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国が隆盛してから滅びるまでのサイクル
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投稿者 中川隆 日時 2022 年 2 月 06 日 07:26:31: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 経済学の歴史、信用貨幣論、MMT 投稿者 中川隆 日時 2020 年 12 月 11 日 18:48:52)

国が隆盛してから滅びるまでのサイクル


世界最大のヘッジファンド: 国家が滅びゆく順序を説明する
2022年2月5日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19532

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏は、大英帝国やオランダ海洋帝国など歴史上の経済大国の盛衰を研究していることで有名だが、アメリカの元財務長官ハンク・ポールソン氏のPodcastでその構想を分かりやすく説明しているので報じたい。

覇権国家の誕生

ダリオ氏が説明するのは国が隆盛してから滅びるまでのサイクルである。彼はこう述べる。

同じサイクルが何度も何度も起きる。それを今から説明しよう。

まずは覇権国家がどのように誕生するかについてからである。ダリオ氏はこう始める。

まず最初に戦争がある。内戦でも外国との戦争でも良い。その結果が世界の、あるいはその国の秩序を変える。

例えば第2時世界大戦だろう。彼はこう続ける。

1945年には戦争があり、勝者が世界のルールを決めた。

ここから新しいサイクルが始まる。サイクルの初期段階では、平和と繁栄があることが多い。戦争の勝者の力は強大で、誰も戦いたくないからだ。世界は彼らに支配される。

こうしてサイクルが始まり、負債が一掃される。前のサイクルにあった多くのものを一掃し、新しいルールが出来る。

当時、色々なことが決められた。各国の通貨をドルにペッグさせるブレトンウッズ体制や、国際連合など様々な仕組みが作られた。それが良いにせよ悪いにせよ、負けた国はそれに歯向かおうとはしなかった。

1945年当時そうだったようにそれが上手く行けば、50年代、60年代のように平和と繁栄が訪れる。

世界は団結しており、経済の生産力も高い。これはサイクルの中で最良の期間だ。

生まれ始める経済的対立

しかし良いことばかりが起こるわけではない。ダリオ氏は、国家が経済的に成功するにつれ歪みが生じ始めるという。

すべての覇権国家は資本主義国家だった。オランダが資本主義を発明した。彼らが作った最初の株式と最初の株式市場によってオランダは資源と起業家精神を手に入れた。

しかし資本主義は大きな貧富の差を生む。何故ならば、資本主義社会では本質的に収入と資産が不均等に分配されるからだ。

筆者はこの意見には異論がある。冨の不平等は資本主義経済の結果というよりは、非資本主義的な金融緩和政策によって金融資産価格が高騰したことが理由として大きいと筆者は考えている。このことについては以下の記事で述べておいた。

資本主義者ドラッケンミラー氏、アメリカの金融緩和終了を歓迎
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19273


しかし今はダリオ氏の話に戻ろう。彼はこう続けている。

そうすると社会の貧富の差がどんどん大きくなってゆき、機会の平等という点で人々が不平等だと感じる、あるいは実際に不平等なシステムが出来てくる。もし裕福な親のもとに生まれれば、良い学校に行き良い教育を受けるだろう。それが不平等な競争の問題になる。

