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信用貨幣論
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/862.html
投稿者 中川隆 日時 2020 年 5 月 05 日 21:21:32: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: ゼロ金利の問題は、実質金利は下がらないどころかむしろ上がってしまうということ 投稿者 中川隆 日時 2020 年 3 月 18 日 09:51:45)


信用貨幣論

2020年5月5日
寓話で学ぶ信用貨幣論
From 角谷快彦@広島大学医療経済研究拠点(HiHER)拠点リーダー/広島大学大学院教授
https://38news.jp/economy/15807

新型コロナ禍の経済的影響が深刻ですが、政府の対策が遅いのは、専門家を含む国民の間の「貨幣観」の相違に起因する、「政府の財政余力に対する認識の違い」が大きいためと考えられます。そこで、この度、より現実に即した「貨幣観」である「信用貨幣論(≒表見主義)」の一般向けの説明のためにオリジナルの寓話を作ってみました。まず、私の立場と貨幣観を明らかにした上で、寓話を紹介します。

私は、一経済学者として、政府は今こそPB目標を止め、国債を大量発行し、全力で国民を救うべきだと主張します。

私の発想はMMT(現代貨幣理論)にとても近く、日本政府に財政問題はないと考えます。日本政府は「何もないところから」自国貨幣を創造することができますし、実際にしています。日本で暮らす私達は日本円で税金を払いますが、日本に最初から日本円があったわけではありません。最初に政府が「何もないところから」創出したから日本円があるのです。

このことは、政府の予算執行にも表れていて、年度はじめの4月1日に政府が国会の議決を経た予算を「何もないところから」執行し、確定申告によってその年度の税収が確定する(税の払込が終わる)のは翌年の5月頃です。ですので、そもそも政府は、町内会のように集めた会費で成り立っているのではなく、「何もないところから」貨幣を生み出して供給し、その後に税金を徴収しているのです。そして、これらは仮説や意見や学説ではなく、単なる事実です。

繰り返しますが、政府は「何もないところから」自国貨幣を生み出します。確かに、会計上、日本政府の貨幣供給は「日本政府の負債」・「日本国民の資産」となるので、家計や企業のバランスシートを見慣れた私達には、この会計上の記載をもって政府は国民から貨幣を借りているように見えてしまいます。しかし、実際の政府は国民を含む他の誰かから自国貨幣を借りているのではなく、「日本政府の負債」・「国民の資産」を創出しているのです。

日本国債も日本政府が発行する貨幣の一種ですので同じです。政府が誰かから借りているわけではなく、その発行は「日本政府の負債」・「日本国民の資産」の創出です。国債は金利がつくので後者は「国民の定期預金」の創出と言った方がわかりやすいかもしれません。「国債発行=一種の貨幣供給」ですので、政府の債務は政府の貨幣供給残高が増えると大きくなります。

ちなみに、銀行もまた融資の際に「何もないところから」貨幣(いわゆる「万年筆マネー」)を生み出します。これを「信用創造」と呼びます。しかし、この場合、生み出された貸出金は「銀行の資産」・「借りた人の負債」になりますので政府が貨幣を生み出す場合と逆です。政府が自分の信用を担保にしているのに対し、銀行は借り手の信用を担保にしているからです。先程から「何もないところから」と繰り返していますが、実は「受け取ってもらえる信用」が貨幣に価値をもたせるのです。

さて、政府の財政に関する議論で、貨幣の海外流出の懸念が時に話題に上がります。しかし、日本円・日本国債は外国の個人や機関も所有することができますが、日本の貨幣は基本的に日本でしか使えませんので、外国所有分も将来的には日本で消費され、日本の資産になります。

さらに、日本は変動相場制を採用していますので、外貨準備に関する制約も少ないです。
もちろん、貨幣も必要以上に供給すればインフレになりますが、この度のコロナ禍の経済対策で議論されている休業補償や消費減税は、従来の経済水準を維持するためのものなので高インフレにはなりません。

ですので、私の主張は「政府は今こそ遠慮なく国債を大量発行し、全力で国民を救うべき」となるのです。

一方で、もうひとつの貨幣観「商品貨幣論(金属主義)」で世の中を見ると、上記とまったく異なる景色が見られます。商品貨幣論とは、貨幣が信用で価値を担保されているのではなく、貨幣そのものに価値がある(もしくは人々が慣習としてそう思い込んでいる)という見方です。アダム・スミスが賛同したため、経済学の教科書でよく見られる貨幣観ですが、現実社会では、文化人類学や歴史学の分野から近年多くの否定的考察がなされており、また1971年の米ドル紙幣とゴールドの兌換停止宣言(ニクソンショック)という歴史的事実もあります。学問としての洗練性はともかく、現実との整合性にはかなり無理があると私は認識しています。

ちなみに、経済学のモデルの多くは古くから「商品貨幣論」を前提としており、圧倒的多数の経済学者が「商品貨幣論」のメガネを掛けています。「信用貨幣論」の私はマイノリティーです。ただし、私は普段、貨幣の創造とほとんど関係のない家計や企業を中心としたミクロ経済学の研究をしているので、特に貨幣観を意識することはありません。他の経済学者もそうだと思います。ただ、政府を含むマクロについて語る時になると貨幣観の違いが大きく出ます。これに対し、ジョセフ・スティグリッツ教授がよく言う「政府の財政を家計と同一視してはいけない」という言葉に私は強く同意します。

さて、この「商品貨幣論」のメガネで見る貨幣は、ゴールドのようにその希少性が価値の裏付けになっているので、政府が新規に貨幣を供給して、貨幣量を増やすことが怖くなります。

先日、麻生財務大臣が「政府の財政を黒字化する目標(PB黒字化目標)を堅持する。そうしないと日本国債が投げ売られる」という趣旨の発言をしましたが、「商品貨幣論」のメガネを掛けると本当にこのような悲惨な光景がはっきりと想像できます。その様は、ゴールドの再出量が急に著しく増えて希少性を失った瞬間にその価値が唯の石ころ同然になってしまうように、1万円札がただの紙屑に姿を変えてしまう光景です。麻生財務大臣にはきっとこれが見えたのでしょう。

同じことは、一部の専門家やメディアでよく言われる「政府の財政赤字が続くと財政破綻する」、「財政赤字は将来世代へのツケ」、「コロナ禍に対応する財政拡大は後の増税を伴う」といったよくある言説についても言えます。

貨幣の価値が希少性によって担保されていると考えると、全体の貨幣量はほぼ一定なので、政府の負債も「誰かから借りたもの」に見えてしまいます。そして、「借りたものは返さなければ」ということで、財政破綻や将来世代へのツケという発想になり、今回のコロナ禍でも「政府の財政は厳しいのでとても全員を助けることはできない」となるのです。

2つのメガネで見る世界はこれ程異なります。私が掛けている「信用貨幣論」のメガネから「商品貨幣論」の論考を見ると「PB黒字化→国民の資産を減らすだけ」、「財政破綻→あり得ない」、「将来世代へのツケ→論理的でない」に見えます。一方、反対側から見ると「新規国債の(大量)発行→借金を増やして将来のツケを残す+このまま続ければ貨幣は紙くず化」となり、お互いに相手の意見が極端な暴論に見えるのです。

ところで、最近、この異なる「メガネ」をかける人同士がインターネット上で人格攻撃を含む壮絶な罵り合いをしているのをよく見かけます。上記のように、お互いが「相手の意見は暴論」に見えるので心情は理解できますが、ぜひとも建設的な議論に留めていただきたいと強く思います。

前置きが長くなりました。いよいよここから一般向けの「信用貨幣論」(厳密には「国定信用貨幣論」)の説明のために作った寓話です。なお、この話はWarren MoslerのSeven Deadly Innocent Frauds of Economic Policyにある「家族クーポンの話」から着想を得ています。「貨幣の信任」、「銀行の誕生」、「信用創造」、「経済成長」を通じて現実社会の「信用貨幣論」を学べます。できるだけシンプルにわかりやすくしたつもりです。


——ある家族のお話です。—–

その家の子供達は細かな不満はありましたがその家が気に入っていました。できればずっと今の家に居たいと思っていました。

ある時、お父さんが子供達に言いました。「庭の芝を刈ってくれ。そしたらお父さんのサイン色紙を2枚あげよう。洗濯、靴磨き、皿洗いをやってくれ、それぞれの仕事にお父さんのサイン色紙1枚をあげよう」

子供達「え?嫌だよ。それにお父さんのサイン色紙なんていらないよ」

お父さん「じゃあ、こうしよう。子供達は皆、毎月末にお父さんに『お父さんのサイン色紙』を5枚、お父さんに返すこと。できなかった子は地下の折檻部屋に閉じ込める」

子供達は折檻部屋に行きたくなかったのと、お父さんは約束を守るはずと信じていたので、仕事をしてお父さんのサイン色紙を集めはじめました。


(貨幣の信任)

そしてある程度サイン色紙を貯めると、子供達の間で「お父さんのサイン色紙」は貨幣として流通しはじめました。

例えば子供達の中で一番多くのサイン色紙を集める太郎は、なかなかサイン色紙を集められない花子に自分のために料理を作らせ、代金としてサイン色紙を数枚渡すと行った具合です。

しばらく経つと、子供達は集めたお父さんのサイン色紙の保管場所に困り始めました。サイン色紙は大きいし、子供達にとっては価値があるので部屋に置いておくと他の子に盗まれます。

子供達の中で一番信頼が厚く、唯一頑丈な「金庫」を持っていた太郎に他の子供達はサイン色紙を預けることにしました。

太郎は他の子供達からサイン色紙を預かり、1枚預かるごとに借用証を手渡します「借用証 お父さんのサイン色紙を1枚預かりました」。

借用証は色紙と比べて小さく、持ち運びやすかったので、やがて借用証自体が貨幣として流通し始めました。例えば次のような具合です。

二郎「腹減った。花子、ラーメン作って」

花子「いいよ。じゃあ、お父さんの色紙2枚ね。支払いはお父さんの色紙でも太郎の借用証でもいいよ」

ある時、太郎は流通する借用証の枚数は実際に預かっているお父さんのサイン色紙の枚数とほとんど関係がないことに気づきました。実際、どの子も一度預けた色紙を引き出すことはほとんどないのです。

(銀行の誕生)

すると、ちょうどいいタイミングで三郎が太郎に相談に来ます。「四郎と五郎に手伝わせて庭に野球場を作って皆から利用料を取るんだ。野球場を作るために借用証を100枚発行してくれよ。あとで101枚にして返すから」

太郎は三郎を信頼できると思いました。そして、自らの金庫の中身を確認することも、サイン色紙の預け入れをすることも何もなく、「借用証 お父さんのサイン色紙を1枚預かりました」と書いた借用証を100枚書いて三郎に渡しました。

(これがいわゆる「信用創造」。民間経済はまさにこの瞬間に成長します。)

三郎のビジネスは大成功しました。皆はそれを見て、様々なビジネスアイデアを思いついて、太郎に借用証を借り、それらを実現させて大家族の生活はとても豊かになりました。
しかし、ある年、大流行した疫病がこの大家族を襲いました。子供達の何人かは感染して働けなくなり、感染しなかった子供も感染を恐れて働くことができなくなりました。

お父さんはこの家族の危機に立ち上がりました。今、お父さんは、働けない子供達が「疫病が来る前の生活水準」を維持できるように大量の色紙にサインをしたためて渡し、子供達の毎月の支払い義務も少し減らそうと考えています。
———
(このお話は次のアナロジーです。お父さん=政府、子供=国民、お父さんの考え=休業補償&減税)

////////////////////

角谷快彦(かどやよしひこ)
1976年生まれ。広島大学医療経済研究拠点(HiHER)拠点リーダー、広島大学大学院教授。
PhD (経済学、豪州・シドニー大学)。

主著に「Human Service and Long-Term Care: A Market Model」(Routledge)、
「介護市場の経済学:ヒューマンサービス市場とは何か」(名古屋大学出版会)。
ウェブサイト:https://home.hiroshima-u.ac.jp/~ykadoya/ja/

https://38news.jp/economy/15807  

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コメント
1. 中川隆[-12723] koaQ7Jey 2020年5月07日 14:56:04 : IC9sJkmouQ : MEtrMm16cm5xY0k=[18] 報告
1999年5月4日 エンデの遺言 金融資本主義の問答。





続エンデの遺言 坂本龍一 銀行の"未来"





▲△▽▼



『エンデの遺言』松岡正剛の千夜千冊
https://1000ya.isis.ne.jp/1378.html

河邑厚徳+グループ現代
エンデの遺言
「根源からお金を問うこと」
NHK出版 2000


ミヒャエル・エンデが最後に望んでいたのは、
利子が利子を生まない貨幣だった。
そういう貨幣が使える新たな社会だった。

エイジング・マネー。
時間の経過とともに変化する貨幣。
自由貨幣、補充貨幣、スタンプ貨幣、代用貨幣。

この卓抜な発想には、何人かの先覚者がいた。
ゲゼル、ケインズ、シュタイナーである。
エンデはかれらの著作から
新たな社会経済の青写真を汲み取っていく。
かつてのNHKの番組がその余波をあきらかにする。






 この本のもとになった番組をぼくは見ていない。1999年5月4日の放送だったようだが、見逃したのではなく、知らなかった。この本によってそういう番組があったことを初めて知った。これを読むかぎり、けっこう充実した番組になっていただろうと予想する。

 河邑厚徳といえばNHKの教養番組ドキュメンタリー派の鬼才で、「がん宣告」「シルクロード」「アインシュタイン・ロマン」「チベットの死者の書」などで鳴らした人物だ。その河邑がエンデが残したたった1本のテープから番組を組み立てていったというのだから、それだけでも構想力や構成力がどんなものであるかが想像できる。もっとも書物になるにあたっては、共著者の「グループ現代」が選んだ森野栄一、村山純子、鎌仲ひとみの3人の準備力と執筆力が大きかったはずである。森野栄一についてはあとで紹介する。

 エンデが残した1本のテープというのは、1994年2月にミュンヘンの自宅で語った2時間のものらしく、それもカメラの回っていない音声録音だったようだ。その翌年にエンデは亡くなった(1995・8・28)。

 このときエンデは冒頭で次のように言っていた。

 「よろしいですか、どう考えてもおかしいのは資本主義体制下の金融システムではないでしょうか。人間が生きていくことのすべて、つまり個人の価値観から世界像まで、経済活動と結びつかないものはないのですが、問題の根源はお金にあるのです」。

 これを聞いた河邑はカメラが回っていなかったことを悔しがり、それならその声のテープに新たな映像を加えて、独自のドキュメンタリーに再浮上させようと決断したようだ。

 それからのことは知らないが、ついには本書に見るように取材先をいろいろ加え、多様な編集戦線をつくりあげていったのだろう。「あとがき」によると小泉修吉プロデューサー、村山純子ディレクターの寄与も相当なものだった。

 本書はそういう成り立ちの本であるが、実はエンデ本人をクローズアップしつづけているのではない。『モモ』や『はてしない物語』の作家としてのエンデをほとんど掘り下げてはいない。むしろエンデの周辺、エンデが影響を受けた経済思想家、エンデの衣鉢を継いだ者たち、さらには今日におけるエンデの貨幣感覚の実践者たち、そういう方面を追っている。テーマはサブタイトルにあるように「根源からお金を問うこと」、それこそが『エンデの遺言』だったのではないかということにある。

 では、ぼくの本書を読んでの感想を綴っておく。番組を見ての感想ではない。大きくかいつまんでいくが、ところどころに本書でとりあげていないエンデの作品や時代についてのことや、これまで千夜千冊してきた貨幣論や経済社会論との関係についての感想などを挟む。

 まずは、ここから話していくのがいいと思う。シュタイナー(33夜)のことだ。エンデにはどこかシュタイナーに振幅しているところがある。

 エンデが青少年期をルドルフ・シュタイナーの影響のもとに過ごしたことは、前夜に紹介した。そこでは書かなかったのだが、シュタイナーのアントロポゾフィ(人智学)には父親エドガー・エンデが傾倒していた。エドガーは「見えない世界」を油絵などにしようとしていたので、シュタイナーのみならずあれこれの神秘思想の本を読んでいた(どんな本だったか、知りたいものだ)。

 エンデはその父親より、もっとシュタイナーに近づいた。6歳でシュタイナー学校に入ったということは、シュタイナーのことをある程度知る者ならおおむね見当がつくだろうが、ほとんど生涯の価値観を決定づけるに足るものだったはずである。

 シュタイナー学校は正式には「自由ヴァルドルフ学校」という。1919年にシュトットガルトの煙草工場に付属する社営学校として開校された。工場に働く師弟が“学衆”だったので、職業学校としてスタートしたものだった。

 いまや世界各地に800校以上を数えるシュタイナー学校は、日本にも1975年に刊行された子安美知子の『ミュンヘンの小学生』(中公新書)を通して、本格的に紹介された。この本には「娘が学んだシュタイナー学校」というサブタイトルがついている。言語芸術、演劇的活動、オイリュトミー(舞踊体操=Eurhythmie)、農業活動、肥料製造、設計、デザイン、ドローイング、絵画、医療、カウンセリングなどを組み合わせた独特の学習教育をしている。ぼくもオイリュトミーの天才と言われたエリゼ・クリンクが来日したときは、なぜか記念講演をさせられた。踊りは風が翻るようですばらしく自在だった。

 ルドルフ・シュタイナー(1861〜1925)はオーストリア・ハンガリー帝国の辺境の町クラリエヴェク(現在のクロアチア)に生まれ、小さな頃から神秘的なことや幾何学的なことに異常な関心を示していた。

 10代は実業学校に通い、物理にも機械にも興味をもつとともに、レッシングやカントを読むようになった。やがてウィーン工科大学で自然科学を、ウィーン大学で哲学・文学・心理学を学んだ。その活動の出発点は22歳から携わったワイマール版『ゲーテ全集』の編集にある。ゲーテ(970夜)はシュタイナーのすべてなのである。だからドルナッハに最初のゲーテアヌムを設計開館すると(1913)、各地にシュタイナー学校が広まるとともにゲーテアヌムを併設していった。

 エンデはそういうシュタイナーに少年時代から馴染んできた。影響が少なかろうはずがない。

 そのシュタイナーに経済社会論をめぐる著作がある。おもな主張は『社会問題の核心』(人智学出版社)や『シュタイナー経済学講座』(筑摩書房)にまとめられている。おそらくエンデが熱心に読んだ本だろう。そこに「老化する貨幣」が提唱されている。

 大意、次のようなことが書かれている。

  健全な社会においては、貨幣は他人の生産した財貨の“小切手”にすぎない。その“小切手”が経済領域においてどのような財貨とも交換しうるのは、その小切手所有者が社会の生産部門の労働をして、生産物を社会に供給する責任をはたしているかぎりにおいてのことである。

 しかしいま、貨幣は生産活動の表象としての機能を失っている。こうしたときは、貨幣はその貨幣価値をその所有者に足して効能を減じていく処置をされるべきである。たとえば、貨幣所有権が一定の期日を過ぎれば、なんらかの手段で社会に還付されるようにする。本来は生産活動に投下されるべき貨幣が死蔵されないためにも、こうした方法が考案されるべきである。

 シュタイナーは貨幣に「25年ほどの期限」をもうけることを提案した。それによって貨幣価値に高低のカーブをつけ、さまざまな決済・融資・贈与のあいだで自動的な調整がおこなわれていけば、きっとオーガニックな経済社会のバランスがとれるだろうと考えた。

 これが「老化する貨幣」だ。当初の価値がしだいに減衰していくという貨幣という意味をもつ。経済学では「エイジング・マネー」と呼ばれている。「加齢する貨幣」である。時を経過するとともにその価値を変化させ、ときには衰えていく。
 そういうエイジング・マネーをミヒャエル・エンデも夢想した。

 そもそもエンデは戦火の渦中のドイツにいて、祖国のマルクが未曾有の混乱を見せつづけていたことをいやというほどに体験している。このような国家は当時はドイツのほかにはなかった。

 ナチス体制のもとで流通していたのはライヒスマルクである。しかし激しいインフレの進行でほぼ信用を失っていた。そのため敗戦直後のドイツは事実上、いまでは想像もつかないだろうけれど、“物々交換”がまかりとおっていた。なんとタバコが価値尺度と交換手段の役割をはたしたのだ(タバコはこういうときに大事なのです。むやみに禁煙運動など広げないように‥‥笑)。

 タバコのことはともかく、ドイツを占領した連合国はさすがにこの原始的現状を見て、焦った。高度な合理を求める資本主義社会では「原始的な交換」こそ最もヤバイことなのである。カール・ポランニー(151夜)の言う「社会に埋めこまれた経済」が発生してしまうからだ。

 そこで一刻も早く通貨改革を施行しようとしたのだが、紙幣の印刷をどの政府のもとでおこなうかについて、ソ連との合意が得られない。そのため全ドイツの通貨統一はあっさり見送られ、ソ連占領地区を除いた暫定通貨の導入に踏切り、紙幣の印刷をアメリカ本土が担当し、それをこっそりフランクフルトのライヒス銀行に空輸で送りこむという非常手段を決行した。

 ドイツは国民の意志とはまったく関係のない暫定通貨、いや擬似通貨とさえいいうる通貨によって、真っ二つに分断されたのだ。

 こうした事情を目の前で見ていたエンデは、貨幣や通貨というものが勝者に強く、敗者には酷(ひど)くなっていくことを実感した。また国際通貨や基軸通貨というものが資本主義と社会主義の苛烈な競争のためにのみ大手をふっていることに気がついた。

 かくてエンデは、「パン屋でパンを買うためのお金」と「株式取引所で扱われる資本としのてのお金」を厳しく峻別すべきことを、しだいに考えるようになっていく。

 このような体験をしたエンデが、貨幣や通貨のありかたに疑問をもったとしても不思議はない。エンデはNHKの番組では、こんなふうに言っている。

 私が見るところ、現代のお金がもつ本来の問題は、お金自体が商品として扱われていることです。本来、等価代償であるべきお金がそれ自体で商品となったこと、これが決定的な問題だと私は思います。お金自体が売買されるのが現代です。これは許されることなのか。そのことにおいて貨幣というもののなかに、貨幣の本質を歪めるものが入るのではないか。これが核心の問題だと思います。

 エンデは貨幣を否定しているのではない。そういうことではない。おそらくどんな思想家も革命家もエコノミストも、貨幣を否定する者なんて、めったにいるはずがない。貨幣は言語や大工道具や運送機関のように必然なのである。そのことは『貨幣と象徴』(1371夜)にも書いておいた。

 しかし、言葉づかいによっては人が傷つくように、英語教育で世界中を統一することが愚挙であるように、大工道具で手が頻繁に切断されてはならないように、尺貫法で大工が仕事をしたっていいように、小さな町を機関車が横断するべきではないように(それでは『ねじ式』の悪夢がくりかえされる)、自動車は森首相の悪ったれ息子だからといって酔ってコンビニに突っ込んではならないように、貨幣にもそれなりの使い勝手があっていいはずなのである。

 エンデはこのことを説明するのに、シュタイナーが説いた「社会有機体三層論」を援用した。

 人間の社会というものは、さまざまなレベルやレイヤーやゾーンで成立している。これをシュタイナーは大きく3つに分けた。第1には国家や法や政治のもとに生きている(法生活)。第2に生産や消費のもとに生きている(経済生活)。第3に文化や教育のもとに生きている(文化生活)。

 これらはそれぞれが相互に自律しあっている「生の領域」なのである。これを一緒くたにしないほうがいい。たとえばフランス革命は「自由・平等・友愛」を掲げたが、「平等」は政治や法が律しても、「自由」は精神や文化が担うべきであろう。もしも「友愛」を問題にしたいなら、それこそ経済における友愛が追求されるべきなのだ。

 そもそも「所得と職業」が、「報酬と労働」が一つになってしまったことが問題なのである。われわれは「働く」ということを「同胞のために働く」という場合にもいかすのだし、逆に、決まった収入を得ることと好きな仕事をもっとしたいということが一致しないことだって、しょっちゅうあることなのである。まして表現活動や冒険の旅に出ることは。

 そう、シュタイナーは主張したわけだ。社会は有機体として「法制・経済・文化」の三層になっているというのだ。ヴァルター・クグラーの『シュタイナー 危機の時代を生きる』(晩成書房)などを読まれるといい。『社会問題の核心』では次のようにも書いている。

  純粋な生産活動によって得られる収入と、すぐれた経営手腕によって得られる収益と、貯蓄によって得られる収入とは、それぞれ区別して考えるべきである。社会における資本のはたすべき役割は、個人がその能力によって発現する役割にも寄与するべきである。資本主義の問題は、資本がそのすべてを経済領域に向けすぎたことにある。むしろ本来の創造的な機能にこそ資本が機能できるようにしなければならない。

 エンデもこのようなシュタイナーの主張を継承して、経済が「自由」と「平等」を謳っていることに疑問を呈し(まさに新自由主義がその合唱のようになったのだが)、社会が分業によって成り立っているのだとしても、その分業によってすべての市場経済が許容されるべきではないし、株式経済のルールが人々を法令遵守させるべきではないと考えた。

 シュタイナーもエンデも、資本はもっと社会的なものであるということを考えていたのだ。銀行だってそうである。社会のためのソーシャルバンクがあっていい。
 しかし、そんなことがありうるのだろうか。それは夢物語にすぎないのではないか。番組では、ここでドイツにあるGLS銀行を取材する。

 「贈ることと貸すことの共同体の銀行」という奇妙な名をもつこの銀行は、預金者が自分で投資するプロジェクトを選び、同時に自分で預金の利率を決められるようになっている。たとえば有機農業のプロジェクトを促進したいと思えば、銀行が選定した有機農業ファンドに投資する。そのとき、自分で自由に利率を選ぶ。銀行側も利子の最高額の設定を通常の利率にしておいて、それ以下でもかまわない投資者を募る。その投資者が多く、その有機農業プロジェクトが成功すれば、投資者は存分なリターンが得られるわけである。

 ここまでくると、前夜にも少しふれたように、エンデがハンス・ビンスヴァンガーの『金と魔術』(1374夜)にひとかたならぬ関心をもったことは、容易に予想がつく。

 あらためて言うまでもなく、ゲーテが『ファウスト』で描いた錬金術は紙幣を勝手に印刷する近代の錬金術だったわけだが、それは連合国アメリカがドイツマルクにしてみせたことであり、ソ連がこれを無視したことに通じていた。戦勝国はたえず貨幣を牛耳ったのだ。それとともに、そのことは現代の貨幣資本主義や株式資本主義のすべての常識にもなっていったのである。ファウストとメフィストフェレスの会話は、資本主義社会にはまったく届いていなかったのだ。

 前夜にも述べておいたように、ビンスヴァンガーはのちにはエンデの『鏡のなかの鏡』にも注目した。映画化をすればきっとアンドレイ・タルコフスキー(527夜)の『ストーカー』のような作品になるような趣向だが、内容は一つのシティの祭壇から金銭価値が増殖していっているという恐怖を描いている。エンデがいつごろ『金と魔術』を読んだのかは知らないが、エンデはビンスヴァンガーに、そのビンスヴァンガーはエンデに影響されてきたのであろう。

 ビンスヴァンガーは、本書のインタヴューでは次のような発言をしている。成長と失墜をもたらす貨幣経済の根底に株式市場があることを問題視した発言だ。
 株式経済は重要な企業形態ではあるけれど、成長を基盤にせざるをえない。しかもこの経済では分配された利益配当が主題であって、株価が主人公なのである。かつ、株式経済の利潤は手元に戻ってくることを当てにした投資で成り立っている。そこに問題がある。エンデはそうした株式市場の外で動く貨幣経済の可能性を模索していたのではないか。

 いささかシュタイナーの思想に加担しすぎたかもしれないが、エンデがこのような経済思想の持ち主だったことは、これまであまり知られてこなかった。本書はエンデに対する取材を通じて、この面を取り出した。

 それでは話を次に進めよう。

 エンデがシュタイナーに続いて、いや、シュタイナーその人がその経済思想に影響されたであろうからエンデも注目しつづけた、もう一人の経済思想家がいた。それが知る人ぞ知るシルヴィオ・ゲゼルなのである(以下、シルビオ・ゲゼルと表記する)。

 ゲゼルは、ケインズ(1372夜)が『雇用、利子および貨幣の一般理論』でとりあげた「スタンプ付き貨幣」を発想したドイツの商人である(以下、スタンプ貨幣と言う)。ケインズはかなりゲゼルの影響を受けている。

 しかしゲゼルは、ケインズが言うようなたんなる商人ではなかった。革命的な経済思想家であり、画期的な貨幣論の提案者であった。むろんケインズもそれはわかっていた。ケインズは「シルビオ・ゲゼルは不当にも誤解されている。しかし、将来の人間はマルクスの思想よりもゲゼネの思想からいっそう多くのものを学ぶはずだろう」と書いた。

 ついでにいまのうちに言っておくが、実はアインシュタイン(570夜)もゲゼルにぞっこんだった。「私はシルビオ・ゲゼルの光り輝く文体に熱中した。貯め込むことができない貨幣の創出は、別の基本形態をもった所有制度に私たちを導くであろう」と褒めている。

 けれどもゲゼルは一貫して無視されてきた。何か危険な思想の持ち主だったのか。それともユートピア主義者だったのか。あるいは極左主義なのか。そのいずれにもあてはまらない。では、いったいゲゼルとは何者なのか。何がケインズやシュタイナーやエンデにもたらされたのか。スタンプ貨幣というアイディアなのか。いや、それだけではなかった。

 ともかくも、この異質な人物のアウトラインを知っておくべきだろう。本書『エンデの遺言』にもそれなりのページ数がさかれている。日本で「ゲゼル研究会」を主宰している森野栄一の執筆担当だった。

 シルビオ・ゲゼルは1862年にドイツ帝国のライン地方に生まれた。マルメディ近郊というところで、ドイツ文化とフランス文化が混じっていた。父親は会計局の役人、母親は教師。9人兄弟の7番目で、家の中ではフランス語、外に出るとドイツ語を喋った。

 16歳でギムナジウムを卒業すると、父親が公務員に就かせたいというので郵政局の職員になるが、すぐに退職してしまう。年長の兄の2人がベルリンに出ていたので、兄弟で歯科用の医療器械を扱う店を開いた。その後、語学力をいかしてスペインのマラガに赴き、ほどなく軍務に服役、その後に退役すると機械メーカーの通信員となる。アンナ・ベッカーとも婚約する。

 1886年、24歳のゲゼルはアルゼンチンに行く。兄のパウルが製造した歯科治療器具をブエノスアイレスで販売することが仕事だが、アルゼンチンはインフレとデフレを繰り返す金融混乱時代になっていた。ゲゼルはこの地でアンナと結婚し、輸入業者としての荒波をくぐりはじめた。とくに国内の不換通貨に金の価格の変動が重なって、国際為替相場が暴力的なほどに擾乱していくのを体験する。

 好調に見えた投機ブームが2年ほどたつと、アルゼンチンの経済は最悪になってきた。政府はデフレ政策をとり、金の流出と引き換えに追加的な対外債務を求めるのだが、いっこうにうまくいかない。銀行も不振に喘ぎはじめ、投資家たちは政府の債務返済猶予を認めない。すぐさま紙幣の価値が低落し、破産企業が続出すると、闇の投機が躍り、貨幣の売り買いが始まった。

 それなりの仕事をしていたゲゼルは、ここで一念発起する。ことごとく事業を整理して(段ボールプラントも仕事にしていた)、工場の売却益でラプラタ川に浮かぶ島をひとつ買うと、そこで農地を耕しつつ、理論活動に耽ったのである。こうして第1弾の『社会的国家への架け橋としての通貨改革』という画期的な論文が生まれる。インフレ期に貨幣の売買が安定するには、「指数通貨」と「自由貨幣」の両方が必要だというものだった。

 反応はなかった。しかしゲゼルは続いて『事態の本質』『貨幣の国有化』を著し、1897年には『現代商業の要請に応える貨幣の適用とその管理』を刊行して、アルゼンチン政府と経済界に問うた。反応はあいかわらず、ない。それでもゲゼルは『アルゼンチンの通貨問題』というパンフレットを作り、政界・実業界・新聞社をまわった。しかしあまりの無反応に、ゲゼルは段ボールのプラントビジネスを再開し、自分の事業の展開によって政策と通貨の問題を実験してみせた(このやりかたは、ぼくが親しい原丈人のやりかたに似ている)。

 しかし、それでもまだ反応はなかった。けれども、ゲゼルの予想はずばり当たっていたのである。物価水準を切り下げようとする経済政策はことごとく失敗だったのだ。アルゼンチン経済は1年後に破綻、4万人の失業者が街に溢れた。ゲゼルのほうはかえって財を得た。34歳になっていたゲゼルは、1900年にヨーロッパに帰ってくる。

 ヨーロッパに戻ったゲゼルはスイスを選んだ。ヌシャーテル県のレゾート・ジュネヴィに農場を購入すると、そこでみずから農民となって6年間をおくった。スイスの長い冬がゲゼルに新たな思索と表現をもたらした。

 アルゼンチン時代とちがって、ゲゼルは今度は「土地」のことを考えた。そこで最初の活動として「貨幣と土地改革」という雑誌を創刊した。「自由地」という概念もこしらえた。あいかわらず世間の反応は冷たかったが、エルンスト・フランクフルトが共感を示した。すでに『不労所得』『シルバーリバーからの手紙』といった著作をものしていた経済学者である。フランクフルトはのちにゲゼルの主要大著『自然的経済秩序』の協力者になっていく。

 ついでスイスの国営銀行法の議論に介入して、『スイス銀行の独占』を書き、1906年には『労働全収権の実現』を、続いて『アルゼンチンの通貨過剰』を、さらにフランクフルトと共著の『積極通貨政策』を刊行した。

 ここでスイスからベルリンに拠点を変えたゲゼルは、ゲオルグ・ブルーメンタールと雑誌「重農主義者」を発刊するかたわら、これまでの著作を編集再構成し、いよいよ『自然的経済秩序』をまとめていった。この主著は、日本では『自由地と自由貨幣による自然的経済秩序』(ばる出版)という大著になっている。カウツキー研究者の相田慎一の訳である。2007年に翻訳刊行されたものだが、ぼくはこれを読んでぶっ飛んだ。

 どういうふうにぶっ飛んだかは、以下のゲゼルのこのあとの事歴の紹介のところにも少しはふれるが、詳しくは次夜の千夜千冊にまわしたい。ここにはピエール・ジョセフ・プルードンが蘇っているからだ。プルードンがどういう思想家だったかということも、今夜はふれない。

 第一次世界大戦のさなかに『自然的経済秩序』は出た。ゲゼルは勇躍、1916年にはベルリンで「金と平和」を、翌年にはチューリヒで「自由土地、平和の根本条件」を、1919年にはふたたびベルリンで「デモクラシー実現後の国家機関の簡素化」を、それぞれ講演した。

 3番目の講演は「小さな政府」を提唱したものだった。しかしゲゼルはそうした驚くべき先駆性とはべつに、1917年に始まったロシア革命によるマルクス主義的な反資本主義の思想と行動に警戒を強めた。いったい社会主義や共産主義によって世界は変革されるのか。ゲゼルは以降、ボルシェヴィズムを批判し、マルクスの経済思想の限界を見極めようとする。

 思想的にマルクスを批判しただけではなかった。1919年にバイエルン共和国のホフマン政府から社会化委員会への参加が要請されると、ミュンヘンで友人のテオフィール・クリスティン、ポレンスケ弁護士らとともに「自由経済顧問団」を結成し、ギュスターブ・ランダウアーの新政府(クルト・アイスナー政府)の樹立に協力をする。ゲゼルは『自然的経済秩序』第4版の序文にこんなふうに書いている。

  自然的経済秩序は新たな秩序の人為的な組み合わせではない。分業から生まれた発展は、われわれの貨幣制度と土地制度かがその発展に対立するという障害に直面する。この障害は取り除かれなければならない。それがすべてだ。

  自然的経済秩序は、ユートピアとも一時的熱狂とも無縁である。自然的経済秩序はそれ自身に立脚し、役人がいなくとも生活する力をもっており、あらゆる種類の監督と同様に国家それ自体を無用なものとする。それは、われらが存在を司る自然淘汰の法則を尊重し、万人に自我の完全な発展の可能性を与えるのだ。

  この理念は自分自身で責任を負い、他者の支配から解放された人格の理念であり、これはシラー、スティルナー、ニーチェ、ランダウアーの理念である。

 だいぶん過激になっている。しかし、ゲゼルが新政府の財務担当人民委員に就任して1週間で、クルト・アイスナー新政府はモスクワの指示に従う共産主義者によって転覆されてしまった。これがバイエルン第二共和国である。ランダウアーは逮捕され、殺害された。

 ゲゼルは憤然として「全貨幣所有者への呼びかけ」というパンフレットを撒いた。また、国内物価水準の安定のために国際為替レートの協調会議の招待状を認(したた)めた。が、ゲゼルらは共産主義者の嫌疑をかけられ、大逆罪で告発される。

 その後、ゲゼルは高等裁判所での法廷闘争を展開、結局は釈放されるのだが、さすがに暗澹たる気分になっていた。国家というものが大逆罪によって何を仕掛けているのか、あまりにもよく見えすぎたからだ。もはや国家には脱出口はないのではないか。さすがのゲゼルも絶望したようだ。

 第一次世界大戦は終わった。しかしヴェルサイユ条約の経済政策はなんともひどいものだった。黙っていられないゲゼルは、1920年に『ドイツ通貨局、その創設のための経済・政治・金融上の前提』というパンフレットを発表する。時のドイツ銀行の総裁ハーフェンシュタインに宛てた。むろん何の対応もなかった。

 もはやドイツ一国を相手にできないと見たゲゼルは、まずは『ドイツ国民への宣言』を書き、ついで「世界貨幣」を構想した『インターナショナル・ヴォルタ・アソシエーション』を発表した。今日のIMFとは異なる国際通貨協会を創設して、どの国民通貨に対しても中立的な通貨を発行するという構想である。このときどうやら、ケインズがゲゼルに注目したようだ。おそらくシュタイナーもこのころにゲゼルの自由貨幣論に触発されて、「老化する紙幣」を発想したものと思われる。

 それならいよいよもって“ゲゼルの奇跡”が近くなってきつつあるはずだったが、もうゲゼルの余命のほうがなくなりつつあった。1927年、渾身をふりしぼって『解体する国家』を書くと、世界が大恐慌に見舞われていったさなかの1930年3月11日、69歳の誕生日を前に、ゲゼルはベルリン郊外のエデンに没した。いま、ぼくが少しずつ近づきつつある年齢だ。

 ミヒャエル・エンデがどのようにシルビオ・ゲゼルを知ったかははっきりしない。NHKの番組では、金融システムの問題を話していたエンデが、その話が華僑に入ったあたりで突然にゲゼルのことを持ち出し、取材班を驚かせたという。NHKチームはゲゼルのことをまったく知らなかったからだ。

 のみならず、エンデはゲゼルの経済思想が実践された例を持ち出した。オーストリアのヴェルグルという町のことだった。

 シルビオ・ゲゼルという人物がいて、「お金は老化しなければならない」と説きました。お金で買ったものはジャガイモにしろ靴にしろ、消費されていく。しかしその購入に使ったお金はなくならない。モノは消費され、お金はなくならない。モノとしてのお金と消費物価とのあいだで不当競争がおこなわれているのです。ゲゼルはそれはおかしいと考えたのです。ゲゼルはお金も経済プロセスの進行とともに消費されるべきだと考えたのです。

  このゲゼルの理論を実践し、成功した例があります。1929年の世界大恐慌の後のオーストリアのヴェルグルという町のことで、その町長のウンターグッゲンベルガーが町の負債と失業対策のため、現行貨幣とともに「老化するお金」を導入したのです。

 ヴェルグルはザルツブルグ近郊にある。その町で、1932年に画期的な実験がおこなわれた。世界大恐慌のあおりをくった人口5000人ほどのヴェルグルは、400人の失業者と1億3000万シリングの負債をかかえていた。そこで町は、通常貨幣とは異なった「労働証明書」という形の新しい通貨を発行し、公共事業の支払いに充てた。

 世界史上初の「エイジング・マネー」の導入だった。しかしオーストリア政府とオーストリア中央銀行は紙幣の発行は国家の独占的な権利であるので、この行為は認められないとして、ウンターグッゲンベルガー町長を国家反逆罪で起訴、すべての新紙幣を回収してしまったため、この実験はあえなく潰えた。

 ヴェルグルで発行された「労働証明書」は、ゲゼルが構想し提案した「自由貨幣」のうちのひとつの、「スタンプ貨幣」である。特定の地域で短期間にわたって使うためのものなので「地域通貨」とも「代用紙幣」ともいえる。

 ヴェルグルのスタンプ貨幣(厳密には紙券)は12カ月分の枡目が印刷されていて、そこに使用者たちがスタンプを貼るようになっている。スタンプ紙券の額面はいろいろだが、どの紙券も毎月1パーセントずつ減額していく。そのため町民は月末までに減価分に相当するスタンプを当局から購入して貼らなければ、額面を維持できない。町はこうしたスタンプ収入をさまざまな救済資金に充てたのだ。

 スタンプ貨幣は“期限のついた紙幣”であって、“減価する紙幣”なのである。使用者の“痕跡が残る紙幣”でもある。とくに「勝手に増殖しないようになっている」という最大の特色がある。

 ゲゼルは1週間で0・1パーセントずつ減価するスタンプ貨幣を提唱した。年間に換算すると5パーセントになる。これは一般の通貨レートの変動に接近した変動幅だと想定できるので、ゲゼルの構想がすぐれていたことを暗示した。


ヴェルグルで発行された地域通貨「労働証明書」

写真は5シリングのもので、裏側(下)に宣言文が記されている。

 いったいゲゼルからエンデに伝わった自由貨幣の構想は、資本主義の世の中で現実化可能なものなのだろうか。

 むろんゲゼルは可能だと考えた。ゲゼルは資本主義をよくするにはそれしか方法はないと考えていた。ゲゼルもエンデも、またシュタイナーも、お金や資本主義を廃止する必要はまったくないと考えている。むしろ現状の通貨・紙幣・資本主義がこのまま進んでいけばしだいに悪化するだろう、取り返しがつかなくなっていくだろうとみなしていた。

 どのようにゲゼルに発した自由貨幣を議論していけばいいのか、またゲゼルが「土地」を“自由地”として再解釈していったかということをどう議論すればいいのか、それを正確に語ろうとするとけっこう難しい。だから、そのことについては次夜に視点を変えて案内するとして、ここでは、こうした自由貨幣構想が各地で現実化した小さな例を、NHKの取材に従って紹介しておくことにする。

 ★1932年の早い時期、ドイツのバイエルンの石炭鉱山の町シュヴァーネンキルヘンで、鉱山所有車のヘベッカーが「ヴェーラ」という自由貨幣を発行した。ヴェルグル同様にすぐに政府が禁止したため、わずか10カ月ほどの実験だったというが、このあとドイツは経済悪化が深刻になり、ナチスが台頭してきた。

 ★1932年10月、アメリカのアイオワ州ハワーデンで30万ドルの自由貨幣が発行された。ハワーデンは人口3000人。自由貨幣は失業手当の調達に使われた。3セントの印紙を貼る方式だった。

 ★1933年、ロングアイランドのフリーポートで、失業対策委員会が5万ドルの自由貨幣を3種類の紙券として発行した。スタンプ紙幣方式だった。同じ年、アラバマ出身のバンクヘッド上院議員とインディアナ州のピーテンヒル下院議員がそれぞれゲゼル理論を咀嚼して、連邦政府に代用貨幣の発行を認めるという法案を提出、緊急時の通貨対策として承認をされたが、これは実施されることはなかった。

 ★1934年10月、スイスのバーゼルに本店をおくヴィア銀行は、協同組合銀行として経済リング「ヴィア」を開始した。そのころのスイスには5万人ほどのゲゼル派がいたらしい。その出資にもとづいて4万2000フランが資本金になった。翌年には会員3000人、年間売上は100万フランになった。1938年に“時間とともに目減りする通貨”を発行するために、「ヴィア」という経済単位での取引ができるようにした。有効期間1年で、毎月、印紙を裏に貼るようにした。理念は利用者間の相互扶助におかれたため、利子率は最低限のものだった。こうしてその取引額は1960年には1億8330万フランに達した。いまでは、スイス企業の17パーセントにあたる7万6000社がヴィア・システムに参加し、1995年以降はヴィアカードによる決済が可能になっている。

 ★1983年、カナダのバンクーバーで、コモックスのマイケル・リントンが「グリーンドル」という物やサービスを交換できるシステムLETSを始めた。地域交換取引システム(Local Exchange Trading System)の頭文字をとってLETSという。物やサービスの提供を受けたい住民が、そのつどグリーンドルという計算単位で代価を発行するしくみになっていて、口座ゼロから出発してグリーンドルを使うと口座からその分がマイナスになることでスタートできた。リントンはこのマイナス口座からのスタートをLETSへのかかわりを示す“積極的な負”とみなした。

 ★1991年、ニューヨーク州イサカで「イサカアワー」という地域通貨が誕生した。「グリーンスター」という生協型のスーパーマーケットのポール・グローバーが始めたもので、非営利の委員会でこれを管理した。1イサカアワーは10ドル。現在も使われていて、8分の1アワー、4分の1アワー、2分の1アワー、1アワー、2アワーの5種がある。表面には「ここイサカでは私たちはお互いに信頼しあっている」というフレーズが刷られ、裏面には「この紙幣は時間の労働もしくは交渉のうえでの物やサービスの対価として保証されています。イサカアワーは私たちの地元の資源をリサイクルことで地元の経済を刺激し、新たな仕事を創出する助けとなります。イサカアワーは私たちの技能・体力→道具・森林・野原・川などの本来の資本によって支えられています」と刷られている。

 ★1992年、ドイツのザクセンアンハルト州のハレ市に、「交換リンク」という仕組みが始まった。現金をまったく使わずに通帳上の中だけで物や仕事やサービスを交換するシステムで、通帳の中で交換されるのは「デーマーク」という経済単位である(1デーマーク=1ドイツマルク)。これは会員全員が見る交換可能リスト誌を媒介にして、日本にもよく見られる「売ります」「買います」の“交易”が成立すれば、あとは年会費や通帳発行料金などを収めれば、そのほか自由だった。その後、「交換リンク」はデーマーク型のものがドイツで200あまりの地域で、フランスでは「SEL」という単位の300あまりの地域が実施されている。


上図:旧東ドイツ・ハレ市の交換リング「デーマーク」

下図:交換リンクの仕組み。サービスと単位の動き。

https://1000ya.isis.ne.jp/1378.html

 ざっとではあるが、こんなふうにゲゼルの自由貨幣運動は各地に広まっていったのである。ここではふれなかったが、ドイツの「緑の党」などのムーブメントにも、つねに自由貨幣論は出入りしてきた。

 しかしながらこれらは、いまでは地域通貨論や電子マネー論の範疇で片付けられているだろう事例になっている。そうなる理由もあるのだが、ゲゼル→ケインズ→シュタイナー→エンデという系譜を考えると、その程度の議論でいいのかどうか、そろそろ問われるべきときがきているはずである。

https://1000ya.isis.ne.jp/1378.html



詳細は

ミヒャエル・エンデの世界
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/846.html

2. 中川隆[-12718] koaQ7Jey 2020年5月07日 23:02:34 : IC9sJkmouQ : MEtrMm16cm5xY0k=[23] 報告


20150317 実のお金と虚のマネー 内橋克人





エンデの遺言の話をされています。聞いてみる価値ありです。
1999年にNHKのBS1で放送された

『エンデの遺言 〜根源からお金を問う〜』
https://www.youtube.com/watch?v=Hh3vfMXAPJQ

本も出版されています。格差が広がる中で地域通貨など共生セクター・協同について考えてみる価値あるかも。1999年のNHK 番組を本にしたもの。
3. 中川隆[-12716] koaQ7Jey 2020年5月07日 23:11:26 : IC9sJkmouQ : MEtrMm16cm5xY0k=[25] 報告
「アベノミクスの成果」【事実をいえば……】

安倍政権の発足直前(2012年10月〜11月)、政府は、80円台から105円(2013年12月)への円安を生むため、30兆円のドル買いを、秘密裏に、郵貯・かんぽ生命等の政府系金融機関に、行わせています。

25円(30%)の円安目的の、「円売り/ドル買い」マネーが、米国系投資銀行に入って、ヘッジファンドから、2012年末から日本株の買い越し(5兆円規模)になり、日経平均が8,500円台だった株価が、1万4,000円に上がっています(2013年末)。

これが、「アベノミクスの成果」とされたのですから、内実は白々しいことでした。当時の当メールマガジンにも書いたことです。

通貨と株価の大きな変化には、いつも、資金量をもっとも大きくできる政府と中央銀行、および政府系金融機関が関与する原因があります。
https://www.mag2.com/p/money/911417


▲△▽▼

日本円が超円安になった理由
「アベノミクス」の正体
日本食潰す金融投機資本に貢ぐ 2013年5月17日付


安倍政府が発足して以後、「アベノミクス」と呼ばれる異次元の金融緩和や公共投資を中心とする政策が台頭し、急激な円安と株高の局面があらわれている。

昨年11月に民主党・野田政府が解散を表明した時点で8600円台だった日経平均株価は、半年たった今年5月中旬には1万5000円台まで急騰し、為替相場は1j=79円台だったものが102円台まで円安になるなど、世界的に見ても例がないほど大きな変動が起こっている。

海外投資家が時価総額のうち七割を占めている株式市場が熱狂し、さらに円安でトヨタをはじめとした輸出企業が過去最高益を上げるなど、金融緩和と為替マジックで金融資本や一部大企業がバブルに浸っている。

ところが一方で、燃油や穀物を中心に日本国内では生活必需品の価格が急騰し始めるなど、国民生活に深刻な影響が広がっている。「アベノミクス」でいったいなにが起きているのか、どうなっていくのかが重大な関心を集めている。


 
 バブルに群がる海外投資家

 この間、日経平均株価はリーマン・ショック以前と同レベルの価格まで急騰してきた。それほど好景気なわけでもなく、むしろ怒濤の首切りや製造業の海外移転を経て失業や貧困が全国的な範囲で広がり、生活実感としては悪化しているにもかかわらず、「日本株、年初から45%の上昇率」「1万5000円台回復」が叫ばれている。今後はさらに1万6000円台、1万7000円台まで上昇するとエコノミストたちが煽っている。

 しかし株式市場もよく見てみると、東証一部の約6割にあたる1000近くの銘柄が値下がりしている。株価が急騰している4割のなかでは円安効果の恩恵を受けた自動車産業や、ソニー、パナソニック、三菱電機といった企業が年初から倍近い株価をつけている。逆に株価が急落している企業としては不動産関係や、国内小売りのヤマダ電機、イオン、東芝などの企業群だ。

 東証の株式時価総額は昨年10月末には261兆円まで落ち込んでいたのが、今年4月末の段階では411兆円にまで膨れあがっている。わずか半年で150兆円がなだれ込んでいる。この半年の推移を見てみると、11月に14兆円増加し、12月には26兆円増加、1月に29兆円、2月に13兆円、3月に23兆円、4月には46兆円とすさまじい勢いで資金が流入しているのがわかる。

 このなかで投機の中心的なプレイヤーとして振る舞っているのが海外のヘッジファンドや投資家といわれ、時価総額の大半は国内資金ではなくこうした海外資金であることが明らかになっている。

サブプライム危機で行き場を失った膨大な余剰資金がヨーロッパを食い物にし、ギリシャ、スペインなど南欧諸国の国家破綻でボロもうけした後しばらくは中国や新興諸国のバブルに巣くっていたが、それも一段落ついて今度は「アベノミクス」バブルに大集結していることを反映している。


 世界3大投資家の一人であるジョージ・ソロスがわずか3カ月で970億円を稼いで

「黒田はガッツがある」

「緩やかに死に向かっていた日本市場の目が覚めた」

などと褒めちぎり、

「しかし円が雪崩のように下落する恐れがある」

などと発言する状況ができている。こうした抜け目ない守銭奴は、日本経済が低迷しているといわれた時期に底値で株式を買い取るなど仕込みを終え、現在のように素人が「株がもうかる」と思い始めるような段階には見切りをつけて売り抜けている。

カモにされるのはいつも決まって素人で、証券会社にそそのかされた年寄りや、中流世帯が巻き込まれて泣きを見ている。


 加熱する米国債の購入 日銀の金融緩和で


 国債市場は株式市場よりも規模が大きく、世界的には株式市場の3倍にもなるとされている。この間の円安で輸出企業は潤ったといわれているものの、円安そのものが国債暴落で、1j=80円の段階で例えば1万円の日本国債の価値がドルベースで換算すると125jだったのが、いまや1j=100円超えなので、その価値は100jと大幅に下落することになった。

 こんな日本国債を持っているよりは、ドル建ての米国債を購入した方が儲かるという判断が働いて、日銀が金融緩和すればするほど米国債買いが加熱して、海の向こうに資金が流れ出していくことになっている。

円建ての日本国債を売り払って円を調達し、その円を売り払ってドルを買って米国債を購入するのが流れになり、あるいは国債を売り払った資金で株式市場に投機する動きとなった。


 安倍政府、日銀による異次元の金融緩和は、米国債購入という形で吸い上げられ、あるいは国際金融資本の博打の源泉として食い物にされる仕組みになっている。

リーマン・ショック後に、米国ではFRBが気狂いじみた量的緩和を実行し、銀行群の損失処理にあたり、ヨーロッパではECBが負けず劣らずの量的緩和をやり、市場に資金を供給してきた。そうしたマネーに寄生し、バブルを渡り歩いてきたのがヘッジファンドで、熱狂した後に売り浴びせることは、過去に日本市場でも経験済みだ。


 円安でも拠点を戻さず 海外移転の大企業

 日本国内ではこの数年、大企業が円高を理由に海外移転を繰り返してきた。ところが円安になったからといって日本に拠点を戻すわけでもなく、多国籍企業のようになって出ていく。内部留保を散散貯め上げたうえで、そうした過剰な資本は国民生活の水準を引き上げるためには用いられず、より利潤の得られる後進諸国への資本輸出や進出へと向けられている。ベトナム、ミャンマーといった進出先のインフラ整備までODAで日本政府に肩代わりさせるのだから、国民の面倒は見ずにもっぱら寄生するだけの存在というほかない。

 その株式を保有しているのが米国をはじめとした海外の超富裕層や、錬金術に長けた金融資本で、人為的な円安、株高政策にせよ、TPPにせよ、日本の富を米国富裕層の個人資産に移し替えてくれる「アベノミクス」だからこそ大歓迎している。

 グローバリゼーションのもとで、かつてなく世界を股に掛けた投機が横行し、産業集約が進んでいる。金が溢れて投資先に困るほど、生産は社会化して富は増大している。ところがその金は一%にも満たない超富裕層が握りしめて離さないことから、九九%がますます貧困に追いやられ、モノが売れずに経済活動は停滞。金融が破綻すれば損失を国家に転嫁するというデタラメがまかり通っている。

 ヘッジファンドが食い荒らしている日本市場の姿と、その資金をせっせと提供している「アベノミクス」の存在が暴露されている。
http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/enyasukabudakanokagedekyuurakusurukokusai.html


安倍「官製相場」の正体。国民生活が疲弊し対米従属は加速する=吉田繁治 2016年10月20日
http://www.mag2.com/p/money/24781


2012年12月に発足した安倍内閣はアベノミクスを標榜し、株価上昇をその支持基盤としてきました。あれから約4年、いよいよ「株価政権」の総括検証をすべき時期が来ています。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2016年10月19日号を一部抜粋・再構成したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した内容(約5,000文字)もすぐ読めます。

なぜ株価は景気を反映しなくなったのか?官製相場の欺瞞を斬る

安倍首相の「スタートダッシュ」

消費税10%法案を通した野田民主党の自滅により、自民党は2012年12月、3年4ヶ月ぶりに政権に復帰しました。首相自ら「アベノミクス」と呼ぶところの、安倍政権の経済・金融政策の始まりです。

安倍首相は前回の失敗から、「スタートダッシュが肝心」と決めていました。自公政権が確実になった12年10月に明らかになったのは、
◾脱デフレの大きなマネー増発策
◾10年で200兆円の国土強靱化の公共投資

でした。日銀法を改正し、独立権を奪ってでも、マネーを増発させるという強いものだったのです。

【関連】株も不動産も奪われる! 預金封鎖よりも怖い「財産税」の傾向と対策=東条雅彦

国土強靱化は、財政赤字を200兆円分拡大して危険だ、という財務省の反対で消えました。東日本大震災の復興予算として、別途、28兆円の政府支出が必要だったからです。

マネー増発を推進するミッションを持ち、黒田総裁・岩田副総裁体制になった日銀は、異次元緩和(量的・質的金融緩和)を開始します。

量的緩和は、金融機関がもつ国債を買ってマネーを増発する政策です。質的緩和は、日銀が日経平均(株式ETF=上場投信)とREIT(不動産投信)を買いあげて、価格を上げるものです。

日銀による株買い(ETFの購入枠は6兆円/年)、これは普通、中央銀行が禁じられていることです。

恐慌の研究家である前FRB議長のバーナンキは、「日銀がケチッャプを買えば物価上がる」と言っています。あるいはヘリコプターでお金をばらまけばいいとか、ニコリともしないで異常なことを言う。

日銀が増刷した円で店頭商品を買えば、需要の超過になり物価は上がります。車を100万台(3兆円)、住宅を100万戸(30兆円)買ってもいいが、さすがにそれはできない。そこで株を買う。

日銀の株買いは迂回(うかい)して行われた

金融機関は、国債をはじめとする債券と貸付金で預貯金や基金を運用しているので、余分な現金は持ちません。

量的・質的緩和を政策にした日銀が、郵貯、年金基金(GPIF)、かんぽがもつ国債を買う。政府系金融と基金(GPIF)はそこで得た円で、日米の株とドル国債を買う。ワンクッションおいていますが、日銀が直接に日米の株を買い、米国債を買うことと同じです。

日銀は直接買うETF(年6兆円の枠)以外に、迂回路をとり数十兆円の株買いを行ったと言えます。方法はごまかしめいて姑息ですが、マネーの流れとしては露骨です。

日銀は量的・質的緩和として、円を下げ、株を上げ、インフレに誘導する「可能な手段の全部」をとってきたのです。

株価上昇は、株主の資産(東証一部時価総額511兆円 ※16年10月18日時点)を増やします。同時に企業の増資コストを下げます。資産が増えた株主は、資産効果で消費を幾分か増やします(しずくのようにわずかなのでトリクルダウンという)。百貨店で、100万円級の機械式時計が売れたのが、この資産効果です。

株価は理論的には、企業の将来の税引き後の予想純益を、期待金利(リスク率を含む株式益回り:6.6% ※16年10月18日時点)で割ったものと等価です。これが表現するのは、株価は企業の予想純益の結果ということです。

しかし多くの人々には、「株価が上がった→景気がよくなったからだ」と理解されます。下がっていた血圧が輸血で上がったから健康に戻った、と思うような本末転倒ですが、投資家と上場企業は歓迎します。支持率が上がるので、政府与党も喜ぶ。

株価が下落し、支持率も低くなった前回の反省を踏まえた安倍首相は、スタートダッシュで円安の誘導、株価の上昇に躍起になりました。円安の誘導は、輸出を増やし、株価を上げるためでした。

マネーの流れ

ヘッジファンドは保有しているドル国債を日本に売り、得た円で、出遅れていた日本株を買う。そして実は、総資金量が420兆円と日銀よりも巨大な政府系金融(現在名ゆうちょ銀行、かんぽ保険、GPIF:総資金量420兆円)は、日銀に国債を売って得た円で、米国債も買っています。

公的年金の残高139兆円(15年12月)を運用しているGPIFの、15年12月のポートフォリオ(分散投資)は、「円国債38%、国内株23%、外国債券(主は米国債)14%、外国株23%」です。

※日銀がGPIFの国債を買いあげる→GPIFは得た現金で国内株、米国債、米国株を買う→GPIFに米国債を売ったヘッジファンドはそのマネーで日本株を買う

マネー運用には遅滞が許されないので、この迂回路取引がコンピュータの中で、一瞬で起こります。

安倍政権の初年度だった2013年には、外国人(ヘッジファンド)からの15.1兆円もの巨大買い越しがありました。

外国人の売買は、東証一部の年間売買額460兆円のうち320兆円(約70%:16年7月水準)です。国内勢(金融機関と個人投資家)は、1990年のバブル崩壊後の損失の累積で資産を減らしたため売買がとても少ない。国内勢の売買は140兆円です。

他方、多くがオフショア(タックスヘイブン:租税回避地)からであるヘッジファンドの売買が320兆円です。東証はこのヘッジファンドの支配下です。

ヘッジファンドの日本株買いと、円先物売りのマネーの多くは、GPIFにおけるような迂回路をとって日銀が買い続けている、政府系金融の国債の現金化から来ています。

安倍政権前から始まっていた「官製相場」

政治相場(あるいは官製相場)は、14年10月末に発表された「日銀の追加緩和」と「GPIFの運用方針の変更」から始まったように言う人が多い。

しかし、マネーの流れを比較貸借対照表で調べると、安倍政権が始まる前の12年の10月から秘密裏に開始されています。最初は、円安介入のための30兆円の政府系金融マネーでした。

※総資金量420兆円の政府系金融3機関が、日銀に国債を売ったマネーで、米国債を30兆円買った→米国債を売ったヘッジファンドが日本株買い/円の先物売りを行った

安倍政権が確実になる前、12年9月の日経平均の予想PER(加重平均)は、1ドル80円台の円高の中で12倍付近と低かった。米国ダウのPERは15倍と3倍高かった。

上場企業(東証一部2000社)においては、輸出製造業の株価シェアが大きい。円安/ドル高になると、利益が数倍に増えます。このため、円安で日本の株価は上がり、円高で下がる基本性格があります。

通貨の低下は、普通、国力(政治力)と経済力の低下を示します。しかし日本では、ドルでは同じでも円での輸出価格が上がる。このため、上場企業の利益が増える予想がたち、株が買われます。
(注)予想PERは、株価の時価総額を次期予想純益で割った株価/収益倍率であり、株価の高さ、低さを判断するための指標です

PERが15倍なら将来15年分の、未実現の企業純益を株価が含んでいます。16年10月の日経平均の加重平均のPERは、14.3倍付近です。単純平均のPERでは18倍と高い。日経平均は、ユニクロ(ファーストリテイリング)の34倍のような高PER銘柄を含むからです。

2016年10月現在、日経平均は1万7000円付近です。米国ナスダックの予想PER(単純平均)は現在21.9倍で、バブル価格の水準です。他国をあげると、インド18.2倍、英国17倍、米国ダウ16.8倍、上海総合14.4倍、ドイツ13.3倍、ロシア6.8倍です。


円安誘導という名の「米国債買い」を実行

安倍政権誕生の2ヶ月前、1ドル77円(12年9月)だった円は、その2ヶ月前から下がりはじめ、10月に80円、11月に83円、12月には87年円と13%の円安になっています。続く13年1月に92円、2月には93円と下がり、6月には岩盤に見えていた100円も超えたのです。
(注)円安のピークは、15年6月の125.8円です。16年2月のマイナス金利以降は、逆に円高になり16年10月は104円付近です

円安は、世界の外為市場(円の売買が日量120兆円:2016年)での「円売り/ドル買い」が「円買い/ドル売り」を超過することで起きます。なぜ50%(1ドル120円)もの円安になったのか?

