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チャンネル桜関係者とアホ右翼が信じている「日銀と通貨発行権」の誤解について
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/848.html
投稿者 中川隆 日時 2020 年 1 月 28 日 11:35:40: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: これがチャンネル桜関係者とアホ右翼が信じている「ユダヤ陰謀史観」 投稿者 中川隆 日時 2019 年 7 月 04 日 13:46:40)

2019.5.27「日銀と通貨発行権の誤解について」
大西つねきの週刊動画コラムvol.80
https://www.tsune0024.jp/blog/2019-5-27-vol-80


2019年5月27日 · 週刊動画コラム
https://www.youtube.com/watch?v=foc3lmP7TSE&feature=emb_title


皆さん、こんにちは。大西つねきの週刊動画コラム、本日5月27日の週刊動画コラムのテーマは「日銀と通貨発行権の誤解について」というテーマでお話ししたいと思います。

何でこの話をしようと思ったかというと、昨日も僕、講演会行ってきました。
講演会に行くと必ずとまではいきませんが、かなりの割合で、要するに、

日銀が株式会社であるということ、
その株主が、55%は政府が出資してるんですけど、残り45%が民間だということ、
それが誰が持ってるか公開されていない

ということで、いろんな憶測というか、それを陰謀論みたいなものにつなげる人が多くて、そういうことを結構聞かれたりするんですね。

ただ、いつも僕答えるのは、日銀の株主の半分近くが民間で、それが誰だかわからないから、だから何なの?って聞き返すんですよ。大抵聞き返された人はもちろん答えられなくて、

日銀がお金を発行してるのに民間じゃおかしいとか、
それを何とかチャイルドみたいな陰謀論と結びつけて考えてるんです。


結局何が問題なのかその人たち自身もよくわかってなくて。
ただ、そういうふうに騒ぐ人たちが一部に恐らくいるんでしょうね。

ただ、これ、仕組みを知ると、いや、別に全然そんな話じゃないっていうのがよくわかります。

どこからはじめようかな。

まず日銀に関しては、民間だからといって、まあもちろん利益も挙がります、ある程度。その利益がどうやって挙がるかというと、これまた

お札を1枚、1万円札を作るのに20円しかかからなくて、それが1万円になるから9980円もうけるんだ

みたいなことを、そういう間違ったことを言う人がいるんですね。

それ完全に間違ってます。そうはなりません。

基本的にお札の発行ってどうやってるかというと、例えば、そもそもあのお札誰が作ってるかというと、日銀じゃなくて国立印刷局というところが毎年の財務省の計画に従って作ってます。

作るっていうのは、それは何で必要かというと、今までのお札が古くなって破れたりするぶんとか、あと、マネーストック、皆さんの現金、預貯金が増えるにしたがって、より多くのお札を引き出すようになるんで、そのぶん恐らく必要だろうということで、ある程度計画的に作ってるんですね。

国立印刷局がそれを刷ります。例えば、じゃあ1兆円のお札を国立印刷局が刷ったとして、それをどうやって発行するのか、発行するっていうか世の中に回してくのかというと、

まず1兆円の紙幣を作ります。それを日銀の金庫に入れるんですね。

日銀の金庫に入れますけど、日銀はそれを1兆円として受け取るわけですけど、それ、そのまま日銀が1兆円をもらってしまったら日銀が1兆円もうかってしまいますよね。(笑)。それおかしいですね、

もちろん。20円で作ったものを1兆円で受け取って、1兆円になってしまったら、確かにそれをやってしまったら日銀は1兆円もうかってしまいますけれども、そうはならなくて。

どうするかというと、要するに1兆円の紙幣を金庫に入れて、それは資産になるわけですね、日銀の。

で、それが利益にならないように負債の側に1兆円の発行済み銀行券という負債を書き込むんです、バランスシートの負債のほうに。

要するに、その時点で左右バランスするんで利益はそれで出ないんですね、日銀は。

1兆円の紙幣を資産として預かって、それを預かりましたという、預かったことにするんです、

負債にするっていうことは。それ誰から預かってるかというと、別に相手基本的にいないんですね。まあいうなれば、日本国民全員に対して新しい紙幣の1兆円ぶん借とするわけですね。

もともと日銀っていうか中央銀行っていうのは、1兆円っていうのは、紙幣っていうのはただの紙ですから、要するに実体的な価値はないわけですね。だから最初は多分恐らく、その信用のなさから何を持っていたかというと、その1兆円の紙を、まあ1兆円っていうよりも1万円札ですね、を持ってきたときに、いつでもそれをちゃんと実体のある、価値のあるものと交換しますよっていうことで、今度、日銀の資産の部分には、金地金という実際の貴金属というのを資産として持ってたんですね。

紙で発行してるんで、要するに、これは負債として、それを持ってくればいつでもそういう実体の金地金と交換しますよっていう、そういう一応論理立てだったんですけども、実際、今、日銀のバランスシートには、金地金っていうのはもうほとんどないです。一応ちょっとありますけど、ほとんどないわけです。

逆に言うと、日銀のバランスシートの、今度、負債の側、借金の側には、約100兆円の発行済み銀行券っていう負債が入ってます。

それは何かというと、今までそうやって発行し続けてきた、要するに紙幣の履歴なわけですね。100兆円ぶん今まで発行しましたよって、だから100兆円ぶんの現金が世の中に回ってますってことです。

だけど、その100兆円っていうのはもちろん日銀にしてみれば借金なわけですから、要するに、100兆円ぶんの紙幣を発行したときに20円の制作費除いて100兆円近く、99兆8000億円ですか、もうかったかというと全然そんなことはないってことですね。

だから、この国では少なくとも紙幣を発行するときにそんな利益なんか全く挙がらないっていうことですね。だから、日銀が民間だからといってそもそも大騒ぎすることはないということです。

そもそも、それから日銀の政策決定に関してはもちろん株主は一切決定権ないです。議決権が全くないんですね。議決権が全くないから逆に、要するに公開する必要もないわけです。

一般の株式会社が5%ルールみたいなかたちで、発行済みの株式の5%以上を取得するとそれが公開されるのは議決権があるからですね。

逆に日銀は一切議決権はなくて、日銀に対しては、株主は全くないです。

で、政策は誰が決めてるかっていうと、日銀の政策委員会が決めてますね。

政策委員会総裁がいて、副総裁が2人いて、あと、審議員みたいな人が6人ですかね、9人の政策委員会で。

この人たちはどうやって任命されるかっていうと、内閣が任命しますね。
で、国会の承認を得てっていうかたちになるんで、結局、株主一切関係ないです。

だから、よくそういう、あまり仕組みを知らずにそういう陰謀論みたいなものに結びつける人たちがいるんですけど、実際、日銀の株主の半分近くが誰だかわからなかったとしても、僕にしてみれば、だから何なの?って話なんですよね。だから何が問題なの?(笑)、ちゃんと説明してって感じなんですけど、誰も説明してくれません。僕は大した問題だとは思ってません。

それからあともう一つ、それでも日銀っていうのは実は利益を挙げるんですね。

どうやって利益が挙がるかっていうと、日銀は基本的に、例えば国債を大量に買ってますけど、国債の利息だったりとか、その利息収益とかあるし、あと、外貨資産も持ってるわけですね、ドルを持ってアメリカの国債を持ってたりするんで。

それで利益とか、利益っていうのは要するに利息みたいなもの、基本的には利息で挙がっていきます。それで挙がるんですけど、年間、結構そこそこの利益は、1兆円以上挙がったりとかするんですよ。

ただ、それも結局どうなってるかというと、これ日銀法[SM1] を読めばわかるんですけど、日銀法の第五十三条っつうのがあるんですよ。五十三条を読むとわかるんですけど、日銀法の第五十三条の、まず第四項ね。四項は株式の、要するに株を持ってる株主に対して配当がどうなってるかっていうことは第五十三条の四項に書いてあるんですけど、

「日本銀行は、財務大臣の認可を受けて、その出資者に対し」て、これ株主ですね、「各事業年度の損益計算上の剰余金の配当をすることができる。」

まあ配当は出せるってことですね。

「ただし、払込出資金額に対する当該剰余金の配当の率は、年百分の五の割合を超えてはならない。」

要するに5%を超えて配当は出してはならないっていうことになっていて。五十三条の第五項、

「日本銀行は、各事業年度の損益計算上の剰余金の額から、第一項又は第二項の規定により積み立てた金額及び前項の規定による配当の金額の合計額を控除した残額を、当該各事業年度終了後二月以内に、国庫に納付しなければならない。」と。

要するにこれ、もうかったぶんっていうのは、積立金とかあるんですね、準備金っていうのが。

要するに、例えば外貨準備を持ったりとか、外貨の、要するに資産を持っていて、その為替の変動とかあるので、それに備えて積み立てとか準備金ってあるんですよ。

それをやったあとは、結局、余ったお金っていうのは国庫に返納しなきゃいけないってことなので(笑)、それで株価がものすごい上がるとかっていう話にはならないので、そもそもそんなことを、なるんであれば、日銀の株っていうのはジャスダックなんかで誰でも買えることになってるんで、そんなに日銀がもうぼんぼんぼんぼんもうけるような話であれば、それをみんなが買うって話になりますよね、間違いなくもうかるんで。

そんなことはならないのは、結局こういう法律があって、日銀はもうかっても別にその剰余金を国庫返納っていうことで。

だから、45%の日銀の株主が誰だかわからないったところで、別に大した問題ではないんですね。という話(笑)。

通貨発行権みたいな話も、結局、日銀が持ってるみたいなことを、間違ったことを言う人がいますけども、別に日銀は全く通貨発行権は持ってなくて。

結局、通貨発行って今の仕組みを理解すると、誰が通貨発行権を持ってるかっていうと、各民間銀行の融資担当者がみんな一人一人、通貨発行権持ってると思ったほうがいいです。

何でかっていうと、結局、今の仕組みは信用創造という、銀行がお金を貸すことによってお金が生まれるということは、その判断をする一人一人の融資担当者がその権利を持ってるってことですね。

だから、日銀とか中央銀行が通貨発行権を持ってみたいな話は都市伝説というか、もうガセネタというか、

特に中央銀行は通貨発行権なんて持ってません、そういった意味で言うと。今、おっきな通貨発行権を実質的に持ってるのは例えば、あ、ちょっと待って。その前に日銀の役割の話を先にしますね。

日銀の役割は何かっていうと金融調節をやってるんですけど、それはどうやってやってるかというと、結局、金利の上げ下げとか量的緩和みたいなことを最近やってます。金利の上げ下げのほうは簡単なんで先に説明しますけれども、

金利を、日銀はお金の量を、例えば減らすために上げます。
金利を上げると何が起きるかというと、金利が高くなるんで、お金を借りたい人とか借りられる人が減りますよね。そうすると、お金って大体借金っていうのは借りたらみんな毎月返していきますね。それに対して、金利が高くなると、毎月みんながお金を返していくとそのぶんお金が減ってくわけですね。

お金を返すときに実はお金って消える。
お金を借りるときにお金が生まれるっていう仕組みになってるんで、返していくとだんだん減っていきますけど、それに対して金利を上げたときに、要するに金利が高いんで借りる人が減ってくとだんだんお金が減ってくんですよ。

そういう金融調節。

逆に、今度お金を増やしたいときには金利を下げます。
金利を下げると借りたい人とか借りられる人が増えるんで、それに対して銀行がお金を貸していけば、借金を増やしていけばお金が増える。

つまり日銀は何をやってるかというと、あくまでも民間銀行の貸し出しの増減を誘導してるにすぎません。通貨発行権みたいな権利を持ってるわけでも何でもなくて、要するに、あくまでもそれは各民間銀行がその通貨を発行する、そういう権利というか機能を持っていて。彼らが要するに借金を増やしたり減らしたりすることによって世の中のお金を増やしたり減らしたりするっていう、その誘導をしてるにすぎなくて、通貨発行権みたいなものは日銀は持ってません。

あと、それから、これ講演会でも説明してますけれども、ある時期から日本の民間銀行っていうのは民間にお金を貸さなくなってしまって、民間の信用創造による通貨の発行、お金の発行っていうのはあまり機能しなくなってるんですね。それからしばらくどうやって、もう数十年たってるんですけど、どうやってお金を発行し続けてきたかというと、

実は政府が借金をして、それを使ってお金を発行してきたっていうことをやってきたんですね。

これ、今、あんまり時間ないんで詳しくは説明しませんけれども。つまりどういうことかというと、毎年の予算ですね。

政府が予算を組みます。で、それを赤字にします。
赤字にするっていうことはその赤字ぶんを銀行から借りて、銀行から借りてっていうか、新たなお金を作るわけですね、銀行が政府の国債を買うことによって。

それで新たなお金を作って世の中のお金を増やしてきたってことをやり続けてきたっていうことは、要するに、

今、実質的に通貨発行権 誰が持ってるかというと、国会の予算委員会が持ってると言っても過言ではないです。

赤字ぶんっていうのは必ずお金の発行になります。
借金ぶんっていうのは新たなお金を作って政府が使う、ないものを作って使うってことになりますから、それで実は世の中のお金は増えてるんですね。

それが通貨発行、ここ数十年で起きてきた、要するに、政府による、政府の予算委員会による、まあ国会の予算委員会に、もちろん政府が予算案を作ってそれを国会で承認してという、そういうプロセスによるお金の発行っていうのがここ数十年で起きてきた。

ということは、日銀何やってんの?って。

日銀は通貨発行してません、ですから。繰り返しになりますが。だから、

通貨発行権とかいうその権利みたいなものを誰か一部の、何とかチャイルドみたいな(笑)、そういう国際金融家が握っていて、それがすべてをコントロールしてるみたいなのは、もうこれは幻想でしかなくて。

仕組みを知ればそんなことではないっていうことがよくわかります。だから何が問題なのかっていうと、この仕組み、銀行が借金でお金を作り出すという仕組みはもう完全に時代遅れになってしまっていて、そういったことから変えてくっていうことを、私大西つねき、それからフェア党は言っています。なので、皆さんもちょっとそこら辺いろいろ調べていただけるとわかると思うんですが、

日銀が民間銀行だからどうとか、通貨発行権がどうたらということはあまり本気にしないほうがいいです。

基本的にあんまり恐らくわかってないんじゃないかなあというふうに思います。

ということで、この質問、よく本当に講演会のあとに聞かれて、一回一回説明してるので、もう一旦これ動画で作って皆さんに見てもらったほうが早いかなと思って、今回、動画を作りました。


ということで、大西つねきの週刊動画コラム、本日は「日銀と通貨発行権の誤解」ですかね、そんなタイトルだったと思いますが、でお話ししました。
https://www.tsune0024.jp/blog/2019-5-27-vol-80
 

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コメント
1. 中川隆[-14132] koaQ7Jey 2020年1月28日 12:47:56 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-919] 報告
大西つねき氏(れいわ新選組)の演説を文字で読む 現代社会が抱える金融システムの不条理 2019年7月12日
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/12166

岡山駅前でのれいわ新選組の街頭演説(10日)

 参議院選に10人が立候補した山本太郎率いる「れいわ新選組」が全国でくり広げている街頭演説や講演会が話題を集めている。そのなかの1人、元外資系銀行ディーラーの大西恒樹氏(全国比例)が10日、広島市内で講演会を開き、現代の日本社会が抱える金融・経済システムの不条理に焦点を当て、資本主義社会のもとで広がる貧困化、格差拡大、増税などの財政問題について問題提起をおこなった。現在の経済の仕組みを根本から問い直す内容が各地で反響を呼んでいる。大西氏の講演を概括して紹介する(掲載する図やグラフは同氏による提供)。

