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[戦争b22] シリア政府軍がトルコ国境付近に進軍、米軍が見捨てたクルド人と協力 トランプ米政権、対トルコ経済制裁を用意 週内にも発動か
シリア政府軍がトルコ国境付近に進軍、米軍が見捨てたクルド人と協力
Dana Khraiche、Selcan Hacaoglu
2019年10月14日 22:33 JST
クルド人勢力、トルコへの対抗でシリアのアサド政権と取引
EUと米国、シリア侵攻巡り対トルコ制裁に踏み切る構え
シリア政府軍は国内北東部への展開を開始し、トルコ国境付近へと進軍した。米軍のシリア撤退決定で見捨てられた格好となったクルド人武装勢力は、アサド政権と手を組んだ。

  トルコのエルドアン大統領は、クルド人勢力を国境付近から押し戻し難民を再定住させるためトルコ軍のシリア侵攻が必要だったと説明している。だが、この侵攻は国際的な非難を浴び、米国と欧州連合(EU)は制裁をちらつかせている。

  クルド人勢力は過激派組織 「イスラム国」(IS)の掃討で米軍と共に戦った。ただ、トルコ軍の侵攻を受けてIS戦闘員を確実に収容所にとどめておくことがもはやできないかもしれないと警告した。戦闘員の中には欧州出身者もおり、出身国政府は受け入れを望んでいない。

  トランプ米大統領は14日、ツイッターで「トルコに対する大型制裁」が実施されるとあらためて述べつつ、撤退の決定を擁護。米国は「200年も相争っている人々と一緒になって別の戦争を始める」ことはないと話した。

  トランプ氏がこのコメントを発した後、トルコの代表的な株式指数は下げを広げ、一時5.7%安となった。

トルコのシリア侵攻について、ブルームバーグ記者オヌル・アント氏がリポート

出典:ブルームバーグ

原題:
Syria’s Assad Sends Troops North as Turkish Offensive Escalates(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-14/PZD3DJT1UM0Z01?srnd=cojp-v2

 


ワールド2019年10月14日 / 15:28 / 8時間前更新
トランプ米政権、対トルコ経済制裁を用意 週内にも発動か
Reuters Staff
1 分で読む

[ワシントン 13日 ロイター] - 米政権は、シリア北部に進攻したトルコに対し早ければ今週中にも制裁を科す用意を進めている。経済制裁は米国が北大西洋条約機構(NATO)同盟国のトルコに対して持つ数少ない措置の1つだ。

国防当局者は、クルド人勢力へのトルコの攻撃に対抗するため米軍を投入することは選択肢ではないとしており、トランプ大統領はシリア北部からの米軍の計画的な撤収開始を国防総省に指示した。[nL3N26Z0ES]

ムニューシン米財務長官は11日、トランプ大統領がトルコに「非常に強力な」制裁を新たに科す権限を米当局に与えたことを明らかにしており、政権関係者は実施に向けた準備を整えているもようだ。制裁の内容は明らかになっていない。[nL3N26W3KB]

トランプ大統領は13日、ツイッターで「トルコへの強力な制裁発動について、(共和党の)グラム上院議員や、民主党を含む多くの議員 と取り組んでいる」と明らかにした。

また「財務省は用意が整っている。追加の立法措置が必要になるかもしれない。この件では強いコンセンサスがある。トルコは制裁を発動しないよう要請している。続報を注視してほしい!」と投稿した。

ある米当局者はロイターに対し、制裁の「導入に向けて政府のあらゆるレベルで作業が行われている」と明らかにした。
https://jp.reuters.com/article/syria-security-turkey-usa-idJPKBN1WT0LI
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/874.html

[経世済民133] 12月予定の対中追加関税、合意なければ実施の公算=米財務長官 米中貿易協議の部分合意、両国の悪化する成長見通しは変わらず 中国はさらなる交渉希望、米中通商合意「第1段階」署名前に 米中貿易協議の「第1段階」合意、中国側は冷ややかな反応 中国の輸出入、9月は共に予想より悪化−米関税や世界貿易減速で
ワールド2019年10月14日 / 23:18 / 33分前更新
12月予定の対中追加関税、合意なければ実施の公算=米財務長官
Reuters Staff
1 分で読む

[ワシントン 14日 ロイター] - ムニューシン米財務長官は14日、12月15日に発動が予定されている対中追加関税について、その時までに中国と通商合意に達しなければ、課される可能性はあるが、合意成立を期待していると述べた。

CNBCとのインタビューで、12月15日に発動予定の対中追加関税に関する質問に対し「合意がなければ、それらの関税は実施されるだろう。しかし、われわれは合意締結を予想している」と応じた。

トランプ米大統領は11日、米中が「第1段階」の通商合意に達したと発表。ただ、今回の合意が今後数週間で白紙に戻るとは考えていないとしつつも、可能性はあるとした。ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、12月に発動される予定の対中関税については何ら決定されていないと述べた。[nL3N26W3UX]

長官は今後数週間で、自身およびライトハイザー代表と中国の劉鶴副首相との電話会談やトランプ大統領と中国の習近平国家主席との会談など様々なレベルでの通商交渉が実施されると指摘した。

また、米プロバスケットボールNBAのヒューストン・ロケッツの幹部が香港のデモを応援するツイートを投稿し、中国が反発している問題については、両者が解決に達することを望むと語った。
https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-mnuchin-idJPKBN1WT1T1

米中貿易協議の部分合意、両国の悪化する成長見通しは変わらず
Brendan Murray
2019年10月14日 10:37 JST
• 米国が12月に計画の新たな対中関税、発動の可能性残されたまま
• トランプ氏が「わが国史上」最大と呼ぶ合意、文書署名に至らず
米国と中国が包括的な通商合意の可能性を持続させるために達した部分的な合意によって、両国の悪化する成長見通しが変わることはほとんどなかった。エコノミストが信用しない「握手」で結ばれた合意だったためだ。
  中国は11日、米国産農産品の年間購入額を現在の倍余りの最大500億ドル(約5兆4200億円)に拡大することで合意した。だがこれは米国内総生産(GDP)の大きな押し上げ要因というよりも、2020年米大統領選でトランプ大統領再選の鍵となる農村部の選挙区に対する政治的な景気づけと言えるだろう。

中国の劉鶴副首相と握手するトランプ大統領(ワシントン、10月11日)
Donald Trump shakes hands with Liu He in Washington, D.C. on Oct. 11.
  トランプ氏は13日夜、中国が既に農産品の購入を開始したとツイートした。
  この見返りに中国政府は、今週予定されていた対中関税率の一部引き上げを先送りするよう米国を説得した。ただ、米国が12月15日に発動を計画している残り全ての中国製品に対する輸入関税という、トランプ氏の最大の経済的脅威であり、今後の見通しへの最も深刻な懸念材料は残されたままだ。
  ムニューシン米財務長官は13日、「われわれにはやるべき多くの仕事があるが、双方が非常に一生懸命に取り組むと確信するとともに、これを成立させると予想している」とABCニュースの番組「ジス・ウィーク・ウィズ・ジョージ・ステファノプロス」で語った。
  投資家はもっと慎重だ。米国株は先週に貿易を巡る緊張の緩和を受けて上昇したものの、11日午後に合意の実体が明らかになると、上げ幅を縮小した。トランプ氏が「わが国史上」最大と呼ぶ今回の合意には、事実上1年余り議論されていたにもかかわらず、まだ文書の署名には至っていないという、大きな欠陥があったためだ。
  モルガン・スタンレーのストラテジスト、マイケル・ゼザス、 メレディス・ピケットの両氏は11日、「既存の関税率の引き下げに向けた実現可能な道はまだない。関税のエスカレーションは依然として大きなリスクだ」と指摘。「そのため、企業活動が大幅に回復し、世界の成長見通しを押し上げるとはまだ予想していない」との見方を示した。
U.S. Agriculture Trade with China

Source: USDA GATS
原題:Trump’s China Handshake Lifts Spirits But Not Sober Outlook (1)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-14/PZC2HLT1UM0Z01?srnd=cojp-v2


 
中国はさらなる交渉希望、米中通商合意「第1段階」署名前に
Bloomberg News
2019年10月14日 22:01 JST
中国当局者、習主席署名前に詳細を詰める話し合いを望む
米国は週内の関税引き上げ見送り、中国は12月予定の関税も撤回求む
トランプ米大統領が吹聴する米中通商合意の「第1段階」について、中国側は詳細を詰めるためのさらなる協議を早ければ今月末にも持ちたい意向だ。事情に詳しい複数関係者が明らかにした。習近平国家主席が署名に合意するのは、その後だという。

  関係者の1人によると、中国政府は交渉担当トップを務める劉鶴副首相を筆頭とした代表団を派遣する可能性がある。来月チリで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて米中首脳が合意に署名できるよう、合意文書をまとめる狙いがある。

  米国は週内に発動予定だった関税引き上げを見送ったが、12月に予定する関税引き上げについては保留している。中国はこの関税引き上げも撤回を望んでいると、別の関係者1人が述べた。非公開の交渉内容だとして関係者らは匿名を条件に語った。

  米中が先週ワシントンで口頭合意した内容の詳細は依然不明だ。トランプ大統領は中国の農産物購入拡大を「我が国の歴史上、偉大な農家に対する最大かつ最も素晴らしい合意」だと歓迎した。一方、中国国営メディアは両国が「最終的な合意達成に向けて双方ともに努力することで一致した」とのみ伝えた。

関連記事:米中貿易協議の「第1段階」合意、中国側は冷ややかな反応
President Trump Meets Chinese Vice Premier Liu He At The White House
中国の劉鶴副首相と会談したトランプ米大統領(11日)
原題:China Wants More Talks Before Signing Trump’s ‘Phase One’ Deal(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-14/PZD3HLSYF01S01


 
米中貿易協議の「第1段階」合意、中国側は冷ややかな反応
Bloomberg News
2019年10月14日 12:39 JST
• 残る問題の多くは依然として不確実性に満ちている−新華社
• 中国のかねての交渉ポジションは追加関税の完全撤回だった
米中が11日に達した「第1段階」の通商合意に対する中国の公式の反応は、慎重ながらも歓迎するものだった。減速する国内経済への圧力を中国政府が少しでも緩和したいのなら、トランプ米大統領に調子を合わせる以外に選択肢がほとんどないことが浮き彫りになった。
  15日に予定されていた対中関税率の一部引き上げの先送り以外、中国に対する米国の関税を巡る圧力が和らげられることはほぼなかった。これは、中国のかねての交渉ポジションだった追加関税の完全撤回からは程遠い。
  中国側も為替や知的財産を巡る慣行についての曖昧な約束や、同国がいずれにしても必要とする農産物の購入といったこと以外はあまり譲歩することはなかった。香港での抗議デモの深刻化に直面し、中国経済への信頼回復を迫られる習近平国家主席にとって、当面は今回のような合意で十分なものと見受けられる。
Growth Slowdown
Economic activity in long-term slowdown in China

Source: National Bureau of Statistics, Bloomberg surveys
Note: September 2019 and 3Q 2019 data are estimates.

  中国政府の公式声明や主要メディアは、劉鶴副首相と米国のライトハイザー通商代表部(USTR)代表およびムニューシン財務長官のワシントンでの協議の結果について、「合意」とは全く言及していない。
  中国商務省は、多くの分野で「双方が実質的な進展を遂げた」とし、「最終合意の方向に向けて協力することで一致した」と表明。ただ同省の声明は、15日に関税率を引き上げないという米側の約束や、中国が400億−500億ドル(約4兆3300億−5兆4100億円)相当の農産品を購入すると約束したという米側の主張に言及していない。
  国営新華社通信は、直近の通商協議での「合理的かつ実際的」な進展に言及したが、こちらも合意や両国による具体的な措置には触れていない。その後の論説では、双方は紛争の激化を回避したが「残る問題の多くは依然として不確実性に満ちている」とし、中国は「常に十分な忍耐と戦略的な強さを維持しなければならない」と主張した。
原題:China Is Cool on Trump Trade ‘Deal’ Its Economy Still Needs (1)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-14/PZCDH36S972D01?srnd=cojp-v2

 

中国の輸出入、9月は共に予想より悪化−米関税や世界貿易減速で
Bloomberg News
2019年10月14日 14:42 JST
• 輸出は3.2%減、輸入は8.5%減−ドルベース
• 対米輸出は前年同月比で約22%減少−税関総署
中国の輸出と輸入は9月に予想よりも大きく減少した。既存の米国の関税や世界貿易の減速継続で需要が損なわれた。
  税関総署の14日の発表によると、輸出はドルベースで前年同月比3.2%減、輸入は同8.5%減となり、貿易収支は396億5000万ドル(約4兆2900億円)の黒字だった。エコノミスト予想は、輸出が2.8%減、輸入は6%減だった。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iPEftqmfqm50/v2/-1x-1.png
  中国経済が内外で需要鈍化に見舞われる中、貿易の低迷は米国と中国が先週に達した「第1段階」の合意の重要性を浮き彫りにしている。
  マッコーリー・セキュリティーズの中国経済責任者、胡偉俊氏(香港在勤)は「主な要因は間違いなく世界経済の減速だ」と指摘。米中貿易協議の「部分的な合意は事態のさらなる悪化を防げるため、良いことであるのは確かだ。しかし、事態が大きく改善することはないだろう」と述べた。
  9月の対米輸出は前年同月比約22%減、米国からの輸入は約16%減。貿易収支は約260億ドルの黒字となった。
原題:China’s Imports, Exports Both Worse Than Expected in September(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-14/PZCJEAT0AFB401?srnd=cojp-v2


ビジネス2019年10月14日 / 15:08 / 8時間前更新
中国、9月は輸出入ともに一段と減少 米関税の影響さらに
Reuters Staff
1 分で読む

[北京 14日 ロイター] - 中国税関総署が発表した9月の貿易統計によると、輸出は2月以来の大幅な減少となり、輸入も5カ月連続の減少となった。長引く米中貿易戦争で経済が一段と減速していることが示され、当局はさらなる支援措置を求められそうだ。

米中貿易戦争で9月は、1日に米国が1250億ドル相当の中国製品に15%の制裁関税を発動し、中国が対抗措置をとるなどの展開があった。

中国税関総署によると、9月の輸出は前年比3.2%減少。減少幅は8月(1.0%減)から拡大し、市場予想(3%減)を上回った。

キャピタル・エコノミクスは「9月の米制裁関税発動に加え、世界需要減退の影響が表れた」と指摘した。

一部エコノミストは、制裁関税発動を控えた「駆け込み」効果が剥落したことが9月の輸出落ち込みにつながったとみている。

9月の輸入は前年比8.5%減少。輸出と同じく、減少幅が8月(5.6%減)から拡大し、市場予想(5.2%減)を上回った。

貿易収支は396億5000万ドル。8月は348億4000万ドル。市場予想は333億ドルだった。

対米貿易黒字は258億8000万ドルで、8月の269億6000万ドルから縮小。

1─9月の対米輸出はドル建てで前年比10.7%減少。米国からの輸入は26.4%減少した。

米中は11日、閣僚級の通商協議で部分的な合意に達し、米は15日に予定した制裁関税引き上げを見送ることになった。しかし、12月に予定する引き上げについては、トランプ大統領がまだ対応を決めていないとされる。[nL3N26W3UX]

中国当局は1年あまりにわたり、さまざまな景気てこ入れ措置を講じているが、景気不透明感が個人や企業を圧迫し内需は低迷したままだ。

アナリストの間では、第3・四半期の成長率は、約30年ぶりの低水準だった第2・四半期からさらに低下し、政府の通年目標(6.0─6.5%)の下限を下回る恐れがあるとの見方がでている。https://jp.reuters.com/article/china-economy-trade-idJPKBN1WT0JT

 

ビジネス2019年10月14日 / 23:38 / 15分前更新
中国、経済運営に向けカウンターシクリカルな調整を活用=李首相
Reuters Staff
1 分で読む

[北京 14日 ロイター] - 中国の李克強首相は14日、中国経済に対する下押し圧力が強まっているとし、引き続き合理的な範囲で経済を運営するためにカウンターシクリカル(景気循環に対して抑制的)な調整を活用していくと述べた。

李首相は国営テレビで、中国は雇用と物価を安定させ、効果的な投資を拡大すると語った。
https://jp.reuters.com/article/china-economy-li-idJPKBN1WT1VE?il=0
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/383.html

[経世済民133] 米で広がる富裕税支持、大統領選後の導入に現実味
コラム2019年10月14日 / 08:02 / 15時間前更新

米で広がる富裕税支持、大統領選後の導入に現実味
Edward Hadas
3 分で読む

[ロンドン 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国の「富裕税」構想が初めて浮上したのは今から8カ月ほど前。構想に耳を傾けたのは主に民主党の傍流だった。それも今は様変わりした。富裕税の強力な提唱者の一人、エリザベス・ウォーレン上院議員は来年の米大統領選の民主党候補者の中で今や先頭を走っている。やはり富裕税を支持するバーニー・サンダース上院議員も、民主党候補者指名争いにおける先頭集団の一人だ。

国民も負けてはいない。クイニピアック大学が4月に全米で実施した調査によると、5000万ドル超の資産に年率2%の税を課す構想を有権者の約60%が支持している。夏にニューヨーク・タイムズ紙の委託で実施された調査では、大半の共和党支持者を含め、国民の3分の2が構想を支持していた。弾劾手続きによってトランプ大統領の再選確率が下がる可能性が出てきた一方、上記の民主党候補者2人が支持率を伸ばしている現状を考えれば、大統領選後の富裕税導入は現実味を増している。

そこで3つの基本的な問いが浮上する。富裕税とは何か、導入可能か、導入すべきなのか。

第1に、富裕税とは何か。基本的な考え方はごく単純だ。純資産を算出し、そこから例えば5000万ドルといった大きな数字を差し引く。答えがプラスの数字であれば、それに2ー8%を掛けた額を米政府に納税する。翌年もこれを繰り返す。

これでは政府はやり過ぎだ、という考え方もある。なにしろ政府は、個人が資産を築くもととなった所得から既に税を徴収しておいて、2口目を頂こうというのだから。ビートルズのジョージ・ハリスンが1966年に歌った通り、「座ろうとすれば座席税、歩けば歩行税」というわけだ。

構想の主な提唱者であるカリフォルニア大バークレー校のエマニュエル・サエズ、ガブリエル・ザックマン両教授は、こうした批判に周到な反論を用意している。大半の米国民は資産の1種、つまり住宅の価値に基づく税金を既に支払っている。富裕税は不動産税をお金持ちの金融資産にまで広げるだけのことだ。

理論上はその通りだが、富裕税は現実に機能するのだろうか。一部の著名エコノミストは機能しないとみる。ラリー・サマーズ元財務長官は、スウェーデンとデンマークでは「富裕税はあまりにも課税逃れが容易で、あまりにも管理が難しいために廃止された」とし、サエズ、ザックマン教授の甘さを指摘する。

サラ・ペレ氏による昨年の調査によると、富裕税を採用する経済協力開発機構(OECD)加盟国の数は、1980年の12カ国から2017年には4カ国に減った。

富裕税が失敗したのはサマーズ氏が言うように、富裕層が租税回避地を利用できるのも一因だが、話はそれで終わらない。ペレ氏によると、各国政府が富裕税の廃止に動いたのは、最高所得層と資本に対する税率を「引き下げる大きなトレンド」に突き動かされたからこそだ。事実、当時の政治ムードは超富裕層課税の引き下げに好意的で、それに政府が乗った。

サマーズ氏のような論者は、こうした政治的解釈を不愉快に感じるだろう。世間のムードが変われば税制も変わり得ることを示唆しているからだ。

そして世間のムードは変わりつつあるのかもしれない。6月24日に「どうぞわれわれに小幅な富裕税を課してください」と訴える公開書簡に署名した億万長者18人は、確かに富裕層の中でもほんの一握りにすぎない。しかし書簡によると、世論調査では「共和党から無党派層、民主党まで米国民の過半数」が富裕税を支持している。

つまり富裕税はシンプルで、おそらく導入可能だ。そこで最も難しい問いが残る。導入すべきなのか。

その答えは、正義を巡るいくつかの判断によって決まる。すなわち富をどう配分するかと、個人の過去の経済的成功に対する金銭的報酬の適切な規模についての判断だ。

正義の問題は究極的には哲学的だが、有権者と政治家が判断を下す上では、経済学的な分析も役に立つ。例えば富裕税が企業家の労働意欲に水を差しかねないという不安であれば、経済学者がなだめることができそうだ。サンダース氏案の純資産3200万ドル以上、あるいはウォーレン氏案の同5000万ドル以上の富裕層への課税であれば、だれも野心をそがれたりしないだろう。

経済学者は提案に修正を加える役割も果たせる。ミネソタ大とトロント大の研究者5人は最近の論文で、資本に対する税率を上げる一方、資本所得への税率を下げることを提案している。粛々と資本に課税し続ければ、資本を非効率に運用している人々の資産を減らせる一方、資本所得の税率を引き下げれば、最も生産的な投資を行った人々の手元に多くの資金が残るようになる。

このような学術的な修正を加えれば、富裕税構想には正義だけでなく経済効率も備わるかもしれないが、票の獲得には大して結びつきそうにない。とはいえ、サエズ、ザックマン両氏の新著「正義の勝利」によれば、米国はかつて富裕層に今よりずっと高い税率を課していた。それを可能にしたのは大恐慌だった。

ウォーレン、サンダース両候補とその支持者らは、大恐慌ほどひどい経済環境ではなくても当時のようなムードは盛り上がると期待しているのだろう。彼らはいいところを突いているのかもしれない。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/us-tax-breakingviews-idJPKBN1WP0QV
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/384.html

[経世済民133] トヨタ前代未聞の労使交渉「変われない社員」への警告 教育劣化が生む「AI未満人材」「日本の国際競争力30位」経営者の危機感 50代よ、再起せよ〜対談:河合薫×中野晴啓(前
トヨタ前代未聞の労使交渉「変われない社員」への警告

島津 翔
日経ビジネス記者
2019年10月15日
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トヨタ自動車は10月9日、秋季労使交渉を開催した。「春季」の労使交渉で決着が付かず、延長戦を実施するという異例の事態だ。結果は、労働組合側が要求したボーナス(一時金)は満額回答となったが、その背景にはトヨタの大きな危機感がある。これまでトヨタは、年功序列や終身雇用といった「日本型雇用」の象徴的存在と見られていたが、その同社ですら今、雇用の在り方を大きく見直そうとしている。

日経ビジネスは10月14日号の特集「トヨタも悩む 新50代問題 もうリストラでは解決できない」で、抜本的な修正を迫られている日本型雇用の実態と、新たな雇用モデルをつくろうという日本企業の挑戦を取材している。あわせてお読みいただきたい。

関連記事:シリーズ企画「目覚めるニッポン」

 10月9日、トヨタ自動車で「秋季」労使交渉が開かれた。1969年に年間ボーナス(一時金)の労使交渉を導入してからこれまで、延長戦に突入したことは一度もない。 異常事態である。

 ふたを開ければ満額回答で、冬季の一時金を、基準内賃金の3.5カ月、2018年冬季比16%増の128万円にすると決めた。日経ビジネスは半年間にわたる延長戦の内実を取材。満額回答に至る裏側で、トヨタの人事制度がガラガラと音を立てて変わろうとしていた。


 春の交渉では、労使のかみ合わなさがあらわになった。13年ぶりに3月13日の集中回答日まで決着がずれ込み、結局、一時金について年間協定が結べなかった。「夏季分のみ」という会社提案を組合がのみ、結論を先延ばしにした格好だ。

 きっかけは、その1週間前だった──。

 3月6日に開かれた第3回の労使協議会は、異様な雰囲気に包まれていた。「今回ほどものすごく距離感を感じたことはない。こんなにかみ合っていないのか。組合、会社ともに生きるか死ぬかの状況が分かっていないのではないか?」。緊迫感のなさに対して、豊田章男社長がこう一喝したからだ。

 組合側からの「モチベーションが低い」などの意見を聞いての発言だが、重要なのはそのメッセージが、非組合員である会社側の幹部社員にも向けられた点にある。

 労使交渉関係者は次のように証言する。「社長は、若手が多い組合側よりも、ベテランを含むマネジメント層に危機感を持っていたようだ」

 豊田社長の発言を受けて急きょ、部長などの幹部側が集まった。危機感の不足を議論し共有するのに1週間を要した。これが、会社回答が集中日までずれ込んだ理由の一つだった。

 10月9日、労使交渉を終えた後の説明会で、河合満副社長はこう述べた。「労使が『共通の基盤』に立てていなかった。春のみの回答というのは異例だったが、労使が共通の基盤に立つための苦渋の決断だった。今回の(労使での)やり取りの中で、労使それぞれが変わりつつあるのかを丁寧に確認した」

 豊田章男社長や河合副社長が実際に現場をアポイントなしで訪れ、現場の実態を確認。そのうえで、トヨタの原点である「カイゼン」や「創意くふう」に改めて取り組んだ。5月には60%だった社員の参加率は9月には90%まで上昇したという。「全員が変われるという期待が持てた。労使で100年に1度の大変革期を必ず越えられる点を確認し、回答は満額とした」(河合副社長)

 豊田社長が危機感をあらわにし、トヨタが頭を悩ませているのは、「変わろうとしない」社員の存在だった。

次ページトヨタ労組「機能していない人がたくさんいるのでは」
トヨタ労組「機能していない人がたくさんいるのでは」
 事実、河合副社長も「取り組みはまだまだ道半ば。マネジメントも含め、変わりきれていない人も少なくとも存在する」と報道陣に述べ、トヨタ自動車労働組合の西野勝義執行委員長も労使交渉の場で「職場の中には、まだまだ意識が変わりきれていなかったり、行動に移せていないメンバーがいる」と会社側に伝えた。

 この問題に対応するため、トヨタ労使は、春季交渉からの延長戦の中で、現場の意識の確認とは別に、評価制度の見直しに着手していた。

 労使交渉の関係者などへの取材によると、トヨタにはいまだ、年次による昇格枠が設定されている。総合職に当たる「事技職」では、40歳手前で課長、40代後半で部長というのが出世コースで、このコースから外れると挽回はほぼ不可能とされる。労使交渉では、組合側から「機能していない人がたくさんいるのではないか」「組織に対して貢献が足りない人もいるのではないか」という率直な意見が出た。

 関係者は語る。「リーマン・ショックまでは拡大路線が続き、働いていなくても職場の中で隠れていられた。最近はそうはいかず、中高年の『働かない層』が目立ち始めた」

 秋の労使交渉後に報道陣の取材に応じたトヨタ自動車総務・人事本部の桑田正規副本部長は、日経ビジネスの「年功序列をどう変えていくのか」との質問に対して「これまでは『何歳でこの資格に上がれる』という仕組みがあった」と認め、こう続けた。

 「その仕組みが、現状を反映していない場合もあった。例えば、業務職では、ある程度の年齢にならないと上がれなかったが、その期間が長すぎた。明らかに時代に合っていないものは見直していきたい。それ以外(の職種)でも、できるだけ早めにいろんな経験をさせたい。大きく(年功序列の仕組みを)撤廃するということではなく、多少、幅を広げていきたいと思っている」

 トヨタは今年1月、管理職制度を大幅に変更した。55人いた役員を23人に半減し、常務役員、役員待遇だった常務理事、部長級の基幹職1級、次長級の基幹職2級を「幹部職」として統合。「事実上の降格」を可能にした。

 ただし、幹部職の創設は人事制度改革の入り口にすぎない。

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動き始めた評価制度見直し「年次による昇格枠を廃止」
 トヨタはさらに、評価制度の見直しを労使で議論し始めた。協議の場は月に1回で、これまでに計5回。会社側は人事本部長、組合側は副委員長をトップとし、ひざ詰めの議論が続く。

 8月21日の5回目の労使専門委員会で、トヨタは初めて総合職の評価制度見直しの具体案を組合に提示した。目玉は、桑田副本部長が「見直していきたい」と発言した、年次による昇格枠の廃止にある。

 曖昧だった評価基準を、トヨタの価値観の理解・実践による「人間力」と、能力をいかに発揮したかという「実行力」に照らし、昇格は是々非々で判断するとした。「ぶら下がっていただけの50代は評価されない。これから降格も視野に入るだろう」(先の関係者)

 組合執行部は「勤続年数や年齢ではなく、それぞれの意欲や能力発揮の状況をより重視する方向だ」と好意的に受け止め、運用の詳細について引き続き議論していくとしている。

 評価制度だけでなく、一時金の成果反映分を変更する加点額の見直しや、中途採用の強化などを労使は議論している。トヨタは総合職に占める中途採用の割合を中長期的に5割に引き上げるとも報じられている。桑田副本部長は人事制度の見直し全般について「試行錯誤しながらやっていきたい。長く議論しても意味がないので、よく考えながら進めたい」とした。

 前代未聞の労使交渉延長戦から見えてきたのは、変われない社員に対する警告ともいえる人事制度の再点検だった。幹部職の創設から中途採用強化まで、トヨタは100年に1度の大変革を乗り越えるべく、従来の雇用モデルを見直そうとしている。

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Kimtoshi

会社員

実績と組織に対する貢献度で評価する、ダメなら降格もあるというのは、どこの会社でもやろうとしていること。トヨタだから記事になるんでしょうか。

2019/10/15 07:07:371

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00067/101000041/?P=3&mds


https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00067/101000041/


教育劣化が生む「AI未満人材」

教育劣化どこまで 社会に出て「引き算」を習う大人たち

吉野 次郎 他 3名
日経ビジネス記者
2019年10月15日
1 87%

印刷
クリップ
全3552文字
 2019年10月。JR高田馬場駅から徒歩1分、早稲田通り沿いにある7階建てのビルの2階で、その“生徒”たちは一心不乱に答案用紙に向き合っていた。

 問題用紙を見ると次のような問いが並ぶ。

「8-0.23=□」

「66.3÷1.3=□」
「桃を24個ずつ箱に詰めたら12箱になりました。9個ずつ詰めると何箱できますか」
「350ページの小説を140ページまで読みました。読み終えたページは全体の何%ですか」

 見たところ、小学校高学年レベルの算数のようだ。

 ただ、そこで格闘しているのは小学生でもなければ中学生でもない。10年も20年も前に義務教育を終えた“大の大人たち”だ。

大手銀行でも新人の半分は消費税計算に苦戦
 パソコン教室の運営を主力とするマミオン(東京・新宿、森万見子社長)が「大人のための算数・数学教室『大人塾』」を始めたのは11年秋。当初、受講生は月に数人だったが、現在はオンライン講座を含めて年間1000人以上が大人塾の門をたたく。


「大人塾」には大卒の大手製造業、サービス業の現役社員も通う
 ここで算数・数学を学び直す理由は、正社員の登用や転職、昇格などの試験を控えているためだ。通う人のほとんどは誰もが知る大手製造業やサービス業で働く現役の社員で、大卒も多い。

 「話を聞いて驚かれる方も多いが、つい先日も大手金融機関で新入社員200人に消費税の計算をさせたところ、半数が税抜き価格に1.08を掛けることができなかった。これが日本の現実」と森社長は話す。

 大人塾の特徴は、前出の例題を見ても分かる通り、場合によっては「引き算」からやり直す「徹底した基礎固め」と、独自のスライド教材を活用した「気軽に楽しく算数を学べるカリキュラム」だ。卒業生からは「中学時代に大人塾があって数学の楽しさを知ることができれば、自分の人生は変わっていた」との感想が少なくない。

 だが、大人塾のカリキュラムの優秀さや、大人になって初めて算数の大切さを知る人々が増えている現実を知れば知るほど、こんな不安を感じる方もいるに違いない。「そもそも日本の教育は大丈夫なのか」と。

次ページ日本の競争力はついに世界30位まで転落
 世界的に見ても早く、明治期からスタートし100年以上の歴史を持つ日本の教育。とりわけ戦後70年以上、安定した平和と順調な経済発展の上に育まれた「日本型教育」は、国民にあまねく「全人的な学び」の場を提供できるシステムとして国際的にも評価されてきた。
 もちろん課題はある。例えば、平均的児童を対象にした画一的教育の結果、米国の飛び級のような「できる子がその才能を一段と伸ばす環境」に乏しいという批判はその1つ。最近は、「ギフテッド」(天から与えられた)と呼ばれるIQ130以上の子供たちが、優秀であるが故に周囲から疎外される「浮きこぼれ」が問題になりつつある。
 「天才や異才を育む仕組み」が日本の教育にない証としてよく取り沙汰されるのが学術論文の低迷だ。文部科学省の研究所はこのほど、世界から注目される論文の国別シェア(占有率)で、日本が05〜07年の5位(3年間の平均)から15〜17年(同)は9位へと低迷していることを公表。かつて「お家芸」とされた化学、材料科学、物理のシェア低下が目立つという。 
 それでもなお、多くの人は、「天才や異才を育てるのは苦手でも、社会で生き抜く必要最低限の知識をできるだけ多くの人に植え付ける」“均質性”の点では、日本の教育は世界トップクラスだろうと思っていたはずだ。「引き算」や「割り算」を学び直す大人たちの存在は、そうした楽観を根底から突き崩すといえる。
日本の競争力はついに世界30位まで転落
 日本の教育は、天才や異才だけでなく、簡単な数学的知識をはじめ「普通の人材になるための基本スキル」を国民に身に付けさせることも、実は、十分にできなくなりつつある――。そんな仮説が正しければ、事は学術論文の数が減るどころでは済まされず、日本企業の競争力そのものにも当然、影響を及ぼす。
 その懸念は既に顕在化しつつある。
 世界の政財界トップによって構成される「ダボス会議」で知られるスイスのシンクタンク「世界経済フォーラム」は10月9日、19年の国際競争力ランキングを発表。それによると日本は141カ国・地域中で6位と、前年の5位から総合順位を1つ落とした。 
 今年5月には、日本企業の生産性や国際競争力に関するよりショッキングなリポートが報告されている。同じスイスの有力ビジネススクールIMDの「2019年版世界競争力ランキング」がそれだ。
 これによると、日本の総合順位は30位。比較可能な1997年以降では過去最低で、シンガポール(1位)、香港(2位)などの背中はほど遠く、中国(14位)やタイ(25位)、韓国(28位)をも下回った。かつて日本が1989年から4年連続で世界1位を記録していた同調査だけに、その没落がうかがえる。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00073/101000001/p2.jpg
次ページ天才よりも「普通の人材」が不足している
 IMDの調査は「経済のパフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」の4項目が主な判断基準で、順に日本は16位、38位、46位、15位だった。ビジネスの効率性、つまり企業の生産性と競争力が足を引っ張っていることは明らかだ。ではその原因は何か。IMDの日本に対する提言は明確だ。
 「Work-style reform and human resources development(働き方改革と同時並行で、人材開発を一層進める必要がある)」――。
 では、日本がIMDの競争力ランキングで1位の座を奪い返すために育成を強化すべきなのは、どのような人材か。そのヒントとなるのが、経済協力開発機構(OECD)による学習到達度調査PISA(ピサ)の成人版PIAAC(ピアック)だ。16歳から65歳の成人で24カ国・地域に居住する約15万7000人を対象にした最新の調査から導き出せる「日本が強化する余地のある人材」は次の3種だ。
1. 仕事に最低限必要な「読解力」を持つ人材
2. 仕事に最低限必要な「数的思考力」を持つ人材
3. 仕事に最低限必要な「IT活用力」を持つ人材
 その程度の基本スキルは日本国民であれば現役世代の大半がとっくに身に付けていると思う人もいるかもしれない。だが、PIAACを見る限り、日本人の現役世代の27.7%は「日本語の読解力の習熟度がレベル2以下」に状況にあり、例えば「図書館の図書目録を指示通りに検索し、指定された書名の著者を検索できない」可能性が高い。
天才よりも「普通の人材」が不足している
 数的思考力でも36.3%がやはり「習熟度レベル2以下」で、例えば「立体図を見ながら、その立体を分解すればどんな平面図になるか想像できない」恐れが強い。さらに、ITを活用した問題解決能力でも53.6%が「習熟度レベル2以下」で、「届いた電子メールの文面から必要な情報を読み取り、会議室予約を代行することが難しい」可能性がある。
 製造業であれ小売業であれ、上司からの指示やマニュアルの意味を理解し、顧客と円満な関係を築くには「相手の言葉を理解する読解力」が欠かせない。生産ラインであれ営業現場であれ、計画を円滑に進めるには「時間や生産量を管理する数的思考力」が不可欠だ。IT化が進むオフィスで「IT活用力」が大切なのは言うまでもない。
 もっとも、厳しい数字が並ぶPIAACだが、国際比較をすると日本の状況はさして悪くはない。例えば「読解力」で言えば、確かに10人に3人は習熟度は低いかもしれないが、平均点は296点とOECD平均(273点)を大きく上回り1位。つまり、日本も褒められたものではないが、他の国にはもっと母国語の読解力の低い人がたくさんいる。これをもってして「PIAACの結果は逆に日本の教育の質が高いことを示す証拠」との見方もある。
 だが教育に詳しい専門家ほど、こうした楽観論には否定的だ。
 日本は、日本で生まれ日本語を母語として育つ子供の割合が高く、移民の比率が高い国や多言語国家に比べ、「読解力」調査などではもともと圧倒的有利な立場にある。十分なハンディをもらっているにもかかわらず、10人中3人が読解力が低いという現実をむしろ深刻に受け止めるべきだ――というのがその理由だ。
「引き算を習う大人たち」が示す未来
 人材難による企業競争力の低下が指摘される日本。だが、企業の競争力を下げているのは、天才や異才の不足というより「企業の現場で、上司の指示を理解し効率よく正確に作業を遂行する普通の人材」の不足である可能性が見えてきた。
 だとすれば、要因の1つに「普通の人材になるための基本スキル」を国民に身に付けさせるはずの日本型教育の劣化があるのはおそらく間違いない。「社会に出てから引き算を習う大人たち」は、その兆候の1つでしかない。


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言語能力が問題
都内のいわゆるトップランク大学で法律を教えているが,言語能力不足で,定期試験の論述式問題の趣旨を把握できない学生は珍しくない。「教科書の読めない子どもたち」という本の指摘は,現場にいると今更という感を否めない。
 単純な計算すら出来ないことは大問題だが,算数の設問自体を理解できない子ども(大人も)を放置してきた文部行政が問題の根幹にあると思う。
 小中学校でも進級テスト・落第制度が必要だと思う。学生のリポートを読むと,留学生の方が日本語の文章力が高い。
2019/10/15 06:38:425
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00073/101000001/?P=3&mds


「日本の国際競争力30位」から見えてくる経営者の危機感

菊池 貴之
日経ビジネス記者
2019年5月29日
39 72%全1285文字
 スイスのビジネススクールIMDは28日、2019年版の「世界競争力ランキング」を発表した。日本の総合順位は前の年から5つ下がり、30位だった。

(出所:IMD)

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/052900397/p1-1.jpg

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/052900397/p1-2.jpg
(出所:IMD)

[画像のクリックで拡大表示]

 IMDのランキングは63の国や地域を対象にしている。首位はシンガポール、以下香港、米国と続いた。アジアでは中国が14位、台湾が16位だったほか、マレーシアが22位、タイが25位、韓国が28位と日本より上位に入った。
 今回のランキング低下の理由について、IMDはビジネスの効率性の低さや政府債務の多さなどを理由に挙げている。日本は同ランキングで1989年から4年連続で世界1位を記録したこともあったが、2010年以降は25位前後で推移しており、競争力は低下傾向だ。とはいえ、世界経済フォーラム(WEF)の2018年の調査「世界競争力報告」では日本の国際競争力は世界で5位。日本が国際競争力を失っていると一概には言い切れない面もある。
 国際競争力を判断する基準は大きく4つ。経済のパフォーマンス、政府の効率性、ビジネスの効率性、インフラだ。
 4つの基準のうち、インフラは15位と比較的高い評価だった。より細かい項目を見ると、携帯機器でのブロードバンド普及率や企業が持続可能な開発を優先している点などが1位になっている。インフラやICT(情報通信技術)の普及を高く評価しているのは、日本が総合順位で5位だったWEFの調査でも同様だった。
 一方、4つの基準の中で最も順位が低かったのがビジネスの効率性で46位だった。より細かく見ると、起業家精神、国際経験、企業の意思決定の機敏性、ビッグデータの活用や分析については63位と最下位の評価だった。
 ただ、これらの順位付けには「日本の経営者へのアンケート調査が反映されている」。国際競争力に関する調査に詳しい三菱総合研究所の酒井博司氏はこう指摘する。38位だった政府の効率性に含まれる政府債務の多さなど、統計データをもとにしている項目もあるが、IMDは統計データだけでなく、それぞれの国の経営層へのアンケート調査をスコアリングに使っている。
 つまり、最下位となった各項目は「実際の競争力というより、日本の経営者が『弱い』と危機感を持っている領域といえる」(酒井氏)。
 バブル崩壊から平成の時代を経て、新興国が台頭するなか、世界経済における日本の地位は確かに下がってきた。少子高齢化による人口減もあり、日本経済への悲観論は絶えない。経営者の現状に対する強い危機感が今回の順位低下の背景にある。実際には、「30位というほど日本の国際競争力は低くない」(酒井氏)。
 「前年より5つ下がって30位」という順位も、経営者が自らの弱みについて危機感を持った結果だと考えると悪くないのかもしれない。弱みと感じてる項目について、改善策を着実に実行に移していくことが求められている。
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https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/052900397/?i_cid=nbpnb_arc


[議論]50代よ、再起せよ〜対談:河合薫×中野晴啓(前編)
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河合 薫

他 1名
健康社会学者(Ph.D.)
2019年10月15日

ギフト



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全5157文字

 役職定年や定年延長、新卒一括採用など「日本型雇用システムの限界」が指摘されていますが、そのしわ寄せが目に見えて出ているのが、大企業の50代社員です。役職定年などによる賃金抑制や、技術の急速な変化などによって求められるスキルが変わり従来の経験が生かせなくなってきていることから、50代社員のモチベーション低下などが多くの企業で課題になっています。日本企業を活気づける上で不可欠な「50代問題」について健康社会学者の河合薫氏とセゾン投信の中野晴啓社長が対談した。10月14日号特集「トヨタも悩む新50代問題 もうリストラでは解決できない」もあわせてご覧ください。(注:記事全文の閲覧とコメントの投稿は有料会員限定です)
>>「目覚めるニッポン」シリーズ記事一覧へ

(写真:村田和聡、以下同)
「使えない、働かない」と言いわれる50代はどんな人?
司会:世代別にそれぞれ組織の中でどのように他の世代を見ているか、という編集部で取った読者アンケートで「会社の中で働かない世代は50代」という結果があります。しかも、若い世代ほど50代が問題という意見が多いのです。中野さんと河合さんは今の企業における50代、シニア社員の状況というのをどう見ていらっしゃいますか?
中野晴啓氏(以下、中野):今、同世代の日本企業に勤める50代の人たちを見て感じるのは、いわゆるインエキスパーティーズという、一定のスキルを持っていない人が多いんじゃないかと思いますね。「何やってるの?」と聞くと「管理職やってるよ」と。管理職って専門性じゃないですよね。でもその理由は明確で、日本は過去において日本型経営システムの中心がゼネラリストの育成だったからだと思いますが。
河合薫氏(以下、河合):そうですね。私もたくさんの人にインタビューをしてきているのですが、スキルを持たずに肩書が上がってきた人たちは「経理は分かりませんけど、経理部長はできます」ということをびっくりするくらい真面目に言っちゃうんです。
 一方で、それ以外の技術系の人とか、あるいは海外に行く機会が非常に多い業界の人などは、意外とみんなスキルを磨いていて自分の売りを持っているんです。ですから一番しんどいのはやっぱりホワイトカラーの事務職の人たちですよね。

河合 薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。1988年、千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了(Ph.D.)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は700人に迫る。 日経ビジネス電子版に「河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学」を連載中。
中野:そうなんです。特に今の50代は、年功序列という日本的システムの中に身を置いてきた人たちですよね。言ってみれば能力に関係なくみんな同じ年齢で課長や部長になって、時期がくればそれなりに偉くなって。それで偉くなっていくと、仕事をしなくなるんですね。今では「パワハラ」とも言われかねない仕事の仕方で、全部部下にやってもらえたのです。自分は一切何もできなくても存続、存在できたんですね。
 しかし、この間まで機能していたその仕組みが急激に機能しなくなってきていて、崩れ始めているのをすごく感じます。ですからゼネラリスト管理職の人たちは、自分のポジションが専門性以外のことでカバーされてきていたことに気付いていて、ちょっと居場所を失っている。それが「使えない、働かない」というふうに見えるのではないでしょうか。

中野 晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信社長。1987年、現在の株式会社クレディセゾン入社。セゾングループの関連会社にて債券ポートフォリオの運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金の運用や海外契約資産などの運用アドバイスを手がける。その後、2006年セゾン投信株式会社を設立。現在2本の長期投資型ファンドを運用、販売している。
次ページ50代を使えなくしたのは組織か?個人か?
河合:私も中野社長もそうですけど、今の50代というのは何やかんや言ってバブル世代で、30代までイケイケだったじゃないですか。だからこんな日が来るなんて思ってもいない。バブルがはじけて大リストラ時代が到来しているのに、日本の社会構造が変わるなんて思っていない。
中野:そうでしたね(笑)。
河合:企業によってだいぶ時差はありますけど、私はその社会構造は1990年代からある程度崩れてきていると思っているんです。しかし自分の頭上ではもう冷たい雨が降っているのに、その雨に激しく当たらない限りリアリティーを持てないので、今の50 代というのはいつまでも幻想を持ち続けちゃった、というのがあると思います。それが一つの大きなとらえ方ですね。
50代を使えなくしたのは組織か?個人か?
河合:もう一つは、会社側の問題です。今の50代以上はぬくぬくとやって年功序列で偉くなった。自分のスキルも磨かずに自立してないといわれているけど、個人だけの問題ではないと思うんです。
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https://business.nikkei.com/atcl/forum/19/00024/100800037/?P=2&mds

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/387.html

[経世済民133] 再来した大リストラ時代と「雇用流動化」礼賛の幻想 正社員「逆ギレ」も、非正規の待遇格差が招く荒れる職場
再来した大リストラ時代と「雇用流動化」礼賛の幻想

河合 薫
健康社会学者(Ph.D.)
2019年10月15日
3 80%

https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00044/?SS=imgview&FD=-1040850507

全5807文字

(写真:Shutterstock)
 「もうね、会社としてはできるだけ65歳まで雇いたくないんです。なのに今度は70歳まで雇えって言ってるでしょ。その結果、何が起こってると思います? 強烈な肩たたきです。

 うちの会社では48歳になると希望退職制度を利用できるんですが、雇い続けたい人からやめてしまうんです。だからターゲットを絞って、圧迫面接を繰り返す。あの手この手でじわじわ追い詰めるんです。特にメンタルを低下させてる社員は狙われます。50代になってメンタルやってる人って、やっぱり色々と問題がありますからね。

 ただ、あまりやりすぎるとパワハラになってしまうから気をつけなきゃなんですけど、会社側もわりと強気で。多分、以前より転職しやすくなったとか、日本型雇用はもたないっていう意見が増えてるからだと思います。

 僕は圧力をかける方なんで、正直しんどいですよ。

 圧力かければかけるほど相手は意固地になる。根比べです。人事には数値目標が与えられるので仕事なんだと自分に言い聞かせてますけど、俺何やってんだろうと思うことは正直あります」

 これは半年ほど前にインタビューしたある執行役員の男性が話してくれたこと。

すでに大リストラ時代が再来している
 彼の話を聞いたときには「まぁ、そうなるだろうね。だって会社は50歳以上は戦力外としか見てないんだもん」とやるせない気分に陥っただけだったが、今は絶望的な気分に襲われている。

 先日東京商工リサーチが公表した「希望・早期退職」者数の合計によると、なんと今年1〜9月までの上場企業が募った「希望・早期退職」者数の合計が1万342人で、6年ぶりに年間1万人超えが確定したというのである。

 問題はその理由だ。これまでは「景気が悪くなる→希望退職者を増やす」が定説だったが、業績の良い企業でも将来を見込んで続々と「お引き取りください!」攻勢に出ているというのだからたまったもんじゃない。

 「バブル期に大量入社した社員の過剰感を是正し、人員削減で浮いた金を若手や外部人材に回す。今後もこの動きは続く可能性は高い」(東京商工リサーチ関係者談)

 具体的には、最も多かったのが富士通の2850人で、ルネサスエレクトロニクス(約1500人)、ジャパンディスプレイ(約1200人)、東芝(1060人)、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス(950人)、アステラス製薬(約700人)、アルペン(355人)、協和キリン(296人)、中外製薬(172人)、カシオ計算機(156人)と続いていた。

 既に一年前から、東芝はグループで7000人削減、富士通はグループで5000人を配置転換、NECは3000人削減、三菱UFJフィナンシャル・グループは9500人分、三井住友フィナンシャルグループは4000人分、みずほフィナンシャルグループは1万9000人分の「業務量」削減……などなど、50代のバブル世代に「リストラの嵐」が吹き荒れていたけど、「将来」を見越して、“おじさん・おばさん社員”が切られている。「将来」っていったいいつ? その「将来」に切りまくっている経営陣は会社にいるのか?

