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[国際18] トランプとプーチンが実は握っている可能性 トランプ大芝居、習は動じず 米中貿易戦争激化、日本も巻添 112回使った裏ワザ
トランプとプーチンが実は握っている可能性

インタビュー

トランプ大統領は貿易赤字と南シナ海を取引しかねない
2017年4月10日(月)
森 永輔

クルーズミサイルを発射する米駆逐艦ポーター(提供:Mass Communication Specialist 3rd Class Ford Williams/U.S. Navy/AP/アフロ)
 トランプ政権が4月6日、シリア政府軍の空軍基地をミサイル攻撃した。米国はシリア政府軍が同4日に化学兵器を使用したと非難。「アサド政権が再び化学兵器を使用するのを防ぐため」攻撃に踏み切ったとする。同基地は化学兵器攻撃の拠点とされる。

 アサド政権を支援するロシアとの関係悪化を懸念する声が高まっている。しかし、米国の安全保障政策に詳しい拓殖大学の川上高司教授は、ロシアとの関係改善を進める交渉を促すため今回のミサイル攻撃に踏みきった可能性があると指摘する。

(聞き手 森 永輔)
今回のミサイル攻撃の知らせを聞いて、最初に何を考えましたか。


川上 高司(かわかみ・たかし)氏
拓殖大学教授
1955年熊本県生まれ。大阪大学博士(国際公共政策)。フレッチャースクール外交政策研究所研究員、世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授などを経て現職。この間、ジョージタウン大学大学院留学。(写真:大槻純一)
川上高司(以下、川上):何と言っても驚きました。

 化学兵器を使用したのがシリア政府軍かどうかはまだ明らかになっていません。アサド政権は否定しています。そうであるにもかかわらず、トランプ大統領はすぐにシリア政府の仕業と決めつけました。急ぎすぎの感があるのは否めません。

 仮に本当にアサド政権が行なったものだったとして、トランプ大統領はオバマ前大統領との違いを米国民に印象づけたかったのでしょうか。オバマ氏は2013年、シリア政府軍が化学兵器を使用したことが明らかになっても、公言していた空爆を実行しませんでした。

 今回のミサイル攻撃によって、アサド政権を支援しているロシアとの関係が悪化することは避けられません。オバマ氏との違いを印象づけられたとしても、とてもペイするとは思えません。

まずはガツンと一発かます

川上:では、なぜトランプ大統領はミサイル攻撃に踏み切ったのか。

 私は二つの可能性があると考えています。一つは、今後のロシアとの交渉と取引(ディール)を有利にまとめるために、ロシアが最も嫌がることをやったという可能性です。

 中国とのやりとりを思い出してください。トランプ大統領は就任前の16年12月、台湾の蔡英文総統と電話協議。続いて17年1月、「一つの中国の原則(中国と台湾は不可分)にこだわらない」と発言しました。これらは、これまでの米中関係の根幹を崩すもので、習近平国家主席に最も妥協できない事柄です。

相手の頭が一瞬真っ白になるような“球”を投げつけて、ひるませておいて交渉を有利に運ぶ。

川上:その通りです。同様に、今後開催されるであろう米ロ首脳会談を念頭において、プーチン大統領が最も嫌がることを実行した可能性があると考えられます。

トランプ大統領は、プーチン大統領との間でどのようなディールをまとめたいのでしょう。

川上:中東と欧州におけるパワーバランスを米ロが拮抗する状態に戻すことです。

 オバマ政権の8年間で、米国は中東におけるプレゼンスを大きく落としました。いまこの地域を力を振るっているのはロシアとイランです。この傾いたバランスを元に戻したい。

 加えて、過激組織「イスラム国(IS)」との戦いにおけるプレゼンスを高めることと、ロシアと情報共有などの面で共闘することをロシアに認めさせたいところでしょう。こうすることで、ロシアとのバランスを元に戻すと共に、イランの影響力を抑えることができます。

 対IS戦において、米国には三つの選択肢があると思います。一つは現状維持、すなわち何もしないことです。ドローン(無人機)を使った空爆を繰り返していますが、これは何もしていないのと同じです。


シリアのアサド大統領(写真:SANA/ロイター/アフロ)
 2つ目のオプションは陸上部隊を投入し、戦闘に全面的に参加すること。これは米国の国内世論が許さないでしょう。すでに厭戦気分が蔓延していますから。

 最も可能性が高いのは3つ目。地上戦を戦う特殊部隊を投入し、全面参加することなく米軍のプレゼンスを高めることです。このオプションはイスラエルも強く推すでしょう。トランプ大統領の娘婿でユダヤ教徒のジャレッド・クシュナー氏がこの案をプッシュしているとみられます。

欧州でのパワーバランスはどうなりますか。

川上:欧州では、フランス大統領選でポピュリストのマリーン・ルペン氏(極右政党「国民戦線」の党首)が世論調査で高い支持率を維持しています。ほか国でもポピュリスト政党が勢いを増しており、米国にとって面白くない状況にある。このバランスを元に戻したいという意向があると思います。

トランプとプーチンが談合?

川上:第2の可能性は、トランプ政権とプーチン政権が水面下で握っている、つまり話をつけている可能性です。国連の安全保障理事会で米ロが激しくやり合っています。ロシアがミサイル攻撃を「国際法違反」と責めれば、米国は「ロシアが見方となっているから、アサドは悪事をしても罪に問われないと考えてきた」と逆襲する。しかし、両者が“歌舞伎”を演じているかもしれない。

 言葉や文字にしなくても、お互いにシグナルを送り合い、理解し合うことはできます。

 トランプ政権は、トマホーク巡航ミサイルを59発も発射したにもかかわらず、23発しか命中していません。空軍基地の滑走路はまだ使える状態といいます。わざとはずしたとしか思えないような精度の低さです。さらに、ミサイル攻撃を1回にとどめるとの意向も明らかにしています。

 安全保障担当の大統領補佐官を解任されたマイケル・フリン氏が依然として、トランプ政権とプーチン政権をバックチャネルでつないでいるという話が耳に入ってきます。

 ロシア側も同様に「国際法違反」「侵略行為」と批判してはいますが、本気度が高いようには見えません。

 トランプ大統領が就任して以降、政権幹部が選挙期間中からのロシアと接触していたことが次々に明らかになりました。フリン氏はその一人。司法のトップであるジェフ・セッションズ長官も選挙期間中に駐米ロシア大使と面会していたことも問題視されています。これらの点を議会で民主党から追及されて辛い状況にある。国民もトランプ政権に対する懸念を高めている。トランプ大統領としては、かねて主張してきたロシアとの関係強化がなかなかできない状態が続いています。

 国民を納得させロシアへの接近を実現するためには、言葉で何を言っても不十分。そこで、ミサイル攻撃という行動を起こすことで疑念の払拭を図ろうとした。

このシナリオの場合、トランプ政権とロシアとどのようなディールをするのですか。

川上:米国が望むのは先ほどと同様に、パワーバランスの正常化です。一方のロシアは制裁の解除、もしくは、米国がロシア産のガスを買う大型取引などを望むでしょう。

いずれのシナリオだったにせよ、ミサイル攻撃されたシリアはなんとも哀れですね。

川上:そうですね。国際政治は残酷なものです。

北朝鮮の核開発をやめさせなければ先制攻撃も…


(写真:大槻純一)
今回のミサイル攻撃は米中首脳会談のさなかに実行されました。これはどんな意味を持つのでしょう。

川上:とても偶然とは思えません。北朝鮮を巡って、米国が中国にメッセージを送ったのでしょう。「北朝鮮が進める核開発を抑えるよう真剣に取り組め。そうでないと北朝鮮の核施設を先制攻撃することも辞さない」。米中会談は表面的には良好な関係を強調しましたが、カモフラージュである可能性が高いと思います。

 先制攻撃では、約700あるとされる米国の攻撃ターゲット――北朝鮮の核施設を含むWMD(大量破壊兵器)――のすべてを破壊する必要はありません。国防長官(当時)だったロバート・マクナマラが米ソ冷戦時代に行なった試算によると、全体の7割を破壊すれば実質的に機能停止に追い込むことができるそうです。金正恩委員長を探し出して殺害しなくても、政権はがたがたになるでしょう。

 そして、攻撃した後、米国はすぐに撤退して後を中国に託す。

え、北朝鮮に新たな親中政権が出来上がるのを容認するということですか。つまり、金王朝ではなく、核兵器を保有しないのであれば、親中政権でもかまわない、と。

川上:そういうことです。

 ただし、このようなディールは今の習近平政権にとって好ましいことではありません。彼らが望むのは現状維持です。少なくとも、今秋に控える共産党大会が終わるまでは、余計なディールはしたくない。

 仮に米国が北朝鮮の核施設を先制攻撃して、金正恩政権を倒した場合、最も大変になるのは日本です。米国が、北朝鮮が保有する核兵器の7割を破壊したとしても3割は残ります。それが日本にある米軍基地に向かって発射されることを覚悟しておく必要がある。

トランプ政権は軍人主導になった

 さらに朝鮮半島の北半分に核を持たない親中政権ができるとは限りません。核を保有する親中政権が成立する可能性だって皆無ではないのです。親中か親米か、核保有か核なしか、選択肢は4通りあるわけですから。

それにしても不思議なのは、北朝鮮の核問題が突然、脚光を浴び始めたことです。オバマ政権の時代には、戦略的忍耐という政策の下で、北朝鮮を無視してきました。

川上:それはトランプ政権が軍人が主導する政権になったからです。オバマ政権が北朝鮮に対して何もしないことに軍は非常に怒っていました。

4月5日に、トランプ大統領はスティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問を米国家安全保障会議(NSC)のメンバーから外しました。それと関係があるのでしょうか。

川上:まさにそれです。バノン氏が抜け、国家安全保障担当の大統領補佐官であるハーバート・マクマスター氏とジェームズ・マティス国防長官という二人の軍人が仕切る体制に変わりました。

 バノン氏が抜けたことで、軍人コンビに加えて、クシュナー氏の力が増しています。クシュナーを軍が取り込んだという情報もあります。先ほど、中東におけるイランの力を排除する可能性を指摘した背景には、同氏の存在があります。

 習近平政権は、このクシュナー氏にだいぶ接近しているようですね。同氏をして、北朝鮮に集中しそうな米軍のパワーを中東に振り向けさせることに成功したという見方もあります。

貿易赤字を解消するなら南シナ海から退く…

米国が北朝鮮に先制攻撃を仕掛ける可能性はどれくらいあるでしょう。

川上:私はかなり高いとみています。

 このまま放置すれば、米本土を射程に収める大陸間弾道弾(ICBM)を北朝鮮が完成させるのは時間の問題です。そうなってからでは遅い。今なら、その目的を挫くことができると考えているのです。

そうすると、シリアと北朝鮮と同時に対峙することになりますね。

川上:トランプ大統領ならあり得るでしょう。

 それどころか、「米軍はこれを機に中国海軍まで叩きたいと考えている」と指摘する米国の専門家もいます。

中国と戦うのですか。

川上:そうです。北朝鮮の核と同様に、中国も航空母艦をはじめとする海軍力をどんどん強めています。こちらも取り返しのつかない規模に成長する前に、今のうちに叩きたいと考えているのです。

 私は米中のディールは北朝鮮の核にとどまらないと見ています。トランプ大統領は対中貿易赤字の解消と、南シナ海や東シナ海における安全保障との取引が進行中だと見ています。

安全保障と貿易を取引材料にするのですか?

 2月に行なわれた日米首脳会談について、いくつかのメディアは、「安全保障と経済をバーターにしない。つまり、米国が日本を守る代わりに、日本は対米貿易赤字を解消する、といったディールを行なわない」との言質をトランプ大統領から取ったので会談は成功と評価していました。

川上:私は異なる見方をしています。トランプ大統領が重視するのは、一にも二にも貿易赤字の解消です。そのおよそ半分を中国が占める。中国がトランプ政権の要求を受け入れて赤字解消に動くならば、米国が南シナ海への介入をやめることもあり得るでしょう。南シナ海の入り口を扼す台湾への肩入れもやめる。ステルス性能を持つ第5世代戦闘機F-35を台湾に売ることもないでしょう

 東シナ海も例外ではありません。米国は、尖閣諸島の防衛に関与しない。中国公船が今以上に多く、高頻度で押しかけるようになりかねません。

貿易赤字の解消と、南シナ海や東シナ海における安全保障の取引は、日本人の目から見ると、天秤が中国有利に大きく傾いているように見えます。

川上:そうかもしれません。しかし、トランプ大統領には釣り合っているように見えると思います。

南シナ海や東シナ海が中国の勢力圏に入れば、米国のシーレーンの安全を脅かすことにもなりませんか。

川上:米軍はそう見ていると思います。なので、トランプ大統領がこのようなディールをまとめる前に、中国海軍と一戦交えようと主張する勢力があります。

え、戦争によって事態の解決を図ろうというのですか。

川上:先ほどお話しした北朝鮮に対する先制攻撃と同じ考え方です。勝利する確率が高い今のうちに中国海軍の力を削いでおく。

どっちに転んでも日本には大きな影響がありそうです。

川上:はい。日本は米国が提供する拡大抑止への依存度を減らす道を考える時期に来ているのかもしれません。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/230078/040700082

 

トランプ大統領の「大芝居」に習主席は動じず

ニュースを斬る

安全保障の不一致、経済協力で穴埋めどこまで?
2017年4月10日(月)
鈴木 貴元
4月6、7日の米中首脳会談では、開催前からトランプ米大統領は貿易赤字問題や北朝鮮問題などを通じて、習近平主席に対して様々な「大芝居」を打ってきた。だが、習主席は大きな土産を持参することはなかった。その背景を、丸紅中国・経済調査チーム総監の鈴木貴元氏が解説する。

(「トランプウオッチ」でトランプ政権関連の情報を随時更新中)

トランプ政権は、習近平主席に対して様々な「大芝居」を打ってきたが、習主席は動じなかった (写真:AP/アフロ)
 米国東部時間4月6日午後8時半頃、フロリダのパーム・スプリングス「マール・ア・ラーゴ」でトランプ大統領主催のディナーが終わったとき、トランプ大統領は中国の習近平主席に、米国のトマホーク第一弾がシリアに着弾したことを告げた。

 発射命令がエアフォース・ワンで下されたのは、着弾から遡ること4時間半前の午後4時。機中、記者団には、米中首脳会談では北朝鮮情勢と巨額の対中貿易赤字への対応を迫ると述べていたが、その時、実はトランプ大統領はサプライズを抱えていたのだ。

 そして、1時間後の午後5時、トランプ大統領は笑顔と握手で、そして娘イバンカ氏の娘・息子による中国の民謡「茉莉花」の歌唱と「三字经(唐詩)」の朗読で習主席夫妻を迎えた。ディナー中に、「中国から全く何も得ていない」と不満を述べつつも、習主席とは「意気投合し、良好な友好関係を築いた」と語っていた。

習近平主席には「お土産」を持参するメリットなかった

 このような経過を経て、シリア攻撃の話を繰り出したわけであるから、トランプ大統領はかなりの芝居を打っていたように思える。4月2日のフィナンシャル・タイムズのインタビューで「中国が解決しなければ、我々がする」と、北朝鮮情勢について中国に圧力をかけていたこともあり、習近平主席としては、米国の武力行使への本気度とともに、ある種の戸惑いや不信感を感じたかもしれない。

 一方、トランプ政権は上層部もスタッフもまだ指名が終わっておらず、外交・通商政策の方針が依然として固まっていない、また、関税政策や為替操作国などの対中対抗策をはじめ、トランプ大統領が選挙時に掲げていた保護主義的・孤立主義的な政策は実現する可能性が低下しているため、習近平主席はそもそも大きなお土産を持ってくる必要も、中国の従来のスタンスを変更して米国にすり寄る態度をみせる必要もないと考えられていた。

 米中関係に関する中国内の論調は、以下のようなものだった。

(1)米国と中国の経済は補完関係にあり、対立は互い利益がない。米国の輸出において、大豆の56%、ボーイング機の26%、自動車の16%、半導体の15%が中国向けであり、北米自由貿易協定(NAFTA)以外の地域で最も拡大が速い国である。直接投資においても、両国で年間170億ドルもの投資が実施されている。よって、協力こそが米中関係の在り方である

(2)中国は、自由貿易体制を支持しており、米国こそが現在の体制を否定している。中国は改革開放路線を変えていない(米国からはサービス部門の開放と、知的財産侵害・サイバーセキュリティー問題の改善が求められているが)

(3)中国は一帯一路や二国間・多国間の自由貿易協定FTAを進めており、トランプ大統領に対する世界的な懸念に対して、中国は現在の自由貿易体制を支えている(実際、3月には環太平洋経済連携協定(TPP)参加国のオーストラリアやニュージーランドを李克強総理が訪問。ノーベル賞の問題で2014年以来、関係が悪化していたノルウェーとも関係を正常化している)

「米中対立」回避は大きな成果だが…

 中国外交部と米国ホワイトハウスによると、今回の会談の成果は目立ったものはない。しかし、(1)米中関係を改善させることや、パートナーとしての協力を進めること、(2)トランプ大統領が年内に中国を訪問することや、密接な関係を保持すること、(3)「外交安全対話、経済対話、法執行とサイバーセキュリティーの対話、社会と人文対話」の4つの対話を新しく設立すること、(4)投資協力協定(BIT)に向けた交渉を進めることや、両国間の貿易・投資を進めること、インフラ建設やエネルギー領域での協力を進めることなどで、方向性の一致を確認している。

 具体的な成果と言えないかもしれないが、オバマ政権からトランプ政権に代わるにあたって最も懸念されることであった、両国間の対話の枠組みの維持とその在り方が4つの対話の設立ということで確認された。さらに、その延長線として、トランプ大統領の年内中国訪問が今後の取り組みに上ったことは、北朝鮮の問題でも大きな懸念材料となり得た「米中対立」を避けることができたという意味で大きな成果であった。

 一方、現在の重大な国際問題(シリアへの攻撃)や地域の問題(北朝鮮、南シナ海と考えられる)では一致をみることができなかった。習近平主席は「敏感な問題は適切に処理されるべき」と述べている。

 米国のシリア攻撃については、中国は化学兵器の使用についてはっきりと反対の立場を表明しているが、ロシアのパートナーとなっていることが影響しているとみられる。また北朝鮮については、中国も石炭輸入停止など厳しい措置をとっているが、中国自身の安全保障に影響を及ぼす軍事行動による解決を受け入れることはないようだ。

 安全保障における不一致の大きさが拡大している中、経済協力がその穴をいつまで埋め合わせられるのか。現状、両国間の難しさは強まる方向にある。

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米中貿易戦争の激化は秋以降、日本も巻き添えか

ニュースを斬る

トランプ大統領と習主席、共に具体策先送りの「必然」
2017年4月10日(月)
細川 昌彦
米中首脳会談では共同声明も出されず、双方の発表内容にも違いがあった。トランプ大統領は国内政策での失点挽回、習主席は国内権力基盤の強化を狙い、具体策の先送りは「必然」。元経産省米州課長の細川昌彦氏(中部大学特任教授)は今秋以降、米中貿易戦争は激化し、日本も巻き込まれるリスクがあると分析する。

(「トランプウオッチ」でトランプ政権関連の情報を随時更新中)

トランプ米大統領の別荘で開催された米中首脳会談(写真:新華社/アフロ)
 共同声明も出されず、米中双方の発表内容の違いが今回の首脳会談の特徴を物語っている。

 中国側発表を見れば、今回は米中の協調を演出して、大国として米国と対等であることを誇示するのが目的であったことが露骨に表れている。今秋予定の5年に一度の共産党大会で、自らの権力基盤を強固なものとしたい習近平主席が、わざわざこのタイミングで訪米を仕掛けた意図はそこにある。

 成果は新しい対話の枠組みを合意したことぐらいで、具体的取引は先送りにして、米国の圧力をかわそうとしている。これは常套手段で、2月の日米首脳会談での経済対話の合意も影響しているようだ。

 また、米国に「相互尊重」を認めさせたことは、この概念が核心的利益の尊重を含みうるだけに、東シナ海、南シナ海問題での米国の圧力に弱腰ではなかったことを国内向けにアピールできるポイントだろう。

 他方、米国はどうであろうか。

 トランプ政権にとってオバマケアの見直しなど国内政策の失点を外交で挽回して稼ぐ、いいチャンスであった。協調が最優先目標の中国相手に、米国は決裂させても強硬姿勢が国内的には支持されるというのは、明らかに交渉ポジションが強い。

 問題は政権内部だ。幹部人事が進んでいない結果、体制が整わず、対中スタンスも定まらない。強硬派と穏健派の綱引きもあって、政権内の力学も流動的だ。結果的に具体策にまで詰められず、立ち入れない。

 具体策に立ち入らない中国、他方で立ち入れない米国。

 結果は具体的合意がなく、具体策は先送りになって当然だった。

貿易不均衡是正、中国は秋まで米国とは事を構えない

 その中で米国がこの強い交渉ポジションを活かして唯一、明確に得点したのが、貿易不均衡是正の100日計画の策定だ。中国側の発表には一切これが出てこないので、米国が中国にねじ込んだのは明らかだ。

 内容は、短期間に貿易不均衡を是正する具体的措置を求めるというものだ。中国としてみれば、今秋までは米国と事を構えず、なだめる作戦だろう。なだめる手法は1980年代の日本を参考にしている。当時米国から貿易不均衡是正の圧力を受けて日本が繰り出したのが、輸出自主規制、輸入拡大、現地生産の拡大の3点セットだった。

 米国としても今秋までの交渉ポジションの強いうちに、取れるものは取っておこうという算段だ。

 中国は経済のパイが大きいこと、そして国有企業もあって、経済活動を国家がコントロールすることはお手の物であることを考えると、当時の日本と比較にならないくらい、やりやすいだろう。ただし、国内的に、米国に譲歩したとみられない工夫も必要になってくる。

米中貿易戦争の激化に日本も巻き込まれかねない

 むしろ問題なのは、日本への影響だ。

 近々予定されている日米経済対話で、日本にも貿易不均衡是正の対策を要求してくる可能性が出てきた。かつて指摘したように、米国が「均衡のとれた経済関係」という、いわば結果主義を標榜していること自体が問題だが、中国はあっさりこれを認めてしまったことになる。

 日本の場合、対米貿易黒字はかつてのような規模ではないものの、中国のように国家が経済活動を直接的にコントロールできる国ではない。そして効果がないことは過去の経験が実証している。日本は難しい対応を迫られそうだ。

 また今秋の党大会を終えて以降、米中の貿易戦争が激化することが予想される。中国が対外的に強硬路線を採りやすく、米国は来年の中間選挙に向けてアピールできるものが欲しくて強硬に出る。しかし、米国は80年代のような一方的措置をちらつかせているものの、当時の日本が相手の時とはまるで事情が違うことは要注意だ。

 中国は安全保障で米国に依存しているわけでもなく、巨大な中国市場というレバレッジを持っている。米国への報復措置も航空機など様々有効な手立てを繰り出すことができる。

 あり得るシナリオとして、米国はアンチダンピングを頻繁に活用する事態になるのではないだろうか。

 いずれにしても、日本が中国の対米経済問題に巻き込まれるリスクが大きいだけに注意が必要だ。

 米国から見れば、中国と日本を同列に並べて攻めていく構図ではない。そのため、日本としては、米国と連携して中国が抱える問題に対処していく構図に持ち込めるかどうかが、来るべき日米経済対話での戦略のポイントとなる。

米中で食い違う北朝鮮問題の「時間軸」

 協調の演出と引き換えに中国が重い宿題を負わされた、もう一つの問題が北朝鮮問題だ。

 北朝鮮問題については、まず米中の間で時間軸が違うことがポイントだ。

 米国にとっては、北朝鮮による米国本土を射程に入れる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発が迫る中、これを阻止するのが当面の差し迫った最大目標だ。事態は緊迫しており、時間との勝負である。

 他方、中国にとっての北朝鮮問題は、できれば触りたくない問題で、今秋の共産党大会までは国内からの批判を恐れてなかなか思い切った手を打てない。この時期、人民解放軍、とりわけ東北部の陸軍に不満を持たせないことは、権力基盤の安定化の上で大事だ。

 来月予定の韓国大統領選も大きく影響する。反米、対北融和の大統領が選出される可能性もあるからだ。

 中国としては米国を揺さぶるうえでも、そういう事態をじっくり待ちたい。逆に米国はそうならないうちに中国を具体的行動に追い込んでいきたい。また、反米、対北融和の韓国大統領が誕生すれば、米国は北朝鮮への軍事行動の前提になる諜報活動を韓国に大きく依存していることから、影響が出てくる恐れもある。そういう綱引きが米中間で行われている。

 今回の米国によるシリア空爆および米国の単独行動も辞さずの姿勢は、中国に対する強烈な圧力になっているようだ。さらに米国は中国に対して波状攻撃で圧力をかけてこよう。

日本は「平和ボケ」の状況から一刻も早く抜け出すべき

 こうした米中の駆け引きの中で、日本はどうするべきか。

 日本としては短期的には、米国の言う「あらゆるオプション」への備えに怠りないようにすべきだろう。ミサイル防衛の強化に一刻の猶予も許されない。北朝鮮が日本射程の弾道ミサイルを100発近く保有しているという現実を直視して、平和ボケから脱するべきだ。

 中長期的には、朝鮮半島の将来像をどう描くかという、本質的な問題に米中は向き合うことになるだろう。仮に反米的な韓国大統領が誕生した場合、米中それぞれ扱いにくい子供を抱えて、朝鮮半島を統一して非核化、中立化する考えが出てきてもおかしくない。その時もっとも深刻な影響を受けるのが日本である。米中のグランドデザインが共有されたとき、想定外ということにならないようにしたいものだ。

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トランプ大統領が16分で112回使った裏ワザ

パフォーマンス心理学者、佐藤綾子の絶対聞かせるリーダーの話し方

トップらしい「語りのスタイル」が熱狂を生む
2017年4月10日(月)
佐藤 綾子
 2017年1月20日、ドナルド・トランプ大統領が行った就任演説には、聴衆を引きつけるアクションがいくつも盛り込まれていた。演説中、112回繰り返したある動作にはどんな効果があったのか。分析するのは、パフォーマンス心理学者の佐藤綾子氏。首相経験者を含む政財界のリーダーのスピーチコンサルタントを務めてきた。自己表現の専門家が語る、トランプ大統領に学ぶべき表現技法とは。
 2017年1月20日、3つのテレビ局から依頼を受けて、ドナルド・トランプ大統領の就任演説を分析した私は思わずうめきました。内容はさておき、聴衆を引きつけるのに効果的なアクションがいくつも盛り込まれていたからです。「これだけのテクニックを駆使されたら、見ているほうも聞き入ってしまうに違いない」と納得するほどです。

 成功するビジネスパーソンは、言葉の内容を強化する表現技術を備えています。


「表現されない実力は存在しないも同じ」と語る佐藤綾子氏
 私は38年間、パフォーマンス心理学者として、相手に伝わる自己表現の手段を研究してきました。首相経験者を含む53人の国会議員のほか、累計約4万人のビジネスリーダーやエグゼクティブのスピーチコンサルタントを務めてきました。

 どんなに素晴らしい実力を持っているビジネスパーソンだとしても、「表現されない実力は無いも同じ」です。特にトップリーダーには、自らのビジョンを分かりやすく語る「語りのスタイル」が欠かせません。

 この連載では、トランプ大統領や小池百合子都知事ら、今注目を集めるトップリーダーの語りのスタイルを分析し、一般のビジネスパーソンが明日から使えるノウハウを引き出したいと思います。

1〜2秒の勝負に勝つ

 パフォーマンス心理学には、「グリンプスバイト」という専門用語があります。グリンプスは「一瞥(いちべつ)」、バイトは「噛みつく」こと。つまり一瞬で相手の心をわしづかみにする身振りや手振りのことを指します。

 人は2秒で相手の表情を読み取り、集中すればわずか1秒で約1万1000個の視覚情報を読み取ることができます。その間、瞬時に相手が敵なのか味方なのか、またどんな人柄なのかを判断してしまいます。相手の言葉を論理的に理解するのはその後。ですから、話し手は、相手の視覚に効果的に働きかけ、好印象を残すことが大切です。

 では、トランプ大統領は、どんなグリンプスバイトを使っているか。就任演説の登場シーンから振り返りましょう。

 最初に目に付く特徴は歩き方。注目すべきは手足の動きです。ステージに登壇するまで、大股で歩き、両腕も大きく振っています。

 歩幅の大きさは、自信やエネルギーの強さを印象付けます。大股で歩くほど、堂々として頼りがいがある人に見えます。脚を大きく前に出すトランプ大統領の歩き方は、元気なイメージと若さをアピールし、70歳という年齢を感じさせません。

 登壇後の腕の動きも非常に大切です。顔の表情筋の動きと異なり、動きそのものが大きいので、30m先からでもよく見えるからです。

 この就任演説に限らず、トランプ大統領の腕の動きは特徴的です。専用機から降りるときにはよく、片手を大きく上げ、満面の笑みを浮かべます。このときもステージに上がるやいなや右手を高く上げて「こんにちは皆さん」と挨拶しました。その手の動きに、つい聞き手は視線を吸い寄せられるのです。

 大きな腕の動きは、実は、ヒトラーの登壇技術とそっくりです。

 「じらしのテクニック」を持つと言われるヒトラーは、登壇してもなかなか言葉を発しませんでした。代わりに会場に万遍なく視線を送りながら、手を挙げ続けました。そして、ひとたび話を始めると、オーケストラの指揮者のように両腕を相手のほうに差し伸べて、次に自分の側に巻き込んで引き取る形をとります。

 トランプ大統領も同じ。就任演説の映像を繰り返し見て私は驚きました。この腕の動作につられて彼に視線を向け、その言葉を聞くうちに、みるみるうちに聴衆が一体化するのが分かったからです。

 大きな歩幅と、独特の腕の動き。この2つに加え、指先の使い方にもグリンプスバイトがありました。

 就任演説の16分30秒の間で、トランプ大統領は、指であるサインを112回出しました。覚えている人もいるでしょう。右手の人差し指と親指で輪を作り、手のひらを広げるOKサインです。

言葉が頭に入っていくサインがある

 彼の場合、OKサインを出す回数は非常に多く、その数は1分間に10回近くにもなります。言葉を強調したいときに気分が高揚し、このお決まりのポーズが出ているようです。

 “We will bring back our jobs.”(私たちは仕事を取り戻す)など、“We will……”で始まるフレーズが多いのも特徴で、文頭の言葉に合わせながら、幾度も同じジェスチャーを続けました。

 また、「麻薬と犯罪がない国にするのだ」などと言うときには、「drug(麻薬)」「crime(犯罪)」と重要な単語を並べるたびにこのOKサインを出しました。手でリズムを取っているかのように出すサインには、その動きと同時に言葉が聞き手の頭に入っていく効果があります。

 OKサインという肯定的な意味を伝える動きを繰り返されると、聞く側は、つい相手のペースに巻き込まれ、その意見に対して知らず知らずのうちに肯定的になってしまうことが予想されます。


トランプ大統領は、就任演説の際、16分30秒の間に112回のOKサインを出した。佐藤氏が顔面動作符号化システムを使い、0.5秒単位で表情とリアクションを分析した(写真:Abaca USA/アフロ)
 この表現方法は、例えば、皆さんが、部下に大事なことを伝えるときにも応用できます。

 OKサインでなくても結構です。手のひらを相手に向け、人差し指を立てたサインでもいいでしょう。ポイントとなる言葉をリズムよく語りながら、そのテンポに合わせて自分なりの決めポーズを繰り返してください。聞く側の視線があなたに集まり、注意を払う様子が見てとれるでしょう。

持ち物も印象に残すツール

 身振り手振りだけではなく、服装や持ち物も相手の心をつかむ大切なツールです。パフォーマンス心理学では、モノも気持ちを表現するツールとして「オブジェクティクス」と言います。

 オバマ前大統領に比べ、政治理念が深みに欠けると誰もが何となく感じていたトランプ大統領。

 そこで彼は、自分の話が正統で、伝統的で、重みのあるものだと強調するため、宣誓式にあるモノをこれまでの大統領よりも多めに持参しました。何でしょうか。

 聖書です。登壇してすぐに聖書を2冊、スピーチテーブルに置き、その上に手を重ねました。2冊のうち、上の1冊は黒い聖書。リンカーン以来、歴代の大統領に引き継がれているものです。トランプ大統領はその下にさらに赤い聖書を重ねました。これはトランプ家で受け継がれてきた聖書でした。

 過激な発言が目立っていたトランプ大統領が、2冊も聖書を持って登壇することで、その信仰深さを念入りにアピールしたのです。

 さて、では日本人のリーダーは、どんな「オブジェクティクス」を使えば、自分の正当性が伝わりやすいでしょうか。皆さん、考えてみてください。

(構成:福島哉香、編集:日経トップリーダー)

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このコラムについて

パフォーマンス心理学者、佐藤綾子の絶対聞かせるリーダーの話し方
ニューヨーク大学大学院でパフォーマンス心理学を学んだ、佐藤綾子氏。自己表現研究の第一人者として、首相経験者などの国会議員も含めて累計4万人のビジネスリーダーやエグゼクティブのスピーチコンサルタントを務め、信頼を集めている。このコラムでは、話題のトップリーダーに着目しその表現力を分析、学ぶべきポイントを探る。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16nv/040500014/040500001/?ST=print
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/881.html

[経世済民120] 「国境調整税」はグローバル時代の税制革命 ドル110円付近で膠着、年内120円 無一文から大富豪になった日本人成功の秘訣
「国境調整税」はグローバル時代の税制革命
アメリカは「タックスヘイブン」になるか
2017.4.7(金) 池田 信夫
トランプ政権発足2か月、障害相次ぎ公約達成に遅れ
メキシコとの国境に壁を築く計画の大統領令に署名するトランプ氏(2017年1月25日撮影)。(c)AFP/NICHOLAS KAMM〔AFPBB News〕
 アメリカの共和党が提案した「国境調整税」が話題を呼んでいる。トランプ大統領の「メキシコに35%の関税をかける」といった保護主義と混同されがちだが、これは彼の当選する前の昨年夏に共和党主流派が出した、包括的な税制改革案である。その狙いは貿易赤字を減らすことではなく、法人税をなくすことだ。

 この提案に対して、アメリカの小売り業者は「輸入品が大幅に値上がりする」と反対運動を展開しているため、実現するかどうかは不透明だが、この改革案はきわめて合理的である。

 その目的は輸出を増やすことではなく、グローバル資本主義の流れを変えることで、実現したら、そのインパクトは革命的といってもよい。

法人税を廃止して課税をキャッシュフローに一元化

 国境調整税という名前は誤解を招くが、正式名称は「目的地キャッシュフロー税」(Destination-Based Cash Flow Tax)という。難しそうだが、その中身はシンプルだ。具体的には、次の3つがポイントである。

1. 利益に課税する法人税を廃止し、キャッシュフローに20%課税する

2.商品が消費された場所で課税し、海外の売り上げには課税しない

3.輸入品にも同じ税率をかけ、輸出品にかけた税は輸出のとき払い戻す

 この税金の本質は(国内も海外も同じく)会計上の利益ではなくキャッシュフローに課税する点にあるので、この記事では「キャッシュフロー税」と呼ぶ。今の法人税は複雑で抜け穴が多い。日本の法人の7割が赤字で、税金を払っていない原因は、法人税が帳簿上の利益に課税されるからだ。

 会計上の利益は、償却の期間を変えると大きく変わる。特にややこしいのは減価償却である。租税特別措置も償却期間の変更で行われることが多いので、税務当局の裁量が大きい。

 共和党の改革案では利益に課税する制度をやめ、正味のキャッシュフローに20%課税する。売り上げから仕入れや人件費などの経費を差し引いて課税するが、減価償却も金利も経費として認めない。租税特別措置もほとんどなくなり、税制は劇的に簡素化される。

消費した国で課税する「国境調整」

 キャッシュフロー税の第2の特徴は、現金を払った場所で課税されるということだ。これが「目的地ベース」(仕向先ベース)と呼ばれる所以だが、これはキャッシュフローに課税することから必然的に出てくる。その最も簡単な例が消費税である。

 東京で給料をもらっても、大阪の店で商品を買ったら、消費税は大阪で払う。大阪の業者が商品を北海道から仕入れていたら、その経費は売り上げから差し引かれる。北海道のメーカーは大阪に出荷した段階で消費税を課税される。

 このような多段階課税は、EUで「付加価値税(VAT)」として行われており、共和党案はEU域内で行われている調整を国際的にやるだけだ。日本の消費税も、考え方としては同じである。VATと同じくキャッシュフローが発生した国で課税し、輸出する場合には国内で課税した税を払い戻す。

 ここで第3の問題が出てくる。大阪の小売店が、北海道ではなくアメリカから商品を輸入したらどうなるだろうか? この小売店は日本の消費税を払うが、仕入れ値はアメリカの州ごとの消費税などが課せられた分、高くなる。他方、日本からアメリカに輸出される商品は消費税が還付されるので8%安くなる。これを同じ条件にするには、アメリカも輸出のとき税金を還付すればいい。これが国境調整である。

 問題は、このときアメリカの輸入品の価格が上がることだ。キャッシュフロー税では輸入品に20%課税するので、計算上は、アメリカが100ドルで輸入した商品は120ドルになり、アメリカ国内で120ドルで売っている商品を日本に輸出するときは100ドルになる。この結果、アメリカの輸出品が安くなり、貿易赤字が減るだろう。

 しかし国境調整で企業の国際競争力は変わらないので、元の貿易収支に戻るまでドルが上がり、貿易赤字は元のレベルで安定する。為替で調整できない分は、インフレが起こって調整される。このルールで世界が統一されれば、すべて生産地で課税されたときと同じなので、理論的には貿易収支に中立だ。

グローバル資本主義を変える税制改革

 法人税には歪みが大きい。企業は利益に課税されたあと、それを配当すると株主には所得税がかかるので、法人税は法人所得と個人所得への二重課税である。おまけに支払い利息を経費として認める一方、配当には所得税が課税されるため、企業は株式より負債で資金を調達するバイアスをもつ。それをキャッシュフローに統一すると、金利と配当は同じ扱いになる。

 アメリカの法人税率は35%と高いため、資本の海外逃避が起こりやすい。20%のキャッシュフロー税の税収は今とほぼ同じだが、法人税のバイアスを是正できる。グローバル時代には生産地で課税することは難しいので、どこで生産しようと消費した国で課税することが合理的だ。

「利益は意見だが、キャッシュは現実である」という。利益は帳簿を操作すれば大きくも小さくもなるが、資金繰りが回らなくなったら会社はつぶれる。キャッシュフロー税の最大の狙いは、ごまかしやすい法人税を透明な現金ベースの税制に切り替えることだ。

 ただし国境調整で輸入品に課税するので、過渡的には値上がりする。これに対して輸入品の多いウォルマートなどの小売り業者は強く反対し、ファーストリテイリングの柳井正会長は「国境税が実現したらアメリカから撤退する」という。しかし国境調整税が一律に課税されれば、ユニクロのアメリカ法人が衣類を輸入する価格は一時的に上がるが、最終的には為替レートで調整されるはずだ。

 最大の効果は、法人税率の違いによる資本逃避がなくなることだ。アメリカの法人税率がゼロになったら、アイルランドやケイマン諸島などに現地法人を置いて法人税を逃れている多国籍企業がアメリカに帰ってくるだけでなく、世界中からアメリカに投資が集中するだろう。

 これはアメリカをタックスヘイブンにしようという大胆な改革である。トランプ大統領は今のところキャッシュフロー税には否定的だが、これは経済活性化の役に立つ。先進国では避けられないと思われていた製造業の海外移転が、逆転する可能性もある。

 この改革案には、マーティン・フェルドシュタインのような保守派の経済学者だけでなく、リベラル派のポール・クルーグマンも賛成している。アメリカがこういう税制改革をやったら、日本もやらざるをえない。キャッシュフロー税は、グローバル資本主義を大きく変える可能性がある。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49671


 
2017年4月10日 田中泰輔
ドル円は110円付近で膠着 年内120円目指す下地不変
拡大する
http://diamond.jp/mwimgs/9/6/-/img_96ccc6f4e354cfbb7fc8a243f0d1105d129988.jpg

 ドル円相場は、予想より早まった3月米利上げ後も、110円近くへ重くだれている。利上げ前に115円台に上昇したが、膨らんだ買い持ちポジションが売り戻された。
 この「織り込み済み」現象に加え、トランプ米大統領がオバマケア改革法案を議会との調整難航で取り下げざるを得なくなったことが追い打ちをかけた。大統領の他の政策の実現性への疑念が再燃し、ポジション整理に弾みがついた。
 相場の短期変動は、投機的ポジションにイベントやニュースがどう絡むかで決まる部分が大きい。この観点からは、ドル円相場は当面もみ合いを抜けられないかもしれない。ドル円上昇の鍵は、米国の景気堅調と金利上昇、そしてその米景気を強化するための財政政策である。4月中はこの全てがドル円にとって強い買い材料として認知されにくそうだ。
 まず、米経済指標が伸び悩む恐れがある。米国では財政政策期待で景況感は良くなったが、実際に政策は発動されておらず、実体指標の伸びはいまひとつ。そこに第1四半期の天候要因の悪影響が重なると思われる。米利上げは、次は6月と見込まれ、少なくとも4月中はドル円の強気材料として浮上しないだろう。トランプ政策は、議会調整を経て、よりシンプル化し、スケールダウンするとの見方が主流になりつつある。
 さらに4月は、米財務省為替報告、日米経済対話を控え、ドル円強気派も買い持ちを積み上げにくい。4〜5月の仏大統領選挙も相場を手控える一因になり得る。極右政権誕生の可能性は小さいとみるが、フランスのEU(欧州連合)離脱リスクが浮上すれば、ユーロ不参加の英国の離脱のケース以上に、市場で資産配分見直しやヘッジの資金フローが大規模に発生しかねない。
 もっとも中期では、米国について前向きな見方を変えていない。米政権の減税案のうち、中間層優遇措置と法人税改革は、オバマケア見直しより戦術的に議会で超党派の同意を得やすい面がある。部分的でも実現のめどが立てば、経済成長が加速する下地はある。その場合、FOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーは粛々と利上げを進めよう。利上げが彼らの想定(上図)通り進むなら、ドル円は120円台に向かおう。
 米国が日本の対米経常黒字を問題視し、円高・ドル安を口先介入で促すとの危惧も聞かれる。しかしドル高を招く米景気の強さは、経常赤字の循環的拡大をもたらす(下図)。トランプ政策が米成長を高める場合、日本や円に何を言おうと、彼ら自身の政策が米経常赤字の拡大とドル高(円安)を招こう。ドル円の強気・弱気の程度を決める鍵として、米政策決定過程を最大限注視したい。
(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー 田中泰輔)

http://diamond.jp/articles/-/124196

 


【第1回】 2017年4月10日 小西史彦
「無一文」から「大富豪」になった人物が語る成功の秘訣は「誰にでもできること」だった
NHKやテレビ東京、日経産業新聞などで話題の「マレーシア大富豪」をご存じだろうか? お名前は小西史彦さん。24歳のときに、無一文で日本を飛び出し、一代で、上場企業を含む約50社の一大企業グループを築き上げた人物。マレーシア国王から民間人として最高位の称号「タンスリ」を授けられた、国民的VIPである。このたび、小西さんがこれまでの人生で培ってきた「最強の人生訓」をまとめた書籍『マレーシア大富豪の教え』が刊行された。本連載では、「お金」「仕事」「信頼」「交渉」「人脈」「幸運」など、100%実話に基づく「最強の人生訓」の一部をご紹介する。
マレーシア大富豪・小西史彦氏のご自宅
マレーシア大富豪との出会い 
 車窓をオレンジ色の外灯(がいとう)が次々と流れていった。
 東京から南へ約5500km。クアラルンプール国際空港を経由して約8時間のフライトを終え、マレーシア北部に位置するペナン国際空港に着いたのは日没後だった。暗闇に包まれているため、「東洋の真珠」と呼ばれるペナン島の美しさはわからない。静かな車内の後部座席から見えるのは、外灯に照らされた路面だけ。ゆるやかに蛇行(だこう)するオレンジ色に染まったハイウェイを、車は滑るように走り続けた。
「タンスリのお宅まで、あと20分くらいです」
 マレー人の運転手が、おだやかな口調で教えてくれた。「タンスリ・コニシ」。これから出会う人物は、マレーシアでそう呼ばれている。「タンスリ」とは、マレーシア国王から与えられる民間人として最高位の名誉称号。いわば貴族だ。想像もつかない世界を生きる人物と、間もなく対面するのか……。そう思うと、緊張が高まった。
 きっかけは3ヶ月前の東京――。
「本物に会いたくないかね?」
 この一言がすべての始まりだった。声の主は、日本人ならば誰もが知る一流企業の会長。その企業の「中
興の祖」として不動の地位を確立した会長への、数ヶ月に及ぶロング・インタビューが終わろうとしていたときだった。
 その会長は、敗戦後の焼野原で露天商から身を起こし、現代に至るまで過酷なビジネスの第一線を生き抜いてきた――あるマッキンゼー出身の経営者が「おそるべき人物」と評する――本物中の本物。その人物が「本物」と呼ぶとは、いったいどのような人物なのか? 興味をそそられないはずがなかった。それを察した会長は、数枚の文書をテーブルに置くと、こう言った。
「これに、彼の経歴をまとめてある。裸一貫で海外に飛び出して、ここまで成功した日本人を僕は知らない。興味があったら、連絡を寄越しなさい。紹介するよ」
 その場を辞すと、喫茶店に直行した。
 そして、コーヒーを注文すると、すぐに文書を取り出して目を通し始めた。そこに書かれていたのは、驚くべき経歴だった。
上場企業を含む約50社を築き上げ、「貴族」となった
 本名は小西史彦。
 1944年石川県生まれ。薬問屋を営む家の長男として生まれた生粋(きっすい)の日本人だ。東京薬科大学で薬剤師の資格を取り、教授の紹介で大手企業の内定を得るが辞退。実家を継がないことも父親に告げた。そして、薬局のアルバイトで生計を立てながら、日米会話学院で英会話を学び始める。海外雄飛(かいがいゆうひ)の夢を実現するためだった。
 転機が訪れたのは2年目。1967年に、日本政府が明治100年を記念して企画した「青年の船」に応募。英語力を武器に選考を勝ち抜き、東南アジア各国を歴訪するチャンスを得る。そこで、魅了されたのがマレーシアだった。
 1957年にイギリスから独立したばかりの若い国。「青年の船」で接した政府高官も若く、「自分たちの国をつくり上げる」という清新(せいしん)な志に満ちていたという。太陽が燦々(さんさん)と降り注ぐ美しい国土にも魅せられて、翌年には国立マラヤ大学に留学。1年間をマレーシアで過ごすなかで、この地で生きていこうと心が固まる。
 翌年、本格的に移住。結婚したばかりの妻とふたり、ほぼ無一文での船出だった。
 ところが、いきなり座礁する。ある日本企業がマレーシア連邦に設立した合弁会社の社員として働くはずだったが、この話がご破算(はさん)になってしまう。わずか2ヶ月で解雇。助け舟を出してくれたのは、合弁会社の社長だった。知り合いの華僑が経営する、シンガポールに拠点を置く商社への就職をあっせんしてくれたのだ。そこで任されたのが日本製の染料の輸入販売。こうして、小西氏は営業マンとしてのキャリアをスタートさせる。
 365日ほぼ休みなく、マレーシア全土の繊維工場に営業をかける毎日。車にサンプルを積んで、月に5000kmを移動するハードワークだったが、その努力が実り、取り扱い量は増加していった。シェアを奪われた数名の欧米人営業マンにつるし上げられたこともあったが、歯を食いしばって地を這うような営業を継続。揺るぎのない営業基盤を築き上げるに至る。
 ところが、またもトラブルに見舞われる。現地の商慣習としてやむなく約束した取引先へのリベートを、社長が横領。約束を反故(ほご)にされた取引先に突き上げられる事態に陥る。進退きわまった小西氏は、帰国を覚悟せざるを得ない状況に追い込まれる。
 しかし、禍福(かふく)はあざなえる縄のごとし。「君がいなくなると困る」と、日本メーカーや取引先の華僑たちが小西氏の独立を支援。かねて住みたいと願っていたペナン島に商社「テクスケム・トレーディング」を設立。出資者のひとりである華僑の事務所の一角を間借りして、たったひとりでの独立を果たす。1973年9月、29歳のときだった。
 それから約45年――。
 たったひとりで始めたテクスケムは、幾多(いくた)の難局を乗り越えて、製造業や商社、飲食業など約50社からなる一大企業グループに成長した。1993年にマレーシア証券取引所に上場し、マレーシアのほかミャンマー、タイ、ベトナムなど7ヶ国で事業を展開。従業員数約8000人、売上高300億円を超える、マレーシアの国民的企業として高い知名度を誇っている。
 経済的な成功をおさめただけではない。日本から多くの投資を呼び込んだほか、大きな雇用を生み出すなど、マレーシアに多大な貢献をしたことが評価され、2007年には「タンスリ」の称号を授けられる。何の後ろ盾もなくたったひとりでマレーシアに渡り、辛酸をなめた男が、マレーシア国民の敬意を集めるVIPにまで登りつめたのだ。
 こんな日本人がいるのか……。
 それが、率直な感想だった。海外で働く日本人は100万人以上いるというが、孤立無援(こりつむえん)、徒手空拳(としゅくうけん)でここまで成功した日本人がいるだろうか? いや、日本人だけではない。世界中で、異国の地でこのような成功をおさめた人物が何人いるだろう? そう思うと、聞きたいことが山のようにあふれ出した。「どんな信条をもっているのか?」「どうやって多くの信頼を勝ち得たのか?」「成功の秘訣は何か?」「数々の苦難をどうやって乗り越えたのか?」「どんな人生観をもっているのか?」……。
 すぐに、会長に連絡を入れた。
「小西さんの経歴を拝読しました。ぜひ、紹介していただけませんでしょうか?」
「いいでしょう。彼に頼んでおくよ」
 こうして、小西氏にコンタクトするチャンスを手にしたのだ。
圧倒的な大豪邸
 気づくと、車はハイウェイを降り、市街地を走っていた。
 ジョージタウンと呼ばれる一角だ。イギリス植民地時代に建てられた洋館が立ち並ぶ美しい街並みは、世界文化遺産に認定されている。この一帯はビジネス街として現在も機能しており、小西氏の現在のオフィスもここに置かれている。
 市街地を抜けると、緩勾配の坂道を登り始めた。住宅街に入ったようだ。
「もうすぐですよ」
 ミラー越しに、運転手が微笑みかけた。しばらくすると守衛がいるゲートで停車した。運転手が守衛に一声かけると、ゲートが上がった。聞くと、ペナン島随一の高級住宅街の入り口だという。セキュリティのためにゲートが設けられているのだ。たしかに、車窓からうかがう風景は一変。道路の両脇には整然と街路樹が植えられ、その間を車はゆっくりと進んだ。外灯に照らされて浮かび上がる広大な敷地の屋敷を、いくつも通り過ぎて行った。
「到着しました」
 運転手はそう言うと、威厳のある門扉の前でスピードを落とした。正門の詰所にいる守衛に合図を送ると、門扉がゆっくりと開き始めた。運転手はハンドルを切りながら、門をゆっくりと通過する。そして、敷地の全貌を眼前にすると気圧されるような感覚を覚えた。

 どのくらいの広さだろう? サッカー・フィールド2面分は軽く超えるだろう。門扉を過ぎると、両側は広大な庭園。その真ん中をまっすぐ100mほどの石畳の路面が延びている。その先に、フランスの城のような大豪邸が、外灯のおだやかな光に照らし出されていた。車はゆっくりと進み、明るく照らされた玄関前に横付けにされた。
 車を降りて礼を伝えると、運転手は会釈を返して車を発進させた。あたりは物音ひとつしない。周りを見渡すと、手入れの行き届いた植木のなかに、見事な彫刻がライトに照らされていた。5段ほどの階段を上り呼び鈴を鳴らすと、ほどなくドアが開いてメイドとおぼしき女性が現れた。名前を告げると、笑顔で招き入れてくれた。
 2階まで吹き抜けになった広い玄関に入ると、左手にホールのような空間が見えた。その部屋の壁には巨大な絵画がかけられている。ボッティチェッリの名画「春(プリマヴェーラ)」だ。中世イタリアを思わせる白亜の柱も目に入った。
「こちらです」
 玄関から右手に延びる廊下を案内された。その廊下にも数枚の絵画が飾られている。左に曲がり、さらに進んだ突き当りに扉があった。女性が扉をコツコツ叩くと、中から張りのある男性の声がした。小西氏だ。女性は扉を開けると、中に入るように促した。
 全面ガラス張りの6角形の部屋だった。窓の外には樹木が植えられ、その向こうには丘陵が広がっているようだった。
「失礼します」
 一礼して部屋の中に一歩踏み出すと、ちょうど小西氏は椅子から立ち上がろうとしているところだった。とても70歳を過ぎているとは思えない、がっしりと引き締まった体躯。立ち上がると、こちらの目をまっすぐに見つめながら声をかけてきた。
「遠いところを、よく来てくれましたね。疲れたでしょう? どうぞ、腰をかけなさい」
 整髪料をつけて、綺麗に整えられた頭髪。鋭い眼光。張り出した顎のラインは、意志の強さを表しているようだった。大きな存在感を前に、思わずひるみそうになる。それを察知したのか、小西氏は微笑みながらこう言った。
「楽にしなさい。僕はごくごく平凡な人間ですから」
 峻厳に思われた顔をほころばせると、相手をホッとさせるような人懐こい表情に一変。一気に心をつかまれそうになる。
「とんでもない。ここまでの成功をおさめられたのですから……」
 そう言葉を返すと、目を伏せながらこう言った。
「いや、ほんとうにそうなんです。常々、平均的な日本人だと思ってきました。だから、すごい話を期待されても困りますよ。ただ、私は、普通の人がしないような経験を無数にしてきました。そのなかで学んだこともたくさんあります。それが、若い人たちのお役に立つとしたら嬉しいことです」
小西史彦(こにし・ふみひこ) 1944年生まれ。1966年東京薬科大学卒業。日米会話学院で英会話を学ぶ。1968年、明治百年を記念する国家事業である「青年の船」に乗りアジア各国を回り、マレーシアへの移住を決意。1年間、マラヤ大学交換留学を経て、華僑が経営するシンガポールの商社に就職。73年、マレーシアのペナン島で、たったひとりで商社を起業(現テクスケム・リソーセズ)。その後、さまざまな事業を成功に導き、93年にはマレーシア証券取引所に上場。製造業やサービス業約45社を傘下に置く一大企業グループに育て上げ、アジア有数の大富豪となる。2007年、マレーシアの経済発展に貢献したとして同国国王から、民間人では最高位の貴族の称号「タンスリ」を授与。現在は、テクスケム・リソーセズ会長。既存事業の経営はすべて社著兼CEOに任せ、自身は新規事業の立ち上げに采配を振るっている。著書に『マレーシア大富豪の教え』(ダイヤモンド社)。
大富豪が語る「成功の秘訣」は、「誰にでもできること」ばかりだった
 小西氏から与えられたのは5日間。
 仕事の時間以外はすべて取材に充ててくれた。4月6日に発売された新刊『マレーシア大富豪の教え』は、このとき小西氏が語ったことを編集してまとめたものだ。
 私たちビジネスパーソンは、そのほとんどが「持たざる者」としてキャリアをスタートさせる。そこから、どうやって成功をつかみ取っていくのか? どうやって充実した人生を切り拓いていくのか? 小西氏は、そんな切実な思いにヒントを与えてくれる、25の教訓を語ってくれた。
【選択】成功したければ、「誰もいない場所」を選びなさい。
【未来】「今」に集中すれば「未来」は拓かれる。
【リスク】「リスク」とは避けるものではなく、自ら取りに行くものである。
【非凡】「才能」があるから非凡なのではなく、「熱中」するから非凡に至る。
【お金】「お金」を貯める者は貧しくなる。
【自信】「自信」をもつより、「不安」を味方につけなさい。
【謙虚】人生は「上」からではなく、「下」から始めなさい。
 など、若くして異国にわたり、徒手空拳でビジネスを始め、一代で大富豪になった小西氏以外には語りえない「最強の人生訓」だ。重要なのは、そのどれもが「誰でもできること」だったこと。「誰でもできること」を徹底することで、必ず成功をつかみ、充実した人生を切り拓くことができるということだ。 関係者への影響を考え、実名の表記を控えた箇所はあるが、すべて実話で構成されている。本物の大富豪が、その成功の秘訣を明かした稀有な内容を、連載第2回以降、ご紹介していく。

http://diamond.jp/articles/-/123881


http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/809.html

[戦争b20] 米国務長官、ロシアに強硬姿勢で対応へ−シリア化学兵器巡り 北朝鮮の体制転換目指してない  ならず者政権は今や核保有政権
米国務長官、ロシアに強硬姿勢で対応へ−シリア化学兵器巡り
Todd Shields、Ros Krasny
2017年4月10日 10:00 JST
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ティラーソン長官はイタリアでG7外相会合後、モスクワ入りの予定
米国は7日にアサド政権の基地をミサイル攻撃
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ティラーソン米国務長官は今週予定するモスクワ訪問で、シリアの化学兵器を巡りロシアに対して強い立場で臨む意向だ。国際的に禁止される化学兵器を用いたとして、トランプ政権は7日、シリアのアサド政権の軍事基地をミサイル攻撃。さらに次の出方を見守っている。
  同国務長官は9日、ABCの番組「ジス・ウィーク」で、ロシアは「化学兵器削減の保証人となることに合意しているのに、それが実現できていないのは私には不可解だ」と発言した。
  ティラーソン国務長官はイタリアのルッカで10日始まる先進7カ国(G7)外相会合に出席後、モスクワでラブロフ外相と会談の予定。シリアの化学兵器については「討議内容の一部になる」として、米国は「既にかなり強い姿勢を打ち出していると思う」と話した。
  シリアに対する米国の軍事スタンスについてティラーソン国務長官は、ミサイル攻撃以外に変更はないとし、アサド政権の行方を決めるのはシリア国民だと言明。政権転覆には「最終的に」米国や国際社会からの軍事行動を含む圧力強化が必要になるかもしれないとした上で、リビアが体制変更後に「大混乱」している例を挙げ、そうした行動は望ましい選択肢とは言えないとも付け加えた。
  同国務長官は米国の最優先課題は過激派組織「イスラム国」(IS)撲滅だとし、「ISの脅威が薄れるか消え去れば、シリア情勢の安定化に直接注意を向けることができるだろう」と語った。
原題:Tillerson Says U.S. to Press Russia Over Syrian Chemical Weapons(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO61NA6JIJW101


 

米国は北朝鮮の体制転換目指していない
ティラーソン国務長官
Heesu Lee、David Tweed
2017年4月10日 07:06 JST 更新日時 2017年4月10日 07:20 JST
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ティラーソン米国務長官は9日、米国には北朝鮮の「レジーム・チェンジ(体制転換)」に関心がないと述べた。北朝鮮の核兵器プログラムを巡る緊張が高まる中で、原子力空母カール・ビンソンをはじめとする米海軍の空母打撃群が朝鮮半島に向かっている。
  米海軍のウェブサイトに掲載された声明によると、シンガポールから北上中の同打撃群はカール・ビンソンや誘導ミサイル駆逐艦、誘導ミサイル装備巡洋艦などで構成される。当初はオーストラリアに向かう予定だった。
米原子力空母カール・ビンソン
米原子力空母カール・ビンソン Photogrpaher: Aaron Tam/AFP via Getty Images
  米太平洋軍のデーブ・ベナム報道官は9日、「西太平洋で準備とプレゼンスを維持する慎重を期すための措置として、米太平洋軍はカール・ビンソンを中心とする打撃群に北上を命じた」と説明。「無謀さと無責任で不安定化を招くミサイル試射プログラムおよび核兵器能力を追求する北朝鮮が引き続きこの地域の最大の脅威だ」と述べた。
  マクマスター大統領補佐官( 国家安全保障問題担当)は「FOXニュース・サンデー」で、空母打撃群を朝鮮半島に向かわせたのは「慎重を期す」ための措置だと発言。「北朝鮮は挑発的な行為を繰り返している。このならず者政権は今や核保有政権だ」と語った。
  マクマスター氏はさらに、中国の習近平国家主席とトランプ大統領がフロリダ州での首脳会談で、朝鮮半島の非核化の必要性で一致したと指摘。トランプ大統領は「そうした脅威を取り除くための全ての選択肢の準備を整えるようわれわれに求めた」と述べた。
  ティラーソン国務長官はABCの番組「ジス・ウイーク」で、米国は朝鮮半島の非核化を望んでいるが、「北朝鮮の体制を転換させる目標はない」と述べた。ただ、6日の米国によるシリア攻撃の決断を北朝鮮は留意すべきかとの質問に対し、「いかなる国」も「国際的な規範や合意に違反し、義務を果たさず、他国への脅威となれば、ある時点で対応が取られることになろう」と答えた。
  一方、北朝鮮の外務省報道官は米国によるシリア攻撃を「絶対に許されない」行為だと非難。無謀な行動から自国を防衛する能力を強化すると述べた。国営の朝鮮中央通信(KCNA)が伝えた。
原題:U.S. Isn’t Planning North Korea ‘Regime Change,’ Tillerson Says(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-09/OO5W8S6KLVRZ01
http://www.asyura2.com/17/warb20/msg/107.html

[政治・選挙・NHK223] 専守防衛から「積極防衛」への転換を 被害を前提にする防衛戦略では立ち直れない  習主席、時間稼ぎ成功−北朝鮮対応が喫緊の
専守防衛から「積極防衛」への転換を
被害を前提にする防衛戦略では立ち直れない
2017.4.10(月) 森 清勇
トランプ大統領、対北で防衛力強化を明言 安倍首相と電話会談
米首都ワシントンで開かれた日米首脳会談で握手を交わす安倍晋三首相とドナルド・トランプ大統領(2017年2月10日撮影)〔AFPBB News〕
北朝鮮は核と大陸間弾道弾(ICBM)の開発を異常なピッチで進めている。米国の新政権による北朝鮮政策が固まらないうちに核搭載のICBMを確保し、米国の行動を抑止したい意図が見え見えである。

米国(本土ばかりでなく米国領の一部でも)を射程範囲に収める核兵器搭載ミサイルの数がわずかでも、米国の拡大抑止にブレーキをかけることができるとみているからであろう。その結果は日本などへの拡大抑止力の低下にもつながる。

米国の拡大核抑止力の低下は、日米・米韓同盟の信頼性を揺がせ、米国の同盟国である日米分断、米韓分断にも等しい状況をもたらしかねない。

その結果、日本の安全を著しく低下させ、「座して死を待つ」悪夢を見る状況が現出する。こうした悪夢をもたらす状況の激変から、日本では今まで封印されてきた「敵基地攻撃能力」問題がようやく語られるようになってきた。

自民党安全保障調査会は3月29日に国防部会との合同会議を開き、ミサイル防衛(MD)の強化に向けた緊急提言をまとめ、翌30日に安倍晋三首相に提出した。その中では米軍の最新鋭の迎撃システムである「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の導入や「敵基地攻撃能力」の保有に向けた検討を直ちに開始するよう求めている。

憲法の精神とは何か

日本は防衛の基本政策に「専守防衛」「軍事大国にならないこと」「非核三原則」「文民統制の確保」を掲げている。

「軍事大国にならないこと」は防衛費が概ねGDP(国内総生産)1%枠であること、「文民統制の確保」は予算査定やPKO五原則などで厳しすぎるほどに守られてきた。「非核三原則」は米国の拡大抑止に依存する点から問題があると批判されながらも、核に手を出さない意志表示として維持している。

「専守防衛」については、過去の経験から、たとえ自衛戦争にしても日本は国土を離れて防衛力を積極的に行使しない含意もあり、戦略守勢などの用語も国会論戦では使用されたが、最終的に専守防衛に落ち着いたと仄聞した。

専守防衛について防衛白書は「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢をいう」と説明している。

「憲法の精神」に則った「受動的な防衛戦略の姿勢」としているが、ここでいう「憲法の精神」とは「第9条」とそこから演繹される政治的軍事的な抑制を指しているのであろう。平和憲法とか不戦憲法と言われてきたゆえんも、第9条や第2章に起因している。

しかし、筆者の独断と偏見では、日本国憲法の精神は第9条にあるのではなく、「前文」にあるのではないだろうか。その結果、憲法の全条項は前文の具現化とみる。

このように解釈すると、国際環境が憲法前文の通りである場合は第9条が日本の決意を示すことになり、また、国際環境が前文のようでないならば、前文に示すようになってくれることを願って第9条を固守してきたと言えよう。

これが日本国憲法の枠組みであると解釈するならば、各条文はあくまでも前文の趣旨を実現するためのものとなり、単なる飾り文句ではないはずである。

そこで、改めて前文を読むと「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する」と述べ、究極的な理想社会の実現を願っている。

その実現に向けて、国際環境が「平和を愛する諸国民の公正と信義」で満たされる状況が到来するならば、日本はそれを「信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」のである。

あくまでも、日本は国際社会の条件つきで、第2章の「戦争の放棄」をしたのである。重大な決意であるので、第9条の冒頭では「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」と前文で述べた条件を再度、掲げたのである。

前文にはさらに、「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる」と、国際社会を構成する国家それぞれの責務にも言及している。

第1撃を許して国土と国民を守れるか

ところで、「相手の武力攻撃」の程度をどのくらいと考えていたのであろうか。明確に言及したものを見聞した記憶はないが、相手の攻撃後に「はじめて防衛力を行使」することからは、相手に先制攻撃を許すことが前提になっている。

その前提の下でも日本は健在であり、反撃のための防衛力も存在し続けることを意識している。

この実相は、相手の先制攻撃が核兵器を含む大量破壊兵器ではなく、在来砲や戦車などによる攻撃と見ている限りは正しいであろうから、「その後に防衛力を行使」することも可能である。

しかし相手はかつて目標国(の都市)を「血の海にする」と豪語したし、先刻の弾道ミサイルの4連続発射では「在日米軍基地」が仮想目標であると言明した。また、先に金正男殺害でVXを使用したように、該国は化学兵器や生物兵器と呼ばれる大量破壊兵器も保有していると推定されている。

このような兵器を使用して日本の主要都市や在日米軍基地が目標となれば被害は甚大であり、とても先制攻撃を許すなどと、間の抜けたことを言ってはおれないのではないだろうか。

大量破壊兵器の使用が国家の自滅につながることは重々承知しているであろうが、該国の行動は予測不能なことばかりであり、これまでの言動をみる限りわれわれの想定外にあるといわざるを得ない。

相手の攻撃の程度によっては、最悪のシナリオとして日本の一都市が壊滅することも考えなければならない。現装備の海自のイージス艦搭載「SM-3」や空自のペトリオット「PC-3」は、最大高度約300キロの弾道ミサイルが日本や米国に向かうのを迎撃するシステムである。

しかし、迎撃に失敗したり、発射されたミサイルが多数のために対応能力が飽和して撃墜漏れが生じないとも限らない。いや、相手は進んで飽和攻撃などの状況を作為してくるに違いない。

ましてや、現在開発が進んでいるとされる新型ミサイルは高度が1000キロ以上に打ち上げられる(ロフテッド軌道)もので、速度が最も遅くなる最高点での迎撃は射程不足で不可能である。このため、韓国は現在「高高度迎撃ミサイル(THAAD)」の配備を開始した。

専守防衛に代わる「積極防衛」の提案

このように考えると、被害を最小限に抑えるため、飽和攻撃を許さない「敵基地攻撃能力」の保有を併せて考える必要があるのではないだろうか。

ここで言う「敵基地」には、移動発射ミサイルではTEL(発射台付き車両)を含むものとする。また、可能なかぎり発射前の攻撃でなければ意味がない。こうなると、専守防衛の基本政策が揺らぎかねない。

そこで、基本政策の整合性とともに、日本の安全に万全を期す意味を込めて、専守防衛ではなく「積極防衛」に政策転換を図ってはいかがであろうか。

防衛白書(26年版)が解説するように、22年の防衛計画大綱で「動的防衛力」としていた抑止の概念を25年の大綱では「統合機動防衛力」に改めた。しかし、これは運用を主体とした抑止の考え方の変更でしかない。

専守防衛は政策であり、どこまでも相手の攻撃後に反撃行動をとることとしている。これでは、最初の被害を容認する前提に立ち、国土、国民の安全を保証することにはならない。

昭和31(1956)年に、憲法9条の下でも敵基地攻撃能力の保有は可能との国会答弁があったが放置されたままである。また、平成25年末の防衛計画大綱改定の際にも、敵基地攻撃能力の保有が議論になったとされるが、与党の一部から「専守防衛逸脱の恐れがある」との反対が出され、見送られたと仄聞した。

「敵基地攻撃」が憲法上は許されるとしつつも、一方で専守防衛政策による制約なり違和感なりが感得されるからにほかならない。

「(受動的)防衛」に力点を置くことに変わりはないが、寸分の国土も国民も犠牲にしない、また必要とあれば、敵基地攻撃もやぶさかでないという強い意志を込めた政策として、「専守」ばかりではないという意図を込めて「積極防衛」の概念を提案したい。

国際情勢の変化や環境の激化を考慮すると、もはや運用の統合化だけでは日本の対処は覚束ない。ことは日本の安全である。北朝鮮の国際社会に背を向けた行動からは、「専守防衛」では適切な対処が困難になっている。ここは「積極防衛」への政策の変更で対応すべきではないだろうか。

敵基地攻撃能力の問題

敵意ある兆候を発射前に察知したならば、発射後のMD(ミサイル防衛)対処より敵基地攻撃能力の効果的な運用の方が被害を減少できるなどの利点が大きいであろう。

ただ、隠蔽された発射基地や飽和攻撃と言われるような多数攻撃に対しては万全ではあり得ないであろうから、敵基地攻撃ですべてが終わるというものではない。あらゆる手段で対処する必要があり、その中には敵基地攻撃能力もあって然るべきであろうという考え方である。

自民党の提言や発表されているいくつかの論文などを見ると、いろいろな角度からの問題点も指摘されている。

先制攻撃との境目が曖昧、実効性に疑問、経費が嵩む、全面攻撃への危険性、発射機の補足困難などなどである。理由をあげればキリがないであろうが、もとより1つの対策で万全というものなどあり得ない。

どこまでも費用対効果で最適な組み合わせを見つけ出すことでしかない。リダンダンシー(冗長性)も必要であり、また、国民の側にも、日本が置かれた状況などを理解してもらう必要がある。

報道で見る米国の姿勢

いま米国ではトランプ政権が発足し、北朝鮮の脅威が当面の安全保障上の最大の危機として迫ってきたという認識とされる。そこで、米国は北朝鮮の後ろ盾となって暴走を許してきた中国にまずは責任をとるべく仕向けようとしているようだ。

それもこれも、過去20年間における北朝鮮に対する制裁で、中国が見てみぬふりどころか、抜け道を設けて支援さえしてきた節があるからである。

エイプリル・フールではないだろうが、平成29年4月1日付「産経新聞」のコラム「緯度経度」では古森義久氏が「半島有事の危機すぐそこに」で、米国では「予防攻撃」という軍事手段さえ頻繁に語られるようになったと書いている。

ティラーソン国務長官は軍事行動を含む「あらゆる選択肢」を考慮すると言明したし、マティス国防長官は、北朝鮮が国際社会の声を聴かずに核実験をやり、ミサイル発射を強行していることを「無謀だ」と批判し、「(核実験などは)阻止される必要がある」とも強調している。

米下院外交委員会は、北朝鮮が「外国のテロ組織を支援し続けている」「米国へのサイバー攻撃」「シリアの原子炉施設建設支援」などをしていることから、「(テロ支援国家)再指定の基準を満たしている」として、国務省に「テロ支援国家」の再指定を求める超党派の法案を可決した。

おわりに

ところで、日本はどうだろうか。弾道ミサイル4連発の時以降も、森友問題に多くの時間が浪費されてきた。自国の安全がとうの昔から脅かされてきたというのに、この無関心である。政治が国民を啓発しないで、どうすればいいだろうか。

該国は核・ミサイルばかりでなく、過日明らかになったVXに象徴されるように、以前から化学兵器や生物兵器にもかなりの執着をもっていることが報道されてきた。こうした大量破壊兵器のほかに、数百人の日本人が拉致されている可能性さえある。

こうした当面する問題が安保法案審議時に一言も語られることなく、すなわち日本の「危機」と意識することもなく過ごしてきた政治の罪は計り知れないほど大きい。石原流に言えば「不作為の罪」とでも言うべきであろうか。

政治の第1は、主権・領土・国民の保護である。日本人拉致はこの3つとも侵害された重大問題である。被害者家族に解決を丸投げしていい問題ではない。

この問題にも「専守防衛」が絡み、動けなかった。その点からも、「積極防衛」では、国家の3要素のどの1つを侵害されても「許さない」という意志を込めた対応が期待できるのではないだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49666

 

習主席、米中首脳会談で時間稼ぎに成功−北朝鮮への対応が喫緊の課題
Ting Shi
2017年4月10日 09:24 JST

フロリダの別荘敷地内を散策する米中首脳(7日) Bloomberg.
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両首脳とも成果を強調、党大会を秋に控えた習主席は現状維持で十分
今後、火種となり得るのは貿易や為替、台湾問題

トランプ米大統領は中国との首脳会談前には「非常に困難」な場になるとの見通しを示していたが、会談を終えて報道陣の前に姿を現すと、中国の習近平国家主席と「素晴らしい関係」を築けたと自賛した。
  習主席も7日、フロリダ州のトランプ大統領の別荘で18時間に及んだ会談を終えると、「お互いを良く分かり合い、ある種の信頼関係を構築し、当初の仕事上の関係と友情を結んだ」と語った。
フロリダの別荘敷地内を散策する米中首脳(7日)
フロリダの別荘敷地内を散策する米中首脳(7日) Bloomberg.
  共産党指導部の刷新が見込まれる党大会を秋に控え、習主席にとってはトランプ大統領から友好的な言葉を引き出しただけで成功と言える。選挙戦以来、トランプ大統領が中国批判を続けてきたことを考えれば、米中関係が当面安定した状況に見えることは成果として小さくない。
  しかし、依然として残る難題は、両国間の経済・安全保障上の問題が貿易戦争や軍事衝突に発展する前に、早急に共通の利害を見いだすことだ。特に米国がシリア攻撃に乗り出したことを考慮すれば、北朝鮮の核の脅威への対応が恐らく喫緊の課題だ。
  ハーバード大学アジアセンターのウィリアム・オーバーホルト上級研究員は、北朝鮮への対応について、「これは引き続き、米中関係にとって波乱を引き起こし得る大きな問題だ」と述べた上で、「米中首脳会談が現状維持で合意したことは明らかだ」と指摘した。
  今後、米中関係で火種となり得る問題は貿易、為替、鉄鋼、台湾問題。貿易では、100日以内に貿易不均衡への改善策を取りまとめることで両国は合意したとロス商務長官が明らかにした。またムニューチン財務長官は近く公表されるレポートで、為替操作国の認定に関する判断が取り上げられると述べた。
  米シカゴ大学のダリ・ヤン教授(中国・政治経済)は、中国側としては習主席がトランプ大統領の怒りをなだめるためにわざわざフロリダ州まで出向いたと受け取られるのではないかと恐れていたが、これは取り越し苦労だったようだと指摘。「習主席は満足して帰国したはずだ。両国は重要な交渉プロセスのスタートラインにちょうど立ったと言えるだろう」と説明した。
原題:Xi Buys Time With Trump as Tensions Loom Over North Korea Threat(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO5YCL6TTDSS01
http://www.asyura2.com/17/senkyo223/msg/804.html

[政治・選挙・NHK223] 中国人民解放軍の大改革に警戒せよ!東部戦区(東部戦域軍)の統合運用能力の向上に対処せよ 
中国人民解放軍の大改革に警戒せよ!東部戦区(東部戦域軍)の統合運用能力の向上に対処せよ
2017.4.7(金) 渡部 悦和

中国・北京の人民大会堂で握手する習近平国家主席(右)と米国のレックス・ティラーソン国務長官(2017年3月19日撮影)〔AFPBB News〕

習近平主席による人民解放軍の大改革

 習近平主席は、2017年の秋に予想される中国共産党第19回全国代表大会に向けて、権力基盤を強化しているが、大きな要素は人民解放軍を自らの完全な統制下に置くことである。
 習主席は、2015年12月31日、中国建国(1949年)以来、最大規模の人民解放軍の改革に着手した。この改革は、既存の組織を少しいじるだけの小さな改革ではなく、多岐にわたる根本的なものであり、しかも改革の目標年を2020年に設定するなど、彼の軍改革にかける執念を感じる内容になっている。
 この大改革が成功すれば、人民解放軍は精強な軍隊になり、自国の防衛のみならず、世界で作戦を実施する手強い存在になる。我が国にとっても大きな脅威となるので、改革の動向を継続的に分析していく必要がある。
 人民解放軍の改革開始から4月1日現在で1年3カ月が経過し、徐々に改革の実態が見えてきたので、本稿においては軍改革の概要を簡単に説明するとともに、日本および台湾に対する作戦を担当する最重要な東部戦区(東部戦域軍)の改革の現状について紹介したいと思う。

 結論的に言えば、人民解放軍改革は、多くの問題を抱えながらも徐々に「戦う軍隊」になりつつあると評価する。しかし、習近平が目標としている2020年までの改革の完成は無理であると断言できる。
 なぜなら、組織を再編成して新しい組織の形(ハード)はできたとしても、組織が効果的に機能を発揮するために実施しなければいけないこと(作戦構想の確立、作戦構想に基づく訓練の実施、その成果のフィードバックなど)は多く、とても2016年から2020年までの4年間で完成しないからだ。2020年以降も改革の継続が必要となろう。

 日本の防衛に大きな影響を及ぼす東部戦区(東部戦域軍)については、艦艇や戦闘機の性能は向上し、陸・海・空・ロケット軍による統合作戦能力も徐々に向上するであろう。

 実は、自衛隊には大きな部隊レベルにおける陸・海・空の統合部隊が存在しない。自衛隊よりも先に、中国の統合部隊が、戦区レベルで戦域軍として誕生した意味は大きい。東部戦区(東部戦域軍)に対峙する自衛隊や海上保安庁をはじめとする組織の対処能力の向上が急務である。


●人民解放軍改革の目的
 改革の最大の目的は、人民解放軍を「戦って、勝つ」軍隊にすることだ。習主席は、改革を公表した2015年の時点の評価として、「人民解放軍は戦えないし、戦っても勝てない軍隊だ」と考えていた。そして、戦って勝てる軍隊にするためにはどうしたらいいかを考えて出した結論が、以下の諸点である。
(1)統合運用などの米軍方式を努めて取り入れ、真に戦い勝利する現代軍にする。
 今回の軍改革の大きな特徴は60年以上続いてきた旧ソ連軍方式から米軍方式への転換である。なぜ、米軍方式なのか。世界一の軍隊である米軍の長所を吸収するためである。
 現代戦は、5個の作戦領域(陸・海・空・宇宙・サイバー空間)をすべて使い、各軍種(陸・海・空・海兵隊など)が密接に連携した統合作戦により遂行される。統合作戦能力を向上することは、結果的に人民解放軍の伝統であった陸軍優先の伝統を排除することにつながる。
 人民解放軍改革の試みは、中国版ゴールドウォーター・ニコルス(Goldwater-Nichols)だと形容されることがある。米国のゴールドウォーター・ニコルス法は、1986年に制定され、米軍の統合運用の根拠となった法律である。
 米軍は、1986年から30年以上かけて統合作戦能力の向上を図ってきたが、いまだに問題点が指摘されることがある。ましてや共産党の軍隊である人民解放軍が統合運用をマスターするためには米軍以上の年月が必要であろう。
 なぜなら、統合運用のためには柔軟性や創造性が不可欠なのだ。共産党の軍隊である人民解放軍に米軍の様な柔軟性や創造性があるとは思えない。
 しかし、後述する戦区(戦域軍)の創設により、戦域軍司令官がすべての軍種から提供される部隊を戦力化して統合運用する「仕かけ」はできた。今後、その「仕かけ」を使い、米軍の太平洋軍などと同等のレベルの統合作戦を実行するには特段の努力が必要である。
(2)人民解放軍内における陸軍優先主義を排除し、中央軍事委員会の影響力を強化する。結果として軍の腐敗を根絶する。
 参謀組織の変更*1により、陸軍が支配していた4総部(総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部)を改編し陸軍優先主義を排除するとともに、中央軍事委員会の影響力を強化し、結果的に習主席の権力基盤の強化にも直結する。
 4総部の中でも総参謀部(General Staff Department)は陸軍司令部も兼ねていたために、海軍司令部と空軍司令部の上位に位置し、陸軍が他の軍種を支配する形であった。それを解消したことは特筆すべきである。
 また、陸・海・空・ロケット軍の統合組織である戦区(戦域軍)の司令官のポストを、陸軍だけではなく他の軍種出身者にも開放することにより陸軍優先を排除する仕組みにした。実際に、南シナ海を担当する南部戦区(南部戦域軍)では、海軍の袁誉柏中将が司令官に就いている。
 陸軍優先主義の排除は、結果として陸軍を中心とした腐敗を根絶することになるし、統合作戦の実施においてもプラスである。
 しかし、最も腐敗した組織の1つである中国軍の改革は困難を極める。下の組織になればなるほど腐敗体質の改善は難しい。習主席は今回の軍改革の一環として軍のビジネスの大半を禁止した*2。甘い汁の源泉を失った陸軍がいかなる抵抗を示すかが注目される。
 「上に政策があれば下に対策がある」と言われるしたたかな中国社会において、習主席の改革がどこまで達成されるかは習主席が何時まで軍の最高指揮官でいられるかにかかっている。
(3)軍内の反習近平派に対する権力闘争に勝利し、自らの権力基盤をより確実にする。
 習主席は、自分の息のかかった軍人を要職に就けることにより、自らの権力基盤の強化を図っている。当然ながら抵抗も強い。特に、大きな影響力を削がれる陸軍を筆頭に既得権益を守りたいグループの根強い抵抗があると報じられている。
 習主席は、その抵抗に対して、反腐敗闘争をスローガンに譲らない姿勢を見せている。習主席の意に沿わない多くの将官が退官を余儀なくされている。
図1「軍改革後の人民解放軍の組織図」。出典:China’s Goldwater-Nichols? Assessing PLA Organizational Reforms
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●軍種レベルの変更
 人民解放軍は、2015年12月31日以前には、陸軍、海軍、空軍の3軍種と第2砲兵(2nd Artillery Corps)*3で編成されていた。しかし、今回の軍改革により、図1に示すように軍種レベルの変更がなされ、陸軍司令部、ロケット軍、戦略支援部隊*4が新設された。
 今回の改革において第2砲兵がロケット軍となり、図1が示す通り、陸・海・空軍と同列の軍種となった。習近平主席は、ロケット軍について、「中国の戦略抑止の中核であり、国防の礎である」と発言している。新設されたロケット軍は、すべて(地上発射、海上・海中発射、空中発射)の核および通常弾頭の戦略ミサイルを担当する。
 新たに新設された戦略支援部隊は要注目であり、現代戦に不可欠なサイバー戦、電子戦、宇宙戦、兵站を担当する部隊であるという見方が多い。
 戦略支援部隊は、第2砲兵と同様に独立した職種であり、陸・海・空軍・ロケット軍と同列の軍種ではなく、中央軍事委員会の直轄で戦区(戦域軍)を直接支援する部隊である。
 一部の専門家の解釈では、陸軍、海軍、空軍、ロケット軍、戦略支援部隊を総称して5大軍種としているが、戦略支援部隊は、陸軍、海軍、空軍、ロケット軍の4軍種とは違う位置づけであり、5大軍種という表現は適切ではない。
*1=渡部悦和、「米中戦争そのとき日本は」、講談社新書、P59〜P60
*2=Bringing an end to the People’s Liberation Army中国軍 Inc. , South China Morning Post, 14 April, 2016
*3=第2砲兵は、陸・海・空軍と同列の軍種ではなく、軍種の中の職種(例えば歩兵など)の扱いであった。
*4=Strategic Support Force

●7「軍区」から5「戦区」への変更
 習主席は、腐敗の温床である軍区制度の変更に関する発表を2016年2月1日に実施した。軍区は、かつて7個(瀋陽、北京、蘭州、成都、南京、広州、済南)存在していたが、7軍区を5個の戦区(東部、南部、西部、北部、中部)に改編することになった(図2参照)。
 今までの7軍区は、地理的な担当地域の意味合いが強かった。軍区司令官は、担当する軍区に所在する陸軍以外の海軍・空軍・第2砲兵に対する平時からの指揮統制の権限を持っていなかった。
 そのため、軍区司令官が平時において陸・海・空・第2砲兵の部隊を訓練すること、つまり統合訓練を実施する権限を持っていなかった。軍区司令官は、有事においては陸・海・空・第2砲兵の部隊を指揮する権限を持っていた。
 つまり、平時には統合訓練はできないが、有事には統合部隊を編成し指揮しなさいと言うことであった。平時に訓練する必要がないから、金もうけのための商売に精を出すことになる。
 特に軍区司令官などの階級が高い者は各省の役人と結託して軍所有の土地を商売(マンション建設など)用に提供するなどして利益を得ていたという。結果として訓練をしない弱い軍隊と腐敗が蔓延する人民解放軍になっていた。
 習近平は、このような状況に危機感を持ち、腐敗を根絶し、統合作戦能力を強化するために軍区の代わりに戦区を導入した。戦区司令官は、平時でも有事でも戦区に所在する陸・海・空・ロケット軍を統合して訓練し指揮することになった。平時においても訓練をしなければいけないから、金もうけのための商売に精を出すことができなくなった。
図2「中国軍の5戦区」 出典:Wikipedia , “The PLA’s New Organizational Structure”*5
●人民解放軍改革の本質から判断して、「戦区」ではなく「戦区(戦域軍)」が適切
 ここで問題なのが戦区という呼び方である。人民解放軍は、軍区の代わりだから地域的・空間的な意味合いの強い戦区という呼び方をするが、軍改革の本質を理解しない呼び方である。
 中国語の戦区を英語にするとTheater Commandだという。素直に訳すと「戦域軍」が適切である。つまり、米軍のCentral Commandが中央軍であり、Pacific Commandが太平洋軍と呼ばれるのと同じである。
 米軍の中央軍も太平洋軍も陸・海・空・海兵隊の部隊を統合運用する統合軍なのだ。軍改革の本質論から言えば、ただ単に空間を示す「戦区」ではなくて統合指揮の側面を重視した「戦域軍(theater command)」と呼称すべきである。過去の経緯もあり当面は「戦区」を「戦区(戦域軍)」と表記することにした。
 戦区(戦域軍)司令官は、米軍の太平洋軍司令官と同様に、担当地域内(戦区内)の陸・海・空軍とロケット軍に対し、より直接的な指揮権を保持することになった*6。つまり、米軍の統合組織を真似た戦区(戦域軍)を新編することにより戦区(戦域軍)レベルでの統合作戦を追求したのである。
 統合作戦を指揮する部署が戦区(戦域軍)と中央軍事委の直属中央組織の両方に設置されれば、統合作戦の面で大きな前進となるが、本当に統合作戦指揮機構が上手く機能するか否かが注目される。
*5=Kenneth W. Allen, Dennis J. Blasko, John F. Corbett, Jr.、The 中国軍’s New Organizational Structure: What is Known, Unknown and Speculation, Parts 1 & 2
*6=Jeremy Page、Wall Street Journal, April 27, 2016
人民解放軍の30万人削減と陸軍の削減
 習近平主席は、2015年9月の「抗日勝利70周年記念」の軍事パレードにおいて、人民解放軍を2017年末までに30万人削減し、200万にすると宣言した。この30万人削減は宣言通りに2017年中に達成されるであろうが、削減される彼らの大部分には再就職先がなく、社会不安定の要因になると予想する専門家もいる。
 30万人削減の最優先のターゲットとなるのは文化面を担当する非戦闘員(例えば雑技団、舞踊団、合唱隊、オーケストラ、テレビに従事する者など)の削減であり、次いでその他の非戦闘員(事務職のシビリアンなど)であり、その多くは陸軍からの削減である。それでも足りない場合は陸軍の軍人を削減することになるのであろう。
 30万人の削減以外にも陸軍を縮小する動きがある。例えば、陸軍から他の軍種(海軍、空軍、ロケット軍)への要員の配置替えが大規模に行われるであろう。
 例えば、海軍陸戦隊(英語でMarine Corpsと表現しているから海兵隊とも訳されている)を現在の2個旅団2万人(司令部は広東省湛江)から5倍の10万人(6個旅団)に増員する予定で、その増員は陸軍からの配置替えで達成される。
 また、ロケット軍や戦略支援部隊の構成員の大部分は陸軍に所属していた部隊の編制替えであり、統計上は陸軍所属人員が減少することになる。
図3「人民解放軍陸軍の軍団の削減」 出典:South China Morning Post
拡大画像表示 http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/7/3/-/img_738d188539e775bd69c416010129c4e352759.jpg

 また、陸軍の定員の削減に伴い、陸軍の軍団(corps)が削減されるという。図3を見てもらいたい。人民解放軍改革の影響で、陸軍の18コ軍団のなんと25%が廃止になると報道されている*7。
 戦区別に見ると中部戦区の2コ軍団(第20軍団、第27軍団)、西部戦区の1コ軍団(第47軍団)、南部戦区の1コ軍団(第14軍団)が廃止になり、北部戦区の2コ軍団(第16軍団、第40軍団)も廃止の可能性があるという。唯一軍団の廃止がないのが東部戦区(戦域軍)のみで、第1軍団、第12軍団、第31軍団は温存される予定だ。
*7=“China to disband over a quarter of its army corps, sources say”South China Morning Post, 18 March
東部戦区(東部戦域軍 ETC:Eastern Theater Command)*8
 我が国にとって東部戦区(東部戦域軍)は5つの戦区(戦域軍)の中で最も重要である。なぜなら、東部戦区(東部戦域軍)は、台湾と日本を担当しているからである。
 台湾に関しては、一中政策(一つの中国政策)を主張する中国にとって死活的に重要な利益であり、東部戦区(東部戦域軍)は台湾の独立を抑止する戦力として極めて重要な役割を果たしている。台湾が独立の動きを示せば、東部戦域軍を使って独立の動きを阻止する可能性が極めて高い。
 また、我が国に対しても、東部戦区(東部戦域軍)は、尖閣諸島の問題や南西諸島の防衛に対し直接的に影響を与えることのできる部隊だ。また、中国が一方的に設定したADIZ(防空識別区)を見ても分かる通り、我が国の航空機(軍用機のみならず民航機も)の運航に大きな影響を及ぼすのが東部戦区(東部戦域軍)である。
 中国に対する脅威は、歴史的には北部および西部から侵入してくる地上戦力であったが、1980年代のロシアとの国境を巡る協定のためにこれらの脅威が薄れ、海上および航空戦力主体の東からの脅威が認識され始めた。
 特に1995〜1996年の第3次台湾海峡危機に際して、米軍の空母2隻により人民解放軍の台湾に対する軍事侵攻が完全に抑止された。その衝撃を受けて人民解放軍における軍事力の現代化が急速な勢いで進んできた。
図4「東部戦区(東部戦域軍)」 出典:Peter Wood

●東部戦区(東部戦域軍)の特徴
 図4を見てもらいたい。東部戦区の地形は、北部の平野と南部および西部の山岳地帯に特徴があり、3億1900万人の人口、中国の10大港のうち上海港、寧波港、廈門港を有している。特に長江が形成する三角州は、人民解放軍の「軍事戦略の科学」により「重心所在(centers of gravity)」と評価される重要な地域だ。
 第1集団軍(1st GA:司令部は湖州)は、中国の中央海岸を防衛する部隊であり、河川や湖沼での作戦を実施する部隊が存在し、これらの部隊は台湾シナリオにおいて活躍する部隊だ。
 その北の第12集団軍(12th GA:司令部は徐州)は、機械化旅団をもって南京と江蘇を防護している。第3戦闘機師団が東部戦区の中枢を防護している。
 第31集団軍が所在する東部戦区の南部地域は山が多く、人民解放軍誕生の地でもあり、現在も人民解放軍陸軍の司令部が福州(Fuzhou)に所在する。福州や厦門(Xiamen)には台湾紛争に備えた数多くの部隊(両用戦部隊や特殊作戦部隊など)が所在する。
 ロケット軍の発射旅団が江西省(Jiangxi)や安徽省(Anhui)の複雑な地形の中に隠れるように所在している。
 東海艦隊は、寧波に司令部がある重要な艦隊で、海軍航空隊が台湾から本土の間の台湾海峡を担当している。
*8=Peter Wood,“China’s Eastern Theater Command”,China Brief 17

●統合作戦
 東部戦区(東部戦域軍)の司令官は、「戦区(戦域軍)の創設は、統合作戦を可能にする鍵となる組織である」と明言している。統合作戦は、東部戦区(東部戦域軍)の中で完結できれば良いが、できない場合には他の戦区(戦域軍)との調整が重要である。
 例えば、上陸作戦において海兵旅団と上陸用舟艇部隊は協同すべきである。しかし、中国の2個海兵旅団は広東省の湛江市に所在するが、上陸用舟艇部隊は上海に基地がある。つまり東部戦区(東部戦域軍)と南部戦区(南部戦域軍)との調整が必要になる。
 また、東部戦区(東部戦域軍)と中部戦区(中部戦域軍)との統合訓練、例えば、防空部隊を中部戦区(中部戦域軍)から東部戦区の福州に移動させるなどの訓練もなされている。
 さらに、人民解放軍は、台湾シナリオにおいて必要な各種演習、例えば着上陸作戦、長距離移動作戦、海上作戦なども行っている。具体的には、空母遼寧は海上での対艦艇実射訓練を実施したり、空軍と協同して台湾周辺で長距離パトロールを実施し、逐次に統合作戦能力の向上に努めている。
 つまり、戦区(戦域軍)という仕かけが徐々に機能し、人民解放軍の統合作戦能力の向上が徐々に進んでいるということだ。

●ロケット軍と戦略支援部隊
 東部戦区(東部戦域軍)のロケット軍は、台湾にとって大きな脅威であり、各種ミサイル(短距離・中距離弾道弾や巡航ミサイル)1200発が台湾に向けられている。これらのミサイルは、日本にとっても脅威であり、在日米軍基地(特に在沖縄米軍基地)、日本の空港や港などの重要インフラを迅速に打撃することができる。
 特に、短距離弾道ミサイルDF-16には、「沖縄エクスプレス」というニックネームまでつけられ、「いつでも沖縄を攻撃できるのだぞ」という脅しになっている。
 戦略支援部隊は、サイバー戦、電子戦、宇宙戦などを担当すると記述をしてきたが、それらを別の観点から表現すると、最新のICT技術を活用したネットワーク戦(「ネットワークを活用した作戦」)を実施する部隊だ。
 戦略支援部隊隷下のネットワーク戦部隊は、東部戦区の作戦において重要な役割を果たすことになる。ロケット軍の部隊は戦略支援部隊と連携して、台湾や沖縄をめぐる紛争において、C4ISR(指揮・統制・情報・監視・偵察)インフラに対する攻撃を主導するであろう。

結言
 習近平主席が進める人民解放軍改革の成否は日本の安全保障にも重大な影響を及ぼす。2016年初から始めて2020年を完成の目標年としている。人民解放軍史上最大の改革が4年で完成するとは思わないが、ある程度の形はできると思う。
 特に注目すべきは戦区(戦域軍)の導入である。統合運用能力の観点から分析した時に、戦区(戦域軍)が平素の訓練の段階から統合運用を積み重ねていき、その能力を向上させていくと手強い相手になる。警戒が必要である。しかし、米軍や自衛隊の経験から判断して、簡単に統合運用能力が画期的に向上するとも思えない。
 また、改革の進展に伴い、腐敗で有名だった人民解放軍から腐敗が一掃されれば、これも人民解放軍の精強化にはプラスである。問題は、腐敗が一掃されるか否かである。
 確かに、腐敗の温床になっていたビジネスの多くは禁止されたが、部隊の末端まで腐敗一掃を徹底するのは難しいと思う。改革の成否は、習近平主席がいつまでトップにいるかにかかっている。
 いずれにしろ、人民解放軍の大改革は推進中であり、今後ともその動向を注視しなければいけないが、自衛隊には統合運用能力の向上をはじめとする真剣な防衛努力を期待する。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49642

http://www.asyura2.com/17/senkyo223/msg/805.html

[不安と不健康18] お腹の調子が悪いと睡眠不足になるのはなぜか?
【第8回】 2017年4月10日 ショーン・スティーブンソン(著),花塚 恵(訳)
お腹の調子が悪いと睡眠不足になるのはなぜか?

全米で話題沸騰中の21の睡眠メソッドを集約した、『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』。本連載では同書の中心的なメソッドを紹介していきます。食事、ベッド、寝る姿勢、パジャマ――。どんな疲れも超回復し、脳のパフォーマンスを最大化する「睡眠の技術」に注目です!


「第二の脳」である腸を整えて
快眠する

睡眠の質には食べたものが大きく影響する。
食べものを単なる食べものだと思ってはいけない。食べものは情報だ。何かを食べれば自動的に体内で処理され、食べたものがどういう種類のもので、どんな栄養素が含まれている(いない)かによって、身体、健康、睡眠の状態が決まる。

それだけではない。良質な睡眠がとれるかどうかは、お腹のなかの環境に左右される。セロトニンは、腸粘膜にある腸クロム親和性細胞によって生成される。生成されたセロトニンが体内に分泌されると、腸の運動が活発になる。文字どおり、消化の働き全般を助けているのだ。
セロトニンが睡眠に深くかかわっているのは、快眠ホルモンであるメラトニンの原料であることからも明らかだ。とはいえ、消化の働きを助けるという意味でも、セロトニンが脳や睡眠に与える影響は私たちが想像する以上に強力だ。

近年の研究により、人間の腸は神経組織の塊で、脳内と同じ神経伝達物質が30種類存在することが明らかになった。食べたサンドイッチを体外に出す手伝いをする以外にも、実にさまざまな働きを担っているという。
脳のように大量の神経組織があることが明らかになり、腸は「第二の脳」の称号を手に入れた。正式名称は「腸神経系」であるこの第二の脳には、約1億個の神経物質が存在する。この数は、脊髄はもちろん末梢神経系に比べても多い。私たちのお腹は、微積分を易々と解ける知性がありながら、それ以外のたくさんのことに専念しているというわけだ。

しかし、何といっても注目すべきは、腸には脳の松果腺の400倍以上のメラトニンが存在するという事実だ。調査によると、松果腺を手術で切除した後ですら、腸には切除前と同レベルのメラトニンが存在したという。腸内の組織(とりわけ腸内分泌細胞)は、メラトニンを生成する能力にそれほど秀でているのだ。このメラトニンという快眠を約束してくれるホルモンは、調子がよければお腹のなかに適切な量が生成される。要するに、腸が健康でちゃんと機能することが、睡眠の質に大きく影響するというわけだ。

腸の働きのとりまとめ役という重責は、迷走神経が担う。迷走神経は、腸に限らず心臓や肺といった臓器と脳を直接つなぐ。そして、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の研究者により、迷走神経を通じて運ばれる食物繊維の情報は、約90パーセントが腸から脳へ渡り、その反対はないという意外な事実が明らかになった。腸内環境と腸の健康は、脳の機能を支配するという重要な役割を果たしているのだ。腸で起きたことは必ず脳まで伝わる。

腸内フローラは
生活リズムの影響をうける

UCLAの研究では、腸内に何兆個と存在する細菌が第二の脳である腸神経系と絶えず情報をやりとりしていることも明らかにされている。また、カリフォルニア工科大学の研究者は、セロトニンの生成に重要な役割を果たす細菌が腸内に存在すると発表した。私たちの体内には細胞の10倍の数の細菌が生息していて、そのほとんどが腸に住みついている。

だからといって怖がることはない。細菌とはそういうものだ。人間は細菌と共生できるように進化を遂げてきた。正常なバランスが保たれていれば、免疫系や消化器系の管理をはじめ、睡眠の正常化も助けてくれる。

細菌でも「善玉菌」と呼ばれるものは、健康の維持に大きく貢献してくれる。一方、「日和見菌」と呼ばれるものは、場合によっては身体にさまざまなダメージを与える。とはいえ、日和見菌にも体内で果たす役割はある。大切なのは、善玉菌に対する日和見菌の比率だ。身体の舵を任せるなら、信用できるやつがいい。悪いやつにのっとられれば、ファストフードのドライブスルーにばかり連れて行かれ、夜になれば暴れて眠らせてもらえない。

腸内細菌はお花畑のように群れていることから、腸内フローラとも呼ばれる。睡眠のリズムが不規則になると、腸内フローラに何が起こるのか。学術誌『セル』に掲載されていた研究によると、人間の体内時計は細菌のバランスに影響を受けるという。日常生活で普通に起こりうる時差ボケなどの出来事を経験するだけで、腸内毒素症が生じ、代謝異常を招くのだ。

また、腸内細菌に独自の体内時計があり、毎晩決まった時間に「衛兵交代式」を行うことで、腸の管理を信用できるやつに引き継ごうとしていることも明らかになった。だから、徹夜したり、寝不足になったりすれば、日和見菌に腸を(ひいては脳も)のっとられる機会を生むことになるのだ。
http://diamond.jp/articles/-/123916
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/484.html

[国際18] ベネズエラで大規模反政府デモ、野党指導者の政治活動禁止に反発 経済苦境のベネズエラ国外脱出が加速1年で20万人 マドゥロ
ベネズエラで大規模反政府デモ、野党指導者の政治活動禁止に反発

[カラカス 8日 ロイター] - ベネズエラで8日、大規模な反政府デモが行われ、デモ隊と治安部隊が衝突した。野党指導者のエンリケ・カプリレス氏が15年間の政治活動禁止を命じられたことを受け、反発が強まっている。

数千人のデモ参加者の中には「独裁者マドゥロ」、「選挙の即実施を」といったプラカードを掲げる人も見られ、石や火炎瓶を投げるデモ隊に対し、治安当局は催涙ガスを使用した。

カプリレス氏は2018年に予定される大統領選で野党勢力として最も勝利の可能性が高いとされていた。

同氏への措置について、中南米諸国や米国は「迫害に深刻な懸念を抱いている」として非難する立場を示した。


ベネズエラ、首都で大統領辞任求めるデモ隊と治安部隊が衝突

ベネズエラ野党、大統領弾劾の審議延期 活動家の追加釈放を要求
米特使がベネズエラ大統領と会談、関係改善を模索
モスクワで野党指導者の追悼デモ、殺害から2年 真相解明求める
http://jp.reuters.com/article/venezuela-politics-idJPKBN17B10L


経済苦境のベネズエラ、国外脱出が加速 1年で20万人
2017.04.06 Thu posted at 17:49 JST

首都カラカスのスーパーマーケットの前で食料品などを求めて列を作る人々
ブエノスアイレス(CNNMoney) 経済苦境や政情混乱が続く南米ベネズエラを見限り、他国へ渡った同国国民は昨年1年間で約20万人に達したことが6日までにわかった。
1999年から2015年初期にかけての年間の平均人数の倍の水準になっているという。これらの数字は、首都カラカスにあるベネズエラ中央大学の移住問題専攻のトマス・パエス教授が割り出した。出国者の多数は学歴があり、技能を持つ国民としている。
同教授によると、反米左派路線を敷き、手厚い貧困層対策などを打ち出したチャベス前大統領が実権を掌握した1999年以降、ベネズエラから他国へ向かった国民は計約200万人。同国の総人口は現在約3000万人。
ベネズエラを見捨てる国民は増加基調にあり、米シンクタンク「ピュー・リサーチ・センター」のデータもこれを裏付けている。昨年、米国に亡命を申請したベネズエラ国民は約170%増を記録。アルゼンチンではベネズエラ人による居住許可の申請件数が120%増を示した。スペインに流入したベネズエラ人移民は過去2年で倍増したという。
エネルギー資源に豊富なベネズエラは移民を歓迎する国として長く知られていたが、現在は大量の移住が発生する皮肉な状況に直面している。
チャベス氏の路線を引き継いだマドゥロ大統領率いるベネズエラ政府は自国民の移住動向に関するデータは公表していない。
同国の経済苦境の先行きに光明は見えておらず、大規模な食糧や医薬品不足に襲われている。凶悪犯罪の発生も目立ち、住民は夜には自宅にこもり、誘拐事件も多発している。国際通貨基金によると、今年の物価上昇率は1660%増に達する見通し。

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http://www.cnn.co.jp/world/35099392.html


ニコラス・マドゥロ
Nicolas Maduro
ベネズエラの旗 ベネズエラ
第54代大統領
任期 2013年4月19日 ?
副大統領 ホルヘ・アレアサ
出生 1962年11月23日(54歳)
ベネズエラの旗 ベネズエラ カラカス
政党 第五共和国運動
(2007年以降)
ベネズエラ統一社会党
配偶者 シリア・フロレス(英語版)
署名 Nicolas Maduro signature.svg
ニコラス・マドゥロ・モロス(別表記:マドゥーロ、スペイン語: Nicolas Maduro Moros、1963年11月23日 - )は、ベネズエラの政治家。ウゴ・チャベス政権下の閣僚。2013年4月、チャベス大統領の死去後の大統領選挙を経て第54代大統領に就任した。
元バス運転手で、労働組合の代表などを経て政界入りした。その後、チャベスの下で頭角を現し、2006年8月から外務大臣、2012年10月からは副大統領を務めた。「チャベス側近の中では最も有能な行政官であり政治家だ」とも評される[1]。
2013年3月、チャベスの死後暫定大統領に就任[2]、同年4月14日に予定されている2013年ベネズエラ大統領選挙にチャベス路線の継承を訴えて出馬した[3]。当選後、4月19日に正式に大統領に就任した。任期は2019年1月10日まで[4]。

生い立ち[編集]
1962年、ベネズエラの首都カラカスに生まれる。父親は左翼系の労働組合リーダーであった[5]。カラカスの西のはずれにある労働者が多く住むEl Valle区にあるLiceo Jose Avalos公立高校に通ったが[6][5]、この高校で青年社会主義者組織のメンバーとなったのがマドゥロにとっての初めての政治活動であった[7][8]。
カトリックの教えを受けて育ったカトリック教徒ではあるが、インドのスピリチュアルリーダー、サティヤ・サイ・ババの信奉者でもある[8][9]。また、父系はセファルディム(スペイン系ユダヤ人)の家系でもある[10][11][12][13][14]。
経歴[編集]
労働組合・国会議員[編集]
バスの運転手をしていた1980年代に、カラカス地下鉄の労働者を代表する労働組合員となり政治活動をはじめる。またこの頃、ベネズエラ大統領選に出馬したホセ・ビセンテ・ランゲル(英語版) 候補のボディガードを務めたこともある[15]。
2000年から国会議員、2005年から2006年は国会議長に選出された[16]。
外務大臣[編集]
2006年8月6日ベネズエラ外務大臣に就任、任期中にはカダフィ政権下のリビアを支援する外交政策をとり、また隣国コロンビアとの間には2008年にアンデス危機が勃発して2010年に一時国交断絶する状態ともなったが同年8月に国交回復するなどした[17]。
副大統領[編集]
2012年12月8日、チャベス大統領は国民に向けて、自身のガンが再発したため手術と治療のためキューバへ戻ると発表した。このときチャベスは、自分の容態が悪化して代わりとなる大統領を選ぶ選挙が行われるときには、ベネズエラ人はチャベスの後継者としてマドゥロに投票すべきだ、と述べている。チャベスは2013年3月5日に死去したが、後継者について、また自らの余命について言及したのはこのときがはじめてであった[18][19]
チャベスがマドゥロを後継者とすることを明らかにしたことで、それまで有力な後継者候補と目されていたディオスダド・カベリョ(英語版) は大統領候補からは外れた。カベロは12月のチャベスの発言後「ただちにチャベスとマドゥロに忠誠を誓った」という[20]。
暫定大統領[編集]
チャベス大統領は2013年3月5日に死去し、後継指名を受けていたマドゥロが暫定大統領に就任した。なおチャベスは4年の任期途中で死去したため、ベネズエラ憲法の規定により30日以内に大統領選挙を行う必要があり[21][22][23]、マドゥロはベネズエラ統一社会党の候補として大統領選への出馬を表明している[24]。
これに対し野党陣営からは、マドゥロが副大統領を辞任せずに大統領選に出馬するのはベネズエラ憲法229条、231条、233条に違反する行為だとの批判がある[25][26][27]。
大統領[編集]
2013年4月14日におこなわれた大統領選挙に当選したが、野党陣営が不正があったとして再集計を求めデモを呼びかけた。4月18日に中央選管は票の再集計をおこなうと発表した[28]。4月19日に第54代大統領に就任した[4]。
2015年9月の中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年記念式典に出席し、天安門広場で行進するベネズエラ軍を閲兵した[29]。抗議デモの際にマドゥロは中国製の装甲車VN-4を投入[30]するなど中国はベネズエラ最大の援助国であり[31]、中国への経済的依存からパレードに出席したともされる[32]。
言動[編集]
マドゥロは、チャベスが「闇の勢力によって毒殺されたと直感している」と述べ、ガン発病は米国の仕業との見方を示したが、米国務省報道官は「チャベス大統領の発病に米国がかかわったとの主張はばかげている」とこれを退けた [33][34] [35][36]。
2012年はじめ、マドゥロは演説において敵対政治家を「ホモ」と発言したがこれが騒動となり、後に地元のセクシュアル・マイノリティズやストレート・アライに謝罪した[37]。
またチャベスは生前、遺体を保存することについて「ゾッとする」「自然に反している」と述べ、自身の遺体はベネズエラの地に埋めてほしいと発言していたのだが[38]、マドゥロは中国の毛沢東やソ連のレーニンを引き合いに出し、チャベスの遺体を永久保存し一般公開すると発表した [39] [40][41]。これについてベネズエラの La Patilla紙のジャーナリストが香港大学政治学教授ジョセフ・チェンにインタビューしたところ、同教授は、これは「体制とその政策を支持」させるためチャベスを永く崇拝の対象とする手法ではないかとの見解を示した[42]。 しかし、エンバーミングが大変困難であるため、行われないことになった。[43]
私生活[編集]
第五共和国運動(MVR)の弁護士で、マドゥロの後任として国会議長をつとめたシリア・フロレスと結婚した。フロレスはベネズエラ初の女性国会議長でもあり[44][45]、1992年のクーデターに失敗したチャベスを擁護しその釈放に尽力した弁護士で、マドゥロが頭角を現したのもフロレスの力があったためとする見方もある[8]。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%89%E3%82%A5%E3%83%AD
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/882.html

[経世済民120] 北朝鮮有事の円相場シミュレーション 経常黒字予想上回る 外国勢が米国債の脅威FRBより HF狙う富裕一族FO 米雇用統計
FX Forum | 2017年 04月 10日 11:26 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
北朝鮮有事の円相場シミュレーション

佐々木融JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長
[東京 10日] - 日本時間7日(金)午前10時過ぎに米軍がシリアに対して巡航ミサイルによる攻撃を行ったとの報道が流れると、円は全面高となり、110円台後半で推移していたドル円相場は110円台前半まで下落、ユーロ円相場も118円ちょうど近辺から117円台前半まで下落した。

円高の動きは約1時間後にピークを迎えたが、ニュースが流れてから1時間の主要通貨の騰落率を見ると、円が「最強通貨」となり、その次に強かったのはスイスフランで、円に対する下落率は0.5%程度だった。最も弱かったのは豪ドルで、円に対する下落率は1%程度、次に弱かったのがNZドルで、3番目に弱かったのが米ドルだった。

しかし、円買いの動きは1時間で終了し、円は反落。ドル円は3時間後には下落分の7割を回復していた。米軍による攻撃が短時間で終了し、その後の展開がなかったことも市場が早期に落ち着きを取り戻した一因だろう。

<「安全通貨」ゆえの円買いではない>

何か突発的な事象が発生し、投資家の不安心理が高まると買われることから、円は「安全通貨」と呼ばれることがある。しかし、このコラムでも何度か指摘したように、円は「安全通貨」などではない。

有事の際に円が買われるのは、円が「安全通貨」として選好されているのではなく、投資家がポジションを閉じることによって買い戻されているのだ。

世界の投資家が為替市場でリスクを取る場合、投資したい通貨と、売りたい通貨をある程度自由に選べる。そして通常、投資家がリスクをより大きく取りたいと思うのは、市場が安定している局面、つまりボラティリティが低い時になる。そのような局面では通常、市場の動きは限定的なものにとどまっている。要するに、市場の変動で利益を得ることが難しい。だから金利差が注目されることになる。

金利差が注目された時、投資家が投資したいと思う通貨は高金利通貨、売りたいと思う通貨は低金利通貨となる。円はこうした時に売りたいと思う通貨の筆頭となる。円の短期金利は極めて低く、当面上昇する可能性は低い。かつ、市場は大きく、流動性が潤沢にある。さらには当局の円安志向が強く、本邦投資家の対外投資による円売りも期待できる。

だから、こうした環境下では、市場に短期的な円売りポジションが積み上がる。よくシカゴ先物市場のポジションが話題になるが、それは氷山の一角でしかない。世の中が安定している時には、円を売って、高金利通貨を買うというポジションが世界中で大きく積み上がることとなる。

そうした時に、有事が発生し、投資家の不安心理が高まり、市場のボラティリティが上昇すると、投資家はポジションを閉じることを余儀なくされる。ポジションを持っていると、市場が大きく動いた時に、たまたま利益を上げることもできるかもしれないが、逆に大きな損失を被ってしまうこともあるからだ。

それゆえに、何か不穏な動きが発生した時に、投資家が真っ先に取る行動はポジションを最小限にすることとなる。これが、有事の際に、円が買い戻されるメカニズムだ。

時々、筆者がこうした説明をすると、「そうは言っても、日本で有事が発生した場合には、円を買い戻すのではなく、米ドルを買った方が良いのではないか」などと質問される時がある。

しかし、例えば、円を売って、豪ドルを買うポジションを持っていた投資家が、豪ドルを売って、米ドルを買ってしまったら、単に円売り・米ドル買いポジションが残ってしまうだけだ。これではポジションを閉じたことにはならない。だから、たとえ日本で有事が発生しようとも、円売りポジションを保有している人は円を買い戻す必要がある。

2011年3月の東日本大震災の時を思い出してもらえれば明らかだろう。日本であれだけの大惨事が起きたのに、円は対ドルで、地震発生から6日後には発生前と比べて8%程度も急騰した。

仮に北朝鮮で有事が発生した場合、地理的に日本と極めて近いことから、今度は円は売られるのではないかとの声もしばしば耳にするが、東日本大震災の時と同じく、円は買い戻されるだろう。

<有事の円買いに3段階のシナリオ>

さて、ここで有事の際の円買い戻しについて、もう少し細かく分析・検討してみたい。というのも、有事の際の円買いについては、3段階くらいに分けて考える必要があると思われるからだ。

第1段階は、これまでの「有事の際は円買い」との経験則から、有事発生直後の円買いは、投機的な円ロングポジションを造成する動きと考えられる、ということである。7日のシリア攻撃の報道が流れた直後の円高は恐らくほとんどがこうした投機的な円買いだったのではないだろうか。だから、続報がないと円は売り戻されるのだ。

第2段階は、世界の投資家がこれまで積み上げてきた短期的な円売りポジションが巻き戻されるような事態だろう。東日本大震災から数日後に急速な円高が進んだ背景には、こうした円売りポジションの巻き戻しがあったと考えられる。この時は福島原発事故に対する懸念が高まる中で急速に円高が進んだ。つまり、発生した事象が世界経済に甚大な影響を与えるほどの重大事象になるとの認識が高まると、数日以内に世界の投資家がポジションを閉じ始め、本格的な円高が発生するものと考えられる。

第3段階は本邦企業・投資家による海外投資に対するヘッジ、ないしはリパトリ(資金の本国還流)の動きだ。日本のように政治的にある程度安定している国では、有事の際に企業、投資家、国民が自分の資金を海外に逃避させようとする動きは相当な事態にならないと発生しない。それはほとんどの日本人が日本で生きていくことを前提に行動するからだ。

日本で生きていくことが前提の場合、必要なのは円キャッシュになる。したがって、本格的に日本経済・世界経済の情勢が怪しくなり、企業であれば自社の今後の売り上げ・利益、個人であれば自分の今後の収入に不安を覚えた場合、日本で必要な固定費を支払うために海外資産を取り崩し、日本に戻すという行動に移るか、少なくともリスクを抑えるように為替リスクをヘッジする行動を取る。

例えば、2007年から2009年にかけて続いた米金融危機の際には、こうした動きが象徴的に見られた。いうまでもなく、この時は世界経済が大きく落ち込み、2007年6月から2009年1月までの約1年半の間に、最強通貨となった円は主要通貨の中で2番目に強かったスイスフラン、3番目に強かった米ドルに対しても20%超上昇した。

日本は世界最大の対外純資産国だ。昨年末時点の対外資産は1003兆円、対外負債は645兆円で、純資産は358兆円に上る。だから日本人が本格的に為替リスクを避け、手元に円キャッシュを置いておこうと考えた時の円買い圧力は大きなものとなる。

ちなみに、アベノミクス下の過去4年間、日本の企業、投資家は70兆円近くの円売りポジションを新たに積み上げたと推計される。本格的に対外資産のヘッジ、リパトリの動きが始まった時の円買いの動きは相当大きなものになると考えられる。

こうした3段階の動きを前提に考えれば、北朝鮮有事の際の円相場の動きも予想しやすくなるのではないか。混乱や動揺が結局、短期間で終わるようなものならば、円高の動きは恐らく1日で終息するだろう。

もっとも、投資家心理を相当程度冷やしてしまうほど、経済に懸念を与えるような事象となるのであれば、期間は1カ月程度だったとしても、それなりに大幅な円高が発生する可能性がある。もし数年単位で世界経済に打撃を与えるような事象に発展するのならば、かなり長期間にわたって円高基調が続くことになるだろう。

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。


コラム:債券・為替・株に広がるバーベル型投資=重見吉徳氏

アングル:ミセスワタナベがポンド逆張り、英離脱ならドル/円下落加速も
コラム:ドル円上昇を阻むハードルの正体=内田稔氏
蓄積される円高のエネルギー、ユーロも逃避先にならず

http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-tohru-sasaki-idJPKBN17B13U?sp=true


 


 

 

 
2月の経常収支は2兆8136億円の黒字−市場予想上回る
高橋舞子
2017年4月10日 09:24 JST

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• 貿易収支は1兆768億円の黒字−予想は9817億円の黒字
• 米金利の上昇で1次所得収支は拡大していく−野村証券の棚橋氏

モノやサービスを含む海外との総合的な取引を示す経常収支は、2月速報で32カ月連続の黒字となった。市場予想は上回った。財務省が10日発表した。
キーポイント
• 経常収支は前年同月比18.2%増の2兆8136億円の黒字(ブルームバーグ調査の予想中央値は2兆5129億円の黒字)−黒字幅の拡大は2カ月ぶり
• 輸出から輸入を差し引いた貿易収支は1兆768億円の黒字(予想は9817億円の黒字)−黒字は2カ月ぶり
• 輸出は12.2%増の6兆3339億円、輸入は0.3%増の5兆2570億円
• 配当金や債券利子などの第1次所得収支は1.9%減の1兆9751億円



https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iPdJu0HcZZdY/v2/-1x-1.png

背景
  世界経済の改善を反映し、輸出は足元で堅調に推移している。輸出、生産の持ち直しを背景に、日本銀行が3日に発表した企業短期経済観測調査(短観、3月調査)の大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、昨年12月の前回調査に続き2期連続で改善した。
  18日にはペンス米副大統領が来日し、麻生太郎財務相らと日米経済対話の初会合を開く。トランプ政権が「貿易不公正」の是正を掲げる中、貿易や為替に加え、経済政策やインフラ投資などが議論される。日本は貿易黒字の大半は海外への投資によって得られる所得収支で、米国経済に利する側面があるとして理解を求める方針だ。
エコノミストの見方
• バークレイズ証券の永井祐一郎エコノミストは6日の取材で、「世界的に景況感が改善しており、輸出の持ち直しがあらためて確認される」と予想した。ただ米国向け自動車輸出は弱まっており、「注目点になってきている」と指摘した。春節の影響で1月の輸出が本来よりも下ぶれており、1月と2月の数字を「ならしてみることが大事だ」という。
• 野村証券の棚橋研悟エコノミストは7日の取材で、中国での建設機械需要やアジアでのスマートフォンの半導体需要により、足元ではアジア向けの輸出が強いと分析。米国を中心に世界の金利が上昇していく中、第1次所得収支が拡大していくと予想した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO13QV6KLVRR01

 

 
Business | 2017年 04月 10日 11:21 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

経常黒字2.8兆円、2月では最大に 「春節反動で輸出増」と財務省

[東京 10日 ロイター] - 財務省が10日発表した国際収支速報によると、2月の経常収支は2兆8136億円と、同月の黒字額としては比較可能な1985年以来で最大となった。中国やアジアの旧正月で1月に輸出を控える動きが広がった反動が出た。

前年同月の経常黒字は2兆3803億円で、前年同月との比較では18.2%増加した。ロイターの予測中央値は2兆6156億円の黒字で、事前の予測値も上回った。

収支速報によると、主な内訳は貿易収支が1兆0768億円の黒字、第1次所得収支が1兆9751億円の黒字。財務省は「中国、アジアの旧正月で(前月に)手控えられた輸出が反動増になった」としている。

コラム:トランプ大統領、北朝鮮に「禁断のカード」切るか

トランプ政権、巡航ミサイルでシリア攻撃 化学兵器使用を非難
コラム:トランプ帝国主義が招くドル高と中国衰退=武者陵司氏
コラム:「絶望死」が増加する米国社会の暗い闇
http://jp.reuters.com/article/currentaccounr-idJPKBN17C02K

 


 

 

 

外国勢が米国債市場の脅威に、FRBの保有資産縮小よりも影響大か
Liz Capo McCormick、Brian Chappatta
2017年4月10日 10:47 JST

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• 海外市場で3兆ドル強の国債の利回りがマイナスからプラスに転換
• FRBの資産縮小と同時期に外国勢の米国債離れが進む恐れも

このところの債券市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が危機対応で買い取った巨額の米国債を減らし始めた場合の影響に誰もが心を奪われているように見える。だが、この騒動の中でほとんど気付かれていない1つの事実は、悪いタイミングで米国債市場から買い手を奪いかねない、もっと大きな債務の山の存在だ。
  海外市場では、3兆ドル(約333兆円)強の国債の利回りがここ数カ月でマイナスからプラスに転じた。アナリストによると、利回りがプラス圏に浮上する債券は今後数年で増える見込みで、経済見通しの改善や金融政策の変更を受け欧州や日本ではさらに数兆ドルの債券がマイナス利回りを脱するという。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ixKH4ETEaVrA/v1/-1x-1.png


  その結果、米債券市場には相当な影響が及ぶ恐れがある。簡単に言うと、利回りの比較的高い米国債に巨額の資金を投じてきた外国勢がここにきて、国内で実行可能な債券投資の選択肢が増えたため、米国債投資に傾かなくなる可能性があるということだ。米金融当局者が2兆4600億ドルの米国債を含む保有資産をついに縮小する構えを示し始めたタイミングであるだけに、外国勢の米国債離れが続けば手痛い損失につながりかねない。
  ドイツ銀行のチーフ国際エコノミスト、トルステン・スロック氏は「欧州や日本から投資マネーの津波が来ることはもうないかもしれない」と指摘した。
  13兆9000億ドル規模の米国債市場における外国勢の保有シェアは43%。トランプ政権の成長促進策で公的債務は今後数年増えると見込まれる中、米利上げ局面で長期の借り入れコストを押し下げておくには外国勢の投資が極めて重要になる。
  

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iHN_rViNgouM/v2/-1x-1.png
原題:A Foreign Threat to U.S. Treasuries That Dwarfs Fed’s Debt Hoard(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO637B6K50XT01


 

 

 


 
News | 2017年 04月 10日 10:47 JST 関連トピックス: トップニュース


米雇用統計:識者はこうみる

[10日 ロイター] - 米労働省が7日発表した3月の雇用統計は非農業部門雇用者数が9万8000人増となり、昨年5月以来の小幅な伸びとなった。小売業が2カ月連続で減少したことが重しとなり、予想の18万人増も大幅に下回った。ただ失業率は2007年5月以来、約10年ぶりの低水準となる4.5%に低下。労働市場の引き締まりが継続していることが示された。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●地政学リスクを冷静に受け止め、好材料に素直に反応へ

<しんきんアセットマネジメント投信 運用部長 藤原直樹氏>

米国によるシリアへの攻撃があったが、米トランプ大統領の支持率への影響を考慮すると、市場に対してマイナスの影響ばかりではない。このあたりは冷静に受け止められている。

また米雇用統計は、非農業部門雇用者の増加数が予想を大きく下回ったが、全体的にみればトレンドが大きく変化したとは言いにくい。天候要因があるという流れならば、FRB(米連邦準備理事会)の利上げに影響するような指標ではなかったといえる。

結局のところ、米金融政策の動向を市場は重視している。6月、9月の利上げと、12月のバランスシートの縮小は、既定路線になりつつある。市場の見方を大きく揺るがすような米経済指標がなければ、ドル高/円安の流れが続いていくはずだ。

