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「匿名希望」氏へのレス:現状なお、「第2の敗戦」ではなく「勝者の蹉跌」 投稿者 あっしら 日時 2002 年 7 月 29 日 00:20:01:

財務省のキャリア官僚とのやり取りがボード上深いレベルになっているので、新たにスレッドを立てるかたちにさせていただきます。

1)日本経済に必要な短期的政策

あっしら:『“微温的政策”は「デフレ不況」克服の出発点だと考えています』
http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/307.html

「匿名希望」氏:『私はこう考えます』
http://www.asyura.com/2002/hasan12/msg/324.html

を引き継ぐ内容のレスです。
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貴殿が日本という国民経済の立て直しについて真摯に向かわれていることに、率直に敬意を抱いています。(国家という概念には様々な種類の“色”が付いているので国家とは言わずに国民経済とします)
そして、現実にどういう政策が実施されることになるかは、最終的に、政治すなわち国民の責任であるとも痛感しています。

貴殿は過日のレスで「第2の敗戦」という言葉を引用されていましたが、「第1の敗戦」は、自らが実現し得なかった“構造改革”を占領統治者が代行実施したことをベースに、国際的政治条件を奇貨としながら、国民一丸となって経済活動に奮闘したことで、かの戦争に“実質勝利”したと言えるほどの国家=国民経済を築く契機になりました。
(国家が6年ほど占領されたことや沖縄など一部領土の占領状態が続いたなどの政治的評価は捨象しています)

現状の日本経済は、「第2の敗戦」ではなく、「勝者の蹉跌」により生じたと認識しています。
それを「第2の敗戦」という言葉で現すとしても、現在の日本は、「第1の敗戦」のときのようにそれから立ち直るための国際的条件に恵まれることはなく、現状の国際的条件を支えにしながら自国の力のみで立ち直るしかない条件に置かれています。
(端的に言えば、余剰通貨をたっぷり持っている国民経済は日本しかないと言っても過言ではない世界経済だからです)

相対比較では70年頃までの米国ほどではないとしても、日本は、人口比で史上最強の「産業資本制国民経済」を築き上げました。

しかし、日本の統治者及び企業経営者が、それがどういうことを意味し、そうなった後の政策はどういうものでなければならないかをきちんと認識(自覚)しなかったために、つまずいてしまったと考えています。
(経済事象的には膨大なバブルを形成したことと考えてもらってけっこうです。バブルは崩壊に問題があるのではなく、形成に問題があるのです)

英国は戦前からですが、戦後の米国は、“余剰通貨”を国内で資本化できない過剰通貨と考え、“余剰通貨”を国外で活かす経済政策を選択しました。
これにより、米国は、「産業資本制国民経済」から「金融資本制国民経済」に大きくシフトしました。
米国国民経済は、そのようなシフトのなかで歴史を歩み続けるなかで、最強の「産業経済国家」という地位から転落しました。

経常収支の赤字が4千億ドルで政府債務が6兆ドルという経済条件にありながらもなお米国が最強の「近代国家」として君臨できているのは、偏に、自国通貨であるドルが管理通貨制での国際基軸通貨であることに拠ったものです。
ペーパーマネーでしかない米ドルが国際基軸通貨であるが故に、米国の国民経済は現在の姿で存続できていると言えます。

82年に登場した中曽根内閣以降の日本は、「金融資本制型国民経済」である米国及び英国がめざしている道を後追いするかのように(まさに意識的な後追いですから失礼な表現ですが)、経済価値観と政策基調を変えてきました。
これが、日本経済に「第2の敗戦」=「勝者の蹉跌」をもたらすることになった要因だと考えています。

金融資本主義的経済活動は、それが国民経済内に強く向けられると必ず破綻するものです。発展途上国で輸出拡大条件があれば別ですが、成熟した国民経済には、金融収益を持続的に増加していくだけの活動余力はありません。