次ページ「日本は解雇のハードルが高い」は間違い
 私はこれまで何度も、「追い出し部屋もやむなし。だって、日本ではクビにしたくてもできない」「日本の正社員ほど守られてる会社員はいない」という意見を耳にしてきた。

 そして、二言目には「終身雇用が悪い」「解雇規制が厳しすぎる」「流動性がない」とのたまい、解雇規制を緩和すべし、流動性を高めるのが先決、そうしないと経済成長はない!と鼻息を荒くする人たちに何度も会った。

 解雇規制が厳しい、解雇のハードルが高い、といわれる国で、これだけの人たちが「希望退職」という美しい言葉の名のもとに仕事を打ち切られている。しかも、それが景気や企業の業績に関係なく進められているのだ。

 そこで今回は、
「解雇のハードルが高い」は本当か?
雇用の流動性は本当に低いのか?
流動性が高まれば経済成長するのか?
 という点を様々なデータから整理した上で、「リストラの先」にあるものについて考えてみる。これらの“当たり前”とされていることの真偽を確かめることで、隠されている本当の問題に向き合おうと思っている次第だ。

「日本は解雇のハードルが高い」は間違い
 まず、解雇のハードルの高さについて、経済協力開発機構(OECD)で使われるEPL指標(Employment Protection Legislation Indicators)で、欧米諸国と比べてみよう。EPL 指標は、雇用保護法制の強さを指数化したもので、指数が高ければ高いほど、規制が厳しいことを意味する。

 欧州、特にオランダ、デンマーク、スウェーデンなどでは、1970年代から流動的な労働市場政策を進めてきた。一方、ドイツは欧州の中でも比較的解雇規制が厳しいとされている。なので、ここではこれら4つの国に米国を加えて比較してみる(OECD Employment Outlook2013より)。

 正規雇用の場合、日本のEPLは2.09。これはOECDの平均2.29を下回り、雇用保護が低い=解雇しやすいグループに入る。一方、米国は1.17とかなり低い。

 一方、デンマーク2.32、スウェーデン2.52、オランダ2.94といった国々では、いずれも日本を上回り、解雇規制が厳しいドイツ2.98とさほど差はない。

 では、非正規雇用ではどうか。

 OECD平均が2.08なのに対し、日本は1.25。スウェーデン1.17 、オランダ1.17、ドイツ1.75、デンマーク1.79、米国0.33だ。

 つまり、「日本は終身雇用制度があるから、クビにできないから追い出し部屋やむなし」「解雇規制が厳しいから希望退職で圧力をかけるしかない」というのは間違い。EPLで比較する限り、正規雇用・非正規雇用とも日本はどちらかといえば解雇しやすい国に分類される。解雇への制約の存在を「日本型雇用システムの最大の特徴」と捉えるのは適切とはいえないのである。

次ページ日本の雇用流動性は必ずしも低いわけではない
 また、雇用の流動性が高いというイメージのある米国も、近年は転職率が低下しているという指摘がある。企業側が長期雇用の利点を生かそうとしている動きに加え、IT技術の進歩が速いために転職する場合に「今のスキルが陳腐化している」という現実があり、働く人にとっても転職の利点が激減しているのだ。
 そもそも欧州の国々では「労働者の人権を守る」哲学が浸透しているので、解雇するには正当な理由をかなり厳しく要求する法制が細かく決められている。さらに、こちら(「正社員「逆ギレ」も、非正規の待遇格差が招く荒れる職場」)でも書いた通り、欧州は原則的に有期雇用は禁止だ。
 有期雇用にできる場合の制約を詳細に決めていて、期間も限られている。日本のように、非正規で何年も雇い続けることができない上に、非正規は「企業が必要な時だけ雇用できる」というメリットを企業に与えているとの認識から、非正規雇用には不安定雇用手当があり、正社員より1割程度高い賃金を支払うのが“常識”である。
 OECDが日本に改善を求めているのも、実はこの点である。日本では「正社員は保護されすぎ」という意見が一般的だが、そうではなく非正規を都合よく使っていることを問題視しているのだ。
日本の雇用流動性は必ずしも低いわけではない
 では、次に雇用の流動性についてみてみよう。雇用の流動性が高ければ、次の職場に簡単に移動できるため失業期間が短くなるはずである。ところがここでも驚く結果が得られている(『データブック国際労働比較2018』独立行政法人 労働政策研究・研修機構)。

(出典:『データブック国際労働比較2018』独立行政法人 労働政策研究・研修機構)

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 ご覧の通り、OECDのデータでは6カ月以上1年未満でほとんど差がない。この傾向はその他の失業率を示したデータでも同様に認められている。一方、1年以上の長期失業率は日本39.5%に対し、デンマーク22.5%、オランダ42.7%、スウェーデン16.8%、米国13.3%となっている。
 「ほらね! やっぱり日本は流動性が低いから長期失業の人が多い!」と解釈するのは短絡的だ。失業期間や失業者の定義は国によって違うし、景気動向や年齢構成によっても異なる。日本では女性が育児のために一時的に労働市場から離れる割合が高いのと、高齢化の影響もある。日本の高齢者が欧米に比べ70歳まで働きたい、働かざるを得ない状況にあることは、周知の事実だ。
 もちろん失業率のデータだけで一概に結論づけることはできないけど、少なくとも日本の流動性が低いと言い切れる数字ではなく、欧州の国々と比較しても、日本の労働市場のパフォーマンスは必ずしも悪くないのである。
次ページリストラは残った社員にも悪影響を与えている
 次に、流動化を進めれば経済成長するのかということを、賃金の変化から見てみよう。転職には、自分のキャリアアップのためにする自主的な場合と、希望退職も含めて会社都合の解雇があるが、ここでは後者にスポットを当てる。
 流動性の高い米国ではこの手の調査が蓄積されていて、全体的には「転職で賃金が減る」という結果の方が圧倒的に多い。割合にすると15%程度の減額で、その状態は5年以上続き、回復したとしても2〜3%程度とされている。特に景気が悪い時に解雇されると、20年近くも低賃金の状態が持続するという実証研究もある。
 デンマークの場合も同様で、解雇された年は12〜15%程度下がる。ただ、3年目以降は徐々に回復するとされている。
 つまり、「流動性が高くなる→スキルが活かせる→賃金が上がる」という方程式は必ずしも成立しないのだ。
 特に日本の場合、どんなに流動性が高まってもいったん「正社員」の座を離れると「非正規」として雇用されるケースが圧倒的に多く、特に50代では正社員雇用を望むのはまず無理。
 実際、「雇用動向調査」でも、20〜30代では転職後に賃金が増加する人の割合が高いが、特に男性は40代後半以降、減少する人の方が多く、これが「将来」的に改善するとは到底思えない。
 さらに、大企業では50歳以上でリストラした人を子会社や関連会社に押し付けるケースも散見され、その人の賃金を払うために他の従業員の賃金が抑制されるという不都合な真実も存在する。
 つまるところ、雇用流動化論を強く主張する人たちが想定しているような、「生産性の低い産業や企業から生産性の高い産業や企業に人々が移れば、経済全体の成長率も高まる」という都合のいい現象は起きていない。
 逆に、生産性の低い産業に、低賃金で、不安定な状態で雇用されるパターンが実態に近いので、「流動性を高めることで生産性を高める」という理論は妄想に近いかもしれないのだ。
リストラは残った社員にも悪影響を与えている
 最後に、解雇が労働者に与える影響、すなわち「リストラの先」にあるものについて、得られている知見を紹介する。
 基本的な理解として、リストラや失業が、体の健康や精神健康と関連が深いことは、以前から指摘されてきた。たとえば、失業している男女は、超過死亡(予想される死亡数に対しての増加分)の頻度が高いほか、主観的健康度も低いというのが研究者の一致した見解だった。
 そんな中、リストラという“イベント”そのものが健康に悪影響を及ぼすのか、それとも失業しているという“状態”が悪いのかを検討するために、1990年代、イギリスで大規模な調査が行われた。
 その結果、リストラ直後にほとんどの人の精神健康が悪化したのに対し、失業期間との関連は認められなかった。また、周りが次々とリストラされ、「自分もリストラされるかもしれない」との不安を感じた人は、リストラされた人と同じくらい精神的健康度の低下が認められたのだ。
 つまり、リストラというイベントは当人だけでなく、周りの社員にも「自分もいつか……」という恐怖を与え、会社からすれば「わが社の社員として頑張ってほしい!」と期待している人のメンタルにまで悪影響を及ぼしかねない「悪行」なのだ。
 また、米国の実証研究では、リストラで平均余命が1年から1年半ほど短くなるとの結果もある。同様の結果は、ノルウェーでも認められていて死亡率は14%上昇する。
 さらに、リストラの影響は「次世代」にも影響する。
 カナダで行われた調査では、父親のリストラがその子どもが大人になったときの年収を9%下げることが分かった。父親のリストラで収入が下がるため、子供の教育費用を減少させたり、父親が不健康になることが子どもの成長に悪影響を与えるのだ。
 これらの結果から言えるのは、リストラが社会に及ぼす影響は広範囲にわたるってこと。本当に「未来を見据える」のであれば、安易にリストラに手を出すのは本末転倒。「今いる社員」が仕事への意欲を高められるような施策を講じることが先だ。
 実際、日本が「世界」の代表と仰ぎみる米国では、社員を長期雇用する企業が増えており、長期雇用におけるプラス面の研究が近年急速に広がっている。
 念のため断っておくが、私は転職したい人のスキルが生かせるような流動性は必要だと考えている。だが、ただ流動性さえ高まれば万事うまくいくみたいな幻想は危険だし、捨てた方がいい。
 どんなに希望退職や早期退職というオブラートに包んだ表現を使っても、その実質はリストラであり、それは1人の人間の人生を大きく翻弄する“刃(やいば)”であり、周りにも悪影響を及ぼす最悪の「経営手段」だ。
 こうした意識が薄らいでいるのは、その凶器に対して鈍感な人が増えてしまったのか、あるいは「自分には関係ない」と思っている人たちの発言力が増しているからなのか。そして、きっと「だから50代はコストが高いわりに働きが悪いことが問題なんだよ!」と、年齢の問題にされてしまうのでしょうね、きっと。

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コメント4件
47
会社が絶対に倒産しないという前提で考えていませんか。倒産しない会社は公務員ぐらいだと思いますよ。いくら大手であっても、民間企業であれば倒産リスクはあるので、企業を継続するためには、リストラでシュリンクする手法は当然にあると思います。民間企業は、非正規社員ならぬ、いわば非正規企業なので、リストラせずに頑張れるだけ頑張って、いよいよになったら会社をたたむのが良いという考え方であれば、それはそれでスジは通っています。いっその事、リストラなどせずに、一度会社を解散して、全員クビにした後、再雇用したほうがスッキリするかもしれません。その時、再雇用されない人は、リストラ候補であったと考えるのが自然であり、結果は、同じになると思います。わざわざ会社を解散して再度立ち上げるより、合理的で経済的であるので、リストラするだけであり、給料が天から降ってくるような感覚の人には永遠に理解できないように思います。
2019/10/15 05:46:511返信いいね!


codeblueline
本文の最初の方に出てくる「執行役員の男性」って、いわゆる会社経営の決定権を持たない管理職ってことなんでしょうが、この人達にはどういうスキルがあるんですかね?
ワタシは大企業とは縁の無い人生送ってきたんでよく知らないんですけど、こういうデカイ企業のマネジメント担当している人には、どういう研修がなされてきたのか?「新人研修」はよく聞くけど、「管理職研修」ってやってるんですか? おおよそ、本文の感じからはやってるようには見えないと言いますか、解雇される人より、この人のほうが大丈夫なんだろうか?って感じなんですがw
会社も国も、実際には経済成長なんて信じてなくて、ただ社内に居る低パフォーマンスな人達を一掃したいというのがあるんじゃないか。自分は、それはそれでしょーがないんじゃないかと思ってるんです。要はその人個人がどれだけ稼げる力を持ってるか、スキルもそうだけど、営業力とか含めての稼ぐ力があれば、たとえ追い出されたところでこういう事態は然程気にならない。
気にはならないんだけど、雇用流動化のもう一つ先、解雇規制を解除しましょうみたいな話になった時に、では解雇する側、マネジメント側の人達は、本当に人を管理したり、解雇するだけのスキルを持っているのか?っていう、そこは厳しく問われると思いますが。
2019/10/15 07:25:38返信いいね!


プレリタイア
働き盛りをリストラする前に、70歳役員定年の促進だね。日本の企業、団体には過去の栄光だけで高給で処遇されているやからが多過ぎる。そこも切り込んでくださいな。
2019/10/15 07:32:41返信いいね!


寺子屋
日本において解雇規制は非正規社員には関係なく、正規社員でも零細企業や中小企業には関係ないから、規制が厳しいというのは厳密には中堅〜大企業の正社員のみにあてはまるのが実態でしょう。日本全体では雇用をもっと守られるべき弱者が多い一方、大企業で機能せずに足を引っ張る中高年も一定数いるのだから、彼らを足して割った平均値で話をするのはあまり意味がないと思います。
2019/10/15 08:02:301


 

正社員「逆ギレ」も、非正規の待遇格差が招く荒れる職場

河合 薫
健康社会学者(Ph.D.)
2019年9月10日
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全5454文字

(写真:shutterstock)
 「非正規と呼ぶな!」と指示したメールが厚生労働省内に出回ったらしい。先週あちこちで批判されていたので、ご存じの方も多いと思うけれど簡単に振り返っておく。

 問題のメールは今年4月に同省の雇用環境・均等局の担当者名で省内の全部局に「『非正規雇用労働者』の呼称について(周知)」という件名で通知されたもので、国会答弁などでは「パートタイム労働者」「有期雇用労働者」「派遣労働者」などの呼称を使うことを指示。「非正規」のみや「非正規労働者」という言葉は用いないよう注意を促すものだった。

 また、「『非正規雇用』のネーミングについては、これらの働き方には前向きなものがあるにもかかわらず、ネガティブなイメージがあるとの大臣の御指摘があったことも踏まえ、当局で検討していた」と記載され、「大臣了」という表現もあったという。

 報道を受け根本匠厚生労働相はメールの指示や関与を否定。また、厚労省は内容が不正確だとし、文書やメールを撤回している。

 厚労省は、2010年版の「労働経済の分析」(労働経済白書)で、1997年と2007年の年収分布を比較し、10年間で年収が100万〜200万円台半ばの低所得者の割合が高まり、労働者の収入格差が広がったのは、「労働者派遣事業の規制緩和が後押しした」と自ら国の責任を認めていたのに……。この期に及んで言葉狩りに加担するとは実に残念である。

「非正規」の言葉を避ける“空気”が醸成されている
 いったい何度、発覚、否定、撤回、が繰り返されていくのだろうか。

 今回の問題を、役所の知人など複数名に確認したところ、かねてから永田町では「非 正規という言葉はイメージが悪い」「希望して非正規になっている人も多い」という意見があったそうだ。

 「老後資金年金2000万円問題」が浮上し野党が行ったヒアリングでも(6月19日)、年金課長が「根本厚労相から『非正規と言うな』と言われている」と発言し、21日に根本厚労相が記者会見で課長の発言を否定したこともあった。

 要するに、メールを撤回しようと何だろうと、「非正規という言葉はなくそうぜ!」という“空気”が出来上がっていたのだろう。

次ページ「非正規雇用」vs「正社員」という構造が生まれた

いずれにせよ、大抵こういった悪意なき無自覚の「言葉狩り」が起こるときは、決まって知識不足、認識不足、無知が存在する。

 実際、3日の記者会見で、根本厚労相は以下のようにコメントしており、私はこのコメントの方がむしろ問題だと考えている(抜粋要約)。

 「正社員に就けずにパートなどの働き方を余儀なくされている方や、積極的にパートなどの働き方を選択している方など、多様な働き方が進んでいる。単に『正規』『非正規』という切り分け方だけでよいのか、それぞれの課題に応じた施策を講ずるべきではないか、と思っている。

 パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者に寄り添った政策を展開して、同一労働同一賃金の実現に向けて全力で取り組んでいく、これが私の姿勢であり、基本的な考え方です」

 ……ふむ。「それぞれの課題」「同一労働同一賃金」という言葉を大臣が使っているので、一見問題があるとは思えない発言だし、ご本人からはいっさい悪意は感じられない

 だが、「働き方」と「働かせ方」は全くの別物である。これを混同していることにこそ、大きな問題がある。

 働き方の主語は「働く人」。働かせ方の主語は「会社」だ。

「非正規雇用」vs「正社員」という構造が生まれた
 パートタイムだろうと、有期雇用だろうと、派遣だろうと、はたまた正社員だろうと「働く」ということに全く違いはない。にもかかわらず、企業が非正規と正規という単なる雇用形態の違いで、

賃金が低い
残業代が出ない
産休や育休、有休が取れない
時短労働ができない
社内教育の機会がない
昇進や昇給の機会がない
雇用保険に入れない
簡単に「雇い止め」にあう、etc.etc.…
と「働かせ方」を区別したのだ。

 労働基準法や男女雇用均等法で禁止されていることを企業側が理解していない場合も多く、非正規雇用者は権利があるのに行使できない。

 しかも、非正規社員が雇用契約している相手は「企業」だ。ところが企業による「待遇格差」が慣例化したことで、まるで「正社員さま」と契約しているかのような事態も発生している。

 「私たちが、誰のために働かされているか分かります? 正社員のためですよ。何もしない正社員のために、契約社員は必死で働かされているんです」

 ある会社で非正規社員として働く女性が、こう漏らしたことがある。

次ページバカにされたくない“正社員”が契約社員を責める
 彼女の職場は転勤が多かったため、出産を機に退職。その後は育児に専念していたが、転勤問題が取り上げられるようになり、人事部のかつての同僚から「もし働く気があれば、契約社員として同じ部署で働けるけど?」と誘われ、昨年、会社に復帰した。正社員だった時と比べると、年収は4割ほど下がったという。

 「以前は自分の仕事が終わればさっさと帰ってしまう契約社員たちを『楽でいいよなぁ』と、腹立たしく思ったことも正直ありました。でも、いざ自分が逆の立場になってみると、契約社員の方が真面目に働いていることに気づきました。

 契約を更新してもらうためには、数字で成果を出さなければならない。残業代も出ませんし、限られた時間の中で効率よく仕事をこなさなければなりません。

 正社員だった時の方が楽だったようにさえ思います。とりあえずは毎月の給料は出るし、ある程度結果を出せば、昇給も昇進もありますから」

 「自分が契約社員になったら、正社員の怠慢と横柄な態度も目に付くようになってしまって。例えば、契約社員が事務書類の提出が遅れると、『意識が低い』だの『モチベーションが低い』だのマイナスの評価を受けます。ところが正社員だと『ちょっと忙しくて』という言い訳が通る。上司もそれを容認するんです。

 それにね。正社員ってある程度までは横並びで昇進し、仕事も任されるようになるけど、契約社員は採用される時点で会社が求めるレベルに達しているので、その意味では契約社員の方が仕事ができます。おそらくそのことを正社員も肌で感じているのでしょう。特に私のように出戻りだと、年下の正社員はなめられたくないのか、ものすごい上から目線で対応してきます。

 20代の正社員が顧客にてこずっていたのでアドバイスしたら、『正社員をなめるなよ!』と言われて驚きました。同期からは『非正規は気楽でいいよな?』と言われることもあります。給料が下がっても仕事が好きで、仕事をしたくて復帰したのに……。正社員ってそんなに偉いんでしょうか」

バカにされたくない“正社員”が契約社員を責める
 この女性はインタビューに協力してくれた半年後に退職。メンタル不全に陥り、「やめる」という選択肢しかなかったという。

 “正社員”から冒涜(ぼうとく)された経験を持つのは、この女性に限ったことではない。

 「『パートなんていつだってクビにできるんだぞ』といつも言われるんです」と嘆く30代のパート社員もいたし、上司に意見したら『契約の身分で偉そうなこと言うな!』と恫喝(どうかつ)された40代の契約社員もいた。

 人は自分が満たされないとき、他人に刃(やいば)を向けることがある。自分がバカにされたくないから、他人をバカにする。そんなとき、非正規という会社との契約形態が、かっこうのターゲットになることだってある。会社が待遇格差をつけたことで、正社員が妙な優越感を持つようになり、本来の性格までゆがめてしまったのだ。

 揚げ句の果てに、何か事件が起こると「非正規」だの「契約社員」だのといった雇用形態の違いに原因があるかのように利用されるようになった。

 繰り返すが、その“身分格差”を生んだのは、「非正規」という言葉ではなく、企業による待遇格差だ。働かせ方の問題である。「それぞれの課題に応じた施策を講ずるべきだ」(by 根本厚労相)などとまどろっこしいことを言っている場合ではないのではないか。

 これまで、政府は基本的に「待遇格差」を禁じ、「正社員化」を進める法律を制定してきたのだから、法の抜け穴を巧妙に利用し、差別をしている企業を根こそぎ罰すればいい。それだけである程度非正規の問題は解決されるはずだ。

次ページ非正規社員が正社員より給与が高い国も
 実はこの“身分格差”問題は、日本の労働史を振り返ると「男社会」により生まれたことが分かる。

 さかのぼること半世紀前。1960年代に増加した「臨時工」に関して、今の「非正規」と同様の問題が起き社会問題となった。

 当時、企業は正規雇用である「本工(正社員)」とは異なる雇用形態で、賃金が安く不安定な臨時工を増やし、生産性を向上させた。

 そこで政府は1966年に「不安定な雇用状態の是正を図るために、雇用形態の改善等を推進するために必要な施策を充実すること」を基本方針に掲げ、1967年に策定された雇用対策基本計画で「不安定な雇用者を減らす」「賃金等の処遇で差別をなくす」ことをその後10年程度の政策目標に設定する。

 ところが時代は高度成長期に突入し、日本中の企業が人手不足解消に臨時工を常用工として登用するようになった。その結果、臨時工問題は自然消滅。その一方で、労働力を女性に求め、主婦を「パート」として安い賃金で雇う企業が増えた。

 実際には現場を支えていたのは多くのパート従業員だったにもかかわらず、パートの担い手が主婦だったことで「パート(=非正規雇用)は補助的な存在」「男性正社員とは身分が違う」「賃金が低くて当たり前」「待遇が悪くても仕方がない」という常識が定着してしまったのだ。

非正規社員が正社員より給与が高い国も
 それだけではない。

 「なぜ、何年働いてもパートの賃金は上がらないんだ!」という不満が出るたびに、企業は「能力の違い」という常套句(じょうとうく)を用いた。正社員の賃金が職務給や年功制で上がっていくことを正当化するために、パートで働いている人の学歴、労働経験などを用い、能力のなさを論証することで、賃金格差を問題視する視点そのものを消滅させたのである。

 私は今の非正規雇用の待遇の悪さは、こうしたパートさん誕生の歴史が根っこにあると考えている。それゆえ、とりわけ女性の非正規の賃金は低い。さらに「正社員を卒業」したシニア社員が非正規で雇われるようになり、ますます非正規雇用の全体の賃金も抑えられるようになってしまったのだ(参考記事:「他人ごとではない老後破綻、60過ぎたら最低賃金に」)。

 だいたい雇用問題では、常に「世界と戦うには……」という枕詞が使われるけど、欧州諸国では「非正規社員の賃金は正社員よりも高くて当たり前」が常識である。

 フランスでは派遣労働者や有期労働者は、「企業が必要な時だけ雇用できる」というメリットを企業に与えているとの認識から、非正規雇用には不安定雇用手当があり、正社員より1割程度高い賃金が支払われている。イタリア、デンマーク、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどでも、非正規労働者の賃金の方が正社員よりも高い。「解雇によるリスク」を補うために賃金にプラスαを加えるのだ。

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MSCI KOKUSAI連動が最高!

この著者の言説には一応注目している。ただこの記事は俗論。

社会学者は労働法に無知なのが多い。

正規と非正規の待遇格差は能力に基づくものではない。

それは「契約」に基づく。

能力の高い人間を高く処遇しなければならないという法律が存在し...続きを読む

2019/09/15 15:15:032返信いいね!


アラフィフさん

正規や非正規の立場でこの問題を擁護する人も、逆の立場を経験すると考えが変わると思います。
国も企業も「働き方の多様性」を言い訳に責任を放棄して、力のない労働者にしわ寄せがきています。
正社員の流動性を高めれば、ぼろ儲けで大きくなり過ぎた派遣...続きを読む

2019/09/17 11:21:071返信いいね!


kojaro

正社員が非正規社員を、「非正規社員である」ことを理由に攻撃する場面って、お目にかかったことがないのですが、本当にあるのでしょうか?
本当に仕事ができて、協調性もある人間を馬鹿にすることは、普通の良識ある人間はしません。その正社員個人の頭がお...続きを読む

2019/09/18 09:16:161返信いいね!
3件の返信を表示


テラ2007

「同一労働、同一賃金」という考え方が間違っているのだからどうしようもない。
インテルとサムスン電子で働いている事務員は、同じ作業をしても給与に違いが出る。これが会社の力の差であって、この差を産み出しているのが正社員の力だと思います。
正社員...続きを読む

2019/09/21 09:24:26返信いいね!
1件の返信を表示


定年君

独立会社長

いつもながら河合先生のご意見に、新しい気づきをいただいています。
働き方と働かせ方は違うという視点の違い。
差別される側とする側の視点の違い。
私も定年後に会社を立ち上げ、契約で仕事を請け負っています。
一時は消費税を払うまでになりましたが...続きを読む

2019/09/23 12:44:18
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00039/

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/388.html

[経世済民133] 東アジアの破局的な少子化と、急ぎ過ぎた近代化 日本と中国と韓国が直面する「少子化」 アジアの労働者が日本で働いてくれなくなる日 少子化が急速に進むベトナム 日本人の介護などできない?
東アジアの破局的な少子化と、急ぎ過ぎた近代化


八日目の蝉
@yu1096
今の20歳が40歳の半分しかいないって本当にいい話だと思う。戦争でもあったのかな?

399
18:22 - 2018年11月7日
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299人がこの話題について話しています

 たぶん、このツイートはブラックジョークのつもりで書かれたものだろう。けれども私には全く冗談には思えなかった。


p_shirokuma(熊代亨)
@twit_shirokuma
「今の20歳は40歳の半分しかいない。戦争でもあったのかな?」というツイート、ジョークのつもりかもだけど、これ、実際戦争に匹敵するようなカタストロフィがあったのに気付いている人があまりいない、ってグロい状況を反映しているなぁ、と思った。

14,772
10:25 - 2018年11月8日
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10,632人がこの話題について話しています


p_shirokuma(熊代亨)
@twit_shirokuma
乳児死亡率の低下によって起こる第一の少子化は、それほどカタストロフではないし、アメリカやヨーロッパのベビーブームが証明しているように劇的少子化とも限らない。しかし、東アジア諸国などで今起こっているような第二の少子化は、それとは次元もメカニズムも違う。社会を滅ぼしかねない大変化だ。

107
10:27 - 2018年11月8日
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p_shirokuma(熊代亨)
@twit_shirokuma
日本、韓国、台湾あたりで起こっている少子化は、カタストロフですよ。戦争や内乱は起こっていないけれども、それらに匹敵する勢いで人が減っていく状況。だのに経済的には微温的な状況が続いているものだから、後進世代がゆでガエルになるまで平常心で行こうと皆で決め込んでいるようにもみえる。

367
10:43 - 2018年11月8日
Twitter広告の情報とプライバシー
288人がこの話題について話しています

 憲法九条のおかげか、国民の選択の賜物か、ともかく日本は戦争を経験せずに70年以上の歳月を過ごしてきた。なお、冒頭ツイートはちょっと間違っていて、平成25年の段階で20歳は40歳の6割ぐらいで、実際に5割になっているのは新生児のほうだ(下図参照)。

 とはいえ、この凄惨な人口動態を前にすると、そういう数字の違いは誤差の範囲にみえる。子どもが第二次ベビーブーム世代の半分以下になりつつあるのは事実だし、かりに、これから合計特殊出生率が急増したとしても、これまでの減少を埋め合わせるには膨大な時間、または欧米諸国もためらうような規模の移民が必要になる。常識的に考える範囲では、日本の合計特殊出生率が急増する契機は思いつかない。

 若者が集まり続けている首都圏の合計特殊出生率が著しく低く、にもかかわらず、子育てに対する考えも、子育てを援助するインフラも未だにそれほど変わっていないのだから、どうしようもあるまい。

「たくさん死ぬ」も破局だが「ぜんぜん生まれてこない」も破局
「人口なんて減っても構わない」という人がいる。

 わからない話ではない。日本人は狭い国土にひしめくように住んでいるから、人口が減ることにはメリットもあるだろう。

 しかし今起こっているのは、そんなに生易しい人口減少ではない。

 今日の医療や社会福祉、そのほかのインフラ事業は、生産人口の急激な減少を前提としてつくられてはいない。目下、急激な少子高齢化をみすえて政権は政権なりに努力はしているだろうけれども、高齢有権者のほうがマスボリュームとしてずっと大きい現状では、少子化対策にリソースを集中できる可能性は乏しい。

 また、人口急減に適合した道徳や倫理も、私達は持ち合わせていない。社会が変わればそれに見合った道徳や倫理が必要になってくるのが世の常だが、国内外の世論はそれを許さないだろう。

 そうした難しさを思うにつけても、この少子化は、戦争による人口減少に迫るインパクトがある。

 たとえばフランスは第一次世界大戦で非常にたくさんの犠牲者を出し、労働人口の1割程度を失ったといわれている。これは当時のフランス社会にとって破局的な損失で、その悪影響は第二次世界大戦にまで色濃くあらわれていた。

 他方、日本の労働人口の減少は、 みずほ総合研究所の調査によれば、2016年〜2065年で4割減少すると推計されるものだ。第一次世界大戦に比べればタイムスパンが長く、大戦中の戦死・戦傷とは性質も異なるため、両者を同じ秤に乗せるわけにはいかない。だが、労働人口の減少がこのまま進んだ時のインパクトは計り知れず、その影響はずっしりと残り続けるだろう。

 そして労働人口の減少とは、消費人口の減少、つまり内需の減少にも直結している。

 戦争やテロで人が大勢死ぬと、人はそれを破局と呼ぶ。自殺者が増えることを破局と呼ぶ人もいるかもしれない。それらは破局として理解しやすい。

 だが、子どもが生まれてこなくなるのも、それはそれで破局ではないか。

 すでに、街で見かける子どもの数は減っている。急激なニュータウン化に苦しんでいる一部地域をのぞけば、小学校や中学校には空っぽの教室がある。数十万〜数百万人の規模で子どもが生まれてこなくなって、数十年で数千万人の人口が減っていく。あまりにもスケールの大きいその影響は、計り知れない。

 こういった破局は、人類史のなかでもはあまり例の無かったことだ。豊かな生活・男女平等・個人の自由・民主政治といったアチーブメントを成し遂げたにもかかわらず、子どもが半減していく事態を、まだほとんどの国は経験していない。そのくせ表向きは豊かな生活が続いているものだから、この破局を破局として認識する人はあまりいない。

 本当は、不産の疫病神のようなものが国全体に、とりわけ人口集中の進む首都圏に憑りついている状態だというのに。

 みんな、この人口減少によって後進世代がゆでガエルになっていくプロセスを平常心で眺めていようと決め込んでいるのだろうか。それとも今日を生きるために明日のことや他人のことを見ないようにしているのだろうか。後進世代よりも先に死ぬから「自分は逃げ切れる」とたかをくくっているのだろうか。

 ともあれ、この破局に違いないはずの変化を破局と呼んでいる人は少ない。

乳児死亡率の低下だけでは説明できない
 よく、少子化と関連のある因子として乳児死亡率が挙げられている。

 確かに、人類史の大まかな流れを追うぶんには、乳児死亡率は少子化傾向の目安として頼りになる。乳児死亡率が低下するテクノロジー水準に到達した国では、合計特殊出生率が2前後まで下がってくる。いわゆる人口転換の第一段階がこれで、大部分のヨーロッパ社会では19世紀〜20世紀の前半にこれを経験している。

親密圏と公共圏の再編成―アジア近代からの問い (変容する親密圏・公共圏)
作者: 落合恵美子
出版社/メーカー: 京都大学学術出版会
発売日: 2013/03/01
メディア: 単行本
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しかし、少子化には第二の段階がある。落合恵美子 編『親密圏と公共圏の再編成 ──アジア近代からの問い』によれば、ヨーロッパとアメリカ合衆国では1960年代から、日本では1970年代からその第二段階の少子化が起こったという。個人主義的で現代的な価値観の浸透や家族観の変化を背景として、合計特殊出生率が2以下になっていく現象だ。

 主要な欧米諸国では、この第二次人口転換は比較的緩やかに進んだ。緩やかに進んだ原因のひとつは多産な移民流入のせいでもあろうが、もうひとつは、もともと近代化が進行していて、ことがゆっくりと進んでいったこと、その時間的猶予のあいだに結婚と挙児についての結びつきがシフトチェンジできたことにもある。

 しかし日本にはこれは当てはまらない。日本はメインストリームな欧米諸国よりも急速に第二次人口転換が進み、時間的猶予が無かったためか、それとも近代化をあまりにも急速に推し進めたためか、結婚と挙児についての結びつきはあまり変化しなかった。
 ここでまた注意しなければならないことがある。ヨーロッパにおいては、婚姻年齢上昇と、生涯独身者の上昇という現象は、同棲と婚姻外の出生の増加とセットになって起きたということである。換言すれば、ヨーロッパ人は遅く結婚するとしても、結婚しないで性的関係をもったり同棲をしたりという、変容した「親密性」を生きているのである(Giddens 1992)。

 これとは対照的に、アジアにおいては同棲や婚姻外の出生の増加は見られず、この点がヨーロッパの第二次人口転換との最大の違いであると言われてきた。日本の18歳から50歳の独身者についての調査によれば、「交際している異性はいない」と回答した人の割合は、男性で52.2%、女性で44.7%であり、1990年代から僅かながら増加が見られるほどである(国立社会保障・人口問題研究所 2005)。日本での婚姻年齢と、生涯独身者の比率の上昇は「親密性の変容」からもたらされたのではなく、「親密性の欠如」を意味している。
『親密圏と公共圏の再編成 ──アジア近代からの問い』より

  欧米諸国では、結婚と挙児とはイコールではなくなり、挙児は、同棲をはじめとする「親密さによる結びつき」によって代替されるようにもなった。そうできたのは、近代化による意識変化の最先端だったからでもあろうし、近代化の本場だったからでもあろうし、変わっていくための時間が十分にあったからでもあろう。

 対して、日本では結婚以外で子どもをもうける割合はあまり増えていない。「できちゃった婚」こそ増えているが、これとて、子どもがいること=結婚すること・家族を構成すること という意識が根強く残っていることを反映しているようにみえる。

 「欧米諸国にならえ」と簡単に言う人もいるが、日本が近代化するために与えられた時間は、あまりにも短かった。乳児死亡率が低下したことによる第一次人口転換と、個人主義的で現代的な価値観の浸透にともなう第二次人口転換の間の猶予時間が日本には少ししか与えられなかったため、ひとびとの結婚観や価値観まで欧米風にシフトチェンジするには、時間が足りなかった。

 こうした歴史的経緯の違い・意識や社会構成の近代化にかけられた猶予期間の違いは、欧米諸国と日本との違いを考えるうえで不可欠のものだと思う。
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シロクマ(はてなid;p_shirokuma)
• 2019年01月07日 17:50
東アジアの破局的な少子化と、急ぎ過ぎた近代化について
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八日目の蝉@yu1096

今の20歳が40歳の半分しかいないって本当にいい話だと思う。戦争でもあったのかな?

399
18:22 - 2018年11月7日
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 たぶん、このツイートはブラックジョークのつもりで書かれたものだろう。けれども私には全く冗談には思えなかった。


p_shirokuma(熊代亨)@twit_shirokuma

「今の20歳は40歳の半分しかいない。戦争でもあったのかな?」というツイート、ジョークのつもりかもだけど、これ、実際戦争に匹敵するようなカタストロフィがあったのに気付いている人があまりいない、ってグロい状況を反映しているなぁ、と思った。

14,772
10:25 - 2018年11月8日
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p_shirokuma(熊代亨)@twit_shirokuma

乳児死亡率の低下によって起こる第一の少子化は、それほどカタストロフではないし、アメリカやヨーロッパのベビーブームが証明しているように劇的少子化とも限らない。しかし、東アジア諸国などで今起こっているような第二の少子化は、それとは次元もメカニズムも違う。社会を滅ぼしかねない大変化だ。

107
10:27 - 2018年11月8日
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p_shirokuma(熊代亨)@twit_shirokuma

日本、韓国、台湾あたりで起こっている少子化は、カタストロフですよ。戦争や内乱は起こっていないけれども、それらに匹敵する勢いで人が減っていく状況。だのに経済的には微温的な状況が続いているものだから、後進世代がゆでガエルになるまで平常心で行こうと皆で決め込んでいるようにもみえる。

367
10:43 - 2018年11月8日
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 憲法九条のおかげか、国民の選択の賜物か、ともかく日本は戦争を経験せずに70年以上の歳月を過ごしてきた。なお、冒頭ツイートはちょっと間違っていて、平成25年の段階で20歳は40歳の6割ぐらいで、実際に5割になっているのは新生児のほうだ(下図参照)。


https://static.blogos.com/media/img/144747/raw.jpg

 とはいえ、この凄惨な人口動態を前にすると、そういう数字の違いは誤差の範囲にみえる。子どもが第二次ベビーブーム世代の半分以下になりつつあるのは事実だし、かりに、これから合計特殊出生率が急増したとしても、これまでの減少を埋め合わせるには膨大な時間、または欧米諸国もためらうような規模の移民が必要になる。常識的に考える範囲では、日本の合計特殊出生率が急増する契機は思いつかない。

 若者が集まり続けている首都圏の合計特殊出生率が著しく低く、にもかかわらず、子育てに対する考えも、子育てを援助するインフラも未だにそれほど変わっていないのだから、どうしようもあるまい。
「たくさん死ぬ」も破局だが「ぜんぜん生まれてこない」も破局
「人口なんて減っても構わない」という人がいる。

 わからない話ではない。日本人は狭い国土にひしめくように住んでいるから、人口が減ることにはメリットもあるだろう。

 しかし今起こっているのは、そんなに生易しい人口減少ではない。

 今日の医療や社会福祉、そのほかのインフラ事業は、生産人口の急激な減少を前提としてつくられてはいない。目下、急激な少子高齢化をみすえて政権は政権なりに努力はしているだろうけれども、高齢有権者のほうがマスボリュームとしてずっと大きい現状では、少子化対策にリソースを集中できる可能性は乏しい。

 また、人口急減に適合した道徳や倫理も、私達は持ち合わせていない。社会が変わればそれに見合った道徳や倫理が必要になってくるのが世の常だが、国内外の世論はそれを許さないだろう。

 そうした難しさを思うにつけても、この少子化は、戦争による人口減少に迫るインパクトがある。

 たとえばフランスは第一次世界大戦で非常にたくさんの犠牲者を出し、労働人口の1割程度を失ったといわれている。これは当時のフランス社会にとって破局的な損失で、その悪影響は第二次世界大戦にまで色濃くあらわれていた。

 他方、日本の労働人口の減少は、 みずほ総合研究所の調査によれば、2016年〜2065年で4割減少すると推計されるものだ。第一次世界大戦に比べればタイムスパンが長く、大戦中の戦死・戦傷とは性質も異なるため、両者を同じ秤に乗せるわけにはいかない。だが、労働人口の減少がこのまま進んだ時のインパクトは計り知れず、その影響はずっしりと残り続けるだろう。

 そして労働人口の減少とは、消費人口の減少、つまり内需の減少にも直結している。

 戦争やテロで人が大勢死ぬと、人はそれを破局と呼ぶ。自殺者が増えることを破局と呼ぶ人もいるかもしれない。それらは破局として理解しやすい。

 だが、子どもが生まれてこなくなるのも、それはそれで破局ではないか。

 すでに、街で見かける子どもの数は減っている。急激なニュータウン化に苦しんでいる一部地域をのぞけば、小学校や中学校には空っぽの教室がある。数十万〜数百万人の規模で子どもが生まれてこなくなって、数十年で数千万人の人口が減っていく。あまりにもスケールの大きいその影響は、計り知れない。

 こういった破局は、人類史のなかでもはあまり例の無かったことだ。豊かな生活・男女平等・個人の自由・民主政治といったアチーブメントを成し遂げたにもかかわらず、子どもが半減していく事態を、まだほとんどの国は経験していない。そのくせ表向きは豊かな生活が続いているものだから、この破局を破局として認識する人はあまりいない。

 本当は、不産の疫病神のようなものが国全体に、とりわけ人口集中の進む首都圏に憑りついている状態だというのに。

 みんな、この人口減少によって後進世代がゆでガエルになっていくプロセスを平常心で眺めていようと決め込んでいるのだろうか。それとも今日を生きるために明日のことや他人のことを見ないようにしているのだろうか。後進世代よりも先に死ぬから「自分は逃げ切れる」とたかをくくっているのだろうか。

 ともあれ、この破局に違いないはずの変化を破局と呼んでいる人は少ない。
乳児死亡率の低下だけでは説明できない
 よく、少子化と関連のある因子として乳児死亡率が挙げられている。

 確かに、人類史の大まかな流れを追うぶんには、乳児死亡率は少子化傾向の目安として頼りになる。乳児死亡率が低下するテクノロジー水準に到達した国では、合計特殊出生率が2前後まで下がってくる。いわゆる人口転換の第一段階がこれで、大部分のヨーロッパ社会では19世紀〜20世紀の前半にこれを経験している。
親密圏と公共圏の再編成―アジア近代からの問い (変容する親密圏・公共圏)
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しかし、少子化には第二の段階がある。落合恵美子 編『親密圏と公共圏の再編成 ──アジア近代からの問い』によれば、ヨーロッパとアメリカ合衆国では1960年代から、日本では1970年代からその第二段階の少子化が起こったという。個人主義的で現代的な価値観の浸透や家族観の変化を背景として、合計特殊出生率が2以下になっていく現象だ。

 主要な欧米諸国では、この第二次人口転換は比較的緩やかに進んだ。緩やかに進んだ原因のひとつは多産な移民流入のせいでもあろうが、もうひとつは、もともと近代化が進行していて、ことがゆっくりと進んでいったこと、その時間的猶予のあいだに結婚と挙児についての結びつきがシフトチェンジできたことにもある。

 しかし日本にはこれは当てはまらない。日本はメインストリームな欧米諸国よりも急速に第二次人口転換が進み、時間的猶予が無かったためか、それとも近代化をあまりにも急速に推し進めたためか、結婚と挙児についての結びつきはあまり変化しなかった。
 ここでまた注意しなければならないことがある。ヨーロッパにおいては、婚姻年齢上昇と、生涯独身者の上昇という現象は、同棲と婚姻外の出生の増加とセットになって起きたということである。換言すれば、ヨーロッパ人は遅く結婚するとしても、結婚しないで性的関係をもったり同棲をしたりという、変容した「親密性」を生きているのである(Giddens 1992)。

 これとは対照的に、アジアにおいては同棲や婚姻外の出生の増加は見られず、この点がヨーロッパの第二次人口転換との最大の違いであると言われてきた。日本の18歳から50歳の独身者についての調査によれば、「交際している異性はいない」と回答した人の割合は、男性で52.2%、女性で44.7%であり、1990年代から僅かながら増加が見られるほどである(国立社会保障・人口問題研究所 2005)。日本での婚姻年齢と、生涯独身者の比率の上昇は「親密性の変容」からもたらされたのではなく、「親密性の欠如」を意味している。
『親密圏と公共圏の再編成 ──アジア近代からの問い』より
  欧米諸国では、結婚と挙児とはイコールではなくなり、挙児は、同棲をはじめとする「親密さによる結びつき」によって代替されるようにもなった。そうできたのは、近代化による意識変化の最先端だったからでもあろうし、近代化の本場だったからでもあろうし、変わっていくための時間が十分にあったからでもあろう。

 対して、日本では結婚以外で子どもをもうける割合はあまり増えていない。「できちゃった婚」こそ増えているが、これとて、子どもがいること=結婚すること・家族を構成すること という意識が根強く残っていることを反映しているようにみえる。

 「欧米諸国にならえ」と簡単に言う人もいるが、日本が近代化するために与えられた時間は、あまりにも短かった。乳児死亡率が低下したことによる第一次人口転換と、個人主義的で現代的な価値観の浸透にともなう第二次人口転換の間の猶予時間が日本には少ししか与えられなかったため、ひとびとの結婚観や価値観まで欧米風にシフトチェンジするには、時間が足りなかった。

 こうした歴史的経緯の違い・意識や社会構成の近代化にかけられた猶予期間の違いは、欧米諸国と日本との違いを考えるうえで不可欠のものだと思う。
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それでも日本はマシなほう
 さて、こうした破局は日本だけのものではない。


https://static.blogos.com/media/img/144748/raw.jpg

 上掲の図が示しているとおり、アジア諸国は日本よりも早いスピードで、もっとシビアな破局に突き進んでいる。韓国、香港、台湾あたりの合計特殊出生率は、国家や民族の存亡にかかわる水準である。

 シンガポールの合計特殊出生率もなかなか低い。強権的なこの国は、第二次世界大戦以降は人口抑制計画を続け、ことの重大さに気づいた1980年代以降は人口増加のための政策を推し進めたが、それでも合計特殊出生率は1.25となっている(googleによれば、2016年の段階では1.20とますます低下している)。強権的な国が強力に政策を推し進めてさえ、この人口減少の"病"は簡単には覆せないことを、シンガポールは証明しているようにみえる。


lakehill@lakehill

「景気を悪くしてロスジェネを蔑ろにしたから少子化が進んだ」的ま意見がバズっているけど、日本も他の先進国並みのGDP成長率を達成していても少子化を克服できなかったと思う。まあ合計特殊出生率がもうちょっとだけ上がった可能性はあるけど

75
14:43 - 2019年1月5日
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 シンガポールの例を踏まえるなら、たとえ日本の「失われた20年」がもっとマシだったとしても、当時の政権がもっと少子化対策に力を入れていたとしても、結局、ある程度の少子化は不可避だったのではという気がしてくる。

 上の表では比較的出生率の高いタイも、間もなく日本に追いつき、追い抜くだろう。なぜなら、タイは今まさに急速な近代化が進んでおり、と同時に首都バンコクへの人口流入が続いているからである。このバンコクの合計特殊出生率が東京以上に酷い。東京が日本じゅうから血を吸い上げることで繁栄を謳歌しているのと同じく、バンコクもまたタイじゅうから血を吸い上げながら繁栄し、そしてタイ全体の合計特殊出生率を引き下げている。

 日本で起こっている以上にはげしい少子化が、もっと早いスピードでアジアの新興国で起こっているわけだ。

 さきほど、日本では急速に近代化が進んだと書いたが、それでも、日本には近代化がゆったりとした一時代があった。
 もしも我々が二つの段階の出生率低下期の中間の、出生率が人口置換水準に安定していた時期を「近代の黄金時代」と呼ぶのなら、その時期の長さは、ヨーロッパとアメリカでは50年であり、日本では20年であり、東アジアの残りの地域ではほとんど存在しない。日本以外のアジア社会では、安定した近代を経験しなかった。そこでは突然に、また一気に後期の、あるいは第二の近代に飛び込んだのである。
『親密圏と公共圏の再編成 ──アジア近代からの問い』より
 日本もある程度そうだが、東アジアの新興国は、しゃにむに近代化と経済発展を追いかけてきた。その努力によって大変なスピードで欧米諸国に追いついたが、まさに大変なスピードだったがゆえに、価値観や結婚観や諸々の習俗なども含めて、いろいろなものが置き去りにされたままになってしまった。

 その結果、ゆっくりと時間をかけて近代化を成し遂げた欧米諸国にはあった、近代化に即した価値観や結婚観の変化を推し進めるだけの時間的猶予はなく、変化にみあった新しい価値観や結婚観、ライフスタイルを人々の間に浸透させることはできなかった。おそらく、タイもこの轍を踏むことになるだろう。

 日本も東アジアの新興国も、かつては近代化や経済発展を旗印に、つまり、欧米諸国のようになることを目標としてきた。ほかのアジアやアフリカの途上国も同様だろう。しかし、急激な近代化とは、いったいどういうものだろうか? 急激に近代化し、経済発展を遂げた国々がたどり着いた破局的な人口減少を目の当たりにした時、ゆっくり時間をかけてたくさんの植民地を蚕食し、そういった土台のうえに先進的な思想と国家体制をかためていった国々を、表層的かつ短期的に模倣したツケは高いものではなかったかと、私は思わざるを得ない。

 実のところ、アジア新興国の近代化と経済発展とは、潜在的な出生率も含めた人口ボーナスのすべてをなげうって行われた、代償を伴った経済発展プロセスではなかったのだろうか。

 欧米諸国の繁栄や思想は、なにかと「後進国」の模範とみなされやすい。それは仕方のないことだとしても、国際社会は、「後進国」にかつての欧米諸国が辿ったのと同一の発展プロセスや歴史的手続きを授けてはくれない。たとえば植民地から収奪し続けながら長い時間を過ごし、そうした状況のもとで民主主義や個人主義を洗練させていくような発展プロセスなど、望むべくもない。

 さりとて、韓国や台湾や日本のような一足飛びの発展は、国と民族の根幹を蝕み、やがては人々の生活にも影を落とすであろう急激な人口減少を招いてしまう。だとしたら、どうすれば良かったのだろうか?

