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「デジタル人民元」は何を目指すのか
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/134.html
投稿者 中川隆 日時 2020 年 5 月 28 日 09:29:56: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 中国の財政出動は凄い 投稿者 中川隆 日時 2020 年 5 月 27 日 19:36:24)


2020年5月26日
ついに実験開始「デジタル人民元」は何を目指すのか
岡田仁志 (国立情報学研究所情報社会相関研究系准教授)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/19714

 2020年4月14日、中国のネットニュースに真偽不明の写真が出回った。スマートフォンのアプリを撮影した画像には「銭包」の文字があり、それが電子財布であることを示している。なにより目を引いたのは、画面の上部を占める横長の長方形のデザインであった(画像はこちら『Suzhou to be pilot city for central bank digital cash』ASIA TIMES FINANCIAL)。

 青緑色の長方形に描かれていたのは、毛沢東の肖像であった。人民元の紙幣を思わせるようなデザインである。左上には中華人民共和国の国章が飾られ、中国人民銀行の筆文字のロゴも見える。そして左側には「¥1.00」の表示がある。これが本物であれば、青緑色の長方形はデジタル人民元の「紙幣」を意味するのだ。

 数日後、中国人民銀行はデジタル人民元のパイロットテストを実施する計画を明らかにした。実験の地に選ばれたのは、深セン、蘇州、成都、および北京南東の副都心「雄安新区」の4都市である。一部報道では、米スターバックスやマクドナルドも参加するという。果たして、デジタル人民元は何を目指すのであろうか。その背景を考察する。

中国農業銀行のロゴマーク

 中国がデジタル人民元を発行する目的は必ずしも明らかではない。一つの仮説として唱えられているのが、元の国際化のための手段である。ブレトンウッズ体制以降、基軸通貨の役割を担ってきたのは米ドルであった。いま国際決済に占める人民元の割合は2%程度に過ぎない。だが、中国が推し進める「一帯一路」構想では、周辺諸国と経済を一体化することが計画されている。

 仮に、中国国内の銀行に口座を持たなくてもデジタル人民元を利用できるように設計されると、中国国外でも容易に人民元にアクセスできるようになる。モバイルアプリとしてデジタル人民元の利用が拡大すれば、5G携帯の普及とともにアジアやアフリカの国々にまで人民元の決済圏が広がるかもしれない。

 独自の決済圏を持つことは、既存の基軸通貨からの自由をもたらす。米ドルの決済圏に属していると、経済封鎖を受けて米ドルの口座を凍結される可能性もある。だが、独自の決済圏を構築すれば、そこでの主導権は自らの手にある。そのために必要とされるのがバーチャルな経済圏の創設であり、そこで流通する新しい基軸通貨である。ゆえにデジタル人民元の登場は必然であった。そのような仮説である。

 冒頭の、デジタル人民元のアプリとされる画像をよく見ると、左下に中国農業銀行の文字が記されている。中央銀行としての中国人民銀行が紙幣を発行するのに、なぜ中国農業銀行が関与するのであろうか。そこには、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行形態にまつわる、二つの方式が関わってくる。

 およそCBDCの発行形態には直接型と間接型がある。国民が中央銀行に口座を持ち、直接にCBDCを受け取るのが直接型である。日本人であれば日本銀行に預金口座を持つことになるが、現行の制度を変更することになる。これを避けるため、多くのCBDCは間接型で発行される。中央銀行から市中銀行の口座を経て、国民に届く仕組みである。

 画像を見る限り、デジタル人民元は間接型を採用しているようだ。中国人民銀行が発行したデジタル人民元は、中国農業銀行などの商業銀行を経て利用者の手元に届く。銀行に口座を持つ人であれば、デジタル人民元を手軽に入手できるようになる。


今回のパイロットテストには、中国銀行、中国工商銀行、中国建設銀行、中国農業銀行という四つの主要銀行が参加するほか、チャイナモバイル、チャイナテレコム、チャイナユニコムの携帯キャリア3社も協力する。

 中国ではデジタル人民元のことをDC/EPと呼ぶ。これは、DC(デジタル通貨)とEP(電子ペイメント)の合成語である。国内ではすでに、アリババグループの支付宝(アリペイ)や騰訊控股(テンセント)の微信支付(ウィーチャットペイ)が普及しており、現金を利用する場面は消滅しつつある。だが、これらは電子ペイメントを便利にする民間の創意工夫であって、法定のデジタル通貨ではなかった。

 今回、満を持して登場するのは、本命となるデジタル通貨である。人民元の紙幣がデジタルに置き換えられ、モバイル端末に搭載される。お財布アプリ「銭包」に入っている長方形の画像は、紙幣を模した何かではなく、本物のお金である。ただ一つ、紙幣との違いは、券面額を自由に変えられるデジタルのお金であることだ。これを支えるのが金融と通信のインフラ企業であり、統制された国家プロジェクトとして開発が進められる。