金融資本主義的経済活動が持続的に成功できるのは、それが外部国民経済に向けられ果実(収益)のみが戻ってくるような構造、すなわち、国際金融取引で利益を上げ続けていける条件を維持しているときのみです。

米国が戦後なぜ欧州諸国や日本に膨大な金融支援を行ったのかを考えてみます。
端的には、膨大な余剰通貨を国内に振り向ける余地が少なく国内でなんとかしようとすれば無利子同然で貸し付けざるを得ない状況にあったこと、さらに、国際的な金融を実施しなければ、「連合国の兵器及び生活財の工場」として資本を急拡大した米国経済主体が存続できない状況にあったからです。

余剰通貨を対外貸し出しに回すことで、貸付け金利も確保できるだけでなく、財(とりわけ資本財)の輸出も増加でき、金融資本も産業資本も揃って活力を維持することができたわけです。
そして、それが持つ危うい罠に気づかぬまま(?)歩み続けたために、産業資本がまずおかしくなり、金融資本もおかしくなりかねない状況を迎えようとしています。

金融資本にとっては、相対的な「高金利&ドル高」は望ましいものですが、産業資本にとってはそれは負担そのものです。
日本の企業は国内事情で決まる金利で日本円を借り入れられますが、米国の企業は、国際“商品”であるドルを国際的需給関係で決まる金利で借り入れしなければなりません。
(金融資本もおかしくなりかねない状況については、のちに機会があれば説明したいと思っています)


日本が「金融資本制型国民経済」をめざすとして、日本の金融経済主体が、米国や英国と同じように、国際金融活動を展開することができるでしょうか?

ハードカレンシーとは言え国際基軸通貨ではない日本円と国際金融活動については幼稚園児並みの経験と能力しかない金融機関のペアで、日本が「金融資本制国民経済」への道を進んだとしても、成功することは幸か不幸か絶対にありません。
(日本の経済主体もドルを使うことはできますが、日本がドルの発行量や金利を制御することはできません)

まず、国際的に貸し付けた通貨をきちんと回収するためには、貸し出し先の国家運営にまで首を突っ込まなければなりません。国際機関を介するとしても、これは、国家の対外活動力そのものです。
また、数百年から数千年間にわたって蓄積してきた国際金融のノウハウとネットワークを持つ他の国民経済の金融経済主体には勝つことができないどころか、いいカモにされてしまうだけです。
(90年代を通じて日本からどれだけの通貨的“富”が流出したか、そして、自己責任であるとは言え、今まさに対外投資に振り向けられていた通貨的“富”がずるずると減少していくという状況にあることをきちんと見直さなければなりません)

前置きが長くなりましたが、80年代から日本に広まった経済価値観は、日本という国民経済の特性から言って、マイナスになることはあっても、プラスになることはないというのが結論です。
それが現実として見せつけたのが、バブル形成→バブル崩壊→バブル反動不況→デフレ不況というこの15年間の日本経済の歩みそのものなのです。

余剰通貨をどう考え、余剰通貨をどうやって資本化していくのかが、先進国に共通して投げかけられているテーマです。

逆に言えば、余剰通貨があるということは先進国が恵まれた条件にあるということです。他の大半の国民経済は通貨不足=資本不足にあえいでいます。

経常収支の黒字で年々大量の余剰通貨を生み出しかねない日本は、とりわけこの余剰通貨=非資本化通貨の存在が大きな問題になっています。
しかし、これは問題であると同時に、余剰状態にある通貨の量が多いということは、経済政策の相対的に高い自由度を保証するものでもあります。

(1)余剰通貨が資本化されない理由


自説:「断言しますが、米国や発展途上国のような通貨不足に陥ってはいない日本経済は、政策的に打つ手があります。通貨事象から言えば、95年から00年にかけて本来ならば資本化されるべき通貨が40兆円も“不胎化”されていることが、国民経済に「デフレ不況」をもたらしているのです。」

