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[近代史7] テレビドラマ 豊川悦司・常盤貴子 愛していると言ってくれ (TBS 1995) 中川隆
1. 中川隆[-14099] koaQ7Jey 2022年1月22日 10:32:57 : 12fdnGwI6A : OEZKVE5BWkpqR0E=[1]
愛していると言ってくれ(1995)第1話「出会い」
https://www.youtube.com/watch?v=dP1lceQFAeg

愛していると言ってくれ(1995)第2話「約束」【編集動画】
https://www.youtube.com/watch?v=epiPmhQ39qw

愛していると言ってくれ(1995)第3話「涙」【編集動画】
https://www.youtube.com/watch?v=H70vFfFnq4o


ドラマ・・・愛していると言ってくれ #6 過去
https://www.youtube.com/watch?v=rAgjQR16dTE

ドラマ・・・愛していると言ってくれ #7 再会
https://www.youtube.com/watch?v=DmGWQCK8S5k

ドラマ・・・愛していると言ってくれ #8 秘密
https://www.youtube.com/watch?v=S3mk2m4kbRw

ドラマ・・・愛していると言ってくれ #9 疑惑
https://www.youtube.com/watch?v=iGEjOoQ5yQ4

ドラマ・愛していると言ってくれ #10 悲劇
https://www.youtube.com/watch?v=38lrGr4MRj0

http://www.asyura2.com/21/reki7/msg/855.html#c1

[近代史5] ロシア・ウクライナの歴史と現代史 中川隆
28. 2022年1月22日 10:37:55 : 12fdnGwI6A : OEZKVE5BWkpqR0E=[2]

2022.01.22XML
米国がウクライナを軍事的支配地にしないと保証しろという姿勢を変えない露政府
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202201220000/

 ロシア政府はアメリカ/NATOに対し、NATOをこれ以上東へ拡大させないこと、モスクワをターゲットにできる攻撃システムをロシアの隣国に配備しないこと、ロシアとの国境近くで軍事演習を行わないこと、NATOの艦船や航空機をロシアへ近づけないこと、定期的に軍同士の話し合いを実施すること、ヨーロッパへ中距離核ミサイルを配備しないことなどを保証する文書を作成し、1月23日までに提出するよう求めている。

 そうした中、1月18日にドイツのアンナレーナ・ベアボック外相はモスクワでロシアのセルゲイ・ラブロフ外相を会談、今後のことはアメリカ政府次第だと言われたという。ドイツの外相はアメリカ政府のためにロシア政府の本心を探ろうとしたのかもしれないが、ロシア政府から駆け引きをしていないと言われたわけだ。

 アメリカはユーラシア大陸の周辺部を支配、内陸部を締め上げるという長期戦略を持ち、その戦略に基づいてジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」も作成されている。

 この長期戦略を始めたのはイギリス。19世紀のことだ。それをまとめたのが地政学の父とも言われるハルフォード・マッキンダー。大陸を締め上げる「三日月帯」の西端がイギリス、東端が日本であり、中東でイギリスは帯の上にサウジアラビアとイスラエルを作り上げた。

 明治維新にイギリスとアメリカが深く関与しているが、琉球を併合してから台湾、朝鮮半島を経て大陸を日本が侵略した背景にも米英両国が存在していた。これは本ブログで繰り返し書いてきたこと。金子堅太郎やセオドア・ルーズベルトは日本がロシアと戦ったのはアメリカのためだとしている。

 その後も日本は北を目指し、1939年5月11日にノモンハン付近で満州国警備隊と外モンゴル軍が交戦、日本側は関東軍が陸軍省と参謀本部の方針を無視して戦闘を継続して敗北している。関東軍が陸軍省や参謀本部を無視できた理由はひとつしか思いつかない。

 ソ連は西側でナチスが支配するドイツを警戒、イギリスやフランスに協力を要請、ドイツとの国境線まで軍隊を派遣すると提案したが、受け入れられなかった。そして1939年8月23日、ソ連はドイツと不可侵条約を結ぶ。

 そのドイツは飛び地の問題を解決しようとしていた。第1次世界大戦後、ドイツは本国と東プロイセンの間にポーランド領(ポーランド回廊)ができ、東プロイセンは飛び地になったのだ。

 その問題を解決するためにドイツ政府はひとつの案を出す。住民投票を実施してドイツへ回廊を返還する意見が多ければ返還、その際にドイツはポーランドに鉄道やバルト海へ通じる高速道路を渡すという案を出した。その案をポーランドは受け入れ、1939年3月21日に同国のジョセフ・ベック外相がドイツの首都ベルリンを訪問することになる。

 しかし、ベックは姿を現さなかった。ロンドンへ向かったのだ。そして26日にポーランドはドイツに対して回廊を返還しないと通告、ドイツ軍は9月1日にポーランドへ軍事侵攻、3日にイギリスとフランスはドイツに対して宣戦布告したが、そこから半年ほどの間、本格的な戦闘は行われていない。

 この時期は「奇妙な戦争」と呼ばれている。ドイツは戦争を拡大しようとせず、イギリスやフランスも動かなかったのだ。イギリス軍やフランス軍はドイツ軍の電撃作戦で敗北したわけではない。

 ドイツ軍は1941年6月22日、310万人を投入してソ連へ向かって軍事侵攻を開始する。「バルバロッサ作戦」だ。西側に残ったのは約90万人だけだった。この非常識な作戦を命じたのはアドルフ・ヒトラーにほかならない。

 ドイツ軍がソ連へ攻め込んだ直後の1941年7月に日本軍はソ連へ軍事侵攻する目的で関東軍特種演習(関特演)を計画したが、8月に中止を決定、ターゲットを東南アジアへ切り替えた。

 バルバロッサ作戦でドイツ軍はレニングラード、モスクワ、スターリングラードなどへ肉薄、最終的にはソ連が勝利したものの、2000万人以上のソ連国民が殺され、工業地帯の3分の2を含む全国土の3分の1が破壊されている。ドイツはレニングラードを攻撃した際に兵糧攻めを実施、多くの餓死者を出したが、そのひとりがプーチンの兄だ。

 この作戦が始まる直前にドイツがいた場所までアメリカ/NATO軍は来ている。CIAは2015年から、つまりウクライナでアメリカ政府がネオ・ナチを使ったクーデターを成功させた翌年にアメリカの南部でウクライナの特殊部隊を訓練、アメリカ/NATO軍は兵器をウクライナへ持ち込み続けている。

 こうしたアメリカの恫喝にロシアは動じず、当初の要求を言い続け、その一方で中国やイランと軍事演習をインド洋などで実施している。ウラジミル・プーチン露大統領は「戦争を望まないが、戦争したいなら受けて立つ」という姿勢。2003年にアメリカはイラクを先制攻撃、100万人とも推測されている人びとを殺したが、その前に有力メディアは存在しない「大量破壊兵器」で攻撃を正当化していた。そうしたプロパガンダは今でも通用しているようだが、「脅せば屈する」というアメリカが繰り返してきた戦法は通じていない。

 他国にアメリカが何をしでかすかわからない国だと思わせれば自分たちが望む方向へ世界を導けるとリチャード・ニクソンは考え、狂犬のように思わせなければならないとイスラエルのモシェ・ダヤン将軍は語った。ジョー・バイデン政権の好戦派は正気を失っているようにも見える。

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202201220000/
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/472.html#c28

[近代史6] 傀儡政権とはこういうもの _ アフガニスタン政府軍がタリバンと戦わずに逃げた理由 中川隆
3. 2022年1月22日 11:00:07 : 12fdnGwI6A : OEZKVE5BWkpqR0E=[3]

アフガニスタンを飢えさす米国の非人道的経済制裁 干ばつで食料危機に 国連が緊急人道支援へ
2022年1月20日
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/22590


 国連は11日、一段と深刻になるアフガニスタンの食料危機に対応するため、今年50億j(約5770億円)の緊急人道支援をおこなうことを決め、各国に拠出を呼びかけた。1カ国に対する支援額としては国連創設以来最大だという。原因は、過去30年間で最悪の干ばつがアフガニスタンを襲っていることに加えて、タリバンが政権を掌握した後にアメリカがおこなっている経済制裁だ。「アフガニスタンの人権を守る」といいつつ、もっとも弱い子どもや女性、年寄りたちを餓死に追いやるアメリカに対し、「米国はただちに経済制裁をやめよ」の声が高まっている。

 国連人道問題調整事務所と国連難民高等弁務官事務所によると、アフガニスタンでは現在、人口の55%に当たる2440万人が人道支援を必要としている。なかでも390万人の子どもを含む470万人が急性の栄養失調となり、今の状態が続くと13万人の子どもたちの命が奪われると警告している。

 2001年のアメリカの軍事侵攻で政権を追われたタリバンは、昨年8月16日、再び政権を掌握した。タリバンは全土を制圧すると恩赦を発表し、国民に向けて仕事に戻るよう呼びかけた。一週間後にはバザールも再開され、女性の姿も見られるようになった。

 現地を頻繁に訪れている日本人研究者たちは、政変後治安は劇的に改善されたとのべている。2010年以降、内戦によって毎年数万人の命が奪われてきたが、ISによるテロ以外は平穏な日常が帰ってきたという。

 だが、かつて農民80%、遊牧民10%で100%に近い食料自給率を誇っていたアフガニスタンは、40年あまり続く戦争で国内経済が疲弊してきた。そこを過去30年間で最悪という干ばつが襲った。

 問題はそうした瀕死の状態にあるアフガニスタンに対し、アメリカが経済制裁を続けていることだ。バイデン政府はタリバンをアフガニスタンの正式な政府として承認せず、米国にあるアフガニスタン中央銀行の資産90億jを凍結した。また、世界銀行の復興資金やIMFの供与金などもすべて凍結されている。

 人々は銀行から現金が下ろせなくなった。企業も事業費がなくなって給与を支払えなくなり、失業者が増えた。病院は薬が手に入らず、食料品価格は高騰して人々は食べ物が手に入りにくくなっている。

 多くの餓死者が出る危機に対して国連が人道支援を呼びかけているのに、アメリカは経済制裁をやめようとしない。上智大学教授の東大作氏は「99・9%のアフガン人は祖国に残って生活を続けている。アフガン支援のための国連職員も1300人が従来通り活動を続けている。タリバンも人道支援は歓迎している」といい、現状の打開を訴えている。

