新興国の外貨準備急減 マネー流出、介入で通貨防衛
2013/7/16 2:00
新興国の外貨準備が減少している。マネー流出で急落した自国通貨を買い支えようと米国債など保有する外貨資産を売っているためだ。5、6月の2カ月でインドネシアの外貨準備は8.5%、インドは4%、ブラジルは2.4%減少した。米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が5月に量的緩和縮小に言及したのが引き金だ。新興国は通貨安に伴うインフレで景気が減速する新たな課題に直面している。
19日に始まる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では新興国からの資金流出問題への対応も議論する。新興各国は米国に対して通貨など市場に配慮した金融政策運営を求める見通しだ。米国がどう応じるかが焦点となる。
各国の外貨準備を集計したところ、インドネシア、インド、ブラジルやロシアなど中国を除く新興12カ国・地域合計は6月末時点で約2兆9700億ドルと4月末(約3兆300億ドル)と比べ2.2%減った。2カ月間の減少率としては欧州債務問題が深刻化した2011年11〜12月以来の大きさだった。
バーナンキ米FRB議長が量的緩和縮小に言及して以降、ドル資金が新興国から流出し、外国為替市場でインドネシアルピアなど新興国通貨が軒並み下落。急激な通貨安で輸入物価が上昇するとインフレを招きかねないため各国は自国通貨を買う大規模介入を実施した。これが外貨準備の減少につながっている。
一方、世界最大の外貨準備を抱える中国は6月末の残高が約3.5兆ドルと3月末(約3.44兆ドル)を上回り、過去最高を更新した。ただ、4〜6月の増加幅は1〜3月と比べて減少した。
新興各国が外貨準備の米国債を一気に売却すると米国債市場の波乱要因にもなる。「米長期金利の上昇につながりかねない」とSMBC日興証券の野地慎為替ストラテジストは指摘する。FRBによると、海外中銀による米国債などの証券保有残高は6月末に前月比400億ドル以上減少。11年末以来の減少幅となった。
新興国は1997年のアジア通貨危機を教訓として外貨流出に備える外貨準備を積み上げてきた。08年のリーマン危機後に米国が金融緩和を拡大した後は高利回りを求めるマネーが新興国に流入。新興国は自国通貨高を抑えようと自国通貨売り介入を実施し、さらに外貨準備が増えた。その流れが米国の量的緩和の縮小観測が強まったことで逆転しつつある。
ただ、足元では12カ国・地域合計の外貨準備高は10年前に比べ約3倍の水準で、「枯渇して連鎖的な通貨危機が起きるような状況ではない」(JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉チーフFXストラテジスト)との見方もある。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC15007_V10C13A7MM8000/?dg=1