そうしている内に所得よりも負債の増加の方が大きくなってくるだろう。

繁栄の時代が徐々におかしくなってゆくというわけである。

覇権国の衰退と新興国の台頭

ダリオ氏の論点は、こうした変化が覇権国にとって不可避であるという点である。

ダリオ氏は次のように述べる。

サイクルが進むにつれてこうしたことが起こる。成功している国の商品は高くなり、人々は働くよりも人生を楽しもうとし始める。投資よりも消費が多くなる。

それが成功した国における自然な流れらしい。ジョージ・ソロス氏の息子がかつて次のように言っていたのが思い出される。

億万長者の息子が、ホロコーストを生き延びてアメリカの金融業界で成り上がった人物ほどハングリーにやれるはずがない。

人間は裕福になると怠惰になり始めるらしい。

日本人が勤勉だと言われた時代もあったが、今は見る影もない。そして日本企業も日本経済も見る影もない。それはそういうことである。

そうして人々は過去の遺産と借金に依存し始め、最終的には政府から10万円が降ってくるか降ってこないかを気にするようになる。

日本が何故駄目なのか、というかこういう人々が何故駄目なのか、はっきりと分かるというものである。

そうしている間に次の勢力が力を付け始める。ダリオ氏はこう続ける。

そうすると同時に競争力のある国や企業がより安くより良い商品を出すようになる。成功した国々と競争を始める。そうすると成功している国の優位性が揺らぎ始める。

日本人は認めたがらないかもしれないが、日本は既に中国に経済規模だけではなく技術的にも様々な面で負けている。

この事実を突きつけられても、彼らのやることはせいぜい隣国への偏見を口にするだけであり、自分で優れたものを作って彼らに追いつこうとはしないだろう。だから日本は駄目なのである。

基軸通貨の功罪

また、覇権国の衰退を更に後押しするのが通貨による要因である。ダリオ氏はこれをオランダ海洋帝国を例にとって説明している。

オランダ人の重要な発明品の1つは優れた船であり、彼らはそれで世界中をめぐり、資源を入手し、貿易することで世界でもっとも裕福な国となった。

彼らは旅をしながら世界最大の貿易国家となり、自国通貨を他国にもたらした。

そしてオランダの通貨は今の米ドルのように準備通貨(訳注:他国がその通貨で資金を貯蓄する通貨)となった。他の国々はそれを保有したがった。何処でも使えるからだ。

恐らくこれは世界初の基軸通貨だろう。そして他の国々にとって、その通貨を保有するということは、その通貨建ての金融資産を買うということである。

そうすると人々はその通貨で債券を買うようになる。資金を保管する時には当然そうなる。するとそれはオランダに法外な特権を与えることになる。

通貨の発行国は簡単に借金が出来るようになる。しかしそれはその国家をどんどん借金漬けにしてゆく。

ここからが衰退の始まりである。

増え続ける負債と拡大する貧富の差という材料が競争力を奪ってゆく。一方で競争相手はどんどん成り上がってくる。

状況は時間が経つにつれて悪くなってゆく。国内の対立と国外の対立があり、拡大する貧富の差と悪化する財政が国内の対立を更に煽る。外国との競争力の低下が財政を更に悪化させる。

まさに今のアメリカの状況である。トランプ氏とクリントン氏、保守とリベラル、国内で対立が広がる中で、前回の記事で述べたようにアメリカの貿易赤字はアメリカから資金を流出させ続けている。

好調な2021年第4四半期米国GDPはインフレと経済過熱に依存している
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19492


そして最終的には覇権国にはとどめが刺される。ダリオ氏はこう締めくくる。

そこに新興国が覇権国に挑戦し、紛争が起こる。

こういうサイクルが歴史上いつも繰り返し起きている。

結論

ダリオ氏の覇権国家サイクルについての説明を一通り報じた。彼の理論については知っている読者も多いだろうが、このように纏められたものはあまりなかったのではないか。

重要なのは、このサイクルがどうやら逃れようのない流れらしいということである。

ダリオ氏はこの仮説から中国の人民元がアメリカのドルに代わって基軸通貨になると主張しているが、彼にとってそれが今なのか、10年後なのかは大した問題ではなく、遅かれ早かれそうなると彼は考えているのだろう。

世界最大のヘッジファンド: 中国が覇権を握りドルは基軸通貨でなくなる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10592


彼の覇権国家サイクル理論についてはオランダ海洋帝国と大英帝国について書いた記事もあるので、そちらも参考にしてほしい。

世界最大のヘッジファンド: オランダ海洋帝国が繁栄した理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10891

世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の繁栄と衰退
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10922


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19532  

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コメント
1. 2022年2月06日 07:28:05 : K7Ig9SNBnI : aExrL1g5WkdWS0U=[2] 報告
世界最大のヘッジファンド: オランダ海洋帝国が繁栄した理由
2020年5月22日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10891


世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏による歴史の授業である。ダリオ氏はアメリカが覇権を失い中国が新たな覇権国家になると主張している。

世界最大のヘッジファンド: 中国が覇権を握りドルは基軸通貨でなくなる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10592


その自説の証明のためにLinkedInのブログ投稿で過去の覇権国家の繁栄と衰退をレビューしていっているのだが、今回はイギリス帝国の前に繁栄したオランダ海洋帝国の物語となる。