◇−−−−◇−−−−◇−−−−◇−−−−◇

 日本は世界一のお金持ち国にもかかわらず、7人に1人の子どもが貧困状態にある。私は3年前から地元神奈川県のある高校の図書館カフェでボランティアをしている。そこからは高校生たちの何気ない会話の中からいろんな問題が垣間見えてくる。学校や家庭の悩みに加えて、最近はバイトの悩みなども多く、日本中の企業が驚くほどブラック化していて、5月の10連休に高校生たちは10連勤している状態もあった。さらにはJK(女子高生)ビジネスといういかがわしいビジネスも横行している。そこから聞こえる何気ないSOSを拾って、しかるべき支援に繋げていくというボランティアだ。この子どもたちの一人一人の顔が、私が政治をやる非常に強いインセンティブ(刺激)になっている。

 そこからは、子どもの貧困はさらに悪化していることがわかる。教育困難校といわれる学校に行くと、3人に1人が生活保護だったりする。この世界一のお金持ち国の現実がすでにそうなっている。では、貧困状態にある子どもたちの何がいけなかったのか? それは生まれてきた境遇によるもので子どものせいではない。

 子どもだけの問題ではなく、大人も簡単に貧困状態に陥る状態にある。病気、ケガ、失業、離婚、災害…などでちょっとバランスを崩した瞬間に一気に貧困状態に突き落とされてしまう。そのようなことが簡単に起こる経済、社会の仕組みになっている。

 例えば、2011年3月の東日本大震災。私が政治団体を立ち上げたきっかけは、この大震災だ。当時、私は宮城県石巻市にボランティアとして通っていた。そのとき私はある民主党議員のところで復興支援室でボランティアをしており、民主党政権下だったので民主党の物資倉庫で物資のやりとりを担当していた。

 あるとき石巻のボランティア団体から電話がかかってきた。「石巻エリアで1500人くらいの人が食うのに困っているから、カップラーメンを2万食送ってくれ」という。だがすでに5月末で、みんな避難所にいっていて、そこには食料も物資もあるはずだ。「なぜ?」という違和感があった。すぐに2万食を送ったものの、何が起きているのか自分の目で確かめようと思い、翌日、車に布団を積んで石巻まで走って行った。

 石巻インターを降りると、すぐ左側に巨大なイオンが営業している。店内に入ってみると、土曜日の午後でもあり、人でごった返し商品も溢れている。まったく被災地感はなく、どこにでもある土曜日の混雑したイオンだった。「何かおかしいな?」と不可解さを抱きながら、そのまま沿岸部に向かった。女川トンネルを抜けた瞬間に景色が一変した。ぐちゃぐちゃになった車が積み重なり、ガソリンスタンドの支柱には車が刺さったまま宙に浮いている。そこで案内されたのは、食うに困っている人たちの代表のお宅だった。避難所ではない。被災後、その人たちも一度は避難所に行ったが、そこには限界状態にある人たちがたくさん集まっていて、プライバシーもない過酷な環境だ。

大震災と津波に襲われた後の石巻市雄勝町(2011年4月、本紙取材にて撮影)
 だから、自宅の1階まで水に浸かり、家の半分がぶち抜かれて泥だらけになり、家電製品が使えなくなっていても、自宅の2階に戻って住んでいた方がマシだということで、石巻では約1万世帯くらいの人たちが在宅被災者という形で自宅に避難して暮らしていた。

 実はいまだに同じ状況が続いている。数は少し減っているが、つい2カ月前にNHKが石巻の渡波(わたのは)という地域の在宅被災者のドキュメンタリーを放映していたが、そこはいまだに壊れた自宅に住んでいる。なぜかといえば、家を直すにも1000万〜2000万円かかる。支援金、義援金を合わせても全壊世帯で600万円。住宅ローンも抱えている。当時は被災で働けなくなり貯金を切り崩して暮らしていた。それが「食うに困っている人たち」の真実であり、だからこそ「1食でもタダでもらえるならもらいたい」ということでカップラーメン2万食という救済の声があがっていたのだ。

 その話を聞いたとき、これは震災の問題でもなく、津波の問題でもなく、巨大な金融問題だ、経済問題だと思った。結局、今の金融経済では困っている人たちのところにはお金がいかない仕組みになっている。

 おそらく他の理由でも同じようなことが起こる。病気、ケガ、失業、離婚…そういう理由で全国津々浦々で経済的に困る人が必ず出る。経済の仕組みがそうなっている。これから大きな問題になるのは高齢者の貧困だ。年金が足りず、2000万円の貯金がなければ大変だといわれているが、そんな額が簡単に貯められるものではない。当然、高齢になると病気もケガもしやすい。そのときに十分な貯金がなく、年金もわずかで、働くこともできなければ、もう誰も助けてくれない。そうやって一気に貧困に突き落とされ、誰にも知られることなく孤独死したり、将来を悲観して自殺するようなことが簡単に起きる。全国津々浦々で日常茶飯事のように起きることが容易に想像できる。

 高齢者だけではない。若者たちもちょっとバランスを崩したり、引きこもったり、いろんな理由で一気に貧困に突き落とされる人がたくさん出る。これも経済の仕組みに起因している。

豪雨災害に見舞われた広島県呉市天応地区(2018年7月12日)

3年たちながら仮設住宅暮らしを強いられている熊本地震の被災者たち(2019年4月、益城町)
お金に支配される本末転倒な社会

 私はもともとJPモルガンという銀行にいて、今の金融システムのど真ん中で働いてきたので、その仕組みがいかに残酷で、いかに格差拡大的であるかを身をもって体験している。震災の光景を見ながら、根本的な原因は金融システム、経済の仕組み、資本主義というような私たちの考え方、生き方にあり、これを根こそぎ変えなければ解決できないと感じた。これを根こそぎ変えるために政治団体を設立した。なぜかといえば、そんなことをいっている政治家も政党もどこにもいないからだ。今の金融経済がおかしい、今の金融システムがおかしい、資本主義はそろそろ限界だ、などといっているような政党はいまだに皆無だ。誰かがそれを大きな声でいい出して、新しい勢力をつくらなければダメだと考えた。

 むしろ、今の仕組みがおかしいということは、国会の中の人たちよりも、その外にいて毎日一生懸命働いても働いてもちっとも楽にならないという人たちの方がはるかに実感している。だから、そういう人たちに、今何が起きていて、何が本当の原因で、何が問題なのかをひたすら伝え続けて納得してもらい、その人たちの気持ちを集めれば必ず後で大きな数となり、本当に政権をとって国をひっくり返す。その先に今の仕組みを根本的に変えることができるだろうと思い、政治団体を設立した。

 2011年の被災地で、私の堪忍袋の緒を切った出来事がもう一つある。5月末か6月ごろ、石巻エリアで巨大な建物が建設され始めた。なぜ被災地にこんな巨大な建物をいきなり建てるのだろう? と思ったが、これはきっと病院や、当時泊まる場所がなくて寝袋を持ってきていたボランティアが寝泊まりできるような復興の手助けになる施設ができるのではないかとワクワクして見ていた。何カ月か後、初めてそれが何かがわかったときに衝撃を受けた。二つとも巨大なパチンコ店だった。自分の中で何かがブチッと切れた。

 確かに今の金融経済では、お金は物凄いスピードでもうかるところへ移動する。困っている人のところにはお金はいかない。もうからないからだ。ある人はいうかも知れない。「当たり前だよ。それが金融資本主義だから」「そういう仕組みだから」と−−。だが、それを「そういう仕組みだから」という理由で鵜呑みにし続けていいのだろうか。困っている人を助けるためにどうすべきかを考えなければいけない。お金も経済の仕組みもそのためにあるべきだ。その本質が忘れ去られ、いつの間にかカネ、カネ、カネの社会、経済になってしまっていることから変えなければ、人間の生き方や人生までおかしくなってしまう。私は、生きて働いて、死ぬときに「何をしたのか?」という自問に答えられないような人生を送ってしまうことに気付いたとき、絶対にこれを変えてやると思った。お金に支配された社会、経済を根こそぎ変えなければ、個人の心の自由も、自分の人生における時間をどのように使うのかという基本的な人権も奪われ続ける。

 週に5日も6日も会社の上司や株主など金持ちのいうことを聞かなければいけない生活を強いられ、場合によっては残業をやらされ、わずかに残った自分の時間だけ自由に過ごせるという人生を30年、50年続けて、最後には何のために生きていたのかわからない状態になるほど歪んでしまっている。自分でコントロールできるはずの時間を一人一人に返さなければいけない。奪われてしまっている時間の解放は、金融経済を変えることによって可能になる。これは未来の子どもたちにとっても非常に不公平な仕組みだ。ひたすら作って、消費して、壊すというサイクルを続ければ地球の環境も悪化し、あらゆる種を絶滅に追い込んでいくことになる。これを根こそぎ変えるには、国家経営の間違いも含めてまったく新しい社会を描かなければいけない。それは世界を変えることでもあり、そのために日本だからこそできることがある。

世界一の金持ち国で340兆円のタダ働き

 冒頭にいった「日本は世界一のお金持ち国」であるという事実はあまり知られていない。だがこれは紛れもない事実だ。主要国の対外純資産【表参照】を調べると、日本はプラスの341兆円で1位。ドイツが2位、中国が3位。そして、アメリカ合衆国がなんとマイナスの1076兆円。日本はこの数十年間不動の1位だ。かたやアメリカは不動の最下位。世界中から借金をしている世界一の借金大国だ。トランプのディール外交というのは、この莫大な借金を解消するために米国製品をひたすら売る。とくに日本に対してポンコツのオスプレイとかGMO(遺伝子組み換え生物)食品、F35、詐欺まがいの金融商品とか、バカ高い医薬品とか、とにかく何でもいいから日本に買わせて世界一の日本の資産を奪っていこうとするものだ。中国に対するプレッシャーも、3位にいる中国人に25%の関税をかけ、「アメリカに売ってばかりでなくて買え」と圧力をかけているのが米中貿易摩擦だ。トランプの政策はとても単純だ。世界一の借金を負っているから少しでも米国製品を売ってそれを解消しようとしている。

 では、日本はなぜこれほど大きな資産を持っているのか。それはみなさんがこの30年間黒字を稼ぎ続けてきた結果だ。日本は戦後復興を貿易立国、輸出主導型でずっとやってきた。海外に製品をたくさん輸出し、輸入を少なく抑えることで黒字を稼いだ。その結果たまった黒字341兆円は、実際には3兆jの外貨で円ではない。国際決済はドルでやってきた。原油もドルで買うし、輸出の代金もドルで受けとる。だから黒字もドルで貯まる。アメリカの1076兆円の赤字も円ではなく、約10兆jのドルを借りている。そのドルは黒字国が貸している。

 では、なぜ世界一の黒字を稼いでいるのにみなさんにその実感がないのか。それはこの稼いだ3兆jがみなさんのために使われないからだ。この黒字は使わなければただの紙切れだから当然投資する。ドルならドルを使うアメリカに投資する。この3兆jはその国で使われる。労働者の賃金を払い、つくった製品も国内に提供し、米国内で循環する。日本には入ってこない。黒字が増え続けたとしても海外投資になるため日本のみなさんは受けとれない。だからまったく実感がない。家庭に例えるなら、親が「わが家は世界一金持ち」といいながら稼いだお金を全部貯金して使わなければ、子どもは「嘘だね。何も買ってくれないじゃないか」というだろう。それと同じ状態で、何一つ受けとれていない。

 それどころか、この30年間みなさんはとんでもない働き方をさせられてきた。1971年から2016年までの為替レート【グラフ参照】を見るとそれがよくわかる。1971年には1j=360円だった。これが今は110円くらいになっている。円の価値が3倍になり、ドルが3分の1に下がっている。その契機が1985年のプラザ合意だ。

 プラザ合意とは、ニューヨークのプラザホテルでG5(主要5カ国)が集まって、各国の協調介入でドルを下げることを決めた合意だ。なぜかといえば、当時のレーガン米政権は「強いアメリカ」であるための「強いドル政策」をしていた。強い自国通貨のドルで労働者に高い給料を払えば、その国の労働者がつくった製品は高くなる。そのかわりに、逆に海外からは物を安く買える。自国の通貨が高いため、輸入ばかり増えて、輸出はしにくくなり、その結果大赤字を抱えた。一方、戦後復興を輸出主導型でやってきた日本と西ドイツはともに戦敗国であり、戦後賠償もあったので輸出で稼いで貿易黒字が続いていた。アメリカは「いい加減に黒字を稼ぐのをやめろ」といって、西ドイツのマルクと日本の円の為替レートを上げることによって、これらの国の黒字を減らしてアメリカの赤字を減らそうとした。

プラザホテル
 その結果、プラザ合意前夜に1j=230円だった為替レートが、2年以内で一気に1j=120円にまで真っ逆さまに落ちた。ほぼ半額のドル安、2倍の円高だ。簡単にいえば、1j=200円が100円になった。日本の輸出企業にはたいへんな事態で、今まで200円のコストで作っていたものが1jで売れていたのに、2jで売らなければならない。海外からすればまったく同じ製品が値段が2倍になるため、日本製品は高すぎて買えないということになる。逆に、海外からの輸入では2j(200円)していたものが1j(100円)で買えるようになる。輸出がしにくく輸入がしやすいので赤字になる可能性がある。つまりアメリカに「日本の貿易収支を赤字にしろ」と要求されたのがプラザ合意だった。

 日本は何をしたか。確かにバブルの3年間はそれをやって金融緩和でお金を回し、みんながそれを使って遊んだので輸入が増えて輸出が減った。それで黒字が少し減った。だが、バブルが崩壊して景気が悪化すると、何とか景気を回復させようとした。

 日本の経済構造は輸出企業が中心だ。彼らはコストカットを始めた。1j=200円のときに200円でつくっていたものをそのままのコストでつくったのでは円高で値段が倍になって売れない。それなら、今まで200円でつくっていたものを100円のコストでつくれば、これまで通り1jで売れるという話だ。要するにコストをカットすればなんとか売れる、売るためにコストをカットする、ということを景気回復のためにひたすらやってきた。

 だが、コストとは、そのまま誰かの売上であり給料だ。それを30年もずっと削り続けて3兆jも稼いだわけだ。半分のコストでつくるといっても人間が2倍の速度で働けるわけもなく、要するにコストカットの名の下に、みなさんが受けとるべき給料や代金がちゃんと支払われなかったということだ。これが支払われていたら製品の値段は上がるので、輸出が伸びず、3兆jも資産は増えなかったかもしれない。つまり、みなさんが自分の身を削り、無理矢理安くつくって、3兆jの黒字を稼いだということだ。胸に手を当てて考えてみてほしい。日本で横行しているサービス残業とは何か。働いているのに給料がもらえないということだ。海外の労働者にしてみれば狂気の沙汰だ。

 この3兆jはみなさんが受けとらなかった分であり、みなさんのタダ働き分だ。現在は1j=110円だから330兆円、1j=200円だったことを考えると600兆円だ。これだけの給料を受けとらないまま、それだけのタダ働きをして世界一の3兆jの黒字を稼いでしまった。しかも、その3兆jはほぼ海外に貸しっぱなしでみなさんは受けとれていない。

 今アベノミクスの賃金偽装疑惑みたいなもので、「実は賃金が〇・何%低かった」というような細かい話をしているが、いかにみなさんが受けとるべき給料が受けとれていなかったかは、もっと大きなデータを俯瞰して見ると一目瞭然だ。

