★阿修羅♪ > 軽毛 jHmW0Q > 100009
 
g検索 jHmW0Q   g検索 pa/Xvdnb8K3Zc
 前へ
軽毛 jHmW0Q コメント履歴 No: 100009
http://www.asyura2.com/acpn/j/jh/jhm/jHmW0Q/100009.html
[国際17] ミャンマー治安機関の責任追及を、少数民族を性的暴行軍警察など組織的に性的暴行 怪僧イスラム教徒を虐殺 スーチー制御できず
ミャンマー治安機関の責任追及を、少数民族を性的暴行 

 2月6日、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」は、西部ラカイン州で軍や警察などの治安機関がイスラム系少数民族ロヒンギャの女性や少女に対する性的暴行に組織的に関与していると非難し、治安機関の司令官らを罰するようミャンマー政府に求めた。写真は5日、バングラデシュの難民キャンプにある診療所で健康診断を受けるロヒンギャ族の難民たち(2017年 ロイター/Mohammad Ponir Hossain)

http://s4.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20170206&t=2&i=1171563853&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXMPED150EW


[ヤンゴン 6日 ロイター] - 米国に本拠を置く国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」は6日、西部ラカイン州で軍や警察などの治安機関がイスラム系少数民族ロヒンギャの女性や少女に対する性的暴行に組織的に関与していると非難し、治安機関の司令官らを罰するようミャンマー政府に求めた。

HRWは、ミャンマー軍による弾圧を受けて隣国バングラデシュに逃れた約6万9000人のロヒンギャにインタビューし、女性に対するレイプや集団性的暴行などについて報告書にまとめた。

報告書によると、「性的暴力は無作為ではなく、ロヒンギャに対して組織的に」行われているとみられるという。

この件に関するミャンマー政府のコメントは得られていない。

ラカイン州には、推定110万人のロヒンギャが暮らしている。昨年10月にロヒンギャとみられる武装集団が警察施設を襲撃して以来、治安部隊が掃討作戦を進める同地域には記者や人権団体の立ち入りは禁止されている。

政府はこれまで、治安機関による性的暴行や暴力、殺害、市民の拘束など大半を否定。村の焼き討ちなどは、ロヒンギャの武装集団に対する合法的な掃討作戦と主張している。

*写真をつけて再送します。

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
訂正:米、人身売買問題でミャンマーを「最悪」国に格下げ
米、人身売買問題でミャンマーを「最悪」国に格下げ
外国企業の同性愛イベント支援禁止、人権団体がシンガポールに抗議
日米同盟揺るがないとのメッセージ発信したい=首脳会談で安倍首相
米国防長官、中国の南シナ海での活動を批判 劇的な軍展開は不要
http://jp.reuters.com/article/myanmar-rohingya-idJPKBN15L0IW


 


“宗教戦争”最前線──イスラム教徒を虐殺するミャンマーの怪僧
Tag: 宗教 、 アシン・ウィラス 、 戦争 、 イスラム 、 ミャンマー 、 ボドゥ・ボラ・シーナ 、 ロヒンギャ 、 民族


mail
「イスラム国」の台頭など、世界では宗教をめぐる争いが深刻化している。民主化が認められたミャンマーでもまた、新たな抗争が生まれている。仏教徒集団「ボドゥ・ボラ・シーナ」が、少数派イスラム教徒ロヒンギャ族に虐殺行為を繰り返しているのだ。英国版『GQ』は、ミャンマーのビンラディンと呼ばれる、この団体のリーダー、アシン・ウィラスを追いかけ、この民族抗争の真実に迫った。

Text: Alex Preston Translation: Ottogiro Machikane

969運動を率いる高僧アシン・ウィラス
2013年3月、ミャンマー中部の都市メイッティーラで仏教徒とイスラム教徒の対立から虐殺が発生した。モスクと、そのまわりの建物が焼き尽くされた惨劇の跡/左:969運動を率いる高僧アシン・ウィラス Getty Images (left center), AFP-JIJI (background)

たわわな果実さながらのオオコウモリを枝々にぶら下げた熱帯樹のでこぼこ道を三輪タクシー──トゥクトゥク──がガタゴトと市街中心部に向けて走っていく。海からどんより漂ってくるもやの向こうに銃を提げた警備兵の姿がおぼろげに浮かび上がり、トゥクトゥクの湿気た帆布製の日よけに隠れようと私は後部席で身を縮め、帽子を目深にかぶり直した。ここはミャンマー最西部のラカイン州、ベンガル湾とバングラデシュ国境にほど近い州都シットウェ。この地で深刻な人道被害が発生し、世界の注目を浴びるに至った。多くの人がその惨状をこう表現する──まぎれもなく、これはジェノサイド(民族浄化)だ、と。

ラカイン州はミャンマーに属してはいるが、南北に連なるアラカン山脈によって他の地方とは切り離され、西隣のバングラデシュに含めてもよさそうな地勢をなしている。このラカイン州はムスリム(イスラム教徒)が最もまとまって暮らす地域(州北部の人口約126万人のうち72%がイスラム教徒とも)である。そして、この地で代々暮らしてきたロヒンギャ族というムスリムの集団が、いま深刻な迫害を受けている。ベンガル地方から流入した不法な移民として外国人扱いされるばかりか、爆発的な人口増を力にミャンマーを乗っ取ろうとしているなどと言いがかりをつけられ、暴力にさらされてもいるのだ。

そのロヒンギャ族を訪ねるために、私はミャンマーまでやってきた。「世界で一番迫害されているマイノリティのひとつ」と国連が表現するムスリムたちの現状をつぶさに見て世界に伝えたい、そんな思いに突き動かされてのことだった。

次のページ仏教国ミャンマーでのイスラム教徒迫害の歴史
http://gqjapan.jp/culture/column/20150607/ashin-wirathu/page/2


 

 
スー・チー氏窮地 反イスラム制御できず ミャンマー
2017年02月05日 06時00分
 ミャンマーに昨年3月発足した新政権の事実上のトップ、アウン・サン・スー・チー氏が窮地に陥っている。イスラム教徒少数民族のロヒンギャ問題を巡り国内で反イスラムの動きが拡大。国外からは指導力不足を批判された。1月には側近の法律顧問が射殺され、同氏の対応が注目されている。 (バンコク浜田耕治)

 1月29日、ヤンゴンにある国際空港のタクシー乗り場で惨劇は起きた。スー・チー氏率いる与党・国民民主連盟(NLD)の法律顧問コー・ニー氏が至近距離から銃で撃たれ、死亡したのだ。インドネシア訪問から帰国した直後だった。

 コー・ニー氏は、憲法の規定で大統領になれないスー・チー氏を「国家顧問」にする法案策定で、ブレーンとして重要な役割を果たした。仏教徒が9割を占めるミャンマーでは少数派のイスラム教徒だった。

 現場で拘束された男は「金で殺害を依頼された」と供述。動機や背後関係はまだ分かっていない。政府は「国の不安定化」を狙った犯行との声明を出したが、イスラム教に絡む憎悪犯罪(ヘイトクライム)の疑いも指摘されている。

 ■ ■

 実際、ミャンマーでは「反イスラム」の動きが広がっている。ロヒンギャが多く暮らす西部ラカイン州では昨年10月、警察施設が何者かに襲撃され、警官9人が死亡した。軍はロヒンギャの仕業として州北部で掃討作戦を実施し、ロヒンギャの集落の焼き打ちやレイプなどの迫害を繰り返した疑惑が浮上した。

 しかし、多数派の仏教徒に配慮して最高指導者のスー・チー氏は沈黙を守ったまま。このため、スー・チー氏は「軍を制御できていない」としてイスラム諸国から集中砲火を浴び、ノーベル賞受賞者のほか、国連からも非難された。

 今年1月に入ると国内各地で、イスラム教預言者ムハンマドの生誕祭が、保守派の仏教僧らの圧力で相次いで中止に追い込まれた。

 ■ ■

 イスラム排斥を掲げる保守派の仏教僧らのグループが近年、台頭している。2015年の総選挙で敗れた軍系の連邦団結発展党(USDP)を支持し、スー・チー氏のNLD政権に対しては「仏教保護に熱心でない」として否定的とされる。

 ミャンマー政治に詳しい北九州市立大の伊野憲治教授は「軍が力で抑え込んでいる時は、イスラム教徒の宗教行事を中止に追い込むような問題は表面化しなかった」とした上で「軍は治安維持などで手を抜いている節がある。(次の総選挙をにらんで)軍の関与がないと社会が混乱するぞ、と印象付ける狙いもうかがえる」と指摘する。

 依然として強い影響力を持つ軍と国際社会の圧力に“板挟み”となっているスー・チー氏。側近の射殺によって、ミャンマーの民主化は危険な局面に入ったとの指摘もあり、同氏の手腕が注目される。

=2017/02/05付 西日本新聞朝刊=

◆好評の西日本新聞アプリ。30日分の全紙面と速報ニュース。初月無料でお試し!
◆ホークスFANタブレットが登場。もれなくマッチとワッチに会える特典付き!

川端康成邸から書など76点 徳田秋声らとの交流示す
遺伝学者O・スミシーズ氏死去 ノーベル賞受賞
「学者・博士」が男子2位に上昇 「大人になったらなりたい」調査
ノーベル賞の大隅さん名誉市民に 福岡市議会 全会一致で同意
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/world/article/306019
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/829.html

[経世済民118] 日本はトランプ大統領の経済敵国にあらず トランプの輸入代替戦略、初代財務長官と共通点 ロンドン不動産、中東勢を引きつける
日本はトランプ大統領の経済敵国にあらず

Quentin Webb

[香港 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日本はアメリカの経済敵国ではない。とはいえ、トランプ大統領が日本は円安誘導していると不満を口にしたわずか数日後、訪米を控えた安倍晋三首相は同大統領をなだめるため、大規模な米国への投資と雇用創出パッケージを用意している、と関係筋はロイターに語っている。

金融・政治の両面において、すでに米国の重要な同盟国である日本だが、対応するほかに選択肢はない。

確かに第2次安倍政権の誕生後、円は2012年の1ドル86円から今日の112円まで下げている。だがこれは、日本経済を復活させる措置のうれしい副作用である。成長とインフレ促進のために日本銀行が行っている大規模な国債買い入れ、つまり「量的緩和」の結果である。

米国の金融政策がドルを引き下げるなか、どちらかと言えば、円は強くなり過ぎていた。だが、米国が独自に行う通貨政策の分析が認めているように、日銀の国債買い入れは外国為替市場に直接介入することとは異なる。日本は2011年以降、為替介入をしていない。

円安は日本企業の業績を押し上げる。理論的には競争力が押し上げられているはずだが、実際には、海外での売上増には結び付いていない。日本の輸出量は依然として、金融危機以前のピークを5分の1下回っている。実際、モノの対米貿易収支は過去4年で80億ドル減少し、昨年9月までの12カ月で700億ドルとなっている。

一方、米国も円安を享受している。消費者は格安価格で質のよい車やゲーム機を手に入れている。同国が保有する大量の米国債によって、米国の借り入れコストは低く抑えられ、日本政府のデータによれば米国への対外直接投資は累計で4350億ドルに達している。

また、裕福で安定した民主主義国家である、米国の最も重要なアジア同盟国が、経済不安から脱却するのを目にすることには大きな価値がある。

日米首脳会談で、安倍首相は70万人の新規雇用と米国内におけるインフラ投資で4500億ドルの市場創出効果のある「日米成長雇用イニシアチブ」を米国側に示すとみられる。

まずは米国企業が、次にソフトバンクグループ(9984.T)の孫正義社長のような外国企業の経営者が、そして今度は政治家がトランプ大統領に敬意を表すべく列をなしている。

日本は少なくとも自国の経済や金融政策に介入しようとする動きには抵抗するだろう。それは十分な妥協以上のものだと言える。米国には間違いなく敵がいるが、日本はそこには含まれない。


おすすめ記事


コラム:トランプ氏が持ち込む「中国式」統治法 2016年 12月 20日
コラム:トランプ米大統領、対メキシコ強硬姿勢で「共倒れ」も 2017年 01月 26日
視点:トランプ円安は幻想、進む「米国の日本化」=青木大樹氏 2017年 01月 23日
http://jp.reuters.com/article/column-jp-not-economic-enemy-idJPKBN15L0NN

 

トランプ氏の輸入代替戦略に見る初代財務長官ハミルトンとの共通点
Rich Miller
2017年2月6日 14:00 JST

関連ニュース
トヨタ:今期業績見通し増額、円安が寄与−米政権の影響は不透明
日本株は続伸、米金融規制の緩和と雇用改善を好感−円高推移が重しに
邦銀3メガ:10−12月は微増益、低金利で本業苦戦も市場収益好調
先読めないトランプ経済政策に備え「特命調査チーム」−三井住友F

実は中国が長年追求してきた戦略をまねている形か
米中の動向に「収れんが見られるのは確か」とプラサド氏

トランプ米大統領が唱える通商・経済政策には、初代財務長官アレクサンダー・ハミルトンの政策と重なる部分が多い。そして、その点に世界の国々や地域は懸念を感じている。
  トランプ氏はハミルトンと同じように、経済にとっての製造業の重要性を指摘し、政府による奨励を望んでいる。同氏はさらに、ハミルトンが用いたような輸入代替戦略を通じてその実現を目指している。これは米国で販売される外国製品を米国産で置き換えることで、グローバル化に逆行するものだ。
  米ダートマス大学教授で、ハミルトンの「製造業に関する報告書」について詳細な論文を執筆したダグラス・アーウィン氏はトランプ政権について、「彼らは確かにそうした方向に向かいたい意向と見受けられる」と語った。ハミルトンは1791年に議会に提出した同報告書で、国内産業の促進を説いた。
  これまでの流れに逆行するトランプ氏のスタンスの下、米国が「強いドル政策」を堅持するのか疑念が生じ、外国為替市場で動揺が広がるとともに、トランプ政権から通貨慣行をめぐり批判を浴びた日本やドイツからは鋭い反発を招いた。
  米国が経済ナショナリズムに転じつつあることを受け、1930年代の再現を憂慮する動きも台頭している。当時はポピュリスト(大衆迎合主義)の政権が保護主義や軍国主義の政策を推進し、第2次世界大戦につながった。
  世界最大のヘッジファンド運用会社、ブリッジウォーター・アソシエーツを率いるレイ・ダリオ会長と共同最高投資責任者(CIO)のボブ・プリンス氏は、1月31日付の顧客向けリポートで、「明らかになりつつあるトランプ政権の政策にわれわれは懸念を強めている」と記した。
相違点も
  独アリアンツの主任経済顧問モハメド・エラリアン氏はトランプ氏の政策プログラムを「輸入代替プラス」の手法と呼び、自動車など特定のセクターを支援する産業政策も含まれるとする。ダートマス大のアーウィン教授はここにハミルトンとの共通点を見いだす。一方で、大きな違いもあるという。
  ハミルトンは、独立を果たしたばかりの米国が自国を守るための武器製造の能力を確保したい考えだった。また、高めの輸入関税率も支持はしたが、幼稚産業への補助金給付に主な重点を置いていた。これに対しトランプ氏が目標とするのは経済成長の押し上げと、雇用創出の加速だ。同氏はこのために補助金よりも関税の方を強調している。
  逆説的ではあるが、「米国第一主義」の通商政策アプローチを取るトランプ氏は、中国が長年にわたり追求してきた戦略をまねている形だ。中国政府はサプライチェーンの刷新を通じて製品部品の国内生産を増やすという、トランプ氏がまさに現在採用しようとしているやり方を推し進めてきた。
  国際通貨基金(IMF)のエコノミストを務めた経歴を持つ、米コーネル大学のエスワール・プラサド教授は米中のこのような動向に関し、「収れんが見られるのは確かだ」との見方を示した。
原題:Trump Echoes Alexander Hamilton With Import Substitution Stance(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-06/OKXJSC6K50XS01


 


 
ロンドン不動産、中東勢を引きつける−EU離脱選択後のポンド安で
Jack Sidders
2017年2月6日 19:55 JST

関連ニュース
トヨタ:今期業績見通し増額、円安が寄与−米政権の影響は不透明
日本株は続伸、米金融規制の緩和と雇用改善を好感−円高推移が重しに
邦銀3メガ:10−12月は微増益、低金利で本業苦戦も市場収益好調
先読めないトランプ経済政策に備え「特命調査チーム」−三井住友F


英国の欧州連合(EU)離脱選択で、同国商業不動産への投資は大半の海外投資家の間で冷え込んだ。だが、中東勢はリスクをしのぐポンド急落や商品相場の持ち直しを背景に投資を活発化させている。
  資産運用会社フィデリティ・インターナショナルがまとめたデータによれば、昨年10ー12月(第4四半期)に英不動産市場に投資した海外投資家のうち中東勢が占める割合は24%と、前年同期の10%から大幅に増えた。その他地域からの投資額は軒並み減ったという。
  不動産仲介業者ナイト・フランクのロンドン中心部担当責任者、スティーブン・クリフトン氏はインタビューで、ロンドンの不動産に対して中東の顧客の投資意欲が著しく高まっていると述べ、「2つの主たる理由がある。それは通貨と安定性だ」と指摘した。
  ロンドンの金融街シティーのオフィス価格は英国が昨年6月の国民投票でEU離脱を選択したことを受けて7年ぶりの大幅安を記録。さらなる価格の下落を恐れる投資家は慌てて投資を引き揚げようとし、一部の不動産ファンドは解約停止を余儀なくされた。一方、国民投票後にポンドが15%下落したことを手掛かりに、アラブ首長国連邦(UAE)やカタールなどの国の買い手が不動産価格の安定に貢献した。
  フィデリティの不動産調査部門責任者、マシュー・リチャードソン氏はインタビューで、「ポンドがまさに暴落した」と発言。原油価格が前年比で62%上昇したこともあり、石油でドルを稼ぐ中東の投資家が英国市場に舞い戻ってきたと説明した。
  通貨安とともに、欧州の他の主要市場と比較して手ごろ感が高まったことも、ロンドンの不動産に買い手を引きつけている。ナイト・フランクによれば、プライムオフィスの利回りはパリが3%、ベルリンが3.5%なのに対し、シティーは4.25%に上る。
原題:London Property Tempts Middle-East Buyers on Pound Brexit Slump(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-06/OKY2TD6K50XV01

 


ドル/円方向感欠く、日米首脳会談に警戒感

[東京 6日 ロイター] - 午後3時のドル/円は、先週末ニューヨーク市場午後5時時点に比べて、若干ドル安/円高の112.57/59円だった。株価の不安定な値動きをながめて下押しする場面があった一方、米金利が持ち直すのをながめて底堅さも意識され、方向感は出なかった。

午後のドル/円は、112円半ばを軸に、方向感なく推移した。10―11日に迫った日米首脳会談を前に、米国サイドからの通貨安批判への警戒感から戻りは鈍かったが、米10年債利回りがじわりと上昇しドル/円を支援した。

トランプ大統領はTPPを離脱表明する一方で、二国間FTA(自由貿易協定)を重要視する考えを示しており、市場では、米国のTPP離脱によって失われる「通貨安競争を回避する」との参加国12カ国の共同宣言(昨年11月)を日米FTAに盛り込んでくるとの見方が出ている。

首脳会談に同行する麻生財務相は3日、トランプ大統領の通貨安批判について、「通貨の競争的切り下げを回避するという、これまでのG7やG20の合意に沿って、今後とも適切に対応していく」と述べた。

トランプ大統領の金融緩和批判については、「金融政策はそれぞれの国内目的を達成することに向けられている」とした。

きょうはフィラデルフィア連銀総裁の講演予定などがあるが、米連邦公開市場委員会(FOMC)や米雇用統計をこなすなかで、ドル/円と米金利の相関の弱まりが意識されており「利上げへの思惑だけでは相場はあまり動きそうにない」(国内金融機関)とされる。

午前のドル/円は、日米首脳会談への警戒感でドルの上値の重さが意識され、日経平均の上げ幅縮小も手伝い、一時112.22円まで下落した。

市場では「112円を割り込めば、一気に行くかどうかは別として、110円台がみえてくる」(金融機関)との声が聞かれた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が3日発表したIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組(1月31日までの1週間)は円の売り越しが5万8331枚と、前回の6万6840枚から減少。昨年12月初め以来の低水準となった。

ドル/円JPY=  ユーロ/ドルEUR=  ユーロ/円EURJPY=

午後3時現在 112.57/59 1.0773/77 121.28/32

午前9時現在 112.64/66 1.0780/84 121.43/47

NY午後5時 112.62/64 1.0781/87 121.40/44

(為替マーケットチーム)

今、あなたにオススメ
沖縄事件で全面的に捜査協力、TPP任期中に結論出す=オバマ氏
日米首脳会談は午後9時半から、世界経済など議論=菅官房長官
伊勢志摩サミット前に日米首脳会談、25日軸に調整=政府筋
スズキとの業務提携検討は事実、今日の取締役会に付議=トヨタ
焦点:トランプ円安の増益効果、円高時の為替予約で享受できない企業も
http://jp.reuters.com/article/tokyo-forex-idJPKBN15L0HS?sp=true
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/743.html

[経世済民118] こども食堂とは何者なのか? 人口減、高齢化という重荷 財政政策でインフレは実現するか トランプショックで回復傾向が足止
こども食堂とは何者なのか?
2017/02/04
風樹茂 (作家、国際コンサルタント)
 数年間、日本を離れているうちに日本の格差や貧困の焦点は大きく変わった。以前はリストラ、ホームレスなどが主要なテーマだった。けれども今、マスメディアがより取り上げるのは子供の貧困であり、その対策として、全国に俄かに広がったこども食堂のブームである。月に2度ほど開かれる食堂が、貧困解決と直接関連があるのだろうか? 東京の千石、葛飾立石、千駄木の各こども食堂を訪れてみた。


こども食堂は大家族(おたがいさま食堂せんごく にて)
文京区千石 おたがいさま食堂
毎週金曜開催 こども100円 大人300円

 おたがいさま食堂せんごくは、文京区の大原地域活動センター2階で開催される。都営地下鉄千石駅から徒歩10分。白山通りから狭い通りを入って行く。開始時間の夕方6時に着いたが、一人の母親がぽつりとキッチンに立っているだけだ。彼女はその日の当番で、メニューを決める役割があるという。さっそく手伝うことになった。

 サンドイッチのためのロールパンに切れ目を入れ、ジャーマンポテトのためのジャガイモの皮を剥き、ポトフのためにニンジン、ブロッコリーを切る。その間、母親、父親が食材を持ちより、子供を連れて三々五々集まってくる。一人子が多い。足りない食材は誰かが買いに出る。父親、母親が台所に立つ。小学生の女の子が一人いて、手際良く手伝ってくれる。父親が手作りのキーマカレーを持参し、一人で参加している女性が煮しめを差し入れてくれる。すべてが自然の流れである。仕事も負担もあうんの呼吸で参加者がそれぞれ分け会う。

 食堂で走り回る子どもがいるし、別室で絵本を読んでもらっている子どももいる。7時にはサンドイッチやジャーマンポテトなどができ、順次テーブルに置いて行く。子供たちが席につき食べ始める。参加者は私を含め、子ども13人、大人14人である。中には年配の母親を連れて来る方もいるが、20代〜30代前半の親と就学前の子供が中心だ。

 食事がすむと、さっさと片付けるとともに、同時にデザートのフルーツを出す。子どもたちが駆けまわり、テーブルの下に潜り込む。騒がしく、慌しい。どこかで見た懐かしい光景である。

 著者は4歳(昭和30年中頃)まで、大家族だった。父母、祖父母、叔父夫婦、いとこ2名、合計9名が食卓を囲んだ。当時は、学校や学年に係らず地域の子どもたちと遊んでいた。家屋には外の世界と接する縁側や縁台があった。しかし昭和30年代後半には核家族になり、近所の友達も減った。縁側や縁台も消えた。

きっかけはうどんの買い過ぎだった


高浜さんは「文京子育て不動産」を経営。「仕事よりも子育てが大切です」
 後日、食堂主催者の高浜直樹(30)さんのオフィスを訪れた。0歳児と4歳児を持ち、子育てを第一に考えていることから、子育て中の夫婦を主なターゲットとした「文京子育て不動産」を経営している。主な一問一答は次のとおり。

ー子育て不動産ってどういうコンセプトなんですか?

「地域密着型で子育てをしている家族に貢献できる事業を考えていて、3年ほど前に起業したんです。それぞれのご家族にとって「幸せなライフスタイル」を実現できそうな条件の部屋を一緒に探していくのをコンセプトにしています」

―どのようなきっかけでこども食堂を作ったのですか?

「阿佐ヶ谷の『おたがいさま食堂』主催者、齊藤志野歩さんと知り合って、楽しそうだなってずっと思っていたんです。あるとき、勘違いから生のうどんを2.4キロも買ってしまい、それを機会にうどんを食べる会のような形で始めました。人数ですか? 最初は口コミで12名ぐらいでした。ネットで告知しなかったら、二組だけのときもありました。15人前後だと落ち着いて話もできますが、先日は人も多かったし、おかずも多すぎたので慌しかったです」

―こども食堂は誰のためにある?

「第一は自分の子供のためです。ぼくは練馬から移ってきたんで、ゆるい形で地域のいろんな大人や子供と週に一度ぐらいは触れあう機会があればと思っていました。周りを見ても子育てが苦しそうに見える人が多いですから。基本的にやっていて楽しいから続けられるんです。子どもの貧困の解消をとくに目的としているわけではありません。自然の流れでそうなればいいとは思いますが」

―どんな親子が多い?

「就学前の子供が多いです。中には小学生が子供だけでくることもあります。その場合は親がつきそっていないので、食事がすむと家まで送って行く必要があります」

―他に苦労する点は?

「気を使うのは、子供のケガや衛生面ですね。食中毒とかになったら大変ですから。社会福祉協議会のボランティア保険には入っていますけど」

―料金は安価ですが、賄い切れますか?

「メンバーの差し入れなどもありますから。まあ、まれに足が出ることがあります。それでも、大原地域活動センターの利用料金が区民だと半額の750円なので助かっています」

―今後の展開は?

「ぼくも含めて仕事をもっていたりするので、おじいちゃん、おばあちゃんが、前もっておかずを作っていてくれて、それでいっしょに食べるのが理想ですね」

 町会のような既存の組織と連携できればいいのだろうが、新住民が接点をうまく持つのは難しいところがあるという。

葛飾区立石 パルこども食堂 月1回土曜日開催
大学生300円 他500円 寺小屋参加者無料

 NPO法人レインボーリボンは「パルこども食堂」と「あおとこども食堂」のふたつを運営している。なぜふたつもあるのか? その目的などを含めて、主催者の緒方美穂子さんに聞いた。

「もともとPTAから派生したNPOですから、こどもの貧困、いじめ、虐待、発達障害などの問題に関心がありました。2014年にNHKの『あさイチ』で豊島区の『要町あさやけ子ども食堂』の活動が紹介されていて、そのあとで、関係者の栗林知絵子さんの講演を聞きに行って、葛飾区でも子ども食堂を作れないかって思ったんです」

 その後、勉強会を開き、ボランティアを募集し、「パルこども食堂」の場所は区の施設の男女平等推進センター(ウィメンズパル)に決めた。そこではハーフタイムという団体が中学生向けの無料学習塾の「寺子屋くらぶ」を開催している。

「『パルこども食堂』の参加対象者は塾で学ぶ中学生にしました。もうひとつの『あおとこども食堂』は誰でも参加できるようにしています。まずは楽しく参加してもらうことが目的です。3、4年後には発達障害の子どもが来て、その人たちを直接あるいは専門家によって支援できるようになれればと考えています」

 食事の手伝いはボランティア保険の対象者だけが可能だという。ボランティア保険とは、社会福祉協議会に登録した「自発的な意思により他人や社会に貢献する無償のボランティア活動」が対象となる保険。団体として加入する(団体参加者の名簿が必要)。掛け金はタイプによるが、年350円か510円と安価である。

 そこで、ちょっとした手土産を持って、「パルこども食堂」を夕方5時に訪れた。周囲には青砥団地や都営住宅がある。キッチンでは、ボランティアの年配の男女が、その日の献立のハッシュドビーフ、長芋の含め煮、大根と白菜の浅漬けをせっせと作っている。給仕してもらうために列に並ぶ。中学生に先生と呼ばれる若者たちが目立つ。上の階の「寺小屋くらぶ」で勉強を教えているNPO法人「Learning for ALL」に属する大学生である。

 私は中学生2名、大学生が3名の席に座る。中学生の女子が気を使って「お茶どうぞ」と勧めてくれる。ハッシュドビーフはなかなかの味で、私の隣の大学生は3杯もおかわりをする。 
参加者は中学生8人、大学生13人、私を含め見学者2人、ボランティアスタッフ9人(男性2名)。この日はクリスマスのプレゼントもあり、和気あいあいとした雰囲気である。

 ボランティアの男性と話すと、「普段はネクタイつけてオフィスにいって、地域と無関係な生活をしているから、ここにくると生きた感じがしますよ」(50代後半)

 「ほかの男はだめだよね。昔の地位がどうだったとか、そんなことばかりいって難しいよ」(60代)。

 食事が終了し、大学生、中学生が去り、あと片付けが終わったあとで、ボランティアによる反省会があった。印象深い声を拾ってみる。

 「中学生は世話されるのが嫌みたいなふうに装っているけど、おばさんが『寒くない、厚着したら』とかおせっかいやいてみると、実はうれしそうだった」

 「最初と比べて子どもたちの様子がまったく違う。人との係りに物怖じしなくなって、自分をあらわすようになった」

 帰宅時に70代にさしかかろうとする女性がこういっているのを聞いた。

 「ここでやって、元気になった。嬉しい」

 「生きる張り合いができた。説明会にはたくさん来たけど、やっている人は少ない」

文京区千駄木 おかえりごはん 
月2回金曜日開催 中学生以下無料、高校生以上300円

 食堂となる坂下会館は、地縁が強く残る谷中商店街の目と鼻の先である。主催しているのは千駄木の町会傘下の地域ネット坂下。この千駄木周辺は都内でも裕福な地域でもある。なぜ、こんなところに食堂が? 主催者の一人、千駄木3丁目北町会の副会長で総務部長の菅完治さんは、町会が所有している坂下会館の有効利用がその目的だったという。

「せっかく持っているのに使っていないことが多いんです。以前、NHKで子ども食堂が紹介されていて、その後、板橋のこども食堂『おかえりごはん』を見学にいきました。普通こども食堂は、開催場所にお金がかかることが多いんですが、会館は町会所有なので無料だし、時間も自由になります。さっそく始めました」

 古民家のような坂下会館を訪れると、狭いキッチンでは、年配の女性3人がせっせとこの日のメニューの空揚げとサラダを作っている。クリスマスが近いので柴又のケーキ屋さんからの差し入れもある。

 参加者は就学前の子供が多い。ボランティアの女性の娘(高校生の姉妹)、50代前後の男性も来る。みな知り合いか? 賑やかである。貧困の解消と関連があるのだろうか?

「ここは、こども食堂っていう名前もつけていないですよ。貧困のためなんて連想が働くと、親子が来にくくなりますからね。むしろ、サラリーマンの旦那の帰りが遅くて、子供と2人きりで食事をして煮詰まってしまうおかあさんたちの月2度のストレス発散の場ですね。貧困対策という意味では、無料学習塾のようなものができないかとは思っていますが。ほら、レストランや食堂じゃ、あんなふうにできないでしょ」(菅完治さん)

 テーブルの下で子供が2人入ってごろごろしている。60過ぎの男性が、ごはんを食べ終わって、皿を持って行こうとするお母さんを見つけると、駆け寄って皿を受け取り台所に持って行く。上げ膳据え膳だ。

 参加者は40人ほどで、大よそだが、子供15人(うち小学生3人)、高校生2名、親13人、大人の男性2名、ボランティア8人というところだった。最高で50人もの親子が参加したこともあるという。

昭和30年代回帰大運動

 テレビを中心とするマスメディアは、こども食堂は貧困家庭のためにあると喧伝することが多い。私は小学校から母子家庭で育って、葛飾区にも住んでいたことがある。そのように紹介されると、かえって貧困家庭の親子は行きづらくなってしまうだろう。

 本来、貧困や格差の解消は政治が担う問題である。教育費の高さ(国立大学でさえ授業料年54万円)、40%を超える非正規社員などを変革しない限り、結婚難、少子化、こどもの貧困は解消されない。

 けれども、こども食堂は、全国で300を超える(『子ども食堂を作ろう!』NPO 法人 豊島こどもWAKUWAKUネットワーク 明石書店)。社会的要請がなければ、ここ2年ほどでこれほど急速に増えることはない。前述した3つの例を見るように、こども食堂を作る目的やきっかけはそれぞれ違うのだが。ならば、こども食堂とは一体何者なのだろうか?

 私は14年ほど前、拙著『ホームレス人生講座』(中公新書ラクレ)で、戦後の日本史を彩るのは、無縁の潮流であるとの趣旨を述べたことがある。とりわけ地縁と血縁(親戚)が薄れた結果、家族に過度の負担がかかり過ぎる。様々な国を訪れたが、これほど人々が無関係な星のように孤立している国は少なかった。だから幸福度が少ない。子育ても困難が伴う。

 例外はあるが、こども食堂は、貧困解決とは直接の関連は薄い。その役割や効果は、

―食卓をともに囲むことで人と人が知りあう場となる。
―母親や父親の息抜きとなる。
―大人、とりわけ年配の人間には生き甲斐となる。
―子供たちが親以外の大人にも見守られていることを感じる。
―可視化できない困難を抱える子供や親を見つけ出すことがある。

 すなわち、こども食堂とは、平成の昭和30年代回帰運動なのである。一時の疑似大家族とともに、失われた地縁を新たに作る運動である。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8821


 
1


2017 年 2 月 6 日
人口減、高齢化という重荷

公益財団法人 国際通貨研究所
経済調査部 上席研究員 森川 央

2000 年代に入ってからの日本の実質成長率は平均 0.7%(2001〜2015 年)に留まり、1 人当りでも同じ 0.7%である。だが、生産年齢人口(15〜64 歳)一人当たりの実質 GDPだと 1.5%成長している。日本経済は案外、「頑張って」いるのである。
少子高齢化は単に市場の縮小や需要の変化を招くだけではない。最近の高齢者は元気な人も多いが、やはり年齢と共に体力は衰え病気のリスクも高まる。当然、医療や年金など社会保障負担が高まるが、それを現役世代が 1 人当たりの稼ぎ(生産)を高め支えてくれているという構図である。

しかし、現役世代 1 人当たりの負担はこれから益々重くなっていく。国連の人口推計をみると、日本の人口は 2015 年 1 億 2,700 万人弱であるが、2050 年には 1 億 700 万人に、約 2,000 万人減少していく。そして、従属人口(14 歳以下と 65 歳以上)は 4,980万人から 5,240 万人に増加する一方、現役世代は 7,720 万人から 5,500 万人に減っていくからだ(図 2)。

その結果、2050 年には現役世代と従属世代の人口がほぼ同じという超高齢化社会が出現するのである。


図1:一人当たり実質GDP
(資料)Thomson Reuters

生産年齢人口の減少が始まった 20 年前に、少子高齢化対策こそ最大の成長戦略という認識で手を打っていれば、今頃はもう少し見通しが明るくなっていただろう。景気対策を従来型の財政出動と金融緩和に頼り、本格的な少子高齢化対策を怠ったツケは重い。
今からでも、少子高齢化対策を急ぐべきだが、当面この負担を支えるには 1 人当りの生産性を高める以外に方法はない 1
。ロボット技術や AI(人工知能)は生産性を高める切り札になる可能性があるので、官民一体で研究開発に取り組む必要がある。

1 移民の受け入れを増やすという選択肢もある。

図2:日本の人口
(資料)Thomson Reuters、国際連合

http://www.iima.or.jp/Docs/column/2017/0206_2_j.pdf

  財政政策でインフレは実現するか〜誤解されがちなFTPL(物価水準の財政理論)」:みずほインサイト 日本経済
http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/jp170203.pdf


TDB景気動向調査 2017年1月調査結果〜トランプショックで回復傾向が足止め。米国の政策で世界経済に不透明感強まる
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/201701_jp.pdf
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/747.html

[国際17] トランプ政権は言われるほどひどくない「世界一高い」米国の法人税 トランプ「日本車が嫌い」?ドル98〜100円程度の円高か
トランプ政権は言われるほどひどくない

キーパーソンに聞く

30年ぶりの税制抜本改革でビジネス環境は激変する
2017年2月7日(火)
篠原 匡
 ドナルド・トランプ大統領が就任して2週間あまりが経過した。就任後、矢継ぎ早に出された大統領令を見ると、選挙公約を忠実に実行しようとする姿勢が見て取れる。ホワイトハウスの椅子に座れば現実路線に転換するだろうという世界の淡い期待は霧消しつつある。

 もっとも、ビジネスの世界に限ってみれば悪いことばかりでもないという声もある。インフラ投資や規制緩和と並んで市場が熱い視線を送っている税制改革、その中でも法人税の抜本改革について、話題の国境税調整をからめつつ、税制の専門家に聞いた。

(聞き手は、ニューヨーク支局、篠原 匡)
大統領令はオバマ政権も乱発

トランプ大統領が就任して2週間あまりが経ちました。メキシコ国境の壁建設や一部のイスラム教国の市民の入国を制限するなど、米国のみならず世界中に混乱をまき散らしています。秦さんは税法がご専門ですが、新政権をどう感じていますか?


秦正彦(はた・まさひこ)氏
アーンスト・アンド・ヤング・パートナー
専門は法人税、パススルー課税、クロスボーダー取引、企業再編、外国人を対象とした米個人所得税、タックス・プロビジョンなど。25年以上にわたり日本企業の海外事業に対して国際税務コンサルティングを提供している。弁護士(米カリフォルニア州)と公認会計士(カリフォルニア州、ニューヨーク州)の資格を持つ。
秦正彦・アーンスト・アンド・ヤング・パートナー(以下、秦):トランプ大統領は長年、ワンマン経営者として企業を差配してきただけあって、中身はともかく、実際の行動は極めて早いと思います。ニューヨーカーは何事も動きが早く、他人の目など全く気にしないところがありますが、トランプ大統領はまさにニューヨーカーの典型といった印象です。

 もっとも、大統領令はオバマ政権を含む過去の大統領もそれなりに乱発しています。とりわけオバマ政権は共和党が支配する議会と考えの相違があまりに大きく、議会の協力がほとんど得られませんでしたので、大統領令を積極的に活用してきました。大統領令や財務省など行政機関による規則を行使する以外に自身の政策を実行する手段がなかったのでしょう。ただ、それにしても議会の権限を侵食しているのではないかと思うこともしばしばありました。大統領令や規則の限界にチャレンジしていたと言ってもいいほどに。


「大統領令」を連発するトランプ米大統領(写真:Pool/Getty Images)
「規制強化」が足かせだった8年間

オバマ政権の8年間では規制強化が進みました。

秦:オバマ氏は人格的にとても立派な方だと思いますし、私も尊敬しています。金融危機の最中に大統領になり、米経済の崩壊を防いだ功績は高く評価されるべきでしょう。一方でビジネス環境という面でみると、ここ8年は相次ぐ規制でかなり厳しい状況にありました。私が専門にしている税法の世界を見ても、FATCA(Foreign Account Tax Compliance Act:外国口座税務コンプライアンス法)やインバージョン(税率の低い国への本社移転)規制、過小資本税制、組織再編の際のスピンオフ制限などの厳しい規制が次々と導入されました。金融全般を見れば、金融機関の説明責任と透明性の向上を狙ったドッド=フランク法(ウォール街改革及び消費者保護法)も挙げられます(取材後、トランプ大統領はドッド=フランク法によって強化された金融規制を見直す大統領令に署名)。

 参考までにご説明すると、FATCAは米国人による外国金融機関を利用した租税回避を防ぐため米国外の金融機関に顧客口座情報の報告を義務づける制度。インバージョン規制は税率の低い国に本社を移転する税逃れを防ぐための措置。過小資本税制は過度のレバレッジに対して支払利息の損金算入を認めないというもの。「支払利息は損金算入が可能だが配当金の費用化はNG」という法人税法の原則を突き、海外からのグループ内借り入れを過度に膨らませる企業が相次いだために生まれた規制です。最後のスピンオフ制限は事業を会社分割で切り分ける際に、含み益を持つ投資資産をタックスフリーで放出することを禁じた措置です。他国の多国籍企業と比べて、日本企業はこういった税圧縮のプラニングをあまり積極的に活用していませんね。

 オバマ政権で導入された税法関連の規制には租税回避を防ぐという大義名分があり、それ自体を否定するものではありません。ただ、財務省などが出す規制を見ると、議会によって法律で各省庁に委譲されている権限を逸脱していると思われるものも多かったように思います。また、一つひとつの規制のボリュームが大きく、企業にとって大きな負荷になっていました。過小資本税制の最終規則を一つとっても518ページに上る大作で、これを企業が理解し、順守するのは並大抵のことではありません。正直なところ、オバマ政権下での規制は過度だったと思います。

 このまま民主党政権が続いていれば、さらなる増税も含め、米国のビジネス環境は極めて息苦しいものになっていたでしょう。

抜本的な税制改革の機運の高まり

それが、トランプ氏の勝利で180度変わりました。

秦:税法以外の政策についていえば、トランプ大統領の主張している政策は個人的にも思うところがあります。もっとも、今の状況の中でトランプ政権は悪くないというのは勇気がいることですが、ビジネスという観点で見れば、トランプ大統領と共和党が支配する議会の組み合わせは決して悪くないと思っています。規制緩和に対する期待も当然ありますが、私の立場で言うと、抜本的な税制改正、特に法人税改革に対する機運が高まっているのが大きい。

トランプ氏は大規模減税を公約に掲げて選挙戦を戦いました。下院共和党もポール・ライアン下院議長を中心に税制改正案のブループリントを発表しています。

秦:米国における大規模な税制改正は1986年のレーガン改正が最後。それ以降、30年以上抜本的な税制改正は実現しませんでした。日本も同じだと思いますが、税制改正は選挙区ごとに勝者と敗者が生まれるため、同じ政党内でもコンセンサスを得るのが困難です。ただ、今回はトランプ大統領が減税に意欲的な上に、上下両院を共和党が押さえているため抜本的な税制改正の機運がこれまで以上に高まっています。


税制の抜本改革実現を目論むライアン下院議長(右)とトランプ大統領(写真:Zach Gibson/Getty Images)
「世界一高い」米国の法人税

なぜ抜本的な税制改革が必要なのでしょうか。

秦:法人税に特化してお話ししますが、理由は2つ、法人税が世界一高く、ワールドワイド課税(企業が海外で稼いだ利益を配当で自国内に戻す際に、その配当に対して法人税を課す税制)のままだからです。

 まず米国の法人税率は州税を含めると約40%で、先進国の平均がざっくり20%後半ということを考えれば、「世界一高い」と言い切ってしまっていいレベルです。よく米国企業の実効税率は実際には低く、法定税率が高くても問題はないという指摘があります。ただ、実効税率が低いのは税金対策に多額のコストをかけて低税率の国に利益を移転させているため。高い法人税が企業に負担を強いているという点で問題があるのは変わりません。

 トランプ大統領は選挙期間中、法人税率を15%まで引き下げると主張していました。共和党のブループリントでは法人税20%をうたっています。タックスヘイブン(租税回避地)かどうかの境目は法人税率20%を目安にすることが多いので、トランプ案の15%はもとより、共和党案の20%でもかなりのインパクトがあります。

 もう一つのワールドワイド課税は、米国外で上げた利益を配当で米国に持ち帰ろうとした時に課税される制度のことです。日本も含め、世界の国々は海外法人の利益の本社への配当に課税しないテリトリアル課税(企業が国外で稼いだ利益には自国の法人税を課さない税制)が中心ですが、米国は税制改革が実現しなかったため、いまだにワールドワイド課税のままです。

「ワールドワイド課税」にともなう多くの弊害

世界一高い法人税とワールドワイド課税の組み合わせは最悪ですね。

秦:その通りです。ワールドワイド課税が適用されているため、米国に拠点を置く多国籍企業にはヘッドクオーターを海外に移すインセンティブが強く働きます。そもそもの法人税が高く、世界中の子会社、関連会社で挙げた利益に最終的に40%の税率が適用されるわけですから。また、法人税率の低い国に本社を移せば、グループ間の貸し付けなど様々なテクニックを活用したアーニング・ストリッピング(支払利息控除を利用して米国内の利益を圧縮すること)も可能になる。製薬業界を中心に、M&Aを利用したインバージョンが広がりました。それも、高い法人税率とワールドワイド課税という組み合わせがあるからです。

 今回の共和党案では、法人税率の引き下げとともにワールドワイド課税の見直しに言及しています。オバマ政権はインバージョンを防ぐため新たに多くの規制を導入しましたが、グローバル企業がインバージョンやアーニング・ストリッピングを活用するのは米国の競争条件が各国と比べて著しく劣るため。その根本的な問題を解決せずに規制を強化しても、別の抜け穴を見つけようとするだけでしょう。トランプ大統領は米国第一主義を唱えていますが、税制に限って言えば、国際競争を阻害している要因を取り除くという性質のもので、世界標準に米国の競争環境を戻すという感覚だと思います。

共和党がかねてから温めてきた「国境税調整」

共和党案には「メキシコ国境の壁」の原資とも言われる、国境税調整も含まれています。

秦:今回、話題になっている国境税調整は税制改革における大きな柱の一つです。簡単に言うと、米企業が輸出する場合は輸出売り上げを課税ベースから控除する一方で、原材料などを輸入した場合は輸入仕入高を経費として認めないという考え方です。法人税率が20%だとした場合、輸出高の20%を補助金として受け取り、輸入高の20%を関税として支払うのと似たような効果が得られるため、米国内に生産拠点を戻すインセンティブが働きます。

 よくトランプ大統領が主張する国境税と混同されますが、国境税は輸入時に関税を課すのに対し、国境税調整の方は法人税の計算時に輸出と輸入にかかわる金額を年に一回調整して申告するイメージです。相手国がどこでも、また非関連者からの調達でも関係ありません。この国境税調整はトランプ大統領が突然、思いついたものではなく、ライアン下院議長をはじめとした下院共和党が従来から温めていたアイデアで、下院案は大統領選挙より前の2016年の夏には発表されています。実際、かなりよく考えられています。

 なぜこういうアイデアが出てきたのかというと、米国には消費税や付加価値税(VAT)などの間接税がないという事情があります。

米国から輸出する製品には、二重に税金がかかる

そういえば、米国には消費税がありませんね。

秦:日本を思い浮かべていただければと思いますが、日本で輸入品を購入する場合、消費者は消費税を払います。同様に日本製品を輸出した場合、輸出先に消費税に準じるものがあれば相手国で課税されます。その際、日本で輸出品に課税されることはなく、サプライチェーンの過程で支払った消費税は還付されます。

 それに対して、間接税がなく法人税ですべて対応している米国の場合、輸入コストは経費として課税ベースから控除できますが、輸出売り上げに対しては法人税がかかります。また、輸出の際はVATでの還付のような仕組みがないため、法人税がそのまま課されます。例えば、日本で製造した自動車を2万ドルで輸入して3万ドルで売れば、輸入仕入高の2万ドルは経費に算入できます。他方、米国で製造した自動車を3万ドルで輸出すると、3万ドルは必要経費を引いた後に課税所得となります。法人税の世界では当然の扱いですが、消費税を大きな財源とする他国と比べて方向が逆なんですね。

 結果として何が起きるか。他国で作った製品を米国に輸出する場合、輸出に対して出荷地では税金がかからず、米国では輸入企業が仕入れコストを経費算入できて、双方で米国への輸出は競争力が出る。他方、米国で作った製品を海外に輸出する場合、米国で法人税がかかり、輸出先でもVATや消費税がかかる。「アメリカは自ら好んで自分たちを不利にしている」と下院共和党はブループリントで述べていますが、まさにその通りで、米国の法人税は他国との比較でいうと、自国の輸出品に制裁を課している一方、輸入を奨励していることになります。トランプ大統領の米国第一主義を持ち出すまでもなく、こういった不均衡を是正しようと思うのは当然です。

「国境税調整」を導入するための“ロジック”

確かに、これでは海外移転にインセンティブを与えているようなものですね。

秦:この状況を修正するためには、米国もVATを導入すればいいのですが、低所得者の負担が重いという見方があるせいなのか、米国はVATに対するアレルギーがあり、VATを入れたがりません。そのため、法人税にVATの概念を入れようとした結果、国境税調整というアイデアが出てきた。

ただ、国境税調整は輸出補助金と輸入関税という側面があるので、WTO(世界貿易機関)ルールに抵触するという指摘があります。

秦:その問題を回避する上では、「設備投資の一括償却」、すなわちキャッシュフローベースという共和党案のもう一つのキーワードがポイントになります。日本やドイツのようにVATを導入している国の場合、企業が設備投資をすると、機械設備を購入した時にVATを払い、そのVATはその後の売り上げに課されるVATと相殺される効果を持ちます。もちろん、法人税の世界では設備ごとに恣意的な償却年数が定められており、それに従って企業は償却しています。ただVATの世界だけで見れば、購入したときに一括償却しているということになります。

 言い換えると、「他国が導入しているVATと同じだから」という理屈で国境税調整を導入するためには、法人税における設備投資の一括償却を認めないとつじつまが合わないということです。WTOは間接税であれば輸出入の税調整はOKだと言っている。米国の国境税調整は法人税ですが、「法人税」という言葉を使っているだけで設備投資の一括償却を認めている。米国内の人件費を費用化できる点を除けば実態としては間接税と変わらない。ゆえに、WTOルール違反ではないという理屈です。

 はっきり言って詭弁ですが、少なくとも下院共和党は国境税調整を導入するロジックとして以上のようなことを考えています。WTOの紛争解決に何年もの時間がかかることを考えれば、まず導入してルール違反と認定されたときに対応を考えるというのも想定内でしょう。

「国境税調整」をメキシコ国境の壁の原資に?

トランプ大統領は「複雑すぎる」と難色を示していました。

秦:私は国境税調整が導入される確率はそれなりに高いと思っています。なぜならば、国境税調整を導入しなければ、法人税減税のための財源が確保できないからです。国境税調整は貿易赤字に対する課税という意味合いもあり、巨額の貿易赤字を抱える米国が国境税調整から得る税収は今後10年間で1兆ドル、法人税率に置き換えれば8%に上ると言われています。この原資がなければ、共和党のいう20%の法人税減税など夢のまた夢でしょう。

トランプ大統領は国境税調整を壁の原資にするという考えもあるようですが…。

秦:そのあたりは共和党との調整でしょうが、共和党が法人税減税と財政中立を両立を目指している以上、国境税調整を導入しなければ実現できません。もちろん、メキシコとの間でサプライチェーンを構築している自動車業界や、輸入品を数多く扱う小売り業界、エネルギーの輸入に関わる石油業界などは反対するでしょう。ただ、国境税調整を導入してもドル高に振れて為替で調整されるという指摘もあります。極端なドル高になると海外資産のドル換算額が目減りしてしまいますし、トランプ政権はドル安に誘導したいでしょうから、この点は国境税調整導入の際のひとつのチャレンジとなる。

 現時点の税制改正案はブループリントであり、詳細は今後、明らかになっていくと思います。ただライアン議長は8月までに法案化したいと語っていますので、そんなに遠い話ではありません。トランプ大統領はいろいろと物議を醸す大統領令を出していますが、税制改革の機運がこれほどまでに高まっている時はありませんので、是非実現してほしいと思います。


このコラムについて

キーパーソンに聞く
日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/020200232

 
トランプ大統領は「日本車がお嫌い」?

上野泰也のエコノミック・ソナー

今年末は1ドル98〜100円程度の円高か
2017年2月7日(火)
上野 泰也
日本の自動車輸出について、不満をぶちまける

 米国のトランプ大統領は1月23日、企業経営者らをホワイトハウスに招いた朝食会で日米間の自動車貿易の状況に関し、「米国(の自動車メーカー)は日本国内で車を販売できないのに、日本は米国に何十万台の車を輸出している」「この問題について協議しなければならない」と発言。不満をあからさまに表明し、日本に「公正」な貿易を求める方針を示した。

 米国からの自動車輸入に対して日本の関税はゼロなのに対し、日本メーカーが米国に輸出する場合は2.5%の関税が課せられている。したがって、大統領の発言は環境規制や輸入時の認証手続きなど、いわゆる非関税障壁を問題視したものと受け止められている。


1月24日、トランプ米大統領は、ホワイトハウスでゼネラル・モーターズなど米自動車製造大手3社のトップと会談した。自動車製造大手のトップは、ドル高是正を政権に求めたとみられている。(写真:代表撮影/UPI/アフロ)
リーマン後、日本の黒字は拡大基調で推移

 日本の財務省が発表している貿易統計で日米間の「自動車」の輸出入差額を調べると、「リーマンショック」後に米国経済が緩やかな回復軌道を走る中、日本の黒字が拡大基調で推移してきたことがわかる。直近データである2016年12月分は+4705億円で、2007年12月以来の水準。ドル/円相場(東京市場17時時点・月中平均)で割ってドルベースで見ると2016年12月分は+39.6億ドル。その前の11月分が+41.0億ドルで、やはり2007年12月以来の大きさである<■図1>。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/020200080/pho01.jpg
■図1:日本の貿易統計 対米国の「自動車」輸出入差額

(出所)財務省資料より筆者作成

 むろん、日本の自動車メーカーは海外現地生産に注力しており、設備投資や雇用で米国経済に多大な貢献をしてきているわけだが、こうした自動車貿易関連の直近の数字は日本側にとり「不都合な真実」ではある。

「東京でシボレーが走っているのを最後に見たのはいつだ?」

 米大統領選の序盤ではいわゆる泡沫候補の1人とみなされていたためほとんど報じられなかったが、2015年6月16日にトランプタワーで共和党大統領候補指名争いへの出馬を表明した際、トランプ氏は次のように述べていた。

 「なんでもいい、我々が何かで日本を打ち負かしたことがあるか? 日本は何百万台もの車をアメリカに輸出している。一方、我々は? 東京でシボレーが走っているのを最後に見たのはいつだ? みんな聞け、そんな光景は存在しないのだ。日本人にはやられっぱなしだ」

 「私は、神がこれまで創造したなかで、もっとも偉大な『雇用創出大統領』になる。間違いない」(セス・ミルスタイン編 『ドナルド・トランプ 大いに語る』 講談社+α新書より引用)

トランプ氏の言動が、円買いドル売りの材料に

 「米国第一」の保護主義的な姿勢によって世界経済全体に大きな混乱や下押し圧力がもたらされる中で、米国経済が最終的にトランプ氏の唱えるようなきわめて良好なパフォーマンスを確保できるとは、筆者には全く思えない。だが、上記のようなトランプ氏の言動が昔の日米通商摩擦の連想を招いており、市場で円買いドル売りの大きな材料になっていることは事実である。

 大統領就任の少し前、1月11日に久しぶりに行った記者会見でトランプ氏は、「中国、日本、メキシコとの貿易で米国は巨額の損失を被っている」と発言。これら3か国に対する米国の貿易赤字に不満を表明した。

 この時点では、通商問題におけるトランプ氏の「主敵」はあくまでも中国であり、日本はターゲットにはならないという見方が優勢だった。

人民元に対するドル上昇に強い不満を表明

 実際、1月13日に米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)の電子版に掲載されたインタビューでトランプ氏は、「彼ら(中国)が為替相場を操作していることは間違いない」「『われわれは通貨を切り下げている』と言う代わりに、彼らは『ああ、われわれの通貨が下落している』と言う。下落しているのではない。彼らが意図的にそうしているのだ」「米国の企業はいま、彼ら(中国の企業)と競争できない。なぜなら、われわれの通貨(ドル)は強く、それがわれわれに甚大な打撃となっているからだ」と述べ、人民元に対するドル上昇に強い不満を表明。中国当局による意図的なドル高人民元安が、米国の企業の競争条件を不利にしているとした。

主要通貨に対してもドル高懸念を表明するだろう

 だが、次の4つの理由から、筆者はこの時点で、トランプ氏は遅かれ早かれ円も含む人民元以外の主な通貨に対するドル高に対して、懸念を表明するだろうと読んでいた。

(1) 上記のようにトランプ氏は1月11日の記者会見で、中国、メキシコと並んで日本に対する米国の貿易赤字へも不満を表明していたこと。

(2) トランプ氏が前面に出している「米国第一」の保護主義的な政策と、ドル相場の上昇は、かみ合わせが非常に悪いこと。

(3) 経済政策の司令塔である国家経済会議(NEC)委員長に就いたゲーリー・コーン氏は「『米国の輸出競争力を弱める』として、ドル高を警戒する発言も繰り返しており、新政権の為替政策にも影響する可能性がある」と報じられたこと(2016年12月10日 日本経済新聞 夕刊)。

(4) 1980年代前半の「レーガノミクス」が大幅なドル高進行によって行き詰まったという歴史の教訓を、トランプ氏も十分知っていると考えられること。
「ドルを押し下げる」可能性にも言及

 そして、トランプ氏は上記のWSJインタビューで「ドルは強過ぎる」「強いドルには長所と同時に数多くの短所がある」と述べるとともに、「ドルを押し下げる」可能性にも言及していたことがその後明らかになり、市場で円買いドル売りの材料になった。

 また、トランプ大統領は1月31日、米製薬会社大手首脳を集めた会合の場で、「(米企業の競争力減少の)多くは、他国が通貨や通貨供給量、通貨安誘導で有利な立場を取っているという事実に関係している。米国はひどい状況が続いてきた」「われわれは、通貨安誘導、全ての(貿易相手)国が通貨安誘導に依存しているということに無知だ。中国は(通貨安誘導を)行っているし、日本は何年も行ってきた」と発言。

 いつものようにまくしたてるような口調で、しかも品性や教養がほとんど感じられない表現で、中国および日本の通貨安誘導によって米国の企業が不利な立場に置かれていることを強調した。トランプ政権の保護主義的な姿勢が強固であることが、市場に強く印象付けられた。そして、「米国第一」というスローガンに沿った米国の製造業復活には、ドルが強いことは障害になる。

「国際秩序の再構築」という観点からも波乱含み

 さらに、「国際秩序の再構築」という観点からも、トランプ政権の今後は大いに波乱含みである。以下の2点に筆者は注目している。

(1) 「トランプのアメリカ」がおそらくはロシアとも連携しながら「中国包囲網」形成を志向する中で、米中間の対立は軍事的な緊張が高まりかねないところまで先鋭化するのか?

〜 東西冷戦下で発足したレーガン政権で主たる敵とみなされた旧ソ連にあたるのは、トランプ政権では中国だろう。米国の対中貿易赤字と南シナ海での中国の軍事的動きをにらみつつ、「1つの中国」原則でさえ、トランプ政権は「ディール(取引)」の材料にしようとしている。仮に、トランプ政権が本気で政治・軍事的に「中国包囲網」を形成しようとする場合、日米同盟や米韓同盟の堅持に加えて、ロシア(およびインド)との関係緊密化がカギになり得る。もっとも、中国とロシアの関係は現在、決して悪いわけではない。また、中国、ロシア、インドはいずれも、BRICS首脳会議のメンバー国である。


(2) 「トランプのアメリカ」がNATO(北大西洋条約機構)の現状や欧州統合を支持しない中で、ただでさえ今年は国政選挙が多く不安視されている欧州情勢は、ますます不安定化するのか?

〜 (A)トランプ大統領はNATOを「時代遅れ」と批判。ロシアの軍事的脅威に対する重要な防衛網へのコミットを米国が弱めることを示唆している(言うまでもなくロシアを利する行動)。大統領就任前には、NATOの加盟国がロシアから攻撃されても米国は防衛に動かない可能性にさえ言及したことがある。

〜 (B)トランプ大統領は英国のEU(欧州連合)からの離脱を強く支持し、独メルケル政権など欧州大陸の伝統的価値観の政治から距離を置く姿勢をとっている。要するに、欧州統合の流れに今度の米大統領は反対姿勢である。欧州が団結しない場合には経済的に米国が有利になるといった計算も働いているのだろうか。いずれにせよ、欧州情勢の不安定化は「リスクオフ」による株安・円高に結び付く話である。
 ドル/円相場の今年の予想は、一段の円安ドル高か、それとも円高ドル安方向への大きな揺り戻しが起きるかで、市場で真っ二つとなっている。

 トランプ政権の保護主義的な姿勢や、それとも絡み合ったリスク要因の多さゆえに、筆者は円高を予想している。いくつもの大きな波を伴った不安定な動きになることは避けられそうにないが、今年の年末時点では98〜100円程度まで逆戻りしているだろう。


このコラムについて

上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/020200080
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/831.html

[経世済民118] 100円硬貨が不足?ニッケル供給不足の現実味 自国優先主義が招く危機 国内年金による不動産投資状況と投資形態別リターン 
100円硬貨が不足?ニッケル供給不足の現実味

元素が買えない 自国優先主義が招く危機

「鉱山開発に反対する目的は『カネ』だ」
2017年2月7日(火)
寺岡 篤志
 昨年6月に誕生したドゥテルテ政権の鉱山政策が世界から注目を集めている。「責任ある鉱山開発」を掲げ、監督官庁である環境天然資源省(DENR)の長官に環境活動家のジーナ・ロペス氏を任命した。ロペス長官は就任直後から9月までに10の鉱山に操業停止を命令。さらにすべての鉱山に対する監査を実施して、41の鉱山のうち30が基準違反を犯していると断じた。

 フィリピンはステンレスの製造に必要なニッケルの最大生産国だ。ステンレスは腐食や酸化に強い耐性を持ち、100円硬貨などにも使われている。もしニッケルの供給が不足する事態となれば、世界の産業界にどれだけの影響が広がるのか。詳しくは2月6日号の特集「元素が買えない 自国優先主義が招く危機」で解説した。

 本稿では、フィリピンのニッケル生産最大手、ニッケル・アジア・コーポレーションのジラード・ブリモ社長のインタビュー記事をお届けする。同国におけるニッケル生産量のうち約4割を同社が占める。特に日本向けに輸出されるニッケルに限れば、シェアは7割に達するという。

 同社はDENRの監査をパスし、1月11日にフィリピンでブリモ社長にインタビューした際には、自社の鉱山開発の正当性を強調していた。環境保護活動に関しても「鉱山開発に反対すること自体が目的化している」と辛辣に批判した。しかし、現地報道によると、2月2日にDENRが発表した監査の最終処分では、傘下の鉱山会社が停止命令の対象になった。多くの鉱山開発会社も処分に反発しており、反対派と鉱山会社の争いが激化することは必至だ。

(聞き手は寺岡 篤志)

【記事のポイント】

●ニッケル市況の変化
●「我々の鉱山に何の問題もない」
●バッテリー向けのニッケル需要が拡大
ニッケルの市況が大きく変化しています。


ジラード・ブリモ氏
ニッケル・アジア・コーポレーション社長兼CEO(最高経営責任者)。マンハッタン大学卒業後、フィリピンのアジアン・インスティテュート・オブ・マネジメントで経営学修了。1985年よりフィリピン最大の資源会社、フィレックスマイニングで副社長、会長を歴任。2010年より現職。
ブリモ氏:2016年最初の半年はニッケル価格の低迷に苦しんできました。2月には13年ぶりの安値をつけた。どのニッケル企業にとっても大きな経営問題だったはずです。

 しかし、後半の半年は市況がやや改善しました。2016年は1900万トンと前年と同水準のニッケル鉱石を生産しました。安値のために稼ぐ力は落ちてしまいましたが、利益は確保できました。

昨年の6月頃からニッケル価格は上昇しています。ドゥテルテ政権の誕生と時期が一致しています。

ブリモ氏:基本的には中国のステンレスの生産が好転したことが原因だと思っています。今のところは政策の影響が、非常に大きいということはありません。環境天然資源省(DENR)の監査で基準違反を指摘された30の鉱山のうち、実際に操業停止となっているのは一部だからです。しかし、どの鉱山が操業停止となるか、罰金が科されるか、その最終判断が近く下される予定です。実際、何が起きるのかまだ分かりません。(注:DENRは2月2日、ニッケル・アジア・コーポレーション(NAC)の子会社、ヒナトゥアン・マイニング・コーポレーションを含む21社に操業停止を命じた)

最終結果の公表も年内と言われていましたが、遅れています。(注:インタビューは1月11日に実施)

ブリモ氏:操業停止を命令するのは、本来非常に難しい問題のはずです。雇用や地域社会への影響がどれだけあるのかを考えると、簡単な決定ではありません。

 記事全文は、スマートフォンやタブレット端末などでも日経ビジネス本誌が読める「日経ビジネスDIGITAL」の有料会員限定となります。「日経ビジネスオンライン」の無料会員ポイントでもご覧いただけます。

【インタビュー後半のポイント】
●「我々の鉱山に何の問題もない」
●バッテリー向けのニッケル需要が拡大

「日経ビジネスDIGITAL」でインタビューの全文を読む

このコラムについて

元素が買えない 自国優先主義が招く危機
世界各国で自国優先主義が台頭し、調達リスクが顕在化した。 フィリピン発のニッケル供給不安、中国が起点となったリチウム高騰…。 偏在しているがゆえに、囲い込みによって「元素」が買えない時代が来る。 スマートフォンから家電、電気自動車…。生産に暗雲が垂れ込める。 資源を持たない日本が「元素ショック」を乗り越える道はただ一つ。 競争の土俵を変えるようなイノベーションを起こすしかない。 日経ビジネスDIGITALの有料会員向けには、記事全文を公開している。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/16/020200015/020300003


 


国内年金による不動産投資状況と投資形態別リターン
金融研究部 不動産運用調査室長 加藤 えり子
図表1に、不動産証券化協会によるアンケート結果1から、国内年金による不動産投資実績と検討状況を2013年まで遡って投資形態別に示した。当該アンケートは不動産投資のみに関する内容であることから、回答者の多くは不動産投資への関心が高いこと、基金の解散等の影響で回答数が減少傾向にあることを考慮する必要があるが、私募リートに投資済の回答数が2016年調査では顕著に増加している。一方で、従来からある不動産私募ファンド(運用期間が定められており原則換金をしないタイプのクローズドエンド型)は、2014年までは最も投資済の回答が多い不動産投資形態であったが、流動性の低さと終了時点でのマーケットリスク懸念から、ファンドの償還に伴い投資が減少してきている。国内不動産については、主要な投資形態が従来型の不動産私募ファンドから私募リートに代わってきていることが分かる。また、実物不動産への投資も減少した。実物不動産への投資はリートやファンドなどの投資手法が確立する前のものと思われるが、長期にわたる賃料収入と昨今の価格上昇により、投資額がある程度回収可能となり売却に至ったと推察できる。海外不動産については、海外リートへの投資は減少し、海外不動産私募ファンドが増加してきている。国内で提供されている海外不動産私募ファンドの多くは、私募リートと同様に、定期的に換金のタイミングがある永続運用型のオープンエンドファンドで、不動産評価額から持分価格を算出するため、上場リートに比べて価格変動幅が小さいことが選好される理由となっている。仕組みが類似している国内私募リートの普及も海外不動産私募ファンドの投資増加に寄与していると考えられる。

図表2に、国内および米国の不動産投資形態別にみたリターンを2012年6月からの累積で示した。国内で私募リートの提供が始まったのは2010年11月であり、私募リートのリターンデータについては、2012年6月以降となるため、それに開始時点を合わせている。

国内上場リートは開始時点の頃を底にした急回復により累積リターンが大きくなっているが、変動幅が大きいため投資期間によってリターンも大きく異なる点には留意が必要である。米国上場リートは、金融危機後の回復が国内上場リートよりも早かったため、該当期間の累積リターンは低いものの、過去1年、過去3年の双方で国内上場リートより高いリターンを記録している。国内私募リートと米国オープンエンドファンドは類似の仕組みであるが、借り入れ比率には差がある。国内私募リートの平均が40%であるのに対し、米国オープンエンドファンドは22%で3、国内私募リートの方が2倍近く高い。これらのファンド運用のリターンは、借入れ効果により実物不動産投資と比べて高くなる。国内私募リートと米国オープンエンドファンドでは、実物不動産投資に対するリターンのプラス乖離度が国内私募リートの方が大きいことがグラフからも分かるが、借入比率の違いがその主要因となっている。しかし、リターンの絶対水準については、実物不動産のリターンが高い米国オープンエンドファンドの方が高くなっている。米国の実物不動産のリターンが高い要因は、主にこの間のキャピタル・リターンが高かったことによる。米国実物不動産の四半期キャピタル・リターンは、期中1.5%から2.0%の間で推移しているのに対し、国内不動産の四半期キャピタル・リターンは、2012年にはマイナスで推移、2013年以降も1%未満に留まっている。相対的に米国不動産のリターンは高いものの、グラフは現地通貨ベースであり、国内からの米国不動産への投資については為替を考慮する必要がある。今後、日米金利差が拡大する場合はヘッジコストの増加が懸念材料となる。

より広範な地域や用途に投資できる海外不動産投資は、今後も段階を経て普及すると思われる。国内不動産を対象としたものも含め、投資形態ごとに市況や特性が異なるこれらの商品を組み合わせた不動産ポートフォリオの検討も進展することが期待される。

________________________________________
 
1 不動産証券化協会が毎年7月から9月に実施。対象は運用資産総額140億円以上の企業年金、共済組合、公的年金から抽出。同協会は回答割合として結果を公表しているが、本稿では回答数に換算した。
2 国内私募リート:AJFI-Open End Core Unlisted REITs 国内実物不動産:AJPI(不動産証券化協会)、米国オープンエンドファンド: Fund Index-Open End Diversified Core 米国実物不動産:NCREIF Property Index、(全米不動産受託者協会)、国内上場リート:東証Jリート指数、米国上場リート:S&P US REIT Index。
3 インデックス構成ファンドの平均LTV。 

(2017年02月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
関連レポート
• 転換期を迎えた世界の不動産投資市場
• 不動産アウトバウンド投資は浸透するか〜国内機関投資家の取り組み状況〜
• オフィス賃料は反発も、インバウンド需要のピークアウトが商業施設、ホテルに影響〜不動産クォータリー・レビュー2016年第3四半期〜
• 増えつつあるクリエイティブ・オフィス−生産性向上につながるオフィス空間の検討
• 国内年金による海外不動産投資の選択肢
このレポートと関連性が高いレポート
国内年金による海外不動産投資の選択肢
不動産投資ブームと投資教育
http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=54972 


 

http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/750.html

[IT12] 「生産性が上がる新型ブラウザー」が密かに人気 トレンド・ウォッチ from日経トレンディ ゲーマーの口コミで広がる 20
「生産性が上がる新型ブラウザー」が密かに人気
トレンド・ウォッチ from日経トレンディ
ゲーマーの口コミで広がる
2017年2月7日(火)
日経トレンディ

ブラウザー「Vivaldi(ビバルディ)」。
 調べ物をする、ニュースを閲覧する、メールやTwitterなどSNSのクライアントとして活用する……。さまざまな用途で用いられるChromeやInternet Explorer、Safariなどのウェブブラウザーは、パソコンにインストールされているソフトウエアの中で、ユーザーが最も多くの時間、接しているものだろう。
 ただ、それだけ多くの時間を費やしながらも、ブラウザーの使い勝手や作業の効率性について考える人は少ない。もしかすると不都合を感じても「どのブラウザーを選んでもそう変わらない」と思っている人もいるかもしれない。
 そんな人の「もう1つの選択肢」となるべきブラウザーがある。それは2016年4月にリリースされたChrome互換のブラウザー「Vivaldi(ビバルディ)」である。ビバルディを開発したVivaldi Technologiesは、元「Opera」ブラウザーを開発していたオペラ・ソフトウエアの元CEOのヨン・フォン・テッツナー氏と冨田龍起氏によって起業された会社だ。
 このブラウザー、全世界で400万〜500万ダウンロードされているが、実は日本のユーザーが最も多くなっているという。なぜだろうか?
かゆいところに手が届く
 ビバルディと従来ブラウザーとの最大の違いは、ユーザーが使い勝手良くカスタマイズできるところだ。
 例えばタブの場所もその一つ。いわゆる一般的なブラウザーと同様、メーンのウィンドウの上部に表示することはもちろん、下部、右横、左横というようにユーザーが使いやすいように自由に設定できる。
 また「ウェブパネル」というサブブラウザー的に使える機能も使い勝手の良さに貢献している。ウェブパネルはメーンウィンドウの左右いずれかに設置できるようになっており、よくアクセスするサイトやSNSを追加しておけば、簡単にチェックできる。
 その他にも、タブを切り替えなくても開いているウェブページを一度に表示できる画面分割機能、閲覧中のページでメモしたい箇所をコピーしてそのページのリンクと共にノートに保存できる機能などが提供されている。まさにユーザーにとって作業効率が上がる「かゆいところに手が届く」ブラウザーというわけだ。

脇のウェブパネルから、サイトやSNSに簡単にアクセスできる。

開いているウェブページを一度に画面分割で表示することも可能。
「自分たちが使いたいブラウザーがなかった」
 では、なぜいま新しいブラウザーを開発したのか。ビバルディを開発した冨田龍起氏に開発の経緯や特長について話を聞いた。

ビバルディを開発したVivaldi Technologiesの冨田龍起氏。
ChromeやSafariなど標準的なブラウザーがあるなかで、なぜいまブラウザーを作ったのか。
冨田龍起氏(以下、冨田): 理由は本当にシンプルで、自分たちが使いたいブラウザーが無かったからだ。
 他社のブラウザーは「機能をそぎ落とし、よりシンプルな方向へ」という開発方針に向かっており、ブラウザー市場は競争のない世界となっている。だからこそあえて真逆とも言える、カスタマイズが利いて、もっとかゆいところに手が届くような、ユーザー目線のブラウザーを作りたいと思った。
ウェブサイトを使う作業の効率性向上がビバルディの特長ということか。
冨田: 今やブラウザーはビジネスで欠かせない。なかでもウェブサイトをひんぱんに使ってリサーチする人にとって、ビバルディは仕事の生産性を向上するためのパワフルなツールだと考えている。
ビバルディの便利な使い方について教えて欲しい。
冨田: メーンウィンドウでは検索しながら、サイドのウェブパネルでTwitterやFacebookなどのSNSツール、チャットツールなどのタイムライン、ニュースサイトなどを表示させて常時確認できる。
 なかにはウェブパネルではYouTubeで仕事用のBGMを流したりする人もいる。ウェブパネルをうまく使うことが、このブラウザーを便利に使うコツ。ユーザーはそれに気付いていて、便利な使い方をツイートしてくれている。(以下はユーザーのツイート例)


クリックして、このツイートにジャンプ


 またビバルディではあらかじめメモ機能をブラウザーに組み込んでいる。閲覧しているページでメモしたい部分を選択して右クリックするだけで、メモできるようになっている。文字のメモだけではなく、メモしたページのURLとスクリーンショットも自動的に取得できるようになっているので、備忘録としても使える。
日本のユーザーが多い理由
現在のダウンロード数について教えてほしい。
冨田: ワールドワイドでは400万〜500万ダウンロードぐらい。ユーザー数としては、アクティブで100万人ぐらいだ。
どこの国のユーザーが多いのか。
冨田: 昨年春のリリース直後は米国でのダウンロード数が多かったが、今や日本は米国と並ぶほど、ダウンロード数が多い。アクティブユーザーの割合としては、日本がおそらくトップと思われる。日本、米国に次いで多いのが、ドイツ、ロシア、ブラジルなど。それ以外にもポーランド、インドなどさまざまな国で活用されている。
日本のユーザーが多い理由について、教えてほしい。
冨田: 日本のユーザーは新しいものを積極的に取り入れる国民性があるからと理解している。特に「艦隊これくしょん」などのブラウザーゲームのヘビーユーザーは特にその傾向が強い。そして彼らが、「攻略サイトやTwitterを見ながらできるので便利」などの書き込みをしてくれたことで、ゲームユーザー中心に口コミで広がり、ダウンロード数が増えている。
ブラウザーに関しては、日本人は保守的かと思っていたが……。
冨田: 全体で見ると保守的と言えるかもしれないが、新しいサービスや商品を早い段階で取り入れる日本のアーリーアダプターはかなり積極的だと思う。
スマホブラウザーでも勝算あり
スマホ向けブラウザーを開発していると聞いた。スマホの場合、ブラウザーではなく、専用アプリの利用が主流だと思うが、いまスマホブラウザーを作ることに勝算はあるのか。
冨田: スマホブラウザーのリリースは今年2017年を予定している。
 確かにスマホでは、専用アプリを使うのが便利だろう。だが実は今、スマホでもブラウザーを使う時間が増えている、と我々は見ている。
 開発の背景にあるのは、スマホの画面サイズの大画面化が進んでいること。いわゆる「ファブレット」と呼ばれる大画面スマホでは、パソコン同様カスタマイズ性に優れたブラウザーの提供ができれば、勝算は十分にあると考えている。
(文/中村 仁美)
[日経トレンディネット 2017年1月24日付の記事を転載]


このコラムについて
トレンド・ウォッチ from日経トレンディ
日経トレンディから、ビジネスパーソン必読のヒットコンテンツを紹介します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030800018/020200258 

http://www.asyura2.com/14/it12/msg/228.html

[経世済民118] 中国資産家の失踪、金融セクターへの警告  トランプ氏の金融規制緩和、高まる投資家の期待 日欧で外債売り越し、その影響とは
中国資産家の失踪、金融セクターへの警告に

中国の著名な実業家が相次いで行方不明になり金融市場をおびえさせている PHOTO: FRED DUFOUR/AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
2017 年 2 月 6 日 17:58 JST

 中国の資産家である肖建華氏が失踪し、2015年の中国株暴落以降に行方不明となった金融業界の著名人がまた1人増えたことが、中国の金融セクターを戦慄(せんりつ)させている。

 中国株式市場が春節(旧正月)の休場後に取引を再開した3日、同氏の事業関連の銘柄は軒並み急落した。流動性への懸念から市場心理が冷える中、上海証券取引所の出来高は1年以上ぶりの低水準に落ち込んだ。

 先週、未確認の情報として、肖氏が香港で中国当局に拉致された疑いがあると報じられた。香港の警察は1日、香港居住者の肖氏が1月27日に中国本土に入ったと断定し、中国本土当局に追加情報を求めたと明らかにした。

 東北証券のアナリストは「弱気相場では、投資家はどのような不確実性をも大いに恐れている」と述べ、肖氏が市場に及ぼす影響の大きさを指摘した。

 投資手法は米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が手本という肖氏が設立したトゥモロー・ホールディングは、保険、不動産、ビーツ栽培など、さまざまな分野に投資している。同氏は10代だった1990年に名門の北京大学を卒業後、無名の証券会社、銀行、保険会社などに投資し、その直後に株価が上昇したことから、市場を驚かせた。

 現在40代半ばの同氏は、中国富豪ランキング「胡潤百富榜」の最新版で32位、個人資産は推定60億ドル(約6700億円)。

 規制当局への提出書類でトゥモロー・ホールディングの所在地とされる北京のビルの入口には、同社は「法的調査への協力を求める通知は受け取っていない」との掲示が出ていた。これは、同社についてのうわさを広めたメディアなどに対して法的措置をとる可能性があることを示唆している。

 同社は先週、肖氏がカナダのパスポートを持っているとの自身の声明を掲示し、その後削除した。

 中国の習近平国家主席が4年前に汚職一掃を約束して以降、中国の多くの著名な実業家がさまざまな期間にわたって行方不明になっている。

 トゥモロー・ホールディングは以前、注目の的だった。08年6月には、中国共産党機関紙「人民日報」の電子版が、07年の太平洋証券の上海市場上場に果たした役割について疑問を投げかけた。同証券は上場前、トゥモロー・ホールディングが経営権を握っていた。

 14年にニューヨーク・タイムズが、肖氏は習主席の親族を含む中国政界エリートのために証券会社を支援したと報じたことに対し、トゥモロー・ホールディングは、肖氏の資産は政治的結びつきから得たものではないと否定していた。

 トゥモロー・ホールディングは電話や電子メールでのコメント要請に応じなかった。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjk9Zbgy_zRAhXFWbwKHaaPA4QQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11367774349816344181604582604893954693780&usg=AFQjCNHUqfQrrRE4lLe95TMgxQI8wL-EDg


 


 
トランプ氏の金融規制緩和、高まる投資家の期待
自己資本11兆円の還元も
トランプ大統領は3日、2010年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)を抜本的に見直す大統領令に署名した
トランプ大統領は3日、2010年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)を抜本的に見直す大統領令に署名した PHOTO: AUDE GUERRUCCI/BLOOMBERG NEWS
By TELIS DEMOS AND PETER RUDEGEAIR
2017 年 2 月 6 日 18:34 JST

 ドナルド・トランプ新政権が銀行の規制緩和に成功すれば、米国の大手銀行6行は今後、配当と自社株買いを通じ、1000億ドル(約11兆2300億円)以上を株主に還元する可能性が出てくる。

 トランプ大統領は3日、2010年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)を見直す大統領令に署名した。トランプ氏はホワイトハウスで開かれた会合で、これら規制の「多くを削る」意向を明らかにした。

 これを受け、3日の米株式市場では銀行株が勢いを増し、米大統領選以降の急上昇に一段と弾みが付いた。金利上昇、規制緩和、力強い経済成長に対する投資家の期待が高まり、銀行がより多くの資本を株主に還元できるようになるとの楽観的見方が後押しされたからだ。銀行が実際にそう動く保証はないが、各行はここ数年、利益成長とバランスシートの改善が進む中で株主還元に意欲的になっている。

 RBCキャピタル・マーケッツの調査によると、規制当局が求める水準を超える自己資本額の合計は、米大手6行で1015億7000万ドルに上る。また、米金融大手モルガン・スタンレーのアナリストらは、主要18行ではこの合計額が約1200億ドルになると推計している。

 3日の米株式市場ではJPモルガン・チェースやシティグループなど大手銀行株が3%以上上昇し、KBWナスダック銀行株価指数は2.2%上昇した。大統領選以降の上昇率を見ると、S&P500種株価指数が7.4%なのに対し、KBWナスダック銀行株価指数は約24%だ。

 ルーズベルト・インベストメント・グループ(運用資産30億ドル)のシニアポートフォリオマネジャー、ジェーソン・ベノウィッツ氏は、「銀行規制が(トランプ)政権にとっての優先事項になるとは見なされていなかったため、非常に早い段階での大統領令への署名を目の当たりにすることはポジティブ(な材料)だ」と語った。

 自己資本比率はドッド・フランク法に明記されているわけではなく、FRBなどの規制当局によって定められる。また、それらの比率は銀行に関する国際合意によって枠組みが示されている。

 こうした要件をトランプ政権が直接変更することはできない。しかし、規制当局者の任命を通じて、各種規制だけでなくFRBの銀行ストレステスト(健全性審査)にまで影響を与えることは可能だ。

 株主は投資利益の増大を歓迎する一方、こうした動きはリスクも生み出すだろう。例えば、金融危機前は大手行の間では、年間利益を上回る金額を配当や自社株買いに投入することが一般的だった。このためシティグループなどは結果的に政府による「ベイルアウト(第三者による救済)」受け入れにつながった。

必要以上に積み増された自己資本
米大手6行が保有する、規定を上回る部分の自己資本の金額(推定値)
米大手6行が保有する、規定を上回る部分の自己資本の金額(推定値)
 厳密にどの規制がトランプ氏の後押しで撤廃される可能性があるのかは明らかではない。投資家が関心を寄せる領域の一つは、将来の金融危機に対するバッファーとして銀行が保有を義務付けられてきた数十億ドルに上る自己資本だ。銀行関係者らによると、こうしたバッファーは損失を吸収するのに必要とされる金額を上回っている。一方の当局者らは、システム上重要な金融機関が世界的な衝撃に耐えられるようにする手段として、これらを捉えている。

 高い自己資本比率を擁護する人々は、「大きすぎてつぶせない」との観念を現実的に消し去るため、銀行にはさらに高いバッファーが必要だと反論する。

 投資家の一部は、こうしたバッファーを「捕らわれた資本」と見なすようになってきた。毎年実施される「ストレステスト」を通じ、銀行の株主還元能力がFRBによって制限されているからだ。このため、多くの銀行は資本を一段と積み増してきた。

 RBCキャピタル・マーケッツによると、要求を上回る自己資本を最も多く抱えているのがシティグループで、金額は約270億ドルに上る。JPモルガンは200億ドル、ウェルズ・ファーゴは160億ドルだ。

 これらの積み上がった自己資本の一部、あるいは全部を解放できるようになれば、さまざまな面で銀行と投資家に恩恵がもたらされるだろう。ゴールドマン・サックスの銀行アナリストらによると、余剰自己資本の全てが自社株買いによって株主に還元されれば、米大手行は平均して2018年の1株当たり利益(EPS)を13%増やすことができるだろう。

関連記事

ウォール街はトランプ氏による規制緩和の夢を見るか
トランプ氏、ドッド・フランク法見直しの大統領令に署名
トランプ政権の「弱いドル」政策がはらむ矛盾
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwj90b6bzPzRAhXLTLwKHZPvDEgQqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11367774349816344181604582604694004032260&usg=AFQjCNHTi2dS8umN0AmBXYzNMCrxKEMfkg


 

日欧で外債売り越し、その影響とは
日欧で外債が売り越しとなっている。その背景と影響とは?
日欧で外債が売り越しとなっている。その背景と影響とは? PHOTO: KRISZTIAN BOCSI/BLOOMBERG NEWS
By MIKE BIRD
2017 年 2 月 6 日 18:53 JST

 マイナス金利を導入している日本とユーロ圏は、過去数年にわたり外債に対し旺盛な投資意欲を見せていたにもかかわらず、足元ではこうした意欲を失っているように見える。

 両地域ではこのところ、外債が売り越しとなっている。日欧ではこれまで、マイナス金利政策が実施されたことを受け、より高い利回りを求める投資家が外国債券を購入してきた。

 こうした傾向は、外国為替と債券を中心とした国際市場で今後、大きな影響を示すだろう。

 財務省が2日発表した「対外および対内券売買契約等の状況」(週次・指定報告機関ベース)によると、1月22日から28日までに日本の投資家は外債(中長期債)を約1兆3000億円売り越し、過去12週間の売り越し額は2014年4月以来最大の3兆7000億円超となった。

日本の外債売り越し高

Japan is shedding some of its foreign-bond holdings…
Net purchases of foreign bonds*
THE WALL STREET JOURNAL
Source: Japan’s Ministry of Finance
*12-week rolling sum
.trillion
2013
’14
’15
’16
’17
-7.5
-5
-2.5
0
2.5
5
7.5
\10
 一方、ユーロ圏では11月末までの3カ月間に159億9000万ユーロ(172億ドル)を超える外債の売り越しとなった。売り越しは2012年以来初めて。

ユーロ圏の外債売り越し高

…and the eurozone has sold some of its foreign-bond holdings aswell…
Net purchases of foreign bonds†
THE WALL STREET JOURNAL
Source: European Central Bank
†Three-month rolling totals
.billion
2013
’14
’15
’16
-50
0
50
100
150
€200
 このような逆転現象は現在の国際市場における謎だ。なぜなら、米国債とユーロ圏および日本の国債の間の利回り差は拡大の一途をたどっており、このため、世界の投資家にとって米国債の妙味は高まっているはずだからだ。

 ただ、年金基金や保険会社のようにリスクに敏感な買い手を中心に、投資家の多くは為替変動リスクをヘッジしたがる傾向にある。世界で米国債への需要が高まることで、ドルを借りて行うヘッジのコストは上昇した。ユーロ圏や日本の買い手が米国債購入で得られる利益はそのコストによって大幅に減少してしまう。

 米金融大手JPモルガン・チェースのアナリスト、ミカ・インキネン氏は「国債市場の投資家が念頭に置くべき重要なことの一つは、為替レートのボラティリティーだ」としたうえで、「利回り差を見るだけでは不十分であり、通貨市場の動向を見ておく必要がある」と指摘する。

 ヘッジツールの一つである通貨スワップを使えば、投資家はある通貨のキャッシュフローと別の通貨のキャッシュフローを交換することができる。ただ、ユーロの買い手にとって同スワップのコストは近年、目立って増大している。

 1月末の時点で10年物米国債利回りは、同年限のドイツ国債利回りを約200ベーシスポイント(bp)、日本国債の利回りを240bpも上回っていた。

 ところが、為替リスクを完全にヘッジしようとすると、この利回り差は吹き飛んでしまい、コストを差し引くと同年限の米国債利回りはドイツ国債より6bp、日本国債より70bpも低くなる。

 「利回り差の妙味は、名目の利回り差が示唆するほどには拡大していない」とインキネン氏は付け加えた。

通貨スワップ金利、上がユーロ・ドル、下が円・ドル

…as demand for U.S. dollars has weakened a bit.
Five-year cross-currency basis swap rates, which measure theadditional cost to borrow in dollars for European and Japaneseinvestors.
THE WALL STREET JOURNAL
Source: Thomson Reuters
Note: The rate becomes less negative as demand for, and the premium on, dollars shrinks.
.percentage point
Euro–dollar
Yen–dollar
2013
’14
’15
’16
’17
-1.25
-1
-0.75
-0.5
-0.25
0
0.25
 ヘッジを実施すればこうした為替レートの影響は和らぐが、日本とユーロ圏の投資家が外債(特に米国債)の高い利回りの恩恵を受けたいのであれば、為替ヘッジしない外債購入を増やさなければならない。

 つまり、ドルに対し今後どのような影響があるかは、投資家が為替ヘッジを行うかどうかで左右されることになる。

 日本やユーロ圏の投資家が米国債を購入する一方で完全にヘッジを実施すれば、為替レートへの影響はかなり緩和されるだろう。しかし、投資家が米国債を購入し続ける一方でヘッジをやめれば、ドル建て債への需要がドルの上昇に拍車をかける可能性がある。

 米銀大手ウェルズ・ファーゴのクレジットストラテジスト、ナサニエル・ローゼンバウム氏は最近のリサーチノートで、「テーパリングかんしゃく以降、米国と米国以外の金融政策がかい離が拡大する中、海外勢の米国債購入は重要かつ増大する需要の源泉となってきた」と書いている(テーパリングかんしゃくとは、米連邦準備制度理事会=FRBが量的緩和縮小を示唆したことで2013年に起きた米国債利回りの一時的急騰)。

 こうした需要によって米国債利回りもまた低下している。米金融大手モルガン・スタンレーのストラテジストらの分析によると、10年物米国債利回りは通常のマクロ経済的要因に基づく予想値を約50bp下回っている。

 直近の統計によると、2016年ユーロ圏の域内成長率は米国の成長率とほぼ同水準だった。欧州の成長加速を受け、ユーロ圏内では外債の魅力が低下する可能性もある。

 ローゼンバウム氏は「その場合、最終的には対ドルでのユーロ安に歯止めがかかる可能性が高い」とし、「ユーロ圏では、米国の社債に対する需要が急低下したり売りへと逆転したりする場合もあり得る」と指摘する。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjCuf_ZzPzRAhXHXrwKHagpAQsQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582604972707308562&usg=AFQjCNEy9dwBy8y9nC31tZh2KkHrjWKl_w
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/759.html

[経世済民118] 生産性向上を個人に押し付ける「働き方改革」の矛盾 高学歴・高キャリアのハイスペック女子が、なぜ「もっと働かせろ」と言うか
社会貢献でメシを食う。NEXT 竹井善昭
2017年2月7日 竹井善昭 [ソーシャルビジネス・プランナー&CSRコンサルタント/株式会社ソーシャルプランニング代表]
生産性向上を個人に押し付ける「働き方改革」の矛盾

昨年末の電通に続き、年明けの1月上旬、違法な長時間労働を部下に強いたとして三菱電機と当時の上司が書類送検された。さらに先週は、大手旅行代理店のエイチ・アイ・エス(HIS)に強制捜査が入った。こちらも違法な長時間労働の疑いで、法人としてのHISと労務担当幹部の書類送検を視野に捜査を進めているという。

労働基準法違反で、法人だけでなく社員個人も書類送検される事例は、何も電通や三菱電機、HISに始まったことではない。しかし、これだけの有名企業が立て続けにあげられ、しかもメディアで大々的に報道されたことは、あまりないのではないだろうか。それだけ、安倍政権における「働き方改革」が本気だということだと思う。その働き方改革の要点はご存じのように「長時間労働の是正」であり、それと関連する「労働生産性の向上」である。もちろん、無駄な長時間労働がなくなり、生産性が向上すれば、従業員にとっても企業にとってもハッピーなことである。

しかし、実際現場から聞こえてくるのはブーイングの嵐だ。とくにそれは、20代独身のハイスペック女子から聞こえてくる。長時間労働是正は、女性活躍推進の文脈からも語られることが多い。長時間労働を是正してワークライフバランスを実現することは、働く女性のためになるというロジックなのだが、これが当の女性たちからは評判が悪い。なかには、あからさまにワークライフバランス(という考え方を)批判する女子もいる。その理由については、以前の第145回で詳しく書いたが、要するに「もっと仕事したい、働きたい」と考えている女子たちに、「働くな」と言っているからだ。

ビジネスにおける「適齢期」とは?

高学歴・高キャリアのハイスペック女子が、なぜ「もっと働かせろ」と言うかというと、彼女たちは成長意欲が高いからだ。スポーツでも芸術でも学問でもそうだが、スキルを上げ、能力を上げるためには、「適齢期」というものがある。たとえば、16歳くらいからギターを始めて、偉大なロックギタリストになることは可能だが(そういうギタリストは数多い)、同じような年齢からピアノを始めて、クラシック畑のコンサートピアニストになるのはまず不可能だ。クラシックの世界で勝負するには、5歳や6歳くらいから、キチンとしたレッスンを受ける必要がある。アスリートも、成長期にキッチリと練習をしてスキルを上げておかないと、世界で通用するアスリートにはなれない。

一般的に、ビジネスの場合はその適齢期は20代で、20代のうちに職業訓練を受けて経験値も上げておかないと、30代以降の成長が難しい。ハイスペック女子たちはそのことを知っているから、20代のうちにもっと働かせろと言っているのだが、働き方改革の議論を見ていると、どうもこの志向性とは真逆の方向に進んでいる。実際、電通が書類送検されて以降、今まで以上に労務管理が厳しくなったという声が多く、残業は月30時間以内、もちろん持ち帰り残業は禁止、早朝残業も禁止といった感じだ。

このように働き方改革はすでに進行中なのだが、ハイスペック女子のみなさんは、そこに不満と危機感を抱いている。労働者のため、とくに働く女性のために長時間労働を是正しようとしているのに、なぜにこうも不満が出てくるのか。それは多様性が欠如、あるいは間違った認識をしているからだ。

働き方改革の骨子のなかには、「多様な働き方」という考え方も入っている。しかし、実際にはその多様性とは、「画一的な多様性」という矛盾したものでしかない。世の中には、なるべくなら働きたくない、休みは多い方がいいという人もいれば、寝る時間も惜しんで仕事をしたい人もいる。その代表例がクリエイターで、一流のクリエイターはおおむね、寝る間も惜しんで仕事をしていて、そうすることが好きな人たちだ。しかし、政府が働き方改革と言い出して、電通が書類送検されて以来、クリエイティブの世界にも「長時間労働是正」の圧力がかかり、深夜の労働が禁止されるようになっている。そのため、何かの作業の途中でも、強制的にオフィスや仕事場を追い出されるようになっている。続きはまた明日というわけだが、それで果たして、優れたクリエイティブができるのだろうか。

コンサルタントの仕事も長時間労働の典型的な世界だが、企画書やレポートを20時間、30時間ぶっ通しで書くことも普通にある。ミュージシャンや映像クリエイターがスタジオにこもって延々と作業をやるように、コンサルタントもパソコンに向かって延々とレポートを書く。テンションの持ち方は同じで、だから長時間労働になりがちなのだが、これも今の流れでは是正の方向に進み、19時になれば強制的に退社となるのかもしれない。しかし、それでレベルの高いアウトプットが可能かというと、甚だ疑問だ。

つまり、多様な働き方と言いながら、長時間働くことの多様性は考慮されていない。それが今の働き方改革の流れだ。つまり、今の働き方改革の議論は、「有休も取れず、無駄な残業を強いる」という画一性から、「有休は100%消化して、定時で必ず退社する」という画一性にシフトしているだけである。もちろん、無駄な残業はなくすべきだし、有休も取りたい人は取れるようになるべきだ。しかし、何が何でも働くなという、下方圧力を社会全体にかけることで、本当に生産性が上がるのだろうか。そして、たとえばスティーブ・ジョブズのようなイノベーターが登場するのだろうか。

デタラメ社員が
いい仕事をしていた時代

多様な働き方の先進事例として必ず出てくるのが、「月単位での勤務時間管理」と「ロケーションフリー」だ。たとえば、月160時間が規定の勤務時間だとすれば、オフィスだろうが、自宅だろうが、南の島のリゾートホテルだろうが、どこで働いてもOKというシステムで、これはこれで素晴らしいシステムではあるが、実は日本においても先進事例でも何でもない。昔の大企業は、意外と(事実上の)フレックス・ワーク・アワーで、ロケーションフリーだった。

これも第168回で紹介したが、昔の電通がその典型だった。昼頃にしか出社しなくて、会社に来たらそのままランチに行く社員もザラだったし、平日の昼間からホテルのプールで泳いでいたり、銀座に飲みに行く途中の夕方にしか会社に顔を出さない人もいた。最近会社に来てないからどこにいるのかと探したら、ニューヨークにいたなんて話もある。とにかくデタラメだった。そして、そのようなデタラメ社員がいい仕事をしていた。

昔の電通がなぜそのような鷹揚なことができたかというと、いろいろ理由はあるが、今ほどコンプライアンスがうるさくない時代だったし、非上場会社で口うるさい外部の株主もいなかったし、何よりも儲かっていたからだと思う。

全米の「働きやすい会社ランキング」で常に上位にランクされるGoogleも、その環境が実現できるのは、儲かっているからだ。電通もかつては儲かる会社だった。テレビや雑誌が元気で、だから銀座で知り合った文化人と一緒にイベントや番組や雑誌の特集などを企画すれば儲かった。だから、銀座で飲むことも重要な仕事だったし、ニューヨークでバスキアやアンディ・ウォーホルに会うことも仕事になっていた。

それが今では、雑誌もラジオもオワコンで、新聞も凋落。テレビも広告媒体としては下降気味で電通の強みがどんどんなくなっていった。急成長するデジタル広告では、電通の強みはそれほどない。つまり、広告業界で電通はどんどん追い詰められている。そして、追い詰められれば、組織は荒廃する。自殺した東大卒電通社員の高橋まつりさんがデジタル広告の部署だったことは、非常に象徴的なのである。

結局のところ、長時間労働の是正も、多様な働き方の実現も、会社が儲かってなければ実現はできない。だが日本企業の場合、内部留保が積み上がっても従業員に還元されていないという問題もあるが、その問題に関してはまた別の機会に論じるとして、近年の働き方改革では、「労働生産性を高める」ことも要求されている。

企業の「労働生産性」
を問う前にすべきこと

もちろん、労働生産性は高めるべきだ。これも第172回で述べたとおり、日本の「1人当たりGDPは世界第27位」「1人あたり輸出額は世界第44位」という状況である。よく、「日本は欧米と比べて労働時間が長い」と批判する人がいるが、欧米より儲かってないから、長時間労働になるのは当たり前なのだ。なので、政府も生産性を高めろと言うし、メディアもそう言う。

しかし労働生産性とは、実は、システムの問題、ビジネスモデルの問題であり、労働者が頑張ってどうこうなるものではない。もちろん自分の仕事のやり方を見直したり、スキルを高めて生産性を上げたりすることは可能だが、その効果は限定的だ。「労働者が頑張れば、労働生産性が上がる」というのは、「長時間労働して頑張れば、企業の業績が上がる」と考えるのと同じ、単なる精神論だ。むしろ、生産性向上を労働者個人に押しつけている、と言える。そうではなく、仕事の仕組み自体を変えなければ、生産性は上がらないのだ。

もっとも日本企業の場合、仕組みを変えると言っても、たいしたことではない。デジタル化すれば一瞬で済むような手続きを、2日も3日もかけてやっている大企業もまだまだ多い。外部の人間の入館管理にしてもそうだ。IT系の企業なら、事前に送られてきたデジタル入館証をリーダーにかざせばそのまま入館できて、待ち合わせロビーに行けば担当者が待ち構えているというのは、もはや普通の光景だ。一方で、日本の大企業では、いまだに受付で入館証を(しかも手書きで!)記入して、受付嬢が担当者に連絡して確認し、ようやく入館できるという非効率的なやり方をしているところも多い。デジタル入館と比べれば、無駄なコストを使っていると思ってしまう。

こうした些細なことでも、一事が万事。受付が非効率な会社は、仕事上の仕組みも非効率だったりする。そのことを指摘すると、担当者は分かっているのだが、役員が分かっていないからとか、昔からのやり方を変えたくないからという理由で、なかなか改善が進まない。

しかし、非効率なシステムという意味では、大企業より行政のほうが遅れている。たとえば、法人の登記簿謄本。先日も契約の関係で、法務局に登記事項証明書を取りに行ったのだが、あいかわらず窓口は混雑しており、いい加減、どうにかならんのかと思う。今では、請求はオンラインでできるようになっているが、受け取りは郵送か窓口のみなので、結局手間がかかる。印鑑証明は区役所にある機械で自動発行できるようになっているのだから、登記事項証明書もそうすればいいのにと思うのだが…。そもそも法人の登記事項証明書など誰でも取得できるもので、秘密情報でも何でもない。だったらデジタル証明書で完全オンライン発行にすれば、お互いのためなのにと思う。

これも些細なことだが、同じく、一事が万事。行政の仕事はまだまだ効率化できることが多いし、日本企業は行政が大口取引先のことも多いので、行政のシステムが変われば、企業のシステムも変わるはずだ。そして、その行政のシステムを変えるのは、実は官僚の仕事ではなく、政治家の仕事なのだ。

というわけで、いま安倍政権が推し進めている「働き方改革」は、まず、政府や地方行政の仕事の生産性を上げることに注力すべきだ。それをやらずに、企業の残業規制ばかり強いていては、生産性が上がらずに労働時間だけが減り、全体の生産額も減り、日本経済が終わってしまうことになる、と僕は危惧している。

(ソーシャルビジネス・プランナー&CSRコンサルタント/株式会社ソーシャルプランニング代表竹井善昭)
http://diamond.jp/articles/-/116935
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/765.html

[経世済民118] 日本の債務は、世界的タブーではなくなる?超低金利が定着する未来 米経済ECBと日銀QEなければ不況化 ドラギ規制緩和警告

【第3回】 2017年2月7日 リチャード・ドッブス,ジェームズ・マニーカ,ジョナサン・ウーツェル,吉良直人

日本の債務は、世界的タブーではなくなる?

超低金利が定着する未来

資本コストをめぐる未来予測のシナリオ2は、「超低金利が定着する未来」である。世界的に日本のような、政府支出の増加と脆弱な経済成長に悩む国が増えることにより、超低金利を定常化することが許容されるかもしれないという。世界一のコンサルティング・ファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーの経営および世界経済の研究所所属メンバーが発表する刺激的な超長期トレンド予測が詰まった書籍『マッキンゼーが予測する未来――近未来のビジネスは、4つの力に支配されている』のさまざまな分析テーマを抜粋して掲載する。今回は長期金利、資本コストを論じる第7章の第3回。

金利を押し下げる
システムが確立される

?金利の上昇を期待するシナリオには、それに反対し、挑む説が存在する。近年、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)を筆頭に、世界のいくつもの中央銀行が金利を下げ、これまでは存在しなかったマイナス金利の領域に移行することも厭わず、紙幣を増刷し、通貨流通量を増やしてきている。

?金融の超緩和政策は、近年の不況、世界中に影響を及ぼした金融危機、それに緩慢な景気回復が一時的なものと思えないことから実施されてきた。リーマンショックと呼ばれる金融危機の初めから、アメリカ、イギリス、ユーロ圏諸国、および日本は、合計5兆ドルを超える流動性をそれぞれの国の経済に注入してきた。

?こうした行動によって、破滅的なシナリオが現実に展開することが防がれたのは疑いもないが、この金融政策はまた、金利水準をこれまで試されたことのない領域にまで押し下げた。そして、金利がこうした低水準にかくも長い期間引き止められたために、抜け出すのが困難な新しい慣習が生まれてしまった。つまり、地球上の各国政府には、景気刺激策を赤字財政覚悟で実施し、その赤字を低金利に依存して膨らませていく癖がついてしまった。たとえば、世界中の国の財政赤字の合計額は、2009年に4兆ドル近くとなってピークに達した。

?とはいえ、低金利には支払い金利コストに歯止めをかける効果があった。たとえば、2008会計年度と2012会計年度の間に、アメリカ政府の純金利負担額は2530億ドルから2200億ドルに低下したが、これは13%の低下であり、一方、連邦総債務残高が67%増加したにもかかわらず、金利負担額は減少したのだった。

?歴史的には、拡大金融政策は、低成長期の消費支出の拡大と企業投資を刺激するための一時的な対策にすぎなかった。過去5年間にわたる中央銀行による量的緩和策によって、世界の総GDPの成長が1〜3%の間で促進されたことに、大半の経済アナリストは合意している。しかしながら、中央銀行がどのようにしてこの成果を達成したのかについては、今でも議論が分かれている。消費支出と企業投資に与える超低金利の影響や因果関係が、明確になってはいないからだ。

?たとえば、アメリカでは2013年の個人貯蓄率は、金融危機以前の水準に比べて5ポイント高かったのだが、企業投資は第2次世界大戦後最低の水準を保ったままであった。では、低金利はGDPに刺激を与え、成長させたのだろうか?それと言うよりは、むしろ急激に増大した政府支出と、比較的早期に回復した住宅建設部門が、成長を押し上げた主要因だろうと思われる。

?2007年から2012年の間に、アメリカ、イギリス、ユーロ圏諸国は、政府負債の金利支払いを合計で1兆4000億ドル節約できたおかげで、さらに大きな政府支出を行うことが可能となったのだ。超低金利によって住宅建設部門も、当初考えられたよりも早く回復することができた。

?日本では、超低金利は別に新しい現象ではない。1980年代のバブルと呼ばれた信用拡大ブームの後、民間部門が積極的に借金を減らしてきたのに対し、政府部門は需要と経済活動の低迷に対応するため、大規模な財政赤字を許容し続けてきた。同時に、中央銀行は低金利を継続し、金融緩和によりバランスシートの規模を拡大してきた。

?20年間にわたる低成長と継続的な借金の貨幣化により、日本の財政赤字は2011年に年間10%弱でピークを迎え、日本の債務残高の総額はGDPの240%を超える水準となった。こうした高水準の債務残高に耐えていられるのは、日本の債務のほとんどが国内で保有されているからである。

?しかしながら、日本の人口構造の見通しが意味するところは、日本の抱える負債を伝統的な手法では返済できない可能性が高く、政府負債を将来貨幣化することが必要になるかもしれない。言い換えれば、中央銀行が新たに貨幣を発行し、政府の債務を買い取るのである。

?この問題を抱えているのは、日本だけではないのかもしれない。世界各国の政府が、高齢化に伴う政府支出の増加と脆弱な経済成長に直面し、債務を減少させるために苦闘しており、量的緩和のような金融政策や、恒久的な債務の貨幣化といった慣例から外れた金融政策も、中央銀行や政府からタブー視されなくなるのかもしれない。

?この新しいマクロ経済の領域では、旧来の需要と供給の指標に注目する伝統的な視点だけでは、将来の資本コストを考える十分な指標とは言えないのかもしれない。2014年の春に、標準預金金利をマイナスに設定した欧州中央銀行の動きのように、これから先の何年間も、超低金利こそが普通の状態としてとどまるのかもしれない。

?2013年のIMF白書で、経済学者カルメン・ラインハルトとケネス・ロゴフが論争したように、従来の慣行から外れる金融政策の支援に伴うリスクを、政策決定者たちは過剰に騒ぎ立てず、中央銀行の政策操作方針をあまり制限しないようにする必要があるのかもしれない。

『マッキンゼーが予測する未来』より

http://diamond.jp/articles/-/114971


マッキンゼーが予測する未来

金利の未来――
資本コストが下がり続ける時代よさらば
我々はずいぶん長く日本の低金利政策の中で生きているが、程度の差こそあれ、世界的にも同様の傾向にあった。はたして、このトレンドは断絶するのだろうか。世界一のコンサルティング・ファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーの経営および世界経済の研究所所属メンバーが発表する刺激的な超長期トレンド予測が詰まった書籍『マッキンゼーが予測する未来――近未来のビジネスは、4つの力に支配されている』のさまざまな分析テーマを抜粋して掲載する。今回は長期金利、資本コストを論じる第7章の第1回。

資本コストは
踊り場にさしかかっている

?現在の経済環境で資本コストがもっと高くなるぞと警告しても、モンスーンシーズンの豪雨の中で干ばつの警告を発するようなものだ。金融機関の融資窓口をちょっとのぞいてみれば、金利動向にさしたる問題はないとの答えが返ってくるだろう。私たちの持つ直観にも、そうした期待が織り込まれている。

?30年間下がり続けてきた金利のせいで、資本コストは現在も安く、今後もそうだろうとの期待が生まれた。つまり、部分的には借り入れ能力に後押しされて決まってくる。

?資産価格は、短期的には変動するものの、長期的には上がり続けるはずだ、と私たちのほとんどが信じている。

?実際、アメリカの住宅価格は1968年から2008年の40年間、一度も下がることなく年平均6.4%の上昇を続けてきた。

?ブラジルの人口最大の二つの都市、サンパウロとリオデジャネイロでは、2008年以降、住宅価格は倍以上に上がった。ロンドンの住宅価格も過去30年間、10年ごとに倍増してきた。

?1980年から2013年の間に、実質住宅価格はスウェーデンで55%、フランスで85%、カナダでは130%上昇した。

?弱含みの資本需要(何十年も続いたインフラストラクチャーへの低い投資比率)によると豊かな資本供給(数年続いてきた慣例には従わないマイナス金利などの金融政策による)の組み合わせにより、資本コストはかつてない低水準となってきているが、この展開が資産価格の上昇を下支えしてきた。

?しかし、大きな変化が進行している。そしてその変化によって、私たちの持つ資本コストおよび資産価格の将来に関する期待、また私たちが常識と考えていることに基づいた直観は、見直しを迫られている。これまでのトレンドが続かず、変曲点に到達していることは明白なのだが、あいにくどちらの方向に変わるのかは明確とは言えない。

?この変化は、伝統的な需給関係により決定されるのだろうか。だとすると、金利は上昇するはずだ。それとも、2008年の金融危機のときのように、人為的に金利を押し下げた状況を継続させるという、かつてなかったような中央銀行の行動によって決まるのだろうか?

?かつて私たちが経験してきたのは、金利と資産価格の先行きが確実な時代である。金利については、水準(低い)と方向(低下)の両面であり、資産価格についても、水準(高い)と方向(さらに上昇)の両面が常態化していた。

?ハーバード大学の経済学教授、マーティン・フェルドシュタインが語るように、このトレンドは変わろうとしている。「長期金利は、もうこれ以上支えきれないほどの低水準にあり、その意味は、債券やその他の証券価格のバブルが存在しているということなのです。確実に起こることなのだが、金利が上昇すればこのバブルははじけ、そうした証券の価格は低下し、証券を保有している人は誰であろうと損をすることになるのです」

?新興国が工業化と都市化を推し進めるのに伴い、投資ニーズは上がってきている。クマーシからムンバイ、ポルト・アレグレからクアラルンプールにいたるまで、資本集約的な建設プロジェクトがどこでも計画されている。

?新興国のそれぞれがインフラストラクチャーに投資すれば、新たな生産能力、機器、および革新的な技術に乗り換えるために投資しようとする企業が増加し、そのことにより資金需要は増幅される。こうした資金需要が、世界の人口の高齢化と、長期化する政府赤字の状況と同時並行して起こっており、それが需要の高まりをきっかけに、世界の総貯蓄額を減らす圧力となるだろう。

?マクロ経済学のファンダメンタルズに基づく伝統的な見方によれば、需要の上昇と供給を減らす圧力という組み合わせの行き着く結果は、一つしかない。それが、これまでよりも入手困難で、高価な資本の時代の到来である。

?しかしながら、近年実施されてきた、これまでの慣行には従わない金融政策の実施によって、私たちは未知の領域に導かれてしまい、これまでとは異なる、理解しがたい世界の基礎を築き始めてしまったのかもしれない。その世界とは、中央銀行と政府が、経済の成長と低金利を維持できるよういつでも介入し、十分な流動性を経済界に注入してくれるという世界である。

?もちろん各国政府は、低金利がもたらしてくれる利益を享受する主要メンバーの一つであった。だがこれは脆弱な均衡の世界であり、マネーサプライの積極的な拡大期の後には、資産バブル、インフレ懸念、通貨のブームと崩壊、といった危機が到来する危険性をはらんでいる。しかも、この新たな領域に試しに踏み込んでみよう、という国の数が増えてきているのだ。

?事実、かつてタブーとされた拡大的金融政策と政府負債の貨幣化ということが、中央銀行の普通の演目となる新しい世界への移行途中に、私たちはさしかかっているのかもしれない。この未来図が実現するとすれば、私たちが今日知っている資本市場は、まったく懸け離れたものに変わってしまう可能性があり、そうなれば、さらに新たな問題の数々を私たちに突きつけてくることになるだろう。

想定されるシナリオは2つ。次回更新(2月1日予定)で掲載予定。『マッキンゼーが予測する未来』より

http://diamond.jp/articles/-/114953


長期金利が上昇する世界は、
どんな未来なのだろうか
歴史的に長期にわたった世界的低金利は、踊り場にさしかかっている。考えられるシナリオは2つ。一方は、世界的に資本コストが上昇する未来のシナリオ1である。世界一のコンサルティング・ファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーの経営および世界経済の研究所所属メンバーが発表する刺激的な超長期トレンド 予測が詰まった書籍『マッキンゼーが予測する未来――近未来のビジネスは、4つの力に支配されている』のさまざまな分析テーマを抜粋して掲載する。今回は長期金利、資本コストを論じる第7章の第2回。

先進国でも、新興国でも
資本需要は明らかに増大する

?需要側の基礎数値は、明確な長期的傾向を示している。グローバルな投資比率、すなわち世界の総GDPに占める世界の総投資額のパーセンテージは、グローバルな不況の底にあった2009年の20.9%から、22%をわずかに切る水準にまで回復している。投資ブームを後押しする新興国の工業化と都市化に伴い、投資比率の増加が続くことを否定する材料はほぼ皆無である。

?ブラジル、インドネシア、インド、中国は、大量の建築資材を必要としている。世界の成長都市はいずれも固定資本投資ストックを、2013年の10兆ドル近くから25年までに20兆ドル超へと倍増する必要がある。

?都市へと移住する人たちは、住むアパート、自動車を運転する道路、通う学校などを誰もが必要とするからだ。

?ブラジルのインフラストラクチャーの状況を、例として見てみよう。1970年代にGDP比5.4%であった総投資額は、2000年代にはわずか2.1%に低下した。この国のインフラストラクチャーが限界にきていることは、世界中の誰の目にも明らかとなった。2014年のワールドカップ開催中に、雨が降るとレシフェの街の下水道および道路があふれ、水浸しになった状況がテレビ放映されたからだ。

?ブラジルの輸送インフラも荒廃がひどく、未舗装道路の比率は86%にのぼる。国土面積はアメリカの90%あるのに、ブラジルの鉄道網の規模はアメリカの13%以下である。

?ブラジルのナショナル・サッカーチームは、2014年のワールドカップでは準決勝でドイツに敗退したものの、FIFAランキングでは今でもトップ10に入っている。ところが、インフラストラクチャーの質となると、世界経済フォーラムのつけたランキングでは、ブラジルは148ヵ国中114位である。ブラジルが経済成長余力をフルに発揮するには、自国の道路、港湾、空港への投資をすぐに始めなくてはならないことが明らかだ。

?一方、世界中の先進国でも、何十年もの投資不足の結果、積もり積もったインフラストラクチャーの新規、建て替え需要が高まっている。先進国のGDP比投資額比率は、1970年代から急速に低下した。1980年から2008年の間の先進国総投資額は、各国がそれ以前の歴史的投資比率を維持していたと仮定した場合の総投資額よりも20兆ドルも少ない。これは、おおよそ日本とアメリカのGDPを足し合わせた額に相当する。

?ボストンとワシントンDCを結ぶ高速鉄道のアセラは、スピードを落としての走行で、出発や到着の時間が定刻どおりではなく、あてにならないことが多い。しかも、車内でのインターネット接続も低速でダウンロードに時間がかかるなど、使い物にならない。こうした現状のサービスの悪さと欠如をなくし、需要の成長に見合った輸送能力に拡大するにはどの程度の投資が必要なのかを、アメリカの土木技師連盟が推計した。それによると、現状で計画されている投資を維持したうえで、2020年までに1兆6000億ドルの追加投資をしなければならない。

?また、米国運輸省は、公共交通網の状態を「良好な補修状況」に持っていくには、2028年までに、公共交通網への支出を年間およそ40%増額しなければならない、と推定している。全体として、期待される経済成長を可能とするには、私たちの推計では2030年までに、世界中の道路、建物、鉄道、通信、港湾、水利といったインフラストラクチャーの整備と建設に、57〜67兆ドルを支出する必要がある。

?これは、全世界に現存するインフラストラクチャーのストック全体の総額を上回り、1994年から2012年までの19年間に実施された世界中の投資総額を60%上回る数字である。

?こうした各種の投資に、償却済みあるいは時代遅れで役に立たなくなった資本財の代替を含めると、世界中の年間投資額は、金融危機以前のピークであった2008年の投資額、13兆ドルを上回り、2030年までに25兆ドルが必要となるだろう。

?このように資本需要は明らかに増加している。では、供給側はどうなのだろう?供給側でも、長年大豊作が続いた後の大飢饉のような状態になる可能性がある。過去の慣行に従わない金融政策が実施されなければ、長期資本供給の見通しは、過去20年間の現実を反映したものにはならない可能性が高い。人口の高齢化に対応する政府支出は、2030年までにGDP比の数字が4〜5ポイント上昇すると予想されており、政府予算の赤字と各国の貯蓄率の低下にさらなる悪影響をもたらすだろう。

?最後に、それぞれ総貯蓄額で1位と4位にランクしている中国やインドといった新興国においては、それぞれの経済構造が個人消費の増加へと転じていくため、貯蓄率の低下を経験するかもしれない。

?中国がエコノミック・パワーとして地位の上昇を果たした、という事実以外に存在する数少ない驚くべき現象が、中国国民の驚くべき貯蓄性向の高さである。中国では、老後や病気などへのセーフティーネットが相対的に未整備であり、国民は1960年代から70年代にかけて経験した物資の欠乏と極端な貧困の時代を、まだよく覚えている。

?このことが、中国国民が自分たちの築いた資本を使うよりは貯蓄にまわし、世界1位の貯蓄者となっている理由の一つである。中国の貯蓄率は2000年代初期にGDP比37%であったが、08年には50%を超える水準となった。この年には、中国の年間貯蓄残高は2兆4000億ドルとなり、世界最大の貯金箱を持つ国となった。

?その4年後、貯蓄率こそそれ以上に上昇することはなかったものの、急速な経済成長のおかげで貯蓄総額はさらに大きな額となった。だが、中国の貯蓄率が高い水準のまま将来も推移する可能性は低い。まず、政府が投資への依存を離れ、国内消費への依存へと方向転換を図ろうとしているからだ。つまり、政府は市民にもう少し貯金を使い、消費にまわしていくことを奨励している。

?もし、中国が日本、韓国、台湾といったアジア諸国と同じ道をたどるとしたなら、中国の高水準の貯蓄率が著しく低下する可能性がある。たとえば台湾の貯蓄率は、政府による健康保険および年金制度の改善がなされた後、1995年から2008年の間に、7ポイント低下した。

?中国の貯蓄率が低下する一方で、先進国の貯蓄率は相変わらずがっかりさせられる水準にとどまるだろう。アメリカ、オーストラリア、イギリスといった国々の貯蓄率は、リーマンショック後の不況の後、若干上昇した。だが、それでも貯蓄水準は相対的に低いままである。たとえばアメリカでは、個人貯蓄率は2007年の3%から09年の6.1%に急上昇したものの、その後再び低下傾向に転じ、今も相対的に低いままである。そして、先進国経済の現在の貯蓄率の改善がたとえ20年間続いたとしても、その効果は2030年の世界貯蓄率をたった1%引き上げるにすぎない。

?2030年までに、需給の不均衡は拡大し、利用可能な世界の総貯蓄額に対し、望まれる投資総額は2兆4000億ドルを上回るという結果となるだろう。

?伝統的なマクロ経済学の視点からすれば、世界の望ましい投資額と世界中の人が喜んで行う貯蓄額との間のこうしたギャップは、実質金利に上昇圧力を加え、投資先案件が厳しく選別されることにつながる可能性がある。

?その結果、資本の生産性の改善が堅調に進まないかぎり、世界のGDP成長の陰りにつながってしまうことだろう。

一方のシナリオ2は、次回更新(2月7日予定)で掲載予定。『マッキンゼーが予測する未来』より

http://diamond.jp/articles/-/114961


 


グロース氏:米経済、ECBと日銀のQEなければリセッション入りも
John Gittelsohn
2017年2月6日 23:39 JST

ジャナス・グローバル・アンコンストレインド・ボンド・ファンドを運用するビル・グロース氏は、世界の中央銀行による資産購入が今後も金融市場を支配し、金利を人為的に低く抑える状態は続くと予想した。
  同氏は6日発表した月次投資コメントで、米10年債利回りは徐々に上昇するだろうが、「米国外の中央銀行による親切な量的緩和政策(QE)のおかげで」、人為的に低い状態が続くとの見通しを示した。「欧州中央銀行(ECB)と日本銀行のQEがなかったら、米10年債利回りは比較的すぐに3.5%に達し、米経済はリセッション(景気後退)に落ち込むだろう」とした。
  同氏は1月に、米10年債利回りが2.6%を超えれば債券弱気相場を示唆すると述べていた。
  またQEをヘロイン中毒の治療に使われるメタドンにたとえ、「投資家は当面、QEというメタドンに逆らわず、むしろ喜んで受け入れなくてはならない」とし、「量は減らされるかもしれないがQE投与は継続されるだろう。メタドンはヘロイン中毒よりはずっとましだが、不健全な資本主義の均衡を生み続け、いつかはツケが回るだろう」と記述した。
原題:Gross Says Investors Must Embrace ‘Financial Methadone’ of QE(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-06/OKYEE66K50XZ01

 

ドラギ総裁がトランプ氏に反論−為替操作を否定、金融規制緩和に警告
Jeff Black、Jonathan Stearns
2017年2月7日 00:42 JST 更新日時 2017年2月7日 02:40 JST 
関連ニュース
KKRプリズマ部門とPAAMCO統合へ−ファンド手数料引き下げも
100%人工知能のヘッジファンド誕生−株取引に人間の感情は邪魔か
極右政党ルペン氏が図るフランス革命、ユーロ離脱と「新フラン」発行
くすぶるオペ限界説、日銀は異例連発で金利操作堅持をアピールか
ドイツは為替操作国でない、2011年以降一度も介入せず−ECB総裁
金融規制の後戻りは「非常に憂慮すべき事態」、理由見当たらず 

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は6日、ドイツによる為替操作を示唆したトランプ米政権の発言に反論、また同政権が金融規制を後戻りさせようとしていることに警告を発した。
  総裁はブリュッセルの欧州議会で証言し、ドイツが「甚だしく過小評価」されたユーロ相場によって貿易面で不公正な優位を得ているとした、国家通商会議(NTC)のナバロ委員長などトランプ政権からの発言に反論。「ECBは2011年以降、外為市場に介入したことはない」と述べ、ドイツの貿易黒字は生産性向上の結果だと主張した。「ドイツは米国との2国間で著しい貿易黒字を抱え、経常黒字も小さくないが、継続的かつ一方的な外為市場への介入はしていない」と言明した。
  質疑応答ではトランプ政権が米金融規制改革法(ドッド・フランク法)の改正を目指していることについて問われ、金融危機の再来を防ぐための柱となっている規制を後戻りさせることは「非常に憂慮するべきことだ」と回答。「規制緩和だけはしてはならないのが現状だ」とし、「銀行・金融サービス業界を危機前よりも強固にした規制を、今緩和する理由が正直なところ見当たらない」と語った。
  冒頭のコメントでは金融政策について「12月の決定は、ユーロ圏経済の見通しが底堅くなっているとの自信の強まりを示す」と述べ、「同時に、インフレ率が望ましい水準へと持続的に収れんする明確な兆候が見られないこと」を考慮したと話した。
  ユーロ圏の成長は2015年以降すべての四半期において「堅調」だとした上で、「インフレ率が確実かつ持続的に目標水準へと収れんするためには、金融政策による支援が引き続き必要だ」と指摘。「ユーロ圏内外で続く不透明性を考慮し、良好な資金調達環境を維持する必要がある」と述べた。
原題:Draghi Says QE Strikes Balance Between Upturn and Weak Inflation(抜粋)
Draghi Defends Europe Against Trump on Currency Wars, Bank Rules
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-06/OKYL1Q6VDKHS01
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/766.html

[経世済民118] トランプ氏の金融規制見直し、結局は肩透かしか  DF法見直しは容易でないショー 日銀くすぶるオペ限界説 百%AIのHF 
コラム:トランプ氏の金融規制見直し、結局は肩透かしか
 2月6日、トランプ米大統領(写真)が2010年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)を見直すための大統領令に3日署名したことで、ウォール街はにわかに希望に包まれた。しかし、肩透かしの変更に終わるかもしれない。ワシントンで3日撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)
 2月6日、トランプ米大統領(写真)が2010年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)を見直すための大統領令に3日署名したことで、ウォール街はにわかに希望に包まれた。しかし、肩透かしの変更に終わるかもしれない。ワシントンで3日撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)
Gina Chon

[ワシントン 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領が3日、2010年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)を見直すための大統領令に署名したことで、ウォール街はにわかに希望に包まれた。しかし大統領令は具体性に乏しい上、規制緩和は民主党の猛反発に遭いそうで、肩透かしの変更に終わるかもしれない。

トランプ大統領は、過度な金融規制によって企業が銀行から資金を借りられなくなっていると主張した。国家経済会議(NEC)委員長に指名されたゴールドマン・サックス出身のゲーリー・コーン氏も大統領に加勢。ゴールドマン株は3日に約5%上昇し、ウォール街は沸いた。大手6米銀は昨年、規制上の所要最低額を1300億ドル上回る資本を積むよう迫られていた。理論上はこの上積み分が株主に還元される、あるいは貸し出しに回る計算とあって、投資家は舌なめずりしている。

しかし、大統領令が財務長官に指示しているのは単に、規制機関と協力して規制を見直し、経済成長に資するなど一定の原則に沿う内容にすることだ。財務長官は120日以内に報告書をまとめることになっているが、長官に指名されたスティーブン・ムニューチン氏はまだ上院の承認さえ得ていない。

しかも、ドッド・フランク法に大きな変更を加えることができるのは、同法を成立させた議会だけだ。大半の変更には上院議員60人の賛成が必要になるが、共和党はそれに8議席足りない。リベラル派の議員らは変更阻止に向けて結集しつつある。下院民主党トップのペロシ院内総務は6日に記者会見を開き、トランプ氏の政策について「ウォール街ファースト」だと批判した。

下院金融委員会のヘンサリング委員長(共和党)も、大統領とは別にドッド・フランク法の見直し案を提出したが、こちらは銀行を悩ませる内容。多くの規制を免除する条件として、銀行に現行より高い10%のレバレッジ比率(自己資本比率)を義務付けるものだ。また、巨大銀行は連邦準備理事会(FRB)のストレステスト(健全性審査)により、株主還元の面で制約を受け続ける。

一連のハードルを勘案すると、ドッド・フランク法の見直しは小幅にとどまりそうだ。自己勘定取引を制限する「ボルカールール」は緩和、あるいは撤廃される可能性があり、地銀や小規模行は一部の規制を免れるかもしれない。銀行とその批判派の双方が失望する結果に終わりかねない。

●背景となるニュース

*トランプ大統領は3日、規制当局にドッド・フランク法の見直しを求める大統領令に署名した。(1)経済成長への貢献、(2)税金による銀行救済の回避、(3)米企業の競争力確保──といった特定の原則に合致しているか否かという観点から見直す。財務長官は金融安定監督評議会(FSOC)メンバーの助言を得て120日以内に大統領に対する報告書をまとめる。長官に指名されたスティーブン・ムニューチン氏はまだ上院に承認されていない。

*下院民主党トップのペロシ院内総務は6日、記者会見を開き、トランプ氏は「ウォール街ファースト」だと述べて大統領令を批判した。

*ヘンサリング下院金融委員長は大統領とは別に、ドッド・フランク法の規則の多くを変更する法案の修正版を準備中。昨年9月に提出した最初の案では、銀行がレバレッジ比率を10%以上に保つことに同意すれば多くの規則を免除するとしていた。この比率は現行よりも大幅に厳しい。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

ロイターをフォローする
おすすめ記事


コラム:トランプノミクスと日本の蜜月が終わる時=竹中正治氏 2016年 12月 22日
国会前で共謀罪反対集会 2017年 02月 06日
コラム:「中間管理職」的なトランプ大統領 2017年 01月 21日
http://jp.reuters.com/article/column-trump-dodd-frank-idJPKBN15M04R?sp=true

 

