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[経世済民106] 猛烈なる売り越し(外人)の先にあるものは?(GLOBAL EYE) 赤かぶ
2. 2016年3月28日 14:13:13 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[1]

金融市場異論百出
2016年3月25日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長]
錬金術師から“薬剤師”へ神通力が落ちた世界の中央銀行

ニール・アーウィン氏著『錬金術師たち』(The Alchemists)(写真右)と、マーヴィン・キング・イングランド銀行前総裁著『錬金術の終わり』(The End of Alchemy)(写真左)
『錬金術師たち』(The Alchemists)。ニール・アーウィン氏が2013年に著したこの本は、中央銀行関係者の間で大きな話題となった。

ベン・バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)前議長、ジャン=クロード・トリシェ欧州中央銀行(ECB)前総裁、マーヴィン・キング・イングランド銀行前総裁が、金融危機後に巨額資金供給でパニックを鎮めた経緯、内幕が描写されていたからだ。

アーウィン氏は、中央銀行は錬金術師のように「無価値なものから価値ある何かを作り出す魔法のプロセス」を持っていると考えた。そういったミラクルなパワーが中央銀行にはあるとイメージしていた人は、当時の株式市場や為替市場にも多かった。

しかし、同書の表紙にも載っていたキング前総裁が今月出版する新著のタイトルは、『錬金術の終わり』(The End of Alchemy)である。時代の変化が感じられる。

実際、今年に入ってから、中央銀行の神通力は落ちてきている。日本銀行は1月29日にマイナス金利政策を導入した。その本音の目的は、円安誘導および株価押し上げにあったと推測されるが、これまでのところうまくいっていない。

しかも、消費者マインドを表す消費者態度指数は2月に大幅に悪化した。おそらく多くの日本国民は、「マイナス金利といわれてもよく分からないが、そんな異常な政策を始めなければならないほど日本経済は悪いのか」と感じて、心配になってしまったのだろう。

一方、ECBは3月10日に、量的金融緩和策(QE)の拡大やマイナス金利の引き下げ等の大胆な緩和パッケージを決定した。しかし、市場の反応は、昨年1月のQE導入決定時より冷ややかだ。ユーロの対ドルレートは緩和策で下落するのではなく、逆に上昇した。

この1年を振り返ると、欧州の株価は昨年4月上旬までは上昇したが、その後は下落、現在はQE開始直前の水準より低い位置にある。インフレ率も2月はマイナス圏に舞い戻ってしまった。

かといって、過度なマイナス金利政策は銀行の金融仲介機能を損ねるため、ECBはさらなる金利引き下げは行わない様子だ。「金融政策には限界がある」と考える市場参加者が増えている。英紙「フィナンシャル・タイムズ」も「何年もの間、投資家たちは中央銀行のとりこだった。しかし、状況が変わってきた」と最近書いていた。

かつて大胆な緩和策の必要性を声高に主張していた経済学者アダム・ポーゼン氏は、前掲書『錬金術師たち』へのコメントの中で、「中央銀行家は錬金術師ではなく、実際は薬剤師だ」と述べていた。「棚にある薬の量は限られており、法律で一定量を超える薬の使用は禁止されている」「望まれる最善の状況とは、副作用を最小限に抑えつつ、患者が時とともに着実に回復してくれることだ」。一時イングランド銀行の政策委員を務めた経験が、彼の見方を変えたようだ。

日銀もECBも、いっそ「中央銀行は実は薬剤師」と認めて身の丈に合った政策を行う方が、副作用を回避できるだろう。先日の主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも、通貨安誘導につながる緩和競争は避けるべきという合意が形成された。

しかし、政府による有効な景気刺激策や構造改革は日欧共に期待しづらい面があるだけに、「中央銀行は無限のパワーを持つ」「緩和手段はいくらでもある」といった強弁をやめることは、なかなか難しいのかもしれない。

(東短リサーチ代表取締役社長加藤 出)
http://diamond.jp/articles/-/88315

 


シェール企業、利払いに窮してバタバタと逝く
いよいよ訪れようとしている原油価格下落の正念場
2016.3.25(金) 藤 和彦
米シェール産業の先駆者が衝突死、入札談合で起訴の翌日
米カリフォルニア州のシェールガス採掘場でパイプから噴き出す炎(2014年3月22日撮影、資料写真)。(c)AFP/Getty Images/David McNew〔AFPBB News〕
3月下旬に入り、米WTI原油先物価格は1バレル=40ドル前後で推移している。

米国での原油掘削装置(リグ)稼動数の記録的な減少(約1600 → 約400へ)がようやく効果を発揮し始めた(生産が1年4カ月ぶりの水準に低下した)ことに加え、連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ見送りで米ドルが急落したことも原油相場を後押しした。

原油価格の見通しについて、投機筋は昨年(2015年)6月以降で最も強気になっているという(3月22日付ブルームバーグ)。

その理由はなんと言っても、4月17日に主要産油国が集まるカタールの首都ドーハでの会合で、生産抑制に向けてなんらかの合意が成立するとの期待である。

3月21日、OPECのパドリ事務局長は「原油価格は適度な水準で回復する」との見方を示した。しかし、4月のドーハでの会合で具体的な合意ができなければ相場が反転することは明らかである。

さらに筆者は、生産水準維持に関する協議が成立したとしても世界の供給過剰にはほとんど影響を及ぼさない可能性が高い、と考えている。理由は次のとおりだ。

国際エネルギー機関(IEA)によれば、今年原油の生産を増加させるのはイラン、ブラジル、アルゼンチン、赤道ギニアだ。このうちイランとブラジルは増産を凍結する意向はない。また、アルゼンチン、赤道ギニアが増産凍結に合意しても、抑制される原油供給は日量5万バレルに過ぎず、世界の供給過剰分(日量約200万バレル)の2.5%にすぎない。OPECが6月の総会で減産を決定する可能性も低い(3月1日付ロイター)。

大幅に増加しそうなシェール企業の破綻

昨年1月に1バレル=40ドル台に下落した原油価格は、その後上昇に転じ、6月には同60ドルに届く勢いだった。だが、6月に開催されたOPEC総会で予想に反して生産据え置きが決定されると再び下落に転じ、同30ドル台後半で年末を迎えた。

今年1月に1バレル=26ドル台だった原油価格は約40%上昇した。しかしこのまま上昇することはなく、年末までにさらなる安値を記録するという昨年の「二の舞」になるのではないだろうか。

その理由は、シェール企業の破綻が今後大幅に増加する可能性が高いからである。

原油価格は回復基調にあるため、シェール企業の一部には増産の動きが出ている。だが、シェール企業全体が利益をあげる水準にはほど遠い。

3月18日、米中堅石油会社「ペノコ」は米連邦破産法第11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請したと発表した(3月19日付日本経済新聞)。ペノコの負債総額は約10億ドルだが、2月16日を期限とする1370万ドルの利払いができず、その後も資金繰りに追われていた。同日、「エナジーXXI」も880万ドルの利払いが不能となり、今後1年間に利払いを果たせない見込みとなった。その後も「サンドリッジ・エナジー」(2月17日、2170万ドル)や「グッドリッチ・ペトロリウム」(3月8日、額は不明)の利払い延期が相次いでいる。

2月19日付ブルームバーグによると、シェール業界は3月末までに総額12億ドルの利息を支払う必要があるという。12億ドルという数字は北米独立系石油・ガス生産会社61社についてブルームバーグが集計した結果である。そのうち約半分の企業はジャンク債に格付けされているため、多額の利払い負担を抱えている。

シェール企業各社の2月期決算を見ると、売上高は低油価のせいで軒並み前年比35〜55%減少し、稼動リグ数も各社は大幅に本数を減らしている。リグ1本当たりの生産量を大幅に増やしているため生産量は前年比横ばいの企業が多いが、原油価格が1バレル=40ドルになっても、各社にとって債務の利払いのための資金調達が困難なことに変わりはない。

米国の石油生産企業の3分の1が年内に破綻?

シェール企業(ガス系を含む)の破綻件数は2013年が15社、2014年が14社と低位で推移してきたが、2015年には67社と急増した(破綻の大半は年後半に発生した)。67件のうち原油系企業は42社であり、地域別にはテキサス州が18社と最も多かった。

シェール企業各社は、キャッシュフローを確実にするとの理由から1年後の原油価格を確定することを金融機関から義務付けられていた(原油先物の「売り」を行う)。そのため、昨年前半までは原油先物の売りと原油現物の買い戻しから生ずる差益を稼ぐことができ、これを操業資金等に充当してきた。しかし今年に入るとその錬金術が使えなくなった。融資に占めるエネルギー企業の比率が高い金融機関の株価が下落傾向にある(2月9日付日本経済新聞)ため、4月以降に集中する金融機関との交渉で、融資が打ち切られるシェール企業が続出することが懸念されている。

2月16日、米監査法人・コンサルテイング会社のデロイトは、米国で株式上場する石油・天然ガス生産企業500社以上の調査を踏まえて、「米国の石油生産企業の約3分の1が年内に経営破綻に陥る危険性が高い」と予測した。経営破綻リスクがある175社の企業は1500億ドル以上の負債を抱えているという。米国全体でシェール企業は4000〜5000社あるとされていることから、焦げ付き債権はトータルで2000億ドルを超える可能性がある。

シェール企業最大手の「チェサピーク・エナジー」も相変わらず気がかりである。

同社は今年に入り、ますます窮地に追い込まれていた。最も大きな要因は、昨年末まで400〜500万バレル相当の原油先物を1バレル=58ドル以上の価格で売る契約を結んでいたが、その契約が今年に入り失効してしまったことにある。キャッシュフローが先細りした同社に対し、2月に入り複数の取引先企業は合計2.2億ドルの担保提供を求めていた。最終的に要求される担保は7億ドルにまで膨らむ可能性がある(2月26日付ブルームバーグ)。

また、同社は保有する石油・ガス関連資産に対し昨年182億ドルの評価損を計上した。今年もさらなる評価損が生じる可能性が高いため、虎の子であるオクラホマ州シェール資産の一部売却を検討しているという(3月10日付ブルームバーグ)。

原油価格の上昇で一息ついた感があるが、負債総額約110億ドルを抱えるチェサピーク・エナジーが破綻すれば、シェール企業の連鎖倒産が起き、金融市場に衝撃が走るだろう。

80年代後半の「S&L危機」が再来か

筆者は以前のコラム(「原油価格急落で再びテキサスは燃えてしまうのか」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43506)で、1980年代後半の逆オイルショック後にテキサス州を中心に生じた「S&L危機」と今回の原油価格下落の類似点について触れた。ここに来て、その再来がますます心配になっている。

1970年代の2度のオイルショックにより、原油価格は1バレル=2.75ドル(1973年)から36.95ドル(1981年)に急騰した。それを受けて金融機関は原油価格が1バレル=60ドルにまでに上昇することを前提に石油ビジネスへの融資を大幅に拡大した。

しかし1981年から原油価格は徐々に低下し、1986年には1バレル=10ドルにまで下落してしまう。高コスト構造の米国産原油はこうした低価格に競争力がなく、多くの採掘事業が行き詰まった。米国内の稼動リグ数は約4000(1981年)から1986年には5分の1以下にまで激減した。

これにより石油企業の5割以上が破綻した結果、1987年から1989年にかけて米国で金融機関の大量破綻が起きた。件数・資産ベースともに金融機関の破綻が深刻だったのがテキサス州である。「S&L」と呼ばれる住宅ローンに特化した小さな金融機関の破綻も、テキサス州が中心だった。1986年初めに3234あったS&Lは1995年末には1645まで減少し、S&L危機に伴う財政負担は1500億ドルに達したと言われている。

今回も、テキサス州を中心にシェール企業の大量破綻が生じ、その救済コストが多額に上る可能性がある。

世界の地政学的リスクはますます上昇

シェール企業の大量破綻は、米国以外の他の金融市場にも悪影響を及ぼす。

今年に入ってからのシェール企業の破綻総数はつかめていないが、年間を通して優に100社を超えることが予想される。だが、シェール企業が発行しているジャンク債市場には3月に入ると資金が再び流入しており(3月11日付ロイター)、世界の市場関係者はいまだ警戒心が薄い。

S&L危機の時とは異なり、金融機関はシェール企業に対するレバレッジド(ハイリスク・ハイリターン)ローンを証券化して、世界中の投資家に売りさばくことによりリスク回避を行っている。しかし、チェサピーク・エナジーのような大型シェール企業が破綻し、金融市場に混乱が生じれば、金融商品化した原油先物価格は暴落する。

その後に金融危機が来るかどうかは「神のみぞ知る」だが、米国でシェール企業破綻に端を発する「4月危機」が来れば、ヒートアップしている米国の大統領選挙への(悪)影響も大きいだろう。さらに原油価格のさらなる急落は産油国経済を直撃し、世界のいわゆる地政学的リスクはますます上昇することは論を待たない。

今回の原油価格下落の正念場がいよいよ訪れようとしている。その結末ははたしてどうなるのだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/46417

 

原油安に翻弄される産油国、減税広がる
2016年3月25日(金)The Economist


 原油価格の上昇。かつてそれは国家が財源を確保する上での必勝パターンであった。石油会社を対象とする様々な課税やロイヤリティ(利権料)、生産物分与契約を通じて政府が獲得する資金は、原油価格が上昇するのに伴いどんどん増えていった。米ボストン コンサルティング グループによれば、政府の平均的な取り分は2000年の1バレル当たり9ドル90セント(約1100円)から、2014年の同30ドル40セント(約3400円)に上昇した。
 こうした相場は、原油価格が3桁をつけていた時期には妥当なものだったかもしれない。だが1バレル40ドル(約4500円)前後で低迷する今、この金額は高すぎる。そこで各国の政府は石油業界の負担を軽減するべく動き出した。英国のオズボーン財務大臣は3月16日に提出した予算案の中で、石油生産にかけていた税の1つを廃止、もう1つを半減させた*1。北海油田の一部については税率を現行の67.5%から40%に引き下げる。
*1:石油収入税を廃止、石油・ガス生産業者に対する追加費用税を半減すると発表した
 石油生産を対象とする税の中には、価格変動の影響を他より強く受けるものがある。
 オーストラリアやノルウェーなどでは油田から上がる収益に対して一定割合の政府の取り分を設定している。こうしたシステムにおいては、原油価格が下がって収益が縮小すれば、政府が得られる額も自動的に調整される。
 一方、ブラジルやカザフスタンなどは1バレルにつき固定額のロイヤリティを課している。この場合、原油価格が下落してもロイヤリティの金額は変わらないため、政府の分け前が膨らむことになる。これら以外のシステム、つまり石油会社と政府がコストと収益を共有する形のものは、これまでに説明した2つの混合型として機能する。
コスト高の油田は高い税率に耐えられない
 現在、固定額のロイヤリティをベースとする体制の多くで過酷な課税状況が生じている。英国に拠点を置く会計事務所のEY(アーンスト・アンド・ヤング)の試算によれば、原油価格が1バレル40ドルになると、ブラジルとアンゴラの一部プロジェクトでは総利益を超える額が政府のものとなる(図参照)。
政府の取り分が総利益を超える
●油田の総利益*に占める割合(%)、2015年

出所:The Economist/EY、Wood Mackenzie
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 たとえ法外な額でなくとも、高い税率は問題を生じさせかねない。ノルウェーのコンサルティング会社ライスタッド・エナジーは、2013年には世界で9000億ドル(約100兆円)だった石油・ガス開発投資が今年は5220億ドル(約59兆円)まで減ると予測している。政府が新規の開発投資を呼び込もうとしても、目的を達成できるチャンスはわずかだ。
 石油資源の中には極めて魅力的なものもあり、そういう案件には何があろうと多数の石油会社が殺到する。だが英国沖の北海油田など、資源の枯渇が予想され、コストも高くつく地域ではそうはいかない。そういうところには税制上の優遇措置が不可欠となる。昨年、デンマークのマースク・オイルはカリーン油田の開発を続行すると決めた。その背景には、この複雑なプロジェクトに対して政府が減税策を導入したことがあった。
 地域によってはさらに切迫した課題に直面している。油田の操業コスト(ロイヤリティを含む)が原油価格を上回った場合、所有者は油田を一時的に閉鎖する可能性がある。EYの石油ガスセクターでグローバル財務リーダーを務めるアレクセイ・コンドラショフ氏によると、米国のシェール層の多くはとりわけその影響を受けやすいという。
英国を皮切りに相次ぐ負担軽減
 一連の減税策を最初に打ち出したのは英国だ。英国は昨年、石油から上がる利益に対する税率を引き下げるとともに、幅広い投資控除を導入した。新規油田を対象とする税率は2015年初めには60%だったが、まず50%に下がり、今度は40%になる予定だ。
 英国の動きに続き、カザフスタンが原油の輸出税を引き下げた。ブラジルは新たに導入する予定だった石油ロイヤリティを保留した。コロンビア、メキシコ、ケニアは税制度に手を入れている。カナダのアルバータ州は1月、石油ロイヤリティの引き上げを見送った。同州では昨年、法人税の引き上げを公約に掲げた左派政府が誕生していた。
安直な答えなど存在しない
 原油価格は最近、部分的な回復を見せた。だがこの勢いが失われれば、「財政難」「巨大石油企業への減税に対する国民の反感」という困難を押してでも財政を見直す政府が増える可能性がある。しかし、この問題に安直な答えなど存在しない。
 ロイヤリティは、企業が回避するのが難しく、政府にとっては頼りにしやすいものだ。だが融通は利かない。収益ベースの課税と生産物分与は複雑で、石油会社による操作の余地が残る。つまり、欠点のないシステムなど存在しないのだ。それを考えれば、石油産業に対する税制が各政府によって大きく異なる理由も理解できる。
 多くの国が石油会社の税負担を軽減しているものの、「底辺への競争」は今のところ生じていない。それどころか正反対の方向を目指しそうな国もある。通貨ルーブルが下落するのと同様に操業コストが縮小し、思わぬ収入を手にしたロシアの石油企業に対しては、増税が実施されるかもしれない。
 また、米国のオバマ大統領は2月、米国で生産される原油1バレル当たり10ドル25セント(約1150円)の新たな連邦ロイヤリティを提案した(州政府が課すロイヤリティはすでに複数存在する)。共和党が多数を占める議会がこの計画を阻もうとしていることは、石油会社にとって朗報だろう。
Economistは約400万人の読者が購読する週刊誌です。
世界中で起こる出来事に対する洞察力ある分析と論説に定評があります。
記事は、「地域」ごとのニュースのほか、「科学・技術」「本・芸術」などで構成されています。
このコラムではEconomistから厳選した記事を選び日本語でお届けします。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/032300070/


海から見た世界経済
【第6回】 2016年3月25日 山田吉彦
「石油価格のメカニズム」2015年の大暴落、その真相とは?

2015年に起こった石油価格暴落。1バレル約100ドルだった石油価格(2014年)は、一気に36ドルまで下がりました。その原因と石油価格のメカニズムを見ていきましょう。「海と経済」の第一人者であり、新刊『完全図解海から見た世界経済』の著者である山田氏に聞いてみました。

石油価格の暴落は、
なぜ起こったのか?

2015年は石油価格が暴落しました。国際的な原油価格の指標となるWTI原油価格は、2014年6月20日、1バレル当たり107・95ドルでしたが、2015年12月28日には、36・36ドルまで下落。実に66%も下落してしまいました。


2015年の石油価格暴落。その流れを追いつつ、「石油価格のメカニズム」を見ていきましょう。
石油価格の急速な下落の引き金になったのは、「シェールオイル開発の影響による、アメリカ内における石油のだぶつき」でした。2013年、アメリカでは、それまで1日に500万バレルほどの石油産出量でしたが、810万バレルまで急速に増加しました。その内、350万バレル近くがシェールオイルです。
※シェールオイルは石油の一種

かつてアメリカでは石油の輸出を制限していました。しかし2014年、シェールオイルの生産による「国内石油の余剰解消」のため、法律を改正し、アメリカ内で産出された石油を輸出できるようにします。テキサス産の原油をヨーロッパに輸出しますが、石油を海外へ送り出すための施設も不足し、供給過多による価格の低迷を解消することはできませんでした。

2014年時点でシェールオイルの生産、流通に関わるコストは、1バレル当たり70ドルから90ドル前後と試算されていました。いずれ量産体制が確立すると1バレル当たり40ドルにまで下がると予想されています。これは、OPEC(石油輸出国機構)に加盟する既存の原産国にとって脅威になります。

石油価格を巡る攻防戦
アメリカ、OPEC

石油価格の大幅な下落の原因をアメリカのシェールオイル増産によると見たOPECは、生産量の維持を決め、価格の低迷を容認しました。

サウジアラビアの石油産出・流通コストは、1バレル当たり18ドルといわれ、価格競争に十分に耐えられます。一方、アメリカのシェールオイル関連企業の一部は既に破綻してしまいました。OPECの生産体制維持は、シェールオイル潰しであるともいわれています。

また、石油価格を低水準に抑えることは、イスラム過激組織IS対策としても推進されています。ISは、軍事占領した地域から産出する石油を軍資金にしています。

さらに、石油価格の低迷は、クリミア問題により欧米諸国と対立しているロシアにも大打撃を与えています。ロシアは世界でも1、2を争う原油生産国ですが、寒冷地という厳しい環境と後発の産油国のため、生産コストが高く、原油価格が1バレル当たり50ドルに達しないと利益を上げることができません。石油の売却益がなくては、国家財政の維持も困難です。原油価格の低迷は、ロシアへの経済制裁にもなっています。

石油価格下落による
悪影響とは?

原油価格の低迷は、海底資源開発の速度を鈍らせる恐れもあります。2013年における、全世界における石油・天然ガス探鉱開発投資額は、68兆円ほどですが、その内の約29兆円が海洋での開発に関わるコストです。

2015年1月時点で、海底から石油およびガスを採取する海洋掘削リグは、世界に954基存在しています(その他に224基を建造中)。最も多いのはメキシコ湾です。アメリカの海域とその周辺に設置されているものが186基あります。その次に海底掘削リグが多いのは、中東地域で155基、次いで東南アジアの125基です。

海洋における石油生産の比率は、2020年までには、全石油生産量の3分の1に上昇すると見込まれています。現在のように石油価格が低迷する状況では、新たな海洋油田開発は推進することができなくなるでしょう。原油価格1バレル当たり50ドルが、海洋油田開発推進のボーダーラインのようです。
http://diamond.jp/articles/print/88442

 
 


 

格差を生み、不況をもたらした許されざる"真犯人"
公開中『マネー・ショート』と『ドリームホーム』が雄弁に語る世界経済
2016.3.28(月) 竹野 敏貴
米NY、最貧地区とウォール街周辺の平均寿命の差は11年
ウォール街にあるニューヨーク証券取引所〔AFPBB News〕
今年のアカデミー賞で、作品賞、監督賞など5部門にノミネートされ、脚色賞を獲得した実話に基づいたシニカルな金融ドラマ『マネー・ショート華麗なる大逆転』(原題The Big Short)(2015)が劇場公開中である。

MLBを舞台とした『マネーボール』(2011)の原作者で、金融界の一員だったこともあるマイケル・ルイスのベストセラー「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」の映画化作は、サブプライムローン問題をいち早く察知した男たちの物語である。

冒頭、ライアン・ゴズリング演じるトレーダー、ジャレッドが、見る者に向かい、MBS(Mortgage backed securities不動産抵当証券)を考案したルイス・ラニエリについて語りかける。

「彼のことは知らないだろうが、マイケル・ジョーダン、アイポッド(iPod)、ユーチューブ(YouTube)を合わせたよりもあなたの生活を変えた人物なのだ」

リーマンショックを予期した男

そして、金融界享楽の時の映像が挟まり、登場から30年ほど経た2008年、世界経済を危機へと追い込んだことを伝える。

専門家もリーダーたちもそれを予見できなかった。しかし、何人かのアウトサイダーや奇人たちには、ほかには見えないものが見えていた。

その1人、クリスチャン・ベール(本作でアカデミー助演男優賞ノミネート)演じるエキセントリックな印象のファンド・マネージャー、マイケルは、住宅ブームさなかの2005年、MBSを調べるうち、高い格付けにもかかわらず、リスキーな変動金利型サブプライムローンが含まれていることを知る。

そして、当初は低く設定されている金利が上がる2007年に暴落が始まると予測する。

スティーヴ・カレル演じる世のシステムに不信を持ち続けるファンド・マネージャー、マークは、マイケルの動向を知ったジャレッドから話をもちかけられ、話に乗る。

ニューヨークへとやって来たばかりの若き投資家チャーリーとジェイミーもひょんなことから情報を得るが、ウォール街に打って出るには桁外れのカネが必要で、かつての隣人で元腕利き銀行家、ブラッド・ピット演じるベンの助けを借りることになる。

こうして、男たちはそれぞれの思惑で「経済の破綻に賭けた」。そして2007年、サブプライムローン事情は悪化・・・。

金融界に縁の希薄な者にとって、リーマンショックの理解は、いまだモヤモヤ。そこには、複雑化した金融システム、商品の知識欠如がある。この映画のストーリーを追っていても、様々な専門用語が飛び交う。

「MBS、サブプライムローン、トランシェ・・・。ウォール街は、彼らだけがそれができると思わせるため、混乱させるような用語を使うのを好む」とジャレッドも語りかける。

しかし、この映画は、重要なキーワードを、俳優や著名人たちが、たとえを使い「解説」してくれる。

バブルを作り破裂させるCDO

開巻間もなく、女優マーゴット・ロビーは、バブルバスにつかりながら、MBSやサブプライムローンを「shit」という言葉を使って解説、たびたび登場する「short」という単語についても「bet against」だと語る。

有名シェフは、役立たずの魚を使ったシーフードシチューがCDO(Collateralized Debt Obligation)だと言い、行動経済学者は、カジノでブラックジャックに興じる人気歌手セレーナ・ゴメスが勝つかどうかに賭ける見物人、その見物人に賭ける他の見物人・・・と賭けが膨張していく様(さま)にシンセティックCDOを重ね合わせる。

こうしてフィクション世界から一時的に逸脱するような「第4の壁を破る」手法は、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013)でもとられている。

そして、26歳の時4900万ドル稼いだという、レオナルド・ディカプリオ演じるトレーダー、ジョーダン・ベルフォートが、ウォール街のカネとドラッグと酒とセックスまみれの生活を見る者に語りかけることで、シニカルな印象づけに成功している。

それでも、英語ネイティブでない我々が、理解しようともがいているうち、フィクション世界の物語は進んでしまっているかもしれない。

実際、大まかなイメージを掴めば、映画的にも知識的にも十分とも思えるのだが、すっきりしないのであれば、ルイスの原作を読むのもいい。

ドキュメンタリー映画『インサイド・ジョブ世界不況の知られざる真実』(2010)なら、用語も分かりやすく説明されているし、金融危機の全体像を捉える助けにもなる。

「内部犯行」を意味する題名のこの映画は、アイスランドから始まる。生活水準も高く、人口32万の成熟した小国は、2000年、大幅な規制緩和を行った。国営3銀行も民営化、米国格付機関も金融機関を高評価した。

株、住宅バブル、2008年銀行破綻。市民生活は大被害を受けた。そして、ニューヨーク。リーマン・ブラザーズ破綻、世界最大の保険会社AIGの経営危機、世界も・・・。

そこから、戦後の米国金融小史が語られていく。大恐慌以降40年、米国は成長を続け、金融危機はなかった。金融界は厳しく規制されてきた。

しかし、1980年代、激変。

世界を変えた米国の金融規制緩和

学者とロビイストに支援され、ロナルド・レーガン政権は規制緩和に着手した。1982年、貯蓄貸付組合(S&L)への規制撤廃、預金によるリスキーな投資が認められるが、80年代末までS&Lの破綻が相次ぎ、救済には税金が使われ、多くの人が貯蓄を失った。

金融界は強大となり、豊富な資金とロビー活動で政治に入り込んだ。巨額のボーナス、詐欺、不正会計の横行。規制緩和と金融工学がデリバティブを生み出し、すべてが投資対象となった。

業界の中心となる投資銀行5行、金融複合企業2社、保険会社3社、格付会社3社による証券チェーン(Securitization food chain)形成。住宅ローンを大量に集め、車や学資ローンなど組み合わせCDOを作り、世界中の投資家に売った。

銀行は格付機関に評価を依頼、大抵は高格付だった。証券化されたことで、貸し手は返済を気にせず、リスキーな相手にも貸すようになった。投資銀行も高利益のCDO販売ばかり考えた。

住宅ローンは質より量となり、21世紀に入って、4倍近くとなった。そこにサブプライムローンが入り込んだ。それでも格付は高いまま。住宅価格は高騰した。借手は必要以上に高いローンを借り、やがて、多くは返済不能となった。

AIGはCDO関連のCDS(Credit default swap)というデリバティブを大量販売した。CDSとは信用リスクを取引するデリバティブで、CDOを持つ投資家にとっては、保険料を払い破綻時に損失補填してもらう保険のようなもの。

しかし、CDOを持っている必要はなかった。その破綻に賭けたければ、他の投資家も買えた。そして、経営危機に陥ったとき、CDS支払いの余力はなく、AIGには公的資金が投入された。

金融界は文字通り桁違いの高収入の世界となった。1980年代以降、米国は格差社会となり、「99%のその他」は長時間労働と借金で対応した。そして、借金が簡単にできるシステムができた。

『マネー・ショート』でも、住宅事情を調べにフロリダにやって来たマークが、バブルの現実、多くの空き家とともに、ローン審査のいい加減さに呆然、金融危機が訪れることを確信する。

貯金をほとんど使わず、借金で家を買う。だから、何かあればローンは滞る。そんなローンを組み込んだ証券でも格付は優良。現実と格付の乖離は、『マネー・ショート』中盤、話のポイントとなる。

2010年の調査委員会の席で「クズだと思っていながら、その証券を最優先で売った」投資銀行幹部が上院議員に詰問されている映像が『インサイド・ジョブ』にある。

ウォール街の架空の投資銀行が舞台の『マージン・コール』(2011)はまさにそんな話。リスク管理部門で働く物理学博士号をもつ若手アナリストが、解雇された上司から渡されたやりかけの仕事を解析、40か月ほど前から扱い大きな利益を上げてきたMBSが25%下落すれば、損失額は会社の総資産価値を上回ることを知る。

不正の対価は桁外れの報酬

それを聞いた会社のとった行動は、価値のないことを知りながら、市場が気づく前、その大半を、CEO言うところの「購買意欲のある買い手に正当な価格で売る」こと。

もちろん、のちに買い手とは確執が生まれ、キャリアに傷がつくことも分かっている。その対価は、桁外れのボーナスだった。

『ウォールストリート・ダウン』(2013)も、経営危機回避のため、顧客など無視、不動産関連商品の投げ売りを指示する幹部の姿から始まる。

一方、警備員である主人公ジムは、保険の限度オーバーという規約を初めて知らされ、脳腫瘍の妻の治療費支払に貯金を当てざるを得ない苦境にある。そのうえ、ブローカーに託していた不動産投資が失敗、全財産を失い、さらに、6万ドルの支払いまで要求されてしまう。

しかし、訴訟を起こそうにも弁護費用は1万ドル。ようやく工面しても弁護士の対応に誠意は感じられない。家は差し押さえられ、職も失い、妻まで失ったジムは、機関銃を手にウォール街に向かう・・・。

ここまでの負の連鎖はなくとも、金融危機で、住宅や貯金など、財産を失い、失職した者の数は計り知れない。現在公開中の『ドリームホーム99%を操る男たち』(2014)は、失業し、住宅ローンを滞納したシングルファザーが主人公。

結局、家は差し押さえられてしまうのだが、その強制執行に郡保安官とともにやって来た不動産ブローカーから仕事をもらったことから、高収入を得られる住宅の差し押さえを仕事とするようになる。

住民ばかりか、銀行や政府をも手玉に取る様(さま)にモラルなど感じられないが、さらに道を踏み外しかねない局面に立たされ・・・。

富める「1%」vs. 残り「99%」の世界を行き来するような主人公の苦悩は、出世やカネのためにどこまで他人を踏み潰せるか、という、それなりの年数、人間をやっていれば、誰もが少なからずぶつかる人生の局面を思い起こさせる。

それなら「1%」が操る世界で「99%」はどうすればいいのだろうか。経済、金融の勉強?