ここで、財務省の外貨準備($1.26兆:126兆円:16年10月)は、目立つので使われなかった。かわりに、ゆうちょ銀行、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、かんぽに、推計30兆円の「円売り/ドル買い」を行わせたのです。

前述のように、日銀がゆうちょ、年金基金、かんぽがもつ国債を買い、政府系3機関は、そこで得た円で、円安誘導を目的にしたドル債買いを実行するわけです。

さて、米国政府は、為替介入を行う国を「為替操作国」と強く非難します。しかし、円売り/ドル買いで得たドルで米国債を買うと途端に沈黙します。この理由は何でしょうか?


アメリカ政府の債務は2000兆円

米政府の総債務(自治体と社会保障の債務を含む)は、日本国債の2倍の$20.0兆(2000兆円:16年)に膨らんでいます。米国債も$15兆(1500兆円:同年)に増えています。

財政赤字は毎年、$7000億付近(16年度は$7130億)です。17年には、公的医療費($2.8兆:280兆円:12年)の増加で、赤字は$1兆を超えるでしょう。

米国の人口ピラミッドは、日本の10年遅れです。医療費では診療単価が約2.5倍高く、総額で$2.8兆(280兆円:12年)です。3.2億人の国民の、健康な人を入れた1人あたり年間医療費は$9000(90万円)です。

日本の医療費は、40兆円で1人あたり31万円/年。米国は1人あたりで3倍も多い。米国の医療費は信じられない高さです。盲腸の手術や流産で200万円とか…日本は世界的には医療費は安い。

米国政府は、この高すぎる医療費のため、日本の10年遅れで高齢者が増えるとつぶれます(ほぼ確定でしょう)。

米国は、新規国債のうち50%は、経常収支が黒字の中国と日本に売らねばならない。米国内では50%分しか買い手がない。米国は、海外からマネーを借りる構造を続けています。円でドル国債を買うことは、マネーの流れとしては米国への貸し付けです。

経常収支の赤字国は、感覚では逆ですが、資本収支では黒字になります。資本収支の黒字とは、マネーが流入することであり、現象形は、海外の金融機関が米国債、株、社債、MBS(住宅ローン担保証券)を買って、ドル預金をすることです。

わが国の民間では、国内の運用先がない三菱UFJグループ(総資産281兆円:16年6月)が、米国運用を増やしています。米国経済は、海外資金が大挙して引き揚げるとひとたまりもない。このため、米国はユーロや円より約2ポイントは高い金利を続けねばならない。


米国が利上げしなければならない本当の理由

米国が14年10月に、3回行った量的緩和(QE:$4兆:400兆円)を停止し、2015年12月にFRBが0.25%利上げした本当の理由は、金利が低いままだとドル債が売られ、海外から来たマネーが逃げる恐れがあったからです。逃げはじめてからの利上げでは、間に合わない。

米政府とFRBが、日本に金融緩和を強く勧めるのも、米国債と株を買ってもらうためです。異次元緩和にも米国への資金環流という条件がついていました。リフレ派は亡国のエコノミストに思えます

リーマン危機のあと、400兆円のドルを増発した3度のQE(08年〜2014年)でマスクされていた米国の「大きな対外不均衡」は、今も世界経済における根底の問題であり続けています。

米国の対外総債務は、$20兆(2000兆円)、対外資産を引いた純負債は$8.8兆(880兆円)と巨大です(15年末)。

一方で日本は、官民で948兆円の対外資産をもち、対外債務は609兆円です。339兆円の純資産があります(15年末:財務省)。経常収支が黒字になり、バブル経済で世界ナンバーワンと言われた1980年代以来、企業と金融機関が営々と貯めてきたものが、対外純資産になっています。

関連して言うと、中国は、公式には$2.1兆(210兆円:14年)の対外純債権国とされています。しかし、15年と16年に民間で起こった「元売り/ドル買い」に対抗して、政府が行った「元買い/ドル売り」により、今は、純債務国に転落していると推計できます。

2015年12月で$3.3(330兆円)とされている外貨準備では、銀行の持ち分と政府の持ち分が二重に計上されています。中国の4大銀行は、全部が国有です。選挙と議会制度がない共産党国家・中国の経済統計には、かつてのソ連と同じ問題があります。


ヘッジファンドによる円売り・日本株買いのカラクリ

アベノミクスとは、インフレを目標にした、

1.日銀の国債買いによる通貨増発
2.ドル買い/円売りによる円安誘導
3.政府系金融とGPIFによる日本株買いと米国債買い


です。

2%のインフレを目標にしたのは、年金・医療費・介護費(社会保障費)が年率3%(3兆円)で増え続け、それが国債の増発に繋がって、債務比率(政府総債務1277兆円/名目GDP505兆円=253%)が拡大することを防ぐためです。

分母の名目GDPが年率で3%以上増え続けないと、債務比率が大きくなり、近い将来の財政破綻が確定するからです(名目GDPの下限目標=実質GDP1%+インフレ率2%)。

仮にインフレになっても、企業所得と税収が増える中で世帯の所得が増えない場合、国民の生活は苦しくなっていきます。年金支給額が固定されている年金生活者3100万人(15年:厚労省)と、円安では企業所得が減る多くの中小企業の雇用者4100万人(06年:経産省)、合計で7200万人は、インフレで実質所得が減ります。

しかし、それらは構わない。政府にとっては、差し迫る財政破綻の防止がはるかに大切だとされたのです。


円安と株価上昇には有効だった量的・質的緩和

需要が増えることによる物価上昇に効果がなかった量的・質的緩和は、12年末から15年までの円安と株価上昇には有効でした。13年と14年の物価上昇は、円安での輸入価格上昇が主因です。世帯消費と企業の設備投資は増えていません。

東証では、年間420兆円の売買額の70%が、オフショアからのヘッジファンドによるものです。国内の個人投資家と金融機関は、90年からのバブル崩壊、00年のIT株崩壊、08年9月からのリーマン危機で3回の大きな損失を被ったことから、売買額が30%に減っています。

個人投資家700万人の多くは、上がるときは損失を回復するため売り越す、下がるときは難平(なんぴん)買いで買い越すという行動を取ります。


2012年末以降の日本株式市場の売買構造

このため、わが国の株価を決めているのは、70%のシェアになったヘッジファンドの売買です。


1.ヘッジファンドが買い越せば上がり、売り越せば下がる

2.下がっては、政府と投資家が困る

3.ヘッジファンドが売り超になると、3つの政府系金融(総資金量420兆円)と日銀(同459兆円:16年10月)が買いをいれる

という単純な基本構造が、2012年末から2016年10月まで続いているのです。

しかし2016年は、政府系金融と日銀の買いに対する株価上昇の反応が鈍い。この理由は、

1.アベノミクスによる株価上昇が政治相場(または官製相場)であることを皆が知った

2.このため二番目に大きな売買シェアを持つ個人投資家(700万人)が、政府系金融に追随した買いを入れなくなった

ことにあります。


米国の後追い。2015年から日本でも自社株買いが増加している

1日平均売買額が2.9兆円(15年平均)だったものが、2.3兆円(16年7月)に減った現在の東証一部で、大きく増えているのは自社株買いの4.3兆円です(16年1月〜9月)。

これは、事業法人の買い超に含まれます。年間では5.7兆円の買い超になるでしょう(13年1.5兆円、14年2兆円、15年3兆円)。

自社株買いは、市場で流通する株式数を減らします。会社利益は同じでも、1株あたり利益は上がったようになり、株価も上がります。タコが自分の足を食べることに似たこの自社株買いは、上場大手企業が留保利益で将来投資をせず銀行預金として貯まった、現金100兆円で行われています。

自社株買いでも、買いが増えれば株価は上がるので「株価上昇という形の株主配当」とされています。経営者が株主サービスとして行うのです。問題は、自社株買いは、いつまでも続けることはできないことです。

米国の2012年以来の自社株買いは、とても大きい。16年の第一四半期で$1820億(18.2兆円)です。年間では73兆円という巨額です。米国では、日本よりはるかに個人株主の要求度が高い。株価が1年も下がり続ければ、資産を失った株主により、株主総会で経営者が追放されます。

このため、経営者は米国FRBの量的緩和と、わが国と同じ将来投資の少なさから滞留したキャッシュフローで、年間73兆円もの自社株買いで事実上の減資をしているのです。

時価総額で世界一のアップル($6091億=60兆円:16年9月)は、社債を発行しゼロ金利マネーを得て、それで巨額の自社株買いを行っています。米国のダウやナスダックの大手企業の株価は、大きな自社株買いで20%から30%は高値になっているでしょう。

本稿執筆時点のダウは1万8161ドル、ナスダックは5243ポイントで史上最高値圏です。過去10年の純益を元にしたシラーP/Eレシオ(26.6倍:16年10月)が示すように、数十%のバブル性があると見ることができます。株価維持のために膨らみすぎた自社株買いの減少があれば、下がります。

自社株買いは、政府主導の官製相場と同じく、3年も5年もと続けることはできません。事実、2016年は米国の自社株買いはピークアウトして、今後は減少する傾向も見えます。

米国の自社株買いの傾向に注目してください。これが減ると、米国株は下がります。米国株が下がると、日本と欧州にも即日に波及します


株価が景気を反映しなくなった理由

ポートフォリオ投資とHFT(超高頻度売買)を組み合わせた売買シェアが、60%まで増えています。10年代の国際金融は、ネットワークで、リアルタイムに連結されているからです。

世界中の国債や株の売りも買いも、コンピュータ画面で一瞬です。株と債券の金融市場は、インターネットで変容しています。売買を叫ぶ「場立ち」があった「のどかな市場」ではない。

それでなくても、わが国の日経平均は米国ダウの子供です。米国株を売買しているヘッジファンドがポートフォリオ(分散投資)で、日本株をたとえば12%と一定割合にしているからです。米国株が下がると、ポートフォリオの中の米国株が減少します。かわりに、12%枠と決めている日本株の構成比が上昇します。これでは日本株の下落リスクが大きくなる。

株価罫線を分析するトレンド理論(傾向理論)とは違う、ランダムウォークの理論では、向こう3ヶ月で10%上がる確率があるときは、10%下がる確率も同じです。このため、ポートフォリオでのリスクが、コンピュータが自動計算する数値で大きくなる。

従って、米国株が下がると日本株を売って減額調整するプログラムが組み込まれています。ヘッジファンドのほとんどの売買で行われているHFT(超高頻度売買)がこれです。人間は関与せず、現物・先物・オプションの売買を組み合わせ、瞬時に売買が行われます。

ファンドマネジャーの関与は、ポートフォリオの割合(パラメータ)を変えるときです。以上の売買構造が増えたため、日米の株価の動きは同時化します。日米だけではない。

世界の株式市場(時価総額6000兆円:世界のGDPの1倍)が、ほとんど瞬間連動して動きます。基礎的な経済指標によるファンダメンタル理論(端的に言えば、景気がよくなると株価が上がる)は、ほとんど関係がなくなっているのです。
http://www.mag2.com/p/money/24781


▲△▽▼

日経平均株価が上がる程、日本人はどんどん貧しくなっていく

アダム・スミス2世の経済解説  2015-05-10
アベノミクスがもたらした株価上昇による100兆円の損失
http://stockbondcurrency.blog.fc2.com/blog-entry-184.html

アベノミクスの評価は、現時点においてもさまざまである。その中で多くの人たちが認める功績は、株価を上昇させたことであろう。アベノミクスの否定論者でも、アベノミクスは株価を上昇させたこと以外にメリットは存在しないという評価を下す人は多い。

今回は、アベノミクスが株価上昇により巨額の損失を日本経済に与え、最近ではその累計額が100兆円にまで到達したという事実を説明する。


現在、日本で使われている日本の純資産に相当するものは、国民経済計算ベースでの国富(=正味資産)である。

現在、国ベースでどれだけ資産を増やした、あるいは減らしたかを認識できる統計は、国民経済計算ベースの国富しか存在しない。


国富のグラフ
http://stockbondcurrency.blog.fc2.com/img/20150510172757912.gif/


国富の大半は非金融資産である。それ以外は、金融資産の一部である対外純資産だけである。国富の大半をしめる非金融資産が減少傾向を示している最大の原因は、地価の下落である。対外純資産は増加傾向にある。

国富には、対外純資産以外の金融資産が存在しない。これは、金融資産が存在すれば、必ずそれに等しい金融負債が存在していると国民経済計算では考えるからだ。この場合、株価が上昇しても、株価の時価総額の増加額に等しい金融負債が増加していると考えるのである。

この考え方に基づけば、アベノミクスの結果株価が上昇しても、プラスは発生しない。株価の時価総額と同金額の金融負債が同時に増加すると考えるからだ。株式保有金額の増加額のうち海外投資家による日本株保有分については、海外投資家の資産増加と、国内部門の負債の同金額の増加が発生すると考える。

これを日本から見れば、国内の負債の増加分と同金額の国内資産が増えているのではなく、同金額の対外負債の増加だけが発生していると見える。

対外負債の増加であるから、対外純資産の減少、すなわち国富の減少を意味する。

日本の株価が上昇すればするほど、資産は増えず、対外負債だけは増加し、対外純資産と国富は減少する。


2014年末における投資部門別の株式保有金額(上場株だけが対象)を表すグラフを下記に示す。


投資部門別保有金額
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2014年末における最大の大株主は海外投資家であり、その金額は165兆円、全体の31%を占めていた。

次に、アベノミクス相場の開始以降、上記の株式保有金額がどれだけ増加したかを表すグラフを下記に示す。


投資部門別保有金額の増加額
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アベノミクス相場の開始日は、野田前総理が衆議院解散を明言した2012年11月14日である。しかし、その日からの統計は存在しないので、代わりに2012年9月末を基準にした。保有金額にだいたいは比例しており、海外投資家による株式保有金額の増加額が95兆円と一番大きい。

次に、アベノミクス相場開始以降の投資部門別の売買状況を表すグラフを下記に示す。

投資部門別売買
http://stockbondcurrency.blog.fc2.com/img/201505101728224f6.gif/


このグラフの起点も、2012年9月末にした。見てわかるとおり、買いの大半は海外投資家である。2014年から公的資金が買い始めたので、信託銀行が少し買い越しになっている。最大の売り越し主体は家計、すなわち個人である。

次に上記の2つの表で示される金額の差を表す投資部門別の調整額というグラフを下記に示す。

調整額
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調整額の定義は、資産の変動金額と売買金額の差である。具体的には、調整額の大部分は株価の値上がり益であり、かなり広い意味ではあるが統計上の不突合が一部に含まれている。最大の大株主である海外投資家が一番大きな株価の値上がり益を獲得している。

最初に示した国富の中の対外純資産は、フローベースでは「経常収支+資本移転等収支」の累積金額になる。一方、ストックベースではそれ以外のさまざまな資産価格の変動の影響を受ける。さまざまな資産価格の変動の中で最も寄与度が高いのは、為替レートと株価の変動分である。

日銀の資金循環統計ベースの対外純資産は、2012年9月末の277兆円から、2014年12月末の376兆円まで98兆円の増加となっている。このうち、海外投資家の日本株投資残高は、先のグラフで示したとおり95兆円、うち買越金額は20兆円、調整額、すなわち株価の値上がり益は75兆円である。

海外投資家は日本の株価上昇により、75兆円前後の値上がり益を獲得した。このため、日本の株価が2012年9月と2014年末が同じであったと仮定するならば、対外純資産は376兆円より75兆円多い451兆円になっていたはずである。

株価が上昇したがために、75兆円もの対外純資産と国富が減少したことを意味する。

株価上昇によって海外投資家が獲得した75兆円の調整額は、2014年末の金額である。2015年に入ってからも、日本の株価は上昇している。

ここで海外投資家の保有株式金額はTOPIXと同じ動きをすると仮定する。この仮定に基づいて、2014年末からの海外投資家の日次の調整額累計を表すグラフを下記に示す。


海外投資家の調整額
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少しばかりの仮定をおいて算出される累積調整額は、2015年4月22日に100兆円に到達した。

この金額は、アベノミクス相場開始以降、日本の株価上昇によって失われた国富の金額にほぼ等しい。

アベノミクスによる株価上昇が原因で失われた国富は、4月22日についに100兆円に到達してしまったのである。


アベノミクス相場の開始以降の株価上昇による(上場株だけから発生した)国富の損失100兆円という数字は、多少の誤差があるとしても、ほぼ正しい金額である。


株価上昇はアベノミクスの最大のメリットというのは正しくない。国民経済計算という有力な会計基準を使った場合、アベノミクスは、株価上昇の結果として日本の国富を100兆円も失わせた。

アベノミクスがもたらした株価上昇の結果は、大変大きな利益ではなく、100兆円という巨額の国富の損失であったという観点が存在することは重要であり、この事実を忘れてはならない。

最後に、100兆円の巨額の損失が発生してしまった原因とその対策を記すことにする。
 

政府・日銀の犯罪的な政策について

日本企業の株というものは、日本国民にとっての大変貴重な財産である。それに対して政府・日銀が過去にとってきた政策は、1989年12月29日の高値38,915円から2009年3月10日の安値7,054円まで、19年強の期間、最大で82%も日経平均株価を下落させたことである。

そして、国内投資家に、株価はもう上がらないという非常に強い予想、期待、確信と、株価が戻れば売らなければならないという非常に強固な信念を抱かせてしまった。そして、1991年以降、結果として取引所という流通市場だけで92兆円、発行市場も含めた国際収支ベースでは114兆円もの日本の現物株を国内投資家が海外投資家に安値で売り渡すことになってしまった。

これは犯罪的とも言えるレベルの政策である。アベノミクス相場が始まってからも、国内投資家は取引所という流通市場だけで20兆円の現物株を海外投資家に売り渡しており、犯罪的な政策は是正されていない。


これ以上海外投資家に株を売り渡せば、株価上昇と並行して増える損失がさらに拡大する。過去の政策があまりにも犯罪的すぎた。

株価が2万円前後にまで戻っても、国内投資家がまだ海外投資家に大量に株を売り渡し続けているという現状は異常である。過去における政府・日銀による犯罪的な政策を容認し、現在の異常な状態を異常と思わない人が多すぎることは、大問題である。
http://stockbondcurrency.blog.fc2.com/blog-entry-184.html
 

4. 中川隆[-12713] koaQ7Jey 2020年5月07日 23:26:04 : IC9sJkmouQ : MEtrMm16cm5xY0k=[28] 報告
元日銀参事・岩村充氏があぶりだす「黒田バズーカ」の本質 注目の人 直撃インタビュー
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/272617
2020/05/07 日刊ゲンダイ

 2013年4月に始まった日銀の異次元金融緩和。丸7年、吹かし続け、27日、国債買い入れ上限撤廃というさらなる追加緩和が決まった。だが、黒田バズーカは、本当に経済成長をもたらしたのか。長期の緩和やゼロ金利によって、誰が得をして誰が損をしたのか――。元日銀マンが本質をあぶりだす。

  ◇  ◇  ◇

 ――異次元金融緩和から7年が経過しました。どう評価されますか。

「現金を出すぞ」と言ったら、景気は良くなるというシナリオのもとに動いてみたが、まったく結果を出せなかったということでしょう。中央銀行が貨幣量を増やすぐらいでは人の心は変わらなかった。マーケットの方が賢かったということです。「黒田緩和」の問題は、うまくいかなかった時にどう戻るかを考えずに、ひたすら突っ走ったというところに尽きます。もっとも、コロナで当面、戻る必要はなくなり、黒田緩和の是非を問う意味もなくなってしまった感じですが。


中央銀行は経済成長のエンジンにはなれない

 ――金融政策の限界を実証した。

 金融政策とは、金利ゼロの中央銀行券とそこそこ金利がある国債を交換することだと言えます。ですから、どちらもゼロになったら金融政策は効きません。そもそも、経済を成長させるための金融政策という考え方が間違いなのです。経済成長のエンジンは人口増とか技術進歩などの経済の基本条件から生まれてくるもの。金融政策はアクセルやブレーキ役はできても、成長のエンジンそのものではありません。中央銀行が経済を背負っていると考えるのは思い上がりの一種です。

 ――日本だけでなく、米国、欧州の中央銀行もずっと低金利政策や金融緩和を続け、経済成長を導こうとしてきています。

 19世紀後半から20世紀は世界的にまれに見る経済成長の時代でした。私的所有権が確立され、技術進歩にも画期的なものがあった。その中で国民国家、民主主義、中央銀行、株式会社などの「仕掛け」が世界標準になったのです。今、経済成長が頭打ちになり、そこで機能する新しい仕掛けが見つからないなかで、中央銀行と政府の区別がつかなくなっています。中央銀行と政府の役割分担は、19世紀後半から20世紀の成長の時代に作り上げた「二分法」ですから、成長が止まったら溶けてしまうのは仕方がない気がします。

 ――今後も20世紀のように経済成長が続くわけではないと。

 続かないでしょう。経済成長が当然だと思うと、皆の期待ほど経済成長していないと、政府は何とか成長を加速しなければと考える。そこで、中央銀行が低金利政策、金融緩和を続けることになるのです。

 ――低金利政策の長期化で何が起こりましたか。

 株式投資とそれ以外の資金運用の間で大きな格差が生じてしまいました。金利が下がると、企業は借金や社債など資金調達の利払いが抑えられ、株主への配当をどんどん厚くします。経済成長がゼロ、うまくいっても2%の時代に、株主資本に対する当期純利益の割合を示すROE(自己資本利益率)について「8%が国際標準だ」という話が大手を振って通るんですから呆れた話です。企業は必死に株主優遇競争を展開し、それを国家と中央銀行が全力で後押しするというのが今の世界なのです。そのしわ寄せを受けるのが、一般の預金者なのです。

 ――株式投資をできる人と普通の預金者の格差ですね。

 黒田総裁もパウエルFRB議長も格差を拡大させようと思って、金融政策をやっているわけではないでしょう。しかし、金融政策自体が富の分配でもあることに気をとめないようでは専門家失格です。成長エンジンが失われている状況で、ともかく経済成長しようという金融政策が結果として格差をつくっているからです。無理な金融緩和で格差づくりに関与してしまったという点では、責任は黒田総裁だけでなく、白川方明前総裁やその前任者の福井俊彦元総裁も同じなのですが、白川や福井は、今は低い金利に抑えるけれどもいずれ取り返すよという考えだったと思います。しかし、黒田総裁には、いずれ巻き戻すという考えはないようです。だから、ずっと格差が拡大するし、それを他人事のように言えるのですね。


日銀は政府と一体化(C)日刊ゲンダイ


消費税の本質は労働課税

 ――グローバル化による格差拡大もありますね。

 背景にあるのは国家間の企業呼び込み競争です。富裕層や法人を優遇しないと、国外に逃げられて国が空っぽになるという恐怖をどこの国の政府も抱いています。だから、所得税の最高税率や法人税を劇的に下げてきました。その減収分を補うのが消費税ですが、消費税の本質は労働課税なのです。

 ――といいますと。

 法人税は、売り上げから物的な仕入れと人件費を差し引いた残余に課します。消費税は、売り上げから物的な仕入れを引いた残余が課税対象です。人件費は差し引かれません。ですから、国の税収の軸足を法人税から消費税に移すということは、税負担を株主から従業員に移すことを意味することになります。労働者の犠牲のもとに、法人や株主を優遇しているわけです。このままでは、格差はますます拡大するでしょう。

 ――低金利政策と税制で労働者など中間層は痛めつけられている。中間層が決起してもおかしくない状況です。

 中間層はバラバラな方向に向かっています。ひとつは、富裕層により多くの負担を求めるという方向です。米国型リベラリズムや社会民主主義にはそういう面があります。米国のサンダースの支持者はそういう意識なのでしょう。

 ――ただ、最近はどこの先進国もリベラル勢力や社会民主主義はパッとしません。

 そこで受け皿になってしまうのがポピュリズムです。自分が豊かになれない理由を、自分たちでない誰かのせいにしようとするのですね。あれだけおかしなことをやりながらトランプ政権の支持基盤が固い理由や、欧州のネオナチや反イスラムの台頭にも同じ背景があると思います。

 ――コロナ禍は世界をどう変えると思いますか。

 グローバル化には一定のブレーキがかかるでしょう。コロナの脅威がある間はそうでしょうし、今のコロナウイルスに対するワクチンが作り出せても、別の新種ウイルスが大流行する可能性は消えません。そうした観点からグローバリズムにリスクがあると考える人が増えてくれば、能天気とも言えそうな国家間の企業呼び込み競争やサプライチェーンのグローバル化には慎重にならざるを得なくなるはずです。


自由の劣化が進む中、コロナ禍が襲った

 ――新型コロナが終息した後は、どんな国家間競争が起きると予想されますか。

 今回の経験を経て、国家はより強く、市民や国民を監視してコントロールする方向に向かう可能性があります。欧米型の自由主義体制ではなくて中国型の政治体制への誘惑が強まってしまうのです。医療産業を国家安全保障の文脈で守ろうとする動きなどには、国際緊張を増し、軍拡競争に転化していく危険すらもあります。

 ――自由が制約される強権的な体制を国民は受け入れるのでしょうか。

 残念ながら受け入れる土壌はできつつあります。責任の一端は、サッチャーやレーガン以来の新自由主義にもあります。19世紀型国民国家の理念になった自由とは、血と涙で守るものでした。明治時代の自由民権運動で「板垣死すとも自由は死なず」というのがありましたが、そこでの自由とは命をかけて守るものなのです。ところが、新自由主義における自由とは要するに規制緩和で、つまり自由は儲けるための道具におとしめられてしまったのですね。自由を守ろうとする気概も勇気も劣化してしまっているのです。コロナウイルス封じ込めのためには何が何でも外出を取り締まるべきだとか、個人行動履歴もどんどん追跡すべきだという議論には怖さを感じます。症状のある人を治療するための検査は重要ですが、疑わしい人を隔離して自分は安全に暮らすための検査拡充論として主張されるとしたら僕は反対です。自由とは、そんなに安っぽいものではありません。コロナ禍で、自由や人権に対する私たちの根性、据わり方が試されているのです。僕だって感染の不安がないわけではないけれど、ここで譲ってしまったらおしまいだろうなという気がするんです。

(聞き手=生田修平/日刊ゲンダイ)

▽いわむら・みつる 1950年、東京生まれ。74年、東大経済学部卒業後、日本銀行に入行、企画局兼信用機構局参事などを経て、97年退行。98年1月から早大教授(現職は大学院経営管理研究科)。近著に「国家・企業・通貨 グローバリズムの不都合な未来」(新潮選書)。

5. 中川隆[-12709] koaQ7Jey 2020年5月07日 23:40:18 : IC9sJkmouQ : MEtrMm16cm5xY0k=[32] 報告
新型コロナと株価暴落の「第二波」は10月か?ロックダウン解除の危険性=吉田繁治
2020年5月5日

5〜6月に都市封鎖が解除された場合、静かな7〜9月を経て、10月から新型コロナの第二波が来る可能性が高いでしょう。そうなれば株価は二番底をつけます。

「新型コロナの第二波に注意せよ」専門家の警告

英国LANCET(権威のある医学専門雑誌)に掲載されたこの論文は、「Beware of the second wave of COVIC-19(新型コロナの第二波に注意せよ)」として、以下のように述べています(4月8日)。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30845-X/fulltext

[原文]
「Leung and colleagues also modelled the potential adverse consequences of premature relaxation of interventions, and found that such a decision might lead to transmissibility exceeding 1 again?ie, a second wave of infections.」

[翻訳]
「リャン(中国名の李?)と研究所の同僚は、政府介入の早期緩和(都市封鎖や移動制限の解除)が、逆の結果を生むことをモデル化し、感染は(現在の)第一波を超えて第二波を生むかもしれないことを発見した」

上記は、5〜6月に都市封鎖や移動制限を解除すれば新型コロナの第二波が訪れ、20年の秋・冬まで長期化する可能性があるという趣旨です。未来は現在の条件から確定したものではなく、未知の新しい現象が生じるので、確率的なものとしてしか示せない。LANCETでは「might」という仮定の助動詞を使っています。

感染症学者は、「最も多い26万人(839万人の人口の3%)の感染者が確認されたNY市ですら初期の段階であろう。感染者はこれからも増える」と言っています。


4月の反発はダマシ?楽観的すぎる株式市場

世界の株価を4月に上昇させた早期収束論は、数理モデルからは誤っている可能性が高い。ワクチンができるのも、最短でも1〜1.5年後とされているからです。
ワクチン開発に時間がかかるのは、臨床の治験が必要だからです。ワクチンは副作用を極小化する必要があるので、普通は短くても5〜7年かけます。ワクチンからの感染事例が出ると巨額の損害賠償になるからです。製薬会社は、そうした分かり切ったリスクは犯しません。

南半球での、およそ4か月遅れの感染増加を考慮すると、延期された東京オリンピックの開催も危ういと見なければならない。アフリカでの確認感染はごく初期段階の2万人(4月上旬)、オーストラリア6619人、ブラジルが1万人です。人が集まる会場は、ウイルス拡散の場になります。

無制限緩和という“人工心肺”で延命中だが
NYダウは、3月18日の一番底の1万8,600ドルから2万3,600ドルまで、4週で5,000ドル回復しています(4月20日)。ピークの2万9,500ドルから9,900ドル下落していたので、半分戻したことになります。
この買いは、

(1)コロナショックは5〜6月に収束するという論
(2)FRBによる2.3兆ドルのマネー供給

によって果たされています。

FRBは、3月3日と16日に2度(1.5ポイント)の利下げをした上で(短期金利誘導目標0.00%〜0.25%)、金融機関とファンドがもっていた米国債と、REIT(不動産上場投信)が下がっていた住宅証券のMBSを買い上げて、まず、金融機関にマネー供給をしたのです。その金額は、2兆ドル(220兆円)と巨大です。

米国債の価格は10年債で14%上がり、MBSも価格を回復しました。金融機関とファンドは、国債とMBSをFRBに売って、入ったドル現金をもとに33%下がっていた米国株(NYダウ、S&P500、ナスダック)の買い越しを続け、ダウで2万3,600ドルまで5000ドル戻したのです。

FRBは今回の量的緩和を無制限としています。株価を下げず、金融危機・企業倒産を防ぐためなら、いくらでも増額するということです<中略>

50%回復した株式市場が想定しているロックダウン解除(5〜6月)が、米国で実際に行われた場合、静かな7月、8月、9月を経て、10月から第二波が来る可能性が高いと思っています。第二波が来れば株価は二番底をつけるでしょう。社債、CLO、REITの再下落も同時です。
https://www.mag2.com/p/money/916477



▲△▽▼


2020年05月06日
アメリカの魔法のステッキ、今回も無限資金供給発動か

バーナンキ(右)とポールソンは短期間で危機を終わらせ、後の10年の好景気を作った

画像引用:https://amp.independent.ie/migration_catalog/b1747/25060987.ece/AUTOCROP/w620h350/banks


アメリカはどうやって金融危機をクリアしたか

最近アメリカは新型コロナウイルスへの対策で1か月に300兆円も財政支出を決め、政府債務が急増している。

労働者の半数が自宅からの外出を制限され事実上の無職状態に陥っている。

年間の財政赤字は過去最悪の水準で、経済専門家や財政関係者は危機感を表明している。

だがそれでアメリカが破産するかというと、数年後には何事もなかったかのように立ち直っていると思われる。

2007年から2010年までの世界金融危機でも同じだったからで、当時はドルが無くなりアメリカが無くなると言われていた。

専門家たちは次の超大国は中国であり、世界は中国を中心に再編成されると言っていました。


10年前の新聞を読んだら今の専門家の言い分と同じで、同じことをずっと言っているだけだと気づくでしょう。

アメリカは2009年に破産を確信するほど経済と財政が悪化したが、1年後の2010年に立ち直り10年続く好景気に入りました。

重要な役割を果たしたのはFRB議長のバーナンキで、空から金を撒けといって毎週数兆円の資金供給をしました。


その方法は金融危機で破産した企業や公団の債権、株式を額面で買い取るという大胆なものでした。

その会社はすでに倒産しているので債権や株券はゴミに過ぎないが、ゴミを数百億円で買い取っていました。

FRBのゴミ買取でアメリカは空前の金余りになり、金は世界に還流して世界中が2010年代のバブルに突入しました。


アメリカの魔法のステッキ

比較しては何だが日本の麻生首相と白川日銀総裁は、金をばら撒くどころか逆に締め上げていました。

消費者金融が問題視され規制強化したのは良かったが、ほとんどの主婦や低所得者はカードを作れなくなった。

消費が大幅に落ち込んだが麻生首相は何も経済対策をせず、日本経済が崩壊するままにまかせてGDP大幅マイナスを記録した。


世界金融危機で最初にアメリカのサブプライムローンが破綻しローンを返済できない貧困者が続出した。

驚くべきことにアメリカ政府はローン破産した人の代わりにローンを支払い、住宅を差し押さえられないようにしました。

当時CNNでこの件を「ローンを払えないくらいで住宅を取り上げられるなんてあり得ない」と糾弾していました。


日本なら「金がないくせに借金したのが悪い」と破産者を非難したのではないでしょうか。

それでどうなったかというと、大盤振る舞いのアメリカはたった1年で完全に立ち直り10年間好景気を謳歌した。

ケチケチ日本は今も世界金融危機前まで回復しておらず、借金だけが雪だるま式に増えた。


どちらが正しくどちらが間違っていたかは明らかです。
http://www.thutmosev.com/archives/82873685.html



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米国の量的緩和が限界に近づき失速へ 株価への影響は2020年5月6日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10574

世界の株式市場は新型コロナウィルスの世界的流行による株安相場からの反発が続いている。しかし筆者には現在の相場にはポジティブな要素がほとんどないように見える。実体経済が危機的状況にあるのはこれまで伝えているが、それに加えてアメリカの量的緩和が失速し始めたからである。

国債買い入れ失速

アメリカでは2月からの株安相場を受けて無制限の量的緩和が行われている。

•米国、量的緩和の無制限化を発表も米国株は下落

量的緩和とは中央銀行が通貨を発行してその通貨で国債などの証券を買い入れることであり、無制限とはその買い入れ額に制限がないことである。

しかしこの無制限の量的緩和が4月の後半から失速し始めている。中央銀行の国債保有額の推移は次のようになっている。


3月に入って勢い良く急上昇したグラフの傾きが段々なだらかになってきているのが分かるだろう。そしてその結果どうなっているかと言えば、長期金利が不気味な上昇を始めている。


長期金利は10年物国債の金利だが、よりリスクの高い30年物国債の金利はもっと明らかに上向き始めている。


繰り返すが、現在アメリカの中央銀行は無制限の国債買い入れによって金利を下げようとしているのである。量的緩和で株価が支えられるのは、国債の金利が下がることによって投資家がよりリスクの高い不動産や株式に資金を振り分けるからであり、金利が上がってしまうとその浮揚効果も無くなってしまう。

量的緩和失速の理由

「無制限の国債買い入れ」は何故失速してしまっているのだろうか? その理由は中央銀行の買い入れ額に制限がなくとも買い入れることの出来る国債の総量に限りがあるからである。

現時点で存在している米国債の量は23兆ドルである。一方で3月に量的緩和が加速してから1ヶ月で買い入れた国債の額はグラフを見れば分かるが1兆ドル程度である。


つまり、「無制限の量的緩和」を当初の速度で続けるとこの世に存在するすべての米国債を2年足らずですべて買い上げてしまうことになるのである。これが量的緩和の限界である。買い入れ対象が無くなれば買い入れは出来なくなる。当たり前である。

それで中央銀行は株価が落ち着いたために買い入れ速度を落としたのだが、そうすると今度は金利が上昇してきた。しかし金利が上昇すれば株価を支えることは出来なくなってしまうだろう。

量的緩和の限界

これがここ数年何度も懸念されていた中央銀行の緩和限界の問題である。

•米国、緊急会合でゼロ金利まで利下げし量的緩和を正式に再開 暴落時の追加緩和が不可能に

今回のコロナショックで世界中の中央銀行は追加緩和の余地を失ってしまった。それどころかアメリカはここまで限界を越えて緩和しており、失速は不可避だったと言える。しかしもしかすると市場は失速を許さないかもしれない。米国の株価指数S&P 500は次のように推移している。


現在の株価水準

筆者は現在米国株を空売りしているが、同じように空売りをしている投資家にジェフリー・ガンドラック氏がいる。ガンドラック氏は株価水準について次のように述べている。

•ガンドラック氏: 株価は3月の底値を更新する


2,863でS&Pを空売りした。ここからはアップサイドもダウンサイドも大きくない。

S&P 500は3,000まで行かないと思うが、それも有り得る。ダウンサイドについては容易に底値を越えていくだろう。

彼が何故このように言ったかと言えば、現在の市場環境とコロナショックの規模の大きさから考えれば3,000程度が株価の限界だからである。実体経済へのダメージの大きさについては以下の記事で説明している。

•新型コロナ、米国経済の景気後退はリーマンショックの倍以上か、第1四半期GDP速報

しかし3,000というのは金利が今の水準に留まるならばの話であり、量的緩和が減速を続けて金利が上昇する場合には3,000という水準も維持が難しくなってくるだろう。しかし量的緩和は減速しなければ2年で打ち止めになってしまう。仮に減速せずに続けたとしても、この状況で量的緩和が打ち止めになれば株価も実体経済も崩壊するだろう。

結論

ということで、実体経済も株式市場も詰んでいるという見解を維持したい。しかしそれで良いのである。コロナショックでこれほど大きなダメージにならなければならないのはこれまで金融緩和と政府債務の膨張によって無理矢理経済をバブルにしてきたからであり、借金と紙幣印刷に頼らないまともな生活をしていれば経済のV回復も可能だったはずである。このことについては以下の記事で説明している。

•新型コロナで借金が実体経済に影響を与える仕組みを分かりやすく説明する

しかし借金を増やして株価をバブルにしたがる政治家から経済を操作する道具は失われた。まともな投資家は当然それを歓迎しているわけである。

•世界最大のヘッジファンド: 政府が金融危機から守ってくれると思うな
•ドラッケンミラー氏: 金融緩和こそがデフレの元凶


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10574

6. 中川隆[-12738] koaQ7Jey 2020年5月10日 14:02:32 : txBdn50SLs : OURXcXpRZUdqSms=[6] 報告

世界最大のヘッジファンド: ドルは既に紙くずになっている2020年5月9日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10645

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏が引き続き政府による紙幣印刷から身を守る方法について語っている。

通貨下落への防衛手段

前回の記事ではダリオ氏がLinkedInのブログ記事で何故量的緩和は債務の解決手段として悪手であるにもかかわらず人は量的緩和に頼ってしまうのかについて説明した部分を紹介した。

•世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で人々はリッチになったような気がする

そして通貨の価値は破滅的に下落すると主張していた。では投資家はどうすれば良いのだろうか? 今回はダリオ氏が通貨の代用品について語った部分を紹介したい。

通貨とは獲得した富を保存するための手段である。今日手に入れた収入を来月でも来年でも使えるのは、多くの人にとっては銀行に現金を置いておけるからである。しかし現金の価値が下落する時にはどうすれば良いのか? ダリオ氏は次のように説明する。


金は時代を問わず普遍的な代替通貨としての役割を果たしてきた。

株式もまた富の貯蔵手段となりうる。

不動産や美術品なども富の貯蔵手段である。

順番に見てゆきたい。

預金 vs 金積立

まず金だが、ダリオ氏は主要な通貨が1600年以来金に対してどれほど減価したかのチャートを示している。見事にすべてゼロに近づいているのだが、実は通貨の価値は下落するものだということを理解するためには400年も遡る必要はない。

読者は金価格の長期チャートを見たことがあるだろうか。見たことのある読者も少なくないだろう。しかし本当にその意味を実感するためにはグラフの上下を逆にする必要がある。つまり、金価格がどれだけ上がったかではなく、現金の価値がどれだけ下がったかを見るのである。以下は過去50年ほどの間に金に対してドルの価値がどう推移したかのチャートである。

50年の間にものの見事に紙くずになっている。50年ほど前のドルの価値を100%とすると、現在のドルの価値はその2.3%である。そして考えてほしいのは、この50年間ほとんどの人は資産の大部分を現金のままにしており、その資産は実際に紙くずになったということである。ダリオ氏が言っているのは、今現代人もそうなるのではないかということである。

現金が勝者だった黄金時代

しかし一方で現金のリターンがゴールドを上回った時期もある。ダリオ氏は次のように説明している。


1850年から1913年(第一次世界大戦まで)の期間では通貨(預金など短期金利による収入を含む)を保有した場合のリターンはゴールドを保有した場合のリターンよりも概して良くなっている。

この60年ほどの期間がどういう期間だったかと言えば、ほとんどの通貨は金か銀に為替レートが固定されており、しかも第二次産業革命と呼ばれるこの繁栄の時代では借金の借り手が借りた資金を収入に変え、収入が借金を返していたために貸し手は魅力的な金利を得ることが出来た。

借金で消費や自転車操業の企業を増やすのではなく生産性を増やし、その後には借金をしっかり返せていた時代があった。返せない借金をしないということがどれほど大事かということである。しかしそうでなければ通貨が紙切れになってゆく。

通貨の価値が維持され、しかも経済が成長していて借り手が金利を払える場合には誰もが問題なく良い生活を送っていた。「紙幣を印刷すると豊かになるのではないか」という「壺を買えば幸せになるのではないか」同然のまやかしで自分を騙す必要もなかったのである。この2つに何か違いがあるだろうか? 誰か教えてほしいものである。紙切れよりはむしろ壺のほうが価値があるだろう。

•ドラッケンミラー氏: 金融緩和こそがデフレの元凶

富の貯蔵手段としての株式

そして最後にダリオ氏が株式について語った部分を紹介しよう。


量的緩和により通貨と信用の供給が増加すると、通貨と信用の価値は減り、(その保有者は損害を受け、)債務の負担は減少することになる。

債務負担の減少によって通貨と信用が生産性と企業利益に流れ込む場合には株価の実質値(インフレによる株価上昇を差し引いた後の株価)が上昇するだろう。

まず前提となるのはインフレは株価にとってプラスだということである。インフレとは通貨の価値の下落なので、その通貨以外のすべてのものの価格が上昇する。株価も例外ではない。

ダリオ氏がここで言っているのは、創造された通貨と信用が生産性と企業利益の上昇に寄与する場合にはインフレの影響を除いても株価は上がるということである。今回のコロナショックではどうなるだろうか。そちらについても徐々に書いてゆきたいと思っている。

次のダリオ氏の更新は大英帝国とオランダがどのように基軸通貨のステータスを失ったかについての記事となるらしい。これまでの記事も再確認しながら待っておこう。

•世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で人々はリッチになったような気がする
•世界最大のヘッジファンド: 中国が覇権を握りドルは基軸通貨でなくなる
•世界最大のヘッジファンド: 政府が金融危機から守ってくれると思うな

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10645

7. 中川隆[-12735] koaQ7Jey 2020年5月10日 16:01:15 : txBdn50SLs : OURXcXpRZUdqSms=[9] 報告
世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で人々はリッチになったような気がする
2020年5月8日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10616

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がLinkedInでのブログ投稿で量的緩和についてこれまでより雄弁に語っている。

為替相場の終着点

ダリオ氏は現在の為替相場について次のように述べている。


ドル、ユーロ、円は債務の膨張・破裂サイクルの後期にあり、これらの通貨で債券を保有することの実質リターンは低く、新たに大量の債務が作り上げられマネタイズされてゆく。

そしてマネタイズの問題点について次のように説明する。


多くの人々は通貨を永遠に続くものと考えたり現金がもっとも安全な資産の保管場所だと思ったりするが、すべての通貨はいずれ減価するか消滅するのでそれは正しくない。

そしてそうなるときには現金と債券(それは通貨を受け取るという約束である)は減価されるかなくなるだろう。紙幣印刷と債務の減免は債務負担を減らすためのもっとも都合の良い方法だからである。

先進国はほとんどの国が巨額の債務を抱えている。ダリオ氏は債務を減らすためには以下の方法があると説明する。

•緊縮財政(消費を減らすこと)
•債務の不履行または減額
•資金と信用の移転(増税など)
•紙幣印刷と通貨の減価

最後のものは要するに量的緩和である。

ダリオ氏は次のように続ける。


この中で紙幣印刷はもっとも便利で、もっとも誤解されやすく、もっとも行われやすい債務縮小の方法である。

実際、紙幣印刷は債務の急な縮小を和らげ、この金融上の富を供給する代償として誰が富を取り上げられる被害者になるのかが分かりにくい(しかしそれは実際には通貨と債券の保有者全員である)。しかも大抵の場合資産価格が減価された通貨建てで上昇するので人々はリッチになったような気がする。

リッチになったような気がする。良いことではないか。

しかしダリオ氏は次のように続ける。


主要な準備通貨がこのように減価したり準備通貨としてのステータスを失ったりすることはわれわれが想像出来るなかで一番破滅的な経済的イベントである。

量的緩和の終着点

量的緩和と似たようなことは過去にも行われた。そして大抵の場合まともな終わり方をしなかった。ダリオ氏は次のように説明を続ける。


ほとんどの人は通貨の下落リスクに注意を払わない。ほとんどの人が心配するのは自国通貨建てで資産が増えるか減るかであって、自国通貨自体が上がるか下がるかを心配する人はほとんどいない。

1700年にはおよそ750の通貨が存在したが、今残っているものはたった20%であり、残っている通貨はそのすべてが減価している。

ドイツではグルデンやターラーが使われていた。日本には円がなく、小判や両が使われていた。イタリアでは6つの通貨のうちいくつかを使っていた。

それらの通貨の内いくらかはハイパーインフレになったり、敗戦や巨額の戦費で債務の支払いが不可能になったりして通貨が消滅し、別の通貨で置き換えられた。いくらかは別の通貨に統合された(ユーロのように)。ドルやポンドのようにいくらかは現在も残っているが価値は下落している。

ちなみに日本の両はいわゆる小判だったが、円に変わるまでの間に金の含有量が何度も減らされている。円ももともと金貨だったがついに紙切れになった。そして紙切れになっても誰も文句を言わないのである。アメリカでも同じことが起こっている。

•レイ・ダリオ氏、「現金がゴミ」になったニクソンショックの経験を語る

何故それでも量的緩和か

ダリオ氏が挙げた債務の4つの対処法の中でいつの間にか財布の中身をなかったことにされる紙幣印刷は本質的にはもっとも不公平なのだが、面白いことに人類が負債という問題に直面した時には大抵紙幣印刷が選ばれてきたのである。ダリオ氏は次のように述べている。


こうした通貨と信用の創造に誰も文句を言っていないようだ。それどころか、政府が通貨を印刷しなければ政府は残酷だなどと悲鳴が聞こえてきそうである。政府には送り出す金などなく、しかも政府とは金持ちの誰かではなくわたしたち自身であり、それをわたしたちが支払わなければならないということを誰も理解していない。

しかしそれでも量的緩和が終わるということをダリオ氏は予想しない。彼は次のように述べている。


今の状況で政府が予算とバランスを取るために支出を減らし、国民にも同じようにするように求め、不況でもたくさんの債務の不履行や減免をそのままにしたり、あるいはお金を持っている人から直接税金によってお金を持っていない人に再分配しようとしたりした場合のことを想像してみてほしい。紙幣印刷のほうがよほど政治的に受け入れられやすい。

つまり、ダリオ氏はそれが良いから量的緩和が行われるのではなく、良し悪しにかかわらず起こりやすいことが起きると言っているのである。

良いことは起こらない。それは起こりにくいからである。ダリオ氏はこうした量的緩和の状況を以下のように例えている。


これはある意味モノポリー(訳注:人生ゲームのようなもの)でプレイヤーのほとんどが文無しになって怒り出したので銀行役の人が現金を配り始める瞬間と同じようなものだ。

政治とは子供をあやすようなものなのである。しかし政治家はあやす対象から金を十分にせしめて帰ってゆくという点が子育てとは違っている。

政治家が何の責任も取らずに帰った後にはどうなるのだろうか? どれだけ紙幣を刷っても円は下がらないだろうか? しかし同じ先進国であるヨーロッパにはその運命は近づいてきているのである。

•新型コロナによる世界恐慌でヨーロッパ経済壊滅の可能性

そして米国がそうなる前に日本がそうなるだろう。

結論

ダリオ氏を含め、ほとんどの著名投資家は量的緩和について同じことを言っている。例えばコロナショックを予想したガンドラック氏である。

•ガンドラック氏、新型コロナでの企業救済とヘリコプターマネーを痛烈批判

例えばクォンタム・ファンドでポンド危機の際にポンドの空売りをしたドラッケンミラー氏である。

•ドラッケンミラー氏: 金融緩和こそがデフレの元凶

筆者には彼らの理屈は当たり前のように聞こえるのだが、不思議と理解者は少ない。量的緩和を何も考えずに支持している人々はきっと彼らより深く経済を理解しているのだろう。

物事を理解できる人間は理解できない人間より大幅に少ないので、民主主義は常に間違え続けるしかない。彼らが間違えるのは勝手だが、巻き添えは遠慮をしたいものである。

幸いにも投資家は相場を使って自衛をすることが出来る。まずはユーロが量的緩和の犠牲になるだろう。

•新型コロナによる世界恐慌でユーロが下落する理由

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10616

8. 中川隆[-12064] koaQ7Jey 2020年7月23日 19:21:11 : TIbrWzwsgw : bEM4QlBXVGM2RWM=[4] 報告
日銀が発行している円紙幣は日銀の借用書

日銀の貸借対照表
営業毎旬報告(令和2年3月10日現在)
https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2020/ac200310.htm/


銀行券が日本銀行のバランスシートにおいて負債に計上されているのはなぜか?