 この文章で参照させていただいた『親密圏と公共圏の再編成』は全体としては落ち着いた筆致の書籍だが、それだけに、以下のようなセンテンスを見つけた時には私はうろたえてしまった。
 しかし、どちらのタイプ*1の家族主義も、持続可能な社会システムを建設することに失敗したということでは、違いはなさそうである。日本における純正な家族主義は変貌する世界に対する柔軟性と適応力を圧殺し、他の東アジア社会における自由主義的家族主義は、経済的に不利な人々に対する無慈悲な社会的排除を結果として生み出した。近い将来、他の東アジア社会が今日の日本と同じように高齢化するまでに、革命的でダイナミックな政策革新を実施できないならば、東アジアの社会的再生産はまさに不可能になるだろう。
(同書P94より)
 つまり、よほど革命的な改革ができない限りは、日本も含めた東アジアの国々は社会的再生産ができない=社会としては終わっていく。

 この、大規模な破局に対する根本的な処方箋は、欧米諸国には存在しない。もちろん各論的な部分では参考にもなろうけれども、ゆっくりと近代化を成し遂げた欧米諸国と、急激な近代化を余儀なくされた国々には大きな相違があり、まさにそれがこの破局の背景として無視できないことを思えば、これは、東アジア諸国がみずから処方箋を作り出していくしかないものなのだろう。

 果たして、そのようなことが日本や韓国や台湾に可能だろうか?

 どうあれ、なるようにしかならず、処方箋を見出せなかった国や地域は急速に衰退し、混乱していくだけのことではあるが。
________________________________________
*1:引用者注:日本の家族主義も他の東アジア諸国の家族主義も
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日本と中国と韓国が直面する「少子化」、特に深刻なのは

サーチナ2019年10月2日 10:12
日本と中国と韓国が直面する「少子化」、特に深刻なのは・・・=中国メディア
中国メディアは、日中韓の出生率について分析する記事を掲載した。(イメージ写真提供:123RF)(サーチナ)
 韓国・ソウル新聞が先月発表したところによると、2018年の韓国の合計特殊出生率は0.98人と、出生率1人未満になったことが分かった。出生率の低さは日本と中国でも問題となっているが、中国メディアの今日頭条は27日、日中韓の出生率について分析する記事を掲載した。

 韓国の2017年の合計特殊出生率は1.05人だったが、今回初めて1人台を割り、統計以来最低の数字を記録したことになる。人口維持には2.1人が必要とされ、超少子化基準の1.3人という数字から見ても、かなりの低水準であることが分かる。

 記事は、1.42人だった日本と比べると、「日本は恋愛も結婚も出産もしない低欲望社会だと毎日言われているが、韓国ほどではなかった」と指摘。合計特殊出生率に関して言うと、2005年に1.26人の最低記録を出した後はわずかながら上昇もしており、「欲望は上昇している」と分析した。

 一方の中国の合計特殊出生率は1.48人と、数字だけでみれば3カ国の間では最も高い数字を示している。しかし「出生率の右肩下がりぶりでは世界一」で、韓国どころか世界でもこれほど急激に低下している国はないという。昨年の出生率だけを見れば韓国が最も厳しいように見えるが、一人っ子政策を緩和させたにもかかわらず少子化が加速している中国は、もしかしたら日本や韓国以上に危機的状況なのかもしれない。

 この話題は中国人の強い関心を引いたようで、多くのコメントが寄せられている。例えば「出産は女性にとって代償が大きすぎる」、「子どもを産んで育てるのは費用がかかりすぎる。誰が産む勇気があるというのだ?」など、中国でも出産を望まない人が増えている様子がうかがえた。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)


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https://www.excite.co.jp/news/article/Searchina_20191002029/

アジアの労働者が日本で働いてくれなくなる日 少子化が急速に進むベトナム 
2019.10.15(火)川島 博之
アジア・オセアニア
ベトナム・ホーチミンの夜景
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(川島 博之:ベトナム・ビングループ、Martial Research & Management 主席経済顧問)
 ベトナムは「労働研修生」などという言葉と共に思い浮かぶ国である。現在、日本に滞在するベトナム人は約33万人。その数は中国、韓国についで多く、近年急速に増加している。
 ベトナム人は真面目でよく働くと言われて、日本での評判は概して良い。多くが大乗仏教徒であり、日本での生活において宗教的な違和感が少ない。イスラム教徒が多いインドネシアなどとは異なり、食事についても特段の注意を払う必要がない。
 そんなベトナムの人口構成はどうなっているのだろう。今回はベトナムの人口について調べてみた。
TFR(合計特殊出生率)が急速に低下
 ベトナムの人口は現在9700万人。2040年に1億800万人になるとされる(国連人口予測)。まだ増えてはいるが、その増加率は急速に低下している。
 図1に日本とベトナムにおけるTFR(合計特殊出生率)の推移を示す。1970年頃にベトナムでは1人の女性が6人から7人の子供を産んでいた。しかし、図に示すように2015〜2020年は2.06にまで低下した。

https://jbpress.ismcdn.jp/mwimgs/4/3/500/img_43b8d49609b29445f095b9b549519ddb38027.jpg
図1 ベトナムと日本のTRF(合計特殊出生率)
2020年以降は中位推計(出典:国連人口予測)
ギャラリーページへ
変化するベトナム人の価値観

 なぜ、TFRがこのように急速に低下したのであろうか。1つの理由として1988年に導入した「二人っ子政策」がある。人口爆発を危惧したベトナム政府は人口抑制政策をとった。しかし、中国でもそうであったが、人口抑制政策を始める前にTFRは減少し始めていた。
 図1には参考のためにタイのTFRについても示した。二人っ子政策を行わなかったタイでも、TFRはベトナムに似た形で低下している。タイの2015〜2020年のTFRは1.53である。同時期の日本は1.37だから、タイでは日本並みに少子化が進行している。
 ベトナムのTFRはタイほど低下することなく2.0程度で底を打ったように見える。この傾向を受けて、国連はベトナムのTFRは今後も2.0程度で推移するとしている。
変化するベトナム人の価値観
 だが、ベトナムのTFRは本当に底を打ったのだろうか。
 ベトナムでは二人っ子政策は廃止された。そもそもベトナムの二人っ子政策は、公務員が3人目の子供をつくると左遷や減給の対象になる程度で、法的な拘束力はなかった。これまでのところベトナム人は概して早婚で、家族を大事にする伝統があるために、結婚してすぐに子供をつくっていた。しかし、当地に滞在していると、そのような傾向がこれからも続くとは限らないと感じる。
 中国で一人っ子政策を緩和してもTFRが向上しないように、ベトナムでも経済発展に伴って、TFRが今より低下する可能性が高い。それはハノイやホーチミンなど大都市で働く高学歴の女性がなかなか結婚しないケースが増えてきているからだ。
 アジアはコメを作ってきた。コメ作には多くの労働力を必要とする。そんな農村では労働力や後継を確保する必要があったために、「女は早く結婚して、子供をたくさん持つことが幸せ」との考えが支配的であった。20世紀に入って農村でも衛生状況が改善され、医療が普及すると、幼児死亡率が減少した。これが人口爆発を招いた。
 しかし、そんなアジアの国でも経済発展が始まると社会は大きく変貌する。人口の都市への移動が始まる。若い女性が働き場所を求めて都市部に移り始める。そうなるとTFRは急速に低下する。これはわが国では年号が昭和になった頃に始まった現象である。ベトナムでも同様の現象が生じている。

ますます減少する若年層

 このように考えると、ベトナムのTFRが今後も2.0付近で推移する保証はどこにもない。ベトナムもタイや日本と同様に少子化に悩む日が、遠からず訪れる。
ますます減少する若年層
 図2に2020年におけるベトナムの人口構成を示す。ベトナムの人口構成はちょっと変な形をしている。これは1986年に始まった「ドイモイ」と呼ばれる経済改革が1990年代に入って軌道に乗り、若者が都市に移動し始めたからである。その結果、1990年代生まれが少ない。

https://jbpress.ismcdn.jp/mwimgs/a/6/600m/img_a6679edfdadce32f14fb01b13d54e45a47020.jpg
図2 2020年のベトナム(縦軸5歳刻み、横軸の単位は1000人)
ギャラリーページへ

 しかし1980年代に生まれた人が多かったために、団塊ジュニアとも言える現在0歳から10歳に相当する層が多い。今後は親となる世代が減少することから、新生児の数も減少する。それは図3に示す2040年の人口構成を見るとよく分かる。ベトナムも日本のように団塊世代と団塊ジュニアが出現する。

https://jbpress.ismcdn.jp/mwimgs/4/7/600m/img_471cf1d51684a0172eb105b527a2915055109.jpg
図3 2040年のベトナム(中位推計による予測)
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 これはTFRが中位推計で推移することを前提にしているが(注:推計は高位、中位、低位のそれぞれのパターンで推移することを想定して行う)、これまで述べたように、今後TFRは、より低下する可能性が高い。その結果、0歳から20歳の層は、この図に見られる以上に減少するだろう。

日本人の介護などできない?

アジアから日本に来る労働者はいなくなる?

 1990年代からベトナムでは順調な経済成長が続いている。現在の1人当たりGDPは2700ドル程度とされているが、推定法に問題があったとして現在校訂中である。新たに公表されるGDPは3000ドルを超えると言われる。
 現在のベトナムは1970年頃の日本に相当しよう。そこら中で土木工事が行われている。このような状態が続けば、2030年頃には1人当たりのGDPは1万ドル近辺になろう。それは現在のマレーシアの水準であり、先進国の入り口に差し掛かるといっても良い。
 ここで考えなければならないのは、日本の労働者の受け入れ政策である。一昔前には韓国から大勢の人が働きに来ていた。しかし、現在では飲み屋やコンビニで韓国人を見かけることはなくなった。いつしか中国人に変わり、その中国人も現在減少している。それは急速に経済が成長しているからであり、ベトナムについても韓国や中国と同じことが言えよう。
 文化が似ているアジアから労働者を受け入れることができる時間は、あと20年ほどと考えていた方がよい。早ければ10年後には、「日本に来てほしい」と言ってもアジアから日本に来る労働者はいなくなってしまう。ここには示さなかったが、インドネシアなどもベトナムとそれほど変わらない状況にあるからだ。
 アジアの人に日本語を覚えてもらって、介護の手伝いをしてほしい。だが、それは虫のいい話である。あと10年もすればベトナムをはじめとするアジアの国々は少子高齢化社会の入り口に立つ。そうなれば日本の老人の世話をする余裕などなくなる。
 どうも、この頃の日本の政策は国家100年の計を考える視点に欠ける。10年程度しか有効でない政策ばかり考えている。目先のことしか考えられない。それは日本社会が本当に老い始めたからなのかも知れない。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57899



http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/392.html

[経世済民133] 台風を期に公共投資「所得倍増」を! 台風・増税で企業は景気後退を視野に「補正2兆円規模」の試算も 日銀の景気判断、8地域据え置き=海外経済や台風の影響を注視
台風を期に公共投資「所得倍増」を!

「伊勢湾台風」型の進路が示唆するもの
2019.10.15(火)
伊東 乾
時事・社会?インフラ

台風の目
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 このコラムは台風19号が日本列島を通過した直後に公開されると思われ、執筆しているのは当然ながらそれ以前のタイミング、10月11日の夜に当たります。何を記すか本当に悩んだのですが、目をそらさず台風の問題を直球で扱うことにしました。

 いま、金曜夜の時点で私が一番心配しているのは、もちろん台風の規模とか、大きさ強さ激烈さ、雨や風も当然ですが、その「進み方」が気になって仕方ありません(追記:実際直撃となりました)。

 いまさら言うまでもありませんが、日本列島の天気というのは、西から東へと流れて行きます。

 今回の台風19号も、上陸後は西南から東北へと、列島の背骨に沿うようにして進んで行くはずですが、この台風は、ほとんど南から北に、まっすぐ進んでいるように見えます。

 日本は「温帯」のはずです。この「温帯」を特徴づけるのは「西から東に流れる風」偏西風と呼ばれるグローバルな強い風ですが、それに流される気配が、ない。

 細かなことは地球物理学者や気象学者など、専門家に伺わなければ全く分かりませんが、間違いなく言えることは「偏西風をものともしない進路」を取って、この台風は日本に上陸しようとしていることで、これには思い当たる記憶がありました。

「伊勢湾台風」です。

 1959年=昭和34年9月26日に日本を襲ったこの台風は、死者4697人、行方不明401人と5000人を超える犠牲者を出し、負傷者4万人、戦後最大の犠牲を出した台風でした。

 その進路が、日本に到達する直前、ほぼ真北に向かって進んでいたのです。それから60年の年月を経て、今回の超大型台風の来襲を日本は受けている。

「伊勢湾台風」の暴風域は東側約400キロ、西側約300キロ、東西合わせて700キロに及ぶという、とてつもない代物でした。

 今回の台風19号はどうなのか?

 今回の台風19号、11日夕方の時点では、八丈島の南南西約500キロ付近に中心があり、その大きさは、風速毎秒25メートル以上の暴風域だけで直径が650キロあり、ほぼ伊勢湾台風のスケールといってよい。

 ここまで大きいと「千葉県に上陸」などと地点を特定することができないサイズになります(追記:実際には中心の位置で見て、土曜日の夕刻、伊豆半島近辺に上陸したと定義されました)。

鉄道の距離で考えると 東京と京都の間は…
鉄道の距離で考えると
東京と京都の間は
 東京から西に測れば650キロというのは広島に届く距離になるし、近畿圏の西端というべき姫路から測れば、650キロ東は関東、福島を通りすぎて仙台まで手が届く。

 こんなエリアが一度に暴風に巻き込まれてしまったら「安全な場所」に避難するのも「安全な場所」から救援に向かうのも、およそ困難なことになりかねない。

 台風一過の状況、少しでも被害が少ないことを祈りますが、このような前代未聞の台風は「同時多発型」の被害を生み出し、日本全国至る所が同時に被災地になっている可能性も念頭において、備えを復旧に心の整理をしておく必要があるでしょう(この校正を記している月曜夕方の時点でも、まだ被害の全容は十分報道されていないように思われます)。

 9月に千葉県を中心に被害を及ぼした台風15号は「観測史上最強規模の」「非常に強い」台風として認識されましたが、襲ってくる台風になすすべもない人が多い中、大規模停電、断水などを引き起こす莫大な被害を生み出しました。

 被害額が東日本大震災を凌駕したことには既にこの連載でも触れた通りですが、この15号台風、暴風域の直系は160キロメートルほどで、つまり台風19号の4分の1程度に過ぎないことになります。

「観測史上最大規模の台風」15号からわずか1か月で、直径だけでもその4倍、台風のエネルギー規模をどのように直径と結びつけるべきなのか、全く分かりません。

 仮に高さが等しい円筒であると考えれば、その容積は、底面積が2乗規模で効いてくるとすれば、1桁大きなものであっても何も不思議ではありません(追記:本校正時点で30人に及ぶ犠牲者が報道されており、いまだその数は増えることが懸念されています。大変な被害になってしまいました)。

 間違いなく被害は出ているはずで、被害の復旧に全力をあげておられるタイミングで公開される原稿を、上陸の24時間以上前に書いているというのは、一面因果なことでもあります。

 が、考えようによっては、先手を打つことができるわけでもあります。

 例えば、このようなサイト(https://www.windy.com/?34.470,132.429,5)を通じて、自分の住まいや家族親戚、友人のエリアが、いつ頃どのような状態にあるか、あらかじめ予測を立て、充分な事前の対策をとることができる時代でもあります。

 被害の極小と復興への道筋を積極果敢につけてゆくべきと思います。その観点で、希望につながる政策案を一つ記してみたいともいます。

伊勢湾台風から所得倍増計画へ…
伊勢湾台風から所得倍増計画へ
 先ほども述べたように、伊勢湾台風が日本全国を襲ったのが1959年、このときの内閣総理大臣は岸信介でした。現在の上皇・上皇后夫妻が結婚、前回の東京オリンピックの開催が決まったのも同じ年のことです。

 また「60年安保」で政治が大荒れに荒れたのもこの頃のことで、翌60年の6月15日には東京大学に在学していた女子学生、樺美智子さんが亡くなり、岸政権は新安保条約批准ののち総辞職、池田勇人内閣が成立します。

 直後の10月、日本社会党の浅沼稲次郎委員長が、17歳の少年山口二矢に刺殺されるなど、別の意味での嵐の季節でもあった。

 そんな中で誕生したのが、池田内閣の目玉政策となった「所得倍増計画」でした。

「年率9%の所得倍増」

「10年間で国民所得は2倍になる」

 といったスローガンは、初めのうちこそ、人気取りのプロパガンダと批判されましたが、4年後に控える東京オリンピック、それに向けての高速道路や新幹線敷設などの大規模な公共投資が控えていました。

 また自動車、電化製品を始めとする多様なイノベーションの芽がでていたことから、可処分所得は名目では文字通り倍増、充分に実体経済を潤すことになりました。

 この上昇カーブが最終的に下向に向かうのが1997年前後で、それからの20余年、私たちは金融危機、震災、原発事故と、様々な困難に直面してきました。

 そして震災原発事故以降、近年非常にはっきりしてきたのが気候変動、より正確に言うなら、地球環境変化に伴う、気象の「乱高下」に伴う大規模災害と見做すことが出来るでしょう。

 なぜ被害が甚大化するのか?

 その一因は、高度成長期以降、日本が伸びていた時期に主として設置されたた多種多様なインフラが「還暦」を迎えつつあるから、と大きく言って外れないかと思います。

 より正確には、もっと「新陳代謝」の激しいものもあるでしょう。

 一般にRC工法ビルの物理的な寿命は50年…
 一般にRC工法ビルの物理的な寿命は50年もあればよい方だと思いますので、「所得倍増計画」直後に建てられたビルはすでにあまり残っていないでしょう。

 あるいは、9月の台風で被害を受けた鉄塔や電柱はどうか?

 架空送電鉄塔の耐用年限は50年、鉄筋コンクリートの電柱が42年、引込線の耐用年限は20年しかないそうです。

「寿命」が言い過ぎだとしても、日本全国、随所のインフラストラクチャ―が「更年期」を迎えているのは、まちがいのない事実でしょう。

 しかも、上記のような「耐用年限」は、かつての日本の環境や気候を前提に考えられ、算出、制度化されたものにほかならない、

 それがもう、充分、茹で上がりつつあるところに、9月に「観測史上最大の台風」が来襲して、首都圏大停電というとんでもないことになってしまった。

 それから1か月、さらに1桁大きな台風がやって来た。そして、こうした来襲には終わりがなく、今後もさらに激甚化の一途を辿る懸念が拭い切れない・・・(追記:実際、甚大な被害が出ています)。

 いまは、大変な中だと思われますので、ここでは、先に結論だけを記したいと思います。

 もう一度、日本のインフラストラクチャーを、本質的に作り変える必要があるでしょう。

 大規模な公共事業を計画し、国民によりよい仕事を与え、被害に遭った人たちを救済するのみならず、明日への希望、生きる灯明を作り出すこと。

 それが政治の役割であって、それができないまつりごとなら、意味はありません。

 被害状況によっては、天皇の即位など、延期しても全然かまわないでしょう。すべては状況によります。

伊勢神宮方式で考えれば2020年は…
 間違いなくやって来る日本の少子高齢化、そのなかでGDPを下げず、国力を温存維持、ないし発展させようと思うなら、1人当たりの国冨を伸ばすしか方法がないことは、小学生でも分かる話で、それをそうさせないのは、別の了見によるものに過ぎません。

 60年前、50年前に日本を元気にし、いまやよれてきているインフラを、根本的に見直すこと、そのための財源を適切にねん出すること。

 そうしたまともな政策が打てて、はじめてまともな政治と呼ぶことができるでしょう。

 日本はサステナブルな観点からは恰好のモデルを持っています。伊勢神宮の遷宮です、

 お伊勢さんが天皇家の祖先であるかは全く知りませんが、少なくとも1300年来、20年に一度全とっかえするのがサステナブルというスタイルを、はっきりと全世界に示している。

 こういうものをこそ「日本の伝統」と呼ぶべきでしょう。

伊勢神宮方式で考えれば2020年は
「21世紀に入ってから作ったものを、全とっかえするタイミング」です。所得倍増計画から数えれば、もう3回まるまる作り変えていてもよいだけの時間が経っている。

 ところが実際には1997年頃から止まったままの成長の時計。それを、もう一度回す政策の転換を、いまこそ検討すべきではないか?

 繰り返し来襲する台風の被害を懸念しつつ、その破壊の先にあらたな新生のイニシアティヴをとってこその、公共であり行政であると思います。

(つづく)

もっと知りたい!続けて読む

また首都圏直撃か、猛烈台風が次々襲う必然性
またしても台風です。19号も日本上陸の可能性があるらしい。「もういい加減にしてくれよ!」と思っておられるかたが大半ではないでしょうか。しかし、これが気候変動にほかなりません。大気の温度を下げる働きをしてきた海水が、長年の温暖化の影響でその役割を失い、逆に台風を育てる孵化器になり始めたのです。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57923?page=5


また首都圏直撃か、猛烈台風が次々襲う必然性
もやは気温下げる機能失ったフィリピン海、インド洋、カリブ海
2019.10.11(金)
伊東 乾
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/746.html


 
トップニュース2019年10月15日 / 14:44 / 3時間前更新
焦点:台風・増税で企業は景気後退を視野に、「補正2兆円規模」の試算も
中川泉
2 分で読む

[東京 15日 ロイター] - 台風19号の広範囲な被害に対応し、安倍晋三首相は補正予算の編成に言及した。国土強靭化計画への上乗せや増税対策も含めれば、規模は2兆円規模に上るとの民間調査機関の観測も出始めた。ただ、企業は海外減速により景気後退も視野に入れるなど既にマインドを慎重化させており、大規模対策を打っても景気の悪化を反転させるには至らないとみられている。

<台風被害で国土強靭化計画上積みへ>

「予備費5000億円の活用、必要であれば補正予算も検討するように」──菅義偉官房長官は15日朝の会見で、非常災害対策本部会議で首相からこうした指示があったことを明らかにした。長官も、昨年の西日本豪雨などを踏まえた国土強靭化3カ年計画について改めて治水対策に取り組む姿勢を示した。[nL3N2700F0]

10日に開催された経済財政諮問会議でも、台風15号による電柱倒壊を受け電線地中化3カ計画について、現状では2400キロとしている延長計画を、年内には新たな数値目標に作り替える議論が行われた。

こうした動きを踏まえて、野村証券・チーフエコノミスト・美和卓氏は、公共工事で2兆円、日米貿易協定に対応した農家支援なども含めると3兆円規模の補正予算を予想している。大和総研・シニアエコノミスト・小林俊介氏も、補正予算と来年度本予算での防災・減災対策として2兆円規模を見込んでいる。

昨年の西日本豪雨などに関連しては、2018年度の補正予算9300億円規模が計上された。今年度は、公共投資の拡大に加えて消費税対策も実施することを前提に、昨年より規模は膨むと予想されている。

<増税対策も欠かせず>

その消費税対策でも、政府は既に予算化している軽減税率や期間限定のポイント還元などに加えて、新たな対策に着手している。

増税による消費落ち込みを長引かせないために、総務省はキャッシュレス決済ポイント還元制度が終了する来年6月以降も、マイナンバーカードを活用した消費活性化策を打ち出した。経済財政諮問会議でも、その内容・規模を早急に明確して経済下支え効果を明らかにするよう求めている。

背景には、予想外の駆け込み需要の拡大があるとみられる。経済官庁幹部は「9月末になってあれほど駆け込みが起きるとは残念だ。いろいろな手を打ってきたのに」と落胆。9月は最終週にかけ、家電や家具など大型消費には駆け込み需要が発生した。

例えばニトリホールディングス(9843.T)では、9月は既存店販売額が19.5%増、客単価も11.7%増となった。増税前の消費で売り上げは堅調に推移したもようで、その分10月の落ち込みが懸念される。

さらに、増税による実質所得の目減りも避けられない。与党関係者からは「明らかに財布のひもは締まるだろうが、政権としては増税の誤りを認めたくない」との本音もこぼれる。

そのせいか官僚の間では、消費に関しては引き続き下支え効果を強調する発言も少なくない。ラグビーワールドカップ(W杯)の経済効果は組織委員会の試算では4000億円規模だが、日本チームの快進撃によりこれをを大きく上回るとの見方があるほか、雇用・賃金も、人手不足や企業の潤沢な内部留保を背景に総雇用者報酬の増加が続いているという基本的状況に変わりはないとの見立てだ。

<それでも景気悪化は避けられず>

ただ、大規模補正予算で台風被害による家計や生産・物流へのマイナス要因を相殺できるとしても、景気自体の悪化は避けられず、エコノミストらはこれまでの景気見通しを上方修正するまでには至らないと指摘する。

10月の「日本経済フォーキャスト調査」(民間エコノミスト36人が回答)では、19年度の成長率0.68%から20年度は0.39%に低下、いずれも潜在成長率以下の予測となっていた。

10月15日、台風19号の広範囲な被害に対応し、安倍晋三首相は補正予算の編成に言及した。写真は14日に長野県で撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung Hoon)
大和総研・小林氏は、「米中貿易問題では、中国からの米国への輸出品にかかる関税の引き上げがいったん延期となり輸出への懸念がやや緩和したとはいえ、世界的な在庫循環からみて生産調整はまだ続く」と指摘。景気底打ちは来年の半ばごろと見込んでいる。

実際、企業の景況感は相当弱気に傾いている。10月ロイター企業調査では、今後景気が「後退局面を迎える」と考える企業が4割強を占め、その過半数が後退局面は21年まで続くとみていることが明らかになった。消費増税に伴う販売現場での混乱や、世界経済の減速を背景に、景気停滞は長引くとの見方だ。

増税に伴う予想外の駆け込みとその反動、実質所得の目減り、海外減速に加えて、台風被害と強まる逆風は、安倍政権にとっては、「対策」の必要性を理由にさらなる財政出動を促す材料になりそうだ。

取材協力:竹本能文 編集:田中志保
https://jp.reuters.com/article/budget-consumptiontax-typhoon-idJPKBN1WU0FG

 
日銀の景気判断、8地域据え置き=海外経済や台風の影響を注視
2019年10月15日16時58分

https://www.jiji.com/news2/kiji_photos/201910/20191015ax04S_p.jpg
 日銀は15日、東京・日本橋の本店で支店長会議を開き、全国9地域の景気を分析した「地域経済報告」(さくらリポート)を公表した。景気判断については2期ぶりに引き上げた北海道を除き、8地域で据え置いた。ただ、海外経済の先行き不透明感に加え、東日本中心に大きな傷痕を残した台風19号の影響など、地域経済を取り巻く状況は厳しさを増している。
 北海道では、昨年9月に起きた地震の復旧に伴う公共投資が伸びたことがプラスに働いた。景気判断を据え置いた8地域のうち中国地方では海外経済の減速や日韓関係の悪化を背景に、自動車や電子部品の生産・輸出が低迷し、「一部に弱めの動きがみられる」との文言を加えた。

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2019101500885&g=eco
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/393.html

[戦争b22] 強まる在韓米軍撤退論への対応は? 「北の核」の真実を衝いたボルトン発言の重み
世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

強まる在韓米軍撤退論への対応は?

2019/10/15

岡崎研究所

 米国では、このところ在韓米軍撤収論が強まっているようである。米国のシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)のハムレ所長(元国防副長官)は、9月24日の講演および中央日報とのインタビューで、「トランプ米大統領が北朝鮮とのさらなる首脳会談の後、在韓米軍を撤収させるのではないか心配だ」と述べるとともに、米議会と外交関係者の間でも在韓米軍撤収の声が高まっているとして「多くの議員が、在韓米軍撤収は可能という声を出しており、その数はこの数年間に増えている。しかし、北朝鮮問題さえ解決すれば米軍は朝鮮半島から離れてもかまわないという考えは根本的に誤りだ」と述べたという。


leremy/bananajazz/iStock / Getty Images Plus
 これを受けて、韓国の保守系の中央日報は9月26日付けの社説‘A rush to insecurity’(原題:「尋常でない在韓米軍撤収論」)で、強い懸念を表明している。同社説の主要点を紹介すると、次の通りである。

・我々が自分自身を守るべきだということは否定できない。在韓米軍も将来いつかは撤収すべきだ。

・しかし、撤収は北の核の脅威が完全に除去された後でなければならない。北の核は20年以上にわたり解決されていない。今でも北の核兵器は確実に増えている。

・北はこれまで米国による体制保証を要求してきた。同時に北は、北の安全保障の脅威となる在韓米軍を撤退させたい。米韓がこの北のロジックに同意すれば、北の核脅威が残ったまま在韓米軍が撤退することに向かいかねない。これは最悪のシナリオだ。

・文在寅大統領は9月24日の国連総会演説で、非武装地帯を国際平和地帯にすることを提案した。非武装地帯にある百万個以上の地雷を除去し、そこに国連機関を誘致することによって軍事衝突を予防したい、とのことだが、地雷除去も国連機関設立も時間をかけて行えばよい。緊急を要するのは北の核脅威の除去だ。「制裁を通じる非核化」という現行政策を維持していくことが最善だ。

 この社説の議論はもっともなもので、完全な非核化の前に在韓米軍が撤退することへの懸念はよく分かる。また、非武装地帯を国際平和地帯にするとの国連総会における文在寅の提案について、社説が異論を唱えている点もよく理解できる。南北関係を先行させるのではないかということは、文在寅政権発足当初から懸念されたことである。文在寅の提案は、社説のいう通り、順序が違い、現実を無視した希望論に過ぎない。今は制裁を通じて完全な非核化を粘り強く継続すべきである、との考え方には同意できる。

 在韓米軍をめぐる韓国国内の議論はどうなるか。おそらく、国を分断する議論になるだろう。上記の中央日報社説でさえ国内の左派を気にしてか、将来何時かの時点で撤収せねばならない、とまで言っている。

 在韓米軍撤退論については、我が国としても我が国の安全保障、北東アジアの安全保障等への影響について、よく考えておくべきであろう。目下の北の意図に完全非核化があるとは思えず、少なくとも既存の核の保持が目下の戦略であることは間違いない。それを崩すために最後の大交渉をするとすれば在韓米軍の撤退を避けて通ることは出来ないように思われる。その代案は、北の核との共存ということになりかねない。従って、厳しい判断が求められる。朝鮮半島を緩衝地帯としておくことが戦略的利益にかなうという、所謂「バッファー論」は今でも適切なのか。米軍のアジア太平洋のプレゼンスはどうなるのか。これらの諸点についてシナリオをよく研究しておく必要がある。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17567


 

「北の核」の真実を衝いたボルトン発言の重み

2019/10/15

斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)


(iStock.com/flySnow/Purestock)
 「北は核放棄しない」―米大統領補佐官解任後、初めて北朝鮮の核問題の核心に触れたジョン・ボルトン氏の発言が大きな波紋を広げている。金正恩最高指導者との個人的関係に重きを置く“トランプ外交”を一刀両断切り捨てたかたちだ。

 ボルトン氏は在任中、大統領が北朝鮮の金正恩労働党委員長と行った3回の首脳会談についても終始、冷ややかな態度をとって来たことで知られる。ただ、立場上、表立った批判は控えてきた。

 しかし、去る9月10日、解任されたことで自由の身となり、政権の内情暴露も時間の問題とみられていた。

 そしてホワイトハウスを去って1か月もたたない同月30日、ボルトン氏はワシントンの有力シンクタンク「ジョージタウン戦略国際問題研究所」(CSIS)に招かれ、初めて公開の場で自らの持論を展開した。


9月30日、解任後初めて公の場で講演したボルトン氏(AP/AFLO)
 「本日は北朝鮮がもたらす核の脅威について、包み隠さず(in unvarnished terms)語りたい」――と、わざわざ断った上で話し始めたスピーチは内容の濃い、力のこもったものだった。

 その中で核心に迫る重大な指摘は、以下の諸点だ:

 「北朝鮮はこれまで、核放棄の戦略的決断を下したことはない。金正恩が終始とってきた戦略的決断は、核兵器運搬能力を維持し、それをさらに発展、向上させるために全力を挙げるというものだ。彼はいかなる状況下であれ、核兵器を率先して放棄するつもりは断じてない」

 「大統領が金正恩に手を差し伸べてきたこと自体、一方的に北朝鮮側に利するものであり、また大統領は、金正恩とのディールを外交政策面の最優先課題としてきたにもかかわらず、これまでのところ得たものは何らなかった」

 「われわれの最大関心事は、朝鮮半島における核拡散の阻止であり、次回首脳会談が開催できるかどうか、といったことではない。実務者協議で北朝鮮側から何らかのコミットメントを引き出そうとしても、彼らはそれらを順守することなどありえないのだ」

 「私は、北の核兵器を放棄させることについて急がないとしてきた大統領の立場には同意できない。時間は、核拡散に反対する者にとって不利に働いており、時間に寛大な態度はそれ自体、北朝鮮やイランのような国々を利することになる」

 「トランプ政権は非核化の取引を模索する過程で、北朝鮮による国連安保理経済制裁の違反行為を見て見ぬふりして来た。最初は制裁決議採択のために動いてきたアメリカが、違反にもの言わなくなるとすれば、他の国々も北朝鮮に制裁を順守させることなどどうでもいいという結論を導き出すことになる」

 「米韓両国がこれまで実施してきた大規模な合同軍事演習に関し、『米軍による将来の対北侵攻訓練の場だ』といった北朝鮮の非難を受けて中止したことは間違いだ。もし両国が軍事訓練を怠るならば、有事の際の共同戦闘能力を次第に低下させていくことになる」

 上記のようなボルトン氏の“爆弾発言”をめぐり、ホワイトハウスは直接論評を避ける一方、元政府関係者間での反応はさまざまだ。

 ジョージ・ブッシュ政権下で「朝鮮問題六カ国協議」の米側代表を務めたクリストファー・ヒル氏は、「ボルトン氏は以前にも公職から身を引いた後、物騒な発言をした前歴の持ち主だ。今回の場合も(大統領に)時間的猶予をあたえるべきであり、今一人で警鐘を鳴らすことは賢明とは言えない」と批判した。

 これに対し、同じブッシュ政権下で国務副長官を務めた穏健派のリチャード・アーミテージ氏は「彼は北朝鮮問題に関しては総じて、道理にかなった政策を進めてきた。金正恩が核放棄する意図はない点についても、トランプそして文在寅(韓国大統領)を除くすべての人たちと同様によく理解している」として、発言を支持している。

決定的に重要な意味
 しかし、行為そのものについての是非論はともかく、今回のボルトン発言には、決定的に重要な意味が込められている点を見過ごすべきではない。

 まず、第一に留意しなければならないのは、ボルトン氏はつい最近まで大統領補佐官として、米政府の国家安全保障・外交政策に関する最高決定機関である「国家安全保障会議」(NSC)事務局長を務め、大統領が目を通すあらゆる機密情報(インテリジェンス)を管理する立場にあったという事実だ。

 アメリカの場合、機密情報はその重要度順に「classified」(取り扱い注意)、「confidential」(部外秘)、「secret」(秘密)、「top secret」(極秘)に分類されており、「top secret」よりさらに重大な内容を含む場合の範疇として「eyes only」(目読のみ=最高機密)がある。そして「eyes only」のスタンプが押される機密文書は性格上、その数も限定され、閲覧者は大統領とNSC事務局長以外はごく少数の当事者のみだ。案件によっては、閣僚といえども目を通すことを許されない場合もある。

 この点、ボルトン氏は在任期間中、「top secret」のみならず、つねに「eyes only」の機密情報にも接していたことになる。

 第二に、「eyes only」の文書は大統領が重要決定を下す際のカギとなる性質をもつだけに、作成に当たっては、NSC事務局長はCIA(中央情報局)、NSA(国家安全保障局)、DIA(国防情報局)などあらゆる情報機関から精度の高い情報を汲み上げた上で、最終的に“完成品”とする立場にある点だ。

 そして当然のことながら、このような“完成品”の中には、スパイ衛星、通信傍受技術などを駆使した相手国の兵器開発状況、兵力規模、部隊展開などに関する機密情報のみならず、その国の最高指導者の「意図」「真意」などに関する高度の分析結果も含まれる。

 第三に、ボルトン氏は北朝鮮の核問題について、今回のスピーチの冒頭、「包み隠さずin unvarnished terms」と異例の前置きをしたのは、これらの最高機密情報を踏まえた上での発言とみられる点だ。ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストはじめ、ボルトン演説を報じた多くの米メディアも、こぞって「in unvarnished terms」という表現を記事の書き出しでとくに重視して紹介したこと自体、同氏の発言が最高度の機密に触れる内容だったことを示唆している。

 このような背景を前提に、ボルトン氏が吐露した発言の中で、最も注目されるのは言うまでもなく、「北朝鮮はこれまで、核放棄の戦略的決断を下したことはなく、金正恩はいかなる状況下であれ、核を放棄するつもりはない」と断じたことだ。そしてこの重大な指摘は、たんに個人的見解とか推測ではなく、金正恩氏の「意図と真意」について、独裁政権の内部にも踏み込んだあらゆる最高機密情報に立脚した判断であることは間違いない。

 加えてこの「金正恩、核放棄せず」の判断は、「国家安全保障会議」事務局長のみならず、国務省、国防総省、CIA、DIAなどの各情報機関でも共有されていると見るのが自然だろう。

ボルトン氏の「裁断」の正しさ
 実際に、第1回米朝首脳会談がシンガポールで開催された昨年6月以来、「非核化」協議における北朝鮮の姿勢を見る限り、ボルトン氏の「裁断」の正しさを立証している。すなわち北側は「朝鮮半島の非核化」を約束したものの、すでに保有している数十発とみられる核兵器については、具体的な廃棄どころか削減の方針さえ何ら示していない。

 さらに最近では、本格的な潜水艦発射ミサイル(SLBM)開発に成功するなど、逆に核兵器を含む戦力強化に乗り出してきている。その一方で、米側に対しては、「体制保証」や「平和条約締結」など、北側の一貫した要求は以前と何ら変わっていない。

 北朝鮮は最近では去る5日、ストックホルムで開催された米側との実務者協議においても「最終的に決裂した」として、協議を半日だけで打ち切った。今後の協議再開のめどは立っていない。

 今回の協議で何ら進展が得られなかったことについて、トランプ大統領は今のところ珍しく直接コメントを避けているが、依然として金正恩氏との第4回首脳会談に望みをつないでいると伝えられる。

 しかし、ボルトン氏が明らかにしたように、米政府の当局者たちのほとんどが、北朝鮮の「非核化」に悲観的な見方をしているとすれば、奇妙にも大統領だけが個人取引による“ビッグ・ディール”を依然として信じ込み、一人相撲を演じていることになる。

 大統領は今後、ウクライナ疑惑をめぐる米議会追及が厳しさを増していく中で、米国民の関心をそらすために北朝鮮問題で起死回生をねらう公算も大きく、それが逆に北朝鮮側に足元を見られ、理不尽な要求と妥協を迫られる結果にもなりかねない。

 まさに今、トランプ「個人外交」の限界が露呈しつつあるといえよう。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17618
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/877.html

[戦争b22] 欧州の態度変化でイラン軍事衝突もありうる イラン石油タンカー攻撃は政府の仕業、対応を言明−ロウハニ大統領 タンカー攻撃、イランが外国政府の関与主張 損傷の写真公開
欧州の態度変化でイラン軍事衝突もありうる

2019/10/14

岡崎研究所

 英仏独、三か国首脳は、7月23日、サウジの石油施設攻撃について共同声明を発出し「イランに責任があるのは明白だ」と非難するとともに、核合意についてイランに全面履行を求めると同時に、現在の規定より長期にわたる核開発制限の枠組みや、ミサイル開発計画を含む地域の安全保障に関し、新たな合意に向け交渉を始めるべきであると述べた。


catolla/Koszubarev/iStock / Getty Images Plus
 これは、英仏独のイランに対する姿勢の明白な変化である。これまで英仏独は、トランプ政権がイラン核合意から離脱した後も、核合意の維持のため努力してきた。3か国の外相は 1月31日付けの共同声明で、核合意を維持すべく、イランとの円滑な金融取引のために「貿易取引支援機関(INSTEX:Instrument for Supporting Tarde Exchanges)を設立したと発表した。INSTEXの設立により、イランとの取引でユーロ建て決済が可能となる。当面はイランでの需要が大きい医薬品や医療機器、農産品、食品などの取引を支援するとされた。

 しかし、イラン政府は、一歩前進だが期待を下回るとして、石油取引の早期再開ができないことに不満をあらわにした。 その上、米国政府が INSTEX に不快感を示し、INSTEX のイラン側機関を制裁の対象とすることを示唆した。

 当初、イランは、核合意で核開発の規制を受け入れる代わりに米欧からの制裁解除でイラン原油の輸出が可能となり、イラン経済を再活性化することを期待した。それが、米国の「イラン核合意」からの離脱で米国の制裁が復活し、欧州の企業は米国の報復を恐れてイラン原油の輸入を躊躇した。イランから見れば、欧州は核合意を遵守すると言っても、イランにとっては、核合意を遵守する経済的なメリットが無くなり、不満を募らせていた。

 イランのザリフ外相が 7月1日、イランの低濃縮ウランの貯蔵量が核合意の上限300キロを超えたと述べ、イランが7月7日以降、核合意に反してウラン濃縮度を高めると警告したのは、欧州の政策に対する不満の表明であり、欧州を牽制する動きと考えられた。

 そこに来て、英仏独による7月23日の共同声明である。核開発自体の制約に加えて、ミサイル開発の規制、イランのヒズボラ、シリアなどへの支援による地域での勢力拡大にストップをかけようとするもので、これはトランプ大統領がかねてより要求してきたことである。 そもそも、2015年の核合意の交渉を始めるにあたって、欧米諸国はミサイル開発の規制、イランの地域での行動規制も交渉の対象とすることを考えていたが、そうすると交渉が難航し、妥結の目途が立て難かったので、取りあえずの最優先事項であるイランの核開発能力の制限にしぼって交渉することとした経緯がある。2015年の核合意にイランのミサイル規制、イランの地域での行動規制が含まれなかったのは、イランの核開発能力を規制し、イランの核兵器取得を防ぐことを最優先させるという現実的考慮の結果だったのである。トランプは、2015年の核合意には欠陥があると言っているが、それが現実的考慮の結果であったことは理解していないか、理解しようとしていない。

 英独仏は過去の経緯から、2015年の核合意の対象が限定的であることを十分理解しているはずなのに、今回交渉の範囲を広げることを主張したのはなぜか、その理由が分からない。

 イランは核合意の再交渉に全く否定的ではないが、交渉の対象を広げることには合意しないだろう。それにイランは交渉の前提として、制裁の解除を主張している。米国が制裁の解除に同意しないことは明らかで、今回欧州が米国に同調したことで、交渉が始まる見通しは立たない。

 今まで何とか核合意の存続に努めてきた欧州が態度を変えたことで、現行の核合意の存続は困難になったと言わざるを得ない。イランの核開発の規制の枠が外れることとなり、イランの核開発は核合意成立以前の極めて不安定な状態に戻る恐れがある。それはイスラエルの危機感を高め、場合によってはサウジの核開発を触発する恐れがある。中東情勢の不安定化が高まるのは必至である。

 今回の動きの発端は、サウジの石油施設攻撃である。未だイランによる攻撃であったとの決定的証拠は出ていないが、イランの革命防衛隊による攻撃であったとの見方がほぼ定着している。イランによる攻撃であったとしたら、イランはそれに対する反応の強さを読み違えていたと言える。

 これからもイランに対する締め付けが強まり、特に頼りにしていた欧州が態度を変えたことで、イランはまた何らかの反撃を試みることは十分考えられる。その際どの程度の反撃なのかは重要である。欧米が一線を越えたと判断するような反撃をすれば、イランをめぐり軍事衝突が起こる危険が高まる。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17566


 
イラン石油タンカー攻撃は政府の仕業、対応を言明−ロウハニ大統領
Golnar Motevalli、Arsalan Shahla
2019年10月15日 6:45 JST
イランのロウハニ大統領は14日、同国の石油タンカー1隻が紅海で攻撃を受けた問題に対応すると表明し、テロリスト集団ではなく、ある政府の仕業であることが証拠で示されていると語った。

  2015年の核合意から米国が昨年離脱した後初めて記者会見に臨んだロウハニ大統領は、イラン政府当局者が事件の映像を見たと述べ、複数のロケットがタンカーを標的にした可能性が高いと指摘した。同大統領は責任の所在に言及することは避けたが、タンカーは攻撃を受けた際、サウジアラビアのジッダ港付近を航行していた。

  ロウハニ大統領は「これはテロリストによる動きではなく、個人によるものでもなかった。ある政府が実行したものだ」と言明。イラン当局がロケットの破片を検証していることを明らかにした。

原題:Iran’s Rouhani Vows Response to Oil Tanker Attack(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-14/PZDRRJT0AFB901


 

タンカー攻撃、イランが外国政府の関与主張 損傷の写真公開
2019年10月15日 6:21 発信地:テヘラン/イラン [ イラン サウジアラビア 中東・北アフリカ ]
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イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
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イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」の船上でポーズをとる乗組員ら。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
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イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」の船上でポーズをとる乗組員ら。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
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イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」の船上でポーズをとる乗組員ら。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
イラン船籍の石油タンカー「サビティ」が受けた損傷。イラン国営タンカー会社(NITC)が公開(2019年10月14日公開)。(c)National Iranian Oil Tanker Company (NITC) / AFP
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【10月15日 AFP】サウジアラビア沖で先週、イラン船籍の石油タンカーが攻撃を受けた問題で、イランのハッサン・ロウハニ(Hassan Rouhani)大統領は14日、首都テヘランで記者会見し、攻撃には外国政府が関与していたとの考えを示し、「敵対的な裏切り行為だ」と批判した。イラン当局は、損傷を受けた船体の写真を公表した。

 イラン政府によると、イラン船籍の石油タンカー「サビティ(Sabiti)」は11日、サウジの港湾都市ジッダ(Jeddah)沖の紅海(Red Sea)海上で2度の爆発に見舞われた。

 ペルシャ湾では船舶に対する攻撃が相次いでいるが、イラン船舶が攻撃を受けたのはこれが初めて。一連の船舶攻撃について、米国はイランの犯行と主張している。

 ロウハニ師によると、イランは複数の「ロケット弾」がタンカーに向かって発射され、うち2発が命中したことを示す映像を入手しているという。

 タンカーを所有するイラン国営タンカー会社(NITC)が公開した13日撮影の写真には、右舷の喫水線の上に開いた2つの穴が写されている。ただNITCは、攻撃がサウジ領土から行われたとの見方については否定した。(c)AFP/Amir Havasi
https://www.afpbb.com/articles/-/3249485
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/878.html

[経世済民133] 中国の生産者物価、9月に下げ拡大−消費者物価は13年以来の伸び 黒田総裁の日銀、債券保有縮小も−現行ペースでテーパリング継続なら 物価モメンタムより注意必要、失速懸念高まれば追加緩和
中国の生産者物価、9月に下げ拡大−消費者物価は13年以来の伸び
Bloomberg News
2019年10月15日 11:03 JST 更新日時 2019年10月15日 12:18 JST
• 9月のPPIは前年同月比1.2%低下−予想と一致
• CPIは前年同月比3%上昇−予想2.9%上昇
中国の生産者物価指数(PPI)は9月に下げ幅が拡大した。景気減速や前年同月の大幅な上げが影響した。一方、豚肉の価格高騰で消費者物価指数(CPI)は2013年以来の大きな伸びを記録した。
  国家統計局が15日発表した9月のPPIは前年同月比1.2%低下。ブルームバーグが調査したエコノミスト予想と一致した。
  9月のCPIは前年同月比3%上昇。8月は2.8%上昇だった。
Companies and Consumers Suffer
As factory prices drop and food prices soar

Source: National Bureau of Statistics
  9月の食品価格は11.2%上昇し、豚肉は69.3%値上がり。食品とエネルギーを除いたCPIの伸び率は1.5%と、前月と同じだった。
  中国の政策当局はCPIとPPIの乖離(かいり)拡大に見舞われている。食品価格の急上昇でCPIが押し上げられる一方で、工業セクターにはデフレが再来し、債務返済が一段と困難になっている。
  調査会社TSロンバードの中国担当チーフエコノミスト、ボー・チュアン氏は統計発表前、「7月以降のPPIデフレ再来は、既に米中貿易摩擦やサプライチェーンの移転によるストレスにさらされている製造業投資の足かせになっているだけではなく、本土企業の債務借り換えに大きなリスクをもたらしている」と指摘した。
原題:
China Factory Deflation Worsens as Pork Drives Consumer Prices(抜粋)
(4段落目以降に詳細や市場関係者のコメントなどを追加して更新します)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-15/PZE7N3T1UM0X01?srnd=cojp-v2

 


黒田総裁の日銀、債券保有縮小も−現行ペースでテーパリング継続なら
masaki kondo、藤岡徹
2019年10月15日 12:34 JST
• 日銀の債券保有残高、来年10年ぶり縮小見込み−ブルームバーグ分析
• 2020年8月に日銀の保有残高が減少し始める公算
日本銀行は歴史的な転換点に向かっている。 ブルームバーグ・ニュースの分析によると、日銀の債券保有残高は来年、10年ぶりに縮小する見込みだ。
  日銀は金融政策の軸足を長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)に移した2016年以降、債券購入を着実に縮小させてきたが、それでも年間80兆円をめどに保有残高を増やすとのガイダンスの廃止は拒否してきた。
  ブルームバーグの分析によれば、日銀の保有残高は来年8月に減少し始める公算で、同月に日銀の購入額が償還額を下回る。これは理論的に、利回りに対する下押し圧力を軽減する。
  世界的な債券相場上昇によりマイナス利回りの日本国債が増える中、黒田東彦総裁にはイールドカーブをスティープ化させるための長期債の購入縮小(テーパリング)を促す力が働く。
In Search of Steeper Curve
BOJ has been cutting purchases of ultra-long bonds aggressively