前週までは期初の益出し売りが日本株の重しとなっていたが、これについてはある程度一巡したとみている。需給的には軽くなっており、今週は好材料に素直に反応する状況になるだろう。

一方、北朝鮮情勢は、今後の米国の姿勢次第だ。シリアと状況が異なるため、米国による攻撃が加われば状況は変わってくる。そうでなければ、市場への影響は限定的となるとみている。頭の片隅には置かなければならない問題だが、あまり警戒しすぎるのもどうか、というところでもある。

●米中首脳会談は米優勢、政治リスクのマグマ拡大

<FXプライムbyGMO 常務取締役 上田眞理人氏>

前週末の米中首脳会談について、米国は、中国との関係で目覚ましい進展が得られたと強調したが、実際は具体的な実りに乏しく、米国が優勢に立った印象だ。

同会談開催中の米軍によるシリアの攻撃をきっかけとした地政学リスクの高まりを受け、原油価格は上昇し、米原油先物は1カ月ぶり高値を付けた。

週末の雇用統計では非農業部門雇用者数の伸びが市場予想を大幅に下回ったものの、失業率の低下が好感され、米利上げペースが維持されるとの見方が広がった。

原油価格の反発と新興国リスクの後退、さらに、米利上げペース維持見通しを手掛かりに、今朝はドルが買い戻されている。

また、バノン主席戦略官兼上級顧問などの政権幹部の更迭見込みも、国内政治の安定の兆しと解釈し、為替市場は全般にポジティブに捉えられているようだ。

以上に鑑みて、目先112.30円付近まではドルの上値余地があるとみている。

ただ、各地で頻発するテロや、シリアを巡る米露間、北朝鮮を巡る米中間の緊張など、政治リスクのマグマはむしろ大きくなっていると考えられる。ドル/円で110円の下値は堅いとしても、ドルの上昇が盤石であるとは言えない。

●明らかに失望誘う、天候要因も

<BMOキャピタル・マーケッツの金利ストラテジスト、アーロン・コーリ氏>

明らかに失望を誘う内容で、天候関連の要因がなかったのかを精査している。非農業部門雇用者数の伸びは良好でなかったが、市場では天候要因を考慮しているのではないか。

ADP民間雇用者数は、ややミスリードだった感がある。

●インフレ基調はるかに重要、非農業雇用者数は異常値

<RBCキャピタルマーケッツ(ニューヨーク)の首席米国エコノミスト、トム・ポルチェリ氏>

GDP変動や低水準の失業申請件数など他の指標と、雇用者数の変化が一致していない。この点を考える必要がある。今回公表された雇用者数の変動が異常値というのが現実だ。

非農業部門雇用者数から関心をそらすのが正しい行動だ。

失業率低下や時間当たり賃金の一部上方改定は、賃金圧力などが存在し続けたことを示す。これらのことを考慮すれば、雇用統計で最も重要な要素は底堅いといえる。これらはすべてインフレ基調と実質的に一致する。非農業部門雇用者数よりもはるかに重要で、さらに決定的なことは、FRBがこうしたことにより大きく関心を抱くとみられる点だ。

●米雇用統計こうみる:雇用の伸びから賃金の伸びに移行

<アリアンツの首席経済アドバイザー、モハメド・エラリアン氏>

雇用者数の伸びは市場予想を大きく下回ったものの、全体的に見れば、単一の基準が示しているほど低調な内容ではない。3カ月平均の雇用者は17万8000人増と堅調に推移しているほか、賃金の伸びは予想と一致している。米労働市場は雇用者の伸びから賃金の伸びへと緩やかな移行を遂げつつある。

●FRB見通し変更につながらず、6月まであと2回の雇用統計

<バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(ニューヨーク)の米短期金利戦略部門責任者、マーク・カバナ氏>

今回の雇用統計により米連邦準備理事会(FRB)が短期的な見通しを変えるとは思わない。5月の会合ではそもそも利上げは見送ると見られているが、6月会合までにあと2回の雇用統計が発表される。

現時点でFRBの見通しが大きく変わることはない。ただ、一部FRB当局者が示していた成長の上振れリスクの重しになる可能性はある。

*内容を追加します。

米3月の雇用者数、10カ月ぶりの低い伸び 失業率は10年ぶり低水準
5月米非農業雇用者数は3.8万人増、2010年以来の低い伸び
http://jp.reuters.com/article/insight-idJPKBN17929W?sp=true


 

 

 

ヘッジファンドが初心に帰る、狙うのは富裕一族のファミリーオフィス
Simone Foxman
2017年4月10日 07:03 JST


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• ヘッジファンド業界の苦戦でファミリーオフィスの力が増す
• 柔軟な手数料や特別注文の投資、著名運用者へのアクセスなど恩恵

ヘッジファンド業界の苦戦で、富裕層一族の資産を預かるファミリーオフィスにとって投資先がよりどりみどりという状況が出現している。
  リターン低迷で年金基金などの機関投資家がヘッジファンドへの投資を考え直す中で、ファンド業界の顧客としてファミリーオフィスの重要性が高まった。おかげで柔軟な手数料や特別注文の投資サービス、著名運用者へのアクセスなど、便宜が増している。
  JPモルガン・チェースのプライマリーブローカー部門のキャピタルイントロダクション責任者、アレッサンドラ・トコ氏は「ファミリーオフィスに対するヘッジファンド運用会社からの関心は伝統的な水準に戻っている」と話す。ヘッジファンドという業態を最初に誕生させたのはそもそも富裕層だが「このセグメントが再び、ヘッジファンドが獲得したい大切な顧客層になった」と同氏はコメントした。
  2016年は金融危機以降で最もヘッジファンド閉鎖が多いという業界受難の年だった。今年も1−3月(第1四半期)の業界平均リターンはS&P500種株価指数を下回り、エリック・ミンディッチ氏のような著名運用者がファンド閉鎖を決めるなど、厳しい状況が続く。
  一方、金持ちとその資産が増える中でファミリーオフィスは増殖している。クレディ・スイス・グループの2016年グローバル・ウェルス・リポートによれば、資産5000万ドル(約55億3300万円)超の資産家の数は2000年の3倍になっている。10億ドル超の億万長者の数は昨年2000人余りと5年前の1000人程度から増えていた。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ipIN5cUIl_cw/v1/-1x-1.png

  ヘッジファンド、ワクスフォード・キャピタルのパートナー、リチャード・シャピロ氏は「今はかつてなかったほど多数のファミリーオフィスがある」と話す。ファミリーオフィスは富裕層一族のために投資ばかりでなく税金から休暇の計画、住宅購入までとさまざまな個人的あるいは金銭面の問題を処理する。多数の年金基金がヘッジファンドへの資金配分を減らしたりこの資産クラスへの投資をやめたりする中で、ヘッジファンド業界が富裕層に向かって大きく門戸を開くのは当然の成り行きだ。
  カンタベリー・コンサルティングで富裕層一族にアドバイスするJD・モンゴメリー氏によれば、新規投資家からの資金を厳密に制限したり受け入れを拒否していたようなファンドが今は投資を受け入れるばかりか場合によっては最低額を引き下げたりしている。そのほか、ポートフォリオにレバレッジを利かせるなどの特別な投資条件を提供したり、運用報酬を徴収できる最低リターンを設定するなどの譲歩を、ファミリーオフィスの投資責任者らはヘッジファンドから引き出しているもようだ。  
原題:Hedge Fund Strife Gives Rich Families New Swagger With Managers(抜粋) Pfd

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-09/OO1P316K50XS01


http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/810.html

[戦争b20] 米国務長官、シリア攻撃で北朝鮮に警告=近海に空母派遣で圧力 アサド政権へ圧力強化 攻撃後シリア政策で高官の見解にばらつき
米国務長官、シリア攻撃で北朝鮮に警告=近海に空母派遣で圧力

ティラーソン米国務長官=5日、ワシントン(AFP=時事)
 【ワシントン時事】ティラーソン米国務長官は9日の米ABCテレビのインタビューで、化学兵器を使ったシリアに対する米国の攻撃に関連し、「国際合意に違反し、他(国)の脅威になれば対抗措置を受けるというメッセージだ」と述べ、国連決議に違反し、核開発を続ける北朝鮮に警告を発した。ただ金正恩体制を転換することは米国の目的ではないとも語った。
〔写真特集〕シリア内戦〜米ミサイル攻撃で破壊されたシャイラト空軍基地〜

 ティラーソン長官は、2013年に米国とロシアがシリアの化学兵器廃棄で合意したことを踏まえ、廃棄されたはずの兵器が使用された事態を重視。国際的な約束を守らない国は対抗措置を受けると明言するとともに、国際合意に反して核開発を続け、ミサイル発射などの挑発行為を繰り返す北朝鮮をけん制した。
 一方で、米国の目的は朝鮮半島の非核化であり、北朝鮮の体制転換ではないと言明した上で、米国が金正恩朝鮮労働党委員長の暗殺を検討しているとの報道には「そうした計画は把握していない」と否定した。
 またマクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)は9日のFOXニュースの番組で、米海軍の原子力空母カール・ビンソンがシンガポールから朝鮮半島近海に向かうと伝えられていることについて「妥当な行動だ」と、事実関係を認めた。
 さらに同補佐官は「トランプ大統領は米国民や同盟国に対する脅威を排除するためのあらゆる選択肢を用意するよう指示した」と説明。北朝鮮に圧力をかけるため、空母派遣以外の措置も検討していることを示唆した。 (2017/04/10-10:37)
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http://www.jiji.com/jc/article?k=2017041000323&g=int


 

 

G7外相会合、シリアへのミサイル攻撃巡り米国の説明要請へ

「米国は表向きは同意すると言いながら裏で何の根拠も示していない」

World | 2017年 04月 10日 11:07 JST 関連トピックス: トップニュース


[ルッカ(イタリア) 10日 ロイター] - イタリアのトスカーナ州で10日から開催される先進7カ国(G7)外相会合では、シリア内戦が主要議題となる見通しで、米軍によるシリア空軍基地へのミサイル攻撃を巡り欧州諸国や日本は米国に明確な説明を求めるとみられる。

議長国イタリアはシリアの6年にわたる内戦の終結を目指した国連の取り組みについて、共同声明で後押しすることを望んでいる。

米国は6日、シリア北部への化学兵器攻撃の拠点となったとされる空軍基地に対するミサイル攻撃を実施。トランプ大統領は、これまでの米政権よりも他国の問題への干渉を控える姿勢を示唆してきたため、この攻撃に外交関係者の多くは当惑している。

ただ、欧州諸国の大半が求めているように、米国がアサド政権の退陣を目指しているかは定かではなく、G7外相会合ではティラーソン米国務長官が米国の立場について他国から説明を求められる見通し。

ヘイリー米国連大使は週末に、シリアの政権交代はトランプ氏にとっての優先課題だと述べた一方で、ティラーソン国務長官は8日、最優先課題は過激派組織「イスラム国」(IS)の打倒だと語った。

欧州諸国は政権移譲を通じたシリア内戦の政治的解決に米国が完全に同意するよう求めているため、米高官の見解にばらつきがあることに懸念が生じている。

欧州の外交当局者は、「米国は表向きは同意すると言いながら裏で何の根拠も示していない」と批判した。

2日間の日程で行われる外相会合では、シリアのほか、北朝鮮やロシアを巡る問題、リビア情勢、テロ対策、イランとの関係なども議題に上るとみられる。
http://jp.reuters.com/article/g7-foreignminister-meeting-idJPKBN17C04K

 

米が北朝鮮に圧力 国務長官、対抗措置を示唆「核兵器を持たない国だけを選んで横暴に攻撃してきたのが歴代米政権だ」
2017/4/10 10:27
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 【ワシントン=永沢毅、ソウル=山田健一】トランプ米政権が北朝鮮への圧力を強めている。ティラーソン国務長官は9日の米テレビ番組で、先のシリアへの攻撃を引き合いに「国際合意に違反し他国への脅威になるなら、いずれかの時点で対抗措置をとる」と話した。国際合意に反してミサイル発射を繰り返す北朝鮮を強くけん制した。米海軍は8日、当初予定を変えて朝鮮半島周辺に向け原子力空母カール・ビンソンを派遣した。

 ティラーソン氏は9日、米ABCテレビなどに出演し米のシリア攻撃を北朝鮮はどう受け止めるべきかと問われ「他国への脅威となるなら、対抗措置がとられるだろう」と述べ、北朝鮮への警告の意味があると示唆した。一方で「我々の目的は朝鮮半島の非核化と明確にしている」と強調し、一部で伝わっている北朝鮮の体制転換が目的ではないとの考えを示した。

 同氏は先の米中首脳会談での協議にも触れ「緊張感は高まり、なんらかの対応をせざるを得ない状況だと(中国側は)はっきり理解したはずだ」と述べ、北朝鮮問題での中国の対応を促した。

 米海軍はシンガポールを8日出港した空母カール・ビンソンを朝鮮半島に向けて派遣した。米メディアによると、オーストラリアに向かう当初の予定を変更した。米海軍は声明で「西太平洋における米国の権益を守る。一番の脅威は北朝鮮だ」と強調。北朝鮮を抑止するため「米軍のプレゼンス(存在感)を示す」狙いがあると明かした。

 マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)は9日、米FOXテレビに出演し、米空母の動きについて北朝鮮による一連の挑発に対する用心のためだなどと説明した。その上で「大統領は米国民と同盟国への脅威を取り除くためにあらゆる選択肢をとる準備がある」と述べた。

 北朝鮮外務省は8日、朝鮮中央通信を通じ、米軍のシリア攻撃について「主権国家に対する明白な侵略行為で絶対に容認できない」とする報道官談話を発表した。「核兵器を持たない国だけを選んで横暴に攻撃してきたのが歴代米政権だ」と主張し、核兵器の開発を進める姿勢も示した。

 北朝鮮では11日に国会に相当する最高人民会議が招集され、15日には故金日成主席の生誕105周年を迎える。重要政治日程に合わせ、北朝鮮が核実験やミサイル発射などの新たな挑発に出る可能性がある。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM10H3B_Q7A410C1MM0000/

 

米、アサド政権へ圧力強化=ロシア・イランは反発

6日、米フロリダ州パームビーチで、シリアへの軍事行動についての声明を発表するトランプ大統領(AFP=時事)
 【ワシントン、カイロ、モスクワ時事】シリア軍が化学兵器を使用したと断定し、対抗措置として同国空軍基地へのミサイル発射に踏み切ったトランプ米政権は、追加攻撃もちらつかせながら、アサド政権への圧力を強めていく構えだ。これに対し、アサド政権や後ろ盾のロシア、イラン両国は反発を強め、対立が深刻化している。
〔写真特集〕シリア内戦〜米ミサイル攻撃で破壊されたシャイラト空軍基地〜

 トランプ大統領は8日、議会に宛てた書簡で、6日のミサイル攻撃に関し、アサド政権軍の化学兵器使用能力をそぎ、化学兵器の拡散を阻止する目的で指示したと説明した上で、「必要かつ適切なら追加の行動を取る」と強調した。ヘイリー米国連大使も、7日の国連安保理緊急会合で「もっとやる用意がある」と追加攻撃の可能性に言及した。
 また、ティラーソン米国務長官は9日のCBSテレビで、ロシアが、シリアの化学兵器廃棄に関する2013年の米ロ合意の順守に失敗したと指摘。「多くの子供や罪のない市民の殺害を招いた」と批判した。長官は11日からのロシア訪問で、ラブロフ外相とシリア問題を協議する意向だ。

シリアのアサド大統領=国営シリア・アラブ通信が2月7日配信(AFP=時事)
 一方、国営シリア・アラブ通信によると、アサド大統領は9日、イランのロウハニ大統領と電話会談し、米国のミサイル攻撃について「(反体制派の)士気を高めるという目標の達成に失敗した」と強調した。ロウハニ大統領も、攻撃を「シリアの主権とあらゆる国際法に違反する侵略行為だ」と非難した。
 ロシア大統領府は9日、プーチン大統領とロウハニ大統領が電話で会談し、米国のシリア攻撃に関し「容認できない」との認識で一致したと発表。両首脳は、シリア問題で引き続き緊密に連携していくとともに、化学兵器使用疑惑では客観的な調査を求めることを確認した。 
 米国はシリアでの軍事作戦について、過激派組織「イスラム国」(IS)打倒を最優先させる方針を維持するとみられ、ティラーソン長官も訪ロでそうした姿勢を説明する見通し。だが、今回のミサイル攻撃をめぐる対立の深まりで、シリア内戦の政治解決がさらに困難になる恐れもある。(2017/04/10-11:30)
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http://www.jiji.com/jc/article?k=2017041000399&g=int

 


米政権、ミサイル攻撃後の対シリア政策で高官の見解にばらつき

[ワシントン 9日 ロイター] - 米軍によるシリア空軍基地へのミサイル攻撃を巡るトランプ政権高官の9日の発言では、対シリア政策の展望にばらつきが見られ、シリアのアサド大統領の退陣が米政権の目標なのかどうか、疑問が浮上している。

米国は6日、シリア北部への化学兵器攻撃の拠点となったとされる空軍基地に対するミサイル攻撃を実施。マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)を含む複数の米当局者は、米国は必要な場合にさらなる措置を講じる用意があると表明した。

ヘイリー米国連大使はNBCの番組で、米国はシリアにおける「複数の優先事項」があると発言。アサド大統領が政権を握る限り、地域の平和は実現できないとの認識を示した上で、米国は退陣に向けたプロセスを「確実に推進する必要がある」と語った。

一方、ティラーソン国務長官のシリア政策に関する発言は国連大使の発言とはニュアンスが異なった。

ティラーソン長官は、米軍のミサイル攻撃はアサド政権による化学兵器の使用を阻止するためだけに行われたと説明。ABCの番組では「シリアにおける米軍の態勢に変更はない」と語った。

長官はまた、シリアにおける米国の優先事項は過激派組織「イスラム国(IS)」の打倒であり、ISの打倒後に米国はシリアに安定をもたらす「政治的プロセス」に関心を移すことが可能になると述べた。

マクマスター大統領補佐官はフォックス・ニュースの番組で、アサド大統領を退陣させるべきかどうかについて、「われわれがその変化をもたらす当事者であるとは言っていない」と語った。

米国の議員は総じてシリア空軍基地へのミサイル攻撃を支持しているものの、トランプ政権の対シリア政策が明確でないことを懸念する声が一部の共和党議員から上がっている。

共和党のルビオ上院議員はABCに対し、「アサド政権に将来はないとしたヘイリー国連大使の発言と、ティラーソン国務長官の今朝の発言は一致していないようだ」と指摘。アサド政権の今後に関与しないままIS打倒に専念するとした国務長官の戦略は機能しないとの見方を示した。

米、シリアにミサイル攻撃
トランプ氏、シリア大統領への強硬姿勢強める 軍事行動検討も
トランプ政権、巡航ミサイルでシリア攻撃 化学兵器使用を非難
http://jp.reuters.com/article/mideast-crisis-syria-usa-idJPKBN17C037


2017年 03月 31日 12:10 JST

米、シリア政策を転換 「アサド退陣」にこだわらず=米国連大使

[ニューヨーク 30日 ロイター] - 米国のヘイリー国連大使は30日、内戦が続くシリアについて、トランプ米政権は今後、オバマ前政権の方針を転換し、アサド大統領の退陣にこだわらないと語った。

アサド氏の退陣を求める欧州諸国と対立するこの方針転換を巡っては、少なくとも2人の共和党上院議員が強く非難した。

ヘイリー氏は、「前政権の方針を必ずしも重視しない」とした上で、「シリア国民のために何ができるのか、必要なのは誰か」を検討することがトランプ政権の「優先事項」と述べた。

ティラーソン米国務長官は30日、訪問先のトルコのアンカラで、アサド氏の長期的な立場は「シリア国民によって決定されるべき」と語った。
http://jp.reuters.com/article/mideast-crisis-syria-usa-haley-idJPKBN172092
http://www.asyura2.com/17/warb20/msg/108.html

[アジア22] 米中首脳会談の結果を、中国はどう受け止めたか?  韓国人が「嫌いな国」、中国が日本を抜いて第2位に浮上  
米中首脳会談の結果を、中国はどう受け止めたか?
2017年4月10日(月)06時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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米中首脳会談、初日の晩餐会 Carlos Barria-REUTERS
中国は米中首脳会談の成果を大きく強調したが、共同記者会見もないという異常事態。会談直前の北朝鮮のミサイル発射と会談中の米国によるシリア攻撃により顔に泥を塗られながら、習近平が笑顔を保った訳とは?

顔に泥を塗られながら、笑顔を保った習近平
米中首脳会談の開催を目前にした北朝鮮は、4月5日、またもやミサイルを発射した。

トランプ氏が大統領選中に「ハンバーガーでも食べながら金正恩(キム・ジョンウン)と話をしてもいい」という主旨のことを言ったものだから、北朝鮮はトランプ氏が大統領に当選した昨年の11月8日から今年2月12日まで、ミサイル発射を控えていた。ひょっとしたらアメリカの次期大統領が自分と会ってくれるかもしれないと期待していたからだろう。 

北朝鮮には「アメリカに振り向いてほしい」という強い願望がある。金正恩のあまりのならず者ぶりに今では見えなくなっているが(そして感覚的に受け入れにくいが)、1953年に休戦協定で終わった朝鮮戦争を停戦協定(平和条約締結)に持って行ってほしいというのが、もともとの始まりではあった。53年7月に南北軍事境界線の板門店で休戦協定に署名したのは北朝鮮とアメリカだ。だからアメリカに振り向いてほしい。停戦になれば、在韓米軍の必然性が消える。「ならず者国家」は、たしかに今ではもうそれだけではなくなっている。核保有国として認めろという姿勢を崩していない。

しかしアメリカ政治に詳しい早稲田大学の中林美恵子氏によれば、アメリカ政界(の一部)では「いっそのこと北朝鮮とは平和条約を結んだ方がいいのではないか」という声が、いま出始めているとのこと。

―――

だが、その声はまだ小さいのだろう。

2月12日に北朝鮮がミサイル発射の抑制を破ったのは、2月3日に米韓の間でTHAADの年内配備で意見が一致したからであり、2月10日に開催された日米首脳会談で北朝鮮に対して核・ミサイル開発の放棄を要求することを意思表明したからだろう。この時点で、「トランプは自分とハンバーガーを食べることはない」と判断したにちがいない。

だから安倍首相が訪米してトランプ大統領と首脳会談を行った最終段階でミサイル発射を再開している。

となれば、4月5日の北朝鮮によるミサイル発射は、米中首脳会談を牽制するために行なったものと考えるのが普通だろう。

次のページ 夕食会さなかのシリア攻撃

しかし中国の外交部報道官は、「このたびの北朝鮮のミサイル発射と米中首脳会談は関係がない」と言ってのけた。当然、中国としては、トランプ大統領から「もし中国が協力しなければ、アメリカ単独で行動してもいい」と言われ、北朝鮮からも泥を塗られたとなれば、訪米する習近平国家主席の威信に傷がつくから、関係性を否定したいだろう。

―――

それだけでも十分な痛手を負っているのに、今度はアメリカ時間の6日夕方、習近平国家主席夫妻がトランプ大統領夫妻の招きを受けて華麗なる晩餐会をフロリダの高級別荘で披露しているというのに、そのさなかにアメリカがシリアに向けてミサイルを59発も発射していたのだから、習近平国家主席の驚きは尋常ではなかったにちがいない。夕食後にシリア攻撃情報を知った習近平一行は、そそくさと宿泊先に引き上げたと言われている。

アメリカの電撃的なシリア攻撃は、トランプ大統領の「何なら北朝鮮に対してアメリカ単独で行動してもいいんだよ」という言葉が、脅しではなく「本当に実行されるかもしれない」という現実味を帯び、習近平国家主席には相当のプレッシャーになったにちがいない。

もっとも、トランプ大統領はオバマ前大統領とは違うんだということをアメリカ国民に知らせたいという意図から、唐突とも言えるほどの(迅速な?)決断をしたのだろうが、それにしてもタイミングがあまりに合いすぎた。今度はトランプ大統領によって習近平国家主席は顔に泥を塗られた形だ。

―――

習近平はその場でトランプ大統領に対して「化学兵器の使用には反対する。トランプ大統領の決断に賛同する」かのようなリップサービスまでしているが、心は裏腹だっただろう。宿泊先では、その逆のことが討議されたにちがいない。

その証拠に、中国共産党が管轄する中央テレビ局CCTVは、習近平国家主席の偉業を讃えると同時に、米中首脳会談とは全く関係ない形でアメリカのシリア攻撃を伝え、特にロシアやシリア側の抗議声明に重きを置いて繰り返し報道し始めた。シリアのアサド大統領が「シリア政府は絶対に化学兵器を使っていない」と抗議している声明を何度も報道したし、中でも「果たして、シリアのアサド政権側が化学兵器を使ったのだろうか」「その十分な検証もなしに、アメリカがシリアを攻撃したのは拙速だ」「これはシリアに対する侵略行為だ」「アメリカのこのミサイルで一般市民や子供が大勢死亡している」「この攻撃はISテロ組織を勇気づけ喜ばせただけだ」というシリアやロシアの抗議声明や評論家の意見に重きを置いて報道した。

―――

それでも翌日、トランプ大統領と二度目の会談に入った習近平国家主席は、笑顔を絶やすことがなかった。

なぜか――?

次のページ 中国では会談をどう伝えたか

それは、今年の秋に党大会があるからだ。

3月は全人代(全国人民代表大会)があったし、5月には一帯一路の初めてのサミットに没頭しなければならない。6月に入れば夏の北戴河の集まりにおける次期党大会の人事配置に着手し始める。したがって、訪米時期としては4月しかなかった。もちろん日本やイギリス、ドイツあるいはカナダなどの首脳がトランプ大統領との首脳会談をつぎつぎとこなしている中、中国がそう遅れととったのでは「威信」にかかわる。それも訪米を急いだ理由の一つだ。

その割に、トランプ大統領を前にした習近平国家主席の表情は、おもねるように委縮し、いつもの、あの「威張り過ぎた」表情や「満面の笑みサービス」は消え、始終「ともかく泥を塗られても屈辱に耐え、一見、柔和な笑みを絶やさず、トランプ大統領と対等に渡り合っていますよ」という「映像用のポーズ」だけは保つことに全力を注いでいるように映った。

中国共産党中央委員会の習近平総書記としては、何としても、米中首脳会談を輝かしいものとしなければならなかったのである。

米中首脳会談は「大成功!」と中国国内報道
米中首脳会談に関する中国国内における報道は、きらびやかさに満ち、ただひたすら中国の外交勝利を讃えるものに貫かれている。

まず初日の晩餐会に関しては習近平国家主席夫妻とトランプ大統領夫妻が、「いかに互いを尊重して円満な雰囲気の中で行なわれたか」を讃えた。

たとえば中国共産党の管轄下にある中央テレビ局CCTV-1のニュースやCCTV13(最初に15秒間ほどの宣伝がある)をご覧いただきたい。

そこでは概ね、以下のような説明をしている。

――習近平は「トランプ大統領と非常に有意義な会談をおこない、中米関係に関して重要なコンセンサスを持つに至った。われわれは相互尊重と互利互恵の基礎の上に立って、貿易投資や外交安全、サイバー・セキュリティ、人文交流など広範な領域において協力を遂行していくことを確認し合った」と語り、一方、トランプは「習主席の指導のもと、中国が際立った発展を遂げたことを、世界中の人が尊敬し注目している。習近平主席とは初めて会談したが、さまざまな意見を交換することができて、実にすばらしい話し合いを持つことができ、友情深い関係を築くことができた」と述べた。

このように、やたら「晩餐会は実に友好的に雰囲気に溢れていた」と褒めそやした。
CCTV13にあるトランプ大統領の5歳の外孫(イヴァンカさんの娘)が『茉莉花』(モア・リー・ホワ)という歌を中国語で歌った場面は、新華社が特に報道したため、他の多くのメディアが転載した。たとえば「鳳凰網」や「捜狐」などがある。
http://tv.cctv.com/2017/04/08/VIDEb4QHH6aeqEiV0BqFTwdd170408.shtml


次のページ 開かれなかった記者会見

この歌は中国人民解放軍専属の歌手だった彭麗媛夫人が歌ったことでも有名で、習近平国家主席がまだ浙江省の書記をしていた2005年の春節の宴で歌った映像も残っている(「春節の宴」は日本の「紅白歌合戦」に相当するようなCCTVの恒例行事)。

イヴァンカさんは自分の子供たちに中国語を覚えさせ、今年のワシントンにある中国大使館で春節の催しが開かれたときには、子供たちを連れて中国大使館に行ったこともある。

彭麗媛夫人はそのことを最大限に利用して、「夫人外交」を展開した。

習近平国家主席のこのたびの外訪は、フィンランド訪問を含めて専門のウェブサイト >「出訪Visit」(新華網)などが作成され、大々的に「外交勝利」を謳っている。

中国にとって「勝利」ではなかったはず――共同記者会見もなく
二日目(現地時間7日)の実務的会談や二人だけの散歩に関しては、多くのメディアが「新華網」の写真などを転載している。たとえば「中華網」などがあり、動画ではCCTV13(広告が二つあった後に画面が出てくる)で観ることができる。

いずれも「習近平・トランプ」の緊密さと中国の「外交勝利」を讃えるものばかりだ。

しかし共同記者会見さえなかった首脳会談が、「勝利」だとは、とても思えない。

結果は?
結果的に米中間で、おおむね以下のような方向性が確認されたようだ。

●貿易に関しては100日間かけて両国間で協議解決する。

●北朝鮮に関しては米中とも北の暴走を食い止めることでは一致しているが、方法論に関しては平行線。中国はあくまでも米朝が対話のテーブルに着くことを要求し、アメリカは(シリア同様)、いざとなったら軍事攻撃をとることを選択肢の一つとする。同時に北と関係を持っている中国企業を個別に叩いていく。これに対して習近平側は、明確な回答を避けている(後者に関しては、黙認したとも受け取れる)。

では、今後中国はどうするのか?
これに関しては、筆者の推測だが、中国はいま、以下のような可能性を考えているのではないだろうか。

○アメリカがシリアを攻撃したことにより、北朝鮮がさらに核・ミサイル開発を加速させる危険性がある。

○アメリカがシリアに力を注がなければならなくなった分、北朝鮮には、それほど大きな力を注げなくなる可能性がある。だから、ひょっとしたら逆に北への武力攻撃は抑制するかもしれない。

○アメリカはロシアを完全に敵に回したので、北への攻撃がしにくくなる。全面戦争になる可能性が高まるから、決断を延期するかもしれない。

次のページ 最初に狙われるのは在日米軍基地

○あるいは逆に5月9日になると、韓国に親中・親北朝鮮・反米の政権が誕生する可能性があるので、その前に北への武力攻撃を断行するかもしれない。事実アメリカは8日、韓国に核兵器を配備するかもしれないと発表した。となれば朝鮮半島における戦争が現実味を帯びてくる。

○いずれにしても中国へのプレッシャーは高まり、中国としても北への圧力を強化するしかない。中国への圧力という意味では、シリア攻撃と首脳会談は一定の効果を発揮した。

日本は?
まだまだあるが、長くなり過ぎた。

少なくとも日本としては日米韓の同盟が強化できるよう、日韓関係を修復しなければならないだろう。しかし韓国は自国の安全よりも慰安婦問題を重視し、それによって選挙民の心をつかもうとしている。この(愚かな)現状を、日本は打破できるのか。

そして武力攻撃が始まったら(始まらなくともその可能性はあるが)、北が最初に狙うのは在日米軍基地であることを肝に銘じなければならないだろう。アメリカによる北への武力攻撃は、ひとごとではない。いかにして日本国民を守るか、真剣勝負が目前に迫っている。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/04/post-7363_2.php

 

韓国人が「嫌いな国」、中国が日本を抜いて第2位に浮上
China Overtakes Japan to Become One of South Korea’s Least Liked Countries
2017年3月24日(金)16時36分
エレノア・ロス
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中韓関係悪化の余波で閉店した中国・杭州市のロッテマート REUTERS
<THAAD配備をめぐって中韓関係が悪化する中、これまで長らく北朝鮮に次いで「嫌いな国」第2位だった日本を中国が追い抜いた>

過去数十年、日本と韓国の関係はぎくしゃくしていた。戦前に日本が朝鮮半島を併合し、日本の支配下では様々な蛮行があった。そんな歴史的背景から、韓国は日本をずっと毛嫌いしてきた。

しかし韓国のシンクタンク、アサン(峨山)政策研究院が今週発表した調査結果によると、韓国国民の間で中国への反感が高まる中、これまで北朝鮮に次ぐ「嫌いな国」2位だった日本が中国に抜かれたことがわかった(最も「嫌いな国」が北朝鮮なのは変わらず)。

「最も好き」の10から「最も嫌い」の0までの点数で評価するこの調査で、中国は昨年の調査結果の5点から急落して、今回は3.21点だった。日本は昨年と変わらず3.33点だった。

韓国世論の変化は、北朝鮮からのミサイルを迎撃する米軍の最新鋭ミサイル防衛システムTHAAD(高高度防衛ミサイル)の韓国への配備をめぐって、中国との関係が悪化していることを反映している。中国は度々、THAAD配備は中国の安全保障上の脅威だと韓国を非難している。

【参考記事】THAAD配備へ中国が「韓国叩き」 次なる標的は米国か

中国の王毅外相は、昨年公表した声明で、「(THAAD配備は)関係国が必要な防衛を逸脱している。もし配備されれば、中国とロシアのそれぞれの安全保障戦略に直接に影響することになるだろう。朝鮮半島の核問題の解決を脅かすだけでなく、すでに緊張が高まっているところへ、火に油を注ぐことになる。さらに朝鮮半島の軍事的均衡を崩してしまう可能性もある」と述べている。

韓国製品ボイコットを呼びかけ
今年2月、中国はアメリカと韓国の双方に対して、米韓合同軍事演習に参加する部隊の数を減らし、規模を縮小するよう求めた。

この演習では毎年、北朝鮮からの攻撃を想定した実戦演習が行われているが、中国は今月、朝鮮半島の緊張緩和のために軍事演習を縮小するべきだと強く主張した。

【参考記事】サードは無力? 北朝鮮の新型ミサイルは米韓の戦略を無効にする

今年の軍事演習に対して、北朝鮮は例年にも増して神経を尖らせ、「我々の自主権が行使される領域にたった一つの火の粉でも落とせば、無慈悲な軍事的対応が開始されるだろう」という警告を出している。

中国は昨年以降、韓国へのTHAAD配備を批判し、韓国が中韓関係を脅かしていると警告していた。そして今年2月になると、中国政府やメディアは、韓国製品や韓国への観光旅行のボイコットを呼び掛け、特にTHAAD配備の用地を提供したロッテグループの中国国内のショップなどが標的になっている。

ただし、日韓関係が好転したわけではない。いわゆる従軍慰安婦問題に関しては、2015年に、日本側が「お詫びと反省」の気持を示し、この問題の最終的な解決とすることで日韓両国が合意に達した。しかし昨年12月、プサンの日本総領事館前に慰安婦像が設置され、反発した日本政府が長嶺駐韓大使を帰国させるなど、日韓関係は最近になって再び冷え込んでいる。

【参考記事】慰安婦問題、歴史的合意を待ち受ける課題

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中国が手に負えなくなったゴミの山
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/03/2-48.php
http://www.asyura2.com/17/asia22/msg/557.html

[政治・選挙・NHK223] 「待機児童ゼロ」先送りへ 0歳児保育見直しの声も 国も自治体も需要を無視、需要予測のミスマッチ 公共投資は本当に無駄か?
「待機児童ゼロ」先送りへ 0歳児保育見直しの声も
2017/4/10

待機児童解消を訴えるイベントが3月に開かれた(東京都千代田区)
 今年も定員超過で認可保育所への入所を断られた待機児童が多数、生まれています。2013年4月、安倍晋三首相は17年度末までに「待機児童ゼロを目指します」と明言しました。期限まで1年を切りましたが、達成は困難な状況です。13〜17年度の5カ年で約50万人分を拡充するなど政府も手は打っています。ただ待機児童は13年(4月1日時点=以下同)2万2741人から16年2万3553人へと逆に増えています。

 誤算は想定以上に利用希望者が増えたこと。受け入れ人数の拡大が「子どもを預けて働きたい」という潜在需要を掘り起こす構図が続いています。政府は6月に新たな保育所拡充計画を立てます。待機児童ゼロの目標達成も新計画に持ち越される見通しです。ただその実現も簡単ではありません。保育士不足が続いているからです。17年2月時点の保育士の有効求人倍率は2.66倍に上り、慢性的な採用難に陥っています。必要な保育士を確保できず保育所の整備計画を見直す事業者も出ています。

 保育士不足に対処するために、0歳児保育の縮小を求める声があります。保育士を手厚く配置する必要がある0歳児にはコストと人手が特にかかるからです。一橋大学の宇南山卓准教授によると、東京都大田区の場合、0歳児1人を預かる公費負担は毎月約62万円。年齢が上がるにつれ負担は減り、4〜5歳児は月約10万円で済みます。「応益負担の原則を導入し、0歳児の保育料を上げるのも一手」というのが宇南山准教授の意見です。「1歳からだと入りにくいので無理して0歳のうちに保育所に入れようとする保護者も多い。増収分を待遇改善など保育士確保に使って1歳から確実に入れる状況にすれば、保護者の被る不利益も大きくない」と指摘します。

 ただ、保育料の値上げには当然反発が予想されます。そもそも保育の受け皿拡充は、5%から8%へ消費税率アップする際の見返りに示されたもの。増税分を財源に待機児童の解消を目指すはずが、さらなる負担増を求められても保護者は納得できません。消費税率を10%に引き上げるなどして財源を確保することが先決でしょう。

■宇南山准教授「コスト問題から目背けるな」

 政府が待機児童ゼロを政策目標に掲げて16年がたとうとしている。保育所を整備すればするほど利用希望者が増えて、いつまでも保育所不足が解決しない。どうすれば待機児童ゼロを達成できるのか。経済学者として長年保育問題をみてきた宇南山卓・一橋大学准教授に秘策を聞いた。

宇南山卓・一橋大学准教授
 ――供給増が新たな需要を掘り起こす。こんな追いかけっこはいつまで続くのですか。

 「足元の待機児童数を目安に保育所をどんなに増やしても待機児童ゼロはなくならないでしょう。根本的な問題は保育料が安すぎること。行政が1人の子どもに掛けるコストと比べて、実際に保護者が保育料として支払っているコストが格安です。乳幼児を育てる保護者にすれば家で世話するよりも預けた方が得。なのでいつまでたっても潜在需要を掘り起こし、待機児童はなくなりません」

 「例えば東京都大田区のケースでみてみます。0歳児を1人預かるのに、行政は月額約62万円掛けています。対して保護者が支払う保育料は月額上限6万円強。言い換えるならば毎月56万円も公的な補助を受け取っていることになります。もし働かずに家で子どもを世話していれば公的補助はありません。でも保育所を利用すれば56万円の補助を得られます。実際に現金で受け取れるわけではありませんが、どっちが得かは明白です。現状の保育所制度は利用者に手厚い仕組みになっていますが、利益の多寡に応じて受益者が負担するという『応益負担』の原則を導入し、保育料を今より高く設定すべきだと思います。そうすれば利用希望者の増加に歯止めがかかり、待機児童はなくせます」

 ――確かに保育料が高くすれば、待機児童もゼロに近づくでしょう。でも日本は一方で女性活躍推進にも取り組んでおり、仕事と子育ての両立が困難になっては本末転倒ではないですか。

 「すべての乳幼児の保育料を上げる必要はありません。問題は0歳児です。0歳児の保育料を上げるだけで状況はかなりよくなると思います。先の大田区のケースでも、区の負担額は1歳児27万円、2歳児24万円、3歳児12万円、4〜5歳児10万円と年齢が上がるにつれて安くなっています。0歳児の負担が突出して高いのです。0歳児保育に応益負担を徹底すれば保育料収入が増える分、財政に余裕も生まれます。増収分を保育士の待遇改善に役立てれば保育士不足も緩和できます」

 「国が定める保育士の配置基準は0歳児に一番手厚く、年齢が上がるほど少ない保育士でも多くの子どもを見られるようになっています。乳児3人に保育士1人を付けなくてはいけません。でも1歳児は保育士1人で6人を見られます。預かる0歳児を減らすだけでも、同じ保育士の数でも、より多くの子どもを預かれます。この点からも保育士不足の解決になるはずです」

 「もちろんひとり親であったり低所得世帯だったりして、0歳児を預けてでも働かざるを得ない保護者もいます。そこへの配慮は必要です。保育料の軽減措置などで対応すればよいでしょう」

 ――保育所整備は少子化対策の側面もあります。国は希望出生率1.8を目標に掲げるなど出生率回復にも努めています。保育料値上げは少子化に拍車を掛けませんか。

 「保育所整備で恩恵を受けるのは働いている保護者です。少子化対策というならば仕事の有無で区別せず、もっと幅広い観点から施策を検討すべき問題だと思います。それにそもそもなぜ0歳児から子どもを預けようとするのかを考えなくてはいけません。それは0歳児のうちに保育所を確保しておかないと、1歳になってからでは入りにくい状況があるからです。保護者の多くが0歳児保育を本当に望んでいるわけではありません。0歳児の枠を減らす代わりに1歳児以上の枠を拡充し、1歳から安心して入れる環境になれば行動は変わるはずです」

 「待機児童問題を語る際、コストの問題から目を背けてはいけません。0歳児保育にどれだけ公的コストがかかっているのかを多くの人は知りません。財源は無制限ではありません。限られたコストの中で、女性活躍推進と出生率回復をどれだけ実現できるか。社会全体で考えるべきです」

(編集委員 石塚由紀夫)


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http://style.nikkei.com/article/DGXMZO14938190V00C17A4EAC000?channel=DF010320171966

 

シリーズ「待機児童はなぜ減らないのか?」
国も自治体も0歳児保育の需要を無視、需要予測のミスマッチ
待機児減らない本当の理由@
2017/04/10
小林美希 (労働経済ジャーナリスト)
シリーズ「待機児童はなぜ減らないのか」では、いつまでたっても一向に改善されることのない待機児童問題の根本原因はどこにあるのか。「需要予測のミスマッチ」「非正規労働者の育児休業の実態」「共働きと長時間労働」「社会構造の変化」という点から解き明かしていく。
 「0歳でも保育園は激戦。なんとか滑り込めたが、本当なら、1歳くらいまでは自分で育てたかった」

 都内に住む古田茜さん(仮名、36歳)は、複雑な心境だ。何度か転職を経験して、今の職場で契約社員として働いて2年目での妊娠となった。「半年くらいでも育児休業を取りたい」と願い出ると、会社は育児休業を取ることを認めてはくれず、「産後8週の産後休業で職場復帰して働き続けるか、いったん辞めて産後に落ち着いたら復帰してください」と二者択一を迫られた。

 本来は、非正社員でも一定の要件を満たせば育児休業を取ることはでき、法律上、茜さんは育休を取ることができたが、「会社がそう言っている以上、闘えない。妊娠中でストレスを抱えたくない」と育休を断念。出産ギリギリまで働き、産後すぐに復帰することにした。食品関係の営業職の茜さんは非正規でも1日8時間のフルタイムに残業も多かったため、なんとか保育所に滑り込めたが、周囲にいる1日6時間勤務のパート社員は保育所には入ることができなかった。「1歳児になってからでは難しかっただろう」と痛感する。


(iStock)
 「残念ながら非常に厳しい状況になっているのは事実だ」。2月17日の衆議院予算委員会で、安倍晋三首相はこう答弁した。安倍政権では、2013年度から17年度末までに50万人分の保育の受け皿を用意して待機児童ゼロを掲げていたが、17年度末の待機児童ゼロについて断念した。

 昨年の今頃は匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね」が大きな反響を得て、待機児童問題が国会でも大きく取り上げられるようになった。保育所への入園申し込みの結果が出る2月以降、今年も「保育園に入れなかったという声が大きく聞こえてくるが、いったい、なぜ待機児童は減らないのだろうか。筆者は、0歳児保育の必要性が見落とされていることが大きな原因だと見ている。

 3月26日、日本経済新聞は「厚生労働省は、待機児童の解消に向け2018年度から、全国の保育所で1〜2歳児などの受け入れ枠を増やす。通常よりも多くの保育士が必要な0歳児枠をできるだけ減らし、浮いた保育士を1〜2歳児に振り向ける」との内容を報じた。1〜2歳児の保育士配置基準が子ども6人に対して保育士1人(「6対1」)であることから、配置基準が「3対1」と高い0歳児の枠をできるだけ減らして、1〜2歳児を増やそうという計画だという。この記事が事実であるか厚生労働省の保育課に確認をすると「事実無根」としている。ただ、行政側としては「コストのかかる0歳児はなるべく作りたくない」というのも本音だろう。

 ここ数年、待機児童の問題がクローズアップされると、これまで保育に熱心ではなかった自治体でも首長が保育政策の優先順位をあげ、対策に躍起になっている。しかし、いくら急ピッチで保育所を新設し、定員を拡充しても限界があり、追いつかない。限られた財源で保育所整備にだけ投資するわけにもいかない事情もある。特に、0歳児を1人預かるコストが月に40万?50万円もかかる場合もあり、自治体は頭を痛めているところだ。

 そのため、多くの自治体の保育課が「行政としては、育児休業の権利があるのですから、それを行使していただきたい。育児休業をとって安心して職場復帰できるよう1〜2歳児を拡充する」と口を揃える。その大義名分とは裏腹に、保育課長らが「財政を考えると、コストのかかる0歳児保育を増やしたくない」と本音を漏らす。

 ある自治体では、新規開設保育所を運営する事業者を公募する時に、表立っては言わないが「0歳児保育をしないとプレゼンしたほうが有利になる」(関係者)という徹底ぶりだ。待機児童解消に積極的に取り組む自治体の地方議員も「もうこれ以上できないというほどやっている。うちの自治体にこないで、待機児童の少ない郊外に住んで欲しい。なんとか保育ママなどを活用して家庭で子どもを見ることができないか」と、さじを投げたい状態だ。

需要予測のミスマッチ

 しかし、その0歳児を増やしたくないということが、そもそも需要予測のミスマッチを起こしているのだ。

 厚労省が2008年8月に行った「新待機児童ゼロ作戦に基づくニーズ調査」では、2017年度の潜在サービスニーズ量が推計されている。ひとり親家庭、フルタイム夫婦、フルタイムとパートの夫婦、パート夫婦の認可保育所の0〜2歳の利用意向は42.2%とされていた。

 2008年9月にリーマンショックが起こり、さらに需要は増えているだろう。保育を必要とする共働き世帯は予想以上に増えているはず。総務省「就業構造基本調査」(2012年)によれば、未就学児を育児している女性で無職の人のうち、就業を希望している人は170万人に上る。安倍政権は保育の受け皿を50万人用意すると言ったが、根本的にそれでも足りないのだ。

 そもそも国が掲げた「50万人」というのは、各自治体が試算した定員拡大の必要量を積み上げたものである。その試算方法は自治体によって異なるが、独自のニーズ調査をしたうえで、「子ども子育て会議」などを経て人口や就労状況を加味して利用率が検討されて、定員が決まっていく。ところが、その算出方法が適切でないことがあるのだ。

 ある自治体では、独自のニーズ調査で0歳児の利用希望が人口に対して6割であったが、「それでは多すぎるだろう」というだけの理由で3割に設定された。他の自治体でも、0歳の利用希望が5割だったが、「育児休業を前倒しして0歳児で預けるケースが目立つから、1歳の枠が増えれば0歳で預ける人が減るだろう」として、利用希望率を2割に設定するなど、まさに適当な「あんばい」がかけられている。これが、そもそも大きな間違いで、実際にはニーズ調査通り、5〜6割の0歳児保育の利用希望があるのではないか。

 3月31日に厚生労働省から発表された「2016年4月の保育園等の待機児童数とその後(2016年10月時点)の状況について」によれば、4月の待機児童数は0歳が3688人、1〜2歳が1万6758人だったが、10月になると0歳が2万2007人、1〜2歳が2万2183人になっており、0歳だけで1〜2歳と同等の数に膨らんでいることが分かる。

育児休業を取得できる恵まれた正社員

 こうした需要予測のミスマッチが起こるのは、自治体が前提に考えているのは主に、正社員のなかでも“育児休業を取得できる恵まれた正社員”となっており、非正規雇用労働のことが抜け落ちているからだ。非正規雇用が出産期の女性労働者の全体の半数を占めるようになっているが、非正規のほとんどが育児休業を取得できないからだ。すると、労働基準法で定められる産後休業8週だけで職場復帰せざるをえない。

 冒頭の茜さんも、「1歳まで育児をしてから預けるなど夢のまた夢。0歳のうちに子どもを保育所に入れなくて済むものなら入れたくなかった」と、毎日後ろ髪をひかれる思いで子どもを保育所に預けて仕事にでかける。この、女性の非正規雇用の増加に伴う0歳児保育の必要性が無視されているため、待機児童の減少を難しくさせているに他ならない。育児休業がどれだけ正社員のためのものである制度なのかが見過ごされている。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9269

 

前向きに読み解く経済の裏側
公共投資は本当に無駄なのか?
2017/04/10
塚崎公義 (久留米大学商学部教授)
 公共投資というと、「無駄な道路を作るために税金を使い、しかも景気も回復しない」と考えている人が少なくないようですが、筆者はそうは思っていません。今回は、公共投資の意義について考えてみましょう。


(iStock)
利用価値の小さい道路も多いが、必要な補修も必要な道路も多数

 公共投資と言うと、山奥に立派な道路を作るような「無駄」を想像する人も多いと思いますが、必要な道路や橋も多数作られています。最近では、高度成長期に大量に作られた道路や橋が耐用年数を過ぎつつ有り、その補修や補強だけでも莫大なニーズがあります。

 問題は、どうやって「無駄」な公共投資を減らして必要な公共投資を増やしていくか、でしょう。これは、「田舎の衰退を止めるために、田舎に道路等を作る」のか、「田舎の人に頼んで都会に移住してもらう」のか、といった大きな価値観の問題が背景にあるので難しいでしょうが、効率を考えれば後者が良いに決まっています。あとは、「生まれ育った場所を離れたくない」という田舎の人々の希望をかなえるために、都会の人々がどれだけ「自分たちの税金を使ってあげよう」と考えるのか、という問題でしょう。

 高度成長期なら、税収が急激に増えていたので、政治家が地元に立派な道路を作る事も容易でした。人口も増えていたので「国土の均衡ある発展」を目指す事も可能でした。しかし、これからは人口が減っていき、税収も伸びない中で、何を優先するのか、政治家も国民も真剣に考える必要があるでしょう。

景気対策としての有効性が落ちている?

 公共投資には、必要な橋や道路を作るという機能以外にも、景気を回復させるという機能があります。一石二鳥を狙った政策なわけです。問題は、バブル崩壊後に巨額の公共投資を行っても景気が回復しなかったため、「公共投資の景気回復効果が落ちた」と考える人が増え、「公共投資は無駄だ」という人も増えてしまったという事です。

 これは残念なことです。あれだけ大きなバブルが崩壊したのですから、公共投資を行なわなければ大不況になっていたはずの所、公共投資のおかげで、あの程度の不況で済んだのです。そこをしっかり認識する必要があります。理科系であれば、実験室の中でバブル崩壊を何度も引き起こし、公共投資を行った場合と行なわなかった場合の結果を比較することで公共投資の効果を測定することができるのかも知れませんが、実際の生きた経済では、それができないので、人々は「公共投資がなければ何が起きていたのか」、をなかなか想像できないのです。

 公共投資の効果が落ちていることは、その通りだと思います。しかし、それは公共投資が無駄だという事では有りません。景気が悪い時には公共投資が効きにくいので、より大量の公共投資を行なう必要があるのです。以下で、景気が悪い時には公共投資の効果が薄い理由をご説明しましょう。

公共投資には「乗数効果」がある……初心者向け解説

 公共投資が景気を回復させる効果は、必ずあります。公共投資そのものが失業者を雇うので、失業者は確実に減るからです。しかし、それだけではありません。雇われた元失業者が給料をもらって壊れていたテレビを買うとします。テレビメーカーは、テレビを増産するために失業者を雇います。

 テレビメーカーが増産のために新工場を建てれば、そのための鉄もセメントも機械設備も必要になりますから、これらの会社も増産のために元失業者を雇うかも知れません。そうでなくても、テレビメーカーに雇われた元失業者は居酒屋に飲みに行くとします。すると居酒屋が多忙になって……という具合に、当初の公共投資に雇われた元失業者の何倍もの人数が雇われることになるのです。こうしたことを乗数効果と呼びます。経済学者は雇われた人数ではなく、GDPの増加額を使いますが、考え方としては同じことです。

深刻な不況期は乗数効果が小さい

 深刻な不況期に公共投資を行なうとします。雇われた元失業者は、遠からず再び失業すると思って倹約するので、テレビを買う人は少ないです。テレビメーカーは、社内失業者(生産量が少ないので、社内でヒマにしている人)が大勢いるため、彼らの尻を叩くだけでテレビが増産出来ます。そこで、新しく失業者を雇うテレビ会社は稀です。工場についても、今の工場の稼働率が低いので、新しい工場を建てることは考えにくいでしょう。

 ろうそくの火はコップの水で消えますが、山火事はコップの水では消えません。「だから山火事には水が不要だ」というのではなく、「だから山火事には大量の水が必要だ」というべきでしょう。公共投資も同じことです。小規模な不況なら小規模な公共投資で回復するけれども、大規模な不況に際しては大規模ではなく「超大規模」な公共投資が必要なのです。

「公共投資の効果は一時的だが、財政赤字は永続する」という批判への反論

 「今年、政府が借金をして公共投資をするとします。今年の失業者は減るでしょうが、来年公共投資をしなければ、来年の失業者は昨年と同数になるはずです。したがって、景気の回復は一時的なものに留まります。一方で、今年政府が借りた金は、永遠に政府の借金として残ります。したがって、公共投資は無駄ではなく有害なのです」という人がいます。

 しかし、これは違います。以前、景気は自分では方向を変えないから、不況期には政府が公共投資で景気の方向を変える必要がある、と記しましたが、その視点に立てば、公共投資でひとたび景気の方向を上向かせてやれば、景気が勝手に回復・拡大していくので、途中で公共投資をやめても構わないのです。マッチで部屋を暖める事は出来ませんが、マッチでストーブに火を点ければ、部屋は温まっていくのです。

 景気がよくなっていけば、税収が増えますし、失業手当ても生活保護も減ります。失業対策の公共投資も続けなくて大丈夫です。長い目で見れば、公共投資を行って景気を回復させることが、財政の健全化にも役立つと考えて良いと思います。

公共投資は労働力不足なら一休みすべき

 公共投資の多くは、特に差し迫った期限はありません。それならば、景気が悪くて失業者が多い時に多く、景気が良くて労働力不足の時に少なく行なうべきです。現在は、景気が良いとも言えませんが、労働力不足ですから、公共投資は急ぐものだけで良いでしょう。

 東京オリンピックが終われば、おそらく建設労働者が失業するでしょうから、その時に大量に工事が発注できるように、資金面の準備も心の準備もしておきましょう。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9315
http://www.asyura2.com/17/senkyo223/msg/806.html

[経世済民120] 日銀総裁、国内景気「緩やかな回復続ける」金利上昇時損失引当「現時点では十分」倒産26年ぶり低水準 街角景気3カ月連続悪化

日銀総裁、国内景気「緩やかな回復続ける」
2017/4/10 10:24
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 日銀の黒田東彦総裁は10日午前、都内の本店で開いた支店長会議の冒頭あいさつで、国内景気は「緩やかな回復基調を続けている」と述べた。先行きについても「緩やかな拡大に転じていく」との見方を示し、従来の認識を維持した。

 消費者物価の先行きについては「0%程度から小幅のプラスに転じる」とし、1月の前回会議でのあいさつから表現を上方修正した。そのうえで「中長期的な予想物価上昇率が高まるにつれ、2%に向けて上昇率を高めていく」と語った。

 昨年9月に導入した新たな金融政策「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」について、2%の物価目標を「安定的に維持するため必要な時点まで継続する」と述べた。

 日銀は10日午後に全国9地域の景気情勢をまとめた4月の地域経済報告(さくらリポート)を公表する。前回リポートでは3地域の判断を引き上げ、引き下げはゼロだった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS10H0R_Q7A410C1EAF000/


日銀総裁、先行きの景気「緩やかな拡大に転じる」 
2017/4/10 9:52日本経済新聞 電子版
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 日銀の黒田東彦総裁は10日、都内の本店で開いた支店長会議の冒頭あいさつで、景気について「緩やかな回復基調を続けており、先行きは緩やかな拡大に転じていく」との見方を改めて示した。

 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、ゼロ%程度となっているが、「エネルギー価格の動きを反映して小幅のプラスに転じたあと、マクロ的な需給バラン…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL10HIO_Q7A410C1000000/?n_cid=DSMMAA10



日銀地域経済報告、9地域中、北陸の景気判断引き上げ 8地域は据え置き
2017/4/10 14:04
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 日銀が10日、全国支店長会議でまとめた4月の地域経済報告(さくらリポート)は、全9地域のうち北陸の1地域の景気判断を前回1月の報告から引き上げた。残る8地域は据え置いた。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL10HO0_Q7A410C1000000/

 


雨宮日銀理事、金利上昇時の損失引き当て「現時点では十分」 衆院決算委で答弁
2017/4/10 10:47日本経済新聞 電子版

 日銀の雨宮正佳理事は10日午前の衆院決算行政監視委員会に出席し、金利上昇(債券価格の下落)に伴う日銀の保有国債の評価損引き当てについて「現段階では十分に行っている」との見解を示した。民進党の原口一博氏の質問に答えた。

 雨宮理事は仮にイールドカーブ(利回り曲線)全体が1%上昇した場合、「保有国債の含み損は23.8兆円程度になる」と明らかにし、「量的緩和によるバランスシートの拡大時には(国債買い入れなどを通じて)収益が拡大し、緩和の出口では収益が減少する」と説明した。

 一方で日銀の会計処理方法が保有資産の簿価と額面価格の差を満期まで毎年均等に処理する償却原価法を採用していることを強調して「(相場変動に伴う)決算上での評価損の計上はない」と強調。緩和の出口に備えた引当金の積み立てなどで「毎期の収益の平準化もできている」と述べた。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

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http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL10HK2_Q7A410C1000000/


 

3月の街角景気、現状判断指数は3カ月連続悪化
2017/4/10 14:04
 内閣府が10日発表した3月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は47.4で、前の月に比べて1.2ポイント低下(悪化)した。悪化は3カ月連続。家計動向、企業動向、雇用がいずれも低下した。

 2〜3カ月後を占う先行き判断指数は48.1で、2.5ポイント低下した。低下は2カ月ぶり。小売や飲食を中心に家計動向が低下し、企業動向、雇用も低下した。

 内閣府は基調判断を「持ち直しが続いているものの、引き続き一服感がみられる」に据え置いた。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL07I15_X00C17A4000000/

平成29年3月調査結果(抜粋):景気ウォッチャー調査

今月の動き(3月)

3月の現状判断DI(季節調整値)は、前月差1.2ポイント低下の47.4となった。
家計動向関連DIは、住宅関連等が低下したことから低下した。企業動向関連DIは、非製造業等が低下したことから低下した。雇用関連DIについては、低下した。
2月の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差2.5ポイント低下の48.1となった。
家計動向関連DI、企業動向関連DI、雇用関連DIが低下した。
なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差2.1ポイント上昇の50.6となり、先行き判断DIは前月差2.5ポイント低下の49.0となった。
今回の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、「持ち直しが続いているものの、引き続き一服感がみられる。先行きについては、引き続き受注等への期待がみられる一方、人手不足やコストの上昇に対する懸念もある」とまとめられる。
全国の動向

1.景気の現状判断DI(季節調整値)
3か月前と比較しての景気の現状に対する判断DIは、47.4となった。家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてのDIが低下したことから、前月を1.2ポイント下回り、3か月連続の低下となった。

図表1 景気の現状判断DI(季節調整値)

景気の現状判断DI(表)

景気の現状判断DI(グラフ)
2.景気の先行き判断DI(季節調整値)
2〜3か月先の景気の先行きに対する判断DIは、48.1となった。家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてのDIが低下したことから、前月を2.5ポイント下回った。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/2017/0410watcher/watcher1.pdf
http://www5.cao.go.jp/keizai3/2017/0410watcher/menu.html



16年度の企業倒産件数、3%減の8381件 26年ぶり低水準 東京商工リサーチ
2017/4/10 13:00
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 民間調査会社の東京商工リサーチが10日発表した2016年度の全国企業倒産件数は、15年度比3%減の8381件だった。8年連続で前年を下回り、1990年度以来26年ぶりの低水準だった。上場企業の倒産も26年ぶりにゼロだった。国内景気の緩やかな回復で財務状況が改善した企業への貸し出しが増えたことが倒産件数の減少につながった。

 産業別での倒産件数は全10業種の内、7業種で前年度を下回った。建設業の倒産件数は1581件と8年連続で減少し、1990年度以来の低い水準だった。製造業と小売業も8年連続で減少した。中国景気の減速による倒産件数は84件と15年度比で3割減少した。一方で人手不足が原因の倒産件数は310件と15年度(321件)と並んで高水準だった。

 上場企業の倒産件数は26年ぶりにゼロだった。月間でも3月まで18カ月連続で倒産が発生しておらず、「円安で輸出企業の業績が持ち直したほか、株式や債券市場での安定も好影響を与えている」(東京商工リサーチ)という。

 負債総額は4%減の1兆9508億円と2年ぶりに前年度比マイナスだった。昨年11月に特別清算を申請したパナソニックプラズマディスプレイ(負債額5000億円)1社で負債総額の4分の1を占めたが、全体としては負債額1億円未満の小規模倒産が中心だった。

 同時に発表した3月の倒産件数は、前年同月比5%増の786件と3カ月ぶりに増加に転じた。産業別に見ると全10業種のうち卸売業や情報通信業、運輸業、サービス業など6業種で前年同月を上回った。一方で負債額100億円以上の大型倒産が前年同月よりも少なかったため、負債総額は5%減の1668億円にとどまった。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL10HM2_Q7A410C1000000/


http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/813.html

[国際18] 見通しの甘すぎるトランプの貿易政策 最低賃金引上に逆風 トランプの天敵 ロシアゲートの濃霧 バノン更迭 英外相、訪ロ取止
世界潮流を読む 岡崎研究所論評集
見通しの甘すぎるトランプの貿易政策
2017/04/10
岡崎研究所
 ワシントン・ポスト紙の3月5日付け社説が、トランプ政権の貿易政策対議会報告を、正しい分析からは程遠く、TPPのような米主導の多国間協力こそが最善の道であり、一方的に「主権」や「保護」を主張することは盲目的だ、と批判しています。要旨、次の通り。


(iStock)
 トランプ政権は選挙中の保護主義的主張を堅持していくようだ。先般公表された「2017年貿易政策課題」は、ライトハイザー通商交渉代表とナヴァロ国家通商会議委員長の影響を反映したものとなっている。6ページの政策表明は冷戦後の米国の貿易政策への批判を繰り返している。NAFTA(北米自由貿易協定)やWTO(世界貿易機関)等の多国間貿易協定と制度は米の主権を犠牲にし、製造業の分野で米の雇用を犠牲にしたと批判する。

 この議論は正しい分析からは程遠い。確かに製造業の雇用は2000〜16年の間に1720万から1230万に減少した(2000年は中国のWTO加盟の前年)。しかし、この雇用減少の原因が、米国だけではなく世界的にみられる生産の自動化その他長期的な要素よりも、100%WTOなど貿易取決めにあるとするかどうかは別問題だ。

 カリフォルニア大学バークレー校のデロングは、ここ20年の製造業での雇用減少は朝鮮戦争後から見られる歴史的趨勢の結果だとしている。非農業雇用の中での工場雇用は53年に32%だったが、NAFTAや中国登場のずっと前の90年に既に16%に下がっている。ドイツでも、1970〜2015年の間に工場雇用は半分に減少した。

 このことは、既存の貿易取決めを再交渉しても、またトランプ政権が示唆するように米国の利益に沿わない裁定がWTOで下される場合にはそれから離脱しても、利益はほとんどないことを示している。反対にデロングは中国のWTO加盟とNAFTAによるネットの雇用喪失は、1億5000万の総雇用人口の中の約50万人程度だったと計算している。

 我々も輸入により履物や家具製造等の軽工業が被害を被ったことに異を唱えるものではないし、中国との貿易が一党独裁国家での法の順守や透明性を増進することにはならなかったとのトランプ政権の主張に反駁するものではない。しかし、中国の重商主義に対抗する最善の道は正にトランプが拒否したTPPのような米国に主導された多国間協力である。

 トランプ等は、過去の政策立案者は「地政学上の利益のために不公正貿易慣行を盲目的に甘受してきた」と非難する。しかし、地政学的考慮も実は紛争を最小化しながら米の利益を増進する世界を作るというものだったのである。盲目とは、他国の正当な利益や他国による報復も考慮しないで一方的に「主権」や「保護」を主張することだ。

出典:‘Trump’s blindness on trade is all too easy to see’(Washington Post, March 5, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/trumps-blindness-on-trade-is-all-too-easy-to-see/2017/03/05/4f576298-0052-11e7-99b4-9e613afeb09f_story.html

 社説の指摘は全くの正論です。このような社説が出ること自体は心強いことです。

 3月1日、米通商代表部は米通商法に基づき「2017年貿易政策の課題と2016年年次報告」を議会に提出しました。全体で336頁、冒頭の8頁がトランプの貿易政策の課題と題された第一部となっています(残りは現行の貿易協定の現状やWTOの活動等についての詳細な報告)。第一部は、選挙演説のような議論になっています。ピーター・ナヴァロ等が書いたのでしょう。それでも、貿易擁護の観点から均衡を取るために誰かが精一杯手を入れたのではないかと推測される文言は見られます。

 報告で特に注目される点は次の通りです。

最大の目的は「より自由でより公平な貿易」を拡大していくこと。雇用を拡大し、相互主義を増進し、米の製造業を強くする。
多国間取決よりも二国間取決が米の利益になる。
地政学上の考慮のために不公正貿易に目をつむるという考え方は「拒否」する。
不公正貿易慣行を打破する。米の知的財産を守る。
米国内法を厳密に実施していく(ダンピングや補助金への対処で)。
米の権利や利益を弱くし義務を増大させるような他国やWTOの努力には「抵抗」していく。
現存の貿易協定は必要に応じ改定する。
優先事項は、@貿易上の国家主権を守る(WTO紛争処理の裁決が「自動的に」米の法律や慣行を変えることにはならない)、A米の通商法を厳密に実施する、B他国の市場を開放するためにあらゆるレバレッジを使う、C主要国と新たなベターな貿易取決めを締結することの四つである。
 トランプ政権が考えを変えない限り、これからの国際貿易やWTOは試練を受けるし、混乱することになりかねません。戦後の国際経済の発展、世界経済のダイナミックスと米国の利益に関し、もう少しバランスのとれた理解を持ってもらいたいものです。

 ナヴァロは「大統領府が懸念する貿易赤字:不均衡は経済成長を危うくし米の安全保障を危険に晒す」と題する寄稿文を3月5日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄せ、日本の「恐るべき非関税障壁」の除去が必要などと主張しています。

 しかし、ナヴァロは貿易赤字を妄想しているように見えます。モノの貿易偏重とも言えます。貿易赤字の議論は短期的思考であり、貿易の縮小均衡をもたらしかねません。貿易を一層自由にしてパイを大きくしていくというダイナミックな思考が欠如しています。それは80年代の日米貿易摩擦の時代の教訓でもあります。経済を効率化し、資源を最適利用して、産業構造を不断に変革していくことこそ、経済成長をもたらすものであり、狭小な赤字議論をやっていては長期的に米国の力が衰退して行きかねません。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9321


 

 

強弱混在の米雇用統計、労働市場引き締まりを示唆
By JUSTIN LAHART
2017 年 4 月 10 日 13:43 JST
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 米労働省が7日公表した3月の雇用統計を理解するための最善策は、かなり軟調だった雇用者数の伸びにも良好そうな失業率にも目を奪われないことだ。その代わり、この2つが強弱反対の内容を示す数字となった理由に目を向ければ、雇用市場は依然として堅調だという安心感を得られるだろう。

 3月の雇用統計が伝える雇用市場の現状はやや理解しづらいものだった。まず、非農業部門就業者数の前月からの伸びはわずか9万8000人とエコノミス...
http://jp.wsj.com/articles/SB10433057978138953778204583075903453996838


米最低賃金の引き上げに吹き始めた逆風
米国の最低賃金引き上げに吹き始めた逆風について、WSJのエリック・モラス記者ととタニア・リベロ記者が解説する(英語音声、英語字幕あり)(Photo: Greg Kahn/GRAIN for The Wall Street Journal
By SCOTT CALVERT AND ERIC MORATH
2017 年 4 月 10 日 10:22 JST
【ボルチモア(メリーランド州)】米国ではメーン州ポートランドからカリフォルニア州ロサンゼルスまでの多くの市や郡で、地域の最低賃金を引き上げる条例案が可決されてきた。しかし、最近はそうした流れに変化が起きていることが示唆されている。

 メリーランド州ボルチモア市のキャサリン・ピュー市長(民主党)は先月、2022年までに地域の最低賃金を時給15ドルに引き上げるという議決に拒否権を発動した。ピュー氏は市長選の選挙活動中は、そうした政策を支持していた。同州モントゴメリー郡でも今年に入り、同じような条例案の成立...

http://jp.wsj.com/articles/SB10433057978138953778204583075623276755696


Minimum Wage Increases Hit a Wall
4/6/2017 3:34PM
The trend of minimum wage increases hits a snag. WSJ's Eric Morath and Tanya Rivero discuss how some cities are pushing back, with opposition from surprising sources. Photo: Greg Kahn/GRAIN for The Wall Street Journal
http://www.wsj.com/video/minimum-wage-increases-hit-a-wall/726F2BD8-6C8B-426B-8377-8B7CAAD21884.html


Has the Movement to Raise the Minimum Wage Reached Its Limit?
Politicians who had supported an increase have reversed course

Minimum Wage Increases Hit a Wall
The trend of minimum wage increases hits a snag. WSJ's Eric Morath and Tanya Rivero discuss how some cities are pushing back, with opposition from surprising sources. Photo: Greg Kahn/GRAIN for The Wall Street Journal
By SCOTT CALVERT and ERIC MORATH
April 6, 2017 10:36 a.m. ET
BALTIMORE?Cities and counties from Portland, Maine, to Los Angeles have successfully passed local minimum-wage increases, but recent resistance in seemingly friendly territory suggests a momentum shift.

The newly elected Baltimore mayor last month vetoed an increase of the local wage floor to $15 an hour by 2022, despite favoring the policy as a candidate. Earlier this year, the top elected official in Montgomery County, Md., outside...


https://www.wsj.com/articles/has-the-movement-to-raise-the-minimum-wage-reached-its-limit-1491489397

Here's who's winning the $15 minimum wage wars now
Paul Sonn, general cousel, National Employment Law Project
Friday, 7 Apr 2017 | 8:53 AM ET
CNBC.com
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Low wage workers and supporters protest for a $15 an hour minimum wage on November 10, 2015 in New York.
Getty Images
Low wage workers and supporters protest for a $15 an hour minimum wage on November 10, 2015 in New York.
After several years of meteoric growth, business groups are boasting about setbacks in the movement for higher wages. But closer examination shows momentum remains strong for improving pay for the 40 percent of U.S. workers who struggle on less than $15 an hour.

Fast food workers launched the Fight for $15 in 2012, and by early last year, cities and states representing 18 percent of the U.S. workforce had approved $15 minimum wages. Once phased in, these measures will deliver raises of around $4,000 a year for more than one third of the workforce in states like New York and California, beginning to reverse decades of growing income inequality. In November, voters in four more states and one city approved minimum wage increases of $12 to $15 an hour, with the result that about one quarter of the nation will soon covered by high minimum wages.

Push back was inevitable. It started with New Jersey Governor Chris Christie vetoing a $15 minimum wage passed by the legislature. Then in Flagstaff, Arizona after voters approved the first $15 wage in the southwest, business groups filed a counter-initiative seeking to roll it back. Last week Baltimore Mayor Catherine Pugh vetoed a $15 minimum wage increase. And now in Missouri, after the state supreme court struck down the Tea Party legislature's attempt to block wage increases in St. Louis and Kansas City, the legislature is threatening to try a new ban.

But despite these speed bumps, closer scrutiny shows that the movement to raise pay is, if anything, spreading to more states. In New Jersey, where Governor Christie is term-limited, the leading candidates to succeed him back the $15 minimum wage, making passage in 2018 likely. In Flagstaff, the city council rejected attempts to schedule an early election on the initiative to cut the wage and, while tweaking the law to smooth its phase-in, actually raised the city's minimum wage even higher to $15.50. In Maryland, where Mayor Pugh has urged action at the state level instead, Democrats have introduced a statewide $15 minimum wage bill. And in Missouri, if the legislature passes a new ban on local raises, advocates have already filed paperwork to put a statewide wage increase on the 2018 ballot where it is all but certain to pass.

"Restaurant industry groups continue to cite claims by individual businesses that higher wages are forcing them to close. Sorting fact from fiction here isn't easy. But what is clear is that overall job growth data don't back them up."
Other major states appear poised to follow. Leaders in the Illinois legislature are holding hearings on a $15 minimum wage, which could be headed to Governor Bruce Rauner's desk soon. And leaders in Vermont, Massachusetts, Connecticut, Rhode Island, Hawaii and Minneapolis are all pushing similar $15 legislation.

And what's been the impact on jobs as states and cities have phased in higher wages? In December the White House Council of Economic Advisors compared employment data for all of the states that raised the minimum wage since the 2009 recession with those that didn't. They found "substantial wage increases with no discernible impact on employment levels or hours worked." That's in line with the lion's share of recent rigorous research on the minimum wage.

Nonetheless, restaurant industry groups continue to cite claims by individual businesses that higher wages are forcing them to close. Sorting fact from fiction here isn't easy. But what is clear is that overall job growth data don't back them up. Instead, strong job expansion has continued in places like San Jose, New York City, Seattle and Chicago that have adopted some of the nation's highest minimum wages.

State-of-the-art studies on the $15 minimum wages proposals in California, New York and Minneapolis help explain why. They find that though a $15 wage increases costs for businesses, it also generates billions in new consumer spending that offset much of the higher cost. In states that have already approved $15 minimum wages, business organizations representing more than 32,000 small businesses have either endorsed -- or in some cases simply not opposed -- the $15 minimum wage. These include the Greater New York Chamber of Commerce, the Brooklyn Chamber of Commerce, the Restaurant Association of Metropolitan Washington, the Golden Gate Restaurant Association, the Northeast Organic Farmers Association ? New York Chapter, and the Long Island and Westchester/Putnam African-American Chambers of Commerce, and others.

What lies ahead? Two strong Fight for $15 supporters, Tom Perez and Keith Ellison, now lead the Democratic National Committee. And more and more Democrats in Congress are talking about coming together around making $15 the next federal minimum wage bill.

But with the Republican Congress and the Trump Administration focused not on raising pay but on rolling back protections for workers, no one is betting on federal action. That means the gulf between the cities and states where pay is beginning to rise, and those where even manufacturing workers and EMT's struggle on less than $15 an hour, will only grow as the nation heads into the 2018 election. That's when voters will get to decide what they think of politicians who side with corporate lobbyists rather than working families fighting for a decent paycheck.

Commentary by Paul Sonn, the general counsel and program director at the National Employment Law Project.

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by TaboolaMORE FROM CNBC
Here's what happens when you save too much in your 401(k)
5 tricks for spotting a bad boss during a job interview
Can you build wealth on minimum wage? One article says yes and triggers backlash
The government reported a 4.5% unemployment rate, but here's the realistic number
Op-Ed: How Democrats are about to give Trump his groove back
There are two reasons the jobs report was a big miss ? one was a fluke, the other is an unstoppable trend
by Taboola Sponsored Links
http://www.cnbc.com/2017/04/07/15-minimum-wage-fighting-back-commentary.html


 

 
海野素央の Love Trumps Hate
トランプの天敵、フリーダム・コーカスの正体
2017/04/10
海野素央 (明治大学教授、心理学博士)
 今回のテーマは「トランプの天敵―フリーダム・コーカス(自由議員連盟)」です。ドナルド・トランプ米大統領はバラク・オバマ前大統領の医療保険制度改革(通称オバマケア)の代替法案に対する支持を、野党民主党議員に加えて与党共和党議員の一部からも得ることができませんでした。その結果、同法案を撤回せざるを得なかったのです。その主たる要因となったのが、共和党下院保守強硬派の議員連盟「フリーダム・コーカス」という対抗勢力です。本稿では、フリーダム・コーカスがどのような特徴を持った議員連盟なのか、今後も同大統領の天敵となるのかについて述べます。


春を迎えたワシントンDC(iStock)
フリーダム・コーカスの特徴

 2015年1月フリーダム・コーカスは9人の下院議員で設立されました。初代議長はジム・ジョーダン下院議員(共和党・オハイオ州第4選挙区)です。トヨタ公聴会で急先鋒であったダレル・アイサ下院議員(共和党・カリフォルニア州第49選挙区)のようにフリーダム・コーカスのメンバーか否か態度を明確にしない議員がいますので正確な数字は把握できませんが、メンバーは30から40人いると見られています。

 フリーダム・コーカスは、減税及び財政規律を重視しています。この点において反オバマ色の強い保守系の市民運動である「ティーパーティー(茶会)」と類似しています。次の税制改革でフリーダム・コーカスはトランプ大統領のインフラ投資に反対し、公約実現に対する阻害要因になる可能性が高いと言えます。

 ピュー・リサーチ・センターの調査によりますと、ラウル・ラブラドア下院議員(共和党・アイダホ州第1選挙区)はヒスパニック系ですが、フリーダム・コーカスの他のメンバーは圧倒的に白人男性であり文化的多様性に欠けています。選挙区は南部に偏っているという特徴があります。

トランプとオバマの類似点

 フリーダム・コーカスのメンバーは今回の代替法案をオバマケアの部分的修正と捉え、「改革が不十分」で完全な置き換えになっていないと主張して反対に回りました。フリーダム・コーカスの影響力の大きさを数字からみてみましょう。

 2017年3月1日現在、下院は共和党が237議席、一方民主党が193議席占めており欠員は5です。読者の皆さんの中には、フリーダム・コーカスの議員数は237人の内40人ほどではないかと思われる方がいるかもしれません。ところが、フリーダム・コーカスのメンバーが結束をすると法案を葬ることができるのです。

 今回のオバマケアに対する代替法案の可決には過半数216票が必要でした。仮に民主党議員全員及びフリーダム・コーカスのメンバーの内30人が反対すると、207になってしまい過半数に届かないのです。そこで同法案の撤回に至ったのです。オバマ大統領(当時)が民主党の財政保守主義を掲げる「ブルー・ドック」という対抗勢力によって医療保険制度改革に関して抵抗にあったのと同様、トランプ大統領も身内の反対勢力に苦戦しています。

トランプの二者択一

 フリーダム・コーカスのメンバーの中には、トランプ大統領がエスタブリッシュメント(既存の支配層)に屈服し、エリート層の一部になってしまったと主張するメンバーがいます。選挙期間中、ウォール街の金融機関とヒラリー・クリントン候補(当時)の癒着を厳しく非難していたのにもかかわらず、閣僚に米金融大手ゴールドマン・サックスの幹部を起用したことが一因になっています。

 現在フリーダム・コーカスの議長であるマーク・ミドウス下院議員(共和党・ノースカロライナ州第11選挙区)は、2016年の選挙で62.2%を得て民主党候補を破っています。ジョーダン下院議員は68.1%、ラブラドア下院議員は68.0%、ジャスティン・アマッシュ下院議員(共和党・ミシガン州第3選挙区)は59.4%、ミック・マルバニー下院議員(共和党・サウスカロライナ州第5選挙区)は59.1%を獲得して勝利を収めています。これらの選挙区はかなり保守的であり、一部の米メディアからフリーダム・コーカスの現職議員は無敵と言われています。2018年米中間選挙でフリーダム・コーカスに所属する現職議員が再選する可能性が高く、トランプ大統領に対する共和党内の対抗勢力は存続すると予想できます。

 トランプ大統領はフリーダム・コーカスのメンバーないし民主党の一部と政治連合を組まない限り、今後も選挙公約の実現が困難になります。同大統領は二者択一を迫られているのです。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9335

 

 


 

ロシアの「失敗がシリアの化学攻撃を可能に」 米国務長官
2017/04/10
BBC News

米国務長官としての初訪ロを目前に控えたレックス・ティラーソン氏は、シリアが反政府勢力地域の町に化学攻撃を実施できたのは、ロシアのせいだと非難した。

9日放送のCBSニュースとのインタビューでティラーソン長官は、シリアが国際社会に約束した化学兵器の廃棄をロシアが十分に管理監督しなかったせいで、イドリブ県での攻撃が可能になったと述べた。

ティラーソン氏は、化学攻撃とされるシリア軍の攻撃にロシアが関与していたと示す証拠は何もないと指摘した上で、「ロシアが共謀していたか、それとも単に無能だったのか、あるいは(シリア政府に)してやられたのかはともかく」、ロシアは「国際社会への約束と責任を果たさなかった」と批判した。

ロシアは「シリアの備蓄化学兵器の備蓄廃棄について保証する」と合意したのにもかかわらず、「ロシアが失敗したせいで、子供たちや罪のない人たちがますます殺されることになった」と長官は付け足した。

ティラーソン氏は10日にイタリアで開かれるG7外相会談に出席した後、モスクワを訪れ、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談する予定。

G7外相会談では、アサド政権と距離を置くようどのようにロシアへの圧力を強めるかを話し合う。

ロシアはシリア政府の主要同盟国。2013年には、シリアの化学兵器廃棄の国際管理体制構築とシリアの化学兵器禁止条約加盟に尽力した。

化学攻撃が疑われる4日のハーン・シェイフン攻撃では、少なくとも89人が死亡。これを受けて米国は6日夜(シリア時間7日未明)、東地中海からシリア北西部のシリア空軍基地にトマホーク巡航ミサイル59発を発射した。

ミサイル攻撃の後、米南部フロリダ州の私邸「マール・ア・ラーゴ」で会見したトランプ大統領は、シリアのバシャール・アル・アサド大統領は「独裁者」で、「罪のない市民に恐ろしい化学攻撃を実施した」と非難した。

これに対してシリア政府は、「愚かで無責任」な攻撃だと米政府を批判。ロシア政府も同様に、米政府が「荒唐無稽な前提をもとに国際法に違反して、主権国家に対して侵略行為」を実施したと批判した。

シリア政府は化学兵器の使用を否定している。ロシアは、シリアの化学兵器保有を示す証拠を何も提示していないと反発している。

ロシア政府は、シリアが化学攻撃を実施した事実はないと主張。現場の住民が被害にあったのは、反政府勢力用に化学兵器を製造していた貯蔵施設が、シリア軍機に爆撃され、薬品が漏れ出たからだと説明している。

これに対して欧米各国の政府やシリアの反政府指導者たち、化学兵器専門家はいずれもロシアのこの主張を批判し、シリア政府による攻撃だったと証拠は示していると主張している。

(英語記事 Tillerson: Russia 'failure allowed Syria chemical attack')

提供元:http://www.bbc.com/japanese/39550724

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9341

 


トランプ・ホワイトハウスにたちこめるロシアゲートの濃霧
2017/04/10
斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)
 ロシアの2016年米大統領選介入に果たしてどこまで加担したか―トランプ陣営のロシア・コネクションを究明する米連邦捜査局(FBI)や連邦議会の調査が本格化しようとしている。ホワイトハウスを覆う“ロシアゲート”の霧は深まるばかりだ。


(iStock)
 去る3月31日、貿易赤字削減に向けた大統領令発表に臨んだトランプ大統領の表情は、いつにもなくさえなかった。1月20日就任早々、環太平洋経済連携協定(TTP)離脱やイスラム諸国からの入国禁止措置などを意気揚々と打ち上げた時とは異なり、明らかにトーンダウンしていた――とホワイトハウス詰めベテラン記者たちの間でも評判だったという。

 しかも、これまでは、大統領令発令のたびごとに執務室に報道陣を招き入れ、自らデスクに座って命令書に署名するのがならわしだったが、この日ばかりは違っていた。内容をそそくさと読み上げた後、署名もしないまま、ペンス副大統領らを残し、報道陣の質問にも無言のまま、一人だけ退室してしまった。

 「マイケル・フリン氏、議会証言と引き換えに免責要求」――たまたま同じ日の31日、米マスコミは一斉に、トランプ大統領の側近中の側近で辞任したばかりのマイケル・フリン前大統領国家安全保障担当補佐官が、ロシアによる大統領選介入とトランプ陣営の関係を究明する上院公聴会での証言にあたり、免責の保証を求めてきたことを大きく報じていたのだ。

 フリン氏はかねてから、ロシア経済界との密接な関係もとりざたされ、米大統領選挙期間中も、駐米ロシア大使と協議や会食を重ねたほか、ロシアの対米工作にも精通していたとみられるだけに、本人が司法取引で供述するとなると、大統領自身にとっても安閑とはしていられなくなる。

 米議会調査は、上院、下院の情報委員会でそれぞれ別途進められており、目下、FBI、中央情報局(CIA)、国防情報局(DIA)など政府、軍関係のあらゆる秘密情報にもアクセスが許された大きな権限を持つ上級調査スタッフ4人ずつが関連資料や関係人物の洗い出しを開始した。

 このうち、下院調査委では、有力メンバーの一人、ウォーキン・カストロ議員(民主、テキサス)が4月4日、CNNとのインタビューで「これまで調査委が収集してきた証拠から判断するかぎり、トランプ陣営の何人かTrump associatesは告発され、収監されることになるだろう」と語り、疑惑の核心に迫りつつあることを示唆している。

フリン氏の裏切りはあるのか?

 一方、上院情報委員会は、とくに疑惑のカギを握るとみられるフリン氏の今後の議会証言を重視しているが、現在までのところ、「免責要求」にただちに応じることを約束していない。事情聴取を通じて本人をぎりぎりまで追いつめた上で、証人喚問で免責に見合うだけの証言を引き出せるか、舞台裏で話し合いを続けているとみられる。

 問題は、そのフリン氏が果たして、トランプ氏に反旗を翻してまで真相を語る覚悟ができているかだ。これまで同氏は、トランプ氏の信頼が厚く、選挙期間中もヒラリー・クリントン候補を非難中傷するダーティなメディア作戦に中心的役割を担ってきただけに、証言では自らの身の潔白をアピールすると同時に、トランプ大統領擁護に回るのではないか、との観測がある。

 だが、そうではなく、免責を求めてきたこと自体、自ら罪を逃れるのと引き換えにトランプ陣営の“闇”にまで言及する腹を固めたとする見方もある。この見方の根拠は、実は、フリン氏が今後の議会調査やFBI捜査に備え、あえてアンチ・トランプの急先鋒の論客でも知られるロバート・ケルナー氏を専任弁護士に指名したことだ。

ウォーターゲート事件どころではない大疑獄

 ケルナー氏は、長年、共和党弁護士を務めてきた大物弁護士だが、昨年の大統領選では徹底的にトランプ氏を批判し、一時は民主、共和両党のいずれにもくみしない第3政党のエバン・マクマリン候補を支持した。#NeverTrump の見出しを掲げた自らのツイッターでは、トランプ氏にこれまで拒否してきた税申告内容の公表を執ように迫り「勝ち負けには関係なく彼の選択は道徳的にも許容できない」などと舌鋒鋭くこきおろしてきている。

 米大統領選挙期間中に、ロシア側と何らかの接触があったことが判明しているトランプ陣営の要人としては、フリン氏のほかに、ジェフ・セッションズ現司法長官、トランプ氏の娘イバンカさんの夫でホワイトハウス上級顧問を務めるジャレッド・クシュナー氏らがおり、この二人もロシアの駐米大使と会談した事実を認めている。クシュナー氏はさらに、選挙後の政権移行期間中の昨年12月、プーチン大統領と密接な関係のあるロシアの銀行会長とも接触したことが明らかになっている。

 “ロシアゲート”疑惑については、これまでのFBI、CIAなどの捜査で、ロシア情報機関が米大統領選挙期間中に、プーチン大統領指示の下、“犬猿の仲”とうわさされるヒラリー・クリントン民主党候補追い落としを目的とした対米情報工作を仕掛けたことが確認されている。そしてもし、今後の捜査そして議会調査の進展具合で、トランプ氏側近がこの工作に加担していた疑いが濃厚になれば、「国家反逆罪」という、ウォーターゲート事件どころではない大疑獄になりかねず、米メディアの関心もじわじわと高まる一方だ。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9336


 


 

 トランプ大統領、バノン氏らの更迭検討 勢力争いを懸念=WSJ

[ワシントン 7日 ロイター] - 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は7日、トランプ米大統領がプリーバス大統領首席補佐官やバノン首席戦略官兼上級顧問など政権幹部の更迭を検討していると報じた。

同紙が政権高官の話として伝えたところによると、トランプ大統領はシリア情勢の緊迫化を受けて上層部の勢力争いに対する懸念を強めた。近く人事に関する発表を行う見通しという。

報道についてホワイトハウス報道官は「全くの誤りだ」と述べた。

WSJによれば、トランプ氏はここ最近、プリーバス氏のパフォーマンスについて周囲と意見を交わし、後任候補を挙げるよう求めた。

一部からはゴールドマン・サックス出身のコーン国家経済会議委員長を推す声が出たという。

バノン氏も更迭が検討されている。バノン氏はトランプ大統領の娘婿であるクシュナー上級顧問と対立しているとされ、5日には米国家安全保障会議(NSC)のメンバーから外れた。

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http://jp.reuters.com/article/usa-trump-staff-idJPKBN17B10N


 


英外相、シリア情勢理由に訪ロ取り止め ロシア反発

[ロンドン/モスクワ 9日 ロイター] - ジョンソン英外相は8日、10日に予定していたモスクワ訪問をシリア情勢を理由に取り止めたと発表した。

ジョンソン外相は声明で「シリア情勢が状況が根本的に変えた」と表明。

「今の自分の最優先事項は、10─11日の主要7カ国(G7)会合に向けて、停戦と政治的プロセスの強化に向けた国際支援の構築へ米国などの国と調整を続けることだ」とした。

ジョンソン外相の訪ロ中止について、ロシア外務省は9日、シリアで起こったことに対する理解が不足していることを示すと指摘。国際問題への影響力を持たない英国と話し合っても得るものはほとんどないことを再認識させるものだとした。

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http://jp.reuters.com/article/mideast-crisis-syria-britain-idJPKBN17B116

http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/885.html

[経世済民120] 米シリア攻撃で原油急伸、市場の懸念は行き過ぎか ドル118円 トランプドクトリン 良し悪し縁故採用 スキルなし正社員窮地

コラム:
米シリア攻撃で原油急伸、市場の懸念は行き過ぎか

Andy Critchlow

[ロンドン 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国がシリアにミサイル攻撃を行ったことで、原油価格は急伸した。軍事介入で原油供給に支障が生じるというだけでなく、イランが対抗措置に出ることが懸念されたためだ。ただそうしたシナリオが現実化したとしても、市場の反応は行き過ぎのように見える。

北海ブレント先物は、米軍のミサイル攻撃報道後に一時1バレル56ドル強と1カ月ぶり高値を付けた。一見すると、中東の緊張がこの地域の大幅な輸出途絶につながるという論理は筋が通っている。だがシリアのダマスカスは、原油の主要供給ルートからはかなり遠い。アサド政権が直接的に世界経済に及ぼす影響は乏しい。

本当に心配なのは、アサド政権と連携しているイランの出方だ。イランが昨年の制裁解除以降、原油供給拡大を続けてきたことが、原油価格の低位安定をもたらしていた。イランの生産量は30%増えて日量380万バレル近くに達している。同国は石油輸出国機構(OPEC)が昨年11月に合意した減産の対象外でもある。

5月に大統領選を控えたイラン政府が、アサド政権を支援する必要があると考えたとしよう。それは、昨年関係各国の間で発効した核合意をトランプ政権が廃棄する口実になり得る。論理的帰結としてイランに対する輸出禁止、外国企業による開発制限などの措置が打ち出され、原油価格が上昇する。

しかし現実は違ってくる可能性がある。まずイランに再び制裁を発動しても同国が最大の市場である中国やインド、韓国、日本などに輸出するのを防げないかもしれない。特にこれらの国が米国の単独軍事行動に穏やかならざる気分でいるとすればだ。次に、イランの供給がなくなった分を、サウジアラビアが穴埋めしてもおかしくない。サウジの生産余力だけで、イランの生産量の半分に達する。サウジは原油価格上昇を望んでいるが、同時に市場の安定も目指している。

もちろんイランが戦略的に重要なホルムズ海峡を封鎖して、ペルシャ湾岸からの原油供給に問題を引き起こす可能性はある。同海峡は、世界中の海上輸送原油の3分の1が通過する要衝で、封鎖となれば原油のリスクプレミアムは増大するだろう。だが海峡の防衛態勢は厳重で、いわゆるタンカー戦争は、イランとイラクが軍事衝突した1980年代以降起きていない。中東の緊張が高まっているからといって、原油価格が必ずしも上がる必然性はない。

●背景となるニュース

*米国が7日に実施したシリアへのミサイル攻撃を受け、原油価格は急伸した。

*米政府当局者によると、シリアの反政府勢力の支配地域に対して4日に化学兵器が使用されたことを踏まえ、海軍の2隻の艦艇からシリア空軍の基地に59発の巡航ミサイルを発射した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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http://jp.reuters.com/article/global-oil-breakingviews-idJPKBN17C09W?sp=true

 


オピニオン:ドル118円へ、政策かい離は健在=チャンドラー氏

マーク・チャンドラー ブラウン・ブラザーズ・ハリマン 通貨戦略最高責任者

[東京 10日] - ドル円相場の方向性を決めるのはトランプ米政権の動向以上に、日米の景気サイクルや金融政策の乖(かい)離であり、2017年末には118円、米10年債利回りの上昇ペース次第では120円超えもあり得ると、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨戦略最高責任者、マーク・チャンドラー氏は語る。

トランプ政権の保護主義政策については、たとえ実行に移されたとしても、大がかりなものにはならず、為替相場への影響は中長期で見れば限定的だと分析。一方で、大規模な減税・インフラ投資が実現する可能性も低く、130円に向かうようなドル高加速も望み薄だと指摘する。

同氏の見解は以下の通り。

<米10年債利回りとドル円に70%超の相関>

日米欧の景気サイクルや金融政策のかい離(ダイバージェンス)が、ドル高に作用する――。私はかねてより、このダイバージェンス説を重視してきた。目下、市場関係者の一部からは、むしろ両者の収れん(コンバージェンス)が進んでおり、それがドル安に作用するのではないかとの見方が聞かれるが、私はそうは思わない。

コンバージェンス論者のよりどころは、ドイツ中銀総裁やオーストリア中銀総裁ら欧州中銀(ECB)理事から緩和縮小への言及が相次いでいること、日銀の国債買い入れ減額観測が高まっていることなどだろう。加えて、2016年通年で見てドイツが前年比で、同年第1・第2四半期に日本が年率換算で、米国を上回る実質国内総生産(GDP)成長率を示したことも、そうした解釈を後押ししているようだ。

しかし、現実問題として、実際に金融引き締め方向に踏み出しているのは米連邦準備理事会(FRB)だけであり、消費者物価(除く食品とエネルギー)の前年比上昇率を見ても、米国の2.2%(最新データ2月分)に対し、ユーロ圏は0.7%(同3月分)、日本は0.1%(同2月分)にすぎない。

また、仮に今後、日欧のインフレ率が高まり、日米欧の金融政策が同じ方向を向くとしても、ダイバージェンスという言葉には、方向性が違うという意味に加えて、同じ方向を向いていてもスピードが違うという意味もある。後者の解釈に転じても、米国と日欧の金融引き締め方向のスピード格差は明白だろう。

ドル円相場について言えば、年内には118円、そこを抜ければ120円、121円も視野に入ると予想している。鍵を握るのは、米10年債利回りだ。

過去60日余りの米10年債利回りとドル円の変化率を見ると、70―80%の相関が確認できる。確かに本来注目すべきは日米金利差だが、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を導入した日銀が長期金利を安定的に低く抑えていることを考えると、基本的には米10年債利回りの行方に注目していれば十分だろう。

私の見立てでは、3月に政策金利を引き上げたFRBは年内にあと2回、6月と12月に利上げを実施する可能性が高い。米10年債利回りは3月の利上げ後も、民間部門の米債需要を背景に低下し、最近は2.3―2.4%台を中心に推移しているが、2017年中に2.75%、2018年中に3%超を目指すとみている。

むろん、中東や北朝鮮を巡る地政学リスクの高まりやトランプ政権の経済政策に対する不透明感を受け、短期的に下方向に圧力がかかる可能性はある。また、2004年の「グリーンスパン・コナンドラム(謎)」の再来、すなわちFRBが利上げを継続しても長期金利が上昇しない展開にも注意が必要だ。

ただ、米経済の堅調さを考えると、米10年債利回りが下落し続けるような状況は想定し難い。年初の118円水準から110円付近(日本時間4月10日午後2時現在は111円半ば)にまで下がったドル円相場について、今後、上下どちらの方向に賭けるかと言えば、米長期金利の見通しに従えば、やはり上昇(ドル高・円安)なのではないか。

<実現するのは「軽量級のトランプ」政策>

こう話すと、トランプ政権による保護主義政策の影響を軽視していると批判されそうだが、1ドル120円前後のレンジでは、ドル高・円安が日米間で政治問題化することはまずないと考える。

確かに、125円を超えて、130円が視野に入るようなことになれば、トランプ大統領も動揺し、口先介入してくる可能性は否めない。その意味でも、ドル円相場のコアレンジは当面、110―120円プラス数円と想定するのが妥当なのではないか。

また、そもそも為替市場では、日米間の貿易額をはるかに上回る規模のマネーが日々飛び交っている。たとえ保護貿易主義的な政策が実行されたとしても、相場への中長期の影響は限られたものとなるだろう。

さらに言えば、大胆な保護主義政策が実行に移される可能性は現時点では低いと思われる。トランプ大統領は選挙期間中、就任初日に中国を「為替操作国」に認定すると息巻いていたが、いつの間にか口にしなくなった。台湾問題で中国側に揺さぶりをかけたこともそうだが、トランプ氏の本質は大統領というよりも、やはりビジネスマンであり、企業のCEO(最高経営責任者)だ。より良いディールをまとめるために、相手をしゃべり負かそうとしている傾向が強い。

のちのち振り返って、結局、トランプ大統領が行ったことは、多くの面で、オバマ前大統領の政策継続あるいは若干の修正を施したにすぎなかったということになるのではないか。中国との間では、米中戦略経済対話があるが、これはもともとブッシュ政権時に創設された枠組みを、オバマ政権が再編成・刷新したものだ。トランプ政権も同様にこの枠組みにいくつかの手を加えることで、対中経済外交における「勝利」を宣言する可能性がある。

ちなみに、中国に対する米国の経済外交スタンスが厳しくなったのはオバマ政権時だ。メディア批判を強めたのもオバマ大統領だ。トランプ大統領は、同じことを、洗練さを欠く無作法なスタイルで継承しているだけとも言える。

ただ、トランプ氏がそうした人物だとすれば、過去に類のない大胆な景気刺激策も当てにはできない。医療保険制度改革法(オバマケア)の改廃を巡る政治的ドタバタはまさにそのリスクを如実に示した。

そもそも、社会保障費の増加に歯止めをかけるとの触れ込みで掲げられたオバマケア改廃は、減税を含む税制改革、そして巨額インフラ投資に連なる経済政策パッケージの大本であり、その最初のステップでつまずいたことは、全体のプランがトーンダウンする可能性を示している。要するに、貿易戦争をいたずらに不安視して、ドル安加速を予想するのも行き過ぎならば、大減税と巨額インフラ投資を当て込んで、130円に向かうようなドル高加速シナリオを描くのも現時点では無理があるということだ。

結局のところ、我々が今後目にするのは、大統領選当時の「重量級のトランプ」ではなく、「軽量級のトランプ」となるのではないか。それでも、米国民はドラマ帝王のトランプ氏を大統領に選んだ。大げさに騒がないオバマ大統領は「No Drama Obama(ドラマなきオバマ)」と言われたが、直情的なトランプ大統領は「Everyday Drama Trump(毎日がドラマのトランプ)」となる可能性が高い。中長期的には金融政策格差こそが為替のドライバーとなろうが、短期的にはトランプ大統領に翻弄される日は意外と多くなるかもしれない。

(聞き手:麻生祐司)

*本稿は、マーク・チャンドラー氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

*マーク・チャンドラー氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのシニアバイスプレジデント兼通貨ストラテジー部門グローバル・ヘッド。HSBCバンクUSAとメロンバンクでチーフ通貨ストラテジストを務めたのち、2005年10月より現職。著書に「Making Sense of the Dollar」「Political Economy of Tomorrow」など。
http://jp.reuters.com/article/opinion-marc-chandler-idJPKBN17C01F

 

 
コラム:
米シリア攻撃、「トランプ・ドクトリン」の始まりか
 4月7日、トランプ米大統領が就任してから3カ月もたたないこの時期に、同大統領がシリアへの軍事攻撃を行うと予想していた人はほとんどいなかっただろう。写真はトランプ大統領と国家安全保障チームとのミーティング風景。ホワイトハウス提供写真。フロリダ州で6日撮影(2017年 ロイター/The White House/Handout via REUTERS)
 4月7日、トランプ米大統領が就任してから3カ月もたたないこの時期に、同大統領がシリアへの軍事攻撃を行うと予想していた人はほとんどいなかっただろう。写真はトランプ大統領と国家安全保障チームとのミーティング風景。ホワイトハウス提供写真。フロリダ州で6日撮影(2017年 ロイター/The White House/Handout via
REUTERS)
Peter Apps

[7日 ロイター] - トランプ米大統領が就任してから3カ月もたたないこの時期に、同大統領がシリアへの軍事攻撃を行うと予想していた人はほとんどいなかっただろう。

トランプ政権は1月以降、シリア反体制派への支援をひそかに減らしており、同国のアサド大統領存続の可能性を残す形でシリア問題の終結を図ろうとしているように見えた。

米国が6日実施したシリア空軍基地へのミサイル攻撃によって、必ずしもその見方が変わったわけではない。同基地は、それより72時間前、化学兵器を使用したとみられる攻撃の拠点となったと考えられている。

だが、そのような素早い攻撃行為を通して、トランプ大統領は、シリア政府だけでなく、ロシアや中国、そしてとりわけ北朝鮮といった米国の敵となり得る国に対し、米国の決意を示す強力で断固たるメッセージを送ったと考えている。

何かしらの行動は避けられなかっただろう。オバマ前大統領がまだホワイトハウスにいたとしても、同様の措置を講じていたかもしれない。

2013年にシリアの首都ダマスカス近郊で化学兵器が使用された後、米国は軍事行動を検討していたが、それはロシアの仲介による合意で回避された。この合意により、シリアは化学兵器を放棄することとされた。シリア政府は保有するすべての化学兵器を引き渡したとして、化学兵器禁止条約に署名していた。このように実にひどい明らかな違反は罰を受けてしかるべきだった。

攻撃を命じるトランプ大統領の素早い判断は(それこそ皆を驚かせた要因であるが)、オバマ政権からの転換を明示するものだ。オバマ政権ではそのような行動を決断する際、事前にオープンに議論されることが多かった。

一夜限りの、空軍基地1カ所のみを標的にした攻撃は、2013年にシリアで化学兵器使用後に米国政府が検討していた軍事行動と比べるとはるかに限定的である。シリア空軍や他の施設に対して圧倒的な攻撃を行い、アサド大統領の失墜にまでは至らないだろうが、権力を弱体化するよう意図的に仕向けることもできただろう。

米国の行動は、ロシアを激怒させ、今回の攻撃を2003年のイラク戦争と比較させた。一方、米国は、シリア内のロシア軍に被害を与えないよう万全を期していたようだ。これは、ヒラリー・クリントン氏が大統領選に当選したら検討するとみられていた一部の計画とは劇的な違いを示している。その計画には、米ジェット機がロシアの航空機を撃墜可能な「飛行禁止区域」の設置が含まれていた。

ここで第1の疑問は、今回の攻撃が米国の対シリア政策にとって何を意味するかだ。化学兵器を使用したとみられる攻撃が起きる前、ティラーソン国務長官とマティス国防長官の2人とも、米国政府はもはやアサド大統領の退陣にこだわらないことを示唆していた。

現在でもそうであるかはまだ分からない。トランプ政権がオバマ政権が進めてきたアプローチに戻り、シリア反体制派を支援することで、同国の支配層をできる限り弱体化しようとする可能性は残されている。

しかし差し当たり、そうしたことは比較的ありそうもないようだ。トランプ政権は、シリアでの主な優先事項は今後も過激派組織「イスラム国」掃討であり、同組織が事実上、首都とする北部ラッカに迫ろうとしている。

最も重要なのは、米国がアサド大統領の退陣を望んだとしても、そのための確かな方法がないことだ。軍隊を大量に派遣して介入する気もない。トランプ大統領は、イラクとリビアにおける教訓として、地域の絶対的指導者を排除することは往々にして悪い考えだということを繰り返し強調している。

少なくとも当面は、今回の攻撃は限定的な処罰であり、米国が支援する中東地域の新たな体制変革の始まりではなさそうだ。

とはいえ、予期せぬ影響が広範囲に及ぶ可能性はある。

今回の攻撃に隠された2番目に重要なメッセージは恐らく、北朝鮮、そしてその主な支援者である中国に向けてのものだろう。トランプ政権は、軍事力の脅威によって、北朝鮮の指導者である金正恩朝鮮労働党委員長が核とミサイル開発を遅らせるよう、あるいはやめるよう説得されることを望んでいる。これもまた実現しそうにないように見えるが、6日の攻撃は米国からの脅威に対する信ぴょう性を高めている。

イランも今回の米攻撃を注視している。同国は米国の軍事的脅威と制裁に直面し、核合意の下で自国の核開発を制限している。トランプ大統領は、前政権下で結ばれた同合意について、生ぬるく、再交渉したい考えを示している。

しかしながら、地政学的に最も重要な持続的影響は、米ロ関係かもしれない。

ロシアが化学兵器使用について事前に知っていたかどうかは不明だが、米国が行動を起こして以来、ロシアが腹立たしく思っていることは間違いないだろう。米国のシリア攻撃は、ロシアが米大統領選でトランプ氏を当選させるよう介入したとの疑惑があるにもかかわらず、あるいは、恐らくそうした疑惑の結果も鑑みて多くが予想している通り、トランプ政権がより強硬な態度を取るかもしれないという、明らかなメッセージを発している。

これはまた、米政権内部の変化を示すサインかもしれない。

バノン首席戦略官兼上級顧問が5日、米国家安全保障会議(NSC)のメンバーから外された。バノン氏失脚の兆候は、辞任に追い込まれたフリン氏の後任であるマクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の権限強化にすでに表れていた。

6日の攻撃は今のところ、トランプ外交政策の「マクマスター化」を最もはっきりと示す兆候と言えるかもしれない。つまりそれは、比較的明白でシンプルな目標とともに、明確に定義された、限定的だが断固たる行動、ということである。

一方、最悪な場合、今回の攻撃がトランプ大統領の「考える前に行動する」という衝動的な行動の予兆との批判が的を得てしまう可能性もある。

どちらにせよ、外交政策において他国介入の際に「トランプ・ドクトリン」なるものがあるとすれば、6日のミサイル攻撃は十中八九、その始まりと見ていいだろう。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。
http://jp.reuters.com/article/column-syria-trump-doctrine-idJPKBN17C0K1

 

【第63回】 2017年4月10日 秋山進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]
「いい縁故採用」と「悪い縁故採用」はどこが違うか


縁故採用が仕事を進めやすくすることもあります。家族ぐるみの付き合いで小さな頃から知っている子女が、仕事で頼ってきたら力になりたいのが人情です
 少し前のことになるが、NHKの朝ドラマ「べっぴんさん」を見ていたら、こんなシーンがあった。

 創業者の娘と創業者仲間の息子が、親の会社の入社試験を受けようとする。「小さな会社だし、入社することになったら他の社員からは絶対に縁故採用だと思われる…」と嫌がる親たち。しかし、人事部長が「優秀な二人だから、試験を受けさせよう」と説得して、彼らは入社試験を受けることになる。

 その試験は名前を隠して受けられるタイプのものだったのだが(イラストやデザインセンスを見る試験だった)、二人は見事合格。希望通り、親の会社に入社が決まった。

 「なんだ、ずいぶんご都合主義な展開だな」と思われるかもしれないが、二人は美術大学と東京大学を卒業してアメリカ留学までしているキラキラキャリアの持ち主である。ある程度優秀なのは確かだし、創業者の娘や息子でなくてもきっと採用されただろう。

 縁故採用と聞くと、眉をひそめる人もいると思う。しかし、私は世の中には「いい(許容できる)縁故採用」と「悪い縁故採用」があると思う。

縁故採用3類型
採っていい縁故・ダメな縁故を見極めよ

 ある程度の規模の会社であれば、「秘書室採用」と呼ばれる採用がある。いわゆる「縁故採用」だ。人事部とは別のルートで、特別な採用枠があるのだ。これには大きく分けて3つの種類がある。

(1)有力者の娘・息子

 代表的なのは、政治家や財界の偉い人、著名な大学教授などの「有力者」のご子息やご令嬢。

 私もこの手の社員と何度か一緒に仕事をしたことがあるが、彼らはスマートで、留学経験もあったりし、非常に賢い人が多い。子どもの頃から「エリート教育」を受けているから、マナーも教養もある。そして、顔見知りの有力者のもとへ、「おじさん、久しぶり!」とスムーズに会いに行ける「人脈」もある。政治家や企業経営者たちは、訪ねてきた顔見知りの若者を大歓迎する。両親とは懇意の仲であり子どもの頃から知っている、かわいくて優秀な息子・娘たちが仕事で頼ってきたら、「よし、面倒を見てやろう」と思うのが人情だ。

 そうでなくても彼らは優秀だから、仕事でもそれなりに順調に結果を出していく。そもそも、コネなどなくても入社できるのに、親が勝手に心配して口出しした結果「縁故採用」されたことになっているケースが多い。もちろん例外もあるが、巷でイメージされるような「横暴の限りを尽くすドラ息子」はレアケースで、人間的にも「できた人」が多いというのが私の印象だ。

(2)取引先の娘・息子

 二つ目は(1)と一部重なるが、採用の目的が「ビジネスを円滑に進めるため」「その会社と繋がっていることにメリットがある」主要な取引先の有力者の娘・息子だ。商社が取引先の娘・息子を入社させるケースやテレビ局が有名タレントの娘・息子を採用するのもこれにあたる。

 双日の加瀬社長(当時)は、このタイプの「縁故採用」をたくさん見たと著作『それでも社長になりました!日経ビジネス人文庫』に書いている。ひどい場合は「娘・息子を採用してくれたら、これだけの商売をつける」という「持参金付き採用」もあったそうだ。

 ちなみに加瀬社長は、自分が人事部の課長になったときに、縁故採用を全面禁止にしたという。一般公募の学生と比べ、縁故採用の学生のレベルが低かったからだ。それに対し、当時の社長から「何様のつもりだ」と文句を言われたりしたが、それでも方針を貫いたのだからすごい。

 さて、このタイプの縁故採用はちょっと厄介だ。なぜなら、取引先との関係は変化するものだからである。その取引先に勢いがあるうちはいいが、そうでなくなった途端、縁故採用された本人に実力がないと、彼らは不良債権化してしまう。一度採用するとよほどの問題でもない限り辞めてもらうこともできないから、「成果も出してくれないし、親の会社との関係もないから、さようなら」というわけにはいかない。

(3)社内の偉い人の娘・息子

 オーナーの娘・息子であり「将来社長になる人」が親の会社に入社するのは仕方がない。彼らが実力に反して異例の大出世を遂げたとしても、納得できる。だってオーナーの子どもだから「しかたがない」のだ。そのため、ここで言う「偉い人」とは、オーナー社長以外の会社の重役たちのことだ。

 彼らは、今現在は「社内で偉い」かもしれないが、所詮「雇われの身」である。娘・息子に自分の地位を譲れるわけではない。それなのに、彼らの娘や息子が入社してくると、一般社員は縁故採用者の扱いに頭を悩ませることになる。どこまで気を遣えばいいかわからないからだ。

 データを駆使したID野球を標榜していた名監督の野村克也氏も、(いささか実力不足の)自分の息子を親会社のオーナーに頼んでヤクルトに入れて以降、常勝チームはBクラスに転落。阪神に移ってもまた息子をチームに入れて、「名監督のやることか?」と信用を落とし3年連続最下位になってしまった。チームメイトはさぞ扱いに困っただろうと思うが、息子本人も居たたまれなかったに違いない。

 統計をもとにした仮説と検証を活用し、世界に冠たるセブン-イレブンを作り上げた鈴木敏文セブン&アイホールディングス元会長もまた子息をグループに入れ、他の社員から見て異例の出世をさせた。そして、そのことが一つの理由となって、突然の退任につながった。

 野村監督も鈴木会長も大きな実績を持つ功労者ではあっても、やはりオーナーとは違う“使用人”なのだ。それなのに息子が破格の扱いを受けるのでは、周りは諦めきれない。しかも、お二人とも、仕事の上は“情”ではなく、“理(ロジック)”を声高に強調する人であっただけに、こと“子息”のことになると、「言っていることとやっていることが違う」と余計な不満が生まれてくるのも当然だ。

 結局のところ、最終的には(採用される)本人次第ではあるのだが、(3)の縁故採用はオーナー社長の子ども以外は(それもないほうがいいが)、たとえ優秀でもやめたほうがいい。結果として、おかしな気遣いから社内の士気を落としかねない。

 (2)も、本人によほど実力がないならやめたほうが無難だ。取引先との関係性は変わりやすく、長い目でみれば、むしろ積極的にその会社との関係を絶つ方向で動く可能性が高いからだ

 唯一、私がありえると言えるのは(1)だけだ。それも、もちろん本人に可能性があればの話だが。人的ネットワークも含め優秀な人材を採用できるなら、縁故でもあってもかまわないであろう。

 しかしながら、採用してからは、本来はオーナーの子どもであっても、以下の原則を守ったほうがいい。ドラッカーの『経営者の条件』から引用しておく。

〈同族企業が繁栄するには、同族のうち明らかに同族外の者よりも仕事ぶりの勝る者のみを昇進させなければならない。デュポンでは、同族色の強かった初期の頃は、監査役と法務部長以外のトップマネジメントは全員同族だった。しかしその地位に上ることのできたのは、非同族による委員会において能力と仕事を認められた者だけだった。〉

 社員の納得性はとても重要なことなのである。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山進、構成/ライター 大高志帆)
http://diamond.jp/articles/-/124152

 

 

2017年4月10日 週刊ダイヤモンド編集部
スキルのない正社員が「働き方改革」で窮地に陥る理由

安倍政権が「一丁目一番地」の政策課題に位置付ける、働き方改革の実行計画がまとまった。労働基準法70年の歴史の中でも、旧来の日本的雇用システムの全否定とも取れる大改革であることは事実だ。その一方で、企業や労働者に対して生産性という名の高いハードルを課すシビアな改革でもある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)


写真はイメージです
「労働基準法を犯せばしょっぴかれてしまう。特に、長時間労働への対応をしっかり整える」(製造業の人事マネージャー)

 3月末、政府が最優先で進めてきた働き方改革の実行計画がまとまった。九つあるメニューの中でも、企業が対応に苦慮しそうなのが、「同一労働同一賃金の推進」と「時間外労働の上限規制の導入」の二つである。

 同一労働同一賃金については、同じ企業内での、正社員と非正規労働者との間の不合理な待遇差を解消する。企業は非正規労働者の求めに応じて、類似業務に就く正社員との待遇差の理由の説明義務を負う。基本給やボーナスについては、合理的な説明さえできれば正社員と非正規労働者とのギャップが認められるが、通勤手当などの各種手当や福利厚生については同じにしなくてはならない。

 時間外労働の上限については、原則は「月45時間、年360時間」だが、労使協定を結べば年720時間、繁忙期は月100時間未満となった。


政権主導で進められた働き方改革実現会議。企業にとっても労働者にとっても受難の改革だ?Photo:JIJI
 働き方改革実現会議のプロセスでは、正社員と非正規労働者との不合理な格差の事例がまとめられたり、時間外労働の上限を月100時間「未満」とするか、「以下」とするかで労使が対立したりと、全く実務の域を出ない、表層的な議論に終始した。

 だが、実はこの働き方改革が断行されたときに起きる、本質的な問題が置き去りにされている。

 まず、企業にとって痛みを伴う。ある政府関係者は、「生産性を上げる仕掛けがないまま労働時間を機械的に減らす。働き方改革が企業の大停滞期の引き金を引いてしまう」と危機感をあらわにする。

 2017年2月の有効求人倍率(求職者1人に対する求人数)は1.43倍と、実に25年ぶりの高水準にある。労働改革は雇用情勢が良いときこそやりやすいというのが通説だが、企業が人材投資に金をつぎ込める好景気が前提となっている。

 だが、現在の雇用改善は、少子高齢化に伴う深刻な人手不足によるもの。好景気によるものではない。ただでさえ人手不足なのに、この時間外労働のキャップがかけられることで、さらに賃金を上げないと人材を獲得できなくなる。

 待遇を上げられる企業、つまり高い生産性を実現できる企業だけが生き残り、それ以外は淘汰されてしまうだろう。とりわけ、深刻なのは運送業や建設業だ。

 日本的な雇用慣行に倣ってきた企業にとっては、抜本的な人事戦略の転換が必要になる。

 今回導入された同一労働同一賃金には、ヨーロッパ型の職務給(仕事に応じた賃金)の考え方が色濃く反映されている。だが、日本企業では年功序列が残る職能給(能力に応じた賃金)を導入しているところが多く、人事体系の見直しは必至だ。

 「働き方改革は、日本的な雇用慣行の否定ともいえる。日本企業の強みである長期的な技能形成の仕組みをどの程度残すのかといった議論は不十分だ」と、山田久・日本総合研究所調査部長は指摘する。

正社員もピンチ スキルで評価されるシビアな改革

 もっとも、日本的な雇用慣行のひずみが噴き出していたことも事実ではある。経営者が、(職務・勤務地・労働時間が限定されていない)無限定社員を酷使したり、電通のように長時間労働に加えてパワーハラスメントが放置されたりといった事態は看過できない。

 労働改革の敢行は急務だった。企業に痛みを強いるのは当然といえるかもしれない。

 政権の罪は、労働者保護の視点に立った働き方改革であると宣言しておきながら、改革を本気で推し進めたときに労働者に降り掛かる厳しさについては国民に伝えていないことにある。

「働き方改革は、労働者保護ではなく、経済成長のツールにすぎない」(厚生労働省幹部)からだ。

 職務給が徹底されたならば、労働者が「時価評価」されることになる。何年働き続けたから、何時間働いたからでは評価されずに、スキルや成果で評価される。労働者個人にも生産性が求められるようになるのだ。

 特に、生産性の低い正社員にとっては耳の痛い話だ。飛躍的な成長を望めない国内では、企業が人件費原資を増やすことは考え難い。非正規労働者の待遇を底上げしたしわ寄せは正社員へ向かう。じきに、正社員の既得権益は剥がされていくことだろう。

 つまるところ、日本が経済成長の道を選ぶ限り、企業は人材への投資を、労働者は自己研さんを続けるより防衛手段はない。「一億総活躍ではなくて、一億総勉強の時代になる」(政府関係者)。企業と労働者の双方にとって、極めてシビアな世界が待ち構えている。

http://diamond.jp/articles/-/124195

 

 


 

みずほ銀、長プラを0.95%に据え置き
2017/4/10 12:31
 みずほ銀行は10日、毎月10日前後に決める大企業向けの融資金利の指標となる長期プライムレート(最優遇貸出金利)について、現行の0.95%に据え置くと発表した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL10HM9_Q7A410C1000000/


 

〔東京株式〕しっかり=環境落ち着き買い戻し(10日後場寄り付き)【4/10 12:45】
【第1部】円高の一服感など投資環境の落ち着きを受けた買い戻しが継続し、日経平均株価、東証株価指数(TOPIX)ともにしっかり。

東芝が上伸し、東エレク、SUMCOは堅調を持続し、任天堂、楽天はしっかり。トヨタ、SUBARUは買い優勢。三菱UFJ、三井住友が高く、野村、第一生命は強含み。ソフトバンクG、ファーストリテが値を上げ、ペプチドリはストップ高買い気配。半面、7&iHDが値を消し、花王、大塚HDは弱含み。ファナック、ソニーが売り物がち。三井不、菱地所は軟調で、OLCがさえない。

〔東京外為〕ドル、111円台半ば=実需買いや米金利上昇で堅調(10日正午)【4/10 12:01】
〔東京株式〕堅調=円高一服、買い戻し(10日前場)☆差替【4/10 11:45】
〔東京株式〕前場後半、伸び悩み(10日前場、続き)☆差替【4/10 11:45】
122円高の1万8786円72銭=10日午前の平均株価【4/10 11:40】
〔東京株式〕堅調=円高一服、買い戻し(10日前場)【4/10 11:33】
米、アサド政権へ圧力強化=ロシア・イランは反発【4/10 11:26】
円下落、111円台半ば=東京市場【4/10 11:25】
2月の経常黒字最大=2.8兆円、輸出が12%増【4/10 11:19】


〔東京貴金属〕金と白金、安値もみ合い=強弱材料が交錯(10日午前)【4/10 11:06】
金は安値もみ合い。午前11時現在、中心限月2018年2月先ぎりは前週末比5円安の4475円、ほかが当ぎりの3円高を除き4〜6円安。日中立ち会いは、取引中のニューヨーク金先物相場が、東京市場の前週末大引け時点を下回ったのを映し、反落して始まった。その後は、円の引き緩みとNYの軟調を眺め、始値近辺で推移している。

銀は期中以降が安い。

白金は安値もみ合い。動意を欠き、18年2月先ぎりが15円安の3410円、ほかが11〜20円安の出合い。パラジウムは期先が軟調。(了)

[時事通信社]

米国務長官、シリア攻撃で北朝鮮に警告=近海に空母派遣で圧力【4/10 10:34】
景気の回復基調続く=春の支店長会議―黒田日銀総裁【4/10 10:29】
日銀は10日、春の支店長会議を開いた。黒田東彦総裁は冒頭のあいさつで、消費者物価の先行きについて「小幅のプラスに転じた後、2%に向けて上昇率を高めていく」と述べ、従来のデフレ脱却シナリオを堅持する姿勢を示した。景気に関しても「回復基調を続けており、先行きは緩やかな拡大に転じていく」と強調した。

黒田総裁は、2%の物価上昇目標の実現に向け、「必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続する」とも語り、デフレ脱却に向けて粘り強く現在の緩和政策を続ける考えを示した。

〔東京外為〕ドル、111円台前半=NY連銀総裁発言で買い優勢(10日午前9時)【4/10 09:16】
〔東京株式〕買い優勢=円高一服を好感(10日前場寄り付き)【4/10 09:14】
円相場、111円21〜22銭=10日午前9時現在【4/10 09:07】
〔東京貴金属〕金と白金、反落=NY安映す(10日朝)【4/10 08:53】
金は反落。中心限月2018年2月先ぎりの始値は、前週末比3円安の4477円。日中立ち会いは、取引中のニューヨーク金先物相場が、東京市場の前週末大引け時点を下回っているのを映し、売りが先行して始まった。

銀は期先が軟調。

白金は反落。NY安を眺め、18年2月先ぎりが14円安の3411円で寄り付いた。パラジウムは期先が安寄りした。(了)

[時事通信社]

〔外為・今日の材料〕ドル、111円台前半=底堅いながら上げ余地限定(10日)【4/10 08:17】
テロを強く非難=米大統領【4/10 07:56】
【ワシントン時事】トランプ米大統領は9日、エジプト北部の教会で相次いで起きた爆弾テロに対し、「非常に悲しいことだ。米国は強く非難する」とツイッターで表明した。さらにエジプトのシシ大統領が事態に適切な対応を取ることに自信を持っていると語った。

米・エジプト両首脳は3日、ワシントンで初めて会談し、テロとの戦いや中東和平など地域情勢への対応で協力する方針で一致したばかり。今回のテロ攻撃では、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出している。

パレスチナに初の女子野球=テニスボールでも士気十分【4/10 07:46】
〔シドニー外為〕米ドル、111円台前半=豪ドルは83円台半ば(10日午前8時半)【4/10 07:42】
米西海岸で英語落語=大阪市と友好60年【4/10 06:47】
米、ロシアを批判=シリア化学兵器攻撃【4/10 06:40】
【ワシントン時事】ティラーソン米国務長官は9日の米CBSテレビで、シリアでの化学兵器攻撃をめぐり、同国の後ろ盾になっているロシアがシリアの化学兵器廃棄に関する2013年の米ロ合意の順守に失敗したと指摘し、「多くの子供や罪のない市民の殺害を招いた」と批判した。長官は11日からの訪ロで、ラブロフ外相とこの問題を協議する意向。

