危なげな話もいろいろ書かれているが、読むべきところは、復旦大学経済学院の孫立堅副院長のいくつかの説明に尽きる。
1)「ヘッジファンドが日本国債を空売りすることはほぼ不可能だ。海外投資家による日本国債の保有率が上昇しているが、その90%以上は日本国内の金融機関と日銀によって握られている。これらの機関が日本国債を軽々しく手放すことは絶対にない。また仮に海外投資家が日本国債を投げ売りしたとしても、日本国内の機関がこれを容易に取得するだろう。日本国内の機関投資家が高い安定性を維持しているからこそ、個人投資家・海外投資家がこれに便乗し、日本国債を保有している」
2)「日本経済は閣僚経済であり、財務省などの各部門が強い力を握る。首相は頻繁に交代できるが、日本政府の各部門は終身雇用制を採用している。各部門は長期にわたり結束を強めており、日銀も首相ではなくこれらの部門からの影響を受ける」
3)「日本の財務省と日銀の関係は非常に特殊だ。日銀は独立性を持たず、財務省から抑制され、大きな影響を受ける。日本の銀行・保険会社などの金融機関が日本国債の最大の債権者となる巨大なリスクは、日銀によって支えられている。日銀のリスク負担の背後には、財務省の長期的な産業政策の支援がある。異なる政党が与党となれば異なる政策を実施する米国とは異なり、日本では政党が頻繁に交代しても、政策・制度に変更は生じない。安倍氏が首相になったとしても、日本の金融政策・産業政策に与える影響には限りがある」
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ヘッジファンド 日本売りのチャンスをうかがう
日本の10年物国債の収益率が、ついに0.5ベーシスポイント持ち直した。これは長期的に日本売りを行なっていたヘッジファンドにとって朗報だ。国際金融報が伝えた。
もう一つの「朗報」は、今年の大人用紙おむつの販売量が、初めて子供用紙おむつを大幅に上回ったことだ。これは日本の高齢化問題が、日本国債バブルをさらに深刻化させることを意味する。2012年の債務残高の対GDP比は230%に近づいており、財政危機の警戒ラインを大幅に上回っている。
さらなる「好材料」は、衆議院総選挙後の情勢だ。ヘッジファンドは、自民党総裁の安倍晋三氏が首相となった場合、より力強い金融政策が実施され、日本国債の収益率を2%に押し上げると予想している。これは円の崩壊に必要な6-7%にはまだ遠いが、空売りを行う投資家が巨額の利益を手にすることになる。
しかしながら、日本で空売りは依然として一つの理論に過ぎず、また新しい理論でもない。世界のヘッジファンドによる円空売りは、すでに4年連続で失敗に終わっている。それでは今、なぜ機会が到来したというのだろうか。大人用紙おむつの販売量が、日本国債の崩壊を招く最後のひと押しとなるのだろうか。
■国債の国有化
日本財務省は12月4日、2兆3000億円規模の10年物国債を発行し、12月6日には7000億円規模の30年物国債を売り出す。これは日本の債務残高がさらに膨れ上がることを意味する。これはまた、日本経済が停滞する中、債務残高の対GDP比がさらに上昇することを意味する。
この原因により、10年物国債の利回りが0.5ベーシスポイント持ち直した。これまで日本国債の利回りは9年半にわたり低位推移していたが、日本政府は今回の持ち直しに対して懸念を示していない。日本の0.71%という国債利回りは依然として世界最低水準であり、日本国債の人気の高さがうかがえる。
某銀行のアナリストは取材に応じた際に、「日本にとって大きな課題は人口構成であり、短期間内に発生しうる危機ではない。日本の定年退職年齢は65歳に達するが、日本政府はユーロ圏の各国のように、必要が生じた場合にこの年齢をさらに延長することができる」と指摘した。
某信託銀行の固定収益型商品ファンドマネージャーは、「10年物国債の利回りは低水準にあるが、依然として購入者がいる。特に海外投資家は近年、日本国債の保有に積極的になっている。海外投資家の保有する日本国債の規模は現在、全体の8%に達している」と話した。
復旦大学経済学院の孫立堅副院長は取材に応じた際に、「ヘッジファンドが日本国債を空売りすることはほぼ不可能だ。海外投資家による日本国債の保有率が上昇しているが、その90%以上は日本国内の金融機関と日銀によって握られている。これらの機関が日本国債を軽々しく手放すことは絶対にない。また仮に海外投資家が日本国債を投げ売りしたとしても、日本国内の機関がこれを容易に取得するだろう。日本国内の機関投資家が高い安定性を維持しているからこそ、個人投資家・海外投資家がこれに便乗し、日本国債を保有している」と分析した。
上述したアナリストは、「日本の債務残高はすでに1000兆円に近づいているが、日本国内の金融資産は約1400兆円に達する。そのため日本国内の金融機関は、依然として国債を消化する能力を持つ。また日本国債は国有化の比率が高いため、どれほど格下げされたとしても、国内の銀行・保険会社・基金等の機関に対して影響が生じない」と分析を進めた。
■衆議院総選挙 空売りのチャンス到来か
12月16日の衆議院総選挙は、空売りの一つのチャンスである。英国に本拠を置くオードリー・キャピタルの、日本売り専門の新ファンドを運用するクリストファー・リグ氏は、「情勢に変化が生じようとしており、すでに準備を整えている」と語った。
リグ氏は「12月16日の衆議院総選挙は情勢変化の刺激剤となる。今回は、自民党総裁の安倍晋三氏が首相の座につくだろう。安倍氏は経済成長の推進に意欲的で、日銀がより積極的な措置を講じるよう望んでいる。日銀は来年年初に、総裁と2名の副総裁を交代する予定だ。安倍氏は任期内に、長期的にハト派であった日銀に変化をもたらす可能性がある。日銀はおそらく、外国債券の購入により量的緩和の新たな措置を推進する」と分析した。リグ氏は、この変化により日本国債の利回りが2%に押し上げられると予想した。これは円の崩壊に必要な6-7%にはまだ遠いが、空売りを行う投資家が巨額の利益を手にすることになる。
ヘッジファンドの日本売りの前提条件は、安倍氏の衆議院総選挙での勝利だ。しかしながら、ヘッジファンドは日本の首相に対して、過度の期待を寄せているようだ。孫副院長は「日本経済は閣僚経済であり、財務省などの各部門が強い力を握る。首相は頻繁に交代できるが、日本政府の各部門は終身雇用制を採用している。各部門は長期にわたり結束を強めており、日銀も首相ではなくこれらの部門からの影響を受ける」と指摘した。
孫副院長は「日本の財務省と日銀の関係は非常に特殊だ。日銀は独立性を持たず、財務省から抑制され、大きな影響を受ける。日本の銀行・保険会社などの金融機関が日本国債の最大の債権者となる巨大なリスクは、日銀によって支えられている。日銀のリスク負担の背後には、財務省の長期的な産業政策の支援がある。異なる政党が与党となれば異なる政策を実施する米国とは異なり、日本では政党が頻繁に交代しても、政策・制度に変更は生じない。安倍氏が首相になったとしても、日本の金融政策・産業政策に与える影響には限りがある」と説明した。(編集YF)
「人民網日本語版」2012年12月4日