くすぶるオペ限界説、日銀は異例連発で金利操作堅持をアピールか
三浦和美、Chikako Mogi
2017年2月7日 00:00 JST 更新日時 2017年2月7日 09:55 JST
Share on FacebookShare on Twitter
関連ニュース
ドラギ総裁:ユーロは不可逆と強調−仏ルペン氏は離脱の意向鮮明に
ロンドン外為:ポンドが対ドルで2週ぶり安値-経済指標とEU離脱懸念
ドイツ銀行のイスラエルCEOを逮捕−VAT納税で虚偽報告の疑い
仏BNPパリバ:10−12月期利益は予想下回る−コスト削減策発表
ブルームバーグ ニュースをフォローする
Facebook Twitter
長期金利0%程度に抑えてYCC維持するのはきつい−バークレイズ
新発10年物国債利回りは一時0.15%に上昇、昨年1月以来の高水準
Share on Facebook
Share on Twitter
日本銀行は操作対象にしている長期金利が誘導目標の「0%程度」から大幅に上方乖離(かいり)したことで、異例の長期国債買い入れオペを連発し、金利上昇抑制姿勢を強めている。一方、市場関係者からは、短期間に大量の国債を購入したことから、オペの持続性に対する疑問の声が上がっている。
  日銀は先週末3日午前の金融調節で、残存期間「5年超10年以下」の国債を4500億円買い入れると通知した。事前予告より400億円多い額だったものの、1月最終オペの水準に戻しただけで、債券市場ではむしろ失望売りにつながった。それを察してか、同日午後0時30分に指し値オペを通知するという異例の対応を取った。
日本銀行本店
日本銀行本店 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  週明け6日のオペでも5年超10年以下を4500億円買い入れ、2日間で日銀が購入した国債の総額はおよそ1兆6200億円に達した。これは黒田東彦総裁が就任した2013年4月以降、2日間の同ゾーン買い入れ額としては最高となる。
  バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、「日銀は後手に回って緊急のオペをやらざるを得ない展開になってきた」と指摘。「それを繰り返していくと量を減らすこともなかなかできなくなり、金利上昇圧力は日銀だけの力では止めづらいということもあり、結果的には追認する形で長期金利ターゲットを引き上げていく可能性がある」と言い、「内外ともに金利上昇圧力が強い中で、長期金利を0%程度に抑えてイールドカーブ・コントロールを維持するのはきつい」と述べた。

  長期金利の指標となる新発10年物の国債利回りは3日に一時0.15%と、昨年1月29日以来の水準まで上昇した。日銀が昨年9月に導入したイールドカーブ・コントロールの枠組みで目指す0%程度を15ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上回る水準だ。
金融市場調節方針をしっかりと実現
  日銀金融市場局は、国債の指し値オペに踏み切った理由について、長期金利が急激に上昇していることを踏まえ、10年物国債金利を操作目標0%程度とする金融市場調節方針をしっかりと実現するよう実施したと説明している。
  債券市場では、指し値オペを好感して買いが優勢となり、長期金利はいったん0.09%まで低下したものの、6日の取引では0.10%に戻した。世界的な金利上昇傾向や日銀オペ運営に対する懸念などから金利先高観も根強く残っていることが背景。バークレイズ証の押久保氏は、「7−9月期には長期金利の目標を10〜20bp程度引き上げる」と見込んでいる。
  パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、「どこかで限界が出てくるという懸念は海外からも聞かれる」と指摘。日銀のオペ対応については、「オペが未達になる危険性がある短期を減らして、長期にシフトしている動きも見受けられる」と述べている。
年間80兆円増めどを維持
  日銀は1月末の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針を据え置き、国債買い入れペースのめどの「年間約80兆円増」の表記を維持した。黒田東彦日銀総裁は、会合後の会見で、日々の金融市場調節について「需給動向、市場環境を踏まえて実務的に決められる」とし、先行きの政策運営姿勢を示すものではないと説明した。
  SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは、「長期金利上昇圧力が強いので日銀が後手に回っているとの見方もあるようだが、大きな前提として80兆円の長国買い入れめどの枠内では買い入れ増額余地はまだ相当大きく、どういう形であれ10年債を0.1%以下に抑制することは容易」と指摘する。「市場が試しているのはあくまでも『日銀の意志』であり、金利上昇圧力が日銀の金利抑制能力を上回ることは今のところ残念ながら考えにくい」と言う。  
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-06/OKXX966K50XS01 

 

ドッド・フランク法見直しは容易でない、政策というよりショー的要素も
Robert Schmidt、Jesse Hamilton、Elizabeth Dexheimer
2017年2月7日 07:03 JST
Share on FacebookShare on Twitter
関連ニュース
ドラギ総裁:ユーロは不可逆と強調−仏ルペン氏は離脱の意向鮮明に
ロンドン外為:ポンドが対ドルで2週ぶり安値-経済指標とEU離脱懸念
ドイツ銀行のイスラエルCEOを逮捕−VAT納税で虚偽報告の疑い
韓国のSKハイニックス、東芝半導体事業への出資を提案
大統領令は長く複雑なプロセスの単なる出発点
トランプ大統領指名の政権幹部、関連機関をまだ掌握していない
Share on Facebook
Share on Twitter
トランプ米大統領は3日、金融規制改革法(ドッド・フランク法)の見直しを命じる大統領令に署名したが、整備に7年を要した同法の見直しは容易ではない。
  従って、同法の一部撤廃や緩和を目指した大統領令は政策というよりもショー的な要素が大きいと、同法の成立に携わった議員や元政府当局者らが指摘した。法改正が迅速に進むとの期待から3日は銀行株が上げたが、銀行に恩恵が及ぶまでには障害が多そうだ。
  その第一はトランプ大統領が指名した政権幹部がまだ金融規制を担当する機関を掌握していないことだ。また、ドッド・フランク法のさまざまな規則を緩和するには議会が新たな法を成立させなければならない。ゴールドマン・サックス・グループの元パートナー2人をドッド・フランク法見直しの中心に据えたことは民主党の反発を悪化させた。
  リテール銀行業界の団体、コンシューマー・バンカーズ・アソシエーション(CBA)を率いるリチャード・ハント氏は、トランプ氏の大統領令は「実際の行動というより市場へのシグナルだ」と言う。
  トランプ大統領は金融規制に関する検証結果を120日以内にまとめることを命じた。政権が標的にするのは自己勘定トレーディングの禁止や高リスク金融機関に対する連邦準備制度理事会(FRB)の厳しい監視、破綻銀行の整理に関する規則などだ。米消費者金融保護局(CFPB)も標的になる可能性がある。
  トランプ氏は選挙戦中、経済的ポピュリストを自称し銀行業界を批判することも多かった。しかし新政権にはゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長と財務長官に指名されているスティーブン・ムニューチン氏という2人のゴールドマン出身者が加わっている。トランプ大統領は3日、金融規制の修正についてJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)という最良のアドバイザーから意見を聞いていると語った。
  エリザベス・ウォーレン上院議員(民主・マサチューセッツ)は、トランプ氏が「大手銀行とヘッジファンドのCEOらと文字通り並んで」ドッド・フランク法見直しを発表したと批判した。民主党大統領候補の座をヒラリー・クリントン氏と争ったサンダース上院議員(バーモント)も5日CNNの番組で、トランプ氏は「ペテン師」だとし、実はウォール街のために働いていると断じた。「政権幹部に指名されたのは超富裕層ばかり。金融問題の主要なアドバイザーはゴールドマン・サックス出身で、今や消費者保護の法律を解体しようとしている」と話す。
  とはいえ、トランプ氏は単独で法律を撤廃できるわけではない。銀行から苦言を呈されている消費者金融保護局にしても、新しい法律ができない限り機能し続ける。法改正には共和党が52議席しか持たない上院で60人の支持が必要になるなど、議会の協力が求められる。ドッド・フランク法の運用についての規則を作った各機関が変更を行えるという議論もあるが、ムニューチン氏はまだ正式に財務長官に就任していないし、他の機関にもオバマ政権が指名したトップが残っている。
原題:Dodd-Frank’s Tentacles Go Deep. They Won’t Be Cut Fast or Easily(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-06/OKYBQT6JIJUX01

 

100%人工知能のヘッジファンド誕生−株取引に人間の感情は邪魔か
Adam Satariano
2017年2月7日 12:07 JST
Share on FacebookShare on Twitter
関連ニュース
ドラギ総裁:ユーロは不可逆と強調−仏ルペン氏は離脱の意向鮮明に
ロンドン外為:ポンドが対ドルで2週ぶり安値-経済指標とEU離脱懸念
ドイツ銀行のイスラエルCEOを逮捕−VAT納税で虚偽報告の疑い
仏BNPパリバ:10−12月期利益は予想下回る−コスト削減策発表
ブルームバーグ ニュースをフォローする
Facebook Twitter
センティエント・テクノロジーズの動向を金融界やAI業界が注視
「とんでもない事態が生じた場合、停止ボタンはある」と創業者
Share on Facebook
Share on Twitter
ババク・ホジャット氏は、株取引で人間は感情的であり過ぎると確信している。このため、100%人工知能(AI)に任せる新興ヘッジファンドを始めた。
  コンピューター科学者でアップルの音声アシスタント「Siri(シリ)」の基盤づくりにも寄与した同氏は、「人間には偏見や感受性、意識、無意識といったものがある」として、「われわれ人間が間違いを犯すことは十分裏付けられている。私に言わせれば、データや統計が純粋に示すものに頼るよりも、人間の直感や説明に依存してしまうことの方が怖い」と述べた。
ババク・ホジャット氏
ババク・ホジャット氏 Photographer: David Paul Morris/Bloomberg
  ホジャット氏はセンティエント・テクノロジーズの共同創業者だ。新興ヘッジファンドの同社は過去10年近くを、膨大なデータを調査してトレンドを見つけ出し、株取引で学び適応しリターンを挙げられるAIシステムの秘密トレーニングに主に費やした。テクノロジー業界のベテランで構成する同社のチームは、AI活用によってウォール街のプロに対して優位に立てると見込んでいる。
  センティエントのサンフランシスコにあるオフィスの壁には、「ターミネーター」のようにAIが人間のように振る舞う世界を描く映画のポスターがところどころ貼られている。窓のない小さなトレーディングルームの中で唯一光を放っているのはコンピュータースクリーン、そして大画面テレビに映るバーチャルな火だ。AIシステムをシャットダウンしなければならない万が一の場合に備え、男性2人が取引を静かに見守っている。
  「とんでもない事態が生じた場合、停止ボタンはある」とホジャット氏は語った。
  センティエントはパフォーマンスについても、技術の詳細の多くについても明らかにしない。ブリッジウォーター・アソシエーツやポイント72、ルネッサンス・テクノロジーズなど伝統的なヘッジファンドは先端技術に資金を投じ、アイデアを生むのにAIを利用するところも多いが、トレーディング全体を任せるというのは異例だ。
  センティエントは今のところ、自己資金のみ取引しているが、その動向は金融界やAI業界が注視している。同社には香港の富豪、李嘉誠氏が所有するベンチャーキャピタルやインド最大の財閥、タタ・グループなどがこれまでに1億4300万ドル(約160億円)出資している。
  同社のチームはアマゾン・ドット・コムやアップル、グーグル、マイクロソフトなどテクノロジー企業のベテランで構成。コンピューターが自ら理解を深めていくマシンラーニング(機械学習)やデータサイエンスの金融市場への応用を目指す、シリコンバレーのグループの一角と言える。AIを活用するヘッジファンドとしてはほかに、ヌメライやエマなどが誕生している。
センティエント・テクノロジーズのオフィス内部
センティエント・テクノロジーズのオフィス内部 Photographer: David Paul Morris/Bloomberg
  センティエントは通常、米国株の銘柄を幅広く保有し、1日に何百回と取引をし、ポジションは数日ないし数週間単位で保有する。最高投資責任者(CIO)のジェフ・ホルマン氏は、「やり方はわれわれがシステムに押しつけたわけではない」と説明。「投資先の対象を広げ、より分散型のポートフォリオにした方が良いとの人間の考え方にAIは同意しているようだ」という。
  同社は内部ベンチマークを上回る成績をAIシステムは挙げているとするが、ベンチマークの詳細は明らかにしない。年内に外部から投資資金を募る計画だという。ウォール街から昨年入社したホルマンCIOは、資金調達中のヘッジファンドによるマーケティングを制限する米証券取引委員会(SEC)の規則を理由に、語れる内容は限られるとした上で、「プラットフォームはしっかりしている。これまで見たことのある他のどんな戦略とも違うようだ」と述べた。
原題:Silicon Valley Hedge Fund Takes On Wall Street With AI Trader(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-07/OKZDL76TTDSS01

http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/774.html

[経世済民118] 焦点:ナウキャストのGDP推計、世界初の衛星画像利用 利用拡大も  [東京 7日 ロイター] - 東大大学院の渡辺努教
焦点:ナウキャストのGDP推計、世界初の衛星画像利用 利用拡大も 

[東京 7日 ロイター] - 東大大学院の渡辺努教授と同氏が顧問を務めるビッグデータ・ベンチャーのナウキャストは、人工衛星画像を利用した国内総生産(GDP)予測値の算出システムを世界で初めて開発した。将来は、公表データの信頼性が低い国のGDPや、把握が困難な産油国の減産協定の順守具合などの確認にも応用できるとしており、多方面への活用が期待できそうだ。

今回の予測システムでは、衛星が写した夜の明るさと経済活動の関連性に着目、各種経済指標と照らし合わせて、GDPを推計する。

具体的には、米国の海洋大気庁が運営する気象衛星「スオミNPP」が日本上空を通過する毎日午前1時30分時点の画像を購入し、縦、横720メートル四方のマス目ごとの明るさを計測する。

同じ明るさでも、農地、商業用地、工業用地など土地の用途によって経済活動の大きさが異なるため、国土地理院の土地利用調査を参照。土地の用途と、明るさが示す経済活動の相関を弾き出し、この結果を考慮した上で、明るさから経済活動の大きさを試算する。

そのうえで、鉱工業生産など各省庁などが毎月公表している経済指標を組み合わせ、内閣府が四半期に一度しか公表しないGDPを早期に予測する。本格稼働は今年夏からを目指し、予測値の公表頻度などは今後詰める。

当面は、政府の公表するGDPを正確に予測するニーズのある投資家向けに、データの販売を検討している。渡辺氏は「投資家が参照するようになれば、市場参加者の意向を把握する必要のある日銀なども参照する必要が出てくる」とみており、渡辺氏自身の古巣でもある日銀に対して説明に出向く予定だ。

システム開発を担当したナウキャスト・チーフデータサイエンティストの林祐輔氏は、経済活動が活発になれば工場の夜の操業が増え、物流量の増加により夜の道路の明かりが明るくなる点にヒントを得た。

人工衛星画像で夜の明るさを計測すれば、経済活動の増減が推計できるとみて、日銀に勤務していた2012年に論文を作成。渡辺氏とナウキャスト関係者が事業化を働きかけ、林氏も昨年、ナウキャストに移籍した。

林氏は九州大学で物理を専攻しており「国ごとの基準の違いなどを乗り越えた、科学的な経済指標の開発に関心があった」という。

渡辺氏によると、中期的には、1)政府統計の信ぴょう性のチェック、2)信頼に足る政府統計の入手が難しい国の経済情勢把握──などに、この予測システムを役立てたい考えだ。

アジアの夜の衛星画像をみると、朝鮮半島は北緯38度線を境に、北朝鮮側は平壌と東部港湾都市を除き漆黒の闇となっている。中国は沿岸部が非常に明るく、内陸に進むほど暗くなっている。

インドは中国などと比べ、全土が満遍なく明るくなっており、特に国境周辺が明るく「国境周辺エリアの経済活動が活発であるのが見て取れる」(渡辺氏)という。

中東のガス田の明るさなどを計測すると、生産動向が日次で把握でき、「減産合意が順守されているかなども把握可能」と渡辺氏は説明する。

従来の政府統計は、企業などが政府に報告するデータの正確性や、データの入手可能性によって精度が左右された。

衛星画像のように誰もが入手可能な公表データであれば、政府、民間の区別なく分析が可能であるため、渡辺氏はこれを「統計の民主化」と呼び、世界的な潮流になると予想している。

(竹本能文、木原麗花 編集:田巻一彦)

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
スコットランド住民投票、英EU離脱交渉開始契機に決定か=議員
トランプ氏、パイプライン建設促進の大統領令に署名
4500億ドルの市場・70万人の雇用創出効果、米に表明へ=政府筋
移民制限の米大統領令、約100社が反対意見書を控訴裁に提出
中国当局、ネット監視強化に向け新委員会の設立提案
http://jp.reuters.com/article/gdp-u-tokyo-idJPKBN15M0NH?sp=true

http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/775.html

[経世済民118] FOMCと英中銀も「通貨冷戦」参戦、日欧中は隠密行動  経常黒字予想以下−輸出増  何もしないHF GS資本減レバレッジ
FOMCと英中銀も「通貨冷戦」参戦、日欧中は隠密行動
PIMCO Lucy Meakin
2017年2月8日 10:58 JST
トランプ政権はドルの強さを容認する可能性が低下−フェルズ氏
米英中銀の政策発表後、ドル指数とポンドは下落

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i0I0GCVhqc9E/v2/-1x-1.png

米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)によれば、米連邦公開市場委員会(FOMC)とイングランド銀行も中央銀行間の新たな「通貨冷戦」に参戦した。

  PIMCOの世界経済アドバイザー、ヨアヒム・フェルズ氏は電子メールで配布したリポートで、欧州中央銀行(ECB)と日本銀行、中国人民銀行は2016年後半にそれぞれの通貨を押し下げようと隠密作戦を展開していたが、米金融当局は金利期待の抑制を図ることで反撃していると指摘した。

  同氏はまた、イングランド銀が2日に政策金利の据え置きを決めるとともに、経済のたるみ(スラック)がこれまでの想定より大きいとしてインフレを加速させることなく失業率がさらに低下し得るとの認識を示したことに触れ、英中銀がポンド安を誘導しようと試みていると論じた。

  「冷戦は表立った争いではなく、隠密行動と言葉による戦いだ」とし、「1日のFOMC後の声明では、すでに低くなっている3月の利上げ期待を、タカ派色を強めた文言であおることを控えた」とする一方、イングランド銀は「ポンド安に寄与するハト派的シグナルを送る措置を講じた」とフェルズ氏は分析した。

  ドル指数は1日のFOMC政策発表の翌日、11週間ぶりの低水準に低下。ポンドはイングランド銀の政策決定後に1%下げた。

  フェルズ氏は、トランプ大統領率いる米政権はドルの強さを容認する公算が小さくなっている上に、保護主義の「核兵器を利用する意向が極めて強い」と指摘。日欧中などの対米輸出国・地域は今のところ、米国の動きをエスカレートさせないように自国通貨の上昇をある程度受け入れる対応をする可能性があるとの予想を示した。

原題:Fed, BOE Join Pimco’s Cold Currency War With Covert Depreciation(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-08/OL16N76KLVR401

 

12月経常黒字は1兆1122億円、予想下回る−輸出は前年比増に転じる
高橋舞子
2017年2月8日 09:16 JST

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/is8dB4TIkWs0/v2/-1x-1.png

財務省が8日発表したモノやサービスを含む海外との総合的な取引を示す経常収支は、昨年12月速報で30カ月連続の黒字となった。市場予想は下回った。

キーポイント
経常収支は前年同月比18.3%増の1兆1122億円の黒字(ブルームバーグ調査の予想中央値は1兆1833億円)−前月は1兆4155億円

輸出と輸入を差し引いた貿易収支は8068億円の黒字(前年同月は3134億円の黒字)−黒字は11カ月連続

輸出は6.6%増の6兆6692億円、輸入は3.3%減の5兆8624億円
海外配当金や債券利子などの第一次所得収支は33.3%減の6759億円

背景
  世界経済の持ち直しを背景に輸出が回復基調にあり、貿易収支が黒字を維持したのが経常黒字の主な要因の1つ。第一次所得収支は昨年6月(4202億円)以来の低い水準にとどまった。
  トランプ米大統領は日本の対米黒字をたびたび問題視している。今後も世界経済が堅調に推移するとの見通しのなか、輸出増が期待されているが、日米間の貿易摩擦に発展するかどうかが懸念される。10日に予定されている日米首脳会談では通商問題が取り上げられる見込み。

エコノミストの見方

第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは7日の取材で、12月の経常収支は「高止まり」を予想。円安で円換算での第一次所得収支がかさ上げされると分析した。また、同時に発表される16年分の統計は20兆円を超える高水準となる可能性があり、トランプ米大統領が貿易赤字を問題視しているなか、「話題になる可能性がある」と述べた。

野村証券の棚橋研悟エコノミストは同日の取材で、先行きについて輸出の改善や直接投資の積み上がりが「黒字幅の拡大につながる」との見通しを示した。11月末のOPECの減産合意の影響が本格的に反映されるのは次回統計以降になるとも述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-08/OKZXU66S972901


 


 
「何もしない」のがヘッジファンド運用の妙案?量的緩和で多くの株が同じ方向に動く世界で

2016年にはパスポート・キャピタルやオデイ・アセット・マネジメント、ランズドーン・パートナーズなどさまざまなヘッジファンドが大きな損失を出した。写真はパスポート・キャピタル創業者で最高投資責任者のバーバンク氏 PHOTO: DAVID PAUL MORRIS/BLOOMBERG NEWS
By
LAURENCE FLETCHER
2017 年 2 月 8 日 06:47 JST
 ヘッジファンドの運用担当者の評価と報酬は取引に関するアイデアの優劣で決まる。彼らの頭の回転は、ここしばらくあまりよくないようだ。
 株式で資産を運用するヘッジファンド――運用資産額は世界でおよそ8500億ドル(約95兆円)に上る――は昨年、損失を計上した。本紙が閲覧したモルガン・スタンレーの顧客向けレポートによると、少なくとも同社がこの種のデータ収集を開始した2010年以降、損失を計上するのは初めてだという。
 平たく言えば、こうしたヘッジファンドの運用担当者は何もしないほういいということになる。
 データ提供会社HFRの1月の統計によると、銘柄を選んで投資するこうしたファンドのリターンはS&P500種株価指数のリターンを下回ったという。
 ジョン・バーバンク氏率いるパスポート・キャピタルやクリスピン・オデイ氏のオデイ・アセット・マネジメント、ランズドーン・パートナーズなどさまざまなファンドが大きな損失を出した。
 ニューヨークのスカイブリッジ・キャピタルのパートナー、ロバート・ダガン氏は値上がりが見込める株を買い、値下がりが予想される株を売る「株式ロング・ショート戦略」が「脅かされている」と指摘する。「激しい逆風が吹いている」。スカイブリッジ・キャピタルはヘッジファンド投資会社で、120億ドルの資産を運用している。
 ダガン氏はパッシブ運用とインデックスファンドが増えていると指摘。その影響で株価の動きと企業業績の連動性が弱まった可能性があるという。
 多くのファンドは、世界的な量的緩和で巨額の資金が市場に流入した結果、多くの株が同じ方向に動くようになり、株式の選別が難しくなったと嘆く。
 この数カ月の間に大きな損失を出したファンドの1つが、ロンドンで75億ドルを運用するオデイ氏のファンドだ。オデイ氏の欧州ファンドは昨年、マイナス49.5%のリターンを記録、世界でも最悪クラスの運用実績を残した。ただし今年に入ってからは4%を超えるプラスのリターンを確保している。

ファンドのリターン(黒)はS&P500種株価指数のリターン(緑)を下回った
https://si.wsj.net/public/resources/images/BF-AO109_TIGERS_16U_20170206171205.jpg

 先月、投資家との電話会議でオデイ氏の発言を聞いた人物によると、同氏は金融政策が原因で市場にゆがみが生じていると指摘した。そのゆがみは「恐怖指数」として知られるVIX指数にも表れている。政治をめぐって不透明感が高まっているにも関わらず、VIX指数は低水準にとどまっている。
 WSJが閲覧した投資家向け資料の中で、オデイ氏は「期待に対するQE(量的緩和)の影響を見ると、市場には魅力のある価値はほとんどないことになる」と述べた。
 リターンがマイナスだったにも関わらず、オデイ氏は自らの信念を曲げるつもりはない。オデイ氏は投資家との電話会議で、少なくとも2015年末から値下がりを予想しているエネルギー会社トゥロー・オイルについては、高い負債水準への警戒から空売りを続けると述べた。
 オデイ・アセットの広報担当者はコメントを差し控えた。
 しかしロング・ショート戦略のファンドの先行きを楽観視する向きもある。
 1191億スイスフラン(約13兆円)の資産を運用するGAMのポートフォリオマネージャー、アンソニー・ロウラー氏はこの1年で株式の評価額が上昇し、個別の株式の動きが以前よりばらついていると指摘した。つまり「ロングポジションをとるだけではだめ」(ロウラー氏)ということだ。
 エントラストパーマルのポートフォリオマネージャーのクリストフ・エングリッシュ氏は、ドナルド・トランプ氏が大統領になったということは「変化があるということ」と話す。「変化は不透明感を生む。ロング・ショート戦略をとる運用者にとっては好都合だ」
関連記事
• 米株市場に戻ってきた銘柄選択、留意すべきこと
• KKRに25%以上の上昇余地
• 英ヘッジファンド、トランプ氏勝利で大損
• 一部ヘッジファンド、株価下落の読み外れ大打撃

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjJs7_zvP_RAhUKTbwKHaLACfQQFggiMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11367774349816344181604582606833440487696&usg=AFQjCNHZ4iI3li0Nv8OBZeO_fcLOoiYqAA


 

ゴールドマンCEO、資本減らしレバレッジ効かせたい−夜明けを信じ
Dakin Campbell
2017年2月8日 04:48 JST
Share on FacebookShare on Twitter
自由にやれるなら、これほどの資本を持たないだろう
通商に関する政権の強硬発言は景気刺激重視政策の中での例外

米ゴールドマン・サックス・グループのロイド・ブランクファイン最高経営責任者(CEO)は、成長が加速し債券トレーディング事業回復の継続が見込まれる中で同社の資本を減らしたい考えを示した。
  「自由にやれるなら、これほどの資本を持たないだろう」と同CEOは7日マイアミビーチでの投資家会議でどのような規制変更を望むかとの問いに答えて述べた。規制の枠組みはそれぞれの企業に異なる制約を加えると指摘した。
  ブランクファイン氏は金融危機後の規制強化は行き過ぎで、一部の規制を緩和することは安全性を損なうことなく金融業界のプラスになるとの考えだ。資本要件の厳格化が収益力を損なってきた債券トレーディング事業は規制緩和の恩恵を受ける見込みだ。
  ブランクファイン氏は「構造的変化と循環的変化の間のバランスは非常に難しい」とし、「うまくバランスを取ることができたのかどうかはサイクルが完全に1周した後にしか分からない。私は偽りの夜明けを予想していないし、改善が続く理由が幾つもあると考える」と語った。
  トランプ政権の通商交渉に関する強硬発言については、景気刺激重視政策の中での例外だとし、成長加速は税制や規制に関するトランプ大統領の政策を後押しするものになるとの見方を示した。
 
原題:Blankfein Pines for More Leverage With ‘False Dawn’ Unlikely(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-07/OL0HZT6VDKHS01

 

http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/797.html

[国際17] オバマケア撤廃、暫定措置から始めよ 新大統領に草の根の声 トランプ減税案、他の措置が恩恵打消す 米求人件数:ほぼ横ばい、
【社説】
オバマケア撤廃、暫定措置から始めよ
共和党の公約破綻を宣言するのは時期尚早
米保健福祉長官に指名されているトム・プライス氏(1月24日) PHOTO: GETTY IMAGES
2017 年 2 月 8 日 11:21 JST

 ここにきて突然、米紙は共和党に関するある論調であふれている。バラク・オバマ前大統領の医療保険制度改革法(オバマケア)を撤廃し、代替制度に置き換えるとの公約から共和党が恐らく後退しつつあるという見方だ。リベラル派は自分たちの正当性を主張し、一方の保守派は神経質になりつつある。しかし、焦って公約の破綻を宣言するのは時期尚早だ。より安定した、かつ手頃な医療保険制度を目指す秩序だった移行への取り組みはまだ始まったばかりだ。

 ドナルド・トランプ氏が大統領であるこの時代、他のほとんどの面でも同様だが、結論を急ぐのは避けるべきだ。重要なのは、共和党議員が「修復」という言葉を自分たちの語彙に加えていることだ。まるでこの言葉が政策変更を意味するかのようにだ。保険市場は実際、修復を必要としており、オバマケアが負のスパイラルに陥っている中で何もしないでいるのは現実的ではない。

 同様に、ペンシルベニア州フィラデルフィアで先月行われた共和党連邦議員による会合は、リークされた音声記録からはけんか腰の雰囲気が伝わってきたものの、異論の中にある良い部分を議論することは政党が戦略を立てる際の方法だ。「医療保険制度の混乱がオバマ前政権のせいだとしても、前大統領を責めることはできない」と共和党は気づいている。爆弾を手渡されたのはいまや自分たちであり、慎重かつ真剣に爆弾処理を進める必要があることを多くの共和党議員が理解しつつあるところだ。

 オバマケアの制度下で複数の保険業者が参加するオンラインの保険市場「エクスチェンジ」は値上がりを続ける高い保険料と保険業者の撤退に苦しめられ、風前のともしびだ。米保健福祉省(HHS)は3日、連邦政府が運営するエクスチェンジを通した2017年の最終的な加入者数は昨年より約40万人減ったと発表した。米医療保険大手エトナのマーク・ベルトリーニ最高経営責任者(CEO)は株主との電話会議で、業界の大方の見方としてこう述べた。「政府と業界の誠意(をもった運営)にもかかわらず、(オバマケアの)目標には到達していない。数百万人の国民が保険に未加入であり、依然として手頃な医療保険へのアクセスが十分ではない状況だ」

 数カ月前に始まった2018年の保険料や給付金の額、保険料率の設定には、否応なくあるものが織り込まれている。先行き不透明感だ。規制当局による承認は春の予定であるため、保健福祉長官に指名されているトム・プライス氏と、医療保険改革チームのトップに起用されたシーマ・ベルマ氏は予測可能な保険市場にするために早く動く必要がある。

 トランプ大統領の最初の行動の一つは、「より自由かつ開放的な保険市場を作るため」に、個人や州、法人に重荷となっている規則の「撤廃、変更、適用除外、延期」を命じた大統領令に署名することだった。具体的な中身はHHSが提案した「市場安定化」に関する規則に盛り込まれており、現在はホワイトハウスの予算局の審査を受けている。

 この規則にはオバマケアの最も厄介な条項を緩和する短期的な措置が含まれているもようだ。文言のみの見直しで、ただちに保険料が値下げされるはずだ。この中には義務化されている基本給付金の緩和、あるいは個人差が生じる保険料率の幅の制限も含まれる。オバマ前政権のHHSは、「特別加入期間」を設けることで、この個人向け強制加入保険を「スイスチーズ」に変えてしまった。つまり、好きな時に出たり入ったりできるのだ。継続的な保険加入がトランプ政権の最優先課題だろう。

 保険料未払いの加入者でも90日間は保険を適用する「猶予期間」を短くすることも暫定的な変更として有効だろう。コンサルティング会社マッキンゼーの調査で、エクスチェンジを介した加入者5人のうち1人は保険期間1年のうちのどこかの時点で保険料の支払いを中止していることが分かった。しかも、そのうちの半数は翌年、同じ保険プランに再加入している。つまり、3カ月間の「無料」適用期間を利用しているのだ。

 連邦議会は保険業界に対する10年間で1450億ドル(約16兆3000億円)の課税を一時中止することでエクスチェンジの安定化を手助けすることができるだろう。この税金の負担は加入者が支払う保険料に上乗せされると考えられることから、オバマ前政権と連邦議会は2017年度の課税停止で合意したのだ。コンサルティング会社オリバー・ワイマンは、もう1年課税を停止すれば、保険料がただちに3%下がると見積もる。そうすればオバマケアの償還プログラムが多岐にわたっていることを背景に、誰が誰に支払い義務を負っているのかを巡る議論もあるなか、いくらか運営上の信用を得ることができる。

 そうしている間にオバマケアを新たな法律に置き換えるという長期的な改革作業を進めればいい。米下院エネルギー・商業委員会は先週、4つの法案に関する公聴会を開いたほか、ほかにも進展を見せている当局もある。ポール・ライアン下院議長は第2四半期までにオバマケアの撤廃と代替案の策定が完了することを期待すると述べた。

 オバマケアが決定的に失敗している点は、その助成金にもかかわらず、ほとんどの人がこの保険制度を手頃とも、価値があるとも考えていないことだ。共和党が多数党となっている議会とトランプ政権は、競争力のある市場のほうが、人々がほしがり、かつ必要とする保険商品を提供できると踏んでいる。

 ライアン氏が思い描く日程は野心的すぎるうえ、医療保険制度改革の第2ラウンドはイデオロギーの純度に関する共和党内部の混乱と、執念深い民主党の反発の中で頓挫する可能性もある。しかし現状を踏まえると、パニックになるのは行き過ぎだ。

トランプ新大統領特集

トランプ氏、オバマケア廃止・代替案の同時採決を支持
オバマケア撤廃めぐる攻防、トランプ氏も参戦
トランプ氏、オバマケアの一部維持に前向き=WSJインタビュー
トランプ時代のアメリカ、草の根の声
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjarr3iu__RAhWLXrwKHURFAJ0QqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11367774349816344181604582608252365198994&usg=AFQjCNFpaCI6Y8zT2N-ULPN2axfRWZl6DQ

 

トランプ時代のアメリカ、草の根の声6郡の支持者や批判者、新大統領に何を思う

トランプ大統領の就任式の模様がテレビに映るペンシルベニア州モネッセンのバー(1月20日) PHOTO: STEPHANIE STRASBURG FOR THE WALL STREET JOURNAL
By
WSJ STAFF
2017 年 2 月 8 日 06:45 JST
 ドナルド・トランプ米大統領の支持者は景気回復から取り残された地域に住んでいる人が多い。経済成長と雇用を米国に取り戻すというトランプ氏の公約に心を動かされたのだ。
 彼らは西部の牧場主であり、エネルギー資源が豊富な州の炭鉱作業員であり、ラストベルト(さびついた工業地帯)の鉄鋼作業員である。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はこうした支持者に加え、支持政党を変えた有権者やトランプ氏に反対する人からも話を聞いた。なぜトランプ氏を支持するのかしないのか、大統領にどんなことを期待しているのか。
ペンシルベニア州ウェストモアランド郡
 【モネッセン】1890年代にマノンガヒラ川の湾曲部に沿って築かれた町、モネッセン。鉄鋼生産と鉄鋼加工会社がけん引して発展した。世界最大級の鉄鋼業の町になったこともある。だが1980年代に鉄鋼産業に逆風が吹き始めると、モネッセンをはじめ周辺の町が傾き始めた。最大の雇用主だったウィーリング・ピッツバーグ・スチールが溶鉱炉を閉鎖したのは1986年のことだった。
 同社と関連業者から8000人の雇用が消えた。ピッツバーグ周辺全体では80年代に10万人余りの雇用が失われた。
 元鉄鋼作業員のエモリー・テレンスキーさん(66)は、雇用に焦点を絞ったトランプ氏の歯に衣着せぬ物言いに動かされ、支持を決めた。トランプ氏が不要だと考える環境関連の規制が廃止されれば、製造業などに雇用が戻ってくると信じている。この地域の民主党政治家が鉄鋼業にも他の産業にも雇用を取り戻せないことに長年不満だったと話した。

元鉄鋼作業員のエモリー・テレンスキーさんPHOTO: STEPHANIE STRASBURG FOR THE WALL STREET JOURNAL
 テレンスキーさんは発足したばかりのトランプ政権に満足していると話す。「やると言ったことはすべてやっている。敵対勢力を怒らせているのはこれだ。彼は後退していない」
 さらに、メキシコとの国境に壁を築くとの公約を押し進めていることを喜び、こう話した。「壁のレンガ代として50ドルを送ってもいい」

マービン・デービスさん(手前) PHOTO: KRIS MAHER/THE WALL STREET JOURNAL
 一方、市の条例執行官のマービン・デービスさん(65)はトランプ大統領に不安を感じていると話す。経済面では公約を果たせず、諸外国との無用な軍事衝突に米国を巻き込みかねないことを恐れていると言う。
 大統領選では民主党候補のヒラリー・クリントン氏に投票したデービスさんだが、トランプ氏には成功のチャンスを与えたいとし、国民に対してもっと多様性に寛容な態度で発言することを期待しているとも話す。
 同じくクリントン氏を支持した妻のメアリーさん(64)は「(トランプ氏が)自分以外の人のために何かをやっているとは思えない」と話した。
アリゾナ州マリコパ郡
 【フェニックス】メキシコに国境を接するアリゾナ州では移民問題を巡る議論が白熱し、マリコパ郡での大統領選は接戦だった。人口410万人の同郡にはヒスパニック系の流入が急激に増えている。
 麻薬や密入国に関する報道や、ヒスパニック系の人々の受け入れに伴う負担費用への懸念を背景に、2000年代半ばから移民の取り締まり強化が支持されてきた。

ファン・バスケスさん PHOTO: PATRICK T. FALLON FOR THE WALL STREET JOURNAL
 大学生のファン・バスケスさん(19)は家族の中で唯一の米国生まれだ。母親は20年前、バスケスさんより年長の子供5人を連れて不法入国した。一家はフェニックス中心部にある移動式住宅用の広場に落ち着いた。
 バスケスさんは大統領選の間、住宅を1軒ずつ訪問し有権者登録をして回った。新規登録者の大半が民主党候補のヒラリー・クリントン氏に投票してくれればと期待した。大統領となったトランプ氏に期待するのは、「米国を母国にした人が市民権を得られる道を作る」ことだ。
 バスケスさんの4人の兄姉は、子供の頃に入国した不法移民の強制送還を免除する政府のプログラム「DACA」の恩恵を受けた。DACAはバラク・オバマ前政権が2012年に導入した。このおかげで、28歳の姉は13年にアリゾナ州立大学を卒業後、米経済誌フォーチュンが発表する売上高上位500社に入る企業に就職した。

パティ・トンプソンさん(左) PHOTO: THOMPSON FAMILY
 この地域で最初に作られた高齢者(退職者)向けコミュニティーの一つ、サンシティーで暮らすパティ・トンプソンさん(68)は、イスラム圏7カ国出身者らの入国を一時的に禁じた大統領令に感心しないと話す。
 「その中身と、米国の安全に対する彼の懸念には同意するが、あまりに早計で関係当局が把握していなかった。やり方がずさんだった」と述べ、こう続けた。「適正な書類がある人を追い出すのは間違っているし、悲しい」
 同郡サプライズで妻と1歳半の息子と暮らす大学の事務職員クリストファー・ヘリングさん(32)は自称「政策面の共和党支持者」。トランプ氏の大統領就任前には、国境の壁は移民問題の解決にはならないと話していた。就任後、再び話を聞くと、「テロを輸出する可能性をもった7カ国からの入国を一時的に停止したのは良識的な措置」だと語った。
ネバダ州ランダー郡
 【バトルマウンテン】ネバダ州北部の牧場主は圧倒的にトランプ氏を支持した。放牧権の急激な縮小など、環境問題への懸念を背景に各種規制を定めている政府機関と折り合いをつける際に、トランプ氏が手助けしてくれることを彼らは期待している。
 牧場が広がる米西部各地での当局との緊張関係が世間の耳目を広く集めたのは2014年のこと。同州の牧場経営者クリバン・バンディーさんが放牧権を巡り、土地管理局(BLM)を相手に武器を持って抗議活動を展開した。昨年は息子のアモンさん率いる集団が地主の権利を主張し、オレゴン州の野生動物保護公園内で41日間におよぶ抗議活動をした。

ネバダ州ランダー郡の牧場 PHOTO: ALAMY
 共和党のマーク・アモデイ下院議員(ネバダ州)は連邦政府の政策、とくに民主党政権の規制が、炭鉱を含め昔からの土地利用者に打撃を与えていると指摘する。
 牧場経営の健康状態は周辺地域にも影響を及ぼす。コネティカット州と同じ面積の土地に6000人が暮らすランダー郡の失業率は最新データの昨年11月で5.5%だった。これは2010年の約半分だが、景気後退前の低水準(2.8%)を大きく上回っている。
 トランプ氏に投票した衣料店の管理職リンダ・ミルズさん(52)は、オバマ政権の医療保険制度改革法(オバマケア)の廃止を望んでいる。自分の保険が「何の費用もカバーしない」からだ。糖尿病を患っており、年間で最大4500ドル(約50万円)の免責金額はあまりにも高額だと話した。

リンダ・ミルズさん PHOTO: JIM CARLTON/THE WALL STREET JOURNAL
 夫で郡政委員のダグさん(53)は、家族経営の薬局の利益が上がるよう法人税の引き下げを期待すると話した。ただ、貿易に対するトランプ氏の強硬な姿勢は心配だと話す。「素晴らしい結果になるかもしれないが、ひどい結果になる可能性もある」
 兄弟で花火の店を経営するアール・カソーラさん(60)は大統領の就任前、仮にトランプ氏が公約を守らず、あまりに独裁的になれば、大統領の弾劾を支持すると話した。とはいえ先行きを楽観視し、「何か大きな事の始まりだと思う。左派の人々は自分たちに対立する人々の感情がどれだけ強いのか分からないのだ」と語っていた。
 その後もう一度話を聞くと、カソーラさんはこう話した。「トランプ氏は私の希望と期待を上回ることをやっていると言っていいと思う」
ワイオミング州キャンベル郡 
 【ジレット】米西部でワイオミング州キャンベル郡ほどトランプ政権の政策に運命が左右される場所はほとんどない。同州は全米で産出される石炭の約40%を担っており、キャンベル郡は鉱物が豊富なパウダー川盆地の中心に位置する。人口3万2600人のブルーカラー労働者の町ジレットは「米国のエネルギー首都」を自称する。トランプ氏がここで勝利した一因は、オバマ前政権が推進した環境規制の強化に有権者の怒りが募ったためだ。

ワイオミング州ジレットの住民たちはこの町を「米国のエネルギー首都」と呼ぶ PHOTO: KRISTINA BARKER FOR THE WALL STREET JOURNAL
 ワイオミング大学のエネルギー経済・公共政策研究所で所長を務めるロバード・ゴッビー氏によると、同州では2万人余りの雇用が直接・間接的に炭鉱産業に依存している。
 だが2016年に同州の2大炭鉱会社、ピーボディ・エナジーとアーチ・コールが連邦破産法の適用を申請した。両社とも人員を15%削減。総計500人近くの雇用が失われた。
 石炭の生産は最近、少しだけ上向いてきた。ピーボディは臨時作業員を雇っている。トランプ氏の勝利はジレットに新たな希望を吹き込んだ。

レイチェル・カレンバーグさん(左)と同性婚相手のアリアン・ジミソンさん PHOTO: KRISTINA BARKER FOR THE WALL STREET JOURNAL
 最近、まきで焼くピザの店を始めたレイチェル・カレンバーグさん(35)と同性婚相手のアリアン・ジミソンさん(38)は、大統領選でリバタリアン党のゲーリー・ジョンソン氏に投票した。トランプ政権になればマイノリティーがどう扱われるのか心配だったし、クリントン王朝の再来は面白くなかったからだ。
 この同性婚カップルはトランプ政権の下で市民権がどう解釈されるのか懸念していると話す。性的指向を公言しているレズビアンやゲイ、トランスジェンダーの住民がほとんどいないキャンベル郡のような土地ではなおさらだ。
 「私に見えるのは、彼の支持者がつけあがり大量の憎しみとたわごとをばらまいている姿だ」とジミソンさん。「気がめいるし、怖い」

スコット・カンディーさん PHOTO: DAN FROSCH/THE WALL STREET JOURNAL
 炭鉱の重機作業員として16年働いているスコット・カンディーさん(48)はビールをすすりながら、昨年がいかに厳しい年だったかを語った。「これまでで最悪だった。もう当てにできる仕事ではなくなった。ほとんど2、3日ごとに従業員が解雇された」
 環境規制に関してカンディーさんは、トランプ氏なら「達成できないほど高い基準は設けないだろう」と述べた。
ノースカロライナ州リッチモンド郡
 【ロッキンガム】ノースカロライナ州リッチモンド郡はかつて、全米で最も豊かな郡の一つだった。数十の繊維工場が立ち並び、鉄道会社が進出していたおかげで仕事はいくらでもあった。
 しかし1970年代から徐々に衰え始めた繊維産業は1993年の北米自由貿易協定(NAFTA)で衰退が加速。現在、州内で最も貧しい地域の一つだ。国勢調査局によれば、貧困層は人口の28%で、全米平均の2倍に当たる。

2人の幼児を抱えるシングルマザーのキャシー・オドムさん PHOTO: VALERIE BAUERLEIN/THE WALL STREET JOURNAL
 住民の多くはNAFTAを理由にビル・クリントン元政権を非難する。民主党で登録している有権者は共和党の3倍だが、昨年の大統領選で妻ヒラリー氏にチャンスはなかったと住民は話す。同郡有権者の55%はトランプ氏に投票した。忘れられた場所に製造業の雇用を取り戻すという同氏の公約を受け入れたのだ。
 2人の幼児を抱えるシングルマザーのキャシー・オドムさん(22)は投票に行かなかった。「ヒラリーはうそをつくし、トランプは話し方を知らない」からだ。だが今、頼みの綱である社会保障というセーフティーネットをトランプ政権が廃止するかもしれないと恐れている。
 オドムさんは、昼間は看護師の勉強を続けながら、夜は時給16ドル(約1800円)の看守の仕事を始めた。

ロバート・リーさん PHOTO: VALERIE BAUERLEIN/THE WALL STREET JOURNAL
 地元で銃器店を営むロバート・リーさん(62)は2008年の金融危機前の水準に比べ、商売が70%落ち込んでいると見積もる。一方、健康保険の保険料は3倍になった。
 トランプ氏についてリーさんは「彼は政治家ではない。雇用を生み出してきた」と話し、大統領が約束通りに仕事を米国に取り戻すことに期待をにじませた。
 リーさんの銃器店は小さな町の理髪店のように人が集まる場所として機能している。リーさんとこの店に集まる人の多くはトランプ氏に投票したという。大きな変化を起こすには従来とは完全に異なる人物が必要だと思ったからだ。
フロリダ州パインラス郡
 【ラーゴ】フロリダ州パインラス郡はインターステート(州間高速道路)4号線で結ばれた人口の多い回廊地帯の西の端に位置する。全州規模の当選者や大統領選での同州の結果を左右することが多いのはこの地域だ。
 退役軍人や高齢の退職者、ハイテクから旅行に至るまで幅広いセクターの労働者が暮らしている。大統領選の夜、従来民主党を支持していたこの郡が共和党に傾いたのは驚きだった。

ファイナンシャル・アドバイザーのカーティス・チャンバースさん PHOTO: EVE EDELHEIT FOR THE WALL STREET JOURNAL
 クリントン氏はセントピータースバーグの都市部では支持を集めたものの、郊外や海岸沿いの地域は高齢の白人が多く、その多くはトランプ氏を支持した中西部や南部の州からの移住者たちだ。
 ファイナンシャル・アドバイザーのカーティス・チャンバースさん(54)は長年、無党派だったが、ブルーカラー労働者の不安に対処しようとしているトランプ氏の姿勢に動かされたと話す。トランプ氏に投票するために予備選前に共和党に登録したというチャンバースさんは「経済的なポピュリズムやナショナリズムが私の心に響いた」と語る。
 米国の競争力を高めるための税制改革を含め、トランプ氏が公約のすべてを果たすことを期待すると言う。「私たちはついに、政治家ではなくビジネスマンの大統領を持つに至った」とし、さらにこう続けた。「私はかなり楽観視している」

トリッシュ・コリンズさん PHOTO: ARIAN CAMPO-FLORES/THE WALL STREET JOURNAL
 セントピータースバーグに住み公共交通機関の人事部で働くトリッシュ・コリンズさん(40)はクリントン氏を支持した。選挙後、数人の友人たちと一緒に「全てはセントピータースバーグのために」というグループを発足させた。社会的・政治的な活動をしたい人同士を結びつけるためだ。コリンズさんは、イスラム教徒をはじめとする難民・移民を標的にするトランプ氏の政策と、欧州の従来の同盟諸国を見下しつつロシアにすり寄る姿勢を懸念していると話した。
 大統領の就任後に話を聞くと、トランプ氏が大統領令を連発していることや、顧問団の小さなグループの中で権力を固めているように見えることに失望感をあらわにした。「独裁政治に向けて列車が猛スピードで進んでいるような感じがする」
トランプ新大統領特集
• オバマ政権の経済レガシー、果実得るのはトランプ氏
• トランプ政権の経済チームに潜む分断
• トランプ氏の大きな賭け「2国間協定」 他国は交渉応じるか
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjgm9aWvf_RAhUMgLwKHYICC1oQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11303642310634324165204582596723750231722&usg=AFQjCNEEjH83WdOU8L4QHLjaNxeknKYQVQ

 
米株押し上げたトランプ減税案、他の措置が恩恵打ち消すとの見方も
Lu Wang
2017年2月8日 08:24 JST
ストラテジストは支払利息の税控除廃止など他の措置がリスクと指摘
企業は決算の電話会議で国境税調整や支払利息の税控除に言及

昨年11月の米大統領選投票日以降、同国の株価を押し上げてきた最大の要因はトランプ氏が公約した減税だった。しかし、同減税案を掘り下げて調べたストラテジスト数人は投資家がなぜこれほど熱狂するのか不思議に思っている。
  確かに法人税率を15%に引き下げれば、S&P500種株価指数のバリュエーション(株価評価)が過去最高水準近くにある中でも、経済成長の再活性化や企業利益の拡大につながる可能性がある。しかし一方で、国境税調整や支払利息の税控除廃止など他の措置が企業への恩恵を打ち消してしまう恐れもある。
  企業利益の拡大を期待する投資家によって昨年11月以来、時価総額が2兆ドル(約225兆円)膨らんだ株式市場にとって、こうした恐れはあまり良い材料ではない。
  トランプ大統領の主な成長刺激策は公共支出の拡大、規制緩和、税制改革の3つだが、投資家の大多数は企業利益を押し上げる早道は減税だとみている。ブラックロックの「グローバル・アロケーション・ファンド」で共同ポートフォリオマネジャーを務めるラス・ケステリッチ氏は、S&P500種構成銘柄にとって今年は、アナリスト予想通り2桁の上昇を達成する「絶好の機会」だと指摘した。
  しかし企業側は警戒心を募らせている。バンク・オブ・アメリカ(BofA)によれば、今決算シーズンの電話会議でこれまでに国境税調整への言及が80回、支払利息の税控除についてのコメントも30回余りあり、利益を圧迫しかねない税制に企業が強い関心を寄せていることが示された。
原題:Trump Tax Plan Seen More Wash Than Windfall for S&P 500 Earnings(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-07/OL0GAXSYF01S01

 
米求人件数:ほぼ横ばい、雇用・解雇者が小幅増−自発的離職者は減少
Patricia Laya、Austin Weinstein
2017年2月8日 01:46 JST
米労働省が7日発表した昨年12月の求人件数(季節調整済み)は前月からほぼ変わらずとなった。
  12月の求人件数は550万1000件と前月の550万5000件(速報値552万件)から4000件減少。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は558万件だった。
  12月に雇用された労働者は525万人と、前月の521万人から4万人増加した。雇用率(全雇用者に対する月間雇用創出の比率)は3.6%で、前月から変わらず。
  一方、自発的離職者は約298万人で、前月の308万人から10万人減少した。離職率(全雇用者に対する自発的離職者の比率)は2%で、前月の2.1%を下回った。
  解雇者は164万人と、昨年8月以来の高水準。前月は162万人だった。

  求人の内訳を見ると、製造業や小売り、金融、ヘルスケア業界などで増えた一方、娯楽・接客、ビジネスサービス、建設、州・地方政府などで減少した。
原題:Job Openings Little Changed in December as Hiring Rises Slightly(抜粋)
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iCrnIox9UOTg/v2/-1x-1.png
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-07/OL0HJL6S972801


http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/851.html

[戦争b19] トランプ、プーチン両氏の「破局」招く引き金は 国防長官「主な脅威まずはロシア」 国務長官、CIA「米国にとって危険」
コラム:トランプ、プーチン両氏の「破局」招く引き金は

 2月6日、トランプ米大統領、ロシアのプーチン大統領の双方から楽観的なシグナルが発せられているにもかかわらず、米ロ関係は急激に悪化、あるいはこれまでよりもいっそう悪くなる可能性を秘めている。写真は、プーチン大統領と電話で話すトランプ大統領。ワシントンで1月撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)
Josh Cohen

[6日 ロイター] - トランプ米大統領は、ロシアのプーチン大統領を擁護し続けている。米スーパーボウル開幕前に行われたフォックス・ニュースとのインタビューで、トランプ大統領は、プーチン大統領を「殺人者」と表現した司会のビル・オライリー氏の発言を一蹴した。

「殺人者はたくさんいる。どう思うか。われわれの国はそれほど潔白なのか」

確かに、米国の国家安全保障はロシアとの関係改善から恩恵を得られるだろう。とりわけ注目すべきは、核戦争と核テロのリスクが減少する可能性があることだ。

だが、トランプ氏側、プーチン氏側の双方から楽観的なシグナルが発せられているにもかかわらず、米ロ関係は急激に悪化、あるいはこれまでよりもいっそう悪くなる可能性を秘めている。

以下に米ロ関係に亀裂を生じさせる恐れのある政策課題を挙げよう。

まずはイランだ。トランプ大統領は、イランとの核合意において矛盾するシグナルを送っている。大統領候補だったころ、トランプ氏は合意を破棄すると繰り返し明言していた。しかし大統領になってからは、合意を強化する方向へと向かっているようである。

プーチン大統領は合意破棄を望まないだろう。合意の結実にはロシアが主要な役割を担ったからだ。なかでも、自国でウラン濃縮を行いたいイランと、その能力を制限したい西側との間で折り合いをつけるため、解決策を見いだすのに大いに貢献した。

ロシアはまた、合意の履行においても重要な役割を担い続けている。2015年末、イランの低濃縮ウラン2万5000ポンド(約11.3トン)がロシアに搬出された。最近では、オバマ前政権の同意を得て、イランからロシアに原子炉冷却材44トンを搬出するのと引き換えに、ロシアはイランに未加工のウラン11万6000キロを搬送した。

トランプ大統領が核合意を破棄するのであれば、プーチン大統領がそれを挑発として、あるいは恐らくイランの核施設に対する米攻撃の前触れとして見なしてもおかしくはないだろう。プーチン大統領は、イランに自国の高性能兵器を送ることに許可を与え、いかなる米国の脅威にも対抗しようとするかもしれない。そうなれば、米ロ間の危機は急激に悪化しかねない。

また、トランプ氏とプーチン氏が新たな核軍拡競争を始める可能性もある。トランプ氏が「米国は自国の核能力を大いに強化し、拡大しなければならない」とツイートし、プーチン氏がロシア軍には戦略的核戦力の増強が必要と述べた後にトランプ氏がMSNBCに対して「軍拡競争が起きるなら放っておけ」とコメントしたように、この問題が沸騰しそうな勢いにあることを忘れてはならない。

ロシアと米国の間で新たに核軍拡競争が起きることは想像に難くない。米国は、欧州大陸全土をカバーするミサイル防衛網を2018年までに完成することを目指している。表向きはイランからのミサイルに対し、北大西洋条約機構(NATO)加盟国を防衛するためのものとされているが、ロシアは自国の核兵器に向けられていると考えている。自国の核抑止力を維持するために必要だと考えるのであれば、プーチン大統領はミサイル戦力を拡大せざるを得ないと感じるようになるかもしれない。このようなロシアの動きを受け、今度は米国の核兵器増強を招く恐れもある。

ロシアの対アフガニスタン政策もまた、トランプ氏とプーチン氏の対立を引き起こす可能性がある。ロシアもイスラム過激派に対する懸念を独自に抱えているが、現在、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンと情報を共有している。米軍は15年にわたり、タリバンと戦ってきた。過激派組織「イスラム国」と戦うためにタリバンと情報を交換しているだけだとロシアは主張するが、アフガニスタンに駐留する米軍司令官は、主にNATOを弱体化させるためにロシアがタリバンにお墨付きを与えていると主張している。

トランプ大統領がイスラム過激派との戦いに専念することを公言していることもあり、タリバンと国際武装組織アルカイダとのつながりが、アフガン政策の変更をロシアに迫るようトランプ氏を駆り立てる可能性もある。そのような要求にプーチン氏が同意するかは今のところ分からない。

もちろん、両者が共通点を見いだせる分野もある。その1つがウクライナであり、もう1つはシリアである。トランプ氏とプーチン氏の関係が良好であり続けるなら、トランプ氏はシリア反体制派への支援を打ち切り、イスラム国と戦うためロシアとシリアのアサド政権と手を結ぶことを検討するかもしれない。

そうなれば、ロシアは間違いなく喜ぶだろうが、問題はプーチン氏がトランプ氏に何を返せるかだ。ロシアがシリアに介入するのはイスラム国との戦いが表向きの理由だが、実際には他のシリア反体制派グループを主として標的にしている。米国のイスラム国との戦いに参加するとプーチン氏が約束することはあるだろうが、もし同氏がこうした関与を無視するのであれば、トランプ氏はどう出るだろうか。

さらに言えば、ロシアとシリア政府と手を組むことは、トランプ氏が非難するまさにイランと事実上、同盟関係を結ぶことを意味する。

同様の懸念がウクライナにも当てはまる。ロシアは米国が自国への制裁を解除し、クリミア併合を認めることを強く望んでいる。ここでもまた、プーチン氏がトランプ氏にお返しできることは何なのか。ロシアはウクライナ東部での戦いを終わらせると約束できるだろうが、プーチン氏はウクライナが西側に加わることを認める兆候をいっさい見せておらず、そのような約束を守らない可能性が十分にある。

加えて、ロシアは制裁解除を望んでいるばかりか、制裁によって被った損害を補償するよう米国に要求するかもしれない。

トランプ氏とプーチン氏の個人的関係はまだ未知数だ。トランプ氏はプーチン氏のことを強い指導者として尊敬していると語っているが、フォックス・ニュースのオライリー氏に対し、「それが、彼(プーチン氏)とうまくやっていけることを意味するわけではない」と話している。

2人がうまくやっていけるかどうかにかかわらず、国内の政治的制約が米ロ関係を正常化しようとするトランプ氏の努力を台無しにする可能性はある。

民主党のシューマー上院院内総務は、対ロシア制裁の解除には議会承認が必要とする超党派の法案を検討している。

また、議会で現在審議中の諜報活動に関する法案には、ロシアの政治介入に対抗するための新たな専門機関の創設をうたった条項が含まれているが、これはロシアからさらなる反感を招きかねない。ロシアの人権弁護士セルゲイ・マグニツキー氏獄死事件など人権侵害に関与したロシア人に制裁を加えることを目的に2012年に制定された「マグニツキー法」の解除にも承認が必要となるだろうが、現在の環境では実現しそうにない。

トランプ氏はまた、ロシア政策において、国家安全保障専門家のみならず、自身の政権内からも反発を受ける可能性がある。初めて国連安全保障理事会に出席したヘイリー米国連大使は、ウクライナにおけるロシアの「攻撃行為」を非難し、クリミア併合に対するロシアへの制裁を継続すると述べた。

ティラーソン国務長官は指名承認公聴会で、ロシアは米国にとって「危険」だと語り、ポンペオ中央情報局(CIA)長官も同様に公聴会で、ロシアは欧州を脅かし、イスラム国との戦いで「何もしていない」と批判した。また、マティス国防長官は「主な脅威として、まずはロシアから」検討すると語った。

トランプ大統領は、シリアでロシアに協力するよう軍にただ命令するだけでいかなる抵抗も理論的には回避可能だが、国防総省はケリー前国務長官が同様のアプローチを取った際には協力しなかった前例がある。

トランプ大統領は米ロ関係の進路を首尾よく変えられるかもしれないが、政策の変更には至らないかもしれない。

*筆者は米国際開発庁(USAID)の元プロジェクトオフィサーで、旧ソ連の経済改革プロジェクトに従事した経歴を持つ。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

おすすめ記事 


視点:トランプ円安は幻想、進む「米国の日本化」=青木大樹氏 2017年 01月 23日
在日コリアン排除デモ禁止 2016年 12月 20日
2017年の原油相場、減産順守なら60ドルへ:識者はこうみる 2017年 01月 05日
http://jp.reuters.com/article/column-trump-putin-idJPKBN15N063
http://www.asyura2.com/16/warb19/msg/638.html

[国際17] ギリシャ、経済成長促進には年金予算削減や減税が必要=IMF 欧州、火種絶えず−債券緊張 日銀長期金利ゼロ%を堅持、牽制

ギリシャ、経済成長促進には年金予算削減や減税が必要=IMF

[ワシントン 7日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)はギリシャの経済政策に関する年次審査の報告書で、同国の年金は「負担しきれないほど高い」と指摘するとともに、成長促進に向けて年金に割り当てられた予算を削減するよう求めた。

IMFはほぼ4年ぶりに年次審査を実施。年金予算を削減する代わりに税基盤の拡大や税率の引き下げに取り組み、貧困層への支援などに支出の対象を絞るべきだとの見解を示した。

IMFのトムセン欧州局長は電話会見で記者団に対し、「ギリシャは予算を今よりはるかに経済成長に資するものにするため、かなり難しい決断を行う必要がある」と指摘。

現状では課税を免除されている世帯が必要以上にある一方で、インフラなど必要な支出が、IMFなどによる支援プログラムで約束した財政目標を達成するために非常に低い水準まで削減されていると分析。そのような投資はギリシャ経済の近代化に必要だと語った。

IMFは報告書で、ギリシャの政府債務が国内総生産(GDP)比で2030年に160%に達すると予想。その後は「爆発的に膨らむ」と警告した。

IMFは現在計画されているギリシャ支援プログラムに資金を拠出する条件として、追加の債務減免と財務目標の引き下げを求めているが、ドイツはこれに反対している。

ただ、トムセン氏はギリシャへの債務減免措置の必要性については意見が集約されつつあるとの見解を示し、「1年前に比べれば、債務の持続可能性や必要な措置について意見の隔たりは埋まりつつある」と語った。

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
コラム:トランプ氏の国境税、中国からの「資金逃避」を加速
コラム:英国は金融業沈没で「双子の赤字」悪化も
焦点:トランプ政権がEU戦略大転換、ドイツにも「口撃」開始
トランプ米大統領、ウクライナ・ロシア問題で両国との協力表明
アングル:英首相の離脱方針、EUは「いいとこ取り」警戒再燃
http://jp.reuters.com/article/greece-imf-idJPKBN15N06J


日銀1月会合「主な意見」、長期金利ゼロ%を堅持 思惑けん制

Business | 2017年 02月 8日 10:35 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース


 2月7日、日銀が1月30、31日に開いた金融政策決定会合では、米国を中心とした世界的な金利上昇圧力の中でも、物価2%目標の実現に向けて現行の「ゼロ%程度」の長期金利目標を維持していくべきとの見解が多くの政策委員から示された。写真は日銀本店。昨年9月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 8日 ロイター] - 日銀が1月30、31日に開いた金融政策決定会合では、米国を中心とした世界的な金利上昇圧力の中でも、物価2%目標の実現に向けて現行の「ゼロ%程度」の長期金利目標を維持していくべきとの見解が多くの政策委員から示された。日銀が8日に公表した決定会合の「主な意見」で明らかになった。

会合では、先行きの経済・物価見通しを示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」も議論されたが、「主な意見」ではイールドカーブ・コントロール(YCC)を中心とした金融政策運営の議論が多くを占めた。

特に米金利動向に連動して日本の長期金利にも上昇圧力がかかる中で、市場では日銀の長期金利目標引き上げ観測がくすぶっており、委員からは「2%の物価安定目標からほど遠い」との見解が複数示され、長期金利目標をゼロ%程度とする「現在の方針を堅持することが何より重要」「当面は現行の枠組みの下で、粘り強くその効果を見守ることが肝要」など市場の思惑をけん制する意見が目立つ。

長期金利をゼロ%程度に維持するための国債買い入れオペについても、「金額やタイミング、回数などは実務的に決定される」とし、「日々のオペ運営によって先行きの政策スタンスを示すことはない」との意見が示された。

一方で「米国の長期金利が大幅に上昇すると、長期金利目標を実現するための金利操作は一層困難度合いが高まる」としてYCCの見直しに言及する委員がいたほか、国債買い入れ額について「市場の反応を慎重に探りつつ減額を模索していけばよい」との意見も示された。

(伊藤純夫)

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
財務省、国債費24兆6174億円に減額へ=17年度概算要求で政府筋
日銀、成長支援目的のドル資金供給を10月に追加実施
コラム:黒田緩和検証、20の疑問(下)=河野龍太郎氏
コラム:黒田緩和検証、20の疑問(上)=河野龍太郎氏
正午のドルは100円後半、ロイター調査「日銀緩和拡大に6割が懸念」
http://jp.reuters.com/article/boj-jan-opinion-idJPKBN15N05D

 

 
海外主要ニュース:米地区連銀総裁、貿易赤字、入国制限、トランプ氏
Bloomberg News
2017年2月8日 07:05 JST
海外の金融経済・企業関連ニュースの主な項目は次の通り(日時は現地時間)。記事は◎をクリックしてください。
◎ミネアポリス連銀総裁:インフレは抑制されており低金利がなお適切
◎米貿易赤字:12月は3カ月ぶりに縮小−通年では12年以来最大
◎米連邦高裁:入国制限の大統領令に関してきょう判断下さない見通し
◎トランプ米大統領:移民めぐる闘い、最高裁まで行く可能性はある
◎デボス教育長官を米上院が承認−ペンス副大統領が均衡破る賛成票
◎トランプ米大統領、週末に安倍首相を私有リゾート施設に招待−報道官
◎独連銀総裁:米政府のドイツ通貨政策非難、「偽りにも程がある」
◎米GM:16年利益、過去最高を記録−SUV人気とコスト削減が奏功
◎米ディズニー:1Q売上高は予想下回る−時間外で株価下落
◎外為ブローカーのFXCM、ゲインに米顧客口座売却−米市場撤退へ
◎米ギリアド:4Q「ソバルディ」売上高は予想に届かず−株価下落
◎米国との「通貨冷戦」、日中欧からの応戦はほどほどに−PIMCO
◎ユーロは過小評価されている、ドイツ経済の観点からすれば−BGA
◎ドイツ銀の米株式トレーディング部門で幹部含む50人超解雇−関係者
◎米消費者信用残高:12月は142億ドル増加−市場予想200億ドル増
◎トランプ米大統領、犯罪に関連した資産の押収を奨励−保安官との会合
◎ゴールドマンCEO、資本減らしレバレッジ効かせたい−夜明けを信じ
◎メーシーズ、「好転への道はあまりに困難」−ディールRが関係者引用
◎米ツイッター、中傷ツイート検索非表示に−「荒らし」常習者ブロック
◎米ホテル企業の17年見通し良好、法人旅行など支えに−MKM
◎英中銀フォーブス委員:英経済、近く利上げが必要になる可能性も
◎イエレンFRB議長、2月14日に上院銀行委員会で証言
◎バルカン:4Qの調整後1株利益、市場予想の下限を下回る
◎GM、17年会社予想の「達成は厳しい」−バッキンガム
◎米エマソン・エレ:継続事業ベースの通期1株利益見通し、予想上回る
◎ミネアポリス連銀総裁:物価データや労働市場、金利据え置きの根拠
◎米求人件数:ほぼ横ばい、雇用・解雇者が小幅増−自発的離職者は減少
◎米モザイク、1Qのリン酸販売量を200万−230万トンと予想
◎トランプ氏指名の労働長官候補、不法移民を家事使用人として雇用
◎アイフォーンは「スーパーサイクル」より「なだらかな伸び」に−UBS
◎ドイツ銀行のイスラエルCEOを逮捕−VAT納税で虚偽報告の疑い
◎キャタピラーの投資判断引き上げ、17年の上振れ見込む−バークレイズ
◎マイケル・コース:4Q売上高見通しは市場予想を下回る
◎仏大統領選、有力候補マクロン氏が浮気否定−スキャンダル回避で先手
◎元バークレイズとドイツ銀のトレーダー、無罪主張-EURIBOR裁判
◎カーディナルヘルス:17年度の1株利益予想、中間値が市場予想下回る
◎トランプ米大統領、プーチン氏面識ないと強調−ロシア取引を否定
◎IMF、ギリシャに理不尽な措置を要求している−政府報道官
◎仏大統領選挙、ルペン氏が決選進出の公算−勝利はない見込み−GS
◎東芝、半導体事業への出資受け入れで投資ファンドを選好か−英紙FT
◎元欧州銀トレーダー6人、無罪答弁−金利操作めぐるロンドンの裁判
◎英下院:EU離脱法案の修正案否決−自治政府の関与必要性も否定
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-07/OL0XSU6K50YC01
 
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/852.html

[不安と不健康18] 死にたくなければ「米国人以外の医師」日本人の研究が反響 死にたくなければ女医
 
2017年2月8日 井手ゆきえ [医学ライター]
死にたくなければ「米国人以外の医師」日本人の研究が反響

「女性医師(内科医)が担当した入院患者は男性医師が担当するよりも死亡率が低い」という衝撃的な論文を米国医師会の学会誌で発表し、米国のマスメディアに注目された日本人研究者が、今度は「アメリカ人医師よりも、米国外で医学教育を受けた外国人医師の方が患者の死亡率が低い」という内容の調査研究を発表し、再び米国内で大きな話題となっている。折しも、いまトランプ大統領による移民やイスラム圏7ヵ国などからの入国制限に関する混乱で、米国の医療サービスを質の高い診療で支えてきた外国人医師が、米国を避ける可能性が出てきたからだ。(医学ライター 井手ゆきえ)

米国医師の4人に1人は外国人医師
「入国禁止令」が研修医の採用にも影響


(写真はイメージです)
 米国の医師の4人に1人は、米国外で医学教育を受けた後、アメリカンドリームを求めて渡米した米国籍を持たない「外国人医師」だ。

 その多くはインド、パキスタンなど英語圏で医学教育を受けた医師や医学生だが、米国の(かつての)懐の広さを反映して、宗教や政治的立場を異にする中国やシリア、エジプト出身者もかなりの割合を占める。もちろん日本の医学部を出て米国で臨床医として活躍する日本人医師も"外国人医師"に含まれる。

 外国人医師たちは、米国の医学部出身の医師と比べ、へき地や貧困層の住む地域で診療を行う確率が高いことが知られている。彼らは地方の小さな施設や都市部の貧困層の健康を守るプライマリケアの担い手として、あるいは専門医として米国の医療を支えてきた。高齢者医療や腎臓内科など半数近くを外国人医師が占める診療領域もある。

 しかし1月27日、トランプ大統領が中東・アフリカ7ヵ国の人々の入国を禁止する大統領令に署名したことで、実際に再入国できず足止めをくらっている医師や、先行きが判らない7ヵ国出身の研修医の受け入れをためらう施設が続出。トランプ VS 連邦裁判所の成り行き次第で米国の医療の基盤が崩れる懸念が生じている。

30日死亡率で有意差
外国人医師はより質の高い医療を提供

 混乱が広がるなか、ハーバード公衆衛生大学院の津川友介氏は「外国人医師の入国を阻む政策はアメリカ人の健康に悪影響を及ぼす可能性がある」と断言する。その根拠は先日、津川氏らのチームがBMJ(英国医師会誌)に報告した調査研究だ。


つがわ・ゆうすけ ハーバード公衆衛生大学院(医療政策管理学)研究員。東北大学医学部卒業後、聖路加国際病院、世界銀行を経て現職。ハーバード公衆衛生大学院でMPH(公衆衛生学修士号)、ハーバード大学で医療政策学のPh.D.を取得。専門は医療政策学、医療経済学。ブログ「医療政策学×医療経済学」において医療政策におけるエビデンスを発信している
 今回、津川氏らは、米国でメディケアの利用者(65歳以上の高齢者)を対象に、急性期病院時の入院データ約120万件と担当医約4万4000人の診療データを解析。海外で医学教育を受けた後、米国で医師免許を取得して働いている医師(以下、外国人医師)と米国で医学教育を受けた医師(以下、米国人医師)とで、入院後30日以内の死亡率を比較した。

 その結果、入院日から30日以内の死亡率は外国人医師11.2%、米国人医師11.6%で、外国人医師が担当した患者の30日死亡率は統計学的に有意に低いことが示されたのだ。これは患者の重症度や診療している病院などをすべて補正した後の比較である。

 これが事実なら、外国人医師が診療することで250人を診療するごとに、米国人医師が担当した場合に亡くなったかもしれない1人の生命を救っている計算になる。

 しかも外国人医師の担当については、入院の原因となった病気のほかにも複数の病気を抱え世帯年収が低くいなど、悪条件が重なる患者の比率が高く、より重症の患者を診ていたと推測される。もし患者の重症度に関するもっと詳細なデータがあった場合、外国人医師の治療成績は米国人医師をさらに上回る可能性すらあるのだ。

選ばれた人材が米国を忌避し、
別の国へ流出する可能性


津川友介さんと中室牧子さんによる『「原因と結果」の経済学 データから真実を見抜く思考法』(ダイヤモンド社)が2月17日から発売予定。208ページ、1728円(税込み)
 外国人医師の治療成績が優れていることに関して、津川氏は「米国の医学教育が劣っているという意味ではありません。そうではなく、彼ら外国出身の医師は、向上心があり、米国の医師免許の試験や就職活動などに成功してきた選りすぐられた人々なのです」という。

「これまで外国人医師は、米国の医療の4 分の1という"量"を担っていることが知られていました。しかし、今回の研究結果から彼らは米国人医師と同等か、それ以上に"質"の高い医療を提供していることが明らかになりました」

 自国での医学教育を終えたのち、米国の医師国家資格試験と不利な条件下での研修施設側からの選別という高いハードルを超えてきた彼らの背景を考えれば、当然といえば当然だろう。マイノリティであることは成功への強いモチベーションとなる。

「しかし、トランプ大統領の入国禁止令はこうした貴重な人材を他国へ追い出すことになりかねず、アメリカの医療の質が低下するという予期せぬ結果を生むかもしれない」と津川氏は懸念する。

 外国人医師の比率が米国並みの国は、英語圏だけでも英国、カナダ、オーストラリアがある。特にカナダのトルドー首相は、難民・移民を歓迎する姿勢を示しているだけに、米国を見限った外国人医師がカナダを目指す可能性はある。トランプ政権下の4年が米国の医療にどう影響するのか、不透明感は増すばかりだ。

DIAMOND,Inc. All Rights Reserved.
http://diamond.jp/articles/print/117108

 

「死にたくなければ女医を選べ」日本人の論文が米で大反響 暴言・逆ギレ「モンスター医師」恐怖の事例集 フリー外科医は可能か
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/296.html
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/384.html

[政治・選挙・NHK220] 日本史の一大汚点 「廃仏毀釈」は いかにして行われたか? 激しい価値観逆転  「稼ぎのいい夫に替える」は笑えない
三流の維新 一流の江戸
【第30回】 2017年2月8日 原田 伊織

日本史の一大汚点
「廃仏毀釈」は
いかにして行われたか?

江戸という時代は、明治近代政権によって「全否定」された。

私たちは学校の教科書で、「明治の文明開化により日本の近代化が始まった」と教えられてきたが、はたして本当にそうなのか?
ベストセラー『明治維新という過ち』が話題の原田伊織氏は、これまで「明治維新とは民族としての過ちではなかったか」と問いかけてきた。
そして、今回さらに踏み込み、「2020年東京オリンピック以降のグランドデザインは江戸にある」と断言する。
『三流の維新 一流の江戸』が話題の著者に、「廃仏毀釈」についてはじめて聞いた。


興福寺金堂
「廃仏毀釈」という
仏教文化の破壊活動

原田伊織(Iori Harada)
作家。クリエイティブ・プロデューサー。JADMA(日本通信販売協会)設立に参加したマーケティングの専門家でもある。株式会社Jプロジェクト代表取締役。1946(昭和21)年、京都生まれ。近江・浅井領内佐和山城下で幼少期を過ごし、彦根藩藩校弘道館の流れをくむ高校を経て大阪外国語大学卒。主な著書に『明治維新という過ち〈改訂増補版〉』『官賊と幕臣たち』『原田伊織の晴耕雨読な日々』『夏が逝く瞬間〈新装版〉』(以上、毎日ワンズ)、『大西郷という虚像』(悟空出版)など
 そして、政権奪取に成功するや否や、日本史の一大汚点というべき「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」という徹底した仏教文化の破壊活動を繰り広げたのである。

 仏教伝来から既に千四百年近く経っていた明治維新といわれるこの時点に於いて、仏教という宗教及びその影響を受けた文化的、精神的諸要素は、既にこの美しい島国の風土を創り上げている主たる要素といってもいいほど大地に、空間に、人びとの心に浸み込んでいる。

 その意味では、薩長新政権が惹き起こした「廃仏毀釈」というムーブメントは、歴史上例をみない醜い日本文化の破壊活動であった。

 これは、俗にいう明治維新の動乱の中で、明治元(1868)年に薩長新政権が打ち出した思想政策によって惹き起こされた、直接的には仏教施設への無差別な、また無分別(むふんべつ)な攻撃、破壊活動のことをいう。

 これによって、日本全国で奈良朝以来の夥(おびただ)しい数の貴重な仏像、仏具、寺院が破壊され、僧侶は激しい弾圧を受け、還俗(げんぞく)を強制されたりした。

 ひと言でいえば、薩摩、長州という新しい権力者による千年以上の永きに亘って創り上げられた我が国固有の伝統文化の破壊活動である。

 現代のイスラム原理主義勢力タリバーンやイスラム国を思えば分かり易いであろう。
 文化財の破壊という点のみでいえば、イスラム原理主義者による文化財の破壊より規模は遥かに大きかった。

 発端は、新政権が出した太政官布告「神仏分離令」と明治三(1870)年に出された「大教宣布」にある。

 学者は、これ自体が直接仏教排斥を指示したり、煽(あお)ったりしていないとするが、それは文章面(づら)のことであって当たり前である。

 これを後ろ盾として、仏教弾圧の嵐が吹き荒れたことは否定のしようもないことなのだ。
 私ども大和民族は、それまで千年以上の永きに亘って「神仏習合」というかたちで穏やかな宗教秩序を維持してきた。

 平たくいえば、神社には仏様も祀(まつ)って別(わ)け隔てなく敬ってきたのである。

多元主義と一元主義

 これは、極めて濃厚にアジア的多元主義を具現する習俗であったといえる。
 それをいきなり廃止せよと命じ、神社から仏教的要素を徹底的に排斥することを推進し、ご神体に仏像を使用することも禁止したのである。

 これが、全国的に大々的な廃仏運動を燃え盛らせたのだ(平成日本人は、「神仏習合」が大和的な、おおらかで自然な姿であったことも分からなくなっている)。
 今、近代と呼ばれている私たちの世界は、一元主義によって行き詰まりを迎えているといえるだろう。

 かつての東西冷戦も現代の西欧社会とイスラム社会の衝突も、一元主義と一元主義の対立である。

 一元主義同士の戦いを一元主義によって収束させることは、残念ながら無理なのだ。
 薩長権力が一転して狂ったようにかぶれた西欧文明はまもなく確実に終焉を迎えるであろうが、それは言葉を換えれば一元主義の破綻といっていい。

 もともと大和民族は、多元主義的な生態を維持してきた故に、多少の混乱期を経験しながらも長期的には平穏な生存空間を、政治的な版図(はんと)を超越して維持してきたのである。
 単に島国であったから、という地勢的な理由だけに頼るのは余りにも稚拙というものであろう。

 ところが、薩摩長州の下層階級が最初にかぶれた思想とは実に浅薄なもので、単純な平田派国学を旗印に掲げ、神道国教、祭政一致を唱えたのである。

 これは、大和民族にとっては明白に反自然的な一元主義である。
 ここへ国学の亜流のような「水戸学」が重なり、もともと潜在的に倒幕の意思をもち続けてきた薩長勢力がこれにかぶれ、事の成就する段階に差しかかって高揚する気分のままに気狂い状態に陥ってしまったのだ。

 こういう現象は、時代の転換期には間々あることではある。
とはいえ、神聖政治を目指す、神道(しんとう)を国教とする、仏教はそもそも外来のものである、すべてを復古させるべきだというのだから、これはもう気狂い状態に陥ったというべきであろう。

 では、一体どこへ復古させるのが正しいのか……当然、五世紀以前ということになってしまうのである。

 そもそも薩摩長州は、徳川政権を倒すために天皇を道具として利用したに過ぎない。
 そのために「尊皇攘夷」という大義名分が必要となった。

 これは、どこまでも大義名分に過ぎない。

 薩摩長州のリーダー層が純粋に尊皇精神をもっていたかとなると、幕末動乱期の行動、手法が明白に示す通り、そういう精神は微塵(みじん)ももち合わせていなかったとみるべきであろう。

「尊皇攘夷」を方便として喚き続けているうちに本当に気狂いを起こし、「王政復古」を唱え、何でもかでも「復古」「復古」となり、大和朝廷時代が本来のあるべき姿であるとなってしまったのだ。

 その結果、寺を壊せ、仏像を壊せ、経典を焼け、坊主を成敗(せいばい)せよ、となってしまったのである。

 この「廃仏毀釈」を単なる民衆の行き過ぎた一時的なムーブメントとし、新政権の方針とは全く無関係であると学者はいい続けてきたが、それは違う。

 新政権政府は、僧侶に対して「肉食妻帯勝手なるべし」と、わざわざ命令している。
 僧侶に戒律を犯させ、仏法の教えにいうところの「破戒」をさせようと企図したことは明白である。

 凡(およ)そ政治施策を推進する上で、こういう手法は実(まこと)に知性、品性に欠ける下劣な手法であるといわざるを得ない。

 このようにして、俗にいう明治維新という動乱期に、日本の伝統文化、伝統芸術の根幹を担ってきた日本の風土に溶け込んで進化してきた仏教は、宗教としても文化的価値としても徹底的に弾圧されたのである。

奈良興福寺と内山永久寺の惨状

 中でも奈良興福寺や内山永久寺の惨状は、筆舌(ひつぜつ)に尽くし難い。

 興福寺だけで二千体以上の歴史を刻んできた仏像が、破壊されたり、焼かれたりしたことが分かっている。
 僧侶は、ほとんど全員が神官に、文字通り“衣替え”したり、還俗することを強制された。
 経典は、町方で包装紙として使われるというゴミ同然の扱いを受け、五重塔は二十五円(一説には十円)で売りに出された。
 薪(たきぎ)にするために売りに出されたのである。
 多くの宝物(ほうもつ)は、混乱に乗じた略奪等によって散逸し、二束三文で町方に出回ったのである。

 因みに、現在の奈良ホテルや奈良公園は、当時の興福寺の敷地内である。興福寺と共に我が国四大寺の一つという格式を誇った内山永久寺に至っては、更に酷(ひど)いもので、徹底的に破壊され尽くし、今やその痕跡さえ見られない。

 姿を残していないのだ。この世から抹殺されてしまったのである。

「廃仏毀釈」とは、それほど醜い仏教文化の殲滅(せんめつ)運動であったのだ。
「復古」「復古」と喚いて、激しく「尊皇攘夷」を口先だけで主張し、幕府にその実行を迫ってテロを繰り広げた薩摩長州人は、このように古来の仏教文化でさえ「外来」であるとして排斥したのだが、政権を奪うや否や一転して極端な西欧崇拝に走った。
「尊皇攘夷」式にスローガンとしていうならば、今日からは「脱亜入欧(だつあにゅうおう)」だと豹変したのである(後に福澤諭吉が唱えた「脱亜入欧」は、経緯、主旨が異なる)。

 これほど激しい豹変を、それも昨日と今日の価値観が逆転するといった具合に短期間に行った民族というものも珍しい。
 どちらの態度も、己のアイデンティティを破壊することに益するだけであることに、彼ら自身が気づいていなかったのである。
 日本人は、テンション民族だといわれる。
 明治維新時に植え付けられたと思われるこの特性は、大東亜戦争敗戦時にも顕著に顕れた。
 その悪しき性癖は、今もそのまま治癒することなく慢性病として日本社会を食いつぶすほど悪化していることに気づく人は少ない。
 このことは、ほとんど近代政治家と官軍史観による教育の犯罪といってもいい過ぎではないだろう。

文部官僚・岡倉天心のまごころ

 奈良興福寺の仏像修復に精魂を傾けたのは誰か。
 彼の努力がなかったら、今日私たちは興福寺で仏像を鑑賞することができないのである。

 それは、文部官僚岡倉天心である。彼が、長州人を中心とした西欧絶対主義者たちによって職を追われたことと、それにも拘わらずその後も地道に仏像修復に当たらなかったら、今日の興福寺さえ存在していなかったことを、私たちは肌身に刷り込んで知っておくべきであろう。

原田伊織(Iori Harada)
作家。クリエイティブ・プロデューサー。JADMA(日本通信販売協会)設立に参加したマーケティングの専門家でもある。株式会社Jプロジェクト代表取締役。1946(昭和21)年、京都生まれ。近江・浅井領内佐和山城下で幼少期を過ごし、彦根藩藩校弘道館の流れをくむ高校を経て大阪外国語大学卒。主な著書に『明治維新という過ち〈改訂増補版〉』『官賊と幕臣たち』『原田伊織の晴耕雨読な日々』『夏が逝く瞬間〈新装版〉』(以上、毎日ワンズ)、『大西郷という虚像』(悟空出版)など
http://diamond.jp/articles/-/114630


 

ネット炎上のかけらを拾いに
「亭主元気で留守がいい」から30年、「稼ぎのいい夫に替える」は笑えない
2017/02/08
網尾歩 (ライター)
 このCMで笑える人との間にあるのはジェンダー観の差ではなく世代間ギャップかもしれない。

男性蔑視であり、女性蔑視でもある描写

 「安い電気に替えるか、稼ぎのいい夫に替えるか」

 こんなことを妻が言い放つ、JXエネルギー「ENEOSでんき」のCMが炎上している。筆者はこのCMが不興を買っているのをツイッター上で知り、その後実際にテレビで見て、よくこんなCMを現代にやるなと思った。随分と時代遅れなCMである。

 内容はこうだ。「主婦って自由に使えるお金って少ないのよねえ」と妻役の女優が茶飲み友達に言い、「解決策は2つあるわ」と続ける。そして冒頭でも紹介した「安い電気に替えるか……」というセリフを、目を見開いて言うのだ。さらに、後ろのドアから覗いている夫役の男優を振り返って威圧し、犬を抱いていた人の良さそうな夫は後ろに吹っ飛ぶ。

 30秒バージョンの方では「安い電気に替えるか…」のセリフの後で、友人の女性が「やあだ〜」と笑い話に変えようとするのだが、妻はいったん笑った後で真顔になり「本気よ」と畳みかける。妻役を演じているのは小池栄子さん。もともとグラビア出身だが2012年には日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞するなど演技派として知られるだけに、このCMでもいい目力を見せている。


iStock
 J-castがこの炎上を伝える記事「『安い電気か、稼ぎのいい夫か』 『ENEOSでんき』CM炎上」の中で下記のようなコメントがネット上にあったことを引用していたが、まさにそれ、である。

「このCMは男性の扱いも問題ですが、世の主婦・女性はこのような考えであるという誤解を生みかねないものでもあり、困りものですね」
「男性蔑視というか、女性蔑視でもあると思うが。男性に経済的に依存しているのが通常ということが前提なわけだろ」
バブル時代の価値観ではもう笑えない

 ネット上で女性を叩く言葉のひとつに「寄生虫」がある。主に専業主婦に対してこの言葉が使われる。言わずもがな、夫の稼ぎに“寄生”して生きているという意味だ。このCMは、ネット上にはびこる偏見と同じ目線にある。寄生することが前提の女性、働きアリになることが前提の男性。どちらの性にとっても差別的だ。

 とはいえきっと、こう言う人もいるだろう。「いやいや、ただの冗談でしょう。このくらいユーモアですませなさいよ」と。

 その昔、「亭主元気で留守が良い」というキャッチコピーを使ったCMがあった。もともとは「亭主達者で留守が良い」ということわざだが、「達者」を「元気」に置き換え、1986年の流行語に選ばれた。さらに2013年には「新語・流行語大賞」過去30年のトップ10にも選ばれている。

 1986年といえば、バブル景気がまさに始まろうとしていた時期。稼ぐ夫と家にいる妻が典型的な夫婦像であり、そして「留守の方がいい」と冗談を言って笑う「余裕」があった時代なのだろう。裏を返せば、それだけ女性の社会的地位が低く、男性にとって脅威ではなかったということだ。

 当時から30年が経ち、専業主婦世帯を共働き世帯が上回って久しい。20〜30代の独身者が結婚後に「共働き」を望む割合は専業よりも高いという調査結果が多くある。その一方で、働き続けたくても雇用の場がなかったり、子どもを預ける保育園がなくて仕事を諦めなければならない状況がある。女性が働くことを政府が奨励しているのに、なぜか足かせがなかなかなくならない。男性も男性で昔のようにただ働いていれば自動的に年収が右肩上がりになるわけではないし、育児と家事をともに担うのが「当たり前」で、ちょっと子どもと遊んだだけで「イクメン」を名乗ろうものなら四方八方からドヤされる。男も女も、旧来の働き方や生き方、そして価値観から脱却しようと四苦八苦しながら模索を続けている。未来では「過渡期」と言われるかもしれない、そんな厳しい時代である。そんな時代に、今さらバブル時代の価値観で笑いを取ろうとされてもね。

 恐らく「ENEOSでんき」CMの制作担当者は、1980年代からタイムマシーンに乗ってきたのではないだろうか。怒っちゃいないがぽかんとする。ははのん気だね〜って感じである。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8851

http://www.asyura2.com/17/senkyo220/msg/393.html

[国際17] メラニア夫人がNYで提訴、ファーストレディーの商機奪われたと主張 約168億円要求
メラニア夫人がNYで提訴、ファーストレディーの商機奪われたと主張
Jef Feeley
2017年2月8日 12:11 JST
Share on FacebookShare on Twitter
英紙デーリー・メールの記事がブランド価値に与えた影響を問題視
訴状によれば、少なくとも1億5000万ドルの損害賠償など請求
 
トランプ米大統領就任でファーストレディーとなったメラニア夫人が自身の高級ブランドを立ち上げて衣料品や靴、宝石、香水などを販売する機会を中傷記事によって奪われたとして、英紙デーリー・メールをオンラインで発行するメール・メディアを相手取り損害賠償などを求めてニューヨーク州地裁に6日提訴した。同紙は記事を撤回している。


  訴状でメラニア夫人は、記事によって自身の評判が「甚だしく傷つけられた」とし、原告である自分が「世界で最も多く撮影される女性の一人である時期に、複数年の契約を結べる大きな事業機会」を生かすことがほとんど不可能になったと主張。自身には「諸製品分野で幅広い商業ブランドを立ち上げるというまたとない、生涯に一度あるかないかの機会」があったとも付け加え、「アパレルやアクセサリー、靴、宝石、化粧品、ヘアケア・スキンケア製品、香水」を販売できたはずだったとしている。訴状によれば、少なくとも1億5000万ドル(約168億円)の賠償などを請求している。

  提訴は、公職に就きながらビジネスチャンスを追求した場合に生じる倫理上の問題をトランプ大統領とその一族が理解しているのかという疑問をあらためて浮上させた。メラニア夫人は当初、メリーランド州の裁判所に訴えていたが、原告には同州での提訴の権利はないとして判事はこれを先週退けた。

  ジョージ・W・ブッシュ政権でホワイトハウスの倫理担当弁護士を務めたリチャード・ペインター氏はメラニア夫人の訴えについて、「ファーストレディーとしての立場から得られるはずの金額を得られないから損害を受けたと確信している」とし、「大統領が自らの公務によって夫人に金銭的恩恵をもたらすことを許すのは、連邦政府職員の行動基準に明らかに違反している」と述べた。
  夫人が問題にしているのはデーリー・メールがウェブサイトに掲載した記事。1990年代にモデルをしていた経歴はエスコート嬢として働いていたことを隠すためのものだったとのうわさに基づくこの記事をめぐり、夫人は昨年9月にメール・メディアとブロガーのウェブスター・タープリー氏を相手取ってメリーランド州の裁判所に提訴。提訴は記事撤回後で、タープリー氏とは同氏が「和解金」支払いに同意したことで問題決着に至ったと、夫人の代理人チャールズ・ハーダー氏が7日明らかにした。
原題:Melania Trump Suit Says Article Hurt Chance to Make Millionshttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-08/OL162I6JIJUP01 (1)(抜粋)
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/855.html

[経世済民118] 日本株マーケットは「異常」だからこそ儲けやすい 超長期債下落、30年入札警戒やオペ不透明感−日銀は長期買い入れ連発


【第5回】 2017年2月8日 村上尚己
日本株マーケットは「異常」だからこそ儲けやすい

ドル円相場と日経平均株価はなぜ連動しているのか?

トランプ氏当選以降、一気に3000円以上の値上がりを見せた日経平均株価。しかし、現状でははっきりしない値動きが続いている。一見すると不透明性が高い状況に見えるものの、「トランプ相場」の到来を的中させた外資系金融マーケット・ストラテジストの村上尚己氏によれば、日本株のマーケットにはきわめて「シンプルな構図」があるのだという。日本のメディアが垂れ流す「通説」を徹底的に批判した同氏の最新刊『日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?』から一部をご紹介しよう。

「ドル円・株価の連動」は
じつは正常な姿ではない

トランプ氏当選後に、1ドル100円前後の円高状況が一気に修正されると、1万6000円付近まで急落していた日経平均株価も、7日程度で1万8000円台にまで大きく上昇した。現時点では1万9000円前後で推移している。これだけの短期間で3000円以上の伸びを見せたのは、2014年11月以来のことだ。
2012年末にアベノミクス相場がはじまって以来、為替相場で円安が進むと、それに連動して日経平均株価も上昇してきた。反対に、円高に動くと株価が下落する。両者はずっと高い連動性を示しているわけだ。
日本株とドル円がきわめて高い連動性を保っているこの状況は、2000年代半ばからすでに10年以上続いている。このため、若い世代や投資経験がそれほど長くない人は、両者は連動しているのが当たり前だと考えているかもしれない。
ただ、じつを言うと、日本株とドル円相場は以前からずっと同じ動き方をしていたわけではない。たとえば、1999〜2000年のように、円高と株高が同時に起きていた時期もある。

http://diamond.jp/mwimgs/2/b/600/img_2b7485b1baf68eb92ae0b1b6584949ac261145.jpg

そのため、「いくら為替が円安・ドル高に動こうとも、日本株が高値を更新するとは限らない」と主張するアナリストもいるようだ。そこで今回は、下記のような通説を検討することにしたい。

[通説]「どれだけ円安が続こうと、やはり株価は先行き不透明」
【真相】否。為替・株価は2020年まで「連動」が続く。

日本経済は「快癒の時期」を迎える
私の最新刊『日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?』でも強調しておいたことだが、これまでの日本経済は、本来の力を発揮できないひどい状況にあった。その淵源は、日銀によるデフレ放置というとんでもない失策にある。日本経済の最大の病巣はデフレであり、これが日本社会全体を深いところで蝕んでいる。
毎年3万人を超えていた自殺者数、ブラック企業などの雇用環境をめぐる問題、高齢化にも大きく関わる社会保障の問題、子育てや教育の問題、そして、日本人のマインドのなかに密かに、しかし着実に広がっている閉塞感―こうしたことの大半は、真っ当な経済政策が打たれていれば解決したはずのことなのだ。
しかし、専門家たちもメディアも、日銀のデフレ放置を容認(ともすれば賞賛)するかのような情報を発信し続け、この国をより貧しくする片棒を担いできた。
しかし、いま状況は大きく変わっている。日本がこのデフレという病を完全に克服するための条件が、かつてないほどに揃いはじめているからだ。私は、遅くとも東京オリンピックが開催される2020年頃までには、日本経済が正常化していくだろうと予想している。
私が考える「正常化」とは、インフレ率が2%程度の緩やかな伸びで安定し、本来の実力どおりに日本の国内総生産(GDP)が成長を続ける状態に戻ることである。
これにより、日本の失業率は1990年代半ばと同様2%台半ばに改善し、就業を希望するほとんどの人が働ける状態、経済学の用語で言うところの完全雇用(Full Employment)が実現するだろう。さらに、メディアで頻繁に騒がれている日本の財政赤字の問題も、この過程で大きく改善していく。
裏を返せば、日本経済はいまだ異常な状態にあるということだ。いまはまさに日本がこの病を回復していく過渡期であり、完治に至る2020年頃までは、ドル円と日本株の連動が続くというのが私の基本的な見方である。
もちろん、かなり先までの見通しなので不確実性は高いが、この連動性がいつまで続くのかを知っておくことは、今後、日本人が資産を選択したり、実際の投資を行ったりするうえで大いに役に立つはずだ。
なぜこの過渡期にはドル円・日本株の連動が続くと言えるのか?説明しよう。

「分散効果」が働かない、
奇妙な日本のマーケット
日本人にとって価格変動リスクがある金融資産は「日本株」と「外貨建て資産(株式・債券)」に大別できるが、現在のように為替と株価が連動する状況には、それぞれの資産に何が起きるだろうか?
整理すると次のようになる。
円安のとき
・外貨建て資産 → ドル高になり値上がり
・日本株 → 円安で企業業績が改善し値上がり
円高のとき
・外貨建て資産 → ドル安になり値下がり
・日本株 → 円高で企業業績が悪化し値下がり
このとおり、日本株と外貨建て資産は、リターンの相関性がかなり高い。より単純化して言えば、日本株が儲かるときには外貨建て資産も儲かる構造になっているということだ。為替と株価が連動していると、こういうことが起きてくる。
なお、外貨建て資産のなかでも、たとえば株式と債券とではリスク/リターンの構造がまったく異なるので、あくまでも為替リスクによる価格変動だけを考慮したシンプルな議論だという点には注意いただく必要がある。ただし、足元では世界的な低金利環境が長期化しているため、外貨建て債券のリターンの大部分が為替の値動き左右されているというのもまた事実だ。
ファイナンス理論の初歩を学んだ経験がある人は、これが異常な事態だということに気づくだろう。伝統的な金融理論の枠組みで言えば、値動きが異なる複数の資産に投資すれば、互いのリスクが打ち消し合われて、安定的なリターンが得られるようになる。これが現代ポートフォリオ理論で言う分散効果だ。
保険会社のように長期的な資産運用計画が必要になる場合は、必ず複数の金融資産に分散投資(これを「ポートフォリオを組む」と言う)しながら資金を運用するのが常識だ。
しかし、現在の日本の金融市場では、リスク資産である日本株と外貨建て資産とのあいだに期待されているほどの分散効果が働かない。両者が似通ったリスク/リターン構造を持ってしまっているためだ。この状況下では、資産運用の伝統的な枠組みは、もはやワークしなくなってくる。
このようにマーケットが歪んだ状況下では、投資家が見ておくべきなのは、(1)これからの方向性が「円安→株高」「円高→株安」のどちらなのかと、(2)その方向性がいつ変わるのかの2つだけである。投資リターンを決める要素はそれだけだからだ。
アベノミクス相場がはじまった経緯を見れば明白だ。為替の方向性は日本銀行や米FRBの金融政策で決まり、それが投資リターンを左右している。このあまりにもシンプルな構図が、現在の日本のマーケットでは続いているのである。

「異常」だからこそ儲けやすい
すでに述べたとおり、私はこの現状を「日本経済が正常化するまでの過渡期」と位置づけている。この過渡期は、本来であればもっと早く終わっているはずだった。アベノミクス発動による日銀の政策レジームチェンジが起きて以来、2013年から日本経済はかなりの復調を見せていたが、2014年に一つの「致命的な愚策」が打たれたことで、今日に至るまでインフレ率は低迷し続けているからである。
しかし周知のとおり、日銀は2%のインフレを政策目標とする姿勢を依然として崩していない。これが実現されるまでは、ドル円の動きに応じて日本株が上下する現状が続くだろう。つまり、この過渡期がいくつかの障害により引き延ばされ、長期化しているというのが真相なのである。これは日本経済にとっては不幸なことだったが、純粋に投資家目線で見れば、それだけ投資機会が増えたと言うこともできるだろう。
「政府と日本銀行が目標とする2%の安定的なインフレは2020年にかけて実現する」と私は予想している。2%インフレが実現してしまえば、それ以降は前述の図式はもはや役に立たなくなるだろう。まず、日本銀行はインフレが行き過ぎないよう金融引き締めに転じるため、経済政策と金融市場の関係はより複雑になる。
そうなれば、2000年代前半以降のように、為替レートに連動して日本株が動くとは限らない。日本株と外貨建て資産の相関性が薄れれば、本来の異なるアセットクラス間での分散効果が発揮される。経済の正常化とともに、資産運用の伝統的なフレームワークも復活するということだ。
ただ、そのときまでは「政策次第で為替レートが動き、為替レート次第で株価が動く」というきわめてシンプルな状況は変わらない。大切なのはその枠組みを頭に入れておき、そこから外れたアナリストの珍説やメディアの煽りに右往左往しないことである。

[通説]「どれだけ円安が続こうと、やはり株価は先行き不透明」
【真相】否。為替・株価は2020年まで「連動」が続く。

村上尚己(むらかみ・なおき)
アライアンス・バーンスタイン株式会社 マーケット・ストラテジスト。1971年生まれ、仙台市で育つ。1994年、東京大学経済学部を卒業後、第一生命保険に入社。その後、日本経済研究センターに出向し、エコノミストとしてのキャリアを歩みはじめる。第一生命経済研究所、BNPパリバ証券を経て、2003年よりゴールドマン・サックス証券シニア・エコノミスト。2008年よりマネックス証券チーフ・エコノミストとして活躍したのち、2014年より現職。独自の計量モデルを駆使した経済予測分析に基づき、投資家の視点で財政金融政策・金融市場の分析を行っている。
著書に『日本人はなぜ貧乏になったか?』(KADOKAWA)、『「円安大転換」後の日本経済』(光文社新書)などがあるほか、共著に『アベノミクスは進化する―金融岩石理論を問う』(中央経済社)がある。

http://diamond.jp/articles/-/116543

 
超長期債下落、30年入札警戒やオペ不透明感−日銀は長期買い入れ連発
船曳三郎
2017年2月8日 08:09 JST 更新日時 2017年2月8日 15:50 JST
Share on FacebookShare on Twitter
新発30年利回り0.91%、新発40年利回り1.065%と約1年ぶり水準
これぐらいしか金利が下がらず、日銀にとっては不本意−野村証

債券市場では超長期債相場が下落した。30年債入札への警戒感に加え、日本銀行の超長期ゾーンの国債買い入れオペ運営に対する不透明感を背景に売りが優勢となった。一方、長期ゾーンの国債買いオペが3回連続で実施されたが、応札倍率は下がらなかった。
  現物債市場の新発20年物国債159回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より一時1ベーシスポイント(bp)高い0.725%を付けた。30年物53回債利回りは0.91%、40年物9回債利回りは1.065%と、いずれも新発として昨年2月以来の高水準を付けた。

  みずほ証券の辻宏樹マーケットアナリストは、「超長期債は30年入札を控えて上値が重い。利回り曲線のスティープ(傾斜)化が進み、利回り水準もいいところにきたが、長期ゾーンほど日銀のスタンスも明確でない」と指摘。一方、長期債のオペは「10年金利を0.1%で抑えたい姿勢は分かった。指し値も含め2兆円超に達し、需給に反映されてくる」との見方を示した。
  長期金利の指標となる新発10年物国債345回債利回りは0.5bp高い0.100%を何度か付けた後、0.095%で推移している。
先物は小幅高
  長期国債先物市場で中心限月3月物は前日比4銭安の149円62銭で取引開始。午前の日銀金融調節通知を受けて149円73銭まで買われる場面も見られた。午後は前日終値を挟んでもみ合った後、結局は6銭高の149円72銭で引けた。
  財務省が8日公表した1月中の対外・対内証券売買契約によると、対外中長期債投資は1兆6210億円の売り越しとなり、昨年12月に続いて売り越しが1兆円を超えた。メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、「本邦投資家はトランプ勝利以降の米金利上昇で損切りの動きが示された。30年債利回りで1%が視野に入る中、ヘッジ付きの米10年債対比で魅力的になってくる可能性もある」と言う。

国債買い入れオペと日銀の主な意見 

  日銀はこの日午前の金融調節で、残存期間「1年超3年以下」、「3年超5年以下」、「5年超10年以下」、物価連動債を対象とした国債買い入れオペを実施した。買い入れ額はいずれも前回と同額。「5年超10年以下」は3日以降、4500億円で3回連続の実施となり、3日の指し値オペの落札額7239億円も合わせると、総額2兆700億円程度に達した。応札倍率は2.92倍と、前回の2.90倍からほぼ横ばいだった。
  野村証券の中島武信クオンツ・アナリストは、「指し値オペを二度と打ちたくないので、オペを連続で打ちながら、スケジュールを考えると7回の可能性も意識されてくる」と指摘する。一方、「これぐらいしか金利が下がらず、また指し値オペの水準まで上がるリスクが十分ある。今日の値動きは日銀にとっては不本意」との見方を示した。
  日銀は1月30、31の金融政策決定会合の「主な意見」を公表した。金融政策運営については「執行部に一定の裁量を持たせ、きめ細かな調節運営を行うことが重要」と指摘される一方、「最適なイールドカーブの形状は適度にスティープであるべきだ」との意見が出ていた。
  メリルリンチ日本証の大崎氏は、日銀のイールドカーブ・コントロールについて「超長期の金利上昇については、対10年金利とのスプレッドがどこまでも開いていくわけでもないため、10年金利を抑えることを重視しているのではないか」とみている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-07/OKZWJH6TTDS001


 

きょうの国内市況(2月8日):株式、債券、為替市場
Bloomberg News
2017年2月8日 15:54 JST 

●日本株は反発、円高勢い一服と好決算評価−旭硝子、三菱ケミH大幅高
(記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい)
  東京株式相場は反発。為替市場で円高の勢いがやや一服したほか、決算内容を好感する買いが株価指数を押し上げた。旭硝子、三菱ケミカルホールディングスなど業績評価銘柄が大きく上げた影響で、ガラスや化学など素材株が上昇。商社株、機械や輸送用機器など輸出株も高い。
  TOPIXの終値は前日比8ポイント(0.5%)高の1524.15、日経平均株価は96円82銭(0.5%)高の1万9007円60銭。日経平均は終値で5営業日ぶりに1万9000円を回復。
  アリアンツ・グローバル・インベスター ズ・ジャパンの寺尾和之最高投資責任者は、「世界景気は回復局面にあり、企業業績は来年度に向け良くなるという認識が根底にある」と指摘。米国の金利が上昇傾向にある中、「1ドル=111円台になっても加速度的に円高が進むような状態ではなく、業績の下振れ懸念は乏しい」と言う。日米首脳会談のリスクも市場はかなり織り込んでいるとし、「リスクが顕在化しなければ、好感される可能性は高い」との見方も示した。
  東証1部33業種はガラス・土石製品や卸売、不動産、ゴム製品、化学、機械、輸送用機器など25業種が上昇。石油・石炭製品や鉱業、建設、情報・通信など8業種は下落。石油や鉱業は、7日のニューヨーク原油先物が1.6%安の1バレル=52.17ドルとほぼ2週ぶり安値を付けたことがマイナス材料になった。
  売買代金上位では三井物産やファナック、SCREENホールディングスが高い半面、17年12月期の営業利益計画が予想を下回ったクラレ、第3四半期は12%の営業減益だったNTTデータは安い。東証1部の売買高は16億4171万株、売買代金は1兆9826億円。値上がり銘柄数は1287、値下がりは585。

●ドル・円は112円台前半、日米首脳会談控えて上値重い展開続く
(記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい)
  東京外国為替市場のドル・円相場は1ドル=112円台前半で推移。今週末に日米首脳会談を控える中、米10年国債利回りの低下などを背景に上値の重い展開が続いた。
  午後3時45分現在のドル・円は前日比ほぼ横ばいの112円35銭。朝方に112円54銭までドル高・円安に振れた後、一時112円04銭まで反落する場面が見られた。主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.1%高。
  ソシエテ・ジェネラル銀行東京支店の鈴木恭輔為替資金営業部長は、ドル・円について、「112円50銭をタッチしたタイミングで、輸出企業、実需の売りも出ているのではないか。今朝からそうした実需フローの売りも見えていた。112円に近いところで拾ってレンジでみている人が元々結構多くて、その下値の幅が111円中盤まで広がったのが現状」と説明した。その上で、「日米首脳会談までは様子見、こう着状態が続くだろう」と見込む。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-08/OL1GZC6KLVR401

http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/801.html

[経世済民118] 黒田日銀も萎縮、「トランプ砲」の威力 $110 トラ不安解消へ3つの根拠 中国外準、越えた危険な一線 ギリシャ再びデフォ
コラム:
黒田日銀も萎縮、「トランプ砲」の威力

FX Forum | 2017年 02月 8日 12:53 JST 関連トピックス: トップニュース

上野泰也みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
[東京 8日] - 日銀が昨年9月から「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みの下で実施しているイールドカーブ・コントロールの運営がこのところ変調しており、債券市場参加者の不安や疑念が強まっている。円金利の上昇を抑制しようとする黒田日銀の姿勢が萎縮したことを市場は見て取っており、その背後にはトランプ米大統領の影がちらついている。

3日の10時10分に日銀がオファーした長期国債買い入れのうち残存期間「5年超10年以下」は4500億円で、当初予定額からの増加幅は400億円にとどまった。このため、日銀の金利低下抑制姿勢の弱さへの失望感から債券を売る動きが一気に強まり、10年物国債利回りは一時0.150%まで急上昇。20年債は0.730%、30年債は0.905%、40年債は1.060%をつけた。10年債の0.150%は、四捨五入すれば0.2%であり、もはや「0%程度」とは言いにくい水準である。

これに対し日銀は、通常の午後のオペ時間(14時)より早い12時30分に10年債0.110%で金額無制限の指値オペを実施した。債券は買い戻されたものの、市場の疑心暗鬼がこれで解消したわけではなく、10年債の利回り低下は節目の0.1%をやや下回るところまでにとどまっている。

<トランプ大統領の刺激を回避した日銀>

上記の一幕についての通説は、日銀が午前中に市場の反応を読み誤ってしまい、想定外に金利が上がったため、午後一番に後始末で「伝家の宝刀」を抜いたというものである。

だが、筆者はそれとは異なる見方をしている。午前中に400億円の増額しか行わない場合、市場で失望感が強まって金利が程度の差はあれ上昇することは、おそらく日銀調節デスクを含む誰の目にも明らかだった。

午前中は中途半端なオペを打つにとどめ、午後に火消しをしたのは、基本線としては予定通りの行動(一種の芝居)であり、こうしたオペの打ち方をすることでトランプ大統領を刺激することも、債券市場を完全に突き放して壊すことも、両方とも回避したのではないかという少数説を、筆者はとっている。

仮に、午前中にいきなり指値オペをオファーしていたら、10年債が0.150%まで売り込まれることはなかった。その代わり、日銀の強固な金利上昇抑制スタンスが内外で印象付けられて、トランプ大統領による円安誘導批判を強めかねなかった。

そして、午前中の失望感を招く日銀の動きによって債券市場がかなり不安定化したため、為替介入で言えば「スムージングオペ」にあたる、事態を沈静化させるための強力なオペを日銀がやむなく打つことが、誰が見ても文句なしに正当化される状況になっていたと言える。

また、日銀は長期ゾーンでは指値オペを実行したが、それとセットで超長期ゾーンでも行うことはしなかった。10年債と違って超長期ゾーンは金利ターゲットの設定されているゾーンではないと言ってしまえばそれまでだが、イールドカーブ・コントロールの当初の想定(市場が日銀から受けた説明)では、超長期ゾーンの金利水準については昨年9月の金融政策決定会合時点の水準が一つの目安だという話になっていたはずである。

ところが、超長期ゾーンの金利上昇を抑制しようとする動きを、日銀はこのところ見せなくなっており、金利上昇抑制の面で、あえて「手抜き」をしている感が漂う。そして、日銀の金利上昇抑制行動が弱まった背後に、少なくとも10―11日に迫った日米首脳会談の前はトランプ大統領を刺激しないよう「おとなしくしている」ことを選んだ日銀の姿が、筆者には見えてしまう。

<年末1ドル=98―100円へ3つの根拠>

トランプ大統領は1月31日、薬品業界大手のトップらとホワイトハウスで会談した際、他国の「通貨供給量、通貨安誘導」によって米国が損害を被っていると述べた上で、「中国は(通貨安誘導を)行っているし、日本は何年も行ってきた」と非難した。

中国については現在進行形である一方、日本は現在完了形という違いはあるものの、日本の為替政策と金融政策が、円高カードをちらつかせる「トランプ砲」によって直撃された瞬間だった。

これらの発言は、トランプ政権の保護主義的な姿勢が強固であることを、市場に強く印象付けるものである。そして、「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」の下で米製造業が「復活」するためには、自国通貨ドルが他国通貨に対して強いことは、大きな障害になる。したがって、「強いドル」政策という看板は歴代政権と同じように掲げつつも、ドル相場が大幅に上昇することを、トランプ大統領は今後も嫌う可能性が高い。

上記のトランプ発言が飛び出した日、ドルは対円で112円割れ寸前まで一時下落した。その後、フランス大統領選挙で極右・国民戦線のルペン党首が勝利する可能性への警戒感、米雇用統計における時間当たり賃金の伸び鈍化という円買いドル売り材料が重なった6日には、ドル円は111円台に突入した。

この6日の動きはきわめて重要である。なぜなら、今年のドル円が、大きな振れを伴いつつも、結局のところ年末時点では98―100円程度で着地するだろうと筆者が見ている根拠が凝縮されていたからである。

すなわち、1)あまりにも大きくなり過ぎたトランプ政権に対する期待の揺り戻し(「トランプラリー」の反動)が今後も避けられない上に、2)今年は欧州の政治イベントのリスクを主因とする「リスクオフ」の円買いが何度も訪れる年になりそうであり、しかも、3)織り込み過ぎた米国の年内利上げ回数(2―3回)をはがす動きが徐々に出てくるだろうという見方である。

筆者は最近、セミナーなどの場で以下のメッセージを発信している。為替市場では今年も円安予想と円高予想が拮抗(きっこう)しているが、筆者は円高を予想している一人であり、下記の3点がその根拠になっている。

●日銀の金融政策を含む政策動向やマーケットの動きを見る際は、「米国(トランプ政権)>日本(安倍政権)>日銀」という、現実的に考えた場合の一種の上下関係を意識する必要がある。日銀のオペ姿勢にも、それは微妙に反映されている。10―11日に行われる日米首脳会談の結果、トランプ大統領が円安誘導批判や暗黙の日銀量的緩和批判をしなくなるかどうかが、目先の重要な関心事である。

●トランプ大統領には、ストラテジーも、ロードマップもなさそうである。場当たり的な「ディール(取引)」を繰り返しているうち、過大な期待の反動が、実体経済とマーケットの双方で大きくなるだろう。

●フランス大統領選挙を中心に、今年は欧州の政治リスクが非常に大きい年で、欧州連合(EU)およびユーロの将来像が揺さぶられかねない。欧州発で「リスクオフ」に傾く場面が多くなると、米国の利上げはチャンスをつかむのが困難になる。昨年11―12月のユーフォリア(陶酔感)的な米国の消費マインド高揚と新車販売増加の反動が年明けからすでに起こりつつあることや、議会共和党の「小さな政府」志向を背景とする減税プランの規模縮小および実行時期の先送り見通しも手伝い、米国の年内利上げはあるとしても1回までにとどまるだろう。

*上野泰也氏は、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト。会計検査院を経て、1988年富士銀行に入行。為替ディーラーとして勤務した後、為替、資金、債券各セクションにてマーケットエコノミストを歴任。2000年から現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。


コラム:トランプ氏のトヨタ批判ツイート、神通力に限界 2017年 01月 09日
視点:トランプ円安は幻想、進む「米国の日本化」=青木大樹氏 2017年 01月 23日
コラム:理不尽なトランプ円高に備えよ=唐鎌大輔氏 2017年 01月 24日
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yasunari-ueno-idJPKBN15N096


 

 
 

 

ドル110円のシグナル点灯か:識者はこうみる

[東京 7日 ロイター] - 東京外国為替市場で7日、ドル/円は111円台後半でのもみあいが続いている。日米首脳会談を控えたドル安警戒感と、欧州政治リスクを背景に、ドルは一時111.59円と11月28日以来の安値をつけた。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●ドル110円のシグナル点灯か ユーロ/円下落にも注意

<IG証券 シニアFXストラテジスト 石川順一氏>

ドル/円はこのところ強固なサポートラインだった112円を割り込み、昨年11月末の水準まで下落した。トランプ米大統領の通商政策がドル安を志向していることが主因ではあるが、フランス大統領選の先行き不透明感や10日の日米首脳会談の動向が警戒され円高圧力が高まっていることも一因となっている。

トランプ米大統領があらためて円安誘導批判に言及するなどした場合は円高に動きやすく、111円前半にある週足一目均衡表の雲下限を下方ブレイクする可能性がある。心理的節目で、トランプラリーの高安の半値戻しの水準である110円トライのシグナルとなるだろう。

また、クロス円ではユーロ/円の動きに注目したい。前日、ユーロは120円を割り込み、12月5日以来の安値をつけた。欧州の政治リスクが意識されやすい局面に突入しており、円高をけん引する可能性がある。

ドル/円が110円を割り込む局面では、トランプ政権の米ドル安政策が相当意識されている可能性が高い。欧州の政治リスクが意識される可能性も考えれば、最新の米為替報告書が公表される4月にかけて107円台まで下落する展開もあり得る。

一方、ドル買い要因として注視すべきは、トランプ氏の予算教書だろう。選挙公約通り大規模減税とインフラ投資を盛り込んだ内容となれば、トランプラリーから脱落気味の米ドルにひとまず買い戻し圧力が強まりそうだ。

●日米首脳会談後も円安批判続く可能性高い

<JPモルガン・チェース銀行 為替調査部長 棚瀬順哉氏>

今年に入ってドル/円は上値の重い展開が続いているが、1月第4週までは、米政府当局者によるドル高けん制発言等を受けた、ドル安主導の動きだった。当時は、ドルと円が両方弱く、オセアニア通貨と北欧通貨が強含むというリスクオン時の典型的なパターンだった。

しかし、それ以降現在に至るまでは、リスク回避的な様相を呈している。

リスク回避時には、通常、ドルと円が両方買われるところだが、トランプ大統領が中国と共に日本の通貨政策を名指しで批判したことから、ドル買いが抑制され、円買いが目立っている。さらに、欧州の政治リスクに対する懸念が高まっていることも、円高に一定程度寄与しているとみられる。

為替市場では、短期筋の円ショートがまだ残っているとみられ、それらが全て巻き戻されるとすれば、109円程度までのドル安/円高はあり得るとみている。

米政権の円安批判は日米首脳会談後も続く蓋然(がいぜん)性が高いだろう。

会談に際して日本からは経済協力パッケージを提示するとされるが、これまでに報じられてきた範囲では、米自動車メーカーの通貨安に対する不満を抑えるような内容は盛り込まれていない。今後は、二国間の自由貿易協定(FTA)で為替条項を盛り込むなど、90年代の貿易摩擦時と似通った状況になるのではないか。

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
GPIF投資、首相「指図できない」 米インフラ巡る報道否定
EU離脱の最終合意案、欧州議会送付前に英議会で採決=英議員
アングル:香港不動産を買い漁る中国本土企業、価格高騰煽る
特別リポート:ローマ法王とマルタ騎士団、「対立」の舞台裏
コラム:アップル、「iPhone頼み」に差す光
http://jp.reuters.com/article/views-dollar-yen-signal-idJPKBN15M07I?rpc=188


 


 


焦点:企業決算への反応鈍い日本株、本業懸念やトランプリスクが重荷 

[東京 8日 ロイター] - 日本の企業業績は着実に拡大基調にあるとはいえ、市場の高い期待には届かず、日本株の反応は鈍い。個別企業の決算を注意深くみると、「稼ぎ頭」の電子部品や自動車メーカーには本業の懸念が浮上したところもある。

「トランプリスク」に日本企業が直面する中、為替がさらに円高方向に振れるリスクもあり、来期の業績に対する市場の楽観的な見方が修正されつつつある。

<本業失速に人手不足の圧力>

電子部品大手、村田製作所(6981.T)が1月31日に発表した2016年10─12月期の売上高は、前年同期比10.5%減、営業利益は同32.7%減。円高だけでなく、成長の源泉だった「通信モジュール」が、思わぬ打撃を受けたことも響いた。

複数の部品をパッケージ化し、顧客に供給する通信モジュールの10─12月期の売上高は26.7%減。決算発表翌日の村田株は4%安。米アップル(AAPL.O)関連株が軒並み高となる中、逆行安となった。

モジュールの失速の主因は、アップルが昨年発売した「iPhone(アイフォーン)7」に搭載される同モジュールのシェア低下とみられている。

アナリストらによると、村田はアイフォーン7に対応するエンジニアを十分に確保できず、開発の立ち上がりに遅れが発生。自社が不得手な部品をモジュールに組み込もうとした結果、コストパフォーマンスが悪化し、シェアを他社に奪われたようだ。

村田の幹部は決算会見で、来期の売上高が前年比で10%程度増加する見通しを示した。実現には今年中の発売が有力なアップル製スマートフォンの新モデル向けの受注が大きく左右する。

しかし、人手不足の問題がすぐに解消できるかは不透明。サプライヤー間の競争も激しさを増している。「失策が今期だけにとどまるとも言い切れない」(岩井コスモ証券・投資調査部副部長の有沢正一氏)との指摘もある。

<のしかかるトランプ大統領の不透明感>

マツダ(7261.T)は2月2日、17年3月期の利益予想を下方修正した。日本・北米の販売台数予想を引き下げたことなどが主因。東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは「技術力への自負から、値引きせずブランド価値を高めようとしてきたが、価格が高くなり、顧客がついてこられなくなった」と分析。米国での販売改革など「『治療中』の北米では台数の伸びは見込めない」とみる。

トヨタ自動車(7203.T)は6日に通期業績予想を上方修正したが、翌日のトヨタ株は2%を超す下落。修正後の営業利益予想は1兆8500億円(前年比35.2%減)。2兆円を上回る水準とみていた市場予想を下回り嫌気された。

同社は17年1月分から1ドル=110円と円安方向に想定レートを見直したが、市場の関心は金融事業にも向かった。

米国での中古車価格の動向を踏まえ、リース車両の残価コストの引当金を積み増し、中間期時点で200億円と見込んでいた金融事業関連の減益要因を1150億円に拡大した。「米国での販売環境に対するトヨタの警戒感が現れている」(中堅証券)との声もある。

みずほ証券リサーチ&コンサルティングの集計によると、17年3月期の国内企業の純利益増減率は、2月3日現在で前年比プラス2.2%。12月末時点の事前予想マイナス2.9%から改善した。(東証1部・金融除く、時価総額ベースで発表率60%)。

これは米大統領選後の急速なドル高/円安の進行で、輸出企業を中心に業績予想の上方修正が相次いだことが背景にある。

一方、日経平均.N225は、安川電機(6506.T)が先陣を切って第3・四半期決算を発表した1月23日以降、ほぼ横ばい。個別物色の域を脱しきれず、全体相場の押し上げにはつながっていない。

<乏しい割安感>

トランプ米大統領が、日本を名指しして通貨安政策をとってきたと批判し、ドル/円JPY=EBSの一段上昇への期待感は後退している。米国内のインフラ投資拡大が日本企業の業績に好影響をもたらすかも未知数だ。

三井住友アセットマネジメント・シニアストラテジストの市川雅浩氏は「あれだけ強く米国第一主義の姿勢が打ち出されれば、企業も構えてしまう。来年度の企業側の業績見通しは、より慎重な数字が出る可能性がある」と述べる。

日経平均の予想1株利益は、2月7日時点で1213円。年初水準に比べ2.8%上昇した。予想株価収益率は16倍台後半から15倍台半ばまで低下したが、概ね14─16倍台で推移してきたアベノミクス相場のレンジの中では、割安感は乏しい。

足元の水準はすでに天井なのか、それとも一段上のバリュエーションを許容しじり高基調を続けるのか──。優良企業の本業における「不調」をにらみ、疑心暗鬼が市場に渦巻いている。

(長田善行 編集:田巻一彦)

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
タカタのスポンサー最有力に米KSS、外部専門委が選定=関係筋
米貿易赤字443億ドルに縮小、輸出が1年8カ月ぶりの高い伸び
「日米イニシアチブ」検討、数十万人の米雇用増目指す=政府筋
鴻海の対米投資、シャープが主導 17年前半にも液晶工場=関係筋
ホンダ、タカタ製エアバッグが異常破裂 昨年12月に日本で発生
http://jp.reuters.com/article/sluggish-performace-jpequ-idJPKBN15N0GA

 

 

コラム:
「トランプ不安」解消へ3つの根拠

FX Forum | 2017年 02月 8日 15:11 JST 関連トピックス: トップニュース

熊野英生第一生命経済研究所 首席エコノミスト
[東京 8日] - トランプ米大統領が何を発言するのかが読めないので、先行き不透明感が続きそうだと言われる。しかし、筆者は就任100日後の2017年4月末には、今よりもずっと不透明感は薄らぐと見ている。だから、現在の不安についての過大評価もきっと解消するだろう。

まず、トランプ大統領の意向だけで経済が動くわけではない。日本や中国が何年も通貨安誘導を繰り広げていると批判したが、ドル円レートは大幅な円高にはなっていない。昨年11月からのトランプラリーは、米経済の加速と利上げ予想によるドル高観測も加わった相乗効果である。ドル高傾向は、今後もファンダメンタルズに沿って継続するとみられる。

<ゲーム理論の教訓>

不透明感が変わる3つの予想シナリオ(根拠)を考えてみたい。まず、1つ目の予想として、トランプ大統領の発言は、次第にサプライズの度合いが小さくなるだろう。これは、私たちがいくつものトランプ発言を聞いて、馴れてくるからである。

就任100日後には、私たちは経験値を増やして、トランプ大統領の発言を今よりも冷静に評価できるようになるだろう。不透明とは、私たちの判断材料が乏しいという条件下では成り立つが、材料が増えると予想が立てやすくなって、不透明さは薄らいでいく。

2つ目の予想は、トランプ発言が摩擦を警戒して、刺激度を落としてくるというものである。メキシコとの間に壁をつくるとか、関税率を45%、35%に引き上げるという爆弾発言は、相手国から強い反発を受ける。国内でも移民排斥への批判はすさまじい。

ゲーム理論という分野で、最強の戦術は「しっぺ返し」だということが言われる。相手の一手に合意のときは優しく受容して、反対のときは強力に仕返しする。すると、相手は次第に仕返しを嫌がって合意になびいていく。

今後、トランプ大統領の政策は、さまざまな反論を受けるだろう。すると、前に進むほど摩擦の痛みに苦しんで、相手からの合意を得やすい行動に変わっていく。要するに、自然と封じ込められる力が働いて、小ぶりに変わっていくというシナリオである。

だから、日米2国間の自由貿易協定(FTA)への合意など早々に決めるのは損だと考えられる。環太平洋連携協定(TPP)のような多国間協議に後から米国が乗ってくる可能性は十分にある。

<内向き化は不利>

3つ目は、時間が過ぎていくと、今は巨大な不透明要因に見えるトランプ大統領が相対的に小さくなっていくだろうという予想である。

トランプ大統領の政策は、今のところオバマ前大統領の政策をひっくり返す意味で混乱を大きくしている。暗黙のうちにトランプ大統領は、オバマ前政権のレガシーを引きずっている。人々が望んでいる政権は、次第に前任者の否定からトランプ大統領自身の成果へとシフトする。他人を批判するのはやさしいが、建設的に議論するのは難しい。

また、旧来からのモンロー主義が色濃くなると、米国の国際的な存在感は小さくなる。2017年は、欧州各国で選挙があり、中国でも政治局常務委員が交代する。これらの新しいイベントの中では、内向きになっていく米国は不利である。

2017年の出来事が過ぎていくと必ずトランプ大統領の不透明感は、現在の地平から見るよりも小さく見えてくることだろう。

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)

しばらくは円安・ドル高に振れる傾向続くだろうという大方の予想と同じ=麻生財務相 2017年 01月 31日
視点:トランプ円安は幻想、進む「米国の日本化」=青木大樹氏 2017年 01月 23日
コラム:米中対立、日本は「漁夫の利」得られるか=嶋津洋樹氏 2016年 12月 13日
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-hideo-kumano-idJPKBN15N0ET


 


 
コラム:中国の外貨準備高、越えた危険な一線
Special | 2017年 02月 8日 15:55 JST 関連トピックス: トップニュース


 2月8日、中国の外貨準備高は、憂慮すべき譲れない一線を越えたと言える。写真は人民元とドル紙幣。北京で昨年1月撮影(2017年 ロイター/Jason Lee)
Pete Sweeney

[香港 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 1月末の中国外貨準備高が約6年ぶりに3兆ドルを割り込んだ。政府が資本流出を取り締まる中、減少ペースは鈍化した。しかし、象徴的な数字や目標、指数水準などに固執する国にしてみれば、憂慮すべき譲れない一線を越えたと言える。

中国の外貨が減少し続けているのは、次なる一線を守ろうとする試みが一つの要因。つまり、1ドル=7元を超える元安にしないということだ。中国人民銀行は1月にオフショアで介入を繰り返し、今やそれが理にかなうかどうかにかかわらず、その節目を守らざるを得ない状況にある。米財務省が4月の為替報告書で中国を為替操作国に認定する可能性があるのがその背景だ。

ただ、為替操作国認定はドルに左右される部分が大きい。もし長らく続くドル高がピークに近づいているなら、中国政府も安心できる。また、月130億ドル以下の外貨減少なら恐れることもない。国際通貨基金(IMF)の指針では中国に求められる外貨準備高の最低水準は2兆6000億ドルとされ、それに迫るには4000億ドル近い余裕があるからだ。

不幸なことに、元が底値付近にあると考えるエコノミストはほとんどおらず、年内にさらに5%かそれ以上下落するとの見方もある。もし中国が市場原理に完全に委ねるとしたら、おそらく急落という結果を招くだろう。それが資本流出を加速し、米国の報復を招くことになる。中国の外貨準備高の絶対的水準はまだ問題ではないが、それがどちらに向かっているかは懸念すべきだ。

●背景となるニュース

*人民銀行が7日公表したデータによると、1月末の中国外貨準備高は12月末から123億ドル減少し、2兆9980億ドルとなった。

*1月の減少幅は12月の減少幅(410億ドル)と比べて大幅に少なく、7カ月ぶりの低水準となった。

*元の切り下げが実施された2015年8月以来、約5000億ドル減少。それでも、中国の外貨準備高はなお世界最大。元は16年に対ドルで6.6%減少し、1994年以来の下落幅となった。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。


おすすめ記事


コラム:トランプ氏の金融規制見直し、結局は肩透かしか 2017年 02月 07日
コラム:アップル、「iPhone頼み」に差す光 2017年 02月 01日
ホットストック:東邦亜鉛が買い気配、業績・配当予想を上方修正 2017年 02月 07日
http://jp.reuters.com/article/column-china-fx-reserve-idJPKBN15N0JY

 


 


アングル:ギリシャ再びデフォルト懸念、返済前に改革審査難航
News | 2017年 02月 8日 16:10 JST 関連トピックス: トップニュース

 
ビナのゼニツァで2015年6月撮影(2017年 ロイター/Dado Ruvic)
[ロンドン 7日 ロイター] - ギリシャ国債の民間投資家は、デフォルト(債務不履行)はもう二度と起きないという5年前に欧州当局が表明した約束を信用できなくなっているようだ。

こうした強い約束があったからこそ、ギリシャは民間投資家に対して債務の大幅な元本削減を実施してからわずか2年で国際金融資本市場へのスピード復帰を果たした。

その際に国債を買った投資家の理屈は単純で、2012年に債務再編の適用を免れた公的債権者が、今度は痛みを引き受けるべきだというものだった。

しかし新たなギリシャ国債の最初の返済が7月17日に予定される中で、ギリシャと公的債権者を代表する欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)の話し合いは紛糾していることから、国債価格は公的債権者のリスク負担が実現しないリスクを織り込む水準まで下落している。

投資家にとって一番の懸念は、ギリシャの改革審査が7月初めまでに完了しない事態となれば、同国は債務返済の資金が確保できなくなるという点だ。

約300万ユーロのギリシャ債を保有するLBB─インベストのポートフォリオマネジャー、ルッツ・ローマイヤー氏は、ギリシャは債務を返済すると予想しながらも、果たして返済できるかどうか「若干の疑念」があると打ち明けた。

eMAXXのデータによると、このほかカルマニャック・ジェスティオンやルーミス・セイレス、パトナム・インベスト・マネジメント、PIMCOもギリシャ債に投資している。

ギリシャは最新の第3次金融支援を受け入れる見返りにさまざまな改革を実行することに合意したが、今年の選挙を前に国内有権者から反発を受けるのを恐れて支援条件を守っていない。

こうした中で7日の国債価格は額面当たり0.95ユーロで推移。償還期限が近づいて本来なら額面をやや上回っているべきところ、異例の低水準となった。トレーダーの話では、6%のデフォルト確率が織り込まれている。

ギリシャのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のプレミアムも急騰し、今後5年間のデフォルト発生確率を50%近くと示す水準にある。

デフォルト確率は今後数週間でさらに高まってもおかしくない。複数の欧州当局者は、20日に開く次回のユーロ圏財務相会合までに、ギリシャは問題点を解決する必要があると警告している。これを過ぎると3月のオランダを皮切りに、9月のドイツまで主要国が相次いで国政選挙に突入し、交渉が政治的に難しくなるとみられるからだ。

<時間との闘い>

1月26日のユーロ圏財務相会合では、債権団がアテネに戻って改革審査を完了するスケジュールを設定できなかった。ギリシャ側は今月7日、債権団の要求の一部は「非論理的」と批判し、歩み寄りの気配は見えない。

ソシエテ・ジェネラルのエコノミスト、Yvan Mamalet氏は「EU諸国の政治日程が立て込んでくれば、改革審査を完了するのは極めて困難なことが判明するだろう。だからこそ、3月初頭が合意に達する可能性がある最後の時期に思える。これを過ぎれば、7月の債務返済も厳しくなる」と指摘した。

ギリシャ第3次金融支援にIMFが参加するかどうか分からないことも、同国の返済ができなくなるリスクを高めかねない。IMF内には、ユーロ圏が課した財政目標に反対し、ギリシャに債務軽減措置を提供すべきだとの声がある。

ギリシャの主要債権者であるドイツは、IMFの関与は第3次支援に必要不可欠だと強調している。ショイブレ財務相は、ビルト紙のインタビューで、IMFが手を引くようなら、ギリシャのユーロ圏離脱に賛成するとまで言い切った。

ショイブレ氏の発言は極端かもしれないが、UBSのストラテジストは、IMF抜きの新たな合意が成立したとしても、欧州各国の議会が承認するまでに時間が必要で、それ自体がギリシャのデフォルトリスクを高めると予想している。

(John Geddie記者)

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
ギリシャが資本規制をさらに緩和、銀行システムへの信頼改善
ギリシャ、改革堅持する必要=モスコビシ欧州委員
ギリシャ協議に遅れ、9日の最終合意の公算小さい=関係筋
焦点:保護主義的な米税制改革、国際ルール違反の可能性高く
ドル110円のシグナル点灯か:識者はこうみる

http://jp.reuters.com/article/eurozone-greece-bonds-investors-idJPKBN15N0IU


 


ギリシャ、経済成長促進には年金予算削減や減税が必要=IMF 欧州、火種絶えず−債券緊張 日銀長期金利ゼロ%を堅持、牽制
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/852.html
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/802.html

[国際17] 英国で野菜不足が深刻化、ズッキーニはどこだ 新鮮な果物と野菜の65%を他のEU加盟国から輸入 出荷を監視するガードマン
英国で野菜不足が深刻化、ズッキーニはどこだ

「野菜も食べなさい」と子供に言いたくても手に入らず
0:00 / 0:00

スペインの天候不順を原因とする欧州北部の野菜不足が深刻になっている(英語音声、英語字幕あり)Photo: Laura Valdez
By
SAABIRA CHAUDHURI
2017 年 2 月 8 日 14:26 JST
 スコットランドの小さな町ラナークに住む「専業主夫」のスコット・パジェットさん(40)は、地元にあるスーパーマーケット3店舗すべてを訪れた後、ツイッターで「SOS」を発した。「ズッキーニがある方、連絡ください」
 ズッキーニは先月初め、英国の食料品店の棚から姿を消し始めた。ブロッコリー、カリフラワー、ナス、ピーマン、キャベツといった野菜もあったりなかったりの状態が続いている。英国のほか、フランス、デンマーク、そしてオランダでもそうだ。
 アイルランドのコーク市に住むブライアン・ケーシーさん(30)は先月、市内にある6つのスーパーを訪れてホウレンソウを探したが見つからず、最終的に冷凍のホウレンソウに落ち着いた。「こんなものがあることさえ知らなかった」

 何世紀も前の大飢饉とは違い、この冬に欧州北部を襲っている野菜不足で誰かが飢え死にするわけではない。野菜不足の原因は、戦争でも、干ばつでも、疫病でもなく、スペインの天候不順だ。比較的寒い時期に欧州の大半の地域にこれらの野菜を供給しているのがスペインなのだ。

ロンドン市内のスーパーで売られるレタス PHOTO: PETER NICHOLLS/REUTERS
 今回の危機をきっかけに欧州の多くの人々は、最も感謝されていない食品群と言われる野菜を見直している。中には、隠れていた野菜への情熱を掘り起こす人々もいる。
 英国葉物サラダ協会の広報担当者、ディーター・ロイド氏は、「サラダ用の葉物野菜はかつてないほど魅力的になっている」と話す。最近の野菜不足が起きるまで、同氏はテレビ出演を依頼されたことなどなかった。それが今は見かけない日はないほどだ。
 「人は『もう手に入らないですよ』と言われて初めて、『いや、どうしても欲しい』と言い出すのだ」とロイド氏は述べる。
 英国の4大スーパーは今や、レタスを制限販売するようになった。
 前出のパジェットさんにとっては、レタスの制限販売は生活にそれほど影響しなかった。「レタスは腹の足しにならない」からだ。だが、ズッキーニ不足は別の問題だという。
 バジェットさんと妻は青果コーナーに足繁く通ってズッキーニを探している。ズッキーニは子どもたちが食べる数少ない野菜の1つだからだ。「子どもたちは野菜が好きじゃない。野菜の少ない食事をせざるを得ないのだが、その摂取量は一層減り始めている」と話す。

ズッキーニの出荷を監視するガードマン PHOTO: NICK MATTHEWS
https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-RZ645_0207VE_P_20170207125037.jpg

 1週間をズッキーニなしで乗り切った後、先週には妻が2本見つけた。その後は1本も見つかっていない。子どもたちからは当然のように文句は出ていないという。
 この間、野菜不足に関する報道などによって需要が余計に喚起され、悪循環が生じた。英国野菜生産者協会の代表を務めるジャック・ワード氏は、「明日はそこにないかもしれないという思いが、普段より多く買う行動につながっている」と述べる。英国人は1年中レタスを食べるが、ズッキーニは通常、夏の食べ物だ。同氏は今冬のズッキーニ騒ぎは「奇妙な現象だ」と述べた。
生鮮農作物の流通会社レイノルズの広報担当者、アンディ・ウィア氏は、今回の野菜危機について、消費者が複雑なサプライチェーンに感謝するきっかけになるかもしれないと語る。同氏は「消費者はあらゆる野菜が1年365日入手可能だと考えている」と語った。

 野菜不足が買い物客に打撃を与え始めたのは、昨年の終わり頃だった。スペイン南東部の地中海沿いに位置するムルシア地方が、12月に深刻な洪水と雪に見舞われたのだ。これにより、作物が被害を受けたほか、農家の作付けが阻まれた。アイルランド最大の袋入りサラダ加工業者、ウィローブルック・フーズのジョン・マッキャン社長は、季節外れの寒さにより、野菜不足があと何週間か続く可能性があると指摘する。食品業界の専門家は、今回の欧州の野菜不足が過去数十年で最悪だと話している。
 特に打撃を受けているのが英国だ。政府統計によれば、英国は新鮮な果物と野菜の65%を他の欧州連合(EU)加盟国から輸入。その単独で最大の供給元がスペインとなっている。
関連記事
• 子供に野菜を食べさせる効果的な方法とは
• 菜食主義者、タンパク質をちゃんと取れるか
• 冷蔵庫まで配達するサービス、北欧で試験運用
• 食品スーパーでヨガ教室はいかが?
• 英国の巨大野菜コンテスト
http://jp.wsj.com/articles/SB10734999991334983926204582608604102840534


http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/859.html

[国際17] トランプ氏を「正常化」するのは誰か トランプのホッブズ主義 米教育長官のきわどい承認劇が映す民主党の素顔、労組の独占体制
【オピニオン】トランプ氏を「正常化」するのは誰か
左派の横暴がトランプ氏を手助けしているかも知れない
NYブルックリンにあるシューマー上院院内総務の住居前で抗議するデモ隊(1月31日) 
By WILLIAM MCGURN
2017 年 2 月 8 日 16:30 JST

――筆者のウィリアム・マクガーンはWSJのコラムニスト。ジョージ・W・ブッシュ元大統領の首席スピーチライターを務めたこともある。

***

 米国の人気番組「トゥナイト・ショー」の司会を務めるジミー・ファロン氏、民主党のチャールズ・シューマー上院院内総務、NBCの人気コメディー番組「サタデー・ナイト・ライブ」、USウィークリー誌、バラク・オバマ前大統領――これらに共通するものは何か。

 正解は、上記の全てがドナルド・トランプ大統領を「正常化する」という大罪に問われている。彼らには、この第45代大統領に反発しない人は誰でも、トランプ氏の新たな「ライヒ(国家)」建設に手を貸すことになるという考え方が背景にある。18世紀後半のドイツで起きた革新的な文学運動「シュトルム・ウント・ドランク(疾風怒濤)」がトランプ氏の周囲で起きていると言っても過言ではないが、要するに反トランプの議論を前に進めるのではなく、議論を完全に妨害していることだ。

 結局のところ人はヒトラーと議論するのだろうか。

 この熱狂は完全な狂気ではない。活動家によると、共和党員も2009年に同じような苦境に陥った。オバマ氏が大統領執務室に収まり、民主党が連邦議会で過半数の議席を占めたからだ。トランプ政権と衝突することで、活動家は自分たちの支持層を喜ばせ、共和党が取った方法による党再建を期待している。

 恐らくそうだ。ただ、「民主党員がもてあそばれている」という面白い議論もある。実を言うと、これは米紙ニューヨーク・デイリーニューズに最近掲載されたマイク・ギーカン氏の記事の見出しだ。同氏は工業地域財団(IAF)の共同ディレクターだが、このIAFとは、左翼活動家のソウル・アリンスキーが設立に加わり、コミュニティーの組織化を進めるバラク・オバマという名前の若者を鼓舞するのに一役買った財団のことだ。

 ギーカン氏によると、現在ワシントンで起こっていることは、2011年にウィスコンシン州で起こったことと相等しい。当時、共和党のスコット・ウォーカー知事は公務員の労働組合から団体交渉権を剥奪する法案を支持していた。憤慨した左派は抗議運動を行い、デモ参加者は州議会議事堂の周囲を占拠した。抗議運動は知事のリコール(解職請求)を押し進め、それは国民的なドラマとなった。

 ただ、一つ問題があった。抗議運動はうまく行かなかったのだ。この法案は州議会を通過し、合法だと判断された。ウォーカー氏は2012年6月のリコール選挙を勝ち抜いた。そして、同州の上下両院で多数派だった共和党員はさらに議席数を伸ばした。同年11月の大統領選挙ではオバマ氏がウィスコンシン州を制したにもかかわらずだ。

 ギーカン氏は、抗議行動が強固で草の根的な説得の代用にはならないと指摘。「民主党員の多くは穏健または多様な見方を持って人々と接する方法を知らないか、そうしたくないのだ」と書いている。「彼らはバスの運転手や飲食店従業員よりもロックスターやセレブの方を好む。彼らはデモ隊のかわいい言葉と気の利いたプラカードが好きで、複雑に絡み合った利益を持つ人々、リベラルというリトマス試験に合格しないだろう人々との間で行われる、長くて辛抱強く耳を傾ける必要のある会合は好きではない」

 米国とウラジーミル・プーチン大統領のロシアとの道徳的等価を示唆するような情報に飽き飽きしている人々を、トランプ氏が最終的に遠ざけることは確かに可能だ。しかし、米国民は孤立状態でトランプ氏に耳を傾けているのではない。同氏を批判する人々から発せられるコメントを踏まえた文脈の中で聞いているのだ。批評家らの意見は、トランプ氏自身が発するだろうあらゆる非常識な発言を圧倒する危険性があるほど行き過ぎている。

 例を挙げよう。「いわゆる判事」と軽蔑したトランプ氏のツイートに憤慨した人の中で、同判事が下した判断の背後にある驚くべき空虚な法的推論に少しでも注意を払った人はいただろうか。司法長官代理を解任されたサリー・イエーツ氏についても同じことが言える。最高執行者に挑むという憲法違反を犯しながら、ファシズムに立ち向かう司法省の被任命者への称賛という皮肉に、誰が気付いただろうか。

 これらは最も穏健な形にすぎない。ワシントンで行われた女性デモ行進「ウーマンズ・マーチ」で、米国民はホワイトハウスを爆破するという歌手のマドンナさんの夢想を耳にした。ツイッター上では、米政治情報サイト「ポリティコ」のジャーナリスト(当時)がトランプ氏と娘の近親相姦(そうかん)をほのめかすみだらな言葉を使っていたのを目にした。先週、カリフォルニア州バークレーで「寛容の擁護者たち」が火を放ったり窓をたたき割ったりする映像が全米のテレビ画面を埋め尽くした。同性愛者の保守派が「カレッジ・リパブリカンズ(共和党を支持する大学生連盟)」で演説するのを阻止しようとしたためだ。

 今や革新的な反トランプ派は味方まで攻撃する決断を下したようだ。反対者らは最近、同様にみだらな言葉が書かれた横断幕を掲げてニューヨーク・ブルックリン地区にあるシューマー氏の住居前で抗議運動を行った。こうした言葉はトランプ氏を俗悪の極みと見なしている人々の間で非常に人気が高い。

 大統領選でヒラリー・クリントン元国務長官が8割近い得票率を獲得したニューヨーク市では、こうした種類の抗議活動が群衆を楽しませるものになるかも知れない。また、大統領就任式のボイコットを求める戦略、上院委員会での採決欠席、トランプ氏によって指名されたあらゆる閣僚候補への反対票もそうだ。しかし、例えばノースダコタ州の市民は違った見方をするかも知れない。そこはトランプ氏が得票率で36ポイント差をつけて大統領選に勝利し、民主党のハイディ・ハイトカンプ上院議員が2018年の再選に意欲を示している州だ。

 繰り返しになるが、トランプ氏が自分を殺してしまうか、少なくとも仕事をできなくさせる激情を解き放った可能性は大いにある。しかし、ウィスコンシン州のような結果となる可能性も同様に残されている。そうなれば、今から2年後にはシューマー氏が一段と衰退した民主党を率いることになるだろう。トランプ氏が経済を再び成長させることに成功すれば、特にそうなりそうだ。

 ウィスコンシン州のような結果となれば、トランプ氏を正常化するのは同氏の支持者ではなくなるだろう。それは着飾ったセレブ、禁句の連発、脅迫を狙った抗議活動を好み、民主政治を避けてきた敵たちになるのかも知れない。

トランプ新大統領特集

トランプ時代のアメリカ、草の根の声
トランプ閣僚承認やっと5人目、大幅な遅れ
反トランプ女性行進、共通の目標なく

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiRtdCnhIDSAhUHOrwKHaTQCyEQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582608412963335818&usg=AFQjCNEUJl8EYbSely1S_iHARAAIZBOg1Q

 


【オピニオン】トランプ大統領のホッブズ主義を読み解く
オバマ前大統領の「謝罪」に激怒した保守派、トランプ氏の米国非難は?