「平和と相互扶助の精神」故・中村哲氏の言葉

 故・中村哲医師が創設したペシャワール会の現会長でPMS(平和医師団・日本)総院長の村上優氏も、同会のホームページでアフガニスタンの現状を訴えている。

 村上氏は、日本の多くのメディアが女性の人権や恐怖政治への懸念ばかり突出させて報道しているが、現実のアフガニスタンでは治安が回復し、人々が普通に移動しており、タリバン政権を多くの国民が受け入れているとのべている。

 PMSの活動も、8月21日には診療所、9月2日には農場、10月7日には灌漑用水路事業が活動を再開した。事業再開に現地の長老から感謝のメッセージが寄せられたこと、タリバンも視察にやってきて中村医師とPMSの事業を称え、「あなたがたのような仕事をしていたらこの国はもっとよくなっていた」といい、安全を保障するといってきたことも伝えている。一方、危機にあるアフガニスタンに経済封鎖をするアメリカに対し、「なんという矛盾でしょうか。農業を復興し食料自給率を上げるなど、国としての最低限度の自立を支援するという発想はありません」と厳しく批判している。

 最後に村上氏は、2001年に経済封鎖で困窮したタリバンがバーミヤンの仏跡を破壊し、国際的非難が巻き起こったときの中村哲医師の次の言葉を紹介している。「われわれは非難の合唱に加わらない。暴に対して暴をもって報いるのは、われわれのやり方ではない。餓死者100万といわれるこの状態のなかで、今石仏の議論をする暇はないと思う」「真の人類共通の文化遺産は、平和と相互扶助の精神である。それはわれわれの心の中に築かれるべきものである」。

 日本が平和国家として役割を果たすことが求められている。

https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/22590
http://www.asyura2.com/21/reki6/msg/527.html#c3

[近代史4] あの中・彬とも?広末涼子の枕営業と関○連合との危険すぎる関係について。 中川隆
1. 2022年1月22日 13:34:19 : 12fdnGwI6A : OEZKVE5BWkpqR0E=[4]
【ゆっくり解説】あの中●彬とも?広末涼子の枕営業と関○連合との危険すぎる関係について。
2021/12/14



【ゆっくり解説】今回は広末涼子さんについて解説しました😖

清純は女優としてブレイクした広末さん...そんな裏の顔があったとは...

http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1737.html#c1
[近代史4] 神田沙也加さん妊娠していた!?悲しい真相。 中川隆
4. 2022年1月22日 16:53:43 : 12fdnGwI6A : OEZKVE5BWkpqR0E=[5]
神田沙也加さんと交際俳優の元恋人 誹謗中傷で憔悴、仕事もいくつか失う
2022/01/22 11:15NEWSポストセブン

沙也加さんと交際していた前山剛久。現在は活動休止中

 ミュージカル『マイ・フェア・レディ』の公演のため、北海道札幌市内のホテルに宿泊していた神田沙也加さん(享年35)が変わり果てた姿で見つかったのは、昨年12月18日のことだった。沙也加さんは昼公演に出演する予定だったが、入り時間までに会場に現れず、マネジャーが警察に通報。ホテル内を捜し回り、14階の非常用屋外スペースに倒れているのが見つかり、搬送先で死亡が確認された。

 沙也加さんが転落したホテルの部屋には、2通の遺書が残されていた。1通は事務所関係者宛て、そしてもう1通が、交際していた俳優・前山剛久宛ての遺書だった。

 沙也加さんと前山は、昨年のミュージカル『王家の紋章』での共演を機に、10月から交際を開始。沙也加にとっては、結婚を視野にいれた本気の交際だったが、交際開始からほどなくして、前山に元恋人・A子さんの影がチラつくようになる。

 前山は、昨年夏頃まで年下のグラビアアイドル・A子さんと交際していた。一度は別れたものの、沙也加との交際中も再びLINEを送るなど、連絡を取っており、それに気づいた沙也加さんが激怒。何度も話し合いが繰り返されたが、沙也加さんは、そのたびに開き直った前山さんに罵声を浴びせられていたという。

 沙也加さんに対する前山の言動が報じられると、ネット上は敏感にこれに反応。前山が連絡を取っていたA子さんが特定され、LINEの履歴などが流出する事態にまで発展した。

「沙也加は生前、前山さんとの会話の録音や、LINEなどを何人か信頼できる人に託していました。それがどういうわけか流出してしまい、A子さんの素性まで特定されてしまったんです」(沙也加さんの知人)

 これにショックを受けたのが、A子さんだ。彼女の知人は困惑したようにA子さんの立場を代弁する。

「そもそも、A子は昨年夏、一方的に前山さんにフラれたんです。しかも、当時2人は同棲していたので、突然追い出される形だったんですよ。それなのに、前山さんが再びA子に連絡をしていると聞いたときは、驚きましたね。もちろん、A子は沙也加さんとは面識はありません」(A子さんの知人)

 だが、ネット上ではA子さんに対する誹謗中傷まで飛び交っており、A子さんもまた、憔悴しているという。

「A子は前山さんから連絡が来ても復縁するつもりなど一切ないし、怪しまれるような関係ではまったくなかった。かといって、完全に無視するのもおかしいから適当なやりとりをしていただけなんですよ。ある意味A子も被害者といえる立場なのに、今回の騒動によっていくつか仕事も失ってしまったそうです」(前出・A子さんの知人)

※女性セブン2022年2月3日号
https://news.goo.ne.jp/article/postseven/entertainment/postseven-1721084.html
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1740.html#c4

[近代史3] メンデルスゾーン 交響曲 『スコットランド』 中川隆
9. 2022年1月22日 19:43:47 : 12fdnGwI6A : OEZKVE5BWkpqR0E=[6]
古典の磁場の中で:その1 5曲のメンデルスゾーン
https://open.mixi.jp/user/7656020/diary/1961526877?org_id=1961576346

 これから主にメンデルスゾーンやブラームスのことを書いていきたいと思うのですが、なにしろここ数年の忙しさに加えてこの暑さなので頭が思うように働かず、細切れにしか書けそうにありません。つぶやき同然の内容の薄さになりそうですが、なにとぞご容赦いただけましたら幸いです。

 メンデルスゾーンの交響曲は少年時代にまとめ書きされた弦楽のための交響曲のあとに5曲書かれていますが、うち1番を除く4曲には標題がつけられています。番号順に記すと2番「賛歌」3番「スコットランド」4番「イタリア」5番「宗教改革」で、うち「スコットランド」と「イタリア」がメンデルスゾーンの交響曲における代表作となっているのは、やはり国名というわかりやすい標題の力によるところも大きいのでしょう(そしてこの2曲を比べれば人気や演奏頻度の点で「イタリア」が抜きんでているのは確かだといえそうです)
 けれどこの2曲に限らず、メンデルスゾーンの曲は意外に演奏が難しいというか、なかなか満足のいく演奏に出会えないような気がします。その理由もまた「イタリア」の場合より明確に出ていると思うのですが、たとえば技術が高いとはいえないアマオケがそれでもがむしゃらに頑張ると、ベートーヴェンなら曲想との兼ね合いで様になる場合もあるわけですが、メンデルスゾーンではそうはいかない。ボロボロでも熱気があればなんとかなる音楽ではありませんし、傷がなくてももっさりしてたらやはり様にはなりません。第3楽章がスケルツォではなく流麗な古典舞踊調になっている点に端的に表れているとおり、余裕をもって洗練美を表せなければどうにもならないところがあります。特に古典的な形式に則った1番と4番「イタリア」および5番「宗教改革」にそれが強く出ています。
 その点で微妙なのが2番「賛歌」と3番「スコットランド」ですが、そのことを考えるにはこれら5曲の作曲順を整理しておく必要があります。当時の作曲家にしばしば見られたことですが、メンデルスゾーンのこれらの交響曲は作曲の順番ではなく楽譜が出版された順に番号が割り当てられていて、しかも「イタリア」と「宗教改革」の出版は没後。なんと現在最も人気のある「イタリア」を作曲者自身は出版していなかったのです。ともあれ作曲された順に並べ替えれば1番、5番「宗教改革」、4番「イタリア」、2番「賛歌」、最後が3番「スコットランド」という順になり、しかも「イタリア」は何度も改訂が加えられ、「スコットランド」は「賛歌」よりはるか以前に着手されたにもかかわらず長い中断を経て「賛歌」の2年後にようやく完成をみています。つまりメンデルスゾーンのこれら5曲は古典的な形式にきちんと則った1番、5番、4番の後に、楽章の数は4曲でも古典的とはいいがたい要素が含まれた3番が中断を挟みつつも書かれる間に最後に着想された2番が先に完成をみているのです。2番がベートーヴェンの9番から前半は器楽のみで後半に声楽が加わるとのアイデアだけ借りてはいても、それ以外は似たところなどまるでない曲になっていることを思えば、あるいはメンデルスゾーンはどこかの時点で古典様式からの脱却を目指しつつ、調和のとれた形でそれをなしとげようとしていたのではないかという気がするのです。「スコットランド」が全曲を切れ目なく続けるよう指示しつつなお着想当初の4楽章制を捨てずにいたことも、その表れだったのかもしれないと。彼流の古典交響曲のいわば完成形であり現に最大の人気曲である「イタリア」を出版せず、難産の末に「スコットランド」を自身最後の交響曲として送り出したメンデルスゾーンがなにを望んでいたのかは、早すぎた彼の死によって永遠の謎になっています。

「イタリア」の演奏が難しいのは要求される技術の高さゆえですが、「スコットランド」の曲想はそこまでの洗練を求めていません。その曲想がもっさりした演奏でも様になるのは「イタリア」ではさすがに評価されないクレンペラーが少なくとも我が国では半世紀たった今でも決定盤の地位を失わないことに表れていると思います。むしろ「スコットランド」の演奏の難しさは何者かになろうとして果たせなかったメンデルスゾーンの過渡的な姿が、残された曲に反映しているからではないかと思うのです。それが過渡的な形であるがゆえにそのまま再現してもなかなか説得力に繋がらない、そういう種類の難しさをこの曲に感じてしまうのです。
 僕にとってこの曲の初めてのレコードはクレンペラーと並んで有名だったマーク/ロンドン響によるデッカ盤でしたが、それを聴いた時点でこの曲の難しさめいたものを漠然とながら感じずにいられなかったものでした。その後クレンペラー/フィルハーモニア、コンヴィチュニー/ゲヴァントハウスなど評価の高かった60年代の名盤からギブソン/スコティッシュ・ナショナル、ドホナーニ/ウィーンフィルなど70年代の新録音まで聴いてみたのですが、どれもあちらを立てればこちらが立たずという趣で、しかもすれすれで的を外しているようなもどかしさが拭えないというのが実感でした。そんなときに巡り会ったのがSP時代の、それも電気吹き込みが始まったばかりの1929年収録という、今では90年前の録音にならんとしているワインガルトナー/旧ロイヤルフィル盤だったのです。