貪欲・獰猛な動物たち

しかし、学者とて、金融機関の幹部経験者、顧問で大金を稼ぐ者も少なくなく、コンサルタント会社が学識者を企業に供給している、と『インサイド・ジョブ』に言われれば、どの論文や書籍をどこまで信用していいものか、考えてしまう。

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は、冒頭、「ウォール街のウルフ」ジョーダンの会社CMを映し出す。

「投資の社会はジャングル。Bull(上げ相場)、Bear(下げ相場)、と、危険だらけ。だからわが社は百獣の王を誇るのです。熟練のプロが投資のご案内をいたします」

『ウォール街』(1987)の貪欲さで有名な主人公はゲッコー(ヤモリ)だし、カネに群がるハゲタカやハイエナは至る所にいる。

ネズミ講まがいの詐欺師もいれば、海には、ローン・シャークや巨額マネーを扱う「クジラ」もいる。貪欲で獰猛な動物たちの「インサイド・ジョブ」に、「99%」が「華麗なる大逆転」をするためのガイドはいずこ・・・。

(本文おわり、次ページ以降は本文で紹介した映画についての紹介。映画の番号は第1回からの通し番号)

(1164) マネー・ショート (838) (再)ウルフ・オブ・ウォールストリート (1165)インサイド・ジョブ
(1166)マージン・コール (1167) ドリームホーム (1168) ウォールストリート・ダウン
マネー・ショート
1164.マネー・ショート華麗なる大逆転The Big Short2015年米国映画

(監督)アダム・マッケイ
(出演)クリスチャン・ベール、スティーヴ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット

子供の頃の病気が原因で片目が義眼であるマイケルは元医師のファンド・マネージャー。住宅ブームのさなかの2005年、サブプライムローン関連の金融商品が、2007年、暴落を始める、と予測、賭けに打って出た。

モルガン・スタンレー傘下のファンド・マネージャー、マークは、マイケルの動向を聞きつけたドイツ銀行のジャレッドから話をもちかけられ、フロリダで、住宅事情、ローンの実態など調査したのち、話に乗ることにする。

ニューヨークにやって来たばかりの若き投資家チャーリーとジェイミーも、情報を得るが、ウォール街に進出するには桁外れのカネが必要なため、知り合いの元銀行家ベンの助けを借りる。

2007年、サブプライムローン事情は悪化、しかし、市場は・・・。

分かりにくい「重要用語」を、俳優や著名人たちが、たとえを使い「解説」する手法をとりながら、サブプライムローン問題をはやくから認識していた「アウトサイダー」や「奇人」を主人公にリーマンショックに至る米国を描くマイケル・ルイスのベストセラーの映画化。

アカデミー賞5部門にノミネート、脚色賞を受賞した。

ウルフ・オブ・ウォールストリート
(再)838.ウルフ・オブ・ウォールストリートThe wolf of Wall Street2013年米国映画

(監督)マーティン・スコセッシ
(出演)レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、マシュー・マコノヒー

1987年、ジョーダン・ベルフォートは、証券会社に就職した。ボスが勧めるのは酒と女とドラッグとカネまみれの生活。しかし、トレーダーとしての初日が「ブラック・マンデー」となり、世はトレーダーいらずとなった。

そんななか、妻が新聞広告で見つけ出したのが、ロングアイランドの「証券会社」。そこは、「ペニーストック」を電話で売りつける職場だったが、手数料が5割もあることに惹かれ就職。絶妙のセールストークもあって成功を収めていく。

やがて「ストラットン・オークモンド」社設立、巨額の収入を上げ、カネと酒と女とドラッグにまみれる生活を送るようになったジョーダンだったが、その強引な手法にFBIが捜査に乗り出し・・・。

今は講演活動をしているというベルフォート自身の同名の回顧録の映画化。人間の欲望をストレートに描き出した作品である。

インサイド・ジョブ
1165.インサイド・ジョブ世界不況の知られざる真実Inside job2010年米国映画

(監督)チャールズ・ファーガソン
(ナレーター)マット・デイモン

2008年、世界を襲った金融危機を、「how we got here」「The bubble 2001-2007」「The crisis」「accountability」「where we are now」の5部構成をとり、ポール・ボルカー、ドミニク・ストロス・カーン、ジョージ・ソロス、クリスティーヌ・ラガルドをはじめ、多くの政治家、経済学者、投資家のインタビューと記録映像、さらに図解などをまじえながら、解明していくドキュメンタリー。

題名のInside jobとは内部犯行を意味する。第83回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作である。

マージン・コール
1166.マージン・コールMargin call 2011年米国映画

(監督)J・C・チャンダー
(出演)ケヴィン・スペイシー、ポール・ベタニー、ジェレミー・アイアンズ、デミ・ムーア、ザカリー・クイント

ウォール街の投資銀行。大量解雇が行われ、オフィスを去るリスク管理部門トップ、エリックから、「用心しろよ」との言葉とともに、部下のピーターはUSBメモリーを渡された。

分析を始めたピーターは、それが、会社に多大な損害を与える可能性が高いMBSの存在を示すものであることを知る。

急遽始められた役員会。そこでCEOが下した決断は、世が知る前に、それを売りさばくこと・・・。

2008年のリーマンショックへと続く金融危機の始まりの頃を描く金融ドラマ。

ドリーム・ホーム
1167.ドリームホーム99%を操る男たち99 Homes2014年米国映画

(監督)ラミン・バーラニ
(出演)アンドリュー・ガーフィールド、マイケル・シャノン、ローラ・ダーン

フロリダのサバービア(郊外地)で、母親と息子と暮らすシングルファザー、デニスは、失業し、ローン支払いが滞ってしまった。

郡保安官とともに不動産ブローカー、カーヴァーがやってきた。差し押さえの強制執行が行われ、デニスは、最小限の家財道具をもち、モーテルへと移るしかなかった。

家を取り返したいと思っても、不況で仕事は見つからない。ところが、高価な道具を取られたと抗議に訪れたカーヴァーのところで、思いがけず、仕事を得ることになる。

さらに、カーヴァーに気に入られたデニスは、巨額の報酬を得られる立ち退き業務も始めるようになり・・・。

『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(2008)『テイク・シェルター』(2011)のマイケル・シャノンが、カーヴァー役で多くの賞を獲得した佳作。

ウォールストリート・ダウン
1168.ウォールストリート・ダウンAssault on Wall Street 2013年カナダ・米国映画

(監督)ウーヴェ・ボル
(出演)ドミニク・パーセル、エリン・カープラック、エドワード・ファーロング、マイケル・パレ

ウォール街。経営危機を回避するため、顧客のことなど無視し、不動産関連商品の投げ売りを指示する金融機関幹部。

警備員をしながらつつましく暮らすジムは、脳腫瘍で治療中の妻の治療費用を限度額オーバーで保険でカバーできないことを初めて知らされる。

貯金を支払いにあてたものの、今度は、ブローカーに託していた財産が、不動産への投資でなくなってしまったことを知る。

さらに6万ドルのもの支払いを銀行に請求され、弁護士に相談にいくが、訴訟を起こすにも弁護費用は1万ドルだと言う。

友人に貸してもらいようやく工面、しかし、弁護士の対応はいい加減なものだった。家は差し押さえられた。職も失った。そして、妻は自殺。機関銃を手に入れたジムは・・・。

金融界に怒りをぶつける主人公ジムを、TXドラマ「プリズン・ブレイク」で知られるドミニク・パーセルが演じるアクション・ドラマ。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46437

 


インテル、グローブ元会長の壮絶な人生
歴史に翻弄された半世紀からパソコン伝道師に
2016.3.28(月) 玉置 直司
インテルが新プロセッサー公開、端末の軽量化と効率的冷却に対応
世界最大級の家電見本市「国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」の米半導体大手インテルのブース〔AFPBB News〕
世界最大の半導体メーカーであるインテルの最高経営責任者(CEO)だったアンドリュー・グローブ氏が2016年3月16日に亡くなった。1990年代の米国の産業競争力の復活を象徴する経営者であり、激動の歴史に翻弄された人生でもあった。

「あなたの今日の顔色は極めて良くない。インテルのここ数年の成長が速すぎて、業務量が急激に増えて無理をしているからではないのか?」

1994年の株主総会

1994年5月4日。米ニューメキシコ州アルバカーキで開催されたインテルの定期株主総会。筆者は、こんな質問を社長兼CEO(最高経営責任者)アンドリュー・グローブ氏にした。

なんで、こんな失礼な質問をしたのか?

グローブ社長とは何度も会っていたが、この日は、本当に顔色が土色だったのだ。それにちょっと、会見場の雰囲気を変えたいといういたずら心もあった。

1990年代前半、インテルは猛烈な勢いで成長した。その勢いは毎年株主総会に行っただけで簡単に感じることができた。

1992年の株主総会は、アリゾナ州フェニックスだった。取材に来た記者は、地元紙を含めて5人もいなかった。がらんとした大会議室で、ゴードン・ムーア会長にインタビューをすることができた。

1993年、カリフォルニア州シリコンバレーで開かれた株主総会には少なくとも20人ほどの記者が来た。このときも、会長だったムーア氏や社長だったグローブ氏と身近で話しをすることができ、シリコンバレー風の開かれた株主総会を実感できた。

そして1994年。すでに日本企業を抜いて「世界最大の半導体メーカー」になっていたインテルは米国の産業界の話題の中心企業だった。

株主総会には、記者やアナリストが軽く100人以上詰め掛けた。

インテルの創業メンバー。左からアンディー・グローブ、ロバート・ノイス、ゴードン・ムーア各氏(1978年、ウィキペディアより)
収益率がどうだの、グロスマージンがどうだのと、投資情報に関する専門的な質問が延々と続いた。アナリストや記者は、グローブ社長から漏れるひと言ひと言を、聞き逃すまいと必死の様子だった。

「なんでそんな細かいことばかり聞くのか。1〜2年前の総会はもっと家族的だったのに・・・」。こんな気持ちから質問をしてみた。

ところが、その反応にびっくりした。グローブ社長に怒鳴られたのだ。細かいやり取りは覚えてないが、その趣旨はこうだった。

「つまらないことを聞くな。インテルの成長スピードは想定通りであり、CEOとしてきちんと業務をマネージしている」

「それにしても、あんなに興奮して反論しなくてもよいのに・・・」

前立腺がんを告白、克服

どうしてあんなに反論したのか。その理由は、直後に分かった。実は、この株主総会の直前に、グローブ社長は、大きな衝撃を受けていた。前立腺がんが見付かっていたのだ。グローブ社長は、そのことを公表した。そして闘病生活の末これを克服した。

アルバカーキでの株主総会は、病気の話しを公表する前だった。そんな時に、無神経にも、健康に関する質問をしたから「ぎょっと」したようだ。

それから数か月後、インテル本社に、ゴードン・ムーア会長のインタビューに訪れた。駐車スペースを探して、レンタカーでぐるぐる回っていたら、遠くの入り口でこちらに向かって手を振っている人物がいた。

グローブ社長だった。

何とか、駐車をして、入り口に行くまでグローブ社長は待っていた。

「今日は、ムーア会長のインタビューだって?」

雑談を交わしたあと、グローブ氏が、にこりと笑って、自分の顔を指差して聞いてきた。ちょうど目尻を触って「あかんべー」をするようなユーモラスな表情だった。

「そうそう。今日の、僕の顔色はどうだい?」

あの時の、グローブ氏の笑顔はいまだに鮮明に覚えている。

「あっ。株主総会のときは知らずに失礼しました。今日は・・・。ああ、顔色はすごく良いですよ。元に戻りましたね」

そう言うと、「そうですか!」と実にうれしそうな様子だった。グローブ社長とは、その後も何度か会う機会が会った。講演や発表会にも、何度も行った。

あれだけあちこちで話しても、同じ話しをしない。半導体メーカーのトップなのに、半導体の話ばかりしない。そして、強力なエネルギーを人を惹きつける磁力をいつも放出していた。

壮絶な半生

グローブ氏の人生は、ドラマよりドラマチックだった。

ユダヤ系のハンガリー人として20世紀の歴史に家族とともに翻弄され続けた。グローブ氏は1936年にハンガリーのブタペストで生まれた。8歳の時にナチスがハンガリーを占領した。ユダヤ系だった一家は、必死になってこれを隠した。

父親は労働収容所に入れられた。奇跡的に生還したが想像もできない苦労をしたようだ。ナチスの迫害をようやく逃れたが、さらに歴史の荒波に翻弄される。

1956年、民主化を求めた「ハンガリー動乱」を機に旧ソ連軍がハンガリーを占領する。このとき、母親も大変な目に遭った。

グローブ氏は、高校生の頃、ジャーナリスト志望だった。おじが記者でグローブ氏も記事を投稿していた。超多忙なCEO時代も、グローブ氏ができるだけ時間をとって取材に応じ、記者との会話を楽しんだのもこうした経験があったからだ。

ところが、旧ソ連の侵攻で、わずかに芽生えていた「現論の自由」はなくなり、おじは逮捕される。絶望したグローブ氏は、オーストリアを経て米国への亡命の道を選ぶ。20歳の時、20ドルのお金を持ってニューヨークに到着した。

ニューヨーク市立大で化学を学んだあと、カリフォルニア大学バークリー校で博士号を取得した。英語も満足でなかった学生が優等の成績で博士号を取得したのだからまさに血のにじむ努力があったのだろう。

グローブ氏が博士号取得のために研究をしていた頃、米国では半導体産業が生まれつつあった。

ムーア氏との運命的な出会い

若くて有能でエネルギーに満ち溢れた研究者たちが、フェアチャイルド・セミコンダクターを設立して、トランジスタやICを事業化することに成功したのだ。

フェアチャイルドの創業者が、ロバート・ノイス氏とゴードン・ムーア氏だ。ノイス氏は、ジャック・キルビー氏とともにICの発明者として歴史に名前を残している。ムーア氏は今もインテルの名誉会長だ。

天才肌で社交的なノイス氏と学級肌のムーア氏は絶妙のコンビだった。ノイス氏が、積極的な社外活動を通して、IC産業について学会、産業界、政府に対して語り続けた。業界のまとめ役でもあった。

ムーア氏が「研究開発」を引き受けた。2人はノイス氏が亡くなるまで親密で信頼し合い、会社は急成長した。

1963年、博士号を取得したばかりのグローブ氏は、フェアチャイルドの採用試験を受ける。面接をしたのはムーア氏だった。

「グローブ氏のその時のことはよく覚えている。とにかく、指導教授の評価が抜群に高く、迷わず採用した」。ムーア氏は、後に筆者とのインタビューでこう話してくれた。

ムーア氏は、この運命的な出会い以降、終生、グローブ氏の最大の理解者であり、経営者としてのグローブ氏の能力を開花させた人物だ。

ノイス氏とムーア氏は、その後、フェアチャイルドを辞める。フェアチャイルドの親会社が、一度は内定していたノイス氏の社長就任を撤回して外部からスカウトすることを決めたのだ。ノイス氏はこれに反発して退社を決めた。

ムーア氏もこれに同調することにした。この時、ムーア氏は研究開発担当役員、グローブ氏はムーア氏の補佐だった。

ムーア氏が退社を決めるとグローブ氏もこれに同調する。ムーア氏が辞めると聞くと、グローブ氏はムーア氏の自宅までやって来て「一緒に付いて行きたい」と頼んだという。グローブ氏は、それほどまでにムーア氏に心酔していたのだ。

フェアチャイルドからインテルへ

その後、ノイス氏とムーア氏はインテルを設立する。最初に加わったのがグローブしだ。その後の、インテルの成功物語は良く知られた通りだ。

インテル設立後も、ノイス氏が「ミスターアウトサイド」、ムーア氏が「ミスターインサイド」という役割分担だった。グローブ氏はムーア氏を補佐しながら、経営者としての資質を養っていった。

アメリカンドリームの体現者であり、ハングリー精神にあふれたグローブ氏は、猛烈経営者だった。グローブ氏は、ジャーナリストを目指しただけあって、超多忙な時間を割いて自分で何冊か本を書いている。

そのタイトルがすごい。

「ハイ・アウトプット・マネージメント」「パラノイアだけが生き残る」

1980年代から90年代にかけて、米国で名経営者と言われたのが、GE(ゼネラル・エレクトリック)のジャック・ウエルチ会長だった。ウエルチ会長は「ストレッチ」を唱えた。

自分の限界まで挑戦して常に背伸びをしろ、という意味だ。グローブ氏の「ハイ・アウトプット」もこれと似たような趣旨だった。自分の能力の限界に挑戦しろ。これがインテルの経営の基本だった。

インテルは、シリコンバレー文化に満ちた記者だった。ムーア氏もグローブ氏も、会長の時代は世界を代表するスター経営者だった。だが、贅沢な生活や豪華な執務室などとは無縁だった。

会長時代のムーア氏が東京に出張に来たことがある。到着早々、日本法人の秘書に、恥ずかしそうに切り出したという。

「東京までのフライトは思ったよりきつかった。私のマイレージ番号はこれこれなんだが、帰りはアップグレードができるか聞いてくれないか?」

こういう社風だった。グローブ氏は気性が激しく、思ったことをはっきりと口にした。こんなグローブ氏を最後まで理解し、サポートしたのが、ムーア氏だった。2人は本当に名コンビだった。

「規定演技」だけでなく「フリー演技」での高得点

グローブ氏の凄さは、部下を叱咤激励したり、素早い意思決定をしたことなどCEOとしての能力だけではなかった。

その視野の広さだった。インテルの経営者として、競争企業の打ち勝つ。インテルの収益率を上げる。こういうことは、「規定演技」で、それ以外に「フリー演技」で高い得点を上げ続けた。

フリー演技とは、半導体やパソコンの産業が発展することが、社会や経済にどういう恩恵をもたらすのか、を常に考えて発信し続けた。

だから、グローブ氏の話はいつも面白かった。インテルの経営や数字の話しは、さっと済ませる。あとは、パソコン文明論だ。

マイクロプロセッサーの能力がどのくらい進歩すれば、医学にどう貢献できるのか。人の生活をどう変えるのか。教育にどう活用できるのか。

その時々の米国や世界で起きている問題、課題に敏感で、マイクロプロセッサーの発達がどう世の中を変えられるか。

1つの産業が安定期だとすれば、経営者にとって「規定演技」で高得点を挙げることは何よりも重要だ。だが、揺籃期や成長期だとすれば、その産業がどう世の中に貢献できるか強い信念を持ち、常に世の中の動向、社会、人類の発展にまで考えを巡らせる「フリー演技」も重要だ。

グローブ氏が経営者だった時代のマイクロプリセッサーとはそういう時代だった。

経営ノウハウを語るCEOはたくさんいる。だが、自分が手がける事業が人類社会にどれほど貢献できるかを常に考え、それを熱く語り続けるはそれほどいるか。

グローブ氏は、マイクロプロセッサーとパソコンの伝道師であり、本物の、ビジョナリストだった。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46438

 


消費税の増税延期をめぐって始まった茶番劇
スティグリッツもクルーグマンも日本の格差を知らない
2016.3.25(金) 池田 信夫
首相官邸で異例の会議「金融経済分析会合」が3回開催された。(出所:Wikipedia)
政府は3月、「金融経済分析会合」という異例の会議を3回も開いた。そのうち第1回に呼ばれたのがジョセフ・スティグリッツ、第3回はポール・クルーグマンというノーベル賞受賞者で、彼らはともに「消費税の増税は延期すべきだ」と提言したと伝えられている。

積極財政論者として知られる彼らを呼んだら、こういう提言が出ることは分かっていた。安倍首相はこれを根拠にして増税を延期し、それを争点にして衆議院の解散・総選挙に打って出るつもりだろう。しかし彼らは本当に政権の意に添うことを言ったのだろうか?

アベノミクスへの死刑宣告

首相官邸のホームページに和訳されているスティグリッツの資料を読むと奇異に感じるのは、「消費税」という言葉が一度も出てこないことだ。

書かれているのは欧米の不況の話ばかりで、日本の話は出てこない。彼が強調するのは「深刻な停滞時において、金融政策が極めて有効だったことはこれまでにない。唯一の効果的な手段は財政政策」ということだ。

そして具体的な政策として、彼は「緊縮財政をやめる」ことを提言しているが、そこで挙げている政策は、投資の促進や技術開発に政府支出を増やして生産性を上げるといった「構造改革」で、増税の延期ではない。

クルーグマンも前回の増税のとき首相官邸まで招かれて延期を勧告したが、日銀のマイナス金利については「効果は限定的だ」とコメントした。彼らの一致しているのは、ゼロ金利では金融政策の効果はないので、財政政策を発動すべきだということだ。

これはEU(ヨーロッパ連合)の不況をめぐる議論で、多くの経済学者が論じていることだ。彼らはドイツが極端な緊縮財政をとっているために南欧の債務国の金融危機が悪化していると批判するが、これは金融危機と無関係な日本には当てはまらない。増税の延期が「構造改革」になるはずもない。

いずれにせよはっきりしたことは、かねてから金融政策に否定的なスティグリッツだけでなく、かつてアベノミクスを絶賛していたクルーグマンまで、金融政策には効果がないとはっきり認めたことだ。これはアベノミクスへの死刑宣告ともいえよう。

消費税の増税先送りで景気はよくなるのか

では増税を延期したら、景気はよくなるのだろうか。これを考えるには、2014年の消費税引き上げがGDP(国内総生産)にどんな影響を与えたかをみればよい。

図1実質GDPと消費支出の推移(出所:内閣府)
2013年の後半から2014年の1〜3月期にかけて、図1のように増税前の駆け込み需要でGDPが大きく上がったが、2014年4〜6月期には大きく下がった。しかしこの落ち込みは2014年中には回復し、10〜12月期のGDPは増税前の水準に戻った。2014年度の税収も、前年度より7兆円増えて54兆円になった。

むしろ問題は2015年の後半から成長率がマイナスになったことで、この最大の原因は個人消費の減退だ。アベノミクスはインフレ・円安で労働者から企業に所得を移転する政策なので、輸出企業の収益は上がったが、輸入物価の値上がりで実質賃金が下がり、労働者は貧困化した。

第1回の会合で、黒田日銀総裁は「失業率が低いのに賃金が上がらないのはなぜか?」とスティグリッツに質問したが、彼は何も答えられなかった。雇用の「非正規化」で賃金が下がっている日本の労働市場を知らないからだ。

こうした構造問題に手をつけないで財政支出を増やしても、バラマキが終わったら元の木阿弥だ。これは1930年代にケインズの提唱した政策と同じだが、経済学は80年前に戻ってしまったのだろうか?

「格差拡大」を指弾する彼らが知らない日本の格差

彼らがともに強調している問題は、格差の拡大だ。最近スティグリッツは「格差と戦う」ことをテーマにした著書を出し、クルーグマンはプリンストン大学からニューヨーク市立大学の「ルクセンブルク所得研究センター」に移り、所得分配の不平等について研究するという。

彼が重視しているのは最近のアメリカの極端な所得格差だが、日本の格差はそれとは違う形で起っている。図2のように、60歳を境に税・社会保険の受益と負担が逆転し、これからの超高齢化で、この格差はますます拡大するのだ。

図2公的年金の受益と負担の年齢別分布(出所:内閣府)
この結果、生涯所得では60歳以上とゼロ歳児で約1億円の受給と負担の格差がつく。このように極端な世代間格差は世界にも例がないので、スティグリッツもクルーグマンも知らないのだろう。

消費税の引き上げ分は、2012年の三党合意で社会保障の財源にする予定だったので、これが延期されると社会保障の赤字は拡大する。2016年度予算でも社会保障特別会計の穴を埋める「社会保障関係費」は33兆円と一般歳出の中で最大だが、これがさらに膨張する。

この赤字は国債で埋め、それを日銀が買っているので、当面は誰も負担した気がしない。日銀がマイナス金利政策をとったことで、金利の急上昇で国債が暴落する「ハードランディング」は当面なくなったが、安倍政権は歳出削減を放棄したので、政府債務はこれからも増え続ける。

今でも政府債務は平時としては世界史上最大だが、戦時国債と違ってこれを償還することは難しい。日銀が永遠に国債を買い増し続けることはできないので、どこかで限界が来る。国債を償還する財源は税しかない。

今のままでも消費税は最終的には30%になるが、増税を延期すると将来もっと高い税率が必要になる。つまり増税の延期は将来世代への負担の先送りであり、浜田宏一氏(内閣官房参与)も認めるように「ネズミ講」なのだ。

人口が無限に増えない限り、ネズミ講はいずれ破綻する。その最後の世代は莫大な損害をこうむるが、そこまで問題を先送りした政治家はそのころには死んでいるだろう。このような政策こそ、スティグリッツが指弾してやまない「不公正で無責任な政治」の最たるものである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46435



http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/869.html#c2

[政治・選挙・NHK203] 岡田リベラル桜開花の季節<本澤二郎の「日本の風景」(2308) <弱者・99%の味方に> <共産・社民・生活とスクラム> 笑坊
3. 2016年3月28日 20:12:01 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[2]

2016年3月28日 松井雅博 [政治ジャーナリスト]
一大新勢力「民進党」への期待が一向に高まらない3つの理由(上)
民進党発足も高まらぬ期待
日本に二大政党は根付かないのか?


満を持して発足した民進党だが、期待がちっとも盛り上がらないのはなぜか。根本的な理由を考察する
Photo:読売新聞/アフロ
今月を振り返ると、アメリカでは大統領選挙予備選のニュースが連日話題になっていた。

現在、連邦議会を制している共和党からは型破りなドナルド・トランプ氏が有力視されている。一方、オバマ現大統領の後継者となるべく、初の女性大統領を目指すヒラリー・クリントン氏が、民主党内で有利な戦いを展開している。

そんな盛り上がるアメリカを横目に、ついに日本でも政局が動いた。3月27日、「民進党」の結党大会が開催され、民主党と維新の党の合流が実現したのである。民主党は130名(衆71名、参59名)、維新の党は21名(衆議院のみ。参議院5名は当面合流せず)、合計151名の規模の政党が誕生する。

これでアメリカ同様、日本にもついに本格的な二大政党が根付くのか……と思いきや、マスコミ各社が行うアンケート調査の結果などを見ると、あまり有権者からの期待を集めているとは言えない状況だ。

1990年代初頭にバブル経済が崩壊して以来、20年以上もの時が経過するが、日本の政治は常に「二大政党」を目指しては失敗を繰り返している。「失われた3年」と呼ばれている、かつての民主党政権の失敗が象徴的なケースだろう。四半世紀も時間をかけてできないならば、二大政党体制はいっそもう無理だと諦めた方がよいのかもしれないという気もする。

アメリカをはじめとする他の先進国には、二大政党と言わずとも政党が安定している国が多いのに、なぜ日本の政党、ことさら野党は離合集散を繰り返し、こんなにも不安定なのか。

そして、新しく誕生した民進党への期待があまり高まらないのはなぜか。その背景には、民進党の政策担当能力への不安があるのかもしれないが、だとすれば、そもそも政策担当能力とは何だろうか。

予め断っておくが、筆者は学者ではない。マッキンゼーでコンサルタントとして働いた後、国会議員政策担当秘書として政治の世界へ飛び込んだ。与野党の国会議員事務所で2年半働いた後、兵庫県第10区(加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)より衆議院議員選挙へ出馬し、5万1316票を獲得するも落選。一民間人の感覚で政治の現場や裏側を見た経験を活かし、政治をできる限りわかりやすく面白く読者にお伝えしている。

政治を語る際、政治学者が語るような抽象論や一般的な理論など、ほとんど意味がないというのが筆者の持論だ。あくまでも実務者として、民進党誕生とそれを取り巻く政界模様について、個別具体的な政治の現象を解説したい。

合流というより「出戻り」?
政党の看板を隠れ蓑にする人々

歴史を振り返れば、通常、新党が誕生するときにはそれなりに期待感が高まるものである。古くは1993年、小沢一郎衆議院議員が仕掛けた新生党は短期間で大きな支持を集め、短い期間であったが、日本新党の細川護煕氏を首班とする7党1会派の連立政権を誕生させた。

最近では、渡辺喜美・元衆議院議員が立ち上げたみんなの党は、二大政党時代を見据えて「第三極」という概念を打ち出し、それなりの支持を集めた。アジェンダ(政策)を中心に少数のメンバーを選び、議席が少なくともどちらも過半数をとれない二大政党の間でキャスティングボート(事実上の決定権)を握り、特定の政策を通そうとするのが「第三極」の考え方である。今や、自民党一強の時代を迎え、第三極という考えも廃れてしまったが。

さらについ最近、特に大きなブームになったのは、橋下徹・元大阪府知事、元大阪市長が立ち上げた大阪維新の会を母体とする日本維新の会である。橋下氏も一時は将来の総理候補とマスコミにもてはやされた時代もあったほど、期待は高まった。

だが、今回の新党誕生は、それらのブームに比べれば盛り上がりに欠けていると言わざるを得ない。

その第一の理由は、旧「維新の党」のメンバーの多くが元民主党議員であることだ。

まず、幹部が軒並み元民主党議員だ。旧「維新の党」の代表を務めていた松野頼久衆議院議員は元民主党。今井雅人元幹事長も民主党出身だ。彼らは、民主党政権末期に「民主党に限界を感じた」「民主党は財務省のいいなりになって消費増税をした」などと批判して橋下氏のもとへ走り、維新の看板で議席を守ったのである。

旧結いの党(江田憲司グループ)の議員も、やはり元民主党が多い。たとえば、維新の党の分裂騒動の引き金を引いた柿沢未途衆議院議員もまた、東京都議会議員時代は民主党だった。そして、飲酒運転で事故を起こしてしまい、議員辞職の上、民主党を離党した過去がある。

このように、個々の議員の先生方の顔ぶれを眺めれば、「新党誕生」のニュースがなんだか白々しく感じてしまうのも仕方ないだろう。新党の名前を公募してみたら、「民主党」が一番多かった理由もうなずける話なのだ。

一方の民主党の議員たちも、あまり変わり映えしない顔ぶれだ。筆者が初めて国政選挙に関わったのは2005年の郵政選挙のときであり、当時学生だった筆者は、兵庫県の衆議院議員事務所で1ヵ月半、ボランティアスタッフとしてお手伝いをさせていただいた。そのときの民主党の代表も、岡田克也代表だった。11年前と代表が同じとは、いったいどれだけ新陳代謝が悪い政党なのだろう、と呆れる他ない。

自民党がSPEEDの今井絵理子氏や『五体不満足』の著者である乙武洋匡氏を擁立するのに対し、野党はなんと人材難なのだろうか。「人気取り」との批判も聞こえるが、人気も能力も初々しさもない人よりは、はるかにいいに決まっている。

当たり前の話だが、大衆が新党へ期待するのは「新人だから」であって、看板だけ変えられても期待感が高まらないのは当然だろう。しかし、多くの有権者は維新の党の議員の多くが民主党出身者であったことなど、知らないかもしれないが。

弱者が集まっても弱者の集団
橋下徹が政界再編を拒絶した理由

第二の理由、これがもっと本質的な理由かもしれないが、そもそも橋下徹氏がいなくなった旧「維新の党」への支持などゼロに等しかったということが挙げられる。マスコミ各社が行う政党支持率調査でもほとんど支持率が検出されないような政党が合流したところで、党勢が強まるはずがない。

企業同士のM&Aでも同じことだが、異なる強みを持った者同士が合流するから相乗効果が生まれるのである。負債を抱えたつぶれかけの会社同士が合併したところで、期待できるのはせいぜい間接部門のリストラによるコストカットくらいで、他に得られるものは少ない。

旧「維新の党」の議員は、そのほとんどが比例復活で当選している。すなわち、「維新」の看板もしくは「橋下徹」の人気にあやかって当選した人たちなのだ。そんな議員たちと一緒になるくらいなら、民主党はむしろ自前の看板を捨てることで、これまで民主党を根強く支持していた有権者の支持が離れてしまわないだろうか。

では、なぜ橋下徹・元大阪府知事、元大阪市長は野党再編を拒絶したのか。これは、直近の大型選挙である参議院議員選挙の選挙制度を見れば理解しやすい。

参議院議員は242人いるが、半数の121人ずつ3年ごとに改選される仕組みとなっている。そしてその121人は、選挙区(73人)と比例区(48人)に分かれる。選挙区は基本は47都道府県単位になっており、そのうち32の選挙区が1人区である(島根・鳥取、徳島・高知は2県から1人の議員を選ぶ)。正直、1人区に関しては、ほぼすべての選挙区で自民党が勝利すると見込まれる。

では、複数の議員を選出する都市部の選挙区はどうなっているのだろうか。代表的な都市部選挙区である、東京都選挙区(当選者数:5人)と大阪府選挙区(当選者数:4人)の前回の参院選の当選者の顔ぶれ(東京都選挙区は次点まで)を見てみよう。

2013年7月参院選

【東京都選挙区:5人区→今年から6人区へ変更】

丸川珠代(自)1,064,660票
山口那津男(公)797,811票
吉良佳子(共)703,901票
山本太郎(無)666,684票
武見敬三(自)612,388票
(落)鈴木 寛(民)552,694票

【大阪府選挙区:4人区】

東 徹(維)1,056,815票
柳本卓治(自)817,943票
杉 久武(公)697,219票
辰巳孝太郎(共)468,904票

参院選を睨んで民主党と合流しても……
メリットは何もないという現実

こうして見るとわかるように、中選挙区においては与党と野党が仲良く議席を分けあうことになる。つまり、参議院においては都市部の民意よりも「地方の一人区」こそが勝敗を分けるのである。

>>後編『一大新勢力「民進党」への期待が一向に高まらない3つの理由 (下)』に続きます。

http://diamond.jp/articles/-/88546


一大新勢力「民進党」への期待が一向に高まらない3つの理由(下)
>>。ハ上)より続く

そして、東京・大阪で民主党は議席を獲得できてない。東京では共産党と無所属が野党枠をとり、大阪では共産党と「維新」が野党の議席を獲得している。つまり、参院選において民主党が勝てる見込みは全くない。一方の比例においても、民主党は労働組合の元幹部ばかりであるから、民主党はただの「労組党」になってしまう。2013年の参院選で民主党の比例で当選した議員はたった7人だが、そのうち6人が労働組合の組織議員という状況である。

【民主党】

1. 271,553票磯崎哲史(自動車総連)
2. 235,917票浜野喜史(全国電力関連産業労働組合)
3. 235,636票相原久美子(自治労)
4. 191,167票大島九州男(経営者、市議会議員)
5. 176,248票神本恵美子(日本教職員組合)
6. 167,437票吉川沙織(情報労連・NTT労働組合)
7. 152,212票石上俊雄(電機労働組合)

つまり、橋下徹氏の立場に立てば、民主党と合流することにメリットなどないことになる。いっそ「第三極」の座を狙うか、小さくまとまって関西から与党にプレッシャーを与える存在になる方が、政治権力を維持することができる。

橋下徹なき旧「維新の党」と労働組合出身者以外選挙に勝てない民主党が合流したところで、弱者の寄り合い政党でしかない。衆参で717議席中151議席の勢力になったと誇示したところで、結局次の選挙で大敗が確実視されている限り、期待は集まらない。

自民党がバラバラでも批判を受けないのは「強い与党だから」であり、野党がバラバラだと批判されるのは、実は政策や思想が問題なのではなく、「弱者の集合体」でしかないところにクリティカルな原因があると言えよう。

「サヨク」のレッテル貼りをされた
民主党が目指すべき世界とは?

そして、最後に挙げるべき第三の理由が、やはり民進党の掲げる政策の問題である。端的に言えば、旧民主党の人気がなかなか上がらなかった原因の1つに、「民主党=サヨク政党」というレッテル貼りがされたことがある。

筆者は、政治を右翼−左翼、保守−革新といった安易な二元論で語る論調が嫌いである。現実の政治はそんな風に簡単に整理できるものではない。ここで筆者が言う「サヨク」とは、人々の不満につけこみ社会不安を煽り、現実離れした理想を掲げ、ひたすら「税金をよこせ」とあたかもお金が天から降ってくるかのごとく政府に乱暴な要求を行う姿勢、とでも定義しようか。民主党はもはや「サヨク」のレッテルを貼られてしまった。たとえ党名を民進党に変えたところで、この評価は変わらないだろう。

たとえば、最近の例で言えば、山尾志桜里衆議院議員が、ネット上で話題になった「保育園落ちた日本死ね!!!」と題した匿名のブログを国会で紹介して話題になったが、これが典型的な民主党のパフォーマンススタイルだったと思う。

子どもが保育園に入れないだけで
「日本死ね」は言い過ぎでは?

筆者としては、匿名ブロガー自身には全く非はないと思っている。言葉は荒いが本当に苦しかったのだろうと同情するし、そもそも匿名の単なる愚痴に過ぎないし、極端に表現せねば読んでもらえないという気持ちは、筆者もネット記事を書いている身なのでよくわかる。むしろこれだけのブームを起こしたのは、あっぱれとも言える。

ただし、冷静に考えれば、自分の子どもを保育園に入れられなかったからと言って、憲法上の権利が侵害されているわけでもなく、「日本死ね」は言い過ぎである。かれこれ十数年にわたって待機児童解消は大きな政治課題の1つとすでに認識され続けており、自治体も必死で保育所を増設している。そして、ここ数年、待機児童数は減少傾向にあり、ここ十年ほど出生率は上昇傾向にあったのも事実なのだ。こうした事実に目を向けることなく、安易に不満を煽ることで必要以上に社会不安を高めてしまえば、ますます悪循環に陥るだけだ。

また、「年金がもらえない」と騒げば、本当に年金保険料を支払わない人が増えてしまう。現実は、確かに高齢者の増加によって国民の負担は増えるものの、みんながきちんと払っていれば、額が減ったとしても破綻するリスクは低い。

「世代間格差」という批判もよく耳にするが、年金を削減することが若者への配分を増やすこととは必ずしも言えない。若者だっていつか年をとるわけで、自分たちが将来もらえる年金を減らすことに他ならないのだから、世代間格差はより広がることになる。それに、明治、大正、戦前、戦後と人々は皆それぞれの時代において、様々な課題に直面しながら生きてきたのであって、今の若い世代が前世代と比べて著しく不遇な時代にあるとは筆者は思わない。

さらに、「日本人は1人800万円の借金がある」と叫べば、人々はお金を使わなくなってしまう。実際は、生まれたての赤ちゃんに800万円を請求する人は誰もいない。単に政府債務を人口で割っただけの数字に何の意味もない。

社会不安を煽って支持を得る
頼りない野党が陥りがちなワナ

日本の政治の舵取りが難しいのは、日本が成熟社会を迎え、人口減少・高齢化が明らかとなり、色々な意味で「下り坂」の時代となり、多くの人々が閉塞感や不満を持っているからである。こうした社会情勢を背景に、野党は社会不安を煽り、自党の支持につなげようとしがちになる。共産党のような万年野党ならそれも結構だが、本気で政権を奪取しようとする政党にしては、実に頼りない。

政治には常に利害が絡む。保育園に入れなかった人からすれば、死活問題だろう。筆者も大学時代、保育士を目指した時期があったし、保育所でアルバイトをした経験もあるから、母親の気持ちには同情もする。だが、感情論に引きずられず、ファクトをもとにしっかりと政策方針を打ち出し、政治や行政の仕組みを理解した上で実現していく。この力こそが政権担当能力である。残念ながら、今の民進党にこの能力があるとは思えない。とはいえ、「実際本当に起こっているか、確認しようがない」という答弁もデータを見れば明らかなのでいまいちな発言であることは否めないが。

前述の匿名ブログをきっかけに、新党は保育士の賃上げ法案を提出する意向のようだ。だが、国が全国の保育士に1万円ずつ配るなど、愚策以外の何物でもない。保育所の問題は、はした金をばらまけば解決する問題ではない。たとえば、規制緩和で民間企業参入を促進させ、保育士人材を幅広く獲得するとともに、財源を地方へ移譲し、地方ごとの事情によって保育所増設を可能にしてやることが必要である。さらに言えば、これは家庭や地域のあり方、特に都市部に住む人々の生き様を見直すべき、実に根深い問題だと思う。

そもそも、動物としての本能である子どもを作り育てるというシンプルな営みが困難になっていること自体、おかしな話なのだ。総理大臣や政治・行政に助けを求めるのも一つの手だが、現代人が自らの生活・価値観を見直す契機にもならねばならないし、政治家も有権者に媚びるだけでなく、そうした厳しい意見も伝える存在でないといけないと思う。

ぜひ民進党には、万年野党ではなく、新時代の未来を描く政策立案能力を、自民党と切磋琢磨できる存在になってもらいたい。

根っこにあるのは政党不信
政界の「再編」よりも「一新」が必要?