Sources: Bloomberg, Bank of Japan
Note: The chart shows BOJ's gross monthly purchases of bonds
   BNYメロン・インベストメント・マネジメントのシニア・ソブリンアナリスト、アニンダ・ミトラ氏は「テーパリングは日銀が資産購入目標の強調をやめ、イールドカーブ・コントロールという主要な政策枠組みに注力せざるを得ない必要性をあらためて示すものだ。将来的には、インフレ目標を達成するため特定の年間金額の資産購入を継続する姿勢すら完全に捨てる必要がある」と話した。
  債券保有残高が減少する見通しは、日銀にテーパリングの再考またはガイダンスや政策枠組みの見通しを迫るかもしれない。ただ、日銀も同様に保有残高減少を想定しているかどうかは不明だ。市場は今月末の政策決定会合で日銀が成長てこ入れ策を強化する可能性があるとみている。
  ブルームバーグの計算によると、日銀が今年1−9月と同じペースでテーパリングすれば、来年の総購入額は49兆4000億円になる可能性がある。同期間には少なくとも55兆9000億円が償還される。

Down, Down, Down

BOJ's bond holdings have kept falling since introduction of yield curve

Sources: Bloomberg, BOJ
Note: Bloomberg estimated the 2019 and 2020 holdings, without accounting for amortization
原題:Kuroda Is on Course to Shrink the Bank of Japan’s Bond Holdings(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-15/PZE7TW6S972801?srnd=cojp-v2


 

物価モメンタムより注意必要、失速懸念高まれば追加緩和-日銀総裁
伊藤純夫
2019年10月15日 9:40 JST 更新日時 2019年10月15日 10:19 JST
海外経済中心に、経済・物価の下振れリスク大きい
台風災害の実体経済への影響把握、金融・決済の円滑確保
日本銀行の黒田東彦総裁は15日、都内の本店で開かれた支店長会議であいさつし、物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、「躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じる」と語った。

  その上で、物価のモメンタムは「より注意が必要な情勢になりつつある」とし、30、31日の次回金融政策決定会合で「経済・物価動向を改めて点検していく」考えを表明。政策金利については「当分の間、少なくとも2020年春ごろまで、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定している」とした。

  日本経済は「当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる」としたが、「特に海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きい」と警戒。最近は「海外経済の減速が続き、その下振れリスクが高まりつつある」との認識を示した。

  足元の消費者物価(生鮮食品除く)の前年比は「ゼロ%台半ば」と、日銀が目指す物価2%目標には依然として距離があるが、先行きは需給ギャップのプラス継続や中長期的な予想物価上昇率の高まりに伴って「2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる」とした。

  また総裁は、広範な地域に被害をもたらした台風19号について「災害の実体経済への影響を把握するとともに、金融機能の維持と資金決済の円滑の確保に努めていく」と語った。

キーポイント
金融システムは安定維持、金融環境は極めて緩和した状態
物価モメンタム損なわれる恐れ高まる場合躊躇なく追加金融措置講じる
物価の先行き、2%に向け徐々に上昇率を高めていくと考えられる
災害の実体経済への影響を把握、金融機能の維持と資金決済の円滑確保に努める
(第2段落以降に総裁発言を追加し、見出しも差し替えて更新しました)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-15/PZE156T0G1KW01?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/394.html

[経世済民133] IMF19年世界成長3%に下げ、10年ぶり低調−日本20年0.5%に上げ IMF新専務理事、世界的な減速が広がる「深刻なリスク」見られる この先も大規模な金融緩和を継続、バランスシート拡大続く=黒田日銀総裁 日銀緩和に問われる円高防御力 難しさ増す「次の一手」 フィリップス曲線は死んだのか、ブラード総裁とミシュキン氏が論戦

IMF19年世界成長3%に下げ、10年ぶり低調−日本20年0.5%に上げ
Jeff Kearns
2019年10月15日 22:00 JST
19年世界経済成長率予想引き下げは5回連続、米中の見通しも下げ
減速の同時発生と不確かな回復でグローバル見通しはなお不安定

国際通貨基金(IMF)は15日公表した最新の世界経済見通し(WEO)で、2019年の世界経済成長率予想を5回連続で引き下げた。貿易摩擦で経済成長が損なわれる中で、世界の主要国・地域で広く景気が減速していると指摘した。

  日本については今年の成長率予想を0.9%に据え置く一方、来年は7月時点の0.4%から0.5%に上方修正した。

  IMFの最新見通しによると、19年の世界経済成長率は3%と、7月時点の予測の3.2%を下回る見込み。20年の予想も3.4%と7月時点(3.5%)から下方修正した。見通し通りになれば、今年は世界経済が縮小した09年以降で最も低い伸びとなる。IMFは米国と欧州、中国、インドの予想成長率を引き下げた。

  IMFのチーフエコノミスト、ギータ・ゴピナート氏は報告書で、「減速の同時発生と不確かな回復に伴い、グローバルな見通しはなお不安定だ。政策ミスの余地はなく、政策担当者が貿易摩擦と地政学的緊張の緩和で協調することが急務だ」と主張した。

  今週ワシントンで開幕するIMF・世界銀行の合同年次総会に先立ち公表された最新WEOでの見通し下方修正は、関税引き上げの経済的コストを浮き彫りにする。トランプ米大統領の貿易政策が引き続き最も大きなグローバルの脅威の一つとなる中で、各国当局者がIMF・世銀関連の一連の会議に集う。米中貿易協議の先週の「部分合意」によって、世界的な先行き不透明感が緩和されるかどうか投資家は見守っている。

  IMFは景気の勢いの鈍さや投資の弱さを理由に貿易量の増加ペースの見通しを「停滞に近い」1.1%と、昨年の3.6%から大幅に引き下げたが、20年には3.2%への回復を見込んでいる。

  報告書は「見通しではリスクが優勢に見える」が、多くの国で最近実施された金融緩和に伴い、「米中貿易摩擦が緩和されたり、英国の欧州連合(EU)からの『合意なき離脱』が回避されたりする場合は特にそうだが、需要が予想以上に押し上げられる可能性もある」と分析した。

  IMFのエコノミストらは米国の19年成長率予想を0.2ポイント引き下げ2.4%とする一方、20年については0.2ポイント引き上げ2.1%とした。

  ユーロ圏の成長率見通しは、今年が1.2%、来年は1.4%にそれぞれ引き下げた。ドイツとフランス、イタリア、スペインは今年と来年の予想がいずれも下方修正された。英国の今年の成長率見通しも1.2%に引き下げ。中国の成長率予想は今年が6.1%、来年は5.8%に下向き修正された。

原題:Trade Woes Push IMF Global Growth Outlook to Decade-Low of 3%(抜粋)

IMF’s Asian Economies GDP, CPI, Unemployment Forecasts (Table)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-15/PZE3AOT1UM0W01?srnd=cojp-v2

 
世界成長率3.0%に減速 IMF、貿易戦争で予測下げ
トランプ政権 貿易摩擦 経済 中国・台湾 ヨーロッパ 北米
2019/10/15 22:00 
米中の貿易戦争を受けて世界的に貿易や投資が減速している=AP

【ワシントン=河浪武史】国際通貨基金(IMF)は15日改定した世界経済見通し(WEO)で2019年の成長率を3.0%と予測し、7月時点から0.2ポイント下方修正した。米中の貿易戦争を受けて世界的に貿易や投資が減速しており、金融危機直後だった09年以来、10年ぶりの低い伸び率となる。中国は20年の成長率が30年ぶりに6%台を割り込むと予測した。

IMFは四半期ごとにWEOを改定している。下方修正は5期連続だ。世界経済は3%成長が好不況の境目とされる。IMFは「世界全体の90%の国・地域で経済が減速している」と指摘した。20年の実質経済成長率は3.4%に持ち直すと見込んだが、7月時点の予測と比べ0.1ポイント引き下げた。

世界景気が急減速する最大の要因は米中の貿易戦争で、19年の世界の貿易量の伸びは前年比で1.1%にとどまりそうだ。18年(3.6%増)から急ブレーキがかかる。米国は中国製品の制裁関税を積み増す可能性があり、IMFは「経済見通しのリスクは下方に傾いている」と警告した。

中国の成長率見通しは、19年が6.1%、20年は5.8%にいずれも下方修正した。18年の6.6%から減速し、天安門事件の直後だった1990年(3.9%)以来の低さにとどまる。金融緩和や財政刺激策で景気の失速を回避すると見込むものの、IMFは「企業と家計の債務は急増している」と金融面での不均衡にも警鐘をならした。

貿易戦争を仕掛けた米国も、19年の成長率見通しは2.4%と7月時点から0.2ポイント下方修正した。企業投資などが弱含み、18年の2.9%成長から減速しそうだ。20年の成長率見通しは、米連邦準備理事会(FRB)の利下げや連邦政府の歳出拡大で0.2ポイント上方修正したものの、潜在成長率並みの2.1%にとどまりそうだ。

日本は19年が0.9%、20年は0.5%と予測をほとんど修正しなかった。19年中は消費税増税の影響を需要喚起策でカバーするが、20年は家計支出が鈍化すると予測した。成長率の停滞は中期的に続きそうで、24年時点の伸び率も0.5%にとどまると見込んだ。

ユーロ圏も輸出依存度の高いドイツは19年の成長率が0.5%、20年も1.2%にとどまる見通しだ。英国も1%台前半の低い成長率を予測するが、欧州連合(EU)離脱の動き次第では下振れが避けられない。

新興国も軒並み下方修正となり、インドの19年の成長率見通しは0.9ポイントも引き下げられた。自動車販売などの個人消費に急ブレーキがかかり、大手ノンバンクが経営破綻するなど、金融面でも資金供給が収縮している。メキシコも緊縮財政の影響で景気後退の瀬戸際にあり、各国・地域とも政策のミスマッチが目立つ。

日米欧と中国など20カ国・地域(G20)は17日から2日間の日程で財務相・中央銀行総裁会議を開く。「世界同時減速」から抜け出すための政策協調を求められるが、米国は中国だけでなく欧州連合(EU)とも航空機の補助金を巡って関税合戦の瀬戸際にある。政治リスクの解消すらできないG20に国際的な政策協調はのぞめない。

FRBや欧州中央銀行(ECB)は金融緩和に打って出たが、金利政策や量的緩和の拡大余地は極めて小さい。ドイツなど一部の国は財政拡張の可能性があるものの、日本などは国家債務の積み上がりも深刻だ。金融危機後の10年間で政策余地を十分に取り戻せないまま、世界景気は「不況」の瀬戸際に立つ。

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世界3.5%成長に減速 IMF19年予測、欧州も下振れ
2019/1/21 22:00

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50995500V11C19A0MM8000/

IMF新専務理事、世界的な減速が広がる「深刻なリスク」見られる
Sarah McGregor
2019年10月9日 2:27 JST
ゲオルギエワ氏、就任後初の主要講演で悲観的な見方示す
貿易、英EU離脱、地政学的な緊張が景気を抑制
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は就任後初の主要な講演で、世界経済に関して悲観的な見方を示し、景気減速が深刻化した場合、各国政府は協調して財政による刺激措置を講じる必要性が出てくる可能性があると述べた。

  今回の講演は来週開催されるIMF年次総会の基調を打ち出すもの。IMFは10月15日公表予定の世界経済見通し(WEO)で2019年と20年の成長見通しを引き下げると、ゲオルギエワ氏は語った。IMFは7月に今年の成長率予測を3.2%、来年は3.5%にそれぞれ引き下げ、昨年10月以降で4度目の下方修正を行っていた。

IMF World Economic Outlook Press Briefing
ゲオルギエワIMF専務理事
  世界の機関やエコノミスト、投資家らは世界的な成長減速の主因として、関税を巡る米中の対立を非難している。ゲオルギエワ氏は8日のワシントンでの同講演で、貿易摩擦が製造業の落ち込みや投資減速の一因となっており、サービス業や消費といった経済の他分野に波及する「深刻なリスク」が生じていると指摘。世界の貿易の伸びは停滞状態に近いと、付け加えた。

  同氏は「世界経済は今、同時減速の状況にある」とし、世界の90%で成長が減速しているとIMFでは見積もっていると発言。一方、2年前は世界全体の4分の3で景気が同時に上向き、成長が加速していたと付け加えた。

  さらに、「貿易や英国の欧州連合(EU) 離脱を起因とする不確実性、地政学的な情勢緊迫が潜在的な経済力を抑制している」とも指摘。それにとどまらず、経済的な対立は「長期にわたり続き」、自己中心的な貿易といったシフトが起こる可能性があると話した。

原題:
New IMF Chief Sees ‘Serious Risk’ Global Slowdown Will Spread(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-08/PZ2DBM6TTDS201


 

最新経済ニュース2019年10月16日 / 15:06 / 4分前更新
この先も大規模な金融緩和を継続、バランスシート拡大続く=黒田日銀総裁
Reuters Staff
1 分で読む

[東京 16日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は16日午後、参院予算委員会で、日銀のバランスシートについて「この先も物価安定の目標の実現に向けて大規模な金融緩和を継続する考えで、バランスシートの拡大は続く」との見通しを示した。

ただ、2%の物価安定の目標を達成した際には「当然、大規模な金融緩和を継続する必要はなくなるので、日銀のバランスシートの規模も見直していく」とも語った。

浅田均委員(維新)の質問に答えた。

*この記事の詳細はこの後送信します。新しい記事は見出しに「UPDATE」と表示します。 (志田義寧)
https://jp.reuters.com/article/idJPT9N26N01V?il=0

物価モメンタムより注意必要、失速懸念高まれば追加緩和-日銀総裁
伊藤純夫
2019年10月15日 9:40 JST 更新日時 2019年10月15日 10:19 JST
海外経済中心に、経済・物価の下振れリスク大きい
台風災害の実体経済への影響把握、金融・決済の円滑確保
日本銀行の黒田東彦総裁は15日、都内の本店で開かれた支店長会議であいさつし、物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、「躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じる」と語った。

  その上で、物価のモメンタムは「より注意が必要な情勢になりつつある」とし、30、31日の次回金融政策決定会合で「経済・物価動向を改めて点検していく」考えを表明。政策金利については「当分の間、少なくとも2020年春ごろまで、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定している」とした。

  日本経済は「当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる」としたが、「特に海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きい」と警戒。最近は「海外経済の減速が続き、その下振れリスクが高まりつつある」との認識を示した。

  足元の消費者物価(生鮮食品除く)の前年比は「ゼロ%台半ば」と、日銀が目指す物価2%目標には依然として距離があるが、先行きは需給ギャップのプラス継続や中長期的な予想物価上昇率の高まりに伴って「2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる」とした。

  また総裁は、広範な地域に被害をもたらした台風19号について「災害の実体経済への影響を把握するとともに、金融機能の維持と資金決済の円滑の確保に努めていく」と語った。

キーポイント
金融システムは安定維持、金融環境は極めて緩和した状態
物価モメンタム損なわれる恐れ高まる場合躊躇なく追加金融措置講じる
物価の先行き、2%に向け徐々に上昇率を高めていくと考えられる
災害の実体経済への影響を把握、金融機能の維持と資金決済の円滑確保に努める
(第2段落以降に総裁発言を追加し、見出しも差し替えて更新しました)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-15/PZE156T0G1KW01?srnd=cojp-v2

中国の生産者物価、9月に下げ拡大−消費者物価は13年以来の伸び 黒田総裁の日銀、債券保有縮小も−現行ペースでテーパリング継続なら 物価モメンタムより注意必要、失速懸念高まれば追加緩和
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/394.html
投稿者 鰤 日時 2019 年 10 月 15 日 18:24:14: CYdJ4nBd/ys76 6dw  
(回答先: 台風を期に公共投資「所得倍増」を! 台風・増税で企業は景気後退を視野に「補正2兆円規模」の試算も 日銀の景気判断、8地域… 投稿者 鰤 日時 2019 年 10 月 15 日 18:02:01)


黒田総裁の日銀、債券保有縮小も−現行ペースでテーパリング継続なら
masaki kondo、藤岡徹
2019年10月15日 12:34 JST
• 日銀の債券保有残高、来年10年ぶり縮小見込み−ブルームバーグ分析
• 2020年8月に日銀の保有残高が減少し始める公算
日本銀行は歴史的な転換点に向かっている。 ブルームバーグ・ニュースの分析によると、日銀の債券保有残高は来年、10年ぶりに縮小する見込みだ。
  日銀は金融政策の軸足を長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)に移した2016年以降、債券購入を着実に縮小させてきたが、それでも年間80兆円をめどに保有残高を増やすとのガイダンスの廃止は拒否してきた。
  ブルームバーグの分析によれば、日銀の保有残高は来年8月に減少し始める公算で、同月に日銀の購入額が償還額を下回る。これは理論的に、利回りに対する下押し圧力を軽減する。
  世界的な債券相場上昇によりマイナス利回りの日本国債が増える中、黒田東彦総裁にはイールドカーブをスティープ化させるための長期債の購入縮小(テーパリング)を促す力が働く。
In Search of Steeper Curve
BOJ has been cutting purchases of ultra-long bonds aggressively

Sources: Bloomberg, Bank of Japan
Note: The chart shows BOJ's gross monthly purchases of bonds
   BNYメロン・インベストメント・マネジメントのシニア・ソブリンアナリスト、アニンダ・ミトラ氏は「テーパリングは日銀が資産購入目標の強調をやめ、イールドカーブ・コントロールという主要な政策枠組みに注力せざるを得ない必要性をあらためて示すものだ。将来的には、インフレ目標を達成するため特定の年間金額の資産購入を継続する姿勢すら完全に捨てる必要がある」と話した。
  債券保有残高が減少する見通しは、日銀にテーパリングの再考またはガイダンスや政策枠組みの見通しを迫るかもしれない。ただ、日銀も同様に保有残高減少を想定しているかどうかは不明だ。市場は今月末の政策決定会合で日銀が成長てこ入れ策を強化する可能性があるとみている。
  ブルームバーグの計算によると、日銀が今年1−9月と同じペースでテーパリングすれば、来年の総購入額は49兆4000億円になる可能性がある。同期間には少なくとも55兆9000億円が償還される。

Down, Down, Down

BOJ's bond holdings have kept falling since introduction of yield curve

Sources: Bloomberg, BOJ
Note: Bloomberg estimated the 2019 and 2020 holdings, without accounting for amortization
原題:Kuroda Is on Course to Shrink the Bank of Japan’s Bond Holdings(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-15/PZE7TW6S972801?srnd=cojp-v2

 

 


為替フォーラム2019年10月15日 / 15:39 / 6時間前更新

日銀緩和に問われる円高防御力 難しさ増す「次の一手」

植野大作 三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ為替ストラテジスト
5 分で読む

[東京 15日] - 今月末の日銀金融政策決定会合を前に、追加緩和の是非や手段を巡る議論が活発化している。現在、選択肢と考えられているのは以下に列記する5つの対策だが、採用された場合、それぞれがドル円相場にどのようなインパクトを与える可能性があるのか。是非論も含め、そのシナリオを検証してみたい。

<短期マイナス金利の深掘り>

日銀が短期金利の誘導目標を現行のマイナス0.1%から更に引き下げるという手段。この政策が採用された場合、海外短期筋が金利の高いドルを借りて円買い投機を仕掛ける際に負担する金利コストが重くなるほか、日本のFX取引でドル円をショートにする際のスワップポイントのマイナス幅も拡大する。国内投資家による対米証券投資の為替ヘッジコストを上げたり、海外投資家が日本株を購入する際の円売りヘッジの誘因になったりするため、他の条件が一定ならば円高抑止にある程度の効果が考えられるだろう。

ただ、日銀が単純に短期マイナス金利の幅を広げた場合、金融機関の収益が一段と圧迫され、預金金利の実質マイナス化などの副作用が強まりかねない。よって、日銀がマイナス金利の深掘りに動く場合は、日銀オペの利率をマイナスに下げたり、マイナス金利適用残高を減らしたりするなどの「副作用緩和策」とセットで実施されるとの見方が多い。

だが、日銀がそのような副作用緩和策を採用しても、中小の金融機関にはあまり恩恵がないほか、銀行貸出し金利の引き下げ競争を助長するリスクもある。「マイナス金利深掘りの副作用軽減策による副々作用」も懸念され、賛否両論を呼ぶだろう。為替円高の抑止効果と金融機関経営に与える副作用を天秤にかけた慎重な判断が必要だ。

<長期金利の下振れ容認>

日銀が現在採用している長短金利操作で長期金利の誘導目標は「ゼロ%程度」であり、許容される上下の変動幅については黒田総裁が当初述べていた0.2%を厳密に解釈する向きが多かった。だが、昨年秋以降の米長期金利低下の影響を受け、日本の10年国債利回りは断続的にマイナス0.2%を割り込む場面も観測されている。日銀が長期金利の下振れを容認する形で事実上の緩和強化に追い込まれているようにも映る。

米国発の長期金利低下の圧力が日本に押し寄せてきた際に、日銀が金利下振れを許容する態度を示せば、米日金利差の縮小に伴い発生する円高圧力を一部減殺する効果がある。日銀が「長期金利の誘導目標からの下振れは認めるが上振れは許さない」という非対称的な市場調節を行えば、円高抑止のアナウンスメント効果はそれなりに強化されるだろう。

日本の長期金利の低下余地は米国に比べて限られるので、日銀が長期金利の下振れを黙認しても円高抑止効果は限られるとの見方もある。しかし、筆者はそう思わない。

過去に購入した高利回りの日本国債が次々と償還され、その結果、多額の運用原資が日本の国内機関投資家の手元に戻ってきている。しかし、現在の日本の長期金利の水準はあまりにも低過ぎるため、単純な国内債への再投資だけでは組織の運営に必要な利息収入を確保できない。そうした国内投資家が累増し、円高局面での米債投資を検討せざるを得ない立場に追い込まれていくからだ。

ただ、日銀が現在の極めて低い長短金利の誘導目標を維持する期間が長引けば長引くほど、金融機関の経営体力を蝕む副作用も時の経過とともに一段と強くなる。日銀の長短金利操作の累積効果による円高抑止力が、「生命の危険」を感じるほどの運用難に直面している国内投資家の苦悩に比例して強まっていることを忘れるべきではない。

<国債買い入れの増額>

日銀が「量的・質的金融緩和」の一環として行っている長期国債の買い入れ額を増やすという手段だが、日銀の長期国債購入残高の伸びは、直近9月末の実績で前年比22兆円増というレベルまで鈍化しており、「年80兆円程度」まで拡げられた国債保有残高の増加枠は既に形骸化している。現行の長短金利操作を約3年前に導入した後、日銀の金融政策の主な操作目標は「量」から「金利」に移っており、長期金利が誘導目標の下限前後を徘徊しているような状況で、国債の購入を無理に増やすような政策は採用しにくいだろう。

もちろん、政府が巨額の財政出動に踏み切って国債を大量に増発すれば、長期金利を過度に下げずに日銀が国債の購入を増やすことは可能になる。政府・日銀がそのような政策協調で足並みを揃えた場合は一定の株高・円安効果がありそうだ。

ただ、日本の財務省は伝統的に野放図な財政拡張に反対の立場であり、政府の放漫財政を中央銀行が国債購入で支える日本の施策を是認する学説として最近注目されている「現代貨幣理論」については、黒田日銀総裁も「全く賛同できない」との見解を示している。現時点でこのオプションが採用される可能性は低そうだ。

<上場投資信託(ETF)購入の増額>

日銀による株価指数連動型のETFの購入枠を現行の「年6兆円程度」から更に拡大するという手段。「中央銀行が民間企業の株式を期限を定めず買い続ける」という政策は世界的にみても異例であり、更に増額された場合は株高・円安の初期反応を呼びそうだ。

ただ、日銀が現行の「量的・質的金融緩和」を導入した当初、「年1兆円程度」だったETFの購入枠は、その後一連の追加緩和で3倍、更に2倍に拡張されて現在に至っている。政府の財政出動とセットでやれば購入量を増やせる国債と違い、民間企業が発行する株式の購入には自ずと限度がある。

また、日銀が民間の上場株をほぼ無差別に購入し続けるという現在の施策は、「優勝劣敗」、「信賞必罰」を原則とすべき資本市場の機能を阻害するリスクがある。あくまで私見だが、日銀によるこれ以上のETF購入の増額は、技術的にも道義的にも問題含みだ。

<フォワード・ガイダンスの変更>

日銀が現在採用しているフォワード・ガイダンスでは、少なくとも来年の春頃まで現在の長短金利の水準を維持する方針が示されているが、これを変更して市場の緩和期待を高めるという手段。具体的な方法としては、現在の低金利政策の継続期間を延長したり、物価目標2%の達成にリンクさせたり、政策金利の水準を「維持する」だけでなく「下げる」可能性を明記するなど、様々なやり方が考えられる。

このオプションが採用された場合、金融政策の操作目標を変えずに市場の緩和期待を強めることができる。声明文の文言を変更するだけの作業で済むため、最もコストが低い政策オプションと言えそうだ。ただ、比較的容易に採用できそうな印象がある分だけ、市場が驚くほど強い表現を日本語や英語訳で工夫しないと所期の効果は薄いかもしれない。

以上、現時点で想定される日銀の追加緩和メニューと為替インパクトに関する論点整理を行った。どのオプションを選んでも賛否両論を呼ぶのは必至だが、何も選ばず株安・円高が進んだ場合も賛否両論にさらされるだろう。

追加緩和の余地が限られる中、「究極の金融緩和措置」であるヘリコプターマネーでも採用しない限り、能動的な円安誘導は難しくなっているが、既存の手段による追加緩和でも過度の円高を防御力は強化できそうだ。

本稿執筆時点のドル円相場は1ドル=108円台で取引されている。残り少ない「緩和カード」を切るのか、それとも温存するのか、日銀は難しい判断を迫られている。

*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

植野大作氏 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト(写真は筆者提供)
*植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。
https://jp.reuters.com/article/column-boj-daisaku-ueno-idJPKBN1WU0I0


フィリップス曲線は死んだのか、ブラード総裁とミシュキン氏が論戦
竹生悠子
2019年10月16日 12:45 JST
米セントルイス連銀のブラード総裁は15日、フィリップス曲線の死を巡って元同僚のフレデリック・ミシュキン氏と論戦を交わし、この現象が消えたかどうかで意見を対立させた。

  ブラード総裁が20年にわたる経験的証拠で失業率とインフレ率に相関関係がないことが示されたと先に主張した点について、米連邦準備制度理事会(FRB)元理事のミシュキン氏は州と地方のデータはその逆を示唆していると指摘。

  ロンドンで開かれたマネタリー・ファイナンシャル・ポリシー・コンファレンスで発言したミシュキン氏は、「フィリップス曲線がこれまでと同様に強力であることが実際に示されている」と指摘した。フィリップス曲線が死んだと想定するのは危険であり、「景気を良くし続けても、それについて心配することはない」という見方を助長すると付け加えた。

Bullard Spars With Mishkin Over Lifeless Body of Phillips Curve
フィリップス曲線の死について論戦したセントルイス連銀総裁とミシュキン元FRB理事
  このやり取りで米金融政策を共に議論したころを思い出したと言いつつブラード総裁は、自身のデータの解釈は正しいとなお信じていると言明。過去20年間のより良い金融政策が曲線の平たん化につながったとの認識をあらためて示した。

原題:
Bullard Spars With Mishkin Over Lifeless Body of Phillips Curve(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-16/PZG1NDDWX2PS01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/398.html

[経世済民133] 年内に続々「発動期限」到来、トランプ政権の関税措置 米中貿易、ほぼ全面的な関税が「新標準」化の恐れ 中国、500億ドル相当の米農産物輸入は困難−米国の関税撤廃が条件に 米中貿易協定には人民元巡る取引が含まれる可能性−S&P 香港「悲惨指数」が示す経済と政治の悪循環
トップニュース2019年10月16日 / 13:01 / 2時間前更新
アングル:
年内に続々「発動期限」到来、トランプ政権の関税措置
Reuters Staff
3 分で読む

[ワシントン 15日 ロイター] - 米中両国は先週、貿易協議で部分的に合意した。結果として大半の分野は今後どうなるか分からないままだが、1つはっきりしたのは、15日に米政府が予定していた2500億ドル相当の中国製品に対する関税率引き上げが見送られたことだ。

ただ米国がこれまでに打ち出した新たな関税措置の発動期限が年末までに続々と到来するため、米国はそれぞれ実行するか、延期するか、あるいは再交渉するかの判断を迫られている。既に米国の通商政策に痛めつけられている世界経済にとって、米政府の今後の対応次第ではさらなる悪影響を被る恐れも出てくる。

トランプ政権は過去3年間で、モノの取引だけに基づく貿易相手上位10カ国・地域全てに対して、さまざまな懲罰的関税を導入したり、長らく維持してきた協定の破棄、通商関係の見直しなどを行ってきた。

一部の専門家によると、こうした全面的な貿易戦争を開始したため、米通商代表部(USTR)は米国にとって最も深刻な問題、つまり中国の不公正な貿易慣行を抑え込むという仕事に集中できなくなっている。

かつてトランプ大統領の経済顧問を務め、現在は法律事務所エイキン・ガンプのパートナー、クリート・ウィレムズ氏は、米国は長年にわたって国際貿易に関する重大な問題に直面しており、何らかの形で打開する必要があるのは確かだが、全部同時に片づける必要はなかったと指摘。そんなことをしなければ、もっと中国への対応に力を注げただろうとの見方を示した。

今後の主な関税措置の発動期限や、貿易協定の議会審議日程は以下の通り。

<10月18日 EU向け関税>

早ければ18日に、米政府はプロボローネチーズやスコッチウイスキーなどのEU製品に25%の関税を課す可能性がある。航空機補助を巡り、世界貿易機関(WTO)が米国に約75億ドル相当の報復関税を導入する権利を認めたためだ。

この措置に基づくと、エアバスが欧州で組み立てた航空機にも10%の関税が適用される。業界関係者は、顧客と合意していた契約を取り消されないように同社がコストの少なくとも一部の引き受けを迫られそうだ、と話している。

フランスのルメール経済・財務相は今月、「もし米政府がフランスやEUが差し伸べた手を拒絶するなら、われわれは制裁という形で動く準備をしている」と語り、EUは対抗措置を講じる見込みだ。

<11月14日 米通商拡大法232条による自動車関税>

米国に輸入される自動車・自動車部品を安全保障上の脅威とみなし、通商拡大法232条に基づく最大25%の制裁関税対象とするかどうかに関する政府の長期的な調査は、11月14日に結論が下される。

トランプ政権は、この判断を先送りしてきた。もし制裁関税を発動すれば、販売価格に数千ドルが上乗せされ、米経済全体で数十万人の雇用が失われる可能性がある。

<11月16─17日 APEC首脳会議>

トランプ氏と中国の習近平国家主席は、11月16─17日にチリで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席する予定。トランプ氏はそこで、中国との「第1段階」の通商合意を正式署名できるとの見方を示している。ただ両国には、知的財産や為替政策、中国における金融サービスアクセス、農産品購入についての相互の了解事項を合意文書に加えるための交渉が残っている。

そうした合意文書取りまとめには集中的な話し合いが必要で、最終的に米国が中国向け関税をさらに軽減したり、中国が米農産品を追加購入することなどが盛り込まれるかもしれない。

<11月中 USMCAの承認採決>

新たな北米自由貿易協定(NAFTA)と位置付けられている、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)は、昨年9月に交渉が妥結したが、発効に不可欠な米議会の承認がまだ得られていない。

トランプ氏や与党・共和党、複数の企業団体は野党・民主党のペロシ下院議長に、11月28日の感謝祭のかなり前に批准手続きを進めるよう求めている。11月末までずれ込むと、批准法案と政府の資金繰りを維持するための予算措置の審議が重なってしまう。その後になれば、来年の大統領選と議会選に向けた活動が本格化し、また下院民主党によるトランプ氏の弾劾調査が進行するので、批准法案は立ち往生しかねない。

それでも一部の民主党議員や米国労働総同盟・産別会議(AFL─CIO)のトップは最近、USMCAの労働者の権利保護に関する条項が適切に執行されるかどうか懸念を表明している。

<12月15日 新たな中国製品向け関税>

12月15日には、これまで対象外だった1560億ドル相当の中国製品に新たな関税が適用される。

携帯電話やパソコン、玩具、衣料品といったほぼ全ての消費財が含まれる見込み。米国の企業や小売業者がクリスマス商戦用に関税ゼロで十分な在庫を確保できるようにこうした期限が設定されたが、同商戦終盤の買い物客は値上げに直面してもおかしくない。
https://jp.reuters.com/article/us-tariff-idJPKBN1WV08F


 
トップニュース2019年10月15日 / 14:29 / 1時間前更新
焦点:
米中貿易、ほぼ全面的な関税が「新標準」化の恐れ
Reuters Staff
2 分で読む

[ワシントン 14日 ロイター] - トランプ米大統領は、中国との貿易協議における第1段階の合意を「これまでで最も素晴らしく、大規模な取引だ」と自画自賛し、中国が最大500億ドルの農産品購入を受け入れたと胸を張った。ただ文書で正式合意されたわけでなく、中国製品向けの数千億ドル規模の関税は残したままで、今後は両国とも輸入関税を課すのが「新標準」となる懸念が生じつつある。

ホワイトハウスの記者会見は今回の部分合意にはほぼ言及しておらず、中国政府の公式声明からは、同国側が実際には何も合意していないと考えている様子がうかがえる。

そもそも関係者の話では、貿易戦争の発端で米政府の不満の核心となっている中国の国家主導型経済モデルは、部分合意には解決策がほとんど含まれていない。このモデルに基づき、中国は外国企業に技術移転を強要し、不公正な補助金を支出しているほか、世界的な生産設備過剰を助長している。

一方で米財務省の国際問題担当次官を務めた、PGIMフィクスト・インカムのチーフエコノミスト、ネーサン・シーツ氏は、米国はこの問題で何も柔軟性を見出していないと指摘。部分合意が着地点になれば、中国に相当な水準の関税を本当に恒久的に課すのかという点が問題になるとの見方を示した。

貿易専門家や中国市場のアナリストによると、米中は5月がそうだったように結局個々の問題で11月半ばに予定される首脳会談までに折り合えない可能性が大きい。また第1段階の正式合意が成立したとしても、中国はより困難な第2段階に必要な譲歩には気乗りせず、むしろ米国から高い関税を適用される方を選ぶだろうという。

パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のモハメド・エラリアン氏は2009年、金融危機後の低成長、低インフレ局面を「新標準」と描写したが、それから10年を経てそうした世界が永遠に続く恐れが出てきた。米国が大半の中国製品に高い関税を課し、中国もほとんどの米製品に関税を発動することで世界経済の足を引っ張る半面、中国の根本的な行動変化は起きないからだ。

米戦略国際問題研究所(CSIS)の中国貿易専門家スコット・ケネディー氏は、部分合意は両国にとって当面は状況を前に進めるには十分とはいえ、いずれトランプ政権が協議を放棄し、中国企業は制約を受けなくなると予想した。

米中貿易戦争が始まるまでは、世界経済の前途は非常に明るかった。17年終盤といえば、トランプ政権が投資促進や成長てこ入れのための包括的な減税を実施する直前で、欧州は金融危機後の低迷から脱却し、中国経済は減速しながらも底堅かった。

国際通貨基金(IMF)は17年10月、18年の世界経済成長率が3.7%に達すると予想していた。

ところが貿易戦争開始以降、中国は商用機を除くほとんどの米国からの輸入品、計1100億ドル相当に関税を課している。米国は年間約5500億ドルとなる中国からの輸入品のうちおよそ3750億ドルに関税を発動した。

そのため、IMFのゲオルギエワ新専務理事は今月、貿易摩擦によって世界経済が「同時的な減速」に陥ったと警告するとともに、主に投資を冷え込ませたり市場に打撃を与える不確実性を通じて、これまでに発表された関税が世界総生産を7000億ドル分下押ししたと述べた。[nL3N26T4G3]

米連邦準備理事会(FRB)も同様に、貿易摩擦で世界総生産は8500億ドル、1%相当が失われつつあるとの見通しを示している。

逆に今回の部分合意で、トランプ政権が15日に予定していた中国向け制裁関税引き上げの見送りは、世界総生産へのマイナス効果を0.1%ポイント和らげるに過ぎない、とオクスフォード・エコノミクスは試算した。

ブルッキングス研究所の中国専門家デービッド・ダラー氏は「(トランプ政権は)他の関税を維持することで中国に対して強硬的で、決して屈しないと主張できる。さらなる話し合いや中国市場の開放に向けた展望はそれほど大きくないように思われる」と話した。

(Heather Timmons記者、David Lawder記者)
https://jp.reuters.com/article/us-china-tariff-idJPKBN1WU03F


 

コラム2019年10月15日 / 11:34 / 6時間前更新
香港「悲惨指数」が示す経済と政治の悪循環
Katrina Hamlin
2 分で読む

[香港 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 反政府デモに揺れる香港の状況が危険な循環に入りつつある。この週末も、デモ参加者らは店や地下鉄駅で破壊活動を行い、実弾を使用し始めた警察にれんがや火炎瓶を投げた。

デモ参加者らの要求は、選挙による行政トップ選出という政治的なものであり、経済に関連してはいない。しかし、BREAKINGVIEWSが算出した「香港悲惨指数」によると、香港経済への重圧が過去最悪の水準まで高まっており、政治的混乱を収拾する妨げになりかねない。

同指数は、世論調査が示す政府への不信感と併せ、不動産価格の高騰や交通、教育など日常的な経費、倒産件数などを反映している。すべての項目がこの10年間で上昇した。

掲載したグラフでは、調査機関のアンケートに対する香港市民自らの回答を基に算出した生活への不満度を示す指数と、悲惨指数を併せて表示している。重ねて見ると、2つの重要な点が見えてくる。

第1に、政治に比べて経済要因の影響は小さい。グラフの双方向性機能を使って経済項目を取り除いて見ると、市民の不満は住宅価格高騰といった経済的数値を反映しているわけではないことが分かる。

一方、行政への不満度は明らかに生活満足度と関係している。SARS(重症急性呼吸器症候群)の感染が拡大し国家安全保障法案への抗議活動が起こった2003年など、政治的な紛争があった時期にはとりわけこの傾向が顕著だ。

第2に、悲惨指数によると超富裕層を除く全市民にとって、重圧が持続不可能な水準に達しつつある。一般的なマンション価格が平均年収の約23倍と、20年前の2倍以上に達している。そして今、デモ自体が観光や小売業への影響を通じて経済的な問題に発展した。

林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は既に教育や中小企業を対象に24億ドルの補助金給付を発表しているが、不動産市場などの根本的な問題解決にはつながらない。800億ドルを投じて公共住宅用の人工島を建設する計画も示しているが、完成には10年を要する見通しだ。林長官は今月の施政方針演説で迅速な対処を表明することが可能だが、長官の政策実行能力には疑問がある。

雇用や賃金への不安が募れば、市民はますます抗議活動を起こしやすくなる。政府はこれ以上、市民の忍耐力を試している余裕はない。

●背景となるニュース

*香港では13日、デモ隊と警官隊が激しく衝突した。前週には10代の若者2人が警官に実弾を撃たれた。

*BREAKINGVIEWSの香港悲惨指数は、緊張の根底にある経済・政治的要因を指数化したもの。グラフでは双方向性の機能を使い、どの項目の影響が大きいかを見ることができる。比較のため、香港市民自らが算出した指数も重ねて表示している。

*悲惨指数の基準値は100で、香港が中国に返還された1997年が起点。算出方法は米シンクタンク、コンファレンス・ボードが推奨する手法に基づいた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/breakingviews-hongkong-idJPKBN1WU06R

 


米中貿易協定には人民元巡る取引が含まれる可能性−S&P
Max Zimmerman
2019年10月16日 12:35 JST
人民元相場に対する市場の役割拡大をベースとする内容であれば、中国は米国との貿易協定に付属する為替政策に関する裏取引を恐らく受け入れるだろうとS&Pグローバル・レーティングがリポートで指摘した。

  S&Pのアジア太平洋地域担当チーフエコノミスト、ショーン・ローチ氏は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)のような最近の先例に沿った内容であれば、中国は為替条項に同意する可能性が高いとの見方を示した。

  さらに、貿易紛争の包括的な解決は多少遠いようだとした上で、米中は知的財産権保護や外国企業の市場アクセスなど構造的問題でほとんど前進していないように見受けられると分析した。

原題:
Any U.S.-China Trade Pact May Have Yuan Side Deal, S&P Says(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-16/PZG4ZQT0G1KW01?srnd=cojp-v2


 


中国、500億ドル相当の米農産物輸入は困難−米国の関税撤廃が条件に
Bloomberg News
2019年10月15日 21:55 JST
• 現在の状況下では米側主張の購入額に達する可能性低い−関係者
• 中国、輸入増やすため幅広い品目の購入を検討


中国は、米国に対する報復関税を維持する限り年間500億ドル(約5兆4200億円)相当の米国産農産物の購入は難しいとみている。報復関税を撤廃する条件は、トランプ米大統領が同様に関税を撤廃することだという。事情に詳しい関係者が明らかにした。
  中国は「第1段階」の貿易合意の一環として米国産農産物の購入を開始する用意があるが、現在の状況下では購入額がトランプ大統領が主張している400億−500億ドルに達する可能性は低いと、関係者が非公開の交渉内容だとして匿名を条件に語った。
  米国は先週、米中両国が大枠で合意に達したとしていたが、中国側の条件は両国の隔たりがまだ大きいことを鮮明にする。米国は、予定されていた関税を発動しないことを条件に中国が大量の農産物購入を約束したとしていたが、中国側の姿勢は合意の道筋が当初の説明よりも複雑であることを意味する。
  第1段階の合意の下で、中国が米国産農産物輸入を今後2年間で年間400億−500億ドル規模に増やすとムニューシン米財務長官が述べていた。中国はこれまでに、同国企業が米国の農産物を購入できるように関税を免除してきた。関係者によれば、中国は購入開始に向けて再びこの措置を取ることができる。しかし年間500億ドルという規模の場合、免除は現実的でないと考えられていると、関係者の1人が述べた。
U.S. Agriculture Trade with China

Source: USDA GATS
  中国企業は今年これまでに大豆2000万トン、豚肉70万トンをはじめとする米国産農産物を購入しており、購入を加速させると中国外務省の耿爽報道官が15日述べた。第1段階の貿易合意に関する質問には、米国の説明は「正確」であり、米国と中国は状況について同じ理解をしていると答えた。
  関係者によると、中国は輸入を増やすために、大豆、穀物、綿、エタノール、肥料、ジュース、コーヒー、肉類などの幅広い品目を購入することを検討。家禽(かきん)に対する輸入障壁を解除することも話し合われている。機械、木材、農薬も輸入品目に追加する可能性があり、これらの購入額は400億ドル以上となる見込みだが、中国側はそれぞれの品目の具体的な輸入額は決定していないという。
  中国商務省に米国産農産物の購入可能性についてファクスでコメントを求めたが、現時点で応答はない。
原題:China Wants U.S. to Remove Tariffs to Hit $50 Billion Imports(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-15/PZEX366KLVR701?srnd=cojp-v2

ビジネス2019年10月16日 / 12:21 / 3時間前更新
増税後の消費、台風直前の買いだめ影響を含め注視=西村再生相
Reuters Staff
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[東京 16日 ロイター] - 西村康稔経済再生相は16日午前の参院予算委員会で、消費増税後の消費動向について台風19号に伴う買いだめの影響も含め注視すると述べた。山本博司委員(公明)への答弁。

西村再生相は消費動向に関し「増税後のデータの十分な蓄積がなく、もう少し細かくみないといけない」と指摘。特に「台風19号の影響で、(上陸)直前の金曜日(11日)に買いだめ需要が相当伸びている。その後の品薄の状況などしっかり注視が必要」と強調し、その上で「全体としては(2014年の)前回(増税時)ほど落ち込みはない思うが、台風の影響も含め注視する」と回答した。

竹本能文
https://jp.reuters.com/article/nishimura-consumption-idJPKBN1WV07R
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/399.html

[戦争b22] ロシアがシリアで影響力拡大、米軍撤退の空白埋める−国境付近で監視 トルコ、シリア北部への攻撃継続 停戦要求圧力高まる トランプ氏のシリア撤収決定に反対、米超党派議員が決議案提出 
ロシアがシリアで影響力拡大、米軍撤退の空白埋める−国境付近で監視
Henry Meyer、Ilya Arkhipov
2019年10月16日 4:51 JST
米国が見捨てたクルド人武装勢力を駆逐しようとシリアに侵攻したトルコ軍は、ロシアのプーチン大統領の策略にはまり、中東における戦略的な勝利を同大統領に手渡してしまったかもしれない。
  トルコのエルドアン大統領がシリア侵攻を命じてから1週間もたたない間にロシアはこの軍事作戦に対する忍耐の限界を表明し、同地域における影響力を印象づけた。シリアから最後の駐留軍を引き揚げさせ、米議員の多くが手ぬるいとみる対トルコ制裁しか打ち出していないトランプ米大統領の対応とは対照的だ。
  プーチン大統領のシリア担当特別代表を務めるアレクサンドル・ラブレンティエフ氏は15日、訪問先のアブダビで「われわれは常に、トルコに自制を求めてきた。シリア内のいかなる軍事作戦も容認できない」と言明。「トルコとシリアの国境は、政府軍の展開によって安全保障が確保される必要がある」と述べた。アブダビでは、プーチン大統領がアラブ首長国連邦(UAE)首脳らと会談した。
  
Turkey’s Frontline
Erdogan wants to force Kurdish militia away from the border

Sources: Conflict Monitor by IHS Markit, areas of control as of Sept. 30, 2019; Office of the Turkish President
  ロシア国防省が15日電子メールで発表したところによると、シリア政府軍は米軍が撤退した国境の要衝、マンビジュとその周辺地域を完全に掌握。シリア政府軍とトルコ軍の境界に沿ってロシア軍警察が同地域の監視活動を行っているという。
  ロシアはシリア内戦に軍事介入し、アサド大統領の政府軍を支援した。それ以来、政府軍の支配地域回復を後押ししてきたが、プーチン氏は今回の危機を利用してクルド人地域に政府軍の支配を巧みに受け入れさせた。クルド人が主導するシリア北東部の当局は13日、米軍撤退後のトルコ国境を守るためシリア政府軍の受け入れでシリアおよびロシア政府と合意が成立したと発表した。
  この合意でロシアは、シリアの将来に強力な影響力を握ることになる。ロシアはすでにイランと協力関係を築き、サウジアラビアとは石油政策で協調するほか、エジプトのシシ大統領とも緊密な関係にある。
原題:
Putin’s Syria Gambit Delivers Again as Trump Sidelines U.S.(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-15/PZFAWXT0G1KW01?srnd=cojp-v2


 

ワールド2019年10月16日 / 13:51 / 1時間前更新
トランプ氏のシリア撤収決定に反対、米超党派議員が決議案提出
Reuters Staff
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[ワシントン 15日 ロイター] - 米民主党議員団と一部の共和党議員は15日、トランプ米大統領によるシリアからの米軍撤収決定に反対する決議案を提出した。

ペロシ下院議長と民主党のシューマー上院院内総務は声明文で「制裁パッケージだけではこの人道主義の危機を食い止めるのに不十分だという考えをわれわれは常に持っていた」と説明した。

ペロシ、シューマー両氏のほかに決議案を主導したのは、民主党のエリオット・エンゲル下院外交委員会委員長と同委員会共和党トップのマイク・マッコール議員。

また上院外交委員会の民主党トップを務めるボブ・メネンデス議員、同委員会の共和党メンバーであるトッド・ヤング議員も決議案を支持した。
https://jp.reuters.com/article/syria-security-turkey-congress-idJPKBN1WV0CN


 

ワールド2019年10月16日 / 02:15 / 3時間前更新
トルコ、シリア北部への攻撃継続 停戦要求圧力高まる
Reuters Staff
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[マンビジ(シリア)/ロンドン/モスクワ 15日 ロイター] - トルコは15日、米制裁や、攻撃停止を求める声の高まりにもかかわらず、シリア北部でのクルド人勢力に対する攻撃を継続した。米軍撤退を受けて、ロシアが支援するシリア軍が軍事的な要衝であるマンビジを勢力下に置くなどの動きが出ている。


トルコのエルドアン大統領は訪問先のアゼルバイジャンで、記者団に対し「彼らは『停戦宣言』を要求しているが、われわれは決して停戦を宣言しない」と強調した。

トルコは軍事作戦を停止するよう圧力を受けているとし、制裁が発表されたことにも言及。「われわれの目標は明確だ。制裁を恐れていない」と語った。

ロシアの支援を受けるシリア軍は米軍撤退後の空白地帯に素早く流入。ロシアのインタファクス通信はロシア国防省の情報として、シリア軍が北東部マンビジの周辺約1000平方キロメートルの地域を勢力下に置いたと報じた。タブカ空軍基地、水力発電施設2カ所やユーフラテス川にかかる橋などを掌握したという。