コメント


mixiユーザー2017年07月15日 09:19
残月◯゜様おはようございます。

もうかなりの間まとまった時間がとれずにいるため、本当はきちんと聴き比べたい音源も続けて聴けず日にちの開いた記憶頼りになるのが忸怩たる思いですが、印象論にすぎなくても一度は整理しておきたいと思い、書き始めることにいたしました。今後ともよろしくお願いいたします。

mixiユーザー2017年07月17日 19:24
メンデルスゾーンについては、ベートーヴェンからシューベルトを経たドイツの交響曲の系譜をシューマンと共に支えた作曲家、という印象を持っています。
メンデルスゾーンが初演を振ったというシューベルトの大ハ長調、やっぱり彼もシューマンと同様に興奮しながらスコアを読み込んだのでしょうか。

ブラームスについては、色々思うところあって(今書いている拙作にブラームスの一番が出てくることが大きな理由です)どのようなご意見を読ませていただけるか大変気になっております。
個人的には、ブラームスはワーグナーと正反対の方向を向きながらも実は同じ場所に背中合わせで立っていた作曲家ではないかと愚考する次第であります。
ワーグナーが楽劇の題材にゲルマン民族の伝説に行きついたことと、ブラームスが純音楽を突き詰めた結果バロックの技法に至ったことはどこか似ていると思うのです。……そういえば、ワーグナーのライトモティーフとブラームスの交響曲の一部の書法、どちらもバッハの対位法から学んだものが多かったような……?

mixiユーザー2017年07月17日 20:58
Astray様こんばんは。

なにしろ同じ時代に活躍した人同士の組み合わせですから、メンデルスゾーンとシューマンや、ワーグナーとブラームスの音楽史的な立ち位置が近いのは確かに当然のことであって、その上での両者の違いにこそ注目すべきとのご意見には大きく頷けるものがあります。御作『吹雪のころに』にもブラームスの1番と並んでワーグナーの「巡礼の合唱」が重要な役割を担っていましたが、それらと共にバッハの「パルティータ」もまた登場するあたり、今回のコメントにその3者が登場するのもむべなるかなと感じるところです。

まずメンデルスゾーンとシューマンについては、メンデルスゾーンの5曲からはメンデルスゾーンがどこかへ行こうとしていたこととその方向性が窺えるように思えるのに対し、シューマンの4曲からはそういう感じがあまりしないのが対照的なことと感じられます。最後の交響曲となった3番「ライン」がベルリオーズの「幻想交響曲」とマーラーの5楽章交響曲を橋渡しする、中間楽章が折り返し点になっているタイプの5楽章形式なのが目を引きますが、ではシューマンがそれをより深めようとしていたとまでいえるのかといえばそこまでは無理とも感じるのです。

ブラームスについてはワーグナーというより、メンデルスゾーンとチャイコフスキーがブラームスを挟んで対照的な位置にいるような気がします。SP時代にブラームスの全集をいち早く録音したのがストコフスキーとワインガルトナーでしたが、チャイコフスキーを得意としたストコフスキーとチャイコフスキーの録音を残さずわずか1曲とはいえメンデルスゾーンで水際立った演奏をものしたワインガルトナーとの違いが2人のブラームスには聴き取れるように思えるのです。

https://open.mixi.jp/user/7656020/diary/1961526877?org_id=1961576346
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/894.html#c9

[近代史3] メンデルスゾーン 交響曲 『スコットランド』 中川隆
10. 2022年1月22日 19:45:06 : 12fdnGwI6A : OEZKVE5BWkpqR0E=[7]
古典の磁場の中で:その2 2つの疑似ステレオ技術
https://open.mixi.jp/user/7656020/diary/1961576346?org_id=1961526877


 僕が買ったワインガルトナーによる復刻盤LPは78年のキャニオンレコードによるもので、アルティスコというレーベル名称による一種の疑似ステレオ盤でした。当時ベートーヴェンの8番と9番くらいしか現役盤がなかったワインガルトナーの、9曲のベートーヴェン全集がEMIと踵を接するように一気に発売されたのが77年でしたが、EMIがそれだけで終わったのに対してアルティスコは続いてブラームス全集を出し、その後登場したのがこのメンデルスゾーンだったのです。その他にSP初期の伝説的な指揮者フランツ・シャルクの録音をLP3枚に集成したのもシベリウスの同時代人ロベルト・カヤヌスが指揮したシベリウスの1番と2番を復刻してくれたのもこのレーベルでした。
 僕がアルティスコのワインガルトナーに手を出したのはアートフォン・トランスクリプションと銘打たれたアルティスコの復刻技術がどんなものかという興味と現役盤の点数が少なかったこの指揮者の全体像がこれで掴めるのではないかという思いが半々という感じでしたが、その下地になっていたのがGR盤と呼ばれる当時のEMIの復刻シリーズのあまりの音の悪さでした。ノイズ除去を意識するあまり高域をばっさりカットしていたGR盤の音は当時鼻をつまんで出す声にたとえられていたほど評判が悪く、僕もGR盤を聴くときはドルビーBをかけてカセットテープに録音した上で、再生時はドルビーをかけずに聴くという裏技で高音を足していたものです。EMIから出た全集のほうは懇意にしていたレコード店でGR盤より改善されているといわれたので店で試聴させてもらった上で買いましたが、そのEMIよりアルティスコ盤は序曲などが収録されている点でも勝っていたので、結局アルティスコ盤も買った上で聴き比べたのでした。そのとき気づいたのが盤面にはMONOと記されたEMI盤の解説書の最後に記された「このレコードは最新の技術によりステレオ化されています」という注意書きで、これが1本の針で2本の溝を盤面に刻みかつ再生するというステレオLPの仕組みでは、左右に厳密に同じ信号を記録再生することができないという問題に2つの会社がそれぞれの立場で取り組んでいることを僕に知らしめたのでした。同じ信号を同じに記録再生できないからこそ、左右の信号を変える必要がある。違っていても正確に記録再生できているわけではないが、変えておくことで同じでなければならない信号が不揃いに記録再生されてしまうことの弊害からは逃れられる。そのことに両社が気づいていたことが2つのワインガルトナーのベートーヴェン全集の盤面には文字通り刻まれているのです。
 EMIの方はモノラル信号に僅かに位相差を加えて音像を広げつつ、高域になるほどズレが出やすい針1本での録音再生機構の限界を逃れようとしたもので、聴感上の違和感を最小限に抑えることが優先されていましたが、アルティスコ盤は高音を左、低音を右に配することで高弦が左、低弦が右に定位するところまで加工されていたのです。そのためアルティスコにはヴァイオリンが左右に配置されていた当時の歴史的事実を歪曲するものと批判がなされ、そのせいかワインガルトナーのスコットランドを最後に新譜が出なくなってしまったのでした。
 その批判は確かに的を射たもので同じことを感じないわけではありませんでしたが、それでもなお両者を聴き比べれば総合的にアルティスコ盤が勝っていると僕には感じられたのでした。再生周波数により定位を定めてゆくという加工は当然ながら周波数バランスへの注意深さを要求するものであり、まだRIAA規格が存在せず各社がバラバラの録音再生カーブを用いていたSP音源の音を整える結果にもつながっていたからです。EMI盤が音色の面ではいささか明るすぎ古い電蓄タイプのスピーカーでないと金属的な印象に繋がりかねなかったのに対し、アルティスコ盤は当時の新しい機材で聴いても各楽器の音色がよりそれらしく鳴る点ではるかに上回っていたのです。これは当時英デッカがエクリプスレーベルとして発売していた廉価シリーズにおける疑似ステレオ盤にもいえることで、記録再生カーブがRIAAでなかった同社のモノラル音源があれほどリアリティのある音色で聴けたのも、疑似ステレオ化の作業に伴う周波数特性の調整があったからこそだと思うのです。
 ともあれアルティスコの復刻は楽器の定位こそ本来のものではないにせよ、ステレオLPという環境にモノラル音源を徹底的に最適化させることにかけてはデッカのエクリプスシリーズと並ぶ絶後の成果を成し遂げたものでした。それあればこそ、あのときワインガルトナーの「スコットランド」は半世紀の時を越えその真価を伝えてくれたのだと思うのです。

コメント

mixiユーザー2017年07月17日 20:40
興味深い内容です。そういえば、デッカエクリプスの、ベーム=VPOのシューベルト8番、5番の演奏も録音も好きで、あとで疑似ステと知ったのですが、処分しがたく未だに持ってます。やっぱ良盤なのかなー。

mixiユーザー2017年07月17日 21:25
こめへん様こんばんは。

デッカのエクリプスシリーズは当時帯と日本語解説書を輸入盤に付け足してなお500円台という破格の安さでしたから僕も随分買い込んだものでしたが、ステレオ音源はもちろんモノラル音源がとにかくすばらしい音で、ステレオカッターでカッティングされたモノLPとは次元の違う彩りの豊かさでした。ステレオ針でモノラル音源をカッティングし再生することの原理的な難しさに気づきつつあった僕にとって、エクリプスシリーズ中の擬似ステレオ盤は大きな啓示ともなった存在だったのです。

おそらくデッカのffrr録音は周波数特性を見直さない愚直な鮮度最優先の復刻では決して本来の色彩感の再現ができないことと思いますので、そのベームのシューベルトは手放さないことを強くお勧めいたします。

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[近代史3] メンデルスゾーン 交響曲 『スコットランド』 中川隆
11. 2022年1月22日 19:46:12 : 12fdnGwI6A : OEZKVE5BWkpqR0E=[8]
古典の磁場の中で:その3 ワインガルトナーの示唆
https://open.mixi.jp/user/7656020/diary/1961613276?org_id=1961613015