お金の量は5倍に増えたのに給料は削減

 ここに1980年から2018年までの4つのデータ【グラフ参照】がある。すべて日銀からとってきたデータだ。4本の線のうち、マネーストックM2というのは、日本中の現金・預貯金(ゆうちょ銀行や農協に預けたお金を除く)をすべて足した額だ。つまり、日本には今お金がいくらあるのかという数値だ。

 1980年にはマネーストックは200兆円だった。それが2018年には1000兆円を超えている。このあいだに5倍に増えた。私が就職した1986年のマネーストックは340兆円だった。このとき私が会社から受けとった初任給は20万円だった。そして、私の息子が就職した2017年のマネーストックは990兆円。息子の初任給はまったく同じ20万円だった。31年たってお金が3倍に増えているにもかかわらず、大学生の初任給は変わっていない。私は外資系金融機関だったので他よりちょっと高かったかもしれないが、それほど極端な金額ではない。600兆円のお金が増えながら、この30年間ほとんど給料は上がっていないという話だ。ではその600兆円はどこにいったのか? みなさん薄々気づいているだろう。日本の大企業の内部留保は600兆円とか、500兆円といわれる。

 この内部留保は、会社が従業員に給料を払うのをやめて、安い法人税を払うと溜まる仕組みになっている。もちろん内部留保は全部現金ではないが、その資産はお金があったから買えたものだ。

 対外資産の3兆jはみなさんに支払われなかったものだと考えると、この30年で日本の企業というのは給料を払うのをやめたということだ。昔の日本の企業は「三方よし」などといわれ、従業員、お客様、株主みんなのためにあったはずだが、小泉・竹中改革あたりから政財界は「会社は株主のもの」という明確な答えを出した。利益を上げるのがよい経営者で、利益を上げないものはクビになる。ひたすら株主のために利益を上げ続けるし、そのために従業員の給料はひたすら削り続ける。みなさんは削るべきコストだ。人間をコストとするのが今の企業経営になっている。そういう仕組みの中で、法人税を下げたり、株式売買益に対する課税が極端に低かったりする。すべて一部の株主のためだとしか思えないような国家経営をずっとやっている。

 この30年間、間違いだらけの国家経営をしてきた。現在の自民党政権がやり続けてきたことだ。だが問題は、この間違いをどの野党も指摘できていないことだ。わかっていないもの同士のプロレスごっこが続いている。私がれいわ新選組から立候補したのは、真実を知らせて彼らの無能を理解してもらい、外に新しい勢力をつくって中に殴り込みをかけるしかないということをわかってもらうためだ。

GDPが上がればよいか 国民の幸せは置き去り

 彼らには、国家経営という概念すらない。強いていえば、「GDPを上げる」「株価を上げる」という浅はかな答えが返ってくるだろう。みなさんが幸せになった結果、GDPや株価が上がるというなら別に悪くないが、これが目的になってしまうと完全に本質を見失う。

 残念ながらこの国の首相は就任した途端に「GDP600兆円」みたいなことをいっていた。そのための「一億総活躍」だ。みんなが活躍して稼げばGDPが上がる、それがみなさんの幸せと信じて疑わないという浅はかな思考の持ち主がこの国の首相だ。

 経済成長の目安にされているGDP(国民総生産)とは、1年間にどれだけのお金が動いたかというだけの指標だ。今までお金の交換でなかったものをお金の交換にすれば上がる。例えば、子育てを保育サービスにするとGDPが上がる。母親が保育料を稼ぐために外に働きに出るとGDPが上がる。それで時間がなくなったから、自分でつくっていたご飯を外で買ってくるようになればGDPが上がる。介護も同じだ。そうしたい人はそれでもいいが、子育てや介護のために自分の手を掛けるとGDPは上がらない。

 GDPとは、消費+政府支出+投資+純輸出だ。純輸出とは、輸出から輸入を引いた差であり、黒字になればプラスで、赤字になればマイナスだ。日本の戦後復興はこの純輸出をプラスにするところからはじまった。焼け野原で資源もないから、まず資源を輸入しなければ生産ができない。輸入するにはドルが必要になる。だからドルを借りて資源を輸入し、それを加工して輸出して黒字を稼ぐとそこからドルを返せた。黒字をたくさん稼ぐと輸入がさらに増やせた。戦後はなにもないから、原材料を輸入してたくさんつくっても飛ぶように売れた。純輸出が増えれば消費が増え、たくさんつくるための投資も増え、政府支出も増える。全部がプラスだからGDPはずっとプラスだ。これで戦後復興を30年、40年ずっとやってきた。その結果、何も考えなくなり、GDPがプラスならいいと思い込み、そこで政治家も官僚も思考停止してしまった。

 戦後復興はそれでよかったが、1985年のプラザ合意でアメリカから円高にされても基本的にやっていることは変わらない。そして、純輸出を上げるためにみなさんの給料を削った。それで売って稼いだ3兆jの黒字は海外に貸しっぱなしで、みなさんの幸せは置いてけぼりになっている。

 売上や給料を削ったために、みなさんが好きなように消費し、自由に時間を使うことができない。それで消費が伸び悩んだとしても、輸出を維持し、作るための投資をし、政府が赤字を垂れ流しながら支出を続ければ、差し引きでGDPはプラスだ。これで「経済成長してます」「政治はうまく機能しています」と政治家も官僚も大手マスコミもずっと言い続け、野党もこれを指摘できない。経団連は輸出企業の塊みたいなものだが、これらが巨額の献金を自民党にすれば輸出企業に有利な政策をする。それによって労働者の幸せなどはとうの昔に置いてけぼりだ。これがこの30年間の日本の国家経営だ。

 いまだに東京五輪をやって外国人にお金を落としてもらえば経済が活性化し、GDPがあがるなどという。五輪で観光客が来たところで落とされるのは外貨であり、輸出と変わらない。いくら黒字を稼いでも海外に貸しっぱなしになって受け取れない。TPP(環太平洋経済連携協定)でも「これで日本の輸出が伸びる」という。そんなことをやってもみなさん幸せになれないことは30年間で証明されているにもかかわらず、いまだにそんなことを言っている。それに対して新しい提言をすべき野党が同じかそれ以下のレベルだからずっとこれが続いている。

 黒字を稼いでも使わなければ意味がない。どうやって使うかは簡単だ。政府がお金を作って配る。1人100万円でいい。あくまでこれは、れいわ新選組の公約ではなく私個人の持論だ。4人家族なら400万円もらえれば現役世代は使うだろう。働く時間を減らして、その分遊ぶ余裕ができれば、消費が増える。消費が増えるから資源の輸入が増える。生産が減るので輸入が増える。もしかしたら赤字になるかもしれないが、むしろ赤字にしなければいけない。赤字にすることが黒字を使う唯一の方法だからだ。政府が国家経営を誤ったために支払われなかった3兆jを「黒字還付金」として国民に配る。1人100万円を1億3000万人に配っても130兆円。タダ働き分の3分の1に過ぎない。それでも赤字がたいしたことなければ1人あたり8万円のベーシックインカムを2年くらい配ることだってできる。これは実は日本だからできることだ。日本がタダ働きで品質のいいものをつくると世界が迷惑する。黒字が出るということは、どこかが赤字なのだ。この構図が続くことは持続可能な社会とはいえない。

借金でお金をつくってきた現代の経済システム

 もう一つは、財政金融の考え方を根本的に間違え続けてきた。政府の借金が大変だから税金でそれを返し続けなければならないとか、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の達成、つまり税収の範囲内で支出を抑えなければならないという発想だ。財務省をはじめ大手メディアもずっと言っている。これは全部大ウソ、大間違いだ。なにもわかっていない人の世迷い言でしかない。

 実は政府の借金とは、政府の無駄遣いのせいでも、税収が足りないせいでもない。もっと根本的な原因はいまのお金の発行の仕組みにある。いまのお金の発行の仕組みを続ければ、世界中のほぼすべての国は赤字(借金)まみれになるという帰結になる。そのお金の発行の仕組みを続けている限りは政府の借金問題は絶対に解決しない。

 では、「お金の発行の仕組み」とはなにか。日銀券だから日銀が発行していると思っているだろうが、それではつじつまが合わない。お金がどれだけあるのかは、さきほど見たとおり1980年に200兆円だったものが現在1000兆円を超えている。800兆円以上のお金が増えている。みなさんがお金だと思っている日銀券は、日本中の紙幣をかき集めても100兆円にもならない。誰がどう見ても計算が合わない。お金の量は1000兆円を超えているのにお札は100兆円しかないのだから。

 では、どうやって800兆円も増えたのだろうか。現金・預貯金の総額であるマネーストックM2というのは、日本中の個人や企業が自分のお金だと認識しているものを足したものだ。みなさんも自分のお金は財布の中だけでなく、預金通帳の中にあるものも含めて自分のものだと思っているだろう。1000兆円あるうち100兆円しか紙幣がないということは、ほとんどが預金でしかないということだ。実際には存在しておらず、あると勘違いしているだけだ。では、どうやってその勘違いが生まれるのか。それがいまのお金の発行の仕組みの正体だ。

 現代のお金の増やし方=信用創造の仕組みを説明する。

 例えば、Aさんが100万円をA銀行に預けに行ったとする。するとA銀行は金庫に入れ、運用もする。銀行には預金準備制度というのがあり、預かった預金のごく一部を日銀に預けなければいけない仕組みになっている。仮に預金準備率が1%とすると、100万円の預金を預かったA銀行は100万円の1%(1万円)を日銀に預けて、残りの99万円を貸すことができる。私がA銀行にお金を借りに行くと、銀行は必ず口座を持たせる。なぜかといえば私が99万円を借りると私の預金通帳に99万円と書き込むだけだからだ。これで私は自分が99万円を持っていると思う。Aさんも口座に100万円持っていると思っている。その時点でお金は199万円に増えている。ただ私は借金だからあまり自分のお金とは思えない。

 だが私がB銀行の誰かに99万円を送金してしまえば、それを受けとった誰かはその99万円を純粋に売上か給料かわからないが自分の預金として認識する。これがもともと私の借金であるかなど知らないし、気にもしない。晴れてめでたく、Aさんの100万円の預金は99万円の預金とあわせて、もともと100万円だったお金が199万円に増えることになる。新たに99万円を預かったB銀行は、そのうち1%の9900円を日銀に預け、98万100円をまた誰かに貸すことができる。また同じことが起きる。これをC銀行の誰かに送金すれば、その誰かは98万100円を純粋に自分の預金と認識し、これを預かったC銀行はまた1%(9801円)を日銀に預けて、残りの97万299円を誰かに貸すことができる。もうこの時点で、私の99万円を受けとった人は99万円を持っているし、これを借りて送金した相手は99万100円を持っていることになる。もともとお金を預けたAさんはお金を1円も動かしていない。預金通帳に100万円と書かれたまま。だがお金は300万円に増えている。

 これをぐるぐるとやっているうちに、貸せる金額は1%ずつ減っていくが、100万円の元預金÷預金準備率1%=1億円までお金を作り出すことができる。これが信用創造という現代のお金の発行の仕組みだ。こうやってお金が増えている。その結果、みなさんそれぞれが1000兆円持っていると勘違いしているという状態だ。実際にはもっていないのだから勘違いにすぎない。実際に存在しているのではなく、銀行が誰かに借金を貸すことによって作り出した数字が電子的に回ってきて、それをみんながお金と認識し、自分のものだと思っている。みんなが一斉に銀行にお札を取りに行っても金庫にお金があるわけではない。

拡大し続ける巨大なイス取りゲーム

 「借金でお金を作る」――この仕組みが意味することは、借金を返すとお金が消えるということだ。最初に私が99万円借りたときには、99万円のお金を作り出し、それを使うこともできる。だが私が返せないかもしれない…と弱気になってすぐ返したとする。返した途端に相殺してお金も消える。仮になんとか借り切ってなにかに使ったとすると、私の手元に残るのは99万円の借金だけだ。もし1年ローンだとすると、1年以内に99万円を世の中から集めてこなければ私はたいへんなことになる。だから1年後に99万円を集めて借金を返すと、同時に世の中から99万円のお金を消して自分の借金を相殺して消すことになる。これはすぐに返しても1年後でも同じだ。

 これが意味するものは、現代のお金はほとんどが借金で生まれているということだ。だからみんなが借金を返してしまえばお金が消える。つまりみんなが借金を返してはいけない仕組みなのだ。ただ、だからといって銀行からお金を借りて「お金を返したらお金が消える仕組みだから返さない」といっても銀行は納得しない。必ず返せという。だからみんな毎月返済する。その分お金は消えている。でもお金が減らないのは、その分誰かが借りているからだ。誰かが返せば、誰かが借りて新しいお金を生むという自転車操業だ。返した分、誰かが借り続けなければいけない。

 しかも問題は、元本分だけ返すのではなく利息が付く。私も99万円返せばいいのではなく5%の利息なら104万円返さないといけない。借金によって元本分しかお金は生まれていないのにそれ以上のお金を集めようとする。それで何が起きるかといえば、お金が足りなくなる。発行されていないのだから−−。

 例えばこの部屋に100人いたとして、1人100万円ずつ銀行からお金を借りて経済を回すとする。それぞれの銀行口座に100万円と記入されてスタートだ。みなさんがマッサージでも占いでもそれぞれサービスを交換し、お金を払ったり、貰ったりして経済を回す。1年後に100万円ずつ借金を返さないといけない。返してしまえばお金は消える。ここに5%の利息が付けば、みんなが1年後までに105万円ずつ集めようとするとお金が足りない。100万円×100人=1億円のお金しか回っていないのに、利息を含めて1人が105万円返そうとすると500万円足りず、必ず誰かが破たんする。いまの金融システムは巨大なイス取りゲームなのだ。

 みんなが破たんせずに105万円を返済するには、あと500万円が余分に必要だ。そのためには誰かが借金をする必要がある。ここにもう5人いて100万円×5人=500万円の新たな借金が生まれ、それがみなさんのところにいけばめでたく利息も返済できる。だがそのときはお金が消えている状態で、この5人の手元には500万円の借金しか残らない。この人たちが返すためにさらに5人が必要になる。そして、もともとの1億円のお金があった状態に戻すためにはもう一部屋必要になる。100万円お金を借りる100人だ。つまり、どんどん部屋が大きくなって増えていかなければ回らない。

 人口が増え続け、借りる人も増え続け、その人たちが必要とする価値(いろんなサービスや製品)が増え続け、作れば売れ続けるような高度成長期のような状態が続けばいいが、そう長くは続かない。経済成長は必ず止まる。借金でお金を増やし続けなければいけない経済も必ず立ちゆかなくなる。

「政府の借金=お金の発行」 という仕組み

 では、実際どうなったのかを先ほどのグラフで見てみたい。日本の現金・預貯金の総額である@マネーストックが200兆から1000兆円へと5倍に増えている。右肩あがりに堅調に伸びているのは、お金と借金が増え続けなければいけない金融システムだからだ。お金を作るために作った借金に利息が付いてどんどん返す金額が増え、それを返すためにどんどんお金が必要だったといことだ。当初は、青い線のB民間銀行貸出が並行に走っており、借金がお金を作っていたことがわかる。

 ところがあるときを境にこの2つの線が乖離していく。CGDPが増えなくなり、すっかり横ばいになる。そうすると銀行は誰に貸し続けるのか。1億3000万人しかいないのに同じ人たちに対して永遠にお金と借金を増やす続けることなどできない。B民間銀行貸出が下がっていくのは、それが実際にできなかったというデータだ。

