★阿修羅♪ > 経世済民115 > 826.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
残業地獄が「脳と人生」に与える深刻な影響 長時間労働と決別する新しい考え方(東洋経済)
http://www.asyura2.com/16/hasan115/msg/826.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 11 月 19 日 20:21:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

             長時間労働は今だけの問題ではなく、人生を通じて弊害が多いという(写真:わたなべ りょう / PIXTA)


残業地獄が「脳と人生」に与える深刻な影響 長時間労働と決別する新しい考え方
http://toyokeizai.net/articles/-/145677
2016年11月19日 東洋経済新報社 出版局


2006年にワーク・ライフバランス社を起ち上げて以来、生産性の高い組織づくりを目指して900社以上の日本企業をサポートしてきた小室淑恵氏。かねてより、日本企業の残業体質、長時間労働がどれほど個人、企業、社会をむしばんでいるかを指摘し、変革への啓蒙活動を行ってきた。その小室氏が「強い共感を得た」という本が、発売1カ月で早くも11万部を突破し話題の『ライフ・シフト』だ。小室氏に、本書の魅力と、日本人の働き方改革を語っていただいた。

■長時間労働は脳にダメージを与える

――本書のどこが、小室さんにそんなに「刺さった」のでしょうか?

長寿化時代には、「脳の健康」の価値がいっそう大きくなるというところです。著者のリンダさんが言うように、人生が70歳で終わる時代と、100歳で終わる時代を比べたとき、50歳で働けなくなることのダメージは、100歳時代のほうがずっと大きいですよね。

日本は、週49時間以上働く人の割合が他国の2倍ほどもあります。非常に長時間労働の国ですから、脳のダメージを回復させるための睡眠が最も取れていない国なのですが、リンダさんの試算によると、2007年生まれの子どもの半数が到達する年齢は日本が群を抜いて長く、107歳だそうです(他国は104歳程度)。現役時代に最も脳を酷使している国民が最も長い寿命になるとどういうことが起きるか。せっかくの長寿も、後半になればなるほどつらい状況になってしまうわけです。日本人こそ、長寿社会のリスクに最も備える必要があり、現役時代の過ごし方を考えないといけない国だと痛感しました。

――仕事に集中することで自分の成長と成果につながる、ということもよく言われますね?

日本が1960年代半ばから1990年代半ばごろまでの「人口ボーナス期」にあったころは、確かにそのような構造が社会にありました。人口ボーナス期とは、若者の比率が高く、高齢者の比率が少ない時期なのですが、そうした人口構造にある国は安い労働力を武器に「早く・安く・大量に」世界の市場を凌駕できます。一方で高齢者が少ないことから社会保障費がかさまないので、利益をどんどんインフラ投資に回して、爆発的な経済発展をする時期です。

この時期には、男性ばかりで、長時間労働をして、均一な組織を創ると成功するという法則があります。中国・韓国・シンガポールやタイが、現在人口ボーナス期にあります。一方で、高齢者比率が高く、若者の数が少ないという人口比率になると人口オーナス期に入り、ボーナス期の手法は一切通用しなくなります。

こうなると、労働力人口が不足するので、育児や介護をしながらでも男女双方が社会参画できることが大事。人件費が高騰するので、短い時間で高い付加価値を生み出すことが大事。お客様が均一なものに飽きてしまうので、組織も多様な人材が入り混じっているほうが、お客様のニーズに合った高付加価値型の商品・サービスを生み出すことができると言われています。

日本は、人口オーナス期に入ってすでに20年たつ国です。しかし、人口ボーナス期に大成功したことで、当時の成功体験から抜け出ることができず、男性ばかりの均一な組織で長時間労働をして勝つやりかたに固執してしまっているのがもったいないですね。

今や、若手であったとしても、長時間労働でたくさんの仕事をやって成長する要素は非常に少なくなりました。まもなくAIが出現し、そういった仕事はますます人間の仕事ではなくなります。むしろ人間にしかできない多様な体験をどれだけ積むかが勝負となるのです。

――小室さんの著書『労働時間革命』に、人の集中力は朝起きて13時間しか続かない、とありましたね。

そうなんです。東京大学医学部の島津明人准教授は、人間の脳が集中力を発揮できるのは朝目覚めてから13時間以内であり、起床から15時間を過ぎた脳は、酒酔い運転と同じくらいの集中力しか保てない、と指摘しています。朝6時に起きた人なら午後7時には終了しちゃうんですね。

島津先生の指摘によれば、脳の集中力こそ仕事上最も大事な武器になるホワイトカラーのビジネスパーソンは、残業中の生産性が最も低いということです。最も生産性の下がった時間に、わざわざ1.25〜1.5倍もの割増残業代を払っているのは、お人よしの経営者だと思いますね。