 LP復刻当時すでに録音から半世紀。今では90年前の音源になりつつあるワインガルトナーの「スコットランド」 にもかかわらずこの演奏を抜きにしてこの曲を、ひいてはメンデルスゾーンという作曲家を語ることは僕にはできそうにありません。彼の「スコットランド」は他の演奏とは考え方が根本的に異なるものでした。それほど僕にとっては啓示的なものでした。
 現在聞ける多くの演奏で「スコットランド」の第1楽章は序奏を持つ古典交響曲とみなされていて、序奏と主部の区分を明瞭につけようとする一方で主部のテンポを極力一定に保つことに力が注がれています。確かに外見上この第1楽章はそのような形式で書かれており、古典交響曲の約束事を当てはめればそういう演奏になるのは当然すぎるほど当然です。でもそうするとこの音楽がなにを語っているのかはとたんに見えなくなるのです。本来なら形式的な見通しがついて当然の措置がなされているにもかかわらず、とくに主部の数多くの楽想が口をつぐんでしまうのです。
 ワインガルトナーは序奏を速め、主部を遅めに演奏して落差を小さくする一方で、主部の楽想が変わるごとに固別のテンポを与えています。それはどんな小さな変化も見逃さないほど徹底したものでありながら、それが煩わしさにつながることは決してありません。彼の時代の大指揮者たちに共通する特徴との2つの違いがそれを阻んでいるからです。決して旋律を粘らせないことと、テンポの振れ幅が抑制されていることです。

 当時の大指揮者たちのほとんどは、自分が感じたものを100%、むしろ150%や200%まで表現せずにはいられない人々でした。たとえばメンゲルベルク、ストコフスキー、フルトヴェングラーなど、それぞれ本質も芸風も異なる人々ですが、その点だけは共通していたのです。だからこそ彼らの演奏はSPの音質を通じてさえ雄弁さを発揮し、それが彼らの実演に接することができぬ人々へも名声を広げることになったのでした。彼ら3人がベートーヴェンと同等かそれ以上にチャイコフスキーの録音で名声を博していたのは偶然ではありません(今では信じ難いことですが、戦前に発売されたフルトヴェングラーのベートーヴェンの交響曲は「運命」ただ1曲だけでした。もちろんそれは当時最も優れた「運命」とされたレコードでしたが、同時期に録音された「悲愴」もまたメンゲルベルクと決定盤の座を争う1枚だったのです)
 ワインガルトナーの流儀はそれら当時の大指揮者たちと正反対とさえいえる、感じたものを100%出し切るというより抑制を尊ぶものでした。どんなに小さな曲想の変化にも敏感に反応しているにもかかわらず、当時の同僚たちのようにそれを強調するのではなく控えめに表現することでさりげなく聴かせようとしているのです。そのことで彼の演奏は指揮者の意志力で曲を背後から駆り立てるというよりは変化に伴い受け身に変わってゆくようなものになっていて、柔構造めいた融通無碍な流動性を示しつつも均整美を見失うことがありません。多くの指揮者たちがこの曲を古典的な形式の枠組みの中に連れ戻し閉じ込めることで失われる風のような自在さを保ちつつ、この曲が痕跡のように残している古典的な形式感をも決して裏切らないのです。この「スコットランド」という曲の特質にこれほど寄り添い、その独自性をかくも見事に描き出した演奏には他に出会ったことがありません。この曲のあるいは最初の録音だったかもしれないワインガルトナーの古い古い録音が、にもかかわらず伝えてやまぬ名人の一筆書きのような草書の美。それは僕に風を連想させずにおかず、ひいてはかつて陰謀劇の舞台となった古城の前に佇むメンデルスゾーンが耳にしたかもしれぬ風の声、古の戦いの鬨の谺や悲愁の織りなす無常の響きの幻想にさえ誘う力を盤面に留めているのです。
 なぜこんな演奏が可能だったのか。これはもう頭で考えた結果というよりワインガルトナーその人の美意識や人間性がメンデルスゾーンのそれに近かったのだと考えるべきもののような気さえします。たとえばロンドン響時代のアバドがDGから出した全集録音は5曲の交響曲の変遷の行く先を考察していることが窺える点において極めて興味深いものですが、それゆえ考え抜いた末に決定された解釈という感触もつきまとい、およそ融通無碍からは遠い演奏なのも決して否定はできないのですから。

 そんなワインガルトナーが一人の指揮者によるベートーヴェン交響曲全集を最初に完成させたということは、当時における彼のベートーヴェン演奏が今からは想像し難いくらい高く評価されていた証であるだけでなく、往時のベートーヴェン像や美意識がその後のものとは異なるものだった可能性をも示唆しているような気もします。ストコフスキーはいうに及ばず、メンゲルベルクやフルトヴェングラーさえセッション録音だけではその生涯にベートーヴェンの9曲全部を遺せなかったことを思えば、当時ワインガルトナーの扱いは破格だったとしかいいようがありません。
 ワインガルトナーはベートーヴェンに対してもメンデルスゾーンと同じ姿勢で接していますが、結果としての演奏ではテンポの動きがより控えられ古典的な輪郭が前面に打ち出されている点に受け身の姿勢だからこそキャッチしているものもあるのだと感じさせるのがこの人ならではで、ベートーヴェン特有の粗野な迫力が均されているきらいはあるものの、それが当時の美意識だったとの確かな手応えも感じさせます。そして大戦中の1943年にスイスで亡くなったワインガルトナーの時代の美意識がしだいに消えゆくしかなかったことも。
 ステレオ初期のベートーヴェン全集には、ワインガルトナーの面影を感じさせるものがそれでもまだありました。弟子であったクリップス/ロンドン響をはじめクリュイタンス/ベルリンフィルやS=イッセルシュテット/ウィーンフィルなどどれも無理にスケールを広げすぎず、端正な造形と当たりの柔らかさを多かれ少なかれ感じさせるもので、それがワインガルトナー的美意識がいかに当時の音楽土壌に深く根を下ろしていたかの証だったとも思えます。けれどそれらはやがてよりスケールの大きさや堅固な骨格、ひいてはベートーヴェンならではの先鋭さを重視する演奏に置き換えられていったのです。70年代末に当時シドニー響の指揮者だったオッテルローの交通事故死で未完成に終わったベートーヴェン集がメモリアルとして後に出たとき、僕にはこういう美しいベートーヴェン演奏の時代が終わったことを示す墓碑銘にさえ見えたものでした。

 現在一般のクラシックファンはいうに及ばず、ヒストリカル録音の愛好家たちの間でさえワインガルトナーへの関心は高いとはいえません。SP録音時代の発売点数ではトップクラスの存在であったにもかかわらず、ウィーンフィルとの組み合わせの音源を除けばほとんどはめったにCD化されず、新星堂がまとめて復刻した大全集も再評価の動きには繋がりませんでした。往年の大演奏家たちの多くが出所の怪しいライブ録音や放送録音まで探索の対象となっている中、ワインガルトナーだけは全くそんな音源が出てこないというのはもはやただごととは思えませんが、それはやはり誇張を体質的に忌避する彼の音楽性が、整った美演よりも八方破れの爆演をむしろ尊ぶ愛好家たちの嗜好とそれだけずれているからだとも感じるのです。
 そしていま、マーラーがかつてなく聴かれるようになったこの日本において、聴き手のメンデルスゾーンへの関心は反比例的に低くなっているとも見えるのですが、僕にはそれがワインガルトナーへの関心の低さとどこかで繋がっているように思えてなりません。そしてストコフスキーやメンゲルベルクはもとよりナチスドイツに留まったせいで長らくマーラーを演奏できなかったフルトヴェングラーでさえ1曲だけとはいえマーラーの録音を遺している一方で、ワインガルトナーはマーラーのみならずチャイコフスキーの作品さえ録音していないのです。

 メンデルスゾーンが古典的なスタイルから脱却し始めたとき、彼が目指した道はチャイコフスキーやマーラーへと続くものではおそらくなかったのではないだろうか。ワインガルトナーによる「スコットランド」の古いSP録音は、そんなことまで示唆するもののように思えてなりません。作曲家でもあったワインガルトナーには7曲に及ぶ交響曲があり海外では全集録音が出ていると伝えられていますが、穏健な作風と評されているのがいかにもと思えると同時に、あるいはそれがメンデルスゾーンのたどり着けなかった道を示しているかもしれないとも考えたりしている次第です。

 そしてそんなワインガルトナーが4曲のブラームスを録音したほぼ同じ時期にストコフスキーも全集を完成したということは、ブラームスの音楽がメンデルスゾーンとは異なり分かたれた道のどちらからもアプローチ可能なものであることの証ではないかとも。

https://open.mixi.jp/user/7656020/diary/1961613276?org_id=1961613015
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[近代史3] メンデルスゾーン 交響曲 『スコットランド』 中川隆
12. 2022年1月22日 19:47:47 : 12fdnGwI6A : OEZKVE5BWkpqR0E=[9]
古典の磁場の中で:その4 「スコットランド」のCD群
https://open.mixi.jp/user/7656020/diary/1961808860


 暑さバテで夏風邪を引き寝込んだ機に、まずは全集に含まれる「スコットランド」を聴きつつCDで持っているものを引っ張り出してきたら、下記のような仕儀と相成りました。まだこの他にマークの3種類とジンマン、O・ドホナーニ盤があるのですが、ケースがどこに紛れ込んだものか出てきません。またLPでしか持っていないものではモノラルのゲールやクレツキ、ステレオのミュンシュ、ドラティ、コミッショナー、オーマンディ、ギブソンなどがあります。
 これらをとっかえひっかえ聴いていると、どうやらこの曲では全曲の中で第3楽章の長さのぶれ幅が大きく、その組み合わせが解釈面でのバリエーションを生み出しているようにも思えてきたので、例によってCDで聴けるものの演奏時間を整理することにいたします。数も数ですし熱もあるので、これらをどういう形で整理するかはもう少し時間をかけて考えようと思っています。

第1楽章提示部の反復がない盤(19枚)

ワインガルトナー/旧ロイヤルPO(1929年)SP
12:20/04:13/08:16/08:51
計33:40 序奏2:40(21.6%)
(36.6%・12.5%・24.6%・26.3%)

ミトロプーロス/ミネアポリスSO(1941年)SP
11:15/03:45/09:33/07:19
計31:52 序奏3:07(27.7%)
(35.3%・11.8%・30.0%・22.9%)

スタインバーグ/ピッツバーグSO(1952年)モノラル
12:07/04:12/08:43/08:46
計33:48 序奏2:58(24.5%)
(35.9%・12.4%・25.8%・25.9%)

クレツキ/イスラエルPO(1954年)モノラル
13:17/04:18/10:13/10:15
計38:03 序奏3:17(24.7%)
(34.9%・11.3%・26.9%・26.9%)