こうした中、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は訪問先のロンドンで英国のジョンソン首相と会談し、トルコによるクルド人勢力攻撃は終了する必要があると表明。英首相報道官は声明で「ジョンソン首相とストルテンベルグ事務総長はシリア北部の情勢に深い懸念を表明した」とし、NATO加盟国としてトルコが果たしたシリア難民問題への対応に謝意を示すとしながらも、「実行中の作戦は終了される必要がある」と言明した。

米政府は13日、シリア北部に残る駐留米軍およそ1000人を全員撤収させると明らかにした。

翌日14日にトランプ大統領は、トルコに対する経済制裁を発表。同日にトルコのエルドアン大統領と電話会談を行い、シリア北部への軍事侵攻を即座に止めるよう求めた。ただ、米国の制裁措置は予想ほど厳しくなかったと受け止められ、外国為替市場ではトルコリラは対ドルで上昇した。

ホワイトハウスによると、ペンス副大統領は17日にトルコの首都アンカラを訪問し、エルドアン大統領と会談する。この問題が解決されるまで「トルコへの経済制裁を維持するというトランプ大統領の方針を繰り返す」という。

トランプ氏が対トルコ制裁を発表した後、米検察当局は、トルコ国有銀行ハルクバンク[HALKB.IS]が、イランに対する米制裁を回避する数十億ドル規模の計画に関与したとして起訴した。

政権高官によると、米政府はトルコの攻撃を停止させるため、さらなる制裁を科す可能性がある。

 10月15日、トルコは、米制裁や、攻撃停止を求める声の高まりにもかかわらず、シリア北部でのクルド人勢力に対する攻撃を継続した。写真はトルコ側からシリアのラスアルアインで確認された黒煙(2019年 ロイター/STOYAN NENOV)
米共和党のリンゼー・グラハム上院議員は、トルコに対し、より厳しい制裁を科すための法案を17日に提出する意向を表明した。

また、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)(VOWG_p.DE)は、現在の中東情勢を巡る懸念から、トルコでの10億ユーロ(11億ドル)規模の工場建設に関する最終的な決定を見合わせる方針を示した。
https://jp.reuters.com/article/turkey-syria-us-idJPKBN1WU2FW
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/879.html

[国際27] 米民主党討論会、勢いづくウォーレン氏の医療保険案がやり玉に 世界を脅かす国務長官“不在”の米国 史上最低と烙印されたポンペオ長官とかつての名長官たち
ビジネス2019年10月16日 / 13:11 / 2時間前更新
米民主党討論会、勢いづくウォーレン氏の医療保険案がやり玉に
Reuters Staff
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[ウェスタービル(米オハイオ州) 15日 ロイター] - 2020年米大統領選の候補者絞り込みに向けて野党民主党が15日開いた討論会で、支持率を伸ばしているエリザベス・ウォーレン上院議員が、医療保険制度や税制を巡り他候補から批判の集中砲火を浴びた。

民主党内の急進派勢力の中心的な存在であるウォーレン氏は過去2カ月間で支持を着実に伸ばしており、最近の幾つかの世論調査で、これまでトップを走ってきたバイデン前副大統領と実質的に互角となった。2強となってから初めて開かれた討論会で、ウォーレン氏は繰り返し、低支持率にあえぐ他候補の標的となった。

ブティジェッジ・インディアナ州サウスベンド市長とエイミー・クロブチャー上院議員は、ウォーレン氏が掲げる国民皆保険制度について、詳細が曖昧なままで、増税を伴うことが明示されていないと指摘。

クロブチャー氏は「米国民に費用をどう賄うのかを明示すべきだ」と強調。「計画と机上の空論の違いは分かっているはずだ」とした。

ブティジェッジ氏はウォーレン氏に対し、「あなたの売りは、全てに関して計画を持っているということだが、国民皆保険は例外だ」と述べ、詳細な計画や財源をどのように確保するかを説明していないと批判した。

一方、ウォーレン氏は批判にひるまず、所得格差を解消し、労働者に公正な競争環境を整えるという自身の公約を説明。

中間層世帯の増税につながるいかなる法案にも署名することはないとし、自身や同じく民主党の指名獲得を目指すバーニー・サンダース上院議員などか提唱する国民皆保険制度「メディケア・フォー・オール」は一般国民の負担減につながると主張した。

「私は自分の信念を明確にしてきた。つまり、富裕層や大手企業の負担は増えるが、勤勉な中間層世帯の負担は低下するということだ」と述べた。

サンダース氏は、メディケア・フォー・オールの下では「税金が増えると認めるのが適切」とコメントした。

民主党候補による討論会は、下院民主党がウクライナ疑惑を巡りトランプ大統領の弾劾調査を開始して以降で初めて開かれた。

弾劾調査では、トランプ大統領がウクライナ政府にバイデン氏やその息子に関する疑惑の調査を依頼したことが、再選を視野に外国政府の選挙介入を求めて圧力を掛けた行為に該当するかどうかが焦点となっている。

バイデン、サンダース両氏はともに、トランプ氏は「歴史上で最も腐敗した大統領」と痛烈に批判。

バイデン氏は「私も息子も全く不正は行っていない。ウクライナの腐敗根絶という米政府の政策を実施したという事実が認められるべきだ」と強調。「トランプ氏を罷免することがいかに重要かの認識を強める必要がある」と続けた。
https://jp.reuters.com/article/usa-election-warren-idJPKBN1WV09W

 

世界を脅かす国務長官“不在”の米国
史上最低と烙印されたポンペオ長官とかつての名長官たち
2019.10.16(水)
高濱 賛
アメリカ?政治
「トランプの秘書」とまで酷評されたポンペオ米国務長官
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決着つかねば最高裁判決へ
 米議会からの召喚も関連文書提出も握りつぶしたマイク・ポンペオ第70代国務長官(55)に厳しい目が向けられている。

 国務長官と言えば、建国の祖の一人、トーマス・ジェファーソン初代国務長官(ジョン・ジェイは国務長官代行で初代長官ではない)から続く大統領継承順位第4位の重職だ。

 そのポンペオ氏が「ウクライナゲート疑惑」に巻き込まれている。

 7月25日に行われたトランプ大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との「問題の電話」を傍受していたことを認めからだ。

 ところが、弾劾調査に乗り出した米議会の解明協力を一切拒否。部下の召喚すら断り続けている。

 米議会の各委員会の調査はナンシー・ペロシ下院議長の「弾劾宣言」を受けて3週目に入る。

 トランプ大統領とペロシ下院議長との対決は日増しに激化。2020年民主党大統領候補のジョー・バイデン前副大統領も「トランプ弾劾」を声高に宣言した。

 トランプ大統領があくまでポンペオ長官ら側近の召喚を拒めば、その是非を巡っての判断は最高裁に委ねられる可能性も出てきた。

 何やら1974年、米議会がリチャード・ニクソン大統領(当時)の録音テープ提出を巡って判断を最高裁に仰いだ歴史的瞬間が再現されそうな雲行きになってきた。

長官の「厳命」を無視 前ウクライナ大使は…
長官の「厳命」を無視
前ウクライナ大使は議会証言
 トランプ大統領とゼレンスキー大統領との電話会談を側で傍受していたことを認めたポンペオ長官に米各委員会が召喚状を出すのは至極当たり前だ。

 米議会は、電話会談を同じく傍受したり、その後ウクライナ側と接触したりした駐ウクライナ、欧州連合(EU)各大使らに議会証言や文書提出を要求。

 ポンペオ長官は大使らに召喚拒否を命じたが、マリー・ヨバノビッチ駐ウクライナ大使(弾劾騒動直後、解任された)は11日に秘密聴聞会で証言した。今後、同調者が出るものとみられる。

 通称フォギーボトム、米外交の要である国務省は今や「ウクライナゲート疑惑」で大揺れだ。

 その国務省の長たるポンペオ長官に、「史上最低の国務長官」というレッテルを張る米学者も出てきた。

「もしポンペオ長官がこれまでやってきたようなことを続けるならば、彼は米国現代史の中で最も質の悪い国務長官としてその名を残するだろう」

 こう語るのは、10月に『The End of Greatness: Why America Can't Have Another Great President』(偉大さの終焉:米国はなぜ偉大な大統領を持てなくなったのか)を上梓したカーネギー財団のアロン・ディビッド・ミラー主任研究員だ。


The End of Greatness:
Why America Can't Have(and Doesn't Want) Another Great President
by Aaron David Miller and Richard Sokolsky Palgrave Macmillian, 2019

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 なぜポンペオ氏は最低の国務長官なのか。ミラー氏はCNNテレビとのインタビューでこう述べている。

「彼はトランプ大統領のそばにいて助言するどころかイエスマンに徹し、外交の要である国務省組織をめちゃくちゃにしてしまった。この罪は重い」

「ポンペオ長官は前任者のレックス・ティラーソン氏から何を学んだのか。大統領には逆らわないこと、大統領をアンハッピーにさせないこと。それだけだった」

 ミラー氏は、名実ともに最高の国務長官とされるジョージ・シュルツ氏(第60代)にまつわるエピソードに触れている。

下院で弾劾された3人の大統領 その時の国…
「ロナルド・レーガン大統領の下で国務長官を務めたジョージ・シュルツ氏は1985年、辞任をほのめかした。政策を巡る意見対立が理由ではなかった。プリンシパル(理念)の問題だった」

「レーガン大統領が政権内の情報がリークされていることを懸念。同政権で働く連邦職員18万人をウソ発見器にかけると言い出した。この中には当然4500人の国務省職員も含まれていた」

「シュルツ長官は国益を守るために日夜働いている国務省官僚を疑うなら私は辞任すると言い放ったのだ。さすがのレーガン氏もこれには参った。ウソ発見器使用は即座に撤回された」

https://www.cnn.com/2019/10/05/opinions/mike-pompeo-worst-secretary-of-state-miller-sokolsky/index.html

 国務省の長たるもの、国益を守るために身を粉にして働いている外交官たちを信用せずして誰を信用したらいいのか、何ができるのか。

 まさに「信なくば立たず」だった。

 かつてこの要職にあって、現代史を動かしたジョージ・マーシャル(第50代)、ディーン・アチソン(第51代)、ジョン・ダレス(第52代)といった人々は、草葉の陰でトランプ大統領の「秘書」に成り下がったポンペオ長官を嘆いているに違いない。

下院で弾劾された3人の大統領
その時の国務長官3人
 米史上で米下院が弾劾した(下院本会議が弾劾決議案を可決した)大統領は3人。

 アンドルー・ジョンソン(第17代)、リチャード・ニクソン(第37代)、ビル・クリントン(第42代)各大統領の3人だ。

 ジョンソン氏とクリントン氏は上院が弾劾決議案を否決した。当時の与党が上院の過半数を占めていたおかげで解任はされなかった。ニクソン氏は上院が採決する前に渋々辞任した。

 3人の大統領が下院で弾劾された時の国務長官は誰だったか。

 ジョンソン政権の国務長官は州知事や上院議…
 ジョンソン政権の国務長官は州知事や上院議員を歴任し、アブラハム・リンカーン第16代大統領に指名されたウィリアム・セワード氏。

 リンカーン大統領が暗殺された後、急遽後継者となったジョンソン氏の下でも国務長官を務めた。

 ニクソン政権の国務長官はヘンリー・キッシンジャー氏だ。当初は国家安全保障担当補佐官を務め、その後国務長官になっている。

 クリントン氏の国務長官は、女性初のマデレーン・オルブライト氏だ。

 この3人は、ポンペオ氏のように大統領をかばっていろいろと画策したり、隠蔽工作に加担していただろうか。

 答はノーだ。

 セワード氏の時代は外交といっても今とは違う。しかし、外交関連業務を淡々とこなしていた。

 キッシンジャー氏はどうか。

 キッシンジャー氏が長官当時、国務省に勤務していたことのある高官の一人はこう回顧する。

「キッシンジャー氏はその外交戦略的な知識を…
「キッシンジャー氏はその外交戦略的な知識を買われてニクソン大統領に登用されたが、インナーサークル(側近グループ)には入れてもらえなかった。それが幸いしてウォーターゲート事件には直接巻き込まれることはなかった」

「有罪判決を受け服役した側近のハリー・ハルデマン大統領補佐官(内政担当)やジョン・アーリックマン法律顧問・大統領補佐官(内政担当)がやった隠蔽工作には関わり合いがなかった」

「だから弾劾を巡って動くことも発言することもできなかった。大統領からの厳命もなかった」

「もっとも、米議会はウォーターゲート疑惑とは別にキッシンジャー氏については補佐官当時、カンボジア秘密爆撃やチリのサルバドール・アジェンデ政権転覆工作を画策するなどの議会無視、違憲行為にについて調べてはいた」

「だが米議会は大統領自身のウォーターゲート疑惑・もみ消し工作にスポットを当てたために別件はうやむやになってしまった」

「だが、その後キッシンジャー氏を『人道に対する犯罪人』として厳しく批判する著者などが出ている*1」

「しかしながら、キッシンジャー氏と言えば、米中関係正常化やベトナム停戦などの業績、それに対するノーベル平和賞受賞で、一般的には『20世紀後半を代表する外政家』と評価されてしまった」

*1=英作家のクリストファー・ヒッチンス氏や米ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏は著書でキッシンジャー氏の「戦争犯罪」を糾弾している。

https://www.amazon.com/dp/145552297X

https://www.amazon.com/dp/0671506889

世にも稀な風見鶏…
世にも稀な風見鶏
 前述のミラー氏がポンペオ氏を「史上最低の国務長官」と断定した理由は何も部下に議会からの要求を拒否せよと命じたからだけではない。

 ポンペオ氏が本業の外交政策でもトランプ大統領の意のまま、(自分に逆らわないことを知っていたから国務長官にしたわけだが)一切反論も口答えもしなかったことを挙げている。

「気まぐれで無秩序なトランプ大統領に仕えなければならないポンペオ氏に多少同情したくもなるのだが、外交を司る国務長官としては完全に失格だ」

「外交音痴な大統領は、すべての物事を個人的な欲求や願望、政治的野心といったレンズを通してしか見ない。自らの虚栄心とムードが常に外交政策を突き動かしてきた。そんな大統領の下で国務長官が務まるような人物はいないのかもしれない」

「外交政策ではなく、外交スタンスと大統領との距離感を巡って争ってきたジョン・ボルトン補佐官が解雇された後ですら、ポンペオ氏の大統領への阿りは変わらなかった」

「ボルトン氏が去ったことでポンペオ氏はワシントンではこと外交では大統領に次ぐ最高政策決定者になった」

「大統領の思いつき外交をチェックし、やめさせられるのが本来の国務長官だが、ブレーキをかけようとはしない。それどころか右足はアクセルを押し続けているのだ」

 ミラー氏はその実例として、米中貿易戦争の激化(目下暫定的な合意はしたが)、対北朝鮮非核化交渉、北大西洋条約機構(NATO)諸国との関係悪化、サウジアラビア関係などを挙げる。

 同氏は、すべてで大統領の言いなりになっているだけだと指摘している。

 前述の元国務省高官は、ミラー氏の「ポンペオ評価」に100%同調したうえで「別に驚べきことではない」とこう述べている。

「ポンペオ氏は確かに陸軍士官学校を優等で卒…
「ポンペオ氏は確かに陸軍士官学校を優等で卒業後、ハーバード大学法科大学院を出たという輝かしい学歴をもつが、その半生は『風見鶏人生』だ」

「弁護士を経て知人が立ち上げた航空機関連企業に参加、その間(巨大な票田を持つ)エバンジェリカルズ教会に近づく一方、保守派億万長者のチャールズ、ディビッド・コーク兄弟とも昵懇になるなど政界進出に向けて着々と準備した」

「下院議員当時、ヒラリー・クリントン国務長官(当時)のベンガジ事件*2を取り上げ、激しくクリントン長官を批判して脚光を浴びた」

*2=2012年9月11日、重武装した集団がリビアのベンガジにあった米総領事館を奇襲、当時いた駐リビア米大使ら4人が死亡した事件。クリントン長官が安全確保を怠ったとして共和党は責任を追及した。

「2016年大統領選予備選ではマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出)を支持し、当時トランプ氏を『共和党を乗っ取ろうとする詐欺師だ』と攻撃していた」

「トランプ氏に初めて会ったのは2017年。トランプ大統領誕生後で、その時米中央情報局(CIA)長官に指名された。それ以後、トランプ氏に忠誠を誓うイエスマンに徹底してきたのだ」

 トランプ大統領は今年に入って「マイク(ポンペオ)は来年の選挙では上院議員になれる」と手形を切っている。

 トランプ氏にとっては「俺に忠誠を誓い、こまめに働けば、次の舞台を用意してやろう」ということなのだろう。

 ポンペオ氏の『半生』については『ニューヨーカー』のベテラン記者、スーザン・グラッサー氏が克明に記述している。記事のタイトルはずばり「Secretary of Trump」(トランプの秘書)だ。

「米国民は国益を守る提唱者たれ」…
「米国民は国益を守る提唱者たれ」
 ポンペオ論とは若干離れるが、ミラー氏の近著の副題「Why America Can't (and Don't Want) Another Great President」が示しているように、同書は歴代のアメリカ大統領を精査したうえで、米政治の現状についてもこう述べている。

「私は今の米国の政治状況を憂えている。米国の政治的エリートたちは気絶しそうなほど両極化しているからだ」

「米国はただ分裂しているだけではない。政敵同士は党派的で辛辣な個人攻撃を繰り返し、人工中絶、同性愛、公立学校での祈祷などといった政策を巡る論争ではなく、政治の基本理念を巡っての言い争いになっている」

「かつての偉大な大統領のような人物がいなくなったというのが、我々の抱いている絶望感や政治不信の要因ではない」

「また、かつての古き良きアメリカは過去のものになったとか、素晴らしい指導者たちはもういないのだといった悲観論者的な物言いが要因でもない」

「我々に必要なのは、大統領になる人物の問題処理能力には限界があると再認識することだ。我々を救ってくれるもの(The One=選ばれし者)は必ずやって来るという概念を捨て去ることだ」

「我々一人ひとりが国家の一市民として責任を持ち、政治参加し、国益を守る提唱者として行動する以外にないのだ」

 ドナルド・トランプという大統領を選んでしまった米国民はどうすればいいのか。トランプ氏を弾劾せよ、とか、辞任に追いやれ、といった議論は、それこそ議会に任せればいい。

 選んでしまった有権者は有権者としてなすべきことをせよ、というわけだ。

「国益を守る提唱者として行動せよ」

 ミラー氏の2020年大統領選に対する有権者への強烈なメッセージだ。

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窮地に立つトランプ大統領に最強の助っ人現る
米国のドナルド・トランプ大統領とジョー・バイデン前副大統領による「ウクライナゲート疑惑」は、今度は中国まで巻き込み、泥沼化している。トランプ大統領は、10月8日、米議会による弾劾調査への協力を全面的に拒否すると通告した。

トランプ失脚後睨み急展開の世界情勢
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保険財政圧迫の主役は「高額医薬品」ではなかった
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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57926

ロシアがシリアで影響力拡大、米軍撤退の空白埋める−国境付近で監視 トルコ、シリア北部への攻撃継続 停戦要求圧力高まる トランプ氏のシリア撤収決定に反対、米超党派議員が決議案提出 
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/879.html
投稿者 鰤 日時 2019 年 10 月 16 日 17:06:25: CYdJ4nBd/ys76 6dw
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/539.html

[国際27] 中国、米国に報復と示唆−香港人権法案成立なら 米下院、香港人権法案を可決−香港民主派を後押し 香港行政長官、映像通じ施政方針演説へ−民主派議員がスローガン叫ぶ
中国、米国に報復と示唆−香港人権法案成立なら
Bloomberg News
2019年10月16日 10:13 JST 更新日時 2019年10月16日 11:12 JST
米下院は「香港人権・民主主義法案」を15日可決
上院にも法案、超党派の支持−成立にはトランプ大統領の署名必要
中国政府は16日、香港が中国から十分な自治を確保しているかどうか毎年の検証を義務付ける「香港人権・民主主義法案」を米議会が可決させた場合、報復することを示唆した。

  中国外務省は声明で、同法案を可決・成立させた場合は強力な措置を講じると主張。米下院は法案を15日可決した。

Demonstrators Attend Rally In Support Of The Hong Kong Human Rights And Democracy Act
「香港人権・民主主義法案」を支持するデモ参加者、星条旗を掲げる(14日)Photographer: Chan Long Hei/Bloomberg
  香港人権法案は「香港の基本的自由と自治が損なわれた場合」その責任を負う当局者に制裁を科すと規定。上院にも同内容の法案が提出されており、超党派の支持を得ている。法案成立にはトランプ大統領の署名が必要となる。

  香港政府の報道官は米下院の動きについて「遺憾の意」を表明。内政に干渉しないよう外国の議会に促した。

Umbrella Movement Leader Joshua Wong Testifies Before Congressional-Executive Commission On China
米議会での証言に臨む香港民主活動家の黄之鋒氏(9月17日)Photographer: Al Drago/Bloomberg
原題:China Threatens to Retaliate If U.S. Enacts Hong Kong Bill(抜粋)

(第3段落以降を追加し更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-16/PZFZPVDWLU6901?srnd=cojp-v2


 

米下院、香港人権法案を可決−香港民主派を後押し
Daniel Flatley
2019年10月16日 6:37 JST
一国二制度が守られているかどうかを毎年検証
上院にも同内容の法案が提出されている−採決日程は不透明
Demonstrators hold placards and the American flag during a rally in support of the Hong Kong Human Rights and Democracy Act in Hong Kong.
Demonstrators hold placards and the American flag during a rally in support of the Hong Kong Human Rights and Democracy Act in Hong Kong. Photographer: Chan Long Hei/Bloomberg
米下院は15日、香港に高度の自治を認めた「一国二制度」が守られているかどうか毎年検証することを義務付ける香港人権・民主主義法案を可決した。香港民主派への大きな後押しとなる。

  米国は一国二制度を前提に、関税などで中国本土よりも香港を優遇している。香港人権法案は15日に下院で採決される4つの法案の1つで、「香港の基本的自由・自治が損なわれた」場合にその責任を負う当局者に制裁を科す条項も盛り込まれた。

  上院にも同内容の法案が提出されているが、採決の日程は依然不透明。両院とも超党派の支持を得ている。

  香港の中心街では14日、米国での香港人権法案の早期成立を求める大規模な集会が開かれた。

原題:U.S. House Passes Bill Aimed at Supporting Hong Kong Protests(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-15/PZFPND6K50XS01?srnd=cojp-v2

 
香港行政長官、映像通じ施政方針演説へ−民主派議員がスローガン叫ぶ
Eric Lam
2019年10月16日 13:00 JST
香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は16日、立法会(議会)の新会期に合わせて施政報告(施政方針演説)を行おうとしたが、開始直後に民主派議員らが抗議のスローガンを繰り返し叫んだため演説を続けられず一時休会となった。

  これを受け、林鄭行政長官は現地時間午後0時15分(日本時間同1時15分)に映像を通じて演説を行うと政府が発表した。

relates to 香港行政長官、映像通じ施政方針演説へ−民主派議員がスローガン叫ぶ
立法会の議場に入る林鄭月娥行政長官(16日)Photographer: Paul Yeung/Bloomberg
原題:Hong Kong Legislature Adjourns as Lam’s Policy Address Disrupted(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-16/PZG768DWRGG401?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/540.html

[国際27] 英国とEU、ブレグジットは終わりなき旅 どの選択肢にも多数の支持がない袋小路 英EU「土壇場合意」期限は16日午後か−北アイルランドDUP説得へ ポンド全面高、英EUが離脱合意に近づく−円は安い
英国とEU、ブレグジットは終わりなき旅 どの選択肢にも多数の支持がない袋小路

マーティン・ウルフ
2019.10.16(水)
Financial Times ヨーロッパ?政治?経済 (英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年10月9日付)


英国のボリス・ジョンソン首相
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 1933年、ナチス・ドイツの宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスは次のように語った。

「ドイツ国家の近代的な構造は、より高度な形態の民主主義である。ここにおいては国民の負託によって統治が権威をもって行われ、国民の意思の遂行を妨げたり不首尾に終わらせたりする議会の干渉が行われる可能性は存在しない」

 ボリス・ジョンソン首相の発言がこのような感じにしばしば聞こえることを考えると、英国がいかに落ちぶれてしまったかが分かる。

 ジョンソン氏は、重要な時期に議会を5週間閉会することでブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)の交渉に対する「議会の干渉」を防ごうとした。

また、議会閉会は違法だったとする最高裁判所の全会一致での判決に異議を唱えた。

 EUとの合意に達しない場合にはリスボン条約50条による離脱期限の延期を首相が要請しなければならないと定めた法律(通称「ベン法」)もできたが、ジョンソン氏はこれを無視できると述べ、ベン法を「降伏法」だと非難している。

 そして最悪なことに、次の総選挙を「国民vs議会」の戦いに仕立て上げようと企んでいる。

 英国は一体どうして、首相が議会を無視すべき障害物だと見なす状況に至ってしまったのか。

 シンプルに答えるなら、それは激しい論争を引き起こすテーマについての著しく思慮のない国民投票を議会制度に持ち込むことを決めたからだ。

 この決断のために正統性の源泉が複数生まれ…
 この決断のために正統性の源泉が複数生まれ、互いに対立するようになったのだ。

 さらに悪いことに、この投票で僅差で多数を獲得した選択肢の意味は明確ではなかった。

「ブレグジットとは、ブレグジットのことだ」というフレーズは恐らく、歴代の英国首相の発言のうち最もばかげたものだろう。しかし、あの時はそうとしか言いようがなかったのも事実だ。

 離脱派の主張とは違い、議会の関与は不当な介入ではない。どんな国民投票でも法律の制定は必要になるし、今回は交渉と合意も必要だった。

だが残念なことに、EUとの離脱協定案はいずれも過半数の支持を得られていない。この点については、残留派と同じくらい離脱派にも非がある。

 その結果、「合意なき離脱」が緊急時の代替策として浮上した。しかし離脱派は国民投票の際、合意なき離脱については事実上何も語っていなかった。

事情に通じた人であれば(公務員も含めて)誰もが分かっているように、合意なき離脱は混乱を招くうえに高くつく。そんな施策を行う権限など、誰も付与していない。

 おまけに、合意なき離脱は交渉の終わりなどではなく、始まりにしかならないだろう。

 しかしその交渉は、これまでよりも悪い状況下で行われることにる。国中が経済の不確実性に覆われる。まさにばかげた選択だ。

 政府は国を助けるために存在する。わざと痛…
 政府は国を助けるために存在する。わざと痛めつけるために存在するのではない。

 この結果をもたらす最も重要な理由の一つに、EUを理解しようとする努力の拒絶(特に離脱派の拒絶)を挙げることができる。

 EU加盟国にとってEUは単なる通商協定ではなく存在に関わるプロジェクトであることを、離脱派は理解する必要があった。

 欧州司法裁判所のもとで欧州の法律が適用されることは、このプロジェクトの中心的な部分だ。また、英国以外の27カ国で構成されるEUが柔軟性に乏しい交渉相手になることも確実だった。

 では、これからどうなるのか。

 英国政府が新たに提示したプランは、北アイルランドが財についてはEUの規制体系下にとどまるものの関税同盟からは離脱するという内容で、外見は複雑で大げさだが中身は単純なヒース・ロビンソン風のプランだ。

 これは穴があちこちに開いているうえに法執行が困難で、アイルランドにおける国境のない交易とも相容れないとしてEU側から拒否されるだろう。

 おまけに、このプランは英国が2017年にアイルランドの国境について行った約束を反故にすることにもなる。これによって英国の信頼性の評価がさらに悪化したことは確実だ。

 さらに、EUには長い陸上の国境があることを忘れてはならない。意図的に穴を多く開けた国境を設ける前例など、決して許容しないだろう。

 このプランはEUに受け入れられるはずだと…このプランはEUに受け入れられるはずだと思っている人もいる。

 それはない。もし北アイルランドがEUの関税同盟にも残るのであれば、うまくいくかもしれない。

 しかし、英国内のほかの地域が独自の貿易・規制政策を取ることになれば、グレートブリテン島とアイルランド島を隔てるアイリッシュ海が英国・EU間の通関・規制の境界になる。

 そんなことは、保守党にとっても民主統一党(DUP)にとっても受け入れられない。北アイルランドでの暴力に再び火がつく事態になるかもしれない。

 では、10月31日までに合意が成立しない場合にはどうなるのか。

 一つの疑問は、英国政府が望んでいないことが明らかな離脱期限の再延長にEUが同意するかどうか、だ。

 仮に同意するとしても、それには条件がつくに違いない。では、どんな条件がつく可能性があるのだろうか。

 一つの可能性として考えられるのは、テリーザ・メイ前首相の離脱協定案の批准を試みることだ。

 それができれば英国とEUは、新たな関係の交渉に進むことができる。英国内の離脱派と残留派が妥協することにもなり、それ自体かなり望ましいことだ。

 しかし、実際には不可能に思える。残留派に…
 しかし、実際には不可能に思える。残留派にとっては不十分な成果に、そして離脱派にとっては過大な譲歩になるからだ。

 残留派はEUにとどまることを望んでいる。そして離脱派は、英国をEUの関税同盟にとどめて英国の貿易政策に無期限に制限を加えることになる、アイルランドのバックストップ(安全策)を拒否している。

 2つ目の可能性は、国民投票を再度行うことだ。

 おそらく、「合意なき離脱」か「EU残留」のどちらかを選ぶものになるだろう。

 合意の有無は最初の国民投票ではほとんど問われなかったため、この2択は妥当なはずだ。ただ、国民投票を実施するには、暫定政権を立ち上げる必要が生じる。これはかなりの難題だ。

 また、設問をどうするかで合意したうえで投票を実施するという作業を、大規模な暴力を招くことなく行うのは不可能かもしれない。筆者にとっては、再度の国民投票は最もましな選択肢だ。だが、これは大きなリスクを生む。

 そして最後に、総選挙を前倒しで行う可能性も考えられる。

 総選挙の欠点は、ブレグジット以外にも多くの問題がかかわってくることと、再びハングパーラメント(宙ぶらりん議会の意、単独過半数を取る政党がない状態のこと)になる恐れがあることだ。

 ジョンソン首相が反議会の選挙運動を展開することから、短期的にも長期的にも悲惨な結果をもたらしかねない。ただ、ブレグジットの問題は、一時的には解決されるかもしれない。

 ただ、今や問題はブレグジットだけではない…
 ただ、今や問題はブレグジットだけではない。それよりもはるかに深刻な問題がある。

 英国の保守党はイングランドのナショナリスト政党に成り下がってしまい、ポピュリスト的な怒りをたきつけるのに忙しい。

 片や労働党は極左勢力に乗っ取られてしまっている。過激な政治の呪いはまさに始まったばかりだ。

 敵対勢力を想像上の「国民」に対する「裏切り者」だと国民が見なすようになれば、憎悪の悪魔が野に放たれる。

 ブレグジットはそうした悪魔を目覚めさせてしまった。

 ジョンソン氏は、ナイジェル・ファラージ氏と同氏の率いるブレグジット党から支援を得ながら、悪魔を解き放つことで選挙に勝とうとするだろう。

 悪魔たちが大きな被害を、非常に長い間この国にもたらすことは間違いない。

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ホワイトハウスが目論む米国版クーデター
昔のクーデターでは、国民は注目されないように息を潜めた。21世紀のクーデターでは、成功するか否かのカギを世論が握っている。トランプ氏は、民主党や「ディープステート(国家内国家)」が自分を大統領の座から引きずり下ろすクーデターを仕かけていると主張している。


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英EU「土壇場合意」期限は16日午後か−北アイルランドDUP説得へ
Ian Wishart
2019年10月16日 6:23 JST 更新日時 2019年10月16日 13:03 JST
EUは英国を除く27カ国の大使級会合を16日午後2時に招集
DUPの支持得る確信ない限り首相はゴーサイン出さないと当局者
英国の欧州連合(EU)離脱の条件を巡り、英とEUとの協議が土壇場の合意に近づきつつあるが、英保守党政権を閣外協力でを支えてきた北アイルランドのプロテスタント強硬派、民主統一党(DUP)が反対すれば、議会の承認が得られない危険がある。

  英、EU当局は過去48時間の協議を通じて、隔たりの大部分を解決した。深夜まで折衝が続けられる一方、英国を除くEU27カ国の大使級会合が16日午後2時(日本時間同9時)に招集された。英国との離脱交渉を担当するEUのバルニエ首席交渉官はその場で合意について説明を行いたい考えだ。

  EUとの新たな離脱合意の取り決めは、今月末の離脱を目指すジョンソン英首相にとって最初のハードルにすぎず、北アイルランドのDUPと与党保守党内の離脱強硬派を説得する必要がある。メイ前首相がEUとまとめた離脱協定案は3度にわたり議会で否決された。

State Opening of Parliament
ジョンソン英首相
  ジョンソン首相は今回、DUPの支持を得る確信がない限り、ゴーサインを出すことはないだろうと複数のEU当局者が語った。ジョンソン氏はDUPのフォスター党首と15日夜に約1時間半にわたり首相官邸で会談した。DUPは「隔たりが残っており、さらに作業が必要だと言って差し支えないだろう」とその後声明でコメントを発表した。

  事情に詳しい関係者1人からの情報を引用し、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じたところでは、EUとの離脱協議で合意が具体化しつつある中で、ジョンソン首相はDUPからの協力確保に向け、英領北アイルランドへの多額の資金拠出についてフォスター党首とぎりぎりの交渉を行った。

  関係者が同紙に語ったところでは、DUPは「数百万でなく数十億」単位の資金を北アイルランドに拠出するよう要求し、支出を増やすことが合意を支持する条件だとジョンソン首相に伝えたという。

  複数のEU当局者によれば、過去数日のうちに英国側は幾つかの大きな譲歩を行った。英領北アイルランドと英国本土との間で税関検査の実施を受け入れることもその中に含まれるが、これにはDUPが強く反対している。

原題:Brexit Deal Inches Nearer as Key Johnson Ally Threatens Hold-Out
DUP Asks for ‘Billions’ of Cash Payment to Back Brexit: FT(抜粋)
Gaps Remain and More Work Required on Brexit Deal, Says DUP(抜粋)

(DUPの要求に関するFT紙の報道を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-15/PZFQ326JTSE801


 
ポンド全面高、英EUが離脱合意に近づく−円は安い
Susanne Barton
2019年10月16日 4:58 JST 更新日時 2019年10月16日 5:44 JST
15日のニューヨーク外国為替市場では、ポンドが主要10通貨すべてに対して上昇。英国と欧州連合(EU)の交渉担当者らが離脱合意の草案とりまとめに近づいており、15日中に事態が打開されるとの期待が高まった。円は下落率トップ。逃避需要が減退した。

合意がまとまった場合、ジョンソン英首相は19日に議会に提出する。そうなれば、今月末に予定されている離脱期限の再延期要請を回避する可能性が生じる
ポンドのボラティリティーは今後数週間に拡大し、2016年7月以来の最大になる可能性があるとの見方がオプション市場に織り込まれている
ハンス・レデカー氏らモルガン・スタンレーのストラテジスト:
「英EU離脱を巡る明るいニュースは、経済のテールリスクを幾分か低減させる。過小評価されているポンドを押し上げるはずだ」
ニューヨーク時間午後4時26分現在、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.1%下落
米セントルイス連銀のブラード総裁はインフレ率が低過ぎるとし、米経済には著しい減速のリスクがあると述べた
ポンドは対ドルで1.3%高の1ポンド=1.2777ドル
ドルは対ユーロで0.1%安の1ユーロ=1.1033ドル。対円では0.4%上げて1ドル=108円85銭
欧州時間の取引
  ドルは対主要通貨で高安まちまち。貿易戦争面での展開や、米金融当局者らの発言を待つ姿勢が広がった。英EU離脱を巡る楽観が戻り、ポンドを支えた。

原題:Pound Tops Peers as Brexit Deal Appears in Reach: Inside G-10(抜粋)

Dollar Steadies Before Fed Speakers, Pound Advances: Inside G-10

(相場を更新し、欧州時間の取引を追加します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-15/PZFII2DWLU6J01
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/541.html

[戦争b22] シリア進攻のエルドアン大統領、停戦を拒否 米政府の要請に応じず シリア・トルコ国境で交戦続く 米軍撤収の空白にロシア部隊
シリア進攻のエルドアン大統領、停戦を拒否 米政府の要請に応じず

2019/10/16

BBC News


シリア北部への進攻を続けるトルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領は15日、即時停戦はしないと述べ、アメリカのドナルド・トランプ大統領による働きかけに応じない姿勢を示した。

エルドアン氏はこの日、記者団に対し、「アメリカは『停戦を宣言しろ』と言っているが、我々は決して停戦宣言などしない」と述べた。

「アメリカは我々に軍事作戦を止めさせるために圧力をかけ、経済制裁を課した。我々の目的は明らかだ。我々はいかなる経済制裁にも不安はない」

16日に直接交渉
米政府はトルコ側に直接、即時停戦を求めるため、16日からマイク・ペンス副大統領とマイク・ポンペオ国務長官を派遣する予定だが、エルドアン氏は2人の訪問を前に釘を刺した。

米財務省は14日、シリア進攻を受け、トルコの2省庁と政府高官3人に対し、経済制裁を課すと発表。ペンス副大統領は、トルコが「即時停戦を受け入れない限り、そして受け入れるまで」トルコへの経済制裁は強化されるだろうと警告していた。

トランプ大統領が6日にシリア北東部からの米軍撤退を発表すると、トルコは9日、クルド人民兵組織「人民防衛部隊(YPG)」を完全排除するため、YPGが支配するシリア北部への進攻を開始した。

米軍撤退をめぐっては、トルコのYPGへの攻撃を「承認」することになると批判が殺到した。

「目的達成まで」軍事行動を継続
シリア政府が、YPG支援のために北部への部隊派遣に合意したことが13日に明らかになったものの、トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領は、「目的が達成される」まで軍事行動を続けると強調している。

<関連記事>

米政府、トルコ政府に経済制裁 シリア進攻は「受け入れられない」
クルド人組織、シリア政府が支援で合意 トルコの進攻で
トルコとシリアの衝突は「容認しない」
一方、シリアにとって軍事上重要な同盟国のロシアは15日、トルコ軍とシリア政府軍の衝突は認めないと述べた。

アラブ首長国連邦(UAE)を訪問中のロシアのアレクサンドル・ラブレンチェフ、シリア特使は15日、トルコ軍とシリア政府軍の争いは「まったく容認できない。(中略)我々はそんなことはもちろん認めないだろう」と述べた。

トルコは、シリア国境から約30キロにわたる一帯を「安全地帯」として確保したい考え。しかし、ラブレンチェフ氏は、これまでの合意内容では、トルコはシリア国境から5〜10キロの距離までしか前進できないほか、永続的にシリア国内に軍を配備する権限はないと主張。衝突を避けるため、シリアがトルコ側と接触していると明かした。

ロシアがクルドとシリアを仲介
ラブレンチェフ氏はまた、クルド人部隊が軍事援助の見返りにシリア政府軍に領土を譲渡するという取引を、ロシア側が仲介したことを認めた。

ロシア国防省は、2015年からシリア国内に駐留するロシア軍が、バシャール・アル・アサド政権とクルド人部隊の「停戦ライン」周辺を巡回していると述べた。

アメリカが戦闘機を配備
米国防総省は15日、シリア北部アインイッサ近くに駐留する米軍の地上部隊に、トルコが支援する親トルコ勢力が接近したため、これを威嚇するため、F-15戦闘機とアパッチ攻撃型ヘリコプター数機を配備したと明らかにした。

トルコ支援勢力は米軍部隊に脅威を与えてはならないという合意に違反したためだと、同省幹部は説明している。

民族浄化への懸念
トルコ政府は、YPGをテロ組織と認定。クルド人地域のトルコからの独立を訴えているクルド労働者党(PKK)も、YPGと関係していると考えている。

安全地帯からYPGの戦闘員を完全に排除したいトルコは9日、シリア北部への侵攻を開始した。トルコは、シリア内戦などでトルコ領内に避難してきたシリア難民360万人のうち、最大200万人をこの安全地帯に移住させたいとしている。

こうした難民の多くはクルド人ではないため、北部地域のクルド人の民族浄化につながると懸念する声が上がっている。

国連によると、トルコ軍の進攻により、これまでに民間人数十人が死亡し、少なくとも16万人が避難を余儀なくされたという。

米軍撤退は「裏切り」と批判
アメリカを中心とした連合国がシリアで過激派勢力「イスラム国」(IS)を破ることができたのは、クルド人勢力の協力によるところが大きい。

YPGは、トルコ南部と国境を接するシリアで活動している。YPGはシリア民主軍(SDF)の大部分を占めており、SDFはアメリカ軍の支援を受けてイスラム過激派組織IS掃討に貢献した。

クルド人部隊は、米軍撤退を「裏切り」と呼び、IS復活を促進し、トルコからの攻撃にクルド人部隊をさらすことになると批判した。

トルコ軍の進攻による混乱に乗じて、シリア北部で拘束されている数千人のIS元戦闘員や家族が結集する可能性が不安視されている。すでにIS戦闘員の家族数百人が逃走したとされる。

シリア北東部の現状は?
クルド人部隊との合意の一環として、シリア政府軍は14日、国境地域への進軍を開始した。

アサド政権の部隊がシリア北部に進攻するのは2012年以来で初めて。シリア政府は当時、他地域で反政府組織との戦いに注力するため、この地域から撤退した経緯がある。

その後、シリア北東部はクルド人の勢力下に入った。アサド大統領はクルド人が求めていた自治は認めなかったものの、特にクルド人がIS掃討作戦でアメリカと協力し始めてからは、この地域を取り戻すことはしなかった。

アメリカにとってはIS掃討作戦のほかにも、ロシアやイランをこの地域から引き離すためにもクルド人の存在は重要だったと言われている。

シリア政府軍は、戦略上重要な、クルド勢力が支配するシリア北部の町マンビジへ進軍した。マンビジはトルコが安全地帯を想定しているエリア内に位置する。一方で、トルコ軍が制圧したとしているタル・アブヤドとラス・アルアインへの配備は、現時点では予定されていない。

なぜマンビジが重要なのか
クルド人部隊は2016年、ISからマンビジを奪還した。以降、トルコは国境に近いこの都市に圧力をかけ続けてきた。トルコはシリア領内のクルド人武装勢力を、テロ組織とみなしている。

過去2年の間、数百人もの米兵がその存在を明示しながら、市内を巡回してきた。2017年3月には、米国防総省が同地域に米兵を配備。トルコによる軍事行動をあからさまに阻止し、双方を安心させるため、目立つ形で星条旗を車両に取り付けた。

このような光景は、シリアのほかの地域では見られない。こうした警戒が続く中、今年1月には自爆テロが発生し、米兵4人が死亡した。

そうやって続いた米軍の駐留が、ここへきていきなり終わることになった。米軍報道官はツイッターで、「連合軍は、シリア北東部からの計画的に撤退している。我々はマンビジを後にした」と明らかにした。

マンビジ周辺を制圧
米軍が出ると、シリア政府軍とロシア軍はただちにマンビジに入った。

ロシア国防省によると、シリア政府軍は、マンビジ周辺の1000平方キロメートル以上を制圧したという。

同地域で撮影された写真には、シリア国旗とロシア国旗を付けた軍事車両が市内へ移動する様子が写っている。

トランプ大統領による米軍撤退の発表から1週間余りで、シリア内戦の状況が劇的に変化した。

ツイッターには、ロシアの軍事記者が米軍基地だった場所に入った際の映像が投稿された。急いで撤退した際に、置き去りにされたとみられる備品などが残されていた。

人道支援の状況は
国際医療NGO「国境なき医師団(MSF)」は、シリア北東部での活動と、職員の撤収を発表した。

「直近の状況によって人道支援の必要性が高まってはいるものの、現在の危険な状態の中で支援を続けるのは不可能だ」と、MSFの緊急対応責任者ロバート・オヌス氏は述べた。

「きわめて遺憾ながら、MFSは活動の大部分を中断し、シリア北東部から国際スタッフを退避させるという厳しい判断を下した」

(英語記事 Russia vows to prevent Turkey-Syria clashes/Turkey rejects US call for Syria ceasefire)

提供元:https://www.bbc.com/japanese/50065023


 
シリア・トルコ国境で交戦続く 米軍撤収の空白にロシア部隊
2019年10月16日 6:53 
発信地:ラスアルアイン/シリア [ シリア 中東・北アフリカ ロシア ロシア・CIS 米国 北米 ]
 

シリアのラスアルアインから立ち上る煙。トルコ側の国境の町シャンルウルファから撮影(2019年10月15日撮影)。 (c)Ozan KOSE / AFP


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【10月16日 AFP】トルコが越境軍事作戦を展開しているシリア北部では15日、クルド人勢力が国境沿いの要衝の町ラスアルアイン(Ras al-Ain)をトルコ側部隊から防衛するための戦いを繰り広げた。一方、ロシアは米軍の撤収に乗じ、新たな地域に自国軍の部隊を派遣した。

 米国とクルド人勢力はイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」掃討作戦で数年間にわたり協力してきたが、米軍の撤収により見捨てられた形となったクルド人勢力はシリア政府に支援を要請。シリア政権軍は14日夜、対トルコ国境に近い要衝都市マンビジ(Manbij)に入った。一方、トルコ側の部隊は計画されている攻勢に先立ち西方に集結している。

 クルド人を主体とする民兵組織「シリア民主軍(SDF)」はシリア北東部の各地でトルコ軍やトルコ側につくシリア武装勢力と交戦。マンビジの東方に位置するラスアルアインでは、クルド人勢力が地下道や狭道、塹壕(ざんごう)で必死の抵抗を試みている。トルコ政府は周辺地域を掌握したと主張しているが、現地のAFP特派員によれば周辺では15日も衝突が続いた。

 一方、ロシア国防省は、米軍がマンビジ周辺の基地から撤収し、シリア政権軍が同市を「完全に掌握」したと発表した。米主導の有志連合も撤収を認め、「われわれはマンビジから離れた」と述べている。米軍は、2016年にクルド人勢力によるISからのマンビジ奪還を支援して以降、同市に駐留していた。

 ロシア政府によれば、同国憲兵隊はトルコ政府と協力し、シリア政権軍とトルコ軍を隔てる地域で巡回を続けている。ロシアのシリア特使アレクサンドル・ラブレンチェフ(Alexander Lavrentyev)氏によると、トルコとシリアの両当局は両国軍の衝突を避けるために連絡を取り合っているという。(c)AFP/Nazeer al-Khatib with Delil Souleiman in Tal Tamr
https://www.afpbb.com/articles/-/3249674
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/881.html

[経世済民133] 米小売売上高:9月は予想外の減少−堅調な個人消費に変化か 米地区連銀経済報告:多くの企業が経済成長見通しを引き下げた 新車販売台数、第3四半期は3期ぶりに前年同期比増 米GMストライキ、現地時間16日に暫定合意か

米小売売上高:9月は予想外の減少−堅調な個人消費に変化か
Reade Pickert
2019年10月17日 0:36 JST
9月の米小売売上高は市場予想に反して減少、7カ月ぶりのマイナスとなった。米経済の主要な柱である個人消費が不安定になり始めていることが示唆され、金融当局が今月、3会合連続となる政策金利の引き下げを決定する論拠が強まった可能性がある。
キーポイント
• 9月の小売売上高は前月比0.3%減
o ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想中央値は0.3%増
o 8月は0.6%増に上方修正−速報値は0.4%増
• 飲食店と自動車ディーラー、建材店、ガソリンスタンドを除いたベースのコア売上高は9月にほぼ横ばい
o 市場予想は0.3%増
Consumer Takes Pause
U.S. retail sales unexpectedly fell in September for first time in seven months

Source: Commerce Department
Note: "Control group" excludes food services, car dealers, building-materials stores and gasoline stations
  小売売上高の減少は2月以来初めてで、これまで米経済成長を支えてきた個人消費に変化が現れ始めた可能性を示す。長引く貿易戦争に加え、企業の投資や製造業が軟化している中で消費まで弱まれば、過去最長記録を今も更新し続ける米景気拡大へのリスクが高まる。
  アマースト・ピアポント・セキュリティーズのチーフエコノミスト、スティーブン・スタンリー氏は堅調な所得の伸びなど、消費者に追い風となるファンダメンタルズにもかかわらず、9月は貿易交渉など「暗い気分にさせられるニュースが多かった」と指摘。「消費者はやや慎重になったのかもしれない」と述べた。
  世界的な景気の弱さと貿易問題を巡る逆風の中、米連邦公開市場委員会(FOMC)は既に2回連続で利下げを実施。10月29、30両日の次回会合で、一部の当局者は追加利下げに傾く可能性がある。
  9月の小売売上高では主要13項目のうち7項目が減少。オンラインショッピングを含む無店舗小売りは0.3%減と、昨年12月以来の大きさで減少。総合小売店は0.3%減、建設資材は1%減、スポーツ・書籍・趣味用品は0.1%のマイナスとなった。衣料品や健康用品、家具は増加した。
  ガソリンスタンドの売り上げは0.7%減。自動車ディーラーは0.9%減と、1月以来の大幅減少。8月は1.9%増だった。
  自動車とガソリンを除いた小売売上高はほぼ横ばい。前月は0.4%増。
  詳細は表をご覧ください。
原題:U.S. Retail Sales Unexpectedly Drop in Sign Consumer Shaky (4)(抜粋)
(詳細やエコノミストの見方を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-16/PZH23O6KLVR501?srnd=cojp-v2