英国の思想家トマス・ホッブズの著書「リヴァイアサン」(1651年)の口絵 PHOTO: GETTY IMAGES

By
BRET STEPHENS
2017 年 2 月 8 日 14:05 JST
――筆者のブレット・スティーブンスはWSJ論説室の副委員長
***

 まず、これは疑う余地がない。もしも米国とウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアが道徳的に等価であると示唆したのが、ドナルド・トランプ米大統領ではなく、バラク・オバマ前大統領だったなら、共和党の政治家たちがテレビのインタビューで手短に異論を唱えつつ税制改革に話題を転換しようとはしないだろう。

 もしもFOXニュースのビル・オライリー氏がプーチン大統領は「人殺しだ」と述べたのに対し、「われわれの側にも殺人者はたくさんいる。わが国が潔白だと思うのか?」と言い返したのが、3週間前までの大統領だったなら、保守系の論客がこの発言を「不可解」または「厄介だ」と切り捨てるだけで終わることはないはずだ。彼らはそれを道徳上の背信行為と呼び、次の選挙までの4年間、同じ場面を連続再生モードにするだろう。
 オバマ前大統領は就任直後の2009年、米国が過去に残した汚点について特定の言及を避けながらも遺憾の意を表す一連の演説を行った。例えば「米国はわれわれ自身の歴史の暗部の一部に今なお向き合っている」。そして「われわれはいくつかの過ちを犯した」という具合に。「謝罪する」という言葉は一度も口にしなかったが、いわゆる「謝罪ツアー」だった。保守派はこれに関していまだに怒りが収まらない。

筆者の過去のコラム
• オバマ外交にふさわしい結末
• 米国は停滞する運命にあるのか
• 如何にして心配するのを止めてプーチン氏を愛するようになったか
• ポピュリスト、経済ではなく正義への不満

 今回、トランプ大統領は米国について謝罪したのではなく、米国を非難した。今までどの現職大統領も元大統領も使ったことがない異例の言葉遣いだった。それは米国に対する極左の中傷を間違いなく正当化する方法であり、恐らくそこまで計算ずくだった。仮にあなたが、ジョン・F・ケネディ元大統領を暗殺し、麻薬のまん延を裏で首謀し、意図的なうそで米国をイラク戦争に誘導したのは米中央情報局(CIA)だ――プーチン体制の実際の行動と道徳的には肩を並べる陰謀説だが――と信じているならば、この大統領はうってつけだ。
 いや、トランプ氏はもっと悪い。
 左派があれこれ国を非難するのは、根拠の有無は別として、大抵は道徳上の目的がある。米国人を恥じ入らせ、よりよい行動へ導くことだ。われわれは人種差別主義者とならないために、奴隷制度の邪悪さや(米国南部の人種分離を合法化した)ジム・クロウ法を思い起こす。大国のおごりを食い止めるために、ベトナム戦争の失敗を詳しく語り伝える。自由な市民社会の重要性を強調するために、マッカーシズム(赤狩り)の迫害を振り返る。
 これと対照的に、トランプ氏の目的は、誤った行動を繰り返さないことではない。それを許容することだ。そう解釈すると、プーチン氏の行動はわれわれと大きな違いはない。むしろより正直で効果的だ。米国は過激派組織「イスラム国」(IS)を確実に打ち負かせるだろう――もしもロシアがシリア北部の都市アレッポを破壊し尽くしたように、罪の意識に妨げられることなく、イラク北部のIS拠点モスルに無差別爆撃を仕掛けることができればの話だが。米国はイラクで優位に立っていただろう――もしも善意の解放者ではなく、悪びれない征服者として振る舞い、平然と原油を横取りしていればだが。
「食うか食われるか」の現実
 こう考えれば、トランプ氏が米国は例外的存在だという見方を信じず、その見方は「世界を侮辱している」と言い、国家としてのわれわれの権利やチャンスに不当な重荷を課していると見なすのも説明がつく。度量の大きさ、公正な対応、規範を示す存在、双方が得する解決策、「丘の上の町」(訳注・世界中の目が注がれる公正な社会を指す)といった理想論はすべて、トランプ氏の頭の中では、食うか食われるかという人生の現実を無視したお人よしの逃げ口上だ。トランプ氏は言ってみれば、米国初の「ホッブズ」主義の大統領なのだ(訳注・トマス・ホッブズは17世紀の英国の思想家で、社会の自然状態は各人が互いの権利を侵害し合う「万人の万人に対する闘い」だととらえ、平等な社会契約に基づく人工国家の形成などを唱えた)。
 こういう物の見方は相対主義や愛国主義など右派・左派含めた幅広い層を取り込むため、その政治的潜在力を過小評価するのは誤りだろう。われわれが他の国より優れていなければ、他の国と同じように行動すればよいではないか。「自由世界」や「自由な国際秩序」といった表現が、ダボス会議に集まるエリート層がデトロイトに住む労働者階級を欺くためのイデオロギー上の策略であるならば、なぜそのために命も財産も犠牲にしなければならないのか。ナショナリズムは通常、真面目な道徳観が表出したものだ。しかしトランプ氏の非凡な才能は、これを不信感の表現へと転換した。
 この不信感を打ち負かすのは簡単ではない。現在、ロシアの反体制活動家ウラジーミル・カラムルザ氏が2度目の毒を盛られ、モスクワの病院で深刻な容体に陥っている。誰が犯人かは容易に想像がつくだろう。トランプ氏がこれを承知していると仮定すると、大半の米国人がカラムルザ氏の運命について自分と同じくらい無関心だと踏んでいるのは間違いだろうか?
 保守派にとってより重大な疑問は、世界に対するトランプ氏の悲観論がこれから先彼らにどのように影響するかだ。ベン・サス上院議員(ネブラスカ州選出)ら共和党の重鎮は、明らかに憤まんやるかたない態度だが、確実にその政治的な代償を払わされるだろう。一方、大統領の粗野な発言にいちいち反応するのは愚かだと考え、だんまりを決め込む人々もいる。ただ、沈黙はすなわち黙認の意味だと見なされるリスクがある。さらに言えば、ウィンストン・チャーチル元英首相やロナルド・レーガン元米大統領の説得力ある言葉で信念を確立した保守派の面々が、いつから言葉をこれほど軽んじるようになったのか?
 ちなみに2月6日は、故レーガン氏の生誕から106年目だった。第40代米大統領を務めた同氏は恐らく映画スターという経歴のせいで、米国人は誰もが似たり寄ったりの状況よりも、善良な人間が悪人に高らかに勝利するストーリーを好むことを知っていた。保守派はトランプ氏が政治的なフィルム・ノワール(退廃的な犯罪映画のジャンル)へといざなうのを警戒すべきだ。その結末は決まって荒涼としたものだから。
トランプ新大統領
• トランプ氏とロシア、共和党議員に抑止力はあるか
• トランプ流「衝撃と畏怖」作戦の行方
• トランプ氏、さっそく戦闘モードに
• トランプ時代のアメリカ、草の根の声

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiz0OyShoDSAhUKXrwKHd7rAw0QFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11367774349816344181604582608441471373790&usg=AFQjCNFMLqHAGM8hOOWQYF_IXiGMZg8tQg


 

【社説】米教育長官のきわどい承認劇が映す民主党の素顔
なぜ民主党上院議員は一人も賛成票を投じなかったのか
教育長官に承認されたベッツィ・デボス氏(1月17日)
教育長官に承認されたベッツィ・デボス氏(1月17日) PHOTO: REUTERS
2017 年 2 月 8 日 15:19 JST

 米連邦議会上院で7日、新たな歴史が生まれた。閣僚の指名承認採決で賛否を決する1票を史上初めて副大統領が投じた のだ。

 マイク・ペンス副大統領が議長決裁票を投じたのは教育長官に指名されていたベッツィ・デボス氏だ。長きにわたって教育改革を手がけてきたデボス氏について、民主党は資質がないとの論旨を展開し、上院では夜を徹した議論が続いた。共和党のリサ・マコウスキー氏とスーザン・コリンズ氏の2人がすでに反対に回っていたため、民主党はあと1人、共和党議員を切り崩そうと必死だったが、成功しなかった。結局、採決では賛否が拮抗(きっこう)し、ペンス副大統領が51票目の賛成票を投じた。

 デボス氏は晴れて任務に就くことができることになったが、この1件が現在の民主党について物語っている事を看過すべきではない。「教育長官」の承認を阻止するために、なぜ一政党の全組織が何週間にもわたって電話や電子メールで猛攻をしかけたのか。財務長官や国防長官ではない。教育関連予算の大半を管理する連邦機関ですらない。教育機関を管轄するのは州や各地の学校区だからだ。なぜ民主党はここまで必死になってデボス氏の承認を阻止しようとしたのか。

 その答えは労働組合の力とカネを巡る血も涙もない現実にある。米国の教育協会と教員連盟は、環境保護団体とともに現在の民主党に最大の影響力を持つ勢力だ。彼らは仕事や資金を提供してくれる民主党に投票し、さらに多くの民主党議員に投票するためにその資金を使う。この組織票を確保し続けるために、民主党は公教育の独占的支配体制を維持する必要があるのだ。

恥ずかしくも寝返った議員

 デボス氏はこの独占体制の申し子ではない。むしろその逆で、デボス氏はこの独占体制の結果として生まれた落ちこぼれ生徒や学業不振に目を向けた。公的資金を受けながら民間が主体となって運営するチャータースクールや、私学補助のバウチャー制度といった選択肢を全米に広げることで変革をもたらそうと活動してきた。何よりもデボス氏は、労組や民主党が使う「機会の平等」という高尚なレトリックを彼ら自身が本当は信じていないことを暴露してきた。彼らが大事にしているのは終身雇用であり、給料を得ることだ。

 この残念な政治の構図は、デボス氏をあえて支持しようとする民主党議員は誰もいないことを意味する。ニュージャージー州選出のコリー・ブッカー上院議員は恥ずかしい寝返りさえ演じた。ブッカー氏は同州ニューアークの市長時代に学校選択制の拡充を支持し、後に「米子ども連盟(AFC)」となるデボス氏の教育団体の理事を務めていた。

 ブッカー氏は2016年5月にも首都ワシントンで開かれたAFCの年次政策会合で熱のこもった演説を披露。ニューアークがブルッキングス研究所から「本当の学校選択制を保護者に提供する全米で4番目の都市」に挙げられたことを自慢してみせた。

 ブッカー氏は学校選択制についてこう説明した。「われわれはあることを実現するための最後の大きな闘争で戦っている最後の世代だ。それは、国内のどんな場所、どんな両親のもとに生まれようと、人種や宗教、社会的・経済的な状況にかかわらず、子どもたちが目指すべき進路と平等な機会が持てることだ。そのために教育ほど基本的なものはない。それこそが偉大な解放だ」

 見上げた解放者だ。7日の指名承認採決でブッカー氏はデボス氏に反対票を投じた。

 ブッカー氏の計算は単純だ。2020年の大統領選を視野に入れている同氏にとって、民主党候補の指名を勝ち取るためには何としても労組の支持が必要だ。民主党の代議員と選挙活動資金の大部分を教員連盟が握っていることを彼は知っている。学校選択制を支持した裏切りをここにきて悔やまざるを得なくなったというわけだ。

新長官にとって最良のリベンジとは

 労組は自分たちの独占体制が脅かされるといけないので、この問題に関して議論することさえ容認できない。よって「子どもたち」に関するやりとりは道徳に関するばかばかしいものに終始した。

 デボス氏は自分の時間とお金でほとんど何でもできる裕福な女性だ。その時間とお金を公益のための慈善活動に費やしてきた。特に、自分ほど恵まれた環境には生まれなくても、アメリカンドリームを実現できる平等なチャンスを子どもが得られる社会を目指して活動してきた。教育は子どもたちのための学習経験であるべきで、大人にとっての職業にすべきではないことをデボス氏は理解している。

 デボス氏の承認を阻止するために同党がここまで極端な行動に出た理由は、まさにこういうことである。現在の民主党に関して知っておくべきことはそれだけだ。デボス氏にとって最良のリベンジは、新たな職務のあらゆるリソースを利用して、チャータースクールとバウチャーの選択肢を全米にあまねく拡充する運動を押し進めることだ。本人もそれを分かっているとわれわれは信じている。

トランプ新大統領特集

トランプ閣僚承認やっと5人目、大幅な遅れ
最高裁判事指名のゴーサッチ氏、一部経歴に疑問
トランプ氏、最高裁判事承認へ「核オプション」示唆

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiJr4rKhIDSAhVKS7wKHSAxAp4QFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11367774349816344181604582608552843753624&usg=AFQjCNEWWjeAJQYzK_tShbrHkxWIZl7rWg
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/861.html

[経世済民118] 英国、移民減らせば日本と同じ道 米、熟練労働者不足 中国資本規制効果あり鍵は米利上 原油先物異変、供給過剰緩和 ロバ
【社説】
英国、移民減らせば日本と同じ道
EUから離れて成功するには、より多くの人材が要る
ヒースロー空港の入国審査コーナー(ロンドン)
2017 年 2 月 8 日 16:08 JST

 英国には移民が多すぎる。英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の熱心な支持者の多くはそう言っている。EUとの離脱協議で移民について強気の交渉を進めると話すテリーザ・メイ首相も同じだ。だが、英国が経済成長を維持するには移民が必要だとする新たな調査リポートを読めば考え直すかもしれない。

 人材コンサルタント会社マーサーの試算によると、英国生まれの労働者の人口は2013年にピークに達した。移民がいなければ、同国の労働力は既に縮小していただろう。そうなれば、少なくとも1850年代以降で初めて、人口全体の増加ペースが労働者の増加ペースを上回ることになる。

 そうした背景に照らして、リポートの執筆者は考えられる移民政策をいくつか検討している。そのうち最も寛大なシナリオでは、現在は年間30万人超の移民純流入数が2020年以降は18万5000人と、政府の予想に沿った流れをたどる。これにより2030年には、労働力が現在の水準を170万人(5%)上回る。この間、全体の人口は8%増加する見通し。

 人口動態や経済状況は、一部ブレグジット支持者が掲げる制限主義的な目標に近づくほど悪化する。移民純流入数がメイ首相の約束通り年間10万人に減った場合、2030年までの人口増加率7%に対し、労働力の伸びは3%にとどまるだろう。他のEU諸国出身者が英国から脱出するなどして移民の流出が流入を上回る極端なケースでは、現在より70万人少ない労働人口が、230万人多い人口を支えることになる。

 移民を制限すれば技能労働者の不足が増幅する。制限主義者に言わせると、移民が現在従事している仕事は英国人にもできる。ここで問題になるのが、それを埋めるのに十分な英国人がいないであろうことだ。子育てなどのために数年仕事から離れたい母親など、英国生まれの成人をより多く労働力に取り込むことは一段と難しくなりそうだからだ。求人を、特にほどほどの賃金で、埋めるのに腐心する雇用主は増えている。その結果、オートメーションへの依存度が高まったり、国外への事業移転が活発化したりしそうだ。

 厳しい移民制限は、財政均衡で苦戦する英政府の課題も深刻化させるだろう。マーサーが想定した中で最も寛大な移民政策の下では、労働者1000人が支える高齢者の数は、現在の277人から346人に増える。移民が純流出となるケースでは372人に増加する。

 メイ首相と同僚は、移民が英国の価値観や治安と矛盾しないことを有権者に請け負う必要がある。だがマーサーのリポートはあらためて気づかせてくれる――英国は移民がいたほうがうまくいく。でなければ、移民を恐れるもう一つの島国であるかつての経済大国、日本に影を落とす停滞の道をたどる。

関連記事

ブレグジット、英議会の試練
トランプ氏とブレグジットが開くチャンス
ブレグジットで日本モデルを後追いする英国
英EU離脱特集


https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwj1wZ_HhIDSAhVIWrwKHY2ZCgoQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11367774349816344181604582608593348825960&usg=AFQjCNEGkofE6ZfBqfSeekWNNqBUsPgqQA

 

 
逼迫する米労働市場、熟練労働者不足が顕著に
求人に対し適切な資格を有する応募者がほとんどいないという小企業の割合は昨年11月に17年ぶり高水準に達した

By JEFFREY SPARSHOTT
2017 年 2 月 8 日 12:45 JST

 米国の小企業は、いい労働者がなかなか見つからないと不満を漏らしている。今や米国の失業率は過去9年間で最低水準付近に低下しており、小企業にとっては従業員の研修というやっかいな仕事が増えている。

 小企業の約3分の2で従業員の研修に費やす時間が1年前より増えていることが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)と企業幹部助言会社ビステージ・インターナショナル(本社:サンディエゴ)の調査で明らかになった。

 このため企業が経験の浅い労働者を採用し、時間と資源を投じる必要が高まっており、熟練技能を必要とする製造業の職に就ける人々が増える可能性がある。

 ミシガン大学の経済学者でこの調査を統括したリチャード・カーティン氏は「企業が直面する最大の課題は、需給が逼迫(ひっぱく)している労働市場で採用を拡大する必要があることだ」と指摘した。

 安全装置メーカーのロック・エキゾティカ(本社:ユタ州クリアフィールド)のトラビス・レーン最高経営責任者(CEO)は「人材、特に何らかの経験のある人材を見つけるのは非常に難しい」とし、「経験の浅い若年層に目を向けざるを得ない状況だ」と述べた。

 リセッション(景気後退)からの回復期に、同社には社内訓練プログラムがなかった。しかしこの3年間に、レーンCEOは新規採用者向けの詳細な研修の計画を構築・運営できる人材を雇った。それでも、新人従業員が監督者なしに機械を扱えるようになるまでには6カ月ほどかかる。数年前は3カ月ほどで済んでいた。

 労働省が発表する統計によると、失業率は2009年10月に10%でピークを付けた。当時は1500万人を超える米国人が積極的に職を探していたが、見つからない状態だった。その後、16年12月時点では失業率は4.7%となり、公式な失業者数は約750万人と、ピーク時の約半分まで減った。

 そのため労働市場が逼迫し、全米自営業連盟(NFIB)によると、求人に対し適切な資格を有する応募者がほとんどいないか皆無という小企業の割合は昨年11月に17年ぶり高水準に達した。その後、12月にはその割合は若干低下した。

 米連邦準備制度理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長は先月、こうした経済指標で「労働市場は金融危機以前よりも若干逼迫していることがうかがえる」と述べた。

 一方で、労働人口の多くがまだふさわしい職についていないことを示す指標もある。職探しを中止した人々やフルタイム雇用を望みながらパートタイムで働いている人々を含む失業率は引き続き高い。労働人口中の25?54歳の男女の割合は15年後半には30年ぶり低水準に並び、その後、遅いペースながら回復し始めた。それでも、この世代の労働参加率は景気低迷以前の10年間の平均を引き続き下回っている。

 他にも要因がありそうだ。例えば、製造業部門では高校やコミュニティーカレッジの卒業生が過去の世代ほど行き届た職業訓練を受けていないという不満が企業から聞かれることも多い。高度な機械を扱う企業では、特定の技能を有する労働者が必要だが、企業の一部は経済の低迷期に経費節約のため研修を縮小していた。労働者の採用が楽だったこともまたその理由だ。

 しかし状況は変わった。経済の回復を受け、職を辞めた工場労働者の数は昨年10月と11月に8年ぶり高水準となった。これはもっと良い職が見つかるとの自信をうかがわせる兆候だ。12月の製造業部門の賃金は前年同月比3.4%上昇と、民間部門労働者全体の2.9%上昇を上回った。

 精密工具メーカー、マウンツのブラッド・マウンツ社長兼CEOは「労働市場が逼迫しているときは職業訓練を増やす必要があるように思う」と述べた。同社は「採用した人々が与えられた職をこなせるよう確実にするために訓練費を4倍近く増やした」という。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwj6457XhoDSAhWKxbwKHbemBIsQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582608481537372826&usg=AFQjCNGNRncAstSDJtI-DKDf7Qy4iKHOGw


 


 

中国の資本規制は効果あり、今後の鍵は米利上げ
中国の1月末の外貨準備高は約6年ぶりに3兆ドルを下回った
By NATHANIEL TAPLIN
2017 年 2 月 8 日 13:03 JST

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 中国の国家外貨管理局のホームページには、雲がたなびく青空の下で万里の長城が連なるのどかな風景が掲載されている。長城は入念に維持管理されているように見える。

 7日に発表された中国の1月末の外貨準備高は3兆ドルの節目をわずかに下回った。一方で、この節目を下回ったということばかりが注目された結果、前月末比の減少幅が約123億ドルと7月以降で最も小さかったという事実はかすんでしまった。減少幅の縮小は、1月にドルの下落によって、中国のドル以外の外貨準備の価値がかさ上げされたことが一因とみられる。だが資本規制の強化も影響を及ぼしていることを示す証拠が増えている。

 市場の純粋主義者は認めないだろうが、人民元の流出に対する規制強化は、金融政策スタンスの引き締めと相まって、外貨準備を取り崩すペースを落とすという中国の重要な目標達成を後押しする可能性がある。これによって一時的にせよドルに対する元の下落ペースが減速するため、ドナルド・トランプ米大統領の不満はなだめられるかもしれない。

 最近の規制強化の主なターゲットである人民元の流出と中国の対外直接投資はいずれも2016年10-12月期に大幅に減少した。キャピタル・エコノミクスのジュリアン・エバンス・プリチャード氏によると、対外直接投資は昨年11月の推定220億ドルから12月にはその半分以下に減少し、例年とは逆の結果となった。

 金融政策も15年半ばに資金流出圧力が強まって以来初めて、引き締め方向に傾いていることが鮮明になっている。これは債券利回りを押し上げ、元建て資産の魅力を高めるはずだ。この2週間、短期金利が上昇していることを受けて、中国人民銀行(中央銀行)は7日、定例オペ(公開市場操作)による短期金融市場への資金供給を2回連続で見送った。オフショア人民元のノンデリバラブル・フォワード(NDF)も元安ペースの減速を織り込み始めており、足元では1年後に元はドルに対し3%下落すると予想されている。1月上旬時点では5%だった。

 米国から聞こえてくる好戦的な発言にイライラしている中国の政策担当者にとって、元相場の安定化は(今のところ)政治的に理にかなっている。

 とはいえ、不確定要素はやはり連邦準備制度理事会(FRB)の動きだ。米国の利上げ(その時期が3月であれ6月であれ、あるいはそれ以降になったとしても)が行われれば、どのみち元安圧力は再燃するだろう。中国でさえ、FRBと戦うのは容易ではない。

関連記事

中国の人民元操作が危うくなっている理由
中国、金融政策スタンス引き締めの裏側―当局の対立
【寄稿】もし中国が米国の役割を担うなら

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiejobUhoDSAhUDf7wKHZIIByEQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582608503398378874&usg=AFQjCNGNbQTlz-pfRQ4YYKMhqnX0HLkfsQ


 


 
原油先物カーブに異変、供給過剰緩和の兆しか
原油先物カーブの変化は供給過剰の緩和を示唆しているのか(写真は北海の石油リグ)  
By STEPHANIE YANG AND ALISON SIDER
2017 年 2 月 8 日 14:13 JST

 原油市場で注視されている指標の一つから、供給過剰が緩和しつつある可能性がうかがえる。実際に緩和に向かっているなら、原油価格上昇の一助となるかもしれない。

 この市場指標とは原油先物の期近価格と期先価格の関係だ。ここ2年余り、期先価格が期近価格より高い状態が続いている。この状態は「コンタンゴ(順ざや)」と呼ばれる。コンタンゴでは、原油を直ちに売却するよりも貯蔵した方が利益になる。これは、市場の重荷となってきた在庫の積み上がりを引き起こした一因でもある。

 だが、この期近価格と期先価格の関係は目下、変化しつつあるのかもしれない。

 石油輸出機構(OPEC)とOPECに加盟していない主要産油国は昨年11月末、1月から6カ月にわたり生産量を日量180万バレルに削減することで合意した。これを受け、原油先物市場では期近限月の価格が上昇している。

 バンクオブアメリカ・メリルリンチとゴールドマン・サックスは、減産合意を受け、早ければ2017年4-6月期にも期近価格が期先価格を上回る可能性があると予想している。こちらは「バックワーデーション(逆ざや)」と呼ばれる状態だ。

 ソシエテ・ジェネラル・コモディティーズ・リサーチは、17年末に納会を迎える限月と来年初めが納会の限月との価格差がこのところ変動している点を指摘し、期近の限月が数カ月のうちにバックワーデーションに戻る兆しかもしれないとの見方を示した。

 バックワーデーションに戻れば、原油相場には好材料だろう。投資家にとって原油の魅力が増すと考えられるからだ。

 JPモルガン・アセット・マネジメントのエネルギー投資部門責任者、エベル・ケメリー氏は「これこそが投資家や市場参加者が強気姿勢を取っている理由だ」とし、原油価格のカーブがバックワーデーションに戻れば「市場はそれに飛び付くだろう」と述べた。

 米原油価格は約1年前の安値から持ち直し、足元では1バレル=50?55ドルで推移しているが、これは14年半ばの水準の半値ほどにすぎない。

 S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのデータを1987年までさかのぼると、現在の長い原油低迷期は過去2番目に長いコンタンゴ期と一致する。ちなみに、最も長くコンタンゴが続いたのは、金融危機を背景に需要が大きく落ち込んだ08年11月から11年10月までだ。

 OPECが減産合意を最後まで守ったとしても、供給過剰がそれほどすぐには是正されず、バックワーデーションがまたしても一時的なものに終わりかねないと考える理由はたくさんあるとアナリストらは言う。

 一部のアナリストはいま兆しが見え始めているバックワーデーションについて、原油市場の引き締まりではなく投機筋の一時的な動きを示している可能性があると指摘する。期先限月の下落は、米国のシェールオイル採掘業者がヘッジを大幅に増やしているしるしだという。採掘業者は17年末や18年中に期限を迎える限月を売却することで1、2年先の販売価格を固定させ、増産に動いている。

 こうした米シェールオイル企業の増産が在庫削減の大きなネックとなり、コンタンゴは終わらない恐れもある。

 だが、ヘッジファンドなとの投機筋は原油市場の需給均衡が近いとの見方から、すでに強気姿勢に転じている。米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細によると、1月31日までの週に原油先物の買い越しは約10年前のデータ公表開始以来最も多くなった。

 また、期先限月の価格が期近限月の価格を下回れば、目先の利益を増やしたいと考える投資家が先物市場に資金を投じる可能性もある。

 ファンド勢は納会が最も近い限月を保有することが多く、納会日には差額を支払い、次の限月にロールオーバー(乗り換え)する。コンタンゴの状態の場合、次の限月の方が価格が高いため、「ロールコスト」が発生し、利益がその分減る。

 一方、バックワーデーションでは、期先物の方が安いため、価格がほぼ横ばいでも投資家の利益は増える。ゴールドマン・サックスのアナリストらは、コモディティー(国際商品)市場ではこうしたバックワーデーション下での利益が今後12カ月、「トータルリターンの押し上げ要因の一つとして重要性が増す」とみている。

 USCFインベストメンツのジョン・ラブ最高経営責任者(CEO)は「そうなれば投資家にとってありがたい。ポジションに追い風となるため、そうなってほしいものだ」と語った。同社が運用する米原油ファンドでは、期近物を買い、1カ月ごとに次の限月にロールオーバーしている。

 原油先物から利益を得やすくなれば、ガソリン先物など「代用」商品に比べて原油の魅力が高まることにもなるとアナリストらは指摘。

 バンエック・グローバル・ハード・アセット・ファンドのポートフォリオマネジャー、ショーン・レイノルズ氏は「ロールオーバーの利益をトレーディング収入の柱としてきたコモディティー・トレーダーが大勢いる。彼らは何年も大変な苦戦を強いられてきた」と話した。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiw_6SQhoDSAhWCU7wKHQsiBDAQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582608602217637494&usg=AFQjCNH3hFq7iqXoIppXmRWQTwDy3UWjJw


 


 著名投資家ロバートソン氏の門下生、昨年は軒並み苦戦
タイガー・グローバル・マネジメントのジュリアン・ロバートソン氏(2010年)
By JULIET CHUNG
2017 年 2 月 8 日 12:22 JST

 著名投資家ジュリアン・ロバートソン氏とその門下生たちは、数十年にわたり弱肉強食のウォール街を支配してきた。だが2016年は風向きが変わり、厳しい年となった。

 昨年、タイガー・グローバル・マネジメントのヘッジファンド部門の損失は約9億ドルに上り、投資リターンは15.3%のマイナスとなった。投資家や関係者によると、110億ドルを運用するリー・エーンズリー氏のマーベリック・キャピタルでは旗艦ファンドのリターンがマイナス10%超、バイキング・グローバル・インベスターズはマイナス4%となった。それ以外のロバートソン氏の元部下たちは、小幅な利益ないし損失を計上した。

 これに対し、S&P500種指数のリターンはプラス12%(配当を含む)だった。

 バイキングは投資家に宛てた1月17日付の書簡で、「こうした結果に非常に失望している。絶対値としても、相対的にも、われわれの目標を大きく下回っている」と書いている。

 これらの「タイガーカブ」(タイガーでロバートソン氏の部下として働いた経験を持つトレーダーが創業したヘッジファンド)を含め、株式ヘッジファンドは昨年さえなかった。

 モルガン・スタンレーによると、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスは昨年のリターン(12月を除く)が8.5%だったが、株式ヘッジファンドのリターンはその5分の1にとどまった。

 この相対的リターンは、2008年の金融危機以降で2番目に悪い。

 16年の相場はタイガーカブや他のボトムアップ投資家にとって難しかった。銘柄が、それぞれの基礎的条件(ファンダメンタルズ)に基づいた値動きをしないケースが多かったのだ。

 同年はセクター全体が歩調を合わせ、例えば上半期にはエネルギー株が上昇し、ドナルド・トランプ氏が大統領に当選すると経済成長への期待から金融株が上昇した。

 そうした横並びの動きは、世界や政治の変化をより広く捉えて投資するファンドには追い風になり得るが、企業のバランスシートを綿密に調べて判断を下す投資家には逆風だ。

 ロバートソン氏はコメントを控えた。同氏が1980年に創設したタイガーは、ピーク時には運用額が220億ドルを超えた。

 2000年に損失を出し、投資家が離れたことから顧客に資金を償還。その後は小さめのヘッジファンドを支える事業に切り替えた。ロバートソン氏の下で働いていた数名は、業界最大級のファンドで計1000億ドルを超える資金を運用している。投資哲学を共有していることから、同じ取引に参加することも多い。

 チャールズ・チェース・コールマン氏のタイガー・グローバルのようなファンドは16年には、かつて好調だったIT銘柄の下落を受けて損失を出した。

 関係者によると、ITにフォーカスしたタイガー・グローバルのファンドは同年の最初の6週間で22%下げ、通年では15.3%の下落となった。

 1-3月期には、アマゾン・ドット・コム、京東商城(JDドット・コム)、ネットフリックスの下げが響いた。

 ヘルスケア銘柄もタイガーカブの足を引っ張った。ローン・パイン・キャピタルとバイキングはバリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナルへの投資が響いた。バイキングの書簡によると、昨年はこのほかアラガンとテバファーマスーティカル・インダストリーズの下げも打撃となった。

 大統領選後、一部のトレーダーは銘柄選択投資の環境が改善するとの見方を示している。ドナルド・トランプ大統領が財政出動を計画し、貿易および税金や、銀行・医薬品その他業界の規制緩和について豪語しているため、相場の変動性が高まっているためだ。この変動性と各中銀の債券買い入れプログラム減退が相まって、ここ数年トレーダーが不満を抱いている静かな相場が打破されるかもしれない。

 関係者によると、マーベリック、タイガー・グローバル、バイキングは今年1月には上昇。タイガー・グローバルは5.5%上昇した。

関連記事

ヘッジファンド、トランプ政権で環境改善か
世界最大のヘッジファンド、社員の脳でアルゴリズム構築
一部ヘッジファンド、株価下落の読み外れ大打撃


https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiRwLjehoDSAhXLvbwKHUtPAUIQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11367774349816344181604582608332804780926&usg=AFQjCNFcbLqtZk4ZWW5kRJ_tahiPA9yKaA


http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/804.html

[国際17] ワインの次は大麻、カリフォルニアの名産品に ワインのように原産地証明へ ギリシャ、ユーロ圏離脱の恐れ−支援交渉打開IMF
ワインの次は大麻、カリフォルニアの名産品に


カリフォルニア州の当局者は、フランスのシャンパンやボルドーワインのように、大麻の原産地証明の統括組織を設立する意向だという
By ZUSHA ELINSON
2017 年 2 月 7 日 15:59 JST

【アルビオン(米カリフォルニア州)】昨年11月に嗜好用の大麻が合法化されたカリフォルニア州。同州北部の「エメラルド・トライアングル(メンドシーノ、ハンボルトとトリニティの3郡)」では、大麻栽培をワイン産業のように原産地に価値を置くモデルに変えようと努力する人たちがいる。

 その中の1人、ジャスティン・カルビーノ氏(38)は、泥だらけの黒いトラックを運転し、太平洋の波が寄せては返す海岸から、樹木の茂った丘を目指す。そこは「大麻のボルドー」になるよう同氏が希望している丘だ。

 メンドシーノ海岸地域を覆う海からの冷気は、栽培する大麻に独特の「フレッシュで土臭い味」をもたらすのだという。

 同州の当局者は、フランスのシャンパンやボルドーワインのように、大麻の原産地証明の統括組織を設立する意向だと述べた。

 実現すれば、他のどの地域の大麻農家も販売できない原産地呼称の大麻が誕生することになる。

 こうした促進努力の背景にあるのが「テロワール」の概念だ。本来は、独特の天候や土壌、そして耕作法などによって異なるワインの味わいを生み出すブドウの生育地の特徴を言う。ワイン鑑定士は、天候がわずかに違うほんの数マイル離れた2カ所の土地で栽培された2種類のブドウの微妙な違いをテイスティングで区別できる。

ジャスティン・カルビーノ氏
 カルビーノ氏が所有するメンドシーノ郡の農場では1月の寒い午後、同氏と2人の大麻愛好家が現地で採れた大麻の味わいを絶賛していた。

 ニック・スミルギーズ氏は「テイスティングはたいてい香りと見た目から始める」と述べた。同氏の味覚は、ローリング・ストーン誌が大麻界のアカデミー賞と呼んだエメラルド・カップで審判員の地位に推挙されたほどだ。

 スミルギーズ氏は、大麻のサンプルを見つめ、「青みがかった色彩」を指摘。そして指で持ち上げ、深くにおいをかぎ、宣言した。「フルーティーな感じで土っぽい感じもある」

 コロラド州で「大麻ソムリエ」を育成しているトライコム・インスティチュートの講師らによると、大麻の世界では、シトラス、パイン、土っぽい、そしてスパイスの香りというのは評価が高い表現だ。一方、「塩とコショウ」の臭いや、「鼻をつく古いジムのロッカー」の臭いはマイナスの表現だという。

ニック・スミルギーズ氏
ニック・スミルギーズ氏 PHOTO: ZUSHA ELINSON/WALL STREET JOURNAL
 カリフォルニア州の大麻農家は、自分たちの土地が他に類をみないユニークな立地にあるとの主張を強めている。一方、エメラルド・トライアングルが本当にワイン界のボルドー地方と同程度に特別な場所なのかは議論が続いている。

 大麻専門誌「ハイ・タイムズ・マガジン」の創設者エド・ローゼンタール氏は、霧の多いカリフォルニア州北部が大麻栽培地に選ばれたのは大麻が非合法だった時代で、警察などの監視の目から隠しやすかったからだと指摘。大麻栽培に理想的な気候だったからではないと語る。

 同氏は「最高級品が栽培できる可能性があるのは、セントラルバレーだろう」と述べる。同州中央部のセントラルバレーは日光が降り注ぐ地域で、果物や野菜の一大生産地だ。

 エメラルド・トライアングルの人々は、セントラルバレー産の大麻と競い合うなかで、高品質市場の一角を占められるよう望んでいる。

 調査会社アークビュー・グループの推計によると、カリフォルニア州における合法大麻の売上高は今後5年間で62億ドル(約7000億円)に達する可能性があるという。

関連記事

米コロラド州の大麻業者、合法化後も現金取引
大麻の合法化で銃購入者に戸惑い
家庭で容易に麻薬密造、米国で広がるオピオイド危機
米国の麻薬問題に「チャイニーズ・コネクション」

http://jp.wsj.com/articles/SB10734999991334983926204582606732666928926

 


ギリシャ、ユーロ圏離脱の恐れ−支援交渉打開を=IMF
ギリシャのチプラス首相(右)とツァカロトス財務相
By IAN TALLEY
2017 年 2 月 8 日 15:07 JST

 【ワシントン】国際通貨基金(IMF)は7日、ギリシャ政府と欧州債権団の同国向け支援策を巡る交渉が行き詰まりを見せる中、同国がユーロ圏離脱を余儀なくされる恐れが再燃していると警告した。また、IMFが近いうちに再び同支援策に加わる可能性が低いことをこれまでにないほどはっきりと示唆した。

 IMFは、ギリシャ政府と欧州債権団がさらに踏み込んだ経済改革や大幅な債務減免で合意しない限り、追加融資は検討しないと述べた。

 IMFは7日、ギリシャ経済に関する年次審査報告書とIMFの同国向け融資第2弾についての評価報告書を発表した。この二つの報告書は、ユーロ圏の支援策が疲弊したギリシャ経済を再建できるのかにIMFが深い疑念を抱いていること、そしてIMFが近い将来に第3弾の融資を行う可能性が低いことを浮き彫りにした。

 IMFは年次審査報告書で、ギリシャの債務は依然として「全く持続不可能」で、債務減免や年金制度・税制の大改革を行わない限り、経済成長が加速する見通しはほとんどないと指摘。さらに、経済の立て直しと債務減免が実現しない場合は「再び流動性逼迫(ひっぱく)に見舞われる恐れがあり、追加支援を受けられなければグレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)懸念が再燃しかねない」と述べた。

 一方、IMF融資第2弾の評価報告書では、ギリシャやその他の国々に対する今後の融資の指針とすべき幾つもの教訓に言及した。

 特に重要視すべき二つのポイントとして、政治的な理由で実行できないということがないよう必要な改革の規模を抑えること、そしてIMFが支援策への参加を決める前に他の債権者らからより強いコミットメントを確保することを挙げた。

 IMFは「中期的な基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化の現実的な目標に基づいて持続可能な債務水準を割り出し、その水準を達成できるような債務減免を行うことを最初に取り決めておくことが必要だ。これが、ギリシャが直面している状況の中で支援策が成功するための前提条件となる」と述べた。

関連記事

ギリシャ危機の悪夢再び、債務不安で国債に投げ売り
ギリシャと債権団、救済策巡る交渉で折り合いつかず
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiHr9z7j4DSAhXGWrwKHeJxDqYQqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582608682080386896&usg=AFQjCNEQ4byp3ClfKhIKBebfjCGLpY6OtQ
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/864.html

[経世済民118] 本当は全然高くなかった日本人の仕事への「熱意」 表向きは勤勉だが「熱意」は最低  部長でも課長でもないAさんが組織を変
本当は全然高くなかった日本人の仕事への「熱意」
「勤勉さ」が通用しない時代に
2017.2.8(水) 太田 肇
日本人は本当に「勤勉」なのだろうか(写真はイメージ)
過労自殺に象徴される「働き過ぎ」、相次ぐ大企業の不祥事、掛け声ばかりで進まぬ女性の管理職登用、職場のハラスメント・・・。一方ではイノベーションや画期的新製品がなかなか生まれず、企業の国際競争力や労働生産性の順位も低下している現実。

いま日本人の働き方、職場のあり方があらためて問われている。政府は「働き方改革」を看板政策として掲げ、企業も改革に本腰を入れるようになった。しかし私が見るところ、現状はいわば対症療法が中心で核心に迫っているとは言いがたい。

冒頭に掲げたような諸問題は、いずれも日本企業特有の組織構造、あるいは組織と個人の関係に根ざしている。したがって、そこにメスを入れないかぎり問題の根本的な解決にはつながらないわけである。

そこでこの連載では、「組織と個人」の関係に焦点を当てながら、日本人の働き方、企業組織の特徴を浮き彫りにし、改革への展望を示したい。

表向きは勤勉だが、仕事への「熱意」は最低

第1回は、日本人の働き方に注目してみよう。

これまで日本人は勤勉だと言われ続けてきた。いま問題になっている「働き過ぎ」はその副作用ともいえる。

しかし、そもそも日本人は本当に勤勉なのだろうか?

まず一般労働者(正社員)の年間総労働時間を見ると、2030時間(厚生労働省「毎月勤労統計調査」2012年)で主要国のなかでは突出して長い。しかも手当が支払われない「サービス残業」もかなり存在することが知られている。また有給休暇の取得率は47.6%(厚生労働省「就労条件総合調査」2015年)と半分も取得されない状態が続いている。

これらの数字を見るかぎり、日本人の勤勉さは依然として健在だといえそうだ。

しかし、他方にはそれと逆のデータもある。

従業員の「エンゲージメント」(仕事に対する積極的な関わり方を意味し、「熱意」と訳されることが多い)に関する国際比較を見ると、複数の調査ではいずれも日本人の低さが際だっている。たとえばアメリカの人材コンサルタント会社、ケネクサが2012年に正社員を対象に行った調査によると、日本人のエンゲージメントは28カ国の中で最低である。

一見すると勤勉そうだが、仕事に対する熱意は低い。すなわち安定しているが受け身で消極的な日本人の働き方がそこから読み取れる。

努力の「質」が問われる時代に

このような働き方は、工業社会には適していたといってよい。とりわけ少品種大量生産型システムにおいては標準化された製品を迅速かつ低コストで生産することが重視され、労働者にはコツコツと勤勉に働くことが求められた。そこでは労働時間と仕事の成果はほぼ比例していた。たとえ受け身、消極的な働き方でもそれほど問題ではなかったのである。なお、それは事務や販売などの仕事においてもおおむね同じである。

ところが、ポスト工業社会に突入すると状況が一変する。1970年代後半から始まったME(マイクロエレクトロニクス)技術革新、そして90年代後半からのIT革命によって生産現場でも、オフィスや店舗でも単純な仕事、定型的な業務は自動化された機械やコンピュータに取って代わられた。そしてハードウエアすなわちモノそのものより、技術、知識、情報、デザインなどソフトウエアが大きな価値をもつようになった。その結果、人間には創造性、革新性、勘、ひらめき、感性、判断力など人間特有の能力がいっそう求められるようになったわけである。

これらの能力には重要な特徴が2つある。

1つは大事な仕事のプロセスが見えないことだ。なぜなら、それが人間の頭で行われているからである。それによってこれまでのマネジメントは根本的な見直しを迫られる。この点については別の回に述べることにしよう。

そしてもう1つは、ここに挙げたような能力は本人の自発的なモチベーションによって発揮させるということ。言い換えれば「受け身」では十分に発揮されないということである。つまり努力の「量」より「質」が重要になっていることを意味する。

作家や芸術家、科学者といった創造性を売り物にする人たちを思い浮かべてみればよい。彼らの優れたアイデアや創造的な成果は自ら仕事に没頭したときに生まれるのであり、いくら長時間働いても受け身では成果があがらない。企業で働く人にとっても同じように受け身の勤勉さではなく、自発的なモチベーションがいっそう大切になってきているのである。

しかし、人々の意識はなかなか変わらない。とくにわが国の場合、明治以降ずっと工業化社会で成功を収めてきたため、その成功体験が企業の中だけでなく社会の隅々にまで浸透している。それが新しい環境への適応を妨げているのである。

実際に私たちはいまでも努力を量でしか捉えようとしない。事あるごとに「全力で」「一丸となって」「精一杯」といった威勢のよい言葉が発せられ、とにかくがんばればよいと考えるのはその表れだ。しかし、がむしゃらにがんばれば何とかなる時代ではないし、その延長線上には過労死や過労自殺といった悲惨な出来事も起こりうることを肝に銘じておかなければならない。

単なる勤勉さではなく、「自発的なモチベーション」「良質な努力」をいかに引き出すかが問われている。

[参考文献]
・『「見せかけの勤勉」の正体』(太田肇著、PHP研究所、2010年)
・『がんばると迷惑な人』(同、新潮新書、2014年)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48945

 


部長でも課長でもないAさんが組織を変えた方法 1人の力でも組織は変えられる!
2017.2.8(水) 和気 香子
Aさんのある行動によって部署の雰囲気はぐっと良くなった(写真はイメージ)
?この前、ある大企業に勤めているAさんという方から素晴らしい話を聞きました。

?Aさんは管理職ではなく1プレイヤーとして働いています。2年ほど前、Aさんが現在の部署に異動になったとき、「何だか雰囲気があんまり良くないなあ」と感じたそうです。社員同士の仲が悪いわけではないのですが、お互いのコミュニケーションが不足していてみんな言いたいことが言えず、なんだかよそよそしく感じられたようです。

?そこで、Aさんは「よし、この部署を変える!」と決めたのだそうです。

実行したのはとてもシンプルなこと

?その部署は、150人もの大所帯です。私は「どうやって?」と思いました。部長や課長たちが先陣切って変えるというのならばイメージできますが、一プレイヤーのAさんが、というのはイメージしにくかったのです。

?では、Aさんは何をしたのか。実行したのはとてもシンプルで簡単なことでした。

?それは、挨拶です。Aさんはこう言います。

「人の出入りがあると、必ず大きな声で挨拶したんです。『おはようございます』『お疲れさま!』とか。そうしたら、やっている内に、席の近くの人たちが真似してくれるようになりました。最後は、その内に部署全体がそうなりました。そして、今では、部署として仕事以外のイベントを企画したり、皆で何かをやる一体感が出てきたんです」

?それを聞いて、驚きました。いきなり1人だけ大きな声を出して挨拶を始めるのは相当な勇気がいることです。周りの人も「一体どうしたんだ」と思ったことでしょう。自分自身をふり返ってみても、出社時や退社時に挨拶をするにはしますが、何だか気恥ずかしくて、最低限の挨拶しかせず、声も小さめです。

?だから、Aさんのしたことに感激して、それがいかに素晴らしいことかを伝えました。ところがAさんの返事は、「そんな大したことはしていませんよ。だって挨拶しただけですよ。挨拶って当たり前のことじゃないですか?」というものでした。

「トップ自らがコミットしないと会社は変わらない」とよく聞きます。私もそう考えていた口でした。ところが、Aさんはトップでも管理職でもありません。つまり、誰もが組織を変える可能性を持っているということが言えるかもしれません。

?それが実現できる条件って何だろうとさらにAさんに話を伺うと、「私は今の会社が大好きなんです。だから良くなってほしいと思うんです。そのためなら自分でできることは何でもしようって思います」とおっしゃいました。そう思わせる会社も素晴らしいし、そう思えるAさんも素敵です。もしかしたら、1人の従業員が会社を変えるための条件は“相思相愛”なのかもしれません。

自分の強みには気づきにくい

?今回はこの話を通して、2つのことを皆さんにお伝えしたいと思います。

?1つ目は、1人の力でも組織は変えられるんだということ。

?2つ目は、自分の強みには気づきにくいということです。以上のエピソードから分かるように、Aさんには、人を巻き込んで協力体制を作る力があります。ところが、Aさんは「大したことはしていません」とおっしゃいます。Aさんはそれを強みだとは感じてなかったのです。自分にとって当たり前にできてしまうことは、あまりに当たり前すぎて、強みと思えないものだったりするのです。

?皆さんも「すごいですね!」と言われて、「全然すごくないんだけど・・・」と思ったことありませんか??でも、それは自分の本当の強みに気づいていないだけかもしれません。もっと胸を張って自信を持ってみてはいかがでしょうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48926
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/805.html

[政治・選挙・NHK220] マティス来日でも全然一件落着ではない防衛負担問題 マティス発言にぬか喜び禁物、強か中国次の一手 米国が守ってくれる幻想を

 

マティス来日でも全然一件落着ではない防衛負担問題
トランプ大統領が問題視しているのは駐留経費だけではない
2017.2.8(水) 古森 義久
冷戦時代の沖縄への核配備、米政府が初めて公式に機密解除
沖縄県宜野湾市にある米軍の普天間飛行場(資料写真)。(c)AFP/Kazuhiro NOGI〔AFPBB News〕
トランプ新政権のジェームズ・マティス国防長官が来日して、日本側の在日米軍駐留経費負担は適切であり「他の国のモデルになる」と述べた。

トランプ大統領が選挙期間中からたびたび批判していた「日米の不公平な防衛負担」という問題がひとまず片づき、日本側の官民はほっと一息ついた観がある。

だが、トランプ氏が「不公平」と指摘していたのは、在日米軍駐留経費だけではない。駐留経費は、日米同盟全体からみれば少額の経費に過ぎない。

在日米軍駐留経費とは、日本国内の基地に駐留する米軍が基地貸与やその光熱費、日本人従業員の給与などに要する労務費を指す。つまり、基地を運営する費用である(米軍の活動そのものに要する費用は、すべて米側が負担することになっている)。

その在日米軍駐留経費の約75%を毎年日本政府が負担している。平成28年度の予算案では約3700億円が日本の防衛費の中に計上されていた。日本の防衛費は全体で約5兆円だから、日本の負担する米軍駐留経費はその10分の1以下に過ぎない。

むしろトランプ氏は、日米同盟の構造的な片務性や日本の防衛の内向き姿勢に強い不満を表明している。だから今後、トランプ政権が日本の防衛を未解決の案件として批判してくる公算はかなり大きいと言ってよい。

トランプ氏が批判するのは日米同盟の片務性

トランプ氏が最初に日本の防衛負担について発言したのは2015年8月である。アラバマ州モービル市の大集会で次のように述べた。

「(いまの日米同盟の下では)米国はもし日本が攻撃を受けた場合、日本を防衛することを義務づけられています。しかし日米安保条約の規定では、日本は米国を防衛支援する必要はないのです。こんな状態をみなさんは良い取り決めだと思いますか?」

同盟を結びながらも日本は守られるだけである。憲法のせいで、同盟の相手を守る義務はない。こんな世界でも珍しい取り決めがこのままでいいのかとトランプ氏は指摘した。トランプ氏は明らかに日米同盟の片務性を批判していたのである。

トランプ氏はそれからちょうど1年後の2016年8月にも、アイオワ州のデモイン市での演説で同じようなことを述べた。

「日本との安保条約では、もし日本が攻撃された場合、米軍は全力で日本を守らねばなりません。しかし、米国が攻撃されても日本は何もしなくてもよい。家にいてソニーのテレビでも見ていればいいのです」

日本は、自国の領土や領海の外では、同盟国の軍隊や民間人が軍事攻撃を受けても、軍事力を使って共同防衛や支援をすることはできない。トランプ氏はここでも、その日米同盟の片務性を指摘し、不公平だと非難している。

そして、トランプ氏は演説の中で、在日米軍駐留経費の問題にも触れ、「日本側がその50%を出しているそうだが、なぜ100%を出さないのか」とも述べた。

トランプ氏が演説で日米同盟に触れる際は、以上のようにほとんどは日本の防衛努力全体や防衛費全体が不十分という趣旨の批判である。在日米軍駐留経費だけに焦点をしぼって日本を批判することはほとんどない。

日本政府は「聞こえないふり」?

これに対して日本政府は、トランプ氏の批判はすべて駐留経費負担だけに向けられているという対応をみせた。日米同盟の片務性や防衛費全体の金額、さらには日本の防衛態勢そのものへの批判については、まるでないかのように振舞った。

日米同盟の実務面のやりとりを少しでも知っている日本側の関係者ならば、米国側が日本に、防衛面での憲法上の制約を取り除き、防衛費を増額するよう求めていることを知っている。それにもかかわらず、あえて聞こえないふりをしているのだ。

これまでトランプ氏は、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国がどこも防衛費を少なくともGDPの2%以上に保つという誓約をしながら、28カ国のうち4カ国しかその約束を履行していないことへの不満を何度も表明してきた(日本は約1%)。やがては、日本の防衛費の対GDP比に目をつけ、増額するよう要求してくるはずである。

マティス氏が「日本の在日米軍駐留経費負担は適切」と言ったところで、日本の防衛負担の問題は決して終わっていないのである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49124

 


マティス発言にぬか喜び禁物、強か中国次の一手
米国が守ってくれる幻想を捨て、尖閣を自ら守る体制整えよ
2017.2.8(水) 織田 邦男
尖閣は日米安保の適用範囲、マティス米国防長官
都内の防衛省で握手を交わす、ジェームズ・マティス米国防長官(左)と稲田朋美防衛相(2017年2月4日撮影)〔AFPBB News〕
2月3日(金)、ジョージ・マティス米国国防長官が来日した。安倍晋三首相はトランプ新政権発足後、初の重要閣僚の来日に対し、「揺るぎない同盟をさらに確固たるものにしたい」と述べて歓迎した。

翌4日に実施された稲田朋美防衛大臣との会談では、日米同盟がアジア太平洋地域の平和と繁栄を支える公共財であること、そしてトランプ新政権との間で、日米同盟の重要性が相互に確認できたことは、大きく評価できる。

米国の「核の傘」による拡大抑止の維持、北朝鮮、中国に対する脅威認識、普天間飛行場の名護市辺野古への移転に対する相互認識の一致など大きな成果があった。

なかでも、マティス国防長官が「尖閣が安保条約5条の適用対象」と語ったこと、そして在日米軍駐留経費負担が「他国の模範」と述べたことが、日本政府にとっては、何よりの成果であった。記者会見における稲田防衛大臣の安堵と高揚感の入り混じった表情からも見てとれる。

尖閣への「5条適用対象」発言については、2014年4月、バラク・オバマ大統領訪日の際、安倍首相との首脳会談で初めて述べられたものである。彼は次のように述べた。「日本の施政下にある領域は日米安保条約第5条の適用対象であり、尖閣諸島もそれに含まれる」

政府の高揚感に強い違和感

今回のマティス発言は、トランプ政権でもこの姿勢を引き継ぐことを明らかにしたものであり、尖閣の領有権を狙う中国に対する力強いメッセージになる。日本にとっては、マティス訪日の最大成果であろう。

だが、手放しでは喜んでいるわけにはいかない。政府の安堵とその高揚感ぶり、そしてメディアの「はしゃぎぶり」に、大いなる違和感を感じたのは筆者だけではあるまい。これには2つの大きな問題が包含されている。

この発言は、安倍首相との会談の冒頭、マティス長官から自発的に述べられたものである。NHKは7時のニュースを報道中、わざわざ「ニュース速報」を出した。マティス米国防長官が「日米安全保障条約の第5条が『沖縄県の尖閣諸島に適用される』と明言した」と流したのだ。

だが、果たして「ニュース速報」を流すような性格のものなのだろうか。

ある評論家は「所領を安堵された御家人」のはしゃぎ様だと揶揄した。筆者も同感である。「アメリカさん、どうか尖閣を守ると言ってください」となりふり構わず懇願し続けた末に、「アメリカさんが言ってくれた。バンザイ!」というような、まるで属国意識丸出しのような報道ぶりに、思わず赤面した人も多いのではないだろうか。

安保法制の時も、イラク派遣の時もそうだった。「アメリカへの従属だ」「アメリカのポチ」だと批難してきたメディアがこういう報道をするから、余計に複雑な気分になる。

先述の通り、今回の発言は中国の「力による現状変更」への大きな抑止力となるのは違いない。だが、間違ってはならないのは、尖閣を含め、我が領土、領海、領空を守るのは日本人であるということだ。

1969年に米国は「ニクソン・ドクトリン」を発表し、「国家の防衛は当事国が第一義的責任を負うべきである」ことを示した。それ以来、米国の同盟政策の基本となっている。当然、日本も例外ではない。それが日米同盟の大前提である。

マティス長官は米国議会の公聴会で「強い同盟国を持つ国は栄え、そうでない国は衰退する」と述べた。今回の会談でも日本の防衛力強化を期待し、「強い同盟国日本」を求めている。

今回の「ニュース速報」の騒ぎぶりに、日本人は米国の同盟政策の基本を理解しているのかと疑念を抱いた。日本人が血も汗も流す努力なくして、「第5条」など発動されることはあり得ないことを知ったうえでの報道なのだろうかといささか心配になった次第である。

この報道ぶりを見る限り、尖閣が中国軍に占領されたら、自動的に5条が発動されて、まず米軍が投入されると勘違いしているのではないか。

あるいは、まさかとは思うが、米軍が尖閣で中国と戦っている映像を、「岡目八目」的に上空から撮り、お茶の間に流すというネットジョークを本当に考えているのかと勘ぐりたくもなる。そこまで程度が低いとは思いたくない。

国民に幻想を抱かせる危険性

いずれにしろ、こういう報道ぶりは、安全保障に詳しくない一般国民に対し、誤った幻想を抱かすことになりかねない。

マティス国防長官は会談の中で『日米関係は試すまでもない。この政権移行期に乗じて、つけ込んでくるのを防ぐために訪日した』と淡々と述べた。まさに「5条」発言は、こういう冷徹な政治的メッセージなのである。

メディア報道に見られる当事者意識の欠けた安堵や高揚感は、44年間、全人生を米国の安全保障に捧げてきた「戦う修道士」、マティス長官に対して、あまりにも失礼であり、実に恥ずかしいものである。両国の信頼を失墜させるに足る愚かなことの自覚が日本人には必要だろう。

もう1つ問題点は今後のことである。翌朝、早速朝刊を見た。おおむね新聞各社は「尖閣に安保適用明言」がトップニュースだった。

まあ、日本にとっては結構なニュースには違いないし、新聞報道としては当然そうなるのだろう。中国の情報当局も、苦々しい顔で日本の新聞各紙を読んでいたに違いない。

だが、これから厄介なことが予想される。今後、米国で政権が交代するたびに、日本は新政権に対し、「尖閣は5条適用対象」と明言してくださいと懇願しなければいけなくなったということだ。

もし何らかの事情で、米国側が「5条適用対象」と言わなかった場合、どうなるか。「言わなかった」という事実が中国に対する大きなメッセージとなり、中国に対する日本の立場を弱くするだけでなく、この地域の不安定化を助長することになりかねない。

ということは、この騒動を永遠に、いや中国が尖閣を諦めるまでやめることはできなくなったということではないだろうか。これは米国に対しても日本の立場を著しく弱くするものである。後先を考えない近視眼的態度が、後の災い種を生んでしまったという気がしてならないのだ。

さて、尖閣について、今後政府は何をやらなければならないか。少なくとも政府はこれで安堵している場合ではない。

なるほど、尖閣諸島への中国の軍事的介入に対する抑止力は高まったことは間違いない。中国は米国とは決してことは構えない。力の信奉者である中国は、自らの軍事力がいまだ米国のそれにはるかに及ばないことを誰よりもよく認識している。従って、「5条」の対象になるような行動は控えるはずだ。

だからと言って、中国は今後尖閣に一切手出しをしないかというとそれは大きな間違いである。

中国は尖閣諸島を「核心的利益」と位置づけている。「領有権の奪取」を決して諦めることはない。中国は今後、安保条約「5条」が発動されない形で領有権を奪取する戦略をとってくるだろう。中国の高官はこう語っている。「我々にとって最も好都合な日米同盟は、ここぞという絶妙の瞬間に機能しないことだ」と。

今後の中国の出方はオバマ発言の中にヒントが含まれている。尖閣諸島はオバマ前大統領が語ったように、「日本の施政下にある領域」だから「5条の適用対象」なのであって、米国は尖閣諸島に対する日本の領有権を認めたわけではない。「施政下」にあることと、「領有権」は別問題なのである。

軍事力使わず実効支配を争奪

米国は他国同士の係争地については、どちらに領有権があるとは決して言わない方針をとっている。日本は「竹島」や「北方領土」も領有権を主張している。だが、両者とも日本は実効支配をしておらず、「施政下」にはない。だから日本がいくら領有権を主張しようが、米国はこれらに対し、決して「5条適用対象」とは言わない。

ということは事実上の実効支配を奪って「施政下」にあると言えない状況を作為すれば、「5条」の適用対象とはならないわけである。中国は、今回のマティス発言を受け、今後、軍事力を行使することなく実効支配を争奪する動きを一層加速するだろう。

2014年のオバマ発言以降、中国は海軍を出さずに海警(中国版コースト・ガード)を投入して既成事実を積み重ねてきた。「3-3-2フォーミュラ」と言われるように、月に3回、3隻、海警を領海侵犯させて2時間居座る行動を繰り返してきた。少しずつ既成事実を積み重ね、実効支配をかすめ取る「サラミ・スライス戦略」である。

昨年8月には海警15隻を同時に領海侵犯させ、6日間で延べ28隻の領海侵犯という実績を上げた。今後は「4-4-2」、そして「5-5-3」とサラミ・スライスを加速させ、既成事実を積み上げていくことが予想される。

これまでも人民解放軍の代わりに民兵(偽装漁民)を活用してきた。米国は民兵が乗船した偽装漁船が機雷敷設訓練を実施している写真を公開している。

これまで数百隻単位の漁船が尖閣諸島周辺や小笠原方面に押し寄せることがあった。これらはまず、上からの指示による民兵の行動だと考えていい。

マティス長官の発言を受け、今後中国は、こういった非軍事活動の頻度や規模を拡大し、既成事実を積み重ねて実効支配を奪取する作戦を加速させるだろう。海警や民兵の行動に対しては、武力攻撃事態の認定は難しく、自衛隊による自衛権行使は難しい。となると「5条」の発動はあり得ないということだ。

これらについては警察権行使を拡大した「領域警備」の範疇である。最も蓋然性の高い事象であるが、一昨年の安保法制では手がつけられなかった。政府はこの領域警備事態で海保や警察の能力を超える場合に、速やかに自衛隊を出動させることでこれに対処しようとしている。これは大きな間違いである。

相手が軍隊を出してもいないのに、自衛隊を投入することは決してやってはいけない。中国に口実を与えるだけで国際社会からの賛同も得られない。まさに愚の骨頂である。

また「非軍事活動」に対する法執行のために、警察権行使という手足を縛ったまま自衛隊を投入することもやってはならない。米国も連邦軍が法執行を実施するのを憲法で禁じている。法執行で軍を使うのは、国際社会の常識からも逸脱している。

では、どうするか。「非軍事活動」に対しては、最後まで海保と警察が対応できるよう強化するしかない。これが「領域警備」であり、その能力の向上は、喫緊の課題なのだ。

今こそ真剣に取り組まねばならない。今回の日米防衛首脳会談で防衛力の強化が謳われたが、防衛力には自衛隊のみならず、海上保安庁、警察の能力向上も含めた総合力強化の観点を忘れてはならない。

そこで盲点なのが領空主権の防護である。平時には、陸には警察があり、海には海保がある。空には航空警察はなく、最初から中国空軍と航空自衛隊のガチンコ勝負である。しかも上空での動きは政治家を含めて一般国民には非常に分かりづらい。

日本の実効支配がなくなれば米国は守らない

中国は今後、海警が領海侵犯を繰り返すように、上空でも尖閣諸島の領空侵犯を繰り返すことにより、実効支配争奪を狙ってくるだろう。領空には排他的かつ絶対的な主権がある。勝手気ままに領空侵犯されるようでは実効支配しているとは言えないし、「施政下」にあるとは言えない。

竹島、北方四島ともに、日本は領有権を主張している。だが、空自機は上空を飛ぶことはできないし、逆に相手国は自由に飛行できる。だから竹島、北方四島は日本の「施政下」にあるとは言えない。従ってこれらは日本の固有の領土にもかかわらず、安保条約「5条」の適用対象ではないのだ。

一昨年、トルコ空軍は領空侵犯を繰り返すロシア機を撃墜して領空主権を守った。相手が軍事大国ロシアであっても、決して領空侵犯を許さない。独立国としては当然の処置である。それでこそ「施政下」にあると言える。

トルコ空軍と同様、航空自衛隊は中国軍機による尖閣諸島の領空侵犯を阻止できるのか。一番のネックは、日本の法的欠陥である。

紙幅の関係上、ここでは述べないが、現在の自衛隊法「領空侵犯措置」には致命的欠陥がある。だが、一昨年の安保法制では手つかずだった。この改正は焦眉の急務である。

中国軍機が尖閣諸島の領空を自由に、勝手気ままに飛べるようになった時、尖閣は日本の「施政下」にあるとは言えなくなる。その時点で米国は「5条適用対象」とは言わなくなる。米軍の介入を招かずに尖閣の領有権を奪取する中国のシナリオの完結である。

「所領を安堵された御家人」よろしく、「5条適用対象」と言われて、「バンザイ」と喜んでいる場合ではない。中国は「5条」発動を回避する戦略で尖閣の領有権奪取を狙ってくるだろう。

日本の領土、領海、領空を守るのは日本人しかいない。その原点に立ち返り、自衛隊の強化、あわせて海上保安庁、警察の強化、そして「領空侵犯措置」の法改正など、自らがやるべきことを粛々と実行していくことが求められている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49127

http://www.asyura2.com/17/senkyo220/msg/407.html

[戦争b19] 米国の抑制と均衡:崩れる要塞は暴君を阻止できるか 
米国の抑制と均衡:崩れる要塞は暴君を阻止できるか
2017.2.8(水) The Economist
 
アクセスランキング
1時間昨日
rank-sns
1トランプは入国禁止令の裏で「宣戦布告」していた
[部谷 直亮]2017.2.8
2本当は全然高くなかった日本人の仕事への「熱意」
[太田 肇]2017.2.8
3マティス発言にぬか喜び禁物、強か中国次の一手
[織田 邦男]2017.2.8
4日本に行ったら殴られるんでしょ?中国人は怯えてい…
[花園 祐]2017.1.4
5宿泊業界大混乱、中国の団体旅行客はどこへ消えた?
[姫田 小夏]2017.2.7
6爆買い客が中国に持ち帰った最も貴重なお土産とは?
[姫田 小夏]2016.12.13
7顔面蒼白!中国人旅行者が旅館でピンチ
[宮田 将士]2016.6.13
8マティス来日でも全然一件落着ではない防衛負担問題
[古森 義久]2017.2.8
9目青不動に隠された近代日本発展の秘密
[伊東 乾]2017.2.8
10「サンキュー、サムスン!」を喜べない事情
[玉置 直司]2017.2.7
ランキング一覧

(英エコノミスト誌?2017年2月4日号)

トランプ政権の入国禁止差し止め無効要求を却下、米連邦控訴裁
米首都ワシントンの連邦最高裁判所前で、難民やイスラム圏7か国出身者の入国を禁じたドナルド・トランプ大統領の大統領令に抗議する人々(2017年1月30日撮影)。(c)AFP/SAUL LOEB〔AFPBB News〕
向こう4年間は憲法学者が忙しくなるだろう。

?ドナルド・トランプ米大統領が1月27日にイスラム圏7カ国からの訪問者入国を一時的に禁止する大統領令に署名した。この大統領令に関して最も厄介なのは、大統領が選挙期間中の公約を本気で実行するつもりだということではない。公約したこと――この場合は、イスラム教徒を米国に入国させないという公約――がたとえ違法であっても、大統領はそれを実行する方法を見つけ出す、ということだ。

「大統領の最初の提案は『イスラム教徒の入国禁止』だった」。トランプ政権の司法長官の候補に挙がっていたルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長はこう説明した。「私に電話をかけてきて、『委員会を立ち上げてくれないか。それを合法的にやる最適な方法を教えてほしい』と言った」

?ヒラリー・クリントン氏を監獄に送りたいとか、拷問を復活させたい(これも選挙期間中の公約だ)といった衝動は抑えられるかもしれない。だが、トランプ氏はすでに、大統領としての妥当性と権限の限界を試そうとしている。

?利益相反の可能性は、その明白な例の1つだ。トランプ氏は、大統領に就任しても事業を売却したりブラインド・トラスト*1を利用したりしない、リチャード・ニクソン以降で初めてのケースになっている。同氏のホテル事業は、大統領就任以降、米国内のホテルの数を現在の3倍に増やす計画を発表している。

?こうした状況自体がすでに心配だが、さらに悪いことに、米国の「チェック・アンド・バランス(抑制と均衡)」の制度もお粗末な状況にある。専制君主の登場を恐れるがゆえに大統領、連邦議会、司法機関(裁判所)の3者が互いに牽制しあう権力の網が、しっかり機能していないのだ。

*1=資産の管理を受託者にすべて任せる信託方式。白紙委任信託。

次へ
[あわせてお読みください]
トランプは入国禁止令の裏で「宣戦布告」していた (2017.2.8 部谷 直亮)
党大会へ向けて中国人民解放軍で大幅な人事異動 (2017.2.7 阿部 純一)
中国とロシアが崩壊させる自由主義の世界秩序 (2017.2.7 古森 義久)
トランプ政権が呼び覚ます、忘れられたアメリカ人 (2017.2.7 竹野 敏貴)
フランスがポピュリストの流れを変える (2017.2.7 Financial Times)
PR
PR
PR
PR
PR
PR
次ページ大統領がより広範な権限を手にしている
1 2 3 4 next
Keyword
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49121

 

The presidency
America’s system of checks and balances might struggle to contain a despot

The next four years will keep students of the constitution busy


From the print edition | United States
Feb 4th 2017 | WASHINGTON, DC
THE most troubling interpretation of the executive order that Donald Trump signed on January 27th, temporarily banning visitors from seven mainly Muslim countries, is not that the president means to honour his campaign promises. It is that he will find ways to do so even where what he promised—in this case, to keep Muslims out of America—is illegal. “When he first announced it, he said ‘Muslim ban’,” explained Rudy Giuliani, a former would-be Trump attorney-general. “He called me up, he said, ‘Put a commission together, show me the right way to do it legally’.”

Even if Mr Trump can resist the urge to lock up Hillary Clinton and reinstitute torture, which he also promised to do on the trail, he is already testing the boundaries of presidential propriety and power. The potential conflicts of interests in his administration are an obvious example: Mr Trump is the first president since Richard Nixon not to sell or place in blind trust his business, including a hotel division that has announced plans to triple its American properties since his inauguration.


All this is worrying in itself. Making matters worse, however, is the sorry state of America’s system of checks and balances, a web of mutually compromising powers woven, in fear of tyrants, around the presidency, Congress and judiciary. “We’re not quite at code blue,” says Norm Ornstein of the American Enterprise Institute. “But we are definitely in the emergency room and heading towards the intensive-care unit.”

This might sound surprising. In his first 11 days as president, 42 law suits were fired at Mr Trump or his administration. Massachusetts, New York, Virginia and Washington challenged the immigration order. But the courts alone will not constrain Mr Trump. Courts can issue stays to pause executive actions. But it could take over a year for the states’ challenge to reach the Supreme Court. By then Mr Trump could have changed America’s immigration system so much that the judges’ verdict would be largely irrelevant.

The legal firepower recently accrued by the presidency has also made the judges’ task harder. The job of White House counsel was created to provide the president with sound legal advice; it has ballooned into a battery of lawyers—almost 50 under Barack Obama—whose task is to find legal cover for whatever the president wants to do. The evolution of the proposed Muslim ban into a bar on visitors from some countries was consistent with such machinations. And this is indicative of a wider power grab by the executive, gaining strength for decades, which accelerated under Mr Trump’s immediate predecessors.

In matters of war, foreign policy and civil liberties, for example, George W. Bush and Barack Obama claimed vast power. And neither the courts nor Congress, even when hostile to the president, seemed able to stop them. If Mr Trump assumes the right to order the execution of American citizens suspected of terrorism or to try someone on the basis of evidence that the state will not divulge, he will merely be following the example of his predecessors.

It was largely on the basis of this power grab that Bruce Ackerman, a legal scholar, predicted in 2010 that the president would be changed “from an 18th-century notable to a 19th-century party magnate to a 20th-century tribune to a 21st-century demagogue.” The current situation may be worse than he envisaged in “The Decline and Fall of the American Republic”, due to the eagerness of the Republican-controlled Congress to pander to Mr Trump, weakening the main check on the presidency.

A month before the election, after a video surfaced in which he boasted of his ability to maul women, 16 Republican senators and 28 Republican members of the House of Representatives said they no longer supported him. Yet Mr Trump’s unruly first fortnight in power, including much evidence that the White House has become, as Mr Ackerman foresaw, a “platform for charismatic extremism and bureaucratic lawlessness”, has drawn few whispers of dissent from Republican congressmen. A few senators, led by Ben Sasse of Nebraska, John McCain of Arizona and Lindsey Graham of South Carolina, have ventured criticism, especially over warnings that Mr Trump will lift sanctions on Russia. Yet at the Republican retreat in Philadelphia on January 26th, dominated by talk of health-care reform, tax cuts and deregulation, the cheers for the president were full-throated. “I cheered him myself,” said Mr McCain. “I want him to succeed, I believe he is commander-in-chief, so, where we disagree, I can’t just play whack-a-mole.”

The reasons for the growth of tribalism in American politics over the past half century—which include the culture wars, introduction of primaries and success of Newt Gingrich, a former Speaker of the House and now Trump henchman in transforming what had been a consensus-prizing assembly into a parliamentary bear-pit—are so familiar that it is easy to lose sight of how dynamic a process this is. Partisanship does not simply imply deadlock, of the kind that bedevilled Mr Obama. It is steadily eroding the norms that enshrine the cautiously collaborative spirit of the American system, in which much of its defence against authoritarianism resides.

Thus, for example, the parcel of House rules and conventions known as the Regular Order which was designed to ensure all members, including those of the minority party, got a fair crack at amending and debating bills; it was trashed by one of Mr Gingrich’s successors, Dennis Hastert, who is now in jail for molesting children. Similarly, the filibuster, which was conceived as an emergency device to prevent the minority having egregious legislation and government appointments imposed on it. Once rarely used, it was employed by Democrats to block five Bush appointees a year; it was used by Republicans to block 16 Obama appointees a year, driving the then Democratic leader in the Senate, Harry Reid, to abolish its use in blocking cabinet appointments. If the Democrats try to block Neil Gorsuch, whom Mr Trump nominated for the vacant Supreme Court judgeship on January 31st, the Republicans will probably abolish its use in that case also. And another important check on the tyranny of the majority party will be lost.

It is striking that such great changes have not caused more disquiet. That probably reflects the fact that while the parties drifted apart, America continued to elect presidents who were more centrist than their parties. Mr Bush’s and Mr Obama’s agendas were in some ways more similar to each other than Mr Trump’s is to either. Moreover both former presidents honoured the constitutional system; when their edicts were checked, they retreated. That is not an attitude Mr Trump’s rhetoric suggests he shares.

“Can the system that has put a demagogue in the White House now hold him to account?” asks Mr Ackerman. “We don’t know. But I can say that over the past half century its capacity to restrain has been dramatically reduced.”

This article appeared in the United States section of the print edition under the headline "A crumbling fortress"
http://www.economist.com/news/united-states/21716060-next-four-years-will-keep-students-constitution-busy-americas-system-checks
http://www.asyura2.com/16/warb19/msg/644.html

[経世済民118] 目青不動に隠された近代日本発展の秘密 明治維新と廃仏毀釈によって中央政府の徴税機関から一転して迫害の対象となった仏教寺院
目青不動に隠された近代日本発展の秘密

目黒、目白、目赤、そして目黄、目青から見た東京史
2017.2.8(水) 伊東 乾
死後も納税? 仏当局、墓の下の死者に資産税請求
仏パリのペール・ラシェーズ墓地にある石の十字架〔AFPBB News〕
江戸=東京の「五色不動」を訪ねる小さな旅。トランプ政権の陥穴などを記す方がビューは立つと思いますが、かまびすしい世間の雑音の中で、底流を流れる静かな基調音に耳を澄ませるのも大事なことと思います。

前回も記したとおり、天保あたりの川柳に、

五色にはふたいろ足らぬ不動かな

と歌われたように、本来の「目の字のつく江戸のお不動さま」は目黒と目白、それに家光将軍がお鷹狩りの折に立ち寄った、現在は不忍通り、動坂あたりの「伊賀・赤目不動」を「目赤不動」と改めた駒込南谷寺の3つが知られていました。

家光将軍が定めたとあることから露骨なように、江戸時代までの寺社は幕府の支配化にネットワーク化されていました。

と言うか、もっと露骨に言うなら、幕府の徴税機関そのものだった。

お寺が徴税と言うと、はてなという顔をされることがありますが、寺院は誕生と死亡を管理する「過去帳」つまり、人頭税を挑発する基本台帳「人別帳」を調えた機関として、全国的に組織され、「寺社奉行」がこれを統括していました。

こうした宗教組織を軸に全国の戸籍を整える方法は遠く欧州からもたらされました。

1517年、ドイツのヴィッテンベルクで火を噴いた宗教改革によってアルプス以北の多くの欧州植民地を失ったローマ・カトリック〜ラテン圏が「対抗宗教改革」として東アジアや中南米など、世界に宣教師を遣わした。

その経路を通じて日本にももたらされ、織田信長がこれを基本的に認めて織豊政権で日本国内にも適用されます。そして、「太閤検地」で全国あまねく浸透したものを徳川幕府が永続化したと言って外れはないでしょう。

1590年、小田原攻めに勝利した秀吉は「太閤」を名乗るようになりますが、それよりはるか以前、山崎に明智光秀を討って主君信長のかたきを取ったと公称し始めた直後から、山崎近辺の寺社地から台帳を集めるなど「検地」を本格化させています。

秀吉は何より下から這い上がった人ですから、小さいときからちやほやされて育った殿様2世とは発想も実行力も全く違います。

「家制度」前提のビジネスモデル

今の言葉で「戸籍」と「検地」と言えば距離を感じるかもしれません。が、戦国末期の天正時代に「核家族」などの概念は存在せず、どのような境涯の人でも当時の日本人は1人では生きていけなかった。

共同体があり、それに属することで食べていくことができる仕組み、つまり「封建体制」の中でのみ、生存することができた。

基本的な縁を絶つこと、つまり「村八分」などの「シカト」は、今風に考えるなら、いわば北朝鮮の経済封鎖と似たようなもので、貨幣経済はおろか物々交換からも締め出され、まともな暮らしが不可能であることを意味していました。

つまり「家」が基本だった。それを「戸」と呼ぶわけですね。戸籍というのは、一定有力な百姓家を基本に、その田畑を耕す作男など、一族郎党全部を含めての「戸籍」で、その氏長者が今日でも「戸籍筆頭」と目される。

これと、西欧風の「family register」が基本的に異なるのは、同じ徴税台帳でも、キリスト教では生誕や死亡の単位があくまで個人であるということです。

その個人が「最後の審判」の日、土の中から蘇って、何の誰べえ、という個人の人格を保ったまま審判の場に再び立つ、という一神教の直線的な死生観を基に「徴税」されているので、単位が個人なんですね。

誰と誰から生まれた第何子の誰それである、としてfamily registerに記載され、いわば「マイナンバー」に即して税金を取り立てた。

しかし、室町期の日本にそういう観念もなければ、そこまで細かな戸籍のシステムも存在しなかった。

「大化の改新」で日本に導入された戸籍「庚午年籍」(670年)は租庸調などの税の取立て「傭兵」といった言葉から想起されるように庸は元来、防人その他の労役、軍務の血税でした。

しかし、実際に人間が動くのは困難で、その分の人件費を別の形、例えば布で納めるなどして、個人単位の税という性格を失っていきます。

豪族単位、のちには荘園単位の生産が発展するなか、中央政府はあくまで「国」単位の石高しか把握しておらず、中央から降ってくる「守護」と、ローカルな有力者「地頭」の二重支配が続くわけですが、国の徴税はあくまで「大和国何万石」「周防国何万石」といったザル勘定でしかなかった。

太閤検地は、地頭や豪族どころか、半農の足軽から身を起こし地方のシステムを肌で知っていた秀吉が、全国の本当の「カレント」財貨の流れを再把握した大きな仕事です。

慶長3=1598年に秀吉が没した後、実権を握った家康も1604年に「郷」単位の生産高管理システムを導入、そこから幕府の支配を磐石なものにしていきます。

やや江戸時代の課税システムに深入りしましたが、ポイントは、お寺というのは明治維新までは税務署であったということです。

明治になって実施された「廃仏毀釈」は、別段仏教を排斥したかったわけではなく、旧幕時代の税の取立てシステムを完膚なきまでに破壊し、新政府の取りそこねがないように破却した、というポイントを見逃さないように、というのが話の筋の中心でした。

幕府時代の租税は「米」を基本とし、天下の米は大阪へ、また税の情報は大阪と淀川でつながった伏見奉行所に集中管理、家康がいかに秀吉の作った器の上に乗っかっていたかがよく分かる事実と思います。

秀吉が作った伏見城は廃城とされ、一部は二条城に移され、伏見奉行は京阪の二都を結ぶ河川と、そこで運送される物品、端的には米など税の対象物を管理することで、徳川封建体制下の一大徴税管理センターに変貌していきました。

だから、明治維新は「鳥羽・伏見」で戦われなければならなかった。封建遺制の金脈を押さえ、それを絶つこと。それなくして国家の近代化などはあり得ず、伏見奉行所は徹底して破壊され、奉行所が管理していた荒地の旧伏見城址はさらに荒廃するわけです。

その再利用は結局、維新から30余年を経て、明治天皇がそろそろ高齢化してきたというタイミングで、荒地となっていた伏見城址を巨大な墓稜に見立て直したわけですね。

いまさら言うまでもないでしょうが、現在の「伏見桃山御陵」にほかなりません。

ともあれ、そうしたリアルな「宗教税務署」としての役割を日本のお寺が終えた1867〜68年というのは、いわばローマ・カトリックの徴税支配をルターの宗教改革が脱した1517年に350年遅れた、同じ位相での出来事と言えるかもしれません。

勝手に現れた五色不動

明治維新と廃仏毀釈によって、中央政府の徴税機関から、一転して迫害の対象となった仏教寺院ですが、西南戦争も収まり、日本が本格的な近代国家として再生し始める頃には、先祖代々のお墓などもありますし、自ずと古来信仰の命脈を復活させていきます。

まあ、いわば「葬式仏教」の始まりとも言えるのですが・・・。

さて、そんな中で、かつてであれば将軍家光が命名しなければ名乗れなかった「江戸の三不動」ならぬ「東京の五色不動」を自称するお寺が登場し始めるわけです。

元来は目黒、目白、そして目赤と続いて250年ほどが経過し、「五色にはふたいろ足らぬ」という陰陽五行説に従って赤、黒、白のほかに「黄色」と「青」が加えられるわけです。

しかし目が黒かったり白かったり、赤く充血したりするのは普通としても「目が黄色い」なんてことがあったら、黄疸の疑いで肝臓の検査をした方がよさそうだし、「青い目」をしていれば米国生まれのセルロイド人形を考えた方が適切でしょう。

実際、世は明治となり、「ざんぎりあたまをたたいてみれば文明開化の音がする」ので、青い目のお不動さんあたりは、時勢に合っていたのかもしれません。

調べてみると「目黄不動」としては墨田区東駒形の最勝寺や台東区三ノ輪の永久寺、また「目青不動」は昔は赤坂三分坂にあった(またしても)最勝寺が、明治15年前後から「五色不動」を名乗り始めているらしいことが分かります。

様々な理由で、現在は上記2つの最勝寺は全く別の場所に移されています。現在で言えば墨田区にあった最勝寺は「駒形橋」の架橋工事に伴って大正2年、南葛飾郡(現在は江戸川区)平井に移転、港区赤坂の最勝寺は明治42〜44年にかけて、現在の世田谷区太子堂に移転します。

各々その地で「目青」「目黄」のお不動様と呼ばれているようですが、これでは本来の由来のわけが分かりません。

しかし、少なくとも「目青不動」については、非常に分かりやすい経緯が見え隠れしています。

元は赤坂三分坂にあったものが、江戸初期の1604年に青山百人町(青山南町)に移転、このお寺の境内に明治8(1875)年、100坪の土地で寺子屋ならぬ幼童学校が設立され、これは現在の港区立青南小学校にそのまま続いているそうです。

青南小学校は1906年の開校、公立の名門として知られ越境入学も多く、俳人の中村草田男、作家・精神科医の斉藤茂太・北杜夫兄弟、俳優仲代達矢、アーチストでジョン・レノン未亡人であるヨーコ・オノなど、多彩なOBOGを輩出しています。

実は私が通った幼稚園は現在「骨董どおり」と呼ばれるすぐ横の道から入った場所にあり、同級生でも優秀な子は青南小学校に進んでいきました。

最勝寺に話を戻すと、続く明治15年頃、「麻布谷町」現在のアークヒルズ、サントリーホールのあるあたりですが(東京で自動車を運転される方は飯倉方向と六本木方向に分かれる「谷町ジャンクション」をご存知でしょう)にあった「観行寺」が廃寺となり、そこにあった不動明王像が最勝寺に移されたらしい。

最勝寺は明治末年、最終的に世田谷区に移ります。正確な跡地までは確認できていませんが、青南小学校のあたりは区画が整理されて現在は青山墓地となっている。

この立地は実に分かりやすい。赤坂御所、神宮外苑に青山通りを挟んで相対する場所に、明治の元勲から日清日露の両戦争で命を落とした人々のお墓を集め、近代日本建設者たちの廟堂に改めたわけですね。

外苑通りを挟んで東側には乃木坂=乃木神社もあります。言うまでもなく明治天皇に準じた人物ですが、乃木希典その人のお墓は実は青山墓地にあります。ほかにも軍人や政治家が多数眠っており、

黒田清隆、副島種臣、後藤新平、西周、三島通庸、松方正義、小村寿太郎、森有礼、山本権兵衛、緒方竹虎、井上準之助、加藤友三郎、小磯国昭・・・と首相や重要閣僚を歴任した人物のオンパレード状態です。

さらには大久保利通、犬養毅、井上準之助など非業の死を遂げた人々、A級戦犯として極東軍事法廷で裁かれていたさなかに命を落とした松岡洋右といった人々も埋葬されています。

目青不動というのは、「青山に移った麻布谷町、溜池のお不動さん」の新しいニックネームだったと考えて、まず間違いないと思います。

それが国家の方針で、皇居に隣接する近代日本の墓地として整えられ、その過程で「目青不動」も山手線の外、現在は環状7号線の近くにあたる世田谷区太子堂に移転させられていた・・・どうやらそんな具合らしい。

実のところ、青山墓地を歩いてみると、鳥居のついたお墓がたくさんあるのに驚かされます。そこで、埋葬者の名をよく見てみると、明治の元勲だったりすることが多い。

なんでそんなことを知っているかというと、別段水木しげるさんのように墓歩きが趣味だからではなく、私の両親が入っている教会墓地も青山霊園の一隅にあるので、この45年ほど、小学校1年次に父が亡くなって以来、日常的に「目青不動」跡地に、それと知らずして足を踏み入れていたからにほかなりません。

でも、正直言って、立派なお墓は手入れも行き届いており、あまり興味ありません。実は花屋から父の墓に行く途中の、ほとんど手を入れた形跡のない古いお墓に花を一輪供えるのを、この25年来の習慣としています。

家族の墓碑数基とともに、ほとんど忘れ去られているそのお墓の主は兆民先生と呼ばれた中江篤介氏、ルソーの社会契約論を「民約論」として翻訳紹介し、「三酔人経綸問答」で完全民主制や非戦論を展開した人のお墓は質素で、鳥居も何もありません。そういうお墓にこそ、小さな花ですが手向けたいと思う。

目青不動の跡地には、様々な近代日本の原点が眠っていたのでした。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49112
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/807.html

[経世済民118] 英銀行資産216兆円が欧州大陸に移転、3万人雇用消失も 独、金融引締G20支持得られず 米国債4日続伸、財政刺激期待薄れ
英銀行資産216兆円が欧州大陸に移転、3万人雇用消失も

-ブリューゲル Gavin Finch
2017年2月8日 13:46 JST

1.8兆ユーロ相当の資産は、英銀行システムの資産全体の17%に相当
英国がEU単一市場へのアクセスを失う前提に基づき推計

ロンドンに拠点を置くグローバルバンクは、英国の欧州連合(EU)離脱後に1兆8000億ユーロ(約216兆円)相当の銀行資産を欧州大陸に移転する必要があると予想され、英国で最大3万人の雇用が失われるリスクがあるとブリュッセルを拠点とするシンクタンク、ブリューゲルが8日公表したリポートで指摘した。

  1兆8000億ユーロ相当の資産は、英国の銀行システムの資産全体の17%に相当する。市場参加者との情報交換に基づくブリューゲルの分析によれば、ロンドンのホールセールバンキング業務の35%がEU内の顧客との取引と推定される。
  2019年と想定される英国のEU離脱に伴い、ロンドンの拠点からEU単一市場に属する他の国にシームレス(切れ目のない)なサービスを提供できるパスポート制度が終わる可能性が高く、金融機関はホールセールバンキング業務について他のEU諸国への移転を余儀なくされる見通しだ。

  アンドレ・サピル氏を中心とするブリューゲルの研究員らは「バックオフィス(事務処理部門)の多くがロンドンや世界の他の地域にとどまるとしても、少なくともEU27カ国に置かれる新たな事業体は、独立した取締役会と完全なシニアマネジメントチーム、シニアアカウントマネジャー、トレーダーが必要になる」と分析した。
  米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は「われわれが予想していたよりも多くの雇用の移転が行われることになりそうだ」と先月発言。英銀HSBCホールディングスのスチュアート・ガリバーCEOも、ロンドン投資銀行の収入の約20%相当を生み出す人員をパリに移す可能性があると述べていた。
原題:Brexit Risks 30,000 U.K. Jobs and 17% of Bank Assets, Study Says(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-08/OL1BVP6K50Y501


 

ドイツ、金融引き締めでG20各国・地域の支持得られず−関係者
Birgit Jennen、Alessandro Speciale、Rainer Buergin
2017年2月9日 07:30 JST
 独当局者は強めの文言を文書に盛り込むことを望んでいた
3月開催のG20財務相・中銀総裁会議で7月の首脳会議の準備へ
 
今年の20カ国・地域(G20)議長国を務めるドイツは、G20として金融刺激を抑制する新たな取り組みを断念した。事情に詳しい関係者が明らかにした。
  ドイツの当局者は、世界金融の回復力促進のため、金融政策の引き締めを支持する文言をG20として後押しするよう他の国々や地域に働き掛けたものの、同意を得られなかった。協議が非公開であることを理由に関係者が匿名で語った。
  関係者の1人によれば、独当局者は、将来の危機の可能性に備えて中央銀行にバッファー強化を促すことを目的に、世界経済の回復力を高める必要性について、文書に署名することをG20の各国・地域が受け入れるよう望んでいた。
  ドイツ財務省の報道官は、G20協議に向けた声明などの草案策定プロセスに関するコメントを控えた。3月にバーデンバーデンで開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議では、7月にハンブルクで開催されるG20首脳会議の準備が行われる。
  もう1人の関係者によると、各国・地域の首脳による最終的な共同声明の付属文書として、ドイツが現在提示している文書では、刺激策の解除への支持は盛り込まれていない。ただ、7月にオリジナルの文言を再び加える可能性を排除するものではないという。
原題:German Push for G-20 Monetary Restraint Said to Stumble (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-08/OL2TAN6KLVR401


 


2月8日の海外株式・債券・為替・商品市場
Bloomberg News
2017年2月9日 06:42 JST 更新日時 2017年2月9日 07:47 JST

関連ニュース
米国株:下げを埋める展開、原油相場の上昇で−金融株は安い
NY外為:ドル下げ縮める、低調な10年債入札受け−111円台後半
トランプ氏、米大統領には移民制限する権限があると主張
米国債:4日続伸、財政刺激策やインフレへの期待が薄れる

欧米市場の株式、債券、為替、商品相場は 次の通り。

◎NY外為:ドル下げ縮める、低調な10年債入札受け−111円台後半
  8日のニューヨーク外国為替市場ではドルが下げを縮める展開。米10年債入札が低調だったことに反応した。一方で市場では、引き続きトランプ政権の為替・貿易政策への懸念も見られる。
  ドルは対円で下落したほか、主要10通貨のほとんどに対して軟化。ただブルームバーグ・ドル・スポット指数は下げを縮めている。ドルは対円で、今週の安値である1ドル=111円60銭を試す展開も見られた。トランプ大統領の為替認識をめぐる懸念が根強く続く中、ドルは一時、支持線となる100日移動平均を試す場面があった。
  ニューヨーク時間午後5時現在、主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は前日比0.1%低下。
  ドルは対円で0.4%安の1ドル=111円93銭。対ユーロでは0.1%下げて1ユーロ=1.0698ドル。
  トレーダーらによれば、トランプ大統領は最近は為替に関してツイッターに投稿していないが、大統領が為替に関してアドバイザーの1人と話をしたとの報道があり、市場は大統領がドルの動きを気に掛けているとの見方を強めているという。
  ドル・円相場では、今週のドルの安値である1ドル=111円60銭を下回った場合、ドルが一目均衡表の雲の下限である110円まで下げる可能性があると一部トレーダーらは指摘している。  
原題:Dollar Pares Drop After Weak 10-Year Treasury Auction(抜粋)

◎米国株:下げを埋める展開、原油相場の上昇で−金融株は安い
  8日の米国株式相場はほぼ変わらず。売り先行で始まったが、原油相場とエネルギー株が持ち直すにつれ、主要指数も下げを埋める展開となり、S&P500種は小幅高、ダウは小幅安で引けた。投資家は米国経済の先行きを見極める意味もあり、企業決算に注目している。
  S&P500種は1.59ポイント(0.07%)上昇の2294.67。ダウ工業株30種平均は35.95ドル(0.18%)安い20054.34ドルで終えた。
  エネルギー株指数は一時1.7%安まで下げた後、方向を転じた。原油相場は在庫増を嫌気していったんは2週間ぶり安値に下げた後、反発した。
  アシュラントやモルガン・スタンレー、ICEなどを中心に金融株が安い。S&P500種のセクター別指数では金融が0.8%下落。
  タイム・ワーナーやアラガン、ホール・フーズ・マーケットをはじめ、この日はS&P500種採用の16社が四半期決算を発表。これまでのところ500社のうち半分以上が発表済み。ブルームバーグのデータによれば、このうち4分の3で利益が予想を上回り、およそ半数では売上高が予想を上回った。
  アリアンツ・グローバル・インベスターズのルーシー・マクドナルド最高投資責任者(CIO、グローバル株式担当)は、ブルームバーグテレビジョンで「マクロではなくミクロの材料が市場を動かしている。決算シーズンだからだ」と指摘。「久しぶりの選挙だったから、こなす材料は大量にある。悪い材料はまだ本当の意味で織り込まれていない」と述べた。
  9日にはKKRやバイアコム、コカ・コーラ、ケロッグ、ツイッターなどの決算が発表される。
原題:U.S. Stocks Little Changed as Utility-Stock Rally Offsets Banks(抜粋)
Treasuries Gain With Gold, U.S. Stocks Erase Drop: Markets Wrap

◎米国債:4日続伸、財政刺激策やインフレへの期待が薄れる
  8日の米国債は4日続伸。財政刺激策が近く発表されるとの期待が薄れたことから、買いが続いた。この日は10年債入札を控えたショートカバーも米国債を支えた。欧州債も総じて上昇した。域内の国債発行では力強い投資家需要が集まった。
  国債利回りの低下幅は1−5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%) 。ニューヨーク時間午後5時現在、10年債利回りは約6bp下げて2.34%。
  米ブラックロックのローレンス・フィンク最高経営責任者(CEO)は、財政出動の遅れで10年債利回りが2%を下回る可能性が高まっていると指摘した。
  午後に実施された10年債入札(発行額230億ドル)の結果を受けて、米国債は伸び悩んだ。最高落札利回りは2.333%。締め切りの午後1時直前の同年債利回りは2.314%だった。プライマリーディーラー(政府証券公認ディーラー)の落札に占める割合は31%。過去4度の10年債四半期入札の平均値を上回った。
  インフレ期待の低下を背景にインフレ連動債(TIPS)は比較的軟調。5年債のブレークイーブンレートは1.93%に低下した。2月2日には2年ぶり高水準の2.06%だった。
  FTNファイナンシャルの金利戦略責任者、ジム・ボーゲル氏は今年上半期の米利上げ見通しが後退し、ドルの下落とともに「インフレ・TIPSの取引も急降下している」と述べた。
  30年債利回りは2週間ぶりに3%を下回った。5年債と30年債の利回り差はこの日も縮小した。
原題:Treasuries Rise as Fiscal Stimulus, Inflation Expectations Ease(抜粋)

◎NY金:上昇、3カ月ぶり高値付近−ETF通じた買いが続く
  8日のニューヨーク金相場は上昇し、ほぼ3カ月ぶりの高値となった。金連動型上場投資信託(ETF)を通じた買いが続き、最大手SPDRゴールド・シェアーズの保有量は6月以降で最長の5営業日連続で増加した。
  ロズランド・キャピタルのシニア経済アドバイザー、ジェフリー・ニコルズ氏は電話インタビューで、「金の安全性が求められている」と指摘。「トランプ大統領の規制緩和や大企業に対するより前向きな姿勢が、企業の利益性という観点では大きなプラスになると市場は当初考えていた。今ではこうした考えをあらためる動きが出始めている」と述べた。
  ブルームバーグのデータによると、ニューヨーク時間午後2時25分現在、金スポット相場は前日比0.4%高の1オンス=1239.24ドル。
  銀スポットは0.4%、プラチナは1.1%、パラジウムは0.8%いずれも上昇した。
原題:Gold Nears Three-Month High as Buyers Flock Back to Top ETF(抜粋)


◎NY原油:反発、ガソリン在庫減少を好感
  8日のニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が反発。米エネルギー情報局(EIA)週間統計では原油在庫が昨年10月以来の大幅増となった一方で、ガソリン在庫は予想に反して減少した。
  エネルギー関連の商品に重点を置くヘッジファンド、アゲイン・キャピタル(ニューヨーク)のパートナー、ジョン・キルダフ氏は電話取材に対し、「ガソリン需要が急減しているとの深刻な懸念があったが、今回のリポートでは正常な水準になっていた」と指摘。「健全なガソリン需要はいずれ製油所の稼働率を押し上げ、原油需要の増加につながるはずだ」と述べた。
  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物3月限は前日比17セント(0.33%)高い1バレル=52.34ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント4月限は7セント上昇の55.12ドル。
原題:Gasoline Pulls Oil Higher as Traders Shrug Off Crude Supply Gain(抜粋)

◎欧州株:続伸、業績に再び関心移る−公益事業株と不動産株に買い
  8日の欧州株式相場は上昇し、指標のストックス欧州600指数は続伸。フランスの製薬会社サノフィなどの決算を手掛かりに買われた。不動産株や公益事業株の上げが目立った。
  センセックス600指数は前日比0.3%高の363.94で引けた。この日は0.3%下げる場面もあった。
  
  公益事業株指数が2.1%上昇し、不動産株指数は1カ月ぶり高水準に達した。英国の住宅建設銘柄は国民投票で欧州連合(EU)離脱を選択して以来の下げを解消した。一方、銀行株は3日続落となった。
原題:European Stocks Rise as Investors’ Focus Turns Back to Earnings(抜粋)
◎欧州債:総じて上昇−ドイツやポルトガルなどの起債で力強い需要
  8日の欧州債市場では、ユーロ参加国の国債が総じて上昇。ドイツとポルトガル、フィンランドの国債発行で力強い投資家需要が集まった。
  ロンドン時間午後4時44分現在、ドイツ10年債利回りは5.3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の0.30%。同年限のポルトガル国債利回りは13.1bp下げ4.11%、フィンランド国債利回りは6.9bp下げて0.5%となった。
原題:Euro-Area Government Bonds End-of-Day Curves and Cross Spreads(抜粋)
Treasuries Gain With Gold, U.S. Stocks Erase Drop: Markets Wrap(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-08/OL28Q1SYF01U01

http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/816.html

[経世済民118] トランプが移民制限すれば米国経済の成長を阻害する 日銀保有国債4割突破 年金リスク追風 1兆ドル壁ジャンク債 日立三菱重
野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る
【第21回】 2017年2月9日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
トランプが移民制限すれば米国経済の成長を阻害する

カリフォルニアのシリコンバレーには、われわれの想像を絶する企業本社のオフィスがある。現在のアメリカを牽引しているのは、こうした企業だ。ここでは外国人が多数働いているので、トランプ大統領が移民抑制的な政策を取れば、こうした企業の成長は抑えられ、アメリカ経済は打撃を受けることになる。

ペンタゴンより大きい
アップル新本社ビル

 この巨大な宇宙船のようなものは、アップルの新しい本社ビル Apple Campus 2 である。実際に、「アップル・スペースシップ」と呼ばれている。

https://www.google.co.jp/maps/place/Apple+AC2+Spaceship/@37.3272073,-122.0087888,790a,20y,353.59h,44.79t/data=!3m1!1e3!4m5!3m4!1s0x808fb596c1598469:0xa6fc33ba56a4e147!8m2!3d37.33502!4d-122.010984?hl=ja

 アメリカ、カリフォルニア州のシリコンバレーに建設中だ。当初は2016年末に竣工とされていたが、グーグルマップの写真では、まだ建設中だ。YouTubeにある最近の動画を見ると、もう少し完成に近づいている。

https://www.youtube.com/watch?v=F29Ue0tGapc

 この建物は、直径が約490メートル、国防総省のビル、ペンタゴンよりも大きい。東京ドーム約6個分のサイズ、4階建てのガラス張りで、収容人数は約1万4000人。中には、約9290平方メートルもの巨大なジムもできるそうだ。

 私は、巨大化が必ずしもよいこととは思わない。実際、企業の巨大化の追求は、企業衰退の始まりであることが多い。このビルの空撮映像を見ていると、「メイズ・ランナー」という映画で、巨大な壁に取り囲まれた空間を思い出してしまう。

 それにもかかわらず、このスペースシップには圧倒される。

 このようなビルを建設できる企業は、世界中にアップルしかないだろう。同社が時価総額で世界トップにあることが、このビルを見ると、納得できる。

「キャンパス」と呼ばれる
フェイスブック本社

 これはフェイスブックの新しい本社である。ここも、大学のように、「キャンパス」と呼ばれている。

https://www.google.co.jp/maps/place/Facebook+HQ/@37.4829341,-122.1356453,1079a,20y,273.83h,44.69t/data=!3m1!1e3!4m5!3m4!1s0x808fbc96cc9eae65:0xe4b691264d679dd6!8m2!3d37.48485!4d-122.1483517?hl=ja

 キャンパスの周りは、サンフランシスコ湾沿いの湿地帯。近くに店はなく、車でかなりドライブしなければならない。

 そこで、レストランはもちろんのこと、それ以外の店もこのキャンパス内にある。つまり、ここは、フェイスブックの本社というより、1つの町になっている。誰でも入ることができるので、観光客もかなりいる。

 YouTubeにあるこの動画を見ると、説明されないかぎり、どこかの観光地にある町だと思うだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=sxp27noEUJA

「街の広場」のような雰囲気
グーグルプレックス

 ここは、「グーグルプレックス」と呼ばれているグーグルの本社だ。

https://www.google.co.jp/maps/@37.4180697,-122.0840467,431a,20y,44.9t/data=!3m1!1e3?hl=ja

 総面積は4.7万平方メートル。ここには、オフィスのほか、公園、世界の料理を提供する無料の社員食堂、フィットネスジムやサウナなどもある。「ブティックホテル」を意識し、「街の広場」のような雰囲気となるよう設計したと言われる。

 この雰囲気も航空写真ではよく分からないが、YouTubeの動画だと、分かる。

https://www.youtube.com/watch?v=cVdlzYpvXsA

 ここには、かつてはシリコングラフィックス(業務用コンピュータの開発・製造・販売を行なう企業)の本社があった。先に見たフェイスブックの本社の場所も、もともとはサン・マイクロシステムズが使っていた(サンは、コンピュータの製造とソフトウェア開発を行なう企業で、現在はオラクル傘下にある)。

 シリコンバレーでも、企業の栄枯盛衰は激しいことが分かる。

 私は2004年から05年にかけて、シリコンバレーにあるスタンフォード大学にいた。そのとき、アップルもグーグルもすでに大きな注目を浴びていた。アップルはiPodの発売直後。グーグルは、IPOを行なった。

 両社の本社は、いずれも斬新な建物ではあったが、異常というようなものではなかった。グーグルの本社は、この航空写真の左上、赤い屋根の建物群だった。

https://www.google.co.jp/maps/@37.4072314,-122.0883416,1736a,20y,44.54t/data=!3m1!1e3?hl=ja

 それが、写真の右半分に大拡張しているわけだ。

 上で見たいまの両社の本社は、まさに異常なものだ。それほどまでに異常な成長があったことの結果だ。売上高や時価総額の数字を見てもそのことは分かるのだが、このように写真を見ると、一目瞭然で把握できる。

 このような異常な風景が展開している地域は、世界中でシリコンバレー以外にない。

 もうひとつ、シリコンバレーの南端、サンノゼにあるシスコシステムズの本社を見ておこう。同社は、ルータなどを製造する世界最大のコンピュータネットワーク機器開発会社だ。1984年に設立された。2000年3月には、時価総額が世界一になったことがある。

https://www.google.co.jp/maps/@37.4133098,-121.9322294,3a,60y,184.95h,77.34t/data=!3m6!1e1!3m4!1sZw9tnM2-ivdPkmVNeeX0Lg!2e0!7i13312!8i6656?hl=ja

移民を制限すれば
シリコンバレーには打撃

 ここで見た企業は、現在のアメリカで時価総額の上位を占めている。アメリカ経済は、このような企業によって支えられているのだ。

 これらの企業は、従来の製造業とは極めて異質のものだ。

 グーグルやフェイスブックはそもそも製造業ではない。アップルやシスコシステムズは製造業だが、自動車産業とはまったく異なる製造業だ。アップルは工場を持たない「ファブレス」製造業であり、シスコシステムズの製品は、ソフトウェアの価値に支えられている。

 シリコンバレーで働いている人たちは、自動車産業で働いている(あるいは、かつて働いていたが失業した)労働者とは、別の人たちだ。したがって、シリコンバレーの企業が成長しても、自動車産業の労働者に直接の利益が及ぶわけではない。アメリカ国内にこうした分裂があることは、間違いない事実である。

 しかし、移民がアメリカの労働者の職を奪っているとして移民を制限したところで、自動車産業の労働者の職が増えるわけではないのだ。

 他方で、移民を制限すれば、シリコンバレーの先端産業には間違いなく不利に働く。なぜなら、インド人や中国人は、これまでシリコンバレーの発達に大きく寄与してきたからだ。このため、アップル、グーグル、フェイスブックなどのトップは、トランプ大統領が導入した入国制限の強化策への反発を強めている。

 今後、H-1Bビザ(専門職につく高学歴者のためのビザ)などの見直しが行なわれるようになれば、影響はさらに広がるだろう。

 トランプ大統領が移民に対して厳しい政策を取れば、結局のところ、アメリカの成長を阻害することになる。

(早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問 野口悠紀雄 )
http://diamond.jp/articles/-/117270?