日本銀行は銀行券の発行を1885年に開始しました。当初、日本銀行の発行する銀行券は、銀との交換が保証された兌換銀行券でした。その後、金本位制度の採用を経て、金との交換が保証されました。こうした制度の下で、日本銀行は、銀行券の保有者からの金や銀への交換依頼にいつでも対応できるよう、銀行券発行高に相当する金や銀を準備として保有しておくことが義務付けられていました。このような銀行券は、いわば日本銀行が振り出す「債務証書」のようなものだと言えます。このため、日本銀行は、金や銀をバランスシートの資産に計上し、発行した銀行券を負債として計上しました。

その後、金や銀の保有義務は撤廃されましたが、一方で、銀行券の価値の安定については、「日本銀行の保有資産から直接導かれるものではなく、むしろ日本銀行の金融政策の適切な遂行によって確保されるべき」という考え方がとられるようになってきました。こうした意味で、銀行券は、日本銀行が信認を確保しなければならない「債務証書」のようなものであるという性格に変わりはなく、現在も負債として計上しています。

なお、海外の主な中央銀行においても、こうしたバランスシート上の取り扱いが一般的となっています。


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日本銀行のバランスシートと金融政策
佐々木 浩二2017.1.12日銀金融政策バランスシート
https://gentosha-go.com/articles/-/6415

日銀が「金融調節」などを行うことによって、日銀のバランスシートがどう動くのか見ていきます。

日本銀行券や貨幣の発行によりバランスシートが変化
日本銀行は,マネーを負債に計上し,マネーを供給するときに購入したモノを資産に計上します。マネーを負債に計上するのは,日本銀行券を保有する私たち,企業,地方公共団体などにとって,日銀当座預金を保有する金融機関にとって,マネーは資産だからです。

図表1 日本銀行のバランスシート(1)


本連載で学んだ現金通貨の発行と還収,中央政府による財政の散布と吸収,金融調節による資金の供給と吸収は日本銀行のバランスシートに記されます。日本銀行券は日銀当座預金を取り崩して発行されます。日本銀行のバランスシートでは,負債の日銀当座預金が減り,日本銀行券が増えます。

図表2 日本銀行券の発行


貨幣も日銀当座預金を取り崩して社会に供給されます。ただし,貨幣の発行者は日本銀行ではなく中央政府であるため,バランスシートの変化は日本銀行券の場合と異なります。政府が日本銀行に保有する預金は,目的別に区分けされています。財務省から貨幣の交付を受けるとき,図表3の左のように,日本銀行は政府の別口預金に貨幣の購入代金を入金します。この段階では,貨幣はマネーではなくモノとして管理されます。政府が支払いにつかえない別口預金に入金するのはこのためです。

金融機関に貨幣を払い出す準備をするとき,図表3の中央のように,貨幣を日本銀行の営業上のバランスシートに載せます。この段階で貨幣はマネーと認識されます。準備された貨幣がすべて払い出されると,図表3の右のように,日本銀行の資産にあった貨幣はなくなり,払い出された貨幣と同額だけ日銀当座預金が減ります。

図表3 貨幣の発行(2)


納税やオペレーションによるバランスシートの変化
私たちや企業が中央政府に税金を納めるとき,その決済は納税の窓口となった代理店金融機関の日銀当座預金を減らし,政府の当座預金を増やして済ませます。

図表4 税金の納付


国債を買い入れる金融調節を行うとき,日本銀行は金融機関の日銀当座預金に購入代金を入金します。購入した国債は資産に計上され,購入代金は負債の日銀当座預金に計上されます。

図表5 資金供給のオペレーション


日本銀行の活動,ひいては日本経済の活動は,日本銀行のバランスシートに反映されます。日本銀行は金融の専門家が高い関心を寄せるバランスシートを毎月上旬,中旬,下旬に公表しています。

図表6 営業毎旬報告(3)

註(1) 小泉・長澤訳(2001,p.6)に

「国家はその表券主義的特権を行使して,この債務それ自身が負債を弁済するものとして受領されるべきことを布告するであろう。このようにして,」

「単に債務であるにすぎなかったものが本来の貨幣になったときには,それはその性質を変えてしまっており,そしてもはや債務と見做されるべきではないのであって,その理由は,それ自身以外の他の何かあるものをもって支払いを強制されるということが,債務の基本的性質であるから」

とある。


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「日銀と通貨発行権の誤解について」

日銀が株式会社であるということ、その株主が、55%は政府が出資してるんですけど、残り45%が民間だということ、それが誰が持ってるか公開されていないということで、いろんな憶測というか、それを陰謀論みたいなものにつなげる人が多くて、そういうことを結構聞かれたりします。

いつも僕答えるのは、日銀の株主の半分近くが民間で、それが誰だかわからないから、だから何なの?って聞き返すんですよ。

大抵聞き返された人はもちろん答えられなくて、日銀がお金を発行してるのに民間じゃおかしいとか、それを何とかチャイルドみたいな陰謀論と結びつけて考えてるんです。結局何が問題なのかその人たち自身もよくわかってなくて。ただ、そういうふうに騒ぐ人たちが一部に恐らくいるんでしょうね。ただ、これ、仕組みを知ると、いや、別に全然そんな話じゃないっていうのがよくわかります。

どこからはじめようかな。まず日銀に関しては、民間だからといって、まあもちろん利益も挙がります、ある程度。その利益がどうやって挙がるかというと、これまたお札を1枚、1万円札を作るのに20円しかかからなくて、それが1万円になるから9980円もうけるんだみたいなことを、そういう間違ったことを言う人がいるんですね。それ完全に間違ってます。そうはなりません。基本的にお札の発行ってどうやってるかというと、例えば、そもそもあのお札誰が作ってるかというと、日銀じゃなくて国立印刷局というところが毎年の財務省の計画に従って作ってます。作るっていうのは、それは何で必要かというと、今までのお札が古くなって破れたりするぶんとか、あと、マネーストック、皆さんの現金、預貯金が増えるにしたがって、より多くのお札を引き出すようになるんで、そのぶん恐らく必要だろうということで、ある程度計画的に作ってるんですね。国立印刷局がそれを刷ります。例えば、じゃあ1兆円のお札を国立印刷局が刷ったとして、それをどうやって発行するのか、発行するっていうか世の中に回してくのかというと、まず1兆円の紙幣を作ります。それを日銀の金庫に入れるんですね。日銀の金庫に入れますけど、日銀はそれを1兆円として受け取るわけですけど、それ、そのまま日銀が1兆円をもらってしまったら日銀が1兆円もうかってしまいますよね。(笑)。

それおかしいですね、もちろん。20円で作ったものを1兆円で受け取って、1兆円になってしまったら、確かにそれをやってしまったら日銀は1兆円もうかってしまいますけれども、そうはならなくて。どうするかというと、要するに1兆円の紙幣を金庫に入れて、それは資産になるわけですね、日銀の。で、それが利益にならないように負債の側に1兆円の発行済み銀行券という負債を書き込むんです、バランスシートの負債のほうに。要するに、その時点で左右バランスするんで利益はそれで出ないんですね、日銀は。1兆円の紙幣を資産として預かって、それを預かりましたという、預かったことにするんです、負債にするっていうことは。それ誰から預かってるかというと、別に相手基本的にいないんですね。まあいうなれば、日本国民全員に対して新しい紙幣の1兆円ぶん借とするわけですね。もともと日銀っていうか中央銀行っていうのは、1兆円っていうのは、紙幣っていうのはただの紙ですから、要するに実体的な価値はないわけですね。だから最初は多分恐らく、その信用のなさから何を持っていたかというと、その1兆円の紙を、まあ1兆円っていうよりも1万円札ですね、を持ってきたときに、いつでもそれをちゃんと実体のある、価値のあるものと交換しますよっていうことで、今度、日銀の資産の部分には、金地金という実際の貴金属というのを資産として持ってたんですね。紙で発行してるんで、要するに、これは負債として、それを持ってくればいつでもそういう実体の金地金と交換しますよっていう、そういう一応論理立てだったんですけども、実際、今、日銀のバランスシートには、金地金っていうのはもうほとんどないです。一応ちょっとありますけど、ほとんどないわけです。

逆に言うと、日銀のバランスシートの、今度、負債の側、借金の側には、約100兆円の発行済み銀行券っていう負債が入ってます。それは何かというと、今までそうやって発行し続けてきた、要するに紙幣の履歴なわけですね。100兆円ぶん今まで発行しましたよって、だから100兆円ぶんの現金が世の中に回ってますってことです。だけど、その100兆円っていうのはもちろん日銀にしてみれば借金なわけですから、要するに、100兆円ぶんの紙幣を発行したときに20円の制作費除いて100兆円近く、99兆8000億円ですか、もうかったかというと全然そんなことはないってことですね。だから、この国では少なくとも紙幣を発行するときにそんな利益なんか全く挙がらないっていうことですね。だから、日銀が民間だからといってそもそも大騒ぎすることはないということです。そもそも、それから日銀の政策決定に関してはもちろん株主は一切決定権ないです。議決権が全くないんですね。議決権が全くないから逆に、要するに公開する必要もないわけです。一般の株式会社が5%ルールみたいなかたちで、発行済みの株式の5%以上を取得するとそれが公開されるのは議決権があるからですね。逆に日銀は一切議決権はなくて、日銀に対しては、株主は全くないです。で、政策は誰が決めてるかっていうと、日銀の政策委員会が決めてますね。政策委員会総裁がいて、副総裁が2人いて、あと、審議員みたいな人が6人ですかね、9人の政策委員会で。この人たちはどうやって任命されるかっていうと、内閣が任命しますね。で、国会の承認を得てっていうかたちになるんで、結局、株主一切関係ないです。だから、よくそういう、あまり仕組みを知らずにそういう陰謀論みたいなものに結びつける人たちがいるんですけど、実際、日銀の株主の半分近くが誰だかわからなかったとしても、僕にしてみれば、だから何なの?って話なんですよね。だから何が問題なの?(笑)、ちゃんと説明してって感じなんですけど、誰も説明してくれません。僕は大した問題だとは思ってません。

それからあともう一つ、それでも日銀っていうのは実は利益を挙げるんですね。どうやって利益が挙がるかっていうと、日銀は基本的に、例えば国債を大量に買ってますけど、国際の利息だったりとか、その利息収益とかあるし、あと、外貨資産も持ってるわけですね、ドルを持ってアメリカの国債を持ってたりするんで。それで利益とか、利益っていうのは要するに利息みたいなもの、基本的には利息で挙がっていきます。それで挙がるんですけど、年間、結構そこそこの利益は、1兆円以上挙がったりとかするんですよ。ただ、それも結局どうなってるかというと、これ日銀法[SM1] を読めばわかるんですけど、日銀法の第五十三条っつうのがあるんですよ。五十三条を読むとわかるんですけど、日銀法の第五十三条の、まず第四項ね。四項は株式の、要するに株を持ってる株主に対して配当がどうなってるかっていうことは第五十三条の四項に書いてあるんですけど、「日本銀行は、財務大臣の認可を受けて、その出資者に対し」て、これ株主ですね、「各事業年度の損益計算上の剰余金の配当をすることができる。」まあ配当は出せるってことですね。「ただし、払込出資金額に対する当該剰余金の配当の率は、年百分の五の割合を超えてはならない。」要するに5%を超えて配当は出してはならないっていうことになっていて。五十三条の第五項、「日本銀行は、各事業年度の損益計算上の剰余金の額から、第一項又は第二項の規定により積み立てた金額及び前項の規定による配当の金額の合計額を控除した残額を、当該各事業年度終了後二月以内に、国庫に納付しなければならない。」と。要するにこれ、もうかったぶんっていうのは、積立金とかあるんですね、準備金っていうのが。要するに、例えば外貨準備を持ったりとか、外貨の、要するに資産を持っていて、その為替の変動とかあるので、それに備えて積み立てとか準備金ってあるんですよ。それをやったあとは、結局、余ったお金っていうのは国庫に返納しなきゃいけないってことなので(笑)、それで株価がものすごい上がるとかっていう話にはならないので、そもそもそんなことを、なるんであれば、日銀の株っていうのはジャスダックなんかで誰でも買えることになってるんで、そんなに日銀がもうぼんぼんぼんぼんもうけるような話であれば、それをみんなが買うって話になりますよね、間違いなくもうかるんで。そんなことはならないのは、結局こういう法律があって、日銀はもうかっても別にその剰余金を国庫返納っていうことで。だから、45%の日銀の株主が誰だかわからないったところで、別に大した問題ではないんですね。という話(笑)。

通貨発行権みたいな話も、結局、日銀が持ってるみたいなことを、間違ったことを言う人がいますけども、別に日銀は全く通貨発行権は持ってなくて。結局、通貨発行って今の仕組みを理解すると、誰が通貨発行権を持ってるかっていうと、各民間銀行の融資担当者がみんな一人一人、通貨発行権持ってると思ったほうがいいです。何でかっていうと、結局、今の仕組みは信用創造という、銀行がお金を貸すことによってお金が生まれるということは、その判断をする一人一人の融資担当者がその権利を持ってるってことですね。だから、日銀とか中央銀行が通貨発行権を持ってみたいな話は都市伝説というか、もうガセネタというか、特に中央銀行は通貨発行権なんて持ってません、そういった意味で言うと。今、おっきな通貨発行権を実質的に持ってるのは例えば、あ、ちょっと待って。その前に日銀の役割の話を先にしますね。

日銀の役割は何かっていうと金融調節をやってるんですけど、それはどうやってやってるかというと、結局、金利の上げ下げとか量的緩和みたいなことを最近やってます。金利の上げ下げのほうは簡単なんで先に説明しますけれども、金利を、日銀はお金の量を、例えば減らすために上げます。金利を上げると何が起きるかというと、金利が高くなるんで、お金を借りたい人とか借りられる人が減りますよね。そうすると、お金って大体借金っていうのは借りたらみんな毎月返していきますね。それに対して、金利が高くなると、毎月みんながお金を返していくとそのぶんお金が減ってくわけですね。お金を返すときに実はお金って消える。お金を借りるときにお金が生まれるっていう仕組みになってるんで、返していくとだんだん減っていきますけど、それに対して金利を上げたときに、要するに金利が高いんで借りる人が減ってくとだんだんお金が減ってくんですよ。そういう金融調節。逆に、今度お金を増やしたいときには金利を下げます。金利を下げると借りたい人とか借りられる人が増えるんで、それに対して銀行がお金を貸していけば、借金を増やしていけばお金が増える。つまり日銀は何をやってるかというと、あくまでも民間銀行の貸し出しの増減を誘導してるにすぎません。通貨発行権みたいな権利を持ってるわけでも何でもなくて、要するに、あくまでもそれは各民間銀行がその通貨を発行する、そういう権利というか機能を持っていて。彼らが要するに借金を増やしたり減らしたりすることによって世の中のお金を増やしたり減らしたりするっていう、その誘導をしてるにすぎなくて、通貨発行権みたいなものは日銀は持ってません。あと、それから、これ講演会でも説明してますけれども、ある時期から日本の民間銀行っていうのは民間にお金を貸さなくなってしまって、民間の信用創造による通貨の発行、お金の発行っていうのはあまり機能しなくなってるんですね。それからしばらくどうやって、もう数十年たってるんですけど、どうやってお金を発行し続けてきたかというと、実は政府が借金をして、それを使ってお金を発行してきたっていうことをやってきたんですね。

つまりどういうことかというと、毎年の予算ですね。政府が予算を組みます。で、それを赤字にします。赤字にするっていうことはその赤字ぶんを銀行から借りて、銀行から借りてっていうか、新たなお金を作るわけですね、銀行が政府の国債を買うことによって。それで新たなお金を作って世の中のお金を増やしてきたってことをやり続けてきたっていうことは、要するに、今、実質的に通貨発行権誰が持ってるかというと、国会の予算委員会が持ってると言っても過言ではないです。赤字ぶんっていうのは必ずお金の発行になります。借金ぶんっていうのは新たなお金を作って政府が使う、ないものを作って使うってことになりますから、それで実は世の中のお金は増えてるんですね。それが通貨発行、ここ数十年で起きてきた、要するに、政府による、政府の予算委員会による、まあ国会の予算委員会に、もちろん政府が予算案を作ってそれを国会で承認してという、そういうプロセスによるお金の発行っていうのがここ数十年で起きてきた。ということは、日銀何やってんの?って。日銀は通貨発行してません、ですから。繰り返しになりますが。だから、通貨発行権とかいうその権利みたいなものを誰か一部の、何とかチャイルドみたいな(笑)、そういう国際金融家が握っていて、それがすべてをコントロールしてるみたいなのは、もうこれは幻想でしかなくて。仕組みを知ればそんなことではないっていうことがよくわかります。だから何が問題なのかっていうと、この仕組み、銀行が借金でお金を作り出すという仕組みはもう完全に時代遅れになってしまっていて、そういったことから変えてくっていうことを、私大西つねき、それからフェア党は言っています。なので、皆さんもちょっとそこら辺いろいろ調べていただけるとわかると思うんですが、日銀が民間銀行だからどうとか、通貨発行権がどうたらということはあまり本気にしないほうがいいです。基本的にあんまり恐らくわかってないんじゃないかなあというふうに思います。


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国際送金の仕組み _ 日銀とコルレス銀行の業務とは

アメリカは具体的にどのように世界中のマネーを吸い上げているのか - YouTube動画
https://www.youtube.com/watch?v=e3MFg9haNFc&feature=emb_title


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日銀当座預金の総額を増減させる「銀行券要因」とは?
佐々木 浩二2016.12.1日銀金融政策新連載
https://gentosha-go.com/articles/-/6391


金融システムの基盤のひとつである日銀当座預金。その総額は、さまざまな要因で日々増減をします。これを適切にコントロールするために日銀が行うのが「金融調節」です。

コール市場の安定に、日銀当座預金の総額管理が不可欠

金融機関が保有する日銀当座預金を足し合わせた額を,日銀当座預金の総額といいます。経済に銀行が3行あり,銀行Aは3兆円,銀行Bは2兆円,銀行Cは5兆円の日銀当座預金を保有しているとしましょう。このとき,日銀当座預金の総額は10兆円です。

図表1 日銀当座預金の総額(1)


金融機関は,日銀当座預金を融通し合って資金の過不足を調整します。たとえば,銀行Bの日銀当座預金が1兆円不足し,銀行Cの日銀当座預金が1兆円余っているとき,銀行Cが銀行Bに1兆円貸し付けると過不足は解消します。

図表2 過不足の解消


日銀当座預金の総額が急に増えたり減ったりすると,金融機関どうしの過不足調整に支障が出ることがあります。日銀当座預金の総額が急に増えると日銀当座預金のゆずり合いがおき,コール市場で資金を運用しづらくなります。日銀当座預金の総額が急に減ると日銀当座預金のとり合いがおき,コール市場で資金を調達しづらくなります。

コール市場の取引を安定させるには,日銀当座預金の総額を誰かが管理しなければなりません。この役割を担うのは,日銀当座預金の唯一の供給者である日本銀行です。(2)

日銀当座預金から引き出される形で発行される現金通貨
日銀当座預金の総額は,銀行券要因と財政等要因によって増減します。図表3は銀行券要因を説明するためのものです。現金通貨は日銀当座預金を引き出す形で発行され,日銀当座預金に入金する形で還収されます。したがって,日銀当座預金の総額は,現金通貨の発行総額が還収総額を上回るとき減り,還収総額が発行総額を上回るとき増えます。

図表3 現金通貨の発還と日銀当座預金の増減


下記の図表4は現金通貨の発還による日銀当座預金総額の増減を表しています。還収が発行を上回り,日銀当座預金の総額が増えると値はプラスになります。発行が還収を上回り,日銀当座預金の総額が減ると値はマイナスになります。プラスが目立つのは,長期休暇中につかわれた現金通貨が還収される1月と5月です。マイナスが目立つのは,ボーナス支給後にまとまった買い物が多くなる6月と12月です。1990年と比べて,2014年の増減幅はせまくなっています。これは,クレジットカードなどが広く使われるようになり,現金通貨を持たなくても支払いができるようになったことを反映しています。

図表4 銀行券要因(3)

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レイ・ダリオ氏、「現金がゴミ」になったニクソンショックの経験を語る
2020年3月28日

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏が学生の頃にウォール街でインターンをしていた時のことをLinkedInのブログで話している。ダリオ氏はその頃にニクソンショックに遭遇したらしい。

1971年ニクソンショック

ダリオ氏は現在70歳なので、これは50年ほど前の話である。

当時アメリカはまだ金本位制を維持していた。つまり貨幣を金と交換することができた。紙幣とはそもそも金塊を持ち歩くのが大変だという理由で金の代わりに流通する目的で作られたものであり、いわば中央銀行に金を預けているという証明書のようなものだったので、紙幣を中央銀行に持っていけば当然金を返してもらうことができた。

ニクソンショックとはアメリカのニクソン大統領が急にこれを取りやめたという話である。その当時ダリオ氏はウォール街で夏のインターンをしていたらしい。彼は次のように語っている。

1971年8月15日の夜、ニクソン大統領はドル紙幣と金を交換するという約束を取り消すと発表した。これによってドルは急落した。ニクソン氏の話すのを聞いている内にアメリカ政府がデフォルトし、いわゆる「お金」としてわれわれが知っていたものが存在しなくなったのだと悟った。

当時、アメリカはベトナム戦争の戦費などがかさみ、財政赤字が拡大していた。戦後のアメリカは本土が戦地にならなかったこともありヨーロッパ諸国への経済支援なども行う立場だったが、1960年代後半にはアメリカ経済も疲弊し始めていた。当時のアメリカの経済成長率のチャートは次の通りである。


1970年には景気後退となっている。

アメリカ政府にはお金がなかった。それで預かっていたはずの金を返せなくなった。返せなくなったので、返さないということにしたわけである。ダリオ氏はこう続ける。

これは良いことであるはずがない、とわたしは思った。だから月曜の朝、株が暴落して地獄絵図になっていると予想しながらニューヨーク証券取引所のトレーディングフロアに入っていった。株は下落する代わりに4%上昇していた。わたしはショックを受けた。それは通貨の切り下げというものをそれまで見たことがなかったからだ。

学生だったダリオ氏が見逃していたのは、貨幣の価値が下がるということはものの値段が上がるということだということである。1,000円で買えていたものが2,000円出さなければ買えなくなる。1円の価値が下がったからである。

「現金はゴミ」発言の真意

ダリオ氏が何故この話を今持ち出したかと言えば、ここにはダリオ氏が年始に言った「現金はゴミ」発言の真意がある。

「現金はゴミ」発言のレイ・ダリオ氏、リスクオフできず新型コロナ株安で20%損失
紙幣とはもともと金を預けている預かり証のようなものだった。だから紙幣には価値があり、人々はそれを使って買い物をすることができた。しかしニクソンショックによってドル紙幣は正真正銘の紙切れとなった。誰も気付いていないが、それには何の価値もない。政府側の人々は紙幣には「政府の保証」があると口々に言うが、「政府の保証」とは中央銀行が株価を上げるために紙幣を次々に印刷することだろうか。それは価値を下げているのであって上げているのではなく、何の保証にもなっていない。

もう少し分かりやすくするために現代風に言い換えて例え話をするとこういうことになる。

あなたはA君に100万円を貸し出した。A君は借用書を書いてあなたに渡し、将来100万円を返すと約束した。ところがある日突然A君がやってきて、100万円は返さないことにしたと言って去っていった。

借用書はまだ手元にあるが、これを持っていても100万円は返ってこないらしい。あなたはA君に対して憤るのも良いだろうし、裕福ならば100万円のことは忘れてしまうのも良いかもしれない。しかし無意味になった借用書を後生大事に持ち続けるという選択肢はない。それを持っていても何も返って来ないからである。しかし実際には世界中の大半の人がその無意味になった借用書を後生大事に持ち続けており、そのおかしさに誰も気付いていない。それが紙幣というものの現実なのである。

現金はゴミ

ビットコインを否定しながら財布に紙幣を入れている人がいるが、ビットコインよりも紙幣の方が信頼できるというのは完全なまやかしである。どちらも何の保証もないという点で一致している。どちらも同じものなのである。

ビットコインがバブルならば、紙幣は人類史上最大のバブルである。チューリップは鑑賞できるが紙幣は鑑賞できない。本当に何の価値もないのである。ただ、トイレットペーパーがなくなった時には役に立つかもしれない。

ダリオ氏が言いたいのは、この紙幣バブルの行方、つまり量的緩和バブルの行方はただでは済まないということである。政治家が支持率を上げるために紙幣を刷りまくったつけが全人類に降り掛かってくる。

しかし一部の経済学者が言うように、先進国の量的緩和の結果がインフレとは限らない。むしろデフレと経済恐慌がその結末であるのかもしれない。ドラッケンミラー氏の言っているのはそういうことである。

ドラッケンミラー氏: 金融緩和こそがデフレの元凶
さて、この話の一番の落ちは市民は政府にいつの間にか金塊を盗み取られているということなのだが、それに気付いた読者はどれだけ居るだろうか?


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貨幣の信用創造

信用創造(英: money creation)とは、銀行が貸し付けによって預金通貨を創造できる仕組みを表す[1]。簡易には準備預金制度のもとで、銀行のみが有する「貨幣を生み出す」機能を指す[1]。創造される信用貨幣の量は準備預金制度に依存し[2][1]、家計や企業の資金需要と借り手の返済能力の影響を受ける[3]。銀行が貨幣経済において果たしている重要な機能のひとつであり、預金創造とも呼ばれる[1]。元の英語のmoney creationから明らかなように、貨幣を創造するのが本来の意味なので、貨幣創造とも呼ばれる[4]。現代のほとんどの経済機構では、マネーサプライの大部分は銀行預金の形をとっている。中央銀行は、いわゆる通貨(金融)総量monetary aggregatesを測定することにより、経済機構内の貨幣量を監視する。


信用創造とは、銀行は集めた預金を元手に貸出しを行っているのではなく、銀行が貸出しの際、借り手の預金口座に貸出金相当額を入金記帳することで、銀行保有のベースマネーといった原資を事前に必要とせずに、何もないところから新たに預金通貨を生み出すことである[5]。この預金通貨は借り手が返済すると消滅する[6][7][8][9]。

銀行は信用供与を通じて銀行の負債である信用貨幣を創造することができる。銀行が信用供与すなわち貸出あるいは証券投資をする際に、借り手あるいは証券の売り手の銀行口座にその金額を記入することにより、新たな預金通貨が創造され、信用回収すなわち返済の際、預金通貨が消滅する。すべての預金通貨は信用創造によって創造され、このような預金通貨から必要に応じて引き出された現金通貨が市中(銀行業システムの外部)で流通する。資金需要がなければ銀行は信用創造できない。現金通貨と中央銀行当座預金は中央銀行の信用創造によって供給される[10]。また、政府支出によって預金通貨が創造され、納税によって消滅する[11]。

信用創造の規模は理論的には無制限であるが、現実的には銀行の貸し付け可能な限界点や家計と企業の行動による制限、金融政策といった制限が存在している[12]。

信用創造と景気循環
設備投資による借り入れなどが増加する景気のよい時期には、自然と貨幣が増加する。一方、設備投資が一巡し、新たな借入よりも返済が多くなれば、景気は落ち着き、貨幣は減少する。

このように信用創造は、貨幣需要(資金需要)にあわせて変動し、景気(名目GDP)と正の相関をもつことが想定される。マネーサプライ(現金+預金)と名目GDP(物価×実質GDP)の比をあらわすものには貨幣の所得速度がある。


信用貨幣論

2007年から2008年の金融危機以降、マネーサプライが貨幣乗数によって制限されるとする部分準備理論に対する批判が高まっている。中央銀行は必要以上の準備金を供給しており、また銀行は必要なときに追加の準備金を積み上げることができるため、銀行の準備金は制限要因ではないことが確認されている。多くのエコノミストや銀行家は、流通しているお金の量はローンの需要によってのみ制限され、準備要件によっては制限されないことを認識している。

銀行が顧客に1000ドルのローンを発行すると、彼らは顧客の借入金口座に1000ドルを借方記入し、同時に顧客の預金口座に1000ドルを貸方記入し、使用できるようにする。今、銀行には1000ドルの新しい資産と1000ドルの新しい負債があるが、資産と負債が同じ量だけ増加するため、銀行の口座はまだバランスが取れている。銀行の貸借対照表は、単純に1000ドルだけ拡張される。銀行はその準備金から1000ドルには手を付けない。その1000ドルは、取引前には存在しなかった新しい流通貨幣なのである。

銀行ソフトウェアの調査は、銀行がローンを発行するときに2つの口座に金額を追加する以外何もしないことを示している。こうして銀行が流通させることができる信用貨幣の量には制限がないように見えるという所見は、「銀行はどこからともなくお金を生み出している"Banks are creating money out of thin air"」というよく聞かれる表現を生み出した。

ローンの発行時にこの方法で生み出される金額はローンの元金(the original amount of a debt on which interest is calculated)と同じだが、ローンの複利(Interest, as on a loan or a bank account, that is calculated on the total on the principal plus accumulated unpaid interest)を支払うために必要な金額は生み出されていない。このプロセスの結果として、世界の債務額はマネーサプライの合計を超える。現行の銀行制度の批評家は、この理由から幣制改革を求めている。

ジョセフ・シュンペーターを嚆矢とする信用貨幣論は、マネーサプライの創造者、配分者としての銀行の中心的な役割を主張し、(技術革新のもと、完全雇用を達成しながらインフレなき経済成長を可能にする)「生産的な信用創造"productive credit creation"」および(消費者物価または資産価格のいずれかのインフレをもたらす)「非生産的な信用創造"unproductive credit creation"」を区別する。

中央銀行の操作(「金融緩和"monetary easing"」など)を通じて刺激されるという銀行貸出のモデルは、ネオケインジアン派経済学およびポスト・ケインズ派経済学の分析、ならびに中央銀行によってas well as central banks却下された。反対派のdissident分析によって提示された主な言い分は、銀行の貸借対照表の拡張(たとえば、新しいローンによるもの)は、それによって法定準備金が銀行から不足した場合、銀行は準備率の制限内で返却するために追加費用を負担するので、(銀行が)ローンから期待できる収益に影響を与える可能性があるということである–しかしこのことは、「そもそも銀行がローンを提供する能力を妨げることはない」。銀行は最初に貸し出し、それから準備率をカバーするのである。貸与するかどうかの決定は、通常、中央銀行がもつ準備金や顧客からの預金とは無関係であって、とにかく、銀行は預金や準備金を貸し出しているのではない。銀行は、顧客の事業の状況、融資の見込み、および/または全体的な経済状況などの貸出基準lending criteriaに基づいて融資を行うのである。


内生的貨幣供給理論

イングランド銀行の季刊誌(2014年春号)は「現代経済における貨幣の創造」の中で、銀行は、民間主体が貯蓄するために設けた銀行預金を原資として、貸出しを行っているのは、通俗的な誤解であると指摘している[13]。銀行による貸出しは、借り手の預金口座への記帳によって行われるに過ぎず、銀行は何もないところから、預金通貨を作り出している。銀行は預金という貨幣を元手に貸出しを行うのではなく、その逆に、貸出しによって預金という貨幣を創造している。貨幣を負債の一種とみなす信用貨幣論を前提とし、需要に応じて銀行によって貨幣が供給されるとする理論は内生的貨幣供給論と呼ばれている[14]。

さらにイングランド銀行の季刊誌(2014年春号)は「現代経済における貨幣の創造」の中で、中央銀行がベースマネーの量を操作し、経済における融資や預金の量を決定しているという見解は通俗的な誤解である[15]と指摘している。中野剛志によれば企業などの資金需要の増大が銀行の貸出・預金を増やし、そしてベースマネーを増やすのであって、ベースマネーの増加が銀行の貸出しを増やすのではない[16]。

また中野は、現代経済において銀行は元手となる資金の量的な制約を受けることなく潜在的には無限に貸出しを行うことができ、制約があるとすれば、貸し手側の資金力にではなく、借り手側の返済能力にあるとする。銀行は借り手に返済能力があると判断する限り、いくらでも貸出しに応じることができる。現代のような複雑かつ大規模な資本主義経済が可能になったのは、その中心に、銀行による信用創造があるからである。銀行は貸出しを増やせば、それに応じた準備預金を増やさなければならないので、金利を調節すれば、銀行の融資活動に影響を及ぼし、貨幣供給を調整することができる[14]としている。

ポスト・ケインズ派のハイマン・ミンスキーは「貨幣がユニークなのは、それが銀行による融資活動の中で創造され、銀行が保有する負債証書の約定が履行されると破壊される点にある。貨幣はビジネスの通常の過程の中で創造され、破壊されるのだから、その発行額は金融需要に応じたものになる。銀行が重要なのは、貸し手の制約にとらわれずに活動するからにほかならない。銀行は資金を貸すのに、手元に資金を持っている必要がないのである。この銀行の弾力性は、長期間にわたって資金を必要とする事業が、そのような資金を必要なだけ入手できるということを意味する」と述べている[17]。

国債と内生的貨幣供給理論

日本政府は私企業とは異なり、民間銀行に口座を保有しておらず、円に関する預金口座は日本銀行のみに開設している。また銀行が国債を購入するには、銀行が日本銀行に保有する当座預金残高を利用している。その具体的な過程は以下の通りである。

銀行が国債(新発債)を購入すると、銀行保有の日銀当座預金は、政府が開設する日銀当座預金勘定に振り替えられる
政府は、たとえば公共事業の発注にあたり、請負企業に政府小切手によってその代金を支払う
企業は、政府小切手を自己の取引銀行に持ち込み、代金の取立を依頼する
取立を依頼された銀行は、それに相当する金額を企業の口座に記帳する(ここで新たな民間預金が生まれる)と同時に、代金の取立を日本銀行に依頼する

この結果、政府保有の日銀当座預金(これは国債の銀行への売却によって入手されたものである)が、銀行が開設する日銀当座預金勘定に振り替えられる

銀行は戻ってきた日銀当座預金でふたたび国債を(新発債)を購入することができる
したがって、銀行の国債消化ないし購入能力は、日本銀行による銀行にたいする当座預金の供給の仕振りによって規定されている
赤字国債の発行にもとづく政府支出の場合であれ、建設国債の発行にもとづく政府支出の場合であれ、銀行は受け入れた預金を基礎に国債を購入するわけではなく、逆に、政府が国債を発行し、銀行がそれを購入することによって、預金が創造される[18]。 1から6までの過程自体は、少なくとも理論的には無限に続き得るものであり、この過程が示すように政府の支出は民間企業の貯蓄となる。政府の財政赤字は民間貯蓄によってファイナンスされているのではなく、その反対に、政府の財政赤字が民間貯蓄を生み出している[19]。

歴史

スコットランドの経済学者H・D・マクラウド(英語版)は、銀行の本質を「要求払いの信用を創造し発行すること」と主張し、シュンペーターやアルバート・ハーン(ドイツ語版)、フィリップス(英語版)らにより理論が発展した[1]。マクラウドは従来の経済学の考え方を根底から覆し、信用創造論を中心とする銀行信用の役割について、きわめて斬新な視点を提供したが、その後のフィリップスによる大きな影響のもとに変質を遂げ、貨幣乗数アプローチに基づく貨幣供給理論が現在のマクロ経済学や金融論の主流を占めている[20]。

ヘンリー・マクラウドの信用創造論の概要は、次の通りである。顧客が取引銀行に1万ポンドの現金を預金として預け入れるとすると、銀行の貸借対照表は、銀行の資産側に現金が1万ポンドが計上され、その負債側に同額の預金が計上され、表1のように表される。マクラウドの言葉によれば、「銀行はその顧客から貨幣を購入し、それと引き換えに銀行は顧客にその帳簿に信用を与える。すなわち、銀行は自分自身に対する同額の請求権を創造する」。銀行は社会的信頼を得ている限り、一方で現金を引き出そうとする顧客もあれば、他方で現金を預けようとする顧客もあるので、大数の法則として預け入れられた預金の一部分だけを手元に支払準備として保有するだけで良いので、ここでは、銀行が3か月払いの4万ポンドの為替手形を買い入れたとする。この場合、割引率を年4%とすれば、銀行の利益は400ポンドであり、この分が手形の買い入れ代金より差し引かれる。つまり、4万ポンドの手形に対して、39,600ポンドの預金が増加することになる。利益の400ポンドは銀行の自己資本として負債(および資本)欄に計上される。この結果、銀行の貸借対照表は表2の通りとなる。銀行は4万ポンドの手形の購入と引き換えに、39,600ポンドの預金(信用)を創造したのである。銀行が貸出しを行った場合も同様である。マクラウドは以上の事例に基づいて、銀行は当初に預かった預金の数倍の収益資産の購入(手形の購入や貸出し)を行うことができると主張し、銀行は信用の製造所であると述べた。そして、銀行によって創造された信用は、小切手その他の支払指図によって、銀行の預金勘定間を自由に移転可能であるから、その性質や効果などあらゆる点において、貨幣と同様であり、信用の創出は貨幣の追加にほかならないとみなした[21]。

表1 銀行の貸借対照表(単位:ポンド)
資産 負債
現金 10,000 預金 10,000
計 10,000 計 10,000

表2 銀行の貸借対照表(単位:ポンド)
資産 負債
現金 10,000 預金 10,000
為替手形 40,000 預金 39,600
利潤 400
計 50,000 計 50,000

フィリップスは、「本源的預金 (primary de- posits) 」をもとにその乗数倍の貸し出しかできるため、その乗数的な預金である「派生的預金 (derivative deposits)」 が創出されると主張した[22]。フィリップスにより提示された「本源的預金と派生的預金の区別、個別銀行と銀行システムとの関係、貸し出し拡張の限界」に関する理論は信用創造の通説となり、部分的修正や精緻化を行う研究者が後に続いた[21]。

フィリップスの公式(X:貸出限度、C:現金、R:支払準備率)[1]
{\displaystyle X={C\times (1-R) \over R}}{\displaystyle X={C\times (1-R) \over R}}
1930年代になると、貨幣乗数の理論が登場し、合わせて理解されるようになる[1]。

ハートレー・ウィザーズ(en:Hartley Withers)はその主著『貨幣の意味』において、「あらゆる貸出しは預金をつくる」と述べ、銀行貸出の増加も、銀行の政府証券の購入も、銀行預金を増加させるという点では同一の効果をもたらすと指摘した[23]。ジョン・メイナード・ケインズは 『貨幣論1』において「本源的預金」に対応する「受動的に創造する預金」、「派生的預金」に対応する 「能動的に創造する預金」という概念を用いてフィリップスと同様の理論を提唱し、さらに、信用創造能力は理論上は無限であると主張した[24]。クヌート・ヴィクセルもケインズと同様銀行の信用創造能力は無限であるとし、さらに、その能力は貨幣に対する市場の需要によって決定されるとした[25]。また、イギリスの経済学者であるR.G.ホートレー(英語版)は、「銀行貸出こそが貨幣供給の源泉」であるとした[26]。


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MMTの本質は『貨幣=負債』と定義する貨幣負債論
主流派経済学の貨幣観である商品貨幣論(外生的貨幣論)は間違いだった


信用貨幣論

2020年5月5日
寓話で学ぶ信用貨幣論
From 角谷快彦@広島大学医療経済研究拠点(HiHER)拠点リーダー/広島大学大学院教授

新型コロナ禍の経済的影響が深刻ですが、政府の対策が遅いのは、専門家を含む国民の間の「貨幣観」の相違に起因する、「政府の財政余力に対する認識の違い」が大きいためと考えられます。そこで、この度、より現実に即した「貨幣観」である「信用貨幣論(≒表見主義)」の一般向けの説明のためにオリジナルの寓話を作ってみました。まず、私の立場と貨幣観を明らかにした上で、寓話を紹介します。

私は、一経済学者として、政府は今こそPB目標を止め、国債を大量発行し、全力で国民を救うべきだと主張します。

私の発想はMMT(現代貨幣理論)にとても近く、日本政府に財政問題はないと考えます。日本政府は「何もないところから」自国貨幣を創造することができますし、実際にしています。日本で暮らす私達は日本円で税金を払いますが、日本に最初から日本円があったわけではありません。最初に政府が「何もないところから」創出したから日本円があるのです。

このことは、政府の予算執行にも表れていて、年度はじめの4月1日に政府が国会の議決を経た予算を「何もないところから」執行し、確定申告によってその年度の税収が確定する(税の払込が終わる)のは翌年の5月頃です。ですので、そもそも政府は、町内会のように集めた会費で成り立っているのではなく、「何もないところから」貨幣を生み出して供給し、その後に税金を徴収しているのです。そして、これらは仮説や意見や学説ではなく、単なる事実です。

繰り返しますが、政府は「何もないところから」自国貨幣を生み出します。確かに、会計上、日本政府の貨幣供給は「日本政府の負債」・「日本国民の資産」となるので、家計や企業のバランスシートを見慣れた私達には、この会計上の記載をもって政府は国民から貨幣を借りているように見えてしまいます。しかし、実際の政府は国民を含む他の誰かから自国貨幣を借りているのではなく、「日本政府の負債」・「国民の資産」を創出しているのです。

日本国債も日本政府が発行する貨幣の一種ですので同じです。政府が誰かから借りているわけではなく、その発行は「日本政府の負債」・「日本国民の資産」の創出です。国債は金利がつくので後者は「国民の定期預金」の創出と言った方がわかりやすいかもしれません。「国債発行=一種の貨幣供給」ですので、政府の債務は政府の貨幣供給残高が増えると大きくなります。

ちなみに、銀行もまた融資の際に「何もないところから」貨幣(いわゆる「万年筆マネー」)を生み出します。これを「信用創造」と呼びます。しかし、この場合、生み出された貸出金は「銀行の資産」・「借りた人の負債」になりますので政府が貨幣を生み出す場合と逆です。政府が自分の信用を担保にしているのに対し、銀行は借り手の信用を担保にしているからです。先程から「何もないところから」と繰り返していますが、実は「受け取ってもらえる信用」が貨幣に価値をもたせるのです。

さて、政府の財政に関する議論で、貨幣の海外流出の懸念が時に話題に上がります。しかし、日本円・日本国債は外国の個人や機関も所有することができますが、日本の貨幣は基本的に日本でしか使えませんので、外国所有分も将来的には日本で消費され、日本の資産になります。

さらに、日本は変動相場制を採用していますので、外貨準備に関する制約も少ないです。
もちろん、貨幣も必要以上に供給すればインフレになりますが、この度のコロナ禍の経済対策で議論されている休業補償や消費減税は、従来の経済水準を維持するためのものなので高インフレにはなりません。

ですので、私の主張は「政府は今こそ遠慮なく国債を大量発行し、全力で国民を救うべき」となるのです。

一方で、もうひとつの貨幣観「商品貨幣論(金属主義)」で世の中を見ると、上記とまったく異なる景色が見られます。商品貨幣論とは、貨幣が信用で価値を担保されているのではなく、貨幣そのものに価値がある(もしくは人々が慣習としてそう思い込んでいる)という見方です。アダム・スミスが賛同したため、経済学の教科書でよく見られる貨幣観ですが、現実社会では、文化人類学や歴史学の分野から近年多くの否定的考察がなされており、また1971年の米ドル紙幣とゴールドの兌換停止宣言(ニクソンショック)という歴史的事実もあります。学問としての洗練性はともかく、現実との整合性にはかなり無理があると私は認識しています。

ちなみに、経済学のモデルの多くは古くから「商品貨幣論」を前提としており、圧倒的多数の経済学者が「商品貨幣論」のメガネを掛けています。「信用貨幣論」の私はマイノリティーです。ただし、私は普段、貨幣の創造とほとんど関係のない家計や企業を中心としたミクロ経済学の研究をしているので、特に貨幣観を意識することはありません。他の経済学者もそうだと思います。ただ、政府を含むマクロについて語る時になると貨幣観の違いが大きく出ます。これに対し、ジョセフ・スティグリッツ教授がよく言う「政府の財政を家計と同一視してはいけない」という言葉に私は強く同意します。

さて、この「商品貨幣論」のメガネで見る貨幣は、ゴールドのようにその希少性が価値の裏付けになっているので、政府が新規に貨幣を供給して、貨幣量を増やすことが怖くなります。

先日、麻生財務大臣が「政府の財政を黒字化する目標(PB黒字化目標)を堅持する。そうしないと日本国債が投げ売られる」という趣旨の発言をしましたが、「商品貨幣論」のメガネを掛けると本当にこのような悲惨な光景がはっきりと想像できます。その様は、ゴールドの再出量が急に著しく増えて希少性を失った瞬間にその価値が唯の石ころ同然になってしまうように、1万円札がただの紙屑に姿を変えてしまう光景です。麻生財務大臣にはきっとこれが見えたのでしょう。

同じことは、一部の専門家やメディアでよく言われる「政府の財政赤字が続くと財政破綻する」、「財政赤字は将来世代へのツケ」、「コロナ禍に対応する財政拡大は後の増税を伴う」といったよくある言説についても言えます。

貨幣の価値が希少性によって担保されていると考えると、全体の貨幣量はほぼ一定なので、政府の負債も「誰かから借りたもの」に見えてしまいます。そして、「借りたものは返さなければ」ということで、財政破綻や将来世代へのツケという発想になり、今回のコロナ禍でも「政府の財政は厳しいのでとても全員を助けることはできない」となるのです。

2つのメガネで見る世界はこれ程異なります。私が掛けている「信用貨幣論」のメガネから「商品貨幣論」の論考を見ると「PB黒字化→国民の資産を減らすだけ」、「財政破綻→あり得ない」、「将来世代へのツケ→論理的でない」に見えます。一方、反対側から見ると「新規国債の(大量)発行→借金を増やして将来のツケを残す+このまま続ければ貨幣は紙くず化」となり、お互いに相手の意見が極端な暴論に見えるのです。

ところで、最近、この異なる「メガネ」をかける人同士がインターネット上で人格攻撃を含む壮絶な罵り合いをしているのをよく見かけます。上記のように、お互いが「相手の意見は暴論」に見えるので心情は理解できますが、ぜひとも建設的な議論に留めていただきたいと強く思います。

前置きが長くなりました。いよいよここから一般向けの「信用貨幣論」(厳密には「国定信用貨幣論」)の説明のために作った寓話です。なお、この話はWarren MoslerのSeven Deadly Innocent Frauds of Economic Policyにある「家族クーポンの話」から着想を得ています。「貨幣の信任」、「銀行の誕生」、「信用創造」、「経済成長」を通じて現実社会の「信用貨幣論」を学べます。できるだけシンプルにわかりやすくしたつもりです。


ある家族のお話です。

その家の子供達は細かな不満はありましたがその家が気に入っていました。できればずっと今の家に居たいと思っていました。

ある時、お父さんが子供達に言いました。「庭の芝を刈ってくれ。そしたらお父さんのサイン色紙を2枚あげよう。洗濯、靴磨き、皿洗いをやってくれ、それぞれの仕事にお父さんのサイン色紙1枚をあげよう」

子供達「え?嫌だよ。それにお父さんのサイン色紙なんていらないよ」

お父さん「じゃあ、こうしよう。子供達は皆、毎月末にお父さんに『お父さんのサイン色紙』を5枚、お父さんに返すこと。できなかった子は地下の折檻部屋に閉じ込める」

子供達は折檻部屋に行きたくなかったのと、お父さんは約束を守るはずと信じていたので、仕事をしてお父さんのサイン色紙を集めはじめました。


(貨幣の信任)

そしてある程度サイン色紙を貯めると、子供達の間で「お父さんのサイン色紙」は貨幣として流通しはじめました。

例えば子供達の中で一番多くのサイン色紙を集める太郎は、なかなかサイン色紙を集められない花子に自分のために料理を作らせ、代金としてサイン色紙を数枚渡すと行った具合です。

しばらく経つと、子供達は集めたお父さんのサイン色紙の保管場所に困り始めました。サイン色紙は大きいし、子供達にとっては価値があるので部屋に置いておくと他の子に盗まれます。

子供達の中で一番信頼が厚く、唯一頑丈な「金庫」を持っていた太郎に他の子供達はサイン色紙を預けることにしました。

太郎は他の子供達からサイン色紙を預かり、1枚預かるごとに借用証を手渡します「借用証 お父さんのサイン色紙を1枚預かりました」。

借用証は色紙と比べて小さく、持ち運びやすかったので、やがて借用証自体が貨幣として流通し始めました。例えば次のような具合です。

二郎「腹減った。花子、ラーメン作って」

花子「いいよ。じゃあ、お父さんの色紙2枚ね。支払いはお父さんの色紙でも太郎の借用証でもいいよ」

ある時、太郎は流通する借用証の枚数は実際に預かっているお父さんのサイン色紙の枚数とほとんど関係がないことに気づきました。実際、どの子も一度預けた色紙を引き出すことはほとんどないのです。

(銀行の誕生)

すると、ちょうどいいタイミングで三郎が太郎に相談に来ます。「四郎と五郎に手伝わせて庭に野球場を作って皆から利用料を取るんだ。野球場を作るために借用証を100枚発行してくれよ。あとで101枚にして返すから」

太郎は三郎を信頼できると思いました。そして、自らの金庫の中身を確認することも、サイン色紙の預け入れをすることも何もなく、「借用証 お父さんのサイン色紙を1枚預かりました」と書いた借用証を100枚書いて三郎に渡しました。

(これがいわゆる「信用創造」。民間経済はまさにこの瞬間に成長します。)

三郎のビジネスは大成功しました。皆はそれを見て、様々なビジネスアイデアを思いついて、太郎に借用証を借り、それらを実現させて大家族の生活はとても豊かになりました。
しかし、ある年、大流行した疫病がこの大家族を襲いました。子供達の何人かは感染して働けなくなり、感染しなかった子供も感染を恐れて働くことができなくなりました。

お父さんはこの家族の危機に立ち上がりました。今、お父さんは、働けない子供達が「疫病が来る前の生活水準」を維持できるように大量の色紙にサインをしたためて渡し、子供達の毎月の支払い義務も少し減らそうと考えています。

(このお話は次のアナロジーです。お父さん=政府、子供=国民、お父さんの考え=休業補償&減税)

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角谷快彦(かどやよしひこ)
1976年生まれ。広島大学医療経済研究拠点(HiHER)拠点リーダー、広島大学大学院教授。
PhD (経済学、豪州・シドニー大学)。


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MMT 現代貨幣理論とは何か (講談社選書メチエ) – 2019/12/12
井上 智洋 (著)

カスタマーレビュー

みぬさ よりかず
5つ星のうち1.0 井上智洋デマと嘘のMMT
2019年12月29日

「MMTはベーシックインカムの財源では無い」

『デフレ脱却こそ全ての解』

 井上智洋さんの著作「MMT 現代貨幣理論とは何か」ですが、『デフレ脱却が絶対に必要』との井上さんの見解に対し、私も100%賛同するものです。しかし、その認識や解決策が間違っている場合、むしろデフレ脱却の妨げになるケースもあります。例えば、本著のアマゾンレビューに1つ星を付けたブロック経済学者の異名を持つ、田中秀臣さんもデフレ脱却の重要性を唱えていた人物ですが、彼が信奉するリフレ理論の根本的な間違いによって、日本のデフレ脱却は逆に遠のいてしまいました。井上さん、貴殿も同じ穴のムジナとなっていませんか?

『ベーシックインカムは新自由主義への降伏である』

 MMTの理論的中枢と呼ばれる雇用保証プログラム(JGP)ですが、私は、この政策提言を知った際、瞬時にベーシックインカム(BI)へのカウンターだと直感しました。MMTの本質は『貨幣=負債』と定義する貨幣負債論であり、全国民に一定額の「カネを配る」というBIは、MMT的には「負債を配る」と同義語となり辻褄が合いません。私は、来日したMMTの提唱者であるビル・ミッチェルに、ベーシックインカムの問題点について直接質問したところ、同氏はJGPについて延々と説明した上で、『ベーシックインカムは新自由主義への降伏である』との回答をしたのです。私の直感は、その瞬間に確信に変わりました。

『BIがMMTに擦り寄る闇』

 井上智洋さんは、ベーシックインカムの推進論者で、民間銀行の信用創造禁止を唱える公共貨幣論者(PM派)として知られています。海外のMMT論者は、BIやPM派を激しく攻撃する事で知られる経済学派ですが、日本で最初にMMTを紹介したのはBI論者らしく、松尾匡さんや大西つねき氏など、PM派のBI論者が、MMTに擦り寄るという逆転現象が起きています。ミッチェルやケルトンなどの海外のMMT論者も同じサヨクという事で、大目に見ているのかも知れませんが、重要なのはBI論者がMMTに接近する理由は、只一つで、MMTをBIの財源の理論的背景として利用しようとしているからでしょう。

『内生的貨幣論と外生的貨幣論を意図的に誤読』

 公共貨幣論はMMTと全く違う貨幣観を持ちます。MMTでは貨幣は負債(内生的貨幣論)ですが、PM派は、主流派経済学の貨幣観である商品貨幣論(外生的貨幣論)のままです。ところが井上智洋さんは、この決定的な違いを曖昧に処理し、松尾匡さんと同じく、両者には大きな違いは無いと断じていますが、その結果、本著の第4章は、非常に分かり難い内容となっています。私は、この操作が意図的なものか?貨幣負債論を井上氏が理解していないだけか?謎ですが、実際は両方なのでしょう。

『貨幣観の間違いは致命的』

 井上氏が支持する公共貨幣論を簡単に説明すると、国債などの政府の借金は悪(=利息)であり、それを利息の無い政府紙幣を発行して全部返せば国の借金問題は解決し、更に政府紙幣をベーシックインカムとして全国民に直接配り、預金の又貸しによって人々を借金(つまり利息)漬けにする銀行の信用創造を禁止すれば、世の中が良くなるとの思想ですが、元の貨幣観が、商品貨幣論(外生的貨幣論)という間違った認識なので、間違えた解決策しか示せていないのです。

『MMTとBIは水と油』

 MMTでは、そもそも貨幣が負債であり、政府支出は、政府通貨の発行で行われると説明します。つまり政府紙幣を発行するまでも無く、既に政府通貨が発行されているとの立場です。またMMTでは、政府支出で金利が下がると説明しており、公共貨幣論者が憎悪する利息は、今や金利0%まで下がっています。また貨幣=負債なのですから、国債は利息の付く通貨でしか無く、その金利は任意であり、銀行の定期預金と実質的に同じであり、国債を止めて、日本銀行の定期預金にする事も可能としています。そして公共貨幣論者のBIを叩き潰す最終兵器がJGPなのです。

『金持ちにカネを配る愚策』

 井上智洋さんは本著72ページで、MMTの国債廃止論に賛同し「お金持ちが楽して儲ける手助けをわざわざ国が行う必要はないと思っています」と書いています。実際、小泉進次郎環境相と結婚した滝川クリステルさんは、個人国債を1億5千万円も持っていた事が話題ですが、金利は年間6万円だそうです。ところが、井上智洋さんは、ベーシックインカムを月7万円全国民に配る事を提唱しており、滝川クリステルに年間84万円も楽して儲ける事を主張しているのでから「何をか言わんや」です。

『105兆円ものBIでバブルと格差拡大と賃下げとインフレが同時発生へ』

 井上智洋さんはJGPの問題点を挙げて、BIの方が良いと本著で主張しますが、月7万円を全国民に配る場合は、年間105兆円もの財政出動となります。この場合、マクロ経済的に起きるのは、滝クリの様な富裕層は投機にBI資金を使いバブルが発生し、中間所得層はBIを貯蓄し、四人家族なら十年で3360万円もの金融資産を得て政府の手で格差が拡大し、貧困層はBIを全て消費に廻しつつ賃金下落の口実をブラック企業に与えます。バブルの発生と格差拡大に加え、インフレと賃金下落が同時に発生するスクリューフレーションが、BIで起きるのは確実です。

『この世の最も無駄な労働とは経済学者であること』

 井上智洋さんは無駄な労働が多いと嘆き、無駄な労働を減らす為に、ベーシックインカムを導入すべきと主張します。私は職業に貴賎は無いとの立場ですが、敢えて世の中の無駄な労働を挙げるとすれば、経済学者である事です。ビル・ミッチェルは来日講演で、招致者である藤井聡氏が土木工学の研究者である事に鑑み、仮に橋が設計ミスで崩落した場合、土木エンジニアは投獄されるが、主流派経済学者は間違った経済学説による社会的な被害に対し責任を一切取らないと憤っていましたが、私も同感です。

『無駄な労働と決別し自らBIを実践すべき』

 井上智洋さんは、無意な営みでは無く、本を読んだり、映画を見たり、経済学の研究を進めたり、居酒屋に行ったりしたい。無駄な労働では無く、絵を描いたり、ギターを弾いたり、仲間とフットサルをしたり、カフェで友人と語らったり、家族で旅行をすべきと本著で記しています。そのような社会がベーシックインカムで実現するそうですから、ならば、無意な営みであり、無駄な労働である、駒沢大学経済学部の准教授を直ちに辞し、生活保護を受給しながら、BIを自ら実践して欲しいと切に願います。

『生活保護とBIは全く違う』

 井上智洋さんは、生活保護の捕捉率が2割程度なのを嘆き、それを、改良したのがベーシックインカムだと豪語しますが、現在の日本での生活保護受給者は、二百万人程度ですので、仮に捕捉率が100%でも1千万人程度の受給者となります。それを一気に1億2千500万人に増やすのがBIならば、それは弱者救済とは何も関係ないのは明白です。BIの提唱者が、新自由主義の始祖であるミルトン・フリードマンである事から、BIとは、国家や政府の解体、財政政策の否定と、財政政策の金融政策化なのは明白です。ミッチェルの発言通り、ベーシックインカムは、どこまで行っても、本質的にネオリベ政策そのものです。

『負債とは関係であり約束』

 貨幣が負債というMMTの世界観が、主流派経済学と根本的に違うのは、『不確実性』という問題と正面から向かい合うか否かです。負債には常にデフォルト債務不履行のリスクが伴います。つまり貨幣とは、現実社会で発生する不確実性を如何に軽減するかという人類の知恵なのです。ところが主流派経済学では、この不確実性を取り除き現実社会を論考します。つまり主流派経済学では貨幣は存在しないのです。負債の対概念は信用です。その信用とは約束であり、人間関係そのものです。逆に言えば、貨幣負債論を否定するBIは人間関係そのものを否定しているのです。

『MMTに中立は無い』

 井上智洋さんは、MMTを中立的に分析としますが、不確実性に対する人類の叡智を学問の対象とするMMTと、不確実性を排除して社会を見る主流派経済学は、根本的に世界観が異なります。仮に井上さんが、MMTの世界観を理解したなら、ベーシックインカムなど、口が裂けても出てこないでしょう。その意味で、本著はMMTの世界観を理解しない人物による間違ったMMT論で有り、MMTの理解に対し、害悪以外の何物でも無いと言わざるを得ません。

『カナヅチの書いた水泳論』

 MMTの国内での議論を通じて思うのは、MMTの根幹である貨幣負債論を理解できるか否かについて、これは水泳やスキーや自転車に似ているという感想です。泳いだり、自転車を漕いだり、スキーを滑れる様になるのは、頭で理解するというより、身体的な感覚に近いのですが、MMTは、これに似ている気がします。その意味で、井上さんは、水泳についての知識は有しているカナヅチの人に似ているのです。カナヅチの人が書いた水泳論ほど信用できないものは無いでしょう。私は、井上さんが、いつか正しいMMTを理解する日が来る事を、切に願って止みません。


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信用貨幣は時と共に貨幣価値が下がり続け、最後は紙屑になる


世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で人々はリッチになったような気がする
2020年5月8日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10616

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がLinkedInでのブログ投稿で量的緩和についてこれまでより雄弁に語っている。

為替相場の終着点

ダリオ氏は現在の為替相場について次のように述べている。


ドル、ユーロ、円は債務の膨張・破裂サイクルの後期にあり、これらの通貨で債券を保有することの実質リターンは低く、新たに大量の債務が作り上げられマネタイズされてゆく。

そしてマネタイズの問題点について次のように説明する。


多くの人々は通貨を永遠に続くものと考えたり現金がもっとも安全な資産の保管場所だと思ったりするが、すべての通貨はいずれ減価するか消滅するのでそれは正しくない。

そしてそうなるときには現金と債券(それは通貨を受け取るという約束である)は減価されるかなくなるだろう。紙幣印刷と債務の減免は債務負担を減らすためのもっとも都合の良い方法だからである。

先進国はほとんどの国が巨額の債務を抱えている。ダリオ氏は債務を減らすためには以下の方法があると説明する。

•緊縮財政(消費を減らすこと)
•債務の不履行または減額
•資金と信用の移転(増税など)
•紙幣印刷と通貨の減価

最後のものは要するに量的緩和である。

ダリオ氏は次のように続ける。


この中で紙幣印刷はもっとも便利で、もっとも誤解されやすく、もっとも行われやすい債務縮小の方法である。

実際、紙幣印刷は債務の急な縮小を和らげ、この金融上の富を供給する代償として誰が富を取り上げられる被害者になるのかが分かりにくい(しかしそれは実際には通貨と債券の保有者全員である)。しかも大抵の場合資産価格が減価された通貨建てで上昇するので人々はリッチになったような気がする。

リッチになったような気がする。良いことではないか。

しかしダリオ氏は次のように続ける。


主要な準備通貨がこのように減価したり準備通貨としてのステータスを失ったりすることはわれわれが想像出来るなかで一番破滅的な経済的イベントである。

量的緩和の終着点

量的緩和と似たようなことは過去にも行われた。そして大抵の場合まともな終わり方をしなかった。ダリオ氏は次のように説明を続ける。


ほとんどの人は通貨の下落リスクに注意を払わない。ほとんどの人が心配するのは自国通貨建てで資産が増えるか減るかであって、自国通貨自体が上がるか下がるかを心配する人はほとんどいない。

1700年にはおよそ750の通貨が存在したが、今残っているものはたった20%であり、残っている通貨はそのすべてが減価している。

ドイツではグルデンやターラーが使われていた。日本には円がなく、小判や両が使われていた。イタリアでは6つの通貨のうちいくつかを使っていた。

それらの通貨の内いくらかはハイパーインフレになったり、敗戦や巨額の戦費で債務の支払いが不可能になったりして通貨が消滅し、別の通貨で置き換えられた。いくらかは別の通貨に統合された(ユーロのように)。ドルやポンドのようにいくらかは現在も残っているが価値は下落している。

ちなみに日本の両はいわゆる小判だったが、円に変わるまでの間に金の含有量が何度も減らされている。円ももともと金貨だったがついに紙切れになった。そして紙切れになっても誰も文句を言わないのである。アメリカでも同じことが起こっている。

•レイ・ダリオ氏、「現金がゴミ」になったニクソンショックの経験を語る

何故それでも量的緩和か

ダリオ氏が挙げた債務の4つの対処法の中でいつの間にか財布の中身をなかったことにされる紙幣印刷は本質的にはもっとも不公平なのだが、面白いことに人類が負債という問題に直面した時には大抵紙幣印刷が選ばれてきたのである。ダリオ氏は次のように述べている。


こうした通貨と信用の創造に誰も文句を言っていないようだ。それどころか、政府が通貨を印刷しなければ政府は残酷だなどと悲鳴が聞こえてきそうである。政府には送り出す金などなく、しかも政府とは金持ちの誰かではなくわたしたち自身であり、それをわたしたちが支払わなければならないということを誰も理解していない。

しかしそれでも量的緩和が終わるということをダリオ氏は予想しない。彼は次のように述べている。


今の状況で政府が予算とバランスを取るために支出を減らし、国民にも同じようにするように求め、不況でもたくさんの債務の不履行や減免をそのままにしたり、あるいはお金を持っている人から直接税金によってお金を持っていない人に再分配しようとしたりした場合のことを想像してみてほしい。紙幣印刷のほうがよほど政治的に受け入れられやすい。