>これだけが理由ではありませんが、ご指摘の点はその通りだと思います。では、な
>ぜ"不胎化”してしまうのでしょうか。

>日本国内に有効な投資機会が存在しないからに他なりません。 なぜ、投資機会がな
>いのか。個人消費の水準が相対的に低いためです。なぜ消費水準がどんどん高まらな
>いのか。各所得階層によって回答は異なるでしょうが、大まかにいうと国民全般が豊
>かになったためです。「豊かさの逆理」とも言えます。

新しい投資機会は、政府支出の対象変更や経済状況の回復を通じて、それこそ自由主義的に見出されるものだと考えています。

私の主張は新しい投資機会を拡大しろというものではなく、既存の投資機会に対して余剰通貨を追加的に資本化することで、供給拡大=需要拡大をはかるというものです。

端的に言えば、国民経済をリードしている一部上場企業が給与を上げることは、経済論理的に言えば投資機会が拡大したことと同じ効果を持ち、国民経済の供給拡大=需要拡大につながります。

受け入れやすくわかりやすい表現を使えば、トヨタなど大きな利益を上げている企業が自社の低中所得者を中心に積極的な給与を引き上げを行ったり、内部留保通貨があったり借入れが可能な立場にある企業がトヨタと同じかたちでの給与引き上げを行えば、日本経済は産業連関的に改善が見せるようになり、トヨタをはじめとして英断を行った企業も、売上と利益を増加させることができるという考えです。
財の供給量が増加しないかたちの供給の拡大は、需要サイドでは、財の価格上昇として現象します。

「財的豊かさ」と「通貨的豊かさ」は同じではありません。「財的豊かさ」は同じでも、「通貨的豊かさ」を上昇させることで、財ではない取引の供給も増加し、その循環を通じて、「平均的な財的豊かさ」もわずかながら上昇していきます。

>生活必需物資が行き渡り、消費に回すよりも貯蓄に回す個人が多いためです(「貯蓄
>は将来への消費の先延ばし」という理屈が我が国で成り立たないのは高齢者層の貯蓄
>率の高さを見れば分かります。理論では説明のつかない行動原理です。)

生活必需物資がそれなりに行き渡っていることは認めますが、所得階層のあいだの質的差異はまだまだあります。(この意味でも財の量的増加はそれほど必要ありません)

本来、貯蓄はことさら消費に回らなくてもいいものです。貯蓄を受け入れた経済主体が、代わりに消費する貸し出しを行い、後にそれをきちんと回収すればなんら問題はありません。
75年頃まで通貨不足だった日本経済を支えたのは、日本家計の貯蓄率の高さです。

逆に問題なのは、貯蓄を受け入れた経済主体がきちんと回収できると判断して貸し出しできるケース(通貨額)が減少していることです。

これこそが、通貨が資本化されずに余剰通貨になるという状況です。

預金を受入ながらそのまま眠らせておけば支払利息分の損失を被る銀行が、資本化に向かう貸し出し先がないために、土地取引や株式取引という投機的経済活動に貸し出しを増加させると、80年代後半のようにバブルが形成されてしまいます。
(80年代になると、上場優良企業は、徐々に株式及び債券市場から資金を調達できるなっていました)

現在の日本についても、貸し出しが拡大できないという経済状況が今後も続けば、産業資本も痛手を受けるだけにとどまらず、銀行資本も大きく損なわれることになります。

バブルの後遺症に苛まれている銀行がバブル形成的貸し出しを行うことはしばらくありえませんから、受け入れた預金を運用する機会の減少により、0.1%や0.01%の支払い利息とは言え銀行の財務状況は劣化してゆきます。
保有国債の利息収入に依存する地位に甘んじるのなら、銀行は、民間である必要はないとも言えます。
(笑い話ですが、現在の経済状況が続くと仮定すると、政府債務が減少していくことでいちばん打撃を受けるのは金融機関ということになります)


>貴殿のサプライサイド寄りの経済の捉え方はおおむね賛同できるものですが、それに
>留まらず上記のような需要側の事情にも目配りがあってしかるべきでしょう(セイの
>法則は価格メカニズムを絶対視し過ぎです。もしこれが本当なら、デフレギャップな
>ど存在しえません。)