海洋帝国オランダ

ダリオ氏の話はオランダが海洋帝国となる前の話から始まる。

16世紀にはスペイン帝国が西洋では覇権国家であり、東洋では中国の明朝が覇権国家だった。スペインと明では明の方が強大だった。

当時、明は世界最大の覇権国家だった。豊臣秀吉が朝鮮出兵で明に喧嘩を売ろうとしたのもこの頃である。そしてオランダはまだスペイン帝国の一部だった。

その時スペインは現在ではオランダと呼ばれている小さな領土を支配していたが、1581年に力をつけたオランダがスペインに反旗を翻す(訳注:オランダ独立戦争)と、オランダはスペインと中国を追い越して1625年から1780年まで世界最大の国であり続けた。

スペイン帝国の極一部に過ぎなかったオランダは何故そこまで成功出来たのだろうか。ダリオ氏は次のように分析する。

オランダ人は非常に優れた教育を受けていた人々で、発明に長けていた。実際に17世紀の主要な発明品の25%は当時最盛期のオランダ人によるものである。オランダ人の生んだ発明のうち重要なものは、まず世界を周ることのできる優れた船舶で、ヨーロッパ内での戦争で身につけた軍事力を使って世界中から富を集めることができた。そしてもう一つの発明はその動力となった資本主義である。

「軍事力を使って世界中から富を集めることができた」とさらっと書いているが要するに強盗である。資本主義の方は、なかなか興味深いダリオ氏の議論に繋がってゆく。

資本主義とは何か

また、このオランダの例でダリオ氏は資本主義の本質に触れている。ダリオ氏はこう主張している。

オランダ人は資本主義的なやり方で資源を分配しただけではない。そもそもオランダ人が資本主義を発明した。

これはどういう意味だろうか? ダリオ氏はこう続ける。

資本主義とはわたしの意見では公共の債券および株式の市場のことである。もちろん生産活動はそれより前にも存在したが、それは資本主義ではない。貿易も存在したが、それは資本主義ではない。個人の所有権も存在したが、それは資本主義ではない。資本主義とは、わたしの意見では大勢の人々が共同してお金を貸し、営業活動の所有権を買うことのできる仕組みのことである。

オランダ人は公共の場で株式を取引できる世界初の株式会社、つまりオランダ東インド会社を作り、世界初の株式市場を作り、世界初の効率的に借金のできる金融システムを作ったとき、資本主義を発明したのである。

特にオランダ東インド会社は重要である。オランダ東インド会社とは反旗を翻した相手のスペインに海洋貿易(と侵略行為)で対抗するため1602年に複数の商社を纏めてオランダが作った世界初の株式会社である。

株式会社とは今では誰でも知っているように、新しい事業を始めたい起業家に事業を始めるお金がない場合、投資家が出資をして事業を可能にする仕組みのことだが、株式会社が存在する前までは事業アイデアと資金の両方が事業家本人になければ事業は難しかったのである。

この革新的なアイデアは当然ながらオランダのGDPを爆発的に増加させた。株式がなければ不可能だった多くの事業が可能になったからである。ダリオ氏の言いたいのは、オランダやイギリスやアメリカが覇権国家になるためには、そうした革新がなければならなかったということである。その点でオランダの株式市場の発明はイギリスの産業革命にも劣らない業績だろう。

世界初の基軸通貨

また、オランダが世界で初めて船を使って大規模な侵略行為を行なったことは「基軸通貨」というおまけも生んだ。ダリオ氏はこう説明している。

オランダの通貨ギルダーは金と銀を除けば世界初の基軸通貨である。オランダは世界の大部分を支配した最初の帝国であり、自国の通貨を広く流通させることができた。

基軸通貨の威力は現在の投資家が一番痛感している部分かもしれない。何故ならば、アメリカが無制限の量的緩和を行なってもドルがそれほど下落しないのは、ドルが世界中で使われている基軸通貨だからである。

また、オランダが支配した金融市場は為替相場だけではない。ダリオ氏はこう続ける。

金融市場に関する無数の発明とオランダ自身の経済的成功によってアムステルダムは多くの投資家を集める世界最大の金融センターとなった。オランダ政府は集まった資金を様々な事業の債券と株式を賄うために利用した。最大の例はオランダ東インド会社である。