 バブルが崩壊してから銀行は不良債権を処理し、貸しはがしや貸し渋りで実は100兆円近く貸し出しを減らしている。貸せる相手が見つからないから、その後も伸ばせていない。貸さないが、いままで借りた人は「返せ」といわれて返し続けるから、だんだんお金は減っていく。新たな借金がなければお金は減る。

 だが、@マネーストックはまっすぐ増えている。では、誰が借金をしているのか。答えは赤い線A国債残高だ。民間銀行がマネーストックを支えきれなくなってから急激に日本の国債残高が上がり、いまや並行して上がっている。つまり、政府が借金をしてお金を発行し続けたということだ。民間の借金にかわって政府の借金でお金を作ってきたということだ。これはすべて日銀のデータだ。その気になれば誰でも引っ張ってこれる。みごとに政府の借金がお金を作っていることが証明されている。

 いまや1000兆円のみなさんのお金に対して政府の借金は900兆円だ。この900兆円を返すために900兆円の税金を集めれば、みなさんの預貯金はほとんどなくなる。政府が借金でお金を作っているのだから、政府が返済すればマネーストックも道連れにして下まで下がっていく。だから政府の借金がたいへんだから税金を上げなければいけないとか、消費税を上げなければいけないというのは全部大ウソだ。まったくあり得ない世迷い言でしかない。プライマリーバランスも同じだ。でもそれを政府もマスコミも言い続けている。

政府の借金を税金では消せない

 政府の借金でお金を発行するというのは、どういうメカニズムなのか。日本の政府の一般会計における税収は年間約50兆円だ。例えば、政府が50兆円の税収を集めれば、みなさんの預貯金が同額減る。それに対して50兆円の予算を組んだとすると、政府の予算というのは公務員給与とか政府支出で民間に行く。集める相手と渡す相手が同じ人とは限らず、ひどく不公平なこともあるだろうが、経済全体としては50兆円の税金を集めて50兆円使うことによって、みなさんに50兆円戻すことになる。基本的には「行って来い」の差し引きゼロだ。

 もし70兆円の予算を組んだとすると、みなさんから50兆円集めたうえで、政府は借用書(国債)を書いてそれを銀行に買わせる。銀行がそれを買って20兆円を政府に払う。この20兆円はみなさんの預金から出ていることになる。だが、政府の借金を銀行が買うからといって、みなさんの銀行の預金残高は1円も減らない。減れば誰もが怒るだろう。

 そうならないのは、銀行は20兆円分のお金をつくって政府に貸しているからだ。先ほどの例えでAさんが100万円の預金をし、僕が99万円を借りるときにAさんの預金が減らないのも、銀行が99万円をつくって貸しているからだ。政府が銀行に借金をするときも同じ事が起こる。そうすると、政府は集めた税収50兆円に加えて20兆円分の新しいお金を手に入れて、70兆円を政府予算で使う。

 そうすると最初の50兆円の税金を払ったみなさんは、70兆円戻ってくるので差し引きで20兆円分増えている。受けとっている実感はなくても誰かが受けとって、そのお金がぐるぐるまわって全体としてみなさんの預金を20兆円増やしている。この20兆円と政府の借金20兆円が同じなのは偶然でもなんでもなく、両方が並行して上がっていく。だからグラフもその通りになっている。これが政府の借金でお金を増やすメカニズムだ。

 では逆に政府の借金を税金で返すというのはどういう意味か。例えば、政府の借金を返すために税収を70兆円に上げたとする。みなさんのお金が70兆円減ってしまうが、その後に50兆円の予算しか組まなければ、差し引き20兆円みなさんのお金が消えてしまう。どこに行くかといえば、それは政府の黒字だ。その黒字で借金を返すので、政府の借金とみなさんのお金を20兆円分相殺して消す。借金を返せば、その分のお金が世の中から消えるのは当然のことだ。これをずっとやれば政府の借金は減るが、そのかわりみなさんのお金もほぼ消えてしまう。論理的にありえない話だ。当たり前のことなのだが、ずっとわからないままやり続けて、ようやく去年ぐらいからMMT(現代貨幣理論)が話題になりはじめた。

 現代貨幣理論とは、政府が借金をしてお金を発行し続ければいいという話だ。まさに日本が数十年間やっていることだ。必ずこうなる当然の帰結だ。政府の借金でお金を発行し続けたのだから−−。そうでなければ回らない金融システムだ。民間の信用創造、民間の借金によるお金の発行は必ず頭打ちになる。地球は一個しかないのだから、経済成長は必ず止まる。お金と借金を増やし続けるようなことが続くはずがない。この金融システムを維持するために誰かが借金をし続け、お金を発行し続けなければ立ちゆかない。最後まで借り続け、1円も返さなくても借り続けられる政府が借金をし続けてお金を発行し続けなければ、今の金融システムを維持する方法はない。

 だからMMTとは、この仕組みをただ単に認めたということに過ぎない。仕組みの結果を認めただけで解決策ではない。そのままそれをやればいいという話ではない。私のことをMMT論者だと誤解している人もいるが、それは間違いだ。

 なにが根本的な問題なのか。それは、借金でお金を発行する仕組みそのものだ。このまま借金を続けることは大きな問題があり、政府の国債のもとに年間9兆円もの利息を発生させている。利息とはお金を持っている人がお金を増やす仕組みだ。持っていない人にお金を貸してもっとお金を貰う。年間9兆円だ。日本政府の国債のもとに30年間で300兆円以上の利息が発生している。つまりそれだけお金を持っていない人からお金持ちに所得が移転されているという話だ。なぜお金という公共のもの(それがなければ経済が回せないもの)をつくるのに利息が発生し、その利息が富める者を富ませ、貧しい者から奪い続けるのか。こんなものは社会にとって意味がない。

政府通貨という発想

 唯一の解決策は、誰の借金でもないお金を政府が責任をもって発行することだ。早くこれに気づかなければ所得の移転が進み、いまの金融経済そのものが巨大な格差拡大マシーンになっていくし、すでになっているということだ。

 私が考える政府通貨とは、1兆円紙幣でいい。この1兆円×130枚を日銀に預けるとする。それを日銀は金庫に入れて、政府の預金口座に130兆円と数字を書き込む。あとはそれを普通にみなさんに送金すればいい。1人100万円ずつ。みなさんの預金口座50万円だったものが150万円になる。それを使うときにはいままで通りに送金したり、1万円札で引き出せばいい。政府貨幣が現行の貨幣と混同されることはない。政府貨幣1兆円は日銀の金庫の中に入ったまま二度と出てこない。それならスペースを取らない1兆円札でいい。

 政府の借金を消すときも、政府が1兆円紙幣を900枚作ればいい。それを日銀に預けて金庫に入れると、政府預金口座に900兆円と書き込まれるだけだ。あとは、それをお金を貸してくれる人に返せばいいが、政府の借金はほぼ銀行がまかなっている。銀行が国債を山ほど持っていた。「持っていた」と過去形にしたのはアベノミクスの異次元金融緩和で、日銀が銀行から山ほど国債を買ってしまっている。半分以上の500兆円ほど買ってしまっている。それでなにが起きたかといえば、なにも起きていない。インフレにもなっていないし、金融的になにも起きていない。それなら全部買ってしまえばいい。

 それで何が起きるかといえば、日銀の金庫の中に900兆円の国債が入っている。これは政府に貸している分だ。日銀の政府預金口座に900兆円があり、政府が借りた900兆円の国債と政府から預かった900兆円が同じ日銀の中に両方あるという状態になる。相殺して消してしまえばいい。これを消したところでみなさんはなにも感じない。おそらく蝶が羽ばたいたくらいの感覚しかない。

 だが、このバタフライ・エフェクトは必ず大きな変化を起こす。なぜかといえば年間9兆円発生していた利息が消滅する。この30年で300兆円もの所得を移転してきた巨大な格差拡大マシーンが止まる。誰が一番困るかと言えば、それでもうけ続けてきた銀行だ。銀行はこの仕組みによって、いままで900兆円、半分買われて400兆、500兆円という利息を得てきた。それが買い取られていきなり現金に変わる。だから収支を圧迫しており、いまや青息吐息だ。日銀は銀行から国債を買って、銀行に「民間にお金を貸しなさい」とプレッシャーを掛けている。それは銀行がお金を貸してはじめてお金が生まれる仕組みからだ。これが金融緩和の本質だ。でも、それができていない。つまり日銀も大したことはやれていないということだ。日銀から全部の国債を買われてしまうといくつかの銀行は潰れる。いろんな手当てをしたうえでやっているが、原理はそういうことだ。このように考えると国家経営も根本的に変わっていく。

忘れ去られている税制の本質

 税金とはなにか。ほとんどの人が、使うために必要だから集めると思っている。実際には、日本政府はこの50年間ほとんど赤字でやっている。前回の東京五輪の翌年に建設国債を発行してから、何年かの例外を除いてずっと税収よりも多い予算を組んで、足りない分を政府の借金で賄ってやってきた。足りない分お金をつくってきたし、それができていた。それができるなら別に集めなくてもいい。全部借金でお金を作って使うこともできる。本当は使うために集めているのではない。

 だから無税国家にすることも可能だ。政府通貨でお金をつくって全部の政府支出を賄えばいい。税金をゼロにするとみなさんが余計にお金を手にして余裕が生まれ、働く時間を減らし、そのお金と時間を使って休んだり、より文化的な生活が送れる。すると消費が増え、輸入が増える。赤字になるかもしれないが、もしそれで大した赤字にならなかったら、そのまま無税国家ができる。日本は世界一の黒字国だから赤字にしていい国なのだ。

 ただ、だからといって税金をゼロにすればいいとは思わない。税金にはもっと大事な、思想の反映とか国家の形をつくるという側面がある。つまり税金は使うために集めるのではなく、国の形をつくるためにある。それはわれわれの考え方に従って決めるものだ。

 例えば、所得税が累進課税になっているが、これはお金持ちから余計にとって貧しい人に回していく。これは「所得の再配分」という思想の反映だ。ある程度所得を平準化させて格差を縮めるということだ。みなさんがそのような社会を望むからそう決まっている。

 相続税を0%にするか、100%にするかも明確に思想が違う。相続税0%ならばお金持ちの家庭は子や孫もお金持ちという富の格差が世代を超えて続く。100%にすれば富の格差は一代でなくなる。みなさんがどちらの社会に住みたいかによって、その思想を税制に反映させればよいものだ。それによって税制も税金も変わっていくし、それこそが政治の本質だ。

 このような税制の本質を忘れ去って、お金が足りないから課税する、政府の借金が大変だから消費税を上げる…という、お金を集めるためのつぎはぎ税制になっている。

価値を生み出さないマネーゲームを優遇

 さらに、政治家が点数稼ぎをするためのおかしな税制になっている。

 私が非常におかしいと思うのは分離課税だ。それは金融課税。株式の売買や配当に対して所得税とは別に税金が課税される。それが一律20%だ。つまり、株式でいくらもうけようと、配当でいくら稼ごうと一律20%しか課税されない。一時は10%まで減税されていた。それに対して所得税の最高税率は45%だ。地方税も合わせると50%以上とられる。

 株式の売買や配当はなにも生み出さない。右から左にお金を動かして、結局なにも作っていない。そういう所得に課税される分離課税がたったの一律20%だ。逆に、所得税というのは基本的に自分たちで働いて価値を作り出している人たちが払う税金であり、それに最高55%が課税される。価値を作って働くよりも、他人のふんどしで相撲をとって右から左にお金と所有権を流す方が低税率で得だから、そうしなさいというのが今の政府だ。

 だが、みんなが株式の売買だけを始めたら国は滅ぶ。株式売買といってもその株式会社で実際に価値を作り出して働く人がいなければ株価など上がらない。みんなが株式の売買をやれば国が滅ぶのに「それでいいですよ」というメッセージをこの国の税制は発しているということだ。完全に狂っている。

 その結果どのようなことが起きているか。所得によってどれくらいの税負担があるかを国税庁の資料【グラフ参照】でみると、一番高い28・7%の税金を払っているのは1億円プレイヤーだ。この人たちがだいたい所得税を払っているサラリーの上限だ。そこから先は税負担が下がり、右端の100億円以上稼いでいる人たちは、金融課税が10%だった平成25年度では11%しか払っていなかった。翌年に税率が20%になっても所得に対して17%しか払っていないということだ。

 つまり、100億円以上稼ぐ人たちは所得税など払っていないということだ。所得税は税率が高くて損だからそういう稼ぎ方はしないのだ。いまの税制の結果だ。税率が低いのは株主優遇なのだ。例えば外国人株主がすごく多いとか、売買を盛んにさせて株価が上がれば「政治家がうまくやった」とか、GDPが上がれば「経済政策が成功した」という。思い込みの点数稼ぎをやっていると、みなさんの本来の働き方や生き方、幸福は全部置き去りになる。そろそろ「おかしいだろ」と誰かがいう必要があるし、それをみんなが理解し、こんなものは変えようという機運をつくる必要がある。

 山本太郎代表は、分離課税と所得税を一体化させて総合課税にして累進課税をかければいいと主張している。もちろんそういう考え方もある。だが私個人の意見はもっと過激で、分離課税をそのままにして思いっきり課税すればいいと思う。1年未満の株式売買で得た利益に対しては99%課税する。要するにやめろという話だ。1年未満で株式を売ってもうける人がこの社会に必要なのか? それは誰のためになっているのか? そんな人はいらないし、そんな行為がいらない。

 1〜3年の株式保有でもうけても85〜90%。3〜5年なら80%。5年以上もってようやく70%と、どんなに保有しても所得税の最高税率より低くならないようにすればいい。そうすると外国人投資家が裸足で逃げ出す。株価は落ちるかもしれないが、そんなものは知ったことではない。株価が下がってもみなさんの生活には基本的になにも関係ない。一部それを保有している人たちの簿価が下がるだけだ。これがれいわ新選組の政策になるかはわからない。だが、これもみなさん次第で正しいと思う人が多ければ政策になるかもしれない。

価値を生み出すために作るのがお金

 国家予算の考え方も根本的に変わる。予算とは、集めたお金の使い道だとたいていの人は思っている。だがこれも違う。そもそも集めなければお金がないということが幻想だ。なぜならいままでも集めらないのにお金を作ってきた。政府通貨でもお金は作れる。

 お金を集めなければいけないという発想も古い時代の思い込みだ。かつて日本の場合、戦争に負けて焼け野原になり、生産能力がなかった。それに対してみんなモノが欲しかった。需要>供給、つまり圧倒的な需要に対して供給量が少ない時代だ。供給する生産能力がなかった。だから一時的に税金を集めた。そして、みんなが貯金をした。するとみなさんのお金が減り、購買力が落ちる。需要を抑えて、国家が集めたお金で大規模に投資する。道路や橋、港湾や空港などインフラを充実させる。すると生産性が飛躍的に上がる。それではじめて需要を満たすことができる。これを戦後復興期はずっとやってきた。

 昔はサプライサイドエコノミーといわれていた。サプライサイド、つまり供給する側の経済だ。いかにして生産能力を高めるかという話で、生産能力を高めれば高めるほど売れまくっていた時代だ。だが、いまや国家が成熟してインフラも整って、逆に生産能力が有り余る状況になっている。そして、お金を集め続けることにより、とくにプラザ合意以降、みなさんの購買力をコストカットの名の下に落としてしまうことによって生産能力に対して需要が思い切り冷え込んでいる。需要<供給、つまり戦後復興期とは逆のことが起きているのに高い税金を集め、みんなが2000万円を目指して貯金などはじめると大変なことになる。これではお金が動かず、人が動かなくなる。