ここまで色々と書いてきたが、筆者個人としては、日本の政治が二大政党に近づくのは良いことだと思う。与党に対してプレッシャーをかけられる存在があるのは、議会制民主主義においては大切なことだ。

また、「選挙のための野合だ」という批判もあるが、「選挙のため」で何が悪いのかと思う。国民にウケのよい政策を打ち出すのも選挙のためだ。選挙こそが民主主義の根本なのだから、政党の枠組みが選挙のために変わって何が悪いのか、と筆者は思う。

ところが、どうしても自民党の対抗軸が育たない。有権者の信頼を得られる野党がなかなか生まれない。この問題の根底にあるのは「政党不信」だ。

この政党不信を抜本的に解決するには、一度、現存の政党をすべてガラガラポンして、新しい政治家を国会に送るべきだと思う。野党が合従連衡を繰り返していても、あまり意味がない。日本の政界再編は、自民党を割ってこそ初めて意味がある。言い換えれば、政界再編とは決して「野党再編」ではないということだ。

小沢一郎も渡辺喜美も橋下徹も、もともとは自民党を割ったところにその凄味があった。野党ばかりが分裂や合併を繰り返しても、同じような顔ぶれの人間が同じようなことを繰り返しているようでは、政治不信は回復しない。

単に「新しい党をつくりました」ではなく、参院選で勝つための具体的な戦略が欲しい。これがないと、結局「弱い者同士の野合」と揶揄されて終わりだ。また、政策も単なる政府批判やキャッチコピーではなく、現実を見据えたものでなければならない。そして、民進党が本当に支持を受けるためには、もっと新しい顔ぶれを仲間に巻き込まねばならない。候補者の選定・育成・評価をしっかりとやるべきだ。

いずれにせよ民進党が誕生し、日本の政界は再び新たな政界再編のステージに突入した。しかしながら、人々が求めているのは政界「再編」ではなく、政界「一新」なのかもしれない。

http://diamond.jp/articles/-/88595
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/566.html#c3

[経世済民106] コール市場の残高が過去最低に 赤かぶ
2. 2016年3月28日 20:15:33 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[3]
2016年3月28日 週刊ダイヤモンド編集部
マイナス金利の歪み、金融だけでなく企業会計・財務にも
3月18日に10年国債利回りが一時マイナス0.135%をつけ、史上最低を更新するなど、マイナス金利は深化するばかり。マイナス金利は金融商品の世界だけでなく、企業会計や財務にも大きなゆがみをもたらしている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田孝洋)


Photo:REUTERS/アフロ、EPA=時事
 2月1日から、ある銀行の営業所は6カ月定期と1年定期共に0.45%という高金利で預金を募集していた。この金利を決定したのは、日本銀行がマイナス金利導入を発表する前日の1月28日。「29日に決定がずれ込んでいればこの金利はなかった。決めた以上利用して預金を集めなければと思った」と営業マンは苦笑いする。実際、早期に上限に達したため2月いっぱいで募集を打ち切った。

 MRF(マネー・リザーブ・ファンド)を日銀当座預金のマイナス金利の対象外とするという、3月の日銀政策決定会合での決定は証券会社にとって朗報だった。MRFは、投資信託や株式、債券といった商品の償還資金や配当金を取りあえず置いておく待機資金の受け皿だ。

 短期国債など主力の運用先の利回りがマイナスになり、運用難に陥っている。MRFの資金は信託銀行を通じて日銀当座預金に回るが、ここでもマイナス金利が適用されれば、元本割れの危機にひんするところだった。

 3月中旬の時点で、償還までの期間が10年以下の国債利回りがマイナスに沈んでいる。マイナス金利は、実は企業会計や財務にも大きな影響をもたらしている。


拡大する
 その筆頭が将来の退職金や年金の支払いに備えて、現時点での必要額を算出する退職給付債務。これは将来時点で必要な支払額を金利で割り引いて計算する。

 その金利がプラスなら、1にその金利を加えた数値で将来の必要額を割るので、退職給付債務は将来の支払額より小さくなる。しかし、金利がマイナスとなると、1より小さな数値で割ることになり、将来の支払額より退職給付債務が大きくなる。この場合、実際には将来の支払額と同じ金額の現金をそのまま保有しておけば支払いに困らないはずだ。にもかかわらず、計算上はそれ以上の金額を債務に計上するゆがんだ状態になる。

 計算に使う金利には、決算期末の国債利回りか高格付けの社債利回りを適用するのだが、国債利回りを選択している企業は少なくない。どの期間の利回りを使うかは、その企業の従業員の勤務期間の平均などによって決まる。その期間が短い企業であれば、マイナス金利を適用する可能性が高くなる。

 企業会計基準委員会は、今3月期については、適用する予定の金利がマイナスであってもゼロ金利を適用してもいいという意見を表明したが、退職給付債務の計算代行をしているIICパートナーズは、「マイナス金利を前提とした計算結果を提示した企業もあった」という。マイナス金利適用会社が実際に出てくる可能性がある。

 将来における工場などの設備の除却費用を負債計上する資産除去債務も、「除却予定までの期間のリスクフリーレート(国債利回り)で将来の費用を割り引いて算出する」(秋葉賢一・早稲田大学教授)。現在の必要額が将来の支払額を上回る公算は大きい。

悪化する実態とは
裏腹に向上する
生保の健全性指標

 マイナス金利が企業の資金調達方法に影響を及ぼすケースも出そうだ。企業財務の現場では、コストを抑えるために金融機関から変動金利で借り、その後変動金利の受け取りと固定金利の支払いを交換する契約(金利スワップ)を結び、実質的に固定金利で借りた形にすることが多い。金融機関から直接固定金利で借りるよりコストが安くなるからだ。こうしたケースの場合、「金利スワップの時価評価をせず、当初から実質的な固定金利の水準で借り入れをしたという会計処理をしてもよい」(園生裕之・有限監査法人トーマツパートナー)という特例もある。

 金融機関から借りる金利はマイナスにはならない。一方、金利スワップでの変動金利は、短期の市場金利に企業の信用リスクが加味されて決まる。短期の市場金利はすでに一部はマイナス。皮肉にも信用リスクの小さい優良企業であればあるほどマイナスになり、金利スワップを組んでも変動金利を二重払いする公算が大きくなる。それなら、最初から固定金利で借りようということになるだろう。

 生命保険会社の財務の健全性を測る指標であるソルベンシーマージン比率もマイナス金利でゆがむ。マイナス金利導入による金利低下で保有する固定利付きの債券の時価評価が膨らむと、この比率は大きくなり、指標上は、健全性が向上する。しかし、現実には、金利低下で運用利回りが低下し、経営の健全性は損なわれる。「指標と実態が乖離してしまう」(植村信保・キャピタスコンサルティングマネージングディレクター)のだ。

 日銀が掲げる2%の物価目標達成はいまだ見通せない。マイナス金利は長期化、深化するだろう。会計・財務などに生じたゆがみは当面解消されることはない。
http://diamond.jp/articles/-/88590



2016年3月28日 丸山 俊(BNPパリバ証券日本株チーフストラテジスト)
欧州でくすぶる信用不安
消えない日本株の売り圧力
 3月以降、中国の人民元相場安定化や欧州中央銀行(ECB)の追加緩和、米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ見送りなど、市場混乱回避への努力から世界的に株価の持ち直し基調がはっきりとしつつある。

 確かに中国当局は人民元を高めに誘導することで、金融市場の安定化に成功しているように見える。しかし、中国景気悪化の要因は割高な人民元だ。意図的に通貨高に誘導したところで景気刺激策を打っても、持続的な景気回復が覚束ないことは日本経済が実証済みだ。


拡大する
 また、FRBのハト派色が強まると円高圧力が強まりやすいため、日本株は他市場に比して回復に手間取ってしまう。日本株が他市場を凌駕するには、やはりFRBが利上げスタンスを崩さないことが必要だ。しかし、反対にFRBが追加利上げを急ぐと、新興国や国際商品市場から資金が再び流出する恐れがある。現在の世界的なリスクオンは「砂上の楼閣」のようなものであろう。

 そうした中、投資家は欧州金融機関の信用不安の火種というテールリスクを忘れてはいないだろうか。3月10日、ECBは月間の資産購入額の増額や中銀預金金利の引き下げに加え、リファイナンス金利や限界貸出金利も引き下げた。さらにユーロ圏内の金融機関以外の企業が発行する投資適格級ユーロ建て債券を買い入れ対象に追加し、新たな資金供給手段としても導入するなど、百点満点の追加緩和パッケージを打ち出した。

 しかし、欧州金融機関のバランスシートは既に縮小に転じつつあり、ECBの緩和パッケージがこれら金融機関の行動を変える可能性は低い。欧州金融機関の負債を見てみると、2012年ごろから株式・出資金が急増している。債務危機に見舞われた欧州では、優先株や証券化債券を発行して自己資本を増強してきた。これ自体は問題ないとしても、同時に資産サイドでも株式・出資金が急増している。結局、資本増強が貸出に向かわず、ファンドへの出資を介して主に金融機関が発行した優先株や証券化債券などに向かっている可能性がある。これでは親戚同士で借金し合っているようなものだ。

 ECBがマイナス金利を導入した15年以降、利回りニーズの高まりもあってこうした動きが顕著になっている。新興国(特に中国)や欧州域内の景気が回復せずに、収益が改善しない場合、規制強化や業績悪化に伴う信用不安が、金融機関による資産圧縮に拍車を掛ける可能性が否定できない。13年以降、海外投資家の日本株買い越し金額20兆円超のうち、その大半は欧州経由であった。欧州金融機関の資産圧縮の影響を最も受けるのは日本株である。

(BNPパリバ証券日本株チーフストラテジスト 丸山 俊)
http://diamond.jp/articles/-/88589
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/876.html#c2

[経世済民106] アベノミクスの円安誘導 中国の日本企業爆買いを促進(週刊ポスト) 赤かぶ
1. 2016年3月28日 22:15:21 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[4]
WISDOM

深層中国 〜巨大市場の底流を読む 第77回
「中国の夢」の終焉 〜急増する富裕層の移民

経営・戦略 田中 信彦 2016年03月28日
「国家の屋台骨」がカナダに移民

 旧正月を終えた今年2月半ば、ある出来事が中国のSNS上などで衝撃を巻き起こした。中国中央テレビ局の著名な司会者、女優、作家でもある倪萍(ニーピン、NiPing)さんという人物が、カナダのバンクーバーへの移民を宣言したのである。

 なぜ1人のタレントの移民がそんなに話題になるのか。それはニーピンさんが、かつて「共和国の脊梁(せきりょう=背骨、大黒柱)」という称号を受けたこともある、それこそ国家的なレベルの超有名人だったからである。

 マスメディアがほぼ全て国家の統制下にあり、そこで最大の影響力を持つ中央テレビ局の威厳は、外国人にはなかなか実感しにくいほどのものがある。看板番組の司会者や夜7時のメインニュースのキャスターともなれば、国家指導者にも匹敵する影響力を持つと言ってもいい。ニーピンさんは、そこで日本の「紅白歌合戦」に相当する大晦日の看板番組「春節晩会」の司会を13回も勤め、おまけに2002年には映画に出演、中国映画界最高の栄誉とされる「中国電影金鷄賞」主演女優賞を獲得、出版したエッセイは権威ある文学賞を受賞、最近では超人気番組「中国達人秀」(米国で大ヒットした「アメリカズ・ゴット・タレント」の中国リメイク版)の審査員を務めるなど、中国ではまさに知らない人はいないと言っていい人物である。

 そんな経緯で2011年には「共和国の脊梁(国家の屋台骨?)」に認定されている。この賞は新聞社などが主催して選定する民間の称号で、公的な権威はないが、要は「国を支えるほどの人物」ということで、彼女が中国を代表する著名人であることは間違いがない。

 そのニーピンさんが祖国を去って移民するというニュースに庶民は騒然となった。SNS上にはすぐさま「国家の背骨がなくなったら、共和国はどうやって立つんだ?」という書き込みが現れ、国民的ジョークとなった。本人はその後、反響の大きさに驚いたのか、中国パスポートを示しつつ「移民はしていない」といった趣旨のことを述べたと伝えられるが、すでにバンクーバー市内の学校に子息の入学手続きを済ませており、移民の意志は明らかと受け止められている。

急増する富裕層の移民

 最近、富裕層の海外移民に対する関心が急速に高まっている。メディアでもその話題がよく取り上げられるし、私の周囲でもそういう気分を感じる。その背景にあるのは国内景気の先行き不安や政府の「思想的締め付け」の強化、国際的な資産分配(人民元の切り下げへの懸念)といったことだろう。要するに、1990年代半ば以降、20年以上にわたって続いてきた中国経済の急成長で恩恵を受けた層、つまり1960年代生まれ以前の人たちが「まあそれなりの資産もできたし、そろそろこの辺ではないか」と思い始めたということである。

 先頃発表された「中国国際移民報告2015」(中国社会科学文献出版社など刊)という報告書に興味深いデータが掲載されている。いま流行りのビッグデータを活用したもので、中国で最も多く使われている検索サイト「百度(バイドゥ)」が公表する「百度指数」(あるワードの注目度をビッグデータ解析で指数化したもの)によると、「移民」は2015年初め頃までは同指数6000ポイント前後で数年間、ほぼ横ばいが続いてきた。しかし2015年に入ると急に上昇を始め、中国の株価が急落した同年夏には40000ポイントと、わずか半年あまりで6〜7倍に急上昇した。株価と移民の確かな因果関係は不明だが、株式相場の急騰、急落をきっかけに富裕層が移民や資産の海外移転に関心を向けた可能性は高い。少なくともこの1年ほどの間に、社会の「移民」に対する関心が急激に高まったことは間違いない。

 同報告書によれば、2014年の中国からの海外移民は年間約15万人で、内訳は大洋州(オーストラリア、ニュージーランド)35.3%、次いで北米(アメリカ、カナダ)25.7%、欧州22.5%と続く。この3地域で全体の8割以上を占めている。近年、増加率の伸びが顕しいのは米国、そしてポルトガル、スペイン、ギリシャなどの南欧諸国。例えば米国は2014年(財務年度)の中国人投資移民は9128人と対前年比46%増で、投資移民全体の85%以上を占める。またポルトガルでは投資移民制度を導入した2012年末以来、2016年1月までに2853人に居住権を認めたが、うち79%が中国人だった。

 一方、中国人移民の急増に耐えかねて投資移民プログラムそのものを中止する国もある。カナダは5年間に80万カナダドル(約6800万円)を指定の案件に投資すれば永住権が取得できるプログラムを実施していたが、2015年2月、この制度を打ち切った。


「ネガティブ移民」が増加

 中国大陸からの移民は以前から存在したが、ブームと呼べるような時期は過去3回あった。今回の「第4次移民ブーム」の特徴は、中国経済の先行き不安や政治情況の不透明感、大気汚染の深刻化といったさまざまな問題で中国での生活に希望を失い、安全・安心な生活先を求めるというネガティブな動機に基づくものが多いという点にある。さらに不動産価格の上昇や株式投資、自身の事業の成功などで一定の資産を築いた層が、より安全・安心な資産の配分先を求めて海外に目を向けているという面もある。

 振り返ってみると、中国の第1次移民ブームは改革開放政策が始まった直後の1970年代末〜1980年代初頭にかけて。この時期、合法的に移民するだけの経済力を持つ人はほとんどいなかったので、沿岸地域からの密航や不法就労など生活苦が理由の労働移民が多かった。一種の経済難民といえる。第2次移民ブームは1990年代初頭。1989年の天安門事件の武力鎮圧とその後の政治的抑圧を経験した学生や若手知識層の間に社会体制に対する失望感が広がった。形の上では留学や海外企業への転職といった形態をとったが、実際には海外に定住する覚悟を持った事実上の移民という人が多かった。緩やかな意味での政治難民と言ってもいいかもしれない。この世代の人たちは現在40歳代後半から50歳代で、日本社会で活躍している人も少なくない。

 第3次移民ブームと呼ばれたのは2008〜2010年頃である。当時はリーマンショック後の経済対策として打ち出された「4兆元」(当時のレートで約60兆円)公共投資の効果もあって経済は好調、不動産価格も上昇してバブル的様相を呈し、着実に富裕層が形成されてきた時期に相当する。移民の動機はさまざまだが、従来なら「夢」にすぎなかった海外移住が実現可能な選択肢に入ってきたことで、世界に開かれた教育環境で子供を育てたいといった思いも含め、より明るい未来を切り開こうという積極的な移民が少なくなかった。

「守り」に入る富裕層

 しかし、今回の移民ブームはちょっと様相が違う。先に「ネガティブ移民」と書いたが、すでに一定の資産を持った人たちの間で、中国での生活に疲れ、そろそろ安定した静かな環境で、ゆっくりした生活に入りたいという「守り」の要素が強く感じられるのである。

 ある地方都市で従業員200人ほどの電子機器メーカーを経営している50歳代の友人は「どんなに頑張っても、いい目を見るのは国有企業と役人だけ。商売はどんどん厳しくなっている。製造業に見切りを付けてサービス業へ転換した人もいるが、人手不足で採用が難しく、人件費は上昇の一途。おまけに競争が激しすぎて、すぐに競合が現れ、儲けが出ない」と嘆く。10数年間稼働してきた工場と自宅マンションを処分し、同郷人のコミュニティがあるイタリア・ミラノへの移民を考えていると言う。「若い頃に向こうに行った連中が、“こっちの商売は気楽だから早く来い”って言うんだ。子供も大学を出たし、多少の蓄えもあるから、小さな商売でもすれば夫婦2人ならなんとかなる。もう疲れたよ」と話す。

 昨今の政府による情報管理の強化に「文化大革命の再来」を本気で心配する声も出てきた。テレビや雑誌、出版、インターネット上の発言などに対する権力の統制はここへ来て非常に厳しくなっている。

 例えば、今年の春節(旧正月)の大晦日に放映された中央テレビ局の「春節晩会」(前述)では、抗日戦争を体験した90歳を超える老兵が舞台上に車椅子姿で登場、当時の体験を涙ながらに語りつつ、弱った足腰にムチ打ってスックと立ち上がり、満場の観衆に敬礼するや拍手喝采の渦――といった演出や、人民解放軍の本物の兵士による模擬大閲兵が舞台上で繰り広げられるなど、「愛国色」の非常に強い内容になった。

 演じられる楽曲や舞踊にも党と習近平国家主席への讃歌を高らかに謳い上げる内容が目立ち、一部にかつての毛沢東時代礼賛的な風潮が見られることに強い違和感を持った人は中国人の中にも多い。ある60歳代の日用品工場オーナーは「私の祖父は実は戦前に国民党の高官だった。70年も経ってまさかとは思うが、何を言われるかわからない恐さはある」と話す。


子供の留学+リスク分散=移民

 一方、富裕層の厚みが増し、資産管理への関心が高まったことで、資産の海外分散と自分や家族の移民をリンクして考える層が増えてきたのも最近の特徴だ。例えば、私の20年近い友人で、1990年代から縫製工場を経営して日本向け輸出で成功し、その後、ヨーロッパのある食器メーカーの代理店を上海で経営してきた人がいる。昔、上海市内に買った租界時代の洋館が莫大な価値になっていたりして、資産は日本円で20億円を超える。

 彼は日本人との商売を通じて日本社会の良さ、日本人の誠実さに感心していて、ぜひ息子を日本で勉強させたいと考えている。息子は来年大学に進学するのだが、幸いなことに息子も日本のファンで、先日、英国の大学での3ヵ月語学研修コースから戻ってきたのだが、「やっぱり日本がいい」と嬉しいことを言ってくれる。先月、親子で東京にやってきてマンションを物色し、いくつかの大学を回った。彼の思惑はこうである。まず東京にマンションを買って、息子を留学に出し、息子が日本で就職するか結婚するか、そのあたりの状況と日本の移民受け入れ政策の進展を見て、いずれ将来は彼と夫人も東京に移り住んで、ゆっくり暮らしたい――。

 そんな彼の思惑の背景になっているのが、人民元の先安感だ。人民元のみで資産を保有しているのはリスクが高い。とりあえず一部を円に置き換えておこうというリスクヘッジの思惑と、息子の学業、自分たち夫婦の将来設計がセットになって考えられている。彼の場合、若い頃に東欧のある国で数年間働いたことがあり、そこでも実は永住権と一定の資産を持っているので、より徹底的だ。

 中国の富裕層の人民元切り下げに対する警戒感は強い。中国当局は「大幅な切り下げはない」と再三否定するが、人々は信用していない。このあたりの感覚は日本人よりはるかに鋭敏だ。日本では、日本円で資産を持っていても円の減価(対ドルレートの値下がり)にさほど頓着しない人が多く、「どうせ日本でしか暮らせないから同じだ」といった話をよく耳にする。中国人は自分の資産で「中国国内で何が買えるか」よりもむしろ「資産の国際的な価値」のほうに敏感で、ことおカネに関する限り、非常に広い視野で世界を見ている。このあたりに日本と中国人の「国家に対する信頼度」の差が表れている。

「下に対策あれば上にも対策あり」

 興味深いのは、こうした国民の海外移民増加の流れに対して、中国政府の側もそれを前提にしたかのような対策を打ち出す構えを見せていることだ。

 国内メディアの報道によると、北京市は海外に移民し、外国籍を取得した「元中国人」に対し「華裔(かえい)カード」(仮称)を発行し、ビザなしでの中国在留や投資、不動産取得などでの便宜を図る制度の導入を検討しているという。「華裔」とは「中国人の末裔」、つまり他国に移り住んで外国籍となった中国人を指す言葉で、「華僑」の「僑」が「仮住まい」を意味するのに対し、「現地化した中国人」を指す言葉として使われている。このカードはいわば「元中国人」を「生粋の外国人」よりも優遇しようという制度で、中国政府は公式には「当面、発行の予定はない」としているが、一部では2019年にもスタートという情報もあり、現実化する可能性はある。

 また先般、北京で開かれた中国政治協商会議(国政の助言機関)全体会議では、現行憲法にある二重国籍を認めない規定を改め、移民先と中国の二重国籍を認めるべきという議題が提出されたという報道もある。これはまだ議案段階に過ぎないが、「当局は富裕層の大量移民は避けられないと判断し、移民後も中国との関係が切れないようにしておこうとの思惑があるのではないか」と囁かれている。

 中国政府にしてみれば富裕層が資産とともに海外に出てしまうのは確かに痛いが、強制的に押し止めるのは難しい。であるならば、移民後も母国と緊密な関係を保ちやすい方策を講じたほうが現実的だ。中国には「上に政策あれば下に対策あり」という言い方があるが、政府のほうも「下に対策あれば上にも対策あり」というわけで、いかにも実利主義の中国らしいやり方だと思う。

「中国の夢」の終わり

 移民意向を持つ人にそれぞれの思惑や事情があるのは当然だが、富裕層全般にこうした移民熱が高まる最も大きな背景は、人々の頭の中に「成長も、そろそろこの辺ではないか」という相場観ができつつあることだと思う。かつて貧困のどん底に喘いでいた時代から、少なくとも北京や上海のような大都市では「市民総億万長者」と言ってもさほど極端ではない状態まで、中国は一気に駆け上ってきた。もちろん広くて人が多いから、これからも成長は続けていくだろうが、発展途上国の成長の最も「おいしい」部分は終わってしまったことを中国の人たちはすでに悟っている。

 これまでに相応の資産を確保した人は、移民したり、海外に資金を逃がしてリスクヘッジをしたりと、安心・安全を第一に、昔のような勝負には出なくなった。一方、移民もできず、逃がすほどの資金もない圧倒的多数の人々は、上の世代のようにゼロから資産を構築する方途も見えず、日々強まる閉塞感に苛立ちを強めている。

 中国という国にはかつて、確かに夢があった。それを実現した人たちもいた。しかし国家の指導者が声高に「中国の夢」を語り始めたいま、皮肉なことに夢は終幕を迎えつつあるように見える。


(2016年3月25日掲載)
https://www.blwisdom.com/strategy/series/china/item/10455-77.html
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/865.html#c1

[自然災害21] 「危険なレベルでの天候変化が数十年以内に起きる」と科学者が警告 「真水」が海水に混ざる→南極やGLの氷がどんどん溶ける てんさい(い)
19. 2016年3月31日 08:02:41 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[4]

知能の低い人々は現実から目をそらしているだけで
『危険なレベルでの天候変化は、とっくに始まっている



http://www.asyura2.com/15/jisin21/msg/306.html#c19

[経世済民106] 東電と関電等しか選べないという完全独占体制で、日本と国民が絶望的に失ってきたこと(Business Journal) 赤かぶ
1. 2016年3月31日 08:09:43 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[5]

これまで消費量が少ない一般世帯が優遇されてきたが

電力自由化により大企業のように規模の大きい消費者が市場原理の恩恵を受け、海外との競争に不利だった高コスト」状況は改善することになる

一方、一般世帯には、ほとんど自由化の恩恵はなく、これまで規制で守られてきた既得権を失うことになる


http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/912.html#c1

[経世済民106] 東電と関電等しか選べないという完全独占体制で、日本と国民が絶望的に失ってきたこと(Business Journal) 赤かぶ
2. 2016年3月31日 08:12:30 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[6]

もちろん、TPP同様、自由化による一番の被害者は、東電や関電などの地域独占企業と、その関連企業や従業員であることは言うまでもない

http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/912.html#c2
[経世済民107] 「ヒトラーは正しい」で緊急停止 最先端人工知能の“アキレス腱”(週刊文春) 赤かぶ
1. 2016年3月31日 17:34:52 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[7]

「人間なら言ってはいけない言葉や道徳観念は子供でも分かります」というのは間違い。
周囲が差別主義者なら、同調して自然に差別主義者になるのはAIと同じ。

http://www.asyura2.com/16/hasan107/msg/134.html#c1
[中国8] 「万病に効く」1本7000円の「神の水」を飲んだ村民が大病患う―中国 赤かぶ
1. 2016年3月31日 18:22:52 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[8]
2016.3.31 08:04
【海底資源「夢の泥」はいま(2)】ケ小平の戦略・中国レアアース開発で荒れ果てた山に無数の酸溶液の池 住民は歯が抜け…陸上破壊進み海洋進出か


中国・江西省の山間部のレアアース採掘現場 =平成25年6月(宮崎紀秀氏提供)
 中国のレアアース開発は、最高指導者だったトウ小平が約24年前に改革開放と経済成長を呼びかけた「南巡講話」で述べた言葉が原動力となってきた。

 「中東有石油、中国有稀土、一定把我国稀土的優勢発揮出来」

 「中東には石油があるが、中国にはレアアースがある。中国はレアアースで優位性を発揮できるだろう」という意味だ。

 中国はレアアースの偏在性を十二分に利用してきた。レアアース鉱床は米国や豪州などの陸上にも分布しているが、中国以外では鉱床に含まれるトリウムなどの放射性元素の処理という環境問題がネックとなって開発は難しい。

 レアアースのうち、ジスプロシウムやテルビウムなどの重レアアースは、日本が得意とする最先端のハイテク製品には欠かせないが、量も少なく、中国一国がほぼ独占。平成22年9月の尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖の漁船衝突事件を機に、禁輸という強気な態度で日本を「レアアースショック」で揺さぶることができたのもこの偏在性が背景にある。

 しかし、ここにきて中国は自国の陸上レアアース資源の開発は限界だと気づき始めているとの見方も出ている。

 重レアアース鉱床は中国でも南部にしか存在しない。北京を中心に活動するジャーナリスト、宮崎紀秀(45)は3年ほど前、中国南部の江西省のレアアース鉱床を取材したことがある。

 江西省の小さな村に入った宮崎の視界に飛び込んできたのは、山肌に掘られていたいくつもの貯留池だった。土に酸をかけて分離したレアアースを回収し、池にはレアアースを抽出した酸溶液をためておく。「もう取り尽くしたという感じでしたね」。荒れ果てた山に無数の穴…。乱採掘を物語っていた。

 内モンゴル自治区を取材したときは、レアアース生産による環境破壊を目の当たりにした。

 同自治区の包頭(パオトウ)は「稀土大街」(レアアース大通り)や「稀土公園」(レアアース公園)がある、レアアースで栄えた都市だ。公園にはトウ小平の似顔入りで「中東有石油 中国有稀土」と揮毫(きごう)された石壁があった。

 包頭郊外の広さ10平方キロメートルの湖の向こうに見えるレアアース関連工場。工場が半世紀ほど廃水を垂れ流したためか、湖のかなりの面積は干上がり、荒涼とした地表が広がっていた。

 湖近郊の村を訪れると、住民の多くは歯が抜けていた。村では地下水を使って生活し、農作物や家畜を育ててきた。住民の話では、30年ほど前から作物は育たなくなり、家畜も歯が黒くなって餌を食べられなくなって死んだという。

 中国の陸上レアアース乱採掘や関連工場による環境破壊-。南鳥島(東京都小笠原村)沖でレアアース泥(でい)を発見した東大教授、加藤泰浩(54)はこう指摘する。「環境問題は持続可能な資源開発の最大の障害だ。中国の陸上レアアースは近い将来開発は難しくなるかもしれない」

 南鳥島沖を含めた太平洋の海底のレアアース泥には、陸上鉱床と違ってトリウムやウランがほとんど含まれず、採掘の際に出る放射性廃棄物の問題もないという。レアアースをめぐる環境問題に直面している中国にとって、海底のレアアース泥はかなり魅力的に映っているはずだ。

 陸上から海洋へ-。中国のレアアース戦略は転換期に差し掛かっているのかもしれない。=敬称略(編集委員 斎藤浩)

http://www.sankei.com/life/print/160331/lif1603310002-c.html
http://www.asyura2.com/16/china8/msg/391.html#c1

[国際13] とんでもない発言をした藩国連事務総長(GLOBAL EYE) 赤かぶ
1. 2016年3月31日 18:36:11 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[9]


21日、モロッコはこのほど国連に対し、西サハラに派遣されている国連平和維持活動要員の撤収を求め、すでに83人が撤退した。写真は国連の旗。

2016年3月21日、仏紙フィガロによると、モロッコはこのほど国連に対し、西サハラに派遣されている国連平和維持活動(PKO)要員の撤収を求め、すでに83人が撤退した。

国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長がモロッコが実効支配する西サハラについて「占領されている」と発言したことに対する措置。環球時報(電子版)が伝えた。

仏AFP通信によると、潘氏は今月上旬、モロッコに隣接するアルジェリアの西サハラ難民キャンプを訪問した際、西サハラがモロッコによる占領状態にあると発言。モロッコ政府が反発し、PKO要員への資金援助を取り消し、全員の撤退を要求した。関係者によると、PKO要員83人は3月19、20日の両日、すでに西サハラを離れたという。

西サハラはスペインの植民地を経て、1975年にモロッコが主権を主張。大部分を実効支配していた。91年には武装組織との武力衝突が終了した。(翻訳・編集/大宮)


国連事務総長が元慰安婦と面会=米国ネット「国連は時間を無駄にするばかり」「日本は米国に原爆を落とされた犠牲者だと考えているから…」

国連の潘基文事務総長、日韓慰安婦合意の忠実な履行を要求=韓国ネット「恥ずかしい、なぜ国連でそんな発言を?」「こっそりと言葉を変えるつもり?」

国連事務総長の年収はいくら?中国ネットユーザーが仰天した金額とは

国連・潘事務総長、中国に春節の祝賀メッセージ「私もさる年生まれ」「希望と活力に満ちあふれた年に」―中国メディア

朴槿恵大統領が国連・潘事務総長を高く評価、「次期大統領として待望視」への質問は笑顔でかわす―韓国紙


http://www.asyura2.com/16/kokusai13/msg/183.html#c1

[国際13] とんでもない発言をした藩国連事務総長(GLOBAL EYE) 赤かぶ
2. 2016年3月31日 18:42:05 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[10]

 
http://jp.wsj.com/articles/SB10045581131988013594504581614390273667946
国連とモロッコに亀裂、事務総長の一言で
モロッコによる西サハラ地域の実効支配を「占領」と
モロッコの首都ラバトで潘事務総長の発言に抗議するモロッコ人ら(13日)

By FARNAZ FASSIHI
2016 年 3 月 22 日 17:25 JST

 【国連】すべては「占領」というひとつの言葉から始まった。この一言が国連と北アフリカの王国、モロッコとの間に異例の亀裂を生むことになった。

 国連の潘基文事務総長はモロッコが西サハラ地域を実効支配していることについて、「占領」という言葉を使った。潘氏の広報官によると、同氏は難民キャンプで目した悲惨な状況に「強く突き動かされた」という。そこでは国連の仲介で1991年に停戦が成立して以降、人々の生活が行き詰まっていた。

 潘氏の批判にモロッコは猛反撃した。西サハラの紛争地域を自国領だと主張しているモロッコは、潘氏が公平でないと非難。首都ラバトでは先週、政党や労働組合が国連に対する大規模な抗議活動を組織し、デモ参加者らは「潘氏は中立でない」との標識を掲げた。

 モロッコのサラーフッディーン・メズワール外相は、米ニューヨークで記者団に対し、同国と国連との関係に問題はないが、潘氏は好きではないと発言。潘氏を頑固者と呼んだ。

 モロッコは先週、一連の報復措置を発表。国連西サハラ住民投票監視団(MINURSO)として知られるPKO活動に従事する文民85人のうち81人と、アフリカ連合のメンバー3人を追放し、3日以内に撤収するよう求めた。また、PKO活動に向けた300万ドル(約3億3600万円)の資金提供を直ちに凍結し、国連のPKO活動に向けた2300人の要員派遣を見直す方針を明らかにした。

