ぶろぐ「法螺と戯言」より(http://c23.biz/L6Yr )同ブログで使われている図のペーストがうまく出来ないので、関心ある方は上記アドレスへ。 %%%%%以下抜粋 日本気象協会(http://c23.biz/hu3Q )によれば2016年10月21日の鳥取県中部地震(Mw6.2 )は、顕著な前震活動が先行したとのことで、住民も「なんだかこのところ地震が多いね」と語りっていたそうです。地震活動は二ヶ月も前の8月20日頃から活発になり本震発生までに約20個(m>2.0)ほど勘定されています。本震発生3日前の10月18日以降では9個と激増していおり、本震当日の直前にはM>4を超える地震が2個たて続けに起きています。 地震専門家はこの活動が「前震活動」であるのか、「群発地震活動」であるのか見極めがつかないまま、活動を拱手して眺めていたのだろうと思います。 2009年4月6日のイタリヤ中部ラキラ地震M6.2 が辿った経過を思い出させます(9月5日関連記事、http://c23.biz/SxRk )。図1に見るようにほぼ一ヶ月前に始まった小地震活動について、住民は言うまでも無く現地在住の地震研究者が「近日中の大きな地震」の発生を危惧していたと伝えられます。しかし、現地防災担当官とほとんどの地震専門家たちは「その活動は、一過性であり大地震の前兆ではない」と考え「安全宣言」を出しました。そのために住民は戸外への避難をやめて家にもどったところで、本震が発生。結局300名余の犠牲者と多数の住宅倒壊、インフラ損傷という大きな災害と6名が「殺人罪」の罪で検察から訴追された事件は本ブログでも書きました(7月29日記事http://c23.biz/DGFU )。 (図1: ラキラ地震に先行する活発な前震活動 http://c23.biz/u25P) foreshocksItalian 太陽系外惑星探査機ケプラを宇宙空間に打ち上げる、一秒の億分の一と言う極小時間内の物質反応実験で宇宙創成の謎にせまる等々、想像もつかない発想を検証実験するための技術開発を人間はしてきました。 ところが、自らが立つ足元を見ると、地下掘削技術は高々15km、地球の半径6371.2kmのわずか0.2%強までしか届いていません。火山など偶々地下から吹き出してくるマグマから地球内部の物質を推定する等地表上のちっぽけな地点で得たサンプル情報から地下の物質の重なり具合を“外挿・推定”してきました。 幸い、「地震波解析技術を使う」ことで、発生した地震の数だけデータが増えますから、それに比例して「地球内部」の知見は確かに急激に蓄積できました。しかし、これらは所詮は「静的地球」の解明であり、地震発生と言う「動学的現象」ではありません。そのためにはもっと多様な事例解明が求められている。それが地震学の現状です。
今般の事態も、「群発地震」なのか「前震なのか」見極めがつかないまま本震が起きる迄は拱手するしかなかった。今更「あれは前震であった」と言っても、それは「後だしジャンケン」です。 思えば、鳥取県での記憶に残る大震災は1943年のM7.2 地震です。この地震の3年後に南海地震M8.0が起きています。早くもそれを指摘し警鐘を鳴らす学者さんも出現しています。 (図2:日刊ゲンダイ10月23日付) 鳥取地震2134 「南海トラフで巨大地震が近づくと、その数十年前から近畿から西日本にかけて地震が多くなることを過去の歴史が示しています。73年前の鳥取地震の前は、兵庫県北部でM6.8の北但馬地震(1925年)、京都府の丹後半島でM7.3の北丹後地震(1927年)など、大きい地震が立て続けに近畿地方を襲いました。そして1943年に鳥取地震が発生すると、その翌年にM7.9の東南海地震が起き、1946年にM8.0の南海地震が発生したのです。つまり、見方によっては、今回の鳥取県中部の地震を南海トラフ地震の予兆と捉えることもできます」と、西田良平氏は語ったとのことです( 日刊ゲンダイ、10月23日 http://c23.biz/efrR )