まさに現在アメリカが世界の金融市場の中心となっているのと同じであり、その現象が17世紀のオランダには既に存在したのである。

オランダ帝国の最期

しかしダリオ氏が言うように、どのような覇権国家にも終わりが訪れる。

覇権国家の最期として典型的なのは、まずオランダが徐々に負債を抱えていったこと、貧富の差や政治的派閥対立など内部で利害対立が発生したこと、そして軍事力が弱まっていったことである。

そして二番手のイギリスの国力は増していた。当初、イギリスはオランダと軍事協定を結んでいたが、海洋貿易での利害対立が続き、イギリスの力が強大になったことが明白となってくると、ターニングポイントが訪れる。ダリオ氏はこの状況を現在の米中の状況に重ねて見ているのだろう。

イギリスはオランダを攻撃した。そしてフランスなどの他国も海洋貿易の主導権をオランダから奪う好機と見なした。第4次英蘭戦争として知られるこの戦争は1780年から1784年まで続いた。イギリスは経済的にも軍事的にも勝利した。オランダはこの敗北によって破産し、オランダの通貨ギルダーはオランダ帝国とともに崩壊した。

オランダ帝国の物語はここまでである。しかしダリオ氏は面白い付録を続けて書いている。オランダ東インド会社はオランダ帝国によって認められた特権で商売をしていたため、この戦争で途方もないダメージを負ったのだが、オランダ東インド会社がオランダ経済にとってあまりに重要だったためにアムステルダム銀行はこれを潰すことができず、ギルダーを新たに印刷することでこの会社を救おうとしたのである。まさに今の量的緩和と同じである。

量的緩和はオランダ東インド会社を救うことができたのだろうか? 記事が長くなったので、この面白い話は次の記事ということにしよう。楽しみにしていてもらいたい。この話題に関する一般論は、以下の記事で読むことができる。

世界最大のヘッジファンド: 政府が金融危機から守ってくれると思うな
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10473


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10891

2. 2022年2月06日 07:31:29 : K7Ig9SNBnI : aExrL1g5WkdWS0U=[3] 報告
世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の繁栄と衰退
2020年5月25日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10922


世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がLinkedInのブログで基軸通貨の繁栄と衰退について語っている。前回はオランダ海洋帝国とその通貨ギルダーの崩壊が現在の状況に非常に似ていることを紹介した。

世界最大のヘッジファンド: オランダ海洋帝国が繁栄した理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10891

世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10903


そして今度はオランダの次に覇権国家となった大英帝国の物語である。

大英帝国の始まり

話はイギリスが第4次英蘭戦争で以前の覇権国家オランダに勝利したところから始まる。ダリオ氏はこのように書いている。

イギリスがオランダに勝利した後、イギリスとその同盟国(オーストリア、プロイセン、ロシア)は引き続きナポレオン戦争でナポレオン率いるフランスと戦っていた。

そしてイギリスは勝った。オランダ海洋帝国に続いてナポレオンが敗北したことでイギリスの天下が確定したのである。

戦後にはよくあるように、戦勝国(主にイギリス、ロシア、オーストリア、プロイセン)は新たな世界秩序を作るために会議を行なった。これはウィーン会議と呼ばれている。

これが、イギリスが唯一の覇権国となり、イギリスの通貨ポンドが基軸通貨となる大英帝国の100年の始まりとなった。そして世界は繁栄した。

大英帝国の時代の始まりである。

ダリオ氏によれば、戦争の後には長期の平和の期間が続くことが多いという。ダリオ氏は次のように続けている。

これもよくあるように、戦争の時代の後には平和と繁栄の期間(この場合は100年間)が続いた。どの国も覇権国に挑戦したり、上手く機能している世界秩序を壊したりしようとはしなかった。

現代でもアメリカが世界中で戦争行為を行なっても被害者以外は誰も文句を言わない。しかしアメリカが弱ってきた場合、文句を言い始める国が出てくるだろう。ダリオ氏が懸念しているのはそういう戦争の時代なのかもしれない。