長官は、ロシアがシリアによる化学兵器廃棄の「保証人」であるにもかかわらず、化学兵器を使用したアサド政権をかばったと明言。米ロ合意後に廃棄されたはずの兵器が使われた事態を重く見て、「ロシアの失敗だ」と断じた。

一方で、ロシアが今回の化学兵器使用に関与した疑いがあるとの報道には「そうした情報は把握していない」と語った。

容疑者、ISに共感=退去命令を無視―スウェーデン【4/10 06:12】
北京郊外に新都市=習主席が実績づくり―中国【4/10 05:58】
米シリア攻撃「容認できず」=ロシア・イラン首脳【4/10 05:29】
【モスクワ時事】ロシア大統領府は9日、プーチン大統領とイランのロウハニ大統領が電話会談し、米国のシリア攻撃について「容認できない」との認識で一致したと発表した。両国はシリアのアサド政権を支援している。

両首脳はシリアでの化学兵器使用疑惑について、客観的な調査を求めることを確認。シリア問題で緊密な連携を続けることで合意した。

米国の目標「失敗」=反体制派排除へ決意―シリア大統領【4/10 05:28】
教会連続テロで47人死亡=ISが法王標的か、非常事態宣言―エジプト【4/10 05:27】
【カイロ時事】エジプト北部のタンタとアレクサンドリアにあるキリスト教の一派、コプト教の教会で9日、爆弾テロが相次ぎ、アルアハラム紙(電子版)によると少なくとも47人が死亡した。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出し、「兄弟(IS戦闘員)による殉教作戦だった」と主張した。

この日はコプト教の祭日「聖枝祭」で、多くの信徒が礼拝で教会を訪問。タンタで29人、アレクサンドリアでは18人が犠牲になった。負傷者は両教会合わせて130人以上に達した。シシ大統領は事件を受け、向こう3カ月間の非常事態を宣言。軍部隊にエジプト全土での「重要施設の保護」を命じた。

内務省によれば、アレクサンドリアの教会では事件発生時、コプト教の法王タワドロス2世が礼拝を主宰していた。治安要員に侵入を阻止された犯人が入り口付近での自爆を余儀なくされ、法王は無事だったという。ISが法王を標的とした可能性もある。

タンタでは、男が教会の内部で自爆したとみられている。ISは声明で今後の攻撃続行を警告した。

朴前大統領、弁護人を大量解任=全面否認戦略めぐり内紛―韓国【4/9 19:42】
シリア支援中止、ロシアに要求=G7外相声明へ調整―英紙【4/9 19:06】
【ロンドン時事】9日付の英日曜紙サンデー・タイムズは、ジョンソン英外相がシリアのアサド政権による化学兵器攻撃疑惑をめぐり、ロシアに同政権への軍事支援をやめるよう求める共同声明を先進7カ国(G7)外相会合で採択する方向で各国との調整に入ったと報じた。

G7外相会合はイタリアで10〜11日に開催される。共同声明ではアサド政権から新政権への移行やシリア再建策の重要性などをうたうことも検討されている。

セウォル号船体、陸揚げ=不明者捜索へ―韓国【4/9 18:03】
アサド政権へ圧力強化=「後ろ盾」ロシアと協議へ―米【4/9 14:29】
【ワシントン、モスクワ時事】トランプ米政権は、さらなるシリア攻撃もちらつかせながら、同国のアサド政権に圧力を加えていく構えだ。トランプ大統領は8日、議会に宛てた書簡で「必要かつ適切なら追加の行動を取る」と強調。ティラーソン国務長官は11日からのモスクワ訪問で、アサド政権の後ろ盾であるロシアに対し、シリア内戦の早期終結に向け米国と歩調を合わせるよう求める可能性がある。

トランプ大統領は書簡で、6日の巡航ミサイルを使ったシリアの飛行場攻撃について、アサド政権軍の化学兵器使用能力をそぎ、化学兵器の拡散を阻止する目的で指示したと説明。「米国の死活的な国家安全保障・外交政策上の利益のために行動した」と主張した。

また、ティラーソン長官は8日、ロシアのラブロフ外相と電話会談し、シリア攻撃後初めてシリア情勢を協議。外相はアサド政権を改めて擁護した上で、「地域と世界の安全にさらなる脅威をもたらす」と武力行使に訴えた米国を批判した。

シリア攻撃の背景には、「状況に応じた即興的手法」(米紙ニューヨーク・タイムズ)を取ることで予測不能な外交・安全保障政策を展開し、シリア以外の「潜在的敵対勢力」をけん制する意図もあったもようだ。

ロイター通信によれば、米海軍は原子力空母カール・ビンソンをシンガポールから朝鮮半島近海に派遣。挑発を強める北朝鮮をにらんだ軍事的動きで、アジア太平洋地域でも緊張は高まっている。

米空母、朝鮮半島近海へ=北朝鮮をけん制―ロイター報道【4/9 10:03】
【ワシントン時事】ロイター通信は8日、米海軍の原子力空母カール・ビンソンがシンガポールから朝鮮半島近海へ向かうと報じた。弾道ミサイル発射の挑発行為を繰り返す北朝鮮をけん制する狙いがあるという。

米当局者はロイターに対し、北朝鮮の懸念される振る舞いを受けて「(軍事)プレゼンスの強化が必要だと感じている」と語った。北朝鮮は5日、東部から日本海へ向けて弾道ミサイル1発を発射。近く核実験を実施する可能性があると韓国政府も認めている。

必要なら「追加行動」=シリア攻撃、議会へ書簡―米大統領【4/9 08:50】
【ワシントン時事】米政府は8日、米軍によるシリア攻撃について説明する書簡をトランプ大統領が議会へ送ったと発表した。大統領はこの中で「米国の死活的な国家安全保障・外交政策上の利益のために行動した」と主張。「必要かつ適切なら追加の行動を取る」と述べた。

米軍は米東部時間6日夜、巡航ミサイルでシリアの飛行場を攻撃した。トランプ大統領は書簡で、この飛行場を拠点とするシリアのアサド政権軍部隊が4日の化学兵器攻撃に関与したという情報があると指摘。政権軍の化学兵器攻撃能力をそぎ、アサド政権による化学兵器の使用・拡散を阻止するため、攻撃を指示したと説明した。

シリアめぐり電話会談=攻撃後初めて―米ロ外相【4/9 07:29】
化学兵器使用阻止で一致=米韓首脳【4/9 07:20】
【ワシントン時事】トランプ米大統領は7日、韓国の黄教安大統領代行(首相)と電話でシリア情勢を協議した。両首脳はアサド政権によるとされる化学兵器の使用は容認できず、同種の兵器使用阻止へ国際社会が結束して努力するべきだという立場で一致した。トランプ大統領は米国によるシリア攻撃への大統領代行の支持に謝意を表した。ホワイトハウスが8日、発表した。

選択肢に韓国へ核再配備も=トランプ大統領に提示―米報道【4/9 00:16】
【ワシントン時事】米NBCテレビは7日、北朝鮮の核開発に対応する選択肢の一つとして、米国家安全保障会議(NSC)がトランプ大統領に対し、米国の核兵器を韓国へ再配備する案を提示したと報じた。軍・情報機関高官の話として伝えた。

対北朝鮮政策の検討に関わる高官の一人はNBCに対し、20年間に及ぶ外交交渉と制裁でも北朝鮮の核開発は止められなかったと指摘した。この高官は「核兵器の(再)配備がわれわれにとって、代償よりも得るものが多いとは思わない」と、実際の採用には否定的な見方を示しながらも、事態の切迫性を強調したという。

NBCによれば、米国は25年前に韓国からすべての核兵器を引き揚げた。トランプ政権は外交と制裁によって中国が北朝鮮への圧力を高めるよう期待しているが、そうした努力が失敗した場合の選択肢も検討しているという。

シリア攻撃「明白な侵略」=核開発を正当化―北朝鮮【4/8 23:20】
【ソウル時事】北朝鮮外務省の報道官は8日、米軍のシリア攻撃について談話を発表し、「主権国家に対する明白な侵略行為で、絶対に容認することはできない」と非難した。朝鮮中央通信が伝えた。

報道官は「力には力で対処しなければならず、核戦力を強化してきたわれわれの選択が正しかったことを実証している」と述べ、核・ミサイル開発を正当化。「自衛的国防力」をさらに強化していくと予告した。

また、「一部では、米国のシリアへの攻撃がわれわれに対する『警告』の性格を持つと騒いでいるが、それに驚くわれわれではない」と強調。「核戦力を中心とするわれわれの強力な軍事力は、米国の侵略策動に対抗し、国の自主権と民族の生存権を守る『正義の宝剣』となっている」と述べ、強硬な政策を取るトランプ米政権に力で対抗していく姿勢を明確にした。

英外相、訪ロ中止=シリア化学兵器疑惑で【4/8 22:44】
【ロンドン時事】ジョンソン英外相は8日、化学兵器攻撃疑惑を持たれているシリアのアサド政権をロシアが擁護し続けるのは遺憾だとして、10日に予定していたロシア訪問の中止を明らかにした。実現すれば、英外相による約5年ぶりの訪ロとなるはずだった。

外相は声明で、化学兵器疑惑や米国によるシリア攻撃で「状況が根本的に変わった」と強調。ロシアに対し「シリア(問題)の政治解決を可能にするため全力を尽くすとともに、ショッキングな出来事が二度と繰り返されないよう国際社会と協力する必要がある」と呼び掛けた。

空爆で15人死亡=有志連合の攻撃か―シリア北部【4/8 22:28】
【カイロ時事】在英のシリア人権監視団によると、過激派組織「イスラム国」(IS)が「首都」と位置づけるシリア北部ラッカ付近で8日、空爆があり、子供4人を含む民間人15人が死亡した。監視団は「(米軍主導の)有志連合が攻撃を行った」との見方を示した。

空爆があったのは北部の村ハネイダ。有志連合は、ラッカ攻略を目指すクルド人主体の「シリア民主軍(SDF)」支援のため、シリア北部で空爆を実施している。

逮捕の男が実行犯か=トラック突入―スウェーデン【4/8 22:19】
文在寅氏、党の結束アピール=予備選候補と一気飲み―韓国【4/8 20:49】
バスク過激派が武器資料提出=130の銃器保管か―スペイン【4/8 19:03】
米中、対話の枠組み刷新=トランプ・習氏が関係構築―対立避け課題先送りも【4/8 17:39】
シリア軍事攻撃「2日半」の決断=首脳会談舞台裏で命令―米大統領【4/8 16:46】
アジア初の拠点、台北に=香港から変更―国際記者団体【4/8 16:41】
シリア難民7万人、砂漠に足止め=国境封鎖10カ月―ヨルダン【4/8 15:27】
【アンマン時事】米軍のシリアへの軍事攻撃で関係国の緊張が高まれば、シリア和平はますます遠のき、2011年から続くシリア内戦は泥沼化する可能性が高い。こうした中、故郷を追われ、隣国ヨルダンに向かったシリア人難民ら少なくとも7万人が両国国境の砂漠で1年近く足止めされている。

難民の足止めは、昨年発生したテロをきっかけにヨルダンが国境を封鎖したのが原因。冬は雪が積もり、夏は気温が50度前後にもなる過酷な状況下で、人々に支援が十分届いていない。

国境には緩衝地帯が設けられ、2カ所のキャンプが設置されている。このうちヨルダン北東部の国境にあるルクバン難民キャンプで昨年6月、同国の治安要員らが死亡するテロが発生。ヨルダン政府はこれを機に、シリアなどで活動する過激派組織「イスラム国」(IS)戦闘員の流入を防ぐためキャンプからの入国を実質的に禁止した。

何度も現地に赴いた国連児童基金(ユニセフ)ヨルダン事務所のプラダナン広報部長は「テロの前まではキャンプのシリア人に直接会えたが、今は国連職員も立ち入れない」と指摘。支援物資もフェンス越しにクレーンを使って届けており、厳しい環境で子供の衛生状態などにこまやかに対応するのが難しいと懸念を示す。

シリアではアサド政権や反体制派、ISの支配地域が入り組んでおり、脱出するのにブローカーに1人当たり2万5000〜3万シリア・ポンド(約11万7000〜14万円)を払う例もある。少ない蓄えから費用を捻出して逃げてきたシリア人にとって隣国に立ちはだかる「壁」は高い。

家畜の「飼育環境」重視=欧米で関心、東京五輪の食材基準に【4/8 15:24】
シリア攻撃でデモ行進=NY【4/8 14:53】
【ニューヨーク時事】米ニューヨークで7日、トランプ政権によるシリア軍事攻撃に抗議するデモが行われた。ABCテレビによると、数百人が参加し、「シリアを爆撃しても国民は守れない。殺すだけだ」などと書かれたプラカードを掲げ行進した。
http://fx.dmm.com/market/news/

 



http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/814.html

[経世済民120] 米国で小売店舗閉鎖が加速、アマゾン独り勝ちの影響深刻 米債V上昇 ツイッターで為替勝利 日株続伸 鉄鉱弱気入 金利の正体

米国で小売店舗閉鎖が加速、アマゾン独り勝ちの影響深刻
Nick Turner、Lindsey Rupp、Lauren Coleman-Lochner
2017年4月8日 02:03 JST

  米国では、価格帯に関係なく小売り実店舗の閉鎖が記録的なペースで進んでいる。全米のショッピングモールでは空きスペースが目立つ一方だ。
  ディスカウント系では、約4000店舗を展開し2万2000人を雇用する靴小売りのペイレスが今週に入り連邦破産法11条の適用を申請し、数百店舗の閉鎖計画を発表した。高級衣料品ラルフローレンは、ニューヨーク5番街の「ポロ」旗艦店を閉鎖すると明らかにした。事情を知る関係者によれば、若者向けアパレルチェーンのルー21が月内にも破産申請する可能性がある。このほか、シアーズ・ホールディングス、メーシーズ、JCペニーなど大手百貨店による店舗閉鎖の動きも加速している。
  クレディ・スイス・グループのアナリスト、クリスチャン・バス氏によると、2017年の閉鎖店舗数は約2880店と、リセッション(景気後退)最中の08年の同期をすでに上回ったほか、16年同期の1153店を大きく超えた。このペースが続けは17年全体では8640店(08年は約6200店)が閉店に追い込まれる可能性もあると、バス氏は試算している。
  積極的なネット販売戦略を展開しているブランドでも、業界リーダーであるアマゾン・ドット・コムの高い成長についていくのに苦心している。調査会社イーマーケターによると、昨年の電子商取引売上高の内訳は53%がアマゾン・ドット・コム、それ以外の小売業者が47%だった。カウエンのアナリスト、オリバー・チェン氏は、成功と失敗を分ける決め手はオンラインでも実店舗でも顧客に前向きな体験を提供できるかどうかで、このため業者は「顧客に再度照準を合わせる」必要があると話した。
原題:Stores Closing at a Record Pace as Amazon Chews Up Retailers (1) (抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-07/OO1SO76VDKHV01

 

 

米債券ボラティリティー、再び高まるか−当局のバランスシート縮小で
Alexandra Harris
2017年4月10日 13:30 JST

米国のシリア攻撃でロシアとの緊張高まる−英外相、訪ロ取りやめ

米国債や住宅ローン担保証券(MBS)で構成され、約4兆3000億ドル(約478兆円)に上るバランスシートを縮小し始める米金融当局の方針に、債券市場は落ち着いた反応を示している。それでも、こうした静けさが長続きしないと考えられる理由は多い。
  米国債やMBSの市場の仕組みをよく見れば、過去10年近くにわたって抑制気味に推移してきたボラティリティー(変動性)が再び高まる可能性があることが分かる。米金融当局は「漸進的かつ予測可能な方法」で政策転換を進めるとのスローガンを繰り返しているものの、満期証券の償還資金再投資をやめた場合の影響はやはり感じられるだろうと、アナリストは指摘する。
  FTNファイナンシャル(シカゴ)の仕組み商品担当シニア・バイスプレジデント、ウォルター・シュミット氏は、米金融当局のバランスシート縮小の方針について、当局の「歴史で最もよく予想されてきた出来事だ」とした上で、「過去2年間分かっていたもので、待ち続けてきた」と語った。
  第3弾まで行われた資産購入による量的緩和(QE)はボラティリティーを抑えてきたが、2013年に当時のバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が購入縮小を検討していると発言し、事態がいかに急速に変化したかは事例として残っている。いわゆる「テーパータントラム」によって利回りは急上昇した。
  米金融当局がバランスシート縮小を巡る本格的な検討に入る中、ボラティリティーが再度高まるかもしれない四つの理由を次に示す。
1.MBS需給の変化
  米金融当局が保有する政府支援機関(GSE)保証付きのMBSは1兆7700億ドル相当で、市場の約31%を占める。金融当局のMBS保有が減り始めれば、市場での追加的な供給への調整として米国債に対するMBSの利回り差(スプレッド)は拡大することになる。
  14年10月のQE第3弾終了以降、ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)の30年物カレントクーポンと米国債の利回り差は90−114ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、歴史的平均の約137bpを下回って推移。だがシティグループのアナリストの推計では、再投資縮小の確実性を市場がいったん織り込めば、スプレッドは5−10bp拡大して、長期的にはさらに10−20bp広がる可能性があるという。
2.コンベクシティ・ヘッジの増加
  米金融当局がバランスシート縮小に際して利上げ休止を決めた場合でも、大口の需要源が消失することで住宅ローン金利は上昇することになる。その結果、借り手によるローンの繰り上げ返済のスピードは低下し、証券のデュレーション(残存期間)拡大につながる。
  金利が上昇すれば、モーゲージ債の予想残存期間の拡大に伴い、いわゆるコンベクシティ・リスクに対するヘッジが増える。米国債売却やスワップ契約の締結を通じ、こうした潜在的な損失を予防することによって、トレーダーは債券市場の変動を一層大きくする可能性がある。
3.タームプレミアムの拡大・リスク資産からの資金引き揚げ
  市場が米金融当局のバランスシート縮小に備えるのに当たり、10年物のタームプレミアムには拡大圧力が働く。バンク・オフ・アメリカ(BofA)メリルリンチのストラテジストによれば、タームプレミアムは18−19年を通じて47bp拡大する可能性がある。モーゲージのデュレーションの拡大と相まって、タームプレミアムの拡大で5−10年物イールドカーブ(利回り曲線)はスティープ化も想定される。
  タームプレミアムの拡大は、過去10年近くにわたる米金融当局の緩和策を背景に過去最高値水準にある株式など、リスク資産からの資金引き揚げの契機となるかもしれない。ただ、BofAメリルのストラテジスト、マーク・カバナ氏は「リスク資産との関連性はそれほど確実ではない」としている。
4.米短期債の金利上昇
  米金融当局のバランスシート縮小が始まれば、米国債市場のうち短期債にも影響が及ぶ。米財務省はイールドカーブ上のどの部分で証券発行を増やしたいか決めなければならなくなる。
  BofAメリルのカバナ氏は「財務省は短期債の供給を極めて顕著な形で増やす必要があるだろう」と話す。財務省が短期証券(TB)の供給を増やすと想定した場合、残存期間が1年未満の債券の金利は上昇する公算が大きく、米国債レポの翌日物金利の押し上げに作用する。それは、米金融当局が行っている固定金利方式の翌日物リバースレポの利用減少を招く可能性がある。
原題:Fed’s Big Unwind Risks Reigniting U.S. Bond Market Volatility(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO6BNO6KLVR401

 


為替市場で勝つ方法はシンプル、ツイッターをフォローせよ

Liam Vaughan
2017年4月10日 11:15 JST

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バークレイズ取締役会がステーリーCEOを叱責−内部告発巡る対応で
• ツイッターに投稿されるユーロ相場の予想と実際の市場動向を分析
• フォロワーが500人以上の投稿者の予想に従うと高リターンの傾向

為替取引で強みを得たいなら、ツイッターだけを見ていればよい。そんな内容の新しい研究調査結果を学者2人が発表した。
  為替動向の専門家がツイッターに投稿した予想に基づきユーロを売買すると、リスク調整後のリターンが通常のキャリー取引をした場合の4倍近くになったと、バヒド・ゴランポー、エリック・ファンウィンクープ両氏が3月発表したリポートで指摘した。
  それによれば、市場を上回る好成績を挙げる可能性が最も高かったのは、フォロワーが500人以上のツイッターユーザーの見方に従う場合で、こうしたユーザーの多くはブローカーやアナリスト、金融コメンテーターとして働く「情報通」という。この調査結果以外にも最近、市場を動かす情報は資産価格に完全に反映される前にソーシャルメディアに流れていることを示唆する文献は増えている。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i5IhDrsg2Q2Y/v1/-1x-1.png

  ニューヨーク連銀でエコノミストを務めた経歴を持つファンウィンクープ氏は「パフォーマンスの水準には全く驚いた」とし、「ツイッターが非公開情報を得るのに良い情報源であるとの考え方を確認させるものだ」とコメントした。研究は米バージニア大学で3年かけて実施した。
  研究は2013年10月から16年3月にかけてユーロの対ドル予想を含むツイッターへの投稿2万7557本を対象とし、その正確性を検証。投稿者の助言に従った投資家が得たであろうリスク調整後リターンを計算するモデルを作成した。その結果、「情報通」のセンチメントに基づく為替取引をすると、リスク1単位当たりのリターンを測るシャープ・レシオが1.68と、長期キャリー取引で得られる年率0.44を上回ることが判明した。フォロワーが500人に満たないツイッターユーザーの予想に従った場合でも0.77と、同レシオは比較的高かった。
原題:How to Beat the FX Market? Just Get on Twitter, Academics Say(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO66HA6K50XU01


 
鉄鉱石価格が弱気相場入り−バークレイズはさらなる下落を予想
Ranjeetha Pakiam、Jasmine Ng
2017年4月10日 11:26 JST

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iOb_AanotR28/v2/-1x-1.png


下押し圧力
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中国の鉄鋼需要後退で低品位鉱石への移行進む
鉄鉱石価格は2月21日に付けた高値から20%余り下落

鉄鉱石価格は弱気相場入りしたことでさらに下落する可能性があるとの見方が出ている。バークレイズは、中国の鉄鋼需要後退で低品位鉱石への移行が進み、鉄鉱石価格は50ドル台に下落するとみており、こうした見方が裏付けられつつある。
  メタル・ブレティンによると、青島の鉄鉱石(鉄分62%)の価格は7日、前日比6.8%安の1ドライトン=75.45ドル。鉄鉱石価格は3週連続で下落し、年初来の上昇分を打ち消しており、2月21日に付けた高値から20%余り下落している。直近の高値から20%以上下落すると弱気相場入りしたとされる。

  バークレイズ のアナリスト、デーン・デービス氏はブルームバーグに対し電子メールで、「価格の軟調さは、末端実需業者の鉄鋼需要の低迷によるものだった」と指摘。「その際に、鉄鋼生産会社は潤沢だった低品位の鉄鉱石に移行した」と述べた。同氏は向こう数カ月間の価格見通しについて弱気姿勢を取っている。
原題:Iron Ore Slumps Into Bear Market as Barclays Sees Further Losses(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO66KQ6KLVR501


 


 


日本株続伸、イベント通過後の円軟調を好感−過度な地政学警戒薄れる

  東京株式相場は続伸。米国の雇用統計や米中首脳会談といったイベント後の為替市場で円が下落し、企業業績の先行き不透明感が後退した。シリア情勢に対する過度な警戒も和らぎ、自動車など輸出株、鉄鋼など素材株中心に高い。米長期金利の上昇を材料に銀行、保険など金融株も買われた。
  TOPIXの終値は前週末比9.88ポイント(0.7%)高の1499.65、日経平均株価は133円25銭(0.7%)高の1万8797円88銭。
  アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの寺尾和之最高投資責任者は「米雇用統計の雇用者数では弱めの数字が出たものの、天候による一時的要因としてマーケットは額面通りに受け止めていない」と指摘。米国が完全雇用に近づいているという解釈なら、「賃金は上がる方向で、金利先高観は残る」と話した。重要イベントを通過し、「さえない米指標もそれなりに織り込まれたことで、今週の日本株は底堅い動きになる可能性がある」とみている。
  東証1部33業種は鉄鋼や銀行、その他金融、非鉄金属、保険、機械、輸送用機器など27業種が上昇。鉱業、食料品など6業種は下落。売買代金上位では、米社と創薬共同研究開発契約を結んだペプチドリームがストップ高。マッコーリーキャピタル証券が投資判断を上げたタダノも急伸、東芝やSUMCO、セブン銀行、IHIも高い。半面、2018年2月期営業利益計画が前期比8.4%減の久光製薬は急落し、塩野義製薬やコカ・コーラボトラーズジャパンも安い。
東証1部の売買高は17億3234万株、売買代金は1兆9300億円、代金は前週末に比べ3割減少した
値上がり銘柄数は1405、値下がりは504

●債券下落、米金利上昇や株高・円安が重し−地政学リスクで下値限定的

  
  債券相場は下落。前週末の米長期金利上昇の流れを引き継いだほか、国内株式相場の上昇や外国為替市場での円安進行を背景に売り圧力がかかった。
  長期国債先物市場で中心限月6月物は前週末比11銭安の150円49銭で取引を開始。一時150円46銭まで水準を切り下げたが、午後に入ると2銭安まで下げ幅を縮小。結局4銭安の150円56銭で取引を終えた。
  バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは「ニューヨーク連銀総裁の発言を受けた利上げ観測の盛り返しで米金利が上昇した流れを引き継いだ上、足元で株高・円安となったことで債券は売られやすい」と説明した。「水準的にも先物と10年債の高値警戒感が強い」とし、「日銀のオペ減額も意識されて買い進みづらい」と述べた。
  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の346回債利回りは、日本相互証券が公表した前週末午後3時時点の参照値から1ベーシスポイント(bp)上昇の0.055%で寄り付いた。午後は0.05%で推移している。

●ドルは対円で1週間ぶり高値、米金利上昇−FRB議長講演に注目

  東京外国為替市場のドル・円相場は上昇し、3日以来の高値を付けた。前週末のニューヨーク連銀総裁の発言を受けて米金利が上昇し、ドル買い・円売りが優勢となった流れを引き継いだ。
  午後3時35分現在のドル・円は前週末比0.2%高の1ドル=111円31銭。朝方に付けた111円01銭を日中安値に、五・十日(ごとおび)仲値公表が集中する午前10時前後にかけて上昇基調を強め、一時は111円58銭と、3日に付けた直近の高値にあと1銭に迫った。主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.1%高の1231.18。一時1232.31と3月16日以来の高水準を付けた。
  ソシエテ・ジェネラル銀行東京支店の鈴木恭輔為替資金営業部長は「ドル・円はダドリーNY連銀総裁の発言で米金利が戻し、シリア攻撃や米雇用統計の弱いヘッドラインで110円トライを狙ったショートポジション(売り建て)がスクイーズされた。きょうもその流れで上昇した」と指摘。「111円60銭を回復できれば112円近辺までもあるが、ポジショニングはやや円ロングからほぼニュートラルといったところ。地政学リスクについては、シリアにしても北朝鮮にしても、予断を持たず今後の進展をみる局面に入っており、これはこれで動きづらい」と述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO6MG16JTSE901


 

富裕層への第一歩は「金利」の正体を知ること!
資産運用のパラダイムシフトはすぐ目の前?(第2回)
2017.4.7(金) 加谷 珪一
金利の考え方はあらゆる経済活動の基礎となる(写真はイメージ)
このところ資産運用の世界で、大きなパラダイムシフトが起こりつつある。長年続いた低金利の時代が終わり、金利上昇が本格化するのではないかとの見方が台頭してきているのだ。

もしこの転換が本物だった場合、個人の資産運用は抜本的な転換を迫られることになる。金利が上昇し、インフレが進む局面において、銀行預金に依存し過ぎることはリスク要因となる。

そこでこのコラムでは3回にわたって、新しい時代を迎えつつある個人の資産運用と金利の動向について論じていく。

前回(「資産家がわざわざローンを組んで不動産を買う理由」)は「金利」の動向を知ることがいかに大切なのか、1980年代のバブル崩壊やリーマンンショックなどを引き合いに解説した。2回目の今回は、金利というものがなぜ存在しているのか、その本質的なメカニズムについて探ってみたい。

なお、2月に上梓した『最強のお金運用術』(SBクリエイティブ)では金利についてさらに詳しく解説しているので、本記事とあわせて参照していただきたい。

金利とは「時間」を買うためのコストである

前回、金利の動向に注意を払っておくことで、市場のピークやボトムをより確実に把握できるという話をした。例えば2003年や2010年は、株式投資や不動産投資における絶好の買い場だったが、金利の動向はいずれもこの状況をよく表していた。

資産家は金利の動向に敏感なことが多く、こうしたチャンスを決して逃さない。実際、このタイミングで思い切って資金を借り入れて投資を行い、大きな利益を得た投資家は数多く存在する。実際、2010年にローンを使って不動産を購入し、手元の余剰資金は株式に投じた資産家を筆者は知っている。その後、その資産家が大きな利益を手にしたことは説明するまでもない。

では、彼等はなぜこのタイミングで、わざわざ金利を払ってローンを組むのだろうか。単純に考えれば、この先、株価や不動産価格が上がりそうなので、銀行からお金を借りて資産をたくさん購入したということになる。しかし、一連の行為をもう少し掘り下げて考えてみると、もっと違った光景が見えてくる。重要なことは、金利というのは「時間」の概念と密接に関係しているという点である。

ここで金利に関する重要な考え方を2つ提示しておこう。これは、あらゆる経済活動の基礎となるものなので、しっかりと頭に入れておいてほしい。

(1)金利というものは、現時点での将来見通しを示したものである

(2)金利を払うという行為は時間を買うことと同じである

両者に共通しているのは時間の概念である。金利を見ることで、市場が将来の動向についてどう考えているのか知ることができる。また、金利を支払うことによって、時間を能動的にコントロールすることが可能となる。金利を制するものがビジネスや投資を制するのは、時間を自由に操ることができるからだ。

先ほどの不動産投資と株式投資を組み合わせたケースでは、ベストなタイミングでローンを組んで物件を買った人は、金利の動向を見て投資のタイミングを決断している。つまり金利には、今後、市場がどのように推移するのかという見通しのヒントになる情報が含まれているということになる。

また、お金があるにもかかわらずローンを組んだということは、その人の中には、ローンを組むという行為は時間を買うことであるとの明確な認識が存在している。将来では値段が上がりすぎてしまうので、買うなら今しかない。ローンを組んで不動産を買えば、手元にキャッシュが残るのでこれを株式投資に回すことができる。

将来得ることができるお金を、コストを払って、今、獲得してしまうのがローンであり、金利は時間の値段にほかならない。同じお金を借りるという行為であっても、単純にお金がないから借りる人とは考え方が180度違っているのだ。

なぜ長期金利は短期金利より高いのか?

こうした感覚が分かってくると金利に対する見方も変わってくるはずだ。金利が時間というものに密接に関係しているのであれば、当然、金利水準についても時間を軸に考える必要がある。

一般的に短期の金利は低く、長期の金利は高くなる傾向がある。では、なぜ短期の金利は低く、長期の金利は高いのだろうか。

短期金利が低く、長期金利が高いのは、一種の常識となってしまっているので、多くの人がこれを当然視している。住宅ローンを組む人の中で、長期のローン金利が、なぜ短期より高いのかについて真剣に考える人はあまりいないだろう。

実は金融理論の世界でも、なぜ長期金利の方が高いのかについて明確な回答が得られているわけではない。ただ、金利というものが時間と密接に関係した存在である以上、その理由も時間と大きく関係していることは明らかである。

一般的に長期と短期で金利差が生じている理由は、以下の2つが原因と考えられている。

(1)インフレ予想

(2)リスク・プレミアム

経済はデフレの時代とインフレの時代が交互にやってくるが、基本的にインフレが続く期間の方が圧倒的に長い。日本はバブル崩壊以後、25年以上にわたってデフレが続いてきたが、これは世界的に見ても非常に珍しいケースである。程度はともかくとしてインフレが継続するのが普通である。

そうなってくると、毎年物価は上がり続けるというのが定常状態ということになり、これが長期と短期の金利差の原因となる。例えば、1年で1%の利回りが得られる1年物の債券があり、これを2年間運用すると仮定する。毎年、物価は上がっていくので、現在1%になっている債券の利回りは、来年は2%になると皆が予想している。

利回り1%の1年物債券を運用すると、1年後には101円になって戻ってくる。その時の利回りは2%になっているので、先ほどの運用で得られた101円を利回り2%の1年物の債券に投資すると、翌年には103円になっているはずだ。

一方、2年満期の債券があり、この利回りが1%だったとすると、100円でこれを購入した投資家は、2年経っても102円にしかならない。

1年後に債券を買い換えた場合は103円になるという現実を考えると、この債券を買う投資家は存在しないだろう。少なくとも、前述のように1年の債券投資を2回繰り返したケースと同じにならなければ、この債券を買う経済合理性がない。

もし2年の債券の利回りが1.5%であれば、これを100円で購入した投資家は2年後には103万円を手にできる。つまり2年の金利(1.5%)は1年の金利(1.0%)よりも高くなっている。皆がインフレになると予想している限り、長期の金利は高く推移することになるが、これが長短金利差の源泉である。

物価が継続的に上昇するメカニズム

日銀は、2016年9月に行われた金融政策決定会合において、イールドカーブ・コントロールと呼ばれる新しい金融政策の枠組みを導入した。先ほど説明したように長期金利が短期金利より高い状態というのは、皆がインフレになると予想している状態である。この状態が持続するよう、金融市場を調整するというのがイールドカーブ・コントロールの趣旨である。

では、インフレになる、つまり物価が継続的に上昇するというのはどのような状態だろうか。量的緩和策の場合には意図的にマネーの絶対量を増やすことで物価を上げようとしているが、一般的なインフレは景気の過熱とともに発生することが多い。

マクロ経済では、消費者は所得の一定割合を消費し、残りは貯蓄することになっている。貯蓄に回った資金は銀行を通じて事業などに融資されることになるが、景気が加熱して取引が増えてくると、銀行には多くの融資依頼が舞い込むようになる。取引が活発になると、より多くのお金が必要となるからだ。

お金が必要となる理由は、ビジネスの現場を考えると分かりやすい。ある商店のケースを考えてみよう。もし不景気で商品があまり売れなければ、今ある商品を販売し、顧客から代金を受け取った後に、次の商品を仕入れればよい。しかし、景気がよくなり、顧客から次々と注文が舞い込むようになるとそうはいかなくなる。顧客からの入金を待っていては、新しい商品を仕入れるタイミングが遅くなり、在庫不足になってしまうからである。商店は、在庫不足にならないよう銀行からお金を借り、販売代金が支払われる前に次の商品を仕入れることになるはずだ。

こうした状況が社会全体で同時多発的に進行すると、銀行は収益を最大化するため金利を引き上げようとする。金利が上がるということは物価が上昇するということなので、金利が上がると現実の物価も上がっていく。経済が活発になれば、必然的に経済活動に必要なお金の量が増え、金利と物価が上昇するという仕組みだ。こうしたメカニズムは、上下のブレはあるとしても持続的なものであると多くの人が考えている。このためインフレは恒常的なものとなり、結果として長期の金利は高めに推移する。

長期金利はたいていの場合、GDP(国内総生産)の成長率に収れんすると思ってよい。つまり金利の動向を分析するということは、その国の経済全体を分析することと同じになる。

(次回は4月12日に掲載します)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49631
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/815.html

[経世済民120] 強まる米株割高説、頼みは「バフェット氏の反論」 アマゾンGOの衝撃 チャットボット 追加緊縮は債務負担削減次第ギリシャ
強まる米株割高説、頼みは「バフェット氏の反論」
編集委員 田村正之
2017/4/10 5:30
日本経済新聞 電子版
 北朝鮮やシリア情勢を巡る緊張の高まりとともに株価の重荷になっているのが米国株の割高説だ。先週公表された3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨でも、何人かの委員が「とても割高だ」と指摘していた。
 ノーベル賞学者のロバート・シラー氏による景気循環調整後の株価指標「CAPEレシオ」は3月末で29倍台で、割高さの目安とされる25倍を突破し、金融危機前の水準を超えている。戦後25倍を超える水準が続いたのはIT(情報技術)バブル期と金融危機前の2回で、その後株価は大きく下落した。
■2万ドル割れの声も

http://www.nikkei.com/content/pic/20170410/96958A9F889DE3E7E2E1E5E6E7E2E2E5E2E6E0E2E3E5E2E2E2E2E2E2-DSXMZO1503817007042017000001-PB1-5.jpg 画像の拡大
 ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏は「明らかに割高であり、近く(ダウ工業株30種平均の)2万ドル割れが起きることも覚悟しておくべきだ。例えば5月の予算教書発表で、減税を巡る見通しが不透明になれば調整の契機になるだろう」と話す。
 異なる意見もある。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏は2月末のテレビインタビューで「米国株はバブルか」と問われ「バブルの領域ではない、金利と比較すればまだ割安な水準だ」と述べた。
 教科書的にいえば、投資家は株式の期待リターンである益回り(予想1株利益÷株価)と長期金利を比べ、投資先を株式にするか債券にするか判断する。トランプ米大統領の当選後、長期金利の水準が上がったとはいえ歴史的にはまだ低く、相対的に株式の魅力が高いということだ。

http://www.nikkei.com/content/pic/20170410/96958A9F889DE3E7E2E1E5E6E7E2E2E5E2E6E0E2E3E5E2E2E2E2E2E2-DSXMZO1503813007042017000001-PB1-5.jpg 画像の拡大

 バフェット氏の主張を確認するグラフを示すのが楽天証券経済研究所の香川睦氏だ。グラフでわかるようにS&P500種株価指数の予想PER(株価収益率)も18倍台で、確かに割高な水準にある。しかし香川氏も「長期金利がまだ低いことを考え合わせるべきだ」と指摘する。
 PERに長期金利をかけた「金利調整後PER」は米国では比較的よく使われる。PERは高くても、金利が低いと金利調整後PERの水準は下がる。S&P500種株価指数の金利調整後PERは最近0.4倍台で、過去25年の平均(0.76倍)より低い。長期金利が2%台前半にとどまっているからだ。ちなみに金融危機前の長期金利は5%前後に達していた。
 香川氏は「金利調整後PERでみれば米国株はむしろ割安。中東や北朝鮮でのリスクやフランス大統領選、5月初旬のFOMCの内容などをめぐる不透明要因で1、2カ月は警戒が必要だが、大きな波乱がなければ再び上昇基調に戻る」とみている。
 もう一つ支えになるのは米企業業績の堅調さだ。今年と来年の米企業業績をともに2ケタ台の増加とみる予測機関も出ている。みずほ証券の倉持靖彦氏は「業績回復局面ではPERが先行して上がり、やがて利益の上昇が追いつき、PERは妥当な水準に戻ることが多い」と指摘する。
 ただし「確かに米景気や業績は悪くないが、市場が思っているほどには強くない。だからこそFOMCは警告を発している」(井出氏)と、ここでも見方は分かれている。
■過剰流動性相場と景気拡大の終わりの始まり?
 当然ながらFOMC議事要旨でもう一つ重視しておかなければならないのは、年内に米連邦準備理事会(FRB)が保有資産の縮小に踏み切る考えを表明したこと。金融危機以降の過剰流動性相場の「終わりの始まり」だ。
 米景気の拡大期間は戦後の平均で5年弱。前回の景気の谷は2009年6月だったので、拡大はまもなく9年目に入る。そうした中で今後、利上げが実施され、同時にFRBによる保有資産の縮小が起きれば、頼みの綱である低金利の効果も薄れていくだろう。過去の景気拡大期の終盤は業績回復が鈍化したことも多く、市場の期待通りの業績拡大が続くか不安も残る。
 現在の米株がバブルと呼ぶほどの割高さではないにしても、過剰流動性相場と長い景気回復局面の「残る賞味期間」を考えながらの投資スタンスが必要とされそうだ。

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AIはシンギュラリティの夢を見るか?

アマゾンGOの衝撃 テクノロジー主導経済の未来

2017/04/10
川手恭輔 (コンセプトデザイン・サイエンティスト)
 世界の貧困問題に取り組むNGOのオックスファムは1月16日、格差問題に関するレポート『99%のための経済(An Economy for the 99%)』を発表した。それは「富める者と貧しい者の間の格差は、これまで考えられていたよりも大きく、世界で最も豊かな8人が世界の貧しい半分の36億人に匹敵する資産を所有している」そして「格差拡大は、何億もの人々を貧困の中に封じ込め、社会に亀裂をつくり、民主主義をも脅かしている」と報告している。

 世界中で大論争を巻き起こした『21世紀の資本』の著者トマ・ピケティも、世界中で富の分配の不平等化が進んでいると指摘したが、その原因は「資本収益率 > 経済成長率」になっていることにあるという。


アマゾンが公開したAmazon GOを紹介する動画

 資本収益率と経済成長率の2つの差が開けば開くほど、それが長ければ長いほど富の分配の不平等化が進み、資本を持っている側は所有資本をどんどん大きくする一方で、労働者の所得はさほど上昇しない。アベノミクスでは富裕層や大企業への減税策を「それらから溢れ出た富が人々を豊かに(トリクルダウン)する」と正当化してきたが、その気配は(当然のことながら)まったくない。

 フォーブスが3月20日に発表した2017年版世界長者番付によると、過去23年間で18回目となる首位に輝いたビル・ゲイツは、資産総額を昨年の750億ドルから860億ドルに増やした。3位のアマゾン・ドットコムのジェフ・ベゾスの資産総額は728億ドル(276億ドルの増加)、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグは560億ドル(114億ドルの増加)で5位となった。グーグルのラリー・ペイジ(資産総額407億ドル)とセルゲイ・ブリン(同398億ドル)は12位と13位につけている。

テクノロジー主導の経済が新たな不平等を生む


(iStock)
 ピケティは「富の継承(相続)が人々の社会的かつ政治的運命を決定する世界」へ逆戻りすることを警告したが、富の配分の不平等化の主な原因はテクノロジーになりつつある。テクノロジー主導の経済は、才能と運を持った少数の勝者への報酬を莫大なものにしている。ピケティは既存企業のトップ(スーパーマネージャー)が、お手盛りで業績とリンクしない高額の報酬を得ていると指摘したが、テクノロジー主導経済のスーパースター達は革新的なサービスとビジネスモデルのアイデアを実現した。

 テクノロジー主導経済の中心となっているインターネットのビジネスでは、勝者がほとんどすべての果実をとっていく。いったんある領域のサービスの勝者が決まると、それ以外の企業の類似のサービスは生き残ることが難しくなる。他の企業が新しい機能や仕組みを開発しても、勝者はすぐにそれらを自分たちのプロダクトに追加してしまう。もっとも利用されているサービスを容易に利用できるのに、人々が2番目のサービスを利用する理由は少ない。かろうじて言語や規制などの理由から、地域ごとのビジネスが成立するだけだ。

 さらに資本主義の本質とは異なり、テクノロジー主導経済においては「価値と富の交換」が不平等になっている。グーグルやフェイスブックなどのネットワーカーのビジネスモデルでは、パブリッシャーはコンテンツを無償で提供し、その無償のコンテンツにアクセスするコンシューマは、そのトラフィックを無償でネットワーカーに提供する。

 ネットワーカーはそのトラフィックを広告主に提供して莫大な対価を得る。ネットワーカーが提供する検索エンジンやソーシャルネットワークの利用と交換に、パブリッシャーやコンシューマが大きな価値を提供し、最終的にネットワーカーだけが対価を得るという「わらしべ長者」のようなモデルによって富がごく少数のネットワーカーに集中する。このようなビジネスモデルでは、価値の創造と維持そしてそれを人々に届けるために必要となる、対価を伴う労働機会が非常に少ない。

テクノロジーによる雇用の破壊が進む

 オバマ政権末期のホワイトハウスがまとめた『人工知能、自動化、そして経済』というレポートは、「自動化によって脅かされている仕事は、低賃金、低熟練、低教育の労働者に集中している。これは自動化が賃金をさらに引き下げ、経済的な格差を拡大し、このグループの労働力の需要を縮小させることを意味している」と警告している。人工知能の技術の発達によって自動化が加速し格差がさらに拡大する。

 このレポートは、自動運転によって220万人から310万人の雇用が奪われるだろうと予測する。これには比較的高給の超大型トラックの運転手170万人が含まれている。黒煙を吹き上げながら広大なアメリカ大陸を駆け抜ける通称ビッグリグ(BigRig)と呼ばれる超大型トラックが、無人あるいはほとんどの行程を自動運転で走行するようになれば、運転手が休憩のために立ち寄るドライブインも閑散としてしまうだろう。かつてウォルマートが多くの小売店や町工場を廃業に追い込んだとき、小売店や町工場が利用していた、地域のサービスや金融会社なども姿を消してしまったように、雇用の破壊はその周辺にも大きな影響を与える。

 そして現時点でのテクノロジー主導経済の勝者は、人工知能を開発するための世界中の知能(人材)を買い漁っている。近年、人工知能はディープラーニングという技術によって飛躍的に進化し、インターネットの次の、あらゆる経済活動で広く用いられる重要なテクノロジー(GPT)になる可能性を帯びてきた。すでに彼らは検索エンジンやソーシャルネットやEコマースを利用するユーザーから収集した、ディープラーニングに必要なビッグデータを所有している。

 MIT Technology Reviewの編集者デビット・ロトマンは「1700年代に産業革命が始まって以来、テクノロジーの進歩は仕事の性質を変え、その過程でいくつかの種類の雇用を破壊してきた。1900年にはアメリカ人の41%が農業に従事していたが2000年には2%になった。同様に、製造業に雇用されているアメリカ人の割合は、第二次世界大戦後の30%から約10%に低下した。それは1980年代の自動化の増加によるものだ」と述べている(2013年6月)。そして次は、人工知能によって可能になる新たな自動化がサービス業の雇用をも破壊しようとしている。

アマゾンのレジなし店舗の意味

 昨年12月にアマゾンはAmazon Goという、レジのない食料品販売の店舗をオープンすると発表した。すでにシアトルのアマゾン本社に併設された店舗で、アマゾンの社員によるテストが実施されている。駅の自動改札のようなゲートで、専用アプリがインストールされたスマートフォンをかざして入店し、自由に商品を自分のバッグに入れてそのまま店舗を出れば、代金がアマゾンのアカウントにチャージされる。コンピュータビジョンとセンサーフュージョンそしてディープラーニングを駆使した、アマゾンがJust Walk Out Technologyと呼ぶ技術によって、来店者が商品を棚から取り出したり戻したりする「行動」を自動的に認識するという。

 人の顔などを認識するコンピュータビジョンの技術はすでに広く用いられているが、動画から「行動」を認識するということは画期的なことだ。その仕組みは明らかにされていないが、コンピュータビジョンの動画認識と、棚などに設置された複数の種類のセンサーからのデータを統合的に処理するセンサーフュージョンによって情報を補完し、商品を「取り出した」「戻した」という行動を認識をしているのだろう。

 「レジがない」というメリットだけで、実際の店舗での食料品販売の事業が成功するとは思えないが、Just Walk Out Technologyは、収集した来店者の行動の情報からディープラーニングによって特徴(feature)を見つけ出し、さまざまな「行動」を認識できるようになるかもしれない。それによって店舗内での高度な接客業務や、他のサービス業への展開もなども可能になるだろう。Amazon Goの成否はともかく、かき集めた富と人材を使って、クレイジーとも思えるイノベーションに挑戦するテクノロジー主導経済の勝者のパワーは計り知れない。

人工知能の経済の未来への対応

 テクノロジー主導の経済が生む富の分配の不平等が、社会全体に悪影響を及ぼしはじめている。アメリカのトランプ政権の誕生には、その不平等に対する行き場のない不満の表れという一面もあるはずだ。すでに「懸命に働けば、誰でもが金持ちになれる」というアメリカンドリームは消え、いまにも切れそうな蜘蛛糸にしがみついた中間層の人々が、後から登ってきた移民や外国人を蹴落とそうとしているが、それでは問題の解決にはならない。

 移民が少ない日本では、サービス業を中心として人手不足が深刻な問題になっているため、自動化による雇用の破壊という問題はあまり論じられていない。しかし日本でも経済的な格差は拡大している。資本は効率を追求するので、人工知能による自動化は高賃金の雇用から破壊する。そこから生じる富は資本に還流し、労働は残された低賃金の雇用に流れざるを得なくなり、格差はさらに拡大すると考えられる。

 基本的な収入を確保できる社会的なセーフティーネットやベーシックインカム制度導入などについても、アベノミクスに幻惑された日本では真剣に議論されていない。先日、大手シンクタンクの人工知能をテーマにしたメディアフォーラムで、「人工知能が効率化と労働代替にのみ矮小化されている」という捉え方をしていたことに唖然とした。人工知能という次のGPTによって加速するテクノロジー主導の経済の未来を多角的に分析し、そこで生じる可能性のある問題に対応する政策として、税制や社会保障制度そして特に、教育システムについて真剣に議論する必要があるだろう。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9282

 


チャットボットが生活を変える!? スマートハウスとの連携もLINE BOT AWARDS決勝大会報告・前編
BY Fumiaki Ogawa (IoT Today)

最近、チャットボットが注目を集めている。2015年にサービスを開始したMicrosoftの「りんな」はユーザー数を爆発的に増やし、企業とのコラボレーションやテレビドラマ出演を果たすなど、1つの人格として活動を展開。まさに、人工知能という言葉が持つイメージを具現化していった好例と言えるだろう。
コミュニケーションツールとして高い普及率を誇るLINEは、そんなチャットボットをプログラミングできる「LINE Messaging API」を使った開発コンテスト「LINE BOT AWARDS」の決勝大会を2017年3月18日に開催した。グランプリには1,000万円という大きな賞金が出るということもあって、国内外の企業・個人から815件の応募があった。
決勝大会では、最終候補となった24チームが自身の作品を有識者などの審査員に対してプレゼンテーションを行った。審査の結果、グランプリは身体の不自由な人を周囲の人が手助けすることを支援する「&HAND(アンドハンド)」が受賞した。

グランプリを受賞した「&HAND」。詳細は後編にて
このイベントの様子を、前後編に渡って紹介していく。
前編では、決勝大会に先駆けて行われたLT大会について触れたいと思う。

LINEのチャットボットとは
LINEのチャットボットは、LINE上の会話を通じてサービスを利用できるというもの。ユーザーはチャットボットに対して決められた内容あるいは自然な文章で要望を伝えることで、様々なサービスを受けることができる。
従来のアプリやWebサービスと違うのは、LINEという日常的に触れているユーザーインターフェースで使えるという点。わざわざ新しいアプリを不安に思いながらインストールする必要も、新しい操作を覚える必要もなく、日常のコミュニケーションの延長で使えるため、とても利用ハードルが低くなることだろう。
本イベントを企画したLINEの砂金信一郎氏によれば、今回の応募作品には、ライフスタイル関連のものが多く、またBeaconという電波によってユーザーの接近を感知するハードウェアを組み合わせたものなどが多かったそうだ。

LINE広告・プラットフォーム室の砂金信一郎氏
これらは、IoTの応用分野として期待されているスマートハウスにも、とても親和性が高く、チャットボット応用の可能性も示唆しているように思う。
LT大会参加作品
決勝大会に先駆けて行われたのは、最終候補には惜しくも漏れてしまったが、審査員たちが気に入った作品のLT大会。8作品が参加して、各3分間のライトニングトーク(LT)が行われた。
参加した作品は、以下のとおり。
・いもうとBOT(いもうとBOT開発チーム)
・LINE × intelligent HOME(チームCDI)
・おとみどりちゃん(Sound Messenger)
・Weather Imouto(Weather Imouto)
・「ココくん&ナツコ」とチャットで、航空券を一括検索!(スカイスキャナージャパン)
・Spice-Shelf(松村 悠)
・TechStylist(TeamKAMI 株式会社ベアシーズ)
・母ロボ(自由なくりえいたーず)
中でも、スマートハウスとチャットボットを連携させた作品「LINE × intelligent HOME」は、IoT分野におけるチャットボットの活用法として可能性を感じられる作品だった。
開発したチームCDIの福西佐允氏、林田丈裕氏に話を聞いた。

Connected Design企画開発部マネージャーの林田丈裕氏(左)、取締役副社長・CSOの福西佐允氏(右)

なぜ、LINEチャットボットと連携させたのか
両氏は、IoTを活用したスマートライフ事業に関するシステムの開発・検証を行うConnected Design社に所属。同社はグループ会社であるイッツコム社が提供しているスマートハウスサービス「intelligent HOME」とLINEを連携させたチャットボットを開発した。
「intelligent HOME」は、スマートロック、IPカメラ、モーションセンサー、ドア・窓センサー、家電コントローラーなどの機器一式をインターネット回線経由で、専用アプリによってユーザーのスマートデバイスから遠隔コントロールできるサービスだ。

ユーザーのスマートフォンから操作できるスマートハウスシステム「intelligent HOME」
専用アプリがあるのに、なぜLINEと連携したチャットボットを作ろうと思ったのか。林田氏によれば、LINEにより日常に溶け込んだ利用シーンを期待しているとのこと。
「専用アプリの場合は高機能を持たせられるという優位性はありますが、利用のたびに起動しなければなりません。特にセキュリティ関連機能となると何も起こらないことが良いわけですが、そうなるとアプリに触れる機会も減り、アプリの存在も忘れられがちになってしまいます」
一方、LINEであれば毎日のように起動し利用するため、日常的にチェックしてもらえ、利用頻度も高まると考えたそうだ。
また、開発にあたり、どういった点で苦労があったのだろうか。福西氏によると、機能とUIのバランスを取るのに苦心したそうだ。
「スマートハウスのコントローラーと考えた場合、誰でも初見で使えるくらいにわかりやすいユーザーインターフェース(UI)が必要となります。機能を盛り込めば盛り込むほど高機能になる代わりに、UIが煩雑になり、わかりやすさが損なわれていきます」
この、機能と見た目のわかりやすさのバランスを取るのが大変だったという。
特に、「intelligent HOME」は賃貸物件への一括導入も多く、そうした物件の入居者は女性や若年層も多い。そうした層には、高機能で煩雑なUIよりも、わかりやすく慣れ親しんだプラットフォームで利用できる方が良いと考えたとのこと。
確かに、遠隔コントロールすることを考えた場合は、細かい操作を行いたいというよりは、鍵の状態の確認や、エアコンなど家電製品の制御といった感じに、やりたいことは比較的シンプルだ。それであれば、表示領域や操作手段が限られているスマートデバイスでの操作においては、シンプルかつわかりやすいUIの方が実用性は高いというのも頷ける。
操作はもちろん、ユーザーフレンドリーな“体験”を目指して
両氏はスマートハウスの操作系をわかりやすくすることが重要だと繰り返した。これは、高齢化が進む日本社会においても、ますます重要な要素になってくるものと思われる。
スマートデバイスなどのタッチ操作は、パソコンの操作に比べ高齢者でも操作しやすいと言われる。こうした操作方法はナチュラルユーザーインターフェース(NUI)と呼ばれ、タッチの他に音声やジェスチャー操作などがある。
生活の一部となるスマートハウスの操作系には、ユーザーに優しい操作方法が求められていくのは必然なのだろう。そうした要望に対して、チャットボットを応用するというのは、“フレンドリーな操作”に加えて、“フレンドリーな体験”を提供するという点で、新しい可能性を見た気がした。
今後、チャットボットとAIが結びつき、サービスがコンシェルジュ化していくことで、スマートハウスはますます付加価値の高いサービスになっていくのだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49679


 


追加緊縮財政策の実行、一段の債務負担削減が条件=ギリシャ首相

[アテネ 9日 ロイター] - ギリシャのチプラス首相は9日、一段の債務負担軽減を条件に、債権団と合意した追加的な緊縮財政策に取り組む意向を明らかにした。

ギリシャは7日、マルタで行われたユーロ圏財務相会合で、欧州連合(EU)などの債権者と追加の金融支援に向けた改革案で大枠合意した。

首相は、与党・急進左派連合との会合で「(ECBの)量的緩和の対象にギリシャも加えるなど、中期的な債務軽減策や、達成不可能でない財政目標が、われわれが決定した措置を実行する際の条件だ」と述べた。

さらに、マルタで達した妥協により、政府は、貧困や失業などに対する救済措置を法制化し、社会的な国家を建設することが可能になると主張した。

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http://jp.reuters.com/article/greece-bailout-idJPKBN17C04A
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/817.html

[国際18] 仏大統領選を機に独仏が築く新時代 WSJ「対日外交を人質に」韓国左派を一括 インドの中国国境防衛、命がけで道路建設 崖の
仏大統領選を機に独仏が築く新時代

FINANCIAL TIMES

ルペン候補の勝算は低く 新独仏関係がEUを救う
2017年4月10日(月)
FINANCIAL TIMES


ドイツとフランスは様々な違いを乗り越え、これまで欧州統合を牽引してきた(写真:ロイター/アフロ)
 欧州経済共同体(EEC)を生んだ1957年のローマ条約が重要な意味を持つのは、調印の時点でさえ、当時の西ドイツとフランスの考えにはズレがあったという事実ゆえである。

 西ドイツは当時、共同市場の創設を求めて調印したが、フランスは同時に設立された欧州原子力共同体(ユーラトム)の立ち上げに熱心だった。西ドイツ政府は工業製品への関税の撤廃を強く求め、フランス政府は自国農民の収入を何としても守ろうとした。

 こうした食い違いに対して独仏両国が歩み寄りの精神を発揮し、違いを脇に置く意思を共有できたことこそが、その後の欧州統合に向けた動きの強みとなった。「欧州連合(EU)においては、常に欧州大陸の二大国による利害と見通しの緊密な一致がみられる」という神話が特に英国では浸透している。この神話は「独仏機関車」と呼ばれたけん引力が成果を上げてきたことの証左でもある。

衝突を繰り返してきたドイツとフランス

 だが、逆のことも言える。欧州のあるべき姿について、ドイツとフランスは最初から言い争ってきたからだ。フランスにとって欧州統合とは、覇権国である米国に対して防火帯を敷設するという問題だった。一方、北米との関係を重視する汎大西洋主義のドイツにとって、欧州は国家再統一への手段であり、近代史上で自国が負った悪霊を退散させる手立てだった。

 ベネルクス3国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)がEECの青写真を提案した直前、フランスは欧州で防衛連合を築くというドイツの計画を潰したことがある。ローマ条約から何十年もの間、連邦主義的な方向性を求めるドイツと、ドゴール主義(フランスの国家主権と独自性を重視する)のフランスは、衝突を繰り返してきた。

 フランスにとって単一通貨ユーロは、ドイツの経済的支配力を封じ込める一つの手段だった。ドイツはドイツマルクを手放すことには消極的だったが、ユーロはドイツが切望する欧州における政治同盟の結成に不可欠な道だった。EUの小国に対し、ドイツ政府は基本的に配慮してきたが、フランス政府は彼らを軽視しがちだ。

 ドイツとフランスの歩み寄りは、1963年のエリゼ条約(独仏協力条約)によってさらに強固なものとなった。この合意により独仏両政府は、あらゆるレベルで協力することを制度化した。両国は放っておけば隔たりが広がっていく関係にあったが、この条約締結によって緊密になる力が働くようになったのだ。

 ただ、この条約も内容を子細に見ると互いが妥協をせざるを得なかった事実がわかる。条約のドイツ語版には対米関係重視を確認する文言が含まれているが、フランス語版にはなぜか入っていない。

 しかし、一連の独仏間の合意は、欧州が結束する基礎となり、同時にEU加盟国間の協力を進めることにも役立った。フランスが自国の主権を犠牲にし、ドイツが貴重な自国通貨を最終的には手放すなど、独仏が欧州共通の利益を追求するために両国の違いを乗り越えられるのなら、他の加盟国も何かで譲歩することを拒絶することはできないだろう。

独仏関係を常に誤解してきた英国

 英国の政治家たちはこうした点をよく理解せず、ドイツとフランスの間にくさびを打ち込もうと何度も無駄な時間を費やしてきた。「ドイツはほぼ(我々と同じ)アングロサクソン的な考え方をするのだから、フランスからドイツを引き離せるに違いない」と。

 英国のメイ首相は、3月25日のローマ条約60周年の記念式典には出席しなかった。同首相は、EUからの離脱交渉が始まれば、英国が過去やってきたように今回もドイツとフランスの分断を図ろうとするだろう。だが、その試みは再び失敗する。ドイツのメルケル首相は、離脱する英国と合理的な協定を結ぶことを望んではいるが、そのために仏政府との関係を犠牲にする気はないからだ。

 欧州はここ数年、様々な危機に見舞われ、EU加盟各国首脳は明るい展望について考える余裕を失っている。経済は停滞し、ユーロ圏はギリシャ債務問題など難問を抱えている。難民の大量流入とポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭を前に、各国は自信を失っている。欧州は衰退の道をたどっている。英国の離脱交渉が不調に終われば、今後、EUはさらに不安定になる可能性がある。フランス大統領選に極右政党「国民戦線」のルペン党首が出馬したことで、見通しは一段と暗くなった。仮にルペン氏が勝利したら、確実だといえることは何もなくなる。

 だからこそ、今は正反対のことを考える好機だ。黒雲が晴れ、空が明るくなってくるかもしれない。今後数年間の欧州は、悲観論者を多少なりとも驚かせるかもしれない。ドイツとフランスの間で新たな政治的な協力に向けた動きが出てくるかもしれないからだ。

ルペン大統領が選出される可能性は低い

 どういうことか──。ルペン氏が大統領に選出される可能性は低い。勝つのは、本命とされる中道系独立候補のマクロン元経済産業デジタル相か、共和党のフィヨン元首相だろう。マクロン氏はフィヨン氏よりも親欧州だ。フィヨン氏は自国の主権を重んじるドゴール主義の信奉者で、マクロン氏よりも急進的な経済改革を主張している。両氏とも、経済停滞と、それがもたらした政治の弱体化を打破するため、何か手を打たなければならないという認識では一致する。フランスがEUで再び発言力を持つには、時代に追いつく必要がある。

 一方、ドイツ政府は、フランスがまさにこの方向に進むことを待っていた。フランスの弱体化によりドイツが1強となってしまい、共に指導力を発揮する国が消え、EUはまとめ役がいなくなった。そのためにメルケル氏は自動的に、望まぬまま欧州の指導者となり、最大の悪役を演じることになった。

 メルケル氏は何よりフランス政府とのかつての関係を取り戻したいと願っている。今秋の独連邦議会選挙で首相の座を目指す社会民主党のシュルツ前欧州議会議長も同じだ。シュルツ氏にとって、マクロン氏がフランス大統領になる方がパートナーとして付き合いやすいだろう。メルケル氏が再選されても同じだ。両氏ともフィヨン氏が選ばれても、やはり良好な関係を築こうとするはずだ。

 EUが抱えている今の亀裂を埋める魔法のような解決策はない。独仏機関車も、27カ国に増えたEUをけん引するとなると、EECの6カ国時代ほど馬力が出ない。

 しかし、独仏両政府の関係が再構築されれば、自信が生まれる。それは、統合を深める意志と力を備えた新たな「欧州の中核」が誕生することになるかもしれない。欧州の将来について楽観的になるのは難しいが、今こそ悲観論を少しばかり和らげるべき時だ。

Philip Stephens, Chief political commentator
(cFinancial Times, Ltd. Mar. 23, 2017)

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2017.4.10 12:00
【国際情勢分析】
米紙が「対日外交を人質に」韓国左派を一括の社説 
「日本という記憶の傷がうずく…」韓国メディア批判の寄稿も


ソウルの金浦空港に到着し、取材に応じる長嶺安政駐韓大使=4日(共同)

 韓国・釜山(プサン)の慰安婦像設置への対抗措置として、日本政府が一時帰国させていた長嶺安政(ながみね・やすまさ)駐韓大使(62)らを4日に帰任させたことについて、一部の韓国紙は「遅くなったが幸いなこと」(東亜日報)と胸をなでおろす。だが、大統領選の有力候補は、一貫して一昨年の「日韓合意」に反対姿勢だ。海外メディアからは「左派集団は外交政策を人質にしようと、慰安婦問題を悪用している」といさめる論説も出ている。

 釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置されたのは今年1月。韓国紙でも海外メディアでも、大使帰任を前向きに評価する論調に共通するのは、核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮への対抗のためには日韓の協調が不可欠だとの認識だ。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルの社説(4日電子版)は「北朝鮮への対抗はあまりに重要であり、第二次大戦の問題が支障となることは許されない」と述べる。

 社説は、基金を設けて元慰安婦を支援する内容が盛り込まれた2015年12月の日韓合意をめぐり、「老齢の被害者を支援する日韓合意を台無しにするようなことは理解できない」とする。その上で、「外交政策を人質」にとり、日韓間の政策協調を阻むことになっている左派勢力に、批判的な認識をにじませた。

 長嶺大使の帰任が、日韓の「安全保障上の関係強化を助ける」とみる同紙は、「東京が責任ある行動を続け、和解を提供しているのだから、報いるのがソウルの責任だ」と指摘する。

 一方の韓国では、慰安婦や教科書問題などに注文をつけつつも、「遅くなったが幸いなことだ」(東亜日報社説)と評価する向きもある。

 だが、朝鮮日報は社説で「日本政府は極端な対処で韓国政府を圧迫した」として、駐韓大使を帰国させた対処がそもそも行き過ぎだったと批判する。その上で「安倍晋三首相の支持率を上げるため韓国たたきが続いた」として、日本側の意図を曲解した論法を展開している。

 同紙は半面、韓国世論にも注文を述べる。5月の大統領選では、すべての主要候補が日韓合意の破棄や再交渉を主張し続けている。この点、「一度結んだ国家間の合意が政権が代わったといって覆されるなら大問題だ」として、扇情的な世論に警戒感を示している。

 中央日報(6日=日本語電子版)も、反日世論がまかり通る「感情外交」にくぎを刺しつつ、慰安婦問題をめぐる感情の衝突が、韓国外交の「戦略的空間を縮小すると懸念される」との専門家の見方を紹介。慰安婦問題が外交の選択肢を狭めているとしている。

 1月に長嶺大使が一時帰国したことは、主要な欧米メディアでも報道され、慰安婦問題に改めて世界の目が向けられた側面がある。

 長嶺大使の帰任決定を報じたロイター通信の記事(日本時間4日配信)は、慰安婦問題を概略した部分で、韓国人活動家が概算した「韓国人犠牲者が20万人に及んだ可能性がある」との見解を紹介しており、韓国側に立脚したバランスを欠く事実認識が、依然として一人歩きしている様子がうかがえる。

 韓国から海外に向けて発信されて続けてきた、こうした「被害者」としてのイメージは、国民感情に深く根ざしたものだ。朝鮮日報の社説は、この点に関連して、「釜山少女像の設置は韓国の民間団体が行ったもので、韓国政府が乗り出して解決するのは基本的に難しい問題だった」との見解を提示している。慰安婦問題の糾弾を求める大衆感情には、政府が立ち入ることができないという「責任放棄」を黙認する韓国政府内の空気を映し出している。

 外交問題を扱う韓国最大のシンクタンク「峨山政策研究院」のベン・フォーニー研究員は、米国の外交専門誌ディプロマットへの寄稿(2月25日)で、「外部の立場からすれば、日本を依然として宗主国として位置づける見方をする韓国人に当惑する」と述べる。

 また、「韓国メディアは被害者としての語り口を助長しており、日本という抑圧者の記憶の傷がうずく国として自国を描ている」として、国民感情を誘導する報道機関にも批判的な目を向けている。

 「東条英機の肖像は東京の下町のどこに行っても見られないが、北京に行けば(朝鮮戦争で)韓国への侵攻を命令した人物、すなわち毛沢東が、いまだに畏敬の対象として、人民元札や天安門広場でみられる」

 フォーニー氏はそうも述べ、歴史問題を中心とした対日感情が、適切な韓国外交を阻害する大きな要因のひとつだと指摘している。(外信部 塩原永久)

朝鮮半島緊迫…米空母が北朝鮮…2【怒濤の世界】崩れ落ちる世界…4中国メディア、森友問題報道で…3東芝、国内テレビ売却検討 ト…5「共産党との選挙協力理解得ら…6沖縄・翁長知事“破産危機” …7米空母打撃群が朝鮮半島へ8【シリア攻撃】シリアへのミサ…10【東京都議選】下村博文都連会…
http://www.sankei.com/premium/news/170410/prm1704100006-n1.html


 


インドの中国国境防衛、命がけで道路建設
崖のような現場、重機は分解してヘリで空輸
KARAN DEEP SINGH/THE WALL STREET JOURNAL

By
NIHARIKA MANDHANA
2017 年 4 月 10 日 06:46 JST
 【TAME CHUNG CHUNG(インド)】ヒマラヤ山脈東部にある垂直に近い斜面で、労働者たちが岩場を爆破したり切削したりしている。インド政府が最優先する全長約55キロの軍用道路建設プロジェクトだ。
 道路の先にはインドと中国が領有権争いを続ける国境がある。
 そこから遠く離れた首都ニューデリー――車、鉄道、飛行機を使っても、徒歩も含めて到着するのに6日間かかる――では、首相府が工事の進捗(しんちょく)状況を監視している。ナレンドラ・モディ首相は強力な隣国中国に対抗しようと、数十億ドル規模のインフラ建設計画の大幅強化を図っているところだ。
 インドが戦略上重要な道路の建設を加速しているのは、武力衝突が起きた場合に国境に兵力や物資を迅速に輸送したり最新鋭兵器を配備したりするためだ。中国は既に自国側に大規模なインフラを整備している。
 「今は平時ではない。われわれはギアチェンジした」。プロジェクトを監督するインド政府高官は言う。
 中国政府はインドとの国境地帯に広がる約9万平方キロを南チベットと呼び、領有権を主張している。これはインドのアルナチャルプラデシュ州のほぼ全域だ。今週にはチベット仏教の精神的指導者ダライ・ラマ14世が同州を訪問し、ダライ・ラマを分離主義者と非難する中国とインドの対立をあおる結果となった。両国の対立は国境問題だけにとどまらない。
 ダライ・ラマはアルナチャルプラデシュ州滞在中、タワン僧院を訪問する予定だ。ダライ・ラマは1959年、中国政府によるチベット弾圧から逃れ、同僧院に逃げ込んだ。数十年に及ぶインド亡命はここから始まり、両国間のしこりは今も消えていない。
 中国外務省はダライ・ラマが同州を訪問することで国境の安定を著しく損なうと述べた。これに対し、インドのキレン・リジジュ内務担当閣外大臣は「自由で民主的な国家として、インドは自国の領土である地域への宗教的指導者の訪問を制限しない」と述べた。

インド・アルナチャルプラデシュ州にある谷あいの村 PHOTO: KARAN DEEP SINGH/THE WALL STREET JOURNAL
 インドと中国を隔てる全長3540キロの国境――その4分の1がアルナチャルプラデシュ州内にある――のほとんどは確定していない。インドの政府関係者によると、2週間前には、断崖の建設現場からそう遠くない場所で中国の兵士がインド領に入ったという。両国の兵士の間の小競り合いは上官が介入するまで数時間にわたって続いた。兵士は翌日まで退去しなかった。
 アルナチャルプラデシュ州――戦略的に重要な地域だが人口は少ない――の領有権を主張し、開発を進めるため、モディ政権は2016〜17年に9億ドル(約996億円)の道路契約を発注した。これはその前の2年間の規模の5倍に上る。2020年までに全長640キロの道路建設を完了するため、新たな政府企業が土地の取得や民間建設会社との契約を進めている。
 インド政府の建設計画で最優先されているのが冒頭で紹介した55キロの道路だ。道路の終わりにあるのは戦略上重要な国境の村Taksing。この村は海抜約2440メートルのところにあり、ここに配置された兵士は燃料や卵、砂糖などの生活必需品をヘリコプターやかごを背負った運搬人に頼っている。運搬の任務を任されているのは軍の将官がトップを務める政府機関だ。
 ヘリコプターでの物資輸送は5回に1回は予想外の天候の変化に見舞われる。だからこそ軍事計画担当者は道路が欲しいのだ。
 この道路プロジェクトにかかる予算は昨年倍増され、完成期限は2024年から2018年に前倒しされた。インドは時間のほかにも、自然や地形とも戦っている。現場はかなりの奥地にあるため、ブルドーザー1台を9つに分解して軍用ヘリにつるして1つずつ320キロの距離を運ばなければならない。

中国国境にいるインド兵士たちに20リットル入りのディーゼル燃料1缶を届けるため、ケムドさんはつり橋を渡り、生い茂った木々の中を歩き、急な斜面を乗り越えた PHOTO: KARAN DEEP SINGH/THE WALL STREET JOURNAL
 ダンプカーやカタピラ車、掘削機も同じようにして運ばれている。3月までの1年間でインド空軍が運んだ機材は290トンに上る。橋も新たに6基建設された。軍はこの地域への立ち入りを制限している。
 割れた不安定な岩場と6カ月に及ぶモンスーンのせいで現場は危険がいっぱいだ。ごつごつした岩の斜面を爆破したあと、作業員のタジ・ナチョさん(20)は不安げに、崩れ落ちそうに突き出したぎざぎざの岩を何時間も眺めていた。ナチョさんの作業チームは120センチしか進めない日もある。
 「ここの山は見た目とは違う。何層にもなっている」とナチョさんは言う。先日は岩の破片でケガをした。「何が凶器になって命を落とすか分からない」

国境の山岳地帯に向けヘリで運ばれるブルドーザーの一部 PHOTO: KARAN DEEP SINGH/THE WALL STREET JOURNAL
 昨年11月には当局が別の州から熟練作業員60人を連れてきた。2カ月後、失業して不満を感じていた部族系住民によって殴られたり嫌がらせをされたりすると、作業員たちは逃走した。
 インドはこうした理由から長い間、この地域に手を付けなかったが、理由はそれだけではない。インドには、道路を作れば、中国がインド領に攻め込みやすくなるという懸念もあった。
 1962年の中印紛争時には中国の兵士がアルナチャルプラデシュ州に侵攻した。道路建設現場のそばには、多くの敵兵を殺害したとされるインド兵シェール・タパの記念碑が置かれている。
 中国が国境周辺のインフラ整備を大々的に進めると、インドも2000年代以降、徐々に方針を変更した。あるインド政府高官はデジタル地図で中国の道路や町を指しながら言った。「見てくれ。何という計画力、なんという実行力だろう。われわれが追い付くにはだいぶ時間がかかる」
 中国が道路や町を建設したのは主にチベット台地で、気候も乾燥している。インドのような規制もない。
 一方、インドでは資金が不足しているほか、長雨で地滑りも起きる。地元住民の要求や環境関係の認可にも対応する必要がある。山の側面が崩れて、何年もかかって建設した道路が19キロにわたって崩落したこともある。別の区画では、ジャコウジカが生息する野生生物保護区を避けて通るように建設計画を変更しなければならなかった。
 政府は、地元のタジン族が山や河川、樹木について先祖から引き継いだという所有権を巡って交渉を続けている。政府は滝から水を採取する代わりに部族の家族を建設現場で雇ったり、川のそばに建設資材を保管できるように部族に報酬を支払ったりしている。
 トパック・ケムドさん(35)は先週、雨の中を山に向けて出発した。道なき道を7時間歩いて兵士たちに20リットル入りのディーゼル燃料1缶を届けるためだ。1缶あれば発電機1台を10時間運転できる。
 ケムドさんは木材とロープでできたつり橋を渡り、生い茂った木々の中を歩き、急な斜面を乗り越えた。ヘビの恐怖にもさらされた。岩の割れ目ははしごで渡った。
 途中でケムドさんは国境からそれぞれの基地に帰任する歩兵にあいさつした。兵士が徒歩で国境を出たのは28時間前。途中で一夜を明かしていた。
 「非常に困難な仕事」とケムドさんは言った。「道路の完成を心待ちにしている」
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http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/886.html

[経世済民120] 米国雇用統計と市場の反応 IMF:労働分配率の低下は技術進歩、貿易の衝撃に備え労働者保護政策を 欧州株↓円111円台前半
グローバル・マクロ・ウォッチ 配信日:2017年4月10日
チーフ・ストラテジスト広木隆によるグローバル・マクロ解説をお届けします。

米国雇用統計と市場の反応

2017年3月米国雇用統計サマリー(予想:Bloomberg)
非農業部門雇用者数前月比:
9.8 万人増(予想18.0 万人増)
失業率:
4.5%(予想4.7%)
平均時給:
前月比0.2%増(予想0.2%増)
前年比2.7%増(予想2.7%増)
労働参加率:
63.0% (予想 63.0%)
先週の金曜日に発表された雇用統計の結果については上記サマリーの通りである。すでにメディアその他の報道やレポートで周知のことと思われるので、ここでは雇用統計の詳細に触れることはしない。そもそもエコノミストでない僕が、雇用統計について語ることができるとすれば、マーケットのリアクションについてであろう。先週の雇用統計は、まさにそれを語るにふさわしい(?)ような数字が出た。
ヘッドラインのNFP(非農業部門雇用者数)が伝わったときは、さすがに目を疑ったが、一部で今回のNFPは天候要因でぶれやすいとの観測もあったので、それほど大きな驚きではなかった。僕が驚いたのは、マーケットが驚かなかったことである。
僕が想定している雇用統計イベントで売買する為替マーケットのプレーヤーというのは、半分が「確信犯的に」(つまり承知のうえで)数字だけに反応して売買するトレーダー、残りの半分が「機械」、すなわち文字通り、マシーン・ラーニング(機械学習)をするAI運用、アルゴリズムを組み込んだCTA、HFT(高速高頻度取引)などで占められているという認識であった。そうであるなら、今回のNFPには、もっと激しいマーケットのリアクションがあって然るべきと思ったが、実際は下記のグラフの通り、瞬間的には反応したが、それもたかだか50銭程度、その後すぐにマーケットは売られたドルを買い戻す方向に動き、発表後20分でもとの水準に戻ってしまった。
雇用統計発表前後の米ドル/円の値動き

(出所)Bloomberg


確かに今回の雇用統計はすでに報道されている通り、弱い内容ではない。労働参加率が変わらないなかで失業率は4.5%と前月より0.2ポイント低下し、2007年5月以来9年10カ月ぶりの低水準となった。NFPの増加幅は市場予測(18万人)を大幅に下回り、昨年5月以来10カ月ぶりの低水準となったが、上述の通り天候による特殊要因の影響があるうえ、3ヶ月平均でみれば17.8万人と極めて良好な数字だ。
だがしかし、こうしたことは発表からしばらく時間が経って冷静になって言えることではないか。NFP 9.8万人と出た直後がドルの安値で、もみあったのが5分足らず、その後はじりじりと戻しに入っている。ヘッドラインの数字だけに反応するプレーヤーの行動にしては、冷静になるのが早過ぎないか。
仮説のひとつは、AIがそこまで学んだ、ということだろう。NFPの予想との乖離でポジティブ・サプライズ/ネガティブ・サプライズを判断して単純に売り買いするレベルではもはやないのかもしれない。だとすると、それは相場にとっては歓迎すべきことであろう。人間のプレーヤーにとっては別であるが。
3月17日付のストラテジーレポートで引いた言葉を再度、掲げておこう。 「ニュースは重要ではない。市場がニュースにどう反応するかが重要なのだ」(ジョセフ・グランビル 「グランビルの法則」で有名なアナリスト)
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過去のレポート
2017年4月10日
米国
米国雇用統計と市場の反応
2017年4月5日
米国
米国雇用統計 − ハードデータの強さを示せるか

https://info.monex.co.jp/report/macrowatch/index.html



IMF:労働分配率の低下は技術進歩が最大の理由−WEO分析部分
Andrew Mayeda
2017年4月10日 22:00 JST

国際通貨基金(IMF)は10日、国民所得のうち労働者が得る所得の割合が減っている最大の理由は技術の進歩にあるとする新たな研究論文を公表した。
  論文は世界経済見通し(WEO)分析部分の一部として公表されたもので、世界主要50カ国中29カ国で労働分配率が1991年から2014年の間に低下したと指摘。「大多数の国で労働分配率が変化した最大の要因は技術だ」との見解を示した。世界経済の成長予想を含むWEO全文は18日に公表される。
  国民所得のもう一つの主要構成要素は資本所得で、賃金の伸びが生産性より鈍い場合は、資本の所有者がより急速なペースで生産性向上の果実を得ることから、労働分配率が低下する。少数の人の手元に資本が集中する傾向があるため、そうした状況では所得格差が悪化するケースが多いと、IMFはブログで付け加えた。
  エコノミストの間では賃金の数十年にわたる伸び悩みの原因が議論されており、トランプ米大統領は中国やメキシコなどの国との貿易が米国の労働者に打撃を与え、米製造業の空洞化の原因だと批判しているが、IMFの論文は技術がより大きな要因だとの考えを示唆。労働分配率低下の約半分は技術の影響に帰することができると論じた。また、情報通信技術の急速な進歩が定型業務の自動化を加速させ、労働力の代わりに資本を活用するよう企業に促していると分析した。
原題:Technology Leaves Workers With Shrinking Slice of Pie, IMF Says(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO6JNX6JTSEE01


 
貿易の衝撃に備え各国政府は労働者保護の政策を−IMFなど呼び掛け
Andrew Mayeda
2017年4月10日 21:00 JST
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世銀とWTOと共に世界貿易に関する報告書を発表
各国政府は取り残された労働者を保護する必要

世界の各国政府は貿易関連の衝撃から労働者を守る措置を検討するべきだ。国際通貨基金(IMF)などが10日公表した世界貿易に関する報告書で呼び掛けた。
  IMFと世界銀行、世界貿易機関(WTO)は、貿易による負の影響から各国が労働者を守る政策を取ることが重要だと指摘した上で、失われた賃金の補償などを挙げた。「適切な政策によって、各国は貿易がもたらす素晴らしい恩恵にあずかるとともに、取り残された人々を引き上げることができる」と論じた。
原題:IMF Says Workers May Need Wage Subsidies to Cushion Trade Shocks(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO6RKP6TTDS201

 


 
欧州市場の主要指標11時半 円111円台前半で反落 材料難で方向感欠く 欧州株は下落
2017/4/10 19:46
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【NQNロンドン】10日午前のロンドン外国為替市場で、円の対ドル相場は、東京市場での円売り・ドル買いの流れを継いで反落して始まった。英国時間11時半時点では、前週末16時時点に比べ50銭円安・ドル高の1ドル=111円20〜30銭で推移している。軟調な欧州株を背景に円の下値は底堅い。もっとも、特に目立った取引材料は見当たらない中、相場の方向感は出にくい。

 英株価指数FTSE100種総合株価指数は同11時半時点で、前週末終値に比べ0.08%安で推移している。小幅高で始まった後、石油株を中心に売りがやや先行している。

 欧州各国の主要株式市場は総じて下落している。

 ロンドン原油市場(ICEフューチャーズ)で北海ブレント先物相場は6日続伸の1バレル=55.65ドル付近で推移している。ロンドン地金市場協会(LBMA)の金価格は前週末比0.08%安の1トロイオンス=1252.51ドル前後で小幅下落。ロンドン金属取引所(LME)の銅先物相場も下落。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGR10H34_Q7A410C1000000/

http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/823.html

[経世済民120] 倒産件数8年連続減16年度3.5%、上場企業ゼロ 東海と北陸で景気拡大 足元は円安、企業側から懸念ない 人権問題補償保険

倒産件数8年連続減 16年度3.5%、上場企業ゼロ
2017/4/10 20:18
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 東京商工リサーチは10日、2016年度の全国の企業倒産状況を発表した。倒産件数は15年度比3.5%減の8381件で8年連続で減少。上場企業の倒産は1990年度以来26年ぶりに発生しなかった。

 負債総額は同4.2%減の1兆9508億円。16年11月に製造業で戦後最大とされるパナソニックプラズマディスプレイ(大阪府茨木市、負債総額5000億円)が特別清算を申請したが、国内景気の回復などを受け全体では低水準だった。

 業種別では10業種中、製造業や建設業など7業種が15年度の倒産件数を下回った。地区別では9地区のうち関東など6地区で15年度よりも倒産件数が減った。ただ、東北など一部では倒産が増え「特に被災地での倒産に注視する必要がある」(同)という。

 10億円以上の大型倒産は同24.5%減の230件だった。100億円を超える倒産は、3月に経営破綻した格安旅行会社のてるみくらぶ(東京・渋谷)など13件だった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS10H8Z_Q7A410C1EE8000/

 


東海と北陸で景気「拡大」 日銀4月報告、生産堅調
2017/4/10 20:37
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 日銀は10日公表した4月の地域経済報告(さくらリポート)で、全国9地域のうち東海と北陸で景気が「緩やかに拡大している」と判断した。強い回復を示す「拡大」を2地域以上に使うのは2008年4月以来。他の7地域も景気は回復基調だ。自動車や電子機器を含む企業の生産が堅調だ。一方、住宅投資の鈍化や人手不足は経済回復の重荷となっている。

 今回のリポートで初めて、調査対象となった企業などの声を詳細に掲載した。

 北陸は前回報告(1月)の「回復」から「緩やかに拡大」へと景気判断を引き上げた。同地域が「拡大」の表現を使うのは、25年5カ月ぶり。電子部品などの生産が増え、北陸新幹線の延伸関連など公共投資も増加した。

 東海は16年1月以降、6回連続で「拡大」の表現を使った。内田真一・名古屋支店長は「企業の設備投資はしっかりしている。長期的視野で投資が進められている」と説明した。

 国内全体でも生産や公共投資がけん引役だ。衛藤公洋・大阪支店長は「アジア向け半導体製造装置、米国や資源国向け鉱山機械など輸出の伸びが強めだ」と指摘した。

 一方、住宅投資については供給過剰懸念が強まっているとの認識が各地域で強く、3地域が景気判断を引き下げた。日銀が今回調査から公表を始めた企業の声からは「販売価格の高さが嫌気され新築マンション販売が鈍っている」(仙台)など過熱感が映し出された。

 人手不足への警戒も強い。特に非製造業で厳しい認識があり、杉本芳浩・札幌支店長は「バスやトラックの運転手のほか仲居が確保できない。事業をたたむ企業もある」と懸念する。秋山修・福岡支店長も「人手不足で工事の進捗が遅れている。訪日外国人(インバウンド)で観光バスの需要が増えているが人手が足りない」と説明した。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS10H99_Q7A410C1EE8000/


 
足元の為替は円安、企業側から懸念はない=日銀大阪支店長

[東京 10日 ロイター] - 日銀の衛藤公洋・大阪支店長(理事)は10日午後日銀本店で会見し、為替が昨年11月の米大統領選前と比べ円安水準にあるため、「関西経済にはポジティブ」と評価した。最近はやや円高方向に推移しているが、関西の企業側から「それほど懸念はない」という。

同日公表された地域経済報告(さくらリポート)で近畿地方の景気判断を、前回3カ月前と据え置いたのは「設備投資と消費に大きな変化がないため」と説明。その一方で、「輸出と生産の足取りはよりしっかりしている。スマートフォン向け電子部品や新興国向け建機・鉱山機械、車載用電池などは相応の持続性が期待できる」との見方を示した。

また訪日外国人観光客のインバウンド消費が「勢いを取り戻している」という。

人手不足で非製造業を中心に雇用のタイト化が進んでいるが、「成長の制約と言うにはまだまだ距離がある」とも指摘した。

実施されて1年が経過した日銀のマイナス金利について「金融機関の利ざやが一段と縮小し、基礎的収益力が低下している」と指摘した。

(竹本能文 編集:吉瀬邦彦)
http://jp.reuters.com/article/boj-kansai-idJPKBN17C0MH


調達先の人権問題補償する保険 東京海上、不買運動時に対策費
2017/4/10 21:47日本経済新聞 電子版
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 東京海上日動火災保険は取引先企業で強制労働や児童労働といった人権問題が発生し、不買運動が起きた際の対策費用を支払う保険の販売を4月から始めた。NPO法人の経済人コー円卓会議日本委員会(CRT)と提携。調達した物品の廃棄費用や納入先への損害賠償費用を保険金として支払う。

 原材料や部品の調達先や、一部業務を外注している取引先企業での人権問題の発生を想定している。保険加入を希望する企業があれば、東京海…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGC10H08_Q7A410C1EE9000/

エルニーニョ発生確率50% 今夏、気象庁見通し
2017/4/10 22:04
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 気象庁は10日、南米ペルー沖の3月の海面水温が基準値より0.5度高かったとする監視速報を発表した。今年の夏の終わりまでに、異常気象の原因となるエルニーニョ現象が発生する確率は50%としている。

 気象庁によると、ペルー沖の監視水域の海面水温は27.6度で、基準値である過去30年の平均を0.5度上回るのは2カ月連続。ただ、インドネシア付近の海面水温の状況などから、今夏にエルニーニョが発生してもあまり発達せず、短期間で終息する可能性が高いとみている。

 現在は、エルニーニョも、海面水温が低くなるラニーニャも発生していない状態。〔共同〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG10HDK_Q7A410C1CR8000/

http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/824.html

[国際18] 「トランプにせもの」説の勝利が確定?場当たり的政策運営で、行き詰まる公算が大  トランプ氏が吠えても工場は動かない 
日経ビジネスオンライン
「トランプにせもの」説の勝利が確定?

上野泰也のエコノミック・ソナー

場当たり的政策運営で、行き詰まる公算が大
2017年4月11日(火)
上野 泰也

オバマケア改廃法案の撤回に追い込まれ、トランプ米大統領の手腕に疑問を感じる米国民が増加、支持率が下落している。(写真:ロイター/アフロ)
期待感は薄れ失望へと変わりつつある

 1月20日に行われた就任式から、マスコミなどとのハネムーン期間とされる100日が経たないうちに、トランプ米大統領への期待感が薄れて失望へと変わりつつあるという報道が内外で相次いでいる。筆者が提示してきたシナリオに沿った動きである。

 この常識破りの大富豪が選挙公約をそのまま実現して米国経済の成長率を一段高く持ち上げることが本当に可能なのかどうかで2つに分かれていた市場の見方、やや大胆な表現をすると「トランプ大統領は『ほんもの』か、それとも『にせもの』か」という論争には、最優先課題に設定してきた「オバマケア」の改廃(撤廃および代替策の実行)に明確に失敗したことにより、「にせもの」説の勝利ということで、ほぼ決着がついたのではないか。

 「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)離脱などトランプ氏の署名で済む大統領令ではなく、法案可決が必要だったオバマケア見直しは、政権運営の行方を占う試金石でもあった」ものの、下院で過半数の票を確保するのに失敗し「入国禁止の移民政策に続く目玉政策の頓挫」となったため「政権には大きな打撃」で「求心力低下が進む可能性もある」(3月26日 毎日新聞)といった報道が、いくつも出ている。

共和党内の保守強硬派が反対姿勢を崩さず

 野党民主党に加えて共和党内の保守強硬派「フリーダム・コーカス(自由議員連盟)」が反対姿勢を崩さず可決の見通しが立たないため、ライアン下院議長が法案を取り下げて採決を回避し、「オバマケア」は存続することになった。

 下院共和党内には一部で「オバマケア」改廃法案の復活を模索する動きがある。だが、ライアン議長が4月4日にそうした取り組みは現時点では「概念的な段階」に過ぎないと形容するなど、これが具体的に前に進んでいく兆候はない。

 「オバマケア」の改廃をあきらめた共和党は、税制改革の論議に前倒しで着手するようである。だが、「国境調整」の問題を含め、ホワイトハウスと議会共和党による税制改革法案作りは大きな難題である。財政赤字を増やさずに減税を行おうとするわけであり、財源問題が大きな障害となる(当コラム3月13日配信記事「トランプ政権、大型減税の早期実現ほぼ不可能」ご参照)。

税制改革に至る道は遠く

 「フリーダム・コーカス」は、財政赤字を増やしかねない案には強硬に反対するだろう。税制改革の議論を主導してきたライアン議長の求心力も大きく低下し、3月24日の記者会見では「税制改革は困難になったが、不可能ではない」という微妙な物言いをせざるを得なくなり(3月25日 日本経済新聞夕刊)、4月5日には税制改革には時間がかかると率直に認めた。

 ロイター通信は4月3日に、「トランプ米大統領は、税制改革を実現にこぎ着けるための十分な人材を欠き、ホワイトハウスとしての明確な方針も持ち合わせていない」「トランプ政権は税制改革の早期実現を表明しているが、複雑な税制を点検して法案を策定し、深刻な対立に陥っている議会を説得するという困難な作業をこなせる能力のある人々を、まだ適所に起用できていないのが実情だ」という、実に厳しい指摘を行っている。

ロシア政府との関係に関する疑惑

 この間、大統領選挙戦中のトランプ陣営とロシア政府の関係に関する疑惑が、トランプ政権にとって大きな「火種」であり続けている。オバマ前政権により盗聴されたとトランプ大統領は3月4日にツイッターで発信したが、これが根拠のない話であることはすぐ明確になった。ロシア問題から人々の関心をそらすために放った「目くらまし」ではないかと推測される。

 3月23日に米誌タイムが電子版で報じたインタビューの中で大統領は、オバマ前政権により盗聴されたなどの発言が客観的事実に基づかないと批判されていることについて、「盗聴とは監視活動の意味だった」「(私の)直観は正しい」などと反論した。

“フェイク・プレジデント”との批判

 だが、トランプ大統領のこうした主張は明らかに説得力を欠いている。米経済紙ウォールストリートジャーナルは3月22日の社説で、トランプ大統領は「からになったジンの瓶を手放そうとしない酔っ払い」のように自分の主張に固執しており、意地を張って間違いを認めようとしない「フェイク・プレジデント(にせ大統領)」だと、厳しく批判した。

 選挙戦中のトランプ陣営とロシア政府の関係を巡る調査の一環で、大統領の娘婿であるクシュナー大統領上級顧問が上院情報委員会で証言することになった。

フリン氏から重大な証言が飛び出す?

 また、この問題で辞任を余儀なくされたフリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)がFBIや議会に対する証言における自らの刑事免責を求めていることが、筆者はどうも気になっている。トランプ大統領も巻き込むような重大な証言が飛び出す可能性があるように思えるからである。

 いらだちや焦りを強めているトランプ大統領は3月26日、身内である共和党内にも批判の矛先を向け、「オバマケア」改廃失敗の責任は「フリーダム・コーカス」にもあるとした。

 議会で公約に沿った法案を通すため、民主党内の穏健派との連携をも大統領は模索し始めたようである。だが、トランプ政権との対決姿勢を強めている民主党指導部はつれない。シューマー上院院内総務は「われわれが彼と一緒に働くのは実質的に不可能だ」「不動産のディール(取引)を行うように大統領職を務めることはできない」と突き放した。

ウォーターゲート事件を超える可能性も

 ニューヨークのトレーディングルームではそういったことを考える雰囲気は今のところ全くないと聞くが、日本の運用担当者や政府関係者の一部からは私見として、トランプ大統領が4年の任期を務め上げずに退任する可能性もあるという声が聞こえてくる。筆者自身もそうした確率が現状2割程度はあるのではないかと考えている。

 フィナンシャルタイムズに3月20日に掲載されたコラムには、トランプ陣営が大統領選挙でロシア政府と共謀したのではないかという疑惑が仮に事実ならウォーターゲート事件よりも大きな醜聞となって、大統領の弾劾につながる可能性があるという文章がある。

ツイート数の推移に注目

 また、ツイッターでトランプ大統領が毎日発信する数に以前から筆者は注目している。これが少ないまま長期間推移するなら、気力が萎えてきたということなのかもしれない。

 ムニューシン財務長官は3月24日のイベントで、トランプ大統領は「完璧な遺伝子を持っている。驚異的なエネルギーがあり、信じられないくらい健康だ」と述べた。だが、閣僚がこんな話をわざわざしなければならないところに、政権の脆さが透けて見える。

 仮に、トランプ大統領が任期の途中で急きょ辞任する場合には、米国株はさすがに急落し、「トランプラリー」で持ち上がった分をいったん帳消しにするだろう。

米株式市場では期待がなお根強いが

 米国の株式市場ではトランプ期待がなお根強く、税制改革の早期実現を待望する空気が今後も漂い続けるとみられる。しかしそれでも、ニューヨークダウ工業株30種平均は3月27日まで8営業日続落となった。連邦政府の債務上限引き上げ問題が大きな悪材料だった11年7月下旬から8月上旬に記録して以来の長さで、さすがに政権への期待レベルが一段下がったことが示されている。

 トランプ政権には「ストラテジー」や「ロードマップ」がない上に、経済政策の主柱となるブレーンが不在で、政策をしっかり実行していくスタッフも十分に集まらず、その政策運営は場当たり的である。個別テーマでの取引(ディール)の成功をアピールして支持層の人気をつなぎとめているものの、いずれ行き詰まる公算が大きい。そして、大きな波乱材料になり得るのが、繰り返しになるが、ロシア政府との関係を巡る疑惑である。

シリア爆撃で、ロシアから重大な情報流出はあるか

 米国は日本時間4月7日、シリア・アサド政権の軍事施設に対して巡航ミサイルによる攻撃を突然加えた。反政府勢力に対し同政権が化学兵器を使用して多数の死傷者が出たという強い疑惑が浮上する中、トランプ大統領は米国の対シリア政策を見直して、「懲罰行動」「力の誇示」に動いた形である。核開発・ミサイル実戦配備を勧める北朝鮮・金正恩政権への強力なメッセージという側面もあるだろう。

 だが、今回の軍事行動について筆者は、内政の行き詰まりから国民の目をそらす狙いの大胆な対外行動ではないかという疑念をぬぐえない。歴史上で古今東西、そうした事例には枚挙にいとまがない。

 そうした行動の代償として、アサド政権を支援しているロシアと米国の関係悪化は、どうやら避けられない情勢である。米国との抜本的な関係改善をロシアのプーチン大統領が完全にあきらめた時に、ロシア側からトランプ大統領に関する何らかの重大な情報が出てくることはないのか。日本のマスコミはそうした点には一切触れていないようだが、筆者は大いに関心を抱いている。

 日経ビジネスはトランプ政権の動きを日々追いながら、関連記事を特集サイト「トランプ ウオッチ(Trump Watch)」に集約していきます。トランプ大統領の注目発言や政策などに、各分野の専門家がタイムリーにコメントするほか、日経ビジネスの関連記事を紹介します。米国、日本、そして世界の歴史的転換点を、あらゆる角度から記録していきます。

このコラムについて

上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
日経BP社
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日経ビジネスオンライン
トランプ氏が吠えても工場は動かない?

GEのデジタル工場 カイゼン4.0の実力

DMG森精機・森雅彦社長に聞く「デジタル工場の未来」
2017年4月11日(火)
池松 由香
 デジタル工場と聞くとIoT(モノのインターネット)が思い浮かぶが、「IoTではなく『IT』と『OT』の両方が大切だ」とDMG森精機の森雅彦社長は指摘する。OTとは、工場の工作機械や人の作業をどう進めれば効率的かを人が考える「オペレーション技術」のこと。これがなければいくら機械のIT化が図れていても工場は動かない。特集で取り上げたGEの米国工場もこの点には気づいていた。工作機械のデジタル化は今、どこまで進んでいるのか。またそれが製造現場の未来をどう変えるのか。日独の現場に詳しい森社長に聞いた。

DMG森精機の森雅彦社長(写真:陶山 勉、以下同)
グローバル市場では工作機械のデジタル化が進んでいますが、日本の工場では思うように進んでいないように見えます。世界の製造現場をよくご存じの森社長の目から見て、日本の工場はどういう段階にあるのでしょうか。

森:世界の工作機械はデジタル化によって「1個流し」、すなわち「1個ずつの計測」がカギを握る世界になってきています。

1個ずつの計測とはどういうことでしょうか。

森:日本の現場では、月産1000〜2000個、自動車業界では9000〜2万個という単位で部品を作っています。部品メーカーは、自社で作った部品の全てにおいて寸法や表面の粗さなどを細かく計測することで顧客への品質を保証しています。大量に作る場合、1個ずつ計測するのでは時間がかかりすぎるので、あらかじめセットしたゲージ(測定機)の上に部品を載せるなどして、たくさんの量を流しても時間が合うようなやり方で計測しています。

 ところが、航空部品や人体に埋め込むような人工関節、ロケット部品などの中には、月に1個も作らない時もあるけれど年に5〜6個は作るようなモノもある。ドイツでは、日本のように大量に作るものが次第に無くなっているので、繊維機械とか印刷機械、化学機械とか航空機の部品など、いろいろなものを月に10個くらいずつ作っているような現場があります。複数の種類を流さなければならないので、1個ずつ測るにしてもマニュアルでは時間がかかりすぎる。1個の部品に付き200〜300カ所くらいを計測する必要があるからです。

 そこで活躍するのが、デジタルの三次元測定機で測る方法です。複数の部品が1個ずつ流れてきたとしても、瞬時に測ってデータとして記録できます。

製造業の基本は「良く測る」

森:三次元測定機で測る最大のメリットは、測定機で測ったデータをリアルタイムで加工機にフィードバックできること。「設計通りに削ったはずだけど熱変位が起きて変形したので、さらにここを削る必要がある」とか、「工具磨耗が進んでいるから工具を交換しよう」とかいう判断をより繊細にできるようになります。その結果、部品の精度が高まるわけです。

 ところが日本では、まだ部品のロットが多いので必要ないということもありますが、このやり方があまり取り入れられていません。三次元測定機を搭載した機械は、10件の鉄工所が導入している機械のうち日本では10〜15台、一方のドイツでは20台くらいでしょう。
 どちらが良いか悪いかというより、モノ作りの文化が違うのです。

工作機械というと切削の方に目が行きがちですが、実は計測が重要なのですね。

森:はい。計測というのは面白くて、さまざまな種類があります。取り付ける場所で言うと、機内、機側、オフラインなどがあり、計測手法で言えば、直接触って測るものから超音波やカメラで測定するものもあります。寸法だけでなく表面の粗さを見たり、表層のマイクロクラック(微細なひび割れ)を見たりもします。

 当社にとってはそこが付加価値になる上、お客様にとっても部品の寿命が延びるのでメリットがある。ウインウインの関係になるのです。

 良く測る――。製造業の一番重要なところは「計測工学」だと思っています。弊社が2010年にソニーマニュファクチュアリングシステムズから計測機器事業を買収し、マグネスケールを子会社として設立した狙いもそこにあります。


「機械を止めないための方法が見えてきた」
機械に60個のセンサーを付けて検証

御社では約2年前から「マシンツール4.0」という実証プロジェクトを自動車・工作機械部品メーカーの独シェフラーと進めています。これはどのようなプロジェクトで、現時点ではどのような成果が出ているのでしょうか。

森:マシンツール4.0では、弊社の工作機械に60個のセンサーを取り付けて実際にシェフラーの現場で使ってもらい、どのデータがどう役立つかを検証しています。シェフラーは弊社の工作機械向けにベアリング(軸受け、機械の軸を支える部品)を製造している取引先でもあります。

 成果は主に2つ。一つは、機械のどの辺りでベアリングの磨耗が進んでいくかということが分かってきたので、シェフラーはベアリングの素材の面で、我々は機械の機構の面での改良に役立てています。この活動を進めていくと、今までは例えば3年で壊れていたスピンドル(主軸、旋盤では部品を把持して回転する部品)が10年ぐらい持つようになってきます。

 もう一つは、機械を止めないためにはどのセンサーを見れば工具の磨耗などを予測できるかが分かってきたこと。工具の磨耗はそれを支えるベアリングをモニターすることで分かりますから、工具を替えるタイミングを適切に設定できます。他にも、切り子(切削した後に出るクズ)がたまりすぎていないか、油が切れていないかなど、機械を止める要因になるものを事前に知ることができるようになります。

IoT機械の発想は1950年代からあった

そうしたモニタリングが発展して、工作機械にAI(人工知能)を搭載できれば、機械が互いに会話をしながら作業を分担したり助け合ったりすることができるようになるのでしょうか。

森:僕は、そこはあまり期待していません。ただ、弊社の場合、AIの活用としてまず考えられるのはサービスエンジニアの部分です。

 サービスエンジニアというのは、お客様から問い合わせがあった時に、その問題を解決する方法をお教えしたり、実際にお客様の元へ出向いて機械を修理したりします。現在は現場経験20年のサービスエンジニアがお客様の抱える問題を聞きながら解決していっているのですが、AIを活用することで、5年目のエンジニアでもある程度は解を提示できるくらいになるのではないかと思っています。

 それから、機械が互いに融通、というところまでは行きませんが、工作機械が自分で「これは削りすぎだ」とか「このままだと工具が破損する」といったことを判断できるようにはすでになっています。

 発想としてはとても古く、1950年代後半に米マサチューセッツ工科大学などがコンピューター数値制御(CNC)工作機械を開発した頃から考えられてきました。私は京都大学で機械工学を専攻しましたが、「AE(超音波)による工具磨耗のインプロセス検出」というタイトルの論文を提出しました。こういった分野は当時の流行だったのです。

 CPU(中央処理装置)やメモリー、センサーといったデバイスが高性能かつ低コストになってきたことで、当時はできなかったことができるようになりました。当時、こういった領域を研究していた我々は今、ワクワクしているところです。

同じ技術でも20年前と今ではレベルが違う

処理能力が速くなったからこそ大量のデータが集められるというわけですね。

森:そうです。もう一つ、加えて言うなら、各種デバイスの処理スピードが速くなると、工作機械の制御の精度をものすごく高められます。工作機械は実は、1000分の1ミリ単位で工具を動かして、精度の高い部品を切削しているのです。

できた部品を組み立てた時のロス(摩擦損失)を減らせるということですか。

森:ロスは減るし、精度は高まることではめ合い(部品同士のはまり具合)がよくなる。

今後は自社の工場の機械をデジタル化できる所とそうできない所に分かれていくと思いますが、今後、勝ち残っていくポイントはどこにあるのでしょうか。

森:デジタル化もありますが、コンピューターやソフトウェアの技術、バイオの技術、表面処理に関連したケミカルの技術など、さまざまな技術が20年前に比べるとはるかに進歩しています。20年前にはダメだったからといって諦めるのではなく、同じ技術でも適宜レビューしておくことが大切でしょう。

 さらにこれからは、全世界の70億人のほとんどが、同じ生活水準になっていくと考えられます。となると、モノを作る場所は日本やドイツでいいと思うのですが、そこで作った製品が世界中に出て行った時に、どこでも同じくらいの品質で提供できるような組織体を整えておく必要があります。

小さい会社もデジタルをうまく使えば世界で戦える

今から10〜20年後の工作機械の世界はどうなっているのでしょうか。

森:これからはもっと設計データや製造の計測データ、出荷後の各種データなどが共有されてつながっていくでしょう。今は別々に存在しているために、設計のデータを分解して公差(部品の設計に対して許容される差)を振って、工作機械の作業に変換するという具合にかなり難しいことをしています。だからこそプロフェッショナルなのですが、弊社では、世界の拠点がデータでつながるグローバルライブラリーのようなものを作っていけたらと考えています。

 デジタルやインターネットの活用は、製造現場だけではなくそれ以外の部門でも積極的に進めるべきです。弊社のような規模の会社が全国に40数カ所の事務所を出せているのも、インターネットやテレビ会議の活用がなければ非効率ですし、全世界の営業スタッフが同じ部品表を共有して見積もりを作れるというのもクラウドがあるからです。

 強い会社はますます強くなれる。一方でデジタルを上手に活用すれば100人や200人の会社でも世界でやっていける。そんな絶好の機会が来ています。

 それから忘れてはならないのは、IT化が進めば進むほどOT(オペレーション技術)が重要になってくるということです。OTというのは、機械やITを使いこなす人の能力を指します。IoTではありません。ITとOT。それらの融合ができるかどうかにかかっています。

 日本はOTに偏っている部分があってITの導入が米国などに比べて遅れがちになっていますが、逆に米国はITで全てを解決しようとしている部分が大きいと言えます。でもOTがなければ工場は動きません。(米大統領のドナルド・)トランプ氏がいくら国内で工場を造ると言ったところで、単にワーカーだけ集めても彼らは工場で何をすればいいか分かりません。作業手順書もなければどのくらいの公差で部品を削ればいいかも分からない。OTを持つ生産技術者が不可欠なのです。

 OTの人材を育てられれば、今は十分に活用されていない機械の能力も100%引き出すことができます。ここは弊社でも取り組んでいかなければならないところです。


このコラムについて

GEのデジタル工場 カイゼン4.0の実力
世界の工場が今、変革の時を迎えている。機械や部品、ヒトの動きに関するあらゆる情報をデジタルデータとして記録し、解析した結果を工場内のカイゼン活動や製品設計に生かしてサプライチェーン全体を効率化する。2017年4月10日号の特集「潜入 GEのデジタル工場」では、最前線を走る米ゼネラル・エレクトリック(GE)の工場を徹底取材すると共に、ニッポンの製造業の生きる道を探った。ここでは、モノ作りの現場を歩き続けてきた本誌記者が、本誌では取り上げきれなかった話を少しだけマニアックな視点でお届けする。
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[経世済民120] スマホ最強、クオーツが語るメディアの未来 長時間労働是正大企業だけ 50代資産運用遅い 経済学三思想 なぜ日本の生産性低
スマホ最強、クオーツが語るメディアの未来

キーパーソンに聞く

急成長のビジネスメディア、クオーツ社長兼発行人に聞く
2017年4月11日(火)
篠原 匡
 2012年の立ち上げ以来、ビジネスエグゼクティブを中心に存在感を高めているビジネスメディアがある。米アトランティック傘下のクオーツ(QUARTZ)だ。スマートフォンなどのモバイルに特化した戦略で知られており、月に2000万人を越える読者を集める。アプリのダウンロード数も月60万近くで、今なお新規読者を増やしている。

 全社員は200人ほどだが、“モバイル・ファースト”を旗印に誕生しただけにエンジニアが20%近くを占める。広告もネイティブアド(広告と明示されているが、編集記事のようなフォーマットの広告)が中心で、スマホの画面には余計なバナーがない。

 「取材して書く」というジャーナリストの基本動作は既存メディアと変わらないが、自分でプログラムのコードを書く記者もおり、中身はモバイル向けに最適化されている。今の時代のメディアの形を体現しているメディアと言えるだろう。クオーツとメディアの未来をどう見ているか、ジェイ・ローフ共同社長兼発行人に話を聞いた。
2012年の立ち上げ以来、モバイルに特化したメディアとして注目を集めています。日本にはクオーツのことを知らない読者もいますので、まずはどういうメディアかというところから教えてください。

ジェイ・ローフ氏(以下、ジェイ):私たちはクオーツを「変化にワクワクするようなビジネスパーソンに向けたグローバル経済の新たなガイド」と説明しています。以前、私はクオーツの読者層を以下のように表現したことがあります。飛行機の前半分(ファーストクラスとビジネスクラス)に乗って、毎日のように世界を飛び回る人々――と。彼らは生まれた国や教育を受けた国とは異なる国で働いているかもしれない。あるいは、普段、働いているシリコンバレーにいるように、東京やムンバイの路地を歩いているかもしれない。私たちはそういったグローバルなマインドを持つビジネスパーソンのために記事を書いています。


クオーツのジェイ・ローフ共同社長兼発行人。ワイアードの広告ディレクターを経た後、アトランティックの発行人として誌面の再活性化などに関わる。2012年9月以降、クオーツの発行人として活躍中(撮影:Mayumi Nashida、以下同)
主要読者は“C-Suite”と呼ばれる経営幹部

 “モバイル・ファースト”のメディアを立ち上げたのも、そういった読者層を意識してのことです。彼らはそれこそ四六時中移動しており、スマートフォンなどモバイルで情報を収集しています。もう紙の新聞やパソコンを必要としていないんですね。また、2012年にサービスを始めた時には、既にあらゆるトレンドがモバイル消費にシフトしていました。モバイル・ファーストのメディアを作る必要があるということは明らかでした。はじめの質問に戻ると、クオーツとは「グローバルに活躍するビジネスパーソンがグローバル経済を理解することを支援するデジタルネイティブな報道機関」と定義づけることができると思います。

読者層についてもうすこし具体的にご説明いただけますか。

ジェイ:フォーカスしているのはグローバルに活躍するビジネスパーソンであり、グローバルなビジネスの意思決定にかかわる人々です。CEOやCOOなどの経営幹部をC-suiteと表現しますが、まさにそういった経営幹部が主な読者層です。ただ、経営幹部を読者層に抱えているという面では米ウォールストリート・ジャーナルや英フィナンシャル・タイムズ(FT)、英エコノミスト、米ブルームバーグなども同じだと思いますが、その中でクオーツが特徴的なのは読者層が若いということです。読者層の平均年齢は40歳前後。読者に現在の経営幹部と、テクノロジーと戦略を理解する次世代のC-suiteも抱えているのが大きな特徴と言えるでしょう。


オフィスは開放的でスタートアップの雰囲気
「我々には守るべきレガシーがなかった」

既存メディアも経営の意思決定にかかわる読者を獲得しようとしのぎを削っています。率直に言って、既存メディアとは何が異なるのでしょう。

ジェイ:違いはいくつかあると思います。まず設立が2012年と新しく、我々には守るべきレガシービジネスがなかったということが挙げられます。クオーツが初めからモバイルに最適化できたのは白地のキャンパスに絵を描いたことが大きいと思います。

 別の要素として、ジャーナリストとエンジニアやデザイナーが一緒に働いていることもあるかもしれません。クオーツで働く前に、いろいろな編集部を見てきましたが、たいていはそれぞれが離れて仕事をしています。デザイナーやエンジニアがジャーナリストの横に座ることはまずありません。一方でクオーツは、見ていただければ分かるように、それぞれがすぐ近くに座っています。クオーツから面白いプロダクトが出てくるのは、ジャーナリストが取ってきた情報をエンジニアやデザイナーと共有し、一緒に考えているためです。

創造性の源泉は記者とデザイナーの協業

 一例として、アップルの2016年の「ベスト10アプリ」に選ばれたクオーツのアプリがあります。このアプリは通常のニュースアプリとは違って、チャット的なインターフェースを採用しています。これはジャーナリストとデザイナーが一緒に議論する中で生まれました。「どうすればより面白い表現ができるか」ってね。実際、ここのニュースルームではクリエイティビティとスピードを両立させるようなオーガニックな会話がそこら中で起きています。


クオーツが2016年2月にiPhone向けにローンチしたアプリ。記事が並んでいるのではなく、スマホのチャットメッセージのようにおすすめ記事が出てくる
メディアの見え方やシステムを何か変えたいと思っても、部署が分かれていると時間がかかります。

ジェイ:まさに。何かを変更したり、微修正したりするときに、後ろを振り向いて「ここを一緒に直そうよ」といえば済むのは大きなアドバンテージだと思います。

 広告モデルも大きく異なります。われわれは4年半ビジネスを展開していますが、いわゆるスタンダードなバナー広告は採用していません。クオーツの広告はすべて影響力の大きいネイティブアドです。もちろん、読者には広告だと一目で分かるようにラベルを貼りますよ。広告という観点で見ても、ほかのメディアとは完全に違います。

「モバイルファーストを実現できたのは白地に絵を描いたため」というお話でした。その時に何か意識したことはありますか?

ジェイ:意識したのはユーザーエクスペリエンスです。われわれが肝に銘じているのは、既存のウェブの悪いところを繰り返さないということです。

「スマホのスクリーンは忙しすぎる」

 なぜ世界中に広告ブロッカーがあるのか、なぜ人々がモバイルで記事を読むときに不満を感じるのか。それはスマホのスクリーンが忙しすぎるためだと考えています。正直、スクリーンには情報が多すぎる。クリックして読めるものが多すぎるんです。広告という観点で言えばポップアップとかね。読もうと思っても、ポップアップを消すための×ボタンを探さないといけない。それはユーザーエクスペリエンスとしては最低です。

 そこで、私たちは最初から読者を尊重するという全く別のやり方を考えました。デザインについても、広告の出し方についても、ユーザーエクスペリエンスを初めに考えたんです。

記事に関して、ユーザーエクスペリエンスを意識した工夫はありますか?

500〜800ワードの記事はデスゾーン

ジェイ:記事作成に関しては伝統的なメディアとそう違いはないと思いますが…、「クオーツカーブ」という言葉は聞いたことがあるでしょうか? これは記事の長さと読者数の関係を示したカーブで、横軸が記事の長さ、縦軸がどのくらいの人が読んだかという読者数です。いつも当てはまるわけではありませんが。これまでのところ、モバイル向けで死ぬ記事は500ワードから800ワードの範囲の原稿だということが分かっています(ワード数は英単語の数。日本語の文字数は、英語のワード数の2〜3倍のイメージ)。


「クオーツカーブ」について解説するジェイ氏
 つまり読者に読まれるのはそれよりも短い記事か、もっと長い記事だということです。ジャーナリストには、文字を無駄に書くなといっています。それならば、インフォグラフィックスや写真、チャートだけにしてパラグラフを減らすか、あるいはもう2、3週間費やして決定的な記事を書くかのどちらかでしょう。読者はスマホで読み、スマホでシェアしますが、ニューヨーカー誌のような長い記事も読むんですよ。(親会社の)アトランティックでも、読まれるのは8000ワードぐらいの長尺ものです。

モバイルやオンラインを巡ってメディア同士の競争が激化しています。その中で勝ち抜くには何を考えればいいと思いますか?

ジェイ:一つの答えはないと思います。答えている人がいるとすれば、ウソをついていると思いますよ。ただ、3つのことは言えると思います。例えば、あなた方の兄弟会社のFTはコンテンツに対する高機能の課金システムを持っています。そういった成功モデルを持っているのであれば、それを続けるべきです。質の高いコンテンツにカネを払う人は増えており、振り子は戻ってきているように思います。

「勇気を持って広告単価を上げるべき」

 二つ目は、出版社が広告で高単価を得るためには勇気が必要だということです。メディアはあまりにも長い間バナー広告を活用してきました。あの小さなバナーによって収益を得ているわけですが、一方で十分な収益を上げることができなくなっています。そのためのソリューションはバナーをたくさん作ることしかありません。結果的に、バナーだらけのサイトになってしまいます。広告枠の供給を減らし、勇気をもって単価を上げることがカギになると思います。

 三つ目は、広告を載せるプラットフォームを多様化させることが重要だということです。現在、成功しているメディアは複数のプラットフォームを持っているように思います。紙とデジタルと動画、あるいはデジタルと動画かどうかは別にして。

クオーツはスマホに特化することで、忙しいビジネスエグゼクティブの支持を得ました。その路線は今後も変わりませんか?

ジェイ:やりたいと思っていることはたくさんあります。最初の一つは、モバイルに正しく移行することです。モバイルへの移行は雑誌からウェブへの以降よりも、さらに難しくなっていると思います。記者のチャート作成を支援するソフトを作ったり、スマホのジャイロセンサーを活用した新たな広告表現を考えたり、様々な発明をしてきましたが、しなければならないこと、発明しなければならないことはたくさんあります。


クオーツがゼネラル・エレクトリック向けに作った広告(左)。地球を回転させてポイントをクリックすると、当該地域のビジネスが出てくる(右)
 また、別の領域として動画やAI(人工知能)の活用も考えていくべきだと思っています。

AIにコンテンツが作れると思いますか?

ジェイ:今はまだ無理でしょうね。記事を書くという面でジャーナリストを上回るとは思いません。ただ、ファクトチェックやソースとなるデータの探索などに役に立つと思います。また、読者それぞれのためのカスタム化を進めるのに使えるかもしれません。例えば、シンガポールの空港を降りたときにアジアに関して何か調べたいことがあるとして、AIがクオーツのインターフェースを用いて質問に回答するというような。地域ごとに提供するコンテンツの中身をAIによって変えていく、というのは面白いところだと思います。

「クオーツはAPIであってウェブサイトではない」

スナップなど動画中心のプラットフォームも増えています。

ジェイ:そういうプラットフォームに読者がいるのであれば、そこに記事を出していくことを考えないと行けません。クオーツはAPIであってウェブサイトではありません。私たちは自分たちのことを、読者が読みたいと思う場所に読者をエレガントにつなぐコードだと思っています。


売上高に占める広告の比率は90%を越える。この比率を下げることが目標だという
メディアの役割は変わりませんが、収益構造は変わるのだと思います。メディアの将来についてどう思っていますか?