■長時間労働の悪循環

生産性に関する指摘は、まだあります。労働科学研究所の佐々木司さんは、肉体の疲労は眠りの前半に回復し、ストレスは後半に解消されると指摘しています。数時間で眠気が取れるから自分はショートスリーパーだと思っている方は、たしかに体の疲れは取れているかもしれませんが、ストレスは回復しないままに毎日蓄積してしまい、コップからあふれてしまう、つまりメンタル疾患になりやすくなってしまいます。

また、AI研究の第一人者である日立製作所の矢野和男さんが、サッカー選手やビジネスパーソンを大量に計測して分析したところ、日中の集中力が高い人に共通していたのは、平日と休日で睡眠時間や時間帯の差が少ないという傾向でした。

つまり、平日に残業が多くて土日に寝だめをするような生活では、そもそも慢性的に日中の集中力が下がってしまうので、成果を出すためにさらに時間をかけなくてはならなくなり、長時間労働になればなるほど成果は落ちていく。企業はコストばかりかかり、離職率が高くなるという悪循環に陥っていくのです。

すると、リンダさんが寿命が100歳まで伸びる時代に重要な無形資産の3点目としてあげていた「変身資産=多様な人的ネットワーク」なんて作る時間もなくなります。

――本当に深刻な問題ですね。

そうですね。さらに、日本の少子化を解決するうえでも、大きな問題があります。厚労省のデータでは、第一子が生まれた夫婦を11年間追跡調査したところ、第一子が生まれた時に夫の帰宅時間が遅く、家事育児に参画する時間が短かった家庭では、その後第二子以降が生まれていないという傾向が見られました。つまり、少子化対策に重要なのは「男性の働き方改革」だったんですね。

20時以降残業禁止を打ち出した都庁は、以前の不夜城ぶりを知っている私からは、とても画期的だと思います。でも、子育て中のママの視点からすると、それでも遅いのではないでしょうか。夜8時まで残業して、9時過ぎに家に帰ってきて食事をして、10時近くから子どもと遊ぼうとする、そんなことはやめてほしいと思っているでしょう(笑)。寝かしつける時間に興奮させないで〜!と。

ひとりひとりが、会社ですべてのエネルギーを使い果たして帰宅するのではなく、余力を残して退社することで、自己啓発をする人が増える、異業種の勉強会に繰り出していく人も増える、笑顔で家庭に帰宅し夕食を取ってゆっくり睡眠を取る。そんな社会を作ることができたら、まだまだ日本には大きなイノベーションの力があるでしょう。

■労働時間短縮で成果を挙げた企業

私たちのコンサルティングを受けて働き方改革を行った企業では、劇的な変化が起きています。損保ジャパンでは、浮いた時間を自己研鑽にあてて、TOEICの点が200点もあがって、念願の海外勤務を果たした若手が出てきたり、かんぽ生命では、たった5カ月で25%も残業が削減でき、その浮いたコストを活用して、社員のイーラーニングを無料にしたり。リクルートスタッフィングでは、休日労働が86%削減できて、生産性は4%向上し、女性従業員が出産する数が1.8倍に、社員が自己研鑽する数が1.6倍になりました。

店舗を抱えて、働き方改革は難しい業界であるアパレルのシップスでも、店舗のバックスペースを使って働き方改革の会議を行い、店舗ごとの工夫を次々に生み出しています。大塚倉庫では、荷積み待ちをするために前日からトラックを駐車させて場所取りをしている状況を改善するために、スマホのアプリで荷積みの予約ができるシステムを作り、ドライバー不足になっているトラック業界の労働環境改善を実現しています。制約こそがイノベーションを生むのです。

――大きな改善ですね。

労働時間の上限がある世界とない世界では、社員がまったく違う動きをします。上限がない場合は、月末、あるいは年度末に向けて「期間当たり生産性」を最大化しようと、時間外労働を行って成果を積み上げる競争が行われます。これは、ノウハウ共有のない、属人化した個人戦になります。

すると、育児や介護に時間を使っている社員は、勝てないゲームだとわかっているので、モチベーションが大幅ダウン。

一方で独身社員に仕事が集中。婚活などの暇はなくなります。既婚の男性社員にも仕事が集中し、育児参加が難しくなって第2子は生まれない。育児女性はキャリアをあきらめて会社のお荷物になる。

組織は集中力の切れた長時間労働ですから利益率も減少……。こんな負のスパイラルに陥ります。

逆に、労働時間の上限があると、成果を出すために「1時間当たりの生産性」をどう最大化するかがカギになります。ここで、チームでノウハウを共有して効率化を図るチーム戦が生じます。

最短で成果を出すために本気で勝負するので、育児女性、介護社員がキャリアをあきらめずに本気を出すプラス効果があります。独身者に仕事が集中しなくなり、婚活、自己研鑽に時間が使える。既婚者なら育児参加に回せるようになると、妻の職場復帰もでき、家庭にも、会社にも、プラスの効果が生まれます。