 


日銀の保有国債が4割突破、巨額買い入れ4年弱経過
 2月8日、日銀が同日までに公表した統計によると、日銀の保有国債残高は1月末時点で358兆1977億円となり、国債発行残高に占める比率が初めて4割を超えた。写真は日銀本店。2016年3月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)
 2月8日、日銀が同日までに公表した統計によると、日銀の保有国債残高は1月末時点で358兆1977億円となり、国債発行残高に占める比率が初めて4割を超えた。写真は日銀本店。2016年3月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 8日 ロイター] - 日銀が8日までに公表した統計によると、日銀の保有国債残高は1月末時点で358兆1977億円となり、国債発行残高(1月末時点894兆3357億円)に占める比率が初めて4割を超えた。

日銀は2013年4月以降巨額の国債買い入れを進め、14年10月の追加緩和以降は残高ベースで年間80兆円のペースで買い入れてきた。このペースの買い入れを続ければいずれ限界が来ることなどから昨年9月には金融緩和の程度を測る目安を「量」から「金利」にシフト、長期金利をゼロ%程度に抑えられる限りは、国債の買い入れ量は定めない運営にシフトしつつある。

もっとも金利上昇圧力が高まれば国債買い入れ増額の可能性もあり、急激な円高圧力などで景気・物価が下振れれば、追加緩和手段としても買い入れ増額の可能性はあるため、今後も巨額国債買い入れが続くとの見方が多い。米トランプ政権による日銀批判の影響も不透明で、日銀の政策運営を取り巻く環境は一段と厳しくなっている。

(竹本能文)

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
財務省、国債費24兆6174億円に減額へ=17年度概算要求で政府筋
NY市場サマリー(24日)
財務省、国債利払いの積算金利0.4%引き下げ=17年度概算要求で政府筋
今年度歳出、100兆円突破へ 政府が補正予算案を閣議決定
コラム:円高・株高で海外M&Aの好機到来=重見吉徳氏
http://jp.reuters.com/article/boj-debt-idJPKBN15N0YL

 

米プルデンシャルに年金リスク移管の追い風、昨年10−12月期22%増益
Katherine Chiglinsky
2017年2月9日 09:26 JST
Share on FacebookShare on Twitter
四半期配当を1株5セント引き上げ75セントに
年金契約の獲得で退職年金勘定の価値は増加
Share on Facebook
Share on Twitter
多くの大企業にとって従業員と何年も前に交わした退職年金支給の約束は大きな頭痛の種になっているが、米生命保険会社プルデンシャル・ファイナンシャルにはこの年金プランが成長への道筋になっている。
  プルデンシャルの8日の発表資料によると、こうした退職年金勘定の価値は2016年に170億ドル(約1兆9000億円)増加し、年末時点で3860億ドルに達した。これが追い風となり、同社の昨年10−12月(第4四半期)営業利益は22%増え10億9000万ドルに上った。
  同社は第4四半期にユナイテッド・テクノロジーズとオーウェンズ・イリノイから年金契約を獲得。ベライゾン・コミュニケーションズやゼネラル・モーターズ(GM)の年金債務などを引き受け年金リスク移管ビジネスで優位な立場を築いた同社の成長を後押しした。年金勘定の価値は10年末に比べてほぼ倍増した。
  発表資料によると、営業利益は1株当たり2.46ドルと、前年同期の1.94ドルから増加し、ブルームバーグが集計したアナリスト予想平均の2.31ドルを上回った。同社は四半期配当を1株70セントから75セントに引き上げた。純利益は2億8400万ドル(1株当たり65セント)で、前年同期は7億3500万ドル(同1.60ドル)だった。デリバティブ(金融派生商品)に関連する投資損失が響いた。
  
原題:Prudential Gains on Pension-Risk Transfers; Profit Jumps 22% (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-09/OL2X1Z6K50YN01

 

1兆ドルの壁にぶつかるジャンク債、償還額は過去最高へ
Emma Orr
2017年2月9日 11:06 JST
Share on FacebookShare on Twitter
ジャンク債の借り換えは市場で歓迎されにくい可能性−ムーディーズ
ローン担保証券(CLO)の需要は14年をピークに低下
Share on Facebook
Share on Twitter
過去最高の1兆ドル(約112兆円)相当のジャンク債(高リスク・高利回り債)が2021年までに満期を迎えることから、これらの発行企業は新たな資金調達に動くと見られるが、市場はそれほど歓迎しないだろうと米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは分析した。
  ムーディーズの8日のリポートによれば、投機的格付けの社債で2017年から21年の間に満期を迎えるのは1兆600億ドル相当で、その大部分に当たる9330億ドルは19年以降に償還の予定。今年後半にはこうした償還に備えて新規発行が増加し始める可能性が高いとティーナ・シーラバーグ氏ら同社アナリストは予想した。
  債券市場は償還金を吸収する用意を整えていないとムーディーズは指摘する。レバレッジドローンをまとめて証券化したローン担保証券(CLO)の需要は2014年をピークに低下し、銀行ローン債権や高利回り債の信用格付けはいずれも悪化しているという。
  シーラバーグ氏はインタビューで、「流動性が干上がれば、デフォルト(債務不履行)率は以前よりも相当高くなる」と述べ、「企業の債務は増えており、中小企業の多くは低金利環境でかなりの量の債務を抱えた」と指摘した。
  連邦規制やマクロ経済環境が2019年までに変化する可能性もあり、高利回り債の魅力は低下する恐れがある。モントリオールのトレーディング・調査会社パビリオン・グローバル・マーケッツは別のリポートで、金融引き締めやボラティリティー上昇、米税法の不都合な変更も同セクターのスプレッドを圧迫し、パフォーマンス不振の要因になり得ると分析した。
原題:Junk May Slam Into $1 Trillion Wall as Maturities Hit Record (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-09/OL31GQ6K50Y501

 

日立株と三菱重株が下落−南ア発電事業のトラブル深刻化を嫌気
松田潔社
2017年2月9日 10:47 JST
Share on FacebookShare on Twitter
日立株は一時3カ月ぶりの下落率
海外事業のリスクが顕在化−バリューサーチ投資顧問の松野氏
Share on Facebook
Share on Twitter
日立製作所と三菱重工業の株価が下落している。日立は8日、火力発電システム事業統合に伴う合弁会社の南アフリカ共和国のエネルギー関連事業の譲渡価格調整をめぐる協議で、三菱重から昨年3月請求時の2倍の約7634億円の差額支払い請求を受けたと発表。両社とも譲渡金額をめぐる協議は続けるとの意向を示したものの、先行きの不透明なリスクが高まり売りが先行した。
  日立の株価は一時、前日比7.6%安の625.1円と3カ月ぶりの下落率。出来高は3000万株を超え東証1部市場の出来高2位。三菱重の株価も一時同3.3%安の459.3円と、昨年11月10日以来の水準まで下落した。
  日立は、請求について「契約に基づく法的根拠に欠けるため請求に応じられない」と昨年の請求時と同様の回答を行ったと8日の声明に明記。ただ協議は継続するとしている。これに対して、三菱重は昨年から最終譲渡価格で暫定譲渡価格との差額を調整する合意があると主張。同社はブルームバーグの取材に対し、増額の理由や請求の内容については「先方との契約、また協議の過程であることから回答できない。日立製作所とは誠意をもって協議を継続している」 と電子メールで答えた。
  独立系投資顧問、バリューサーチ投資顧問の松野実社長は、両社の株価下落についてトラブルが深刻化したためと話した。業績が好調で株価も右上がりだった日立の方が下げ幅は大きく、一方で三菱重はこれまでかなり売り込まれていたことから下げ幅は限定的と指摘。しかし「下げ幅でこの問題を測ることはできない。事業面で不調が続く三菱重の方が、損害を受けた場合のダメージとしては大きいのは明白だ」と語った。
  松野氏は東芝の米原発問題と時期も重なり、海外事業のリスクが顕在化していると話す。「詳細が開示されず先行きも分からないため、株主を不安にさせている。日本を代表する二大エネルギー関連企業であり、早い段階で決着を付けることが必要」との見方を示した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-09/OL31UP6TTDS401
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/825.html

[経世済民118] メキシコへの工場移転、計画進める米企業 米国は友か敵か 試される絆 米メキシコ貿易戦争、1戦目の意外な勝者トランプ逆効果
メキシコへの工場移転、計画進める米企業
トランプ氏の圧力にもかかわらず
米国生産の維持を訴えるレックスノード社の従業員ら(2日、インディアナポリス)
By ANDREW TANGEL
2017 年 2 月 9 日 10:56 JST

 【インディアナポリス】ドナルド・トランプ米大統領は就任前の昨年12月、工業機械メーカーのレックスノード社がインディアナ州インディアナポリスの工場を閉鎖しメキシコに移転させる計画について、厳しく批判した。その時、同工場の労働者約350人は期待に胸を膨らませた。

 それから2カ月たった今も、レックスノードは工場閉鎖計画を変えていない。トランプ氏は昨年11月、同州にある空調大手キヤリアの工場のメキシコ移転計画に介入し、計画を断念させているが、レックスノードには介入が効かなかったようだ。

 同社によると、メキシコへの工場移転は年間3000万ドル(約33億6000万円)の支出節減計画の一環だ。

 インディアナポリス工場では、米国人従業員が移転させる機械の梱包作業に追われる一方、メキシコ工場で働く予定のメキシコ人の訓練をさせられている。同社で12年間働いてきた機械工ティム・マチスさんは「自分の代替要員に仕事を教えるなんて本当に惨めだ」と話す。

 トランプ氏の圧力にもかかわらずメキシコへの工場移転計画を進めている米企業はレックスノードだけではない。ほかにも同様の企業は多い。中には、建設機械大手キャタピラーや鉄鋼大手ニューコアなど、経営トップがトランプ氏に製造業政策を助言する諮問グループに名を連ねている企業もある。

 キャタピラーは、イリノイ州ジョリエット工場を閉鎖し、メキシコ・モンテレーに移転させる計画だ。同社のブラッド・ハルバーソン最高財務責任者(CFO)は1月のウォール・ストリート・ジャーナル紙とのインタビューで、トランプ政権の通商政策について「成り行きを見守らざるをえないだろう」と語った。

JFEスチールとの合弁も

 ニューコアも、JFEスチールと折半出資でメキシコに自動車用鋼板工場を建設する計画を変更していない。ニューコアのジョン・フェリオラ最高経営責任者(CEO)は1月31日のアナリストの会合で、メキシコに投資する米企業が不利益を被るような政策が打ち出されることになれば、計画は変更される可能性があるとし、「政治動向を注視している」と話した。

 米自動車大手フォード・モーターは1月、メキシコでの新工場建設計画を中止した。だがミシガン工場の小型車「フォーカス」の生産を既存のメキシコ工場に移転させる計画は進めていると明らかにした。ゼネラル・モーターズ(GM)もメキシコへの生産移転を進めている。

 レックスノードのトッド・アダムズCEOは先週、業績発表に伴うアナリストとの電話会議で、メキシコへの工場移転は「後悔するようなものではない」と述べた。

 全米鉄鋼労組によれば、同社のインディアナポリス工場労働者の賃金は、超勤分を除いて時給約25ドル(約2800円)。従業員らは、解雇された後に同水準の賃金を得られる職を見付けられるかどうか不安を抱いている。

 インディアナポリス工場で8年間勤務してきた機械工のゲリー・カンターさんは、昨年11月の大統領選でトランプ氏に投票したという。彼は、トランプ大統領が製造業を活性化させ、新規雇用を創出してくれるとの期待を持ち続けている。「われわれはこの男にチャンスを与えた。彼は、われわれに何もしてくれなかった普通の政治家ではないからだ」

関連記事

米メキシコ貿易戦争、1戦目の意外な勝者
米国は友か敵か、揺れるメキシコ 試される絆
【社説】トランプ氏とメキシコの小戦争
GMの収益センター、カギはメキシコ

http://jp.wsj.com/articles/SB10734999991334983926204582610333938432356

 

米国は友か敵か、揺れるメキシコ 試される絆
トランプ大統領の発言で両国はかつての敵対的な関係に逆戻りしてしまうのか

メキシコ(右)と米ニューメキシコ、テキサス両州とを分断する国境沿いのフェンス PHOTO: ALEJANDO BRINGAS/EUROPEAN PRESSPHOTO AGENCY
By
DAVID LUHNOW AND JACOB M. SCHLESINGER
2017 年 2 月 9 日 07:12 JST
 1980年代半ば、メキシコは経済が閉鎖的で低迷し、米国からの投資もほとんどなく、国民のほとんどは米国を歴史的な敵とみなしていた。メキシコの麻薬密売組織が米麻薬取締局(DEA)捜査官を拷問・殺害した事件を受け、当時のロナルド・レーガン米大統領は一時的に国境を閉鎖した。
 その後の30年で多くが変わった。北米自由貿易協定(NAFTA)の下、両国は毎年5000億ドル(約56兆円)相当のモノとサービスを取引している。安全保障、移民、環境でも協力している。米小売り大手ウォルマート・ストアーズはメキシコで最も多くの従業員を雇用する民間企業となっている。一方、米国民がスーパーボウル(米ナショナル・フットボールリーグ [NFL] の王者決定戦)のテレビ観戦で食べるスナックのワカモレディップには、メキシコ産アボカドが欠かせない。
 ドナルド・トランプ米大統領はNAFTAの再交渉、メキシコ国境への壁建設、移民対策に早急に取り組むと表明しており、両国の絆が今、試されている。トランプ氏は、前任の4人の大統領(共和2人、民主2人)が培った同盟関係が米製造会社のメキシコへの雇用移転を促し、米経済の弱体化を招いたと指摘。手ぬるい移民規制が治安を損ねることにもなったとも述べている。

米メキシコ品目別貿易額(単位:10億ドル)。ピンク:米国への輸出額/緑:米国からの輸入額
https://si.wsj.net/public/resources/images/P1-BZ982_USMEX_9U_20170202163908.jpg

 また、米国の対メキシコ貿易赤字が増えたとも指摘。1月27日、メキシコが「歴代の米大統領を通じて交渉でわれわれをやりこめ、たたきのめした」と述べ、「われわれの顔をつぶした」と息巻いた。さらに2月2日、議会に対しNAFTA再交渉の手続きを「早急に開始する」意向を伝えた。
 こうした緊張感の高まりを受け、両国の関係性に疑問が生じている。果たして過去30年間の友好的な関係が今後も続くのか、それとも最初の170年間のような敵対的な関係に逆戻りするのか。
「神にはあまりに遠く、米国にはあまりに近い」
 トランプ氏のメキシコへの対処の仕方は、同氏の外交政策――貿易で優位に立ち、長年の同盟関係や前提を見直すというもの――の行方を占う試金石になる。メキシコとの対決の結果が、トランプ氏が海外のその他の課題、特に対中貿易不均衡の是正にどう取り組むかに影響する可能性がある。
 トランプ氏によれば、貿易や移民、国境に対する同氏の厳しい姿勢は、両国の関係にマイナスではなく、プラスになるという。トランプ氏は大統領令を発令するにあたり「前向きな貿易、安全な国境、経済協力に関して共に取り組むことで、両国の関係を長年目にしなかった水準に高められると心から信じている」と語った。「メキシコとの関係はさらに向上するだろう」
0:00 / 0:00

メキシコと米国の複雑な関係を巡る他の要因について、WSJのジェラルド・F・サイブ前ワシントン支局長が解説する(英語音声のみ)Photo: AP
 ワシントンのコンサルティング会社マナットジョーンズ・グローバル・ストラテジーズの最高経営責任者(CEO)でオバマ前政権で商務次官を務めたマイケル・カムニェス氏は「トランプ氏の物言いに反して、皮肉にもトランプ政権下でむしろ米・メキシコ関係は商業的に一段と強化される可能性がある。実際に交渉の場につき、NAFTAを補強・改善しようとの政治的意欲があるからだ」と話す。
 米国がメキシコを軽視し、それにメキシコが敏感に反応する事態は両国関係の歴史を通じて何度か繰り返されてきた。メキシコ史上、将来に重要な影響を与えることになった出来事が1946〜48年に発生した米墨戦争だ。この争いでメキシコは米国に国土の半分以上を奪われた。19世紀後半〜20世紀初頭のメキシコの独裁者、ポルフィリオ・ディアス元大統領が言った言葉は有名だ。「かわいそうなメキシコよ。神にはあまりに遠く、米国にはあまりに近い」
 1913年にはメキシコ史上初めて民主的に選ばれた大統領が、米国大使の裏工作により暗殺された。この出来事がメキシコ革命を激化させ、結果的に約20万人が死亡。90年近く民主主義は復活しなかった。
 とはいえメキシコは北の隣人に完全に背を向けることはなかった。第1次世界大戦でドイツが旧領土の返還と引き換えにメキシコに対米国戦で協力を求めた際も突っぱねた。第2次大戦では枢軸国に宣戦布告し、日本と戦うために太平洋に飛行隊を派遣した。
封鎖から開放へ
 戦後は経済を外界から封鎖。「メード・イン・メキシコ」が最優先課題となった。冷戦では傍観者的立場を維持した。メキシコの子供たちは米国がメキシコに与えた歴史的脅威に重点を置いた教科書を読んで育った。

メキシコのペニャニエト大統領(左)と握手するトランプ氏(2016年8月) PHOTO: JORGE NUNEZ/EUROPEAN PRESSPHOTO AGENCY
 1980年代初めまでには、内向きの経済はたどるべき道をたどっていた。周期的な金融危機が国を揺るがし、安定が脅かされ、数百万人のメキシコ人が北へ向かうようになった。記録に残る限り最大規模の人類の大移動が行われた。メキシコ政府は徐々に経済を開放し始めた。
 1988年、米ハーバード大学出身のカルロス・サリナス大統領(当時)が、先進国との戦略的パートナーシップにより自由市場への開放をさらに進めることを決断。サリナス氏によると、日本や欧州訪問時に冷遇されたことで、メキシコの未来は米国と共にあると気づかされたという。
 サリナス氏は国民に対し、米国に対する見方を変える必要があると訴えた。メキシコにとって最大の脅威ではなく、最大のチャンスだと。
 米政権も素早く熱意を持って応じた。「われわれは安定した隣人がほしかった」。当時のジョージ・H・W・ブッシュ政権の米通商代表部(USTR)代表としてNAFTA交渉に着手したカーラ・ヒルズ氏はこう述べた。同氏はそれを欧州復興計画の「マーシャル・プラン」になぞらえ、米国にとって隣に安定した国家を建設するための「自己啓発活動」だと述べた。
 メキシコは世界でどの国よりも多くの自由貿易協定に調印した。NAFTAと貿易は1994〜95年のメキシコ通貨危機後の経済安定化を助け、最終的に数百万人を貧困から脱却させた。協定によってメキシコは欧米企業が要求する投資ルールや保護措置を受け入れざるを得なくなり、外国からの直接投資を流入させることになった。またNAFTA始動により、完全な民主主義国家となった。

1992年にテキサス州サンアントニオで行われたNAFTA調印式。当時のサリナス・メキシコ大統領(上左)、ジョージ・H・W・ブッシュ米大統領(上中央)、マルルーニー加首相(上右)が出席した PHOTO:BETTMANN ARCHIVE/GETTY IMAGES
 NAFTA時代に反米主義はおおむね姿を消した。反米主義は、1929〜2000年までのナショナリスト的な制度的革命党(PRI)政権の基盤の1つだった。PRIは2000年に政権を失ったが、2012年にエンリケ・ペニャニエト大統領の下で与党に返り咲いた。
 「NAFTAは若いメキシコ人に米国人は敵ではないというメンタリティーを植え付けた」。中南米で化学薬品を販売するメキシコ企業の社長を務めるアルマンド・サンチェス氏(55)はこう話す。「メキシコ人は日に日にけんか腰の態度を和らげていった」
メキシコは北米の一部
 世論調査会社ピュー・リサーチ・センターが2015年に行った世界各国の米国に対する好感度調査では、メキシコの大きな世代格差が明らかになった。米国に好感を持つメキシコ人の割合は、50歳以上では55%だったのに対して、18〜29歳では74%だった。
 過去10年は、麻薬・組織犯罪との戦いで米国の法執行当局と軍当局がメキシコ当局の訓練を支援した。歴史的な敏感さを考えれば、こうした協力関係はかつて考えられなかったことだ。米国の軍と情報機関は麻薬密売やテロ対策でメキシコ当局と情報を共有している。2016年にメキシコが強制送還した、米国を目指す非メキシコ人移民の数は15万人近くに上る。
 こうした関係にもかかわらず、米・メキシコ関係は一部米国人にとって敏感な問題となっている。国境を越える不法移民の数は近年減少しているとはいえ、メキシコからの輸入品や移民が米国の経済やコミュニティーに与える影響を懸念する人たちだ。トランプ氏は選挙運動の序盤からそうした有権者の懸念に率直な言葉で訴えかけることに力を注いだ。
 NAFTA擁護派の人たちでさえも、この協定で雇用が失われたことを認めている。米シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所の2014年のリポートによると、メキシコとの貿易を原因とする米国の年間の純雇用喪失数は1万5000人に上る。一方で、喪失した雇用1人あたりの米国経済に対する相殺利益は数十万ドルに上るとの調査結果についても言及している。
 メキシコ人の中には、トランプ氏を北米統合化のささいな障害にすぎないとみる人たちもいる。自動車をはじめさまざまな業界が国境をまたぐサプライチェーンを構築していることから、商業関係の巻き戻しはコストがかかり、厄介だ。ワシントンの超党派シンクタンク、ウィルソンセンターの最近の推計によると、米国の約490万人の雇用が2番目に大きな輸出市場であるメキシコへの輸出に関連したものだ。また北米には1億6000万人を超えるメキシコ人・メキシコ系米国人がいる。
 メキシコは自分たちをラテンアメリカというよりも北米とみなし始めていたことから、メキシコ人の多くは、米国が近所から自分たちを追い出したがっているように感じている。メキシコの著名歴史家ロレンソ・メイヤー氏は、トランプ氏の壁建設の強調――国境の大部分には既にフェンスが存在するが――は、メキシコ人に辛辣(しんらつ)なメッセージを送っていると話す。
 「メキシコで受け入れられてきた、われわれは北米の貧しい一部ではあるが、一部には変わりないという概念が崩された」。メイヤー氏はこう指摘する。「トランプ氏が言っているのはこういうことだ。われわれは北米に属する国の定義を変えた。それは米国とカナダだけだ」
関連記事
• トランプ時代のアメリカ、草の根の声
• GMの収益センター、カギはメキシコ
• 【社説】トランプ氏とメキシコの小戦争
• それほど大きくなかったNAFTAの米国経済への影響
• 米メキシコ首脳会談中止、壁巡り溝深まる
• 壁建設の米国境沿いの町、懸念と期待が交錯

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjmzZifiILSAhWCEbwKHTbnBRsQqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11367774349816344181604582608733036486916&usg=AFQjCNHIU9pmk8VE8pyi2quO1ybx3Z3Xgw

 

米メキシコ貿易戦争、1戦目の意外な勝者
トランプ米大統領の発言、今のところ逆効果

コストコ・ホールセールは決算発表でペソ安によってメキシコでの売上高のドル換算値が目減りした点を強調した。写真はメキシコの首都メキシコシティにあるコストコ(2013年) PHOTO: DARIO LOPEZ-MILLS/ASSOCIATED PRESS
By
JUSTIN LAHART
2017 年 2 月 9 日 10:14 JST
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
***
 ドナルド・トランプ米大統領は、メキシコからモノを輸入する米企業のコスト引き上げを狙う一方で、輸出企業を後押ししている。しかし現在のところ同氏の発言は逆効果となっている。メキシコからの輸入企業が恩恵を得る一方で、メキシコにモノを売る企業は痛手を負っている。
 理由はメキシコペソの下落だ。ペソは大統領選挙後、対ドルで過去最安値に落ち込んだ。2016年10-12月期(第4四半期)のペソの対ドル相場は平均で前年同期比15%安となった。
 ペソ安は多くの米企業の決算発表で話題に上った。日用品大手キンバリー・クラーク、会員制量販店コストコ・ホールセール、たばこ大手フィリップ・モリス・インターナショナルなどの企業がペソ下落でメキシコでの売上高のドル換算値が目減りしたことを強調した。
 メキシコで歯列矯正製品を製造するアライン・テクノロジーは「対ペソでのドル高はコスト面で当社にとって有益だ」と述べた。恐らくこのことで注意を引きたくはないだろうが、コスト低減のためメキシコに製造部門を設けた他の多くの企業にも同じことが言える。

対ドルでのペソ相場の推移(四半期平均) SOURCE: WSJ MARKET DATA GROUP
https://si.wsj.net/public/resources/images/OG-AK405_Howman_TAB_20170208123844.png

 投資家にとって、これはデリケートな状況を生んでいる。メキシコで調達を行う企業はペソ安の恩恵を受けており、トランプ氏の圧力にもかかわらず、多くがメキシコ事業の拡大計画を進めている。しかし、ペソが現在の水準よりも大幅に下がらない限り、議会で共和党が支持している輸入税案、つまりメキシコにより直接狙いを定めた関税と税金を課す案によって、メキシコで調達を行う企業の利益が侵食されないようにするのは難しい。
 企業はメキシコにとどまる可能性もある。たとえ税金を課せられてもコスト効果が依然高い場合や、税金が課せられるのはトランプ氏の在任期間中だけで、製造業務を移転するのはコスト面で割に合わないと判断した場合だ。あるいは、ペソがさらに下落し、コストの節減額が増税額を上回った場合もとどまる可能性がある。
 一方、税負担がコスト節減分を帳消しにするほど重い場合や、オートメーションで米国での労務費を低減できると判断した場合、企業は業務を米国に移す可能性がある。
 投資家がもう一つ考慮する必要があるのが、輸入税と関税で打撃を受けることになる多くの企業が猛反発し、結局、現状が維持される可能性があることだ。そうなればペソ安の恩恵を受ける企業が依然、勝ち組になるかもしれない。
関連記事
• 【WSJで学ぶ経済英語】第265回 国境税
• GMの収益センター、カギはメキシコ
• トランプ氏、ドル安を使って貿易拡大か?
• トランプ税制改革の盲点、軽視される関税
• トランプ氏、目指すはNAFTA脱退ではなく大幅改定

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjehc3ph4LSAhUHerwKHRBWDawQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582610192631227120&usg=AFQjCNEGgrkX_pRurC4EMT5i8Yx0PMA-aw

http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/829.html

[経世済民118] ギリシャとユーロ、はてしない物語の再開 ギリシャ虚偽指摘の統計局長に責任押しつけ 復活した新興国市場、残るトランプリスク
ギリシャとユーロ、はてしない物語の再開
市場を必要としない状況を確保するのがカギ
アクロポリスの丘にある神殿(アテネ)
2017 年 2 月 9 日 09:22 JST

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 欧州の2月はギリシャ危機が冬眠から覚める季節だ。国際通貨基金(IMF)は7日、ギリシャのユーロ圏離脱リスクについてあらためて警告した。依然として債務減免が障害になっている。

 国内総生産(GDP)の約1.75倍に上るギリシャの膨大な債務を完全に削減することは政治的に不可能だ。同国の債務の大半は非常に長期の低利融資であることが、問題の規模をやや抑えている。

 しかし、ギリシャが公的融資の代わりに民間の債権者から現金を調達するには、市場金利は高すぎる。そのためIMFは、同国の債務が2060年までにはGDPの2.75倍に増加していると予想している。ギリシャの長期成長率は1%弱と見込まれているが、その成長や財政再建努力を上回るペースで借り入れコストが膨らむとみられるためだ。

 となると、ギリシャが市場を必要としない状況を確保することがカギになる。IMFは、成長見通しと財政収支に関する欧州各国政府の見通しがあまりに楽観的だとみており、2070年までの融資延長や40年までの利払い猶予など、追加的な譲歩を示唆している。これはギリシャの資金調達需要を最小化することにつながるはずだが、財政保守主義の債権者との合意が難しいことは明らかだ。

 15年夏、ギリシャは銀行を閉鎖し資本規制を導入するなどユーロ離脱の寸前にあったが、土壇場で救済策に合意した。昨年の夏はそれほどの波乱はなく、再燃を回避するのに十分な余裕を残して合意が成立した。

 今年は昨年よりややこしいようだ。7月償還のギリシャ国債の利回りは10%超に急上昇している。同月、欧州中央銀行と民間の債券保有者に約60億ユーロ(約7200億円)を返済する必要があるのだ。夏場の危機の可能性が再び高まっている。

関連記事

リスク満載、それでも倒れないユーロ圏
2017年の欧州最大の課題は選挙にあらず
【社説】ギリシャに長い冬到来
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjwu6ebiILSAhVFgbwKHX6IBMgQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582610101331589454&usg=AFQjCNEYhpxsLKp1kbc7dt6UdQ7Ans_Ohw


 



ギリシャ危機、虚偽指摘の統計局長に責任押しつけ
ギリシャ統計局長だったゲオルギウ氏は、ギリシャの財政赤字を過大申告した容疑などで何度も訴追されている


By MARCUS WALKER
2017 年 2 月 9 日 11:24 JST

 【アテネ】緊縮策に苦しむギリシャを巡り、欧州連合(EU)などから支援を受け続けるための条件を満たせないのではないかとの懸念が再び浮上している。政府高官がはっきり分かっているのは、その責任を誰に負わせるかということだけだ。それはギリシャ統計局(ELSTAT)の局長だったアンドレアス・ゲオルギウ氏だ。

 債務危機に直面する前のギリシャでは、政府が統計を改ざんし、財政赤字の規模をごまかしていた。ゲオルギウ氏は2010年、ギリシャ初の政府から独立した統計機関であるELSTATのトップに就任した。その後、同氏が統計の誤りを正し、財政赤字を正確に報告したとEUは認定した。

 一方、ゲオルギウ氏に批判的な人々は、EUと国際通貨基金(IMF)が10年に作成した支援の「覚書」に基づきギリシャに過酷な緊縮策を実施させる策略の一環として、同氏が財政赤字を過大申告したと主張している。

 ギリシャの司法当局が、ゲオルギウ氏はEUの会計規則を適用したにすぎず罪は犯していないと結論づけたのは、この4年間で4回に上る。それでも、政治家や裁判所の判断でゲオルギウ氏は法廷闘争の継続を余儀なくされており、ある裁判では終身刑が言い渡される恐れもある。

 先進国としては1930年代以来の深刻な不況に見舞われ、国家レベルで過去最大の救済を受けたギリシャでは、債務危機の間ずっと政府関係者の多くが自らの責任を否定し、陰謀説まで持ち出して自己保身に走った。

 そのため、ドイツを中心とするユーロ圏諸国で、ギリシャは過去の失敗に学ばず同じ失敗を繰り返すのではないかとの懸念が強まっている。

 ドイツ当局はギリシャの統計が再び政争の具になることを警戒する。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した提案によると、EU諸国の一部は、ギリシャが自国の担当者がまとめた数字を認めるまで追加融資や債務免除を凍結する案を非公式に協議している。

 ゲオルギウ氏批判の急先鋒(せんぽう)である経済学者のゾーイ・ゲオルガンタ氏とコンサルタントのニコス・ロゴセティス氏は、ゲオルギウ氏はギリシャの緊縮策を正当化できるデータを必要としていたIMFとEUの「人質」だと指摘する。

 「彼のせいで苦境が続いている」とロゴセティス氏は述べ、ゲオルギウ氏のしたことは「国家反逆罪以外の何物でもない」と非難する。

 ゲオルガンタ氏は自身のウェブサイトで、ギリシャの財政赤字は債務危機が始まった09年時点で国内総生産(GDP)比3.9%と欧州諸国の中で最低レベルだったと主張している。もっとも、この主張は同国の膨大な国債発行額(09年の新規借入額は350億ユーロでGDP比15%程度)と整合性が取れているとは言い難い。

 5年間の任期を終えて米メリーランド州の自宅に戻ったゲオルギウ氏は、不正行為を全面否定している。「(法定闘争が)6年目を迎えるなんて考えもしなかった」と話す。

 同氏に対する主な容疑は、ギリシャの09年の財政赤字を38億ユーロ(約4500億円)上方修正するという「虚偽認証」を行い、現在のGDPの120%に相当する2100億ユーロもの損失を国家に与えたというものだ。

 ギリシャでは政治的な緊張が再び高まりつつあり、解散総選挙がちらつくため、政治家が「ギリシャは犠牲者」と訴える戦術に逆戻りする恐れがある。

 コスタス・カラマンリス政権下の04年?09年に実態に合わない予算を編成していた新民主主義党(ND)の幹部らは長年、ギリシャ危機は例の「覚書」が原因だと批判してきた。現与党の急進左派連合(SYRIZA)は「ギリシャは犠牲者だ」という主張を展開している。

 欧州議会は報告で、ギリシャの没落は統計不正が一因と指摘した。カラマンリス政権は09年10月、ギリシャの同年の財政赤字はGDP比6%になる見通しだとEUに伝えた。その2日後、新民主主義党は選挙で敗れた。新たに発足した全ギリシャ社会主義運動(PASOK)政権は、同年の財政赤字が実際には12.5%になるとの見通しを明らかにした。EU当局はこれに衝撃を受け、投資家もギリシャ国債の投げ売りを始めた。

 一方、EUの統計機関であるユーロスタットは、09年の財政赤字はGDP比13.6%へ再び修正されたものの、それでも不完全だと指摘した。ギリシャは10年5月に支援策に署名した。ゲオルギウ氏がELSTAT局長に就任したのはその3カ月後だった。

 ギリシャの当局者らによると、同国出身でありながらIMF統計局など米国での経歴が長いゲオルギウ氏は、ギリシャの慣習に精通していない「部外者」との見方が多かった。配慮を求める政治家の声に同氏が聞く耳を持たなかったため、省庁から「融通の利かない人物」と不満が漏れた。

 当時、財務相としてゲオルギウ氏をかばったゲオルグ・パパコンスタンティノウ氏は「ギリシャの統計は完全に信用を失っていた。ルールを厳格に守れる人物が必要だった」と述べている。

 ゲオルギウ氏は10年11月、ユーロスタットの指摘を踏まえて09年の財政赤字をGDP比15.4%に引き上げた。EU規則で政府機関として扱われる国有企業の赤字を反映させるなどした。EUはギリシャの統計はようやく正確になったと述べた。ギリシャでは支援策の反対派が反撃に出た。

 ロゴセティス氏とゲオルガンタ氏はいずれもELSTAT局長職に応募したが、政府が適任と判断したのはゲオルギウ氏だった。ロゴセティス氏とゲオルガンタ氏はゲオルギウ氏が国際債権団から密命を受けていると疑い、ロゴセティス氏はゲオルギウ氏の電子メールをハッキングしたほどだ。その後の裁判でロゴセティス氏は、国益を守るための行為だったとして無罪を言い渡されている。

 11年には新民主主義党のアントニス・サマラス党首が「組織的な(財政赤字)ねつ造計画」と指摘し、陰謀説を勢い付かせた。

 財政赤字の過大申告疑惑について捜査を開始したギリシャの検察当局は13年1月、虚偽の事実を認証して国家に損害を与えた容疑などでゲオルギウ氏を起訴した。

 新民主主義党の幹部議員プロコピス・パブロプロス氏(現大統領)は、ゲオルギウ氏はEUの要求に屈したとして同氏訴追を支持した。カラマンリス政権下で09年まで内相を務めたパブロプロス氏は、急拡大した公務員給与を所管していた。同氏はインタビューに応じなかった。

 それ以降は、「ゲオルギウ氏を起訴」、「裁判所が証拠不十分として結審」、「政府が異議」、「裁判所が再調査を命じる」という流れを何度も繰り返している。

 ゲオルギウ氏は14年7月、EUが検証済みの統計に関する調査が長引く一方、過去の統計不正に関する調査が全く行われていないのはなぜなのかと疑問を呈した。その結果、前任の統計担当職員らに対する名誉毀損(きそん)の罪で禁錮1年(執行猶予付き)の判決を言い渡された。同氏は上訴した。

 さらに、急進左派連合のアレクシス・チプラス党首が選挙戦で、「ELSTATが財政赤字を水増しし、わが国を台風の目に追いやった本当の理由を今こそ明らかにすべきだ」と訴え、ゲオルギウ氏への批判を加速させた。

 欧州委員会はギリシャ政府に対し、「(ゲオルギウ氏がELSTAT局長を務めていた)10年〜15年の統計が改ざんされたという誤った印象に対し、積極的かつ公に異議を唱えるよう」求めた。

 ゲオルギウ氏は、職務を全うしただけなのに裁判所に何度も引っ張りだされるのはつらいとした上で、「本当の責任者はみな不問に付されている」と語った。

関連記事

ギリシャとユーロ、はてしない物語の再開
ギリシャ、ユーロ圏離脱の恐れ−支援交渉打開を=IMF
ギリシャ危機の悪夢再び、債務不安で国債に投げ売り
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjjiY3Yh4LSAhWMgLwKHfp1Du4QFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11367774349816344181604582610381094962536&usg=AFQjCNGxvyWlch4IL9tddzj8FZZcLpITiQ

 

復活した新興国市場、なお残る「トランプリスク」
商品価格の上昇や経済成長見通しの改善を受けて、ブラジルなどの新興国が再び注目を浴びている(写真はリオデジャネイロでパレードを行うサンバ学校の生徒たち)
By GEORGI KANTCHEV AND GREGOR STUART HUNTER
2017 年 2 月 9 日 12:15 JST

 ドナルド・トランプ氏が米大統領選で勝利したことで、新興国市場は最も大きな痛手を被ると予想されていた。だが、同市場の資産は今年に入ってからこれまでで、パフォーマンスが最も良い資産の1つとなっている。

 昨年11月のトランプ氏の当選を受けて、新興国の通貨、債券市場、株式市場は急落した。米国の金利とドルが上昇するほか、貿易障壁が増えるとの観測が広がったためだ。

 ただ、多くの投資家は現在、最悪の事態は織り込み済みと考えており、むしろ、世界経済の力強い成長や過去最低水準に近いバリュエーション、商品(コモディティー)価格の上昇が新興国にもたらすメリットに注目している。

 MSCIエマージング・マーケット・インデックスは年初来で約7%上昇しており、上昇率はS&P500種指数の2倍以上に達している。MSCIチャイナ・インデックスは大統領選以降、約4%上昇している。通貨では、ブラジルレアルが大統領選前の水準を上回り、トランプ氏の発言に特に敏感に反応するメキシコペソでさえ、ここ数週間、上昇している。

 新興国専門の資産運用会社アシュモア・グループの調査責任者、ジャン・デーン氏は「トランプ氏の公約の大半はすでに織り込まれており、おそらく(国境税の導入といった公約は)実行しないだろう。その結果、新興国市場を取り巻く環境は好転している」と述べた。

 それでも、商品相場が再び下落する、あるいはトランプ氏が関税引き上げなどの政策を遂行するといった大きなリスクは残っている。

 調査会社のEPFRグローバルによると、2月1日までの1週間で、資産運用会社は新興国の株式に14億ドル(約1600億円)をつぎ込んだ。新興国の債券も物色され、債券ファンドへの資金流入額は直近5週間のうち4週間で増加した。

 大統領選投票日後の数週間には、新興国株式ファンドから50億ドル以上が流出していた。

 その大半は米国に戻り、財政支出の拡大と減税というトランプ氏の公約への期待から米国株と米国債利回りは急上昇した。

 利上げ期待の高まりがドルを押し上げた。債務と商品輸出がドル建ての場合が多い新興国にとって、米国の金利上昇とドル高は通常、悪い知らせだ。

 「トランプ相場」はすでに衰えの兆しを見せている。例えば、ドルは年初来で1%余り下落している。

 トランプ相場の転換に伴い、新興国市場が再び注目を浴びている。

 これ以外にも新興国が注目されている理由はある。金属や砂糖などの商品価格が上昇しているほか、原油価格が1バレル=50ドルを上回る水準で推移していることだ。

 ロシアのような資源大国はその恩恵を受けている。ロシア経済はリセッション(景気後退)が2年続いたが、国際通貨基金(IMF)は今年は1.1%成長すると予想している。

 また、新興国全体の今年の経済成長率が4.5%と昨年の4.1%を上回り、先進国の2倍以上になると見込んでいる。

 アジアではここ数年、企業利益が減少していたが、韓国のミレー・アセット・グローバル・インベストメンツの共同最高投資責任者によると、安定化の兆しが見えているという。

 新興国の株式市場もまた底入れしようとしている。商品価格の低迷やドル高、トランプ氏の「米国第一主義」の政策の影響に対する懸念が重しとなり、新興国株は2年余りにわたりパフォーマンスが先進国株を下回ってきた。

 国際金融協会(IIF)のデータによると、PER(株価収益率)に基づく新興国の株式市場のバリュエーションは過去最低水準近くにある。一方、先進国の株式市場のバリュエーションは08年以降で最も高い水準に迫っている。

 だがトランプ氏の動きを予測するのは難しいため、一部の投資家は慎重な姿勢を崩していない。

 マニュライフ・アセット・マネジメントの新興国市場担当アナリスト、リチャード・シーガル氏は「危険が去ったとは言えない」と語った。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiIk52KjoLSAhXGfLwKHWz2AnoQFggaMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582610450972610424&usg=AFQjCNGtNBm4eG6M1nAL6l6EssDUuYOjVw&bvm=bv.146496531,d.dGc
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/834.html

[経世済民118] 日銀・中曽副総裁、金利引き上げを否定 長期金利「ゼロ%程度」堅持 強力な金融緩和を推進 米経済リスク要因 春闘期待 高知
日銀・中曽副総裁、金利引き上げを否定
2017/2/9 12:00
保存 印刷その他
 日銀の中曽宏副総裁は9日、高知市で講演し、市場の一部で浮上している長期金利の誘導目標を早期に引き上げるとの見方を否定した。物価の足取りはなお弱く、政策目標とする2%物価上昇は「実現になお距離がある」と指摘。短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する現行の金融緩和を「粘り強く推進するのが何よりも重要」と述べた。

 中曽氏は物価を巡り「(消費不振などを背景に)足元では一進一退の動き」と述べ、物価上昇圧力が高まるまで現在の金融緩和の枠組みを続ける考えを示した。

 トランプ米政権については「減税やインフラ投資などの積極的な財政運営によって、経済成長率や物価上昇率が高まる方向に作用する」と語った。海外経済は「上振れ、下振れ双方の観点から見ていく必要がある」とした。

 日銀は昨年9月に長短金利を誘導目標とする新しい金融緩和を導入した。長期金利の誘導目標はゼロ%程度だが、今月3日の債券市場で指標となる新発10年物国債の利回りが一時0.150%に上昇していた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGF09H02_Z00C17A2EAF000/


 


中曽日銀副総裁「強力な金融緩和を推進」 米経済をリスク要因に
2017/2/9 11:11
保存 印刷その他
 日銀の日銀の中曽宏副総裁は9日、高知市で開いた金融経済懇談会で講演し「経済・物価の見通しは下振れリスクがあり、強力な金融緩和を推進していくことが重要だ」と話した。海外金利の上昇から、日銀が長短金利の操作目標を引き上げるとの見方が市場で広がっていることをけん制した。

 中曽副総裁は国内経済のリスク要因として米国の動向を取り上げた。トランプ米大統領の経済政策に対し「減税やインフラ投資など積極的な財政運営で、経済成長率や物価上昇率が高まる方向に作用する」と指摘した。米景気の拡大で「米国の長短金利は上昇すると考えられ、国際金融市場に与える影響を注意してみていく」と述べた。米金利の上昇が日本にも波及しかねない状況に警戒感を示したもようだ。

 足元の物価情勢は「やや勢いを欠いた状況が続いている」としつつ「2%の物価安定目標に向けたモメンタムは維持されている」と述べた。原油安で押し下げられていた予想物価上昇率は、原油価格の持ち直しで「ニュートラルか若干押し上げ方向に作用する」との見通しを示した。

 「労働需給の引き締まりは賃金の上昇圧力をもたらしている」とし、賃金上昇が物価押し上げにつながる点も強調。「企業収益が高水準で推移し、賃金が上昇する環境は十分に整っている。今年の春季労使交渉の動向には大変注目している」と賃上げへの期待感を示した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL09HE5_Z00C17A2000000/


 
中曽日銀副総裁、長期金利「ゼロ%程度」堅持の構え 春闘に期待

[高知市 9日 ロイター] - 日銀の中曽宏副総裁は9日、高知市内で講演し、日銀が近い将来に長期金利の操作目標を引き上げるとの見方が出ていることに対して、現局面では強力な金融緩和を粘り強く推進していくことが重要と述べ、現行の「ゼロ%程度」を堅持していく考えを示した。物価2%目標の実現にはなお距離があるとし、春闘での賃上げに期待感を表明した。

中曽副総裁は、昨年9月に導入したイールドカーブ・コントロール(YCC)を柱とする「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」について、経済・物価に対する見方が好転した場合でも金利上昇を抑制することで、実質金利の低下などを通じて「金融緩和の効果を増幅する機能がある」と説明した。

海外金利の上昇を受け、市場の一部に「日銀が近い将来、長期金利操作目標の引き上げを検討するとの見方がある」ことを紹介しながら、「2%の物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されているものの、力強さを欠いており、その実現にはなお距離がある」と指摘。

経済・物価の見通しは「引き続き下振れリスクが大きい」とし、「現在の局面においては、強力な金融緩和を粘り強く推進していくことが、何よりも重要」と強調した。

足元の物価は「やや勢いを欠いた状況が続いている」が、先行きは需給ギャップの改善や、原油価格の持ち直しと円安などに伴って「人々の中長期的な予想物価上昇率も高まっていく」との見通しを示した。

賃金と物価の相関性の高さを踏まえ、特に「春闘の動向に大変注目している」と指摘。高水準の企業収益や労働需給の引き締まりの中で「賃金が上昇する環境は十分に整っている」と述べ、賃上げに強い期待感を表明した。

これまでは原油価格の下落が実際の物価の押し下げを通じて予想物価上昇率を抑制してきたが、今後は原油価格の上昇や円安が「予想物価上昇率の引き上げにつながれば、消費者物価上昇率が持続的に高まることになる」との見解を示した。

日本経済は緩やかな回復基調を続けているものの、先行きのリスク要因として「特に海外経済の動向に関する不確実性には注意が必要」と強調。

トランプ米新政権の経済政策については「減税やインフラ投資などの積極的な財政運営によって、経済成長率や物価上昇率が高まる方向に作用する」との見方を示し、米金利の上昇が新興国を含めた国際金融市場に与える影響に注視が必要と語った。

(伊藤純夫 編集:内田慎一)

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
財務省、国債費24兆6174億円に減額へ=17年度概算要求で政府筋
コラム:黒田緩和検証、20の疑問(上)=河野龍太郎氏
正午のドルは100円後半、ロイター調査「日銀緩和拡大に6割が懸念」
アングル:日銀検証、利回り曲線平坦化の功罪議論か 
インタビュー:日銀は量の効果を検証すべき=富士通総研・早川氏
http://jp.reuters.com/article/boj-nakaso-idJPKBN15O0AY

 

2 0 1 7 年 2 月 9 日
日 本 銀 行
日本銀行副総裁 中曽 宏
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 高知県金融経済懇談会における挨拶 ──
1
1.はじめに
日本銀行の中曽でございます。本日は、当地の行政および金融・経済界を
代表する皆様との懇談の機会を賜りまして、誠にありがとうございます。ま
た、皆様には、日頃より日本銀行高知支店の様々な業務運営にご協力を頂い
ており、この場をお借りして改めて厚くお礼申し上げます。本日は、皆さま
から、当地経済の実情に関するお話や、私どもの政策・業務運営についての
忌憚のないご意見を承りたく存じます。まず、私から、日本銀行が先月末に
公表した「展望レポート」の内容をご紹介しながら、経済・物価の先行きに
対する見方や、金融政策運営の考え方についてお話しします。
2.内外経済の現状と先行き
わが国経済は、緩やかな回復基調を続けています。先行きについては、海
外経済の成長率が緩やかに高まるもとで、きわめて緩和的な金融環境と政府
の大型の経済対策の効果を背景に、潜在成長率を上回る成長を続けるとみて
います。具体的には、日本経済の潜在成長率は「0%台半ば程度」と推計し
ていますが、「展望レポート」の成長率見通しは、政策委員の中央値でみて、
2016 年度+1.4%、2017 年度+1.5%、2018 年度+1.1%となっています(図
表1)。昨年 11 月初に公表した前回見通しと比べると、GDP統計の基準改
定の影響に加え、海外経済の上振れや為替相場の円安方向への動きもあって、
幾分上振れています。以下では、こうした見通しの背景についてご説明しま
す。
(海外経済)
まず、海外経済の動きです。ご承知のように、金融市場では、昨年秋頃ま
で、先行きに対する悲観的な見方が支配的でしたが、振り返ってみると、昨
年半ばから、世界経済の成長のモメンタムが強まっているように窺われます。
特に、製造業や貿易面の改善が顕著です。各国の製造業の業況感に関する指
標をみると、スマートフォンなど情報関連需要の増加や、新興国における素
材の在庫調整の進捗などを背景に、このところ上昇傾向が明確になっていま
2
す(図表2)。地域別にみると、アジア新興国では、これまでの景気刺激策の
効果から内需が底堅く推移するとともに、情報関連や素材関連の輸出が持ち
直しています。中国経済も、公共投資の増加や自動車減税等の政策効果にも
支えられて、総じて安定した成長を続けています。この間、先進国では、こ
れまで家計部門中心の回復が続いてきましたが、最近では、回復の動きが企
業部門にも拡がっています。このようなグローバルな需要の回復を受け、原
油をはじめとするコモディティ価格も昨年前半に底入れし、上昇に転じてい
ます。
なお、昨年 11 月の米国大統領選挙以降、世界的に株価や長期金利が上昇し
ています。これには、米国新政権の下での積極的な経済政策運営に対する期
待が影響していることは確かですが、底流には、こうしたファンダメンタル
ズの改善があると考えられます。
先行きの海外経済については、先進国の着実な成長が続くとともに、新興
国経済の回復も、先進国からの好影響の波及や景気刺激策の効果によって、
次第にしっかりとしたものになっていくとみています。IMFが1月に発表
した各国・地域の成長率の見通しを、わが国の輸出ウエイトで加重平均しま
すと、2018 年にかけて成長率が高まっていく姿となっており、前回見通し時
点と比べてみても小幅ながら上方修正されています(図表3)。
(企業部門)
こうした海外経済の改善を受けて、わが国でも輸出・生産の持ち直しが明
確になっています(図表4)。輸出・生産は、昨年夏頃から増加に転じていま
したが、そうした動きは、熊本地震後の自動車の挽回生産といった一時的な
要因に支えられていた面がありました。もっとも、その後も増勢が続いてお
り、増加品目の裾野は着実に拡がっています。内外需要の緩やかな増加に加
え、資本財や生産財などの在庫調整も進捗しており、輸出・生産の回復は、
徐々に持続力を増してきています。先行きの輸出・生産については、海外経
済の成長率が緩やかに高まっていくもとで、緩やかに増加していくとみてい
ます。
3
こうしたもとで、企業収益は、過去最高に近い水準で推移しており、先行
きについても、内外需要の増加に加え、為替相場の円安方向への動きもあっ
て、着実な増益傾向をたどるとみています。設備投資は、こうした好調な企
業収益を背景に、成長期待の高まりや東京オリンピック関連需要の本格化も
あって着実に増加していくと見込まれます。緩和的な金融環境も設備投資を
サポートしていくと考えています。12 月短観をみても、企業収益は引き続き
高水準で推移しており、企業の設備投資計画も、総じてしっかりとした計画
が維持されています。
(家計部門)
この間、個人消費は、昨年初以降、雇用・所得環境の着実な改善にもかか
わらず、やや鈍い動きとなっていましたが、このところ改善傾向を続けてい
ます。昨年前半は、先ほどお話ししたとおり、新興国を中心に世界経済が減
速し、これを受けて株価も下落しました。加えて、天候不順なども重なる中
で、消費者マインドが慎重化しました。ただ、ここに来て、消費者マインド
は、株価上昇などを背景に改善しており、個人消費は一頃の弱さを脱しつつ
あります(図表5)。以前から比較的堅調であった外食などのサービス支出に
加え、自動車・家電などの耐久消費財の販売や、スーパーやコンビニエンス
ストアの売上も改善傾向がはっきりしてきました。日本銀行が各種の販売・
供給統計を合成して作成している消費活動指数は、昨年夏場以降、持ち直し
ています。
先行きについても、個人消費は、緩やかに増加すると見込まれます。個人
消費を支えているのは、雇用・所得環境の着実な改善です。労働需給をみる
と、有効求人倍率や短観の雇用人員判断DIは、いずれも 1991〜92 年頃と同
程度の水準まで改善しています(図表6)。失業率は、最近では3%程度まで
低下し、ほぼ完全雇用と言える状態になっています。こうしたもとで、賃金
は、振れを伴いつつも緩やかに上昇しています。特に、労働需給に感応的な
パート労働者の賃金は、前年比1%台後半から2%程度の高めの伸びとなっ
ており、今後、こうした賃金の上昇がベースアップなどを通じて一段と拡が
4
っていくことが期待されます。
(上振れ・下振れ要因)
以上が 2018 年度までのわが国経済の中心的な見通しですが、こうした見通
しには、当然、リスク要因があります。特に、海外経済の動向に関する不確
実性には注意が必要です。
具体的には、まず、米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際金
融市場に及ぼす影響があります。現時点では、米国の新政権の下での経済政
策の詳細は明らかになっていませんが、基本的には、減税やインフラ投資な
どの積極的な財政運営によって、経済成長率や物価上昇率が高まる方向に作
用すると考えられます。こうしたもとで、米国の長短金利は上昇していくと
見込まれますが、これが新興国を含め、国際金融市場に与える影響について
は、注意してみていく必要があります。このほか、中国をはじめとする新興
国・資源国経済の動向、英国のEU離脱問題の帰趨やその影響、金融セクタ
ーを含む欧州債務問題の展開などにも注意が必要です。
なお、これらの要因は、いずれも経済の下振れ要因となりますが、上振れ
方向に作用する可能性もあります。昨年の英国のEU離脱の国民投票の際に
みられたように、市場や経済主体がリスクをある程度意識している場合には、
実際の影響が事前の予想に比べて軽微なものに止まるとの見方が拡がったり、
リスクが顕在化する蓋然性が低下すると、経済の先行きに対するコンフィデ
ンスが高まることなどを通じて、景気の上振れにつながると考えられます。
このように、海外経済の動向については、上振れ・下振れ双方の観点からみ
ていく必要があると思います。
3.物価の現状と見通し
(物価の現状)
次に、わが国の物価情勢についてお話しします。日本銀行が 2013 年4月に
「量的・質的金融緩和」を導入して以降、間もなく4年が経ちます。この間、
わが国の物価情勢は大きく改善してきました(図表7)。2014 年秋以降、原
5
油価格が大幅に下落しており、これが消費者物価の下押しに寄与しています
が、生鮮食品とエネルギーを除くベースの消費者物価の前年比をみると、「量
的・質的金融緩和」導入以前は長年にわたってマイナス圏で推移していたも
のが、2013 年の秋にプラスに転じ、現在まで3年以上にわたってプラスで推
移しています。日本経済は、既に「物価が持続的に下落する」という意味で
のデフレではなくなっています。
もっとも、日本銀行が目指している2%の「物価安定の目標」の実現には、
依然としてなお距離があることも事実です。生鮮食品とエネルギーを除く消
費者物価の前年比上昇率は、昨年初以降、プラス幅の縮小傾向が続いたあと、
足もとでは一進一退の動きとなっています。その背景としては、個人消費の
もたつきを受けて、企業の価格改定の動きが鈍化したことや、昨年中の為替
円高から耐久消費財などで値下げの動きがみられたことが挙げられます。ま
た、もう少し長い目でみると、ここ2年半ほど続いた原油価格の下落に伴っ
て、実際の消費者物価が弱めの動きを続けたことから、人々の予想物価上昇
率も、これに引きずられる形で低下したことが指摘できます。
(物価の見通し)
このように、足もとの物価は、やや勢いを欠いた状況が続いていますが、
2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されていると判断して
います。すなわち、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、原油価格が底入
れしたことを反映して0%程度から小幅のプラスに転じたあと、2%に向け
て上昇率を高めていくとみています。2%程度に達する時期は、「展望レポー
ト」の見通し期間の終盤である「2018 年度頃」になる可能性が高いとみてい
ます。こうした物価見通しについては、前回の「展望レポート」から変化は
ありません。
先行き、物価上昇率が高まっていくメカニズムとしては、第一に、労働需
給の引き締まりにみられるように、マクロ的な需給バランスが着実に改善し
ており、これが賃金の上昇などを通じて物価上昇率の高まりにつながってい
くこと、第二に、原油価格をはじめとするコモディティ価格の持ち直しや、
6
為替の円安方向への動きが消費者物価の押し上げに寄与すること、第三に、
それらの動きに伴って、人々の中長期的な予想物価上昇率も高まっていくこ
と、が指摘できます。
労働需給の引き締まりは、賃金の上昇圧力をもたらしています。日本銀行
が目指しているのは、企業収益や賃金の上昇を伴いながら、消費者物価上昇
率が緩やかに高まっていく姿です。過去のデータをみても、賃金上昇率と物
価上昇率は、概ねパラレルに動いています。こうした観点から、昨年までと
同様に、春闘の動向には大変注目しています。企業収益が高水準で推移する
もとで、労働需給は引き締まっており、賃金が上昇する環境は十分に整って
います。こうした環境を活かしながら、労使双方において、経済の好循環に
向けた前向きの取り組みが行われることを強く期待しています。
また、これまで下押し方向に働いてきた原油価格などの下落の影響は、2016
年度末にかけて概ね剥落し、その後は、消費者物価に対してプラス方向に作
用していくと予想されます。具体的に申し上げると、エネルギー価格が消費
者物価に与えるマイナス寄与は次第に縮小してきており、2017 年初には、概
ねゼロになると見込まれます。先行きの寄与度について、原油価格が先物価
格に沿う形でごく緩やかに上昇していくといった前提で試算すれば、2017 年
度中は小幅のプラスとなる見込みです。
予想物価上昇率については、先ほど申し上げたように、わが国においては、
実際の物価上昇率に引きずられる傾向があります。こうしたメカニズムを「適
合的な期待形成」と呼んでいます。2014 年秋以降の原油価格の下落は、「適
合的な期待形成」を通じて予想物価上昇率の押し下げ要因となってきました
が、これからは、ニュートラルか若干押し上げ方向の要因として作用するこ
とが見込まれます。原油価格の上昇や為替円安が消費者物価に与える影響は、
それ自体は、やがて減衰する一時的なものですが、これが中長期的な予想物
価上昇率の引き上げにつながれば、消費者物価上昇率が持続的に高まること
になります。日本銀行では、2%の「物価安定の目標」の実現に対する強力
なコミットメントと相俟って、人々の予想物価上昇率は上昇傾向をたどり、
7
2%に向けて収斂していくとみています。
4.日本銀行の金融政策運営
続いて、日本銀行の金融政策運営についてお話しします。日本銀行は、昨
年9月に、従来の「量的・質的金融緩和」および「マイナス金利付き量的・
質的金融緩和」を強化する形で、新たな金融緩和の枠組みである「長短金利
操作付き量的・質的金融緩和」を導入しました。
この枠組みは、2つの要素から成り立っています(図表8)。1つは、日本
銀行が長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」です。経済・
物価・金融情勢を踏まえながら、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた
モメンタムを維持するために最も適切と考えられる長短金利の形成を促して
いきます。現状では、金融市場調節方針において、短期政策金利を▲0.1%、
10 年物国債金利の操作目標をゼロ%程度と定め、これを実現するように国債
買入れを行っています。
もう1つの要素は、「オーバーシュート型コミットメント」です。これは、
「消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベー
スの拡大方針を継続する」という、強力なコミットメントです。先ほどご説
明したように、わが国では、予想物価上昇率について「適合的な期待形成」
の要素が強いことを踏まえれば、予想物価上昇率を2%まで引き上げ、その
水準でアンカーするためには、人々が2%を超える物価上昇を実際に経験す
ることが重要であると考えています。こうしたコミットメントにより、「物価
安定の目標」の実現に向けた日本銀行の強い姿勢を改めて示すことで、2%
の実現に対する人々の信認を高め、予想物価上昇率をより強力に引き上げて
いくことを狙いとしています。
この枠組みは、経済・物価に対する見方が好転した場合には、金融緩和の
効果を増幅する機能があります。通常、そうした場合には、経済・物価の好
転に見合った形で金利に上昇圧力がかかることになりますが、それを抑えて
同じイールドカーブを保てば、実質金利の低下や、自然利子率の上昇を通じ
8
て、金融緩和の度合いが高まることになるためです。
先行きの金融政策運営については、経済・物価・金融情勢を踏まえ、2%
の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するために最も適切と考え
られるイールドカーブの形成を促すという観点から、毎回の金融政策決定会
合において、「金融市場調節方針」を決定します。
この点、市場の一部には、海外金利が上昇していることを受けて、日本銀
行が、近い将来、長期金利操作目標の引き上げを検討するとの見方もあるよ
うです。しかしながら、「展望レポート」でも示したように、2%の「物価安
定の目標」に向けたモメンタムは維持されているものの、力強さを欠いてお
り、その実現にはなお距離があります。経済・物価見通しについては、海外
経済や中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って、引き続き下振れリス
クが大きいと考えられます。こうした状況を踏まえると、現在の局面におい
ては、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、強力な金融緩和を
粘り強く推進していくことが、何よりも重要であると考えています。
5.おわりに
最後に、高知県経済について触れておきたいと思います。
足もとの高知県経済は、緩やかに回復しています。当地でも、先ほど申し
上げた世界経済の復調を受けて、新興国向け輸出が増加しており、生産が持
ち直しています。
需要面についても、公共投資、住宅投資が増加しているほか、高水準の企
業収益を背景に、企業も前向きな設備投資スタンスを維持しています。また、
個人消費も、新車投入効果により乗用車販売が持ち直すなど、明るい動きも
みられています。こうした個人消費の動きの背景には、雇用・所得環境の好
転があることは言うまでもありません。高知県の有効求人倍率は、1 年前に
長く念願であった1倍を超え、その後も上昇傾向をたどっています。こうし
たもとで、賃金が上昇しており、雇用者所得も緩やかな増加基調にあります。
ただし、こうした有効求人倍率上昇の背景には、景気の好転だけでなく、
9
全国に 10 年以上先駆けて進んでいる人口減少や高齢化による人手不足とい
う側面もあります。その一方、人口減少は県内市場の縮小という大きな課題
ももたらしています。
こうした課題に対応すべく、県は、平成 21 年度から「高知県産業振興計画」
を強力に推進しています。この計画では、当地の強みである農林水産業を活
かした食品産業や観光産業の強化と県外・海外への販路拡大による「地産外
商」、「拡大再生産」が掲げられています。この方針に沿って、県内各地では、
特産の柚子や栗、鰹などを活用した六次産業化の取り組みが進んでおり、生
産額も増加しています。また、当地の特性や伝統技術を活かした製品の開発
と国内外への販路拡大を進めている企業も増加しています。例えば、もとも
と防災意識の高い当地ならではの技術を活かした防災関連製品、土佐和紙の
伝統を活かした競争力のある紙製品などでは、国内外で高いマーケットシェ
アを有するニッチトップ企業も育ってきています。
観光面でも、様々な取り組みが着実に成果を上げています。高知県は、幕
末の志士・坂本龍馬をはじめとして、歴史上の偉人を数多く輩出した進取の
気性に富んだ土地であるとともに、室戸ジオパークや四万十川に代表される
豊かな自然、歴史・文化を有する観光の県でもあります。県内各地で、豊か
な自然や高知ならではの食や文化を活かした観光地づくりが進んでおり、外
国人観光客を含め、高知を訪れる観光客は増加傾向にあります。「大政奉還」
と「明治維新」から 150 年目にあたる今年から来年にかけては、「志国高知 幕
末維新博」が開催され、さらなる観光客の増加と全国への魅力の発信が期待
されています。
「自由は土佐の山間より出づ」、これは、明治時代に活躍した高知県出身の
植木枝盛の言葉です。高知県は、人口減少と高齢化がいち早く進んでおり、
まさに将来の日本の姿を写す鏡とも言っても過言ではありません。高知経済
の発展は、今後の日本経済の進むべき方向を示す道標の役割を果たすと思い
ます。「日本経済の活性化は、土佐の山間から」、日本銀行としても、高知支
店を中心に、地域活性化に向けた取り組みに少しでも貢献できるよう努めて
10
参りたいと考えています。最後になりましたが、高知県経済のますますの発
展を心より祈念し、挨拶の言葉とさせて頂きます。
ご清聴ありがとうございました。
以 上
2017年2月9日
日本銀行副総裁
中曽 宏
最近の金融経済情勢と金融政策運営
― 高知県金融経済懇談会における挨拶 ― 
マネタリーベースの拡大方針を継続
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/data/ko170209a1.pdf
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/837.html

[国際17] 米大統領専用機に民間航空機が2カイリまで接近、当局が調査 トランプは独善的、労組が提訴 上院セッションズ司法長官就任承認
米大統領専用機に民間航空機が2カイリまで接近、当局が調査−関係者
Alan Levin
2017年2月9日 13:48 JST
Share on FacebookShare on Twitter
エアフォースワンとの接近は3日、フロリダ州上空で発生
両機の飛行進路が並行していたことから衝突の危険は小さかった
Share on Facebook
Share on Twitter
米国の航空運輸当局は、トランプ米大統領が搭乗した大統領専用機「エアフォースワン」と民間航空機とが、許可されている距離よりも接近した事態の調査に乗り出した。
  公に発言する権限がないことを理由に匿名を条件に関係者3人が語ったところによると、3日にフロリダ上空で両機は約2カイリ(約3700メートル)の距離まで接近した。航空管制空域では、航空機同士は高高度で5カイリ、空港近くでは少なくとも3カイリの距離を空けることになっている。今回のケースでは、両機の飛行進路は並行だったため衝突の危険はなかった。
  大統領が航空機で国内を移動する際には、特別な安全・保安上の措置が幾つか講じられ、多くの場合、他の航空機はエアフォースワンとの距離を大きく取るよう飛行停止や迂回(うかい)を余儀なくされる。
  トランプ大統領は3日にパームビーチ国際空港に向かい、現地時間午後4時半に到着した。異常接近は同空港から約30マイル離れた空域で発生したと関係者1人が述べた。
  大統領が通常搭乗するボーイング747型機を含む全てのタービン推進型の航空機には、他機の動きを追跡し空中衝突防止を警告する機器が備え付けられている。
  調査を行っている米連邦航空局(FAA)は電子メールでコメントを控えた。航空機事故調査の権限を有する国家運輸安全委員会(NTSB)にも通知された。
原題:Investigators Said to Probe Plane Too Close to Air Force One (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-09/OL36XT6JTSE801

 

米上院:セッションズ氏の司法長官就任を承認−議論紛糾の後
Chris Strohm、Terrence Dopp
2017年2月9日 09:33 JST 更新日時 2017年2月9日 11:32 JST
Share on FacebookShare on Twitter
共和党がウォーレン議員の議論参加を禁じる
共和、民主両党は30時間以上に及ぶ論戦を繰り広げた
Share on Facebook
Share on Twitter
米上院本会議は8日、ジェフ・セッションズ上院議員(共和、アラバマ州)の司法長官就任を承認した。採決前の論戦中、上院共和党はエリザベス・ウォーレン上院議員(民主、マサチューセッツ州)の議論参加を禁じた。
  採決は賛成52、反対47。民主党はセッションズ氏(70)の指名承認を遅らせる戦術に出て、共和党との激しい論争は30時間時間余り続いたが、結局、指名を覆すことはできなかった。
  採決に先立つ論戦で民主党は、セッションズ氏がトランプ氏から十分な独立性を保つこともなく選挙権や市民権の保護を怠るだろうと主張。共和党は、セッションズ氏は法律の執行を政治よりも優先させるだろうと反論した。
  両党の論戦中、ウォーレン議員は1960年代に公民権運動を率いた故マーティン・ルーサー・キング牧師の妻、故コレッタ・スコット・キングさんが1986年にセッションズ氏を非難した書簡を読み上げた。これを受け、共和党は議員への個人攻撃を禁止するルールに基づき、ウォーレン議員を議論に加われないようにする議案を可決した。
  セッションズ氏は1986年に連邦判事に指名されたが、人種差別的な発言や行動の疑いがあるとして上院の承認を得られなかった経緯がある。セッションズ氏はこうした疑惑を否定していた。
原題:Senate Confirms Sessions as Attorney General After Bitter Fight(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-09/OL30736K50Y501

 


規制緩和命じたトランプ米大統領令は「独善的」−2団体と労組が提訴
Andrew Harris
2017年2月9日 08:28 JST
Share on FacebookShare on Twitter
新たな規制1つの導入に既存の規制2つ撤廃を命じた大統領令を非難
大統領令は国民保護の恩恵よりコストを優先、米国民に損害与える
Share on Facebook
Share on Twitter
トランプ米大統領が連邦政府機関に対し新たな規制1本の導入に際して規制2本を撤廃するよう求めた大統領令を出したのは「独善的」で違憲であり、米国民に損害を与えるとして2つの権利擁護団体と労働組合が首都ワシントンの米連邦地裁に訴えた。
  今回の訴訟は、トランプ大統領が選挙戦中に掲げた政策見直しを迅速に実施するため大統領令を利用することに対し、反発がさらに高まっていることを示している。イスラム圏7カ国の国民の入国を一時禁止する大統領令の執行停止仮処分への対応を連邦高裁が検討する中、トランプ大統領は8日、移民入国を制限する大統領権限について裁判所で決められるべきではないと主張した。
  1月30日に署名された規制緩和に関する米大統領令は、新たな規制のコストを従来の規制に伴うコストでカットして相殺するよう政府機関に指示する内容。同大統領令をめぐって8日にワシントンの連邦地裁に提訴したのは、消費者擁護団体のパブリック・シチズンと自然資源防衛協議会、全米通信労働組合。パブリック・シチズンは訴訟について発表した声明で、「大統領令は新規制に伴う今会計年度のコストを正味ゼロドルとすることを義務付けるもので、国民を保護する恩恵の価値を考慮していない」と指摘した。
  司法省のスパイサー報道官は、これら団体の主張は「極めて不正確だ」と主張、トランプ政権が諸規制を「行き当たりばったり」撤廃しようとしているとの見方を否定した。
原題:Trump’s Deregulation Plan Called ‘Arbitrary’ in Latest Suit (3)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-08/OL2QDK6TTDSH01
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/881.html

[政治・選挙・NHK220] 安倍首相のトランプ氏別荘訪問、倫理上の懸念 トランプ政権イラン革命防衛隊のテロ組織指定を検討、指定すれば幅広い分野に影響
安倍首相のトランプ氏別荘訪問、倫理上の懸念

大統領所有ゴルフリゾートでの滞在費用、誰が負担するのか
安倍首相は10日、ワシントンで日米首脳会談に臨んだ後、トランプ大統領が所有するフロリダ州のゴルフリゾート「マー・ア・ラゴ」を訪問する予定

By REBECCA BALLHAUS
2017 年 2 月 9 日 13:28 JST

 ドナルド・トランプ米大統領は今週末、自身が所有するフロリダ州パームビーチのゴルフリゾートで安倍晋三首相をもてなす予定だが、この費用を誰が負担するのかを巡り、倫理専門家から懸念の声が上がっている。

 安倍首相は10日、首都ワシントンで日米首脳会談に臨む。その後、両首脳はトランプ氏が「冬のホワイトハウス」と呼ぶリゾート施設「マー・ア・ラゴ」に移動する予定となっている。ショーン・スパイサー大統領報道官は8日の会見で、別荘訪問の費用を日米いずれの政府が負担するのか承知していないと述べた。別のホワイトハウス報道担当職員はこれに関する質問に答えなかった。

 専門家によると、仮に日本政府が「マー・ア・ラゴ」滞在費用を支払うとすると、大統領は議会の同意なしに政府職員が外国政府から金品を受け取ることを禁じる合衆国憲法の規定に違反する可能性が高い。この規定に違反すると、受け取った金額を米政府に没収される可能性もある。この規定に関して訴訟が起こされたことはほとんどない。

 倫理専門家は、もし日本政府の倫理規定が許すならば、トランプ氏が自身の賓客として安倍首相を迎えることが最も適切な選択肢だろうと話す。その場合、日本政府はゴルフ場でのプレーや宿泊の料金を一切支払う必要がない。

 日本政府が費用を払うことを選ぶならば、米政府に直接支払われる必要があると、ジョージ・W・ブッシュ政権で倫理担当の主任弁護士だったリチャード・ペインター氏は指摘する。

 「外国政府から(トランプ一族のファミリー企業である)トランプ・オーガニゼーションに金銭が渡ってはいけない」とペインター氏は話す。

 倫理専門家は、安倍首相の訪問を巡るこうした疑問は、くすぶっているトランプ氏の利益相反問題を浮き彫りにする一例だとしている。

 外国首脳が米大統領と会談する場合、通常はホワイトハウスに近い迎賓館のブレアハウスに宿泊する。また、大統領が外国首脳をワシントン近郊の山荘キャンプデービッドに招くこともある。

 かつてジョージ・W・ブッシュ元大統領は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領やトニー・ブレア元英首相など数人の外国首脳をテキサス州クロフォードにある自身の牧場に招待した。ペインター氏によると、ブッシュ氏は自らの賓客として首脳を迎えたという。

 しかしブッシュ氏の牧場とは違い、マー・ア・ラゴは会員制クラブとして運営されている。会費はここ数か月で10万ドル(約1120万円)から20万ドルに跳ね上がったという。大統領が頻繁に訪れるとなれば――しかも外国の首脳を伴って――リゾート施設のビジネスチャンスが一段と拡大する公算が大きい。

トランプ新大統領

トランプ氏、安倍首相を安心させられるか
トランプ氏、揺らぐ同盟国との信頼関係 日本も矛先か
トランプ氏と利益相反、早わかりQ&A
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwj7tbbnp4LSAhVFwbwKHc6IBeYQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582610524271914682&usg=AFQjCNFzW4bGosIHPI3a_OLytX9xswDDew

 


トランプ政権、イラン革命防衛隊のテロ組織指定を検討
実際に指定すれば幅広い分野に影響が及ぶ
9月にテヘランで行進を行うイランの革命防衛隊

By FELICIA SCHWARTZ AND JAY SOLOMON
2017 年 2 月 9 日 12:16 JST

 【ワシントン】ドナルド・トランプ米大統領がイラン革命防衛隊(IRGC)とムスリム同胞団をテロ組織に指定することを検討している。事情に詳しい関係者が明らかにした。

 影響力の大きい両組織のどちらかでもテロ組織に指定すれば、中東のイスラム系組織に対する米国の制裁は格段に強まることになる。米政府は現在 アルカイダや「イスラム国」のほか、数十の武装勢力をテロ組織に指定している。

 1人の関係者によれば、IRGCの方がテロ組織指定に向けたハードルは低く、ホワイトハウスもより迅速に動く可能性が高いという。ただ、指定の時期がいつになるかは不明確だ。

 ショーン・スパイサー大統領報道官は8日、具体的なコメントは控えるとした上で、「米国が直面するイスラム系テロリストの脅威に対し、大統領は着実に対処し攻撃を行う。その決意を疑う者はいない」と述べた。

 IRGCはイランの最高指導者であるハメネイ師の直轄組織で、イラン軍とは別の指揮系統を持つ。1979年のイラン革命後に結成されたが、ここ10年ほどは原油や天然ガスのほか通信事業にも進出し、同国の経済に大きな影響力を持っている。米当局者はIRGCがイラン経済の半分をコントロールしていると推計する。

イランの最高指導者ハメネイ師
イランの最高指導者ハメネイ師 PHOTO: OFFICE OF THE IRANIAN SUPREME LEADER/ASSOCIATED PRESS
 一方、ムスリム同胞団は1928年にエジプトで結成され、上層部は政治的暴力ではなく民主的な手法でイスラム社会を形成したいと主張する。

 米国はムスリム同胞団の分派にあたるイスラム原理主義組織ハマスを1997年にテロ組織に指定済み。また、エジプトやサウジアラビア、アラブ首長国連邦は、ムスリム同胞団をすでにテロ組織として認識している。

 同胞団は2012年にエジプトのムハンマド・モルシ政権が崩壊したことで打撃を受けたものの、今も数百万人の支持者がおり、テロ組織に指定されれば反発が生じる可能性もある。ヨルダンやチュニジアなどの議会ではムスリム同胞団と関連のある政党が議席を確保している。

 米当局者や人権団体の中には、ムスリム同胞団をテロ組織に指定することに反対する声もある。指定すれば幅広い分野に影響が生じるためだ。

 「ムスリム同胞団は、多くの国で活動する巨大かつ複雑な構造を持った政治団体だ」と話すのは、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのローラ・ピッター氏。ムスリム同胞団全体をテロ組織として指定すれば、イスラム系組織が民主化プロセスに参加する道を閉ざしてしまう危険があると同氏は話す。

 上院外交委員会で民主党トップのベン・カーディン議員(メリーランド州)は、ムスリム同胞団が「テロリスト型の組織だ」と指摘。そのうえで、米国は他の同盟国とも協議をした上で、テロ組織として指定することの影響を考慮しなければいけないと述べた。

 「正式な行動を取る前に、その後にどのようなことが起きるかを考慮することが重要だ。エジプトやヨルダンの政治情勢もこれによって影響を受ける」とカーディン氏は語った。

関連記事

トランプ政権の火種リスト、1位はイラン
米トランプ政権、イランに新たな制裁
トルコとイランが外交接近−クルド人けん制で
サウジを「破門」? イスラム教内部に新たな亀裂
高級ブランド、イランで偽物と混同され苦戦
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjd38Dkp4LSAhVDxrwKHQbqDHcQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11367774349816344181604582610170397654652&usg=AFQjCNEijyiSamjZoDHxTyUjVLWA9n8w4g
http://www.asyura2.com/17/senkyo220/msg/438.html

[国際17] 米国は憲政の危機に? 大統領vs司法 メラニア夫人「ブランド価値に傷」で英紙提訴 商業利益得る機会喪失と  
米国は憲政の危機に? 大統領vs司法
2017/02/08
BBC News

自分は米国をテロから守ろうとしているのに、「いわゆる裁判官」が邪魔をするせいで、とても大変だというのが、ドナルド・トランプ米大統領の言い分だ。

対する裁判官は、特定7カ国からの入国を制限する大統領令の執行停止を命令。大統領の行動の順法性を確保しようとしているのだと主張している。

大統領令をめぐり、米政府の三権のうち二権が真っ向から対立していることになる。行政府と司法府は論理上は対等だ。そのため、この対立は憲政上の危機につながる可能性がある。

何が問われているのか

米国の統治の仕組みを理解するには、権力分立の原則を理解する必要がある。

合衆国憲法は、貴重な「チェック・アンド・バランス(抑制と均衡)」の仕組みを作り上げた。政府の三権の権限は平等で、互いを牽制する関係にある。

連邦政府の権力は、行政(大統領と内閣)、立法(連邦議会)、司法(裁判所)の3つに分かれている。

大統領は――裁判官を指名し、議会が作る法律を拒否することができる。

議会は――大統領の拒否権を覆し法律を制定することができる。連邦政府の予算決定権も議会にある。裁判所に対しては、大統領が指名した判事の任命を拒否できる。判事を弾劾(罷免・処罰)することもできる。

裁判所は――大統領の行動を違憲と判断できる。議会が制定した法律についても、違憲判断が下せる。

この仕組みはだいたいの場合、うまく機能する。三権は互いに協力し合うのが普通だ。

しかし大統領が公然と、司法府ないしは立法府と対立する場合、政府機能が完全に膠着(こうちゃく)するおそれがある。

そうなってしまうと、。トランプ大統領は裁判官の権限に公然と挑戦しているかのように見えるだけに、このままでは事態打開の方法がない、憲政上の危機に至る可能性もある。

上院司法委員会のパトリック・リーヒー議員(民主党)は、「法の支配に対して大統領が敵対心を示している。これは恥ずかしいというだけでなく、危険だ」、「憲政上の危機を引き起こそうとしているように見える」と懸念

判事は本当に大統領と対等なのか

大統領令の差し止めを命令したのは、シアトルにある連邦裁判所の判事だ。米国に連邦地裁判事は約700人いる。

州裁判所の判事と異なり、連邦判事たちは連邦最高裁や連邦控訴裁と同様に、連邦司法制度に属する。

合衆国憲法第3章第2条では、憲法と合衆国の法律、合衆国の権限に基づいて締結された条約、もしくは将来締結される条約の下で発生する法律上の全ての事件について、司法権が及ぶと定めている。

米国の法律や条約の解釈、ならびに公務員の行動に司法判断を下すのは、94カ所の連邦地裁。連邦地裁の司法権限は、連邦最高裁から与えられたものだ。

裁判所は通常は、求められない限り、政府の政策に意見を表明したりしない。訴えが提起された際に法律を解釈するだけだ。

議会は立法府として法律を作り、大統領府は行政府として法律を執行する。そして司法府は、紛争が起きた際に法律を解釈する。

現在問題になっているのは、まさにここだ。大統領令には法律と同じような強制力があるため、法律と同じように、司法チェックの対象になる。

大統領令に対する司法判断はこれまでも何度も行われてきた。

2015年2月には当時のバラク・オバマ大統領が、不法移民の一部を強制送還から免除しようと大統領令に署名したが、テキサス州の連邦判事が差し止めを命令。2008年10月には、グアンタナモ米海軍基地に収容されていたウイグル人について、連邦地裁が釈放を命じたものの、当時のブッシュ政権の上訴を受けて連邦控訴裁が拘束の継続を認めるという、法廷でのやりとりがあった。

トランプ氏はなぜ判事を解任しないのか

確かに、連邦地裁判事は大統領に指名され、上院の承認を得て就任する。

たとえば、トランプ氏に「いわゆる裁判官」とツイッターで嘲笑されたジェイムズ・ロバート判事は、2003年末にジョージ・W・ブッシュ元大統領に指名され、2004年6月に承認された。

しかし、大統領は裁判官を解任できない。

米国の建国の父たちが、司法府を行政府の介入から守る仕組みを作ったからだ。

連邦判事を弾劾して罷免できるのは、連邦議会のみ。大統領を弾劾・罷免する手続きと同じで、上下両院の賛成が必要となる。

合衆国憲法第3章に守られた裁判官の地位は、実際には非常に強固で、上院の劾裁判で有罪となり罷免された連邦判事は米国史上8人しかいない。

その結果、連邦判事は自ら引退を選ぶまで、もしくは死亡するまで、務めることがほとんどだ。

そして現在、米国政府三権のうち行政府と司法府が対立状態にあるが、大統領も裁判官もお互いを罷免するわけにはいかない。

では最高裁は?

連邦最高裁は、その名が示す通り、米国の司法権の最高機関で、他の下級裁判所はこの下に属する。

大統領令をめぐる今の争いについて、政府はいきなり最高裁の判断を仰ぐこともできたし、今後そうする可能性もある。

しかし他の連邦裁判所と同様、最高裁の司法判断は政治干渉から守られている。

裁判官の定員は9人だが、アントニン・スカリア判事が昨年2月に死去して以来、8人のままの状態が続いている。

4人は民主党の大統領に指名され、4人は共和党の大統領に指名された。9人目についてトランプ氏は、ニール・ゴーサッチ連邦控訴裁判事を指名している。新判事の判断次第では最高裁の勢力均衡が崩れ、判決が保守か革新かのいずれかに傾く可能性がある。

では立法府の役割は?

大統領と裁判所が対立して膠着状態に陥った場合、事態打開の権限は連邦議会にある。大統領令を覆す法律を可決する、もしくは大統領や裁判官を弾劾し罷免する権限が議会にはあるからだ。

トランプ氏が率いる共和党が現在、上下両院の多数を占めているため、大統領に対して議会が行動するとは考えにくい。

そして司法の独立は米国の統治の根幹を成すあまりに重要な要素なので、議会が大統領を応援して裁判官を攻撃し始めるなど、かなり極端な事態だ。

それでも、三権のうち二権が対立する状態が続くなら、最終的な決着はいずれ連邦議会にゆだねられるのかもしれない。トランプ氏が、大統領令を修正しないならば。

歴代の大統領は、司法の反対を受けるとだいたいは譲歩してきた。その伝統に鑑みれば、大統領の修正こそ最も賢明な対応なのかもしれない。

しかし今のところトランプ氏は「裁判官がこの国をこんな危険な目に遭わせるなんて信じられない」とツイートしている状態で、考えを変える気配はまるで見えない。

(英語記事 Taking on Trump: Is the US facing a constitutional crisis?)

この話題についてさらに読む

トランプ米大統領の入国制限命令、連邦控訴裁で審理開始
2017年02月8日
トランプ米大統領「何かあれば」判事の責任と 
2017年02月6日
米連邦裁判事、トランプ政権の入国制限差し止めを命令 政府は上訴
2017年02月5日
Video 「ああどうしよう……」 米国のムスリム学生たち
2017年02月2日
米国の移民・難民入国制限、なぜこの7カ国? 政府説明と実際のデータ
2017年02月1日
米司法長官代行、大統領令に反発 政権はただちに解任
2017年01月31日
トランプ米政権、入国停止措置を堅持する構え
2017年01月30日
Video 就任1週間のトランプ米大統領 支持者たち絶賛
2017年02月1日
Video 国を守るため必要なら トランプ氏の入国制限に賛成意見
2017年02月1日
Video トランプ氏の入国制限命令に大企業反発
2017年01月31日
Video 英国各地でもトランプ氏に抗議 「沈黙は共犯」
2017年01月31日
Video 「難民歓迎」「人権のため闘う」 ニューヨークやシカゴの空港でも
2017年01月30日
Video 「ここは皆さんの国」「アメリカにようこそ」 ワシントンの空港で歓迎と抗議
2017年01月30日
Video 永住権を持っていても……ボストンの空港でも家族が拘束され
2017年01月30日
トランプ米大統領、移民審査強化を命令 シリア難民受け入れ一時停止
2017年01月28日
読み物・解説 記事をさらに読む
提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-38891182
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8862

 
メラニア夫人「ブランド価値に傷」で英紙提訴 商業利益得る機会喪失と
2017/02/08
BBC News

http://ichef.bbci.co.uk/news/660/cpsprodpb/EA93/production/_94215006_mediaitem94215003.jpg
米国のファーストレディー、メラニア・トランプ夫人が6日、自分のブランド力によって巨額の利益を得る「一生に一度の機会」を報道によって失ったとして、英紙デイリー・メールへの訴えを再び起こした。少なくとも1億5000万ドル(約170億円)の損害賠償を求めている。

デイリー・メールは昨年8月20日、メラニア夫人がかつて「エスコート」として働いていたと報道したが、後に記事を撤回している。

訴状によるとメラニア夫人側は、デイリー・メールの記事によって夫人の「ブランド価値が大きく傷ついた」と主張。「世界で最も写真を撮られる女性になる」タイミングで、「複数の商品カテゴリーにまたがる幅広い商業ブランドを立ち上げ」、「複数年にわたり数百万ドル規模の商取引を獲得する」機会があったにもかかわらず、報道によってその機会が損なわれたと訴え、損害賠償を求めている。

想定されていたメラニアさんブランドの商品ラインには、洋服やヘアメイク製品が含まれる予定だったという。

メラニア夫人は当初の報道を受けて昨年9月にメリーランド州の裁判所に提訴しているが、裁判所は同州での審理は適切ではないと却下。このたび、デイリー・メールを所有するメール・メディア社のあるニューヨーク州であらためて提訴した。

投書の記事を撤回するにあたり、デイリー・メールはメラニアさんの過去について記事内で言及した内容が「本当だと断定するつもりも、示唆するつもりもなく、トランプ夫人がかつて『エスコート』だった、あるいは『性風俗産業』で働いたことがあると、断定もしくは示唆するつもりもなかった」と釈明していた。

再提訴について同紙はコメントしていない。

トランプ夫人は米国のブロガー、ウェスター・タープリー氏に対しても同様の訴えを起こした。夫人の弁護士によると、こちらについては7日に和解が成立。タープリー氏が謝罪を公表し、「相当の和解金を払う」と合意したという。

<関連記事>

・トランプ氏の経営権移譲では不十分=米倫理局トップ

・トランプ氏は事業から身を引く? 大統領職との様々な抵触

・トランプ氏が娘婿を上級顧問に 民主党反発

利益相反の懸念

トランプ氏の大統領就任にあたり、一族の事業の利害関係が大統領の公務に抵触するのではないかと懸念が続いている。

事業の所有権を清算して白紙委任信託に預けるのではなく、経営権を息子たちに移譲するという方針は、利益相反の回避につながっていないという批判もある。

トランプ氏に対してはすでに政治倫理専門の弁護士たちからなる監視団体が、大統領就任後も事業を売却せず、所有ホテルや不動産などを利用する外国政府から金銭や便宜の提供を受けているのは違憲だと提訴している。

訴えに対してトランプ氏側は、「訴えの利益がない」と反発している。

(英語記事 Melania Trump re-files Daily Mail lawsuit over 'lost business opportunities')

提供元:http://www.bbc.com/japanese/38902927
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8856
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/884.html

[国際17] 米との関係修復、ロシアが恐れる最悪のシナリオ 行方を左右する二つの国 「第2次朝鮮戦争」から目をそらす韓国人 早読み 
米との関係修復、ロシアが恐れる最悪のシナリオ

解析ロシア

行方を左右する二つの国と米国との緊張
2017年2月10日(金)
池田 元博
 「米国第一主義」を掲げるトランプ政権が始動した。世界が懸念を強めるなか、トランプ氏の就任を心待ちにしていたのがロシアだ。ロシアとの良好な関係づくりを公言する米新政権の下で、米ロ関係は本当に改善するのだろうか。

国務長官には、「ロシア通」として知られる米石油大手エクソンモービルの前CEO、レックス・ティラーソン氏が就任した(写真:The New York Times/アフロ)
 米ロ関係の先行きを占う材料として注目されたのが、先月28日に実施されたトランプ大統領とプーチン大統領の電話協議だ。

 トランプ大統領の就任後、初めてとなった電話協議は約45分に及んだ。

 ロシア大統領府によると、両首脳は米ロ関係の発展に向け、建設的かつ対等、相互利益の原則に基づいて共同作業を活発に進めることで合意した。ビジネス交流を通じて両国の貿易・経済協力を復活させる重要性も確認したという。

 国際情勢をめぐってはとくに、国際テロリズムが世界の主たる脅威となっているとし、過激派組織「イスラム国」(IS)やシリアの他のテロ組織の撲滅に向け、米ロが共同歩調をとるべく調整していく必要性で一致した。

 電話協議では、両国関係改善への最大の障害となっているウクライナ情勢も話し合った。ペスコフ大統領報道官によると、米国による対ロ経済制裁の緩和問題は議題に上らなかったという。

 それでもプーチン大統領は協議のなかで、「ロシアは200年以上にわたって米国を支持してきたし、過去の2度にわたる世界大戦でも米国の同盟国だった」と強調。現在も米国は国際テロとの戦いで最重要のパートナーだと持ち上げ、関係修復への期待を強くにじませた。

 一方、米ホワイトハウスも声明で「前向きな電話協議は、修復が必要な米ロ関係進展への重要なスタートとなった」と表明。「トランプ、プーチン両大統領はともに本日の電話協議後、テロとの戦いや互いに関心を持つ他の重要課題に速やかに取り組めると期待している」と指摘している。

政権だけなく、ロシア社会全体に広がる「トランプ期待」

 ちなみにトランプ大統領はこの日、日本の安倍晋三首相、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領、オーストラリアのターンブル首相とも相次ぎ電話協議している。ロシア以外はすべて米国の同盟国で、トランプ氏がいかにロシアとの関係を重視しているかを示したともいえる。

 しかも米メディアの報道によると、ターンブル豪首相との電話協議は難民問題で対立。トランプ大統領がわずか25分で一方的に電話を切ってしまい、「これまでの電話協議で最悪」と述べたという。

 トランプ氏自身はツイッターで「フェイク(偽)ニュースのウソ」と断じているが、少なくとも同盟国首脳との電話協議より、プーチン大統領との会話のほうが雰囲気は良かった可能性は否定できない。

 周知のように、トランプ氏は選挙期間中からプーチン大統領を「彼は非常に賢い」「強い指導者だ」と高く評価。オバマ前政権下で大きく冷え込んだ米ロ関係の改善に強い意欲を示してきた。

 ロシアが米大統領選時、トランプ氏を支援すべく大規模なサイバー攻撃を仕掛けたのかどうかはともかく、プーチン政権が同氏の当選を切に望んでいたのは事実だろう。

 ロシアの「トランプ期待」は政権だけなく、社会全体に広がっている。政府系の全ロシア世論調査センターが先月実施した調査によると、オバマ前大統領については回答者の81%が「否定的」評価を下した。一方でトランプ新大統領に対しては「良い」が40%と、「悪い」の4%を大きく上回った。

 独立系の世論調査会社レバダ・センターが「米国との関係をどうみるか」と聞いた今年1月の調査でも、「良い」が37%、「悪い」が49%だった。米ロ関係を否定的にみる回答が依然として上回ってはいるが、2年前の2015年1月時点では「悪い」が実に81%に達していた。

ウクライナの戦闘激化は“瀬踏み”?

 そんなロシアがトランプ新政権に最も期待しているのは、オバマ前政権がウクライナ危機を受けて発動した厳しい対ロ経済制裁の緩和や撤回だろう。

 オバマ氏はとくに、ウクライナ東部で政府軍と泥沼の戦闘を続ける親ロシア派武装勢力にプーチン政権が軍事支援していると激しく非難。ウクライナ東部紛争の政治解決をめざした和平合意(ミンスク合意)が完全に履行されない限り、対ロ制裁は緩和しないとしてロシアに強硬な対応をとってきた。

 ところがトランプ氏は、就任前のインタビューでロシアが核兵器削減の「取引」に合意すれば対ロ制裁を解除する可能性に言及するなど、必ずしもウクライナ東部の和平合意履行と絡ませない考えを示唆している。

 トランプ大統領は今月4日、ウクライナのポロシェンコ大統領とも電話協議し「和平への協力」を約束した。しかし、直後に放映された米テレビとのインタビューで改めて「プーチン大統領を尊敬する」と述べるなど、ウクライナを全面的に支援してきたオバマ前大統領の姿勢とは明らかに異なる。

 ロシアにとってさらに追い風なのは、トランプ政権の最重要閣僚とされる国務長官に、「ロシア通」として知られる米石油大手エクソンモービルの前最高経営責任者(CEO)、レックス・ティラーソン氏が就任したことだろう。

 同氏はエクソンモービルのCEO時代、ロシア国営石油最大手ロスネフチとの間で油田・ガス田開発事業を進めた。2013年にはプーチン大統領が「友好勲章」を授与したこともある。対ロ制裁にはもともと反対の立場を表明してきた経緯もあり、ロシアにとっては願ってもない布陣といえる。

 当のウクライナ東部ではトランプ、プーチン両大統領が電話協議した先月28日以降、ウクライナ政府軍と親ロ派武装勢力による戦闘が再び激化している。ロシア、ウクライナはいずれも相手側が仕掛けたと非難合戦を繰り広げているが、プーチン政権がトランプ政権のウクライナ問題に対する「関心」の度合いを瀬踏みしている可能性は完全に否定できない。

 ロシアでは実際、「トランプ氏は誰が敵かを良く覚えている。ウクライナのポロシェンコ政権が米大統領選でヒラリー・クリントン候補を熱心に支持してきたことを決して忘れていないはずだ」(外交専門家)との見方が根強い。

関係修復の障害になりかねない米のイラン敵視政策

 いずれにせよ、プーチン政権がトランプ政権の発足を好機ととらえ、関係修復と対ロ制裁解除へのシナリオを模索しているのは間違いない。とくに外交専門家の間では、まずは国際テロリズムとの戦いを前面に押し出し、米ロ協調を演出していく道筋がとりざたされている。

 ロシアは現在、シリア和平を実現すべく、アサド政権と組んで外交攻勢を活発化させている。先月にはカザフスタンの首都アスタナで開いた和平会議も仲介した。この会議には米側から結果的に駐カザフ大使がオブザーバー参加しただけだが、ロシアはトランプ政権にも積極的に参加を呼びかけていた。

 シリアはトランプ氏が「掃討」をめざすISの拠点だ。ロシアが「ISとの戦い」と称して米国に共闘を求めつつ、米国の協力も得ながら、アサド政権を存続する形でシリア和平実現の構想を描いていることは十分予想される。

 ただし、こうした構想の障害となる暗雲が早くも漂い始めている。トランプ大統領がイランに対する敵視政策を強め始めていることだ。

 イランが先月末、弾道ミサイルの発射実験を実施したのに対し、トランプ政権はさっそく追加制裁を科すと発表した。オバマ前政権時代、イランと米欧などはイランが核開発を制限する見返りに経済制裁を解除する「歴史的合意」を達成したが、トランプ氏はこの核合意を「最悪」と非難している。米国とイランの関係は早晩、大きく冷え込みかねない状況だ。

 一方、ロシアは地対空ミサイルシステム「S300」を供給するなどイランとは密接な関係にある。シリアの停戦や和平協議もトルコとともに、イランの協力を得て進めた。米国とイランの関係が悪化すれば、IS掃討とシリア和平への協力を通じて米ロの関係改善をめざす道筋自体が頓挫しかねない。

ロシアが最も恐れる、対中国の強硬姿勢の余波

 イラン問題だけではない。ロシアが最も恐れているのは、トランプ氏の中国に対する強硬姿勢の波及だ。まだ表面化していないが、米政権が米ロ関係を改善する見返りとして、中国と距離を置くようロシアに要求するシナリオが想定されるからだ。

 ロシアにとって中国は最大の貿易相手国だ。ウクライナ危機で国際的な孤立を強めるなか、ロシアは対中依存をさらに強めた経緯もあり、中ロ関係を台無しにしてまで米国にすり寄るとは考えにくい。

 自信過剰で起伏が激しいとされるトランプ大統領だけに、その外交路線も予見しにくい。ロシアの思惑通りに、米ロ関係が順調に改善すると断じるのは早計だろう。


このコラムについて

解析ロシア
世界で今、もっとも影響力のある政治家は誰か。米フォーブス誌の評価もさることながら、真っ先に浮かぶのはやはりプーチン大統領だろう。2000年に大統領に就任して以降、「プーチンのロシア」は大きな存在感を内外に示している。だが、その権威主義的な体制ゆえに、ロシアの実態は逆に見えにくくなったとの指摘もある。日本経済新聞の編集委員がロシアにまつわる様々な出来事を大胆に深読みし、解析していく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/040400028/020700022

 

 
「第2次朝鮮戦争」から目をそらす韓国人

早読み 深読み 朝鮮半島

「狂犬」のお達しも空振りに
2017年2月10日(金)
鈴置 高史

2月3日、マティス米国防長官と韓民求国防部長官が会談した国防部前ではTHAAD配備反対集会が(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
(前回から読む)

 米国が「北朝鮮の核武装」阻止に動く。だが、韓国の腰は定まらない。

マティスに反旗の左派系紙

鈴置:「狂犬」(Mad Dog)のあだ名を持つマティス(James Mattis)米国防長官が2月上旬、韓国と日本を訪問しました。

韓国紙はマティス訪韓をどう評したのですか?

鈴置:在韓米軍へのTHAAD(=サード、地上配備型ミサイル防衛システム)配備に焦点を当てました。韓国がそれを受け入れるかが米韓同盟の試金石となっているからです(「『北の核』潰しの覚悟を日韓に質したマティス」参照)。

 メディアにより、意見は割れました。左派系紙のハンギョレはTHAAD配備の危うさを指摘しました。社説「新ミサイル体制のために訪韓したような米国防長官」(2月3日、日本語版)で以下のように主張しました。

マティス長官は24時間ほどの短い訪韓中にTHAADの配備を押し切ると何度も表明した。訪韓の最大の目的が「THAAD配備固め」のようにすら感じられる。
このような動きは中国やロシアを刺激して朝鮮半島と北東アジアの安保情勢を悪化させ、核問題解決策の議論の障害物になりかねない。
マティス長官の今回の歴訪は北朝鮮だけでなく中国にも警告メッセージを送る意味がある。トランプ大統領が公言してきた対中国圧迫を本格化させるのに先立って、韓米日の協力体制を固めようとしているのだ。
我が国は今後韓米日の軍事安保協力強化の求めによって具体化していくこのような動きに対して、バランス感覚を持って対処する必要がある。
 ハンギョレは「日米韓」の軍事協力強化に反対してきました。北朝鮮との融和も唱えています。こうした書きっぷりになるのも当然です。

「ずるい」中央日報

 配備には賛成するけれど、さりげなく留保条件も付ける「ずるい」社説を書いたのが中央日報です。「THAAD配備と拡大抑止の強化に漏れがあってはならぬ」(2月3日、韓国語版)です。

 見出しだけ見ると、親中色が強くTHAAD配備に慎重だった中央日報が「狂犬」の訪韓を受け、宗旨替えしたかと思います。

 本文中でも「THAADは北朝鮮の核・ミサイルから国民と財産、米軍の兵力の保護と生存に必須の防御兵器だ」と主張しました。でも、それに続いてこんなくだりがあるのです。

配備に反対する国民をもう一度説得し、中国とロシアにも誠意を持って説明することを政府に望む。
 韓国民はともかく、中国とロシアは韓国政府がいくら説得しても応じるはずがありません。米国に対しては「私は配備に賛成しました」とゴマをすり、中ロには「御意向を尊重するよう政府に要求しました」と弁解する、子供だましの筆法です。

相変わらず「二股」の朝鮮日報

最大手の朝鮮日報は?

鈴置:やはり米中双方にいい顔をする「二股社説」を載せました。2月4日の社説「トランプ時代にも米韓は利益ではなく『価値の同盟』でなければ」(韓国語版)から引用します。

マティス長官の言葉通り「THAADはひとえに北朝鮮のミサイルの脅威に対する防衛的な武器」であり「韓国国民と我々(米国)兵力を保護するための措置」だ。
中国がTHAADに憂慮することには留意せねばならぬが、我々を手なずけようとか、韓米同盟を離間する機会にしようとするのは決して容認しない。
 まず、マティス長官の言葉を引用することで中国の怒りを米国にそらそうとしました。「配備は米国の意向です。文句を言うなら米国に言って下さい」というわけです。

 そのうえ「中国の憂慮に留意せねばならぬ」と書いて「あなたに逆らうつもりはありませんから」と、もみ手したのです。

 こんな舌先三寸の社説を書いて、もし中国から「だったらお前の言う通り、俺にもちゃんと留意して配備を拒否しろ」と言われたら、朝鮮日報はどうするのでしょうか。

マティスもげっそり?

韓国各紙の社説をマティス長官が読んだら、さぞかしげっそりするでしょうね。
鈴置:げっそりしたと思います。韓国は北朝鮮との緊張が高まるたびに米国に「次の米韓合同軍事演習では、B52爆撃機など戦略兵器を持ち込んで北を脅してくれ」「いっそのこと戦略兵器を韓国に配備してくれ」と要求する。

 今回も中央日報が社説「韓米国防会談、米国の戦略資産を韓半島に常時循環配備せよ」(2月3日、日本語版)でそれを主張しました。

 でも、韓国は米国にそう要求する一方で、中国に秋波を送る。「米国と協力して北の核を根絶しよう」と国民に戦争の覚悟を訴えるわけでもない。韓国の言うことを聞いて戦略兵器を韓国に送ってきた米国からすれば「食い逃げ」されっぱなしです。

「覚悟」を訴えた東亜日報

1紙ぐらいは「覚悟」を呼びかけてもよさそうなものですが。

鈴置:私が見た中では唯一、高まる「第2次朝鮮戦争」の可能性を指摘し、国民に心構えを説いた社説がありました。東亜日報の「ただならぬトランプの対北圧迫に準備はあるか」(2月4日、韓国語版)です。

最近、トランプ政権や米議会では対北先制打撃はもちろん、北朝鮮政権の交代や金正恩(キム・ジョンウン)の暗殺まで議論されている。
1994年に北の寧辺(ヨンビョン)核施設への空襲の一歩手前まで行ったが、全面戦争勃発と韓国の被る莫大な被害への憂慮のため、取り止めたことがある。今回も、タカ派一色のトランプ政権の動きがただならない。
金正恩の予告通りに北朝鮮が大陸間弾道弾(ICBM)の試射を断行した場合、米国が要撃などの強硬措置に出れば、朝鮮半島情勢がすぐさま、激浪に飲み込まれることもあり得る。
国が百尺竿頭の危機にあるというのに、政界は大統領選ごっこに血道をあげる。野党には、THAAD配備など敏感な懸案でトランプ政権の対北政策と反対の方向に旋回する動きも見える。一般の国民の安保意識もこれまでと変わらない。
どうせ大国が決める

なぜ、韓国人は「百尺竿頭の危機」を直視しないのでしょうか。

鈴置:「直視してもしょうがない」と思っているからでしょう。仮に「北朝鮮の核施設を先制攻撃してほしい」と韓国人が頼んでも、米国がすんなり応じてくれるわけでもない。反対に「やめてくれ」と頼んでも、自分に必要なら米国は実行する。

 1994年の寧辺への攻撃も韓国と相談もなく計画され、韓国の意向とは関係なく取り止めになりました。当時の金泳三(キム・ヨンサム)大統領は後になって「自分が中止させた」と言い張っていましたが、それを本気で信じる韓国人は少ない。

 この問題に限らず、韓国人には「自分の運命は周辺大国が決めるものだ」との諦念のようなものがあります。歴史的に「常に大国に決められてきた」からです。

 元寇や明治維新のように外敵を追い払った経験を持ち「団結すれば運命は切り拓ける」と考える日本人とは完全に異なるのです。

 「自らの意思で自分の運命を決められない」以上、韓国メディアが厳しい現状の分析よりも、読者の耳に心地よい話を報じるのは当然です。

 マティス訪韓に関しても多くの新聞が「日本に勝った」「やはり韓国は米国に愛されている」といった情緒的な分析を載せました。

日本に勝った!

なぜ「日本に勝った」のでしょうか。

鈴置:マティス長官が日本よりも先に韓国を訪問したからです。韓国を「愛する」からというより、韓国が米中間で「揺れている」ので、米国はまずその姿勢を確かめたかったのだ、と私は想像しますけれど。

 国会開催中だった日本が「木・金」ではなく「金・土」の日程を希望したこともある、と説明する関係者もいます。

 今、韓国人は孤独感にさいなまれています。それも「日本に勝った」式の報道を加速していると思います。

 中国からはTHAADで苛められ、日本からは「慰安婦像」で見捨てられた。その結果、実害も出ています。

 資金流出が始まりそうというのに韓国は、大口の通貨スワップを失う可能性が大きくなったのです(「中国が韓国を『投げ売り』する日」参照)。

 朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の北京の軍事パレード参観で、米国から白い目で見られていることに、韓国人はようやく気づきました(「掌返しで『朴槿恵の親中』を批判する韓国紙」参照)。

 ことに米国に自国の利益を徹底的に追求するトランプ(Donald Trump)大統領が登場しました。韓国人はどんなに苛められるかと冷や冷やしていた。

 そんな中、米国の国防長官が日本よりも先に韓国を訪問してくれたのです。そこで韓国各紙は「まだ、捨てられていなかった」「完全に孤立したわけではない」と小躍りしたわけです。

苦笑する中国

 韓国経済新聞の2月5日の社説「堅固な韓米同盟を確認したマティス訪韓」(韓国語版)から引用します。

主要国の大統領や官僚、さらには有名な芸能人、スポーツ選手もアジアに来る時は日本から訪問し、次に韓国を訪れるのが通例だ。しかし、マティス国防長官は異なった。トランプ政権が東アジアでどれほどに韓国を重視しているかを示す象徴的な例だった。
国内政治が混乱する中、中国や日本との関係も疎遠になり東アジアで外交的な孤立に陥った韓国に配慮し、力づけようとしているのではないかと思えるほどだ。
 米国にとって「北朝鮮の核」が最も緊急の課題ではありますが、それと「韓国を重視する」こととは異なります。もし、韓国が対北先制攻撃のお荷物になるのなら、トランプ大統領は韓国を見捨てると思います。

韓国人はプラス思考ですね。

鈴置:こんな韓国人を笑いながら見ている国があります。中国です。中国共産党の対外威嚇用メディア「環球時報」が2月3日の社説「韓国は米国から重視されたというけれど、幸せにはなれない」(中国語)で、以下のようにマティス訪韓を評しました。

韓国はマティス長官が自分たちの国に最初に来たと、興奮している。北朝鮮の核の脅威に驚くあまり、韓国は米国を救世主だと見なし、外交の独立性を失った。韓国は独立国として思考する能力をますますなくした。
 米国に頭を撫でられたと大喜びする韓国――。中国は苦笑しています。この分ならもう少し脅せばまた、こっちの言うことを聞くだろうと考えていると思います。

不透明な米国

では、中国は韓国イジメを強化するのでしょうか。

鈴置:それもするでしょうが、中国にとって韓国はあくまで外交ゲームの「駒」に過ぎません(「米国から『ピエロ役』を押し付けられた朴槿恵」参照)。

 中国は小さな「駒」を動かすことよりも、ゲームの相手である米国の出方を研究する必要に迫られています。

 トランプ大統領はいったい何をするのか分からない指導者です。突然の入国制限だけではありません。中国に対しては「1つの中国」という米中の基本的な合意を破る姿勢をちらつかせながら「北の核」の解決を迫り始めました。

 環球時報の英語版「Global Times」が2月3日、マティス長官の訪韓・訪日に関する2人の中国人学者の意見を載せました。

 「Korean Peninsula tensions top the agenda of Mattis Asian tour」です。2人とも「トランプの不透明さ」を前提に議論を進めています。

 朝鮮半島問題の専門家であるCui Zhiying氏は、北朝鮮への米国の先制攻撃の可能性に言及しました。以下です。

North Korea should stop developing its nuclear power before a possible rise in tension in the Korean Peninsula, as well as Trump's preemptive countermeasures.
China should continue to deter Pyongyang's nuclear programs while the Trump administration should seek to carry out the US-North Korea dialogues in the near future.
 米国が先制攻撃的な手法をとって緊張が高まる前に、北朝鮮は核開発を止めよ。中国は北朝鮮を抑え込むから、米国は北との話し合いを早急に始めてくれ、との悲鳴に近い提案です。

判断の早いトランプ

米国は先制攻撃するのか、それとも話し合いに入るのでしょうか。

鈴置:分かりません。今、米国はまさに分岐点に立っています。言えるのは、どちらの道を選ぶにせよ、トランプ政権は判断に時間をかけないと思われることです。

 ここがオバマ(Barack Obama)前政権と完全に異なる点です。理由は2つ。トランプ大統領の性急な性格と、北の核武装が目前に迫ったという冷厳な事実からです。

(次回に続く)

大好評シリーズ最新刊 好評発売中!
Amazon「朝鮮半島のエリアスタディ 」ランキング第1位獲得!
『孤立する韓国、「核武装」に走る』

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録

『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』『米中抗争の「捨て駒」にされる韓国』 に続く待望のシリーズ第9弾。10月25日発行。

このコラムについて

早読み 深読み 朝鮮半島
朝鮮半島情勢を軸に、アジアのこれからを読み解いていくコラム。著者は日本経済新聞の編集委員。朝鮮半島の将来を予測したシナリオ的小説『朝鮮半島201Z年』を刊行している。その中で登場人物に「しかし今、韓国研究は面白いでしょう。中国が軸となってモノゴトが動くようになったので、皆、中国をカバーしたがる。だけど、日本の風上にある韓国を観察することで“中国台風”の進路や強さ、被害をいち早く予想できる」と語らせている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/020700091

http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/907.html

[政治・選挙・NHK220] トランプ大統領の本音主義、限界が近い 1に辺野古 「おもてなし」の国は、いずこへ「通じない…」「何で?」同時多発の憂鬱
トランプ大統領の本音主義、限界が近い

田原総一朗の政財界「ここだけの話」

2017年2月10日(金)
田原 総一朗

トランプ大統領は最高裁判事に保守系のニール・ゴーサッチ氏(写真左)を指名。(写真:AP/アフロ)
 米国のドナルド・トランプ大統領が毎日のように過激な発言を繰り返し、日本のテレビ・新聞はその話題で持ちきりになっている。番組の中身はほとんどが批判的なものだ。テレビでトランプ大統領を批判すると、視聴率が伸びる。新聞の1面トップも、関連する記事が占めている。今は、テレビも新聞もトランプ大統領で稼いでいると言える。マスコミの本心としては、彼に対してありがたいと思っているだろう。

 その典型例が、米新聞大手のニューヨーク・タイムズだ。同紙はトランプ大統領から名指しで批判され、猛烈に反論している。同社のマーク・トンプソンCEOは、「(2016年度の)第4四半期には、新規で20万件以上のデジタル専用購読を達成した」と述べている。トランプ効果あってのことだろう。

 バラク・オバマ前大統領の時は、ニューヨーク・タイムズもワシントン・ポストもどんどん部数が落ちていた。アメリカのマスメディアは、オバマ氏に対して「歓迎」の立場を取っていたから、オバマ氏とマスコミの間で喧嘩をすることはなかった。ただ、それでは話題にならなかったのだ。

 ところがトランプ氏が大統領に就任すると、トランプ氏とマスコミが対決する構図になった。それが世界中の注目を集め、部数増に繋がったのだ。これは興味深い現象だと思う。

トランプ大統領の言動は、「暴走」ではない

 イスラム圏7カ国からの入国を禁止した大統領令に対して、ワシントン州とミネソタ州は違憲だと訴え、ワシントン州の連邦地裁が2月3日、全米を対象に大統領令の差し止めを命じた。日本の新聞は「混乱」「泥沼化」などと報じたが、混乱ではないと僕は思う。むしろ、アメリカはさすが民主主義の国だと思った。もし日本であれば、首相が決めたことに対して地裁が即座に差し止めを命ずることなどないのではないか。

 さらに面白いのは、トランプ氏は「この命令は不服だ」として連邦控訴裁判所に控訴したわけだが、今度は控訴裁が直ちに「控訴を受け付けない」という判断を下したことだ。これは混乱でも泥沼化でもなく、アメリカが健全な民主主義の立法・司法・行政がそれぞれ独立しているということを見事に示した事例だ。むしろ、これを「混乱」と表現する日本のジャーナリズムの方がおかしい。

 トランプ氏の言動は過激に見えるが、僕は「暴走」ではないと思う。イスラム圏からの入国禁止という大統領令の是非について、ロイター通信が全米50州で実施した世論調査によると、賛成が49%、反対が41%になったという。世界中から批判が集まっているものの、アメリカ人の本音としては賛成なのだ。

 トランプ氏は、アメリカ国民の本音が賛成だと分かっているから、マスコミと喧嘩をしながら強気に出ている。決して国民の意に反してやっているわけではない。そういう意味では、暴走ではないと僕は思う。

 一方、オバマ氏はアメリカ人の「良心」だった。もっと言えば「建前」の象徴だった。「世界と仲良くしなければならない」「戦争をやってはいけない」「核兵器はなくすべきだ」という建前を並べていたが、実際はほとんど実現できなかった。

 対してトランプ氏は、アメリカ人の本音によって選ばれた大統領だと言える。「アメリカ第一主義」「アメリカが良ければ、世界はどうなってもいい」。これが本音なのだ。人間は誰であれ、本音は自分が得をしたいと考えている。本音では、人のために尽くさなければならないなんて思っていないだろう。

 そもそも政治家は、ほとんど本音を言うことはない。いつの時代もそうだ。僕は多くの政治家を取材してきたが、トランプ氏ほど本音を語る政治家はいなかった。逆を言えば、本音を言いすぎる人は「出る杭」として打たれ、出世街道を上っていけない。これは政治の世界だけではなく、会社などの組織の中でも同じだろう。それを考えるとトランプ氏は稀有なリーダーと言える。彼への対応も簡単ではない。

安倍・トランプ会談では、農産物の自由化を迫られる可能性がある

 アメリカ人の本音が噴出した最大の理由は、グローバリズムの矛盾があまりにも大きくなりすぎてしまったことだ。

 アメリカの工場がメキシコや中国などの海外へ向けてどんどん出て行き、アメリカ人が職を失い、賃金が下がり、不満が高まった。一方、グローバリズムで伸びた金融業は拡大していった。国内の格差は大きく広がり、国民の不満をますます膨張させた。

 しかし、本音やポピュリズムが必ずしも「正しい」とは限らない。本音を貫き続けても、いずれはうまくいかなくなる時が訪れる。

 僕は、滋賀県彦根市に生まれた、近江商人の末裔だ。近江商人には「三方良し」という概念がある。これは「お客さんに信用される」「社会から信用される」「自分の商売がうまくいく」とい3つの「良し」を意味した言葉だ。

 自分の商売がうまくいくためには、自分だけが得をしようと思ったらダメなのだ。トランプ氏は、お客さんである輸出相手国に信用されなければならないし、世界からも信用されなければならない。それらが実現して、初めてアメリカはうまくやっていけるのだ。

 トランプ氏がやっていることは、今のところ「自分の商売がうまくいく」ことしか考えていないと見える。だが、これではいずれ頭打ちになるだろう。自分だけが得をしようなどという考え方は、世の中では通用しない。

 今後、トランプ氏がどういった舵取りをしていくのだろうか。そこを見極めるためにも、10日の安倍・トランプ会談は大きな注目点だ。

 僕は、トランプ氏から出る話題の中心は経済だと思う。中でも、中心になるのは農業ではないだろうか。アメリカは農業の大輸出国だ。もし、日米の間で自由貿易協定(FTA)の交渉をするとなると、アメリカは農業分野の譲歩を迫ってくる可能性がある。自動車より農業が心配だ。

 日本は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉を進めている時に、コメやサトウなど重要5品目を中心に農業を守った。安倍首相は、頑なに自由化を認めなかった。しかし、もし日米でFTAの交渉を進めるとなると、アメリカから農業について相当厳しい条件を突きつけられるのではないか。ここで、安倍首相がどこまで「NO」と言えるか問われるだろう。

辺野古への基地移転は無理だ

 今月3日に訪日したジェームズ・マティス国防長官の発言にも触れておきたい。僕が注目したのは、沖縄問題だ。マティス氏は辺野古への新基地建設について、安倍首相に「2つの案がある。1に辺野古、2に辺野古だ」と断言した。

 しかし、本当に辺野古への移転は実現できるのだろうか。僕は無理だと思う。沖縄がほとんど全島一丸となって反対しているところに基地をつくることは、まず不可能ではないだろうか。そもそも民主的ではない。

 日本政府としては、マティス氏に言われたことで、「辺野古への移転を後押しされてよかった」と思っているだろう。もちろん、多くの沖縄の人たちは「冗談じゃない」と感じている。今の政府と沖縄との対立が、かつての60年安保闘争と重なる。当時、デモに参加していた東大生の樺美智子さんが警官隊と衝突して亡くなるという事件があり、それによって安保闘争が終わった。

 もし、政府と沖縄の反対運動をしている人たちとの対立が深まれば、同じ事態が繰り返されない。要するに、運動している側に衝突による死者が出るかもしれないということだ。そうなれば、普天間の移転どころではなくなる。

 トランプ氏は「米国は世界の警察を辞める」と言っていた。普天間基地に駐在している米軍は、海兵隊だ。海兵隊とは、攻める時に最初に乗り込んでいく部隊だ。彼の発言をそのまま受け止めるならば、沖縄に海兵隊を置く必要などないのではないか。

 ところが、アメリカは防衛費を削減するのではなく、むしろ増やし、陸軍・空軍・海軍も増強すると発表した。「他の国家が、我々を軍事力で上回ることを許すことはできない」とまで言っている。これはどういうことなのか。

 建前でなく本音を貫くトランプ氏。だが、発言や考えに矛盾が出始めている。本音主義はどこまで続けられるのだろうか。その限界も近いのではないかと僕は考える。


このコラムについて

田原総一朗の政財界「ここだけの話」
ジャーナリストの田原総一朗が、首相、政府高官、官僚、財界トップから取材した政財界の情報、裏話をお届けする。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/020800007/

 


「おもてなし」の国は、いずこへ

遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」


2017年2月10日(金)
遙 洋子

ご相談

部下に指示をしても、反応が鈍いなあと思う場面が増えているように感じています。指示した内容がうまく伝わっていなかったことが後から判明して、バタバタすることもしばしば。難しいことを指示しているわけではないのですが…。私の教え方、伝え方が悪いのでしょうか…。(40代男性)

遙から

 一流ホテルの一流レストランに予約の電話をした。

 「世界レベルの一流」と世間で認められているその店に電話したのは、ご恩のある先輩の祝宴で、幹事を仰せつかったからだ。

 日時や人数などを伝えたのち、もう1つ、頼みたいことがあった。コース料理の最後を飾るデザートの皿に、その方の名前をデコレートしてほしかったのだ。

 いわゆるメッセージ入りデザートプレートを用意してくれるサービスは今や珍しくないし、その店でも受け付けてくれると聞いていた。

漢数字の二です…

 以下、電話での会話。

 「デザートプレートに名前を書いてほしいのですが」
 「はい。承ります」
 「名前は、漢数字の二、漢数字の三、そして子供の子です。フミコと読みます」
 「かしこまりました。漢数字の二、美しいの美、子供の子、で、フミコですね」
 「いえ、もう一度言いますね。漢数字です。漢数字の二、漢数字の三、子供の子でフミコです」
 「はい。漢数字の二、美しいの美、子供の子、で…」
 「違います。もう一度、言います」

 そうしてようやく文字を理解してもらえたのだが、次の言葉は

 「では、プレートには、"二三子へ"でよろしいですね?」

 いえ、よろしくありません。

 「敬称をつけてください」

 なんせ、大先輩だ。

 「どういう敬称を?」
 「様だとちょっと他人行儀なので、"姉"でお願いします」
 「わかりました。では、さきほどの名前はカットして、"姉へ"というプレートということですね」

 いやいや…。

 「違います。"姉へ"ではありません。名前の下につける敬称を、"姉へ"としてほしいのです」

 と、言いつつ、私の気が変わった。「姉」に「様」を付けてはどうだろう。敬称が重なるけれど、何となくこちらのほうがしっくりくるような気がする。

 「あ。訂正します。"姉"に"様"をつけてください」
 「わかりました。では、名前をカットして、"姉様へ"ですね」

 ・・・それじゃあ、極道の妻みたいじゃないか。姐さん、というアレ。それに、どうしてそこまで名前をカットしたがるのか。名入れの相談なのに・・・

 電話の先の相手、声の感じは若い人のようだ。いったいどうすれば通じるのかとしばし思案したが、ひとまず諦め、もうすぐ来るという支配人に改めてお願いすることにした。

 ここまで約15分。しかも、予約は完結していない。

 しばらくして支配人と電話で「漢数字の・・・」から始めて完了するまで、所用時間は約2分。

 ・・・普通はそのくらいですよね。一流のお店で、15分もかけて、全く要領を得ない対応なんて何かの間違いに違いない。

お茶を一杯…

 そんなモヤモヤした思いを抱えたまま、寿司屋に行った。カウンターでいつもの職人さんが担当してくれた。ここも若い女性が働いていた。

 職人さんは私がいつもお茶を飲むのを覚えていてくれて「あがりを」と女性店員に言う。

 が、しばらく待ってもお茶は来ない。寿司が来てもお茶がないままだったので

 「あの、お茶を…」と声を掛けた。

 職人さんが大きな声で、女性店員に「お茶を!」と言う。

 女性がお茶を持って私の後ろに来たのを察知したので、私は自ら手を挙げ、「はい」と言った。

 だが、その女性は私の隣りに座る女性に「ここでよろしいですか?」とお茶を置いた。その女性の前にはすでにお茶があるにもかかわらず。隣に「はい」と手を挙げた私がいるにもかかわらず。

 う〜む。確かに、ほかにもお客さんはいたけれど、パニックになるような状況には見えなかった。いや、アルバイト初日だったのかもしれない。そうは見えなかったが、そういうことにしておこう。いや、たとえ初日だって、お茶のない人の前に置くよね。う〜む。

 翌日、居酒屋に行った。

 まだ誰も客はいない。ひとりでさっさと夕食を済ませ、帰宅しようと思った。早い時間の居酒屋は女性のひとり客にとってはいいダイニングになる。

 客のいない長いカウンター。

 私ひとりがそのカウンターの一番奥側に座っている。カウンターの中央にいる料理人とお喋りする。自然、身体は斜めになり、私の正面にはカウンターを挟んで料理人の顔がある。

 店員の女性が、ほどなく料理を運んでくる。

 ・・・私の背後に置いた。

 最初はたまたまかと思って、背中側に置かれた料理を自分の前に置き直して食した。次の皿も来た。来る料理来る料理にはそれぞれに料理人のこだわりのタレ皿がついている。

 一品注文すると何皿も来る。

 それらが、ことごとく、私の背中側に置かれる。

 さて、なぜこれから食事をしようとする人の前に、注文した料理が並ばず、背中側に並ぶのか。

 料理人と私の会話を邪魔しないように? などとも考えてみたが、どうにも無理がある。「お待たせしました。肉じゃがです」などと一声かけて、お客の前に置くのが自然だと思うのだが・・・。

靴下を三足…

 百貨店に行った。男性用の靴下を三足セットにして贈り物にしようと思い、靴下売り場の女性に「プレゼント用で」とお願いした。

 「箱代がかかりますが、よろしいですか?」
 「はい。お願いします」

 この時点で、私は密かにワクワクしている。

 カウンターに置かれた包装紙の上に商品が置かれるやいなや、手際よくピシッと包まれていく様子を見るのが私は昔から好きなのだ。百貨店の店員の腕の見せどころ、とにかくカッコいい。

 どんな商品を包んでも、正面中央には百貨店のロゴがピタリと収まる。その完成度に私はプロ根性を見て感動するのだった。

 さて、店員さんはまずは目測で三つの靴下を箱のサイズに合わせて三つ折りにした。すると、一足が微妙に箱に入りきらなかった。足首部分の長さが三足それぞれに違う。厚みも違う。すると、三足一緒に折りたたみ、というわけにはいかない。

 うんうん、プロだってやり直しはあるよね、と余裕の眼差しで、最後のピシッと包装紙の折り目が立つ瞬間を待った。

 ところが、三度試しても、靴下がバランスよく箱に入らない。

 折り方を観察してみた。店員さんは、箱から何度も出してやり直すのだが、同じ所で靴下を折るのだ。そりゃ入らんやろ。だって、さっき入らなかったのだから、取り出して同じ所で折りたたんでも、そりゃ、入らん。

 やがて店員さんは諦めた。三足並んで見えるように折りたたむのではなく、入りきらないサイズのを一番上に下の二足を覆い隠すように重ねて置いたのだ。

 そしたら、箱を開けたら、一足しか入っていないようにしか見えないじゃないか。

ならば、私が…

 私は思わず「あ〜、その納め方は…」と口を挟み、そして、とうとう言ってしまった。

 「私にやらせてもらえませんか?」と。客の私が。

 まず、それぞれ折り位置を変えて、三足を同じサイズにして、次に、厚手のモノを中央にして両脇に薄手のものを並べた。そうしないと、薄手のもの同士、重なってしまう可能性があるからだ。

 箱詰めを終え、包装は店員さんに任せた。

 ・・・あ〜、包装まで自分でやればよかった、という出来栄え・・・

 私には、わからない。

 あの、ピシっと折り目の美しい包装ができる店員さんはどこに行ったのだろう。

 出来たての料理を手際よく目の前に並べてもらうことは、もう高望みなのだろうか。

 「はい」と手を挙げた人の隣りの客にお茶を置かれてしまうのは、そういう時代なのだと黙って受け入れるしかないのだろうか。

 一流ホテルの一流レストランで、名前やら敬称やらが伝えられないのが、今の普通なのだろうか。

やれやれ…

 数日の間に、大阪で起きたこれらの出来事。しかし、いずれも、私一人での体験だ。

 とてもすごい確率で、私にだけこんなことが起きている可能性もある。

 そして昨日。友人に誘われ、数人で東京の一流ホテルにある"ケーキが食べられる"はずの店に行ったら「ケーキは置いておりません」と言われた。

 やれやれ…。

 「こちらのホテルにお尋ねして、こちらのお店にケーキがあると聞いて来たんですが…」と首を傾げる友人に、店のスタッフが「ソフトクリームならあります」と言う。

 なぜケーキを求める客にソフトクリームを勧めるのか。そんな疑問はひとまず脇に置き、「皆でソフトクリームを食べるっていうのも楽しくない? コーンのところをこう握ってさ、わいわい食べるのなんて久しぶり」と、憮然としている友人をなだめるつもりで提案した。

 全員が「懐かしい!」と合意して「じゃあ、ソフトクリーム握ろう!」「握ろう!握ろう!」と注文した。皆で「握ろう!」と盛り上がるのも何やら奇妙な光景だが、ワクワクした。一流ホテルのソフトクリーム、どんな味?

 それぞれのテーブルに置かれたのは、ガラス皿に盛られた、いわゆるアイスクリームで、傘の形のクッキーが添えてある。途端、意気消沈した。

 「みんなでソフトクリームを握って」の"握って"を、店のスタッフは耳にしながら、「かしこまりました」と恭しく承って、握らないアイスクリームを持ってきたわけだ。

 きっと、ソフトな仕上がりのアイスクリームを、この店では、ソフトクリームと言うのだろう。「握って食べる」なんてハシタナイ食べ方は、一流店ではありえないから、そんな言葉は耳に入らないのだろう。

 ・・・やれやれ、大阪で一人でいる時の私にだけ「?」な出来事が起きていたわけではないらしい。

 もちろん、すべての店で「?」なことが起きているわけではない。プロもアルバイトも、老いも若きも、たくさんの人がそれぞれの現場で頑張っている。

 でも今、何やらあちこちにほころびが見えている。そんな気がする。その原因は○○だ!と決めつけたり、こうすれば解決できる!と声高に言うつもりはない。データ的な裏付けがあっての話ではないし、そんな気がするだけだから。でも、「お・も・て・な・し」を世界に誇るはずの国は、もはや幻の国なのかもしれないと、ふと思う。あくまでごく個人的な肌感覚だけれども。

 何やら難儀な時代がやってきている。と、嘆いていても仕方のない時代がやってきている。「えっ」「何で」と思う出来事がいろいろと起き得るのだということを想定して、うまくやっていかないといけない時代がやってきている。

 とりあえず、今度お寿司を食べに行ったときには、お茶がさっと出てきてほしい。寒い日には、ちょっと熱めだとありがたい。


遙洋子さん新刊のご案内
『私はこうしてストーカーに殺されずにすんだ』

『私はこうしてストーカーに殺されずにすんだ』
ストーカー殺人事件が後を絶たない。
法律ができたのに、なぜ助けられなかったのか?
自身の赤裸々な体験をもとに、
どうすれば殺されずにすむかを徹底的に伝授する。

このコラムについて

遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」
 働く女性の台頭で悩む男性管理職は少なくない。どう対応すればいいか――。働く男女の読者の皆様を対象に、職場での悩みやトラブルに答えていきたいと思う。
 上司であれ客であれ、そこにいるのが人間である以上、なんらかの普遍性のある解決法があるはずだ。それを共に探ることで、新たな“仕事がスムーズにいくルール”を発展させていきたい。たくさんの皆さんの悩みをこちらでお待ちしています。
 前シリーズは「男の勘違い、女のすれ違い」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/213874/020800042/
http://www.asyura2.com/17/senkyo220/msg/471.html

[経世済民118] 個人投資家は今のマーケットに参加する必要なし 市場は「晴れ、ときどき台風」 晴れ間があってもいまは「冬」 
個人投資家は今のマーケットに参加する必要なし

市場は「晴れ、ときどき台風」

晴れ間があってもいまは「冬」
2017年2月10日(金)
居林 通

トランプ米大統領の登場を、市場はまずは前向きに受け止めました。それを受けて前回(「投資は“トランプ旋風”に乗るか、逃げるか?」)お話をお聞きしたのですが、居林さんは「乗らない。風は吹いているが、北風だ」とおっしゃいました。

 国内最優先の路線が支持されて大統領になるトランプ氏は、世界が不景気になっても自国の景気を優先するでしょう。具体的にはドル安政策であり、自国製品優先主義になると見ます。
居林:はい。「ここまで言って外したら大恥ですけどね。恥をかくリスクはあるけれど、言わないのは罪だと思うので」申し上げました。

 今回お話ししたいことは2つ。「市場を一つの見方だけで見るのは危険だ」ということ、そして「個人投資家の方は、株式市場に参加しなくてよい時がある」ということです。

ダウ平均株価が2万ドルを超えて、市場はまだまだ強気のように見えます。「理屈ではおかしい。けれど、ここで買わないのはもったいないのでは」と、投資家ならば考えたくなる局面では。

居林:2つの理由から、個人投資家の人は今のマーケットに参加する必要がないと思います。第1は、前回にも指摘しましたが、現在の日本株マーケットは「トランプ大統領がアメリカの景気を良くするので、円安になる」という期待値でできていることです。

 トランプ大統領の政策がアメリカ経済にとって良いことだとしても、日本経済、日本の企業収益に良いことかどうかは大いに疑問が残ります。つまり、株価が上がるシナリオに疑念を持っています。第二に、これが今回のメインポイントですが、マーケットが良いニュースをフルに織り込んでいる(PERが16倍程度になっている)時に、さらなる上値を追いかける必要はないのではないかと思う点です。

PERが16倍、ということは、居林さんのセオリー(PERは13〜14倍が適正、詳しくは「或るプライベートバンカーの株価の読み方」)からいくと、かなり上回ってきた。

居林:はい。ということは、多くの投資家が期待していることは、すでに株価に織り込まれているのではないでしょうか? そうなると、リスクとリターンを考えると、リスクが大きいのではないでしょうか? そんな風に私は考えます。

 一方、個人投資家には休む自由があるのです。機関投資家と個人投資家の一番の違いはここです。個人投資家が情報量で勝る機関投資家に勝つためには、無駄な勝負をしないことです。

上昇局面ではどう考える?

 去年はマーケットに参加するタイミングが2、3回ありました。年初の原油の急落時、BREXIT(ブリクジット、英国が国民投票でEU離脱を決定)の時、そして102円まで円高に振れた時です。まさに、「本当に株価は戻るのか?」と、胃薬を飲みながらがんばって買う状況でした。

 今はみなさん「もう大丈夫だよね」と胃薬を薬箱にしまって、喜んでいるところでしょうか。でも、こういう時こそ、少なくともトレーディングのポジションは利益を確定して、マーケットのセンチメントの変化を注視するときなのだと思います。ここは胃薬ではなく、投資哲学が必要なところです。

「相場が高すぎたら売り、低すぎたら買う」の前者の局面にいると。

居林:「株価は企業業績の関数で、適正水準はPERで判断できる」というのが私の考えで、そこから上でも下でも大きく離れたときは、投資のチャンスです。ブリクジットやトランプ政権誕生などで株価は大きく動きますが、政治が株価に与えるインパクトはどんなに大きくても一時的です。誰かが悲鳴を上げたら、利益が期待できるチャンスと考えるべき。「パニックで株価が下がった時はリスク対リターンのコストパフォーマンスがいい。頑張って買おう。胃薬を握りしめて」です。

現状のような、上昇相場の局面ではどう考えますか。

居林:今は大切な時期です。市場がユーフォリア(多幸感)の中にいる。そういうときにはどうするか。株価が上がる可能性があれば買いたくなりますよね。しかし、市場に影響を及ぼすリスク要因は引き続き存在しているのです。

あ。そりゃそうか。

居林:リスクが無くなったから株価が上がっている、というわけではなく、市場参加者がリスクが減ったと「感じている」だけなのです。よって株価もPERが上がっていくわけですが、もし上がったとしても、その株価上昇から得られるリターンはリスクを多めに負担していることになります。私の見方では「コスパが悪い投資」ということになります。

 休むも投資なのだと思います。株式投資というのはスポーツと違って、全員勝者になる時期もあれば、全員敗者にもなり得ます。上値があって下値が少ないのが良い投資環境であって、下値があって上値が少ない投資環境だと思ったら引き下がることも必要だと思います。

なるほど。

上がる週と下がる週の数は同じ

居林:ひとつ図を見て頂きましょう。

過去10年間の日経平均(週次)のプラスマイナスの分布

居林:上の図は過去10年間の日経平均の週次のプラスマイナスを示したものです。プラスの週とマイナスの週は見事に半分ずつ、なおかつきれいに正規分布しています。

本当だ。上がる週と下がる週の数は対象形なんですね。

居林:しかし、我々投資家は、下がり続けると「もう上がらないのではないか」とか、上がり続けていると「来週も上がるだろう」とか考えてしまいがちです。結局は上がる週と下がる週の数が同じ、という事実を受け入れて、下がりすぎなのか、上がりすぎなのかを自分で判断するツールを用意すべきなのです。それが、投資哲学であり、胃薬と同時に投資家には必要不可欠なものだと思います。

 ただ、投資哲学(と胃薬)を持つ上でいちばん難しいのは、投資は詰まるところ行動だ、という点にあります。

え?