つまり、ダリオ氏はそれが良いから量的緩和が行われるのではなく、良し悪しにかかわらず起こりやすいことが起きると言っているのである。

良いことは起こらない。それは起こりにくいからである。ダリオ氏はこうした量的緩和の状況を以下のように例えている。


これはある意味モノポリー(訳注:人生ゲームのようなもの)でプレイヤーのほとんどが文無しになって怒り出したので銀行役の人が現金を配り始める瞬間と同じようなものだ。

政治とは子供をあやすようなものなのである。しかし政治家はあやす対象から金を十分にせしめて帰ってゆくという点が子育てとは違っている。

政治家が何の責任も取らずに帰った後にはどうなるのだろうか? どれだけ紙幣を刷っても円は下がらないだろうか? しかし同じ先進国であるヨーロッパにはその運命は近づいてきているのである。

•新型コロナによる世界恐慌でヨーロッパ経済壊滅の可能性

そして米国がそうなる前に日本がそうなるだろう。

結論

ダリオ氏を含め、ほとんどの著名投資家は量的緩和について同じことを言っている。例えばコロナショックを予想したガンドラック氏である。

•ガンドラック氏、新型コロナでの企業救済とヘリコプターマネーを痛烈批判

例えばクォンタム・ファンドでポンド危機の際にポンドの空売りをしたドラッケンミラー氏である。

•ドラッケンミラー氏: 金融緩和こそがデフレの元凶

筆者には彼らの理屈は当たり前のように聞こえるのだが、不思議と理解者は少ない。量的緩和を何も考えずに支持している人々はきっと彼らより深く経済を理解しているのだろう。

物事を理解できる人間は理解できない人間より大幅に少ないので、民主主義は常に間違え続けるしかない。彼らが間違えるのは勝手だが、巻き添えは遠慮をしたいものである。

幸いにも投資家は相場を使って自衛をすることが出来る。まずはユーロが量的緩和の犠牲になるだろう。

•新型コロナによる世界恐慌でユーロが下落する理由

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10616

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世界最大のヘッジファンド: ドルは既に紙くずになっている2020年5月9日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10645

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏が引き続き政府による紙幣印刷から身を守る方法について語っている。

通貨下落への防衛手段

前回の記事ではダリオ氏がLinkedInのブログ記事で何故量的緩和は債務の解決手段として悪手であるにもかかわらず人は量的緩和に頼ってしまうのかについて説明した部分を紹介した。

•世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で人々はリッチになったような気がする

そして通貨の価値は破滅的に下落すると主張していた。では投資家はどうすれば良いのだろうか? 今回はダリオ氏が通貨の代用品について語った部分を紹介したい。

通貨とは獲得した富を保存するための手段である。今日手に入れた収入を来月でも来年でも使えるのは、多くの人にとっては銀行に現金を置いておけるからである。しかし現金の価値が下落する時にはどうすれば良いのか? ダリオ氏は次のように説明する。


金は時代を問わず普遍的な代替通貨としての役割を果たしてきた。

株式もまた富の貯蔵手段となりうる。

不動産や美術品なども富の貯蔵手段である。

順番に見てゆきたい。

預金 vs 金積立

まず金だが、ダリオ氏は主要な通貨が1600年以来金に対してどれほど減価したかのチャートを示している。見事にすべてゼロに近づいているのだが、実は通貨の価値は下落するものだということを理解するためには400年も遡る必要はない。

読者は金価格の長期チャートを見たことがあるだろうか。見たことのある読者も少なくないだろう。しかし本当にその意味を実感するためにはグラフの上下を逆にする必要がある。つまり、金価格がどれだけ上がったかではなく、現金の価値がどれだけ下がったかを見るのである。以下は過去50年ほどの間に金に対してドルの価値がどう推移したかのチャートである。

50年の間にものの見事に紙くずになっている。50年ほど前のドルの価値を100%とすると、現在のドルの価値はその2.3%である。そして考えてほしいのは、この50年間ほとんどの人は資産の大部分を現金のままにしており、その資産は実際に紙くずになったということである。ダリオ氏が言っているのは、今現代人もそうなるのではないかということである。

現金が勝者だった黄金時代

しかし一方で現金のリターンがゴールドを上回った時期もある。ダリオ氏は次のように説明している。


1850年から1913年(第一次世界大戦まで)の期間では通貨(預金など短期金利による収入を含む)を保有した場合のリターンはゴールドを保有した場合のリターンよりも概して良くなっている。

この60年ほどの期間がどういう期間だったかと言えば、ほとんどの通貨は金か銀に為替レートが固定されており、しかも第二次産業革命と呼ばれるこの繁栄の時代では借金の借り手が借りた資金を収入に変え、収入が借金を返していたために貸し手は魅力的な金利を得ることが出来た。

借金で消費や自転車操業の企業を増やすのではなく生産性を増やし、その後には借金をしっかり返せていた時代があった。返せない借金をしないということがどれほど大事かということである。しかしそうでなければ通貨が紙切れになってゆく。

通貨の価値が維持され、しかも経済が成長していて借り手が金利を払える場合には誰もが問題なく良い生活を送っていた。「紙幣を印刷すると豊かになるのではないか」という「壺を買えば幸せになるのではないか」同然のまやかしで自分を騙す必要もなかったのである。この2つに何か違いがあるだろうか? 誰か教えてほしいものである。紙切れよりはむしろ壺のほうが価値があるだろう。

•ドラッケンミラー氏: 金融緩和こそがデフレの元凶

富の貯蔵手段としての株式

そして最後にダリオ氏が株式について語った部分を紹介しよう。


量的緩和により通貨と信用の供給が増加すると、通貨と信用の価値は減り、(その保有者は損害を受け、)債務の負担は減少することになる。

債務負担の減少によって通貨と信用が生産性と企業利益に流れ込む場合には株価の実質値(インフレによる株価上昇を差し引いた後の株価)が上昇するだろう。

まず前提となるのはインフレは株価にとってプラスだということである。インフレとは通貨の価値の下落なので、その通貨以外のすべてのものの価格が上昇する。株価も例外ではない。

ダリオ氏がここで言っているのは、創造された通貨と信用が生産性と企業利益の上昇に寄与する場合にはインフレの影響を除いても株価は上がるということである。今回のコロナショックではどうなるだろうか。そちらについても徐々に書いてゆきたいと思っている。

次のダリオ氏の更新は大英帝国とオランダがどのように基軸通貨のステータスを失ったかについての記事となるらしい。これまでの記事も再確認しながら待っておこう。

•世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で人々はリッチになったような気がする
•世界最大のヘッジファンド: 中国が覇権を握りドルは基軸通貨でなくなる
•世界最大のヘッジファンド: 政府が金融危機から守ってくれると思うな

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10645



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信用通貨のドルが紙屑になりつつある _ ペトロダラーシステムの崩壊


2020.04.21
原油価格マイナス!史上初! 通貨紙屑化の重要サイン来たーーー!
https://golden-tamatama.com/blog-entry-oil-value-minus.html


つぉぉぉぉおお。

ぇああああああああ。
何このチャート。
原油価格がぁぁあ。
初のマイナスになってしまいますた。
逆オイルショック来たー
価格がマイナスってどういうこと?
イメージつきにくいかもしれませんが。
石油買ったらお金貰えるということです。
初の原油価格マイナスを受けて
NYダウも592ドル安。
はい。
そうか。
これからガソリン価格安くなるんだ。
ワーイ(∩´∀`)∩
そんな単純な話じゃない。
もっと根本的な。。
次の段階。
そう。
これは次の段階の重要なサイン。
通貨の紙屑化。
いよいよ来る。
なぜそうなるのか。
前に書いた説明を再度載せときます。
皆さん知っての通りアメリカは借金大国ですよね。
不思議に思わないでしょうか、なんで毎年あんな借金してやってけるんだ?
毎年80兆の赤字。
輸入と輸出の差し引きが輸入が80兆も上回っている借金大国です。

えっ?
アメリカってそんなに毎年赤字なの?
だってgoogleとかappleとかfacebookとかamazonがあるじゃない。
それはアメリカのシリコンバレーの企業でしょ。
いやいや、IT企業はどっちかというと無国籍企業です。
タックスヘイブン企業。
アメリカの会社じゃぁありません。
アメリカは自動車、電気製品、食料品。
ありとあらゆるものを輸入してます。
完全輸入超過大国です。
これを個人の家計で例えるなら、支出と収入で差し引き毎年800万の赤字。
収入がちょびっとしかないのに、毎年バカスカ買い物してるキチガイ一家ってことです。
普通なら破産しちゃいますよね。
ぇえ?
なんでそれでやってけるの?
どらえもーーん。
毎年無駄遣いし過ぎて借金で首が回らないよ〜。
もうしょうがないなぁ のび太君は。

はい。
ペトロダラーシステム〜
じゃーん。

これを使えばどんなに借金をしようがやってけるんだ。
わーい(∩´∀`)∩
ありがとうカネえもーん。
そう。何度も今まで書いたことですね。
そりゃぁあんた。
米ドルが基軸通貨だからです。
アメリカはとにかく毎年米ドルを刷りまくってる。
そのため借金しようがなんだろうが、やってけるのです。
ぇ?
でも、そんなに米ドルを刷りまくったらハイパーインフレになるんじゃない?
例えばベネズエラなんて、こんなハイパーインフレになっちゃいますたよ。

いやいや。
ベネズエラの通貨ボリバルなんて誰も欲しがりません。
というか通貨名すら知りません。
そんな通貨を刷りまくったらそりゃインフレになるのは当たり前です。
でも、米ドルは世界中の人が欲しがってますよね。
だから米ドルは紙屑にならないのです。
これをペトロダラーシステムというのです。
アメリカが借金大国なのにやっていける仕組み。
米ドルが紙屑にならない仕組み。
例えばあなたが世界のどっかの国の人だとします。
そうですね。
あなたは例えば極北のアイスランド人だったとして。
ガクガクガクガク。
寒い。凍え死ぬ。
石油欲しい。
石油欲しいよ〜
そう思って、サウジアラビアさんに問い合わせる。
すみません。石油売ってくれませんか?
そうすると、1バレル70ドルですね。
そう言われる。
ドル以外では買えないんですか?
アイスランドの通貨クローナでは買えないの?
すみません。うちはドルでしか売ってないんですよ。
そう断られる。
そうですか。。。
で、しょうがないので他のイラクとかクェートとかいろんな国に問い合わせる。
でも、全部ドルでしか売ってくれないのですた。
実は原油はぜーーーんぶドルでしか買えない。
つまり、あなたは原油を手に入れようと思ったら、
まず自分の通貨とドルを交換してからそれで原油を買わざる得ないのですた。
これをペトロダラーシステムと言うのですた。
ペトロ(石油)とドルをくっつけた造語です。
ってことは普通に分かると思いますが、ドルの価値は下がりませんね。
だって、世界中の人が石油を欲しがる限り、ドルと交換したがるわけですから。
なので米ドルを刷りまくってもインフレにならないのです。
で、産油国はどんどん米ドルが貯まってきちゃいます。
当たり前ですが。
この溜まった米ドルどうしよう。
で、産油国はその米ドルをなにかで運用しようとするのですが、どこで運用するでしょうか。
実は、産油国はその米ドルで米国債を買ってるんですね。
つまりアメリカにお金を貸してあげてるのです。


サウジアラビアさんなどの産油国は貯まった米ドルで米国債(借用証書)を買ってるのです。

これが必殺のペトロダラーシステムです。
どらえもんの出してくれた打出の小づち。

これで借金大国アメリカは維持されているのですた。
まわりまわって価値がアメリカに還流する仕組み。
どんなに使おうが、価値が回って戻って来るのです。
はい。
ですから
原油がマイナスになった。
この意味分かりますね。
その仕組みが逆回転し始めるのです。
今まで価値が米国にまわって来たものが、
今度は米国から価値がどんどん逃げてくくということです。
米ドルは石油価格で、価値を裏付けされてきた。
でも、マイナスになったということは。
こんな紙屑、なんで引き受けなきゃならないの?
引き受けてあげてもいいけど、保管料5万円よこせ。
このようになるのです。

いや、基軸通貨ドルに重要なサイン出た。
いよいよ来た。
世界の株価は半値戻しつつある。
でもそこから真っ逆さまに。。
かなり近い。
ひじょーに近い。

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 ペトロダラーの終焉か、人民元建て原油先物の取引開始迫る
小菅努 | マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
2018/1/9
https://news.yahoo.co.jp/byline/kosugetsutomu/20180109-00080211/

中国で人民元建て原油先物取引が間もなく開始される。昨年12月に中国政府は取引開始の最終承認を行っているが、ポータル・ニュースサイト界面(Jiemian.com)は匿名の先物業者の話として、「1月18日」の取引開始で決まったと報じている。上場される上海期貨交易所の上海国際エネルギー取引所(INE)からの正式発表は行われていないが、12月中にシステムテストも終わっており、昨年から何度も延長が繰り返されていた人民元建て原油先物取引の開始が間近に迫っている。

国際原油価格については、米国のNYMEXで取引されているWTI原油先物、欧州のICEで取引されているブレント原油先物、そして中東(ドバイ)原油の三つが国際指標になるが、いずれもドル建てで取引されている。1バレル(約159kl)を何ドルにするのかを市場で決定し、これを指標価格に油種などに応じて各国が取引価格を決定していく流れになる。

一方、日本では東京商品取引所(TOCOM)がドバイ原油先物取引を上場しており、これは1klを何円にするのかを決定している。国内ではリットル単位の方が利便性が高く、自国通貨である円建ての指標価格を決定している。

その意味では、中国で人民元建て原油先物取引が開始されても、何ら議論に値しないとみることもできる。実際に、中国には上海期貨交易所の他に大連商品取引所、鄭州商品取引所などの大型の商品取引所が存在しており、工業用素材から農産物まで幅広いコモディティ(商品)の人民元建て指標価格が決定されている。

しかし、マーケットでは人民元建て原油先物取引の開始は、銅や大豆といった他のコモディティ先物取引とは異なる意味がある動きとの評価が存在している。すなわち、単純に人民元建て原油の指標価格を決定するのみならず、中国のより大きな国家戦略の中に位置づけられる動きとみられているのだ。具体的には、国際基軸通貨ドルに人民元が挑戦する通貨戦略がいよいよ佳境に入ったとみられている。


■ペトロダラーに挑戦する中国

この議論を理解するためには、「ペトロダラー(Petrodollar)」の話から始めなければならない。あまり聞きなれない言葉かもしれないが、「petroleum(=石油)」と「dollar(=ドル)」を合成した用語であり、国際原油取引では米ドルが国際決済通貨の殆どを占めることで、このような呼ばれ方をする。もっと踏み込むと、国際基軸通貨としてのドルの地位を維持するために、あらゆる国が必要としている石油をドルのみで取引する体制を創出・維持することを通じて、ドルの地位を守るアメリカの国家戦略システムと言える。

ペトロダラーの役割を重視する人達は、このペトロダラーの再循環(リサイクル)体制こそが、米国が世界最大の超大国としての地位を守るために、重要な役割を果たしていると考える。アメリカは「双子の赤字」と言われる巨額の貿易赤字と財政赤字を抱えており、通常であればインフレや通貨価値の低下、国際通貨としての地位低下といったアメリカにとって歓迎できない動きが想定される。それにもかかわらず、一貫して巨額の軍事支出が可能であり、中国に次ぐ世界第二位の経済規模を維持できているのは、ペトロダラーの再循環体制の恩恵と言える訳だ。

ロジックとしては、あらゆる国家は石油を必要としており、その国際決済をドルで行う限りは、産油国に巨額のドルが流れ込むことになる。そして、産油国はこのドルを米国債購入などを通じて米経済に還流させることで、アメリカの経済・財政を支援することになる。そしてアメリカはこうした流れを維持するために原油価格を高値誘導する必要があり、国際通貨基金(IMF)などを通じて新興国に資金援助(ドル)を行い、そのドルが原油購入を通じて再び米国に帰ってくる流れになる。


こうした視点からは、米経済とドルはペトロダラーの再循環体制によって支えられていると言え、今回の中国による人民元建て原油先物取引の開始は、このポスト金本位制のアメリカ経済とドルを支えてきた体制への挑戦ではないかとみられているのだ。

この辺の議論は陰謀論のようなものも数多く、例えばブッシュ政権がイラク攻撃で湾岸戦争に踏み切った背景としては、その当時のフセイン大統領が原油取引の決済をドル建てからユーロ建てに移行すると表明したことが、アメリカの「レッドライン」を超えたとの見方がある。イラクがペトロダラー体制に明確な反旗を翻したことで、他産油国がこうした動きに同調することを阻止するための見せしめとして、アメリカはイラク攻撃に踏み切ったという訳だ。

本稿ではこうした分析の是非については評価しないが、いずれにしても金、ドル、原油市場などには、ペトロダラーの再循環体制が崩壊した場合には、経済・政治・軍事などの面で大きな混乱が生じるとの見方が存在していることは間違いない。中国の人民元国際化への歩みが新たなステージに突入し、ペトロダラー再循環体制に危機が生じるとの見方が存在することが、人民元建て原油先物取引開始の動きが、マーケットで注目されている理由である。

従来は、ペトロダラーに挑戦する通貨があるとすればユーロだとみられていたが、欧州債務危機でユーロは自滅してドルに挑戦する当面の権利を失った。こうした中、世界最大の経済規模を確立し、軍事・政治の点でもプレゼンスを増す中国の通貨人民元が、いよいよドルに本格挑戦を開始する一里塚になるかもしれない動きになっている。


■結論が出るまでは長い時間が必要

仮に世界最大の原油輸入国である中国が、原油取引を順次人民元建てに移行することができれば、原油市場のみならずドルや金市場、更には国際政治・軍事にも大きな影響が生じる可能性がある。中国は既に「一帯一路(シルクロード経済圏)」構想において、資金提供を人民元建てで行うと同時に、地域の資源調達においても人民元決済を広げるなど、中国国外にも人民元建て決済圏を広げる努力を行っている。

その最終段階ともいえる国際基軸通貨ドルへの挑戦は1年や2年で結論が出るものではないが、少なくとも中国の原油取引決済でドルから人民元へのシフトが進めば、ペトロダラー再循環体制の議論を無視するとしても、ドルを取り巻く環境には大きな変化が生じる可能性がある。

ここ数年の通貨市場では法定通貨と仮想通貨との共存が可能かを巡る議論が活発化しているが、その法定通貨内では人民元のドルに対する挑戦が着実にレベルを引き上げている。TOCOMのドバイ原油先物上場などと、中国の原油先物上場の議論は、全く別次元のものである可能性が高いのだ。中国の人民元建て原油先物価格のスタートで、世界の政治経済環境に大きな変革が生じるか否かが注目される局面になっている。

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新型コロナによる世界恐慌でヨーロッパ経済壊滅の可能性2020年4月22日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10350

新型コロナウィルスの流行による世界的なロックダウンで世界経済は停止している。そして問題は停止していた間の経済損失だけではなく収入と資産の減少によるその後の消費停滞、経済減速だということを以下の記事で説明した。
•新型コロナで景気後退が続く仕組みと経済対策の影響を分かりやすく説明する

それはどうやら2008年のリーマンショック級の不況になりそうである。それでもアメリカと日本は何とか生き残るかもしれないが、ヨーロッパ経済がコロナショック後に原型を留めていることはかなり難しいだろう。

一昔前の覇権国

世界最大のヘッジファンドを運用するレイ・ダリオ氏はコロナショックによる世界恐慌がアメリカの覇権を危うくする事態を警告している。

•世界最大のヘッジファンド: アメリカの覇権が中国に奪われる4つの道筋

この歴史的な観点で言えばヨーロッパは先進国の中でもっとも古い覇権であり、その衰退は100年以上前から細々と続いている。そして今回のコロナショックが瀕死のヨーロッパにとどめを差してしまうかもしれない。

例えばイタリアの予算局は1-3月期のGDP成長率が5%のマイナス、4-6月期が10%のマイナスになると予想している。この予想が正しければ、仮に今年の後半は前年の水準に戻ったとしても(そんなことはあり得ないが)、2020年のイタリア経済は約4%のマイナス成長ということになる。実際には6%程度の景気後退となると考えられ、これはリーマン・ショック時の2009年の5.3%を上回る。

問題はこの6%の景気後退ではなく、その後の消費の減少である。記事の最初に載せた説明記事に借金の概念を付け加えて景気後退を説明した記事が以下である。

•新型コロナで借金が実体経済に影響を与える仕組みを分かりやすく説明する

この記事で説明したように、経済のなかに借金をして消費を無理矢理大きくしている経済主体がいる場合、景気後退による資金減少で借金ができなくなり債務がしぼむと無理矢理増やしていた分の消費がなくなるため、経済後退を乗り越えた後の経済水準は景気後退の前よりも一段弱いものとなる。詳しくは上記の記事を読んでもらいたい。

ではイタリアのGDPがリーマンショック以後どうなっているかというと、こうなっている。


リーマンショック前の水準をいまだ大きく下回っているのである。それで株価も上がっていない。


しかもその間政府債務はGDP比100%から130%に増えている。債務を無理矢理増やしてGDPも株価も上がっていないことに着目したい。そして今回のコロナショックでこの両方がもう一段下がることになるだろう。

これはヨーロッパにおいてイタリアだけの問題ではない。スペインやポルトガルも同じような状況にあり、ギリシャでは問題はより大きくなるだろう。ギリシャ政府は否定しているが、2020年は10%のマイナス成長になるという予想もある。

結論

もう一度イタリアのGDPと株価のチャートを考えてもらいたい。今だから「リーマンショック前の高値を回復していない」と言えるが、ここからもう一段下がればそれが長期的な下落トレンドであることを認めざるを得なくなる。それが最初に書いた「ヨーロッパの覇権の凋落」なのである。

•世界最大のヘッジファンド: アメリカの覇権が中国に奪われる4つの道筋

これはダリオ氏の観点を借りれば100年前からの長期トレンドであり、債務を無理矢理増やすことによってそれに抗ってきたが、明らかに限界が来ている。

ダリオ氏はアメリカの覇権の凋落を気にしているようだが、恐らくそれはヨーロッパに一番当てはまる表現だろう。ヨーロッパが先進国となってから数百年だが、コロナショックの後にはイタリアを含むヨーロッパ諸国の大半は先進国とは呼べない経済状況になっているかもしれない。今回の世界恐慌はそれだけ大きいものなのである。


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原油の次に暴落するもの2020年4月26日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10440#more-10440

新型コロナウィルスの世界的流行により飛行機や自動車の利用が激減したことから原油価格が暴落したが、原油暴落の本当の原因は新型ウィルスではない。それは元々存在したバブルであり、それが20年かけて崩壊したのである。

20年来の原油バブル

原油価格の長期チャートを見てもらいたい。

原油はもともと20ドル前後だった。それは長らく20ドル前後だったのだが、2001年のドットコムバブル崩壊によってアメリカ経済が景気後退に陥ったことで、当時のグリーンスパン議長が4%もの利下げを行なったところから猛烈な勢いで原油価格に資金が流入し始めた。20ドルだった原油は100ドルを越え、ついには150ドル近くにまで達した。

このグリーンスパン氏の低金利政策によるバブルは2008年のリーマンショックの原因となるのだが、原油価格の高騰がそのバブルと同じ根を持ったものであることを証明するように原油相場も2008年のバブル崩壊とともに暴落している。

しかし原油はその後100ドル近辺に戻ってしまった。この歴史的な観点から見れば分かるが、それは100ドルが原油の適正価格になったということではなく、2001年からの原油バブルがまだ続いていることを意味していた。それは米国シェール産業による供給増加で2014年に100ドルから50ドル近辺まで下落し、コロナショックによって50ドルから地の底まで落ちることになったのだが、それらは単に元々存在したバブルを崩壊させるトリガーに過ぎなかったのである。

原油の後に続くもの

原油は元の水準にまで戻ったが、同じようにバブルになってまだ元の水準まで戻っていないものがある。例えば銅相場である。

これも全く同じ種類のバブルだということが理解してもらえるだろう。銅の価値が2000年代にいきなり急上昇したというわけではない。そして原油相場と違ってまだ崩壊していない。

銅相場のバブルがまだ崩壊していない事実は株式市場にも同様の資金が入り込んでおり、まだ出ていっていないことを意味している。以下は米国株のチャートである。

2008年以前のトレード経験のない金融関係者が多くなってきている今では忘れられていることかもしれないが、量的緩和以前の世界では米国株は必ずしも毎年上がり続ける資産クラスではない。実際に2009年までの10年間では横ばいを続けていたのである。原油相場や銅相場に帰るべき適正水準があり、量的緩和もそれを止められなかったとすれば、株式だけその運命を逃れる理由があるだろうか。

金融市場でないバブルも挙げてみよう。例えばイタリアのGDPである。原油相場を押し上げたアメリカの低金利は世界中に低金利をもたらし、低金利は債務の膨張を可能にする。債務が膨張すればGDPも膨張する。それで元々それほど上がるはずもなかったイタリアのGDPも2008年までは成長していたのである。

しかしこのバブルも2008年が頂点であり、コロナショックによって下落トレンドが確定的なものとなるだろう。ギリシャは更に一歩先に行っている。スペインやポルトガルはイタリアに続くだろう。以下の記事で説明した通りである。

•新型コロナによる世界恐慌でユーロが下落する理由

この結果イタリアの株式市場がどうなっているかと言えば、原油価格のように元の水準に戻っているのである。

そしてイタリアがこの運命を逃れられないように、結局はすべての国がこの運命を逃れることは出来ないのである。

このようにはっきりした前例があるにも関わらずそれを認めない人は多いだろう。しかし何故米国や日本がイタリアと違うと言えるのだろうか。バブルによって経済を無理矢理支えてきたという点ではどの国も同じであり、銅より早かった原油と同じようにイタリアは他の国より早かったというだけのことなのである。

スペインやポルトガルの後に続くのはドイツや日本であり、アメリカも同じように続くだろう。世界最大のヘッジファンドを運用するレイ・ダリオ氏が話しているのはそういうことである。

•世界最大のヘッジファンド: アメリカの覇権が中国に奪われる4つの道筋

このトレンドは20年来の巨大なトレンドであり、原油が他のものより先に暴落したようにすべてが一気に崩壊するのではなく、長い時間をかけて順番に崩壊してゆくことになる。

しかしはっきりしていることは1つある。量的緩和やヘリコプターマネーを使ったところで原油暴落やイタリア経済の斜陽化が止まらなかったように、それは単に順番の問題に過ぎないということである。そして金融緩和による延命が成功すればするほど最後の下落は痛ましいものになるだろう。


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世界最大のヘッジファンド: 中国が覇権を握りドルは基軸通貨でなくなる
2020年5月7日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10592#more-10592

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏が米国と中国の覇権戦争の結末について語っている。

中国が覇権国家になる

ダリオ氏は今後中国が米国に成り代わって覇権国家になり、人民元が基軸通貨になるのかという問いについて以下のように答えている。


そうなる。しかし革命のように一気にそうなるのでなく、徐々にそうなるだろう。中国経済は何年もしない内に世界で最も重要な経済となり、米国は一定の期間そのライバルであり続けるだろう。米国と中国がこのライバル関係をどのように扱うかが世界にとってとても重要になる。

ダリオ氏はこれまでも覇権交代を今後のシナリオとして検証してきたが、今回遂に断定している。

•世界最大のヘッジファンド: アメリカの覇権が中国に奪われる4つの道筋

中国がアメリカを追い越して世界一の経済大国になるのはダリオ氏にとってメインシナリオであるようだ。その中国の通貨である人民元については次のように述べている。


基軸通貨としての人民元については、その変化はゆっくりしか起こらないだろう。基軸通貨の移行は覇権の移行にかなり遅れて起こるものだからである。どちらにしても中国は今後10年でもっとも重要な国となるだろう。

基軸通貨はなぜ重要か

しかし基軸通貨というのは何故重要なのだろうか。それは基軸通貨が暴落しにくいからである。ダリオ氏は次のように説明する。


今のところ米国はドルという基軸通貨を印刷できる大きな権力を持っている。膨大なドル建ての負債が世界中にあり負債が返済されるごとにドル買い需要が生まれる間は米国は大きな力を持つ。

世界中でドルが使われればドル買い需要が生まれる。今回のように金融危機が起こればドル建てで借金をしている人や企業はドルを調達して借金を返済しなければならなくなり、それがドル買い圧力を生む。今回のコロナショックで米国が負債を増やし量的緩和などの奔放な政策を行なってもドルが暴落していないのはそうしたドル買い圧力のためである。

しかしその恩寵にも限界がある。ダリオ氏は次のように続ける。


しかしデフォルトやドル紙幣の印刷などでこれらの負債が消え去ると、ドルの基軸通貨としての価値は減り始めるだろう。そうすると米国の経済的影響力は大幅に弱まる。歴史上すべての帝国はその負債と通貨とともに繁栄し衰退した。イギリスやオランダの覇権とその通貨に起こったことと同じである。

ドルが基軸通貨でなくなった場合、国内の負債が膨大で対外負債があり、貿易赤字まで抱えているアメリカの通貨ドルが暴落するのは避けられないだろう。しかしドルは基軸通貨であるためにこれまで耐えてきたのである。

コロナショックと負債

ダリオ氏はコロナショックを上手く切り抜ける条件として次のことを挙げている。


財政状況が強固な者が勝者となる。貯蓄がある者が勝者となり、負債のある者が敗者となる。

このことについては直感的にも明白だろう。貯蓄があれば数ヶ月のロックダウンにも耐えられるが、貯蓄がなければ無理に働いて感染するか働かずに飢えるかの選択肢しかない。現在そういう状況に陥っているのがブラジルである。

•ブラジル、新型コロナによる人口減少で景気後退へ

また、借金の有無によってコロナショック後の回復の度合いが違うということは以下の記事で簡単な経済モデルを作って説明している。この記事での検証によれば、借金があると仮定した場合コロナショック後の経済回復はより弱いものとなった。

•新型コロナで景気後退が続く仕組みと経済対策の影響を分かりやすく説明する
•新型コロナで借金が実体経済に影響を与える仕組みを分かりやすく説明する

ダリオ氏も次のように述べている。


負債がこれほど多くなければ経済へのダメージはもっと軽かったはずだ。国も人も企業も、こういう状況ではいくら貯蓄があっていくら負債があるかということがとても重要になる。

借金まみれの経済と貧富の差があるときに自然災害が起これば、それは最悪の組み合わせとなる。

自分の頭で考えられない人々には無視されがちな事実だが、量的緩和をしようと何をしようと借金にはネガティブな側面があるのである。

アメリカは「最悪の組み合わせ」を体現しているが、ドルはまだ暴落していない。上で述べたようにドルが基軸通貨だからである。ユーロ圏は最悪の組み合わせを揃えており、しかも基軸通貨ではないためユーロの下落は避けられないだろう。筆者はユーロを空売りしている。

•新型コロナによる世界恐慌でユーロが下落する理由

日本はどうだろうか。日本は国内では莫大な負債を抱えているが、対外的には高度経済成長期に蓄えた対外資産があるために何とか持ちこたえている。しかし対外資産が尽きれば膨大な負債があり基軸通貨でもない日本はブラジルのようになるほかない。

負債さえなければ日本の状況はもっとましだっただろう。しかしこれまで日本人はオリンピック施設などその後何の役にも立たない公共事業のために負債を積み上げる政府を支持してきたのである。大阪にある誰も訪れない万博公園がまたもう1つ出来上がるわけである。

日本国民は他人による勝手な自国の借金膨張によって全く自分には利益のないまま自国にブラジルシナリオが着々と迫っていることを理解しているのだろうか。それでも日本人は自民党を支持し続けるのだろう。政治家にはやりやすいことである。


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かつて基軸通貨だったオランダやイギリスの信用貨幣は量的緩和で暴落し紙屑になった


世界最大のヘッジファンド: オランダ海洋帝国が繁栄した理由 2020年5月22日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10891

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏による歴史の授業である。ダリオ氏はアメリカが覇権を失い中国が新たな覇権国家になると主張している。

・世界最大のヘッジファンド: 中国が覇権を握りドルは基軸通貨でなくなる

その自説の証明のためにLinkedInのブログ投稿で過去の覇権国家の繁栄と衰退をレビューしていっているのだが、今回はイギリス帝国の前に繁栄したオランダ海洋帝国の物語となる。

海洋帝国オランダ

ダリオ氏の話はオランダが海洋帝国となる前の話から始まる。


16世紀にはスペイン帝国が西洋では覇権国家であり、東洋では中国の明朝が覇権国家だった。スペインと明では明の方が強大だった。

当時、明は世界最大の覇権国家だった。豊臣秀吉が朝鮮出兵で明に喧嘩を売ろうとしたのもこの頃である。そしてオランダはまだスペイン帝国の一部だった。


その時スペインは現在ではオランダと呼ばれている小さな領土を支配していたが、1581年に力をつけたオランダがスペインに反旗を翻す(訳注:オランダ独立戦争)と、オランダはスペインと中国を追い越して1625年から1780年まで世界最大の国であり続けた。

スペイン帝国の極一部に過ぎなかったオランダは何故そこまで成功出来たのだろうか。ダリオ氏は次のように分析する。


オランダ人は非常に優れた教育を受けていた人々で、発明に長けていた。実際に17世紀の主要な発明品の25%は当時最盛期のオランダ人によるものである。オランダ人の生んだ発明のうち重要なものは、まず世界を周ることのできる優れた船舶で、ヨーロッパ内での戦争で身につけた軍事力を使って世界中から富を集めることができた。そしてもう一つの発明はその動力となった資本主義である。

「軍事力を使って世界中から富を集めることができた」とさらっと書いているが要するに強盗である。資本主義の方は、なかなか興味深いダリオ氏の議論に繋がってゆく。

資本主義とは何か

また、このオランダの例でダリオ氏は資本主義の本質に触れている。ダリオ氏はこう主張している。


オランダ人は資本主義的なやり方で資源を分配しただけではない。そもそもオランダ人が資本主義を発明した。

これはどういう意味だろうか? ダリオ氏はこう続ける。


資本主義とはわたしの意見では公共の債券および株式の市場のことである。もちろん生産活動はそれより前にも存在したが、それは資本主義ではない。貿易も存在したが、それは資本主義ではない。個人の所有権も存在したが、それは資本主義ではない。資本主義とは、わたしの意見では大勢の人々が共同してお金を貸し、営業活動の所有権を買うことのできる仕組みのことである。

オランダ人は公共の場で株式を取引できる世界初の株式会社、つまりオランダ東インド会社を作り、世界初の株式市場を作り、世界初の効率的に借金のできる金融システムを作ったとき、資本主義を発明したのである。

特にオランダ東インド会社は重要である。オランダ東インド会社とは反旗を翻した相手のスペインに海洋貿易(と侵略行為)で対抗するため1602年に複数の商社を纏めてオランダが作った世界初の株式会社である。

株式会社とは今では誰でも知っているように、新しい事業を始めたい起業家に事業を始めるお金がない場合、投資家が出資をして事業を可能にする仕組みのことだが、株式会社が存在する前までは事業アイデアと資金の両方が事業家本人になければ事業は難しかったのである。

この革新的なアイデアは当然ながらオランダのGDPを爆発的に増加させた。株式がなければ不可能だった多くの事業が可能になったからである。ダリオ氏の言いたいのは、オランダやイギリスやアメリカが覇権国家になるためには、そうした革新がなければならなかったということである。その点でオランダの株式市場の発明はイギリスの産業革命にも劣らない業績だろう。

世界初の基軸通貨

また、オランダが世界で初めて船を使って大規模な侵略行為を行なったことは「基軸通貨」というおまけも生んだ。ダリオ氏はこう説明している。


オランダの通貨ギルダーは金と銀を除けば世界初の基軸通貨である。オランダは世界の大部分を支配した最初の帝国であり、自国の通貨を広く流通させることができた。

基軸通貨の威力は現在の投資家が一番痛感している部分かもしれない。何故ならば、アメリカが無制限の量的緩和を行なってもドルがそれほど下落しないのは、ドルが世界中で使われている基軸通貨だからである。

また、オランダが支配した金融市場は為替相場だけではない。ダリオ氏はこう続ける。


金融市場に関する無数の発明とオランダ自身の経済的成功によってアムステルダムは多くの投資家を集める世界最大の金融センターとなった。オランダ政府は集まった資金を様々な事業の債券と株式を賄うために利用した。最大の例はオランダ東インド会社である。

まさに現在アメリカが世界の金融市場の中心となっているのと同じであり、その現象が17世紀のオランダには既に存在したのである。

オランダ帝国の最期

しかしダリオ氏が言うように、どのような覇権国家にも終わりが訪れる。


覇権国家の最期として典型的なのは、まずオランダが徐々に負債を抱えていったこと、貧富の差や政治的派閥対立など内部で利害対立が発生したこと、そして軍事力が弱まっていったことである。

そして二番手のイギリスの国力は増していた。当初、イギリスはオランダと軍事協定を結んでいたが、海洋貿易での利害対立が続き、イギリスの力が強大になったことが明白となってくると、ターニングポイントが訪れる。ダリオ氏はこの状況を現在の米中の状況に重ねて見ているのだろう。


イギリスはオランダを攻撃した。そしてフランスなどの他国も海洋貿易の主導権をオランダから奪う好機と見なした。第4次英蘭戦争として知られるこの戦争は1780年から1784年まで続いた。イギリスは経済的にも軍事的にも勝利した。オランダはこの敗北によって破産し、オランダの通貨ギルダーはオランダ帝国とともに崩壊した。

オランダ帝国の物語はここまでである。しかしダリオ氏は面白い付録を続けて書いている。オランダ東インド会社はオランダ帝国によって認められた特権で商売をしていたため、この戦争で途方もないダメージを負ったのだが、オランダ東インド会社がオランダ経済にとってあまりに重要だったためにアムステルダム銀行はこれを潰すことができず、ギルダーを新たに印刷することでこの会社を救おうとしたのである。まさに今の量的緩和と同じである。

量的緩和はオランダ東インド会社を救うことができたのだろうか? 記事が長くなったので、この面白い話は次の記事ということにしよう。楽しみにしていてもらいたい。この話題に関する一般論は、以下の記事で読むことができる。

・世界最大のヘッジファンド: 政府が金融危機から守ってくれると思うな

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世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨 2020年5月23日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10903

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がLinkedInにおけるブログでオランダ海洋帝国の繁栄と衰退について語っている。

・世界最大のヘッジファンド: オランダ海洋帝国が繁栄した理由

歴史的な部分は前回取り上げたので、今回はオランダ海洋帝国の通貨ギルダーがどのように世界初の基軸通貨となり、そしてどのように暴落していったのかに焦点を当てたい。

海洋帝国オランダ

ダリオ氏のオランダ海洋帝国とギルダーの説明から入ろう。


オランダはアメリカ新大陸からアジアにまで及ぶ帝国を築き上げた。彼らの作った世界初の主要な株式市場によってアムステルダムは世界でもっとも重要な金融センターになったのである。そしてオランダの通貨ギルダーは世界の国際取引の3分の1を担う世界初の国際的な基軸通貨となった。

オランダ人はたった100万か200万の人口でこれをやり遂げたのである。

前回の記事で説明したが、株式市場と優れた船舶という技術革新がどれほど凄かったかということである。

しかし第1次英蘭戦争、北方戦争、第2次英蘭戦争、仏蘭戦争、第3次英蘭戦争などいくつもの戦争を経験するにつれてオランダ海洋帝国の国力は衰退、1780年の第4次英蘭戦争でイギリスの優位が決定的となる。ダリオ氏は第4次英蘭戦争についてこのように説明している。


この戦争はオランダと当時力を増していたイギリスとの戦争で、オランダがアメリカの独立を支援したことへの報復戦争である。結果はオランダの大敗となり、戦費とその後の平和がオランダの通貨ギルダーが基軸通貨としての地位を失うことに繋がった。

ギルダーの衰退についてもう少し詳しくダリオ氏の説明を見てみよう。


18世紀にはオランダの債務負担は大きくなっていたが、ギルダーはまだ基軸通貨として世界中で使われていた。この時点でギルダーを支えていたのは利便性と信用だけだった。(先に説明したように、基軸通貨の地位は覇権国の他の要素よりも遅れて衰退することが多い。)

既に負債だらけとなっていたオランダがギルダーに対して何の保証もできなかったことは明らかである。それでもギルダーは使われていた。これは既に紙切れになっているドルが未だに「信用」だけで人々に使われていることと同じである。

・世界最大のヘッジファンド: ドルは既に紙くずになっている

しかし日本円もそうだが、金本位制を捨てた後の紙幣は誰も何も保証しないただの紙切れである。「信用」とはこの場合、いかに人々が騙されているかを示しているに過ぎない。それは紙幣をゴールドと交換できた時代の余韻によってまだ使われているだけなのである。

世界初の基軸通貨の最期

さて、そのギルダーもとうとう使われなくなる時代がやってくる。ダリオ氏はこう続ける。


オランダが貿易で競争力を失うにつれて増加する債務の支払いがオランダ経済を圧迫し始めた。海外事業からの収益も減り始めた。オランダの富裕層は資金を海外に移し始め、オランダへの投資から成長率と金利のより高いイギリスへの投資にシフトし始めた。

これもアメリカ人やヨーロッパ人が新興国への投資へシフトしていることに似ている。そして新興国経済とはその大半が中国である。


・世界最大のヘッジファンド: 中国が覇権を握りドルは基軸通貨でなくなる

ギルダーの終わりのきっかけとなったのはオランダ東インド会社の崩壊である。


一番重要なのは、第4次英蘭戦争が東インド会社の収益力とバランスシートにとどめを刺したことである。東インド会社は既に競争力を失っていたが、イギリスがオランダの海岸とオランダ東インドを封鎖したことで貿易が崩壊すると、それは東インド会社にとって破綻の危機となった。

オランダ東インド会社は第4次英蘭戦争で巨額の損失を計上すると、(訳注:公営の)アムステルダム銀行から巨額の借金を借り始めた。東インド会社がオランダ政府にとってあまりに重要だったからである。

これは現在の状況で言えば株式市場が重要すぎて崩壊させられないので量的緩和で支えるというところだろうか。しかしそれを崩壊させなければ単に別のところで破綻が起きるだけである。それは初めから分かっているにもかかわらず、人々は同じ間違いを何度でも繰り返す。


・世界最大のヘッジファンド: 政府が金融危機から守ってくれると思うな
・ガンドラック氏、新型コロナでの企業救済とヘリコプターマネーを痛烈批判

しかし個別の歴史には個別の道がある。オランダ海洋帝国の場合はこうだった。ダリオ氏は続けて説明する。


アムステルダム銀行の預金者は銀行が新たに印刷したギルダーをオランダ東インド会社に「貸している」ことに気付くと、アムステルダム銀行で取り付け騒ぎが起きた。投資家が資金を引き出し始め、紙幣よりもゴールドが好まれた。現金を持っている者はアムステルダム銀行でそれをゴールドに交換しようとしたが、十分なゴールドがないことが明らかになった。

「新たに印刷したギルダーでゾンビ企業を生きながらえさせる」と言い換えるとここの読者は聞き覚えがあるのではないか。ドラッケンミラー氏による量的緩和デフレ元凶論である。

・ドラッケンミラー氏: 金融緩和こそがデフレの元凶

まったく同じことが起きているのだが、誰も歴史から学ばない。状況を理解しているのは著名投資家など極一部の人間だけである。ギルダーの場合はどうなったか? ダリオ氏の説明を最後まで聞いてみよう。


銀行からの逃避とギルダーからの逃避が戦争の最中に加速し、オランダの敗戦が濃厚になると銀行は更に紙幣を印刷しギルダーの価値を薄めなければならなくなると予想された。

ギルダーは貴金属の裏付けがあったが、ギルダーの供給が増加すると状況を理解した投資家たちはギルダーの金と銀への交換を要求した。金と銀へ交換要求は結局アムステルダム銀行の貴金属の貯蔵が空になるまで続いたのである。ギルダーの供給は増え続け、需要は減り続けた。

そうして世界初の基軸通貨となったギルダーは暴落した。量的緩和によって暴落したのである。

結論

新型コロナで経済活動が失われたにもかかわらず、それを新たな経済活動で埋め合わせずに印刷した紙幣をばら撒いて埋め合わせようとしているアメリカや日本の政府を見ていると本当に頭が痛くなる。

・世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる

筆者の見方では、現代の量的緩和バブルの最期は道筋はギルダーと異なったものにはなるだろうが、本質的には同じことが起こるだろう。ちなみにドルにも円に貴金属の裏付けはないので、価値が暴落する時にはただ暴落するだけで、誰も何かと交換してくれたりはしない。ただの紙切れをただの紙切れと気付かずに持っている人間の責任ということである。

冷たいようだが、文句は是非政府に言ってもらいたいものである。しかし誰も言わない。だからあなたがたは政治家に騙され続けるのである。

・世界最大のヘッジファンド: 政府が金融危機から守ってくれると思うな

幸いにも投資家は金融市場を使って自衛をすることができる。損をするのは量的緩和の支持者だけにしてもらいたいものである。

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世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の繁栄と衰退 2020年5月25日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10922

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がLinkedInのブログで基軸通貨の繁栄と衰退について語っている。前回はオランダ海洋帝国とその通貨ギルダーの崩壊が現在の状況に非常に似ていることを紹介した。

・世界最大のヘッジファンド: オランダ海洋帝国が繁栄した理由
・世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨

そして今度はオランダの次に覇権国家となった大英帝国の物語である。

大英帝国の始まり

話はイギリスが第4次英蘭戦争で以前の覇権国家オランダに勝利したところから始まる。ダリオ氏はこのように書いている。

イギリスがオランダに勝利した後、イギリスとその同盟国(オーストリア、プロイセン、ロシア)は引き続きナポレオン戦争でナポレオン率いるフランスと戦っていた。

そしてイギリスは勝った。オランダ海洋帝国に続いてナポレオンが敗北したことでイギリスの天下が確定したのである。

戦後にはよくあるように、戦勝国(主にイギリス、ロシア、オーストリア、プロイセン)は新たな世界秩序を作るために会議を行なった。これはウィーン会議と呼ばれている。

これが、イギリスが唯一の覇権国となり、イギリスの通貨ポンドが基軸通貨となる大英帝国の100年の始まりとなった。そして世界は繁栄した。

大英帝国の時代の始まりである。

ダリオ氏によれば、戦争の後には長期の平和の期間が続くことが多いという。ダリオ氏は次のように続けている。

これもよくあるように、戦争の時代の後には平和と繁栄の期間(この場合は100年間)が続いた。どの国も覇権国に挑戦したり、上手く機能している世界秩序を壊したりしようとはしなかった。

現代でもアメリカが世界中で戦争行為を行なっても被害者以外は誰も文句を言わない。しかしアメリカが弱ってきた場合、文句を言い始める国が出てくるだろう。ダリオ氏が懸念しているのはそういう戦争の時代なのかもしれない。

大英帝国繁栄の理由

大英帝国に話を戻そう。オランダの記事ではオランダが株式市場と優れた船舶を持っていたことが覇権に繋がったことが説明されていた。

・世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨

イギリスも最初はオランダの真似から入ったようである。ダリオ氏はこう説明している。

イギリスはグローバルな機会を逃さず非常に裕福で強力になるために、商業活動と軍事力を組み合わせた。例えばイギリス東インド会社はオランダ東インド会社に代わって世界経済でもっとも支配的な商社となり、イギリス東インド会社の軍隊はイギリス政府の常備軍の2倍の規模となった。

ダリオ氏はあっさり書いているが、西洋人以外の人種には何故商社に軍事力が必要なのかまったく分からないだろう。彼らは非常に愉快な人種である。

いずれにしても大英帝国はオランダのやり方をより強力に行うことによって繁栄していった。そして勿論、イギリスがそこまで強力になれたのは単にオランダの真似をしたからではない。

1760年頃、イギリスは製品を生産して豊かになり、生活水準を改善するためのまったく新しい方法を発明した。それは産業革命と呼ばれた。

イギリスで始まった産業革命については説明は不要だろう。機械を使って工場で大量生産をしたり、蒸気機関を使って大規模で効率的な輸送を実現したりしたわけである。「機械ができて仕事がなくなる」などと言われていたことは、「AIができて仕事がなくなる」と言われている今と似ているかもしれない。人は決して学ばないものである。

IT革命がアメリカで生まれたように、ある国が覇権国となるためにはそれなりの理由がある。オランダの場合には株式市場の発明と優れた船舶、イギリスの場合には産業革命だったということである。ダリオ氏はこう結んでいる。

つまり良い教育を受けた人々の集まるこの比較的小さい国は発明と資本主義と優れた船舶とグローバル化を助けるその他の技術、そして優れた軍隊によって大英帝国を作り上げ、その後100年を支配し続けたのである。

イギリスはオランダのやり方をまね、そこに独自の技術革新を付け加えることで覇権国となった。当然ながらロンドンはアムステルダムに変わる金融センターとなった。

それが大英帝国の黄金時代である。しかしオランダの時と同じように、その時代にも終わりは来る。

まず、イギリス発の産業革命に続いて起こったのが第2次産業革命だが、こちらはアメリカのトマス・エジソンに代表されるようにイギリスだけで起こったものではなかった。他国、特にアメリカの国力がイギリスに追いついてきたのである。また、この頃にはイギリスで発明された蒸気機関も多くの国で使われていた。イギリスがオランダを真似たように、イギリスも真似られたのである。

第1次および第2次世界大戦

そして最終的には大英帝国の覇権は2度の世界大戦で崩壊することとなった。イギリスはこの世界大戦を2度とも勝利しているが、戦費と被害が馬鹿にならなかったのである。

ダリオ氏が匂わせているところによると、元々植民地における軍事行動によって金儲けをしたイギリスが世界大戦では儲けられなくなっていたことと、「世界の警察」を自称していたアメリカが海外における軍事行動から手を引き始めていることがパラレルなのだろう。

またアメリカだけではなく、ドイツや日本などの国々もイギリスに追いつきつつあった。第1次世界大戦ではイギリスは勝利したものの、その後のパリ講和会議を主導したのはイギリスではなくアメリカだった。このあたりからイギリスは植民地を完全に押さえつける力を失いつつあり、国力では既にアメリカの後塵を拝していたが、ポンドは基軸通貨として使われたままだった。オランダのケースと同じように、基軸通貨の衰退は国家そのものの衰退よりも遅れるのである。

そして第2次世界大戦を経てアメリカの覇権が公的にも確立されたものとなる。1945年に発効したブレトン・ウッズ協定ではドルを基軸通貨とした固定相場制が採択され、ポンドに代わって公式に世界の基軸通貨となったドルはゴールドとの兌換を維持することとなった。この金本位制はダリオ氏自身も経験したニクソンショックによって1971年に崩壊するのだが、それはまた別の話である。

・レイ・ダリオ氏、「現金がゴミ」になったニクソンショックの経験を語る


結論

これがアメリカが覇権国となる前に栄えた大英帝国の繁栄と衰退である。ダリオ氏は言及していなかったが、個人的な感想では世界がグローバル化したことによって世界的に均一な教育が施されるようになった結果、徐々に人口の多い国が優勢になっていったようにも思える。皆が同じような教育を受けているならば、数が多い方が勝つということである。

また、オランダの通貨ギルダーの時と同じように、ポンドの衰退はイギリスの衰退よりも遅れ、第二次世界大戦の後もポンドはある程度使われ続けたのだが、グローバル化した世界における基軸通貨の崩壊はギルダーの時のようにシンプルな取り付け騒ぎとは行かず、もっと複雑で深刻な結果を残すこととなるのである。

・世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨

オランダ海洋帝国の時と同じように、ダリオ氏の記事のポンドにフォーカスした部分については新しい記事で紹介することとしたい。しかし恐ろしいのは、ポンドの時でさえ世界中の人がポンドを持っていたためにその崩壊が世界的な混乱を生んだとすれば、ドルの時にはどうなってしまうのだろうか。ドルを持っていることがなかなか恐ろしくなる記事である。

・世界最大のヘッジファンド: ドルは既に紙くずになっている

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世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の基軸通貨ポンドはいかに暴落したか 2020年5月26日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10953

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がLinkedInのブログで歴史上の覇権国の繁栄と衰退の検証を続けている。ダリオ氏は中国がアメリカに代わって覇権国となると予想しているからである。


・世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の繁栄と衰退

前回は大英帝国の歴史について説明した部分を紹介したが、今回の投稿ではその通貨ポンドがどのように基軸通貨の地位を失ったかを説明している。ダリオ氏によれば、それがドルの運命だからである。

大英帝国とポンド

前回の記事で説明したように、19世紀に栄えた大英帝国の衰退は第1次世界大戦時には既に始まっており、第2次世界大戦後のブレトン・ウッズ協定で公的にも米ドルが英ポンドに代わって世界の基軸通貨となることが決定されたが、それでも世界的にポンドは使われ続けていた。

ダリオ氏によれば基軸通貨の衰退は覇権国の衰退よりも遅れる傾向があるからである。彼はこれを次のように説明している。


一度世界的に広く使われた基軸通貨が一定の期間使われ続けるのは、世界でもっともよく話されている言語(訳注:英語)が国際取引の布地に深く織り込まれて取り除き難いことと同じである。

分かりやすい。それでも戦後75年を経てポンドは既にヨーロッパのローカルな通貨になっているが、今でも世界中の人々が大英帝国の英語を使っている。通貨も言語も、「皆が使っているから使う」という法則の成り立つものはすべて生き残りやすいようである。

ポンドの衰退

それでも戦後にはポンドの凋落は始まっていた。英語はまだ残っているが、ポンドは残らなかった。ダリオ氏はこう語っている。


一部の賢明な人々はイギリスの増大する債務負担と少ない純資産、そしてアメリカとの経済状況の大きな格差を知っていたため、ポンドは戦後には基軸通貨の地位を失い始めていた。

「一部の賢明な人々」は状況が見えていたのでポンドを売り始めたのである。そしてそれは「その他の賢明でない人々」は凋落する通貨を持ち続けたことを意味する。現在の話に適用すると、誰も何の保証もしてくれないドルや円を持っている人々はどちらの側になるだろうか?


・世界最大のヘッジファンド: ドルは既に紙くずになっている

話を大英帝国のポンドに戻そう。戦後、ドルを金本位制にしてそのドルに先進国通貨の為替レートを固定するブレトン・ウッズ協定によってポンドはドルに固定されていたが、戦争によって債務が増大したイギリスの経済は凋落を続け、ポンドの価値を維持することが難しくなっていた。ダリオ氏はこう語っている。


ポンドが戦後も国際的な準備通貨として機能し、世界経済がブレトン・ウッズ体制に移行するためにはドルへの固定が維持されることが要求された。

イギリスは自国通貨の暴落を避けようとしていた。


イギリスはまず厳格な為替規制を行なった。イングランド銀行の許可なしにはアメリカの商品や資産を買うためにポンドをドルに替えることは出来なかった。

しかしドルが世界的には基軸通貨として選ばれていたために、世界経済は深刻なドル不足に直面していた。一方でほとんどすべてのポンド圏(イギリスおよびイギリス連邦)の国々が輸出と魅力的なドル建て資産への投資に依存していたが、ポンド建ての債券を保有することを強制されていた。

現代人は強制されずともドルや円を保有するので、政府としてはやりやすいことである。しかしそれも変わる。恐ろしいのはそれが変わるタイミングが来る時である。

そういう瞬間には政府は無理矢理穴を塞ごうとする。それでも1つの穴を無理矢理塞げば別の場所に穴が開く。新型コロナウィルスの問題をヘリコプターマネーで解決しようとしている人々は決して理解しないが、経済とはそういうものである。

・ガンドラック氏、新型コロナでの企業救済とヘリコプターマネーを痛烈批判

そして何処に穴が開くかをこのように政府が決定する仕組みのことを共産主義という。ヘリコプターマネーを支持している一部の人々はそれが分かっているのだろうか。

・世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる

共産主義化による経済の破綻が日本やアメリカの穴の空き方のようである。一方で大英帝国の場合はこうなった。


イギリスは対外的な競争力の低下や国内の燃料危機のために深刻な支払いの問題に直面し、巨額の戦争債務はポンドの信認を脅かしていた。

戦争債務はポンド建てだったので、ポンドが高いと支払いが多くなる。一方でポンドが安くなると国際市場でものが買えなくなるので燃料危機がより一層深刻になる。どちらに転んでも窮地なのである。

怒涛のポンド切り下げ

しかし結局のところ通貨を無理矢理支える試みは長期的には機能しない。現代ではユーロとスイスフランの関係が似たようなものだろうか。

・スイス国立銀行、為替介入で窮地 スイスフランショック再来の危機か

イギリスは1949年にポンドをドルに対して30%切り下げることを余儀なくされる。ブレトン・ウッズ協定の発効からたった4年後のことである。

30%の切り下げとは相当である。自分の持っている通貨の価値がいきなり30%下がるわけである。しかもこれはブレトン・ウッズ協定が発効してからたった4年のことなのだから先が思いやられる。

当時、「一部の賢明な人々」は既にゴールドやドルを持っていたのだろう。賢明かどうかで資産の30%をやられるかどうかが決まるわけである。

終わりではなく始まり

しかしこれで終わりではなかった。ダリオ氏はこう語っている。


英ポンドの下落は何年もの間に何度も切り下げを続けて起こった慢性的な病だった

イギリスは必死に固定レートを維持しようとしていたが、出来なかった。一方で各国からはポンドの価値を維持するよう多大なプレッシャーがかかっていた。イギリス国民がポンドをドルに自由に変えられないことはアメリカの輸出業に損失を与えていた。

またスウェーデンやスイス、ベルギーなどイギリスにポンドを貸していた債権者は当然ポンドの信認維持を要求していた。ベルギーなどは国際的介入が起こらなければポンドの使用を止めると警告した。

それが満たされなければポンドからの逃避が起こることは明らかだった。しかし投資家の観点から見れば、この時点でポンドの下落は避けられない。ベルギーには悪いが、紙切れを持ち続けた人間が悪いということなのである。米国債を大量に抱えている日本政府はどうなるだろうか?