マーク/ロンドン響(1958年)
13:12/04:10/11:03/09:35
計38:00 序奏3:41(27.9%)
(34.7%・11.0%・29.1%・25.2%)

クレンペラー/フィルハーモニアO(1960年)
15:22/05:14/09:35/11:47
計41:58 序奏4:00(26.0%)
(36.6%・12.5%・22.8%・28.1%)

バーンスタイン/ニューヨークPO(1964年)
13:08/04:19/11:36/09:13
計38:16 序奏3:52(29.4%)
(34.3%・11.3%・30.3%・24.1%)

アバド/ロンドンSO(1967年)
12:42/04:15/10:12/09:24
計36:33 序奏3:29(27.4%)
(34.8%・11.6%・27.9%・25.7%)

カラヤン/ベルリンPO(1971年)
13:57/04:25/11:48/09:24
計39:34 序奏3:49(27.4%)
(35.2%・11.2%・29.8%・23.8%)

マズア/ゲヴァントハウスO(1972年)
13:23/04:25/08:08/10:16
計36:12 序奏2:46(20.7%)
(37.0%・12.2%・22.5%・28.3%)

C・ドホナーニ/ウィーンPO(1976年)
13:24/04:30/09:23/09:24)
計36:41 序奏3:34(26.6%)
(36.5%・12.3%・25.6%・25.6%)

シャイー/ロンドンSO(1979年)
14:31/04:25/11:55/10:07
計40:58 序奏4:03(27.9%)
(35.4%・10.8%・29.1%・24.7%)

I・フィッシャー/ハンガリー国立O(1985年)
13:45/04:28/09:42/09:45
計37:40 序奏3:19(24.1%)
(36.5%・11.8%・25.8%・25.9%)

C・ドホナーニ/クリーブランドO(1988年)
12:30/04:22/08:18/08:54
計34:04 序奏3:16(26.1%)
(36.7%・12.8%・24.4%・26.1%)

広上淳一/日本PO(1990年)
14:34/04:30/10:50/11:46
計41:40 序奏3:18(22.7%)
(35.0%・10.8%・26.0%・28.2%)

フロール/バンベルクSO(1991年)
13:03/04:31/09:38/09:18
計36:30 序奏3:32(27.1%)
(35.7%・12.4%・26.4%・25.5%)

マーク/マドリード響(1997年)
14:07/04:32/10:17/10:45
計39:41 序奏3:41(26.1%)
(35.6%・11.4%・25.9%・27.1%)

デプリースト/Oアンサンブル金沢(2003年)
12:39/04:25/09:09/10:04
計36:17 序奏3:08(24.8%)
(34.9%・12.2%・25.2%・27.7%)

村中大祐/オーケストラ・アフィア(2014年)
13:35/04:16/10:10/09:34
計37:35 序奏3:37(26.6%)
(36.1%・11.3%・27.1%・25.5%)

第1楽章提示部の反復がある盤(11枚)

サヴァリッシュ/ニュー・フィルハーモニアO(1967年)
15:22/04:18/09:28/09:43
計38:51(反復あり)
(39.5%・11.1%・24.4%・25.0%)
12:21/04:18/09:28/09:43
計35:50(反復除外)序奏3:02(24.6%)
(34.5%・12.0%・26.4%・27.1%)

アバド/ロンドンSO(1984年)
16:54/04:02/11:27/09:55
計42:18(反復あり)
(40.0%・9.5%・27.1%・23.4%)
13:46/04:02/11:27/09:55
計39:10(反復除外)序奏3:46(27.4%)
(35.2%・10.3%・29.2%・25.3%)

マーク/ベルン響(1986年)
17:15/04:18/10:39/10:40
計42:52(反復あり)
(40.2%・10.0%・24.9%・24.9%)
13:56/04:18/10:39/10:40
計39:33(反復除外)序奏3:52(27.8%)
(35.2%・10.9%・26.9%・27.0%)

マズア/ゲヴァントハウスO(1987年)
14:38/04:18/09:25/09:30
計37:51(反復あり)
(38.7%・11.3%・24.9%・25.1%)
12:08/04:18/09:25/09:30
計35:21(反復除外)序奏2:37(21.6%)
(34.3%・12.2%・26.6%・26.9%)

アシュケナージ/ベルリン・ドイツSO(1996年)
16:14/04:12/08:51/09:17
計38:34(反復あり)
(42.1%・10.9%・22.9%・24.1%)
13:17/04:12/08:51/09:17
計35:37(反復除外)序奏3:34(26.9%)
(37.3%・11.8%・24.8%・26.1%)

堤俊作/ロイヤルチェンバーO(1999年)
14:33/04:21/09:46/09:59
計38:39(反復あり)
(37.6%・11.3%・25.3%・25.8%)
11:37/04:21/09:46/09:59
計35:43(反復除外)序奏2:47(24.0%)
(32.5%・12.2%・27.3%・28.0%)

内藤彰/東京ニューシティO(2007年)
15:05/04:17/08:39/08:58
計36:59(反復あり)
(40.8%・11.6%・23.4%・24.2%)
12:06/04:17/08:39/08:58
計34:00(反復除外)序奏3:02(25.1%)
(35.6%・12.6%・25.4%・26.4%)

シャイー/ゲヴァントハウスO(2009年)
14:35/04:11/08:34/09:02
計36:22(反復あり)
(40.1%・11.5%・23.6%・24.8%)
11:53/04:11/08:34/09:02
計33:40(反復除外)序奏2:54(24.4%)
(35.3%・12.4%・25.5%・26.8%)

沼尻/日本センチュリー響(2013年)
16:21/04:27/10:08/10:02
計40:58(反復あり)
(39.9%・10.9%・24.7%・24.5%)
13:15/04:27/10:08/10:02
計37:52(反復除外)序奏3:29(26.3%)
(35.0%・11.7%・26.8%・26.5%)

有田正広/クラシカルプレーヤーズ東京(2016年)
16:36/04:17/09:25/09:51
計40:09(反復あり)
(41.3%・10.7%・23.5%・24.5%)
13:35/04:17/09:25/09:51
計37:08(反復除外)序奏3:40(27.0%)
(36.6%・11.5%・25.4%・26.5%)

ネゼ=セガン/ヨーロッパ室内O(2016年)
16:42/04:13/09:49/10:01
計40:45(反復あり)
(41.0%・10.3%・24.1%・24.5%)
13:27/04:13/09:49/10:01
計37:30(反復除外)序奏3:20(24.8%)
(35.9%・11.2%・26.2%・26.7%)

こうやってみるとやはり第3楽章のテンポが最も演奏による偏差が大きいことが見て取れます。このあたりの比較のためには提示部を反復しているグループについて、反復分を差し引いた数値も算出して比較したほうがわかりやすいかもしれないと考えているところです。


コメント

mixiユーザー2017年07月31日 00:30
I・フィッシャー盤が出てきたので追記しました(汗)


mixiユーザー2017年08月05日 13:47
反復ありの8枚について、反復を除外した演奏時間と比率を追記しました。


mixiユーザー2017年08月12日 10:48
マークの3種と沼尻盤を追加し、反復を省いた第1楽章における序奏の時間と比率を全ての盤において付記しました。


mixiユーザー2017年08月16日 21:47
ネゼ=セガン/ヨーロッパ室内O盤が入手できたので追記しました。


mixiユーザー2017年09月02日 17:29
ミトロプーロス/ミネアポリスSO盤が出てきたので追記しました。


mixiユーザー2017年09月20日 18:34
クレツキ/イスラエルPOによるLP復刻CD−R盤を購入できましたので追記しました。

https://open.mixi.jp/user/7656020/diary/1961808860
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/894.html#c12

[近代史3] メンデルスゾーン 交響曲 『スコットランド』 中川隆
13. 2022年1月22日 19:49:17 : 12fdnGwI6A : OEZKVE5BWkpqR0E=[10]
古典の磁場の中で:その5 年代順比較用一覧
https://open.mixi.jp/user/7656020/diary/1961908650?org_id=1961867450


 前回取り上げた30枚のうち第1楽章の提示部を反復している11枚について比較のために反復分を除いた演奏時間と楽章間の比率を算出し、全てを録音年代順に並べなおしてみました。

ワインガルトナー/旧ロイヤルPO(1929年)SP
12:20/04:13/08:16/08:51
計33:40 序奏2:40(21.6%)
(36.6%・12.5%・24.6%・26.3%)

ミトロプーロス/ミネアポリスSO(1941年)SP
11:15/03:45/09:33/07:19
計31:52 序奏3:07(27.7%)
(35.3%・11.8%・30.0%・22.9%)

スタインバーグ/ピッツバーグSO(1952年)モノラル
12:07/04:12/08:43/08:46
計33:48 序奏2:58(24.5%)
(35.9%・12.4%・25.8%・25.9%)

クレツキ/イスラエルPO(1954年)モノラル
13:17/04:18/10:13/10:15
計38:03 序奏3:17(24.7%)
(34.9%・11.3%・26.9%・26.9%)

マーク/ロンドン響(1958年)
13:12/04:10/11:03/09:35
計38:00 序奏3:41(27.9%)
(34.7%・11.0%・29.1%・25.2%)

クレンペラー/フィルハーモニアO(1960年)
15:22/05:14/09:35/11:47
計41:58 序奏4:00(26.0%)
(36.6%・12.5%・22.8%・28.1%)

バーンスタイン/ニューヨークPO(1964年)
13:08/04:19/11:36/09:13
計38:16 序奏3:52(29.4%)
(34.3%・11.3%・30.3%・24.1%)

サヴァリッシュ/ニュー・フィルハーモニアO(1967年)
15:22/04:18/09:28/09:43
計38:51(反復あり)
(39.5%・11.1%・24.4%・25.0%)
12:21/04:18/09:28/09:43
計35:50(反復除外)序奏3:02(24.6%)
(34.5%・12.0%・26.4%・27.1%)

アバド/ロンドンSO(1967年)
12:42/04:15/10:12/09:24
計36:33 序奏3:29(27.4%)
(34.8%・11.6%・27.9%・25.7%)

カラヤン/ベルリンPO(1971年)
13:57/04:25/11:48/09:24
計39:34 序奏3:49(27.4%)
(35.2%・11.2%・29.8%・23.8%)

マズア/ゲヴァントハウスO(1972年)
13:23/04:25/08:08/10:16
計36:12 序奏2:46(20.7%)
(37.0%・12.2%・22.5%・28.3%)