その強みは「どんな場面でも利用できること」

 古来より、お金は天下の回り物である。人から人へと移転してこそ意味がある。この性質のことを、転々流通性という。それは通貨を構成する要素の一つであり、どんな状況でも転々流通性が確保されていなければお金とはいえない。

 デジタル人民元は紙幣に置き換わる新しい現金であるから、たとえ携帯が圏外であっても使えなくてはいけない。デジタル人民元のアプリとされる画像には、スマホとスマホを近づけるような絵柄のコマンドがある。それは、NFCと呼ばれる近距離通信技術に対応していることを示唆し、一定の周波数を用いて機器間での相互通信が可能となることを意味する。

 デジタルの金銭的価値というのは、端末間のローカル通信によって移転するように設計することができる。ただし、リスクを抑えるために上限を設定し、圏内に戻ったときに履歴を検証する必要がある。ある程度のリスクとコストを許容して、どんな場面でも利用できることを優先する。それこそが民間のペイメントサービスとデジタル人民元の役割の違いである。

 2019年秋、中国政府はブロックチェーン技術の応用可能性について公式に言及した。この構想を支えて、あらゆる分野における開発を支援するのが、BSN(ブロックチェーン・サービス・ネットワーク)という組織である。

 BSNに参加するのは、日本でも銀聯カードでおなじみの中国銀聯と、携帯キャリアの中国移動通信グループである。これらの巨大インフラ企業と肩を並べて、北京市朝陽区のサイエンスパークに入居する北京紅棗科技というスタートアップも参加しており、北京大学をはじめとするアカデミックの知識も投入される。


現時点では、デジタル人民元の設計にブロックチェーンを利用する計画はないと中国では伝えられる。中国人民銀行の数字貨幣研究所長の発言や、中国人民銀行の元・副頭取の寄稿記事によれば、ブロックチェーンの要素技術の一部を援用することは否定しないが、ブロックチェーンを基盤とする計画のないことが強調されているのだ。この点について確たる情報はない。

 ただ、ブロックチェーン技術を利用するということは、リブラのようなグローバル・ステーブル・コイン(ビットコインやイーサリアムとは異なり、法定通貨に対する交換レートが安定しており、国際的に流通する民間デジタル通貨)と同じ領域において対峙することを意味する。ブロックチェーンを基盤とした経済圏というのは、デジタル通貨とアプリの2層構造になっている。

青か赤か 
リブラと対峙するデジタル人民元

 第一層のデジタル通貨はグローバルで共通化するが、第二層で動くシェアリングエコノミーなどのサービスは、国や地域ごとにローカライズして載せることができる。すなわち、世界の誰かが作ったサービスが優れていれば、それを他の地域でも応用することが可能であり、作者の知らないうちに世界に広がっていくかもしれない。このとき、一つのブロックチェーン技術を基盤としていれば、そこを流れるデジタル通貨は世界共通で揺らがない。

 このように、ブロックチェーン経済においてデジタル通貨は経済の土台を形作る。リブラを基礎としたブロックチェーンが世界で使われるようになれば、「青いカーペット」で世界が埋め尽くされる。デジタル人民元を基礎としたブロックチェーンが世界で使われるようになれば、「赤いカーペット」で世界が埋め尽くされる。

 いま北京には、従来型の技術とブロックチェーンの理想的な協力関係がある。デジタル人民元に適用されるのは中央集権型のモデルであって、分散型のブロックチェーンではない。その一方で、ブロックチェーン関連の特許取得数において中国は世界のトップを走る。果たして集権型と分散型のいずれを目指すのだろうか。

 中国の研究者が好んで引用するのが、三国志演義序文の一節である。それは、「およそ天下は分かれて久しければ合し、合して久しければ分かれる」という理を著す。大きな変革が起ころうとするときには、中央に集まろうとするエネルギーと、外側に分散しようとするエネルギーが同時に生じる。それらを巧みに操った者こそが天下の覇者となる機会を得る。

 おそらく通貨の覇権にも、この理があてはまる。国内の通貨体制を中央集権型で統治しながら、国際通貨としての拡張性にはブロックチェーンも活用する。一見すると相矛盾するように見える二つの手綱を操りながら、国内経済と国際社会の両方を視野に入れて戦略を練る。その意味では、中国の策は巧みであり、老練さを備えている。  

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コメント
1. 中川隆[-12178] koaQ7Jey 2020年7月06日 19:55:41 : 3epvGDHcvk : YVlZdjNpODZwYlE=[5] 報告
アメリカは具体的にどのように世界中のマネーを吸い上げているのか


2. 2020年8月28日 07:57:58 : y0GopNjkkY : WHBHR0FhdjMuak0=[1] 報告
大統領選挙の郵便投票で大規模な不正を画策か
2020/08/28





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