ジェイ:難しい質問だね(笑)。まさに日々私たちが考えていることだよ。ただ、メディア企業は往々にしてリソース過多なので、収益の増加とコストコントロールの両方にフォーカスして筋肉質になっていく必要があると思います。そこに注力すれば、無理にスケールを追わなくなる。クオーツはビジネスニュースにフォーカスしており、ほかのメディアのような規模が全く必要がありません。明確な読者層に適した記事を提供すれば、それだけ多くのレベニューを得る機会が生まれます。こういう読者層にリーチしたいという広告主がいて、ライブイベントで彼らに会いたいというスポンサーはいますので。


このコラムについて

キーパーソンに聞く
日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/040500250/

 

【第474回】 2017年4月11日 真壁昭夫 :法政大学大学院教授
長時間労働の是正が大企業だけで終わりかねない理由

 労働市場はバブル期に迫る勢いでひっ迫している。2月の完全失業率は1994年6月以来の2.8%まで下がり、有効求人倍率も1.43倍だ。新卒、中途、派遣とも、売り手市場であることに間違はない。物流など特定の分野で、“人手不足”が深刻化していることは周知のとおりだ。政府は、今のところ「働き方改革」に関する“矛盾”に目をつぶっている。本来なら、働き方改革の推進と同時に、省人化、生産性の向上を通して人手不足に対応する処方箋をセットにすべきだ。その観点が抜けてしまうと、改革は、一部の大企業分野だけでしか進展しないことになる。


深刻化する人手不足
“利益なき繁忙”で終わる

 深刻な人手不足が続くと、企業は必要な労働力を確保することが難しくなる。人手に頼った事業拡大は困難だ。それは、中長期的に、わが国の経済の実力=潜在成長率を低下させる可能性が高い

 今、人手不足に直面している最大の原因は労働力人口の減少だ。少子高齢化の進展に伴い、総人口の中で実際に働き手になり得る労働力人口の減少傾向は顕著だ。

「アベノミクス」のもとでの景気の好況はバブル期を抜いて戦後3番目の長さになった。 働き手が減る中で景気の回復が続くと、一人あたりの業務負荷が増え、需要はあってもそれに応えられず、売り上げや収益の取りこぼしも出始める。この状況に対応するために、一部業種では経験不問で人材を確保する動きも出ているが、それでも需要に追い付けていない。

 また企業の国際展開の進展などによって企業の求めるスキルや技能が高度化し、職務にふさわしい人材が見つからないという問題もある(構造的失業)。

 専門知識に加え、語学、ITスキルなど複数の分野での要求水準が高まっている。多様なスキルを備えた人材が不足していることも、人手不足の一因だ。実際に多くの企業が人手不足を意識せざるを得ない状況だ。特に、知名度が相対的に低い中小企業は、働き手を確保するために、大手企業以上の給与水準を提示することが必要になっている。また、一部企業では人手不足のあまり、受けた注文を断らざるを得なかったり、深刻なケースでは、人材が確保できないため“人手不足倒産”に追い込まれたりということが起き始めているという。短期間で働き手を増やすことは困難だから、この状況が続くと、一部の業種ではオリンピック開催に向けた需要に対応しきれるか不安が残る。

 すでに、物流などの分野や中小企業では、今いる人材をつなぎとめるために賃上げを余儀なくされている企業もある。だが一方で、多くの企業は増加した分のコストを販売価格に転嫁しきれずにいるようだ。まさに、利益なき繁忙、“働けど働けど我が暮らし楽にならざる”の状況だ。実際、アベノミクス下の好況でも賃金はほぼ横ばいで推移している。

 だがこうした人手不足の状況が続くと、潜在成長率や実際の経済成長が抑えられるリスクにつながる。ヤマト運輸のサービス見直しのように、企業が人手不足の中で事業を続けるためには、サービスを縮小したり、一部の事業を閉鎖したりということも、実際に起き始めている。

「(働き手の)売り手市場だから賃金を増やさなければならない」との見方もあるが、現実は違う。多くの企業は競争激化の中で、販売価格も賃金も上げられず、需要にも応じきれないというのが実情だ。人数、技能の両面で十分な人材を確保できない限り、企業の事業拡大のペースは鈍化するだろう。ひとまず、人手不足が十分に解消されない限り、経済がデフレ脱却に向かうとは考えづらい。

長時間労働制限は矛盾する
省力化の取り組みが不可欠

 人手不足が深刻化する中、政府が働き方を改革しようとする発想はいい。重要なポイントは、人手不足の中でそうした改革が本当に実現できるか否かだ。人手不足の中で労働時間を制限することは矛盾する。本音では、多くの企業が労働時間を伸ばして、需要に対応したいはずだ。

 特に中小企業はその実態を考えると、従業員にはできるだけ長い時間、働いてほしいのが本音だろう。

 政府がまとめた働き方改革の実行計画は、同一労働同一賃金、高齢者の就業支援など9の指針を示した。その意図は長時間労働の制限にあるといえる。

 働き手が減る中で長時間労働を減らすとすれば生産性の改善が欠かせないが、一方で、政府の実行計画には国全体での生産性を向上させていくという取り組みは見当たらない。長時間労働に賛成するわけではないが、人手不足が深刻化する中で労働時間の制限が本当にできるか、疑問が残る。

 生産性を上げるには、“省人化”が必要だ。すでに生産現場ではロボットによる製造プロセスが浸透している。同様の取り組みを配送など、人手不足が顕在化している分野にも応用すべきだ。機械に任せられることは任す、思い切った発想が必要だ。ドローンによる宅配など、実現の可能性があるものは積極的にテストしていくべきだろう。

 そうした取り組みを進める中で、省人化を進めやすいように、在宅 でも働けるようなITインフラの整備や職住近接の街など、都市の設計を見直すことも必要になるだろう。

 こうした創造的破壊=イノベーションを進めることが、限られた労働力を有効かつ効率的に活かすためには欠かせない。逆に言えば、省人化を進めて、付加価値を生み出す効率性を引き上げることができれば、人口が減少する中でも成長は可能だ。

 そう考えると、政府の働き方改革は踏み込み不足だ。形なりの制度が成果を生み出すとは限らない。企業の生産性改善に向けた技術導入のメリットが明示されなければ、企業の賛同と実践は得られないだろう。

休暇取得の義務付けを
大胆な発想で働き方を変える

 そもそも人がどれだけの時間、どう働くかは、個人の主観、感覚に依存する部分が大きい。また長年培われた組織の文化の影響も無視できない。労使間で考え方も違う。業種によっては、昼夜関係なく働くこともある。労働時間の制限を課すことが、過度な長時間労働の是正につながるとは限らない。制限があるがゆえに労働時間の改ざんなどが増えることもありうる。
い。
 働き方改革の究極の目標は過度な長時間労働を減らすというだけではない。労働時間そのものを減らし、国民の健康、ワークライフバランスの向上を通して人々の幸福感を高めることが重要だ。

 政府が真剣に、ワークライフバランスを改善しながら労働者一人当たりの生産性を改善しようとするなら、これまでにない、大胆、かつ抜本的な施策が必要だ。例えば、政策として、休暇取得などを義務化し、それが経済にとってプラスに働くよう制度を設計することも考えるべきだ。

 一例がフランスの“バカンス”だ。フランスでは多くの人が夏休みをコート・ダジュールなどの保養地で過ごすことが多い。政府が年間の有給休暇日数を25日と定め、労働者に有給消化の権利を認めているなどが背景にある。雇用者は未取得の従業員に消化を促さなければならない。

 フランス政府も庶民もバカンスを楽しむことができるよう、ラングドック=ルシヨン地域の観光開発を進め、道路網や安価な宿泊施設の整備にも取り組んできた。それが観光産業の振興にもつながっている。

 これからの日本の成長戦略を考えるなら、ワークライフバランスの改善につながる制度を導入し、観光など関連産業の育成、必要なインフラの整備を進めるべきだ。そうでもしなければ、人手が不足する中で成長を維持し、休みも増やすというのは難しい。財政・金融政策で景気を支えることが行き詰まる中で、これまでにない休暇制度を確立し、それを関連産業の育成や地域振興につなげる議論を行う意義は大きい。それが実現すれば、休暇のメリットがより多くの企業や人々に実感されるだろう。同時に、生産性向上につながる取り組みも進める。そうした取り組みこそが、真の働き方改革だろう。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)

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50代で資産運用を始めてはいけない理由

日系企業を経て、外資系証券会社へ勤務後、お金のふやし方を学び、現在、1億円を超える年収がある著者:生形大氏が書いた『9割の日本人が知らないお金をふやす8つの習慣』。本連載では、本書の内容のダイジェストで構成したものを紹介する。


誰も本気で考えていない
老後のお金

 日本人が知らなければならないことの中の一つで、大事なのが老後資金の貯め方、使い方です。
 本書で詳細を述べていますが、ほとんどの日本人は、老後資金の必要性を感じていながらも、必要となる資金の半分も貯蓄できていません。

 厚生労働省によれば、平成29年度の「67歳以下の年金受給者」の平均的な年金受給額は、夫婦2人分で22万1277円となっています。定年後に仕事をしていなくても夫婦で約22万円の収入があるということです。

 これに対して支出はどのくらいあるでしょうか。総務省の家計調査によると60〜69歳の二人以上世帯の一ヵ月の平均支出は27万7283円ですので、収入と支出の差額である5万円以上が毎月赤字になる計算です。赤字の分は貯蓄を切り崩して穴埋めしなければなりません。

 では、一般的な家庭では老後の備えはいくらぐらいあるのでしょうか。

 フィデリティ退職・投資教育研究所が勤労者3.2万人を対象に行ったアンケート調査「勤労者3万人の退職準備状況(2014年)」によると、「退職後に必要となる公的年金以外の資金総額」は2952万円。つまり、多くの人が退職後に3000万円近くが必要になると想定しています。

 しかし、実際の退職後準備額の平均は526万円で、想定額の約6分の1程度しかありません。普通に働いて退職後に備えるだけでは、老後の必要資金が足りなくなることを示しています。それなのに「退職金が入ってくるから」「年金があるからなんとかなる」そう思っている人があまりにも多いのです。

老後が見えてからあわてて
資産運用するのでは遅すぎる

 50代に入りそして実際に老後が近づいて現実が見えてくる、たいていの人が貯蓄が少ないことに焦りだして、おもむろに資産運用を始めようとして失敗します。

 大手の銀行で勧められた高利回り外貨建て債券などを数百万円単位で買い、為替変動によって大きな損失を被るといったケースもよく聞きます。大手の銀行だから安全、大手の保険会社か勧めるから大丈夫、といった思い込みも危険です。

 また雑誌でもよく「50歳からの資産運用」などと特集を組んで、株式投資やFX投資を紹介していますが、50歳から始めて本当に稼げるようになるとは到底思えません。株式投資は長期的に投資の経験を積んでいくことが大事ですし、FXに至ってはそもそも1割の人しか利益を上げられないという実態があります。特に株やFXで勝つにはメンタルがとても重要になります。

 50歳を超えて、これから入ってくる収入が見えている状況で、老後に向けた大事な貯蓄を株やFXのようなハイリスク、ハイリターン商品で勝てるほど甘い世界ではありません。

 むしろ50歳を超えたら、いかに今の資産を安定的に守って行くかを考えるくらいに資産を作っておきべきです。

 そのためにも若いうちから老後のことを考えて、定期的に入ってくるストック収入を得る仕組みを構築していくことが大切なのです。

生形大(うぶかた・だい)
1977年8月生まれ 富山県富山市出身。横浜国立大学工学部建築学科卒 横浜国立大学大学院修了。外資系証券(バークレイズ証券・JPモルガン証券)出身の投資家。現在、国内12棟189戸、海外3戸、都内の戸建て・区分マンション4戸の不動産を所有。不動産以外にも株・FX・先物・オプション取引・オフショアファンドなどあらゆる金融商品に精通。現在は資産運用の専門家として独立し、成功者続出の投資家を養成するスクールの運営、不動産投資セミナーの人気講師として、経済的、時間的な自由を志すサラリーマンに指導を行っている。主な出演メディアにサタデープラス(TBS系列)。主な著書に『年収1億円を生み出す[ハイブリッド]不動産投資』(ぱる出版)がある。
http://diamond.jp/articles/-/124135

 


 
2017年4月11日 週刊ダイヤモンド編集部
5分でわかる!経済学三大思想「新古典派、ケインズ、マルクス」の流れ

現代経済学の礎を成す新古典派経済学、マルクス経済学、ケインズ経済学の三大思想。その流れを押さえることで、経済学や経済政策の理解は深まる。歴史を知れば、本質が見えてくる。
 厄介な専門用語が多いばかりか、時に数学まで出てくる経済学は、とっつきにくさがなかなか拭えない。ただ、世界の政治や経済のメカニズムは、経済思想史を頭に入れると、がぜん理解が深まる。

 経済思想とは、経済現象や経済行為の背景にある考え方のことだ。政治思想と裏腹の関係にある。大きな柱は、18世紀後半から100年続いた古典派経済学を経て誕生した新古典派経済学、マルクス経済学、ケインズ経済学のたった3本だ(図参照)。


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 順に詳しく見ていこう。まずは、現代経済学の圧倒的な主流である新古典派。これは1871年から74年にかけ、レオン・ワルラス、ウィリアム・ジェヴォンズ、カール・メンガーが起こした限界革命と呼ばれる経済理論の革新が基盤となっている。

 それぞれフランス、英国、オーストリアと国籍の違う3人が、ほぼ同時期に限界効用理論を発表したのだ。

 それまでの古典派経済学は、「物やサービスの価値は労働量で決まる」という労働価値説を前提としていた。ところが彼らは発想を変え、「価値は効用で決まる」という効用価値説を打ち出した。

 効用とは満足度のことだ。ジェヴォンズは「欲望」と書き、メンガーは「食欲」を例に挙げている。例えばカツ丼を1杯食べたときの満足度に対し、もう1杯、また1杯と食べていけば満足度は減っていく。これが「効用は、物やサービスが1単位追加されるたびに増え方が減る」という限界効用逓減の法則だ。

 変化率は数学の微分法で計算可能だ。ワルラスとジェヴォンズは論理学者であり、数学者でもあった。ここから現代の数理経済学が発展していく。

 ワルラスとメンガーの経済学は、それぞれローザンヌ学派、ウィーン学派として受け継がれた。40代で水難死したジェヴォンズの直接的な継承は途絶えたが、後にケンブリッジ大学のアルフレッド・マーシャルが批判的に受け継ぎ、新古典派のケンブリッジ学派と呼ばれるようになった。

 マーシャルは効用価値説と、アダム・スミスが「見えざる手」と称した市場の均衡を結び付け、需要・供給の法則を図示したことでも有名だ。縦軸に価格、横軸に生産量(購買量)を取る、おなじみの需要・供給曲線である。

 新古典派の背景にある政治思想は、18世紀の自由放任型の自由主義だ。政府の権力を最小化するべきだと考え、政府からの自由を求める右派の立場である。政党としては、小さな政府を目指す自由主義・保守政党に当たる。

 新古典派は後のミクロ経済学のことだ。派生したゲーム理論は日本でも研究者が増えている。

マクロ経済学は
1930年代の
大恐慌の中で完成

 新古典派とほぼ同時期の19世紀後半に登場したのが二つ目の柱のマルクス経済学だ。

 マルクス経済学といえば、社会主義体制の樹立を目指す労働者階級の革命を導いた経済思想だが、社会主義思想それ自体はマルクス経済学が登場する前からすでに欧州では広がっていた。貧富の格差が拡大し、貧困や過酷な工場労働にあえぐ人が増えていたからだ。

 カール・マルクスは、古典派の労働価値説を継承しつつ、古典派を批判的に検討し、資本主義の運動法則を解明したと主張した。いわく、資本主義市場経済は放っておくと不安定になり、やがて崩壊するという。

 資本家が、労働者が賃金以上に働くことで生み出した剰余価値を生産手段に投資していくと、傾向的に利潤率が低下するという利潤率低下法則がその根拠だ。

 現代社会とは距離があるが、19世紀は各国で恐慌が繰り返されていただけに、古典派や新古典派よりもリアリティがあったのかもしれない。経済学としては、欧州や日本でかなり普及することになる。

 マルクスの目指すところは、労働者の政党による独裁的な社会主義国家の完成にある。政治思想はむろん、富を民主的に分配するために生産手段の社会化=国有化を行うべきだとする社会主義であり、経済システムとしては政府による計画経済を目指した。

 実際、1917年のロシア革命で、共産党独裁による社会主義国家(ソビエト連邦)が誕生する。ソ連共産党はその後、ドイツやオーストリアの共産党を支援するが、両国民の支持を集めたのは議会制民主主義を維持しつつ、経済危機を脱するために社会主義的な政策を実現しようという社会民主主義だった。第1次世界大戦後のドイツとオーストリア共和国政府では、社会民主党が与党となっている。

 社会民主主義は、マルクス経済学の影響を受けていながらも社会主義とは別だ。一党独裁の必要性を掲げることはないし、大きな政府による福祉の最大化を求めるが、資本主義は維持する。現在の大陸欧州各国の社会民主党、社会党、英国労働党の政治・経済思想もここにある。

 残る柱のケインズ経済学は、1929年の米国株式市場の大暴落に端を発する、30年代の世界恐慌のさなかに完成した。

 大暴落も、新古典派に従えば「いずれ元に戻るはずだから放っておけ」ということになる。現に、自由主義者の米共和党大統領ハーバート・フーバーは放置したが、そのために世界恐慌が拡大してしまった。

 民主党のフランクリン・ルーズベルトは1933年、修正資本主義を掲げて大統領に就任。危機から脱するべく、政府による財政・金融政策を総動員させた。

 このルーズベルトのニューディール政策を支持したのが、ケインズ経済学の創始者で、マクロ経済学の生みの親でもあるJ.M.ケインズだ。ケインズは「放っておいたら市場経済は不安定になる」として、不況時には政府が財政出動し、供給サイドの過剰な生産能力に見合うだけの需要を創り出すべきだとした(有効需要の創出)。

 重要なポイントは、公共投資をすれば民間投資と個人消費が刺激され、政府の支出額以上に国民所得が増加するという乗数理論を提唱したことだ。国民所得が増えれば税収も増えるから、公共投資のための財源確保に国債を発行しても問題ない、ということになる。

 金融政策としては、金本位制を離脱して管理通貨制度へ移行し、貨幣量を増やすことを推していた。

 政府の市場介入の必要性を説いているのだから、ケインズ経済学が志向するのは、やや大きな政府だ。政治思想は中道のリベラリズムということになる。


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http://diamond.jp/articles/-/109385


 

【第13回】 2017年4月11日 ちきりん
スタバのレベルは圧勝なのに、
なぜ日本の生産性はアメリカよりも低いのか?

ロバート・アラン・フェルドマン×ちきりん(1)
ワールドビジネスサテライトのコメンテーターとしても活躍する、モルガン・スタンレーMUFG証券シニアアドバイザーのロバート・アラン・フェルドマンさんと、人気ブロガー・ちきりんさんの対談が実現しました。まずは『自分の時間を取り戻そう』のテーマである生産性について、フェルドマンさんに専門である経済学の観点からご意見を伺います。(構成/崎谷実穂 写真/疋田千里)


ロバート・アラン・フェルドマン
1970年、AFS交換留学生として初来日。76年、イエール大学で経済学、日本研究の学士号を取得。84年、マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。国際通貨基金(IMF)、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券を経て、98年モルガン・スタンレー証券会社に入社(現・モルガン・スタンレーMUFG証券)。現在、同社のシニアアドバイザー。著作に『フェルドマン博士の 日本経済最新講義』(文藝春秋)などがある。
生産性を上げれば、まだまだ日本も成長できる

ちきりん 書店でふと見つけた『フェルドマン博士の日本経済最新講義』という本がすごくわかりやすく、かつ、おもしろかったので、一昨年の年末にブログで紹介しました。そうしたらフェルドマンさんから御礼のサイン本をお送りいただいて。それがご縁で今回の対談が実現しました。以前から「いつかお話ししたい!」と思っていたのでとても嬉しいです。

ロバート・アラン・フェルドマン(以下、フェルドマン) こちらこそ、ありがとうございます。ちきりんさんにご紹介いただいたことで、私の本を知ってくださる方、買ってくださる方がぐっと増えたんです。ちきりんさんの『自分の時間を取り戻そう』、私も本屋で見つけてすぐ買いました。個人にとっての生産性の上げ方がわかりやすく書かれていますね。


ちきりん フェルドマンさんに読んでいただけたなんて感激です。今日はお聞きしたいことがたくさんあるんですが、まずは私の本のテーマである生産性についてです。
 最近は日本でも長時間労働が問題視され、生産性という言葉をよく聞くようになりました。ところが日本の労働生産性はアメリカの6割強しかなく、OECD加盟35ヵ国のなかでも半分以下の18位というデータもあります。専門家のフェルドマンさんは、こうしたデータの意味するところについてどう思われますか?

フェルドマン アベノミクスではGDPの成長率2%を目標としています。これをどうやって達成するか。そう考えたときに、1955年の労働者1人あたりの生産性は今の価格で計算すると100万円以下で、現在は800万円ほどであることに注目しましょう。その間、労働力人口は若干上がり、今は下がっています。つまり、当時34兆円だったGDPが現在は530兆円まで成長したのは、労働力が増えたのではなく、生産性が上がったからです。
 また、これからの日本は、全体の人口減少よりも労働人口の減少のほうが速く進む。だからこそ、現在の生活水準を守るためにも、その分生産性を上げることが急務だと考えています。

ちきりん 日本が経済成長を成し遂げた理由として、人口増加が主要因だったといった見方もありますが、そうではないってことですね?

フェルドマン 需要側から見るとそういう説明もできますが、成長理論は供給側から語るものなので、人口増加が最も大きな要因だとは考えられません。

ちきりん たしかにGDPが34兆円から530兆円まで15倍も上昇しているのだから、主要因が人口増加のみだったわけはないですよね。だとするとあの経済成長を支えたのはやはり生産性の大幅な上昇だったと。

フェルドマン はい。そして生産性を上げるには、技術革新が重要なポイントになります。

これから生産性を向上させる技術とは

ちきりん 今後、産業の生産性を大きく上げそうな技術分野はどのあたりですか?

フェルドマン エネルギーに関連する技術とITですね。近年、太陽光発電や蓄電池の技術が発展して、かなり低いコストでエネルギーがとれるようになってきました。このままいくと、エネルギーはほとんど無料になるかもしれません。

ちきりん えっ!? エネルギーコストがタダに近くなるんですか? 御著書でも、「経済学とは希少資源の最適配分について解き明かすための学問だ」と書かれていました。さらにその目的は、「希少資源の奪い合いから起こる争いを減らし、世界を平和にすることだ」とも。たしかに国際紛争の多くはエネルギーの奪い合いから起こっています。もしそのエネルギーが無料になったら、世の中ものすごく変わりますよね。

フェルドマン そうですね、世界の争いの多くはエネルギーと水の取り合いから始まります。その2つが豊富にあるのであれば、より平和になると思います。
 あとはITをもっとうまく利用できるようになれば、人々の生活は大きく変わるでしょう。労働時間が短縮され、生産性は上がり、週休5日もあり得ると思います。しかし、新しい技術の活用が既得権益層によって妨げられているという問題があります。特に農業ですね。私は日本の農業には大きな可能性があると考えていますが、JAが権力を独占してきたがために伸び悩んでいるように見えます。

ちきりん 私も農業は本当にもったいないことになっていると感じます。世の中にはどんどん新しい技術が出てきているのに、既得権益を持っている人たちがそれを使わせてくれず、成長もできない……そういう分野って農業以外にもたくさんありそう。
 『自分の時間を取り戻そう』にも書いたんですが、生産性の低い産業を守ろうと抵抗している人には給与だけ渡して、働かないでいてもらったほうが社会のためになる。たとえば農業だって本当にやる気のある農家の人だけに任せてしまって、そういう人には規制も外して自由に稼いでもらう。一方、自由化されたらやっていけないと言ってる人には、「すみません。自由化します。その代わり、あなたには今の年収をずっと差し上げますよ。だから反対するのはやめてください。やる気のある人に、自由にやらせてあげてください」と言ってしまったほうが、社会全体としては利益が大きくなるんじゃないかと。

フェルドマン 理屈としてはそうかもしれませんが、やはり人というのはお金をもらうだけでは満足しないという面があるので、難しいでしょうね。働きたい、役に立っているという実感を得たい、という気持ちから、けっきょく口を出してくるのではないでしょうか(笑)。ですから、よりやる気のある、農業をやりたいという人材を育成していくということが大事だと思います。

ちきりん たしかに。あと、金融はどうですか? ファイナンスとテクノロジーをかけ合わせたフィンテック(Fintech)が注目されて久しいです。このまま技術革新と規制緩和が進めば、日本人も海外のネット銀行や仮想通貨を簡単に使えるようになると思うのですが、そうなると変化の遅い既存の銀行は淘汰されてしまうのでしょうか?

フェルドマン それを考えるには、本のビジネスが参考になると思います。たとえば、2000年にamazonが入ってきたときは出版界に激震が走りました。検索してクリックひとつでさまざまな本が手に入るようになり、より便利になりました。そういう現象は金融でも起こるでしょう。でも、リアル店舗の本屋は生き残っていますよね。Amazonによって、著者や出版社の役割が奪われたかというと、そういうこともない。

ちきりん 書店に関しても後継者のいない小規模書店は大幅に減っていますが、巨大な都市型書店が増えたので本の売り場面積は大きくは減っていません。私自身、今でも書店は大好きです。雑貨屋のような書店やカフェ併設の書店も増え、すごく多様化していますよね。
 著者に関しては、電子書籍なら出版社を通さず誰でも出せるようになり、むしろチャンスが増えました。同じ理屈で、金融分野の技術革新によって投資が簡単便利になれば、より積極的に高度な金融サービスを使う人が増えるかもしれません。海外企業の株式や投資信託、さらには不動産などももっと簡単に買えるようになるかも。金融のリテール分野でも本格的に国際競争が始まりそうです。

フェルドマン はい。そして、ネットで買えるからといって、全員がamazonで本を買わないように、既存の国内の銀行も独自の価値を出していくことで、生き残ることができると思います。

消費者余剰の多さが、日本の生産性を低くしている

ちきりん 最近は次々と新しい技術がでてくるので、未来はとても明るいと思えるのですが、そのわりに日本社会の生産性が上がらないのは、文化的な要因もあるんじゃないでしょうか。
 その1つが職人文化です。日本は職人とか巧みの技とかがすごく尊敬される国で、それはそれですばらしいことなんですが、誰も彼もが職人みたいな仕事をする必要はありません。たとえば、四角いマスを塗るという仕事があったとします。職人なら何時間かけてでも、端から端まで一切のムラなくきれいに塗らねばなりません。でも、全体にざっと塗って次の仕事に移る、そういうやり方で十分な仕事もあるのに、日本の場合はそれだと許されない。

フェルドマン 塗り残しは別の人が塗ればいい、と考えると分業が成り立ちますね。

ちきりん そうです。それになかには、端まで完璧に塗らなくても何の問題もないという仕事もあるんです。ところがそういう場合でも、完全に完璧に塗らないと「不完全だ」「手抜きだ」「中途半端だ」と文句を言われてしまう。
それが、「何時間かけてもいいから完璧にするべし」という、生産性を度外視してどこまでも時間を投入する姿勢につながっているのかなと。

フェルドマン それは重要な指摘ですね。先日、美術館で昔の西洋画の肖像画について、どういうふうに制作していたかという説明を聞きました。そうしたら、画家によっては工房をもっていて、弟子たちと分業して描いているんですよね。人物は人気のある画家が描き、背景は弟子が描く。

ちきりん それでも芸術的な価値は保たれているわけですよね。かつ、生産性も高い。でもそう聞いてしまうと、いくら名画でも「えっ、背景を弟子に描かせているなんて手抜きだ!」ってことになるのかも……。

フェルドマン だから、1から10まできっちりやる場合は価格を高くすればいいわけですよね。背景を部下に任せるものは、相応の価格にすればいい。

ちきりん そうそう。日本はそういうものまで「よいモノを安く」とか言って、安く売ろうとするから生産性が上がらないんです。
 私、旅行をしててよく思うんですけど、日本のスターバックスって、世界のどの国のスターバックスよりもテキパキしていて気持ちのいいサービスが受けられますよね。ニューヨークでスタバに行くと、あちこち汚れてるし時間もかかるし、お釣りや注文の間違いがあったりと、明らかにレベルが低い。それなのにサービス業の生産性を比較すると、日本はアメリカの6割しかない。これって何か変じゃないですか?

フェルドマン それは、生産性を時間とお金で計算するからですよね。アメリカのスタバは同じ売上でもサービス水準が低い。つまり、同じ商品ではないんです。日本って、消費者余剰(Consumer surplus)が多い国なんですよ。消費者余剰とは、買い手が払ってもいいと考える額から、実際に支払う額を差し引いた額のことです。

ちきりん つまり、「こんな良いサービスを受けられるなら800円くらい払ってもいい」という状態なのに、実際には500円で済んでいるってことですね。消費者が得をしていると。
 だったらニューヨークのスタバの隣に「スターバックス・ジャパン」の店舗を出して、2店並べて営業してみたらいいと思うんです。その店では隣のニューヨーク・スタバに比べて“迅速なのに丁寧”という日本レベルのサービスが受けられる。すると隣より価格が2割高くても、そちらを利用するニューヨーカーもいるんじゃないかな。

フェルドマン そうしたら、時給を高くできて、生産性も高くなる。同じスターバックスで違うサービスを展開したらどうなるか、と考えるのはおもしろいですね。


http://diamond.jp/articles/-/123921
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/831.html

[政治・選挙・NHK223] 「共謀罪」に反対一辺倒なら野党は無残に敗北する 森友問題、保守とリベラル空回の本質 小泉進次郎ら提言「こども保険負担問題
【第154回】 2017年4月11日 上久保誠人 :立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長
「共謀罪」に反対一辺倒なら野党は無残に敗北する


「組織犯罪処罰法改正案」が衆議院で審議入りした。過去3度国会で廃案となった、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設しようとするものである。安倍晋三政権は、「安倍一強」と呼ばれる高い内閣支持率を背景に、これまで保守派が実現できなかった「特定秘密保護法」(本連載2013.12.6付)「安保法制」(2015.919付)など、いわゆる「首相のやりたい政策」(2015.3.5付)を着々と進めてきた。「組織犯罪処罰法改正案」(以後、「テロ等準備罪新設法案」と呼ぶ)も、この一連の流れの延長線上にあると考えられており、野党の激しい抵抗が予想される。

 しかし、本稿は野党が「安保法制」の国会審議時のように、法案の廃案を狙って、国会内で徹底的に法案を批判し、国会外で反対のデモを煽るようなやり方をしても、必ず失敗すると論じる。

安保法制の徹底抗戦戦略の
失敗をまた繰り返すか

 この連載では、日本の安全保障政策は、本来反対するはずの「リベラル派」が積極的に関与した際に前進してきたことを論じてきた。例えば、安保法制が立案されて、成立する過程を追った時には、連立与党の一角として公明党が大きな役割を果たした。安保法制の与党事前協議が始まった時、安倍首相と自民党は、自衛隊の活動範囲を際限なく拡大しようという思い入れを前面に出した原案を出してきた。しかし、公明党が自民党の思い入れを一つひとつ論破していくことで、原案はより現実的な法案に練り上がっていったのである(2015.4.16付)。

 だが、与党事前協議の後、国会審議では、安保法制を巡って安倍政権と野党が激しく対立した。国政選挙で3連敗して勢力を縮小させた野党は、政権奪取の可能性を現実的に描くことができなくなっていた。野党は、政権に協力する意味を見いだせず、徹底的に反対することで存在感を示そうとした。安保法制を「戦争法案」と決めつけた野党の激しい反対は、国会外に飛び火し、安保法制反対のデモは全国に広がった(2015.7.25付)。

 だが、安倍政権は野党と一切妥結せず、ほぼ原案通りの法案を強行採決した。国政選挙に3連勝した自信と、世論調査の動向から、野党に支持が集まっていない上に、国民の関心は安保よりも経済であると判断したのだ(2015.10.27付)。結局、その翌年7月の参院選で、野党は敗北した(2016.7.19付)。筆者は、「テロ等準備罪新設」を巡る与野党攻防も、同じように展開するのではないかと危惧している。

なぜ、自民党は
「テロ等準備罪新設法」を急ぐのか

 自民党は今回の法案について、これまでの「共謀罪」と異なるものだと強調してきた。今年1月、自民党は原案を発表し、処罰の対象となる犯罪を「懲役・禁錮4年以上の刑が定められた重大な犯罪」とし、その数は676とした。

 対象とする犯罪が600を超えていることは、過去3度廃案となった「共謀罪」と何も変わっていない。だが、自民党は、過去の法案とは違うと主張した。「共謀罪」では適用対象としていた「団体」を更に絞り込み、テロ組織や暴力団、振り込め詐欺グループなどを想定した「組織的犯罪集団」に限定するとした。その上、凶器を買う資金の調達や犯行現場の下見などの犯罪を実行するための「準備行為」を、法を適用する要件に追加することで、法律を適用する条件をより厳しくしたと説明した。

 自民党は「国際組織犯罪防止条約」の締結のために、今回対象とした犯罪を「準備行為」の段階で罰する、国内法の整備が必要だとした。「国際組織犯罪防止条約」とは、組織的な犯罪集団への参加・共謀やマネーロンダリング、司法妨害・腐敗(公務員による汚職)等の処罰、およびそれらへの対処措置などについて定める国際条約である。日本以外のG7諸国を含む187ヵ国が締結している条約だが、日本はこの条約を締結していない(未締結はわずか11の国・地域のみ)。

 その理由は、この条約が、組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の共謀行為を処罰する罪(つまり「共謀罪」)を制定していることを加入の条件にしており、国内の「リベラル派」(主にいわゆる「護憲派」)が強く反対していたからだ。

 世界各地でテロが相次ぐ中で、日本は2020年の東京五輪開催などを控え、テロ対策の強化が必要なことは言うまでもない。しかし、インターネットの発達や交通手段の高速化で、国境を越えて組織犯罪が発生するケースが増えている現状で、国際組織犯罪防止条約に未加入だと、対テロ対策の国際的な法の抜け穴を日本に作ってしまうことになる。

 また、テロ対策のための国際協力に十分に参加できず、テロを未然に防ぐために必要な、人身売買、密入国、不正な銃器の売買などの重要な情報を、諸外国と共有できなくなってしまう。このままでは、ビッグイベントを控えた日本は、テロリストにとって格好の標的となるリスクがある。そこで、安倍政権は条約加入の条件である国内法の整備を急いでいるのである。

 そして、自民党は処罰対象となる676の「重大な犯罪」とする「テロ等準備罪新設法案」の原案を作成した。だが、殺人、放火、化学兵器使用による毒性物質等の発散、テロ資金の提供など「テロに関する罪」は167だけにとどまっていた。

 一方、強盗、詐欺、犯罪収益等隠匿など「組織的犯罪集団の資金源に関する罪」が339、覚醒剤の製造・密輸など「薬物に関する罪」が49、偽証、組織的な犯罪における犯人蔵匿など司法の妨害に関する罪が27など、組織的犯罪にあたるがテロとは直接的に関連がない罪が多数並んでいた。また、「組織的犯罪集団」による犯罪の計画にはあたらないものの「懲役・禁錮4年以上の刑」にあたるために対象に数える罪(過失犯など)も41含まれていた。

 安倍首相や自民党の保守派は、安保法制の立案時と同じであったといえる(2015.4.16付)。これまで3度廃案になっても諦められないのだから、「共謀罪」についても、非常に強い思い入れを持っているのだろう。対象となる重大犯罪の範囲は、「テロ等の準備」を超えて、非常に幅広いものとなっていた。

公明党との非公式協議による
処罰対象犯罪の削減という「歯止め」

 自公政権では、安保法制など過去の重要法案については、国会提出前に与党による事前協議を行なってきた。しかし、この法案については、事前協議会の設置を見送った。これは、この法案が今国会に提出されることが明らかになってから、民進党など野党が衆院予算委員会で質疑を行ったことに対し、法務省が「法案審議を国会提出後にするよう配慮を求めた」文書を発表したことで、野党側が態度を硬化させて金田勝年法相の辞任を求める事態となったりしたことなどが影響したのだろう。

 自民、公明の事前協議の内容が次々と明らかになるようでは、野党の追及により予算委員会が紛糾し、世論の反発が強くなり、国会提出前に法案がボロボロになる。国会審議を乗り切る力を政府与党が失ってしまうことを恐れたと考えられる。

 その結果、両党の調整は水面下で行われることとなった。だが、官僚が両党の間を走り回ってまとめたとの話もあり、政治家の動きはわからず、法案修正の過程はなかなか見えてこなかった。だが、自民、公明両党がそれぞれ党内で了承を得て「閣議決定」された法案は、対象とする犯罪が676から277まで絞り込まれていた。具体的には「テロに関する罪」の対象は110まで減り、その他についても「薬物」29、「人身」28、「資金源」101、司法妨害9と大幅に減っていたのである。

「平和の党」を標榜する公明党は安保法制の協議において、様々な論点で厳しい指摘を繰り返し、「前のめり」自民党の「歯止め役」を徹底的に務めた。そして、自民党が提示した、自衛隊の活動範囲を際限なく拡大したいという思いが露骨に出て粗っぽすぎた案を、現実的な具体策に練り上げる役割を果たしていた(2015.4.16付)。

「テロ等準備罪新設法案」においても、与党協議の内容は見えないものの、公明党の役割は同じだったといえるだろう。公明党は「歯止め」を自認しながら、3度も廃案になってきた「共謀罪」を、何でもかんでも処罰対象にしたがる自民党の案から、テロ対策に必要ないものをできるだけ削り、より現実的で国民の理解を少しでも得られる「組織犯罪処罰法改正案」に練り上げることに、少なくとも一定の役割は果たしたと評価すべきである。

審議入り後の公明党な何もできない
野党は安保法制と同じ戦略なら失敗する

 そして、「テロ等準備罪新設法案」が衆議院で審議入りした。法案の修正により国会提出に貢献した公明党だが、党内からは、7月の東京都議選への影響を回避するため、今国会成立の見送りを求める声が出ており、会期内の早期成立を目指す自民党とは温度差がある。だが、公明党は所詮連立与党の一角である。法案の答弁を行う担当大臣は自民党だ。国会審議に入ると、公明党はよくも悪くも、何もできなくなる。むしろ問題は、野党ということになる。

 学校法人「森友学園」の問題が思いのほか長期化することで、まるで全体主義国家の学校をイメージさせるような、「教育勅語」を幼児に暗唱させる映像や、その教育勅語の内容に閣僚が次々と理解を示すことに国民の多数は衝撃を受けている。安倍首相やその他の政治家と保守系団体との「不適切な関係」の有無にも高い関心が集まった(2017.3.28付)。

「テロ等準備罪新設法案」が、これら安倍政権下における一連の自民党の「右傾化」のイメージと同一線上に位置づけられるのは当然であり、国会審議では野党の激しい反対が予想される。だが、野党の国会戦略が「安保法制」と同じであるならば、野党はなにも得られず、無残な敗北を喫することになる。

 日本共産党の小池晃書記局長は、安倍政権が法案名を「共謀罪」から変えたことに対して、「本質はまったく変わらない」と厳しく批判している。そして、「違憲立法の共謀罪創設に反対する闘いは日に日に広がっている」と強調し、「共謀罪は過去3回廃案となった。その時期に比べても、いまは市民と野党の共闘が大きく発展している」として、「共謀罪法案を必ず撤回させる」と表明している。

 なんともいえない、既視感がある。基本政策が異なるはずの野党が共闘し、安保法制を「戦争法案」と叫び続けたように、野党は今回の法案でも「共謀罪」という名称にこだわり、叫び続けるのだろう。そして、ただひたすら廃案に向けて、一切妥協せず、反対を訴えるのだろう。既に「共謀罪反対デモ」は広がりつつあるが、また国会を取り囲むのだろうか。

国民の関心は経済に集中
五輪まで安部政権は盤石

 だが、安倍政権は国政選挙で4連勝して、圧倒的多数派を形成していることを忘れてはならない。国会で野党がどんなに激しく批判を展開し、既に不安視されている金田法相の答弁が更に迷走しようとも、安倍政権は簡単に法案を可決させることができるのだ。

 徹底的な「共謀罪反対」のアピールで、安倍政権の支持率を落とし、次の選挙での勝利を狙うのかもしれないが、残念ながらその戦略は安保法制の際に完全に失敗したではないか。2016年7月の参院選で、野党は「改憲勢力に衆参両院で3分の2の議席獲得を許す」という、戦後政治において野党が最低限死守すべきラインすら割ってしまう、最悪の惨敗を喫したのだ。この戦略が成功しないのは明らかである。

 実際、「森友学園」の問題が長期化しても、安倍政権の支持率はほとんど低下していない。国民の関心は経済である。安倍政権による日本社会の「右傾化」を嫌だなと思っていても、日本がまた戦争をする国になるというリアリティはない。

 安倍首相は、おそらく今年中に解散権を行使することはない。来年秋の自民党総裁選後になるという予測もある。現在、経済は停滞気味だが、東京五輪が次第に近づいてくると、派手派手しく景気対策が打ち出されるだろう。折しも、「将来の増税、歳出削減を国民が予想するので、結果的にデフレになる」「増税や歳出削減を一切予定せず、インフレによる財政赤字返済を前提とした追加財政を行うべき」という荒唐無稽としかいいようがない理論が米国からやってきて、安倍政権が都合よくそれに乗ろうとしている。

 もちろん、まじめに財政危機や将来世代の負担の軽減を訴える人はいるだろう(例えば、山田厚史の「世界かわら版」2017.3.30付)。しかし、国を挙げて五輪を盛り上げようという「空気」が広がり、それに水を差す異論を許さなくなっていくはずだ。そんな時に、安倍首相は解散総選挙に打って出る。その結果がどうなるか、言うまでもないだろう。

野党は真に「テロ準備罪」のみに
有効な法律を練り上げるべきだ

 要は、「共謀罪反対」と叫び続けて、安倍政権の支持率を短期的にほんの少しだけ傷つけたとしても、政局の大きな流れの中では、ほとんど無意味なのだ。それよりも、この連載がずっと主張し続けてきたように、民進党は共産党との共闘関係を絶つべきだ。共闘は選挙で多少、議席を増やすことにつながるだろうが、日本のマジョリティである中流の人々の信頼を失い、政権交代はむしろ遠のいてしまうのだ(2016.9.17付)。

 民進党は安保法制の国会攻防時に、元々対案を準備していたはずなのに、感情的になって与野党協議ができず、共産党とともに廃案を狙った徹底的な反対路線を突き進んだ(2015.6.26付)。しかし、今回の国会審議では、考え方を変えるべきではないだろうか。

 繰り返すが、「テロ等準備罪新設法案」を廃案にするのは絶対に無理だ。国際情勢の不安定化で、国民の多くが、テロ対策の必要性を強く認識しているというのが現実だ。今回の勝負は、どうあがこうとも成立してしまう法律を、いかに「歯止め」の効いた、国民が安心できるものにするかであるべきだ。それには、現在277まで減っている処罰対象となる犯罪を、いくつまで減らせるかに集中することである。


本連載の著者、上久保誠人さんのの共著本が好評発売中です。『やらせの政治経済学:発見から破綻まで』(宮脇昇他編、ミネルヴァ書房刊)第3章「選挙とやらせと財政再建:英国・キャメロン政権と安倍政権の比較」を担当しています
 前述の通り、現在でも、対象の罪のうち「テロに関する罪」の対象は110だけである。まだまだ削れる余地がたくさんある。与党と完全に対決して、無修正で強行採決されるのは、最悪である。与党と協議して、どれだけ削ったかを成果とすべきだ。

 要するに、この法案を「共謀罪!共謀罪!」だと叫び続けて、国民の間にレッテルを貼りつけようとするような非生産的なことはやめるのだ。何度でも繰り返すが、大事なのは「テロ対策」に当てはまらない処罰対象を1つ1つ削って行って、共謀罪ではない本当の意味で「対テロ準備罪有」のみに有効に機能する法律に練り上げていくことである。

 それは、政権交代の実現には直結しないが、長い目で見れば、「自民党に代わる政権交代可能な政党」としての信頼を少しずつ取り戻す、きっかけとなるはずだ。今、民進党に必要なのは、本当の意味での地道な取り組みと、国民に対する誠実さではないだろうか。

(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
http://diamond.jp/articles/-/124330

森友学園問題をめぐる、
保守派とリベラルの空回り議論の本質
[橘玲の日々刻々]
 当初はささいなことと思われていた森友学園問題は、理事長の国会での証人喚問で一気にヒートアップしました。密室での献金や講演料の授受は水掛け論としても、疑惑が公になったあとも首相夫人が副園長(理事長夫人)と頻繁にメールのやりとりをしていたことや、小学校を建てる国有地の借地期間の件で理事長が直接、首相夫人に電話をかけ、経産省から出向していた秘書官が財務省に照会し、回答をFAXしていたことは大きな衝撃でした。政府はこれまで首相夫人を「私人」と説明してきましたが、民間人からの依頼を官僚に処理させていたことでこの理屈は破綻しました。

 この件で不思議なのは、首相官邸がメールやFAXの存在をまったく把握できていなかったらしいことです。これはようするに、国家の危機管理を担う日本国首相は、妻がなにをやっているかまったく知らないし、その行動をなんら「管理」できていないということでしょう。この驚くべき事実は、最近では永田町界隈で「アベノリスク」と呼ばれるようになったようです。

 ところがこのことが、首相の責任をめぐる保守派とリベラルの議論を混乱させています。

 強大な国家権力の頂点に立つ首相の職責とは、多様な利害の調整だけでなく、自らの決定に国民を従わせることです。その首相が自分の妻すら「管理」できないとすれば、国民がそのマネジメント能力に疑念を抱いたとしても当然でしょう。

 これと同様のことが旧民主党政権時代に起きたとしたら、「日本社会の根幹はイエ制度」と信じる保守派のひとたちは、「家庭を管理できない奴に国家の管理が任せられるか」と大騒ぎしたでしょう。しかし今回は当事者が保守派の“期待の星”なので、「夫婦関係は私的なこと」として無視をきめこんでいます。民進党代表の家族がテレビで紹介されたときは、「夫をヒト扱いしない人が国民をヒト扱いするのか?」とバッシングしたことを思えば、目を覆わんばかりのダブルスタンダードです。

 その一方で、首相を批判するリベラルの側にも頭の痛い問題があります。彼らの理屈では夫と妻は独立した人格ですから、妻の不始末の責任を夫がとる(あるいはその逆も)ことなどあってはならないのです。首相に妻を「管理」する責任などなく、首相夫人がどれほど“公権力”を濫用したとしても、夫である首相がそれを知らなかったのなら、「困った妻に翻弄されるかわいそうな夫」というだけのことなのです。

「真に日本国を支える人材を育てる」小学校の開校について、政府は一貫して政治的圧力はなかったと主張していますが、首相夫人が名誉校長に就任し、理事長が有力な国会議員や大阪府議会議員に働きかけているのですから、これが「政治案件」であることは誰でもわかります。副園長とのメールのやりとりを見ても、首相夫人はたんなるつき合いで名誉校長を引き受けたわけではなく、その教育理念に共感し同志的つながりを持っていたことは明らかです。

 しかしこのように首相夫人の責任が前面に出てくるほど、「夫婦の連帯責任」を問わずに首相を追及するのが難しくなってきます。これが、首相の責任をめぐる議論が空回りしていうように見える理由なのでしょう。

『週刊プレイボーイ』2017年4月3日発売号に掲載

橘 玲(たちばな あきら)

作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(ダイヤモンド社)『「言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)など。最新刊は、小説『ダブルマリッジ』(文藝春秋刊)。

●橘玲『世の中の仕組みと人生のデザイン』を毎週木曜日に配信中!(20日間無料体験中)
http://diamond.jp/articles/-/124370


 

2017年4月11日 森信茂樹 :中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員
小泉進次郎氏ら提言「こども保険」で考える“負担”の問題


 3月29日、小泉進次郎氏を中心とする「自民党・2020年以降の経済財政構想小委員会 (2017)」が、「『こども保険』の導入〜世代間公平のための新たなフレームワーク構築〜」と題する提言(以下「提言」)を公表した。「子どもが必要な保育や教育を受けられないリスクを社会全体で支える」ための仕組みとして、年金や医療、介護に続く新しい社会保険制度として導入しようというもの。増税や教育無償化のための「教育国債」などに加えて、子育てや教育の財源をめぐって、新たな問題提起がされた形だ。

新たな保険料を徴収
児童手当に給付金上乗せ

「子ども保険」の内容は、「保険料率0.2%(事業主0.1%、勤労 者0.1%)の保険料を、事業者と勤労者から、厚生年金保険料に付加して徴収する。自営業者等の国民年金加入者には月160円の負担を求める。財源規模は約3400億円となり、小学校就学前の児童全員(約600万人)に、現行の児童手当に加え、こども保険給付金として、月5000円(年間で6万円)を上乗せ支給する」というものである。

 少子化を放置すれば、経済の停滞、社会保障の持続可能性の崩壊につながる。また、十分に教育を受けられなかった人は、高所得の得られる仕事につけず、子どもにも十分な教育を受けさせられないという形で、格差の連鎖を生み出すことにつながっていく。

 その意味では、こうした問題を正面から取り上げて、公的保険という制度で解決しようという「提言」は、自民党内で別途繰り広げられている、「教育国債(赤字国債)で教育無償化を」という、負担を将来世代に先送りするだけの安直な議論と比べて、貴重な問題提起として評価したい。

 もっとも、子育てや幼児教育の財源を公的保険として構築するには、様々な乗り越えるべき課題もある。簡単には実現しそうにはないが、今後この議論を、建設的な国民負担の議論につなげる起爆剤とすることが「提言」の価値と評価できる。

 だがさまざまな問題点があることは確かだ。

子育ての負担論議の起爆剤に
富裕高齢者も所得税で負担を

 本稿では、負担論として、どのような問題があるのかを考えてみたい。

 第1に少子化対策や幼児教育は、少子高齢化が急速に進む日本にとって最重要課題であるだけに、勤労世代だけに負担を負わせる社会保険制度での対応ではなく、高齢世代にも負担を求める方法をとることがあるべき姿ではないか、という問題である。

 有権者のなかで高齢者の割合が大きくなる中で、高齢者への負担増を避けようとするのは、今日まで続いてきた、高齢者の利害を優先しがちなシルバー民主主義をなぞるもの、といわざるを得ないのではないか。

 高齢者にも負担を求める方法としては、誰もが一律に負担する消費増税が思いつくが、所得の多い人がより多くの負担をする所得税での対応が重要である。具体的には、年金のほかにも所得がある高所得年金受給者への課税強化(公的年金等控除の縮小)、富裕高齢者に多くが帰属する金融所得に重く課税することが考えられる。これらは、高所得・富裕高齢者に集中的に負担を求めるもので、高齢者に社会保障の受益が偏りがちだという世代間・世代内の公平性を大きく向上させるというメリットがある。子育てをめぐる負担論議でもこの選択肢を放棄すべきではない。

子どもがいない世帯は
給付がないのに負担をするのか

 第2に、保険制度、保険原理としての課題である。

 提言を読むと、「(保険は)負担額と給付額が一致しているので、国民全体で見れば、全く負担増にならない。給付を前提に負担を求める点で、増税とは違う」と書かれているが、例えば子どもがいない世帯にも保険料の負担を負わせることが公的保険として妥当か、という問題にぶち当たる。子どものいない世帯にとっては必ずしも「受益と負担」がバランスしているとは限らない。

 加えて、現在の国民年金保険料負担の実態を見ると、自営業者(非正規雇用者も含む)は定額(月1万6000円強)となっており、高所得者ほど負担が軽くなるので、消費税より逆進性(低所得者により重い負担)が高い構造となっている。

 厚生年金についても、高所得サラリーマンには負担の上限があり、所得水準がそこを超えると負担は相対的に下がっていくという逆進性が見て取れる。

 このことは、保険制度では、所得の再分配に対してマイナスの影響を与えかねないという問題である。低所得の非正規雇用者の負担するこども保険料で、豊かな正規雇用のサラリーマン家庭の子育てを支援する、という逆説的なことが生じうる。

 もっとも、保険は本来はリスクをカバーすることが目的で、所得再分配はその機能ではない、ということかもしれない。そうであれば、所得格差の拡大が問題になっている現状では、所得再分配機能の強化(格差是正)も可能となる所得税方式の方が、メリットがあるということになる。

事業者の負担増加
非正規雇用を増やす恐れ

 また現状でも、国民年金の4割が未納という保険の実態をどう認識するのか、という問題もある。「子ども保険」の保険料が上乗せされることで、低所得の人たちの未納をさらに増やすことにもなりかねない。

 さらには、事業者にこれ以上の負担増を求めることは、事業コストの増加につながり、それを避けようとして低賃金の非正規雇用化への流れにつながりかねないということも留意点であろう。

 これらの点については、「報告書」は以下のような比較表を掲載している。


拡大画像表示
 表では、税方式としては消費税だけが掲載されているが、上述のように、所得税(公的年金等控除の縮小や金融所得への重課など)方式も考えられることを付け加えておきたい。

 このように、今回の自民党若手議員の「子ども保険」の提言には、今後、議論すべき論点が数多くあるが、「提言」を議論の起爆剤として、消費増税を含めたあるべき国民負担論、つまり、どの世代でどう負担していくかという国民的な議論に、建設的につながっていければ、望ましいといえよう。

 その意味で、この「提言」は、問題提起として大事にしたいものである。

なお筆者は、東京財団・税社会保障調査会でもこの議論を経済学者と行っているので参照してもらいたい。

(中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信茂樹)
http://diamond.jp/articles/-/124332
http://www.asyura2.com/17/senkyo223/msg/834.html

[国際18] 米中首脳会談中のシリア攻撃、中国側の本音は何か 米中会談寄与−フォードEV拡大 中国楽視、米国売上高が予想下回り人員削減
【第99回】 2017年4月11日 加藤嘉一 :国際コラムニスト
米中首脳会談中のシリア攻撃、中国側の本音は何か


習近平国家主席の米国訪問
今回は“様子見”の色彩が濃い

 先週、習近平国家主席が米国を訪問し、ドナルド・トランプ大統領と初めての会談に臨んだ。同会談に同行・参加した王毅中国外相の会談後ブリーフィングによれば、「両国首脳は7時間以上に渡って深く交流し、中米関係と共に関心を持つ重大な国際地域問題を巡って意見交換をした。多くの重要なコンセンサスを得た。双方は今回の中米首脳会談は前向きであり成果に富んでいたと考えている。会談は中米関係の発展に建設的基調を打ち立てたと同時に、双方が共同で努力をしていく方向性を打ち出した」とのことであった。

 日本でも多くの報道がなされていると察するが、本稿では同会談の様子を中国国内から眺めながら、特に本連載のテーマにも照らし合わせ、「習近平主席率いる中国共産党指導部がどのような視角・立場からトランプ大統領を見つめ、同陣営とどのような関係を構築しようとしているのか?」を巡って私が感じたこと、考えたことを三つの切り口から書き綴ってみたい。

 一つ目が、習主席率いる党指導部にとって、今回の訪米には“様子見”という色彩が濃かったという点である。習主席が訪米を終えて北京に戻った直後、今回の習主席訪米の企画・実行に関わった中国外交部スタッフが私に次のような振り返りを語った。

「習主席とその周辺からすれば、例えば“一つの中国”政策などではトランプ大統領の立場に対してある程度の掌握を持てるに至っているが、それでも同大統領、そしていまだその人事調整が不安定に映るトランプ政権に対して安心しきっているわけでは決してない。一歩一歩各レベルの会談や接触を続けつつ、確信を得ていく過程にある。だからこそ、今回は首都ワシントンD.Cではなく、フロリダ州で、しかもトランプ大統領自身の別荘に赴くことで彼に気分良く振る舞ってもらい、友好的な雰囲気の中で終了することを心がけた。習主席の外遊をフィンランド訪問とセットにしたのも、ピンポイントで米国へ外交をしにいくというトーンをダウンさせるためだったと私は理解している」

 トランプ大統領との会談においても、習主席は終始米中が協力していくことの重要性を前面に出す姿勢で臨んでいたように思える。「私と大統領は長時間に渡る深い意思疎通を行い、相互理解を深め、相互信任を増進した。多くの重要なコンセンサスも得たし、良好な仕事の関係を構築できた」(習主席)。

 中国側が様子を見ながら、ステップ・バイ・ステップでトランプ陣営との協力事項と関係構築を推し進めていこうとしている一つの状況証拠として、今回会議の一つの成果とも言えるだろうが、「外交と安全保障」「経済」「法の執行とサイバーセキュリティー」「社会と文化」という4つの分野で対話メカニズムを設ける米中包括対話が構築された。

 トップは習・トランプ両首脳が務めるが、首脳会談期間中、汪洋国務院副総理や楊潔チ(チの字は竹かんむりに“褫”のつくり)国務委員(外交担当、元外相)など各分野の責任者が米国側のカウンターパートとメカニズムの運用方式や重点とする分野などについて協議を行った。中国側としては、トップ会談、准トップ会談、ハイレベル協議、各分野事務協議などあらゆるレベル・角度からトランプ陣営の対中政策における戦略的意図を伺い、洗い出し、対米戦略・政策における“確信”を掴みにいきたいと考えているのだろう。

 習主席は会談の席でトランプ大統領の年内の中国公式訪問を要請・招待し、「トランプ大統領もそれを受け入れた。現段階では訪中は2017年度内を予定している。大統領は日程を確認・調整すると応えた。訪問をいつに設定するのが適当なのかをこれから中国側と一緒に考えていくことになるだろう」(ティラーソン国務長官)。秋に北京で開催される共産党の19回大会との絡みも注目されるが、習主席としてはトランプ大統領中国公式訪問を2017年における中国外交の成果としたいのだろうし、党指導部としては可能な限り「19回党大会円満終了」+「トランプ大統領公式訪中」の間に戦略的リンケージを見出すことで、習近平率いる党指導部の正統性を確保・強化しようとしているに違いない。

 2日目の米中首脳会談で習主席の右隣に座り、やや後ろに引いた角度から同主席とトランプ大統領とのやり取りを無表情で見つめていた王滬寧・中央政策研究室主任兼政治局委員あたりは、今年下半期の中国政治と対米関係の関係性について思考を凝らしていたのではないかと私は勝手に想像している。

米中首脳会談期間中のシリア攻撃
中国は米国を暗に牽制している

 二つ目は、米中首脳がフロリダ州で時空を共有している間、米国がアサド政権による化学兵器使用によって多数の市民に被害を与えたシリアに対する軍事行動を始めた状況を巡る、米中のやり取りと探り合いについてである。ティラーソン国務長官が首脳会談後記者たちに行ったブリーフィング&質疑応答によれば、トランプ大統領は一日目の夕食会が終わりに差し掛かる20時40分頃、習主席に対して直接軍事行動の事実を伝え、その意図と背景について説明したという。「習主席は伝えてくれたことに感謝すると呼応し、子どもが命を失ったりしている状況下でのそのような対応は必要であると理解を示した」(ティラーソン国務長官)。

 米中首脳会談期間中に起こった米国によるシリア攻撃に関して、中国政府訪米団報道官の陸慷中国外交部報道局長は記者たちからの質問に対して次のように答えた。

「中米両国首脳が会談をしている最中この問題にも話が及んだ。習近平主席は中国側の化学兵器使用に反対するという一貫した立場を述べ、現在差し迫った任務は情勢の一層の悪化を防止し、シリア問題の政治的解決プロセスを何とかして守ることである」

 その後の中国外交部報道官の記者会見でのコメントなどからも比較的明確に見て取れるが、中国のこの問題に関する立場は三つに集約されるといえる。

 一つは、いかなる国家・組織・個人がいかなる目的によってであれ化学兵器を使用することに反対すること、二つに、問題は政治的に解決されるべきであること、言い換えれば、可能な限り軍事力の行使やそれによる解決を回避し、政治的駆け引きや外交的交渉によって情勢を緩和すべきだという主張だ。最後に、問題解決には国際連合の枠組みとルールが活用されるべき、特に化学兵器使用過程に対する調査や検証作業のプロセスで国連が独自の役割を担うべきであるという立場である。

 このように考えてみると、2番目と3番目の理由・動機によって、中国当局がトランプ政権のシリア攻撃を暗に牽制している現状を比較的容易にうかがい知ることができる。どのような状況であっても、米国は軍事力の行使に慎重になるべきであり、国連の枠組みとルールを重んじるべきだと米国に忠告したかったのであろう。

 そして、この米国のシリア攻撃に対する牽制からこれまた比較的容易に連想できるのが、北朝鮮の核ミサイル問題を巡る米中間の駆け引きである。

 中国はトランプ政権に対して、(1)中国は一貫して朝鮮半島の非核化にコミットする立場にある、(2)問題解決は政治的解決によるべきである、(3)国際連合の枠組みとルールを通じた解決プロセスが遵守されるべきである、という3点を主張したいのだろう。

 現状からすると、要するに北朝鮮への先制攻撃には慎重になるべきであり、対北朝鮮制裁プロセスも国連安保理で審議・採択した枠組みから出るべきではない、ということであろう。習主席はトランプ大統領に対して、従来の立場に基づいて、米国が韓国に高高度追撃ミサイルシステム(THAAD)を配置することにも反対の意を示している。米中両首脳は会談を通じて北朝鮮の核問題解決を巡って協力強化を謳ったものの、今後、朝鮮半島は以前にも増して米中の地政学的力量・戦略的意図が交錯する地帯へと化していきそうである。

習近平政権の特徴
有利な分野はクローズアップ

 三つ目に、習近平政権の特徴であると私が考える“内政の外交化”、および中国外交に顕著に見られる自らに有利な分野はクローズアップし、不利な分野をカモフラージュしようとするスタイルが如実に表れていたことである。習主席が会談においてトランプ大統領に呼びかけた次の部分を見てみよう。

「中国は現在供給側構造改革を推進しており、不断に内需を拡大している。サービス業が国民経済に占める割合も不断に高まっている。中国経済は良好な発展の勢いを保持していくであろうし、中米の経済貿易協力を巡る展望は広く開かれている。双方はこの機会を掴むべきである。中国は米国が"一帯一路"の枠組み内における協力に参加することを歓迎する」

 トランプ大統領率いる米国に中国経済の現状と改革を支持してほしいこと、特に習近平政権が提唱・宣伝する“一帯一路”を米国に肯定・評価してほしいという意思が垣間見える。また、習主席は自らが内政面で大々的に推し進める軍事建設、反腐敗闘争といった分野でも米国側に協力を求めている。

 繰り返すが、習主席およびその周辺には、特に自らが重視する内政マターを外交の舞台で提起・議論し、外国指導者(特にライバル米国)からの支持や協力を取り付けることで共産党政権の威信を向上させようとする傾向が顕著に見て取れる。

 トランプ大統領自身の“アメリカファースト”もあり、米国が経済・貿易問題で中国側に何をどのように要求するかも注目された。米国は「米国の中国への輸出を増やし、対中貿易赤字を減らすために」(ロス商務長官)“100日計画”を作って取り組んでいくつもりだという。興味深かったのは、米中首脳会談後の王毅外相によるブリーフィングや国営新華社通信による関連報道からは“100日計画”の存在や実施について言及が見られなかったことである。

 米中間で具体的な取り組みや進め方について合意が取れていないが故に言及がなかった可能性は十分にあるが、それと同様に、あるいはそれ以上に、中国側として同計画の存在と実施が自らの思惑や利益に符合しないと考えているからであろう。

 習近平陣営が警戒する経済・貿易の分野において主導権を握るべく、中国側としては上記の包括的対話のメカニズムを存分に活用しようと奔走するであろう。とりわけ、中国側は米中首脳会談の後というタイミングで米国が中国を“為替操作国”に指定してくるか否かを警戒・懸念していると私は見ている。

(国際コラムニスト 加藤嘉一)
http://diamond.jp/articles/-/124334


 

フォードCEO:米中首脳会談、関係強化に寄与−中国EV投入拡大へ
Bloomberg News
2017年4月10日 19:22 JST
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経済関係を「極めて慎重に進めていく」必要−フィールズCEO
ピックアップトラックで中国に「大きな機会」ある
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米フォード・モーターのマーク・フィールズ最高経営責任者(CEO)は、フロリダ州で行われた米中首脳会談を両国関係の強化に向けた建設的な一歩だと称賛するとともに、電気自動車(EV)とピックアップトラックの中国投入を増やす計画を明らかにした。
  同CEOは8日、上海でのブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は直接会うことで親密になれると指摘し、「これが非常にしっかりとした基盤となり、2国間関係を強化する具体的な進展につながる。その可能性が高いと感じている」と語った。
  中国でのピックアップトラック販売拡大計画の概略を説明するイベントの前に、フィールズCEOは「貿易という観点で米中には大きな相互関係がある」と説明し、「この点において極めて慎重に進めていく必要がある。経済関係は全体的な関係の基礎だからだ」と述べた。
  フォードは6日、プラグインハイブリッドと電気を原動力とするスポーツタイプ多目的車(SUV)を中国に投入し、2020年までに電気パワートレインを現地製造する計画を示した。
  フィールズCEOは、中国は都市中心部でのピックアップトラック利用に関する規制緩和が進んでおり、売り上げを押し上げる「大きな機会」があると指摘。同社は人気の高い「ビルト・フォード・タフ」シリーズを中国に投入し、中型ピックアップトラックの「フォード・レンジャー」の販売を18年に始める計画だ。同CEOは「耐久性とタフさ」を兼ね備えたレンジャーを例に挙げ、「中国には満たされていない需要がある」と話した。
原題:Ford CEO Says Trump-Xi Meeting Helps Strengthen U.S.-China Ties(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO6PKY6JIJUP01


 

中国の楽視、米国売上高が予想下回り人員削減へ−関係者
Selina Wang
2017年4月11日 08:27 JST
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楽視の米国売上高は当初目標の1億ドルを大幅に割り込む
米従業員数の約3分の1強を削減する計画
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中国のテクノロジー関連コングロマリット、楽視が米国市場での野心を急速にしぼめている。
  中国で動画ストリーミングやスマートフォン、電気自動車などさまざまな事業を展開する楽視は、2016年に米国で売上高目標を大きく下回ったため、米従業員数の約3分の1強を削減する計画だ。事情に詳しい関係者1人が明らかにした。
  同社を率いる資産家の賈躍亭氏が世界進出構想を縮小する背景には、販売不振や資金難の見通しがある。同社は昨年10月に北米市場に進出し、サンフランシスコで開いた派手なイベントでは、超高解像度テレビやスマートフォン、仮想現実(VR)ゴーグルなど多数の製品を披露していたが、同関係者によると、その後の米国売上高は1500万ドル(約17億円)弱と、当初目標の1億ドルを下回っている。
  同関係者が匿名を条件に語ったところによれば、米国部門は約175人を削減する計画で、その結果、米従業員数は300人前後に縮小するという。
  楽視は人員削減計画や売り上げ不振についてコメントを控えた。
  
原題:LeEco Is Said to Miss U.S. Sales Forecasts, Plan More Job Cuts(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO7TXU6K50XS01
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/895.html

[戦争b20] 米政府、シリア・アサド政権の「たる爆弾」使用に警告−行動示唆 米英:訪ロ、シリア支援縮小説得 さらに複雑化 カタールの賭
米政府、シリア・アサド政権の「たる爆弾」使用に警告−行動示唆
Justin Sink
2017年4月11日 08:33 JST
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たる爆弾で民間人を殺傷するのをやめよとホワイトハウス報道官
昨年「たる爆弾」約1万3000発投下、民間人少なくとも653人が死亡
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ホワイトハウス報道官は10日、シリアに対し、「たる爆弾」と呼ばれる円筒形の容器に火薬や金属片を詰めた爆弾で民間人を殺傷するのをやめるよう警告した。トランプ米大統領が化学兵器使用以外の理由でもシリアのアサド政権に対し行動を起こし得ることが示唆された。
  スパイサー報道官は定例記者会見で、「赤ちゃんを毒ガスで殺害したり、罪のない人々にたる爆弾を投下したりすれば、トランプ大統領が対処するだろう。こうしたことは許し難い行為だ」と語った。
  シリア人権ネットワークによれば、アサド政権は昨年、少なくとも1万2958発のたる爆弾を投下、民間人653人以上が死亡した。国連安全保障理事会は2014年、同政権にたる爆弾使用停止を命じる決議を採択。また国連調査団は同政権のたる爆弾使用は国際法に違反しているとの調査結果を発表した。
原題:White House Warns of Response to Syrian ‘Barrel Bomb’ Use (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO7UEZ6KLVR401


 

米英首脳:米国務長官の訪ロ、シリア支援縮小するよう説得の好機
John Follain、Nick Wadhams、Thomas Penny
2017年4月11日 09:53 JST
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英首相府が電子メールで声明を送付
G7外相会合でロシアとシリアへの新たな制裁が議題
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トランプ米大統領とメイ英首相は、ティラーソン米国務長官の11日のモスクワ訪問について、シリア・アサド政権への支援を縮小するようロシアを説得する良い機会になるとの見解を示した。現在、西側主要国は民間人への化学兵器使用でシリアへの制裁強化を検討している。
  英首相府は電子メールで送付した声明で、「メイ首相とトランプ大統領は、アサド政権との同盟はもはや戦略上の利益にならないとロシアを説得する絶好の機会があるという見解で同意。今週のティラーソン国務長官のモスクワ訪問は、持続的な政治解決を実現する解決に向けて前進する機会となるという点で一致した」と発表した。
  イタリアのルッカで10日開幕した主要7カ国(G7)外相会合の初日は、アサド大統領の行動を受け、ロシアとシリアへの新たな制裁が議題となった。
原題:Trump and May See Chance to Persuade Russia to Cut Assad Support(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-11/OO7Y8X6KLVRA01

 

 
ティラーソン米国務長官のモスクワ訪問、シリア攻撃でさらに複雑化
Nick Wadhams、Ilya Arkhipov
2017年4月11日 07:29 JST
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ティラーソン米国務長官が今週、モスクワを訪問する。米国がシリアの空軍基地を巡航ミサイル「トマホーク」59発で攻撃したことを巡り、ロシアのラブロフ外相やプーチン大統領からの厳しい非難に直面する可能性が高い。
  ロシア側がティラーソン長官を鼻であしらい会談を拒否すれば話は別だが、海外での武力行使も辞さないというトランプ米大統領の方針を受け、長官は強い姿勢で会談に臨むことになりそうだ。トランプ大統領は従来、「米国第一」主義のアプローチの一環として外交問題のもつれを避けて、ロシアと新たな関係構築を目指す考えを選挙戦で表明していたが、ここにきてプーチン大統領をいら立たせることもいとわない姿勢だ。
  アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の研究者、フレッド・ケーガン氏は「ロシアの期待とは大幅に異なる雰囲気となりそうだ」と予想。「ロシアは米国が自国に近寄ってくると大きな期待を持っていた。ロシア側がシリア問題やテロ対策でのより緊密な協力や、ウクライナ関連の制裁緩和を意味する関係改善を想定していたなら、それはあり得ない」と指摘した。
  シリアのアサド政権が4月4日に化学兵器を使用し多数の犠牲者を出したとされる事件を巡り、米国は報復する責務があると主張しているが、長期にわたるシリア内戦でアサド政権の後ろ盾となってきたロシア側は、化学兵器攻撃の背後に同政権がいるという証拠に疑念を示し、米国の対抗措置は国際法違反だとしている。
  ティラーソン長官はエクソンモービルの最高経営責任者(CEO)時代にロシアとの親善関係を築き、2013年にはプーチン大統領から「友好勲章」を授与されたが、今回のモスクワ訪問でこうした友好関係が試されそうだ。
原題:Tillerson’s Moscow Mission Just Got a Lot More Complicated (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO7QZR6TTDS101


 


カタールの賭け、成功するかは予断許さず−QuickTake
Mohammed Aly Sergie
2017年4月11日 09:22 JST
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ペルシャ湾に面するカタール首長国は小国ながら、大胆な賭けをすることで有名だ。膨大な天然ガス埋蔵量に恵まれた同国の260万人の住民は、12万9700ドルに達する世界最高の国民1人当たりの年間所得を誇る。カタールは総額で3350億ドルを超える資産を世界中で購入しており、欧州で最高層のビルとされるロンドンのザ・シャードなど、記念碑的な資産も買い占めている。カタールはまた、不安定な地域において重大な役割を果たす陰の実力者としても注目されているほか、2022年にはワールドカップ(W杯)開催国として世界中の関心を集めるだろう。とはいえ、カタールの賭けがいつも予想通りの結果をもたらしているわけではない。支援してきた反体制派が勢力を失ったことで他の近隣アラブ諸国との関係が悪化したほか、W杯に向けた準備の段階でもこれまで悪いニュースばかりが取り上げられている。カタールはいまだ、どうすれば外交面でのメインプレーヤーでいられるかを模索しているのだ。
カタールの首都ドーハ
カタールの首都ドーハ Photographer: Gabriela Maj/Bloomberg
現状
  巨額投資により液化天然ガス(LNG)の世界最大の輸出国となったカタールだが、LNGが世界的に供給過剰となったことで価格が低下し、同国の景気は悪化に転じた。13年に就任したタミム首長は国外での冒険的事業ではなく国内問題に注力し、カタールが15年ぶりに財政赤字を計上すると政府は歳出削減に乗り出した。カタールが出資する衛星テレビ局アルジャジーラはリストラを断行し、米国事業から撤退した。また、W杯の大会招致に絡む同国の不正疑惑は、W杯の運営組織が調査を行った結果、晴らされた。ただ、大会用施設の建設に従事する移民労働者に対し虐待が行われているとの報告書が発表されたことで、準備の見通しに不安が生じている。
  とはいえ、同国の政府系ファンド、カタール投資庁は引き続き大型の投資案件の発掘に意欲的であり、ここ数カ月間ではトルコ養鶏最大手の買収や、ロシア最大の国営石油会社ロスネフチの株式取得に巨額の資金を注ぎ込んでいる。カタール投資庁はドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンの第3の大株主であるほか、08年の金融危機の際に英銀のバークレイズを支援した後も引き続き最大の出資者の一つに名を連ねている。

背景
  サウジアラビアの東海岸沿いの半島に位置するカタールが強力な隣国の影から姿を現したのは、タミム現首長の父であるハマド前首長が無血クーデターにより自身の父親を追放して政権を奪取し、野心的改革に着手した1995年。翌年にはハマド首長の資金提供によりアルジャジーラが設立され、地域の伝統に逆らいアラブ諸国のリーダーにとって都合の悪いニュースの報道も開始された。2003年に米駐留部隊がサウジから撤退すると、カタールは自国への移転に合意。現在は1万人の駐留米軍を受け入れている。
  10年に発生したアラブの春では、カタールは中東諸国の中では珍しく、ペルシャ湾岸に火の粉が飛んでこない限りにおいて、反政府グループに手を貸した。自国の恵まれた住民が反旗を翻すことはないとの確信に基づき、今後彼らが勢力を増すと見越してリビアやシリア、チュニジア、エジプトで政府に対抗していたムスリム同胞団系勢力を支援した。だが、その後ムスリム同胞団は勢いを失い、対中東政策が行き詰まりを見せた14年にカタールはその支援を引き揚げた。同国では政党が禁止されており、表現の自由も大きく制限されている。住民のうち国民はわずか30万人に過ぎず、そのほかは権利がほとんど認められていない外国人労働者である。
論点
  カタールは、中東地域に必要とされる仲介者になりたいとの強い願望を持っている。首長家のリーダーたちは、米国やタリバン、リビアで敵対する部族など、あらゆるコネクションを維持している。だがその一方で、アラブの春の革命で一方の側についたことで中立的な国としての正当性が希薄となり、サウジアラビアとの関係は冷え込んだままであるほか、かつて親密だったイランとの関係も緊迫化している。また、国内の懸念事項に圧されてカタールのリーダーたちが外交問題に注力できる余地も狭まっている。
  カタールは、他の産油国同様、限りある化石燃料への依存度を減らすために経済活動の多様化を目指しているが、W杯に向けたインフラ計画での巨額な支出を問題視するアナリストもいる。ただ、カタールに埋蔵されているガスが枯渇する心配は当面なく、ある推計によると可採年数は135年に達する。カタールでは今後も直接的に政府に敵対する勢力はほとんど現れない見通しながら、政府に批判的な見方はある。また、無駄な官職を減らすという計画もあるが、これは、首長家と交わした「沈黙を守るための富」という契約を疑問視する国民を増やす要因となっている。
原題:A Humbler Qatar Still Wants To Be an Outsized Player: QuickTake(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-11/ONKE576K50XZ01
http://www.asyura2.com/17/warb20/msg/120.html

[国際18] プーチン、沿ドニエストルに死刑を宣告 揺れる南アフリカ、マンデラ遺産脅かす経済問題アパルトヘイトと変わらない黒人生活

プーチン、沿ドニエストルに"死刑"を宣告
ウクライナの電力輸出攻勢に沿ドニエストル経済は大ピンチ
2017.4.11(火) 藤森 信吉
沿ドニエストル側に位置するモルドバ地区電力発電所 (同社HP)
 あまり知られていないが、ウクライナは電力輸出国である。ウクライナ危機により一時的に輸出余剰を喪失したものの、今年に入り、ウクライナのDTEK社がモルドバへの電力輸出契約(契約期間: 2017年4月1日から翌3月31日まで)を取りつけ、その復活を印象づけた。

 この契約通りに電力供給が行われれば、これまで主たる供給者であつた沿ドニエストルは輸出市場を失い、経済危機が深刻化することになる。

 一見すると、この契約劇にはモルドバの政治的意図が反映されているようにみえる。何しろ、沿ドニエストルはモルドバからの分離独立を目指す「非承認国家」であるからだ。

 しかし、実際は、沿ドニエストルのパトロンであるロシアの意向が強く反映されている。

電力輸出国ウクライナ

 伝統的にウクライナは旧ソ連諸国に電力を輸出してきた。しかし、ドンバス紛争で石炭供給が不安定になると深刻な電力不足に陥り、2014年夏には各地で停電が発生した。

 この機に乗じてロシアがウクライナのシェアを奪った。ロシア国営INTER RAO社は、対ベラルーシ輸出を増やし、また、同社が沿ドニエストルに保有するモルドバ地区発電所(MGRES)もモルドバにおけるウクライナのシェアを奪った。

発電所をあしらった沿ドニエストル政府の紋章
 モルドバは、電力自給率が2割程度と低く、恒常的な電力輸入国である。

 しかし、ウクライナは、すぐに輸出余剰を回復させる。2016年度こそウクライナはモルドバへの輸出契約を取りつけられなかったものの、今年3月末〆の国際入札で最安値を提示して落札に成功した。

 一方、沿ドニエストルのMGRESは落札できなかった。表向き、MGRESより安い価格を提示したウクライナのDTEK社が勝ち、国際入札によって透明性・競争性が確保された、という評価になろう。

 しかし奇妙なことが多すぎる。MGRESは負けるわけにはいかなかったし、負けるはずもなかったからだ。MGRESが自ら負けを選んだとしか思えない。

「発電国家」沿ドニエストルと無料の天然ガス

 MGRESはソ連時代、旧ソ連南部や東欧諸国の電力需要を満たすために建設された巨大な火力発電所である。ソ連崩壊後、同発電所は沿ドニエストル政府によって国有化され、2005年にロシア国営INTER RAO社に売却されている。

 沿ドニエストル経済における発電の重要性は極めて高い。電力は、貿易輸出額、工業生産額の3〜4割を占めている。

 また法人税納税額でMGRESは第2位である。

 2015年にGDP(国内総生産)成長率マイナス21%を記録した沿ドニエストル経済にとり、今般の電力輸出市場の喪失は、死刑宣告に近いインパクトがあろう。


 このように沿ドニエストルにとり、モルドバ電力市場の確保は死活問題になるわけだが、ウクライナ側より安い価格を提示して落札することは十分可能である。その秘密が、ロシア・ガスプロム社が沿ドニエストルに供給する「無料の」天然ガスである。

 「非承認国家」という立場を利用して、沿ドニエストルはロシアから輸入する天然ガスの対価を支払わずに消費し続け、ロシアも「沿ドニエストルはモルドバの一部であるから、その消費分はモルドバに課す」としてこれを黙認してきた。

 沿ドニエストルは毎年約20億m3の天然ガスを受け取っているから、5億ドル(1000m3=250ドルで計算)が毎年、債務として累積していく計算になる。事実上の援助金である。

 この「無料の天然ガス」のおかげで、沿ドニエストルは、国内消費者に極めて安価なガスを供給することができる。ウクライナの4分の1以下という安いガスを使って発電するわけだから、価格競争力で負けるはずがない。

グラフ1  モルドバおよび沿ドニエストルのガス輸入量(単位:億m3)(出所)モルドバガス社HP、ガスプロム社HP
 グラフ1は沿ドニエストルとモルトバの天然ガス輸入量である。沿ドニエストルの経済規模はモルドバの8分の1であるが、天然ガス輸入量は2倍である。火力発電所がその7割を消費しているからだ。

 この構造では、発電すればするほど、MGRESと沿ドニエストル政府は潤い、モルドバも安い電力を購入できる。その一方で、ガスプロム社の債権は膨れ上がっていく。

 2016年末時点で、ガスプロムの対「モルドバ」ガス債権は65億ドル、うち60億ドルが沿ドニエストル消費分である。この額は、モルドバGDPの1年分、沿ドニエストルGDPの8年分に相当し、もはや回収不能な水準に達している。

 逆に言えば、この構造では、輸出を止めて発電量を落とせれば、ガス債務の累積も穏やかになり、ガスプロムの負担も軽くなる。

 報道によると、事前の相対交渉でMGRESは引き下げに応じず、入札に際しても、2016年度供給価格より高値を提示、これはウクライナ側より1割高かったという。自ら負けを望んだとしか思えないような行動だ。

モルドバ再統合への道

 ここで注目されるのが、政治的な動きである。MGRES(INTER RAO社)もガスプロムもロシア国営企業であるから、入札に際して、クレムリンの意向が反映されないはずがない。

沿ドニエストル議会・政府合同庁舎とレーニン像(2012年筆者撮影)
 また、3月末の応札締切日を前に、ロシア、モルドバ、沿ドニエストル各首脳が早くも今年2度目の会合を行っていることも異例である。

2016年
12月16日 クラスノセリスキー沿ドニエストル新大統領就任
12月20日 沿ドニエストル大統領、モスクワ訪問、ラゴージン副首相と会談
12月23日 ドドン・モルドバ新大統領就任

2017年
1月5日 モルドバ・沿ドニエストル両大統領、沿ドニエストルで会談
1月17日 モルドバ大統領、モスクワ訪問、プーチン大統領と会談
3月17日 モルドバ大統領、モスクワ訪問、プーチン大統領と会談
3月21日 沿ドニエストル大統領、モスクワ訪問、ラゴージン副首相と会談
3月30日 モルドバ・沿ドニエストル両大統領、モルドバで会談

 実際、3月30日のモルドバ・沿ドニエストル両大統領会談では、この入札が議題に上った。

 一方、3月17日のモルドバ大統領との会談については、ロシア大統領府のプレスリリースには「沿ドニエストル問題について対話を活発化させた」としか書かれていない。

 しかし、モスクワで沿ドニエストル経済の命綱である電力問題が話し合われないはずはない。そもそも沿ドニエストル電力のモルドバ輸出体制を作り上げた当事者はウラジーミル・プーチン(当時、首相)とイーゴル・ドドン(当時、モルドバ第1副首相)であるから、その仕組みを熟知している。

 ウクライナDTEK社の供給能力が不足しているとの指摘があり、モルドバが必要とする全量をカバーできないのではないかという懸念があるのも事実だ。

 いずれせよ、沿ドニエストルの電力輸出は削られ、その結果として天然ガス消費量は大きく減ることになる。

 この入札劇は何を意味するのだろうか。既報のとおり、クレムリンは、モルドバにおける親ロ派大統領当選を奇貨として、沿ドニエストル問題の解決、すなわちモルドバ連邦下での再統合を推し進めている。

 再統合の動機の1つに、ロシアが負っている非承認国家維持コストの削減がある。モルドバが再統合されれば、沿ドニエストル経済の面倒はモルドバにかかることになるからだ。

 ウクライナ危機以降、ロシアは沿ドニエストル経済への関与を減らし続けており、2015年にはかつて沿ドニエストル経済の一翼を担っていた冶金工場を手放している。

 そしてその2年後に発電事業からも手を引こうとしている。今後起こる、ロシアの天然ガスを通じた沿ドニエストル「援助」の大幅縮小には、沿ドニエストル・モルドバ再統合へ向けたクレムリンの強い意志が込められている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49684

 

 


揺れる南アフリカ、マンデラの遺産を脅かす経済問題
不満の根底にアパルトヘイト当時と変わらない黒人の生活
2017.4.11(火) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年4月6日付)

公金使った南ア大統領宅改修は「違法」、護民官が費用支払い要求
南アフリカの首都プレトリアで記者会見するジェイコブ・ズマ(Jacob Zuma)大統領(2013年10月14日撮影、資料写真)。(c)AFP/ALEXANDER JOE〔AFPBB News〕
 南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領は3月末、非の打ちどころがないプラビン・ゴーダン財務相を含め、閣僚の半分を解任したとき、これで政府が「抜本的な社会・経済改革」の仕事に取り掛かれると述べ、猛烈な内閣改造を正当化した。

 ズマ氏の主張は理不尽だ。大統領の政策は――それが「政策」と呼ぶに値するのであれば――、アフリカ大陸の大部分を台無しにしてきた恩顧主義的な政策を復活させ、支持者の私腹を肥やすことだ。

 ゴーダン氏の解任は、無謀な行為だった。解任を受け、通貨ランドは13%急落し、南アのドル建て債務は米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)から「ジャンク(投機的)」に格下げされることになった。これにより輸入品が値上がりし、南ア国民の借り入れコストも上昇する。言い換えると、ズマ氏が自分が仕えていると主張する当の国民に害を及ぼすのだ。

 だが、ある意味では、ズマ氏は1つ、重要な真実にしがみついている。

 同氏が言うように、アパルトヘイト(人種隔離)政策からの解放後、23年経った今になっても、多数派の黒人が置かれた社会的、経済的状況は十分に変わっていない。経済格差を測るジニ係数(税引き前の家計所得ベース)は、白人少数派の覇権的支配下にあったころと事実上同じだ。与党アフリカ民族会議(ANC)に投票する人の大半は、仕事に就いていない。若年失業率は50%を上回っている。

 ズマ氏の発言は――不誠実だとはいえ――、同氏よりはるかに信頼できる人物の考えと重なる。ANCの元議長(党首)で、1981年にアパルトヘイト後のジレンマを予見してみせたオリバー・タンボ氏その人だ。アパルトヘイトからの解放は、経済的解放がなければ無意味だと同氏は言った。「既存の経済的勢力が利益をそのまま保持するのを許すことは、人種差別的な優位と搾取の根を育むことであり、解放の影にさえならない」。

 タンボ氏の警告には、先見の明があった。ANCは実際、南アの経済的利益をそのまま残した。ネルソン・マンデラがまとめたグランド・バーゲン(包括取引)は、もし黒人に選挙権が認められたら、黒人は計画を邪魔しない、というものだった。問題は、その計画は多数派の黒人が人種差別的な法律に縛られ、意図的に貧しくさせられていたときに立てられたことだった。

 南アが1994年に白人独裁体制から多民族の民主主義体制へ移行したとき、新たな指導者たちは2つの経済を引き継いだ。1つは白人の豊かな経済、もう1つは黒人の貧しい経済だ。南アの民主主義がやり残した大きな仕事は、どうにかしてこの差を埋めることだ。

 だが、一体どうすれば埋められるのか。日本や韓国、シンガポールなど、一握りの「奇跡」のアジア経済国を別にすると、短期間で貧困から富へ移行した国はほとんど存在しない。南アが豊かで平等な社会に少しでも近づくためには、30年間にわたる年間10%の成長――および再分配――が必要になる。

 ANCはほんのわずかでも、そこに近づくことができなかった。好況期でさえ、1人当たりの経済成長率が年間3%を超えることはめったにない。昨年は現に、経済が縮小した。

 急進的な再分配を否定したANCは、漸進主義的な政策を追求した。

 まず、現在副大統領を務めるシリル・ラマポーザ氏が代表的な受益者にあたるような権限付与計画を通じて、少数の黒人エリート層を生み出した。次に、税収を再分配した。現在、1700万人の南ア国民が社会給付金を受給している。このセーフティーネット(安全網)はよく、ANCの大きな功績として称賛される。

 だが、それはANCの大失敗でもある。なぜ1700万人もの人が、生計を立てるのに給付金に頼らねばならないのか?

 こうした展開において、財務省は確かに――ズマ氏が言うように――おおむね保守的な役割を果たしてきた。同省の仕事は、財政責任を確保することだった。これは、過度な再分配主義的政策や無謀な支出を確実に抑制することを意味した。

 ANCは、どうしようもない手札を引き継いだ。マンデラの取引は、まだ大部分において疎外されている多数派黒人の間で大きな不満を生んだ。それがジュリアス・マレマ氏のような人物にとって肥沃な土壌を生み出した。マレマ氏は、ANCから分派した政党「経済的解放の闘士(EFE)」を率いる扇動家で、急進的な再分配を唱え、白人の特権を攻撃している人物だ。

 また、最近もあったように、ズマ氏が「すべての南ア国民、特に貧しい人々に有利になる、構造、制度、機構、所有パターン、経済の管理・統制の根本的な変化」を求める際のレトリックも、黒人の抱く不満で説明がつく。

 南アにとっての悲劇は、一体どうすればそのような劇的な変化が実現し得るのか分からないことだ。少なくとも、受け入れられる時間軸では無理に思える。ラマポーザ氏のようなテクノクラート(実務家)もマレマ氏のような急進勢力も、貧しい黒人経済から豊かな黒人経済を魔法のように作り出すことはできない。

 もし公平性がゴールなのだとすれば、唯一あり得る方法は、裕福な白人を貧しくすることだ。そして、その道を進んだ先にあるのは、ジンバブエだ。

By David Pilling
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49690


http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/896.html

[戦争b20] ジャーナリストが命がけで伝えたシリアの地獄絵図 レイプ、拷問 人口2240万人で難民500万人超 これが“内戦”の実態だ
ジャーナリストが命がけで伝えたシリアの地獄絵図
HONZ特選本『シリアからの叫び』
2017.4.11(火) HONZ
本当に読むに値する「おすすめ本」を紹介する書評サイト「HONZ」から選りすぐりの記事をお届けします。
シリア反体制派支配下の刑務所に空爆、16人死亡
シリア北西部イドリブで、空爆が原因とされる火災の消火活動にあたる民間防衛隊「ホワイト・ヘルメット」のメンバー(2017年3月24日撮影、資料写真)。(c)AFP/Omar haj kadour〔AFPBB News〕
(文:冬木 糸一)

シリアからの叫び (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズII-15)
作者:ジャニーン・ディ・ジョヴァンニ翻訳:古屋美登里
出版社:亜紀書房
発売日:2017-03-04
シリアの国情は長い期間にわたって荒れ狂っている。

ことの発端は2011年。2010年に起こったアラブの春を端緒として過激化した反政府運動と、それに対抗するアサド大統領に率いられた政府軍によって内戦が勃発。ジリジリと進まない市街戦、非人道的で歯止めのかからない拷問、市民へのレイプ被害など無数の事態により状況は泥沼化していく。

国連難民高等弁務官事務所によるとシリアからの難民は500万人を超えたという。外務省のデータによると2012年のシリア人口は2240万人だから、尋常な数ではない。

いったい、シリアで何が起こっているのか。そもそもなぜこのような戦争が起きてしまったのか。そこで暮らす人々は何を考えているのか。本書『シリアからの叫び』はそうした疑問に答えるべく、政府軍、反体制側といった立場を問わず、シリアの人々に対して寄り添うようにして行われた取材をまとめた渾身のルポタージュである。ジャーナリストだけ数えても94人もの犠牲者が出ているシリアなので、ただでさえ命がけの取材内容を、見事な筆致で描き出していく。

レイプ、拷問

本コラムはHONZの提供記事です
事実上の戦争が起こっているわけだから、シリアで起こっていることは何もかもが問題といえるのだが、とりわけ深刻にみえるのがレイプ/拷問による市民への被害である。シリア国連調査委員会のレポートによれば、シリア難民たちは脱出理由のひとつに誘拐やレイプ、拷問の危険性が高まったことをあげているが、著者が調査を行った2012年頃から日常的に行われていたようだ。

本書にもレイプ被害にあった犠牲者の生々しい声が集められている。レイプは被害者からしてみればただでさえ最悪の事態だが、結婚するまでヴァージンであることが求められるイスラム教の女性にとってはより深刻な結果をもたらす。レイプ被害を受けることで結婚ができなくなり、社会から孤立せざるをえなくなるなど、精神的な被害がより重体化するケースがあるからだ。

政府軍による(反体制側も拷問を行っているという証言もある)拷問の内容も衝撃的。一人の男性の証言によると、家に押しかけてきたアサドの軍隊員によって銃撃され、拷問を行う病院へと連行される。死体置き場へと放り投げられ、毎晩拷問が終わるとそこへ戻されることになる。

拷問では好き放題に殴られ、逆さにつるされ、外科用のメスで腹を開き腸を切られ、乳首の下から背中の中央まで届く穴を開け吸引チューブで肺に穴を開けるなど、とても現実とは思えない過酷な拷問が行われていたケースが無数に浮かび上がってくる(ちなみにこの証言者は、医師が偽の死亡診断書を書いてくれたことにより脱出し、ぎりぎり生きながらえることができた。)。

一センチ一センチ進んでいく

取材は市街戦が起こっている街の政府軍や、市井の人々に対しても行われている。特に市街戦においては、政府軍も反政府軍も、もちろん市民も疲弊しつくしている様が描き出されていく。

市街戦では戦況が膠着しがちであり、スナイパーが一日中銃弾を応酬しあい、建物を一軒一軒、道路を一本一本じりじりと制圧する/される苦しい戦いが続く。極度に長い時間死が隣にある日々。『「ひとつの建物を占拠するには何時間も、何日もかかるんだ」リファフは低い声で呟いた。「こんなふうに戦いは進むんだ。こっちが一センチ進むと、あっちは一センチ下がる。あっちが一センチ進むと、こっちは一センチ下がる」』とは政府軍側の兵士の弁だ。

こうした市街戦が起こっているすぐ近くで、戦時シフト(デスクやコンピュータが人数にたいして足りないので、半日だけ行われる勤務や授業)で働いて、スナイパーがひそむ街で子供を育て、買い物に出かけ、学校を開き、なんとかして日常を成立させようとする人たちもいる。

“「でもわたしのような中立の者もいるから、なんとか仲良くやっていけるのよ。みんなうんざりしてるから近所づきあいはいいの。あなたはホムスが戦場だと聞いているでしょう。でも、爆弾と暮らすことを学んでいる人たちがいるってこと、知らないでしょ」”

Twitterなどで発信できる時代だが、こうした"戦場"とみなされている場所で営まれているそのリアルな実情は、著者のようなジャーナリストがいなければなかなか表に出てこないものだろう。

これが“内戦”の実態だ

本書でシリアの人々の実態を知ったからといって、我々にできることは多くはない。

とはいえ、どれほど容易く破壊的な争いに陥ってしまい、元の生活に戻るのがいかに困難なのか。非人道的な拷問やレイプが当然のものになってしまう過程、そこでいったいどれだけの不幸が起こるのかという、“内戦”──その実態を、本書は心底まで実感させてくれる。声なき人に声を与える、ジャーナリズムの仕事のひとつの見事な達成の成果がここにある。

HONZメンバーであるアーヤ藍が配給に携わったシリア映画はこちら。


◎こちらもおすすめ!
・まいったかっ!大阪にはこんなおもろい大学あるんやぞ『教えて! 学長先生-近大学長「常識破りの大学解体新書」』
・凝集と拡散のせめぎ合い──『宇宙に「終わり」はあるのか 最新宇宙論が描く、誕生から「10の100乗年」後まで』
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・酒、悪態、怠惰、ストレスを肯定する──『悪癖の科学 その隠れた効用をめぐる実験』
・『そして、暮らしは共同体になる。』「ゆるゆる」という新スタンダード
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49680
http://www.asyura2.com/17/warb20/msg/124.html

[政治・選挙・NHK223] 出来の悪い大臣が多すぎないか 人口8808万働き手4割減、成長阻害 生産性向上が急務 賃金の上がり方弱い=黒田日銀総裁 
出来の悪い大臣が多すぎないか
稲田、今村、金田・・・この人たちで大丈夫?
2017.4.11(火) 筆坂 秀世
尖閣は日米安保の適用範囲、マティス米国防長官
ジェームズ・マティス米国防長官と会談した稲田朋美防衛相(右)(2017年2月4日撮影)。(c)AFP/FRANCK ROBICHON〔AFPBB News〕
 安倍内閣は依然として高い支持率を誇っている。これに対抗すべき野党第一党の民進党は、長島昭久衆議院議員が共産党との共闘路線に異論を唱え、ついに離党届を提出した。東京都議会でも民進党議員の離反が相次いでいる。自民党に対抗するどころではないというのが現状だ。

 そのことも遠因になっているのかも知れないが、最近、出来の悪い大臣が目立ちすぎる。もっと強い野党が存在していたなら、首が飛んだであろう大臣も何人かいる。

稲田氏に防衛相は務まるのか

 森友学園問題で虚偽答弁を行い、訂正と謝罪を繰り返したのが稲田朋美防衛相だった。そして稲田大臣に関して森友学園問題以上に深刻なのが陸上自衛隊の日報隠し問題だ。

 PKO活動として南スーダンに派遣された陸上自衛隊は、「南スーダン派遣施設隊 日々報告」という日報を作成していた。ここには「戦闘」という言葉が再三使われていた。例えば昨年7月11日には、「ジュバ市内の戦闘に関する状況」には、「戦闘が生起」と明確に書かれており、翌12日には、「UN(国連)施設近辺で偶発的に戦闘が生起する可能性があり、流れ弾には注意が必要である」と記録されていた。

 これは現地に派遣された自衛隊員が、いかに危険な場所で任務を遂行しているかを示すものだ。

 ところが2016年10月に日報の開示請求がなされたのに対し、防衛省は「日報を作成する現地部隊と報告先の国内の司令部を中心に文書を探したが、破棄されたことを確認した」として、同年12月に不開示の決定をしていた。これに対して自民党の河野太郎衆院議員が、再調査を求めたことで事態が動き出し、12月26日、日報の電子データが残っていたことが判明した。

 だが電子データの存在が稲田防衛相に報告されたのは、約1カ月後の2017年1月27日である。防衛相があまりにもないがしろにされているとしか言いようがない。軽く見られているということだ。

 なお、稲田氏は2月の段階でも、野党から説明を求められて「(日報は)随時発生し、短期に目的を終える文書として、紙・電子媒体を問わず廃棄した」と言い張っていた(陸自では「随時発生し、短期に目的を終えるもの」は例外的に1年未満でも廃棄できるとされている)。

 その後、結局、稲田氏は5年前の派遣開始以来すべて電子データとして保管していることを明らかにした。しかし、一連の対応で稲田氏の信用は地に堕ちたと言ってよい。自衛隊がPKO活動として海外派遣されるというのは、重要な任務である。災害派遣などもそうだ。その日報というのは、自衛隊員がいかに危険な環境の下で活動しているのかを示すものであり、今後の派遣活動にも生かされるべきものである。国民の知る権利ということもあるが、自衛隊自身にとっても、「短期で目的を終えるものとして廃棄する」ということは、あり得ないし、あってはならない。稲田氏はそれを理解しているのだろうか。

 さらに「戦闘」という言葉を巡っても、とんでもない答弁をしている。

 稲田氏2月8日の国会答弁で、「事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」と発言してしまった。さらには、「人を殺し、ものを破壊する行為はあった」が、「客観的な事実としては、国際的な武力紛争の一環としては行われていなかった」などという答弁も繰り返した。「国際的な武力紛争」はなかったのは当然のことである。もともと内戦状態が続いていたのだ。ここでも、ごまかし答弁をしているということだ。

 “隠すより現る”という言葉がある。「何事も隠そうとすればするほど、かえって知れわたってしまう」という意味だ。陸上自衛隊が日報を隠したのも、稲田氏が「戦闘」を「武力衝突」と言い換えたのも、根底にあるのは「戦闘」を知られたくないという発想である。しかし、隠そうとすればするほど真実が露呈し、結局は強い非難を浴びることになる。

 北朝鮮情勢が緊迫している今、この大臣では不安が募るばかりである。

今村復興相の「自己責任」発言

 今村雅弘復興担当相が福島原発事故での自主避難者に対して、どうするかは「自己責任」と言い放ち、「裁判でも何でもやればいい」と発言して、発言の撤回と謝罪に追い込まれた。一部の報道では、この質問をしたフリージャーナリストのしつこさを批判するものもあるが、それは問題の本質をそらすものだ。

 誰一人として、避難したくてしているわけではない。やむを得ず故郷を離れ避難しているのだ。福島第一原発の事故さえなければ、苦難の道を歩む必要ななかったのだ。

「子ども・被災者支援法」という法律がある。その第二条2項には、「被災者生活支援等施策は、被災者一人一人が第八条第一項の支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない」とある。

 この法律に照らしても「自己責任」などということはあり得ないのである。

金田勝年法相は大丈夫なのか

 すでにテロ等準備罪に関する法案が国会に提出されているが、法案そのものだけではなく、金田勝年法相に十分な答弁ができるかにも注目が集まっている。

「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案に関して、金田法相は、法務省に作成させた「国会提出後に審議すべきだ」とする文書を報道機関に公表し、わずか1日で撤回した。要するに、国会でまともに答弁できないので、法案提出前には質問しないでくれということだ。野党が怒ったのも無理はない。

 法案提出前の国会での議論では、以下のようなやり取りがあった。

・民進党の福山哲郎参院議員がハイジャック目的のテロの処罰について質問。

・金田法相は「相当数の凶器や乗客の拘束具など必要な装備を持って空港に向かうなどしなければ、(処罰は)難しいことがあると考えられている」「現行法では処罰できない」と述べた。

・これに対して民進党の福山議員は、刑法解説書に、現行のハイジャック防止法で「予備」に当たる行為として「航空券をハイジャックなどの目的で購入すること」が挙げられていることを指摘。「予備罪が適用され、(チケット購入も現行のハイジャック防止法で)検挙可能だ」と追及した。

・だが、金田法相は「裁判例に従えば、ハイジャック目的での航空券予約でも、予備にあたらない事例もある」「テロ行為未然防止のためには、テロ等準備罪を設けて対処することが必要」と答弁。

・続いて福山議員が、テロ組織が殺傷力の高い化学薬品による大量殺人を計画し薬品の原料の一部を入手した場合についても「現行法で対応できない犯罪」としていることに対して、『警察学論集』の記述を紹介し「予備罪で対応できる」と追及。

・これに対して金田法相は、「単に化学薬品の原料の一部を入手する行為は、裁判例をみると、組織的殺人の予備に当たるとは言いがたい場合もあると考えている」と答弁。

・福山議員が「具体的な判例を挙げていただけますか」と質すと、「ご指摘の点は直接の判例はありません」としてすぐに訂正した。

 こんなあやふやな答弁で、これから先、テロ等準備罪の審議を十分にこなせるのか心配になる。

 これだけではない。文部科学省で組織的に天下りのあっせんが行われていたことが発覚し、事務次官が引責辞任をした。この場合も野党が強ければ、文科相の辞任という事態も招いたかも知れない。

 森友問題での財務省理財局の交渉経過文書の廃棄もそうだ。麻生太郎財務相は、理財局の説明通りに「適正に処理した」などとのうのうと答弁しているが、一切の交渉文書を廃棄したということは、適正に処理したか否かも証明されないということだ。ずっとグレーなのである。

 弱い野党しか存在しない中で、政府・与党が緊張感を無くすと必ずそのツケが回ってくることを自覚してもらいたい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49694

 

Business | 2017年 04月 11日 10:59 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

人手不足の割に賃金の上がり方弱い=黒田日銀総裁

[東京 11日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は11日午前の参院財政金融委員会に出席し、「人手不足の割に賃金の上がり方がやや弱い」との見方を示した。民進党の藤末健三委員への答弁。

ほぼ完全雇用の状態にありながら、物価上昇が弱い背景について、黒田総裁は「長期のデフレで人々のデフレマインドの転換に時間がかかり、労使も賃金より雇用を重視していること」や、「労使交渉で前年度の物価実績を勘案して賃金を決める労使慣行」などを列挙した。

今後の物価について「需給ギャップ改善、エネルギー価格による物価押し上げ、実際の物価が上がることによる人々の予想物価上昇率の上昇により、物価は目標の2%に向けて上昇していく」との従来見解を繰り返した。

http://jp.reuters.com/article/kuroda-upperhousefincommittee-idJPKBN17D06C

 


人口、50年後に8808万人 厚労省推計、働き手4割減
2017/4/11 1:31
日本経済新聞 電子版
 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は10日、長期的な日本の人口を予測した「将来推計人口」を公表した。1人の女性が生む子供の数が今と変わらない場合、人口は2053年に1億人を割り、65年には15年比3割減の8808万人になる。働き手の世代は4割減とさらに大きく減る見通しだ。政府が経済成長に必要とする1億人を保つのは難しく、政策は大きな見直しを迫られる。(関連記事3面に)
 将来推計人口は国勢調…
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO15146340R10C17A4MM8000/


50年後の人口8808万人 厚労省、出生率は上方修正
2017/4/10 15:03
 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は10日、長期的な日本の人口を予測する「将来推計人口」を公表した。2065年の人口は15年比3割減の8808万人と試算した。近年の30〜40歳代の出生率の改善を受け、5年前の前回推計から合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むとされる子どもの人数)の仮定を上方修正。人口減少のペースが緩やかになる見通しを示した。
 厚労省が同日の社会保障審議会人口部会で報告した。将来推計人口は国勢調査の結果を基に5年に1度改定している。
 15年の総人口は1億2709万人で、53年には1億人を割り込み9924万人に減る。15〜64歳の生産年齢人口の割合は足元の60.8%(7728万人)から50年後には51.4%(4529万人)に低下。逆に65歳以上の高齢者の割合は26.6%(3387万人)から38.4%(3381万人)に上昇する。
 一方で近年の30〜40歳代の出生率の実績が前回推計より上昇していることを踏まえ、長期の出生率を1.35から1.44に修正した。65年の人口は前回推計より672万人増え、1億人を下回る時期も5年遅れるとした。
 それでも少子高齢化の傾向は変わらない。50年後に現役世代1.2人で高齢者1人を支える構図は前回推計と同じ。社会保障制度の持続可能性が問われることになりそうだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF10H0I_Q7A410C1000000/

働き手不足、成長阻害 生産性向上が急務
2017/4/11 1:41
日本経済新聞 電子版
 国立社会保障・人口問題研究所が10日発表した「日本の将来推計人口」では、世界でも類を見ない高齢国家への道を歩んでいることが改めて浮き彫りとなった。5年前の推計より少子高齢化のペースは緩和する見込みだが、主要な働き手である生産年齢人口が大幅に減る基調は変わらない。少子化対策や社会保障制度の改革、生産性向上策など思い切った手を打たなければ、活力ある未来は展望できない。

http://www.nikkei.com/content/pic/20170411/96958A9E889DE3E7E3E6E4E2EBE2E3E3E2E6E0E2E3E59793E0E2E2E2-DSXMZO1514272011042017EA2001-PB1-7.jpg

 今回は2065年まで50年分の推計とその毎年分の結果を公表した。
 働き手の減少は深刻だ。15〜64歳の生産年齢人口は65年に15年比で4割減る。40年時点でも5978万人と今より2割以上減る見通しだ。足元で生産年齢人口は年間50万人を超えるペースで減っているが、推計をみると、より間近な20年にかけても300万人と大幅に減少する見通しだ。
 すでに建設や運輸、介護などの有効求人倍率が3倍を超えている。このまま人口減の基調が続けば、多くの人手を要する産業は立ち行かなくなる。抜本的な生産性の向上や技術革新は急務だ。
 介護ではIT(情報技術)の活用や介護ロボットの導入が進むが、高齢化の進展によって増える需要に労働力が追いつくメドはたっていない。運輸では宅配便の時間帯指定サービスの一部廃止など業務の見直しを急ぐが、配達個数が減らなければ、現在の人手で一定のサービス水準を維持するのは難しい。
 働き手の減少による日本経済全体へのインパクトも大きい。内閣府の14年の試算によると、現状のペースで人口が減り、生産性も改善しない場合、40年代以降はマイナス成長が定着する。逆に40年代以降の実質経済成長率を1.5〜2%に保つには、1億人の人口を維持し、生産性を世界トップレベルに引き上げねばならない。

http://www.nikkei.com/content/pic/20170411/96958A9E889DE3E7E3E6E4E2EBE2E3E3E2E6E0E2E3E59793E0E2E2E2-DSXMZO1514274011042017EA2001-PB1-7.jpg

 日本生産性本部によると、15年の日本の労働生産性(購買力平価換算)は7万4315ドル(約825万円)。主要7カ国(G7)の中で最も低い。G7でトップの米国に追いつくには日本の生産性を1.6倍に高める必要がある。特に低迷するサービス業のテコ入れが欠かせない。
 即効性のある処方箋は多くないが、女性が働いて家計の経済力を維持しながら、子育てできる環境を急ぎ整える必要がある。共働き世帯が増えれば、出生率が上昇し、働き手も拡大する可能性が高まる。
 自民党内には、保育や幼児教育を無償化するために、国民や企業から保険料を徴収する「こども保険」の構想が持ち上がる。構想の実現可能性は定かではないが、女性の労働参加を拡大するためにも、若い人に子供を持っても大丈夫と思わせる大胆な策が必要になる。
 女性だけでなく一人でも多くの人に職に就いてもらう対策も欠かせない。高齢者の就労を増やす定年引き上げや、配偶者控除の見直しによる働く主婦層の増加などは避けて通れない課題だ。時間や場所にとらわれずに働いて成果を出せる人も増やす余地がある。人口減が進む中、働き手一人ひとりの生産性を高め、国や企業の成長力強化につなげる必要がある。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO15146090R10C17A4EA2000/


http://www.asyura2.com/17/senkyo223/msg/840.html

[経世済民120] FRB議長「米経済かなり状態良い」利上げに意欲  株下放れへ トランプラリーまだ終わらない アマゾン雇用拡大3万人超採用

FRB議長「米経済かなり状態良い」 利上げに意欲
2017/4/11 10:18
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 【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は10日、米ミシガン大での講演で「米経済はかなり良い状態だ。利上げを長く待ちすぎたくはない」と述べ、早期の金融引き締めに意欲をみせた。3月の米雇用統計は就業者の伸びが急減したが、イエレン氏は「失業率が4.5%まで改善し、完全雇用とみる水準を下回っている」と述べ、労働市場の堅調ぶりを強調した。

 FRBは年内2回の追加利上げを想定しているが、3月の雇用統計は就業者の伸びが10万人を切り、事前予測を大きく下回った。市場は利上げシナリオへの影響を注視してきたが、イエレン氏は従来通り「緩やかな利上げが適切だ」と主張。利上げ時期についても「長く待ちすぎたくはない」と述べ、早期の追加引き締めに意欲をみせた。

 3月の雇用統計では、失業率が約10年ぶりの水準となる4.5%まで低下した。イエレン氏は「我々が完全雇用とみる水準をわずかに下回っている」と指摘。労働者の需給が引き締まって人材を大量に雇い入れにくくなったことが、就業者の伸びを抑えているとの見方をにじませた。物価上昇率も目標の2%に達しつつあると強調した。

 FRBは3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、過去の量的緩和で買い入れた保有資産の再投資を年内にも停止し、バランスシートの縮小に転じる考えを表明している。イエレン氏は「金融政策のスタンスは正常化に近づいている」と述べ、長期国債などの資産圧縮を検討していることを改めて強調した。

 先物市場では6月の利上げを見込む確率が6割を超える。6月、9月と2回の利上げに踏み切った後、12月に保有資産の縮小を開始するとの観測が強まっている。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM11H0O_R10C17A4EAF000/

 


株、「もみ合い離れは相場につけ」 地政学リスクで下放れへ
2017/4/11 12:33日本経済新聞 電子版
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 11日午前の東京株式市場で日経平均株価は前日比89円(0.48%)安の1万8708円と反落した。年初から続く日本株のボックス相場は、北朝鮮や中東の地政学リスクの高まりを背景に下放れしそうだ。

■1万9000円が上値抵抗に

 日経平均は今年に入りおおむね1万8500円〜1万9500円の範囲で推移している。地政学リスクが売り圧力を高め、日経平均は3月31日以降、終値で1万9000円台を回復できない。市場…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL11H7X_R10C17A4000000/


 

Business | 2017年 04月 11日 12:13 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

GPIF、オルタナティブ投資拡大へ 運用機関を募集

[東京 11日 ロイター] - 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は11日、オルタナティブ投資の拡大に向け、新たに運用機関の募集を始めた。運用の多様化を進める中、投資体制が整ったと判断した。

GPIFによると、募集の対象はプライベート・エクイティ(PE)、インフラ、不動産の3分野。株式や債券の運用と同様、GPIFと一任契約を結んだ運用機関が投資判断を行う。

オルタナティブ投資を巡っては、2013年10月に4人の担当者を配置し、現在は専門の推進室に10人が在籍している。

GPIFの基本ポートフォリオは、オルタナティブ資産への投資上限を年金積立金全体の5%と定めているが、16年12月末時点では0.07%だった。

(梅川崇)
http://jp.reuters.com/article/gpif-pe-idJPKBN17D0A6

 


 
進化するトランプ政策、トランプラリーはまだ終わらない世界株高に日本株式も合流か
2017.4.11(火) 武者 陵司
「米国は正義のために戦う」 シリア攻撃でトランプ大統領が演説
米テキサス州パームビーチで、シリアに関する声明を読み上げるドナルド・トランプ大統領(2017年4月6日撮影)。(c)AFP/JIM WATSON〔AFPBB News〕
経済好調、政治不安との顕著なコントラストが市場低迷をもたらした

?政治面の不透明性の高まりと、明るさを増す経済環境、この両者のコントラストが現情勢の特徴である。後述する経済面での明るさとは裏腹の政治面での混迷が、ここ数週間の市場低迷(おそらくテクニカル調整)の口実になってきた。

?昨年末急伸した日本の株式市場は今年に入ってから足踏みを続けている。3月半ばまで史上最高値を更新するなど好調であった米国株式も、3月23日のオバマケア代替法案の不成立をきっかけに調整色を強めている。トランプ政権の政策実現能力に大きな疑問符がつけられたから、と取りざたされている。

?3月29日には英国が正式にEU(欧州連合)離脱を通告した。5月のフランス大統領選挙、9月のドイツ総選挙などでは欧州ポピュリストの台頭が懸念されるなど、政治面での不透明性は高い。メディアはこの政治面の不透明性にことさら焦点を当てるので、人々は悲観に流れがちになっている。

トランプ政権の進化・成長が見え始めた

?こうした中での先週末の米中会談と、米国によるシリアアサド政権の軍事基地爆撃は、トランプ政権の進化と信頼性の高まりと評価されるのではないか。

?トランプ氏は「非人道的化学兵器を使用し罪のない子供や赤ん坊を殺すような行為はレッドラインをいくつも超えている」と主張し、それまでのロシアとの連携の下でアサド政権を追認してイスラム国(IS)に対処するという戦略を、大きく転換させた。

?同時に米国第一主義を主唱し、対外関与やシリア攻撃に反対したとされるスティーブ・バノン氏が国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーから外された。また米中会談では、対北朝鮮政策で中国が協力しないなら米国の単独行動も辞さないとの意思が示された。

?トランプ政権が孤立主義的傾向を拭い去り、国際主義に回帰する画期となるのではないか。トランプ政権が一度はオバマ政権によって捨てられた世界の警察官の任に戻る意思の表れと考えられる。

?また米中会談において通商問題では、対中貿易赤字削減のための「100日計画」が決定され、中国の市場開放、不公正貿易慣行の是正などのアクションプランの策定とその検証を行う体制が作られた。これは形骸化した多国間機関に頼らず公正な通商基盤を二国間で建設しようとするもので、より効果的な自由貿易体制創設の努力とみなされるのではないか。

?トランプ政権の評価は、移民の入国制限、オバマケアの見直しなど主要な政策の挫折により、地に落ちていた。しかし、先週を底にトランプ政権の進化・成長が評価される場面に入っていくと見られる。

?当社は2月13日のストラテジーブレティン177号(「トランプ政権の本質、保護主義ではなく帝国主義〜守りではなく攻撃〜」)で、以下のように主張していた。

「(トランプ氏が目的としている) 1. 強いアメリカ、2. 安全な世界、3. 強い国内雇用を実現するためには、孤立主義や保護主義が全く逆効果であることは論を待たない。また世界で最も民主的な米国において、過激な差別主義が定着するとは思われない。トランプ政権の政策の成長進化、メディアの曲解是正により、トランプ政権の3つの負のイメージ(孤立主義・保護主義・差別主義)は急速に是正されていくはずである。」

?一旦政策実行能力が疑われたトランプ政権だが、その親ビジネス・成長重視政策が再評価される余地は大きいのではないか。相次ぎ規制緩和を打ち出したトランプ政権が、4月以降、税制改革、インフラ投資などの経済成長政策に踏み出せば、市場は再度それを好感し始めるだろう。

市場は絶好調の経済を無視できない

?他方、経済に目を向けると、米国はもとより欧州、日本、中国と軒並み大きく好転している。特に情報インターネット革命に支えられたイノベーションと生産性向上により、企業業績の向上が著しい。好業績に支えられて世界的な投資ブームが起こりそうな気配が濃厚である。

?米国ではトランプ政権によるビジネスにやさしい政策への期待が企業家心理を大きく押し上げている。中小企業景気楽観指数はリーマンショック以降88〜96で推移していたが、昨年12月以降104前後の過去最高水準へと大きくジャンプした。

?米国利上げは始まっているものの金融緩和姿勢は根強く、世界的に投資資金は潤沢かつ低金利であり、起業家のアニマルスピリットが大きく前進しているのである。

?原油価格上昇による資源・エネルギー・鉱業部門の回復に加えて、2015年から2016年にかけて停滞していたハイテク景気循環が拡大局面に入っている。ハイテク製品の在庫調整完了、プロダクトサイクルの好転、中国での半導体・液晶投資の急拡大などが背景にある。日本でも半導体製造装置受注、電子部品受注、工作機械受注などが内需・外需向けともに浮上してきた。

?この世界的景気拡大は当分続きそうである。なんといっても情報化の進展と新興国の低賃金労働によりに賃金が抑えられインフレ圧力が小さいので、金融引き締めが抑制的と考えられていることが大きい。米国では最初の利上げからリセッションに陥るまでの期間は最低3年、最長7年、平均5年であるが、現在はまだ1年余り、リセッションに陥る心配はここ数年著しく低いと考えられている。リセッションが到来しない限り株価はピークアウトしないという経験則を重ねて考えれば、今の株高トレンドの持続性は高いと見ざるを得ない。米国株式が再度史上最高値を更新するとなれば、リスクオフの円高も限定的、1ドル110円程度が円高の限界になるのではないか。

年度末の乱気流を終え株価再騰開始へ

?日本株式もそうした米国主導の世界株高に合流していくだろう。日経平均株価は円ベースでは足踏みだが、ドル建てで見ると3月末時点で昨年末来5%程度値上がりし、リーマンショック後の高値を更新し続けている。かつてのように円高になっても株価が下落しにくくなっているのは、日本企業の円高抵抗力が評価されつつある証といえる。

?年度末のテクニカル要因による乱気流が沈静化した後は、日本株式も出直っていくだろう。アベノミクスの長期上昇相場は一休止を終えて、再び騰勢を開始すると期待できるのではないか。

(*)本記事は、武者リサーチのレポート「ストラテジーブレティン」より「第179号(2017年4月10日)」を転載したものです。

(*)投資対象および銘柄の選択、売買価格などの投資にかかる最終決定は、必ずご自身の判断でなさるようにお願いします。本記事の情報に基づく損害について株式会社JBpressは一切の責任を負いません。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49688

 
アマゾンの雇用拡大策、着々と今度は3万人超のパートタイム採用へ
2017.4.11(火) 小久保 重信
ブラックフライデー、英国にも波及 アマゾン倉庫は大忙し
英ロンドン北郊ヘメル・ヘムステッドにあるインターネット小売り大手アマゾン英国法人(Amazon.co.uk)の物流倉庫で、注文商品を探すスタッフ(2015年11月25日撮影)。(c)AFP/ADRIAN DENNIS〔AFPBB News〕
米アマゾン・ドットコムは今年に入って、矢継ぎ早に大規模な雇用拡大策を発表しているが、今度は3万人を超える規模で、パートタイム従業員を新規雇用すると発表した。

福利厚生もしっかりと

海外メディアによると、同社がパートタイム従業員の雇用に関して、情報開示するのはこれが初めて。同社のワールドワイド・カスタマーサービス担当副社長のトム・ウエイランド氏は、急速に増え続ける顧客に対応するため、と説明している。

アマゾンが4月6日に公表した広報資料によると、同社は現在米国で4万人のパートタイム従業員を抱えているが、今後1年間でその数を約1.8倍に増やす。

新規雇用する約3万人のうち、2万5000人は米国の配送センターや仕分けセンターで勤務し、残りの5000人は「バーチャル・カスタマーサービス」と同社が呼ぶ、在宅で顧客対応する部門に配置されるという。

その主な業務内容は、電話のほか、電子メール、チャットでの顧客対応を行うことだと、米ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

また、これらのパートタイム従業員は週20時間以上働くことが可能で、その場合、フルタイム従業員と同様に、各種の福利厚生のほか、「キャリア・チョイス」と呼ぶ研修プログラムも受けられる。

このプログラムは、受講料の95%をアマゾンが前払いするというもので、その分野はアマゾンにおける仕事と関連のないものも選択可能。例えば、CAD(computer-aided design)、工作機械技術、看護など多岐にわたると同社は説明している。

米国で10万人超の新規フルタイム従業員

アマゾンはこれに先立つ今年1月、米国で10万人を超える規模でフルタイム従業員を雇用すると発表したが、今回の新規雇用は、この計画を拡大するものとなる。

アマゾンによると、米国におけるアマゾンの従業員数は2011年時点で3万人だった。これが昨年末には18万人と、5年で15万人増えた。さらに来年半ばには28万人を超える規模になる見通しだと、同社は説明している。

このほか同社は今年2月、英国で約5000人のフルタイム従業員を採用する計画も明らかにしている。

(参考・関連記事)「アマゾンが米・英で大規模な雇用拡大策」

全世界の従業員数、48%増の34万人に

前述のウォールストリート・ジャーナルの記事によると、アマゾンの全世界における従業員数は昨年1年間で48%増加し、34万1400人となった。

同社は有料プログラム「Amazon Prime」の会員を増やすことで、顧客の囲い込みを図っているが、そのマーケティング戦略で重要になるのは、物流施設をできるだけ多くの顧客の近くに置くことだと言われている。

ウォールストリート・ジャーナルによると、アマゾンはその戦略どおり、ここ数年間で数十に上る物流施設を新規開設してきた。これに伴って、同社の従業員数は急速に増えているという。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49697
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/834.html

[経世済民120] 借金まみれのアジア諸国、米国の利上げでリスク高まる PIMCOドル強気後退 アジア企業リターン改善 大手証券新卒採用最低
借金まみれのアジア諸国、米国の利上げでリスク高まる
Bloomberg News
2017年4月11日 12:27 JST
アジアの金融危機から20年が過ぎ、世界的な信用収縮から10年たった今、アジア諸国は借金まみれに陥っている。
  多額の負債は企業や銀行、政府、家計に広がっており、上海の鉄筋価格からシドニーの不動産価格に至るまであらゆる物価のバブルを膨張させつつある。こうした中での米連邦準備制度の利上げを受け、債務問題が再び懸念要因に浮上している。

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  中国の景気減速や商品相場の変動、為替相場のボラティリティーはリスクの一部にすぎない。S&Pグローバル・レーティングの推計によると、同社の格付け対象で2021年までに満期を迎えるアジアの社債1兆ドル(約110兆円)近くのうち、ドル建ては63%、ユーロ建ては7%となっている。

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  政府が外貨準備を積み増し、リスクヘッジも改善しており、国内債券市場の充実が新たな資金調達手段になっているため、かなりのバッファーはある。また、米国の金融引き締めでも、欧州や日本の当局が続ける大規模な金融緩和策が影響を相殺する。金利は依然として歴史的低水準にあり、リフレ政策が金利負担を押し下げている。
  それでも、借り入れペースは涙が出るほどだ。アジアは世界経済に最大の貢献をしているだけに、債務問題の後遺症は重大だ。国際通貨基金(IMF)によると、アジアの2017年と18年の成長率は5%を超え、世界成長率の約3.5%を上回る見通し。
  中国の債務総額は昨年、国内総生産(GDP)比で約258%に達した可能性が高く、2005年の158%を大きく上回る。借り入れの大部分は企業レベルのもので、ゾンビ企業と呼ばれる負債過多の国有企業が引き続き中心だ。IMFは中国に企業債務問題に緊急に対処するよう警告している。

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  韓国は数年にわたる低金利と不動産ブームに支えられた後、後遺症に見舞われている。家計債務は1344兆3000億ウォン(約130兆円)という記録的水準に達し、返済負担で消費が悪化している。韓国当局は米金融引き締めが国内の貸出金利に影響し、低所得世帯が債務不履行に陥ると懸念している。

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  韓国も経済協力開発機構(OECD)加盟国で高債務国の一角で、家計の可処分所得に対する債務の比率は2015年時点で169%と、平均の129%を上回る。
  日本は世界屈指の高債務国で、政府債務総額はGDPの2.5倍強に上る。2020年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化させる目標について、政府自身も実現できる見通しを描けていない。ただ、日本は多額の海外投資と国内資産を持つためネットベースでの債務負担は軽減される。また、社債の大部分と全ての国債が円建てで、国債の大部分は国内で保有されているため、資本の海外流出リスクは比較的低い。
原題:Fed Rate Hikes Raise Risks for Asian Nations Swimming in Debt(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-11/OO84136JIJV501

 

PIMCO:ドルへの強気な見方後退−アジア新興市場債投資を縮小
Netty Ismail、Liau Y-Sing
2017年4月11日 10:33 JST


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フラッシュクラッシュ、一斉避難で為替新参組には千載一遇のチャンス

• 市場の展開を見守るのに良い時期−スパジック氏
• オバマケア代替、「すでに4月だが何も米議会を通過していない」

米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)が、アジアの新興市場通貨との取引でドルに対する強気を後退させている。同社は今、比較的割高だとしてアジア債券投資を縮小していることを明らかにした。
  PIMCOの新興アジア担当ポートフォリオマネジメント責任者ルーク・スパジック氏(シンガポール在勤)は先週のインタビューで、「引き続きドルのロングとなる緩やかなバイアスで、一部のアジア通貨をアンダーウエートとしている。ただ、これまでは強い確信だったが、今はそれほど強い見方ではなく、主要で中核的な強い見方ではなくなった」と述べた。
  「金利や通貨、株式のバリュエーションを踏まえると、リスクの一部を抑えるとともに、一部を現金化して各市場がどのようにして展開していくのか見守るのに全く良い時期だ」とも指摘した。
  インドやインドネシアを含む新興アジア市場の債券は先週、値下がり。1−3月(第1四半期)の資金流入がここ2年余りで最大となったことで、値上がりし過ぎたとの懸念が広がった。トランプ米政権が公約としていた医療保険制度改革法(オバマケア)撤廃・代替に向けた法整備が進まず、リフレトレードを巡る思惑も後退した。
  スパジック氏は「すでに4月だが何も米議会を通過していない。意味のある法改正の多くが2018年に影響を及ぼすことになるのかもしれない」と話した。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/it9SUy95O__0/v3/-1x-1.png
原題:Pimco Tempers Bullish Dollar View, Says Asia Bonds Losing Luster(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-11/OO7ZLY6S972A01


 


PIMCO:ドルへの強気な見方後退−アジア新興市場債投資を縮小
Netty Ismail、Liau Y-Sing
2017年4月11日 10:33 JST


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  「金利や通貨、株式のバリュエーションを踏まえると、リスクの一部を抑えるとともに、一部を現金化して各市場がどのようにして展開していくのか見守るのに全く良い時期だ」とも指摘した。
  インドやインドネシアを含む新興アジア市場の債券は先週、値下がり。1−3月(第1四半期)の資金流入がここ2年余りで最大となったことで、値上がりし過ぎたとの懸念が広がった。トランプ米政権が公約としていた医療保険制度改革法(オバマケア)撤廃・代替に向けた法整備が進まず、リフレトレードを巡る思惑も後退した。
  スパジック氏は「すでに4月だが何も米議会を通過していない。意味のある法改正の多くが2018年に影響を及ぼすことになるのかもしれない」と話した。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/it9SUy95O__0/v3/-1x-1.png
原題:Pimco Tempers Bullish Dollar View, Says Asia Bonds Losing Luster(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-11/OO7ZLY6S972A01


 

 
フラッシュクラッシュ、一斉避難で為替新参組には千載一遇のチャンス
Lananh Nguyen
2017年4月11日 13:21 JST


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Signage for Toshiba Corp. is displayed atop the company's headquarters in Tokyo, Japan, on Tuesday, March 28, 2017. Toshiba Corp. projected its annual loss could more than double to a record 1.01 trillion yen ($9.1 billion) as its U.S. nuclear unitWestinghouse Electric filed for Chapter 11 bankruptcy in New York court. Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

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英バークレイズCEO、就任1年半で「最後通告」か−賞与全額返上も

相場が極端に動くときの情報蓄積が長い目でプラスに

アイザック・リーバーマン氏にとって「フラッシュクラッシュ」と呼ばれる相場急変は大チャンスだ。
  著しい相場急変が起きると、為替ディーラーの多くは立ち往生するものだが、リーバーマン氏は逆にその瞬間を捉えて利益を得ようと、軍事やテクノロジーの専門家らを集めてアストン・キャピタル・マネジメントを設立した。他社がブレーキを踏んで止まる時にギアを高速にする会社だ。