 富とはなにか。それはみなさんが作り出す価値だ。だからみなさんが活動しなくなれば富は生まれない。お金を貯めるというのはこれからは自殺行為だ。でもそういう発想の転換が政治家にはできていない。仕組みをわかっていないからゼロから考える能力がないのだ。

 何をするべきなのか。お金を作って配り、使うことだ。価値を作るためにお金を作るのだ。例えば、これから介護産業にものすごい人数が必要になる。この産業を大きくする必要がある。そこにはたくさんの仕事がある。若者たちに行ってほしくても、お金がなく十分な給料がもらえないからみんな行かない。そこにお金を作って投入すれば、そこで働く人が増えて、実際にそこで人が動き始め、そこではじめて価値が生まれる。価値が生まれるなら、その分のお金を先につくって注ぎ込めばいい。それをせずに生まれるべき価値が生まれないということは富がないということだ。根本的に発想を転換する必要がある。

国家の財産とは人の時間と労力

 すぐに結果がお金で返ってくるような短期的な投資は民間企業に任せておけばいい。政府がやるべきは中長期的な価値の創造だ。例えば、子どもの教育や環境の保護。こういったものはすぐに利益が返ってくるものではない。子どもの教育にいくら人を使い、お金を投入しても、それが実際にお金として返ってくるのは20年後か、30年後か、50年後かわからない。そんな長期的な投資は民間企業はできない。だが教育の充実は必ず国を豊かにする。そこに絶対に価値が生まれるという信念のもとに政府がお金を作って投入しなければ、その価値は生まれない。

 環境保全でもお金など戻ってこない。その価値は計算できない。だがそれは絶対に価値があるものだと信義をもってお金を投じなければいけない。そのためならお金などいくらでも作って突っ込めばいい。そういう発想をもって政府は動かなければいけない。お金で考えるから本質を失う。民間企業だけでなく、政府の予算立案者も政治家もカネ、カネ、カネばっかり考える。

 国家経営にとって大事なのはGDPでも株価でもなく、最も大事なのは人の時間と労力と貴重な資源だ。国家が持っているものはこれだけだ。この国にあるのは一人一人の時間と労力、自然資源だけだ。外貨もあるが基本的にこれだけだ。その貴重な時間と労力をいかに大事に無駄なく使って、本当に意味あることに役立てるかというのが国家経営だ。カネの話ではない。

 例えば、1億円で穴を掘って埋める。まったく意味のない無駄な事業だ。無駄なのは1億円だからではない。10億円でも1000万円でも関係ない。お金というのはぐるぐると経済を回るだけでなくなりはしない。本質は、このお金が回る間に何をするかだ。1億円の穴掘り事業が無駄なのは、そのために使われた人の時間と労力は二度と返ってこないからだ。それに使われた資源も同じだ。われわれの時間と労力と、国の資源をどれだけ何のために使うかが大事なのだ。これこそが国家経営の本質だ。お金はそのためのツールに過ぎない。

 それが人の時間と労力の使い方を決めるのであれば、カネがあるとかないとかは全然関係ない。カネがあろうとなかろうと、絶対にやらなければいけない仕事ならばやればいい。そういう発想が必要だ。なにをやらないかも大事で、人の労力と時間を無駄にしないために障害は取り除かなければいけない。

 例えば、この国では高速道路は有料だ。あんなものは無料が当たり前だ。お金で考えるから有料という発想になる。高速道路などは造った時点でコストは確定している。そのために使った人の時間と労力と地球の資源は二度と返ってこない。それを取り戻せると思うのはカネで考えるからだ。課金すればカネが返ってくる。だが有料にすれば高いからみんな使わず、下道を走るといい始める。本来はそれを使ってみなさんの時間と労力をセーブしてもらうために造っているのに、課金して使わせないことによって、そこから先の人の時間と労力は無駄になる。こんなバカな話はない。

 あらゆるインフラがそうだ。電気、ガス、水道、通信、郵便、銀行のATMも、公共交通機関もだ。なぜ民営化しているのか? なぜ企業がもうけなければいけない? みなさんの生活に必要なものを提供している企業がもうける必要はない。公営化し、国営化し、最低限の金額でいいし、赤字でも構わない。

 例えばJRも国鉄に戻して、一定金額までタダにすればいい。学生とか若者の交通費など全部無料にすればいい。それで有り余る時間を使って、好きな場所に行き、好きな人に会い、好きなモノを見て、持っている時間を有効に使えと。それが富を生む。みなさんの時間と労力を使う以外に実際に富を生む方法などない。課金することによって、富を生み出す機会をどんどん潰している。

 消費税がなぜいけないのか。あれが金持ち優遇だとか、8%か5%かというような話ではない。消費税を課税することで、余計にお金を払わされることでみなさんが活動しにくくなる。全国民の活動が低下する。人生の長さは変わらないから、その分人の貴重な時間が無為に過ごされる。これ以上の国家の損失があるだろうか。その分みなさんが価値を生むチャンスを潰しているのだ。思想的にあり得ない。どこかの国はもっと高いなど関係ない。その国が愚かなだけで、消費税などゼロが当たり前だ。そういう無駄な障害を確実に取り去っていく必要がある。

なんのために働くのかという新しい価値観

 もう一つ大事なのは、明確な方向性だ。国家経営の仕事として、国を成り立たせるために必要な仕事をみんなに分担してもらう必要がある。食糧の自給、エネルギーの自給、この国に無い物を買ってくるだけの十分な外貨を稼ぐことだ。この3つがなければ基本的に国として自立できない。残念ながら食料の自給とエネルギーの自給ははるか遠く及ばない。これはなんとかしなければならない。それでも外貨は世界一稼いでいる。もうやりすぎたので、お金を配って返すことによって生活を楽にし、みなさんから取り過ぎた時間を返すべきだ。

 それをやったとしても、みなさんは「遊ぶより人のために役立ちたい」といって休まずに働き続けるかもしれない。それなら今まで通りの働き方ではなく、何のために働くのかという新しく明確な方向性を出そうと−−。われわれはこの30年以上、その大きな方向性を失っている。戦後復興という大きな目標を成し遂げた後、何のために生き、働いているのかわからなくなったまま、ひたすら目先の利益とか売上のために働き続ける状態がずっと続いてきた。若者たちはそんな大人たちを見てもっとわからない。そんな社会になんで入っていかなければいけないのか、なんのためにそれをしているのか、どこの企業に入っても「売れ、売れ」といわれるが、それがそんなに重要なのか若者たちはわからない。おそらく彼らもそれほど生きる意義を見いだせないから、10〜30代の若者の死因のトップが自殺になったりしている。

 われわれ大人が何のために生き、働くのかというのを国家として大きな方向性を示す。これだけの経済大国で、世界一の黒字を稼ぐ生産性を持つに至ったわれわれとしては、もはやそれを自分たちのためだけに役立てるのではなく、もっと世界中の困っている人たち、餓死寸前に置かれている10億人の人たち、壊れゆく地球環境を保全する技術、そのための生き方や社会のインフラなど、世界の問題を解決するようなモデル社会をつくるために使わなければいけない。われわれの社会が大きな使命を帯びたときに、人の生き方や働き方が変わり、何が不必要で何が必要かがみなさんの中で選別されていくだろう。カジノやパチンコ産業などがいかに無用なものであるかがはっきりしてくる。

お金集めのために社会や地球を破壊

 世界のあらゆる問題を解決するには、いまの世界がいかにおかしいかをちゃんと認識する必要がある。残念ながらいまの世界経済はすでに狂気だ。本質から経済システムがかけ離れている。経済とは、価値の生産と価値の交換だ。みなさんに必要な価値があるからそれを作り、それを互いに交換する、それだけだ。必要ないものは作らなくていいし、売らなくていい。なのに私たちは必要ないものを膨大に作り、捨てさせ、壊し続けている。いつの間にかお金を貰うために経済を動かしている。

 結局、お金をもらうゲームだ。先ほどいったように、1人100万円の借金に利息をつけて経済を回す巨大なイス取りゲームだ。お金をもらわないと破たんするゲームだから、何を提供するかなど関係ない。それが人を幸せにするものかなど関係なく、だましてお金を取った方が楽だ。1年後にお金を集めなければ破たんするのだから。

 あらゆる理屈を付けて、短時間でいかにお金を稼ぐかというゲームが始まり、何を作っているかなど二の次になる。一番簡単な方法は「安かろう悪かろう」の商品を作り、買ってもらい、すぐ捨ててもらい、また買ってもらうことをいかに短い時間でくり返すかだ。現実に身の回りに溢れている。当然、世界はゴミの山になる。お金がすべての社会。狂気の沙汰でしかない。

 いかに短時間で手を掛けずに商品化してお金をもらうか――いまの経済や経営学は、学問でもなく、世の中の本質を見失っている。経済の専門家がことあるごとに「コストがどうだ」というが、いまの経営学がいうコストとは人間が動く労力の分しか入っていない。魚を獲るときに無駄な種も含めてばっさり大量に捕獲しているのは、その方が安いからだ。あくまで人間が獲るコストしか入っておらず、多様な魚がそこに存在するまでにかかった長い時間は一切入っていない。原油や石炭などの鉱物のコストも、掘り出す人間が動くコストしか入っておらず、それらの鉱物がその状態になるまでにかかった何十万年という長い時間は入っていない。原発もそうだ。元に戻しようのないものをコストとして考えること自体が無理がある。計算しようのないものをコストに入れていないのだから、論理として完全に破たんしている。そろそろ正気に戻る必要がある。

 世界中の企業がそんなことばかりやって、こんな経済を回していたら地球が破たんするに決まっている。

資本主義にかわる新しい社会の展望

 みんなが当たり前だと思っている資本主義という制度も疑わなければいけない。資本主義とは、資本家のいうことをきかなければいけないという考え方だ。誰もが自由意思をもって生きているのに、週5日も6日もお金のために拘束されて動かされ続け、残りのわずかな時間だけ自分のために使える。その人がお金をもっているからというだけで、誰かのいうことを聞いて生きなければいけない理由がどこにあるのだろうか?


 資本主義というのは、資本家が労働者を安く使って、同じ労働者(消費者)に高く売りつけるという仕組みだ。企業が利益を上げるためにそれ以外の方法はない。世界中の企業がそれをやっている。だから、世界で最も裕福な28人が世界の下位半分の36億人と同じだけの資産を持つに至っている。そして10億人の人たちが年中餓死寸前の状態に置かれている。資本主義だから仕方がないのか? 文明を持つ人間の生き方として根本的に間違っていないか? そろそろ真剣に考えるときに来ている。

 資本家が利益を上げて資本が増えるというが、資本って本当に増えるのか。お金で考えるから増えると勘違いする。数字が増えるから。でも資本とは何かといえば、人の労働力や土地といった基本的に実態物だ。お金などいくら貯めても実態としては札束という紙切れでしかなく、預金であれば数字でしかない。そこからは何も作り出せない。

 本来の資本である人の労働力、使える土地などは永遠に増え続けるのか? 一つしかない地球が2個、3個になるのか? 普通に考えれば全部思い込みでしかないことがわかる。

 お金とは虚の数字でしかない。いま実際に起きていることは、この数字を一部の人たちがどんどん集め、その数字を使って市場で土地を買ったり、株を買ったり、さらに知的所有権、種子、水道などみなさんの生活に必要なものの権利を買っていく。膨大に膨れてしまった何の意味もない数字で、実際にみなさんが生きるために必要な地球を買い取っている。それによってみなさんを永続的に隷属化することができる。そういうことがもうすでに起きているということを、そろそろみなさんもお気づきだろう。狂気なのだ。

 お金には何の意味もないことに気づかなければいけない。お金とは、交換できる実体(価値)があって初めて意味を持つ。でも実体物は、金利でお金が増えるように時間とともに増えるものではない。普通のものは時間とともに壊れたり、腐ったりして減っていくのが自然だ。だがお金が金利で増えていけば、変わらない実体物(価値)の量に対してお金が膨大に増えてバランスがとれなくなる。バランスを取るために無理矢理作って売ることをやっていれば当然地球は破壊される。追いつくはずがないのだから。

 同時に、気づかなければいけないのは、お金の量=借金の量ということだ。このことをほとんどの人が知らないことが問題なのだ。みなさんがあると思っているお金は、すべて借金の裏返しなのだ。借金をすべて返してしまえばお金はない。あるのは実態物だけであって、お金というのは借金と利益を合わせたゼロサムゲームだ。借金と利益を平等に分け合えばお金は消えてしまうので、お金を奪い合い、借金を押しつけ合あわせる。私たちもそうしなければ、ちょっとバランスを崩して弱い方に回ってしまうと借金まみれになり、貧困に突き落とされる。みんなが豊かになるのではなく、必ず多くの人が貧困に突き落とされる社会の仕組みなのだ。

 必然的に熾烈な競争社会になり、生産性のない人たちがいじめられるようになる。生産性がないというのはとても狭い価値観の中での言葉だ。その人たちが社会保障などでお金を手にすると、その分の借金が誰かに回る。「俺たちが一生懸命働いているのに、生産性のない連中が社会保障でお金を手に入れるのはけしからん」という感情もこの経済システムが生み出すものだ。社会はどんどんギスギスしていく。こんな醜い仕組みをこのまま子どもたちに渡していいわけがない。

 いますべきことは、この金融資本主義の仕組みを根こそぎ変えることだ。これ以上に重要な政治課題はないと思う。すべての政治家が命をかけてとりくむべき課題だ。地球規模の大転換が迫られている。

 日本の政治というのは、それを促進するための政治であるべきだと思う。だからまったく新しい次元の新しい政党をつくって、新しい政治を実行するべきだ。いまの既存の政党や政治家はこのレベルにはいない。なぜみなさんが世界一の黒字を稼ぎながら、こんなに苦しいのかということすらわかっていない。だから、これから世界がどこにシフトしていくのかについても考えすら及ばない。新しい次元でものごとを考える勢力を作って、国会の中に殴り込みを掛けなければいけない時に来ている。

 2011年に政治団体を設立し、お金の仕組みのおかしさを言い続けてきた私がれいわ新選組から立候補したのは、この地球規模の大転換のチャンスがいまここに来ていると思ったからだ。まったく無名の人間や勢力が国政の壁を突破することはたいへん難しい。だが、世界的な新しいムーブメントがそこに生まれようとしている。

 ただ、例え国政を突破しても、世界を変えるためには、社会を構成する一人一人の頭の中を変革することからしか変わらない。紙切れを「お金」と思い込むのは、人間が作り出した概念に過ぎないし、所有権というのも人間の意識だ。人間の生命活動は本来生きて死ぬだけなのに、地球上のものを所有していると思い込むことによってサバイブ(生き残る)できると思い込む。資本主義とは、一種の所有主義であり、所有者支配主義だ。株主つまりお金を持っている人のいうことを聞かなければいけない。なぜ? という問いに哲学的に答えられるだろうか。ただそういう仕組みだというだけの話だ。その正しさを誰か説明できるだろうか。

 資本主義制度によって効率的にモノを生産でき、みんなが生き残れた時代もあったかもしれないが、現在はそれが逆にみんなを苦しめている。これからは金持ちのいうことを聞いて生きる社会ではなく、もっとみんなが自由に創造的に生き、お互いの人権が尊重される社会がもうそこまで来ている。そのような大きな思想の転換が求められる時代が来ており、政治もその新しい転換をベースにして新しい運動を作らなければ、大きな数は生まれないと思っている。