居林:人間はいつも目先のものごとを大きく捉えます。そして、それに基づいて行動したくなるんです。今、相場が上昇局面にある。理屈ではおかしい。でも、自分もその波に乗りたくてたまらない。まさしく「わかっちゃいるけど、やめられない」です。

 でも、投資を趣味ではなく仕事として行うのであれば、目先ではなく、自分の哲学、信念、意思を優先させねばなりません。そして、自分の行動を、自分の信念や意思と同一にできるのは偉大な人です。これがどんなに難しいのかは、ダイエット、マラソン、英語学習などなどを考えてみればわかります。 これらを達成するために、ほかの人が何をやっているのかは、あまり、いやほとんど関係がありません。 

わかっちゃいるけどやってしまう

…たしかに、意思は現実に負けやすい。投資もそうだとは思いませんでした。

居林:株式投資も一緒ですよ。「わかっちゃいるけど、やめられない」を、やめなければいけない。

 今は皆さん株式を買いたくなっていますよね。株価はまだ上がりそうだと。でも、企業業績が好調だったにも関わらず、ブリクジットで安くなった時はなかなか手が出なかった。原油もそうです。一時は1バレルあたり26ドルでした。今は55ドルになっています。26ドルのころも、平均採掘コストは40ドルだったのに。利益を期待するなら、そういう時、つまり「リスクが安く買えるとき」に買うべきです。

リスクが安く買える、ですか。それが「コスパがいい時」ですね。

居林:そうです。ついでに言いますと、株式を買うことに「所有する喜び」はありません。

仕事柄、買ったことがないので分かりませんが、そういうものなんですか。

居林:「クルマを持っていると、コスパが悪い」といわれて「所有する喜びがあるじゃないか」という反論がありますよね。でも、投資家ならば問うべきなのです。「そう? では、所有する喜びはいくらになるの? 例えばレンタル料金よりいくら上乗せするの?」と。

あああ。なるほど。

株は「リスクを買う」ものだ

居林:REIT(不動産投資信託)はちょっと別かもしれませんけれど、基本的に私は、株を買うとは「リスクを買う」ことだと思います。投資家にとって、株式投資で得るものは「リスク」と「リターン」の可能性です。ほとんどの個人投資家にとつて株価は「リスク」「将来のリターン」の値段であって、会社の一部を所有することの対価ではありませんよね。損するかもしれないリスクを負って、リターンを得ようと参戦する。そこに「所有する喜び」のような定性的な意味を持ち込むと、理屈で割り切れず、迷いが生じます。

 投資家は、まず自分の行動原理を決める。それは自分の哲学によって決める。私の場合はそれが「株価は企業業績の関数で、それ以外は中長期的には一時的な作用」というわけです。

 今の市場環境について私と同じ意見でなくてもまったく構いません。しかし、せっかくこの連載を読んで下さっている方には、「周りの人がみんな買いだと言っているから、私も株を買う」という行動はとってほしくないのです。

「リスクを買う」とのことですが、株価は変動しますが、リスクの量も増減するんじゃないでしょうか。先ほどおっしゃった、「政治リスクは一時的」というのは「本当かな」と思うんですが。

居林:「投資リスクは常にある。そして、その量はほぼ一定」くらいに考えた方がいいと思います。歴史を振り返れば、同じようなリスクを前にも経験し、吸収していることがほとんどだからです。例えば英国のEU離脱(=ブリクジット)の際の経緯と市場の反応は、1998年のEU創設のためのマーストリヒト条約への、英国の批准をめぐる騒ぎとそっくりです。

「買わない=幸せを逃がしている」

面白いですね。ということは「史上初だ」とみんなが思っている出来事には、ちょっと眉唾だと見たほうがいいのかな。

居林:でも、乗せられてしまうのですよ。

 たとえば今日は冬にしては暖かい、気温が20度になりそうな日ですね。ジャケット一枚で外を歩ける。「じゃ、明日はもっと温かくなるな」と、Tシャツで出社しますか?

風邪を引きます。

居林:そう。誰もそんな馬鹿なことはしない。「たまたま温かくなっただけ」と判断する。季節が冬だと理解しているからですね。「2月に夏は来ない」と。ところが、季節が目に見えない相場では、暖かい日が数日続くと「夏が来るのか!」と、Tシャツを着る人が出てくる。株価は(何度も申し上げているように)意外に少数の市場参加者の動向で動くので、「あれ? Tシャツを着たほうがいいのかな?」とダウンジャケットを脱ぐ人が出てきた。

吹雪がきたら全員風邪を引く、と。じゃあ、いまは「夏気分」の人がTシャツになって、それを「どうしようかな」と様子見している人が現れている、そんな感じでしょうか。

居林:ためらい、それでも「このまま夏になったらどうしよう」と思うわけです。

居林:天気ならば分かりやすくても、相場は、みんながハッピーになっていると「自分だけ乗り遅れているのではないか?」となって、自らの哲学で決めた通りに行動するのが難しい。

 それに、株価が上がっていると売り急がない。なぜか。幸せな気分が続き、そこに「所有する喜び」が生まれてしまうんです。これが下げ始めてから売るときは逆になって、「こんな株、持っていなければよかった」となって、一部の人が売ると、他の人が引っ張られ「人より先に売ろう」になるのですけれどね。

そこから解脱して、哲学で判断するには。

居林:繰り返しになりますけど、株式は、「リスクという代金を払って将来のリターンを買う」ゲームに参加するためのチケットだと考えることでしょうか。なぜ参加したのかと言えば「この程度のリスクを負うが、ここまでのリターンが期待できるから」ですよね。

リスクまで計算して買うのが正しい

あっ、「儲かるから」じゃダメなんですか?

居林:買うときに、リスクとリターンがどの程度なのか考えないのは、「真冬にTシャツ」ですよ。

 「XX%のリターンを期待できる、なぜならばこれらの理由が」ということはみんな言えるのです。でも、「それにどんなリスクがあるの? うまくいかないとどの程度の損になるの?」を言う人はまずいない。たとえば「配当があるから株価が下がってもマイナスXX%で済みます」などと言えれば、これは「下値がなくて上値がある」よい投資なんです。リスクとリターンを買う、というのは、上値だけでなく下値まで考えて買うことです。

なるほど…。ところで、いまの市場は春夏秋冬のどこでしょう?

居林:要するに、その時期の下値と上値が分かれば季節が分かります。もちろんどこかに書いてあるわけではなくて、そこを自分の哲学、私の場合は、企業業績をみて季節を予測するわけですが。

 今は、冬に向かっていると思います。企業業績のトレンドに大きな変化がない状況で、トランプ政権による米国自国主義の台頭は世界経済にとってマイナス要素にもなりかねない、と私は考えているからです。従って、いかに暖かい日があっても、ダウンを脱いでTシャツになってはダメです。

 前回の繰り返しになりますが、トランプ氏は米国の景気を最優先する、いや、せざるを得ない大統領です。たしかに米国景気はよくなるだろうけれど、そのために世界経済は大きなダメージを受け可能性がある。米国金利上昇による円安を期待する方もいますけれど、金利を上げれば米国の景気が冷えますから、トランプ政権はそちらには向きにくい。

 いまダウンを脱いでいる方は、トランプ政権が(米国の)景気を良くすることを過剰評価し、それしか目に入っていないんです。もっと大きな視点で見れば、米国は景気回復が10年つづくスーパーサイクルの中にあります。結構なことですが、株価が上がっているということは、リスクの値段が高くなり続けている、とも言えますね。

じゃ、下がる前に売れば?

つい、上昇局面だと悪いことが起きないような気がしますが…。

居林:みんながハッピーになっているときにこそ、起こり得るリスクを見なければいけません。「起こり得るリスクの可能性は大きく変わらない」のです。低下しているように見えるのは感覚によるマジック、簡単に言えば慣れです。

 聞いた話ですが、釣り堀で釣られたお魚は、元に戻してもしばらくは懲りて餌を食べないそうです。ところが、2週間もするとまた釣られるんだとか。

ああ、よく分かります。

居林:というわけで、現在の市場では少数派になりますが、私の判断は「利益確定」。少なくとも買いではない。

ひとつお聞きしたいのですが、ここまで聴いて「下がるから買うな、というけれど、下がる前に売ればいいじゃないか」と思う方も多いのではないでしょうか。

居林:おっしゃるとおりです。高いときに買って、もっと高いところで売る短期トレーダー的な手法ももちろんあります。長年この世界にいますので、信じられないくらいの才能を持つ、まさに天才を何人か目にしました。「株価が上昇し始めたところで乗って、天井につく前に降りればいい」という理屈も正しい。できる、と思うならどうぞ、わたしにはそういう才能がないのでやれません、他の方にも勧めません、というお話です。

 私のようなバリュー投資か、グロースか。「長期的に生き残れるのは全員バリュービレッジの出身だ」とウォーレン・バフェットが言ってまして、私の好きな言葉なんです(笑)。

 別の分け方をすると、投資哲学として、コントラリアン(逆張り)、波乗り(順張り)、両方(スイッチ)という分け方もあります。運用会社で25年の経験がありますが、長い目で見ると、私はコントラリアンですね。それも、強い馬のオッズがいいときに賭けている。懐かしの「クイズダービー」で言えば、はらたいらさんがたまたま調子が悪くて、倍率が上がったときに賭ける、みたいな。

篠沢教授が20倍、には?

居林:絶対行きません。冷静に考えれば当然ですよね。でも、「投資は行動」なので、目の前の20倍に釣られるのです。そこで釣られないために哲学がいる。

投資は10年単位の勝ち残り戦

なるほど。ところで「長期的に生き残れるのは」という、長期とは何年くらいですか?

居林:私は、長期というのは10年単位だと思っています。株式投資を仕事としてやるなら10年勝ち続けねばならない勝ち残り戦。参戦自体にコストがかかるので、それを上回る利益を上げられるかどうか。10年平均して勝ち続けないと意味がない。

 先ほど見て頂きましたが、日経平均のヒストグラムを長期で取ると、きれいに正規分布になるんですよ。過去10年、266週でプラスマイナス。きれいに対象形になります。もちろん、時には行きすぎたブラックスワンの日もあり、そこだけをみんなが覚えている。1998年に破綻したLTCMもその点では正しかった。

ロシア通貨危機が短期で収まると見越して投資したんでしたっけ。

居林:はい、長期的には正しい予測でしたが、レバレッジをかけ過ぎて予測が実現する前に破綻してしまいました。統計的異常値に注意し、逆張りしてもいいが全力でかけず、アベレージの世界に住んでいることを忘れずに、というのが教訓でしょうか。マーケットは明日もある。「今日は撤退でいい」と決めるのが大切です。

そういえば、居林さんの「撤退」についてのお話はまだお聞きしていませんね。

居林:撤退、利食い、損切りをどうするのか、は大きなテーマです。昨年は、いつマーケットに入るのか、の話を良くしました。この後は出方ですね。どう出口戦略を執行すべきか、そして我慢するべきか。次回にお話ししましょうか。最後に一言。売った後も上がるともう一回買い直したくなるんだけど、そこはぐっとこらえてください。


このコラムについて

市場は「晴れ、ときどき台風」
いわゆる「アナリスト」や「経済評論家」ではなく、「実際に売買の現場にいる人」が書く、市場の動きと未来予測です。筆者はUBS証券ウェルス・マネジメント本部日本株リサーチヘッドの居林通さん。そのときそのときの相場の動きと、金融市場全体に通底する考え方の両面から、「パニックに流されず、パニックを利用する」手法を学んでいきましょう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/020500004/020900010
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/853.html

[経世済民118] 三菱UFJとみずほ銀、ついに預金利回「0.00%」マイナス金利1年 金余り預貸ギャップ過去最高 株大幅高トランプ税制改革
三菱UFJとみずほ銀、ついに預金利回「0.00%」−マイナス金利1年
河元伸吾、Gareth Allan
2017年2月10日 05:05 JST
Share on FacebookShare on Twitter
両行が初めて決算資料に表記、三井住友銀は0.01%
「預貸ギャップ」は224兆円と過去最高−カネ余り続く

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iewOIo1F6_90/v2/-1x-1.png

国内メガバンクの預金利回りがついに「0.00%」となった。マイナス金利導入から1年が経過し貸出利回りの低迷が続く中、三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行は4ー12月(第3四半期)決算で初めて預金利回りをゼロ%と開示した。
  決算資料によると、ゼロになったのは主に預金者に支払う利息などを示す「預金等利回り」。両行とも前年同期の0.03%から0.00%(4ー9月期は0.01%)に低下した。ただ、これは小数点第3位を切り捨てた結果で、実際にはわずかながら利回りはある。三井住友銀行では4月から0.01%の状態が続いている。
  お金は経済の血液だ。預金利回りには銀行にお金を預けることで預金者が得る利息などが反映されている。銀行は預金で集めたお金を事業会社などに貸し、融資金利の一部を預金者に返す。預金利回りの低さは、お金という血液が日本経済の好循環にうまく活用されていないことを暗に物語っている。
  MUFG広報の嶋田龍太氏は、預金利回り低下について「過去に預かった利息が高めの定期預金などが満期償還されているため」と説明。みずほ広報の塩野雅子氏は「低下傾向は継続」しており、反転の兆しはないという。

カネ余り
  昨年2月に日銀の黒田東彦総裁がマイナス金利を導入して間もなく1年が経過する。3メガ銀は預金金利を段階的に引き下げ、現在、普通預金金利は0.001%と過去最低。定期預金も預け入れ額や期間に関係なくすべて0.01%となっている。にも関わらず、お金が銀行に滞留し融資などに回らないカネ余りの状況が続いている。

カネ余りを示す「預貸ギャップ」は過去最高に
カネ余りを示す「預貸ギャップ」は過去最高に
  日銀の貸出・預金動向によると、17年1月の国内銀行の預金残高は前年同月比4.5%増の668兆5200億円だったのに対し、貸出金残高は2.6%増の444兆6000億円にとどまった。預金から貸出金を引いた「預貸ギャップ」は過去最高の224兆円に達した。これはイタリアの国内総生産(GDP)を超える規模だ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-09/OKZFK36JTSEG01


 

 
日本株大幅高、米政策期待や為替懸念後退−輸出や金融主導全業種上げ
長谷川敏郎
2017年2月10日 08:06 JST 更新日時 2017年2月10日 09:38 JST
Share on FacebookShare on Twitter
米国債利回りが上昇、日米金利差拡大で円は1ドル=113円台に下落
日米首脳会談への警戒も薄れる
Share on Facebook
Share on Twitter
10日の東京株式相場は大幅高。米政策期待に加え日米首脳会談への警戒が和らぎ、為替市場では円安が進展、業績期待から自動車や機械など輸出関連、銀行や保険など金融株中心に東証33業種は全て高い。
  TOPIXは前日比1.5%高、日経平均株価は1.6%高と大幅に反発して取引を開始。その後日経平均は1.8%高の1万9257円まで上昇、日中上昇率は1月4日以来の大きさ。
東証内
東証内 Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  トランプ米大統領は9日、米航空各社の幹部との会合で、今後2−3週間以内に税制について「驚異的な何か」を発表すると述べた。政策で経済が活発になるとの見方から、米10年債利回りは6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上げて2.39%となった。また10日の日米首脳会談では、トランプ大統領が以前批判した日本の「為替操作」の問題は優先議題ではないと、米政府当局者が明らかにした。きょうの為替市場では一時1ドル=113円60銭台と、東京株式市場の9日通常取引終了時点の112円19銭に比べてドル高・円安が進んでいる。
  トランプ氏はアメリカの空港や鉄道システムは時代遅れで、道路もひどいとし、インフラ改善に取り組む考えもあらためて示した。中国と日本には「高速鉄道が至る所にある。われわれにはない」とも発言した。
  SBI証券の藤本誠之シニアマーケットアナリストは「減税やインフラなどトランプ米大統領が進める政策は日本企業にはトータルでプラスになる」と述べた。日米首脳会談は「大きな問題なく通過しそう。半信半疑の部分は残っているものの、円高リスクをにらんでショートしていた向きは買い戻しをしなければならない」と話していた。
午前9時31分時点のTOPIXは前日比23.95ポイント(1.6%)高の1537.50、日経平均株価は同349円48銭(1.8%)高の1万9257円15銭
東証33業種はゴム製品、石油・石炭製品、鉱業、輸送用機器、銀行、陸運が上昇率上位
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-09/OL4PU66K50XT01

 

 トランプ大統領、「驚異的」税制改革案を約束−2、3週以内発表
Sahil Kapur
2017年2月10日 07:33 JST 更新日時 2017年2月10日 09:05 JST
Share on FacebookShare on Twitter
「米国企業の全体的な税負担の低減」を目指す−トランプ大統領
包括的な法人・個人税制の抜本的改革をまとめている−報道官
Share on Facebook
Share on Twitter
トランプ米大統領は9日、法人税改革の「驚異的な」プランが今後「2、3週間」内に発表されると述べ、期待感を高めた。
  トランプ大統領は詳細には言及しなかった。ホワイトハウスのスパイサー報道官はその後で記者団に、詳細が明らかになるのは数週間後だと述べ、ホワイトハウスが1986年以降で最も包括的な法人・個人税制の抜本的改革をまとめていると説明した。
  米航空会社幹部と会談したトランプ大統領は、自身のプランは「米国企業の全体的な税負担の低減」を目指すものだと述べ、「これから2、3週間で税金という面では驚異的な何かを発表するつもりだ」と語った。
  トランプ大統領の側近らは先月、ライアン米下院議長が支持する法人税案に大統領が乗り気になっていると話していた。同案は法人税率を20%に引き下げるほか、米企業による国内での所得と輸入に課税し、輸出と海外所得は課税対象外とする内容。こうした「国境調整」案は小売りや石油精製業などの産業から幅広く反対されている半面、ゼネラル・エレクトリック(GE)など大手輸出企業は支持を表明している。
  企業に国内生産の維持を促す成長促進の仕組みになるとライアン議長が売り込むこうしたアプローチをトランプ大統領が十分に有望視しているかどうかは不明だが、スパイサー報道官のコメントは少なくとも同様の目標を支持していることを示唆している。
  同報道官は「われわれが海外との競争に直面しているのは米国の税制が理由だ。米国の税制は国内にとどまりたくない企業に有利なもので、大統領もその点を認めている」と指摘。政権は法人と個人の税制で議会と協力しており、超党派的なアプローチの実現を望んでいると述べた。
  さらに同報道官は、政権が議会向けの全体的な予算案に取り組んでいると述べ、「数週間以内に予算案をまとめる」方針を示した。
  
原題:Trump Promises ‘Phenomenal’ Tax Plan as Ryan’s Ideas Draw Fire(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-09/OL4NC36S972T01


http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/865.html

[政治・選挙・NHK220] トランプ大統領は「黒船」で日本を開国できるか 資本自由化する新「日米構造協議」必要 アジア情勢と沖縄:観光客の楽園と要塞
トランプ大統領は「黒船」で日本を開国できるか
資本を自由化する新たな「日米構造協議」が必要だ
2017.2.10(金) 池田 信夫
連邦判事は「政治的」 トランプ大統領、入国禁止令めぐり司法批判
ワシントンで開かれた全米の保安官らによる会合で演説するドナルド・トランプ大統領(資料写真、2017年2月8日撮影)。(c)AFP/SAUL LOEB〔AFPBB News〕
 アメリカのトランプ大統領は、日米間の自動車貿易について「アメリカは日本で自動車を販売できないのに、日本は米国に何十万台の車を輸出している」と不満を表明し、この問題について「日米で協議しなければならない」と発言した。

 安倍首相は間もなくホワイトハウスで行う日米首脳会談で、この問題を協議する予定だが、日本側は戦々恐々だ。トランプは、1980年代の日米構造協議のような通商交渉を始めようとしているのかもしれない。今では名前を覚えている人も少ない構造協議は、アメリカの仕掛けた筋違いの喧嘩だった。

「貿易赤字で損する」というトランプは時代錯誤

 トランプ大統領が選挙運動のときから言っている「アメリカは貿易赤字で損している」という話は、高校でも教わる初歩的な間違いだ。貿易赤字は輸入が輸出より多いというだけで、いいことでも悪いことでもない。「赤字」という言葉が誤解を招くが、個々の企業は海外から商品を輸入して国内で売れば利益が出る。

 2016年のアメリカの経常収支(貿易収支+所得収支)は約4700億ドルの赤字で、GDPの2.5%だった。これは1980年代と同じぐらいで、その後は2000年代のバブル期に5%を超えたが、2009年以降の不況で赤字は減った。経常収支は「国内需要−国内供給」なので、貿易赤字は景気がよくて需要が大きいことを示すのだ。

 経常収支の赤字は資本収支の黒字と同じで、アメリカの借金(海外からの資金流入)を示すが、これも悪いことではない。世の中に、借金をしていない企業はほとんどない。アメリカの借金が多いのは全世界から投資が集まるからで、これによって先進国でトップクラスの成長を維持している。

 アメリカ車が日本で売れなくても、iPhoneは2016年に日本で1473万台売れた。携帯電話で日本は、1兆円以上の貿易赤字だ。個々の商品が売れるか売れないかは国際競争力の問題で、政府が変えることはできない。もちろん貿易黒字が悪いわけでもなく、80年代のような「黒字減らし」は意味がない。

構造協議に勝利したのは日本の消費者だった

「貿易摩擦」は、1985年に突然始まった。レーガン大統領が当選してから、アメリカは「強いアメリカ」を目指したが、ドルが強くなって貿易赤字が拡大し、減税で財政赤字も大きくなったため、「双子の赤字」といわれた。貿易赤字の最大の原因は財政赤字だったが、レーガン政権は日本を標的にした。

 最初は「日本の製品輸入が少ない」という話が出て、「黒字減らし」のために政府専用機やスーパーコンピュータなどを政府が緊急に調達して黒字を減らした。だが、そんなことで貿易赤字は減らないので、MOSS協議(市場志向型分野別協議)が始まった。

 これは半導体、通信機器、医薬品、農産物などの分野別協議で、日本はハイテク製品の輸出を減らして農産物などの輸入を増やすよう迫られた。アメリカでも反日感情が高まって「ジャパン・バッシング」が起こり、アメリカの下院議員がホワイトハウスの前で東芝のラジカセをハンマーで壊した。

 このころ私もNHKで日米双方に取材したが、印象的だったのはアメリカ側が日本の実態を実に詳しく知っていることだった。たとえば農産物の非関税障壁について、USTR(アメリカ通商代表部)は、部外者には分からない細かい問題を指摘してくる。それは通産省(当時)がUSTRに情報を提供していたからだ。

 私も通産省に呼ばれ、本館17階のレストランでご馳走になって資料を見せられ、「農水省はこんなひどい障壁をつくっている」と情報を提供された。それを我々が報道すると、USTRが「NHKが報道をしていた」と日本政府を追及する「やらせ」の交渉だった。本格的な構造協議は1989年に始まったが、それは「日米交渉」ではなく、通産省がやりたいことをアメリカに言わせた「日日交渉」だったのだ。

 日本が世界から恐れられたのは、あのときが最後だろう。その後、日本のバブルが崩壊して交渉は下火になった。アメリカの貿易赤字は90年代以降も(景気回復で)拡大し、日本の貿易黒字は不況で増え続けた。

 10年近い構造協議の交渉で勝ったのは、日本の消費者だった。アメリカが最大のターゲットにしたのは、大店法(大規模小売店舗法)だったが、これは通産省の念願だった。彼らは「外圧」を利用して規制緩和し、2000年に大店法を廃止した。日本の政策は自民党と官僚機構のコンセンサスで決まるので、大きな変化は「黒船」や敗戦のような外圧でしか起こらないのだ。

日米FTAは「対内直接投資」をテーマに

 2011年から始まったTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉も、アメリカの力を借りて「開国」する試みだった。もともと日米FTA(自由貿易協定)は小沢一郎氏が結ぼうとしていたものだが、彼が民主党政権で「鎖国派」に転じたので、経産省がアメリカと小国の結んでいるTPPに後から参加したのだ。

 これも経済的なメリットはほとんどなく、経産省の希望的観測でも今後10〜20年間にGDP比で2.6%という微々たるものだ。ただ個別にFTAを結ぼうとすると相手国が例外品目を設定して交渉が難航するので、多国間でほぼ決着していたTPPに参加することは、それなりの意味があった。

 ところが与野党の議員の過半数がこれに反対し、交渉が難航しているうちに、アメリカが降りてしまった。トランプ大統領が正式にTPP離脱を決めたので、今まで6年間の交渉は無駄になり、また最初から日米FTAの交渉をやり直すしかない。

 しかし日本が失ったものは少ない。貿易協定としてのTPPにはほとんど中身がなく、これで日本の対米輸出が増える見込みはない。「だからFTAもやめろ」という重商主義者がいるが、これはナンセンスである。FTAの目的は貿易黒字を増やすことではなく、消費者の利益を増やして成長率を高めることだ。

 日米FTAを仕切り直すとすれば、最大の課題は対内直接投資だろう。これは外国企業や投資ファンドによる日本企業の買収のことだが、日本は図のようにGDPの3.7%と、199カ国中の196位だ。

対内直接投資残高のGDP比(%)
(2013年末、財務省調べ)
 日本の経営者が株主資本主義を嫌い、株式の持ち合いなどの買収防衛策を二重三重に張りめぐらしているため、日本ではハイリスクの投資ができず、株主資本利益率(ROE)はアメリカの半分程度で、労働生産性は6割である。

 買収防衛策を撤廃し、外資系ファンドによる買収を自由化する資本の開国が必要だ。それが万能の解決策にはならないが、日本には資本主義が少なすぎる。不動産投資で成り上がったトランプ大統領は、そういう外圧をかける悪役としてふさわしい。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49154


 


アジア情勢と沖縄:観光客の楽園とそびえ立つ要塞
2017.2.10(金) The Economist

print
1
2
3
next
アクセスランキング
1時間昨日
rank-sns
1上海の新スポット、日本のラーメンに中国人が殺到!
[花園 祐]2017.2.10
2ニュージーランドに世界の富豪が殺到
[Financial Times]2017.2.9
3トランプ大統領は「黒船」で日本を開国できるか
[池田 信夫]2017.2.10
4パクリ疑惑の上海「大江戸温泉物語」に行ってみた
[花園 祐]2016.12.27
5日本に行ったら殴られるんでしょ?中国人は怯えてい…
[花園 祐]2017.1.4
6米国では酷評「マティス・稲田会談は成果なし」
[北村 淳]2017.2.9
7体重の大小よりも“体の中身”が問題だ
[漆原 次郎]2017.2.10
8アジア情勢と沖縄:観光客の楽園とそびえ立つ要塞
[The Economist]2017.2.10
9日本語を学ぶ夜のお姉さん、意欲も服もすごかった
[宮田 将士]2017.1.23
10究極の方法?「痩せたければダイエットをするな」
[漆原 次郎]2016.12.9
ランキング一覧

(英エコノミスト誌 2017年2月4日号)

冷戦時代の沖縄への核配備、米政府が初めて公式に機密解除
沖縄県宜野湾市にある米軍の普天間飛行場(2009年11月7日撮影、資料写真)。(c)AFP/Kazuhiro NOGI〔AFPBB News〕
東アジアで地政学的な緊張が高まるにつれ、琉球諸島の不快感も高まっていく。

 1年のこの時期、日本の北の海岸には流氷が打ち寄せるが、南の琉球諸島では農家の人たちがサトウキビを刈り取っている。日本列島はとてつもない距離に広がっている。北海道の北端の宗谷岬からは、ロシア極東のサハリンの影が水平線上ににじんで見える。琉球列島最西端の与那国島からは、時折、台湾東部の山を見分けることができる。

 この旧正月(春節)、沖縄県を構成する琉球諸島は、行楽客でごった返していた。沖縄は、あらゆる趣味を楽しめる楽園の島としての評判が高まっている。冬の太陽と免税のショッピングモール、そしてボリューム満点の炒め物(名物の1つはスパムだ)を求めて、中国本土の家族連れがパッケージツアーで那覇空港へ流れ込む。

 那覇からおよそ400キロ南に行ったところでは、クルーズ船がサンゴ礁の間をすり抜けて石垣島の港に入り、地元の黒真珠が目当ての台湾人観光客を降ろしていく。一握りの冒険家たちは与那国まで足を延ばし、シュモクザメが泳ぐ中でダイビングしたり、久部良の埠頭に立ち、漁師たちがメカジキを獲って持ち帰って来るのを眺めたりしていた。この島は、生命を育む黒潮のど真ん中に位置している。

 安全保障にかかわる人の間で、沖縄は駐屯地の島として知られている。F15戦闘機の轟音は確かに那覇生活の1つの要素となっている。

 だが、大半の訪問者は軍のプレゼンスをほとんど感じない。心地よい安らぎは、観光パンフレットが作り出す虚構ではない。平和主義は、沖縄人の自意識にしっかり焼き付けられている。元沖縄県知事の太田昌秀氏はかつて、1879年に日本に併合されるまで独立国だった琉球王国の最大の特徴は「平和への献身と武器を持たないこと」だったと語ったことがある。

 沖縄の人たちは好んで、バジル・ホールを引き合いに出す。1816年に琉球を訪れ、王国の温和さと礼儀正しさ、そして武器がない様子に驚嘆した英国海軍大佐だ。ホールは後に、セントヘレナで流刑生活を送っていたナポレオン・ボナパルトのもとを訪ね、琉球の話をして皇帝を困惑させた。「しかし、武器なしでどうやって戦うのか」とナポレオンは叫んだという。

次へ
[あわせてお読みください]
米国では酷評「マティス・稲田会談は成果なし」 (2017.2.9 北村 淳)
マティス発言にぬか喜び禁物、強か中国次の一手 (2017.2.8 織田 邦男)
トランプの外圧は日本の国防“独立”への好機 (2017.2.2 北村 淳)
覇権国下りた米国がもたらす手本なき世界 (2017.1.31 堀田 佳男)
トランプに対抗できるのは安倍首相だけ? (2017.1.31 筆坂 秀世)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49146
http://www.asyura2.com/17/senkyo220/msg/484.html

[国際18] イタリアで高まる反ユーロ感情、各政党は支持獲得に躍起 ギリシャ目標未達に備える 豪中銀、成長率予想を1%ポイント引き下げ
焦点:イタリアで高まる反ユーロ感情、各政党は支持獲得に躍起

[ローマ 8日 ロイター] - イタリア国民の間で欧州単一通貨ユーロに対する反感が広がってきた。同国では6月にも前倒し総選挙が実施される可能性があり、毛色の異なるさまざまな政党が反ユーロ感情に訴えかけて支持を獲得しようとしている。

イタリア中央銀行のサルバトーレ・ロッシ副総裁は先週、リスナーからの電話質問に答えるラジオ番組に出演した。多くの質問は、イタリアがなぜユーロを離脱して旧通貨リラに戻らないのか、というものだった。

離脱すれば「破滅と大惨事」を招くと副総裁は答えたが、数年前なら離脱シナリオが公に討論されること自体、なかっただろう。

ユーロが導入された1999年以来、イタリア経済は右肩下がりで、多くの国民はその原因がユーロにあると考えている。

「ユーロ導入前の方がずっと暮らし向きが良かった」と嘆くのは、ローマで不動産鑑定士として働くルーカ・フィオラバンティさん(32)。「物価は上がったのに給料は横ばいだ。ユーロから抜けて主権通貨に戻る必要がある」と語る。

イタリア中銀は反ユーロ感情の高まりに気をもんでおり、中銀筋によると副総裁がラジオに出演したのは一般市民と対話するためだった。

イタリアは1957年の欧州連合(EU)の元となる創設国の1つであり、英国のようにEU自体からの離脱を望む国民はほとんどいない。EUのおかげで欧州は平和と安定を保てたとの見方が浸透している。

与党、民主党はユーロ支持の立場だが、ユーロを巡る財政規則は厳しすぎると不満を訴えてきた。

その他の主要3党は濃淡こそあれ、いずれも反ユーロで、イタリアが現在の形でユーロにとどまるべきではないと考えている。

次の総選挙は2018年初めの予定だが、前倒し実施の可能性もある。レンツィ前首相が昨年12月に国民投票で敗北し、辞任して以来、民主党が選挙で勝利する可能性は後退している。世論調査によると、現在の選挙制度では、どの政党も連立も過半数を獲得できそうにない。

イタリア国民は従来、加盟国の中で最も親ユーロの部類に属していたが、12月に欧州委員会が実施した調査によると、ユーロは「良いものだ」との回答は41%にとどまり、「悪いものだ」が47%を占めた。

EU統計局(ユーロスタット)のデータによると、イタリアはユーロ圏の中で唯一、ユーロ採用後に1人当たり国民総生産(GDP)が減少した国。経済規模は2008年の世界金融危機前に比べて7%縮小したままで、若年失業率は40%に達している。

<五つ星運動>

最もユーロに批判的な政党は、第3党で右派の北部同盟だ。同党は政権に就けばユーロから離脱すると約束しているが、支持率は13%程度と低い。

反既成政党の「五つ星運動」の方が大きな脅威になるかもしれない。世論調査の支持率は30%程度で民主党と肩を並べており、ユーロ残留か離脱かを問う国民投票の実施を唱えている。

ただ、イタリアの憲法は国際協定が司る問題についての国民投票を禁じている。このため五つ星運動は、拘束力のない投票で世論を諮る案を示している。

同党の創始者ベッペ・グリッロ氏は先週ブログに「手遅れになる前にユーロの国民投票を」と題した記事を投稿した。

同党が首相に擁立すると見られているルイジ・ディ・マイオ氏はロイターに対し、「我が国は主権通貨に戻るべきだ。他国の合意が得られるなら、新たな規則に基づく新たな共通通貨を結成してもよい」と述べた。

シルビオ・ベルルスコーニ氏率いる中道右派政党「フォルツァ・イタリア」は直接的なユーロ離脱を訴えてはいないが、ドイツがユーロを離脱するか、イタリアがユーロとリラを同時に使えるようにすべきだとしてきた。

イタリア中銀は、ユーロを離脱すれば国民の貯蓄が急激に目減りすると警鐘を鳴らす。しかし中銀は度重なる銀行危機を防げなかった上、長年にわたり楽観的すぎる経済成長見通しを示してきたため、かつてのように国民から尊敬されてはいない。

(Gavin Jones記者)

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
コラム:イタリアで反EU政権誕生の現実味=田中理氏
インタビュー:銀行救済でもイタリア格下げせず=S&P責任者
インタビュー:銀行救済でもイタリア格下げせず=S&P格付け責任者
完全菜食主義を子どもに強要する親に禁錮刑を、イタリアで法案提出
伊銀行救済基金、モンテ・パスキの不良債権買い取り資金確保
http://jp.reuters.com/article/italy-anti-euro-idJPKBN15O0BA

 

ギリシャ目標未達に備える措置を債権者提案も、こう着打開で−関係者
Sotiris Nikas、Nikos Chrysoloras
2017年2月10日 09:12 JST

支援プログラムの進展状況をめぐる審査のこう着状態打開を目指す
ギリシャ政府に10日にも財政措置の枠組みが提示される見通し


ギリシャ支援プログラムの進展状況をめぐる審査がこう着状態に陥る中で、債権者グループが事態の打開に向けて、審査完了に必要な財政措置の枠組みをチプラス政権に提示する可能性がある。事情に詳しい関係者2人が明らかにした。
  非公開情報であることを理由に関係者が匿名を条件に語ったところでは、20日のユーロ圏財務相会合までに協議の進展が求められる中で、ギリシャ政府に10日にも提案が行われる見通し。関係者の1人によると、直近の支援プログラムで債権者と合意した予算目標を政府が達成できない場合に発動する国内総生産(GDP)約2%相当の緊急財政措置が提案に含まれることになりそうだ。
  欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)、欧州安定化メカニズム(ESM)、国際通貨基金(IMF)の代表団は、ギリシャ政府の提案への反応を見極めた上で、協議継続のためにアテネに戻ることを検討する。
原題:Greece’s Creditors Said to Prepare Proposal for Bailout Deal(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-10/OL4Q3W6TTDS101

 

豪中銀、17年6月期の成長率予想を1%ポイント引き下げ=四半期報告

[シドニー 10日 ロイター] - 豪準備銀行(中銀)は10日発表した四半期金融政策報告の中で、2017年6月期のGDP伸び率予想を1%ポイント引き下げ1.5─2.5%とした。

昨年12月に発表された第3・四半期の実質国内総生産(GDP)は予想外のマイナス成長になったことが背景。

ただ、今後2年間で回復を見込んでいるとし、追加利下げは検討していないことを示唆した。

最大の貿易相手国である中国が急成長する中、中銀は世界経済に対して前向きな見方を示した。主要先進国も順調に成長すると予想。ただ、フィリップ・ロウ総裁は米国の政策に「強い不透明感」があるとし、世界の経済成長や価格に影響が出るとみている。

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
金融政策の景気刺激効果には限界=豪中銀総裁
米経済成長率、第3四半期は+3.7%=アトランタ連銀GDPナウ
米経済成長率、第3四半期は+3.7%=アトランタ連銀ナウ
仏中銀、第3四半期成長率は前期比+0.3%と予想
基調インフレ率、目標以下で推移へ=豪中銀四半期金融政策報告

http://jp.reuters.com/article/rba-juneforecast-idJPKBN15P04U

http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/108.html

[経世済民118] トランプ氏、日米首脳会談前に新幹線を称賛−米鉄道は「時代遅れ」 米新規失業予想外の減少 米国債下落 米株上昇、過去最高値
トランプ氏、日米首脳会談前に新幹線を称賛−米鉄道は「時代遅れ」
Mary Schlangenstein
2017年2月10日 06:48 JST
Share on FacebookShare on Twitter
航空会社幹部との会合でインフラ改善に取り組む考えを表明
「米国の空港はかつては最高だったが、今や最低」−トランプ氏
トランプ米大統領は9日、米航空会社幹部や空港管理責任者との会合で、米国の運輸システムは「時代遅れ」だと指摘し、インフラ改善に取り組む考えをあらためて示した。
  トランプ大統領はホワイトハウスで行われた会合で、「米国の空港はかつては最高だった。今や最低だ。航空機システムは時代遅れ、空港は時代遅れ、鉄道も時代遅れだ。道路も良くない。われわれはこれを全て変える」と語った。
  トランプ氏は、道路や橋、空港を改善するため最大1兆ドル(約113兆円)のインフラ投資を行う考えを示してきたが、目標達成の手段については詳細を明らかにしていない。同氏はこの日、米国では中国や日本のような幅広い高速鉄道網が整備されていないとも指摘した。大統領は10日に安倍晋三首相との首脳会談を控えている。
  トランプ氏はインフラ改善計画の財源について、より多くの民間資金を取り込む考えを示しているが、具体的な計画は明らかにしていない。会合に出席したロサンゼルス・ワールド・エアポーツ(LAWA)のデボラ・フリント最高経営責任者(CEO)によると、大統領は米国の空港をカタールやシンガポールの空港に対抗できるようにする考えを示した。
  トランプ大統領は、中国と日本には「高速鉄道が至る所にある。われわれにはない」と発言した。大統領は10日にホワイトハウスで安倍首相との首脳会談を行い、翌日にはフロリダ州の別荘に安倍氏を招き、一緒にゴルフをする予定。
原題:Trump Renews Call to Mend ‘Obsolete’ Airports, Trains and Roads(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-09/OL4M976K50XT01

米新規失業保険申請件数:予想外の減少−約3カ月ぶり低水準
Shobhana Chandra
2017年2月9日 23:19 JST

先週の米週間新規失業保険申請件数は市場予想に反して減少し、ほぼ3カ月ぶり低水準となった。
  米労働省が9日発表したところによると、4日終了週の失業保険申請件数は前週比で1万2000件減少して23万4000件。ブルームバーグがまとめたアナリスト予想の中央値は24万9000件だった。前週は24万6000件。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iWBe_HSiDJAg/v2/-1x-1.png

  より変動の少ない4週移動平均は24万4250件に減少し、1973年11月3日終了週以来の低水準。前週は24万8000件だった。
  失業保険の継続受給者数は1月28日までの1週間に1万5000人増えて208万人だった。
  統計の詳細は表をご覧ください。
原題:U.S. Jobless Claims Unexpectedly Fall to Lowest Since November(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-09/OL41RG6VDKHU01 


 


米国債:下落、トランプ大統領の税制発言で−利上げ確率が上昇
Elizabeth Stanton
2017年2月10日 06:34 JST

9日の米国債は下落。トランプ米大統領が2−3週間以内に税制について発表すると述べたことから、この日はドルと株が上昇した。
  午後に入ると四半期定例入札の30年債入札(150億ドル)が実施された。入札前に同年債利回りは3%を上回った。ニューヨーク時間午後4時過ぎの30年債利回りは6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%) 上昇して3.01%。10年債利回りは6bp上げて2.40%。
  トランプ大統領の税制に関する発言を手掛かりに、市場では6月までの米利上げ確率が上昇した。
原題:Treasuries Fall After Trump Says Tax Plan Coming Soon(抜粋)


米国株:上昇、過去最高値を更新−トランプ減税への期待が復活
Oliver Renick
2017年2月10日 06:21 JST
9日の米国株式相場は上昇、主要株価指数が過去最高値を更新した。トランプ大統領が税制について「驚異的な何か」を発表すると述べたことが手掛かり。週間新規失業保険申請件数が予想外に減少したことも朝方の相場を支えた。コカ・コーラやケロッグ、ツイッターなど四半期決算が引き続き注目されている。
  ニューヨーク時間午後4時過ぎの暫定値によると、S&P500種株価指数は13.20ポイント(0.58%)上げて2307.87。ダウ工業株30種平均は118.06ドル(0.59%)高い20172.40ドル。いずれも過去最高値を更新した。
  トランプ大統領による規制緩和などの約束を受けて、航空株が買われた。ダウ平均採用銘柄ではナイキが好調。2.6%上げて上昇率首位となった。
原題:U.S. Stocks Set Records After Jobs Data as Banks, Energy Rally(抜粋)
Reflation Trades Show Signs of Life on Trump Taxes: Markets Wrap (抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-09/OL4LSS6VDKHT01
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/868.html

[国際18] 中国の人気動画アプリ、地方と都市の分断浮き彫りに 月間アクティブユーザー数が1億人 ライブ動画の女王」たち、高収入の源泉
中国の人気動画アプリ、地方と都市の分断浮き彫りに
0:00 / 0:00
月間アクティブユーザー数が1億人に上る動画アプリKwaiでは、中国の大都市以外の生活ぶりが映し出されている(中国語音声、英語字幕のみ)Photo: Kwai
By LI YUAN
2017 年 2 月 10 日 10:41 JST

 米国でベストセラーとなった回顧録「ヒルビリー・エレジー」は、沿岸部に住むエリートたちに貧しい白人労働者の生活を垣間見せた。中国でそれに相当するのは、北京快手科技の動画投稿アプリ「Kwai(クワイ、中国名:快手)」だ。月間アクティブユーザー数(MAU)1億人を抱える同アプリは、中国の大都市以外での生活ぶりを教えてくれる。

 Kwaiに投稿された動画のいくつかはこんな具合だ。ガチョウが鳴いている田舎の家の庭で、純白のウェディングドレスを着た新婦が裾を汚さないようスカートを持ち上げている。3人の仲間がふざけあい、互いの背後で爆竹を鳴らしている。老人男性が電子ピアノを弾きながら1980年代のポップ歌手のラブソングを歌っている。

元警備員の男性はわさびのチューブを食べたり、ボトルの酢を飲んだりする動画をKwaiに投稿した
元警備員の男性はわさびのチューブを食べたり、ボトルの酢を飲んだりする動画をKwaiに投稿した PHOTO: KUAISHOU
 こうした短い動画が受け入れられ、Kwaiは中国のあまり裕福でない小さな町で人気の娯楽チャンネルとなった。アプリは1日当たり約4000万人が利用し、1分足らずの動画とライブストリーミング動画が毎日500万本アップロードされている。登録ユーザー数は4億人と、短い動画のプラットフォームとして中国で最も人気を集めている。

 比較的大きな都市に住む人々は、今年の春節(旧正月)の連休中に地方の親類を訪ねて衝撃を受けた。ほとんど耳にしたことのなかったアプリに皆が夢中になっていたからだ。筆者が中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」のフォロワーにKwaiを利用しているか尋ねたところ、利用していると答えた人はほとんどいなかった。微博のユーザーは都市部に住む、教養のある人たちが多い。

 突如現れたように見えるKwaiは、中国で広がる社会経済格差を映し出している。これは米国のSNSが「レッド(共和党)フィード」と「ブルー(民主党)フィード」とに分断されているようなものだ。

北京快手科技の宿華CEO
北京快手科技の宿華CEO PHOTO: KUAISHOU
 中間層の一部インテリはKwaiのコンテンツの大半について、注目を集めたりお金を稼いだりすることを狙った下品なユーモアや、ばかばかしい悪ふざけと見なしている。

 こうした批判に対し、北京快手科技の宿華最高責任者(CEO)はKwaiが普通の中国人向けの「幸せで、本物の場所だ」と語る。

 中国の大都市はニューヨークやロンドンと比べても見栄えがするようになっているが、地方に目を転じればそこは発展途上のままだ。Kwaiはそうした地方に住む人々にとって現実味があり、かつ楽しめる動画を共有する場所なのだ。

 雲南省の観光地、大里で運転手として働くZhang Yunhaiさん(28)は、Kwaiを通じてプロレスを見たりするが、プロパガンダにあふれているという理由でテレビは見ないという。また、自身の投稿を誰も見てくれない微博も使っていないと語る。「自分にとっては、他のどのアプリよりもKwaiが身の丈に合っている」

関連記事

中国「ライブ動画の女王」たち、高収入の源泉は
中国でライブ動画配信アプリ人気の理由
SNSが直面する新たな課題 ライブ動画の怖さ
中国の出会い系アプリ「Momo」、投資家が変身歓迎
「カネで書く記者」探すアプリ、中国で重宝
http://jp.wsj.com/articles/SB11367774349816344181604582610852102491214


 
中国「ライブ動画の女王」たち、高収入の源泉は
ストリーミングで月収1500万円超えも、ファンは貢いだ額で称号獲得
0:00 / 0:00
ライブ動画配信をして視聴者から収入を得る人が中国で増えている。新郷のクイ・ユンカイさんもその1人だ(英語音声のみ、字幕なし)。
By PANG YUHONG AND OLIVIA GENG
2016 年 9 月 29 日 10:56 JST

 【新郷(中国河南省)】クイ・ユンカイさん(21)の仕事は、人口600万人の新郷の街が眠りにつく深夜から始まる。彼女の職業は自身の動画をインターネットで生配信すること。クイさんは「ダ・クイ(大きなクイ)」というハンドルネームで4時間にわたりファンと交流し、大きな声で中国のポップソングを歌ったりする。

 彼女の動画を見ているファンは、ハートやバラの絵文字を送信して応援する。「とても美しい歌声だ」「素晴らしい」といったコメントが画面を埋める。

 中国にはライブ動画をストリーミングできるプラットホームが200以上存在する。調査会社のiiメディア・リサーチによると、ライブ動画配信の市場規模は今や13億ドル以上に成長した。年内には国内のネット利用者の半数にあたる3億1200万人がライブ動画配信を視聴すると同社は予測する。動画配信のノウハウを伝授する大学講座も誕生する一方、政府はコンテンツの取り締まり強化に乗り出している。

 ライブ動画配信アプリの大手である映客(Ingkee)、斗魚(Douyu)、そしてキキ(Qiqi)といったアプリでは、「ストリームの女王」と呼ばれる人気投稿者たちに向けてファンがバーチャル・プレゼントを贈る。例えばクイさんのファンは、13.4人民元(200円)を支払えばバーチャルのバラを5本贈ることができる。動画はまるで集団オンライン・デートの様相だ。

 バーチャル・プレゼントの売り上げの半分はストリーミングを提供しているサイトの収入になり、残りの半分を動画投稿者とそのマネジメント会社が分ける形が多い。人気アプリのキキでは、貢いだ金額によってファンもランク付けされる。760円なら「お金持ち」。最高ランクの「神なる皇帝」の肩書を得るには7600万円を使わないといけない。

平均月収の10倍の収入

 クイさんは夜の仕事を初めてまだ数カ月だが、約4万元(60万円)の収入を毎月得ているという。河南省の平均収入の10倍だ。今は「クイ軍団」と名乗る5000人のファンが彼女の動向を追い続ける。クイさんは8月、7万人の投稿者が登録するキキで15位にランクインした。深夜に生配信される彼女の動画は、毎回1800人ものファンが視聴している。

 「最初の頃は1日に6時間も7時間もパソコンの前に座って動画を配信して、視聴者と話していた。食事をするのも忘れていた」とクイさんは話す。

ライブ動画配信サイト「キキ」では、視聴者は支払う金額によって28段階にランク付けされる。「神なる皇帝」になるには500万人民元(7600万円)の利用が必要だ(表中央の太字金額は各称号を得るために必要な支払い金額、その右は称号を維持するために必要な月額、単位は人民元)
ライブ動画配信サイト「キキ」では、視聴者は支払う金額によって28段階にランク付けされる。「神なる皇帝」になるには500万人民元(7600万円)の利用が必要だ(表中央の太字金額は各称号を得るために必要な支払い金額、その右は称号を維持するために必要な月額、単位は人民元)
  米アルファベット傘下の動画共有サイト「ユーチューブ」には10億人以上のユーザーがいるというが、番組は一方的なもので視聴者が参加することはない。生配信でチャットもできる中国のプラットホームは、ツイッターのペリスコープ機能に似ていると言えるだろう。中国の生配信の特徴は、視聴する側から直接収入を得るシステムができあがっている点だ。

 ライブ動画配信の分野には中国の大手企業が続々と進出している。8月、斗魚は国内インターネットサービス大手である騰訊控股(テンセントホールディングス)などから2億2600万ドルの資金を調達したと発表。中国一の富豪と言われる大連万達集団(ワンダ・グループ)の王健林会長の息子、王思聡氏は昨年、ライブストリーム用のアプリであるパンダTVを立ち上げている。

 中国の電子商取引最大手、阿里巴巴集団(アリババグループ)の動画部門である優酷土豆は、2014年にライブストリーミング用のサイトを立ち上げ、昨年はゲーム動画の配信を専門にする火猫TVに投資した。スマートフォンメーカーの小米科技(シャオミ)は、今年に入ってからミ・ライブと呼ばれるストリーミング・サービスを立ち上げた。競合が増える中で一歩リードしているのは、1日のアクティブユーザー数が700万人近いという映客だ。

セレブもストリーミングに参入

 有名人もライブ動画配信に参加している。リオ五輪で銅メダルを獲得した際の喜びぶりが話題を呼んだ競泳の傅園慧選手は8月に生番組を配信、1回で1100万人の視聴者を引き付けた。

 軍の兵士でさえライブ動画配信をする。人民解放軍の機関誌によると、腕立て伏せの仕方を教えたり歌を歌ったりする番組が今年に入ってから配信された。誤って軍事機密が流出する危険があるため、番組打ち切りの命令が出たという。

 「ストリームの女王」の中でもトップクラスのカオ・アンナさん(26)は、これまでの最高月収が100万元(1500万円)。たった2時間の放送で26万元(390万円)を手にしたこともある。

 もっとも、それほどの高収入は珍しい。パンダTVで2カ月にわたって配信をしているジ・ハンさん(21)は、月収が2000元(3万円)に達したと話す。「これは激務だ。わずか数人しか視聴者がいなくても、3時間にわたって話したり歌ったりし続けないといけない」と彼女は言う。

中国のライブ動画配信アプリ「映客」の画面
中国のライブ動画配信アプリ「映客」の画面 PHOTO: INGKEE
大学でライブ動画配信講座も

 浙江省にある義烏工商学院によると、この秋に同大学に入学した3000人のうち25人がライブ動画配信に関する訓練プログラムを受けるという。プログラムは昨年から始まり、すでに1万人以上のファンを持つ学生もいるという。講義では動画配信のエチケットを教えるほか、踊りや運動のレッスンもある。最終試験では、30秒の動画配信を想定して連続してポーズを取る課題を与えられる。

 一方で政府は、急成長を続けるライブ動画配信市場の取り締まり強化を模索する。中国の国家新聞出版広電総局は今月、動画配信の認可を得るための新たな要件を発表。番組が違法な内容を含んでいてはならず、「拝金主義」など下品な内容は拒否すべきだとしている。 

 中国のソーシャルメディア企業YYでエンターテインメント・プラットホーム部門を指揮していたグ・フェング氏は、この新たな規制によって業界の整理・統合が促されるとみている。中小の業者には資本面などで認可を取得する要件が満たせないためだという。

 グ氏はライブ動画配信が飛躍的に広まった背景として、孤独や退屈といった要素が大きいと分析。ファンは「オンライン上の有名人と話すためにお金を払う」と指摘する。ただ政府の規制が強まることで、業界の初期の成長期は終わるとみている。

 黒竜江省ハルビンの質店で働くソン・シナンさん(22)は、クイさんのライブ動画配信のファンだ。8月から計2000元(3万円)を貢いだと言う。彼はクイさんについて「お金だけが目的で偽善ぶっている他のキキの女性とは違う」と話す。多額の支払いをしたため、現在のランクは「子爵」だ。

関連記事

SNSが直面する新たな課題 ライブ動画の怖さ
中国サイバー警察、SNS通じ表舞台に登場
悲嘆に暮れる中国の中間層 SNSに多く事例
SNS最新機能「ライブ動画」の正しい使い方
http://jp.wsj.com/articles/SB12281053434115554903104582341101113877364
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/109.html

[医療崩壊5] 「病院」と「診療所」の違いとは?医療費に差も! 知らないと損する!医療費の裏ワザと落とし穴132
知らないと損する!医療費の裏ワザと落とし穴
【第132回】 2017年2月10日 早川幸子 [フリーライター]
「病院」と「診療所」の違いとは?医療費に差も!

 家の近所にある何でも相談できる診療所、子どもの病気を専門に見てくれる小児科のクリニック、内科や外科など複数の診療科を備えた病院。地域にはさまざまな形態の医療機関がある。

 フリーアクセス制をとっている日本では、健康保険証1枚あれば、規模の大小にかかわらず原則的にどこでも好きな医療機関を受診できる。そのせいか、ふだん私たちはあまり意識することなく、医療機関のことをまとめて「病院」と呼びがちだ。

 だが、法律では「病院」と「診療所」を区別しており、同じような治療でも、どこで受けたかによって医療費に差が出ることもある。「病院」と「診療所」は、どのような基準で分けられているのだろうか。

入院用のベッド数が
20床以上あると病院

 医療の安全を確保し、効果がよく分からない民間療法などから国民を守るために、医療法では病気やケガの治療を行える施設は、原則的に科学的根拠に基いた治療を行う「病院」と「診療所」に限定している。

 とくに「病院」に対しては、高度な医療を行えるように、医師をはじめとしたスタッフの人数、備えるべき設備などについての基準を設けているが、「診療所」との明確な線引きになっているのが入院用のベッドの数だ。

 医療法第一条の五では、ベッド数20床以上だと「病院」で、19床以下またはベッドがない施設を「診療所」と定めている。ただし、同じ「病院」のカテゴリーの中でも、ベッド数に応じて医療費が異なる仕組みになっている。

 とくに、最近、患者の自己負担に大きな差をもたらしているのが、医師の紹介状を持たずに病院を受診した場合の特別料金で、そのラインとなっているのが400床と500床以上の病院だ。

400〜500床以上の大病院が
特別料金の対象になる

 限りある医療資源で効率よく適切な治療を行なうために「診療所は日常的な病気やケガの治療や慢性疾患の経過観察」「病院は高度な手術や検査、化学治療、放射線治療」など、国は医療機関の機能分化を進めている。

 こうした国の目指す医療体制に患者を誘導するために、2016年4月から診療所などの医師の紹介状(診療情報提供書)を持たずに大病院を受診すると、通常の一部負担金に加えて、初診時5000円以上、再診時2500円以上の特別料金の徴収が義務化された。

 その対象のひとつが高度な医療を提供している特定機能病院だ。具体的には大学病院や国立病院機構などで、病床数はおおむね400床以上となっている。もうひとつが、救急医療の提供や診療所などと連携をとって地域医療を担っている地域医療支援病院で、その中でも病床数が500床以上あると対象になる。

 特定機能病院(400床以上)と500床以上の地域医療支援病院に、診療所などで書いてもらった紹介状を持たずに、「大きな病院のほうが安心だから」といった個人的な理由で受診すると、通常の医療費以外の定額負担が必ず徴収されるので気をつけよう。

 こうした特別料金が徴収される大病院は、そもそも高度な医療をするための病院だ。医師をはじめ看護師や薬剤師などの医療スタッフも充実しており、高度な医療機器も揃っている。

 その分、がんや難病などになったときは高度な医療を安心して受けられるわけだが、施設基準の整っている病院の医療費には通常よりも高い加算がついていることが多い。

 病床数の多い病院は、初再診料の特別料金だけではなく、全体的な医療費も施設基準の低い病院に比べると、わずかながら高くなる傾向にあることを覚えておきたい。

受診前にホームページで
施設基準をチェックする

 紹介状なしの定額負担があるのは、入院用のベッドが400〜500床以上の大病院だけではない。実は、ベッド数が200床以上でも、病院の裁量によって特別料金の徴収できるようになっている。

 こちらは国が義務化したものではないが、医療機関の機能分化を進めるために、独自の判断での徴収が許されているもので、通常の医療費に加えて数千円程度の特別料金を徴収している病院もある。

 だが、「病院」と名のつく医療機関のすべてが、紹介状なしの患者から特別料金を徴収しているわけではない。病院でも、200床未満なら特別料金がかかることはない。

 医療には、自分や家族の命がかかっている。安ければいいというものではない。高度な医療が必要なときは、病床数が多く病院を受診したほうが、施設基準が整っているので安心だが、比較的軽いの病気やケガなら施設基準が高くない病院でも対応は可能だ。

 本来なら、ふだんから何でも相談できるかかりつけの診療所を探しておいて、大きな病気がみつかったら、かかりつけ医からその病気の治療をするのに適切な病院を紹介してもらえれば安心だ。

 だが、急な体調の変化を感じて、いますぐにちょっと詳しい検査を受けたいという場合もあるだろう。そんなときは、ベッド数が200床未満の病院を探して利用すれば初診時の費用は抑えられる。

 初再診時の特別料金の有無や金額は、病院の受け付けなどに掲示されていたり、ホームページに掲載されていたりするので、揃っている検査機器などとともに確認しておこう。病院に行ってみてはじめて「こんなに医療費がかかるなんて」と驚かないためにも、施設基準は事前に確認しておきたいもの。

 ひとくちに「病院」といっても、その機能はまちまちだ。医療費を抑えながら、適切な医療を受けるためにも、その病院が用意しているベッド数に注意しながら病院探しをしてみよう。

(フリーライター 早川幸子)

http://diamond.jp/articles/-/117275
http://www.asyura2.com/16/iryo5/msg/536.html

[政治・選挙・NHK220] 安倍首相迎えるトランプ大統領の狙い アジアの同盟関係重視をアピール トランプ氏が新幹線を評価 米国でも交通インフラの整備
安倍首相迎えるトランプ大統領の狙い
アジアの同盟関係重視をアピール
トランプ大統領(左)と安倍首相(16年11月、ニューヨーク) SECRETARIAT/AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
By CAROL E. LEE AND ALASTAIR GALE
2017 年 2 月 10 日 10:35 JST 更新

 ドナルド・トランプ米大統領は10日の安倍晋三首相の訪米を利用し、アジア太平洋地域での同盟関係を重視している姿勢を示すことで同盟諸国を安心させたい意向だ。トランプ氏は先に、同盟関係について疑問を生じさせるような発言をしていた。

 トランプ氏は同盟関係全般を米国と世界の安全保障にとっての「基盤」ととらえている。アジアでの同盟関係は「安全保障と地域の繁栄の両面でわれわれが成功するための中核」であることを、安倍氏の訪米中に明確に示したい意向だ。政権高官が明らかにした。

 「いまだ残っているかもしれない疑念の解消に向けて、これは大いに役立つだろうと思う」とその高官は話した。

 トランプ氏は選挙期間中、アジアでの軍事的関与の縮小や、日本と韓国の核武装について発言するなど、米国が過去数十年間にわたり継続してきた外交政策からの決別を示唆していた。

 大統領選でトランプ氏が勝利したことを受け、特に日本では、第2次世界大戦後の平和と繁栄をもたらした国際秩序の混乱に対して懸念が浮上している。共同通信が1月末に実施した世論調査では、トランプ氏によって国際情勢が不安定になると考えている人の割合が84%に達した。

 これは日本にとっては極めて重要な問題だ。米国は日本にとって最大の輸出先であるほか、安全保障の保証人でもある。日本に駐留している米軍兵士は約5万人で、アジアで最大規模だ。

 トランプ氏が就任直後に環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を表明したため、米国のアジアからの後退に対する日本の懸念は強まった。

 先週来日したジム・マティス国防長官は、北朝鮮の核開発や中国の軍事的台頭に対抗するための重要なパートナーとして日本をとらえていることを示し、安心感を与えた。日本の政府関係者によると、マティス氏は同盟関係への日本の貢献を称賛し、駐留米軍の費用については言及しなかった。

 マティス氏の発言は日本の懸念を和らげる一助にはなったものの、トランプ氏と側近の間で断続的に矛盾した対応が起きていることを日本政府関係者は懸念している。このためトランプ氏が安倍氏に対して方針を再確認することは大きな意味を持つ。

 トランプ氏は同盟関係への全般的な支持に加え、東シナ海の尖閣諸島が日米安保の適用範囲であるという米国側の現状認識を維持する考えを示す見込みだ。

 米政府高官は「トランプ大統領が(安保)条約の確約をかなり明確な表現で語るのは確実だと思う」とし、こう続けた。「(尖閣)諸島に対する日本の施政を損ねることを目指したいかなる一方的な行為にも、われわれは反対する」

 通商面では二国間協定を好むトランプ氏がTPPからの離脱を決めたこともあり、今後の方向性について協議するとみられる。

 米政府高官は「二国間協定では多国間協定の場合と比べ、米国にとってより有利な条件を交渉することができる」と述べた。日本の政府関係者はTPPの方を支持するものの、二国間協定へ向けた議論も排除しないとの見解を示した。

 トランプ氏が大統領就任後、外国の首脳と会談するのは1月下旬のテリーザ・メイ英首相に続き、安倍氏が2人目。

関連記事

【社説】トランプ氏、安倍首相を安心させられるか
【社説】日米首脳会談、通貨論争は勝者なき戦い
安倍首相のトランプ氏別荘訪問、倫理上の懸念
トランプ氏、揺らぐ同盟国との信頼関係 日本も矛先か
トランプ新大統領特集

http://jp.wsj.com/articles/SB10734999991334983926204582612061063845498


 

トランプ氏が新幹線を評価 米国でも交通インフラの整備急ぐ意向
産経新聞 2/10(金) 1:34配信

トランプ氏が新幹線を評価 米国でも交通インフラの整備急ぐ意向
北海道新幹線=北海道北斗市(三尾郁恵撮影)(写真:産経新聞)
 【ワシントン=小雲規生】トランプ大統領は9日午前、「日本や中国にはいたるところに高速鉄道があるが、米国にはない」と述べ、米国でも高速鉄道網を含めた交通インフラの整備を急ぐ考えを示した。ホワイトハウスで行われた航空各社のトップとの面談で話した。

 またトランプ氏は空港などの航空インフラが「時代遅れ」になっていると指摘し、規制緩和などで経営を支援すると表明。減税策については「今後2、3週間のうちに何らかの発表をする。目をみはるような内容になる」と述べた。

【関連記事】
デルタ機内で「トランプ!」叫んだ男、生涯搭乗禁止に
中国はARJ21をMRJのライバルと吹聴するが…性能差は歴然、航空各社は見向きもせず
トランプ大統領、真の「敵」中国攻撃指令 IS殲滅宣言「テロを地球上から根絶させる」
海の次は空の覇権?習主席悲願の航空大国に爆走中国 なりふり構わぬ開発姿勢に危険な匂いも…
定時到着率「トップ10」漏れの韓国機 JALにも負けて…反論と言い訳ばかり
最終更新:2/10(金) 9:08
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170210-00000502-san-n_ame
http://www.asyura2.com/17/senkyo220/msg/488.html

[戦争b19] 中国を警戒し始めた「太平洋国家フランス」の安全保障事情 中国人観光客に「パリ離れ」 2017年日本と仏は悲観、中国楽観
中国を警戒し始めた「太平洋国家フランス」の安全保障事情
2017.1.16
【野口裕之の軍事情勢】
 日本、フランス両政府は日本時間の1月7日未明、パリで開かれた2+2(外務・防衛閣僚協議)で、南シナ海で軍事膨張をひた走る中国を「念頭」に、緊張を高める一方的な行動への強い反対を表明し、自制を求めたが、わが国のみならず、フランス政府の「念頭」に浮かぶ中国の不気味な影は今後ますます膨らむだろう。
 昨夏にも仏国防相がEU(欧州連合)加盟国に、「航行の自由」を確保すべく、南シナ海に海軍艦艇を定期的に派遣するよう呼び掛けたが、背景にはフランスの太平洋権益が中国に脅かされ始めた危機感も横たわる。
 フランスは1100万平方キロに達する世界第2位のEEZ(排他的経済水域)を有する「海洋国家」だが、海外領土が広大なEEZを稼いでいる。太平洋にも4カ所あり、50万人ものフランス国民が暮らす。一部には軍事基地が置かれる。
 ところが、中国は海洋鉱物・漁業資源を求め、仏海外領土周辺の南太平洋島嶼国家への札束外交攻勢だけでなく、「独立後」をにらみ太平洋に点在する仏海外領土へも手を突っ込む。中国の影がヒタヒタと押し寄せる現実に、フランス軍は米軍や豪州軍、ニュージーランド軍に加え、自衛隊との軍事演練を加速・活発化させている。 
 ただし、フランスとの付き合い方には、それなりの作法、いや「不作法」が必要だ。中国人民解放軍が民間人を虐殺した《天安門事件/1989年》後、EUは対中武器禁輸を建前としてきたが、禁輸対象は各国に委ねられた。フランスは殺傷兵器に限定し、ステルス構造やレーダー、機関などを何食わぬ顔で中国に販売している。
 一方で、台湾に戦闘機やフリゲートを売れる国柄である。アジア・太平洋に張り巡らした盗聴網「フランス版エシュロン」を駆使して、損得勘定をはじいているに違いない。
 「南国の楽園」の別の顔
 豪州の東1200キロに位置し、美しいサンゴ礁が世界遺産に登録される世界有数のリゾート地=ニューカレドニア。だが、「南国の楽園」はもう一つ別の顔を持つ。
 インマルサット(国際移動通信衛星ネットワーク)やインテルサット(商業衛星通信システム)などを傍受する世界的通信監視網のアジア太平洋地域における拠点なのだ。
 外交・安全保障上の盗聴は言うに及ばず、フランスの国策である兵器取引の成約を狙う産業諜報も主要任務だといわれる。《フレンシュロン》と呼ばれ、米国や英国、豪州、ニュージーランド、カナダで構成する同種の監視網《エシュロン》に比べ、性能・規模は劣るが、決して侮れぬ存在に進化しつつある。
 フレンシュロンの他、ニューカレドニアには陸・海・空軍や国家憲兵隊などで編成する《ニューカレドニア駐屯フランス軍=FANC》が陣取る。フリゲートや戦車揚陸艦、哨戒艇や巡視艇、固定翼輸送機やヘリコプターなどを配備する。兵力は2950名(2008年仏国防白書)。

 また、フランス領ポリネシアには《フランス領ポリネシア駐屯フランス軍=FAPF》が、FANCと同種の編成・装備で各諸島に散開している。兵力は2400名(08年仏国防白書)。
 フランスが国軍を本土よりはるか彼方の、例えば18000キロ以上離れた仏領ポリネシアに常駐させる理由は当然、国益に向けた戦略ゆえだが、戦略のベクトルは時代によって変化してきた。まず、大前提として仏海軍には、米海軍のように長期・常続的に遠方の戦略海域で自己完結しながら留まる能力が乏しい。
 その上で、時計の針を1963年まで戻す。フランスは同年、米英が太平洋での核実験を終えたのを横目に、《太平洋実験センター=CEP》を設置し、1966年に核実験を開始した。
 CEPは仏領ポリネシア内のムルロア環礁とファンガタウファ環礁の核実験場を管理する。周辺の独立国や各列強の海外領土、環境保護団体は激しく反発。FAPFの重要任務はCEPの防衛だった。
 同時に、核実験に対する東西両陣営による情報収集や先住民による独立運動、経済・雇用への不満が元で起きる暴動の鎮圧…にFANCもFAPFも不可欠だった。
 あくまで強気を貫いたフランスも、包括的核実験禁止条約(CTBT)採択を受諾し、1996年に核実験を完了すると、前後して戦略上のベクトルを修正する。
 南太平洋の島嶼国家や列強の海外領土は頻繁に大きな自然災害を受けるが、経済事情もあり対処機能が弱い。といって、豪州やニュージーランドといった地域大国の国軍だけでは、広域かつ島々が点在する南太平洋をカバーしきれない。

 FANCやFAPF=フランスの南太平洋駐留部隊は次第に、豪州やニュージーランド、続いて次々に独立し増えていく島嶼国家とともに災害対処はじめ密漁監視、海難救助などで共同演習や実活動の輪を広げていった。
 脆弱な軍・警察力しか持たぬ島嶼国家に代わり、豪州やニュージーランドと協力した治安維持活動も始まった。孤立に近かった自主外交の転換だった。もはや、フランスの南太平洋駐留部隊の支援なしに、各国軍による地域の非軍事・警察活動は成り立たなくなった。
 そうした過程で、地域安定を目指す純軍事的な交流・演習も増えていく。
 南進する中国
 しかし、地域安定を望まぬ異分子が、ここでもチョッカイを出している。言わずと知れた中国である。 
 振り返ってみれば、中国は《環太平洋合同演習リムパック/1998年》→《西太平洋潜水艦救難訓練/2000年》→《コブラゴールド軍事演習/2002年》にオブザーバを派遣。2007年にはタスマン海で、豪州やニュージーランドと対テロ・捜索救難に関する海上共同訓練に参加した。明らかに南進している。
 この種の訓練はどちらかと言えば信頼醸成にウエートが置かれるが、参加各国に比べ中国は仮想敵国や周辺国の能力・装備を探る諜報活動に完全に傾斜している。
 中国はさらに「病院船外交」を展開中だ。2014年には、人民解放軍海軍の「病院船」がトンガ/バヌアツ/フィジー/パプア・ニューギニアに寄港して現地の人々を無料診察した。気持ち悪ほどの“善行”だが、全て中国と外交を結んだ国々で、地元の要人・住民を艦内に案内し、軍事力を見せつける「中国らしさ」も忘れなかった。米軍や豪軍の電波・通信情報の収集任務も兼務していると、多くの安全保障関係者が分析している。

 もっとも、「中国らしい」ミスも犯した。仏領ポリネシアでも無料診療を行ったのだ。軍事拠点に近付いた人民解放軍海軍を、フランス軍は間違いなく警戒したはずだ。しかも、FANCとFAPFの間に位置するフィジーはロシアに続き2015年、中国とも海軍建設などで軍事協定を締結した。軍事クーデターで政権が樹立された際、南太平洋の「盟主」たる豪州の経済制裁を受けても強気だったのは、中国が背後で強力に支えたためだ。
 南太平洋の島嶼国家は、中国と台湾が激烈な外交関係樹立を競う「戦場」だ。現在は中国8カ国と台湾6カ国と、中国が優位に立つ。当面の「有効兵器」は札束。政府機関ビルや港湾の建設に無償供与よりも借款の比率を高め、借金漬けにされている国も多い。
 フィジー同様、FANCとFAPFの中間に位置するトンガも、中国への借款返済額が国家収益の2割近くに達し、経済破綻の瀬戸際だ。トンガなど各国で、反中国人暴動が勃発し、豪州軍やニュージーランド軍が鎮圧に派兵している。
 「無料医療攻撃」にさらされた仏領ポリネシアにも交通や観光関係のインフラを中心に中国資本が流入する。
 資本進出だけではない。ニューカレドニア(仏領)とバヌアツは両国間に眠るレアメタルなど海底資源をめぐり「大陸棚争い」をしている。
 フィリピンは、南シナ海のほぼ全域の領有を主張する中国に国際裁判で完勝したが、仲裁裁判所(オランダ)の判断以前に中国を支援した太平洋地域で最初の国家がバヌアツだった。レアメタルを狙う中国の影を、バヌアツの背後に感じる。

 半面、ニューカレドニアは伝統的にフランスからの独立機運を高めてきた。2019年までに完全独立の是非を問う住民投票も控える。小欄は、中国がニューカレドニアの独立後、フランスの外交・軍事にかかわる影響力を排除し、海底と観光という大きな資源を狙っていると観測している。
 敵・味方に武器を売るフランスが日本に接近中
 かくしてフランスの対中警戒感は徐々に高まっている。フランスは南シナ海でおびただしい数の「中国漁民=海上武装民兵」が水産資源を大量に密漁している実態も学習しているだろう。南シナ海での沿岸国の取り締まりが厳しくなれば、「漁船艦隊」は南太平洋を目指して、今以上に殺到する。
 既にフィジーに寄港する外国船の7割が「中国漁船」とされる。一部は米軍や豪州軍の電波・通信を傍受しているもようだ。南太平洋の島嶼国家は南シナ海の沿岸国以上に海上兵力・海上警察力が弱い。米国や豪州、ニュージーランドだけでは密漁への対抗措置は万全ではなく、フランスの南太平洋部隊の海空兵力が絶対に必要で、災害出動を含め実動局面は激増している。
 加えて、フランスは、中国と軍事協定を結んだフィジーや、対中借款地獄に陥っているトンガの海洋治安維持活動への支援や教育に乗り出した。
 フランスは、関心ゼロだった東シナ海での中国の野心、すなわち尖閣諸島(沖縄県石垣市)の強奪や水産資源乱獲に少し関心を持ち始めた。南太平洋でも起こる恐れが出てきたためだ。

 現に、2014年春の日仏外相戦略対話の中で「日本と同じ太平洋の海洋国家」との表現を用い、「法の支配」の原則を堅持して地域の安定に取り組む利益と責任を共有すると表明。自らが主催する同年夏の《南十字星演習》に自衛隊を招待し、人道支援・災害救助を演練した。翌年には、早くもフランス海軍が九州西方沖に遠征し、自衛隊や米軍と水陸両用作戦に取り組んだ。
 だが、フランスの対中姿勢は慎重に見極めなければならない。対中貿易収支は大幅赤字で、2014年の習近平国家主席の訪仏では新分野での双方向の投資拡大が決定した。
 そもそも、フランスは天安門事件後の対中武器禁輸解除の旗頭に度々立った。2003〜05年には、米国の猛反対と英国の“裏切り”で頓挫したが、あと一歩に迫った。解禁の見返りには軍民汎用衛星の受注なども含まれていた。
 昨年6月に中国海軍艦が初めて尖閣諸島の接続海域に入ったが、天安門事件後の建造にもかかわらず、フランス生まれの技術が多用され、ステルス構造やレーダー、機関など殺傷兵器以外ではフランス製が少なくなかった。
 禁輸対象=殺傷兵器の一部が、人民解放軍にコピーされても対抗措置を採らない。人民解放軍海軍が、フランス海軍の攻撃型原子力潜水艦(SSN)を欲しがっていることも熟知する。フランス製SSNは排水量が小さく、東シナ海〜西太平洋かけての浅海での作戦行動に適しているのだ。
 中国と台湾だけでなく敵・味方に平然と武器を売る。フォークランド紛争(1982年)でも、同盟国・英国の駆逐艦など2隻を沈めた交戦国アルゼンチンに、同じ対艦ミサイルを事実上追加供与せんとし、英国にはこのミサイルの弱点を漏らしている。
 フランスとの確固たる協力関係が構築できれば「毒をもって毒を制す」ことができる。けれども、「毒」の取り扱いには覚悟を決めねばならぬ。倒錯している日本国憲法では、わが国の“覚悟”を前文でこう定めている。
 《平和を愛する『諸国』民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した》
 《諸国》にはもちろん、中国は入らない。フランスは該当するのだろうか…。
http://www.iza.ne.jp/kiji/world/news/170116/wor17011608270035-n1.html

 

中国人観光客に「パリ離れ」の動き、日本人や韓国人も大幅減少―英紙
Record china配信日時:2017年1月24日(火) 7時50分
中国人観光客に「パリ離れ」の動き、日本人や韓国人も大幅減少画像ID 542330
22日、観光客に人気となっていたフランスのパリを敬遠する中国人観光客が増えている。写真はパリ。
Email
Share
Tweet
コメント
2017年1月22日、観光客に人気となっていたフランスのパリを敬遠する中国人観光客が増えている。アジアからの観光客も急激に減少している。中国紙・参考消息(電子版)が伝えた。

英紙デイリー・エクスプレスによると、暴力事件や強盗が増えたほか、テロの危険性もあり、安全性を懸念する外国人が増えている。中国人観光客は、2016年には160万人訪れたが、15年には220万人が訪れていた。日本人観光客は39%減少し、韓国人観光客も27%減った。

中国の富裕層が休暇を過ごす目的地としては、ロシアの首都・モスクワの人気が高まりつつある。「それほど魅力があるわけではないが、安全性は高い」という理由だが、モスクワのほかには、欧州連合(EU)離脱でポンド安となっている英国も旅行先に選ばれやすくなっている。

フランス華人旅行会社協会の責任者によると、パリの治安悪化は深刻で、有名観光地はおろか、ひどい場合にはホテルの前でバスを降りた直後に強盗にあるケースさえあるという。観光シーズンともなると、誰も被害に遭わない日はないほどで、多くの中国人観光客にとって、パリ観光は悪夢と化しているという。(翻訳・編集/岡田)
http://www.recordchina.co.jp/a161692.html

 

2017年に対して日本人とフランス人は悲観的
更新日:2017年2月8日カテゴリー:国際

見る

メールマガジン購読
2017年に対して日本人とフランス人は悲観的
 2017年がスタートして早1ヶ月以上が過ぎた。初詣で「今年も良い年になりますように」と願った人も多いだろうが、果たしてどれだけの人々が今年は良い年になると考えているのだろうか。グローバル市場調査会社のIpsosによるレポート「2017: High Hopes or Dire Straits」が、2017年に対して各国の人々がどのような見通しを持っているかを示している。

 2017年が良い年になるかという問いに、「Very much agree(非常に同意する)」「Somewhat agree(多少は同意する)」とポジティブな回答をした割合で、調査対象国を並べた(以下グラフ)。ペルー、コロンビア、インド、中国、南アフリカの人々は9割以上がポジティブな回答をしており、楽観的な見通しを持っている。一方で5割強しかポジティブな回答をしなかったのが日本とフランスで、2017年に対して悲観的だ。なお、調査対象国でポジティブな回答をした割合の平均値は78%だった。ポジティブ回答の割合上位の国々は、必ずしも経済的に発展した国ではないことを鑑みると、多分にその国民性が影響していると考えられる。

20170206_ns_01
http://newsphere.jp/wp-content/uploads/2017/02/20170206_ns_01.png

 また、年齢層の観点でデータを見ると若い世代ほど、収入の観点で見ると高収入層ほど楽観的なようだ。これからを担う若い世代が楽観的という点は、私たちが将来に対して楽観的になれる良い傾向だろう。

photo via Max Pixel

(酒田 宗一)
http://newsphere.jp/world-report/20170208-1/
http://www.asyura2.com/16/warb19/msg/655.html

[経世済民118] 「生活保護なめんな」ジャンパーだけじゃない小田原市の福祉不毛地帯ぶり 中途半端に勉強だけ二流な訳 金融緩和為替目的でない
生活保護のリアル〜私たちの明日は? みわよしこ
【第79回】 2017年2月10日 みわよしこ [フリーランス・ライター]
「生活保護なめんな」ジャンパーだけじゃない
小田原市の福祉不毛地帯ぶり
「保護なめんな」は氷山の一角?
「またか」と悪評高い小田原市の実態


小田原市の「保護なめんな」ジャンパー問題。生活保護だけではなく、同市の「福祉不毛地帯」ぶりは以前から問題視されていた。その実態とは?
 2017年1月17日に明らかになった、小田原市「保護なめんな」ジャンパー問題は、3週間が経過した現在も話題になり続けている。

 これは、神奈川県小田原市の生活保護担当職員が、ローマ字および英文で「保護なめんな」「我々は正義だ」「(不正受給しようとする人々に)あえて言おう。クズであると」などと書かれた揃いのジャンパーを着て、生活保護受給者の自宅への訪問を含む業務を行っていたというものだ(参照:現代ビジネス/大西連氏記事『「生活保護なめんな」ジャンパーが冒涜したもの』)。

 その後、「ジャンパーは2007年からつくられていた」「当初は福祉事務所内だけで着用するつもりだった」「夏向けにTシャツもあった」「携帯ストラップもマグカップも」といった事実も明らかにされている。

 翌1月18日、社会運動家の稲葉剛氏は、小田原市ホームページにあった生活保護制度の解説が誤っており、利用できない可能性ばかりが列挙されていて、違法性が高いことを自身のブログで指摘した。小田原市は、問題のあった記述を同日中に修正した。


小田原市役所の「生活保護における不適切な行為についてのお詫び」のページ 拡大画像表示
 翌週の1月24日には、生活保護問題対策全国会議のメンバーら7名が小田原市役所を訪問し、事前に送付していた公開質問状に基づく申し入れと意見交換を行った(参照:ハフィントンポスト/雨宮処凛氏記事)。小田原市は、ホームページに「お詫び」を掲載した。また、1月24日の記者会見で、第三者も含めた検証・不足していたケースワーカーの増員を行う考えを明らかにした(参照:日経新聞記事)。

 検証委員会には、生活保護を必要とする人々の権利擁護に取り組んできた弁護士・森川清氏、および生活保護受給経験を持つ和久井みちる氏(参照記事)が参加する予定である(生活保護問題対策会議による)。当事者目線・当事者経験を持つ人々による生活保護制度運用の検証には、大いに期待できそうだ。

 それにしても、正直なところ「また?」という印象だった。小田原市に限らず全国で、生活保護の申請に行った人々や、生活保護を受給している人々から、「生活保護ケースワーカーや相談員に困らされ、泣かされ、屈辱を味わわされている」という話を、私はあまりにも度々耳にしているからだ。年に最低2回と定められている訪問調査のときに土足で上がりこまれたとか、ズカズカと屋内に入り込まれて冷蔵庫やタンスを勝手に開けられたとか、精神の不調を抱えている人が気絶するまで罵倒を続けたとか……。

 小田原市ジャンパー問題が明るみに出た頃、私の周辺ではそういう事例が同時多発的に持ち上がっていた。小田原市に行く時間を取れなかった私は、近所のスーパーでスイーツのデコレーションに使うチョコペンを購入し、毎日、おやつのクッキーや饅頭に「生活保護」と書き、「ナメたら甘い生活保護」を味わって一息ついていた。「保護なめんな」というジャンパーの文言へのささやかな抵抗だ。

 それにしても、小田原市の問題点は生活保護だけなのだろうか。生活保護で何か問題が起こる自治体は、福祉全般に問題を抱えていることが多い。そこで、神奈川県内・小田原市の近くにある精神科病院で、長年ソーシャルワーカーとして働く友人のカオル(47)に「小田原市って、どう?」と尋ねてみた。

あまりにも不親切な小田原市
ホームページの障害福祉情報

 カオルは「あの『保護なめんな』ジャンパーの報道を見たとき、『ああ、小田原だからなあ』と思ったよ」と、話を切り出した。

「小田原市は、いわゆる“福祉不毛地帯”なんだよ。入院している患者さんの住所が小田原市だとわかると、『ああ、残念だなあ』と思うよ。障害福祉も児童福祉もとにかく福祉が貧弱だから、退院してからが大変。実際、暮らしていけなくて、病状が悪化して、またすぐ入院しなきゃいけなかったりすることもあるし」

 その患者さんは、入院する前も「健康で文化的」と言える生活はできていなかったのだろう。しかし入院は、病院のスタッフの支援のもと、普段の生活を立て直すきっかけともなり得る。退院後の病状を安定させるためにも、何か異変や不調を感じたら気軽に医療機関を受診できることや、ヘルパー派遣などの支援を受けられることは重要だ。

 しかし、「でも小田原市は本当に、あれもない、これもないという、使えない感じなんだよ」とカオルは言う。そこで私は、改めて小田原市のホームページを確認してみた。

 まず、「障害者支援」ページを見てみると、障害者福祉に関する各種メニューが列挙されているだけだ。誰が何を利用できるのか、さっぱりわからない。それでもメゲずに、目を皿のようにして「障害者支援」ページを見てみると、下の方に「障害福祉サービスについて」とある。ここを見れば良さそうだ。


小田原市役所の障害者支援のページ 拡大画像表示
 ところがクリックしてみると、「利用するまでの流れについては、厚生労働省監修のパンフレット(略)ご覧ください」「利用を希望される場合は、まず、障がい福祉課または相談支援事業者にご相談ください」と淡々と書かれているだけだ。

「困ったときに頼ってほしい」と思っているのなら、情報提供ページをこんなつくりにはしないだろう。もしかすると、「ご相談」に行かざるを得ないようにウェブページをつくっておき、うかうか1人で「ご相談」に来た障害者や家族を、聞き取りや対話の中で、利用を断念せざるを得ない状況に追い込もうということなのかもしれない。

 小田原市が実際にはそうではないことを願いたいが、生活保護で「水際作戦」として知られる利用抑制・申請妨害は、障害者福祉にもある。周囲には経験者が少なからずいるし、私自身も経験した。少なくとも、このウェブページのつくりから、「小田原市では、障害福祉の“水際作戦““硫黄島作戦“はなさそうだ」と確信することはできない。

神奈川県内で堂々のブービー賞
「20万都市」精神保健福祉の貧しさ

 さて、精神障害者福祉に関する情報はどこだろうか。探しに探してやっと、「精神保健福祉ガイドブック」を発見できた。精神障害だけなら、このガイドブックで必要な情報が得られるかもしれない。でも重複障害の場合はどうか。まず、どこに相談に行けばいいのだろうか。


小田原市役所の障害福祉サービスについてのページ 拡大画像表示
 昨日まで障害者でも障害者家族でもなかった人々が、このどこまでも不親切な小田原市ホームページから、必要な障害者福祉情報にたどり着けるとは、とても思えない。

 では、小田原市の精神保健福祉は、実際のところどうなのだろうか。地域で生活する精神障害者の生活や病状の安定は、不調のときに病院に行くことができるかどうかで、大きく左右される。このため、貧困状態でも通院できるように、様々な助成制度が設けられている。精神疾患による通院であれば、国の制度である「自立支援医療」による医療費助成が受けられる。

 しかし、精神障害者が必要とする医療は、精神科だけで事足りるわけではない。虫歯にもなれば、インフルエンザにも罹る。精神障害者の精神疾患以外の病気をカバーするため、「重度障害者医療費助成制度」が存在し、都道府県単位で実施されている。ところが地域によっては、同じ障害でも適用対象となったりならなかったりするのだ。なんと東京都では、精神障害者が対象とされていない(参照:筆者記事)。

 では、神奈川県内の各市区町村ではどうなっているのだろうか。

「いい医療.com」の「重度障害者医療費助成制度 市町村別一覧」を見てみると、市町村によって大きな差がある。まず神奈川県基準では、精神障害者保健福祉手帳1級(以下、精神障害1級)では通院のみ対象、精神障害2級では対象とならない。各自治体は、独自の判断で県基準の一部負担金をなくしたり、対象者を拡大したりするなど若干は充実させている。

 この内容を整理したのが以下の表だ。神奈川県基準よりも充実している部分を黄色で示し、「幸福の黄色いセル」が多い市町村を左側に、少ない市町村を右側に配置した。

拡大画像表示
 並べて眺めてみると、精神障害者に対する医療費助成の充実ぶりには、若干は自治体の財政的体力が関係しているようだ。とはいえ、「自治体が豊かなら、精神障害者福祉も豊か」と言い切れるほど明確な関係性は見えない。財政体力の問題というよりは、取り組み姿勢が表れている観がある。小田原市は全12ランクのうち、充実している方から11ランク目、堂々のブービー賞だ。

県の基準に違反してはいないが……。
市町村裁量の「充実度」はほぼゼロ

 小田原市の精神障害者は、障害等級が1級なら精神疾患以外の病気でも通院だけは無料になる。しかし入院まではカバーされない。2級なら、通院を含めて精神疾患以外の病気に対する医療費助成が存在しない状態だ。また、在宅重度障害者等手当(年間6万円)も、小田原市の場合、精神障害だけでは対象にならない。重度身体障害との重複、重度知的障害との重複、身体+知的+精神の重複障害でないと対象にならないのだ。

 この現状にカオルは怒る。

「小田原市は、市町村裁量の部分がゼロに近いだけ。神奈川県の基準に違反しているわけではないんだけどさ、小さい町ならともかく小田原市レベルの中都市では、あ・り・え・ない! だよ」

 その現状は、どのような問題をもたらすだろうか。「小田原市では、入院が必要な人が入院できなかったりするんだよ。児童福祉も障害福祉も貧弱すぎ、社会資源が足りなさすぎるから」とカオルは言うが、どういうことだろうか。

全体が「残念」な小田原市の福祉
何もかもが機能していないのか?

「小田原市は、障害があっても障害者手帳を持ってないとか、障害者手帳を持っててもヘルパー派遣などの支援を受けるための『障害支援区分』の認定を受けてないので利用できる制度がないとか、認定を受けてても期限が切れたままそれっきりとか、本当によくあるんだ。生活全般に支援が必要なお宅でも、支援を受けるために必要な前提となるものがないわけ」(カオル)

 それでは、生活が成り立たないではないか。

「精神障害などの障害があっても、ヘルパーさんに家事援助に入ってもらったり、相談支援(介護保険のケアマネに該当)の担当者に日常の金銭管理の相談に乗ってもらったりしていれば、それなりに暮らせるはずなんだよ。でも、病院に来た小田原市の患者さんが日常生活に困ってるから聞いてみたら、相談支援の担当者もいない状態でね。小田原市の福祉課に電話で問い合わせてみたら、福祉課はその患者さんの状況を把握してなかった」(カオル)

 その家庭に子どもがいたら、いったいどうなるのだろうか。

「もし、生活全体に支援が必要な家庭で、血縁者の協力が得られない状況だったら、親の病状が悪化したら、すぐ、子どもの生活全体に影響が出るからね。でも、障害者福祉と児童福祉とか他部署との連携、小田原市の場合は、こちらが言って初めてやってくれる感じ」(カオル)

 障害者福祉、児童福祉、生活保護。もちろん、小田原市にも、それぞれを担当する部署がある。県の児童相談所もある。でも、カオルによれば、小田原市役所内の連携は全くスムーズではないし、そもそも福祉に使える資源の総量が不足している感じだ。

「結局、社会資源があまりにも足りないと、ちょっとやそっとの周囲のフォローがあっても、どうにもならないね」(カオル)

 そうは言っても、地域には民生委員がいるだろう。困難を抱えた家庭や人々のSOSを何らかの形で行政に届ける方法は、ありそうな気がする。民生委員も福祉職員も含めて、小田原市では何もかも機能していないのだろうか。

「でもさ、『支援が必要だ』と発信する能力の低い世帯には、自治体福祉のシステムは介入できないからね。そこに介入するのが福祉課だと思うけど、そういうシステムになってないから、現場を責める気はしない。それに、行政のヒューマン・リソースも足りてないんじゃないかな」(カオル)

問題は人員の不足ではなく
「気持ち」にあるのでは?

 ジャンパー問題で、小田原市の生活保護ケースワーカーは若干不足していることが明らかになった。でも、それほど大きな不足ではない。問題は、人数ではないどこかにありそうだ。

「まだ、小田原市の生活保護担当とやりとりしたことはないけど、あのジャンパー着てた時点で『全体が残念な役所なんだろうな』と思った。障害者福祉が脆弱ってことは、もちろん生活保護とも連動するはずだからさ」(カオル)


本連載の著者・みわよしこさんの書籍「生活保護リアル」(日本評論社)が好評発売中
 今、お住まいの自治体の福祉サービスを利用していないあなたが、明日障害者にならないという保障はない。そのときに初めて、「この地域では生きていけない」と気づいたら大変すぎる。もしも同時に生活保護を必要とする状態になったら、他自治体への転居も簡単にはできない。

「自治体によって、『障害福祉は悪くないけど生活保護はイマイチ』とか、その逆とか、色々あるね。小さすぎる自治体で福祉が貧弱になるのは、内情を考えると無理もないし、担当者の当たり外れもあるし。でも公務員だったら、せめて最低レベルはクリアして欲しいよ」とカオルは言う。私も同感だ。どこに住んでも「大ハズレ」だけは引かないという安心は、私も欲しい。「そんな安心、別に欲しくない」という人はいないだろう。

「保護なめんな」ジャンパーで話題になり、反省と方針転換を迫られている小田原市の福祉の今後に、「期待しすぎないように」と自分に言い聞かせながら、少しだけ期待したい。
http://diamond.jp/articles/-/117428

 


一流の育て方
【第36回】 2017年2月10日 ミセス・パンプキン

中途半端に勉強だけできる人が、二流なワケ
勉強だけでなく、仕事でも活躍する子は、こんな勉強をしている

将来、子供に感謝される「育て方」とはどのようなものか?約200人の「リーダーシップ溢れる学生」および、各界で活躍するビジネスリーダーたちが「親に最も感謝している教育方針」を徹底的に調査した『一流の育て方?ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』。本書は短期間で20万部の大ベストセラーとなっており、育児書としてだけでなく、子供がいないビジネスパーソンにも「主体性・リーダーシップの育み方」として絶大な支持を得ている。
今回から、著者であるミセス・パンプキン氏が、本書や数々の講演会で伝えている「自分の価値観で、自己実現できる人の育て方」のエッセンスを公開していく。

偏差値至上主義を超える「新しい育て方」

『一流の育て方』というタイトルで、この本は子供を東大・京大などのエリート校に入れ、外資系企業や大企業で活躍するビジネスエリート養成本だという誤解を受けることが多々あります。

?しかし実際は、「旧来のような偏差値エリートに育てる教育が、いかに不幸の元凶か」という「新しい育て方」を論じた本だということが、本書が半年で20万部もの支持を受けることができた一因だと思っております。

?まずは、本書にも編纂されています、「エリート大学生自身が語る、偏差値エリート教育の無意味さ」に関するアンケートを紹介したいと思います。

勉強至上主義で育てない──勉強ができても偉くはない

【アンケート結果】
●勉強ができるくらいでは偉くない
?私の両親は勉強については一切口を出さず、人間性や教養の教育を重視していました。そのせいか、私は「勉強ができることは偉い」という感覚はあまりありません。実際、勉強をして得をするのは他ならぬ自分だし、勉強するだけでアウトプットがなければ、他人に何か大きく貢献しているわけではないと今でも考えています。
?私は、子どもに「勉強ができることは偉い」「素晴らしい」と言うのは不適切だと思います。子どもが、勉強ができる自分は偉いと勘違いしかねないからです。勉強して得た知識や立場を自分の欲望のために使うのは個人の自由であり責められることではありませんが、ほめられることでもありません。(東京大学大学院情報理工学系研究科Tさん)

●勉強は「しなければならないもの」ではなく「できたらいいもの」
?私は高校卒業まで両親から勉強に関し、干渉されたことがない。また、成績がよかったときはほめてくれたが、成績が悪くても特に怒られることはなかった。したがって勉強を両親のためにしているように思ったことはなく、すべて自分のためだと納得して取り組むことができた。そして、勉強は「しなければならないもの」ではなく「できたらいいもの」と教えてくれた両親に大変感謝している。(京都大学経済学部Fさん)
学力をほめすぎると勘違いした大人になる

?学力至上主義で子供を育てると、テストの偏差値や成績でしか人と自分を評価できない、偏狭な人間に転落してしまいます。

?私が親しくさせていただいているある小学校の校長先生が、「子どもの道徳教育は、親と一緒にしないとどうにもならない」とよく仰っておられました。小学生の子を持つ親が偏差値で人を評価したり成績至上主義者だと、たいがい子どももそうだというのです。

?そういえば、私が4人の子どもを通わせた塾では、どの年も、成績がよいことで天下を取った気分でいるような親子が、必ず数組はいたものです。たかだか中学受験の成績で一生が保証されるわけでもないのに、人を見下げるような言動をし、しかも本人たちは気づきもしません。

?世の中には、学歴がなくても社会で役立つ働きをしている立派な人はいっぱいいますし、学歴が高くても社会に貢献らしい貢献をしていない方もたくさんいるものです。

?芸術やスポーツで社会に貢献している人たちなども含めれば、単純に塾や学校のテストの成績を人と比べて有頂天になること自体、恥ずかしくてできることではありません。

?もし親が良識と柔軟な価値観を持ち、謙虚な人であれば、その子どもが横柄な態度になるはずがないと思うのです。成績はよくても、表情が豊かでなく、社交性に欠け、挨拶もまともにできないお子さんがおられます。そのうち壁にぶつかって、ちょっと成績がいいくらいでは社会で通用しないことに気づけばいいのですが、悲しいことにいつまでも気づかない大人も大勢います。

?本当の意味で優秀な人は、人格自体が素晴らしいものです。なにげない立ち居振る舞いや言動に他者への思いやりがあふれ、謙虚さがにじみ出ています。

?これに対し、中途半端に優秀な人ほど、上から目線だったり威張る傾向があり、専門分野の知識は多くても、人間的には二流だったりするものです。

?一流の人は威張る必要がなく、謙虚なのにオーラがあり、周囲から尊敬を集める存在になっていきます。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」(優秀な人ほど謙虚になる)という言葉がありますが、そんな稲穂のような子どもを育てるには、親が持つ価値観や道徳観が大事です。

?テストの得点を上げることだけが至上命題のような育て方は、出身校の偏差値だけが自尊心の源という小さな人間を育てます。そしてテストや学校の偏差値でしか他人を判断できないという、視野の狭い、つまらない大人を生み出してしまうのです。

?勿論勉強ができることは素晴らしいことですが、「勉強できるから偉い」ではなく、勉強は「できたらいいもの」、ただし、「勉強ができるだけでは大したことがない」と、「学力の褒め方」にも十分注意を払わなければならないのです。

(※本原稿は『一流の育て方』から編集して掲載しています)

http://diamond.jp/articles/-/116532

 

中曽副総裁、日銀の金融緩和は為替目的ではない 各国も理解

[高知市 9日 ロイター] - 日銀の中曽宏副総裁は9日、高知市内で会見し、トランプ米大統領による円安誘導批判の背景に日銀の大規模な金融緩和があるとの見方について、日銀の金融政策は為替を目的にしておらず、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の声明に沿ったものと各国から理解が得られている、と反論した。

中曽副総裁は、トランプ氏による円安誘導批判への見解を問われ、日銀の金融政策は「あくまで2%の物価安定目標の早期実現だけが目的であり、為替相場を目的にしていない」と強調。

G20声明で金融政策について「中央銀行のマンデートと整合的に経済活動を支える」と明記されていることに触れ、「日銀の金融政策が声明の趣旨に完全に沿ったものであるとの各国当局の理解は、十分に得られている」との認識を示した。

トランプ氏は保護主義的な発言に関しては「国際社会では自由貿易の重要性が共有されている」とし、各国の相互依存関係が強まっている中で「保護主義的な動きが世界的に進むとは考えていない」と指摘。

同氏が金融規制改革法(ドッド・フランク法)を見直すための大統領令に署名したことには「米国の金融規制の見直しは邦銀の経営、企業のビジネス、グローバルな金融システムに影響が及び得る。帰すうを十分に注意したい」と述べた。

世界的に金利上昇圧力が強まる中、日銀は国債買い入れの増額や指し値オペを実施するなど長期金利の抑制に懸命だ。

国債買い入れオペについて「金額・タイミング・回数は需給環境や市場動向を踏まえて実務的に決定している」とし、「特定の金利水準やレンジを念頭においてはいない」と指摘。オペ運営によって「先行きの政策スタンスを示すことはない」と述べた。

足元の経済・物価・金融情勢を踏まえれば「現在のイールドカーブは適切」との見解も示した。

午前の講演では、現行「ゼロ%程度」としている長期金利目標の引き上げに否定的な考えを示したが、イールドカーブ・コントロール(YCC)のもとでは「経済や物価に対する見方が改善した場合、それに見合って長期金利目標を引き上げても、金融緩和度合いを減じることにはならない」と語った。

もっとも、「2%の物価安定目標になお距離がある」とし、目標の早期達成には「現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を推進していく」と強調。「使命達成のために必要・十分な国債買い入れを今後も継続していく」とも述べた。

(伊藤純夫 編集:吉瀬邦彦)

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
コラム:ヘリマネ騒動の後遺症、遠のく為替安定=植野大作氏
コラム:トランプ大統領とイタリア危機は杞憂か=鈴木健吾氏
米財務長官、G7後の発言要旨「無秩序な為替、バーは高い」
1月工作機械受注は1037億円、前年比+3.5%=工作機械工業会
NY市場サマリー(9日)
http://jp.reuters.com/article/nakaso-boj-idJPKBN15O0Q9?sp=true
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/871.html

[経世済民118] インフレ税はなぜ日本に必要か=シムズ教授本人が解説デフレ脱却の新手法 豪中銀世界景気改善 中国債券先物に異変、取引高急増
視点:
インフレ税はなぜ日本に必要か=シムズ教授

クリストファー・シムズ 米プリンストン大学教授/ノーベル賞経済学者

[東京 9日 ロイター] - 長期にわたるデフレと低成長、政府債務の拡大を経て、日本はアベノミクス始動以来、主に金融緩和によって事態打開を図ってきたが、利下げ余地のないゼロ金利下限では金融政策は効果を失っているため、財政拡大で物価上昇率2%を目指すことに重きを置くべきだと、ノーベル賞経済学者のクリストファー・シムズ・米プリンストン大学教授は語る。

具体的には、政府債務の一部を増税ではなくインフレで相殺すると宣言し、金融緩和に加えて財政拡大で人々のインフレ期待に働き掛けることが重要だと説く。

同氏の見解は以下の通り。

<日本への政策提案は>

端的に言えば、ゼロ金利下限(Zero lower bound)と低インフレから脱するために、金融緩和と財政拡大を協調して実施することだ。財政拡大と言っても、無計画に歳出を増やしたり、財政赤字を膨らませと言っているわけではない。ここで主張したいのは、政府債務の一部が将来のインフレで相殺されるとの期待を人々に抱かせることの重要性である。

問題は、20年以上も物価の下落や低迷が続く日本のような国において、どのようにして、そうした期待を醸成できるかだが、1つの方法は、政府が財政拡大を2%のインフレ目標に明示的にリンクさせることだと考える。

非常に単純化して言えば、「物価水準の財政理論(FTPL:Fiscal Theory of the Price Level)」では、政府が財政支出を増やして増税で返そうとしなければ、物価水準の調整が起こる(インフレが起きて帳尻が合う)。この理論をもとに、2%インフレ目標の持続的な達成が視野に入るまでは、増税は行わず、財政拡大政策を続けると宣言することだ。

別の観点から言えば、ゼロ金利下限に直面している間は、「インフレ目標達成を担うのは中銀であるべきだ」という規範からは距離を置いた方が良いということである。なぜなら、今の日本のように政策金利が下がって利下げ余地がない状況に陥ると、物価水準は金融政策によってコントロールできないからだ。

具体的な財政拡大策のアイデアについては、以下の2点は検討の余地があるのではないか。まず、2%インフレ達成までは次の消費増税を延期すると宣言することだ。そして、基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の改善目標についても、同様にインフレ目標の達成を条件とすることを提案したい。そうすることで、物価低迷が継続している間は、人々はPBの改善ペースが緩やかなものになると期待する。

私は日本の政治経済分野の専門家ではないので、これ以上具体的な提案は差し控えたいが、要するに財政政策でインフレ期待に働き掛けるのが趣旨だ。

そして、2%超のインフレを相当期間にわたり実現し、金利も3―3.5%水準まで安定的に上昇したならば、物価制御の役割は再び日銀が一手に担えば良い。つまり、インフレが再び目標を下回り下降傾向に入ったならば利下げをし、逆の場合は利上げをするという正常の金融政策に戻る。

ちなみに、こうした協調的な政策の必要性は、何も財政・金融政策上の革命でもないし、それ自体が中央銀行の独立性を脅かすものではない。これはあくまでゼロ金利下限から抜け出せない状況に対する緊急的な措置だ。

言うまでもなく、正常な状態では、財政政策は物価制御には注意を払わないし、払う必要もない。債務の管理に集中し、発散(右肩上がりで増大)しないように気を付けるのが役目だ。しかし、繰り返すが、ゼロ金利下限では金融政策は有効性を失っている。ゆえに、財政政策をインフレ目標にリンクさせる必要性が生じる。

<パイパーインフレは杞憂か>

私の主張を伝えると、必ずと言っていいほど、物価の発散が起こるリスクについて質問がある。話がうますぎるというのだろう。しかし、そのような大きな危険はないと思う。むしろ、本当のリスクはインフレ急進とは逆のケースではないだろうか。

日本人はあまりに長い間、物価の下落と低迷を経験してきたので、インフレのない環境に慣れてしまっている。さまざまな政策的実験がこの国で行われてきたが、うまくいったとは言えない。「インフレ目標達成まで増税をしない」「債務の一部はインフレで相殺される」と政府が宣言しても、人々が信じずに、インフレ期待が高まらないリスクの方が心配だ。

また、そもそも万が一、インフレが6%などへ高く跳ね上がりそうになったときには、われわれは、金融引き締め策をどう適用すれば良いかを知っている。中銀の大きなバランスシートと準備預金の金利は、非常にパワフルな金融引き締めのツールとなる。

実際、1970年代末から80年代後半にかけてのボルカー議長時代の米連邦準備理事会(FRB)が示したように、中銀がインフレを制御できた事例は十分と言えるほどある。インフレ退治が必要となれば、金融政策は同じように機能するだろう。

ところで、私は現状でも、日銀の金融緩和が不要だとは言っていない。2%インフレ目標の達成に向けて、財政・金融政策の双方が協調することが何より重要だと考えている。ゼロ金利下限で金融緩和が効果を失ったことと、金融引き締めに動くべきタイミングは別問題だ。当面は政策金利を低く抑えておく必要がある。

ただ、現在のように、大きなバランスシートを日銀がいつまでも抱えている状況は好ましくない。FTPLでは、(政府と中銀を合わせた)統合政府の予算で見るので、本来は中銀のバランスシートだけを問題視する必要はないし、前述した通り、財政・金融政策の協調自体は中銀の独立性を脅かすようなものではないが、日銀の損失発生の可能性に注目が集まり、独立性を危険にさらすような政治的議論に発展するリスクはゼロとは言えない。

また、資産と負債で長短の期間ミスマッチを抱えた大きなバランスシートは、(金利上昇時に)金融政策が財政に与えるインパクトを大きくするリスクがある点にも注意が必要だ。

<増税よりインフレが有効な理由は>

インフレ目標とリンクさせた財政支出の重要性を私が主張している背景には、年金など社会保障制度の持続性に対する若年層の不安をいかにして減らすことができるかという問題意識もある。

日本に限らず先進国では、特に若年層を中心に、社会保障制度の持続性について非現実的と言っていいほど悲観的な見方が強まっている。高齢化に加えて、一貫性のない財政政策が、将来の不透明感を増大させている面もあろう。

もしも債務の一部をインフレで相殺すると政府が宣言し、一定水準の社会保障を維持できることを人々に納得してもらえれば、そうした不透明感の低減に役立つはずだ。人々が貯蓄よりも支出を増やせば、経済的な拡張につながる。

質問に戻れば、確かに増税によって不透明感を低減すれば良いという意見もあるだろう。ただ、増税はそもそも財政引き締めだ。増税によって、どのように社会保障制度の持続性が高まるのか、かなり具体的かつ明確な議論がなければ、不透明感の低減にはつながらないだろう。

ちなみに、この種の議論をする際によく持ち出されるリカーディアン均衡(リカードの等価定理)的な考え方では、追加的な政府支出の効果は将来の増税予測によって相殺されるというが、現在は相殺どころか、それ以上の増税を予測する「パイパー・リカーディアン」とでも呼ぶべき「期待」がむしろ広がってしまっている。増税頼みでは、この状況から抜け出すことは困難であり、むしろ事態をさらに悪化させかねない。今はリカーディアン均衡から離れるように人々を納得させることが重要だ。

なお、インフレにはデフレ脱却という利点もある。確かに、デフレが「悪」であるか、理論的に説明するのは難しいが、歴史的にデフレが経済の低成長や効率低下を招きやすい傾向があることは知られている。

むろん、インフレも、政府債務軽減に用いられるという意味で、ある種の「税(Tax)」であることは事実だ。だが、過去言われてきたように、一定のインフレは経済の潤滑油の働きをする。それは他の税にはないインフレのアドバンテージである。

*本稿は、シムズ氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています(聞き手:麻生祐司)

*クリストファー・シムズ氏は、米国の経済学者。2011年にノーベル経済学賞を受賞。2016年8月にイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長ら主要国の政策関係者が集った米ジャクソンホール会議で、ゼロ金利下限での金融政策の限界と、インフレ目標とリンクさせた財政支出の重要性を説く講演を行い、注目を集めた。1968年に米ハーバード大学で博士号取得。1942年生まれ。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

ロイターをフォローする
おすすめ記事


歩く明治天皇をパチリ 2017年 01月 20日
コラム:トランプ氏の円安誘導批判は「空砲」=池田雄之輔氏 2017年 02月 06日
女性元行員、4億円を着服か 2016年 12月 22日

http://jp.reuters.com/article/interview-sims-idJPKBN15O0J7?sp=true


 


2017年2月10日 週刊ダイヤモンド編集部

シムズ教授本人が解説、デフレ脱却の新手法「シムズ理論」

クリストファー・シムズ 米プリンストン大学教授インタビュー
金融緩和の限界が明らかになった今、安倍政権の経済ブレインである浜田宏一・米イェール大学名誉教授が注目しているのが“シムズ理論”だ。日本は何をすべきか、クリストファー・シムズ・米プリンストン大学教授を直撃した。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子、竹田幸平)

Christopher Sims/1942年米ワシントン生まれ。68年米ハーバード大学にてPh.D.取得。ハーバード大学准教授、米イェール大学教授などを経て99年より現職。2011年にトーマス・サージェントと共にノーベル経済学賞を受けた。マクロ経済学や計量経済学に関する論文多数。Photo by Kohei Takeda

──日本銀行が2%の物価目標を掲げて「量的質的緩和」を実施してきましたが、継続的な物価上昇は起こっていません。今、何をすべきなのでしょうか。
 日本は、金融政策と併せて、財政政策を実施していくことこそが必要です。超低金利の状況において、中央銀行は財政拡大のサポートなしに、(量的金融緩和による)資産買い入れを遂行すべきではありません。
 中央銀行が財政政策の支えを求める際は、債務の大きさを判断の基準とするのではなく、インフレ(物価上昇)を条件とすることが欠かせません。言い換えれば、インフレ目標を達成するために、財政を拡大するということです。
──日本銀行が取ってきた量的質的緩和は効かなかったということですか。
 金利がゼロ近傍になると、量的緩和だけでは、物価に影響を与えることはできないということです。
──日本国民にはインフレに対するアレルギーがあり、容易に理解が得られるとは思えません。
 インフレとは、(預金者から最大の債務者である政府へ実質的に所得を移転させる意味で)税金です。ですから、本来的に人々にとって人気のあるものではありません。政府には国民に対して、政府債務の一部をインフレによって軽減させていく狙いがあるのだと、明確に示す政治的勇敢さが求められます。

http://diamond.jp/mwimgs/c/a/-/img_cab440712f2ff80e17011e704ae85761239550.jpg

 日本はデフレが続き、その影響に苦しめられてきたのですから、むしろ前向きに捉えるべきでしょう。
 超低金利下では金利の下げ余地が小さく、金融政策の物価下落に対する効果は限られたものとなります。中央銀行だけでは、物価をコントロールできない可能性が出てきました。
 インフレが加速を始めるのは、財政拡大の動きがあってこそということです。人々が物価の急速な上昇を認識したときに、中央銀行や財務当局は物価過熱の抑制策を取ることが必要です。
【クリストファー・シムズ教授は、2011年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者。金融政策がマクロ政策に与える影響などを研究し、「物価水準の財政理論」(Fiscal Theory of Price Level、FTPL)の論客として知られる。

 FTPLとは、物価動向を決める要因として、財政政策を重要視する考え方。政府が将来増税しないと約束し、財政支出を増やしていけば、人々が財政赤字拡大から、将来、インフレが起こると予測し、消費や投資を拡大する。それが物価上昇の圧力となり、インフレが発生して、デフレや低インフレ状態から脱し得ると説く。

 財政支出の拡大で政府債務が拡大するが、FTPLではインフレで実質債務を圧縮するという考え方だ。】

物価目標実現が見えるまでは
消費増税を延期
──日本は19年に消費増税の実施を予定していますが、消費増税については延期、凍結、実施のどれが望ましいのでしょうか。
 日本で19年10月の消費増税の実施はすでに決定ずみとなっています。ただ、当局が過ちを犯したと思う点は、彼らが19年10月という具体的な時期を明文化したことです。なぜなら、財政拡大策と消費増税による財政緊縮策を同時に行うことは矛盾しているからです。人々は「将来に増税が待っている」と思えば、政府が財政支出を拡大しても、消費を拡大しないでしょう。
 もし目標のインフレ水準が達成されるまで「消費増税をしない」と言えば、人々に前向きな影響をもたらせたでしょう。その方針を続ける限り、人々はインフレを受け入れやすくなります。そうすれば彼らはお金を使うようになり、マネーの流れも活性化するに違いありません。
──FTPLを政策として実行した場合、成功すると思われますか。
 それが成功するかどうかは、政策当局者が将来の民間の意識を変えられるかどうかに懸かっています。ただ、非常に難しいことであることは確かです。
──仮にインフレが発生した場合、物価上昇率が3%、4%などとターゲットより行き過ぎてしまう危険はないのでしょうか。
 インフレ対策については、中央銀行も財政当局も経験があり、何をすべきか、知っているはずです。例えば、政策金利の引き上げや財政改革(歳出抑制など)です。
 超低金利低インフレからいつまでも脱することができないというのも決していいことではありません。予期しない物価上昇などで急な調整を迫られたときに、打つ手がなくなるからです。
──FTPL自体は1990年代からあったにもかかわらず、昨夏の米ジャクソンホール会議で急速に注目を集めました。
 日本においては、安倍晋三首相の存在が密接に関係しているでしょう。政治的な状況、ということです。
 ただ、私の論文に対する強い反響がその他の多くの場所であったことには驚きました。
 この理論(FTPL)の詳細な議論は、私の論文に引用したマイケル・ウッドフォード氏(米コロンビア大学教授)の長い論文に収められています。しかし、その内容には極めてテクニカルな議論が多く、マクロ経済の専門家向けに書かれたものでした。
 ジャクソンホールでの講演はランチタイムでした。スライドは使えないし、電源やコードもない状況でテクニカルな論文の説明をしなくてはなりません。私には30分間の講演を言葉だけで行う必要がありました。
 そのために私は、何カ月も準備に費やしました。そうして過去に取られた政策を振り返ってみると、低インフレ時代の金融政策の限界を、FTPLから説明できるのではないかと考えました。
 こうした取り組みが、インパクトをもたらす結果につながったのだと思います。
【日本でシムズ教授がにわかに有名になったのは、「アベノミクス」の経済ブレインである浜田宏一・米イェール大学名誉教授(内閣官房参与)が金融緩和の限界を認め、「今後は財政の拡大が必要」とジャクソンホール会議での同教授の論文を紹介したため。浜田名誉教授は、“シムズ理論”を引用し、「金融緩和をしても財政を引き締めれば効果はなくなるため、消費増税は延期すべきだ」と提言している。】
──自身の考えが政治的に利用されることをどう感じますか。
「物価2%目標」を掲げた黒田東彦・日本銀行総裁。もはや金融緩和だけでは達成が難しいことが明らかになってきた Photo:REUTERS/アフロ
 政策が実行される際に、私の考えが政治家の目的に沿って使われるのであって、それぞれの政治家にとって役立つかどうかは気にすることではありません。
 危険は常に、財政による刺激策が政治的なアピールに使われることにあります。私が主張しているのは、将来的な物価動向の行方がどうなるかを考えながら政策プランを策定することです。当局者は私が単純に支出を今すぐ増やせ、と言っているのだと誤解すべきではありません。
──ドナルド・トランプ米大統領は、減税やインフラ投資など財政拡大を掲げています。
 彼の政策では、何が実際に起きるのか、不透明です。(FTPLにのっとったものではなく)ただ、財政赤字を膨らませる政策のように見えます。
 しかし、共和党内には、健全財政派の勢力もあり、トランプ氏の政策が全て実行されることにはならないでしょう。
──シムズ教授は、財政拡大はインフレターゲットを達成するまでのものであり、放漫財政を容認しているわけではないと言っているのですね。
 “適度”な財政悪化がインフレを起こすのに必要と言っているだけで、健全財政を放棄してもいいわけではありません。プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化も重要だとは思いますが、デフレ脱却にはインフレターゲットを実現するまでは、財政拡大が有効だと言いたいのです。税収が増加すれば、プライマリーバランスも改善します。
【記者の目】
財政拡大により消費が増えるか疑問

 貨幣数量説に基づくマネタリーベース拡大、物価目標明示によるインフレ期待への働き掛けで物価上昇を狙った量的緩和の効果が表れない現状において、シムズ教授のFTPLは、財政政策でインフレを起こせる可能性を示し、デフレ脱却への処方箋として注目を集めている。

 ただし、日本における実効性については議論が分かれている。FTPLでは、「政府が財政赤字を増やすが、将来、一定程度の物価上昇が起きるまで増税されることはない」ということを国民が信じて、消費や投資を拡大することが前提になっている。 

 しかし、少子高齢社会の進展で将来の社会保障に不安があれば、インフレ目標達成まで増税しないと政府が宣言しても、消費者の財布のひもはなかなか緩まず、家計の消費拡大にはつながらない公算が大きい。

 日本の現状では、財政拡大によってインフレを引き起こすことができるかというと、疑問が残る。参考にすべき理論だが、処方箋になるかどうかについてはさらなる検証が必要だろう。

http://diamond.jp/articles/-/117435


 


豪中銀:世界景気見通し改善を強調−雇用の伸びは限定的となる可能性
Michael Heath
2017年2月10日 11:06 JST
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は10日 発表した金融政策四半期報告書で、世界景気見通しの改善を強調する一 方で、成長による雇用への恩恵は軽微だとして、雇用の伸びは限定的に とどまるとの見通しを示した。
豪中銀は報告書でインフレ予想をほぼ据え置いた一方で、昨年7− 9月(第3四半期)のマイナス成長の「ベース効果」を理由に、2017年 6月までの1年間の成長率見通しを1ポイント引き下げた。液化天然ガ ス(LNG)輸出は17年と18年の国内総生産(GDP)成長率を約0.5 ポイント押し上げる要因になるとの見通しを示した。
豪中銀は「全般的な成長は、予想期間に失業率を大きく低下させる には十分ではないと見込まれる」と指摘。 豪州の昨年12月の失業率 は5.8%だった。
報告書発表後に豪ドルはほぼ変わらず。シドニー時間午前11時38分 (日本時間同9時38分)現在、1豪ドル=0.7622米ドル。発表前 は0.7621米ドルだった。
原題:RBA Highlights Better Global Outlook, Limited Employment Gains(抜粋)
--取材協力:Kimberley Painter.