  リーバーマン氏はニューヨークの高層ビル85階にあるアストンのオフィスでインタビューに応じ、「なかなか得難いデータを得られるフラッシュクラッシュ的イベントについては非常に興奮する」と語り、「そのような事態はシミュレーションできない」と述べた。
  1日当たり5兆1000億ドル(約565兆円)が取引される外国為替市場では近年、荒々しい値動きがよく見られるようになった。2014年設立のアストンは、電子取引で為替のマーケットメークを手掛ける企業として新規参入。超が付くほど激しい相場変動の中でも顧客に値を提示し、平常時に戻る際に利益を得られると期待する。アストンの専門家らは価格パターンを分析し、相場を先読みする戦略をコンピューターで作成。大変動時のパフォーマンスを検証し、アルゴリズムを調整する。

  アストン以外にも、XTXマーケッツやシタデル・セキュリティーズ、バーチュ・ファイナンシャルなどが、08年の金融危機後の規制強化を受けた為替ディーリング会社の撤退・縮小によって市場に開いた穴を埋めている。

  大変動の新たな時代は15年に幕を開けた。同年1月、スイス・フランはスイス国立銀行(中央銀行)が上限を突然撤廃したことで、20分で約41%も値上がりした。直近の例では、昨年12月にユーロがアジア取引時間中に数分で1.6%上昇。同年10月には、ほんの数秒で英ポンドが約9%下落した。南ア・ランドやニュージーランド・ドルも同様に乱高下した。リーバーマン氏によれば、アストンはこのポンド急落時に90秒間で5億ドル相当取引した。

  トレーダーは相場急変にうまく対応できなければ大やけどする。JPモルガン・チェースをやめて自己資金でアストンを設立したときのリーバーマン氏の課題は、リスクテーク意欲のあるチームをつくることだった。ニューヨークではエンジニアや数学者の獲得競争が厳しく、同氏はユダヤ教会を通じて、テクノロジーに詳しくイスラエル国防軍の情報組織8200部隊で陸軍少佐を務めた経歴を持つ人物の助けを得ると、テルアビブでチームを採用した。軍事やテクノロジーに詳しくても、金融市場の知識をほとんど持たない社員にはホワイトボードを使って為替売買について教育しながら、相場急変時に利益を得るためのソフトウエアを作り始めた。

  フラッシュクラッシュ時に「理解したいのは、どれが最も見つけにくいが最も時宜を得たトレーディングになるかだ」とリーバーマン氏は話し、「どこかの時点で、フラッシュクラッシュは止まり、価格は適正値に向けて戻り始める」と付け加えた。

  アストンは1日当たり平均して10億−20億ドルを取引する。昨年は11月末まででリターンがプラス22%超だったと、パフォーマンス報告書で明らかにしている。
  市場参加者の多くにとって、フラッシュクラッシュが起きるときは安全策を講じるときだ。ヘッジファンドのファースト・クアドラントのパートナー、ドリ・レバノニ氏はポートフォリオ運用者やトレーダーらは市場の状況が好転するまでは売り買いの注文を出さずに立ち止まると話す。
  だが、リーバーマン氏にとって、その同じ瞬間が行動への時となる。「全体を理解できるように、何が起きたかの断片を集めてストーリーにしようとしている」と同氏は話した。
原題:Flash-Crash Trader Jumps Into Currency Market When Others Flee(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-11/OO87DA6JIJUQ01

 

日本などアジア企業の株主リターン、統治改善で向上へ−ゴールドマン
Kyunghee Park
2017年4月11日 16:46 JST
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日本では企業統治改革後に株主リターン76%上昇
中国、韓国、日本株が最も改革の恩恵大きい
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コーポレートガバナンス(企業統治)の改善によってアジア企業の株主リターンは大きく高まる可能性がある。特に中国、日本、韓国企業に向上余地が大きいと、ゴールドマン・サックス・グループが指摘した。
  企業統治の改革が進めば高成長のアジアへの投資でリスクが低下すると、ガブリエル・ウィルソンオットー氏らゴールドマンのアナリストが11日のリポートで分析した。改革によって価値を高めることができる企業として、日本の三井住友フィナンシャルグループ、韓国の現代自動車とサムスン電子、中国の宝山鋼鉄を挙げた。
  2007年以降に明らかになった環境問題や社会的、あるいは企業統治の不祥事14件についてゴールドマンが分析したところ、スキャンダルに見舞われた企業は問題発覚後の2週間に平均で、セクター全体のパフォーマンスを25%下回った。取締役会を多様化する日本の取り組みや中国の国有企業改革の動きは改革の必要性が認識されていることを示すが、一段の行動が必要だとしている。
  アナリストらは「こうしたトレンドの継続はアジアでの企業統治絡みの『テールリスク』事件による価値破壊の危険性を低下させることにつながり得る」とし、改革は「企業の再編やより効率的な資本構造を通じて、閉じ込められている株主価値を解き放つ可能性がある」と記述した。
  日本では14、15年のスチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの導入が、株主リターンの76%向上につながったとゴールドマンは指摘している。
原題:Goldman Sees Potential Stock Boost From Company Reform in Asia(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-11/OO8H9I6JTSEG01


日本株は3日ぶり反落、地政学リスクと円高警戒−景気敏感や金融に売り
(記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい)
  東京株式相場は3営業日ぶりに反落。地政学リスクへの警戒が根強い中、為替のドル安・円高推移が嫌気され、電機や機械など輸出株の一角、石油や鉱業、海運株など景気敏感セクター中心に安い。米長期金利の上昇力の鈍さを背景に銀行株も軟調。
  TOPIXの終値は4.55ポイント(0.3%)安の1495.10、日経平均株価は50円1銭(0.3%)安の1万8747円87銭。
  アセットマネジメントOne・調査グループの清水毅ストラテジストは「トランプ米政権はオバマ政権と違って明らかに対外的に強い姿勢を見せており、シリア・北朝鮮問題で不確実性やテールリスクを感じている」と言う。日米経済対話や米為替報告書、仏大統領選など「当面控えるイベントでサプライズがあれば、円高リスクにつながる」とし、「為替からデカップリングできるほど日本株のセンチメントは強くない」との見方を示した。
  東証1部33業種は海運、石油・石炭製品、機械、電機、金属製品、証券・商品先物取引、鉱業、銀行、その他金融など23業種が下落。不動産や保険、陸運、小売、食料品など10業種は上昇。銀行など金融セクターの一角は米金利の低下、10日の米S&P500種株価指数の業種別11指数で金融が下落率2位だった影響を受けた。
  売買代金上位では3回目の決算発表期限をきょう迎えた東芝、ゴールドマン・サックス証券が投資判断を下げたGMOペイメントゲートウェイ、今期の営業利益計画が市場予想を下回ったJ.フロントリテイリングが安い。JR九州やリクルートホールディングス、ミネベアミツミ、スタートトゥデイも売られた。半面、石川製作所や三井不動産、ケネディクスは高い。
東証1部の売買高は16億9117万株、売買代金は1兆8635億円、代金は3月15日以来、ほぼ1カ月ぶりの低水準
値上がり銘柄数は504、値下がりは1384

●長期金利3カ月ぶり低水準、地政学リスクで買い−物価連動入札は順調

  
  債券相場は上昇。長期金利は約3カ月ぶり低水準を付けた。米国のシリア攻撃を発端とした地政学的リスクが高まる中、安全資産としての国債に買い圧力がかかった。
  長期国債先物市場で中心限月6月物は前日比8銭高の150円64銭で取引を開始。午後には一時150円70銭と、中心限月ベースで3月8日以来の水準まで上昇。結局は12銭高の150円68銭で引けた。
  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の346回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値から0.5ベーシスポイント(bp)低下の0.04%と、1月18日以来の水準まで買われた。20年物160回債利回りは1bp低下の0.61%と、新発債として1月以来の低水準。新発30年物54回債利回りは1.5bp低い0.83%まで下げた。
  岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは「海外の状況は緊張がやや高まっている感があり、安全資産需要という意味では国債は買われて当然」と指摘。一方で「どんどん積極的に買うような利回り水準でもないので、投資家の動きは鈍い。内外で不透明要因が多過ぎて、市場全体が膠着(こうちゃく)している」と言う。
  財務省が実施した10年物価連動国債入札の結果は、最低落札価格が105円00銭と、市場予想の104円80銭を上回った。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.64倍と、前回の2.61倍から上昇した。

●円が上昇、シリアや北朝鮮めぐる地政学リスク警戒

  東京外国為替市場では円が上昇。米国によるシリアや北朝鮮への対応をめぐる地政学リスクへの警戒感から円買い優勢の展開が続いた。
  円は主要16通貨に対して全面高となり、対ユーロでは一時116円88銭と昨年11月以来の水準まで円高が進んでいる。ドル・円相場も1ドル=110円台後半から一時110円46銭と2営業日ぶりの水準までドル売り・円買いが進行した。午後4時20分現在は110円54銭前後で取引されている。
  三井住友信託銀行マーケット金融ビジネスユニット為替セールスチームの西田朋広主任調査役は、北朝鮮やシリア情勢、仏大統領選といった不透明感から消去法的に円が買われやすいと説明。ドル・円については「基本的に押し目買いスタンスの人も、110円割れリスクには注意が必要」と話した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-11/OO8IJP6S972A01
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/842.html

[政治・選挙・NHK223] 強い米国がいよいよ始動、北朝鮮問題にも着手 もはや惰眠を貪ることができなくなった日本は何をすべきか 非核三原則の廃止 
強い米国がいよいよ始動、北朝鮮問題にも着手
もはや惰眠を貪ることができなくなった日本は何をすべきか
2017.4.11(火) 用田 和仁
米大統領、アサド政権は「多くの線越えた」 攻撃死者86人に
米ホワイトハウスでヨルダンのアブドラ・イブン・フセイン国王(奥)との共同記者会見に臨むドナルド・トランプ大統領(2017年4月5日撮影)〔AFPBB News〕
1 いまだ鳴りやまないトランプ大統領への誹謗・中傷

 米国のマスコミの大半を敵に回したことにより、米国のマスコミの反乱は鎮まることなく、ますます声高にトランプ政権の粗探しに邁進しているようだ。

 日本のマスコミも米国の大手マスコミの意見に同調して、トランプ大統領の粗探しと非難に明け暮れているように見受けられる。しかし、その変化は、トランプ大統領一人による変化ではなく、世界を巻き込む大きな変革の潮流の変化ととらえるべきであろう。

 それは端的に言うと、グローバリズムと言われたものがその真の姿を隠しながら、一部の者だけが勝者となる危険性をはらみ、国家というものが衰弱し、国民の多くが貧乏になってきていることに気づき始めたということであろう。

 中国がグローバリズムの旗手だと言われても、大きな違和感がある。英国のEU離脱がまるでアクシデントのように言われ、EUにとどまることが正義のように報道されているが、EUこそ国家としての経済施策を奪い去り、国家を疲弊させた元凶でもあることは全く報道されない。

 また、EUはNATO(北大西洋条約機構)あってこその経済同盟であり、トランプ大統領が指摘しているように、核兵器を除き全くヨーロッパを席巻する軍事力を失ったロシアを敵と言わざるを得ないNATOは時代遅れである。

 それでも米国にとってNATOはかけがえのないヨーロッパにおける米国の覇権の象徴であり、ヨーロッパの国々の軍事予算の倍増により、NATO自らの軍事力によってNATOを維持していくことになるだろう。

 トランプ大統領の目指すものは、グローバリズムの対極にある国家の再生である。そもそも国家とは何だったのかの大きな問いかけである。

 国家とは「国民を豊かにし、国民を守り、国家に繁栄をもたらすものである」という国家としての原点に立ち返ろうとする革命であると言っても過言ではないであろう。決して軽薄な「孤立主義」や「保護主義」という言葉で表されるものとは異なっていることに気づくべきである。

2 大戦略を考えているトランプ大統領

 就任以来、次々に出される大統領令の適否や、政権とロシアの関係ばかりが議論されているが、大切なことが見過ごされている。

 それは、ランドパワーをシーパワーが押さえ込むユーラシア大陸の海洋に接するリムランドの中核となる英国、イスラエル、日本との関係を早期に再確認し、多少の困難はあってもロシアとの関係を改善することでしっかりとした米国を中心とした覇権の態勢を再構築している点にある。

 さらには、軍事政権であるタイをバラク・オバマ前大統領は非難し、関係を絶ったことで中国に追いやった大失敗から、タイとの関係改善へと方向を変換していることは、実に戦略的である。エジプトとの関係改善も進みつつある。残るはインドとの関係の構築だ。

 3月のトランプ大統領の施政方針演説にあるように、従来の自由、民主主義、人権外交と言いながら、軍事力と軍事行動を軽視したオバマ政権と異なり、真実と自由、正義を旗印とするトランプ政権は、自由と正義にもとる中国、北朝鮮を決して許しはしないだろう。

 狙いを定めた本命は、中国と北朝鮮である。そして、通商における覇権の獲得の仕かけはすでに始まってる。

 トランプ政権は、今、調整と学習の時間にあるが、いずれ政権が固まり動き始めると、軍事と通商の両輪を回し、中国と北朝鮮に向かうであろう。

 そのような政権の陣容であり、スティーブ・バノン首席戦略官・上級顧問、ピーター・ナバロ国家通商会議ディレクター、ジェームス・マティス国防長官、ハーバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)などは強力な実行者となると考えられる。

 残念ながら、中東ではIS(イスラム国)に勝利を収めても、形を変えてテロは継続するだろうし、イスラムの恨みは消えることはないだろう。

 米国の関与は一段落しても、イスラエルにとって、イランを主敵として力を結集するために中東の混乱は望むところかも知れない。

 その時、日本はこの潮流の変化と米国の通商と軍事の日本に対する期待に応えられるだろうか。

 トランプ政権が誕生した時に、防衛費をGDP(国内総生産)比1%以上にすることはあり得ないとさんざん言っていた人たちが、何となく1.2%や1.4%に防衛費を上げることを言い、なぜ、防衛費を上げなければならないのかを議論することをせずに、米国の装備品を爆買することが日米同盟の証だと考えている論調があることに唖然とさせられる。

 日本における「空気の支配」は健在だ。当然、筆者は従来の延長線上にはない新防衛計画の大綱の作り変えが前提であると認識している。

 しかし、今回それを検討し国家の俎上に乗せるのは、国家安全保障会議(NSC)であり、従来のように自民党や与党が主導するものではない。与党や省庁は、可能性を詰め実現できるよう政策化する本来の役割に戻るべきであろう。

3 日本の役割は明確

 トランプ大統領の3月の施政方針演説の中に、短いが明確に米国が日本に期待することが述べられている。それは、以下の発言である。

 「NATO、中東、太平洋地域のいずれでも、我々のパートナーに戦略および軍事作戦で直接的で意味のある役割を果たし、コストを公正に分担することを期待する」

 英国は、今後、軍事力を向上させるであろう他のNATO諸国とともにロシアに対抗する態勢を構築するであろう。 イスラエルは、中東のイスラム同士の戦いにおける混乱を背景として、イランに立ち向かうであろう。

 日本は、政治的、経済的に混迷を深めていく韓国とともに、中国・北朝鮮の強力な軍事力に対抗していかなければならない。今の韓国の状況から、日本は自らの防衛力を向上させ、米国とともに立ち向かわなければならないだろう。相当の覚悟が必要なことは自明のことである。

 コストの前に日本は、いかなる役割を担うのかをはっきりさせなければならない。

 いかなる役割を担うのかは、筆者をはじめ陸海空の元自衛官が、2年前ワシントンや海軍大学を訪問し、最新の第3次相殺戦略やエアシーバトル等の本質を議論した内容にその答えがある。トランプ大統領が言う日米の役割分担とは次の通りである。


 この図にあるように、同盟国などに要求されることは、まず第1に、潜り込む不正規軍による攻撃対処である。

 米国でもやっとリトルブルーメンとして認識されるようになってきたが、この本質は、海上民兵や不正規軍の攻撃から、海上民兵が運搬してくる地上の正規軍までの幅がある攻撃のことである。尖閣諸島はおろか、南西諸島全域の港湾などから上陸してくる地上軍に対応する役割は米軍ではない。

 2つ目の同盟国によるA2/AD(Anti-Access/Area Denial=接近阻止・領域拒否)ネットワークの構築には2つの意味があり、1つは国土防衛そのものである。もう1つは、中国海空軍に対する列島線からの拒否力の発揮であり、直接的に米海空軍の攻撃を可能とする土俵を提供する、主として陸からの対艦攻撃であり、防空戦である。

 自衛隊では、約10年前から統合運用の1つとして陸海空の統合での対艦攻撃の演習を実施してきたが、ここにきてようやく米軍も重い腰を上げそうだ。

 米太平洋軍司令官のハリス大将は、今年2月の会議で「私が今の配置を去る前に、陸軍の地上部隊が敵艦を沈める演習を見たいものだ」「陸軍は相当な防空能力を持っており、海軍のシステムと連携させるべきである」と言う趣旨の事を述べている。

 2年前から陸上自衛隊を見習えとして米陸軍に要求されていたものが現実化し、南シナ海まで日本の「南西の壁」が広がっていく日も近いと考えられる。

 この際、航空作戦においては、生き残り、戦い続けることが前提であり、民間の飛行場も使った航空阻止作戦に重点を置くべきである。

 この同盟国などの前方での防衛を前提として、エアシーバトルの作戦のエキスを柱とした「長距離打撃」と「経済封鎖を主とする長期戦」が成立する。

 これらの作戦は、短期・高烈度決戦による局地戦の勝利を追求する中国に対する戦いであり、少なくとも数週間は続くという米国の見積もりである。

 ここでお気づきのように、米中の作戦の考え方には時間的・空間的なズレがあり、日本にとって大きな問題を含んでいる。

 また、表の真ん中にある同盟国と米国の両者に要求される抗堪力、継戦力について日本は実に貧弱である。

 特にミサイルデフェンスはいくら高性能のミサイルを揃えようとも、日本全土を守ることはできず、また、弾も高額なため所要数を獲得することは難しいだろう。

 一方、日本には電子戦(電波による妨害)や電磁波(電磁波により電子機器を破壊する)の優秀な基礎技術があるとともに、世界一の高出力電源の技術を有していることから、国を挙げてこれらの分野に投資をして開発・装備化し、既存のミサイルと組み合わせ、日本独自の強力なミサイルデフェンスを構築しなければならない。

 このような技術力を守り国防にこそ使うべきなのに、経産省はじめ大学などは守るどころか、外国に売ることばかりを考えていることに失望している。

 このような電子戦やサイバー攻撃、電磁波を使った作戦の事を、米国は盲目化作戦として、詳しくは語らないが、対中作戦の切り札の1つとしている。

 さらに、ここには表現されていないが、潜水艦・機雷などを使った水中の支配作戦は、これも切り札の1つとしていることから、日本の海上防衛力も水中の支配作戦に舵を切るべきであろう。

4 財政主導の防衛計画大綱を廃し、新たな国防作戦計画を作成すべき

 これまで述べてきたように、現在の防衛計画の大綱は、その策定の在り方から変更し、明確な嘘のない日米の役割分担の下、至急構築しなければなるまい。結果、防衛費を何%にするかは、自ずから答えが出るだろう。

 筆者は、新しい国防作戦計画の性質は、「積極拒否戦略」として、本格的な防衛力を備えなければならないと考える。この際、非核三原則の核を持ち込ませずは廃止すべきであろう。

 また、専守防衛という国防を考えるうえで、あり得ない考え方は廃止すべきで、日米共同を前提とした「限定的な攻撃力」として日本も打撃力を保有すべきであろう。

 米国にも、日本には本格的な軍事力を持たせないという考えが根深くあるが、日米一体となった対中戦略を日本が主体的に説明できれば、トランプ政権は必ず理解すると信じている。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49669


 

World | 2017年 04月 11日 15:46 JST

北朝鮮の貨物船、積載最大で中国から引き返す

[上海 11日 ロイター] - トムソン・ロイターのデータによると、北朝鮮の貨物船複数が中国から北朝鮮の港湾都市南浦に向かっており、大半の船は最大積載状態にある。

北朝鮮が国際社会の批判を受けながらもミサイル発射実験を続けていることを受け、中国は2月26日付で北朝鮮からの石炭輸入を全面的に禁止した。

関係筋によると、中国の税関当局は4月7日、北朝鮮からの石炭貨物を返還するよう国内商社に命じた。

トムソン・ロイターの金融情報・分析プラットフォーム、アイコンのデータによると、複数の貨物船が中国から南浦に向かっている。

中国当局からのコメントは得られていない。

私たちの行動規範: トムソン・ロイター「信頼の原則」
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http://jp.reuters.com/article/china-northkorea-coal-idJPKBN17D0KN
http://www.asyura2.com/17/senkyo223/msg/857.html

[国際18] 原油需給、ゴールドマンだけが大幅供給超過を予想 先物5週ぶり高値 米政権内紛でイエレン再任とドル安 英インフレ加速一服


News | 2017年 04月 11日 14:30 JST 関連トピックス: トップニュース

アングル:原油需給、ゴールドマンだけが大幅供給超過を予想

[ロンドン 10日 ロイター] - 米シェール産業の発展に伴って原油市場における供給サイクルが様変わりし、原油需給の見通しにも影響を及ぼしている。

ほとんどの投資銀行やトタル(TOTF.PA)、ENI(ENI.MI)を含めた大手石油会社は、2014年以降の原油価格急落による業界の急激な投資削減のため、今後2年で市場は供給不足に陥ると警告する。

しかしゴールドマン・サックス(GS.N)だけは、足元の価格反発を背景にした米国の生産回復と従来型の新規プロジェクトが相次ぐことから、2019年までに大幅な供給超過が生まれると予想。シェール業界の開発・生産調整スピードを重視した格好だ。

シェール革命以前の従来型石油だけの世界では、将来の供給量は表面化しているプロジェクト案件を数え上げ、産油国の政治リスクなど不確定要素をある程度織り込めば済んだ。

ただその後登場したシェール産業は価格変動に素早く対応し、油田の稼働・休業を数週間単位でできるので、生産サイクルが短縮化された。このため石油輸出国機構(OPEC)、国際エネルギー機関(IEA)をはじめ多くの機関がシェール産業について、原油価格急落時には減産幅と価格反発による増産ペースの見積もりが過小になってしまった。

そうした中でゴールドマンは、シェール産業の動きを考慮に入れた上で、今後油田開発が大規模化してOPECの減産による需給均衡の取り組みを難しくするとみている。

ゴールドマンの株式調査チームは先月、「長いリードタイム(実施までの期間)のあったプロジェクトが相次いで押し寄せることと、米シェール業界が主導した短期的なサイクルが相まって、2018─19年に相当な供給超過が生じかねない」と指摘。こうした要因で18─19年の世界の原油供給量は日量100万バレル増加する可能性があるとの見方を示した。

全体としては、原油は供給不足になるとの声が多い。ウッド・マッケンジーは2025年までに日量2000万バレルの不足に見舞われると予想。モルガン・スタンレー(MS.N)は、今年の米国における生産急増も、市場の需給均衡化を阻むことはないと主張する。

モルガン・スタンレーは「OPECは生産抑制に成功しており、米国のシェール業界の掘削活動が急激に上向いているとはいえ、年内の大規模な在庫引き出しの妨げになるほどのスピードではないだろう」と分析した。

UBS(UBSG.S)も、今年の原油高で探査・開発計画が進んだとしても、20年までに400万バレルの供給不足になる可能性があると見込んでいる。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによると、米国外では掘削リグ稼働数が増加する兆しが見えないという。

それでも市場はゴールドマンの意見に耳を傾けているように見受けられる。北海ブレント先物の19年までに受け渡しとなる取引は、期近物の価格を下回っている。

(Amanda Cooper記者)
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World | 2017年 04月 11日 10:10 JST 関連トピックス: トップニュース
原油先物が5週間ぶり高値圏、地政学リスク高まる=アジア市場

[シンガポール 11日 ロイター] - アジア時間11日午前の取引で、原油先物が5週間ぶり高値圏で推移している。米原油先物は6営業日続伸。

米軍のシリアへのミサイル攻撃やリビア最大の油田が封鎖されたことを受けた地政学リスクの高まりが背景にある。

米WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物CLc1は0040GMT(日本時間午前9時40分)時点で、0.28%高の1バレル=53.23ドル。6営業日続伸は今年に入って最長。

北海ブレント原油先物LCOc1は一時、1バレル=56.16ドルに上昇し、5週間ぶり高値を記録。その後は0.23%高の同56.11ドルで推移している。

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FX Forum | 2017年 04月 11日 15:37 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:米政権内紛が導くイエレン氏再任とドル安

上野泰也みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
[東京 11日] - 米国の多くのメディアにより、トランプ政権の内紛が4月7日から報じられている。1月20日の大統領就任式からすでに80日以上が経過しており、29日がこの政権にとって区切りの100日目になるが、「トランプ期待」が大きかった米株式市場の参加者には特に、この間の政策運営実績はどうにも期待外れだろう。

医療保険制度改革法(オバマケア)の改廃が、ホワイトハウスと議会共和党の最優先課題とされていた。だが、共和党内保守派グループ「自由議員連盟」の強い反対から下院本会議での可決見通しが立たず、法案取り下げによる採決見送りとなって、あっさり頓挫した。

トランプ政権は大型の法人・所得減税を含む税制改革に前倒しで着手する構えだが、下院共和党案にある国境調整の問題などで意見の隔たりが大きく、妥協案とりまとめにはかなりの時間を要する見通しである。年内に議会可決まで話を進めるのは、もはや絶望的な状況だろう。また、大統領選が行われていた間のトランプ陣営とロシア政府の関係にまつわる疑惑も、今後の大きな「火種」である。

日本時間4月7日午前には、シリア・アサド政権の軍事施設に対し、米軍が巡航ミサイル50発以上を発射する軍事行動が行われた。この動きの狙いについては、化学兵器を内戦で使用したとみられるアサド政権への懲罰行動、北朝鮮への威嚇メッセージなどいくつかの狙いが指摘されているが、内政の行き詰まりから米国民の目をそらそうとする狙いも含まれていたのではないかと、筆者は推測している。

確固としたストラテジーやロードマップ(工程表)が伴っていない上に、柱となるブレーンがトランプ政権にはおらず、各省庁の政治任用ポストはいまだに空席だらけである。そして、政策運営はあまりに場当たり的に見える。個別テーマにおける取引(ディール)の成果をアピールすることでコアな支持層の人気をつなぎとめているものの、このままではもっと苦しくなるのは目に見えている。

<イエレンFRB議長再任の鍵を握る人物>

このようなトランプ政権の不安定な足取りは、潜在的にはかなり大きなドル売り材料である。債券・為替市場は昨年12月15日までは、米国株の「トランプラリー」に気おされて、金利上昇・ドル高の流れとなっていた。だが、この日につけた水準(米10年物国債利回りで2.64%、ドル円相場で118.66円)を転換点に、これら2つの市場は米株式市場とはたもとを分かち、金利低下・ドル安の方向に動き始めたという経緯がある。

米10年債は4月7日に一時2.26%まで買い戻され、ドル円は3月27日に110.11円をつけた。トランプ政権内部での「綱引き」激化は、政策運営の一層の不安定化と市場の期待減退を通じて、一段の長期金利低下とドル安円高に結びついていくだろう。

ここで1つ注目されるのが、ホワイトハウスの「大番頭」である大統領首席補佐官の交代の有無である。米メディアの報道によると、バノン首席戦略官・上級顧問を中心とする保守的な「バノン派」と、クシュナー大統領上級顧問を中心とする中道寄りの「クシュナー派」にホワイトハウスの内部は割れており、バノン氏とともにプリーバス大統領首席補佐官にも更迭論が出ている。そして、プリーバス氏の後任候補としては、コーン国家経済会議(NEC)委員長やマッカーシー共和党下院院内総務の名が挙がっているという。

仮にコーン氏が大統領首席補佐官に登用される場合、市場はその影響をよく見ていく必要がある。米大手投資銀行出身のコーン委員長は3月12日、FOXニュースに対し、米連邦準備理事会(FRB)による利上げがどうなってもトランプ政権は雇用創出を妨げる障害を減らすよう取り組みを続けるとしつつ、「FRBは独立した機関だ。彼らは経済データを持ち、インフレや労働力を通じて経済成長を調整しようとしている。その点では良い仕事をしていると思う。われわれはFRBの力を尊重する」と述べた。FRBのこれまでの政策運営は良好と前向きに評価した上で、その独立性を尊重すると明言した点は、大いに注目に値する。

また、トランプ政権の経済政策運営でキーパーソンの1人であるムニューシン財務長官は、就任前だった1月下旬に上院議員あてに送付した書簡の中で、FRBは「金融政策を実行するために十分な独立性を与えられている」と述べ、共和党議員の一部がFRBの監査強化などを目指していることからは距離を置く姿勢を示していた。

トランプ大統領は選挙戦中にイエレンFRB議長の政策運営を批判し、2018年2月の議長任期満了に際してその再任を認めない考えを示唆していた。だが、政権内部で一種のパワーシフトが起こり、コーンNEC委員長が大統領首席補佐官に就いてホワイトハウスを仕切る場合、米大手投資銀行出身者など現実主義的な姿勢の人々が経済政策の実権を握り、イエレンFRB議長再任の線が急浮上するのではないかと筆者はみている。

ただでさえ政権運営が不安定な中で、FRB議長交代を図って政治的な難題をまた1つ抱え込むことに、トランプ大統領自身もなかなか前向きになれないのではないか。SNSを通じた大統領の情報発信では、就任後これまでのところ、FRBの政策運営を正面から批判したものは見当たらない。

市場の一部には、イエレン議長が2018年2月までの自らの任期中に再投資政策見直しへの着手という実績(金融政策の正常化に向けたさらなる一歩)を残したがっているのではないか、そのことが年内にも再投資政策の見直しに着手するという3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での多数意見形成に微妙に影響を及ぼしたのではないかという見方がある。

筆者自身は上記のようにはみていないが、仮にイエレン議長が再任濃厚となれば、年末までの利上げ回数・再投資政策見直しの有無に関する市場の織り込みに、それらが後ずれする方向で微妙に変化が生じてくるかもしれない。これもドル売り材料である。

2017年のドル円についての市場の見方は相変わらず二分されているものの、筆者は引き続き、年末までに1ドル=100円前後まで円高ドル安に動く余地があるとみている。また、年内の米国の追加利上げはあっても1回で(時期は9月だろう)、フェデラルファンド(FF)レート誘導レンジの上限が節目である1.5%に到達しないことから、再投資政策の縮小開始は2018年にずれ込むとみている。

*上野泰也氏は、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト。会計検査院を経て、1988年富士銀行に入行。為替ディーラーとして勤務した後、為替、資金、債券各セクションにてマーケットエコノミストを歴任。2000年から現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

麻生財務相、米利上げとドル安発言はかい離 政策に時間

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コラム:米政権内紛が導くイエレン氏再任とドル安=上野泰也氏

http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yasunari-ueno-idJPKBN17D0BE?sp=true

 


英国:3月のインフレ率2.3%、前月から横ばい−加速に一服
Jill Ward
2017年4月11日 18:42 JST
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iYvdLB1BWRgk/v2/-1x-1.png

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驚嘆の利益率は運用業界屈指−クオンツ大手AQRの初公開財務データ
Jes Staley. Photographer: Simon Dawson/Bloomberg
英バークレイズCEO、就任1年半で「最後通告」か−賞与全額返上も

英国では3月にインフレ加速が一服した。復活祭の時期の関係で航空運賃が前年同月を下回り、食料品と衣料品の価格上昇の影響を和らげた。
  英政府統計局(ONS)が11日発表した3月の消費者物価指数 (CPI)は前年同月比2.3%上昇と、2月と同水準にとどまった。とはいえ、1年前の0.5%に比べ、インフレ率の上昇は顕著だ。ここ1年でのインフレ加速は燃料価格上昇と昨年6月の欧州連合(EU)離脱選択以降のポンド安を反映している。
  CPIは前月比では0.4%上昇した。3月の航空運賃は前年同月比で4%値下がり。前年は復活祭が3月中だったため23%の値上がりだった。
  インフレ加速は既に勤労者を圧迫している。英小売協会(BRC)のこの日の発表によれば、1−3月(第1四半期)の小売売上高はここ6年で最大の落ち込みとなった。1−3月期の賃金上昇率は2.1%に鈍化したと見積もられ、家計の状況は悪化する公算だ。
  イングランド銀行(中央銀行)は、インフレ率が年末までに3%近くに達するとみている。中銀目標は2%。

原題:U.K. Inflation Pickup Takes Easter Break as Rate Stays at 2.3%(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-11/OO8MSU6TTDSD01

 
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/900.html

[経世済民120] 東芝異例決算は市場の信頼を失墜しかねない強行突破 東証、上場廃止含め判断 日本株決算トレード、順張り後に逆張り有効と野村
東芝異例決算は市場の信頼を失墜しかねない
監査法人の「適正」なく
読売新聞 2017年4月11日

http://tk.ismcdn.jp/mwimgs/5/d/600/img_5d28b7b13f0d71dd550950ee6df2f144381835.jpg

経営再建中の東芝は11日、2度延期している2016年4〜12月期連結決算を載せた四半期報告書の金融庁(関東財務局)への報告期限を迎えた。

前例のない3度目の延期や上場廃止のリスクを避けるため、監査法人の「適正」との意見が得られなくても報告書を提出する方向で最終調整に入った。監査法人が適正かどうかの判断を示さないで報告書を出すことになれば、異例の事態といえる。


東芝は11日午後に決算を発表するとともに、綱川智社長が記者会見して、事情を説明するとみられる。

東芝は、2月14日に発表する予定だった決算を延期し、次の期限だった3月14日も再延期した。米原子力発電子会社ウェスチングハウス(WH、米連邦破産法11章の適用を申請)の損失額を少なく見積もるよう、WH経営者が部下に圧力をかけていたことが分かり、監査法人が決算への影響を懸念したためだ。

関係者によると、監査法人は、過去にも同様のことがあったのではないかとみて、16年3月期決算の修正が必要になる可能性を指摘している。一方、東芝は、担当弁護士などの意見を基に修正の必要がないと主張している。双方の溝が完全に埋まらないまま、11日の期限を迎えた。

決算発表は、業績などを盛り込んだ報告書を金融庁に提出するのが前提となる。企業は監査法人から「適正」以外の意見が出たとしても、報告書を提出できるとされるが、監査法人が内容について「適正」との意見を出すことが通常の流れだ。

東芝が3度目の延期を申請したとしても、その後に監査法人の承認が得られる確証はない。このため、「適正」とされなくても、報告書を提出する案が浮上し、協議してきた。

ただ、監査承認を得ない形での決算報告は大企業としては極めて異例の対応となり、市場の信頼を一段と失墜しかねない。
http://toyokeizai.net/articles/-/167306


 

東芝の四半期決算、適正意見なしで強行突破 東証、上場廃止を含め判断へ
2017/4/11 17:59日本経済新聞 電子版
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 東芝(6502)は11日、2016年4〜12月期の四半期決算を発表した。ただ監査法人との意見の相違は埋まらず、監査法人が「意見不表明」とする中での強行突破となった。適正意見が付かなかった要因を監査法人は「評価が終了していない調査事項がある」などと説明し、米ウエスチングハウス(WH)の決算処理について、監査法人と会社側との意見の隔たりが生じているとみられる。東京証券取引所は今後、上場廃止を含め対応…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL11HE3_R10C17A4000000/


 

日本株決算トレード、順張り後に逆張り有効と野村証−早耳禁止
長谷川敏郎、Kyunghee Park
2017年4月11日 00:00 JST 更新日時 2017年4月11日 10:24 JST

日本株3日ぶり反落、地政学リスクと円高警戒−景気敏感、金融に売り
GPIF:オルタナティブ資産の運用機関を公募、不動産では初めて

発表40日前から5日後まで上昇傾向、5日後以降は反転
ポジティブサプライズ候補にホンダや三菱商、東京海上Hなど

アナリストによる決算プレビューが禁止され、企業の業績発表に絡み銘柄をトレードする「決算プレイ」の際、過去の経験則が重要な材料になろうとしている。野村証券は、過去にポジティブな決算を発表した銘柄を「順張り」し、発表後は一転「逆張り」する投資戦略が有効との見方だ。
  村上昭博チーフ・クオンツ・ストラテジストがまとめたリポートによると、過去にポジティブサプライズの実績がある銘柄を「買い」、ネガティブサプライズの実績がある銘柄を「売り」とした場合のパフォーマンスは、決算発表の40日前から5日後あたりまで上昇。発表から5日後以降は、明確なリターンリバーサルが起きた。
東証での企業決算発表の様子
東証での企業決算発表の様子 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  日本証券業協会は昨年9月、協会員のアナリストの取材などに関するガイドラインを公表。アナリストは未公表の決算期の業績に関する取材などを発行体に対し原則行わないことを決め、いわゆる早耳情報を禁止した。
  また、金融庁は企業の未公表情報の公平な開示を求めるフェア・ディスクロージャー・ルールの導入に関し、今国会で法改正を進める。このため、投資家は決算発表前に積極的にポジションを組む手掛かりに乏しくなった。
  野村証では17年3月期・第3四半期までの過去8四半期について、ポジティブサプライズやネガティブサプライズの傾向がみられた銘柄を分析した。ポジティブサプライズを発表しやすい銘柄はホンダや三菱商事、東京海上ホールディングス、ダイキン工業、スズキ、SMC、SOMPOホールディングス、日東電工、住友電気工業、住友不動産など。ネガティブサプライズを発表しやすい銘柄ではパナソニックや富士フイルムホールディングス、三菱重工業、明治ホールディングス、JR西日本、味の素、東京ガス、住友化学、LIXILグループ、大阪ガスを挙げた。
  アリアンツ・グローバル・インベスター ズ・ジャパンの寺尾和之最高投資責任者は、「通常の決算発表はガイダンスに注目が集まるが、今回は終わった期にも株価が反応する可能性がある」と言う。アナリストがディスクロージャーに関するルール変更を守っているため、「終わった期が予想から振れる可能性があり、株価を動かす材料として大きくなっている」と指摘。その上で、決算プレイは投資家にとってリスク要因である半面、投資機会にもなるとの認識を示した。
  東京証券取引所によると、3月期決算企業の業績発表は4月4週から本格化し、25日には日本電産やシマノ、26日は花王やヤフーなどが予定されている。28日にはソニーや新日鉄住金など196社が発表し、前半戦のヤマ場となる。1日当たりの発表社数では5月12日の755社がピークだ。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-10/OO6HR56KLVR501
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/843.html

[戦争b20] シリア化学兵器廃棄に失敗=訪問前、ロシア批判−米長官 ロシアに影響力行使促す=「シリア」で特別会合−G7外相共同声明
シリア化学兵器廃棄に失敗=訪問前、ロシア批判−米長官


11日、イタリア中部ルッカで開かれた先進7カ国(G7)外相会合で円卓を囲むティラーソン米国務長官(AFP=時事)
 【ルッカ時事】ティラーソン米国務長官は11日、先進7カ国(G7)外相会合が開かれたイタリア中部ルッカで「シリアの化学兵器廃棄の保証人となることにロシアは失敗した」と述べた。会合後、ロシアを訪れるのを前に、厳しい対ロ批判を行った。ロイター通信が伝えた。 
 長官は「アサド家の支配体制が終わりに近づいているのは明らかだ」と強調。「アサド大統領という信頼を欠く相手と手を結んでいたのだと、プーチン政権が目を覚ますよう望んでいる」と語り、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラやイランとも手を切り、欧米側へ陣営を乗り換えるよう呼び掛けた。
 シリア空爆に関しては「米国の安全保障の問題」であり、アサド政権の「野蛮さ」への攻撃だったと説明。化学兵器使用の「常態化」は許さないとも強調し、アサド政権の化学兵器がイスラム過激派の手に渡る事態も絶対に阻止すると誓った。
 一方、シリアやイラクでは過激派組織「イスラム国」(IS)掃討が優先課題であることに変わりはないと訴えた。対テロ戦でのロシアとの協力への期待が消えていない様子をうかがわせた。
 AFP通信によると、アサド大統領のいないシリアを米国も「望んでいる」と長官は語った。ロシアにアサド政権への支持放棄を迫っていく構えをにじませた。(2017/04/11-21:13)
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ロシアに影響力行使促す=「シリア」で特別会合−G7外相共同声明


11日、イタリア中部ルッカで記念撮影する先進7カ国(G7)外相会合の出席者(AFP=時事)
 【ルッカ(イタリア中部)時事】先進7カ国(G7)外相会合は11日、イタリア中部ルッカで最終日の討議を行った後、シリアの紛争終結のためアサド政権に対する影響力行使をロシアに促す共同声明を発表し閉幕した。米軍が行ったアサド政権への攻撃に対しては「化学兵器の拡散・使用を防止・抑止するための注意深く計算された、対象が限定的な対応だ」と理解を示した。一方、北朝鮮に核実験、ミサイル発射の自制を要求した。
 前日もシリア内戦をめぐり活発な議論が行われていた。AFP通信によると、フランスのエロー外相は11日の会合後、アサド大統領退陣がシリア問題解決の前提という認識でG7は一致したと述べた。ティラーソン米国務長官も、アサド大統領のいないシリアを米国も「望んでいる」と語った。ただ、アルファノ伊外相は、対シリア追加制裁でG7は一致できなかったと述べた。
 11日はシリア問題に議題を絞った特別会合も開催され、アサド政権に批判的なトルコやサウジアラビアなど地域諸国の外相らも出席した。岸田文雄外相はこの中で「日本は困難に直面するすべてのシリア人への人道支援を最大限行っていく」と強調。政治プロセスの進展には全土での停戦と人道状況の改善が不可欠だと訴えると、各国から賛意が示された。(2017/04/11-20:41)
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[国際19] 米政府:アサド政権のサリン使用を証拠が裏付け−かばうロシアを非難 韓国大統領選、安哲秀氏の支持率が上がった理由 保守寄り
米政府:アサド政権のサリン使用を証拠が裏付け−かばうロシアを非難
Jennifer Epstein、Nick Wadhams
2017年4月12日 06:46 JST
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毒ガス使用が疑われる現場でサンプル採取をする調査官(5日) Photographer: Omar Haj Kadour/AFP via Getty Images
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A visitor walks past an electronic board displaying market indices at the Tokyo Stock Exchange (TSE), operated by Japan Exchange Group Inc. (JPX), in Tokyo, Japan, on Monday, June 27, 2016. The yen was closing in on 99 per dollar at one point Friday and headed for its biggest gain since it was freely floated in February 1973, as Britain's vote to leave the European Union prompted investors to flee global markets and seek safety in Japanese government bonds. Photographer: Akio Kon/Bloomberg
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プーチン大統領:誤った情報を根拠にした2003年のイラク攻撃を想起
ティラーソン米国務長官はモスクワで12日にロシア外相と会談
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トランプ米政権は、今月の民間人への化学兵器使用の背後にシリアがいたことを明確に示す証拠が得られたとした上で、ロシアは批判の矛先をそらしたり、疑念を投げ掛けたりしてシリアのアサド政権をかばおうとしていると非難した。
モスクワに到着したティラーソン米国務長官(11日)
モスクワに到着したティラーソン米国務長官(11日) Photographer: Alexander Nemenov/AFP via Getty Images
  ティラーソン米国務長官がモスクワへと向かう中、ホワイトハウスは犠牲になった市民から採取したサリン使用を裏付ける証拠のほか商業衛星画像や現場報告書など、機密解除された情報資料と公開資料を基に作成した文書を11日、公表した。
  民間人への攻撃とアサド政権の役割の分析を概説した同文書は、「シリアの政権が自国民に対し、神経ガスのサリンを使って化学兵器攻撃を行ったと米国は確信している」と結論付けた。
毒ガス使用が疑われる現場でサンプル採取をする調査官(5日)
毒ガス使用が疑われる現場でサンプル採取をする調査官(5日) Photographer: Omar Haj Kadour/AFP via Getty Images
  一方、ロシアのプーチン大統領は米国がシリアの化学兵器使用を非難したことについて、大量破壊兵器疑惑の誤った情報を根拠にした2003年のイラク攻撃を想起させると非難。ロシア外務省は米国が捏造(ねつぞう)された写真を基にシリア政策を決定したと批判した。
  ティラーソン長官は11日、主要7カ国(G7)外相会議が開かれているイタリアのルッカで記者団に対し、シリアの将来に関する協議で「重要な役割」を果たしたいとロシアが望むなら、アサド政権への支援を撤回しなければならないと語った。
  ティラーソン長官は12日にモスクワでロシアのラブロフ外相と会談する。米ロ関係の緊張が増す中、プーチン大統領との会談が実現するかどうかは不透明。
原題:Syria Clearly to Blame in Chemical Attack on Town, U.S. Says (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-11/OO9KAF6S972801


 

韓国大統領選、安哲秀氏の支持率が上がった理由

日本と韓国の交差点

2017年4月12日(水)
趙 章恩

国民の党の大統領候補となったアン・チョルス(安哲秀)氏(写真:アフロ)
 5月9日に行われる第19代・韓国大統領選挙まで、残り1カ月を切った。

 北朝鮮は弾道ミサイルを再び発射。米中首脳会談で、北朝鮮の核・ミサイル開発の解決に向けて協力を強化することに両国首脳が合意した。

 海の上の軍事基地と呼ばれる米海軍の航空母艦カール・ビンソンは4月8日、シンガポールからオーストラリアに向かう計画を変更し、再び朝鮮半島に向かった。北朝鮮に対して存在感を示すためだ。同空母は3月15日から2週間、韓米連合軍事訓練のために釜山港に入港していた。

 韓国内では、大統領不在による外交・安保の停滞が深刻に受け止められている。その影響からか、大統領候補の支持率にも変化が表れ始めた。

 19代大統領選挙には、各党から選ばれた5人が出馬している。進歩派は、共に民主党のムン・ジェイン(文在寅)候補と正義党のシム・サンジョン候補が。保守派からは、自由韓国党のホン・ジュンピョ候補と正しい政党のユ・スンミン候補が。そして進歩と保守の間にある中途派からは国民の党のアン・チョルス(安哲秀)候補が立った。

 各新聞とテレビ局が4月9日に行った世論調査では、文在寅氏と安哲秀氏の支持率がほぼ拮抗。安哲秀氏の支持率の方が高いと報道するメディアもあった。今までは文在寅氏が圧倒的な支持を集めていた。

 複数の韓国メディアは、「20〜40代が支持する文在寅氏と50〜60代が支持する安哲秀氏の競争になった」と報道している。完全な進歩派か、保守と進歩の間にある中途派か、の選択になった。

 50代以上の根強い保守支持層が安哲秀氏を支持し始めたことから、同氏の支持率が急上昇しているという。保守派支持層は、保守派の候補が当選する可能性はないので、次善の選択として安哲秀氏を支持している。進歩派だけど、文在寅氏は支持しないという人達がこれに加わった。

 文在寅氏は学生時代に民主化運動に参加した。弁護士出身で、故ノ・ムヒョン大統領の秘書室長、共に民主党の党代表を歴任した。安哲秀氏は元医者。パソコンのウィルス退治ソフトを開発しベンチャーを立ち上げた起業家でもある。KAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)・ソウル大学教授、国民の党の元共同代表を歴任した。

 2人とも2012年の大統領選挙には、進歩派の大統領候補として出馬した。進歩派支持層の票が分散するのを避けるため候補を一本化しようと安哲秀氏が選挙前に候補を辞退。朴槿恵前大統領と文在寅氏の一騎打ちとなった。進歩派候補だった2人が今回、ついに大統領選挙でぶつかることになった。

 文在寅氏と安哲秀氏は12年には同じ進歩派の候補だったが、現在は正反対のイメージになった。文在寅氏はセウォル号事件の被害者家族と一緒に断食をしたり、ろうそく集会に熱心に参加したり、庶民の味方というイメージを築いた。

 保守支持層からは「親北で過激な人」と見られている。「財閥改革」「積弊を清算する」「大統領になったら金剛山観光を再開、開城公団を拡大する。北核問題を解決するためには対北経済協力が必要で、これは韓国企業の利益にもなる」などを主張してきたからだ。

 一方の安哲秀氏は成功した起業家で学者、エリートのイメージが強い。保守派の「『正しい政党』とも手をつないで協治する」と発言したことから保守支持層にとって受け入れやすい人物といえる。

THAAD反対から受け入れやむなしへ

 2人には共通している面もある。「政権交代で韓国を変えたい」と望む点は同じだ。THAADに関しては、文在寅氏も安哲秀氏も「THAAD反対」から「受け入れるしかない」に立場を変えている。

 文在寅氏は「(THAADに関して)韓米政府が合意したことをそう簡単に覆せるとは思わない。次の政府が、国会での十分な議論を経て、中国とロシアを説得すべき」と発言し、これまでの「反対」より立場を一歩後退させた。安哲秀氏は「次の大統領はTHAADをしっかり配備すべきである。そして中国を説得すべきである」とTHAADを積極的に受け入れる立場を示した。

 慰安婦問題をめぐる日韓合意に関しては、文在寅氏も安哲秀氏も今のところ再交渉すべきという立場を取る。安哲秀氏は「状況が変われば立場が変わるのが当たり前」「国家間の合意は尊重すべき」としているが、今後どうなるかはわからない。THAAD配備に関しては、反対から賛成に立場を変えている。

「私も親米。しかし常にyesではない」

 両候補をめぐり、親米、親北、親中のいずれなのかを問う、韓国メディアの報道が過熱している。

 文在寅氏は、16年12月に行われた韓国メディアとのインタビューで、「大統領選に当選したら、迷うことなく、米国より先に北朝鮮を訪問する」と発言した。

 この発言について17年2月、本人がテレビに出演し、以下のように釈明した。「米国でも北朝鮮でも日本でもロシアでも、我々の国益に資するならどこにでも行き誰とでも会うという意味。北核の解決が重要だ。核問題の解決につながるなら、米国と緊密に協議し、北朝鮮に先に行くこともあるという発言だった」

 3月10日付ニューヨークタイムが掲載した文在寅氏へのインタビューも問題になった。同紙は文在寅氏が「South Korea should learn to say no to the Americans」と発言したと書いた。これはインタビュー中の発言ではなく、文在寅氏が1月に発売した著書に出てくる発言だったことが判明。同紙は報道を訂正した(関連記事)。

 ニューヨークタイムズのインタビューの件で、保守派は一斉に「文候補は親北反米で韓国の安保を危険にさらしている」と批判した。文在寅氏は3月13日、記者に対して「私も親米だ。だが、だからといって米国に対して無条件にYesとばかり言うことはできない。国益上必要であればNoも言う。我々と米国はとても重要な同盟関係にあるが、国家の利益が優先される冷酷な国際政治の現実の中で、両者の利益が常に一致するわけではない。我々の国益を守る時は守る、堂々とした姿勢が必要だ」と釈明した。

 安哲秀氏は4月6日、ソウル市内にあるプレスセンターで行われた討論会で、記者から「韓国の安保において米国が重要か、中国が重要か」と問われ、「当然、米国が重要だ。米国とは同盟関係にある。その関係を強化すべきだ。中国とは戦略的協力同伴者関係だ。北核問題解決のために(韓国は米国の同盟国として動くと)中国政府を説得し続ける必要がある」と答えた。

 「戦略的協力同伴者関係」は、李明博大統領(当時)が2008年に訪中した際、韓国と中国の関係をより緊密なものに格上げするため交わした合意である。

 文在寅氏と安哲秀氏は、北核問題が韓国安保の最重要課題であるという認識は共通している。韓国の問題を他人任せにしない(米国と中国と協力するが引きずられてはならない)、北核問題は当事者として韓国が積極的に動く、軍事的行動や戦争はあってはいけない、という考えも一致している。ただ、これをどのような方法で実現するかに両候補の差が出てくるわけだ。


このコラムについて

日本と韓国の交差点
 韓国人ジャーナリスト、研究者の趙章恩氏が、日本と韓国の文化・習慣の違い、日本人と韓国人の考え方・モノの見方の違い、を紹介する。同氏は東京大学に留学中。博士課程で「ITがビジネスや社会にどのような影響を及ぼすか」を研究している。
 趙氏は中学・高校時代を日本で過ごした後、韓国で大学を卒業。再び日本に留学して研究を続けている。2つの国の共通性と差異を熟知する。このコラムでは、2つの国に住む人々がより良い関係を築いていくためのヒントを提供する。
 中国に留学する韓国人学生の数が、日本に留学する学生の数を超えた。韓国の厳しい教育競争が背景にあることを、あなたはご存知だろうか?
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/215834/041100062

http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/104.html

[政治・選挙・NHK223] うつ病対策で自殺者の7割は救える!?欧米では政治家・経営者が精神科医を雇う時代に  安倍首相はうつ病だった
うつ病対策で自殺者の7割は救える!?欧米では政治家・経営者が精神科医を雇う時代に

和田秀樹 サバイバルのための思考法
2017年4月12日(水)
和田 秀樹
 毎年4月7日(世界保健機構[WHO]の第1回総会の開催日にちなむそうだ)は、1950年以来70年近く、世界保健デーと定められている。この日のテーマは毎年変わり、「その時点において世界的に重要であり、課題性のある健康に関する事項に焦点を当てて、関心を高め対策行動への契機とするために設定」(日本WHO協会のホームページより)されるものだ。


世界的な推定値では自殺者の7割はうつ病によるものと考えられ、自殺を防ぐためには、まさにうつ病対策が最重要なものと言える。(cyouichi4411-123RF)
2017年、世界保健デーのテーマはうつ病

 例えば、2012年は「高齢化と健康」、2013年は「血圧管理の重要性」、2015年は「食品安全」そして、昨年は「糖尿病」であったが、本年度のテーマは「うつ病:一緒に話そう」となっている。WHOによると世界のうつ病患者は3億人(世界人口の4%以上)を上回り、うつ病から年間80万人が自殺しているとされ、国際的な取り組みが求められているからだ。

 まさにうつ病対策は、現代社会のサバイバルのために重要ということになる。私は、特に我が国でこそうつ病の対策を重視すべきで、「一緒に話そう」というテーマは重大だと考えている。現実に統計数字をみても、以前より減ったとは言え、今でも自殺は年に2万2000人の命を奪い、15〜39歳の日本人の死因トップだからだ。もちろん、自殺のすべてがうつ病によるものではないが、世界的な推定値では自殺者の7割はうつ病によるものと考えられ、若死にを防ぐためには、まさにうつ病対策が最重要なものと言える。

 実は、日本でも1998〜2011年まで年間の自殺者が3万人を超えていたこともあり、政府も自殺対策には相当力を入れている。2006年に「自殺対策基本法」が制定され、恐らくその効果だったのだろうが、2012年についに自殺者数が3万人を切り、2016度は22年ぶりに2万2000人を下回った。

うつ病対策で自殺は減らせる

 ここで重要なのは、自殺は本人の意志なのだから止められないと思われがちだが、きちんとした対策をすれば減らせるということである。

 自殺対策基本法では、「自殺の恐れがある人が受けやすい医療体制の整備」「自殺の危険性が高い人の早期発見と発生回避」などがうたわれている。実際、新潟県の松之山町(現十日町市)では、精神科医たちがこのような自殺対策を実施したところ、高齢者の自殺率が4分の1に下がったという実績もある。

 日本の場合、風邪をひいたくらいで簡単に医者に行くし、集団検診で一つでも異常値が出ると医者に行き、薬をもらうのが当たり前のようになっているが、これは世界では例外的だ(それだけ外国は医療費が高かったり、医療へのアクセスが悪いということなのだが)。逆に、うつ病など心の病については、手遅れにならないと医者にかからないという先進国では珍しい国である。

 うつ病になっても、実際に自殺するまで医者にかかっていなかったり、自殺未遂をして初めて医者にかかる人が多い。関連して、アルコールなどの依存症になっても軽いうちに医者にかからないので、社会的生命を奪われたり、自殺という結末をたどる人も少なくない(自殺の20%以上がアルコール依存者という推定値もある)。

 ただ、それだけ心の病が恥ずかしいものだと思われているという側面は否定できない。だからこそ、本年度のテーマである「一緒に話そう」というのは大切なことであり、うつ病などの心の病に対する啓発活動は重要な意味を持つ。

 まずは、うつ病という病気がどんな病気かを知らせることが大切だろう。食欲がなくなったり、眠れなかったりしても、自分がうつ病にかかっているという自覚のない人は少なくない。「パパ、ちゃんと眠れてる?」というポスターで、うつ病の初期症状が不眠だと啓発したことも相当有効だったようだ。

ノルウェーでは首相がうつ病から回復

 うつ病の症状を知ることで早期に医療の受診につながり、それが自殺やうつ病のさらなる悪化(これで社会的生命を奪われる人が多い)を防ぐのは確かだが、私の見るところ日本にはもう一つの大きな壁がある。それはうつ病に対する偏見だ。要するにうつ病にかかることや、精神科や心療内科にかかることが恥ずかしいと思っているので、うつ病の可能性があっても医者にかからない人はまだまだ多い。

 以前、ノルウェーのボンデヴィックという首相が在任中にうつ病になったと告白し、1998年の8月30日から9月23日まで首相の仕事を休んだことがある。うつ病を治したボンデヴィックは喝采をもって迎えられ、第二次政権まで首相を務め、その後は平和や人権のための活動家として身をささげた(アメリカのカーターセンターと協力関係があった)。2009年にはサンフランシスコ大学から名誉教授の称号を与えられている。

 これはノルウェー国民には大きな意味を持つものである。

 一つは、首相のような人でもうつになることを知らしめたことだ。これはうつ病に対する偏見をかなり弱める効果があっただろう。二つ目は、うつ病が治るということを知らしめたことである。その後も首相を務めあげ、引退後も活躍している姿を見せることで、やはりうつは早期発見、早期治療が大切だと分からせる絶大な効果があっただろう。

 もちろんボンデヴィックが首相になる前からかなり減っていたが、かつては北欧というのは自殺率が高いことで有名な地域であった。日本も減ったので今はそこまででもないが、現在のノルウェーの自殺率は日本が自殺対策をやる前の半分程度である。まさに啓発の大切さを物語るものだ。

 実は私は、前回突然に辞任した際の安倍首相は、少なくとも診断基準の上ではうつ病に当てはまると考えている。不眠が報じられ、明らかに体重も5%は減っていたし、涙目は抑うつ気分を象徴するものと考えられる。疲れやすさや集中力の減退を訴えていたという報道もあった。うつ病の診断基準を5つ以上2週間以上満たせば、うつ病と我々は診断する。

 胃腸障害も合併していただろうし、その治療のためステロイドなどの薬物の影響も否定できないので、うつ病ではなかったのかもしれない。しかしそれでも、「実はうつ病です」と芝居でもいいから言ってもらって、現在のような見事な回復をアピールできたら(安倍氏が前回辞任した2007年には日本では年間3万3093人が自殺していた)、首相でもうつになることや、それが治ることがアピールできただろうから、年間1万人くらいの命が救えたかもしれない。国防というのは国民が死ぬ可能性に対処するものだが、自殺予防は毎年確実に多くの命を救うものなのだ。

欧米では政治家・経営者が心の主治医を持つ

 もちろん、この件で安倍氏を責めるつもりは毛頭ない。むしろ、日本という国ではうつ病を告白することがそれだけ政治的生命に響くという判断だったように思えてならない。この偏見をなくすことの大切さを痛感させられただけだ。

 日本の場合、明らかに覚せい剤の依存症という心の病に陥っている芸能人などにしても、再犯をするたびに責めるだけで治療の大切さへの関心はそれほど高くない。自殺と同じく、心の病が自己責任のように思われているから、治療を受けようという機運も高まらないし、治療施設が増えないという二次被害も生む。

 ブッシュ・ジュニアにしても40歳でアルコール依存を克服したことを堂々と言明しているし、そのほうが国民の人気につながった。ビル・クリントンも自らのアダルト・チルドレン(機能不全家庭で育ったことにより、成人してもなお内面的なトラウマを引きずり、言動に影響が出ること)やカウンセラーの存在を明らかにしている。

 昨今、日本の国会では感情のコントロールが悪い政治家の失言が相次いでいる。欧米では心の病以上に、医者やカウンセラーを上手に使えず、自身の感情をコントロールできないことのほうが恥のように思われることが多い。

 実際、最近の認知科学の考え方では、心の健康が判断力や思考力に影響を与えると考えられている。だから、欧米では政治家や経営のエグゼクティブが自分の精神科医を雇うのだ。

 心の病というのは、なってからより、なる前の予防のほうが意味を持つという考え方も強まっている。病気になる前に検査データの異常の段階で医者にかかるような集団検診が当たり前になっているが、心の病も同じことだ。そういう意味で、2015年の12月にストレスチェック制度が始まったのだ。点数が高い人は、病気になる前に医者にかかったほうがいい。心の主治医やカウンセラーを持っていると、人生のさまざまな局面で助けになるだろうし、感情に振り回された判断をするリスクも低減する。

電通事件では管理職によるうつ病の無知が問題

 こうしたメンタルヘルスを考えるうえで、昨今、最も話題になっているのは残業問題だろう。

 もちろん、過度な残業はやらないに越したことがないが、様々な調査や統計をみると、長時間残業がうつにつながると証明できているとは言えない。実際、昔のように長時間残業が多かった時代に、うつが今より多かったわけでもないし、自殺も昔のほうが少なかった。

 ただ、一方で、過労を通じてうつになる人は一定数確実に存在する。問題はそのフォローアップだろう。

 たまたま、電通の過労死事件が世間で注目されたので、私も精神科医として何回か取材を受けた。そして、さまざまな資料を与えられたのだが、私が一番の問題と思ったのは、うつ病が疑われる部下に対する管理職の対応の悪さだ。亡くなった人がツィッターで書いたことが事実であったとしたら(うつになると物事の受け取り方が被害的になりやすいので、歪曲されている可能性もあるが、少なくとも彼女の主観的世界では事実なのだろう)、不眠で恐らくうつ病を発症してボロボロになっている部下に、管理職は下記のような暴言を吐いている。「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」「会議中に眠そうな顔をするのは管理ができていない」「髪ボサボサ、目が充血したまま出勤するな」。

 うつ病についてのまともな知識があれば、眠そうな顔から不眠を疑い、身だしなみを気にしなくなったことからうつ病を疑う姿勢が求められる。さらに言うと、うつ病の人の心を傷つける発言は病状をさらに悪化させる。

 実際、部下を自殺に至らしめた際の会社の損失は多大なものだ。また判例次第では、管理職によるメンタルヘルスの管理責任が問われる時代も間近だろう。管理職のメンタルヘルスに対する怠慢や無知が許されない時代が来ている。

 実は私は、日本における自殺予防の権威である高橋祥友教授(筑波大学)とともに、一般社団法人「心の健康管理推進協会」というものを立ち上げた。少しでもメンタルヘルスの啓蒙やストレスチェックの高得点者のフォローに役立つことができればと念じている。


このコラムについて

和田秀樹 サバイバルのための思考法
国際化、高齢化が進み、ストレスフルな社会であなたはサバイバルできますか? 厳しい時代を生き抜くアイデアや仕事術、思考法などを幅広く伝授します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/122600095/041100007
http://www.asyura2.com/17/senkyo223/msg/886.html

[戦争b20] 米国が不安視する中国とロシアの軍事的急接近 軍事協力がこれまでになく高い水準に 「中国に好感」、ロシア人の8割近くが回答
米国が不安視する中国とロシアの軍事的急接近
軍事協力がこれまでになく高い水準に
2017.4.12(水) 古森 義久
ロシア空軍の「スホイ35」戦闘機(資料写真、出所:Wikipedia)
「中国とロシアの軍事協力が前例のない水準まで高まり、アジア太平洋地域での米国の安保態勢に新たな脅威を形成しつつある」――米国議会の中国関連の政策諮問機関が、日本の安全保障にも大きく影響する新たな動きを発表した。中国とロシアが軍事面でますます急接近しているというのだ。

軍事協力の中身とは

「米中経済安保調査委員会」は3月下旬、「中国とロシアの軍事関係=高い水準への動き」と題する調査報告書を発表した。

 同委員会は米国議会の超党派の政策諮問機関で、米国と中国との経済関係が米国の国家安全保障にどう影響するかを中心に活発な調査研究や政策勧告の活動を続けている。中国側の軍事動向を分析することも多い。

 同報告書は、中ロの軍事協力が密接になっている状況を以下のように説明する。

 中国とロシアの両国は1996年から「連携的な戦略パートナーシップ」というスローガンを掲げ防衛や安保の協力を進めているが、ここに来て戦略的な協力をさらに強めるようになった。

 この協力の中核をなすのは、ロシアから中国への兵器の売却である。2006年ごろにその最盛期を迎えたが、その後、中国側がロシアの兵器システムの核心技術を盗用して自主製造を図る傾向が顕著となったため、ロシア側が後退した。だが2012年ごろから両国は再び新たな防衛協力を推進するようになった。

 2017年の現在、中ロ両国の軍事協力はこれまでにない高い水準の規模と質とを示すようになった。その協力の領域は具体的には(1)軍事演習、(2)軍事技術協力、(3)軍部同士の高レベルの接触、の3つである──。

 そのうえで同報告書は、米国のアジアでの安全保障態勢に悪影響を与えるおそれがある中ロ軍事協力の最近の動きとして、以下の具体例を挙げていた。

・ロシアの「スホイ35」戦闘機の中国への売却

(2016年12月に始まった同機の売却はアジア太平洋地域での米軍の航空戦力の優位を崩し、高性能な戦闘機開発に必要な技術を中国軍に与えることとなる。中国軍にとって同戦闘機の確保は国産の次世代戦闘機の開発のための基礎となる)

・ロシアの「S400」地対空ミサイルシステムの中国への売却

(2018年に中国への引き渡しが始まる同システムは、首都・北京の防空態勢を強化するだけでなく、台湾有事の際は台湾空軍への脅威となる。また、南シナ海や東シナ海での有事でも米国や日本の空軍力への脅威を増すことになる)

「S-400」地対空ミサイルのTEL(輸送起立発射機)車両(資料写真、出所:Wikipedia)
・中ロ両国軍の合同軍事演習の複雑化と深化

(両国の合同演習は、戦闘体験のほとんどない中国人民解放軍の近代化という目標追求に対して、とくに深い考察と知識を与える) 

・ミサイル防衛に重きを置いた中ロ両国軍の合同演習の地理的な拡大

(この動きは、中ロ両国が安全保障上の利益の共有を増大させることを意味し、相互支援の拡大も示している。両国の安保利害の連帯は米国やその同盟諸国への挑戦を強化させることになる)

東シナ海での脅威も増大

 以上のように同報告書は、最近の中国とロシアの密接な軍事協力の動きが米国側にとって深刻な脅威の増大であることを強調していた。

 また、その軍事協力の結果、中国が新たに取得するS400地対空ミサイル防空システムが東シナ海で日本に対する明確な脅威となることも指摘している。

 ただし、中国とロシアは日本と米国のような同盟関係にあるわけではない。中国とロシアの安保協力のレベルは確かに向上しているが、同報告書は「両国間の安保関連政策の違いや伝統的な相互不信により、一方の国が外部から攻撃された際に他方が共同防衛という形で支援する総合的な同盟関係の成立に至る見通しは少ない」と分析している。

 だがたとえそうであっても、日本としては、中国とロシアが連帯を強めることは、アジアでの米国の安保上の基本利益を脅かすという点で注意を払う必要があるだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49712


 

「中国に好感」、ロシア人の8割近くが回答―露メディア レコードチャイナ 2017年4月11日 14時00分 (2017年4月12日 09時10分 更新)


11日、環球時報によると、ロシアの民間調査会社レワダ・センターが行った調査で、ロシア人の8割近くが中国に好感を抱いていることが分かった。資料写真。(Record China)
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2017年4月11日、環球時報によると、ロシアの民間調査会社レワダ・センターが行った調査で、ロシア人の8割近くが中国に好感を抱いていることが分かった。

ロシアメディア・スプートニクによると、78%が「中国に好感を抱いている」と回答。「好感を抱いていない」は13%だった。一方、米国や欧州連合(EU)については、好感を抱いていない人がそれぞれ52%、53%と半数を超えた。

同調査が行われたのは3月31日〜4月3日で、米国がシリアの空軍基地を攻撃するよりも前だった。(翻訳・編集/北田)
http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20170411/Recordchina_20170411027.html


 
「中国に好感」、ロシア人の8割近くが回答―露メディア
2017年04月11日 14時00分 Record China
「中国に好感」、ロシア人の8割近くが回答―露メディア
11日、環球時報によると、ロシアの民間調査会社レワダ・センターが行った調査で、ロシア人の8割近くが中国に好感を抱いていることが分かった。資料写真。
2017年4月11日、環球時報によると、ロシアの民間調査会社レワダ・センターが行った調査で、ロシア人の8割近くが中国に好感を抱いていることが分かった。

ロシアメディア・スプートニクによると、78%が「中国に好感を抱いている」と回答。「好感を抱いていない」は13%だった。一方、米国や欧州連合(EU)については、好感を抱いていない人がそれぞれ52%、53%と半数を超えた。

同調査が行われたのは3月31日〜4月3日で、米国がシリアの空軍基地を攻撃するよりも前だった。(翻訳・編集/北田)
https://news.nifty.com/article/world/china/12181-174877/
http://www.asyura2.com/17/warb20/msg/131.html

[医療崩壊5] 誰も知らない医療の現場:患者を拘束したくない!拘束しなければ高額の賠償請求も、あまりに足りない看護師・介護士 
誰も知らない医療の現場:患者を拘束したくない!拘束しなければ高額の賠償請求も、あまりに足りない看護師・介護士
2017.4.12(水) 坂本 諒
治療に不満、高齢の男が火を放ち女性看護師焼死 イスラエル
仏西部アンジェの病院で患者の歩行を手伝う看護師〔AFPBB News〕
 私は看護師だ。大学を卒業してから3年間、精神医療センターに勤務した。入院患者の多くは認知症の患者で、何らかの身体疾患を持っていた。私は、日中3〜4人、夜間6〜7人の患者を受け持っていた。

 ある夜勤の日、認知症の患者から「ここから出してください。帰りたいんです」と言われた。私は、「そうですよね、入院も長くなってますし、そろそろ帰りたいですよね」と答えた。

 患者は「そうなんです。私は普通の患者です。縛られてるんです。出してください」と返してきた。この患者は、認知症の進行によって治療の必要性を理解できず、普段は意思疎通が図れなかった。彼からこのような言葉が出たことに、私は驚いて立ち尽くした。

 患者は、誤嚥性肺炎を繰り返し、そのたびに絶食し、補液や抗生剤を投与していた。しかし、患者は、認知機能の低下によって点滴の必要性を理解できず、自分で管を抜いてしまいそうになることがあった。

拘束したくないが避けられない事情

 加えて、サクション(肺炎によって喉元に溜まった痰を管で吸引すること)の必要性を理解することが困難で、暴力で抵抗していた。

 また、歩行が困難な状態であるが、1人でベッドから降りようとするため、家族の了承を得て、拘束(抑制帯で縛ること)をしていた。

 拘束は、寝たきりの状態をつくる。拘束で“管理”をすることはできても、それは“ケア”ではない。患者は、寝たきりの状態が長く続き、身体機能は低下し、拘縮(関節が固くなり動かなくなること)が進んだ。初めは自力でご飯を食べられていたが、それも難しくなった。

 誰もが、拘束や寝たきりを避けたいと思うが、認知症によって自らの安全を保てない場合、対応できる看護師の人数が不十分であれば、拘束は避けられない。

 事実、拘束の件数は、厚生労働省の調査が始まった2003年以降、増加の一途を辿っている。認知症以外の疾患を含む拘束件数は、2003年度の調査で5190人であったのに対し、2013年度の調査で1万229人と倍増している。

 病院には、患者の転倒・転落を防止する義務がある。実際に、拘束をせずに転倒・転落による負傷・死亡が発生し、患者の家族が損害賠償を請求した事例がある。

 負傷における訴訟では、グループホームに入所中の79歳の認知症患者が、1人で椅子から立ち上がり、転倒・骨折した事例がある。入院費用や傷害慰謝料など、400万円の支払いが事業者に命じられた。

 死亡における訴訟では、ショートステイをしている81歳の認知症患者が、夜間に1人でベッドから立ち上がって転倒し、急性硬膜下出血で死亡した事例がある。

 死亡事故という重大事故であったこと、また認知症があるため、指示を従わないことによる患者側の責任はないと判断されたことから、3402万円の損害賠償責任が認められた。

 私たち看護師は、「拘束をしない選択」と「少ない人員配置による限界」との間で、ジレンマを感じている。私の働いていた急性期の病棟では、1人の看護師が、日中3〜4人、夜間6〜7人の患者を受け持っていた。

 慢性期の病棟より受け持ち患者数は少ないものの、認知症の患者に常時付き添うことは難しい。慢性期の病棟では、1人の看護師が20人の患者を受け持つことがある。そのような状況では、さらに目が届かないだろう。

 拘束は寝たきりをつくり、寝たきりは身体機能の低下を引き起こす。私たちは、この問題への対策を考えなければならない。

圧倒的に足りない看護師、介護士

 現状では、圧倒的な人員不足があるため、まずは人手を増やす方法が考えられるだろう。看護師や介護士の人数が増えれば、1人当たりの受け持ち患者数は減るため、手厚いケアができる。

 しかし、実際に看護師や介護士の人数を増やすことは難しい。介護士を目指すための学校では定員割れが起きており、看護師は需要に対して供給が少なく、大学や専門学校が毎年新設され続けている状況だ。

 あるいは、無資格のボランティアに、患者の見守りを依頼することはどうか。

 しかし、ボランティアに義務はなく、さらに専門職ではないため、何か問題が起きた時に責任を取ることは難しい。実際、私の働いていた病棟では、ボランティアに認知症患者の見守りを依頼することはない。

 認知症で自らの安全を保てない場合、1人で歩けないにもかかわらず、ベッドから降りようとすることがある。患者の力が強ければ、1人では対応できない。

 実際に、暴れる患者には複数人の医療者で対応する。入院中は、点滴や経管栄養のルート、手術部位などに挿入されるドレーン、気管切開部に挿入されるカニューレなど、生命にかかわる管があるため、無資格のボランティアが見ている間に抜けてしまっては大変だ。

 では、海外からの移民看護師を受け入れることはどうか。

 看護師であれば、専門的な教育を受けている。ケアにおける言語の壁はあるが、専門職ではないボランティアと比較すれば、医療的な観察・処置はカバーできる。近年、専門職の移民は増加しており、特に医療分野においての増加が顕著だ。

 移民は、年間20万人程度であれば、経済効果があるとされている。それならば、積極的に移民を受け入れ、委譲できる部分を任せることで、人員不足を補えるかもしれない。

 日本の看護師の給与は、海外、特に東南アジアの看護師と比較すると、かなり高い。タイの看護師の月給は約3万3000円で、他国から看護師が流入するシンガポールでも約13万3000円である。

米国に倣い人材を海外に求める必要

 一方、日本の看護師の平均月給は35万円だ。高い給与や充実した教育環境があれば、優秀な人材が来てくれる可能性がある。

 日本の移民看護師の受け入れ開始は2008年であり、受け入れは定着していない。一方、日本と同様に看護師不足の問題を抱える米国は、フィリピンからの移民看護師を多く受け入れている。

 フィリピンには、米国植民地時代に導入された看護教育のカリキュラムがあり、さらに英語を話すことができる。米国の看護師の平均月給は、病院勤務で37万円〜62.5万円と高い。フィリピンの看護師の平均月給は9800円であるため、高給与の米国への移住は魅力がある。

 グローバル社会の中で、一時的な右傾化が進み、極端に閉鎖的な国が増えてきている。しかし、閉鎖的な環境が必ず停滞をもたらすことは、歴史から明らかになっているはずだ。

 超高齢社会の今、日本は新たな局面に立たされている。グローバル化に柔軟に適応するか、閉鎖的になってしまうのか、選択をするのは私たちの世代だ。

 閉鎖的になることを選択し、人手不足で火車のようになるならば、グローバル化に適応して移民を受け入れ、超高齢社会における圧倒的な看護師不足を補う方が賢明ではないか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49699
http://www.asyura2.com/16/iryo5/msg/598.html

[国際19] 米国のシリア攻撃、一番得をするのは中国だ 韓国と米国に共通する「衆愚政治」の危険 韓国大統領「文」でも「安」でも危機的状
2017年4月12日 北野幸伯 :国際関係アナリスト
米国のシリア攻撃、一番得をするのは中国だ

米軍は4月7日、シリアのシャイラト空軍基地をミサイル攻撃した。理由は、アサド軍が4日、イドリブ県ハンシャイフンを空爆した際、化学兵器を使用したとされること。唐突に感じる米軍のミサイル攻撃だが、これで世界はどう変わるのだろうか?(国際関係アナリスト・北野幸伯)

過去6年にわたって
内戦が続いてきたシリア

 少し詳細に、何が起こったのかを見てみよう。シリアでは、2011年から内戦が続いている。「アサド派」と「反アサド派」の戦いだ。ロシアとイランはアサドを支援し、米国、欧州、サウジアラビア、トルコなどは、反アサド派を支援している。


習近平との首脳会談の日に、シリア軍基地にトマホークを打ち込んだトランプ。その狙いはどこにあるのか、そして、今回の事件は米ロ関係、米中関係にどう影響するのだろうか? Photo:Reuters/AFLO
 13年8月、オバマは、「アサド軍が化学兵器を使った」ことを理由に、シリア攻撃を実行しようとした。しかし、翌9月、戦争をドタキャンして世界を仰天させた。

 その後、反アサド派から分かれた「イスラム国」(IS)が勢力を拡大。14年8月、米国と有志連合はISへの空爆を開始した。さらに15年9月、有志連合とは別に、ロシアがIS空爆をはじめた。

 つまり現在、シリアには、ロシア、イランが支援するアサド派、欧米、サウジ、トルコなどが支援する反アサド派、そしてIS、大きく分けて3つの勢力が存在している。

 米国とロシアは、シリア問題での協力関係を深め、16年2月には、「停戦合意」がなされた。しかし、この合意は破棄され、現在は、ロシア、イラン、トルコがアサド派、反アサド派の仲介をしながら、停戦に向けた努力が続けられている(米国は、事実上このプロセスに関わっていない)。

 アサド軍は4月4日、シリア北西部イドリブ県の反体制派支配地域を空爆。86人が死亡した。この時、化学兵器サリンが使われた疑惑が浮上している。

 トランプ大統領は、「文明世界は、この事件を看過できない」とアサドを批判。英国のジョンソン外相は、「わたしが目にした全ての証拠は、アサド政権が自国民に対し違法な兵器を使用したことを示唆している」と語り、アサドの仕業と断定した。国連のグテレス事務総長は、「シリアで戦争犯罪が続いている」と化学兵器使用を非難。フランシスコ・ローマ法王は、「受け入れられない虐殺だ」と嘆いた。

鵜呑みにするのは危険
米国もウソをつくことはある

 非常に苦しい立場に立たされたアサドだが、彼自身は化学兵器の使用を否定している。では、アサドを支持するロシアの主張は、どうだろうか?時事通信4月5日付を見てみよう。

<ロシア国防省はシリア軍が「テロリストの倉庫」を標的に空爆を実施し、倉庫に毒性物質が含まれていたと主張している。報道官は国連安保理の緊急会合で「われわれの国防省の資料を示す」と語った。>

 つまり、アサド軍が空爆をしたのは事実だが、化学兵器は使っていない。反アサド派の倉庫に化学兵器があり、それが漏れたのだと。

 このような2つの矛盾する情報に接すると、日本人はほとんど無条件に、「米国は本当のことを語っている」「プーチンとアサドは、ウソをついている」と信じがちだ。

 しかし、実をいうと、米国もウソをつくことはある。

 例をあげてみよう。米国は03年、フセインが「アルカイダを支援している」「大量破壊兵器を保有している」ことを根拠に、イラク戦争を開始した。しかし、この2つの理由が「大ウソ」だったことは、米国自身が認めている。読売新聞06年9月9日付には、以下のようにある(太線筆者、以下同じ)。

<米上院報告書、イラク開戦前の機密情報を全面否定

[ワシントン=貞広貴志]米上院情報特別委員会は八日、イラク戦争の開戦前に米政府が持っていたフセイン政権の大量破壊兵器計画や、国際テロ組織アル・カーイダとの関係についての情報を検証した報告書を発表した。>



<報告書は『フセイン政権が(アル・カーイダ指導者)ウサマ・ビンラーディンと関係を築こうとした証拠はない』と断定、大量破壊兵器計画についても、少なくとも一九九六年以降、存在しなかったと結論付けた。>

 もう1つ例を。既述のように、オバマは13年8月、アサド軍が「化学兵器を使った」ことを理由に、「シリアを攻撃する」と宣言した。今回と同じパターンだ。ところが、国連調査委員会は、「化学兵器を使ったのは、アサド軍ではなく、反アサド軍」と報告していた。

<シリア反体制派がサリン使用か、国連調査官

AFP=時事5月5日(月)配信

[AFP=時事]シリア問題に関する国連(UN)調査委員会のカーラ・デルポンテ調査官は5日夜、シリアの反体制派が致死性の神経ガス「サリン」を使った可能性があると述べた。
 スイスのラジオ番組のインタビューでデルポンテ氏は、「われわれが収集した証言によると、反体制派が化学兵器を、サリンガスを使用した」とし、「新たな目撃証言を通じて調査をさらに掘り下げ、検証し、確証をえる必要があるが、これまでに確立されたところによれば、サリンガスを使っているのは反体制派だ」と述べた。>

国際機関の調査を待たずに
トランプは空爆に踏み切った

 もちろんこの報告書は、「アサド軍が化学兵器を使っていない証拠」にはならない。しかし、アサド派も反アサド派も化学兵器を使っているとすれば、米国は、なぜアサド派を責め、(同じく化学兵器を使う)反アサド派の支援を続けるのか?米国の論理は、非常に矛盾している。

 筆者も、「米国は常にウソをつく」とか「アサドやロシアは正直だ」と主張するつもりは、全くない。ただ、米国は、過去にイラクやシリアの件で、はっきりとウソをついたのだから、「即座に米国の主張を妄信するのは危険」と言いたいのだ。

 では、どうすればいいのか?常識的に考えれば、化学兵器禁止機関(OPCW)の調査結果を待つべきだろう。実際、OPCWは、すでに調査を開始している。

<シリア化学兵器疑惑、調査を開始 OPCW
朝日新聞デジタル 4/7(金) 18:03配信
 シリアの反体制派が拠点とする北西部イドリブ県で化学兵器が使用されたとされる問題で、オランダ・ハーグの化学兵器禁止機関(OPCW)は6日、調査に着手したと発表した。すでに情報の収集や分析を開始。シリア当局とも連絡をとり、情報提供を求めているという。>

 しかしトランプは、調査結果を待たず攻撃することを選択した。トランプは4月7日、シリア攻撃に関する演説を行った。曰く、

<火曜日(4日)、シリアのアサド大統領は恐ろしい神経ガスを使って、罪のない市民に恐ろしい化学兵器を発射した。>
 
<シリアが禁止された化学兵器を使用し、化学兵器禁止条約に違反し、国連安全保障理事会の説得を無視したことは疑いの余地がない。>

 トランプはOPCWの調査結果を待たず、アサドの仕業と断定した。

 <かわいい赤ん坊までもが、この非常に野蛮な攻撃によって無情にも殺害された。どんな神の子も、このような恐怖に苦しんではならない。>

 キリスト教徒が大部分の米国民は、この部分を聞いて同意したことだろう。そしてトランプは、「シリア攻撃」を指令したことを明かした。

<今夜、化学兵器による攻撃をしたシリアの航空施設に標的を定めた軍事攻撃を命じた。>

<多くの困難を抱える世界の挑戦に直面する我々に、神の英知を求める。負傷者や、亡くなった人々の魂のために祈る。米国が正義と平和、調和の側に立つ限り、最終的に勝利を得ることを望んでいる。米国と世界全体に神のご加護を。>

 米国が、正義と平和、調和の側に立つというのは、大いに疑問のあるところだが、大部分の米国民は、トランプを支持するだろう。

 こうして、米軍によるシリア攻撃が実施された。巡行ミサイル「トマホーク」59発が、シャイラト空軍基地に向けて発射された。この基地は、アサド派が化学兵器を使った空爆を実施したとされる戦闘機の拠点である。

米軍のシリア攻撃で
世界はどう変わるか?

 次に、米軍のシリア攻撃で何が変わるかを見てみよう。

1.シリア情勢は、あまり変わらない

「米国が決意したのだから、アサドは終わりだ」と考える人も多いだろう。 しかし現時点では、米国がアフガン、イラク戦争並みの兵力をシリアに投入してアサドを倒すという話にはなっていない。

 シリア内戦は、始まってからすでに6年が経っている。そして、今後もダラダラと続いて行く可能性が高い。哀れなのは、犠牲者になるシリア国民だ。

2.トランプ人気は上がる

 一方、トランプの人気は上がる可能性が高い。前述した、13年のオバマのシリア戦争ドタキャンは、「オバマ最大の失態」とされ、彼は「史上最弱の大統領」と呼ばれることになった。トランプは、オバマの失敗を繰り返さないために、シリア攻撃を即決したのだろう。

 これまでトランプは、政権基盤が非常に脆弱だった。民主党は全部敵。共和党の「反ロシア派」も敵。ことあるごとに「フェイクニュース」と批判するので、マスコミも概して敵。特に、CNN、ABC、ニューヨーク・タイムズなどは、はっきりと反トランプである。

 しかし、「シリア攻撃」でトランプは救われるかもしれない。「化学兵器を使った」という衝撃的な事件ゆえ、マスコミもトランプを強く批判できないだろう。
 
 とはいえ、リスクもある。OPCWの調査で、「化学兵器を使ったのはアサド軍ではなかった」との結果が出れば、今度は逆に厳しい批判にさらされることになる。支持率は、一転急降下することになるだろう。

3.米ロ関係は悪化する

 アサドを支援し続けるロシア。アサドを攻撃する米国。当然、米ロ関係は悪化する。

 プーチンは7日、米軍のシリア攻撃について、「主権国家に対する侵略だ!」と強く非難した。大統領選挙戦中、トランプは「プーチン愛」を語り続けてきたが、就任後わずかな期間で米ロ関係はボロボロになってきている。

早くも米ロ関係はボロボロ
漁夫の利を得る中国

4.一番得をするのは、また中国

 元「世界の警察官」米国は、世界3つの地域で問題を抱えている。

 中東では、イラン、シリア問題。
 欧州では、ウクライナ、ロシア問題。
 アジアでは、中国、北朝鮮問題。

 オバマは、シリア、ウクライナ問題に深入りし、中国を放置した。彼が、シリア、ウクライナで、ロシアと「代理戦争」を戦っている間、中国は着々と南シナ海を埋め立て、軍事拠点化していたのだ。

 オバマは、15年3月のAIIB事件でようやく目覚め、中国へのバッシングを強めた。そして、彼はロシアと和解し、ウクライナ、イラン、シリア問題解決への道筋を作った。

「ロシア好き、中国嫌い」のトランプ大統領が誕生し、「ようやく米国が中国の暴走を止めてくれる」との期待が高まった。しかし、蓋を開けてみればトランプは、15年以前のオバマと同じ過ちを繰り返している。すなわち、シリア問題でロシアと激しく対立しているのだ。

 米軍がシリア軍基地を攻撃したその日、トランプは習近平と会談している。「シリア攻撃」の命令を出し、夕食中にそのことを習近平に伝えた。習はトランプの説明に謝意を示し、攻撃に理解を示したという。

 このタイミングでシリアを攻撃したのは偶然ではないだろう。

 米国は、「間もなく米本土に届く大陸間弾道ミサイルを完成させる」と宣言している金正恩を放置するだけでなく、支援し続けている中国に憤っている。今回のシリア攻撃は、「もし中国が北を放置するなら、米国はシリア同様、北朝鮮攻撃を開始するぞ!さっさと金正恩をなんとかしろ!」というメッセージだったのではないだろうか。

 それにしても、米国のシリア攻撃を「侵略だ!」と強く非難したプーチンと、「理解を示した」習の反応はずいぶん違う。(習の場合は、唐突に切り出され、アドリブで適切な反応ができなかっただけかもしれないが)

 ロシアは米国の行動に「敵対的」であり、中国は米国に「融和的」である。シリア攻撃で米ロ関係は悪化するが、米中関係は、これまでと変わらない。

 中国の「理想的な戦略」は、「2頭のトラの戦いを、山頂で眺めること」といわれる。つまり、「米国とロシアを戦わせ、中国が漁夫の利を得ること」。中国は、またもや理想的なポジションを確保しつつある。 

http://diamond.jp/articles/-/124488

 

 

2017年4月12日 渡部 幹 :モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授
韓国と米国に共通する「衆愚政治」の危険に潜む心理

韓国とアメリカに共通する
「感情的正義」

 朴前大統領の弾劾が行われた韓国では、次の大統領選に向けて候補者のつばぜり合いが行われている。

 朴前大統領は就任以来、比較的高い支持率を堅持していた。就任直後から50%台後半から60%台前半を推移し、「空白の7時間」が問題となったセウォル号事件直後でも46%までしか落ちなかった。その後、中国との蜜月外交と再選挙、補欠選挙で与党が勝ったことから、支持率はまた50%台に持ち直した。


朴前大統領がどれだけの罪を実際に犯したのか、という冷静な報道がほとんどなされないままに弾劾を決めた韓国。正義を論理で判断するのではなく、感情で判断していることがうかがえる Photo:AP/AFLO
 ところが、2016年10月に、大統領の友人である崔順実の国政介入問題、いわゆる「崔順実ゲート事件」が起こると支持率は一気に急落し、11月初頭には5%までに下落した。伝統的な左派地盤である全羅南道に限れば支持率は0%だった。

 その後、大統領弾劾の機運が高まり、ソウルではいわゆる「ろうそくデモ」が起こり、あっという間に弾劾が決まった。その後も、大統領に対する世論の風当たりは止むことがなく、現在まで続いている。

 弾劾が決まった時、また大統領が逮捕された時、韓国のテレビ局が流すニュースやネットでは、市民の「正義が実行された」「大統領といえども、過ちを犯すとこうなる」といったコメントであふれた。

 しかし、大統領が実際にどれほどの罪を犯したかについて、客観的で冷静は報道をほとんど見かけない。本当に「正義」を求めるならば、そのような検証が必要だと思うのだが、少なくとも筆者の知る限り、本格的にそういった議論がなされるのを見たことはない。

 一方で先日、アメリカがシリア爆撃を決定し、すぐさま実行に移した。アサド政権下にあるシリア政府が化学兵器を用いたというのが理由だ。その兵器は、サリンガスと推定される。1995年にオウム真理教が東京都内地下鉄テロ事件で用いた毒ガスなので、知っている読者の方々も多いだろう。

 トランプ大統領は多くの子どもたちが化学兵器の犠牲になったことを「人道への侮辱」として、直ちに攻撃に踏み切った。米中首脳会談の最中だったにもかかわらずだ。

 そして、大統領の決断は、アメリカ国内ではおおむね支持されているようだ。かのクリントン氏さえ支持しており、「これでトランプは真に米国大統領になった」という声も聞かれるくらいだ。

「正義か否か」の判定には
感情が大きく関わっている

 しかし、多くのニュースで触れられていたように、化学兵器を使ったのは、本当にアサド政権なのか、ほとんど検証されていなかった。実際、アサド政権にとって化学兵器を用いるメリットはまったくと言っていいほどない。にもかかわらず、アメリカは問答無用でトマホーク59発を撃ち込んだ。アメリカ政府がアサド政権の化学兵器使用の証拠をつかんだと発表したのは、この爆撃後4日経ってからだった。

 それでもアメリカ世論は好意的に見ているのだ。これは「正義」だと。

 最近起こった、この2つの国での出来事は、「感情的正義」の力の大きさを端的に示している。

 もともと、正義についての研究は、公共哲学を中心とする思弁的な学問分野で主に行われてきた。その歴史は、ギリシャ哲学にさかのぼるほど古いが、目的はシンプルである。それは「正義とは何か」を知ることだ。さまざまな正義の定義や基準が多くの学者によって研究されてきた。その果てには何か統一的で共通する「正義像」があるのではないか、という期待が、それらの研究分野の前提にある。

 その1つの到達点と言われるのが、アメリカの政治哲学者、ジョン・ロールズの著した『正義論』だ。詳しいことは割愛するが、彼はこのなかで「無知のヴェール」、「正義の二原理」という重要な概念を提唱し、正義論の発展に大きな影響を及ぼした。

 ロールズを含むそれら正義論の特徴は、理性、論理によって「何が正義か」を思考していくことにあった。しかし、近年はそれとは異なるアプローチが台頭している。

 その授業の面白さで、日本でもブームとなったマイケル・サンデル(ハーバード大学教授)は、正義の判断には、感情が重要な役割を果たすとし、それをむしろ積極的に肯定している。

 そして、近年の脳科学、心理学の研究でも、これを支持する結果が出ている。私たちが「○○は正義かどうか」を判断する際には、「島」や「扁桃体」といった主に感情を司る脳部位が、「側頭頂結合部」や「上側頭溝」などの論理や推論を司る部位と同じ、あるいはそれ以上に関与していることが明らかとなってきた。

 これらの結果が示しているのは、「何が正義」かという主張は、方便さえ整えば、人々が「気持ちいい」「溜飲がさがる」という方向に簡単に流れる可能性があるということだ。

諸刃の剣と言える
「感情的正義」に気をつけろ

 罪状がはっきり特定されないまま「悪者」に仕立て上げられた朴氏を攻撃することによる「勧善懲悪感」や、誰が使ったか検証されていない毒ガスの手当を受けるかわいそうな子どもたちの衝撃的映像は、理論的、論理的な正義判断を凌駕して、感情的な正義判断を助長する。

 実は多くの革命は、こういった感情的な正義によって行われてきた可能性が高いと筆者は感じており、歴史の流れにおいて感情的正義の果たす役割は大きいと感じている。

 だがその一方で、韓国やアメリカを見るに、筆者はこの状況は好ましくないと思っている。民主主義が浸透し、国民主権が当たり前となれば、為政者にとっては、感情を煽ることで正義をふりかざすのが最も手っ取り早い。しかし、感情は一時的なものだ。後になって間違いに気づくことも多い。しかし政治的決断の場合、それはもう手遅れになることが多いのだ。

 最近の研究では、セロトニントランスポーターやオキシトシン受容体といった脳内物質が、これら感情と論理の正義判断傾向に影響を及ぼす可能性のあることが、わかってきている。つまり、脳の状態によって、我々は簡単に感情的正義に流されもするし、論理的に正義を考えることもできるということだ。

 国際情勢が荒れている今こそ、冷静になることが必要だろう。「気持ちいい」「溜飲がさがる」という感情を全面的に否定するわけではないが、その前に必ず一度、冷静になって判断することが、我々一人ひとりに求められている。そうしないと民主主義は、衆愚政治へと堕ちてしまう。そして後になってそれに気づいても、もう遅いのだ。
http://diamond.jp/articles/-/124487

 

2017年4月12日 武藤正敏 :元・在韓国特命全権大使
韓国大統領選、「文」でも「安」でも危機的状況は変わらない


「国民の党」元共同代表の安哲秀候補が追い上げてきた Photo:Lee Jae-Won/AFLO
朴政権の進めた北朝鮮政策や
日韓関係の改善は逆戻りする

 3月10日に朴槿恵大統領が韓国の憲法裁判所によって罷免され、5月9日に大統領選挙が行われることとなった。

 国民の不満により韓国の憲政史上初めて弾劾された朴前大統領だったが、対北朝鮮戦略や日韓関係においては少なからぬ実績を残してきた。

 例えば、北朝鮮問題では昨年2月、国会で、「これまでのやり方、善意では北朝鮮の核開発は止められない。金正恩はいずれ核を実戦配備するであろう。実質的変化をもたらす根本的な解決策を取る勇気を持たなければならない」と演説し、北朝鮮の経済特別区である開城公団の全面中断、地上配備型迎撃ミサイル(THAAD)の配備、米韓合同演習の強化など強硬な姿勢を取ってきた。

 また、日韓関係についても慰安婦問題で合意を導き、この合意を実践するため「挺身隊問題対策協議会(以下“挺対協”)」や「ナヌムの家」に属さない独立した元慰安婦の説得に当たり、7割を超える元慰安婦の同意を取り付けてきた。したがって、本来この問題は一部の活動家とそれに連なる元慰安婦を除いては、解決しているはずであった。

 そんな朴前大統領が弾劾され、大統領選では全ての候補者が朴前大統領とは真逆の政策を掲げて戦うという構図となっている。

 そこで今回は、大統領選の争点となる(1)経済問題、(2)北朝鮮の核ミサイル開発の問題、(3)慰安婦合意を始めとする日韓関係について、現時点で想定される展望を概観してみたい。

経済問題の改革は
次期大統領でも改善は難しい

 経済問題で最大の焦点となるのは、格差の是正、国民の幸福の追求、財閥と政界との癒着の解消などである。これらはいずれも、朴前大統領と文在寅氏が前回の選挙で戦った時の争点であるが、いずれも解消していない。

 今回の選挙で各候補は、経済成長をもたらす具体的な政策については言及せず、富の分配によって国民の不満を解消する政策を掲げている。その一例が、最低賃金を1万ウォン(約1000円)に引き上げようというもの。だが、これは韓国の大多数を占める中小零細企業にとって耐えがたいほどの負担であり、企業の倒産を始めそれに伴う失業者の増大を招く危険性を無視している。

 そもそも韓国では、就職、恋愛、結婚、出産、マイホーム、人間関係、夢を諦めた「7放世代」と言われる若者が多く存在し、朴前大統領の弾劾を動かしたエネルギーとなった。各候補ともこうした世代に迎合するのみ。本来、韓国経済を停滞から回復させ、底上げしていくためには規制緩和と新しい産業の創出、中小企業対策の強化が不可欠であるにもかかわらず、そのための具体策に言及する候補者はいない。つまり韓国経済が独自の力で著しく改善するのは難しいといえよう。

北朝鮮の核開発問題が最大の争点 
融和主張の危うさに気づき始めた国民 

 続いて北朝鮮の核開発問題。これは今回の大統領選最大の争点であり、韓国の国民が、各候補の主張をいかに考えるかが選挙の帰趨を決定すると言えそうだ。

 これまで、選挙戦で終始独走してきたのは、文在寅「共に民主党」元代表である。
故盧武鉉元大統領の青瓦台(大統領府)秘書室長を務めた最側近であり、盧武鉉大統領の遺志を継いで大統領に立候補している。

 盧武鉉氏は人権弁護士出身であり、クリーンな人物として若者の圧倒的な人気で大統領になったが、親族の不正に関する捜査が自身に及びそうになって自殺した。しかしこのことが、李明博大統領(当時)に殺害され、非業の死を遂げたと捉えられ、依然として若者からの支持と同情が集めている。若者に人気のなかった朴前大統領の対極をなす人物として文候補は最も支持を集めてきた。

 だが、文候補は極端な北朝鮮融和主義者として不支持率も高い。仮に文大統領となれば、北朝鮮の核開発を止める手立てはなくなるであろうと見られているためだ。このため、韓国で保守派と言われる人は、何としても文候補の当選は阻止しなければいけないとして、やっと現実に目を向け動き出したのが最新の世論調査である。

 4月6日に公表された、韓国ギャラップ調査によれば、国民の党の元共同代表の安哲秀候補が文候補を猛追している。先週行った調査では、文候補支持が40%、安候補支持は29%であったものが、7日には文候補支持が38%に対し、安支持が35%と、その差は誤差の範囲内にまで縮まっている。これは去る3日に行われた「共に民主党」内の予備選挙で脱落した安熙正氏、李在明氏の支持層の票が、安哲秀候補に移ったためであろう。

 韓国の公共放送KBSと聯合ニュースが9日に発表した調査では、政党候補5人のうち、安氏の支持率が36.8%、文氏が32.7%と初めて安氏が首位に立った。今後の注目点は、15、16日の大統領候補登録の後も、安候補が上り調子を維持できるか、に集まっている。

 確かに文候補の北朝鮮融和策は危険である。文候補は、北朝鮮の人々は同じ民族であり、その指導者である金正恩と対話していくと主張する。文候補の盟友、故盧武鉉元大統領は北朝鮮の核開発は自国の防衛のためであるとして理解を示してきた。文候補も同じ見方であると考えられる。また、宋旻淳元外相(盧武鉉政権当時)の回顧録によれば、文候補は2007年に国連総会で北朝鮮の人権決議を審議した際、韓国の投票行動を北朝鮮と協議したうえで棄権している。さらに、2007年の大統領選挙の2ヵ月前になって大統領候補の反対を押し切り、故盧武鉉の北朝鮮訪問による首脳会談を推進して南北関係を既成事実化しようとしたのも文候補である。

 文候補は、「大統領になった際、米国よりも先に北朝鮮に行って何が悪い」と述べているほど。文候補が大統領になれば、これまでの日米韓の結束と、北朝鮮の核開発の放棄を求めてきた努力が水泡に帰す懸念が強い。

 他方、安候補は中道寄りの候補と言われ、北朝鮮の脅威を見誤るべきではないとしており、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備についても「国家間の合意は尊重すべきだだ」として支持し、文候補の「次期政権が決めるべき問題」として消極的姿勢を示すのとの違いを示している。

 ここに来て安候補が猛追してきたことは驚きであるが、韓国国民が北朝鮮の脅威を直視し、危機意識を持ったのであれば救いである。同時に仮に文候補が当選するような事態になっても、勝手に北朝鮮と気脈を通じることがないよう何らかの対策を考えておく必要がある。

 THAAD配備の前倒しはその一つ。韓国国内で北朝鮮への対応について、マスコミを中心に活発な論議を行って国民の意識を高めておくことも、単に選挙における正しい投票行動を促すだけでなく、北朝鮮に対する過度な接近を抑制する手段として有効かもしれない。

理性的な判断ができない状況
慰安婦像について今は静観の時

 次期政権下では、残念ながら日韓関係が一層緊迫することは避けられないであろう。特に、慰安婦問題については全ての候補が、合意の破棄や見直しを主張しているからだ。

 ただ、それぞれの候補がどれだけ強く慰安婦合意に反対しているかは、現在の各候補の主張からだけでは分からない。文候補の反日はより確信的であろうが、安候補がより現実的かはまだわからない。大統領選においては、朴前大統領の政策を全否定することが当選への道と考えている節があるので、大統領選挙後も変わらないかは何とも言えない。言えることは表面的な全候補の主張に大きな違いがあるわけでなく、日韓関係を争点化しても“得点”にならないということである。最近の安候補の猛追に見られるように、大統領選に影響を及ぼしているのは北朝鮮問題であり、日韓関係ではない。

 朴前大統領は慰安婦合意を履行するために、過去の大統領がしたことがないような努力をしてきたことは率直に認めていいだろう。また、少女像の撤去については慰安婦問題の合意そのものよりも韓国国内の反対が強いことから、まず韓国国内に慰安婦問題の解決を納得させて、その後慰安婦像の撤去に移そうと考えていたのだと思う。ただ、そうした朴前大統領の目論見を砕こうとしたのが挺対協である。

 今般、長嶺大使が韓国に帰任し、慰安婦問題の誠実な履行と、次期政権への確実な引継ぎを求めるため、大統領代行に面会を要請したにもかかわらず、「大統領代行は大使とは格が違う」「日本側が事前に韓国政府と調整することなく一方的に面会要請を発表したのは外交儀礼に反する」などとして、面談要請は検討さえされていない。残念なことである。

 もともと、日韓関係悪化の原因となったのが釜山総領事館前の少女像の設置であり、これを止めなかったのは韓国政府である。長嶺大使の帰国はそれに抗議してのこと。日本への一時帰国後、日本政府の立場を韓国政府首脳に伝えたいとするのは決して不自然なことではない。大使は格が違うといっても、日本政府の首脳からの指示による要請であれば、受け入れるのが普通ではないか。韓国政府にとって愉快なことではないであろうが、友好国同士の間であれば、そうした配慮があってもおかしくない。ただ、今度も韓国政府は国民の反発を意識し、日韓関係よりも国内政治を優先したということである。

 このような状況で、日本が慰安婦問題で韓国政府に申し入れを行ってもその成果はあまり期待できないかもしれない。むしろ、そのことによって韓国国内で日本批判の声が高まり、慰安婦問題を大統領選の争点にすることは望ましいことではない。今は、静かにしておき、大統領候補に慰安婦問題であまり発言させないことが賢明だ。

 いずれにせよ、大統領選後ただちに状況が改善するとは思わないが、何らかの機会に日韓関係見直しの気運が生じれば、新しい大統領も客観的な視点に立って、より柔軟な対応をとる機会が訪れるかもしれない。あまり愉快なことではないが、中長期的にみれば、日本にとっては様子見をしておく方が得策なのかもしれない。

(元・在韓国特命全権大使 武藤正敏)
http://diamond.jp/articles/-/124416
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/107.html

[戦争b20] 南シナ海の戦略水域、中国は「アメとムチ」で勢力増大 米国のシリア攻撃一番得をするのは中国 日本人は世界一自然環境を重視
2017年4月12日 ロイター
南シナ海の戦略水域、中国は「アメとムチ」で勢力増大

4月10日、南シナ海のスカボロー礁付近の水域に、いかりを下ろした漁船が何マイルにもわたって列をなしている。背後には、中国海警局の小艦隊がにらみをきかせ、アジアで最も激しい領有権争いが起きているこの海域での中国の勢威を誇示している。写真は同礁で5日、中国国旗を掲げた漁船と中国の沿岸警備艇(2017年 ロイター/Erik De Castro)
[スカボロー礁(南シナ海) 10日 ロイター] - 濃紺の深海と淡青の浅瀬が接する南シナ海のスカボロー礁(中国名:黄岩島)付近の水域に、いかりを下ろした漁船が何マイルにもわたって列をなしている。

 背後には、中国海警局の小艦隊がにらみをきかせ、アジアで最も激しい領有権争いが起きているこの海域での中国の勢威を誇示している。

 国際司法の場で、中国がこの環礁を実効支配していることが違法と裁定されてから9ヵ月が経過したが、同国は今もこの豊かな漁場における主権を主張し、船団を増強している。

 南シナ海の大半において主権を有するという中国の主張を無効とした常設仲裁裁判所の裁定の受け入れを、中国政府は拒否している。

 ただし、中国船舶のあいだにフィリピン籍の船舶も点在していることから、この裁定をある程度遵守しているようにも見える。フィリピンのドゥテルテ大統領が、数十億ドル規模の融資や、投資、貿易交渉を中国と進めていることもプラスに働いている可能性がある。


写真はフィリピンの漁船ボートの横を通過する中国の沿岸警備艇。同礁で5日撮影(2017年 ロイター/Erik De Castro)
 中国は10月、フィリピン船舶に対する排除行動を中止し、フィリピンから200キロ離れた海面に露出した岩礁の周縁部における漁船の操業を認めている。制限をさらに緩和しようとする動きも見られる。

 ロイターの記者は先週、スカボロー礁に足を踏み入れた。外国メディアがこの地を訪れるのは、中国が実効支配を開始した2012年以降初めてのことだ。多数の小型漁船が日夜、この岩礁に出入りし、豊かな水産資源を獲得している様子をロイターの記者は目撃した。

 潜水マスクを着け、銛を手にしたビンセント・パラワンさんは、岩礁内の水域で立ち泳ぎしながら、「中に入れてもらえるようになってありがたい。これで家族を養える」と語った。

「中国人にここにいて欲しいとは思わない。何しろ彼らは数が多いから、私たちの漁業に影響が出る。しかし共存しようという気持ちはある。追い出されるのは嫌だ。少なくとも今は、魚を捕ることができる」

 サンゴ礁からなるこの環礁は、南シナ海における勢力争いの象徴的な存在であり、戦略上の「火薬庫」となっている。中国とフィリピンの他、台湾とベトナムもスカボロー礁に対する主権を主張している。

 譲歩する姿勢を見せているとはいえ、この水域での中国のプレゼンスは増大している。海警局の艦艇と漁船で構成される船団の規模は、昨年末の衛星画像によって確認された数からさらに拡大している。

 こうした動きにフィリピン政府は懸念を募らせている。フィリピンの排他的経済水域内にあるスプラトリー(南沙)諸島に人工島を築き、要塞化した中国が、スカボロー礁においても同じような野心を持っているのではないかと疑念を抱いているのだ。

平和的共存

 スカボロー礁は水面にようやく頂点を出している岩からなる、1辺46キロの三角状の環礁で、フィリピン・中国両国の船舶は、そこから100メートルも離れていない場所に並んで投錨しており、両者のあいだには平和的な共存が見られる。

 麦わら帽子をかぶった中国人が漁船のあいだを行き交い、フィリピン人と身振り手振りを交わしつつ、煙草や酒と魚を交換している。

 小型漁船はブーンとエンジン音を響かせ、サンゴ礁が作る天然の消波堤を抜け、環礁内の水域を出入りする。何世紀も前から漁師たちに豊富な漁獲と嵐からの避難所を提供してきた場所である。

 老朽化した手狭な漁船に乗ったフィリピン人漁師たちは、数のうえでは約10倍と優位にある、増強された中国船団との競争に不満を漏らす。

「以前は数日間、漁を行っていたが、今は数週間だ。少なくとも、ある程度は魚を獲れる」と語るのは、20年にわたり漁業を営んでいる漁船の船長ラミル・ロザルさん。

「中国人はもっとたくさん獲っている。フィリピン漁船は彼らと魚を分け合わなければならない。だが、彼らが特に迷惑ということはない。親切な人たちもいる」

 オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、すべての国に開かれた伝統的な漁場だと判断したスカボロー礁付近の水域だが、ここでは中国海警局の艦艇数隻が自国ルールを強制している。同裁判所は、環礁の領有権については判断を下していない。

 フィリピンのマナロ外相は、フィリピン漁船にとってのアクセスが改善されたことは「もちろん常設仲裁裁判所の裁定に沿ったもの」だと話している。

厳重な監視体制

 ロイターが漁師たちに取材したところ、中国海警局の艦艇は、大型漁船が環礁内に入ることは禁じているものの、2人乗りの小型漁船であれば環礁内で自由に漁ができるという。

「中国漁船にもフィリピン漁船にも同じルールが適用されている」とロザル船長は言う。

 見慣れぬ船舶がこの水域に近づくと、監視のため強力なエンジンを備えたボートが大型の艦艇から発進することがある。

 昨年のフィリピン政府からの発表によれば、海警局の艦艇のうち3隻は水の底の土砂を取り去る能力を有する艦種だったという。そのうち1隻は環礁内に常駐していたが、その行動内容は明らかではない。

 ロイター取材陣が中国漁船に横付けしてみると、海警局が中国の漁師たちと連携していることが分かった。

 漁船員の1人は急いで携帯無線を手に取り、記者たちの写真を撮影した。まもなく海警局の艦艇が針路を変え、こちらに向かって急速に接近してきたが、短時間追尾しただけで引き返していった。


写真はフィリピンの漁師。同礁で6日撮影(2017年 ロイター/Erik De Castro)
 ロイターは中国外務省にスカボロー礁に関する質問を送ったが、ただちに回答は得られなかった。同省の最近のコメントは曖昧で、スカボロー礁の状況に変化がないことを述べているだけだ。

 フィリピンの漁師たちは、ベトナム漁船もスカボロー礁で漁を行っており、それはベトナム政府が中国政府による新たな措置を試している兆候だと語った。

 とはいえ、ロイター取材陣はベトナム漁船を1隻も目撃しなかった。またベトナムの2つの漁業団体は、自国漁船がスカボロー礁に向かったことを把握していないと述べた。ベトナム政府からの回答は得られなかった。

 スカボロー礁をめぐる状況は改善されているとはいえ、緊張は残っている。

 先月、中国がスカボロー礁に環境測定所を建設することを計画しているとの報道があり、フィリピン側を驚かせた。ドゥテルテ大統領は、中国の行動を止めることはできないが、「両国の友好を尊重するならば」建設はないと確信していると述べた。

 そして、ドゥテルテ大統領はつい先週、南シナ海でフィリピンが占有する9つの環礁・島嶼(とうしょ)上の施設の更新を命じて、中国、ベトナム両国を警戒させている。

 今のところ、フィリピン漁船は中国との緊張緩和を最大限に利用しており、環礁に数ヵ月も留まっている者さえいる。

 日に焼けた肌に傷みの目立つ作業着をまとった男たちは、過積載状態の漁船の舷側を慌ただしく行き交いながら、魚を入れたカゴを、フィリピンに帰港する船へと積み替えている。

 37歳のレナート・エタック船長は、ひっきりなしに煙草を吸いながら、魚の重量を測り、各々の納品分について詳細に記録している。エタック船長によれば、漁獲高は減少傾向にあるとはいえ、スカボロー礁での操業はフィリピン人漁師にとって「お祭り」だという。

 エタック船長は、中国海警局についても肯定的に見ている。

「もし彼らがここにいなければ、スカボロー礁は皆に解放される。違法操業の漁船も含めてだ」と彼は言う。「彼らがここにいることが、ある意味、抑止力になっている」

(Martin Petty 翻訳:エァクレーレン)
http://diamond.jp/articles/-/124177

 


 

米国のシリア攻撃、一番得をするのは中国だ 韓国と米国に共通する「衆愚政治」の危険 韓国大統領「文」でも「安」でも危機的状
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/107.html

 

 


017年4月12日 本川 裕 :統計データ分析家
「日本人は世界一自然環境を重視」世界価値観調査を読み解く

日本人が最も重視している
価値観は自然環境の価値
 国際共同意識調査の代表格である「世界価値観調査」では、日常生活を導く10個の基本価値を体系づけたシュワルツ(Schwartz)の価値理論にそって、それぞれの“価値”について、回答者がどれだけ“大切”にしているかという設問を設けている。
 それぞれの価値を大切にしていると回答した人の比率を10個の価値についての回答結果の平均で除して、それぞれの価値の相対的重視度を計算した。図1には、日本人の回答の結果を掲げている。
 これで見ると、日本人は、「自然環境」の価値を項目平均の1.71倍と最も重視している点が目立っている。2番目、3番目は、それぞれ、「安全」の価値、「創造性」の価値を重視している。最も重視していないのは、「裕福さ」の価値であり項目平均の0.23に過ぎない。
◆図1 日本人はどんな価値を重要視しているか
©本川裕 ダイヤモンド社 禁無断転載 拡大画像表示
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 この自然環境の価値の相対的重視度を対象国60ヵ国について計算して、ランキングすると図2の通りとなる。日本は、1.46で2位だったオランダを大きく上回る世界一の高さである。
 自然環境の価値に対しては多くの国で1.00以上となっており、比較的重視されている価値といえる(世界全体では、「安全」「社会貢献」に次ぐ3番目である)。その中で、自然環境の価値の重視度が低い国としては、アフリカやイスラム圏の国が目立っている。
◆図2 自然環境をどれだけ重視しているかの世界ランキング(60カ国中)
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日本は「共存すべき」が
96.1%で世界トップ
 世界価値観調査では、以前、「自然は支配すべきものか、共存すべきものか」という形で各国の自然観を尋ねた設問を設けていた。この設問の結果から、日本人の自然観がどのような特徴を持っているかをさらに調べてみよう。
 図3を見ると、日本人の回答は「人間にとって自然は調和し、共存すべきものである」が96.1%と圧倒的である点が目立っている。同比率は、米国が84.6%、中国が56.2%と低くなり、サウジアラビアに至っては35.0%と、むしろ「人間にとって自然は支配すべきものである」という回答の57.0%を大きく下回っている。
◆図3 自然は支配すべきものか、共存すべきものか
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◆表1 自然は支配すべきものか、共存すべきものか(世界57カ国、1995〜2003年)
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 表1は、この設問に対する世界57ヵ国の回答結果(「共存すべきもの」の回答割合)を大陸別に整理したもの。日本は、アジアのみならず、世界的に見ても最も「共存すべきもの」の回答割合が高い点が目立っている。
 自然観については、西洋は「自然の支配」、東洋は「自然との共存」が特徴であるという見方があるが、回答結果を見る限り少なくとも現在の欧米とアジアとの間ででそうした対立は認められず、欧米もアジアもそれぞれ国ごとにばらつきが大きくなっている。
 むしろ、経済発展の進んだ先進国では、自然観に関して「共存」志向が強く、発展途上国では「支配」志向が強いという一般傾向が認められる。高い経済成長の下では、橋梁、堤防など社会資本整備も大きく進展し、「自然の支配」志向も高まる傾向があるといえる。
 その中で、米国が先進国である割には、「共存」志向が弱い点が気になる。
 さらに、「支配」志向の強い国は、アフリカやイスラム圏に多く、また、ヨーロッパ・中央アジアや東アジア・太平洋の中では、ロシアをはじめとする旧ソ連圏諸国や中国、ベトナムといった社会主義国、旧社会主義国での特徴である点も目立っている。

日本人も以前は自然改造を
志向していた時代があった
 これまで見てきたように、日本人の自然観は世界の中でも自然保護の価値観が最も強く、また自然との共存を最も重視しているという特徴がある。しかし、これは以前から変らない日本人の特徴なのであろうか。この点を探るため、日本人の意識の長期データの得られる統計数理研究所の国民性調査における自然観に関する設問の結果を見てみよう(図4参照)。
◆図4 日本人の自然観の長期推移
©本川裕 ダイヤモンド社 禁無断転載 拡大画像表示
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 この設問は、人間が幸福になるためには「自然に従わなければならない」か、「自然を利用しなければならない」か、「自然を征服してゆかなければならない」か、という3つの選択肢で自然に対する見方をきいている。上の「自然を支配すべき」はここでの「自然を征服」にほぼ該当しているといえよう。
 今では非常に少ない「自然を征服」への回答は、以前から少なかったわけではないことが分かる。
「自然を征服」は戦後すぐには2割強とそう多くはなかったが、高度成長期には増大し、34%にまで達した。ところが、1973年には、2割以下へと急落したのが目立っている。その後も「自然を征服」の割合は低落し続けた。
 1968〜73年の大変化は、公害問題が1970年前後にマスコミでも連日大きく取り上げられ、70年11月には公害国会が開かれるなど爆発的な社会問題となったためである。1971年の環境庁(現環境省)発足の影響、1971〜72年に新潟水俣病、四日市公害、富山県イタイイタイ病、熊本水俣病といういわゆる四大公害裁判の判決が続いた影響もある。自然を征服しようというのは人間のおごりではないかという考え方が、急速に広がったことがうかがえる。
 一方、「自然に従う」は、特定の企業が引き起こす「公害問題」を契機に増加したが、その後も大気汚染や水質悪化といった国民の生活が引き起こす「環境問題」へ、そして人間の消費拡大がグローバルな温暖化につながるという「地球環境問題」へと、自然との関わりについての課題が深化・拡大するに伴って増加してきた。今や国民意識に染みつくまでに至っているエコ志向も、こうした長期傾向を背景としていることはいうまでもない。

人類は自然や環境を
大切にするようになるだろうか
「自然を支配」あるいは「自然を征服」するという自然観は、おそらくユダヤ教からキリスト教、イスラム教へと引き継がれた一神教の成立と普及とともに、中東から世界に広がったと思われる。全能の唯一神だからこそ自然を造り、改造することが出来るのであり、人間はこの神の手助けを得られると思うから、自然を支配するという考えを抱くことが可能となったのであろう。
 さらに、全能の神が歴史という概念に置き換えられ、「自然に従属していた段階から、技術進歩により自然を征服するに至るのが歴史的な人間の使命」というような考え方として、同種の自然観が社会主義思想の中で生き延びてきたと思われる。旧ソ連圏諸国や中国、ベトナムにおいて「自然を支配」の考え方が強いのは、こうした事情によるものといえよう。
 一時期は、日本も一神教にルーツをおく欧米思想の影響で、自然を征服できると考えた時期があった。だが、公害問題や環境問題の深刻化、また温暖化による地球環境問題に直面したことによって、経済発展の中で同じように環境問題が深刻化した欧米先進国と同様に、自然との共存志向へと大きくギアチェンジして来た。
 しかし、自然との共存志向が世界一のレベルにまで達しているからには、それなりの日本固有の事情があると考えなければならない。
 日本は島国なので大陸からの影響は逐次的であり、世界的な宗教思想による精神面の根本改造を経験していない。そのため、先進国としてはまれな例として、もともとの土俗的な自然信仰が途絶えることなく受け継がれて来ている。花見や俳句の季語などに代表される情緒面での自然交流の長い経験を有してもいる。こうしたことから、高度成長期の「自然の征服」による弊害からの反動で、世界一の「自然との共存」志向にまで至ることになったのであろう。
 深刻極まりない原発事故が起こったにもかかわらず、世界一の「自然との共存」志向のわが国で、「自然の征服」型の代表ともいえる原子力発電方式を継続するのは、いかにも無理があるような気がする。
 また、どの国も地球的な環境問題から逃れることはできないことから、資源・エネルギーの消費大国である米国と中国の動向に、わが国としても無関心ではいられない。国際的な取り組みに対しては、各国の国民意識のあり方による影響が大きいことはいうまでもない。このため、先進国としては不思議と「自然との共存」志向の低い米国や社会主義の影響もあって、基本的に「自然との共存」志向の低い中国の国民の自然観が、どのように推移していくかに目が離せない。今後、公表される世界価値観調査などの国際意識調査の最新の結果が注目されるのである。
(統計データ分析家 本川 裕)

http://diamond.jp/articles/-/124483


http://www.asyura2.com/17/warb20/msg/134.html

[経世済民120] 「結婚」は昨今の経済状況下では損か得か 無礼な振る舞いを見過ごすとチームの能力は下がる 能力の低い人ほど自分を過大評価す
2017年4月12日 山崎 元 :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
「結婚」は昨今の経済状況下では“損”か“得”か


過去5年で男女ともに
生涯離婚率が3%以上上昇

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2015年で「生涯未婚率」の対象になる日本人は、男性が23.37%、女性が14.06%にのぼったという。同推計は国勢調査を分析して行われるとのことだが、5年前と比較すると、男性で3.37%、女性で3.45%増加しているとのことだ。

 はじめに断っておくが、筆者は、他人について結婚するかしないかについて、どちらが望ましいという価値観を持っているわけではない。無理にでも(たとえば日本社会のために)結婚せよという気持ちもないし、独身がいいと勧めるつもりもない。性別、年齢、国籍に関係なく、自分の結婚くらい自分で好きに決めたらいい。

 さて、生涯未婚率とは、満50歳までに一度も結婚しない人の比率だ。近年、男女共に寿命が延びて、高齢でも元気なので、「50歳まで未婚」を「生涯未婚」と同一視していいのかについては、少々疑問があり、対象者から抗議の声(?)が上がるかもしれないが、特に50歳以降は女性が妊娠・出産するケースがごく少ないので、人口動態を考える上では、この辺を区切りにしておくことに、一応の意味がありそうだ。

 それにしても、生涯未婚率の上昇ペースは速い。ここ5年で3%以上増えたとは、社会の変化としていかにも急激だ。

「ここ5年で3%以上増えた」と言うと、つい昨今の経済状況に関連付けて説明したくなる。近年の勤労者所得の伸び悩みなどを見ると、結婚適齢期の世代の経済的困窮が結婚を妨げているようにも思えるが、それは、必ずしも適切ではない。過去のデータを見ると、男性では1970年代から一貫して、女性も1980年代後半からずっと「生涯未婚率」は上昇を続けている。

 もっとも、女性の生涯未婚率の上昇カーブが男性並みの傾きになるのは、2000年代前半からなので、勤労者所得の伸び悩みが、未婚率の上昇につながった可能性はあるだろう。

 女性側から見て「私を養ってくれる甲斐性のある男になかなか出会えない」という状況は進んでいるはずなので、女性側には強い経済要因があるかもしれないし、か弱き男性側にも女性側の心理を忖度することが遠慮につながっている可能性がある。なお、筆者は、女性が男性の経済的甲斐性にこだわることには賛成しないが、こだわる女性がいるのは事実だろう。

結婚したいと思う男性が
適齢期男性の5%以上余っている

 国立社会保障・人口問題研究所が昨年9月に公表した出生動向基本調査によると、「いずれは結婚したい」と考える18歳?34歳の未婚者の割合は、男性85.7%、女性89.3%であるという。これらの調査対象は、生涯未婚率の計測対象になっている世代と世代が異なるが、「結婚したい」と思っていても、結婚に至っていない男女が少なからずいることは、事実のようだ。

 ケインズ以後の経済学では失業を自発的失業と非自発的失業に分ける考え方があるが、結婚を希望していながら独身にとどまる人を、「非自発的独身」と名付けることができようか。

 データの扱い方として乱暴だが、先の生涯未婚率の数字と、結婚したいという回答の比率を合計してから100%を引いて非自発的独身の多寡を推定すると、男性が+9.07、女性が+3.36%と、男性の方でより結婚希望の未達成者が多い(実際の非自発的独身率は離婚経験者が入るので、もっと大きな数字になるだろう)。単純に「需給」の問題として解釈すると、結婚したいと思う男性が適齢期男性人口の5%以上余っていると想像できる。

 一つの可能性としては、何度も結婚する、結婚市場において積極的でかつ競争力の強い男性が、複数の女性との結婚経験を持っている結果、こうした状況になっているのかもしれない。

結婚は出来高がほとんどない
株式に投資するような意思決定

 結婚を希望する割には現実に結婚する事が少ない(結婚適齢期の)男性の側から見ると、「結婚」には経済的なメリットが必ずしも多くない。「結婚」という形に自分を落とし込んだ場合に、失う自由が多い割に、得るメリットが少ないと感じる男性が多いのではないか。もちろん、女性の側から見ても、「結婚」で制約される自由は小さくない。

「結婚している方が、安定感があって信用されやすい」という世間体や、税金(配偶者所得控除)、あるいはサラリーマンの場合なら国民年金の第3号被保険者になることができる妻の年金面での有利さも総合的に勘案して、結婚を目指す人が多少はいるかもしれないが、これらの「お金のメリット」は、それほど大きなものではない。

 つまり、純粋に男女二人が「自発的に」恋愛関係にあるというだけなら、それだけで二人の関係を結婚の形にまとめる必然性はない。恋愛が続く限り、好きなだけ仲良くしていればいいだけのことだ。

 だが、その恋愛がいつまで続くのかは、両当事者にとってよく分からない。

 そこで、一方が他方を、将来にわたって「確保」したいと考えた場合に、そこで「自分は、将来、相手を変えるつもりはありません」という意味の手形を振り出して「結婚」というカードを切るのが、いわゆる「プロポーズ」だ。その最大のコストは、将来にわたる自分の「独身としての自由」だ。

 お互いが純粋な恋愛関係にあり、将来にわたってお互いの愛情を信じているなら、本来、「結婚」という形態に大きな意味はない。しかも、将来、「離婚」する場合には相当のエネルギーが必要だ。「結婚」は、出来高がほとんどない株式に投資するような意思決定である。

子どもの養育、共働き…
経済的なプラスとマイナス

 お互いの恋愛感情を重視する恋愛至上主義的な価値観だけでは、「結婚」に至る積極的な理由は説明しにくい。

 結婚が必要と思える重要な理由の一つとして、子どもを養育するに当たって結婚している方が好都合だからということはあるだろう。

 様々な理由によって、片方の親だけが子どもを育てている家庭はあるが、男性でも女性でも、自分の子どもを持ちたいと思った場合に、子どもにとって両親が結婚している状況が望ましいと考えて結婚を選ぶケースはあるだろう(筆者が結婚した理由はこれに近い)。

 一方、子どもを育てる経済的なコストは、高騰を続ける一人当たりの教育費に加えて、出産・幼少時の母親の離職期間のコストなども含めて考えると、平均並みかそれ以下の所得の勤労世帯にとって非常に大きい。

 子どもを育て上げる経済的負担を選びたくない(あるいは負担に自信がない)ことが理由で、「子どもを持たないなら、結婚を選ぶ理由はない」と考える、少子化を憂う社会にとっては残念だが、本人にとしては合理的で冷静な独身者も、生涯未婚者の中には少なくあるまい。

 加えて、一方が他方を経済的に「養う」のは大変だと考えて、独身を選ぶ人もいるだろう。

 これらの、直接的あるいは間接的に「経済的に余裕がないことが理由で結婚を選ばない人たち」をどこまで「自発的独身」と考えていいのかは判断に迷う。ただし、経済的に余裕のある所得・資産の持ち主であっても、配偶者や子どもを養うことの負担(金銭的負担だけでなく家事・育児の労働負担もある)を嫌う、自発的独身者もいることだろう。

 一方、「共稼ぎ」を前提とすると、結婚することの経済的なプラス・マイナスは、大きくプラスに転換する。

 2人で暮らすとしても、生活コストは2倍にはならない。貧困率の計算をする際に、世帯人数の平方根で世帯の所得を割り算することを参考にするなら、1.4倍強ということになる。2人であっても、規模の経済効果が働くということだ。加えて言うなら、共稼ぎには、病気や失業のリスクに備える「保険」の機能もある。

 生活に規模の経済が働くことについては、生活の実感としても、「そうだ」と思う。外食や気晴らしのための無駄遣いが減って、「共稼ぎではなくても、一人暮らしよりも苦しくならなかった」という経験をお持ちの既婚者は少なくないのではないか。

 読者の中に、経済的な自信がないから結婚に踏み切れないという方がるなら、「大丈夫。結婚してしまえば、案外何とかなる」と申し上げたいところだ。

 しかし、共稼ぎでも、共稼ぎではなくても、有力な反論がある。

「同棲でもいいではないですか」と言われた場合には、返す言葉がない。「同棲」は、生活における規模の経済と、将来の自由との両取りができる都合のいい形態だ。

結婚は非合理なもの
恋愛のバブルである

 配偶者控除や国民年金の第3号被保険者のような、社会的公平性の点で問題を含む既婚者のメリットを除くと、経済的なロジックでは、「是非、結婚した方がいい」という積極的な理由が見いだせない。特に、「子どもは持たなくてもいい」と思う人が増える場合には、ますますその状況が顕在化するのではないか。

 つまり、生涯未婚率の上昇は、合理的なのだろうし、今後も続くのではないかと予想される。

 こう考えると、むしろ「結婚」の方が非合理的で、それは恋愛がこうじた一種の「バブル」の結果だと考える方が実態に合っているのかもしれない。結婚は恋愛のバブルだ。そして、恋愛感情がバブルの水準で永続することはなく、やがて、「生活の現実」がやって来る、というのが、多くの夫婦がたどる道筋だ。

 一方、社会的には、急激な少子化は不都合だと考えられており、この観点からは未婚率の上昇が望ましくない。さりとて、独身であることや、同棲という形態が経済合理的であることとの調和をどう考えたらいいのだろうか。

 一つの方向性としては、結婚を奨励するのではなく、同棲・事実婚あるいは両親が共に独身であっても、子どもを生み育てることが心配なくできるような社会設計が望ましいのかもしれない。

 もちろん、両親が共に自分の子どもの養育に責任を持つように仕向ける制度は重要だが、配偶者控除や国民年金の第3号被保険者のような、結婚を奨励する制度を廃止する代わりに、大学まで含めた教育費の全面無償化(少なくとも国公立については)をはじめとする手厚い育児支援を行い、結婚と子どもを持つこととを切り離すような施策がいいのかもしれない。

 生涯未婚率の上昇は今後も続くだろう。社会としては、これを阻止するよりも、この状況に適応した仕組みを考えていくことが重要なのではないだろうか。

 なお、筆者は、「結婚は恋愛のバブルである」と書いたが、同時に、バブルのない人生はつまらないと思っていることを付記しておく。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
http://diamond.jp/articles/-/124486


 


 

 
無礼な振る舞いを見過ごすとチームのパフォーマンスは低下する

クリスティーン・ポラス:ジョージタウン大学マクドナースクール・オブ・ビジネスの准教授
2017年4月12日
チームの業績低下や機能不全の一因に、「無礼な振る舞い」の影響がある。職場での無礼を専門に研究する筆者が、礼節ある環境をつくる要諦を示す。


 礼を失した振る舞いは、チームに亀裂を生み、協力関係を破壊し、メンバーの心理的安全を損ね、チームの有効性を妨げるおそれがある。軽蔑的で品位を傷つける発言や、侮辱、中傷その他の無礼な行為は、自信と信頼を失わせ、助け合いの精神をむしばむ可能性がある。こうした影響は、「無礼な行為の直接的なターゲットでない人たち」に対してさえも及ぶのだ。

 最近のある研究では、非礼な振る舞いが医療現場で協力関係とパフォーマンスを低下させると報告している(英語論文)。

 実験では、イスラエルにある4つの新生児集中治療室で働く24の医療チームが、治療の質を向上させるための研修会に招かれて、参加した。チームは研修の一環として、腸の重篤な疾患によって状態が急に悪化した未熟児に処置を施す必要があった(単なるシミュレーションであり、新生児の健康に危険はない)。スタッフは、状態を特定・診断して、心肺蘇生法などの適切な治療を施さなければならない。

 チームには、米国から来ている専門家が遠隔で(ビデオを通じて)見守っており、時折コメントやアドバイスをする、と説明した。実はその「専門家」とは、この実験をしている研究者らの1人だ。

 半数のチームは専門家から、シミュレーションによる研修と実習の重要性に関する偏りのないメッセージを受け取った。その際、チームの医療行為の質については言及されない。残る半数のチームは、(自分たちではなく過去の)イスラエルの研修参加者らのパフォーマンス、およびイスラエルの医療の質が、いかに「お粗末」かについて、侮辱的なメッセージを受けた(例:他国に比べ感心できない、イスラエルに滞在中は病気にかかりたくないものだ、等)。

 研究者らは医療シミュレーションを録画し、客観的な立場の人に評価してもらった。すると、事前に無礼なメッセージを受け取ったチームはそうでないチームに比べ、診断および処置のすべてのパフォーマンス指標において低い能力を示し、新生児の生存の可能性を著しく低下させていた。

 その理由は主として、無礼な対応に直面したチームは、情報の共有を進んで行わず、メンバー間で助けを求めるのをやめてしまったからである。

 この状況は、私の研究でも頻繁に見られる。心理的安全――チームの環境が信頼と敬意に満ち、安心してリスクを取れる場所であるという感覚――に欠ける人は、往々にして無意識のうちに心を閉ざしてしまう。そしてそうなると、フィードバックを求めたり受け容れたりすることが少なくなる。

 実験してみること、ミスについて話し合うこと、潜在的または実際の問題について口を開くことなども、ためらいがちになることがわかる。威嚇的な人がその場にいなくても、ネガティブなムードの中で働き、ベストを尽くすことができないのだ。

 ひとたび非礼が生じると、ネガティブな思考が人々の頭の中に容易に浸透して留まり、ネガティブな行為を引き起こす。私が行った実験では、人は無礼な振る舞いに接すると、他人を助ける傾向が3倍低くなり、共有しようという意欲が半分以上減ることがわかった。これは理にかなっている。誰かが無礼や不快な振る舞いをすると、悪感情が広がってその振る舞いが増幅し、攻撃性や機能不全につながることがあるからだ。

 たとえば、誰かを軽はずみにけなしたり、能力を人前で問題視したりといった、比較的小さなことであっても、その人の心に爪痕を残し、そのパフォーマンスや心身の健康を次第に悪化させる。イェール大学の心理学者、アダム・ベアとデイビッド・ランドが開発した数学的モデルが示すように、日頃、嫌な人たちに囲まれている人は、身勝手さを本能的に身につけ、行動に慎重さを欠くようになる(英語論文)。このような人たちは、立ち止まって考えようとしないので、協力すれば報われる場合でさえ身勝手に行動してしまう(英語記事)。

 ちょっとした礼節をわきまえることは、大きな効果がある。人々の心理的安全を高め、チームのパフォーマンスを向上させるのだ。私が実施したある実験では、人は提案を丁重な態度で示された場合のほうが、不作法な(話をぶしつけに遮られてばかりいる)場合よりも、心理的安全を感じる割合が35%高かった。

 他の研究でも、心理的安全がチームの全般的なパフォーマンスを向上させることが示されている。グーグルは、チームの有効性について、社内で活動中の180以上のチームを対象に調査した。その結果、より重要なのは「チームが誰で構成されているか」よりも、「チームのメンバーがどのようにコミュニケーションを取り、仕事を組み立て、貢献を評価しているか」であったという(英語サイト)。

 そして、心理的安全が高いチームにいる人のほうが、仲間のアイデアを活用する傾向が高く、退職率も低かった。また彼らは、グーグルにより大きな収益をもたらし、幹部から「有能」との評価を受ける傾向が2倍高かった。

 チームの雰囲気を決めるのはリーダーである。職能横断的な製品チームに関する研究によれば、リーダーがメンバーに公平さを持って接した場合、メンバー個々人とチーム両方の生産性がより高かった(英語論文)。また、職務要件の範囲を超えて尽力する傾向も高いことがわかっている。

 すべてはトップから始まる。リーダーが礼節を守ることで、従業員のパフォーマンスと創造性が向上し(英語論文)、ミスの早期発見と自発的な行動が可能となり、精神的な消耗が小さくなる(英語論文)。

 礼節がチームの有効性に寄与するのは、従業員に安心感と幸福感を与え、気を楽にさせるという部分が大きい。2万人以上の従業員を対象とした私の調査では、リーダーに敬意を表されていると感じている人はそうでない人に比べ、仕事への集中と優先順位付けができている割合は92%高く、意欲は55%高かった(英語記事)。

 礼節のある風土をつくることで、従業員が互いに敬意を持って接するようになり、いっそうの協働が促進される。グーグルのキャスリン・デカスと同僚らによる最近の研究からは、チームの風土が組織市民行動(組織への自発的で無償の貢献行動)にいかに影響を及ぼすかが示されている(英語サイト)。部下にもっと効果的な協働とさらなる貢献を望むなら、チームの風土、リーダーによる率先垂範、そしてチームの規範についてよく考えてみるべきだ。

 ここで重要なのは、礼節はただ強制すればよいわけではないという点だ。従業員と継続的に対話し、礼節をわきまえるとは何を意味するのかをきちんと定義しよう。対話のプロセスに彼らを引き込むことで、礼儀正しい振る舞いへの相互責任を負うことについて、より多くの支持を得て実現を後押しできる。

 礼節について従業員と話し合うことは、どんな組織にとっても有益だ。カリフォルニア州アーバインの法律事務所、ブライアン・ケイブのマネージングパートナーであるスチュワート・プライスと私は、集団の規範を定義するためのエクササイズを主導した。

 我々は従業員に、「どのような人になりたいか」を尋ねた。そして、互いに責任を負ってもよいと彼らが考える規則、つまり「自分の組織にふさわしい規範」を挙げるよう求めた。すると1時間強で、従業員は10箇条の規範を考え出して合意した。同社はこれらを採用し「礼節規定」としてまとめ、ロビーの目立つ場所に掲示している。プライスの証言によれば、この礼節規定は、同社がオレンジ郡で「最も働きがいのある職場」の第1位となったことに直接貢献したという。

 規範を形成するだけでは十分でない。従業員がそれらを理解し尊重するよう、訓練する必要がある。私が実施した調査で、無礼に振る舞ってしまう理由を尋ねたところ、自分の組織が傾聴やフィードバックといった必要な基本的スキルを提供していないから、と回答した人は25%超に上った(英語論文)。

 礼節に関するメッセージを組織ですでに打ち出しているのに、従業員の振る舞いが好ましくない場合には、「そのための備えを提供しただろうか」と自問してみよう。礼節ある振る舞いを誰もが承知しているものと、決めつけてはならない。基本的なスキルを学んでいない人も多いのだ。

 大手企業のなかには、礼節の研修を公式に提供しているところもある。マイクロソフト社内で人気の「プレシジョン・クエスチョニング」(精密な問いかけ)の講座が教えているのは、自分自身のアイデアに疑問を投げかけること、健全で建設的な批判をする方法、緊迫した状況でも感情を押し殺さずにうまく制御しながら行動する方法だ。

 ロサンゼルスのある病院では、気難しい医師たちに「礼儀作法教室」への参加を義務づけ、不遜な態度を改善させて訴訟の可能性を抑えるよう努めている。教室では、職場の雰囲気をつくるのは医師であり、それは実習生にも影響すると教えている。

 リーダーがチームの礼節度に注意を払えば、そこには報いがある。協力関係とパフォーマンスが向上するのだ。メンバーの振る舞いが望ましくない場合には、必要に応じて規範を修正するか、研修を提供してみるとよい。


HBR.ORG原文:How Rudeness Stops People from Working Together January 20, 2017

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クリスティーン・ポラス(Christine Porath)
ジョージタウン大学マクドナー・スクール・オブ・ビジネス准教授。
http://www.dhbr.net/articles/-/4793


 
20160119

本読書人の雑誌『本』
なぜ能力の低い人ほど自分を「過大評価」するのか 気鋭の脳科学者が「ココロの盲点」を明かす
池谷 裕二東京大学薬学部教授
脳研究者プロフィール

〔photo〕iStock
文/池谷裕二(東京大学薬学部教授)

「自分は平均以上」と勘違い

先日電車に乗っていたら、隣に中学生くらいの女の子が座っていました。かわいい子だったので、手元のスマートフォンを操作している振りをしながら、横目でチラチラと見ていました。

すると、あろうことか、彼女は席を立ってしまいました。

ジロジロ見過ぎてしまったことを反省しましたが、しかし、どうやら私の視線が気になって席を立ったわけではないようです。理由はすぐに明らかになりました。「どうぞ」と目の前のお年寄りに席を譲ったのです。

深く恥じ入りました。

気が利く、気が利かないとはなんでしょうか。

彼女は気が利く人です。一方、私は気が利かない人です。これは明らかです。でも、ここで問いたいのです(決して言い訳のためではなく)ーー気が利かない人は、その時、自分を「なんと気が利かない人間だ」と残念に感じているでしょうか。

きっと感じていないでしょう。なぜなら、そもそもそのお年寄りが困っているという事実に気づいていないからです。気づいていてわざと席を譲らなかったら、それは気が利かないとは言いません。単に意地悪なだけです。

つまり、人は「自分がいかに気の利かない人間か」を知ることができないのです。ところが、他人が気が利かないことはすぐに気づき、指摘したり憤慨したりすることができますーー私がこんなに気を利かせているのに君はけしからん!