米地区連銀経済報告:多くの企業が経済成長見通しを引き下げた
Christopher Condon
2019年10月17日 3:21 JST 更新日時 2019年10月17日 4:26 JST
米連邦準備制度理事会(FRB)が16日公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)では、米景気がここ数週間で「わずかなペースから緩慢なペース」で拡大したと判断された。米経済への認識を緩やかに下方修正した。

  ベージュブックは「調査対象企業はおおむね景気拡大が続くと予想しているが、多くの企業が向こう6−12カ月の成長見通しを引き下げた」と指摘した。

  今回のベージュブックは、10月7日までに地区連銀12行が集めた情報を基にクリーブランド連銀がまとめた。それによると、製造業活動は鈍化傾向が続いた。企業は「長引く貿易摩擦と世界的な景気減速が企業活動への重しとなった」と報告した。

  一方、家計支出は「堅調」で、非金融サービスの活動は「着実に拡大した」と記述されている。

  企業は引き続き労働者不足を報告。勢いが減速している製造業セクターでさえ、レイオフに踏み切らないという。「より長期的な労働者確保への不安を募らせた企業は、従業員数でなく労働時間の削減を選ぶようになっている」と、ベージュブックは指摘した。

  物価上昇ペースは大半の地区で緩慢だとされた。小売業者と製造業者は投入コストの上昇を指摘しており、このうち小売業では「コスト増加分を顧客に転嫁することが比較的うまくいっている」と記した。

原題:
Fed Says Many Businesses Temper Outlook for Economic Growth(抜粋)

(第3段落以降に詳細を追加して更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-16/PZHBEKT0G1KX01?srnd=cojp-v2

米国の新車販売台数、第3四半期は3期ぶりに前年同期比増
(米国)

ニューヨーク発

2019年10月11日

モーターインテリジェンスの発表(10月2日)によると、米国の第3四半期(7〜9月)の新車販売台数は前年同期比0.5%増の431万8,211台だった。2018年第4四半期(10〜12月)以来、3期ぶりの前年同期比増となった。

小型トラックのシェアは過去最高の72%まで上昇
車種別にみると、乗用車が前年同期比9.9%減の120万5,783台だった一方で、小型トラックが5.3%増の311万2,428台となった(表1参照)。小型トラックの人気は続いており、新車販売全体に占めるシェアは過去最高の72.1%まで上昇した。中でもスポーツ用多目的車のクロスオーバーSUV(CUV)とピックアップトラックの人気は高く、シェアはそれぞれ前年同期比で2.2%ポイント増、1.5%ポイント増となった。

表1 2019年第3四半期の新車販売台数の内訳(季節調整前)
主要メーカー別では、好不調が混在した結果となった(表2参照)。最も販売構成比の高いゼネラルモーターズ(GM)は、前年同期比6.0%増と5期ぶりに増加した。「シルバラード」や「シエラ」といった大型のピックアップトラックに加えて、中型のCUVの「ブレイザー」などが好調だった。GMでは9月15日から全米自動車労働組合(UAW)によるストライキが行われており(2019年9月17日記事参照)、生産への影響が報じられているが、ディーラー保有の在庫台数が80日分(82万台、9月1日時点)あったことなどから、当期の販売への影響は限定的だったとみられる。

そのほかでは、フィアットクライスラー・オートモービルズ(FCA)は、0.1%増加した。ジープブランドの人気モデルが減少したが、ラムブランドのピックアップトラックなどが押し上げた。ホンダは小型トラック、乗用車ともに伸びて2.4%増となった。CUV「パスポート」のほか、「シビック」などの乗用車が押し上げた。スバルは中型CUV「アセント」が好調で2.9%増と伸びた。現代は前期に発売した中型CUV「パリセード」が好調だったことから6.8%増、起亜も中型SUV「テルライド」などが伸びて0.2%増となった。

表2 2019年第3四半期の新車販売台数の内訳(季節調整前)
一方で、販売構成比2位のトヨタは、前年同期比1.2%減と6期連続の減少となった。乗用車に加えて、中型SUV「4Runner」やミニバン「シエナ」など小型トラックも落ち込んだことが影響した。フォードも5.1%減少した。中型のSUV「エクスプローラー」やピックアップトラック「Fシリーズ」などの人気モデルが落ち込んだ。日産は4.8%減となった。「セントラ」「バーサ」といった小型乗用車に加えて、大型のピックアップトラック「タイタン」などが減少した。フォルクスワーゲン(VW)は中型乗用車「パサート」やアウディブランドの小型乗用車「A3」などが落ち込んで1.2%減となった。

なお、この時期にメーカーが消費者に提供する割引額は平均で4.5%増の3,950ドル(ALG調べ)と、2018年第3四半期から1年ぶりに増加した。特に、販売台数が前年同期比でプラスだったGMやFCAなどが伸びた。1台当たりの平均販売価格は、前年同期から879ドル高い3万4,466ドルとなった。SUVやピックアップトラックといった価格帯の高い人気車種の販売が増えたことなどを反映した。

(大原典子)

(米国)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/10/5abdd798cfd5b751.html


 


米GMストライキ、現地時間16日に暫定合意か
(米国)

シカゴ発

2019年10月16日

ロイターは10月15日、全米自動車労働組合(UAW)による、ゼネラルモーターズ(GM)への1カ月にわたる全米ストライキが、10月16日にも暫定合意に至る可能性がある、と報じた。最終的な合意は発表されていないものの、GMとUAWは大筋で合意しており、現在は合意文書の文言を調整している段階だという。GMとUAWは共に、ロイターへの取材に対するコメントを拒否している。これを受けて、10月15日のGMの株価は、前日に比べ2.1%上昇して36.26ドルとなった。

ロイターによれば、GMの新提案では、労働協約批准時のボーナスを1,000ドル増加して9,000ドルに、また4年契約の2年目と4年目に3%の昇給、1年目と4年目にはそれぞれ3%と4%の一時金(Lump Sum payment)を出すとしている。さらに、3年勤務した臨時雇用者を正規雇用し、3,000ドルのボーナスを出すとのことだ。

今回のUAWのストライキは9月15日から始まっており(2019年9月17日記事参照)、1970年以来最長を記録している。しかし、自動車関連サービス企業コックス・オートモーティブが10月8日に発表したレポートによれば、ストライキの影響で工場が1カ月間稼動していないにもかかわらず、GMの新車在庫は依然として業界平均よりも多い状況だという。

(河内章)

(米国)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/10/d5fa3b3a540cede5.html

 


全米自動車労組がGM工場でストライキ突入、2007年以来12年ぶり
(米国)

ニューヨーク発

2019年09月17日

全米自動車労働組合(UAW)は9月15日、米国内9州にあるゼネラルモーターズ(GM)の31拠点などでストライキに突入した。UAWに加盟するGMの従業員は約4万8,000人。UAWによるストライキは2007年以来12年ぶりとなる(注)。

UAWと米系自動車メーカー3社〔GM、フォード、フィアット・クライスラー(FCA)〕間の労働協約は4年に1度改定されており、2019年は改定年に当たる。7月16日からGMを皮切りに交渉が開始されたものの、協約満了の9月14日時点で同社との交渉はまとまらず、合意に至っていない。交渉中の従業員との契約に関しては、3社とも前協約を延長して対応することで労使は合意した。

ストライキを決行するに当たり、UAWは正当な給与と福利厚生の支給や雇用の確保に加え、臨時雇用者の待遇改善などを要求している(UAW外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。UAWのテリー・ディッテス副委員長はストライキを交渉の「最終手段だ」(オートモーティブニュース9月15日)とし、「組合員とその家族、地域のために立ち上がる」と述べた。UAWはGMが2018年11月に事実上の生産停止を発表した国内3工場(ミシガン州ウォーレン、オハイオ州ローズタウン、メリーランド州ボルチモア)の再開を求めていた(2018年11月28日記事参照)。

GMのダン・フローレス広報担当マネジャーは交渉に際して、「われわれのゴールは従業員と事業の力強い将来だ」と強調(デトロイト・ニュース9月16日)し、5,400人の雇用と、国内8工場への70億ドルの投資、電動トラックの生産を予定していることなどを提示した。給与、福利厚生の面では8,000ドルの協定締結一時金と、前協約と同条件での健康保険の支給、また報道によると、年2回の賃上げと一時金の引き上げを提案している。

GMの提案に対し、ディッテス副委員長は「交渉の早い段階でこのような提案を受けていれば、一時的な合意の下、ストライキを避ける可能性はあった」と述べた(「ワシントン・ポスト」紙9月17日)。

(注)2007年のストライキは2日間で終結した(ロイター9月14日)。

(大原典子)

(米国)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/09/678955885fa2734a.html


GMが生産体制を大幅に見直し、工場停止や人員削減
(米国)

ニューヨーク発

2018年11月28日

米国自動車メーカーのゼネラルモーターズ(GM)は11月26日、北米5工場での乗用車生産停止と、人員削減を含む大幅な業務再構築計画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。乗用車の販売減、次世代車である電気自動車(EV)や自動走行車(AV)の普及といった今後の市場の変化に対応するため、資本と人材の配分を最適化し、2020年末までに年間約60億ドルのコスト削減を目指す。

コストを削減し、次世代車に対応
今回、対象となるのは、乗用車の生産拠点であるミシガン州ハムトラマック、オハイオ州ローズタウン、カナダのオシャワの3つの組立工場と、メリーランド州ボルチモア、ミシガン州ウォーレンの2つの変速機工場。北米以外では、韓国の群山工場のほか2工場で操業を停止する。米国では乗用車人気が低下しており、GMも乗用車が前年比20.3%減となり、2017年の販売台数は全体で1.4%減と減少した。今回対象となる北米3工場では、シボレー「インパラ」「クルーズ」、キャデラック「XTS」などを生産しており、販売台数はそれぞれ前年比で約6割減、3割減、3割減と大幅に減少した。

人員削減に関しては、幹部クラスの25%を含む、従業員全体の15%が対象となる。

一方で、先端技術への投資に注力することが盛り込まれた。EVやAVなどの開発には、今後2年間で2倍の資源を投入する。

GMは今回の改革で、資産評価損や年金の支払い、その他の従業員関連費用などで最大38億ドルの支出を想定している。メアリー・バーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は「今回の改革により、長期的な収益増をもたらす体制をつくり、回復力の向上を目指す」と述べた。なお、同社では通商拡大法232条による鉄鋼への追加関税で10億ドルのコストが発生した、と報じられている。

トランプ大統領は「not happy」と発言
今回対象となる拠点の従業員数は、米国だけで合計6,000人以上に上る。雇用回帰を政策の目玉とするトランプ大統領はメディアのインタビューに対し、「GMの決定を快くは思っていない(not happy)。これまでバーラ会長には、売れる車種を生産するよう何度も説得してきた。今後の展開に期待している」と述べた。

また、全米自動車労働組合(UAW)の担当者は「今回の決定は寝耳に水だ。『生産割当停止』についてもよく分かっていない」とした上で、「無公害車の生産など、新たな要求には前向きに対応していくつもりだ」と、今後のGMの対応を注視する姿勢を示した。

(大原典子)

(米国)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/11/e969a405f8fd4098.html


General Motors Accelerates Transformation
2018-11-26

• Transforming the global enterprise to advance the company’s vision of Zero Crashes, Zero Emissions, Zero Congestion
• Taking cost actions and optimizing capital expenditures to drive annual run-rate cash savings of approximately $6 billion by year-end 2020
DETROIT – General Motors (NYSE: GM) will accelerate its transformation for the future, building on the comprehensive strategy it laid out in 2015 to strengthen its core business, capitalize on the future of personal mobility and drive significant cost efficiencies.
Today, GM is continuing to take proactive steps to improve overall business performance including the reorganization of its global product development staffs, the realignment of its manufacturing capacity and a reduction of salaried workforce. These actions are expected to increase annual adjusted automotive free cash flow by $6 billion by year-end 2020 on a run-rate basis.
“The actions we are taking today continue our transformation to be highly agile, resilient and profitable, while giving us the flexibility to invest in the future,” said GM Chairman and CEO Mary Barra. “We recognize the need to stay in front of changing market conditions and customer preferences to position our company for long-term success.”
Contributing to the cash savings of approximately $6 billion are cost reductions of $4.5 billion and a lower capital expenditure annual run rate of almost $1.5 billion. The actions include:
• Transforming product development – GM is evolving its global product development workforce and processes to drive world-class levels of engineering in advanced technologies, and to improve quality and speed to market. Resources allocated to electric and autonomous vehicle programs will double in the next two years. Additional actions include:
o Increasing high-quality component sharing across the portfolio, especially those not visible and perceptible to customers.
o Expanding the use of virtual tools to lower development time and costs.
o Integrating its vehicle and propulsion engineering teams.
o Compressing its global product development campuses.

• Optimizing product portfolio – GM has recently invested in newer, highly efficient vehicle architectures, especially in trucks, crossovers and SUVs. GM now intends to prioritize future vehicle investments in its next-generation battery-electric architectures. As the current vehicle portfolio is optimized, it is expected that more than 75 percent of GM’s global sales volume will come from five vehicle architectures by early next decade.

• Increasing capacity utilization – In the past four years, GM has refocused capital and resources to support the growth of its crossovers, SUVs and trucks, adding shifts and investing $6.6 billion in U.S. plants that have created or maintained 17,600 jobs. With changing customer preferences in the U.S. and in response to market-related volume declines in cars, future products will be allocated to fewer plants next year.

Assembly plants that will be unallocated in 2019 include:
o Oshawa Assembly in Oshawa, Ontario, Canada.
o Detroit-Hamtramck Assembly in Detroit.
o Lordstown Assembly in Warren, Ohio.

• Propulsion plants that will be unallocated in 2019 include:
o Baltimore Operations in White Marsh, Maryland.
o Warren Transmission Operations in Warren, Michigan.
In addition to the previously announced closure of the assembly plant in Gunsan, Korea, GM will cease the operations of two additional plants outside North America by the end of 2019.
These manufacturing actions are expected to significantly increase capacity utilization. To further enhance business performance, GM will continue working to improve other manufacturing costs, productivity and the competitiveness of wages and benefits.
• Staffing transformation – The company is transforming its global workforce to ensure it has the right skill sets for today and the future, while driving efficiencies through the utilization of best-in-class tools. Actions are being taken to reduce salaried and salaried contract staff by 15 percent, which includes 25 percent fewer executives to streamline decision making.
Barra added, “These actions will increase the long-term profit and cash generation potential of the company and improve resilience through the cycle.”
GM expects to fund the restructuring costs through a new credit facility that will further improve the company’s strong liquidity position and enhance its financial flexibility.
GM expects to record pre-tax charges of $3.0 billion to $3.8 billion related to these actions, including up to $1.8 billion of non-cash accelerated asset write-downs and pension charges, and up to $2.0 billion of employee-related and other cash-based expenses. The majority of these charges will be considered special for EBIT-adjusted, EPS diluted-adjusted and adjusted automotive free cash flow purposes. The majority of these charges will be incurred in the fourth quarter of 2018 and first quarter of 2019, with some additional costs incurred through the remainder of 2019.
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General Motors (NYSE:GM) is committed to delivering safer, better and more sustainable ways for people to get around. General Motors, its subsidiaries and its joint venture entities sell vehicles under the Cadillac, Chevrolet, Baojun, Buick, GMC, Holden, Jiefang and Wuling brands. More information on the company and its subsidiaries, including OnStar, a global leader in vehicle safety and security services, Maven, its personal mobility brand, and Cruise, its autonomous vehicle ride-sharing company, can be found at http://www.gm.com.
Cautionary Note on Forward Looking Statements. This press release and related comments by management may include “forward-looking statements” within the meaning of the Private Securities Litigation Reform Act of 1995. We caution readers not to place undue reliance on forward-looking statements. Statements including words such as “anticipate,” “appears,” “approximately,” “believe,” “continue,” “could,” “designed,” “effect,” “estimate,” “evaluate,” “expect,” “forecast,” “goal,” “initiative,” “intend,” “may,” “objective,” “outlook,” “plan,” “potential,” “priorities,” “project,” “pursue,” “seek,” “should,” “target,” “when,” “will,” “would,” or the negative of any of those words or similar expressions to identify forward-looking statements represent our current judgment about possible future events. In making these statements we rely upon assumptions and analysis based on our experience and perception of historical trends, current conditions and expected future developments, as well as other factors we consider appropriate under the circumstances. These statements are not guarantees of future performance; they involve risks and uncertainties and actual events or results may differ materially from these statements. Potential risks and uncertainties that could cause actual results to differ from expected results include, among others, whether the Company will be able to implement the Plan as planned, whether the expected amount of the charges associated with the Plan will exceed the Company’s projections, and whether the Company will be able to realize the full amount of estimated savings from the Plan. Readers should also consult the other “risk factors” found in our Annual Report on Form 10-K for the year-ended December 31, 2017 and our subsequent filings with the U.S. Securities and Exchange Commission. We undertake no obligation to update publicly or otherwise revise any forward-looking statements, whether as a result of new information, future events or other factors that affect the subject of these statements, except where we are expressly required to do so by law.
Non-GAAP Financial Measures. See our Annual Report on Form 10-K for the fiscal year ended December 31, 2017 and our subsequent filings with the U.S. Securities and Exchange Commission for a description of certain non-GAAP measures referenced in this press release, including EBIT-adjusted, Core EBIT-adjusted, EPS-diluted-adjusted, ETR-adjusted, ROIC-adjusted and adjusted automotive free cash flow, along with a description of various uses for such measures. Our calculations of these non-GAAP measures are set forth within these reports and these measures may not be comparable to similarly titled measures of other companies due to potential differences between companies in the method of calculation. As a result, the use of these non-GAAP measures has limitations and should not be considered superior to, in isolation from, or as a substitute for, related U.S. GAAP measures.

Juli Huston-Rough
Director, GM Brand, Finance and Sales Communications
Mobile 313-549-6977
julie.huston-rough@gm.com
Michael Heifler
GM Investor Relations
Phone 313-418-0220
michael.heifler@gm.com
David Paterson
Vice President, Corporate & Environmental Affairs
Mobile 416-356-8671
david.paterson@gm.com
https://media.gm.com/media/us/en/gm/news.detail.print.html/content/Pages/news/us/en/2018/nov/1126-gm.html


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/405.html

[経世済民133] 「常軌を逸した」マイナス利回り債買うのはお断り−JPモルガンAM 8月の米国債保有残高、日本が外国勢で首位−中国との差拡大 債券は小幅高か、米長期金利低下受けて買い先行−5年債入札に注目
「常軌を逸した」マイナス利回り債買うのはお断り−JPモルガンAM
Ruth Carson
2019年10月17日 10:32 JST
• マイナス利回りの債券が最終的に「壊滅的な」損失につながると予言
• ファンドの資金のほぼ半分を現金に、債券の一斉売りでも打撃回避へ
世界的リセッション(景気後退)への懸念の中でマイナス利回りの債券のトレードで利益を得ている運用者もいるが、JPモルガン・チェース・アセット・マネジメントのファンドマネージャー、ウィリアム・アイゲン氏は、そんなことをするくらいなら引退した方がましだという考えだ。
  マイナス利回りの債券が最終的に「壊滅的な」損失につながると予言する同氏は、自身の運用するファンドの資金のほぼ半分を現金にし、債券の一斉売りが起こっても打撃を受けないようにしている。
  業界29年のベテランのアイゲン氏はボストンからインタビューに応じ、「マイナス利回りというコンセプト、つまり金を貸すために金を払うという概念そのものが、私には常軌を逸した行動と思われる」と語った。 「私は、金を払って金を貸すようなことはしない。それは確定利付投資ではなく、確定損失投資だ」と述べた。同氏は125億ドル(約1兆3600億円)規模の「JPモルガン・ストラテジック・インカム・オポチュニティーズ・ファンド」を担当している。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iNfoKkqzsrdQ/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/666x-1.png
  アイゲン氏は、長年にわたる欧州や日本の超緩和的金融政策が生み出した大量のマイナス利回り債券によってゆがめられた市場で、投資家は最終的に大惨事に見舞われるだろうと述べた。

ウィリアム・アイゲン氏
  同氏は欧州のリセッションと米国の「かなりひどい」景気減速を予想しているが、それでもマイナス利回り債券は避けている。
  通常、景気悪化時は債券の買い時だが、同氏は買わない理由として第1に、債券価格が既に景気悪化を織り込んでいると指摘。さらに、マイナス利回り債からキャピタルゲインが得られるのは「自分よりさらにクレイジーな人が、借り入れ過ぎの政府や企業に金を貸す特権のために、もっと高い金を喜んで払う」場合だけだと説明した。
  そして、最も重要な理由は、現在の債券市場について持続可能なものは何もないことだという。遅かれ早かれ相場は暴落するだろうとして、それが起こるときに手元に資金を持っていたいと語った。
  「私が言っているのは、これだけの紙幣を印刷し、バランスシートに何兆ドルもの証券を積み上げていれば、ある時点で何かが壊れるということだ。近い将来にそうなるとは言わないが、そうなった時に債券投資家が被る損失は壊滅的なものとなるだろう。その環境でプラスのリターンを上げるのが私の仕事だ」とアイゲン氏は語った。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/inBc8nmfDIUk/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/666x-1.png
原題:JPMorgan Veteran Refuses to Buy ‘Insane’ Negative-Yield Bonds(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-17/PZGSFH6S972901?srnd=cojp-v2


 

8月の米国債保有残高、日本が外国勢で首位−中国との差拡大
Katherine Greifeld
2019年10月17日 6:12 JST
Daily Life in Tokyo's CBD Ahead of the BOJ's Tankan Report
Photographer: Bloomberg/Bloomberg
日本は8月の米国債保有残高で引き続き外国勢首位となった。一方、中国の保有は減少が続いた。

  米財務省の16日の発表によると、日本の保有残高は1兆1700億ドル(約127兆円)と、約440億ドル増加。日本は今年6月に外国勢の保有残高で中国を抜き、2017年5月以来の首位となっていた。中国の保有は約68億ドル減少し1兆1000億ドル。

  外国勢全体の米国債保有は約6兆9000億ドルと、7月の6兆6300億ドルから増えた。

原題:
Japan Extends Lead On China as Top Foreign Holder of Treasuries(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-16/PZHH4MT1UM1301?srnd=cojp-v2

 
債券は小幅高か、米長期金利低下受けて買い先行−5年債入札に注目
日高正裕
2019年10月17日 7:43 JST
債券相場は小幅高が予想されている。前日の米国債相場が米小売売上高の予想外の減少を受けて反発した流れを引き継ぎ、買いが先行する見通し。市場で日本銀行の追加緩和期待が後退する中、この日に実施される5年債入札結果が注目されている。
長期国債先物(12月物) 154円30銭台前半〜154円40銭台前半か(前日154円35銭)
新発10年物国債(356回債)利回り マイナス0.17%〜マイナス0.16%程度か
(前日マイナス0.165%)
  先物夜間取引で12月物は米長期金利の低下を受けて一時154円41銭まで上昇したが、その後は上値が重くなり154円26銭まで下落。結局は154円32銭と前日の日中取引終値比3銭安で引けた。
市場関係者の見方
東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジスト
• 今日の相場は強含みと予想
• ただ、5年債入札は不安を残そう
• 先物中心限月の予想レンジは154円31銭〜154円43銭
5年債入札
• 発行予定額は1兆9000億円程度、16日の入札前取引はマイナス0.29%程度
• 大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジスト
o 日銀の追加緩和に対する過度な期待がしぼみつつある
o 5年セクターは現在、目立つ割安感も割高感もない
o マイナス0.30〜マイナス0.25%での投資家の需要を見極めながら応札スタンスを考えたい

海外市場の流れ
• 16日の米10年国債利回りは前営業日比3ベーシスポイント(bp)低い1.74%程度
• 米小売売上高:9月は予想外の減少−堅調な個人消費に変化か
• 東京時間早朝の円相場は1ドル=108円台後半で推移
• トランプ大統領、11月に習主席と会談し米中貿易合意に署名する公算
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-16/PZGI9GT1UM1701?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/407.html

[経世済民133] 日銀のマイナス金利深掘りが「再増税」リスクを高める理由 レポ金利急騰を抑制したFRB、米債投資ヘッジコストも低下へ ビットコイン、8000ドル割れ−さらなる下落をテクニカル分析が示唆 ポンドが下落、離脱巡る楽観が後退−合意に障壁
日銀のマイナス金利深掘りが「再増税」リスクを高める理由
加藤 出:東短リサーチ代表取締役社長

政策・マーケット 金融市場異論百出
2019.10.17 4:10 会員限定


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金融市場異論百出
日本銀行の黒田東彦総裁の心中は次の一手を打つことに傾いているかもしれないが、難しいかじ取りを求められそうだ Photo:EPA=JIJI
「欧州と日本はブラックホール的な金融政策を実施している」

 米ハーバード大学のローレンス・サマーズ教授は、英紙「フィナンシャル・タイムズ」への最近の寄稿で、欧州中央銀行(ECB)と日本銀行が実施しているマイナス金利政策の効果に対して、そう懐疑的な見解を示していた。

 しかし、日銀幹部はマイナス金利の深掘りを含む追加の金融緩和の是非を、10月末の金融政策決定会合で検討すると強調している。黒田東彦総裁としては、次の一手を打ちたい心情なのではないか。

 とはいえ、ここからの追加緩和はメリットよりも副作用が上回る可能性が高い。そのため「やるぞ、やるぞ」と言いながらも決定せずに引っ張り続ける戦術の方が効果的に思われるのだが、日銀は9月の決定会合を経て追加緩和に前のめりな姿勢を一段と強めてきた。

 2016年1月にマイナス金利政策を決定したときは、あまりに唐突だったため、日銀は多方面から激しい批判を浴びた。同様のトラブルを避けようと日銀が早めに情報を発信してきた可能性はある。ただし、10月の決定会合での追加緩和が日銀内ですでに「ダン・ディール(取引成立)」になっているわけではなさそうだ。

 日銀政策委員の最終的な判断は、米中貿易戦争やBrexit(英国の欧州連合〈EU〉離脱)が世界経済のダウンサイドリスクを高める恐れがあるか否かによるだろう。懸念が強ければ追加緩和となるが、10月中旬時点では米中交渉に明るい兆しが表れている。このまま進めば、米連邦準備制度理事会(FRB)が10月30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを見送る確率が高まる。

 かつ、Brexitも最悪のケースがひとまず回避されるなら、日銀が10月31日に政策の現状維持を選択する可能性も出てくる。今回は会合当日まで市場参加者が気をもむ展開になるかもしれない。

 一方、仮に追加緩和を行うにしても打つ手は限られる。黒田総裁は超長期金利(20〜30年などの国債の金利)の過度な低下は避ける必要があると最近何度も説明している。それは保険会社や年金基金に打撃を与え、家計部門に強い不安をもたらす恐れがあるからだ。

 となると、マイナス金利の大幅な引き下げは難しい。投資家たちに「サーチ・フォー・イールド」(少しでも良い利回りを求める行動)を促し、超長期金利に強い低下圧力を加えてしまうからだ。マイナス金利を先行き何度も引き下げる印象を日銀が醸し出すことも、同様の影響をもたらす恐れがある。

 世界に目を向けると、マイナス金利政策が行われている欧州の多くの国では、金融機関は同政策による収益悪化を和らげるために、顧客(主に法人)の口座預金へマイナス金利を適用している。デンマークでは最近の法人向け新規預金金利が平均マイナス0.57%だ。

 日本は金融機関同士の競争が激しく、そうはなっていない。だが、もし日銀が大幅にマイナス金利を引き下げれば、口座維持手数料などによる事実上のマイナス金利適用を模索し始めるかもしれない。

 それは預金者にとっては“増税”のようなものだ。10月に消費税率が引き上げられたばかりの国民がそれに直面したら、消費マインドは一段と悪化してしまう。

 このように考えると、日銀が10月の決定会合でマイナス金利を深掘りすることは適切ではなく、それでも行う場合は、せめて引き下げを0.1ポイント程度の小幅にとどめるべきだろう。

(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)


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レポ金利急騰を抑制したFRB、米債投資ヘッジコストも低下へ

野地 慎:SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト
政策・マーケット 金利市場透視眼鏡
2019.10.17 4:00
 FRB(米連邦準備制度理事会)が9月に2度目の利下げを行う中、米国の短期金融市場ではレポ取引(国債等を担保とする短期資金の取引)の金利が急騰した。
 FRBがバランスシートを縮小してきた中、(銀行が連邦銀行に預ける)準備預金が不足がちになり、連邦政府による税金収納と国債発行に伴う資金決済が重なり、ドル不足が生じたことが金利上昇を招いたとされる。

拡大画像表示
 長らく超過準備(準備預金)が溢れるような金融政策を続けてきた当局が油断していた中で生じた金利急騰と見ることもできるが、FRBの反応は素早かった。
 ニューヨーク連銀は連日巨額の資金供給を行い、またFRBのパウエル議長は準備預金の拡大を表明している。各期間のレポ金利は低下し始め、また、短期金融市場のドル逼迫の影響で上昇しやすいLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)も低下し始めた。
 今後、短期金融市場に安心感が広がれば、LIBORはOIS(リスクフリーレート)に対する上乗せ幅を縮め、さらに低下すると予想されるが、本邦投資家がドル資金を調達する際の金利(ヘッジコスト)は日米のLIBOR金利差を基に算出するため、本邦投資家の外債投資にも影響が及ぶと予想される。
 日本銀行のマイナス金利政策が長期化する中、本邦投資家は外債投資を積極化させてきたが、2017年から18年にかけてのFRBの相次ぐ利上げでヘッジコストが上昇し、米国の債券については為替ヘッジ付きでは投資しづらい環境が続いてきた。
 米国債に対し一定の利回りの上乗せがあるMBS(住宅ローン担保証券)であれば為替ヘッジ後でも利ザヤが確保できたため、一定の投資が続いていたが、その利ザヤもゼロに近づく中、フランス国債や日本の超長期国債への見直し買いが増え、全世界的な長期金利低下の一助となったとされている。
 そのような中、FRBの利下げとそれに伴うドル短期金利(ヘッジコスト)低下によって資金の行き先が変化する可能性もあったのだが、上述のレポ金利急騰はその流れに水を差した格好ともいえる。
 ただ、FRBの英断でヘッジコストは低下しつつある。足元では米銀がドル資金を出し渋る年末に差し掛かり、ドルのヘッジコスト低下は一筋縄ではいかないことがうかがえるが、今後のFRBの利下げの回数次第によっては、ヘッジコストがさらに低下する可能性は十分にありそうだ。
 年末のドル資金逼迫期を乗り越えた来年の1月あたりには米国債と欧州債、日本国債のリターンを比較しながら運用先を選ぶような投資家も増える可能性が高いといえよう。
(SMBC日興証券チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)
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野地 慎


1-3月期GDPが示す景気変調、次の金融緩和の決め手は「マイナス金利の深堀り」
大久保琢史
https://diamond.jp/articles/-/217688?


 

ビットコイン、8000ドル割れ−さらなる下落をテクニカル分析が示唆
Olga Kharif
2019年10月17日 8:58 JST
• 悪いニュースが続く中、ビットコインは6月以来の安値に逆戻り
• この節目を持続的に割り込めば約7311ドルを試す恐れ
仮想通貨ビットコインの見通しは良くない。
  ビットコインは16日に8000ドルを割り込み、6月以来の安値に逆戻りした。悪いニュースが続いていることが他の仮想通貨にも重しとなっている。テクニカル指標は今回の8000ドル割れが重要であることを示唆しており、さらなる痛みにつながる可能性がある。
  この節目を持続的に割り込めば、ビットコインは200日移動平均である約7311ドルを試す恐れがある。ビットコインの50日移動平均も100日移動平均も割り込んでおり、テクニカル分析での見通しが悪いことをさらに示唆している。

原題:
Bitcoin’s Latest Swoon Raises the Risk of Key Technical Breach(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-16/PZHP7XT0G1KW01?srnd=cojp-v2


ポンドが下落、離脱巡る楽観が後退−合意に障壁
Charlotte Ryan
2019年10月16日 17:48 JST
16日の外国為替市場で英ポンドが下落。欧州連合(EU)離脱を巡る合意が目前に迫っているとの楽観が後退した。英保守党政権を閣外協力で支えてきた北アイルランドのプロテスタント強硬派、民主統一党(DUP)が合意案に異を唱えた。
  合意への期待からポンドは過去4営業日に2008年以来の大幅上昇を演じていた。交渉は15日夜に進展し16日に再開されると当局者が述べたが、英政府はDUPの反対のために悲観的になったと当局者が明らかにした。
  トレーダーはポンドが2つの相反する方向で大幅に変動する可能性があるとみて、オプションの購入に動いている。ブルームバーグが調査したストラテジストによれば、EUと離脱合意を成立させ議会が承認すれば、ポンドは1.40ドルまで上昇するとみられる。一方、合意に失敗すれば英国経済は合意なき離脱の混乱に陥り、ポンドは1.11ドルに沈む可能性がある。
  ポンドはロンドン時間午前9時までに0.6%安の1.2707ドルとなった。15日には約5カ月ぶり高値の1.28ドルに達していた。

原題:Pound Pulls Back From Rally as Brexit Negotiations Hit Hurdle(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-16/PZGKBH6S972801


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/408.html

[国際27] 一帯一路からデジタル覇権へ舵切った中国の野望 世界中の独裁政権が渇望するデジタル監視技術で世界制覇狙う 米「香港人権法案」に中国激怒、揺らぐ香港の命運 法案成立なら報復という習近平政権、トランプはどう出るのか? 香港経済は7−9月にリセッション入り トランプが「根拠のない世界」に浸かる狙い 
一帯一路からデジタル覇権へ舵切った中国の野望 世界中の独裁政権が渇望するデジタル監視技術で世界制覇狙う
2019.10.17(木)渡部 悦和
中国 IT・デジタル 政治 安全保障 経済
4月24日、ミャンマーのアウンサン・スーチー氏と面会し握手する中国の習近平国家主席(北京で、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
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 一帯一路構想(BRI:Belt and Road Initiative)は、中国が最も重視する国家戦略の一つであり、米中の覇権争いを分析する際に不可欠な要素だ。
 このBRIが現在どのような状況になっているかを明快に分析した論考*1が最近発表された。
 この論考は、米国のシンクタンクAEI(American Enterprise Institute)が運営している「中国世界投資調査(CGIT:China Global Investment Tracker)」の膨大なデータベースに基づいて分析されている。
 この分析で注目されるのは以下の2点だ。
 まず、BRIの参加国は増えているが、中国によるインフラ建設は、中国の外貨準備高の減少に伴い2016年をピークに減少していて、この傾向は継続する可能性が高いという指摘だ。
 つまり、BRIにおけるインフラなどの建設分野は今後期待できないということだ。
 2点目は、BRIで今後注目すべきは、中国政府が重視する「デジタル・シルクロード(DSR:Digital Silk Road)」であり、その動向に注目すべきだという指摘だ。
 以下、この2点を中心として紹介するが、特に「中国のDSRの成功が中国の21世紀の国際秩序を形成する能力を強化し、米中覇権争いの帰趨を決定づける可能性がある」という観点で、DSRの重要性を強調したい。
図1「一帯一路構想(BRI)」
出典:台湾国防白書
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*1=Cecilia Joy- Perez、“The Belt and Road Initiative Adds More Partners, But Beijing Has Fewer Dollars to Spend”
1 一帯一路構想(BRI)…
1 一帯一路構想(BRI)
 BRIとは?
 一帯一路構想には明確な定義がないが、陸の「シルクロード経済ベルト」と海の「21世紀海洋シルクロード」によりアジアから欧州までを連結させる雄大な「シルクロード経済圏構想」と表現されることが多い。
 2013年からBRIを提唱していた中国の習近平主席は、2014年11月に開催されたアジア太平洋経済協力首脳会議で大々的に発表した。
 その後、BRIは中国の重要な国家戦略として、2017年10月24日に中国の憲法にも盛り込まれ、習近平主席の威信を懸けた戦略となっている。
 発展途上国にとってBRIは、自力では困難なインフラ整備が可能になるという抵抗しがたい魅力を持っているという。
 しかし、負の側面として発展途上国の経常収支の悪化や対外債務拡大をもたらしていると批判されている。
 中国は現在、137カ国とBRI協定を締結している。特に、2018年6月から2019年6月までに新たなパートナー諸国62カ国が加盟した。
 しかし、この加盟国の増加は、BRIにおける建設額や投資額の増加につながっていないという。この原因は、中国の資金不足が大きい。
 一方で中国側の嘆きは、多くのBRI加盟国がBRIを中国による対外支援と捉え、「待つ」「頼る」「求める」という傾向が強い点だという。
 つまり、資金力のある米国や日本が加盟しておらず、中国に依存しすぎる国々が多すぎ、中国一国では支え切れない状況だ。
BRIの目的は何か?…
BRIの目的は何か?
 BRIの目的については様々な解釈がある。私は、米国主導の世界秩序に対抗する中国主導の世界秩序の構築がBRIの目的だと思っている。
 この中国主導の秩序の中に中国の海外展開のための軍事インフラ(人民解放軍が使用する港、空港、鉄道・道路など)の確保も入っていることを強調したい。
 BRIに批判的な人たちの表現を使えば、BRIは発展途上国に対する債務の罠を伴う「新植民地主義」「現代の朝貢システムの構築」「中国版マーシャル・プラン」、中国の過剰生産能力の解消手段として輸出市場を確保する狙いなどが列挙されよう。
 こうした中国に批判的な見方に対して、中国サイドの美しいナラティブ(物語)を紹介する。
 李向陽・中国社会科学院アジア太平洋・グローバル戦略研究院院長によると、「BRIとは、古代シルクロードを原型とし、インフラによる相互連結を基礎とし、多元的協力メカニズムと「義利観」を特徴とし、運命共同体の構築を目標とする発展主導型の地域経済協力メカニズムである」という*2。
 ここで言う「義利観」について、「義」は理念・道義・倫理、「利」は利益・互恵・「ウィンウィン」という意味だ。
 孔子が唱える「利」よりも「義」を優先すべきとの立場に立つのがBRIの理念である「義利観」だという。
 そして、運命共同体は、習近平主席がしばしば言及する「人類運命共同体」のことであり、「平等な扱いを受け合い、互いに話し合い、互いに理解を示し合うパートナー関係を築くことが、運命共同体を実践する主要な方法。公正・公平で、共に建設し、共に享受する安全な構造を築くことが、運命共同体を築くうえでの重要な保障」としている。
 人類運命共同体をはじめとして、なんと美しい言葉が多いことか。BRIについて、言っていることと実際に行っていることの乖離は大きいと言わざるを得ない。
*2=李 向陽、「一帯一路は中国が世界に提供する公共財だ」、日経ビジネス
BRIの建設ピークは2016年、その後は減…
BRIの建設ピークは2016年、その後は減少
 中国ではエネルギー・プロジェクトが海外でのBRI関連の建設および投資の大部分を占めている。
 しかし、中国はエネルギー部門以外にも、輸送部門におけるBRI関連の建設プロジェクトや商品への投資を重視している。
 これは、エネルギー供給を確保し、海外との商品貿易と輸送の接続性を改善するという中国の長年の野心に合致する。
●投資ではなく建設がBRIの主要な経済活動
 投資ではなく建設がBRIの主要な経済活動である。建設プロジェクトには、「建設し、運用し、譲渡する」プロジェクトなどの長い運用段階が含まれ、それらは投資と見なされる。
 例えば、ハンバントタにあるスリランカの港を「China Merchants Ports(CMPort))」が所有しているように、港を運営するための長期の利権も投資として処理される。
 2013年10月から2019年6月まで、現在の137カ国すべてに関係する9500万ドルを超えるBRI案件を集計すると、建設プロジェクトは4320億ドル、投資総額は2570億ドルであった。
 商業的および政策的理由から、BRIでは建設が投資を上回っている。
 商業面では、ほとんどのBRI諸国は開発途上国で、買収する価値のある収益性の高い資産をほとんど持たないから額が少なくなる。
 政策面では、中国の海外非営利建設推進は国有企業内の過剰設備問題を解決するためだ。
 国有企業は、BRIの枠組みの内外を問わず…
 国有企業は、BRIの枠組みの内外を問わず、グローバルな契約の圧倒的多数を担っている。
 国有企業を失敗させたくないという中国の姿勢は、肥大化した企業にビジネス・プロジェクトを提供する必要性を生じさせ、ひいては世界的な建設プロジェクトの継続的な流れを生み出している。
 過去数年のデータと比較すると、2019年上半期のBRI建設プロジェクトの件数は40%減少し、資金量はほぼ140億ドル減少した。
 この3年間の上半期においては平均83件の建設プロジェクトがあった。しかし、2019年の上半期には58件しか報告されていない。
図2「BRI(2014〜19年上半期)の建設・投資額(単位は10億ドル)」
(出典:中国グローバル投資調査)
ギャラリーページへ
https://jbpress.ismcdn.jp/mwimgs/6/9/450/img_696c4f011cbf3f696db9046d0fae7fe357727.jpg

●外貨準備高が減少すると建設額も減少する
 上記の図2から、BRIの建設最盛期は2016年であったことが分かる。これには中国の外貨準備高が影響している。
 中国の建設プロジェクトは通常、中国政府からの安価な資金提供を受けており、その資金援助は中国の外貨準備からもたらされている。
 中国政府の外貨準備の状況が悪化したため、建設資金がその後数年で減少した可能性がある。
 2013年にBRIが発表されたときから、外貨準備高は一貫して増加しており、2014年6月には4兆ドル近くに達していた(国家外国為替管理局(SAFE)、2018年5月7日)。
 それ以来、外貨準備は減少し、約3兆1000億ドルで安定している。
 これは依然としてかなりの額だが、中国政府は、米国との貿易摩擦で外貨準備が厳しく、資金を投じることがますます難しくなっている。将来的に、「カネの切れ目は縁の切れ目」の状態になる可能性はある。
2 デジタル・シルクロード構想…
2 デジタル・シルクロード構想
 デジタル・シルクロード構想(DSR)は、インターネット・インフラの強化、宇宙協力の深化、共通の技術基準の開発、BRIの加盟国における警察システムの効率改善などが含まれている。
デジタル・シルクロードに対する懸念
 最近、中国によるBRI諸国の通信分野への影響力の拡大を懸念する声が多いが、中国政府はBRIの一部であるDSRを重視している。
 中国のDSRの成功が中国の21世紀の国際秩序形成する能力を強化し、米中覇権争いの帰趨を決定づける可能性がある*3。
 DSRを通じて米国との戦略的技術競争を行うとともに、世界中にデジタル独裁主義(Digital Authoritarianism)モデルを輸出している。
 DSRはBRIの重要な部分で、海外におけるデジタル連結性を向上し、技術大国に上り詰めることに焦点を当てている。DSRの特徴を4つの分野で分析する。
@物理的なデジタルインフラ(5G携帯ネットワーク、ファイバー光ケーブルを含むインターネット・インフラ、データセンターなど)を提供する世界のリーダーになる。
ADSRを通じて経済的及び戦略的に活用できる最先端技術(衛星航法システム、人工知能、量子コンピューティングなど)の開発に投資する。
BDSRを通じデジタル自由貿易地域を構築し、国際的なEコマースの主導権を握る。
Cサイバー空間と先端技術に関する国際的な規範を確立する。結果として、将来的なデジタル世界の概念(例えばサイバー主権(cyber sovereignty))に適合する規範を確立する。
 世界中の独裁的な政権は、これらの努力を歓迎する、なぜならサイバー主権が国民の表現の自由などを抑圧でき、国民を統制しやすくなるからだ。
*3=Clayton Cheney, “China’s Digital Silk Road Could Decide the US-China Competition”, The Diplomat
DSRの何が問題か?…
DSRの何が問題か?
●中国のデジタル監視社会の輸出
 中国のデジタル監視社会は、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒に対する徹底的な監視と弾圧、インターネット検閲による共産党批判の封じ込め、至る所に張り巡らされた監視カメラ網、国民一人ひとりがデジタル技術で格付けされる「社会信用システム」の構築などにより国民を徹底的に監視している。
 この中国式デジタル監視社会がDSRによりBRI沿線国に輸出され、中国の影響圏が拡大する可能性が高い。
 デジタル監視を行う政権側にはビッグデータが蓄積され、そのビッグデータは中国に集積される可能性が高い。
 そのビッグデータを中国が利用してBRI沿線国をコントロールする可能性はある。デジタル監視社会の輸出は中国的な「デジタル独裁主義」の輸出につながりかねない。
 また、沿線国のビッグデータを用いて、中国のAI開発、電子商取引やキャッシュレス決済などのデジタルビジネスを加速することが可能となる。
●中国の技術でBRI沿線国のサイバー空間を支配
 DSRは、中国によるBRI沿線国に対するサイバー空間の構築を意味する。
 結果的に、中国は沿線諸国のサイバー主権を侵し、サイバー支配を確立するかもしれない。中国がサイバー空間を支える技術を提供しているだけに、他国のサイバー空間で多くのことを隠密裏にできるであろう。
●「デジタル地球」構想に伴う中国宇宙技術による支配
 DSRは、サービス開始以来、アジアの新興経済国に中国の技術を提供を行っている。
 2016年、中国科学院は、BRIの下での複数のプロジェクト、特に南アジアと東南アジアでのプロジェクトのために、宇宙に根拠を置く遠隔計測データを収集する「情報シルクロードによるデジタル地球(Digital Earth Under the Information Silk Road)」構想の一環として、海南と新疆に2つの地域研究センターを設立した。
 一方、中国の産業界において、2020年までに35基の衛星から成る中国版の全地球測位システム(GPS)である「北斗衛星導航システム(BeiDou Navigation Sattellite System)」(最初は北斗-1、現在は北斗-2)の開発が積極的に進められている。
 中国衛星航法局は、米国政府が保有するGPSに代わるものとして、全世界で実用化を目指している。
 既にパキスタン、ラオス、ブルネイ、タイなど多くのアジア諸国で採用されている。中国は、宇宙技術でこれらの国々を取り込み、「現代版朝貢システム」を構築しようとしている。
●「Eコマース」と「モバイル決済」によるデ…
●「Eコマース」と「モバイル決済」によるデジタル・ビジネスの支配
 一方、DSRのソフト面では、「Eコマース(電子商取引)」と「モバイル決済」の利用が増加しており、Eコマースと従来の企業とのコラボレーションが拡大している。
 2014年から15年にかけて、中国のアリババ(Alibaba)は、伝統的な郵便事業会社であるシンガポール郵便(Singapore Post)に4億米ドルを投資した。
 一方、テンセント(Tencent)、政府系ファンドである中国投資有限責任公司(China Investment Corporation)、ライドシェア会社である滴滴出行(ディディチューシン)は、東南アジアの主要な配車サービスであるグラブ(Grab)に投資している。
 南アジアでは、アリババグループは2015年から2017年の間に、インドのEコマース会社である「Snapdeal」、「Big Basket」、「Ticket New、One97」に対し、合わせて6億2000万ドル以上を投資した。
 これらのデジタル経済は、消費者行動の動向の把握、伝統的な企業とデジタル企業の双方に大幅な成長をもたらしている。
 しかし、新興経済国が今後数年間に中国からの技術移転によってより公平な競争条件を獲得するにつれて、アジア経済に大きな競争が起こることを意味する。
 ミャンマーを例にとってみよう。
 2012年には、人口の1%未満しかブロードバンドにアクセスできなかった。しかし、同国の運輸通信省はファーウェイ(HUAWEI)と協力して2025年までに5Gブロードバンド・サービスを開始する予定だ。
 つまり、シンガポール、マレーシア、インドなどの国々が経験してきた何世代にもわたるモバイル・ネットワークを飛び越えて、いきなり最新の5Gブロードバンド・サービスを手に入れることになる。
 中国のテック企業がBRIの加盟国に進出し続けるにつれ、南アジアと東南アジアが全体として急速に発展することは間違いない。
 このDSRは本質的にゲーム・チェンジャーであり、すでに低成長に陥っている国々の競争上の優位性が厳しくなる一方で、低開発国にはより大きな経済的機会をもたらすことになる。これらをコントロールするのは中国の技術だ。
3 米国と日本のDSRへの対応は難しい…
3 米国と日本のDSRへの対応は難しい
 中国がDSRを拡大していくと日本や米国の入り込む余地がなくなる。
 米国の国防戦略で記述されている「世界の秩序は中国に有利な方向に向かっている」という表現は、DSRには特に当てはまる。
 米国はDSRに対応するダイナミックな戦略を持っていないし、ファーウェイの5Gに匹敵する携帯通信技術力と安さを兼ね備えた企業も持っていない。
 しかし、米国が技術分野と経済分野で中国との戦略的な競争に強い姿勢で臨んでいることは適切だし、ZTEとファーウェイに対する制裁は、米国が中国の通信大手に打撃を与える手段をまだ持っていることを示している。
 中国のDSRへの取り組みは「北斗衛星導航システム」の提供、ファーウェイの光ファイバーや4G・5G携帯通信技術の提供などによりBRI沿線国に着実に食い込んでいる。
 米国がただ単にファーウェイ技術や製品を排除するように同盟国や友好国に圧力をかけたとしても効果は限定的だ。米国はもっと統合的なアプローチを行っていかなければいけない。
 そのためには、アメリカ・ファーストを唱え、米国だけの利益を追求して同盟国や友好国に負担を強いる姿勢を改める必要がある。
 米国が6月に発表したインド太平洋戦略では、米国の同盟国や友好国との連携なくして中国に対抗できないことを認めているではないか。
 我が国は、中国のBRIやDSRに対して米国と共同歩調を取ってきた。今後とも米国と共に中国のDSRに対応せざるを得ない。
 そのためには、国を挙げたデジタル技術、AIなどの最先端技術の開発による技術大国の復活を目指すべきだし、日本独自のインド太平洋地域における、中国の強引なインフラ整備とは一線を画す、質の高いインフラ整備を継続するなど、やるべきことは多い。
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中国建国70周年軍事パレードが示す本音と虚構
中国は10月1日に建国70周年を迎え、北京の天安門広場で軍事パレードが行われた。兵員約1万5000人、戦車などの車両約580台、航空機約160機が参加し、最大規模のパレードであった。米国との貿易摩擦や香港問題など国内外で難しい問題を抱えるなか、一連の行事を盛大に行う目的は国内的には国威発揚だ。