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-10/OL4XB16KLVRP01

 

アングル:中国の債券先物市場に異変、ヘッジ需要で取引高急増

[上海 9日 ロイター] - 中国の債券先物市場に異変が起きている。3年前に再開したものの低調な取引が続いていたが、昨年10月からヘッジ目的の利用が急増し、取引高が爆発的に増えている。

中国の債券先物市場は1995年に不正取引問題をきっかけにいったん閉鎖。2013年9月に再開されたものの、低金利環境下ではヘッジの需要は弱く、小ぶりの商いが続いていた。

しかし昨年10月に様相が一変する。11月の5年債と10年債の先物の取引高は8200億元(1191億3000万ドル)と前月から倍増。さらに12月は過去最高の1兆7700億元へと2倍に増えて、わずか3カ月間で4倍に膨れ上がった。1月も旧正月の連休があったにもかかわらず、約1兆2000億元と高水準を維持した。

背景にあるのはヘッジ需要の増大だ。中国政府が金融政策を引き締めに転換し、債券利回りと金利スワップが上昇。ほとんどの債券は事実上、政府の保証を受けていると受け止められてきた中国経済に新たなリスクが生まれた形になった。

政府は2014年以降、デフォルト(債務不履行)の一部容認、経営悪化企業の債務の株式化などを通じて、国内総生産(GDP)の約3倍にも膨らんだ債務の圧縮に取り組んできた。また資本流出や人民元安を食い止めるため、さまざまな規制も打ち出している。

新たなリスクの発生で、3年間にわたった債券相場の上昇に終止符が打たれ、10年物国債の利回りは昨年10月の安値から80ベーシスポイント(bp)上昇して3.5%近辺に達した。

一方、ヘッジファンドのマネジャーにとって債券先物市場は、債券に弱気の見方を表明したり、ボラティリティ上昇に乗じて利益上げるのに便利な手立てだ。

ヘッジファンドのアルファ・スクウェアード・キャピタルのワン・フェン最高経営責任者(CEO)は「これまで債券先物市場はヘッジファンドにとって厚みや流動性が不十分だった」と述べ、今年は取引高が2倍に増えると予想した。

今は取引高の増加がヘッジを望む投資家をさらに引きつける状態。アルファ・スクウェアードのワン氏は「取引が活発になればなるほど市場参加者が増加し、それに伴って流動性も増えるだろう」と話した。

(Samuel Shen and John Ruwitch記者)

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
シリア政府軍がアレッポ再包囲、トルコ軍は国境地帯でIS排除
フィリピン、麻薬密輸問題で中国大使に説明求める
アングル:中国の個人投資家を魅了する「ロボ・アドバイザー」
アングル:香港・深セン相互取引、A株のMSCI採用は期待薄
コラム:トランプ米大統領、対メキシコ強硬姿勢で「共倒れ」も
http://jp.reuters.com/article/china-bond-futures-idJPKBN15O0HC

http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/872.html

[国際18] 米中首脳、長時間協議 米公表は「一つの中国」のみ 中国軍機、南シナ海で米軍機急接近  中国内外需要上向、対米貿易黒字縮小
米中首脳、長時間協議 米公表は「一つの中国」のみ
2017/2/10 15:14
 【北京=山田周平】トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は10日(中国時間)、電話協議した。米中双方が発表した。米ホワイトハウスによると、トランプ氏は習氏の求めに応じ、「我々の『一つの中国』政策を尊重していく」と表明した。トランプ氏の1月20日の大統領就任以降、米中首脳が電話協議するのは初めて。

 ホワイトハウスによると、両首脳は電話で長い時間協議し、多くの議題を話し合った。ただ、具体的な議題として公表したのは、中国大陸と台湾が一つの国に属するとする「一つの中国」の原則を巡るやりとりだけだった。

 中国では、国営中央テレビが昼のトップニュースで電話協議を伝えた。習氏が米中が幅広い分野で協力を進める必要性を指摘したなどと報じたが、具体的な議題ではトランプ氏が「米国政府が一つの中国の政策を堅持する」と述べたとする台湾問題だけを詳報した。

 米国は1979年に中国共産党政権と国交を樹立する際、中国が主張する「一つの中国」の原則を尊重することを確認。その後は台湾当局とは外交関係を持たず、米台交流は非公式だとしてきた。中国はこれを「中米関係の政治的な基礎」と位置づけてきた。

 しかし、トランプ氏は当選後の2016年12月、中国が自国の一部と見なしている台湾の蔡英文総統と異例の電話協議を行い、公表した。中国がこれに反発した後も、「一つの中国」の原則の見直しを辞さない考えを表明し、大統領就任後の出方が注目されていた。

 トランプ氏は就任以降、安倍晋三首相やロシアのプーチン大統領、メルケル独首相ら主要国首脳と電話協議を重ねたが、米中協議だけ行われない異常な状態が続いていた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM10H6J_Q7A210C1000000/


米大統領府:トランプ大統領が米中関係の発展を期待

2017-02-10 10:18:01 cri [A A A]
 米国のスパイサー大統領報道官は現地時間9日の定例記者会見で、「トランプ大統領は米中関係の重要性を理解し、前向きな関係発展を望んでいる」と表明しました。

 スパイサー報道官は「米中関係において、米国が重要視するのは、経済、安全保障など分野での利益だ」と述べ、中国進出への意欲を見せる米国企業の例を挙げました。

 また、これに先立ち大統領府は8日夜に声明を発表し、トランプ大統領が同日、習近平国家主席に書簡を送り、習主席と中国国民に元宵節(旧暦1月15日、今年は2月11日)のお祝いを述べ、中国との建設的な関係発展に期待を示したことを明らかにしました。

 一方、中国外務省の陸慷報道官は9日の定例記者会見で、トランプ大統領から書簡を受け取ったことを表明し、これを高く評価する中国政府の姿勢を示しました。さらに、「中国は米国と共に、衝衝突せず、対抗せず、互いに尊重し、協力するという原則にのっとって協力を拡大し、意見の不一致を調整し、中米関係の健全で安定した、さらなる発展を推し進めていきたい」と述べました。(Mou、謙)
http://japanese.cri.cn/2021/2017/02/10/161s258040.htm

トランプ氏「一つの中国」を尊重、習主席と電話会談
ホワイトハウスのトランプ米大統領(9日)
2017 年 2 月 10 日 14:06 JST 更新

 【北京】ドナルド・トランプ米大統領は中国の習近平国家主席と電話会談し、「一つの中国」政策を尊重する見解を示した。ホワイトハウスの発表と、中国国営メディアの報道で明らかになった。

 トランプ氏は大統領就任前に、米国が対中関係で長年にわたって維持してきた「一つの中国」政策を尊重する姿勢に疑問を呈したことがあった。今回の電話会談により、米中関係の円滑化に弾みがつきそうだ。

 中国が掲げる同政策の下、米国は台湾との外交関係を認めないことで中国と合意している。

 ホワイトハウスによると、両首脳は「非常に心のこもった」長いやりとりを交わし、トランプ氏は「習氏の要望により」、同政策を尊重することで合意した。

 大統領に就任する前、トランプ氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、中国が為替や貿易問題に対する姿勢で変化を見せない限り、この政策に対する自身の姿勢を対中関係の切り札に使うことを示唆していた。

トランプ新大統領特集

トランプ氏、揺らぐ同盟国との信頼関係 日本も矛先か
トランプ米大統領への対応、再考する中国
米中首脳、重なる世界観
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=4&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiHx77C8oTSAhWEebwKHT1fA3YQFggqMAM&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582612570698828772&usg=AFQjCNHA89u9KeTQ2cLvnjdE1RGX8lkMqA

トランプ氏、「一つの中国」確認−習主席と就任後初の電話会談
Ting Shi
2017年2月10日 14:04 JST 更新日時 2017年2月10日 15:12 JST

両首脳は互いの国への訪問を要請−ホワイトハウス
習主席は貿易や投資などで米国との関係強化の意向示す−CCTV

トランプ米大統領は就任後初めて中国の習近平国家主席と電話会談を行い、米国の歴代政権が支持してきた「一つの中国」政策を確認した。
  ホワイトハウスは9日の声明で、「両首脳は数多くの議題について話し合った。『一つの中国』政策を尊重するよう習主席が求め、トランプ大統領が同意した」と説明。「両首脳はまた、互いの国への訪問を要請した」と明らかにした。
  中国国営の中国中央テレビ局(CCTV)によれば、習主席は協力強化が双方にとって必要だと述べ、貿易や投資、技術、エネルギー、インフラ分野で米国との関係を強化する意向を示した。国際的また地域的な軍事問題で両国がコミュニケーションを深めるべきだとの考えも伝えた。
  トランプ大統領が「一つの中国」政策への支持を明言したことで、両大国間の外交的な緊張の主な原因の一つが和らぐ可能性がある。トランプ大統領は昨年12月に台湾の蔡英文総統と電話会談し、その後「一つの中国」政策に縛られない考えを示していた。
  アジアCEOフォーラムのマーク・マイケルソン会長は「米中の不透明感を解消させる最初のステップだが、問題は他にもある。貿易はどうなのか。制裁が科されるのか。中国は為替操作国に認定されるのか。南シナ海はどうなんだ」と述べた。
原題:Trump Reaffirms ‘One-China’ Stance in First Call With Xi (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-10/OL571F6TTDS101

 


 
中国軍機、南シナ海で米軍機に急接近 米軍「危険行為」
ワシントン=峯村健司2017年2月10日11時53分

 南シナ海の上空を飛行していた米海軍のP3哨戒機に8日、中国軍の早期警戒機が急接近していたことがわかった。米太平洋軍司令部当局者が9日、明らかにした。約300メートルまで接近していたとみられ、米軍は「危険行為」として中国側に申し入れをした。

 ロイター通信によると、現場は中国がフィリピンと領有権を争うスカボロー礁の上空付近。当局者は「国際法にのっとった定期飛行をしていた」と説明している。スカボロー礁は中国が実効支配しており、埋め立てて軍事拠点化にすることを米側は警戒している。監視活動をしていた米軍機に対して、中国軍機が妨害をした可能性がある。

 米当局者によれば、米中の軍用機同士による接近は、2016年に2回発生しているという。これまでも、米新政権の発足直後に中国軍側が南シナ海において米側を軍事挑発する事件が起きている。ブッシュ政権発足直後の01年4月には南シナ海の海南島沖で両軍機が空中接触。オバマ政権発足後の09年3月にも米国の調査活動が中国船に妨害された。(ワシントン=峯村健司)

こんなニュースも
(耕論)AVへの出演強要 伊藤和子さん、中里見博さん、青山薫さん
(ニュースQ3)インフルで欠場、格闘家に無期限停止で波紋
安倍首相、「訂正でんでん」と誤読? 参院代表質問答弁
韓国野党「安倍に10億円返そう」 首相の発言に反発
http://www.asahi.com/articles/ASK2B3FKSK2BUHBI00V.html

 


中国の対米貿易黒字、1月は213.7億ドルに縮小

Business | 2017年 02月 10日 13:13 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

[北京 10日 ロイター] - 中国税関総署が公表したデータによると、1月の中国の対米貿易黒字は213億7000万ドルと、昨年12月の217億3000万ドルから縮小した。
http://jp.reuters.com/article/china-usa-trade-surplus-idJPKBN15P0DA?rpc=190


2017年 2月 10日 2:41 PM JST
中国、1月は輸出入とも予想上回る 内外需要上向く

http://s1.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20170210&t=2&i=1172122092&w=640&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXMPED19081

[北京 10日 ロイター] - 中国税関総署が公表したデータによると、1月の中国輸出はドル建てで前年同月比7.9%増となり、アナリスト予想を大きく上回った。輸入も16.7%増で、こちらも予想を上回った。

国内外で需要が上向き、国内では石炭や原油、鉄鉱石の需要が増加した。

貿易収支は513億5000万ドルの黒字。

ただ中国ウオッチャーらは、1月と2月のトレンドが長い旧正月休みの影響で歪んでいる可能性があると警告している。休み前には企業活動が鈍化し、業務規模を縮小したり閉鎖したりする企業が多いためだ。

今年の休みは1月28日に始まり、昨年より11日早かった。

税関総署は2月23日に改定値を発表する。

アナリストは1月の輸出を3.3%増、輸入を10.0%増、貿易黒字を479億ドルと見込んでいた。

2016年の輸出は7.7%減と2年連続で減少。減少率は金融危機時の09年以降で最大だった。貿易黒字は5107億ドルに縮小した。

1月の対米輸出は前年比6.2%増、輸入は23.4%増。対米貿易黒字は213億7000万ドルと、12月の217億3000万ドルから縮小した。

*内容を追加し写真を差し替え、再送します。
http://jp.mobile.reuters.com/article/topNews/idJPKBN15P0EP


2017年 2月 10日 2:33 PM JST
中国貿易統計、輸出入とも予想を上回る:識者はこうみる

[東京 10日 ロイター] - 中国税関総署が公表したデータによると、1月の中国輸出はドル建てで前年同月比7.9%増となり、アナリスト予想を大きく上回った。輸入も16.7%増で、こちらも予想を上回った。

市場関係者の見方は以下の通り。

●旧正月控え企業が輸出前倒しか

<OCBC銀行(シンガポール)エコノミストのTOMMY XIE氏>

輸出が予想を上回った理由は主として3つある。1)比較水準が低かったこと、2)旧正月の影響、3)成長見通しの改善だ。

中国企業は旧正月を控え、輸出を前倒しする傾向がある。今年の旧正月は1月末だったため、前倒しが行われたのではないか。

政治的な不透明感が世界経済に与える影響も当面は限定的なようで、これも中国の輸出を引き続き支援しそうだ。

ただ、全体的に見ると、旧正月休み中の1カ月のデータで全体像は分からないため、2月のデータを見るまでは、結論に飛び付かないようにしている。

●人民元の下向きバイアス変わらず

<オーストラリア・ニュージーランド銀行(香港)のシニアエコノミスト、RAYMOND YEUNG氏>

今年の人民元については引き続き、バイアスが下向きと市場はみており、今回の貿易統計によっても変わらないだろう。貿易統計自体、春節の連休が昨年よりも前倒しになったことでゆがめられており、年初の3週間に駆け込みで取引が行われた可能性がある。

トランプ米大統領が中国との貿易で強硬姿勢をみせる可能性から、中国企業が取引を急いだとの見方もあるが、私は懐疑的だ。

市場の構造的なトレンドを変えるような一部の反貿易政策をトランプ政権が実施しない限り、貿易収支は今後数カ月安定的に推移するだろう。コモディティー価格の上昇と連動した輸入の順調な増加は、国内経済に対する健全な兆候だ。ただ輸入高の増加率に関しては、天井を打った可能性がある。

●輸入好調、リフレ継続の裏付け

<ガベカル・ドラゴノミクスの中国担当エコノミスト、ロン・チェン氏>

今年は春節が1月、昨年は2月だったことによる影響もあるが、かなり強い内容だった。(特に資源の)輸入が力強く、中国経済のリフレがなお続いていることを裏付けた。輸出は人民元安が奏効し始めたことを示している。

●世界経済の回復が増加要因、リスクは米中関係

<みずほ証券(香港)のチーフエコノミスト、Jianguang Shen氏>

(輸出入の増加は)春節の大型連休による影響だけではなく、欧米や新興国経済の成長回復も関係があるとみる。

輸入は堅調であり、中国政府の刺激策により内需が促進されていることからすれば当然と言えよう。輸出の見通しは、米中間の貿易戦争のリスクがあることを除けば良好だ。

米トランプ政権が対中貿易でどう対応するかが、中国にとって最も重要なリスクだ。

(Reporting By Michio Kohno)

http://jp.mobile.reuters.com/article/topNews/idJPKBN15P0FV

http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/116.html

[国際18] トランプ氏が暴くプーチン氏の真の姿 ごまかしの時代はついに終わり 偽テロ攻撃リャザン トランプ氏が修正する金融規制の欠陥
【オピニオン】トランプ氏が暴くプーチン氏の真の姿 ごまかしの時代はついに終わりを迎えるか
ロシアのプーチン大統領(1月25日)
2017 年 2 月 10 日 13:44 JST

――筆者のホルマン・ジェンキンス・ジュニアはWSJ論説委員で「ビジネスワールド」欄担当コラムニスト

***

 ドナルド・トランプ米大統領はいま忙しいだろうが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領をさらに喜ばせるようなことをするかもしれない。それはロシア政府が昨年12月に合意した石油大手ロスネフチの持ち分売却の支持だ。

 この ロスネフチ株の放出はロシアが経済制裁下にあるなか、欧米諸国の投資家に同国の魅力をアピールする絶好の機会になるはずだった。ところが想定通りには運ばなかった。結局、スイスの大手資源商社グレンコアとカタール投資庁に売却することになったが、詳細は不明であるものの、その出資額の大部分はロシア国内から出ているようだ。同国は多くのリスクを取って大きなアウトサイダーを引き入れることにしたわけだ。

 だがトランプ氏はいつだって、取引に怪しいところはないと大声で言えるはずだ。つまるところ欧米諸国も怪しげな取引に関与しているではないか。

 というのは冗談にしても、ロスネフチのことは笑うわけにはいかない。同社株の売却は隣国ウクライナへ侵攻したロシアが国際社会との関係を再び正常化するための戦略の一部だ。しかもプーチン氏は見た目よりも必死だ。

 FOXニュースのビル・オライリー氏を相手にトランプ氏が言ったコメントは明確かつ一貫性をもったトランプ流世界観の表れだと考える人もいるが、われわれの考えは若干異なる。ちなみに、オライリー氏はトランプ氏のその発言に対して、プーチン氏を人殺しと呼んで反論した。

 トランプ氏のコメント自体はただ愚かで、自分の立場をよく理解していない人のような内容だった。だがトランプ氏は実際のところ、プーチン氏をかばうという米国の長きにわたる政策を不器用ながらも踏襲しているのだ。

 ところが、皮肉な結果に陥っている。トランプ氏は大きな衝撃をもたらしかねないプーチン氏最大の秘密を正式な公の場にさらす絶好の機会を自ら作り出してしまった。1999年以降、数多くのCIA長官や外交当局のトップが連邦議会で証言に立ってきた。しかし、誰一人として、モスクワの東南に位置する町リャザンに関する質問を受けていない。モスクワやその周辺ではそれまでテロ攻撃が続いており、実行犯はチェチェン人とされていた。しかしロシアの治安部隊がリャザンの集合住宅の地下に爆弾を仕掛けていたことが発覚すると、それを契機にテロ攻撃は突然ぴたりと止んだのだ。

 議会公聴会の議事録を探したところ、リャザンという地名が出てきたのはわずか3回のみ。筆者は以前、非公式に国家安全保障当局の元トップに質問したことがあった。当局者は意図的にぽかんとした表情を作り、その件に関する報告を見たかどうか覚えていないと回答した。

 そしてトランプ氏の登場だ。全国的に放送された公聴会でマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)は国務長官に指名されたレックス・ティラーソン氏に、プーチン政権が集合住宅の爆破事件に関与したことを示唆する「信じられないほど大量の報告」について直接質問した。

 一般市民であるティラーソン氏にそれを聞くのは完全にお門違いだった。だが報告について認識していると勇敢にも同氏は認めた。「非常に重大な告発だ」としたうえで、「公になっている記録があると承知しており、機密扱いになっている記録も大量にあるのは確かだ」と述べた。

 国務長官に就任したティラーソン氏は今後、上院に何度も戻ってくることになるだろう。ルビオ氏は同氏に機密文書を見た後でどう思ったかを聞くだろう。

 それが転換点になるかもしれない。

 ビル・クリントン氏、ジョージ・W・ブッシュ氏、バラク・オバマ氏の3人の元大統領はプーチン氏から得たいものと引き替えに、リャザン事件を無視するという確固たる方針を持っていた。プーチン氏は欧米諸国の首脳が会い、かつ取引可能な相手であるという状況を維持する必要がこの3人の元大統領にはあったのだ。

 だが突然、米国の主要政党の一つ、つまり民主党は沈黙で覆ったままにしてはいけないという党派心に基づいた直情的な動機を持つに至ったようだ。同党のナンシー・ペロシ下院院内総務は5日、「ロシアがドナルド・トランプについて何を握っているのか知りたい」と述べた。

 ペロシ氏とその同僚、特に民主党で外交政策を担当するエスタブリッシュメント(既成勢力)たちは本当に聞くべき質問は別にあることをいずれ理解するだろう。それは、トランプ氏に汚名を着せるために利用できるどんな情報を中央情報局(CIA)がプーチン氏に関して握っているのか、という質問だ。

 ここで、はっきりさせておこうではないか。そうした醜い真実の表面化は欧米諸国のリーダーたちにとって根本的に不都合なことであり、結局のところ、プーチン氏を手が出せない相手として扱うよりは、取引できる相手でいてくれる方を彼らは望んできたのだ。

 トランプ氏もつまるところ、前任者たちと違わない。トランプ氏もプーチン氏と取引したいと思っている。だが、トランプ氏の奔放かつ慎重さに欠けた発言が、いずれにせよ結局は避けられなかったであろう事を表面化させたのだ。ロンドンで毒殺された元情報将校のアレクサンドル・リトビネンコ氏。殺害されたジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤ氏。射殺された野党指導者で元第1副首相のボリス・ネムツォフ氏。モスクワやその周辺で複数発生し、計293人の死者と数百人の負傷者を出した集合住宅の爆破事件。このすべての事件は永遠に隠蔽(いんぺい)されたままにしておくわけにはいかない。プーチン氏が目指す「復権」はうまくいっていない。

 オライリー氏の発言に対してロシアがFoxニュースに「謝罪」を求めざるをえなかったロシアの弱々しさと逆効果を見てほしい。ロスネフチの取引を巡るプーチン大統領と欧米諸国の関係者との滑稽でつまらない会談、つまりロシアではすべてが申し分ないという印象を作り出すことが目的のこの会談の様子を見てほしい。

 トランプ氏の発言は解釈次第でプーチン氏の本質を認めた最初の米国大統領だとも読み取れる。プーチン氏の取り巻きは火の中水の中、たとえ何があろうともプーチン氏と運命をともにすると覚悟を決めているという見方もある。だがこれは議論の余地がある。仮にプーチン氏の行く末が「のけ者」であるのなら、権力の中枢にいるロシア人の大多数は同氏と運命を違えることを望んでいるかもしれない。

関連記事

【オピニオン】プーチン氏の秘密、CIAが暴露できない理由
【社説】トランプ氏とロシア、共和党議員に抑止力はあるか
トランプ氏、ロシアとイランの不和を模索
トランプ新大統領特集
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjax_bE8oTSAhXLyrwKHVO-DzQQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582612293959274160&usg=AFQjCNGBw6gq_OeKr9sJuQOjyzYMlcQRog


 


トランプ氏が修正する金融規制の欠陥
当局者は融資や成長をあきらめるコストを考えることに
ニューヨーク市内にあるゴールドマン・サックスの建物
2017 年 2 月 10 日 12:11 JST

――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

***

 ドナルド・トランプ米大統領が先週、金融規制の包括的な見直しを命じると、そこかしこで懸念の声が上がった。欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は「非常に心配」だといらだちを見せ、米民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、銀行が「再び私たちの経済を吹き飛ばす」ことになるのかと問いかけた。

 彼ら心配性の人たちはリラックスすべきだ。金融危機の始まりから10年の間に、規制の振り子は容赦なく強化の方向に振れてきた。トランプ氏の大統領令はその向きを反転させるが、トランプ政権が金融規制を2007年の状況に逆戻りさせたがっている兆しはほとんどない。

 ただ大統領令は確かに、危機後の規制の深刻な欠陥に対応しようとしている。規制は金融市場の安定と消費者の保護を追求するあまり、融資や経済成長や消費者の選択をあきらめるコストをほとんど無視した。トランプ氏は、これらのコストを考慮すべきだとの考えを示唆している。同氏は現在の規制がどれだけ成長や効率性、競争力を促進しているか、120日以内に報告するよう財務長官(ただし承認待ち)に要請した。これはいずれ、より広範な企業・家計に対してより均衡の取れた信用供給をもたらす可能性がある。

 バラク・オバマ前大統領の下で2010年に議会を通過した金融規制改革法を受けて、住宅ローン引き受けとデリバティブの規則が策定され、銀行に限らない「システミックな」金融機関の監督が強化された。そうした機関がつまずいた時に段階的に縮小するメカニズムも提供され、銀行による投機的な取引に制限が課され、消費者金融保護局(CFPB)が誕生した。

 同法は金融規制の一部にすぎない。09年に成立した法律は、クレジットカードに新たな規制を課した。国際的な協議で決まった規則により、銀行が維持しなければならない資本や流動資産の水準が増した。司法は住宅ローンや海外送金、自動車ローンに新たな審査をもたらしてきた。労働省の新たな受託者基準は、退職口座での取引に投資アドバイザーが手数料を課さないよう奨励している。

 だが規制当局は、それによりどれだけリスクが減り、何が失われたのかを数値化しようとしてこなかった。銀行の安全性が資本増強で高まったのは確かだが、自己勘定取引の禁止といった条項のメリットが、あったとすれば何だったのかは不明だ。

 理論上、規制強化は信用コストを押し上げ、成長率を押し下げることになるが、数値化は難しい。信用の伸びはさまざまな要因に左右されるからだ。

 最も打撃が目立つのは、信用力が相対的に低い住宅購入者向けの融資だ。ゴールドマン・サックスが14年に行った調査によると、規制と訴訟の影響が最も大きかった中小企業向け融資やクレジットカード、ホームエクイティローン(保有する住宅の価値がローン残高を上回る分を担保にした融資)などのコストは、相対的に規制が緩い自動車ローンや大手企業向けローンのコストに比べて上昇していた。ゴールドマンは15年にはこれに関連して、規制が小規模企業や新興企業より大企業に有利な「二速経済」を生んだと主張した。

 規制はゼロ近辺の金利と相まって銀行の収益を圧迫している。銀行株は危機前のピークを依然24%下回っており、全体的な株価が約50%上昇しているのと対照的だ。

 コンサルティング会社フェデラル・フィナンシャル・アナリティクスを率いるカレン・ペトルー氏は、銀行が手数料を生む事業(富裕層向けが多い)を優先せざるを得ない状況に置かれてきたと話す。ネット系を中心とする金融機関は、小さめの企業や所得が低めの顧客を相手にすることもある。だが一部は銀行よりはるかに高い手数料を課している。ペトルー氏は、それらの機関が次の低迷局面を乗り切れない可能性があると述べた。

 トランプ氏の大統領令は、新たな規則のコストとメリットをより正確に分析し、投資家が情報に基づく選択をできるよう一段と配慮することを求めている。

 トランプ氏は、退職口座に取引ベースの手数料を課さないよう金融アドバイザーに求める労働省の受託者基準も疑問に思っている。オバマ政権はこれにより投資家が手数料を年間170億ドル節約できると訴えた。しかし、証券業金融市場協会(SIFMA)はこの金額に異議を唱え、この手数料で得られたかもしれないアドバイスなどのメリットが無視されていると主張した。

 規制改革で次の金融危機を防ぐ可能性を最大限に高めるには、銀行が将来の損失を吸収するために保有を義務付けられる資本を大幅に引き上げることだ。トランプ政権は自己資本要件の大幅な引き上げを防ごうとするかもしれないが、大幅に引き下げる計画はないようだ。国家経済会議(NEC)のゲーリー・コーン委員長は先週ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、「古き良き時代に戻りたいわけではない」と述べた。さらに、米国の大きな競争優位のひとつとして、「世界で最も自己資本比率が高い最高の銀行」を挙げた。

 S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによると、金融株は規制緩和の見通しを受けて大統領選以降に約17%上昇し、市場全般の上昇の20%超を担った。このことは、金融業界の収益性がもっと高いはずであることや、資金を探しあぐねている企業や家計に流れ始める融資が増える可能性を示す。それにより、米国経済で最もリスク許容度が欠けている部分で、リスクオンが復活する可能性がある。

トランプ新大統領特集

米規制緩和の効果、予想外に小さいか
【社説】米金融規制緩和、銀行ではなく経済に資するルールに
トランプ氏の金融規制緩和、高まる投資家の期待
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&ved=0ahUKEwjWt57K8oTSAhXCyrwKHdiDD8MQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582612224207175072&usg=AFQjCNEdMQSC8rDSBAtaaKWPPyJGlYnrKQ
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/117.html

[経世済民118] トランプ・安倍会談に潜む「円高リスク ナンセンス 為替手掛かり 短期は楽観、中長期リスク山積 メディア当たらない予測好む
コラム:トランプ・安倍会談に潜む「円高リスク」

高島修シティグループ証券 チーフFXストラテジスト
[東京 9日] - 10日から2日間にわたって安倍晋三首相とドナルド・トランプ大統領による日米首脳会談が行われる。そのイベントリスクはドル安円高サイドに傾いていると考えられ、春先にドル円は108円前後に下落すると考えてきた筆者の見方を補強することになるだろう。

今回の首脳会談には、岸田文雄外務相に加え、麻生太郎財務相も同行する。当初は世耕弘成経済産業相も同行すると報じられていた。米新政権との日米交渉は早々にトップギアで走り始めそうな雰囲気だ。特に、予定されていた世耕経産相の同行は、トランプ政権が最重要課題に掲げている通商問題が本格的に動き出そうとしていることがうかがえる。

世耕経産相のカウンターパートはウィルバー・ロス商務長官だ。著名投資家のロス長官は2000年に日本の幸福銀行を買収したこともあり、知日派・親日派として知られる。日本の実情に理解を得ながらの交渉が可能だろう。

一方で麻生財務相の立場はやや複雑だ。副総理を兼務する麻生氏の一つの顔はマイク・ペンス副大統領のカウンターパートである。インディアナ州知事を務めたペンス副大統領は知事時代に日系企業の誘致に熱心に取り組んだと言われる。ロス商務長官と並んで、ペンス副大統領に対する日本の政界・財界の期待は大きい模様だ。

だが、財務相としては麻生氏はスティーブ・ムニューチン財務長官と相対することになる。ムニューチン長官はドル相場に関してバランスのとれた発言を行っているが、強いドル高政策に信念を持っているとは考え難い。

トランプ大統領は環太平洋連携協定(TPP)離脱を表明する傍ら、2国間の自由貿易協定(FTA)を重視する考えを示しており、その際、相手国の為替操作を禁ずる条項を組み入れる意向を打ち出している。こうした点が今後、日米通商交渉の中で浮上し、ドル円の上値を重くすることが予想される。

<ポストTPPの米国通商戦略>

日米FTAでは、米新政権はTPPで得るはずだった果実を求めてこよう。その一つは日本による農産物輸入の自由化(関税引き下げ)だ。

TPP交渉が白熱化した2014―15年にかけて、安倍政権はしたたかにも、農産物に関しては米国とライバル関係にあるオーストラリアとのFTAを成立・発効させた。このままTPP漂流で日米間にFTAを欠いたままだと、米国の農業団体は日本という輸出市場を失うことに対するストレスを高めるはずだ。トランプ政権に日米FTA成立に動くことを促すことだろう。

反面、TPPへの警戒感が強かった米自動車産業はトランプ政権によるTPP離脱を基本的には前向きに捉えていよう。だが、オバマ前政権はTPPをスムーズに実現するため、2015年11月、米財務省に音頭をとらせて参加12カ国のマクロ当局による為替操作を回避する共同宣言を発行させた。

最近、米自動車産業から為替操作を問題視する発言が目立つのは、TPPで得るはずだったこの釣果(ちょうか)を失うまいとする思惑が透けて見える。1月、トランプ大統領は日本を名指しして自動車産業や通貨政策を批判したが、その伏線にはこうした流れがあると考えられる。

<米中通商紛争が招く円高リスク>

もう一つ、通貨政策の観点から今後のドル円を考えるにあたって、欠くことができない視座が、熾烈化しそうな米中通商問題とそれが人民元相場に及ぼす影響だ。

というのは、トランプ政権が中国との不均衡是正を強力に推進し、元高圧力を強めようとするときに、逆に元安を誘発しかねない。もしくは、中国に元高誘導を躊躇(ちゅうちょ)させる要因になりかねない円安が歓迎されないことは明白だからだ。

ここで理解する必要があるのが、中国の人民元政策の特殊性だ。人民元は対ドルで多少は変動するが、その変動幅は小さく、いまだに基本的にはドルリンクの通貨である。そのため、人民元の円やユーロ、韓国ウォンなどアジア通貨に対する為替相場はドルとともに変動する傾向にある。

ゆえに、2014年のように急激なドル高が進む際、人民元も円やユーロ、韓国ウォンなどに対して通貨高となる。そうしたときに人民元が全面高になり、競争力を失うことを避けるために、中国は対ドルでは元安誘導を行う傾向にある。

為替報告書の記述などから察するに米財務省は正しくこの「ドル高円安が元安ドル高を招く」ロジックを理解している。2014年10月に黒田日銀が追加緩和に踏み切り、急激な円安が進んだ後、米国の通貨政策が態度を著しく硬化させたのは単に円安ドル高に不満を募らせただけではない。それが中国に対ドルで元安誘導を行う口実を与えることを警戒したからだ。実際、その米国の懸念は2015年8月に行われた突然の人民元切り下げという形で実現することにもなってしまった。

しかも、事態をより複雑にするのは、目下、中国は深刻な資本流出問題に直面しており、元買い/ドル売り介入を余儀なくされ、外貨準備も急減中であることだ。こうした中で元高を実現するには、まずは資本流出を止める必要がある。

中国から資本流出に歯止めがかからないのは、1)米連邦準備理事会(FRB)の引き締めによって金利差面でドルの人民元に対する魅力が増していること、2)それが中国の個人や企業の間に先々のドル高元安観測を生んでいることがある。

加えて、3)FRBの引き締めに伴うドル高の反面で進む円安やユーロ安、アジア通貨安が競争力問題を通じ、最終的には上記のような対ドルでの元安調整につながることを予感し、投資家や企業が先んじて元売りを加速させているという側面もある。

トランプ政権も早晩、人民元が置かれている、このような特殊な環境を理解するはずだ。

<最大で105円への下ぶれもあり得る>

上記の通り、今後、日米関係は通商問題に絡んで重要局面を迎える。その交渉は決して容易なものではなかろうが、ペンス副大統領やロス商務長官といった、日本にとって心強い味方がいることも事実だ。

加えて注目されるのが、トランプ大統領が新設した国家通商会議の委員長にカリフォルニア大学のナバロ教授が就任したことだ。「Death By China(中国による死)」の著者であるナバロ委員長は対中強硬派で知られるが、対中政策上、いわゆる「第一列島線」に位置する日本は台湾とともに地政学的な重要性が大きいと考えていると察せられる。

トランプ大統領が自ら日本を名指しで批判したことは気になるものの、基本的には通商チームが機能し始めれば、日本への直接的な攻撃は緩んでいくのではないかと考えられる。

ただし、それでも、トランプ政権とその通商チームが中国との不均衡是正に真剣であればあるほど、元安を誘発しかねない円安にはナーバスになってくるはずだ。その中国に対してタカ派的なトランプ政権の通商交渉スタンスが日米財務省の通貨政策や、FRBや日銀の金融政策に影響を及ぼすことも考えられる。

今後しばらくはトランプ政権の下で、約20年ぶりに表舞台に躍り出ることになった通商問題が市場で猛威を振るうことが予想される。その中でも最初の難関となるのは、中国が為替操作国に認定されるか否かが問われる今年4月の米為替報告書だと考えられる。

その頃までにドル円は108円前後へ値崩れするというのが現在の筆者の中短期見通しだが、一時的になら最大で105円程度への下ぶれも驚きでない。

*高島修氏は、シティグループ証券のチーフFXストラテジスト。1992年に三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行し、2004年以降はチーフアナリスト。2010年シティバンク銀行入行、チーフFXストラテジストに。2013年5月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

ロイターをフォローする
おすすめ記事


視点:トランプ円安は幻想、進む「米国の日本化」=青木大樹氏 2017年 01月 23日
コラム:トランプ氏の円安誘導批判は「空砲」=池田雄之輔氏 2017年 02月 06日
コラム:最強通貨は円か、2016年相場の重い事実=佐々木融氏 2016年 12月 30日

http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-osamu-takashima-idJPKBN15O0AQ?sp=true


 

 


トランプ政権の為替発言は「ナンセンス」−為替取引で首位のシティ
Lananh Nguyen
2017年2月10日 10:57 JST

揺さぶりかけても効果は限定的とシティのチーフエコノミストは指摘
市場は米国でのかなりの規模の刺激策と一層の金融引き締めを想定

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i3es.RQsyNYg/v2/-1x-1.png

ナンセンスでたわ言。為替相場に関するトランプ政権の発言について、シティグループのチーフエコノミスト、ウィレム・ブイター氏はこう評価した。
  トランプ大統領がドル安誘導の発言を行うとともに、為替操作に従事しているとして米国の主要貿易相手国の一部を批判しているものの、外国為替取引で世界首位のシティグループは、ドルが今年上昇すると予想する。
  ブイター氏はブルームバーグテレビジョンのインタビューで、為替相場についてトランプ氏が中国と日本を批判したことに言及し「全て基本的にナンセンスだ」と述べ、「為替操作しているという発言は全て基本的にたわ言だと思う」とコメントした。

  ブイター氏は「トランプ政権がドル安誘導を試みてどれほど激しく揺さぶりをかけても、市場が米国でのかなりの規模の刺激策と一層の金融引き締めを想定しているのなら、ドル相場は短期的にふらつくかもしれないにせよ、他の主要国通貨に対して1つの方向にしか進まない。それは上昇だ」と語った。
  シティはドルが年内に対円で1ドル=124円に上昇し、対ユーロでは等価を超えると予想している。
  ブイター氏はトランプ氏について、「為替相場の経済学の基礎をおさらいするのがよいだろう」と指摘。世界の他の国々や地域が引き続き概して金融緩和のモードにあり、米国では拡張的な財政政策と金融の引き締めが見込まれる中で、「自国通貨下落の想定はできないはずだ」と話した。
原題:World’s Biggest FX Trader Calls Trump Currency Talk Hogwash (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-10/OL4UIC6KLVR401

 


 


 

日米首脳会談で為替市場が注視する「手掛かり」
安倍晋三首相は10日にトランプ米大統領との初の首脳会談に臨む
By SAUMYA VAISHAMPAYAN、JAMES GLYNN AND IRA IOSEBASHVILI
2017 年 2 月 10 日 12:39 JST

 【香港】安倍晋三首相とドナルド・トランプ米大統領との初の首脳会談を控え、専門家は日米関係の行方を見極めようとしているが、投資家はもう一つ重要な関係、つまりドルと円の関係を探る上で首脳会談を注視している。

 トランプ氏が11月の大統領選で勝利した後、米国の経済成長やインフレが加速するとの見方から、ドルは円に対して10カ月ぶりの高値に急伸した。だが、今年になって選挙後の高揚感が薄れる中、逆に円が対ドルで4.1%上昇している。

 今後の展開を予測するのは簡単でない。トランプ氏のそうそうたる経済政策や、日本が着手した型破りな金融政策の持続可能性には大きな疑問符が付いている。

 水面下では緊張が走っている。両国首脳は先ごろ、日本は貿易で優位に立とうと円安誘導しているのではないかという議論に踏み込んだ。トランプ氏は先週、日本と中国が通貨安を誘導する中で米国は「ばかみたいに」座っていたと主張した。

 円への投資パターンを見れば緊張は明らかだ。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、ヘッジファンドやレバレッジドファンドは大統領選後に総じて円安への賭けに大きく傾き始め、昨年のそれまでのパターンが逆転した。

 だが、円安を見据えた先物やオプションの建玉数は1月3日にピークをつけて以来、約半分に減少している。

 JPモルガンの外国為替ストラテジスト、石川真央子氏は、為替レートにとって「短期的には政治リスクが最も大きい材料だ」と指摘した。

 日米首脳は、主要国が通貨切り下げ競争に引きずり込まれるとの懸念が高まる中で会談を迎える。ニュージーランド準備銀行(中央銀行)のグレーム・ウィーラー総裁は9日、経済成長のバランスを保つためには自国通貨の下落が必要だと述べた。

 米債券ファンド大手パシフィック・インベストメント・マネジメント(ピムコ)の世界経済アドバイザー、ジョアキム・フェルズ氏は今週のリポートで、現在の雲行きは為替版の「冷戦」のようだと指摘した。欧州や日本、中国の中央銀行が昨年後半に講じた対応策がそれぞれの通貨安につながったという。

 日本と米国に関しては、言葉と行動にいくつか矛盾があることで状況は複雑になっている。

 安倍首相をはじめとする日本の当局者は、国内のインフレを押し上げることが優先課題だとしている。だがアナリストらは、その政策と為替介入の類似性を否定するのは難しいと指摘している。

 日銀は主な政策の一つとして、10 年物国債利回りがゼロ程度で推移するよう長期国債の買い入れを行っている。利回りが高くなりすぎれば介入して国債を買わねばならないということだ。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は年内に複数回利上げするとみられており、日本が国債利回りを低水準に抑えることは一段と難しくなっている。米国の金利上昇に伴い、利回り追求型の投資家は日本国債を売って米国債を買い、日本の利回りを押し上げる可能性がある。そうなれば日銀は利回り目標を守るため、国債買いを強いられることになる。

 結果として米国債と日本国債の利回り差が拡大すれば、円相場に下押し圧力がかかることになる。

 2月3日にはこのシナリオが現実となった。日銀は10年物利回りが年初来で最高の0.150%へ上昇したことを受け、国債買い入れの増額を強いられた。これで一時的にではあるが円相場が下落した。

 JPモルガンの石川氏は「外からは為替を操作しているように見える」と言う。

 投資家は目下、米国が為替相場を巡って日本にさらなる圧力を加える兆しに注目している。

 BNPパリバ証券のシニアエコノミスト、白石洋氏は「市場が疑問を抱いているのは、日銀が長期金利を抑制できるかどうかではなく、これが政治問題に発展した場合でも長期金利をゼロ近辺にとどめる意思やコミットメントがあるかだ」と述べた。

 米国も矛盾をはらんでいる。トランプ氏や政権メンバーの最近の発言からすると、強すぎるドルは望んでいないことがうかがえる。

 それでも、トランプ氏の法人税減税や財政支出拡大計画で米国のインフレは上昇し、FRBに速いペースでの利上げを促す可能性があるとエコノミストらはみている。これが円を含む諸通貨に対するドル相場に上昇圧力をもたらすだろう。

 トランプ氏の貿易姿勢ももう一つ重要な要素だ。例えば、輸入品に国境税を課せば米企業の輸入が阻まれ、各社の外貨需要が減るため、ドルの支援材料になる。混乱に輪をかけているのが、トランプ政権の貿易措置の時期や程度、そして他国がどう反応するかが不透明であることだ。

 ピムコのフェルズ氏は、日本や他の主要国にとって理にかなった反応は、米国が保護主義を捨てるよう願って自国通貨のさらなる上昇を容認することだと述べた。

 ただ「これでトランプ政権が関税の核ボタンを押さずにすむかは分からない」とし、それは「時とツイッターが教えてくれるだろう」と語った。

関連記事

トランプ氏が修正する金融規制の欠陥
「トランポノミクス」が招く予期せぬ負の結末
安倍首相迎えるトランプ大統領の狙い
【社説】トランプ氏、安倍首相を安心させられるか
【社説】日米首脳会談、通貨論争は勝者なき戦い
安倍首相のトランプ氏別荘訪問、倫理上の懸念
トランプ氏、揺らぐ同盟国との信頼関係 日本も矛先か
トランプ新大統領特集
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwj73pjH8oTSAhVIW7wKHZXnCYQQFggeMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582612493011141640&usg=AFQjCNG9swlJTAMtSZGc4zSFQAM6ELrrUg

 


 

2017年2月10日 「週刊ダイヤモンド」編集委員・原英次郎
トランプ政権と日本経済、短期は楽観、中長期はリスク山積
大和総研・熊谷亮丸チーフエコノミストインタビュー

Photo:Reuters/AFLO
米国のトランプ新大統領は、就任直後からTPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱を正式に決定、自動車の対米輸出も問題視するなど、保護主義的な姿勢を露わにしている。これまでのルールをチェンジしようとするトランプ政権の登場によって、経済の先行きにも「不確実性」が高まった。そうした状況下にあって、トランプ政権の経済政策は日本経済どのような影響を与えるのか。大和総研チーフエコノミストの熊谷亮丸氏とエコノミストたちが緊急出版した『トランプ政権で日本経済はこうなる』(日経プレミアシリーズ)は、多くのヒントを与えてくれる。(聞き手/『週刊ダイヤモンド』編集委員?原 英次郎)

「アンカリング効果」を駆使する
トランプ大統領の交渉術

──第2次世界大戦後、曲がりなりにも国際経済の基本ルールは自由貿易でした。トランプ政権の誕生や英国のBREXIT(英国のEU離脱)はどのような意味を持つのでしょうか。ルールの大転換の時代に入ったのでしょうか。

?現在、第2次世界大戦後の自由貿易体制は大きな曲がり角を迎えています。欧州ではBREXITを受けて、他国が離脱の連鎖を起こす可能性が生じており、今後「欧州統合」に向けた取り組みが頓挫し、「ユーロ」が崩壊することなどを受けて、世界貿易が収縮するリスクがある点に注意が必要です。こうした中、一部で自由貿易の終焉を危惧する声が聞かれます。トランプ政権の誕生を受けて、世界経済の潮流が自由貿易から保護貿易へと進路を変える可能性すら生じています。

?トランプ大統領の就任までは、実際に大統領に就任すれば「選挙モード」から「統治モード」へと移行し、米国の首を絞めかねない過度な保護貿易主義に傾斜することはないと考えられていました。しかし、大統領就任後の強硬な言動を勘案すると、世界経済のテールリスク(確率は低いが発生すると非常に巨大な損失をもたらすリスク)として自由貿易の終焉という最悪シナリオについても慎重に見極めることが必要だと思います。

?世界経済が保護主義の暗雲に覆われる中、国際貿易取引量が大きく縮小し、各国の経済成長率が下押しされるリスクがあります。今後、二国間および多国間の通商交渉の成否が一国の発展の明暗を分ける時代に突入するでしょう。日本政府は、トランプ大統領に自由貿易を中心とする日米両国に共通する普遍的価値の大切さを再認識してもらうことに、最大限努力するべきだと思います。


くまがい・みつまる
東京大学大学院修士課程修了。1989年、日本興業銀行に入行。同行調査部エコノミスト、みずほ証券エクイティ調査部シニアエコノミスト、メリルリンチ日本証券チーフ債券ストラテジストなどを経て、現職。財務省「関税・外国為替等審議会」の委員をはじめとする様々な公職を歴任。
?とはいえ、トランプ大統領の発言に一喜一憂するのも考えものです。彼は「アンカリング効果」という、ハーバード・ビジネス・スクールなどで教えられている、交渉術の代表的なテクニックを駆使しています。「アンカー」とは「船のいかり」のことです。最初にトランプ氏が、自分たちに有利な場所に、船のいかりをおろすことによって、その場所が交渉の起点となります。

?例えば、トランプ氏が「日本政府は輸入障壁を設けて、米国製の輸入車を差別している」という、全く事実無根の主張を繰り返すことで、日本政府にとっては交渉のハードルが高くなってしまうのです。日本政府は、トランプ氏がこうした事実無根の主張を取り下げてくれただけで、何か交渉上の利益が得られたような錯覚に陥ります。トランプ氏は、こうした心理学の知見に基づく、高度な交渉術のテクニックを駆使しており、われわれは彼の真意がどこにあるのかを慎重に見極めていく必要があるでしょう。

──著書『トランプ政権で日本経済はこうなる』の特徴は、どのテーマについても複数のシナリオが想定されていることだと思いますが、予測にあたって基本にはどのような方針で臨まれましたか。

?まず、全体の構図を大局的に捉えて、基本シナリオを策定することを重視しました。そのためには、大統領選挙中の発言から閣僚人事の見通しに至る幅広い情報を丹念に分析することが欠かせません。また、各章がオーケストラのように反響し合いながら全体が構成されることも重要です。そこで、各章の執筆を進める中で、全体の構成を何度も見直して、より良いハーモニーが生まれるように微調整を繰り返しました。

?しかし、トランプ政権の政策には「不確実性」が高いのも事実です。このため、起こり得るシナリオを可能な限りピックアップした上で、その中で特に重要なものを別のシナリオとして提示することにしました。その際にも、幅広い情報を徹底的に分析して、確度の高いシナリオを厳選しました。

?さらに、日々刻々と状況が変化してきますので、最新の情報を反映させるために、ぎりぎりまで調整を行いました。例えば、トランプ政権の閣僚候補に関する有力情報が明らかになるたび、その情報の確度を綿密に分析しつつ、締め切り間際まで本書に盛り込むよう最大限努力しました。また、トランプ大統領の発言などを受けて、政策の方向性が大きく変化する可能性がありますので、「ツイッター」を常に確認していたことは言うまでもありません。

米国の歴史において
最も謎に包まれた大統領

──トランプ政権の経済政策の性格・特徴を、簡単にまとめていただくと、どうなりますか。政権発足後に、より明確になったことはありますか。


『トランプ政権で日本経済はこうなる』(熊谷亮丸+大和総研編著?日本経済新聞出版社?918円[税込])
?トランプ大統領は、米国の歴史において最も謎に包まれた大統領だと考えています。政治家や軍人を経ることなく、大統領の座に登り詰めたのは、トランプ大統領が初めてです。さらに、経済政策については、特異な主張を持った人物で、共和党候補ながら伝統的な共和党の主張とかなり隔たりがあることも大きな特徴だと言えます。

?例えば、財政面では、減税と同時にインフラ投資の拡大を主張しているため、結果的に共和党の「小さな政府」路線でなく、「大きな政府」路線になってしまう可能性があります。また、中絶・同性婚・銃規制への反対といった、共和党にみられる道徳面での保守的な主張を前面に出していません。さらに、貿易面でも、TPPからの離脱を表明しており、米国が国内雇用確保の観点から「保護貿易主義」路線を突き進む公算が大きいとみています。

?政権発足後に明らかになったことは、トランプ大統領が「有言実行」の人物だという評価を勝ち取るために、膨大なエネルギーを割いているという点です。例えば、大統領に就任してから早々に、オバマケアの見直し、TPPからの離脱、メキシコとの国境に壁を作るといった、大統領選挙中はかなり極端だと考えられていた政策事項に関する大統領令に署名しました。このため、われわれが本書でリスクシナリオとして取り上げた政策が今後いくつも実施される可能性があります。

──トランプ政権の経済はどのような波及経路を通じて、日本経済に影響してくるのでしょうか。主なものを挙げてください。政権発足後、修正が必要になったことはありますか。

?トランプ政権の成立が日本経済に与える影響を端的に示すと、「短期的には楽観」、「中長期的にはリスクが山積しており要注意」と整理できます。その主な波及経路としては、(1)米国向け輸出、(2)金融・資本市場、の2つを通じた経路が重要です。この構図は、トランプ政権発足後も変化していません。

?短期的には、米国企業と家計に対する減税やインフラ投資を中心とした財政政策、さらには規制緩和などが米国経済を押し上げると見込まれます。またトランプ政権の一連の政策を勘案すると、為替市場では少なくとも短期的に円安・ドル高が進行する可能性があります。円安・ドル高の進行は企業収益の拡大などを通じて株価の上昇要因ともなります。これらは輸出、消費、設備投資の増加などを通じて、日本経済の成長を高めると考えられます。

?他方、中長期的には、トランプ大統領の掲げる保護主義的な政策によって、米国の通商政策の内向き色が急速に強まり、世界経済が減速する可能性があります。米国の財政悪化に伴い「トリプル安」などと言われる、「債券安(長期金利上昇)・株安・ドル安」が生じる懸念があることに加え、「地政学的リスク」が高まり、消去法的に円が買われる可能性もあります。この結果、世界向け輸出の減少や企業収益の悪化などを通じて、日本経済が下押しされることになります。

中長期のリスクが発現すれば
日本経済を大きく下押し

──日本のGDPに与える影響も試算されておられますね。それぞれの前提と結果について教えてください。

?日本のGDPに与える影響を、中長期的な2つのリスクシナリオについて試算しています。具体的には、世界経済の実質GDPの水準が、(1)▲0.2%低下するケース、(2)▲1.3%低下するケースです。前者は、トランプ政権の保護主義的な政策などによって世界経済が一定程度下押しされると仮定したもの、後者は、2008年のリーマンショック級の急激な景気悪化を仮定したものです。さらに、いずれのシナリオにおいても、TOPIX(東証株価指数)が▲20%低下、ドル円レートが+10%上昇(円高)すると仮定しました。

?試算結果によると、1つ目のケースである、米国の実質GDPの水準が▲1.0%低下したケースでは、日本の実質GDPの水準は「トランプ・ショック」がなかった場合と比較して、▲0.7%程度押し下げられます。2つ目のケースである、リーマンショック級の影響を想定したケースでは、日本の実質GDPの水準は、同じく▲1.1%程度押し下げられるとの結果が得られました。試算結果については幅を持ってみておく必要がありますが、日本経済への影響は無視できない大きさだと言えます。

?このような中長期的なリスクに対する懸念が杞憂に終われば、それに越したことはありません。しかし、万が一の事態が発生した場合、日本経済に甚大な悪影響が発生しうる点は、是非とも心にとどめておいていただきたいと思います。

──日本政府や日本企業は、この本をどのように活用して、トランプ政権発足に伴う変化に準備したらよいのでしょうか。アドバイスをお願いします。

?本書は、トランプ政権成立が日本経済、グローバル経済、金融市場などに与える影響について多面的に検討し、複数のシナリオを提示している点が大きな特徴です。手前味噌ながら、先行きを考える上で役に立つ考察も随所にちりばめられています。トランプ大統領の就任から約1カ月前に本書を刊行して以来、日本経済を巡る情勢は日々刻々と変化していますが、依然として本書の内容は全く色あせていません。

?2月10日に日米首脳会談が予定されていますが、安倍総理には是非とも「したたかな」会談を行って欲しいと思います。米国の政治学者であるウォルター・ラッセル・ミード氏によれば、米国の歴代大統領の外交スタンスは4種類に分類できます。この中で、トランプ大統領は、「ジャクソ二アン」と言われる「現実主義」的な大統領だと見られています。これに対して、安倍総理は「理想主義」を重視する「ウィルソニアン」だと考えらます。

?こうした違いを考慮すると、安倍総理には2つの点が重要となります。第一に、「理想主義」の立場から、民主主義、人権、自由貿易、日米同盟などの普遍的価値を、トランプ大統領に心の底から伝えることです。第二に「現実主義」的な観点から、米国に実利を与える??すなわち「米国にとって日本と付き合うことは得だ」と確信させることも重要です。安倍総理には、「理想主義」と「現実主義」のバランスをとった、したたかな日米首脳会談を行って頂きたいと思います。

?最後に、本書はビジネスマンや就活生が通勤・通学時間などにも気軽に読めるように、簡単で分かりやすい文章にしているほか、気になった章を読むだけで話が完結する構成になっています。時間が空いたときにさっと手に取っていたければ、トランプ政権に関する多面的な論点を簡潔に整理することができると思います。それにより、トランプ政権成立後の世界経済の動向などに関心がある全ての読者の皆様のお役に少しでも立てれば、望外の幸せです。

DIAMOND,Inc. All Rights Reserved.
http://diamond.jp/articles/-/117437


 

 
日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?
【第6回】 2017年2月10日 村上尚己
日本のメディアが「当たらない予測を垂れ流すエコノミスト」の意見を好む理由


「わかりやすい経済解説」に潜むワナ
日本の経済メディアには、繰り返し繰り返し「過剰な悲観論」が登場するが、振り返ってみると、その経済予測が当たったためしはほとんどない。にもかかわらず、メディアは「予測を外した人物」のオピニオンを取り上げることを止めようとしない。

「トランプ相場」の到来を的中させた外資系金融マーケット・ストラテジストの村上尚己氏は、国内アナリストたちとメディアとの間にある種の「共犯関係」が成立しているのだと指摘する。同氏の注目の最新刊『日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?』から一部をご紹介しよう。

メディアと専門家の「共犯関係」

前回までの内容からもわかるとおり、じつは日本のメディアに登場するアナリストの言説を鵜呑みにしていると、損をすることはあっても、投資リターンを高めることにはあまり役立たない。今回のトランプ相場の到来だけでなく、2012年末からのアベノミクス相場への大転換すら指摘できなかったアナリストがほとんどである。予測を何度外しても、相変わらず珍説を披露するのをやめない人も散見される。

それでもなお、大新聞やテレビは彼らに意見を聞くのをやめようとしない。常識的に考えれば、ここまで精度の低い予測を垂れ流す人間には誰も耳を貸さなくなりそうなものであるが、なぜかそうはならない。これが日本の経済アナリストと経済メディアに見られる、独自の奇妙な構造である。そこで今回は、下記の通説を検討してみることにしよう。

[通説]「著名人の経済解説なら、わかりやすくて信頼できる」

私が知る限り、米大統領選でドル安・円高に動くシナリオをメインに据えていたプロフェッショナルの海外投資家はほとんどいなかった。彼らは基本的な経済理論を踏まえたうえで、それが金融市場の価格形成にどう影響するかを考えている。トランプ相場が「教科書どおりの値動きでしかない」と私が語る理由もここにある。彼らが突飛な予測をすることはほとんどないのだ。

なぜ日本では、経済にまつわる分析や報道が正常に機能しないのだろうか??以前の連載で触れた「円高シンドローム」のような歴史的経緯も軽視できないが、もう一つ考えられるのが、彼らが所属している組織の構造的要因である。

※参考
トランプ「円安批判」に戦慄する日本人の「歴史的トラウマ」とは?
―「円高シンドローム患者」の過剰反応に踊らされてはならない
http://diamond.jp/articles/-/116539

アナリストが重視するのは、
予測レポートの「質」より「量」

端的に言ってしまえば、日本のアナリストたちが繰り返し「当たらない予測」をし続けるのは、彼らが会社から「投資リターンを高めること」をそもそも期待されていないからである。

これは多少言い過ぎの面があるかもしれないし、なかには顧客の利益になる情報を真剣に伝えようと努力している人ももちろんいるだろう。しかし、アナリストがどれだけ多数のレポートを出し、どれだけ頻繁にメディアに露出していようとも、その人の予測精度の高さとはまったく相関がない(あるいは逆相関している)のが実情だ。

私自身もかつては国内外の証券会社やシンクタンクで勤務し、エコノミストやアナリストの仕事を務めてきた。エコノミストやアナリストの主な仕事は、マクロ経済や当局の政策動向を予測・分析し、投資家のための「レポート」にまとめることである。当然ながら、株価・金利・為替など金融市場の具体的見通しにまで踏み込むことになるので、時間が経てば予測が当たったかどうかははっきりと答えが出る。

しかし、金融機関やシンクタンクに勤めるサラリーマン・アナリストたちは、予測の精度を高めることにはさほどモチベーションを感じづらい。むしろ、社内的な評価を考えれば、重要なのは、レポートの本数を増やして顧客満足度を高めることである。

いまだから言うが、私自身もアナリストとして駆け出しの頃には、レポートの品質を高めることよりも、まずレポートの数を増やすことに注力せざるを得なかった時期があった。証券会社のアナリストにとって、予測の精度が人事評価にとって大きなウエイトを占めることは少ないし、そもそも予測が正確だったかどうかを検証する仕組みも整っていないのだ。したがって、サラリーマンとして一定の評価を得ようとするのなら、やはり目に見える形でレポートを(質は低くても)大量にアウトプットするのが最も合理的なのである。

「アナリストの評価」は
メディア露出に依存している

レポートの「本数」のほかに、アナリストが重視するのが、メディアへの露出である。経済紙やビジネス誌、ウェブメディアやテレビ番組に出演して、コメントをする機会が増えれば、当然ながらそのアナリストの影響度は高まるし、所属企業のブランド認知も進む。さらに、組織に所属するサラリーマンとして、その後のキャリアステップを考える際にも、メディアへの露出を高めて、「顔」を売っていくほうがプラスの影響が大きいのだ。

こうした「著名アナリスト」になるうえで重要なのは、的確な予測をできるかどうかではない。投資家だけでなく購読者や視聴者に「わかりやすいと感じてもらえる筋書き」をつくれるか、さらにメディア側の意向に沿った発言ができるかがモノを言う世界である。

だからこそ、アナリストたちは予測にしっかりとした理論的背景があるかどうかはさほど重視せず、「リスクオフによって安全通貨・円が買われて円高になる」などといった、マスコミ好みの「もっともらしいストーリー」をつくることに注力するのである。

私は、現在、外資系運用会社のマーケット・ストラテジストという立場にあり、同僚らと議論を繰り返しながら、最終投資家がいかに儲けられるかをサポートする投資戦略を立案する立場にある(難しいがやりがいがある仕事だ)。

つまり、現在の私は投資家側のポジションにもあり、さまざまなアナリスト/エコノミストたちのレポートの「ユーザー」でもあるわけだ。日頃から膨大な数のレポートに目を通していると、アナリストたちの間にもかなりのレベル差があることに気づかざるを得ない。まさに玉石混交といった感じだが、大半を占めるのは「石」であるし、時間的余裕も限られているので、すべてをじっくり読んでいるわけにはいかない。そうなると、どうしてもメディア露出が多い人のレポートから優先的に目を通すことになることも少なくないのだ。

もちろん、プロの投資家たちは特定のレポートだけを鵜呑みにすることはなく、多数のシナリオ・分析を収集したうえで、自分なりの投資判断を下していく。そうだとしても、やはりメディアに露出しているアナリストのほうが、レポートを参照してもらえる機会は多いだろう。アナリストとしての影響度を高めるうえでも、メディアに出ることは重要なのである。

私はこれまで約20年間にわたって金融業界に身を置き、米・欧・日の証券会社を含めた複数の会社を渡り歩いてきた。だからこそ、アナリストという人種がどういう考え方をしながら仕事をしているのかはよく理解しているつもりだ。

さらにいまは、さまざまなレポートを横断的に参照して、それぞれの経済分析・予測の価値を見極めていくマーケット・ストラテジストの仕事をしているので、そうした観察材料にも事欠かない。そうなると、社内政治やメディア露出に注力し、経済分析・予測の精度を高めようとしない「なんちゃってアナリストたち」の存在は否が応でも目に入ってくるのである。

社内的な評価制度やメディアとのもたれ合いの構造を考えると、彼らの行動に合理的な側面があるのも事実だ。彼らも一人の経済人として、自分の利益を最大化する振る舞いをしているという意味では、一方的に批判するのはフェアではないのかもしれない。

しかし、誤った経済観を広めることは、投資家たちの不利益となるだけでなく、長期的には日本経済の正常化を遅らせる要因にもなる。彼ら個人の社会的な成功のために、日本の人々の生活が犠牲になるのはやはりどう考えてもおかしいし、許しておくわけにはいかないというのが私の率直な思いである。

メディア側も「使いやすい専門家」に殺到

アナリストばかりを批判してきたが、一方でそんな彼らを「起用」するメディアもメディアだろう。メディアが誤った情報を発信する専門家に取材し、結果的にデマを拡散してしまうのには大きく2つの理由がある。

一つはまったくシンプルに、メディアの人間はアナリストの品質を見定める目を持っていないからだ。ここで言う「品質」とは、しっかりとした経済学の枠組みに沿ったまともな予測をする能力のことだ。しかし、テレビマンや新聞記者がそこまでの知識を持っていることはまずないし、その能力の有無を判断するのは難しい。そこで結局、大手金融機関・有名シンクタンクなどの立派な肩書きがあるアナリスト、あるいは、視聴者にわかりやすくて面白いストーリーを提供できる「先生」が指名されることになる。

もう一つは、アナリストと同様に、メディアという組織そのものが抱える問題である。たとえば新聞記者に、「相場の動きを言い当てる記事を書こう」というインセンティブが働いているケースはまずないだろう。メディアの役割は、投資リターンを高める材料を提供することではないので、それはやむを得ない。

もしもそういう記事を書いたとしても、それは予測を提供したアナリストの手柄として認識されるだろうし、そのことによって記者の社内的評価が上がるかというと、そんなことはないだろう。アナリストと同様、短期的には一定量の仕事をこなすことが求められるという意味では、記事などの「本数」を稼ぐことが重要になる。

また、営利企業でもあるメディアは、市場や経済の動きを「広く伝えること」、つまり、視聴率・購読者数を高めようとすることからは逃れられない。そのためには、些細な事象についてセンセーショナルに記事を書いたり、危機を煽るような番組演出をしたりすることが必要になる。

ランキング上位に入る
人気アナリストの「正体」とは?

そうなると、「メディアに選ばれるアナリスト」というのは、2種類に分かれる。一つはいつでも取材にスムーズに応じてくれて、わかりやすい話をすぐできる人。メディアの人たちは厳しい時間的制約のなかで、一定量のニュースを次から次へと「生産」しなくてはならない。メディア側でストーリーの筋道をつくってしまっている場合には、スピーディに事実確認をして、臨場感の味付けや権威づけを手伝ってくれる専門家が重宝される。

なお、経済メディアが伝える「アナリストランキング」などがあるが、これに投票するのは投資家であり、普段からサービスしてくれているアナリストへの「対価」としての意味合いが大きい。経済予測の精度はほとんど勘案されず、アナリストの所属する証券会社の営業サービスがものを言う、一種の人気投票である。

そして、著名アナリストになるためのもう一つの要素が、センセーショナルで面白いシナリオを語れることである。これは経済書のマーケットなどでもよく見られるパターンだ。こういう人たちは定期的に書籍を刊行するが、経済の状況がどれだけ変化しようとも、「国債が暴落し、日本経済が破綻する!」「未曾有の円高がやってくる!」など、ネガティブな見通しをいつも繰り返し語る点で共通している。前回の(大ハズレだった)予測については「なかったこと」になっているケースがほとんどだ。

これらは経済分析や投資判断の材料としての価値はゼロだが、一定数のファンが絶えないことを考えると、一種の「伝統芸能」ないし「エンターテインメント」として消費されており、間接的には日本経済に貢献していると言うべきかもしれない。むしろ、おなじみの「日本が危ない!」論が聞こえているあいだは安心だ。彼らが万が一、「日本がよくなる!」などと言いはじめれば、逆に、私は景気の行き過ぎを疑うだろう。

いずれにしろ、日本の経済メディアは、世界の投資のプロたちからすれば考えられないようなデマ情報を流しているというのが実情である。だが、最後につけ加えておけば、アナリストのなかにも良心のあるプロフェッショナルはいるし、しかるべき専門家の声を報じるメディアも存在している。それを見分ける目を養っていただくうえでも、最新刊『日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?』を参考にしていただければ幸いである。

[通説]「著名人の経済解説なら、わかりやすくて信頼できる」
【真相】否。メディアが流す「経済予測」は外れて当然。

村上尚己(むらかみ・なおき)
アライアンス・バーンスタイン株式会社 マーケット・ストラテジスト。1971年生まれ、仙台市で育つ。1994年、東京大学経済学部を卒業後、第一生命保険に入社。その後、日本経済研究センターに出向し、エコノミストとしてのキャリアを歩みはじめる。第一生命経済研究所、BNPパリバ証券を経て、2003年よりゴールドマン・サックス証券シニア・エコノミスト。2008年よりマネックス証券チーフ・エコノミストとして活躍したのち、2014年より現職。独自の計量モデルを駆使した経済予測分析に基づき、投資家の視点で財政金融政策・金融市場の分析を行っている。
著書に『日本人はなぜ貧乏になったか?』(KADOKAWA)、『「円安大転換」後の日本経済』(光文社新書)などがあるほか、共著に『アベノミクスは進化する―金融岩石理論を問う』(中央経済社)がある。
http://diamond.jp/articles/-/116544

http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/875.html

[政治・選挙・NHK220] 対トランプ外交、安倍総理の楽観姿勢が危険な理由 内容薄でも「日米首脳会談」が超重要な理由 貿易戦争の不安、楽観予想の重し
2017年2月10日 清談社
対トランプ外交、安倍総理の楽観姿勢が危険な理由

その過激な政治手法に、アメリカ国内はもちろん、世界各国の首脳から早くも非難の声が上がっているトランプ大統領。一方、日本政府は妄信的とも思えるほどの楽観論を崩していない。しかし、ジャーナリストの鈴木哲夫氏によると、現在の日本外交の置かれている状況は、かなり厳しいものであるという。(文/清談社)

安倍総理のブレーンが
明かした危機感

?1月20日に第45代アメリカ合衆国大統領に就任したドナルド・トランプ。政権発足まもない1月27日には、イラクなど7ヵ国からのアメリカ国内への入国を一時停止する大統領令を発令。さらに、その大統領令に反発したイエーツ司法長官代行を解任するなど、就任早々、過激な言動が話題となっている。


「ビジネスマンだから、極端なことはしないはず」という根拠なき楽観論を持つ安倍総理とその周辺。しかし、過去を振り返ってみても、日本はアメリカとの二国間交渉では全戦全敗。日本も自国の利害をハッキリ主張していかなければ、トランプに強引に押し通されるだけだ?写真:首相官邸HP
?世界各国の首脳が非難の声を上げるなか、日本政府は、トランプ政権を批判するメッセージを発することもなく、静観を決め込んだまま。従来のアメリカ追随の外交姿勢を変えていない。鈴木哲夫氏が語る。

「安倍総理の周辺では、トランプ大統領に対して非常に楽観的というか期待感というか、そういう見方をしている人も多い。例えば、ビジネスマンだから政治を理解してくれば、そう過激なことはやらないはずだと考えたり、他国には厳しくても、日本との同盟関係を大事にして、実際に大統領になったら、選挙で主張していたような極端なことはしないはずだ、と思い込んでいるようなんです」

?さらにこうした楽観論は、総理の周辺だけでなく、安倍総理自身も持っているというのだ。

「安倍首相周辺から聞いた話では、安倍首相は、トランプ大統領に会って一対一で胸襟を開いて会談すれば、活路を見出せると思っていたようなんです」

?しかし、総理周辺にも危機感を抱く人物もいたという。

対アメリカの外交交渉で
過去全敗してきた日本

「昨年末、私が取材した安倍総理の外交面でのブレーンの議員は、トランプへの楽観論を非常に甘い見方であると言い切っていました。当時は、安倍総理がトランプと初会談した直後でしたが、彼がその会談を『会うのも地獄、会わないのも地獄』と評していたのが非常に印象的でした。またそれだけでなく彼は『トランプは、本当に何をやるかわからない。いくらビジネスマンだからといっても、いまは権力を手にした大統領。ビジネスマンだから話がわかるだろうなんていう発想は、絶対に間違いだ』と警鐘を鳴らしていましたね」

?では今後、日本とアメリカの外交交渉はどのような局面を迎えることになるのか。

「これからの外交交渉は、アメリカとの二国間(バイラテラル)での交渉になることは間違いありません。実は、日本は過去の歴史を振り返ってみても、対アメリカの外交交渉で、勝ったことは一度もありません。全敗の歴史なんです。アメリカ外交の強みは、なんといっても、一つの視点だけでなく、安全保障など様々な要素を絡めて、自らの要望を強引に押し通そうとするところです」

?今までアメリカは、自動車貿易に関する交渉においても、安全保障やコメの輸入、保険や金融業界の規制緩和などあらゆる要素を交渉材料にして、自国にとって最も有利な条件を引き出そうとしてきた。

「あらゆる取引材料のなかでも日本に対して効果的なものは、安全保障です。アメリカ軍の一部撤退や、在日米軍駐留経費の日本側負担分の増額に言及されると、日本は強く出られません。総理ブレーンの議員は、今後の首脳会談のポイントとして、日本の利害をはっきりと主張し、平気で喧嘩ができるような環境整備が重要だと語っていました」

?要するに、時にはアメリカ政府が乗りにくいような強気な提案もして、交渉決裂も辞さないような姿勢も見せていかないと、交渉上手なアメリカに簡単に舐められてしまうということなのだ。

ヒラリー落選で外務省が失墜
対トランプ外交は経産省主導に

?トランプ政権の誕生という外部要因だけでなく、日本政府内部における問題点についても鈴木氏は語る。

「現在の安倍政権の対アメリカ外交のイニシアチブは、本来主導するはずの外務省ではなく、経済産業省が持っています。これには、昨年のアメリカ大統領選での外務省の失態が関係しています。このとき、外務省はトランプの大統領就任を想定せず、ヒラリー・クリントンの大統領就任を確信していたため、安倍総理の信頼を失ってしまいました。そのため、11月の総理とトランプとの会談も、経産省ルートでトランプタワーに入っている企業を通じて、会談の実現にこぎつけたと経産省OBが話していました」

?元々、外務省と経産省との関係はあまり良くないが、外交の主導権を巡り、非常にギクシャクしているのは、当面の不安要素の1つだろう。また、トランプ大統領が以前から言及している在日米軍の費用の日本負担の増額や、在日米軍の撤退をめぐり、日本国内の安全保障をめぐる議論も変容する可能性があるという。

「アメリカ軍が撤退するならば、日本独自の防衛力を強化しなければいけないという発想から、憲法改正し、自衛隊を増強しようという議論が右寄りの保守層を中心にして、活発化する可能性はあります。実際に、自民党内では、日本単独で北朝鮮に先制攻撃できる法律を整備しようという動きも起きているほどですから」

?その一方で鈴木氏は、トランプ政権の発足が日本にとって従来の外交から抜け出すチャンスになりうるとも指摘する。

「アメリカ外交は、今後、TPPのような多国間的な交渉ではなく、バイラテラルな一対一での外交になります。これは日本にとっても、これまでの外交ではなく、アメリカに遠慮せずに、他国とバイラテラルの外交を展開するチャンスにもなります。日本独自の外交力を発揮することができれば、これまでと異なる日本の姿勢を国際的にアピールすることもできます」

?トランプ政権の発足により、安倍政権も正念場を迎えることになりそうである。舵取りを間違えれば、安定しているかのように見える安倍政権の足元が揺らぐ可能性も、充分にあると言えるだろう。
http://diamond.jp/articles/-/117434


 


内容薄でも「日米首脳会談」が超重要な理由
安倍首相のミッションは小さくない
ピーター・エニス :東洋経済特約記者(在ニューヨーク) 2017年2月10日

安倍首相ははたしてトランプ大統領と、信頼関係を築くことができるか(写真: Kim Kyung-Hoon/ロイター)
日米同盟の結束の堅さをアピールできるのか。昨年11月にドナルド・トランプ大統領が当選した直後、安倍晋三首相がトランプタワーを「電撃訪問」してから約3カ月、今回は大統領就任後初の公式な日米首脳会談となる。2人はまず首都ワシントンで会談し、その後、大統領専用機でフロリダ州パームビーチにあるトランプ大統領の別荘に向かい、11日にはゴルフをプレーする予定だ。

すでに双方は、日米同盟の強みを改めてアピールすることで合意しており、日米関係悪化の要因となりかねない、トランプ大統領の「米国第一主義」に関する話は、少なくとも今回は出てくる可能性は低い。

「パーソナルな関係」を築く旅

これには日本側も安堵しているが、日米貿易摩擦があった1980年代に形成されたトランプ大統領の日本に対する基本的な考え方については警戒感をもっており、リラックスしたゴルフ会談のさなか、この話題が出る可能性を少なからず懸念している。もう1つ、日本側の関係者が危惧しているのが、自身の外交手腕に自信をもっており、今回トランプ大統領と「パーソナルな関係」を築こうとしている安倍首相が、誤ったアプローチでトランプ大統領を興奮させないかということである。

先ごろ開かれたオーストラリアのマルコム・ターンブル首相との電話会談でトランプ大統領が、突如「キレた」ことを考えれば、現実的にない話ではない。

もっとも、首脳会談に関与している日米関係者の話をまとめると、今回は比較的前向きな会談となりそうだ。これは、米国政府関係者が言うところの「マティス効果」にほかならない。

マティスとは、2月3日来日したジェームズ・マティス国防長官のことだが、同氏はトランプ政権のほかの主要閣僚と違ってトランプ大統領と一定の距離感を保っていることで知られる。選挙戦中にトランプ大統領の応援をしたこともなければ、今回指名前に行われた面接もわずか40分で終わった。トランプ閣僚のなかでは「親トランプ度」は低いといえるが、それでもトランプ大統領は、マティス国防長官の「狂犬」という異名を気に入り、外交政策や安全保障政策については、同長官の経験や知識を参考にする考えのようだ。

マティス国防長官も、自身の立場や任務を認識しており、ホワイトハウスの「強硬派」が吠えないうちに日本を訪れ、日米同盟のあり方や、これに対する米国の基本的なスタンスを再確認することを急いだ。先日、マティス国防長官の来日時にも書いた(トランプ閣僚が「日韓訪問」を最優先した理由)が、日本と韓国を国防長官として初の訪問地に選んだ理由は、早ければ2月中にも北朝鮮による軍事的な挑発行為が起こりかねない、という米政府の強い懸念があったからだ。こうしたなか、マティス国防長官は日韓訪問で改めて、東アジア地域における平和と安定に米国として関与することを再確認している。

マティス国防長官は同時に、日米同盟における日本の費用面での貢献についても触れ、トランプ大統領が選挙戦中口走った「日本(やそのほかの米国の同盟国)は米軍駐留費を全額負担すべき」という考えについても、「棚上げ」することに努めた。今回の日米首脳会談でも、この件は話題に上らない公算が大きい。

また、マティス国防長官は、中国が領有権を主張する沖縄・尖閣諸島は、日米安保条約の適用範囲内であると再確認、その後レックス・ティラーソン米国務長官も岸田文雄外相との電話会談で、これを再確認している。

つまり、マティス国防長官は事前に日本を訪れたことによって、日米同盟は「日本の経済競争力向上にしかつながっていない」との考えをもつ(トランプ大統領含む)米政府内の強硬派の口を(少なくとも今は)封じることに成功したわけである。

中国が話題に上ることは?

一方、トランプ政権の貿易政策はまだ固まっておらず、国務省や国防総省におけるアジア専門家のポジションはまだ埋まっていない。トランプ大統領は、元銀行家で日本にも詳しいウィルバー・ロス氏を、自身の貿易政策チームのトップに据える考えだが、まだ確定はしていない。最終的にはロス氏で落ち着くことになるとみられるが、確定するまでは、トランプ政権がアジアにおける貿易政策について確定的なことを語ることはないだろう。

いずれにしても、トランプ政権の貿易政策における最大の焦点は中国になることは間違いないが、現時点では、南シナ海における米軍のプレゼンスなど、対中国に関する具体的な政策を日本と話し合う用意はできていない。マティス国防長官が来日した際も、南シナ海や台湾における日本の監視・哨戒(しょうかい)活動についての話は出ず、今回の首脳会談でも話し合われることはないだろう。

今のところホワイトハウスでアジア政策のカギを握っているのは、スティーブン・バノン首席戦略官と、ピーター・ナヴァロ国家通商会議代表である。対中強硬派で知られるナヴァロ氏は、これまで一貫して中国の貿易政策や東アジアにおける拡大主義を批判しており、それがトランプ大統領の目に留まったといわれている。今後は、バノン首席戦略官とナヴァロ氏のお眼鏡にかなったアジア専門家が政府に集められるとみられているが、いったんロス氏が貿易政策チームのトップに就けばナヴァロ氏の影響力は小さくなるのではないか。

今回の首脳会談におけるトランプ政権のキーパーソンの1人として、新たに大統領経済補佐官の次官に指名されたケネス・ジャスター氏を知っておくといいだろう。

投資銀行家だけでなく、米政府でもキャリアを積んできたジャスター氏は、トランプ大統領の娘婿、ジャレッド・クシュナー氏の任務を引き継ぐ格好となる。ちなみに、ジャスター氏は大統領選直後の安倍首相によるトランプ大統領訪問をアレンジした人物でもある。今回も、在米日本大使館はまずクシュナー氏に連絡を取ったようだが、クシュナー氏はNSCが今回は主導権を握ることを希望し、最終的にはジャスター氏がこの役割を引き受けた。

さて、環太平洋経済連携協定(TPP)の離脱など、トランプ大統領がすでに積極的に保護主義の方向へ動いているなか、経済協力において日本は、トランプ大統領が「米国を再び偉大にする」のに協力するというスタンスを保つのがいいのかもしれない。

つまり、安倍首相はワシントンを訪れるにあたって、新たな(あるいはさらなる)2国間における経済協力によって、米国のインフラやテクノロジーの発展を促し、米国での雇用を新たに70万人増やすことができると示すのではないか。トランプ大統領が安倍首相の案を気に入れば、ただちにツイートする可能性もある。

安倍首相の提案が「筋違い」になる可能性も

もっとも、これは安倍首相が示す日本による対米投資のメリットが、必ずしもトランプ大統領が描いている米国の成功とは一致しない可能性もあることから、安倍政権にとっては薄氷を踏むような戦略でもある。たとえば、米国にある日本の自動車メーカーで雇用が増えるというのと、米フォードや米ゼネラルモーターズ(GM)のシェアが、日本市場で増えるという話はまったく異なる。トランプ大統領は、前者だけでなく、後者も含めて「米国の成功」とみなしている。これは、たとえば高速鉄道など日本による米国へのインフラ投資に関しても同じことがいえるだろう。

日本の政府関係者によると、今回安倍首相は、トランプ大統領を刺激しないためにもTPPに触れることはなさそう。ただし、安倍首相としては、日本と米国がオープンかつ透明性が高く、さらに公正な世界貿易の最前線に立つべきとの考えは示したいようだ。さらには、2国間協定の先には、多国間協定もあるとの考えを伝える可能性もあるという。

安倍首相はまた、新たな日米経済協力のフレームワーク作りに向けて、マイク・ペンス副大統領と、麻生太郎副総理兼財務相の関与を強めることによって、トランプ政権における保護主義的な貿易政策を少しでも緩和したい考えがあるようだ。

トランプ政権の貿易政策が固まっていないことを考えると、今回の首脳会談で予想外のことが起きる可能性は低いだろう。しかし、今後の日米関係においてトランプ大統領と「パーソナルな関係」を築くにいたらなくとも、日米同盟の利点を確認することや、経済政策の基本的な考え方を共有するという点で重要な場になることは間違いない。
http://toyokeizai.net/articles/-/157960

 

貿易戦争の不安、エコノミストの楽観予想の重しに
By JOSH ZUMBRUN
2017 年 2 月 10 日 07:23 JST

 米国のエコノミストらは大統領選以降、経済成長とインフレ、金利の見通しを引き上げ、上振れリスクが米経済に及ぼす影響を見極めようとしてきた。

 ドナルド・トランプ新政権はつまるところ、景気押し上げを図る減税やインフラ支出拡大、規制緩和といった政策を公約に掲げてきた。首尾良く実施されれば、こうした政策の大半は実際に少なくとも短期的な成長加速につながるためだ。

 だが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の最新のエコノミスト調査では、経済学者や金融機関、民間のエコノミストらが政権の国際貿易に対する姿勢に一層不安を募らせていることが明らかになった。

 経済予想に上振れリスクがあるとみるエコノミストの割合は、先月調査の64%から今月は50%に後退した。上振れリスクとは予想を上回るペースで景気が拡大する状況であり、一般的には歓迎すべきサプライズである一方、景気過熱や連邦準備制度理事会(FRB)が利上げで後手に回る可能性も高まる。

 経済予想に対する最大のリスクを特定する自由回答形式の質問では、貿易戦争や新たな貿易規制の米経済に打撃を与えるリスクを挙げたエコノミストが75%に上った。その他のリスクとして、恐らく中国か欧州発の世界的な景気減速が米経済の足かせとなる可能性や、急速過ぎる政策金利引き上げなどが指摘された(もっとも、これらは昨年の中心的な懸念要因だったが、足元では貿易懸念の陰に隠れている)。

 世界各国との貿易協定の再交渉やメキシコに国境の壁の建設費用を支払わせる方針は、トランプ大統領が選挙戦中に意欲を見せ、政策綱領でも広く知られた項目だった。それでもエコノミストの多くは、トランプ氏がメキシコやオーストラリアなどと協議した際、一部で貿易を巡りこれほど早く状況が悪化したことに不意打ちを食らった格好だ。

 全米不動産協会(NAR)のチーフエコノミスト、ローレンス・ユン氏は「メキシコに大きな苦痛を与え中国を傷つければ、米国に打撃が跳ね返ってくる」と指摘する。

 ただ、今のところ下振れより上振れのリスクを予想するエコノミストの方が多く、まだ短期的に成長を後押しする政策に集中する機を逸してはいないとの見方が大勢だ。

 ロバート・フライ・エコノミクスの主任エコノミスト、ロバート・フライ氏は「もしトランプ氏が貿易から税制に焦点を移せば、上振れリスクとなる」と語った。

 WSJ調査によると、米国内総生産(GDP)成長率の予想平均は今年が2.4%、来年は2.5%となっている。失業率は足元の4.8%から4.5%への低下が見込まれる。向こう12カ月以内にリセッション(景気後退)入りするリスクは15%となった。

 ここ数年の経験から、たとえ政権が誠意を持って取り組んでも議会の機能不全で無駄になる恐れがあるとの懸念も根強い。調査回答者の間でバラク・オバマ前大統領の経済政策に対する評価はまちまちだが、議会に対してはおしなべてマイナス評価が与えられた。

 セントラルフロリダ大学のショーン・スナイス氏は「議会の度重なる内輪もめは政治を混乱に陥らせ、トランプ氏の経済計画を遅延あるいは脱線させかねない」と警告した。

トランプ新大統領特集

「トランポノミクス」が招く予期せぬ負の結末
米メキシコ貿易戦争、1戦目の意外な勝者
トランプ政策、財政赤字の容認どこまで
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjwgrGdvYTSAhUEwrwKHYoTAWMQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582612040332967750&usg=AFQjCNEw22a2XpkIV33jlz4h6QMMXz74oQ
http://www.asyura2.com/17/senkyo220/msg/495.html

[経世済民118] トランプ氏のツイッター攻撃が効かないノードストロム株価が続伸 超長期債利回低下、日銀買オペ増リスクオン先物下落 ツイッタ
トランプ氏のツイッター攻撃が効かないノードストロム、株価が続伸
Lindsey Rupp
2017年2月10日 05:44 JST
関連ニュース
日本株は大幅反発、円安と米政策期待で全業種上げる−売買ことし最高
三菱UFJとみずほ銀、ついに預金利回「0.00%」−マイナス金利1年
トランプ大統領、「驚異的」税制改革案を約束−2、3週以内発表
米モルガンS、マンハッタンのウェストサイドへの移転検討−関係者
Share on Facebook
Share on Twitter
米百貨店チェーンのノードストロムは8日にトランプ米大統領からツイッターで激しく批判されたが、投資家は気にも留めていないようだ。
  大統領がツイッターでノードストロムを批判した8日に同社株は上昇。9日の市場でも続伸しており、2日間の上昇率は最大8.4%に達した。これは昨年11月以降で最大。トランプ大統領はツイッターで、娘イバンカさんのファッションブランドの取り扱いを停止したノードストロムを批判していた。
  ロッキード・マーチンなど、過去にトランプ氏の批判ツイートが株価に打撃を与えた例はあるが、ノードストロム株は底堅さを見せている。ノードストロムはまた、イバンカさんのチームとは「素晴らしい関係」だったとしたほか、商品を再注文しないとの決定は販売の落ち込みが理由だと説明し、緊張緩和にも努めた。
  ノードストロムはイバンカさんのチームと過去1年に率直な話し合いを行い、イバンカさん本人に今回の決定を1月初めに伝えていたと説明。イバンカさんのブランドの販売は特に昨年後半に減少が続き、取り扱いを継続することは理にかなわないと指摘した。
原題:Nordstrom Shrugs Off Trump’s Critical Tweet as Shares Climb (1)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-09/OL4J0Q6VDKHT01

 


超長期債利回り低下、日銀買いオペ増額受け−リスクオンで先物は下落
山中英典、野沢茂樹
2017年2月10日 08:08 JST 更新日時 2017年2月10日 16:19 JST

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iT1yDrcBQ0qk/v2/-1x-1.png

関連ニュース
日本株は大幅反発、円安と米政策期待で全業種上げる−売買ことし最高
三菱UFJとみずほ銀、ついに預金利回「0.00%」−マイナス金利1年
トランプ大統領、「驚異的」税制改革案を約束−2、3週以内発表
米モルガンS、マンハッタンのウェストサイドへの移転検討−関係者

超長期利回り上昇に対する不安はひとまず払拭−マスミューチュアル
先物6銭安の149円92銭で終了、長期金利0.085%

債券市場では超長期債相場が上昇。日本銀行が残存10年超の国債買い入れオペを増額したことを受けて買いが優勢の展開に転じた。半面、トランプ米大統領政権による政策期待を背景にしたリスク選好の動きで先物は軟調に推移した。
  10日の現物債市場で新発20年物の159回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値と横ばいの0.68%で開始後、1.5ベーシスポイント(bp)高い0.695%まで上昇。午後は0.665%まで低下した。新発30年物の53回債利回りは1bp高い0.88%まで上昇後、0.85%まで下げた。長期金利の指標となる新発10年物国債の345回債利回りは1.5bp高い0.095%を付けた後、0.085%に戻している。

  マスミューチュアル生命保険運用戦略部の嶋村哲金利統括グループ長は、「超長期債利回りの上昇に対する不安はひとまず払拭されている。今日の残存10年超のオペは10年債が1週間前の指し値オペ時の金利水準からあまり下がっていかないので、せっかくの相場の戻り歩調をしっかりサポートしたかったのではないか」と指摘。「年80兆円増の買い入れペースを考えると大分余力があるので、増やせるうちに増やしておこうという気持ちもあるのかもしれない」と述べた。
  長期国債先物市場で中心限月3月物は前日比10銭安の149円88銭で開始。午前10時10分の日銀オペ通知後にいったん戻した後、149円79銭まで下げた。午後は下げ幅を縮め、結局は6銭安の149円92銭で引けた。
  日銀はこの日午前の金融調節で、残存期間「10年超25年以下」を2000億円、「25年超」を1200億円と、ともに前回から100億円ずつ増加した。増額は昨年12月14日以来となる。一方、1年超3年以下」が4000億円、「3年超5年以下」が4200億円と、いずれも前回と同額だった。オペ結果では応札倍率が全年限で低下した。

国債買い入れオペの結果はこちらをご覧下さい。

  バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、超長期ゾーンの増額について、「もともと予想通り。昨日30年入札を無難にこなし、後場引けにかけて強かったのは多少は増額期待の織り込みがあったとみている」と指摘。「センチメントが一気にリスクオンにまた傾いてきているし、抑えにいった。またトランプ相場が盛り返した中で売り圧力があり、そういう中での日銀の対応。しっかり打ってきた」と述べた。

トランプ政策期待

  トランプ米大統領は9日、法人税改革の「驚異的な」プランが今後「2、3週間」内に発表されると述べ、期待感を高めた。
  9日の米債相場は下落。米10年国債利回りは前日比6ベーシスポイント(bp)高い2.39%程度で引けた。トランプ米大統領が近く税制について発表すると述べたことが背景。同発言を手掛かりに、市場では6月までの利上げ確率が上昇した。米株式相場は上昇し、S&P500種株価指数は0.6%高の2307.87で終えた。ニューヨーク外国為替市場ではドルが対円中心に上昇した。
  日米首脳会談について、マスミューチュアル生命の嶋村氏は、「トランプ米大統領の発言は保護主義的なことばかりで、日本の輸出産業に好都合な内容は何も出てきていない。今回の日米首脳会談で為替操作国の疑いを外してもらうには至らずに帰ってくるのではないか。引き続き米国第一の姿勢は変わらず、ゴルフはして、融和はしてこないのではないか」と述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-09/OL4PBQ6S973001


 


【債券週間展望】長期金利低下か、日銀オペで利回り上昇抑制との見方
三浦和美
2017年2月10日 17:03 JST

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iHJFOo_ZYuk8/v2/-1x-1.png

関連ニュース
日本株は大幅反発、円安と米政策期待で全業種上げる−売買ことし最高
三菱UFJとみずほ銀、ついに預金利回「0.00%」−マイナス金利1年
トランプ大統領、「驚異的」税制改革案を約束−2、3週以内発表
米モルガンS、マンハッタンのウェストサイドへの移転検討−関係者

日銀、長期金利の上昇抑える姿勢続けている−岡三証
円債は売ってももうかる状況ではなくなっている−パインブリッジ

来週の債券市場では長期金利に低下圧力がかかりやすいと予想されている。日本銀行が先週から指し値オペや国債買い入れオペを積極的に実施し、金利上昇抑制姿勢を示していることが背景にある。
  岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、「日銀は長期債利回りの上昇を抑える姿勢を続けている」とし、「長期金利に上昇圧力がかかれば、指し値オペなどを実施し利回りの上昇を抑えよう」と予想。一方、「13日に発表される10−12月期の国内総生産(GDP)では、景気の緩やかな回復基調が確認される見通し」と言い、「景気回復期待から上値追いには慎重な姿勢が目立つだろう」とみる。
  今週の新発10年物国債345回債利回りは0.09%で開始。週前半は0.10%まで売られる場面が多く見られたが、連続で5−10年の国債買い入れオペが入ったことや、9日の30年利付国債入札で最低落札価格が市場予想を上回ったことなどから0.085%まで低下した。

過去の長期国債買い入れオペの結果はこちらをご覧ください。
  
日本銀行本店

  日銀は10日の金融調節で、残存期間「1年超3年以下」、「3年超5年以下」、「10年超25年以下」、「25年超」の国債を買い入れるオペを通知した。このうち、10−25年が2000億円、25年超が1200億円と、それぞれ前回から買い入れ額が増額された。
  マスミューチュアル生命保険運用戦略部の嶋村哲金利統括グループ長は、「今月は5−10年のオペが大幅な増額となりそうだ」とし、残存10年超のオペも増額され、「10年債が1週間前の指し値オペ時の金利水準からあまり下がっていないので、せっかくの相場の戻り歩調をしっかりサポートしたかったのではないか」と説明。「年80兆円増の買い入れペースを考えるとだいぶ余力があるので、増やせるうちに増やしておこうという気持ちもあるのかもしれない」とみる。
  8日には新発30年債利回りが0.915%、新発40年債利回りが1.07%と、いずれも昨年2月以来の水準まで上昇したが、10日にはそれぞれ0.85%、1.00%まで切り下げた。新発20年債利回りも0.665%と、2日以来の水準に低下した。

  パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、「欧米金利が上昇基調をたどる可能性があるが、円債は日銀のサポートが見込まれる」と指摘。「日本国債が米独の国債に対してアンダーパフォームしていたこともあって、今後は円債がアウトパフォームしていくと思われる。円債は売ってももうかる状況ではなくなっている」と言う。
  来週は財務省が14日に5年利付国債入札、16日には投資家需要の強い既発国債を追加発行する流動性供給入札を実施する。松川氏は、「5年債入札は現在の水準より安くなるかもしれないが、場合によっては日銀のサポートが見込まれることから、それほど崩れないのではないか」とみる。
市場関係者の見方
*T
◎パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長
*最近のオペで全体的に応札倍率が低下し、業者の在庫が軽くなっている可能性
*入札全体に対する懸念も低下していくのではないか
*長期金利の予想レンジは0.05%〜0.10%
◎岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジスト
*日米首脳会談の結果次第だが、トランプ期待相場も回復しそうな気配
*日銀は引き続き利回り上昇抑えるだろうが、利回りの低下は進みづらい
*長期金利の予想レンジは0.06%〜0.10%
◎マスミューチュアル生命保険運用戦略部の嶋村哲金利統括グループ長
*超長期債利回りの上昇に対する不安はひとまず払しょく
*残存5−10年のオペ、今月はこれまでより1回多い7回になるか注目
*長期金利の予想レンジは0.045%〜0.115%
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-10/OL5BBY6JTSE901

 

【債券週間展望】長期金利低下か、日銀オペで利回り上昇抑制との見方
三浦和美
2017年2月10日 17:03 JST

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iHJFOo_ZYuk8/v2/-1x-1.png

関連ニュース
日本株は大幅反発、円安と米政策期待で全業種上げる−売買ことし最高
三菱UFJとみずほ銀、ついに預金利回「0.00%」−マイナス金利1年
トランプ大統領、「驚異的」税制改革案を約束−2、3週以内発表
米モルガンS、マンハッタンのウェストサイドへの移転検討−関係者

日銀、長期金利の上昇抑える姿勢続けている−岡三証
円債は売ってももうかる状況ではなくなっている−パインブリッジ

来週の債券市場では長期金利に低下圧力がかかりやすいと予想されている。日本銀行が先週から指し値オペや国債買い入れオペを積極的に実施し、金利上昇抑制姿勢を示していることが背景にある。
  岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、「日銀は長期債利回りの上昇を抑える姿勢を続けている」とし、「長期金利に上昇圧力がかかれば、指し値オペなどを実施し利回りの上昇を抑えよう」と予想。一方、「13日に発表される10−12月期の国内総生産(GDP)では、景気の緩やかな回復基調が確認される見通し」と言い、「景気回復期待から上値追いには慎重な姿勢が目立つだろう」とみる。
  今週の新発10年物国債345回債利回りは0.09%で開始。週前半は0.10%まで売られる場面が多く見られたが、連続で5−10年の国債買い入れオペが入ったことや、9日の30年利付国債入札で最低落札価格が市場予想を上回ったことなどから0.085%まで低下した。

過去の長期国債買い入れオペの結果はこちらをご覧ください。
  
日本銀行本店

  日銀は10日の金融調節で、残存期間「1年超3年以下」、「3年超5年以下」、「10年超25年以下」、「25年超」の国債を買い入れるオペを通知した。このうち、10−25年が2000億円、25年超が1200億円と、それぞれ前回から買い入れ額が増額された。
  マスミューチュアル生命保険運用戦略部の嶋村哲金利統括グループ長は、「今月は5−10年のオペが大幅な増額となりそうだ」とし、残存10年超のオペも増額され、「10年債が1週間前の指し値オペ時の金利水準からあまり下がっていないので、せっかくの相場の戻り歩調をしっかりサポートしたかったのではないか」と説明。「年80兆円増の買い入れペースを考えるとだいぶ余力があるので、増やせるうちに増やしておこうという気持ちもあるのかもしれない」とみる。
  8日には新発30年債利回りが0.915%、新発40年債利回りが1.07%と、いずれも昨年2月以来の水準まで上昇したが、10日にはそれぞれ0.85%、1.00%まで切り下げた。新発20年債利回りも0.665%と、2日以来の水準に低下した。

  パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、「欧米金利が上昇基調をたどる可能性があるが、円債は日銀のサポートが見込まれる」と指摘。「日本国債が米独の国債に対してアンダーパフォームしていたこともあって、今後は円債がアウトパフォームしていくと思われる。円債は売ってももうかる状況ではなくなっている」と言う。
  来週は財務省が14日に5年利付国債入札、16日には投資家需要の強い既発国債を追加発行する流動性供給入札を実施する。松川氏は、「5年債入札は現在の水準より安くなるかもしれないが、場合によっては日銀のサポートが見込まれることから、それほど崩れないのではないか」とみる。
市場関係者の見方
*T
◎パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長
*最近のオペで全体的に応札倍率が低下し、業者の在庫が軽くなっている可能性
*入札全体に対する懸念も低下していくのではないか
*長期金利の予想レンジは0.05%〜0.10%
◎岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジスト
*日米首脳会談の結果次第だが、トランプ期待相場も回復しそうな気配
*日銀は引き続き利回り上昇抑えるだろうが、利回りの低下は進みづらい
*長期金利の予想レンジは0.06%〜0.10%
◎マスミューチュアル生命保険運用戦略部の嶋村哲金利統括グループ長
*超長期債利回りの上昇に対する不安はひとまず払しょく
*残存5−10年のオペ、今月はこれまでより1回多い7回になるか注目
*長期金利の予想レンジは0.045%〜0.115%
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-10/OL5BBY6JTSE901


 

ツイッター、なぜ成長も利益も得られないのか
ツイッターの16年10−12月期決算は赤字が拡大
By MIRIAM GOTTFRIED
2017 年 2 月 10 日 09:57 JST

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 ツイッターは成長できないのであれば、利益を出す必要がある。同社はそのことを十分に認識しているが、おいそれとは実現しないだろう。

 ツイッターが9日に発表した2016年10-12月期(第4四半期)決算では、純損失が予想以上に膨らむ一方、売上高の伸びは前年同期比1%弱に鈍化した。広告収入は小幅に減少。ユーザーの伸びは7-9月期(第3四半期)の3.3%から4.5%に加速したが、それを収益に結びつける試みは足りなかった。ARPU(1契約者当たりの収入)は4%減と、初めて減少に転じた。

 ツイッターは投資家に対し、年内の黒字化に向けて態勢を整えようとしていると述べたが、広告収入のリスクが高まっているように思われることから簡単にはいかないだろう。

 同社は1-3月期(第1四半期)の売上高見通しを示さなかった。しかし、デジタル広告費を巡る競争激化や同社が売る広告の種類の再評価は、広告収入の伸びが引き続きユーザー数の伸びを下回ることを意味しかねないと注意を促した。月間アクティブユーザーの伸びが既に停滞し、急成長中のスナップチャットによる新規株式公開(IPO)が近く見込まれるなど、良くない兆しもある。

 また、ツイッターは費用削減で限られた成功しか収めていない。10-12月期には、販促費の削減が売上原価の増加で打ち消され、株式報酬費用を除いた費用が1%増加したという。確かに、同社は株式報酬費用を削減する措置を講じてきた。10-12月期には13%減少しており、同社は今年15〜20%の削減を見込んでいる。

 ツイッターによると、ユーザーがサービスをチェックする頻度は高まっている。だがそれは必ずしも売上高の増加につながらない。そのためには投資を増やす必要があるかもしれない。

 同社にとって最高の結果は相変わらず身売りだ。それがなければ、成長と利益を見つけることは今後も難しいだろう。

関連記事

ツイッター、注目度に業績比例せず 10-12月期も増収率鈍化
SNSに脳を乗っ取らせるな:プロが勧めるコツ
スナップ、IPO申請書で明かされた最大のリスクとは
トランプ次期大統領がツイートを続ける理由
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjB8MSfvYTSAhVTPrwKHUzWDEYQqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10734999991334983926204582612100711974844&usg=AFQjCNGxrgeK5O0MND52uqz3bnXIZ14FKQ
http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/879.html

[経世済民118] 「子会社あるある」覆面座談会、理不尽親への不満炸裂! ギャンブル依存ビギナーズラックが危ない 借金重ね社会的地位失って

2017年2月10日 週刊ダイヤモンド編集部
「子会社あるある」覆面座談会、理不尽親への不満炸裂!
週刊ダイヤモンド2017年2月11日号特集「子会社『族』のリアル」より
これまで誰も触れなかった「現代の身分差別」が存在する。大企業の子会社で働く「子会社族」だ。子会社で勤務経験のある20代の社会人4人に、その実態や本音を聞いた座談会。日本のビジネス界を担っていく彼ら若手層からは、現場に渦巻く「子会社あるある」のような不満や愚痴が次々噴出した。(週刊ダイヤモンド2017年2月11日号特集「子会社『族』のリアル」より)


同一労働同一賃金などを謳う「働き方改革」の議論の中でも、非正規労働者のようにスポットが当たることがない“現代の身分差別”、それが「子会社族」だ??Illustration by Saekichui Kojima
A/元ネット広告大手の子会社勤務・20代女性
B/大手携帯キャリアの子会社勤務・20代男性
C/元大手広告会社の傘下企業勤務・20代男性
D/大手消費財メーカー子会社勤務・20代男性

──「子会社」で勤務経験のある皆さんですが、実際に働いてみて感じたことを聞かせてください。

D?まず給料を上げてほしいってことですね。

A?早速始まったよ!

D?それはともかく、僕は周りの社員と比べても、がんがん仕事をしていきたいタイプだと思っていました。ただ、就職氷河期の中で当時は慶應大生でも大企業から内定を得られず、かといってベンチャー企業は危険な香りがする。結果的に大手消費財メーカーの子会社に入社しました。

?すると(親会社から子会社に)出向してきている人が多くて、どれだけ頑張っても追い付けない壁がある現実に突き当たりました。日本企業は採用が入り口戦略になっていて、入り方が大事になっているじゃないですか。

?子会社社長は常に親会社からの出向者です。上から2番手、3番手なら子会社採用のプロパー社員でもなれる可能性はありますが、行けてもそこまでですね。

?当然、本社側の人事方針などもあるのだと思いますが、そういう会社人事の在り方に個人的には不満を感じています。転職活動も視野に入れていましたが、ひとまず希望していた国際部門に行けたので、1年間は頑張ってみようと思っています。


A?私がいた会社は、(親会社と子会社で)交流は特になかったな。月1回、役員が親会社の人につるし上げられるぐらい(笑)。

D?そこはだいぶ違いますね。うちの会社の場合、親子間の折衝もあるだろうし、社長が親会社から来るのは理解できます。ただそうなると、今の会社にいる限り出世に限界が見えていて、この先どうしていくか迷いもあります。

A?大きな人事交流こそなかったけれど、親会社と子会社の社長同士は犬猿の仲だったな。親会社にもうけを献上する“上納金”みたいな仕組みがあってね。基本的に正社員1人当たり、月7万円ほどを親会社に献上しなきゃいけない、そんな決まりがあった。

?ただ、それは交渉によって若干、下げることも可能だった。というのも、ゲーム開発の別の子会社がグループ内では収益的に重要な存在で、その会社があるとき親会社に「上納金が多過ぎる」と文句を言って献上額を下げてもらった。

?うちの会社も、それまで上納金は絶対に下がらないと聞いていたのに、IPO(新規上場)を目指している中でやりとりのあった関係者から「あのゲーム開発子会社は上納金を下げてもらったみたい」という情報が後で入ってきた。

?そこで、私がいた子会社の幹部が親会社側に問い詰めると「実はその通りです」と認めた。最終的に、親会社側は「他のグループ会社には内緒にしてほしい」とした上で、私の会社の上納金も下げることにした。でも上納金の仕組み自体、一般社員は知らない。

C?明かしましょう!

──社内でも「上納金」と呼ぶのですか?

A?グループ運営費、という名前になっていたね。またグループ内で営業利益順に子会社がランキング化されていた。グループ運営費は販管費として営業利益から差し引かれるので、上納金が多いほど業績の重荷になる。親会社から収益状況について突っ込まれたときに「グループ運営費がなければ、こんな順位ではなかったのに!」という不満は、子会社の上層部の中にはかなりあった。


拡大する
C?それだと人数が多いほど、負担がかかることになりますね。

A?そう。四半期末の従業員数によって、翌四半期の上納金が決まっていたから、例えば12月末ではなく、15日付の退職にさせたがっていた。月末まで在籍していると、その人がいないのに上納金を翌四半期も払わないといけなくなるから。

C?闇は深いですね(苦笑)。

A?本当にむかつくよね。新卒の給料は、親会社より2万円ほど少なかったけど、上納金がなければ子会社の方が数万円多い、ということになるわけで。

B?現場社員がこの実情を知らずに働いているとは……。もう言ったら暴動が起きかねないですよ!

A?ちなみに子会社は営業赤字。それでもグループ運営費を払わされていた。一方、孫会社は黒字で、そちらの方がもうかっていた。それで子会社は資金繰りに困っていて、孫会社から多額の借り入れをしていた。上納金は孫会社からも出ているけれど、孫会社在籍の社員は全て子会社からの出向者。だから、結局は子会社を通じて献上している形だった。

──営業赤字でIPOを目指しているとは。上場の目的は?

A?ただ単にストックオプション(新株予約権)を手放したい、ということ。それだけで社員のモチベーションを引っ張っている。持ち株制度で従業員に子会社株を持たせていたのね。けれど、私は会社の業績が厳しいことを知っていたから制度に加入しなかった。同期の中には買っている人もいたな。

若手抜擢人事は人材獲得のため
モテる子会社社長

A?あと同じ事業をやる子会社をたくさんつくって戦わせる仕組みがあったな。

一同?へ〜(嘆息)。

──子会社同士で取引先がかぶるのでは?

A?よくかぶるよ。要は「戦え」と。

C?仲悪そうですね。

B?Aさんとは同業界にいましたが、例えば子会社と孫会社の両社の営業マンが取引先に出向いて、そこの担当者から「何で同じグループ内の2社から来ているのですか」と不思議がられる。そんな話を聞くことも珍しくなかったですね。

A?会社をつくるのもつぶすことも頻繁にやる。それで抜てき人事をニュースリリースで出すことがあるけど、あれは優秀な学生が入るのを狙っている目的が大きい。

D?チャラチャラした若い人も「社長になれる」みたいな(笑)。

B?例えば「2012年卒の3年目で子会社社長になった」という人のコメントがリリースに載る。すると、学生がそれを見て「若いのにそんな上まで行けるのか」などと思って受けると聞きますね。

A?それで入ってはくるけれど、そういう会社は大体、2〜3年後につぶれていることも多い(笑)。

──確かに親会社の若手が経営経験目的で出向する場合も多いです。

A?ただ私がいた会社の場合、経験を積むのではなく、リリースに載せて優秀な人材を集めたいだけ。子会社ベンチャーの社長に就いた若手がしているのは、せいぜい営業リーダーレベルの仕事。損益計算書ですら読み込む能力がない。

D?でも名刺の肩書は「社長」になっているってこと?

A?だからキャバクラでモテる(笑)。ちなみに、合コンで“電通”と名乗る人は大体CCI(サイバー・コミュニケーションズ、電通子会社)というのもよくある話ね。

D?子会社の若手社長は本社の経営会議には出ていなかったの?

A?全然、出てない。経営会議に呼ばれるのは私がいた子会社だけで孫会社は対象外。取締役以上がローテーションで出るけれど、業績が悪いときなどは指名される。一番数字を分かっているから「今回は常務が来い」といった形で。

C?人事的な話で言うと、被害を直接受けてはいないのですが、営業部隊に昨春、親会社の部長クラスの人が子会社に下ってきて、失敗を現場になすり付けるという不満を内部から聞きました。親会社が持っている広告分野を強めようとするタイミングで、上層部の人がたくさん入ってきたそうです。

──親会社側のリソースを活用しようとする中で、“天下り”も同時に起きたということですね。

C?それが現場では弊害となっていたようです。僕が子会社を辞めた後は、あるときから役員が一斉に親会社の人に様変わりしました。

A?それで思い出したのは、前職の入社時には従業員の約半数が親会社の出向者だったけど、「ゴミ捨て場」のようになっていたことね。

B?私は親会社が広告系の案件を代理店に通す前、一度今の子会社に入ってくる、という場所で仕事をしています。そこで営業担当が親会社を訪ね、提案しに行くのですが、そのオーダーに振り回される感じがあります。

?もともとベンチャーにいたのですが、そのときの平均年齢は非常に低かった。一方、今の親会社は年齢層が高く、堅い社風もあって帰宅時間が早い。こっちは働いていて、しかも大事な案件なのに担当者がもう帰っている、というようなことが結構あります(苦笑)。

──Bさんの会社はベンチャーとして創業して数年後、今の親会社に買収されていますよね。

B?そういう意味では、スピード感も親会社に左右されているところがあります。ベンチャーだったらすぐあれもこれもやろう、というふうになりますが、やっぱり上(親会社)がいると、ぱんぱんスピードを上げて、という形でプロダクトは生み出しにくいですね。

?親会社側には「グループ会社だからシナジー(相乗効果)を図っていこう」という文化がある。親会社が出しているサービスに沿った広告では、対象者が限られて逆に効果が薄くなってしまうのが実態なのですが、大方針も考慮してユーザーにメリットの少ない親会社の広告をある程度、出さざるを得ない。それは親会社が上にいるからこその大変さだと思います。


拡大する
所属は変わらず努力で埋まらぬ差
いずれは転職も

C?メーカー勤務のDさんは、こういう話を聞いてどう思います?

D?とても動きが速いですよね。同じ子会社というくくりでも、ネットビジネスのベンチャー系企業と、メーカー系の保守的な人が多いところでは全然違うなって。

?僕の会社では皆、本社側に気を使っている感じがすごくあります。子会社社員の給与は親会社の大体9割。だいぶ差が縮まる流れにはありますが、ベースが下がると年金などの格差も出てきます。

?海外駐在すれば赴任手当も出るので、給与差を努力で埋められる部分もありますが、やっぱり所属は変わらない。いずれは必ず差をつけられるので、そのときに転職しようと考えています。

?合コンとか含めて、対外的には親会社のブランドを名乗るわけですよ。でも細かく見ていくといろいろ違う。悔しくて、「このままじゃ終われない」とは思っています。

C?逆に僕は宿命なので(子会社でも)別に仕方がないかなと、楽観視するタイプでした。スキルを伸ばせるならいいかなって。

?ただ、こちらで作った提案書なのに、営業に同行できないのは、納得いかない点ではありました。

A?あれは本当にむかつくよね。

C?例えば親会社の大手広告代理店と一緒に進める案件があり、僕らが提案書を作る。すると親会社の人だけがわれわれの作った提案書を取引先にプレゼンしに行き、同席はできません。理由の一つに子会社だから、というのがあったようです。向こう(親会社)の手柄にしたいのでしょうね。

A?それで案件を落としたら営業力ではなく、私たちの提案書のせいにするやつもいる。なんか愚痴というか“子会社の闇”って感じ。話しだすと止まらないね。

DIAMOND,Inc. All Rights Reserved.
http://diamond.jp/articles/-/117431


 

2017年2月10日 岡本実希
ギャンブル依存症の引き金、「ビギナーズラック」が危ない

借金を重ね、社会的地位を失っても、ギャンブルをやめることができないのが「ギャンブル依存症」だ。厚生労働省の調査によれば、男性のおよそ9人に1人は依存症の傾向があるとされており、深刻な問題となっている。2016年12月にはカジノ法案が成立したが、ギャンブルに触れる機会が増えるようになることで、依存症患者がさらに増加する危険性も指摘されている。ギャンブル依存症とは何なのか、どのような対策をとるべきなのか。専門家に話を伺った。(取材・文/岡本実希、編集協力/プレスラボ)

?昨年末、福岡県飯塚市の斉藤守史元市長らが平日昼間から賭け麻雀を行っていたことが発覚。今年1月末に飯塚市長を辞職した。疑惑を向けられた当初、「金をかけなければ麻雀人口が減る」と自己弁護したことも批判を浴びた。このように、ギャンブルによって自らの社会的な評判や地位を失うことは決して珍しいことではない。


※写真はイメージです
?国立病院機構久里浜医療センター・樋口進氏を代表とする厚生労働省の研究班が2014年に行った調査によると、ギャンブルをやめることができず日常生活に支障を及ぼしている依存症の患者は、日本全国で536万人にも及ぶという。特に男性では全体の8.7%にものぼり、およそ9人に1人は依存症の傾向があるという驚きの結果も発表された。

?ギャンブル依存症には適切な治療が必要だ。しかし、「やめられないのは意思が弱いから」というように性格の問題として片付けられてしまいがちであることから治療が遅れ、症状が悪化する原因のひとつとなっている。正しいギャンブル依存症への理解を広め、対策を整えていくことが患者の増加を食い止める一歩になることは間違いない。

?そこで、ギャンブル依存症の原因や治療の方法、そして行うべき対策を知るべく、ギャンブル依存症の患者の治療やブログでの情報発信を行う医療法人社団榎本会榎本クリニック・山下悠毅院長にお話を伺った。

親の年金を使い切り
生活保護を余儀なくされるケースも

――ギャンブルが好きな人はたくさんいると思いますが、依存症かどうかはどのように判断するのでしょうか。

山下?判断する条件は、大きく分けて以下の3つです。

?(1)1日中ギャンブルのことばかり考えてしまう
?(2)「やらないほうがいい」と自分で分かっている
?(3)自分の力で止めることができない

?これらの条件が満たされていると、病気だと判断して治療に移ることが多いですね。ただ、医学的に明確な診断基準がないことから、最終的には本人や周囲の人が困っており、治療を望んでいるかどうかに基づいて治療を開始します。

――ギャンブル依存症について、今までご覧になってきた患者ではどのようなケースがありましたか。

山下?自分の貯金を使いきってしまうのはもちろんのこと、家族が借金を数百万円工面した後も続けている方が大多数です。中には、親の年金にまで手を出してしまう方もいます。私が経験した最も深刻なケースだと、両親の積み立てた保険を解約し、土地の権利書もこっそりと売ってしまった方を診察したことがあります。結局その方は、本人の治療はもちろんのこと、ご両親の生活保護の書類も私が書きました。

ギャンブル依存症
やめられなくなるメカニズムとは

――「やめられないのは意思が弱いからだ」という意見を言う人もいます。


山下悠毅
帝京大学医学部卒業。東横恵愛病院医局員、たわらクリニック院長を経て、平成28年8月より榎本クリニック院長。日本精神神経学会認定精神科専門医?精神保健指定医?日本医師会認定産業医
ブログ:プラセボのレシピ
山下?ギャンブル依存症は「意思の弱さ」といった性格が原因なのではなく、治療が必要なれっきとした「心の病」です。こういった間違ったイメージをなくしていくためにも、ギャンブル依存症についての正しい理解が広がることが必要だと考えています。

?まず、「依存症とは何か」について説明しますね。ギャンブル依存症は、大麻や覚せい剤などが原因の「物質依存症」とは異なり、「行為依存症」と呼ばれています。「私たちは、「のるか、そるか」といった、まさしくギャンブル状態におかれると、興奮してドキドキしますが、そのドキドキがやみつきになって該当行為をやめられなくなることを指します。ちなみに、万引きや盗撮が止められない方も、この「行為依存症」です。そのため、私は「行為依存症」を「ドキドキ依存症」とも呼んでいます。

――ドキドキしているとき、体内ではどのような変化が起こっているのでしょうか。

山下?人間の頭のなかを簡単に表現すると、「本能」と「理性」に分けることができます。本能は、大脳辺縁系という部分で、好き嫌いを決める偏桃体や、記憶に関わる海馬などからなっています。これは全動物に備わっていて「エサを食べたい、異性に接近したい」といった欲動のアクセルです。

?一方、理性を司っているのが前頭前野です。これは、人間が最も発達しており、「おいしそうだけど、今はお腹いっぱいだから後にしよう、異性に対していきなり抱きつかずにまずはデートに誘おう」というように、欲動に対してブレーキをかける機能を持っています。

?そして、依存症患者は、この脳の「本能」を司る大脳辺縁系の周囲に「依存の回路」が後天的にできてしまっているのです。

?ギャンブル依存症患者も、普段は「理性」を司る前頭前野のブレーキがきちんと働いているのですが、パチンコ店や競馬場の前を通りかかった瞬間、過去の記憶や快感が呼び起こされ、大脳辺縁系周囲の回路が強く活性化します。その結果、回路に多くの血液が集まり、前頭前野の血液量が少なくなる(※)ことでブレーキ機能が停止状態となり、アクセルが暴走してしまうのです。

※人は、アルコールを摂取すると前頭前野の血流が低下し、ブレーキ機能が低下することが証明されています。そのため、アルコールを摂取すると暴言を吐いたり、セクハラをしたりといった不適切な行為が多くなる傾向にあります。ギャンブル依存症では上記のような血流の動きはまだ完全には証明されていませんが、アルコール摂取時と同じようなメカニズムが脳内で起こっている、と山下さんは言います。

ビギナーズラックや大当たりが
依存症を加速させる

――依存症になる人とそうでない人がいるのはなぜでしょうか。

山下?暇であったり、趣味や専念できるものがない、なんて方は危険ですが、それ以上に重要な要素が「ビギナーズラック」です。誰だって、初めてギャンブルをした時に、一度も当たることなく大金をすってしまったら、「二度と行くもんか」と思いますよね。しかし、偶然にも初めて行った時に大きく勝つ人がいる。そうすると、ドーパミンが大量に分泌され、大脳辺縁系に依存の回路ができるのです。私も、パチンコは友人に誘われ、行ったことはあるのですが、もしそこでビギナーズラックを経験したならば、依存症になっていた可能性があると思います。

――パチンコや競馬、宝くじなど様々なギャンブルがありますが、特に注意が必要なものはありますか。

山下?運だけが大きくものをいう宝くじで、サラ金からお金を借りてまで依存してしまう人は皆無です。一方、素人が偶然、羽生善治さんに将棋で勝ったとしても、勉強を非常に要する将棋の依存症になることもありません。

?つまり、大切なのは、この「運」と「勉強(工夫)」の組み合わせなのです。パチンコや競馬は、雑誌を読んで機種や馬の研究をするなど一定の工夫のしがいがあり、かつ運も必要になってきます。これが、ギャンブルが面白くなる絶対的要素で、依存の回路が強化されている条件なのです。また、「自分は努力している」という自己肯定感や「自分は選ばれている」といった選民意識もそれを後押ししていると思います。

「欲動のアクセル」を抑え
「理性」のブレーキをかけること

――では、ギャンブル依存症はどのように治療を行えばいいのでしょうか。

山下?よく、クリニックにいらっしゃった患者のご家族の方が「もうやらないように反省文を書かせました」「もうしませんと誓わせました」とおっしゃるのですが、これは全くといっていいほど意味がありません。先ほども説明したように、依存症患者はギャンブルを目の前にすると、理性である前頭前野のブレーキが壊れた状態になってしまうからです。いくら理性の部分で反省や誓約をしたところで無意味なのです。


?そこでまず今すぐにとりかかれることとしては「できてしまった依存の回路が回らない、つまり前頭前野のブレーキが壊れない環境をつくる」ことです。当たり前ですが、ギャンブルはお金を持っていないとできませんから、家族にお金を管理してもらい自由に使えないようにすれば、ブレーキがきちんと機能し続けるのです。

?お金のようにギャンブルをしてしまうきっかけになるものは、ほかにも数多くありますが、私はこれらをまとめて「THE・TPO」と呼んでいます。以下のような要素をできるだけ生活のなかから排除することが依存の回路を回さない環境づくりのためには重要です。

?T:ツール(道具)打つためのお金、お店に行くための車など
?H:ヒューマン(人)一緒に行く人、パチンコの雑誌を見せてくる人など
?E:エモーション(感情)職場や家庭でのストレス、孤独感や寂しさなど

?T:タイム(時間帯)ノー残業デーの帰り道、休日の空いた時間など
?P:プレイス(場所)お店がある場所、ギャンブルの雑誌がある場所
?O:オケーション(状況設定)上記のT・H・E・T・Pの組み合わせ

?これらを徹底的に、できうる範囲内で日常から排除、解決していくのです。

?例えば、日曜日の暇な時間帯(T:タイム)にギャンブルをやってしまう傾向がある人は、その時間にジムに行く習慣をつけてパチンコができないようにするといった対策が考えられます。また、パチンコ店が通勤ルートにあり(P:プレイス)目に入るとやりたくなってしまうという人は、通勤ルートを変えてその道を避けるという対策をとることができるでしょう。

?もうひとつ重要なのは、「自分でもう一つブレーキを作る」ということです。これを私は「二次ブレーキ」と名づけていますが、前頭前野が機能停止をしても大丈夫なようにしておくのです。

?簡単に言うと、いつもパチンコ店の前を迂回して通勤している人が、偶然出張などでパチンコ店を見つけてしまったら、「あっ、と思ったその瞬間に、180度後ろを向いてその場を離れられるようダッシュする」とあらかじめ決めておくのです。こうすることで、欲動のアクセルが暴走してしまうその前に、問題行動を防ぐことができるのです。

?私の行う治療では、実際にパチンコ店を見つけてしまったと仮定して、ダッシュするロールプレイングも行っています。何度も練習することで、この二次ブレーキのかけかたを覚えこませることが大切です。

カジノ法案が成立
ギャンブル依存症は増加する?