おそらく現実の自分は、自分に対して抱いている自己像よりも、気が利かない人間であることは間違いないでしょう。

これは気が利く気が利かないだけの話ではありません。日常生活全般において、似た状況は少なくありません。結局のところ人は実際のレベルよりも自分を高く評価することになります。

たとえば、日常的に車を運転する生活を送っている人に訊いた調査結果があります。

「あなたは平均よりも運転がうまい方ですか?」。この質問のポイントは「平均より」という点です。抜群に優れている必要はありません。あくまでも平均に比べたら「まあマシな方かどうか」という判断です。

このアンケートの結果は驚くべきもので、なんと70%の人が「私は平均以上です」と答えるのです。70%という値は平均値の概念にそぐいません。つまり、多くの人が「自分は平均以上にデキる」と勘違いしていることがわかります。

ただし注意してください。このデータは、正しく自己評価できている人がいないと主張しているわけではありません。

では、どのような人が正しく自己評価でき、またどのような人が自己評価を誤る傾向があるでしょうか。そんな研究をしているのが、コーネル大学のダニング博士とクルーガー博士です。

NEXT ?? 能力の低い人ほど自分を過大評価

脳のクセを知らないと損をする

たとえば博士らは、ジョークを楽しむ能力について調査しました。

ユーモアは洗練された知識と機知がないと理解できません。65名の大学生を対象に、30個のジョークを読ませ、どれほど面白かったかを評価してもらいました。この点数でユーモアの理解度がわかります。これと同時に「あなたのユーモアの理解度は同年代の中でどのくらいに位置していると思いますか」と訊きました。

調査の結果、ユーモア理解度の順位の低い人ほど自己評価の高い傾向があることがわかりました。

成績下位25%以内の人は、平均して「上位40%程度にいる」と自分を過大評価したのです。一方、成績上位25%以内の人は「上位30%程度にいる」と過小評価していました。

つまり実際の能力の個人差は、人々がイメージする差よりも、はるかに大きいということになります。なお、この現象はユーモアだけでなく、論理的思考力や一般学力試験にまで、普遍的に見られます。

博士らは、この現象を次のように説明しています。1.能力の低い人は自分のレベルを正しく評価できない。2.能力の低い人は他人のスキルも正しく評価できない。3.だから、能力の低い人は自分を過大評価する。

もちろんこの結果だけでは「能力が低いから自分を客観視できない」のか「自分を客観視できないから能力が低い」のかはわかりません。しかし、この研究は心理学では広く認知され、博士らの名前にちなんで「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれるようになりました。

この効果の面白いところは、ダニング=クルーガー効果について初めて知った人の多くが「たしかに自分を勘違いしている人はいますね。身近な人の顔が具体的に思い浮かびますよ」と笑顔で答えてくれることです。つまり多くの人は「まさに自分が該当する」かもしれない可能性に思い至らず、自分を棚に上げて、他人に例を探し始めるのです。

これこそが冒頭で説明した「気が利かない人は自分の気の利かなさに気づいていない」ことに相当します。これもまたダニング=クルーガー効果の亜型で、とくに「バイアスの盲点」と呼ばれます。

いずれにしても、ここで見逃せないポイントは、脳が無意識のうちに判断をミスしてしまうという点です。決して「わざと」でなく、あくまでも自動的で反射的な思考として「そう思ってしまう」わけです。

つまり、脳には特定の「思考癖」があるというわけです。

そうした脳のクセは「認知バイアス」と呼ばれます。認知バイアスは曲者で、しばしば奇妙で、ときに理不尽でさえあります。こうした心理のクセに気づいていないと、ふとしたところで判断を誤ったり、損したりしかねません。だとしたら、これをよく理解しておくことは、日常をよりよく生きることにつながります。

人間は心の多面体です。だから認知バイアスにはたくさんの項目があります。いくつか紹介しましょう。

NEXT ?? 認知バイアスで収入を増やす方法

どうすれば収入を増やせるか

まず「おとり効果」から。たとえば、カレー店を経営しているとします。店のメニューは、

普通カレー ¥1000
特製カレー ¥1500

の二つです。すると客の多くは安価な普通カレーを注文するかもしれません。

そこで認知バイアスを利用して、特製カレーの注文を増やし、増収を図ることができます。どんな対処法が考えられるでしょうか。最もシンプルな方法は選択肢を一つ増やすことです。

普通カレー ¥1000
特製カレー ¥1500
極上カレー ¥3000

この選択肢から選ぶ場合、特製カレーへの選好が心理的に高まることが知られています。高額な極上カレーをオプション(おとり選択肢)に加えることで、相対的に特製カレーを安く感じさせることができるわけです。これが「おとり効果」と呼ばれる理由です。

おとり効果については、米マサチューセッツ工科大学のアリエリー博士らの面白い実験があります。経営学専攻の学生に英経済誌『エコノミスト』を定期購読してもらいました。

ウェブのみ購読  $59
冊子&ウェブ購読 $125

という選択肢では、冊子とウェブの同時購入を選んだ学生は32%だったのですが、選択肢を増やし、

ウェブのみ購読  $59
冊子のみ購読   $125
冊子&ウェブ購読 $125

としたら84%の学生が冊子とウェブの同時購入を選びました。冊子の値段を「冊子&ウェブ」と同一に設定することで、見かけ上のお得感を狙っているわけです。

実際、この効果は絶大で、おとり選択肢を一つ増やしただけで、40%以上の収入増となりました。

選択肢が多すぎると逆効果

ただし、やみくもに選択肢を増やせばよいというわけではありません。なぜなら「選択肢過多効果」と呼ばれる認知バイアスがあるからです。コロンビア大学のアイエンガー博士らのデータを紹介しましょう。

NEXT ?? 脳は「苦労」が好き?

博士らは、ジャムの試食販売ブースで、6種のジャムを売る場合と、全24種を売る場合を比較しました。

立ち止まる人は24種のブースのほうが多かったのですが、実際に商品を買ってもらえる率は反対に6種のジャム売り場のほうが高くなりました。結果として、6種陳列のブースのほうが、7倍もの売り上げをあげたのです。

アイエンガー博士らはこの結果を「同時に処理できる情報には限界があり、許容量を超えると購買意欲そのものが低下する」と説明しています。

客のことを考えると「つい気を利かせて」たくさんの選択肢を用意してあげたくなりますが、選択肢が多いことは逆効果にもなるというわけです。言われてみれば、メニューが豊富なラーメン屋よりも、「うちは塩ラーメン一本だよ」と言ってもらったほうが、スカっと気持ち良いし、信頼できる気がします。

つづいては「コントラフリーローディング効果」について。これも選択肢過多効果に似て、直感に反する認知バイアスの一つです。

たとえば、こんな実験例があります。ある団体に所属するときに、希望すれば誰でも入会できる場合と、厳しい試練を経て仲間入りできる場合を設けます。すると、たとえ根拠のない無駄な儀式であっても何らかの入団基準があったほうが、入会後に、その団体への帰属感や愛着が強くなるのです。

脳は労せずに手に入れた(フリーローディング)ものよりも、何らかの対価を払って入手したものを好みます。これがコントラフリーローディング効果です。この効果が見られるのは人間だけではありません。私が研究室で飼育しているネズミを見てもよくわかります。

私は仕事柄、連日ネズミの行動を観察しています。通常、餌は皿に入れられていて、好きなときに食べられる状態にしてあります。もちろんネズミは十分に賢いので、レバーを押すと餌が出てくる仕掛けに変えても、すぐに学習し、上手にレバーを押して、餌を食べるようになります。

そこで、こんな実験をしてみましょう。2種の方法で、同時に与えてみるのです。一つは皿に入った餌、もう一つはレバーを押して出る餌。どちらの餌も同じものです。さて、ネズミはどちらの餌を選ぶでしょうか。

試せばすぐにわかります。レバーを押す率が高いのです。苦労せずに得られる皿の餌よりも、労働をして得る餌のほうが、価値が高いのです。

コントラフリーローディング効果は、多くの動物たち、たとえばイヌやサルはもちろん、トリやサカナに至るまで、動物界にほぼ共通してみられる現象です。

ちなみに、同じ実験を就学前の幼児に対して行うと、ほぼ100%の確率でレバーを押すことがわかります。成長とともにレバーを押す確率は減っていき、大学生になると五分五分の選択率となりますが、やはり、完全に利益だけを追求することはありません。

こうした脳の本質的なクセを知ると、労働の価値について考えさせられます。贅沢三昧で悠々自適な生活は、誰もが憧れます。しかし仮にそんな夢のような生活が手に入ったとして、本当に幸せでしょうか。

定年で突然仕事を奪われた手持ち無沙汰さからストレスを溜めこんでしまう「定年症候群」が近年しばしば話題にのぼりますが、働いて得た給料と、労働せずにもらえる年金では、おなじ1円でも価値が異なるというわけです。

NEXT ?? 社会的地位が高い人はモラル低い

ちなみに、これまで調べられたなかで、コントラフリーローディング効果が生じない動物が、一種だけ知られています。飼いネコです。ネコは徹底的な現実主義です。レバー押しに精を出すことはありません。

社会的地位が高い人ほどモラルは低い?

最後に「上流階級バイアス」を紹介しましょう。簡単にいえば「金持ちはマナーが悪い」という傾向です。

意外にも思いますが、これもまた認知バイアスの一つです。これを証明したのがカリフォルニア大学のピフ博士らです。原著論文には、これを支持する実験証拠を七つ発表しています。ここでは三つ選んで紹介しましょう。

まずピフ博士らは運転マナーについて調査しました。車のレベルが社会的ステータスを反映していることはよく知られています。博士らは、車のランクを高級車から大衆車まで五つに分類し、階級別に交通規則をどれほど守っているかをモニターしました。

すると、横断歩道で手を上げている歩行者を待たずに通過してしまう確率は普通車35%のところ、高級車は47%であることがわかりました。また、交差点で相手の車を待たずに割り込む率は普通車12%のところ、高級車は30%と2.5倍にもなったのです。

次にピフ博士らはボランティア参加者を集めた実験を行いました。たとえば、参加者に面接官になってもらいます。就職希望者とうまく交渉しながら採用者の給料を決定するのです。この際、重要な事実があります。志願者は長期的で安定した職を求めていますが、実は、今回の採用ポジションは近々廃止予定なのです。さて、面接官は志願者にこの不都合な真実を告げるでしょうか。

実験の結果、下流階層の人は素直に事実を告げて志願者と交渉する傾向が強かったのですが、社会的ステータスの高い人は事実を隠したがることがわかりました。「あとから状況が変わったことにすればよい」という作戦でしょうか、ともかく騙してでもいいから、自分に有利に交渉を進めるわけです。

ピフ博士らが最後に行った実験が、もっとも象徴的です。「自分は社会的地位が高い」と思って行動をしてもらう実験です。すると、下流階級の人でも貪欲さが増し、非道徳的な態度になります。つまり、モラルの低さは生まれつきではなく、その地位が作ったものだと言えそうです。

さらに面白いことは、「金欲があることは悪いことでない」と付け加えると、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」はどこへやらで、下流階級者の尊大ぶりは、実際の上流階級よりもひどいものになりました。

単に有頂天で「天狗になっている」のか、あるいは、普段受けている仕打ちへの腹癒せなのかはわかりませんが、醜悪な心理を、見事に浮き彫りにした実験結果だと言えます。

NEXT ?? 最大の未知は自分自身

人間が好きになる脳のトリセツ

いかがでしょうか。認知バイアスは、そうとわかっていても、つい落とし穴にはまり、なかなか修正することができないクセです。だからこそ認知バイアスなのです。

人は自分のクセに無自覚であるという事実に無自覚です。他人のクセには容易に気づくことができても、案外と、自分自身のクセに気づかないまま自信満々に生きているものです。最大の未知は自分自身です。

本当の自分の姿に気づかないまま一生を終えるなんてもったいないーー。せっかく人間に生まれてきたのですから、自分の認知バイアスについて知っておくのは、決して悪いことではありません。

こうした考えが、私も40代の後半に入り、ますます強くなってきました。これに押され、ついに認知バイアスについての初心者向け解説書『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版』(講談社ブルーバックス)を上梓する運びになりました。この本は、心の盲点を知るための手引き、いわば「心の辞書」です。

「脳」はこんなにダマされている!池谷裕二『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版』
ただし注意してください。脳に偏見があること自体は罪ではありません。クセは脳のデフォルトです。そして偏見はときに生きることを楽にしてくれます。

しかし、だからといって、その偏見は必ずしも礼賛されるとは限りません。もし全員が自分の「正しさ」を妄信したままコミュニケーションすると、不用意な摩擦が生じかねません。

傾向と対策ーー。脳のクセを知っていれば、余計な衝突を避ける予防策になります。それだけではありません。脳を知れば知るほど、自分に対しても他人に対しても優しくなります。そして、人間って案外とかわいいなと思えてくるはずです。

人間が好きになる脳のトリセツ。そんなふうに本書を役立ててもらえれば著者望外の喜びです。

「本」2016年2月号より

池谷裕二(いけがや・ゆうじ)
1970年、静岡県藤枝市生まれ。薬学博士。現在、東京大学薬学部教授。脳研究者。海馬の研究を通じ、脳の健康や老化について探求をつづける。日本薬理学 会学術奨励賞、日本神経科学学会奨励賞、日本薬学会奨励賞、文部科学大臣表彰(若手科学者賞)、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞などを受賞。主な 著書に『記憶力を強くする』『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』(ともに講談社ブルーバックス)、『海馬』『脳はこんなに悩ましい』(ともに共著、新潮文庫)、『脳には妙なクセがある』(扶桑社)などがある。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47416?page=6

http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/858.html

[政治・選挙・NHK223] 四面「核」歌¥態の日本が生き残る道 戦略なきシリア攻撃、背景にホワイトハウスの権力闘争 
四面「核」歌¥態の日本が生き残る道

対談― 戸崎洋史(日本国際問題研究所 軍縮・不拡散促進センター 主任研究員)×小泉 悠(未来工学研究所客員研究員)×神保 謙(慶應義塾大学総合政策学部准教授)
2017/04/11
浅野有紀(Wedge編集部)

冷戦の終結とともに、米国とソ連はそれぞれが保有する核兵器の数を削減してきた。
 しかし、その一方で北朝鮮や中国は核戦力を増強し、脅威を増している。日本を取り囲むこれらの核保有国の具体的な脅威とは。日本がとるべき戦略とは。核戦略・安全保障の専門家3人に語ってもらった。

(写真・CLOCKWISE FROM TOP:AGENCIA MAKRO/CON/GETTYIMAGES;MIKHAIL SVETLOV/GETTYIMAGES;BLOOMBERG/GETTYIMAGES;KYODO NEWS/GETTYIMAGES)

編集部(以下、――)北朝鮮の核・ミサイルの脅威が高まっています。今年に入っても2月、3月と続けて弾道ミサイルを発射していますが、狙いは何でしょうか。また、その技術はどれくらい進化しているのでしょうか。

神保:北朝鮮は、自らの核抑止力を技術的に証明することに躍起になっています。かつては核開発を進めることを通じて米国との直接交渉を目指していましたが、現在は核兵器の実戦配備を通じて事実上の核兵器国としての承認を欲している状況です。核弾頭の小型化、ミサイル実験の多種化、弾頭の大気圏再突入技術の誇示など、全てこのロジックに沿っています。

小泉:核爆発装置があるという段階から、実際に戦略として核を使用できる段階まで進んできているということですね。ただ、北朝鮮は面積としてはかなり小さな国で、先制攻撃を受けた場合に核兵器が生き残る能力にはかなり疑問があると思いますが、いかがでしょうか。先制攻撃から生き残ってミサイルを発射できてもミサイル防衛もすり抜ける必要があるわけですし。

戸崎:確かに、他の核保有国と比べると開発は初期段階ですが、恐らく自らが世間一般の常識の枠を超えた「非合理的」な存在として見られていることを知っていて、初期段階ながらも、何をするか分からない、核兵器をいつ使うか分からないという恐怖心を他国に抱かせようとしている側面もあるのではないでしょうか。さまざまな計算の上での行動だと思います。

小泉:非合理性の合理的な利用、もしくは戦略的曖昧性といったところですね。

神保:北朝鮮は抑止力について3層の戦略を考えていると思います。1層目は、韓国の都市部や米軍基地に対する通常戦力による奇襲能力や核兵器の打撃力を誇示して、米韓同盟にくさびを打ち込むこと。2層目は、日本の都市や在日米軍に対するミサイル攻撃能力の確保。過去10年程度進めてきた中距離弾道ミサイル・ノドンの連続発射実験、移動式発射台の運用、ミサイルの固体燃料化などは、ミサイル防衛を難しくさせています。
 
 そして3層目は、米国に対して長距離弾道ミサイル・テポドン2改良型や開発中のKN−08などの大陸間弾道ミサイル(ICBM)を本土に打ち込める能力を示し、米国と同盟国を切り離し(デカップリング)、拡大核抑止の信用性を揺るがすこと。これらが彼らの戦略だと思います。


戸崎洋史:日本国際問題研究所 軍縮・不拡散促進センター 主任研究員 大阪大学法学部卒業、大阪大学大学院国際公共政策研究科博士後期課程中途退学。博士(国際公共政策)。日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター研究員補を経て、2000年より同センター研究員。


戸崎:その中で、特に危険なのは日本でしょうね。北朝鮮にとって、朝鮮半島統一という将来的な目的のためには、韓国に核戦力で壊滅的な被害を与えることは望ましくないことから、最も実際の攻撃対象としやすいのは日本でしょう。また、日本を威嚇して朝鮮半島事態への関与から手を引かせれば、米国による韓国防衛コミットメントの遂行も難しくなります。その意味でも、日本は3カ国の中で一番適当なターゲットだと思います。

小泉:国力やテクノロジー面で劣勢な国は、必ずその制約の中で何かしらの軍事戦略を考えるものです。そういった意味では、北朝鮮も必ず相手の隙をつく作戦を考えてくると思われますので、侮れないですね。
 
 北朝鮮が戦略的曖昧性を最大限に発揮する中で、米国は韓国との合同軍事演習で朝鮮半島上空に爆撃機を飛ばすなど、その程度の能力では核抑止は確立していないと北朝鮮に知らせる行動を繰り返し起こしています。これはイタチごっこのような気がしますが、どこかで均衡して交渉に向かうことはできるのでしょうか。

戸崎:難しい問題ですね。互いに相手の能力や意図を十分に認識しているつもりが、実際にはそうではない部分も少なくないと思います。北朝鮮が核を持ち、増強しようとする目的をどう捉えるかによっても変わってくるでしょうね。現体制の維持という防御的な目的であれば、交渉での解決を目指せるかもしれませんが、核を背景にした挑発などによって攻撃的な目的の達成を狙っている場合は、抑止など強い圧力をかけないと北朝鮮はチャンスだと判断しかねません。

 しかも、北朝鮮の狙いも、自らの核戦力の強化とともに変わる可能性があり、その動きを絶えず慎重に把握していないと間違った政策判断を下すことになりかねません。

――トランプ大統領は就任前に、北朝鮮への対応は中国に任せておけばいいという放任的な発言もしていました。

小泉:トランプ大統領の選挙中の発言は正直あてにならないと思います。選挙戦中の発言とその後の行動が合致していないことが多々あります。選挙戦中は北朝鮮なんてどうでもいいと言っていましたが、現実的に彼が米国の安全保障戦略を仕切る立場においては、そうは言っていられないでしょう。

神保:大統領選挙期間中のトランプ大統領に明確な北朝鮮政策があったとは思えません。しかし今年2月のマティス国防長官の韓国・日本訪問や、日米首脳会談の際のミサイル実験への対応、3月に実施されている最大規模の米韓合同軍事演習を通じて、トランプ政権が北朝鮮への軍事的警戒を強めていることは明確になりました。オバマ政権の「戦略的忍耐」が失敗したという認識のもとに、現在はマクファーランド大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)の下で北朝鮮政策の見直しが行われているとも伝えられています。
 
 しかし、対北朝鮮政策が大幅に変更されることは考え難いと思います。

――北朝鮮に関する報道の影に隠れて表に出ない中国の核戦力も日本にとって脅威となるのでしょうか。

戸崎:中国は、核弾頭を250〜300発、米国に届くICBMを少なくとも50基以上、日本を対象にできる中距離ミサイルを数百基保有していると言われています。ただし、中国の核戦力における透明性は低く、保有する核弾頭数も運搬手段の種類・数も公表していません。運搬手段については、海(潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM))、陸(弾道・巡航ミサイル)、空(爆撃機)と多様化しています。

 さらに、米ロ間では、中距離ミサイルを全廃する中距離核戦力(INF)全廃条約を締結していますが、中国はその締約国ではなく、この中距離ミサイルも保有しています。このように、核運搬手段の多様性という点においては、他の核兵器保有国を上回っている状況です。

http://wedge.ismedia.jp/mwimgs/2/3/670m/img_23fff6d61d172b4927692ec373f9de0855425.jpg

写真を拡大 国別の核弾頭保有数およびその運搬手段※表中の6カ国の他、インドは100〜120発、パキスタンが110〜130発、イスラエルが最大80発の核弾頭を保有しているとされている。(出所・2016年版防衛白書を素にウェッジ作成)


 核戦略に関して、中国は一貫して「最小限抑止」、「先行不使用」、「非核兵器国には核兵器を使わない(消極的安全保証)」、という3点を主張してきましたが、核戦力が拡大していく中で変化する可能性も指摘されています。最近では、1基の弾道ミサイルに数発の核弾頭を載せたMIRV化ICBMを配備したという話もありますが、これは先制攻撃に有効な兵器のため、先行不使用政策を本当に今後も継続するのかという懸念が生じています。

 日本にとっては核・通常両用の中距離ミサイルが脅威ですが、核を後ろ盾にしつつ、通常戦力を積極的に活用する戦略をとってくるのではないかと思います。核戦力と通常戦力の双方への対応も考えなければいけないという点で、北朝鮮以上に対応が難しいと思います。

小泉:中国は、北朝鮮やロシアと違って通常戦力をどんどん近代化させているので、核に頼らなければならない場面は逆に減っていくと思います。日本にとって中国の核が問題になるとすれば、尖閣諸島などで米国のコミットメントが後退した場合に、通常戦力ではなんとか中国に対応できたとしても、核を使用されることになれば何もできなくなるというシナリオでしょう。

 ただし、トランプ大統領は尖閣諸島においても日米安保条約を適用すると明言しました。その意味では、トランプ政権に変わったことで日本が中国の核を今まで以上に気にする必要が出てきたということはないと思います。

――中国の核弾頭数が明らかにされていないことを踏まえると、中国が数年後に米国やロシア並に多くの核弾頭を持つこともあり得るのでしょうか。


小泉 悠 :未来工学研究所客員研究員 早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に『プーチンの国家戦略』(東京堂出版)。
小泉:それはさすがに難しいでしょうね。米国の分析にもありますが、中国で生産できる核分裂物質の数から考えると、そこまで多くの核弾頭を作れないと思います。

戸崎:もし仮に、核弾頭数を大幅に増やすことができるとしても、どこまで増やすのかは、中国がどのような核戦略を目指すのかによっても変わってくると思います。米ロと同数程度の核弾頭を持つことで、米ロに並ぶ大国としての地位を築きたいと考えるのであれば、米ロの核弾頭数に並ぶまで数を増やすことを考えるかもしれません。

 一方、米国に相当程度のダメージを与えられる能力を持つことで中国の目標達成に十分だと考えるのであれば、そこまで核弾頭数を増やす必要はないと考えるでしょう。

神保:冷戦期の米ソ間の「戦略的安定性」を中国は異なる文脈で追求していくと思います。かつて米ソは数万発の核兵器を保有し、互いに第二撃能力を保持することを通じて、確実に報復が可能な「相互確証破壊」を基礎に据えて、相互抑止を模索しました。

 しかし中国は自らの核心的利益を保護するために、米軍の介入を阻止する通常戦力を重視し、核戦力はその延長に位置付けられています。中国にとって重要なのは米国に対する限定的な確証報復(米本土の都市部を確実に攻撃すること)であり、米国と同じレベルの核戦力(パリティ)は目指さないと思います。したがって米中・中ロの間で核弾頭数では非対称の「戦略的安定性」をつくることができるかが、大きなポイントになります。

――中国が核開発を進める一方で米国とロシアは2国間で核軍縮を進めてきましたが、この構図は続いていくのでしょうか。トランプ大統領は核戦力を増強する姿勢を見せ始めています。

小泉:米ロ間では18年までに戦略核弾頭(長射程で破壊能力の高い核兵器)の数を1550発まで削減する新戦略兵器削減条約(新START)という条約を結んでいます。ここまでは減らせるかもしれませんが、さらに1000発まで減らすことはできないでしょう。ロシアは中国を恐れているため、米国との2国間でのさらなる軍縮は避けたいと考えているからです。

 そして、核軍縮に中国を巻き込めないのであれば中距離ミサイルを持てるようにすべきだというのがロシアの主張です。先日、ニュースでも報じられていましたが、とうとうロシアが米国とのINF全廃条約を破ったことは、その主張の強い表れだと思います。

 米国にとっては、中国から飛んでくる核弾頭はせいぜい100発程度でしょうが、ロシアの場合は距離が近く、もっと多くの核弾頭が中国から飛んでくる可能性があります。保有する核弾頭数を1000発程度まで減らすと、ロシアは米国の1000発に加え、中国の数百発を気にしなくてはならなくなるため、新STARTを超えたさらなる削減はのまないでしょう。

――ロシアの核戦略の中には、日本を核攻撃する計画もあるのでしょうか。

小泉:ロシアの参謀本部の中には日本を核攻撃するオプションも用意してあるのでしょうが、標的は自衛隊の基地というより米軍基地でしょう。日ロ間の軍事的な対立レベルは低いので、日本を攻撃する優先度はそこまで高くないと思います。

 ロシアが本当に核戦力を使うのは、日本と通常戦力で戦って劣勢になりそうな場合でしょうが、そのシナリオ自体が考えにくいです。今ヨーロッパでロシアと緊張が高まっているのは、ソ連崩壊後、ロシアの勢力圏だと思っていた地域が西側に取り込まれそうになっているからです。

――昨年の日ロ首脳会談では北方領土問題が話題になりましたが、より重要なのは、平和条約締結によりロシアの危険度を下げることなのでしょうか。

小泉:日本にとってのロシアの危険度はそこまで高くはないものの、日ロ間でずっとわだかまりが続くことは戦略的に望ましくないため、それを取り除こうとはしていますね。一番の原因は相互不信だと思います。結局日本は米国の同盟国であり、そんな国に領土を譲り渡すのは心配だ、ということをロシアは繰り返し言っています。


神保 謙: 慶應義塾大学総合政策学部准教授、 キヤノングローバル戦略研究所主任研究員 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程修了。南洋工科大学ラジャラトナム国際研究院客員研究員などを歴任。
神保:過去数年間の航空自衛隊のスクランブル数は、冷戦期の最も多い時期に匹敵します。中国機への対応が急速に増えたことに加え、ロシア機も過去3年ほど活発な活動を続けています。

 日本は新しい防衛大綱のもとで力点を中国と接する南西にシフトしたいのですが、北方から離れられない状態であり、ロシアが自衛隊の構造改革を遅らせているともいえます。日本は中国とロシアの二正面で防衛態勢を維持する余裕はないので、ロシアとできるだけ信頼関係を深めて中国に注力できる状態にしていく必要があります。さらに外交戦略まで踏み込むと、日本は中ロ分断を進める必要があるでしょう。

戸崎:中ロを分断するという意味においては、日本は基本的価値、あるいは国際秩序などよりは、もっと「利益」の側面に焦点を当てる方が良いと思います。

神保:その通りだと思いますね。ヨーロッパから見たロシアとアジアから見たロシアは違い、アジアにとっては機会主義的な見方ができると思います。

小泉:ロシアは、アジア太平洋にはそんなに不満を抱いているわけではなく、むしろ期待を持っています。ヨーロッパの国々と付き合ってもそこまで高度成長を望めないので、アジアに入っていくというポジティブな姿勢でいます。これまでは中国という非常に大きなパートナーがいましたが、その次に日本とどんな関係が結べるかというのがロシアの関心だと思います。その時に日本がロシアをうまく引き付けることで北方の脅威を軽減し、南西側の脅威に専念できるようにすることが、安保上の重要な方策でしょう。

――北朝鮮、中国、ロシアという核保有国に取り囲まれる中、日本が生き残るための具体的な戦略について教えてください。

神保:核戦略は単純なものではなく、それぞれの国、地域の特色に応じた戦略が重要で、日本はそれに適合した形での抑止戦略を丁寧に作り上げていく必要があります。その前提として、米国のアジアにおける地域的な核戦略が明確に定義されている必要があります。具体的には、米国が北朝鮮や中国の戦力構成に対してカスタマイズした兵器体系と宣言政策を明示していることです。

 日本については、海上配備型迎撃ミサイルのSM−3ブロック2Aの配備計画を着実に遂行し、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)との二段構えのミサイル防衛態勢を構築するとともに、早期警戒、破壊措置命令が運用レベルで維持できるように整えておくことが重要だと思います。それでも穴があるようであれば、高高度ミサイル防衛システム(THAAD)を導入してさらに多層的な迎撃態勢を整えていく必要があるでしょう。


ミサイル迎撃態勢を強化する高高度ミサイル防衛システム(THAAD)
(写真・U.S. DEPARTMENT OF DEFENSE, MISSILE DEFENSE AGENCY/REUTERS/AFLO)
小泉:日本独自の敵基地攻撃能力も視野に入るのでしょうか。

神保:実際の運用は難しいのではないかと思います。日本を射程におく北朝鮮のノドンについて言えば、発射までに要する時間が短い上に、抗堪化(敵の攻撃の中で生残り,その機能を維持できるようにすること)・秘匿化が進み、移動式発射車両を利用するとなると、これらの策源地を確実に攻撃できる能力を持つことは至難の技です。

 そう考えると、日本にとっての有効な資源配分の在り方は、確実なミサイル防衛配備と拡大核抑止の信頼性の担保の2点セットであり続けるのではないかと思います。

戸崎:おっしゃるとおりですね。ただ、北朝鮮による日本への核攻撃に対して、もし米国、韓国による防衛が間に合わないという状況になったときには、日本として敵基地攻撃をせざるを得ないような状況に追い込まれるかもしれません。

 また、米韓が自国だけでなく日本の防衛も目的として敵のミサイルや指揮命令系統を攻撃するという梃子(てこ)、のようなものを常に与えておく必要があると思います。日本単独で24時間体制の監視・攻撃を行うことはほぼ不可能なので、米韓との協力体制を強化しておくことがいずれにしても不可欠です。

――仮に日本がTHAADを配備したとすると、中国からの大きな反発を生むことになるのでしょうか。

神保:韓国のTHAAD配備とは少し意味合いが違うと思います。中国が最も気にしているのは、新たに前方配備されたレーダーにより、核能力をはじめ中国の軍事情報が収集されてしまうことです。日本は、THAADの運用に必要なXバンドレーダーを既に地上に配備しているので、韓国のTHAAD配備と同じ目線で反発するということはないと思います。

 ただ、一般論として新しい兵器体系が日本に入ることに対しての反対は間違いなくあるでしょう。

戸崎:韓国がこれまでミサイル防衛に慎重だったのは中国との関係に留意していたからですが、その韓国が16年に入ってTHAAD導入を決定したこと自体に中国は強い不快感を抱いています。さらに、それが日米韓のミサイル防衛を通じた連携を強める可能性があるということも、反発を強める一因になっていると思われます。

――米国が日本に対して、新たな役割として期待していることはありますでしょうか。

神保:自らの防衛や地域間協力の責任をもっと担ってほしいという考え方はオバマ政権以前から継続してあると思います。

 中国のA2/AD能力(遠方で米軍の部隊を撃破し、中国軍の作戦地域に進出させないようにする能力)拡大により、米国の前方展開のコストは飛躍的に増えています。その中で同盟国として期待されるのは、やはり抗堪性の高い形での駐留能力、つまりは米国がプレゼンスを確保できる環境を整備することだと思います。

 そうすると、日本のミサイル防衛も首都防衛だけでなく、在日米軍基地防衛の在り方を考える必要がありますし、敵の攻撃に耐え得るような地下施設やコンクリートの厚い滑走路の建設、修復能力の強化、場合によっては、嘉手納、岩国、三沢などの米軍基地が攻撃されたときに他の航空基地や民間空港が使える体制を整える必要があるでしょう。

 トランプ政権になって、米軍の駐留経費負担の問題も議論されます。労務費や光熱費といった使途もいいのですが、日米が協力して在日米軍基地の抗堪性の強化に投資するとすれば、非常にピントの合った議論ができるのではないかと思います。現代の戦略環境に沿った形で同盟を位置づけるためにお金を使うことが重要だと思います。

写真・NORIYUKI INOUE
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9176


 

戦略なきシリア攻撃、背景にホワイトハウスの権力闘争
2017/04/12
佐々木伸 (星槎大学客員教授)
 トランプ政権のシリア攻撃は長期的な戦略に基づいたものではなく、場当たり的な作戦だったことが一段と明らかになりつつある。その背景には、孤立主義を主張するバノン首席戦略官派と、国際的な関与を強めるトランプ大統領の娘婿クシュナー上級顧問派との権力闘争が激化していることがある。

沈黙する大統領


(GettyImages)
 「米第一主義」を掲げてきたトランプ氏が化学兵器を使用したシリアへの攻撃に踏み切ったことで、「米国の国益に関係のない他国の問題から距離を置く」としてきたこれまでの「不介入戦略」は大きく転換、時には人道的な問題でも軍事介入する姿勢が示される形になった。

 トランプ氏自身、攻撃に関する声明の中で「シリアでの殺りくや流血を終結させるため米国の行動に加わるよう」世界に呼び掛け、シリアの和平に主導権を取っていく考えすら示唆した。

トランプ政権の方針転換を鮮明にしたのはティラーソン国務長官だ。長官はG7の開催されたイタリアで、「世界のどこであっても、無辜の人々に対する犯罪をなすどんな者に対しても責任を取らせる」と踏み込み、トランプ氏が批判してきた米国の伝統的な価値観に回帰するような態度を見せた。

 だが、7日以降、トランプ氏はツイッターも含め、シリア問題に関する発言を一切控え、沈黙している。なぜか。その大きな理由はシリア介入派とこれに反対する一派が対立し、長期戦略を描けないでいるからだ。

 米メディアなどによると、シリア攻撃を積極的に主張したのは、クシュナー上級顧問やコーン国家経済会議委員長らニューヨーク出身の実業家勢力だ。これにマクマスター補佐官(国家安全保障担当)、マティス国防長官、ティラーソン国務長官らも賛同したようだ。

イバンカの助言が影響?

 特にクシュナー氏の夫人で、トランプ大統領が溺愛する長女のイバンカ氏が化学兵器で被害を受けた赤ちゃんらに衝撃を受け、トランプ氏に助言したことが攻撃に傾いた大きな引き金になったと見られている。家族重視のトランプ氏の姿が思い浮かぶ。

 対して慎重論を唱えたのは、バノン首席戦略官やプリーバス首席補佐官、ミラー上級顧問らトランプ氏の大統領当選を支えた「米第一主義」論者たちだ。ミサイル攻撃後、この一派の支持者らからは「介入は裏切り」という批判も出始めている。

 「不介入戦略」を掲げてきたトランプ政権にはもともと、長期を展望したシリア政策はない。ミサイル攻撃のほんの数日前まで、アサド政権の存続を「政治的現実」(スパイサー大統領報道官)として容認していたにもかかわらず、攻撃後唐突に「アサド氏の退陣を要求」(ヘイリー米国連大使)している事実が場当たり的な政策しか持っていないことを浮き彫りにしている。

 シリア内戦の終結のため外交的なイニシアチブを取り、和平交渉を積極的に推進する考えはあるのかどうか。アサド政権の居座りを認めるのか、追放を掲げるのか。反体制派をオバマ政権同様、支援するのか、支援を打ち切るのか。過激派組織「イスラム国」(IS)の壊滅作戦と並行して内戦終結も目指すのかどうか。

 本来はこうした点を入れたシリア政策を策定していなければ、武力行使には踏み切ることはできないはずだ。戦略のないまま、軍事的に攻撃することはその後の展開に不確定要素が多すぎてリスクが大きいからだ。

こうした戦略の欠如に加え、両派の権力闘争が激化しているため、シリア政策を策定することがさらに困難な状況になっていると言えるだろう。トランプ氏が何らかの発言をすることはどちらかの意見に与することになり、同氏としても簡単には決められない。

IS壊滅作戦にも影響

 アサド政権側にも大きな疑問がある。アサド政権がなぜ、米国の懲罰攻撃を招く恐れがある化学兵器を使ったのか、ということだ。ロシアやイランの支援が奏功して反体制派に対して圧倒的な優位に立っていた現状を考えれば、化学兵器をあえて使う必要はなかったはずだ。

 これに対してはさまざまな見方がある。軍の一部が独走したという説や、過去3回に渡って化学兵器で攻撃をしたが、国際社会から大きな関心は呼ばず、今回も見過ごされると慢心したのではないかという見方もある。

 アナリストの1人は「計算された使用」だったと指摘する。その背景には政権軍の人員不足がある。政権軍は今や1万8000人ほどしかいない上、ロシアから結果を出すよう強い圧力を受け続けていたため、大きな打撃を与えられる化学兵器に「つい頼ったのではないか」という分析だ。

 ロシアが化学兵器の使用を前もって承知していたという米当局者の発言も報じられたが、トランプ政権はこれを否定した。ロシアをこれ以上怒らせてはIS壊滅作戦に支障が出かねないと危惧したためだったろう。

 というのも、ロシアは米国のミサイル攻撃後、シリアにおける偶発的な衝突を回避するための米ロのホットラインを一方的に遮断した。このため、ロシアの防空網に引っかかることを恐れた米国のIS攻撃は激減、IS壊滅作戦が遅れる懸念が高まっている。

 ティラーソン国務長官は12日、ロシアを訪問し、ロシアのラブロフ外相にアサド政権支援を弱めるよう要求するといわれているが、ミサイル攻撃を「国際法違反の侵略」と非難するロシアがこれを受け容れる見通しは全くない。米ロ関係は改善どころか、新たに悪化の道をたどるのは決定的だ。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9362

  
http://www.asyura2.com/17/senkyo223/msg/896.html

[国際19] 現地で見た難民押し寄せるギリシャ「監獄島」のリアル エルサルバドル国債フィッチ格下げ一部債務不履行
現地で見た難民押し寄せるギリシャ「監獄島」のリアル

60万人が流れ着いたレスボス島の「金網の中」
2017/04/12
木村史子
昨年3月に発効した欧州連合(EU)とトルコの難民対策合意から1年余。ギリシャの島々に渡った難民をトルコに送り返す代わりに、EUがトルコから7万2000人の難民を直接引き受けるこの合意を契機にEUへの難民流入は激減した。これまで60万人を超える難民が漂着したギリシャのレスボス島も、一見、平穏を取り戻したかのように見えるのだが、現実はどうなのか。レスボス島に飛んだ。

昨年11月の火災で亡くなった子供の写真(上)、ウェブレスボス島で絶望し、手首を切った難民(下)
 「夜寝ているとドカーンと大きな音がしてガバッと飛び起きた。炎が燃え上がるのが見えたので慌ててテントから飛び出した。あと5秒遅かったら命はなかった」とモリア難民管理センターに収容されているイラン出身のアリレザ(35)はその時を思い出して叫ぶように証言した。半年前にイランを出国。1カ月がかりでトルコを横断し、レスボス島にたどり着いた。難民認定が一番難しいとされる男性単身者で、認定審査の面談日も決まらない。

 レスボス島の冬は厳しく、雪が積もる。昨年11月26日夜、暖を取るガスボンベが爆発。火はアッという間にテント村に燃え広がり、66歳のイラク女性と6歳の子供が死んだ。アリレザは「亡くなったのはこの2人だ」とそれぞれの写真を見せてくれた。あどけなく笑う少年の姿が痛々しい。犠牲になった2人は火元ではない。火の回りが早すぎて逃げ遅れたのだ。アリレザのテントも火元の並びにあった。テントとテントがくっついて乱立していたという。その後も、3人が一酸化炭素中毒で亡くなる事故が起きている。

http://wedge.ismedia.jp/mwimgs/f/0/670m/img_f0b1b83bf90f27d90e01cf2397d11e6e99174.jpg

 コンゴ出身のジョエル(20)は「この島に来て5カ月になるが、これからどうなるのか全く分からない。まともなトイレもないし、食べ物もひどい。テントは寒いが、コンテナは女性しか入れない。今日も誰かが自殺したと聞いた。僕も手首を切った」と言う。先行きが見通せなくなった難民が絶望して自殺を図ったり、自傷行為に走ったりする例が報告されている。

 ロンドンから飛行機を乗り継いで到着したレスボス島。対岸にうっすら見えるトルコはミティリニ海峡をはさんで13キロの距離だ。人口8万6000人、面積は1633平方キロメートルで沖縄本島(1207平方キロメートル)より大きい。オリーブなど農業、漁業、観光業が主な産業だが、2015〜16年の欧州難民危機では島全体の人口の約7倍に相当する難民が押し寄せ、観光業が大きな打撃を受けた。


古代栄えたギリシャの島は難民問題で揺れている

モリア難民管理センター
 2015年、トルコの海岸からレスボス島を中心にギリシャの島々に渡った難民の数は85万6723人に達した。EU・トルコ合意によって16年は17万3450人に減り、今年は4月2日時点で4056人にまで激減している。難民には迫害の危険に直面する本国に送還されない「ノン・ルフールマン(非送還)の原則」が適用されるが、欧州難民危機を境に「難民(refugee)」と「出稼ぎ労働者、移住者(migrant)」が巧妙に使い分けられるようになった。

 国際NGO(非政府組織)「レスボスの欧州弁護団」を結成し、難民への法的支援を続けるドイツ人弁護士コルト・ブルーグマンから「EU・トルコ合意から1年経つので、現地に取材に来ないか」と誘われたのが、レスボス島を訪れた理由である。

 「レスボスの欧州弁護団」によると、レスボス島に上陸した難民は登録を済ませると、高いフェンスに囲まれたモリア難民管理センターに収容される。最初の25日間はセンターから出られない。その後は島内を自由に行き来できるようになるが、自らの意思で島を出ることはできない。ひたすら島で難民認定される日を待つことになる。難民認定されなかった場合は、トルコに送り返される。トルコは過激派組織IS(イスラム国)が活動するシリアとイラクを除いて、ほとんど自動的に本国に強制送還しているようだ。

 ギリシャ側は当初、「ノン・ルフールマンの原則」を厳格にとらえ、「トルコは安全な第三国ではない」として送還を渋っていた。これに業を煮やしたEUは昨年12月、「加盟国はEU域内の最初の入国地であるギリシャに難民を送り返してもよい。17年3月から実施する」と発表してギリシャに揺さぶりをかけた。EUはドイツの首相メルケルが欧州難民危機に際し「門戸開放」政策をとってなし崩しにしてしまった「EUに到達した難民は、最初の入国地でのみ難民認定審査を受けられる」というルール(ダブリン規則)を復活させた。


収容されている人々
 現在、レスボス島にいる難民は全員、EU・トルコ合意以降にやって来た人たちだ。最長で1年余、島のセンターで生活を続けていることになる。

 昨年11月、モリア難民管理センターの収容者数は5800人に膨れ上がった。夏用テントがひしめく環境は劣悪で、衛生状態も悪く、カギのついた女性専用トイレもなかった。食事もひどく、シャワーも温水もなかった。同センターの現在の収容者数は約50カ国2200人で、家族・女性・単身者に区分けされ、コンテナ住宅も次々と建造されている。

 センターの責任者によると、第一に住環境を、第二にコミュニケーションを大事にしているという。国ごとにリーダーを選び、毎晩リーダーがそれぞれの国の収容者と話をする。各国のリーダーは毎週金曜に集まって話し合いをするそうだ。


モリア難民センターで支給される飲料水
 11月の火災以来、同センターからは子供や女性などのグループが島内の一般住宅やホテル、他のセンターに移された。それがモリア難民管理センターの収容人数が減った最大の理由である。このため収容者は男性単身者が多数を占めている。 アフガニスタン出身のモフタール(25)は「2日前にアテネへの移動が決まった。フランスやドイツ、英国で暮らす家族と一緒に住めるよう再会の申請をする。今妻と暮らしている別のセンターはモリアよりずっと快適だが、水が供給されない。今日は自分たちのセンターで無料配布される果物を持って40分歩いてここまできた。ここで無料配布される飲料水と交換してもらうためにね。トルコからここに渡るボートに妻と2人で2400ドル、貯金を使い果たした。また一から働いて、お金を貯められる日が来るのはそう遠くないと信じたい」と嬉しそうに話した。

 バングラデシュ出身のサイフとレジャール(いずれも17歳)は「一緒に来た仲間はみんなトルコに送り返された。バングラデシュ人、パキスタン人、ネパール人、スリランカ人、インド人に望みはない」と声を落とした。


レスボス島のモリア難民管理センター
 自由と人権の擁護者を自認するEU。その東の端、中東との接点となるレスボス島ではとても人道的とは言えない難民への対応が続いている。難民の声を取材するためモリア難民管理センターを取り囲むフェンス沿いを歩いていると、2〜3人が小走りでこちらに駆けてきた。背中に「ポリス」と入った制服警官に「何をしている」と職務質問された。「写真を撮ったのか」と聞かれたが、咄嗟に首を振った。「パスポートを見せろ」と言われ、代わりに携行していたEUの運転免許を見せたが、警官は英国のUKを指差し「EUから出てゆく国だ」とせせら笑った。

 同センター内に同行を求められ、フェンスの破れた部分をくぐって敷地内に入った。さっきフェンス越しに取材した若者たちが心配そうに見ている。「大丈夫」と知らせるために手を振った。センターの中では20人ぐらい並んでいる場所があったが、どの顔にも表情がない。隙を見てカメラからメモリーカードを抜き取った。写真を消去されたカメラマンがいると聞いていたからだ。

 同センター内詰所でもらちがあかない。屈強で大柄な私服警官2人に車に乗せられ、ホテルにパスポートを取りに行った。そのあと石造りの警察署に連れて行かれた。鉄製の重いドアがガチャーンと閉じられると、そこは小窓からしか光が差さない薄暗いホールだった。ギリシャ正教の祭壇があり、ロウソクが灯されていた。パスポートなどのコピーを取られた。今後はパスポート携行と写真撮影は同センター入り口で許可を取るよう注意され、やっと解放された。

 命からがら島にたどり着いた難民たちにとってEU域内に入れるか、トルコに送り返されるか、まさに運命の分かれ道。最大の関門が難民認定のための面接だ。その前に難民たちに法的なアドバイスをしているのがブルーグマンらの「レスボスの欧州弁護団」である。

 難民認定の面接は、子供、お年寄り、母子、病身、身体障害者、同性愛者など社会的弱者から優先的に進められる。シリアなど紛争地から逃れて来た人たちはパスポートを持たない場合が多く、身元確認に時間がかかるためなかなか面接の日取りが決まらない。

 最近では家族再会プログラムが進められ、EU域内にいる家族に連絡して身元確認を行い、引き取ってもらうケースも多い。それでも通常10カ月ほどかかるという。最近の一番早かった例はスウェーデンに夫がいた女性のケースで、4カ月で再会を果たしている。


難民の支援活動を続けるレスボスの欧州弁護団
 現在いるボランティアの弁護士はオランダ、フランス、ドイツ、イタリア、ベルギーの計7人。フランス人女性弁護士は「最初に政治亡命って何か知っている?と必ず質問する。ほとんどの人が人権の意味も知らない」と語る。オランダ人女性弁護士は「ムスリム(イスラム教徒)の同性愛者は恥に感じて言おうとしない。同性愛者は難民認定されやすいと解っていても口に出せない深い葛藤がある」とため息をついた。

 その一方でこんな話もある。オランダ人男性弁護士は「シエラレオネが戦場で大変だったと言うのは随分、昔の話。同僚と顔を見合わせたのはこの2週間でそれぞれ10人ずつぐらいから全く同じ話を聞いたことだ。この手の話が認定されやすいからか」と肩をすくめた。やはり「経済移民」としか言えない人たちが多く含まれているのも現実だ。

 ギリシャの代表は「ギリシャは国も国民も、債務危機以降の厳しい財政再建で疲弊している。元手も財源も何もないのだから、やれることは限られている。レスボス島は2年前、難民が島中にあふれかえって観光客が空っぽになる最悪の危機を経験した。あの時に比べると今はどうということはない」と話した。

 ギリシャの副代表を務める女性弁護士は船舶関係が専門だ。ギリシャ債務危機以降、20%から29%に上がった法人税率に悲鳴を上げた海運業者が本社を国外に移すようになり、仕事が減ったという。「昨年から税金や社会保障費で給料の8割方持っていかれる。どんな状況でも飄々とやり過ごすのがギリシャ人の心意気だが、子供たちに将来もギリシャで頑張りなさいとは言えない」と悲しげに語った。


金網越しの彼らは何を思うのか
 人道支援NGO「国境なき医師団」はEU・トルコ合意に抗議してEUと加盟国政府から支援を受けない方針を貫いている。トラウマによる自殺未遂や自傷行為が相次いでいるのはレスボス島だけではない。サモス島では今年1月だけで12件の自殺未遂、6件の自傷行為が報告されている。

 トルコは難民対策のためEUから60億ユーロの支援を順次受けているが、EUへの査証なし渡航の見通しは立っていない。ドイツは今年9月の総選挙を控え、トルコ・EU合意が破綻して再びギリシャに難民が殺到し、ドイツを目指してバルカン半島を北上するのを防ぐため、3月15日以降にドイツに入った難民についてEU域内の最初の入国地に送り返している。また、EU域内の旧東欧諸国は難民受け入れに関して強い拒絶反応を示している。

 ギリシャとイタリアに流入した難民のうち16万人をEU加盟国に振り分けるというEUの計画は今年2月時点で1万1966人(7.4%)しか進んでいない。保守化が進むハンガリー、ポーランド、オーストリア、デンマークの受け入れ数は未だにゼロのままだ。自分勝手なEUの政治力学の中で難民たちの漂流はまだまだ続きそうだ。

写真・著者撮影
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9348


 


Markets | 2017年 04月 11日 14:37 JST
エルサルバドル、金融の安定性を主張 フィッチ格下げに対応
[サンサルバドル 10日 ロイター] - エルサルバドルは10日、格付け会社フィッチ・レーティングスが同国の長期自国通貨建て発行体デフォルト(債務不履行)格付けを「一部債務不履行(RD)」に引き下げたことに対応し、同国の金融の安定性が維持されていることを主張した。

左派政党、ファラブンド・マルティ民族解放戦線(FMLN)が率いる政府は前週、保守派の反対を受け、4月期限の利息を支払う金融パッケージの承認が下りず、フィッチによる格下げにつながった。

金融システム監督庁トップのリカルド・ペルドモ氏は、政府には支払い能力がある、と指摘。「(未払いは)流動性の問題ではない。われわれは政治協定によってこの問題が解決されることを望んでいる」と述べた。


ポルトガル格付け「BB+」維持、見通しも「安定的」=フィッチ

アングル:トルコ、投資不適格に転落の恐れ クーデター未遂への対応カギ
ギリシャ格付けを据え置き、改革めぐり今後引き下げも=S&P
国債格下げ、2016年は過去最多に=フィッチ
http://internal.jp.reuters.com/article/elsalvador-debt-idJPL3N1HJ25F


 


エルサルバドル財務相:債券投資家に対するリスクないと保証
Ezra Fieser
2017年4月12日 12:58 JST
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「投資家を心配させたことは遺憾だ」−カセレス財務相
フィッチとS&Pグローバルが相次ぎ格下げ

エルサルバドルのカセレス財務相は、一部の現地通貨建て債務の不履行につながった政治の混乱が債券投資家にリスクを及ぼすことはないと言明した。
  同相は電話インタビューで、「投資家を心配させたことは遺憾だ。この問題の影響を承知しているが、他の債務に影響がないことを保証する」と述べた。この発言の数時間後に、S&Pグローバル・レーディングはエルサルバドルの信用格付けを引き下げている。
  フィッチ・レーティングスも10日、エルサルバドルの格付けを「B」から「CCC」に引き下げた。フィッチは基準に基づき、エルサルバドルがソブリン債のデフォルト(債務不履行)寸前の状態にあると判断。
  S&Pはエルサルバドルの外貨建て・自国通貨建てソブリン格付けを「B−」から「CCC−」に引き下げるとともに、一段の格下げの可能性を指摘。エルサルバドル政府が国内の年金基金への支払い2880万ドル(約31億5000万円)相当を怠ったことで、「SD」(選択的デフォルト)は不可避とみられるとコメントした。
原題:El Salvador ‘Guarantees’ No Risk to Investors Amid Default (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-12/OOA0K86JTSE801
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/109.html

[経世済民120] 中国リスク軽視されている、16年初めと似た状況も 黒田あと1年デフレ脱却厳し 狙いは円安批判封じナンバー2が日米経済対話
中国リスク軽視されている、16年初めと似た状況も
クライントップ氏
Eric Lam
2017年4月12日 11:04 JST

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• 引き締め続けば中国相場急落で世界株が最大20%値下がりの公算
• かなり厳しい状況にも−「市場でないがしろにされているリスク」

中国が再び世界的な株価下落の引き金となる脅威を投資家は見逃している。チャールズ・シュワブのチーフグローバル投資ストラテジスト、ジェフリー・クライントップ氏はこう指摘する。
  同氏は香港でのインタビューで、中国当局が米国と共に政策引き締めを継続すれば、借り入れコストの上昇に伴い、これまで以上に消費者と民間支出を圧迫する公算があると述べた。
  こうした政策引き締めは中国株を巡る地合いを損ね、上海株の急落が世界中の取引を揺るがした2016年初めと同様の状況を生み出す可能性があると指摘。最悪のシナリオでは、中国相場の「非常に急な後退」を受け世界の株価が10−20%値下がりする恐れがあるとの分析も示した。
  クライントップ氏は「かなり厳しい状況になり得ると思う。市場でないがしろにされているリスクだ」と語った。

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原題:China Tracking Fed May Spark Global Equity Slump, Kleintop Says(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-12/OO9WOL6S972801


 


黒田日銀総裁の任期まであと1年−デフレ脱却の実現厳しく道半ば
藤岡徹
2017年4月12日 08:51 JST

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• 物価目標2%の達成見通せず−現行政策の成否は後任に託される
• 出口戦略に着手すれば異次元緩和で急増した保有資産から負債発生も

黒田東彦日銀総裁があらゆる手段を尽くしても、残る1年の任期内にデフレ脱却を実現することは難しい状況だ。
  就任直後に導入した量的・質的金融緩和による円安・株高で、一時は物価上昇への期待が高まったものの、原油価格の大幅な下落や増税に伴う消費の落ち込みによる景気低迷に阻まれた。
  原油価格の回復に伴い、物価は再び上昇基調にあるが、黒田日銀が掲げる2%物価目標の達成への道のりは遠い。物価見通しの民間予想は今年0.6%、2018年は0.9%と1%を下回る。黒田総裁が続投しない限り、現行の金融政策の成否は次期総裁に託されることになる。

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  日銀出身のJPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストは「物価に関しては完全に失敗だ。2年で達成するといっていたのが、4年たった今でも達成できていない。それどころか本当に達成できるのか相当疑わしい」と指摘。足立氏は残りわずかな任期中に黒田総裁がどのような手を打つのか見届けた上で、その手腕を総括したいと述べた。
  黒田総裁は13年4月に決定した異次元緩和で、2年程度を念頭にできるだけ早期に2%の物価安定目標を達成するためマネタリーベースを倍増。長期国債・指数連動型上場投資信託(ETF)などの資産購入によってインフレ期待の高まりを狙い、借り入れコストを下げた。その後も、マイナス金利、長短金利操作と政策を次々と打ち出し、デフレと闘ってきた。

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  相次ぐ黒田バズーカが政策効果をもたらさなかったわけではない。インフレ率が低水準で推移する一方で、貸し出しはここ数年で最も速いペースで増えている。

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  マネーサプライの拡大は円安につながり、輸出企業の競争力を高めた。

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  これによって株価が上昇し、企業収益が過去最高に達した。
  経済成長も堅調だ。日本の国内総生産(GDP)は16年の各四半期に1%以上拡大。年間を通じてプラス成長が続いたのは05年以来となる。安倍晋三首相が再び政権を取り戻した12年末以降、GDPは10%拡大した。
  しかし、黒田総裁は来年4月8日に任期を終える。残された課題は後任が引き継ぐことになりそうだ。日銀のバランスシートは日本のGDP(約500兆円)に匹敵する規模になりつつある。日銀が出口戦略に着手すれば膨大な保有資産から負債が発生する可能性もある。

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  BNPパリバ証券は国債発行残高に占める日銀の保有比率が現行の4割から、来年末には6割になると推計する。
  同証券の河野龍太郎チーフエコノミストは雇用が逼迫(ひっぱく)する中、現在の大規模緩和の縮小は早ければ早いほど良いとし、日銀は何兆円にも上る可能性がある出口でのコストを避けるべきだとしている。
  
  雨宮正佳理事は10日の衆院決算行政監視委員会で、仮に昨年9月末の段階で金利がイールドカーブ全般に1%上昇した場合、23.8兆円の国債の含み損が発生すると答弁した。
  日銀のバランスシートは差し迫った問題ではない。72歳の黒田総裁の退任までに予定されている金融政策決定会合は8回。一部のエコノミストは黒田総裁の再任を予想するが、多くが現段階での金融引き締めを想定していない。
  前内閣官房参与で安倍首相に経済政策を助言している本田悦朗駐スイス大使は今年1月の電話インタビューで、黒田総裁の後任人事について、再任も「一つのやり方」と述べるとともに、「基本的には黒田総裁の路線を継承してくれる人」と語った。それはデフレ脱却に向けた試練が18年以降も続くことを意味する。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-11/OO8CTK6K50XT01

 


狙いはトランプ氏の「円安批判」封じ−ナンバー2が日米経済対話
高橋舞子、Connor Cislo
2017年4月12日 09:23 JST更新日時 2017年4月12日 12:33 JST

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• 麻生副総理とペンス副大統領が来週、初会合−マクロ経済など協議
• 貿易不公正の是正優先の米と思惑のずれも−日本はTPPの意義説明

日米経済対話の初会合が今月18日、都内で開かれる。日本側は2月の首脳会談で協議したマクロ経済政策やインフラ協力などの3本柱に沿って詳細な議題を決めたい考えだが、米国側は貿易不公正の是正を優先課題に掲げる。思惑のずれも見え隠れしており、どこまで議論が進展するかは不透明だ。
  経済対話は麻生太郎副総理兼財務相とペンス副大統領をトップに据え、財政、金融などマクロ経済政策の連携、インフラ、エネルギー、サイバー、宇宙などの協力と2国間の貿易に関する枠組みについて交渉する。

記者会見する安倍首相とトランプ米大統領(2月11日、米フロリダ州パームビーチで)

Photographer: Nicholas Kamm/AFP via Getty Images
  米国第一主義を掲げるトランプ大統領は、企業に国内投資を求め、貿易や通貨政策で他国をやり玉に挙げる。各国が対応に苦慮する中、その批判をかわす対策として安倍晋三首相が首脳会談で提案した。個別案件で首脳同士の対立を回避すると同時に、インフラやエネルギー分野で貿易関係を強化し、「ウインウイン」の枠組みに持ち込む構えだ。
日本の目算
  日本が第一の柱の「マクロ経済政策」に込めた狙いは、トランプ氏の日本批判を抑えることだと政府関係者は解説する。トランプ氏は首脳会談を控えた1月31日、アベノミクスの根幹である日本銀行の金融政策を念頭に「円安誘導」と非難。浅川雅嗣財務官らが反論に追われるなど政府内に衝撃を与えた。
  三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは、「具体的な結論を求めていくというよりは、日本の金融政策の妥当性を米国に理解してもらうための方法」と分析。あくまで物価目標達成のための緩和政策であり、それは米国経済にも貢献すると説明するだろうと話した。
  「インフラ・エネルギーなどの協力」では、日米双方に利益をもたらすことを演出する。日本の政府関係者によると、具体的には高速鉄道などの対米投資や米国からの液化天然ガス(LNG)の輸入などが検討されている。
  安倍首相は2月の首脳会談後の会見で、日本のリニア技術を紹介し、「日本はこうした高い技術力で大統領の成長戦略に貢献できる。米国に新しい雇用を生み出すことができる」と述べ、米国でのインフラ投資に意欲を示した。
TPPの意義説明も
  日本側は経済対話でトランプ政権が離脱を決めた環太平洋連携協定(TPP)の戦略的意義についても説明する方針だ。政府関係者は「貿易に関する枠組み」に関する協議で、TPP交渉で得た成果を復活させたい考えだと話す。
  安倍首相は2月の訪米時、トランプ大統領にTPPの経済的・戦略的意義を説明。共同記者会見では「アジア・太平洋地域に自由かつルールに基づいた公正なマーケットを日米両国のリーダーシップの下でつくり上げていく」との強い意志をトランプ氏と確認したと語った。
  一方、戦略国際問題研究所(CSIS)のマシュー・グッドマン政治経済部長は、米側は経済対話を2国間自由貿易協定(FTA)につながる枠組みと見ていると分析。日本が「財務相同士で議論することで合意した」と説明する為替問題が議題になる可能性も指摘した。18日の初会合には、日米間の通商協定の「優先度が高い」と話すロス米商務長官も参加する。
  米商務省の資料によると、モノの貿易で16年の米国の貿易赤字は7343億ドル。対日赤字は9%にあたる689億ドルで、国としては中国に次ぎ2番目だった。

日米輸出品目
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  経済対話では厳しい議論が交わされる可能性もある。トランプ氏は3月、不公正貿易の是正に向けた2つの大統領令に署名しており、トランプ氏の指示を受けたロス長官は日本や中国を名指しして貿易赤字を抱える相手国との調査に取り組む意向を表明。先週の米中首脳会談では100日以内に貿易不均衡への改善策を取りまとめることで合意した。
  麻生氏は12日、衆院財務金融委員会で、経済対話は日米間で「自由貿易に関するルール」を「きちんと作り上げておくというのが最大の狙い」と述べた上で、そのルールをアジア、太平洋諸国に拡大する「基礎ができるのが最高だ」と語った。
「綿密な準備」
  安倍首相に近い甘利明前TPP担当相は日本が経済対話の実現に持ち込んだ背景について「首脳間の信頼関係」があると分析する。首相は、トランプ氏が大統領選に勝利した直後に電話会談し、その1週間後にはニューヨークのトランプタワーで外国の首脳として初めて直接対面を果たしている。2月にはホワイトハウスでの首脳会談後、フロリダにあるトランプ氏の別荘を訪ね、ゴルフをプレーするなどして親交を深めた。
  安倍首相は他国との首脳会談前には「綿密な準備」と「さまざまな気配り」をすると話すのは柴山昌彦首相補佐官。正式就任前にトランプ氏との直接会談に踏み切ったことについて、「交渉相手として重視、尊重してくれていると思ってもらうために、他の国はやらない早期のアプローチを行うことが非常に効果的だと思ったのだろう」と説明する。
タフ・ネゴシエーター
  時に激しい言葉で相手を非難してきたトランプ氏。安倍首相との信頼関係にひびを入れない仕掛けとして、政府は当初から麻生氏を経済対話のトップに据える人事を描いていた。甘利氏は、「個別案件はぶつかる。ぶつかる役は次席以下にさせて、トップ同士は非常に良いケミストリーを持ち続ける。そうすればぶつかってもうまい修復ができる」と言う。
  ペンス氏はインディアナ州知事時代、経済関係促進のために2度訪日している。インディアナ経済開発公社によると、1人当たりの日本の対米投資は同州が最大で、日本企業は5万人以上の雇用を生み出している。
  しかし、日本の政府関係者によると、ペンス氏は通商交渉に関わった経験がないことを理由に、経済対話を取り仕切ることに最後まで消極的な姿勢を示していたという。甘利氏によると麻生氏は2月の訪米時にペンス氏にインディアナ州を50倍にすればいいだけだと説得。さらに、両氏が同席した首脳会談で、トランプ氏が麻生氏のことをタフ・ネゴシエーターと評し、ペンス氏が承諾する流れにつながった。
  ホワイトハウス関係者は、ペンス氏は役職を引き受ける前に経済対話の枠組みが大統領の意に沿ったものであることを確認したかったとも話している。
  ペンス氏のスポークスマンを務めるマルク・ロッター氏はブルームバーグの取材に対し、副大統領は日米関係の強化に資する今回の訪日を楽しみにしており、訪日は日米の経済関係と地域の安全保障環境を強化するという双方の目的に貢献すると文書で回答した。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-12/ONKDU16TTDS101

http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/864.html

[経世済民120] トランプ政権が招く「意図せざるドル安」米国分断加速 世界経済勢い削ぐIMF 世界IT支出今年も増 百年スパンで見える金利

FX Forum | 2017年 04月 12日 19:26 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
トランプ政権が招く「意図せざるドル安」

熊野英生第一生命経済研究所 首席エコノミスト
[東京 12日] - トランプ政権は、意図せざるドル安・円高を招いている。第1の理由は、経済政策の看板の1つとして掲げてきた法人税減税の行方がますます見えなくなっていることだ。

議会は上下院とも共和党が多数派なのに、医療保険制度改革法(オバマケア)の代替案を通すことができなかったことで、法人税減税はもっと難しいのではないかとの暗雲が立ち込めている。

年内に有効な景気刺激策を発動できなければ、2018年秋の中間選挙は、共和党が不利になる可能性がある。今よりも議会運営が楽になることが望めないとすれば、米経済のシナリオを少し前のように楽観視できない。

さらに不都合なことも起こってきた。シリア・アサド政権に対するミサイル攻撃に加えて、北朝鮮に次なる制裁圧力をちらつかせていることだ。米ロ関係は一時の楽観ムードが変わり、中国もトランプ政権が期待するようには動いてくれない。地政学リスクの高まりは円高要因である。

結局、「アメリカ・ファースト(米国第一)」を掲げても、米国は孤立主義にはなり得ない。軍事・外交の主導権を軍人や国務省のベテランが担うと、米国中心の覇権を手放すようなことはできなくなる。オバマ前政権の弱腰を批判しても、中東・アジアの火種を放置することはできず、逆に介入度合いを深めてしまったのが実情だ。この方針のぶれが、トランプ外交の前途を不安視させる。これがドル安要因である。

<救いは経済の強さ>

経済思想には、「政府が何もしないのが、一番の景気対策になる」という保守の見解がある。意図せざる結果として、現状もそうなってきている。

大減税もインフラ投資もやらなければ、オバマ前政権が築いた財政赤字の抑制が守られる。国境税の導入も止めてしまえば、輸入コストが上がらずに貿易促進を続けられる。

米経済は雇用改善が完全雇用へと進んで、トランプ大統領が望んだ状態に近づいている。舵取りは米連邦準備理事会(FRB)に任せて口を出さずに利上げを見守るのがよい。FRBが2018年初になってインフレなき成長を成し遂げて、かつ、ドルの短期金利が上昇していれば、そのままイエレン議長を再任して何の問題もない。

実は、下手な介入をせずに経済の追い風を持続させることこそが、ドル高要因である。つまり、目先、トランプ政策が不発で、軍事・外交もリスクを高めても、経済分野の強さがあるから大幅なドル安にならずに済んでいるとみることができる。

<不気味な米長期金利>

筆者は、米経済が必ずしもバラ色だとはみていない。むしろ、上昇しない米長期金利には潜在的な不安が投影されているのではないかと感じている。本当ならば、2017年初から物価指標が上向きになって、FRBの利上げ観測と相まって米長期金利はさらに上昇してよいと思っていた。その期待はこれまでのところ裏切られている。

上がりすぎた米株価が調整されて、債券にシフトしたと説明すればわかりやすい。それでも物価の基調が2%になって、米長期金利が2%台前半という相対関係は、米成長シナリオと矛盾しているように思える。これは短期の需給では説明できない。長期の成長見通しが強気になれない姿が隠れていると思う。低金利の構造問題と言ってもよい。

筆者は、1)トランプ失策、2)地政学リスク、3)低金利構造の3つがドル安要因として重なっているとみている。一方、ベースとなっている経済ファンダメンタルズは、雇用と物価が改善し、消費者心理がそれを反映して好転していく状況にある。これはドル高要因だ。

本来は、ファンダメンタルズの好調さによってドル高になってもおかしくないが、3つのドル安要因がじりじりと存在感を増している。最も気掛かりなのは、低金利構造の行方だ。ここには、成長見通しが昔のように上向かず、長期停滞のリスクを気にかける臆病な投資家心理が横たわっているとみている。

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)


コラム:トランプ氏の景気刺激策、景気後退を先延ばしするだけ

コラム:円高予想の蔓延がもたらす投資機会=村上尚己氏
オピニオン:2017年はドル安と新興国株高へ=居林通氏
コラム:トランプノミクスはアベノミクスの再来=村上尚己氏
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-hideo-kumano-idJPKBN17E0RW

 


 
News | 2017年 04月 12日 19:34 JST 関連トピックス: トップニュース

焦点:トランプ効果が米国の「分断」加速、政策合意の障害に
 

 4月6日、政治、文化、経済といった主要課題について、ただでさえ米国の有権者に深い分断が生じているなか、「トランプ大統領(写真)」という要素が絡んでくると、さらに世論が二極化する傾向があることが、ロイター/イプソスの最新世論調査で浮き彫りとなった。2月撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)

Chris Kahn and James Oliphant

[ニューヨーク/ワシントン 6日 ロイター] - 米共和党支持者は一般的に、政府当局者が国政運営の過程で個人的利益を得るべきではないという点に同意しているが、それがトランプ大統領だとすれば問題はないと大半が考えている。

一方、民主党支持者は国家が運営する医療制度について、おおむね賛同しているが、そのアイデアをトランプ大統領が支持していたと知ると、その賛同率は急激に低下する。

政治、文化、経済といった主要課題について、ただでさえ米国の有権者に深い分断が生じているなか、「トランプ大統領」という要素が絡んでくると、さらに世論が二極化する傾向があることが、ロイター/イプソスの最新世論調査で浮き彫りとなった。

重要な政策課題についてコンセンサスを得ようとしても、単にトランプ大統領が関わってくるだけで合意形成が困難になってしまうという状況を、この調査は示している。

2月1日から3月15日まで、1万4000人近くを対象に実施された今回の調査では、税制や犯罪対策、報道メディアなど関する過去のトランプ発言を取り上げ、それについてどう考えるかを人々に質問している。多くの場合、トランプ大統領に対して自分がどう思っているかを基準として、自分の意見の方向性を決めている様子がうかがわれた。

たとえば共和党支持者は、米国が歴史的に他の先進国とは異なっているとする「米国例外主義」について、トランプ大統領が「他国に対して失礼」と発言していたことを知ると、その発言に同調する傾向が強くなる。また、核兵器の増強や政府のインフラ支出についても、トランプ大統領がそれらに前向きだと聞くと、賛同する傾向が強くなった。

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アメリカの例外主義について、「トランプ効果」を検証


民主党支持者は、その逆だ。トランプ氏が懸念していることが分かると、インフラ整備に対する支持は薄れ、米司法への批判も鈍くなり、都市犯罪の増大についても同意が低下する。

「彼が言うことすべてに、基本的に反対だ」と語るのは、この調査に参加したフロリダ州ジャクソンビルの民主党支持者、ハワード・ハウスさん(58)。「あの男に対しては、ほぼ心を閉ざしている」

世論を二極化させる大統領はトランプ氏が初めてではない。

1995年にワシントンポストが行なった世論調査では、当時のクリントン大統領のアイデアだと思われる法案には、民主党支持者が賛同する傾向があった。2013年にハート・リサーチ・アソシエイツが「2010年医療費負担適正化法」について調査したところ、この法案を「オバマケア」という別名で呼んだ場合には、支持と不支持双方の傾向が強まることが確認された。

だが、ギャラップの世論調査によれば、就任間もない時点での支持率は、トランプ氏よりも歴代大統領の方が高かった。それだけに、彼らは世論の分断にうまく対処できる立場にあったと言えるかもしれない。ギャラップ調査によれば、4日時点でのトランプ氏の支持率は42%である。先週は35%にまで下がっている。

ホワイトハウスでは、今後数カ月のあいだに包括的な税制改革パッケージや、大規模なインフラ投資計画を成立させたいとしており、恐らく「オバマケア」撤廃にも改めて取り組むだろうが、今のところトランプ氏は、おおむね有権者からの批判に直面している。

トランプ大統領は政治的なコンセンサスを構築するために、選挙期間中に彼を支持しなかった人々にも働きかけようと努力してきた、とホワイトハウスは説明する。

「この国をどうすればもっと良くしていけるのか、大統領との話し合いの席に着いて率直な議論をしようと望む多種多様な人々に対して、ホワイトハウスのドアは開かれている」とホワイトハウスの広報担当者は電子メールで述べている。

<党派対立激化のトランプ時代>

今回の世論調査では、回答者を2つのグループに分け、それぞれにここ数年のトランプ発言について共通した質問を行った。ただし、一方のグループには、それが大統領の発言であることを知らせなかった。その上で、それぞれの発言について賛成か反対かを尋ねている。

トランプ大統領の発言だと分っても、回答傾向にほとんど影響を与えない場合もいくつかあったが、大半の発言において、大統領の名前を出すことで、結果が変化した。最も大きな影響が見られたのは、利益相反に関する一連の質問だ。

共和党支持者のうち、「公職者」が政府内の地位を利用して金銭的な利益を得ることに対して「気にしない」と答えたのは約33%である。だが、もう一方のグループに対して、主語を「公職者」から「トランプ大統領」に変えた場合、「気にしない」と回答した共和党支持者は、2倍以上の70%に達したのである。

世論を2極化する「トランプ効果」が浮き彫りに
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回答者の一部は、トランプ氏を特別に例外扱いしている自覚はある、とその後の面接調査で語っている。

医療分野で働くテキサス州フォートワースのスージー・スチュワートさん(73)は、「結局は信頼の問題」だと指摘する。ほとんどの政治家については、個人的利益と政府の仕事を混同することを禁じるべきだが、大統領選でトランプ氏に投票したという彼女は、トランプ大統領にはそうした権利を自力で勝ち取ってきた、と言う。

「彼は非常に賢明な人物だ」とスチュワートさんは語る。「彼は、自分が素晴らしい経営者の1人であることを実証している。何かを作り上げる人物だ。この国にとって最善のことをやるビジネスセンスを持っていると思う」

前出したフロリダ州在住の民主党支持者であるハウスさんは、昨年の大統領選ではヒラリー・クリントン候補を支持していた。政治的には対極にあるが、やはりトランプ氏を特別扱いしていると語る。ただし彼の場合、トランプ氏が支持することにはすべて反対、という意味だ。

もしトランプ氏が「空は青い」と発言しても、「本当かどうか外に出てチェックする」とハウスさんは語る。

メディア発言に見る「トランプ効果」

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テキサス大学オースチン校で党派性について研究しているジョン・ビュロック氏は、政治に関する世論調査において、人々がどのような動機によって特定の回答をするのか厳密に言い当てるのは不可能だ、と言う。

回答者のなかには、質問の背景を読んで、トランプ大統領に賛成することになるのか、それとも反対することになるのかを考えつつ答える人もいるだろう、と同氏は言う。ただ、それ以外の回答者はその問題について深く考えたことがなく、トランプ大統領の名前を手掛りとしてどう答えるかを決めている可能性もあるという。

「そうした人々は、トランプ大統領のことを、自分と価値観を共有できる人物、もしくは、決してそんなことはできない人物だと考えている」と同氏は語る。

(翻訳:エァクレーレン)
  

トランプ氏支持、主な理由は「クリントン氏勝利の阻止」=世論調査
コラム:米大統領選、不動産王トランプ氏人気上昇の理由
クリントン氏勝利予想、共和党支持者で拡大=世論調査
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-effect-poll-idJPKBN17E0CK?sp=true

 


保護主義が世界経済の勢い削ぐ可能性=IMF専務理事

[ブリュッセル 12日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は12日、世界経済の回復の勢いは増しているものの、保護主義の台頭が世界貿易の脅威となっており、回復の勢いを削ぐ可能性があるとの見方を示した。

過度の対外不均衡の是正など、通商問題解決には多国間で協力し、戦後の開かれた貿易を推進すべきだ、と訴えた。

トランプ米大統領が推進する「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」には言及しなかったが、貿易を制限することは「自ら招いた傷」となり、サプライチェーンを乱し、商品価格を引き上げ、貧困層に最も大きな打撃を与えると指摘した。

先進国経済の見通しは以前よりも良好で、製造業部門は底堅いと指摘。今年の経済成長率の4分の3以上を占める新興国と発展途上国の経済の見通しも以前よりも好ましい、と説明した。

原油やコモディティ(商品)価格の上昇は、多くの商品輸出国を支援したが、そうした国の歳入は好況期の水準は下回っていると指摘した。

IMFは最新の世界経済見通しを4月18日に発表する。
http://jp.reuters.com/article/eu-imf-idJPKBN17E15K


 


 

100年スパンで捉えると見えてくる金利の先行き 資産運用のパラダイムシフトはすぐ目の前?(第3回)

2017.4.12(水) 加谷 珪一
1987年にベルリンの壁の前で演説する米国のレーガン大統領(当時)。レーガン大統領は執拗なインフレを退治し、米国を長期的な繁栄に導いた(資料写真、出所:Wikipedia)

 このところ資産運用の世界で、大きなパラダイムシフトが起こりつつある。長年続いた低金利の時代が終わり、金利上昇が本格化するのではないかとの見方が台頭してきているのだ。
 もしこの転換が本物だった場合、個人の資産運用は抜本的な転換を迫られることになる。金利が上昇し、インフレが進む局面において、銀行預金に依存し過ぎることはリスク要因となる。
 そこでこの集中連載では3回にわたって、新しい時代を迎えつつある個人の資産運用と金利の動向について論じてきた。第1回は投資に際して「金利」の動向をつかむことの重要性について、1980年代のバブル崩壊やリーマンンショックなどを例に解説し、第2回は金利が持つ本質的なメカニズムについて述べた。

(第1回)「資産家がわざわざローンを組んで不動産を買う理由」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49620
(第2回)「あなたは『金利』の正体を知っていますか?」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49631

 最終回は、過去100年間の金利動向などから、今、発生しつつある金利上昇というパラダイムシフトについて探っていく。
 なお、2月に上梓した『最強のお金運用術』(SBクリエイティブ)では金利についてさらに詳しく解説しているので、参照していただきたい。
米国の金利が上昇している本当の理由
 これまで解説してきたように、金利の動向というものは、その国全体の経済成長率と密接に関係している。短期的には金利は様々な要因で上下変動するが、長い目で見れば、長期金利の水準は、その国の名目成長率に収れんしていく。
 第2次大戦以降、世界経済は基本的に米国を中心に回っており、基本的な図式は今も変わっていない。それどころかトランプ政権の誕生によってその傾向がさらに顕著になる可能性も高まっている。米国という大きな市場から見れば、日本はアジアの地域経済に過ぎず、最終的な景気動向は米国に大きく左右される。つまり、今後の日本経済について理解するためには、米国の金利動向の分析が不可欠となる。
 トランプ政権の誕生以降、米国では金利がジワジワと上昇を続けている。FRB(連邦準備制度理事会)も3月のFOMC(連邦公開市場委員会)において、大方の予想通り利上げを決定した。このところの金利上昇は、トランプ政権が公約に掲げる大規模な経済対策への期待によるものとされている。
 マクロ経済的には、大規模な減税やインフラ投資は金利の上昇要因となるので、これらに対する期待で金利が上がっているという話はあながちウソではないだろう。だが重要なのはその先である。もしトランプ政権の経済政策に対する期待のみで金利が上がっているのだとすると、政策に対する期待が落ち着いてくれば、金利もある程度のところに収束することになる。
 だが、もっと大きな理由で金利の上昇が進んでいるのだとすると、金利上昇の期間はより長期的となり、トランプ政権の経済政策はこの動きをさらに加速する役割を果たす。どちらが本当なのか判断するためには、金利の歴史的な推移について知っておく必要があるだろう。

米国の金利は過去100年で2回のピークを付けている
 下の図は、米国における過去100年間の長期金利の推移を示したグラフである。長期金利のデータについては、1919年までは当時の中核的な金融商品だった鉄道債の金利を、1920年以降については米国債の金利を使用している。またダウ平均株価は、値上がりが激しいので対数表記にした。
米国における過去100年間の長期金利の推移
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/2/0/530/img_20806d296370811ce391c5af3b14e2a941558.jpg

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49646

 このグラフを見ると、米国の長期金利にはピークとボトムが2回ずつあることが分かる。1回目のピークは世界恐慌前の1920年前後で、この時期、長期国債の金利は5%を突破している。その後、世界恐慌に突入したことで金利は低下。ニューディール政策の実施に伴い景気は回復したものの、その後も金利はあまり上昇しなかった。
 戦後の高度成長がスタートすると金利は上昇を開始。しばらくは経済成長に伴って金利も上がるという状況が続いたが、1970年代に入ってこの状況に変化が生じてきた。その原因は米国で発生した深刻なスタグフレーション(経済の低成長とインフレが同時に進むこと)である。
 当時の米国は経済成長が鈍化したにもかかわらず、物価上昇のペースはむしろ加速した。米国の消費者物価指数は10年間で約2倍になったが、株価は横ばいが続き、実質ベースでは大幅な下落であった。ベトナム戦争の後遺症で経済が疲弊していたことや、オイルショックによる輸入物価の上昇、米国企業の競争力低下など悪い材料が目白押しとなっており、歴史的に見ても70年代は米国にとって最悪の時代の1つだった。
 長期金利は一時14%という驚異的な水準まで上昇していたが、この執拗なインフレを退治し、米国を長期的な繁栄に導いたのがレーガン大統領である。

金利が底を打つタイミングは間もなく?
 レーガン政権誕生と前後してFRB議長に就任したポール・ボルカー氏(のちにオバマ政権ではボルカー・ルールと呼ばれる金融規制強化に尽力した)は、政策金利(FF金利)を20%近くまで引き上げるなど、強烈な金融引き締め策を実施。市場では一気にドル高が進み、米国のインフレはようやく沈静化した。
 一方、レーガン大統領は、「高金利、ドル高、緊縮財政、減税、規制緩和」の5つからなる新しい経済政策(レーガノミクス)を打ち出した。これまで需要サイドに偏っていた経済政策を供給サイドにシフトし、徹底した規制緩和を通じて、容赦なく企業を競争環境に放り込んだのである。
 レーガノミクスを実施した当初は、米国経済は大混乱となったが、やがて企業の競争力は強化され、米国経済は力強く蘇った。米国の株価はその後、めざましい上昇を続け、ダウ平均株価は35年間で約20倍になった。その間、金利は一貫して下がり続け、現在に至っている。リーマンンショックは大きな出来事ではあったが、長期的に見れば、長い金利低下局面の一部分でしかない。
 金利の上昇や低下にサイクル的な動きがあるのだとすると、永久に金利が下がり続けるとは考えにくい。どこかで金利が反転する局面がやってきてもおかしくないはずだ。
 金利の低下が始まってから今年で36年になるが、1940年の金利のボトムから1980年の金利上昇までの期間が約40年だったことを考えると、そろそろ金利は底を打つタイミングかもしれない。

今の経済環境は金利が反転した1940年代とよく似ている
 それだけではない。トランプ政権を取り巻く経済的環境は、金利が緩やかに反転上昇を開始した1940年代とよく似ているのだ。
 大恐慌後に就任したフランクリン・ルーズベルト大統領は、需要不足と労働者の失業問題を解決するため、ニューディール政策と呼ばれる大規模なインフラ投資を行った。
 現在の米国はリーマン・ショックから立ち直り、ほぼ完全雇用に近いレベルまで失業率が下がったものの、雇用のミスマッチは依然として続いている。目的や状況は異なるかもしれないが、需要サイドを重視し、労働者に意図的に仕事を分配するという点において、トランプ氏の政策はニューディール政策に近い。
 大規模な国債増発を伴うニューディール政策は金利を上昇させるはずだが、意外にもニューディール以後の米国経済において、顕著な金利上昇は見られなかった。その理由は、米国政府が金利を一定水準以上には上昇させない「金利の釘付け政策」を1951年まで継続していたからである。景気の回復局面であるにもかかわらず、米国政府は意図的に金利上昇を抑制していたのである。
 同じような傾向はトランプ政権にも見られる。トランプ政権の経済政策は金利上昇とドル高をもたらすが、これが行き過ぎれば景気の腰を折ってしまう。トランプ政権はこれを警戒し、過度なドル高を牽制する発言を繰り返し行っている。穿った見方をすれば、日本や中国の通商政策を批判することで過度なドル高を抑制し、米国内の景気拡大を後押ししているともいえる。
 もし一連の状況が1940年代と同じであれば、いずれ金利は顕著に上昇する局面がやってくることになる。
 本当に長期的に金利が上昇するのか、現時点ではまだ分からないが、備えだけはしておく必要があるだろう。もし長期的な金利上昇がスタートした場合、資産運用の環境は180度変わってしまうからである。
 金利の上昇局面において、銀行預金に依存した資産運用はリスクが大きい。インフレで資産を目減りさせる事態を避けるためには、米国や日本の株式、あるいは不動産など、インフレに強い資産に分散して投資していく必要がある。長い目で見た場合、2017年は長期的な資産運用の転換点となっているかもしれない。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49646

 


IT最前線 マーケティング?IT

世界のIT支出額は今年も増加する見通し ドル高の影響受けるも、1.4%増の3.46兆ドルに
2017.4.12(水) 小久保 重信
ロシア大手銀5行に大規模サイバー攻撃、ITセキュリティー会社が発表
露モスクワにあるITセキュリティー大手カスペルスキー本社にある文字列が書かれたガラスの壁(2016年10月17日撮影)。(c)AFP/Kirill KUDRYAVTSEV〔AFPBB News〕
?米国の市場調査会社ガートナーが4月10日に公表した最新リポートによると、IT(情報通信技術)に対する今年(2017年)の世界支出額は、3兆4600億ドル(約383兆1600億円)となり、前年から1.4%増加する見通しだ。

ドル高の影響で670億ドル減少

?同社は今年1月に出したリポートで、今年のIT支出額が前年比で2.7%増加すると予測していたが、今回のリポートでこれを下方修正した。

?その主な理由はドル高だ。ドル高の影響で今年の世界IT支出額は670億ドル減少し、これに伴い米国を本拠地とする多国籍企業の収益が圧縮されると、ガートナーは見ている。

?ただし、昨年実績では、支出額の前年比伸び率が0.4%と小幅な伸びにとどまっており、今年はこれに比べて市場環境が幾分良い状態になるようだ。

?ガートナーは世界のIT支出額を規模順に、「通信サービス」「ITサービス」「デバイス」「企業向けソフトウエア」「データセンターシステム」の5分野に分けて分析している。

?このうち、IT支出全体の約4割を占める「通信サービス」は、前年比0.3%減の1兆3760億ドルになると推計している。一方で、これ以外の4分野の支出額は、いずれも増加する見通しだ。

?例えば、「企業向けソフトウエア」の支出額は3510億ドルで、その前年比伸び率は5.5%と、5分野で最も高くなる見通し。「ITサービス」も同2.3%増の9170億ドルと、堅調に推移するという。

「デバイス」はスマホの販売価格上昇に期待

?このほか、パソコン/携帯電話/タブレット端末などの「デバイス」への支出額は、同1.7%増の6450億ドルになる見通しだ。

?ガートナーによると、「デバイス」への支出額は昨年2.6%減少した。だが、今年はアジア太平洋地域の新興国市場や、中国で携帯電話の平均販売価格が上昇することから、増加に転じるという。

?また、米アップルのスマートフォン「iPhone」は発売10周年モデルが登場すると見られており、このモデルを含むアップル製端末への買い替えも進むとガートナーは見ている。

?一方で、アップルの「iPad」やマイクロソフトの「Surface」などに代表されるタブレット端末は、引き続き大幅減少が見込まれている。

(参考・関連記事)「落ち込みが止まらない、世界タブレット端末市場」

?パソコンも、デスクトップパソコン、ノートパソコンともに、依然買い替え周期が長期化しており、販売台数と利用台数の両面において、低迷が続くとガートナーは見ている。

(参考・関連記事)「Androidの利用台数、ついにWindowsを上回る」

「データセンターシステム」はサーバー市場が低迷

?このほか、「データセンターシステム」は前年比0.3%増の1710億ドルと、小幅な伸びにとどまる見通しだ。これについては、顧客企業の動きに変化が現れており、サーバー市場が低迷していると、ガートナーは報告している。

?同社によると、企業は従来のように、サーバーを購入し、自前のデータセンターシステムを構築するのではなく、アマゾン・ドットコムやグーグル、マイクロソフトといったクラウド企業のデータセンターサービスを利用するようになっている。

?こうした顧客の変化が、サーバーへの支出減少につながり、この分野の全体に影響を及ぼしているとガートナーは指摘している。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49709

http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/867.html

[国際19] 米国は「何か間違っている」−楽観で知られるJPモルガンCEOが警告 ロシア大統領:トランプの下で米国との信頼関係が悪化 
米国は「何か間違っている」−楽観で知られるJPモルガンCEOが警告
Laura J. Keller
2017年4月5日 11:34 JST
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Exclusive: JPMorgan Chase & Co. CEO Jamie Dimon And Publicis Group SA Outgoing CEO Maurice Levy Interview
Jamie Dimon. Photographer: Christophe Morin/Bloomberg
株主宛の年次書簡で不安材料を列挙−JPモルガンについては楽観的
「お金をかけなくとも経済成長を助ける『秘伝のソース』は自信」
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米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)はトランプ政権下となって間もない米国について、2つ言いたいことがある。「米国は類いまれな国」であると同時に、「何かが間違っていることは明白」ということだ。
  ダイモン氏は4日付で株主に宛てた45ページにわたる年次書簡の中で、米国がこれまで以上に強くなっているさまざまな例を列挙した上で、同国が自ら招いた諸問題の長いリストを掲げた。
  記述するのに「気がめいる」としたダイモン氏はまず、今世紀に入って米国が戦費に何兆ドルも費やした点や債務まみれの学生、同国の大学で高い学位を取得しても外国人が残留できず国外退去を迫られたり、時には比較的軽度な違反で重罪となり多数の米国人が職場を追われるシステム、規制の縛りで抑制された住宅市場を挙げた。
  ダイモン氏はトランプ大統領が雇用拡大に向けて設置したビジネスフォーラムの一員で、楽観的な見方で知られる。大統領の経済政策の一部に既に支持を表明。2月には新政権が税制改革や規制緩和、インフラ投資などの計画を実行に移せば米国の未来は明るいとし、3月のインタビューでは米消費者と企業の信頼感向上に大統領が寄与し、「アニマルスピリッツを呼び覚ましたようだ」と評価した。
  ところが、4日の書簡からは懸念材料があふれ出た。労働参加率が低いとしたほか、都心の貧困層の子供に教育が行き届かず、高等・専門学校が就職に役立つ技術を教えていないとしたほか、国内で主要空港が20年以上も新設されないインフラ計画・投資の欠如も指摘。厄介な法人税制や過剰規制も挙げた。
  一方で、JPモルガンの成長や利益を伸ばす能力については引き続き楽観的な姿勢を示した。また、同行幹部らが米国や世界経済の基調的成長に自信を持っているとも付け加えた。
  それでも米国は判断の誤りの代償を払うだろうとして、学校や政府、企業を含む「機関への信頼感と自信が必要だ」と結論づけ、「お金をかけなくとも経済成長を助ける『秘伝のソース』は自信だ」と強調した。
原題:Dimon, Still Optimistic, Warns ‘Something Is Wrong’ With U.S.(抜粋)
原題:Dimon Alarmed That Foreigners With Advanced Degrees Can’t Stay(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-05/ONWUO26TTDSA01


 

ロシア大統領:トランプ米大統領の下で米国との信頼関係が悪化
Ilya Arkhipov
2017年4月12日 22:15 JST
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Putin on April 12. Photographer: Alexei Druzhinin\TASS via Getty Images
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ロシアのプーチン大統領は、トランプ米大統領の就任後、両国の信頼関係が悪化したとの認識を示した。シリア内戦を巡る緊張が高まる中で発言した。
  ロシアは米ロ関係改善についてのトランプ大統領の選挙公約を歓迎したが、シリア問題などで米国が強硬路線を取るに伴い改善の見通しは薄れつつある。
  プーチン大統領は12日放映されたロシアのミールTVとのインタビューで、「実務レベル、特に軍事分野での信頼関係は良くなっていない」と語った。
Putin on April 12.
Putin on April 12. Photographer: Alexei Druzhinin\TASS via Getty Images
  米国と同盟国はシリアのアサド大統領への支持を撤回するようロシアに圧力をかけている。トランプ政権は今月のシリア民間人への化学兵器攻撃について同国政府によるものだと示す証拠があると主張している。
  一方、プーチン大統領はアサド政権がロシア主導の合意を順守し、化学兵器を破棄したという情報を得ていると論じた。
原題:Putin Says Trust With U.S. Deteriorated After Trump Took Office(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-12/OOAPL66K50XU01
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/111.html

[経世済民120] なぜ若者たちは「シリコンバレー脱出」を望むか ドル109円割トランプけん制 米、北朝鮮攻撃を日本に伝達 トルコ爆発3人死
なぜ若者たちは「シリコンバレー脱出」を望むか

瀧口 範子瀧口 範子
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2017年4月13日(木)
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 世界から注目されるシリコンバレーは、みんなが来たい場所、みんなが働きたい場所だと思われているだろう。最先端のテクノロジーやホットな企業があり、ほかにはないチャンスが転がっている。若者ならばなおさら、ここにひかれるはずだ。

 ところが最近の調査で、ミレニアル世代(1982〜2004年生まれの世代)がシリコンバレーを離れたがっていることが分かった。理由は住みにくさだ。

 この調査はシリコンバレーの民間団体「ベイエリアカウンシル」が2017年1月に、シリコンバレーと周辺地域の住民1000人に対して実施したもの。それによると全体の40%が今後数年の間にこの地域から引っ越したいとしており、その割合は昨年の33%から増えている。

ミレニアル世代の46%が脱出を希望

 しかもミレニアル世代に絞ってみると、この数字は46%にも上ることが分かった。シリコンバレーを見回すと若者がやたらと多く、まさにこのミレニアル世代ばかりが目につくのだが、彼らの半数近くが早くここから出て行きたいと考えているとは意外だ。

 調査では、回答者の55%がこの地域の生活費高騰、41%が交通渋滞、39%が住宅問題を懸念しているとしている(写真)。最大の問題は何かと尋ねると、住宅問題を挙げる人が多かったようだ。トランプ政権を問題だと挙げた人も5%おり、これは移民問題など政策への不安感からだろう。


写真●平日は午後3時から始まるシリコンバレーの帰宅ラッシュ
撮影:中田 敦
[画像のクリックで拡大表示]
 これまでシリコンバレーは40歳以上になると住みにくくなる場所だと言われてきた。上述したように若者が多く、スタートアップ従業員の平均年齢は22歳とされる。言ってみれば、そうした若者がシリコンバレーの原動力であり、若い世代が少なくなると地域の経済力や活力に大きな影響が出ると、ベイエリアカウンシルは懸念している。

 住居や交通問題などの住みにくさは、これから家庭を築こうというミレニアル世代にとっては正面からやってくる障害だ。良い学校がある地域は、住宅や家賃がさらに高く、かなりの勝ち組でなければ十分な広さのある家に家族で住んだり、子供を良い学校に通わせたりできなくなっているのだ。長期的に見れば、今はシリコンバレーがサステイナブル(持続可能的)になれるかどうかの分かれ道にあるかもしれない。

 もう一つ別の調査も、シリコンバレーからの脱出傾向を捉えている。こちらも民間団体の「ジョイント・ベンチャー・シリコンバレー」が行った調査に基づく「2017年シリコンバレー指数」だ。

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 こちらは主にこの地域の経済環境を調査するもので、先の景気後退から回復した2010年以降、29万7000人の雇用が創出され、2016年だけでも4万5621人の雇用が加わったとしている。最大の割合を占めるテクノロジー関連職は、その間に5%も拡大した。

 ところがその一方で、住人の12人に1人が米国勢調査局の定める貧困線以下の収入しか得ていない。貧困線とは、生活を支えるのに必要な最低限の収入を示すもので、例えば子供2人がいる4人家族ならば2万4339ドルだ。ここでは、子供の11人に1人が貧困状態にあるという。シリコンバレーの輝かしいストーリーからは、全く見えない部分である。

サービス業の賃金に至っては減少

 しかも、掃除や介護、店員などのサービス業に携わる人の賃金は、2010年から8%下がり、シリコンバレーの世帯の29%が何らかの援助なしには最低限の生活すらできないレベルだという。

 賃金は教育レベルによっても見通しに大きく差が出ており、大学や大学院卒業者の中間収入は、2014年と2015年の間で3578ドルも上がった一方で、それ以下の学歴の人々の収入は下がっている。シリコンバレーにおける学歴による収入の差は、サンフランシスコよりも高く、もちろん全米平均よりもずっと大きい。

 こうした背景があるからだろう。シリコンバレーの人口増加は伸びが緩慢になっているという。テクノロジー関連職につく海外からの移民が依然として多い一方で、シリコンバレー地元住人の外部地域への引っ越しが増えているからだ。実際、入ってくるよりも出て行く人の方が多く、人口の増加が見られるのは出生数と死亡数の差による純粋な自然増によるものという。人々がここから逃げているのだ。

 この調査でもやはり、交通渋滞の悪化が指摘されている。生活が苦しく、ただでさえ複数の仕事を掛け持ちしている人々にとって、こうした交通渋滞は死活問題だろう。公共交通も日本からは想像できないほど不便だ。シリコンバレーの成功は、裏で大きな負の問題を作り上げているわけだ。

 テクノロジーに基づく特殊な歴史だけではなく、シリコンバレーの社会、経済面での異例でいびつな発展は、重要な研究対象になるだろう。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/061700004/040700191/?ST=editor


 


 

NY為替:ドル109円割れ、トランプ大統領がドル高けん制[FISCO]

配信日時 2017年4月13日(木)06:45:06 掲載日時 2017年4月13日(木)06:55:06
12日のニューヨーク外為市場でドル・円は、109円87銭へ上昇後、108円96銭まで反落し、109円03銭で引けた。米国とロシアの緊張が高まる中、ティラーソン米国務長官がプーチン露大統領と会談、ラブロフ露外相との共同会見で双方の関係改善への姿勢が見られたため、緊張感が緩和しドル売り・円買いが後退した。その後、トランプ大統領が「ドルは過剰に強くなりつつある」との見解を示したためドル売りが加速した。ユーロ・ドルは、1.0589ドルから1.0675ドルへ急伸し、1.0665ドルで引けた。ユーロ・円は116円07銭から116円55銭まで上昇。米国とロシア関係のさらなる悪化への懸念は多少和らぎリスク回避の円買いがやや後退した。ポンド・ドルは、1.2482ドルから1.2548ドルへ急伸した。ドル・スイスは、1.0089フランへ上昇後、1.0022フランへ反落した。


米政府、北朝鮮攻撃の可能性を4月上旬に日本に伝達

配信日時 2017年4月12日(水)06:30:00 掲載日時 2017年4月12日(水)06:40:00
 共同通信によると、北朝鮮の核・ミサイル問題を巡り、米政府が米中首脳会談を控えた4月上旬の日米高官協議で、中国の対応によっては北朝鮮への軍事攻撃に踏み切る可能性に言及していた。

 米国務省高官は、中国が北朝鮮への圧力を強化するか、米国が攻撃するか、2つに1つの選択肢しかないと説明。同方針をトランプ大統領から中国の習近平国家主席にも伝達するとも述べたという。
http://klug-fx.jp/fxnews/ 

 
トルコ南東部で爆発、3人死亡=地下トンネルで「テロ攻撃」【4/12 22:37】
【エルサレム時事】トルコ南東部ディヤルバクルの警察本部で11日、爆発が起き、ソイル内相は12日、捜査の結果「テロ攻撃」だったことが分かったと述べた。爆発で警官ら3人が死亡した。

トルコでは16日、大統領の権限強化に向けた憲法改正の賛否を問う国民投票が行われる予定で、当局はテロ事件への警戒を強めている。ロイター通信によると、反政府武装組織クルド労働者党(PKK)が12日、犯行を認める声明を発表。ディヤルバクルではこれまでも、PKKによる治安当局者を狙った攻撃が相次いでいた。

事件直後、地元当局は装甲車の修理中に起きた事故との見方を示していた。しかし、ソイル内相は12日、敷地外から掘られた地下トンネルを通じ、爆発物が仕掛けられたと明かした。

http://fx.dmm.com/market/news/
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/870.html

[政治・選挙・NHK224] 在韓邦人は守れるか? 北朝鮮の反撃でソウルは火の海 ギリギリだった駐韓大使「帰任」 森友問題で財務省が態度を変えた理由

在韓邦人は守れるか?
北朝鮮の反撃でソウルは火の海


シリア攻撃と似ているようで決定的に違う北朝鮮攻撃

2017.4.13(木) 北村 淳

「戦争の準備できている」 北朝鮮、米空母派遣を非難

韓国ソウルの鉄道駅で、北朝鮮によるミサイル発射に関するテレビニュースを眺める人々(2017年4月5日撮影、資料写真)。(c)AFP/JUNG Yeon-Je〔AFPBB News〕
http://afpbb.ismcdn.jp/mwimgs/1/9/600w/img_193141c4e61ebe1a416d02a1a15336b3130212.jpg

トランプ政権がシリア軍事施設へのトマホーク巡航ミサイルによる攻撃を実施した。日本のメディアの間では、「次は北朝鮮核兵器関連施設への空爆か?」あるいは「いよいよ斬首作戦(米国軍と韓国軍による金正恩排除作戦の名称)実施か?」といった憶測が飛び交っている。

シリア情勢と北朝鮮情勢の類似点

たしかに「シリアのアサド政権と米国」「北朝鮮の金正恩政権と米国」という2つの対決軸には構造的に類似した点も少なくない。

シリアも北朝鮮も、米国が忌み嫌う「大量破壊兵器(核兵器、生物化学兵器)拡散」の直接当事者である。そして米国に言わせると、シリアも北朝鮮も、アサド政権と金正恩政権という独裁者政権であり国民を抑圧している。

米国ではかつてオバマ政権が「化学兵器の使用はレッドラインを越えることを意味する」と強い警告を発していた。同様に「北朝鮮によるICBM(米国本土に届く核弾頭搭載大陸間弾道ミサイル)の完成はレッドラインを越える」という警告も発している。

また、アサド政権の背後にはロシアの存在があり、北朝鮮の背後には(表面的には金正恩政権非難を強めているが)中国が存在する。ロシアはウクライナを侵攻し、東ヨーロッパ諸国に対する軍事的脅威を強めつつある。同様に中国も南沙諸島に軍事拠点を建設し、南シナ海そして東シナ海沿岸諸国に対する軍事的脅威を高めつつある。

だからといって、「シリア+ロシア」ならびに「北朝鮮+中国」をひとくくりにして米国に対する敵勢力とみなすこともできない。米国には、ロシアとも中国とも協調しなければならないというジレンマが存在している。

現在戦闘中の対IS戦争では、アサド政権もロシアも、ISと戦っている。とりわけロシアの攻撃力はISを崩壊させるために極めて重要である。したがって、トランプ政権としても、プーチン政権によるアサド支援やウクライナ情勢などにはある程度目をつぶっても、ロシアとの協調を望んでいた。

また、中国に対しても、中国が国連決議に従い対北朝鮮経済制裁を実施すると言いつつも、北朝鮮と中国の間を石炭運搬船や貨物船が行き来している状況を米国が把握していないわけではない。北朝鮮軍情報機関が満州内のとある施設で人民解放軍情報機関と同居し活動していることも米軍情報機関は承知している。つまり、中国と北朝鮮がある意味で“仲間”になっていることは暗黙の事実だ。にもかかわらず、金正恩政権の暴走を少しでも制御するには中国共産党の力が必要なことも、トランプ政権としては認めざるを得ない。したがって、北朝鮮を押さえるには、中国による南シナ海や東シナ海での覇権主義的な動きにはあえて触れずに、中国に協力を求めるしかないことになる。

米国はこのようなジレンマを抱えつつ、「レッドラインを越えた」アサド政権に対して直接的軍事攻撃を仕掛けた。この攻撃を北朝鮮および背後の中国に対する脅しと考えることは可能である。

北朝鮮軍事攻撃に立ちはだかるハードル

しかしながら、シリアと北朝鮮では数々の相違点がある。

まず、シリアも北朝鮮もそれぞれ大量破壊兵器を保有しているが、北朝鮮の場合は米国本土に届くICBM(大陸間弾道ミサイル)を手にする秒読み段階にまで達している。

また、シリアには米国本土や米国の前進拠点に対する反撃能力はないが、北朝鮮には韓国や日本の米軍諸施設はもとよりグアムの米軍基地にすら反撃を実施する弾道ミサイル戦力が存在する。したがって、北朝鮮が米国にとっての「レッドライン」を超えた場合、米国すらも直接被害を被りかねない。シリアをミサイル攻撃する場合は米軍の損害を考える必要はないが、北朝鮮の場合は韓国や日本に展開する米軍も損害を被ることを織り込まねばならないのだ。

それだけではない。シリアの軍事攻撃目標は、今回のミサイル攻撃の状況を映し出したロシアのドローンの映像でも明らかなように、地上にむき出しの航空施設や建造物がほとんどである。それに対して、北朝鮮の軍事攻撃目標の多くは地下施設や山腹の洞窟施設である。

それらの地下式施設を、今回のシリア攻撃で用いたトマホーク巡航ミサイルで破壊することは不可能に近い。そうした強固な軍事施設を破壊するには、どうしても大型貫通爆弾(GBU-57 MOP)が必要である。これは巡航ミサイルには装着できず、B-2ステルス爆撃機(一機に2発搭載可能)で攻撃する必要が生ずる。

B2ステルス爆撃機に装着されたGBU-57大型貫通爆弾
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/c/b/400/img_cb1c303e43ea155b83e3cab641aa9632133349.jpg

さらには、シリア軍の軍事施設や化学兵器関連(と米国がみなす)施設の所在はおおかた判明しているのに反して、北朝鮮の大量破壊兵器や弾道ミサイルに関連した地下施設の大半は位置すら判明していない状態だ。いくらステルス爆撃機で接近可能であっても、また、大量の巡航ミサイルを精確に撃ち込むことが可能であっても、攻撃目標の正確な位置が判明していなければ攻撃できない。

韓国への反撃は確実、おそらく日本にも

そして何よりも決定的な問題点(米国にとっての)は、北朝鮮に対する軍事攻撃は“確実に”韓国(とりわけソウルとその周辺)に対する激烈な報復攻撃と、“おそらくは”日本に対する報復攻撃も引き起こしてしまうことである。

すでに本コラム(2017年3月30日「米国で北朝鮮攻撃が議論の的に、日本は備えを急げ」)で指摘したように、米国による北朝鮮軍事攻撃の直後に、ソウルとその周辺に対しては無数の砲弾とロケット弾が雨あられと降り注ぐことになる。その事態をどのように考えるのかが、米国軍関係者の間では議論の焦点になっている。

いずれにせよ、トランプ政権が北朝鮮への軍事攻撃を決断するには、広島・長崎に原爆を投下した際と類似した理論を持ち出さざるを得ない。

つまり、「韓国や日本における一般市民の犠牲は、米国本土がICBM攻撃された場合に生ずる損害を防ぐためにはやむを得ない犠牲と考えざるを得ない。また、北朝鮮が核兵器を手にした場合、韓国や日本自身でもさらに多くの人々が犠牲になりかねない。そのような悲惨な事態を抑止するための軍事攻撃であり、そのための犠牲は甘受せざるを得ない」──といった正当化理論である。

米国第一主義を掲げるトランプ大統領にとっても極めてハードルが高い決断にならざるを得ないだろう。

極度に困難な立場の日本政府

今回の米国によるシリア攻撃に対して、日本政府は「化学兵器拡散を抑止するための正しい決断であった」とトランプ大統領の決断を高く評価し、支持を表明した。

しかし、米国による北朝鮮攻撃に対して日本政府はこれまで通りに「イエスマン」であり続けるわけにはいかない。

「大量兵器拡散を抑止するための北朝鮮軍事攻撃」がトランプ政権のテーブルの上にあがっている現在、日本政府は「報復攻撃の結果生ずる在韓邦人の犠牲や、日本への弾道ミサイル着弾による惨状」を避けつつ北朝鮮の暴発を抑止しなければならないという、極度に困難な立場に立たされているのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49703


ギリギリだった駐韓大使「帰任」のタイミング北朝鮮への対応と日韓合意の行方
2017.4.13(木) 新潮社フォーサイト

新潮社の会員制国際情報サイト「新潮社フォーサイト」から選りすぐりの記事をお届けします。
日本政府、駐韓大使らの一時帰国発表 釜山の少女像設置を受け
慰安婦を象徴する少女像(右端)が設置された韓国・釜山の日本領事館前で、警備に当たる警官ら(2017年1月2日撮影)。(c)AFP/YONHAP〔AFPBB News〕
(文:フォーサイト編集部)

韓国・釜山市の日本総領事館前に慰安婦像が設置されたことへの対抗措置として、今年1月から一時帰国していた長嶺安政駐韓大使が4月4日夜、帰任した。

岸田文雄外相は3日、帰任の理由について「5月9日の大統領選挙を控え、次期政権誕生に備えた情報収集」と「北朝鮮問題に対処するうえでの日韓の緊密な情報交換と連携の必要性」を挙げ、菅義偉官房長官は「諸般の事情を総合的に検討した結果であり、邦人保護に万全を期すとの観点も踏まえたもの」と説明している。

一時帰国から3カ月、そもそもなぜここまで長引いたのか。そしてなぜこのタイミングだったのか。朝鮮半島政治が専門の小此木政夫・慶應義塾大学名誉教授に聞いた。

「今しかなかった」

大使を帰任させた当初は、ここまで長期化させるつもりではなかったのではないか。1〜2週間の「一時帰国」で韓国側が折れ、釜山の少女像は撤去されるだろうと、政府は読んでいたはずだ。

ところが韓国政府は、朴槿恵(パク・クネ)大統領のスキャンダルで、当事者能力を失っていた。そこに「一時帰国」という対抗措置をとることに意味があったのか。結局3カ月も引っ張ったうえ、少女像もそのまま。質のいい外交とはいえない措置だった。

その意味で帰任は当然の措置なのだが、ギリギリ最後のタイミングだった。外相や官房長官は大統領選挙と北朝鮮問題を理由に挙げているが、これはもっともな話で、まさに今しかなかった。

北朝鮮の瀬戸際政策への対応

1993年1月、アメリカではビル・クリントン氏が大統領に就任し、2月には韓国で金泳三(キム・ヨンサム)政権が発足、そして3月には米韓合同軍事演習が行われた。そんな中、北朝鮮はNPT(核拡散防止条約)から脱退し、「核開発」を武器に、アメリカを相手に瀬戸際政策を展開した。結局翌年10月に米朝枠組み合意が成立。これは北朝鮮にとって大きな成功体験になった。

実は現在は、この第1次核危機と非常によく似た状況になっている。1月にスタートしたトランプ政権の新政策が固まる前に、北朝鮮は「核ミサイル」をちらつかせて米朝交渉を迫る、という瀬戸際政策を始めているのだ。アメリカは対北朝鮮政策が整っていない段階で、何らかの決断をせざるをえないところに追い込まれており、軍事的なオプションの可能性さえ取り沙汰される状況になっている。

そういったときに駐韓大使が韓国に不在だというのは、日本にとってはきわめて不利だ。その意味で、帰任はギリギリのタイミングだった。

新政権に日韓合意の履行を迫る

駐韓大使には、さらに大きな任務がある。それは慰安婦問題を巡る日韓合意の履行を迫ることだ。

先にも述べたように、大統領が不在の現政権には当事者能力はない。もちろん黄教安(ファン・ギョアン)大統領代行に対して引き続き履行を促すことも重要だが、より大事なのは、5月9日の選挙の結果誕生する新政権に「日韓合意を守る」と言わせることである。

今のところ、大統領選の有力候補者たちは全て、日韓合意の破棄や再交渉を主張している。つまり日韓合意をあまりにも軽く考えているのだ。そうした候補者や側近に対して、日本側の真意を今のうちから伝える必要がある。

それは新政権が発足してからでもいいではないか、と考えるむきがあるかもしれないが、それでは遅い。当選直後の大統領は、任期の中でもっとも強く国民に訴えることのできる時期である。必要なのは、大統領が「日韓合意は守らなければならない、それを反故にすることは国際合意や国際儀礼に反すること」と国民を説得することなのだ。そのためには、選挙戦中から候補者にアプローチする必要があり、それができるのは大使だけなのである。

その意味でも、大使の帰任はこの時期でなければならなかったのだ。

◎新潮社フォーサイトの関連記事
・「原発」と「食品」で安倍政権の揺さぶりを狙う中国の「計略」
・法律・条約による核兵器の制御
・「国家安全保障戦略」から日本の防衛を考える
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49691


 


【第133回】 2017年4月13日 山田厚史 :デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員
森友問題で財務省が「交渉記録データ復元」に態度を変えた理由


 森友学園への国有地払い下げで、財務省は交渉経過を書き留めた書類を「破棄した」としてきたが「電子データなら復元できる可能性あり」と態度を変えた。

 防衛省の「南スーダン日報問題」と似た展開になった。防衛省は日報を「破棄した」と言い張り、ウソがバレそうになると「電子データならある」と認めた。財務省も同じコースを歩むのか。

 書類が存在していることは、3月2日の『世界かわら版、財務省の「交渉記録は残っていない」は本当か』に書いた通りである。私文書として保存するのは官僚の常識。それを「ない」と言い張るのは無理がある。資料がないなら、当事者に聞いて報告すればいい。調べる意思はなく、第三者による調査もしない。そんな当たり前のことさえ拒む。国民への背信を続ける役所が「増税」を叫んでも、誰も相手にしないだろう。

パソコンで作り電子で残す時代に
「残っていない」は無理がある

 いまどき行政文書を手書きする役人はいないだろう。会議の報告書や面談の応答記録はキーボードを叩いて作る。手元にはプリントされた文書が残っても役所の記録は電子データだ。

 財務省の佐川宣寿理財局長は「短期間で自動的に消去され復元できないようなシステムになっている」と国会で答弁していた。

 これもウソだったようだ。10日付朝日新聞によると、財務省が2013年に導入した現在のシステムには「自動的にデータを消去する仕組みはなく」、データの消去は手作業だと職員は言う。消してもシステム上に残る。佐川局長が頑なに「消去された。復元できない」と言い張ったのは「文書を見せろ」と言われると困るからだろう。だが、そこに無理があった。

「ないことにしよう」という方針が揺らいだのは、大阪地検特捜部の動きと絡む。

 豊中市議らが「国有地を格安で払い下げ、国に不当な損害を与えた」として近畿財務局を背任罪で告発した。地検特捜部は4月5日この告発状を受理した。

 起訴か不起訴か、特捜部は判断することになる。交渉経過をまとめた書類は、重要な手掛かりになる。「破棄しました」「ありません」は通用しない。自発的に出さなければ家宅捜索される恐れが出た。財務省は「電子データならある」と態度を変えた。

 かつて「大蔵省」だった頃、接待汚職で地検特捜部の家宅捜索を受けた。メモや手帳など私文書をごっそり持っていかれた苦い体験。あの二の舞はゴメンということだろう。「出せる資料は出す」という方針に変えざるを得なくなった。

「都合のいい資料は出す」に転換
姑息とはまさにこのこと

 反省して態度を改めたのか。残念ながら、そうではなさそうだ。朝日新聞によると「復元できるかを調べるためには、相当の費用と時間がかかる」と同省情報管理室は説明している。消去された文書は、2週間経つと新たなデータが上書きされる。つまり「残っていないデータもある」と匂わせている。

 ポイントはここだ。「出せるデータ」と「出せないデータ」を分ける、ということだ。「情報公開は都合が悪いからしない」という方針から「財務省にとって都合のいい資料は出す」という態度に変わった、ということだろう。

 これも捜査が関係している。財務省は「背任ではない」と主張したい。そのためには、不正はなかった、とする証拠が必要だ。刑事事件もそうだが、証拠は権力側が握っている。その中で犯罪を立件するのに都合のいい証拠を選び、起訴状が描くストーリーに沿って並べる。

 財務省は手元にある情報から、自分が主張したいストーリーに合わせ「データが復元できた」と資料を出す、というハラだろう。

 森友学園の小学校用地にはゴミがたくさん詰まっていた。撤去するには巨額の費用が掛かる。想定される費用を値引きしたら9億円の土地が1億円になりました。そんなストーリーに合わせた資料を出そうというのである。

 姑息、とはこういうことではないか。財務官僚は競争社会を勝ち抜いてきた人たちだ。優秀な頭脳をこんなことに使うため難しい試験を突破してきたのだろうか。

 森友学園の籠池理事長は、近畿財務局の対応に「想定外の大幅な値下げ」と驚いて見せた。世間は知っている。特段の便宜を図りながら、ルール違反にならない「知恵」を官僚は持っていることを。

 人々が知りたいのは、なぜそんな「知恵」を働かせて、特定の団体や人物に得させたのか、である。特段の措置を与えるために無理はなかったか。誰が指示すればそんなことができるのか、ということだ。

 疑われるのは財務省に責任がある。払い下げ価格の開示を求める情報公開請求を、近畿財務局は拒否した。後ろ暗いことがある、と誰しも思う。

防衛省の日報問題と同じ構図
データ廃棄なら証拠隠滅だ

 防衛省の「日報隠匿」も、都合の悪い情報は国民に知らせない、という身勝手が底流にあった。こちらも情報公開を拒んだことが発端だった。

 南スーダンでは昨年7月、駐屯地近くで起きた大規模な武力衝突が起きた。状況を時系列で報告したのが日報だ。公表すると部隊が戦闘地域にいることになり、PKOの継続が危うくなる。

 ジャーナリストの開示請求に対し、防衛庁は「日報は事務連絡の書類。保存義務はない。廃棄した」と開示を拒んだ。

 PKOを継続できるかに関わる重要情報でありながら、都合が悪いから隠す、という安易な対応に、自民党内からも疑問の声が上がり、調査すると電子データが統合幕僚監部に残っていた。陸上自衛隊の複数のコンピューターにもデータはあり、不開示後に消去された疑いも浮上した。

 紙の時代とは違い、電子データは転々流通しやすく、機密情報でもない日報を防衛庁は隠しきれなくなった。

 財務省でも同様なことが起きてはいないか。近畿財務局の担当者が作成した面会記録や会議資料は担当者の端末だけでなく、財務省のデータベースで管理されているはずだ。アクセス権は誰にあるのか。籠池理事長は本省で理財局の室長に面会している。当然、室長はアクセスできるのだろう。情報データは多くの関係者が保管している可能性がある。

 調べればすぐ分かることだ。関係書類は「保管期限1年、国有地売却が決まった時点で廃棄した」と佐川局長は言うが、子どもだましの言い訳である。

 森友学園への売却は分割払いで、支払いは完了していない。カネがない学校法人である。鴻池事務所が口利きし、首相夫人付きから照会があった「政治案件」。トラブルが起きかねない案件であることは役人なら分かる。経過や対応を記したデータを廃棄するなどありえないことだ。やっていたら証拠隠滅だ。

情報公開法に反する文書管理の省令
不都合な細部はすべて「私文書」に

 財務省の情報管理に詳しいOBによると、「公開制度ができたとき、文書管理を洗い直した」という。内部の書類をすべて出すと面倒が起こりかねない。開示するのは、国会などに出す公式文書などで、交渉経過や面談記録など細部を記録したものは、担当者が保管する「私文書」として情報公開の枠から外した、という。

 佐川理財局長が主張する「文書管理は財務省令に従い」というのはこれである。財務省が勝手に決めたことで、「政策決定過程を後で検証できるようする」という情報公開法の趣旨に、明らかに反した情報管理がなされている。

 TPP(環太平洋経済連携協定)を思い出してみよう。交渉内容は「非公開」だった。何がどう話し合われているか表に出てこない。交渉担当者は「守秘義務」が課され、しゃべってはいけない。と言いながら交渉についてはレクや懇談があり、外務省や経産省の役人が記者クラブで説明する。世論対策として都合のいい部分だけ公開した。

 交渉が妥結して、分厚い協定書や付属文書が公開された。ところが交渉経過や個別会談の内容は非公開のままだ。

「真実は細部に宿る」という言葉がある。どこの誰が、いつ、どんな話し合いをしたか。その「細部」が全体の性格を映し出す。だからTPPは交渉記録を非開示にする。どこの国が、どんな要求をして、どう決着したか。そこにTPPの本質が滲むからだ。

 財務省が交渉記録を出さないのは、それと同じである。誰の圧力で、どう動いたかが分かるからだ。

 森友事件は、情報公開制度の実態を考え直すいい機会だ。鉄面皮な理財局長が「省令に従い」というが、その省令がとんでもないものであることがよく分かった。

情報公開なくして増税なし
情報公開なくして民主主義なし

 財務省だけの問題ではない。元経産官僚の古賀茂明さんも「交渉記録など大事な文書はないことになっているが、あります。担当者がちゃんと保管している。局長が、誰か持っていないか、というと『あります』と出すようになっている」と役所の内情を語っている。

 財務省も経産省も、多分その他の官庁も、同様な「抜け穴」を作っているのだろう。それが公然化したのがTPPだった。

 役人は、税金で情報を集めながら、情報は自分のものだと思っている。

 情報は権力だ。民主主義は政府に集まる情報を透明にすることなしに実現しない。

 南スーダンの日報問題も、森友学園の国有地格安売却も、発端を切り開いたのは情報公開請求、という点は意味深い。

 権力者は公開の間口を限りなく狭くする。情報公開法ができても、省令でブロックする。世間が知りたい情報は出さず、「私人である首相夫人付きの役人」への回答書という意味不明な文書などが突然出てきたりする。

「情報の非対称性」とは、こういうことだろう。権力側は情報を全て抱え込み、都合のいい「証拠」だけを小出しにする。市民の側は、請求しても「のり弁」。真っ黒に消された文書か「非開示決定」である。

 日報問題も森友事件も、安倍政権の性格を色濃くあらわす事件だった。そして情報公開がいかにおろそかにされ、権力者の都合で運用されていることを学ぶ機会となった。

 情報公開なくして民主主義なし。財務省は肝に銘ずべきだろう。情報公開なくして増税なし。政府への信頼がなければ財政再建など夢物語である。

(デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員 山田厚史)
http://diamond.jp/articles/-/124650
http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/131.html

[経世済民120] Fランク大学と専門学校、どちらを選ぶべきか 就職先選び学入試より重要 誰もいない場所で戦え 相づち笑顔 目標+実行で倍速
【第5回】 2017年4月13日 オバタカズユキ[監修]

Fランク大学と専門学校、どちらを選ぶべきか

親としては「大卒」レベルの賃金を得てほしいけど…

初刊行から19年を数えるロングセラー『大学図鑑!』の2018年版発売を記念し、監修者オバタカズユキさんがみなさんから寄せられた“大学選び”の悩みについて、独断と偏見で答えちゃいます。

今回は、推薦かAOで安易にFランク大学に行ってしまいそうな息子を心配されるお父さんへの回答です!(なお、本連載での回答は、就職や夢の実現を保証するものではなく、一意見として参考にしてください。受験生ご本人、親御さん、ご親戚からのご質問をお待ちしております!)