そしてイギリスは準備資産を売りながらもポンドの信任を維持しようと努力することになる。しかし貿易でも競争力がない、資産は減ってゆく、通貨が下がればものの値段が高くなる、完全な窮地である。もはやイギリス連邦の国々もポンドで準備資産を持つことを嫌がっていた。

そして1949年の切り下げから20年ほど経った1967年、イギリス政府は2度目の切り下げを決断する。今度は14%の切り下げとなった。

この2度目の切り下げ以降、ポンド建てで多額の準備資産を維持する国はオーストラリアやニュージーランドなどイギリス政府によってドルの裏付けを保証された国々だけとなった。大幅な価格の下落、そしてどの国もポンドを自発的には持たなくなったことによって、第2次世界大戦より22年後、かつての大英帝国の通貨ポンドは基軸通貨としての地位を完全に失ったのである。

結論

これでダリオ氏の「過去の覇権国シリーズ」は終わりである。オランダ海洋帝国の話は量的緩和によるバブル崩壊など現代との共通点もあったが、イギリスのポンドが国際的な騒乱を引き起こしたことは現在では想像しにくい。それは恐らく、ドルの崩壊がこれからの話だからだろう。

・世界最大のヘッジファンド: オランダ海洋帝国が繁栄した理由
・世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨
・世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の繁栄と衰退

それでもトランプ政権が中国の保有する米国債の債務返済を拒否する考えを見せるなど、似たことは既に起こっている。今後の進展が楽しみである。

ちなみにダリオ氏の怒涛のブログ投稿は遂にアメリカと中国の覇権争いの詳細に立ち入ってゆくようである。そちらも楽しみに待ちたい。

・世界最大のヘッジファンド: 中国が覇権を握りドルは基軸通貨でなくなる


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レイ・ダリオ氏、「現金がゴミ」になったニクソンショックの経験を語る
2020年3月28日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/9645


世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏が学生の頃にウォール街でインターンをしていた時のことをLinkedInのブログで話している。ダリオ氏はその頃にニクソンショックに遭遇したらしい。

1971年ニクソンショック

ダリオ氏は現在70歳なので、これは50年ほど前の話である。

当時アメリカはまだ金本位制を維持していた。つまり貨幣を金と交換することができた。紙幣とはそもそも金塊を持ち歩くのが大変だという理由で金の代わりに流通する目的で作られたものであり、いわば中央銀行に金を預けているという証明書のようなものだったので、紙幣を中央銀行に持っていけば当然金を返してもらうことができた。

ニクソンショックとはアメリカのニクソン大統領が急にこれを取りやめたという話である。その当時ダリオ氏はウォール街で夏のインターンをしていたらしい。彼は次のように語っている。

1971年8月15日の夜、ニクソン大統領はドル紙幣と金を交換するという約束を取り消すと発表した。これによってドルは急落した。ニクソン氏の話すのを聞いている内にアメリカ政府がデフォルトし、いわゆる「お金」としてわれわれが知っていたものが存在しなくなったのだと悟った。

当時、アメリカはベトナム戦争の戦費などがかさみ、財政赤字が拡大していた。戦後のアメリカは本土が戦地にならなかったこともありヨーロッパ諸国への経済支援なども行う立場だったが、1960年代後半にはアメリカ経済も疲弊し始めていた。当時のアメリカの経済成長率のチャートは次の通りである。


1970年には景気後退となっている。

アメリカ政府にはお金がなかった。それで預かっていたはずの金を返せなくなった。返せなくなったので、返さないということにしたわけである。ダリオ氏はこう続ける。

これは良いことであるはずがない、とわたしは思った。だから月曜の朝、株が暴落して地獄絵図になっていると予想しながらニューヨーク証券取引所のトレーディングフロアに入っていった。株は下落する代わりに4%上昇していた。わたしはショックを受けた。それは通貨の切り下げというものをそれまで見たことがなかったからだ。

学生だったダリオ氏が見逃していたのは、貨幣の価値が下がるということはものの値段が上がるということだということである。1,000円で買えていたものが2,000円出さなければ買えなくなる。1円の価値が下がったからである。

「現金はゴミ」発言の真意

ダリオ氏が何故この話を今持ち出したかと言えば、ここにはダリオ氏が年始に言った「現金はゴミ」発言の真意がある。

「現金はゴミ」発言のレイ・ダリオ氏、リスクオフできず新型コロナ株安で20%損失
紙幣とはもともと金を預けている預かり証のようなものだった。だから紙幣には価値があり、人々はそれを使って買い物をすることができた。しかしニクソンショックによってドル紙幣は正真正銘の紙切れとなった。誰も気付いていないが、それには何の価値もない。政府側の人々は紙幣には「政府の保証」があると口々に言うが、「政府の保証」とは中央銀行が株価を上げるために紙幣を次々に印刷することだろうか。それは価値を下げているのであって上げているのではなく、何の保証にもなっていない。

もう少し分かりやすくするために現代風に言い換えて例え話をするとこういうことになる。

あなたはA君に100万円を貸し出した。A君は借用書を書いてあなたに渡し、将来100万円を返すと約束した。ところがある日突然A君がやってきて、100万円は返さないことにしたと言って去っていった。

借用書はまだ手元にあるが、これを持っていても100万円は返ってこないらしい。あなたはA君に対して憤るのも良いだろうし、裕福ならば100万円のことは忘れてしまうのも良いかもしれない。しかし無意味になった借用書を後生大事に持ち続けるという選択肢はない。それを持っていても何も返って来ないからである。しかし実際には世界中の大半の人がその無意味になった借用書を後生大事に持ち続けており、そのおかしさに誰も気付いていない。それが紙幣というものの現実なのである。

現金はゴミ

ビットコインを否定しながら財布に紙幣を入れている人がいるが、ビットコインよりも紙幣の方が信頼できるというのは完全なまやかしである。どちらも何の保証もないという点で一致している。どちらも同じものなのである。

ビットコインがバブルならば、紙幣は人類史上最大のバブルである。チューリップは鑑賞できるが紙幣は鑑賞できない。本当に何の価値もないのである。ただ、トイレットペーパーがなくなった時には役に立つかもしれない。

ダリオ氏が言いたいのは、この紙幣バブルの行方、つまり量的緩和バブルの行方はただでは済まないということである。政治家が支持率を上げるために紙幣を刷りまくったつけが全人類に降り掛かってくる。

しかし一部の経済学者が言うように、先進国の量的緩和の結果がインフレとは限らない。むしろデフレと経済恐慌がその結末であるのかもしれない。ドラッケンミラー氏の言っているのはそういうことである。

ドラッケンミラー氏: 金融緩和こそがデフレの元凶
さて、この話の一番の落ちは市民は政府にいつの間にか金塊を盗み取られているということなのだが、それに気付いた読者はどれだけ居るだろうか?


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ドルが紙屑になると日本の銀行と大企業はすべて欧米資本に乗っ取られる

チャンネル桜で大騒ぎしている中国人の土地買いとかどうでもいい小さな問題
それより遥かに恐ろしいのは安倍首相とトランプ大統領が画策している欧米資本による日本の銀行と大企業の乗っ取りだよ
安倍首相もトランプ大統領も反グローバリストではなく欧米資本(ディープステートとか言ってるな)のエージェントだ。

アベノミクスで日本が米国債を買いまくった為に、1ドルが70円以下になると日本の対外純資産はマイナスになり、日本の資産はすべて外資に乗っ取られる。特に日本国債を日銀に売って、その金でアメリカ国債を買った日本の銀行はすべて債務超過になって欧米資本に乗っ取られる。

2018.5.28「安倍首相の売国政策を糾弾する」大西つねきの週刊動画コラムvol.28
https://www.youtube.com/watch?v=VFEBdHhOv5A

資金不足を続けている対外純債務国(10兆ドル;1,100兆円)が発行する米国債は、ゼロ金利の日本・欧州の金利と、2%から2.5%の金利差(イールド)があるという理由から、売れていきました。

しかし今は、コロナショックからのFRBの緊急利下げで、米国債も金利ゼロです。ゼロ金利のドル国債を買うと、日本、欧州、中国からはドル安のリスクを、金利ではカバーできません。

短期で投機的なドル先物買いの動きは別ですが、2年単位の中期では、債務国の通貨のドルに金利差がない時は、基軸通貨とは言っても「円に対してドル安」の材料になります。



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貨幣が中央銀行の借金だというのがわかってくれればそれでいいんだよ

本質はそれだけだから (複式簿記・貸借対照表の基本原理、貨幣の信用創造理論の原理)

大西つねきさんは

お金は国民の借金

だと誤解していたから、大西つねきの貨幣論は間違いだと言われたのさ。
それだけの違いさ。


ねこでもわかる経済問題

とかいうのは

お金は資産

という理解だから、19世紀の金本位制の時代の貨幣論だよ。 (単式簿記のレベルの発想)

日銀の貸借対照表を見れば

貨幣は中央銀行の借金

が正しい

_________


複式簿記と単式簿記の違い
https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/82/


簿記の方法には、単式簿記と複式簿記というものがあります。

単式簿記では、基本的には収支のみを帳簿に付けるためシンプルです。一方で複式簿記は、「借方」「貸方」という概念を用いて、少し複雑に帳簿を付けていくことになります。

「会計」が持つ報告するという意味との関係で考えた場合、単式簿記で作成された帳簿では記録自体がシンプルであるため、報告内容は簡単なものにならざるを得ず、複式簿記で作成された帳簿では記録が詳細になるため、報告もより詳細に行うことができます。

単式簿記

単式簿記は、「単式」とあるように取引を1つの勘定科目に絞って記載する方法です。いくつか、具体例をみてみましょう。

例1:12月8日に電気代を10,000円、現金で支払った場合
12月8日 支出 電気代 10,000円

例2:12月25日に商品30,000円を売り上げて、現金でもらった場合
12月25日 収入 商品売上 30,000円

例3:12月27日に金融機関から100,000円の借入れをした場合
12月27日 収入 借入金 100,000円

このような形で記帳を繰り返し行い、収入の合計から支出の合計を引けば、手許の現金がいくら増えたのか、減ったのかがわかる仕組みです。とても簡単なのでわかりやすく、複雑な簿記の知識がなくとも計算できるのが特徴です。
誰でもすぐにはじめられるので、開業から間もない場合や取引が多くない場合には、単式簿記で記帳するのもよいでしょう。

しかし、単式簿記は、基本的には現金の増減を把握して記帳を行っていくため、その結果としての財政状態(現金や借金などの残高)がわからないという欠点があります。

先ほどの例でいうと、電気代が支払われ、現金が10,000円減少したということは記録されますが、その結果として例えば現金が990,000円になった、という情報はわかりません。
また、仮に借金で100,000円借りた場合なども、収入として把握しますが、その結果として現時点で借入金残高がいくらになった、という情報はわかりません。

このように、入出金だけを把握する単式簿記では、十分な報告を行うための情報提供ができないため、その欠点を補うために用いられるのが複式簿記です。

複式簿記

複式簿記は、「複式」とあるように、取引を複数の科目で記載する方法です。先ほどと同じ例でみてみましょう。

例1:12月8日に電気代を10,000円、現金で支払った場合
12月8日  電気代 10,000円 / 現金 10,000円

例2:12月25日に商品30万円を売り上げて、現金でもらった場合
12月25日  現金300,000円 / 商品売上 300,000円

例3:12月27日に金融機関から100,000円の借入れをした場合
12月27日 普通預金100,000円 / 借入金 100,000円

例1であれば、借方(左側)に「電気代」、貸方(右側)に「現金」というように複数の科目で記帳されています。これが複式簿記の記帳方法です。

複式簿記では、左側を「借方(かりかた)」、右側を「貸方(かしかた)」と呼びます。例1〜3ともに、「借方」か「貸方」のどちらかに、「現金」や「借入金」などの勘定科目が使用されていますが、これが複式簿記の特徴であり、取引の結果として財政状態がどのように変化したのか(現金や借金がいくら減ったのか、増えたのかなど)を簿記によって表すことが可能になるのです。

ここで、簿記を知るうえで、仕訳の基本的な構成要素について紹介しましょう。
複式簿記では、資産、負債、純資産、収益、費用の5つのグループに分け、仕訳により、基本的には以下の8つを表現します。

1 資産が増えた 又は 2 資産が減った
3 負債が増えた 又は 4 負債が減った
5 純資産が増えた 又は 6 純資産が減った
7 収益が発生した
8 費用が発生した

先ほどの例1で考えると、電気代は費用(上記8)に該当し、現金を支払うことで資産が減っています(上記2)。このため、借方に電気代10,000円記入し、貸方に支払った現金10,000円を記入することになります。

次は、複式簿記をすることによって作成される貸借対照表と損益計算書についてみていきましょう。


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2020年04月20日
国債1千兆円は返さなくて良い 日銀国債購入で分かった事

日銀が購入した国債は償還時期が来ると、返済した事にして消してしまう。

借金は返さなくて良い


日本の借金が1000兆円以上あるという話は耳にタコができるほど聞かされてきました。


ところがその殆どを、返済しなくて良いのが分かったのです。


安倍首相が政権について以来、日銀の金融緩和を行い大量の日本国債を購入してきました。


日銀の国債保有残高は約500兆円で、政府が発行した長期国債約600兆円の8割も保有しています。


国債を発行したのは日本政府で、買い取った日本銀行も日本政府の所属機関です。


自分の借金を自分が買い取り、自分に利子をつけて返済しています。


政府は日銀保有500兆円を償還によって返済するが、日銀はまた同額を買い取っています。。


ならばこれからもずっと日銀が国債を買えば、いいのではないか?と想像すると思います。


ゼロにならないまでもゼロ金利で日銀が買い取れば、実質的に国民は支払わずに済みます。


実はこの通りで、国債1000兆円と言っても、返済する必要は無いのです。


これが安倍政権が金融緩和した結果、分かった事でした。


国債買取りで日本崩壊?


日銀による日本国債買取りには財務省を中心に反対論が大勢を占めていました。


「日本の信用が無くなる」「金利が暴騰して国家破綻する」「信用崩壊と金利暴騰によって通貨の暴落が起きる」


「1ドル500円いや、1ドル1000円にもなるだろう」などが経済専門家によって、良く言われていました。


テレビなどで聞いた事があると思います。


しかし最近これらの主張をしていた人たちは黙り込んでいます。


金利は暴騰しないし、為替レートは安定しています。


日銀の国債買取りを否定する理論は間違っていた訳です。


黒田日銀は『異次元バズーカ』によって年50兆円以上のペースで国債を買い取りました。


これはおおよそ、毎年発行する新規国債にも近い金額です。


破産しそうな会社が1000億円の借金を抱えていて、毎年50億円の借金をしている。


もう末期症状でどうしようもありません。


ところがこの会社はお金の印刷を自由にできて、毎年50億円印刷しては返済に充てることができる。


もう借金は返さず、お金を印刷すれば良いと気づいた。


これが『アベノミクス』の根幹で、実は景気浮揚とかとは別の狙いがあったのです。


日銀が国債を買い取ることで借金を返済するので、日本が財政破綻する可能性はゼロです。


日本は外国から借金をしていないので、外国からの借金で破綻する可能性もゼロです。


新型ウイルスで緊急経済対策を行う必要があるが、こんなものは100兆円でも1000兆円でも国債を発行して日銀が買い取ればいいのです。


「そんな事をしたら大変な事になる」というのが財務省の飼い犬麻生氏だが、彼はリーマンショック時に何もせず「大変な経済危機」を引き起こした。


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2015年11月28日
日銀国債買い入れで「日本破産」と喚いた連中 日銀国債は返済しなくて良い
日銀が買い入れた国債は、再び売却しない限り、存在しないのと同じ


日銀による日本国債買い入れが急増し、いまや360兆円に達しているとされています。

この国債は返済を迫られるのか、それとも雲散霧消するのでしょうか。


安倍首相対財務官僚

2013年から2015年春にかけて日銀が国債を買い取れば「日本が崩壊する」と主張する人が大勢居ました。

それも立派な肩書きを持つ経済学者や大学教授、官僚や国会議員、著名文化人や投資家を総動員して「日本は滅びる」キャンペーンを展開していました。

日本という国では時おりこうした、国を挙げた反政府キャンペーンが展開され、最近では反安保法制がありました。

       

このように国全体、特に全マスコミや教育関係者に命令できる組織は官僚しかなく、特に財務省が政権を交代させたがっている時に起こります。

財務省は事実上全省庁の予算を握って命令できる立場に居るので、マスコミ、大学教授、言論人などあらゆる人々を利権によって動員します。

安倍首相が消費税先送りを決めてから、反安倍運動が展開されたのは偶然ではなく、そう指導した人が居たからです。


財務省は全省庁で唯一、日本の財政が悪化すればするほど権力を増し、利益を得る役所です。

日本財政が健全だった頃は、当時の大蔵省には何の権限も無く、田中角栄に子供のようにあしらわれていました。

だから財務官僚は日本の財政を悪化させて地位を高めようとし、その為の有効な手段が消費税です。


消費税を導入すれば国民は消費をしなくなるので日本のGDPが減少し、税収も減少するのが分かっています。

消費税増税で得られる僅か数兆円のために、日本のGDPを減らして数十兆円の税収を減らすことが出来ます。

税収を減らせば財政は悪化するので、財務官僚の権勢は朝廷を支配した平家一族並みに高まるでしょう。


その財務官僚に真っ向から歯向かう行為が「日銀の国債買い入れ」でした。


嘘つき学者達は沈黙した

日銀による国債買い入れは安倍首相就任後の2013年から始まり、同時に財務省による「日本が破産する」キャンペーンが始まりました。

この頃ごく一部の変人を除いて、全ての経済アナリストや評論家は、日銀による買取に反対していたと思います。

代表的な意見は「金利が急上昇して国債支払い不能になりデフォルトする」というものでした。


別な意見では「ハイパーインフレが発生してジンバブエのようになり日本は破産する」とも言っていました。

ジンバブエは超インフレで100兆ジンバブエ・ドル札を発行したので知られていて、国庫金が2万円を割り事実上破産しました。

インフレ率は5000億%に達し、トイレットペーパーを買うのにその何倍もの紙幣を持っていかなければなりませんでした。


中央銀行が国債を買い取れば信用が低下して金利が上がる、国債を買い入れてお金をばら撒くのでインフレになる。

両方とも事実ですが話が極端であり、普通は僅かに金利が上がり、僅かにインフレ率が上がる程度です。

例えばアメリカはリーマンショックの時に、日銀を遥かに上回る国債買い入れを行いましたが、少し変化した程度でした。


日本崩壊論は大嘘も良い所で、カブトムシを見て大怪獣だと叫ぶような行為でした。

そう言っていた偉い先生達は今は黙り込んでしまい、自分がそう主張した過去すら隠そうとしています。

替わって彼らが現在言っているのが「日銀が国債を買っても借金は減らない」という主張です。


財務省が発表した「日本の借金」のうち、本当の借金は半分以下に過ぎない
201505081803

日銀が買い取った国債はどうなる?

日銀が買い入れた国債はやがて満期を迎え償還されるが、日銀が「国債乗換」をすれば政府はお金を支払う必要がありません。

「国債乗換」とは満期が来た国債を1年間の短期国債と交換する行為で、毎年繰り返すと支払わなくて済みます。

日銀保有の国債は毎年10兆円以上満期を迎えているので、その分の支払いは免除されている恰好です。


日銀の保有国債は300兆円を突破していて、まだまだ買い入れをするつもりなので、やがて400兆円にもなるでしょう。

日本国債の発行残高は約800兆円ですが、色々なカラクリがあって実際には400兆円程度しかありません。

例えば「高速道路の通行料やガソリン税で支払う」と財源が決まっている建設国債も「国債」と一まとめに計算されています。


国民が支払う借金ではないので建設国債を外国では国の借金に含めていませんが、こうした手口で財務省は日本の借金を多く見せかけています。

従って日銀が400兆円の国債を買い入れるという事は、事実上日本国債の全てを日銀が買い占めるという事なのです。

国債買い入れの先輩である米国FRBを見ると、毎年3000億ドル(40兆円)も国債を買い入れているが、FRBが倒産するという噂はありません。


FRBの総資産は2014年末でで2.5兆ドル(約300兆円)まで膨らみ、現在はもっと増えたと思います。

FRBは満期を迎えた国債を償還し、再び国債に投資していて、日銀の「国債乗換」とほぼ同じ事をしています。

FRBが得た金利収入は政府に納めているので、政府はFRB保有分は実質的に国債金利を支払っていません。


インフレによって国債の価値は少しずつ減少し、一方で金利は払わず、実質的に償還もしていないのでFRB保有分は、政府の負担になりません。

長期的には中央銀行保有分の国債はインフレによる価値の目減りでどんどん減少していくでしょう。

日銀が保有する日本国債も同じことで、インフレ率がプラスでさえあれば返済する必要が無いのです。


これに異を唱えているのが財務省による宣伝部隊で、インフレになればインフレ率を下げるために、日銀は国債を売却せざるを得ないと言っています。

これもまた小さな事を大げさに言う類で、今の日本のインフレ率はゼロなのに、10%になった時の事を心配しているのです。

日銀が国債を売却しなくてもインフレ率を下げる方法は色々とあり、すぐに国債を売却する必要などありません。


というわけで日本は800兆円だか1000兆円の借金を気にする必要は無く、年度ごとの収支だけを正常にすれば「破産」はしません。

気がかりなのは安倍首相や日本政府が、財務省の言いなりになって消費税を増税し、再びマイナス成長にする事です。


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2016年02月15日
金融緩和で国債買取280兆円 日銀への利払いや償還はどうなった


日銀は毎年90兆円ペースで国債を買っています

日本政府が発行した国債の27%を、日銀が保有しているのが分かりました。

今年はさらに増えそうですが、日銀が保有している国債の償還や利払いはどうしているのでしょうか。


日銀が国債の27%を保有

日本銀行が保有する日本国債は、2016年1月29日で、日銀HPで2,855,022億円つまり285兆円に達しました。

国債残高は財務省HPで1029兆円と書かれているので、日本国債の27.7%を日銀が保有しています。

2012年末には89兆円、2014年末には190兆円(短期国債を除く)だったので、1年で90兆円のペースで買っているのが分かります。

今年も同じペースなら2016年末には370兆円近くになり、日本国債の35%を日銀が保有する事になります。

いったい日銀が保有した国債は将来どうなり、金利の支払いなどはどうなっているのでしょうか。

国債には満期があり、10年国債は10年後に額面の金額を支払う必要が生じます。


しかし日銀は「国債乗換」をするので政府は償還する必要がありません。

「国債乗換」は満期が来た国債を別の国債と交換することで、繰り返すことで国はお金を払わずに済みます。

日銀保有の国債は毎年10兆円以上満期を迎えているので、その分を国は支払わなくて済んでいます。


ではもし日銀が「国債乗換」をせず満期を迎えたらどうなるのか、興味深いですね。

理論上政府は日銀に額面の金額を支払わねばならないが、「必ず支払う」のではなく請求があって初めて支払います。

日銀がもし政府に請求しなかったら、財務省のHPの説明では満期から10年間請求しなければ、請求権が消滅します。


日銀国債の償還や利払いはどうなっている

日銀は政府の借金を消す為に、満期を迎えても請求せず、10年経ったら国債は消滅してしまうのです。

日銀保有国債が消滅し、政府がお金を払わなければ日銀は額面分の損失を計上する事になります。

日銀が巨額損失を被ったら、破産して日本は倒産するのでしょうか?


日銀が国債を買いまくっているのは、金融緩和をしてインフレ率を上げて、経済成長するためです。

従って充分にインフレ率が上昇し、経済成長率が上がったら、逆に保有国債を手放す「出口戦略」を取るでしょう。

すると政府は新しい国債保有者に現金を償還する必要があるが、その時は経済が好転し税収も増えているので問題なくなる。


インフレ率が上がると金利も上がるので、政府の支払いが増えるが、それはインフレ率上昇で相殺されます。

こんな風にやがて日本経済が好転すれば、問題も解決する事になっています。

ところで現在日本は政策金利がマイナスですが、日銀保有国債への金利支払いはどうなったのでしょうか。


政策金利がマイナスになっても国債金利がマイナスになった訳ではないので、国は金利を支払う必要があります。

実際政府は日銀に金利を支払っていますが、「国庫納付金」という名目で政府に戻しています。

日銀の決算日には「受け取った」事にしておいて、決算後に政府に戻すことを延々と繰り返しています。

要するに日本政府は日銀が国債を持っている限り、利払いも償還もしていないのです。

 

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【青木泰樹】広義の政府負債から眺めると
投稿日: 2016/09/10 From 青木泰樹@京都大学レジリエンス実践ユニット・特任教授

先月も報道された「国の借金、1053兆円(平成28年6月末現在)」。

もはや風物詩と化したマスコミのプロパガンダですが、財務省が3か月ごとに発表する統計(「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」)に基づいて報道されますので、ほとんどの国民は嫌でもこの嘘を年間4回聞くことになります。

刷り込みを狙っているのでしょうね(そもそも国民経済は政府と民間経済から成り立っており、民間を無視して政府だけを抜き出して「国」と決めつけるところに土台無理のある話です)。

この統計には、一般政府の債務に分類されない「償還や利払いが租税からなされない財投債」も借金として計上されており、かなり盛り込んだ数字になっています。
少しでも大きな金額に仕立てあげて、増税の地ならしのために「国は借金漬けで大変だ」という印象を政治家や一般国民に抱かせようとしている意図を、大半の皆さんは既に見抜かれていることでしょう。

本日は、「広義の政府の負債」についてお話しします。

それを突き詰めていけば、経済成長(経済の健全化)を目指す財政運営がいかに重要であるかを理解できると思います。

政府の負債(借金)と聞けば、先ず国債が思い浮かぶでしょう。

国債は政府負債の中心ですから(6月末で800兆円強あります)。

他方、一般の人にはあまり知られていませんが、ベースマネー(現金)もまた政府の負債なのです。

正確には日銀券は日銀の負債ですが、政府と日銀(中央銀行)のバランスシート(B/S)を結合した「統合政府(広義の政府)」を考えれば、日銀券は政府の負債となります(日銀のB/Sの負債側に日銀券、資産側に国債、政府のB/Sの負債側に国債、資産側に徴税権が置かれますから、両者を足し合わせるとそうなります)。

現在、ベースマネーは約400兆円です。

財務省は「国の借金」の中にベースマネーを加えておりません(加えればもっと大きな数字に見せることができるでしょうに)。

さすがに償還義務も利払いも必要ない現金残高を「国の借金」と強弁するのは躊躇(ためら)われたからでしょう。

さて「広義の政府負債=国債残高+ベースマネー(現金残高)」と定義して、この観点から金融政策および財政政策を考えます。

先ず、日銀は量的緩和(国債買取り策)によって何をしているのでしょうか。

実は「民間保有の国債」と「現金」を交換しているだけなのです。
すなわち日銀と民間銀行の間で政府の負債同士を交換しているだけなので、量的緩和によって民間保有の広義の政府負債残高は変化しません。

政府負債の増減とは全く関係のない政策なのです。

それでは、量的緩和のメリットは何でしょうか。

ひとつは、償還も利払いも必要な「負担になる政府負債(国債)」を、そうした必要のない「負担にならない政府負債(現金)」と交換することによって政府の負担を減らせることです(民間に対して利払いや償還をしなくて済みますから)。

次に、金利全般を押し下げて資金の借りやすい経済環境を整えることです。
この二つは量的緩和によって確実に実現できました。

しかし、日銀の思惑通り(教科書通り)にインフレにはなりませんでした。その理由は、私がよく持ち出す下記の定義式を見れば簡単にわかります(ここで非金融部門は個人と企業から成る実体経済を指します)。

「ベースマネー(B)=金融部門保有の現金(B1)+非金融部門保有の現金(B2)」。

「マネーストック(M)=B2+非金融部門の預金(D)」。


量的緩和は銀行保有の国債と交換にB1(日銀当座預金)を増やすだけの政策ですから、当然のことながら、直接マネーストックは増えません。

実体経済の規模を表す名目GDPに影響を及ぼすのはマネーストックですから、量的緩和だけでは景気に影響を及ぼすことができず、それゆえインフレにもならないことは自明です。

しかし既存の経済学では、民間経済を二部門に分けず一元的に考えますので、B1とB2を区別することができず、それらを一緒くたにしてしまいます(同じ鍋に入れる)。

結果的に金融部門と非金融部門(実体経済)が混在した中でベースマネーとマネーストックを考えることになりますから、ほとんどの経済学者は貨幣認識に関して間違えます。

例えば両者の関係を「貨幣乗数(M÷B)」と定義して、貨幣乗数の値が安定的(一定値で推移する)なら、「ベースマネーによるマネーストック管理は可能である」といった岩田日銀副総裁の好きそうな結論が出てくるわけです。

しかし、現実経済では貨幣乗数の値は不安定で、量的緩和をすればするほど低下を続けています。

これは当たり前のことで、多少専門的になって申し訳ないのですが、経済学の貨幣乗数の定義式に「銀行の超過準備(現金)」は入っていない(論理的に入れられない)からなのです。経済論理で理屈がつけられないのです。

そうした現実的要素を捉えるための認識手段として、私は再三再四、「民間部門を二分割し、かつ貨幣の役割を考慮して貨幣循環を考えましょう」という動態的貨幣論を唱えているわけです。

さて、量的緩和(B1の増加)によってマネーストックは自動的に増えないことが理解されたと思います。

それでは、マネーストックが増える条件は何でしょう。

それは実体経済(非金融部門)の預金(D)が増えることです。

そのためには企業や個人が銀行融資を受けて投資を行うことが必要です(投資支出が他者の所得増になり、結果的に預金が増えるのです)。

すなわち、この不確実な世の中でリスクを負って借金をする人(投資者)がいてはじめて、言い換えれば「借金」があってはじめて経済は成長するのです。

注意すべきは超過準備(B1)から融資が行われたのではなく、信用創造によって民間に新規の購買力が生まれたのですから、この場合、日銀当座預金の額は変わらないことです(無論、政府負債残高も変わらない)。

ところが先行き不透明な現況で民間の資金需要は低迷せざるを得ません。

金利が底ばいを続ける中、さらに僅かの金利低下があったとしても実物投資を刺激しないことはこれまでの経験から実証済みでしょう(投資が実質金利のみに依存するのは経済学の世界だけの話)。

しかし日銀は銀行に融資を拡大させるために、マイナス金利を導入しました。

銀行にペナルティを課して融資を促す政策ですが、民間に資金需要の無い状況では、いたずらに銀行収益を圧迫させ、リスク資産への投資を促すだけです。
投機を助長し金融を不安定化させる政策ですから、天下の愚策といえましょう(マイナス金利の深堀はさらに混迷をもたらします)。

マネーストックを増やすもう一つの手段は、非金融部門の現金(B2)を直接増やすことです。

これは民間金融機関を通さない「新規の政府負債の創出」ですから、ミルトン・フリードマンのヘリコプターマネー(元祖ヘリマネ)ですね。
以前指摘したように、昨今のヘリマネの定義はさまざまです。


そのとき紹介した若田部昌純早大教授のヘリマネの定義は「貨幣を増やし、増えた貨幣が恒久的に残ること」で、ヘリマネと量的緩和の違いは「増やした貨幣を将来回収するか否か」でありました。

定義は約束事にすぎませんから、人それぞれどのような定義であっても、そこから有意な論理が展開されれば問題とはなりません。

ただし若田部氏の定義は、「新規の政府負債の創出」を意味しないので、フリードマンの元祖ヘリマネとは全く別物といえます。

若田部氏の定義を現実的観点から解釈すれば、「日銀当座預金を増やし、増えた日銀当座預金が恒久的に残ること」をヘリマネと言っているのですから。

先述した通り、量的緩和によっても広義の政府負債は不変ですから、将来民間銀行から現金を回収しようとしまいと政府負債残高に変わりはありません。

ヘリマネといった奇策を用いることなく、新規の政府負債の創出を伴うことなく経済を成長させ、結果的にマネーストックを増加させる手段こそ財政出動なのです。
以前より指摘しているように、「日銀保有の国債を徐々に新規の政府債券(無利子長期国債)と交換する」という適切な出口戦略をとれば、いわゆる国債の累増に起因する問題は完全に解消します。

もちろん、この場合も広義の政府負債残高は変わりません。

ただし日銀が量的緩和を今後も継続すると、民間保有の国債が干上がることになります。

民間金融機関にとって国債は長期資金の運用手段として、また担保用としてある程度保有する必要がありますから、この事態は避けねばなりません。

そのためにも、また現在の日本を取り巻く様々な脅威(地震や台風といった自然災害、外国からの軍事的圧力等)に備え、かつ国土の比例的発展を促すための資金調達手段として適切な量の建設国債を発行する必要があるのです。

日銀が買い、政府が売る。

これが金融政策と財政政策のバランスをとる王道なのです。

肝心なのは、建設国債は市中消化されねばならないことです(日銀が量的緩和をしている以上、金利は上がらない)。

銀行に国債を与える必要があるからです。

市中消化によって日銀のB/Sの負債側にある日銀当座預金から、同じく負債側の「政府預金」へ現金が移動することになります。

すなわち日銀当座預金の中で超過準備として死蔵されたカネ(所得を生まない不活動貨幣)を、政府が建設国債の発行により調達し、実体経済(非金融部門)へ注入することによって所得化するカネ(活動貨幣)に転換するのです。

結果的にマネーストックは増加し、名目GDPも増加するのです。

民間主体が投資意欲のない(借金しない)状況で、政府が社会に有益な投資のための借金をすることで、経済は成長するのです。

この場合、建設国債が市中消化されているわけですから、当初からの広義の政府負債残高は変化しません。

それゆえヘリマネではないのです。

近視眼的に日銀当座預金の増加を以って、それがあたかも財貨への需要増をもたらすと捉え、ハイパーインフレの危険性を唱える主流派学者の間違った懸念も生じないでしょう。

現行の枠組みの中で真っ当な政策を実施すれば、ヘリマネを持ち出さなくとも景気浮揚は可能なのです。

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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 日本の財政は世界一健全
掲載日時 2016年10月26日 14時00分 [政治] / 掲載号 2016年11月3日号

 財務省はこう主張している。

 「日本は1000兆円以上の借金を抱えていて、財政が破たん状態にある。高齢化社会の社会保障費を賄うためにも、消費税率を引き上げていく以外に方法はない」


 しかし、本当に日本の財政が破たん状態なら、なぜ日本の国債にマイナスの金利がつくのだろうか。財政破綻した国の国債は、信用されないから、高い金利を払わないと資金が調達できない。例えば、'09年の政権交代により財政赤字が表面化、結果、破たんしたギリシャでは、国債金利が一時、40%を超えたのだ。

 日本国債の金利が世界一低い理由は、財務省自身が発表している資料を見ると明らかになる。

 財務省が今年1月に発表した「国の財務書類」によれば、日本政府(一般会計+特別会計)が抱える負債は1171兆円と、国民がよく知っている数値となっている。ところが、日本政府が抱えている資産額が679兆円もあるため、純債務は492兆円にすぎない。財政の実態は、イメージとずいぶん異なる。GDPの2倍あると言われている借金が、実質的にはGDPと同じ程度しか存在しないからだ。

 また、今年3月に財務省が発表した「連結財務書類」をみると、事態はさらに改善する。これは、日本政府に加えて各省庁から監督を受けるとともに、財政支援を受けている特殊法人、認可法人、独立行政法人、国立大学法人などを加えたものだ。

 これによると、平成26年度末の純債務は439兆円とさらに減少する。しかも、前年度の純債務は451兆円だったから、借金は1年間で12兆円も減少しているのだ。そのため、少なくとも日本の借金が毎年増え続けているという認識は、事実と異なるのだ。
 さらに、この連結財務書類には、日本郵政や日本政策投資銀行などが含まれているが、肝心の日本銀行が含まれていない。その日本銀行が財政の一番のカギを握っている。

 これまで、日銀は金融緩和を進めるために、年間80兆円という猛烈なスピードで国債を買い続けてきた。日銀のバランスシートを見ると、平成26年度末の国債保有高は270兆円に達している。実は、この日銀が保有する国債は、政府にとって事実上返さなくてよい借金なのだ。

 実態はもう少し複雑だが、シンプルに言うと、日銀は国債を市場から購入して、日本銀行券を発行する。日本銀行券は、国債と異なって、利払いの必要がないし、元本返済の必要もない。つまり、国債を日銀が購入するということは、国債を返済不要の日銀券にすり替えるということなのだ。そこで、日本の連結純債務の439兆円から、日銀が保有する国債残高の270兆円を差し引くと、日本政府の本当の借金は169兆円ということになる。

 しかも、これは平成26年度末の話だ。平成27年度末の日銀の保有国債は349兆円に増えているから、日本の本当の借金は、90兆円にすぎない。しかも今年度も年間80兆円ペースで日銀は国債を買っているとみられるから、日本政府は、今年度末には実質無借金経営になる。

 長かった財政再建が、ようやく今年度に完了するのだ。


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「ブタ積み」された不換紙幣の価値とアベノミクス

アベノミクスと貨幣数量説 埼玉学園大学教授 奥山忠信 (2014/02/03)


 2年間で貨幣量を2倍にして、2%の物価の上昇をもたらす。言うまでもなく、アベノミクスと呼ばれる経済政策の根幹をなす黒田日銀総裁の金融政策である。貨幣量の調整を経済政策の基本とする点で、マネタリズム(貨幣量の増加が物価を上げ、貨幣量の減少が物価を下げるという経済学の伝統的な学説)にもっとも忠実な政策である。

 30年前のアメリカのレーガン大統領の政策と目標は逆だが、手法は同じである。いわゆるレーガノミクスが、インフレとの戦いを目標にしたのに対して、アベノミクスはデフレからの脱却を唱えている。レーガンの新保守主義を支えたマネタリズムの巨匠フリードマンが、インフレは貨幣現象である、という名言を残したが、安倍首相は2013年2月7日、衆議院予算委員会において、デフレは貨幣現象である、とフリードマンを真似ている。

 たしかに、アベノミクスの推奨者たちは、現政策を単純な貨幣数量説ではないと主張し、インフレマインドの定着を唱えている。フリードマンは、マインドの定着は20年かかると言っている。インフレが起きてから20年という意味である。今回の政策は、インフレが起こる前にインフレマインドを定着させようとする点と、インフレマインドを短期に定着させようとする点が、新しい点と言えなくもない。

 しかし、これは「騙せたら勝ち」と言っているに等しい。危うい政策であり、メディアの「大本営発表報道」的協力を不可欠とする政策と言える。文字通り背水の陣の政策である。しかし、背水の陣の政策は、本当に有効性を持つのかどうか。

 ■19世紀への先祖返りの結果

 1980年代以降のマネタリズムの隆盛と、1990年代以降のグローバリゼーションの急展開で国家対市場の対立が叫ばれ、国家や社会による保護を前時代的なものとし、規制緩和を是とする経済思想が席巻した。そして、市場主義の下での自由競争を最も効率的なシステムとする思想が広く受け入れられるようになった。これは19世紀への先祖返りである。

 第二次世界大戦後に人類の「進歩」と思われていたケインズやマルクスの「革命」は、マネタリズムによって一掃されてしまった。いわゆるフリードマンによる経済学上の「反革命」の勝利である。

 しかし、市場主義の下での自由競争は、不運な弱者を淘汰し、格差社会は世界的な傾向となった。新興国はもとより、先進国の貧困問題が時代の新しい主要な社会問題として浮上してきた。

 わが国もまた、労働者の3分の1を非正規雇用とする社会となった。事実上の社会主義とさえ言われていた70〜80年代の日本の賃金体系がたちどころに崩壊し、先進国内でもまれにみる速さで格差社会を生み出したのである。

 ■通貨変動相場制を真に受けた唯一の国

 今、アベノミクスで株価が1.5倍になるなかで、2013年下半期(7〜12月)の実質賃金(物価変動を考慮した賃金)は、1%を超える下落が予想され、リーマン・ショック以来の下落はばとなる。年間60〜70兆円の貨幣供給は、賃金には反映していないのである。

 日本の賃金は下降線をたどり続けている。これは国際化への日本的な対応の帰結であった。その基本的な原因は、日本が変動相場制への転換を生真面目に受け止めた点にある。ニクソン・ショックとスミソニアン体制の崩壊後の1973年以降、変動相場制が導入された。

 1944年のブレトンウッズ会議によって作られた第二次世界大戦後のIMF体制は、固定相場制とアメリカ・ドルと金との兌換(1トロイオンス=35ドル)によって成立していた。ニクソン・ショック(1972年8月)による戦後体制の崩壊は、資本主義世界の崩壊を思わせるほどの衝撃であった。しかし、東西冷戦下、ベトナム戦争の泥沼化が続く中で、アメリカは金兌換による金の国外流出を見逃すことはできなかった。戦時には紙幣はただの紙に戻る。金は戦時には不可欠の貨幣となる。

 変動相場制は、金・ドル兌換停止と国家の為替市場への不介入を前提とする。国家が為替市場に介入しないということは、外貨準備が不要になることを意味する。変動相場制に伴う為替以上の混乱は、先物市場が作られることによって回避されるものとされていた。フリードマンが提唱したこの学説は、貨幣に関する市場主義であり、外貨準備不要の理想的なシステムとされていた。

 しかし、理論的な関心は持たれていても、その現実性は信じられていなかった。信じられていなかったからこそ、8月のニクソン・ショックの後の変動相場制を12月のスミソニアン合意によって固定相場制に戻したのである。その崩壊は、変動相場制の理論的な優位ではなく、固定相場制の放棄の帰結に過ぎない。

 現実の変動相場制は、為替を維持するために大量の外貨を必要とし、国家が為替介入し、国際的な協調体制をとることによってかろうじて維持されてきた。当初の理論的な想定とはあまりにも違いすぎる。為替リスクを回避すると言われていた先物市場も、アジア通貨危機(1997年)には、投機の対象として利用された。

 変動相場制を真に受けたのは日本だけと言える。ヨーロッパはさまざまな制度を作って広域経済圏の固定的な為替相場を維持しようと努めていたし、新興国はドルをはじめとする強い通貨にリンクして貿易の安定を保とうとしていた。この動向は今でも同じである。ヨーロッパの努力の結果が欧州単一通貨ユーロである。ドルが世界通貨である限り、アメリカは経常収支の制約を直接に受けることはない。おそらくは、日本が変動相場制の被害を一番被った国であろう。

 ■起きなかったトリクルダウン

 1985年プラザ合意時の1ドル250円水準から、1995年の1ドル=80円の円高まで、10年間で円は3倍になる。以後一時的に円安に振れることはあったが、円高基調は続いた。日本は、この経済環境の悪化を、国外への生産拠点の移動と賃金の切り下げによって国際的な競争力を維持し乗り切ろうとしたのである。

 正規雇用者の賃金の上昇を抑え、非正規雇用を急激に増やすことで、グローバリゼーションに対応したのである。名ばかりの労働市場の流動性である。規制緩和の行きつく先が今であり、安易な市場主義導入のつけが回っているのである。

 戯言を言わせてもらえば、もしニクション・ショック(1971年8月)がなければ、・・・金とドルとの兌換、そして固定相場が維持されていれば、日本は今でも「ジャパン・アズ・ナンバーワン」でいられたかもしれない。

 現状は、過少消費不況である。非正規雇用の急激な増大が、貧困化をもたらし、消費需要を停滞させているのである。政府が経営者団体に賃上げを迫るという異常事態は、この問題の深刻さを政府が認識していることを示している。富者を富ませれば徐々に貧者も豊かになるというトリクルダウンは起きなかったのである。

 ■「ブタ積み」されたマネーの効果

 日銀が供給した膨大なマネーはどこに消えたのか。日銀の中の金融機関の口座の中に眠っているだけである。これを隠語で「ブタ積」みという。貨幣数量説による貨幣量の増加のイメージは、しばしばヘリコプター・マネーと呼ばれる。貨幣数量説の論者であるベンバーナンキが「ヘリコプター・ベン」と呼ばれたのは、貨幣数量説による。

 本当にヘリコプターから1万円札を撒くのなら拍手喝采であろう。しかし、そうではない。量的緩和のために日銀券を刷るわけではない。日銀券はアベノミクスの計画でもほとんど増えない。金融機関の国債が日銀に移り、日銀の中にある金融機関の口座に莫大な代金が振り込まれるだけである。紙幣の印刷費もかからない。

 そこから先に貨幣が流れるかどうかは、企業と金融機関の行動次第である。実際にはなかなか流れないのである。不況マインドの中では、資金は借りたくても借りられない。貸したくてもリスクが大きすぎる。統計上の雇用が増えても、非正規雇用が増えるだけで、肝心の実質賃金が下がるとなると、何の効果もなかったことになる。「ブタ積み」の量が増えたのである。根本的な問題は、貨幣の問題ではないのである。

 しかし、日銀が国債を買って貨幣を供給するという手法は、国債の値段を上げ、金利を低くする効果は期待できる。もともとゼロ金利状態なので、その変化はわずかであり、国内の製造業がこの微々たる金利の変化で投資行動を変えることは考えにくいが、金融機関にとってはわずかな差も見逃せない。金利の低下が期待されれば、円は売られ、円安になる。この期待は為替を円安に誘導する。輸出産業にとっては、これは有利に働くはずである。

 言うまでもないが、円安による輸入価格の上昇は、デフレからの脱出ではあっても、不況の脱出の指標ではない。物価が上がっても喜ぶべきことではない。むしろ実質賃金の低下の要因となる。また、財政投資によるGDPの増大は、経済成長ではあるが、ケインズの手法であり、マネタリズムの批判してきた政策である。貨幣量増大の成果に数えるべきではない。

 また、国債を日銀が買うことによって、日銀以外の機関の投資行動が、国債から株にシフトすることは十分に考えられるので、株式市場は活性化する。あるいは活性化することが期待される。現状は外資中心の株の売り買いだと言われているが、この思い込みによって株価は上昇する。ただし、株価の上昇と実体経済の成長とは直接の関係はない。株価は株価、架空の評価である。株でもうけた人が、もうけた分を株に投資しないで消費に回すという仮定で成り立つ話であり、多くの期待は出来ない。

 株や不動産は、生産を刺激するものではないので、いくら上昇しても、実体経済に結びつく保証はない。貨幣を増加すれば、為替が下がり、株価が上がる効果は期待できるが、景気が回復して物価が上がる保証は特にないのである。

 ■貨幣数量説の本来の意味とは?

 なぜそのような幻想が生じたのか。それは貨幣数量説の出自と理論にある。貨幣数量説の起源は不確かである。貨幣が増えれば物価が上がるという考えは、日常経験に馴染みやすい。とは言え、この学説は、コロンブスのアメリカ発見以来の金銀のヨーロッパへの流入、これに伴う16世紀のいわゆる価格革命と呼ばれる時期に普及している。当時のヨーロッパの貨幣は金と銀である。その増加と物価の上昇が軌を一にしたのである。

 これが学問的な関心の対象となった。貨幣数量説の創設者には、ジョン・ロック、モンテスキュー、デイビッド・ヒュームという世界史を飾る知性が名を連ねている。この学説は、ヒュームにおいて完成するが、有名な公式は20世に入ってから、アーヴィング・フイッシャーによって作られる。MV=PT(M:貨幣量、V:貨幣の一定期間での使用回数あるいは流通速度、P:価格、T:取引量)、である。千円札が5枚、1週間に各3回使われたとすると、1万5千円。アイスクリームが1個100円で1週間に150個売れたとすると、1万5千円。購入総額(MV)と販売総額(PT)は常に等しいので、この公式は常に成り立つ。Vが慣習的に一定でTにも大きな変化が一般にはないと仮定すると、MとPは、比例定数1の正比例関係になる。つまり、一方が2倍になれば他方も2倍になるのである。MV=PTが「自明」であるとすれば、この正比例関係も「自明」になる。

 フリードマンによれば、貨幣量と物価の比例関係を言うだけでは貨幣数量説ではない。貨幣量の増加が原因で、価格の上昇は結果であると言うことが重要である。Mが原因で、Pが結果であるということは、この等式からは本来導くことはできない。価格が上がれば貨幣量も増えるという必要流通手段量説も成り立つ。この考えは貨幣数量説に対する批判の系譜として伝統的に受け継がれている。アダム・スミスやカール・マルクスなどがそれであり、現在の貨幣供給に関する内生論もこの系譜にある。

 とは言え、貨幣数量説にとっては、貨幣の供給が外生的に決まる、とすることで政策手段としての意味を持つ。しかし、この学説には当初から根本的な疑問が付きまとっていた。貨幣量が増えれば本当に需要量は増えるのか(ジェームズ・ステュアート)、貨幣が増えても使われなければどうなるのか、という疑問である。使われなかった貨幣は物価に影響しないのだから、等式から外して、貨幣数量説を成立させる(J.S.ミル)見解も登場する。

 単純化すれば、一定期間に100円のアイスクリームが1個売れ、100円玉が一個使用された、というだけの等式である。自明ではあるがそれ以上の意味は持たない。今でも、使われた貨幣だけを取れば、貨幣数量説はいつでも成立する。問題なのは供給されたが、使われなかった貨幣の存在である。今の日銀の目標は、貨幣量を2倍(基準年の200%)にして、物価を2%上げることにあるが、それ自体が、本来の貨幣数量説とは程遠い。

 ■国際的通貨システムの根本的な見直しを

 ニクソン・ショック以降、アメリカ・ドルは一国の不換紙幣のままで世界貨幣として信認されてきた。ロバート・マンデルによれば、シニョレッジ(貨幣発行益)がアメリカ一国によって独占されている状態であり、道義的にいつまで続くかわからない状態にある。各国通貨もまた不換紙幣である。通貨発行の歯止めは失われつつある。

 それとともに、バブルとその崩壊が景気循環を主導するようになっている。アメリカはリーマン・ショックの後で、4カ月で通貨を3倍にして、証券市場崩壊の危機を乗り切っている。しかし、増えた貨幣を回収することは極めて困難である。量的緩和を縮小したり、場合によっては止めたりすることはあっても、通貨量を元に戻すことはありえるのだろうか。市中に流された大量の貨幣は、次のバブルの源泉となる。その分だけバブルとその崩壊の規模が大きくなる可能性が高い。

 しかし、それだけではない。不換紙幣は固有の価値を持たない。貨幣数量説が唱えるように、貨幣量によって比例的に貨幣価値が管理されているわけではない。貨幣価値は人々の社会的な幻想によって維持されているにすぎない。貨幣価値に対する信認の崩壊は、インフレのレベルを超えて市場の崩壊である。

 格差社会の現実に立ち向かい、現代の国際通貨システムを根本的に考え直す時期に来ていると言える。
 


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借金まみれ扱いの日本の国家財政は「世界一健全」と森永卓郎氏
週刊ポスト2017年1月13・20日号

「日本は1000兆円も借金があるから増税しなければいけない」

「ギリシャのように破綻する可能性がある」

──新聞・テレビで何度も繰り返されてきた“警告”だ。

だが、日本という国家の財務状況は「借金の額」だけを見ても判断できないはずだ。

 投資家や銀行が企業の経営状態が健全かをチェックする際には、必ず「バランスシート」を見る。傘下に多くの子会社を抱える大企業の財務体質をはかる場合、子会社を含めた連結決算の財務諸表を見なければ本当の姿はわからない。

 国の財政も同じだ。主要国は政府の財務諸表を作成する際、政府単独とは別に、政府と中央銀行の財務諸表を合算した「統合政府」のバランスシートを作成している。しかし、日本(財務省)はそれを作成していない。

経済アナリストの森永卓郎氏が語る。

「信じ難いかもしれませんが、政府と日銀を含めた連結バランスシートを考えると、いまや日本の国家財政は世界一健全なんです」

 アベノミクスの開始以来、日銀は大幅な金融緩和で国債を大量に買い続け、2016年10月には日銀の国債保有残高は400兆円を超えた。

 日銀はお札を刷って、国債を買っている。つまり、日銀のバランスシートには、保有する400兆円の国債が「資産」に計上され、「負債」には市中銀行が日銀に預けている当座預金と日銀券(お札)の発行額が計上される。

 森永氏の解説を簡単に説明すると、

政府と日銀のバランスシートを合算(連結)して考えると、政府が発行した900兆円近い国債のうち400兆円は「統合政府」自ら保有しているから相殺され、実質的な国債発行額は500兆円に減る。

 かわりに日銀券と銀行の当座預金の400兆円が「負債」に計上されるが、いくらでも自由に発行できる日銀券は返済の必要がなく、銀行が当座預金の引き出しを求めた場合も日銀はお札を刷って払うことができる。

いずれも事実上、返済する必要がない負債だ。


 日銀が国債を買い入れたことで、国(統合政府)のバランスシート上、資産の裏付けがない借金である純債務は491兆円から91兆円に大幅に減ったのである。

 当然ながら、そのリスクも指摘されている。

本来、中央銀行に国債を大量に買わせるとインフレ、国債暴落、通貨安という副作用が起きて、国民生活に大ダメージを与えるとされてきた。

ところが、日本には“特殊な状況”が生まれているというのだ。


「現在の日本経済は日銀が物価を上げたくても上がらない、国債はゼロ金利だから多少金利がついた方がいい、為替ももう一段の円安が望ましい。

副作用が起きても全部プラスに働く。
こんな国は日本だけで、世界でも日本だけが使える魔法なのです」(森永氏)


 国の資産を管理する財務省理財局の資金企画室長などを歴任した嘉悦大学教授の高橋洋一氏もこういう。

「私が初めて国のバランスシートをつくった当時と一番違っているのはそこです。

日銀の国債大量買い入れによって統合政府のバランスシートでみると日本の借金は大きく減り、財政再建は終わったと考えていい。

 20年前、私が米国プリンストン大学に留学中にバーナンキ教授(前FRB議長)が、

『中央銀行が量的緩和してもインフレにならなければ財政再建ができるね』

といったことがある。それがまさに20年後の日本で現実になった」


 一方で、財務省は“まだ日本は借金大国で増税が必要だ”としきりに繰り返している。

しかし、いまこの国に必要なのは、増税ではなく、経済成長でもっと国の税収を豊かにし、将来の年金問題を解決することだろう。

 たしかに専門家の中には、たとえ今インフレが起きていなくても中央銀行の国債大量買い入れがいきなりハイパーインフレを引き起こすリスクがあると指摘する声も多い。手放しで現状に安心はできないだろう。

 ただ、国が借金をする裏付けに徴税力という“資産”が使えるのは、国民が経済成長を支え、納税の義務を果たしているからだ。

増税はその経済成長に冷や水を浴びせる。

「借金が多いから増税」という財務省のロジックが乱暴であることも、国のバランスシートから浮かび上がってくる。


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スティグリッツ教授の「日本国債無効化論」 2017-03-16

日本では重大な報道が相次いでいますが、本日はこれ。


『スティグリッツ教授:政府・日銀保有国債の無効化主張−諮問会議

●政府債務が「瞬時に減少」、「不安和らぐ」と−スティグリッツ氏
●債務の永久債や長期債への組み換えも提言−金利上昇リスク移転可能
 ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ米コロンビア大学教授は14日夕、経済財政諮問会議に出席し、政府・日銀が保有する国債を無効にすることを提言した。

 会議に提出された資料によると、スティグリッツ教授は、政府・日銀が保有する国債を無効化することで、政府の債務は「瞬時に減少」し、「不安はいくらか和らぐ」と主張。また、債務を永久債や長期債に組み換えることで、「政府が直面する金利上昇リスクを移転」できるとしている。永久債の発行は「政府支出に必要な追加的歳入を調達し、経済を刺激する低コストの方法」だとした。
 日本の政府債務については、金利の大幅な上昇で「政府は問題に直面するかもしれない」と懸念を表明。しかし「政府債務を低下させるために消費税を上げることは逆効果」であり、代替案として企業の設備投資を促す炭素税の導入を挙げた。
 スティグリッツ氏は記者団に対し、金融政策では強い経済を取り戻すのに必要な刺激を与えるのは難しい、と説明。財政政策によって、さまざまな分野の構造改革を進めるべきだと述べた。

 スティグリッツ氏は昨年3月、政府が開いた国際金融経済分析会合の初会合に出席し、17年4月に予定していた消費増税について、世界経済が低迷する中での実施は間違っているとして安倍晋三首相に再考を促した。安倍首相は6月、消費増税の再延期を正式に表明した。』


 日本銀行は、日本政府の子会社です。そのため、日本銀行が保有する国債については、連結決算で相殺されるため、返済の必要も、利払いの必要もありません。これは価値観云々とは関係ない、単なる統計的な真実です。


 償還期限が来たところで、借り換え「させれば」済む話です。何しろ、日本銀行は日本政府の子会社です。(別に、日銀保有ではない国債にしても、償還期限が来ると借り換えされるのですが、本日はその話はしません)


 すなわち、日本政府が保有する国債は、「シャッキ〜ンッ!」とやらではないのです。単なる、貨幣です。と言いますか、そもそも中央銀行の国債買取は「国債の貨幣化(マネタイゼーション)」と呼びます(財政ファイナンスとやらではありません)。今、この瞬間も、日本政府は国債の貨幣化を猛烈な勢いで推進しているのです(量的緩和による)。


 というわけで、わたくし共は、
「日本に財政問題(国の借金で破綻する!)など、存在しない」
 と主張し、青木泰樹先生の「長期の無利子国債(ゼロクーポン債)」といった提言を拡散してきたわけです。


 すでにして、日銀保有の国債は「実質的に負債ではない」わけですが、これを名目的にも単なる貨幣にしてしまうのが、長期無利子国債です。日本政府が長期無利子国債を発行し、日本銀行の保有する国債と交換してしまえば、名実ともに「クニノシャッキ〜ン」は消滅します。


 文字通り「消える」のです。


 などと、わたくし共が主張を続けても、一向に受け入れられないのですが、ノーベル経済学者のジョセフ・スティグリッツ教授が言ってくれれば、別でしょう?