「財政事情」と「貿易事情」に照らすと、日本経済は、需要サイドで手を打てる余地が限られています。
政府支出(減りかねない)と輸出増加(期待薄)での需要増加が見込まれない状況では、供給を増加させるしかありません。

(セイの法則は、根源的には、輸出増加によってのみ打破できるものです。価格メカニズムが働かないとしたら、貯蓄ではなく資本化されない余剰通貨が生まれたということです)

>端的に言えば、「高い貯蓄率を低落させ消費に向かわせるにはどうすれば良いか」と
>いう問題です。

贈与税や相続税をめぐる与党や統治者の動きも、このような目的に沿ったものだと考えています。(地価や株価を下支えするためという観点で唱えている人も多いと思っていますが)

金融機関が利息を支払ってまで貯蓄を受け入れるということは、それ以上利息を支払っても通貨が欲しい経済主体がいるからであり、そのような存在(額)が減少していけば、預金は減って欲しいと思うのは当然ですし、減ってそれが消費に向けられれば経済状況も改善されます。
しかし、それは、一時的ないし中期的な効果でしかありません。そのような余剰通貨がなくなったところで、その水準を維持することが精一杯という状況になります。

また、貯蓄の減少は、「国債サイクル」に少なからぬ影響を与えるものです。これを考えると、貯蓄率の低落はほどほどに抑える必要があります。
(国民の意識状況から言えば、貯蓄率が低下するとしたら、食いつなぐために貯蓄を取り崩していると考えるべきですから、貯蓄率低下を心配することはないのですが...)


>貴殿の挙げられたアイデアでは、(1)税の累進性強化を行う、(2)生産性(労働価値?)
>の増大により勤労者の実質所得引き上げを行うの二つが確認できまし
>た。(1)は既に申し上げた通り国民が是認しうる範囲の税率改定では効果が薄いと指
>摘しました。
>(2)は、企業の行動原理からして、最初に来る事はあり得ません。魅力的な投資機会
>があり、投資が成功して企業収益が上がる結果、勤労者の賃金増の決定を行うので
>あって、その逆ではありません。

まず簡単に、「生産性」と「労働価値」の違いを説明します。

「生産性」の上昇は賃金の切り下げや財の価格の恣意的な上昇でも実現できますが、「労働価値」の上昇は、賃金や財価格が同じであっても、得られる利益を増加させます。
マクロ的に言うと、通貨量が2倍になっても財の価格水準が同じであるなら、それは、国民経済レベルの「労働価値」が2倍になったことを意味するというものです。


(1)については、薄い効果でもやらないよりもやったほうが経済回復によって意義があると言っておきます。

(2)については、まさにおっしゃられる通りなのですが、経済状況ここに至れば、一度くらいは、生産性上昇に先行した賃金引き上げをやってみたらいかがでしょうと言っておきます。

80年代までは、持続的な輸出増加により、そのような賃金政策を採らなくとも、企業経営そして国民経済をうまく運営することができました。

しかし、そうではなくなった現在においては、まず賃金を引き上げることで産業連関的な国民経済の需要増加を実現し、それを通じて、賃金を引き上げた企業も、操業率の上昇や余剰人員の減少を迂回的ながら実現するという方法しかなく、信用力と価格支配力を維持している一部上場企業がまとまってそれを行い、税制のサポートを受けていれば、必ず経済状況を改善させます。
その後は、生産性の上昇(「労働価値」的意味での)を達成した後やインフレを後から補うかたちでの賃上げに戻してかまわないのです。