大英帝国繁栄の理由

大英帝国に話を戻そう。オランダの記事ではオランダが株式市場と優れた船舶を持っていたことが覇権に繋がったことが説明されていた。

世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10903


イギリスも最初はオランダの真似から入ったようである。ダリオ氏はこう説明している。

イギリスはグローバルな機会を逃さず非常に裕福で強力になるために、商業活動と軍事力を組み合わせた。例えばイギリス東インド会社はオランダ東インド会社に代わって世界経済でもっとも支配的な商社となり、イギリス東インド会社の軍隊はイギリス政府の常備軍の2倍の規模となった。

ダリオ氏はあっさり書いているが、西洋人以外の人種には何故商社に軍事力が必要なのかまったく分からないだろう。彼らは非常に愉快な人種である。

いずれにしても大英帝国はオランダのやり方をより強力に行うことによって繁栄していった。そして勿論、イギリスがそこまで強力になれたのは単にオランダの真似をしたからではない。

1760年頃、イギリスは製品を生産して豊かになり、生活水準を改善するためのまったく新しい方法を発明した。それは産業革命と呼ばれた。

イギリスで始まった産業革命については説明は不要だろう。機械を使って工場で大量生産をしたり、蒸気機関を使って大規模で効率的な輸送を実現したりしたわけである。「機械ができて仕事がなくなる」などと言われていたことは、「AIができて仕事がなくなる」と言われている今と似ているかもしれない。人は決して学ばないものである。

IT革命がアメリカで生まれたように、ある国が覇権国となるためにはそれなりの理由がある。オランダの場合には株式市場の発明と優れた船舶、イギリスの場合には産業革命だったということである。ダリオ氏はこう結んでいる。

つまり良い教育を受けた人々の集まるこの比較的小さい国は発明と資本主義と優れた船舶とグローバル化を助けるその他の技術、そして優れた軍隊によって大英帝国を作り上げ、その後100年を支配し続けたのである。

イギリスはオランダのやり方をまね、そこに独自の技術革新を付け加えることで覇権国となった。当然ながらロンドンはアムステルダムに変わる金融センターとなった。

それが大英帝国の黄金時代である。しかしオランダの時と同じように、その時代にも終わりは来る。

まず、イギリス発の産業革命に続いて起こったのが第2次産業革命だが、こちらはアメリカのトマス・エジソンに代表されるようにイギリスだけで起こったものではなかった。他国、特にアメリカの国力がイギリスに追いついてきたのである。また、この頃にはイギリスで発明された蒸気機関も多くの国で使われていた。イギリスがオランダを真似たように、イギリスも真似られたのである。

第1次および第2次世界大戦

そして最終的には大英帝国の覇権は2度の世界大戦で崩壊することとなった。イギリスはこの世界大戦を2度とも勝利しているが、戦費と被害が馬鹿にならなかったのである。

ダリオ氏が匂わせているところによると、元々植民地における軍事行動によって金儲けをしたイギリスが世界大戦では儲けられなくなっていたことと、「世界の警察」を自称していたアメリカが海外における軍事行動から手を引き始めていることがパラレルなのだろう。

またアメリカだけではなく、ドイツや日本などの国々もイギリスに追いつきつつあった。第1次世界大戦ではイギリスは勝利したものの、その後のパリ講和会議を主導したのはイギリスではなくアメリカだった。このあたりからイギリスは植民地を完全に押さえつける力を失いつつあり、国力では既にアメリカの後塵を拝していたが、ポンドは基軸通貨として使われたままだった。オランダのケースと同じように、基軸通貨の衰退は国家そのものの衰退よりも遅れるのである。

そして第2次世界大戦を経てアメリカの覇権が公的にも確立されたものとなる。1945年に発効したブレトン・ウッズ協定ではドルを基軸通貨とした固定相場制が採択され、ポンドに代わって公式に世界の基軸通貨となったドルはゴールドとの兌換を維持することとなった。この金本位制はダリオ氏自身も経験したニクソンショックによって1971年に崩壊するのだが、それはまた別の話である。

レイ・ダリオ氏、「現金がゴミ」になったニクソンショックの経験を語る
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/9645

結論

これがアメリカが覇権国となる前に栄えた大英帝国の繁栄と衰退である。ダリオ氏は言及していなかったが、個人的な感想では世界がグローバル化したことによって世界的に均一な教育が施されるようになった結果、徐々に人口の多い国が優勢になっていったようにも思える。皆が同じような教育を受けているならば、数が多い方が勝つということである。