――2016年12月にはカジノ法案が成立しました。今後ギャンブル依存症患者が増える可能性も指摘されていますが、どのような対策をとっていけばよいでしょうか。

山下?現状、日本にはパチンコ店や競馬場が数多く存在しており、既に日常生活のなかにギャンブルが浸透しています。ですから、新しくカジノができたことでギャンブル依存症患者が急増するとは思いません。

?例えば、オリンピックに向けて都内にたくさん日本酒のバーができたところで、コンビニでビールが買える日本において、アルコール依存症の患者が増えないであろうことと同様です。

?ただ、世界各国ではカジノを設置する際に、ギャンブル依存症患者が増えないように法律が定められるなど様々な対策がとられています。

?例えば、韓国では入場回数が多い顧客に対してカウンセリングが定められており、依存症が深刻になる前に治療を始められるようになっています。また、韓国やマカオ、シンガポールでは、依存症やそのリスクが高い利用者は本人もしくは家族・行政がカジノ施設への入場を規制することができるようになっています。

?日本でもこうした各国の対策を参考にして、依存症患者の治療制度を整備していく必要はあると思います。
http://diamond.jp/articles/-/117430

http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/880.html

[経世済民118] 高齢ドライバー事故、免許証返納ではない解決策 「後付け」の安全装置も出現。自動ブレーキ義務化も視野に 
高齢ドライバー事故、免許証返納ではない解決策
「後付け」の安全装置も出現。自動ブレーキ義務化も視野に
2017/02/09
中西 享,伊藤 悟
 「母が軽度の認知症と診断され、運転免許証を返納させるか否か、家族で揉めています」

 榊原史子さん(仮名、東京都中央区在住)はそう悩みを打ち明ける。76歳になる母親は埼玉県草加市に住んでいるが、最寄駅から車で15分のところに住んでおり、自動車は生活に欠かせないという。

 「交通事故の恐ろしいところは、運転している本人だけでなく、何の罪もない周りの人も巻き込むことです。私としては何とか返納させたいと考えているのですが……」

 高齢化した親に免許証を返納させるべきか否か─。もしくは自分自身、免許証を返納すべきか否か─。こんな悩みを抱えている方も多いのではなかろうか。


2016年11月、立川市で83歳の女性が運転していた車が歩行者をはねた。連日のようにこうした交通事故が報じられている(JIJI)
実態とは異なる
報道から受けるイメージ

 2016年は交通事故死者の54.8%が65歳以上と、統計が残る以降、最も高い割合を示した。テレビをつければ、連日のように高齢運転者による悲惨な事故が報道されている。「高齢者は運転すべきでない。強制的に免許証を返納させろ」。こんな意見も目立つ。

 だが、事故の詳細をみていくと、日々の報道から受ける印象とは異なる実態が浮かび上がってくる。警察庁の資料によると、05年に6165件あった交通の死亡事故が、15年には3585件へと減少している。これは高齢者を含む全事故の件数で、ここ10年ほどで4割以上も減っている。

 認知症に罹患しやすくなる75歳以上の高齢運転者が起こした死亡事故件数のみ抽出してみると、05年は457件、15年は458件とほぼ横ばいだ。つまり、死亡事故全体の件数は減っているが、75歳以上の高齢運転者による事故は横ばいなので、割合が高まっている(05年7.4%→15年12.8%)ということになる。


写真を拡大
3月に道交法改正
強化される認知症対策

 75歳以上の高齢運転者による死亡事故の割合が12.8%とはいえ、認知症に罹患しやすい高齢者の多くがハンドルを握る現状を憂う意見には耳を傾ける必要がある。

 今年の3月12日から認知症の高齢運転者への対策を強化した改正道路交通法が施行される。免許更新時に認知機能検査で認知症の疑いがある75歳以上のドライバーは、逆走や信号無視などの交通違反がなくても医師の診察が必要になる。逆に交通違反があると、臨時の認知機能検査が課され、認知症が疑われると医師の診察が必要になる。いずれも認知症ドライバーによる重大な事故を未然に防ぐのが狙いだ。

 免許更新を受ける高齢ドライバーの数から考えると、これまでは認知症と診断されて免許取り消しになるケースは少なかった。

 老年精神医学が専門の慶應義塾大学医学部の三村將教授は「この改正法の施行により、医師による臨時適性検査の対象が大幅に拡大されるので、診察を行う認知症の専門医をどう確保するかなどの問題はあるが、一定の成果はあるのではないか」とみている。

 高齢者の免許証の返納についてみると、警察庁の統計では75歳以上の免許所有者のうち自主返納したのは15年では2.8%しかなく、返納者数は増えているが低い水準にとどまっている。

 特に地方の過疎地域の場合、地方自治体の財政難からバスなどの公共交通機関が縮小、廃止されてきており、買い物、病院通いなどの移動手段がマイカーしかないところが多い。

 このため、高齢者になっても生活の足として運転せざるを得ない状況にあり、地方では一律的な返納は反発を招きかねない状況になっている。

 高齢者に対して無理に免許を返納させようとするとトラブルが起きかねない。昨年12月には岡山市で事故を起こした母親(79歳)と免許返納を求める息子とで口論になり殺人未遂事件まで起きている。

 仮に75歳以上の高齢者すべてに免許証を返納させたとしても、前出の通り、12.8%の死亡事故はなくなるが、90%弱の死亡事故は残る。

 果たして交通事故を限りなくゼロに近付け、しかも地域の足を確保する解決策はあるのだろうか。

期待すべきはテクノロジー
広がる「自動ブレーキ」

 その解の一つはテクノロジーである。昨今注目されている自動運転は、そもそも人にぶつからない可能性が高いが、すべての自動車が自動運転車になるにはまだまだ時間がかかる。現実的には、「自動ブレーキ機能」に大きな期待が寄せられる。


シリコンバレーの一般道を試験走行するグーグルの自動運転車(MASATAKA NAMAZU)
 08年にいち早く低価格で衝突防止装置を取り付けたのが、ステレオカメラで前方の障害物を検知する運転支援システム「アイサイト」を導入した富士重工業だった。10年以降、装着費用が10万円程度と割安だったことからユーザーの支持を受けて普及した。

 トヨタ自動車は、車の前後に取り付けた超音波センサーが障害物の接近を表示とブザーで知らせ、ペダルの踏み間違いによる衝突防止に役立つ「インテリジェントクリアランスソナー(ICS)」を開発、12年以降9車種に搭載してきた。今後、装備できる車種を増やす方針だ。

 ICSを装備した車と、していない車の駐車場で起きた事故データ約2500件を比較調査したところ、装着した車のペダル踏み間違い事故が約7割減少、後退時の事故は約4割減少したという結果を得られたという。

 自動車の価格が高価であればあるだけ、自動ブレーキ機能を付加することによる価格上昇の割合が抑えられるため、受け入れられやすいが、低価格がウリの軽自動車にもこの機能は広がってきている。

 ダイハツ工業は12年にレーザーレーダーで前方の障害物を検知する衝突回避支援システム「スマートアシスト」を軽自動車で初めて導入、5万円という低価格だったことから装着するドライバーが増え、昨年7月には「スマートアシスト」搭載車種が累計100万台を超えた。今や同社が販売する乗用車では、約8割のユーザーが「スマートアシスト」搭載の自動車を選んでいるという。

 今後、自動ブレーキ機能を搭載した自動車はますます増えていくものと予想されるが、ここで問題となるのが中古車である。

 日本では新車約500万台に対し、中古車約370万台が売れる(15年)など、中古車市場の存在感は大きい。自動ブレーキ機能が搭載された新車が数多く世に出れば、いずれ中古車市場にも出回ることになるが、それにはまだ時間がかかる。自動ブレーキ機能の後付けが安価でできれば、事故は少なくなるが、一筋縄ではいかないようだ。

課題となる中古車対策
「後付け」安全装置も出現

 「今のところ中古車に後付けで自動ブレーキ機能をつける予定はありません」と自動車会社の社員は話す。

 中古車に対して後付けで自動ブレーキなどを装着するのは、センサーを付ける位置の設定が難しく、最近の車はエンジンとブレーキの動きがコンピュータ制御されているものが多いため、後から設置するのが技術的に困難だという。

 このため自動車メーカーは安全装置の後付けを歓迎しない傾向がある。メーカーとしては、車の組み立て段階で電子部品の一部として装置を組み込まない限りは、事故が起きた際に責任が取れないという考え方だ。中古車の後付けより利幅の大きい新車販売に注力したいという思惑もあるだろう。

 そうした状況のなか、自動車用品店最大手のオートバックスセブンが、昨年12月に急発進防止装置「ペダルの見張り番」を発売した。

 もっともこれは「自動ブレーキ機能」ではなく、アクセルとブレーキの踏み間違いを防止するものだ。アクセルペダルを踏み込んだ量を電気的に制御して誤発進を防止するシンプルな装置で、カメラやセンサー機能は付いていない。

 軽自動車を含む約100車種に後付けが可能で、価格は取り付け費用込みで税別3万9999円。「見張り番」を装着した車に乗ってみたが、時速10キロ以下で動いているときにアクセルを強く踏んでも警報音が鳴ってゆっくりと進むだけで加速しない。

 アクセルをゆっくり踏み込むと普通に加速する。これならブレーキとアクセルの踏み間違い事故も減りそうだ。自動車メーカーがやろうとしない後付けできる安全装置が低価格で登場してきたのは好ましいことで、問い合わせが相次いでいるそうだ。

 あらゆる状況に対応した自動ブレーキとなると、センサーなど複雑な装備が必要になり、後付けはできないことから、現状では「見張り番」は事故防止のための一つの選択肢と言える。

 富士重工業の安全運転支援システム「アイサイト」を搭載した車と非搭載の車を比較したところ、1万台当たりの人身事故発生件数が61%減少したそうで、操作ミスによる事故防止に役立っていることが確認された。同社によると新車購入時の「アイサイト」装着比率は9割以上になっているという。

 損害保険各社でつくる損害保険料率算出機構は、自動ブレーキを搭載した車の事故率が大幅に減少していることから、昨年12月に自動ブレーキがかかる車の自動車保険料を平均9%安くすると発表。18年1月から適用になる。

 保険料が安くなれば、自動ブレーキ機能を搭載するコストの負担が実質減ることになり、自動ブレーキ機能を搭載するインセンティブにつながる。蛇足だが、年間8兆円の市場規模の損保会社にとっては保険料収入の約6割を占める自動車保険ビジネスの縮小につながる可能性がある。

視野に入れられている数年後の自動ブレーキ義務化 

 高齢者による事故が社会問題化していくことを受け、昨年11月に急きょ、関係閣僚会議を開催、安倍首相が高齢者の事故防止対策を強く要請した。

 国土交通省自動車局技術政策課の村井章展・車両安全対策調整官は「自動ブレーキの技術は障害物は認識するが、歩行者はまだ完全には検知できない。歩行者も認識できるなど全体の検知レベルが向上するのを受けて義務化も検討したい」と話し、数年先にはなりそうだが、義務化が視野に入れられていることがわかった。

 また、同省によると、軽自動車の台数は3000万台を超え、自動車全体のおよそ4割を占めるまでに増加し、その利用者の3割以上が60歳以上と高齢者の比率が高い。

 このため昨年12月に根本幸典国交政務官が軽自動車メーカー4社の担当役員を呼び、自動ブレーキをはじめとした先進安全技術の開発と普及促進を盛り込んだ事故防止対策を、2月までにまとめるよう指示した。防止対策は新車だけでなく、すでに販売した車に対しても警報装置を設置することなどを求められそうで、軽自動車メーカーは高齢者事故防止対策が待ったなしの最優先課題になっている。

 また、高速道路での逆走事故が絶えないことから、同省はカーナビ画面で運転手に警告するシステムの実現に向けた取り組みを始めた。衛星利用測位システム(GPS)の機能を活用して走行ルートを外れないようにし、車載カメラで進入禁止の標識を認識して逆走を防ぐことを想定している。カーナビメーカーなどから技術を公募中で、18年度からの運用を目指す。

 こうした官民の対策がすでに販売されている車を含めて実行されれば、高齢運転者に限らず、事故件数を大幅に減らすことができるだろう。

 しかし、大雪や豪雨などの悪天候ではどんなにセンサー技術が進歩しても、性能には限界があり自動ブレーキが作動しないことがあるという。最終的にはどのような気象条件でも走行できる自動運転車の開発が待たれる。事故は1件でも少ないほうが良いことは言うまでもない。まずは自動ブレーキ機能が搭載された自動車の普及が待たれるところである。それだけでも「登校中の小学生の列に自動車が突っ込み児童が死亡した」というような“惨劇“は大幅に減るはずだ。高齢ドライバー事故、免許証返納ではない解決策
「後付け」の安全装置も出現。自動ブレーキ義務化も視野に
2017/02/09
中西 享,伊藤 悟
 「母が軽度の認知症と診断され、運転免許証を返納させるか否か、家族で揉めています」

 榊原史子さん(仮名、東京都中央区在住)はそう悩みを打ち明ける。76歳になる母親は埼玉県草加市に住んでいるが、最寄駅から車で15分のところに住んでおり、自動車は生活に欠かせないという。

 「交通事故の恐ろしいところは、運転している本人だけでなく、何の罪もない周りの人も巻き込むことです。私としては何とか返納させたいと考えているのですが……」

 高齢化した親に免許証を返納させるべきか否か─。もしくは自分自身、免許証を返納すべきか否か─。こんな悩みを抱えている方も多いのではなかろうか。


2016年11月、立川市で83歳の女性が運転していた車が歩行者をはねた。連日のようにこうした交通事故が報じられている(JIJI)
実態とは異なる
報道から受けるイメージ

 2016年は交通事故死者の54.8%が65歳以上と、統計が残る以降、最も高い割合を示した。テレビをつければ、連日のように高齢運転者による悲惨な事故が報道されている。「高齢者は運転すべきでない。強制的に免許証を返納させろ」。こんな意見も目立つ。

 だが、事故の詳細をみていくと、日々の報道から受ける印象とは異なる実態が浮かび上がってくる。警察庁の資料によると、05年に6165件あった交通の死亡事故が、15年には3585件へと減少している。これは高齢者を含む全事故の件数で、ここ10年ほどで4割以上も減っている。

 認知症に罹患しやすくなる75歳以上の高齢運転者が起こした死亡事故件数のみ抽出してみると、05年は457件、15年は458件とほぼ横ばいだ。つまり、死亡事故全体の件数は減っているが、75歳以上の高齢運転者による事故は横ばいなので、割合が高まっている(05年7.4%→15年12.8%)ということになる。


http://wedge.ismedia.jp/mwimgs/5/3/-/img_5388bd0e02ad50dec9c472a70a507a81115693.jpg
3月に道交法改正
強化される認知症対策

 75歳以上の高齢運転者による死亡事故の割合が12.8%とはいえ、認知症に罹患しやすい高齢者の多くがハンドルを握る現状を憂う意見には耳を傾ける必要がある。

 今年の3月12日から認知症の高齢運転者への対策を強化した改正道路交通法が施行される。免許更新時に認知機能検査で認知症の疑いがある75歳以上のドライバーは、逆走や信号無視などの交通違反がなくても医師の診察が必要になる。逆に交通違反があると、臨時の認知機能検査が課され、認知症が疑われると医師の診察が必要になる。いずれも認知症ドライバーによる重大な事故を未然に防ぐのが狙いだ。

 免許更新を受ける高齢ドライバーの数から考えると、これまでは認知症と診断されて免許取り消しになるケースは少なかった。

 老年精神医学が専門の慶應義塾大学医学部の三村將教授は「この改正法の施行により、医師による臨時適性検査の対象が大幅に拡大されるので、診察を行う認知症の専門医をどう確保するかなどの問題はあるが、一定の成果はあるのではないか」とみている。

 高齢者の免許証の返納についてみると、警察庁の統計では75歳以上の免許所有者のうち自主返納したのは15年では2.8%しかなく、返納者数は増えているが低い水準にとどまっている。

 特に地方の過疎地域の場合、地方自治体の財政難からバスなどの公共交通機関が縮小、廃止されてきており、買い物、病院通いなどの移動手段がマイカーしかないところが多い。

 このため、高齢者になっても生活の足として運転せざるを得ない状況にあり、地方では一律的な返納は反発を招きかねない状況になっている。

 高齢者に対して無理に免許を返納させようとするとトラブルが起きかねない。昨年12月には岡山市で事故を起こした母親(79歳)と免許返納を求める息子とで口論になり殺人未遂事件まで起きている。

 仮に75歳以上の高齢者すべてに免許証を返納させたとしても、前出の通り、12.8%の死亡事故はなくなるが、90%弱の死亡事故は残る。

 果たして交通事故を限りなくゼロに近付け、しかも地域の足を確保する解決策はあるのだろうか。

期待すべきはテクノロジー
広がる「自動ブレーキ」

 その解の一つはテクノロジーである。昨今注目されている自動運転は、そもそも人にぶつからない可能性が高いが、すべての自動車が自動運転車になるにはまだまだ時間がかかる。現実的には、「自動ブレーキ機能」に大きな期待が寄せられる。


シリコンバレーの一般道を試験走行するグーグルの自動運転車(MASATAKA NAMAZU)
 08年にいち早く低価格で衝突防止装置を取り付けたのが、ステレオカメラで前方の障害物を検知する運転支援システム「アイサイト」を導入した富士重工業だった。10年以降、装着費用が10万円程度と割安だったことからユーザーの支持を受けて普及した。

 トヨタ自動車は、車の前後に取り付けた超音波センサーが障害物の接近を表示とブザーで知らせ、ペダルの踏み間違いによる衝突防止に役立つ「インテリジェントクリアランスソナー(ICS)」を開発、12年以降9車種に搭載してきた。今後、装備できる車種を増やす方針だ。

 ICSを装備した車と、していない車の駐車場で起きた事故データ約2500件を比較調査したところ、装着した車のペダル踏み間違い事故が約7割減少、後退時の事故は約4割減少したという結果を得られたという。

 自動車の価格が高価であればあるだけ、自動ブレーキ機能を付加することによる価格上昇の割合が抑えられるため、受け入れられやすいが、低価格がウリの軽自動車にもこの機能は広がってきている。

 ダイハツ工業は12年にレーザーレーダーで前方の障害物を検知する衝突回避支援システム「スマートアシスト」を軽自動車で初めて導入、5万円という低価格だったことから装着するドライバーが増え、昨年7月には「スマートアシスト」搭載車種が累計100万台を超えた。今や同社が販売する乗用車では、約8割のユーザーが「スマートアシスト」搭載の自動車を選んでいるという。

 今後、自動ブレーキ機能を搭載した自動車はますます増えていくものと予想されるが、ここで問題となるのが中古車である。

 日本では新車約500万台に対し、中古車約370万台が売れる(15年)など、中古車市場の存在感は大きい。自動ブレーキ機能が搭載された新車が数多く世に出れば、いずれ中古車市場にも出回ることになるが、それにはまだ時間がかかる。自動ブレーキ機能の後付けが安価でできれば、事故は少なくなるが、一筋縄ではいかないようだ。

課題となる中古車対策
「後付け」安全装置も出現

 「今のところ中古車に後付けで自動ブレーキ機能をつける予定はありません」と自動車会社の社員は話す。

 中古車に対して後付けで自動ブレーキなどを装着するのは、センサーを付ける位置の設定が難しく、最近の車はエンジンとブレーキの動きがコンピュータ制御されているものが多いため、後から設置するのが技術的に困難だという。

 このため自動車メーカーは安全装置の後付けを歓迎しない傾向がある。メーカーとしては、車の組み立て段階で電子部品の一部として装置を組み込まない限りは、事故が起きた際に責任が取れないという考え方だ。中古車の後付けより利幅の大きい新車販売に注力したいという思惑もあるだろう。

 そうした状況のなか、自動車用品店最大手のオートバックスセブンが、昨年12月に急発進防止装置「ペダルの見張り番」を発売した。

 もっともこれは「自動ブレーキ機能」ではなく、アクセルとブレーキの踏み間違いを防止するものだ。アクセルペダルを踏み込んだ量を電気的に制御して誤発進を防止するシンプルな装置で、カメラやセンサー機能は付いていない。

 軽自動車を含む約100車種に後付けが可能で、価格は取り付け費用込みで税別3万9999円。「見張り番」を装着した車に乗ってみたが、時速10キロ以下で動いているときにアクセルを強く踏んでも警報音が鳴ってゆっくりと進むだけで加速しない。

 アクセルをゆっくり踏み込むと普通に加速する。これならブレーキとアクセルの踏み間違い事故も減りそうだ。自動車メーカーがやろうとしない後付けできる安全装置が低価格で登場してきたのは好ましいことで、問い合わせが相次いでいるそうだ。

 あらゆる状況に対応した自動ブレーキとなると、センサーなど複雑な装備が必要になり、後付けはできないことから、現状では「見張り番」は事故防止のための一つの選択肢と言える。

 富士重工業の安全運転支援システム「アイサイト」を搭載した車と非搭載の車を比較したところ、1万台当たりの人身事故発生件数が61%減少したそうで、操作ミスによる事故防止に役立っていることが確認された。同社によると新車購入時の「アイサイト」装着比率は9割以上になっているという。

 損害保険各社でつくる損害保険料率算出機構は、自動ブレーキを搭載した車の事故率が大幅に減少していることから、昨年12月に自動ブレーキがかかる車の自動車保険料を平均9%安くすると発表。18年1月から適用になる。

 保険料が安くなれば、自動ブレーキ機能を搭載するコストの負担が実質減ることになり、自動ブレーキ機能を搭載するインセンティブにつながる。蛇足だが、年間8兆円の市場規模の損保会社にとっては保険料収入の約6割を占める自動車保険ビジネスの縮小につながる可能性がある。

視野に入れられている数年後の自動ブレーキ義務化 

 高齢者による事故が社会問題化していくことを受け、昨年11月に急きょ、関係閣僚会議を開催、安倍首相が高齢者の事故防止対策を強く要請した。

 国土交通省自動車局技術政策課の村井章展・車両安全対策調整官は「自動ブレーキの技術は障害物は認識するが、歩行者はまだ完全には検知できない。歩行者も認識できるなど全体の検知レベルが向上するのを受けて義務化も検討したい」と話し、数年先にはなりそうだが、義務化が視野に入れられていることがわかった。

 また、同省によると、軽自動車の台数は3000万台を超え、自動車全体のおよそ4割を占めるまでに増加し、その利用者の3割以上が60歳以上と高齢者の比率が高い。

 このため昨年12月に根本幸典国交政務官が軽自動車メーカー4社の担当役員を呼び、自動ブレーキをはじめとした先進安全技術の開発と普及促進を盛り込んだ事故防止対策を、2月までにまとめるよう指示した。防止対策は新車だけでなく、すでに販売した車に対しても警報装置を設置することなどを求められそうで、軽自動車メーカーは高齢者事故防止対策が待ったなしの最優先課題になっている。

 また、高速道路での逆走事故が絶えないことから、同省はカーナビ画面で運転手に警告するシステムの実現に向けた取り組みを始めた。衛星利用測位システム(GPS)の機能を活用して走行ルートを外れないようにし、車載カメラで進入禁止の標識を認識して逆走を防ぐことを想定している。カーナビメーカーなどから技術を公募中で、18年度からの運用を目指す。

 こうした官民の対策がすでに販売されている車を含めて実行されれば、高齢運転者に限らず、事故件数を大幅に減らすことができるだろう。

 しかし、大雪や豪雨などの悪天候ではどんなにセンサー技術が進歩しても、性能には限界があり自動ブレーキが作動しないことがあるという。最終的にはどのような気象条件でも走行できる自動運転車の開発が待たれる。事故は1件でも少ないほうが良いことは言うまでもない。まずは自動ブレーキ機能が搭載された自動車の普及が待たれるところである。それだけでも「登校中の小学生の列に自動車が突っ込み児童が死亡した」というような“惨劇“は大幅に減るはずだ。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8825

http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/892.html

[不安と不健康18] 糖尿病とストレス 絶え間ないストレス 都会に発症率が高い アジアでも増加
最終更新日:2017年2月10日
◎PDFはこちら
糖尿病とストレス
2017年2月
NPO法人「食と健康プロジェクト」 理事長  高田 明和
東京都済生会渋谷診療所 松岡 健平、加藤 清恵
昭和女子大学 高尾 哲也、小川 睦美、石井 幸江、清水 史子
島津製作所グローバルアプリケーション開発センター 増田 潤一

【要約】
 糖尿病患者と健常中高年男性を比較すると糖尿病患者の血中トリプトファン濃度は低下していた。トリプトファン代謝のセロトニン系、インドール酢酸系、キヌレニン系のいずれの代謝産物は糖尿病患者では増加していた。
 このことは糖尿病患者が絶え間ないストレスにさらされていることを示唆する。

1.糖尿病の発症因子
 日本人の栄養摂取量は毎年減っているが、糖尿病の受療率は増加している1)。 砂糖摂取量という視点では、砂糖摂取は空腹時血糖にも影響を与えず、BMI、中性脂肪量にも影響を与えていない2)。 つまり、同じような栄養摂取量の人でも糖尿病になったり、ならなかったりするということである。このことは糖尿病の発症には栄養摂取量の増加だけなく、何か別の要因があるのではないかと考えさせる。

 実際、ロンドン大学のBrunnerらは、ロンドンの官庁街であるWhitehallで働く人を対象に調査したところ、図1に示すように、職の地位の低い人は食後の血糖値が高いことが分かった3)。

 一方、図2に示すようにアジアでも糖尿病は増加しているが、田舎に比べて都会に発症率が高いことが多い4)(図2)。

 このことはストレスが糖尿病発症に大きな役割を果たしているのではないかと推察させる。しかし、ストレスを客観的に評価することは難しい。われわれの研究では、トリプトファン代謝産物が炎症性ストレス、身体的ストレスに関係していることが分かってきた5),6)。従って、トリプトファン代謝産物の測定が可能になればストレスの客観的な評価につながると期待された。しかし、トリプトファン代謝には多くの代謝産物があり、そのすべてを測定することは困難であった。
 ここでトリプトファン代謝の簡単な経路を示す(図3)。

 つまり、トリプトファンはセロトニン系、インドール酢酸系、キヌレニン系と代謝される。ちなみに、セロトニンは脳内では精神の安定に関係する物質とされ、うつ病などではセロトニンの活性を高めるような薬物が使われる。
2.結果
 そこでわれわれは、50歳から80歳の中高年の男性を対象に早朝空腹時に採血し、トリプトファン代謝産物の一部の濃度について調べた。なお、糖尿病患者(平均65歳)は、東京都済生会渋谷診療所に来所した患者から許可を得て採血した。

 表1は、健常中高年男性と糖尿病患者の血(けっ)漿(しょう)中アミノ酸の濃度の比較を示している。
  トリプトファンに注目すると、健常中高年男性のトリプトファン濃度は糖尿病患者の濃度より高い。つまり、糖尿病患者ではトリプトファンが消費されている。

 表2は、トリプトファン代謝産物の濃度の測定結果を示す。
 糖尿病患者は、セロトニン系、インドール酢酸系、キヌレニン系のいずれの代謝産物の濃度も健常中高年男性より高いことが分かる。

3.考察
 トリプトファンは必須アミノ酸であり、食べ物から摂取しなくてはならない。しかも、植物性のタンパク質には少なく、食肉、魚などに多いことが知られている。唯一の例外は豆で、大豆などはトリプトファンを多く含む。

 トリプトファンから精神を安定させるセロトニンが作られ、セロトニンは脳内でメラトニンになり、睡眠を引き起こす。うつ病などではセロトニンが足りないとされ、現在、うつ病の薬として用いられているパキシルなどは神経系でセロトニンの有効利用をもたらすものである。しかし、トリプトファンの95%はキヌレニンという物質に変換され、それはさらにさまざまな代謝産物になる。

 Heyesら8)は炎症でキヌレニン系の代謝が促進されることを示した。一方、Kleberら9)は心筋梗塞で代謝が促進されることを示している。

 われわれは、ラットに電気ショックを与えると脳内、肝臓、腎臓でトリプトファン代謝が促進されることを示している5),6)。 しかし、この促進は30分後には性状に戻る。つまり、キヌレニン系の代謝が長時間促進されているということは、持続的に炎症、あるいは精神的ショックが続いていることを示していると思われる。

 先に述べたように、糖尿病は全世界的に増加している。日本でも図4に示すように、糖尿病患者あるいは糖尿病を疑わせる人は著増している。

 これらの事実は糖尿病には食べ物以外の因子が重要な役割を果たしていることを示している。
 最初にも述べたように、ストレスがあると血糖値は増加する。さらに、都会の方が田舎よりも糖尿病患者が多いということはストレスが糖尿病発症の重要な因子であることを示唆している。

 しかし、今までストレスを客観的に評価する方法がなかった。増田らは最近、超高速液体クロマトグラフィー・質量分析計を用いて、ストレスの指標であるトリプトファン代謝産物の一斉分析に成功した。

 われわれはこの方法を用いて、糖尿病患者のトリプトファン代謝産物の濃度を測定すると、セロトニン系、インドール酢酸系、キヌレニン系のいずれにおいても代謝が促進していることが示された。

 最近では、痩せている人の多くに糖尿病の発症が見られる。このことは糖尿病の発症が食べ過ぎだけではないことをさらに示唆する(図5)。

 Schwartzらは、糖尿病の発症における肥満の関与に関して図6のような仮説を出している10)。
 痩せていると、血糖値が低下する。脳はブドウ糖を必要とするために、身体がブドウ糖を消費することも貯蔵することもできないようにする。つまり身体をインスリン抵抗性にするのだ。しかし、これだけでは糖尿病にはならない。図6に示すように、脳への心理的、炎症性のストレスがあると、身体は不可逆的にブドウ糖を使うことができなくなるのだ。このインスリン抵抗性が本来の糖尿病の原因と考えられる。

 確かに、食べ物の過剰な摂取は糖尿病を引き起こす可能性もある。しかし、この場合にもストレスの関与を忘れてはならない。


文献
1)高田明和 他(2014)「砂糖摂取と糖尿病の関係」『砂糖類・でん粉情報』(2016年4月号)独立行政法人農畜産業振興機構
2)清水史子 他(2015)「健康な中高年男性の食事摂取状況と血液性状について-砂糖・穀類摂取を中心に」『砂糖類・でん粉情報』(2015年10月号)独立行政法人農畜産業振興機構
3)Brunner EJ, Marmot MG, Nanchahal K, Shipley MJ, Stansfeld SA, Juneja M, Alberti KG(1997)「Social inequality in coronary risk:central obesity and the metabolic syndrome. Evidence from the Whitehall II study」『Diabetologia』Nov 40(11)pp.1341-1349.
4)Yoon KH, Lee JH, Kim JW, Cho JH, Choi YH, Ko SH, Zimmet P, Son HY(2006)「Epidemic obesity and type 2 diabetes in Asia」『Lancet』Nov 11,368(9548)pp.1681-1688.
5)Malyszko J, Urano T, Takada Y, Takada A(1995)「Amino acids, serotonin, and 5-hydroxyindoleacetic acid following foot shock in rats」『Brain Res Bull』 36(2)pp.137-140.
6)Pawlak D, Takada Y, Urano T, Takada A(2000)「Serotonergic and kynurenic pathways inrats exposed to foot shock」『Brain Res Bull』 53(3)pp.197-205.
7)Matsuoka K, Kato K, Takao T, Ogawa M, Ishii Y, Shimizu F, Masuda J, Takada A(2016) 「Concentrations of various tryptophan metabolites increase in patients of diabetes mellitus compared to healthy aged male adults」『Diabetol.Int』DOI 10.1007/s13340-016-0282-y
8)Heyes MP, Saito K, Crowley JS, Davis LE, Demitrack MA, Der M, Dilling LA, Elia J, Kruesi MJ, Lackner A, et al(1992)「Quinolinic acid and kynurenine pathway metabolism in inflammatory and non-inflammatory neurological disease」『Brain』 115 (Pt5)pp.1249-1273
9)Tobias DK, Pan A, Jackson CL, O'Reilly EJ, Ding EL, Willett WC, Manson JE, Hu FB(2014)「Body-mass index and mortality among adults with incident type 2 diabetes」『The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE』Vol 370pp.233-244.
10)Schwartz MW, Porte D Jr(2005)「Diabetes, obesity, and the brain」『Science』 307(5708)pp.375-379.
http://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001414.html
http://www.alic.go.jp/content/000134422.pdf 


http://www.asyura2.com/16/health18/msg/397.html

[経世済民119] やはり財政赤字の推計は過大 物価は上昇基調へ  トランプに揺れるメキシコ 後始末に追われる金融当局  FTPLと資金需要
やはり財政赤字の推計は過大
SG証券・会田氏の分析
(写真=PIXTA)
シンカー:財政収支の赤字として、国民経済計算確報、資金循環統計、そして内閣府の試算をならべてチャートにしてみると、2016年度の内閣府の試算の赤字のジャンプが異様であることがわかる。この財政収支の赤字の異様なジャンプがある2016年度を基点として、2020年度まで試算を伸ばしているため、内閣府の財政収支の赤字の試算は過大になっていると考えられる。このジャンプを修正し、それを起点に試算を延ばせば、チャートからも、2020年度の基礎的財政収支の赤字は完全に解消してしまうことも十分に考えられるような財政収支の改善ペースであることがわかる。このジャンプの一つの説明の仕方として、2015年度の第二次・三次の補正予算の成立による国債発行の増加がある。しかし、それが理由なのであれば、補正予算の影響は一時的なものであるため、元のトレンドに戻るはずの2017年度の財政収支の赤字の推計が2016年度からまったく変化していないことが説明できないことになる。これ以上に過度に財政赤字を懸念して緊縮政策に傾けば、デフレ完全脱却は成功せず、経済パフォーマンスの悪化が財政状況を悪化させるというこれまでの悪循環を脱することができなくなってしまうだろう。財政問題を含め、国民は危機に気づいていないから悲観論を誇張してでも関心を持たせ、対策を早めなければいけないというこれまで政策の考え方は危険であり修正する必要がある。その誇張された悲観論自体が景気センチメントを冷やし悲観論が自己実現してしまうリスクを高めてきたこれまでの失敗の歴史があるからだ。

財政赤字の推計
報道される国家予算の一般会計の収支には特別会計や地方政府が入っていないため、国民経済計算確報でまとめられて一般政府全体の財政収支の赤字がわかることになる。

国民経済計算確報の資本取引から算出された純貸出(純借入)では、2015年度の一般政府の財政収支の赤字はGDP対比3.3%であった。

2012年度の8.2%、2013年度の7.2%、2014年度が4.9%であったことを考えれば、財政収支はしっかり改善してきている。

しかし、国民経済計算確報は公表まで1年程度の時間がかかるため、四半期ごとに公表される日銀資金循環統計で直近の動きを確認することになる。

資本取引の裏には金融取引があるため理論的には同一であるはずだが、実際には算出方法の違いにより、純貸出(純借入)は資本取引と金融取引で若干の誤差が存在する。

資金循環統計の純貸出(純借入)も、金融取引のものであり、公表が早いため推計値が多く入るため、国民経済計算確報の資本取引から算出された一般政府の財政収支とは若干の誤差が存在する。

しかし、両者の2009年度からの相関係数は0.98となっており、トレンドはほぼ同一であり、資金循環統計で実際の財政収支の動きをより迅速に追うことは可能である。

資金循環統計の一般政府の純貸出(純借入)に相当する資金過不足では、2015年度の財政収支の赤字は2.9%となっている。

2016年度に入った2016年7−9月期までの1年間では財政収支の赤字は2.3%となっており、赤字の縮小ペースが継続していることが確認できる。

1月25日に内閣府は中長期の経済財政に関する試算を改定し、一般政府の財政収支の赤字の予測を行っている。

2020年度の財政収支の赤字は2.2%となり、そこから利払い費などを控除した基礎的財政収支の赤字(2020年度で1.4%)の解消が困難であるということの根拠になっている。

もちろん、内閣府も新たに公表された2015年度の国民経済計算確報を考慮して試算を行っているはずだ。

問題なのは2016年度から
しかし問題なのは、2016年度の財政収支の赤字が5.1%となっており、2015年度の3.3%から大幅に悪化していることだ。

新たに公表された2015年度の国民経済計算確報によって明らかになった大幅な財政収支の改善、そして直近の資金循環統計の動きをほぼ無視するかのような試算になってしまっている。

資金循環統計の動きを考慮すれば、2016年度の財政収支の赤字はどんなに悪くとも2015年度と同程度であるというのがより現実的だろう。

円安に転換したことにより、2016年度後半の税収はしっかり増加し、2016年度の財政収支が改善することも十分可能だろう。

財政収支の赤字として、国民経済計算確報、資金循環統計、そして内閣府の試算をならべてチャートにしてみると、2016年度の内閣府の試算の赤字のジャンプが異様であることがわかる。

この財政収支の赤字の異様なジャンプがある2016年度を基点として、2020年度まで試算を伸ばしているため、内閣府の財政収支の赤字の試算は過大になっていると考えられる。

このジャンプ(1.8ppt)を修正し、それを起点に試算を延ばせば、チャートからも、2020年度の基礎的財政収支の赤字は完全に解消してしまうことも十分に考えられるような財政収支の改善ペースであることがわかる。

このジャンプの一つの説明の仕方として、2015年度の第二次・三次の補正予算の成立による国債発行の増加がある。

しかし、前倒し発行も含めた国債発行計画はGDP対比1.4%程度しか増加しておらず、政府支出が増加すれば税収で戻ってくる部分も多いため、国債発行計画の増額分をそのまま財政赤字の推計に載せるのは過剰である。

前倒し発行のように国債を発行してもその資金を使わず、現金が増加しただけであれば、両建てで資産と負債が増加するだけなので、国民経済計算確報での財政収支(純借入)はほとんど動かないはずだ。

補正予算による国債発行をそのまま財政赤字に載せるというのは、国債の発行を増やし、それをすべて使い(すべてを海外で使うのが例)、税収の増加がまったくないという極端な前提が必要になる。

更に、補正予算の影響は一時的なものであるため、元のトレンドに戻るはずの2017年度の財政収支の赤字の推計がGDP対比5.1%と2016年度からまったく変化していないことも、このジャンプが補正予算だけでは説明できないことを示している。

これ以上に過度に財政赤字を懸念して緊縮政策に傾けば、デフレ完全脱却は成功せず、経済パフォーマンスの悪化が財政状況を悪化させるというこれまでの悪循環を脱することができなくなってしまうだろう。

財政問題を含め、国民は危機に気づいていないから悲観論を誇張してでも関心を持たせ、対策を早めなければいけないというこれまで政策の考え方は危険であり修正する必要がある。

その誇張された悲観論自体が景気センチメントを冷やし、悲観論が自己実現してしまうリスクを高めてきたこれまでの失敗の歴史があるからだ。

https://cdn-zuu-online.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/wp-content/uploads/64e51936d515bd7911bfcb36ddee6c08.gif

日本の財政収支

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
会田卓司

【編集部のオススメ記事】
・あの有名企業への合格判定はA判定?あなたのビジネスパーソンとしての偏差値を測る(PR)
・100万円で79万円儲かる?「究極の」資産運用術とは
・年末年始の人気海外旅行先は?エグゼクティブの海外での過ごし方(PR)
・東京23区「平均年収ランキング」圧倒的1位は902万円の……
・日本で唯一「シワを改善する薬用化粧品」が証明。ポーラ・オルビスグループの底力(PR)

https://zuuonline.com/archives/139218


 

 
企業物価指数(2017年1月)

2015年3月以来の上昇、物価は上昇基調へ
企業物価指数,輸入物価,最終財
(写真=Thinkstock/GettyImages)
国内企業物価は2015年3月以来の上昇
2月10日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、2017年1月の国内企業物価は前年比0.5%(12月:同▲1.2%)と2015年3月以来のプラスとなり、事前の市場予想(QUICK集計:同0.0%)を上回った。前月比では0.6%(12月:同0.7%)と3ヵ月連続でプラスとなった。今回から2015年基準に改定され、16年1月から17年1月までの平均で前年比▲0.1%の小幅な下方修正となった。

55041_ext_15_1

国内企業物価(*1)の前年比寄与度をみると、鉄鋼・建材関連(12月:前年比0.1%→1月:同0.3%)、為替・海外市況連動型(12月:前年比0.3%→1月:同1.2%)のプラス寄与が前月から拡大したほか、素材(その他)(12月:前年比▲0.6→1月:同▲0.3%)のマイナス寄与が縮小したことが、国内企業物価を前年比で押し上げた。

国際商品相場が需給の改善を背景に堅調に推移していることや、為替が円安基調にあることから物価上昇圧力が高まりつつある。対前年比の伸び率をみると、鉄鋼・建材関連(12月:前年比1.1%→1月:同2.5%)は、スクラップ類(12月:前年比32.3%→1月:同38.1%)の急上昇を主因に堅調に推移している。

為替・海外市況連動型(12月:前年比3.3%→1月:同16.9%)についても、石油・石炭製品(12月:前年比4.0%→1月:同22.3%)や非鉄金属(12月:前年比1.6%→1月:同6.7%)の上昇などを受けて前年比で伸びが拡大した。

非鉄金属では、銅の国際市況が改善したことなどから上昇している。石油・石炭製品では、OPEC・非加盟国による減産が着実に進んでいることを背景に石油製品が堅調に推移しているほか、中国政府主導の過剰生産能力の削減などが石炭製品を押し上げている。

———————————-
(*1)
1.機械類:はん用機器、生産用機器、業務用機器、電子部品・デバイス、電気機器、情報通信機器、輸送用機器
2.鉄鋼・建材関連:鉄鋼、金属製品、窯業・土石製品、製材・木製品、スクラップ類
3.素材(その他):化学製品、プラスチック製品、繊維製品、パルプ・紙・同製品
4.為替・海外市況連動型:石油・石炭製品、非鉄金属
5.その他:食料品・飲料・たばこ・飼料、その他工業製品、農林水産物、鉱産物
———————————-

輸入物価は約2年ぶりの上昇
1月の輸入物価は、契約通貨ベース(12月:前年比1.2%→1月:同7.1%)では2ヵ月連続のプラス、円ベース(12月:前年比▲2.6%→1月:同4.5%)では2014年12月以来となるプラスに転じた。

輸入物価(円ベース)(*2)の前年比寄与度をみると、石油・石炭・天然ガス(12月:前年比0.6%→1月:同6.6%)、金属製品(12月:前年比0.5%→1月:同1.2%)のプラス寄与が前月から拡大したほか、機械器具(12月:前年比▲1.8%→1月:同▲1.6%)のマイナス寄与が縮小したことが輸入物価を押し上げた。

対前年比の伸び率をみてみると、原油(前年比48.3%)や石炭(前年比58.8%)が堅調に推移したことや円安を背景に、石油・石炭・液化天然ガス(円ベース)は前年比26.5%(12月:同2.3%)と前月からプラス幅を大きく拡大した。金属・同製品(円ベース)についても、金属素材(前年比13.3%)や鉄鋼(前年比22.8%)の急上昇を受けて前年比11.2%(12月:同4.3%)と伸びを拡大した。

為替レート(月中平均)は1月に1ドル=114.7円、前年比3.0%の円高水準となった後、2月は1ドル=112.8円(前年比1.9%の円高)で推移しており、対前年比での円高の影響はほぼ一巡しつつある。足元では円安の進行が一服していることから、輸入物価(円ベース)の大幅な上昇は見込みにくいものの、国際商品市況が支えとなり緩やかな上昇が続くと予想する。

55041_ext_15_2

———————————-
(*2)
1.機械器具:はん用・生産用・業務用機器、電気・電子機器、輸送用機器
2.その他:繊維品、木材・同製品、その他産品・製品
———————————-

最終財への下押し圧力はほぼ一巡
55041_ext_15_4

1月の需要段階別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料が前年比17.5%(12月:同3.2%)、中間材が前年比0.3%(12月:同▲2.2%)、最終財が前年比▲0.6%(12月:同▲1.7%)となった。

国際商品市況の持ち直しや円安の進行で素原材料は前年比で伸びが拡大しており、上昇圧力が高まっている。川下の最終財についてもマイナス幅が縮小するなど、川上から川下への下押し圧力は一巡しつつある。消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い最終消費財は1月の前年比▲0.6%から2016年度末までにプラスに転じた後、円高の影響一巡やエネルギー価格の上昇を受けて伸びを高めると予想する。

国内企業物価は緩やかな上昇が続く見込み
国際商品市況の改善や円安を背景に、前年比でみた国内企業物価は2015年3月以来となるプラスに転じた。特に原油価格(ドバイ)はOPEC・非加盟国による減産を受け1バレル=50ドル台で推移するなど、昨年の水準(1バレル=30ドル程度)から大幅に水準を切り上げており、国内企業物価の押し上げ要因となっている。

先行きは、国際商品市況が堅調に推移すること、国内景気の持ち直しを背景に需給が改善することなどから、緩やかな上昇が続くことが予想される。もっとも、トランプ新政権が掲げる政策に対して不透明感が高まっており、引き続き商品市況や為替レートに与える影響を注視する必要があろう。

岡圭佑(おか けいすけ)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

【関連記事】
・鉱工業生産16年12月〜10-12月期の生産は消費増税前以来の高い伸び
・貿易統計16年12月〜10-12月期の外需寄与度は前期比0.3%程度のプラスに
・家計調査16年12月〜乖離する需要側と供給側の消費関連指標
・消費者物価(全国16年12月)〜全国コアCPIは17年1月にプラス転化へ
・景気ウォッチャー調査(17年1月)〜回復基調に一服感、トランプ新政権に対する不透明感が重石

Share
Tweet
Share
2015年3月以来の上昇、物価は上昇基調へ
ZUU online の最新記事を
毎日お届けします

関連記事

やはり財政赤字の推計は過大 あいかわらず保守的「日本人の資産構成」から分かること 景気ウォッチャー調査(17年1月)〜回復基調に一服感、トランプ新政権に対する不透明感が重石 「年金カット法案」が示す「世代相互の思いやり」 マクロで見た日本の財政の本当の姿
あなた
https://zuuonline.com/archives/139281

 


財政政策でインフレは実現するか / トランプ政権発足に揺れるメキシコ
掲載日:2017-02-11 発表元:みずほ総合研究所 総アクセス数:52 PDF
リンク切れ報告 / ブックマーク数(0) / 発表元で検索 / 発表元の関連書籍
共有する
※PDFファイルをご覧になるためには、Acrobat Readerが必要です。 無料ダウンロード
※各レポートは作成時点での意見・分析結果とお考えの上、読者自身の判断でお読み下さい。
キーワード検索: 金融市場ウィークリー | 金融市場見通し | 株式相場 | FTPL | 物価水準の財政理論 | トランプ政権 メキシコ |
シリーズ・関連レポート:シリーズ一覧を表示
金融市場ウィークリー 2017年2月3日号〜トピックス:トランプ砲が鳴り響く中、様子見し...−17-02-04
金融市場ウィークリー 2017年1月27日号〜トピックス:トランプ大統領就任後の為替相場...−17-01-28
金融市場ウィークリー 2017年1月20日号〜トピックス:英国はハード・ブレグジットへ ...−17-01-21
金融市場ウィークリー 2017年1月13日号〜トピックス:新興国を襲ったトランプショック...−17-01-14
お薦めレポ: 金利はどのように決まるのか〜財政赤字の影響は小さかった
同カテゴリーの最新レポート:
【記者会見】中曽副総裁(高知、2月9日)...−17-02-11
金融市場ウィークリー 2017年2月10日号〜トピックス:財政政策でインフレは実現す...−17-02-11
Weekly金融市場 2017年2月10日号−17-02-11
メキシコの政策金利引き上げについて−17-02-11
国内FinTech(フィンテック)市場に関する調査を実施(2016年)〜積極的な銀行...−17-02-10
最近の金融経済情勢と金融政策運営:高知県金融経済懇談会における挨拶 日本銀行副総裁 ...−17-02-10
金融政策決定会合における主な意見(1月30、31日開催分)−17-02-09
2016年アジアパシフィックにおける金融セクターディールの状況〜金融セクターの201...−17-02-08
Weekly Market Report(2017年2月6日〜)〜振り回される日々−17-02-07
金融分野のAPIエコノミー〜オープンAPIが生み出す革新的なサービス−17-02-07
http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/market-w/weekly_170210.pdf
http://www3.keizaireport.com/report.php/RID/299459/

 

トランプ政権の金融・財政政策 後始末に追われる金融当局
2017.2.8 05:00

 トランプ米政権の下、金融政策と財政政策は衝突に向かい、米金融当局は需要面のショックに直面すると当初、想定されていた。だが、一部の国々への新政権の敵対的な姿勢を見ると、金融政策が衝突するのは国際的な貿易・金融政策で、金融当局が見舞われるのは供給面のショックかもしれない。

 ◆国際貿易は「安全弁」

 トランプ氏当選を受けてまず台頭した基本的なシナリオは、米経済が完全雇用に近い現状で、赤字財政によって需要が膨らめばインフレを加速させ、米金融当局は支出拡大の効果を相殺するために一段と積極的なペースでの引き締めを強いられるというものだった。

 こうした金融政策運営はトランプ大統領の経済政策目標と対立し、金融当局とホワイトハウスが衝突するという筋書きだ。

 しかし、この論理展開では常に、対外セクターが難問の部分的な突破口となってきた。成長加速はドル高を招いて輸入品価格を押し下げ、増大する内需を海外の生産者に振り向ける。輸入品の値下がりはインフレ圧力を和らげ、金融当局の負担も多少軽減される。言い換えれば、米国の貿易赤字拡大により、政権との衝突につながるような金利の大幅引き上げなしで内需の増大を可能にする。

 これがホワイトハウスと金融当局との対立を回避する部分的な解決策にすぎない理由には、ドル高が米製造業の重しになる点が挙げられる。貿易赤字拡大を容認すれば増大する内需をカバーできるが、製造業部門の雇用は打撃を受ける。そして、トランプ氏が公約に掲げてきたのは同部門の雇用を保護して増やすことだ。

 トランプ氏は本気でこの約束を守ろうとしているようだ。だが、そうなれば米国は国際貿易という安全弁を失うことになる。国家通商会議(NTC)のナバロ委員長は、国際的なサプライチェーンを米国本土に取り戻したい考えだが、それには時間がかかり、その間にインフレ高進が予想される。

 ◆逆回転と悪循環

 北米自由貿易協定(NAFTA)発効後の世界では、こうしたサプライチェーンが広がり、耐久財価格は大幅に下落した。この世界的な流れを逆行させるなら、正反対の事態が予想される。さらにトランプ氏の政策では、インフレ高進の下で米金融当局が利上げで内需の伸びを抑制しようとしても、海外に内需を振り向ける余地は小さくなる。この結果、急増する内需に金融当局は一層積極的にブレーキをかけなければならない。

 高めの金利は一段のドル高につながると想定され、ドル安を志向していると受け止められるトランプ氏らの通商政策に、ここでも金融政策が衝突することになる。ナバロ氏はユーロが「甚だしく過小評価」されていると指摘。トランプ氏は、中国と日本がそれぞれの通貨を操作して押し下げるのを、米国は「間抜けな集団」のように傍観してきたと主張した。

 それでも、ドル安はインフレ圧力をあおり、米金融当局にさらなる引き締めを促す。それがドル高圧力を高めてトランプ政権に目標達成をあらためて阻害する。

 結局のところ、新政権が推し進めようとしている通商やドル、移民をめぐる政策は、供給サイドのショックと捉えるのがベストだ。その帰結は成長鈍化とインフレ圧力の高まりであり、金融当局は苦境に陥ることになる。ショックは恐らく、最近の商品相場高に絡んだものよりずっと深刻となりそうだ。金融当局は商品値上がりを一時的なものとして受け流し、ほとんど対応を必要としなかったためだ。これに対し、政権の対外政策の転換の場合、衝撃はもっと長期的で、金融当局の対処の仕方もそれに相応したものでなければならない。(Tim Duy)

                  ◇

 この寄稿を書いたティム・ドイ氏は米オレゴン大の教授で、「ティム・ドイのフェッドウオッチ」の執筆者です。この寄稿文の内容は同氏自身の見解です。このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません。
http://www.sankeibiz.jp/macro/print/170208/mcb1702080500023-c.htm

 


物価水準の財政理論とネットの資金需要(前編)
SG証券・会田氏の分析
(写真=PIXTA)
シンカー:現在注目されている物価水準の財政理論(FTPL)は物価動向を説明するツールとしては、鈍い刀であると考えられ、1%単位の細かな物価の変動を説明することは困難であろう。しかし、景気過熱を考慮しない異常な財政拡大が、いずれ異常な物価上昇をもたらすことは説明できる。一方、逆にも応用でき、過剰な政府債務残高への警戒感による異常な財政緊縮が、デフレの原因になってしまうということも説明できる。

物価を説明する一般的な経済理論では、貨幣の量を動かすことにより物価が動くと考えられ、物価上昇は貨幣的現象であり、貨幣の量を調整する金融政策だけでコントロールできると考えられてきた。

しかし、リーマンショック後、日本や欧米先進国は大規模な金融緩和政策により市場に流通している貨幣の量を増やしたが、物価上昇率はなかなか加速せず、低インフレ状態が続いてきた。

日銀は2%の物価上昇率の目標を掲げて、マネタリーベースを年間80兆円程度増加させる大規模な金融緩和政策を行っているが、足元の物価上昇率はマイナスになってしまい、目標を達成するには相当の時間がかかりそうである。

一方、現在注目されている物価水準の財政理論(FTPL)では、物価水準(インフレ)は財政政策の拡大で起こすことが可能であるとし、物価上昇は貨幣的現象であるという従来の一般的な経済理論の考えと大きく異なる。

一般的な経済理論では、現在の実質政府債務残高は、将来の実質財政収支の黒字で返済されるとされる。

物価は貨幣的現象として前提となり考慮されず、現在の実質政府債務残高と、将来の実質財政収支の和の現在価値がイコールとなるように、財政収支が調整されると考える。

一方、FTPLでは、将来の財政収支の和で必ずしも債務残高が返せないという仮定を置き、将来の物価期待が変動(上昇)することにより、現在の名目政府債務残高と、将来の名目財政収支の和の現在価値がイコールになると考える。

財政拡大により現在の名目政府債務残高が増加すれば、家計が将来的に増加分を増税等で返済することが無い信じれば、将来の実質財政収支が一定であるため、物価が上昇してバランスすることになる。

一般的な経済理論では物価は貨幣的現象として財政政策と切り離されて考えられるが、FTPLでは財政運営が物価期待に大きな影響を与えると考える。

FTPLは物価動向を説明するツールとしては、鈍い刀であると考えられ、1%単位の細かな物価の変動を説明することは困難であろう。

しかし、景気過熱を考慮しない異常な財政拡大が、いずれ異常な物価上昇をもたらすことは説明できる。

一方、逆にも応用でき、過剰な政府債務残高への警戒感による異常な財政緊縮が、デフレの原因になってしまうということも説明できる。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
会田卓司

【編集部のオススメ記事】
・あの有名企業への合格判定はA判定?あなたのビジネスパーソンとしての偏差値を測る(PR)
・100万円で79万円儲かる?「究極の」資産運用術とは
・年末年始の人気海外旅行先は?エグゼクティブの海外での過ごし方(PR)
・東京23区「平均年収ランキング」圧倒的1位は902万円の……
・日本で唯一「シワを改善する薬用化粧品」が証明。ポーラ・オルビスグループの底力
https://zuuonline.com/archives/138220


 



http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/110.html

[経世済民119] 不動産屋が借金をし始めたら危ない FTPLは期待を醸成できれば  ユーロから始まる世界経済の大崩壊 中銀は持ちこたえるか
サマーズ:不動産屋が借金をし始めたら危ない

Facebook4TwitterGoogle+HatenaMixiEmailPrintFriendly共有
ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が、トランプ政権批判を続けている。
先日は理路整然と保護主義を批判したが、この日は同じThe Washington Postで金融分野の規制緩和について批判している。

今回の批判対象は金融界と金融界出身の閣僚・高官であり、サマーズ氏の批判も辛辣を極めている。
ウォーレン・バフェット氏が絶賛したトランプ政権人事をバッサリ切り捨てている。
「不幸なことに、政府内で有能だからといって(少なくとも多大な助けなくしては)企業に入って経営する能力が培われるわけではないのと同じように、ビジネスの経験もまた公共政策・政治のプロセスを指揮する能力を与えてはくれない。」
そのビジネス経験豊かな閣僚・高官らが、リーマン危機等への反省に立って作られた金融規制を緩和しようとしている。
こうした規制は2011年の《ウォール街を占拠せよデモ》などでも見られた、民衆の金融界への不信感を具現化したものでもあった。
サマーズ氏は、ドッド・フランク法などの規制が官僚主義や小規模銀行を含むなど負担の多すぎるルールになっている点を認めている。
しかし、それを撤廃しろと言う人たちの姿勢も軽率すぎると非難する。
「大統領やそのアドバイザーが言うことは、公共政策改正のための真剣なよりどころというより、高級別荘地でのカクテル・パーティーでのおしゃべりのように聞こえる。」
なるほど、確かに商売人のおしゃべりというのは、正しさ・厳密さ・実現可能性などお構いなしに、その場その場で適当に話を合わせるところがある。
正統的な閣僚・学者からすれば、そう聞こえるのだろう。
サマーズ氏は、米国家経済会議議長に就任したゲイリー・コーン元ゴールドマン・サックス社長兼COOの発言に噛みつく。
議長の発言を「オルタナティブ・ファクト」(でっち上げを事実と言い張る時のトランプ政権の言い訳)と称するほど厳しく、一つ一つ矛盾を突いていく。
コーン議長が、米銀の資本増強がすでに万全と主張していることについて、サマーズ氏は注意を怠るべきでないと慎重だ。
• リーマン危機前、ベア・スターンズやリーマン・ブラザーズは資本が充実しているとFRBやBISからお墨付きを得ていた。
• 時価総額:総資産の比が依然高いレバレッジを示唆している。
拙速な規制緩和が金融システムを再び不安定化しかねないと心配しているのだ。
サマーズ氏は、大統領の同業者がドッド・フランク法のために望むほど借金できないとこぼすことについて、こうコメントした。
「不動産屋が望む信用を得られないとすれば、いいことだ。
実際、過去40年の金融史は、不動産屋が信用供与でわくわくすると、往々にして数年後に金融危機がやってくると示唆している。」
金融規制が緩和され、サマーズ氏の同業者の商売が活発になったら、その時が黄信号ということのようだ。
投稿者FP編集部投稿日:2017年2月8日カテゴリー政治, 海外経済タグローレンス・サマーズ
投稿ナビゲーション
前過去の投稿:【輪郭】物価水準の財政理論FTPLの基本のき
次次の投稿:【メモ】ジム・オニール:将来予想のための6つの最重要指標
関連記事
• 2016年10月11日サマーズ:世界は未踏の危険な領域へ
• 2017年1月9日サマーズ:トランプの規制緩和が金融危機の温床に
• 2017年1月22日サマーズ:幻滅、期待、計画
• 2016年10月21日サマーズ:インフラ投資で停滞からの脱出を
• 2017年1月5日サマーズ:新経済プランはブードゥー経済学以下
http://www.financialpointer.com/jp/%E3%82%B5%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%BA%EF%BC%9A%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E5%B1%8B%E3%81%8C%E5%80%9F%E9%87%91%E3%82%92%E3%81%97%E5%A7%8B%E3%82%81%E3%81%9F%E3%82%89%E5%8D%B1%E3%81%AA%E3%81%84/ 


 

クリストファー・シムズ:FTPLは期待を醸成できれば・・・

クリストファー・シムズ
Facebook0TwitterGoogle+HatenaMixiEmailPrintFriendly共有
物価水準の財政理論(FTPL)で注目を浴びているクリストファー・シムズ教授が、Reutersのインタビューに応じている。
その提案には実際の適用上いくつもの飛躍があり、いまだ俎上に上るようなものには仕上がっていない。

インタビューの内容は既報のものとほぼ同様、より詳細になっている。
シムズ教授の提案は、ゼロ金利制約によって金融政策の効果が発揮できない中、財政政策を協調的に活用しながら、国民・市場の期待を誘導することでインフレが実現できるというもの。
全貌がほぼ明らかになり、問題点も明らかになってきた。
既報分と重複になるが、ここでは問題点を挙げておこう。

都合よく期待は誘導できるか?

シムズ教授は、期待の醸成のために「2%インフレ目標の持続的な達成が視野に入るまでは、増税は行わず、財政拡大政策を続けると宣言すること」を提案する。
しかし、異次元緩和でも《目標達成までやり続ける》との宣言があったが、インフレ期待は十分に高まらなかった。
インフレ期待さえ醸成されていれば、量的緩和はゼロ金利下でも効くはずだったのだ。
金融政策での期待醸成がダメだったから財政政策で期待を醸成すると言うなら、教授の説明は少々荒っぽすぎる。
これで納得する人がどれだけいるのだろうか。

インフレが高まりすぎないか?

シムズ教授は、「われわれは、金融引き締め策をどう適用すれば良いかを知っている」とし、「中銀の大きなバランスシートと準備預金の金利は、非常にパワフルな金融引き締めのツールとなる」と言っている。
後者はおそらく預金準備率の極端な引上げと付利引上げの併用のことを言っているのだろう。
しかし、この重大な懸念に対して、たったこれだけの言及ですまされるはずがない。
既報でも紹介したとおり、シムズ教授が例として挙げたボルカー・ショックの時代とは、短期の政策金利が20%となった時代だ。

米CPI(総合、都市部、青)と実効FF金利(赤)
米CPI(総合、都市部、青)と実効FF金利(赤)

これをセーフと考えるのは難しい。
また、中央銀行のバランスシート拡大について、教授は「独立性を危険にさら」したり、「財政に与えるインパクトを大きくするリスク」を指摘している。
すでに、各国中央銀行は以前の中央銀行ではないのだ。

米マネタリー・ベース
米マネタリー・ベース

ボルカーFRB議長(当時)は直面した高インフレに対し勇気ある対応をし、インフレを封じ込めたと言えるだろう。
それを成功として認めるとしても、同じことが不連続に大きく膨張した中央銀行のバランスシートでも再現できるのだろうか。
「パワフル」なのは間違いないが、いい方にも悪い方にもパワフルになるであろうことを覚悟しなければならない。

(次ページ: 本当のリスクは・・・)

ページ: ページ 1, ページ 2
投稿者 FP編集部投稿日: 2017年2月10日カテゴリー 国内経済タグ クリストファー・シムズ
投稿ナビゲーション

過去の投稿:ラリー・フィンク:たくさんの暗い陰が見える

次の投稿:【書評】ユーロから始まる世界経済の大崩壊
関連記事

2017年2月8日【輪郭】物価水準の財政理論FTPLの基本のき
2017年2月1日クリストファー・シムズ:インフレ税で軽減しろ
2016年12月21日浜田宏一教授:量的緩和は間違ってない
2017年1月25日アデア・ターナー:債務は本当に存在するのか、しないのか
2017年1月11日佐々木融氏:年末までにドル円100円割れも

http://www.financialpointer.com/jp/wp-content/uploads/sites/2/2017/01/94bcd8d4c96839695fc9e1c4655b2224-768x409.png

http://www.financialpointer.com/jp/wp-content/uploads/sites/2/2017/02/ce8b6f2da4458793da843a48e05ac554-768x405.png


 
インフレ期待が高まらないリスク

シムズ教授は、「本当のリスクはインフレ急進とは逆のケース」だという。
これは、まったくそのとおりだ。
インフレ期待が醸成できない場合、何が起こるか。
ディスインフレが継続したまま、財政悪化が進んでいくことになる。
日本財政はハードランディングし、ある意味での高インフレが実現することになる。

シムズ教授は、期待の醸成の困難さを認めている。

「この種の議論をする際によく持ち出されるリカーディアン均衡(リカードの等価定理)的な考え方では、追加的な政府支出の効果は将来の増税予測によって相殺されるというが、現在は相殺どころか、それ以上の増税を予測する『パイパー・リカーディアン』とでも呼ぶべき『期待』がむしろ広がってしまっている。」

こうした反応は、日銀の追加緩和、とりわけマイナス金利導入の際にも垣間見えた。
キリギリスの米国人はどうかわからないが、アリの日本人は、悪い予感を感じると将来のために貯蓄を増やそうとしかねない。
インフレが来るとか、インフレで政府債務の一部を減価させるから社会保障は安泰だとか、政府債務が増えるとか、こうしたことに対する日本人の自然な反応が貯蓄よりも支出を増やすことだろうか。
日本人の99.999%は、将来を政府債務評価方程式で予想してはいない。

「日本の政治経済分野の専門家ではないので、これ以上具体的な提案は差し控えたい」というシムズ教授。
どれほど日本の実情を知った上での提案なのだろうか。

そもそもインフレが必要か

そして、根源的な質問がリフレの要否だ。

「デフレが『悪』であるか、理論的に説明するのは難しいが、歴史的にデフレが経済の低成長や効率低下を招きやすい傾向があることは知られている。
・・・
一定のインフレは経済の潤滑油の働きをする。」

シムズ教授のこの指摘に反対する人はほとんどいないだろう。
しかし、本当の問題は《大きなリスクやコストを負担してまで、このやり方でインフレを誘導するのか》であろう。
少なくとも、上記の教授の発言だけでは、その疑問は払拭されない。

また、教授は

「インフレにはデフレ脱却という利点もある。」

とも発言している。
シムズ教授の提案とそれに対する(特に日本の)受け取り方には混濁がある。
リフレのためのFTPLなのか、財政再建のためのFTPLなのか。
そこが明確に定義されていないため、いろんなところでトンチンカンな議論に発展してしまうのであろう。

ページ: ページ 1, ページ 2
投稿者 FP編集部投稿日: 2017年2月10日カテゴリー 国内経済タグ クリストファー・シムズ

http://www.financialpointer.com/jp/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A0%E3%82%BA%EF%BC%9Aftpl%E3%81%AF%E6%9C%9F%E5%BE%85%E3%82%92%E9%86%B8%E6%88%90%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8C/


【書評】ユーロから始まる世界経済の大崩壊


Facebook0TwitterGoogle+HatenaMixiEmailPrintFriendly共有
世界銀行上級副総裁等を歴任したジョゼフ・スティグリッツ教授によるユーロ圏についての論説・提言。
「ユーロから始まる世界経済の大崩壊 格差と混乱を生み出す通貨システムの破綻とその衝撃」との副題がついており、ギリシャ問題が再び表面化しつつある今、参考になる一冊だろう。

ユーロ圏にかかわる諸問題を経済だけでなく政治ほかのさまざまな側面に配慮しながら丁寧に議論している。
全編にスティグリッツ教授の考えが溢れているが、それを度外視しても、重要ポイントの列挙・事実認識の確認という意味で有用な書物となっている。
常に弱者に優しく、強者や権力者に辛辣な教授が、トロイカ体制やEU・ドイツを厳しく批判する。
完璧主義の教授に妥協はなく、誤り・不足あるところ、すべてを斬りまくる。
立派なのは、(現実的な実現性はわからないが)批判と提案が対をなしているところだろう。
教授の処方箋の一端を紹介しよう。

「ドイツと北部諸国の一部(オランダやフィンランドなど、現在の苦境からすぐに復活しそうな国)を離脱させるのだ。
ヨーロッパに健全性を取り戻させるのが目的なら、この方法はギリシャを脱退させるよりたやすいだろう。」

ユーロ加盟国間の格差の主因の一つが単一通貨ユーロであるのは明らか。
ドイツのように強い国にとってユーロは弱すぎ、ギリシャのように弱い国にとってユーロは強すぎる。
結果、強い国がさらに強くなり、弱い国はさらに弱くなる。
この弊害を取り除くため、ユーロ圏を「無印ユーロ」圏と「北ユーロ」圏に分割しろとスティグリッツ教授は提言している。
貿易黒字をため込んで批判を浴びてきた北ユーロ圏は、強い北ユーロによってその黒字が消されるという。
教授はこの考えを敷延し「柔軟なユーロ」の構想を提案している。

本文で458ページ、文字も比較的ぎっしり詰まっている。
これで2,200円(税別)だから、出版とは本当に儲からない営みだ。

さて、日本からすれば、ユーロ圏の話は少々遠い物語に感じられる。
しかし、日本が本当にTPPのような広域の包括的通商協定を目指すなら、ユーロ圏の諸問題はいい反面教師になるはずだ。
欧州やNAFTAを見ればわかるように、FTAとは単に貿易の話ですむものではない。
為替、通貨、金融政策、銀行監督、移民、財政へと幅広い分野に広がるものだ。
とりわけ、域内の為替・移民政策は問題化が避けられない。
TPPが頓挫した今、日本は広域の協定を目指すのか、二国間協定を駆使するのか、慎重に考えないといけない。
残念なのは、そうした議論が公に深まらないまま、個別の話だけが進んでしまうことではないか。
投稿者 FP編集部投稿日: 2017年2月10日カテゴリー Exclusive, 書評, 海外経済タグ ジョゼフ・スティグリッツ
http://www.financialpointer.com/jp/%E3%80%90%E6%9B%B8%E8%A9%95%E3%80%91%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%81%8B%E3%82%89%E5%A7%8B%E3%81%BE%E3%82%8B%E4%B8%96%E7%95%8C%E7%B5%8C%E6%B8%88%E3%81%AE%E5%A4%A7%E5%B4%A9%E5%A3%8A/


 


 
【書評】中央銀行は持ちこたえられるか

日本銀行
Facebook3TwitterGoogle+HatenaMixiEmailPrintFriendly共有
日本総合研究所の河村小百合氏による、日本の財政・金融政策破綻の予言書。
「忍び寄る『経済敗戦』の足音」との副題がついている。

新書であり、税込820円と安価であることから、読み始めるまで正直のところさほど期待していたわけではなかった。
しかし、この本はいい意味でのサプライズだった。
テーマを包括的かつ丁寧に論じており、紙幅の制限の中で、きちんと事例やデータを呈示している。
日本の財政や金融政策が行き詰った場合に何が起こるのか、それを考えるための材料を与えてくれる本だ。

一例を挙げるなら、河村氏は「債務調整」について説明している。
国が財政危機に陥った場合、その状況を打開するための債務リストラの方法であり、2種類に分類する:

連続的な債務調整: 長期間にわたって国民に高い負担を課す高インフレや金融抑圧など
非連続的な債務調整: デフォルトやリスケ、国債費以外の歳出カットなど
こうした論点・分類・事例が丁寧に書かれている。
本書自体が日本を含む各国の運命を詳細に予言しているわけではない。
(暗示はされている。)
誰かがそうした予想をしたい時に本書を読めば、必要な基礎知識はすべて揃う。

FRBは金融政策の転換を本格化させようとしている。
日欧は量的緩和を続けているとは言え、毎日、一日ずつゴールに近づいていることは間違いない。
世の中では、出口を占おうという試みがますます増えつつある。
日銀は出口はおろかテイパリングについてさえ口をつぐんでいるが、投資家はそうはいかない。
最善の道、まあまあの道、ありえない道があるとすれば、3つ目だけには進まないようにするのは当然だ。
投稿者 FP編集部投稿日: 2017年2月11日カテゴリー Exclusive, 国内経済, 書評
投稿ナビゲーション

過去の投稿:【書評】ユーロから始まる世界経済の大崩壊

次の投稿:ラグラム・ラジャン:ラジャン総裁退任の本当のワケ
関連記事

2016年12月8日【書評】英EU離脱! 日本は円高に対処できるか
2017年1月25日【書評】現代日本経済史年表 1868-2015年
2016年12月24日【書評】日本国債が暴落する日は来るのか?
2017年1月27日【書評】アニマル・スピリット
2017年2月10日【書評】ユーロから始まる世界経済の大崩壊
http://www.financialpointer.com/jp/%E3%80%90%E6%9B%B8%E8%A9%95%E3%80%91%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E9%8A%80%E8%A1%8C%E3%81%AF%E6%8C%81%E3%81%A1%E3%81%93%E3%81%9F%E3%81%88%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%8B/

http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/112.html

[経世済民119] ラグラム・ラジャン:ラジャン総裁退任の本当のワケ ジム・オニール:将来予想のための6つの最重要指標 
ラグラム・ラジャン:ラジャン総裁退任の本当のワケ

ラグラム・ラジャン
Facebook3TwitterGoogle+HatenaMixiEmailPrintFriendly共有
インド中央銀行総裁を昨年9月に退任したラグラム・ラジャン シカゴ大学教授の総裁退任理由が暴露された。
ラジャン氏は乱暴な高額紙幣廃止に反対し、半ば政府から追い出されたのだという。

インドのモディ首相は昨年11月8日夜、ルピーの高額紙幣2種を廃止すると発表した。
わずか数時間後の深夜0時には当該紙幣は廃止され、両替もできない市民は大混乱に陥った。
代替の紙幣を用意しない中での高額紙幣廃止のため、ベース・マネーが急減したインド経済は景気後退に苦しむことになった。

インド各紙・各テレビ局は11日、前財務相で議会重鎮のP. Chidambaram氏が5ページにおよぶ書簡の存在を暴露したと報じた。

「政府が透明だというなら、この書簡を公にすべきだ。
書簡はRBIを代表して書かれている。
高額紙幣廃止についてであり、なぜ実施すべきでないか書かれている。」

内容は紙幣廃止に反対するもので、RBIの誰かが中央政府にあてたもの。
その書簡の日付が、ラジャン総裁(当時)の退任日なのだという。

「政府はラジャン氏が職を続けるのを難しくし、今思えば、退任の一因となったのだろう。
政府は紙幣廃止を行いたかったが、ラジャン氏は反対していた。」

モディ政権とラジャン氏とは、たびたび金融政策について対立していた。
安易に利下げを望む政権に対し、安易には利下げに応じないラジャン氏。
世界一の中銀総裁と称されることもあったラジャン氏だが、それだけに政権からはやりにくい相手だったようだ。
投稿者 FP編集部投稿日: 2017年2月12日カテゴリー 政治タグ ラグラム・ラジャン
投稿ナビゲーション

過去の投稿:【書評】中央銀行は持ちこたえられるか
http://www.financialpointer.com/jp/%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%EF%BC%9Afrb%E3%81%AF%E6%AD%A3%E3%81%97%E3%81%84%E3%81%A8%E6%80%9D%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%92%E3%81%99/


【メモ】ジム・オニール:将来予想のための6つの最重要指標

ジム・オニール
Facebook1TwitterGoogle+HatenaMixiEmailPrintFriendly共有
BRICsの生みの親Jim O’Neill氏が短期経済予想の秘伝を皆伝している。
秘伝を用いると、周期的な要因から、短期的には40年来の平均を超える経済成長が見込まれるという。

オニール氏がProject Syndicateで、Goldman Sachsチーフ・エコノミスト時代に用いていた短期予想のための最重要指標を明かしている。
世界中から選んだ6つの最重要指標を用いて、その後半年の世界経済を予想してきたのだという。
結論は凡庸なのだが、この分析手法を知っておくのは極めて有用と思われるので、6つの指標をメモしておこう。

毎週の米新規失業保険申請件数:
米経済全体の強さの指標。
遅行指標としてだけでなく先行指標としても使える。
米ISM製造業景況感指数:
3-6か月後の米経済の先行指標。
米ISM調査の製造業の新規受注と在庫
 
中国の小売消費額:鉱工業生産の比(インフレ調整後):
中国の周期的なトレンドとともに、輸出から国内消費への経済の構造変化を示す。
韓国の貿易統計:
どの国よりも早く毎月1日に公表され、貿易相手国は世界の主要経済を網羅する。
独Ifo景況感指数:
欧州全体の景気循環を推測するのに有用。
Brexitやトランプ勝利によって、2016年は大荒れだった。
米大統領選までは、長く経済の混乱が続くかとも思われたが、選挙を境にセンチメントが改善、2017年に入って景気循環要因による経済回復が鮮明になったとオニール氏は解説する。

「すべて勘案すると、6つの指標は、世界経済が4%超の成長率で成長すると示しているようだ。
長い間で最高の成長率だ。」
これは40年来の平均を上回る水準だという。
この経済回復を米・英での政策期待によるものとする人もいる。
しかし、オニール氏によれば、そうした要因がなくても経済は回復していたという意見が大勢だ。
ただし、確たる答はわからない。

「6つの指標は、数か月後以降に何が起こるかは教えてくれない。
・・・
この疑問(経済改善が米・英の政策期待なのか)に対する答を与えてくれる指標はない。
時間だけが教えてくれる。」
投稿者 FP編集部投稿日: 2017年2月9日カテゴリー 海外経済タグ ジム・オニール


 
http://www.financialpointer.com/jp/%E3%80%90%E3%83%A1%E3%83%A2%E3%80%91%E3%82%B8%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%AB%EF%BC%9A%E5%B0%86%E6%9D%A5%E4%BA%88%E6%83%B3%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE6%E3%81%A4%E3%81%AE/

 

http://www.financialpointer.com/jp/%E3%82%B8%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%82%BA%EF%BC%9A%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E9%87%91%E8%9E%8D%E5%B8%82%E5%A0%B4%E3%81%A7%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%8C%E8%A1%A8%E9%9D%A2/
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/115.html

[経世済民119] 無価値でも売れる!「値付け」で都市型錬金術 凄い値付け 洋酒、規格外野菜、卵の殻やローン提案も

日経ビジネスオンライン
無価値でも売れる!「値付け」で都市型錬金術

凄い値付け

洋酒、規格外野菜、卵の殻やローン提案も
2017年2月13日(月)
西 雄大
 たとえ無価値だと思われるものでも、アイデア次第で価値を持ち値段を付けられる。日経ビジネス2月13日号特集「凄い値付け」でも、5円のマンボウを500円で卸す鮮魚流通ベンチャーを紹介した。ほかにもまだまだある。企業は最低限のコストで新たな収益源を構築できる可能性を秘める。それは、まるで都市型錬金術とも言うべき手法だ。

 「応接間のサイドボードに、お酒眠ってまへんか」。こう問いかけるのはのぶちゃんマン(京都市)の滝下信夫社長。同社が100円均一でパンを販売するチェーンを展開するほかに、最近力を入れているのが酒の買い取りだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/020900110/021000002/01.jpg

家庭内に眠るウイスキーなどを買い取るのぶちゃんマンの滝下信夫社長。(写真撮影:菅野勝男)
 一般家庭に眠るお酒のボトルを買い取る。かつて多くの家庭には応接間があり、そこには応接セットとサイドボードを置くことがステータス。そして飾り棚には高級食器や洋酒を並べるのが定番の使い方だった。

 1970年代は海外旅行が珍しい時期でもあり、おみやげに洋酒を贈られることも多かった。だが、その多くは飾られるだけで放置されていることが少なくない。特に若い世代はお酒を飲む量が減っているため、使い道がないままとなっている。

 一方で古いお酒を探しているマニアはたくさんいる。サイドボードに眠るお酒たちは、マニアにとって宝物だ。そこで不要な家庭から買い取り、マニアへ販売している。1970年代のジョニーウォーカーブラックラベルを例にすると、1本300円前後で買い取る。これを店頭で約3000円で売る。価値が10倍になった計算だ。

 さらに2月に、そうやって集めた酒を飲めるバーを開店する。高級感あふれる内装にしたバーで1杯1000円前後で提供する予定。1本のボトルから20杯は作れるので、2万円以上の売り上げが見込める。これで価値は60倍以上になる。「北新地や祇園のバーで飲めば1杯5000円はする。それを1000円で飲めるからお客さんも得」(滝下社長)。ほかにも、ビンテージワインなどでは20万円を超える買取金額を提示することもあるという。まさに眠っていた金鉱脈を掘り当てたようなものだ。


MFSが展開するローン相談窓口
0円が20万円に

 さらに無価値なものにアイデアを加えて、値段を付けられたサービスもある。無料の情報を加工し、20万円のサービス料を取り事業を成立させている企業がある。MFS(東京都新宿区、中山田明社長)だ。顧客から20万円で住宅ローンの最適な借り換えを提案している。

 金利情報は店頭に行けば誰でも見られる。わざわざ顧客が大金を払うのは手数料を支払っても、最適な借り換えにより平均400万円以上のローン残債を減らせるからだ。月々の支払い負担が軽くなるため、高い金利で借りていた世帯から注目されている。

 塩澤崇取締役COOは「銀行と一般消費者の間には情報格差がある。穴埋めするのが我々の仕事」と指摘する。

 銀行各社の金利情報が掲載された比較サイトには、金利が安い順に表示されている。消費者は最も安い金利の銀行に融資を申し込みたくなる。だが「全員がその金利で借りられるとは限らない」(塩澤COO)という。

 そのためローン審査を申し込んでも断られてしまうケースが多い。住宅ローンの融資は年収や預貯金のほか、自動車ローンなどの債務状況や過去の延滞履歴など総合的に判断する。

 消費者はなぜ審査に落ちたのか分からないケースが少なくない。銀行は住宅ローンの融資基準を公開していないことが多いためだ。

 そこでMFSが銀行と消費者の間に立ち、その顧客が利用可能で最も有利なローンを提案するのだ。まずMFSが消費者の資産や返済能力をヒアリングする。その内容でより有利な条件で貸し出してくれる銀行を探してくれる。ここに20万円の価値がある。

 銀行にもメリットがある。低金利になったことで借り換え需要が高まり、多い月には1万件以上の審査依頼が届くという。MFSが仲介することで適切な申込者しか依頼がこなくなり、MFSを通じた顧客を優先することで業務効率が向上する。最近、MFSが自社のサイト上で、自分の融資能力が分かるサービスを立ち上げた。塩澤COOは「今後は金融機関から、我々だけにより良い条件の金利を引き出せるようにもしたい」と意気込む。

有料で捨てたものも値付けに成功

 無料どころか有料で捨てていたものに価値を見出し、商品化にこぎつけた企業もある。

 長崎県平戸市にあるベンチャー、アイル(早田圭介社長)が目をつけたのが規格外野菜だ。規格外野菜とはサイズが不揃いであったり、傷がついているといった理由で出荷できない野菜のことを指す。農家が収穫した野菜のうち4割程度は市場に流通できず廃棄処分となると言われている。


野菜を海苔のように乾燥させた、ベジート
 これを原材料にして、アイルは「ベジート」を製造している。野菜をペースト状にし、海苔を製造する要領で乾燥させる。パリッとした食感でにんじんや大根の味がそのまま残っている。早田社長が海苔と同じような食感となるように数年間研究を重ねた結果、出来上がった。早田社長は「海苔の代替商品ではなく、サンドウィッチといった新しい需要を開拓したい」と話す。早田社長によると海外の展示会に出展すると反応が良いという。

 このベジートは農家だけを救うものではない。のり業者が使わない夏場の乾燥機が使えるため、生産量が増えればのり業者に機械の使用料を支払える。アイルがある平戸市は有明海にも近く海苔業者が多くいる。彼らの収入アップにも貢献しそうだ。

 まだある。たまごの殻を使って新しい価値を見出したのが、佐賀県佐賀市にあるベンチャー、グリーンテクノ21(下浩史社長)だ。

 下社長は卵の殻を集めるために割卵業者や食品メーカーを回っている。下社長は「当初『たまごの殻を譲ってもらえませんか』と話をすると不信がられた」と笑う。それもそのはず。たまごの殻は産廃業者へ委託し、廃棄するものだった。1トンあたり2万円ほどかかるゴミを、下社長はわざわざ1キロあたり1円で買い取る。食品メーカーに卵の殻を乾燥し粉砕する機械を置く。定期的にグリーンテクノが回収する。

 同社が卵の殻で作るのはラインマーカーだ。小学校などの校庭に線を引く際に使うもの。20キロで800円ほどになる。40倍に化けるのだ。下社長がラインマーカーに目をつけたのが理由がある。市場性だ。「競合も少なく、販売価格が乱高下しない。安定した計画が立てられる」(下社長)。シェアはまだ5%ほどで「まだまだ開拓する余地がある」(下社長)。

 いずれの商品やサービスも発想を転換し、市場の見方を変えたことで新しい需要を掘り起こせた。コストを重視した同質市場から抜け出して、無駄に消耗しない戦い方を身に付けられる可能性も秘めている。


このコラムについて

凄い値付け
経営の神様こと松下幸之助氏ですら長年、頭を悩ませたと言われる「値付け」。
経営の最重要事項であるはずのそんな価格戦略で、日本企業の迷走が深まっている。
収益力の向上を目指し値上げに踏み切ったものの、客離れを招く企業あり。
逆に「デフレは続く」と一段の値下げに走った結果、業績が低迷する企業もある。
成熟時代には、中途半端な値段を付ける戦略では十分な利益は上がらない。
常識価格を大きく上回る値段を設定し、その分、消費者が驚く付加価値を乗せるか、
前代未聞の安値を打ち出し、顧客を力技で引き寄せる。いずれかの姿勢が必要だ。
モノを売りたきゃ倍値か半値──。そんな「大胆値付け戦略」を先進企業に学ぶ。
日経BP社
Copyright © 2006-2017 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/020900110/021000002/
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/121.html

[政治・選挙・NHK220] 日米首脳会談、第一ラウンドの勝者は誰か? 語られなかったところに火種がある 日本と中国が為替操作していると批判されるワケ
日米首脳会談、第一ラウンドの勝者は誰か?

トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く

語られなかったところに火種がある
2017年2月13日(月)
篠原 匡

貿易政策の攻防は、ペンス副大統領と麻生副総理の「経済対話」に舞台を移す(写真:ロイター/アフロ)
 真実は、表立って語られなかったところにあるのかもしれない。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/012700108/021200007/aflo_OWDG833172.jpg

 米国国境に隣接するメキシコの町、マタモロス。ティファナなどと同様に、マキラドーラ(保税輸出加工区)として発展を遂げた国境の町である。ここで、米企業向けに様々な部品を輸出している企業は、遠く離れたワシントンで開催された首脳会談を注視していた。

 「(日本との関係という面で見れば)我々のビジネスに関係があるのは日本から輸入している原材料に限られる。だが、今回の首脳会談で今後について何らかのインサイト(洞察)が得られるかもしれない」。ノバリンクのオペレーションマネジャー、ルイス・ムスキス氏は会談直前に、本誌の取材にこう述べた。ノバリンクの部品が組み込まれた最終製品は90%以上が米国で販売されている。北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉や"国境税"の導入が実行に移されれば、ビジネスそのものの存亡に関わる。

「トランプの貿易政策」詳細は見えず

 2月10日に開催された日米首脳会談。ムスキス氏のように、貿易協定や為替政策に関して、新大統領の求めるものがある程度、見えるかもしれないという指摘は少なからずあった。トランプ大統領の具体策があまりに不透明だったためだ。

 大統領選で環太平洋経済連携協定(TPP)やNAFTAを厳しく批判、大統領選の勝利後もメキシコでの工場建設を進める自動車メーカーをツイッターで非難した。1月20日に就任初日にはTPP離脱の大統領令に署名している。一方で、二国間のFTA(自由貿易協定)を望んでいるということを除くと、貿易政策の詳細はあまり明らかになっていない。その手がかりが、首脳会談を通じて見えるのではないかという期待である。その観点で言えば、手がかりと言えるようなものはほとんどなかった。

 首脳会談自体はおおむね好意的な評価を得ている。米ロイターは共同声明で日米安保に基づく防衛義務を確認したことに言及、「共同声明は安倍首相の勝利」と論評した。米ワシントンポストも、トランプ政権のアジア政策が従来の路線に修正されつつあると好意的に捉えた。

 「トランプ大統領は『一つの中国』という従来の考え方を踏襲、尖閣諸島を含め、日本の施政権の及ぶ範囲の防衛義務を明言した。一連の動きを見ると、東アジア政策に関して、新政権が伝統的なアプローチにシフトしていることが見て取れる」。米シンクタンク、CNAS(Center for a New American Security)のリチャード・フォンテーヌ会長は指摘する。

 トランプ大統領は選挙中、日韓の核武装を容認する発言で物議を醸した。またロシアとの関係改善に意欲を示す一方で、北大西洋条約機構(NATO)を批判したり、在日米軍の駐留経費の増額を求めたり、同盟国を揺さぶる発言を続けていた。今回の首脳会談は、こういった不安を解消するものとして評価されている。

「麻生・ペンス経済対話」新設の意味

 もっとも、両首脳の記者会見を見ると、日本が望んだ方向に進んだ安全保障分野に比べて、為替政策や通商政策については両者の溝がうかがえる内容だった。

 「通貨の切り下げについてはずっと不満を述べている。最終的に、恐らく人々が考えるよりも早く、公平な競争条件になると信じている」。トランプ大統領は記者会見でそう述べると、「それがフェアな唯一の方法」と改めて念押しした。日本は通貨の切り下げは一切していないという立場だが、その主張にトランプ大統領が納得していないのは明らかだ。日系自動車メーカーに対する表立った批判もなかったが、国内での雇用創出や貿易赤字の削減という旗は下ろしていない。

 「安全保障についてはトランプ大統領がかなり踏み込んだという印象を持った。半面、為替や貿易赤字については根本的にかみ合っていないと感じた」。野村インターナショナルの雨宮愛知・シニアエコノミストは指摘する。

 今回の首脳会談で、麻生太郎副総理とペンス副大統領をトップとする経済対話の新設で合意、日本が避けたい二国間FTAや金融政策を巡る議論をここに押し込むことに成功した。何を言い出すか分からないトランプ大統領ではなく、ペンス副大統領を相手に実務を進めようという狙いである。その面では成功と言えるが、貿易と為替が日米の火種として残り続ける状況は変わらない。むしろ、首脳同士の記者会見でほとんど言及されなかったということが、今後の波乱を示唆しているのかもしれない。


このコラムについて

トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く
1月20日に第45代米大統領に就任したドナルド・トランプ氏。通商政策や安全保障政策など戦後、米国が進めてきた路線と大きく異なる主張をしているトランプ大統領に対する不安は根強い。トランプ氏は具体的に何を実施し、何を目指しているのか。新大統領が率いるアメリカがどこに向かうのか。それをひもといていこうというコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/012700108/021200007/


 


日本と中国が為替操作していると批判されるワケ

ニュースを斬る

元日銀審議委員、白井さゆり慶応大教授が解説
2017年2月13日(月)
白井 さゆり
日米首脳会談では、「為替」についてのサプライズはなく、ひとまず穏便に終わった。だが、トランプ大統領は「日本は何年も市場で通貨安誘導を繰り返している」と批判しており、この先も予断を許さない。そもそも、最近は為替介入をしていない日本が、なぜ批判されるのか。元日銀審議委員で慶応義塾大学教授の白井さゆり氏が解説する。

黒田東彦日銀総裁も超金融緩和を長くは続けられない(写真:ロイター/アフロ)
 安倍首相とトランプ氏の首脳会談が2月10日に開催された。主要議題は日米同盟の重要性の確認で、尖閣諸島、中国の海洋進出、北朝鮮の核・弾道ミサイルなどの懸案事項で共通認識が共有され、トランプ大統領の年内来日要請と同氏による受け入れ表明など、日本外交としてはまずますの成功と言えそうだ。

 経済関係については、米国の環太平洋経済連携協定(TPP)離脱を踏まえ、今後は日米二国間で議論を進めていくこと、貿易や投資拡大に向けて麻生太郎副総理とマイク・ペンス副大統領による対話の枠組み新設などを確認した。注目点は為替問題で、トランプ大統領は記者の質問に対して通貨の切り下げに言及し、きわめて短期間で公平な条件を取り戻して通貨安誘導を阻止する構えを強調した。中国を念頭に置いているのは間違いなく、今年4月の米国財務省による為替報告書の発表を待たずに、近く中国を「為替操作国」と認定し、高関税を適用する可能性がある。日本については、今年末の企業懇談会でトランプ氏は中国と日本の両方に言及し「何年も市場で通貨安誘導を繰り返している」と言及しており、今後の日米交渉でこの点も議論の俎上に乗るとみられる。

 そこで本稿では、トランプ大統領が繰り返し言及する中国と日本の「通貨の切り下げ」に焦点を絞って論点をとりまとめてみたい。

中国は「為替操作国」なのか

 中国に対する通貨の切り下げとは、2015年8月に人民元が対ドルで3%程度切り下げられて以来、人民元安が10%程度も進んだ現状を指しているとみられる。主要貿易相手国との貿易額で加重平均した人民元の名目実効為替レートも10%程度安くなった。ただし、トランプ氏の言うように何年もその状態を続けてきたというよりも、ここ1年半の最近のことだ。

 というのは、中国では、2005年7月に1ドル=8.3元程度で人民元をドルに対して固定する為替制度を撤廃して以来、2013年末までは人民元高が続いてきたからだ。この間、中国政府は変動幅を徐々に拡大し、2015年12月にはドルよりも主要貿易相手国の貿易加重平均をとった通貨バスケットに重点を移しており、2005年から2013年までに人民元は対ドルで25%程度、通貨バスケットに対して(ピークの2015年初め対比で)50%程度も高くなっている。通貨高の影響もあって、経常収支の黒字が国内総生産(GDP)に占める割合はピークだった2007年の10%程度から、2015年以降には3%程度へ低下し、2016年は2%以下にまで低下したようだ。過去と比べれば中国は外需から投資・消費主導の経済へと大きく転換を果たしているのは明らかだ。

 米国側でも、同じ傾向が確認できる。米国の経常収支の赤字は対GDP比でここ5年ほどは2%台で推移しており、貿易赤字も世界金融危機前の6%近くから4%台へと縮小している。米国の経済活動の規模からみてこの程度の赤字は大きな問題ではないはずである。

 では何が問題なのか?ここ1年半の人民元安の動きとともに、時を同じくして米国の貿易赤字が金額ベースでは急ピッチで拡大し、世界金融危機前の状況に戻りつつあることをトランプ氏は懸念しているようだ。特に米国の輸入総額に占める中国の割合が2005年の14%程度から2016年には2割を超えるまで拡大しているのに、米国の輸出総額に占める中国の割合がこの間4.6%から2016年には8%へ拡大しているに過ぎないため、貿易の不均衡は甚だしいということなのだろう。

的外れの対中貿易批判

 こうした見方には2つ問題がある。ひとつは、中国では2015年半ばの人民元切り下げをきっかけに人民元安圧力が強まっており、資本流出に拍車がかかっていることにある。最初は人民元安期待が高まる中で中国企業による短期ドル建債務の前倒し返済が中心だったが、最近では居住者による(さまざまな規制の網の目をくぐった)当局の統計では把握できない形での流出が増えている。中国向け証券投資も減っている。

 中国はさらなる人民元安を招くと資本流出がとまらないことに恐怖を感じており、人民元安の急速な進行をなんとか抑えているのが現状だ。用いている手段は(1)外貨準備の取り崩し、(2)資本流出規制の適用強化、そして(3)金利上昇が中心である。

(1)外貨準備については、2015年半ばの4兆ドルから大きく減少して今年1月には3兆ドルを下回っており、米国債もこの間2200億ドルほど売却している(もっともこの減少の一部は為替評価損も含まれる)。

(2)資本流出規制については主に企業の国際送金などに対して引き締めており、企業の経済活動の妨げとなっている。中国政府は、2009年から人民元のSDR通貨バスケット入りを目指して国内金融規制の自由化、資本流入規制の緩和、人民元の国際化を進めてきたが、現在ではその流れと大きく逆行している。

(3)金利引き上げについて、今年1月に中国人民銀行(中央銀行)が商業銀行に貸し出す6カ月物のやや長めの金利を10ポイント引き上げ2.95%にした。それに加えて、昨年の米国大統領選挙以降、資本流出や米国金利につられて長期金利は1%ほど上昇している。金利上昇は中国経済を冷やす恐れがあるが、資本流出を抑制する効果が期待されているようだ。

 米国が主張するように中国が完全に自由な変動相場制に移行すれば、人民元は大幅に安くなり、米国の国益とは合わないであろう。しかもそれにより中国金融市場が不安定になって中国経済が落ち込めば、世界第2位の輸入大国である中国の輸入低迷が続き、米国を始め世界の対中輸出は伸び悩む恐れがある。最近では中国発の為替・株価不安定化が日本を含む世界に波及するほどの影響力をもつようになっていることにも注意が必要だ。

 もう一つの問題は、1980年代とは異なり二国間貿易の不均衡に注目しても意味がない点にある。アジア地域では2001年の中国による国際貿易機関(WTO)への加盟をきっかけにサプライチェーンが加速し、日本や他のアジア諸国が付加価値の高い中間財・資本財を中国へ輸出あるいは中国・アジアに生産拠点を構えて生産する生産分業体制が進んだ。

 例えば、米国は世界最大の輸入市場であるが、日本の対米輸出は2割程度に過ぎず、アジア向けが半分を占めるのもそうした背景がある。だからこそ、中国から米国へと輸出が増えているのだ。米国が中国に高関税を適用しその状態が長期化すれば、外資系・中国系問わず企業は他の国へと生産拠点を移していくであろう。米国社会が貯蓄よりも消費が旺盛である限り、不均衡を改善するのは難しい。

 それでも米国新政権は、選挙公約通り、中国を為替操作国として認定し高関税率を適用するとみられる。それを正当化する根拠として、米国の貿易赤字の約半分を中国が占めており、2005年の25%程度から拡大していることを挙げるであろう。米国の関税率引き上げに中国は報復する構えであるため、そうした応酬がメキシコやカナダなどの他の諸国でも実践されていくと、企業の経済活動は阻害され、世界の貿易活動が今後数年はいっそう停滞することが懸念される。

為替介入をしていないのに日本が批判される理由

 では日本はどうなのか。米国の貿易赤字で第2位にあるのは確かに日本だ。米国の貿易赤字に占める日本の割合は2005年の11%程度から2016年には9%程度へ低下しているものの、3%程度を占めるドイツよりも大きい。この間の米国の輸入総額に占める日本割合は8%から6%に低下した。しかし、米国財務省の「為替報告書」で為替操作の「監視国リスト」として挙がる6カ国のうち残る4カ国のドイツは5%、韓国は3%、台湾とスイスは1.8%程度と低い。しかも2014年半ば以降に日本の輸出総額は伸びているが、対米依存が際立つ。日米通商交渉では日本が厳しい譲歩を迫られる可能性がある。日本の輸出の強みは自動車と資本財だが、対米向けは自動車が大きい。

 為替政策についてはどうなのだろうか。トランプ氏は日本について為替介入はしていないが、金融政策で円安誘導していると批判している。確かに、日本は直近では2010年から2011年にかけて数回の介入を繰り返したことがあるが、その後は、介入実績はない。

 一方、2013年4月からは日本銀行が黒田東彦総裁の下で大量の国債を買い入れる「超金融緩和」を実施し、過度な円高・株安が是正されている。2016年1月にはマイナス金利を導入し、意図しない円高方向への転換を招いている。同年9月に10年金利を0%程度で釘付けする政策を導入すると当初の影響は限定的であったものの、11月8日の米大統領選挙後の米国金利が急上昇すると、その金利差をもとに短期筋の外国投資家を中心に円安・株高へ方向へとポジションが転換し、円安が進むきっかけなった。

「為替介入」と「超金融緩和」の違いとは?

 為替介入も超金融緩和も円安の方向に働きかけるとすれば、それらの違いはどこにあるのだろうか。ひとつには、第一義的な目的が異なっている。為替介入の場合、急速に通貨高が進むと経済への負担が大きいと判断される場合に、通貨高のペースを抑えるために為替相場に直接的に働きかけることが多い。20カ国・地域(G20)ではこうした介入は、自国の競争力を高めるために他国を犠牲にして輸出を促進しているわけではないとして容認している。一方、超金融緩和の目的は国内の物価安定にあり、そうした政策についてもG20で合意がある。物価の安定とは各中銀が定めたインフレ目標を実現することを指し、日本では2%である。エネルギーを除いた現在の物価の基調をみると0%程度なので金融緩和がまだまだ必要だというわけである。

 もうひとつの違いは、用いる手段が異なることだ。為替介入ではドル預金や米国財務省証券等の外国資産を買い入れるのが、超金融緩和では国債を含む国内資産を買い入れる。どちらも資産買い入れの見返りに、中銀が自国通貨を市場に供給している点で同じである。もっとも日本の場合、為替介入は財務省が所管しており財務省が国庫短期証券を発行して円を調達し、日本銀行に委託してその資金を使って外貨を買い入れているため、資金供給が増えることはない。仮に日本銀行が外国資産を直接買い入れれば資金供給が増えることになるが、その行為が為替介入とみなされれば財務省の権限とのすみわけが難しいこともあり、実施されていない。

 ではG20で国際合意があるのに、なぜ、日本は通貨安誘導と批判されるのだろうか。それは、超金融緩和の目に見える効果として通貨安とそれにもとづく株高が際立つからであろう。

 日本では銀行に預金が沢山集まっており資金が潤沢な割には貸出先が少なく、大企業では現金を多く保有し資金需要が乏しいという構造的問題を抱えており、金融緩和効果は大きいとは言えない。このため、円安・株高が唯一の金融緩和効果なのだから日銀は米国との金利差を維持する低金利政策を続けるべきとの見解を、海外投資家からよく耳にする。しかも、米国財務省の為替報告書では日本を前述の監視国リストに入れる理由の説明で、円高圧力が高まると政府当局による円高抑制を目的とした口先介入がみられると明記している。確かに、円高が進むと財務省・日銀・金融庁の幹部が緊急会合を開催し、市場を牽制するかのような行為がみられる。こうした一連の動きが、国際的に円安誘導ととられがちな背景にあるようだ。

いずれにしても、超金融緩和は長くは続かない

 現在の円安が超金融緩和によるところが大きいとすれば、そうした超金融緩和は長くは続けられないことを今から認識しておくことが必要だ。だとすれば、超円高が是正されている現在、低金利環境である今のうちにその環境を最大限に生かして、スピード感をもって、企業は為替の変動に左右されない競争力を一段と高めていくこと、政府は企業の新陳代謝が進むよう規制緩和や成長戦略などにいっそう取り組んでいくことが重要だ。

 日本の輸出はもはや「量」ではなくより付加価値の高い製品の輸出に大きく軸足を移している。アジア地域で生産分業体制が定着しており、アジアの生産拠点と日本の間では企業間の輸出と輸入が双方に拡大している。となると円安が総じて日本経済にプラスだとしても、以前ほど需要を押し上げる効果は期待できなくなっている。目先の為替の動向よりも超金融緩和後の将来を見据え、必要な対策を今から着々と打っていくことに皆が専念すべきではないか。


このコラムについて

ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/021000564
http://www.asyura2.com/17/senkyo220/msg/600.html

[環境・自然・天文板6] 唯一オランウータンと心が通ったと思ったとき 孤独が日常 ヒトのオランウータン化 環境が良ければめいっぱい繁殖より少なく産
唯一オランウータンと心が通ったと思ったとき
研究室に行ってみた

国立科学博物館 オランウータン 久世濃子(6)

2017年2月11日(土)

川端 裕人
東南アジアのボルネオ島とスマトラ島に暮らす“森の人”、オランウータン。群れを作らず、木の上で暮らすため、同じく大型の類人猿であるゴリラやチンパンジーなどと比べると多くの謎に包まれている。そんな野生のオランウータンを研究すべく、自ら調査フィールドを拓き、10年以上にわたり野生での調査を続ける久世濃子さんの研究室に行ってみた!(文=川端裕人、写真=内海裕之)
 進化の歴史の中で、ぼくたちの隣人である大型類人猿オランウータンが、合わせ鏡のようにぼくたちに見せてくれるトピックとして、「少子化」やら「孤独な子育て」といったきわめて現代的な問題がある、と久世さんは言う。連載の1回目で触れたし、その後も通奏音のように背景に響いていた。

久世濃子さんも二人の幼いお子さんの母親だ。
 オランウータンは、「環境が良ければめいっぱい繁殖する」よりも、「少なく産んで確実に育てる」方式の先達(かもしれない)。また、今の日本の子育て世代で、母親が家にいる場合、ただ一人で子どもの面倒を見るような密室的な孤独な環境になってしまいがちなのは、「ヒトのオランウータン化」と言えるかもしれない。
「オランウータンって、まさに孤独な子育てをしてるんです。ほかの大人と誰とも会話することなく、ただただ子どもとだけ一緒にいるって、人間にとってはものすごくつらいですよね。でも、オランウータンは全然つらくなくて、それが日常だし、一生でもあるんです」

親より子ども

 孤独が日常で一生。フィールドで会いやすいのは、比較的行動範囲が狭いメスだけれど、メスにとっては、「孤独な子育て」を何年かごとのサイクルでまわしながら暮らしていくのが、まさに「一生」だ。ヒトだったら、本当に頭がおかしくなりそうな状況だが、オランウータンのお母さんたちはまったくつらそうではないという。オランウータン化しているヒトと、どんなところが違うのだろうか。

「自分も子どもを育ててみて思うのは、親が違うというより子どもが違うんですよね。オランウータンの子どもって騒がないし、要求しないし、かわいいだけで。あれだったら私もできると思いました。だから、お母さんの問題じゃないです。人間の赤ちゃんの性質とか行動とかが、お母さん一人だけで子育てするようにできていないんです。基本的に」
 思わず、大爆笑。
「ヒトのオランウータン化」といっても、少子化する傾向は共通するものの、孤独な子育てはヒトにはそもそも無理! という見解なのである。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/227278/121500075/1-ph2.jpg
ナショナルジオグラフィック2016年12月号でも特集「オランウータン 樹上の危うい未来」を掲載しています。Webでの紹介記事はこちら。フォトギャラリーはこちらです。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/magazine/16/112200016/112200003/?P=2&img=ph1.jpg

 久世さん自身、2005年にフィールドに入った後で、09年に出産、育児をする立場になり、今では二人のお子さんがいる。
 すると、オランウータンのお母さんたちは、単なる観察の対象というよりも、より明確な「合わせ鏡」の対象になる。その結果、久世さんが感じ取ったのが、前述のような感想だ。学術的な雑誌に論文として発表されるような知見ではないけれど、大型類人猿の研究では、この手のヒトに直接返ってくる部分が常にある。
1対1じゃない
「だから、お母さんが一人で抱え込むんじゃなくて、保育所こそ、ヒトの本来の子育てだと思います。たくさん子どもたちがワラワラいて、見る人もワラワラいて、1対1じゃないという。孤独に子育てしているオランウータンだって、実は、子どもがほかの子どもと遊ぶ時間を確保しているとことが分かってきているくらいですからね」
 単独行動が基本のオランウータン同士でも、食べ物になる木の近くでばったりと出くわすことがあって、お互いに子どもがいたら、積極的に(というか、子どものなすがままに)遊ばせるのだそうだ。その結果、母も子も食べる時間が減って、摂取カロリーが減ることになろうと。

ダナムバレイの母子。(写真提供:久世濃子)
「私も観察していたことがあるんですけど、母子ともども食べるのが終わって、休んでいるときに遊びに行くんです。お母さんは、その間、子どもが遊び終わるのをただ待っています。ときどきチラッチラッと様子を見て、『ああ、まだ終わらないわ』みたいな顔をして、じぃーっと待っている。自分が子どもを産む前だったんですが、待っているお母さんの忍耐力がすごいなと思いました」
 そういうオランウータン研究者自身、「忍耐」を要求されるフィールドで生き残ってきた人たちだから、あなたたちの忍耐力もすごいよ、とぼくは言いたくなる。野生オランウータンの研究は、かかる期間が長いこともあって、自らの人生と、野生オランウータンをめぐる経験が、濃厚に混ざり合う傾向にある。

 久世さんもそうだ。

 ポスドクとして新しいフィールドを拓くのに没頭した時期の後、自らも子を得た。すると、今度は、子どもを持ちつつ、オランウータンの母子を観察するという立場になるわけだ。子育てとフィールドの両立は一大テーマなのだけれど、久世さんは、お子さんをつれていくという決断をした。
「私、ポスドクの時、京都大学の人類進化論研究室というところにいたんです。その時の教授が、今、京大総長の山極寿一さんです。山極さんも家族を連れてゴリラの調査に行ったと聞いたりしていたので、子どもが生まれたら連れて行こう、夫に育児休業を取ってもらってでも行こうと思っていたんです」
 しかし、ここで思いがけない壁にぶつかることになる。

保育園の壁

「立ちはだかったのが保育園の壁で、1カ月以上休ませると強制退園。帰って来たらまた入れる保証がないんです。じゃあ、いっそ何年も向こうに行ってしまうかというと、自分の身分ではできないし、せいぜい数カ月。結局、1歳4カ月で断乳して、子どもは日本に置いて、1回1週間とか10日とか、長くて3週間までのフィールドワークにとどめることになりました」
 本当に、この「保育園の壁」は切実だ。長期間休むと自動的に退園という以前に、「保育園落ちた」というケースも多い。すると、フィールドワークどころか、自分の研究生活そのものが成立しなくなる。若い研究者は日本学術振興会の特別研究員(いわゆる学振)に採用されていることが多いが、この場合、働いていると認めてもらえないことすらあった。学術振興会と特別研究員は、直接の雇用関係にはないので、採用証明書は出しても勤務証明書は出してくれなかったからだ。やっと最近になって、保育園関係に関してのみ、勤務証明書を出すようになった、という経緯がある(これから学振制度を利用する人は、知っておいて損はない)。
 しかし、二人目のお子さんが生まれて、事情が変わってきた。
「二人とも日本に置いていったら、夫が大変すぎるとか、私も、一人目よりも経験があって、気持ちにも余裕があるし、じゃあ、連れて行こうと。まだ1歳ですけど、この8月にはじめて行ってきたんですよ」
 一番近い町まで、車で2時間かかるところだから、何か大きな病気をした時に心配だとか、いろいろ不安はある。それでも期間的に長くないし(なにしろ1カ月を超えると強制退園!)、なにはともあれ、現地の人が住んでいる環境だ。えいやっ、母子二人でのフィールドワークへと旅立った。

こちらもダナムバレイの母子。子どもが1歳半のときに撮影。(写真提供:久世濃子)
 結果は、とても満足の行くものだっそうだ。
「さすがに、オランウータンの追跡にフル参加するのは無理なんですけど、楽しんでいるのが分かるんです。調査助手に霊長類の写真を見せてもらって『オランウータンはどれ?』と聞かれると、ちゃんと指差すんですよ。子どもを連れて行くことで、これからまた別な経験ができそうっていう予感があります」
 子どもと一緒にフィールドに入ることで、違った経験をする、というのは、文化人類学の研究者などがよく口にする。子どもと一緒だと、まず、自分自身が地元の親コミュニティに受け入れてもらいやすくなるし、子どもは勝手に現地の子たちと遊び始めるから、子どもの社会も見えてくる。

鍵はコミュニケーション

 では、野生のオランウータン研究者にとってはどうだろう。
 お子さんの目を通して、あるいは、その成長を通して、オランウータンとヒトをより深く知り得る手がかりは得られるのだろうか。
 ひとつの鍵は、「コミュニケーション」ではないか、と久世さんと話していてぼくは感じた。すごく雑な言い方になるが、オランウータンの母子のコミュニケーションと、ヒト(久世さんたち)の母子のコミュニケーションを、オランウータンに近いところで比べることに意味があるのではないかと。
 印象的なエピソードがある。

「私が唯一、オランウータンと心が通ったと思ったのと、どのみちオランウータンとは分かり合えないと同時に思った経験があるんです。リハビリセンターで研究をしている時に、大人メスで攻撃的な個体がいたんですよ。人間も噛むし、ほかのオランウータンの子どもも噛んで怪我させて。私も一回噛まれています。それで、その個体が近くにいるときに、やっぱり噛まれた経験のあるちっちゃい子が一緒にいて、私と2人でガシッと抱き合ったことがあるんです。ああどうしよう、みたいな状況で。お互いがお互いを必要としているってひしひしと感じられたんですけど、でも、その子がふっと手を離して行っちゃったんです。そのタイミングが、私には分からなかった。一方的に切られたみたいな。いや、切るという意識すらなく、行っちゃったみたいな。たぶん、人間とか、チンパンジーなら、そこまでお互いに必要とした後、離れる前にも何かあると思うんですよね」

共感と断絶感のはざまから

 ヒトとヒトだったら、去り際に目と目の会話があったり、得も言われぬ時間が流れたかもしれない。相手がチンパンジーでも、そういったことが起きるかもしれない。ちなみに、動物園でチンパンジーやゴリラを担当してた飼育員が、オランウータンの担当に変わった時にもらす標準的な感想は、「何を考えているのか全く分からない!」だ。
 では、オランウータンの母子と、久世さん母子は、どんなふうにコミュニケーションの仕方が違うだろう。もっといえば、ヒトの子がオランウータンの母や子とコミュニケーションする瞬間がこの後あったとして、ヒトの母である霊長類学者はそこから何を感じ取って言語化するだろう。
 近くて遠い親戚であるオランウータンは、こういう独特の立ち位置からヒトを照らし出す。研究者である久世さん自身も、自らの育児経験も、その合わせ鏡になる。
 そして、豊かなサイエンスは、こんな共感と断絶感のはざまから芽吹く。その先にあるはずの新たな知見を期待したい。

おわり

久世濃子(くぜ のうこ)
1976年、東京都生まれ。国立科学博物館 人類研究部 日本学術振興会特別研究員。理学博士。日本オランウータン・リサーチセンター事務局長。1999年3月、東京農工大学農学部地域生態システム学科卒業。同年4月、東京工業大学命理工学研究科に入学してオランウータンの行動や生態を研究し、2005年9月に博士号を取得。京都大学野生動物研究センターの研究員などを経て、2013年4月から国立科学博物館人類研究部に所属。著書に『オランウータンってどんな『ヒト』?』(あさがく選書)、共著に『セックスの人類学』(春風社)、『女も男もフィールドへ(FENICS 100万人のフィールドワーカーシリーズ12)』『フィールドノート古今東西(FENICS 100万人のフィールドワーカーシリーズ13) 』(共に古今書院)などがある。

川端裕人(かわばた ひろと)
1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社文庫)『天空の約束』、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)など。近著は、知っているようで知らない声優たちの世界に光をあてたリアルな青春お仕事小説『声のお仕事』(文藝春秋)と、ロケット発射場のある島で一年を過ごす小学校6年生の少年が、島の豊かな自然を体験しつつ、夏休みのロケット競技会に参加する模様を描いた成長物語『青い海の宇宙港 春夏篇』『青い海の宇宙港 秋冬篇』(早川書房)。

本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 ――日本人の眠り、8つの新常識』(日経BP)、「昆虫学」「ロボット」「宇宙開発」などの研究室訪問を加筆修正した『「研究室」に行ってみた。』(ちくまプリマー新書)、宇宙論研究の最前線で活躍する天文学者小松英一郎氏との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)がスピンアウトしている。
ブログ「カワバタヒロトのブログ」。ツイッターアカウント@Rsider。有料メルマガ「秘密基地からハッシン!」を配信中。


このコラムについて
研究室に行ってみた
世界の環境、文化、動植物を見守り、「地球のいま」を伝えるナショナル ジオグラフィック。そのウェブ版である「Webナショジオ」の名物連載をビジネスパーソンにもお届けします。ナショナル ジオグラフィック日本版公式サイトはこちらです。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/227278/121500075

http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/493.html

[経世済民119] 最大の対米債権国が米国債売り、トランプ政権下で投資安全性に疑問符 ヘッジF王も懐疑派に トランプ政権ゴールドマン多過対応
最大の対米債権国が米国債売り、トランプ政権下で投資安全性に疑問符
Brian Chappatta
2017年2月13日 11:52 JST
Share on FacebookShare on Twitter
関連ニュース

10−12月GDP年率1.0%増−4期連続プラスも市場予想下回る
イエレンFRB議長証言に市場注目も、リフレ相場左右はCPIか
フィッシャー副議長:FRBは目標に集中−トランプ政権の政策不透明
日本株は上昇、日米首脳会談の結果を好感−輸出や金融、原油関連高い

日本の投資家による米国債保有は2013年以来の大幅落ち込み
懸念要因は財政赤字拡大やインフレ高進の可能性、利上げ観測など

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iVEQ8ntnH9qg/v2/-1x-1.png

米国債を大口保有する海外勢はトランプ政権の発足後、米政府が発行する債券に資金を投じることを突然考え直すようになっている。
  海外勢で米国債を最も多く保有するのは日本の投資家だが、昨年12月の保有額が約4年ぶりの大幅減少となったことが財務省の直近データで示された。目を引くのは、海外投資妙味がめったにないほど良い状況でも売りが続いた点だ。日本だけではなく、世界中で外国勢がこれまでにないペースで米国債から手を引きつつある。
  東京や北京、ロンドンに至るまで、海外投資家のコンセンサスは明確だ。それは、米国債市場に今、足を踏み入れたくないということだ。その理由がトランプ政権下で財政赤字が膨らむ見通しであれ、インフレ加速懸念であれ、米利上げ観測であれ、米国債市場が世界で最も安全な債券市場とは確信できなくなっているようだ。利回りが昨年11月以降に急上昇しているだけに、なおさらそうだ。また、トランプ大統領には威嚇する傾向があるため、国内にとどまる方が投資ははるかに楽だ。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の井上健太シニア外債ストラテジストは、政治的不透明感があるため、今年は日本勢による米国債やドルへの投資が通常より難しいかもしれないと指摘。米国債利回りは近い将来再び急上昇する可能性があり、積極的な買いは引き続き妨げられるとの見方を示した。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iRWkOe_ti3Tc/v2/-1x-1.png
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iUMQtuhwI.hQ/v2/-1x-1.png


原題:America’s Biggest Creditors Dump Treasuries in Warning to Trump(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-13/OLAI8R6TTDSI01


 


ヘッジファンドの王様」も懐疑派に転換−米大学基金の損失膨らむ
Janet Lorin
2017年2月13日 06:33 JST
Share on FacebookShare on Twitter
関連ニュース

10−12月GDP年率1.0%増−4期連続プラスも市場予想下回る
最大の対米債権国が米国債売り、トランプ政権下で投資安全性に疑問符
イエレンFRB議長証言に市場注目も、リフレ相場左右はCPIか
フィッシャー副議長:FRBは目標に集中−トランプ政権の政策不透明

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i4E8NO73Oa1o/v1/-1x-1.png

米ウースター大学の寄付基金にとって、ヘッジファンドはかつてリターン向上になくてならなかった。今はそうではない。
  オハイオ州にある同大の経済学教授で寄付基金の投資責任者も務めるジョン・セル氏は「われわれはヘッジファンドの王様だった」が、大学の事務当局は今や「アクティブ運用について懐疑的になっている。ヘッジファンドは超アクティブ運用の典型的な例だ」と話した。
  全米大学実務者協会(NACUBO)と運用会社コモンファンドの調査によると、大学基金がヘッジファンドやその他の代替投資から被った投資損失は昨年6月30日までの1年間に過去最大に膨らんだ。運用資産1億100万−5億ドル(約115億−570億円)の大学基金約800を対象に調査をまとめた。
ヘッジファンドのリターンに失望、テキサスの大学基金が資金引き揚げ
  ウースター大は過去5年間、ヘッジファンドへの資産配分を50%近くにしていたが、最大でも25%までに減らすことにした。これは大学基金と公的年金基金の全般的な傾向で、ヘッジファンド投資の価値が疑問視されつつある。ウースター大では、パッシブ運用を増やしてコストを減らしリターンを高める方法が「議論の中心」になっているとセル氏は語った。

原題:Once ‘King of Hedge Funds,’ College of Wooster Becomes a Skeptic(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-12/OL5JMG6K50XT01


 


トランプ米政権、「ゴールドマン出身者」多過ぎるとの批判配慮か
Saleha Mohsin、Jennifer Jacobs
2017年2月13日 08:27 JST
Share on FacebookShare on Twitter
ジム・ドノバン氏は財務副長官でなく次官に起用引き下げもと関係者
トランプ氏は選挙戦中にウォール街批判を展開していた
 
米ゴールドマン・サックス・グループのバンカー、ジム・ドノバン氏はトランプ米政権の財務副長官の候補に挙がっている。だが、同政権の重要ポストに指名されたゴールドマン出身者が多過ぎるという批判に配慮して、国内金融担当などの財務次官ポストに起用が引き下げられる可能性があると、事情に詳しい関係者が明らかにした。
  トランプ大統領は財務長官にゴールドマン出身のスティーブン・ムニューチン氏を指名。そのほか、国家経済会議(NEC)委員長にゲーリー・コーン前ゴールドマン社長、首席戦略官にスティーブン・バノン氏、大統領補佐官兼上級顧問(経済イニシアチブ担当)にディナ・パウエル氏をそれぞれ起用した。バノン、パウエル両氏もゴールドマン出身。
  トランプ氏は選挙戦中、米大手銀をしばしば批判していた。現在、ホワイトハウスはゴールドマン出身者の重要ポストが多過ぎるのではないかとの批判に敏感になっているもようで、残るポストの人選でこの問題を考慮に入れている。
  ドノバン氏は1993年からゴールドマンに勤務しており、直近ではマネジングディレクター。ムニューチン氏とも在籍期間が一部重なる。
  ゴールドマンの広報担当、アンドルー・ウィリアムズ氏は今回の動きや、トランプ政権に加わった同社出身者についてのコメントを控えた。
原題:Trump Team Leery of Having Too Many ‘Goldman Guys’ in Top Posts(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-12/OLA9CL6TTDS301
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/132.html

[経世済民119] 10−12月GDP年率1.0%増−4期連続プラスも市場予想下回る FRB議長に市場注目もリフレ相場左右はCPI 株$上昇

10−12月GDP年率1.0%増−4期連続プラスも市場予想下回る
日高正裕
2017年2月13日 09:15 JST 更新日時 2017年2月13日 11:10 JST
  
関連ニュース
イエレンFRB議長証言に市場注目も、リフレ相場左右はCPIか
フィッシャー副議長:FRBは目標に集中−トランプ政権の政策不透明
日本株は上昇、日米首脳会談の結果を好感−輸出や金融、原油関連高い
「ヘッジファンドの王様」も懐疑派に転換−米大学基金の損失膨らむ
ブルームバーグ ニュースをフォローする
Facebook Twitter
個人消費は横ばい、設備投資は0.9%増、公共投資は1.8%減
外需の寄与度がプラス0.2ポイント、在庫がマイナス0.1ポイント

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iU0kN1acpYf4/v2/-1x-1.png

昨年10−12月期の実質国内総生産(GDP、速報値)は4期連続のプラス成長となった。市場予想は下回った。内閣府が13日発表した。
キーポイント
実質国内総生産は前期比0.2%増、年率換算1.0%増、(ブルームバーグ調査の予想中央値はそれぞれ0.3%増、1.1%増)
GDP全体の約6割を占める個人消費は前期比横ばい(予想は0.0%)
設備投資は同0.9%増(予想は1.2%増)、公共投資は同1.8%減
在庫のGDP全体への寄与度はマイナス0.1ポイント、外需の寄与度はプラス0.2ポイント

背景
  政府は1月の月例経済報告で「一部に改善の遅れもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」との景気判断を維持した。日銀は同31日公表の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、世界経済の改善や昨年12月の政府のGDP統計見直しを受けて、17年度の実質GDP成長率の見通しを1.5%増と昨年11月の前回見通し(1.3%増)から上方修正した。
  日銀は一方で、誕生したばかりのトランプ米新大統領の通商政策や為替政策をめぐる不透明感もあり、経済・物価とも見通しに比べて「下振れリスクの方が大きい」との見方を示した。黒田東彦総裁は同日の会見で、米国の経済政策は世界経済や国際金融市場に大きな影響があると指摘し、その方向性や影響を「注視してみていきたい」と語った。
エコノミストの見方
メリルリンチ日本証券デバリエいづみ主席エコノミストは統計発表後、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、景気回復への良い上昇基調は確かに出ているとしながらも、輸出主導の成長が続いていると分析。「民間消費は引き続き弱い。そこに勢いが出てこない限り成長が急速に加速するのは難しい」との見方を示した。
第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは統計発表後のリポートで、「ゼロ%台後半とみられる潜在成長率を上回る成長が実現」していることから、景気の回復傾向を改めて確認させる結果と分析。「トランプ大統領の政策の不透明感は強いものの、メインシナリオとしては着実な景気回復を見込んでおいて良い」としている。
詳細
7−9月期の実質GDP成長率は前期比0.3%増、年率1.4%増−2次速報値(前期比0.3%増、年率1.3%増)から上方修正
GDPデフレーターは前年比0.1%減(予想は0.2%減)
2016年名目GDPが537兆円と比較可能な1994年以降最大−基準改定でかさ上げ
16年の実質GDPは1.0%増と5年連続のプラス成長となった
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-13/OKXL8Q6KLVRM01


 


イエレンFRB議長証言に市場注目も、リフレ相場左右はCPIか
Vincent Cignarella
2017年2月13日 09:26 JST 更新日時 2017年2月13日 10:29 JST
Share on FacebookShare on Twitter
関連ニュース

10−12月GDP年率1.0%増−4期連続プラスも市場予想下回る
最大の対米債権国が米国債売り、トランプ政権下で投資安全性に疑問符
フィッシャー副議長:FRBは目標に集中−トランプ政権の政策不透明
日本株は上昇、日米首脳会談の結果を好感−輸出や金融、原油関連高い

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iIQnnUdtAWj0/v2/-1x-1.png

トランプ政権のリフレ政策を期待した相場、CPIで勢いづく可能性
税制案への臆測でドルの先高観は持続へ

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iT92UjZ3hVEY/v2/-1x-1.png

外国為替・債券市場でトランプ政権のリフレ政策を期待した相場が続くには、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長による14日、15日の議会証言の間に発表予定の指標が重要になってくる可能性がある。
  トランプ米大統領が税制で「驚異的な」プランを約束したのを受けてドルは昨年12月以降で初めて週間ベースで上昇し、リスクオンのセンチメントが再燃したものの、金融当局が年内に予想するだけの引き締めを実施できるほど経済成長が強いのかどうか疑問は残る。
  そこで注目されるのが、イエレン議長による上院と下院での証言の間に当たる15日公表の1月の消費者物価指数(CPI)だ。当局は個人消費支出(PCE)価格指数を重視するが、消費者物価の上昇や、実質世帯収入の減少を通じた可処分所得の目減りは無視できなくなりつつある。1月のCPI総合指数は前年同月比2.4%上昇への加速が予想される。2015年9月は変わらずだった。

  イエレン議長が議会証言でタカ派寄りの姿勢を示せば、ドル高に弾みが付く可能性が高い。そうなれば3月の米利上げの確率は現在の約30%から50%に近づくだろう。ブラックロックのリック・リーダー氏は、米景気拡大を背景に当局が雇用とインフレの2つの責務の達成に近づいている状況を踏まえれば3月利上げは「討議の対象」との見方を示した。
  トランプ大統領が税制プランを明らかにすると約束した2、3週間後は、大統領による両院議会演説の時期と重なる可能性があり、ドルの先高観の持続につながりそうだ。リフレ相場が再燃し、米金融当局者が年内3回の利上げを見込む金利予測分布図(ドット・プロット)に沿う動きを見せれば、長期間持続するドル高基調となる可能性が高い。

原題:As All Eyes Turn to Yellen, Reflation Trade Hinges on CPI Report(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-13/OLAB966TTDS101


 


 

日本株は上昇、日米首脳会談の結果を好感−輸出や金融、原油関連高い
佐野七緒
2017年2月13日 08:04 JST 更新日時 2017年2月13日 09:47 JST
 関連ニュース

10−12月GDP年率1.0%増−4期連続プラスも市場予想下回る
最大の対米債権国が米国債売り、トランプ政権下で投資安全性に疑問符
イエレンFRB議長証言に市場注目も、リフレ相場左右はCPIか
フィッシャー副議長:FRBは目標に集中−トランプ政権の政策不透明
 日本の緩和的金融政策の継続を日米で確認
ドル・円相場は一時1ドル=114円10銭台、1月30日以来の円安値
 
13日の東京株式相場は上昇。日米首脳会談では経済対話開始で合意し、投資家の警戒感が和らいだ。為替のドル高・円安推移も好感され、自動車など輸出関連、銀行や保険など金融株が高い。原油市況の続伸で鉱業や石油、鉄鋼など資源や素材関連株も上昇。
  TOPIXは前週末比0.8%高、日経平均株価は0.7%高と続伸して取引を開始。日経平均は一時1万9519円まで上昇し、1月5日以来の1万9500円台に乗せたが、その後はやや上げ幅を縮めている。
  安倍晋三首相とトランプ米大統領は10日、初の日米首脳会談を行い、マクロ経済政策や貿易枠組みなど分野横断的な経済対話を行っていくことで合意した。共同声明では「国内および世界の経済需要を強化するために相互補完的な財政、金融および構造政策という3本の矢のアプローチを用いていくとのコミットメントを再確認した」と明記。財務省関係者は、日本は「緩和的な金融政策を継続していく」ことを日米が確認したということだと解説した。
  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は「日米首脳会談は極めて上々の出来で、成果は大きい」と指摘。金融市場では日米貿易や為替問題について「米国側から厳しい発言が出てくるという懸念があったが、実務者で協議していくことになり、先送りに近い形ではあるが会談を機に円高・株安になるリスクは無くなった」とみる。
東証内
東証内 Photographer: Yuriko Nakao/Bloomberg
  きょうのドル・円相場は1ドル=114円10銭前後と、1月30日以来のドル高・円安水準に振れている。10日の日本株通常取引終値時点は113円70銭だった。日米首脳会談では為替について財務当局間で取り扱うことで合意した。また、トランプ大統領の税制改革計画は米ゴールドマン・サックス・グループ元社長のゲーリー・コーン氏を中心に策定が進められていると、ホワイトハウスの当局者が明らかにした。
  10日の米国株市場は続伸し、S&P500種株価指数が0.4%高の2316.10など軒並み過去最高値を更新した。ニューヨーク原油先物は1.6%高の1バレル=53.86ドルと続伸。石油輸出国機構(OPEC)の減産順守率が過去最高の90%に達したことが好感された。
  東証33業種は原油高などを受けて鉱業と石油・石炭製品の上げが大きく、鉄鋼や非鉄金属といった素材関連、輸送用機器、銀行も上昇率上位。電気・ガスは下落。売買代金上位では2017年3月期利益計画を上方修正した国際石油開発帝石やダイフクが高く、富士重工業やヤフー、ナブテスコも上昇。半面、17年12月期営業利益計画が市場予想を下回ったライオンが大幅安、アマダホールディングスやNTTも安い。

午前9時36分時点のTOPIXは前週末比7.95ポイント(0.5%)高の1554.51、日経平均株価は同78円70銭(0.4%)高の1万9457円63銭
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-12/OLA9UI6TTDS001


 

ドル・円が上昇、2週ぶり114円台−日米首脳会談で円安直接批判出ず
小宮弘子
2017年2月13日 09:34 JST 
関連ニュース

10−12月GDP年率1.0%増−4期連続プラスも市場予想下回る
最大の対米債権国が米国債売り、トランプ政権下で投資安全性に疑問符
イエレンFRB議長証言に市場注目も、リフレ相場左右はCPIか
フィッシャー副議長:FRBは目標に集中−トランプ政権の政策不透明
トランプ税制改革期待したドル買い・円売りに安心感
100%なくなったわけではないが、目先の懸念は後退−Cアグリコル
 
13日の東京外国為替市場ではドル・円相場が2週間ぶりに1ドル=114円台へ上昇。日米首脳会談で日本の為替・金融政策や貿易不均衡に対する直接的な批判が出ず、トランプ大統領の税制改革を期待したドル買い・円売りに安心感が出ている。
  午前9時33分現在のドル・円は前週末比0.8%高の1ドル=114円07銭。一時114円17銭と1月30日以来の水準までドル高・円安が進んでいる。
  クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司外国為替部長は、為替については問題先送りで100%懸念がなくなったわけではないが、今回直接の言及がなかったということで「取りあえず目先の懸念はなくなった」と指摘。「週明けは株を見ながら堅調な展開になる」と語った。
  安倍首相とトランプ大統領は現地時間10日、ホワイトハウスで初めての日米首脳会談を行い、マクロ経済政策や貿易枠組みなど分野横断的な経済対話を行っていくことで合意した。為替をめぐる問題については財務当局間で取り扱うことで合意。トランプ氏は会見で、個別の国名への言及を避けた上で、「為替の切り下げについては、長い間、ずっと私は苦情を言ってきた」と述べた。為替をめぐり公平な立場を作ることで、貿易などで競い合うことができると話した。
  ブルームバーグのデータによると、円は主要16通貨全てに対して前週末比で下落。対オーストラリア・ドルでは1豪ドル=87円台半ばまで下落し、昨年12月以来の安値に近づいている。
  朝方発表された昨年10〜12月の国内総生産(GDP)速報値は前期比年率1.0%増と、市場予想(同1.1%増)をやや下回ったが、市場の反応は限定的となっている。13日の東京株式相場は続伸して始まり、日経平均株価は一時100円を超える上げとなっている。
  主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドルスポット指数は0.2%上昇。トランプ大統領が今後「2、3数週間」以内に発表するとしている「驚異的な」税制改革への期待から、先週は7週間ぶりの上昇となった。
  斉藤氏は、首脳会談が表面的にはうまくいったということで、ドル・円の急落リスクはなくなったが、税制改革の内容を見極めるまでは「上攻めも難しい」と指摘。まずは14、15日のイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言で、年内の利上げが3回になる可能性をもう一度確認する必要があるとした上で、「118円66銭のところのダブルトップを試すのは、税制改革を見た後だろう」と話した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-13/OLAE6Z6TTDS201
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/133.html

[経世済民119] 日本経済はトランプノミクスに乗れるか 世界の労働人口減少、想定超−アジア厳しい 日米経済対話、本格始動はペンス氏来日後か

コラム:日本経済はトランプノミクスに乗れるか

岩下真理SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト
[東京 13日] - 10日に行われた安倍晋三首相とトランプ大統領による初の日米首脳会談は、事務方の説明努力もあって為替と金融政策は議題に上らず無難に終了した。市場にはいったん安心感が広がろう。

日米同盟や経済関係については、全体として大きな枠組みの話にとどまったが、日本からのインフラ投資で、例えば高速鉄道の建設が米国の雇用増加に資するなどトランプ大統領の希望に沿う内容を提示したのだろう。

両首脳はハグに堅い握手を交わし、笑顔を絶やさずに親密ぶりをアピールした。1月31日に日本を厳しく批判した「トランプ発言」は、やはり会談前に自分に有利な状況を導くための交渉術だったことが分かる。

<日本批判は当面封印か、ドル円は下値固めへ>

今後は、麻生太郎副総理とペンス副大統領で新経済対話を創設し、進めていくことになる。為替については、財務長官に指名されたムニューチン氏の承認が遅れており、交渉相手がそろうまで協議は進まないだろう。よって、トランプ政権からは目先、痛烈な日本批判は出にくい状況と思われ、日銀は2%の物価目標達成のための長短金利操作を淡々と続けることが可能だろう。

ドル円も目先は下値固めが見込まれる。新経済対話が始まってからは、協議に紆余曲折は考え得るが、ペンス副大統領に任せる以上、従来に比べ日本名指しの「トランプ発言」は出にくくなるのではないか。

28日には、トランプ大統領が米議会の上下両院合同本会議で経済などの基本政策を示す演説を行う予定だ。選挙活動中は、現行35%の法人税率を15%まで引き下げると主張していた。一方、共和党案は20%までの引き下げ。税政策に関してトランプ大統領が言う「驚異的」という形容詞の意味するところが気になる局面だ。

また、分かりにくいとトランプ大統領が指摘していた国境調整税の取り扱い、最高税率の39.6%から33%への引き下げを主張していた所得減税の行方も注目される。

後者については仮に税率を下げる方針を公言しても、その分の歳入減少に対して、インフラ投資などの財源をどう確保するのか示さなければ、政策の実現性や効果に信憑性はない。収支を明確にする予算教書の発表日はいまだ不明だ。また、政権の税制改革の方針が、そのまま議会で承認されるとは限らず、不確実性は残りそうである。

よって、市場では「驚異的な」計画発表時にいったんの材料出尽くしが見込まれる。その後は、議会との協議を見守る時間帯に移行しよう。これが意外と時間がかかるかもしれない。就任100日となる4月末までに立法措置を目指しつつも、どうなるかは読み切れない。

そうなると市場は、それ以外の米利上げ動向や欧州政治を材料にする可能性が考えられる。「トランポリン相場」の第2幕(米10年債の2.3―2.6%のレンジ)は続こう。

<GDP統計「希望の光」は設備投資の健闘>

日米関係に安堵感が漂う状況下、足元の日本経済は緩やかな回復を続けている。13日朝発表の10―12月期実質国内総生産(GDP)1次速報値は、前期比0.2%増、年率1.0%増と4四半期連続のプラスとなり、市場予想平均の年率1.1%増にほぼ近い水準となった。

世界経済の回復と原油価格の安定を背景とした輸出主導の成長であり、内需に弱さが見えた。輸出は米中向けの自動車とIT関連がけん引役だ。内需では停滞する個人消費、失速し始めた住宅投資に対して、設備投資の健闘が希望の光だ。それでも先行きはトランプ政権の不確実性が高いことから、楽観的にはなれない。日本経済にとっては、トランプノミクスの波にうまく乗って、外需主導での緩やかな回復を持続し、デフレを脱却することが望ましい姿だろう。

個人消費は前期比0.01%減と4四半期ぶりのマイナスに転じた。財・サービス別支出を見ると、耐久財は増加に寄与したが、半耐久財と非耐久財が足を引っ張った。パソコンやテレビなどの家電販売は好調だったが、暖冬の影響で冬物衣料は販売不振、野菜価格の高騰で節約志向が強まったようだ。

雇用者報酬は前年同期比で実質2.0%増と7四半期連続のプラスながらも、プラス幅は縮小。所得面の持続的な後押しがあっても、天候要因や先行き不安に伴う節約志向が強ければ、消費は低迷する状況だ。

ただし、販売統計の商業動態統計の強さに比べて需要統計の家計調査はかなり弱い。特に12月は円安と株高進行を受けて、百貨店では高額品の売り上げが好調だった。家計調査の弱さが反映されるGDP統計の個人消費の数字よりも、消費の実態はしっかりだと筆者はみている。統計改善に意見できるなら、GDP個人消費の推計方法を変えることも一案ではないだろうか。

次に住宅投資は前期比プラス0.2%と大きく鈍化。日銀のマイナス金利政策の効果一巡に加えて、相続税対策による貸家ニーズも値崩れによりメリットが薄まり、住宅着工に頭打ち感が強まっている。当面、冴えない動きが続きそうだ。

一方で、設備投資は前期比プラス0.9%としっかり。更新需要に加え新規の情報化投資も増えており、ソフトウェアや通信機器が押し上げた。IT関連がけん引役となる「生産増」「輸出増」「設備投資増」の前向きなサイクルがワークし始めたのは、朗報だ。

<緩やかな回復持続へ、不安は自動車生産>

では、今後も回復軌道を進んでいけるのか。9日発表のESPフォーキャストの2月調査(回答期間は1月26日から2月2日)の予測平均は、1%台前半の成長率の推移が2018年1―3月期まで続く見通しである。内閣府がGDP基準改定後に推計したプラス0.8%とされる潜在成長率をやや上回る、緩やかな回復は持続できるとの見方が主流だ。

目先の1―3月期は、第2次補正予算の効果により、公共投資は持ち直そう。製造工業生産予測指数の前提では1―3月期は前期比4.2%増と強いが、直近の実現率下ぶれを考慮すると、鉱工業生産は1%台にとどまる可能性が高いとみる。それでも半導体関連は、中国スマホ向けや自動車の自動運転技術向け受注で強さを維持しているようだ。

しかし、トランプ大統領の米国第一主義の意向を踏まえると、今後の不安材料は自動車の生産(全体の2割弱のウエート)だろう。日本メーカーは米企業との提携などを画策するが、新経済対話の行方次第では、現地生産比率を高める可能性もあり、注意は必要だ。

最後に、10―12月期のGDPデフレーターは前年同期比マイナス0.1%と2四半期連続の低迷となったが、国内需要デフレーターで見ると、同マイナス0.3%とマイナス幅は7―9月期のマイナス0.8%から縮小した。エネルギー価格の反転と円安定着により、プラス圏に向けて歩を進めてはいるが、デフレ脱却にはまだ時間が必要だ。

昨年11月下旬以降、ドル円で110円を超える円安が定着しつつある。これが半年ぐらいのタイムラグを伴って、物価押し上げに働くだろう。筆者は夏場に、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の前年比プラス1%が視野に入るとみている。

むろん、日銀の2%物価目標はまだ遠い。来年度にサービス価格の押し上げが広がるのか、食料品の値上げだけが進み、消費者の節約志向が再び強まってしまうのか、2017年も企業にとって価格設定の「試練の年」となりそうだ。

*岩下真理氏は、SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト。三井住友銀行の市場部門で15年間、日本経済、円金利担当のエコノミストを経験。2006年1月から証券会社に出向。大和証券SMBC、SMBC日興証券を経て、13年10月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

おすすめ記事


ベトナムに新造巡視船6隻を供与 2017年 01月 16日
しばらくは円安・ドル高に振れる傾向続くだろうという大方の予想と同じ=麻生財務相 2017年 01月 31日
コラム:トランプ・安倍会談に潜む「円高リスク」=高島修氏 2017年 02月 10日
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-mari-iwashita-idJPKBN15S0QH

 

世界の労働人口減少、想定超える急ペース−アジアに厳しい選択迫る
Vincent Del Giudice、Wei Lu、David Roman
2017年2月13日 15:22 JST 
関連ニュース
日本株続伸、日米首脳会談波乱なしと円安−景気敏感セクター買われる
最大の対米債権国が米国債売り、トランプ政権下で投資安全性に疑問符
トランプ米政権と英EU離脱がユーロ圏経済へのリスク−欧州委
英国のEU離脱選択、景気への影響は見積もりほど大きくない−欧州委

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ifQEVwzsyiW8/v4/1200x-1.png

ブルームバーグのサンセット指数が示す−各国ごとに定年年齢を調整
65歳以上の世界人口の約22%占める中国は男性60歳、女性55歳が定年

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iD.Z_XOEQUq4/v3/1200x-1.png

世界の労働人口は想定を超える急ペースで縮小しており、増え続ける高齢者を支える労働者の減少が一段と進んでいる。ブルームバーグのサンセット指数が示した。
  旧来からある指数は15−64歳の人々を労働力として計算するが、世界では65歳よりかなり手前で引退する人も多い。ブルームバーグが調べた177カ国・地域では男性の77%、女性の78%が65歳にならなくとも年金を受け取り始めることができる。
  各国ごとの法定上の年金受け取り可能年齢を基にしたサンセット指数は、世界銀行や国連などが示した2016年推計値との違いを浮き彫りにしている。旧来の指数はロシアでは高齢者1人を労働者5.1人が支えるとしているが、サンセット指数はわずか2.4人の労働者が支えなければならないことを示している。
  資源配分で厳しい選択を迫られる可能性が高いのがアジアだ。アジア太平洋リスクセンターの推計によると、アジアの高齢者人口の割合は2030年までに71%に達し、北米の55%や欧州の31%を大きく上回る。

  世界の65歳以上の人口の約22%を占める中国では男性60歳、女性55歳が定年。サンセット指数は、中国では高齢者1人を労働者3.5人が支えることを示している。従来型の指数では7.3人が支えるとしていた。
  サンセット指数によれば、労働者の負担が最も大きいのは、定年が61.6歳のフランス。退職者1人を約2人の労働者が支える。米国は4.4人の労働者が高齢者1人を支える。

原題:Shrinking Worker Pool Pressures Retirement Programs (Correct)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-13/OLAQG66JIJUQ01

 


 

焦点:日米経済対話、本格始動はペンス氏来日後か 金融連携の指摘も

[東京 13日 ロイター] - 日米首脳会談では、「自動車」「為替」「環太平洋連携協定(TPP)」などの各論に踏み込まず、日本政府サイドは安全保障関係での「満額回答」も踏まえ、上々のスタートを切ったと高評価が多い。ただ、新設の経済対話が本格稼働するのは、ペンス米副大統領の来日後になりそう。財政・金融などマクロ経済政策で日米連携の可能性を指摘する声もあり、対話の行方に不透明感も漂っている。

<経済対話、本格稼働は副大統領の来日後>

首脳会談前、日本政府が懸念していた「自動車」「為替」「TPP」の3分野ではいずれも踏み込んだ言及がなく、政府関係者の多くはホッと胸をなで下ろしたという。

また、北朝鮮のミサイル発射は「かえって強固な日米同盟を内外に発信できた」(政府関係者)との認識が政府内にある。

日米両政府は、麻生太郎副総理とペンス副大統領の下に新たに「経済対話」の場を設けることで合意し、今後は両氏のもとで協議を進める方針を共有。そこでマクロ、ミクロを含めた幅広い経済問題を討議。上記3分野などで日米の対立が先鋭化するのを避ける戦術が取られている。

ある政府関係者によると、ペンス副大統領の来日は今年4月ごろが念頭にあるとされ、それまでの間に新経済対話に参加する閣僚レベルのメンバーを決めることになるという。

ただ、米上院での閣僚承認が遅れており、経済対話における米側の主力メンバーが、どの組織を中心に選ばれるのか今のところ不透明。

このため新経済対話における本格的な議論は、ペンス副大統領の来日まで持ち越される公算が大きい。

別の政府関係者は「対話の枠組みを新設したことで具体的な議論を先送りし、対立の表面化を避けたという点で成功と言える」と指摘した。

日本側が水面下で調整していた「日米成長雇用イニシアチブ」の柱立ては共同声明に明記されなかったが、今後の協議で活用される可能性もありそうだ。

<声明に盛り込まれた「金融」で異なる見方も>

一方、声明に盛り込まれた「相互補完的な財政、金融および構造政策」との文言を巡り、一部に広範な解釈も聞かれる。

複数の政府関係者は声明について、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の声明などを踏まえて「3つの政策を相互補完的に機能させる」ことと説明する。

もっとも、一部には「日米間で相互補完的に政策を実施する」との意味合いを含むと読み解く向きもある。

政府高官のひとりは「いろいろ相互にという意味だ」と述べ、金融政策を含めた日米連携を否定しなかった。

別の政府関係者は、米連邦準備理事会(FRB)と日銀の協調の可能性について「トランプ政権とFRBの関係性も不透明」とし、「方向性は現段階で見えない」と語った。

*カテゴリーを追加しました。

(竹本能文、伊藤純夫、梅川崇 編集:田巻一彦)

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
ECBによるユーロ操作、絶対ない=サパン仏財務相
ユーロ圏、ギリシャ審査長引けば金融不安の恐れ=欧州副委員長
「緩やかな回復基調変わらず」 実質GDPで石原再生相が談話
ドル上昇、米大統領「税に関し目を見張るような発表」=NY市場
安倍首相、トヨタ社長と会談 貿易摩擦回避へ対応協議

http://jp.reuters.com/article/pence-idJPKBN15S0Y0?sp=true


http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/148.html

[国際18] 中国巡るトランプ氏の立場修正、ティラーソン国務長官が尽力  トランプ北朝鮮ミサイルに手詰まり  中国資産家、香港から拉致


 

中国巡るトランプ氏の立場修正、ティラーソン国務長官が尽力

[ワシントン 10日 ロイター] - トランプ米大統領が前週、中国政府の求めに応じ、米国の「1つの中国」政策を維持すると表明した背景には、ティラーソン国務長官の尽力があった。米当局者が明らかにした。