Q 今年は息子が進学時期ということで、『大学図鑑!2018』を自分も参考に読ませていただきました。息子の通う高校は地方の下位校で、複数の大学から推薦枠とAO入試の案内がきているものの、それらは『大学図鑑!』だと最下位グループにあたる「関東私大Eグループ」(編集部注:本書独自の区分で、関東私大をA〜Eグループに分けています。ちなみにEグループは大東文化、東海、亜細亜、帝京、国士舘、拓殖、東京経済、和光、立正、関東学院、桜美林)のいくつかと、ほかは同書に掲載されていないそれ以下のレベル(Fランク?)と思われます。

 しかも息子の成績は、ビリから数えたほうが早いレベルです。2年の成績が推薦やAOで先方にいくので、頑張って上げるようにと2年のはじめに三者面談で言われたし、自分も口を酸っぱくして言い続けたのですが、この始末。
 つい先日、友だちのつきあいで車系専門学校のオープンキャンパスに行った息子が、ふだんは車の話などしないのに、その気になって帰ってきました。たしかに、その専門学校は面白いカリキュラムのある有名校ではあるものの、息子の反応には内心仰天しました。
 私としては『大学図鑑!』のせめてEグループまでの大学を目指してもらいたいなあ、中小企業でも面白い会社がたくさんあるのは知っているので、賃金を「大卒」基準でもらってほしいと思うのですが、このままだと“Fランク”行きは確実そうです。なぜなら、高校の生徒はほとんど推薦枠かAOで入学していて、受験する子はごくわずかしかいないそうなのです。友だちに流されやすいうえに文系なので、せめて少しでもマシなところに進んでもらいたいのですが……。心理学系に唯一興味があるようなのですが、そもそもEはともかくFランクの心理学科で就職口はあるのでしょうか?
 色々とっちらかってしまいましたが、オバタさまのご意見をお聞かせください。よろしくお願いいたします。


せめてEランクの大学に行ってほしい、という親心だが…

A  長文のご質問をありがとうございました。何をのんきにと怒られてしまうかもしれませんが、拝読し、「いいなあ、この父子」と温かい気持ちになりました。

 息子さんの将来が心配でならないお父さま。最初は「ちょっと過干渉かも」と感じたのですが、よくよく読ませてもらうと違う。ご自身が大学受験生の年代だった頃とはかなり変化している昨今の受験事情を、お父さまはきちんと調べて理解されています。推薦やAO入試の合格に必要な条件をちゃんとご存じだし、なにより息子さんの成績や性格傾向、現在の進路に関する気持ちについても把握されています。

 きっと息子さんは、お父さまのことが大好きなのでしょう。でなきゃ、高校3年生あたりの男子が父親に、パッとしない自分の成績をオープンにはしないものです。<友だちに流されやすい>と感じさせるような場面を父親に見せないし、<心理系に唯一興味がある>といったナイーブな内面まで明かそうとはしません。息子さんはお父さまのことを信頼しているので、自分を隠さずにいられるのだと思います。

 そんな父子関係はそう簡単に作れるものじゃありません。おそらく幼少の頃から、父が子に正面からきちんと向き合ってきた。その蓄積の成果だと私は思います。そして、そうやって自分の存在を深いところで肯定されて育ってきたお子さんは、この先、大きな壁にぶつかっても自分を大事にするということを忘れない。そこさえ揺るがなければ、どんな学歴であろうが、どんなに厳しい社会だろうが、人はけっこうたくましく生きていけるものだと私は考えます。

 だから、たしかにお父さまの質問文は少々「とっちらかって」いるかもしれませんが、さほどに慌てなくても、息子さんは大丈夫なように思うのです。<広告、建前、裏取引一切なし!>をキャッチコピーとする『大学図鑑!』を作っている私ですから、きれい事は言っておりません。「いいなあ、この父子」と本当に感じた私の気持ちを、まず受け取ってください。

 そのうえで申し上げます。息子さんは、先日、車系専門学校のオープンキャンパスに行き、特に車好きでもないのに、<その気になって帰って>きて、お父さまを驚かせたのですよね。さらにお父さまは<そこは面白いカリキュラムのる有名校>と書かれています。ならば、進学先の暫定的第一志望はその専門学校でいいのではないでしょうか。

 もちろん、そんな簡単に言ってくれるな、というお気持ちは理解できます。<中小企業でも面白い会社がたくさんあるのは知っているので、賃金を「大卒」基準でもらってほしいと思う>というご意見はごもっともです。知る人ぞ知るいい優良企業が世の中にはいっぱいあるのだから、そこの総合職採用基準(=大卒)をとりあえずクリアしてくれ、との思いは、世間体や見栄などから出てきたものじゃなく、お子さんの将来を本気で考えたからこそです。

「大卒」切符はいつまで有効か?

 ただ、どうでしょう。

 ご承知のように、あらゆる産業構造が大変化中で、しかもその変化の速度は増すばかりです。知る人ぞ知る優良企業でも10年先にどうなっているかは、誰もわかりません。大卒という「資格」を取って、優良企業の入場切符を手に入れても、それが先々の生活保障になるのかどうか、私は疑問です。

 あくまで私見ですが、優良な中小企業で10年後、20年後、30年後も優良でい続けるところは、<賃金を「大卒」基準で>支払うような旧式の雇用スタイルをすでに壊しているのではないでしょうか。私が取材したことのある有望ベンチャー企業のいくつかは、「大卒」も「専門学校卒」も同じ扱いで採用していました。そのぶん、はっきりとした実力主義で、たとえ難関大学を出た社員でも、働きが悪ければ優遇なんてされてませんでした。

 新卒採用の際に「専門学校卒」よりも「大卒」を優遇する会社が多いことは事実だと思います。けれども、入社後、その学歴差を埋めて十分の働きをする社員には、相応のポジションを任せ、相応の報酬を支払う会社はどんどん増えているし、イノベーションを起こしながら生き残っていく可能性の高い優良企業ほど、学歴云々はどうでもいいという傾向も強まっているように見えます。

 そうした中で、働く者にもっとも求められるものは、単純な話ですけれども「やる気」です。学歴や資格などのスペックよりも、職務へのモチベーションやその会社の理念に対する共感性を重視しています。

 だとしたならば、息子さんが専門学校のオープンキャンパスに行って、<その気に>なったというのは、かなりラッキーな話ではないでしょうか。何が息子さんの心を動かしたのかはわかりませんが、進学においても一番重視すべきはモチベーションだと思うのです。私がお父さんの立場だとしたら、その専門学校についてもっと調べてみろ、と息子さんに言います。

 そして、他の専門学校や、一般入試で受けられそうな大学も、なるべくたくさん見学に行かせます。さきほど「暫定的第一志望」と書いたのは、息子さんがもっと多くの進学先の感触を確かめていったら、より<その気に>なるケースがまだまだ出てきそうだからです。

 友だちのつきあいで行った専門学校で、お父さまが<仰天>するような反応を起こした息子さんです。どこでどんなアンテナが働くか、楽しみじゃないですか。ピンときた学校が、たとえ学力的に難しそうな大学であったとしても、モチベーションさえ見つかれば、ガリ勉スイッチが入るかもしれません。逆に、ピンと来たのが、名前を書けば誰でも入れるような専門学校だとしても、入学後に目覚めて、優良企業が「いいね、君のやる気は!」と評価する人材になる可能性だって十分にありえると思います。

「心理学部(科)」の内容を息子さんによく調べさせよう

 お父さまは、<EはともかくFランクの心理学科で就職口はあるのでしょうか?>と質問なさっていますが、この件はシビアに申し上げましょう。もし心理職で正規就職したいのなら、『大学図鑑!』でいえばAグループ(早稲田、慶應、上智、国際基督教、東京理科)以上の大学を出てその大学院を優秀な成績で修めるくらいじゃないと難しいのが現実です。そのくらい心理職の雇用情勢は厳しい。

 また、大学の心理学部(科)では、実験授業が盛んに行われます。知覚や記憶や思考など基本的な心的機能の働きについて、ネズミを使った実験でデータを取り、その統計分析と格闘し続ける。そんな地味でハードな研究が待ち構えています。心理学に興味を示す人の多くは、自分や身近な誰かの心の奥を知りたいといった動機を持っているものですが、そういう面白心理学みたいなことは、基本的に扱いません。そこは要注意です。

 職種は問わないというなら、何学科を出ようが、大切なのはやっぱりモチベーションです。進学した先で、どれだけ生き生きと学んだか、社会で生きていくということに関して気づきを得たか、そのあたりが問われます。

 大学名は、EでもFでも、ぶっちゃけ大きく変わりません。ざっくり申し上げると、MARCH(明治、青学、立教、中央、法政。『大学図鑑!』ではBグループ)より下位の大学名が就職の武器になることはあまりないとお考えになっていいと思います。ただし、やる気や人間性などは卒業大学名に関係なく、評価対象になります。勉強があまりできるほうじゃないのなら、余計に大事なのはそこです。きれい事じゃなく、それが現実です。

 受験システムや進学の現状に詳しくなるほど、「木を見て森を見ず」のような意識になりがちなところがあります。実社会で生きることの厳しさをよくご存じであると思われるお父さまが、「大卒」や細かな「ランク」ごときにこだわられているのは、失礼ながら、そういうことかもしれません。

 しっかりと向き合って育ててきた息子さんの、潜在的な生命力を信じ、高校卒業後の進路については、ちょっと距離を取って、本人任せにしてみたらいかがでしょうか。

 これまでの学校の成績が芳しくなかったのは、「やらされる勉強」にモチベーションを見出せなかったからだと思います。学校見学というかたちで、新しい世界を覗きに行けば行くほど、「勉強って面白いかも!」という発見を意外にたくさん見つけてくる。息子さんはいい意味で、そんなタイプのようにお見受けします。
http://diamond.jp/articles/-/124642

 


【第2回】 2017年4月13日 小西史彦
【マレーシア大富豪の教え】
成功したければ「誰もいない場所」で戦いなさい


NHKやテレビ東京、日経産業新聞などで話題の「マレーシア大富豪」をご存じだろうか? お名前は小西史彦さん。24歳のときに、無一文で日本を飛び出し、一代で、上場企業を含む約50社の一大企業グループを築き上げた人物。マレーシア国王から民間人として最高位の称号「タンスリ」を授けられた、国民的VIPである。このたび、小西さんがこれまでの人生で培ってきた「最強の人生訓」をまとめた書籍『マレーシア大富豪の教え』が刊行された。本連載では、「お金」「仕事」「信頼」「交渉」「人脈」「幸運」など、100%実話に基づく「最強の人生訓」の一部をご紹介する。

自分の意志で「戦う場所」を選ぶ

 なぜ、24歳で日本を飛び出して、マレーシアに渡ったのか――。
 これは、これまで実に多くの方々に質問されたことです。
 答えはシンプル。私は、「戦う場所」を選んだのです。
 日本ではなく、マレーシアで戦うほうが、自分にとって勝算が高いと考えたわけです。

 どういうことか?

 私が青年期を迎えたのは1960年代。当時、日本は戦後の荒廃から立ち直り、「奇跡」と呼ばれる復興を遂げていました。いわゆる高度成長です。国民の多くが「明日はもっと豊かになれる」と思える、非常に活気のある時代でした。しかし、「事業家として何事かを成したい」と願っていた私には閉塞感があった。というのは、すでに日本の体制は、完全に出来上がっていたからです。

 大資本が形成され、それが国内経済を支配。今後、その体制が一層強化されていくのは明らかでした。父親が営んでいた薬問屋の未来も見えていた。父親の薬問屋は石川県の能登地方をエリアとしていましたが、都市部である金沢に本社を構える薬問屋に吸収される運命にあるのは明白でした。さらに石川県の薬問屋は、名古屋に本拠を置く薬問屋に吸収されるに違いない。そのような未来がはっきりと見えていたのです。

 そんな“出来上がった国”のなかに、資金も有力なコネクションもなく、能力的にも平凡な人間である私が入り込んでいって、何かを成し遂げることができるだろうか? そこに、勝ち目があるとは思えなかったのです。

 だから、私は、自分の夢をかなえるためには、「戦う場所」を選ばなければならないと、はっきりと自覚していました。もちろん、ひとりの日本人として日本を愛しています。しかし、自分が事業家として戦う土俵はここではない。平凡な自分が夢を実現するためには、別の「場所」を見つけなければならないと考えたのです。

 そして、私が選んだ「場所」がマレーシアでした。

 1967年に、日本政府が企画した「青年の船」に乗って、東南アジア各国を回ったときにマレーシアという国に魅了されたのです。当時のマレーシアはイギリスから独立して間もない「若い国」で、日本のように“出来上がった国”ではありませんでした。出会った政治家、官僚、実業家も若く、「いい国をつくろう」という清新な志に満ち溢れていました。この国ならば、一生懸命に働けば、平凡な自分でも何事かを成すチャンスがあるはずだと考えたわけです。

同じ努力をしても、「戦う場所」で結果は変わる

「戦う場所」を選ぶ――。

 これは、生きていくうえで非常に重要なことです。
 国レベルで「戦う場所」を変えるのは、たしかに大きな決断です。誰もができる決断ではないかもしれません。だけど、コトの大小は問わず、私は常に「戦う場所」を選ぶことを意識してきました。なぜなら、「持たざる者」が活路を見出すためには、絶対に必要なことだからです。

 たとえば、「青年の船」に応募したときもそうです。

 明治100年を記念する一大国家プロジェクトでしたから、応募者が殺到することは容易に予想できました。だから、私は住民票を東京都から石川県に移すことにしました。都道府県ごとに選考することになっていたので、どう考えても東京の倍率がいちばん高くなります。そこには、私のような平凡な男にチャンスはない。「戦う場所」を生まれ故郷の石川に変えるべきだと考えたわけです。

 これが見事に当たりました。私は東京で日米会話学院に通っていましたが、石川県に英会話を本格的に学んでいる人はほとんどいませんでした。だから、トップの成績で選考されることに成功。英会話を学んでいる人が多い東京では、こうはいかなかったでしょう。

 もしかすると、「ずるい」と思う人もいるかもしれませんが、あくまでもルールの範囲内。「ずるい」のではなく、「戦略」をもって戦ったというべきでしょう。私という人間に変わりはないけれど、「戦う場所」を変えれば結果は変わる。同じ努力をしても、「戦う場所」によって人生には天と地の差が生まれるのです。

まず、“群れ”から離れる


小西史彦(こにし・ふみひこ) 1944年生まれ。1966年東京薬科大学卒業。日米会話学院で英会話を学ぶ。1968年、明治百年を記念する国家事業である「青年の船」に乗りアジア各国を回り、マレーシアへの移住を決意。1年間、マラヤ大学交換留学を経て、華僑が経営するシンガポールの商社に就職。73年、マレーシアのペナン島で、たったひとりで商社を起業(現テクスケム・リソーセズ)。その後、さまざまな事業を成功に導き、93年にはマレーシア証券取引所に上場。製造業やサービス業約45社を傘下に置く一大企業グループに育て上げ、アジア有数の大富豪となる。2007年、マレーシアの経済発展に貢献したとして同国国王から、民間人では最高位の貴族の称号「タンスリ」を授与。現在は、テクスケム・リソーセズ会長。既存事業の経営はすべて社著兼CEOに任せ、自身は新規事業の立ち上げに采配を振るっている。著書に『マレーシア大富豪の教え』(ダイヤモンド社)。


 では、「戦う場所」をどう選ぶべきか?

 これは、状況次第で変わりますから、一般論として語るのは難しい。それでも定石(じょうせき)はあります。まず考えるべきなのは、「人が多い場所は避ける」ということ。先ほどの住民票もそうです。競争相手の多い東京ではなく石川で戦えば、成功確率が上がるのは当然のことです。

 日本を飛び出して、マレーシアに渡ったのも同じです。

当時は、海外旅行をするのにも大金が必要な時代。海外に移住する日本人などきわめて稀(まれ)でした。しかし、だからこそチャンスがある。

 たしかに、資金もなく特別なコネクションもない私が、マレーシアに根を張るのは容易なことではないことはわかっていました。しかし、それに成功すれば、マレーシアにおいて日本とのコネクションをつくることができる希少(きしょう)な存在になることができる。日本のなかにいれば平々凡々たる存在であったとしても、マレーシアでは唯一無比の存在になれる可能性があるのです。

 ところが、私が見るところ、この定石を打たない人が多い。

 むしろ、逆の手を打つ人ばかりだ。「寄らば大樹の陰」でしょうか、人が群れている場所についていく人が多い。たとえば、就職活動。相変わらず人気企業ランキングに名前を連ねる大企業をめざす人が多いようです。しかし、競争相手が多いのだから、苦戦するのは目に見えている。運よく勝ち抜いても、大企業だから社内での競争も激しいでしょう。唯一無比の存在になるのが難しいのは、いわば当然の帰結(きけつ)。“群れ”のなかで生きるのは、実は難しいことなのです。

 もちろん、大企業を否定するわけではありません。私が言いたいのは、なんとなく群れるような生き方をすべきではないということ。世界は広い。誰でも、自分が有利に戦える「場所」はあるのです。だから、まずは、できるだけ広い視野をもって、「戦う場所」を探してみるべきです。そして、間違ってもいいから、自分の意志で「戦う場所」を決めてみるのです。

 なにも、私のように「国」を変える必要はありません。

 これから就職するという人であれば、安心できそうだからという理由で大企業をめざすのではなく、魅力を感じる分野のベンチャー企業に飛び込んでみるのがいいかもしれない。すでに企業で働いている人であれば、誰も手を挙げたがらないリスクの高い新規事業にチャレンジしてみるのがいいかもしれない。いや、もしかしたら、誰もがやりたがらない地味な仕事を、自ら買って出てコツコツやり続けるのがいいのかもしれない。それは、まさに人それぞれ。自分自身で選び取ることです。

 とにかく、まず“群れ”から離れること。世の中の多数派と同じ選択をすることで、安心を得ようとするのではなく、自分の意志で「戦う土俵」を選び取ることです。そして、そこで全力で戦うことが、自分の人生を切り拓く第一歩なのです。
http://diamond.jp/articles/-/124421


 

【第6回】 2017年4月13日 生形大
年収を左右する就職先選びこそ、大学入試よりも重要である

日系企業を経て、外資系証券会社へ勤務後、お金のふやし方を学び、現在、1億円を超える年収がある著者:生形大氏が書いた『9割の日本人が知らないお金をふやす8つの習慣』。本連載では、本書の内容のダイジェストで構成したものを紹介する。


豊かな生活を送るには
どんな会社に就職するかが重要

 私は日系企業から外資系企業に転職し、さらに外資系企業を数社渡り歩いてきましたが、そのたびに年収がアップしていきました。同じような業種、ほぼ同じような仕事であっても、働く会社によって年収が倍くらい違うこともありました。

 もちろん年収だけが大事では決してありませんが、このような経験を通して、働く会社をどう選ぶかは人生のライフスタイルにおいて非常に大切なことだと実感しました。しかし、私がよく思うのが、就職先を選ぶ際、安易にイメージなどで選んでいる人がとても多いということです。

 どこの大学を出るかより、むしろ、どこの会社でどういう仕事をするかの方が人生を大きく左右します。もちろん、いい大学を出れば、その選択肢も広がりますが、せっかくいい大学を出ても、最後の一番重要な選択をする時に、しっかりと調べずに決めてしまっているのです。

 今の時代、定年まで同じ会社で働くことは珍しくなりつつあり、日本でも転職する人が多くなっていますが、最初からいい会社に勤められるのであればそれにこしたことはありません。

親の責任は大学まで、で
本当にいいのか?

 自分の就職先だけでなく、自分の子供の就職先についても同じです。

 多くの親は、子供がいい大学に進学することには熱心で、塾に通わせたり、私立の中学や高校に通わせたりします。そしていい大学に入学できたらそれがゴールのように思えて、満足感に浸ってしまう。

 しかし、人生において本当に大切な時期は就職してからです。でもそこに積極的にかかわっている親はあまりいません。「子供の好きなように選ばせる」親が多いのではないでしょうか。

 子供から相談されればアドバイスくらいはするかもしれません。でも、「悪いことは言わないから大企業にしておけ」「公務員になれば安泰だよ」くらいの、今の時代にはあまり役に立たないアドバイスしかしていない人が多いと思います。

 台湾企業に買収されたシャープ、ルノーの傘下にある日産のそのまた傘下に入ってしまった三菱自動車工業など、かつては名門だった大企業が凋落する例はいくつもあります。

 大企業だからといって決して安心はできない時代です。「その企業が今後も伸びていく業種か」「今後AIやロボットなどに置き換わって行くような業種ではないか」といった将来まで見据えた視点で、就職先もアドバイスしてあげることが大切なのです。

人生が豊かになる
働き方を選ぼう

 業種だけでなく、給料や退職金についてもよく調べる必要があります。

 就職する会社によって給料は大きく違います。例えば同じ営業職でも業界が違うだけで給料が2倍になることもある。就職先を探す際は、そういったことも含めてリサーチするべきです。

 誰だって「給料ランキング」や「平均年収」くらいはチェックしているかもしれませんが、それを鵜呑みにしてはいけません。いくら給料が高くても、サービス残業が多かったり、あるいは退職金が出なかったりといった会社もあるからです。

 私が働いたある会社では、給料はそれほど多くはありませんでしたが、退職金がたくさん出ました。退職金を在職期間で割ると、月10万円ほどプラスでもらえたことになります。また、他の会社では年俸制で見た目の年収は高かったのですが、残業代も退職金も、挙げ句の果てに交通費の支給すらありませんでした。

 繰り返しになりますが、会社を給料や待遇で選べと言っている訳ではありません。同じような仕事をして、働く時間が少なく、給料が高ければ、より有効に時間を使えるようになり、人生が豊かになる可能性が高くなるということです。

 しかし、こういったことを教えてくれる人は誰もいません。仕事のやりがいはとても重要ですが、やりがいだけで一生安泰に暮らしていける時代は終りつつあります

 学生のうちに、「どの会社で働けば将来有望か」「働いている間に実質的にもらえるお金はいくらになるのか」など、働き方・稼ぎ方を教えてくれる専門の塾があってもいいくらいだと考えています。

生形大(うぶかた・だい)
1977年8月生まれ 富山県富山市出身。横浜国立大学工学部建築学科卒 横浜国立大学大学院修了。外資系証券(バークレイズ証券・JPモルガン証券)出身の投資家。現在、国内12棟189戸、海外3戸、都内の戸建て・区分マンション4戸の不動産を所有。不動産以外にも株・FX・先物・オプション取引・オフショアファンドなどあらゆる金融商品に精通。現在は資産運用の専門家として独立し、成功者続出の投資家を養成するスクールの運営、不動産投資セミナーの人気講師として、経済的、時間的な自由を志すサラリーマンに指導を行っている。主な出演メディアにサタデープラス(TBS系列)。主な著書に『年収1億円を生み出す[ハイブリッド]不動産投資』(ぱる出版)がある。
http://diamond.jp/articles/-/124137

 


【第3回】 2017年4月13日 桐山知佳
売れる販売員が必ずやっている行動とは 本気のほめる相づち


その販売員が接客につくと、いつの間にかお客様が多くのものを買っており、しかもそのお客様もいい買い物をしたという大変な満足を感じているという「カリスマ販売員」がいますね。
一体その販売員は、どういう接客をしているのでしょうか。
4月13日にダイヤモンド社から発売される『売れる販売員は似合わないものを絶対に売らない』から、その秘密に迫っていきます。
教えてくれるのは、多くの販売員を店長に昇格させてきた、接客アドバイザーの桐山知佳さんです。

第3回の今日は、「売れる販売員が必ずやっている行動」をお伝えします。

商品を丁寧に扱うということは、行動で商品の良さをアピールしているということ

「商品を丁寧に扱うのはなぜか」といえば、もちろん商品に傷や汚れをつけないように、です。
しかしこれはいちばんの理由ではありません。
実は、商品の扱い方に、お客様はその販売員の「本音」を見てしまいます。

Tシャツが1枚1000円程度の、低単価なアパレルショップにいた時の話です。
商品が安いので、お店の在庫が非常に多く、いつの間にかスタッフ全員が商品を雑に扱っていました。
ある時スタッフが、接客中に置き場所がなく商品同士を積み上げてスペースを作りました。どさどさと、乱雑に商品を寄せています。
これでは、いくら口先で
「安くても、うちの商品は良い商品です」
と言っても、信憑性を欠いた接客になってしまいます。
本当に大切だと思ったり、良い商品だと思うなら、自然と扱いも丁寧になるはずで、お客様もそのことを敏感に感じ取ります。
反対に、100円均一ショップに行ったときのことです。S字フックの場所を聞いた時に、お店のスタッフは近くまで案内してくれ、最後に丁寧に両手で差し出し
「こちらがお探しの商品です」
と渡してくれました。
丁寧に商品を扱う姿に
「安い商品でも、大事に扱っているのだな」
と価値を感じたことを覚えています。

どんなに安くても、これから自分が買う商品を丁寧に渡されたら悪い気はしません。

ユニクロや無印良品で、低単価な商品をズレなくきれいに畳んで配置しているのは、
「安くても上質」
「安くても丁寧に扱っています」
ということを陳列でアピールするためです。
丁寧に扱い、行動で商品に付加価値をつけていきましょう。

相づちだけで、顧客ができる

また、接客では、ぜひ「相づち」の威力を知っておいてほしいと思います。
日々売場にいるとひしひしと知る、接客をうけるのが苦手……むしろ嫌い! というお客様が多いという事実。
なぜ、そんなに接客が嫌いだと感じるのでしょうか。

とあるアンケートによると
「勝手に商品についてまくしたてられる」
「聞いてもいない話を一方的に聞かされる」
という回答が上位をしめていました。
つまり、販売員との間に信頼感がなく、納得して商品を買ってもらえていないということ。

そして、ここで信頼感を増す大きな方法が「相づち」です。

顧客数が社内1位の同期がいました。彼女は取り立ててよく話すとか、美人などというわけではありません。
ただ、彼女と話をしていると、つい気分良くいろいろなことを話してしまうのです。いつも接客を受けたいというお客様が大勢いました。
彼女の接客の特徴は、とにかく相づちがうまいこと。
お客様も、知らないうちに気分がのってきて、いつのまにか聞かれていないことまで話していると言います。
この接客の特徴は、お客様のほうが話している時間が長いことでした。
他に、特別なことはしていません。
相手が話してくれれば、話してくれるだけ情報が入ってきます。その情報を元にお客様にぴったりの商品をすすめるから、お客様も満足するのです。

相づちは、実は多くの人が単調になりがち。いちばんの基本は、
「そうなんですか」
「へえ」
ですが、これだけでは長続きしません。
もうひとつ、相づちに増やしたいのは、相手の言葉を褒めるものです。
・「それは良いことを伺いました」
・「私にはない視点でした」
・「すごい!」
といったものです。

そして、その相づちを打つときの根本で押さえておきたいのは、「本気の相づち」にすること。
こうしないと、お客様の心は開かれません。しかし、これはそんなに難しいことではありません。
あれこれ考えず、まずはお客様の話をじっくり聞いて、面白そうなところに合いの手を入れるだけです。
そうすると、自然に心がこもります。 
基本の「そうですか」「へえ」の他に、ほめる相づちを増やしてみましょう。
相手が話していることをきちんと聞かなければ使えないものなので、相手の会話をいまよりももっと聞こうと耳をすませることができます。
http://diamond.jp/articles/-/124246

【第16回】 2017年4月13日 山名裕子
「きれい!」と人に言うと本人がきれいになってくる

無意識のうちについつい言ってしまう口ぐせ。でも、その口ぐせひとつで幸せになれる人となれない人が決まってしまうとしたら……? テレビ出演多数の人気臨床心理士が、幸せを引き寄せる口ぐせの数々を、脳への効果や医学的理論を基に解説。今回は、「きれい!」という言葉の素晴らしい効用についてです。


脳は「自分に言われた言葉」と勘違いする


山名裕子(やまな・ゆうこ)
やまなmental care office代表。臨床心理士。 1986年、静岡県浜松市生まれ。幼い頃から両親が一番の理解者であったが、身内ではないからこそ話せることもあるのだということに気がつく。心理学系大学を卒業後、夢に向かって努力を重ねるが、努力だけではどうにもならない挫折を味わい、自信をなくす。その後もう一度心理学を学び、臨床心理士として活動するため、大学院にて心理療法の心得や技術を習得する。2013年、臨床心理士の資格を取得。心の専門家、臨床心理士として「モーニングバード」(テレビ朝日)、「あさチャン!」(TBS系)、「Rの法則」(Eテレ)などメディア出演多数。また、有名企業から教育機関などで講演活動も精力的に行っている。主な著書に『バカ力―完璧をめざさない強さ―』(ポプラ新書)『一瞬で「できる男」と思わせる心理術』(宝島社)がある。


 ここまでにたびたびお話ししてきましたが、他人に向けて発した言葉であっても、脳は「自分に言われた言葉」と勘違いします。

 いいことを言えばいいように、悪いことを言えば悪いように脳が受け取り、自分自身にその影響が出てきます。

 大学時代、読者モデルをやらせていただいたことがあるのですが、撮影中、カメラマンさん、編集の方、ライターさん……皆さん寄ってたかって「かわいい〜!」「きれい〜!」と言ってくださるんです。私のモチベーションを上げようと、過度に言ってくださっているんですけれど、思わず嬉しくなってニコニコしちゃう。でもよく見ると、「きれい〜!」と言っているご本人たちがとても高揚しているんですね。満面の笑みで、お肌ツヤツヤ、輝いて見えました。

 このように、意識して周りに「きれい!」と言うように心掛けると、自分もきれいになっていきます。「きれい」が与える言葉の魔法が、発している自分自身に作用し、イキイキ、ツヤツヤしてくるのです。

 もちろん女性だけでなく、男性にも有効です。日本の男性は、あまり女性に「きれい」「美しい」と言いませんが、発すれば発するほど、自分自身に活力がみなぎり、若々しくなります。周りの女性もきれいになるし、優しく接してくれるようにもなりますので、ぜひ使っていただきたい言葉ですね。

 また、周りの女性に対して「きれい」を使うと、「きれいな女性と一緒にいられる自分」という認識が高まり、自己肯定感を得られるという効果もあります。「きれい」という言葉は一石二鳥なのです。

 話は少しそれますが、自分よりも若い友人がいる人、意識して若い人の輪に飛び込んでいる人は、年齢よりも若々しく、お肌にもハリがあります。若い人の中に身を置き、若い人ならではの言葉や感性に触れることで、脳や心が「自分も彼らと同年代なんだ」と勘違いするんですね。

 きれいになりたい方は、実際にきれいな人や、きれいになろうと自分磨きをしている人
に、意識的に近づくといいでしょう。自然と「きれいですね!」と言う機会が増えますし、「き
れい」に関する言葉を耳にする機会も増えることから、自分もきれいになっていきますよ。
きれいな人の習慣や言動を取り入れることも有効ですね。

(『幸せを引き寄せる「口ぐせ」の魔法』の本文の一部を掲載しました)
http://diamond.jp/articles/-/123549

 


【第14回】 2017年4月13日 近藤宣之
お金をかけずに手っ取り早く社員のモチベーションが上がる魔法の「○○ 」

◎倒産寸前「7度の崖っぷち」から年商4倍、23年連続黒字、10年以上離職率ほぼゼロ!
◎「赤字は犯罪」&「黒字化は社員のモチベーションが10割」と断言!
◎学歴、国籍、性別、年齢不問! ダイバーシティで女性管理職3割!
◎「2-6-2」の「下位20%」は宝! 70歳まで生涯雇用!
……こんな会社が東京・西早稲田にあるのをご存じだろうか?
現役社長の傍ら、日本経営合理化協会、松下幸之助経営塾、ダイヤモンド経営塾から慶應義塾大学大学院ビジネス・スクールまで年50回講演する日本レーザー社長、近藤宣之氏の書籍『ありえないレベルで人を大切にしたら23年連続黒字になった仕組み』が話題。発売早々3刷が決まった。
なんと、政府がこれから目指す施策を20年以上前から実践している小さな会社があった! 「7度の崖っぷち」からの大復活! 一体、どんな会社なのか?

モチベーションが10割!


近藤 宣之(Nobuyuki Kondo)
株式会社日本レーザー代表取締役社長。1994年、主力銀行から見放された子会社の株式会社日本レーザー社長に就任。人を大切にしながら利益を上げる改革で、就任1年目から黒字化させ、現在まで23年連続黒字、10年以上離職率ほぼゼロに導く。2007年、ファンドを入れずに役員・正社員・嘱託社員が株主となる日本初の「MEBO」を実施。親会社から完全独立。現役社長でありながら、日本経営合理化協会、松下幸之助経営塾、ダイヤモンド経営塾、慶應義塾大学大学院ビジネス・スクールなど年50回講演。東京商工会議所1号議員。第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の「中小企業庁長官賞」、東京商工会議所の第10回「勇気ある経営大賞」、第3回「ホワイト企業大賞」など受賞多数。
【日本レーザーHP】 www.japanlaser.co.jp/
【夢と志の経営】 info.japanlaser.co.jp/
 会社を再建するのに最も必要なのは、社員のモチベーションです。
 モチベーションが10割です!

 社長が細かい実務までできるわけはありませんから、実際には社員にやってもらうことになります。

 ということは、それぞれの社員がレベルアップして成長しないことには、会社も成長しません。

 よく「中小企業は、社長の器以上に成長しない」と言われますが、私が強調したいのは、

「社員の成長がなければ、会社は成長しない」
「社員のモチベーションさえ上がれば、会社も自然と大きくなる」

 ということです。

お金も時間もかからずに
モチベーションを上げる方法

 では、どうすれば社員のモチベーションは上がるのでしょうか。
 お金も、時間もかけず、社員のモチベーションを高める方法が「2つ」あります。

 それは、「社長の笑顔」と「社長の声がけ」です。

●社長の笑顔
 私は、「笑顔ほど、人の心を開かせるものはない」と思っていて、40年以上前から心に決めていることがあります。

「よい報告は笑顔で聞く。トラブルなどの悪い報告は、もっと笑顔で聞く」

 私がこう思うようになったのは、日本電子時代の、ある出来事がきっかけです。

 私が現場の問題を社長に進言したところ、露骨に「嫌な顔」をされたことがありました。

 アメリカから戻った私が社長に、「こういう問題がある」と言ったところ、社長は、「わかった。もういい」というひと言だけ。

 私がもう一度社長室に出向いて同じ報告をすると、

「近藤くん、キミもしつこいね。わが社は技術がすぐれた会社なのだから、営業は、技術がつくったものだけを海外に売ればいいんだ。もうくるな!」

 と一蹴されてしまったのです。

 私は「会社の危機だ」と痛感しました。
 社長自身が、会社が変わる(よくなる)機会をみすみす逃していたからです。

 トップがこんな顔をするようでは、社員は報告をやめ、問題を隠そうとする。
 社長が社員からの提案を拒む限り、会社は改善されません。

 このとき私は、「自分が社長になったら、いい話だけでなく、悪い話でも笑顔で聞こう」と決めました。

 私は「笑顔は、社長の仕事」であり、「笑顔は、社長の能力」だととらえています。

 社長がしかめっ面をしていたら、それを見た社員は、「話しかけてくるな」「近寄るな」という情報として受け取ります。
 社員は萎縮し、茶坊主となって、「社長にとって都合のいいこと」しか報告しないでしょう。

 反対に、社長の笑顔は、「いつでも話しかけていいよ」「怖くないよ」という情報と同じで、社内の空気を明るくします。

 社員に笑顔を見せて、会社の空気を明るく、楽しく、やさしくするのも、社長の大切な仕事なのです。

 日本レーザーでは、半期ごとに社員面接を行っていますが、社長にとって「カチン」とくる批判を社員から浴びせられることもある。
 そんなときこそ私は、「よく言ってくれたね、ありがとう」と笑顔で接しています。

 管理部・総務課長の野中美由紀は、私に対してこんな印象を持っているそうです。

「何があっても、いつも笑顔で、絶対に声を荒げない人」

 笑顔こそ、社長の武器なのです。

近藤 宣之(Nobuyuki Kondo)
株式会社日本レーザー代表取締役社長。1944年生まれ。慶應義塾大学工学部卒業後、日本電子株式会社入社。28歳のとき異例の若さで労働組合執行委員長に推され11年務める。そこで1000名のリストラに直面した後、取締役米国法人支配人、取締役国内営業担当などを歴任。1994年、その手腕が評価され、債務超過に陥り、主力銀行からも見放された子会社の株式会社日本レーザー代表取締役社長に就任。 人を大切にしながら利益を上げる改革で、就任1年目から黒字化させ、現在まで23年連続黒字、10年以上離職率ほぼゼロに導く。社員数55名、年商約40億円の会社ながら、女性管理職が3割。2007年、社員のモチベーションをさらに高める狙いから、ファンドを入れずに役員・正社員・嘱託社員が株主となる日本初の「MEBO」(Management and Employee Buyout)を実施。親会社から完全独立する。現役社長でありながら、日本経営合理化協会、松下幸之助経営塾、ダイヤモンド経営塾、慶應義塾大学大学院ビジネス・スクールなどでも講師を務め、年間50回ほど講演。その笑顔を絶やさない人柄と、質問に対する真摯な姿勢が口コミを呼び、全国から講演依頼が絶えない。東京商工会議所1号議員。 第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の「中小企業庁長官賞」を皮切りに、経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」「『おもてなし経営企業選』50社」「がんばる中小企業・小規模事業者300社」、厚生労働省の「キャリア支援企業表彰2015」厚生労働大臣表彰、東京商工会議所の第10回「勇気ある経営大賞」、第3回「ホワイト企業大賞」など受賞多数。
【日本レーザーHP】 http://www.japanlaser.co.jp/ 【夢と志の経営】 http://info.japanlaser.co.jp/
http://diamond.jp/articles/-/122243


 

 


【第15回】 2017年4月13日 三木雄信
孫社長が超速で事業を
成功させてしまう非常識な方法

わずか三十数年で8兆円企業へと成長したソフトバンク。多くの企業が日本経済の停滞に苦しむなか、圧倒的な拡大を続けることができたのは、「同時にすべてを試す」という普通は思いついてもやらないし、やれないはずの「奇策」にあった。
ソフトバンクでは今も、6万人超の社員がこの手法を使っている。この手法があるからこそ、孫社長の思いもよらない奇策も実現できるのだ。
でも、それは普通の会社で働く人にも可能なのか? もちろん可能だ! 9年にわたり孫社長の右腕として活躍した元ソフトバンク社長室長・三木雄信氏の話題の新刊『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごいPDCA』から一部抜粋して紹介する。

「あること」を決めるだけで、思考が倍速化する

 実行の決断と同時に孫社長はあることを決めます。

 それは高速PDCAの「大きな目標」にあたる最終目標です。ソフトバンクでは「ゴール」と呼んでいました。

 ADSL事業で言えば、こうなります。

「ADSL事業に参入して、まずは1年で100万人の顧客を獲得するぞ!」

 そのために、まずモデムを100万台発注しました。もはや発注してしまったのですから、不退転の決意です。これがゴールです。

「Plan(計画)」ではなく、「目標+実行」からソフトバンクではすべてが始まるのです。

 こうして最初にゴールを設定し、実行すると決めれば、「では、資金はどうやって調達するか」「人はどれくらい集めるか」などを考えざるを得なくなります。

 人はプレッシャーがかかった状態で考えると、思考が倍速化します。

 つまり、めざすゴールが決まっていると、どんなに不利な状況であっても、そこから逆算して「いつまでに何をやるべきか」を具体的に考えるようになるのです。

 仕事の締め切りが迫ってきて、プレッシャーはピークに到達。ない知恵を何とか絞り出し、無理やりにでも計画を動かす。そんな経験は誰もがあると思います。

 この仕組みがあるから、ソフトバンクは新しいことにも積極的にチャレンジできるのです。

多くの人が持つソフトバンクへの誤解

「ソフトバンクは資金も人も潤沢だから、無茶な目標でも何とかできるんじゃないの?」

 そう思う人もいるかもしれませんが、大きな誤解です。

 今でこそ大企業のソフトバンクですが、私がいた2001年当時はまだ「知る人ぞ知るITベンチャー」という存在でした。

「Yahoo! BB」事業を立ち上げたときも、孫社長以外のメンバーは私を含めて3人だけ。与えられた場所も、雑居ビルの小さな一室でした。

 サービス開始を宣言したあとはさすがに規模が拡大しましたが、各グループ会社から人手を募っただけでは到底足りず、顧客対応の窓口となるコールセンターでは、業務経験がまったくないフリーターや学生アルバイトまでかき集めたほどです。

 もし最初に人員計画を立てていたら、「これだけのリソースで、ユーザー100万人規模のビジネスをやるのは不可能だ」と誰もが結論づけたでしょう。

 しかし、孫社長が常識外のゴールを設定したことで、社員たちの思考からも常識の枠が外れ、思いがけないアイデアや工夫が生まれました。

 そして、ADSL事業参入からわずか3年後、ソフトバンクは固定電話事業者の日本テレコムを買収。その2年後には携帯電話事業者のボーダフォンを買収し、通信事業会社として急拡大します。

 明確な「ゴール」の設定と実行の決断が、常識では考えられない結果へとつながったのです。

 繰り返しになりますが、もし実行が決まっていなかったら、今のソフトバンクはありませんでした。

 それができたのはソフトバンクでは、誰もが「達成できない目標はない」と知っているからです。だから、最初から「目標+実行」を決断できるのです。
http://diamond.jp/articles/-/124405

http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/875.html

[国際19] 中国で農村の模範だった「金持ち村」はなぜ凋落したのか 統計から北朝鮮の意外な食料事情 米国が兵糧攻を中国に要請も効果は 

【第302回】 2017年4月13日 莫 邦富 :作家・ジャーナリスト
中国で農村の模範だった「金持ち村」はなぜ凋落したのか
華西村には、農村には似つかわしくない巨大なビルが建設されている Imaginechina/AFLO
 江蘇省江陰市には「金持ち村」と呼ばれる村がある。華西村だ。1990年代に私が数度取材したところだ。
 華西村は、早い段階から豊かな村として知られており、「中国第一村」と呼ばれるほど集団化経営に成功したと言われた存在である。80世帯、1520人、面積がわずか0.96km2という小さな村だ。
 1997年にこの村を訪ねたとき、すでに多くの農民の家に自家用車として軽自動車が配給されていた。村営製鉄所や村営衣料品工場などが、村民たちの豊かな生活を保証していた。村のリーダーである呉仁宝氏は、毛沢東の人民公社時代に、朽ち倒れんばかりのぼろ家に豆腐工場をひそかに設けて、現金収入を確保していた。

豆腐工場から身を起こし
工業化に成功した村
 党の上層部が検査に来ると、豆腐工場であるぼろ家に藁などをかけて、ばれないように偽装してごまかした。のちに人民公社が解散して、農業経営が自由になったとき、他の村の農民は農業に専念することしか知らなかったが、呉氏率いる華西村は郷鎮企業の雛型を形成し、工業化の道を先に踏み出していた。
 当時、私のインタビューに対して、呉氏は次のように強調した。
「先に踏み出したその一歩は、非常に大きな意味をもっていた。販路、市場、経験など市場経済の分野ですべて私たちがリードする形で走り出すことができたからだ。それが今になって他の農村を大きく引き離し、私たちに大きな成功をもたらした」という言葉が印象的だった。
 2004年、同村の村民はすでに1人当たり所得が12万2600人民元になっていた。これは、普通の農民の年収の42倍近くに相当する。その成功を武器に、周辺の村をどんどん合併すると同時に、貧困で有名な寧夏回族自治区に「寧夏華西村」を、ロシアと隣接する黒竜江省に「黒竜江華西村」を作るなどして、勢力を拡大していた。そうした華西村の成功を見習って、多くの村も自発的に合作社を作り、集団化経営の道を歩み始めた。
 私は、中国の農村のなかで改革の先頭を走ってきた村としてメディアで何度も華西村を紹介し、上記のような内容を日本の読者に伝えた。

村民のカネを乱用し
成金趣味のホテルを建設
 しかし、実際、香港返還の年に当たる1997年のその取材で私は華西村に対する印象をかなり悪くした。
 村の象徴的存在とされた「金塔」というホテルを案内されたとき、そのダサさと成金ぶりにあきれた。私は、案内係に「こんな建物を作る必要は果たしてあるのか。必要だとすれば、もっとましなデザイナーに頼んだ方がいいのでは」と率直な印象を口にした。案内係が慌てて私の口を塞いで、「案内の責任者は呉氏の息子さんで、その批判めいた発言がもし彼の耳に入ったら、あんた村から追い出されてしまう。この村では、批判的な発言は控えた方がいい」と私に忠告した。
 好意的とは言え、その忠告という行為、そしてその内容に私は驚きを覚えた。文革時代への逆行を感じたからだ。
 村中に点在していた大きな動物と、歴史上または文学上の聖人たちの彫刻がアンバランス的な雰囲気を醸し出している村の一角に、万里の長城の巨大なミニチュアが配されている。そこを案内された私は、「この長城のミニチュアの長さは1997mで、香港返還の1997年を記念するものだ」と呉氏の息子から説明を聞いた。
「なぜこんなものを作るのか。村民のお金を乱用しているのでは」と心の中ではそのように不満をぶつけていた私は、できるだけ軟らかい表現で疑問を伝え、その真意を確かめてみた。そこでまた不思議な思いに見舞われた。
「どうして疑問を持つのか?香港返還は私たち中国人の一人ひとりにとっては非常に大事な出来事ではないのか」と息子から逆に聞かれたからだ。
 それ以上、質問しても意味がないと悟った私は、それ以降、何も聞かなくなってしまった。そして、心の中で「この村にはもう来ないだろう」とつぶやいた。村営企業で村の発展と村民の福祉を支えるビジネスモデルと集団化経営を貫く村の成功経験は、中国の農業経営の問題を解決していない、と認識したからだ。
 だから、私は日本のメディアで、「経済が発展し、競争が激しくなった今の中国では、技術レベルが低い製鉄所と、衣料品やインスタントラーメンを加工する町工場的な企業で、集団化の成功村の躍進を引き続き支えていけると思うか」と聞かれると、「強く疑問に思う」と答えている。

コア技術と研究開発力を持たない
金持ち村は窮地に立たされている
 最近の中国メディアの報道によれば、2016年3月末現在、鉄鋼、紡績、資材、商業など5つの分野で、傘下企業208社を抱える華西集団は、総資産541.93億元(約8670億円)である。しかし、同集団の負債総額は389億元超、資産負債率は約69%だという。7割近い負債率は、従来の産業モデルが日ごとに衰えるのに伴って、かつて中国農村経済の模範だった華西村が岐路に立たされ、モデルチェンジが避けられないことを物語っている。
 現在、華西集団は博豊鋼鉄、華西北鋼、華西南鋼などを擁している。鉄鋼加工では、華西集団は華西村に型材工場、フランジ工場、帯鋼板工場、溶接管工場、曲がり管工場などを相次いで建設し、鉄鋼加工の産業チェーンを構築した。
 だが鉄鋼業の不景気で華西集団の3大鉄鋼企業は全面的な赤字となった。
 2008年の金融危機後、海運企業の大多数が赤字となり、船舶を売りに出す形で損失を埋めた。当時、華西村はむしろこれを海運業界に参入する千載一遇のチャンスだと踏んで、5隻の船を中古で安く購入し、海運業に足を踏み入れた。その海運業も大きな赤字を作っている。
 コア技術と研究開発力をもっていない華西村のような中国の「金持ち村」はこのところ、相次いで窮地に立たされている。突破口がどこにあるのかという基本的な課題さえもまだクリアしていない。村の経営は、今後、ますます凋落していくだろう。
(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)
http://diamond.jp/articles/-/124652

 

統計データから見えてくる北朝鮮の意外な食料事情
米国が北朝鮮への兵糧攻めを中国に要請、果たして効果は?
2017.4.13(木) 川島 博之

北朝鮮・平壌の建設現場を視察した金正恩・朝鮮労働党委員長。国営朝鮮中央通信(KCNA)配信(2017年3月16日撮影)。(c)AFP/KCNA VIA KNS〔AFPBB News〕
 北朝鮮は中国に石炭などの地下資源を売り、その代金で石油や食料、それに核やミサイルの開発に必要な物資を調達している。米国は核やミサイルの開発を止めさせるために、中国に北朝鮮と交易しないように要請している。ただ、現時点では中国が本当に米国の要請に従うかどうかは、はっきりしない。
 ここでは食料問題に限って言及する。中国が食料の輸出を止めると北朝鮮は本当に困窮するのであろうか。そのことを調べてみたい。
穀物は足りているが豊かではない
 北朝鮮は国連に加盟しており、その傘下にあるFAO(国連食糧農業機関)にもデータを提供している。だからFAOデータからその食料事情を伺い知ることができる。ただ、北朝鮮はウソをつくことが多いから、そのデータを丸のみにすることはできない。
 図1に北朝鮮の穀物生産量を示す。北朝鮮ではコメと共にトウモロコシが多く生産されている。これは寒冷ゆえにコメを生産できる地域が限られるためである。北朝鮮の人々は日常的にトウモロコシを食べている。コメとトウモロコシ以外の生産はわずかである

図1 北朝鮮の穀物生産量(単位:100万トン、出典:FAO)
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/f/b/400/img_fb6525e11e2444ba6f40a810bc44053a31296.jpg

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49698
 生産量は1991年から93年にかけて著しく増加した。その一方で、95年から97年にかけて大きく減少している。普通の国で、生産量がこのように大きく乱高下することはない。ソ連の崩壊(91年)に伴い石油の供給を受けられなくなったことから、90年代に北朝鮮の食料生産は危機的な状況に陥った。特にその時期の生産量はデタラメである。全く信用できない。
 しかし、ウソの中からも本当のことを読み解くことは可能である。それには歴史的背景を考えるとともに、他のデータと突合せることが必要になる。
 栽培面積を見てみよう(図2)。栽培面積には大きな変動はなく、生産量よりはずっと信頼できそうである。生産量は多くの人が注目するためにウソをついたが、栽培面積については概ね本当のことを報告したのだろう。

図2 北朝鮮の穀物栽培面積(単位:100万ヘクタール、出典:FAO)
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/0/f/400/img_0f47f4e380f8e47900130d8bd86df7e526253.jpg

 北朝鮮の穀物栽培面積は130万ヘクタール程度。人口は2500万人であるから、1ヘクタールで扶養する人数は約20人。世界平均は約10人だから、北朝鮮は農地の割に人口が多い国である。
 ただ、戦前の日本は1ヘクタールで20人程度を養っていたから、自給が不可能なレベルではない。しかし、この水準では飼料穀物にまで手が回らない。戦前の日本がそうであったように、北朝鮮の人々は肉をほとんど食べていない。
 図3に穀物輸入量を示す。輸入量は生産量に比べて信頼がおける。それは相手国があるからだ。一方的にウソを報告してもばれてしまう。

図3 北朝鮮の穀物輸入量(単位:100万トン、出典:FAO)
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/0/3/400/img_031898f276371d36341060cdccfdbe9223872.jpg

 小麦が作れないために、小麦はソ連が崩壊する前から輸入していたが、ソ連が崩壊してからはコメやトウモロコシの輸入量も増えた。ただ、それは2010年代に入って減少している。現在の輸入量は100万トン程度かそれ以下であり、多くの穀物を海外に依存する状況にはない。
 北朝鮮の穀物生産量は500万トン前後であると考えられる。それに対して、輸入は100万トン以下だから、穀物の自給率は80%を超えている。
 供給量は約550万トン。これを2500万人で割ると人220キログラムになる。1年間に220キログラムの穀物は生きて行くには十分であるが、決して豊かな暮らしとは言えない。戦前の日本と同じような状況にあるが、その食事にトウモロコシが半分程度混じっているから、戦前の日本より悪いと言ってよい。
 ついでに北朝鮮の農産物輸出量を見てみよう(図4)。この図から北朝鮮の置かれた状況がよく分かる。北朝鮮はソ連が崩壊する前まで、かなりの農産物を輸出していた。コメの他にリンゴなども輸出しており、農産物輸出国と言ってもよかった。それがソ連崩壊で一変した。

図4 北朝鮮の農産物輸出量(単位:1000トン、出典:FAO)
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/d/6/400/img_d6b664fd406a366249313c2486d4cb4632912.jpg

 1990年代には“麦わら”をかなり輸出しているが、“麦わら”を輸出しても、いくらにもならない。それほど外貨が不足したのだろう。ただ、それは21世紀に入って止まっているから、現在の状況はその時期よりもよいと思われる。
食料よりも大砲
 FAOデータを基に考えると、北朝鮮の食料事情は次のようになる。
(1)1人当たりの穀物供給量は220キログラム程度であり、それほど豊かではないが飢餓に苦しむレベルでもない。穀物を腹いっぱい食べることはできるが、飼料がないから肉はほとんど食べられない。牛乳もたまにしか飲めない。
(2)ソ連が崩壊するまでは、農産物の輸出が可能な状況にあった。食料に困るようになったのはソ連が崩壊してからである。現在の状況は1990年代よりも良いが、食料をほとんど輸出していないことから、ソ連崩壊以前の状態には戻っていない。
(3)北朝鮮は食料をほぼ自給している。人々は貧しい食事に慣れていると思われるから、禁輸による兵糧攻めを行っても、政権に大きな打撃を与えることはできないだろう。
*  *  *
 なぜソ連の崩壊がこれほどまでに農業生産に影響を与えたのであろうか。ソ連からの石油の供給が止まり、そのために化学肥料が作れなくなったことが大きいとされるが、果たしてそれだけが原因だろうか。化学肥料は石炭を用いても作ることができる。そして北朝鮮は石炭の輸出国である。
 真の原因は、ルーマニアの崩壊を目の当たりにして、先軍思想を徹底し体制の維持を優先したためと考える。“経済学では大砲かバターか”との議論が行われるが、大砲の生産に注力し過ぎて、食料生産をないがしろにしているのだろう。そう考えれば、核兵器とミサイルの開発に血道を上げる昨今、時間が経過しても北朝鮮の食料事情が大きく改善されることはない。
 平壌を訪れた人が、北朝鮮の人々はかなり豊かな食事をしていると報告することがあるが、彼らが見たのは全体のごく一部である。平均的な人々はかなり貧しい食生活をしている。
 ただ、自給率が高いことから、食料に関する限り禁輸による締め付けを強化しても、北朝鮮が参ることはない。食料供給を見る限り、中国は北朝鮮にそれほど大きな影響力を持っていないと言えそうだ。
[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49698

http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/113.html

[政治・選挙・NHK224] 入院ベッド15.6万床削減 25年全都道府県構想「医療難民」拡大に懸念 日本の医療の問題点を教えてくれるフェルドマン博士
入院ベッド15.6万床削減 25年 全都道府県構想

「医療難民」拡大に懸念

安倍政権の医療抑制策

13年135万床から

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-04-12/2017041201_01_1b.jpg

 2025年の医療提供体制を示す「地域医療構想」を全47都道府県がまとめ、入院ベッドを13年時点の約135万床から15万6千床(11・6%)も削減する計画になったことが11日までに本紙の集計で分かりました。首都圏などを除く41道府県でベッド数が減り、8県で削減率が3割を超えました。医療関係者から「医療難民が広がる」との声があがっています。

8県が3割以上減

 地域医療構想は、安倍政権が医療費削減を狙って各都道府県に策定させたもの。高齢化のピークとされる25年のベッド数を推計した結果、全国で119万799床となりました。13年時点と比べ、15万6118床が削減されることになります。

 内閣官房の専門調査会が15年に示した約15万〜20万床の削減計画と符合する結果です。どちらも国が示した推計方法で、診療データや人口推計を利用。もともと医療資源が少なくて通院しづらいなど、地方の実態を置き去りにし、人口減少などで現行のベッド数が“過剰”になる結果となっています。

 削減率が3割を超えたのは、鹿児島県の34・9%を筆頭に熊本、富山、宮崎、佐賀、徳島、山口、高知の8県で、2割台は19県。削減数が1万床以上は熊本、鹿児島、北海道の3道県でした。

 国は指針でベッドを機能ごとに区分し、比較的軽症の患者は「在宅医療等で対応する」と提起。各構想では、救急や集中治療を担う「高度急性期」と「急性期」を合わせると全都道府県で減る一方、在宅復帰に向けた「回復期」や在宅医療は全都道府県で増えました。医療費削減へ「施設から在宅へ」と患者を押し流していく狙いに沿ったものです。

 国は、推計結果はあくまで「参考値」と弁明。構想の多くも「削減目標ではない」(熊本県)、「直ちに減らすものではない」(石川県)などと明記していますが、さっそく病院の統廃合に踏み出す事例が生まれています。

命の保証どこに/重症化招く危険


 入院ベッド数を全国の1割にあたる15万6千床も削減する計画となった地域医療構想。

 自治体病院の割合が全国より高い青森県では、構想策定後の昨年10月に、弘前市内の弘前市立病院と国立病院機構弘前病院の統廃合が提案され、この6月にも合意書が市議会に提出される見通しです。現行の4分の1にあたる150床程度も削減する計画です。

 黒石市の黒石病院や大鰐(おおわに)町立大鰐病院などのベッド削減も示しています。

 「住民の、いざという時の命の保証が削られる」と語るのは、青森県民主医療機関連合会の那須稔事務局長。

 「統廃合で病院が遠くなり、通いづらくなる高齢者も生まれます。在宅医療で担えと言っても、深刻な医師の人手不足・高齢化のなかで簡単ではありません。むしろ、統廃合の話がすすむなかで弘前市立病院では医師の退職が相次いでいます。ベッド削減ありきの計画はやめるべきです」

 一方、厚労省は都道府県に対し、調整会議で10〜12月にも病院名をあげて「具体的な決定」をするよう提起。知事が公的医療機関に空床の削減命令ができる法改悪もしており、ベッド削減の狙いを鮮明にしています。

 全国団体からは「ベッドが現状で足りなくなることも考えられる」(全日本病院協会)と懸念が出ています。

 各県の構想では、「医療不足が診療活動、特に大幅な入院制限に影響を与えている」(滋賀県・湖北区域)などと、医師不足で空床にせざるをえない実態が示されています。

 「医師不足で、…日常的な疾病・外傷等に対処する機能が不足している地域がある」(秋田県)との指摘もあり、ベッド削減で医療がさらに遠のき、重症化につながる危険は明白です。医療体制の拡充こそ求められます。

(松田大地)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-04-12/2017041201_01_1.html


 

 


【第14回】 2017年4月13日 ちきりん
日本の医療の問題点を教えてくれるフェルドマン博士の個人的な体験

ロバート・アラン・フェルドマン×ちきりん(2)
エコノミストのフェルドマンさんと人気ブロガー・ちきりんさんの対談、今回のテーマは医療制度です。昨年、94歳の母親を亡くされたフェルドマンさん。看取るプロセスで直面した、ごく私的な経験をお話ししてくださいました。そのお話から伺える、日本の医療の問題点とは? (構成/崎谷実穂?写真/疋田千里)


ロバート・アラン・フェルドマン
1970年、AFS交換留学生として初来日。76年、イエール大学で経済学、日本研究の学士号を取得。84年、マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。国際通貨基金(IMF)、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券を経て、98年モルガン・スタンレー証券会社に入社(現・モルガン・スタンレーMUFG証券)。現在、同社のシニアアドバイザー。著作に『フェルドマン博士の 日本経済最新講義』(文藝春秋)などがある。
医療が公共財だというのは、一種のイデオロギー

ちきりん 技術革新によって今後の生産性が大幅に上がりそうな分野として、医療と教育という2つの分野があります。でもこう言うと、「医療と教育は産業ではない」と反論されるんです。社会インフラとして誰でも等しく機会が与えられるべきものだから、生産性という概念を持ち込むのはよくない、という意見があって……。

ロバート・アラン・フェルドマン(以下、フェルドマン) 生産性を持ち込むべきか否かという議論は、その産業が公共財かどうかを考えればよいでしょう。たとえば、国防は議論の対象外でいいですよね。国防は商品ではなく、消費者1人ひとりが「この分だけほしい」と買うことはできない。でも、医療と教育はさまざまな供給者がいて、選択肢があります。

ちきりん 多彩なニーズがあり、マーケットが成立しているということですね。

フェルドマン 医療が公共財だというのは、一種のイデオロギーですね。日本の医療の問題は、ヘルスケアとシックケアが分かれていないことだと私は考えています。そして現状、日本にヘルスケアを提供する医療機関はほぼないですよね。

ちきりん ヘルスをケアする、つまり、健康を維持するための病院がないってことですね。

フェルドマン もちろん、医師は自分の患者を治そうとしていると思いますよ。でも、産業そのものとしては治すことを一番の目的にはしていない。日本の病院は本当にすばらしいです。医療技術も高い。でも、健康を守るよりも「病気ですね」と診断したほうが、病院は得をするんです。医療制度がそうなっているので。国民が元気になったら、医療産業にとっては困る面もあります。

ちきりん 医療関係者の意識がそうだとは思いませんが、病気の人が多いほうが産業規模として大きくなるというのはそのとおりです。

フェルドマン だから小中規模の病院は、基本的にヘルスケアを提供するという役割を担っていくべきだと思うんですよね。そうしたら、国民も健康になり、結果的にシックケアも減ります。

ちきりん 予防医療に注力する医療機関を増やすということですね。病気になってから高額の医療費をかけるより、そのほうが圧倒的に安く済むし、国民もハッピーですよね。あと、医師のなかでも開業医の医師会は政治力が強く、病院の勤務医は激務で疲弊している人も多い。そういったひずみも、医療業界全体で制度改革を進めることの妨げになっていると感じます。

フェルドマン それも制度の問題ですよね。現状では、医療費は診療報酬点数によって決められていて、健康保険に入っている人は3割負担、70歳以上になると一般的には2割になります。2014年までに70歳になっていた人は1割負担です。1、2割しか負担しなくていいなら、ちょっとしたことでも病院に行ったほうがいいと考えますよね。開業医が儲けやすい制度になっている。ビジネスとしてはよくわかりますよ。ですから、そもそもの制度設計をする人がどの方向を向いているのか、という問題なんです。

ちきりん 医療関係者はみんな目の前の仕事に忙しく、医療制度、全体の設計を考えたり変えたりするためのリーダーシップがなかなかとれない。じゃあ厚生労働省がそれをできるかというと、こちらも選挙のためには高齢者が極めて大事だという政治家の意向に振り回される。どの分野も同じですが、最後は選挙制度の問題に行きついてしまう気がします。


医療改革を難しくする倫理の問題

フェルドマン 医療制度には、倫理の問題もつきまといます。これも、医療改革を難しくしている要因の1つですね。昨年の12月、6年ほど前から認知症を患っていた母が94歳で他界しました。この母のケースでも、倫理について考えさせられることがあったんです。亡くなる2ヵ月前に、医師から母のペースメーカーの電池が切れそうなので、手術で取り替えるかどうするか、という相談がありました。取り替えれば電池は10年もつそうです。でももう高齢ですし、手術中に亡くなるリスクもある。

ちきりん それは難しい判断ですね。ペースメーカーの電池が切れれば、当然、命に関わるわけだから、医師としては「取り替えましょう」というのかもしれないけど……。私が94歳の患者本人だったら「もういいです」って言いたくなる。

フェルドマン そうなんです。認知症の状態でこのまま10年生きるというのは、本人の生活の質としてどうなのだろう、とも思いました。しかもその時点で67歳の姉が、これから10年母親の面倒を見続けるのかという問題もありました。そこで、姉弟4人でEメール会議、場合によっては電話会議をして、電池を取り替えるかどうかを議論したんです。結果としては、全員一致で取り替えないということに決めました。私の出身であるテネシー州の法律だと、死を早めない限りはそれでいいということでした。でも、これが日本だったらどうだろう、と考えたんです。法律はともかく、打つ手があるのであれば、打たなければいけないという意見が多数なのではないでしょうか。

ちきりん 日本だと法律的にも取り替えないといけないのかな? ただ、そういう方の手術をするには家族から同意書にサインが必要なので、勝手に手術されることはないですよね?

フェルドマン とされていますけど、応急処置的に胃ろうを入れられたりすることはありますよね。

ちきりん たしかに救急措置だと「命を助けるためにできることはすべてやる」という形になりますね。しかも患者さんに身寄りがなくて、ペースメーカーの電池を取り替えないと死んでしまう、でも、その判断をできる身内は誰もいない、という状態だったら……病院の判断で取り替えることになるのかな? 
 こうした終末期医療に関わる問題は、少子高齢化の進展によって今後さらに大きな問題になると思うんです。フェルドマンさんのお母様は、お子さんが複数いて家族会議で決められましたけど、ひとりっ子であれば自分ひとりで親の生死について決断しなければならない。最近は未婚率も高いため、患者さんに子どもがいなければ、何十年も会っていなかった親戚の子どもに連絡が来るかもしれません。そうなったとき、「もう死んでもいいから電池は取り替えないでください」と言うのは、すごく勇気のいることだと思います。


イギリスやフランスの高齢者医療の考え方

フェルドマン そして、その高齢者を延命するための治療は、誰のお金でおこなわれるのでしょうか。イギリスには、医療従事者向けの診療ガイドラインを策定する国立医療技術評価機構、通称NICEという機関があり、症状に対しておこなうべき治療手法や、それに対して報酬が支払われるか否かが示されています。かなり厳しい基準のようです。
 やはり、国のお金を高齢者の医療にあてすぎると、他にやるべきことができなくなりますからね。そこは個人負担でお願いします、ということなんです。そして国民もそれを受け入れている。人間はそもそも死ぬもので、それは神様が決めたのです。

ちきりん ある程度高齢になれば、治療費が払えず延命治療がおこなえなくても、それがその人の天命であったと考えるんですね。フェルドマンさんの本にも、フランスで2015年に「深眠法」という、死を間近にした患者に延命措置をおこなわないという法律が下院を通過したと載っていました。ヨーロッパ各国では安楽死や尊厳死についても議論が進んでいますが、日本では議論をすることすらはばかられるという雰囲気があります。これはなぜなのでしょう。

フェルドマン よくわかりませんが……自分のことを自分で決める、という自己決定の文化は西洋に強いと思いますね。

ちきりん あー、そこが違うんですね。だとすると……日本人は、自分の人生を誰が決めるべきだと思っているのでしょう。てか、日本人の私がこんなことをフェルドマンさんに聞くのも変なんですけど(笑)。

フェルドマン グループで決める、という考え方は強いと思います。ただ、そのグループが小さくなってきている。共同体が解体し、家族も小さくなってきていますので。

ちきりん グループで決める、か。大事なことは政府や会社、そして、地域や家族で決めていくべきものだと。そういえば昔の結婚なら、村長や親が勝手に相手を決めたりしてましたよね。
 ただ、世の中も変わり、自分の所属するグループに人生の大事なことを相談して決めていく、もしくは決めてもらう、というのも難しくなっています。これからはやっぱり日本人も、「自分の人生は自分で決めていく」という自己決定の世界に少しずつ慣れていかないといけないのでしょう。
http://diamond.jp/articles/-/123922


 

日本の医療を受けたい! 中国人が日本の病院に押し寄せる理由=中国報道
2017-04-12 10:12

 日本医師会と読売新聞社は毎年、「心に残る医療」体験記コンクールを実施している。日本医師会の公式サイトによれば、このコンクールはより良い医療環境を作ることを目的として医療や介護の体験記を募集している。

 公開されている入賞作品を見てみると、医療スタッフたちの思いやりや優しさをはっきり感じ取ることができる。また日本の医療現場には患者への思いやりが存在していることを日本人は自らの体験を通じて知っているが、中国メディアの今日頭条が7日付で掲載した記事も、日本の医療サービスを絶賛している。

 記事はまず、日本を観光で訪れる中国人が増えるなか、買い物ではなく、医療サービスを受けることを目的に訪日する中国人も増加傾向にあると紹介。今後はさらに多くの中国人が日本の医療サービスを求めて訪日するとの見通しもあることを伝え、「中国人は一体、どのような点に魅力を感じ、日本の病院に押し寄せているのか」と疑問を投げかけた。

 続けて、「中国国内の病院と比較すると、日本の病院の最大の特長は患者の気持ちをリラックスさせてくれる点にある」と指摘し、たとえば日本の病院には中国の病院でするような強烈な薬品臭がないことや、また、病院全体が「重苦しくない」設計・デザインとなっており、これらの要素が患者の気持ちをリラックスさせることに貢献していると指摘した。

 さらに日本の病院の内部デザインを紹介する目的でいくつかの写真を掲載し、待合ロビーにしても病室にしても、中国の病院と比べて明るいうえに清潔で、落ち着いた雰囲気だと紹介。また、日本には「優れたサービスを提供する文化」が存在しているとも称賛。そのため日本の医療スタッフたちも患者のニーズを満たすために徹底したサービスを提供していると説明し、これらすべてが「中国人が日本の病院に押し寄せる」要因となっていると論じた。

 中国の病院では廊下に簡易ベッドが置かれ、そこに横たわっている患者を見かけることがある。患者の圧倒的な多さに対して医療スタッフの数が足ないのだろう、病院内であっても時間帯によっては助けが必要な時に医療スタッフと連絡が取れないということもある。こうした環境で医療サービスを受けている中国人であれば、深刻な病気になれば少々高額であっても日本の医療サービスを受けたいと考えるのもごく自然なことだと言えるだろう。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)
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http://news.searchina.net/id/1633456?page=1


 

複数医療機関による訪問診療を認めるべきか、患者の状態に応じた在宅医療の報酬をどう考えるか—中医協(1)

 複数の診療科の医師が協働して訪問診療を行う仕組みを構築すべきか、在宅療養支援診療所「以外」を含めたかかりつけ医による在宅医療をどう評価すべきか、患者の状態などに応じた効率的・効果的な在宅医療提供のための報酬をどう考えるか—。

 12日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会では、2018年度診療報酬改定に向けて「在宅医療その2」を議題とし、こういったテーマについて検討を行いました。

4月12日に開催された、「第349回 中央社会保険医療協議会 総会」
4月12日に開催された、「第349回 中央社会保険医療協議会 総会」
ここがポイント! [非表示]
1 在支診以外の診療所による在宅医療、どう評価していくべきか
2 24時間対応のためなどに複数医療機関が連携した場合を、どう評価すべきか
3 循環器疾患等のみの患者に比べ、複数疾患を抱える患者では複雑な在宅医療が必要
在支診以外の診療所による在宅医療、どう評価していくべきか

 在宅医療については1月11日に「その1」として総論的な議論をすでに行っており、今回は、主に「在宅医療提供体制の確保」などが検討テーマとなりました。

 在宅医療に力を入れている医療機関として在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)がありますが、厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長は▼在支診でも、訪問診療・往診・在宅看取りなどすべてを担っているわけではない▼在支診以外の診療所が、訪問診療の13.8%、往診の39.6%、在宅看取りの21.5%を担っている—状況を説明。「在支診以外を含めた、かかりつけ医」が、在宅医療において欠かせない存在となっていることが分かります。診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、こうした状況から「『在支診以外』の在宅医療の評価を今以上にすることが求められていると言える。前向きに検討すべきである」と提案しました。

在支診だからといって、すべての在宅医療提供を行っているわけではないようだ
在支診だからといって、すべての在宅医療提供を行っているわけではないようだ

在支診以外の診療所も相当程度、在宅医療を提供している
在支診以外の診療所も相当程度、在宅医療を提供している

 
 しかし、「在支診」と「在支診以外」とを比較すると、▼「在支診以外」では重症患者への在宅医療提供が少ない▼「在支診以外」では自院の外来患者への在宅医療提供が多く、他院からの紹介患者は少ない—ことも分かりました。こう考えると、「在支診以外」の診療所による訪問診療などの点数が低く設定されている現在の診療報酬には一定の合理性がありそうです。診療側委員はかねてより「『在支診以外』の診療所における在宅医療の評価充実」を求めていますが、これを実施した場合「在支診の評価」をさらに充実させなければバランスがとれず、どこまで改定財源を確保できるかという点も含めた総合的な検討が必要となりそうです。

在支診に比べて、そうでない診療所は、重症患者への訪問などが少ない
在支診に比べて、そうでない診療所は、重症患者への訪問などが少ない

在支診に比べて、そうでない診療所では「自院の外来患者」に対する在宅医療提供が多い
在支診に比べて、そうでない診療所では「自院の外来患者」に対する在宅医療提供が多い

在宅医療の報酬では、機能強化型在支診など>通常の在支診療など>一般の診療所など、という具合に点数に傾斜がつけられている
在宅医療の報酬では、機能強化型在支診など>通常の在支診療など>一般の診療所など、という具合に点数に傾斜がつけられている

 
24時間対応のためなどに複数医療機関が連携した場合を、どう評価すべきか

 在宅医療提供(かかりつけ医機能の中でも在宅医療提供は重要かつ大きな要素)に向けたハードルとして、もっとも高いものは「24時間対応」と考えられます。厚労省や日本医師会の調査でも、これを支えるデータが出ています。たしかに、1人医師診療所に24時間・365日の対応を求めることは不可能でしょう。そこで診療側の松原謙二委員(日本医師会副会長)らは、「複数の医療機関が連携・共同して訪問診療などを行う」ことを保険診療上認めるべきとかねてから要望しています。

かかりつけ医機能・主治医機能の中で、負担の大きい項目の最大のものは「在宅患者への24時間対応」となっている
かかりつけ医機能・主治医機能の中で、負担の大きい項目の最大のものは「在宅患者への24時間対応」となっている

 
 現在の診療報酬では「1人の患者に対して訪問診療料を算定できるのは1医療機関のみ」の旨があり、松原委員らは「24時間対応を行うためには、複数の診療所の連携が不可欠である。また、専門外の診療科による訪問診療が必要なケースもある」とし、複数医療機関による訪問診療を強く要望しているのです。同じく診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)や猪口雄二委員(全日本病院協会副会長)も、「後方病院も含めて、複数医療機関・医師がチームを組んで在宅医療を提供することが必要である」と同旨の要望を行っています。

 この点、支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)も24時間対応への医師の負担を考慮し、「現在の訪問診療料は1医療機関のみが算定可能だが、複数疾患ある患者などでは複数の医療機関が連携した総合的管理が必要となろう。点数を含めて、診療内容に応じた評価は検討する必要がある」と一定の理解を示しましたが、花井十伍委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)や平川則男委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)は、「訪問診療は患者の疾病などを継続的に管理していくもので、かかりつけ医機能と重なる部分がある。複数の医療機関による訪問診療では、個々の医師がバラバラに患者を管理する状況も生じるのではないか。連携の在り方・ルールなどをしっかり見なければいけない」と指摘し、慎重な検討を求める構えです。また同じ支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)も「医師の連携・協働を評価するまえに、かかりつけ医と訪問看護ステーション、薬局、介護支援専門員などの連携・協働を優先的に進めるべき」との見解を示しています。

 これに対し松原委員は「在宅時医学総合管理料を算定している医療機関が中心になって連携する。バラバラな管理はあり得ない」と理解を求めています。ところで訪問看護ステーションにおいても24時間対応が重要な課題問看護、2018年度同時改定でも事業規模拡大などが論点に―中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)となっており、かねてから「大規模化による機能強化」が進められています。診療所においても、同じように「統合などによる大規模化」を進めることで、この問題を解決するもう一つの答えが得られるかもしれません。

 なお迫井医療課長は、この点に関連して「かかりつけ医の夜間・時間外の負担軽減に資する、地域医療機関の連携による救急応需体制」の評価も論点に掲げました。

 

 また実際に24時間対応した実績を深夜加算・夜間加算の算定状況から見ると、「往診全体の8%」となっていますが、万代委員は「万一に備えた体制を整えている。実際の対応が少ないので大したことはないと考えないでほしい」とコメントしています。

循環器疾患等のみの患者に比べ、複数疾患を抱える患者では複雑な在宅医療が必要

 2016年度の前回診療報酬改定では、在宅医療の報酬体系が大きく見直され、例えば▼重症患者(末期がんや人工呼吸器使用など)への訪問を手厚く評価する▼在宅時医学総合管理料などを月1回の訪問でも算定可能とする(ただし点数設定は低く)▼集合住宅に対する在宅医療の評価軸を「1日に複数人訪問したか」から「1か月に何人訪問したか」に変更する—などです(関連記事はこちらとこちらとこちら)。

 迫井医療課長は、さらに「訪問診療時に医師が行った診療内容」を分析。例えば、「循環器疾患・脳血管疾患・認知症・糖尿病・骨折・筋骨格系疾患のみの患者」と「その他の患者」とでは、後者では▼抗がん剤の点滴▼皮下輸液▼中心静脈栄養・ポート管理▼腹水・胸水穿刺―などを行うケースが多いこと、また重症患者(上記)では▼患者・家族などへの病状説明▼訪問看護ステーションへの指示—などの業務が増えていることなどが分かりました。つまり、患者の状態によって訪問診療時の診療内容が変わってくるのです。

循環器疾患等のみの患者に対する訪問診療では、その他の患者に比べて、注射や点滴などの診療行為が少ない
循環器疾患等のみの患者に対する訪問診療では、その他の患者に比べて、注射や点滴などの診療行為が少ない

重症患者と、そうでない患者で、訪問診療における診療行為を比較すると、重症患者では病状説明や訪問看護ステーションへの指示などが多くなる
重症患者と、そうでない患者で、訪問診療における診療行為を比較すると、重症患者では病状説明や訪問看護ステーションへの指示などが多くなる

 
 現在は、重症患者では報酬が高く設定されていますが、「重症以外の患者」では診療内容の違いが報酬に反映されません。このため支払側の幸野委員は「重症以外の患者を、もう少しきめ細かく分類した報酬体系にすべき」と提案しましたが、診療側の中川委員は「診療報酬の簡素化が求められており反対である。『重症患者』と『それ以外』という報酬体系は臨床現場の感覚として分かりやすい」と反論しています。

 なお、サービス付き高齢者向け住宅などの「高齢者向け集合住宅」と「戸建て、マンション、アパートなど」とで、同一日に訪問診療を行う人数を比べると、前者(高齢者向け集合住宅)では圧倒的に複数名診療が多く、また、前者の患者に対する診療時間は、後者よりも若干短いことが分かりました。診療報酬上は、前者を施設入居時等医学総合管理料として、後者の在宅時医学総合管理料よりも低い点数が設定されており、合理的な報酬体系になっていると言えそうです。

戸建てやマンション・アパートなどに比べ、高齢者向けの集合住宅に対する訪問診療では、複数名診療となるケースが圧倒的に多い
戸建てやマンション・アパートなどに比べ、高齢者向けの集合住宅に対する訪問診療では、複数名診療となるケースが圧倒的に多い

在総管の算定患者に比べ、施設総管の算定患者では、若干、診療時間が短い
在総管の算定患者に比べ、施設総管の算定患者では、若干、診療時間が短い

 
 迫井医療課長は、「▽患者の状態▽診療内容▽居住形態—に応じた効果的・効率的なサービス提供」を推進するための評価の在り方も論点に掲げており、2018年度改定でも「重症患者への訪問はより手厚く、一方、軽症患者への訪問はそれに見合った報酬」という方向が見えてきそうです。

  

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【関連記事】
かかりつけ薬剤師指導料、対象患者は高齢者や多剤処方患者に絞るべきか—中医協総会(2)
生活習慣病の重症化予防、かかりつけ医と専門医療機関・保険者と医療機関の連携を評価―中医協総会(1)

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在宅医療専門クリニック、設置認可も診療報酬などは厳格に設定―中医協総会
在宅医療の報酬体系に「患者の重症度」導入を検討へ―中医協総会
16年度診療報酬改定の議論スタート、在宅専門医療機関に賛否両論−中医協総会
http://www.medwatch.jp/?p=13240

http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/134.html

[経世済民120] 貿易統計は「サービス」を測定できていない 経済学三大バトル 日銀ETF永遠に持て イエレン再指名 ブ中銀09来最大の利下
【第6回】 2017年4月13日 ザカリー・カラベル , 北川知子
貿易統計は「サービス」を測定できていない

前回の記事で、アメリカの対中貿易赤字は存在しない可能性があると示唆したザカリー・カラベル氏。その理由は、GDPや貿易統計が現代を正しく反映していないからだという。新刊『経済指標のウソ』第8章から一部を特別に公開する。

国際金融取引は
貿易統計から漏れている


(画像はイメージです)
 サービスは財の取引に比べると測定が困難だが、20世紀初頭までは小さな要素だった。しかし1980年代に入ると、サービスが世界貿易、特に金融サービスのかつてなかったほど大きな部分を占めるようになっていた。

 サービスの取引とは何を意味するのか。たとえばアメリカの銀行のロンドン支店があるとしよう。ゴールドマン・サックスだと考えてもらってもいい。

 ゴールドマン・サックスのロンドン支店は、西アフリカに工場を建設したいと考えている某スイス企業のためにローンを組む。この取引は、「クロスボーダーファイナンス」の一例だ。

 国境を越えた金融活動は、この数十年で、世界の経済活動の無視できない一部になっている。ところが従来の貿易統計では測定されることはなく、統計的には存在しない。

 旅行業は、金融を上回る「サービス輸出」だ。ロンドンっ子がアトランタに行くためにデルタ航空のチケットを買うたび、旅行業の輸出とみなされる。アメリカ企業による非居住者へのサービス提供だからだ。

 中国人の団体旅行客がサンフランシスコ観光のためにバスをチャーターしたり、マンハッタンのホテルに団体予約を入れたりすれば、アメリカから中国への「サービス輸出」として計算される。逆に、アメリカ人の団体旅行客がアンコールワットやマチュピチュを訪れた場合には輸入になる。

 教育は、アメリカにとってもう1つ重要な「サービス輸出」だ。サウジアラビアの学生がアメリカの大学に入学したり、中国人の大学院生がカリフォルニア工科大学でPh.D.を取得したりすれば、教育の輸出とされる。

 知的財産もサービスの一種であり、輸出されたり輸入されたりする。チャイナ・モバイルがサンディエゴに本社を置くクアルコムから携帯電話技術のライセンスを得れば、統計的には、アメリカからこのサービスが輸入されたと言える。

 しかし、対中貿易赤字を示すアメリカの公式統計に含まれるのは財だけであって、サービスは含まれない。国勢調査局によって毎月発表される数字は財だけを追跡し、経済分析局が追跡するサービス貿易は盛り込まれていない。

 アメリカは、中国に対しても、世界全体に対しても、財に関してはかなりの赤字である一方、サービスは黒字であるため、これは問題だ。2011年には、サービス輸出が輸入に比べて2000億ドル超過だった。

 とはいえ、さまざまな検討が行われながらも、サービスをあらわす数字の入手は困難であり、統計数字の編纂に関わった者は誰でも、国際活動のかなりの部分が測定から漏れていると気づいていた。

 経済分析局が、たとえば旅行サービス業をどのように測定しているかを知れば、ますますややこしくなるだろう。実際のところ、特定の中国人団体旅行客がサンフランシスコでいくら使ったかを示す信頼できるデータは存在しない。

 そのため経済分析局は、外国人旅行者数に平均支出額をかけて、外国人旅行者によるアメリカでの支出額を推計していた。平均支出額は、旅行者やツアーグループに対する空港での調査に基づくものであり、正確さには疑問が残る。

「一国一単位」という
時代錯誤の前提

 あるモノがどこで作られたのか、付加価値のどれだけをどの国に割り当てることができるのか。こういった判断はますます困難になっている。

 そもそも貿易統計は、一国を一単位とする単純な前提に基づいている。この単位は、閉じたシステムだ。

 外国製品が入ってきて(輸入)、国内製品が出て行く(輸出)という出入りはあっても、国民経済は、貿易の影響を受ける閉じた回路として扱われている。

 これは、現代にどこまで当てはまるのだろう。確かにたいていの人は、生まれた国で育ち、成長し、死んでいく。昨今のように旅行や貿易が拡大していても、ほとんどの人が生まれた場所の近くで暮らす。

 しかし、物理的にどこかの場所に根を下ろすとしても、人間が営む経済活動は違う。

 これは、経済生活が、旅行や教育、オンラインなどのサービスによって定義されるようになっているためだけではない。財でさえ、1つの地域には簡単に割り当てられなくなっているからだ。

 貿易統計は、ほかのほとんどの指標にもまして、世界の変化に追いつけなくなっている。端的に言えば、私たちは現実には存在しない世界に基づいて決断を下しているのだ。

 紛れもない一例は、米中貿易均衡である。数字がある程度正確だとしたら、現実に不均衡が存在することになる。

 しかし、数字は正確ではない。貿易統計が、製品がどのように作られるかをもっと正確に測定できるなら、中国とのあいだに貿易赤字が存在しなくなる可能性もあるのだ。

 どの国が成長していて、どの国が停滞しているのか、それぞれの国の強みと弱みはどこにあるのか。誰もが統計に答えを求めるが、肝心の統計そのものはほとんどの場合間違っているのだ。

 原因は、財の原産地を判断する方法、サービスという明確な形のない世界を測定する方法が十分に進化していないところにある。といっても、統計を編纂する人々や、担当機関の限界によるものではない。

 統計数字の編纂に責任を持つ者はみな、この問題を認識している。統計担当機関は政府の官僚機構の一部であり、人手も予算も無限ではないため、動くスピードにも作業量にも限界がある。一方、世界経済の進化には限界がない。
http://diamond.jp/articles/-/124691

 

2017年4月13日 週刊ダイヤモンド編集部
経済学史に残る「驚きの三大バトル」を振り返る

週刊ダイヤモンド2015年9月26日号特集「やっとわかった! 経済学」より
経済現象の真理解明に生涯をささげた大経済学者たち。時に先陣争いを繰り広げ、また論敵との激論に臨み、経済学史にその名を残した。本当にあった驚きのバトルを振り返ろう。(週刊ダイヤモンド2015年9月26日号特集「やっとわかった! 経済学」より。)

マルサスVSリカード
自由貿易か保護貿易か
小麦の輸入で大激論

?「経済学の父」アダム・スミス以降の英国古典派経済学者といえば、トマス・マルサス(1766〜1834年)とデヴィッド・リカード(1772〜1823年)が代表的な存在だ。

?マルサスは『人口論』(1798年)で現在でもよく知られている。ケンブリッジ大学で数学などを学び、卒業して5年後に教職に就いた。1805年以降は東インド会社に付属する官僚養成学校で経済学教授を務める。

?一方、リカードは14歳から20歳まで証券仲買人(証券会社)だった父の下で働き、21歳で結婚。独立した後、証券業界で頭角を現した人物だ。金融ビジネスの現場にいたから、当初マルサスとリカードはまるで違う人生を歩んでいた。

?しかし、スミスの『国富論』を読んで経済学に目覚めたリカードが1809年に論壇でデビューし、民間の経済学者として世に出ると2人は生涯の論敵となる。

?最も有名な論戦が、「穀物法論争」だ。1815年にナポレオン戦争が終わると、1806年にフランス皇帝ナポレオンが英国を経済的に孤立させようと敷いた大陸封鎖令が解除された。これにより、英国に大陸から穀物が輸入されることになる。

?そこで英国議会は穀物法を施行し、輸入を制限することにしたのだが、この法律の是非をめぐって論戦を繰り広げたのだ。

?フランスの大陸封鎖令は英国にとって保護貿易の手段ともなっていた。しかし輸入が再開されて安い小麦が国内市場に入れば、小麦価格が下落してしまう。それを恐れた地主貴族が小麦輸入の制限を訴え、穀物法を通した。

?ところが産業革命で力を付けていた産業資本家は施行された穀物法に反対し、その廃止を訴えた。食費が上がるのはかなわない、というわけだ。

?マルサスは地主貴族の立場に立つ。産業資本家が作った生産物を購入するのは地主、労働者と農民。小麦価格が下落すれば地主らの所得が減るから、産業資本家の商品の需要も減ると主張した。また、食糧安全保障上も国内生産を維持する必要があるという。

?反論するリカードは産業資本家側に立った。食費が上昇したら資本家は労働者の賃金を上げざるを得なくなる。資本家の利潤が減ったら、産業革命のための資本蓄積が進まなくなる、と主張した。1817年には『経済学および課税の原理』を出版し、貿易国がそれぞれ相対的に得意な物の生産に特化して交易すれば、双方とも豊かになるという比較優位説を展開してもいる。

?つまり、マルサスは保護貿易を、リカードは自由貿易を訴えたのだ。

?リカードが早世するまで論戦は続いた。ただし、2人は論敵であると同時に親友にもなっていた。そこには、学者としては幸福なライバル関係があったといえる。


Illustration by Akira Nakayama
ワルラスVSジェヴォンズVSメンガー
誰が最初の提唱者?
限界革命の手柄の行方

?経済学に革命を起こし、新古典派経済学のトビラを開いたとして教科書に載っている人物は3人である。レオン・ワルラス(1834〜1910年)、ウィリアム・ジェヴォンズ(1835〜82年)、カール・メンガー(1840〜1921年)だ。

?この3人、母国も活動拠点もバラバラだった。ワルラスはフランス人でスイスのローザンヌ大学教授、ジェヴォンズは英国人で後のマンチェスター大学教授、メンガーはオーストリア人で後のウィーン大学教授である。にもかかわらず、3人がほぼ同時期の1870年代前半に、同じ限界効用理論(限界効用逓減の法則)を世に問うたのだ。

?詳しくは「戦後日本55年の政策を経済学三大思想でスッキリ読み解く」に譲るが、「物やサービスの価値を決めるのは人間の満足度だ」とする理論で、それまでの経済学の前提をひっくり返した歴史的な発見である。科学理論でよくあるような、「最初の提唱者は誰か」をめぐる“優先権争い”はなかったのだろうか。

?ワルラスの著書『社会的富の数学的理論』(1877年)にはジェヴォンズとの往復書簡が収められており、当時の様子が少し分かる。外国語版に、ワルラスからジェヴォンズへの書簡に付された注釈があり、ここに優先権についてワルラスが次のように書いていた。

?「ジェヴォンズ氏と私は、関数あるいは曲線による効用の実現と、交換によって獲得される極大効用の条件が、元プロシャ王室の行政官補ヘルマン・ハインリッヒ・ゴッセンによる『人間の交易の法則とそれから導かれる人間行為の基準の発展』(1854年)と題された著作において、ひじょうに明示的に供与されていることを認識した」──。

?なんと、ドイツ(プロイセン)のゴッセンが20年前の1854年に同じ論旨で出版していたとはっきり書いている。しかも、「ジェヴォンズ氏と私(ワルラス)は」それを「認識」したとも。つまり優先権はゴッセンにあったわけだ。

?ところが、優先権の該当者はもう1人いた。フランスのジュール・デュピュイである。やはり限界効用理論に近い論文をゴッセンのさらに10年前、1844年に発表していた。

?デュピュイについてはジェヴォンズが『経済学の理論』(1871年)第2版(1879年)の序文にこう書いている。

?「斬新はもはや私の理論の主たる特徴に数え得ないことが明らかとなった。(優先権の)多くはデュピュイに属し、残りの大部分は、ゴッセンに与えられなければならない」。そして「遺憾」だが、本書が読まれれば「容易に満足の中に呑み込まれるであろう」と結んでいる。

?ただ、メンガーについては、ワルラスもジェヴォンズもまったく触れていない。

?メンガーの『国民経済学原理』(1871年)を読むと、他の2人、いや4人とは大きな違いがある。メンガーは数学をまったく使っていないのだ。一点だけ、食欲と喫煙欲、それぞれの満足度が次第に減ることを示した表を載せているが、あくまでも数式やグラフではなく表である。

?『国民経済学原理』を出版したころ、メンガーは政府系の新聞記者で、まだ大学には所属していなかった。そのため、大学教授だったワルラスとジェヴォンズの目には触れにくかったはずだ。ドイツ語の書物だったことも不利だっただろう。


Illustration by Akira Nakayama
?ゴッセンの著書もドイツ語だったが、数学で記述しているので20年後に発見できたのかもしれない。何しろ、メンガー以外の4人は「数学オタク」という共通項でつながっていたのだ。

?後年、ワルラスはローザンヌ学派、ジェヴォンズの系譜からはケンブリッジ学派、メンガーはウィーン学派を成し、優れた学者を輩出した。デュピュイは土木技術官僚、ゴッセンは行政官だったので弟子はいない。現在の知名度に大きな差があるのは、そのためでもある。

ケインズVSハイエク
政府介入は是か非か
大経済学者が大げんか


Illustration by Akira Nakayama
?J.M.ケインズ(1883〜1946年)流の財政・金融政策で効果を出すには、「ハーヴェイロードの前提」という大きな条件が必要である。名付け親はケインズの弟子のロイ・ハロッドだ。

?ハーヴェイロードはロンドンの上流知識人が多く住む街だ。つまり、裁量的な財政・金融政策は、民間の一般人より賢明で合理的な判断ができるエリートが行うことが前提条件だというのだ。

?こうしたケインズ経済学に対して激しく論争を仕掛け、長年にわたって反論を続けたのがF.V.ハイエク(1899〜1992年)である。

?ハイエクは急進的な自由主義、つまり完全自由主義者(リバタリアン)である。三つの経済思想(図参照)でいえば、右側の新古典派・新自由主義からさらに右へ突き出た存在だった。

?ウィーンの貴族出身で、第1次世界大戦の兵役後、母校ウィーン大学講師を経て1931年にロンドン・スクール・オブ・エコノミックス教授となり、約20年間勤務する。この間にケインズとの論争が続いた。三つの経済思想の真ん中に位置するリベラルのケインズと、右に振り切れたリバタリアンのハイエクでは激突するばかりで、ほとんど大げんかである。


『これならわかるよ!経済思想史』
坪井賢一?著
(ダイヤモンド社?1600円)
  2人の論争はハイエクの著書『ケインズとケンブリッジに対抗して』にまとめられている。

?ハイエクのケインズに対する論点ははっきりしていた。ハイエクは基本的に、合理的ではない人間が合理的に経済を計画することはできないという。経済は自生的に形成される秩序であると語り、公益のために中央政府が介入し、統制する集産主義を批判した。

?ハイエクは長命で、ケインズ没後の1950年にシカゴ大学教授、62年以降はドイツ、オーストリアの大学に勤務し、74年にノーベル経済学賞を受賞。92年に92歳で天寿を全うしている。

【参考文献】中村廣治『リカードウ評伝』(昭和堂、2009)、菱山泉『リカード』(日本経済新聞社、1979)、ジェヴォンズ『経済学の理論』(小泉信 三他訳、日本経済評論社、1981)、ワルラス『社会的富の数学的理論』(柏崎利之輔訳、日本経済評論社、1984)、メンガー『国民経済学原理』(安井 琢磨、八木紀一郎訳、日本経済評論社、1999)、ハイエク『ケインズとケンブリッジに対抗して』(小峯敦、下平裕之訳、春秋社、2012)、西野武彦 『ケインズと株式投資』(日本経済新聞出版社、2015)、フィッシャー『価値と価格の理論の数学的研究』(久武雅夫訳、日本経済評論社、1981)、 L・R・クライン『ケインズ革命』(篠原三代平他訳、有斐閣、1965)、シュンペーター『理論経済学の本質と主要内容』(上下巻、安井琢磨他訳、岩波文 庫、1983〜84)、伊東光晴、根井雅弘『シュンペーター』(岩波新書、1993)、塩野谷祐一『シュンペーター的思考』(東洋経済新報社、 1995)、ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』(野矢茂樹訳、岩波文庫、2003)、藤本隆志『ウィトゲンシュタイン』(講談社、1981)
http://diamond.jp/articles/-/109379


 

 


 

 


日銀のETF売却は不要、経済活性へ永遠に持て−S&PダウCEO
佐野七緒、Min Jeong Lee
2017年4月13日 00:00 JST


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• 国内ETF市場はおよそ22兆円、3分の2を日銀が保有
• 出口戦略論議は尚早、株価形成もゆがめていない−黒田総裁
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日本銀行はETFを売る必要はないーー。米国の指数算出会社であるS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのアレックス・マトゥーリ最高経営責任者(CEO)は、市場で取り沙汰され始めた異次元緩和の出口論を一蹴した。日本経済の一層の回復には、中央銀行による刺激策の持続が不可避とみるためだ。
  マトゥーリCEOはブルームバーグのインタビューで、「日銀はETFを清算しなくても良いし、永遠に持ち続けられる。株式は永遠に続く」と発言。日銀による指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れは、「経済を活性化するために行っており、経済に資金を投じる必要がある」との認識を示した。
  日銀は昨年7月の金融政策決定会合で、2013年の黒田東彦総裁就任以来の量的・質的金融緩和策を強化、ETFの買い入れ額を年間約3兆3000億円から約6兆円に増額した。直近の1回当たりETF購入額は725億円(設備・人材支援ETFを除く従来枠)となっている。ブルームバーグ・インテリジェンスによると、日銀は純資産ベースで現在22兆円あまりの国内ETF市場のうち、3分の2を保有している。

黒田日銀総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  日銀のETF買いはおおむね株価の下落時に入り、相場の下支え役を果たすケースが多い。一方、東証1部の1日当たり平均売買代金が15年の2兆5482億円をピークに16年は2兆2994億円、17年(11日現在)は2兆2346億円と伸び悩む中、日銀の影響力拡大が流動性や価格形成をゆがめるとの懸念も浮上、株安時の日銀のバランスシート悪化リスクは従来に比べ格段に高まった。
  野村証券はことし1月、問題視すべきは日銀の過度なリスクテークで、含み損の可能性が疑われれば、日銀に対する信頼感は低下し、金融政策運営上の自由度も大きく損なわれると指摘。4月会合でETF買い入れ額を1兆ー1.5兆円減額すると予想した。ただその後、米国の経済政策に対する期待感の後退や中東、極東の地政学リスクなどを材料に為替は5円ほど円高に振れ、TOPIXは5%弱下がっている。
  ブルームバーグの調べでは、日銀はETF購入を通じ既に主要企業の間接的な大株主となっており、現状の買い入れペースなら17年末に日経平均株価を構成する225銘柄中、55銘柄で筆頭株主になる可能性がある。この点についてマトゥーリ氏は、「ETFを購入することで議決権とも分けられている」と指摘した。
  日銀がETF購入を続ける背景にあるのは、2%の物価安定目標の存在だ。黒田総裁は4日の衆院財務金融委員会で、ETF購入は目標の早期達成に必要とし、出口戦略の議論は時期尚早で、株式相場の価格形成をゆがめていないと発言。同日公表された企業短期経済観測調査(短観、3月調査)の企業の物価見通しは、1年後が0.7%上昇、5年後が1.1%上昇にとどまる。
  英運用会社のアーカス・インベストメントの共同設立者で、日本株ストラテジストの草分けであるピーター・タスカ氏もマトゥーリ氏と同様、日銀の異次元緩和策に「出口が必要だとは思わない」との立場だ。「株式を売ることについて出口を急ぐ必要はない。2%目標から遠く、やめる必要はない」と話している。

トランプ米大統領:ドルは強過ぎる−中国の為替操作国認定は見送りへ
Andrew Mayeda
2017年4月13日 06:06 JST
• WSJとのインタビューで語る−発言を受け、ドルは下落
• ドル高は「人々が私を信頼しているため」であり、私にも責任

トランプ米大統領は中国を為替操作国に認定しないことを明らかにし、選挙公約の目玉の一つを後退させた。その一方で、強いドルが米企業の競争力を損ねているとも指摘した。
  トランプ大統領は12日の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューで、中国は「為替操作国ではない」と語り、中国が人民元安誘導を目的とした介入を最近行っていないことを認めるような発言をした。
  トランプ氏は昨年の選挙期間中、中国が貿易で優位に立つため為替を操作していると主張し、大統領に当選すれば就任初日に中国を為替操作国に認定すると公約していた。
  トランプ氏はWSJのインタビューで、ドルが経済への痛手になるほど強くなり過ぎていると指摘するとともに、他国が自国通貨を「切り下げている」と発言。これを受け、ドルは下落し、米10年国債利回りは低下した。
  トランプ氏は「ドルは強くなり過ぎていると思う。これはある程度私のせいでもある。人々が私を信頼しているためだ。しかしはこれは痛手となっている。最終的に痛手となる」と指摘。「ドルが強く、他国が自国通貨を切り下げている状況で競争するのは極めて難しい」と語った。
  トランプ大統領はさらに、イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長の再指名の可能性に含みを持たせるとともに、「低金利政策」が望ましいと発言した。
  米財務省はトランプ政権発足後では初の外国為替報告書を今月中に公表する見込み。
原題:Trump Says China Not FX Manipulator, Sees Dollar Too Strong (2)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-12/OO4WA76JTSE801

 

 

トランプ米大統領、イエレンFRB議長再指名の可能性残す−WSJ紙
Christopher Condon
2017年4月13日 06:29 JST
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イエレン氏を「好感」、低金利政策が「好ましい」
イエレン氏の任期に関する話は極めて尚早だ
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トランプ米大統領は就任後初めて、来年2月に任期切れを迎えるイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長を再指名する可能性を残していることを示唆した。
  米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)との12日のインタビューに応じたトランプ大統領は、イエレン氏を「好感し、尊敬している」と述べた上で、「極めて尚早だ」と付け加えた。同大統領はまた、「低金利政策が好ましいと、私は正直に言わねばならない」と語った。
  大統領選中、トランプ氏はイエレン議長を批判していた。昨年9月には同議長が「政治的な仕事」をし「非常に見せ掛けの経済」にしており、「自身について恥ずべきだ」とトランプ氏は述べていた。イエレン氏のFRB議長としての任期は来年2月3日に満了する。
  同紙によれば、トランプ大統領のインタビューの一部にはムニューシン財務長官も同席。同長官は、トランプ氏が極めて近いうちに空席のままとなっている銀行監督担当のFRB副議長を指名する方針だと話した。
  
原題:Trump Says He’s Open to Renominating Yellen at Fed, WSJ Says(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-12/OOBEMZ6TTDS101


 


ブラジル中銀、2009年以来最大の利下げ−景気てこ入れで
Mario Sergio Lima
2017年4月13日 06:35 JST更新日時 2017年4月13日 09:39 JST


https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iexDi.MhMUSQ/v2/-1x-1.png

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• 政策金利1ポイント下げ11.25%に、エコノミスト44人中42人が予想
• 緩和ペースを少し速めたのは現時点で「適切」−声明

ブラジル中央銀行は12日、政策金利を1ポイント引き下げることを決めた。利下げ幅は約8年で最大。中南米で最大規模のブラジル経済の成長を積極的に促進する。
  イラン・ゴールドファイン総裁率いる政策委員会は政策金利を11.25%に引き下げた。前回と前々回の政策委ではそれぞれ0.75ポイントずつ利下げしていた。ブルームバーグが調査したエコノミスト44人中42人は1ポイントの利下げを予想。2人は1.25ポイントの利下げを見込んでいた。
  中銀当局者は金利決定と同時に公表した声明で、「金融緩和を1月と2月の会合で決めたペースよりも今回少し速めたことは、現時点で適切だ」と説明。ディスインフレのプロセスがさらに拡大しており、食品価格は好ましい供給ショックを与えているとの認識をあらためて示した。
  インフレ率が今年、目標を下回る見通しであるため、中銀が景気支援で一層の行動を取り得るとみるアナリストもいる。グラジュアルCCTVMのチーフエコノミスト、アンドレ・ペルフェイト氏は電話取材に対し、「中銀はインフレに明らかに満足しており、経済は極めて弱い。中銀はより大幅な引き下げの可能性を排除していない」と指摘した。
  エコノミスト予想によれば、ブラジル中銀は年内に政策金利を8.5%に引き下げ、2018年いっぱいは同水準で据え置く見通し。予想通りなら、07年9月までの2年間に19.75%から11.25%に利下げして以来最も大幅な金融緩和サイクルとなる。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-12/OOBFCG6TTDS001

http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/877.html

[国際19] 米株は著しい調整へ、ワールドシリーズごろ再投資を 債券続伸かトランプ低金利支持 シンガポールマイナス成長 ブロックC革命
米株は著しい調整へ、ワールドシリーズごろ再投資を

グッゲンハイム
John Gittelsohn
2017年4月13日 09:47 JST
弱気相場になるとはみておらず、強気相場は健在だとマイナード氏
トータル・リターン・ボンド・ファンドの年初来のリターンは2.4%

米資産運用会社グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナード氏は、トランプ米大統領の政策実現能力について失望感が広がり始め、外交関係のリスクを巡る不安が高まる中で、米国株の相場が「著しい調整」に見舞われるとの見通しを明らかにした。
  グッゲンハイムの最高投資責任者(CIO)を務めるマイナード氏は、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「われわれは夏か秋の初めに著しい調整に見舞われると私は考えている。これが弱気相場になるとはみておらず、グレート・ブルマーケット(類いまれな強気相場)はなお健在だと思う」と語った。
  マイナード氏は「5月に売って逃げろ」というウォール街の格言を引き合いに出し、米メジャーリーグでワールドシリーズの最初の試合が始まる10月後半ごろが、再投資にふさわしい時期だと指摘。トランプ大統領の政策や北朝鮮およびロシアとの関係、フランス大統領選を巡るかなりの不透明感がなお存在するものの、米経済は引き続き成長し、株価の上昇も続き、相場の上昇率は今後2年で最大20%に達すると予測した。
  ブルームバーグが集計したデータによれば、グッゲンハイムの旗艦ファンドである「グッゲンハイム・トータル・リターン・ボンド・ファンド」の年初来のリターンはプラス2.4%と、類似するファンドの93%を上回り、上位7%に入る運用成績を残している。
原題:Guggenheim’s Minerd Says ‘Significant Correction’ Is Coming(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-13/OOBL0G6K50XS01

 


債券は続伸か、トランプ米大統領が低金利支持発言−30年債入札は警戒
三浦和美
2017年4月13日 08:07 JST
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トランプ米大統領 Photographer: Olivier Douliery/Pool via Bloomberg
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30年入札は絶対水準妙味薄れ、流れる可能性高まった−東海東京証
先物夜間取引は150円98銭で引け、前日の日中終値比8銭高
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債券相場は続伸が予想されている。トランプ米大統領の発言を受けて、前日の米国市場で長期金利が大幅低下した流れを引き継ぎ、国内債市場でも買いが先行する見通し。半面、足元の急激な金利低下を背景にこの日実施の30年利付国債入札に対する警戒感が出ている。
  13日の長期国債先物市場で中心限月6月物は150円台後半から151円台前半での推移が見込まれている。夜間取引は150円98銭と、前日の日中終値比8銭高で引けた。

  東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、前日の米国市場は株安・長期金利低下、ドル安・円高の展開となり、「これまでのリスクオフの動きに加え、トランプ大統領の発言が働いた」と指摘。「円債相場は今日も続伸」と予想する。
  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の346回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値0.015%を下回る水準での推移が見込まれている。佐野氏はこの日の予想レンジを0.005%〜0.02%としている。
トランプ米大統領
トランプ米大統領 Photographer: Olivier Douliery/Pool via Bloomberg
  12日の米債相場は上昇。米10年債利回りは前日比6ベーシスポイント(bp)低下の2.24%程度。トランプ大統領が米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、低金利政策を支持したほか、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の再指名に関して可能性を残したことが手掛かりとなった。
30年債入札
  財務省はこの日、 30年利付国債の価格競争入札を実施する。54回債のリオープン発行で、表面利率は0.8%に据え置かれる見込み。発行予定額は前回と同じ8000億円程度となる。
  30年物の54回債利回りは前日に一時0.805%と、新発債として2月28日以来の低水準を付けた。東海東京証の佐野氏は「30年債入札は絶対水準妙味が薄れた分、流れる可能性が高まっただろう」とみる。
  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊シニア債券ストラテジストは、「金利水準は低下してきた。例年スロースタート傾向の生保勢が、期初から積極的に買い進むレベルではないようにみえる。また、25年超は日銀による国債買い入れが発行額対比で相対的に少ないゾーン。こうした点を考慮し、警戒的にみておきたい」と指摘。「入札結果の弱さは超長期債にとって一定の重し」としながらも、「中長期債や先物の底堅さは今日も変わらない」とみている。
過去の30年債入札結果はこちらをご覧下さい。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-12/OOBJNV6JIJWC01

 

シンガポール、1−3月GDPは前期比年率1.9%減−マイナス成長に
David Roman
2017年4月13日 09:33 JST
シンガポール経済は1ー3月(第1四半期)に前期比年率ベースでマイナス成長となり、やや勢いを失った。
  シンガポール通産省が13日発表した1ー3月期の国内総生産(GDP)速報値は前期比年率1.9%減。昨年10−12月(第4四半期)は同12.3%増だった。ブルームバーグがまとめたエコノミスト14人の予想中央値は1.8%減だった。前年同期比では2.5%増と、ブルームバーグ調査の予想中央値(2.6%増)を下回った。
  部門別では経済の約3分の2を占めるサービス業が前期比年率2.2%減。製造業は同6.6%減、建設業は同5.4%増だった。
原題:Singapore’s Economy Contracts Annualized 1.9% in First Quarter(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-13/OOBNRK6K50Z901


 

ブロックチェーンは金融サービスをどう変えているのか
アレックス・タプスコット,ドン・タプスコット:ノースウエスト・パッセージ・ベンチャーズのCEO
2017年4月13日
本記事では、『ブロックチェーン・レボリューション』の著者らが、ICO(新規コイン公開)という新たな資金調達のトレンドを概説する。

 世界の金融システムは、1日に何兆ドルも動かし、何十億もの人々にサービスを提供している。だが、多くの問題を抱えてもいる。手数料や手続きの遅延によるコスト増、重複的で煩わしいペーパーワークによる摩擦、不正や犯罪の機会などだ。
 何しろ、決済ネットワーク、証券取引、送金サービスなどを扱う金融仲介機関の45%が毎年、経済犯罪の被害に遭っているのだ。この数字(経済犯罪率)は、世界経済全体では37%、専門的サービス業界では20%、テクノロジー業界では27%に留まっている(英語報告書)。規制順守のためのコストの増加が、銀行にとって最大の懸案事項であり続けていることは驚くに当たらない。そして、そのコストは最終的に消費者が負担することになる。
 そこで、ある疑問が呈される。金融システムは、なぜこれほどまでに効率が悪いのだろうか。
 第1に、時代遅れである。その場しのぎの業界技術と、デジタルの外見を装った書類中心のプロセスにいまだに依存している。第2に、中央集権型であるゆえに、変化を受け入れず、システム障害や攻撃に弱い。第3に、排他的であり、基本的な金融手段にアクセスしたい何十億もの人々を拒んでいる。
 混乱を伴うが経済の活性化と発展には欠かせない創造的破壊を、多くの銀行は総じて避けてきた。しかし、イノベーションの行き詰まりに対する解決策が出現した。それがブロックチェーンである。
ブロックチェーンの5つの基本原理をおさらい!
1.分散型データベース
 ブロックチェーン上の各参加者は、全データベースとその全履歴(台帳)にアクセスできる。誰か1人がデータや情報を管理することはない。誰もが、仲介業者を介さずに取引相手の記録を直接確かめることができる。
2.ピア・トゥ・ピア(P2P)の送信
 コミュニケーションは中央ノードを介さずにP2Pで直接行われる。各ノードが情報を保存し、他の全ノードに転送する。
3.匿名性と透明性の担保
 あらゆる取引とそれに伴う価値は、システムへのアクセス権を持つ者ならば誰でも閲覧できる。ブロックチェーン上の各ノード、つまりユーザーは、みずからを特定する30文字以上の英数字から成る固有のアドレスを持つ。そして匿名のままにするか、身元の証明を他者に提供するかを選べる。取引はブロックチェーンのアドレス間で行われる。
4.記録の不可逆性
 ひとたび取引がデータベースに入力されてアカウントが更新されると、記録は変更できない。それらは、過去に入力された取引記録すべてと紐づいているからだ(これがまさに「チェーン」という用語の由来である)。さまざまな計算アルゴリズムと仕組みによって、データベースの記録は永続性、時系列順、ネットワーク上の全参加者への公開が担保されている。
5.計算論理
 台帳のデジタル化が意味するのは、ブロックチェーンの取引が計算論理に関連づけられ、プログラム化できるということである。したがってユーザーは、ノード間での取引を自動履行するアルゴリズムと規則を構築できる。

 ブロックチェーンは元々、ビットコインなどの暗号通貨の要素技術として開発された。世界中に広く分散し、数多のデバイス上で稼働する台帳であり、価値あるものすべてを記録できる。金銭、株式、債券、所有権、証書、契約、その他ほぼあらゆる資産を、安全に、私的に、P2Pで移動し保管できるのだ。なぜなら、ブロックチェーンで信用を担保しているのは、銀行や政府などの権力を持つ仲介機関ではなく、ネットワーク上のコンセンサス、暗号、協働、精巧なコードだからである。
 企業であれ個人であれ、複数の当事者が、互いを知らなくても、仲介業者なしで合意を形成して取引を行い、価値を構築できるようになった。銀行、格付け機関、米国務省等の政府機関などに頼らずとも、当事者間で身元を確認して信用を築き、あらゆる商取引の基礎となるビジネスロジック(契約、清算、決済、記録など)を遂行できる。これは人類史上で初めてのことだ。
 こうした破壊的テクノロジーの可能性と危険を前に、金融業界では、銀行、保険、監査、専門的サービスを含む多くの企業がブロックチェーンのソリューションに投資している。では、何がこれほど多くの資金と興味を引きつけているのだろうか。
 ほとんどの企業は、摩擦とコストの削減機会について言及している。結局のところ、たいていの金融仲介機関は、運営上、目が回るほど複雑かつ高コストな他の仲介者群に自身も頼っているのだ。欧州のサンタンデール銀行は、年間200億ドルの節約が可能だと見積もっている。また、コンサルティング会社のキャップジェミニの試算によれば、ブロックチェーンを使ったアプリケーションによって、消費者は銀行と保険会社の手数料を年間160億ドルも節約できるという(英語サイト)。
 たしかに、ブロックチェーンによって、JPモルガン・チェース、シティグループ、クレディ・スイスなどの既存の金融機関(いずれもブロックチェーンに投資している)は、少ない資源でより大きな成果を上げ、業務をスリム化し、その過程でリスクを軽減できるかもしれない。しかし、機に聡いこうした視点は有益かつ往々にして必要だが、それだけで十分ということは滅多にない。(旧態依然とした金融機関とは違い)すでに根本的な構造変化を遂げているビジネスやマーケットでは、コスト削減の余地はあるのだろうか。
 この点でも、ブロックチェーンは真のゲームチェンジャーとなる。経済における全参加者間の取引コストを削減することで、P2Pによるマス・コラボレーションを下支えするのだ。これにより、既存の組織形態のほとんどが不要となる可能性がある。
 たとえば、新しいベンチャー企業が成長資金を調達する方法を考えてみよう。従来は、新規ビジネスの初期段階ではエンジェル投資家に頼り、その後はベンチャー投資家に目を向け、最終的に証券取引所で新規株式公開(IPO)を行う。この業界は、多くの仲介者で成り立っている。たとえば投資銀行、取引所の運営機関、監査役、弁護士、クラウドファンディングのプラットフォーム(キックスターターやインディゴーゴーなど)だ。
 ところが、ブロックチェーンによってこの方程式は様変わりする。どんな規模の企業でも、世界中に株式を分散発行し、P2P方式で資金調達できるようになるからだ。この新しい資金調達の仕組みは、すでにブロックチェーン業界を変えつつある。ブロックチェーン企業は、2016年、従来型のベンチャー投資家から4億ドルを集めた一方、IPOならぬICO(新規コイン公開)で2億ドル近くを調達している(英語記事)。
 ICOは、単に企業の体裁で暗号通貨(トークン)を新規に発行することのみを意味するのではない。コンテンツの制作配信とデジタル著作権管理のプラットフォーム(SingularDTVなど)、分散型ベンチャーファンド(DAOなど)、ICOへの投資とデジタル資産の管理を容易にする新しいプラットフォーム(ICONOMIなど)といったサービスも関わっている。
 すでに現在、ICOの強固なパイプラインが存在する。たとえばCosmosは、世界中のあらゆるブロックチェーンをつなげる統合技術だ(ゆえに「ブロックチェーンのインターネット」という別名がある)。他の企業も、間違いなくこの流れに追随するはずだ。2017年には、ブロックチェーンのスタートアップ企業は、他のどの方法よりもICOによって多額の資金を調達する、というのが我々の予想だ。これは歴史的な転換点である。
 既存企業もここに注目している。ニューヨークを拠点とするベンチャーキャピタルのユニオンスクエアベンチャーズ(USV)は、ICOを直接購入できるように投資戦略を拡大した。メンロパークにあるベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツは、USVと共同で、トークンのみを購入するヘッジファンドのポリチェーンキャピタルに投資した。業界最大手の投資機関の1社であるブロックチェーンキャピタルは最近、ICOによるトークンの発行で新規ファンドの資金を調達すると発表した。これは業界初の試みだ。
 そして言うまでもなく、ゴールドマン・サックスやナスダック、インターコンチネンタル取引所(ニューヨーク証券取引所を傘下に持つ米企業)なども、ブロックチェーン企業に大型投資を行っている。
 あらゆる斬新なビジネスモデルと同様に、ICOもリスクを伴う。規制制度がほとんど、もしくはまったくないのだ。デューディリジェンスと情報開示が十分ではなく、ICO後に倒産した企業もある。「買い手の危険負担」が合い言葉となっており、初期の出資者の多くは、資金提供者というより投機家だ。
 しかし、この流れを止めることはもはや誰にもできない。ICOを正しく実施すれば、資金調達の効率が向上するだけでなく、起業家と投資家の資本コストが下がり、世界の資本市場への公平な参入機会が開かれる。
 ベンチャーキャピタルの世界が1年間で劇的に変わるとしたら、他にどんな変革ができるだろうか。ブロックチェーンによって、業界内の多くの複雑な仲介機能が一変する可能性がある。すなわち、身元と評価の保証、価値の移動(支払いと送金)、価値の保存(預金)、貸し借り(債権)、価値の交換(証券取引所などのマーケットプレイス)、保険とリスク管理、監査、税などの機能である。
 これにより、我々の知る銀行業は終焉を迎えるのだろうか。それは、既存企業がどう反応するかにかかっている。新しい技術パラダイムを受け入れ、内側から破壊を起こす企業にとっては、ブロックチェーンは存在を脅かすものではない。
 問題は、金融サービス業界の誰がこの革命を主導するかである。歴史を通じて、古いパラダイムの主導者は、新たなパラダイムの受容に苦労してきた。なぜAT&Tはスカイプをつくれず、Visaはペイパルをつくれなかったのか。CNNは言葉を放送用に短くするのが得意なのだから、ツイッターを生み出すこともできたはずだ。ゼネラルモーターズやハーツがウーバーを始めたり、マリオット・インターナショナルがエアビーアンドビーを考案したりもできたはずである。
 現代の金融を支えるインフラを、止めようのないブロックチェーン技術の波が飲み込もうとしている。過去に起きてきたパラダイムシフトと同じように、ブロックチェーンも勝者と敗者を生むだろう。この避けがたい衝突によって、旧態依然とした金融システムがあらゆる人々に繁栄をもたらすプラットフォームへ変わることを、我々個人としては望んでいる。

HBR.ORG原文:How Blockchain Is Changing Finance March 01, 2017
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アレックス・タプスコット(Alex Tapscott)
ノースウエスト・パッセージ・ベンチャーズのCEO。ブロックチェーン分野のスタートアップを支援している。最新刊『ブロックチェーン・レボリューション』は父との共著。


ドン・タプスコット(Don Tapscott)
トレント大学総長。トロント大学ロットマン・スクール・オブ・マネジメント非常勤教授。著書はベストセラーとなった『ウィキノミクス』など多数あり、最新刊は『ブロックチェーン・レボリューション』(息子アレックスとの共著)。2015年のThinkers50(最も影響力のある経営思想家トップ50人)では第4位に選出。

http://www.dhbr.net/articles/-/4795 

 

https://www.capgemini.com/news/consumers-set-to-save-up-to-sixteen-billion-dollars-on-banking-and-insurance-fees-thanks-to
Consumers set to save up to sixteen billion dollars on banking and insurance fees thanks to blockchain-based smart contracts says Capgemini report
October 11, 2016 | News alert
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Paris – A report by Capgemini’s Digital Transformation Institute reveals the average consumer could save more than 500 US dollars in banking and insurance fees thanks to the emergence of a new type of smart contracts based on blockchain technology. The report draws on extensive discussions and initial trials with industry professionals, prominent smart contract start-ups and academics from the financial services sector, predicting mainstream adoption beginning 2020. However, there are a number of challenges detailed, including privacy, the security of the blockchain technology and the regulations that surround it.
So-called ‘smart contracts’ work similarly to standard written contracts in serving as a legally binding agreement based on a set of agreed terms and conditions. Where smart contracts differ is that they are electronically programmed and based on distributed ledgers such as blockchain technology, meaning they can automatically enforce actions like payments as soon as the agreed conditions have been met, and without the need for independent verification or manual processing. For instance, when buying a house, instead of the current process involving heavy documentation and manual intervention, details would be shared in a permissioned ledger smart contract network1 connecting all parties in the system. This would simplify the loan process, drive down processing charges, and result in a speedy transfer of property title to the consumer. Subsequent disbursement of loan amounts and interest payments would take place automatically as per the terms encoded in the smart contract.
While smart contracts could be used in a wide range of scenarios, the report, "Smart Contracts in Financial Services: Getting from Hype to Reality" focuses on the financial services industry, where contract technology and systems underpinned by blockchain are already in development by many major institutions such as BNP Paribas, Deutsche Bank, and Credit Suisse. It details three major areas where smart contracts are anticipated to have a significant impact for both consumers and organizations:
1. Retail banking: Personal loans and mortgages are set to benefit through the adoption of smart contracts. Smart contracts can help eliminate today’s paper-based appraisal and documentation processes, reducing the time involved in interacting with multiple agencies to verify applicant and property details, and in processes related to the transfer of property ownership. This could translate to an average saving of between $480 and $960, or eleven to twenty-two percents on mortgage arrangement and account fees for consumers. Meanwhile, it is estimated that banks would be able to cut between $3 and $11 billion annually by lowering processing costs in the US and EU alone.
2. Insurance: Smart contracts will speed up claims across areas such as health, motor, home and travel insurance, with fewer forms to fill out and interactions between claimants and insurers needed. A smart contract system would bring all parties in the insurance value chain – consumers, insurers, claim agents and third-party vendors – together on one platform. This would result in fast and seamless claim processing due to reduced documentation, reduced dependence on manual checks and faster settlement of dues to vendors. In the personal motor insurance industry alone, smart contracts are estimated to have the potential to result in approximately $21 billion in annual cost savings globally for insurers through reduced processing costs. Were insurers to pass even half of these savings on to consumers this would lead to an average annual saving of $45 on premiums.
3. Investment banking: In syndicated loans trading, settlement typically takes 20 days or more currently. Smart contracts could reduce the delay in processes such as documentation, buyer/seller confirmation and assignment agreement and checks such as KYC, AML and FATCA2, which are currently performed by back and middle-office staff. This could reduce the settlement cycle for corporate client from 20 days to 6-10. This could lead to an additional five percent growth in demand in future or 2 to 7 billion dollars, leading to higher income in addition to lower operational costs for the investment banks in the US and Europe. In addition, regulatory capital requirements and risk associated with delayed compensation payments during the settlement of the leveraged loan would reduce.
The broad applications of smart contracts within the financial services industry and the potential benefits to consumers have led many organizations to explore them as a matter of priority. Philippe Denis, Head of CIB Blockchain Initiatives at BNP Paribas, said: "Now is the time to start experimenting with smart contracts in a sandbox environment. By 2017, we will begin to see early-stage contracts enabling practical use-cases and also a connection to legacy platforms. By 2019 we might even begin to see consumer adoption ramping up."
Meanwhile, startups built around the idea of smart contracts are thriving. Louis Stone, Managing Director-Head of Business Development, Symbiont: "Two years ago Symbiont was started to show the transformative potential smart contracts could have on financial institutions and capital markets. In a short space of time, having proven the success of several use cases involving smart securities and syndicated loans, we’ve seen huge interest from the industry in exploring and adopting smart contracts."
Amol Khadikar, lead blockchain researcher at Capgemini’s Digital Transformation Institute, said: "Contracts have largely escaped the digitization of financial services, leading consumers to bear the financial brunt of manual, antiquated processes. We’re at a point where distributed ledger technology can, and will, drive a revolution in contracts. This will hugely benefit the industry to reduce risks, cut costs and enhance operational efficiencies. Consumers would benefit, not just financially, but also from processes that are simpler and free of many of the hassles of today’s customer experience."
Please read the full report: https://www.capgemini-consulting.com/blockchain-smart-contracts
The Digital Transformation Institute is Capgemini Consulting’s in-house think-tank on all things digital. The Institute publishes research on the impact of digital technologies on large traditional businesses. The team draws on the worldwide network of Capgemini experts and works closely with academic and technology partners. The Institute has dedicated research centers in the United Kingdom and India.
About Capgemini
With more than 180,000 people in over 40 countries, Capgemini is a global leader in consulting, technology and outsourcing services. The Group reported 2015 global revenues of EUR 11.9 billion. Together with its clients, Capgemini creates and delivers business, technology and digital solutions that fit their needs, enabling them to achieve innovation and competitiveness. A deeply multicultural organization, Capgemini has developed its own way of working, the Collaborative Business ExperienceTM, and draws on Rightshore®, its worldwide delivery model.
1A permissioned ledger smart contract system allows the participants to agree on who can create, transact, validate and view smart contracts. This is done using rules and permissions granted to the participants in the system in advance. For instance, banks can be granted rights to validate transactions; and regulators can be granted access to view transaction details and so on.