また、オランダの通貨ギルダーの時と同じように、ポンドの衰退はイギリスの衰退よりも遅れ、第二次世界大戦の後もポンドはある程度使われ続けたのだが、グローバル化した世界における基軸通貨の崩壊はギルダーの時のようにシンプルな取り付け騒ぎとは行かず、もっと複雑で深刻な結果を残すこととなるのである。

世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10903


オランダ海洋帝国の時と同じように、ダリオ氏の記事のポンドにフォーカスした部分については新しい記事で紹介することとしたい。しかし恐ろしいのは、ポンドの時でさえ世界中の人がポンドを持っていたためにその崩壊が世界的な混乱を生んだとすれば、ドルの時にはどうなってしまうのだろうか。ドルを持っていることがなかなか恐ろしくなる記事である。

世界最大のヘッジファンド: ドルは既に紙くずになっている
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10645


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10922

3. 2022年2月06日 07:35:37 : K7Ig9SNBnI : aExrL1g5WkdWS0U=[4] 報告
世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨
2020年5月23日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10903


世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がLinkedInにおけるブログでオランダ海洋帝国の繁栄と衰退について語っている。

世界最大のヘッジファンド: オランダ海洋帝国が繁栄した理由
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10891


歴史的な部分は前回取り上げたので、今回はオランダ海洋帝国の通貨ギルダーがどのように世界初の基軸通貨となり、そしてどのように暴落していったのかに焦点を当てたい。

海洋帝国オランダ

ダリオ氏のオランダ海洋帝国とギルダーの説明から入ろう。

オランダはアメリカ新大陸からアジアにまで及ぶ帝国を築き上げた。彼らの作った世界初の主要な株式市場によってアムステルダムは世界でもっとも重要な金融センターになったのである。そしてオランダの通貨ギルダーは世界の国際取引の3分の1を担う世界初の国際的な基軸通貨となった。

オランダ人はたった100万か200万の人口でこれをやり遂げたのである。

前回の記事
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10891

で説明したが、株式市場と優れた船舶という技術革新がどれほど凄かったかということである。

しかし第1次英蘭戦争、北方戦争、第2次英蘭戦争、仏蘭戦争、第3次英蘭戦争などいくつもの戦争を経験するにつれてオランダ海洋帝国の国力は衰退、1780年の第4次英蘭戦争でイギリスの優位が決定的となる。ダリオ氏は第4次英蘭戦争についてこのように説明している。

この戦争はオランダと当時力を増していたイギリスとの戦争で、オランダがアメリカの独立を支援したことへの報復戦争である。結果はオランダの大敗となり、戦費とその後の平和がオランダの通貨ギルダーが基軸通貨としての地位を失うことに繋がった。

ギルダーの衰退についてもう少し詳しくダリオ氏の説明を見てみよう。

18世紀にはオランダの債務負担は大きくなっていたが、ギルダーはまだ基軸通貨として世界中で使われていた。この時点でギルダーを支えていたのは利便性と信用だけだった。(先に説明したように、基軸通貨の地位は覇権国の他の要素よりも遅れて衰退することが多い。)

既に負債だらけとなっていたオランダがギルダーに対して何の保証もできなかったことは明らかである。それでもギルダーは使われていた。これは既に紙切れになっているドルが未だに「信用」だけで人々に使われていることと同じである。

世界最大のヘッジファンド: ドルは既に紙くずになっている
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10645


しかし日本円もそうだが、金本位制を捨てた後の紙幣は誰も何も保証しないただの紙切れである。「信用」とはこの場合、いかに人々が騙されているかを示しているに過ぎない。それは紙幣をゴールドと交換できた時代の余韻によってまだ使われているだけなのである。

世界初の基軸通貨の最期

さて、そのギルダーもとうとう使われなくなる時代がやってくる。ダリオ氏はこう続ける。

オランダが貿易で競争力を失うにつれて増加する債務の支払いがオランダ経済を圧迫し始めた。海外事業からの収益も減り始めた。オランダの富裕層は資金を海外に移し始め、オランダへの投資から成長率と金利のより高いイギリスへの投資にシフトし始めた。