C・ドホナーニ/ウィーンPO(1976年)
13:24/04:30/09:23/09:24)
計36:41 序奏3:34(26.6%)
(36.5%・12.3%・25.6%・25.6%)

シャイー/ロンドンSO(1979年)
14:31/04:25/11:55/10:07
計40:58 序奏4:03(27.9%)
(35.4%・10.8%・29.1%・24.7%)

アバド/ロンドンSO(1984年)
16:54/04:02/11:27/09:55
計42:18(反復あり)
(40.0%・9.5%・27.1%・23.4%)
13:46/04:02/11:27/09:55
計39:10(反復除外)序奏3:46(27.4%)
(35.2%・10.3%・29.2%・25.3%)

I・フィッシャー/ハンガリー国立O(1985年)
13:45/04:28/09:42/09:45
計37:40 序奏3:19(24.1%)
(36.5%・11.8%・25.8%・25.9%)

マーク/ベルン響(1986年)
17:15/04:18/10:39/10:40
計42:52(反復あり)
(40.2%・10.0%・24.9%・24.9%)
13:56/04:18/10:39/10:40
計39:33(反復除外)序奏3:52(27.8%)
(35.2%・10.9%・26.9%・27.0%)

マズア/ゲヴァントハウスO(1987年)
14:38/04:18/09:25/09:30
計37:51(反復あり)
(38.7%・11.3%・24.9%・25.1%)
12:08/04:18/09:25/09:30
計35:21(反復除外)序奏2:37(21.6%)
(34.3%・12.2%・26.6%・26.9%)

C・ドホナーニ/クリーブランドO(1988年)
12:30/04:22/08:18/08:54
計34:04 序奏3:16(26.1%)
(36.7%・12.8%・24.4%・26.1%)

広上淳一/日本PO(1990年)
14:34/04:30/10:50/11:46
計41:40 序奏3:18(22.7%)
(35.0%・10.8%・26.0%・28.2%)

フロール/バンベルクSO(1991年)
13:03/04:31/09:38/09:18
計36:30 序奏3:32(27.1%)
(35.7%・12.4%・26.4%・25.5%)

アシュケナージ/ベルリン・ドイツSO(1996年)
16:14/04:12/08:51/09:17
計38:34(反復あり)
(42.1%・10.9%・22.9%・24.1%)
13:17/04:12/08:51/09:17
計35:37(反復除外)序奏3:34(26.9%)
(37.3%・11.8%・24.8%・26.1%)

マーク/マドリード響(1997年)
14:07/04:32/10:17/10:45
計39:41 序奏3:41(26.1%)
(35.6%・11.4%・25.9%・27.1%)

堤俊作/ロイヤルチェンバーO(1999年)
14:33/04:21/09:46/09:59
計38:39(反復あり)
(37.6%・11.3%・25.3%・25.8%)
11:37/04:21/09:46/09:59
計35:43(反復除外)序奏2:47(24.0%)
(32.5%・12.2%・27.3%・28.0%)

デプリースト/Oアンサンブル金沢(2003年)
12:39/04:25/09:09/10:04
計36:17 序奏3:08(24.8%)
(34.9%・12.2%・25.2%・27.7%)

内藤彰/東京ニューシティO(2007年)
15:05/04:17/08:39/08:58
計36:59(反復あり)
(40.8%・11.6%・23.4%・24.2%)
12:06/04:17/08:39/08:58
計34:00(反復除外)序奏3:02(25.1%)
(35.6%・12.6%・25.4%・26.4%)

シャイー/ゲヴァントハウスO(2009年)
14:35/04:11/08:34/09:02
計36:22(反復あり)
(40.1%・11.5%・23.6%・24.8%)
11:53/04:11/08:34/09:02
計33:40(反復除外)序奏2:54(24.4%)
(35.3%・12.4%・25.5%・26.8%)

沼尻/日本センチュリー響(2013年)
16:21/04:27/10:08/10:02
計40:58(反復あり)
(39.9%・10.9%・24.7%・24.5%)
13:15/04:27/10:08/10:02
計37:52(反復除外)序奏3:29(26.3%)
(35.0%・11.7%・26.8%・26.5%)

村中大祐/オーケストラ・アフィア(2014年)
13:35/04:16/10:10/09:34
計37:35 序奏3:37(26.6%)
(36.1%・11.3%・27.1%・25.5%)

有田正広/クラシカルプレーヤーズ東京(2016年)
16:36/04:17/09:25/09:51
計40:09(反復あり)
(41.3%・10.7%・23.5%・24.5%)
13:35/04:17/09:25/09:51
計37:08(反復除外)序奏3:40(27.0%)
(36.6%・11.5%・25.4%・26.5%)

ネゼ=セガン/ヨーロッパ室内O(2016年)
16:42/04:13/09:49/10:01
計40:45(反復あり)
(41.0%・10.3%・24.1%・24.5%)
13:27/04:13/09:49/10:01
計37:30(反復除外)序奏3:20(24.8%)
(35.9%・11.2%・26.2%・26.7%)

やはり全体としては年代順に並べたほうが演奏スタイルの変遷を辿れるようにも感じられますので、次回から原則としてこの順にそれぞれの演奏についてコメントしていきたいと思います。


コメント

mixiユーザー2017年08月12日 11:19
マークの3種と沼尻盤を追加し、反復を省いた第1楽章における序奏の時間と比率を全ての盤において付記しました。


mixiユーザー2017年08月16日 21:48
ネゼ=セガン/ヨーロッパ室内O盤が入手できたので追記しました。


mixiユーザー2017年09月02日 17:33
ミトロプーロス/ミネアポリスSO盤が出てきたので追記しました。


mixiユーザー2017年09月20日 18:37
クレツキ/イスラエルPOによるLP復刻CD−R盤を購入できましたので追記しました。

https://open.mixi.jp/user/7656020/diary/1961908650?org_id=1961867450
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/894.html#c13

[近代史3] メンデルスゾーン 交響曲 『スコットランド』 中川隆
14. 2022年1月22日 19:50:51 : 12fdnGwI6A : OEZKVE5BWkpqR0E=[11]
古典の磁場の中で:その6 リストの追記と注目点
https://open.mixi.jp/user/7656020/diary/1962031362?org_id=1961920406


 マークの3種と沼尻盤をリストに追加し、反復を省いた場合の第1楽章における序奏の時間と比率を全てに付記しました。この修正は前2回のリストにも加えています。またシャイーの新盤と有田盤は1842年版による演奏で、翌年の現行版より第1楽章で15小節、第4楽章で22小節長いのですが、実演総時間でも大差がなく比率を計算しても誤差の範囲に収まってしまうので、ここでは実際の演奏時間のままで表記しています。最近出たてのネゼ=セガン/ヨーロッパ室内Oの全集なども入手できれば順次追加していく予定です(入手したので追記しました)

 解釈を考えていく上で注目すべき比率はまず反復抜きの第1楽章における序奏の比率。これが25%を切ると序奏のテンポが主部の平均的なテンポより速く感じられます。ただし主部の最初のモチーフを遅く、続く「戦の幻想」と呼べそうなモチーフを速く演奏している演奏と、モチーフごとに差をつけない演奏とでは、主部への移行に伴うテンポの変化の印象が変わってくるので注意を要します。数字の上ではワインガルトナー、スタインバーグ、クレツキ、サヴァリッシュ、マズアの新旧両盤、フィッシャー、広上、堤、デプリースト、シャイーの新盤、ネゼ=セガンが25%以下です。
 もう1つは第3楽章の比率が第4楽章の比率より高いか否か。これは物理的な時間においても同じ結果であるわけですが、第3楽章を低回気味に演奏し第4楽章を煽ってコントラストを強調する演奏ほどこの比率に差が出てきます。両極端はクレンペラーとカラヤンで、クレンペラーが22.8%・28.1%なのに対しカラヤンは29.8%・23.8%になっていて、設計が根本的に異なることを強く印象つけずにおきません。総じて第3楽章の比率が高いほど後期ロマン派的性格が強い演奏と感じさせる傾向があります。
(追記:その後出てきたミトロプーロス盤がカラヤンよりさらにコントラストが強烈な30.0%・22.9%です)

ワインガルトナー/旧ロイヤルPO(1929年)SP
12:20/04:13/08:16/08:51
計33:40 序奏2:40(21.6%)
(36.6%・12.5%・24.6%・26.3%)

ミトロプーロス/ミネアポリスSO(1941年)SP
11:15/03:45/09:33/07:19
計31:52 序奏3:07(27.7%)
(35.3%・11.8%・30.0%・22.9%)

スタインバーグ/ピッツバーグSO(1952年)モノラル
12:07/04:12/08:43/08:46
計33:48 序奏2:58(24.5%)
(35.9%・12.4%・25.8%・25.9%)

クレツキ/イスラエルPO(1954年)モノラル
13:17/04:18/10:13/10:15
計38:03 序奏3:17(24.7%)
(34.9%・11.3%・26.9%・26.9%)

マーク/ロンドン響(1958年)
13:12/04:10/11:03/09:35
計38:00 序奏3:41(27.9%)
(34.7%・11.0%・29.1%・25.2%)

クレンペラー/フィルハーモニアO(1960年)
15:22/05:14/09:35/11:47
計41:58 序奏4:00(26.0%)
(36.6%・12.5%・22.8%・28.1%)

バーンスタイン/ニューヨークPO(1964年)
13:08/04:19/11:36/09:13
計38:16 序奏3:52(29.4%)
(34.3%・11.3%・30.3%・24.1%)

サヴァリッシュ/ニュー・フィルハーモニアO(1967年)
15:22/04:18/09:28/09:43
計38:51(反復あり)
(39.5%・11.1%・24.4%・25.0%)
12:21/04:18/09:28/09:43
計35:50(反復除外)序奏3:02(24.6%)
(34.5%・12.0%・26.4%・27.1%)

アバド/ロンドンSO(1967年)
12:42/04:15/10:12/09:24
計36:33 序奏3:29(27.4%)
(34.8%・11.6%・27.9%・25.7%)

カラヤン/ベルリンPO(1971年)
13:57/04:25/11:48/09:24
計39:34 序奏3:49(27.4%)
(35.2%・11.2%・29.8%・23.8%)

マズア/ゲヴァントハウスO(1972年)
13:23/04:25/08:08/10:16
計36:12 序奏2:46(20.7%)
(37.0%・12.2%・22.5%・28.3%)