 モロッコ政府は潘氏に発言を公式に撤回するよう求めたが、潘氏は応じなかった。同氏は声明で、「占領」という言葉の使用に「誤解」が生じたと述べる一方、個人攻撃には深く失望すると同時に憤りを感じるとし、モロッコが潘氏と国連に「失礼を働いた」と述べた。

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http://www.recordchina.co.jp/a131565.html
国連・潘事務総長の発言に反発、モロッコが西サハラのPKO要員撤収を要求―仏メディア
配信日時:2016年3月22日(火) 9時50分

21日、モロッコはこのほど国連に対し、西サハラに派遣されている国連平和維持活動要員の撤収を求め、すでに83人が撤退した。写真は国連の旗。
2016年3月21日、仏紙フィガロによると、モロッコはこのほど国連に対し、西サハラに派遣されている国連平和維持活動(PKO)要員の撤収を求め、すでに83人が撤退した。国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長がモロッコが実効支配する西サハラについて「占領されている」と発言したことに対する措置。環球時報(電子版)が伝えた。

仏AFP通信によると、潘氏は今月上旬、モロッコに隣接するアルジェリアの西サハラ難民キャンプを訪問した際、西サハラがモロッコによる占領状態にあると発言。モロッコ政府が反発し、PKO要員への資金援助を取り消し、全員の撤退を要求した。関係者によると、PKO要員83人は3月19、20日の両日、すでに西サハラを離れたという。

西サハラはスペインの植民地を経て、1975年にモロッコが主権を主張。大部分を実効支配していた。91年には武装組織との武力衝突が終了した。(翻訳・編集/大宮)


http://www.nuclearpost.top/%E4%B8%96%E7%95%8C/1054867489.html
モロッコ、国連事務総長のスポークスマンからの説明をはねつける


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 火曜日、モロッコは係争中の西サハラに関する騒動は「誤解」によるものだという国連の潘基文事務総長の事務所からの説明をはねつけました。

 藩事務総長は今月、アルジェリアの難民キャンプを訪れた際に、係争中の領土である西サハラに「占領」という表現を用い、モロッコを激怒させていました。
 「配慮から出た一個人の表現が、誤解とこのような結果を招いたことを遺憾に思います。あのような言葉を使ったのは予定されていたものでも、意図的なものでもなく、あくまで自然に出た、個人的な反応でした。」と、月曜日に事務総長のスポークスマンであるステファン・デュジャリック氏が語りました。
 しかし、モロッコは火曜日、再び事務総長を非難しました。モロッコ外務省のスポークスマンは、事務総長の容認できない発言はかつてなく重大なもので、正当でもなければ、取り消すことができるものでもないと述べています。
 このスポークスマンは、「この状況は単なる誤解で解決できるものではありません」と発言し、一方でモロッコは「責任を持って、包括的かつ建設的な対話」に従事する準備があるとも述べたということです。
 藩事務総長は火曜日、チュニスでの記者会見でこの発言に対するコメントを拒否しました。事務総長は「私のスポークスマンが昨日説明しました。繰り返すつもりはありません。単語の一つ一つが監視、分析されているからです。」と述べています。
 モロッコは、旧スペイン植民地で1975年に併合した西サハラを自国の不可欠な領土だとみなしており、モロッコ政府の元での地方自治政府という形を提案しています。事務総長の発言の報復として、モロッコは西サハラ住民投票ミッションに配属されていた非武装の専門職の職員の大半を追放し、国連軍の連絡事務所を閉鎖していました。

執筆:やの
引用:http://www.dailymail.co.uk/wires/afp/article-3514557/Morocco-rejects-UN-chief-explanation-Sahara-row.html


     
http://www.asyura2.com/16/kokusai13/msg/183.html#c2

[経世済民107] この「円高」局面はいつまで続くのか? 〜マイナス金利は円安に働くはずなのに…(現代ビジネス) 赤かぶ
2. 2016年3月31日 18:50:47 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[11]

112円台は円高ではない。
株価も17000円近辺を維持しており、ドル建てで見れば堅調。
クロス円を見れば明らかなように、単にリスクオンでドル安になっているだけ。



http://www.asyura2.com/16/hasan107/msg/129.html#c2

[経世済民107] 市場の期待の流れを変化させるFRB 赤かぶ
2. 2016年3月31日 22:23:19 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[12]

米家計、支出増えるも所得は減少=民間財団調査

ドイツ系格安スーパーのアルディ店内(南カリフォルニア) PHOTO: CASEY RODGERS/INVISION FOR ALDI/ASSOCIATED PRESS
By
JEFFREY SPARSHOTT
2016 年 3 月 31 日 10:09 JST
 米家計の消費支出は直近のリセッション(景気後退)から完全に回復したが、所得は依然さえない。そのため、家計は圧迫されており、多くの低所得世帯が赤字に陥っている。米民間助成財団ピュー・チャリタブル・トラストが30日発表した報告書で明らかになった。
 報告書は「低所得世帯は資金の融通が利かないため、短期的には経済的安定が、長期的にはエコノミック・モビリティー(所得や社会的地位の向上を一生涯でどの程度実現できるか)が脅かされている」と指摘する。
 同財団は20歳から60歳までの勤労世代の米国民を対象に1996年〜2014年の実質消費支出と所得を調査した。すると、07〜09年のリセッションの後、支出がいったん落ち込んでから回復したのに対し、所得(給与、社会保障給付金、年金、育児手当などを含む)は低迷したままであることが分かった。
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 報告書から見えてくるのは、安定的な雇用創出や個人消費の拡大に支えられ景気が緩やかに回復している一方で賃金は伸び悩み、所得格差が拡大しつつある、といった経済全般の問題だ。
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米家計の実質支出額 (茶:平均値、青:中央値)
 報告書によれば、04年と14年を比較すると税引き前所得(中央値)が13%減少したのに対し、支出は14%近く増加した。結果、全ての世帯所得階層で貯蓄や教育などの投資に回す資金が減った。
 増えた支出分の大半は住居、交通、食料への支払いで、家計のやり繰りの余地は少なくなった。低所得世帯の場合、住宅関連費や通勤・通学費、食費を増やす以外の選択肢はあまりないだろう。
 実際、同財団は低所得世帯の所得の半分近くが家賃に消えていることを見いだした。
 同財団のディレクター、エリン・クーリエ氏は「低所得世帯が経済的な不安を抱えている理由を考えた場合、こうした住宅関連費用の増加は実に重要な要因の一つだ」とした上で、「従って、多くの世帯は家計が綱渡り状態だ。必需品は値上がりしており、所得の伸びはこれに追い付いていない」と述べた。
 このため、レストランでの飲食や娯楽などの裁量的支出を削っているにもかかわらず家計が赤字の人たちは多い。報告書によれば、所得から消費支出を差し引いたものを黒字と定義すると、所得階層の下位3分の1に属する典型的な世帯の場合、04年時点では1500ドル(16万8000円)の黒字だったが、14年には2300ドルの赤字に転落した。
 報告書を見ただけでは家計が赤字を埋めるための資金をどこから調達しているかははっきりしないが、可能性としては貯蓄、家族や友人、借り入れなどが考えられる。
 所得階層の上位3分の1の世帯の場合、所得から支出を引いた金額(中央値)は04年が約4万4915ドル、14年が3万3414ドル。中間層の世帯では、それぞれ1万7000ドル、5944ドルだった。
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世帯所得階層別の住宅関連支出額(茶:上位3分の1、青:中間層、灰:下位3分の1)
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健全な労働市場でも低調な成長、回復の鍵はどこに
世界の鈍い経済成長の背景には弱い生産性がある。これは金融政策や財政出動では修復できないだろう
By GREG IP
2016 年 3 月 31 日 13:08 JST

 世界経済には暗雲がかかっている。国際通貨基金(IMF)は成長見通しをまた下方修正しようとしている。IMFのラガルド専務理事は先ごろ、「弱々しい」景気回復が「速やかな行動」を求めていると警告を発した。各中央銀行はリセッション(景気後退)を避けるため、残された非従来型政策手段には何があるかを研究している。20カ国・地域(G20)の首脳らは中国の上海で、「金融、財政および構造的な、あらゆる政策手段」を講じることを誓った。

 だが、経済の健全性を示す最も重要な指標を見る限り、こうした心配は的外れのように思われる。

 大半の経済大国において、失業率は下がりつつある。多くの国々ではリセッション前の水準を回復するという、高い評価に値する展開を示している。ところが、G20もラガルド専務理事も、このことは指摘しなかった。

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 失業率が国内総生産(GDP)成長率よりも世界経済の健全性にとってより良い指標ならば、金融と財政による景気刺激をめぐる現在の強迫観念は間違いだ。成長は需要の欠落にはそれほど阻止されていないが、人口高齢化と生産性の弱まりによる潜在力の伸び悩みに邪魔されている。

 米国は成長と失業率が一致しない典型例だ。2010年にオバマ大統領の経済顧問らは、10年から15年にかけて年率3.9%のGDP成長率を予想した。実際の成長率は辛うじてその半分の平均2.1%だった。失業率は10.0%から5.9%に下がると考えたが、これについては悲観しすぎだった。失業率はいまや4.9%まで低下している。

 他の国々でも同じような状況だ。英国の景気回復は期待はずれだが、現在の失業率は07年よりも低い5.1%だ。日本経済は08年以降で4回目の理論上のリセッション(2四半期連続のGDPマイナス成長)に陥っているかもしれないが、失業率は20年間で最低の水準に低下している。ユーロ圏でさえ、失業率が東西統合後の最低水準にあるドイツばかりでなく、失業率は13年以降着実に下がっている。ソブリン債務危機に最も打撃を受けた国々でも、まだ高すぎる水準ではあるが低下傾向を早めている。

 失業率低下の原因は、求職を諦めた労働者が労働力人口から離脱しているためでもない。日本や英国、韓国、ドイツでは、雇用がIMFの予想以上に伸びている。確かに米国では、労働力人口に占める働き盛りの成人比率が、人口動態で説明できるよりも大幅に低下した。だが、日本や英国、ユーロ圏では比率は上昇している。

 ある意味でこれは朗報だ。各中央銀行は、リセッションの名残である過剰な経済資源を排除するために、かつてない非従来型の措置を試みてきた。失業率の低下は、それがうまく行っていることを意味している。

 だが逆に残念なのは、このように低調な成長でも十分にスラック(余剰資源)を解消できるとするならば、成長の潜在力は本当にひどく悪いに違いないことだ。

 こうなる理由は二つある。まず、社会の高齢化に伴い、労働年齢人口の伸びは富裕国でも新興国でも鈍化した。次に、生産性、つまり労働者一人当たりの生産の伸びの落ち込みだ。

多くの国々で失業率は金融危機前の低水準まで下がったが、生産性が弱いために成長率は低迷している。(上:失業率の推移、下:雇用(青)と生産性(黄)の推移)

 JPモルガン・チェースのエコノミストらは、世界の雇用の伸びは実際、過去1年間で加速しリセッション前の水準(必ずしも労働市場の統計が入手可能ではないインドと中国を除く)を回復したと指摘している。だが、生産性の伸びは先進諸国ではゼロで、新興諸国はマイナスだ。世界の生産性が03年から07年にかけてみられた1.7%で伸びたならば、世界の経済成長率は2.4%ではなく4.2%になっているだろう、と同行では推計している。オバマ政権の経済顧問らも、米国の生産性が過去のすう勢程度で伸びたならば、昨年の失業率の低下でGDP成長率は2%ではなく4.3%に達したとみている。

 企業がリセッションと金融危機の余波を受け効率を高める機器への投資を渋ったため、弱い需要が生産性を抑えた可能性はある。また、企業は賃金の伸びがあまりにも低いので、設備投資を労働力で補っているのかもしれない。

 だが、生産性は金融危機以前から伸びが減速し始めており、リセッションをほぼ回避した国々でもそうなっているという事実からみて、根本には構造的な要因があると思われる。つまり、技術革新の効果が薄れていることや、教育など人的資本の伸びの鈍化だ。

 成長がこれほど弱い理由が生産性と人口動態のためだという事実は、どこまで金融緩和と財政出動を進めるかという議論が間違いだということを示している(生産性の伸びの弱さで、賃金の伸びの低迷は説明できる)。

 だからと言って各中銀は金融引き締めを急ぐべきということではない。先進諸国のインフレ率はまだ目標を下回っており賃金の伸びは低調だ。それでも、原油相場が下げ止まれば物価は上がるはずで、失業率が下がり続けるにつれ賃金も上がるだろう。

 ヘリコプターマネーなど貨幣の増刷で景気を刺激する独創的な提案は、理論的試みとしては魅力的だ。だが、労働市場が発しているメッセージは、金融政策が既に成果を挙げていることを示している。世界の成長を高めるには、生産性の回復が必要だ。これは単に金融政策や財政出動を講じるよりも難しい課題だ。

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【コラム】米大統領候補に問う「FRBをどうしたい」−コチャラコタ
Narayana Kocherlakota

次期米大統領は、イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長を再指名するか、別の人物を新たに議長に指名する機会を与えられる。だが、大統領選の5人の有力候補がどのようにFRB議長の人選の任に当たるかつもりか、有権者はこれまでのところほとんど何も分からずにいる。
  私の知る限り、ヒラリー・クリントン前国務長官、テッド・クルーズ上院議員、ジョン・ケーシック・オハイオ州知事、バーニー・サンダース上院議員、ドナルド・トランプ氏のいずれのウェブサイトにも金融政策や連邦準備制度へのコメントは見つからない。
  サンダース氏には米金融当局の構造改革についての論説記事があり、クルーズ氏は金本位制への回帰を支持しているが、FRB議長の人選にどう取り組むか理解するための手掛かりとなる部分は限られている。このため候補者全員に次の5つの質問をしたい。
米金融当局は2%のインフレ目標を導入したが、この金融政策目標の変更を望む人物を議長としたいか。そうだとすれば、どのような変更か
金融当局のもう一つの責務である最大限の雇用について、当局自体も議会も数値化していない。次期議長がこの責務への当局の取り組みを変更するよう望むか。仮にそうなら、どうしたいか
下院では、金利設定に数式を用いるよう金融当局に義務づけ、それから逸脱があれば説明を求める内容の法案が可決された。金融政策へのこうしたアプローチに同意する人物を議長としたいか
米金融当局は2007−09年の世界的な金融危機に際し、金融システムを支えるために数多くの異例の措置を講じた。将来危機に見舞われた場合に、同じように介入主義的な手法を取る人物を議長に望むか。もっと概略的な聞き方をすれば、あなたの政権は金融危機にどう対処するか
10年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)は、規制監督を担当するFRB副議長の指名を大統領に求めた。このポストは空席のままだが、空席を解消するつもりか、それともその責務を議長に委ねるつもりか。いずれにせよ、この職務はどうあるべきだと考えるか
  最初の3つの質問はあまりにも金融政策に焦点を絞ったものと受け止められるかもしれない。米金融当局は結局、大統領を含む選挙の洗礼を受けて公職に就いた代表からの政治的圧力を受けず、独立して政策金利についての判断を下すことになっている。ただ、金融政策の長期的な目標と戦略に関しては、有権者とその代表が発言権を有することが当然であり、重要だと信じる。
  最後の2つの質問は(物価安定、最大限の雇用に加え)多くの識者が米金融当局の3つめの責務と見なしている金融の安定性に関わる。08年の危機の経験によって、金融の安定性が重要であることは誰の目にも十分明らかとなったのは間違いない。この目標を追求する上で、次期大統領が金融当局にどのような働き掛けするつもりか、有権者は知っておかねばならない。
  米金融当局がさまざまな任務を遂行できるよう、議会からは極めて大きな独立性を認められている。しかし、そうした独立性には監督と説明責任が伴うものであり、選挙で公職に就いた代表は主に誰をFRB議長に選ぶかを通じて監督権限を行使する。このためこうした代表、特に大統領を目指す人物は全員、自身の行動計画を一般の人々に知らせることが不可欠だ。
(ナラヤナ・コチャラコタ氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストで、2009−15年に米ミネアポリス連銀総裁を務めた。このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)
原題:Ask the Next President About the Fed: Narayana Kocherlakota(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-31/O4W05P6JTSEB01

欧州株、回復遅れる理由とは
欧州の難民危機対応は、政策決定の不手際ぶりを投資家に再認識させた(写真はアテネ近郊ピレウス港に到着して食糧配給に並ぶ難民、2月25日)

By RICHARD BARLEY
2016 年 3 月 31 日 12:23 JST

 世界の多くの株式市場は年初に急落したが、その後下げをほぼ戻している。米国では、S&P500種指数の年初来騰落率がわずかではあるがプラスに転じている。新興国市場もいくらか勢いを取り戻している。ロシアとトルコの株式市場は年初からの上昇率が2桁に達し、通貨や債券も反発している。投資適格債やハイイールド(高利回り)債は安定を取り戻し、商品(コモディティー)相場は上昇している。

 だが、欧州株は後れを取っている。欧州主要企業600社で構成するStoxx600指数は、年初来騰落率がまだ6.7%安だ。欧州の銀行株は特に打撃が大きく、下落率は19.5%に達している。

 これはある程度不可解に思える。欧州経済はひどい状況にはなく、欧州中央銀行(ECB)は今月、市場の期待を上回る緩和策を発表した。一方、海外からの逆風はまだ存在するものの、弱まっている。例えば、中国の為替政策をめぐる懸念は今やそれほど顕著ではない。

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 だが、域内のリスクは多数ある。欧州の難民危機対応は、政策決定の不手際ぶりを投資家に再認識させた。欧州連合(EU)離脱の是非を問う6月の英国民投票もさらなる政治リスクだ。ギリシャ問題も再び表面化する恐れがまだある。

 ユーロ圏に限って言うと、経済成長の加速はいまだ願望であって、現実ではない。格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)は30日、ユーロ圏の今年の成長率予想を1.8%から1.5%へ下方修正した。企業収益にも同じことが言える。つまり、欧州はまだ持続的な成長を待っている状況だ。調査会社ファクトセットによると、Stoxx600指数の予想PER(株価収益率)は14.7倍で、欧州株が間違いなく価値を提供しているとは主張し難い。ドルに対してユーロが上昇していることもマイナス要因だ。

欧州主要企業600社で構成するStoxx600指数 ENLARGE
欧州主要企業600社で構成するStoxx600指数
 確かに、現段階で欧州株を毛嫌いする理由はこれといって見当たらない。世界の状況が一段と落ち着いていることは喜ばしい。そして政治リスク、特に英国のEU離脱は差し迫った脅威ではない。欧州はこれまでのように、どうにか難局を切り抜ける状況が続いている。

 だがその一方で、他の地域は投資家の関心を引こうと競い合っている。新興国市場の回復がその好例であり、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が利上げに慎重姿勢を示したことが回復に寄与する可能性もある。欧州の投資家自身も見通しに確信が持てないようだ。米金融大手ステート・ストリートが発表した地域別の投資家信頼感指数は、3月に米国とアジアでリスク志向が大幅に回復したことを示したが、欧州での回復は小幅にとどまった。

 結局のところ、欧州の経済成長と企業収益の持ち直しが長らく待たれていることが、投資意欲を損なっている。希望の泉は枯れないというが、そうはいかない時もある。

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焦点:新興市場の回復阻む「3つの要因」、政治リスクの懸念増す
Business | 2016年 03月 31日 15:19 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス

[ロンドン 30日 ロイター] - これまで数年間にわたった低迷期を経て、新興国市場には割安感が出始めており、世界の投資家の間では、新興国資産への回帰の動きも見られる。しかし、不透明感が残るなか、資金の戻りは鈍い。

国際金融協会(IIF)のデータによると、外国人投資家は今年3月、新興国の株式と債券におよそ368億ドルを投じ、流入額はこの約2年間で最高を記録。過去4年間の月間の平均水準を大幅に上回った。

ただし、2015年の新興国からの資金流出額が約7300億ドルに達したことを踏まえると、新興市場への資金の戻りはごく緩やかだ。

新興国投資の本格回復には、3つの不透明要因の払拭が必要だ。

その3つの要因とは、まず、米利上げとそれに伴うドル上昇への警戒感。そして、中国の景気減速、およびその影響がコモディティー(商品)価格や新興市場全体に波及する可能性。最後に、ブラジルやトルコ、南アフリカなど多くの国で起きている政治的なリスクの高まりだ。

最初の2要因については、今のところどちらも解消されていない。

たとえば米利上げだが、米連邦準備理事会(FRB)は昨年12月の利上げ後、追加利上げ実施をためらっているが、最近は一部のFRB当局者がタカ派的な姿勢を示しており、市場を再び動揺させかねない。

JPモルガンのストラテジストらは、新興市場が向こう3カ月、アウトパフォームすると見ている。ただ、経済情勢は改善しない見通しであり、新興市場の回復は主にポジション調整によるもの、としている。

<「新興市場から距離置いている」>

「中国リスク」も無視できない。中国は無秩序な人民元下落の可能性を否定するが、投資家は中国市場について確信を持てないでいる。

ピクテのウェルスマネジメント部門でアセットアロケーションを担当するクリストフ・ドナイ氏は、中国は当面は現状を維持するかもしれないが、今後3年以内に「ミンスキー・モーメント(信用や通貨への圧力の結果、資産価格が急落すること)」が起こるリスクは高いと指摘。

「そのため、当社では、新興市場資産からは距離を置いている。われわれの新興市場へのエクスポージャーは極めて限定的だ」と語った。

ただでさえ国際的な環境への疑念が強いなか、政治リスクを抱える新興市場に投資するというのは、蛮勇以外の何物でもない。

政治リスクの代表格が、リセッション(景気後退)に陥っているブラジルだ。国営石油会社ペトロブラスをめぐる汚職捜査が拡大するなか、ルセフ大統領は弾劾に直面する。政権交代への期待感から市場は上昇したが、混乱の決着にはまだ、数週間、数カ月かかる可能性がある。

トルコでも、シリアの内戦とそれに伴う難民流入、独立を目指すクルド人との対立、メディア規制、ロシアとの関係悪化に苦慮している。

ゴールドマン・サックスの新興市場リサーチ担当マネジングディレクター、カマクシャ・トリベディ氏は「新興市場では先行き、政治が大きな役割を占める」と指摘。「政治という要因は、経済成長が加速し信用も潤沢な時期には軽視されがちだが、成長が低迷し信用が引き締まっているような局面においては、重要性が増す」との見方を示している。

(Mike Dolan記者 翻訳:吉川彩 編集:内田慎一)
http://jp.reuters.com/article/global-emerging-politics-idJPKCN0WX0D4?sp=true


 
アングル:15年度は日経平均2448円安、アベノミクス相場初の下落
ロイター 3月31日(木)18時16分配信

 3月31日、2015年度の日経平均は前年度末比で2448円32銭安となり、いわゆるアベノミクス相場で初の下落となった。年度ベースで下落となるのは2010年度以来、5年ぶり。写真は都内の株価ボード、2月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)
[東京 31日 ロイター] - 2015年度の日経平均<.N225>は前年度末比で2448円32銭安となり、いわゆるアベノミクス相場で初の下落となった。年度ベースで下落となるのは2010年度以来、5年ぶり。

6月に18年ぶり高値を付けたが、夏場以降は中国ショック、原油安を背景にした世界的なリスク回避などで失速。昨年後半からは円高も進行し、海外勢の売りが強まった。

<下げ幅はリーマンショック以来>

15年度はまずドル高/円安が進行。6月5日に1ドル125.85円まで上昇した円安基調を追い風に日経平均は同月24日に2万0952円71銭と、1996年12月以来、18年半ぶりの高値を付けた。

だが、夏場以降に相場のムードが一変。8月11日に中国人民銀行(中央銀行)が人民元を事実上切り下げたことを機に、中国景気減速への懸念が台頭。日経平均は同月25日までの約2週間で3000円超の大幅な下落となったほか、125円近辺にあったドル/円<JPY=EBS>も一時116円台まで急落した。

12月にかけて日本株、ドル/円ともにいったん持ち直しの動きがみられたが、今年に入り、再び円高・株安が進行。日銀によるマイナス金利導入も打開策にはならず、世界的なリバウンド相場の流れに乗れないでいる。

15年度の日経平均の下落幅は、リーマン・ショックの08年度(4416円01銭安)以来の大きさとなった。売買主体別では、外国人投資家が現物・先物の合計で10兆円に迫る売り越しとなったことが大きい。

ドル/円はきょうの午後3時時点で112円前半。昨年度末は120円前半であり、1年間で約8円の円高となった。ドル/円が前年度末の終値との比較で円高となったのは、これもアベノミクス相場初で、11年度以来となる。

<内需株好調・外需株軟調>

年度後半の円高基調を背景に、業種では内需株が好調だった。東証33業種のうち、上昇率トップとなったのは水産・農林<.IFISH.T>の29.6%高。建設<.ICNST.T>の9.5%高、食料品<.IFOOD.T>の6.1%高がこれに続く。下落率では海運業<.ISHIP.T>の38.3%安が最大。自動車・電機など外需関連は総じてさえない。

個別株では、TOPIX500構成銘柄の上昇率で雪印メグミルク<2270.T>がトップとなった。コーセー<4922.T>などインバウンド関連も上位にランクインした。

雪印メグの16年3月期純利益は前年比約3.7倍の145億円と、過去最高益となる見通し。「利益率の高い製品が売れたことに加え、製品価格の値上げ後も物量が落ちることがなかった」(広報部)という。

下落率首位は半導体ウエハーを手掛けるSUMCO<3436.T>。ミネベア<6479.T>など米アップル<AAPL.O>関連や、不正会計問題に揺れた東芝<6502.T>の下げも目立つ。

SUMCOはスマートフォンなどに使われる半導体ウエハー需要の懸念が重しとなった。15年12月期は増益を確保したものの、株価の面では「供給過剰感があるなかで、長期契約などで安定供給先を確保している競合他社との格差が広がっている」(藍沢証券・投資顧問室ファンドマネージャーの三井郁男氏)との見方もある。

日本株全体では円高による来期企業業績への懸念が強まっている。日本アジア証券エクイティ・ストラテジストの清水三津雄氏は「景気対策が打ち出され参院選に突入する展開が見込まれるが、それ以降は日本株はもたつく形となり、夏場がピークとなる可能性がある」との見方を示している。

(長田善行 編集:伊賀大記)

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最終更新:3月31日(木)18時16分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160331-00000066-reut-bus_all


 

広木 隆「ストラテジーレポート」

チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、実践的な株式投資戦略をご提供します。広木 隆が投資戦略の考え方となる礎を執筆していたコラム広木隆の「新潮流」は、こちらでお読みいただけます。 (@TakashiHiroki)
プロフィール
2016年03月30日

年度替わりの日本株相場展望

10月は、株式投資にはとくに危険な月である。それ以外に危険な月は、7月、1月、9月、4月、11月、5月、3月、6月、12月、8月、2月である。(マーク・トウェイン)

4月相場に期待

日本株式相場は昨日から実質新年度入りした。前回のレポートで述べた通り、年初からの嵐のような下落相場は終わった。3月ひとつきをかけて日経平均は1万7000円という「居心地の良い」水準をしっかりと固めた。年度替わりで日本株は戻りを試す展開となろう。まずは次の節目の1万7500円を明確に上抜けることが目先のターゲットだ。昨年12月高値から2月安値までの下落幅の半値戻しに当たる水準である。その水準を固められれば、2月の高値(1万7905円)を抜いて1万8000円台をつけにいくことが可能となろう。

4月相場は期待していい。新年度入り初日の昨日29日の日経平均は30円安の1万7103円。配当権利落ち分(127円)を考慮すると、実質的には値上がりである。配当落ちを即日埋めるのは相場が強い証拠と言われる。昨日は配当落ち分を「すべて埋めた」わけではないが、「ほぼ埋めた」とは見なせる。なので、「それほど弱くはない相場」くらいのことは言ってよかろう。

そもそも4月は株が上がる月である。日経平均の月別上昇率を見ると4月は1月に次いで2番目に上昇する確率が高い月であるが、その背景として新年度入りした機関投資家からの資金流入期待が挙げられる。

日本株の出遅れ感
下げ相場は終わったとはいえ、日本株は年初来上昇率がプラスに転じたNYダウ平均などに比べて戻りの鈍さが際立っている。もっとも、出遅れ感が強いのは日本株だけではなく、景気減速懸念の強い中国株およびスイス、ドイツ等の欧州株も米国株に大きく劣後する。

一方、ブラジルのボベスパ指数は1月安値からの上昇率が3割を超え、年初来のリターンも世界の主要株価指数のなかで突出して高く、その次にはラテンアメリカではメキシコやアルゼンチン、アジアではタイ、インドネシアなどが続く。3月FOMCが示唆した年内利上げの回数は2回とそれまでの4回から大幅にトーンダウンした。米国利上げに伴う資本流出懸念で売られた新興国が米国の利上げペース鈍化観測を受けて買い戻されている背景である。

米国の利上げペース鈍化観測はドル独歩高を是正し、それは米国企業にとって好材料であるため米国株も順調に戻り歩調にあるという構図が鮮明である。その裏返しが直近の円高であり当然、日本株にとっては重石であった。米国の利上げペース鈍化観測のタイミングにリパトリ等の期末要因も加わって円高が進行、ドル円相場は先日一時110円台をつけた。

円高の背景 - 米国のインフレ期待
但し、今回の円高も早晩一服するだろう。期末の円高要因が剥落したこともあるが、最大の要因である日米のインフレ期待の格差拡大にも歯止めがかかる可能性があるからだ。円高に振れていた最大の要因が日米のインフレ期待の格差であるということをもう一度、丁寧に説明しよう。

前回のレポートでもこう指摘した。<(円高の背景は)米国のインフレ期待が徐々に高まっていることだろう。インフレとは通貨価値が減価することだ。米国でインフレ期待が高まる一方、日本はマイナス金利が足元では逆効果を生んで却ってデフレ的な側面が強くなっている。この日米のインフレ期待の差が円高ドル安の背景ではないか>

日本のマイナス金利の影響で日米の名目金利差は拡大している。しかし、インフレ期待の格差が名目金利差以上に大きいため、実質金利ベースでは日米金利差は縮小し、むしろドル安円高の要因となっているのである。グラフは市場が推測する期待インフレ率であるBEI(Break Even Inflation rateブレークイーブンインフレ率)を名目金利から差し引いた2年国債の実質利回り格差とドル円レートである。

では、なぜ米国の期待インフレ率(その指標であるBEI)が上昇しているのか?それは、実際に足元のインフレ指標が上昇しているからだ。米国の2月の消費者物価指数(CPI)は食品・エネルギーを除くコアが前年比で2.3%上昇と2012年5月以来の高い伸びとなっている。

FRBが目標として見ている物価指標はPCE(個人消費支出)のデフレーターである。コアPCEインフレ率は前年比で1.7%の上昇である。これはFRBが予想する今年の中央値(1.6%)を上回り、中心的予想レンジ(上下3つ両極端の予想を排除して丸めたレンジ)の上限に達している。

FRBはデュアルマンデートを負っている。デュアルマンデートとはFRBとFOMCが連銀法により課されている「物価の安定」と「完全雇用(雇用の最大化)」という金融政策の運営にあたっての2つの法的使命のことである。この2点についての一般論は、失業率は5%を割り込むまでに低下し「ほぼ完全雇用」の水準にあるが、一方、物価については原油安の影響や低成長もあって遅々として目標とする2%に届かない - というようなものであったように思う。

ところが現実は、インフレのほうがFRBの当座のターゲット(見通し)をクリアしており、失業率のほうが見通しまでまだ伸びしろがある。市場は、ある意味、盲点をつかれたような状態だったのだろう。BEIは、コアPCEインフレを追いかける格好で急上昇した。これが足元、米国の期待インフレ率が急激に高まった背景である。

米国の個人消費支出が弱くインフレ期待の上昇も一服
今週は重要指標が目白押しでハイライトは週末4/1(金)の米国・雇用統計とISM製造業景況感指数、中国・PMI、日本・日銀短観の発表である。だが、僕が一番注目した指標は月曜日に発表された米国の2月個人消費支出(PCE)だった。コアPCEインフレ率の事前予想は1.8%だった。もしも予想通りの数値となれば上述したFRBの中心的予想レンジを上抜けることになる。そうなれば4月利上げの蓋然性が一段と高くなっていたであろう。結果はコアPCEインフレ率の前年比は前月と変わらずの1.7%だった。予想ほど高まらなかったが、依然としてFRBの中心的予想レンジの上限に張り付いていることには注意したい。

発表された2月個人消費支出(PCE)の内容は弱いものだった。2月の前月比は0.1%増だったが、1月分が大幅に下方修正された。家電や自動車など耐久財への支出が速報段階の12%増から0.7%減に下方修正されたこともあって全体が0.5%増から0.1%増にまで下方修正されたのだ。

こうした個人消費の弱さに、昨日のイエレン議長の講演で示唆された利上げを急がないというメッセージもあって、一時高まっていた早期利上げ観測は後退した。短期的にはそれによって円高となっているものの、基本的にはこれ以上の円高進行は限定的だろう。なぜなら根本的な背景である米国の期待インフレの急上昇にも歯止めがかかりつつあるからだ。BEIの急騰は、もともと実際のインフレ率の上昇を織り込み切れていなかった部分の急速なキャッチアップという側面もあり、それはほぼ達成しただろう。加えて、実際のインフレがこの先すぐに一段と加速する兆しは2月個人消費支出を見る限りないと思われる。改めて雇用統計で賃金の上昇ペースを確認することに市場の関心は向くだろう。

さて、その米雇用統計だが、非農業部門の雇用者数が前月比で25万人かそれ以上の増加、失業率の4.8%への低下となれば再度、早期利上げ観測が浮上しよう。しかし、米国の非農業部門雇用者数という統計にとって3月は鬼門である。過去8年のうち7回、3月の数値は予想を下回っている。2008年からでは、実際に発表された雇用者数がブルームバーグ調査の予想中央値を平均で約5万3000人下回った。2000年以降の3月では7割近く(67%)で平均約6万9000人下回っている。15年3月は予想に11万9000人届かず、01年以降で最も大きく下回る結果となった(以上はブルームバーグニュースの情報に依る)。今年も波乱に注意したい。

https://info.monex.co.jp/report/strategy/index.html


 

コラム:米大統領選とドル円、警戒すべき展開は=植野大作
FX Forum | 2016年 03月 31日 09:24 JST

三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト
[東京 31日] - 米国大統領選挙は、民主・共和両党の候補者指名を争う予備選がいよいよ大詰めを迎えている。民主党では本命視されていたヒラリー・クリントン元国務長官が対抗馬のバーニー・サンダース上院議員に意外な善戦を許しつつも7月の党大会での勝利に必要な代議員数の7割以上をすでに獲得、候補者に指名されることがほぼ確実視されている。

一方、共和党では過激な暴言の数々で存在感を増す大富豪のドナルド・トランプ氏が指名獲得レースの先頭を走っており、7月の党大会までに指名獲得に必要な代議員を確保できるかは微妙だが、現時点ではその可能性が最も高い位置にいる。

このような状況を受け、「米大統領選がドル円相場に与える影響」についてのマーケット・トークが活性化している。まだ予備選の段階であれこれ考えるのは時期尚早との意見もあるが、今のうちから頭の体操を行っておくのは、決して無駄にならないだろう。以下、現時点における筆者の見解を示しておきたい。

<米政治めぐる霧が晴れるまでドル円の重しに>

米大統領選がドル円相場に与える影響を考察するに際しては、選挙の期間中と結果判明後に分けて考える必要がある。

まず選挙期間中については、いったい誰が米国の次期大統領になるのかが分からないため、新政権発足後の政策運営も読み切れない。米大統領選は4年に一度開催される「世界最大の政治ショー」だが、市場関係者は、結果の読めない不透明な状態を最も嫌う。