個別企業の利益=“資本の論理”に固執する限り、国民経済はさらに悪化し、そのために個別企業の収益力もさらに悪化していくことになります。

そして、個別企業が収益力確保という判断でコスト低減を計るために海外に製造拠点を移せば、日本という国民経済はその分供給が減少するので需要もその分減少し、国内生産財にはより強く、輸入財にも、価格下落圧力が加わるようになります。
海外であっても日本向けに財を生産している限り、日本という国民経済の需要状況=供給状況の制約から抜け出すことはできません。
メリットはせいぜい一時的に競合他社との競争を有利にできるだけで、それも、競合他社にも同じ道を選択させることになり、国民経済の供給=需要はよりいっそう減少することになります。

これは、「総合の誤謬」の典型のようなものです。
個別企業が経営的に良かれもしくはそれしか生き残る方法はないと考えて行動したことで、国民経済全体に悪影響を与え、そのような行動をとった個別企業にも打撃を与えるというサイクルです。

個別企業に、国民経済レベルの合理的な判断を求めたり、それに基づいた経済行動を採ることを強制するわけにはいきません。
個別企業と国民経済のあいだにある論理矛盾を解決するためにこそ、国民経済レベルで経済問題を考える政府部門が必要であり、企業のあいだの利害対立を共通利益に変えるための経済団体があると考えています。

これからまだ2、3年であれば、まだ、日本の企業間で調整して経済問題に当たることができると思っていますが、それ以降もそのような条件が続くとは即断できません。
日本が産業国家として質的に米国を追い抜いたように、中国が、外資や輸入ではなく主体的な力で日本にキャッチアップすることはできないという甘い見通しはできません。

対中市場や対米市場に向けた財の生産を海外で行うべきではないとは言いませんが、日本市場向けの財は、日本でできるだけ生産しなければ、日本を本拠地としている企業自体が脆弱になるのです。
供給=需要であることを肝に命じるべきです。


(2)金融システム

自論:「金融システムに関しては、「銀行の信用創造機能が崩壊の危機に瀕している」というレベルを超えて、“銀行の自立的存続自体が危機に瀕している”と考えています。 現在の経済状況が続く限り、銀行は、自己の存続維持を図るのが精一杯で、信用創造機能の回復を図ることはできません。」


>ご懸念の点は理解できます。しかし我が国があくまでも自由主義経済の国である以
>上、過度かつ恣意的な経営への介入は極力避けるべきと考えます。我々の見通しが正
>しければ、整理・統合を含む既存の道具だてで何とか凌げると考えています。勿論、
>経済は生き物ですから、不測の事態になれば適切かつ迅速に手を打つ必要があります
>し、そうするつもりです。
>公的資金の投入には国民の納得を得るためのそれなりの客観的情勢が必要だと言う制
>約条件も厳然として存在します。
>また、金融機関の自律的再生には時間がかかることも指摘しておきたいと思います。
>柳沢長官が不良債権処理に7年かかると”正直な”見通しを発表したところ、「7年も
>かかるとは何事だ。」と蜂の巣をつついたような騒ぎになり、発言を撤回せざるを得
>なくなったのは記憶に新しいところです。7年はやや楽観的な見通しです。
>今後の経済情勢によっては10年以上かかるかも知れません。


前回書いた内容は、「過度かつ恣意的な経営への介入」を無分別と言えるほど避けたものです。

前回書いた自説:「現時点の“過剰”不良債権に見合う額なのか、自己資本比率を充足させるために必要な額なのかは別として、国費を使って返済する必要がないかたちでの増資を大規模に行うことでしか、金融システムの正常化は実現できません。銀行名や経営陣は、大きな問題がないのなら、そのままでもいいのです。(合併が有効だと考えるのなら合併させてもいいし、経営陣に問題があれば変えればいいのです)「金融システム」が安定したら、過日の公的資金を編成してもらうと共に政府保有株式を徐々に売却して国費を回収するという過程を踏むもよし、それ以外の政治的判断をしてもよしというふうに考えています。対銀行については、このような政策を採らない限り、「デフレ不況」も克服できず、投入した公的資金も戻ってくることがないばかりか、再度、再再度の公的資金投入が必要になります。」