C・ドホナーニ/ウィーンPO(1976年)
13:24/04:30/09:23/09:24)
計36:41 序奏3:34(26.6%)
(36.5%・12.3%・25.6%・25.6%)

シャイー/ロンドンSO(1979年)
14:31/04:25/11:55/10:07
計40:58 序奏4:03(27.9%)
(35.4%・10.8%・29.1%・24.7%)

アバド/ロンドンSO(1984年)
16:54/04:02/11:27/09:55
計42:18(反復あり)
(40.0%・9.5%・27.1%・23.4%)
13:46/04:02/11:27/09:55
計39:10(反復除外)序奏3:46(27.4%)
(35.2%・10.3%・29.2%・25.3%)

I・フィッシャー/ハンガリー国立O(1985年)
13:45/04:28/09:42/09:45
計37:40 序奏3:19(24.1%)
(36.5%・11.8%・25.8%・25.9%)

マーク/ベルン響(1986年)
17:15/04:18/10:39/10:40
計42:52(反復あり)
(40.2%・10.0%・24.9%・24.9%)
13:56/04:18/10:39/10:40
計39:33(反復除外)序奏3:52(27.8%)
(35.2%・10.9%・26.9%・27.0%)

マズア/ゲヴァントハウスO(1987年)
14:38/04:18/09:25/09:30
計37:51(反復あり)
(38.7%・11.3%・24.9%・25.1%)
12:08/04:18/09:25/09:30
計35:21(反復除外)序奏2:37(21.6%)
(34.3%・12.2%・26.6%・26.9%)

C・ドホナーニ/クリーブランドO(1988年)
12:30/04:22/08:18/08:54
計34:04 序奏3:16(26.1%)
(36.7%・12.8%・24.4%・26.1%)

広上淳一/日本PO(1990年)
14:34/04:30/10:50/11:46
計41:40 序奏3:18(22.7%)
(35.0%・10.8%・26.0%・28.2%)

フロール/バンベルクSO(1991年)
13:03/04:31/09:38/09:18
計36:30 序奏3:32(27.1%)
(35.7%・12.4%・26.4%・25.5%)

アシュケナージ/ベルリン・ドイツSO(1996年)
16:14/04:12/08:51/09:17
計38:34(反復あり)
(42.1%・10.9%・22.9%・24.1%)
13:17/04:12/08:51/09:17
計35:37(反復除外)序奏3:34(26.9%)
(37.3%・11.8%・24.8%・26.1%)

マーク/マドリード響(1997年)
14:07/04:32/10:17/10:45
計39:41 序奏3:41(26.1%)
(35.6%・11.4%・25.9%・27.1%)

堤俊作/ロイヤルチェンバーO(1999年)
14:33/04:21/09:46/09:59
計38:39(反復あり)
(37.6%・11.3%・25.3%・25.8%)
11:37/04:21/09:46/09:59
計35:43(反復除外)序奏2:47(24.0%)
(32.5%・12.2%・27.3%・28.0%)

デプリースト/Oアンサンブル金沢(2003年)
12:39/04:25/09:09/10:04
計36:17 序奏3:08(24.8%)
(34.9%・12.2%・25.2%・27.7%)

内藤彰/東京ニューシティO(2007年)
15:05/04:17/08:39/08:58
計36:59(反復あり)
(40.8%・11.6%・23.4%・24.2%)
12:06/04:17/08:39/08:58
計34:00(反復除外)序奏3:02(25.1%)
(35.6%・12.6%・25.4%・26.4%)

シャイー/ゲヴァントハウスO(2009年)
14:35/04:11/08:34/09:02
計36:22(反復あり)
(40.1%・11.5%・23.6%・24.8%)
11:53/04:11/08:34/09:02
計33:40(反復除外)序奏2:54(24.4%)
(35.3%・12.4%・25.5%・26.8%)

沼尻/日本センチュリー響(2013年)
16:21/04:27/10:08/10:02
計40:58(反復あり)
(39.9%・10.9%・24.7%・24.5%)
13:15/04:27/10:08/10:02
計37:52(反復除外)序奏3:29(26.3%)
(35.0%・11.7%・26.8%・26.5%)

村中大祐/オーケストラ・アフィア(2014年)
13:35/04:16/10:10/09:34
計37:35 序奏3:37(26.6%)
(36.1%・11.3%・27.1%・25.5%)

有田正広/クラシカルプレーヤーズ東京(2016年)
16:36/04:17/09:25/09:51
計40:09(反復あり)
(41.3%・10.7%・23.5%・24.5%)
13:35/04:17/09:25/09:51
計37:08(反復除外)序奏3:40(27.0%)
(36.6%・11.5%・25.4%・26.5%)

ネゼ=セガン/ヨーロッパ室内O(2016年)
16:42/04:13/09:49/10:01
計40:45(反復あり)
(41.0%・10.3%・24.1%・24.5%)
13:27/04:13/09:49/10:01
計37:30(反復除外)序奏3:20(24.8%)
(35.9%・11.2%・26.2%・26.7%)


コメント

mixiユーザー2017年08月16日 21:48
ネゼ=セガン/ヨーロッパ室内O盤が入手できたので追記しました。


mixiユーザー2017年09月02日 17:38
ミトロプーロス/ミネアポリスSO盤が出てきたので追記しました。


mixiユーザー2017年09月20日 18:42
クレツキ/イスラエルPOによるLP復刻CD−R盤が購入できましたので追記しました。

https://open.mixi.jp/user/7656020/diary/1962031362?org_id=1961920406
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/894.html#c14

[リバイバル4] ウェスタン・エレクトリック 300B を使ったアンプ 中川隆
43. 2022年1月22日 20:20:29 : 12fdnGwI6A : OEZKVE5BWkpqR0E=[12]
「300B」はなぜ“真空管の王様”と呼ばれるのか?ウェスタンエレクトリック流の矜持、復刻の舞台裏を探る
2021/12/5
https://news.yahoo.co.jp/articles/96235cfe80b8679d3ec523e24d4de0bda24b3375

■本家・ウェスタンエレクトリック「300B」が国内でも正式発売

去る10月28日、待望のニュースが発表された。真空管アンプに用いられる出力管の中でも格別の人気を誇る、本家ウェスタンエレクトリックの「300B」再生産品がようやく国内で販売されることになったのである。数年前から噂でウェスタンエレクトリックの300Bが再生産されることを耳にしており、2021年に入ってから本国サイトでは販売を開始していたので、国内導入の知らせを待っていたのだ。


10月28日のリリースで、ここ日本では輸入総代理店に株式会社エレクトリ、総販売元に株式会社トライオードが担当することが公表された。これは真空管をよく知るトライオードならではの販売チャネルを通すことで、市場動向や後に説明する保証体制の手順を円滑に進められるという利点があるからだ。

新たな300Bは1本11万円、特性の揃った2本ペア+化粧箱セットで23万1千円、さらに特性の揃った4本クアッドセットが48万4千円となる。近年オリジナル300Bが高騰する情勢を踏まえると決して安くはないものの、高すぎるプライスではない。

今回、「2021東京インターナショナルオーディオショウ」開催直前の慌ただしい中、株式会社トライオードの山崎順一社長にもウェスタンエレクトリック300Bを取り扱うことになった経緯やその思いを伺うことができた。その中で見えてきたのは、今回の再生産はオリジナルに忠実な復刻というより “現代の最新技術で再構築” した、『新300B』であるということだ。

■さらに一皮むけた音質クオリティの新300B

山崎社長もウェスタンエレクトリック製品の魅力に惹かれていたお一人であり、かなり以前から入手し、その音に耳を傾けていたという。「300Bはもちろんですが、励磁型コンプレッションドライバー『555W』を使った大型のホーン型システム『15A』を使っていたこともあります。その当時勤務していた国鉄の社宅に搬入するのにとても苦労しましたね。ベランダの窓枠を外すしかなくて(笑)。6畳の部屋に2台入れたんです」

まさに武勇伝だが、古くからのオーディオマニアにとってウェスタンエレクトリックとは憧れの存在であり、いつかは手に入れたい逸品であったのである。

社名とした “トライオード” は三極管を意味しており、まさに300Bはその代表格。今回のウェスタンエレクトリック300Bを取り扱うようになったことはまさに格別の思いであろう。

「日本にはまず先方からヒビノさんに打診があったようなのです。ヒビノさんは基本的にプロシューマー企業ですから、コンシューマー向けには傘下企業であるエレクトリさんでどうだろうという話の流れとなったようですね。ただ真空管単体の販売という点では経験も必要ですし、そうしたことが得意な販売元を探していたそうです。イベント等でもご一緒する機会も多くありましたので、そんなご縁からお声がけいただきました」

「新300Bの音質はかなり低域が伸びてます。97年の再生産のものよりも一皮むけてます。空間の出方もここまで変わると思わなかったほどで、ハイレゾ時代でも対応できるレンジの広さを実感しました。一口にウェスタンといっても製造時期によって音も違いますが、新300Bの音質傾向は非常に良いもので、ウェスタンとして語れるものであると考えています」

■劇場用の音響システムなどを手掛けてきたウェスタンエレクトリック

300Bも当然素晴らしい真空管であるが、この300Bを生み出したウェスタンエレクトリックがどのようなメーカーなのかも触れておこう。ウェスタンエレクトリックが設立されたのは1872年。1881年からはアメリカの電話会社AT&Tの機器製造部門を100年以上担っていた。

1925年にはウェスタンエレクトリックの技術部門はベル研究所となり、後年トランジスタなど、いくつもの革命的な発明を生んでいる。1916年にはコンデンサーマイクを発明。1920年代からはトーキー映画用の劇場用拡声器・音響システムの開発にも力を入れていった。1926年に誕生した名機の誉れ高い励磁型コンプレッションホーン555Wもそうしたシステム群を構成する基幹製品のひとつだ。

ウェスタンエレクトリックは音の入り口であるマイク、そして出口であるスピーカーまでを開発できる、まさに総合メーカーとしての側面を持っていたが、その仕向け先は業務用であり、製品の性能や耐久性については極めて高いクオリティを要求される。だからこそ、製品を構成するパーツ一つ一つにも妥協なく当時入手できる最高のものを使い、その時での最先端技術を用いて製造されていた。そしてこの製品に使われる真空管についても当然のごとく最高水準の性能・耐久性を求められるわけだが、ここにもウェスタンエレクトリックは大きな強みを持っていたのである。