特に、ドル円ファンは「米国の政治ネタ」に対して非常に敏感だ。米大統領選をめぐるモヤモヤ感が晴れない間は、そのこと自体がドル円相場の心理的な重しになりやすい。

実際、民主・共和両党の最有力候補と見られているクリントン氏とトランプ氏が、いずれも選挙キャンペーン中に米地方紙に寄せたコラムや演説で「中国と日本が米国の国益を損なう通貨安誘導を行っている」という著しい事実誤認を露呈している。今後も同様の発言が反復されるリスクに対し、市場はしばらく神経質にならざるを得ないだろう。

前回のコラムで指摘したように、2月上中旬の円高ショックでドル円相場はすぐに上昇トレンドに復帰するのがほぼ絶望的な深手を負った。筆者がトレンド判断の際に重視している52週移動平均線は現在明確な下向きに転じており、当面のドル円相場は「米大統領選絡みのモヤモヤ感」なども口実に、上値の重い展開が続きそうだ。

ただ、11月に米大統領選が決着し、来年1月20日に新政権が発足する頃になれば、ドル円相場は次第に「日米金融政策の印象格差」というファンダメンタルズ睨(にら)みの色彩を取り戻すだろう。日銀が実施している異常な金融緩和はその頃も続いている可能性が高いため、米国で緩やかな景気回復基調が崩れていなければ、やがては米国の利上げ観測に立脚したドル高・円安ストーリーの信奉者が再び増えてくると思われるからだ。

もちろん、過激な主張を繰り返すトランプ氏が大統領になった場合は、彼の選挙キャンペーンで「口撃」の対象となっているメキシコ、中国、日本、イスラム圏諸国の金融・為替市場が極度の不安を強いられるほか、米国の重要施策があらゆる分野で迷走しそうなため、「リスクオフの円高局面」が長期化する可能性はある。

ただ、良識のある米国民がそのような人物を次のホワイトハウスの主として迎える可能性は低い。恐らく本選挙で勝つのはクリントン氏になるだろう。

11月の本選挙でクリントン大統領の誕生がほぼ確定した場合、初期反応としては同氏が米中西部の地方紙に寄せていたコラムが蒸し返され、一時的に円高気味の市場解釈が広がる可能性はある。だが、当該コラムはかつて日本の製造業を激しく敵視していた風潮が残る地域の票獲得を狙った一時的かつ政治的な方便である可能性が高い。

ヒラリー氏の地元に本社があるニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルにも同様の見解が示された場合は、そのような考え方を改める必要が出てくるかもしれないが、古今東西、「君子豹変」は政治家の日常だ。「大統領候補」としての言動と「現職大統領」としての言動は相当違ってくるのではなかろうか。

米国の新政権が市場で決まる為替変動を尊重する姿勢を示すようになれば、ドル円相場は政治的ノイズから解放されるだろう。米国景気の回復基調が続く限り、「金融政策の正常化をゆっくり進める米国」と「出口の見えない異常な金融緩和を続ける日本」の違いが再び市場で重視されるようになり、ドル円相場は安定感を増してきそうだ。

<米為替政策のキーパーソンは大統領より財務長官>

ただし、米国の新政権が本当に市場メカニズム重視の為替政策を採用してくるか否かを確認するに際し、絶対に確認しないといけないチェックポイントが1つだけある。それは、次期大統領が指名権を行使する財務長官人事だ。

米為替政策の歴史を振り返ると、大統領自身が直接的に関与していた痕跡は薄く、具体的な戦略の策定及び運用は財務長官に委ねられることが多かった。実際、米為替政策が同じ大統領の任期中に180度変わった事例が戦後2回ある。

1980年代に2期8年続いた共和党のロナルド・レーガン政権時、最初にドナルド・リーガン氏が財務長官だった間は「ストロング・ダラー、ストロング・アメリカ」をキャッチフレーズにしたドル高政策が採用されたものの、その後、ジェームズ・ベーカー氏が財務長官に就任した途端に「プラザ合意」でG5諸国を巻き込んだ大幅なドルの切り下げが断行された。

一方、90年代に同じく2期8年続いた民主党のビル・クリントン政権時は、最初にロイド・ベンツェン氏が財務長官だった間こそ、通商交渉で日本に市場開放圧力をかける道具として円高攻撃を仕掛けられたが、同氏の辞任後にロバート・ルービン氏が財務長官に就任した途端に市場関係者に「マントラ(呪文)」と揶揄されるほど「強いドルは米国の国益である」と言い続け、大幅なドル高が進んだこともあった。

このため、今秋の大統領選で「ヒラリー・クリントン政権の発足」が決まった場合でも、その後に決まる財務長官人事を睨んで、米為替政策に対する市場の印象が変わる可能性は残される。バラク・オバマ政権で国務長官の要職まで務めた同氏の経歴なども加味すると、極東アジアで米国にとって最も重要な同盟国である日本に対する通商・為替政策のスタンスは「正確な現状認識に基づく現実路線」に豹変することを期待したいところだ。

ただ、現時点ではまだ米国の次期大統領すら決まっていないため、次の財務長官人事まで読むのは無理だ。米新政権の為替政策をめぐる「詮索トーク」を煮詰めていくのは、現時点ではやはり情報不足であり、「頭の体操」にも限界がある。今秋以降のドル円を読む上で、必須のチェックポイントであるとの認識を踏まえた上で、現時点では米大統領選の展開をしっかりフォロー、「米国の民意」を見極めることに専念したい。

*植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら) 
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-daisaku-ueno-idJPKCN0WW1UM


 

田嶋智太郎の外国為替攻略法
2016年03月30日
当面は米国の賃金と消費者物価の伸びに要注目!

筆者は、明日(31日)の20:00よりマネックス証券オンラインセミナー「4月の為替相場展望」の講師を務めさせていただきます。前回(2月23日)と前々回(1月28日)のセミナーでも繰り返し述べたのですが、以前から筆者は米国経済の成長度合いについて「年前半は非常に緩慢に見えるものの年後半からは一気に加速しはじめる」と考えています。

少なくとも、現時点における米国経済の成長度合いが多くの人々の目に「非常に緩慢」と映っていることは間違いなさそうですし、これまで実際に発表された経済指標・景気データの多くもそのことを裏付けています。たとえば、下図に見られるPCEコア・デフレーターという指数の推移を見ても、少しずつ水準が切り上がる傾向にはあるものの、遠目に見れば「ほぼ横ばい」と言えなくもない状況に今はあります。

このPCE(個人消費支出)コア・デフレーターは個人消費の物価動向を示す指標で、個人消費のうち変動の大きい食品・エネルギーを除いたものです。米連邦準備理事会(FRB)の物価判断基準において最も重要視される指標であり、FRBは同指数が2%にまで切り上がることを目標にしているとされます。その意味では「徐々に目標水準に近づいてきている」と見ることもできますし、逆に言えば「もう一歩足りない」ということにもなります。つまり、成長は続いているけれども、その度合いは非常に緩慢であるということです。

実際、米商務省が一昨日(28日)、2月のPCEコア・デフレーターが前年同月比で1.7%上昇したと発表した後、市場は一旦ドル売りで反応しました。市場予想の中心であった1.8%を下回ったことや、この程度の水準ではFRBが利上げ判断を急ぐことにはつながらないと市場が見做したことなどがドル売り材料とされた模様です。

振り返れば、昨年までPCEコア・デフレーターは長らく伸び率が1%台前半に留まっていたわけであり、ここにきて1%台後半での推移が続いていることは大いに評価されていいものと思われます。最近の雇用回復に伴う賃金の上昇によってサービス物価などが上向いていることが同指数を緩やかな上昇に向かわせていると考えることができ、今後一段の上昇が十分に見込めるものと思われます。

実際、下図中に示したもう一つのデータ「平均時給の推移」は右肩上がりの伸びを続けており、いま米国では水面下で沸々と人々の消費マインドが盛り上がりはじめているように思われます。あと「もう一歩」でそれが実際の消費行動に結びつき、結果として個人消費の物価動向を一段と押し上げる段階が訪れることでしょうし、それが年後半以降、米国経済の成長度合いをグンと押し上げるものと筆者は想定しています。

20160330_tajima_graph01.jpg

その一方で、景気の後追いとなることが「宿命」である金融政策(=追加利上げ)の出番は、想定以上に先延ばしされることとなる可能性が濃厚です。その実、昨日(29日)行われたイエレンFRB議長の講演は、市場関係者の多くが想定していた以上にハト派な内容となりました。このところ複数の米地区連銀総裁によるタカ派な発言が相次いでいたことによって戻り歩調にあったドルは、議長の発言で急落することと相成りました。

こうした場面で過度に大きな痛手を負わないために、今後も米国における賃金の上昇度合いや、それを反映して動く個人消費の物価動向などを丹念にチェックし続けて行くことは非常に重要であると思われます。差し当たっては、今週末1日に発表される3月の米雇用統計では「平均時給」の伸びに注目したいところです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役

前の記事:あらためてドル/円の下値の目安を想定してみる −2016年03月23日
http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2016/03/30.html

 

Business | 2016年 03月 31日 13:43 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
国債買い入れ、財政ファイナンスと誤解される恐れない=日銀総裁

[東京 31日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は31日午後の参院財政金融委員会で、大規模な国債買い入れの狙いは2%の物価安定目標を早期に達成するためであり、「財政ファイナンスと誤解されるおそれはない」との認識を示した。小池晃委員(共産)への答弁。

そのうえで総裁は、市場に十分に理解してもらえるよう、常に説明を心がけたい、と語った。

(伊藤純夫)
http://jp.reuters.com/article/boj-jgbpurchase-idJPKCN0WX09U


 

現在の政策に量的限界や乗り越えられない壁はない=日銀総裁

[東京 31日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は31日の参議院財政金融委員会に出席し、現在の金融政策に「量的な限界や乗り越えられない壁はない」と述べた。

大塚耕平委員(民進)への答弁。

黒田総裁は、金融緩和の手段に限界はないとの従来の主張についても「私の考えは変わらない」と述べた。

また、黒田総裁は「デフレやデフレスパイラルの定義はいろいろある」と指摘したうえで、日銀は政府のようにデフレ脱却の定義を政策委員会で決めていないが、2%の物価目標の早期達成を目指して現行のマイナス金利付きの大規模な金融緩和を進める考えに変わりはないことを強調した。

(竹本能文 編集:吉瀬邦彦)
http://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-policy-idJPKCN0WX07V


バーゼル委の金利リスク規制、「監督対応」で大筋合意=関係筋

Business | 2016年 03月 31日 00:20 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス


[東京 31日 ロイター] - バーゼル銀行監督委員会(バーゼル委)は、銀行が抱える国債や長期貸出金などの金利リスクに対する規制について、従来通り各国による「監督対応」とすることで大筋合意した。規制の詳細を詰めて4月にも最終案として発表する。複数の関係筋が30日、明らかにした。

バーゼル委は昨年発表した市中協議案で、銀行の金利リスクに対する規制案について、1)資本の積み増しを求める新たな規制、2)各国の金融当局による監督対応──の両論併記とし、どちらを導入するのか議論を進めてきた。

銀行の金利リスクは、金利の上下によってどれだけ損失を被るかで計られる。国債のほか、長期の貸出金となるプロジェクトファイナンスや住宅ローンなどはリスクが高くなる。

複数の関係筋によると、バーゼル委は3月の会合で、従来通りの監督対応とする方針で大筋合意した。各銀行はこれまで通り金利リスク量を開示するが、これまでは銀行ごとに異なっていたリスク計測の手法を一定程度統一化することにし、一段の透明性を図る。計算手法の統一化により、銀行同士の金利リスクの比較が可能になり、リスク管理力が高まると判断した。

また、現行の規制では、金利リスク量が自己資本の20%超える金融機関(アウトライヤー銀行)に対して監督を厳しくする仕組みになっているが、この水準をどのように設定するかなどの規制の詳細を詰めて、4月の会合で最終案を決定し、公表する。

バーゼル委は、世界的に低金利環境が続く中、将来の金利上昇リスクが高まっているとの認識を強め、より厳格に銀行の金利リスクを捕捉する必要があるとして議論を進めてきた。

関係筋によると、自己資本積み増しによる対応を主張してきたのは、ドイツ、英国、スイス、オランダなどだ。これらの国の金融システムは健全性が相対的に高いが、ギリシャなどユーロ圏の周辺国で国債利回りが急上昇した経緯を踏まえ、将来の金利変動に備える必要性を痛感していたという。

一方、日本や米国は、国や銀行によって金利リスクの性質が異なるため、一律に資本賦課を義務化することに反対を表明していた。規制強化により、銀行の融資行動を委縮させるリスクも懸念されていた。

資本増強を求める規制が導入された場合には、邦銀はこれまで注力してきた海外でのプロジェクトファイナンスなど長期の貸出金や、国債保有にも影響が出かねないとの懸念が、金融関係者や当局関係者から出ていた。

(布施太郎 伊藤純夫 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/basel-rate-risk-regs-idJPKCN0WW1SS

 

大槻 奈那「金融テーマ解説」

チーフ・アナリスト 大槻奈那が、毎回、旬な金融市場のトピックについて解説します。市場の流れをいち早く把握し、味方につけたいあなたに、金融の「今」をお伝えします。
プロフィール
2016年03月29日

金融規制の方針転換発表〜余剰資金1,000兆円の行方に注目

3月24日、金融規制に新たな動きがあった。
世界の金融規制を決めるバーゼル委員会(BIS)が、高度なリスク計算手法の利用を制限し、格付機関の格付に準拠するよう求めるという、いわば「先祖返り」的な規制強化案を発表したのである。

現段階では市場参加者に意見を募る「市中協議案」の初期段階であり、かつ、中には規制が緩くなる項目も入っているため、銀行株価への影響は限定的となっている

むしろ問題は、実体経済や市場への影響であろう。世界のマネーの方向性を決める大きな要素は「金融政策」と「金融規制」であるが、緩和に傾く政策に対し、今回の規制方針は、金融機関のリスクテイクに冷や水を浴びせかねない。特に邦銀の場合、消費増税延期の行方次第では、国や金融機関の格付けが引き下げられる懸念があり、格付機関への依存を高める本案の影響を受けやすい。

一方、緩和マネーが世界中にあふれている状態では、規制が厳しくなればなるほど、規制が相対的に緩めの、ごく狭い分野の運用先に過度な資金が集中することもある。中長期的には、局所的な"バブル"も誘発しうるという点も念頭に置いておきたい。

邦銀と米銀の合計余剰資金は過去5年で4倍、1000兆円規模に

現在、銀行の余剰資金、即ち貸出に回されていない預金の量は日米合計で1,000兆円にも上り、このうち600兆円が中央銀行などの預金に滞留している(図表1、2、注参照)。過去5年間で、余剰資金は4.1倍に、中央銀行などへの預け金は2.2倍に膨らんでいる。米国の余剰資金は、金利引き上げで減少する可能性もあるが、日本は依然増加傾向にあることから、引き続き世界の余剰資金は高水準に留まるとみられる。

これらの史上最大級に膨れ上がった金融機関の余剰資金はどこに向かい、どこで目詰まりを起こしうるのかを次項以降で考えたい。

金融規制の経緯:従来は、計算技術を磨く大銀行に有利だったが・・・

BISが決定した金融機関の資本比率の規制は、1993年に実施された。資本比率の計算式は以来一貫して「資本÷リスクアセット」とされているが、その計算手法は大きく変化している。

計算式の分母に当たるリスクアセットとは、各銀行のすべての資産を種類ごとに分け、それぞれのリスクに応じた掛け目を掛けて合計したものである。例えば、100億円の貸出を行った場合、損失が発生するリスクが20%と低ければ20億円、120%と高ければ120億円が、分母に加算され、金融機関はこの額に応じた資本を積まなければならない。この例では、同じ金額を貸しても必要な資本は6倍違うことになる。

図表3の通り、規制導入当初は、BISが決めた同一の掛け目を世界中の銀行で用いてリスクアセットが計算されていた。その後2004年に、格付機関の格付を用いる「標準的手法」か、または、高度な手法を開発し、各銀行独自の信用格付けを用いることが容認された。銀行独自の計算は、「内部格付手法」(IRB= Internal-Rating Based approach)と称される。高度化のインセンティブを付けるため、「内部格付手法」を取ると、リスク資産を削減できるように設計された。

バーゼルU導入を機に、主要国の銀行は計算技術を磨き、リスクアセットの圧縮に動いた。図表4は、銀行の総資産をリスクアセットで割った数値の推移である。この値が低ければ低いほど、会計上の資産に対してリスク量が低く計算されていることになる。邦銀は、過去ほぼ一貫して低下しているのがわかる。この低下の一部は、現在信用リスクがゼロで計算されている国債が増えためである。しかしこの影響を除いていても、高度な「内部格付手法」の活用等で、リスクアセットは1〜2割圧縮されたと思われる。なお、米銀は、そのような手法の高度化をあまり行わず、近年は、投融資リスクを取り始めたことから、リスク掛け目が上昇している。

バーゼルV導入後も、特に邦銀ではリスク手法高度化のメリットを享受してきた。しかし、高度化が進めば進むほど、複雑化し、銀行間の横比較がしにくくなってきた。このため数年前から、資本計算を「シンプルにするべき」という意見が出始めた。

そこで提案されたのが今回の変更案である。前掲図表3の通り、金融機関取引、大企業融資、プロジェクト・ファイナンスや事業用不動産融資、株式などについては、銀行の内部格付手法を認めず、格付機関の格付けに沿った掛け目を用いることとされた。過去10年余り容認されてきた「内部格付手法」を一部でも禁止したことは、大きな方向転換である。
(なお、今回の変更案以外にも、「標準的手法」自体の見直しも12月に発表されており、株式、住宅ローン等の掛け目が厳格化されている。)

影響度:株式、海外貸出、事業用不動産融資等に逆風

これらの変更案が採用された場合の影響度はどの程度になるか。一定の開示がある株式と金融機関向け与信だけを取っても、リスクアセットが8.5%増加する計算である(図表5)。今の資本比率を維持するには、年間純利益の8割に当る2.4兆円の資本が追加で必要になる計算となる。但し、冒頭触れたように、その他の緩和点もあるため、これだけで、金融機関が財務的に苦しくなるわけではない。

より注目すべき点は、銀行の資産運用方針への影響である。一部資産については、リスク掛け目が上がれば投資妙味が薄れ、運用方針の見直しが迫られるかもしれない。

このような資産として第一に注目されるのは株式運用である。マイナス金利下で有力な運用先と考えられる高配当株だが、リスク掛け目が、現在の約140%から250%へ、1.8倍に膨らんでしまうので、同じリスク・リターンを得るには、配当等の総リターンが1.8倍以上高い株式を探す必要がある。

第二に、大企業向け貸出へのマイナス影響が懸念される。例えば、銀行のメイン先大企業が赤字を計上したとする。現在は、ヒアリング等を経たメイン行が、融資を続ければ倒産はあり得ないと判断した場合、独自計算のリスク評価を据え置くこともできる。しかし新規制の下では、大企業貸出のリスク掛け目は格付機関の格付けに基づいて決まる。外部格付では日本特有のメイン行の支援はそこまで考慮されない。このため、大企業の業績が悪化した際には、格付機関の格下げで、銀行が支援しにくくなるといったケースが発生しうる。

第三に、資源・エネルギー関連与信も問題がある。プロジェクト・ファイナンスのリスク掛け目が上昇することから、来期以降満期が増加した際に、再貸しがしにくくなる可能性がある。

更に、マイナス金利でインターバンク市場の収縮が懸念される中、規制が追い打ちをかける可能性がある。為替スワップ等についても、相手行のリスク算出が厳格化される見通しで、海外投融資に逆風である。特に邦銀の場合、前述の通り、格下げリスクがあるため、格付機関への依存を高める本案の影響を受けやすいと考えられる。

巨額の余剰資金はどこに流れやすいのか

このような環境下で消去法的に残る運用先は、現時点では超長期債が筆頭格であろう。しかし、これも、現在「自国の国債の信用リスクを 'ゼロ' に放置するべきか否か」という、金融規制最大の難問が話し合われている最中であり、中長期的には大きな不確実性を抱えている。

だとすると、金融機関が積極化しやすいと考えられるのは、例えば、高格付の国内社債、地方債、中小企業融資など、今回の規制上の取り扱いが比較的緩く、安定的な分野である。株式については、一定の投資は続くと思われるが、今回の規制が施行された場合、これまで以上に選別的にならざるを得ないだろう。

規制実施までには間があるので、ハイリスク市場への規制影響が表面化するまでには時間がかかると思われるが、中期的には、資金の集まりそうな債券関連商品への投資(公社債投信等)にも注目したい。

(※)印刷用PDFはこちらよりダウンロードいただけます。
https://info.monex.co.jp/report/financial-market/index.html

 

アングル:豪ドル、「やや先走り」の上昇に反転リスク
Business | 2016年 03月 31日 11:52 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス

 
[シドニー 31日 ロイター] - 豪ドルは3月に対米ドルで主要通貨を軒並み上回る上昇を記録したが、「やや先走り」の感もあり、投資家心理の反転に最も影響を受けやすい通貨の1つとなっている。

3月の豪ドルの対米ドル相場AUD=D4は7%近い上昇となり、1豪ドル=0.76米ドルに達した。単月では4年超ぶりの大幅な値上がりだ。貿易加重平均でみた豪ドル指数(TWI)=AUDの上昇は3%超と、2012年以来の大きさで、現状は64.0となっている。

対照的に英国ポンド、カナダドル、ニュージーランドドルは米ドルに対し3─4%の上昇にとどまっている。

ひときわ目立つ豪ドルの上昇は、米ドル相場の下落や、好調なオーストラリアの経済ファンダメンタルズ、さらには同国にとって最大輸出品目である鉄鉱石など商品市況の反発の動きを反映したものだ。

米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、2014年後半以降は圧倒的に豪ドルに対して弱気だった投機筋は、今年2月中旬に買い越しに転じた。

AMPキャピタルの投資戦略責任者シェーン・オリバー氏は「売りポジションが極めて大きい時に、豪ドルに関する一連のニュースが豪ドルを支援する内容に変わった。買戻しが進み、売り持ちが買い持ちに転じるという真逆の方向に市場は向かっており、0.80米ドルを目指すとの見方も出ている」と語った。

しかしこれは、とりわけ豪ドルが反撃にもろいことをも意味している、とオリバー氏は指摘する。同氏は今後1年間に豪ドルが0.60米ドルまで下落すると見ている。

アビバ・インベスターズのマルチ・ストラテジー・ターゲット・リターン・ファンドとターゲット・インカム・ファンド部門でポートフォリオマネージャーを務めるイアン・パイザー氏によれば、対米ドルでの豪ドルの売り持ちが最も好ましいトレード。

仮に米連邦準備理事会(FRB)が慎重に利上げを進めるとしても、オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)には豪ドル相場を低めに維持する理由があるからだという。

実際、イエレン氏が今週非常にハト派なスタンスを取ったことで米ドルが売られ、RBAは一段の圧力を受けている。

フィリップ・ロウ副総裁は今月、「ほぼ全ての中央銀行は通貨安を好む。それを公然と口にするところもあれば、言葉を濁すところもある」と語った。

スティーブンス総裁も前週、為替は「やや先走りしている」と述べた。

キャピタル・エコノミクスの豪州およびニュージーランド担当エコノミスト、ポール・デールズ氏は、豪ドルが0.80米ドルまで上昇した場合、RBAは発言のトーンを強めると予想する。

さらにデールズ氏は「もしくは通貨戦争で負け組に入るのを避けるために、追加の利下げが必要かどうかを真剣に検討する」と語った。

日本銀行と欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利を導入しているため、オーストラリアの2%という政策金利は天文学的な数字に見える。RBAは、こうした状況を是正するため、今後1─2カ月間の間に金融緩和策を実施する可能性もある。

(Ian Chua記者)
http://jp.reuters.com/article/australian-dollar-idJPKCN0WX05C

消費増税は延期されるのか!?(大前研一)
【日本】消費増税は延期されるのか!?

 政府は16日、国際金融経済分析会合の初会合を開き、その中で講師役の、ノーベル経済学賞を受賞しているジョセフ・スティグリッツ氏が、消費税は総需要を増加させるものではないので、今のタイミングで引き上げるのは適切ではないと指摘しました。一方、安倍首相は18日の参院予算委員会で、世界経済に不透明感が増しているとの認識を示すとともに、「経済状況を注意深く見ていきたい、経済が失速しては元も子もなくなる」と述べ、2017年4月の消費税率引き上げ再延期に含みをもたせました。

 これは非常に卑怯なやり方で、ノーベル賞受賞者や、もともとの応援団のような人たちも呼んで、世界経済について意見を聞きましょうとやっているのです。そして、わざわざ世界経済について語ったはずのスティグリッツ氏までが、消費税を上げるのは今は適切ではないという話をしているのです。ノーベル賞をもらったような人がストライクゾーンに球を入れるようなことをしたわけです。飛行機代を誰が出したかにもよるのでしょうが、非常にみっともないやり方です。

 それよりもさらに、出だしで黒田日銀総裁が、「不可思議なことがあります、質問していいですか」と言って、「金融政策を打っても賃上げが遅いのはどういうことでしょうか」と尋ねているのです。中央銀行の総裁が、金融政策について思ったほど効果が出ていないのはなぜでしょうかなどと聞いているのです。市中引き回しの刑だというくらい罪の重い質問でした。スティグリッツ氏がなんと言おうと、自分はこのやり方を信じているというくらいでないといけないのです。

 また、安倍首相の言い方にも驚きます。経済が失速しては元も子もないと言っていますが当たり前のことです。親の恩はありがたいという言葉と同じで、当たり前すぎてなんの意味もない言葉です。ただ、安倍首相は最近まではそうは言っていませんでした。リーマンショッククラスのことが起こった場合は別として、と言っていたのですが、今回は経済が失速しては元も子もないと言い、消費税増税は延期しますと持って行きたいのです。この経済の失速は原則として過去形になっていなくてもいいのです。失速していなくても、失速するのが恐ろしいからと言えるのです。そうならば最初からそんな約束はしなければよかったのです。ダブル選挙に向けての見え見えの作戦だと言えます。

 しかし、タブル選挙については非常にタイミングが悪いのです。7月に参議院の選挙をせざるを得ないわけですが、本当は8月にしたいのです。安倍首相は今回、対抗馬がいないので総裁選に受かるとして、改選された場合、オリンピックまでもつのです。2020年8月がオリンピックなので、その開会の総理を務めるためには、どうしても選挙を8月にしたいのです。つまり、目的は幾つかあり、一つは三分の二を取りながらダブル選挙することです。まず参議院選で勝つ、という目標はどこかへ行ってしまい、ダブル選挙にして、公明党と大阪維新とでどちらも三分の二以上を取ってしまおうということなのです。

 そしてもう一つは、オリンピックの時の開会を宣言する首相になりたいという目的ですが、その場合選挙は8月にしなくてはならず、ダブル選挙はできなくなります。参議院選は3年と決まっているのでどういう理由が見つかるかわかりませんが、何か技術的に、ダブル選挙に持ち込む理由を探ろうと苦悶しているのです。だから歯切れも悪いのです。元も子もないといろいろ言いながら、基本的には約束していた消費税増税は延期します、そんな悪い人間なので裁いてくださいと選挙に臨むわけです。しかし増税延期でもって裁いたら、民衆は拍手を送るに決まっています。方法としては、参議院を先にやっておいて、余韻のある間に衆議院もやる、ダブル選挙だが一、二ヶ月ずらして行うとか、いわゆる小手先の議論に入ってしまっています。

 このように外国の専門家を呼び、周辺を固め、世界の賢人に聞きましたところ、これはやめろということでしたと話を持って行きたいのです。実に見え見えの演技で、歌舞伎などで唸っている間にくるくると回って江戸に到着してしまったという演出と同じ感じです。また、それについて、批判もなく垂れ流ししている新聞も恐ろしいものがあると思います。

【日本】米利上げ鈍化観測→ドル安加速→原油40ドル台回復
http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/backnumber/20160330-2/ 

 日経新聞は19日、「マネーの流れ急変」と題する記事を掲載しました。これは、アメリカの利上げ観測の後退でドルの実効為替レートは4ヶ月ぶりの水準に下がる一方、ドル建てで取引するアメリカ原油は1バレル40ドルと、3ヶ月ぶりの高値になったと紹介しています。株式市場ではロシアなど資源国に資金が戻る一方で、円高を背景に日本では売り圧力が強まっており、二極化が鮮明としています。

 WTI原油先物の推移を見ると、戻ったと言ってもほんの少しであることがわかります。一時は140ドルなどという水準の時もありましたが、今は40ドルとなっています。このレベルだとまだほとんどの産油国は苦しいわけです。

 一方ドル円の推移を見ると、円高が進んでいます。輸出企業は70円台も経験しているのでまだ大丈夫だと思いますが、安倍政権になってから円安に振れたので、安心していたところだったと思います。しかし、実は今年の秋の先物は103円までいっていて、110円台というレベルではないのです。輸出企業にとっては厳しくなると言えます。

 輸出企業は超円高の時には海外の、米ドルに近いような通貨のところで生産して持って行ったり、直接アメリカでの生産を増やすということをするしかないのです。当たり前のことですが、できるだけ生産性を上げることも重要です。実際どちらに振れるかはわかりませんが、秋には103円というのが今のところの予測です。アメリカの方は腰がフラフラしていましたが、利上げを後4回と言っていたのを2回としてきているので、かなり腰が引けてきていることは間違いないようです。

 悪いことばかりではなく良いこととしては、産油国が少し元気になってきて、そちらにお金が戻り、アメリカ一極集中ということではなくなりそうだということで、これはメリットの一つです。輸出企業は少なくとも100円程度を想定しながら準備しておく必要があるでしょう。想定レートを115円程度にしている企業が多いので、結構大変だろうと思います。

講師紹介


ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 学長
大前 研一
3月20日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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その他の記事を読む
方向感がない金価格と原油価格(近藤雅世)
http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/backnumber/20160330-2/ 


グロース氏、競合ファンドの約90%を打ち破る−移籍後最高の成績
John Gittelsohn
2016年3月31日 14:50 JST

ジャナス・キャピタル・グループのビル・グロース氏は1−3月期、「ジャナス・グローバル・アンコンストレインド・ボンド・ファンド」の運用を引き継いで以来、四半期ベースで自身最高の運用成績を上げている。
  同ファンドのリターンは今年に入ってプラス約2%で、投信調査会社モーニングスターが調査対象とする同種ファンドの運用成績上位11%に入った。ミューチュアルファンド運用者にとって3カ月という期間は成績を評価するには短いが、グロース氏は幸先の良いスタートだとの認識を示した。
  同氏は2014年9月にパシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)を退社した後、ジャナスに移籍した。
  
  グロース氏は他の運用者が避けた新興市場の証券やスワップの活用で、他を上回るパフォーマンスを記録した。ジャナスのウェブサイトによると、2月29日時点でジャナス・グローバル・アンコンストレインド・ボンド・ファンドの資産の36%が新興市場資産で、その大半は中南米となっている。
 
原題:Gross’s Janus Fund Capping Its Best Quarter Since He Took Charge(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-31/O4VYJX6KLVR801


中国の格付け見通し「ネガティブ」に、改革遅れ見込む−S&P
Malcolm Scott
2016年3月31日 18:07 JST 更新日時 2016年3月31日 19:14 JST

格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ (S&P)は中国の信用格付け見通しを「ネガティブ(弱含み)」と、 従来の「ステーブル(安定的)」から引き下げた。中国の経済リバラン スの進み方がS&Pの想定より遅くなるとの見通しが理由。
同時に、長期格付け「AA−」と短期の「A−1+」を確認した。
S&Pは発表資料で、「中国政府の信用力に対する経済的および財 政面でのリスクが徐々に高まるとの予想を反映させ、見通しを変更し た」と説明。「中国が向こう5年に、経済のリバランスと与信拡大ペー ス減速で緩やかな進展しか示さないとの当社の見込みに起因するもの だ」と解説した。
S&Pは中国の今後3年の成長率について、年6%以上を維持する と予想。その上で、投資水準がS&Pが持続可能と判断する国内総生産 (GDP)の30―35%を大きく上回る可能性があるとの見方を示した。
「当社の見解では、予想されるこのようなトレンドは中国経済の衝 撃に対する耐久性を弱め、政策の選択肢を狭めるほか、潜在成長率がよ り急激に落ち込む確率を高めることがあり得る」と分析した。
S&Pによれば、中国が成長率を6.5%以上で安定させるために与 信を名目GDPの伸びよりも「はるかに速いペースで」拡大させる可能 性が高まったと同社が判断した場合は格下げにつながり、与信拡大が経 済成長と同程度のペースに減速すれば格付けは安定するという。
(詳細を追加します)
原題:China Rating Outlook Cut to Negative From Stable by S&P (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-31/O4WBP16KLVRL01


ユーロ圏:3月インフレ率はマイナス0.1%−2カ月連続の物価下落
Marcus Bensasson
2016年3月31日 18:27 JST 更新日時 2016年3月31日 19:36 JST

ユーロ圏では3月に消費者物価が下落し、2カ月連続でインフレ率がマイナスとなった。欧州中央銀行(ECB)はデフレ回避に向けて追加刺激策を4月から実施する。
  欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が31日発表したユーロ圏の3月の消費者物価指数(CPI)速報値は前年同月比0.1%低下し、ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査の中央値と一致した。2月のインフレ率はマイナス0.2%だった。
  価格変動の大きいエネルギーなどを除いた3月のコアインフレ率は1%と、前月の0.8%を上回った。
  ウニクレディト(ミラノ)のユーロ圏担当チーフエコノミスト、マルコ・バリ氏は「エネルギーがインフレ率に大きな下押し圧力を加えている」とし、「金融政策で全てを解決することはできないが、基本的に当面は唯一の策だ。これが現状で、向こう数カ月にさらなる衝撃があった場合、おそらく同様となるだろう」と述べた。
  ECBは4月1日から月間の資産購入額を800億ユーロとし、これまでの600億ユーロから拡大する。これはドラギ総裁が今月発表した追加利下げなど新たな政策パッケージの一環。ユーロ圏のインフレ率は2013年以来、ECBが目安とする2%弱を下回る水準にとどまっており、原油安による物価下落の影響を打ち消すほどの景気回復を果たせていない。
原題:Euro-Area Prices Drop for Second Month Before ECB Beefs Up QE(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-31/O4WC6A6S972L01

ウォール街、高リスクローンの始末に苦戦−チャート
Claire Boston
2016年3月31日 15:54 JST

高リスクの企業向け融資があまりにも不人気になったため、今年販売されたこうしたローン、230億ドル(約2兆5800億円)余りについて銀行は利回りを引き上げざるを得なかった。企業買収のための融資であるレバレッジドローンは厳しい環境に直面している。巨額債務を抱える企業について投資家が警戒を深めているためだ。ハードディスク駆動装置(HDD)メーカーの米ウエスタンデジタルは米サンディスク買収のためのローンで利回り上乗せを受け入れた。
原題:Offloading Junk Loans Is Getting Harder for Wall Street: Chart(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-31/O4W4IC6KLVRQ01