「政府・日銀が保有する国債を無効化することで、政府の債務は「瞬時に減少する」


 上記のスティグリッツ教授の言葉が、真実なのです。 


 ちなみに、政府が保有する国債とは、恐らく社会保障基金(国民年金や厚生年金など)が保有する国債のことなのでしょうか。バランスシート上、日本政府の一部である社会保障基金も国債を保有しているため、「政府が政府に金を借りている」状況になってます。 


 もちろん、財務省は日銀保有分も、社会保障基金保有分も「政府の負債」に積み上げ、
「クニノシャッキンデハタンスル〜ッ!!!」
 プロパガンダに活用しています。日本政府は、自分が自分に借りている負債分までもを「借金」に積み増しされ、破綻する、破綻すると騒がれているのです。


 ちなみに、上記のスティグリッツ教授の発言は、今のところブルームバーグ紙にしか載っていませんでした。こうして、日本国民は情報を統制され、間違った道を歩まされることになるというわけです。


 日本に財政問題など存在しないにも関わらず、財務省の「国の借金プロパガンダ」により我が国は亡国路線を邁進しています。


 スティグリッツ教授の経済財政諮問会議による発言が、少しでも政府をまともな方向に動かしてくれることを願うばかりです。


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2017年10月23日
日本の財政収支は改善していた

リーマンショックでGDP比9%台に悪化した単年度赤字は3%台になった

日本の財政赤字が改善傾向

衆議院選挙も終わったが、今回の選挙では「財政赤字」や「財政均衡」が争点になりませんでした。

過去の選挙では日本の借金をどう返すか、大増税しかないという議論が必ず起きていました。

どうして財政議論が沈静化したかというと、この数年で日本の財政赤字は縮小し、改善されつつあるからです。

         
「日本の借金は世界最大!(嘘です)」と騒いでいた財務省のデータを引用すると、2016年財政収支はGDP比4.9%の赤字でした。

2017年度の歳入約63兆円で歳出97.4兆円、単年度の財政赤字は35.3兆円でした。(財政関係基礎データ 平成29年4月より)

歳出のうち「真水」つまり執行する予算は73.9兆円で、国債費が約23.5兆円でした。


歳入が63兆円で歳出が73.9兆円なので赤字額は11.9兆円で、残りは国債償還費用でした。

この国債を日銀が大量に購入していて、9月時点で約400兆円、日本政府が発行している国債残高は865兆円でした。

国債のうち584兆円だけが国が払う債務で、274兆円は建設国債なので高速料金やガソリン税から利用者が払っています。


584兆円のうち短期債務は予算のやりくりで数ヶ月間借りては返済するもので、長期債務はおそらく500兆円くらいでしょう。

政府が返す500兆円のうち400兆円を既に日銀が保有していて、もうすぐ100%に達してしまいます。

現在日銀は国から国債償還を受けると同じ金額の国債を購入しているので、実質的に国は償還していません。


毎度おなじみ財務省の「国の借金」実は政府が返すのは赤い部分の584兆円だけで、そのうち400兆円を日銀が保有しているので、賞味184兆円しかない。
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財政赤字問題は解消に向かう

では日銀が国債を100%近く保有してしまい、これ以上買えなくなったらどうするか、というのが「金融緩和出口論」です。

そのまま持ってれば良いんじゃないかという意見、いや債券市場の健全性を損なうから全部売却しろという終了論があります。

今まで買い集めた国債を日銀が売り飛ばしたら、どう考えても大混乱になるが、財務省などはそう主張している。


別な考え方としては政府は「永久国債」や50年債、100年債をゼロ金利で発行して、事実上凍結してしまうというのがあります。

イギリスとかは100年以上前の借金をそのようにして「冷凍保存」しているそうです。

日本のGDPがこのままプラスで推移すれば税収は自然に増えるので、数年後には国債を除く単年度赤字はもっと少なく成るでしょう。


すると事実上、財政議論は単年度で黒字化することから、今まで日銀が買い取った国債をどう処理するかという問題に変わります。

日銀を倒産させて第二日銀を立ち上げても良いが、それはあんまりなので、やはり低金利の長期債で「塩漬け」か「冷凍」が妥当でしょう。

米経済メディアのブルームバーグは今週、「日本の財政収支は大幅に改善した」という記事を掲載しました。


それによると2011年ごろに日本の単年度赤字はGDP比9%に達していたが、現在は3%か4%で推移しています。

日本の政府債務そのものも、この2・3年は増えていないとしています。

データの計算方法は書いていないが、GDPのプラスや日銀の国債買い取りで借金の増加は止まりつつある。

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2018年2月24日 土曜日

◆天才・高橋洋一の国会「財政危機は大ウソ。天下り先を売らないのが、その証拠」「消費税増税はアンフェアだ!」2018年予算委員会公聴会

◆国会公聴会で話した「アベノミクス擁護」の理由 2月22日 高橋洋一

 政府はすべての人に職があることを目指すべきだ。職があれば、社会の安定にもつながる。

 職があることは、就業者数で見てもいいし、失業率でもいい。

 例えば、失業率が低くなれば、自殺率は顕著に下がるし、犯罪率も下がる。社会問題のいくつかは、失業率を低下させることで、ある程度解決する。

 さらに、若者にとって職があることは重要だ。例えば、大学の新卒者の就職率は1年前の失業率に連動する。

 一流大学の就職率は常にいいが、筆者が教える大学では雇用事情の影響をもろに受ける。5、6年前には就職率は良くなかったが、今では全員が就職できるまで上昇している。

 この5年間、学生の学力が目立って上昇したわけではない。ただ、アベノミクスに異次元金融緩和があっただけだ。

 学生は就職が自分たちの“実力”のせいでないことをリアルに感じている。就職は学生の一大関心事なので、だから安倍政権の人気が高いのだ。

 マクロ経済政策が雇用政策であることは、欧米では常識だ。

 そして、このことは「左派政党」がいち早く主張した。ところが、日本では、保守の安倍政権が初めて主張して、結果を出している。一部の野党が、いまの金融緩和策を否定しているのは、世界から見れば雇用の確保を無視しているわけで、海外では理解不可能なのではないか。

 マクロ政策で雇用確保に熱心でない一部の野党が、労働法制の議論で細かい話をしているのは、かなり奇異に見える。
(中略)


しばしば、日本は財政状況が悪いという声を聞くが、筆者にはかなり疑問だ。

 経済学では、政府と中央銀行を会計的に合算した「統合政府」という考え方がある。もちろん、行動として中央銀行は、政策手段の独立性があるが、あくまで法的には政府の「子会社」なので、会計的には「連結」するというわけだ。

 この場合、財政の健全化を考える着目点は、統合政府BS(バランスシート)のネット債務ということになる。図6は、財務省ホームページにある連結政府BSに日銀BSを合算し、「統合政府BS」として、私が作成したものだ(図表6)。

 統合政府BSの資産は1350兆円。統合政府BSの負債は、国債1350兆円、日銀発行の銀行券450兆円になる。

 ここで、銀行券は、統合政府にとって利子を支払う必要もないし、償還負担なしなので、実質的に債務でないと考えていい。

 また国債1350兆円に見合う形で、資産には、政府の資産と日銀保有国債がある。

 これらが意味しているのは、統合政府BSのネット債務はほぼゼロという状況だ。

 このBSを見て、財政危機だと言う人はいないと思う。

もっとも、資産で売れないものがあるなどという批判があり得る。しかし、資産の大半は金融資産だ。天下りに関係するが、役人の天下り先の特殊法人などへの出資金、貸付金が極めて多いのだ。

 売れないというのは、天下り先の政府子会社を処分しては困るという、官僚の泣き言でもある。もし、政府が本当に大変になれば、関係子会社を売却、民営化する。このことは、民間会社でも同じだ。

 例えば、財政危機に陥ったギリシャでは政府資産の売却が大々的に行われた。道路などの資産は売れないというが、それは少額であり、数字的に大きなモノは、天下り先への資金提供資産だ。

 海外から見れば、日本政府はたっぷりと金融資産を持っているのに売却しないのだから、財政破綻のはずはないと喝破されている。

 もちろん、海外の投資家は、政府の債務1000兆円だけで判断しない。バランスシートの右側だけの議論はしない。あくまで、バランスシートの左右を見ての判断だ。

 この「統合政府」の考え方からすれば、アベノミクスによる量的緩和で、財政再建がほぼできてしまったといえる。

 かつて、私のプリンストン大での先生である前FRB議長のバーナンキが言うっていた。

「量的緩和すれば、デフレから脱却できるだろう。そうでなくても、財政再建はできる」

 まさにそのとおりになった。

 実際に、財政再建ができたということを、統合政府BSに即して、具体的に示そう。

 資産が900兆円あるが、これは既に述べたように大半は金融資産である。その利回りなどの収益は、ほぼ国債金利と同じ水準であり、これが統合政府には税外収入になる。

 また、日銀保有国債450兆円は、統合政府にとっては財政負担はない。この分は、日銀に対して国が利払いをするが、日銀納付金として、統合政府には税外収入で返ってくるからちゃらだ。

 つまり、負債の1350兆円の利払い負担は、資産側の税外収入で賄われる。この意味で、財政再建がほぼできたといってもいい。(後略)


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森永卓郎氏 「日本経済にとっては安倍総裁の再選が望ましい」
マネーポストWEB 5/25(金) 7:00配信
 
 安倍氏が総裁選に勝利すれば消費増税再凍結もあるか?


 2018年9月の自民党総裁選で誰が勝者となるのか。安倍晋三総裁の対抗馬として誰が立候補するかもまだ明白にはなっていない状況だが、経済アナリストの森永卓郎氏は、安倍氏と岸田文雄政調会長の一騎打ちになる可能性が高いと予想している。総裁選の日本経済への影響について、森永氏が解説する。

 * * *
 自民党総裁選が私の予想通りの構図になったとしても、安倍氏と岸田氏のどちらが勝つかは、正直なところ現状でははっきり見えない。ただし、はっきり予想できることはある。こと日本経済にとっては、安倍氏の勝利が望ましいということだ。

 岸田氏が勝って岸田政権が誕生すれば、消費税の8%から10%への引き上げが2019年10月から予定通りに行なわれるはずだ。その結果は、火を見るより明らかだ。前回の消費税率引き上げ後と同様に、日本の景気が大きく失速することは間違いない。

 一方、安倍氏が勝てば、少なくとも消費税が上がることはないと考えられる。安倍氏はおそらく、自民党総裁選前に再び消費税の凍結、あるいは引き下げを表明すると、私は見ている。なぜなら、内閣支持率の急落という逆境から一発逆転勝利を狙う最後の切り札は、それしかないと思われるからだ。

 日本経済にとって最良のシナリオは、安倍氏が消費税率の引き下げを宣言して勝利することだ。その結果、たとえば消費税が5%に引き下げられれば、日本の株価も一気に上がるはずだ。

 消費税を5%に引き下げても、通貨発行益を財源として利用すれば、財源的には何の問題もないはずだ。日銀は量的金融緩和で国債を大量に買い増し続けているが、日銀が保有する国債は、元利の返済が実質不要だ。日銀が国債を買い入れるということは、国債を日銀が供給するお金にすり替えることを意味する。日銀券は元本返済も利払いも不要なので、日銀保有の国債は借金にカウントする必要がなくなる。それが通貨発行益と呼ばれるものだ。

 2017年度ベースの日銀の国債買い入れ額は、約31兆円に上った。ということは、通貨発行益が2017年度ベースで約31兆円出たということだ。一方、2017年度のプライマリーバランスの赤字額は約19兆円なので、2017年度の日本の財政は実質的に約12兆円の黒字だったのだ。それに対して、消費税を5%に引き下げるために必要な財源は約8兆円なので、問題なく可能なのである。

 もし安倍氏が総裁選に勝って消費税率が8%に据え置かれた場合でも、岸田氏が勝って消費税率が10%になった場合を比べれば、日経平均株価は5000〜6000円の差が出ておかしくないと見る。一般の個人投資家にとっても、安倍氏の勝利が望ましいといえるのである。

 ちなみに2108年1〜3月期の実質GDPは、2年3か月ぶりのマイナス成長となっている。「リーマン・ショック並みの経済危機がくれば、消費税凍結を考える」と総選挙で発言した安倍総理が、消費税の凍結あるいは引き下げを断行する環境は整ってきている。


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2018年09月13日
経済好調のアメリカはなぜ焦っているのか
アメリカが公表しているのは連邦の直接債務だけ


絶好調なアメリカの悩み

アメリカは2010年のリーマンショック明けから9年連続の好景気で、来年も景気拡大が予想されている。

にも拘わらずトランプ大統領は取るに足らない貿易赤字を問題視し、中国や欧州に解消を迫っている。

この動きはいずれ日本にも波及し、輸入拡大と輸出削減を迫ってくるでしょう。


アメリカ経済は絶好調で株価は毎年過去最高を更新し、消費も企業業績もすべて拡大しています。

貿易赤字も好調だから増えてるので、米国の消費が活発過ぎて国内生産だけでは需要を満たせないのです。

反対に日本は貿易黒字ですが、これは国内消費が弱いから外国から輸入しなくても良いというだけです。


つまり貿易赤字こそ繁栄の象徴であり、貿易黒字の国は国内消費が弱いのを示しています。

じゃあなんでトランプは怒っているかというと、経済に弱いのもあるが拡大し続ける債務懸念があります。

経済全て絶好調のアメリカの悩みは増え続ける債務で、公的債務は推定で5500兆円に達していると言われています。


日本の借金は「たった」1000兆円ですがアメリカはその5倍で、GDPの差が3倍あるのを考慮しても多すぎる。

悪いことにアメリカは自国の公的債務を国民に公開しておらず、アメリカ人は「アメリカに借金はない」と信じています。

だから平気な顔で「日本は世界最悪の借金を抱えている」などと他国を批判したりしています。


アメリカの債務爆弾とは

アメリカは家計債務と企業債務、金融債務も膨張していて、その原因は最近の経済好調そのもに求められる。

「資産=債務」というのが経済原則なので、株価が上がって米国の資産が増えれば、同じ金額の負債も増えています。

ここで問題になるのは米国の公的債務がGDPの3倍以上になるなど、稼ぐ金より債務額が遥かに多いことです。


よく日本は「年収500万円の人が1000万円の借金をしている」とたとえられます。

その比率ではアメリカは「年収1500万の人が5500万円の借金をしている」という事になり、どっちもどっちです。

いつか起きるのではないかと言われているのがアメリカの債務危機で、世界的な経済危機を予測する人もいる。


アメリカ政府が公表している公的債務は「連邦債務」だけで日本で言えば中央の借金のみで、地方や特殊法人、公的企業や団体分を除外してある。

いつどんな形で噴き出すのかは分からないが、増え続ける借金を永遠に隠し続けることはできない。

同じことは中国についても、欧州についても当てはまる。


世界各国は経済成長率を遥かに超えるペースで借金を増やし、しかも日本以外は公表していない。

いつどんな形で各国の債務が明らかになるかは分からないが、人々が真相を知ったら混乱するでしょう。

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IMFが公表した日本の財政「衝撃レポート」の中身を分析する それでも消費増税は必要ですか(現代ビジネス)
2018.10.15 橋 洋一 経済学者 嘉悦大学教授 現代ビジネス


やっぱり日本のメディアは報じないが…

消費税増税の外堀がさらに埋められた。安倍総理は、15日の臨時閣議で、来年10月に予定している消費税率10%への引き上げに備えた対策を早急に講じるよう指示する。この臨時閣議は、首相が16日から訪欧するために開催されるもので、西日本豪雨や北海道地震の災害復旧費などを盛り込んだ平成30年度補正予算案が決定される。

消費増税の足音が近づいてきているが、前回の本コラム(「消費増税で国民に負担を強いる前に、政府がいますぐにやるべきこと こんな順番では納得できない」 では、消費増税前に、政府保有株の売却などやるべきことがあると指摘した。

今回は、その続きの一つとして、IMF(国際通貨基金)が公表した重要なレポートを紹介しよう。先週も指摘したように、IMFは財務省出向職員が仕切っている側面もあり、単なる財務省の代弁としか言いようのないレポートもあるのだが、財務省の出向職員があまり手を出せないスタッフペーパーのなかには、いいものもあるのだ。

今回紹介するものはその類いである。それは、今月の公表された「IMF Fiscal Monitor, October 2018 Managing Public Wealth」である。

これは、各国の財政状況について、負債だけではなく資産にも注目して分析したものだ。このレポート、海外メディアの注目度は高い(たとえば が、日本のメディアではさっぱり取り上げられない。だからこそ、紹介する価値があるというものだ。

筆者が大蔵省時代に、政府のバランスシート作りに取り組んだ経緯は、前回のコラムでも少し触れたが、レポートを見る前に、その当時の世界の情勢も加えておこう。

筆者がバランスシートづくりに取り組んだのは、1990年代中頃であるが、その当時、アメリカなどでさえ、政府のバランスシート作りにはまったく手がついていなかった。その意味で、筆者はこの分野での先駆けであったことを自負している。

そこで、筆者がその考え方(企業と同じように、政府もバランスシートによって財政を評価するべきだということ)を諸外国の財政当局の担当者に話すと、興味津々であった。そのおかげで、アメリカなどのアングロサクソン系国家から、「そのバランスシート作りについて、日本のやり方を教えてほしい」という要望があり、かなりの数、海外出張に行った記憶がある。

さて、それを前提にIMFのレポートに話を戻そう。上記のIMF報告書の33ページのAnnex Table 1.2.3には、各国データの「availability」がある。要は、各国がこの「バランスシート」の考え方を導入した年代が分かるわけだ。

日本は他先進国とともに、一番早い2000− となっている。ここの記述はやや不正確であり、日本は1995− が正しいと思う。筆者の記憶では、日本が1995年ごろにバランスシートをつくり、他先進国はその後2年くらいでできあがったはずだ。

これには、ちょっとした理由がある。日本の政府バランスシートは1990年代中頃に作られ、世界最先端を行っていたのだが、その公表は封印されたのだ。

大蔵省はそれまで、バランスシートではなくその右側だけの負債だけを都合よく利用して財政危機を訴えてきたので、包括的なバランスシートが出来てしまうと、それまでの説明に矛盾が生じてしまうからだろう。大蔵省だからというわけではないだろうが、このバランスシートは「お蔵入り」と言われたことは覚えている。

その後、2000年代になって小泉政権が誕生すると、財務省内からも「そろそろ政府のバランスシートを公表したほうがいい」と言う声が上がり、そこに例の「埋蔵金論争」などもあったことから、結局バランスシートを公表するようになった。

それからは、財務省のホームページにはバランスシートが公表されているが、これについては財務省がマスコミにまともなレクチャーをしないから、ほとんど知られていない。債務の大きさだけを強調し、財政再建が必要だと主張するためだ。財務省も財務省だが、財務省からレクを受けないと記事が書けないマスコミも情けない。

いずれにしても、2000年代から各国でバランスシート作りが盛んになり、データも蓄積されてきたところなので、IMFでも各国のバランスシートについて分析できるようになったのだろう。

グラフをみれば一目瞭然

さて、当該のIMFレポートでは、主に一般政府(General Government)と公的部門(Public Sector)のバランスシートが分析されている。

一般政府とは中央政府(国)と地方政府を併せた概念である。一方の公的部門とは、中央銀行を含む公的機関を含めたものだ。

筆者は、これまで統合政府という概念でバランスシートを論じることが多かった。例えば、2015年12月28日「『日本の借金1000兆円』」はやっぱりウソでした〜それどころか…財政再建は実質完了してしまう!」などである。

この場合、筆者が考慮するのは中央政府と中央銀行だけにしているが、ネット資産(資産マイナス負債)に着目する限り、これはIMFレポートの「公的部門」とほぼ同じである。というのは、地方政府と中央銀行を除く「公的機関のネット資産」はほとんどゼロであるからだ。

中央銀行も、形式的にはネット資産はほぼゼロであるが、中央銀行の負債は実質的にはないので、実質的なネット資産が大きくなるので、統合政府ではそれをカウントしているわけだ。そこで、統合政府のバランスシートをみれば、ネット負債はほぼゼロ……つまりネット資産もゼロとなっている。

これらを踏まえた上で、IMFレポートを見てみよう。

2ページの図1.1では、比較可能な国の「公的部門バランスシート」でのネット資産対GDP比がでている。


それによれば、日本の公的部門のネット資産対GDP比はほぼゼロである。これは、筆者の主張と整合的だ。まあ、こんな話は誰が計算しても同じである。

ここから出てくる話は、「巨額な借金で利払いが大変になる」というが、それに見合う「巨額な資産」を持っていれば、その金利収入で借金の利払いは大変ではなくなる、という事実だ。このため、日銀の保有する国債への利払いは、本来であればそのまま国庫収入になるが、それを減少させる日銀の当座預金への付利を問題にしているわけだ(詳しくは先週の本コラムを見てほしい)。

ギリシャ、イタリアと比べても…

続いてIMFレポートでは、一般政府バランスシートでのネット資産対GDP比も分析している。7ページの図1.4である。


ここでも、日本は若干のマイナスであるが、ギリシャ、イタリアと比べるとそれほど悪くない。

IMFレポートでは、どのような財政運営をすると、ネット資産がどのように変化するか、という分析を行っている。例えば、単に赤字国債を発行するだけだと、ネット資産は減少するが、投資に回せばネット資産は減少しない。その投資が生きれば、ネット資産は増加する……といった具合だ。

この観点から論をさらに進めれば、先週の本コラムに書いたような「研究開発国債」という考え方は容認できるだろう。もっとも、今の財務省の経済音痴では、そのような新手は望むべくもないだろうが。

このほかにも、ネット資産は財政状況をみるのに使える。理論的には、ネット資産が限りなく減少すると(数学的な表現では、マイナス無限大に発散)財政破綻、ということになる。IMFレポートではそこまで書いていないが、35ページのAnnex Table 1.3.1.において、長期金利と一般政府でのネット資産との状況について、回帰分析を行っている。

その含意は、「ネット資産が少なくなると、長期金利が上昇する傾向がある」となっており、理論面でのネット資産と財政破綻の関係と整合的であることが示されている。

そこで、一般政府でのネット資産対GDP比とその国の信用度を表すCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)レートの関係の相関を調べてみた。


これをみるとかなりの相関があることが分かる。筆者はCDSのデータから、その国の破綻確率を計算し、例えば、日本は今後5年以内に破綻する確率は1%未満であるといっている。この話は、日本のネット資産がほぼゼロであることと整合的になっている。

こうした話は、本コラムでこれまでにも書いている。昨年来日したスティグリッツ教授が、経済財政諮問会議の場でも「日本の財政負債は大半が無効化されている(から財政破綻にはならない)」といっている。

そのとき、日本の増税学者は「スティグリッツが間違っている」と強気だった。これに対し、筆者はもしそうなら、スティグリッツに手紙を書き謝罪文をもらうべきだといった。いまだに、スティグリッツから謝罪文がきたという話は聞いていない。

すり替え、が始まった

財政破綻を訴え増税を主張する人たちは、それでもやはり消費増税を強行するのだろうか。IMFレポートをみれば、財政破綻というロジックが使えなくなったことは歴然なのに……。と思っていたら、増税派は「財政破綻を回避するために」という論法ではなく、「将来の年金など社会保障のために増税すべき」と、新しい言い方に変え始めている。これには失笑するほかない。

筆者は、社会保障の将来推計の専門家である。社会保障の将来像などを推計するのはそれほど難しくない。かつては、「財政問題のストック分析:将来世代の負担の観点から」という論文も書いている。

今更「社会保障が重要」などという暢気なコメントを出すような人より、ずっと前からこの問題については考えている。

何より、社会保障財源として消費税を使うというのは、税理論や社会保険論から間違っている。大蔵省時代には、「消費税を社会保障目的税にしている国はない」と言い切っていたではないか。

そんなデタラメに、まだ財務省がしがみついているのかと思うと、心の底から残念で仕方ない。

社会保障財源なら、歳入庁を創設し、社会保険料徴収漏れをしっかりとカバーし、マイナンバーによる所得税補足の強化、マイナンバーによる金融所得の総合課税化(または高率分離課税)といった手段を採ることが、理論的にも実践的にも筋である。

それらを行わずに、社会保障の財源のために消費増税を、というのは邪道である。さらに、景気への悪影響も考えると、いまの時期に消費増税を行うというのは尋常ではない。

少々難解かもしれないが、ぜひともIMFレポートなどを読んで、「消費増税の是非についての認識を深めてほしい。


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2018年10月22日
IMFが「日本政府に借金はなかった」と密かに訂正

日本の借金は1000兆円だが資産も1000兆円なので返さなくて良いということ

日本に借金はなかった

IMFは長年「日本の公的債務は200%以上で世界最悪」と言ってきたが、最近急に「日本政府に借金はない」と言い出しました。

180度の転換に憶測が飛び交っているが、IMFは何を言っているのでしょうか。

10月10日にIMFは主要31カ国の財政モニター報告書を発表し、負債とともに資産も計上している。

従来のIMF報告書は負債を書くだけだったので、「日本の借金は世界一」と連呼していました。

この幼稚さは以前から指摘されていて、日本政府には負債を上回る資産があるのに、負債だけを見るのはおかしいと言われていました。

また日本政府が発行する国債のほとんどを日本人が保有していて、そのほとんどを日本銀行が保有しています。


日銀は日本政府の政府機関なので、要するに日本の借金のほとんどは日本政府から借りていることになる。

自分で自分に借用書を書いて、自分に金利を払って自分で受け取るようなことをしています。

これが「日銀の独立性」で、日本政府から独立した組織として会計するので、こんなおかしな事になっている。


IMFによると31カ国の資産合計額は101兆ドル(約1京1000兆円)で債務合計は94%と驚くほど健全だった。

主要国全体では資産が債務の2倍以上あり、IMFが長年警告していた「危険性」はどこにも存在しなかった。

日本については負債がGDPの283%に達しているが、負債の半分以上は日銀や日本政府が「貸している」。


日本よりドイツの「借金」が多かった

さらに日本政府が所有する資産を差し引きすると、日本の純資産=正味の借金はゼロだった。

反対に今までIMFが健全財政を褒めたたえていたドイツは純資産がマイナスなので正味の借金が存在した。

反論もあり日本政府の資産(たとえば皇居や基地などの土地)は売却できないし貸すこともできない。


IMFが今頃各国の本当の純資産を発表したのは、国の本当の負債と資産を各国が公表していなかったからでした。

公的債務の完全な資料を公開していたのは日本だけだったので、日本の債務が世界一という作り話が創作された。

実際には金額でもGDP比でも中国とアメリカの方が、日本より公的債務が多かったのだが、少なく公表していました。


さすがにこの「作り話」のウソ臭さに世界の人々も気づいていて、ちゃんと計算するべきだという批判が強まった。

遅まきながらIMFは各国の本当の資産と負債を計算しなおし、従来の説を事実上訂正するに至った。

IMFに「日本の借金は世界一」と報告していたのは日本の財務省で、財政を悪く見せかけることで消費増税を推進しようとした。


だがそのトリックは否定されたわけで、来年10月の消費増税は土壇場で中止するのではないかと憶測を呼んでいる。


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日銀破綻という妄想論 2019-02-13


 スポンサーが、三橋TVで藤巻健史の破綻論を取り上げてくれと言い出したのは、彼の著作「日銀破綻」が切っ掛けだったようです。

藤巻の破綻論は「日銀破綻論」を含めて、全て出鱈目です。というか、彼は会計やデータを無視というか「見ない」傾向が強いです。


 とはいえ、藤巻に影響され、

「三橋は日本国債は日銀が買い取れば返済、利払い不要となるため破綻しないと言っているが、日銀の負債が増えるじゃないか!」
 と、面倒くさいことを言ってくる連中が後を絶ちません。


 あのね、こう言っては何ですが、わたくしはこの手の話の「専門家」なのですよ。しかも、頭に「超」をつけても構わないほどの専門家です。何しろ、これでご飯を食べているのです。日銀が国債を買い取った場合のバランスシートや会計の動きを把握していないはずがないでしょ。


 もっとも、「破綻脳」の人たちは、とにかく「日本は破綻する」という結論は変えず、懸命に破綻理論を考え付こうとします。藤巻やらあなた方の「ピコーン!ひらめいた!」系の破綻論など、とっくにデータで否定済みです。


 が、もう一度書いておきます。


 日本銀行は、通常、日銀当座預金というおカネを発行し、国債を買い取ります。その時点で、政府の国債に対する返済・利払い負担が消えるのは、これは単なる事実。


 さて、現在、日銀の当座預金は三つの階層に分かれています。「基礎残高」「マクロ加算残高」「政策金利残高」に三つです。


 本来、日銀当座預金に金利はつきません。とはいえ、現在は「基礎残高」に+0.1%が付利され、逆に「政策金利残高」からは0.1%の金利を徴収しています(いわゆるマイナス金利)。


 誤解している人が多いのですが(藤巻もでしょうが)、現在、増えている日銀当座預金は金利がつかないマクロ加算残高であり、基礎残高ではありません。基礎残高は、200兆円超でほぼ横ばいが続いています。


 「金利がつかないマクロ加算残高」が量的緩和で増え続けているのです。


 というわけで、基礎残高に対し+0.1%の金利を支払い、逆に政策金利残高から0.1%の金利を徴収し、差額つまりは「日銀当座預金に対して日銀が支払わなければならない金利」がいくらかといえば、年に2000億円弱です。


「そんな安いのか!」
 と、思われたでしょうが、安いのです。

 そもそも、金利を付利する基礎残高が200兆円超なので、0.1%の金利は2000億円です(そこから政策金利残高から得られる金利が差っ引かれる)


 例えば、日銀の「第133回事業年度(平成29年度)決算等について 」を見ると、「補完当座預金制度利息」として1836億円の費用が計上されています。これが、日銀当座預金に対する付利です(厳密には差額)。


 さて、日銀の純資産は直近で29兆円。日銀は意外に「収益源」が多い事業体ですが、とりあえず何も利益を稼げないと仮定して、日銀当座預金の金利を支払い続けると、約150年後に債務超過になる計算ですね。藤巻をはじめ、日銀破綻論者は全員死んでるでしょ、間違いなく。(わたくしも死んでいますが)

 
 しかも、日銀が債務超過になったところで、政府がおカネを発行し、資本投入したら終わる話です。


「政府がおカネを発行するなんて!」
 と、思われた方は、硬貨を使うのをやめましょう。あれは、政府が純資産として発行しているおカネです(厳密には金属代金と加工料はかかっていますが)。


 何を言いたいのかといえば、藤巻をはじめ「ど素人」の破綻論は、全てデータや事実に基づいて否定されているという話です。それにも関わらず、
「日銀が国債を買い取ると、利払いで債務超過になって破綻する!」
 と、大衆を煽るのは簡単です。論破されても、しつこく、繰り返せば済む話ですし。


 それに対し、こちらは「会計」「おカネの動き」について細かく説明しなければなりません。それどころか「おカネとは何なのか?」を理解してもらわなければ、破綻論を打破できないのです。


 先日のメルマガにも書きましたが、この「プロパガンダの非対称」もまた、我々の前に立ちふさがる壁なのです。


 藤巻のように無知な扇動家の嘘つきが「日銀が破綻する!」と叫ぶと、それなりに効果を持ってしまうわけでございます。


 というわけで、金融や財政を完璧に理解した「反・緊縮財政」の政党が必要なのです。


 とりあえず、日銀破綻論を言い出す連中を見かけたら、本エントリーに誘導して下さいませ。

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2019年09月23日
アメリカのMMT経済、100年国債を中央銀行が買い取り

日本政府は日銀から32兆円借りて23兆円返済しているが、日銀が無限に買い取れば返済しなくて良い


画像引用:平成31年度予算案を閣議決定 一般会計101兆4564億円、初の大台 - 産経ニュース

アメリカ全体の借金は5000兆円以上

アメリカは最近「日本は世界最悪の債務国家」のような事を言わなくなったが、これはアメリカの方が借金が多いのに気づいたからです。

欧米人は自分が正しいと思うと大声で他人を非難するが、自分が悪いと思うと黙ってシラを切ろうとする。

アメリカ合衆国の2018年度財政赤字は約9000億ドル(約97兆円)、19年度は約1兆ドル(約107兆円)と見積もられています。

これは単年度で連邦累積債務は16兆億ドル(約1700兆円)、だがこれらは1年前の数字なので現在はもっと悪化しています。

アメリカの公的予算は連邦予算と州予算、民間予算に分かれていて、合計すると連邦債務の3倍の公的債務が存在すると言われています。

国全体の借金が連邦債務の3倍としたら5100兆円だが、もっと多い筈だと指摘する専門家が多い。


赤字の源は社会保障費や教育費やインフラ工事などだが、これらを州や市や民間団体が行っています。

例えば米軍に従事したアメリカ兵はこれから高齢化するが、民間を装った特殊法人的な団体に社会保障費を付け替えたりしています。

オバマケアでアメリカにも公的保険制度ができたが、高齢化が進むと年数十兆円も政府が赤字補填することになる。


アメリカには民間の高速道路が多いが、実態は政府や州の赤字を付け替えるための「道路公団」に過ぎない。

道路企業が経営破綻しても道路を解体して売却する訳にはいかないので、道路公団と同じで政府が払うしかない。

都合が良い事にアメリカ全体の公的債務は「国防上の秘密」なので、誰も調査できないようになっている。


日本は実質MMT経済を行っている

日本もアメリカを見習って国全体の借金を「国防上の秘密」にして財務省に調査させないようにすれば、半額以下に減らせます。

アメリカのGDPは日本の3倍だが借金は5倍以上多いので、控えめに言ってもアメリカのほうが公的債務が多い。

そして現在アメリカを超えつつあるのが中国で、GDPで超える夢は果たせそうもないが、借金の額では先に追いつくでしょう。


GDPの3倍以上も公的債務があったら経済破綻するのではないかと思うが、そこで登場したのがMMT経済理論でした。

MMTとは中央銀行が国債を買い取れば借金していないのと同じになるという理論で、日本はすでに実施しています。

日本の借金は約1000兆円だが国が発行する長期国債は500兆円ほどで、このうち460兆円を日銀が保有しています。


日本政府は日銀に金利を払っているが、日銀は受け取ったお金でまた日本国債を買うので、政府と日銀がお金をやり取りしているだけです。

日本の長期金利はマイナスなので実際には政府は金利を払わず、実質的に借金の返済もしていません。

平成31年度予算では国債を32兆円発行し(借金をし)、国債を23兆円返済したので差し引き9兆円の不足でした。


アメリカは100年国債でMMT経済へ

日本政府は日銀から9兆円金を借りて、まあ後日払うよと言っているが返す気はないでしょう。


元米FRB総裁バーナンキが2016年に来日し安倍首相と会談した時、永久国債で借金を踏み倒せばいいと提案しました。

安倍首相は断ったが内心「それでいこう」と思った筈で、日本は実質MMTに進みました。


バーナンキの提案ではゼロ金利で永久に償還しない国債を発行し、全額日銀が買い取ればそれで日本政府の借金はチャラになります。

日本の実質MMTが成功しているのを見てアメリカもやろうという事になり、50年国債や100年国債の発行を検討しています。

超低金利で超長期債を発行してFRBに買い取らせれば、アメリカの借金問題は100年後に先送りできる。


100年後の人どうするかは今の人たちには関係ないので、アメリカの借金問題は解決します。

ちなみにイギリスは第一次大戦の借金をいまだに返済していないし、アメリカはフランス革命前の借金を返済していません。

政府の国債をゼロ金利で買わされた中央銀行はその後どうなるかですが、100年後に破産すれば良いんじゃないでしょうか。


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2020年02月24日
永久国債とは何か 日銀の国債買い入れを制度化


財務省のペット、麻生財務大臣

永久国債を提言

数年前FRB議長のベン・バーナンキが来日した時に「永久国債」を提言したが、体よく断られていました。

バーナンキは、日本が再びデフレに戻るリスクを指摘し、「ヘリコプターマネー」を勧めた。

ヘリコプターマネーはバーナンキ議長が「ヘリコプターでお金を撒けば良い」と言ったことから始ました。

だから『教祖』のバーナンキがヘリコプターマネーを勧めるのは予想された事で、むしろその話を聞きに言ったのでしょう。

政府が永久国債を発行し、市場を通さずに中央銀行が直接買い取る事で、国債市場に影響を与えず公共事業を実施できる。

バーナンキは選択肢の一つとして説明し、それ以上踏み込んだ話にはならなかったという。


バーナンキは2016年に安倍首相と会談し、アベノミクスや金融緩和を続けるべきだと発言しました。

今まで出てきた永久国債とは、満期を定めない国債の事で、発行者(国)が求めない限り、償還しなくても良い。

その代わり永久に利子を払い続ける必要があるが、例えばゼロ%やマイナス金利で発行すれば、金利は払わずに済みます。


金利の付かない債権を買う人はいないが、中央銀行が買い取れば、事実上返済しなくて良い借金になります。

そのような国債は前例がないのかと思いきや、大和総研の資料では2014年に世界で2,278億ドル(約25兆円)も発行されています。

イギリスでは5000億円近い永久国債が発行されていて、200年以上前の国債が今でも塩漬けにされ続けています。


財務省の飼い犬とアヒル

日本でも年間数千億円の永久債が民間によって発行されているが、政府は永久国債発行に否定的です。

理由は日本では日銀の直接買い取りが禁止されているので、マイナスやゼロ金利では購入者が居ないと考えられる為です。

日銀の国債引き受け額は2019年末時点で国債発行額の約43%に達したが、最近は頭打ちになっている。


先ほど書いたように日銀の直接引き受けは禁止されているので、一旦市場で販売した国債を、日銀が買い取っています。

これを直接日銀が国から買い取っても、実質的に何も変わらないが、財務省が強く反対しています。

反対理由は表向き「財政の健全性が損なわれる」と言っていますが、要は自分の縄張りだから手を出すなという事です。


犬が近づいた人間に吼えるのと同じで、財務省の縄張りを守る為に吼えるのです。

例えば財務省と飼い犬たちは、ヘリコプターマネーで日本の信用が崩壊すると言っています。

この崩壊論は財務省に近い人ほど大好きな理論で、これを口にしたら「ああ財務省の飼い犬だな」と判断できます。


増税しないと日本崩壊する、金融緩和で日本崩壊する、アベノミクスで日本崩壊する、今度はヘリコプターマネーで日本崩壊すると言っています。

「ハルマゲドンが来る」と言っていた麻原彰晃やオウム幹部達と、彼らの理論がそっくりなのは気のせいでしょうか?

財政支出を増やすと国債が「金利1000%」になったり通貨は「1ドル1万円になる」などと言っています。


彼らの理論では財政を縮小するほど「日本の信用が高まり」財政が健全化するが、過去25年間その通りにした結果、日本経済は崩壊しました。

逆に日本の数倍の借金を抱えている中国とアメリカはまったく破産せず、日本より高成長を続けています。

日本の借金はアメリカや中国と同じ基準で計算するとGDP80%以下に過ぎず、逆にアメリカと中国はGDP比300%以上の借金を抱えています。


財務省と飼い犬たちはこういう本当の数字を突きつけると逃げ回り、「日本破綻」「日本崩壊」という言葉だけを、アヒルのように繰り返しています。


バーナンキの言う通り日本政府が永久国債をゼロ金利で発行し日銀が全額買い取ると、事実上日本政府の借金は消えてなくなります。


財務省が主張する日本の借金がGDP比200%だから財務省は威張れるが、借金ゼロになったら誰も財務官僚に敬意を払わなくなります。


そうなると財務官僚の権限が小さくなり天下り先がなくなり、彼らの金儲けができなくなります。


財務省事務次官経験者は退官した後銀行などに天下りし、年収数億円プラス数年ごとに十億円以上の退職金を受け取ります。


退官後の収入が数百億円にも達するそうで、結局財務官僚がやっているのは「自分の金儲け」です。


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2020年3月11日
日銀が債務超過になっても問題ない理由
塚崎公義 (久留米大学商学部教授)


 日銀は大量にETFを持っていて、株価下落で債務超過に陥るのではないか、と懸念する人がいますが、日銀の債務超過は問題ない、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は説きます。


日銀は大量のETFを持っている

 日銀は、大量のETFを持っています。ETFというのは株式投資信託の一種なので、要するに巨額の日本株を持っているということですね。したがって、株価が暴落すると日銀が高い時に買った株が含み損を抱えることになり、それが膨らむと日銀が債務超過に陥るのではないか、と心配している人がいます。

 確かに、株を大量に持っている株式会社は、株価が値下がりすると債務超過に陥ることになります。決算書を作る際に保有する株式を時価評価するか否かによって表面上の数字は変わりますが、いずれにしても実質的に債務超過になることには違いないわけです。

 一般企業が債務超過に陥ると、倒産の可能性が格段に高まります。債務超過というのは「資産をすべて売却しても負債が返済しきれない」という状態ですから、債権者は不安になります。

 「他の債権者が自分より先に債権を回収したら、自分の債権が回収できなくなってしまう。それは困るから、他の債権者より先に自分が返済を受けてしまおう」と債権者たちは考えて、会社に押しかけて来ます。そうなると、会社は倒産せざるを得ません。

 早い者勝ちになるのか「裁判所が会社の財産を管理して、資産を売り、債権者たちに平等に分ける」といったことが行われるのか、といった違いはありますが、いずれにしても会社は消滅してしまうわけですね。

 そこで、「日銀も株式会社なので、同じように消滅してしまったらどうしよう」と考える人もいるでしょう。

 そうでなくとも、日銀が債務超過だということは、日本銀行券という紙幣の信用力を大きく損なう原因となるのではないか、と心配する人もいるでしょう。

 しかし、筆者は全く心配していません。


日銀が債務超過になったら、増資をして政府に引き受けてもらえば良い

 日銀が債務超過になったら、増資をして政府に引き受けてもらい、債務超過を解消すれば良いだけのことです。日銀法に増資の規定がなければ日銀法を改正すれば良いだけの話ですから。

 日銀が数兆円の債務超過に陥り、その分だけ増資をしたとします。増資を引き受けた日本政府は「債務超過の会社の株式という紙くず」を、例えば5兆円で買うことになります。それは嬉しいことではありませんが、日本経済のために必要であれば、仕方ないでしょう。

 「そんなことをしたら財政赤字が数兆円も拡大してしまう」と心配する人もいるでしょうが、1100兆円の借金を抱えている日本政府の借金が数兆円増えたからと言っても、「誤差の範囲」でしょう。

 もちろん、政府が1100兆円の借金を抱えていることが問題だ、という人はいるでしょうが、その問題については本稿は触れないことにしておきましょう。

 反対に、政府が数兆円の出資を惜しんで日銀が倒産してしまったら、日本経済に考えられないほどの悪影響が生じるわけですから、政府は増資を引き受けないという選択肢を持っていないわけですね。

 そもそも日銀の資本金は1億円です。債務超過による倒産が怖いなら、最初から資本金を大きくしておけば良いのに、そうしていないのは、何とでもなるからでしょう。心配は無用です。

 今回の株価暴落で日銀が債務超過に陥るのか否か、筆者にはわかりませんが、将来金利が上昇した際に国債の価格が下落し、国債を大量に保有している日銀が債務超過に陥る可能性は決して小さくないと思います。その意味では、日銀の債務超過について今のタイミングで考えてみることは有益でしょう。

日銀は金儲けのための会社ではない

 日銀が含み損を抱えたとして、それについて日銀を批判する人がいるとしたら、それは誤りです。日銀の目的は利益を稼ぐことではありませんから。

 日銀は、民間銀行とは異なり、儲けるための会社ではないのです。政府の子会社として、日本経済をうまく回すための組織なのです。金融政策を決める際には政府の指図を受けない、といったことはありますが、日本経済をうまく回そうという目的は政府と共有しているわけです。

 日銀が金融政策で国債を購入するのは、儲けるためではありません。日本経済をうまく回すためです。政府が公共投資や減税をするのも、儲けるためではありません。日本経済をうまく回すためです。日銀がETFを購入するのも、同じことです。

 したがって、日本経済をうまく回すために国債やETFを買い、それが仮に値下がりして損が出ても、政府がその損を負担することは何もおかしいことではないのです。

日銀納付金を返してもらう、と思えば良いのかも

 以下は余談です。日銀は、黒字の年には法人税等を納めた上に、国庫に納付金を納めています。そうであれば、赤字の時にはこれを返してもらうとしても、何も不思議なことではないでしょう。

 もっとも、これを突き詰めると、一般の民間企業が赤字で倒産しそうな時には、過去に支払った法人税等を国から返してもらう、という話になりますね。理屈上は正しそうですが、財政当局が認めるとも思えないですね。というわけで、深く考えるのはやめておきましょう。

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2019年10月27日
日本政府が検討する超長期国債 100年債で国の借金はチャラになる?


安倍首相に永久国債発行を勧めたバーナンキ元議長


日本政府が検討し始めた100年債

麻生財務相は2019年9月10日の衆院予算委員会で、「ただいまの段階で、100年債の発行は考えていない」と答弁しました。

消費増税対策として100年債発行を発行すべきという野党の質問に答えたものだが、額面通りには受け取れない。

冒頭に「ただいまの段階で」と付けたように検討はしていると考えられ、欧米各国で50年債や100年債の発行が相次いでいる。

日本の政策はアメリカの真似をする事が多いが、ムニューシン米財務長官は2日後の12日に「50年国債の発行を検討する」と語った。

財務長官はさらに「成功すれば100年債も考える」と野心的な計画を語り、超長期債発行に強い意欲を持っているのを伺わせた。

米政府が現在発行している最長期債は30年だが、2017年頃にも50年債を検討した事があった。


アメリカが超長期債を検討しているのは米国の借金が多いのと現在低金利なためです。

低金利のうちに100年債を発行すれば、少ない利子を払うだけで問題を100年後に先送りできる。

米連邦政府は22兆ドル(約2300兆円)の累積債務を抱えており、数年から30年で償還しています。


アメリカは10年間続いた好景気が終わり停滞期になりつつあるが、それでも他の先進国より成長率が高い。

米国債金利も日本や欧州より高いので、投資家から見ても米国の超長期債は魅力的です。

スウェーデン、オーストリア、メキシコ、アルゼンチンが100年債を発行し、イギリス等も発行を検討している。


国の借金はなくせる

実はイギリスは第一次大戦前に発行した国債を償還しておらず、アメリカもフランス革命前のフランス国王からの借金を返済していない。

日本も敗戦前の国債を召喚しなかったので、これらは永久国債のようなものと言える。

永久債は社債として各国で発行されていて、償還しなくていい代わりに永久に金利を払うので企業にとってあまり有利ではない。


ところがGDPの2倍の国の借金(国債はその半分程度)を抱える日本では、借金減額の手段として注目された。

バーナンキ元FRB議長は2016年7月に安倍首相と歓談した時、永久国債を発行するよう勧めた。

現在日銀は400兆円以上の国債を買い取っているが、政府は毎年金利分を市場と日銀に支払っている。


もし永久国債を発行すると永久に日銀が保管するので、事実上日本政府の借金は半分になる。

この時マイナス金利で永久国債を発行して日銀が買い取れば、時間が経てば借金が減っていきます。

安倍首相はこのアイディアに乗り気でなかったが、借金を減らす魔法の手段として注目された。


これができるのは日本国債の買い手のほとんどが日本人(生保や金融機関)で、日銀が買い取る事もできるからでした。

財務省は否定しながら50年債や100年債の発行を検討している筈で、ゼロ金利やマイナス金利で日銀に買い取らせるでしょう。

ゼロ金利で日銀が買ってインフレ率が1%なら、保管するだけで日本国債が毎年1%(4兆円以上)減っていく。


4兆円は消費税を1.5%増税するのに相当し、消費税と違って景気を冷やす事もない。


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ジョージ・ソロス氏: EUは永久債を発行すべき2020年4月24日


最近は政治的な発言しかしない著名投資家ジョージ・ソロス氏の久々の経済に関するコメントである。

基金と永久債

筆者の予想する通り新型コロナウィルスの経済的影響はヨーロッパで非常に大きなものとなりそうであり、EUは経済対策のための1兆ユーロの基金を立ち上げようとしている。

しかし問題はその資金が何処から来るかということである。ソロス氏はその問題について提案があるようで、Project Syndicateへの寄稿のなかで次のように述べている。


基金のためのお金を「永久債」によって賄うことを提案する。永久債とは返済を要求されることはないが、発行者が望む時に償還したり買い戻したりすることのできる債券である。

永久債というのは多くの読者にとって聞き覚えのない単語かもしれない。返済しない債券とはどういうことだろうか? ソロス氏はこう続ける。


EUの義務は金利を払い続けることだけである。1兆ユーロの永久債に0.5%の金利が付くとしてもEU予算への影響はたった50億ユーロである。

つまり、永久債とは返済期限のない無期限債のことである。発行主体は金利を払い続けるか、あるいはお金が必要でなくなれば自分の意志で償還する(お金を返して債券を取り戻す)ことができる。ソロス氏はこの永久債のメリットについてこう強調する。


永久債は財政刺激のための火力を手に入れられる一方で、返済の期限がないためにEUの財政にとって負担になりにくい。

良いことずくめではないか。しかしこの話があまりに馬鹿げた話に見えないようにするためにソロス氏はその効能を控えめに語っている。何故ならば恐らくこの永久債の金利は0.5%にはならない。高い確率でマイナスになるだろう。

つまり、永久債の買い手は永久債を買うことでEUに金利を永久に払い続けるということになる。誰が買うのだろうかと言いたくなるが、それについてはソロス氏が説明してくれている。


EUの発行する永久債はECB(欧州中央銀行)の量的緩和の格好の買い入れ対象になるだろう。期限がないので償還された分の債券をもう一度買い直す手間がかからないのである。

そしてソロス氏はこうした例は昔にもあったことだと説明する。


このような巨額の債務を永久債で賄うことはEUにとって未曾有のこととなるだろうが、過去には様々な政府が永久債に頼ってきた。一番知られている例はナポレオン戦争や第1時世界大戦のために永久債に頼ったイギリス政府だろう。これらの永久債は2015年に償還されるまでロンドンでトレードされていた。

だから何の問題もないということだろうか。

崩壊の危機にあるEU

以下の記事で説明した通りEUは完全に崩壊の瀬戸際にある。新型コロナによって一番影響を受けるのは富裕国より貧困国だが、ヨーロッパには貧しい国が多すぎる。イタリアやギリシャのGDPはコロナショックの前から下落トレンドにあり、スペインやポルトガルもそれに続くことになるだろう。

•新型コロナによる世界恐慌でヨーロッパ経済壊滅の可能性

元々膨大なイタリアやギリシャの債務が更に膨れ上がることは必至であり、それを結局は支払うことになるドイツとの軋轢はこれから数年で恐らく限界を越えて大きくなることになる。

EUには究極的には2つの選択肢しかない。ドイツがイタリアやギリシャの債務を肩代わりするか、ユーロ圏が崩壊するかである。どちらもヨーロッパにとっては破滅的な結果となる。

前者の場合ヨーロッパ内の政治状況は非常に険悪なものとなり、恐らくそれはドイツに我慢の限界が来るまで続くだろう。(つまりは持続不可能だと言っているのである。)一方でユーロ圏が崩壊し各国が自分の通貨を取り戻す場合にはドイツマルクの価値は今の金相場のように暴騰するだろう。そうすればドイツの自動車産業は壊滅的な状態となる。

EUの終焉

EUは完全に詰んでいるのである。しかしそれはリベラル派の政治活動に自己資金のほぼすべてを注ぎ込んでいるソロス氏にとっても危機的状況ということになる。アメリカでは彼が莫大な資金を注ぎ込んだヒラリー・クリントン氏が敗北してトランプ政権となっており、移民政策と国境の撤廃を掲げる彼の味方はもはやEUしか残っていない。

今や政治活動にしか興味がなく、経済や相場にはほとんど口を出さないソロス氏は次のように言う。


EUはウィルスとの一生に一度の戦争に直面しており、状況は人々の命のみならずEU自体の存続さえも脅かしている。加盟国が同じ加盟国に対してさえも国境を守ることにこだわれば、EUが設立された団結の原則が破壊されてしまう。

「人々の命のみならずEU自体の存続さえも」というフレーズからは人命よりもEUが重要だという彼の本音が見え隠れしている。実際にイタリア北部で新型ウィルスの流行が始まったとき、EUの政治家たちは当初「団結の原則」のために国境を閉じることを拒絶した。

それでウィルスは近隣のドイツ、フランス、スイス、オーストリアに広がり、そこからアメリカと日本にも広がって多くの人が亡くなったのだから迷惑な話では済まないだろう。彼らは自分の政治的イデオロギーのために人を殺したのである。ヨーロッパのリベラル派にとって国境撤廃と気候変動対策は一昔前のキリスト教の神のようなもので、「あなたは神を信じますか」ならぬ「あなたは気候変動を信じますか」という言葉でヨーロッパ人に迫られた筆者の経験は一度や二度ではない。新興宗教の勧誘と同じくお引き取り願いたいものである。

度重なる戦争と移民政策で世界を騒がせてきたヨーロッパもその歴史をついに終えようとしている。繰り返しになるが、ヨーロッパ経済は完全に詰んでいる。投資家としてはユーロの下落に賭けながらその様子を傍観してゆくことになるだろう。

•新型コロナによる世界恐慌でユーロが下落する理由


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2020年04月26日11:30
日銀の無制限国債買い入れで日本はどうなる?

日銀が買い入れた国債は、再び売却しない限り、存在しないのと同じ


日銀による日本国債買い入れは460兆円に達しているとされています。

日銀はコロナ経済対策のため国債買い入れ枠を無制限にすると言われています。


日銀の国債買い取りで日本破産と騒いだ連中

日銀が国債を買い取れば「日本が崩壊する」と主張する人が大勢居ました。

それも立派な肩書きを持つ経済学者や大学教授、官僚や国会議員、著名文化人や投資家を総動員して「日本は滅びる」キャンペーンを展開していました。

日本という国では時おりこうした、国を挙げた反政府キャンペーンが展開されました。


日銀による国債買い入れは安倍首相就任後の2013年から始まり、同時に財務省による「日本が破産する」キャンペーンが始まりました。

この頃ごく一部の変人を除いて、全ての経済アナリストや評論家は、日銀による買取に反対していたと思います。

代表的な意見は「金利が急上昇して国債支払い不能になりデフォルトする」というものでした。


別な意見では「ハイパーインフレが発生してジンバブエのようになり日本は破産する」とも言っていました。

ジンバブエは超インフレで100兆ジンバブエ・ドル札を発行したので知られていて、国庫金が2万円を割り事実上破産しました。

インフレ率は5000億%に達し、トイレットペーパーを買うのにその何倍もの紙幣を持っていかなければなりませんでした。


中央銀行が国債を買い取れば信用が低下して金利が上がる、国債を買い入れてお金をばら撒くのでインフレになる。

両方とも事実ですが話が極端であり、普通は僅かに金利が上がり、僅かにインフレ率が上がる程度です。

例えばアメリカはリーマンショックの時に、日銀を遥かに上回る国債買い入れを行いましたが、少し変化した程度でした。


日本崩壊論は大嘘も良い所で、カブトムシを見て大怪獣だと叫ぶような行為でした。

そう言っていた偉い先生達は今は黙り込んでしまい、自分がそう主張した過去すら隠そうとしています。

替わって彼らが現在言っているのが「日銀が国債を買っても借金は減らない」という主張です。


日銀が買い取った国債はどうなる?