1910年代、ウェスタンエレクトリックは電話中継用に用いる真空管の製造を開始し、第1次世界大戦当時は軍用の真空管製造も手掛けていた。無線分野や海底ケーブル中継器など、絶対の信頼度が要求される現場で磨かれた製品クオリティがその後のウェスタンエレクトリック神話へと繋がってゆくのである。

そして1938年、300Bが誕生。劇場用拡声器に向けた大出力なニーズに応えるために開発された直熱三極管である。当初は「300A」として登場したが、間もなく改良版である300Bが生まれた。

300Bはシンプルな構造で増幅を行う直熱三極管のなかでもA級シングルで8Wという大きな出力を取り出せることが特徴だが、ただ出力の大きさという点で見ると後年登場するビーム管などの方が優位である。

ではなぜ未だに高い人気を誇るのか。「45」「2A3」そして300Bと続く直熱三極管の歴史は高出力化への歩みでもある。直熱三極管はフィラメント、グリッド、プレートという増幅を行うための必要最小限の構造であるため、その音も素直で透明感の高い爽やかなサウンド性が特徴だ。ここに真空管特有の艶やかさや華やかさと言った倍音表現が加わり、独特な音質を生んでいる。

直熱三極管の中でも巨大な部類に属する300Bは素直さと繊細さ、そして力強さを兼ね備えたバランスの良い出力管であり、巨大なプレートを支えるガラス管の優美な形状も相まって “真空管の王様” という呼び名が定着しているのだろう。この現在での300Bの高評価もウェスタンエレクトリックが由来だからこそであるが、本来業務用に供給されていた真空管であったため、入手が難しかった時代があったことも評価を押し上げる要因の一つだったのかもしれない。

ウェスタンエレクトリック製300Bは幾度かの生産休止期間を挟みつつ製造が続けられていたが、1988年に一旦その歴史に終止符を打った。しかし世界の管球マニアの300B復活を求める声に応えるかたちで、1997年にウェスタンエレクトリック300Bの再生産が始まったのである。しかし1961年に設立され、300Bも生産していたカンザスシティ工場の老朽化などが要因で、この時の再生産は2006年で終焉を迎えた。

この頃になると中国や東欧諸国で生産される他社製300Bも増えてきたが、相反するようにウェスタンエレクトリック・オリジナルの300Bを望む声は日増しに高まっていく。トライオードでも、元曙光電子のエンジニアが独立して立ち上げた中国・PSVANEが1960年代のオリジナル300Bの構造を研究した“限りなくオリジナルに近い300B“である「WE300B」を取り扱っているが、このPSVANE WE300B開発時にも山崎社長は色々とアドバイスをしていたという。

「PSVANEは曙光電子よりもっと良いものを作りたいということで独立したんですね。ですからモノづくりの経験値は相当高いものを持っています。初めてPSVANEのWE300Bを見たときは “本物じゃないの” って思ったくらいです。内部も含めて本物とほとんど遜色ないクオリティでしたね。途中で色々変更されないよう注意を払っていましたが、サウンドは問題なかったですし、他社製300Bとしては非常にクオリティの高いものです」

2006年に一旦終了したかに見えたオリジナル300B復活プロジェクトであるが、実は水面下では動き続いていたそうで、2018年にジョージア州ロスヴィルに真空管製造ラインを持つ新工場が設立された。ここにはかつてのカンザスシティ工場で使われていた製造・測定器具も含まれていたそうだが、多くは新たに開発した製造・測定器具となり、製造精度の向上へと結びついているという。

■優れた特性を持つ素材を投入、真空度も向上している

今回のオリジナル新300Bにおいて従来のものと大きく異なるのがプレートのコーティング素材である。往年はカーボンを用いていたが、今回はグラフェンを取り入れているという。プレート-フィラメント間の熱放射率や電気伝導率を改善するとともに、プレート自体の素材である純ニッケル合金とグラフェンの第一原子層が結び付くことで、高い真空を維持しつつ寿命に結び付くガスの発生を抑えるという。さらに平均プレート電流も高くなり二次電子放出の影響も大幅に減少しているそうだ。

フィラメントはかつてのウェスタンエレクトリック・ホーソン工場に由来する溶解物から取り出した伝統のある素材だそうで、酸化コーティング剤は海底ケーブル伝送用に開発されたものを最先端の製造工程で施しているという。

そして旧来の300Bに使われていたガラスやハンダなどはかつて鉛を含んでいたが、現在はRoHS指令などに基づいて、環境に配慮した素材を使わなければ国や地域によっては輸出ができない。それゆえ、プレートのコーティング素材を含め、現在入手できる優れた特性を持つ素材を導入しているのである。

ちなみに96〜06年までの再生産時には金メッキピン仕様のものも登場したが、「ウェスタンエレクトリックとしては本来はやりたくなかったが、輸入元の要請で実施した」という事情があったそうだ。他にもガラス管内の真空度に影響するポンプについて、ドライスクロールポンプを補助に用いた最新のターボ分子ポンプによって、極めて高い真空度を達成したとのこと。「優れたPSVANEでも新300Bの真空度にはかなわない」と山崎社長。この真空度の高さは新300Bの大きなメリットとなるだろう。

「実は去年からウェスタンエレクトリックの取り扱いについて話をしていまして、サンプルも来たんです。その最初のサンプルでは、プレートはカーボンコーティングを施した黒いものでした。ただ不具合がありまして、構造上の問題なのか、変に響くのでそれを直すよう進言しました。するとコーティングを変えて見事に直してきたんですね。結果的に良い改良だったと考えています。さすがウェスタンエレクトリックだと」

「PSVANE WE300Bと新300Bを比較すると、少し色気が違うのです。どちらもしなやかなサウンドで良いのですが、新300Bは低域の量、空間性が良い印象です。ただしPSVANEのWE300Bも継続して販売してゆく予定です。単価が違いますし、PSVANEにはPSVANEとしての個性と魅力がありますからね。ウェスタンらしいニュアンスを持ったリーズナブルな選択肢として存在価値があります」

「新300Bとどちらを選ぶのかという楽しみも増えますよね。アンプ製品にはオプションでウェスタンエレクトリックの新300Bに交換できるようにしたいと考えていますが、初めから新300Bを積んだアンプ製品については出す予定はありません」

現在真空管アンプを手掛けるメーカー各社にも新300Bの売り込みを行っているとのこと。販売に関しては量販店やECサイトには卸さず、定価で販売をお願いしているという。「ウェスタンエレクトリックというブランドの価値、プレミアムさを大事にしていきたい」と山崎社長は語る。

■異例の「5年保証」を実現。品質の高さに自信あり

ウェスタンエレクトリック製品は信頼性、耐久性を重要視していることは前述したが、この新300Bも例外ではない。真空管としては異例の『5年保証』を謳っているのだ。トライオードではこれまでの真空管販売では1年保証としていたが、それも業界としては長めの設定であった。

比較的安価な他社製300Bでは1年もするとノイズが出るものもあり、音が出なくなるなどの致命的なトラブルではないものの、音楽再生では気になってしまう。しかしウェスタンエレクトリック300Bは5年という長さの保証を付けるというのは、それだけ製品の完成度、品質に自信があることを裏付けるものでもある。

新300Bでもベース部にシリアルナンバーが刻印されており、97年からの再生産同様、一本ずつにデータシートも添付。ウェスタンエレクトリックならではの製造年・週表示(取材時のサンプルでは“2152”、2021年52週目の生産を示す表記があった)もベースにプリントされているので、オリジナル品同士でも見分けがつけられるだろう。

説明書も英語だけでなく、フランス語、ドイツ語、中国語、そして日本語でも記載がされており、ウェスタンエレクトリックがユーザーをしっかりと認識しているスタンスが受け取れる。もし壊れてもその個体と似たデータを持つ製品を出荷してくれるそうであり、保証書の登録は必ず行っておきたい。国内ではトライオード宛てに保証書を送付すればよく、エレクトリと本国間で取りまとめ、シリアルが登録されるという。

高い技術力と伝統に息づく耐久性、モノづくりの姿勢を映す『5年保証』はまさに安心・信頼の証である。スペックに則った設計の範囲内で用いることで長寿命を実現できることもウェスタンエレクトリックならではのメリットである。オリジナル300Bとしては比較的安価とはいえ、なかなか手を出しにくいプライスではあるが、長い目で見ての信頼性、安定感という点でこれ以上の選択肢はないだろう。

既に国内に供給予定の第1、第2ロットは完売しているといい、第3ロット待ちという盛況ぶりであるが、それだけ新300Bへの期待が高まっていたという証拠に他ならない。『2021東京インターナショナルオーディオショウ』でも新300Bに注がれる熱いまなざしを何度も見かけることができたが、実際その音に触れることができた方も表現力の高さ、これまでとは一味違うウェスタンサウンドに驚かれたのではないか。

トライオードブースにて、300B・A級パラシングル方式のプリメインアンプ「TRZ-300W」へウェスタンエレクトリックの新300Bを換装した状態でデモをしていただいたが、しっかりと重心低くグリップするベースの弾力とスムーズな音伸び、直熱管ならではの開放的で音離れ良いボーカル定位の爽やかさ、潤いを実感。これまでのオリジナル品以外の300Bとは一味違う彫りの深さ、ステージの奥行き、音像の確固たる芯の強さ、ナチュラルなボディ感も味わうことができた。

かつてのオリジナル300Bが持っていた濃密な中域表現は幾分抑えられている印象であるが、迷いのない的確なステージ、楽器の描写力、ボーカルの逞しさは健在だ。何より付帯感のないワイドレンジな帯域感が素晴らしく、従来の300Bのサウンドとは一線を画す世界観である。またじっくりと向き合って聴いてみたいと思える素晴らしい体験であった。

今回のウェスタンエレクトリック300Bの復活は単なる復刻ではなく、時代に合わせたアップデートを果たした新規の300Bともいえ、オリジナルだからこその基本性能の高さをさらに上のステージへ引き上げた、別次元の完成度を誇るものとなっている。

かつてのサウンドの再来を期待すると肩透かしを食らうかもしれないが、これは現代の音楽事情を踏まえた懐古的ではない増幅素子本来の在り様を追求しているのではないか。その時代に相応しい最高のものを作り上げる “ウェスタンエレクトリック流の矜持” ともとれる新300Bへの取り組みの数々は、突き詰めていった300B本来の姿であるのかもしれない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/96235cfe80b8679d3ec523e24d4de0bda24b3375
http://www.asyura2.com/18/revival4/msg/107.html#c43

   

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