投資家が金連動型ETFに殺到、資金流入は09年以来最大−チャート
Luzi Ann Javier
2016年3月31日 12:38 JST

  金連動型上場投資信託(ETF)の2大ファンド「SPDRゴールド・シェアーズ」と「iシェアーズ・ゴールド・トラスト」への1−3月(第1四半期)の資金流入が、2009年以来最大となっている。金相場は16%上昇と、四半期としては1986年以来最大の上げ。米連邦準備制度当局がハト派的な姿勢を強めたことがドルの重しとなったほか、7兆ドル(約790兆円)を超えるソブリン債がマイナス利回りとなっていることが背景。
原題: Investors Pile Into Gold ETFs at Fastest Pace Since 2009: Chart
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-31/O4VTR86JTSF301

米経済のけん引役はミレニアル世代と低所得者層
ENLARGE
クレイ マーブックス&アフターワーズ・カフェ店内の買い物客(ワシントン) PHOTO: BETH J. HARPAZ/ASSOCIATED PRESS
By
ERIC MORATH
2016 年 3 月 30 日 14:59 JST
 米経済は昨年末、個人消費が大きく伸びたおかげでマイナス成長を免れた。個人消費をけん引したのは富裕層ではなく、低所得者層とミレニアル世代(18〜34歳)だった。
 JPモルガン・チェース・インスティテュートは全米15都市圏の顧客5000万人超を対象にデビットカードとクレジットカードの毎月の利用額(約140億ドル)を集計し、個人消費の一つの目安となる指標「米国消費者取引インデックス(LCCI)」を算出しているが、29日発表のLCCIリポートによると、2015年12月のLCCIは前年同月比2.3%上昇し、原動力となったのは若年層と低所得者層だった。10月と11月もこれらの層がけん引役を務めた。
 米商務省が25日公表した15年10-12月期の国内総生産(GDP)確報値では、個人消費の伸びがGDP成長率を上回り、設備投資と輸出入のGDP押し下げ分を相殺した。
 JPモルガンのデータによると、12月のLCCIの伸び率(2.3%)に対し、25歳未満の寄与度は約1ポイントで、35歳未満で区切ると1.9ポイントに達した。一方、55歳以上の伸びは1年前を下回った。
 所得階層別では、最も所得の低い層(多くは若年層)がLCCIの伸びを主導した。寄与度は下位20%が1.25ポイント、上位20%がマイナス0.43ポイントだった。
 同社のダイアナ・ファレル最高経営責任者(CEO)は「下位20%の消費者が大きく貢献した。彼らの利用額は全体の20%に届かないのが一般的だ」と述べた。
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米15都市圏における個人消費の前年比伸び率に対する年齢別寄与度(単位:ポイント)
 12月は下位20%が利用額全体に占める割合は13.8%だったが、前年同月比で10%近く増えた。同様に、人口の9.4%を占める25歳未満の利用額は全体の6.9%だったが、前年同月比の伸び率は16%に達した。
 ファレル氏は二つの要因が関与している可能性が高いと指摘した。
 ガソリンを除き、医療費や自動車修理費など多くの生活必需品が値上がりしている。裁量の余地がほとんどない低所得者層は支出を増やさざるを得なかった。
 だがその一方で、雇用の伸びは引き続き安定しており、賃金も小幅ながら上向きつつある。これは所得ぎりぎりの暮らしをしている消費者の後押しとなるはずだ。JPモルガンのデータもこれを裏付けている。ぜいたくなお金の使い方の典型とも言えるレストランでのカード利用額は昨年を通して増加傾向にあった。病院の診察代、娯楽、賭博、美容院やネイルサロンなど、他のサービスの利用額も増えた。
 燃料費は年間を通して減少が続いたが、12月のLCCIの伸び全体に対する寄与度はマイナス0.6ポイントで、マイナス幅は一年で最も小さかった。燃料価格が個人消費に与える下押し圧力が弱まりつつあることがうかがえる。
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米15都市圏における個人消費の前年比伸び率に対する所得階層別寄与度(単位:ポイント、赤=下位20%、青=上位20%)
関連記事
• 米個人消費、増え続けるには雇用・所得・貯蓄率の伸び必要
• 10-12月期の米GDP、年率1.4%増に上方修正−予想上回る
https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NH586_Income_M_20160329105358.jpg


ヘッジファンド資金引き揚げ増加 リターン低下で
低コストの代替運用商品を提供するAQRキャピタルの運用担当者アスネス氏

By TIMOTHY W. MARTIN AND ROB COPELAND
2016 年 3 月 31 日 16:37 JST

 運用資産160億ドル(約1兆8000億円)のイリノイ州投資委員会のマーク・レビン会長は、今月のヘッジファンドに関する会議で挑発的な質問を投げかけた。

 「なぜヘッジファンドが必要なのか」という同氏の問いかけは、現在多くの有力投資家が共有している疑問だ。

 年金基金、保険会社、大学基金がこの10年間でヘッジファンドに資産運用を委託した額は過去最大の3兆ドルに達した。しかし、そのリターンは株と債券との伝統的な資産配分がもたらすリターンを6年連続で下回り、その不均一な投資リターンから一部の州では高額な手数料が政治的に問題になり、多くの機関が委託資金を引き揚げつつある。

 ニューメキシコからニューヨークまで大型投資家がヘッジファンドへの委託資金を大幅に減額し、資金を手数料の安い類似の資産運用機関へと移している。HFRによると、昨年10-12月期には世界の投資家によるヘッジファンドからの引き揚げ資金が委託資金を上回った。四半期ベースの資金出超はこの4年間で初めてだ。そして、調査会社イーベストメントによると、今年1、2月のヘッジファンドからの引き揚げ額はさらに153億ドルにのぼったという。

 レビン会長率いるイリノイ州投資委員会も間もなく引き揚げ組に加わる。同氏がヘッジファンドは必要かと疑問を呈してから2日後には、約6万4000人の公務員の資金を運用する同委員会の役員会は、資金のうち10億ドルを未公開株(PE)投資専門の低手数料率で運用するファンドに振り替えることを決めた。レビン会長によると、委託をやめたファンドの一つはパーシング・スクエア・キャピタルだ。事情筋によると、ニューヨークに本拠を置く同ヘッジファンドは、カナダの製薬会社バリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナルへの投資が不調なため、先週までに運用利回りが20%超低下したという。

 パーシングの広報担当者はイリノイ州投資委員会の資金引き揚げについてのコメントを控えた。

 多くの大手機関はヘッジファンドが景気下降局面での損失回避を約束していることから運用委託を継続している。しかし、昨年に市場の変動が大きくなり、そのために損失が出たことに対し、資金を長期間委託してきた投資家の不満は募っている。

 米保険大手アメリカン・ インターナショナル・グループ(AIG)は先月、当初ヘッジファンドへの委託を予定した運用資金110億ドルを半分に減額することを発表した。低調な運用成績を理由に挙げたAIGは、その減額分を自前で債券や商業不動産に投資することを明らかにした。

 ほかには、かつてはヘッジファンドだけが提供していた投資戦略が今や他の運用機関でも数分の一の手数料を通じて利用できるようになったために資金を引き揚げている投資家もいる。「リキッド・オルタナティブ」や「マルチ・アセット」と呼ばれるこれらの金融商品は、低いボラティリティや金利の方向性を手がかりに、リターンを向上するためにさほど借入金を使わずに資金を投入できるものだ。

 ヘッジファンドは通常、ほかの運用機関より高い手数料を取っており、これまでは運用委託総額の2%と利益の20%を毎年徴収してきた。ヘッジファンドの新たな競争相手の一部は、手数料を委託総額の1%、利益に対しては無料で同様の運用サービスを提供している。

 例えば、ノーザン・トラストは、ヘッジファンドと似た「エンジニアード・エクイティ」という投資戦略の新金融商品を委託手数料1%足らずで提供している。同社の定量調査部門責任者、マイク・ハンスタッド氏は、新商品はトレーダーでなく運用モデルを使い、ボラティリティや市場リスクを一定の限度内に抑えるように株式を一括運用すると説明した。

 こうした低手数料の代替運用商品が広まってきたことは、イリノイ州の公務員退職基金(IMRF)が先月、ヘッジファンドへの5億ドルの委託プログラムを打ち切った理由の一つとなった。

 同基金の運用責任者、ドゥバニ・シャー氏は、委託コストが高かったとし、「本当に引き合うのか」といえば「答えはノーだ」と話した。

 イーベストメントによると、1月には有力投資家の資金引き揚げ額が全体で197億5000万ドルとなった。これは1月としては09年以来最大の金額だという。2月には委託資金が44億ドルの純増となったものの、10〜15年の2月の平均純増額である226億ドルを大幅に下回っている。

 今後もこうした低調さが続くかは不明だ。依然多くの有力投資家がヘッジファンドに巨額の資金を運用委託している。

 例えば、財団や基金は昨年、コンサルティング会社ウィルシャー・トラスト・ユニバース・コンパリソン・サービスが01年にデータの集計を始めて以来初めてヘッジファンドを通じた運用額を減らした。しかし、こうした団体の運用ポートフォリオのうちヘッジファンドを利用した運用は依然8.62%を占めている。

 ウィルシャーによると、米公的年金の運用ポートフォリオ全体に占めるヘッジファンドの割合はピークだった12年の2.31%から昨年は1.37%へ低下したという。

 債券専門のヘッジファンド、TIGアドバイザーズのスピロス・マリアグロス社長は、投資家は今後も通常の投資手段より高いリターンを求めてTIGのようなヘッジファンドを求めると見込んだ。しかし、ヘッジファンド業界は、単に最も高いリターンを得るのではなく、投資を多様化し、市場の振れによる影響を緩和することも狙うことを一層明確に伝える必要があるとした。

 同社長は「我々が改善しなくてはならないのは、委託会社に何が期待できるかを明確にすることだ」と述べた。

 フロリダ州の公的年金を管理するフロリダ州管理理事会は39億ドルをヘッジファンドに委託しているが、それを減額する計画はないという。

 あるヘッジファンドの元役員で現在は同理事会を切り盛りするアッシュ・ウィリアムズ氏は「われわれの目的は満たされている」と語った。

 ヘッジファンドは投資家の不安を鎮静化させるための新たな方策を探っている。一部のファンドは、伝統的な手数料とはかけ離れた低コスト商品を投資家に提案している。

 AQRキャピタル・マネジメントは、そうした低コスト商品を提供する大手ヘッジファンドの一つだ。米最大の公的年金基金であるカリフォルニア州退職年金基金(カルパース)は、14年にすべてのヘッジファンドへの運用委託をやめると表明したものの、AQRの低コスト商品には依然5億7800万ドル分の運用を委託している。

 AQRの幹部、クリフォード・アスネス氏は「これは超特価のような価格設定となっている」という。さらに「まだマジックのような(高い手数料の)商品はあるが、最近はほぼ同様の成績を上げる、一段と単純で安価な商品が他にもある」と述べた。

関連記事

ヘッジファンド、供給過剰の原油に強気に転じる
ボラティリティー上昇に賭けるヘッジファンド
https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NI154_HEDGER_M_20160330132947.jpg

http://www.asyura2.com/16/hasan107/msg/138.html#c2

[経世済民107] 円高転換の真相とは?注目のG20、米国貿易赤字は危険水準に 日欧の金融緩和政策は限界を迎えた(会社四季報オンライン) 赤かぶ
1. 2016年4月01日 23:57:28 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[13]

倉都康行の世界金融時評
2016年度「ドル円100円割れ」の可能性FRBが利上げを断念する日

2016年4月1日(金)倉都 康行


人工知能などの技術革新を組み込んでも生産性の伸びは低いまま(写真:AP/アフロ)

 年初に突然のように金融市場を覆った暴風雨が去り、様々な不安要因を前にして消化不良に陥っていた投資家も、徐々に平常心を取り戻してきた。人民元相場が落ち着き、原油相場に底入れ感が出始めたことも、安心感を強めている。

 だが、怪しげな中国経済から英国のEU離脱リスク、米国大統領選挙そして中東や北朝鮮を巡る地政学リスクに至るまで、市場から不透明要因が消えることはないだろう。そして米国の今後の金融政策の行方も、いま一つスッキリしない材料である。それは今年度のドル円動向にも大きく影響する筈だ。FRBには、日銀やECBと違ってまだ市場を動かす力が残っているからである。

 米国の3月利上げは予想通り見送られ、今年の成長率やインフレ率が若干下方修正されるとともに、メンバーが示す年内利上げ回数予想の中央値も4回から2回へと修正された。米国経済は堅調と見る株式市場では「予想以上のハト派的内容でサプライズ」との声も上がり、為替市場では一時ドル円が110円台まで低下した。

 今回の金融政策判断に大きな影響を与えたのは、世界経済と金融市場の二つのリスクである。中国をはじめとする新興国経済の失速懸念と年初来の株式市場などの急落が、FRBのメーンシナリオを狂わせてしまったことは明白だ。

 だが、イエレンFRB議長は利上げ方針を堅持する姿勢を変えていない。記者会見で同議長は、設備投資の低調さや脆弱な海外経済の輸出への悪影響などにも言及しつつも、米国の内需は堅調で本年以降も潜在成長率を上回るペースでの成長は持続する、という基本認識を示している。

 FOMC議事要旨にも、足許の物価上昇率には上昇の兆候が見える、と記されていた。確かに物価統計にはそうした気配も窺える。そしてFOMC終了後には利上げ推進派から慎重派に転じていたセントルイス連銀のブラード総裁が手のひらを返すように利上げ再開を示唆したのをはじめ、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁、アトランタ連銀のロックハート総裁、そしてフィラデルフィア連銀のハーカー総裁らが4月利上げを検討すべきだ、と述べるなど「ハト派ムード修正」の動きが起きている。

「ドット・プロット」に右往左往する市場

 こうした発言を受けて、一時弱含んでいたドルは一転して堅調な地合いとなり、ドル円は再び上昇トレンドに向かうかもしれない、といった期待も浮上している。市場のこうした右往左往には、FOMCが2012年に導入した「ドット・プロット」と呼ばれるメンバーの政策金利見通しが悪影響を及ぼしている。

 その予想金利水準の分布図に拠れば、2015年12月時点では2016年末の見通し中央値が1.375%で年間4回の利上げが示唆されていたが、2016年3月にはそれが0.875%に下がったことで「利上げ回数が2回に下方修正された」と市場は読んだ。それが「ハト派」と解釈された所以である。

 だが「ドット・プロット」はFRBのコミットでもなく正確な予想でもない。その予測性は、導入以来常に裏切られており、「今年の2回利上げ」という見方ですら、ディスインフレを実感する債券市場は懐疑的である。日本の主要メディアも3月のFOMCの内容を「利上げ回数予想の減少」と伝えているが、実際には「FRBの認識が漸く金利市場の読みに接近してきた」いうのが正直な感想だ。

 FRBはそもそも「政策金利動向はデータ次第」と主張しており、「ドット・プロット」を通じて金利水準の経路を予想しようとしているのではない。その図は、FOMCメンバーが抱くメーンシナリオが実現した場合に正当化される金利水準の分布であり、当局内でどれだけ意見の相違があるのかを映し出しているに過ぎないのである。

 地区連銀総裁らが意識的に利上げの可能性に言及し始めたのは、FRBのメッセージが「超ハト派」と誤って捉えられたことを警戒してのことだろう。だが、あれだけリスク要因への警戒を示したFRBがいきなり今月の会合で利上げを決定するとは思えず、様々な発言がかえって市場の混乱を増幅させているように見える。

 日銀に見られる幅のない対話力も問題だが、FRBのように多様過ぎる情報提供もコミュニケーション力低下の一因であり、市場の変動性を高めるだけに実体経済にとっては厄介な問題である。FRB主流派の心中は「利上げどころではなくなってきた」というのが本音なのではないだろうか。それは数日前のイエレン議長の講演の発言内容にも滲み出ている。

注目すべきはインフレ率と労働生産性

 今後の米国の金融政策を読むには、ひとまず金融当局が発する「ノイズ」から離れて、実体経済のデータに目を向けた方が良さそうだ。筆者が注目する観察対象は、インフレ率と労働生産性である。

 インフレ率に関しては、年初の時点では、失業率と賃金・物価の負の相関を示すフィリップス曲線は破綻した、との見方が優勢であり、市場にはディスインフレ基調がさらに強まると見られていた。失業率は5%を割ったが、賃金上昇率は2%程度に低迷したままであり、短期金利市場ではFRBが望む「好ましい物価上昇率」は当分達成出来ない、との見方が大勢であった。

 だが、1月のコアPCEデフレーターが前年同月比1.7%上昇して約3年ぶりの高水準になり、2月もその水準をキープしている。2月のコアCPIは前月比0.3%上昇、前年同月比では2.3%の上昇となり、ややセンチメントが変わってきた。

 インフレ期待も上昇中である。10年物の「ブレーク・イーブン・レート」で見るインフレ率期待値は2月中旬の1.2%台から現在では1.6%台へと急反発している。ニューヨーク連銀の調査による消費者の1年先のインフレ期待値も上昇に転じている。

 これは本格的な物価上昇に繋がる前兆なのか、或いは一時的な要因に拠る現象なのかを見極めることは、日本経済にとって「ドット・プロット」の分析などよりよほど重要だ。極論すれば、そのポイントが米国の金融政策動向を左右し、今後ドル円は120円近辺に戻るのか、或いは100円に向けた円高基調に移行するのか、という分水嶺になる可能性がある。

 短期金利市場や債券市場がFRBの利上げ見通しにさほど反応していないのは、物価指数の上昇は一時的現象と判断しているからだ。ダラス連銀の調査に拠れば、コアPCEデフレーターの上昇を牽引しているのは主に衣料品や宝石・高級時計、自動車、医薬品といった項目である。またコアCPIに関しても家賃と医療保険支出などの上昇が主因で、どちらの上昇も一時的な現象だと見られている。

FRBが留意すべきは成長率の鈍化

 また、利上げの前には「頭打ちの賃金上昇率」という大きなハードルも聳え立つ。2015年の米国における賃金上昇率は2.2%であった。2%に満たないインフレ率を考えれば、確かに実質賃金は多少上昇しているが、賃金上昇が加速する気配は見えないままだ。

 さらに、賃金や福利厚生の分布を見れば、米国家計がそれほど経済成長の恩恵を受けていないことがわかる。Economic Policy Instituteの統計に拠れば、2007-2014年の間で豊かになったのは上位10%の労働者に限定されていた、という。

 オレゴン大学のマーク・トーマ教授は「その歪な構造は現在も変わっていない」と述べ、低いパーセンタイルの労働者は今でも実質的な賃金低下や福利厚生削減に見舞われている、と述べて、賃金上昇のトレンドを抑制する必要性は全くない、とFRBの利上げ姿勢を批判している。

 米国市場では、自然失業率は5%前後ではなくいまや3%程度に低下している、といった議論すら起きている。現時点でFRBが留意すべきはインフレ率の上昇ではなく成長率の鈍化だ、といった指摘はあちこちで見られるようになった。

 バーナンキ前FRB議長でさえも、自身のブログで「FRBにはまだ武器が残っている」として、米国に導入される可能性は低いとしながらも、マイナス金利の政策的な有効性を解説しているのが興味深い。利上げに理解を示してきた同氏も、先行きに不安感を感じ始めているのかもしれない。

 実はイエレン議長も、前述したように利上げ方針を継続するとの姿勢を堅持しながらも、インフレ率に対しては、上述した地区連銀総裁らの認識とは違った考えを抱いているように見える。12月と3月の発言内容の落差は、思考回路の大幅修正を反映していると思われるからだ。

 具体的には、同議長は昨年12月時点の「2%という物価上昇率を超えてはならない」という認識から、今では「一時的な目標超えは許容しうる」との考えに変えてきたように感じている。もしそうであれば、この変化は地区連銀総裁らの「ノイズ」と違い、極めて貴重な「シグナル」である。敢えてそれを明言せずに利上げ方針継続の表明を行ったのは、12月の利上げは失敗だったのか、と問い詰められる可能性があったからだろう。

世界的に頭打ちになる労働生産性

 現在の米国経済成長力にさほど勢いがないことは、個人消費、住宅投資、設備投資、貿易収支そして財政支出のどの項目からも明白だが、労働生産性の低下という別の視点から見ても、FRBがなぜ利上げ継続にこだわるのか、不思議に思えてくる。

 労働生産性の伸びが頭打ちになっているのは世界的な傾向だ。1960-70代の高度成長時代には8%を超えていた日本の数値は今では1%に満たない水準にまで低下しているが、経済の一強時代を象徴する米国でも、昨年第4四半期には伸び率が2.2%へ低下し、2016年を通じても0.6%の上昇率に留まっている。

 輸出競争力の高いドイツも然りである。そして、先進国の先端技術を容易に導入し得るメリットがある筈の新興国でも、労働生産性の伸び率は低位で推移している。技術開発の停滞を背景とする世界的な労働生産性の低下は、現代社会における「成長の限界」を示唆しているのかのようだ。

 もちろん、それには反論もある。iPhoneの登場や3Dプリンターの発明、或いはグーグルやSNSの普及など、人々の生活を豊かにしている実例は沢山ある。また先日、世界的な囲碁の名人である李九段を打ち負かした「AlphaGo」のような人工知能に代表される21世紀の新技術は、19世紀や20世紀の技術開発と比べても遜色はなさそうに見える。GDPなどの経済指標は、現代のそうした革新の果実を反映出来ていない、という主張もある。

 だが先般、FRBとIMFの研究者(David Byrne氏、John Fernald氏、及びMarshall Reinsdorf氏)が発表した研究論文は「その反論の根拠は薄い」と主張している。彼らは無形資産、ソフトウエア、コンピューター、特殊機械、コミュニケーション・ツールなど、従来のGDP把握から漏れていた要素を組み込んで時間当たりの生産の伸び率を計算しなおしてみたところ、従来の計測結果とそれほど大きな違いはなかった、と結論付けている。

原因は競争の阻害と低賃金

 ではなぜ、労働生産性が上昇せず低成長が続いているのだろうか。MITの研究者らは、ここ15年間で新興企業の成長・拡大の速度が20世紀後半と比べて大幅に鈍化していることを理由に挙げている。その背景には、投資意欲の希薄化に見られる競争意識の低下がある、という。米国では昨今の規制強化において金融、ヘルスケア、保険、通信、化学、建設など様々な分野で競争が阻害されており、それが生産性低下の一因になっている、との指摘もある。

 さらに注目されるのは、低生産性と低賃金の相関だ。従来、低生産性が低賃金の原因だと見られてきたが、逆にその結果である可能性も指摘されている、と英エコノミスト誌は述べている。例えば金融危機後の米国では安価な労働者が多数存在したことで、企業はロボットやソフトウエアへの投資を抑制し、低賃金労働者の雇用に拠る限定的な利益確保に走った。日欧などでも、低賃金構造が固定化されることで生産性の低下が長期化する傾向が出ているのかもしれない。

 その悪循環を断ち切ろうと、日本やユーロ圏ではマイナス金利まで導入したが、効果は乏しいだろう。米国は金利正常化に向けて舵を切ったが、どうやらそれは拙速な判断であったように見える。市場には、12月の利上げが世界的な資本の流れを変えて金融市場の不安定さを招き、米国経済にも自業自得的な悪影響を与えてしまったのだ、という見方すらある。

 イエレン議長が利上げ路線の看板を下ろすのは容易ではないが、海外要因を理由にして「転向」する可能性は十分ある。安定しているように見える中国は、いつどこで火を噴くかわからないエンジンを抱えた飛行機のようなものであり、難民問題や英国のEU離脱リスクを抱える欧州は、目的地を失った漂流船の如きである。

 仮に同議長が利上げ路線白紙化への布石を打ち始めれば、それはドルの上昇エンジンの停止を意味する。時期を予想するのは難しいが、夏から秋に向けてドル円が100円割れに直面する可能性が仄かに見えてきたように思われる。

次の流行語は「ヘリコプター・マネー」?

 日本でも金融政策の限界論が主流になりつつあり、政府は財政政策を検討する必要に迫られてきた。消費税増税延期はもはや既定路線であり、アベノミクス失敗論に対抗すべく政府が補正予算などに一歩踏み出す可能性もある。だが、大胆な国債借り換え策などを伴わない財政出動の威力は限定的だろう。

 残る手段は所謂「ヘリコプター・マネー」だ。それはハイパー・インフレを招く禁じ手だとして封じ込められてきたが、何をやってもインフレにならない現状、善悪は別として、政府・日銀が経済政策への批判をかわすために採り得る奇策(愚策?)は、恐らくこれしかない。

 現在、金融市場の流行語といえば「マイナス金利」と「フィンテック」だが、年末に流行語大賞が決まる頃には、それらを押しのけて「ヘリコプター・マネー」が日本中のメディアを席巻しているかもしれない。

このコラムについて
倉都康行の世界金融時評

日本、そして世界の金融を読み解くコラム。筆者はいわゆる金融商品の先駆けであるデリバティブズの日本導入と、世界での市場作りにいどんだ最初の世代の日本人。2008年7月に出版した『投資銀行バブルの終焉 サブプライム問題のメカニズム』で、サブプライムローン問題を予言した。理屈だけでない、現場を見た筆者ならではの金融時評。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/230160/032900011/?ST=print

2016年4月1日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長]
日銀のインフレ2%目標は
中長期的目標にシフトすべき時

参議院予算委員会で、マイナス金利政策の効果について答弁する日本銀行の黒田東彦総裁
Photo:REUTERS/アフロ
?黒田東彦総裁をはじめとする日本銀行幹部は、マイナス金利政策は日本経済にとって有効であり、その金利を今後引き下げる可能性があることを最近たびたび示唆している。

?3月の金融政策決定会合で日銀は、景気判断を下方修正した。一方、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備制度理事会(FRB)は、事実上、過度なドル高を避ける情報発信を行いながら、ゆっくりと利上げを進める方針を示した。過去3年間のFRBは、日銀や欧州中央銀行(ECB)の金融緩和でドル高が起きてもわれ関せずだったが、様子が変わってきている。

?日銀としては円高が進んでインフレ目標達成がさらに遠くなることは避けたいだろう。最近は人々のインフレ予想も弱い。マイナス金利の一段の引き下げを含む追加緩和策のタイミングを日銀は意識し始めているようだ。

?とはいえ、マイナス金利政策に対して国民は警戒心を抱いている。経済データ解析を手掛けるナウキャストが最近実施した1.2万人を対象としたアンケートによると、マイナス金利政策を「非常に望ましい」「望ましい」と答えた人は計17%にとどまった。一方、「やや望ましくない」「望ましくない」は計83%もいた。

?日銀は同政策によって2%のインフレ目標を早期に達成することを狙っている。だが、その目標自体の評判が芳しくない。

?前掲調査によると、日銀の物価目標について、「非常に望ましい」「望ましい」と答えた人は、1年前は計32%だったが今年は29%だ。逆に「やや望ましくない」「望ましくない」と答えた人は、計67%から71%へ増えた(同社マンスリーレポート3月号、渡辺努・東京大学大学院教授のレポートより)。

?ところで、政府・日銀は企業の賃上げペースの低調さにいら立っているが、経営者だけでなく労働組合側も東京五輪後の日本経済に自信を持てないのが実情といえる。自社の対外競争力に不安を感じている企業も少なくない。

?代表例が、本誌12月26日・1月2日合併号の自動運転に関する対談記事に載っていた。泉田良輔氏が日本の電機産業が衰退していく過程を本にまとめたところ、「実は電機より自動車業界で反響が大きかった」そうだ。「次に狙われるのは日本の自動車産業だと」。

?今の日本で自分の先行きの所得増加に自信がある人はそう多くない。そんな中で、物価が毎年2%ずつ上がる経済を早期に実現すると日銀が意気込んでも、ポジティブな心理効果は生みにくい。

?3月14日に筆者も参加した野村総合研究所主催の「金融市場パネル」で、聴衆(金融機関関係者、機関投資家、研究者等)へのアンケートが行われた。「2%のインフレ目標を日銀はどうすべきか」という質問に対して、「あくまで早期に達成すべき」と答えた人はわずか5%。一方で、「中長期的目標に変えるべき」は37%、「目標自体を見直すべき」は58%もいた。

?実現困難な目標を追求する金融政策が副作用を起こしつつあることを考慮すると、目標見直しは正論といえる。ただ、日銀がインフレ目標を1%に下げ、欧米は2%のままだと激しい円高が生じる。

?日米欧が目標を一斉に1%に下げる可能性は現在ほとんどないだけに、現実対応としては、インフレ目標を「中長期的目標」へと徐々にすり替えつつ、日本企業がイノベーションを起こせる環境づくりをじっくりとサポートしていくしかないように思われる。

(東短リサーチ代表取締役社長?加藤 出)

http://diamond.jp/articles/-/88611


“現状維持”が最悪の選択である
【第1回】 2016年4月1日 井堀利宏
財政再建に消極的な政治と現在世代の重罪
財政健全化に消極的なアベノミクスのもと、消費増税は再延期の見通しが濃厚となってきた。消費税ありきとは言わないが、財政健全化そのものを先送ることで若い世代や将来世代に負担を強いる構造をそろそろ本気で変えるべく行動を起こすべきではないだろうか。本連載では、財政学の第一人者である井堀利宏・東京大学名誉教授が描く財政健全化に向けた具体策を順次ご紹介していく。

?消費増税を巡る政策決定が迷走している。

?安倍政権は消費税の引き上げに消極的である。2015年10月に予定されていた10%への税率引き上げは、「信を問う」と強引な解散総選挙を実施して、2017年4月まで先送りした。

?昨今は来年に迫った増税も「リーマンショックや大震災級の世界経済の収縮が起きなければ」という不明瞭な留保条件を付けるなど、及び腰になってきたのが窺える。安倍首相と菅官房長官は「消費税率を引き上げて税収が上がらなければ元も子もない」とも発言されていたが、そもそも消費税率を上げることで消費税収が減るなどということはあり得ない。

?合理性の欠ける言い回しに、よほど消費税率を上げたくないのか、と勘ぐりたくなる。増税凍結かという観測を一応は否定してみせるが、額面通り受け取れないのが安倍政権である。

?いずれにしても、増税時に導入する軽減税率などを含めた準備期間や、7月に参議院議員選挙が実施されることなどを勘案すれば、その前までに増税か否かの結論が下されるだろう。

?私は決して、消費税増税ありきと主張したいわけではない。ただ、巨額の国債残高があり、社会保障需要の増大が避けられないわが国の厳しい財政状況を勘案すると、歳出削減とともに10%程度の消費税率引き上げは避けられまい。

?仮に消費税増税を再度先延ばしするとして、1年の延期でも、2020年に基礎的財政収支を均衡させる財政健全化計画そのものを見直す必要が出てくる。消費税率の引き上げは、財政再建に対する本気度を試す一里塚ではないだろうか。財政再建を先延ばしすれば、いま生きている現在世代は助かるが今後生まれてくる将来世代は大きな負担を被る。再建タイミングは世代間格差に直結している点を忘れてはならない。

量的な歳出入改革だけでは、もはや限界

?では財政再建を着実に進めるうえで、量的な歳出入改革以外には何をすべきか。

?たとえば、財政運営の錘となっている社会保障費用の見直しは急務である。少数の若者が多くの年配層への給付を支える現行の賦課方式が続く限り、世代間不公平も解消されない。実の親子間で年金や医療費をまかなう個人勘定の積立方式への移行を検討すべきではないだろうか。

?また、そのように社会保障制度を抜本改革するには、抵抗勢力となる高齢者が過度に政治力をもつ現行選挙制度の改革が必須である。青年世代の選好が政治に反映される世代別選挙区の導入や選挙権年齢の引き下げなど、従来の弥縫策にとどまらない新たな仕組みが必要である。

?財政運営は政治の場で意思決定される。わが国の財政状況が悪化したのは、政治が若い世代や将来世代の利害を加味せず、その場しのぎで政策決定をしてきたためである。本連載では次回以降、財政赤字が世代間格差を助長する構造をふまえ、それを是正するための年金・医療制度改革や、その改革を可能にする選挙制度改革について私案を紹介していく。

?改革の痛みを甘受してでも抜本改革を実施できるかどうか、われわれ現在世代の良心が問われている。
http://diamond.jp/articles/-/88824


 


NY外為(午前):ドルが下げ渋り、雇用統計で利上げ観測強まる
Taylor Hall、Rachel Evans
2016年4月1日 21:53 JST

1日午前のニューヨーク外国為替市場ではドルが下げ幅を縮小。3月の米雇用者の伸びが市場予想を上回り、利上げの根拠が強まると受け止められた。
  3月の非農業部門雇用者数は21万5000人増。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は20万5000人増だった。
  ニューヨーク時間午前8時32分現在、ドルは対ユーロで前日比0.3%安の1ユーロ=1.1409ドル。一時は0.5%下落する場面もあった。
原題:Dollar Pares Drop as Jobs Report Boosts Outlook for Higher Rates(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4YGUI6KLVR601



3月の米雇用者:21.5万人増、賃金も伸びる−失業率は5%に上昇
Victoria Stilwell
2016年4月1日 23:38 JST

米国では3月に雇用者数が増加し、賃金も増えた。

  米労働省が1日発表した3月の非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比21万5000人増。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は20万5000人増だった。前月は24万5000人増(速報値24万2000人増)に修正された。
  3月の平均時給は前月比0.3%増となった。前月はマイナス0.1%だった。前年同月比では2.3%増。
  一方で家計調査に基づく3月の失業率は5%と、前月の4.9%から上昇。労働力人口に復帰した人が増えたことが背景にある。
  ジェフリーズのチーフ金融エコノミスト、ウォード・マッカーシー氏は「厳しい局面もいくらかあったが、多くの雇用を生み出し続けている」と指摘。「消費者主導の経済では、そうした状況により正しい方向に進み続けることができる」と加えた。

  雇用者数を業種別に見ると、建設業が3万7000人増と3カ月ぶりの大幅な伸び。気温が高めだったことも影響した可能性がある。一方で製造業は2万9000人減少した。
  労働力人口への復帰について詳細を見ると、一部はパートタイムの職しか得られなかったことが分かる。経済的理由からパートタイムで勤務している人は13万5000人増えて612万人と、昨年8月以来の高水準。
  これにより、経済悪化でパートタイム就労を余儀なくされている労働者や職探しをあきらめた人などを含む広義の失業率は9.8%と、前月の9.7%から上昇した。



  労働参加率は63%に上昇し、2014年3月以来の高水準となった。  
  民間部門の週平均労働時間は前月から変わらずの34.4時間だった。
  統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Payrolls in U.S. Increased 215,000 in March as Wages Picked Up(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4YJ8SSYF01Y01



Business | 2016年 04月 1日 23:14 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
3月米雇用21.5万人増、賃金プラスに

[ワシントン 1日 ロイター] - 米労働省が発表した3月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が21万5000人増となり、予想の20万5000人増を幾分上回った。時間当たり賃金も前月比0.3%増と、プラスに転じた。

労働市場が底堅く推移していることで、連邦準備理事会(FRB)が緩やかな利上げを実施できる可能性があることが示された。

1月と2月分は1000人下方修正された。

失業率は5.0%と、8年ぶりの低水準だった前月の4.9%から悪化したものの、労働参加率の上昇を反映しており、心強い兆候となる。市場予想は4.9%だった。

労働参加率は63%と、前月の62.9%から上昇し、2014年3月以来の高水準となった。

時間当たり賃金は前月比0.3%、前年同月比2.3%それぞれ増加した。エコノミストによると、インフレ率がFRBの目標である2%に到達するには、時間当たり賃金が3─3.5%の伸びとなる必要がある。

3月の雇用は幅広い業種で増加したものの、製造業は2万9000人減少し、2009年12月以来の大幅減となった。製造業部門で安定化の兆しがみられる中での減少となった。