これもアメリカ人やヨーロッパ人が新興国への投資へシフトしていることに似ている。そして新興国経済とはその大半が中国である。

世界最大のヘッジファンド: 中国が覇権を握りドルは基軸通貨でなくなる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10592


ギルダーの終わりのきっかけとなったのはオランダ東インド会社の崩壊である。

一番重要なのは、第4次英蘭戦争が東インド会社の収益力とバランスシートにとどめを刺したことである。東インド会社は既に競争力を失っていたが、イギリスがオランダの海岸とオランダ東インドを封鎖したことで貿易が崩壊すると、それは東インド会社にとって破綻の危機となった。

オランダ東インド会社は第4次英蘭戦争で巨額の損失を計上すると、(訳注:公営の)アムステルダム銀行から巨額の借金を借り始めた。東インド会社がオランダ政府にとってあまりに重要だったからである。

これは現在の状況で言えば株式市場が重要すぎて崩壊させられないので量的緩和で支えるというところだろうか。しかしそれを崩壊させなければ単に別のところで破綻が起きるだけである。それは初めから分かっているにもかかわらず、人々は同じ間違いを何度でも繰り返す。

世界最大のヘッジファンド: 政府が金融危機から守ってくれると思うな
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10473

ガンドラック氏、新型コロナでの企業救済とヘリコプターマネーを痛烈批判
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/9681


しかし個別の歴史には個別の道がある。オランダ海洋帝国の場合はこうだった。ダリオ氏は続けて説明する。

アムステルダム銀行の預金者は銀行が新たに印刷したギルダーをオランダ東インド会社に「貸している」ことに気付くと、アムステルダム銀行で取り付け騒ぎが起きた。投資家が資金を引き出し始め、紙幣よりもゴールドが好まれた。現金を持っている者はアムステルダム銀行でそれをゴールドに交換しようとしたが、十分なゴールドがないことが明らかになった。

「新たに印刷したギルダーでゾンビ企業を生きながらえさせる」と言い換えるとここの読者は聞き覚えがあるのではないか。ドラッケンミラー氏による量的緩和デフレ元凶論である。

ドラッケンミラー氏: 金融緩和こそがデフレの元凶
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/7103


まったく同じことが起きているのだが、誰も歴史から学ばない。状況を理解しているのは著名投資家など極一部の人間だけである。ギルダーの場合はどうなったか? ダリオ氏の説明を最後まで聞いてみよう。

銀行からの逃避とギルダーからの逃避が戦争の最中に加速し、オランダの敗戦が濃厚になると銀行は更に紙幣を印刷しギルダーの価値を薄めなければならなくなると予想された。

ギルダーは貴金属の裏付けがあったが、ギルダーの供給が増加すると状況を理解した投資家たちはギルダーの金と銀への交換を要求した。金と銀へ交換要求は結局アムステルダム銀行の貴金属の貯蔵が空になるまで続いたのである。ギルダーの供給は増え続け、需要は減り続けた。

そうして世界初の基軸通貨となったギルダーは暴落した。量的緩和によって暴落したのである。

結論

新型コロナで経済活動が失われたにもかかわらず、それを新たな経済活動で埋め合わせずに印刷した紙幣をばら撒いて埋め合わせようとしているアメリカや日本の政府を見ていると本当に頭が痛くなる。

世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10831


筆者の見方では、現代の量的緩和バブルの最期は道筋はギルダーと異なったものにはなるだろうが、本質的には同じことが起こるだろう。ちなみにドルにも円に貴金属の裏付けはないので、価値が暴落する時にはただ暴落するだけで、誰も何かと交換してくれたりはしない。ただの紙切れをただの紙切れと気付かずに持っている人間の責任ということである。

冷たいようだが、文句は是非政府に言ってもらいたいものである。しかし誰も言わない。だからあなたがたは政治家に騙され続けるのである。

世界最大のヘッジファンド: 政府が金融危機から守ってくれると思うな
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10473


幸いにも投資家は金融市場を使って自衛をすることができる。損をするのは量的緩和の支持者だけにしてもらいたいものである。


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10903

4. 2022年2月06日 07:36:42 : K7Ig9SNBnI : aExrL1g5WkdWS0U=[5] 報告
バブル崩壊の歴史と これから起きる超円高によるバブル崩壊
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/388.html

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