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米「香港人権法案」に中国激怒、揺らぐ香港の命運 法案成立なら報復という習近平政権、トランプはどう出るのか?
2019.10.17(木)福島 香織
アメリカ国旗を持って香港行政長官の施政方針演説に抗議する人(2019年10月16日、写真:ロイター/アフロ)
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(福島 香織:ジャーナリスト)
 香港では10月上旬から緊急法に基づく覆面禁止法が施行され、警察による無差別逮捕が始まり白色テロ(暴力を伴う政治的弾圧)の様相を帯びてきた。
 9月以降、海から引き揚げられた遺体や、高所から飛び降りて死亡確認されたケースは9月中旬の段階で50人前後。複数の遺体は、全裸だったり暴行の跡があったり、口にガムテープが張られている。それにもかかわらず、警察は自殺として処理しており、8月31日の8.31デモ以降、連絡が途絶えているデモ参加者の噂などと相まって、公表はされていないが警察の暴行による死者が出ているのではないか、という懸念も出ている。
 深センに近い山中にある新屋嶺拘置所には2000人前後のデモ参加者が拘留されていると見られており、そこで看守や警官による拘留者への虐待や辱めが行われているという出所者の証言や、新屋嶺拘置所に隣接した土地に大規模な反テロ訓練施設を建設する計画などが報道されている。
 林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は記者会見で「中央政府への支援を求める選択肢を排除していない」と香港基本法18条に基づく解放軍出動要請の可能性もにじませ、香港市民の抵抗を警察権力と軍事力行使をほのめかすことによる恐怖で押さえつけようとしている。
 旺角の繁華街では駐車中の警察車両近くで、携帯電話を使った遠隔操作式の手製爆弾が爆発した。警察はデモ隊の仕業としており、香港のデモは放っておくと紛争に近い状態になるのではないか、と懸念する声もでてきた。
米下院で「香港人権・民主主義法案」可決
 そういうタイミングでついに、米国下院が10月15日、「香港人権・民主主義法案」を可決した。上院本会議で可決され、トランプ大統領が署名すれば成立だ。
制裁色が濃くなった新版法案
 この法案は、香港の人権、民主を損なう政策や行動をとった香港官僚に対して入国拒否などの制裁を行い、香港に対して経済制裁をとることを定めている。中国は法案を成立させたならば報復措置をとる、としている。この法案は、香港の救いとなるのか、あるいはより深い混沌に導くのか。
 アメリカの国営放送局、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によれば、この法案は争議が存在しないものとして、両院での審議時間は40分に制限され、内容上はほとんど修正がないと見られている。上院の可決もほどなく行われる見通しだ。法案の中身は、先月に両院の外交委員会で全会一致で通過した法案と比べると、本会議に提出された新版法案では制裁色がかなり濃くなった。
 たとえば、以下のような変更点がある。
(1)法案は、香港の自治状況を年度ごとに評価する。香港政府が行政、立法、司法部門で法治を維持し、公民の権利方面の“自主決策”を保護できているかを審査する。もし、法治が維持できておらず、公民の“自主決策”の権利が保護されていないと判断されれば、香港が引き続き中国大陸と異なる特別優遇を認定するか否かについては、米国と香港の間で協議される。今回可決された新版法案では、この協議のテーマについて、明確に商業協議、執法協力、不拡散承諾、制裁執行、輸出管制協議、税収・為替兌換の状況などの協議と細分化して言及されていた。
(2)新版法案では制裁対象がさらに広汎に拡大された。外交委員会で提出された法案では、香港の書店関係者拉致に関与する者や親中派記者、および基本的自由、人権を行使しようとした人間を拘束し中国大陸に引き渡した司法関係者などが制裁対象者例として挙げられていた。だが新版法案では、(A)香港において任意拘束、拷問、脅迫を実施したり中国大陸に引き渡すと恫喝した人物、(B)『中英連合声明』『香港基本法』で定められた香港、中国の共同の義務に背いたり違反する行為、あるいは米国の香港における自治、法治方面の国家利益を損なう行為、その決定にかかわる者、(C)香港において国際社会が認める深刻な人権侵害行為を行った者、などが対象となった。
(3)一方、香港人のビザ発給要件は寛容になった。最初の法案では、香港民主、人権、法治を求めて平和的な方法のデモを行って逮捕、拘留された香港人については、米ビザ発給が拒否されない、という文言だったが、新法案では「平和的」と強調する文言がなくなった。つまり平和デモ以外の勇武派デモでも、これに参加したことで逮捕された香港人については政治犯として扱われ、ビザ申請を米国は拒否しない、とした。
(4)輸出管制報告の要求も変わった。香港商務部が提出する年度報告をもとに、香港政府が米国への輸出管制法規に従っているか、米国と国連の制裁規定に従っているかを評価することになっていたが、これについて180日ごとに報告書の提出が求められるようになった。
中国は激しく反発
(5)米国公民と企業の香港における利益を保証するものとして、最初の法案では「香港政府は逃亡犯条例を強行に制定した場合、犯罪容疑者の中国大陸への引き渡しについては認める」としていた。というのも、この法案が最初に提案された当時の論点は逃亡犯条例改正問題だったからだ。だが香港政府が正式にこの条例改正案を撤回したので、新版法案からこの部分の内容は削除された。代わりに、香港政府が類似の法案を提出した際には、米国務長官が米議会に通知し、そのリスクを評価し、米国の香港における利益を保証する戦略を制定する、とした。
 このほか、制裁対象者の米国における資産凍結、本人および直系家族の米国入国禁止などの措置が取られるという。また、同日下院では香港警察に武器販売を禁止する「香港保護法案」、香港人のデモの権利を支持する「香港支持決議」が可決された。
中国は激しく反発
 この可決直前の10月12日、テッド・クルーズ上院議員が香港を訪問し、米領事公邸での記者会見で、北京の独裁政権を非難。その翌日、中国の習近平国家主席は訪問先のネパールで13日、「中国の地域の分裂を企むものはいかなる者も、“最後は粉々になる”」と激しい語調の演説を行ったことが、チベット問題だけでなく香港を念頭に置いたものではないか、と話題になった。
 10月16日の中国外交部記者会見では、報道官が香港人権・民主主義法案について「強烈な憤慨と断固反対」を表明。もし、法案を最終的に成立させたなら、「中国側の利益を損なうだけでなく、米中関係を損ない、米国自身の利益も深刻に損なわれることになる。中国側は必ず力のある断固とした対応策を講じて、自身の主権と、安全、発展の利益を断固擁護する」として、報復措置を明言。「崖っぷちから馬を引き返せ。すぐ、法案の審議を中止して、香港事務に手を突っ込み、中国の内政を干渉するのをやめよ」と激しい調子で警告した。
気まぐれなトランプはどう出るか?
 この香港関連法案がいつ成立するのか。本当に成立するのか。目下の米議会のムードを読めば、議会側に法案成立を阻む要素はない。
 1つあるとすれば、トランプ大統領がサインするかどうか。おりしも、10月10〜11日にワシントンで行われた第13回米中通商協議(閣僚級)では、貿易戦争休戦に向けた第一歩と言える部分的合意ができたらしい。中国は毎年、米国農産品400億ドルから500億ドル分を購入すると承諾し、トランプは「米国の農家はすぐに、より多くの農地と大型トラクターを買いに行くべきだ」と記者会見で笑顔でコメントした。トランプに言わせれば「米中間は一時緊張していたが、再び愛情の季節がやってきた」とか。どこまで本気かは怪しいが、少なくともウォール・ストリートの株価は好感した。11月にチリでAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が開かれるが、うまくいけば合わせて行う米中首脳会談で調印される可能性もある、らしい。
追いつめられた習近平は?
 10月15日に実施する予定だった2500億ドル分の中国製品に対する30%までの関税引き上げは、一時的に延期された。トランプは劉鶴に対して、香港の抗議デモについて「数カ月前と比較すると、確かに参加人数は現在ずいぶん減った。我々はこの問題についても討論し、香港自身が解決すると思っている」と軽くコメント。そのコメントはあたかも、トランプが香港を今まで擁護したのは通商協議を有利に運ぶためであり、中国が全面的に譲歩すれば香港を見放すのではないか、と想像させるような軽さだ。
 だが、逆に言えば、通商協議と香港関連法という2つのカードで米国がとことん習近平政権を追いつめるチャンス到来、という見方もできる。
 中国ではまもなく、およそ20カ月ぶりの共産党中央委員会総会(四中全会)が開かれる。それを前にしたタイミングで米国が香港の問題と貿易問題で中国に徹底的に妥協を迫ることもできる。
 習近平も党内で必ずしも味方が多いほうではない。追いつめられた習近平は、完全に妥協し、中国の覇権を諦め、米国主導の国際ルールのもとで再び改革開放路線に舵を切るのか。あるいは、対米報復措置をとり、香港のデモに対して解放軍出動といった天安門方式で一気に鎮圧するという暴挙に出るか。
 香港の運命は、気まぐれなトランプと、毛沢東信望者の習近平の危険なディールの延長の上で揺れている。
 私はもし、日本にアジアで最も民主と自由の恩恵を受けている国家という認識があるなら、ここで香港の民主や自由を守るアクションを国会議員たちが取ってもいいのではないか、と思っている。米中のディールだけに香港の命運を預けるのではなく、国際社会がコミットすることで少しでも明るい展望が示せることもある。
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韓国大統領、サムスン、現代自動車相次ぎ訪問
2019年10月15日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)大統領が京幾道華城(ファソン)にある現代自動車の研究所を訪問し、自動運転や水素、電気自動車など未来型自動車研究施設などを視察した。10月10日には、サムスン電子のディスプレー工場を視察したばかりだ。経済民主化を掲げ、財閥と一定の距離を置いていた大統領だが、経済活性化のために財閥との関係が変化しつつある。


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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57956


 
香港経済は7−9月にリセッション入り、支援策講じる−林鄭行政長官
Eric Lam、Iain Marlow
2019年10月16日 15:38 JST
市民の不満が広がる一因の経済問題に対処する姿勢
立法会で演説開始も民主派議員が妨害−映像を通じた演説に変更
Demonstrators display a banner during a protest outside the Legislative Council building in Hong Kong, China, on Wednesday, Oct. 16, 2019.
Demonstrators display a banner during a protest outside the Legislative Council building in Hong Kong, China, on Wednesday, Oct. 16, 2019. Photographer: Chan Long Hei/Bloomberg
香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は16日、域内経済が7−9月(第3四半期)にリセッション(景気後退)に入ったとの見方を示した。数カ月に及ぶ政府への抗議活動や世界経済の減速で予想されていた結果を追認した形だ。

  林鄭行政長官は施政方針演説に当たる施政報告で、高止まりする住宅コストの引き下げに向けた措置を発表。立法会(議会)で演説を始めたが、民主派議員らが抗議のスローガンを繰り返し叫んだため、議場で演説を続けられず映像を通じて行った。

  7−9月の域内総生産(GDP)速報値は31日に発表される。

  林鄭長官は低所得層の生活コスト引き下げに向けた施策を打ち出し、市民の不満が広がる一因となっている根本的な経済問題の一部に対処する姿勢を示した。一連の対策として住宅用土地取得強化や1次取得者向けの住宅ローン規制の緩和、学生への現金支給、低所得世帯への助成増額などを計画している。

relates to 香港経済は7−9月にリセッション入り、支援策講じる−林鄭行政長官
立法会の議場に入る林鄭月娥行政長官(16日)Photographer: Paul Yeung/Bloomberg
原題:
Lam Sees Hong Kong in Recession, Unveils Measures to Aid Economy(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-16/PZGE7V6JIJUP01?srnd=cojp-v2


ワールド2019年10月16日 / 13:16 / 4時間前更新
香港行政長官、住宅不足緩和措置を公表 民間から用地取得へ
Reuters Staff
1 分で読む

[香港 16日 ロイター] - 香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は16日、動画配信された施政方針演説で、長引く抗議デモへの対応として、住宅不足の解消に向けた措置を打ち出した。

長官は先に、3回目となる施政方針演説に臨んだが、開始後に民主派議員がデモ隊のスローガンにもなっている「ひとつも欠けることない5大要求」と叫んで妨害、中断を余儀なくされた。

その後、動画配信された演説で長官は、香港政府は住宅事業を劇的に増やし、公共住宅の販売を加速すると表明。香港では不動産価格の高騰が若者を中心に国民の怒りを買っており、デモの一因になったと考えられている。

長官によると、土地収用条例に基づき、新界地区にある民間所有地約700ヘクタールを取得する計画で、これに加えて450ヘクタールも収用する予定だという。

香港の有力な不動産開発業者からの用地取得は、ここ数年で最も大胆な措置の1つとなる。政府の推計によると、恒基兆業地産(ヘンダーソンランド)や新世界発展(ニューワールド・デベロップメント)、新鴻基地産発展(サンフンカイ・プロパティーズ)といった不動産大手は1000ヘクタール以上の農地を抱えているという。

長官は「さまざまな所得層の人々が住宅を保有する機会を生み出し、香港で幸せに暮らせるようにする決意だ」と表明。「すべての香港市民とその家族が住宅問題にこれ以上悩まないよう、香港に自分たちの住宅を持てるようにするという明確な目標をここに掲げる」と述べた。

長官はすべての不動産開発業者に協力を要請。具体的にどのように作業を進めるのかについて、これ以上の詳細は明らかにしなかった。

発表を受け、香港株式市場では、不動産株指数が2%以上値上がりした。

香港では1997年の中国返還前、政府が土地所有者に補償をした上で公共のために土地を活用することが度々あったが、中国返還後に、民間の不動産開発業者からの土地収容を実現した行政長官はいない。

長官は「一国二制度」を支持するとも表明。香港経済は低迷しており、短期的に人員削減の圧力が強まっているとの認識も示した。

*内容を追加しました。
https://jp.reuters.com/article/hong-kong-lam-speech-idJPKBN1WV0A5


香港危機、天安門事件の経験者が抱く諦観
身をもって知った中国共産党の怖さ、若者の勇気は称えるが・・・
2019.10.17(木)The Economist
10月14日の香港。この日も大々的な抗議デモが行われていた(写真:ロイター/アフロ)
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天安門の経験者は歴史が作られた瞬間を見た。そこには多大な犠牲を伴った。
 中国共産党は、自らの意志を通すためには人を傷つけることも厭わない――。
 韓東方(ハン・ドンファン)氏はこれを苦い経験を通して学んだ。1989年の民主化運動で活動していた韓氏はその年の6月初め、噂が飛び交う天安門広場にやって来た。
 そして鉄道電気技師に転じた元兵士として、人民解放軍は同胞を決して撃たないと語り、怖がる仲間たちを安心させた。
 その過ちにいまだに苦しんでいる韓氏は2014年9月、中国を追われて以来住んでいる香港で、中心部を占拠する運動「中環占拠(オキュパイ・セントラル)」の民主活動家が道路を封鎖するのを見て、いても立ってもいられなくなった。
 慌てて抗議行動の現場に赴き、若者たちの隣に座り、道理をわきまえるよう促した。
 道路を封鎖することで君たちは警察、ひどい場合には香港の兵舎でひっそり待機している中国の兵士たちに攻撃の口実を与えている、と助言したのだ。
 時は下って2019年。今度は新世代の急進的な活動家たちが、中国の支配層をほとんど挑発するに至っている。
 香港市街に部隊を送ってみろ、人を傷つけて中国の本性を見せてみろ、といった具合だ。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57951

 
トランプが「根拠のない世界」に浸かる狙い

「ウクライナ疑惑」もう1つの闇が浮き彫りにするもの
2019.10.17(木)新潮社フォーサイト
2019年9月25日に行われたウォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領とトランプ大統領の首脳会談(提供:Shealah Craighead/White House/ZUMA Press/アフロ)
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(文:杉田弘毅)
 ドナルド・トランプ米大統領に対する下院の弾劾調査が始まった。
 ウォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領との電話会談で、民主党のジョー・バイデン前副大統領と息子のハンター氏についての捜査を要求したことが弾劾相当と、民主党は追及している。その後トランプ大統領は中国にもバイデン氏の捜査を促しており、その行動は世界を驚かせている。ここでは、日本のメディアもほとんど取り上げていないが、ウクライナ大統領との電話会談でのもう1つの重要発言も精査したい。
 それは、「地下言説」とも呼ぶべき根拠のない世界に、トランプ大統領がどっぷり浸っている事実を浮き彫りにするものである。
 元首席戦略官のスティーブン・バノン氏らが率いる「右派ポピュリスト」(もう1つの右翼と呼ばれる「オルト・ライト」とも)の影響下にトランプ大統領は今も置かれ、2020年大統領選では、支持基盤である彼らの言説やフェイクニュースを徹底的に使っていく戦略が見えてくる。
「クラウドストライク」という企業を名指し
 トランプ大統領は7月25日、ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談で、2つの要求を行った。1つは、弾劾事案とされるバイデン親子への捜査要求である。そしてもう1つ、「クラウドストライク」(以下、CS社)という企業の名前を挙げて、ロシア疑惑の発端についてウクライナ政府に捜査を要求したのだ。
 CS社は2011年に創設された、米カリフォルニア州のシリコンバレーを本拠地とするサイバーセキュリティー企業である。そのソフトウェアの「ファルコン」は、「ゴールドマン・サックス」や「アマゾン」など多くの大企業が契約している。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長のパロディ映画を製作した「ソニー・ピクチャーズ」がハッキングされた際、米連邦捜査局(FBI)とソニー・ピクチャーズはCS社に調査を依頼してハッキングの鑑識調査を行い、北朝鮮の犯行であると断定し名前を上げた。
CS社にどう触れたのか
では、トランプ大統領は電話会談でCS社にどう触れたのだろうか。ホワイトハウスの公表した電話会談録を訳してみよう。
〈あなた(ゼレンスキー大統領)には、ウクライナに関するこの全体状況に関して何が起きたのかを突き止めてほしいのだ。彼らはクラウドストライクと言っている。ウクライナには富裕な人がいるだろう。彼らはあのサーバーはウクライナにあると語っているのだ〉
 この発言を解説するとこうなる。
 2016年大統領選では民主党全国委員会(DNC)のサーバーがハッキングされ、ヒラリー・クリントン陣営の内情などが流出。しばらくして内部告発サイト『ウィキリークス』にその内容が掲載された。このハッキングについてはFBIや米中央情報局(CIA)などが、ロシアのハッカーの犯行であると結論づけ、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)幹部ら12人が起訴された。
 CS社は、このDNCのサーバーへのハッキングを最初に調査し、ロシアの犯行であると断定した。FBIやロシア疑惑をめぐるロバート・モラー特別検察官の捜査も、CS社の調査結果を確認した。
 ちなみに米国では、サイバー犯罪の捜査を民間企業が助けることが多い。中国人民解放軍の米企業へのハッキングも、民間企業「マンディアント」が、人民解放軍総参謀部第3部の犯行であると突き止め、起訴に持ち込んだことがある。
荒唐無稽な「邪悪な企て」論
 ロシア疑惑とは、トランプ陣営がこのロシアのハッカーたちに、クリントンを陥れるためにあら捜しを依頼したのではないか、というものだ。つまりトランプ陣営とロシアによる、クリントン陥れの共謀ということである。
 モラー特別検察官は2年近い捜査の結果、今年5月に「共謀は証拠不十分」と結論づけた。これを受け、ロシア疑惑をめぐる騒動は一段落し、トランプ大統領は「潔白が証明された。事件は終わった」と胸を張った。
 それから2カ月後のゼレンスキー大統領との電話会談で、トランプ大統領はCS社を持ち出し、サーバー、つまりハッキングされたDNCサーバーがウクライナにあるとの見立てを語ったのだ。
荒唐無稽と誰もが思うが
 荒唐無稽と誰もが思う。
 だが、DNCへのハッキングはロシアではなく実はウクライナが行ったという言説が、当時から右派ポピュリストのサイトでは流れているのだ。その言説によれば、ロシア疑惑とはトランプ氏の大統領当選を無効にする民主党の邪悪な企みであり、DNCへのハッキングは実はウクライナと民主党の共同作戦だ、というものだ。ロシア犯行説をでっちあげるためにCS社も動員され、ハッキングの最重要証拠であるDNCのサーバーをウクライナに持ちこみ、ウクライナと民主党の犯行の発覚を防いだ、という展開である。
 先述した電話会談録にあるように、トランプ大統領は「ウクライナの富裕な人」という表現をした。これは、CS社がウクライナの政商に操られているという思い込みから発想したものだ。CS社の創設者の1人はロシア生まれの米国人であるのだが、ウクライナ・民主党による邪悪な企て論を補強するために、思い込みが事実に勝ってしまったのだろう。
尋常ではない執着はどこから?
 この言説からは、いくつもの政治的な文脈が読み取れる。
 まず、ウクライナの親米政権はバラク・オバマ政権が支えてきており、民主党とつながりが深い。対するトランプ大統領は、ウクライナと敵対するロシアのウラジーミル・プーチン大統領と親密である。ロシアのサイトは、DNCハッキングはウクライナ発である、あるいはそもそもハッキング自体なかったとの「フェイクニュース」をこれまでも拡散してきた。
 オバマ政権で、ウクライナを主に担当したのが副大統領のバイデンであり、息子はウクライナのエネルギー企業の役員として巨額の報酬を得た。このためウクライナを非難することはバイデン叩きにつながる。また、トランプ大統領の盟友である元ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニ弁護士が、ウクライナの内政に関わっている。
 もっとも、ロシア疑惑を完全否定するこの言説を、米捜査当局もサイバーセキュリティー企業もまったく相手にしていない。もちろんウクライナ政府は全面否定である。
 そんな話になぜトランプ大統領は執着し、捜査まで要求するのだろうか。ウクライナへの4億ドル(約430億円)もの軍事援助について、DNCサーバーの捜索努力とバイデンへの捜査を条件としたことはほぼ間違いない。その執着は尋常ではない。
 米メディアの報道を検証してみると、実はトランプ大統領は2017年4月に『AP通信』のインタビューで、DNCのサーバーがウクライナにあり、CS社が関係していると語っている。今年に入ってからも、お気に入りの『FOXニュース』 のトーク番組で、「FBIはDNCサーバーを押収しないのはなぜだ。ウクライナを調べればいいのに」と語っている。
「情報機関」への激しい敵視の理由
 その執着にはいくつかの理由が考えられるが、すべて2020年大統領選の戦略という観点でとらえるべきだろう。
 まずトランプ大統領は、2016年大統領選挙での勝利に疑義がついていることを今も苦々しく思い、ロシアの介入などなかったと証明したい。米ジャーナリストが執筆した内幕本のいくつかは、トランプ大統領自身も当選を予想していなかった、と記しているから、自らがいまだ米国民の支持を得て大統領職を担っているとの確信がないのだ。
 モラー特別検察官は2年近い捜査の末にトランプ大統領を無罪放免したが、それでは不十分と思っているのだろう。内外の疑念を晴らさなければ、2020年選挙は不利だから、ウクライナと民主党がDNCハッキングの黒幕であるとの説にすがりついているのではないか。
 次に、「ディープステート」との戦いの構図を描くことで、右派ポピュリストの支持を固められる。「ディープステート」とは、選挙を経ない官僚が動かす国家形態を呼ぶ。長年行政府に巣くう官僚機構が権力を握り、民主選挙によって選ばれた政治家を巧みに操作して、民意を骨抜きにしているという論に基づくものだ。そのポピュリズムの響きは、左右両派に共通する。
 トランプ大統領は官僚たちの中でも、情報機関に対して敵意を燃やしている。ロシア疑惑を最初に捜査したのは、当時FBI長官のジェームズ・コミー氏であり、そのコミー氏を解任したら、今度は先輩のFBI長官だったモラー氏が特別検察官として、弾劾を視野に入れて捜査の指揮をとった。
 今回のゼレンスキー大統領との会話もCIA職員が内部告発したもので、弾劾調査に発展した。情報機関が何度も、異端のポピュリストである自分を潰そうと戦いを挑んでいるという構図である。DNCハッキングの「真相」は、米国とウクライナの情報機関同士が合同で仕組んだ「クーデター」であるとの論も、トランプ支持派のサイトでは流れているほどだ。
トランプ支持者を沸き立たせるキーワード
 そしてトランプ大統領のこの一連の言動には、バノン氏らが率いる右派ポピュリストの心情を掻き立てる狙いがある。彼らを投票に向かわせ、バイデン氏であれエリザベス・ウォーレン氏であれ、民主党候補を攻撃し貶める材料となる。バノン氏は2016年大統領選の頃から、トランプ政権の目的の1つに「行政国家の解体」を挙げてきた。行政国家とは「ディープステート」の別称である。
 トランプ大統領が本当に、DNCハッキングがウクライナ発であると信じているのかどうかは疑わしい。だがあえてウクライナ大統領との電話会談録を公表したのは、右派ポピュリストの「怒りボタン」を押す狙いがあるのではないか。
 電話会談録の公表を受けて、右派のトークラジオホストとして絶大な人気を誇るラッシュ・リンボーは、「重大な展開だ」と喜んでいる。「CS社が我々の会話に戻ってきた」との右派の書き込みもある。CS社、ウクライナ、クリントン、バイデンなどは、トランプ支持者を沸き立たせるキーワードであるのだ。
 DNCのサーバーは今もワシントンのDNC本部にあるし、かつてCS社でDNCサーバーを調べた技術者は、「常軌を逸している。ウクライナ大統領はこんな話を聞いて驚嘆したに違いない」と述べているのだが、火消しにはなっていない。
 2016年の大統領選では、クリントン氏がワシントン郊外のピザ店を根城にする児童買春組織の元締めである、というフェイクニュースが拡散し、実態を確かめに来たという男がピザ店で発砲するという騒動も起きた。米情報機関―ウクライナ情報機関―民主党の連携によるトランプ追い落としという絵図は、ピザ店のフェイクニュースよりはるかに深い層に響く。
 バノン氏は今年3月の私とのインタビュー(2019年3月22日の新潮社フォーサイト『ポピュリズムと地政学:バノン思想の「今」を探る』)で、2020年の選挙は「南北戦争のような、醜いものになる」と語っていた。地下層でひそかに語られるような異端の言説が、大統領同士の公式会談で取り上げられる。それだけでも来年の大統領選の闇と醜い展開を予想させる。

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杉田弘毅
共同通信社特別編集委員。1957年生まれ。一橋大学法学部を卒業後、共同通信社に入社。テヘラン支局長、ワシントン特派員、ワシントン支局長、編集委員室長、論説委員長などを経て現職。安倍ジャーナリスト・フェローシップ選考委員、東京−北京フォーラム実行委員、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科講師なども務める。著書に『検証 非核の選択』(岩波書店)、『アメリカはなぜ変われるのか』(ちくま新書)、『入門 トランプ政権』(共同通信社)、『「ポスト・グローバル時代」の地政学』(新潮選書)など。
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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57925

http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/547.html

[経世済民133] 今年のノーベル経済学賞が、途上国支援とビジネスの双方にもたらす革命的な影響とは コペルニク
今年のノーベル経済学賞が、途上国支援とビジネスの双方にもたらす革命的な影響とは
現場目線で解説する2019年度ノーベル経済学賞
中村俊裕:米国NPOコペルニク 共同創設者兼CEO
経済・政治 エディターズ・チョイス
2019.10.19 4:20
2019年度のノーベル経済学賞は、MITのエステール・デュフロ氏、アビジット・バナジー氏、そしてハーバード大学のマイケル・クレマー氏が獲得した。受賞理由は、世界の貧困削減に実証実験を用いたアプローチを行ったこと。一見、日本で暮らす私たちとの関わりは少ないように見える。だが、国際NPOコペルニクの共同創設者・中村俊裕氏によると、今回の受賞者らの業績は、途上国支援やNPOの施策はもちろん、ビジネスにも広く影響を与えるという。受賞者の業績を、途上国の中でも援助の届きにくい地域にテクノロジーを届けて貧困を削減する活動を約10年続けている中村氏が、「現場」目線で解説する。
コペルニクホームページより。コペルニクでは、今回のノーベル経済学賞で評価された実証実験の手法を、途上国の現場で実際に実施している。中には、今回の受賞者が属する研究機関との共同プロジェクトもある
2019年ノーベル経済学賞の受賞者と功績
――インドとケニアで教育の質を劇的に変えた2つの実証実験
 2019年10月14日、ノーベル経済学賞が発表された。普段はあまり興味をひかれることはないが、今回の受賞は途上国の貧困削減という自身が取り組んでいるテーマそのもので、受賞者のうち2人の代表作“Poor Economics”(邦題:『貧乏人の経済学』)はコペルニクのスタッフにも読むべき本として薦めているほどだ。受賞者たちの研究は、コペルニクの近年の活動に大きなインスピレーションを与えてくれてもいて、協業もしているので、今回受賞した業績について改めて考えてみようと思う。
 受賞した3人は、MITのエステール・デュフロ氏、アビジット・バナジー氏、そしてハーバード大学のマイケル・クレマー氏だ。ノーベル賞を与えるスウェーデン王立科学アカデミーは、今回の受賞の理由として、「現場での実証実験に基づいたアプローチ」を実際の途上国課題解決に取り入れたことにより、「貧困削減を現場で行うわれわれの能力を劇的に向上させた」としている[1]。さらに、「複雑な課題を対応可能な小さい課題にまで」昇華させることにより、具体的に問題解決をしやすくしたとも述べられている[2]。まずは、「現場」、「実証実験」というキーワードから、3人が残した業績の具体的をいくつか見てみよう。
例1:インドで「先生の欠席率」を効果的に減らす方法を検証
 インドでは、小学校の先生が必要な授業日数の50〜60%しか来ていないということが問題になっている。この問題は教育の質の低下につながり、その影響は当然子どもたちに及ぶ。デュフロ氏らは、インドのラジスタンで学校を運営するNGOと共同で、どのようにすれば先生の欠席を減らすことができるかを明らかにすべく、実験を行った。
 実験では、カメラを先生に配布し、授業前と授業後に生徒と一緒の写真を撮ってもらい、その写真で授業をしたことを証明した先生には、出席日数に応じて給料を支払った。また、先生のうち、半分をカメラを与える先生(トリートメント群)、残り半分を今まで通りの運営でカメラを与えない先生(コントロール群)に、ランダムに分けた。コントロール群の先生は、通常通り学校で授業を行っても行わなくても、月に約2300円をもらう。
 結果として、何も介入がなかったコントロール群の先生の授業出席率は58%だったのに対し、カメラで出席を証明する必要のあったトリートメント群の先生の出席率は79%まで向上した[3]。
2:腸内寄生虫を減少させる駆虫剤(Deworming)の効果を証明し、世界に広めた
 世界保健機構(WHO)によると、主に途上国で暮らす8億5千万人の子どもが汚れた水と接触することで、腸内寄生虫が体内で繁殖し、栄養失調、貧血などの症状につながっているとされている。その結果、マラリアなどの病気にもかかりやすくなり、授業に集中できない、学校を休む、という事態に陥っている。
 この課題を解決するため、ケニアの75の小学校を対象に実証実験を行った。75校の学校から25校をランダムに選び、駆虫剤を投入するとともに、どうやって腸内寄生虫を予防するかを教えた(トリートメント群として介入を行った)。残り50校の学校はコントロール群として何も介入を行わなかった。その結果、介入を行ったトリートメント群では、約3割の生徒で重・中度の腸内寄生虫の削減が確認され、病気になり学校を欠席する頻度も減り、また栄養吸収の基準となる生徒の身長の伸びでも向上が見られた。このアプローチの採用によって子ども1人の学校出席率を1年間にわたって向上させるための費用は、300円と非常に低い。このため、途上国の多くの学校で駆虫剤の配布を行うべきだと政策提言が行われたのだ[4]。
 さらに注目すべきは、この後の話だ。調査結果を2007年の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)で発表したデュフロとクレマーの両氏は、同時に‘Deworm the World’(「世界から駆虫を」)というイニシアティブを発足させ、駆虫を促し支援する活動を世界で大々的に開始した。2009年には、ケニアの当時の大統領が、政府の予算で小学校で駆虫を行うことを宣言し、今でも毎年600万人の子どもがその恩恵を受けている。さらに、インド、ナイジェリア、パキスタン、ベトナムでも中央・地方政府が駆虫のプログラムを開始したが、その実現にあたっては、火付け役である当初の実証実験結果が大きなインパクトをもたらした。ケニアでの学術機関が行った実証実験から、数か国にわたる大規模な政府プロジェクトへ進展したというこの事例は、なぜこの実証実験を行った学者らにノーベル経済学賞が与えられたのかを如実に示している。
 これ以外にも現場ベースの途上国課題解決のための実証実験の事例が無数にあり、興味のある人は、MITの関連機関であるJPAL(Abdul Latif Jameel Poverty Action Lab)や、IPA(Innovations for Poverty Action)のホームページをご参照いただきたい。前者はエステール・デュフロ氏とアビジット・バナジー氏、そして後者はマイケル・クレマー氏が所属しており、彼らとその弟子たちの類似の研究結果が多く掲載されている。
[1]ノーベル賞の公式Twitterアカウント(@NobelPrize)など参照。
[2]https://www.bbc.com/news/business-50039214
[3]https://www.povertyactionlab.org/evaluation/encouraging-teacher-attendance-through-monitoring-cameras-rural-udaipur-india
[4]https://www.povertyactionlab.org/evaluation/primary-school-deworming-kenya

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「現場での実証実験に基づいたアプローチ」とは?

受賞理由「現場での実証実験に基づいたアプローチ」とは?
 受賞理由の1つである「現場での実証実験に基づいたアプローチ」はこの2つの例を見てもよくわかるのではないだろうか。ケニア、インドの実際の小学校という舞台で、子どもの出席率、疾患率、先生の出席率、そして教育の質の改善を図ろうとするこのような取り組みにはまさに「現場」の視点がくっきりと出ている。
 受賞者らの実証実験におけるアプローチで特筆すべきなのは、特定の介入の効果を測定する際の方法論だ。これはRandomized Controlled Trial(RCT)と呼ばれ、日本語では「ランダム化比較実験」とも訳されている。もともとは自然科学、特に医療・製薬の分野で使われている手法で、途上国支援ではほとんど使われてこなかったアプロ―チだ。具体的には、以下の特徴がある。
1) 性質の類似した、介入をするグループ(トリートメント群)と介入をしないグループ(コントロール群)を区別する
2) 介入する対象やデータを集める対象サンプルをランダムに選ぶ
3) トリートメント群とコントロール群の差を見て、介入の効果を測定する
 たとえば、製薬分野で新しい風邪薬が開発されたとする。この風邪薬に効果があるかどうかを調べるために、今の時点で風邪にかかっている100人に薬を使ってもらったとしよう。2日間の服用を続け、100人のうち、仮に70人が風邪から治った場合、薬に効果があるといえるだろうか?
 多くの人は、これだけではわからないと言うのではないだろうか。そもそも治ったのは薬のせいなのか、それとも自然回復なのかという疑問が浮かぶ。よって、この疑問に答えるためには、よく似た種類の風邪にかかっており、薬を服用しない100人(コントロール群)が必要となる。もしこのコントロール群のうち70人が薬を飲まずに2日後に回復していたという場合、2群の差異はなく、薬の効果はないということが言えるだろう。これが、上で述べた1)と3)に対応する部分だ。
2)のランダム化は、実験をさらに科学的にするために追加される方法だ。トリートメント群とコントロール群の参加者の属性を均一にすることができ、実証実験の結果と介入の関連性がきれいに見えることになる。
開発援助の世界に持ち込まれた「エビデンス」革命
 人体の安全にかかわるような新薬のテストでは、このようなランダム化比較を使った実証実験の方法論がすでに確立されている。ところが、貧困削減や、途上国の小学生の出席率向上という別の重要課題になったとたん、このようなアプローチは実はほとんど見られなくなってしまう。
 コペルニクを立ち上げて約10年になるが、それ以前に所属していた国連で東ティモール、インドネシア、シエラレオネといった途上国の現場で多くの貧困削減に関するプロジェクトを実行してきた私自身、ランダム化比較実験のアプローチを使った効果測定の経験どころか、そういった考えすら浮かばなかった。
 たとえば、私が東ティモール時代に担当していた、元兵士の社会統合を促すプロジェクトでは、元兵士に対して職業訓練や小規模ビジネスを開始する際の資金を提供していた。実際に何百人という元兵士がこのプロジェクトを通じて、家具を作るといった新たなスキルを身につけ、ビジネスを開始する資金を得て自立の道をたどっていったのだが、プロジェクトに参加していない元兵士、すなわちコントール群のデータ収集はしていなかった。そのため、プロジェクトがなくても、またはこのプロジェクト以外の機会を通じて、必要なスキルを身につけて自立できていたのではないか、という疑問には答えられない。
 1つ断っておくと、これは国連が遅れていたということではなく、それ以外のODA機関やNGOでもそれが普通だったのだ。このノーベル経済学賞の意義は、そういう「普通の状態」に一石を投じたことにあるといってもいい。兆円単位のお金が開発援助という名目でOECD諸国から途上国に流れている中で、そのお金が効果的な援助の活動に使われているのか、実際に導入された介入は効果的だったのか、ということをできるだけ科学的なエビデンスに基づいて判断しようという流れをつくった意義は非常に大きい。

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コペルニクが生み出したコレクティブ・インパクトとは

途上国支援のジレンマ
――実証実験的なアプローチを阻む「壁」
 では、税金が投入されている国際機関や、限られた寄付を資金源として運営している多くのNGOがどこまで実証実験的なアプローチを突き進められるのか。実は、ここに「壁」がある。というのも、実証実験というアプローチには失敗というリスクが常につきまとううえに、ランダム化比較実験を行うには多くの人的・金銭的資金が必要となるからだ。また、倫理的な問題を指摘する人もいる。
 リスクについては、評判リスクと置き換えてもいいかもしれない。おそらく、大手のNGOや国際機関に寄付をしている方々からすれば、自分が託したお金で、何十人の人々にきれいな水を提供できたとか、へき地に学校が建設されて何百人に新たな教育の機会が与えられたとか、何千人分のワクチン接種代として使われて子どもの健康状態がよくなったとか、「失敗しない」支援を期待してしまうのが普通だろう。そういった期待感がある中、「学校を建設して、新たにオンライン教育を取り入れて授業の効率化を行いましたが、教育効果はありませんでした」ということになれば、もうこの団体には寄付しないと決めてしまうかもしれない。
 さらに、ランダム化比較実験というのは、より科学的、信憑性の高いデータを集める必要があるため、時には数千という多くのサンプル数のもと、中長期的に継続してデータを集めなければならない。その結果、予算として、数千万円、場合によっては億単位の資金が必要となることがあるのだ。上の議論と似ているが、この数千万円を実験ではなく、井戸を掘って水へのアクセスを向上させるとか、確実に効果があることに使うべきだというもっともな意見も出てくるのだ。
 さらに、介入しない人々(コントロール群)の存在を前提とすることを非倫理的だと指摘する人もいる。目の前に支援が必要な人がいるのに、ある人には支援を行い、その他の人には支援を行わないというのは許されるべきでないという。それがたとえ、実証実験の後に支援を行うとしても[5]。
コペルニクの新たなアプローチ(1)
解決策の横展開でコレクティブ・インパクトを
 2012年にダイヤモンド・オンラインで「世界を巻き込む途上国ビジネス」という連載の機会をいただいた際(後に加筆して書籍化)、私自身の国連での仕事と、コペルニクの初期の方向性などを共有した。あれから7年が経ち、コペルニクという団体も「途上国の課題を解決するためにはどういったやり方がいいのか」を常に自問自答しながら活動の方向性の微調整を行ってきた。
 連載当時は、主にシンプルなテクノロジーをラストマイル(途上国の中でも、最も支援が届きにくい地域)に届けつつ、日本内外の企業とパートナーシップを組み、途上国の課題を解決しつつビジネスにつながるよう支援を行っていた。だが、2つのきっかけで新しい方向へと踏み出した。
 1つめの転機が訪れたのは、2015年ごろだ。ノルウェーのあるインパクト投資(投資を通じて経済的なリターンだけでなく、社会的課題の解決を目指すこと)機関から、コペルニクが行っているラストマイルにテクノロジーを届ける活動を、彼らの投資先を通じて、つまりコペルニクを通さずに、そのままインドネシアの別の場所で行いたいというコンタクトがあったのだ。当初は、どう対応すればよいのか迷ったが、よく考えてみると、貧困削減という公共性の高い活動を行う団体としては、これほど嬉しい申し出はない、という結論に達した。「模倣は最高の賞賛」ともいわれるが、競争という観念とはあまり親和性がないソーシャル・セクターでは、効率的だと思われるアプローチを他の団体が模倣することで解決策が広がってくれることこそが、最終的にはコレクティブ・インパクト(個別にアプローチするだけでは解けない複雑な社会課題を、行政、企業、NPOなどの立場の違う組織が手を組み解決していくこと)をもたらすと考えたからだ。
 その後、国連機関や、国際NGOからも同じような話をいただき、ミャンマーでソーラーライトや調理用コンロなどのシンプルなテクノロジーをラストマイルに届けるプロジェクトのデザインにもかかわった[6]。当初は模倣してもらうなどまったく意図していなかったが、同じ思いを持った他の団体が、コペルニクのアプローチを横展開してくれることで生まれるインパクトにとても大きなポテンシャルを感じた。我々の規模とは何十倍・何百倍も差があるが、腸内寄生虫の駆虫剤の配布の例で、ケニアの小さいプロジェクトが数か国の政府が行う大規模支援に成長していった流れと共通点があると思っている。
[5]https://behavioralscientist.org/rcts-are-not-always-the-answer/
[6]https://www.mm.undp.org/content/myanmar/en/home/presscenter/pressreleases/2015/06/10/affordable-technology-innovations-for-rural-communities-initiative-kicks-off-in-myanmar-.html

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受賞者とも協業。「現場」+リーンな「実証実験」で見えた可能性

コペルニクの新たなアプローチ(2)
「現場」でリーンな「実証実験」
 2つめのきっかけは、今回ノーベル経済学賞を受賞したエステール・デュフロ氏とアビジット・バナジー氏の共著“Poor Economics”のデータ、エビデンスを重視したアプローチに大いに感銘を受けたことだ。結果、コペルニクでもコントロール群のデータを収集をするなど、ランダム化比較実験の要素を取り入れていった。さらに、ある多国籍企業とデザインファームのIDEOと共同で行ったプロジェクトでは、インドネシアのデング熱・マラリアを予防するための製品の実証実験を行ったが、その時に取り入れたラピッド・プロトタイピングのアプローチにも強い手応えを感じていた。
 これらの学びに基づいて、どうしたら支援のアプローチが模倣され、広がっていくのかを考えるようになった結果、途上国の「現場」で「実証実験」を行い、どういった介入で課題を解決できるのかを理解し、その結果を積極的に他の団体と共有してくことがコペルニクの方向性だと確信した。ただ、リソースの制約など、途上国支援のジレンマを肌感覚で理解している私たちは、いかにリーンな実証実験ができるかに注目し、小規模で、短期間に「現場」で行う「実証実験」を目指すことにした。
 新たな方向性を設定して以来、今までに30以上の小・中規模の実証実験を行ってきた。たとえば、インドネシア東部の農村部で栽培されている穀物、ソルガムキビが、収穫後、コクゾウムシに食べられて価値が下落しているという課題に対して、藻類の一種であるオーガニックの珪藻土を保存の袋に混ぜるという介入を行い、珪藻土を入れない伝統的な保存法と、コクゾウムシの数を比較した。結果、珪藻土を追加した保存法では、伝統的な保存法に比べて、コクゾウムシが90%以上減少していた。
ソルガムキビ(左)と実証実験の様子(右)
 別の例としては、今年行った太陽熱で収穫物を乾燥させるソーラードライヤーのプロジェクトがある。カカオを乾燥させるため、太陽熱を囲い込む簡単な仕組みを作り、伝統的な乾燥方法と、カカオの乾燥速度、カカオの質の比較を行った。結果として、乾燥速度は2割早くなり、また第三者機関によるカカオの質の調査では、コントロール群に比べて質が上がっているという結果が出た。
カカオを乾かすためのソーラードライヤー
 また、こうしたコペルニクの新たなアプローチは、国際会議でも積極的に共有している。2017年に南アフリカ共和国で行われたGlobal Evidence Summitという会議でコペルニクのリーンな実証実験について発表[7]すると、「ランダム化比較実験の弱点をうまく補完するアプローチだ」というコメントをいただいた。
 実は、このような活動もあってか、今回ノーベル経済学賞を受賞したデュフロ氏とバナジー氏が中心となって始まった前出のMITのJPALから声がかかり、インドネシアの農村部で、零細農民の収入が減少する時期の収入を補填するための介入に関し、ランダム化比較実験のお手伝いをすることとなった[8]。このプロジェクトはコペルニクが新しい方向性で打ち出したリーンな実証実験よりも重めのデータ収集・分析を必要としたが、非常に多くのことを学ばせていただいた。
 今コペルニクでは、これまで行ってきた30を超える実証実験の結果を、他の機関のプロジェクトで採用してもらうとともに、現場でのリーンな実証実験のアプローチそのものを、より多くの援助機関で取り入れてもらうことを目指している。その結果、援助という大きな産業の仕組みがより効率化し、途上国の課題がより効率的に解決できるようになればと考えている。
[7]https://www.globalevidencesummit.org/abstracts/lean-experiments-filling-evidence-gap
[8]https://www.evidenceaction.org/no-lean-season-indonesia/

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日本企業が今回の受賞研究を取り入れる意義とは

日本企業が今回の受賞研究を取り入れる意義
――SDGsをお題目で終わらせないために
 ノーベル経済学賞がデュフロ氏らの研究に与えられた意義は、援助業界だけではなく、実は日本企業に対しても大いにある。たとえば、賛同する日本企業もいよいよ多くなってきた、持続可能な開発目標(以下SDGs)。2015年に国連で採択されたSDGsにより、企業は社会インパクトをビジネスに統合することが必要となった。そして、社会インパクトを発信するということと、今回のノーベル経済学賞を受賞した研究には大いに関連性がある。
 たとえば、ある企業の製品が子どもの下痢の削減に貢献していると訴求したい場合を考えてみよう。これまでの援助の世界と同様、エビデンスに対する要求度がそれほど高くない場合は、お母さんからの「製品のおかげで子どもの下痢が減りました」というコメントを報告するだけでよかったかもしれない。
 しかし、エビデンスに対するリテラシーが年々高まるこれからは、この製品が本当に下痢の削減に貢献しているということを、コントロール群も含めたデータを収集して発信していく必要が出てくるはずだ。たとえば製品を使っている子どもの手のひらの大腸菌が、この製品を使っていない子どもの手のひらに比べて、大幅に減少しているということをデータで示すことなどだ。こうした社会インパクトをエビデンスによって「見える化」することの重要性は、SDGsはもちろんだが、ESG経営や、インパクト投資においても同じだと言えるだろう。
 今回のノーベル経済学賞が契機となって、企業も、援助機関と同様、より精査したアプローチで実証実験のデータを収集し、エビデンスを収集、発信していく必要性はより高くなるだろう。そして、それは結果的にSDGsの達成を早めることになるはずだ。

世界を巻き込む。
中村俊裕 著
<内容紹介>
今、全世界から注目を集めているNPOがある。その名は「コペルニク」。 アジア、アフリカの援助すら届かない最貧層(=ラストマイル)へ、現地のニーズに即したシンプルなテクノロジーを届ているグローバルNPOだ。創設者である中村俊裕氏が、国連を辞めてまで起業した経緯から世界的なしくみづくりまでを初めて語る

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国連を辞めてまで、僕がNPOを立ち上げたワケ
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「ビジネス」を掛け算できるかどうかが、
これからの15年を左右する
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途上国向けのビジネスモデルが、日本でも生きる。
コペルニクが被災地支援から学んだこと
中村俊裕


今年のノーベル経済学賞「行動経済学」は何が凄いのか
真壁昭夫

https://diamond.jp/articles/-/218035?page=5


 

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イノベーションをラストマイルに

コペルニクは「ラストマイル」と呼ばれる途上国で最も支援が届きにくい地域において、貧困削減に繋がる革新的なテクノロジーの開発、検証、普及に取り組んでいます。
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民間企業や公的機関に対して、専門的なアドバイザリー・サービスを提供し、新興国・途上国市場の人々のニーズに応える革新的な製品やサービスの開発、普及を支援しています。
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貧困削減に繋がる
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コペルニクのインパクト
現地のニーズに応える
イノベーションの実証実験
ラストマイルの人々の生活向上に効果が期待できる解決策を、短期間且つ小規模な実証実験により検証しています。
1
イノベーションをラストマイルに
2
アドバイザリー・サービスによる ビジネス展開支援
3
貧困削減に繋がる
テクノロジーの 普及
4
現地ニーズに応える
イノベーションの実証実験
コペルニクの活動
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Arvin Dwiarrahman

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• 2019/7/29
廃棄プラスチックを無くす国際アライアンスにてコペルニク代表中村俊裕がモデレーターを務めました
Hiromi Tengeji

https://kopernik.info/jp


Encouraging Teacher Attendance through Monitoring with Cameras in Rural Udaipur, India
Esther Duflo
Rema Hanna
Stephen Ryan
Location: Udaipur district, Rajasthan, India
Sample: 113 Informal Education Centers
Timeline:
2003 to 2006
Target Group:
Primary schools

Teachers

Rural population
Outcome of Interest:
Enrollment and attendance

Provider attendance

Student learning
Intervention Type:
Incentives

Monitoring
AEA RCT Registration Number:
AEARCTR-0001226
Data:
Download dataset (5.2 MB)
Research Papers: Incentives Work: Getting Teachers to Come to School
Partners:


Despite booming economic growth and an improved educational infrastructure in many regions in India, primary education is lagging in many remote and marginalized communities. This study estimated the effect of financial incentives on teacher attendance on students' attendance and math and language levels. The incentives increased teacher attendance and teaching time, and student test scores rose as a result.
Policy Issue
Over the past decade many developing countries have expanded primary school access, energized by initiatives such as the United Nations Millennium Development Goals, which call for achieving universal primary education by 2015. However, these improvements in school access have not been accompanied by improvements in school quality. Poor learning outcomes may be due, in part, to high absence rates among teachers, who often lack strong incentives to attend work. There have been relatively few rigorous studies that have evaluated successful interventions to address absenteeism, so little is known about how reduced absenteeism impacts other educational outcomes. If teachers are incentivized to show up to school, is that all they do, or once there do they teach? Do simple financial incentives undermine their motivation to teach well?
Context of the Evaluation
Despite booming economic growth and an improved educational infrastructure in many regions in India, primary education is lagging in many remote and marginalized communities. Sixty-five percent of surveyed children enrolled in grades 2 through 5 in government primary schools could not read a simple paragraph, and 50 percent could not do simple subtraction. Teacher absenteeism, a pervasive problem in these schools, may contribute to these poor educational outcomes. Disciplinary actions are rarely undertaken against absent teachers: in a survey of 3,000 Indian government schools, only one principal reported a teacher having been fired for poor attendance . This may account for the extremely high rate of teacher absence in India: in schools examined by this study, teachers attended classes about 65 percent of the time.