日銀が買い入れた国債はやがて満期を迎え償還されるが、日銀が「国債乗換」をすれば政府はお金を支払う必要がありません。

「国債乗換」とは満期が来た国債を1年間の短期国債と交換する行為で、毎年繰り返すと支払わなくて済みます。

日銀保有の国債は毎年10兆円以上満期を迎えているので、その分の支払いは免除されている恰好です。


日銀の保有国債は460兆円を突破していて、コロナ対策でまだまだ買い入れをするつもりなので、すぐ500兆円になるでしょう。

日本国債の発行残高は約800兆円台ですが、色々なカラクリがあって実際には500兆円程度しかありません。

例えば「高速道路の通行料やガソリン税で支払う」と財源が決まっている建設国債も「国債」と一まとめに計算されています。


国民が支払う借金ではないので建設国債を外国では国の借金に含めていませんが、こうした手口で財務省は日本の借金を多く見せかけています。

従って日銀が500兆円の国債を買い入れるという事は、事実上日本国債の全てを日銀が買い占めるという事です。

国債買い入れの先輩である米国FRBを見ると、毎年数千億ドル(数十兆円)も国債を買い入れているが、FRBが倒産するという噂はありません。


FRBの総資産は2020年4月で5兆ドル(約5500兆円)まで膨らみ、今後はもっと増えると思います。

FRBは満期を迎えた国債を償還し、再び国債に投資していて、日銀の「国債乗換」とほぼ同じ事をしています。

FRBが得た金利収入は政府に納めているので、政府はFRB保有分は実質的に国債金利を支払っていません。


インフレによって国債の価値は少しずつ減少し、一方で金利は払わず、実質的に償還もしていないのでFRB保有分は、政府の負担になりません。

長期的には中央銀行保有分の国債はインフレによる価値の目減りでどんどん減少していくでしょう。

日銀が保有する日本国債も同じことで、インフレ率がプラスでさえあれば返済する必要が無いのです。


これに異を唱えているのが財務省による宣伝部隊で、インフレになればインフレ率を下げるために、日銀は国債を売却せざるを得ないと言っています。

これもまた小さな事を大げさに言う類で、今の日本のインフレ率はゼロなのに、10%以上で話をしています。

日銀が国債を売却しなくてもインフレ率を下げる方法は色々とあり、すぐに国債を売却する必要などありません。


というわけで日本は800兆円だか1000兆円の借金を気にする必要は無く、年度ごとの収支だけを正常にすれば「破産」はしません。

気がかりなのは安倍首相が財務省の言いなりになって再びデフレ経済にする事です。

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2020年05月06日
アメリカの魔法のステッキ、今回も無限資金供給発動か


バーナンキとポールソンは短期間で危機を終わらせ、後の10年の好景気を作った


アメリカはどうやって金融危機をクリアしたか

最近アメリカは新型コロナウイルスへの対策で1か月に300兆円も財政支出を決め、政府債務が急増している。

労働者の半数が自宅からの外出を制限され事実上の無職状態に陥っている。

年間の財政赤字は過去最悪の水準で、経済専門家や財政関係者は危機感を表明している。


だがそれでアメリカが破産するかというと、数年後には何事もなかったかのように立ち直っていると思われる。

2007年から2010年までの世界金融危機でも同じだったからで、当時はドルが無くなりアメリカが無くなると言われていた。

専門家たちは次の超大国は中国であり、世界は中国を中心に再編成されると言っていました。


10年前の新聞を読んだら今の専門家の言い分と同じで、同じことをずっと言っているだけだと気づくでしょう。

アメリカは2009年に破産を確信するほど経済と財政が悪化したが、1年後の2010年に立ち直り10年続く好景気に入りました。

重要な役割を果たしたのはFRB議長のバーナンキで、空から金を撒けといって毎週数兆円の資金供給をしました。


その方法は金融危機で破産した企業や公団の債権、株式を額面で買い取るという大胆なものでした。

その会社はすでに倒産しているので債権や株券はゴミに過ぎないが、ゴミを数百億円で買い取っていました。

FRBのゴミ買取でアメリカは空前の金余りになり、金は世界に還流して世界中が2010年代のバブルに突入しました。

アメリカの魔法のステッキ

比較しては何だが日本の麻生首相と白川日銀総裁は、金をばら撒くどころか逆に締め上げていました。

消費者金融が問題視され規制強化したのは良かったが、ほとんどの主婦や低所得者はカードを作れなくなった。

消費が大幅に落ち込んだが麻生首相は何も経済対策をせず、日本経済が崩壊するままにまかせてGDP大幅マイナスを記録した。


世界金融危機で最初にアメリカのサブプライムローンが破綻しローンを返済できない貧困者が続出した。

驚くべきことにアメリカ政府はローン破産した人の代わりにローンを支払い、住宅を差し押さえられないようにしました。

当時CNNでこの件を「ローンを払えないくらいで住宅を取り上げられるなんてあり得ない」と糾弾していました。


日本なら「金がないくせに借金したのが悪い」と破産者を非難したのではないでしょうか。

それでどうなったかというと、大盤振る舞いのアメリカはたった1年で完全に立ち直り10年間好景気を謳歌した。

ケチケチ日本は今も世界金融危機前まで回復しておらず、借金だけが雪だるま式に増えた。


どちらが正しくどちらが間違っていたかは明らかです。


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財政出動には利子の付いた国債ではなく政府紙幣を発行するのが正しい
政府紙幣には低レベルの誤解が多過ぎる


経済コラムマガジン 03/3/3(第287号)

軽視される高橋是清の偉業


歓迎されるデフレ主義

今日、日本経済の状態を誰でもデフレと思っている。明治以来、一般にはっきりとデフレと認識されているのは「松方デフレ」と「昭和恐慌」である。ところでIMFの基準では、2年連続して物価が下落した場合をデフレと称している。前者の「松方デフレ」はこの定義にはまらない。むしろ筆者が日頃主張しているような「大きなデフレギャップが存在している状態がデフレである」の方が当て嵌まるようである。

明治の維新政府は、税制など歳入システムが未整備のままスタートした。政府支出の大部分は、太政官札などの政府紙幣の発行によって賄われていた。当初は、デフレギャップが存在していたので、物価も上昇せず、経済も順調に拡大した。しかし明治10年の西南の役の戦費がかさんだ。このための政府紙幣が大量に発行されたことが原因でインフレが起った。流通通貨の増大でインフレギャツプが生じたのである。農産物が高騰し、農村は潤ったが、都会生活者、特に恩給暮しの者達は困窮した。

そこで政府は、増税などによって政府紙幣の回収を始めた。この結果、物価動向も落着いた。しかし新たに登場した松方政権はさらに多くの政府紙幣の回収を行った。この結果、大幅に需要が減り、逆にデフレになった。農民も農産物を売り急ぐようになり、農産物価格は大幅に下落した。物価の下落は農産物にとどまらず、全ての商品に及んだ。これが有名な「松方デフレ」である。原因は過剰に政府紙幣の回収を行ったことである。どうも松方は日頃から「農産物の値上がりで、農民は贅沢をしている」と考えていたらしい。


昭和恐慌は、第一次世界大戦時の好況の反動が発端である。1914年第一次世界大戦は起ったが、日本は戦場にならず、輸出の増大で日本経済は大いに潤った。しかし大戦が終わり、列強が生産力を取戻すにつれ、日本経済は落込んだ。1920年以降、日本経済はずっと不調が続いた。特に27年には金融恐慌が起り、取り付け騒ぎや銀行の休業が到るところで見られた。

ところがこのような経済が苦境の最中の29年に発足したのが、浜口幸雄内閣であり、蔵相が元日銀総裁の井上であった。なんとこの浜口・井上コンビはデフレ下で緊縮財政を始めたのである。ところが浜口首相は「ライオン宰相」として国民から熱狂的な支持を受けていた。前の田中義一首相が、腐敗などによって国民から反感をくっていた反動と思われる。

浜口首相は「痛みを伴う改革」を訴え、「全国民に訴う」というビラを全国1,300万戸に配布した。内容は「・・・我々は国民諸君とともにこの一時の苦痛をしのいで、後日の大いなる発展をとげなければなりません」と言うものであった。実にこの首相は小泉首相と酷似している。そして国民から熱狂的に迎えられたと言う点でも両者は共通している。昔から日本ではバンバン金を使う者より「緊縮・節約」を訴え、「清貧」なイメージの指導者の方が、少なくとも当初は支持を集めるのである。最近、公共事業に反対する候補者がどんどん選挙に勝った。これもこのような日本人の心情を理解すれば納得できる。


しかし不況下でこのような逆噴射的な経済運営を行ったため、経済はさらに落込み、恐慌状態になった。当り前の話である。浜口・井上コンビは財政政策だけでなく、為替政策でも大きな間違いを犯した。「金輸出の解禁」である。

ここで為替制度をちょっと説明する。為替を変動させておけば、総合収支尻は、為替の変動によって自動的に調整される。ところが為替を固定させておくと、総合収支の決済尻をなにかで埋め合わせる必要がある。輸出が好調で総合収支が黒字の場合には問題がないが、反対に赤字の場合には国際的に価値が認められている「金」などで決済することになる。つまり「金輸出の解禁」は、変動相場制から固定相場制、そして金本位制への移行を意味する。

さらに浜口・井上コンビは固定相場に復帰する際のレートを日本の実力以上に設定した。実勢より一割も円高の水準で固定相場に復帰したのである。これは単純に以前の固定相場の時のレートを採用したからである。この二人は、蔵相や日銀総裁を経験した経済のプロと思われていた人物である。しかし頭が固い(悪い)のである。

浜口・井上コンビの狙いは、構造改革で競争力を高め、輸出を増やして、不況から脱することである。しかし設定した固定為替レートは高すぎ、逆に輸入が増えた。また貿易業者は、輸入代金を市場から外貨を調達して払うのではなく、高い円で金を買い、これを送って決済した。金はどんどん輸出され、日銀の金の保有量が減った。金本位制のもとで金の保有が減ったため、政府は財政支出を減らす必要に迫られた。これによって経済はさらに落込んだ。この結果、財政支出を削っているにもかかわらず、財政はさらに悪化したのである。

さらに29年のニュヨーク株式相場の崩壊から始まった世界恐慌の影響も日本に及んで来た。日本では街に失業者が溢れ、大幅な賃金カットが行われ、労働争議が頻発した。特に農村は、農産物の大幅な下落によって大打撃を受け、「おしん」のような娘の身売り話も増えた。

このため農村から離れる者が増えた。しかし一方、逆に街で働いていた人々が失業して、どんどん農村に帰って来た。彼等は元々農家の次男・三男達であり、帰農者と呼ばれた。帰農者は明らかに失業者である。しかし井上蔵相は「帰農者は失業者ではない」と主張している。元々彼は「失業はたいした問題ではない」と言う認識の持主である。そして失脚後の32年2月に彼は暗殺された。今日の日本政府も、失業者のほとんどは「ミスマッチ」と言っている。本当によく似ているのである。


歴史学者のマルクス主義史観


30年の5月、浜口首相は、ロンドン軍縮会議・五カ国条約の批准に不満を持った分子に襲撃された。次の首相の若槻礼次郎首相も構造改革派であった。したがって日本経済はどん底状態になった。そしてついに31年12月に政友会に政権交代が行われ、犬養毅内閣が発足した。犬養は、以前首相も経験したことのある高橋是清に大蔵大臣就任を懇請した。

高橋は矢継ぎ早に、デフレ対策を行った。まず「金輸出の解禁」を止め、さらに平価の切下げを行った。最終的には約4割の円安になった。そして積極財政に転換し、その財源を国債で賄った。さらにこの国債を日銀に引受けさせることによって金利の上昇を抑えた。実に巧みな経済運営である。

そこでまず当時の経済成長率の推移を示す。


昭和恐慌時の実質経済成長率(%)


経済成長率


1927
3.4

1928
6.5

1929
0.5

1930
1.1

1931
0.4

1932
4.4

1933
11.4

1934
8.7


32年からの経済成長は実にすばらしい。実際、列強各国はこの時分まだ恐慌のまっただ中であり、日本だけが恐慌からの脱出に成功したのである。

1932年に国債の日銀を引受けを始めたが、物価の上昇は、年率3〜4%にとどまっている。1936年までに日銀券の発行量は40%増えたが、工業生産高は2.3倍に拡大した。そしてこの間不良債権の処理も進んだのである。

今日の日本政府の経済運営はミスの連続であるが、昔は賢明な政治家もいたものである。高橋是清は日本人の誇りである。なにしろケインズの一般理論が世の中に出たのが36年の12月であり、実にその5年前に既にケインズ理論を実践したのが高橋是清である。今日でこそカルトまがいの経済学者がよくノーベル経済学賞を受賞しているが、もっと昔からノーベル経済学賞があったら、高橋是清こそこの賞にふさわしい人物である。筆者は、昔から、くだらない経済学者より、実際に経済界で活躍し、人々に貢献した政治家や実業家にこそノーベル経済学賞は与えられるべきと考えている。


しかし高橋是清の業績は、今日あまり人々に知られていないだけでなく、時には全く違う解釈がなされている。今週号を作成するに当り何冊かの本を参考にした。特に歴史学者の評価が問題である。

学者の中には高橋是清の政策を軍需インフレ政策と指摘している者もいる。たしかに軍事費は増大したが、これも当時の国際的な緊張の高まりを考えると、簡単には否定できない。また世界恐慌の脱出のために軍事費を増やしたことは列強各国に共通している。しかし本格的に軍需支出が増えだしたのは37年以降である。むしろ経済があまりにも順調に回復したので、インフレの徴候が現れ、是清は引締め政策に転換し、軍事予算を削ろうとした。このため軍部の反発をかい36年の2.26事件で殺されたのである。つまり軍事費が本当に増えだしたのは、高橋是清の死後である。

高橋是清は、軍事予算を増やすと同時に地方での公共事業費を増やしている。学者は、これは土木業者だけが潤ったと、いつも通りのパターンの批難をする。しかしこれによって失業が減ったのは事実である。少なくとも高橋財政政策によって、有効需要が増え、設備投資も増え、都市部の勤労者は潤った。年に10%の実質成長率を達成できれば、かなりの経済問題が解決の方向に向かうのは当然である。

歴史学者は、高橋是清の政策は、インフレの目を残す政策と言っている。たしかに急速に景気が回復したため、イフンレの徴候が現れた。そこで高橋是清は一転、金融引締めに動いた。日銀が引受けた国債の90%を市中に売却し、余剰資金の回収を行ったのである。実に柔軟な経済運営である。たしかに日銀の国債引受けによる資金調達と言う手段は、軍備拡張を可能にし、インフレの種なったのは事実である。しかし先ほど申したように、軍需予算が急増したのは、高橋是清が暗殺された以降の話である。

歴史学者の中には、農村の経済が上向かなかったことを指摘する者もいる。しかし当時、農村では凶作が続いていたのであり、これを高橋是清の責任にすることはできない。どうも歴史学者は、高橋是清の政策を過少評価したり、間違った印象を与えるような記述を行いたがる。これには何か変な意図を感じるのである。

昔から歴史学者にはマルクス主義者や、これに強い影響を受けた者が多い。つまり彼等は、資本主義経済は必然的に恐慌に陥ると言う確固たる歴史観を持っている。したがってこれに対する是清が行った有効な政策に対しては、「将来にインフレの元になった」、「ダンピング輸出」そして「軍事国家への道をつけた」と言った具合にケチをつけるのである。日本の教科書も彼等の影響を受けており、高橋是清の奇跡的な偉業に対する記述がほとんどない。

とにかく日本教科書では、デフレ時にインフレ的手法を用いて経済を立直した為政者の評価が低い。逆に「わいろ」が横行したといった記述がなされたり、流通貨幣増大策を「悪貨は良貨を駆逐する」といった表現で否定する。逆にデフレ政策を押進めるような「清貧の思想」を持った政治家を持上げる傾向が強い。歴史学者は、経済がデフレに陥り、最後に民衆が立上がり、革命が起ることを期待しているのであろう。これも長い間、日本の歴史学者がマルクス主義の影響下にあったからと筆者は見ている。

来週号は、さらに時代を遡り、今週号でもちょっと触れた明治政府の政府紙幣発行を取上げる。

日本経済復活の会の活動では、小野さんが「財政政策を行ったほうが、財政再建に貢献し、失業が減る」というシミレーション結果を各方面で説明している。筆者も時々同席している。聞いている人の反応はとても良い。これまで財政再建には緊縮財政を行うのが当り前という空気が強かったが、これが間違いだということを証明したのである。

大きなデフレギャップが存在するデフレ下では、流通貨幣増大を伴う財政政策が常識の政策である。理論だけでなく、シミレーションでも確認できたのである。さらに今週号で取り上げたように、歴史的にもデフレ克服には、円安・財政政策、そして低金利政策が有効であることが証明されている。


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経済コラムマガジン 03/3/10(第288号)
政府貨幣の理解


由利公正と政府貨幣

先週号で述べた通り、明治の維新政府には、政権樹立当時、財源がなかった。そこで新政府の財政を担当していた由利公正(五箇条の御誓文の起草者)が中心となって、「太政官札」と言うお札を発行した。これは戌辰戦争の戦費にもなった。新政府は、この「太政官札」や「民部省札」を印刷し、これを歳出に充てていた。特に慶応3年12月から明治2年9月までの2年弱の間、なんと歳出の93.6%がこの政府紙幣の発行収入によるものであった。

この政府紙幣は、不兌換紙幣で、金との交換の保証はなかった。明治政府の信用で流通したのである。つまり今日の通貨と同じである。しかしこのような政府紙幣がどんどん発行されても、インフレは起らなかった。維新当時、社会の混乱もあり、経済は低迷していた。つまりデフレ・ギャップが存在していたのである。ちなみに次の表は明治初期の物価指数の推移である。


東京と大阪の物価指数(明治2年を100)


東 京 大 阪


明治1年
82 71

明治2年
100 100

明治3年
104 89

明治4年
103 66

明治5年
113 55

明治6年
114 59

むしろ政府貨幣が発行されたため、明治の初期には経済は活発化した。これも当時、世の中にデフレ・ギャップ、つまり生産余力が存在していたからである。

今日、明治維新の立て役者は西郷隆盛や木戸孝允達ということになっている。しかし筆者は、一番の功労者は由利公正だと思う。もし明治新政府が、財源を政府紙幣でなく、初めから徴税に求めていたなら、人々から反感を買い、政治の運営も難しかったと思われる。さらに当時のデフレ状態を考えれば、もし新政府の運営費を無理矢理税金で賄っておれば、デフレが一層悪化していたと考えられる。

明治政府は、世の中が落着くにつれ、税制を整備して行った。その後、西南の役の戦費が嵩んだため、政府紙幣の発行量が増え、一時インフレになった。そこで増税などによって政府紙幣を回収し、このインフレを抑えた。つまり生産力に余力がある場合には、政府紙幣の発行は優れた政策である。しかし需要大きくなり過ぎて、これが生産力をオーバーする時には、政府紙幣の発行を控えめにするか、もしくは回収する必要がある。常識と言えば常識である。

世の中には「裏付けのない通貨は発行してはならない」といった意見の人が結構いる。これは金本位制、あるいは兌換紙幣の発行の概念である。しかし筆者の知る限りでは、世界で今日兌換紙幣を発行している国は思い当たらない。金本位制では経済がうまく行かないから、管理通貨制度を採用しているのである。また「生産物があって始めて通貨は発行できる」と考える人もいる。これはマルクス経済学の労働価値説のまがいもののような考えである。このような考えでは、明治新政府は潰れていたであろう。

このように個人の道徳と、国の通貨制度を混同している人が多い。おそらく国の通貨発行を犯罪者が行うニセ札造りと同等と考えているのである。企業倒産が多発し、失業が大きいデフレ経済においては、通貨の流通量を増やすことが常識であり、反対にインフレギャップが発生するようなら、通貨を回収すれば良いのである。「裏付けのない通貨は発行してはならない」という人は、自分が今日の管理通貨制度を否定していることに気が付いていないだけである。つまりこのようなことを言って満足している人々は、自分の言っていることの意味がまるで分っていないのである。


惜しかった話

セイニア−リッジ(seigniorage)権限(政府の貨幣発行特権)についてもう少し説明する。発音は「シーニィョアーリッジ」という方が近いようだ。これは封建時代の領主の権利を意味する。つまり昔の領主はやりたい放題で、お金も自分で造り、これを流通させていたのである。たしかに貨幣を自由に造ることができるなんて、こんなに良いことはない。しかし領主の儲を別にすれば、人々がこれの価値を認め、日々の生活や取引にこの貨幣を使うなら、金の裏付けがなくとも問題はない。さらに領主が、領民を他国からの侵略から守ってやったり、領内の治安を維持したりしているなら、儲はこのコストに見合うという考えもある。

日本でも昔から藩札が発行されており、これもセイニア−リッジの一つである。明治以降の近代社会になって「太政官札」などの政府紙幣が発行されている。ちなみに日銀が創立したのは、明治15年であり、日銀が兌換紙幣を発行したのが明治18年である。また民間銀行である渋沢栄一の第一銀行が兌換紙幣を発行したのは、日銀より早く、明治6年であった。つまり明治時代は、兌換紙幣より政府紙幣の発行の方が早かったのである。

もちろん今日の政府も政府貨幣を発行することができる。「政府貨幣」の発行は、独立国家固有の権限である。日本現行法では「通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律」(昭和62年6月1日、法律第四二号)で定められている。同法の第四条には「貨幣の製造および発行の権能は、政府に属する」と明記されている。また同法によれば「貨幣」の素材や形式などは政令で定めることになっているのである。

今日使用されている、一円玉、100円玉などの補助貨幣もこの法律に基づいて発行されている。記念コインの発行も同様である。また「貨幣」の素材や形式などは政令で定めることになっているから、コインの形ではなく、紙幣でも一向にかまわないわけである。

さらに同法には、政府貨幣発行に関しては、発行額の制限や担保の規定はない。発行は政府の自由である。ちなみに政府貨幣の額面から製造コストを差引いた額が、貨幣鋳造益となり、政府の収入になっている。


筆者達は、政府貨幣の発行政策、あるいはそれに類する政策を実現させるため、一年以上、勉強会や色々な活動を行って来た。半年前までは、もしこのような政策が実現されるとしても、相当先の話と覚悟していた。しかし最近になって、世間も徐々にこれに注目するようになった。亀井前政調会長も「政府紙幣」に言及したりしている(本人は政府紙幣ではなく金利ゼロの国債を発行し、これの日銀引受と言っている)。

しかし最近、政府貨幣の発行について財務大臣に質問を行った国会議員が現れた。自由党の西村真悟議員である。予算委員会の分科会で塩川大臣に政府貨幣を発行することを迫っている。さらに日本経済復活の会の小野さんのシミュレーション結果を紹介し、積極的な財政政策に転換した方が財政再建に良いことを主張している。そして今日のような緊縮財政を続けることが、却って財政赤字を増やすことになることを指摘している。

この西村議員と塩川財務大臣のやり取りがインターネットで聞くことができる。

これが大変面白く聞いてみる価値がある。ただちょっと長いので、ちょうど半分くらいの所から聞くことをお薦めする。

しかしパソコン環境によっては、このファイルを読めない人もいる。そこで簡単にやり取りの山場だけを紹介しておくことにする。西村議員の質問に対して、財務大臣は自らの戦前の経験から「何種類もの通貨を使うことが面倒で混乱した。この経験から政府紙幣を新たに発行するのは混乱の元と思われるので、発行は考えていない」と答えていた。そこで西村議員は「政府貨幣を発行し、これを日銀に売却するといった方法がある」とさらに追求したが、話はそこまでであった。

もしもう少し時間に余裕が有り、議員が、「政府貨幣の発行権を日銀に売却し、日銀振出しの小切手を受取れば、何も新紙幣を発行する必要がないこと」を説明し、財務大臣がこのことを理解してくれたなら局面が変わっていたかもしれない。戦前のような種類の違った紙幣が流通させる必要はなく、日常生活には全く影響はないことを解ってもらうのである。またこの方法なら自動販売機や券売機の読取り装置の修正は必要ない。もし塩川大臣がこのことを理解したなら、答弁の様子から案外「それなら良いかもしれない」と答えていたかもしれないのである。質議時間が限られていたといえ、実に「惜しい話」である。

たしかに予算委員会の分科会にはめったにマスコミが取材にこないので、この質議は世間にほとんど知られていない。しかし分科会と言え、政府貨幣(紙幣)について国会で質議が行われたことは画期的なことである。ちゃんと議事録もある。

ところで小野さんのシミュレーションは各方面から注目を集めており、小野さんはかなりの与野党の国会議員にも説明を行っている。筆者も何回かこれらに同席して、たまには議員さんの質問に答えることがある。特に自由党の西村真悟議員は熱心で、2回は説明会に出席しておられるはずである。ただ西村議員のシミュレーションの引用が、最近の小野さんの説明とちょっと異なる。最初の頃は、小野さんは、議員が引用したように減税だけのケースを中心にしたシミュレーション結果で説明していたが、今は主に財政支出と減税を組合わせたケースを用いている。

来週号はさらに時代を遡って、江戸時代のデフレと貨幣発行をテーマにするつもりであったが、諸般の事情でこれはもう少し延期する。来週号のテーマは今のところ未定である。今週号は丹羽春喜大阪学院大学教授の著書を参考にさせてもらった部分が多かった。教授からは、さらに別の論文を送ってもらう予定なので、この時代の経済はもう一度取上げるつもりである。


最近の株価、為替さらに国債利回りの動きが奇妙である。筆者がそう感じたのは、2月24日頃からである。ちょうど日銀の総裁・副総裁の人事が発表されてからである。国債利回りを別にして、それまでは株価・為替にはかなり力強い介入があって値を保っていた。しかし24日を境に、介入は行われているようであるが、値を維持しようと言う意志が感じられない。特に株のPKOは目立たなくなっている。日銀人事も決まり、小泉政権にはもう用はないようにも感じられる。

銀行決算における持株の評価は、三菱が月末日で、他は月中の日々の終値の平均を使っている。つまりほとんどの銀行の持株の評価は既に始まっているのである。ここで各銀行が3月の株価の推移をどれくらいに想定して、決算対策を行っているのかがポイントとなる。増資額もそれを前提にしていると思われる。

竹中大臣も「ETFを買え」と言っていたくらいだから、誰もが3月の株価はかなり戻すと思っていたはずである。しかしこの竹中発言が問題になり、さらに日興ソロモンの不祥事で、これも怪しくなった。したがって今後の株価動向によっては、株価自身や国債利回りにも影響が考えられる。もちろん銀行貸出しの回収にも影響が発生すると考えるべきである。

銀行の増資や外貨建て債権・債務の減少、さらに昨年末比で為替は円高になっており(外貨建て債権・債務がさらに圧縮される)、バランスシート上では、自己資本比率を十分維持できるものと当初考えていた。しかしどうも事情が変わって来たかもしれない。いずれにしても10日からの株価動向は注目される。
http://www.adpweb.com/eco/eco288.html

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経済コラムマガジン 03/4/21(第294号)

ノーベル経済学賞受賞のスティグリッツ教授が、日経新聞の招きで来日し、シンポジウムで意見を述べている。デフレからの脱出には、円安や消費税減税に加え、政府紙幣(貨幣)発行による積極財政を主張している。ほとんど筆者達と同じ主張である。一気に政府紙幣(貨幣)発行が注目を集めている。本誌ではかなり以前から取上げていたが、日本では政府紙幣(貨幣)発行はほとんど知られていない政策である。世の中も変わったものである。

まだ政府紙幣(貨幣)については理解が十分になされていない。日銀のある理事は「日銀券が政府紙幣に置き換わるだけであり、問題を解決する方策とは思えない」と反論していた。これは全くの誤解である。政府紙幣を発行するとは、これを使って財政政策を行うことを意味する。つまり所得を発生させるようなマネーサプライを増やすことを意味しているのである。政府紙幣を使って銀行が持っている国債を政府が買上げるような政策は想定していない。

政府紙幣に対して、岩田一正日銀副総裁は「国債の日銀引受け同様に、日銀の独立性を脅かす」と反論している。これに対してスティグリッツ教授は「世界的に中央銀行の独立性があれば経済が回復するとの証拠はない」と反論している。さらに政府紙幣の発行量に制限を設ければ、問題はないといっている。全くその通りである。

だいたい内閣府出身の岩田一正日銀副総裁は「インフレ目標実現のため、日銀にETFやREITを買わせろ」と言っていた人物である。そのような人物が急に「日銀の独立性」といっているのであるから驚く。また中央銀行による国債買入れの方も、今週号で説明したように米国などが大々的にやって来たように、経済状況によって行われるむしろオーソドックスな政策である。日銀がETFやREITを買う方が、よほど異常な政策である(既に誰か関係者がETFを高値で買っているのであろうか)。筆者の印象では、この岩田副総裁自身が日銀でも浮いている存在のような気がする。

財務省もスティグリッツ教授を招いて講演会を行っている。これがどういう意味を持つのか、ゴールデンウィーク中考えてみるのも良いかもしれない。「感」の鈍いエコノミスト、政治家、官僚は世の中の流れがひょっとしたら大きく変わろうとしていることに、全く気がついていないのかもしれない。

政府紙幣(貨幣)に関して、本誌は以前、政府貨幣発行権を日銀に売却し、日銀振出しの小切手を受取る方法を説明した。これに関して知人が財務省と日銀に照会していた。財務省からの回答は「政府が政府紙幣(貨幣)を作成し、それを日銀に持ってゆき、日銀の口座である国庫(政府預金口座)に入金してもらえば、政府貨幣発行となる。」『「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」(昭和62年法律第42条)第4条3項』であった。どうもやはり政府紙幣(貨幣)の現物をまず作成(金額の制限はない)する必要があるみたいである。

スティグリッツ教授の主張通り、政府貨幣を発行し、これを財源に積極財政を行えば、日本もデフレ経済から脱却できる。銀行の不良債権も処理が簡単になり、失業も減る。政府紙幣は借金ではなく、もちろん財政は急速に良くなる。困るのはこれまで「規制緩和」や「構造改革」で日本経済が良くなると大嘘をついてきた連中である。これらの主張が虚言・妄言ということが証明されるのである。したがってその代表格である内閣府出身の岩田一正日銀副総裁などは、スティグリッツ教授の主張を否定するのに必死である。
http://www.adpweb.com/eco/eco294.html


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政府紙幣発行政策の誤解 経済コラムマガジン 03/5/5(第295号)

政府紙幣の意味

4月27日、日曜の日経新聞に「政府紙幣」に関するコラムが掲載されていた。執筆者は編集委員の滝田洋一氏である。タイトルは「太政官札の轍踏むな」である。この2週間ほど前にコロンビア大学のスティグリッツ教授が日経の招きで来日し、シンポジウムで意見を述べたり、講演を行った。

教授は、デフレに陥っている日本経済に処方箋をいくつか提案している。「円安誘導」「銀行システムの立直し」と言ったありきたりの政策に加え、なんと「プリンティングマネー(政府紙幣)の発行」をスティグリッツ教授は提案した。これは各方面に衝撃を与えており、今日波紋がひろがりつつある。これはまさに筆者達が以前から主張していた政策である。

ところが日本には、政府貨幣(紙幣)に関する文献は極めて少ない。一緒に政策を主張している小野盛司氏のところにも、あるテレビ局から、氏の著書である「政府貨幣発行で日本経済が蘇る」を至急送ってくれるよう依頼がきているほどである。やはりスティグリッツ発言の影響は大きかったのである。「政府紙幣とは一体何だ」というのが世間の印象である。お札といえば日銀券と思っている人がほとんどである。経済学者やエコノミストも日銀券と政府貨幣(紙幣)の区別がつかないようである。

この政府紙幣発行に対して色々の反論や解説がなされている。しかしそれらのほとんどが間違っているか、的外れである。このような反論を行っている人物達が、日銀の理事だったり、リチャード・クー氏なのだから、こちらも驚く。それほど日本においては政府貨幣(紙幣)に対する知識や情報が乏しいのである。


まず政府紙幣と日銀券の違いを簡単に説明しておく。日銀が発行する日銀券は日銀の債務勘定に計上される。つまり日銀の借金である。もちろん今日の日銀券は兌換紙幣ではないので、これを日銀に持っていっても金に換えてくれない。このような不換紙幣である日銀券が流通しているのも、日銀の信用があるからである。しかし日銀の信用と言っても、実際はバックにいる国家の信用である。

一方、政府貨幣(紙幣)も国家の信用で発行するお札である。政府貨幣の材質は政令で定めることになっており、金属でも紙でも良い。紙の場合が政府紙幣ということになる。また今日流通している10円玉や100円玉といったコインも政府貨幣である。つまり日本においては政府貨幣(紙幣)は、既に立派に流通しているのである。ただ日銀券より政府貨幣の方が、流通している金額がずっと小さいだけである。もちろん今日の法律でも高額の政府紙幣を発行することは可能である。要は政府の決断一つにかかっている。


日銀券と政府紙幣の違いは、日銀券が日銀の債務に計上されるのに対して、政府紙幣は国の借金にならないことである。今日のコインにもいえることであるが、額面からコインの製造経費を差引いた額が国の収入になる。たとえば500円硬貨を製造するのに50円かかった場合には、差額の450円が貨幣鋳造益として政府の収入に計上される。要するに500円硬貨が世の中で「500円玉」として認められれば良いのである。

スティグリッツ教授の主張は「この政府貨幣(紙幣)の発行をもっと大規模に行え」ということである。さらに重要なことはこの貨幣鋳造益や紙幣造幣益を『財政政策』に使えと提案しているのである。今日、国債の発行が巨額になり、政府は「30兆円枠」に見られるように、財政支出を削ろうと四苦八苦している。しかしこれによってさらに日本のデフレは深刻になっている。そこで教授は、国の借金を増やさなくとも良い政府紙幣を発行し、その紙幣造幣益を使って、減税や公共投資を行えば良いと提案しているのである。

幼稚な反論

しかしこれらの政府貨幣(紙幣)発行への反対論があまりにも幼稚過ぎる。一つはお札が、日銀券と政府紙幣ということになれば、世の中が混乱するというものである。しかし政府が政府紙幣(貨幣)を作成し、それを日銀に持ってゆき、日銀にある国庫(政府預金口座)に入金してもらえば、政府貨幣発行となる(「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」(昭和62年法律第42条)第4条3項)。財政支出を行う時には日銀券を使うのである。この方法を用いれば、世間に流通するお札は日銀券だけで済む。また日銀には政府紙幣(貨幣)という資産が計上されることになる。

しかしこれに対して、これは結果的に日銀券の増発に繋がるという批難が考えられる(ところが不思議なことに、心配されて当り前と思われるこのようなことが全く指摘されていないのである)。まず日銀券の増発、つまり通貨の増発はインフレの原因になる。しかしそこがまさにスティグリッツ教授が主張したいところである。今日の日本経済のようにデフレに陥った場合には、通貨増発といったインフレ政策が必要なのである。

スティグリッツ教授も、無闇やたらに政府紙幣を発行しろとは言っていないはずである。大きなデフレ・ギャップが存在する日本では、相当の額の政府紙幣を発行できると言っているだけだ。またこの政策によって、もし物価上昇率が限度額を越えるようならば、政府紙幣の発行をセーブすれば良いのである。もっとも経済がそのような状態になったことこそが、日本経済が相当上向いているを示す。つまり問題となっているデフレが克服されることを意味するのである。

もちろんこの場合には、過度の物価上昇を抑制するためインフレターゲット政策を行うことも一案である。インフレ目標政策は、英国などでうまく行っているのであるから、日本ではうまく行かないと考えることはない。むしろ物価が上昇するような経済活性策がないのに、インフレ目標政策と言っている今日の政府の方がおかしい。彼等は念力で物価を上げるというのか。また物価だけが上がれば良いという考えも根本的に間違っている。物価上昇は、遊休設備が稼動し、失業が解決し、設備投資が生まれる結果として起るべきである。むしろ小泉政権に見られるように、単に物価が上がれば良いという感覚が異常である。


もう一つの大きな誤解は、政府紙幣が発行されても、日銀券が政府紙幣に置き換わるだけであり、経済に何の影響を与えないという意見である。たしかに公務員の給料支払いを日銀券ではなく政府紙幣で行ったり、国債の買いオペを政府紙幣で行えば、そのようなことになる。もっともその分だけ国の借金は増えないが。しかしそのようなばかげたことを主張するため、わざわざスティグリッツ教授が来日し、政府紙幣に関した発言を行うはずがない。

当然、今日行われている経済政策にプラスして、政府紙幣を発行による財政政策を行えと言っているのである。今日、日本には巨額のマネーサプライ残高が存在している。しかしその大半は凍り付いている。金が動かないのである。巨額のマネーサプライが存在するのに、人によっては金不足になっている。経済がこのような状態になれば、政府が財政政策を行う他はない。財政政策によって、所得の発生を伴うマネーサプライを増やすことが肝腎である。これこそが教授の言いたいことである。

ところで政府紙幣を造幣し、それを日銀に入金し、それを財政政策に使うとなれば、先ほど述べたように、当然日銀券を増発することになる。場合によっては、日銀券の大増発である。たしかに以前ならこれは問題になった。しかし平成10年4月から施行されている改正日銀法では、旧法で課されていた日銀券発行に対する保証条件がすべて撤廃された。つまり日銀は、自由かつ無制限に日銀券を発行できるようになっているのである。まるで今日の状況を予見していたような法改正がなされていたのである。


しかし筆者は、スティグリッツ教授の提案に対して、経済の専門家からこのような初歩的で的外れの疑念や批難が続くこと自体を危惧する。このような状況では、いきなり政府紙幣発行はちょっと無理かもしれない。このように混乱している議論に対して、黒田東彦内閣官房参与(前財務省財務官)が「日銀がもっと大量に国債を購入することが現実的」と発言している。これは穏当な意見であり、筆者もこれに同感せざるを得ない。ちなみに黒田前財務省財務官は、以前からリフレ(穏やかなインフレ)政策を主張している。

政府紙幣の発行も、日銀による国債購入も実質的に国の借金にならない。そこで政府紙幣への理解が進まないようなら、まず日銀の国債購入によって積極財政政策のための資金を賄う他はない。ただ日銀による国債購入には難点がある。日銀は国債購入の限度を日銀券の発行額と一応定めているのである。これがネックとなる可能性がある。したがって日銀がどうしても限度額にたいして柔軟な姿勢を示せないなら、最後の手段として政府貨幣(紙幣)のオプションは取って置くべきである。


前段が長過ぎ、本題に入れなかった。来週号は滝田洋一氏の「太政官札の轍踏むな」へ徹底的な反論を行う。

岩田一正日銀副総裁の「日銀の独立性うんぬん」の意見は論外にして、それにしても政府紙幣に対して、経済の専門家と言われている人々の認識が低すぎる。おそらくスティグリッツ教授もあきれはてて米国に帰ったと思われる。今日の日本の経済がどのような状況にあり、このままだとどこまで落込むのか、スティグリッツ教授に食って掛かっていた人々には全く認識がないと言える。教授は真摯に日本のことを考えて、アイディアを提供しているのである。

教授も「政府紙幣発行」なんてとてもオーソドックスな政策とは考えていない(実際、教授も博士号を剥奪されるかもしれないと冗談を言っているくらい)。しかしあえてそのような政策が必要な段階まで、日本経済は窮地に追込まれている。教授に反論していた人々は、政府紙幣に関してほとんど知識がないなら、もっと謙虚になるべきである。教授は日本人に対して「単に物づくりに異常に長けているだけであり、こと経済理論や経済政策に関しては小学生」という印象を持ったはずである。経済の混迷が10年以上続いているのに、いまだ経済政策が迷走しているのを見ていると、日本はどうしようもない。

14日のシンポジウムの様子が30日の日経に掲載されていた。しかし議論は錯綜しており、日本のエコノミストはほとんどスティグリッツ教授の言っていることを理解していない。せっかくフィッシャー理論を持出して、資産デフレの悪影響に言及しているのに、これに対する反応が全くない。日本のエコノミストはあいかわらず「規制緩和」「生産性の向上」「金融政策の浸透」と言った、実現性がないだけでなく、効果もはっきりしない(効果の測定さえ困難)な政策を訴えている。教授が指摘しているように、まず必要な政策は大胆な需要政策である。これによって経済が活性化し、うまく資産デフレが止められるかがポイントである。

5月4日のサンデープロジェクトは、日本のデフレがメインテーマであった。それにしても経済学者・エコノミストそして政治家達の意見は実に悲惨であった。それにしても「徹底した規制緩和」「予算の組替えで経済が回復する」「銀行の経営者をくびにしろ」はいい加減に止めてもらいたい。何もアイディアがないのなら、テレビ出演を断わるべきだ。特に「銀行の経営者をくびにしろ」は出来の悪い若手の銀行員がよく言っていることである。彼等は上がくびになれば、自分達の出世が早くなると考えているだけである。
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経済コラムマガジン 03/5/12(第296号)滝田洋一氏への反論


明治の政府紙幣

先週号に続き、4月27日日経新聞の滝田洋一編集委員のコラム「太政官札の轍を踏むな」を取り上げる。ところで不思議なことにどういう訳か、経済が不調になると、むしろデフレを加速させるような「おろか者」の主張が支持を受けるのである。たとえば戦前の昭和恐慌時、浜口・井上コンビのデフレ政策は、当初、大衆の大歓迎を受けたのである。最近では、橋本政権、小泉政権の「改革」という名のデフレ政策である。どうしても滝田氏の論調には、これらに通じるものがある。


最初に滝田氏のコラムで問題になるいくつかの箇所を指摘する。同時にこれらが滝田氏のコラムのポイントでもある。このコラムを読んでいない読者もいると想われるので、これらを列記する。「明治元年(1868年)から12年(1879年)まで明治政府が発行した太政官札」「お札といえど庶民からそっぽを向かれると紙切れになる」「政府と離れた中央銀行(日銀)をつくってお札の発行を任せることになったのもそうした苦労の産物」などである。つまり滝田氏のコラムの狙いは、先週号で触れたスティグリッツ教授の「政府紙幣発行政策」の提案を否定することと思われる。

まず太政官札(金札・きんさつ)が発行されたのは、明治元年と明治2年だけである。発行額の合計は4,800万両(明治4年より両という呼称は円に変更。つまり4,800万円)であった。さらに民部省札が69年から70年に750万両発行されている。これは太政官札が高額紙幣だったので、小額紙幣として発行された。当初、民部省札は太政官札との交換を予定していたが、財政難から結果的に政府紙幣の追加発行となった。

さらに明治新政府は、71,72年に大蔵省兌換証券680万両、72年開拓使兌換証券250万両を発行した。これらは二分金との兌換を約束された兌換証券であった。しかしこれは建前だけであり、事実上不換紙幣であり、現実には政府紙幣であった。

明治5年(1872年)から明治10年(1877年)の間に「新紙幣」と呼ばれる政府紙幣が1億4,679万円も発行されている。それまでの太政官札(金札)以下の政府紙幣の造作が急ごしらえで粗雑だったので、もう少し本格的な紙幣らしいものを発行したのである。これは当初、太政官札以下の政府紙幣や、当時まだ流通していた藩札との交換を目指して発行された。たしかに「新紙幣」の6割くらいは、これらに使われた。しかし残り4割は為替会社への貸付や西南の役の戦費に流用された。さらに明治14年(1881年)から明治18年(1885年)にかけて、改造紙幣と言う政府紙幣が6,440万円発行されている。これは紙幣贋造を防ぐため、印刷技術が進んでいたドイツのドンドルフ・ナウマン社に発注したものである。そして明治18年(1885年)に、初めて日銀から兌換紙幣が発行されたのである。


しかし明治初期の頃の各藩の藩札を別にして、紙幣を発行したのは政府だけではない。名前は国立銀行であるが、実体は民間銀行であったナンバー銀行も紙幣を発行した。渋沢栄一の第一銀行などである。当初、国立銀行には厳しい制限があり、発行できる紙幣も兌換紙幣だけであった。このため国立銀行は4行のみと、設立は足踏み状態であった。しかし明治9年(1876年)国立銀行条例が改正され、資本金の10分の8まで銀行券が発行できるようになった。当初、兌換紙幣発行を目的としたはずの国立銀行までが、不換紙幣を発行できるようになっていたのである。ちなみに明治15年(1882年)には143行もの国立銀行が存在していた。

このように当時は、政府だけでなく国立銀行までが不換紙幣を発行していた。しかし明治10(1877年)までは物価上昇は限定的であった。ちなみに次の表は明治初期の物価指数の推移である。


東京と大阪の物価指数((明治2年を100))

東 京 大 阪


明治1年
82 71

明治2年
100 100

明治3年
104 89

明治4年
103 66

明治5年
113 55

明治6年
114 59

明治7年
117 69

明治8年
120 66

明治9年
125 57

明治10年
112 60


これは明治の初期に大きなデフレ・ギャップが存在しており、不換紙幣の発行によって通貨が大量に発行されても、物価が上昇しなかったのである。むしろ通貨の大量流通によって明治初期の経済は活性化したと言えるのである。


兌換紙幣と不換紙幣

局面が変わったのは、明治10年の西南の役の頃からである。一説では、この戦争の戦費は4,156万円かかっている。明治5年から発行された政府紙幣の「新紙幣」の発行額は合計で1億4,679万円であり、この約20%の2,900万円が西南の役に使われている。つまり戦費の約70%を政府紙幣で賄ったことになる。たしかにこの戦費支出がインフレの一因となっている。ちなみに物価上昇率を表す金貨や銀貨に対する紙幣平均相場は、当時、次の表の通り推移している。なお数字は、金貨・銀貨それぞれ1円に対する紙幣の価格である。


紙幣年平均価格の推移

対金貨 対銀貨


明治9年
1.01 0.99

明治10年
1.04 1.03

明治11年
1.16 1.10

明治12年
1.34 1.21

明治13年
1.57 1.48

明治14年
1.84 1.70

明治15年
1.69 1.57

明治16年
1.39 1.26

明治17年
1.20 1.09

明治18年
1.21 1.06

この表を見ても明らかなように、明治10年の西南の役以降、物価が上昇し、段々紙幣の価値が下落している。ところでこれまで筆者は、この頃のインフレの原因を西南の役の戦費と説明して来た。しかしもっと調べてみると、どうもインフレの原因はこれだけではなさそうなのである。当時、明治政府は、旧体制の解体費用の捻出(旧武士階級への秩禄処分など)や殖産興業政策を行っており、どれだけでも資金が必要だったのである。特に大隈重信大蔵大臣などが、インフレ容認政策によって日本の資本主義化を急いだため、このような物価の騰貴を生んだ可能性が強い。

たしかにここまで急激に物価が上昇すると、金利も上昇し、むしろ産業の発展の障害となって来た。この頃には、デフレ・ギャップが消滅し、反対にインフレ・ギャップが発生していたのである。そこで大隈重信は一転、増税による公債・政府紙幣の償却によるインフレの抑制や、官営工場の払下による政府財政負担の軽減などを行った。しかし大隈重信は明治14年(1881年)の政変で失脚した。表の数値のようにインフレのピークも1881年であり、インフレ対策が効果を示し始めた矢先に大隈重信は失脚したのである。

大隈重信の次の大蔵大臣が松方政義である。松方は大隈重信の政策をさらに押進め、緊縮財政と紙幣整理を強引に行った。しかし世の中は、インフレから一転し、デフレとなった。これが有名な松方デフレである。しかし大隈重信時代に既にインフレ終息のメドはたっており、松方のデフレ政策は余計であったという意見がある。表を見る限り、筆者もおそらくその意見が正しいと考える。松方が何もしなくとも、なだらかにインフレは終息していたと思われるのである。インフレ・ギャップの方もそれほど大きくなかったのである。


滝田洋一氏のコラムの話に戻る。これまでの説明のように「明治元年(1868年)から12年(1879年)まで明治政府が発行した太政官札」は話にならないくらいデタラメである。太政官札が発行されたのは、明治元年と明治2年だけである。また少なくとも明治10年までは、物価は極めて安定的に推移している。

また「お札といえど庶民からそっぽを向かれると紙切れになる」も事実無根である。たしかに当初、明治維新政府に信頼はなく、太政官札も大量に発行したため、うまく流通せず、価値は正貨の40%くらいまでに一時的に暴落した。そこで新政府は、発行額を限定し、将来政府発行の新紙幣と交換することを宣言した。これは太政官札(金札・きんさつ)の造りがあまりにもちゃち過ぎたことが、ある程度影響していると思われる。

筆者も写真で現物を見たが、これは酷い。紙幣というより、何かの証文か札(ふだ)のように見える。おそらく日本で紙幣のことをお札(さつ)と呼ぶのも、このような前時代的な紙幣の影響と思われる。まん中に「金五両」「金十両」と書いてあり、判子が押してあるだけである。しかし明治政府の一連の措置によって、明治3年の中頃には、太政官札はちゃんと時価を回復している。つまり兌換紙幣でなく、極めてちゃちな太政官札でさえ、明治3年以降は立派に額面で流通していたのである。

たしかに明治5年(1872年)以降、太政官札などは「新紙幣」に少しずつ交換されていった。明治5年(1872年)から明治10年(1877年)の間に発行された「新紙幣」は体裁をある程度整えた紙幣であった。しかしこれも金と交換できる兌換紙幣ではなく、太政官札と同様に政府紙幣であり、不換紙幣であった。しかし当時はこの「新紙幣」だけでなく、太政官札も信頼され立派に流通していたのである。このこのことは上の表の数値を見ても一目瞭然である(ちなみに明治6年の数字は、それぞれ1.00と1.04と極めて紙幣価格は安定していた)。滝田氏の「庶民からそっぽを向かれ」とは一体何の話であろう。つまり滝田氏の話は全くの「大嘘」である。

さらに「政府と離れた中央銀行(日銀)をつくってお札の発行を任せることになったのもそうした苦労の産物」と言っているが、日銀が初めて兌換紙幣を発行したのは明治18年(1885年)と随分遅い。さらに日銀の兌換紙幣発行によって、政府紙幣や銀行券が過剰に償却され(兌換紙幣ということになれば金や銀の保有量の関係で、当然通貨の発行額は制限される)、逆に一段と松方デフレが進んだ。このため農産物価格は大幅に下落し、多くの自作農家が没落し、土地を手放すはめに陥ったのである。


滝田氏のコラムは、どうも完全に読者に誤解を与えることを意図しているようである。彼は、太政官札などの政府紙幣の発行が多過ぎてインフレが起ったが、日銀が兌換紙幣を発行し、これで政府紙幣を償却したからインフレは収まったというストーリを描きたかったのであろう(全く事実無根の)。しかしインフレの方は、日銀の兌換紙幣発行の4年も前に終息に向かっていたのである(上の紙幣年 平均価格の推移を見ても歴然としている)。このように表題の「太政官札の轍を踏むな」とは一体何のことであろうか。

どうも滝田氏のコラムを読む限り、兌換紙幣が正しく、不換紙幣は邪道という印象を受ける。政府紙幣は不換紙幣である。したがってスティグリッツ教授のアイディアのような不換紙幣である政府紙幣を発行したなら、インフレになるという印象を読者に与えることが目的で、このコラムを書いたと思われる。それにしても日経新聞は「日本は管理通貨制度をやめて金本位制に復帰すべき」と本気に主張するつもりなのだろうか。

スティグリッツ教授が来日し、政府紙幣の発言が行った。このため本誌も予定を変更し、先週・今週と政府貨幣(紙幣)を取り上げた。来週号は、そのまとめとして言い残したことを述べたい。さらに世間の最近の政府貨幣に対する動きについて取り上げたい。筆者も政府貨幣発行政策がすんなりと実行されるとは考えない。しかし急速に政府貨幣に対する関心が大きくなっていることは事実である。
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経済コラムマガジン 03/5/19(第297号)
政府紙幣発行の認知度


•明治の経済

先週号で、4月27日日経新聞の滝田洋一編集委員のコラム「太政官札の轍を踏むな」に反論を行った。氏の意見にどうしても反論する必要を感じたのは、このコラムが管理通貨制度の根幹に関わるからである。税制が整わず、支配地域からの年貢の徴収にも限界があり、財源に窮した明治維新政府は苦し紛れに太政官札を発行した。これは政府紙幣であり不換紙幣であった。しかし他に方法がなかったと言え、まだ兌換紙幣が主流であった世界で、一国の政府が不換紙幣を発行したことはある意味では画期的なことである。

つまり今日の世界では常識になっている不換紙幣を発行したのである。たしかに当初は、明治維新政府のこの太政官札も額面では流通しなかった。当初、打歩が打たれ交換比率は額面を下回っていた。先週号で述べたように、一時は額面の4割まで交換比率が下落したのである。しかし政府の打歩の禁止令や発行量を制限すると言った施策を行うことによって、太政官札は額面を回復する。

まさに管理通貨制度の元における通貨政策を、明治維新政府は実行していたのである。しかし太政官札が価値を回復したのは、一連の政策の効果だけではない。国民の明治維新政府への信頼感が増していたことが影響したと考える。つまり政府に信頼さえあれば、金との交換を保証しなくとも、発行する貨幣や紙幣が価値を持って流通するのである。このように明治維新政府は先進的な通貨制度を実行していたのである。

むしろ明治18年に日銀の兌換紙幣が正しいと主張する滝田洋一氏の方がおかしい。日本が金本位制に復帰した主な理由は、世界の諸国はまだ金本位制(日本は、銀本位制とのアジア諸国との関係で、この時代は銀本位制であった)が主流で、貿易の決済の際の為替変動が問題だったからである。特に明治14年までのインフレによる為替変動が貿易の障害になったことが影響していると思われる。国内の経済に関しては、全く金本位制にする必要がなかったのである。

しかしいつの世にも「裏付けのない通貨を発行してはいけない」と言った観念論者がいるものである。彼等は金や生産物の裏付けのない通貨を発行してはいけないと主張するのである。松方デフレの松方大蔵大臣もその典型的な一人であろう。つまりこのような人々は、個人の道徳と国の通貨制度と同一と見なしている。しかし物価の上昇や経済の活動レベルを勘案しながら、適正な通貨発行量を調整するのが国の本来の務めである。


明治10年以降、日本経済はインフレになった。たしかに西南の役や殖産振興のための財政支出が増え、通貨発行量が増えたことが影響している。しかしこの時代のインフレを過度に問題にすることはフェアーではない。まず当時の金融政策に関する調整技術の未熟さを考える必要がある。これを考慮せず、兌換紙幣ではなかったからインフレになったと決めつけることは、あまりにも短絡過ぎる。日銀が兌換紙幣を発行するようになって、日本は一層デフレが深刻になったことをむしろ問題にすべきである。

もう一つはこの時代の産業構造を考慮すべきである。今日と大きく違い、当時の日本は一次産品を中心にした経済である。GDPの大半が農産物などの一次産品、そして一次加工品である。ちなみに輸入品の第一位は綿製品であり、輸出品の第一位が生糸、第二位が茶であった。今日の産業構造とは全く違うのである。

一次産品の特徴は供給量の価格弾力性が極めて小さいことである。一次産品は供給量に融通性がないため(米は年に一回しか収穫できない)、需要がちょっと上回れば価格が高騰し、反対に需要が少し下回ると価格が大幅に下落する性質が強い。つまり価格の乱高下しやすいのが一次産品の特徴である。今日でもこの種の生産物の取引はあるが、GDPに占める比率は極めて小さくなっている。

たしかに過去には、日本の物価も原油価格の動向にいくらか影響を受けた時代もあった。今日では、原油代のGDPに占める比率は小さくなっており、原油代の物価に及ぼす影響は極めて小さくなっている。今日の消費物資は、電機製品や自動車に代表される組み立て加工品であり、これらは需給によって価格が乱高下することはない。さらにむしろこれらの製品は需要が増えるほど、中長期的には、逆に価格が低下する傾向が強い。またサービス消費のうち比重が大きくなっている通信費も同じ傾向にある。

滝田洋一氏は、スティグリッツ教授の提案である「政府紙幣」に対して、今日の経済には何の参考にならない初期の明治の頃のインフレをことさら引き合いに出し、根拠のない批判を行っているのである。しかも先週で説明したように、明治の政府紙幣についてもほとんど事実と違うことを言っている。反対に太政官札が明治初期の経済を活性化させたといった成果は、ほとんど無視しているのである。むしろデフレを加速させた日銀の兌換紙幣発行を評価しているのであるから驚く。


ところで滝田氏のコラムとは別に、最近、松方大蔵大臣のデフレ政策を評価する声があることに驚く。松方デフレによって食い詰めた人々が農村から都会に出たたため、これによって近代産業が発展したというのである。つまり松方デフレは構造改革だったと主張するのである。話は逆であろう。近代産業が発展し、都会に就業機会が増え、人々が都会に集まったと考えるべきである。また先週号で述べたように殖産振興したのは、松方ではなく、前の大蔵大臣の大隈重信たちであった。

このようないびつな見方をするのは、今日の改革派と呼ばれる人々である。小泉改革で建設・土木業が壊滅すれば、新しい産業が興ると言っているのと同じ発想である。そして経済政策の失敗を構造改革と呼んでいるのである(なんと浜口・井上コンビによって引き起された昭和恐慌も、彼等は構造改革と呼んでいる)。今日、小泉政権の経済政策は大失敗ということは、誰でも承知している。つまりこのようないびつな意見の持主は、小泉政権の発足時、経済改革とやらに手放しで賛成していた人々である。彼等の負け惜しみのセリフが「構造改革」である。

松方自身も、デフレ政策を構造改革なんて少しも考えていなかったはずである。たしかに明治10年以降、農産物が高くなり、自作農民は潤った。反対に都市の俸給者や旧武士階級は、米などの農産物が高くなり、生活に窮していた。そして松方は、日頃から「農民は贅沢をしており、けしからん」と言っていた。どうも松方には、農民に対して差別意識があったと思われるのである。それを松方の構造改革と呼ぶのはまさに詭弁である。

政府紙幣と政治家

5月15日、東京・六本木で第4回の「日本経済復活の会」が開催された。4名の与野党の政治家がゲストとして出席され、スピーチをしてもらった。特に民主党の副代表の岩國哲人氏には、政府紙幣発行による財政政策に関する講演を行ってもらった。岩國議員は元々「政府紙幣」発行に前向きな政治家である。先日も、岩國議員は塩川財務大臣に「政府紙幣」の発行を検討するように話しに行かれたと聞く。

自由党の西村真悟衆議院議員が予算委員会の分科会で、塩川財務大臣に政府貨幣(紙幣)の発行を迫ったことは、前に本誌でも取り上げた。しかしこれらの方々以外にもかなりの政府紙幣発行論者が日本の政治家の中にいる。もちろん自民党にも政府紙幣発行を主張している人々がいる。今回の「日本経済復活の会」に出席してもらった、静岡県選出の衆議院議員の斉藤斗志二(としつぐ)元防衛庁長官もその一人である。

政府紙幣発行政策は、これまで奇策の一つと見なされ、あまり人前で主張しにくい政策であった。しかしこれに賛成しておられる政治家は意外と多くいて、この方々はよく勉強をされている。今日のように経済政策がどんづまり状態では、このような政策が現実味を帯びるのはたしかである。


今日の「日本経済復活の会」は、政府貨幣に関する勉強会から発足した。しかし日本経済復活の会としては、政府貨幣(紙幣)に必ずしもこだわっていない。まず政府の政策が積極財政に転換する必要があることを主張し、なるべく広く賛同者を増やすことが第一と考えている。

たしかに世の中には、積極財政を唱えるエコノミストがいるが、彼等はその財源を明らかにしない。したがって彼等の主張する財政政策の規模は5兆円とか、せいぜい10兆円といった小規模なものである。しかし筆者達は、この程度の政策では効果が限られていることを承知している。我々はもっと大きな財政政策を、しかも何年も続けることが必要と訴えているのである。

我々が考えるこのための財源はまず国債の発行である。しかし国債の発行額が増えれば、金利が上昇する。したがってこの金利の上昇を一定の範囲に収めるには、日銀の国債の買増しが必要になる。都合の良いことに、日銀による国債の購入分は、実質的に国の借金にならない。

しかしこれには、日銀の協力が必要になり日銀の対応がどうしても問題になる。ところが日銀は国債の買入れに限度額を設けている。一応、日銀券の発行残高が国債の買入れ限度という内規が存在するのである。しかしこのことはあまり知られていない。日銀がこの限度額を柔軟に考えているのなら問題はない。しかしどうしても日銀が、国債の買入れの限度にこだわるというのなら話は別である。この場合には、最後の手段として政府貨幣(紙幣)という手段を留保しておく必要があると筆者は考える。

多くの人々が政府貨幣(紙幣)に賛同してくれることが理想であるが、どうしても政府貨幣(紙幣)に抵抗を示す人がいる。このような人々の多くは、国債の発行で賄えると考え、わざわざて政府貨幣(紙幣)を発行することもないと考えている。しかしこのような人々の中には、日銀の国債の買入れ限度という内規を知らない人がいる。いずれにしても、経済政策が転換するということになれば、財源の問題は避けて通れない。筆者は、その中で良い知恵が必ず生まれてくるものと考えている。まず政策転換が第一である。

りそな銀行への公的資金投入や為替の変動など経済を巡る環境がちょっと大きく変化している。来週号は、これらを取上げるつもりである。

りそな銀行への国費投入は波紋を呼んでいる。正直いって筆者も驚いた。先週の15日、霞ヶ関の4号合同庁舎の10Fに訪ねる人があり、筆者は、日本経済復活の会の会長の小野盛司氏と一緒にエレベータに乗った。ところが間違えて、9Fまでしか行かないエレベータに乗ってしまった。そして到着した9Fがまさに話題になっている金融庁である。エレベータホールにこの時沢山の人々がいたことが印象に残っている。

この前日、同様に小野さんと二人で、自民党の経済政策のキーパーソンと言われている国会議員を訪問し、我々の主張している政策を説明した。我々の政策を大変喜んでいただき、「別の議員を集めるから、そこでまた説明してくれ」と言ってもらった。

この数日の間、これらの政治家以外にも、何人かの政治家やマスコミ人に接触する機会を持った。しかしりそな銀行の件はまったく話題にならなかった。筆者は、どうも「りそな銀行」の件に、政治はほとんど関与していないという印象を持っている。たしかに一民間銀行の問題に政治家が立入ることは問題かもしれない。しかし大丈夫と言われていた銀行に多額の公的資金が投入され、経営陣が交代するのである。

りそな銀行の件は、他のメガバンクに波及することは必至である。そしてこのよう重大なことに政治が全く関与しなくて本当に良いのか疑問である。小泉首相も事後に報告だけを受けたようである。思い出すのは拓銀や山一の破綻である。この時も政治はほとんど関与していなかった。もっとも「構造改革なくして成長なし」の政治家に、何を相談しても意味がないのはたしかである。
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赤字国債大量発行は貧富の差を拡大し階級社会を完成させる _ MMT(現代貨幣理論) は日本を滅ぼす
MMTは国際金融資本が儲ける為の現状追認で時代錯誤の対症療法、MMTでは国難は救えない、自民党では経済改革はできない


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MMTを推進しているのは欧米金融資本だった。

新型コロナ危機が始まってからの3カ月間、大規模金融緩和・財政出動のお蔭で米国の富裕層は資産を約5650億j(62兆円)増やした。

チャンネル桜のアホ評論家は日銀の金融緩和のために既に日本がハイパーインフレに近くなってるのを知らないんだな。これから更に財政出動までしたら国内価格もハイパーインフレになるよ。公共事業をいくらやっても資本家が儲かるだけで労働者の賃金は上がらないから、スタグフレーションになるだけだ。いくら公共事業をやっても賃金が増えなければ内需は拡大しないんだよ。公共事業ではなく、利子ゼロの政府紙幣をベーシックインカムとしてばら撒いて内需拡大するしかないんだ。

マネーフローが10倍になれば貨幣価値が1/10になり、不動産価格と株価も本来の適正価格である10倍になるというだけですね。

別に金融緩和で増えた金で不動産価格や株価が上がるのではなく、不動産価格や株価が本来の適正値に戻るだけです。

貨幣価値が1/10になっても、給料はそれ程上がらないので、実質賃金も1/10になります。

商品価格の大半は人件費なので、物価はあまり上がりません。

これが金融緩和してもインフレにならない理由ですね。

そもそも欧米の物価と日本の物価を比較すれば 1ドル=20円程度が適正値なのに、1ドル=110円まで超円安になっている。タイでもラーメン1杯が1000円になっているよ。

ドル自体が紙屑になっていると言われているのに、そのドルに比べても円のこの安さ。

日本人がアメリカに留学できなくなったのはアメリカの授業料が年間何百万円になったからだよ。アメリカでアパートを借りてもワンルームが月30万円だから、日本人はアメリカ留学すらできない。

そもそも日本人が作っている日本の野菜や傘、洋服や日曜品ですら日本人には高値の花になっている。こういうのをハイパーインフレーションというんだよ 。

最近はチャンネル桜のアホ評論家の嘘に騙されている人ばかりですね。
GDPの増加率や経済成長率には意味はありません。
中国やアメリカの様にGDPがいくら増えても、いくら経済成長しても国民の生活が良くなる訳ではありません。
政府がいくら金融緩和しても財政出動しても絶対にデフレから脱却できません。

マネーサプライが10倍になれば貨幣価値と実質賃金は1/10になり、GDP, 政府支出と株価は(大雑把には)約10倍になり、一般人は、ますます貧困化します。貨幣価値が減ったからといって給料を上げてくれる親切な会社はないので、実質賃金は下がるのですね。商品価格のコストの大半は人件費なので、貨幣価値が減っても物価はあまり上がりません。それで日本の物価は上がらずデフレになるのです:

通貨は基本的にはバブルで、お金の総量を増やすと貨幣価値が減っていっていずれ紙屑になります。
逆に言えば、いくら通貨を増やしても、国の食品・工業製品やインフラの供給量で決まる国家資産は変わらないので、貨幣価値が減るだけです。お金をいくら増やしても、増やした金の分配以外の問題は起きません。
お金が増えれば貨幣価値がその分下がるので、要するに、紙幣に書かれている10,000円という数値を100,000円に書き換えたという様に貨幣単位が変わったというだけの話です。
 

マネーサプライが毎年増えている国は毎年貨幣価値が小さくなっているので、 GDP、政府支出、地価と株価は、実質価値が減らない様に、毎年上がり続けています。

詳細は

ドルは既に紙くずになっている
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10645

世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で人々はリッチになったような気がする
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10616

ただし、貨幣価値が減ったからといって給料を上げてくれる親切な会社はないので、実質賃金は下がります。
日本人の給料が上がらないから、人件費を反映する物価も上がらない
しかし、外国に行けば日本円が紙屑になっているのがわかります。
しかし、日本国内での商品価格のコストの大半は人件費なので、貨幣価値が減っても物価はあまり上がりません。
それで日本の物価だけは上がらずデフレ経済になるのですね。

▲△▽▼


利子付き国債の発行はこれだけ貧富の差を拡大する


2020年04月19日
バブル崩壊で勝ったのは国債だけだったという事実

危険を煽ってもっと危険な投資や移住を勧めると、どこかから報酬が貰えるのだろうか


最も「勝ち組」の投資は日本国債だった

投資をしている人は「日本国債が危ない」「国債が破綻する」「国債を買うな」という情報を、今までに数多く聞いてきたと思います。

ニュースを見れば国債破綻、投資コラムでは国債を買うなという具合で、悪い投資の筆頭に上げられることが多い。

だが現実に1990年台バブル崩壊で「1円も損をせず」「元金が7倍以上になった」のは日本国債を買った人だけだった。

バブルの頃は色々な投資がブームで、金銀、土地、ゴルフ会員権、株やピカソの絵、ハワイや湯沢の別荘が人気でした。

これらの投資はその後のバブル崩壊で全て損をした筈で、保険や年金商品ですら政府の方針でカットされていました。

そんな中で唯一バブル崩壊の影響をまったく受けなかった投資商品が「日本国債」で、日本国債が危ないという定説とは真逆の結果です。


バナナ売りみたいな投資アナリスト達は毎日毎日「あぶないよあぶないよ、さあ国債が破綻するよ」と道端で「国債が危ない」と言い続けています。

彼らがそう言っている理由は国債以外の投資商品を売って稼いでいるからで、国債が売れたら困るのです。

日経先物とかFXとか株とか土地とかピカソの絵を売って初めて「カモ」から金を取れるので、日本国債が売れたら儲からなくなるのです。


1980年に日本国債を購入した人は、30年後の2010年に7倍に増えていて、もし最初に1000万円なら7000万円、100万円でも700万円に増えていたのです。

バブル崩壊も阪神大震災も福島原発もリーマンショックもすべて無関係で、1980年台に買っていさえすれば誰でも7倍になったのです。

では日本国債を買う以外でこの30年間に投資で資産を7倍にした人がどれだけ居たか、聞くまでもなくほとんど居ないはずです。

日本国債より危険な投資に手を出す人々

「そんなのウソだ。日本国債はゼロ金利じゃないか」というもっともな意見がありますが、それでも30年間毎年金利が付くことで、5倍とか7倍に増えるのです。

考え方を変えれば本当に「金利ゼロ」だったとしても、デフレで物価が下がると実質的にお金が増えるのです。

「経済専門家は皆日本が破産すると言っている」というもっともな意見もあるが、逆に日本政府が破産した後に残る安全な物って何なんでしょう?