2KYC: Know Your Customer , AML: Anti-Money Laundering, FATCA: Foreign Account Tax Compliance Act

Rightshore® is a trademark belonging to Capgemini

 


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A revolution in entertainment…
SingularDTV is constructing the world’s first transparent database of rights and rights owners for film and television, as well as the automation of revenue and royalty payments using smart contracts and Ethereum’s blockchain. SingularDTV will address today’s lack of transparency and fundamentally change the prominence of creative accounting in the entertainment industry, with a particular focus on benefiting independent productions. Our rights management platform will empower creators by giving them back control over their creative output.

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Ben Dickson is a software engineer and the founder of TechTalks.
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In 2016, blockchain startups raised some $200 million in Initial Coin Offerings (ICO), a new form of crowdfunding based on cryptocurrency tokens. This figure might not be much compared to the billions being poured in by VCs and Kickstarter-style crowdfunding, but it shows a huge year-over-year growth for blockchain crowdsales.
Some of the startups have raked in millions of dollars with barely more than a promise and a website; several have failed to deliver on those promises.
As is with blockchain itself, expert opinion is highly polarized on the crypto–tokencrowdfunding hype, its reliability, its legality and its future. Here’s what you need to know.
How does it work?
In a nutshell, projects launch an ICO by issuing crypto-tokens on the blockchain (usually the Bitcoin or the Ethereum blockchain), giving early investors the chance to acquire tokens in exchange for cryptocurrency.
ICOs are usually limited by time or a cap on the amount of funds raised. The value and number of tokens released can be static or calculated based on the amount of funds raised.
Crypto-tokens have become an easy way for blockchain startups to fund their projects early in the development cycle, and for regular users and enthusiasts to invest in projects of potential value and have a say on how their future is shaped.
Where do crypto-tokens stand legally?
The legal classification of ICOs and crypto-tokens remains murky and a point of contention. They borrow traits from both IPOs and traditional crowdfunding (e.g. Kickstarter, Indiegogo), while at the same time they bear enough difference to avoid fitting into any of those categories.
They do not account as donations because they give crypto–token purchasers a stake in the company and a right to vote on future decisions. Neither can they be called the cryptocurrency equivalent of stocks.
The U.S. Securities and Exchange Commission (SEC) and their counterparts in other countries have remained largely silent on whether crypto-tokens account as securities. A framework put forth by Coinbase, Coin Center, Consensys and Union Square Ventures tries to weigh in on the issue but stops short of providing a definite answer, part of which is due to the unregulated nature of the blockchain itself.
Others, such Preston Byrne, blockchain expert and COO at Monax, are more vocal in their dismissal of token sales as being legal at all. “Real investments are legal in nature in that they specify the rights and obligations of the parties to them and have to follow certain, entirely arbitrary formalities to be valid and binding,” Byrne said in a Slack conversation. “And they rely on the courts for their enforcement.”
Many view ICOs and crypto-token sales as fraudulent schemes for a quick money grab.
If an issuer fails to meet investors’ expectations, such as abstaining from repaying a loan, investors can then go to a court and seek performance, perfection of title to collateral or damages in order to be made whole for their losses.
“Tokens, on the other hand, usually disclaim that any legal relationship exists between the token-seller and the investor at all,” Byrne says. “Fortunately for the law, legal obligations around the marketing of investments are arbitrary and exist no matter how loudly token-peddlers may protest that ‘this time it’s different’ or that ‘blockchains represent a new paradigm.’ The difference between a legal scheme and an illegal one is whether there is a legitimate, legal investment opportunity — a real business with a legal obligation to the investor to deliver something — that underlies it.”
Byrne underlines that coin offerings often don’t follow regulations and purport not to create any legal obligations for the scheme promoter to deliver anything in return to the investor. “Indeed the scheme promoter often expressly disclaims these obligations in their offering documents,” Byrne says. “At the same time the scheme promoter, expressly or impliedly, makes it known to the investors that profits may be expected from the scheme.”
Are crypto–token projects a scam?
Many view ICOs and crypto–token sales as fraudulent schemes for a quick money grab.
Building on his previous arguments and referring to the FTC definition of pyramid or Ponzi schemes, Byrne clearly stipulates, “In my informed opinion, many ‘coin offerings’ run the risk of being seen as closer to Ponzi schemes of the past than they are to legitimate investment products of the present-day. Draping an investment scheme in advanced cryptography and Silicon Valley futurebabble won’t change that. I’m frankly stunned that some of the best minds in venture capital can‘t see what’s right in front of them for what it is.”
Byrne’s perspective is echoed by other experts, who describe them as “snake oil,” scam tokens and outright mistakes.
In fact, many crypto–token projects have failed miserably to deliver on their promises to investors. A stark example is The DAO, which raised $150 million in ICO, the largest ever, and lost a huge chunk of it to a hack, causing a huge stir in the Ethereum community.
In many cases, startups have launched their ICO without due diligence and by offering little more than a vague whitepaper and a flashy website.
“It appears that many of the groups running crypto crowdfunding/ICOs/crowdsales are often deliberately giving outlandish promises with the goal of collecting as much funds as possible, without considering the long-term trust implications, especially for people watching from outside of the crypto-economy,” says Stas Oskin, core developer at WINGS.ai, a decentralized platform that aims to address some of the problems that riddle cryptocurrency investment. “This can lead to tarnished brand images for these projects, funding difficulties in the future for the teams involved, but also an overall impression that the space is just too early to get involved in.”
But the rising skepticism hasn’t prevented companies from raising funds through crypto-funding. WINGS itself raised more than $1 million in its first round of ICO. Golem, a decentralized computing platform, raked in $8.6 million in mere minutes in a November ICO. Lisk, a blockchain application platform for JavaScript, collected 14,000 bitcoin (BTC) in its crowdfund in early 2016. And ICONOMI, a platform for managing ICOs and crypto–token projects, scored a $10 million-plus funding in its September token crowdsale.
Some believe the future of the investment landscape will have no place for ICOs and cryptocurrency tokens.
Why does the investor hype surrounding crypto–token continue? A lot of it has to do with the one-time success of Bitcoin and Ethereum, experts believe.
“The main thing that’s going on is crypto enthusiasts have experienced significant gains from BTC and ETH in the past few years and are now overweighting vision and underweighting execution when making investment decisions,” says Nick Tomaino, principal at Runa Capital. “The crypto market has set the bar shockingly low for entrepreneurs to raise money and this is dangerous for everyone involved.”
In a blog post where he weighs in on the “irrational exuberance around ICO investing,” Tomaino describes crypto crowdfunding as fundraising getting done based on vision rather than any semblance of execution. “This has been a problem on Kickstarter for years and I’m fearful we’re going to see a lot of the same in the ICO world,” he says.
Otherwise, blockchain technology and blockchain investment are still nascent, and there are a lot of kinks that need to be ironed out. “The fact is that blockchain services have a real potential to disrupt huge industries like banking or insurance,” says Tim Zagar, co-founder at ICONOMI. “But, as they are very new, there is not much of a track record to go by. So the investors can choose either to wait for certainty and lose the potential of a large payout or accept the inherent risk — because the potential payout is worth it.”
The future of crypto-tokens
Some believe the future of the investment landscape will have no place for ICOs and cryptocurrency tokens. In a post titled “Against Crowdsales,” Hivemind developer Paul Sztorc, warned against crypto–token crowdsales in general, saying, “If you ever ‘invested’ in a crowdsale, you made a big mistake. It’s OK, maybe you didn’t know any better. Until now.”
Others believe it will depend on the investors and whether they push project developers to abide by a set of universally accepted rules. In a Medium blog post, Tomaino proposes a set of best practices that investors can use to vet crypto–token projects and determine whether they’re worth investing or not.
The practices include transparency, presenting a viable and testable model, a cap on funds and a control on liquidity. But above all, Tomaino believes, it’s the team itself that matters.
“Ask any professional VC what the most important aspect of early-stage investing is and they’ll tell you it’s people,” Tomaino says. “ICO investing is very similar to early-stage startup investing. The biggest thing being missed currently is people overweighting the importance of the idea and underweighting the importance of the people behind the idea and ability to execute — this isn’t something that technology will solve anytime soon. Investors need to assess the people behind the project and make sure that they’re quality.”
Several startups are working on programs and platforms that will make it easier for both investors and startups to overcome the challenges of crypto–token projects.
“Very often, blockchain startups are amazing technology teams that lack business experience, which leads them to underestimate the value of market research, sales or even a good revenue model,” ICONOMI’s Zagar told me. ICONOMI, Zagar explained, recently initiated a mentoring program to protect ICO investors while helping projects clarify their business proposition and business plan.
ICOrating is another company that has set up shop recently to offer analytical research and assessment of ICO projects to potential investors. The website presents a list of past and ongoing crypto–token projects along with their details, ICO progress and level of integrity based on the analysis done by the company’s experts.
Only time will tell whether ICOs are just another dot-com bubble ready to burst.
Other companies are pushing for more transparency by leveraging the power of the blockchain itself.
WINGS’ platform for creating and managing decentralized autonomous organizations uses the power of the blockchain community to evaluate and rate tokens. “The most important factors as always are understanding the team, the technology, the market potential and the timing,” says Dominik Zynis, communications lead at WINGS. “That can be really hard — if not impossible — for someone who is not crypto-savvy.”
Zynis further stresses that it can be hard to trust random analysts on the web, especially when their interests and goals are not known.
WINGS gives teams the ability to transparently weigh the sentiment toward their crypto–token project by using the power of crowd intelligence. The platform’s community analysts evaluate tokens via forecast markets, and get accountable and transparent incentives for the accuracy of their forecasts. The votes, history and credibility of each participant is stored on the blockchain.
“We think that this system can be used as a standard like a good housekeeping seal of approval,” Zynis says. “If WINGS forecasters take their financial rewards seriously then over time people will notice that projects that don’t launch with WINGS carry a higher risk factor of failing.”
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Another startup worth following is OpenLedger, which is developing a number of synergistic ecosystems and platforms to enable startups to strategize, promote and execute crypto–token crowdfunding campaigns.
OpenLedger’s team is working to develop a business model that will purportedly provide the blockchain community a source of investment opportunities. At the same time, the team has developed a due diligence checklist that it uses to assist startups through the conceptualization and launch phase and help them vet their projects before going public.
Adel, a self-regulating blockchain startup incubator, is working on an ecosystem based on the Nxt blockchain-as-a-service platform to assist in the proposal and development of blockchain projects. Members can get help on solidifying their proposals for funding by introducing their projects to the Adel community and receive advisory services in various fields such as finance, marketing, tech and law.
Adel will ICO in March 2017.
It’s still too early to see if any of these initiatives will manage to bring order to the chaos of the crypto–token landscape. The fintech industry is still ripe for disruption and only time will tell whether ICOs are just another dot-com bubble ready to burst or a new form of the investment that will drive a wedge between traditional venture capital and centralized crowdfunding and carve itself a permanent niche.
In the meantime, if trends are any indication, crypto-tokens will continue to absorb huge amounts of cash in 2017.

https://techcrunch.com/2017/02/12/can-you-trust-crypto-token-crowdfunding/


 

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ICONOMI.index
Launch date
21 Dec 2016
No. of tokens in array
13
1 week return
6.29 %
1 month return
40.63 %
02 Feb 10:4625 Feb 14:2020 Mar 17:5312 Apr 21:26$0.1500$0.2000$0.2500$0.3000
ABOUT ICONOMI DAA
ICONOMI.index
is a passive Digital Asset ArrayTM (DAA) developed from the ICONOMI value tokens index. It measures the performance of digital assets that meet the ICONOMI eligibility criteria and reflects the blockchain economy. The structure of the ICONOMI.index DAA delivers diversification benefits and minimises risk. The digital assets included in the index represent ~92% of the total market capitalisation of value tokens.
ICONOMI.performance
is an actively managed DAA with a higher performance target. Lead by a team of experts conducting thorough research and due diligence, ICONOMI.performance connects supporters’ digital assets with the best distributed economy startups and other lucrative opportunities.
Features
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DAA
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ICONOMI.index
ICONOMI.index is a passive digital assets array (DAA) developed from the ICONOMI cryptocurrencies index. It measures the performance of digital assets that meet the ICONOMI eligibility criteria and mimics the blockchain economy. The structure of the ICONOMI.index DAA delivers diversification benefits and minimises risk. The digital assets currently included in the index represent ~92% of the total market capitalisation of cryptocurrencies.

ICONOMI.index constituents and their corresponding weights are rebalanced on a monthly basis, or more frequently due to the fast changing environment of the cryptocurrency market. Between rebalancing periods, the weights of the index constituents move proportionally to their price movements. If the weight of a specific digital asset surpasses 25%, the index is immediately rebalanced.

ICONOMI.index is represented by ICNX app token. The methodology, rules, current structure and price of ICONOMI.index is published and updated every 5 minutes.
https://www.iconomi.net/


INTERNET OF BLOCKCHAINS
The Cosmos fundraiser raised $16.8 million USD and finished on April 6, 2017 6:28AM PDT.

Building an Internet of Blockchains
Purpose
Cosmos is a project with an ambitious mission: To create a network of distributed ledgers that will solve long-standing problems in the cryptocurrency and blockchain communities.
Architecture
The Cosmos network consists of many independent, parallel blockchains, called zones, each powered by classical Byzantine fault-tolerant (BFT) consensus protocols like Tendermint (already used by platforms like ErisDB). Some zones act as hubs with respect to other zones, allowing many zones to interoperate through a shared hub. The architecture is a more general application of the Bitcoin sidechains concept, using classic BFT and Proof-of-Stake algorithms, instead of Proof-of-Work.
Cosmos Hub
The first blockchain in the Cosmos network is the Cosmos hub. The Cosmos hub connects to zones via the novel IBC (inter-blockchain communication) protocol and keeps a record of the total number of tokens in each zone. Because all inter-zone token transfers go through the Cosmos hub, you can transfer tokens from one zone to another, quickly and securely, without the need for a liquid exchange or a trusted third party between zones.

The Cosmos hub can connect to many different kinds of zones, as long as each zone speaks IBC. As a result, Cosmos can support a variety of currencies and scripting languages like those found in Bitcoin, Ethereum, ZeroCash, CryptoNote, and more.
Read Whitepaper
Fundraiser Event
raised $16.8 million USD in 28 minutes.
https://cosmos.network/whitepaper
https://cosmos.network/



http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/115.html

[経世済民120] イオン岡田氏「脱デフレはイリュージョン」254品目値下、2年連続増収増益 中古マンション変動「最大格差10億円超」の明暗
イオン岡田氏「脱デフレはイリュージョン」
2017年4月13日 00:09


 流通大手イオンの岡田社長は12日の決算会見で、「脱デフレは大いなるイリュージョンだった」と述べ、消費の厳しい現状を指摘した。

 イオンの2月までの1年間の決算は、本業のもうけを示す営業利益が前の年度に比べて4.4%増え、1847億円となった。

 一方、岡田社長は、これまでの経営方針には課題もあったと指摘した。

 イオン・岡田元也社長「“脱デフレ”というのは大いなるイリュージョン(幻想)だったと思いますが、これをきちんと見抜いて対処することに著しく欠けた」

 岡田社長は、消費税の増税などで値上げ圧力に屈したと指摘した上で、インターネット通販の拡大で低価格化がすすみ、消費者にも依然、節約志向があることから、今後は、ディスカウント事業に力をいれるとの考えを示した。

 傘下のスーパーでは、4月中に日用品など最大254品目を値下げする方針。

http://www.news24.jp/articles/2017/04/13/06358851.html


イオン、4月中にNB商品239品目を値下げ 
3月実施と合せて値下げは380品目
ロイター 2017年4月11日

 4月11日、イオン は、イオンリテールの約400店舗において、4月中にナショナルブランド(NB)の食品や日用品239品目の値下げを実施することを明らかにした。3月の141品目に続く値下げとなる。写真は千葉にあるイオンのショッピングモール。昨年11月撮影(2017年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京?11日?ロイター] - イオン <8267.T>は11日、イオンリテールの約400店舗において、4月中にナショナルブランド(NB)の食品や日用品239品目の値下げを実施することを明らかにした。3月の141品目に続く値下げとなる。

広報担当者によると、値下げ幅は平均で10%前後。牛乳や菓子パン、ドレッシングや日用品など、購買頻度が高く、消費者のニーズの高い商品が対象。イオンリテールの岡崎双一社長は1月の決算発表の席上「コモディティ商品は、いかに安くするかが大切」との認識を示していた。

同社は、昨年11月からグループのプライベート商品(PB)「トップバリュ」についても順次、値下げを実施している。これまで134品目の値下げを行っており、4月中に15品目を行う。これは、グループ約2700店舗が対象。

昨年11月にトップバリュ30品目を5%程度値下げした際、対象商品の売上数量は1.2倍に拡大したことなどから、消費者の価格に対するニーズが強いと判断した。 広報担当者は「電気代など様々なものが値上がりし、生活環境が変化する中、消費者のニーズに応えたい」としている。

消費者の節約志向に対応し、消費者の来店を促すため、他の小売りでも値下げの動きが出ている。セブン&アイ・ホールディングス <3382.T>傘下のセブン―イレブン・ジャパンは、今月19日から、洗濯用洗剤やシャンプーなどナショナルブランド(NB)の日用品61品目の値下げを実施する。

また、米ウォルマート<WMT.N>傘下の西友も、2月から生鮮食品を中心に201品目の値下げを実施。6カ月以上値上げしない「プライスロック」の対象としている。

(清水律子)
http://toyokeizai.net/articles/print/167251


イオン、17日から254品目値下げ 食品や日用品
2017/4/11 15:53
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 イオンは11日、傘下のスーパー400店で、食品や日用品の最大254品目を4月17日から順次値下げすると発表した。値下げ幅は平均で10%程度。全体の品目数からするとごくわずかにすぎないものの、同社は昨秋から順次、プライベートブランド(PB)とメーカー品を合わせて約270品値下げするなど、定番商品の価格引き下げを続けている。

 4月に値下げするのは、総合スーパー(GMS)のイオンリテールが販売するメーカー品が約240品目、グループ共通で扱うPBが15品目。メーカー品では税抜き98円で販売している菓子パンを88円に、同235円の歯ブラシを215円に引き下げる。PBでは「トップバリュ天然微炭酸の水」を税込み149円から105円にする。

 イオンリテールの岡崎双一社長は昨年10月、子育て世代など、節約志向が強い層の客離れが起きているとして「強烈な売価訴求」を重要課題に掲げた。メーカー品の価格見直しは半年ごとなど定期的にしており、「社会保障負担などが高まる春に合わせ、日用必需品を買いやすくする」(広報)としている。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ11HGO_R10C17A4000000/



イオン 2年連続の増収増益 総合スーパーの店舗改装で
4月12日 20時34分
流通大手の「イオン」は、ことし2月までの1年間の決算を発表し、業績低迷が続いていた総合スーパーで店舗の改装を進めた結果、売り上げが持ち直したことなどから、グループ全体で2年連続の増収増益となりました。
イオンは、ことし2月までの1年間の決算を発表し、グループ全体で売り上げに当たる営業収益が8兆2101億円で、前の年度より0.4%増え、本業のもうけを示す営業利益も4.4%増えた1847億円と2年連続の増収増益となりました。

これは、業績低迷の続いていた総合スーパー事業で店舗の改装を進めた結果、売り上げが持ち直していることに加えて、傘下の銀行などの金融事業が好調だったことが主な要因です。

イオンの岡田元也社長は今の消費の状況について「脱デフレは大いなるイリュージョンだった」と指摘しました。

また、総合スーパー事業を担当する「イオンリテール」の岡崎双一社長は、「価格の安い商品を求めるお客は依然として多いので、今後も商品の値下げなどを通じて集客を図っていきたい」と話していました。

総合スーパーは、専門店やネット通販に顧客を奪われて、業績の低迷が続いていましたが、各社が店舗の閉鎖や改装を進めていて、「イトーヨーカ堂」もことし2月までの1年間の決算で営業黒字に転じるなど業績が持ち直してきています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170412/k10010946451000.html


イオンの今期、純利益33%増 総合スーパーや金融事業が好調
2017/4/12 15:44
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 イオンは12日、2018年2月期の連結純利益が前期比33%増の150億円になりそうだと発表した。総合スーパー(GMS)事業で店舗改装の投資が一巡するほか、プライベートブランド(PB)商品の販売好調を見込む。金融事業やイオンモールも増益を見込む。

 売上高に相当する営業収益は1%増の8兆3000億円、営業利益は6%増の1950億円を見込む。

 併せて発表した17年2月期の連結決算は、純利益が前の期比87%増の112億円だった。総合スーパーの採算改善が進んだ。店舗の減損損失で400億円を計上するが、本業の好調で増益を確保した。

 営業収益は微増の8兆2101億円、営業利益は4%増の1847億円だった。既存店での販管費抑制が進み、GMSの主力「イオンリテール」の営業利益は前の期から35億円改善した。金融事業やドラッグストア事業も寄与した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL12HCN_S7A410C1000000/


イオンの前期、純利益87%増 総合スーパーが好調
2017/4/12 15:11
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 イオン(8267)が12日発表した2017年2月期の連結決算は、純利益が前の期比87%増の112億円だった。主力の総合スーパーでプライベートブランド(PB)商品の販売が好調だったほか、販管費の抑制で採算改善も進んだ。店舗など固定資産の減損で400億円の特損を計上したが、増益を確保した。

 売上高に相当する営業収益は微増の8兆2101億円、営業利益は4%増の1847億円だった。

 18年2月期の連結純利益は前期比33%増の150億円を見込む。年間配当は前期と同じ30円を予定する。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL12HBK_S7A410C1000000/


ヤマトに続く値上げ交渉 イオン社長「談合に近い」
2017/4/2付日本経済新聞 朝刊
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 イオンの岡田元也社長は1日、ヤマト運輸の値上げ表明について「従来のサービスができなくなったら、やめるか値上げするかだ」とあくまで個々の企業の経営判断との見方を示した。ヤマトに続いて日本郵便や佐川急便などが一部の大口顧客に対する値上げ交渉を表明して…
http://www.nikkei.com/article/DGKKASDZ01H4F_R00C17A4EA4000/

 


2017年4月13日 沖有人 :スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント

中古マンション価格変動ランキング、「最大格差10億円超」の明暗

中古マンションの価格査定を行うと、最大で9億円値上がりした物件がある一方、最大で2億円値下がりした物件もある。その「格差」は実に10億円超となる

 スタイルアクトが運営する「住まいサーフィン」の中古マンション価格査定は、毎年2万件使われている。会員数は20万人を超えたため、売却を検討する人も増え、査定件数はほぼ10万件になった。自宅の価格査定は無料会員制の住まいサーフィンで瞬時に判明するので、不動産業者に相談するまでもない。
 今回これを分析してみたら、想像以上の結果で10億円もの差が生まれていた。マンションは値上がりもするし、値下がりもする。その明暗の分かれ目はこれまでも「7つの法則」として述べてきたが、それ以外にも一部に当てはまる法則がここには強く影響している。今回は実マンション名を出して、そうした法則を検証してみよう。
(出典)住まいサーフィン 拡大画像表示
http://diamond.jp/mwimgs/d/0/-/img_d00d600b03e661f7958fa10144ce4264136971.jpg

アベノミクス以降、
中古価格は約3割上昇
 アベノミクス以降、中古価格は上昇している。その上昇率は約3割になる。それは「査定年別平均騰落率」でわかる。査定データはその時点の情報から査定しているので、アベノミクス前の2012年から2017年の間に27%ほど上昇していることがわかる。この5年間に、物件は古くなっているにもかかわらずである。
 築年ごとの下落率が2%なので、5年で10%分をこれに足したら37%になる。そのくらい値上がりしているので、含み益を出している人は非常に多い。この含み益の定義を購入価格より値上がりした価格とすると、2017時点で9.4%も上回っている。これはマンションを購入すると、入居後無料で住みながら、売却時にキャッシュが増えるという資産形成をしていることを意味している。
 上記で見るように、2016年以降は安定しているので、このデータをサンプルにして話を展開することにする。まず、資産形成した額の総額を計算すると5600億円になった(これはこの査定を行った人が2017年まで所有していたと仮定している)。購入者の中で売却を検討する人は毎年2%ほどなので、5年で10%になる。まだ売る気もなく査定を行っていない人がこれの10倍ほどいると想定すると、住まいサーフィンの会員総数の含み益の総額は5兆円を越える。つまり、資産インフレすることは持ち家の世帯には不労での資産形成を可能にしている。
 毎年の供給戸数が減少基調なのに対して、ストックは増えていく。供給戸数が6万戸に対して、ストックはその100倍の600万戸超存在するのだ。そんな中で、資産インフレ基調は望まれる政策だと考える。実際、昨年の首都圏分譲マンション市場が分譲価格×供給戸数で2兆円弱なので、これをはるかに上回る資産インフレとなっている。
儲かった物件は価格が2倍
以上になっている
◆図表2:騰落率ランキング(上位30)
(出典)住まいサーフィン 拡大画像表示
http://diamond.jp/mwimgs/a/b/-/img_ab67dfcff7cb2f34bfc3eb7df4fd1230622910.jpg

 査定は成約ベースの取引価格で算出している。新築時価格よりも2倍になった物件が1件ある。これは東京都の土地を定期借地権で売り出したタワーマンションで、相場が上昇している中にあって、最初から格安ですごい倍率がついた。総戸数809戸に対して最高倍率378倍、平均倍率17.65倍で即日完売となった。
 ちなみに、この販売に要した広告はHP1枚だけで、5年以内の転売が禁止されたほどだ。この物件は例外としても、2位の物件はJR横浜駅に隣接するタワーマンションで、97%値上がりしている。ターミナル駅に最も近いタワーマンションは鉄板のように高い資産価値を示す代表例である。
 これと同じ属性は豊洲シエルタワー、サンウッド三田パークサイドタワー、ワテラスタワーレジデンス、白金タワーなどで、上位30の約半数をタワーマンションが占めている。この傾向は近畿圏でも同じであり、グランフロント大阪オーナーズタワー、ザナンバタワーレジデンスインナンバパークスがこれに当たる。
 これ以外で特筆すべきは、アールヴェール河原町二条のように、京都の中心地は稀少性が高く、物件価格が高止まりする傾向にあることだ。このほか、1位のシティタワー品川のように、定期借地権マンションであっても立地が優れて割安で販売された場合は値上がり幅が大きく、ザ・パークハウス渋谷美竹はそのパターンにはまっている。
 この物件は新築販売時の売れ行きが悪く、苦戦していたのが今見ると不思議なくらいだ。新築時4000万円台のマンションが3000万円も値上がりして7000万円になるようなことが現実に起きていることは、認識しておいた方がいい。
◆図表3:騰落額ランキング(上位30)
(出典)住まいサーフィン 拡大画像表示
http://diamond.jp/mwimgs/2/8/-/img_2895b3e7b244a262dab9df20c53a7f6e583030.jpg

 次に、値上がりした額でランキングすると、もっと驚愕の事実がわかる。1位のザ・ハウス南麻布は、セゾングループの迎賓館として使用されていた米荘閣の跡地のマンションであり、金額では平均2.2億円の値上がりをしている。このほか、都心の高額物件で軒並み1億円以上値上がりしている物件が5件ある。宝くじで1億円を当てるのは確率が低過ぎるが、マンションの場合は法則性が明確なので比較的容易にできてしまう。
 麻布・青山・番町・千鳥が淵などのアドレスで、高額物件としての造り込みが価格相応のものになると、このように希少価値が生まれ、ヴィンテージマンション予備軍となる。ちなみに、最も値上がりした住戸は新築時10億円が19億円になったアークヒルズ仙石山レジデンスの上層階の400m2超えとなっている。

購入時から価格が4分の1に下落
してしまったマンションも
◆図表4:騰落率・騰落額ランキング(下位3)
(出典)住まいサーフィン 拡大画像表示
http://diamond.jp/mwimgs/0/8/-/img_08791a2c510b1ca48df85910e89a2a7a201262.jpg

 ランキングの下位になると、様相は一変する。物件名は避けるが、場所だけがわかるように物件名を一部省略したのが以下の一覧表だ。最下位の値下がり率は75%なので、価格は4分の1になっているし、2500万円以上値下がりし、数百万円で売買されている。こうした物件はアベノミクスでやや価格が上昇しているので、一時的に新築時の10分の1になった時期もある。
 最も値下がりした物件が浅草にある。バブル期に3億円ほどで新築分譲されたが、今では1億円を割り込み、都心部以外では「億ション」が成り立たないことの証明となっている。値下がり率はなんと7割となっている。値上がり益の最高は9億円なのに対し値下がりは2億円なので、その差は11億円に及ぶ。
(出典)住まいサーフィン 拡大画像表示
http://diamond.jp/mwimgs/f/0/-/img_f0e8348cbdee25520bc3fb9e6067c9ed194140.jpg

 首都圏の中古価格をインデックスにすると、以下のグラフのようになる。このデータは同じ物件の価格推移を表しているので、1年後は築1年増えている。2004年1月を基準にしているので、その当時に購入した物件は築年で12年経過しているにもかかわらず、購入価格の5%増しで取引できていることが読み取れる。築年下落率が年2%なので、2%×12年+5%=29%(約3割)相場が値上がりしていることになる。
 こういう状態になっているのは、2013年からのアベノミクス以降、相場が上昇してきたからであるが、1年ほど前から頭打ちが鮮明になっている。山に例えると現在は9合目付近であり、これ以上上がることは考えにくく、今後は築年に応じて緩やかに中古価格が下落する可能性が最も高いと考えている。価格が下がり始めるならば、「そろそろ売り時か」と考えてもいい時期だと思う。

売却を検討するなら
調べるべきことは2つ
 かく言う筆者も、そろそろ自宅の売却を考え始めている。と言うのも、含み益が4000万円を超える水準に達しているからである。その前の自宅について、含み益を4500万円出して売却していることは、過去に当連載で書いた。2回で約9000万円の値上がり益はアベノミクスの金融緩和の影響も大きく、十分に活用することができた。
 1回目の益出しから2年以上経過したので、また自宅の含み益の無税枠3000万円が使える状態になっている。この自宅だけの特例は1人で3000万円なので、夫婦2人ならば6000万円まで無税になり、2年おきに利用することができる。私の場合は子どもが巣立ち始めているので、ダウンサイズを考えている。そうなると、含み益だけでなく、ダウンサイズして買い替えた分の資金が手元に残るので、生活の自由度が上がる。
 読者諸氏が売却を検討するなら、調べるべきことは2つある。1つは今いくらで売れているかであり、これは住まいサーフィンを使えば無料で知ることができる。もう1つは住宅ローンの残債である。銀行からローン返済表をもらっているはずなので、確認しよう。実際に手元に残る金額は、「値上がり益+元本減少分−販売諸経費」になる。これを把握した上で、引越しを検討するだけでもしてみたらどうだろう。
 
(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)
http://diamond.jp/articles/-/124645

http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/879.html

[経世済民120] 「トランプ円高」加速、地政学リスクとドル高けん制で ドル安の夢ト 日株連日安 最大債券会社が待ったボラ上昇 日米貿易協定
Business | 2017年 04月 13日 18:14 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
アングル:

「トランプ円高」加速、地政学リスクとドル高けん制で

 

[東京 13日 ロイター] - 「トランプ円安」から一転して「トランプ円高」になってきた。シリアや北朝鮮を巡る米国の軍事行動が地政学リスクを高め、逃避の円買いが進行。トランプ米大統領のドル高けん制発言も加わり、ドル/円JPY=EBSは一時108円台まで落ち込んだ。

「有事」の際、円高・円安どちらに進むかは見方が分かれているものの、足元では海外短期筋による円ロングの勢いが勝り、節目を次々と突破している。

<200日移動平均線を割り込む>

ドル/円は13日、200日移動平均線を一時割り込んだ。200日移動平均線は1年の平均コストとほぼ同義。昨年11月の米大統領選直後に上回った同線を一時的にせよ割り込んだことは「トランプ円安」が正念場を迎えたことを示している。

下押し材料となったのは、トランプ氏の発言だ。米紙ウォールストリート・ジャーナルとのインタビューで「ドルが強くなり過ぎている」とコメント。さらに金利が低水準にあることを望むとも述べたことで、10年米国債利回りUS10YT=RRは年初来のサポート水準だった2.3%台を大きく割り込んだ。

「減税など財政政策がうまくいかないことで、政策の中心が、議会を通さなくてもいい外交や通商、為替政策に移ってきたようだ。米景気などファンダメンタルズが悪くなったわけではないが、政治リスクが円高材料となっている」と、りそな銀行・アセットマネジメント部チーフ・エコノミストの黒瀬浩一氏は話す。

<朝鮮半島で有事なら瞬時に2─3円の円高>

地政学リスクも円高材料だ。米中首脳会談期間中に、米国はシリアにミサイル攻撃を実施。その後、原子力空母カール・ビンソンを中心とする第1空母打撃群を朝鮮半島周辺へ移動させている。「地政学リスクを材料に海外短期筋が、円買いを進めている」(国内証券)という。

北朝鮮では、15日に故金日成主席の生誕105周年の記念日が控えている。北朝鮮がイベントに合わせて核実験やミサイル発射などを行えば、緊張が一気に高まる。「朝鮮半島で有事となれば、瞬間的に最大2─3円程度の円高が進む可能性もある」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券・チーフ為替ストラテジスト、植野大作氏は予想する。

一方、朝鮮半島有事で日本が巻き込まれた場合、円高になるか円安になるかは見方が分かれている。1)投機の円買い、2)円キャリートレードの巻き戻し、3)日本勢の対外資産取り崩し、という円高ルートが考えられる。ただ、日本国内に資産を置くリスクが意識されれば、円安圧力が強まるとの指摘もある。

<この先もイベント目白押し>

さらに向こう1カ月の間には「米為替報告書」公表、日米経済対話など、米国を巡って円高材料になりかねないイベントが目白押しだ。

米為替報告書については、トランプ大統領が中国を為替操作国に認定しない方針を示したことで「日本やドイツが操作国認定されるリスクは後退した」(国内証券)とみられている。

だが、日米経済対話については「一時的に対立相手を設けて攻撃することで存在感をアピールする手法が持ち込まれるなら、メイントピックは高い確率で通貨・通商問題になり得る」(みずほ銀行・チーフマーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏)との指摘もある。

ドル/円のリスク・リバーサル(RR)25%デルタは、一カ月物がミドルレートで2.625%のドル・プット・オーバーとなった。昨年6月の英国の欧州連合(EU)離脱を巡る国民投票付近、同11月の米大統領選挙付近に次ぐ傾きだ。

不確実な要因が多過ぎるため、明確な下値めどが見つけにくくなっている。ただ、地政学リスクの高まりに種々の円買い要因が重なれば、ドルは米大統領選開票前の水準の105円台まで下げ余地があるとの見方も出ている。

(杉山健太郎 編集:伊賀大記)
 
コラム:トランプ大統領、北朝鮮に「禁断のカード」切るか

トランプ政権、巡航ミサイルでシリア攻撃 化学兵器使用を非難
東芝、監査意見不表明で決算発表へ 東証が上場を判断=関係筋
コラム:北朝鮮有事の円相場シミュレーション=佐々木融氏
http://jp.reuters.com/article/trunp-yen-idJPKBN17F10W?sp=true

 


 


トランプ大統領のドル安の夢、強い経済の実現公約と相いれず
Andrew Mayeda
2017年4月13日 15:18 JST

Trump's Inherited Strong Dollar
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トランプ大統領:ドルは強くなり過ぎ、米国に痛手となっている
米金融当局の利上げ方針で魅力増すドル、上昇の道に抵抗少ない

トランプ米大統領はドル安と低金利を望ましいとする考えを示唆したが、米経済の回復が続き、減税やインフラ投資とった野心的な政策課題をやり遂げていけば、ドルと金利のどちらも結局、望み通りにならないかもしれない。
  12日の米紙ウォールストリート・ジャーナルとのインタビューでトランプ大統領は、「米ドルは強くなり過ぎていると思う。これはある程度私のせいでもある。人々が私を信頼しているためだ」と述べ、米経済に「これは痛手となりつつある。最終的に痛手となる」と指摘した。
  同大統領はまた、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長を再指名する可能性を残しながら、「低金利政策」が望ましいと付け加えた。大統領発言が伝わると、米10年債利回りは低下し、ドルは下落した。イエレン議長の今の任期は来年2月に満了する。
  労働市場に改善の兆候が見えていることから、米金融当局は昨年11月の大統領選でのトランプ氏勝利以降に利上げを2回実施。米国株はそれ以来10%近く上昇し、ドルはトランプ大統領が減税やインフラ投資拡大の計画を実現するとの楽観論から好調を維持してきた。ただ、最近はトランプ政権による公約実行力への疑念から強気センチメントは弱まってきていた。

  ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのチーフ投資ストラテジスト、スコット・クレモンズ氏は「イエレン議長の言葉通りに受け止めれば、労働市場や経済の強さが持続するという信頼が高まっているため金利は上昇の方向にある」と指摘。「利上げ理由を探している主要中央銀行として私が地球上で唯一思いつくのは米連邦準備制度だ。最も抵抗の少ない道はドルの上昇だろう」と語った。
原題:Trump’s Weaker Dollar Dream at Odds With Strong Economy Promise(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-13/OOC0X36JIJV701


 

 

世界最大級の債券運用会社が待っていた瞬間−ボラティリティー上昇
Brian Chappatta
2017年4月13日 12:42 JST

Volatility Awakens
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トランプ大統領のドル安の夢、強い経済の実現公約と相いれず
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米当局のバランスシート縮小検討や地政学リスクなどで変動性高まる
ブラックロックやJPモルガン・アセットなどが買いの好機と判断
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金融市場のボラティリティー(変動性)が低調な時期を脱して上昇し始めた。
  米金融当局によるバランスシート縮小検討や北朝鮮とシリアの地政学的な緊張の高まり、フランス大統領選で急進左派候補の支持率が浮上し、選挙情勢を変化させる可能性が出てきたことなどが原因だ。
リック・リーダー氏
リック・リーダー氏 Photographer: Christopher Goodney/Bloomberg
  世界最大級の債券運用会社の一部は、この瞬間を待っていた。ブラックロックのリック・リーダー氏やJPモルガン・アセット・マネジメントのボブ・ミッシェル氏らは、リフレトレードの持続可能性やそれが利回りに与える潜在的な影響をじっくりと考えるよりも、相場変動が向こう数日ないし数カ月、飛躍的に大きくなることに賭けている。その戦略は今週に入って既に実を結んでおり、CBOE/CBOT米10年国債ボラティリティー指数は2月以来の高水準となった。
  JPモルガン・アセットでグローバル債券・通貨・商品の最高投資責任者(CIO)を務めるミッシェル氏は、「私はボラティリティーを買う。米金融当局がバランスシートの規模縮小開始に向かい」、ドイツ総選挙後には「欧州中央銀行(ECB)も同様の措置を講じる時期にようやく入りつつあるからだ」と述べた。同社の運用資産は約1兆7000億ドル(約185兆円)に上る。
ボブ・ミッシェル氏
ボブ・ミッシェル氏 Photographer: Kholood Eid/Bloomberg
  ブラックロックのグローバル債券CIOで、「ブラックロック・ストラテジック・インカム・オポチュニティーズ・ポートフォリオ」ファンド(運用資産278億ドル)の共同運用者であるリーダー氏は、ボラティリティーをショートでなくロングにすると話している。

原題:Volatility Buying Back in Vogue for BlackRock, JPMorgan Funds(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-13/OOBU8R6JIJUP01

 

日本株連日の安値、米大統領のドル高けん制と極東有事−資源中心売り
長谷川敏郎
2017年4月13日 07:59 JST 更新日時 2017年4月13日 15:29 JST

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トランプ大統領のドル安の夢、強い経済の実現公約と相いれず

為替は一時1ドル=108円70銭台、今期の業績期待揺らぐ
オプションSQ前の需給要因も影響、テクニカルでは底値接近の声

13日の東京株式相場は3日続落。トランプ米大統領のドル高けん制発言や朝鮮半島有事への警戒で為替が5カ月ぶりのドル安・円高水準に振れ、企業業績への懸念から電機など輸出株、鉄鋼など素材株、銀行など金融株中心に売られた。商品市況の下落を材料に、石油や商社など資源株は業種別下落率で上位。
  TOPIXの終値は前日比11.23ポイント(0.8%)安の1468.31、日経平均株価は125円77銭(0.7%)安の1万8426円84銭。両指数とも連日で年初来安値を更新。
  ちばぎんアセットマネジメントの加藤幸祐運用部長は、「地政学リスクで市場センチメントが悪く、日米経済対話も控える中でのトランプ米大統領発言というタイミングがさらなる円高を招いた」と指摘。為替が1ドル=105ー110円のレンジに移行すれば、「今期業績の最終的な着地に対する業績上方修正期待が完全に消えかねない」と懸念を示した。

  トランプ米大統領は12日の米紙ウォールストリート・ジャーナルのインタビューで、「ドルは強くなり過ぎている。ドルが強く、他国が自国通貨を切り下げている状況で競争するのは極めて難しい」と語った。また、低金利政策が望ましい、との認識も示した。
  一方、米ジョンズ・ホプキンス大学の北朝鮮分析ウェブサイト「38ノース」は、北朝鮮の核実験場は準備しているようだと分析した。北朝鮮は15日、金日成国家主席の生誕105周年となる。

  ドル高けん制発言に北朝鮮情勢への警戒が加わり、きょうのドル・円は一時1ドル=108円70銭台と、5カ月ぶりに109円台を割り込むドル安・円高が進んだ。12日の海外市場では、トランプ大統領発言に反応しドルが急落、米10年債利回りは6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)下げ2.24%と一段と低下した。
  野村証券投資情報部の若生寿一エクイティ・マーケット・ストラテジストは、ファンダメンタルズの裏付けのない政治的発言の影響力は長続きしないが、「米大統領は世界で最も政治的な力を持っており、いざとなれば政策にも口出しできる」と言う。地政学リスクで為替が円高に振れやすい中、トランプ大統領の発言を受け、「FRBの政策に意を唱えるところまで市場の連想ゲームが働いた」とみていた。

  石油や鉱業、商社、非鉄金属など資源セクターが業種別下落率の上位を占有。12日の国際商品市況は、ニューヨーク原油先物が0.5%安の1バレル=53.11ドルと反落。政府統計で米国の石油生産が約1年ぶりの高水準を示したことを受けた。ロンドン金属取引所(LME)の銅やニッケルも安く、市況安を嫌気する売りに押された。

  もっとも、きょうの日経平均は昨年11月9日安値から3月2日高値までの上げ幅の38.2%押しに当たる1万8310円を午前に割り込んだ後、取引終了にかけては下げ渋った。あす14日は株価指数オプション4月限の特別清算値(SQ)算出日で、「きょうはオプションSQの最終売買日。コールオプションを買った向きがリスク回避で手じまい売りを出しており、需給要因が下げを加速させた」と、岡三オンライン証券の伊藤嘉洋チーフストラテジストは分析。SQに絡む投げ売りが出た上、チャート分析面ではフィボナッチの節目に到達し、「いったん地政学リスクは織り込んだ」ともみる。14日はグッドフライデーの祝日で米国の株式・債券市場が休場、欧州株も休場で、円高の勢いが鈍った局面では短期の買い戻しも入りやすかった。

  東証1部33業種は石油・石炭製品、鉄鋼、鉱業、卸売、保険、銀行、非鉄、機械、電機など30業種が下落。電気・ガス、水産・農林、パルプ・紙の3業種は上昇。売買代金上位では、東芝や三井物産が安く、今期も収益性は低位にとどまるとメリルリンチ日本証券が指摘したイオンも売られた。石川製作所など防衛関連銘柄は急反落。半面、ペプチドリームや関西電力、ニプロは高く、最新ゲーム「アナザーエデン」の出足好調のグリーは急伸した。
東証1部の売買高は19億5868万株、売買代金は2兆2590億円
値上がり銘柄数は543、値下がりは1374

日経平均とドル・円相場の推移
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iHkHqROAm9Y4/v2/1200x-1.png
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-12/OOBIXR6JIJUO01

 

Business | 2017年 04月 13日 18:23 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
インタビュー:日米貿易協定、拒否する理由ない=伊藤元重氏

[東京 13日 ロイター] - 伊藤元重・東京大学名誉教授(学習院大教授)は、18日に第1回会合を開く日米経済対話で、貿易不均衡問題がテーマの1つになるとしても、対ロシア関係や北朝鮮問題を抱える米国は、日米関係の強化を優先、日本に厳しく対することはないとの見方を示した。

日米2国間貿易協定を巡っては、サービスや知的財産権の輸出で日本にメリットが大きく、拒否する理由はないとした。

貿易不均衡是正への対処方法に関しては、1980年代と異なり対米輸出の削減余地が小さいため、シェールガスの輸入増が効果的だと指摘。日本企業のシェア確保のうえで対米投資拡大もメリットになるとの見方を示した。

仮に朝鮮半島で有事が起きた場合、ドル高が進行したとしても、米国が相手国の通貨政策に介入してくるような状況にはないと指摘した。

伊藤教授は、政府の経済財政諮問会議の民間議員も務めている。

13日に行ったインタビューの詳細は以下の通り。

──日米対話で、米国から貿易不均衡是正の圧力がかかるケースは考えられるか。

「米国にとって現状は、貿易や為替問題よりも、対ロ関係や北朝鮮問題が深刻化する中で、日米関係(の強化)の方を優先する状況だ。貿易問題が議題になるとしても、話し合いは実務者レベルではなく閣僚間だということを踏まえると、今議論して来月からこうしようということにはならない。定期的に時間をかけて進めていくものだ」

「麻生(太郎副総理)・ペンス(米副大統領)会談でどのような議題が並ぶかは、(日本側の意向でなく)米国次第ということだろう。2国間貿易協定の提案があれば、積極的に取り組むべきだ」

「モノだけでなくサービスや知的財産権など、TPP(環太平洋連携協定)でそうだったように、日本側にはメリットが大きい。EU(欧州連合)ともEPA(経済連携協定)を結ぼうとしている状況の下で、日米での協定をこちらが拒否する理由はない」

──日本は貿易問題にどう対処すべきか。

「貿易不均衡は、レーガン政権時代も同様だった。貿易収支の問題を議論するのはあまり生産的だとは思わないが、粛々と対応するしかない。しかし、対米輸出が急速に伸びていた80年代とは時代と状況が異なる。(現地生産も拡大し)今は日本からの輸出を減らせるものはない」

「不均衡緩和に効果的なのは、何といってもシェールガスの輸入拡大だ。また、インフラ投資など日米双方にメリットのある分野での協力も有効だ。ただ、トランプ政権にとってインフラ投資の優先順位は水道や道路などだ。日本が得意な鉄道は先の話となるだろう。その意味でも、双方にとって今すぐ鉄道インフラ整備の議論を進めるインセンティブはないはず」

「トヨタの例のように、企業の対米投資と絡めたやり方もある。日本の企業にとって米国マーケットは大事であり、シェア確保のためにも当然検討するだろう。ただ、投資のタイミングなど、アメリカがどの程度歓迎するのか、どこまで付いてくるかは微妙なので、慎重に判断することになるだろう」

──国内投資に勢いがない中で、企業が米国で大型投資を実施することに政府や与党内に空洞化への懸念は出ないか。

「安倍政権としては、日本国内で企業による工場の大型投資にあまり期待していない。むしろAIなど、IT投資に力を入れてほしいというスタンスだ。米国での生産拠点拡大などで、国内空洞化が進むといったことにさほど批判的ではないだろう」

──トランプ大統領は、ドル高が好ましくないと発言しているが、為替の議論で日本に圧力はあるとみているか。

「シリア問題では円高に動いているが、北朝鮮の問題は円安に振れるのか円高に振れるのか、誰にもわからないだろう。東日本大震災の時でも円安に動くとみられていたが、そうではなかった」

「有事で為替がどう動くのかわからないが、米国にとってそれを問題視するような状況ではない。為替の議論は続くだろうが、ドル高/円安で何とかしようという状況ではない。北朝鮮の情勢緊迫化が背景にある。今、急いでドル高是正に向けて相手国の政策に介入してくるなど、何かアクションをとるような状況にはない」

(中川泉 スタンレー・ホワイト 編集:田巻一彦)

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[国際19] 朝鮮半島有事の「日本売り」シナリオ 北核実験準備万端 トランプ砲ドル100円割 中接対ロ悪化 シリアと北朝鮮、危険な綱渡
FX Forum | 2017年 04月 13日 18:45 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
朝鮮半島有事の「日本売り」シナリオ

斉藤洋二ネクスト経済研究所代表
[東京 13日] - 「大統領不在」が長引く韓国で、青瓦台(大統領府)の安全保障対応力を不安視する声が強まる中、核保有と弾道ミサイルの高度化を誇示する北朝鮮と、「力の外交」に回帰するトランプ米政権の対立が激化。朝鮮半島情勢は緊迫の度を高めている。

朝鮮半島情勢の緊迫化はもちろん過去何度も繰り返されてきたが、日本にとってはこれまで近くて遠い話題でもあった。しかし今や、秋田沖に再三ミサイルが落下するなど経済・金融面のみならず物理的被害の可能性も排除できなくなっており、警戒レベルを一段と引き上げる必要がある。

ついては朝鮮半島リスクの本質を整理し、「有事の円買い」という長年使い古されたアクションプログラムの有効性を点検したい。

――関連コラム:北朝鮮有事の円相場シミュレーション

<常に「有事の円買い」だったわけではない>

「愚者は己の経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とはプロイセンの宰相ビスマルクの名言だが、その教えるところは固定観念そして感情にとらわれることなく事実を歴史に学びつつ理性的に考えることの重要性であり、地政学リスクもその例外ではない。

1973年の変動為替相場制移行以来の44年間を振り返っても、地政学リスクはたびたび顕現化し、金融市場を揺さぶってきた。この間、特に円相場に大きな影響を与えた3種類の事案と言えば、次のようなものとなるだろうか。

●第4次中東戦争(1973年)、イラン革命(1979年)、イラン・イラク戦争(1980―88年)、イラクのクウェート侵攻(1990年)とその後行われた湾岸戦争(1991年)など日本のエネルギー事情への不安を呼び起こした事案

●世界貿易センター爆破事件(1993年)や米同時多発攻撃(2001年)など世界のマネーが集中する米国経済を揺るがした事案

●阪神・淡路大震災(1995年)や東日本大震災(2011年)など日本経済を直撃した自然災害

このうち最初に挙げた中東発の事案では、相場は初期反応としては原油枯渇への恐怖でパニック的に円安に振れた。ただ、それは一過性の「感性による円売り」とでも言うべきものだった。その後、冷静さを取り戻した投資家による「理性の円買い」が勝り、円相場は元の水準へと回帰した。

実際、湾岸戦争の引き金となった1990年8月のイラク軍によるクウェート侵攻の第一報で瞬間2―3円程度の円安に振れたが、その後の事態の長期化とともに相場の自律調整機能が働いた。為替需給や金利といった要因に支配されるところになり、秋には円は大きく上伸したのだ(8月の1ドル150円水準から120円台前半水準まで円高ドル安が進行した)。

2番目の米国発の事象では、2001年9月の米同時多発攻撃発生後にはニューヨーク株式市場が4営業日にわたって閉鎖され、再開すると暴落、さらにドル売りがもたらされた。この時期を境にそれまでの「有事のドル買い」から「有事のドル売り」へと投資家のアクションプログラムが更新されたように見受けられる。実際、2003年3月のイラク戦争勃発時においては、ドルは開戦前に上昇したが、開戦の報を受けて下落に転じた。

3番目の日本国内の自然災害による相場変動については、多くの投資家は国内資産の海外逃避を進めるというアクションプログラムを用意していると思われていた。よって円安へ動くと見られていたが、実際は2011年3月の東日本大震災の時、国内の資金需要を受けた機関投資家の海外資産売りを機に円買いが奔流となり、秋に1ドル75円まで上昇したことは記憶に新しい。

この点、行動経済学者のダニエル・カーネマン氏が著書「ファスト&スロー」で指摘している人間の思考プロセスが参考になる。同氏によれば、人間の思考には、直感的な「速い思考(システム1)」と、熟考型の「遅い思考(システム2)」がある。

つまり、実際の為替市場においても、地政学リスクへの反応は短期的にこそ「システム1」である心理的要因に支配されて、避難行動としてポジション手じまいの方向へと傾くが、心理面で平静を取り戻すと「システム2」に基づく行動に移り、需給や金利など本来の相場決定要因に視線が戻る(自律調整機能が働く)と想定できるのではないだろうか。

<システム1もシステム2も円売り示唆>

では、朝鮮半島有事に対し、投資家がとるべき対応について検討してみたい。朝鮮半島リスクの特徴は、前述した中東発や米国発の事案とは違い、有事の際は、地理的に近い日本(平壌―東京間はわずか1300キロ程度)も直接的・物理的な被害を受ける当事者となる可能性が高いことだ。

これまでの北朝鮮による核実験やミサイル発射はおおむね市場を株売り・円買いへと突き動かした。しかし、上述したように、かつての有事においては、必ずしも円買いではなく円売りの反応が散見されたことには注意が必要だ。

日本の近接したところで発生し、また物理的な被害まで想定される以上、恐怖感など直感が判断を左右することは明らかである。よって、円売りへの反応が正解なのではないだろうか。少なくとも「有事の円買い」「有事のドル売り」に固執するのは危険だ。

基本的に有事に直面した投資家がとる共通行動は、自己の安全そして自らの資産の保全を図ることであり、必然的に「ポジションクローズ」が行われるだろう。前述のカーネマン氏が指摘するように、人間は何よりも損を嫌うとの特性を有している以上、当然の行動だ。

目下の市場のポジションは過去2―3年の相場つきからほぼ中立的から若干の円買いと言えるだろう。したがって、少なくとも海外勢が行う有事のポジション調整の多くは外貨買い・円売りによる手じまいとなるのではないか(ただ、不安感から足元の円キャッシュを増やそうとする日本勢の外貨売り・円買いの動き、あるいは「有事の円買いドル売り」ストーリーに賭けた投機も、「システム1」的な行動として、ある程度起こる可能性はある)。

また、東京株式市場の外人投資家の行動を予測すれば、「日本買い」のポジションをひとまず縮小させるだろう。つまり、日本へのエクスポージャー圧縮を目指すヘッジの動きが主流となり、短期的なアクションは株売り・円売り、つまり「日本売り」ではないだろうか。

もちろん、その後の長期的な相場の動きについては、為替需給と金利などを眺めて均衡点を模索することになるだろう。ただ、熟考を経た「システム2」の行動が、円買いにシフトする保証はない。

特に朝鮮半島リスクが、1)米朝間で「軍事行動」の脅しが前面に押し出される現段階から、2)北朝鮮との関係が深い中国を巻き込み、米中対立の恐れが高まる次の段階、そして3)北朝鮮と友好関係にあるシリア、イランさらにその後ろ盾であるロシアをも巻き込んだ国々と西側諸国との軍事対決懸念が高まる最終段階へと進展していくようなことになれば、発火点に近い日本からの資金流出はいずれ段階的に加速することになろう。

このように考えると、システム1でもシステム2でも朝鮮半島有事は日本売りを示唆しており、為替ディーラーや投資家の長期行動はドル買い・ユーロ買い・円売りではないだろうか。つまり、「有事の円買い」のアクションプログラムは、こと朝鮮半島の事案絡みでは「有事の日本売り」へと上書き訂正する必要があるように思えてならない。

*斉藤洋二氏は、ネクスト経済研究所代表。1974年、一橋大学経済学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。為替業務に従事。88年、日本生命保険に入社し、為替・債券・株式など国内・国際投資を担当、フランス現地法人社長に。対外的には、公益財団法人国際金融情報センターで経済調査・ODA業務に従事し、財務省関税・外国為替等審議会委員を歴任。2011年10月より現職。近著に「日本経済の非合理な予測 学者の予想はなぜ外れるのか」(ATパブリケーション刊)。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

コラム:朝鮮半島有事の「日本売り」シナリオ=斉藤洋二氏

コラム:北朝鮮有事の円相場シミュレーション=佐々木融氏
コラム:英国EU残留でもドル安円高基調は不変=内田稔氏
前場の日経平均は大幅続落、北朝鮮情勢の警戒感で年初来安値更新
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yoji-saito-idJPKBN17F0DO


 
 

 


 

 


FX Forum | 2017年 04月 13日 18:46 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
トランプ砲でドル100円割れの扉は開くか

村田雅志ブラウン・ブラザーズ・ハリマン 通貨ストラテジスト
[東京 13日] - 地政学リスクの高まりやトランプ米大統領のインタビューでの発言を機に、ドル円は下落基調を強めている。このままドル安・円高が続くとの見方も一部にあるようだが、米債利回りは昨秋の米大統領選後の下値を割り込んでいない。日米金利差を考えれば、ドル円の一段安リスクは、さほど大きくないと思われる。

しかし、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が、トランプ大統領の意向をくむ形で利上げを先送りする姿勢に転じれば話は変わる。トランプ大統領と米議会との協議が不調に終わり、財政刺激の早期実施も期待しにくくなれば、ドル円が100円ちょうどを目指す展開も視野に入る。

トランプ大統領は12日、米紙とのインタビューで、ドルはあまりに強くなりつつあり、最終的には買いがあると発言。中国の為替操作国認定は見送られるとの見通しを示した。大統領はFRBの金融政策にも触れ、自身は低金利政策が好ましいと述べ、来年2月に任期を迎えるイエレン議長が再任される可能性があると発言した。

トランプ大統領のインタビュー記事が伝わると、ドル円は109円台後半から109円台前半に急落。その後もじり安の動きを続け、翌13日の朝方には108円台後半と、200日移動平均水準まで下落した。仮に200日移動平均水準を大きく割り込めば、ドル円の下値余地は、米大統領選から昨年12月半ばにかけての上昇(いわゆるトランプラリー)の61.8%戻し水準である107円台後半まで広がることになる。

ただ、トランプ大統領がドル高をけん制する発言をしたことで、米国政府がドル安姿勢を鮮明にしたとの見方もあるようだが、それは違うだろう。トランプ氏は大統領就任前後にもSNSなどを通じドル高をけん制する発言をしており、今回の発言も過去の内容と大差がない。

トランプ政権は、大統領令、報告書、声明といった公式文書でドル高是正に向けた動きをみせておらず、ムニューシン米財務長官が加わった独バーデンバーデン20カ国・地域(G20)会合声明では、通貨の競争的な切り下げを回避することや、競争力のために為替レートを目標としないというコミットメントが再確認されていることも忘れてはならない。

3月1日に公表された2017年通商政策課題をみてもわかるように、トランプ政権が目指すのは、米製造業の生産増と米国での雇用創出であり、そのための主な手段は二国間交渉である。ドル高是正は、通商政策課題でも触れられておらず、二国間交渉を有利に進めるための駆け引き材料にすぎないとみるのが自然と思われる。

<イエレン議長による忖度(そんたく)リスク>

むしろ、トランプ大統領のインタビューで注意すべきは、ドル高のけん制や、中国の為替操作国認定見送りではなく、イエレンFRB議長の再任について触れたことだろう。

大統領選の期間中、トランプ氏はイエレン議長がオバマ政権を支援するという政治的な配慮から作為的に低金利政策を続けており、「彼女は恥じるべきだ」と極めて強い口調で批判。仮に大統領に就任したら、イエレン議長の再任を認めない意向を示した。

しかし、今回のインタビューでは、低金利政策が好ましいと考えており、イエレン議長を「尊敬」していると述べ、来年2月の任期後も議長として再任される可能性を指摘した。選挙期間中とは正反対である。

トランプ大統領が、何かに対する見方や評価を180度変えることは珍しいことではない。例えば、選挙期間中には日米安保体制の見直しを示唆したが、安倍晋三首相との初の首脳会談では、日米安保体制を含めた日米同盟の強化が重要であるとの認識が共有された。中国の為替操作国認定についても、大統領就任直前の公約を今回のインタビューで撤回した。

こうした過去の言動から推察すると、取引相手と見なされる対象に対し、さまざまな投げかけをすることで相手を揺さぶり、有利な状況に引き込もうとするのがトランプ大統領の基本スタンスであると言えそうだ。この考えが正しいとすれば、今回のインタビューで明らかになったことは、イエレン議長もトランプ大統領の取引相手に見なされたということである。

取引相手と見なされたイエレン議長がとり得る選択肢は大きく2つある。1つは、米国中央銀行のトップとして、政府から独立した考えのもと、金融政策を遂行するという選択だ。

イエレン議長は10日、米ミシガン大での講演で米経済はかなり良い状態であると指摘。利上げを長く待ちすぎたくはないと述べ、早期の金融引き締めに意欲をみせた。また、金融政策のスタンスは正常化に近づいているとも述べ、現在の金融政策はリーマン・ショック後から続いた緊急避難的なものではなく、正常化に向けたものであるとの認識を示した。

こうした発言から考えれば、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げは十分にあり得ることになる。日米金利差の大幅な縮小は回避されることになり、ドル円は底堅さを増す展開が予想される。

イエレン議長のもう1つの選択肢は、トランプ大統領の意向を「忖度」し、これまでの主張や発言を翻す形で利上げを休止することだ。この場合、6月FOMCでの利上げはあり得ず、12月FOMCまで利上げを休止することも考えられる。米経済が軟調になれば、来年まで利上げを見送ることも可能になるだろう。

これによりFRBに対する市場からの信任は低下するかもしれないが、イエレン議長が再任される可能性は高まる。イエレン議長が議長職に固執すれば、こうした動きを選択することも考えられなくはない。

市場では利上げ先送り観測が強まることで日米金利差の拡大が期待しにくくなる。トランプ大統領と議会との調整が不調に終われば、トランプ政権による財政刺激の早期実施も難しくなり、日米金利差は縮小に向かうだろう。ドル円は、トランプラリーの全値戻しの展開となり、昨年8月下旬以来の100円割れが現実味を帯びる。

*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。近著に「人民元切り下げ:次のバブルが迫る」(東洋経済新報社)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
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World | 2017年 04月 13日 18:13 JST 関連トピックス: トップニュース

焦点:トランプ外交が急転換、中国に接近 対ロ関係は悪化


[ワシントン 12日 ロイター] - 米国のトランプ大統領が就任から3カ月足らずで、対外政策を急転換している。トランプ氏は、就任前から繰り返し中国を批判、同国を為替操作の「グランドチャンピオン」などとこき下ろしていた。

北大西洋条約機構(NATO)についても「時代遅れ」と述べ、ロシアとの関係改善を目指していた。

ところが12日の一連の会見やインタビューでは、対ロ関係の悪化と対中関係の改善に言及。NATOについても、世界の脅威の変化にうまく対応していると持ち上げるなど、態度を一変させた。

ストルテンベルグNATO事務総長との共同会見に臨んだトランプ氏は「私はNATOは時代遅れだと語った。もはや時代遅れではない」と発言。米ロの接近に神経を尖らせていた欧州諸国の懸念が後退する可能性がある。

対中関係については、習近平・中国国家主席との「絆」に言及。中国の台頭を警戒するアジア諸国の間に困惑が広がるとの見方も出ている。

政権内部では、黒幕と呼ばれたバノン首席戦略官が、大統領の娘婿クシュナー上級顧問と対立。バノン氏の影響力低下が指摘されている。

<「史上最悪の冷え込み」>

トランプ氏は、選挙戦の最中の昨年9月、「(ロシアのプーチン大統領が)私を称えれば、私も(プーチン氏を)称える」と発言。プーチン氏との関係強化に意欲を示していた。

ところが、この日は、シリアのアサド大統領を支持するプーチン氏に懸念を表明。「ロシアとの関係は、もしかしたら史上最悪に冷え込んでいるかもしれない」と述べた。

一方、フロリダの別荘で会談した中国の習主席については、「絆」で結ばれていると発言。会談前は「厳しい」通商交渉を予想していた。

また、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙とのインタビューでは、中国を為替操作国には認定しない意向も表明。選挙期間中は、就任初日に同国を為替操作国に認定すると主張しており、見解を180度転換した格好だ。

オバマ前政権で国防次官を務めたクリスティーン・ワーマス氏は、トランプ氏について、就任直後は「(外交政策の)習得に困難を来たしていた」が、その後「多くの問題について、以前よりも繊細な、深い理解を示し始めている」と分析している。

この日の一連の発言は、選挙期間中の側近の影響力が低下し、マティス国防長官、ティラーソン国務長官、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)の影響力が増していることを浮き彫りにしたといえそうだ。3氏はいずれも、ロシアを強く警戒している。

トランプ政権では今年2月、大統領補佐官に起用されたマイケル・フリン氏が、政権発足前にロシア大使と会談していたことが発覚し、辞任を余儀なくされた。バノン首席戦略官も、クシュナー上級顧問と対立しており、トランプ氏が事態の打開を目指す中での、一連の発言となった。

トランプ氏は11日付のニューヨーク・ポストとのインタビューで「スティーブ(・バノン氏)は好きだが、彼が私の陣営に参加したのは(選挙戦の)最終盤だ」と発言。バノン氏を強く支持する発言を避けている。

*見出しを修正しました。

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http://jp.reuters.com/article/usa-trump-idJPKBN17F0H4

 


 


 

 


Column | 2017年 04月 13日 17:32 JST 関連トピックス: トップニュース

コラム:シリアと北朝鮮クライシス、米政権の「危険な綱渡り」

Peter Apps

[11日 ロイター] - トランプ米大統領が命じたシリアへのミサイル攻撃は、北朝鮮に対してメッセージを発信する意図を含んでいたのか──。そんな疑問があったとしても、米海軍の空母打撃群が週末に、朝鮮半島の近海に向かったことによって解消されたはずだ。

シリア内戦と北朝鮮の核兵器開発という、トランプ政権が直面している2つの重要な外交危機には、奇妙な対称性が見られる。どちらも、米国にとって地政学上の2大ライバルであるロシア・中国との関係に亀裂を起こし、どちらについても容易な解決策は見当たらない。

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長にせよ、シリアのアサド大統領にせよ、米国政府は彼らが消えることを望んでいる。北朝鮮が抱く核兵器開発の野望には地域紛争を引き起こすリスクがあり、長引くシリア内戦は中東を不安定化させ、過激派組織「イスラム国」のような武装集団の温床となっている、と米国政府は考えている。

北朝鮮については、軍事的な選択肢はどれも好ましくない。ほとんどの選択肢には、誰もが避けたいと願っている紛争勃発のリスクが伴う一方で、恐らく同国の核開発計画には影響が出ないだろう。

オバマ前政権は現地の反政府勢力に限定的な支援を行うことでアサド体制を覆そうとしたが、成功しなかった。トランプ政権内には、地上部隊による大規模な介入を公然と主張する声はない。たとえトランプ大統領がそうした作戦に対する議会承認を獲得できたとしてもだ。

トランプ政権は、せめてロシアや中国と本格的な交渉を行うことで、両国が事態の収拾に手を貸すよう説得できないかと考えている。

その一方で、米国の軍事行動が拡大すれば、核保有大国のあいだで対立が生じるリスクが増大する。6日の米シリア攻撃において重要な発言権を有していたH・R・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)とジェームス・マティス国防長官などの政権上層部は特に、このことを理解している。

シリア攻撃の際、米軍はロシア軍関係者の犠牲を出さないことを最優先し、ロシア政府に事前通告を行い、標的となったシャイラート空軍基地に駐留していたとみられるロシア軍顧問の危険を最小限に抑えた。

今回の攻撃が、米軍事力によるアサド政権打倒という広汎な試みの幕開けになるとは考えにくい。マクマスター補佐官は、週末に行われたフォックスニュースのインタビューのなかで、攻撃の目的はこれ以上の化学兵器使用を抑止することに大きく限定されていた、と述べている。

ティラーソン米国務長官のモスクワ訪問の主目的は、アサド政権に対する立場を変えるようロシアのプーチン大統領を説得することになるだろう。だが今回の攻撃によって、トランプ大統領がプーチン大統領との関係を改善する機会は損なわれてしまった。プーチン氏はティラーソン国務長官には会わない予定だと伝えられている。

少なくとも、ロシア政府がシリアとイランに対する軍事援助を強化する可能性は高いようだ。この援助には恐らく、今後の米軍事行動を困難にするような対空兵器の供給が含まれると思われる。

地中海の米艦による巡航ミサイル発射を受けて、ロシアはこの海域の哨戒のために艦艇を1隻派遣した。中国が保有する唯一の航空母艦も、朝鮮半島沖で訓練航行中だ。この海域での米軍の軍事行動があった場合、対抗する可能性があることを示唆している。

また、今回の米軍による攻撃の後、ロシアがシリア上空での飛行制限に関する交渉から離脱したと報じられており、不慮の事件が発生するリスクが高まっている。その後「衝突予防ライン」の再設定が行われたかどうかについて、報道は分かれている。

米軍によれば、合意の現状や用いられている手法についてコメントしないが、ロシア側当局者とのコミュニケーションは維持しているという。

こうした対立が、もっと広範囲での関係悪化を招く可能性もある。

米国のシリア攻撃に対して、ロシア政府がウクライナでの武力行使の拡大や東欧の不安定化といった形で報復してくる可能性がある。北朝鮮に対する攻撃によって中国との関係が崩壊することになれば、中国政府は南シナ海でいっそう攻撃的な姿勢を強めるだろう。

あるいは、ロシアや中国とも、サイバースペースでの報復を試みる可能性があり、そうなれば誰も収拾することができない新たな種類の戦争が始まることになる。

先週末のトランプ大統領と中国の習近平国家主席による米中首脳会談は、部分的にせよ、こうした食い違いのいくつかを解消すること、少なくとも、どちらの側もそれぞれの立ち位置を理解することを意図していた。トランプ政権は、米国が侮りがたい存在であること、それでも相互協力という選択肢を維持したいと考えていることを、シリアに対する攻撃を通じて、中国政府に伝えたいと願っている。

少なくとも今のところ、米国の狙いは成功しているかもしれない。

中国の国営メディア「環球時報」は、中国人アナリストの発言として、北朝鮮の核への野心は中国側の「我慢の限度」に近づいているとの見方を報じ、中国政府が北朝鮮に対してより強硬な姿勢を取る可能性を示唆した。

ただし、米軍事行動に反対する中国政府の立場も改めて報じられており、このアナリストを含めた専門家は、そうした軍事行動が「耐えがたい結果」をもたらす可能性がある、と警告している。

米国政府は、北朝鮮やシリアの指導部に対する心理的圧力を維持する姿勢だ。米当局者によれば、アサド大統領を直接狙う「暗殺作戦」という選択肢も検討こそされたが、この段階で却下されたという。また米軍部隊は、北朝鮮の金正恩氏への直接的な攻撃も訓練しているという。

今のところは、恐らくロシアや中国からの反発もあるため、こうした選択肢は外交上のポーズに過ぎない。米国がイラクで学んだように、体制交代は、さらに多くの問題を引き起こすだけの結果になるかもしれない。だがこのことは、2003年以来、激動する国際情勢が米国政府にとってどれほど変化したかを思い起こさせる。

マクマスター補佐官はフォックスニュースとのインタビューで、トランプ政権は今週、ロシアやシリアへの対応、さらには中国との首脳会談と、驚くほどの「同時並行作業」をこなしたが、誰も「汗一つかかなかった」と語っている。だが、いずれの問題も片付いていない。今後、汗だくの日々がやってくるとしても不思議はない。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

コラム:シリアと北朝鮮クライシス、米政権の「危険な綱渡り」

コラム:米シリア攻撃、「トランプ・ドクトリン」の始まりか
トランプ氏、シリア大統領への強硬姿勢強める 軍事行動検討も
プーチン氏「トランプ政権下で関係悪化」、異例の厳しい態度表明
http://jp.reuters.com/article/column-syria-northkorea-crisis-idJPKBN17F0CJ

 

 

 
北朝鮮、核実験場の準備万端のもよう−「大きな」出来事は街路開通
Russell Ward、Kanga Kong
2017年4月13日 16:01 JST

豊渓里の核実験場を捉えた衛星画像(4月2日) Photographer: DigitalGlobe/38 North via Getty

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ipLpdSxUh4eY/v1/1200x-1.jpg


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トランプ大統領のドル安の夢、強い経済の実現公約と相いれず
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ウェブサイト「38ノース」でアナリストが指摘
韓国の合同参謀本部は差し迫った実験の可能性が高いとはみていない


北朝鮮の核実験場は実験実施に向けて「準備万端」の様子がうかがわれる。北朝鮮を監視している米国の調査機関が報告した。
  12日の商業衛星画像で平壌の北東にある豊渓里の核実験場での活動が確認されたと米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院の北朝鮮分析ウェブサイト「38ノース」でアナリストらが指摘した。画像では北側入り口で活動が続いているほか、主な管理エリアで動きがあり、指令センター近辺に人員がいることが示されている。
豊渓里の核実験場を捉えた衛星画像(4月2日)
豊渓里の核実験場を捉えた衛星画像(4月2日) Photographer: DigitalGlobe/38 North via Getty Images
  韓国の合同参謀本部は差し迫った実験の可能性が高いとはみておらず、北朝鮮が挑発行為を準備している兆候を韓国軍は捉えていないと報道官がソウルで記者団に述べた。
  トランプ米大統領が北朝鮮に対する軍事行動の可能性に言及する中、また北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の祖父で建国を果たした故金日成主席の生誕105年の祝賀を15日に控え、6回目の核実験実施の観測が強まった。
  北朝鮮を訪れている外国人記者は13日の午前中に「大きく重要な出来事」に備えるよう伝えられたと、ロイター通信が報じていた。ロイターのジェームズ・ピアソン記者はその後ツイッターで、大きな出来事とは新しい街路の開通だったと報じた。
  トランプ米大統領は12日、北朝鮮に圧力をかけるよう中国の習近平国家主席に働き掛けていると記者団に語った。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューでは、北朝鮮問題解決への協力の見返りに貿易問題での摩擦緩和を提案したことを明らかにした。両首脳は12日に電話会談した。
原題:North Korea’s Nuclear Test Site Seems Ready, U.S. Group Says (2)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-13/OOC4PU6S972901

 

 


 
World | 2017年 04月 13日 17:24 JST 関連トピックス: トップニュース

北朝鮮発表の「重大イベント」は街路の開設式、金委員長も出席

[ソウル/平壌 13日 ロイター] - 北朝鮮当局者が同国で取材中の外国人記者団に13日伝えた「大規模かつ重要なイベント」は、平壌に新たに整備された街路の開設であることが分かった。

街路の開設式には金正恩朝鮮労働党委員長も出席した。

北朝鮮の核開発プログラムを巡る緊張が高まるなか、同国の当局者は13日、国内で取材中の外国人ジャーナリストに対し、「大規模かつ重要なイベント」に備えるよう伝えていた。北朝鮮では、週末15日に故金日成主席の生誕105周年の記念日が控えており、首都の平壌には約200人の外国人ジャーナリストが集まっている。

過去には、比較的小規模な軍事行動に関連して、同様の通知がなされたことがあった。

<高まる緊張>

トランプ米大統領は今週、北朝鮮に対し特定の行動を許容しない考えを「明らかに通告」しており、中国が平和的解決を求めるなかで、朝鮮半島情勢を巡る緊張が高まっている。

トランプ大統領は北朝鮮が新たなミサイル試射を行うのを威嚇するため、米空母「カール・ビンソン」などの空母打撃群を、予定していたオーストラリアから朝鮮半島近海に移動させる命令を下した。米当局者によると、空母打撃群が朝鮮半島近海に到着するには最大9日間を要する見通し。

北朝鮮は11日、米国による先制攻撃の兆候があれば米国に核攻撃すると警告した。

トランプ大統領と中国の習近平国家主席は、米国で初めての首脳会談を開催したわずか数日後となる12日、再び電話会談を行った。このことは北朝鮮がもうすぐ核・ミサイル実験を行うのではないかとの懸念が高まるなか、両首脳が抱える緊迫感を示している。

トランプ大統領は、習主席との電話会談について、「北朝鮮の脅威」について「非常に良い」議論ができたとのコメントをツイッターに投稿。同大統領はその後、必要なら米国は中国の協力なしで北朝鮮を巡る危機に対応する用意があると述べた。

習主席は電話会談で「(中国は)朝鮮半島の非核化と、平和と安定の維持という目標に取り組んでおり、平和的な手段による問題解決を提唱している」と発言し、「今後も米国側との緊密に連絡を取り、協調していく」と述べた、と中国国営中央テレビ(CCTV)が報じた。

米国の北朝鮮情報サイト「38ノース」によると、12日撮影の衛星画像は北朝鮮北東部の豊渓里にある核実験場周辺で活動が継続しており、核実験ができる状態であることを示しているという。

韓国当局者は13日、核実験の可能性が高まっていることを示す新たな兆候は見られないが、いつでも実験が実施できる状態を維持していると語った。

*内容を追加しました。

スライドショー:緊迫する北朝鮮情勢、平壌はいま

米中首脳が電話会談、習主席「北朝鮮問題は平和的解決必要」

シリア攻撃は警告、対北朝鮮行動の必要性で中国と一致=米国務長官
習中国主席、THAAD配備にあらためて反対表明 中韓首脳会談
北朝鮮、核実験などの挑発行為に出る恐れ=韓国大統領代行
http://jp.reuters.com/article/northkorea-usa-idJPKBN17F0O6

http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/121.html

[経世済民120] 不十分な金利水準と規制圧力、どうなる国内機関投資家の新年度運用 日銀は緩和継続をOECD 市場はシュガーハイ、サマーズ

不十分な金利水準と規制圧力、どうなる国内機関投資家の新年度運用
Chikako Mogi、Chikafumi Hodo
2017年4月13日 15:22 JST

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• 当面様子見、慎重にという雰囲気から始まっている−日興SMBC
• リスクは欧州緩和後退や政治的不安、米国の利上げや地政学など..

国内の銀行や生命保険会社、年金基金などの新年度の運用が今月から始まった。昨年度のような日米欧のファンダメンタルズ(経済諸条件)を中心にした世界の景気動向を見据えた投資環境とは違い、欧州の金融緩和後退や政治的不安、米国の利上げ、地政学リスクなどが複雑に絡まる中で投資判断を迫られる難しさがある、と市場関係者はみている。
  「消去法的に、米国の減税や規制緩和、インフラ投資などがタイミングも規模も少しモデレートなものになりそうなのであれば、買いイントは新年度ある程度高まってくると思うが、その一方で含み損を抱えている中ではなかなか」。大和住銀投信投資顧問の国部真二債券運用第二部長は、利回りが相対的に高い米債投資は魅力的としながらも、中途半端な水準で利回り水準がもみ合っている現在の運用環境での取引に慎重にならざるを得ないとみている。

香港の為替両替看板

Photographer: Anthony Kwan/Bloomberg
  財務省が10日に発表した3月の対外 ・対内証券売買契約等(約定報告機関ベース)によると、国内投資家の外債投資は買いと売りがほぼ同規模の34兆円台にとどまった。買い越し額の年度比較では、2015年度が16.2兆円だったのに対して、16年度は9.2兆円と大幅に減った。米債は2月まで4カ月連続で売り越し、フランス債にいたっては少なくとも2005年以来で最大の処分になったようだ。

100ドル札と1万円札

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  SMBC日興証券の竹山聡一金利ストラテジストは、「ヘッジ米債を買えなくもない。米国か欧州か。欧州の方はヘッジコストなどは安い、長短スプレッドは立っているが、政治リスク、ECB(欧州中央銀行)リスクがある。根本的なビューが皆な金利上昇とみている感があるので、そうすると当面様子見、慎重にという雰囲気から始まっている」と言う。
  以下は国内機関投資家の3業態別の運用見通しだ。   
銀行  

• 金融庁からの規制的な圧力
• 16年度は3兆円の売り越しで、13年以来初めて処分超

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i_eLoLnU0aaE/v2/-1x-1.png

  金融庁の遠藤俊英監督局長は3月9日の参院財政金融委員会で、特別検査の対象とされる地方金融機関について、日本の国債の替わりに外債の運用を増やしてきたと指摘。聞き取りでリスク管理態勢の実態が分からない場合には、機動的にモニタリングを展開することを明らかにしている。
  金融庁のリスクが加わると、銀行は外債投資に一層慎重になり、国内債に戻る可能性がある、と4.5兆円の運用を手がけるアムンディ・ジャパンの浜崎優市場経済調査部長はみている。実際、外債運用に対する金融庁の検査方針は投資行動に影響を与えているようだ。5週移動平均の週間対内債券投資は昨年12月に金融庁が国内金融機関に対して緊急調査を実施するとの報道以来、マイナス圏で推移している。
生保
• 日銀のデータによると、保険会社は外債保有で国内2位の投資家
• 16年度の買い越し額は7.7兆円と少なくとも05年以来最高も、今年3月は2カ月連続売り越し
• 生命保険会社は債券利回りの上昇待ち


https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i5fYSAzdogso/v2/-1x-1.png

  二ッセイ基礎研究所・年金総合リサーチセンターの徳島勝幸年金研究部長は、「米債は金利上がったところでいけるので、今年の前半はあまり大きな動きは出てこない、淡々と買えばいいだろう。米国の金利が落ち着けばヘッジコストも落ち着く。外債投資のそんなに逆風でもない」と話す。
年金
• 16年度は2.1兆円の買い越し。15年度は3兆円
• GPIFは国内債を削減する一方、外債を買い増し
  
  「一番興味があるのは年金」。BNPパリバ証券の井川雄亮金利ストラテジストは、基本ポートフォリオの観点から年度終了の3月末と昨年12月とで主要の金融指数を比較分析した場合、「やはり外債が中心で円債と外株を続けて買うような感じ。短期資産が12月末時点でかなり膨れ上がっているのがポイント。これがどこかで振り替えないといけない。代行返上の動きもまだあるだろうし、構造的なもの。また年金特会からGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)にお金が振り分けられることは往々にしてあるだろう」とみている。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ilrxWofG3qSM/v2/-1x-1.png

  井川氏によれば、GPIFを例にとると、5円の円安になると外株と外債を買う余力が減り、その分、国内債に運用資金が移動しやすくなる。「もし6月までの段階でドル・円で円安方向に振れた場合、外債・外株を買う余力は1兆円くらいトータルで減るはずで、その分、国内物に来る」とみている。
  ブルームバーグの市場予測調査によると、ドル・円相場は今年末までに1ドル=117円と、現行の109円前後から円安に向かうと市場関係者はみている。大和住銀投信投資顧問の国部氏は、「年金もいまのところ大きな流れとしては、まだ円債からヘッジ外債というところへのデマンドが一年前ほどでないにしてもそのイントはまだある。一部はヘッジ外債増やそうと考えているところもある。まちまちかもしれないが、一定の買いイントはある」と言う。  
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-13/OO8M0P6S972A01

 

Business | 2017年 04月 13日 18:14 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

日銀は緩和継続を、17年成長率見通しを上方修正=OECD対日報告

[東京  13日 ロイター] - 経済協力開発機構(OECD)は13日、対日経済審査報告を公表した。日銀は物価上昇率が2%の目標を上回るまで金融緩和策を維持すべきとする一方、資産価格や金融セクターへのリスクにも警戒すべきとの見方を示した。

OECDは2年に1度、対日審査報告を取りまとめている。

今年の日本の成長率は、消費支出、輸出、設備投資の拡大が見込まれることから、前回予想の1.0%から1.2%に小幅上方修正した。

日本は最低賃金の一段の引き上げと、中小企業の生産性改善すべきとの見方を示した。

報告書では「潜在コストと副作用を注意しつつ、2%のインフレ目標達成は引き続き最優先課題だ」と指摘した。

日銀の膨大な国債保有は流動性に悪影響を与え、日銀が出口政策を実行する際には市場の不安定性につながる可能性があるとの見方も示した。

日銀の政策を受けて、過剰なリスクテイクにより資産価格が上昇する可能性があるとも指摘。マイナス金利が銀行の収益を悪化させ、年金基金や生命保険会社の資産運用が一段と困難になるおそれにも言及した。

物価上昇率がゼロ%近辺にとどまっていることを踏まえると、量的緩和の解除はかなり先になると予想。

今年の成長率見通しは上方修正したものの、2018年については消費支出と純輸出の勢いが失われることから0.8%に鈍化するとの見通しを示した。

OECDのグリア事務総長は同日、都内で記者会見を開き、こうした提言に加え、持続可能な財政運営の必要性をあらためて強調。OECD諸国と比べて日本の消費税率が低いことに触れつつ、「(増税の)余地がまだある。毎年1%ずつ引き上げるなど、徐々に上げていくことが必要だ」とし、2019年10月の消費税率引き上げは「ぜひ実現させてほしい」と語った。

また、欧米などを中心に保護主義が高まりつつある現状を踏まえ、「解放された貿易・投資環境が重要だ」とも述べた。

*内容を追加します。

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http://jp.reuters.com/article/japan-economy-oecd-idJPKBN17F0S9


 

市場のバリュエーションは「シュガーハイ」−サマーズ元米財務長官
Jeanna Smialek
2017年4月13日 17:35 JST

ここ数カ月の市場動向を経済の何が正当化するのか不明と発言
ダウンサイドのサプライズの余地が恐らく大きくなっているようだ

サマーズ元米財務長官は12日、相場のピークを予想するのは難しいとしながらも、市場のバリュエーションは最近数カ月の間に経済実態を上回る水準に達したとの見方を示した。
  サマーズ氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「ここ数カ月に見られた度合いの市場動向を経済の何が正当化するのか、私には不明だ」と述べ、「人々が振り返って、バリュエーションの一部が少しばかりシュガーハイ(糖分による興奮状態)だったと認識しても私は驚かない」と発言した。
  同氏は、市場では現在、上振れの可能性より下振れのリスクが大きいと分析。欧州の政治やアジアの不確実性、米国での法整備を進める上での問題点を踏まえると「一定の懸念」があるとし、「現時点では私には、ダウンサイドのサプライズの余地が大きくなっているように見える」と話した。
原題:Summers Sees More Downside Risks as Market Enjoys a ‘Sugar High’(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-13/OOC8506JTSGA01


http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/892.html

[国際19] ロンドン住宅市場の低迷鮮明、3月は金融危機以降で最悪 ユーロに冷めるイタリア通貨存続の新たな「断層」 野村HD米ビジ拡大
ロンドン住宅市場の低迷鮮明、3月は金融危機以降で最悪
RICS
Fergal O'Brien
2017年4月13日 17:21 JST

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• ロンドンの住宅価格指数はマイナス49、2009年以降の最低
• 全国の住宅価格指数はプラス22で横ばい

ロンドンでは住宅市場の低迷ぶりが、3月にあらためて鮮明になった。価格動向を示す指数が金融危機以降の最低を記録した。住宅市場の低迷は全国的なもので、今後も続く公算がある。
  英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)が13日発表した3月のロンドンの住宅価格指数はマイナス49と、2009年2月以降の最低となった。指数低下は価格下落を報告した仲介業者の割合が増えたことを意味する。一方で今後1年については、ロンドンの住宅がまだ値上がりするという見通しを示す回答者が半数を上回った。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iQXeYWM03saY/v2/-1x-1.png

  英国全体では3月の住宅価格指数はプラス22を維持したものの、今後1年の価値と取引件数に関する見通しはいずれも弱まった。新たな購入希望者からの問い合わせと成約は停滞しており、特に優良物件で顕著だとリポートが指摘した。
原題:London Housing in Its Deepest Slump Since the Financial Crisis(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-13/OOC7DV6JIJUO01

 

ロンドン株、続落 0.51%安
2017/4/13 17:43
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【NQNロンドン】13日朝のロンドン株式市場で、FTSE100種総合株価指数は続落している。英国時間9時15分時点では、前日比37.65ポイント(0.51%)安の7311.34だった。

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News | 2017年 04月 13日 18:08 JST 関連トピックス: トップニュース

焦点:
ユーロに冷めるイタリア人、通貨存続の新たな「断層」に

[ロンドン 12日 ロイター] - ユーロ圏の存続を脅かす最大の要因はもはや、ギリシャやポルトガルといった小規模な周縁国ではなく、圏内第3の経済大国であるイタリアがユーロに背を向ける可能性かもしれない。実際に同国が脱退するリスクは小さいが、想像を絶する出来事というわけではない。

最近発表された2つの報告書は、イタリア国民にとってユーロが何を意味し、なぜ彼らのユーロ熱が薄れたのかを良く示している。同国民はユーロ加盟前より貧乏になり、主な貿易相手国ドイツに対する競争力も落ちたのだ。

昨年12月に欧州連合(EU)の統計局(ユーロスタット)が公表した報告書は、国民の購買力を示す1人当たり国内総生産(GDP)を2004年と15年で比較。EU加盟28カ国の基準を100とした場合、ドイツはこの間に120から124に上昇した半面、イタリアは110から96に落ち込んでいる。

この結果、イタリアの水準は大国ドイツより、チェコ、スロバキア、スロベニアといった新興国に近くなった。フランスはほぼ横ばいの106だ。

つまりイタリア国民は、独自通貨リラを捨ててユーロを採用した数年後の2004年に比べ、購買力という点で貧乏になっている。

<輸出競争力>

もう1つの報告書は、調査団体ワールド・エコノミクスが今月発表したもので、ユーロ圏内でドイツの輸出競争力が大幅に高まった一方、イタリアは悪化していることが分かる。

同団体は、代表的な財とサービスを米ドル建てでバスケット化し、それを他通貨の購買力と比較する「世界物価指数(WPI)」を算出。これにより、ユーロ圏については「ドイツ版ユーロ」、「フランス版ユーロ」、「イタリア版ユーロ」といった各国毎の実質的な為替レートを求めることができる。

この2年間で「イタリア版ユーロ」はドルに対しては3%の過大評価から4%の過小評価に転じた。しかし「ドイツ版ユーロ」に対しては過大評価の幅が14%と、2%ポイント拡大している。つまりドイツに輸出するイタリア企業の価格競争力は悪化し、イタリアにおけるドイツ製品の価格競争力は向上した。

報告書によると、輸出競争力という点ではフランスやギリシャなど、イタリア以上に悪い状況に置かれている国もある。ただ、イタリアがユーロ圏を揺るがしかねない新たな「断層」として浮上してきたことが分かる。

「イタリアは、ドイツ経済の強さに押され次に倒れる『ドミノ』になりそうだ。この流れは過去1年間でさらに顕著になった」とワールド・エコノミクスは指摘している。

これらの現象がユーロの採用自体に起因しているとは言い切れないが、イタリアは成長率も1%に届かず、企業の設備投資やインフラ投資も減少している。国民がユーロ加盟を良いことだと思わなくなったのも無理はない状況だ。

3月の世論調査では、イタリアのユーロ離脱を問う国民投票の実施を求めている反体制派政党「五つ星運動」が支持率を33%程度に伸ばした。やはり反EUを掲げる政党「北部同盟」も12%程度の支持率を確保しており、他にも反EU政党は存在する。

(Jeremy Gaunt記者)

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http://jp.reuters.com/article/analysis-italy-euro-idJPKBN17F0NI

 

野村HD:米国ビジネス再び拡大へ、「今、人探してます」−森田社長
日向貴彦
2017年4月13日 19:00 JST

Nomura Securities President Toshio Morita Interview
Toshio Morita Photographer: Akio Kon/Bloomberg
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トランプ大統領のドル安の夢、強い経済の実現公約と相いれず

野村ホールディングスは米国ビジネスを再び拡大するため、バンカーなど人材の発掘に着手したことが分かった。野村は赤字が続いた海外拠点で数度にわたる大規模な人員削減を完了、今後はさらなる手数料収入の獲得を目指す。
  野村証券の森田敏夫社長(55)はブルームバーグ・ニュースの取材で、同社は今後これまでよりも大きな規模で、またコンスタントにバンカーを採用することで、日本企業による米国での買収案件をより多く手掛けたいとの考えを明らかにした。
  2016年4月以降、欧州と米州で1000人規模の人員削減を実施した野村HDは、海外拠点の黒字化を図り、今月下旬に7年間で初めてとなる海外事業の通期黒字を発表する見通しだ。現在、日本関連の複数のリーグテーブルで首位の座を逃している同社は企業の合併・買収(M&A)助言、株式・債券引き受けで三冠を狙う。
  今月トップに就任した森田社長はインタビューで、「リーグテーブルには課題として真正面から向かい合わなくてはならない」と全ての分野でトップになる意向を示した上で、「日本企業のグローバルM&Aが増えている、アメリカはもう一度拡充していかなくてはいけない」と語った。
  米国では主に顧客企業を担当するカバレッジバンカーを中心に起用していく考えで、候補者を「慎重に丁寧に」見極めて採用を図りたいという。
「真のパートナートとして」
  ブルームバーグ・データによれば、16年の日本企業関連のM&A助言ランキングで野村は6位だった。トップはみずほフィナンシャルグループで、クロスボーダー案件の数が明暗を分けた。
  債券の引き受け業務では野村は4位と、首位には就けなかった。エクイティー関連業務ではトップだった。野村は3月、財務省から日本郵政株式売り出しのグローバルコーディネーターの一社に指名された。
  森田社長は、野村は「まだまだ多くの顧客から真のパートナーとして信頼を得られていない」とし、そうした状況では「相談は来ない」と話した。その上で、「日本の上場企業は少子高齢化や人口減少で10年後のビジネスの景色が変わるのではとの悩みを抱えている。アメリカには顧客のニーズが十分にある」と語った。
バンキングは人が重要
  同社は3月、奥田健太郎インベストメントバンキング・ヘッドが米州地域ヘッド(ニューヨーク駐在)に、デイビッド・フィンドレー氏が米州のエグゼクティブ・チェアマンに就く人事を発表した。これで同地域の役員は、米州地域の共同責任者を務める武村努氏を入れて2人から3人体制になった。
  野村HDは4月27日の決算発表で、7年間で初めてとなる海外事業の通期黒字を発表する見通しだ。森田社長は、株主還元策として、自社株式の消却など、いろいろな観点で議論していると述べた。
  米州業務強化に向け、「今、人探しています」と森田社長。「バンキングの世界は人が重要、顧客も人についてくる。丁寧に対応していかなくてはいけない」と語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-13/OOC9SQ6KLVR501
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/122.html

[経世済民120] OECD事務総長、消費増税「10%からまだ引き上げ余地ある」日中韓FTA終了 公募投信7カ月連続増 温暖化ガス2年連続減
OECD事務総長、消費増税「10%からまだ引き上げ余地ある」
2017/4/13 18:13
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 経済協力開発機構(OECD)のアンヘル・グリア事務総長は13日、日本記者クラブで会見し、政府が2019年10月に予定する消費増税の着実な実施を求めた上で「OECD諸国の平均は20%でまだ(引き上げ)余地がある」との考えを示した。グリア氏は財政再建に向けより多くの歳入が必要だとし「毎年1%ずつなど徐々に時間を掛けて上げていく」べきだと改めて主張した。併せて法人税を引き下げ、企業の投資意欲を刺激することなども必要だと話した。

 また、環太平洋経済連携協定(TPP)から米国が離脱を表明したことに関しては、経済成長や雇用創出、技術革新に寄与するとの分析から「アベノミクス4本目の矢だと思った」と遺憾の意を示した。「何らかの形でTPPが将来できることを期待している」としたほか、関係構築などを経て米政策も変わる可能性は残っていると指摘した。

 グリア氏は同日、首相官邸で安倍晋三首相を表敬したほか、財務省で麻生太郎財務相とも会合。さらなる経済成長と債務残高比率の低下に向け「アベノミクスの3本の矢すべてをうまく実施することが不可欠」などとする提言を含むOECDの対日経済審査報告書を手渡した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL13HNW_T10C17A4000000/


 


 


日中韓FTA交渉会合が終了 知財や関税など議論
2017/4/13 19:24
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 日本と中国、韓国は13日、東京で開いていた自由貿易協定(FTA)交渉会合を終えた。政府調達や電子商取引、知的財産などのルール分野で作業部会を開き、自由化の水準や関税交渉の枠組みについて話し合った。外務省は「関税交渉の枠組みなどで意見が一致した」と説明した。

 日中韓FTAは2013年に交渉を開始したが、各国で自由化の水準に隔たりがあり、交渉は停滞気味だ。3カ国は東南アジア諸国連合(ASEAN)やインド、オーストラリアなどを含む東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉にも参加している。日中韓FTAではRCEPを上回る水準の自由化を目指している。次回は今夏をめどに韓国で開く予定。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS13H5F_T10C17A4EE8000/

ベトナム投資や事業環境整備を議論 世耕氏と投資相
2017/4/13 19:21
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 世耕弘成経済産業相は13日、ベトナムのズン計画投資相と経産省で会談し、同国でのインフラ投資の加速や日本企業のビジネス環境の整備などについて話し合った。世耕氏は「2国間のさらなる関係強化をはかりたい」と述べ期待を示した。

 ベトナムは11月に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の議長国を務める。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)と環太平洋経済連携協定(TPP)の両方にも参加しており、日本の通商政策にとって重要性が増している。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS13H5C_T10C17A4EE8000/

 


 


公募投信7カ月連続増 3月、1年4カ月ぶり高水準
2017/4/13 19:29
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 投資信託協会が13日発表した3月の投信概況によると、公募投信の残高は98兆7742億円と7カ月連続で増加し、1年4カ月ぶりの高水準となった。株式相場が下落するなかで、上場投資信託(ETF)を中心に下値で買う動きが増えた。

 設定から解約などを除いた全体の資金流出入額は8585億円のプラスだった。うちETFへの資金流入額は1兆1665億円となり、過去最高だった2007年6月以来9年9カ月ぶりの大きさだった。

 一方、個人投資家の待機資金の置き場所とされるマネー・リザーブ・ファンド(MRF)は2カ月連続で資金流出した。流出額は8254億円と、3年2カ月ぶりの大きさだった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGC13H05_T10C17A4EE9000/

 


 


 

官房長官、円108円台「地政学リスクが意識、緊張感持ち注視」
2017/4/13 18:30
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 菅義偉官房長官は13日午後の記者会見で外国為替市場で円相場が約5カ月ぶりの円高・ドル安水準となる1ドル=108円台後半に上昇したことについて「金融・為替市場において地政学リスクが意識されている」と語った。

 一方で「米国を始め世界経済が堅調に推移していることには全く変わりがない」と指摘。その上で「為替の安定が重要であって、引き続き為替市場の動向については緊張感を持って注視をしていきたい」と述べた。

 トランプ米大統領が「ドルは強くなりすぎている。最終的には害をもたらす」などと発言したことについては「米国の大統領の発言に予断を持ってコメントすることは控える」と述べるにとどめた。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL13HOA_T10C17A4000000/

 
北朝鮮情勢悪化で原油輸送に支障も QUICK資源セミナー、懸念相次ぐ
2017/4/13 18:52
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 QUICKとエネルギー情報提供を手掛けるリム情報開発(RIM、東京・中央)は13日午後、トランプ米大統領政権下の資源相場をテーマにしたセミナーを都内のQUICK本社で開いた。パネルディスカッションでは中東や北朝鮮の地政学リスクを懸念する声が相次いだ。

 SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは注目点としてイラン情勢を挙げた。「シリア情勢の混乱がイランの5月の大統領選で保守強硬派に有利に働けば、イランと米欧の核合意への悪影響が懸念される」と話した。

 石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミストは、北朝鮮情勢が悪化した場合「北朝鮮によるミサイル発射を警戒して原油の海上輸送が滞り、消費国への供給減も意識され、原油相場の上昇につながる」と指摘。一方、株安に伴う投資家心理の悪化だけでなく「有事のドル買い」もドル建ての原油相場を押し下げると説明した。

 一方、環境ベンチャーのスマートエナジー(東京・中央)の神尾正彦経営企画室長は地政学リスクの高まりなどを背景に原油相場が上昇する局面では「米国がシェールオイルの生産を増やすため、原油相場が大きく上昇するとは考えにくい」と指摘した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL13HO5_T10C17A4000000/

 


温暖化ガス排出、2年連続減 国内15年度2.9%
2017/4/13 19:18
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 環境省は13日、2015年度の国内の温暖化ガス排出量(確報値)が二酸化炭素(CO2)換算で14年度比2.9%減の13億2500万トンだったと発表した。2年連続の減少だった。発光ダイオード(LED)照明など電力消費が少ない機器の導入が進んだり、冷夏や暖冬で冷暖房の使用が減ったりしたほか、原子力発電所の再稼働も寄与したと分析している。

 2年連続の減少はリーマン・ショックによる景気後退があった08〜09年度以来となる
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS13H37_T10C17A4EE8000/
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/895.html

[経世済民120] 共働き世帯の増加と長時間労働の実態 待機児童が減らない本当の理由C アフリカ移民が「奴隷市場で売られている」=国際機関 
シリーズ「待機児童はなぜ減らないのか?」
共働き世帯の増加と長時間労働の実態
待機児童が減らない本当の理由C
2017/04/13
小林美希 (労働経済ジャーナリスト)
 「夜勤をしてもしなくても長時間労働は避けられない」

 都内の病院に勤める看護師の原野美知恵さん(仮名、35歳)は、不妊治療を経て待望の子どもを授かった。上司である病棟の師長に妊娠を報告し「すみません。つわりが酷いし、お腹が張って流産が心配なので夜勤を免除してもらえないでしょうか」と申し出た。すると、師長から「急に言われてもシフトを調整できない。人手が足りなくて皆が夜勤を頑張っている。あなただけ特別扱いできない。夜勤ができないならパートになって」と、暗に退職かパートになるかの選択を言い渡された。

 妊娠を理由にパートにさせるなど労働条件の切り下げ(不利益取り扱い)も、男女雇用均等法によって禁じられているが、美知恵さんは「看護師はやりがいのある仕事で辞めたくはない。けれど、みんなに迷惑をかけてまで夜勤免除を強くいえない。不妊治療でせっかく宿った命。ここで争って居づらくなるより、いったんパートになって出産まで無事に過ごしたほうがいいのかもしれない」と悩んだすえに、やむなく労働条件の切り下げに応じた。

 美知恵さんは非正規でも育児休業を取って職場復帰できることになったが、出産直前には切迫早産(早産しかかる状態)のため、休みが多くなって勤務実績が足りず認可保育所に子どもを入れることができなかった。病院の院内保育所に子どもを預けながら、認可保育所に空きが出るのを待つうち、師長から「そろそろ常勤に戻って夜勤に入れないか。それが無理なら、土曜の勤務に入ってほしい」と詰め寄られている。

 「看護師として技術を高めていくには、私は病棟勤務がいい。しかし、看護師で病棟にいる以上、夜勤から逃れられない。かといって、夜勤をしない代わりに土曜も仕事では、さすがに子どもがかわいそう」と、美知恵さんは悩んでいる。


(iStock)
ワークライフバランスは絵に描いた餅

 民間企業で働く夫は長時間労働で、ほとんど子どもと接する時間がない。夫による保育所の送り迎えは全く期待できない。頼ることのできる実家も近くはない。院内保育所なら夜勤の間も子どもを預けられるが、利用できるのは3歳まで。もし地域の認可保育所に入ることができても、夜勤や遅番に対応できる延長保育は実施していない。

 「ワークライフバランスなんて、人手不足の業界では絵に描いた餅でしかない。今の病院で看護師を続けられたとしても3歳まで。これ以上働くなら、辞めてクリニックのパートになるしかない。女性は子育てしながら、やりがいを感じて働いてはいけないのか」と、不条理さを感じている。

 共働き世帯が増えるにつれ、当然、保育の需要は高まる。1980年代は専業主婦世帯が主流で、80年の専業主婦世帯は1114万世帯、共働き世帯はわずか614万世帯だった。しかし、バブルが崩壊した91年から両者は拮抗するようになり、山一証券が破たんし金融不安が襲った97年には、完全に逆転。2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショックなどをきっかけに共働き世帯が増加していき、2013年の共働き世帯は1065万世帯、専業主婦世帯は745万世帯となっている。不況期には「手に職つけて働き続けられる」と、医療や福祉業界への就職人気が高まった。

 2007年には団塊世代が定年を迎えて大量離職が始まった。2010年頃からは、労働力人口の激減を目前として、どの業界でも人材確保に躍起になり、新卒採用は売り手市場になった。学生のなかには、「一生働き続けたいから」「働きながらきちんと子育てもしていきたい」と、男女を問わずに、子育てとの両立支援に手厚い企業を調べて採用試験を受ける姿も多くみられるようになっている。「男女共同参画」や「男女平等」という意識が高まり、当然のこととして共働きは増える傾向にある。

 これまで、女性が働き続けることについて経済的な理由が多かったが、その意識の変化も鮮明になっている。連合の「マタニティ・ハラスメント(マタハラ)に関する意識調査」(2013年5月)」では、妊娠未経験者への質問で「働くことと子育て」について、「できるならば自分の希望として働きながら子育てをしたいと思う」が51.0%と、「経済的な理由で働きながら子育てをしなければいけないと思う」(27.4%)を大きく上回った。女性も当たり前のように、結婚しても出産しても働き続けたいと思うようになったことが、保育の需要を高めている。

 そして、製造業からサービス業へと産業構造が転換した今、雇用の受け皿となっている産業や職種が長時間労働や不規則な働き方を強いられがちで、保育の多様性も求められるようになってきた。

文部科学省「学校基本調査」(2016年度速報)の「卒業後の状況調査」から、就職先で多い産業を見てみよう。男性は、多い順に「卸売業・小売業」(17.0%)、「製造業」(14.8%)、「情報通信業」(10.5%)となっている。小売業では24時間オープンしている店舗もあり、情報通信業ではシステムエンジニアなど超長時間労働が目立つ業界でもある。女性のトップは「医療・福祉」(19.5%)、次いで「卸売業・小売業」(15.2%)、「金融業・保険業」(10.7%)、「教育・学習塾」(9.8%)となる。

「社員=親」ということが理解されない職場

 サービス業は土日祝日に働くことも多く、男女ともに夜間や早朝、休日のニーズの高い就業が増加しており、ワークライフバランスを図ることが難しい。冒頭の美知恵さんのように、医療・福祉は夜勤を伴うことがほとんどだ。

 育児介護休業法の「短時間勤務制度」では、子が3歳未満の社員は1日6時間労働が認められている。労働基準法でも、1日に30分を2回「育児時間」を取得できるはずだが、実際どうなのか。厚生労働省の「雇用均等基本調査」(2015年度)によれば、育児のための「短時間勤務制度」が「ある」企業は57.8%で、約4割の企業には制度すらない。制度があっても、最長利用可能期間が最も多いのが「3歳に達するまで」(59.7%)で「小学校就学の始期に達するまで」は19.8%に留まる。また、国立社会保障・人口問題研究所の「第15回出生動向基本調査」(2015年実施)では、「育児時間制度・育児短時間勤務制度」を利用した女性は、わずか7.1%に留まる。

 子育て世代の雇用環境は厳しく、「社員=親」ということが理解されない職場では、ワークライフバランスを図ろうとすれば降格、左遷され、クビになりかねない。子どもとの時間をもちたくても、延長保育や土曜保育を使わなければならない状況だ。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9307


 


アフリカ移民が「奴隷市場で売られている」=国際機関
2017/04/12
BBC News

https://ichef-1.bbci.co.uk/news/624/cpsprodpb/12FDB/production/_94878777_migrant-routes-624.png

国際移住機関(IOM)は11日、アフリカから欧州を目指す人たちがリビアの「奴隷市場」で売られていると警告する報告書を発表した。特殊技能をもつ人はより高値で売られるという。

IOM報告によると、密航業者や民兵組織に拘束された移民たちは、リビアの町の広場や駐車場で売られている。特にサハラ砂漠以南から欧州を目指す若者数百人が、いわゆる「奴隷市場」に巻き込まれているという。

IOMリビア事務所のオスマン・ベルベイシ代表はBBCに対して、中でも塗装やタイル張りなどの技術があると高値が付くのだと話した。

リビアは2011年に北大西洋条約機構(NATO)の支援を受けた反政府勢力によってカダフィ政権が崩壊して以来、混乱状態に陥っている。

「飢え死にさせられ」

IOM報告では、身の安全のために匿名のセネガル人男性が、リビア南部サブハの「奴隷市場」で売られた体験を話している。

この男性によると、移民約100人が人質にとられ、にわか仕立ての監獄に閉じこめられ、家族が呼びよせられた。拷問される様子を家族に聞かせるため、家族に来てくれるよう電話する際に叩かれることもあったという。

監獄の中は「恐ろしい」状況で、食べ物は限られ、家族が身代金を払えないと殺されるか、飢え死にさせられたと男性は話している。

9カ月かけて身代金を工面したという別の男性は、重度の栄養失調になり、入院時の体重はわずか35キロだったという。

この男性によると、一般リビア人に買われた女性たちは性奴隷にさせられていると話す。

IOMのベルベイシ代表はBBCに、奴隷としての値段は能力によって決まると話した。

「自分も家族も身代金が払えない移民について、業者は奴隷としてできるだけく売って最低限の利益を上げようとする。能力や資格次第で、値段は確実に変わる。たとえば塗装やタイル張りなど特別な技能があれば、値段は高くなる」

ニジェールのIOM事務所スタッフは、逃げ出した複数の移民からリビアで行われている奴隷競売について確認したと話す。

「リビア・サブハの広場やガレージで、奴隷として売られる危険があるとみんな口を揃えた。奴隷として彼らを売るのは密航業者や、町の日雇い仕事の手配師だ。移民がありつけるのは建設現場の仕事が多い。日給を払う代わりに、別の業者に奴隷として売りつける」

ナイジェリア、ガーナ、ガンビアなどの出身者は、他の移民が閉じ込められた家や奴隷市場そのものの警備員として働かされることもあるという。

IOMは、こうした奴隷市場の出現は「リビアでただでさえ厳しい状況におかれている移民にとって非常に気がかりな、新しい動きだ」と指摘する。

今年2月には国連児童基金(ユニセフ)が「子供たちの命をかけた旅」と題して、リビアからイタリアへ渡る大勢の子供たちがどのような危険にさらされるか、報告書を発表。時に恐ろしいほど詳細に、子供たちが奴隷にされたり、暴力や性的虐待を受けている様子を報告した。

このユニセフ報告書によると、2016年には約2万6000人の子供が地中海を渡った。そのほとんどは保護者の付き添いがなく、多くが密航業者によって虐待されたという。

昨年は北アフリカから地中海を経て数万人の移民がイタリアにたどりついた。移民の多くは最大6日間をかけて酷暑のサハラ砂漠を渡る危険な旅路を経て、ようやくリビアに到着し、さらにそこから欧州を目指す船に乗り込んでいる。

(英語記事 African migrants sold in Libya 'slave markets', IOM says)

提供元:http://www.bbc.com/japanese/39574661wedge.ismedia.jp/articles/-/9366
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/899.html

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