 できるか、できないかではない。自分がやらなければならいと信じることをやるか、やらないかだ。いずれ死ぬのなら、人間生きている間に何をするかだ。仮にそれができなくても、誰かがそれをやり、他にもやる人が出てきて、ちょっとずつ進んでいるうちに最後には大転換が到来する。すべてはプロセスであり、自分が生きている間に何ができるかをみんながくり返していけば、大きな変化が起きる。この社会がおかしい理由をみんなが気づき始めれば、それはもう止まらない。そこからみんなが新しい希望を抱くようになれば世界は変わる。昨今の世界情勢、日本国内の変化をみれば、それはもう遠い未来の話ではなくなっている。

一人一人の意識や行動が変われば、世界は変わる。みんなで日本から世界を変えよう。

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おおにし・つねき
東京都出身。上智大学外国語学部英語学科卒業。シアトル大学政治科学専攻。JPモルガン銀行資金部為替ディーラー。株式会社インフォマニア代表取締役。政治団体フェア党代表
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/12166

2. 中川隆[-14137] koaQ7Jey 2020年1月28日 12:49:46 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-918] 報告
れいわ新選組・大西つねき氏が萩市で講演 格差拡大させる金融システムの不条理伝える 2019年9月14日
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/13097


真実知ることで新しい価値観を

 れいわ新選組の大西つねき氏の講演会(主催/スマイルマップやまぐち)が9日、山口県萩市の総合福祉センターで開かれた。「お金の仕組みを知ってワクワクする未来をつくろう!」をテーマにした講演会には、平日にもかかわらず萩市内をはじめ山口県内各地、島根、広島、福岡からも聴講希望者が訪れ、約100人が会場を埋めた。

 大西氏は、JPモルガン銀行やバンカース・トラスト銀行で為替ディーラーやトレーダーとして働いた後、被災地や学校などでのボランティア活動をしながら「現代の狂った金融システム」についての研究・執筆活動を重ね、この経済の仕組みを根本的に変えなければ日本社会が抱える問題はなにも解決しないこと、そのためには経済・金融のあるがままの現実を知らせ、多くの人がこれまで正しいと思い込まされてきた価値観を転換する必要を感じたことから政治団体を立ち上げて活動してきたことをのべた。

 とくに近年は、横浜市内の「底辺校」といわれる高校で図書館や校内カフェのボランティア活動に参加するなかで高校生とのふれあいが増え、「昼休みになると市民から差し入れられたお菓子やジュースをめがけて200人もの高校生が押し寄せてくる。不思議に思っていたが、よく聞いてみると“昨日からなにも食べてない”“今日は校内カフェがあるからなにも(食事を)持って来ていない”という。糖分補給のために来ているのだ」と子どもたちの置かれている窮状を伝えた。

 「単に生まれた環境が違うだけで、有能で感性豊かな多くの子どもたちが社会的に排除され、努力が足りないといわれ、“生きている価値がない”とさえ思い込まされる。子どもだけでなく、大人も同じだ。病気、ケガ、失業、離婚、災害などの少しのきっかけで貧困に突き落とされる。東日本大震災の被災地でも、あれだけの災害を生きのびながら、お金がないために負債を抱えながら壊れた家に住まなければならない人がたくさんいる。お金が、社会が必要としているところではなく、もうかるところにしか流れないからだ。これは巨大な経済、金融問題であり、社会を形づくる根本的な価値観の問題だ」とのべた。

大西つねき氏
 「本来の豊かさとは、お金ではなく、個人の心の自由、つまりみんなが自分の時間と労働力を本当に意味あるものに使うことができる社会だと思う。だが、日本のマネーストック(現金・預貯金の総額)がこの三十数年間で200兆円から1000兆円へと5倍も増えているのに、もらえる給料も自由な時間も増えていない。生産効率化の成果は人人の生活には還元されず、いまも人人はお金に追い回されて人生を奪われ続けている。とくに日本は対外純資産341兆円(貿易黒字)を持つ世界一のお金持ち国家でありながら、国民の多くはその恩恵を受けとることなく、大企業が内部留保を貯め込み、債務返済のためといって消費税増税までしている。世界一の借金国家アメリカ(対外純資産=マイナス1077兆円)に大金を払ってポンコツオスプレイ、F35、最近では山盛りのトウモロコシまで買わされている。働いても働いても楽にならないのはこの狂気ともいえる仕組みのためだ」と指摘した。

 現代のお金は、銀行がはじめに借り入れた預金の貸し付けをくり返しながら銀行間をめぐるあいだに数字上で100倍に膨らむ「信用創造」によって増えており、だれかの借金に依存して社会全体のお金が増えている。また、借金を返済すると同時に同量のお金が社会から消える。90年代初頭のバブル崩壊後は信用収縮で民間が借金をしなくなったため、かわりに政府の赤字国債でお金を増やしてきたことを日銀のデータをもとに解説した。そして「政府の借金=民間の資産」であり、900兆円もの国の借金を税金で返してしまえば、社会全体から同量(ほぼすべての現金・預貯金)が消え、金融経済が破たんするカラクリを指摘した。

 大西氏は、この国の借金に年間約9兆円の利息が発生し、それによる富の移動で格差が拡大していることをあげ、「900兆円の国の負債を返すには、1兆円の政府紙幣を900枚発行して日銀に納め、日銀は民間から900兆円分の国債をすべて買いとり、日銀のなかで両者を相殺すれば国の財政問題は簡単に解決する。国民にとっては、蝶が羽ばたいたくらいのインパクトしかないだろうが、これによって巨大な格差拡大マシーンが消滅する。計り知れない効果を生む」と強調した。

 また、「税とは、予算を組む(使う)ために集めると思われているが、日本の予算はこの50年間赤字国債でやっている。つまり、必要なら集めなくても借金でお金をつくれることを証明している。税制とは、予算が足りないから集めるというものではなく、所得の再配分(累進課税)や所得格差の是正(相続税)など、みなさんの思想を国の形に反映するためのものだ。それこそが政治の本質だ」とのべ、金融資産や株取引への課税を所得税から分離軽減して、なんの価値も生み出さないギャンブルを奨励している現在の税制の本末転倒ぶりを批判した。

 現代の経済システム全体が「巨大なイスとりゲーム」であり、すでに上位8人が下位36億人と同じ資産を独占するまでに行き着くなど資本主義が末期的な局面を迎えている。お金をもらうために人間がキリキリ舞いさせられ、お互いに富を奪い合う荒廃した社会ではなく、この不条理を乗りこえる新しい価値観に立って「本当に豊かな暮らし、社会を実現するためにまず自分自身から変えていこう。そうすれば社会が変わり、日本が変われば、世界が変えられる」と呼びかけた。
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/13097

3. 中川隆[-14136] koaQ7Jey 2020年1月28日 12:51:18 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-917] 報告
反響呼ぶ大西つねきのお話会 in 下関 社会と人間蝕む金融システムの本質伝える2019年11月5日
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/14039

市内外から300人が聴講

 「お金の仕組みを知ってワクワクする未来を作ろう! 子ども達の未来のために」をテーマにしたれいわ新選組・大西つねき氏のお話会(主催/スマイルマップやまぐち)が2日、下関市のシーモールホールで開かれた。大西氏は、JPモルガン銀行やバンカース・トラスト銀行でトレーダーとして働いてきた経験から、貧困や格差、戦争など現在の社会で起きている問題の根本原因である金融経済の不条理な仕組みについて解説し、このシステムを変える世界的な変化がすでにはじまっていることについて熱を込めて講演した。下関で初となる講演会には、市内をはじめ、県内各地、福岡、広島などから約300人が詰めかけ、3時間におよぶ講演に集中して聞き入った。

◇  ◇  ◇

 冒頭、大西氏は「いまの日本の問題を考えるうえで一番足りないのは現状認識だ。今、私たちの国がどういう状態にあるのかがわからないから、政治もどう対応したらいいのかわからない。世界中で起きている問題も同じだ。みなさんも薄々感じている格差、貧困、戦争、環境破壊、病気……などの大きな問題の中心には必ずお金が絡んでいる。問題の本質に迫れば必ずお金の問題につきあたる。だが、これについて日本だけでなく世界中のどの政党も誰もいわない。政治に必要な根本的な思想と哲学を失っている。その根本原因であるお金の発行の仕組みを伝えたい。この仕組みを変えることにこそ世界の希望がある」という問題意識で政治団体を立ち上げ、2011年から執筆や言論活動をはじめたことを明かした。

 そして、自身の考え方が大きく変化した事柄として、神奈川県内の「底辺校」といわれる高校ではじめた校内カフェのとりくみを紹介。ボランティアがかかわって開設した校内カフェには、さまざまな困難を抱えた子どもたちが訪れる。金髪や茶髪は当たり前で、顔や体中に自分でピアスの穴を開けていたり、「単純にお金がないという理由だけでなく、自傷行為も入っている。リストカットの傷を持つ子も多く、“自分なんて生きていたってしょうがない”という声もよく聞かれる。そんな子どもたちが昼休みになると、カフェに置かれたお菓子やジュースめがけて200人くらいが殺到する。よく聞いてみると、前日の晩からなにも食べていない、なにも食事を持って来ていないという。糖分補給のために来ているのだ」と子どもたちの窮状を伝えた。

 「感性豊かで多くの可能性を秘めている子どもたちが居場所を失い、社会的に排除され、その才能を開花させることなく命を失ってしまうケースも多多ある。これは単純に親や学校や地域の大人たちの問題として片付けられるものではない。大人たちも現在の金融経済の仕組みのなかで競争を煽られ、みんな必死になり、余裕を失っている。優しさを失った社会のなかで、子どもなどの弱者がみずから命を絶ってしまうような悲劇があちこちで起きている。

 格差が拡大するなかで社会のクラス化が進み、学校も進学校と問題校に分かれ、頑張れば報われた世代からは“頑張りが足りない”“自己責任”“相対的貧困であって食べていくのには困ってないでしょ”と語られることが多い。だが、そもそも“生きていても仕方がない”という根本的な自己肯定感が欠けている子どもたちに“自分のために頑張れ”といっても説得力がない。貧困が親から子へ連鎖するのは、単純にお金が無いからではなく、根本的な自己肯定感を得られる環境になかったことがある。どんな家庭に生まれたとしても最低限の自己肯定感が得られ、頑張って挽回できるところまで引き上げなければ解決しない」と指摘した。

 貧困は子どもたちの問題に限らない。大人でも病気、ケガ、失業、離婚、災害などをきっかけにしてたちまち貧困に突き落とされる。

 大西氏は、東日本大震災被災地でのボランティアの経験から、多くの被災者が家を失い、生き残った人たちが多額の負債で生活が立て直せていない現状に触れ、「これは震災問題ではなく、震災を入口にした巨大な経済・金融問題だ。まったく別の理由でも運悪く不利な立場になったとたんに同じ境遇に陥る。高齢者の貧困を見ても、どんどん年金が削られ、病気やケガになっても誰も助けてくれない。まるで網の目からこぼれ落ちるように孤独死や自死に追い込まれていく。私は金融システムのど真ん中で働いてきたので、いまの金融システム、資本主義の仕組みがいかに冷淡で格差拡大的であるかをこの目で見てきた。お金はもうかるところにしかいかない。いくら困っている人を助けてももうからないから民間からお金は流れない。そして命を救うべき行政(国)は、“財源がない”といって手を差しのべない。だがお金の仕組みを知れば、まったくおかしな理屈だ。政治家や官僚よりも、その外側で生きている多くの人たちの方が、すでにそのおかしさに気がついているし、その数は日に日に増大していることを実感している。隠されてきた真実を知る人が増していけば、必ず現在の政治を総とっかえする時が到来する。これは歴史の必然だ」と力をこめた。

受け取れなくなった労働の対価  国内外で二重の搾取

 また大西氏は、「お金に支配された社会からどんな社会を目指すべきか? それは個人の心の自由、つまり一人一人の人生そのものである自分の時間と労働力を本当に意味あるもののために使うことができる社会だと思う。だが現在の社会は、働いて金をいかに稼ぐかを中心に回っている。昔と比べてはるかに生産力が増し、生産が効率化しているのに、人人の生活に余裕ができるどころか、金を稼ぐために昔以上にキリキリ舞いさせられ、時間的にも体力的にも限界まで働いている。富(お金)を所有している人間に従い、その仕事に意味を感じなくても、ただ金を稼ぐために人生(時間と労働力)を浪費させられる。それが果たして社会を形づくる思想・哲学・価値観であっていいのか? 金融経済の仕組みを根こそぎ変えるためには、この現在当たり前とされている思い込みが間違いであることを知ることからはじまる」とのべ、現在の日本社会が置かれている現状を以下のように解説した。

 現在「国の借金900兆円、一人あたり900万円」と宣伝される日本だが、それは政府の借金であって国民の借金ではない。日本国は政府だけでできているのではなく、政府と民間の二つで構成されている。900兆円の借金を政府に貸しているのは、ほとんどが民間(国民)であり、国内でいえば「借金=資産」という相殺関係にある。


 さらに日本全体でみれば、対外純資産(外国への貸付から借金を差し引いた額)は341兆円(2018年度)の黒字をもっている【表@参照】。圧倒的に貸している金額が大きい世界一の金持ち国だ。逆に米国はマイナス1076兆円で、圧倒的に借りている金額が大きい世界一の借金大国だ。トランプのディール外交は、この巨額の赤字を消すために世界中に米国製品を売りつけるもので、「資産を持つ従順な国」になんでもかんでも押しつける。オスプレイ、F35、GMO(遺伝子組み換え)食品、詐欺まがいの金融商品、高額な医薬品…そして山盛りのトウモロコシ。同じことを、純資産国3位の中国に仕掛けているのが米中貿易摩擦だ。

 日本が対外純資産を膨らませたのは輸出主導型の経済政策の結果だが、国際決済はドルであるため、輸入はドルで支払い、輸出の対価もドルで受けとる。つまり日本の対外資産である341兆円の実体は3兆jの外貨だ。米国の借金も、実際には10兆jの借金であり、それを貸しているのが日本をはじめとする黒字国だ。つまり、日本が稼いだ3兆jは日本に入ってくることなく、米国の銀行に貯まり続けて米国内で循環している。日本が世界一の資産国であることをみなさんが実感できないのはそのためだ。

 もう一つは、1j=360円だった円/ドルの為替相場を変動相場制にし、さらに1985年の「プラザ合意(主要5カ国による協調行動への合意)」を境に米国から円高を強いられ、1j=250円から1j=120円にまで急激な円高が進んだことにある【グラフA参照】。日本の悲劇はここからはじまったといっても過言ではない。

  
 これまで海外で1jで売れていたものが2jになる。日本の輸出製品の値段が倍に跳ね上がって海外で売れなくなるため、企業はこぞってコストカットを叫び、輸出製品の値下げを進めた。労働者の給料を削り、サービス残業という「奉仕」が横行した。みなさんに労働の対価を払わないことで海外で安く売ることができ、その結果として膨大な黒字を稼いだ。つまり日本の3兆jの対外純資産はみなさんが身を削ったタダ働きによって得たものだ。

 日銀データで日本のマネーストック(現金・預貯金の総額)を見ると、1980年の200兆円から2018年の1000兆円へと右肩上がりに800兆円(約5倍)も増えているが、みなさんが受けとれる給料の金額は20年間ほぼ変わっていない。この間に大手企業は460兆円といわれる内部留保金を蓄えた。給料を払わず、下請への支払いを削り、法人税が安いから溜まり続ける。対外純資産の341兆円は海外に貸し出し、460兆円は内部留保にとられ、二重に搾取されているのだから豊かさが実感できるわけがない。