トランプ大統領は9日に中国の習近平国家主席と電話会談し、中台がともに一つの中国に属するという「1つの中国」政策の維持で合意した。

米当局者によると、大統領による突然の立場修正に先立ち、ホワイトハウスではティラーソン国務長官やフリン大統領補佐官らが会合を行った。ある当局者はこの会合について、米中関係や地域の安定のために「1つの中国」政策の維持を表明することが正しい選択だと大統領を説得するための協調的努力だと述べた。

ティラーソン長官は会合で、米中関係の柱となってきた政策を巡る疑念を解消しない限り、米中関係は停止したままになると警告した。

ティラーソン長官による今回の尽力は、トランプ政権が直面する幾つかの地政学的問題で同氏が影響力を持つ可能性を示唆している。

過激派組織「イスラム国(IS)」との戦いや対イラン政策、ロシアとの関係改善など、トランプ氏が掲げる他の優先課題でティラーソン氏が今後どのような役割を果たしていくか注目が集まる。

中国に精通した米国の専門家はトランプ氏の立場修正について、緊張が和らぎ、幅広い問題で協議に道が開かれるとしながら、南シナ海の問題や中国からの輸入品に対する関税など他の問題を巡る立場の軟化につながるわけではないと釘を刺す。

一方、中国側がトランプ氏について、発言は強硬でも圧力をかければ態度を変えさせることができると判断する恐れがあるとの指摘も出ている。

ホワイトハウスと国務省はコメントを控えた。

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
一部中国製品に反ダンピング税適用すべき=トランプ氏
オバマ米大統領、9月に任期中最後のアジア歴訪 中国主席らと会談
韓国とオーストラリア、通貨スワップ協定延長 規模も拡大
韓国、北朝鮮ミサイル発射で市場混乱なら「迅速に断固たる行動」
メキシコ全土で大規模な反トランプデモ、自国大統領への批判も
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-china-call-idJPKBN15S050

 


 


中国の資産家、車いすに乗せられ香港のホテルから拉致=情報筋

[香港 11日 ロイター] - 中国出身の資産家で、行方不明になっている明天集団の経営者である肖建華氏は、先月27日朝、頭に布を被され車いすに乗せられて、香港中心部の豪華ホテルから拉致された。同氏に近い情報筋がロイターに語った。

また、別の情報筋は、肖氏がホテルの入り口で本人の車に押し込まれたと語り、その作業は「スムーズ」に見えたと話した。肖氏の意識があったかどうかは不明だという。

肖氏に関しては、ニューヨーク・タイムズ(NYT)が失踪を報じ、中国公安当局に拉致されたとの報道もある。

香港警察は当初、同件を「拉致」として扱うとしていたが、ホテルや国境検問所の防犯カメラの映像から、肖氏が自発的に香港を離れたと結論付けた。

警察とホテル側は11日、コメントの求めに応じていない。


総資産およそ6800億円とされる中国のIT長者、肖建華氏が先週末、香港の高級ホテルでの滞在が確認されたのを最後に消息を絶った。そして1日、中国当局による拉致の可能性を否定する、本人が出資しているとみられる全面広告が地元紙に掲載され、謎はさらに深まっている。
ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
フィリピン、麻薬密輸問題で中国大使に説明求める
三越伊勢丹HD、ニッコウトラベルにTOB 「コト消費」に対応
焦点:日米経済対話、本格始動はペンス氏来日後か 金融連携の指摘も
仏サノフィ、2017年利益はほぼ横ばい見込む 買収は急がず
イエレン米FRB議長の議会証言に注目=今週の米株市場
http://jp.reuters.com/article/china-hongkong-billionaire-idJPKBN15S0A5


 


焦点:トランプ政権、北朝鮮ミサイル対抗策に手詰まり感

[ワシントン 12日 ロイター] - トランプ米大統領は選挙期間中、北朝鮮に対してより強硬な態度を取ると表明していたが、前週末の弾道ミサイル発射後の公的な反応は抑制されたトーンにとどまった。これで浮き彫りになったのは、米国が北朝鮮の核開発を止める有効な手段をほとんど持ち合わせていないという事実だ。

トランプ政権内では現在、北朝鮮への追加制裁からミサイル防衛力の強化を見せつけるといった措置まで、いくつかが検討されている。しかしどれもオバマ前政権が策定した選択肢の二番せんじの域を出ていないように見える。

歴代の米政権が試みてきた中国を通じて北朝鮮の行動を抑えるというやり方も、はかばかしい効果を発揮していない。

より思い切った対策としては北朝鮮への直接的な武力行使、もしくは直接交渉が考えられる。とはいえ武力行使は周辺地域を巻き込む戦争に発展するリスクがあり、交渉は北朝鮮の思うつぼであることから、両対策とも現実的な検討課題にはならず、成功も覚束ないだろう。

米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のアジア専門家、ボニー・グレーザー氏は「トランプ氏が選べる手段は限られている」と指摘した。

トランプ氏は北朝鮮のミサイル発射を受けて安倍晋三首相との共同記者発表に応じ、「私が皆さんに完全に理解してもらいたいのは、米国が偉大な同盟国である日本を100%支持するということだ」とだけ発言。北朝鮮への直接的な言及はなく、具体的な報復計画も示さなかった。

この問題についてトランプ氏がいつものようにイッターに強い口調のメッセージを投稿する可能性は残されている。しかし一部の専門家は、比較的おとなしい発言をしているのは、トランプ氏に北朝鮮の誘いに乗って実行が難しい対抗措置を安易に発表しないよう、側近が必死に説得している表れではないかとの見方を示した。

<中国の出方>

オバマ前政権は北朝鮮に対して、段階的に制裁と外交圧力を強めつつ、実質的には同国指導部の出方を見守る「戦略的な忍耐」と呼ぶ政策を遂行していた。これに対してトランプ氏側近は、現政権はもっと攻めの姿勢を取ると話しているものの、実際にどうするかはあいまいなままだ。

ある政府高官の話では、トランプ氏や側近は(1)新たな金融制裁(2)空海軍戦力の増強(3)朝鮮半島内および周辺における合同演習の拡大(4)韓国の新型ミサイル防衛システム導入加速──を今後検討する公算が大きい。

トランプ氏は中国が北朝鮮の核開発にブレーキをかける上で十分な影響力を行使してないとの考えも明らかにしており、先の政府高官はトランプ氏が中国への働き掛けを強めるとの見通しをロイターに語った。もっとも、北朝鮮政治体制の不安定化を避けることが国益にかなう中国は、特に制裁実施において一定程度以上は踏み込まないだろうという。

制裁という点ではトランプ政権が前政権よりも積極的になって、北朝鮮の兵器開発を支援する企業や団体(その多くが中国勢)までを制裁対象に含めるかどうかは分からない。

またトランプ氏が中国の習近平国家主席とこのほど行った電話会談で「1つの中国」の原則を受け入れたことで、北朝鮮問題に関する中国側の協力拡大を引き出せるかどうかもはっきりしない。

こうした中で米ロビー団体「ミサイル防衛擁護同盟(MDAA)」の創設者リキ・エリソン氏は、トランプ政権が韓国と日本のミサイル防衛を迅速に強化すべきだと主張。オバマ前政権が既に土台をほぼ整えているこの取り組みを、速やかに実行する必要があると訴えた。

もっとも米国と韓国が年内の配備に同意している高高度ミサイル防衛システム「THAAD」については、中国が自国の安全保障を脅かすとして強く反対している。

(Matt Spetalnick記者)

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
安倍首相、北朝鮮ミサイル発射を非難 「安全保障に重大な脅威」
中国、朝鮮半島の緊張をもたらす行動に反対を表明
防衛省の17年度予算、過去最大の5.1兆円を要求へ=政府関係者
自衛隊に常時迎撃命令、北朝鮮ミサイルに備え=政府関係者
北朝鮮ミサイルの破片か、海上保安庁が発見
http://jp.reuters.com/article/northkorea-missiles-usa-idJPKBN15S05L?sp=true
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/161.html

[経世済民119] 先進国の低金利政策に試練 海外勢の売却で 国境税激震、投資家 中国の銀行危険度示す流動性カバレッジ OPEC減産9割達成
先進国の低金利政策に試練 海外勢の売却で

米国など先進国の国債の外国人保有比率が低下している PHOTO: REUTERS
2017 年 2 月 13 日 11:12 JST
 米国など主要国の国債の外国人保有比率が低下している。これは、海外マネーが先進国の金利を低く抑えているという長年培われてきた信念を揺るがすかもしれない。
 今世紀になって、世界のマネーが米国を中心にドイツや英国など西側大国の国債市場に避難場所を求める動きがほぼ一貫して続いてきた。その間、これらの国やその国民、そして企業は極めて低い金利で資金を借り入れてきた。
 一方で、世界経済と金利にとって別の重大な変化が訪れている。例えば、多くの国が現代資本主義を特徴付けている自由貿易の理念から離れ始めたことや、インフレのかすかな兆しが見えてきたことから主要な中央銀行が前例のない景気刺激策の縮小に向かおうとしていることなどだ。
 海外勢の国債保有量は減少の一途をたどっている。米財務省と連邦準備制度理事会(FRB)が1月に発表した最新の公式統計によると、昨年11月時点で、発行残高が20兆ドルに上る米国債の外国人保有比率は2009年以降で初めて30%を下回った。英国では現在27%と、08年の36%から低下。ドイツでは、14年につけたピークの57%から49%に低下している。

国債の外国人保有比率 青:米国、赤:英国、緑:ドイツ
https://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AV210_GOVFIN_9U_20170207124205.jpg

 こうした国債離れがどのような結果をもたらすかは分からない。国債に需要が集まると価格が上昇する一方で利回りが低下する。少なくとも短期的には。また、中国などの買い手はこれまで国債を買いあさってきた。中国では2000から14年にかけて当局が主に人民元安の維持と国内輸出企業の支援のために米国債を購入したことで外貨準備高が4兆ドルに達した。だが今年1月末時点では3兆ドルの節目を約6年ぶりに割り込んだ。中国は現在、元相場を押し上げようとしており、米国債保有額は昨年5〜11月に約2000億ドル減少した。
 UBSウェルス・マネジメントのチーフエコノミスト、ポール・ドノバン氏は「プロの投資家が操作して利回りを下げている。今起きている変化は米国にとってこの上なく重要だ」と指摘した。
 海外勢による先進国の国債離れからうかがえる変化の1つは、年金基金や政府系ファンド、中銀といった買い手による国債購入の減少だ。年金基金などは資金の一部を世界で最も安全な資産に蓄えておくことが義務付けられているが、利回りが極めて低いため、こうしたリスクを嫌う投資家の購入意欲も減退している。
 アビバ・インベスターズの金利担当責任者、チャーリー・ディーベル氏は、米国では中国などの外貨準備の運用担当者は「自分の国と通貨を守るために、無難な米国債を購入していた。こうした運用担当者が購入を控えたら、米国が発行する国債を他の誰かが引き受けなければならないだろう。それはむしろ経済に関わる意思決定になる」と語った。
 長期的には、海外の買い手の減少はそれほど大きな問題ではないかもしれない。自国の通貨を印刷している国では、国債利回りは、中銀が将来どのあたりに金利を設定すると投資家が考えているかに大きく左右される。少なくとも理論上は、需給要因で乱高下する国債価格は、いずれ金利見通しにさや寄せする形になるだろう。
 さらに米国債市場では、大口の海外投資家が突然国債を売却すると、国内投資家や他の海外投資家も追随する可能性がある。
 英国債を発行・管理している英債務管理庁のロバート・スティーマン長官は、英国債市場で海外の参加者が減ったら、国債利回りが変動し、短期的に国債不足に陥るかもしれないと述べた。アライアンス・バーンスタイン・ホールディングのファンドマネジャー、ダニエル・ラフリー氏は、海外勢の購入が不安定だと、市場も乱高下すると指摘。「比率をあまり大きく変えない方がいい。つまり、過度に引き上げたり、引き下げたりしないことだ」と述べた。
 だが結局のところ、英国はポンドを発行して国債を償還しているため、国債利回りはおおむねイングランド銀行が設定する金利水準に再び近づいていくと語った。
 中銀は政府に資金を供給するために17世紀に設立された。今ではその大半は政府から独立しているものの、今も国債の売買によって金融政策を実行している。また投資家らは、海外勢の需要減退で国債価格が大きく変動したら、中銀のさらなる介入を招くとみている。
 実際、中銀は何度となく市場に介入している。08年に金融危機が始まった時、FRBとイングランド銀行は民間債券市場を落ち着かせるために介入した。その後、両者は大量の国債を購入して利回りを引き下げた。
 日本では現在、日銀が10年物国債利回りを0%に誘導している。国債の外国人保有比率は9.2%すぎない。政府債務残高の対国内総生産(GDP)比が229%に達し、格付け会社から再三警告を受けているにもかかわらず、国債利回りは何十年も過去最低水準にとどまっている。
 10年のユーロ圏債務危機では、欧州中央銀行(ECB)は国債市場を安定させるために苦労した。しかしユーロ圏諸国はユーロを思い通りにコントロールできないため、ある国の国債償還能力に投資家が神経をとがらせるたびに利回りが上昇する。例外は、ユーロをコントロールしていると投資家が見なすドイツだ。
 米国をはじめとする先進国の国債に対する海外勢の需要後退にはいくつかの理由がある。その1つは、これらの国債の利回りが極めて低いため、リスクを嫌う海外投資家でさえ高利回りを求めて新興国市場に目を向けていることだ。欧州の資産運用大手アムンディのデータによると、主な新興国の現地通貨建て国債の外国人保有比率は平均して4分の1〜3分の1だ。10年前は5分の1に満たなかった。
 買い手も売り手も少ない新興国の国債市場では、利回りの変動幅が先進国より大きい。米国債市場では、利回りがFRBの誘導目標から外れると、すぐに国内勢も海外勢も飛び付く。
 クレディ・アグリコルの資産運用部門インドスエズ・ウェルス・マネジメントの投資責任者フレデリック・ラモット氏は米国の先行きを悲観し、ドナルド・トランプ米大統領の反自由貿易的発言は、世界経済に対する米国の支配を損なうことになるとの見方を示した。ただ、10年物米国債の利回りが本格的に上昇し始めたら、買いに動くとしている。「2.75%を超えたら買い」だそうだ。
 10日の米国市場で10年債の利回りは2.409%だった。

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjK1ayRkY3SAhUCk5QKHTqzD_MQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB12058936961426933320104582618402768364034&usg=AFQjCNHBQC04_7E7QPVEEmPuCMRlt1ObGw


 

「国境税」の激震、投資家は半信半疑
ドルは25%上昇、原油価格は65ドルに上昇する可能性も

メキシコと米国の国境沿いに設置された壁の航空写真(ティフアナ郊外) PHOTO: MARIO VAZQUEZ/AFP/GETTY IMAGES
By
CHELSEY DULANEY
2017 年 2 月 13 日 16:42 JST
 議会共和党の税制改革案を巡り、アナリストらは米国における原油価格の2桁上昇から1980年代以降で最も強いドル相場など、グローバル市場を揺るがす大変化を予想している。しかし、こうした見通しに基づいて投資しようとする投資家は現時点でほとんどいない。
 共和党が提案するいわゆる「国境調整」の広範な影響を市場ははかりかねている。国境調整では米国からの輸出品への課税が免除される一方、輸入品には20%の関税が課される見込みだ。この狙いは事業者にとって米国を一段と魅力的な投資先にすると同時に、共和党が提案する減税措置の埋め合わせとして1兆ドル(約114兆円)を調達することだ。
 この提案が法律として成立すれば、市場は大きな変化に直面する。ハーバード大学のマーティン・フェルドシュタイン教授など複数のエコノミストによると、ドル相場は25%上昇し、1980年代以降目にしたことのない水準に到達する可能性がある。ゴールドマン・サックスのアナリストらは、米国市場における需給バランスの急速な引き締まりを反映して、国内の原油価格が現在の1バレル=54ドルから65ドルにまで急上昇するだろうと予想。また、ゴールドマンは米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数が現在の1.6%から2.4%以上にまで急伸すると見込んでいる。
 しかし、投資家はこうした動きを織り込んだ投資をためらってきた。その一因として、国境調整が法律として成立するのか、またはそれがどのような形を取り得るのかについて、極めて大きな不透明感があるからだ。ここ数週間、この提案は米国企業と政治家の両方からの批判に直面してきた。税制改革案の立案に参画した共和党のケビン・ブレイディ下院議員は、反対意見を聞いて納税者に無理のない移行方法を模索すると述べた。
 ゴールドマン・サックスのアナリストらは先月、国際原油相場に織り込まれた価格を見ると、国境調整が法律として成立する確率は9%にとどまると述べた。

貿易不均衡:対米黒字国と、それぞれの黒字額(単位は10億ドル)
https://si.wsj.net/public/resources/images/BF-AO279_BORDER_16U_20170210185105.jpg

 ドナルド・トランプ米大統領は1月、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで国境調整に言及し、「複雑すぎる」との懸念を表明した。それ以降、トランプ政権は国境調整が米国とメキシコとの壁を建設する費用に充当される一つのオプションになると述べてきたが、ウォール街は疑心暗鬼のままだ。
 クレディ・スイスの外国為替ストラテジスト、アルビス・マリーノ氏は、「この税制(改革)は(トランプ)政権にとって最優先の項目ではなさそうだ」と話した。
 トランプ氏は9日、3週間以内に「税制に関して驚くような」発表をすると述べた。
 それでも、税制に対する不安はドル相場に重くのしかかってきた。ドルは主要通貨に対して年初から2%下落し、大統領選後の急騰のほぼ半分を帳消しにした。
 輸出税を免除される米国企業が海外でより多くの製品を売ることができるようになるため、国境税はドル相場を押し上げると予想されている。海外で米国からの輸出品を購入する際、外国人は自国通貨を売ってドルを買わなければならず、このためドルの価値が引き上げられる。同時に、国境税のため外国製品に対する米国人の購買意欲が後退する可能性があり、これが外貨需要を抑制してドルを押し上げることになるだろう。
 ドル高を主張する人々は海外における同様の税制に為替相場がいかに反応してきたかに言及した上で、ドルが上昇して国境税の効果を相殺してしまい、消費者物価は安定を保つ可能性があると指摘する。例えば、メキシコで生産された自動車部品に20%の輸入関税が課されれば、その効果と同じ程度までメキシコ・ペソが減価し、物価は輸入業者と消費者の両方にとって安定を保つというわけだ。
 しかし、こうした予測について、多くのアナリストは経済理論に基づいたものにすぎないと警告する。現実の世界では、ドルがマイナス効果を吸収するために急速かつ十分な水準にまで上昇する可能性は低いだろう。
 HSBCホールディングスで米国為替戦略のヘッドを務めるダラ・マーハ氏は、ドルおよび他の外国通貨の価値は、主に株式や債券などの資産に対する需要によって動かされると指摘。HSBCによると、1日当たりのドル取引で貿易に伴う取引が占める割合は1.4%にすぎない。
トランプ新大統領特集
• メキシコ国境の壁、輸入品関税で費用捻出=米政府
• トランプ税制改革の盲点、軽視される関税
• トランプ氏の貿易政策:「力を通じた平和」


https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwj-nILUkY3SAhXHfLwKHXvmDsMQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB12058936961426933320104582618860344240778&usg=AFQjCNGZSIpjqCATDVkPb7BRp9AVH5dUdQ

 

中国の銀行の危険度を示す「比率」
知られざる流動性カバレッジ比率
By
ANJANI TRIVEDI
2017 年 2 月 13 日 11:40 JST
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
***
 中国の金融システムの頑丈な柱に傷みの兆候が表れている。結局のところ、30兆ドル規模の銀行システムでも支えられることには限界があるのだ。
 昨年12月以来、中国の中央銀行はさまざまな貸し出しツールを利用して8000億ドル前後という記録的な額の流動性を金融システムに注入してきた。一方で最近は金融機関に対する貸出金利を徐々に引き上げてきている。
 これを金融引き締めとみる人もいれば、むしろレバレッジ取引を巻き戻し、資本流出を阻止するための措置とみる人たちもいる。その両方の可能性もある。これは、金融システムに膨れ上がっている預金と銀行借り入れという疑わしい品質の資産を、パニックを引き起こさずに管理するという難しい作業でもある。
中国の銀行の流動性カバレッジ比率

Liquid AssetsLiquidity coverage ratios of selected Chinese banksTHE WALL STREET JOURNAL.Source: CEIC*Latest available; Requirement for 2016: 80%, 2017: 90%; 2018: 100%
20152016*ICBCChina ConstructionChina MerchantsIndustrial Bank0%100255075125150

 中国の銀行の自己資本バッファーは縮小しており、そのプレッシャーは銀行が隠しているとされる不良債権をも上回っている。そこで規制当局は、借り入れコストを引き上げることでレバレッジやキャリートレードの増加を抑制しようとしている。ところが、銀行への資金提供を支援する手段である中銀の流動性ツールが逆にプレッシャーを与えてしまっている。
 こうした問題は、ほとんど知られていない流動性カバレッジ比率に現れている。中国の中規模銀行では、短期的な資金支出に対する流動性の高い資産の比率が急激に低下しており、今や国際的な銀行規則「バーゼルIII」の中国版の規制限度を下回っている。
 2014年に60%で始まった後、この比率は段階的に上がっており、来年に100%となる。この比率は、銀行が現金に換えられる十分な資産を保有し、短期的な支出需要を満たすことを確実にするためのものだ。中国の大手銀の1つ、中国工商銀行ではその比率がまだ基準を上回っているものの、昨年9月の145%から133%に低下した。上海浦東開発銀行のような小規模銀行では、昨年第3四半期の89%から77%に低下した。
 流動性カバレッジ比率の分母であるマネーサプライとしての短期預金は、昨年の下期以来20%も増加している。一方、銀行はその低リスク資産を中銀の流動性注入に差し出してきたので、分子は縮小している。つまるところ、このストレス指標が上昇している原因は、中銀が銀行システムの流動性を維持するために利用するツールにあるのだ。こうしたことを踏まえると、トラブルが広がる可能性もある。
 銀行の持続可能性にとって重要なのは資金力である。現在、中国の銀行のバランスシートの約70%は預金で調達されており、これは2015年の75%から低下している。その要因としては、資本市場への依存度が高まったこと、今や中銀と銀行間取引市場が負債の約20%を占めていることなどがある。とはいえ、預金の種類も急激に変化している。レバレッジがかかっているが価値がより高いものもあれば、短期で逃避しがちなものもある。その一方、最近のより高い金利での中銀の流動性注入はイールドカーブをスティープ化させ、資金調達コストを引き上げた。
 中国政府が慎重に対応していかないと、ゆっくりとした揺れが激しくなりかねない。
関連記事
• 中国の資本規制は効果あり、今後の鍵は米利上げ
• 中国、「青天のへきれき」が試す成長の方程式
• 栄光からの転落、中国造船業界のいま

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwipgrSykY3SAhUEopQKHWnECmIQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10675506150565094895104582618451410721034&usg=AFQjCNHP9mLT0_n9-kzGjlofrK7slm99KQ


 

OPEC、減産目標9割達成 需給改善に強い意欲
1月110万バレル
2017/2/13 22:05
日本経済新聞 電子版
 【ロンドン=黄田和宏】石油輸出国機構(OPEC)が昨年11月の総会で合意した減産に積極的に取り組んでいる。13日発表した1月の生産実績によると、加盟国は目標とする減産量の約9割を達成し、原油市場の需給改善に向けて強い意欲を見せた。ただ、シェールオイルの増産への警戒感から原油相場は足元で頭打ち感が出ている。今後は減産への着手が遅れている非加盟の主要産油国の対応や減産延長の行方が焦点となる。

http://www.nikkei.com/content/pic/20170213/96958A9E9381959FE3E19A93EA8DE3E1E2E0E0E2E3E59494EAE2E2E2-DSXMZO1286036013022017FF8002-PB1-3.jpg

 OPECによると、加盟13カ国(加盟停止中のインドネシアを除く)のうち、減産の適用を免れているナイジェリアとリビア、イランを除く10カ国は、減産の基準となる生産量から合計で日量約110万バレルを削減。達成率は目標の120万バレルの9割に達した。OPECの過去の減産の平均の6割を大きく上回り、過去最高水準に達した。
 一部の加盟国は目標を上回る減産を実施。サウジアラビアは目標の49万バレルを超す減産に踏み切り、生産量を1千万バレル以下に引き下げた。原油市場では国際指標の北海ブレント原油先物が年初に一時1バレル58ドル台に上昇したものの、シェールの増産への懸念から上昇が頭打ちとなっている。減産への強い意気込みを示すことで、価格を押し上げたい狙いがある。半面、イラクなどは目標に届かず、加盟国の間で取り組みには温度差がある。
 一方、OPECとの協調減産に応じた非加盟の主要産油国は減産への着手がやや遅れているとの見方が多い。非加盟国は全体で日量60万バレル弱を削減する計画だが、ロイター通信は1月の減産の達成率は4割にとどまると報じた。国際エネルギー機関(IEA)によると、ロシアの減産は目標の日量30万バレルに対して、10万バレルにとどまっている。
 ロシアなど非加盟の11カ国を含む1月の生産量のデータは17日をめどに集計。22日にウィーンのOPEC本部で開く予定の専門家会合で、減産の進捗状況や今後の対応を話し合う。現時点ではOPECと非加盟国は協調姿勢を示しているが、2月以降も減産が大きく進まず非加盟国が減産に消極的との見方が広がれば、協調体制が揺らぐおそれもある。
 今後の焦点は、6月で期限を迎える減産の期間を延長するかどうかだ。OPECの議長国サウジは現時点では延長の必要はないとの考えを示した。夏場の原油需要の増加に対応する必要があるほか、サウジの減産への依存が高まり、かつてのような「スイングプロデューサー」として需給の調整役とみなされることに警戒感もある。
 イランなどは減産の継続が必要との立場で、減産目標の引き上げが必要になるとの見方もある。OPECの予測では、原油市場の需給が均衡するのは年後半とみており、期限後に加盟国が増産に動けば市場の過剰供給の解消が遅れるおそれがある。JPモルガン・セキュリティーズの石油アナリスト、デビッド・マーティン氏は「米国の原油在庫がなお高水準なことが懸念材料」と指摘する。
 OPECは5月25日に開く次回の総会で減産の延長の是非を最終的に判断する予定だ。3、5月に開く非加盟国の閣僚との監視委員会で今後の対応を協議する見通し。シェールの脅威が再び増すなかで、今後も協調体制を維持できるかどうかが重要になっている。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM13HA8_T10C17A2FF8000/



http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/151.html

[国際18] ギリシャ問題、チプラス首相に3つの選択肢  ユーロ圏17年1.6%成長予測へ上方修正欧州委 
ギリシャ問題、チプラス首相に3つの選択肢
欧州での選挙が近づく中、ギリシャのチプラス首相(写真)は国際債権団からの要求に身動きがとれなくなっている

By NEKTARIA STAMOULI
2017 年 2 月 13 日 15:56 JST

 【アテネ】ギリシャの急進左派連合(SYRIZA)党首であるアレクシス・チプラス首相は、国際債権団との交渉が熱を帯び、欧州で一連の重要な選挙が近づく中、自身の選択肢を検討している。

 ギリシャ政府は、国際通貨基金(IMF)から緊縮財政を迫られ、ドイツからは多額の債務減免を拒否されて、苦境に立たされている。IMFは第3次ギリシャ支援プログラムに同意していない。だがドイツを中心とするユーロ圏の債権国はIMFの参加を求めている。

 IMFはドイツの後押しを受けギリシャ政府に、所得税の課税対象拡大と年金の削減によって、債務返済を除きプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字を国内総生産(GDP)の3.5%相当にするという、これまでに合意した目標を達成するよう迫っている。ドイツはさらに、債務を巡る何らかの交渉に入る前に、ギリシャは財政の一段の緊縮を約束する必要があると主張している。

 追い詰められた首相に残された選択肢は以下の3つだ。

1.  大幅な譲歩

 チプラス首相がIMFの求める追加の緊縮財政を早急に受け入れることだ。こうすればドイツは債務を巡る交渉を先導する余地がなくなる。2018年より後のギリシャ債務減免策の詳細を具体化することができ、欧州中央銀行(ECB)が量的緩和プログラムの対象にギリシャ国債を含める道筋ができる。先行き不透明感が払拭(ふっしょく)され、経済成長を加速させる機会が与えられる。このことはギリシャ政府が失った評判を一部取り戻すことにつながる可能性がある。

 首相はこの選択肢を積極的に検討しており、交渉担当チームはIMFからの要求を満たすよう譲歩案を練っている。早期の解決はギリシャにとっても欧州にとっても効果が大きい。欧州大陸では間もなく一連の選挙が注目の的になるためだ。こうしたさなかに欧州はギリシャの欧州連合(EU)離脱、いわゆる「グレグジット」懸念の再燃を招きたくはない一方、ギリシャは放置されるリスクを取りたくはない。

 だが首相は、明らかな見返りがなくてもまず債権団の要求に屈し議会に賛同を求めるリスクを負わなければならなくなる。迅速な解決にはさらに、ギリシャ支援プログラムのすべての参加者が協調して数週間以内に大量の作業をこなす必要がある。デフォルト(債務不履行)期限が近づいていない中で、こうしたことが実現したことはこれまでほとんどない。

2. 抵抗と先延ばし

 チプラス首相は債権団の要求に屈せず、より同情的な交渉パートナーである欧州委員会の助けを受けながら、より緩やかな政策を引き続き求めるという可能性がある。そうなれば交渉は、多額の債務の返済期限を迎える今夏まで長引くことが考えられる。

 長年にわたるギリシャ危機に関わる大きな決断はこれまで、ギリシャが瀬戸際まで追い詰められた時に下されてきた。今回もギリシャには同じ選択肢が与えられる。ただ、欧州は選挙ムードに支配されるためタイミングはさらに悪くなり、譲歩する利点はなくなりそうだ。オランダとフランスの選挙後に欧州の指導者の構図が変わるかもしれず、ギリシャ政府はこれまでより柔軟性を欠いた国々の政府に対処する必要があるかもしれない。

3. 選挙を実施

 チプラス首相は議会を解散して総選挙を実施したくなるかもしれない。そうなれば首相率いるSYRIZAが緊縮財政に反対する野党に転落する可能性が高い。この選択肢は検討されているものの、現時点でギリシャ政府は最も選択したくないと考えている。

 中道右派の新民主主義党(ND)の新政権が誕生しても選択肢は同じで、痛みを伴う譲歩を早急に決断しなければならなくなる。

関連記事

ギリシャ危機、虚偽指摘の統計局長に責任押しつけ
ギリシャとユーロ、はてしない物語の再開
ギリシャ、ユーロ圏離脱の恐れ−支援交渉打開を=IMF
ギリシャ危機の悪夢再び、債務不安で国債に投げ売り

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjnm4-hko3SAhXGfbwKHV5PBkAQqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB12058936961426933320104582618810020080128&usg=AFQjCNGRLRIwDb6N6l9gzdzFJ_AE54naZw

 

ユーロ圏17年1.6%成長予測へ上方修正 欧州委
2017/2/13 22:08日本経済新聞 電子版
 【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)の欧州委員会は13日、2018年までの経済見通しを公表した。ユーロ圏の17年の実質成長率を前回見通し(16年11月)から0.1ポイント高い1.6%へ上方修正するなど主要項目で軒並み判断を強めた。ただ先行きのリスクは「例外的に大きい」とも指摘。米政権の経済政策や英国のEU離脱交渉など政治リスクへの警戒を強調した。

 「荒れた海の航海」。欧州委は今回の経済見通しにこんなタイトルをつけた。18年にかけて、成長率や失業率は昨秋の見通しを上回るペースで改善が見込める。すべてのEU加盟国が18年にかけてプラス成長の見通しになったのは、08年のリーマン・ショック後では初めて。それでも「注意深さを保ち、拙速な結論は避ける必要がある」と先行きへの警戒を促した。

 欧州委が「とりわけ不確実性が高い」先行きのリスクとして指摘したのが、なお不透明なトランプ米政権の経済政策の行方と、独仏など欧州主要国で相次ぐ選挙、今春から本格化する英離脱交渉の3つだ。

 米政権については、短期的には財政刺激策や企業活動重視の改革が世界経済を刺激し、見通しを上振れさせる可能性があると指摘。一方で中期的には、米政府の通商政策の転換に伴う混乱が国際貿易に悪影響を及ぼす懸念や、より早いペースでの利上げが新興国経済に打撃を与えるリスクを指摘した。

 欧州では経済的な格差の広がりがポピュリズム(大衆迎合主義)を勢いづけているとの指摘もある。13日記者会見したモスコビシ欧州委員(経済・財務担当)は「経済成長の恩恵がユーロ圏すべてとすべての社会階層で感じられるようにしなければならない」と訴えた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM13HAB_T10C17A2FF8000/
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/163.html

[経世済民119] トランプ氏の為替批判で浮上する「通貨冷戦」 外為市場の関心はFRB 春まで株高、共和党政権経験則 サウジ8年ぶり大幅減産
トランプ氏の為替批判で浮上する「通貨冷戦」
トランプ政権の為替批判で「通貨冷戦」の懸念が高まっている
By PAUL HANNON
2017 年 2 月 13 日 14:01 JST

 ドナルド・トランプ大統領は為替問題に注目しているが、これは、世界の主要中央銀行による金融緩和政策の終わりを意味しているのだろうか。

 世界的にインフレ率が上昇し、経済成長の加速が見込まれる中、欧州中央銀行(ECB)や日本銀行など、中銀による追加的な金融刺激策の可能性は低下している。

 ただ、トランプ政権は、他国が為替操作をしていると非難する一方、保護主義的な姿勢への傾斜を明らかにしており、これが決定的要因になる可能性はある。

 輸出促進に向けた中銀による通貨安政策に対する批判は、ブラジルのグイド・マンテガ財務相が「通貨戦争」という言葉を使った2010年にも見られた。当時、批判の的となっていたのはドル安を招く米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和策だった。

 報復的な通貨切り下げが実施されるとの懸念が再燃したのは2013年初めで、このときは、日銀が円安につながる複数の量的緩和措置の実施を準備していることが明らかとなった。

 こうした懸念に対し、モスクワで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は声明で、「通貨の競争的な切り下げを回避する」と約束した。

 また、「競争力のために為替レートを目的としない」とし、「金融政策は国内の物価安定に向けられるべきだ」と付け加えた。

 それでほとんど問題はなかった。通貨戦争は起きず、ECBが2014年半ばから一連の緩和措置を続け他の中銀もこれに追随する一方、FRBは中銀としてほぼ唯一、段階的に金融刺激策を縮小していった。

 ところが、トランプ氏の大統領選出で通貨をめぐる緊張は再浮上した。今月に入ってからだけでも、日銀の黒田東彦総裁、ECBのマリオ・ドラギ総裁、ドイツ銀行のイェンス・バイトマン総裁らは為替操作をしているというトランプ政権の非難に対し、これを否定する必要に迫られている。

 たとえどのような利点があるとしても、こうした非難は追加的な金融緩和措置の威力を低下させる恐れがある。自国通貨の価値が少しでも下がれば、意図した政策変更と理論的に関連付けられてしまうリスクが高まっているからだ。

 米債券ファンド大手パシフィック・インベストメント・マネジメント(ピムコ)のグローバル経済アドバイザー、ヨアヒム・フェルズ氏は「現在の通貨の冷戦では力の均衡が保たれていないと言えるだろう。トランプ政権はすでに発足し、同政権がこの冷戦における核兵器、つまり、保護貿易政策を実施することにかなり意欲的だと思われるからだ」としたうえで、「欧州、日本、中国、その他の輸出国にとって合理的な対応は、米国をこれ以上怒らせないよう、通貨の冷戦緊張を高めないようにし、少なくとも一時的には対ドルでの自国通貨上昇をある程度までは容認することだ」と指摘する。

関連記事

トランプ大統領の外交、現実路線に近づく
米国と中国、足並みそろえた方向転換
日米の為替協定、結ぶなら双務的に=篠原前IMF副専務理事
トランプ氏の為替批判、日中「共闘」の好機か
日米首脳会談で為替市場が注視する「手掛かり」
【社説】日米首脳会談、通貨論争は勝者なき戦い

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjy0s3tkI3SAhVEJJQKHbcOAEkQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB12058936961426933320104582618642940539370&usg=AFQjCNFlYx-qw4btqk6rvwQMO3ssFDhdvw

 
焦点:外為市場の関心はFRBへ、引き続きトランプ発言には注目

[東京 13日 ロイター] - トランプショックなき日米首脳会談となり、外為市場の次の焦点は、米景気動向と金融政策の行方に移りつつある。3月利上げの織り込み度合いが低いだけに、今週のイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言からタカ派色の強い発言が飛び出せば、ドル高/円安が進展することも予想される。その際は、「トランプ発言」にも注目が集まりそうだ。

<為替問題、トランプ外しの見方>

日米首脳会談前の市場では、トランプ大統領から日本の対米貿易黒字や円安などを批判する発言が出てくることへの警戒感が高かったが、「暴言封印」との声も出るほどの友好ムードで会談は終了。日本政府にとって「満額回答」(外資系金融機関)との評価が多い。

市場の関心が高かった為替政策は、ペンス副大統領と麻生太郎副総理兼財務相がトップに座る「新経済対話」の中で議論される見通し。「不規則発言の存在感が際立っているトランプ大統領を介さなくてもよい仕組みを創設できた」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト、植野大作氏)と、市場に安心感が広がった。

ドル/円が110円まで急落する可能性はいったん後退したとの見方が多く、13日の東京市場では一時114円前半まで上昇。2週間ぶりの高値をつけた。

<FRB議長の議会証言に関心>

今後、トランプ大統領の口先介入で相場のボラティティが高まる可能性はあるが、トレンドを支配することはできないとの予想も少なくない。市場の関心は、米国のファンダメンタルズや金融政策に向かうとの予想が増えている。

こうした中、目先は13、14日に行われるイエレンFRB議長の議会証言が注目されている。米国の3月利上げについて、市場参加者の織り込み度合いは低く、仮に利上げを実施するなら、この場で市場にメッセージを発信する公算が大きいからだ。

ある国内金融機関の関係者は「6月利上げの予想が多く、強気の発言があれば予想外の展開として、ドルが115円方向に買い進まれるだろう」と述べる。

もっとも、トランプ政権から具体的な財政政策の表明はなく、欧州の政治リスクも台頭している。「おそらく3月利上げはないだろうが、米国の景気は堅調。6月利上げに向けた地ならしがあるかどうか」(あおぞら銀行・市場商品部部長、諸我晃氏)との声もある。

<米為替報告書、中国の操作国認定あるか>

全般的な金融市場の環境として、最高値更新に転じた米国株や新興国市場の底堅さがドル/円を支援しそうだ。

だが、ドル安/円高の圧力が完全に消えたわけではなく、「2、3カ月のスパンでみれば、ドル/円にはダウンサイドリスクがある」(シティグループ証券・チーフFXストラテジスト、高島修氏)との指摘もある。

高島氏は、4月公表予定の米為替報告書で、中国を為替操作国に認定するかどうか注目している。「中国に人民元高を飲ませていこうという時に、中国の競争力問題を誘発する円安が歓迎されないことは明らかだ」と指摘。米為替報告書の公表に向け、108円前後へのドル安/円高が進む可能性があるとの見方を示す。

いずれにせよ、日米首脳会談後のドル/円の方向性は、今年の基調を決める上でかなりの重要性を持ちそうだとみる市場参加者が増えている。

(杉山健太郎 編集:田巻一彦)

ロイターをフォローする
今、あなたにオススメ
欧州市場サマリー(22日)
「緩やかな回復基調変わらず」 実質GDPで石原再生相が談話
第4四半期の中国経常収支は376億ドルの黒字=外為当局
為替は市場で決まる話、日本の通貨政策は適切=麻生財務相
1月末の中国外貨準備高、2011年2月以来の3兆ドル割れ
http://jp.reuters.com/article/frb-trump-idJPKBN15S0OX?sp=true

 

コラム:春まで株高か、共和党政権の経験則

木野内栄治大和証券 チーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト
[東京 10日] - トランプ米大統領の政権運営に対する不安と期待が交錯している。例えば、米国10年債利回りは、大統領選挙の頃には1.8%程度だったが、12月央には2.6%程度まで急騰した。しかし、それ以降はボックス相場だ。

直近ではそのボックスの下限である1月央の2.326%の水準割れを試している。連れて、為替市場もドル安気味で、トランプ政権の政策に対する不安が感じられる値動きとなっている。

そこで、今年と同じように民主党から共和党に政権が移行した年を見ると、年後半のNYダウは下落する傾向が強い。景気に関しても、政権1年目に必ず後退期に入っている事実は見逃せない(分析対象期間は戦後。以下同じ)。

具体的な景気の後退期間は、アイゼンハワー政権1年目の1953年7月からの10カ月間、ニクソン政権1年目の1969年12月からの11カ月間、レーガン政権1年目の1981年7月からの16カ月間、W・ブッシュ政権1年目の2001年3月からの8カ月間だ。

逆に、共和党から民主党に政権が移行した年は、ケネディ政権やオバマ政権のように、従前からのリセッションが底入れすることはあっても、新たに景気後退に陥ったことはない。

こうして見ると、民主党から共和党に政権が移行した1年目に景気が必ず後退してきた理由は、共和党伝統の「小さな政府」政策やそれに対する事前の不安感だろう。やや緊縮的な財政政策が適用される政権1年目の10月前後に景気の失速を招いているのだろう。

<減税よりインフラ投資に景気後退回避の鍵>

ここで見逃せないのは、トランプ大統領と類似性が指摘されることが多いレーガン大統領も、政権1年目には景気後退に陥ったことだ。レーガン大統領は、減価償却に対するインセンティブ拡充などによって企業の税負担を軽減し、個人の所得減税も実施した。しかし、減税政策は景気に対して、すぐには効果が出なかったわけだ。

トランプ大統領が選挙中に公約した減税やインフラ投資がどのようなタイミングで実施されるかは不明だが、ライアン下院議長は8月までに税制改革を法案化したいと発言している。

そうなると、例えば法人減税のメリットが生じるのはおそらく来年3月頃の納税時期だろう。それも10―12月の1四半期分だけのわずかな額にとどまる懸念もある。ある程度の金額が民間にシフトするには、さらに時間が必要ともなりかねない。加えて、減税分の全てが活用されるかも定かではない。

これに対し、インフラ投資は直接的ですぐに効果が出やすい。通常ならば10月からの新会計年度入り後に、公共事業に対する入札などが行われる。契約金額は巨額であり、インフラ投資の金額分の経済効果は必ず期待できる。

さらに、建設会社が建設機械を購入し、人員を雇うなど民間部門での投資と雇用の誘発効果も年内に顕在化する。つまり、減税とインフラ投資では支出に対する有効需要の創出効果や効果が出る時期がまるで異なる。よって、インフラ投資が積極的に行われるなら景気後退リスクは大きく後退すると言える。

では、大型インフラ投資は現実化するのか。その鍵を握るのは、かねて指摘しているように、米国企業に海外利益のリパトリエーション(本国還流、以下リパトリ)を促す「リパトリ減税」の有無になるだろう。リパトリ減税とは企業が海外利益を米国内に還流する際の税率を下げる政策だが、徴税効果アップで税収増が期待できるので、早々に打ち出されるのなら、そこからの税収増を財源として当て込むインフラ投資に軸足が置かれるはずだ。

インフラ投資が主に民間資金を活用するにしても、リパトリ減税を行うなら、その効果を減殺してしまう法人減税はトーンダウンするだろう。自ずとインフラ投資に軸足が置かれることになろう。

ただ、リパトリ減税が打ち出されないなら、法人減税に軸足が置かれることになり(あるいは同時実施でもリパトリ減税を利用するメリットが減殺され、徴税効果は出にくくなり)、大型インフラ投資は遠のく可能性がある。法人減税より先に判明する可能性があるリパトリ減税議論の行方に注目したい。

<過去の例では2月から4月前後まで米株は堅調>

さて、共和党に政権が移行した年は、年後半に米株安に見舞われたと前述したが、実は2月から4月前後まではNYダウが堅調となる傾向を確認できる。

議会演説などを通して政権交代に伴う不透明感が晴れてくることが、この時期の株高の背景だろう。トランプ政権では大統領令を中心に、ややエキセントリックな政策が先行した。しかし、今後は議会との協業政策が中心となってくるので、今まで以上にエキセントリックな提案が出てくるとは考えにくい。

例えば、銀行規制緩和、あるいは実際の効果が遅い減税策の話であっても景気刺激策に関する話題ならば、まずは株式市場ではポジティブに受け止められるだろう。

また、需給の改善も期待できる。今年は所得減税が見込まれているので、マーケットでも昨年終盤には利食いを控え、年初から利食いが集中したバイアスがあった。確かに、かつて所得減税を公約したレーガン大統領就任直後の1月にも米株は軟化した。しかし、その利食いは1カ月程度で吸収しており、当時のNYダウの底値は2月13日だった。

加えて、通常の季節性の回復も期待できる。例年この時期からは税還付が始まり、5月までの累計は毎年30兆円程度に達する。今年1月は上場投資信託(ETF)を含む米国内株ファンドから資金流出が続いていた。しかし、2月1日までの1週間では米国内株ファンド分野は資金流入に転じたことが確認されている。

<日米金利のかい離修正で市場の混乱は鎮静化へ>

また、米国10年債利回りが昨年12月央以降の保ち合い下限に位置しているのに対して、日本の10年債利回りは保ち合い上限に位置している。背景はトランプ大統領が中国と日本が通貨安政策を行っていると決め付け、「他国はマネーサプライと通貨安誘導で有利な立場にある」と発言したことだ(1月31日)。ここで大統領が言う「マネーサプライ」が日銀の金融緩和策を指しているとの懸念の声が上がっている。

これを受け、日本の10年債利回りは0.087%(1月31日)から0.106%(2月6日)にプラス0.019%ポイントと上昇気味だ。同期間の米国10年債利回りがマイナス0.045%ポイントと低下していることとは対照的で、これらを受け、為替はドル安円高となっている。

しかし、日銀は金利水準を重視しており、場合によっては国債買い入れ額を増やすこともいとわないだろう。直近でも、3日に日銀は5年超10年以下の国債買い入れを若干増額すると通知した。増額幅が小幅でかえって失望を招き市場金利を跳ね上げてしまったが、同日に実際の買い入れを伴う指値オペも行った。その後も買い入れオペを続けている。

中央銀行は無限の信用創造力を持っており、1940年代の米国での金利釘付け政策時も当初のイールドカーブは5年間も引き上げられなかった。今回も、早晩、債券市場は落ち着くと考えるべきだろう。それに伴い為替市場も平静を取り戻す可能性が高いと言えよう。

トランプ大統領は安倍首相とフロリダでゴルフを予定するなど友好的な態度で、メキシコやオーストラリアの首脳に対するときとは異なる対応に見える。ここからしばらくは債券・為替市場が落ち着く第一候補の時期と考えられるだろう。

*木野内栄治氏は、大和証券投資戦略部のチーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト。1988年に大和証券に入社。大和総研などを経て現職。各種アナリストランキングにおいて、2004年から11年連続となる直近まで、市場分析部門などで第1位を獲得。平成24年度高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。現在、景気循環学会の理事も務める。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

ロイターをフォローする
おすすめ記事


視点:トランプ円安は幻想、進む「米国の日本化」=青木大樹氏 2017年 01月 23日
しばらくは円安・ドル高に振れる傾向続くだろうという大方の予想と同じ=麻生財務相 2017年 01月 31日
為替こうみる:日米首脳会談後のトランプラリー継続は困難=FXプライム 上田氏 2017年 02月 10日
http://jp.reuters.com/article/column-eiji-kinouchi-idJPKBN15P0FB?sp=true

OPEC:サウジアラビアが8年ぶりの大幅減産−合意規模を上回る
Grant Smith
2017年2月13日 22:59 JST
Share on FacebookShare on Twitter
サウジの1月減産量は日量71万7600バレル
全体の減産量、6月までに市場を均衡させるには不十分
Share on Facebook
Share on Twitter
サウジアラビアは1月に、8年余りで最大の減産を実施した。減産規模は市場均衡に向けた石油輸出国機構(OPEC)合意を上回った。
  OPECが13日公表した月報によれば、サウジが申告した1月の産油量は日量974万8000バレルで、前月の水準を日量71万7600バレル下回った。外部からの情報を基にOPECがまとめたデータではサウジの1月減産量は49万6000バレルと、合意に一致する水準だった。  
  原油急落で経済が打撃を受ける中、産油国はOPECとロシアを中心に3年にわたる供給過剰の解消に向け減産を進めている。原油価格は昨年11月30日のOPEC加盟国による減産合意後の数週間に20%上昇したものの、OPEC減産分を米国の生産回復が埋めることへの懸念が値上がりにブレーキをかけた。
  月報によれば、イラクとベネズエラ、イランは合意を上回る産油量を申告した。OPECの二次情報源に基づく試算では、減産対象の11カ国による順守率は90%強だった。
  1月の産油量は89万2000バレル減の3213万9000バレル。需給均衡にはまだ減産が不十分であることを月報のデータが示唆している。
原題:Saudi Arabia Tells OPEC It Cut Oil Output by Most in 8 Years (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-13/OLBCNK6TTDSA01


 


トランプ米政権と英EU離脱がユーロ圏経済へのリスク−欧州委
Ian Wishart
2017年2月13日 19:28 JST
Share on FacebookShare on Twitter
今年のユーロ圏成長率は1.6%と2016年の1.7%から低下すると予想
17年ユーロ圏インフレ率予想を平均1.7%と、昨年11月から上方修正
Share on Facebook
Share on Twitter
米国のトランプ新政権と英国の欧州連合(EU)離脱選択がユーロ圏経済のリスクを高めると、EUの欧州委員会が指摘し、2017年の域内成長率が前年を下回るとの予想を示した。
  欧州委は13日公表した経済見通しで、ユーロ圏の景気回復が複数のリスクに見舞われているとの認識を示し、今年の成長率は1.6%と、16年の1.7%から低下すると予想した。
  欧州委の経済・金融問題部門トップのマルコ・ブティ氏は声明で「大きな不確実性が世界およびユーロ圏の景気見通しを特徴付けている」とし、「英EU離脱の道筋も将来のステータスもまだ不明確だ。米新政権の具体的な経済政策もまだ明らかになっていない」と分析した。欧州委は「リスクバランスは引き続き下方向だが、上下双方向ともリスクは増した」との認識も示した。
  国別ではドイツの成長率予想を1.6%に上方修正したが、昨年の1.9%成長には届かない見通し。フランスは1.4%と昨年を0.2ポイント上回り、イタリアは0.9%で昨年並みと見込まれる。スペインは2.3%成長で、昨年の3.2%から減速する見込み。
  欧州委は今年のユーロ圏インフレ率予想を平均1.7%とし、昨年11月時点から0.3ポイント上方修正した。
  最近のエネルギー価格上昇による「上向きのベース効果は今後薄れる」とした上で「賃金は今年と来年、若干の上昇が見込まれ、生産ギャップは縮小し解消に向かうとみられる。これに支えられ基調的な物価圧力は緩やかかつ段階的に強まるだろう」と分析した。

原題:Trump, Brexit Pose Risk to Outlook of Euro-Area Economy, EU Says(抜粋)
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-13/OLB5356TTDS001.

 
英国のEU離脱選択、景気への影響は見積もりほど大きくない−欧州委
Brian Swint
2017年2月13日 20:03 JST
Share on FacebookShare on Twitter
2017年成長率見通しは1.5%−11月時点は1%
EU離脱選択の影響、「まだ顕在化していない」−欧州委が指摘
Share on Facebook
Share on Twitter
欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は最新の経済見通しで、英国のEU離脱選択が今年の同国景気に与える影響は先の見積もりよりも緩やかとなるとの見解を示した。
  欧州委は13日、2017年の英経済成長率見通しを1.5%と、昨年11月に示した1%から上方修正した。18年については1.2%で据え置いた。
  イングランド銀行(英中央銀行)も今月、成長率見通しを引き上げた。政策金利は過去最低で据え置いた。英中銀と欧州委はいずれも、消費支出の軟化とインフレ加速によって今年の英景気が減速するとみている。欧州委は英インフレ率が今年2.5%と、昨年の0.7%から加速すると予想した。
  欧州委は報告書で、「英国が2016年6月23日の国民投票でEU離脱を選択したことの景気への影響はまだ顕在化していない」とした上で、「最近の景気の勢いは1−3月(第1四半期)も総じて続く」が、「その後顕著に弱まる」との見通しを示した。
原題:Brexit’s Hit to Growth Will Be Milder Than Expected, EU Says(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-13/OLB6Y26K50XX01
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/154.html

[政治・選挙・NHK220] 日米首脳会談、長い握手が示した日米の力関係 上向いた日本経済に忍び寄るトランプリスク 公務員に求められる変化を楽しむ気質
日米首脳会談、長い握手が示した日米の“力関係”

ニュースを斬る

異様だった「19秒の握手」でトランプ大統領が誇示したもの
2017年2月14日(火)
日野 江都子

異例とも言える19秒間のトランプ大統領と安倍首相の握手(写真:ロイター/アフロ)
 「滑稽」「ぎこちない」と形容されながらも、トランプ大統領が日本の首相と19秒も握手をしたことが話題になった。

 一部の報道ではこの握手を、日米間の固い信頼の証しとも解説しているようだが、イメージコンサルタントである私の立場から見ると、この握手には強い違和感を覚えた。

 握手では、トランプ大統領が終始、力任せに安倍首相の手をグイグイと引っ張り、安倍首相はトランプ大統領に引っ張られる通りにならないよう、何とか踏ん張っていた。安倍首相の様子は、まるで腕相撲の強い相手に弄ばれているかのようだった。

 2人の座る位置関係も影響しているが、安倍首相は握手をする手を遠くから差し出す姿勢を取らねばならず、しかも報道陣に向けて体を正面にしようとしており、どうしても腕に力が入りづらくなったのだろう。

 それを知ってか知らずか、脇をしめ、肘の角度を90度に固定したまま、腕に力を込めるトランプ大統領。わずか19秒の握手でさえ、トランプ大統領は安倍首相の不意を突き、そして自分の“やり方”を貫いていた。

 この19秒間の握手の最中に、トランプ大統領は2度ほど、握手している手とは別の手を握手の上に添え、ポンポンと軽く叩いていた。

 通常、握手の最終にもう片方の手を添えるのは強い親愛の情を示す。しかしトランプ大統領のこの仕草は、まるで自分よりも小さく、弱い存在を可愛がるような印象で、安倍首相への強い親愛というよりも、安倍首相との力関係を報道陣に見せつけたいという狙いが透けて見えた。

握手直後、「参った」表情を撮られた安倍首相

 握手は、米国では非常に重要視されるコミュニケーション手段で、政財界のあらゆるシーンで欠かすことはできない。

 基本は、相手に向かってまっすぐと腕を伸ばし、相手の手をがっしりと強く握り、目と目を合わせて、笑顔で挨拶をしながら、握った手を上下に数回振る。あまり細かく振るのは落ち着きがなく見え、振らなすぎるのもやる気がなく見える。

 だが今回の安倍首相のように手首を曲げてしまうと、それだけで“パワーレス”の印象を与えてしまう。首脳会談など、政治的なメッセージを発するシーンでは本来ならば、特に注意をしなくてはならなかったのだ。

 握手後、トランプ氏は親指を立て、ご満悦の様子でポーズをとっていた。対する安倍首相はといえば、強い握手から解放された直後の「参った」という表情を、うかつにも報道陣の前でさらしてしまい、その表情はテレビやネットを介して世界中に広がった。

 今回の握手は、終始トランプ大統領が力関係の違いを見せつけたという点で、極めて異様で、日本人にとっては非常に残念なものだった。

 唯一、評価できるとすれば、潔癖性で知られるトランプ大統領が、19秒に及ぶ長い握手をしたことの意味だ。少なくともトランプ大統領は、安倍首相のことを「嫌いではない」、むしろ「身近な存在」と感じており、「可愛がっておこうか」と思っているように”見える”ということだ。


このコラムについて

ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/021300568/?

 

 

上向いた日本経済に忍び寄る「トランプリスク」
上野泰也のエコノミック・ソナー
米国の動き次第で、日本の輸出・生産に下振れ懸念
2017年2月14日(火)
上野 泰也
鉱工業生産、12月0.5%上昇 10〜12月2.0%上昇
 経済産業省から1月31日に発表された昨年12月の鉱工業生産速報で、生産指数(2010年=100)は100.4(前月比+0.5%)になった(2か月連続の増加)。2016年8月以降、前月比マイナスになった月は1つもない<■図1>。そして、10-12月期の鉱工業生産は前期比+2.0%になった(3四半期連続の増加)。経済産業省は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。
■図1:鉱工業生産 生産指数・在庫率指数(季節調整済)

注:生産の直近2か月は製造工業生産予測指数(前月比)を用いた試算値
(出所)経済産業省資料より筆者作成
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/021000081/photo01.jpg

 また、出荷指数は前月比▲0.3%(4か月ぶりの減少)、在庫指数は同+0.2%(4か月ぶりの増加)で、在庫率指数は108.8に上昇した(同+0.9%)。出荷と在庫のバランスは12月には若干悪化したものの、気にする必要があるほどの動きではない。むしろ、在庫率指数が11月にかけて急速に低下しており、在庫と出荷のバランスは大幅に好転した状態となっている。
輸送機械や電子部品・デバイスなどが好調
 主な品目について向こう2か月の生産計画・予測を示している製造工業生産予測指数は、2017年1月が前月比+3.0%、2月が同+0.8%で、いずれも上向きである。これらを用いて鉱工業生産の1・2月平均を試算すると、2016年10-12月期の水準から4.2%も切り上がる計算になる。
 ただし、予測指数は実現率がマイナスになりやすい(生産の実績は計画・予測段階の数字を下回るのが常となっている)。そうしたことも勘案して経済産業省が作成した1月の鉱工業生産の先行き試算値(季調済)は前月比▲0.5〜+1.5%で、最も可能性の高い最頻値は同+0.5%となっている。
 製造工業生産予測指数が示すほどの強さではないが、主力業種(電子部品・デバイス工業および輸送機械工業)が好調を維持する中で、鉱工業生産は当面、緩やかな増加を続けると見込まれる<■図2>。
■図2:鉱工業生産  生産指数(季節調整済)  輸送機械工業、電子部品・デバイス工業

注:生産の直近2か月は製造工業生産予測指数(前月比)を用いた試算値
(出所)経済産業省資料より筆者作成
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/021000081/photo02.jpg

輸出の強い動きが、鉱工業生産の増加につながった
 この間、実質輸出(日銀が試算している数量ベースの輸出)がかなり強い動きとなっている。そうした中で出荷と在庫バランスが改善方向に大きく動き、在庫の水準が下がった。そこで、在庫補てんのため鉱工業生産が増加し、いわば実質輸出の動きにキャッチアップしてきている構図だとも言える<■図3>。
■図3:実質輸出指数と鉱工業生産指数

注:生産の直近2か月は製造工業生産予測指数(前月比)を用いた試算値
(出所)経済産業省・日銀資料より筆者作成
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/021000081/photo03.jpg

 加えて、国内需要の面では、新車販売台数(登録車)がニューモデル効果を原動力に足元で好調である。また、不振が続いてきた軽自動車でも販売が上向きに転じる兆しがある。自動車は生産面で、鉄鋼業など素材業種への波及効果が大きい。
輸出や生産の直近の強い動きの持続性には疑問符
 もっとも、輸出に関しては、@自動車を中心に生産拠点の海外シフトが相当進んでしまっていること、A電子部品のうち足元好調な中国メーカー向けを含むスマホ関連需要には製品サイクルの関係などから遅かれ早かれ一巡感が出てくるとみられること、B米国のトランプ政権が日本の対米貿易黒字を問題視していることなどから、輸出や生産で見られている直近の強い動きの持続性に、筆者は懐疑的である。
 なお、日銀は2月1日に公表した展望レポートの背景説明(BOX1)財別輸出の動向の中で、上記Aの関連で、「情報関連について、企業からの聞き取り調査などによれば、最近は、スマートフォンの新製品向けだけでなく、中国スマートフォンのメモリ大容量化や、クラウド化に伴うサーバー需要の拡大、車載向け製品の増加など、電子部品需要の裾野に拡がりがみられてきている」と記述した。これは確かに明るい動きである。だが、足元の生産予測指数の伸びがあまりに急激であることも考え合わせると、それらの輸出にはやはり、一巡感が早晩出てくるのではないか。
「トランプ発」の自動車貿易摩擦や円高のリスク
 また、言うまでもないことだが、「トランプラリー」の反動で為替が円高ドル安方向に大きく揺り戻して輸出に悪影響を及ぼすことを警戒する必要もある。
 1月30〜31日に開催された日銀金融政策決定会合は、金融政策の現状維持を決定した。すでに述べたように電子部品などの輸出・生産が足元で好調に推移している上に、昨年11月からの「トランプラリー」で円安・株高が進んだことが追い風になっており、日銀の景気見通しは強気に傾いている。黒田総裁は昨年12月26日に、「日本経済は、これまでは、いわばグローバル経済の『逆風』の中で奮闘してきましたが、世界経済が新たなフェーズに入る中で、これからは『追い風』を受けてさらに前進していくことが可能な状況になってきていると思います」と述べた。
 しかしその後、米トランプ政権の保護主義的な施策が世界経済に混乱を巻き起こすことが警戒されるようになっており、自動車を巡る日米貿易摩擦の再燃リスクも意識されている。
 これまでの「追い風」と、今後起こり得る強い「向かい風」の両方を考えると、日銀としては今後の景気・物価見通しで、過度に強気に傾斜するわけにもいかない。1月31日に公表された日銀の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)では、実質GDP(国内総生産)の見通しが2016・2017・2018年度いずれについても上方修正される一方、消費者物価指数(除く生鮮食品)の2017・2018年度の見通しは上方修正されず、据え置かれた。そして、物価の前年比が2%程度に達する時期については、「見通し期間の終盤(2018年度頃)になる可能性が高い」という、昨年10・11月の前回展望レポートの表現が維持された。さらに、中心的な見通しのリスクバランスは今回も、「下振れリスクの方が大きい」とされた。

ドナルド・トランプ米大統領の発言や行動に、日本経済が振り回され続ける可能性がある。(写真:ロイター/アフロ)
日銀の緩和策を「円安誘導」と批判してくるリスクも
 政府関係者は「金融政策にまで口出ししてくると面倒なことになる」と述べ、米国が日銀の緩和策を「円安誘導」と批判してくるリスクを否定しきれないと漏らしていた(1月28日 日経)。数日後、1月31日のトランプ大統領発言で、それが早くも現実になった。
 また、同じ1月31日の英紙フィナンシャルタイムズには、対中強硬派として知られており新設の国家通商会議(NTC)のトップに就任したピーター・ナバロ氏が、「暗黙のドイツ通貨・マルク安が貿易交渉の障害になっている」として、為替市場でユーロが安くなっていることを強く批判した発言が掲載された。
 これらの発言は、トランプ政権の保護主義的な姿勢がいかに強固なものであるかを、市場に強く印象付けた。「米国第一」の下での米製造業「復活」のためには、自国通貨ドルが他国の通貨に対して強いことは、明らかにネガティブである。
「強いドル政策」を財務長官は示唆するが、上昇余地は限られる
 トランプ大統領から財務長官に指名されたスティーブン・ムニューチン氏は1月19日に上院で開催された指名承認公聴会の席上、「強いドルは長期的に重要だ」「ドルは最も魅力的な通貨で、海外から米国に投資を呼び込んでいる」と発言した。これは、クリントン政権のロバート・ルービン氏以降、米国の歴代財務長官が継承してきた「強いドル政策(strong dollar policy)」を、トランプ政権も採用する考えを示唆したものだろう。@基軸通貨としてのドルの信認を保つこと、Aそのことによって経常赤字国である米国への投資マネーの安定的流入を確保する狙いが背景にある。
 だが、話はそこで終わるわけではない。ドル高が行き過ぎれば、輸出減少・輸入増加を通じて、トランプ大統領が忌み嫌っている米国の貿易赤字が拡大する。
 1980年代前半のレーガン政権は、大型減税・高金利政策・ドル高に由来する「双子の赤字」で行き詰まり、1985年9月には国際協調でドルを押し下げる「プラザ合意」が成立した。「レーガノミクス」の失敗を、「トランポノミクス」が繰り返さないためには、ドル高が行き過ぎないようマネージする必要がある。トランプ大統領の頭の中にあるとみられる世界観は1980年代のそれではないかという印象を、彼の言動から抱いているのは、筆者だけではあるまい。
在庫補てん一巡後の鉱工業生産については、楽観視できない
 したがって、「強いドル」政策という「看板」はこれまでの政権と同じように掲げながらも、トランプ政権はドル相場がここから大きく上昇するようなことは極力回避しようとする可能性が高い。つまり、ドル相場の上昇余地は限られるということであり、「トランプラリー」の下で昨年11〜12月に急進行したドル大幅上昇の反動がこの先も続きやすいという見方である(市場には、ある1つの方向に限界を見出した場合、その反対側を試しにいく性質がある)。
 以上のように考えを巡らせると、在庫の補てんなどが一巡した後の鉱工業生産の足取りは過度に楽観視すべきでない。米国の動き次第ではむしろ日本の輸出・生産に下振れリスクが急浮上しかねないと、筆者はみている。


このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/021000081/


 


 

公務員に求められる、変化を楽しむ気質

地方にはタカラの山が眠っている

内閣府の派遣者が見た「リアルな地方創生」(後編)
2017年2月14日(火)
日経トップリーダー
地方創生の目玉施策の一つが「地方創生人材支援制度」だ。中央省庁、民間企業、大学から、多

様な能力と個性を持つ69人が結集。彼ら派遣者(日本版シティマネージャー)たちは、夢と希望と

、いくばくかの不安を抱きながら、人口5万人以下の小さなまちに、それぞれが着任した。派遣者

7人が1年間の活動を座談会という形で振り返った。前編では、住民が、自分のまちの未来や強み

に「気づく」ことの重要性が指摘された。後編では「変化」に焦点が当たる(前回の記事はこち

らをご覧ください)。
【座談会メンバー】
伊藤耕平/山形県寒河江市・さがえ未来創成課長(派遣元は経済産業省)
小濱哲/山梨県丹波山村・前顧問(派遣元は横浜商科大学=当時、現在の所属は一般財団法人 公

共経営研究機構)
西野由希子/茨城県常陸大宮市・創生特別顧問(派遣元は茨城大学)
早川卓也/千葉県いすみ市・参事(派遣元は総務省)
深谷信介/茨城県桜川市・参与(派遣元は博報堂)
藤井延之/秋田県湯沢市・副市長(派遣元は総務省)
横山喜一郎/徳島県三好市・政策監(派遣元は野村総合研究所)
(司会は北方雅人・日経トップリーダー編集長)

PDCAを回したり、KPIを設定したりすることを国が地方の自治体に求めているのも、仕事の進め方

を変えようとしているからです。そうした改革が進めば、地方創生も加速するのでしょうか。


横山喜一郎・三好市政策監(徳島県)
横山:民間企業なら当たり前の基本動作が、これまでの自治体にはなかった。中長期のゴールを

設定せず、毎年、同じことを繰り返ししているから、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)もない

。民間だったらありえないでしょう。ゴールがないから、会議の進め方も遅い。事前にアジェン

ダ(議題)を示して、会議ではホワイトボードを使って建設的に議論して、という仕事のやり方

が身につけば、いろいろな物事がスムーズに動き出すと思います。
 私たち派遣者は1年か2年しかいません。その短期間で、まちを変えることは無理です。だから

こそ地方創生の戦略そのものも大事ですが、戦略のベースとなる仕事の進め方を変えることは、

同じくらい大きな意味があるのではないでしょうか。

身の丈に合った戦略を考えてPDCAを回すだけ


西野由希子・常陸大宮市創生特別顧問(茨城県)
西野:総合戦略を短期間でつくるのは大変な作業でしたが、数値目標を設定するという新しい発

想が、一斉に各地の自治体に導入されました。数値目標を定めたことで、現実に、職員の意識も

仕事の仕方も変わってきています。「別の課の事業と一緒にすると、より効果が出るのでは」な

どど、考えを広げるきっかけになっています。


深谷信介・桜川市参与(茨城県)
深谷:自分たちの身の丈に合った戦略を考えて、それをしっかりPDCAサイクルで回していけば十

分なんです。加えて、住民がもっと参画できるような状況をつくると、地方創生のスピードが速

まるように思います。ただ、東京の時間軸で物事を考えてはいけないと思います。それぞれの地

方には、それぞれの文化や価値観、住民同士のつながりなどがあります。また、平成の大合併に

は功罪がありますが、罪のほうの部分が強く出ている市町村もあります。そうしたところは、性

急に議論を進めるのは難しい。

これまでの役所組織はモノカルチャー

これからの公務員にはどのような人材が求められるのでしょう。


藤井延之・湯沢市副市長(秋田県)
藤井:公務員が地方でできることはまだまだたくさんあります。地域経済の中で、市役所の扱う

予算規模は大きいし、まちのルールをつくることもできる。公務員のバリューは大きいと思うの

ですが、いったん役所に入ってしまうと、どうしても役所の都合で物事を考えてしまいがちなの

が残念です。役所内のものさしではなく、自分が担当している仕事が役所の外ではどのような意

味を持つのか、市場価値で考えるようにしたほうがいい。

横山:以前は安定志向の学生が公務員になりましたが、最近は「まちを良くしたい」という純粋

な思いに駆られて、公務員の道に進む学生が増えているような気がします。私は、まちづくりほ

どクリエーティブな仕事はないと思っています。まちづくりには、複雑な要素がたくさん絡み合

う難しさはありますが、その分、それらをどのようにつなぎ、組み立てるかという道筋は様々な

ので、実に面白い。
 ただ、これまでの役所組織はモノカルチャーで柔軟性に欠けていました。これからの公務員に

は、他の役所や民間企業の情報をどんどん取り入れていくような働き方が必要でしょう。


伊藤耕平・寒河江市さがえ未来創成課長(山形県)
伊藤:1つのまちを取ってみても、多様なエリアがあり、多様な人たちが住んでいます。日本全国

で見ればそれこそ千差万別です。そうした多様なまちに必要なのは、多様な人材です。こういう

人材でなければいけない、というのはないでしょう。そうして公務員一人ひとりが多様性を追求

していれば、地方ではもっと面白いことが起きていくはずです。
 寒河江市では職員を1年間、東京の大手広告代理店に研修に出しています。若い職員は、民間企

業や国など、どんどん外に出たほうがいい。そうしたW他流試合Wを通じて、いろいろな考え方

や働き方を学べば、そこで身についた多様性が地方創生の過程で必ず生きてきます。

西野:同じ世代で横につながることも必要ではないでしょうか。自分が働いている役所だけで問

題を抱え込むのではなく、他の役所の職員と情報交換しながら、より良い問題解決の方法を探る

。今後はそんな動き方が求められると思いますし、私自身、多くの学生を役所に送り出している

大学教師として、そうした連携の場を自治体の皆さんと一緒に、つくっていきたいと考えていま

す。

地方も切磋琢磨しなければ……

深谷:連携という考え方には大賛成です。私は、地方公務員を総合職と専門職に分けるのも、選

択肢の1つだと考えています。例えば観光事業を極めたい人は、他の自治体の観光担当者と密に情

報交換し、切磋琢磨もしながらベストな施策を打つ。他の自治体に一時出向し、観光のノウハウ

を共有しても面白いでしょう。一方の総合職はマネジメント力を極めるのです。都道府県単位、

あるいは国で、そうした公務員の育成システムを構築してほしいですね。


早川卓也・いすみ市参事(千葉県)
早川:いすみ市では、2015年に周辺の市、町と一緒にフィルムコミッションを立ち上げました。

これは映画やテレビドラマ、コマーシャルなどの撮影を誘致し、まちを活性化していくための組

織です。こうしたことが実現できるかどうかは、リーダーシップを取る人がいるかいないか。自

分の市のことだけを考えるような人だとできない。公務員の中から、広い視野、高い視点を持っ

てリーダーシップを発揮できる人がたくさん現れるといいですね。


小濱哲・丹波山村前顧問(山梨県)
小濱:その意味では、この派遣者制度は大きな意義があると思っているんです。これまで中央官

庁が日本を良くしようといろいろな施策を打ってきたけれど、なかなか地方は動きませんでした

。唯一動いたのが、田中角栄の日本列島改造論くらい。
 けれど、今回の地方創生に対する国の危機感は相当強い。何としても地方に動いてもらわなけ

ればと考え、この派遣者制度をつくって霞が関の魂を伝えさせた。特に、民間企業の人が国のお

墨付きを得て、地方のまちづくりのために散らばるという試みは、これまでありませんでした。

産官共同の新しい形ですよ。地方自治体のあり方は、今まさに刻々と変化しています。そうした

変化を楽しむことができる人が、これからの公務員に求められる資質ではないでしょうか。

(本記事は『未来につなげる地方創生 23の小さな自治体の戦略づくりから学ぶ』を再編集しまし

た)


日経BP社では『未来につなげる地方創生 23の小さな自治体の戦略づくりから学ぶ』を発行しまし

た。本書は内閣府地方創生人材支援制度の第一期派遣者たちによる、地方創生のリアルな現場の

克明な記録です。派遣者たちは地方で何を見て、どう感じ、どんなことに取り組んだのか。「地

方創生」の歴史はここから始まります。くわしくはこちらをご覧ください。

このコラムについて

地方にはタカラの山が眠っている
地方創生の動きが本格化する中で、東京などの大都市から地方に進出するベンチャー企業が増え

ている。住民や行政とネットワークを築きながら、ITなどの技術を駆使して社会の困りごとを解

決し、新しいビジネスを生み出していく。小さな事業の種を都市とパイプをつなげることにより

、大きく伸ばしていくことができるのも魅力だ。地方創生の担い手として注目が集まるベンチャ

ー企業やその経営者の奮闘にスポットライトを当てる。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/112600053/021000007



まちづくりほどクリエーティブな仕事はない

地方にはタカラの山が眠っている

内閣府の派遣者が見た「リアルな地方創生」(前編)
2017年1月31日(火)
日経トップリーダー .
地方創生の目玉施策の一つが「地方創生人材支援制度」だ。中央省庁、民間企業、大学から、多様な能力と個性を持つ69人が結集。彼ら派遣者(日本版シティマネージャー)たちは、夢と希望と、いくばくかの不安を抱きながら、人口5万人以下の小さなまちに、それぞれが着任した。派遣者7人が1年間の活動を座談会で振り返った。
【座談会メンバー】
伊藤耕平/山形県寒河江市・さがえ未来創成課長(派遣元は経済産業省)
小濱哲/山梨県丹波山村・前顧問(派遣元は横浜商科大学=当時、現在の所属は一般財団法人 公共経営研究機構)
西野由希子/茨城県常陸大宮市・創生特別顧問(派遣元は茨城大学)
早川卓也/千葉県いすみ市・参事(派遣元は総務省)
深谷信介/茨城県桜川市・参与(派遣元は博報堂)
藤井延之/秋田県湯沢市・副市長(派遣元は総務省)
横山喜一郎/徳島県三好市・政策監(派遣元は野村総合研究所)
(司会は北方雅人 日経トップリーダー編集長)


横山喜一郎・三好市政策監(徳島県)
派遣者として地方創生に深く関わった皆さんの目に、地方の活力はどのように映りましたか。

横山:地方にも元気な企業はたくさんあり、一概に活力が低下しているとは言えません。ただ、人口は確実に減っているので、何とかしなければという焦燥感のようなものが地方にはあると思います。焦燥感はあるけれど、具体的に何をどうすればいいのかがまだ見えないので、将来に対して明るい希望が持てない。そんな状態ではないでしょうか。


早川卓也・いすみ市参事(千葉県)
早川:私が派遣された千葉県いすみ市は県内では平均所得が低いほうですが、住民の生活は豊かです。風光明媚で、山海の幸がたくさん採れ、イセエビの漁獲量は日本で1、2を争う多さ。地方は疲弊しているという人がいますが、そんな地方はどこにあるんだろうと考えてしまうくらい、元気な人が多い。人口減に対する危機感を口にする人もいますが、ごく一部です。

 ただ地元の人たちは、自分のまちがどれほど魅力的かということにあまり気づいていません。東京には特急電車で1時間余りと近いのに、アピールも不十分。物事を大きく変えるのは「よそ者、わか者、ばか者」と言われます。よそ者である私のような人間が、新しい視点をまちに持ち込まないといけないと感じました。

派遣者の役割は新しい視点を持ち込むこと

深谷:都会の目線で見ると、地方は人口が減って、商店街も人通りがまばらで大変だ、となるのでしょうが、住んでいる人たちに悲壮感はありません。少なくとも、私が派遣された茨城県桜川市はそうでした。緑豊かで、今日、明日の生活には困らない。東京など大都市のまちのほうがよほど疲弊していると思います。

 ただ、まちの人口減少に何も手を打たないと10年後はどうなるかという話をすると、「それは問題ですね」と気づく。目線を少し遠くに向けてもらい、新しいまちづくりの必要性に気づいてもらうという作業が、私たち派遣者の大きな役目なのでしょう。

住民の人たちが「気づく」というのが、地方創生の第一歩なのかもしれませんね。まちの未来の姿に気づく。自分たちの強みに気づく。どちらも大切なことです。


深谷信介・桜川市参与(茨城県)
深谷:まちには、高齢者もいれば若者もいます。年金生活をしている人もいれば、バリバリ働いている会社員もいます。いろいろな人がいる中で、どうすれば気づいてもらえるかということを考えながら、とにかくいろいろな人に会ってきました。まちによって違うのでしょうが、私の体験では、長年家業を営んでいる人は、比較的すっと共感してくれました。やはり、代々継いでいくことの大切さと難しさが、体で分かっているのでしょう。


西野由希子・常陸大宮市創生特別顧問(茨城県)
西野:自分のまちの強みがはっきりしたら、元気が出るし、それが目に見える形になり、まちにとって何よりの価値を持つものだと分かると自信になります。その魅力は経済的に豊かであることだけではなく、伝統文化や歴史、食など文化的なものも含まれます。

 茨城県常陸大宮市でもそうでしたが、総合戦略をつくる過程で、どこの市町村も、自分のまちの強みは何か、真剣に議論したと思います。そうして自分たちの強みに気づき、言語化することの意味はとても大きかったと思います。

高齢者に合ったスピードで変えていく

派遣先で、「都会から来た人にうるさく言われたくない」と反発されるようなことはありませんでしたか。

伊藤:私は、山形県寒河江市のサポートをしていますが、最初のうちは住民の方とお酒を飲んでいると、たぶん、そういう目で見られているんだろうなと感じた瞬間は何度かありました。

 そこで私は、別の自治体を例として示し、何もしなければこの規模まで人口が減るんですよ、と分かりやすくイメージできる資料を持って、最初に年配の人たちを重点的に回りました。その土地に長年住んできた年配者に、まちづくりの考え方を変えてもらうのは大変だからです。彼らに「よし、やってみるか」と思ってもらえれば、それから若者を巻き込んでも遅くはありません。

 地方創生において最も避けなければならないのは、世代間闘争になることです。人口減少対策のために若者にお金を使うと、多かれ少なかれ、高齢者支援が割を食うわけです。それでも人口減少対策は必要だと高齢者に納得してもらわないと、地域において世代間で分裂してしまうので、その点には気を使いました。

 

小濱哲・丹波山村前顧問(山梨県)
小濱:人口規模が大きいまちのほうが、仕組みで動かすことができる分、地方創生に向かって走り出すことは比較的簡単かもしれません。私が関わった山梨県丹波山村は、人口600人。小さなまちになればなるほど一般に高齢者の比率が高い。保守的な考えの人が多いので、意識を変えるには時間がかかります。

 だから私は、「高齢者でもできるまちづくり」というコンセプトを掲げ、高齢者に合ったスピードで、まちを変えていくことにしたんです。矢継ぎ早に施策を打つことは控え、とにかくゆっくり、ゆっくりと。「お子さんやお孫さんが戻ってきてくれる、新しいまちをつくりましょうね」と言いながら、その実現に向けて、手と手をつないで引っ張っていくイメージです。

藤井:各地の市や村はこれまで国から「あれをやりなさい、これをやりなさい」と指示され、その通りにするという仕事のやり方を続けてきました。だから、自分で考えることに慣れていません。まだ地方創生の取り組みは始まったばかりで、どのまちも成果はこれからですが、自らの力で考えようと模索しているまちには、既に変化が起きています。例えば、外部の意見を進んで聞いたり、民間と協力したり、若者の力を生かしたりして頑張っているまちは、空気からして違う。

 私が携わっている秋田県湯沢市では、いろいろな審議会に若い市民をどんどん登用して、新しい風を吹き込んできました。そうすると年配の市民も、こういう考え方もあるんだなと気づくんです。

 今の人口構成では、どうしても高齢者中心に物事が決まってしまいます。けれど、未来のことを考えるのですから、若者の声を取り入れるのは不可欠でしょう。湯沢市では、まちづくりに若者の声を十分反映させるために、例えば各種審議会の委員構成のルールだったり、市民アンケート実施に際しての配慮だったりなど様々な仕掛けをビルトインするための条例を検討しています。これまで声が出せなかった人に出してもらい、意思決定方法を変えることで、地方創生に向けた動きが本当の意味で自走し続けることができるのではないでしょうか。

意思決定の改革、という指摘は興味深いですね。民間企業では終身雇用・年功序列のカルチャーが崩れつつありますが、自治体ではまだ根強く残っているのかもしれません。

藤井:組織も縦割りで、ノウハウが組織で共有されてなかったり、同じような業務を複数の課でしていたり。もっと具体的にいえば、「ここの省庁の窓口は○○課」と明確に窓口を分けているので、補助金の情報などがその課で止まって、他の課に伝わらないということもあります。ですから、組織の情報の流れをちょっと変えるだけでも、パフォーマンスが大きく変わる。

やめるべき事業はやめるが、住民の生活は守る

 役所で新しいことを始めようとするとき、「予算がない」という言い方で二の足を踏んでしまうことも多いと思いますが、省庁が持っている補助金を賢く使ったり、官民連携でゼロ予算でしたりという工夫はいくらでもできる。そうした動きを促すには、やはり組織の風通しが良くないと難しいと思います。


藤井延之・湯沢市副市長(秋田県)
伊藤:寒河江市を含む一般的な自治体は、各年代の職員数が均等でなく、偏っています。特に若い働き手であり、組織イノベーションのキープレーヤーである30代は、全国の自治体が採用を絞った時期に入庁したために層が薄くなっています。そして人数が少ないなどいろいろな理由で、その世代を境目に上の世代と下の世代の間で役所内の情報が円滑に伝わらないという構造になっているとの印象を受けました。

 そこで私は、層の薄さを埋めるために採用された30代の社会人経験者を核として、ベテランなどの上の世代と若い世代の間で、情報が偏らないように工夫しました。そうすると、若い職員が「こういうことをやりませんか」と面白い提案をしてくれるなど、目に見えた変化がありました。


伊藤耕平・寒河江市さがえ未来創成課長(山形県)
早川:私は市長に進言して、アイデアを持ち、行動的でやる気のある職員に、活躍できるポストを与えていただきました。やる気のある職員が実務の権限を持たなければ何も動かないですから。

横山:改革ということで言えば、ゴールの設定の仕方もそうです。役所ではプロジェクトの評価をする時、予算執行率で判断することがあります。1000万円の予算を990万円使ったら、それでよしとする。本来なら、そのプロジェクトを始めた目的の達成がゴールであり、それをどの程度実現できたかで評価しなければならない。役所の職員は、少ない人数で多くの仕事をこなさなくてはいけないので大変だけれど、もっと中長期のゴールを設定したほうがいい。

小濱:首長の多くは自分の宣言したことがちゃんとできているか、自己チェックしていると思うんです。ただ、課長クラスでもそれができているかというと、ちょっと疑問ですが。

藤井:事業の改廃もなかなか難しいですよね。成果が上がっていないならやめればいいのに、そう進めようとするとかなり抵抗を受けます。でも、やめるべき事業はやめないと、新しいことができないのは自明の理です。言われたことは続けるという意識を捨て、自分の頭で検証、決断をしていかなければならない。

小濱:何かをやめることのエネルギーは、何かを始めることの100倍はエネルギーが必要。民間企業でもいったん走らせた事業をやめることは大変ですが、役所のそれは民間の比ではありません。

早川:そこに切り込めるのが、私たち外部の人間なんでしょう。事業を切ってしまえば、「勝手なことをして」と役所内で悪者扱いされるかもしれませんが、こういうやり方があるのだと知っておくことは、必ず組織のためになります。

伊藤:地方創生は地域の成長戦略の推進という側面もあるため、「選択と集中」という話になりがちです。するとどうしても、日が当たる産業と日が当たらない産業が出てきますが、スパッと支援をやめるようなことを行政はしません。円滑に「選択と集中」を進めるためにも、ある支援事業をやめることはあっても、他の手立てでケアをするなどして対応します。そのためにも行政と住民が近づいて、より良い手はないかと、もっと議論していかないといけません。

(後編に続く、本記事は『未来につなげる地方創生 23の小さな自治体の戦略づくりから学ぶ』を再編集しました)


日経BP社では『未来につなげる地方創生 23の小さな自治体の戦略づくりから学ぶ』を発行しました。本書は内閣府地方創生人材支援制度の第一期派遣者たちによる、地方創生のリアルな現場の克明な記録です。派遣者たちは地方で何を見て、どう感じ、どんなことに取り組んだのか。「地方創生」の歴史はここから始まります。くわしくはこちらをご覧ください。

このコラムについて

地方にはタカラの山が眠っている
地方創生の動きが本格化する中で、東京などの大都市から地方に進出するベンチャー企業が増えている。住民や行政とネットワークを築きながら、ITなどの技術を駆使して社会の困りごとを解決し、新しいビジネスを生み出していく。小さな事業の種を都市とパイプをつなげることにより、大きく伸ばしていくことができるのも魅力だ。地方創生の担い手として注目が集まるベンチャー企業やその経営者の奮闘にスポットライトを当てる。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/112600053/012600006/?ST=editor


http://www.asyura2.com/17/senkyo220/msg/646.html

[経世済民119] 灰色の“自己啓発残業”へ誘う「過剰適応」の罠 「稼ぎの悪い夫は交換」CMが炎上しないワケ プレゼンが全然伝わらない…滑舌
灰色の“自己啓発残業”へ誘う「過剰適応」の罠

河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学

暗黙の指示によるグレーな労働が意識の高い若手を追い込む
2017年2月14日(火)
河合 薫

 2012年12月。23歳の新人看護師が亡くなった。
 遺体で発見された一人暮らしのアパートには、遺書が残されていた。

「自分が大嫌いで、何を考えて、何をしたいのか、何ができるのかわからなくて。苦しくて、誰に助けを求めればいいのか、助けてもらえるのか、全然わからなくて。考えなくていいと思ったら、幸せになりました。甘ったれでごめんなさい」

 その2日前。夜勤を終えた彼女は、
「11月30日。看護師向いてないのかもー。あー自分消えればいいのに、なんてねー」
と、SNSでつぶやいていたという。

 彼女はなぜ、死を選ばなければならなかったのか――。

 母親は「娘が自殺したのは長時間労働などで、うつ病を発症したことが原因」だとして、勤務先病院の運営主体であった国を提訴。

 その初弁論が、2017年2月3日札幌地方裁判所で開かれ、「帰宅後の、娘の自宅での仕事は一切、時間外として考慮されていない」とする原告(母親)に対し、国側は答弁書で請求を退けるよう求め、争う姿勢を示した。つまり「労災は認められない」と主張したのだ。

 看護師の女性は2012年4月からKKR札幌医療センターに勤務していたそうだ。その翌月の5月の時間外労働は、約91時間。

 5月13日にはLINEで、「この前の初めての夜勤で、事故起こしたんだよね。全盲の患者さんの薬の量、間違ったんだ。それがもう、とどめって感じで」とのやりとりを、友人との間でしていたことが確認されている。

 6月以降も“時間外”は続き、6月は85時間、7月は73時間、8月は85時間で、9月は70時間、10月は69時間、11月は65時間。この中には夜勤も含まれている。

 さらに彼女は帰宅後も、業務に不可欠な知識をフォローアップするため毎晩毎晩、机に向い続け、睡眠時間は2、3時間程度だった。

 作成が毎日義務付けられていた、先輩看護師との間の記録には「なんでその処置が必要か、根拠について確認してください」「知らない時は調べる」といった記述も残されており、彼女が“ひとりの看護師”として、きちんとした仕事をするために寝る間を惜しんで勉強していたことをうかがい知ることができる。

 つまり、今回の裁判のポイントは、時間外労働の長さに加え、仕事に必要な知識を補うための「自宅での仕事」をどう捉えるのか――というのが一つ。また、先の勤務には夜勤も含まれているので、心身に負担がかかる夜勤の捉え方もポイントとなる。

極めてグレーな「持ち帰り残業」

 数年前には、英会話学校の講師だった22歳(当時)の女性が2011年に自死したのは、「持ち帰り残業」が原因だったとして労災が認められている。

 ただ、このときの自宅での仕事は「授業で使う『単語カード』を2千枚以上自宅で作る」というもので、これが業務命令と判断されたという経緯がある。

 「持ち帰り残業=自宅での仕事」は、サービス残業同様、いや、それ以上に、極めてグレーな“働かせ方”。厚生労働省はサービス残業をなくすために1月20日、「自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと」と明記した新たなガイドランを策定したが、「自宅での仕事=自己啓発?」「自宅での仕事=サービス残業?」については線引きが難しく、どこまで認めてもらえるのか……。

 また、特にヒューマンサービスの現場には、「労働時間」だけでは語れない過酷さがある。

 5年ほど前に看護師の方たちに、私が開発したストレスマネジメントプログラムを実践してもらい、その効果を検証する実証研究を行ったことがある。

 プログラムを実施するにあたり、数名の看護師にフォーカスグループインタビューを実施したのだが、多く聞かれたのが、看護師さんたちが感じる「職務上の要求の高さ」と「心理的プレッシャー」だった。
※意識や深層心理を把握することができる座談会形式のインタビュー調査
 仕事量が多いのに加え、時間的切迫度も高い。絶対にミスは許されない。人手不足でひとりの看護師の責任が非常に高い。他の看護師のサポートを受けることができない。医療技術や使われる薬品も日々更新されるので、休日も勉強する必要がありゆっくり休むことができない――。

 さらに、
・高齢化社会で認知症の方も多く、四六時中ナースコールに呼び出されることもある。
・経験の浅い看護師に先輩が教えたり、サポートしたりする余裕がないので、孤軍奮闘している若い看護師が多い。
・看護師の仕事は育児や介護との両立も極めて難しいため、ベテランの離職もあとをたたない
という声も多かった。

仕事の要求度が高まると、自ら“働き過ぎ”に突き進む矛盾

 こういった状況は、日本医療労働組合連合会(医労連)が取りまとめた2013年の「看護職員の労働実態調査」でも示されている。

・「1年前に比べて、仕事量が増えた」は59.6%
・「疲れが翌日に残る」「いつも疲れている」は合計73.6%で過去最高
・「強いストレスがある」 は67.2%
・「健康に不安」は 60.0%
・妊娠者の 3 分の 1 が夜勤免除なし
・妊娠者の3 人にひとりが切迫流産を経験

 4人に3人が「仕事を辞めたい」とし、その理由のトップは「人手不足で仕事がきつい」(44.2%)で、以下「賃金が安い」「休暇がとれない」「夜勤がつらい」と続いていた。

 奇しくも2月6日、医労連が、「夜勤交代制労働など業務は過重である。(月平均60時間・年間720時間、繁忙期には単月100時間、その翌月とあわせた2カ月平均で80時間まで時間外労働を認めるという)政府案はまさに過労死を容認するもので、断じて容認できない」として、「月60時間」が過労死ラインと主張する談話を公表した。

 過労死認定にはある一定の基準が必要なことは、重々理解できる。だが、“長時間労働だけ”を、疲労やストレスの直接の原因とするのは、極めて危険。仕事上の要求とプレッシャーが増大することによっても、疲労やストレスは増大することを忘れてはならない。

 一方、仕事の要求とプレッシャーが高まると、人は自ら“働き過ぎ”を拡大するという矛盾がおこる。

 「いい仕事をするためには、私的な時間を犠牲にしてもやむをえない」と過剰適応し、身も心も疲れ果てボロボロになっているのに、どこまでも働き続けてしまうのである。

 「いい仕事をしたい」「会社に貢献したい」「お客さんを喜ばせたい」といった承認欲求に加え「人に迷惑をかけたくない」という意識が、

長時間労働→疲労→家でも仕事→睡眠不足→作業能率の低下によるミス→自己嫌悪→挽回するため長時間労働+家でも仕事→さらなる疲労――

といった矛盾に満ちた行動を、可能にしてしまうのだ。

「人生を生き抜く力」は“傘”に左右される

 そういった「人間の矛盾」を加味した上で、心身に悪影響を生じさせる労働時間を分析していくと、ボーダーラインは「月残業時間50時間前後」で、「帰宅時間22時」ということがわかっている。

 実はこの指標、私の大学院時代の指導教官であり、恩師の山崎喜比古先生が1993年に行った調査で明らかにしたもの。この研究は、長時間労働と健康との関係を考察した代表的な研究としていまなお評価されていて、私にとってはバイブルなようなものだ。この調査結果が、働く問題を考えるときの土台になっているといっても過言ではない(東京都立労働研究所「中壮年男性の職業生活と疲労・ストレス」)。

 「残業50時間なんて、夢のまた夢!」と思う人もいるかもしれない。だが、他の研究者が行った調査でも近似した結果が得られているし、脳血管疾患・心臓疾患のリスクも「月残業45時間」を境に急激に高まることがわかっている。

 私たちは想像以上に弱く、想像以上に強い。この二面性が複雑に絡まり合いながら、私たちは社会的な動物として、環境に“適応”しているのである。

 そもそも「自殺する」――と表現をするけど、死にたくて死ぬ人はいない。 

 自殺する人の誰一人として、喜んで死を選ぶ人はいない。

 言い方を変えれば、生きる力が萎えるから「死」に向かってしまうのだ。

 「ストレス対処力(Sense of Coherence:SOC)」――。これは幾度となくこのコラムでも取り上げている概念だが、SOCは誰もが内部に秘めている「生きる力」だ。

 人生で遭遇する困難や危機は、いわば人生の雨。危機を乗り越えるリソース(=傘)を備え、対処(=乗り越えること)に成功すれば、SOCは高められる。

 SOCには、「健康の維持や回復に必要とされる行動を確実かつ継続的に実行できる」防衛能力としての機能もある。

 また、SOCが高いと、ストレスの雨に遭遇しても、決してパニックに陥らずに冷静かつ客観的に受け止められ、ときには「雨が通り過ぎる」まで待ったり、ときには「すぐにやむから」と我慢したり、「これはもっと強くなりそうだぞ」というときには、傘をかき集め濡れないように対処できる。

 しかしながら、どんなにSOCが高い人であっても、手持ちの傘だけではどうにもならないような豪雨に降られたり、傘が見つからなかったりすると、次第にストレス豪雨に心がやられ、生きる力が失せる。

 傘がない、傘が足りない。「傘を貸してください」と頼める他者も、「この傘を使って」と傘を差し出してくれる他者もいない――。こういった状況が、その人のSOCを低下させ、生きる力を萎えさせる。その結果、人は取り返しのつかない、悲しい行動をとってしまうのである。

“野ざらし”の職場

 新人看護師さんの状況を思い起こしてほしい。

 看護師として働き始める時期には、「期待、希望」という光が差し込む一方で、初めてのことばかりでストレスの雨も降っていたはずだ。そして、その雨をなんとかしのいでいるうち、「一人前の看護師」として多くの患者さんを任された。

 ベテランの看護師でさえ「勉強に終わりはない」という医療の世界だ。高齢化社会で重症患者も多い。

 そういった過酷な状況下で他者の傘を借りようにも、周りの先輩たちもいっぱいいっぱいだから借りることが出来ず、先輩たちにも彼女に「傘を差し出す」余裕はない。

 いわゆる突然死の過労死は、何度かこのコラムでも書いたように前頭葉にある疲れの見張り番の疲弊で、「疲れを自覚せず、死ぬまで働いてしまう」メカニズムにはまるわけだが(「“スーパーネズミ”はなぜ死んだ?」参照)、過労による自殺は「生きる力」であるSOCが機能しなくなった結果だ。

 何度でも言う。職場で降り注ぐ雨に濡れ続け、生きる力が萎えた結果なのだ。

 もし、雨が降ってきても、

・足りない知識を補うサポート体制が現場にあったり、
・職場の風通しがよく、ちょっとした相談ができたり、
・落ち着いて勉強できる時間を持てたり、
・その日の疲れをとる睡眠時間(6時間以上)が確保できたり、
・休日に友人とドライブに出かけたり、
・美味しいものを食べに行ったり、
・友人と愚痴を言い合って笑い飛ばせる時間があったり、
・趣味を持てる余裕がある生活をできたり、
etc、etc…

そういったいくつもの「傘」があれば、「私、なんでこんなにダメなんだろう」ではなく、「うん、なんとかできた。よくやった!」と、今度は“自信”という傘を手に入れ、SOCを高めていくことができる。

 そんなSOCを高める職場環境の会社が、日本社会にどれだけ存在するのだろう。


このコラムについて

河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学
上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/021000091/


 

 


 
「稼ぎの悪い夫は交換」CMが炎上しないワケ

記者の眼

ENEOSでんきが浮き彫りにした社会通念のしぶとさ
2017年2月14日(火)
林 英樹
 「これは炎上してしまうんじゃないか」「アウトかもしれませんね」

 編集部で同僚記者とこのような会話を交わしたのは1月下旬のことだった。日経ビジネスでは2015年から毎年年末に『謝罪の流儀』という特集を掲載している。その年に起きた企業や個人の不祥事・炎上案件を取り上げ、何がダメだったのかを詳細に分析。これらの事例をもって他山の石とすることを狙った企画である。

 同じ特集班メンバーとの間で話題に上ったのが、JXエネルギーが手がける電力小売りサービス「ENEOSでんき」の新しいテレビCM。それは次のような内容だった。


小池栄子さんが出演する「ENEOSでんき」のCM(JXエネルギーホームページより)
 妻役の小池栄子さんがリビングで友人とお茶を飲みながら、自由に使えるお金の少なさを嘆いている。「解決策は2つあると思うの」。その答えが、「安い電気に変えるか、稼ぎのいい夫に変えるか」。友人は冗談だと受け止めるが、小池さんは急に真顔に変わり、「本気よ」と口にする。

 ちょうどリビングに入ろうとした夫役の古舘寛治さんがその言葉を聞いてしまう。真顔の小池さんが古舘さんの方を振り返り、ニヤッと笑うと、ガーンという低音と共に古舘さんが後ろに吹っ飛ぶ。そこで場面が切り替わり、ENEOSでんきがいかにお得かを説明する──という流れになっている。

 小池さんは専業主婦という役柄なのだろう。外で仕事をして稼ぐのが夫の役割で、妻は家計を預かる。そんな古びた価値観をベースにした内容であることに加え、自由に使えるお金を増やすための方法として、妻が自らも働きに出ることを申し出るのではなく、「稼ぎの悪い夫は交換する」という上から目線の考えを披瀝する。一部の男性に(場合によっては女性にも)不愉快な印象を与えかねない内容であることから、絶対に炎上すると確信していたが、我々の予想に反し、半月以上経った今でもほぼ「無風」状態を保っているのだ。

 無風と書いたが、正確には複数のインターネットニュースサイトがこのCMを批判的に取り上げた。ネットニュースは経緯を一覧表示する「まとめサイト」に転載され、それをテレビや新聞、雑誌などの既存メディアが取り上げることで、SNS(交流サイト)などを通じて短期間に燎原の火と化す──というのが最近の典型的な炎上パターンだが、JXエネルギーのCMは一部のまとめサイトに掲載されただけで、批判はそれ以上には広がらなかった。

JXは「それほど反響ない」

 企業には批判が寄せられなかったのだろうか。気になったので、JXエネルギーの広報担当者に電話で聞いてみた。

 「確かにネットの一部では話題になっているようですね。ですが、担当者に確認しましたが、当社にはそれほど反響は来ていません」

結構際どい内容だと感じたのですが、意図的に話題になることを狙った、炎上商法に近いような広告戦略だったのでしょうか。

 「そのような意図はまったくありません。あくまで電気料金が安くなる、切り替え手続きが簡単だということを知ってもらいたいと考えて作ったCMです。男女差別とか離婚とかを想起させる意図もありません」

 JXエネルギーは3月末まで電気代の基本料金を1ヵ月分無料にするキャンペーンを展開している。このキャンペーン期間に合わせ、CMも当初の予定通りに3月末まで放送する予定だという。

 特集班が炎上必至だと考えたのには理由がある。謝罪・炎上トレンドを取材する中で「ジェンダー」がキーワードの一つとして浮かんでいたからだ。

 25歳の誕生日を迎えた女性に対し、同性の友人が「今日からあんたは女の子じゃない」「もうチヤホヤされない」などと厳しく指摘する化粧品のCM。放送直後から批判が殺到し、資生堂は撤回を余儀なくされた。テレビCMではないが、特産の養殖ウナギをPRするため、女性をウナギに見立てた動画を公開した鹿児島県志布志市も激しい批判に晒されるなど、ジェンダー絡みで炎上する案件が目立っている。

 ただ、炎上案件の大半は女性蔑視との批判が起きたCMで、男性蔑視で炎上した案件はほとんどなかった。ENEOSでんきのCMも恐らく男女逆に描かれていたら、つまり家計を管理できない専業主婦に対して、「安い電気に替えるか、やりくり上手な妻に替えるか」などと突きつける内容だったとしたら、大炎上を招いていた可能性が高い。そうなった場合、「男は仕事で女は家事」という設定そのものにも批判の矛先が向けられていたに違いない。

 現実にそうならなかったのは、やはり男が槍玉に上げられている点が大きいのだろう。

ブラックジョークとして成立

 企業の危機管理を手がける経営コンサルタントにも話を聞いてみた。

 「確かに不快と思う人がいるとは思いますが、結論から言えば、グレー、セーフだと考えています」

どうしてですか。

 「小池栄子さんの発言はハラスメントではあるけど、パワハラではありません。一般論で言うと、主婦は夫に対して優越的な立場になく、ブラックジョークで済んでいるからです」

なるほど。でも一部で女尊男卑との声は上がっています。

 「男女の立場が逆ならブラックジョークにならない可能性はありますが、今回のCMの場合には、古舘さんのコミカルな演技が発言の毒気をかなり中和しているように感じます」

 JXエネルギーが際どいCMを打ち出した背景には、電力小売り事業の激しい競争環境も少なからず関係していると考えられる。

 昨年4月、企業や店舗などの事業者だけでなく、一般家庭も自由に契約先の電力会社を選べるようになった結果、他業種から多くの企業が電力小売り事業に参入した。だが、お値打ち感を打ち出しにくく、セット割など契約形態が複雑といった理由から、実際に契約先を切り替える家庭は大きく増えていないからだ。

 先の経営コンサルタントも「厳しい競争で差別化が難しい中、目立とうと、あえて“確信犯的”に際を狙ったCMを打ち出したのではないか」と指摘している。

 ブラックジョークが通用するのは、各人が共通理解として持つ社会通念を踏まえていることが大前提となる。今回のCMが炎上しなかったのはとりもなおさず、「男が仕事で女は家事」という考え方が社会通念として未だ確固たる根を張っているからに他ならない。

 JXエネルギーは意図的な炎上商法ではないと否定しているが、社会通念にブレがないことを見抜き、そこをしたたかに突いたのであれば、結果として世間を手玉に取るのに成功したと言えるだろう(もちろん実際にCMを制作したのは広告代理店なのだろうが)。

 米国人の友人は「米国でこのCMが流れたらバッシングが起きると思う」と話す。一億総活躍社会、働き方改革を掲げ、女性の社会進出を後押しする安倍政権。その結果として帰着する先が、本当に素晴らしい世界なのかどうかはともかくとして、少なくともJXエネルギーのCMが炎上を招く社会であるのは間違いない。

「24時間戦う」は炎上する?

 もちろん社会通念は不易ではない。「24時間戦えますか」。バブル期に流行したあの栄養ドリンクの CMを、電通の女性社員自殺問題をきっかけに長時間労働に対して敏感になっている今放送したら、猛烈な批判が起きることになるだろう。

 ただ、政府の威勢のいい掛け声とは裏腹に、「我が国固有の労働慣行に配慮しながら…」などという文言が重しのようにしれっと挿入された働き方改革の議論を見るに、表層的に制度が変わったとしても、我々が想像しているよりもずっと長く、そしてずっとしぶとく、この社会通念は残り続けるのかもしれない。

 と大上段に書いてきたが、「小池栄子さんになじられるのなら悪くない」と考えてしまっている時点で、私自身、気づかないうちにこの社会通念が思考に染み付いているのだろう。もちろん、稼ぎの多寡が男性の価値基準ではないのと同様に、美醜が女性の価値基準だという考えなんて毛頭持ち合わせていないが。念のため。


このコラムについて

記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/021300408/


 

 


プレゼンが全然伝わらない…滑舌を良くしたい!

誰にも言えない…オトコのお悩み相談室

呼吸法、口周り筋トレ、抑揚の改善法を身につけよう
2017年2月14日(火)
荒川直樹=科学ライター

まだまだ男盛りの中高年に容赦なく襲いかかる体の悩み。医者に相談する勇気も出ずに、1人でもんもんと悩む人も多いことだろう。そんな人に言えない男のお悩みの数々を著名な医師に尋ね、その原因と対処法をコミカルで分かりやすく解き明かす。楽しく学んで、若かりし日の輝いていた自分を取り戻そう。

精密機械メーカーの販売企画部に勤務する32歳。自分では「仕事ができる」男だと思っている。顧客からの問い合わせやクレームはバッサバッサ解決。「販促企画を立てろ」と言われたらポンポン出てくる。そんなオレの弱点は「話し下手」だ。まず、滑舌が悪い。モゴモゴ聞こえるらしく、取引先と電話して何回も聞き直されることも。また、プレゼンを担当したときは、「エー」「エー」ばかりが聴衆の耳に残ったようで、部長から「この次は、もう少し分かりやすく話してくれ」とくぎを刺されて意気消沈。誰か、もっと上手に話しができる方法を教えてくれ。

(イラスト:川崎タカオ)
 「人前で上手に話せるようになりたい、と考えている人は思っている以上にたくさんいる」というのはフリーアナウンサーでボイス・スピーチデザイナーの魚住りえさんだ。そういう人にとっては、丁々発止の対談や軽やかなフリートークは、はるか先の目標。とりあえず部下の前で話したり、プレゼンで大切なことをきちんと伝えたいという、基本のスキルをブラッシュアップしたいということだ。

 どうしたら上手に話せるようになるのか。魚住さんは「話すという行為を、いくつかの要素に分けて考えることで、誰でも話し方を改善できる」とアドバイスする。相手に伝わりやすくするためのポイントは、腹式呼吸、滑舌、抑揚の3つ。「これらを改善する3つのトレーニングを繰り返すと、話し方は確実に上達します」(魚住さん)。吃音症を治すには医療機関での治療が必要だが、早ければ1カ月半で話し方が改善するケースもあるという。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/16/091500010/021300011/2.jpg
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/16/091500010/021300011/3.jpg

 この3つのポイントの具体的なトレーニングについて、順に紹介していこう。

レッスン1(腹式呼吸):いい声で話すと、人に聞いてもらえる

 「まず、スピーチするときは良い声で。声がいいと、何を話しているか聞いてみようという気持ちにさせる」と魚住さん。「声の良し悪しは生まれつき」とあきらめてはいけない。呼吸法を見直せば、良い声に改善できるのだ。

 良い声を出すために大切なことは、まず肺にタップリと空気を入れる(=たっぷり吐き出す)ことだという。いわゆる「腹式呼吸」が最適だ。腹式呼吸では、空気を吸うとき肺のすぐ下にある横隔膜を押し下げるので、肺のスペースを大きく確保することが可能だ。

 「腹式呼吸なんて、声楽家、俳優、アナウンサーなど特殊な職業の人が行うものだ」と考えている人は多いかもしれないが、腹式呼吸を取り入れることで、誰でも自分の声を改良することができる。

 魚住さんは「腹式呼吸で話すと、声がエネルギッシュになる。それが聞き心地のよさにつながり、相手に安心感のようなものを与えてくれる」と話す。いざ人前で話すときはお腹から声を出して、大きく口を開くように心がけよう。

レッスン2(滑舌):新聞のコラムを読んでみよう

 滑舌が悪いというのも、とても多く聞く悩みだ。「声はたっぷり出ているのに、滑舌がハッキリしないがために損をしている人は少なくない」と魚住さんは話す。こうした滑舌を矯正するため、「話し方教室」では母音と子音の発声をしっかり学んでいく。専門家の指導がないとなかなか難しいが、以下に母音発声の仕方を紹介するので参考にしてほしい。

母音発声の口の形

(ア)上下の歯が見えるくらい大きく、丸く口を開ける。(イ)口の両端を思い切り横に引っ張る。(ウ)チューの形で口をすぼめるが、少し緩める感じで。(エ)イの形から下唇だけを下げる。(オ)アとウの中間程度に口を丸く開ける。(『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』<東洋経済新報社、魚住りえ著>に掲載の図を基に編集部で作成)
 魚住さんが、個人的に滑舌を治したい場合に勧めるのは、新聞のコラム(日本経済新聞なら『春秋』)を読む練習だ。良い声で、口角を上げて歯が見えるように話すといい。このとき書いてあることをよく理解し、間違えないように読みたい。魚住さんは「文字を見て、正確に声に出す脳の回路を作ることがとても大切だ」と話す。

 そして、このとき口の周りの筋肉をほぐして動きやすくしたり、適切に使ったりすることで、滑舌は見違えるように改善されるという。口の筋肉なんて普段はあまり意識しないが、発声のためには意識せずともさまざまな顔の筋肉を使っている。魚住さんが提案するのは、こうした口の筋肉のトレーニングだ。

滑舌を良くする舌のストレッチ

(1)口は閉じたまま、舌でぐるりと歯ぐきをなめる。逆回りも同様にして、それぞれ3周行う。(2)舌を横に出して、左右に動かす。往復10回行う。(3)舌を思い切り出して、上下に動かす。往復10回行う。(『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』<東洋経済新報社、魚住りえ著>に掲載の図を基に編集部で作成)
レッスン3(抑揚):メリハリを付けることで伝わりやすく

 どんなに美声で滑舌よく話せたとしても、棒読みでは何を言っているかが分かりにくい。話し上手の人は、言葉の発音に抑揚を上手につけ、大事なことが相手の頭に入るようにしている。

 言葉の抑揚には、さまざまなものがある。例えば、重要な言葉を発するとき、声を高くしたり、大きな声で話したり、ゆっくり話したり、逆に早口で話したりすることで、相手に話し手の意図が伝わるのだ。プロの話し手にかかると、こうしたリズムが音楽のように心地よく相手の耳に届くとともに、大事なことはしっかりと伝わっている。

 これは演技力やセンスではなく、魚住さんは「あくまでも国語力」だという。話し言葉には名詞、数字、接続詞などが含まれるが、重要な言葉はどれか、そうでない言葉は何か、仕分けができていく。それに併せて抑揚を付加していけば、自然とリズムよく話せるようになるという。

 なお、話の抑揚は自分のイメージづくりとも関係している。話し方を変えるとどのようなイメージになるかを魚住さんがまとめた。

●「高い声×ゆっくり」話すと、やさしくおおらかな印象になる
●「高い声×速く」話すと、元気で明るい印象になる
●「低い声×ゆっくり」話すと、落ち着いた印象になる
●「低い声×速く」話すと、仕事ができる印象になる

話し方のクセを知ろう

 ここまで話し方を改善するためのポイントを紹介してきた。ただ、話し方には、たくさんのスキルがあり、より本格的な話術を取得したいなら、各種教材を参考にしたり、話し方セミナーなどに参加するのもいいだろう。

 魚住さんは「どんなときも大切なことは、相手の立場で話すこと。話すことは思いやりである」と話す。これまでの自分の話し方のリズムを一度見つめ直して、相手に本当に伝えたいことを選択、要らないものを捨てる。それで想像以上に相手とのコミュニケーションを改善できるはずだ。また、会社の同僚や家族とも、楽しく話す時間を持とう。普段話さないでいるとノドや口周りの筋肉や脳の神経が退化してしまう。

 もっと話し上手になりたいと思えば、1日24時間、1年365日が話し方トレーニングの場になるのだ。

魚住りえ(うおずみ りえ)さん
フリーアナウンサー、ボイス・スピーチデザイナー
魚住りえ(うおずみ りえ)さん 大阪府生まれ。広島県育ち。高校時代に放送部に在籍し、数多くのアナウンサーを輩出しているNHK杯全国高校放送コンテストに出場。朗読部門で約5000人の中から全国3位に選ばれる。95年、慶応義塾大学を卒業後、日本テレビ入社。「所さんの目がテン!」「ジパングあさ6」「京都 心の旅へ」などを担当。2004年フリーに転身し、テレビ、ラジオを問わず幅広く活躍中。「魚住式スピーチメソッド」を立ち上げ、経営者や弁護士といったビジネスパーソンを中心に、話し方を磨くための指導を行っている。

このコラムについて

誰にも言えない…オトコのお悩み相談室
 まだまだ男真っ盛りの中高年に容赦なく襲いかかる体の悩み。医者に相談する勇気も出ずに、1人でもんもんと悩む人も多いことだろう。そんな人に言えない男のお悩みの数々を著名な医師に尋ね、その原因と対処法をコミカルで分かりやすく解き明かす。楽しく学んで、若かりし日の輝いていた自分を取り戻そう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/16/091500010/021300011/
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/157.html

[経世済民119] 黒田総裁のほほ笑みが消えるとき−日銀の国債保有が残高の4割突破 債券は下落か、米株高・債券安 ルペン1億ユーロのチャンス
黒田総裁のほほ笑みが消えるとき−日銀の国債保有が残高の4割突破
ジェームズ・メーガ、Garfield Reynolds
2017年2月14日 06:00 JST

関連ニュース
米国株:上昇、最高値を更新−成長促進策への期待でリフレ取引
米アップルが終値ベースの最高値更新−次期iPhoneを楽観
トランプ米大統領:北朝鮮には「非常に強く」対処−ミサイル発射で
NY外為:ドルが伸び悩む、イエレン議長の証言控えて薄商い

• 長期金利上昇に国債購入で対抗−金融調節の新枠組み
• いずれ市場の国債枯渇の見方、政策の継続性に疑問符消えず

日本銀行の黒田東彦総裁はかつて、日銀が購入している国債の割合はイングランド銀行(英中央銀行)の買い入れの半分だと笑ってみせたことがある。しかし、このままだと笑いごとでは済まなくなる日も遠くない。
  ブルームバーグが集計したデータによると、国債発行残高のうち日銀が保有する割合が40%を突破した。黒田総裁は2014年10月にニューヨークで講演した際の質疑応答で、発行済みの国債のうち日銀保有は20%で、イングランド銀行は英国債を約40%保有していると指摘、追加緩和のオプションは多いと説明した。その後、日銀の国債保有残高は膨張の一途をたどることになる。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ii7wSy2Sz_C4/v3/-1x-1.png

  日銀が国債買い入れ拡大を停止したり減速したりする兆候は今のところみられない。金融調節の目標を長短金利操作(イールドカーブコントロール)に切り替えたため、長期金利を0%程度に維持するため10年物国債の買い入れ継続を余儀なくされている。いずれ日銀への国債の売り手がいなくなってしまうのではないかという懸念も広がる。
  UBS証券の青木大樹・日本地域最高投資責任者(CIO)は、日銀は昨年末にかけて買い入れペースを減らしていたものの、マーケットが日銀によるテーパリングのリスクを織り込み始めると利回りが0.15%まで上昇、日銀は買い入れを加速せざる得なくなったと指摘する。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iZMmMgVUZrV8/v2/-1x-1.png


  日銀は3日、指定した利回りで無制限に買い入れる「指し値オペ」を長期債を対象に初めて実施した。オペ通知前の10年物国債の利回りは0.15%。日銀の指し値は0.110%で、落札額は7239億円に上った。このオペを含め日銀は3日から8日までの4営業日のうち3日で買いオペを行い、5−10年債を2.1兆円買い入れた。この年限の買い入れとしては黒田総裁が13年4月に異次元緩和を導入してから最大規模となった。
  一連のオペで為替相場は円高に振れた。黒田総裁ら日銀幹部は金融調節の枠組みを長短金利操作に切り替えた際に、金融緩和政策の持続性が高まったと説明していたが、国債買いオペの拡大は、操作目標を量から金利に切り替えた後も量的緩和の持続性に対する懸念が払しょくされないことを示す格好となった。
  金融調節の新たな枠組み導入は、利回り曲線(イールドカーブ)をスティープ化する狙いもあった。これは実際に効果を発揮した。昨年11月以降の30年債と10年債の利回りの差はここ6年以上で最速のペースで拡大し、一時82ベーシスポイント(bp、1bpは0.01)に広がった。イールドカーブコントロール導入前は50bpだった。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i1QUB9aGQeYM/v2/-1x-1.png
  銀行が売却に回せる国債の量はそろそろ限界に近づいているとの見方がある中で、イールドカーブのスティープ化によって、長期負債と見合う投資資産を必要とする年金や保険などの資金が超長期債に戻ってくるとの見方もある。そうなれば日銀の買える国債の量に影響を与える可能性がある。
  黒田総裁が導入した異次元緩和の最初3年半の間に、銀行が売却した国債の累計は141兆円に上り、この間に日銀が買い入れた国債298兆円の半分近くを供給したことになる。残された銀行保有の国債は219兆円。そのうち一定部分は自己資本比率規制を満たすため保有を続ける必要がある。こうしたことから、日銀が買える国債の量の制約に直面する可能性が現実のものになってくる。
  日銀は自らの政策によって、国債の利回り減少で日銀のバランスシートがむしばまれる懸念も生んだ。日銀の保有する国債のほぼ3分の1は年間利回りが0%か0.1%となっている。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iwASETtHz9UM/v2/-1x-1.png

  過去4年間の国債価格の上昇は日銀に損失ももたらしている。実際に買い入れた価格はほとんどが額面を上回っているからだ。簿価と額面の差額が拡大していることになり、国債の大規模買い入れ政策の持続性をめぐるもう一つの懸念を生んでいる。
  UBS証券の青木氏は、来年のいずれかの時期に日銀は買い入れる国債が底をつく見通しに直面すると指摘。ただ、日銀は保有が発行残高の4割を超えても気にしているようには見えず、当面は買い入れペースを維持するだろうと予想、現在の政策からの出口までは非常に長い道のりだと強調した。
  当面は日銀は国債の購入をやめることはできないようにみえる。さもなければ、イールドカーブコントロールができなくなるからだ。一方で、永遠に国債を買い続けることもできない。売り手がいなくなってしまうからだ。 黒田総裁の任期は18年4月まで。後悔しようとしたときにはもう任期が切れているかもしれない。
英文記事はこちら
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-13/OL32MH6KLVR901

 


 
債券は下落か、米株高・債券安受け売り先行−5年債入札結果を見極め
三浦和美
2017年2月14日 08:08 JST

関連ニュース
米国株:上昇、最高値を更新−成長促進策への期待でリフレ取引
米アップルが終値ベースの最高値更新−次期iPhoneを楽観
トランプ米大統領:北朝鮮には「非常に強く」対処−ミサイル発射で
NY外為:ドルが伸び悩む、イエレン議長の証言控えて薄商い
 
他市場はネガティブ、カーブはスティープ気味を予想−東海東京証
先物夜間取引は149円82銭で終了、前日の日中終値比3銭安
 
債券相場は下落が予想されている。前日の米国市場がトランプ政権の景気浮揚策に対する期待感を背景に株高・債券安となった流れを引き継ぎ、売りが先行する見通し。一方、この日の5年債入札で債券需要を見極めたいとの姿勢も強く、結果が判明するまでは下値が限定される可能性がある。
  14日の長期国債先物市場で中心限月3月物は149円台後半での推移が見込まれている。夜間取引は149円82銭と、前日の日中取引終値に比べ3銭安で引けた。

  東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、米国の株高や長期金利の上昇など「他市場はネガティブ」とし、「昨日の相場は手掛かり材料をなくす中、軟調な展開だった。今日もその延長にあり、弱含み」と見込む。また、「カーブはスティープ気味」と予想する。
  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の345回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値0.085%を上回る水準での推移が見込まれている。佐野氏はこの日の長期金利の予想レンジを0.09%〜0.095%としている。  
イエレンFRB議長
イエレンFRB議長 Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg via Getty Images
  13日の米株式相場はトランプ政権の政策期待を背景に上昇し、主要株価指数は過去最高値を更新した。一方、米国債相場は3営業日続落。米10年国債利回りは前週末比3ベーシスポイント(bp)高い2.44%程度となった。
  今週の米市場の関心は14、15日に行われるイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言に集中している。
5年債入札
  財務省はこの日、5年利付国債の価格競争入札を実施する。130回債のリオープン発行で、表面利率は0.1%に据え置かれる見込み。発行予定額は前回と同じ2兆4000億円程度となる。
  SMBC日興証券の竹山聡一金利ストラテジストは、「1月19日の5年130回債入札は日銀保有割合が85.2%と流動性が枯渇した状態で実施され、今回も最大で86%に達している可能性がある」と指摘。ただ、「需給面から少なくとも無難にこなすと予想した前回入札結果が不調だったこと、その後から日銀オペの不透明感が強まっていることを踏まえると、需給面の下支えは期待し過ぎない方がいいのだろう」と言う。「レラティブ面でも引き続き総じて割高とみられ、あえて5年で勝負する魅力は乏しい」とみている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-13/OLC50K6JTSE801

 


 
ルペン氏で1億ユーロのチャンス到来か、独国債に賭けるオプション
Stephen Spratt
2017年2月14日 04:36 JST 
フランスの大統領選挙の影響でドイツ10年債利回りがゼロになれば、オプショントレーダーは1億ユーロ(約121億円)の利益を得られるかもしれない。
  仏大統領選でルペン国民戦線(FN)党首が勝利した場合に利益の出る、ドイツ国債のオプションが人気だ。世論調査は同氏が決選投票で勝利する可能性は低いことを示しているものの、2016年の政治ショックを踏まえ。トレーダーらは次のサプライズが生じる可能性にピリピリしている。
  年初から特に人気を集めている取引に、ロングコール・カレンダー・スプレッドがある。事情に詳しい複数の関係者によれば、すでにこうしたオプションは約1100万ユーロのプレミアムを付けてユーレックスで決済されている。トレーダーの予想通りになれば、総額で1億1400万ユーロの利益が生じ、純利益は1億300万ユーロになる。
  ドイツ10年債の利回りは現在0.3%前後。ゼロになるには質への逃避が相当進まなければならない。英国の欧州連合(EU)離脱選択後には、利回りが過去最低のマイナス0.21%まで低下した。
原題:Traders Seek $100-Million-Plus Bonanza From Bund Bets on Le Pen(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-13/OLBNOO6VDKHS01

 


 
日本株続伸へ、米金利上昇や為替安定を好感−金融やアップル関連上げ
佐野七緒
2017年2月14日 08:07 JST

関連ニュース
米国株:上昇、最高値を更新−成長促進策への期待でリフレ取引
米アップルが終値ベースの最高値更新−次期iPhoneを楽観
トランプ米大統領:北朝鮮には「非常に強く」対処−ミサイル発射で
NY外為:ドルが伸び悩む、イエレン議長の証言控えて薄商い

14日の東京株式相場は3日続伸する見通し。トランプ米大統領の経済政策に対する期待感が市場に戻っている。米金利上昇で金融株が上げるほか、為替の安定が好感され、自動車など輸出株が高くなる。米アップルの新製品への期待が高まっており、特に電子部品関連は上げそうだ。
  SMBCフレンド証券投資情報部の松野利彦チーフストラテジストは「トランプ大統領の減税策によって景気が良くなれば金利は上昇するとの見方から米国株が金融中心に堅調なことは日本株にもポジティブ」と指摘。また終盤を迎えた国内決算発表では「円安効果が働き、改善がみられる。米利上げが進めば円安方向で、来期も1割程度の増益は期待できる」と指摘する。
  米シカゴ先物市場(CME)の日経平均先物(円建て)の13日清算値は1万9505円と、大阪取引所の通常取引終値(1万9440円)に比べて65円高だった。
東証外観
東証外観 Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  トランプ米大統領が今後2−3週間以内に税制について「驚異的な何か」を発表すると述べて以来、拡張的な米財政政策への期待が先行しやすくなっている。13日の米国債相場は下落し、10年債利回りは2.44%と、2.9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇。けさのドル・円相場は1ドル=113円70銭台と、13日の東京株式市場の通常取引終了時点113円71銭に対して横ばい圏で推移している。
  13日の米国株市場ではリフレトレードが勢いを増し、主要株価指数が過去最高値を更新した。S&P500種株価指数が0.5%高の2328.25と5営業日続伸、ダウ工業株30種平均が0.7%高の20412.16ドルだった。金融株が上げをけん引した。米アップル株は最高値で取引を終えた。次期「iPhone(アイフォーン)」が同社の売上高を再び押し上げるとの楽観的な見方が広がっており、日本の電子部品関連株にも恩恵を見越した買いが波及しそうだ。
  トランプ米大統領との会談を終えた安倍晋三首相は13日のNHKのニュース番組で、ワーキングランチで日米の自動車問題について「大統領からこれについての発言はなかった。日本の自動車産業による米国への貢献を日本側から述べてきており、その結果、今回言及がなかったと理解」と説明。数値目標は「日本として生産的ではない」との考えを示した。為替については「財務相に任せようと言って、大統領もすぐに了解」したという。SMBCフ証の松野氏は「日米会談を受けて今後の日米対話でもそれほどひどいことにならないという見方は広がっている」と言う。
  ただ、日本株の上値も重くなる可能性がある。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言を14−15日に控えており、SMBCフ証の松野氏は「発言を前に様子見ムードも強い。日経平均で1万9500円を挟んだ取引となりそうだ」と言う。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-13/OLC4NS6JIJUP01
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/167.html

[自然災害21] 米加州でダム決壊の恐れ、住民18万人超が避難継続 最後の手段として緊急用の放水路を初めて使用
米加州でダム決壊の恐れ、住民18万人超が避難継続
2017.02.14 Tue posted at 11:21 JST

決壊の危険が発覚した米加州のダム。当局は住民への避難指示を継続している

http://www.cnn.co.jp/storage/2017/02/14/98197a49617f11f4824ba4310994f88a/orovilla-dam-kcra-footage.jpg

ダム放水路が決壊の恐れ 米
米カリフォルニア州オーロビル(CNN) 米カリフォルニア州北部にあるオーロビル・ダムの放水路が浸食によって損傷し、決壊の危険が高まったことから、下流の住民約18万8000人が避難した。状況はやや改善したものの、13日現在も避難指示は解除されていない。
避難指示は緊急用の放水路に巨大な陥没穴が見つかったことから12日に発令された。中には避難するまでにわずか数分の猶予しかなく、身の回り品だけかき集めて緊急避難した住民もいた。オーロビルに住むマギー・キャブレルさんは12日、CNN系列局KFSNの取材に対し、「誰もが駆け回っていた。大混乱だった」「通りはたちまち車であふれ、近所の人たちは持てるだけの物を持って自宅から飛び出し避難した」と話している。
カリフォルニア州では長期間にわたって干ばつが続いていたが、今年に入って豪雨と降雪に見舞われた。オーロビル湖を源流とするフェザー川には大量の雨水が注ぎ込み、シエラネバダ山脈から流れ込む水でオーロビル湖の水位も上昇していた。
カリフォルニア州水資源局によると、同ダムは米国一の高さをもつ。2つある放水路のうち、緊急用の放水路は、ダムが完成してからの48年間、1度も使われたことがなかったという。
同ダムではこれまでメーン放水路からオーロビル湖の水を放水して、この地域の洪水を防いでいた。しかしメーン放水路は浸食によって深さ12メートル以上ある巨大な陥没穴が開き、すぐには補修できない状態になった。
11日には湖の水位が容量の901フィート(約275メートル)を超えたため、最後の手段として緊急用の放水路を初めて使用した。

ところが現地時間の12日午後3時ごろ、緊急用放水路でも浸食が起きていることが分かった。州消防局は、地面の浸食が始まれば土砂などが崩れ落ちて非常に危険な状態になると指摘。「適切に対応しなければ、高さ約9メートルの水の壁に見舞われる」と危機感を募らせた。
カリフォルニア州のブラウン知事は非常事態を宣言。12日午後に周辺の自治体が住民に緊急避難を呼びかけた時点では、放水路がいつ決壊してもおかしくない状況だったという。
ダムの120キロ下流にあるサクラメント市でも、放水路が決壊すれば鉄砲水に襲われる可能性もあるとして、消防局が住民に警戒を促している。
各地で商店は休業し、避難所が開設され、警察は道路を封鎖。道路は低い土地から脱出しようとする住民で交通渋滞が発生し、途中にあるガソリンスタンドの多くは13日までにガソリンが売り切れた。
現在、緊急用放水路からの放水は止まり、13日午前8時現在、オーロビル湖の水位は上限より1.2メートルほど低い約273メートルに低下した。その後も毎時10センチのペースで低下を続けているという。
15日には降雨が予想されることから、当局はそれまでに水位を約15メートル低下させることを目指している。
«12

メールアドレスを入力してください
登録
CNN.co.jpの最新情報をメールでチェック
こんな話題も

スキーリゾート地で雪崩、4人死亡 フランス 10:50
トレーラーが強風で飛ばされパトカーに直撃、映像公開 米 02/13
米南部で竜巻、19人死亡 カリフォルニアも嵐で死者 01/24
米イエール大、施設の名称から白人至上主義者の名前削除へ 02/13
ゾウの赤ちゃん、川で恩人を「救助」 保護団体が映像公開 10/18
http://www.cnn.co.jp/usa/35096531-2.html
http://www.asyura2.com/15/jisin21/msg/767.html

   前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 軽毛 jHmW0Q > 100009  g検索 jHmW0Q

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。