鉱業は1万2000人減。ピークをつけた2014年9月以降、18万5000人の雇用が失われている。

建設は9カ月連続で増加し、3万7000人増。小売も4万7700人増と好調。

政府は2万人増だった
http://jp.reuters.com/article/us-jobless-mar-idJPKCN0WY4V4


円高の「巻き戻し」を警戒せよ−流れには逆らうな
Luke Kawa
2016年4月1日 16:05 JST

円は今年に入ってからこれまでにドルに対し7%近く上昇した。しかしソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、キット・ジャックス氏によれば、4−6月(第2四半期)のテーマの一つは「円高の巻き戻し」だ。
  同氏は円の対ドル上昇の過程で投機家が相当大きな円買い持ちポジションを積み上げてきたことを認識しているが、それよりも日本に関する証券投資の数字に注目し、資金の流れが円高の方向に向いていないと指摘する。外国人による日本の株・債券への投資が純減となる一方で日本の投資家は急ピッチで外債を買い増しているという。
  先週は日本の債券と株の外国人による売り越しが2008年以来で最大となり、日本の投資家による過去4週間の外債買い越しは少なくとも2000年以来で最大だったと同氏は説明。「投機家による円ロングが資本流出を相殺しドルの対円相場を現水準に保っているとすれば、どちらの力が最後に勝つ可能性が高いか私には確信がある」と述べた。
原題:There’s a Big Reason to Watch Out for the ’Unwinding of Yen Strength’(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4XYM0SYF01X01



Column | 2016年 04月 1日 17:02 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:円安のゲタ脱いだ日本企業、株価は海外動向次第の構図に

田巻 一彦

[東京 1日 ロイター] - 円安のゲタを脱いだ日本企業の業績と株価はどうなるのか──。3月日銀短観の大企業・製造業の想定為替レートが117円台となったのを見て、多くの市場関係者はこんな連想をしたのではないか。米連邦準備理事会(FRB)が緩やかな利上げを志向し、ドル高/円安進行のハードルは上がっている。もし、円安依存の企業が多かった場合、今年の日経平均.N225は海外動向に振らされ、値幅の大きな展開になると予想する。

<日本企業の想定レート、117円台の意味>

3月短観で示された想定レート117.46円は、1日の東京市場で取引されている112円前半から5円超も円安となっている水準だ。

昨年前半のように、日米金利差の拡大を材料にドル/円JPY=EBSが円安方向に動けば、輸出企業を中心に為替差益で収益が押し上げられ、増益基調を維持できる企業が増えるだろう。

しかし、足元の外為市場を見ていると、そのシナリオの実現性に「黄信号」が点滅しているように見えてならない。

最大の要因は、FRBの金融政策スタンスだ。イエレン議長は3月29日の講演で「政策調整を慎重に進めることが妥当だと考える」と明言。一部で主張されている年内3回の利上げ路線とは明確に距離を置いた。

NY連銀のダドリー総裁も3月31日、イエレン議長の利上げに関するスタンスに賛同するとの見解を示した。

市場では、4月利上げの可能性低下が指摘されているだけでなく、一部では6、7月の利上げ可能性の後退もうわさされ、ドルに下落圧力がかかっている。

また、一部のFEDウオッチャーの中には、こうしたイエレン議長らの発言の背景には、ドル高進展による国内総生産(GDP)下押し効果への懸念があるという見方がささやかれている。

「ゆっくり利上げ」と発信することで、過度のドル高圧力を回避し、適度な成長と物価上昇、利上げ回数をどれも達成させる狙いがある──との見方だ。

このため市場にはドルの上値が当面は重くなると予想する声が年初よりも増加しており、ドル/円の114円半ばよりドル高方向には、ドルの戻り売り注文が並んでいるとされる。

仮に112円前後の水準が長期化するようなら、117円の想定レートを組んでいる企業にとって、増益要因がなくなるだけでなく、減益要因が増加することになりかねない。

<円安依存と利益剰余金>

いわゆる「円安のゲタ」を脱いでも、増益基調を維持できる企業がどの程度の割合で存在するのか──。今年は、日本企業の実力が試される年になるだろう。

ただ、利益剰余金を過去最高の355兆円も貯め込み、ベースアップ率は昨年を下回る現実を見るにつけ、日本企業が独自の戦略を策定し、その下で積極的にリスクを取って将来を見据えた設備投資に注力しているとは思えない。

この私の見方が正しいなら、前年に計上した為替差益分の利益がなくなって、前年比減益となる企業が、かなりの割合になるだろう。

ただ、産油国の増産回避に向けた会議が成功し、原油価格が1バレル40ドル台から徐々に値上がりし、リスクオフ心理が鎮静化していけば、米経済の成長トレンドも鮮明化し、FRBが6月に利上げを決断しても、大きな株価下落を回避し、世界的な株高シナリオが実現する可能性もある。

そのケースでは、ジワジワとドル高/円安が進み、国内企業の想定レート117円台を超えて円安が進むかもしれない。その結果、為替差損のリスクは大幅に低下し、増益企業の割合が増えることが予想される。

<リスク判断次第で大きく振幅か>

こうした点について見方を変えて俯瞰すれば、日本企業の収益は海外経済の動向によって、大きく振れる構造に直面していると言えるのではないか。

リスクオン心理の盛り上がりで、日経平均が2万円前後まで上昇する可能性がある一方で、FRBの利上げが当面ないという展開になれば、円高進展で1万4000円近辺まで大幅下落する可能性もゼロではない。

最近の電機業界における名門企業の凋落を見るにつけ、戦略的な投資を怠った企業に未来はないとの思いが深くなる。

積極的な投資によって、国際競争力を磨いていく経営方針を掲げている企業なら、為替の振幅で赤字になったり、黒字になったりするような「ブランコ現象」に直面するリスクは、大幅に低下するだろう。

2月29日のコラムでも指摘したが、企業経営者の勇気ある行動が、日本経済の未来を切り開いていくことになる。「円安のゲタ」を履いているだけでは、株主に対する説明もおぼつかないことになるのではないか。
http://jp.reuters.com/article/tamaki-c-idJPKCN0WY3WF


Business | 2016年 04月 1日 12:00 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
「精一杯取り組んでいる」入行式で日銀総裁、脱デフレ強調せず

[東京 1日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は1日の入行式で「日本経済が健全な発展を遂げることを心から願い、精一杯の取り組みをしている」と強調。新入行員に対して、1)専門性を磨くこと、2)理論と実践の両面を大事にすること、3)自分の考えをしっかり持つこと──の心構えを示した。

自身の経験を振り返り「固定相場制の時代に『変動相場制が望ましい』との論文を執筆、時代に先駆けてインフレ目標の論考を寄稿した」と披露した。

13年3月に就任した黒田総裁は、過去3回の入行式では「わが国のデフレは、世界的にもきわめて異例。日銀はこれに果敢に立ち向かって行かなければならない」などと檄を飛ばしてきたが、今回は脱デフレ向けた強い文言はなかった。

その代わり、情報技術と金融の融合によるフィンテックや、マイナス金利政策、国際金融規制、決済システムなどの分野に触れた。

(竹本能文)
http://jp.reuters.com/article/boj-commancingdate-idJPKCN0WY3CR


Business | 2016年 04月 1日 12:09 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
海外減速・円高で企業の景況感悪化、3月日銀短観 市場に政策期待

[東京 1日 ロイター] - 日銀が1日発表した3月全国企業短期経済観測調査(短観)は、大企業、中小企業の業況判断DIがそろって悪化し、中国をはじめとした新興国経済の減速や円高進行などの影響が表れた。一方、企業収益が高水準を維持する中で設備投資計画はしっかりした内容となったが、市場には金融・財政政策への期待が高まりつつある。

業況判断DIは大企業・製造業がプラス6、同非製造業がプラス22となり、前回12月調査からぞれぞれ6ポイント、3ポイントの悪化となった。中小企業も製造業、非製造業ともに悪化。大企業と中小企業の製造業・非製造業がそろって悪化するのは、消費税率引き上げ後の2014年6月調査以来となる。

中国をはじめとした新興国経済の減速が長引き、年明け以降の国際金融市場の不安定化で株安・円高が進むなか、大企業・製造業では輸出関連企業を中心に慎重な見方が強まっている。

海外での製商品需給判断DI(需要超過─供給超過)はマイナス11と前回から2ポイント悪化。海外需要が減退する中で、15年度の輸出の売上高計画も下方修正された。16年度の想定為替レートは1ドル117.46円。足元の112円台からは円安方向に想定されており、今後の企業収益を下振れさせる可能性がある。

好調な内需に支えられてきた非製造業も大企業の業況判断DIが6四半期ぶりに悪化した。緩和的な金融環境を背景に建設・不動産が好調で、原材料価格の下落に伴うコスト減も引き続き支援材料になっているが、訪日外国人によるインバウンド消費の増勢鈍化や盛り上がりに欠ける個人消費などが企業心理を慎重化させている面がある。

一方、原材料価格の低迷に伴うコスト減もあり、企業収益は引き続き高水準を維持している。15年度の売上高経常利益率の計画は大企業・全産業で前年比6.08%ポイント増、全規模・全産業でも同4.87%ポイント増と3月調査では過去最高を更新した。

好調な企業収益を背景に設備投資計画はしっかり。大企業・全産業の15年度計画は小幅の下方修正となったものの、同9.8%増と06年度以来の高さを維持。16年度計画も同0.9%減と過去の平均並みのスタートが見込まれている。

市場では、3月短観が事前の予想よりも弱い内容となったことに失望感も出ている。

ニッセイ基礎研究所・シニアエコノミストの上野剛志氏は「こうした市場のセンチメント悪化が、今後の財政出動や日銀の追加緩和を促す可能性がある」とし、金融政策について「追加緩和のメーンシナリオは7月とみているが、ETF(上場投資信託)の買い入れ額の拡大だけなら4月もあるかもしれない」との見方を示している。

(伊藤純夫)
http://jp.reuters.com/article/tankan-mar-worsen-idJPKCN0WY3DF?sp=true






News | 2016年 04月 1日 16:23 JST 関連トピックス: トップニュース
来週のドル/円は下値への警戒必要、株安なら円買いも

[東京 1日 ロイター] - 来週の外為市場で、ドル/円はレンジ継続を基本線としつつ、下方向への警戒も必要とされる。米国の早期追加利上げ観測が後退し、米国サイドからのドル買い要因に期待できなくなっている。一方、株価が予想以上に下げるなど悪い流れが続いた場合は、リスク回避の円買いが強まりそうだという。

予想レンジはドル111.00―114.00円、ユーロ1.1200―1.1500ドル。

先週は複数の米連邦準備理事会(FRB)高官からタカ派的な発言が相次いだ。米国の早期利上げ期待がにわかに高まったが、今週、イエレンFRB議長が予想以上に慎重な姿勢を示したことで、4月の利上げ期待は一気にしぼんだ。

そのため、きょうの米3月雇用統計が良い数字になった場合でも、4月の利上げ期待は再燃せず、ドルの強いサポートにはなりにくいとみられている。「雇用統計後の米ISM製造業景気指数も良ければ113円台に回帰する可能性はあるが、114円を超えていくのは難しいのではないか」(国内金融機関)との見方が出ている。

<輸出企業に業績下振れ懸念>

1日発表された3月日銀短観によると、大企業、中小企業の業況判断DIがそろって悪化。2016年度の大企業・製造業の想定為替レートは1ドル=117.46円と、実勢に比べて5円近い円安水準となった。

短観を受けた東京市場では、16年度の企業業績の下振れ懸念が強まり、日経平均株価が大幅に下落。ドル/円はリスク回避的な円買いが強まった。

ただ、ドル/円は下値の堅さも確認されつつある。市場からは「ベルギーの連続爆破事件でリスク回避が強まった場面でも111円前半で反転した。下がっても111円くらいで買戻しが入りそうだ」(外為アナリスト)との声が出ていた。

<ユーロ/ドルは上値余地>

ユーロは買われやすい地合いが続きそうだ。31日、ユーロ/ドルは一時1.1412ドルまで上昇し、昨年10月16日以来5カ月半ぶりの高値をつけた。

米国の早期利上げ観測が後退した一方、欧州中央銀行(ECB)の追加緩和打ち止め観測があり、米欧金融政策のギャップが意識されている。「(ユーロは)一段と上がりそうな雰囲気はある。1.15ドルも視野に入ってきた」(国内金融機関)との声が出ていた。

(外為マーケットチーム)
http://jp.reuters.com/article/tokyo-f-idJPKCN0WY3TX


Business | 2016年 04月 1日 15:44 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
焦点:日銀短観が発する「黄信号」、市場に追加策の思惑

[東京 1日 ロイター] - 日銀が1日発表した3月短観は、市場予想を超えて悪化した。世界経済の減速懸念による悪影響が出た製造業とともに、国内消費の弱含みを反映して非製造業も景況感が悪化した。

また、企業の物価観を反映する価格判断も下落方向にシフト。経済・物価情勢が「要注意」となってきた可能性を示している。市場関係者の間からは早速、財政・金融政策による「追加刺激策」を求める声が浮上してきた。

<予想以上の悪化>

市場が注目している大企業製造業の業況判断DIは、前回の昨年12月と比べて6ポイント低下して6となり、市場予想の8を下回った。

先行きも悪化しており、日銀では、1)中国・新興国経済の減速、2)インバウンド需要の鈍化──が響いたとみている。

全規模全産業での2015年度の経常利益見通しも、5年ぶりに下方修正された。16年度も減益見通しだ。

また、企業の物価への見通しを反映する販売価格判断(「上昇」─「下落」)は、大企業が昨年12月のマイナス11からマイナス15へマイナス幅が4ポイント拡大。仕入価格判断でも、大企業はマイナス2からマイナス8へ6ポイントのマイナス幅拡大となった。

さらに注目されるのが、大企業・製造業の想定為替レート。15年度のドル/円JPY=EBS119.80円に対して、16年度は117.46円。企業が次年度を円高方向にみるのは2011年度以来となった。

しかし、足元での急速な円高シフトには追いつけず、1日の水準である112円台とは約5円のギャップが生じている。

<価格判断にデフレ方向の動き>

景況感悪化の背景として、日銀は新興国経済の減速の悪影響を注視している。昨年12月の短観では、企業の業況感が日銀が心配していたほど悪化せず、いったんは安心感が広がった。

しかし、3月短観を見ると、懸念していた中国などの減速を起点にした悪影響が、いよいよ国内企業に波及してきた可能性が高いとみている。

また、内需の動向を反映している割合が大きい非製造業でも、足元だけでなく先行きの景況感が悪化方向に傾いたことに対し、日銀内では警戒感が高まり出している。

市場の一部では、インバウンド効果の頭打ちの反映との声も出ているが、国内消費に力強さが見られない最近の動向が、非製造業の業績に影響を与え出した可能性を指摘する声も日銀内にはある。

もし、外需と内需の両方に懸念材料を抱えることになれば、この先の日本経済が再浮上ではなく、失速するリスクが高まってしまう。日銀内では、足元の停滞感が一過性なのか、それとも長期化するのかを見極めたいという声も出ている。

さらに販売と仕入れの価格判断が、下落方向に動き出したことに対する警戒感も一部で聞かれる。もし、この背景に全体的な需給の緩みが存在しているなら、「デフレ方向」に引き戻そうという力が、久方ぶりに強まっているリスクがあるからだ。

<人手不足は物価押し上げ要因>

他方、日銀にとって好ましいデータもある。企業の人手不足感を示す雇用人員判断は18ポイントの「不足」で、先行きも人手不足の度合いが高まると予測している。

「少子高齢化による人手不足について、企業が織り込み始めている」(ニッセイ基礎研究所・シニアエコノミスト、上野剛志氏)ことが事実なら、賃金の上昇を通じて物価上昇圧力となりやすい。

設備投資も堅調さが確認された。16年度大企業・全産業の設備投資計画は前年度比マイナス0.9%だったが、大企業製造業は同プラス3.1%。麻生太郎財務相は1日の閣議後会見で、大企業製造業の設備投資が増えているのは良い傾向だとの認識を示した。

<短観受けて株価急落、一時500円安>

しかし、1日の市場は政府の楽観的な見通しとは対照的な動きを示した。日経平均.N225は前日比500円超の下落となる1万6200円台まで水準を切り下げた。

同時に市場の一角では「市場のセンチメント悪化が、今後の財政出動や日銀の追加緩和を促す可能性がある」(ニッセイ基礎研の上野氏)との思惑も浮上した。

これに対し、日銀は4日に公表される企業の物価見通しによって、期待インフレ率の失速感が明確になれば、追加緩和の検討も辞さない構えだ。

ただ、政府・与党関係者の一部には、1月のマイナス金利導入決定後に銀行株が急落し、株価全体が下押しされ、それが円高要因として指摘された記憶が、今も「生々しく残っている」(政府関係者)という。

政府・日銀がどのような情勢判断を下すのか。閣僚や政府高官、日銀幹部からのメッセージ発信をマーケットは見守っている。

(竹本能文 編集:田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/boj-idJPKCN0WY3L7

Business | 2016年 04月 1日 15:44 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
16年度相場は波乱の幕開け、業績懸念強めた日銀短観

[東京 1日 ロイター] - 厳しい2016年度相場のスタートとなった。円高は限定的だったが、日本株は大幅安。売りの背景は日本企業の業績懸念だ。この日発表された3月日銀短観で示された業績予想や想定為替レートが先行きの不安を強めている。政策催促相場になったとしても、持続的な業績拡大期待が高まらないようであれば株価の反発力は弱くなりそうだ。

<海外勢が警戒する業績下振れ>

ネガティブ・サプライズの業績予想といえるかもしれない。3月日銀短観で示された2016年度の経常利益は全規模・全産業で前年比2.2%減となった。

新年度の収益計画は、3月の日銀短観で初めて明らかになるが、1997年以降、経常利益予想が前年比マイナスで出たのは09年と14年の2回しかない。「その後下方修正されるにしても、最初はわずかでも増益の計画を出してくるはず」(国内証券エコノミスト)との期待は裏切られた。

14年度の経常利益の結果は5.9%増と増益で着地したが、今年度は業績下方修正の可能性を秘めている。3月短観で示された大企業・製造業の想定為替レートは1ドル117.46円と足元の水準から約5円の円安。1円の円高で0.5%の減益要因とすれば、2.5%の下押し要因になる。

「昨年度までと真逆だ。海外投資家は、景気や業績に下げ止まり感がある米国企業などに業績上振れを期待している一方、円安の追い風が消えた日本企業には業績下振れリスクを警戒している」(JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏)という。

1日の値下がり率2位(東証1部)はパナソニック(6752.T)の12%。同社は31日に、17年3月期が減収・減益になるとの見通しを発表、19年3月期の売上高10兆円目標も撤回した。市場の業績懸念を示した株価の動きといえる。

<日経1万5000円割れ予想も>

年初からの日本株安の要因としては、中国景気減速や原油安など海外の材料も指摘されているが、突き詰めれば日本企業の業績悪化に集約される。

足元の日経平均の予想一株利益は約1123円。前年度ピークの1275円程度からは、約150円下がったことになる。PER(株価収益率)15倍なら2250円分だ。日経平均は前年度1年間で2448円下がったが、業績悪化でほぼ説明がつく。

15年度の業績予想に関しては保守的な予想が多いとみられており、4月後半からの3月期決算企業の業績発表時点では、上方修正される可能性が大きい。しかし、今年度は円高や世界景気の減速など逆風が吹いており、減益決算の可能性が高まっている。

ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジストの井出真吾氏は15年度の1株利益の着地を1200円とみる。しかし、今年度は中立シナリオで1120円(7%減)、悲観シナリオで1038円(13%減)と予想。「悲観シナリオではPERは13─14倍に低下、日経平均は1万3500円─1万4500円がフェアバリュー」という。

<政策効果には冷めた見方>

足元の株安は政策催促相場ともいえるが、市場では「今後、景気対策が打ち出されたとしても、短期的にはともかく、中長期的な業績拡大期待は高まらない」(外資系投信)と冷めた見方も多い。

日銀がマイナス金利政策の導入を決定してから2カ月。市場の一部では、4月の追加緩和期待も高まってきているが、今回の3月短観にみる「政策効果」はまちまちだ。

金融機関の貸出態度DIが上昇し、借入金水準判断DIが低下するなどマイナス金利のポジティブ効果がみられている項目もある。しかし、利回り低下による運用難に苦しんでいる銀行業のDIはプラス16と前回比8ポイント低下。先行きはプラス8とさらに低下する見通しだ。

日銀短観の業況判断DIには金融機関は含まれないが、もし含めれば、全体の景況感はさらに悪化する。マイナス金利政策がなければ、全体の景況感はもっと悪化していたということも可能だが、日本経済をトータルにみて、マイナス金利政策の景気押し上げ効果は現時点ではそれほど大きくない。

販売価格DIから仕入れ価格DIを引いた「マージン」は先行き低下。輸入品などのコストが上昇する一方、消費環境は厳しく、業績改善期待は高まりにくい。財政政策で消費を押し上げても短期的効果しかないことは、バブル崩壊後の日本経済が示している。

アベノミクスを支えてきた企業業績に暗雲が漂い始めている。

(伊賀大記 編集:石田仁志)
http://jp.reuters.com/article/tokyo-st-idJPKCN0WY3PR


3月日銀短観、予想以上に悪化:識者はこうみる
News | 2016年 04月 1日 10:48 JST 関連トピックス: トップニュース

 

[東京 1日 ロイター] - 日銀が1日発表した3月短観は、大企業・中小企業、製造業・非製造業を問わず幅広い業種で業況判断が悪化。指標とされる大企業製造業の業況判断DIは昨年12月の前回比で6ポイントと大幅に下落して6となり、市場予想の8を下回った。

<みずほ証券 チーフ為替ストラテジスト 山本雅文氏>

企業の景況感悪化については市場の想定内だが、悪化の程度は市場予想以上に弱いものだった。

こうした結果を踏まえた景気刺激策について、為替市場はドル/円相場に影響を及ぼす可能性がある追加的な金融緩和ではなく、財政政策が採用される公算が大きいとみている。

このため、短観発表直後のドル/円は目立った反応を示さなかった。ただ、発表後に取引が始まった株式市場が株売りで反応しているため、リスク回避から若干の円買いを招いている。

現行のドル/円水準からかい離した117.46円に設定された2016年度の大企業・製造業の想定為替レートについては、ドル/円相場に直接的な影響を及ぼすものではないだろう。

ドル/円は当面111―114円をコアとするレンジ内での取引になるとみているが、今夜発表される3月米雇用統計が市場予想(非農業部門雇用者数(NFP)の伸び:20.5万人、平均時給の前年同月比2.2%増)を大幅に下回ったり、あるいは上回る結果となれば、コアレンジの下限/上限を試す展開となるだろう。

ただ、NFPと平均時給の両方が市場予想を上回る場合でも、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長のハト派発言を受けて、4月のFOMCでの追加利上げ期待にはつながりにくく、ドルの上昇は限定的なものになると考えられ、114円台に定着するのは難しそうだ。

<ニッセイ基礎研究所 シニアエコノミスト 上野剛志氏>

想定より良くない。大企業製造業DIが6で、先行きは3。非製造業も同じく22、17だった。ともに市場予想を下振れた。

発表後のドル/円は、株安もあってリスク回避的な円高が先行したが、こうした市場のセンチメント悪化が、今後の財政出動や日銀の追加緩和を促す可能性がある。政策期待に目が向けば、相場の下支えにはなるため、急激なドル安/円高の材料にはなりにくい。追加緩和のメーンシナリオは7月とみているが、ETFの買い入れ額の拡大だけなら4月もあるかもしれない。

16年度度の企業収益は、経常利益が前年比マイナス2.2%と慎重なスタートといえる。しかも前提となるドル/円レートは、大企業製造業で117.46円となった。足元は112円台前半と5円のかい離があり、相場がここから円安に向かわなければ、収益計画はさらに下振れる。

大企業製造業は機械系が総崩れとなり、円高や中国をはじめとする新興国経済の減速の影響を色濃く受けている印象だ。鉄鋼も弱い。

非製造業では、金融緩和の追い風を受けやすい建設・不動産がプラスだったが、個人消費の低迷を受けやすい小売・卸売がマイナスとなった。宿泊・飲食も相当大きく下落しており「爆買い」の下支え効果も力不足だったようだ。

需給は足元で国内外がともに弱含んでおり、販売価格もやや下振れバイアスがかかっており、景況感に響いたのだろう。設備投資もやや弱い印象だが、計画が詰まっていない春先はマイナススタートが通例のため、しばらく様子を見る必要があるだろう。

<大和証券・チーフエコノミスト 永井靖敏氏>

大企業の製造業・非製造業の業況判断DIは市場予想を下回ったほか、先行きも悪化持続を示している。新興国経済の減速や金融市場の混乱に加えて、内需も消費中心に低迷しているため、企業経営者の心理が一段と慎重になっていることが明らかになった。

また、16年度の大企業・製造業の想定為替レートは1ドル=117.46円と現在の水準に比べて5円程度のドル高・円安水準。今後の企業業績は下方修正含みだ。製造業の業況判断DIは、先行きゼロまで落ち込んでも不思議ではない。

ただ、日銀短観は、現時点で景気後退を示すほど悪い内容というわけではない。日銀が4月末の金融政策決定会合で追加緩和に踏み切る可能性は低いとみている。追加緩和は早くても、金融機関のシステム対応が進み、マイナス金利でのコール取引に厚みを増す7月ごろではないか。

安倍首相は、16年度予算の前倒し執行を指示しているが、追加景気対策は既定路線だろう。消費再増税の先送りも議論されるだろうが、リーマン・ショック後ほど、景気の落ち込みがひどくないことを踏まえると、再増税先送りの根拠に乏しい。

<三井住友アセットマネジメント チーフストラテジスト 石山仁氏>

全体的に弱い印象があるが、ある程度想定の範囲内での悪化となった。ただ、想定為替レートは今の水準と相当のかい離がある。1ドル=112円─113円で想定レートが置かれれば、減益になる企業は当然出てくる。だが今の水準の円高が持続可能かといえばそうではない。

今後の米国景気の改善と、日本のマイナス金利政策の本来の効果を考えれば、年後半にかけて117円─118円への円安進行が期待できる。今回の短観で大幅に想定レートが円高方向に変わっていれば、今年度下期に円安になることによる企業業績のサプライズが期待できたが、発射台が117円台となれば、そうはいかない。

金融機関の貸出態度判断の部分は、前回調査からあまり動きはなかったが、業種ごとに濃淡が出ている可能性もある。中小企業で若干の改善がみられたことは、前向きに評価をしていいのかもしれない。一方、製造業の販売価格判断などをみても、物価に下落のプレッシャーが掛かっている。これは日銀の追加緩和に対する期待をつなぐものとなるだろう。

今後は追加緩和の期待による円安・株高と、期待はく落による円高・株安を繰り返す可能性がある。もっとも、アベノミクスへの信頼感が落ちているなかでは、追加緩和だけでなく、財政対応や消費税引き上げの先送りなど、日銀と政府の政策が一体感を持たなければ、市場は反応しないのではないか。追加緩和で投機筋が円安・株高に持って行ったとしても、再び巻き戻しになり株安になる可能性も意識しなければならない。
http://jp.reuters.com/article/martankan-idJPKCN0WY39O


桜井日銀委員:政策は乱発すべきでないが、やるべき時はきちっとやる
日高正裕
2016年4月1日 19:26 JST

「それほど早急な判断せず落ち着いて慎重に判断していけばいい」
「これからも知恵を絞って新たな政策手段を開発すべきだろう」

日本銀行の桜井真審議委員は1日夕、就任会見で、追加緩和について「金融政策はそれほど乱発すべきものでない」としながらも、「やる時はきちっとやるべきだろう」と述べた。
  桜井委員は「景気の下振れリスクが高まっていることは事実」としながらも、「日本の経済指標は結構良いもの、悪いものが混じった状態だ」と指摘。「それほど早急な判断をするのではなく、少し落ち着いて、慎重にものを見て判断していけばいいのではないか」と語った。日銀は27、28両日、金融政策決定会合を開くが、一部で追加緩和観測がくすぶっている。
  政策手段については「政策当局として一番重要なのは政策手段を多く持ち、たくさん開発しておくことだ」と指摘。「政策手段が多ければ多いほど目標は達成しやすい。これからも知恵を絞って新たな政策手段を開発すべきだろう」と語った。
  日銀が1月に導入を決定したマイナス金利については「イールドカーブが随分早く下がった。意外なくらいに効いている」とした上で、実体経済に好影響を及ぼすには「ある程度時間がかかる」と語った。国債の買い入れについては「限界はまだまだ先の話だろう。日本の国債は短期から長期までいろいろとあるので、まだまだ余裕があるだろう」と述べた。
円はそれほど高くはないが
  為替相場については「為替は金融政策の目標にはなっていない。ただ、結果として円高是正になった」と指摘した。足元の円相場については「12年前半は1ドル=80円というのはいくら何でも高すぎるだろう。今の状況はまあ、それほどすごく高いというほどでもないような感じがする」と語った。
  一方で、「1月からわずか3カ月で7円、8円と上がってきたので、これはちょっと難しい。短期の変動はどうしてもオーバーシュートするのである程度仕方ない面もあるが、金融政策を考えれば、中長期でどれくらい安定してファンダメンタルズを反映するレートになっているかどうかが一番重要な判断の基準だろう」と述べた。
  午後7時22分現在のドル・円相場は112円28銭付近で推移している。
  同日発表された企業短期経済観測調査(短観)については「確かに悪化しているのは事実」としながらも、「設備投資はそれほど悪くなってない」と指摘。良い経済指標もあり、「そう悲観することもない」と語った。
  一方で、2017年4月に予定されている消費増税については「消費が弱くなっているのは事実」とした上で、「景気の下振れリスクが高いときは、やはりかなりハードルは高いのではないか」と述べた。
物価目標は60%くらいは達成
  桜井委員は白井さゆり氏の後任。任期は5年。1970年中央大学経済学部卒の桜井氏は76年に日本輸出入銀行に入行、旧大蔵省(現財務省)財政金融研究所特別研究員や旧経済企画庁(現内閣府)経済研究所客員研究員を歴任した。三井海上投資顧問取締役を経て2007年からサクライ・アソシエイト国際金融研究センター代表。
  会見で抱負を聞かれ、「景気は半年前に比べ、世界経済全体の成長減速に直面しているので、下振れリスクはやや高くなっている」と指摘。このような時期に審議委員に就任することになり、「大変責任重要で、身を引き締めて仕事をやっていきたい」と述べた。日銀が掲げる2%の物価目標については、原油価格の大幅な下落を考慮すれば、「だいたい物価目標の60%くらい達成しているのではないか」と述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4Y96O6KLVRP01



Business | 2016年 04月 1日 19:58 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
金融政策、ある程度サプライズ必要=桜井日銀審議委員

[東京 1日 ロイター] - 4月1日就任した日銀の桜井真審議委員は同日会見し、金融政策について「ある程度のサプライズは必要。小出しに乱発すべきではない」と語った。黒田東彦総裁による政策運営スタイルを全面的に支援する姿勢を明確にした。

2%の物価目標は「できる限り(5年間の)任期中に達成したい」と述べる一方で、景気の現状は「下振れリスクが高い」とも指摘。目標達成のため、さらなる緩和強化にちゅうちょしない姿勢を示した。

<下振れリスク高まっている>

桜井委員は過去3年間の黒田日銀による大胆な金融緩和により、「物価目標は6割達成している」が、原油価格下落などの影響で「100%達成には時間がかかる」との見解を示した。

景気の現状について「日本経済は世界経済の減速に直面しており、半年・1年前と比べて下振れリスクが高まっている」との認識を示した。

もっとも、「経済指標は良いものと悪いものが拮抗している」とし、細かな景気認識については明言を避けた。

年初来の円高・株安については「ドルが80円台であった時と比べれば、今の状況はそれほど円高でない」とも述べた。

<金融政策、乱発すべきでない>

金融政策運営については、黒田総裁体制以降の過去3年間は「きちんと前向きにやってきた効果が出ている」と評価し、期待を変える観点からも、金融政策で「ある程度のサプライズを狙うのは必要」と語った。

2%の物価安定目標は「できれば早く達成するに越したことはないが、景気の基調を崩すことなく進んだ方がいい」と指摘。これまでの政策効果が出ている中で「慎重に推移を見守り、どういう政策を採るべきか考えた方がいい」とし、「金融政策は乱発すべきものではない」との見解を示した。

<新たな政策手段開発すべき>

債券市場を中心に年間80兆円の国債買い入れが数年内に限界を迎えるとの懸念が出ているが、「限界はまだまだ先の話」と否定した。同時に「政策手段は量から広げることが必要」と指摘。「今後も知恵を絞り、新たな政策手段を開発すべき」とし、各種政策手段を組み合わせることも提唱した。

消費増税については「景気の下振れリスクが高い場合はハードルが高い」と述べた。

桜井委員は金融市場でも必ずしも知名度が高くなく、このため「首相官邸のよほど強い意向で選ばれた」(国際金融筋)との見方もある。桜井氏は任命の経緯については「自分の書いた経済分析リポートが読まれたからだろう」と述べるにとどめた。

*内容を追加しました。

(竹本能文、伊藤純夫 編集:内田慎一)
http://jp.reuters.com/article/sakurai-boj-money-idJPKCN0WY4A7


日銀短観、大企業製造業の設備投資増 麻生財務相「良い傾向」
[東京 1日 ロイター] - 麻生太郎財務相は1日の閣議後会見で、同日発表された3月調査の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)について、大企業製造業の設備投資が増えているのは良い傾向だとの認識を示した。

トップニュース, ビジネス 10:08am JSTPhoto
日銀短観は総じてプラス、石原再生相「所得と雇用環境いい」
[東京 1日 ロイター] - 石原伸晃経済再生相は1日の閣議後会見で、日銀が同日発表した日銀短観3月調査に関して「総じてみればプラスの状態を維持している」との認識を示した。



Business | 2016年 04月 1日 10:32 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
3月日銀短観は予想以上に悪化、中国減速でアベノミクス変調の兆し

[東京 1日 ロイター] - 日銀が1日発表した3月短観は、大企業・中小企業、製造業・非製造業を問わず幅広い業種で業況判断が悪化。指標とされる大企業製造業の業況判断DIは昨年12月の前回比で6ポイントと大幅に下落して6となり、市場予想の8を下回った。先行きも悪化しており、日銀では、1)中国・新興国経済の減速、2)インバウンド需要の鈍化──が響いたとみている。

全規模全産業での2015年度の経常利益見通しが5年ぶりに下方修正されており、安定した海外経済を背景に円安・株高が下支えしたアベノミクスの変調がいよいよ明確になった。

・景況感は輸出企業ほど悪化、インバウンド増勢鈍化も響く

今回もっとも悪化幅が大きかったのは大企業製造業。中国発の国際商品市況急落と需要減が直撃した鉄鋼が22ポイントと落ち込んだほか、はん用・生産用機械などが落ち込んだ。造船も市況悪化が響いた。大企業非製造業も3ポイント悪化。小売や対個人サービス、宿泊・飲食サービスの悪化が目立っており、インバウンド需要の伸びが鈍化しているためとみられる。原油価格下落で恩恵を受ける電気・ガスなどは3ポイント上昇している。

・経常利益、2011年以来の下方修正

2015年度の売上高は全規模全産業で前年度比マイナス1.0%と前回より0.5ポイントの減収見通しとなった。経常利益は4.3%の増益を見込むが、前回より1.0ポイントの下方修正。経常利益見通しの下方修正は2011年以来。