 そして昔は、消費者・従業員・経営者に優しい「三方よし」といわれた日本の企業も、小泉・竹中内閣あたりから「株主のもの」という明確な定義づけがされはじめた。国家経営から哲学や思想が失われた結果、残ったものはカネだけ。お金に支配された殺伐とした社会と一部による富の独占だ。

 現在の政府が目標に掲げる「GDP(国内総生産)600兆円」「一億総活躍社会」というのも社会の豊かさには繋がらない。GDPとは消費+政府支出+投資+純輸出だ。いくら純輸出が増えたところで国内には還元されず、消費(内需)が冷え込んでいても、政府が赤字を垂れ流しながら支出を削らなければ数値としてのGDPは維持できる。みなさんが自分の時間や労働力を自由に使える、つまり消費が活発になったことをまったく意味しない。

 東京五輪でいくら海外からのインバウンドの客が増えても、外貨(ドル)が落ちるだけで輸出と同じ。TPPでたとえ輸出を伸ばしても稼ぎは海外に貸しっぱなしになり、みなさんの豊かさとは関係がない。それはこの30年間で証明されている。私の持論としては、政府が一人100万円を全国民に配り、生活に余裕をとり戻し、消費を活発にする。たとえ貿易収支が赤字になってもいいし、むしろ赤字にしなければいけない。黒字は使わなければ意味がなく、黒字を使う唯一の方法は赤字にすることだからだ。これはバラ撒き政策ではない。一人100万円を1億3000万人に配っても130兆円。みなさんが受けとっていないタダ働き分の3分の1に過ぎない。「黒字還付金」だ。

借金でお金増す仕組み 巨大なイスとりゲーム

 次に大西氏は「お金の仕組みをみんなが理解すれば、現在の国家経営や財政政策がいかに支離滅裂なものであるかがわかる」とのべ、そのメカニズムを説明した。

 2018年時点の日本のマネーストック(現金・預貯金)は1000兆円にのぼるが、実際に現金(紙幣や貨幣)として存在するのは100兆円程度しかない。ほとんどが預金(数字)なのだ。お金は「日本銀行券」だが、日銀が民間の預金を増やすわけではない。「では、どうやって増えているのか?」――それが現代のお金発行の仕組み【図B参照】だ。

    
 A銀行に100万円のお金を預けると、A銀行はその1%(預金準備率)を日銀に預け、その顧客の預金口座に100万円という金額を書き込む。そして、銀行は残った99万円を元手にもうけるために運用(貸付)に回す。すると、その99万円を借りた誰かが送金したB銀行の口座にも金額が書き込まれ、またその1%を日銀に預ける。残ったお金が誰かに貸し出され、さらに別のC銀行の口座に振り込まれると、実際には100万円しか存在しなかったはずのお金が三つの銀行と日銀の口座をあわせると約300万円に増える。

 「このように貸し借りをくり返しながら銀行間の循環を続けるうちに100万円が数字上で1億円(100倍)にまで膨らんでいく。これが『信用創造』という現代のお金発行の仕組みだ。つまりほとんどのお金を借金で作っているので、借金を返すと同時にお金が消える。みんながお金を返したら成り立たない仕組みであり、お金を増やすためには誰かが返した分、誰かが借金をしなければならない巨大な自転車操業のシステムなのだ」と解説した。

 そのため借金には必ず利息が発生する。金利5%ならば、100万円借りたら105万円を返さなければならない。限られた圏内でみんなが借金を返済するためにはお金が足りなくなるため、さらに外へ外へと果てしなく借金をする人たちを増やさなければならず、その結果世界が「巨大なイスとりゲーム」と化していることをのべた。

 そして日銀のデータ【グラフC参照】をもとに、日本国内のマネーストック(現金・預貯金の総額)は、90年代初頭までは民間銀行の貸し出し(民間の借金)によって増えていったが、バブル崩壊による信用収縮で民間銀行は貸し渋り・貸しはがしをはじめたため、それにかわって国債(政府の借金)に依存して増えていることを指摘した。

   
 グラフを見ると、国内の現金・預貯金の総額であるマネーストックM2(太い実線)が、90年代はじめまでは民間銀行貸出(青い線)と並行して増えていくが、バブル崩壊後の2000年以降は国債残高(赤い線)と並行して増えていることがわかる。毎年、政府が赤字国債を刷って民間銀行に買わせている関係であるため、それを一部の人間が独占していたとしても「政府の借金=民間の預貯金」であり、政府の借金900兆円を民間から集めた税金で返してしまえば政府の赤字はなくなるが、国内から同額のお金(ほぼすべての現金・預貯金)が消えることを意味している。


 「世界広しといえども永遠に借金を続けられる民間企業などない。人口は限られているのに、経済成長が永遠に続くわけがない。借金が増え続けるということは一円も負債を返済していないということであり、1円も返済せずに銀行から借金できるのは政府しかいない。だが返してしまえば経済が破綻する。そもそも未来永劫返さないものを『借金』と呼ぶ意味すらない。完全に論理破綻している」とのべ、最近、米国などで提唱されているMMT(現代貨幣理論)は、自国の通貨発行権を持つ政府は赤字国債(借金)で予算を組むことができるこの仕組みを解説したものであることを説明した。

 だが、この政府の借金には、毎年9兆円、この30年で300兆円以上もの利息が累積している。利息とは、お金持ちがお金をもっているというだけで、時間とともにお金が入ってくるという仕組みだ。その利息は、国債を買い込んでいる機関投資家(民間銀行や保険会社など)が受けとっている。そのため時間がたてばたつほど、貧困者から金持ちへの富の移転が進み、国内の格差はどんどん拡大していく。

 その解決策として大西氏は、「まだ世界にお金が必要である以上は、税金や赤字国債ではなく、新たな政府通貨として1兆円紙幣を900枚発行して日銀に預け、日銀が民間銀行にある900兆円分の国債を買いとればいい。すでにアベノミクスの金融緩和で半分もの国債を買いとっているがインフレもなにも起きていない。知らない人もいるくらいだ。すべて買いとってしまえば、同じ日銀の金庫の中に、政府から預かった900兆円(政府通貨)と政府に貸している900兆円(国債)が存在することになり、両者が相殺される。すべて数字上の話であり、おそらくみなさんには蝶が羽ばたいたくらいの感覚しかないだろうが、このバタフライ・エフェクトによって年間9兆円もの膨大な利息を生んでいた巨大な格差拡大マシーンが停止する。国債から利息を稼いでいた銀行は青息吐息になるだろうが、社会全体からみれば後に劇的な変化を生む。皆さんが知らず知らずのうちに奪われつづけてきた膨大な時間とお金をとり戻すことができる」との持論を展開した。

人の労力と時間が国の資産 税制と国家予算の本質

 また「国家経営において“税金を集めなければ使えるお金がない”という発想は、税を年貢米で納めていた時代のものだ。コメは集めなければ使えない。だが、お金とはそもそも無だ。すべて借金で作り出している。現に日本の国家予算はこの50年間毎年赤字だ。その気になれば、無税国家にしてすべて政府の借金でお金を作って回すことも可能であることを証明している」としたうえで、「ただ税制には、国の形をつくるという大事な意義がある」と強調した。

 現在の累進課税には「所得の再配分」、相続税には「所得格差の是正」という思想が反映されており、「みなさんが望む社会のあり方に従って国の形を作っていく。それが本来の税制の役割であり、政治の本質だ」とのべた。

 現在は所得税の最高税率が45%であるのに対して、株や為替取引など金融取引で得た1億円以を稼ぐ投資家の所得は分離課税(17%程度)で優遇され、なんの価値も生み出さず他人の富を奪うギャンブルを国が奨励している。「この金融取引で得た所得に高税率をかけられると投資家は飛び上がるが、“どうせ働くならこの世に価値を生み出して下さい。それが私たちが望む国の形だ”という明確なメッセージを与えることになる。日本は世界一お金を貸している国であり、外国人投資家など本当は必要ないのだ。だが私たちは外国人投資家を追い出す前に在日米軍を追い出さなければそれを実現できないだろう。その覚悟を持って政治家と政党を選んでいくことが必要だ」とのべた。

 国家予算についても「お金は紙切れであり、経済の中を数字がぐるぐる回るだけで消えることはない。それ自体は何の価値も生み出さない。本来の国家の財産とは、人間の時間と労力、そして環境資源だ。これが実体価値を生み出す源泉で、使ってしまうと二度と返ってこない。これを有効に使うことこそが国家経営であり、その価値を作り出すためならばお金はいくらでも作ることができる。だが現在は、教育や介護にしても、必要としている人がいて、働きたい若者もいるのに、そこにお金が注がれないために価値を生み出せない本末転倒な状態に置かれている。電気、水道から鉄道や道路をはじめ社会全体にとって必要不可欠な公共インフラの民営化、消費税、カジノ解禁など、社会にとってなんの価値もない金もうけのために人の時間と労力が無駄に使われる。これこそが国家にとってのコストだ。お金で考えるから論理が逆転するのだ」と指摘した。

本質を知り動き出した世界 進む価値観の転換

 最後に大西氏は、「この30年間、日本は明確な方向性を失ってきた。戦後復興という大きな目標を成し遂げた後、何のために生き、働くのかさえわからないまま、ひたすら目先の利益や売上のために働き続けてきたが、それがすでに社会の豊かさとはかけ離れたものになっていることを誰もが薄々気がついている。大人がそうであれば、それを見ている子どもたちは余計にわけが分からない。奨学金という借金を抱えて社会に放り出され、ただ“売れ、売れ”といわれるが、それに価値があることすら感じられず、生きる意義を見いだせない。だからこそ10代〜30代の若者の死因のトップが自殺というような歪な社会になっている。私たちは、ただ金を稼ぐために働くという目的から、よりよい社会を作るために時間と労働力を使うことを明確にし、日本から新しい国づくりをはじめることを提案したい。そのためには、この狂気と化した金融経済を変えるための指針を示す国家経営をする政治家を作り出さなければならない」と強調し、以下のように続けた。

 そもそも経済とは、価値の生産と交換だ。みんなに必要なものを作るからこそ交換できる。だが、今は必要ないものを無理矢理作って売る。お金をもらうための経済だからだ。それは金融の仕組みが、誰かの借金で成り立っている巨大なイス取りゲームだからだ。売ったものが社会にとって必要か、不必要かすら判断できなくなっている。

 経済の専門家も政治家も、お金を「あるもの」として考え、コストも人間が効率的にカネをもうけられることを基準にしか考えない。その他の多くの人の方が本質に気がつき、疑問に感じているはずだ。


 価値とは、人が必要とするモノやサービスなどの実体そのものであり、それを交換するためのお金はその量に見合うだけあればよく、金利や借金で増え続ける必要などない。限られている実体価値以上にお金が増え続ける、つまり同じだけの借金が増え続けた結果、みんながそれに課せられた金利を返すために熾烈な競争社会になり、誰かを蹴落とさなければ生きていけない経済のシステムになっている。この問題を解決しなければ、貧困や格差、戦争、病気などあらゆる社会の問題は絶対に解決しない。みんなが仲良く共存できない世界をこの金融システムが作っている。

 この金融資本主義の仕組みを根こそぎ変えることは、世界中の政治家にとって最大の政治命題だ。すでに地球も社会も維持できないところまで来ており、歴史の必然として地球規模の大転換がそこまで迫っている。

 そのためにはまったく新しい次元の新しい政党をつくる必要があり、れいわ新選組はその大転換の動きが生み出したものだ。米国大統領選でサンダース旋風が起きたのも地球規模で始まった自浄作用といえる。人間の意識は地球を壊滅させることもできるが、それを立て直すこともできるすごい力を持っている。既成の政治勢力の外側から新しい社会を目指す勢力が生まれている。名前がなんであれ、代表が誰であれ、この考え方が新しい時代を作っていくことを断言できる。

れいわ新選組の街頭演説に集まった人々(7月、東京)
 だが単純にそのような政党が政権をとっただけで世界が変わるほど甘いものではない。かつて政権を失った民主党がそうだったように、われわれ自身が大して変化していないからだ。お金の発行の仕組みは、世界中の経済の仕組みを変えなければならず、みんなが是が非でもという強い熱意をもってそれを求めなければ変わらない。一人一人が、世界を狂わしているお金に従って動いていくなら、狂った社会はなにも変わらない。

 大事なのはみんなの頭の中だ。みんながお金よりも大事なものに気がついて、少しずつ自分の判断を変えていくのなら、その数が増えるだけ社会にものすごい変化を起こしていく。その先に政権を取る事業があり、日本が変わればその影響は世界に計り知れない変化をもたらすことになる。

 所有という概念も人間が作り出した意識にすぎず、自然界にあるものは人間を含めたすべての生き物の共有物だ。支配という概念も、株主(資本家)のいうことを聞かなければいけないという意識も、この社会であたりまえとされて信じ込まされているだけの観念であり、真理でもなんでもないことに気がつくことができる。お金も紙切れにすぎず、それそのものに何の価値もない。ないもの(カネ)に縛られてあるものを歪めていくのか、あるもの(時間と労働力)を使って新しい世界を創造していくのか。それはすべて頭の中から始まり、それぞれが自分の頭で考えて決めていけばいい。

 私の考えでは、よりよい世界を作るためには、まず1人からできることをやる。自分の頭の中だけは誰からも邪魔されないからだ。自分の思い込みが正しいとは限らないのに、たくさんの人を巻き込もうとすれば逆に失敗する。他人と結果はコントロールできないが、自分が1段の階段を上がることはできる。それをみんなが始めたら社会は大きく変わっていく。

 私の場合は、2011年時点で、世界は変わり始めたし、すでに変わったと直感した。だから、私はその変わった世界と、みなさんの頭の中に漠然と起きている変化を整頓して言語化していくことによって、それを皆さんが意識するようになると思った。だから本を書いたり、動画を作ったり、講演会活動を始め、まったく相手にされない時期もあったが、やっているうちにだんだん周りが影響されて耳を傾けてくれる人が増え始めた。

 そして、みなさんから「それは私が思っていたことだ」「それがおかしいと思っていた」「それを求めていた」といわれ始めた。私の言葉であるのに、それを通じてみんながこれまで気がつかなかった自分の心が発していた言葉に気付いていくことができるということを経験してきた。自分をとり巻く世界で起きている現状とその問題を生み出す本質的な原因に気がついたとき、人は自分の本当の声を聞くことができるのだと感じた。自由を奪ってきた思い込みや既成概念が取り払われると、自分にとって本当に大切なものが見えてきて自然とワクワクしてくる。

 そこで私が次にみなさんに期待するのは、突き放すようだが「勝手にしてくれ」だ。自分の声を聞いたのなら、自分がやりたいことや望む生き方がはっきりする。それに向かって自分のペースで動いていけばいい。よいことをしようとするなら「利己的になって焦らない」のが大切だ。主観的に結果や他人をコントロールしようと思えば、それはエゴにしかならない。

 他者に対しては、愛して信じて待つ。自分の信念に従ってまず自分を変える。自分だからこそできることがあるし、自分が変わるから他者に影響を与えることができる。そのようにしてしか世界は変わらないし、それが世界を変える大きな鍵だと思っている。
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/14039

4. 中川隆[-14168] koaQ7Jey 2020年1月30日 21:22:16 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-851] 報告
目からウロコの財政金融基礎知識/大西つねき 2016/10/03



国の借金が880兆円あると言われているけど、実は日本は世界一お金持ち。

お金は国や政府が発行しているわけではない。

お金の発行の仕組みとは?