しかし、この学者さんにしたところで、鳥取域で起きる地震活動と南海地震との力学的因果関係の物理学を踏まえているわけではありません。高々、高所的発想である「プレート」理論に照らして関連付けたという程度のものです。それは、解明したことにはなりません(尤もこの手の議論を猫も杓子もしているのですが)。そこが、地震予知・地震予測ビジネスの悩ましいところです。 前置きが長くなりました。下の表は前回記事の再掲です。 (表1:上はGlobal CMT Catalogue より。最下段の二行が断層面として可能性のある二つの面(節面と呼ばれる)です。下は Global CMT Catalogue解析から導かれる震央に働く3つの応力の方向成分とその大きさ、および非DC量) 20161021鳥取b 上の表(下)の”eigen”とある行の3つの数値は、最左が圧力応力(−2.8911dyne・cm)、最右が張力応力(3.1250)、そして中央が震源に働く全ての応力が”0”であるという条件下から導かれる「中間主応力(と呼ばれる、−0.2379)」です。地震波をこの条件下で解析するならば、震源では鉛直方向(何故ならこのケースでは、二つの応力はほぼ水平面上にある)に微小な“圧力”が働いていたことを意味します。しかし、この解釈はあくまでも数値解析から生じた量で、その解釈には色々と検討するべき問題がある事は以前書きました。そもそも、今回のような地下浅い場所で発生する地震源周囲は静水圧状態に近いのか?と言った疑問もあります。
それはさておき、地震時には“張力”が大きく働いたという解釈も可能です。表1(下)のeigen 列で最右の値の絶対値が最左のそれよりも大きいからです。それは図1右の“T”二相当し張力軸の方向です。気象庁の記者発表は、フィリッピン海プレートの運動方向に働く力、つまり”P”方向の力がこの地震を起こした、と言います。つまり、今般の地震の主要な起動力は「フィリッピン海プレートの北西方向の運動」であるという一般的な解釈に随(したが)ったのでしょう。 (図3:(左)地震発生前一週間の震央分布、(右)表1の解析から得られる発震機構図) 20161021鳥取a 上の図の右と左を見比べることから、この地震の断層面の幾何学的性状は表1(上)の最下段に示される二つの節面の内“面-a”であることがわかります。左横ずれ断層です。
今般の地震については、ネットおよび週刊誌などですっかりおなじみになった「地震予想専門家」の発生予測は無かったようです。尤もこれも「後出しジャンケン」に近い形ではありますが京都大学の地震研究者が「GPS観測から同域の地殻歪を認識していた」と談話していました。しかし、それはさほど大きくは無かったのでしょう。更には、地震予測で名を馳せたお一人はまさにGPSを専門とする東大名誉教授でしたが、今般は「この先生の成功譚は聞こえませんでした。 その理由として以下を想像して居ます。「歪」というのは地表の二点間の距離が変化することで認識されます。これは地殻の変形によって生じます。したがってこの地殻が周囲から大きな力を受けても、それに抗って地殻が必死に抵抗してしまうと、「歪」は生じない又は、生じても小さいことになります。地殻が強い力を受けても変形せずに「硬化」してしまう”hardening”を起こす事があるのではなかろうかと私は思っています。「ダイラタンシ」と言う考え方です。この場合には”変形“は小さいけれども、つまり”歪”は小さいけれども大きな力を受けているという状態です。この場合にはGPS観測には感応しない。しかし、圧電効果は生じる?しかし、この分野の先生も今般は沈黙です。 上にも書きましたが、昨今は「中央構造線が何時活動しても不思議でない」との論調があちこちに行き渡っています。今般の鳥取地震を起こすくらいの大きな力が働いたのであれば、「より割れやすい筈の中央構造線」を何故その大きな力は割らないのか?何故、わざわざ割れにくい鳥取の名も知れぬ断層を割ったのか?疑問は尽きないのであります。 %%%%%抜粋おわり
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