・想定為替レートは実勢より円安

大企業製造業の想定為替レートは2015年度がドル円119.80円と前回の119.40円より円安となった。16年度についても117.46円と市場実勢より円安に設定されている。

・国内、海外ともに製品・サービス需給悪化

国内での製品・サービス需給は、製造業、非製造業ともに供給超過方向に悪化した。海外での製造業の需給も供給超過方向に悪化した。

(竹本能文)
http://jp.reuters.com/article/mar-tankan-idJPKCN0WY39A

Business | 2016年 04月 1日 19:35 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
アングル:動き鈍る消費エンジン、「プチ富裕層」と「爆買い」変調

[東京 1日 ロイター] - 国内消費を支えてきた富裕層と訪日観光客の動きが鈍り始めている。年初からの株価下落が高級時計の売れ行きなどに影響、「プチ富裕層」の慎重な消費姿勢が顕著になってきた。

訪日観光客の免税売上高(インバウンド)は、客単価の減少を客数増でカバーする状況が続いており、消費拡大の原動力になってきた二つのエンジンが変調をきたしている。

1日に発表された3月の百貨店売上高速報では、各社の宝飾品・時計が前年同月比マイナスとなった。J.フロント リテイリング (3086.T)の宝飾・時計は21%減と大きく落ち込んだほか、高島屋 (8233.T)でも宝飾が6.5%減、時計が4%減となっている。

高島屋の広報担当者は「百貨店の高額品販売は、株価に対して2―3カ月遅れで連動する。年初からの株価下落により高額品の販売に影響が出ている」と分析する。昨年末1万9000円だった日経平均株価は、年初から荒い値動きとなり、4月1日現在では1万6000円付近で推移している。

こうした株安の影響は「超富裕層」ではなく「プチ富裕層」に鮮明に表れている。三越伊勢丹ホールディングス (3099.T)の三越日本橋本店では、500万円以上の時計の販売個数は前年同月と同水準だったが、100―500万円の時計の販売個数は2桁減と落ち込んだ。

三越伊勢丹HDの広報担当者は「基調として、富裕層のマインドが慎重になってきているが、背景などは分析し切れていない」としたうえで、「日本橋店で美術品は60%増。富裕層の消費がどう動くか、2・3・4月が転換点になる可能性も含め注目している」と話す。同社の3旗艦店(伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店)の宝飾・時計は3%減となった。

<免税売上は客単価減>

消費を支えるもう一方の柱だった訪日観光客による消費は、免税売上高でみると、高額品のまとめ買いから、化粧品を中心とした消耗品へと購買対象が移り、客単価が下落している。三越伊勢丹では、3月の客単価が前年同月比17%減と大きく低下した一方で、客数は30%増と伸び、結果、免税売上高は9.1%増と伸長した。

安倍晋三政権は3月31日、訪日観光客数を2020年に4000万人とし、訪日客の消費額を8兆円まで引き上げる新たな目標を設定した。こうした政府の動きがあるだけに、客数増に対する期待は大きい。

高島屋では「中国の景気減速の影響が懸念されていたが、中国の富裕層は1億人、そのうちパスポート保有は5%と言われている。まだまだポテンシャルは高い」とみている。

今年1月の三越銀座店に続き、ロッテが3月31日に銀座に空港型免税店をオープンさせた。消費税だけでなく、関税なども免税となるほか、受け渡しが空港となり、荷物を運ぶ手間も省ける。大阪や福岡など今後も計画は目白押しだ。増える観光客、そしてその消費をどのようにして取り込むか―――。消費を支える貴重な柱だけに、インバウンド獲得競争はますます激しくなってくる。

(清水律子 編集:北松克朗)
http://jp.reuters.com/article/focus-shopping-idJPKCN0WY4B6?sp=true


Business | 2016年 04月 1日 19:11 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
消費喚起へ「定率減税を」、諮問会議民間議員 骨太取りまとめへ提言

[東京 1日 ロイター] - 経済財政諮問会議(議長、安倍晋三首相)の民間議員が4日の会合で示す、骨太方針の取りまとめに向けた提言原案がわかった。

2017年4月の消費税率引き上げを控え、所得税や住民税を視野に入れた「定率減税」を含む可処分所得の増加策を柱に、消費喚起への取り組みが重要と指摘する。政府筋が明らかにした。

提言は、今年5月の取りまとめをめざす骨太方針のたたき台となる。日銀が1日発表した3月短観は大企業製造業の業況判断(DI)がプラス6と専門家の予想に届かず、景気の足踏み感が色濃い。

提言では、日本のファンダメンタルズについて、良好との認識を維持する一方、「民需に力強さを欠いている」と強調。そのうえで安倍政権が掲げる1億総活躍社会の実現に寄与する政策を重点的に盛り込み、600兆円経済に向けた道筋を鮮明にすべきと指摘する。

成長と分配の好循環に向けた基本方針としては、1)国際協調に向けG7で日本が積極的役割を果たす、2)定率減税を含む可処分所得の増加策などの環境整備、3)アベノミクスの成果の活用方針の明確化──などを列挙。

具体策として、待機児童解消に向けた保育の受け皿拡大や保育士の待遇改善、最低賃金1000円の早期実現などを掲げる。子育て支援バウチャー(クーポン)の導入で、潜在的な需要の創出にも努める案も明記する。

<結論まで曲折も>

民間議員が減税措置を提言する背景には、消費税率8%への引き上げ以降、低迷する個人消費への危機感がある。

ただ、現政権がめざす経済成長と財政健全化の両立に効果があるかは不透明なうえ、「減税すれば将来的に社会保障制度が維持できない」「20年度に基礎的財政収支の赤字を解消できなくなる」などと反発を招くのは必至だ。

政府内には「定額ならまだしも定率にする意味はあるのか。『高所得者優遇』との批判が強まるだけでは」との声も出ており、実際に導入できるか結論を得るまでの曲折は避けられそうにない。
http://jp.reuters.com/article/tax-cut-plan-idJPKCN0WY47H



Business | 2016年 04月 1日 17:43 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
GPIF新理事長「現在の枠組みで最善」、市場変動に警戒感も

[東京 1日 ロイター] - 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の高橋則広理事長は1日、就任に当たって記者会見を開き、現在の基本ポートフォリオの中で最善を尽くす考えを示した。足元では市場の動きが激しく「短期的な収支変動は避けられない」と警戒感をにじませた一方、分散投資によって安全かつ効率的な運用を目指すと強調した。

GPIFの運用をめぐっては、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会などで株式の直接投資に関する議論が進められたが、見送られる結果となった。

高橋理事長は「運用には必ず制約があるもの。今の制約の中で、長期投資家としてどの程度のリターンを出せるのか、チャレンジしていきたい」と語った。

(梅川崇)
http://jp.reuters.com/article/gpif-idJPKCN0WY40C

リスクあるが追加利下げは可能−スイス中銀のメクラー理事
Catherine Bosley
2016年4月1日 18:35 JST

スイス国立銀行(中央銀行)のメクラー理事は追加利下げについて、生じ得る副作用を踏まえ検討する必要はあるものの、可能性は排除しないとの考えを示した。
  メクラー理事はチューリヒで3月31日行われた金融専門家のイベントで、「常に、必要に応じてあらゆる選択肢を検討している。追加利下げを含めいかなる選択肢も排除しない」と語った。
原題:SNB’s Maechler Says Further Rate Cut Possible Despite Risks (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4Y506SYF01S01

ユーロ圏:3月の製造業上向く、製品価格は下落−ECBに警鐘
Jeanna Smialek
2016年4月1日 18:13 JST

ユーロ圏では3月に製造業の活動が上向いた ものの、製品価格は2009年以来の大幅下落となった。インフレ圧力が弱 く企業が値上げをしにくい状況が示された。
マークイット・エコノミクスが1日発表した3月のユーロ圏製造業 購買担当者指数(PMI)改定値は51.6と、2月の51.2から上昇し活動 拡大・縮小の分かれ目である50を上回った。3月は速報値の51.4から上 方修正されたものの、1−3月期ではここ1年で最も低い水準にとどま った。
価格の指標は欧州中央銀行(ECB)にとっての事態の厳しさを浮 き彫りにした。ECBは域内のインフレ押し上げに向け新たな刺激措置 を打ち出しているが、3月のユーロ圏インフレ率はマイナス0.1%と2 カ月連続でゼロを下回った。インフレ率は3年にわたり、ECBが目指 す2%弱の水準に届いていない。
マークイットのエコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は「製造 業のサプライチェーン内でデフレ圧力が高まっていることに当局者らは 懸念を深めるだろう」とし、「デフレ圧力は『中核国』で特に顕著で、 価格は急落している。活動はドイツで2カ月連続してほぼ停滞したほ か、フランスでは昨年8月以来の縮小となった。両国では雇用も広範な トレンドに反して純減した」と語った。
3月のドイツ製造業PMI改定値は50.7と、速報値の50.4から上方 修正された。フランスの製造業PMIは49.6だった。
原題:Prices Sag in Warning to ECB Even as Manufacturing Picks Up(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4Y4XU6KLVRM01


ロシア:10−12月GDPは前年同期比3.8%減−予想ほど縮小せず
Olga Tanas
2016年4月1日 22:46 JST

ロシア経済は昨年10−12月(第4四半期)もマイナス成長となったものの、予想ほど縮小しなかった。
  連邦国家統計局が1日発表した10−12月国内総生産(GDP)は、前年同期比で3.8%減少した。ブルームバーグがまとめたアナリスト13人の調査中央値では3.9%減が見込まれていた。7−9月(第3四半期)は3.7%減に上方修正された。
  1−3月(第1四半期)と4−6月(第2四半期)はそれぞれ2.8%減、4.5%減と、これまでの2.2%減と4.6%減からそれぞれ修正した。通年では3.7%のマイナス成長となった。
原題:Russian Economy Shrank Less Than Forecast, Enduring Crash in Oil(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4YIWR6KLVRU01


新興国株は「新たな夜明け」、クレディSは一段高を予想−チャート
David Wilson
2016年4月1日 15:48 JST

  先進国株との比較でここ数年、回復に苦戦していた新興国株が「新たな夜明け」を迎えたと、クレディ・スイス・グループのストラテジスト、アレクサンダー・レッドマン、アルン・サイ両氏が指摘した。MSCI新興市場指数とMSCI世界指数の比率は1月21日に付けた11年ぶりの低水準から3月30日までに9.8%上昇した。新興国通貨や商品相場の上昇、利益率の改善、投資信託への資金流入は一段の上昇を示していると両氏は31日付リポートで分析した。
原題:Emerging-Stock Rebound Means ’New Dawn’ to Credit Suisse: Chart (抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-04-01/O4XYWA6JIJUQ01


【インサイト】ジャンク債のデフォルト、10兆円で終わりとは限らない
Lisa Abramowicz、Rani Molla
2016年4月1日 07:03 JST

クレジットサイクルが急速に悪化しつつある状況を疑う人がいるなら、世界最大の米社債市場でデフォルト(債務不履行)の数字が上昇している様子を見るといい。
  フィッチ・レーティングスによれば、米国のジャンク(投機的格付け)債のうち今年は900億ドル(約10兆円)相当がデフォルトに陥ると予想される。これは先の金融危機以降では、最も大規模だ。社債市場の窮状の深刻さは、大手格付け会社のアナリストを含め多くの人々を仰天させ、アナリストらはデフォルトの見通しを増加方向に修正した。
  米連邦準備制度の緩和的な金融政策がリスクの高い米債の購入を促し、リスクに見合う十分な補償がない事実が時に無視される浮ついた状態が何年も続いた後、デフォルトの拡大が予想される今の状況は、投資家を冷酷な現実に目覚めさせる。また、より投機的な資産に運用担当者を駆り立てようと中央銀行が全力を挙げている欧州にも、同時に警告を発することになるだろう。
  米国の高利回り債市場が2009年末以降66%拡大し、約1兆4000億ドル規模に達していることもあって、デフォルト率が同年のピークをなお大きく下回っていることは朗報だ。

  しかし、今後1、2年でさらにデフォルトがどれだけ多く発生するかはっきりせず、基金からヘッジファンド、投資信託の投資口を購入する一般家庭の投資家に至るまで、ありとあらゆる種類の投資家が痛みを感じていることは、悪い知らせだ。ブルームバーグが最新の届け出資料をまとめたところでは、約10億ドルの負債を抱え、連邦破産法11条に基づく会社更生手続きの適用を申請した石油掘削リグメーカー、パラゴン・オフショアが発行した社債の大口保有者には、米資産運用会社ルーミス・セイレスやアライアンス・バーンスタインも含まれている。
  今後さらに痛みが待っているのは、かなりはっきりしている。今がデフォルト局面の終わりなのか、中盤なのか、始まりにすぎないと考えるべきか、ただそれが分からないだけだ。
  (このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)
原題:A $90 Billion Default Flood That May Not Be Cresting: Gadfly(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-31/O4W4WS6KLVRO01

Business | 2016年 04月 1日 14:32 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
中国統計局3月製造業PMI、50.2で予想以上に改善 人員減は続く

[上海 1日 ロイター] - 中国国家統計局が発表した3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.2で、2月の49.0から予想以上に改善し、景況拡大と悪化の分かれ目となる50を9カ月ぶりに上回った。

市場の予想は49.3で、2月から幾分改善するものの、節目の50には届かないとみていた。

2月の製造業PMIは2011年以来の低水準だったが、一部エコノミストは春節(旧正月)休暇の時期の影響で指数にゆがみが生じた可能性があると指摘していた。

また、このほど発表された1─2月の工業部門企業利益が前年同期比で4.8%増加し、昨年12月まで7カ月連続で続いていた減少からプラス転換。製造業の苦境が底打ちしたのではないかとの期待が強まっていた。

一部アナリストは、不動産市場の回復が加速し、建設活動が活発化したことでセメントやガラス、鉄鋼といった建材の需要が強まったことも今回の改善の背景にあるのではないかと指摘している。

ただ、生産指数が上昇し、国内外ともに新規受注指数が50を上回ったものの、雇用指数は依然として50を大きく下回り、工場の人員削減が進んでいることを示している。

中国ウオッチャーらは経済は引き続き低迷が見込まれるとして、中国政府や中銀による財政出動拡大や利下げの支援が必要だと指摘する。

実際、統計局のPMIよりも小さい規模の企業に焦点を当てた財新/マークイットの3月中国製造業PMIは49.7で、13カ月連続で50を下回っている。とはいえ、悪化の度合いは13カ月中で最も軽微となった。雇用指数は前月とほぼ変わらない水準となっており、29カ月連続で50を下回った。

国家統計局が同時に発表した3月の非製造業PMIは52.7から53.8に上昇した。

*内容を追加します。
http://jp.reuters.com/article/china-statistics-idJPKCN0WY3B8

金融監督当局、気候変動リスクの影響に注目

By GABRIELE STEINHAUSER
2016 年 4 月 1 日 15:14 JST

 【ブリュッセル】世界各国の規制当局は、気候変動や原油価格の急落に対処できなかった場合、金融の安定にどのようなリスクが生じ得るかについて検討を進めている。

 英イングランド銀行(中央銀行)や金融安定理事会(FSB)、欧州システミックリスク理事会(ESRB)といった監督当局は、二酸化炭素の排出規制で石油やガス、石炭の関連企業株が急落した場合、銀行や保険会社、年金基金などがどのような行動を取るかについて分析を行っている。

 監督当局が注目しているのは、こうしたエネルギー関連企業に対し、株式と債券の両市場で抱えるリスクの開示を義務付け、さらには、異なる環境条件下でのシナリオに基づくストレステスト(健全性審査)を実施したり、追加的な資本バッファーを求めたりする新たな規制策だ。

 当局が懸念しているのは、科学的な評価によると、各国政府が地球の気温上限を産業革命以前の水準から2度上回る温度にしたいと考えた場合、現在分かっている世界の石油埋蔵量の多くは今後掘削することができなくなることだ。昨年12月に合意した「パリ協定」に盛り込まれた通り平均気温の上昇を1.5度に抑えようとすれば、いわゆる「炭素予算」はさらに縮小するだろう。

 このため、太陽光や風力といった再生可能エネルギーへの転換での管理がうまくいかなった場合、石油関連会社の株が売りを浴び、エネルギー不足による経済問題が広がるのではないかとの懸念が生まれている。

 イングランド銀行のカーニー総裁は最近の講演で、「今後の展望に大規模な見直しがあった場合、それが急なものであればなおさらだが、市場は不安定化し、景気循環に沿った形で損失が発生したり金融環境の引き締まりが続いたりする恐れがある」と述べた。

 FSB議長でもある同総裁はこのところ、気候変動リスクをめぐる議論の有力な論客となっている。20カ国・地域(G20)は昨年、気候変動に関連して金融システムが脆弱(ぜいじゃく)化する可能性の範囲について、FSBに問いただした。

 これに対しFSBは、各企業が気候変動リスクを開示する際の基準を策定する作業部会を立ち上げた。初の報告書は1日に発表される。

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米国債市場、4-6月期も不安定な展開続くか
米国債市場にかかる相反する圧力が、4-6月期の相場動向予想を難しくしている

By MIN ZENG
2016 年 4 月 1 日 15:27 JST

 米国債市場では、一部の債券利回りが数年ぶりの低水準をつける中、投資家らは米国の雇用急増とのつじつまをどう合わせるか苦慮しつつ、4-6月期の荒れ相場に身構えている。

 2016年1-3月期に長期米国債利回りは四半期としては最大の低下を記録し、四半期末としては12年末以来の低水準で3月31日の取引を終えた。10年債利回りの終値は1.784%で、15年末の2.273%から大幅に下がった。これは投資家らが米国債を長く買ったままにするリスクを気にしていない様子を物語っている。

 しかし、米国経済の情勢は、債券投資家にとって10年前の住宅バブル全盛期よりもさらに多くの危険性をはらんでいると言うのがアナリスト全般の見解だ。失業率は08年以来の水準まで低下し、賃金は上向く兆しをみせており、待望のインフレ回復が始まる可能性がある。インフレは、固定された金利収益の価値を薄め、債券投資家に打撃を加える事態だ。

 こうした情勢から、4-6月期の投資行動を予想するのはかなり難しいものになっている。

 ウィリアムズ・キャピタル・グループの債券取引責任者、デビッド・コード氏は、「経済指標と債券相場のずれが実際どうなるか、解き明かすことは難しい」と指摘した。

 一部の投資家は、13年半ばに米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和(QE)縮小観測を背景として生じたいわゆる「テーパリングかんしゃく」のような債券相場の急落が今後数カ月で起きる可能性があるとみている。経済成長が上向きインフレ率を押し上げ、長期国債の売りを促し、米国債利回りが上昇するとの見方だ。

 一方、世界に目を向け、欧州と日本は金利をさらにマイナス水準に引き下げ、FRBが利上げする構えであっても米国債の需要は高まるとの見方もある。

 FRBのイエレン議長は29日、世界の成長見通しが不透明なため利上げは極めてゆっくり行うと語った。アナリストらは、こうした慎重な姿勢で米国債利回りは抑えられ続けるだろうとみている。

 だが、利回りを動かす力は上下のいずれについてもかなり強い。アナリストやトレーダーらの多くは、利回りは必ずしも経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)で左右されるものではないとして、大幅な値動きに甘んじている。

2年債と10年債の利回り差(左)、長期米国債ファンドへの資金動向(中)、1-3月期の年限別米国債運用成績(右) ENLARGE
2年債と10年債の利回り差(左)、長期米国債ファンドへの資金動向(中)、1-3月期の年限別米国債運用成績(右)
 実際、長期米国債に対する世界からの需要があまりにも強いため、2年債と10年債の利回り差は2月29日に07年12月以降では最少の0.95%まで縮小した。ヘッジファンドや資金運用担当者らが長期米国債の持ち高を積み上げているため、この利回り差は13年末の2.62%から急激に縮小した。

 長短の利回り差縮小は、先行きの景気低迷を示唆することが多いが、そうした兆しはいま見当たらない。米国の失業率は2月に4.9%となり、一部のインフレ指標はこのところFRBが目標とする2%を上回っている。

 一部の投資家は、この利回り差の急速な縮小は、米経済の下ぶれリスクを過大に見積もっている可能性があると懸念している。

 一方、利上げしても長期金利が上がらないという逆説的状況の可能性を指摘するアナリストもいる。04年6月から06年6月にかけてFRBが利上げを続けたにもかかわらず、大量の外貨準備を背景とした中国をはじめとする新興諸国からの米国債需要が利回り上昇を抑えたときのようにだ。

 だが、いまや中国からの相場支援は期待できない。米国債にとって最大の外国投資家である中国は、人民元の急落を回避するため米国債の持ち高を解消して資金化し始めており、この動きが急に終わると予想するアナリストはほとんどいない。

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https://si.wsj.net/public/resources/images/MI-CO940A_QMLED_16U_20160330185739.jpg



主要行の原油相場見通し、昨年8月以降で初の上方修正
当面は供給過剰継続が予想されるため、慎重姿勢は変わっていない
WSJが調査した投資銀行13行の原油相場の見通し

By GEORGI KANTCHEV
2016 年 4 月 1 日 17:10 JST

 主要投資銀行は原油相場の見通しを昨年8月以降初めて、やや上方修正した。ただし、慎重な見方は崩していない。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が投資銀行13行を対象に実施した調査によると、原油価格の平均予想は前月より1ドル上がった。米国の原油価格は2月につけた安値から50%近く戻している。国際指標のひとつである北海ブレント原油の今年の平均予想は1バレル=40ドルで、米国指標となるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は同39ドル。

米国ではガソリン販売が伸びている(写真はノースダコタ州の油田)

 ここ最近の上げ相場は、2014年から相場の押し下げ圧力となってきた世界的な在庫のだぶつき感が今年は後退し始めるとの楽観的な見方が背景。サウジアラビアやロシアを含む主要産油国は生産量の制限を約束した。一方、米国では自動車による移動の需要が伸び、ガソリン販売が押し上げられた。

 だが当面は供給過剰が続き、世界の在庫も増え続けると予想されるため、主要各行は相場の見通しに慎重になっている。

 ソシエテ・ジェネラルの石油市場調査責任者マイク・ウィットナー氏は「大量の供給過剰により、現在の世界的なファンダメンタルズは依然として弱い」と指摘。

 ウィットナー氏は、原油価格には圧力がかかっているとみている。その理由は、やや下向きとはいえ立ち直りの早い米国の原油生産、石油輸出国機構(OPEC)加盟各国による大量生産、さらにイランによる世界市場への段階的な回帰だ。

 カタールの首都ドーハで今月17日、OPECと非加盟産油国が増産凍結に関して協議する予定だが、合意にいたる可能性についてアナリストらは懐疑的だ。例えば、イランは長年にわたる経済制裁の影響で失った市場シェアを取り戻すため、生産量の拡大を目論んでおり、今回の話し合いには参加しない。

 また、OPEC加盟国のなかで輸出量が最大級のサウジアラビアとクウェートは今週、1日当たり最大30万バレルの生産能力を持つ共同運営の油田の生産再開を決めた。

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中国の石油会社、原油安でも従業員は安泰
ヘッジファンド、供給過剰の原油に強気に転じる
米シェールオイル業界、反撃の機会はあるか
https://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AH989_OILPOL_16U_20160331062712.jpg

 

山田厚史の「世界かわら版」
【第106回】 2016年3月31日 山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
増税見送りなら、日銀は「財政ファイナンス」責任論を免れない

中央銀行の規律は守られているか――
?渋顔が多い日銀総裁の中で、黒田東彦総裁はなぜか微笑みを絶やさない。安倍首相の勉強会・国際経済分析会合でノーベル賞学者のジョセフ・スティグリッツ氏や、ポール・クルーグマン氏と並んだ時も、笑っていた。TVに映ってニコニコ顔に「黒田さん、笑ってられる場ですか」と突っ込みを入れたくなった。世界の「賢人」は、日本経済の危うさを指摘し「消費税増税を実施できる経済状況でない」と進言し、首相は「消費増税先送り」へと動き始めた。

?日銀の見立ては「景気は緩やかに回復中」だったはずだ。それが正しいなら消費税見送りという結論にはならない。「リーマンショック級の事態が起きない限り消費増税は実施する」と首相は繰り返し言っていた。

?異次元緩和に踏み切ったのは「政府は財政健全化に努める」ことが条件だった。ところが、猛烈な勢いでお札を刷って財政赤字を埋める「日銀による財政ファイナンス」が進んでいる。後世、黒田氏は「中央銀行の規律を崩壊させた総裁」と言われるのではないか。理由は3つ。@国債バブルを発生させた。A事実上の国債日銀引き受けを行った。B中央銀行の政治的独立を放棄した。

?笑っている場合ではない。

2013年の政策アコードで
政府と日銀は財政規律を“約束”

「政策アコード」という取り決めがある。2013年、白川方明日銀総裁の日銀と政府の間で取り交わされた協定だ。日銀は国債を買い上げて金融機関に流動性(通貨)を供給する。政府は財政健全化に努め、国債の膨張を抑制する。そんな約束だった。

「市場に出回る資金を増やすため日銀は国債を買うが、政府がこれ幸いと財政赤字を膨らませたら大変、ということで念のため約束を取り交わした」

?日銀の政策担当者はそう言っていた。

「政府が財政規律を緩めることの片棒を担ぎませんよ」という日銀に、政府が「大丈夫、財政節度は守るから」と応じたのが政策アコードだ。

?そのころ日銀が買い上げる国債は年間5兆円程度だった(2012年の取り決め)。これぐらいなら財政も緩むまい、という判断だった。ところが、黒田総裁が就任すると「異次元の金融緩和」が始まり、買い入れ額は一桁上がって50兆円に膨れた。

「そんな無茶苦茶な」と金融界は驚いた。常識はずれの政策まで動員し日銀の本気を示す、ショック療法である。「インフレがやってくる」と世間が受け取れば、「今のうちにカネを使ってしまえ」と消費や投資が誘発される、というシナリオだった。

?異次元緩和は短期決戦を狙った劇薬だった。物価が跳ね上がったらさっと手仕舞い、という筋書きだったが、目論見はもろくも崩れた。だが一度手を染めた劇薬はやめられない。「有事の非常手段」が日常のオペレーションになり、それでも効かないため劇薬の処方を増やす。第二弾が2014年10月末に放たれた。50兆円が80兆円になった。目先の株価は上がったが物価に効かない。景気も冷え込んだまま。期待したトリクルダウンも起こらず、アベノミクス神話は陰りだす。そして第三弾がマイナス金利だった。

「ベースマネー」を増やせば、インフレ期待が膨らむという仮説は「的外れ」だったことが、この3年で立証された。

?劇薬の処方はもう止めたほうがいい。副作用があるからだ。

マイナス金利は赤信号
いつかは終わる「国債バブル」

?怖い副作用の典型が「国債バブル」である。満期10年の長期国債の市場金利はマイナス0.1%となった。国債金利がマイナスになるということは借金する側が利息をもらう、ということだ。財政赤字で政府は借金すればするほど得する。あり得ないことが国債市場で起きている。

?国債価格がどんどん上がっていく。満期が来たら100円で償還される国債が102円前後で買われている。非常識を絵に描いたような現実が起きている。日銀が買い上げているからである。

?こんなバカげたことはいつまでも続かない、と知りながら市場は熱狂に沸いている。バブルである。弾けるまで上昇相場に乗る。リーマンショック直前のサブプライムローンや、バブル経済に沸いた日本の不動産市場がそうだった。

?賢明な読者はお分かりと思うが、マイナス金利は国債バブルに赤信号が灯った、という警鐘である。それなのに「資金調達がしやすくなった。どんどん国債を発行して公共事業で景気対策しよう」とい声が首相周辺から上がっている。そうした風潮がバブルである。

?輪転機を回せばカネはいくらでも創れる。日銀はこれからもずっと国債を買い支えるのか。それは不可能だ。やがて日銀財政が破綻するだろう。高値で買った国債が額面価格(100円)で償還されれば差損が出る。今のペースで国債を買い上げていたら、遠からず年間数十兆円の国債が償還期を迎え、数兆円規模の損失さえ生じかねない。どこかで止めなければ日銀財務が破綻する。

?証券市場は、売ったり買ったりするプレーヤーで成り立っている。政府の介入は短期的には有効であっても、ひたすら買いだけ、しかも通貨発行権を背に、という行為は間違いなく市場を歪める。咎めはやがて国民が負うことになるのだ。

出口が見えない「財政ファイナンス」
異常な相場はハードランディングが常

?第二の副作用は財政ファイナンスである。日銀は「国債を買っているのは通貨発行量を増やすための措置であり、財政への資金供給にはあたらない」としている。それは方便に過ぎない。硬貨の裏表みたいなもので、金融政策で買い取っても、財政補填になる。

?財政法は「日銀による国債引き受け」を禁止している。戦費を国債で賄い戦後のハイパーインフレにつながった教訓が込められた「禁止規定」だ。それなのに日銀の国債買い上げが許されるのはなぜか。

?政府から直接引き受けるのではなく、銀行が保有する国債を買い取るから構わない、という理屈である。だが銀行は「媒介業者」に過ぎない。財務省から買って利益分を上乗せして日銀に売っている。事実上の日銀引き受けである。年間80兆円の買い上げは、新規の国債発行(2016年予算で34兆円)の2倍超に相当する。

?強引な買い上げは「市場のメカニズム」を破壊した。国債は大量に発行されれば引き受け手が足りなくなり、金利が跳ね上がる。調達コストが上がり発行にブレーキが掛かる、という市場メカニズムを通じて放漫財政を封じてきた。カネに糸目をつけない日銀の登場で市場による抑制機能が失われ、マイナス金利で借金ができる魔法の杖を政府は手に入れた。

?先に指摘したように「魔法」はやがて消える。その時に何が起こるのか。国債バブルで高騰した価格は反落する。異常なほど上がっているから衝撃は大きいだろう。いずれは下がる、と皆知ってるが、いつ起こるのか。それは暴落か。だれも分からない。分からないから考えたくない。上がっているうちに儲けておこう。市場参加者の多くはそんな対応ではないか。

?軟着陸のシナリオもある。日銀が買い上げのペースを緩める、市場の落ち着きを見定めながらやがて停止し、景気が良くなってきたら少しずつ売って日銀の負担を減らす。

?異次元緩和の「出口戦略」と呼ばれるものだが、言うは易く、行うは難し、である。投資家は先を読む。日銀が買い入れペースを落とせば、国債価格はこれから下がる、と見て売りが殺到するだろう。出口戦略は全く描けていない。リーマンショックやバブル崩壊のように熱狂相場はハードランディングで終止符を打たれるのが常だ。

?大型倒産、政情不安、外国発の経済危機、天変地異、テロ。何が引き金になるかわからない。ヘッジファンドなど投機筋が仕掛けることもあるだろう。日本国債の格下げがきっかけになるかもしれない。

?今のペースが続けば、2年後には政府が発行する国債のおよそ半分を日銀が保有することになるという。銀行、生命保険、年金基金などが国債を保有しているなら、その後ろに国民の貯蓄がある。日銀が持つ、ということは政府の借金が輪転機によって賄われていることに等しい。

?だから政策アコードで、日銀は「健全財政をお願いします」とクギを刺した。クギは抜けてしまったのか。

「政治から独立」のはずの
日銀総裁が去就を問われる事態

?6月の参議院選挙は、ダブル選挙になるかもしれない。首相はその前に、来年4月の消費税10%増税延期を発表する。そんな政治スケジュールが永田町で語られている。

?2014年11月と同じことが繰り返されるかもしれない。あの時は、翌年10月に決まっていたのを1年半延期し、「国民への約束を変更したことへの信を問う」と称して衆議院を解散した。その時、安倍首相は何と言ったか、以下は読売新聞に載った記者会見の記事である。

「安倍首相は18日夜、首相官邸で記者会見し、2015年10月から予定されている消費税率10%への引き上げを17年4月に1年半先送りするとともに、21日に衆院を解散する考えを表明した」

「17年4月の再増税に関しては、『18ヵ月(1年半)後にさらに延期するのではないかといった声があるが、再び延期することはない』と(安倍首相は)強調した。来年の通常国会で、増税の道筋を定めた社会保障・税一体改革関連法を改正する際、景気次第で増税を見送る『景気条項』を撤廃する方針も示した」

?首相は「景気判断で再延期するようなことはもうしません」と言ったのである。

?前回(2014年11月)は国内の経済学者やエコノミストを集め意見を聞いた。予定通りの増税を求めた専門家は少数ではなかったが首相は「延期」を強行した。

?今回は海外からノーベル賞級の学者を呼んだ。首相がお相手を務め、「あたま撮り」をTVがお茶の間に流す。結論は人選で決まる。「消費増税の延期を進言した」とメディアが伝えれば、「増税などゴメン」と思う有権者は「安倍支持」に傾く、という世論誘導でもある。

?学者たちがどんな論理でどのような分析をしたか、全体像は「非公開」。都合のいい部分だけを抜き出して菅官房長官が発表した。

?財政再建を消費税で行うことが正しいか、大いに議論はあるだろう。スティグリッツ氏は、消費を冷やす消費増税を否定し、併せて法人税減税に異を唱えた。温暖化ガスの排出に課税する炭素税を主張している。大事なのは公平な課税と適切な分配である。

?安倍政権には未来を見据えた財政論議がない。決めていた不人気政策を、自ら取り下げ「甘口政策」の是非を国民に問う。そこで約束した政策を、また取り下げ、二匹目のドジョウを狙う。頭にあるのは選挙に勝つこと。

?政治の世界はそんなものかもしれない。経済政策を預かる側はそれでいいのか。

「政治から独立」のはずの日銀総裁が去就を問われる事態である。

?2014年11月に安倍首相が「増税一年半先送り」を決めた時、黒田総裁は困惑していた、という。

「債券市場がどのように反応するか注目している」

?記者会見で、懸念を表明した。財政再建の先送りは国債の信用を低下させる。消費税先送りを受けて米国のムーディーズは日本国債の格付けを1ランク下げた。総裁は「消費税延期を残念に思った」「裏切られた思いだったようだ」と解説する人もいる。

?直前の10月31日に「黒田バズーカ第二弾」と呼ばれる金融緩和策が発表された。ここまでしたのだから、財政再建はしっかりやってほしい、という日銀の思いを込めた追加策だった、という。

?官邸は無視し「財政健全化」を先送りした。同じことがまた繰り返されるとしたら、総裁として将来に責任はとれるのだろうか。

?短期決戦で始めた戦争が長期化し、敗戦確実な状況でもやめられず、絶望的な思いで戦艦大和が沖縄に向かった情景が、マクロ経済運営に重なる。

?黒田総裁の内心は知る由もないが、苦悩を表に見せない仮面がニコニコ顔のように思えてならない。
http://diamond.jp/articles/-/88788
http://www.asyura2.com/16/hasan107/msg/171.html#c1

[経世済民107] 5人の命を助けるために1人を殺してもよいか?人工知能が殺人を犯す懸念と倫理問題(Business Journal) 赤かぶ
7. 2016年4月02日 00:02:45 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[14]

>トロッコ問題解決がなければ自動運転車の普及はない?

AIとは関係ない

単に、人がルールをどう決めるかの問題


http://www.asyura2.com/16/hasan107/msg/152.html#c7

[経世済民107] 田原総一朗「急発達するAIが人間に絶対に勝てない仕事とは」〈週刊朝日〉 赤かぶ
2. 2016年4月02日 00:08:48 : BgMZfmGIi2 : yrsuJ@BHgAY[15]

無知の極み


http://www.asyura2.com/16/hasan107/msg/154.html#c2

   

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