書きながら恥じらいさえ感じていますが、理念や信念を棚上げしてでも、国民経済を救うためであれば、“お金をたっぷり投入しても、経営にはこれまで以上の口出しをせず、通貨政策及び経済政策で銀行経営を軌道に乗せ、その後で投入資金を回収する”というものです。

「公的資金の投入には国民の納得を得るためのそれなりの客観的情勢が必要だと言う制約条件も厳然として存在」することは現実ですが、ここまで鬱積した精神状況であれば、“それでスッキリするのであればやったほうがいい”という国民が多数派だと予測します。
しかも、将来、オマケ付きになるかどうかは別として、売却を通じて返済が実現できるわけですから十分に納得が得られるはずです。
(返済が実現できないということは、日本経済が回復を果たせず、財政も危機から脱せないということです)

「不測の事態になれば適切かつ迅速に手を打つ必要がありますし、そうするつもりです」では、これまでの繰り返しになってしまいます。


不良債権処理は、返済不要の増資を政府が行うとしても、国民経済状況に照らしながらじっくり進めていくべきです。
増資で銀行の財務に余裕が生まれたなかで、不良債権が通常債権に回復する可能性があるのかないのかを見定めるべきです。

柳沢長官の発言に対する反応は、「デフレ不況」解消は不良債権処理にかかっているという、ある意味正しいが絶対的な要件ではない考え方があまりにも強く根づいているからだと思われます。
そうであれば、不良債権処理に7年かかる=「デフレ不況」は7年続くという判断をもたらします。

バブルの形成と崩壊でとてつもなく高い授業料を支払う破目になりましたが、いつまでも高い授業料を払い続けることはありません。
今後3年間で結果として20兆円支払うことになるのなら、今の段階で20兆円支払ったほうが、3年間を無駄にすることなく投入効果もずっと高くなります。


(3)政策の選択肢

>今後の政策実施の方向性として、大きくは次の3つが考えられます。

>1.日本経済を再活性化するために、極端な財政支出拡大と極端な金融の量的緩和を
>行い、起死回生に賭ける。
>2.現在の体力で実行可能な政策項目を全て実施する。
>3.税制を始めとするあらゆる制度や組織を官民ともにラディカルに改革する。

>ギャンブルは小渕政権で終わりました。もう一度やると本当に国を破滅させます。
>従って1.は選択肢たりえません。
>貴殿のお立場は2.と思われます。私の立場は、2.をも採り込みつつ、軸足は3.
>に置くというものです。
>なぜ、2.ではダメなのか。ヒトコトで言うと、有効性に乏しく、良くてもせいぜい
>現状の先送りにしかならないためです。
>大いなる確率で、2.を行っても経済はさらに悪化してゆきます。残念ながら、それ
>が我々の置かれた現状なのです。
>過去のツケを先延ばしにすることなく、少しづつ払ってゆく以外に日本に残された道
>はありません。

色々と書いていますので、ここでは、2.をまず行い、どういう3.の政策を採るべきかをその過程で考えるべきだとのみ書きます。

(4)自説の短期政策に関するもの

注:●で始まり●までが自説


● 税制政策:「中低所得者減税」とその減税金額に対応した「高所得者増税」●

>これについては既述の通りです。悪い政策ではありません。しかし、80年代から連綿
>と続くこれまでの税制に関する思潮は転換して行く必要があります。

この政策の有効性が国民経済に現われ、税制に関する思潮の転換と経済価値観の変容が生まれることを期待しています。


● 金融政策:公的資金による返済不要の増資による銀行の“実質的”一時国有化●

>日本が独裁国家で、私が為政者ならすぐにこれを実施します。現実には世論が納得す
>る客観情勢が訪れるまで不可能です。

今年の2月、3月は、これを実施する絶好の客観情勢だったと考えています。
そして、今なおそのような客観情勢が続いていると判断しています。


● 通貨政策:緩やかな公定歩合の引き上げと通貨の量的緩和政策の継続による実質マイナス金利の実現●

>景気が回復しないと公定歩合は引き上げられませんので、この政策は実は何も言って
>いないのと同じことです。

自説の後ろに、「(但し、所得税変更後に実施。そうでなければ、量的緩和政策は働かず、さらに酷いデフレに陥り企業倒産の増加する)」と書いたように、時間軸としては後に実施すべき政策です。