政府の借金を20年で完済する方法。…

既存の経済理論を覆す新しい哲学で国家経営の本質を語る、フェア党代表の大西つねきさんの「目からウロコ」の経済学講座です。
5. 中川隆[-13601] koaQ7Jey 2020年3月22日 10:50:54 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[1303] 報告

「会場が震えた」大西つねき れいわ新選組 参議院選個人演説会
/希望とワクワクを配るツアー@7/7大阪
2019/07/07 にライブ配信


6. 中川隆[-12258] koaQ7Jey 2020年6月23日 06:54:35 : SdKRyXdLoU : YWNCOS4wZ0FhbTY=[19] 報告
日銀の役割についてとその公平性について(Live配信2020/6/22)


7. 中川隆[-14529] koaQ7Jey 2021年12月19日 12:31:02 : dppXNWrKaE : Z2Jvd3hjalMzTzY=[9] 報告
日本銀行は日本政府の子会社である
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/1385.html
8. 2023年8月05日 17:14:59 : 5392876OEk : bGY2TE8uaW5WREk=[10] 報告
<■104行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
世界最大のヘッジファンド、量的緩和と現金給付に続く新たな金融緩和を語る
2023年8月4日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38616

世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がLinkedInのブログで、世界的な物価高騰をもたらした現金給付に続く新たな金融緩和の方法について語っている。

過去40年の金融緩和

アメリカでは1970年代の物価高騰が終わって以来、金融市場の歴史は金融緩和の歴史である。

1970年代の物価高騰を止めるために20%以上に上がったアメリカの政策金利は、その後30年近くかけて低下してきた。以下はアメリカの政策金利のチャートである。


中央銀行は経済が弱るたびに利下げを行い、金融緩和によって実体経済を支えてきた。

だがその金利は2008年のリーマンショックでついにゼロに到達する。中央銀行はこれ以上金利を下げられなくなったが、それでも緩和をする方法が欲しかったので、紙幣を印刷して金融市場から国債などの証券を買い入れる量的緩和という方法に頼ることになった。

政策金利を操作する方法では国債の金利を直接下げることはできないが、紙幣印刷で中央銀行が有価証券を買い上げてしまえば、資産価格を人工的に押し上げ、国債の金利を押し下げることで更なる緩和を行うことができる。

だがこの方法では実体経済をコロナ危機から救うことは出来なかった。日本で実際にそうなっているように、資産価格を上げても得をするのは資産を持っている人々だけだという当たり前の事実に、アメリカも直面せざるを得なくなった。

そこで考案されたのが、国民の銀行口座に直接現金を注ぎ込む方法である。現金給付と呼ばれるこの方法は、家計の財政状況を見た目上改善した一方で、世界的な物価高騰を引き起こした。

世界最高の経済学者サマーズ氏が説明するインフレの本当の理由
このように緩和の歴史を振り返ってみると、明らかに言えることは、緩和の副作用が強くなっていることである。利下げの副作用は、2000年にドットコムバブルを引き起こしたり、2008年のリーマンショックにつながる住宅バブルを引き起こしたりすることだった。

それだけも酷かったかもしれないが、利下げが量的緩和になり、量的緩和が現金給付になった今、緩和の副作用は雪だるま式に膨らみ、インフレという形で全国民に降り掛かっている。

だが緩和の極端化というこのトレンドは、もはや誰にも止められないだろう。人間にそれを止める頭があれば、そもそもインフレは起きていない。

ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
だから投資家は現金給付に続く新たな緩和方法が何かということを、そろそろ考え始める必要がある。

中央銀行はまず利下げによって金利を低下させ、経済における最大の債務者、つまり政府を救済し続けてきた。その次には量的緩和によって、金融危機で資産を失った資産家を救済した。コロナ禍におけるはロックダウンで収入を失った家計を救済した。

もう救済するものはあと1つしか残っていない。中央銀行による中央銀行の救済である。

中央銀行が自分自身を救済する

政府が国債を中央銀行に押し付け、中央銀行はシリコンバレー銀行などの破綻処理にあたって価格が下落していた債券を額面で引き受けているので、もはや中央銀行はさながらゴミ箱のような様相である。

政府はこのまま中央銀行をゴミ箱のように扱い続けることができるのか? 現代人は誰もその実験を経験したことはないが、歴史上には同じような事例は存在する。こうした疑問を尋ねるのに最良の人物は、やはりダリオ氏だろう。

ダリオ氏は次のように述べている。

長期的には、歴史を振り返ってこれから何が起こるかを描いてみると、政府の財政赤字が増大するのは実質的に確実で、利払いや他の予算の費用が増加している以上、増加の加速度は上がる可能性が高い。

アメリカのGDP比財政赤字は次のように推移している。


短期的には上下しているが、長期的には赤字は増え続けている。そしてこれが少なくなる見通しのないことは、誰もが同意するところだろう。

緩和も財政も悪化し続ける。だが緩和が利下げから現金給付まで指数関数的に進化してインフレという限界にぶつかったように、政府の財政も同じように指数関数的に進化して人々が思っているよりも早く限界にぶつかるだろう。

このまま財政赤字が加速度的に増加すればどうなるか。ダリオ氏は次のように述べている。

そしてそうなれば、政府はより多くの国債を発行しなければならなくなり、自己強化的な債務スパイラルに陥ることになるだろう。

金融市場がそれ以上増やさないよう迫る一方で、中央銀行は紙幣印刷によってもっと多くの国債を買わなければならなくなる。そうしなければ損失が拡大し自分のバランスシートが毀損されることになる。

「金融市場がそれ以上増やさないように迫る」というのは、国債の発行増加を市場の投資需要が支えきれなくなり、国債価格が暴落してゆく状況だろう。

そうした要因での米国債の価格下落は、今の市場参加者にはほとんど想像もできないはずだ。だが少し前の市場参加者には、インフレも想像できなかったことを思い出したい。

ダリオ氏の言う通り、国債の発行が指数関数的に増加してゆくならば、量的緩和なしには国債価格を維持できない状況はいずれ必ず訪れる。そして「指数関数的」な増加によってその水準に到達する日はそれほど遠くないということは、少しの数学的素養のある人ならば分かるはずだ。

ダリオ氏によれば、そうした問題の典型的な解決策は、政府が中央銀行の損失を補填することだという。だが政府は中央銀行の紙幣印刷によって資金供給されているので、中央銀行は結局は自分に資金供給することになる。この空中でジャンプして空に浮き続けるような末期的状況の典型的な帰結は、金利高騰か通貨暴落かインフレ、あるいはその組み合わせだろう。

結論

実際、イギリスはその状況に到達しかけた。1つ前のトラス政権がインフレの状況下で大規模な財政緩和を行おうとしたとき、金融市場では英国債とポンドが両方急落した。

サマーズ氏: 景気後退で財政支出する国はイギリスの二の舞になる
結局はトラス氏が辞任に追い込まれることによって緩和は撤回されたが、他の先進国はそうした瀬戸際にある。日本では円安とその結果としてのインフレが大きな問題になっている(が、自民党支持者はストックホルム症候群によって緩和の引き起こした円安とインフレの関連を頭から消し去っている。)

利上げで預金者はインフレから資産防衛できるにもかかわらず日銀が利上げを行わない理由
アメリカは、基軸通貨ドルの恩恵によって今のところ日本やイギリスのような羽目にならないで済んでいる。だがスタンレー・ドラッケンミラー氏は、まさにそれが原因でアメリカはより大きな危機に陥ると予想している。

ドラッケンミラー氏: アメリカは基軸通貨ドルのお陰で致命傷を食らうまで緩和を続けられる
短期的な延命のために長期的な危機が許容される。いつものことである。しかし若者たちはそれで良いのだろうか。

ドラッケンミラー氏、高齢者が若者から搾取する税制を痛烈批判

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/38616

9. 中川隆[-11708] koaQ7Jey 2024年2月02日 12:24:10 : bm8TTGJh0s : b3BsT1RPYTdKZTI=[5] 報告
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壺齋散人 日本の右翼
https://japanese.hix05.com/Uyoku/uyoku.index.html

日本の右傾化が指摘されて久しい。日本で右傾化というとき、主に政治的な面が強調され、それに国民の間の社会的気分というようなものが付加的に言及される。政治的な面における右傾化は、自民党政権の復古的な動きによって代表される。自民党政権は、自主憲法の制定を党是としているが、かれらのいう自主憲法とは、現憲法を否定して明治憲法の精神に立ち戻ろうという多分に復古的な意図を感じさせるものだ。だから日本政治における右傾化とは、復古主義的願望に沿ったものということができる。

一方、国民の間の社会的な気分としての右傾化は、いわゆるネット右翼の台頭によって代表される。ネット右翼といっても、その特徴は千差万別で、さまざまな主張を内包しているが、ひとつだけ共通しているのは、自分たちと異なった考え方をもっているものを敵とみなし、それに対してヘイト的な攻撃を加える一方、主張の似ているものを仲間と見なして、その仲間内で盛り上がることを楽しむことである。彼らのほとんどは権力融和的であって、自分を権力と同一視し、権力に寄り添いながら敵を攻撃する。これは、日本の右翼の根強い伝統に沿ったもので、いまさら刮目するようなことではない。

そこで、日本では右翼とは一体何だったのか、あるいはどのようなことを考え、どのような役割を果たしてきたのか、ということが問題になる。右翼とは日本固有の事象ではなく、世界中で見られるものである。ヨーロッパの古い国々ではどこでも右翼が幅を利かせてきた歴史があるし、現にいまでも右翼の巨大な運動を抱えている国もある。アメリカのような歴史の浅い国においても、右翼が台頭したことはあったし、最近もトランプ現象という形をとって表面化したことは記憶に新しいことである。

右翼という言葉が、政治的なタームとして使われるようになったのはフランス革命以後のことである。それ以前には、守旧派とか王党派という言葉が、今日の右翼という言葉に相応していた。守旧派という言葉は、今日ではかならずしも右翼と重なり合う内容を持ったものではなく、むしろ現状を尊重する穏健な主張というふうに受け取られることもあるが、フランス革命以前には、王政を支持して、それに対抗するあらゆる運動に敵対したことで、今日の右翼と同じような、復古主義的で反動的なイメージを振りまいていたのである。

フランス革命が右翼という言葉にお墨付きを与えたと一般的に云われている。フランス革命の際に成立した国民議会の構成にその起源がある。国民議会はフランス革命を推進しようとする勢力と、革命をとめて旧秩序を回復しようとする勢力からなっていた。彼らは議会の議場にそれぞれ同士が隣り合うように着席したのだったが、たまたま、議長席から見て左側に革命派が着席し、右側に反革命派が着席したところから、革命派を左翼と呼び、反革命派を右翼と呼ぶようになった。その後、フランス革命の伝統を重んじ、社会の改良をめざす勢力が一般的に左翼と呼ばれ、既存秩序を守ろうとする勢力が右翼と呼ばれるようになった。ただ既存秩序の維持を主張する勢力には、穏健な保守派もいたので、保守派のうちでも、復古反動的な色彩の強いものを特に右翼といった。右翼のなかでもとりわけ反動的な分子は極右と呼ばれ、左翼のなかでも急進的で騒がしい連中を極左と呼ぶようになった。

面白いことに、議会における右と左の分布は、フランス以外の欧米諸国でも見られ、日本の衆議院の座席配置にも見られるので、今日右翼と左翼の分別は、その国の議会の議場の配列に物理的根拠を持っているのである。日本の衆議院の議場配置は、議長席から見て右側に与党が座り、左側に野党が座る。野党の中でももっとも左翼的とされる共産党は、実際にも議場のもっとも左側の席を占めている。これは東京都以下地方議会でもほぼ共通しているらしい。すくなくとも東京都議会の議席配置は衆議院のそれと同じである。ところが、参議院には、こうした配置はあてはまらない。参議院では、与党の自民党は議場の中央部分に集中し、共産党は右側に位置している。だから、参議院の議席配置を基準にすれば、自民党は中央派、共産党は右翼、ということになる。

このように、右翼という言葉自体は、フランス革命の進行のなかから、偶然の事態をきっかけに生まれたものだったが、その言葉によって意味されるものの内実は、革命以前から存在していたものだ。左翼の革命派が目指したものは、自由と平等という理念の実現であった。それに対して王党派などの右翼が目指したものは、既存のシステムの回復であった。回復であるところが単なる保守主義と違うところである。保守派は今ある秩序を守ることをめざすが、右翼はいったん失われたものを回復することをめざす。つまり過去に反り返るという意味での反動が、右翼という概念の中核的な要素なのである。

以上から浮かび上がってくることは、右翼とは革命への反動として始まった、少なくとも言葉の定義の問題としてはフランス革命にその淵源をもつということだ。革命そのものは、左翼と呼ばれるようになる勢力によって推進されたから、左翼こそがまず歴史の流れの主流となり、右翼はそのカウンターパートとして生れたということになる。つまり右翼は左翼あっての右翼だったわけで、左翼がいなければ成り立たなかったといってよい。そういう意味では、右翼は、左翼に対立することを本質とするという意味で、依存的・従属的な概念だということになる。

興味深いのは、保守主義という概念も、そもそもは革命への反感から生まれたということだ。保守主義の思想上の祖先はエドマンド・バークということになっているが、バークの思想は、フランス革命への対抗の中から生まれたものだ。バークの思想が単に保守主義といわれ、右翼といわれないのは、その穏健性によるとされるが、フランス革命への敵意から発している点では、バークと右翼との間に大差はない。バークの主張したことは、立憲主義に代表されるイギリスの伝統的な統治システムを擁護することにあったが、それがうまくいっているかぎりは、ことさらにその利点を叫ぶことはなかった。ところがフランス革命によって、過激な思想が出回るようになると、それとの対比でことさら既存システムの利点をあげつらう必要が出てきた。そこで始めて、保守主義にも思想としての独自の意義が認められたのである。

以上で、右翼と左翼の相違、右翼と保守主義の相違についての一般的な事項を述べたので、以後は、日本という国において、右翼とか保守主義とか言われるものがどのような経緯で発展してきたか、また、その結果今日の日本がどのような形で右傾化しているのか、について詳細な分析を加えていきたいと思う。


日本右翼の源流 玄洋社:日本の右翼その二

民権から国権へ:日本の右翼その三

アジア主義への傾斜:日本の右翼その四

大正期の右翼の動向:日本の右翼その五

昭和の右翼テロ:日本の右翼その六

北一輝の国家社会主義:日本の右翼その七

大川周明の大アジア主義:日本の右翼その八

翼賛体制への右翼の組み入れ:日本の右翼その九

敗戦と右翼:日本の右翼その十

敗戦後の右翼の追放と復活:日本の右翼

戦後右翼の特徴反共・親米:日本の右翼その十二

新右翼の登場:日本の右翼

日本会議:日本の右翼その十四

跋扈するネット右翼:日本の右翼その十五

右傾化する日本:日本の右翼

安倍晋三と統一教会問題:日本の右翼


(参考)

鈴木邦男「新右翼」

安田浩一「『右翼』の戦後史」

堀幸雄「戦後の右翼勢力」を読む

小山俊樹「五・一五事件」

関岡英之「大川周明の大アジア主義」を読む

大塚健洋「大川周明」を読む

大川周明「復興亜細亜の諸問題」を読む

高橋正衛「二・二六事件」を読む

嵯峨隆「頭山満」を読む

菅野完「日本会議の研究」

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