労働時間を削減すると業績に悪影響が及ぶとおっしゃる方もまだおりますが、今の状況は、逆なのです。脱長時間労働を社会全体に適応できれば、GDP600兆円の達成、出生率1.8の実現、介護離職ゼロの実現も不可能ではないと、私は思います。

日本は労働時間に事実上上限がない法制度になっています。時間外労働は月間45時間という一応の労基法がありながら、それを超えても罰則規定はなく、36協定の特別条項を結んでしまえば、1年のうち最大6カ月は労使で決めた上限まで残業できてしまう。厚労省が過労死ラインを80時間としていますが、それを超えた労使協定を結んでいる企業では月間100時間を超えた残業も合法になってしまっています。

■卒業後すぐに大企業への就職は危険

――小室さんは、本書に登場する1998年生まれの「ジェーン」のような生き方をされている印象を受けました。

リンダさんは、これから100年時代を生きる人にとっては、自分たちの親世代の生き方は参考にならない、と述べていますね。私は資生堂に7年間勤めたのですが、その前に1年間、ベンチャー企業でインターンをしていましたし、その前の1年間には、大学を休学して海外を放浪したこともあります。

今から20年も前のことなので、大学生を5年間やることは、就活上のリスクでしかないと思われていましたし、在学中にインターンシップをする人もほとんどいませんでした。しかし、当時圧倒的に多かった、4年間でしっかり大学を卒業して大企業に入るというような道を歩まなかったことこそが、今の私の強みになっています。

ベンチャーの論理と、大企業の論理、どちらも経験したうえで、31歳で自分の会社を起業しました。だからこそ、前提を疑い、前例のない仕組みを作り、残業ゼロ・有給消化100%で、10年間増収増益を達成しています。

いきなり大企業に就職してしまうと、自分を際だたせることが極めて難しくなります。自分と同じものの見方をする人ばかりが周りにいることになりますから。

これから100年時代を生きる若い方には、20代のころから、仕事だけで終わらない時間配分を心掛けてください。私たち40代以降の人間は、まだAIが来る前に逃げ切れるかもしれませんが(笑)、20代は逃げ切れませんので、AIが来ても太刀打ちできるだけの自分の専門性を磨いておくことが重要になります。

40代以降の先輩が、会社に24時間捧げるスタイルを期待してきても「私はまだまだ現役が長いんで。自己研鑽や多様な人的ネットワークを作る時間を重視しています」ときっぱり言いましょう。リンダさんの言う3つの無形資産「生産性資産・活力資産・変身資産」を作るための時間配分を意識していくことが重要ではないでしょうか。

小室 淑恵(こむろ・よしえ)/ワーク・ライフバランス社代表取締役社長。日本女子大学在学中に渡米。1年間滞在し、ベビーシッターで生計を立てる。帰国後、インターン、大学卒業を経て1999年、資生堂に入社。2004年、日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー受賞。2005年に資生堂を退社し、2006年ワーク・ライフバランス社設立。以来、生産性の高い組織づくりを目指して900社以上の日本企業をサポートしている。2014年、安倍内閣の産業競争力会議民間議員就任。同年、ベストマザー賞(経済部門)受賞。2016年、霞が関の働き方改革を加速するための懇談会座長就任など、公務もこなすかたわら、各メディアで積極的な発言を続ける

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
1. 2016年11月20日 09:30:14 : HjCHbiL9yc : r66eSYUSdgw[149]
技術が途方もなく進展した今、仕事時間を急激に低減させずして、文化社会は有り得ない。残業などはもっての他、あらゆる分野で分業や協業を進展させて、仕事時間の短縮を図ろう。

2. 2016年11月20日 12:48:47 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[3307]

>いきなり大企業に就職してしまうと、自分を際だたせることが極めて難しくなります。自分と同じものの見方をする人ばかりが周りにいることになりますから

いや、スペックが高いのであれば、転職すれば良いんだよ

それに大企業は体制がしっかりしているから、自分の時間もコントロールしやすく

大学院への勉強や博士取得まで面倒みてくれるところもある


またスペックが低い場合は、大企業にシガミついた方が、生涯年収は高くなる

ただしメンタルコントロールの技術を習得しておかないと、ストレスでやられることになるから要注意だw


3. 2016年11月20日 12:55:02 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[3308]

>私は資生堂に7年間勤めたのですが、その前に1年間、ベンチャー企業でインターンをしていましたし、その前の1年間には、大学を休学して海外を放浪

本人の人的資本や基本スペック、親の経済力が高ければ、こういう人生も低リスクで可能だろうが

一般には、お勧めできないだろうな


  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民115掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民115掲示板  
次へ