インフレ可能経済条件をつくりだすなかで、名目金利を引き上げ、実質金利を0もしくはマイナスにすることが、企業経営にとっても、国家財政にとっても必要です。

借入れ名目金利が1.5%や3%のように低いと言っても、GDPデフレータがマイナス1%であれば、実質金利は2.5%や4%になります。
一方、名目金利が4%や5.5%であっても、デフレータが4%であれば、実質金利は0%や1.5%になります。
(前者が国債の金利で後者が企業借り入れ金利とすれば、政府も企業も、現在より2.5%も金利負担が楽になる)


● 財政政策:財政支出目的の優先度を人的活動力への対価支払いに移行●

>賛成です。これが、日本の就業構造を変えて行く起爆剤になるでしょう。

鉄鋼もセメントも運輸も輸入財が不可欠な産業ですから、輸入財に支払われる分マイナス少々だけ、公共投資よりも効果的な需要=供給の拡大につながります。


● 税制政策:設備及び就業者の追加的投資に対応した「法人税」減税●

>「政策意図」は分かりますが、法人税制の見直しには日本の都合だけを考えるわけに
>は行きません。

現実の納税行為として誰が支払っているにしても、経済論理としては、国民経済=国家の税は経済主体(企業)が負担しているという認識を経済団体が持つようにならないと税制変更は難しいテーマだと考えています。

「法人税」のあり方については、じっくり考えるべきだと思っています。

(小泉政権は、法人税の1兆円減税に踏み切ろうとしていますが、減税分が追加的に資本化されなければ、経済状況の改善にはつながらず、歳入の減収だけで終わってしまいます)


● 資産価格:株価及び地価の公的買い支え政策の放棄
(株式や土地は、経済合理性のレベルまで下落すれば否応なく安定し、インフレが進行すれば価格は上昇に転ずる)●

>賛成です。私が主張する方向でも決してデフレ・スパイラルにはならない、という論
>拠もここに繋がっています。


● それぞれの政策を実施する理論的根拠を政権が明確に説明する。●

>この種の「教育的効果」が発揮されれば素晴らしいことですが、大衆はえてして耳を
>貸しません。

人々の“直感”はそう捨てたもんじゃないと思っています。

理屈を立てて説明はできないとしても、これは良いこれは悪いという直感的判断はなかなかのものです。
(変な言い方ですが、知識をつなぎあわせた論理を展開している人よりも、経済活動を現実的に行っている人の直感力のほうが勝っていることが多いと感じています)

貴殿に苦言を呈することではないのですが、国会内で、未だこなれていない英語をつかって経済事象を説明することは意識して控えるべきだと思っています。
“普通の人”の理解を初めから遠ざけているようなものです。


● 企業が抱える余剰人員については、その整理をできるだけ先延ばしするよう要請し、そのために必要な借り入れができるよう金融機関を指導する。●

● 製造拠点の海外移転とりわけ“対日輸出拠点”目的での海外移転を抑制するよう経済界に要請する。(利益と販売を確保したいという企業の気持ちはわかるが、供給のないところに需要はないので、ますます販売不振と価格下落に陥る)●

>この種の行政指導が通用するのは、70年代まででした。

金融機関は指導しているし今後もすべきだと思っていますが、産業については、お願いの域を越えるものとして考えているわけではありません。

内閣総理大臣が、企業自身にとっても長期的には利益であるとの理を加えてお願いすれば、100社のうち70社くらいは理解を示し、70社が理解を示せば他の30社も抑制的に振る舞うと思っています。

どちらにしても、政府の役割と言うより、経済団体の役割だと思っています。


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