格差」を縮小することもできるだろう。

 ただし、そのためには、(1)企業経営の革新(個別の社員に応じたもっと丁寧な人事評価と個別交渉など)、(2)解雇規制の緩和(金銭解決がいいだろう。予期可能なコストで不要な社員を解雇できなければまずい)、(3)個人が老後に備えるための自助努力のための制度拡充(たとえば個人型確定拠出年金やNISAを拡大し、もっと使い良くする)、などが必要だ。

 結論としては、「定年廃止」の実現を目指す方が、「より良い社会」になるような気がする。

 

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コメント
 
1. 2016年8月24日 11:52:37 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[2435]

正規と非正規の間の賃金格差をなくし、退職金への税制優遇を止めれば、

定年など、別にどうでもよくなる


特に人脈があったり、労働生産性が高い人材など、

企業にとって労働価値が明確であれば、本人が望む限り

好きなだけ働けばいいだけのこと


2. 2016年8月24日 22:10:27 : 8QKo7kVfXs : PAwlCkz4KQY[1]
エントリー者も最後に触れているように、解雇規制の緩和がなければ、定年廃止によりいつまでも会社にしがみつく人の処遇に困るだろう。
逆に、定年制度は定年を過ぎた人を雇ってはならないわけではないから、高齢者の労働参加を促進する上で、定年を延長するだけでなく「廃止」する方向が有効とは思えない。
むしろ、解雇規制の緩和により生活に困る労働者が増え、生活保護などの社会的コストが膨らむだろう。
現在の日本の問題は、自己責任社会であることを労働者が強く自覚して、各々がその緩和策として蓄えを増やし消費を減らしていることにある。社会全体でリスクに備えるより個々にリスクに備える方が総体として蓄えが多く必要となり、結果、消費が抑えられることになるからだ。
定年制や雇用規制はそういうリスク管理を社会として行う体制をきちんととってからでなければ、ますます個々にリスク防衛し社旗全体の活力を下げるだけだろう。

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