例えば土地は消えませんが、戦前日本最大の資産家だった本間家(ローソク足を発明した本間宗久の子孫)は敗戦でアメリカ軍に土地を没収され、ただの釣具屋になり今は中国に買収されて消滅しました。

有名企業の株を保有しても日本政府が倒産するほどの事態なら、三菱や三井やトヨタだって倒産するでしょう。

金などの貴金属は物質として目減りしませんが、あの手のものは長期的には必ず物価上昇率より価値が目減りしていきます。


日本国債がデフォルトするほどの危機なら、どんな資産も無価値になる可能性が高く、それらより危険ではありません。

例えば沖縄県知事のアホは「中国に統一してもらって日本から独立しよう」と言っていますが、中国は共産国家で個人の土地所有が認められていません。

米軍基地が中国軍基地にかわり、土地は政府の所有になり、住民は政府から借りた借地に住む事になります。(中国人民はそうしている)

日本国債より安全な投資って何?

日本国債が無効になるほどの衝撃というのはこれほどの事が起きると推測でき、こんな事を考えるよりは自衛隊に税金を払ったほうが幾らかマシです。

「日本国債がアブナイから他に投資しよう」という考えは一見合理的にみえて、相当におかしいのが分かると思います。

例えていえば「巨大隕石が地球に落下するから地球の裏側に逃げよう」みたいな話で、恐竜より頭の働きが鈍いです。


日本国債ではなく米国債など外国政府に投資しようという人も居て、こちらの方は理にかなっています。

円高が進んでも日本よりアメリカの金利が高いので、最終的に日本国債を買うよりも、数十年後に元本が増える可能性は高いです。

だがしかし日本の証券会社から米国債を買って、日本政府が倒産したときにその証券会社は存在し、銀行は投資した元本を保証してくれるのか甚だ疑問です。


日本が破産したとき自分が買った証券会社が倒産していて、資産保全しているメガバンクも倒産したら、買っておいた米国債も消滅するでしょう。

アメリカの証券会社から米国債を買うという方法もあるが、おそらく日本からだと余計なコストを取られたり不利になるかも知れません。

このように考えると「日本国債があぶない」から色々な投資を試みるのは、結局どれも日本国債そのものより危険な投資に手を出すハメになります。


▲△▽▼


コロナ禍の3ヶ月間で米国富裕層の資産62兆円増 背景に大規模金融緩和
2020年6月14日


 新型コロナ危機が始まってからの約3カ月間、米国の富裕層が資産を約5650億j(62兆円)増やしていたことがわかった。

米国の進歩的な政策研究所(inequality.org)が統計データを集計し、4日に報告書を発表した。過去最大規模の金融緩和の恩恵を受ける1%の富裕層と、コロナ禍で生きる糧を奪われる99%との格差がかつてなく拡大している。

 報告書によると、コロナ危機による世界経済の急激な停滞によって、3月18日からの約3カ月間で、新規失業手当を申請した米国人は4300万人(労働統計局)にのぼり、リーマン・ショック不況後に創出された雇用のほとんどが消滅した。これには自営業者として支援を申請した数百万人は含まれておらず、実態はさらに深刻だ。


inequality.orgサイトより

 同じ3カ月間に、富裕層の累計総資産は約5650億j増加した。現在、億万長者の資産総額は3・5兆j(385兆円)に達しており、新型コロナ流行の開始時に記録された最低水準から19・15%上昇している。一方、米国ではコロナ感染ですでに10万人以上が死亡しており、報告書のなかでは「パンデミックの最中、億万長者の富が急増していると同時に、何百万人もの人々が苦しみ、多くの困難や死に直面している。米国社会の不平等でグロテスクな現実だ」とのべている。

 この間、資産を飛躍的に延ばした主な富裕層は以下の通り。IT大手や投資関連の大企業が目立っている。

ジェフ・ベゾス(アマゾンCEO)362億j増

マッケンジー・ベゾス(前妻)126億j増

マーク・ザッカーバーグ(フェイスブックCEO)300億j増

イーロン・マスク(テスラCEO)141億j増

セルゲイ・ブリン(グーグル共同創業者)139億j増

ラリー・ペイジ(グーグル元CEO)137億j増

スティーブ・バルマー(マイクロソフト元CEO)133億j増

ビル・ゲイツ(マイクロソフト創業者)118億j増

フィル・ナイト(ナイキ創業者)116億j増

ラリー・エリソン(オラクル会長)85億j増

ウォーレン・バフェット(バークシャー・ハサウェイCEO)77億j増

マイケル・デル(デル創業者)76億j増など。

 富裕層の資産拡大の背景には、株式市場の異常な回復がある。連邦準備制度理事会(FRB)が緊急措置としてゼロ金利、無制限の債券買いとりなど、かつてない規模の金融緩和策を講じ、2月19日をピークに29%減まで急下降していたナスダック指数が史上最高値に迫るなど、株式市場は大幅に値上がりした。実体経済と乖離した市場の活況が富の移動をもたらし、格差拡大を加速させている。

 国連は5月末、2020年の世界経済は少なくとも3・2%縮小し、3億人以上が失業し、米国だけで3900万人が失業すると予測したが、実態はそれを上回る。米国内の医療保険未加入者は3000万人をこえ、コロナ禍に見舞われながらも医療の恩恵を受けることができず、多くの死者を出している。米国の失業率は今後20%に達することが予測されており、リーマン・ショック恐慌を上回る深刻さをみせている。

 報告書共著者であるチャック・コリンズ氏は「数百万人の苦しみと窮状と引き換えにもたらされた億万長者の富の急増は、私たちが今後数年で社会を回復するために必要な社会的連帯を損なう。これらの統計は、私たちがかつてなく経済的、人種的に分裂していることを示している」と声明でのべている。

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最近宣伝されているMMT は国際金融資本の要請で、過去の欠陥金融システムを肯定するだけの対症療法、赤字国債大量発行は資本家と国際金融資本だけに利益をもたらし、貧富の差を拡大、マルクスが預言した階級社会を完成させる。

高度成長が一段落してもマネーストックは増え続けている。 それは政府が毎年税収以上の金をばら撒いているから。そしてその金はすべて資本家に再分配されている。労働者の賃金は全く上がらないからデフレになるんですね。

つまり、MMTも含めて今の金融システムは、国民から集めた税金を資本家に再分配するシステムなんです。


資本主義の仕組みは既に破綻している:

資本主義経済を動かしているのは貸した金にかける利子、国債・企業債の利子、株の配当金と貸した土地の地代・貸家にかかる家賃で、
利子・配当金・地代・家賃が巨大投資家だけに集まるから貧富の差が生じ、階級社会になる。
これでは農奴の時代、小作人を搾取していた時代と何も変わらない。

特に国際金融資本や大資本家の利益に一番貢献しているのが政府の発行する国債
MMT論者が薦めている大量の赤字国債発行は階級社会を完成する事になる。

格差が無いまともな経済に戻すには

・国債ではなく政府紙幣を発行する
・輸出依存経済からの脱却
・人材派遣会社、鉄道、電気・ガス会社、郵便局、病院、学校等のインフラは公営化する
・高速道路無料化
・年金保険料の徴収を廃止
・子供一人当たり月5万円の子育て資金を出す、大学までの教育費を無料にする
・ベーシックインカム
・土地を公有化する

という社会主義に近い経済体制にするしかない。

資本主義の金融システム自体が機能しなくなっているのが今の低金利・デフレの原因ですね。そもそも国債を銀行と生命保険会社に売って政府の運営資金を作っているのがおかしいんですね。

政府紙幣を発行すれば利子を払わなくても済むのに、意図的に銀行や生命保険会社に利子を払って、富裕層に税金で集めた金を再分配しているんですね。
日本政府が国債を発行して銀行や生命保険会社に利子を払うというのは、日本国民が金を銀行や生命保険会社にやっているというのと同じです。 国民主権国家なら銀行や生命保険会社に金を出すより、国民の福祉に金を使います。

日本のマネタリーベースが毎年増えているのは、国債の利子の影響が大きいです。
経済成長がストップしているのにマネーストックだけ増えて、増えた金がすべて資産家の資産に変わってしまったのですね。これがトマ・ピケティの『21世紀の資本』の言っていた 『格差はこうして生まれる』システムですね。

そもそも現在は科学技術が進歩して、人間が働かなくても生活できる時代なんですね。平成30年の農業就業人口は175万人、そのうち約68%の120万人が65歳以上。 それで日本人が消費する価格ベースで7割の農作物を作っている。

アフリカやアマゾンの狩猟採集民の労働時間は1日2時間程度なのですね。

現代人も2時間も働けば普通に生活できる筈なのです。しかし、欧米人に搾取されたり、資産家に搾取されるので、毎日10時間働かないと食べていけないのです。

欧米の資本家による日本人からの搾取の実例としては

日経平均株価が上がる程、日本人はどんどん貧しくなっていく
アベノミクスがもたらした株価上昇による100兆円の損失
http://stockbondcurrency.blog.fc2.com/blog-entry-184.html  

最近は MMTとか チャンネル桜が流すデマを信じて、金が無ければ国債をどんどん発行すればいいというアホばかりになったけど、MMTというのは国際金融資本が資金に困ったから、政府に金を出させようという話です。
大昔から国債の金利や株式の値上がりで稼いでいるのが資本家なのです。

地方銀行とか国債の金利が下がってから営業危機になって倒産寸前です。

本当はお金が一部の資本家に集中し、市場経済が崩壊しつつあるから金利が下がってデフレになっているのです。
財政出動すれば解決する問題ではないんですけど、MMTバカは洗脳されてそれがわからないんですね。


▲△▽▼


階級社会が経済を破壊する理由を分かりやすく説明する


人口100人の青い目の人達の村_新自由主義村があった。

4人の資本家に支配された労働者庶民96人が住んでいた。

資本家の年俸は2億円、残りの庶民は年俸200万円
全体で9億9200万円の紙幣が循環していた。

新自由主義村では、自動車は6、7台しか売れず、他の者は自転車だった。
暴動や略奪や薬物中毒・犯罪が頻繁に起こっていて
ズタズタなスラム社会になった。


その村の隣に、ジパングという人口100人の島国があった。

20人の知恵者をリーダーとした職人庶民80人いた

リーダーの年俸は1440万円、残りの職人は年俸500万円

全体で 新自由主義村より少しすくない6億8800万円の紙幣が循環していた。

その村では、自動車は100台売れた。 自転車も売れた。

あらゆる産業が学問が医療が社会福祉が発展し
インフラが整備されていき、すばらしい街を形成していった。  

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コメント
1. 2020年7月23日 11:45:57 : Wq5ELzbtHM : bnJDSTk1YTFNU0E=[2] 報告
▲△▽▼
「商品貨幣論」は何処が間違っているのか

貨幣プール論 貨幣ヴェール説 それは商品貨幣論
http://niseifukyu.livedoor.blog/archives/6199394.html

前回までの3回の記事で

「金融とは、本来、信用創造での貨幣の発生・消滅の機能を、物質的な移動現象に置き直した表現方法である」
とお話ししました。
そして、その「置き直した表現方法」は、「貨幣に信用を与える」という大事な役目がある、
とも言いました。

これはつまり「金融とは信用創造を商品貨幣論的に見るという行為」なわけです。
(ようやくスタイリッシュにまとめた表現ができたw。)

例として取り上げたのは「銀行間の送金振込」ですが、これは別に銀行間取引でのみ行われるわけではありません。
政府と民間銀行、政府と日銀、日銀と民間銀行、そして民間銀行と企業や私たち民間人、全ての取引関係において行われる信用創造の現象を「物理的な移動現象」に置き直して表現することができるわけです。

そして、この「置き直し」があまりにもリアルであるが故に「信用創造」での説明を重要視しないで「商品貨幣論オンリーで貨幣現象を見てしまう」というのが現在の経済観の間違いの原因となるわけです。

「あまりにもリアル」なのは商品貨幣論が「物質的な移動現象」だから「信用があるため」ですね。
経済評論家の三橋貴明さんはこれを「貨幣プール論」と呼んで国家財政に適用することを批判しています。


■貨幣プール論
貨幣を貯めることができるという物質でとらえて、それを汲み上げて使う。
皆さんにとって一番なじみ深い、当たり前の、そして疑いすら持たない考えだと思います。
中学の公民で「国庫」というものを習ったと思います。そして、国家予算を決めて、その国庫にあるお金を使う、という。
あれが貨幣のプール論です。

この貨幣プール論には亜流がたくさん存在します。

例えば「企業の内部留保の市場への放出させるための経済政策を・・・」という考えは皆さんもマスコミ等でよく聞きませんか?
政府もよく言いますね。

これは
「企業に内部留保という『貨幣のプールがある』ということ」
を前提としています。

この企業の貨幣のプールを放出させる政策、というのは
「インフレにして貨幣の価値を下げれば企業も貨幣のプールを放出し・・・」とか
「内部留保に税金をかける資産課税を・・・」、
あとはちょっと珍しいところで言うと
「時が経てば価値が減っていく貨幣(ゲゼルマネー)にすれば企業が貨幣のプール放出するはずだ」
というのは全部「商品貨幣論(金融)に基づく政策」ということになります。

また、「クラウドファンディングでお金を集めて」とかいうのもありますよね。あれも「貨幣のプールを作りましょう!」という考えです。
あれは「民間の貨幣をかき集める」という点でいえば「デフレを促進する」ものなので、政府や公共性の高い組織が主導していいものではありませんが、地方創生の財源としてやろうとしていますね、政府・・・(ぎゃあ)。

そして、「ベーシックインカム」は特に貨幣のプールのイメージが強い政策です。
寧ろプールが無ければできない政策です。

あれは
「政府の国庫プールの貨幣を国民の小さな貨幣のプールに分配」して、
国民一人一人に「あなたにはこれだけの価値の貨幣のプールを与える」
という「プールを国家権力が与える」という独裁的な形態をとります。

さて、以上が、簡単な「貨幣プール論」の説明になります。

他に「貨幣ヴェール説(貨幣ヴェール観)」という表現の方法があります。


■貨幣ヴェール説
これは、貨幣を物質として捉える、というよりは「交換する商品同士の間に存在する、仲立ちを行う媒介物」というイメージになります。
提唱者で有名なのはデイヴィッド・ヒュームというイギリスの哲学者で、「アダム・スミスとマブダチ」だった人ですね。
多分、親友の商品貨幣論を何とか補強してあげよう、という考えだったのかもしれませんね(よけなことを・・・w)。

何で「ヴェール(布)」というのかというと、「交換する商品たちの間に覆い被さっている布(ヴェール)」というイメージになるからですね。

Aという商品とBという商品の間にある
覆い被さったヴェール(貨幣)により
AとBはお互いを行き来する。

つまり、商品の交換を促進するのが貨幣である、ということになるので、最終的にはこちらも貨幣プール論いう「物質交換」に行き着きます。

つまり結果的に二つとも同じものです。

更に面白いのはこの貨幣ヴェール説は経済学の黎明期の学説だったこともあるのでしょうが
「覆い被さっているヴェールに過ぎないんだから、貨幣の量が増えようが減ろうが経済には全く影響しない。重要なのは物質としての商品が交換されることだ。」
と考えているところです。
つまりおそらく今の新自由主義な思想のレッセフェール(自由放任に任せよ)の卵です。

(因みに、この貨幣ヴェール説から「いや、そうは言うけど、貨幣量は現実には影響するだろ?銀貨の価値が増えたり減ったりするじゃん。多少コントロールする必要なくね?」という考えが組み込まれたのがデヴィッド・リカードの「貨幣数量説」になります。)


前回3回の記事を読まれた上でこれを読まれている方は方は気づくと思います。

「商品貨幣論」は「金融・市場・ミクロ経済(買い物)」の分野では当然の考えです。
私も「貨幣に信用を与えるために商品貨幣論、金融の概念は必要」と考えています。
ですので、私はこれを全否定しているわけではありません。

しかし、国家の財政(マクロ経済)を信用以外の側面、特に「供給の分野で語る場合」は、「全く相応しくない」ということが分かると思います。
何故なら、国家財政の貨幣は本来「信用創造」によって調達されるのですから。
貨幣は「現実には物質的な移動はしない」のが「本質」なのです。

以上から私は
「商品貨幣論」は「信用創造された貨幣(まだ説明が足りていませんので信用貨幣論とは表現しません)に従属するものだ」
と考えております。

________


金融と信用創造の関係について1
http://niseifukyu.livedoor.blog/archives/6073813.html


さて、今回は金融と信用創造の関係について書きます。

信用創造、というのはMMTの広まりから、金融機関で行われる貨幣の発行であり、「現金を無から作り出す方法(万年筆マネー)」だ、というのはだいぶ浸透してきています。

ですが、実際には、未だ「又貸しモデル」を前提とした理論を信用創造という人は多く、特にそれは「金融業界」の人がとても強く認識しているように思います。
100万円がA→B→C→Dとめぐり巡って、100万以上の乗数効果の膨張を信用創造と言ったりしていますね。
はっきり申し上げて、あれは信用創造ではありませんが、敢えてそれを信用創造というのであれば、あれは「ミクロ経済の金融市場限定の信用創造」です。本来の意味での信用創造ではありません。

そこで、とりあえず私は「金融」の概念をまず定義したいと思います。
勿論この定義は辞書的定義ではありません。
私独自の定義ですのでよろしくお願いいたします。

すごく簡単に言います。
金融とは「本来流れていないはずの貨幣」を「流れて移動している物質」として可視化する、一種の実体化ビュー(ビューとは視点)だと思われます。


例えば、Aの持っているB銀行口座から、Cの持っているD銀行口座に100万円振込が行われて、貨幣が送金されるとしましょう。

それを金融の取引として大雑把に表すとこうなります。

1.
@Aの振込む100万円は、Bの銀行口座から、B銀行が日銀に持っている日銀当座預金に変換されます。
  ⇓
Aその後、C銀行の日銀当座預金と取引されて、それが日銀当座預金から、通常使用できる貨幣に変換されてDの口座に100万円振込まれます。

Bこの時に日銀・民間銀行間での貨幣のやり取りに使われる取引証明が「国債による照合」だということになります。

以上となります。
はっきりと、眼で見て貨幣が「A→B銀行→(日銀)→C銀行→D」というように物質が動いているのが分かるかと思います。

これが、実際には違う、というのが私の意見です。
信用創造の概念を用いると、こうなります。

2.
@Aのお金がB銀行の口座から100万円消滅する。

AC銀行でDの口座に100万円の信用創造が行われる。

以上となります。

2.を読んで「えっ?」
と思われる方もいるかもいるかもしれません。
ですが、これが「信用創造」を前提としている場合の、「振込」という業務の真実です。

1.と2.との間に「違いはない」と思われる方もいるかもしれません。
確かにAから100万円が消え、Dに100万円が現れるという結果だけを見れば1.と2.は「全く同じもの」と思われるかもしれません。

ですが、

1.は明らかに「貨幣という物質がA→B→C→Dというように移動した」ことにより振込が行われたわけですが、

2.は移動していないわけです。

そこに物質の保証がなくても「書き込めば貨幣を生み出せる」のが「万年筆マネー」という「信用創造」なのですから「移動」という物質の概念を持たせること自体が実は違う、のです。

これが現実です。
1.は「後に移動して補填する」という点で「信用創造の否定」が前提ですらある、といっても過言ではないのです。

特に、信用貨幣で管理通貨制度の現代は、貨幣の価値は金という物質(商品)との交換を担保とした「金本位制度ではない」わけですから、2.こそが真実であることは改めて述べると、「あ、そうか」と思われる方も多いかと思います。

_____

金融と信用創造の関係について2
http://niseifukyu.livedoor.blog/archives/6079300.html

カテゴリ:貨幣についてさて、前回の続き、というか
追記を行います。

前回は、貨幣は銀行から銀行へ送金振込をされる、ということはどういうことなのか、というのを表してみましたが、下記で下地がグレーになっている部分が今回追記した部分となります。


◎貨幣の振込が行われるとしたら

■「貨幣のデータの物質的移動」ならば、

1.
@Aの振込む100万円は、Bの銀行口座から、B銀行が日銀に持っている日銀当座預金に変換されます。
  ⇓
Aその後、C銀行の日銀当座預金と取引されて、それが日銀当座預金から、通常使用できる貨幣に変換されてDの口座に100万円振込まれます。

Bこの時に日銀・民間銀行間での貨幣のやり取りに使われる取引証明が「国債による照合」だということになります。

Cもし「デジタル上のデータ通知」という意味でもそれは「移動」と同じ意味です。
スピードに差があるだけで、金貨を運ぶのと、紙幣を運ぶのと、デジタルデータで通知するのは同じA→B銀行→(日銀)→C銀行→Dになります。


■「貨幣を無から創出する」という「信用創造」での送金振込なら

2.
@Aのお金がB銀行の口座から100万円消滅する。

AC銀行でDの口座に100万円の信用創造が行われる。

B上記@Aは本来、連動することなくバラバラに行われる。

ということになります。


まず、何故、1.のCの追記を行ったのか、というと
「データ通知」とは「数字を物質として移動させる行為」と私は思うのですが、これを物質の移動としては認識せず、銀行の「データ通知」は「移動ではない」というイメージと持たれている人が一定数いることに気付いたからです。

私はこれは違うと主張します。
データの通知は、金貨を銀行間で移動させることや、現金紙幣を移動させることをスピードアップさせただけで、「本来物質ではない情報を、物質として移動させている」時点で本質的には「物質の移動」なのです。

そして、2.のBですがこの追記は
「無から貨幣を想像する信用創造」というイメージを確固としたものにするため、「本来は連動していない」ということを強調するために加えました。

変なことを言うと2.は
@で1000万円が消滅し、
Aで100万円の信用創造が「何故か」行われる、
という現象を起こすことだってあり得るわけです。
もちろん現実には「敢えて連動性を持たせているので」そのようなことは行われないわけですが。

つまり、何が言いたいか、というと、重ねて念を押すことになりますが、
銀行の日銀当座預金があろうがなかろうが、2.は行われるし、
日銀当座預金は実際には1.の「データ通知という移動を行う際に必要」なのであって、
移動させないのであれば必要ない、というのが私の結論です。

では
本来2.であるならば、
何故、普段はまるで1.のように貨幣は移動していると、説明されるのでしょうか?

これについては実はすでに上記で結論を述べてしまっています。

先ほど説明した
 @でB銀行でAの口座から1000万円が消滅し、
 AでC銀行のDの口座に100万円信用創造が行われる

という現象が起こってしまうと大きく齟齬が出てしまい、きちんと振込が行われなった、ということでB銀行とC銀行では「振込すると貨幣額に変動がある」(チョロまかされる)という点で信用が損なわれることになります。

そこで、B銀行とC銀行の間に「敢えて連動性を持たせ」、まるで「貨幣というデータが物質移動しているかのように『同額の消滅と信用創造』を行う」ことで、利用者から「移動させても貨幣額に変動がない」(チョロまかされていない!)という信用を得ているわけです。

誤解を恐れず言いますと、日銀当座預金という「概念」は、実際には働いていなくても(或いは存在していなくても)、まるで連動しているかのように語ることによって、変化のあった貨幣が事後処理的に「まる移動したかのように見せかけて信用を得るため」に必要なのです。

私はここで、日銀当座預金というものを貶めているわけではありません。
日銀当座預金、というものがあるから、本来あやふやであるはずの「信用創造」という実際には信用のはっきりしない「負債(借金)」に「それは貨幣である」という「信用」を付与されるのです。
日銀当座預金は貨幣取引上信用を確保するためには極めて重要なものだ、ということを最後に申し添えておきます。

今回は以上となります。

________

金融と信用創造の関係について3(金融について まとめ)
http://niseifukyu.livedoor.blog/archives/6122365.html

さて、前回書いたようなことを常々思っていた私自身が、最終的に慨嘆したのは「金融って何だろうなぁ」ということでした。

日銀のサイトでは前回の記事内容の銀行間での振込業務はこのように書かれています。
https://www.boj.or.jp/paym/outline/kg53.htm/
kg5d
丁寧に図までついています。
これでは勘違いする人がいて当たり前ですよね。
「勘違いするように書かれている」わけですから・・・。

つまり、前記事の1.で書かれているわけです。
貨幣を無から創造する2.を前提としては書いていないわけですね。

通帳に数字を書くことで生まれる万年筆マネーは日銀も現実には行っていることですし、国会の答弁でも否定していないのですが、1.以外の説明は一切が省かれています(国民に知られると都合が悪いんでしょうか?本当にイングランド銀行は素晴らしい…)。

確かに、物質であれば安心感があります。
そして説明しやすいし、私たちも非常に理解しやすい。
「B銀行→C銀行」にお金が移動する、というのは「当然の物理現象」なわけです。
「B銀行で消えて C銀行に新たなお金が誕生する」というのは現実には正しくても、「不自然」に見えます。
つまり、世間一般では1.の方が2.よりも信用できるわけです。

更に言うと、実はこの「移動する貨幣」というのは「金本位制」という「貨幣の価値は金という物質との交換ができるという信用に担保されている」という世の中においては寧ろ、そちらの方が主体であり、2.はその時代であれば「狂人の夢」と思われても致し方ないでしょう。

因みに、この金本位の時代は正確には1971年まで続きました。
今から49年前まではそちらの方が現実だったわけです。
勿論、その中においても不換紙幣への移行や逆行と悲喜交々あったわけですが。

さて、それでは私なりの金融とは何なのか、をまとめてみます。

金融とは「債務で創造される貨幣(信用創造)を、『移動する物質貨幣』として『敢えて扱う』ことで貨幣に信用を与える」ということ、というのが私の考えです。
「『金』という物質を『融かしている』ことを見立てている」=「金融」という、まぁ、昔の人はすごいものです。よくこの漢字を充てたものですね。

そして、察しの良い人は気づいているでしょう。
つまり1.は商品貨幣論です。
融かした貨幣のプールから組み上げる、貨幣プール論です。
貨幣が物質として、商品と交換されるのが、商品貨幣論です。
その商品が金であれば、それは「金本位制」。
米ドルとの交換であれば、「米ドル本位制」ということになります。

ややこしいのは、この商品貨幣論は「信用と価値」が完全に一体化している、というところでしょう。
交換が成立すれば、それは信用を前提としているのと同時に、金の価値、或いは米ドルの価値が、貨幣に付与されます。
この、「信用と価値の一体化」が信用貨幣論にはある意味、全く適さないのです。
まぁ、その話は長くなるので後日に回します。

何度も言いますが、この、とてもリアルに見えるために信用される1.の論理は、しかし、本当の貨幣は2.の信用創造であり1.の金融論理は「敢えて信用を付与する為に行われているオペレーションだ」ということは忘れないでください。

極論、ととらえられるかもしれませんが、誤解を恐れず言いますと、「金融=商品貨幣論」なのです。

9. 中川隆[-11854] koaQ7Jey 2020年8月15日 08:25:35 : XAcXkcJt3k : TjQybE9UVUxDQy4=[8] 報告
負債で資産を買う? かくも奥深き貨幣の世界よ 2020-08-15
三橋貴明
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12617938563.html

「語彙が足りない」

 わたくしの知識の話ではありません。貨幣制度を完璧に説明する際の、日本語の語彙が足りないのです。(別に、日本語だけではなく、英語等でも同じでしょう)


 過去の人類は、商品貨幣論に基づき、貨幣を理解していた。


 ところが、現実は信用貨幣論(+α)で貨幣制度は成り立っている。商品貨幣論的な説明しかされてこなかった人類にとって、貨幣制度の「奥の奥」まで理解する語彙が不要だったのでしょうか。


 一つ、例を挙げます。


 これは、近々、三橋TVで目にすることになりますが、わたくしが高家さんに、「日銀のETF購入」について説明する際に、

「日銀はETFを買う際に、日銀当座預金を増やしているだけ。日銀当座預金は日銀にとって負債だから、負債で資産(ETF)を買っているわけです」

 と、説明すると、「負債で資産を買う」という表現の真意を理解した高家さん(この人、本当に地頭が良い)が、
「おお〜っ!」
 と、感動するシーンがあります。


 慣れない人には厳しいでしょうが、バランスシート(BS)で書きますね。日銀が証券会社(※証券会社は日銀当座預金の口座を持っています)からETFを買うと、

日銀のBS
 借方       貸方
 ETF 1兆円  日銀当座預金 1兆円

 となるため、日銀は「負債」である日銀当座預金で、「資産」ETFを買ったことになります。
 とはいえ、この表現って「正確」なのでしょうか。


 あるいは、国債発行。
 政府が国債を発行すると、借方で日銀当座預金が、貸方で国債が増えます。

政府のBS
  借方             貸方
 日銀当座預金 1兆円  国債 1兆円

 ↑これは、政府が国債を発行し、日銀当座預金を「借りた」ことを意味しますが、
「政府が日銀当座預金という資産を、国債という負債で買った」
 と、表現することもできません? 


 また、我々は「預金」という言葉を、自然と「資産」として理解してしまいます。とはいえ、銀行預金は銀行の負債で、日銀当座預金は日銀の負債です。


 今度は、銀行の貨幣発行(貸出)で考えてみましょう。
 銀行が皆さんに、3千万円貸したとします。

銀行のBS
 借方                  貸方
 借用証書(貸付金) 3千万円  銀行預金 3千万円

皆さんのBS
 借方            貸方
 銀行預金 3千万円  借入金 3千万円

 となりますが、この場合、
「銀行は銀行預金という負債で、借用証書という資産を買った」
 と、同時に、
「皆さんは、借入金という負債で、銀行預金という資産を買った」
 と、双方が成立してしまいます。


 ここで、
「え? 前者はともかく、後者の「借入金で銀行預金を買った」という表現はおかしいだろ? 借金でカネを買うって、意味わからん」
 と、思われたとしたら(思われた方が多いでしょうが)、まさに、
「銀行預金は貨幣だが、借入金は貨幣ではない」
 という思い込みに縛られています。


 銀行預金だって、銀行の負債ですよ。


 さあ、混乱してきませんか? 
 混乱して、当然です。何しろ、日本において、ここまで突っ込んで、貨幣制度の「本質」が語られるのは(恐らく)初めてです。語彙が不十分であるため、わたくしは「既存の語彙」を使い、何とか「現実」を説明しようとしているわけですが、自分でも巧くやれているとは思えません。


 貨幣とは単なる「情報」に過ぎず、様々な経済活動において、借方と貸方で、情報=数字がピコピコと動いているわけですが、それを表現する適切な語彙がないため、「買う」といった言葉を使わざるを得ない。となると、「買う」という言葉のイメージが先行し、実体がよく分からなくなってしまうわけでございます。


 我々は、商品貨幣論という間違った貨幣観の蔓延により、貨幣の説明に関する語彙の発展を妨げられていた可能性があるのです。自分たちが日常的にやっていることについて、表現する語彙を持っていない。

 ワクワクしません?

 江戸末期から、明治初期にかけ、欧米から様々な新たな概念が流入した日本では、偉大なる先人たちが「造語」により危機を乗り越えました。貨幣制度を完璧に説明するためには、同じことをする必要があるように思えます。


 まあ、わたくしは学者ではないので、造語等にまで手を出す気はありませんが、いずれにせよ、貨幣の世界は本当に奥深い。

 というわけで、本日の三橋経済塾のわたくしの講義のテーマは「貨幣とは「情報」である」でございます。
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12617938563.html

10. 2020年9月12日 07:22:58 : yfVFU2YMo2 : eFFQYXluUmtGaXM=[4] 報告


【RE:明るい経済教室 #9】スペンディング・ファースト〜政治家の大部分が勘違いしている政府支出の構造[R2/9/10]


11. 2020年10月12日 11:20:15 : RpwMiNUFXo : Nzk2SWtSOXdJekE=[14] 報告
最近ニュースになっているデジタル人民元の狙いは何か
2020/10/12





12. 中川隆[-8669] koaQ7Jey 2021年1月03日 10:01:43 : FN5ePxnIHg : QTVvd0FDb0FsLms=[11] 報告
令和3年度税制改正大綱の闇 簿記が暴く税金の真実(室伏謙一×森井じゅん)
2021/01/03





13. 中川隆[-7936] koaQ7Jey 2021年1月22日 12:23:24 : S5sBIuDAsc : WW9BTlIvaG5aUVk=[18] 報告
今さらですが、安藤裕衆議院議員の動画です。特に「中盤(12分)以降」の貨幣創造の説明の部分が極めて秀逸ですので、是非、そこだけでもご覧ください。


衝撃!!「財政赤字」は「国民を豊かにすること」〜令和の"所得倍増"はこうすれば実現できる!〜
2020/12/22





14. 中川隆[-7933] koaQ7Jey 2021年1月22日 12:28:52 : S5sBIuDAsc : WW9BTlIvaG5aUVk=[21] 報告
民間銀行はもうこの世に必要ない(Live配信2021/1/12)


15. 2021年1月23日 18:28:38 : C262U7JCBk : TFpjbTFDOE1tbGs=[33] 報告
インフレが制御不能になれば政府は価格統制を始める
2021年1月22日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/11964


これまでの記事で論じてきたとおり、アメリカで物価の高騰が始まっている。

新型コロナ対策として日本やアメリカで政府による未曾有の資金注入が行われた。アベノミクスにおける量的緩和など、これまではどれほど紙幣を印刷してもインフレにはならないように思われていたが、コロナ禍における現金給付でアメリカではついに許容量を超えたようである。物価指数の上がり具合をもう一度引用しておこう。

コロナ不況でデフレになる日本、インフレになるアメリカ

新型コロナ不況による先進国政府の未曾有の紙幣印刷に警鐘を鳴らしてきた著名投資家は多いが、特にレイ・ダリオ氏はこの危険性を早くから的確に指摘し続けてきたと言える。

・世界最大のヘッジファンド: 政府が金融危機から守ってくれると思うな (2020/4/29)

ダリオ氏の先見の明にはいつも驚かされるが、ではインフレの後にはどうなるのだろうか。今回はダリオ氏よりも更に先を見据えている別の人物の見解を引用してみたい。

政府は紙幣印刷を止められない

この人物の名はあとで挙げるが、この人物は現在のような不況において紙幣印刷は状況を長期的に悪化させるにもかかわらず、政府が紙幣印刷という手段に頼り続けることは避けられないと主張する。彼はこのように述べている。

あらゆる世代の経済学者は政府が貨幣の量を素早く増加させることによって短期的には政府は失業のような経済的害悪から人々を救済する力を持っていると主張し続けてきた。残念ながらこれは短期的に正しいに過ぎない。

貨幣の量を増やすことは短期的には有効に見えるかもしれないが、長期的にはさらに大きな失業を引き起こす原因となる。これが事実である。しかし短期的に支持を獲得することが出来るならば、長期的な効果を気にかける政治家が果たして存在するだろうか。

今の日本政府や米国政府に対する痛烈な皮肉ではないか。紙幣印刷は不況の直接的な原因である。ここの読者であればそれがどのように不況の原因であるのかはお分かりだろうが、分かりやすく解説した以下の記事をもう一度挙げておこう。
新型コロナで借金が実体経済に影響を与える仕組みを分かりやすく説明する
コロナでGDPが大幅に下落した原因は過去の紙幣印刷による債務の拡大なのである。それがなければここまでの不況にはならなかった。しかし麻薬中毒者が麻薬を止められないように、すべての政府と短期的な視野しかない有権者は紙幣印刷を選好し続ける。

それはいずれ不可避的な物価高騰に繋がってゆく。インフレは緩やかにしか起こらないので人々は安心して何十年も紙幣を刷り続けるが、起こった時にはもう止めることができない。それがインフレである。

アメリカでは遂にそれが起こりつつあるということである。では止められない物価高騰が起こったとき、政府はそれをどのようにしてお茶を濁すだろうか。彼は次のように説明している。

周知の通り、インフレは経済や市場の秩序が破壊されるまで続く。しかしわたしにはより悪い可能性のほうがありうるように思われる。

政府は物価高騰を止めることができない。しかしこれまでもそうだったように、物価高騰の目に見える効果だけは抑えたいと考える。物価高騰が続き、価格のコントロールが行われるようになり、それは究極的には経済制度全体を管理するところにまでいたる。

インフレが市場と経済を破壊するところまではもうその兆候が観測されている。金融市場で取引される種類の日用品の価格高騰は去年から始まっており、あとはその価格上昇がスーパーに並ぶ品物の価格にまで及ぶのを待つだけである。

・金融市場にインフレの兆し: 金、原油、穀物価格が高騰


経済の混乱は既に始まっている。そして彼は追い詰められた政府が行うのは価格統制だと主張している。正規の店舗に並ぶ品物の価格は見た目上抑えられ、ブラックマーケットでは品物が高値で取引させる世界が来るのである。

それでも正規の店舗では安値で日用品が買えるなら良いのではないか? しかし現実はそう甘くない。誰も安値で売りたがらないので、すべての品物はブラックマーケットに流れて高値で売られ、単に正規の店舗でものが買えなくなるだけである。それが経済である。ダリオ氏も言っていた。

われわれが消費をできるかどうかはわれわれが生産できるかどうかに掛かっているのであり、政府から送られてくる紙幣の量に掛かっているではない。

紙幣は食べられない。

しかし誰も彼の警鐘を聞かなかった。

そして価格統制が上手くいかなくなると、政府は経済全体を管理しようとするだろう。それがこの人物の主張である。

結論

このような世界が来るとコロナ前には誰が予想していただろうか? しかしインフレ率や金融市場などの現実はダリオ氏やこの人物の予想通りに推移している。そして興味深いのはダリオ氏も彼もともに政府のこうした近視的行動が共産主義的な計画経済にいたるリスクを指摘していることである。

世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる
コロナ後の経済についてダリオ氏よりも更に先を読むこの人物は誰か? 経済学に明るいここの読者ならば分かる人もいるだろうか。今回の記事で引用した主張を述べた人物はフリードリヒ・フォン・ハイエク(1899-1992)である。19世紀に生まれ、ジョン・メイナード・ケインズと論陣を張り合い、コロナよりもはるか昔に亡くなったオーストリアの経済学者である。

引用した文章も何十年も前に書かれたものだ。しかしその主張はまるで今の経済状況と政府の対応を批評するために誂えたような文章ではないか。

今回の文章は日本語版では彼の『貨幣論集』などに収録されているが、ハイエク氏の著作にはコロナ禍に適用できる更に面白い知見が含まれているので続けて紹介したいと思っている。ダリオ氏の記事も再読しながら楽しみにしてもらいたい。

・世界最大のヘッジファンド: 紙幣印刷で経済成長率は救える


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/11964

16. 中川隆[-7765] koaQ7Jey 2021年1月26日 00:19:59 : 2ydmNr8Rvw : SDJnQ0RJbmZzTkk=[31] 報告
【ゆっくり解説】目からウロコが落ちる「中央銀行」について〜お金の歴史から読み解く通貨の信認とは〜
2020/07/21




現在の制度では中央銀行が通貨の信用を担っています。その辺があまり世間に知られていないようなので解説しました。
お金の歴史から中央銀行の役割までを解説しています。
17. 中川隆[-7811] koaQ7Jey 2021年1月30日 23:31:15 : WsTabVtPIQ : ZW1xLlovZzh6WWM=[34] 報告
ハイエク: 政府から通貨発行の独占権を剥奪せよ
2021年1月30日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/12051


ここのところ続けて19世紀生まれの経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏の論考を紹介しているが、ようやく本題である。

新型コロナとハイエク経済学

2020年の新型コロナウィルスの世界的流行によって世界経済は未曾有の景気後退にさいなまれ、日本やアメリカなどの先進国政府は紙幣印刷や現金給付を行なって多数派の有権者の支持を取り付けた。

政府は中央銀行にいくらでも紙幣を刷らせることが出来るので、新型コロナで店舗や企業が儲からなくても人々は生活に困らないというわけである。

実際には先進国政府はコロナ前にも紙幣印刷を大量に行なってきた。その紙幣で中央銀行が国債を買い上げたために政府はいくらでも借金ができたのである。

その借金で政府は長らく有権者の支持を購入してきた。新型コロナで多くの人が亡くなっているにもかかわらず、政府の関心はオリンピックの開催とGO TOトラベルによって建設業界や広告業界、宿泊産業の政治的支持を取り付けることにある。これはどの国の政府も行なってきたことである。しかしアメリカではそうした慣習にも限界が来ている。インフレの到来である。

・コロナ不況でデフレになる日本、インフレになるアメリカ
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/11939


そして日本はその背中を追っている。

政府に借金をさせないために

政府が借金をこれほどまでに増やせなかったなら、政府がここまで好き放題にすることもなかっただろう。そして中央銀行が紙幣を印刷できなかったならば、政府が借金をここまで増やすことも不可能だっただろう。

通貨は政府が発行するものだというここ100年くらいの間に生まれた特異な考え方に慣れた者でなければ、これは当然の考え方である。そしてその当然の考え方を主流派経済学者の間違った意見に左右されずに主張し続けた経済学者がいる。ハイエク氏である。

戦前、戦後の時代にケインズ氏とやりあったハイエク氏は様々な経済学上の功績で有名だが、その中でも異彩を放つのが通貨発行自由化論である。ハイエク氏は政府のみならず民間企業や個人も通貨を発行すべきであり、政府の通貨と競争させることで政府の浪費を牽制できるという考え方の持ち主なのである。

ハイエク氏は彼の

『貨幣論集』
https://www.amazon.co.jp/%E8%B2%A8%E5%B9%A3%E8%AB%96%E9%9B%86-%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%82%AF%E5%85%A8%E9%9B%86-%E7%AC%AC2%E6%9C%9F-%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%82%AF/dp/4393621921?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%82%AF+%E8%B2%A8%E5%B9%A3%E8%AB%96%E9%9B%86&qid=1611295460&sr=8-1&linkCode=sl1&tag=asyuracom-22&linkId=eb7e92ebe3988e41f171092f0fdf438f&language=ja_JP&ref_=as_li_ss_tl


においてむしろ控えめに次のように述べている。

こうした提案は法定通貨という概念のもとで育ったすべての人にとって最初は馬鹿げたものに映るかもしれない。

しかしかつて紙幣を中央銀行に持っていけば金(ゴールド)と交換できた金本位制の時代の人々は、何と交換することもできない何の保証もない紙切れを大事に財布に持っている人々の方を不思議に思うだろう。

現代の通貨は本当に暴落しないのか

繰り返しになるが日本円もかつては金と交換できたのであり、金を中央銀行に預ける代わりに紙幣を受け取って、中央銀行に紙幣を持ち込めば預けた金が返ってきたのである。しかしいつの間にか金は返ってこなくなった。政府がそう決めたからである。では預けられていたはずの金は何処へ行ったのだろう。政府がすべて使ってしまったのである。

このようなあからさまな詐欺に多くの人々がまったく気付いていない。ハイエク氏は次のように述べる。

200年間の金本位制の時代だけを例外として、実際には歴史上ほとんどの政府が人々を騙し搾取するために通貨発行の独占権を行使してきた。

大英帝国のポンドやオランダ海洋帝国のギルダーが政府による紙幣印刷で暴落していったことは以前解説した通りである。

・世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10903

・世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の基軸通貨ポンドはいかに暴落したか
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10953


そしてその犠牲者はその通貨を持っていた一般市民であり、政府ではなかった。通貨が暴落したときには既に政府は多額の借金をしてその資金を使い果たしてしまっていた。

根拠はないはずなのだが、現代のわれわれはこれを過去のことであり、今の円やドルには起こらないと無根拠に信じている。しかし実際にはメジャーな通貨の減価はゆるやかにしか起きないので、そのトレンドのただ中にいると気付かないだけなのである。

事実、1970年のドルの価値を100とし、その価値をゴールド本位で計算すると今のドルの価値は次のチャートのようになる。


https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2021/01/since-1970-value-of-usd-in-gold-chart.png

ほぼ皆無である。そして2021年、コロナで大量の紙幣印刷と現金給付を行なったことにより、死に体のドルにはとどめが差されようとしている。

・世界最大のヘッジファンド: ドルが下落したらアメリカは終わり
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/11762


そしてアメリカに起こることは日本にも起こるのである。

ハイエク氏の通貨発行自由化論

こうした状況を打開するためにハイエク氏は政府から通貨発行の独占権を剥奪すべきだという。ハイエク氏は言う。

人々が使いたい通貨を自由に選択させてはなぜいけないのだろうか。

ハイエク氏が想定するのは政府だけではなく民間企業や個人が通貨を発行する世界である。そこでは人々は自分の好きな通貨で貯金をし、好きな通貨で買い物をする。好きな通貨で会計報告をして好きな通貨で納税をする。

彼は次のように続ける。

店主が現行のレートで望む通貨に即座に両替できると分かれば、すぐにどのような通貨に対しても適切な価格で商品を売るだろう。しかし政府の通貨で表示される物価だけが上昇していることが分かれば、政府の悪行はもっと早く察知されることになる。

そして人々はより安定した通貨を主に利用するようになるだろう。そうすれば通貨発行者は自分の通貨の価値をより安定させ、より多くの人に使われるように努力するようになる。ハイエク氏の主眼は通貨をこのような競争にさらさせることになるのである。彼は次のように続けている。

人々が信用できない通貨を拒否し、信用できる通貨を選んで使うことができるとすればどうか。政府が通貨を乱用するのを避けるためにはこれ以上に有力な抑止力は有り得ない。そうすれば通貨の供給を需要より低く抑えるかぎり、その通貨の需要は増大してゆくだろう。そしてそれは政府が通貨の安定性を維持させるための何よりも強い要因となる。

つまり、政府が無思慮に紙幣を膨大に印刷しようとすれば政府発行の通貨が使われなくなるという状況に直面させることで政府を律しようというわけである。

これは同様に民間の通貨発行者にも適用されるだろう。通貨発行者は手数料のような利益を(政府と同じように)得るだろうが、ハイエク氏の言う世界ではこれが今のように通貨発行権の独占の対価として与えられるのではなく、価値の安定した通貨を発行していることに対する対価として与えられるならば、通貨発行者に対して国民が払うコストは合理的なものになってゆくだろう。

少なくとも、金塊がいつの間にか盗まれているとか、数十年の間に価値がほぼゼロになっているとか、そういうことはなくなるはずである。有り得ないような話が日本円や米ドルで実際に起きているのである。

・ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/11992


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/12051

18. 中川隆[-6038] koaQ7Jey 2021年4月04日 07:08:27 : gDb5AlH4lg : VVV5Zk1LelZYVXc=[7] 報告
民間銀行の信用創造について低レベルの誤解をしている人が多い
民間銀行は自己資金ゼロでも、顧客に借用書を書いてもらって、融資金額を顧客の銀行預金として記帳するだけでお金が無から生まれると思っているアホが多過ぎる。
そもそも民間銀行が自己資金も持っていないのに顧客に融資したとしたら、顧客が自分が借りた金を日銀券(円紙幣)で引き出したいと言った時に、全く金を持っていない民間銀行が顧客に日銀券を渡せる訳がないですね。小学生でもわかる道理です。

信用貨幣論というのは要するに、
貨幣と言っても、マネタリーベース、マネーストック、銀行預金、国内で商品購買に使うお金、国内で不動産・株式購買に使うお金、為替交換して外国に投資するお金等 何種類もありますが、

・政府の信用創造: 国債と硬貨国債を発行、国債は政府が発行する有利子貨幣、硬貨は政府が発行する無利子貨幣

・日銀の信用創造: 日銀当座預金と日銀券(円紙幣)を発行、日銀当座預金は有利子貨幣で、日銀は民間銀行から国債を買って、民間銀行の日銀当座預金口座に日銀当座預金を信用創造し、マネタリーベースを増やす。
日銀券(円紙幣)は日銀が発行する無利子貨幣で、日銀は民間銀行の要請で日銀当座預金と日銀券(円紙幣)を交換する。

・民間銀行の信用創造:、銀行預金は民間銀行が発行する有利子貨幣で、民間銀行は一般人に融資して民間銀行の口座に銀行預金を信用創造し、マネーストックを増やす。民間銀行が日銀券(円紙幣)を持っていてもマネーストックにはならない。

お金の又貸し説は日銀当座預金では正しい

民間銀行の信用創造というのは民間銀行が自分の持っている日銀当座預金口座の日銀当座預金を日銀券に変えるという意味です。日銀当座預金口座は政府と民間銀行しか作れないので、民間銀行に借金しないと日銀券を発行してもらえないのです。
それが、借金でお金を作る、という意味です。
ゼロからお金を作るのではなく、日銀当座預金を日銀券に変えているだけです。 銀行が顧客に金を貸せるのは、貸す金額と同額の日銀当座預金を持っている場合だけです。

民間銀行の持っている日銀当座預金は、顧客から銀行預金として預かっている日銀券を日銀でデータに変えて保管したものです。民間銀行の融資というのは顧客から銀行預金として預かっているお金を又貸ししているだけです。

 銀行は自己資本だけではなく、お金を借りてそれをさらに融資するという「又貸し」を行っています。銀行の最大の他人資本は「預金」であり、この他に、他の金融機関からの借り入れや社債を発行して集めたお金、さらには中央銀行から借りたお金なども他人資本となります。融資が焦げ付いた場合、預金などの他人資本に手を付けるわけにはいかないので、銀行には一定水準以上の自己資本を持つことが義務付けられています。 国際的な業務を営む銀行の場合、自己資本比率=自己資本÷融資額(リスクアセット)×100 の下限は8%、国内業務に限っている場合には4%という「自己資本比率規制」があり、これを維持することがBIS(国際決済銀行)によって義務付けられています。

一方、日銀は買いオペで国債を買って日銀当座預金を信用創造できますが、マネタリーベースを増やすと貨幣価値が下がってしまい、マネタリーベースすべてを使って買えるものの総量はマネタリーベースを増やしても変わりません。
日銀当座預金の信用創造というのは単に貨幣価格の単位を変えただけです。
いままで1万円札で10ケ買えていたものが、貨幣量を10倍にすると貨幣価値が1/10になって、1万円札で1ケしか買えなくなります。 日銀が信用創造で円貨幣を増やしても、貨幣の単位が変わるだけで経済には(長期的には)影響しません。

民間銀行が一般人に融資して民間銀行の口座に銀行預金を信用創造しても、それは民間銀行が元々日銀当座預金口座に持っている日銀当座預金の一部を一般人専用にしているだけで、お金が増えた訳ではありません。民間銀行の信用創造というのは日銀当座預金を日銀券(円紙幣)に変えてマネーストックが増えた場合だけです。但し、マネーストックが増えても国内で商品購買に使われなければ物価は上がりません。

お金が増えるのは、買いオペで日銀が国債を買い取って、その代金を日銀当座預金口座に信用創造して、マネタリーベースが増えた場合だけです。マネタリーベースが増えると貨幣価値は下がりますが、物価があがる訳ではありません。

日本人の給料は30年前と変わらないので、国内で商品の購買に使われる総額も同じで、従って国内物価は上がりません。金利も変わりません。円の貨幣価値が下がったというのは輸入物価やゴールド・原油・鉄鋼・穀物・大豆などの商品相場が上がったという事で、国内の消費者物価や金利が上がった訳ではないんですね。

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古典派経済学の貨幣数量説・貨幣の中立説
貨幣中立説は、歴史的には大航海時代以後にスペインなどが重金主義を採用したことによる反動ともいえる。
重金主義とは、貿易などを通じて貴金属や貨幣を蓄積することにより、国富を増すことを目指す経済思想や経済政策の総称。

一方、古典派経済学の貨幣中立説は貨幣量の増減は物価にだけ影響を与え、生産活動や雇用の増減などには影響を与えないとする説。 中立説によれば、貨幣は社会的な分業や効率性をもたらす以上の役割はない。経済活動の本質は物々交換であり貨幣はその仲介を行っているにすぎず、貨幣量の増減は貨幣錯覚による混乱をもたらすが国富・国民経済の観点では中立的であり、国富の増大には貨幣量の拡大ではなく生産・供給能力の増強によるべきとした。

貨幣数量説は貨幣の中立性を前提にしており、物価の乱高下は流通貨幣量の管理によって押さえ込むことができるとする。管理通貨制度が定着する以前は、社会に存在する貨幣の総量は誰にも計測できず、金塊が採掘されるなり、難破などの事故により貴金属が喪失するといった確率現象や、貯蓄のために金塊を退蔵するといった個々人の経済行動は、物価に対して深刻な影響を与える要素であった。

ルーズベルトやニューディーラーは古典派経済学・マルクス経済学の系統で、ソ連の5か年計画を真似してニューディール政策を行っています。ルーズベルトやニューディーラーは勿論 緊縮財政派です。
長期的には貨幣の中立性は成立し、金融政策は実体経済に影響を与えず、ただ名目変数を動かすだけであるという点では、新古典派経済学、マネタリスト、ニュー・ケインジアンの見解は一致しています。

一方、ケインズやMMT学派は古典派経済学・マルクス経済学の貨幣数量説・貨幣の中立説を否定して、金融緩和や財政出動が経済を変えると思っているのですね。 1970年代までは欧米政府はすべてケインズ政策に基づいた経済政策を行っていましたが、悉く失敗したので。経済政策をハイエクの自由主義経済と財政均衡主義に変えたのです。
しかし、三橋貴明さんはそういう経済の流れを全く知らず、重商主義とケインズ・MMT学派と新自由主義の三つしか考えていないのです。この現代に既に大失敗したケインズ政策をもう一度繰り返す事に意味は無いのですけどね。

19. 中川隆[-5017] koaQ7Jey 2021年5月05日 07:44:15 : FAehPifVaM : MEpOMk4wblpPNEU=[9] 報告
【ゆっくり解説】なぜ金は高いのか 〜歴史的背景と科学的性質からその理由を紐解く〜
2021/05/04




20. 中川隆[-4789] koaQ7Jey 2021年5月14日 11:32:31 : CU8lM4oEXo : Y25nUHBzRG42OW8=[31] 報告
【RE:明るい経済教室 #29】日銀当座預金の役割〜準備資産から決済手段への変質[桜R3/5/13]


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