Student practicing arithmetic in Udaipur, India. Photo: Vipin Awatramani | J-PAL/IPA
Details of the Intervention
In rural Udaipur in India, Seva Mandir, an Indian NGO, runs informal schools to help students not reached by ordinary government schools. Each school has only one teacher who instructs about 20 students in basic Hindi and math. Similar to other schools around the world, teacher absenteeism was high: the teacher absence rate was 44 percent.
Because these were NGO schools and teachers, it was an ideal setting to test how teachers responded to incentives: would the incentives be effective, or would teachers find a way around the system? Unlike government schools, Seva Mandir had enough freedom and control over its own schools to experiment with a straightforward method for motivating teachers.
Each teacher in the program was given a camera with a tamperproof date and time stamp and was instructed to take a picture with students at the beginning and end of each school day. Teachers were paid for the number of days that they attended as recorded by the cameras, giving them a clear incentive to attend school. To test the effectiveness of the program, Seva Mandir randomly assigned half of the teachers to the camera program, while the rest were supervised and paid the normal way as a control group. Unannounced, random checks measured the true attendance of each group.
The camera program did not require a large change in school regulations or institutions. Instead, it provided a way to enforce existing rules.
Incentives
• Ordinarily, teachers were paid a salary of Rs. 1,000 (about $22) per month, for 21 days of teaching.
• In the camera schools, each teacher was guaranteed a base pay of Rs. 500. Teachers were rewarded with Rs. 50 for each valid day taught.
• When the incentives were implemented, monthly pay ranged from Rs. 500 to Rs. 1,300.
• Upon receiving the first paycheck under the program, each teacher received a detailed explanation of how it was calculated.
Monitoring procedure
• Teachers were instructed to have a student take a picture of the teacher and other students at the beginning and end of each school day.
• A teacher was counted as present only if the two pictures were separated by at least five hours and a minimum number of students were present.
• This rule was strictly enforced and gave teachers one hour of grace from a six hour work day.
• Cameras were collected a few days before the end of a pay period so there was minimal delay between action and reward.
Cameras
• The time and date buttons on the cameras were covered with heavy tape. Each had a seal that would indicate tampering. Teachers were told they would be fined if the seals were broken; no seals were broken.
• Teachers were told they would be fined for using the camera for any other purpose; one teacher did.
• Camera upkeep (replacing batteries, changing fi lm, etc.) was done at regular monthly teacher meetings.
• If a camera malfunctioned, teachers were instructed to call within 48 hours and were credited for the first day of the broken machine.
Results
Objective monitoring linked to clear, credible incentives motivated attendance.
The camera-mediated incentives improved teacher attendance. Attendance increased from 58 percent in the control group to 79 percent in the group with cameras. Overall, this translates into 34 more days of instruction per student per year. Attendance increased for teachers with both relatively high and low attendance records. In the camera group, 36 percent of the teachers were present at least 90 percent of school days; in the control group, only one teacher was.
Material incentives did not destroy teachers’ intrinsic motivation.
Despite fears that well-enforced monetary incentives would reduce teachers’ intrinsic motivation, teachers did not reduce their effort. While at school, a teacher in the camera group was as likely to be teaching students as a teacher in the control group.
Higher teacher attendance means higher test scores for students.
When teachers came to school more, students learned more. Students in camera schools had higher test scores by 0.17 standard deviations and were 62 percent more likely to be admitted to regular government schools. Seven percent more girls were able to take a test that required being able to write. This study also speaks to the debate on informal schools. Many say such schools are ineffective because teachers tend to be less skilled than government teachers. However, this program shows that under the right conditions informal schools can improve education for the rural poor.
The program was a cost-effective way to increase student learning.
The camera program was not designed to be a scalable intervention, but rather to test the impact of motivating teacher attendance, particularly for student learning. Because the incentive pay proved equal on average to the salary teachers would otherwise be paid, the only cost of the program was for cameras and monitoring. Surprisingly, the program was so successful that it became a cost-effective way of promoting learning. The program cost Rs. 5,379 (about $120) per teacher per year, about 40 percent of a teacher’s yearly salary. Of this, about $25 was for the camera; $85 was for film, batteries, and photo development; and $10 was for labor costs to run the program. Each additional day of teacher presence cost $2.20. This translates into 11 cents per extra day of school per child. A larger program with more economy of scale or digital cameras might be even less expensive.
Policy Lessons
Rampant absenteeism of teachers and health care workers around the world is not going to be solved by cameras. This study was not designed to test a replicable program, but to understand the effect of monitoring.
Objective monitoring with incentives worked. Given credible incentives to attend school, teachers improved their attendance. Once at school, teachers in camera schools were just as likely as regularly salaried teachers to actually be teaching, so monitoring caused teaching time to go up. Incentives did not undermine teachers’ motivation: students learned more, scored higher on tests, and were more likely to graduate.
The camera program’s objective monitoring linked directly to incentives caused it to succeed where other programs designed to motivate teacher attendance failed. Neither teachers nor their supervisors could hide performance, excuse absences, or distort incentives. The result gave teachers control of their incomes and gave students a better education.
Duflo, Esther, Rema Hanna, and Stephen P. Ryan. 2012. "Incentives Work: Getting Teachers to Come to School." American Economic Review, 102(4): 1241-78.

https://www.povertyactionlab.org/evaluation/encouraging-teacher-attendance-through-monitoring-cameras-rural-udaipur-india


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/419.html

[不安と不健康18] 海の近くに住むと、メンタルヘルスに良い影響が出る可能性 健康 ヘルスデーニュース
海の近くに住むと、メンタルヘルスに良い影響が出る可能性 

健康 ヘルスデーニュース
2019.10.19 5:10

 
海とメンタルヘルス 
海の近くに住むことは心の健康に良い?

 近年、緑豊かな自然の中で過ごすことがメンタルヘルスに良い影響を与えることを示した研究が増えつつある。しかし、海の近くに住むことも精神的な癒しになる可能性が新たな研究により示された。

 研究を率いた英エクセター大学医学部のJo Garrett氏は、「イングランドの海に近い都市部に住む貧困層では、精神疾患の症状に悩まされている人が少ないことが、この研究により初めて示された。メンタルヘルスという観点では、海の近くという“保護作用のある”地域に住むことで、高所得者と低所得者の間の健康格差がなくなる可能性がある」と述べている。研究の詳細は、「Health and Place」10月1日オンライン版に掲載された。

 Garrett氏らの説明によると、イングランドではおよそ6人に1人が不安やうつといった頻度の高い精神疾患(コモン・メンタル・ディスオーダー)を抱えている。こうした精神疾患は、貧困な人において生じる可能性が高いことが指摘されている。

 今回、同氏らは、イングランド健康調査(Health Survey for England)の参加者約2万6000人のデータを用いて、都市部に住む成人において、海の近くに住むこととメンタルヘルスとがどのように関連するのかを調べる観察研究を行った。

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海岸から0〜1kmに住む人は心も健康?

 Garrett氏らが関連する要因を考慮して解析した結果、GHQ精神健康調査票12項目版(GHQ12)での測定で不安やうつといった精神疾患を発症するリスクが高い人の割合は、イングランドの海岸部から50km以上離れた場所に住んでいる人に比べ、0〜1kmの距離に住んでいる人で有意に低いことが分かった。

 また、海までの近さと精神疾患発症リスクの低さとのこうした関連がみられたのは、研究参加者を世帯収入に応じて5つのグループに分けたうち、最も収入が低いグループに属する、海から5km以内の場所に住んでいる人のみであった。

 こうした結果を受け、Garrett氏らは「“ブルースペース”(海岸や川、湖といった水性環境)、特に海岸部と健康およびウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態)とのポジティブな関係は、社会経済的に恵まれない人において強くみられることを示すエビデンスは増えつつあるが、今回の研究結果も新たなエビデンスとしてそこに加えられるものだ」と述べている。

 一方、共著者で同大学のMathew White氏は、「政府に、海岸環境を保全し、活用方法を考え出し、その使用を促してもらうには、水辺の環境が健康に与える影響に関する今回のような研究が必要不可欠である」と研究の意義についてまとめている。

 そして、「私たちは、都市部において“ブルースペース”がウェルビーイングにもたらす効果を最大化する方法について、政策担当者に理解してもらえるよう努めなければならない。さらに、壊れやすい海岸環境を保全しつつ、誰もが等しくそこへアクセスできるようにすることが大切だ」と述べている。(HealthDay News 2019年10月3日)

https://consumer.healthday.com/environmental-health-information-12/environment-health-news-233/seaside-living-soothes-the-mind-of-rich-and-poor-alike-750821.html

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日々晴雨
https://diamond.jp/articles/-/217995?page=2


Seaside Living Soothes the Mind of Rich and Poor Alike

couple on beach
En Español

THURSDAY, Oct. 3, 2019 (HealthDay News) -- Could living near the coast be an inexpensive balm for mental troubles?

"Our research suggests, for the first time, that people in poorer households living close to the coast experience fewer symptoms of mental health disorders," said researcher Dr. Jo Garrett, from the University of Exeter, in England.

"When it comes to mental health, this 'protective' zone could play a useful role in helping to level the playing field between those on a high and low income," Garrett said in a university news release.

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For the study, her team analyzed survey responses from nearly 26,000 people who took part in the Health Survey for England.

The investigators compared people's health to their proximity to the coast and found that people living in towns and cities near the coastline reported having better mental health, even the poorest folks.

About one in six adults in England suffers from mental anxiety and depression, and they are more likely from poorer families, the study authors noted.

Research into what the investigators call "blue health" should boost efforts by governments "to protect, create and encourage the use of coastal spaces," said Dr. Mathew White, an environmental psychologist at the university. "We need to help policy makers understand how to maximise the wellbeing benefits of 'blue' spaces in towns and cities and ensure that access is fair and inclusive for everyone."

The report was published Sept. 30 in the journal Health and Place.

More information

For more on mental health, visit Mental Health.gov.

SOURCE: University of Exeter, news release, Sept. 30, 2019

-- Steven Reinberg

Last Updated: Oct 3, 2019
https://consumer.healthday.com/environmental-health-information-12/environment-health-news-233/seaside-living-soothes-the-mind-of-rich-and-poor-alike-750821.html
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/790.html

[経世済民133] 「超計算」人類の手中に グーグル実証か 銀行業務の自動化がアメリカ20万人の雇用をなくす日「量子超越性の実証」が本当に意味すること 別にそんなにすごくない?
「超計算」人類の手中に グーグル実証か
 最先端のスパコンでおよそ1万年かかる計算問題を、同社の量子コンピューターが3分20秒で
 
科学&新技術
2019/10/18 18:00
日本経済新聞 電子版

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グーグルが開発したとみられる新しい量子チップ
人工知能(AI)などに続く革新的技術として期待される量子コンピューターが「スーパーコンピューターを超える日」が近づいてきた。米グーグルは、理論上の概念だった性能を実証し、最先端のスパコンで1万年かかる問題を瞬時に解く実験に成功したもようだ。米IBMなども研究に力を入れる。急速な進歩はいずれ人類にこれまでにない計算パワーをもたらす。AIの活用や金融市場のリスク予測などを通じ、社会にディスラプション(創造的破壊)を起こす可能性を秘める。
イブニングスクープ
翌日の朝刊に掲載するホットな独自ニュースやコラムを平日の午後6時ごろに配信します。
グーグルが「量子超越」を達成したもようだ――。英フィナンシャル・タイムズは9月、こう報じた。日本経済新聞が入手した資料によると、最先端のスパコンでおよそ1万年かかる計算問題を、同社の量子コンピューターが3分20秒で解いたという。

量子超越は、従来のコンピューターでは困難な計算問題を・・
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51143200Y9A011C1MM8000/


 

銀行業務の自動化がアメリカ20万人の雇用をなくす日
2019.10.19 12:00
author Brian Merchant - Gizmodo US[原文]( satomi )
銀行業務の自動化がアメリカ20万人の雇用をなくす日
米銀がテクノロジーに投じるお金は年間1500億ドル(約16兆円)。その刈り入れ時がやってきたようです。

AI化で、アメリカの銀行業界は「今後10年で約20万人がリストラ」され、「金融史上最大の労働から資本への移転」が起こると、Wells Fargo銀行アナリストのMike Mayo氏が最新報告で発表しました。職を失う人は「全行員の1割」で、「バンキング業務効率化の黄金時代」がやってくるとFinancial Timesに話していますよ?

人員削減されるのは主に顧客対応窓口、コールセンター、支店で、それぞれ20〜30%がカットになって、高性能なATM、チャットボットに置き換えられて、投資判断もビッグデータとクラウド処理で行えるようになるのだそう。

欧米の銀行はこの夏にも大型リストラが吹き荒れて、全体で3万人が失業したばかりです。最近の目立つところを拾ってみただけでも、こんなにあります。

・ドイツ銀行:18,000人を2020年までに削減。

・シティグループ:数万人規模の削減を予定。

・HSBC:4,000人削減。

・バークレイズ:3,000人削減。

・ソシエテジェネラル:1,600人削減。

・クレディ・スイス:当面採用凍結を発表。

それやこれやで「かつてないほどテクノロジーの存在感が増す10年になる」と、Mayo氏はCNBCニュース(動画下)でも盛んに投資家向けにアピールしていますよ。


・いま銀行の収入は過去80年で最低水準。

・収入が減ったら、支出を減らさなければならない。銀行の出費の半分を占めるのは人件費。

・これをテクノロジーの力で削減する。テクノロジー化が進む黄金時代に入る。

・銀行だってもうノーチョイス。年間1500億ドル(約16兆円)ものお金を技術に投じている。

・それは25年も前からのことで、あまり成果は上がっていなかったが、やっ自動化が大規模に進められる基盤がそろった。ゴリアテ(巨人。ここではメガバンク)の大勝利。

・銀行の支出で一番負担が大きいのは人件費で、出費全体の半分を占める。それをテクノロジーで削る。

・銀行株買うなら今がチャンス。

メガバンクのアナリストがここまであからさまなテクノロジー礼賛、リストラ万歳も珍しくて、普通シンクタンクや都銀がリストラの未来予想を発表するときには、もうちょっと遠慮するものなのけど…。いくらオブラートにくるんでもリストラはリストラっていう割り切り方がすごいですね。

モルガン・スタンレーの大型吸収合併のときも「ゴリアテの大勝利*」と言っていたので、好きな言い回しなんでしょうね。要は大きなものは勝つ、と。 拡大化路線で小さな銀行はどんどん吸収合併されていき、体力をつけた銀行だけが生き残って、これ以上大きくなりようがないほどに肥え太ったら、だぶついた行員を数千、数万人単位で斬り捨てて、最後に笑うのはひと握りの中枢の人だけ、ということですよね。

*編注:少年のダビデが巨漢の勇者ゴリアテを倒す旧約聖書のエピソードの逆。

まごころ対応なんてしていたら、すぐ大きなところに吸収されてしまうので、銀行の選択肢も減っていきそうです。Wells Fargo銀行と言えば、ゴールドラッシュ時代、金の山を幌馬車で東海岸まで運んで、お金に換えて戻っていたところから始まった銀行です。馬と人力だった160年前のウェルズさんとファーゴさんもこんな未来、想像もしなかっただろうなあ…。%!(EXTRA string= )

ゴリアテは、人の手が入らない純度の高い資本が集積する銀行とも言えるし、それを牛耳る人間とも解釈できます。いや、もしかしたらそれさえもマリオネットで、資本主義という目に見えない怪物なのかも。

https://www.gizmodo.jp/2019/10/goliath-is-winning.html


 

2019.10.03 THU 09:30
グーグルの量子コンピューターによる「量子超越性の実証」が、本当に意味すること

グーグルが量子コンピューターを使って、最先端のスーパーコンピューターでも1万年かかる計算を数分で終えたとされる実験結果が、誤ってアップされたとみられる論文から明らかになった。量子コンピューターが既存のコンピューターより優れていることを示す「量子超越性」は、本当に実証されたのだろうか。

TEXT BY MATT REYNOLDS
TRANSLATIOn BY CHIHIRO OKA

WIRED(UK)

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IMAGE BY WIRED UK

科学の世界においては、必ずしも予期していなかった状況で物事が飛躍的に前進することがよくある。9月半ばに米航空宇宙局(NASA)のウェブサイトに誤ってアップロードされたとみられるある論文の草稿によって、一部の人たちの間では蜂の巣をつついたような騒ぎが起きている。そこにはグーグルの研究チームが「量子超越性(quantum supremacy)」を実証したと書かれていたのだ。

グーグルや競合のテクノロジー大手は、かなり以前から量子コンピューターの実用化に向けた努力を続けてきた。グーグルは2017年、年内に量子超越性を検証すると宣言したが、具体的な成果などは発表されないまま時間が過ぎていった。この間、IBMとインテルも量子ビット[編註:量子コンピューターの情報単位のこと、キュービットとも呼ぶ]の数を徐々に増やして実験を続けている。

しかし、NASAのサイトにアップロードされた論文が正しければ、グーグルは他社より先に重要な到達点に達したようだ。論文には「Sycamore」と呼ばれる53量子ビットの量子プロセッサーを搭載したマシンが、世界最速のスーパーコンピューターでも1万年かかる問題を3分20秒で解いたと記されている。グーグルはNASAと共同研究を進めていた。なお、グーグルはこの件に関してメディアからのコメントの要請には一切応じていない。

一方で、このブレークスルーによって量子コンピューターがいますぐに実用化されるというわけではない。ただ、量子コンピューティングの世界で次の時代に向かうための扉が開かれたことは確かだ。

量子超越性の意味すること
その前に、量子超越性とは何かを考えてみよう。オックスフォード大学教授で量子技術の専門家であるサイモン・ベンジャミンは、量子超越性とは「量子コンピューターを使えば、古典的コンピューターと呼ばれる従来型のコンピューターでは不可能だったことができる」ことだと説明する。つまり、グーグルは量子コンピューターは古典的コンピューターより優れていることを証明しただけで、大騒ぎするほどのことではないというのだ。

グーグルの論文では、量子コンピューターにランダムな命令を出す一方で、スーパーコンピューターに量子コンピューターの計算結果を予測させた。スーパーコンピューターによる予測が不可能なら、その命令は量子コンピューターにしかできないことになるからだ。

ただ、これは量子コンピューターと古典的コンピューターは違うものなのだということを証明する以外には、実質的な意味をもたない。だとすれば、量子超越性そのものが無意味だと言うこともできる。ベンジャミンは「本当にすごいものを手に入れる上で必要な通過点ではありますが、すぐに結果が出るということではありません」と話す。

量子超越性という言葉を考え出したのは理論物理学者のジョン・プレスキルだが、ベンジャミンを含め、この概念が大げさに語られすぎていると指摘する研究者もいる。世の中では量子コンピューターはターミネーターのようなとんでもない怪物だと思われているが、実際は既存のコンピューターより技術的に優れているというだけで、ベンジャミンはこれを正確に伝えるために、例えば「量子唯一性(quantum inimitability)」のような別の用語を使うべきではないかと提案する。

量子コンピューターでしか処理できない問題
ただ、実質的な意味をもたないなら重要性が低いということではない。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの量子科学技術研究所のトビー・キュビットは、「(量子超越性の実証によって)量子コンピューターが古典的コンピューターでは真似できない処理を行っていることが、かつてない高い信頼性をもって証明されたのです」と説明する。つまり、量子コンピューターが秘めている可能性が証明されたわけで、これは大きなニュースだろう。

IBMは2017年10月、スーパーコンピューターを使った56量子ビットの量子コンピューターのシミュレーションに成功した。この話を聞くと、スーパーコンピューターでシミュレーションできるのなら、なぜ実際に量子コンピューターを組み立てなければならないのだろうと思わないだろうか。しかも、それは巨大で絶対零度に近いような超低温でないと動かせないような面倒な代物なのだ。

しかし今回のグーグルの論文によって、量子コンピューターでしか処理できない種類の問題があることが確認されたのである。同時に、量子コンピューターに解かせるための問題を設計するという、新しいタスクも生まれるだろう。

「NISQ 」での成果の意味
グーグルの研究は、もうひとつ大きな意味をもつ。量子超越性の実証により、量子コンピューティングは新しい時代に入ろうとしているのだ。

現在の量子コンピューターは「NISQ(Noisy Intermediate Scale Quantum)」と呼ばれるエラーの訂正能力が低いものである。簡単に言えば、量子コンピューターとしてはまだ不完全な状態で、分子の相互作用の計算や複雑な暗号コードの解読といった古典的コンピューターでは不可能な処理をするには十分ではない。

現状では、最高レヴェルとされる量子コンピューターでも悲惨なエラーを起こすことがよくある。何百万もの計算で構成されるプログラムを処理する際に、計算1,000回ごとに1回の割合でエラーが出るようでは、使い物にはならない。つまり、量子超越性を証明したグーグルのSycamoreでさえ、実用という意味ではまったく意味をなさないのだ。

NISQの時代にあって行われているのは、エラーやノイズには目をつぶっても、とにかく動く量子コンピューターを完成させることである。オックスフォード大学のベンジャミンによれば、現段階では不完全なマシンから価値を引き出す方法を考え出すことが鍵になる。

例えば、エラーの多い量子コンピューターでも実行できるようなシンプルなプログラムを開発するというのは、ひとつのやり方だ。また、量子ビットの少ない小規模なマシンでも結果を出せるように、ハードウェアの改良に取り組むこともできる。

NISQマシンで一定の成功を収めるというこの目標は、「量子優位性(quantum advantage)」と呼ばれる。ベンジャミンは「不完全なマシンで結果を出そうという試みです。そうすれば、少なくとも量子コンピューターを有用なツールとして使える段階に進むことができます」と説明する。

レースは始まったばかり
量子の優位性が確立されれば、非常に大きな数の因数分解や量子力学のモデリングなど、量子コンピューターだけが解決できる課題について考えられるようになるだろう。ただ、そのためには、いまあるNISQマシンとはまったく別種の量子コンピューターが必要になる。完璧なエラー耐性をもち、数百万の量子ビットを使用して計算を実行できるようなマシンだ。

この分野では、現在はグーグルが頭ひとつ飛び抜けている。その一方で、いまは主流である超電導量子回路を用いたマシンが、将来的にも量子コンピューティングの基本形であり続けるかはわからない。

オックスフォード大学のナタリア・アレスは、「どのような種類のハードウェアなら100万量子ビットのマシンを実現できるのか、予測するのは困難です」と言う。量子コンピューティングの黎明期にあってはイオントラップ型が一般的だったが、グーグルやIBMが採用している超電導量子コンピューターのおかげで、性能は飛躍的に伸びた。

アレスはまた今回のニュースについて、刺激的ではあるが、いますぐに量子コンピューターの時代がやってくるといった過度な期待をすべきではないと指摘する。現時点で最高の量子プロセッサーは、グーグルが開発した「Bristlecone」という72量子ビットのものだが、これでさえ量子優越性を実証できていないのだ。

量子コンピューティングに期待されるような本当に複雑な処理をするには100万量子ビットが必要であり、そこに到達するにはまだ長い時間がかかる。アレスは「量子コンピューターで明らかに有用なことをやるにはほど遠い状況ですが、徐々に進歩はしています」と語る。いまはグーグルがリードしているが、レースは始まったばかりなのだ。

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#Google #Quantum Computer #Science

https://wired.jp/2019/10/03/google-quantum-computers-supremacy/


 

Googleの「量子超越性を実証」発表は、別にそんなにすごくない
2019.09.28 09:00
9,268

author Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文]( R.Mitsubori )
Googleの「量子超越性を実証」発表は、別にそんなにすごくない
Image: Gizmodo US
実用化までに、半世紀はかかるってことか。

20日、フィナンシャル・タイムズが「Googleがついに量子超越性を実証」という内容の速報を出しました。量子超越性とはつまり、従来型のコンピュータよりも量子コンピュータの性能が上回る、ということ。

その後、世界中のメディアがこれをこぞって取り上げ、あたかも新時代の幕開けのような大ニュースになっていますが、米GizmodoのRyan F. Mandelbaum記者はこれを「驚くことほどのでもないし、たいしたことじゃない。少なくとも、(一般市民である)あなたにとっては」と評しています。以下、Mandelbaum記者の論評を紹介します。

この記事を読んでいただく皆さんにはまず、量子超越性がなんなのか、大まかでかまわないので、ざっくり知っていただきましょう。 通常のコンピュータは、1と0の組み合わせであらゆる事象を表現する、いわゆる「二進法」で成り立っています。一方、量子コンピュータは素粒子である「量子ビット(キュービット、とも)」を演算単位としています。

コンピュータ科学者や物理学者、そしてGoogleなど一部の専門家や企業にとっては関心度の高い量子コンピュータですが、そのほかの大多数の人にとってはまだ身近な問題とは言えず、是非みなさんにはその点を了承していただきたいと思います。今起きていることはすべて、我々がすでに予測したとおりなんです。

1万年かかる計算を量子コンピュータが3分20秒で解いた
フィナンシャル・タイムズが先週報じたのは、NASAのウェブサイトに「Googleが量子超越性の実証に成功」という研究論文の草稿が掲載されたというもの(草稿はその後すぐに削除されました)。私たちもこの論文を読みましたが、その中身は、Googleが今後実現すると公言してきた内容そのものでした。 Googleはこの件に関してコメントを控えており、本来は公開を意図していなかったことは間違いないでしょう。論文の中身を見ると、概要は「従来のコンピュータでは1万年かかる計算を量子コンピュータがわずか3分20秒で解いた」というものです。

≠量子コンピュータがスパコンを超えた
ただ、今回使われた計算は非常に特殊なタスクであり、これを早く処理できたからといって、すべての演算でスーパーコンピュータを超える「最高位」になったとは言えません。研究者らが「量子コンピュータが生得的に処理可能」と考える演算処理を、スーパーコンピュータがシミュレーションする、という形がとられていたのですから。

要するに、Googleは「原始的な量子コンピュータは、スーパーコンピュータよりも、原始的な量子コンピュータっぽい」ということを公表したにすぎません。たしかに、今回の発表は初期のマイルストーンにはなりましたが、だからといってGoogleのデバイスの能力が進化する、と示すものではなかったのです。

量子コンピュータの課題
量子コンピュータは基本的に、皆さんが使い慣れているものとは異なるアーキテクチャーで構築されたコンピュータで、原子より小さな素粒子の働きによって機能しています。そのため、わずかな振動や温度の変化でもエラーが起きるなど、非常にデリケートでとてもコントロールしにくいのが難点。

量子コンピュータの可能性
それでも量子コンピュータには、新たな医薬品開発に役立つ「分子の動きのシミュレーション」や、暗号化の基礎を形成するのに欠かせない「大きな数の因数分解」など、将来的にコンピュータの課題の一部を効率的に解決する可能性を秘めています。ただ、科学者らが知る限り、量子コンピュータでも解消できない課題が多いことも事実。(NP完全問題など)。

Googleの論文は研究者たちによって確認されていくべきもの
今、量子コンピュータには誇大宣伝的な情報が多い中、それが本物であり、確かに有用であることを実証する量子超越性の研究結果は、とても重要です。だからといって、それが現実世界にかかわる問題の解決につながるかどうかは、未知数。これから、科学者たちはGoogleの論文趣旨が実際に有効であるかどうか、長きにわたって論争を続けることになるでしょう。それを確認するには、とても難しい計算が必要になるからです。

誤った見解の例
Googleのニュース以後も、量子コンピュータに関する誇大広告は止むことはなく、大統領候補のアンドリュー・ヤン氏もツイッターで「Googleが量子計算を成功させることには、大きな意味があります。中でも重要なことは、解読できない暗号などないことを証明する点です」と述べています。

しかし、この見解には多くの誤りがあります。「量子計算」は以前から存在しているし、「解読できない暗号はない」なんていうのは、まったくの間違いです。アメリカ国立標準技術研究所(NIST)では、現在使われている暗号化戦略にとって代わる、「量子コンピュータが解読できない新しい暗号」の開発コンテストを実施中で、今のところ研究は順調に進んでいるといいます。

量子コンピュータはまだ実用段階にはない
量子インターネットが一般の人々にとって何を意味するのか、以前の記事でも紹介されていますが、そこで述べられているように、多くの人はその変化に気づくことすらないでしょう。 心配するに値する量子コンピュータはすぐそこまで来ているかもしれませんし、もしかしたら数十年先の未来にしかないのかもしれません。

量子コンピュータは今、従来型コンピュータが1950年代にいたのと、同じ立ち位置にあります。つまり、サイズが大きく、非効率的で、高価で、アプリケーションは限定的というもの。今回の実験に使用されたGoogleのシカモアプロセッサは53キュービット(量子コンピュータの単位で、ビットのようなもの)しかなく、これではいくつかの操作を実行するだけで量子動作ができなくなってしまいます。ちなみに、量子コンピュータが複数のアプリケーションを起動させる場合、本来は数千ないし数百万キュービットが連携して動作することになります。

Googleが達成したと言われる量子超越性は大きな飛躍とは言えず、衝撃的というほどではまったくありません。量子コンピュータの有用性への長い旅路において、より困難なマイルストーンへとまた一歩、あゆみを進めたに過ぎないのです。

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https://www.gizmodo.jp/2019/09/about-google-s-quantum-supremacy-announcement.html

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/420.html

[国際27] 核爆弾50発を“人質”、米副大統領、トルコ訪問の本当の理由 トルコ大統領、トランプ氏の手紙を「ごみ箱へ」 逆上したのはどちら?トランプ氏とペロシ氏
核爆弾50発を“人質”、米副大統領、トルコ訪問の本当の理由

2019/10/18

佐々木伸 (星槎大学大学院教授)

 ペンス米副大統領は10月17日、トルコの首都アンカラを訪問してエルドアン大統領と会談、シリア北部の停戦で合意したと発表した。しかし、ペンス氏はトルコ軍の撤退を要求せず、トルコが侵攻によって確保した「安全地帯」を追認する形になった。米国が大きく譲歩したのは、トルコに配備した戦術核爆弾50発をトルコ側の“人質”に取られているという切迫した理由があるようだ。


会談したエルドアン氏とペンス氏(REUTERS/AFLO)

もはやトルコと米国の問題ではない

 アンカラからの報道などによると、ペンス氏にはポンペオ国務長官、オブライエン大統領補佐官らが同行、「大物がそろってエルドアン詣でをした格好」(アナリスト)となった。5時間もの会談の後、ペンス氏が記者会見で明らかにした合意内容は、以下のようなものだ。

 トルコの攻撃を受けるクルド人の武装組織「人民防衛隊」(YPG)が5日間の停戦の間に、国境沿いの「安全地帯」の範囲から撤退する。「安全地帯」はトルコ軍が管理する。米軍が撤収した後にアサド政権軍やロシア軍が展開したシリア北部の要衝マンビジなどの扱いについては、今後ロシアと協議する。米国がトルコに科した鉄鋼関税の引き上げなどの経済制裁については、トルコが停戦を履行すれば解除する。

 ペンス副大統領は「合意は暴力に終止符を打つものだ。生命を救う解決策だ。米国は望んでいた停戦を達成した」などと成果を強調した。しかし、トルコ軍の撤退については言及されておらず、事実上、トルコの侵攻と、国境から幅30キロ、長さ約400キロにわたる「安全地帯」創設を追認した形となった。

 トルコのチャブシオール外相は「これは停戦ではない。作戦の一時休止にすぎず、撤退を意味するものではない。米国は安全地帯の重要性を理解した。われわれは望んでいたものを獲得した」と“勝利宣言”。実際に停戦が発効するのか、また5日間の停戦期間が過ぎた後に戦闘が終結するのかなど数多くの疑念が残る合意となった。

 最大の問題は「もはや米国とトルコだけの問題ではないということだ。ロシアやシリアのアサド政権との合意も必要となり、状況は一段と複雑になった」(同)。アラブの専門家らによると、トルコは「安全地帯」の創設を完了するまで今後も作戦を続行し、YPGとの小競り合いは続く可能性が高い。

核爆弾の国外搬出急ぐ米

 ベイルートの情報筋や米紙などによると、米側が今回、ペンス副大統領まで派遣した背景には、両国関係が悪化する中、米国がトルコのインジルリク空軍基地に配備している戦術核爆弾約50発を事実上、エルドアン大統領の“人質”にされているとの懸念が強まっているためだ。

 これら核爆弾は東西冷戦が高まる1961年から、北大西洋条約機構(NATO)加盟国である同国に配備が始まった。冷戦終結後に米政府内部で、核爆弾の撤去が折に触れて検討されてきた。最近では、過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭で、過激派に核爆弾が渡ることのリスクや、2016年のトルコのクーデター未遂事件の際、核爆弾が流出する懸念が論議されたが、国外搬出は先延ばしされてきた。

 トルコはこのところ、ロシアから最新の防空システムを購入するなどしたため米国との関係が冷却化、その上、今回の侵攻作戦をめぐる両国の対立が先鋭化したことから、国防総省やエネルギー省などが現在、本腰を入れて核兵器の搬出を検討している。しかし、エルドアン大統領がこれに反対し、国外搬出を阻止するのではないかと懸念が米政府内に高まっていた。

 エルドアン大統領自身、核保有についての意欲を隠していない。大統領は先月、トルコが核保有を禁じられているルールはおかしいと主張、「核を持っていない先進国はない」などと述べていた。トランプ大統領は17日、記者団からこの問題について聞かれ「われわれには極めて強力な空軍基地がある」と述べ、事実上、核兵器の存在を認めた。

 米紙はトランプ大統領が、核兵器の存在を肯定も否定もしないという米政策を破ったと指摘している。共和党の元大統領候補のロムニー上院議員はペンス副大統領の派遣について、「すべての馬を失った後、納屋を閉めに行く農夫のようだ」と対応のまずさを皮肉っている。

与党共和党も反旗

 エルドアン大統領が今回、最終的にシリアへの侵攻作戦を決断したのはトランプ大統領が侵攻を黙認する“青信号”を出したためだ。エルドアン氏が6日の電話会談で、“テロリスト”のクルド人を掃討するためとして、トランプ氏に侵攻の考えを伝えた後、ホワイトハウスはトルコとシリアの国境沿いに展開する米部隊約50人を戦闘に巻き込まれないよう撤退させると発表した。エルドアン大統領がこれを米国の侵攻黙認と受け取ったのは当然だった。

 トランプ大統領はさらにシリア北東部に駐留していた全部隊1000人を撤退させると発表、すでに部隊はイラクなどへの撤収を開始した。苦境に追い込まれたのはクルド人だ。米国の先兵としてIS壊滅作戦を戦い、大河ユーフラテス川東部地域の支配圏を固め、つかの間、独立国家樹立の夢を見たものの、トランプ氏から梯子を外され、トルコ軍の攻撃にさらされることになったからだ。

 米国に見捨てられたクルド人にとって選択肢は1つしかなかった。それは緊張関係にあったシリアのアサド政権と手を組み、「反トルコ同盟」を結成することだった。両者を仲介したのはシリアに軍事介入しているロシアだ。米国の撤退はアサド政権を支援するロシアやイランとっては願ってもない展開。アサド政権にしても、黙っていてシリアの4分の1に相当するクルド人地域を奪回し、全土支配に大きく近づくことになる。

 米国の敵対勢力が一夜にして大きな利益を獲得したことに対し、トランプ大統領は内外から猛烈な批判を受けることになった。与党共和党の重鎮グラム上院議員は「オバマ前政権のイラク撤退よりも始末が悪い」と痛烈に批判。米下院は16日、米軍のシリアからの撤退に反対する決議を354対60という圧倒的多数で可決した。与党共和党からも120人以上が賛成し、トランプ大統領に反旗を翻した。

 下院の決議が可決された後、トランプ大統領は与野党の議会指導者をホワイトハウスに招いてシリア問題を話し合った。米紙などによると、大統領は民主党のペロシ下院議長から「あなたが敷いた道はロシアのプーチンの利益につながるものだ」と批判されると「私の意見では、あんたは“三流の政治家”だ」などと言い返した。

 大統領はさらに、軍などから尊敬を集めているマティス前国防長官も撤退に反対していると指摘されると、「彼は世界で最も過大評価された将軍だ」と酷評。「なぜなら彼は十分に強靭ではないからだ」と畳みかけた。しかし、大統領は内心、予想をはるかに超える批判に再選に悪影響を及ぼすとして動揺しているのも事実だろう。

 大統領が躍起になって「侵攻の青信号は出していない」と否定し、ペンス副大統領をトルコに派遣したのも、こうした危機感の表れだ。大統領は17日で在任1000日。しかし、トルコ侵攻で、安全保障問題や危機管理の対応の稚拙さを丸出しにした上、「ウクライナ疑惑」でも弾劾調査が進められており、大統領の窮地は一段と深まった感がある。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17672


 

トルコ大統領、トランプ氏の手紙を「ごみ箱へ」
2019年10月18日
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Image copyrightGETTY IMAGES
トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領が、同国によるシリア北部進攻の停止を求めるドナルド・トランプ米大統領からの手紙を、その場で「ごみ箱に」捨てていたことが、BBCの取材で明らかになった。

トランプ大統領が6日にシリア北東部からの米軍撤退を発表すると、トルコは9日、クルド人民兵組織「人民防衛部隊(YPG)」が支配するシリア北部への進攻を開始した。

進攻を開始した9日付の書簡で、トランプ氏はエルドアン氏に対し、「タフガイの真似はするな。馬鹿な真似はするな!」と書き、即時停戦を求めた。しかしエルドアン大統領は「停戦宣言などしない」と述べ、この働きかけに応じない姿勢を示した。

これについてエルドアン氏に近い関係者はBBCに対し、「エルドアン大統領は書簡を受け取り、要請内容を徹底的に拒絶し、ごみ箱に捨てた」と明かした。

Image copyrightEPA
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トランプ氏が唐突に発表したシリア北東部からの米軍撤退は、トルコによるクルド人攻撃に対する「青信号」に等しいと批判されている
書簡の内容
トランプ大統領は書簡で、エルドアン大統領に対し、「いい取り引きをしようじゃないか! あなたは数千人の虐殺の責任を負いたくはないだろうし、こちらもトルコ経済の破壊の責任は負いたくない。でもそうする」と書いた。

「あなたが正しく人道的なやり方でこの状況を解決すれば、歴史に良い評価をしてもらえる。いい結果にならなければ、歴史は永遠にあなたを悪魔とみなすだろう。タフガイの真似はするな。馬鹿な真似はするな!」

Image copyrightREUTERS
Image caption
エルドアン大統領へ宛てたトランプ大統領の書簡には「いい取り引きをしようじゃないか!」と書かれている
「一時停止」で合意も
マイク・ペンス米副大統領は、即時停戦を直接交渉するため、トルコの首都アンカラで17日、エルドアン氏と会談。軍事作戦を5日間「一時停止」することで合意した。

しかし、トルコ側は、クルド人民兵組織「人民防衛部隊(YPG)」が同地域から完全に撤退するまでは「停戦」しないとしている。

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共和党も軍撤退に反対
トランプ大統領は、米軍撤退はトルコによるクルド人攻撃の「青信号」に等しいとして、激しい批判にさらされている。そうした批判の大半は、身内の共和党から上がっている。

米下院は16日、シリア北東部からの米軍撤退に反対する決議案を、354対60の賛成多数で可決した。野党・民主党のほか、共和党からも129人が賛成に回った。この決議案は、エルドアン大統領に対し即時停戦も求めている。

決議可決後、議会指導部はシリア進攻についてホワイトハウスで大統領と会談した。このとき、トランプ氏と民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長の激しい舌戦が繰り広げられたとみられる。

民主党のチャック・シューマー上院院内総務によると、トランプ氏がペロシ氏を「三流政治家」呼ばわりしたため、民主党議員が退室する事態となったという。

共和党指導者は、会議中のペロシ氏の言動は「不相応」なものだったと指摘。議長が「激怒して部屋を飛び出した」と批判した。

ペロシ下院議長はその後、記者団に対し、会談でトランプ氏が「逆上していた」と明かした。

これに対し、トランプ氏も同様の批判をペロシ氏にぶつけた。会談中に立ち上がって話すペロシ氏の写真と共に、「神経質なナンシーが逆上した!」とツイッターに投稿した。

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Donald J. Trump

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Nervous Nancy's unhinged meltdown!

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7:29 - 2019年10月17日
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トランプ氏が投稿した写真には、民主党議員から、ペロシ氏の「最高の瞬間」を示す「象徴的」な写真だと称賛する声が上がった。ペロシ氏は、自分のツイッター・アカウントのトップ画像をこの写真に変更した。

トランプ氏の主張
トランプ氏は16日、「トルコとシリアは国境で問題を抱えている。我々の国境ではない。我々がそのせいで命を失うべきではない」と述べ、米国はトルコのシリア進攻へ介入すべきではないと主張した。

「米兵はあの地域から撤退した。米兵は絶対に安全だ。(トルコとシリアが)問題を解決しなくてはならない。戦わないでも解決できるかもしれない。我々は状況を注視し、交渉し、トルコに正しいことをさせようとしている。我々はとにかく戦争を止めさせたいから」

トランプ氏はさらに、過激派勢力「イスラム国」(IS)掃討で重要な役割を果たし、米国に協力していたクルド人は「天使」ではないとも述べた。

「(クルド人は)我々と一緒に戦った。一緒に戦うためたくさんの金をクルド人に提供した。それは構わない。クルド人は我々と一緒に戦った時はよくやった。我々抜きの戦いでは、それほどでもなかった」

クルド、トルコ、アメリカの関係
アメリカを中心とした連合国がシリアでISを破ることができたのは、クルド人勢力の協力によるところが大きい。

YPGは、トルコ南部と国境を接するシリアで活動している。YPGはシリア民主軍(SDF)の大部分を占めており、SDFはアメリカ軍の支援を受けてイスラム過激派組織IS掃討に貢献した。

トルコ軍の進攻による混乱に乗じて、シリア北部で拘束されている数千人のISのジハーディスト(イスラム聖戦主義者)が結集する可能性が不安視されている。

トルコは、YPGをテロ組織と認定しており、クルド人地域のトルコからの独立を訴えているクルド労働者党(PKK)も、YPGと関係していると考えている。

狙いはクルド人の排除
トルコの狙いは、同国がテロ組織と認定しているYPGの戦闘員を、安全地帯から完全に排除すること。シリア内戦などでトルコ領内に避難してきたシリア難民360万人のうち、最大200万人をこの安全地帯に移住させたいとしているが、こうしたトルコの一連の動きは、クルド人に対する民族浄化だとの批判も出ている。

在英非政府組織のシリア人権監視団(SOHR)によると、軍事作戦の開始以降、民間人71人、少なくともSDF戦闘員185人、親トルコ勢力164人、トルコ軍兵士9人が死亡したという。

一方、クルド人自治政府の保健当局は、17日までに民間人218人が死亡したとしている。

Image caption
シリア北部の勢力図。青色がシリア政府、緑色がクルド人組織が制圧している場所。北西部の赤い地域にトルコ軍と親トルコ派の反シリア政府組織が進攻している。トルコは国境沿いの斜線部分に「安全地帯」の設置を要請している。
<解説>脅迫交じりの手紙に激高――ジェレミー・ボウエン中東編集長

首脳同士が交わす書簡で、今回のような文言が使われるなどなかなか想像し難い。

ドナルド・トランプ大統領の手紙は、脅しと、ロッカールームで交わすような軽口が入り乱れるもので、トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領を激高させた。

エルドアン氏に近い人物はBBCに対し、同氏が書簡をごみ箱に投げ捨てた後、同じ日に軍事作戦を開始したと話した。これはつまり、トランプ氏による「青信号」がなかったことの証明になるだろう。

一方で、IS掃討のためにバラク・オバマ前大統領がSDFと手を組んで以降、いずれトルコと間で問題になるのは自明だった。なぜならSDFは、クルド人地域のトルコからの独立を訴えているPKKと密接につながっているからだ。トルコは、SDFとPKKが合わさってひとつのテロ組織なのだと主張している。

エルドアン大統領は昨年12月、軍事行動についてトランプ大統領と協議した。トルコの首都アンカラの外交筋は、トルコの大きな戦略目標は、クルドとアメリカを切り離すことだったと示唆している。

いずれにせよ、実際にそうなってしまった。

エルドアン大統領はアンカラで、マイク・ペンス副大統領とマイク・ポンペオ国務長官率いる米代表団と会談した。その背景には、シリアを取り巻く外交の大失態がある。双方の妥協点を見出すのは難しい。


クルド人とは なぜトルコが攻撃しているのか
(英語記事 Turkish president 'threw Trump letter in bin')

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https://www.bbc.com/japanese/50092919

 
逆上したのはどちら? トランプ氏とペロシ氏の写真、米政治の分断表す

2019/10/18

BBC News


米野党・民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長が、ホワイトハウスの会議室でドナルド・トランプ米大統領を前に立ち上がって指を差している写真が大いに話題になっている。

ホワイトハウスの会議室で撮られた写真は今月16日のもの。トルコによるシリア北東部のクルド人勢力攻撃について米下院は同日、同地域からの米軍撤退に反対する決議案を354対60の賛成多数で可決した。野党・民主党のほか、トランプ氏率いる共和党の議員も、大勢が決議案に賛成した。この決議可決後、議会指導部はシリア進攻についてホワイトハウスで大統領と会談した。問題の写真は、その時のものだ。

大きいテーブルを前に議会や政権、軍の男性幹部たちに囲まれたペロシ氏は、大統領に向かって指を差しながら何かを力説しているように見える。トランプ氏はあっけにとられた様子だ。

会議のあと、トランプ氏はお気に入りのツイッターで「神経質なナンシーが錯乱して怒り狂った!」と書いてこの写真を投稿した。

これに対してペロシ氏は、会議中に「怒り狂った」のはトランプ氏の方だと反論し、この写真を堂々と自分のツイッターやフェイブックのアカウントのトップ画像に使った。

トランプ氏によるツイートは18日になった時点で約3万回、リツイートされた。6万以上のコメントがついているほか、本人のツイートに直接関わらない形でも、大勢がこの写真について意見を書いている。

この写真を機に人々は、政治における男女の不平等から、どちらの方が良い大統領になるかまで、様々な発言をしている。しかしなによりこの写真と、それに対する人々の反応は、トランプ氏による唐突な米軍撤退の決定がいかに米政界を分断したか、如実に表している。

テーブルの周りではどういう話が
民主党筋はAP通信に対して、会議はまずトランプ氏の自慢で始まったと話した。自分はいかに「嫌味な」手紙をトルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領に書き送ったかを、議会幹部に披聞かせたのだという。

明らかになった手紙の写真から、トランプ氏はエルドアン氏に対して「タフガイの真似はするな。馬鹿な真似はするな!」と書いていたことが明らかになった。この書簡について、エルドアン氏に近い関係者はBBCに対し、「エルドアン大統領は書簡を受け取り、要請内容を徹底的に拒絶し、ごみ箱に捨てた」と明かしている。

この手紙についての大統領の話が終わると、ペロシ議長は米軍撤退に反対する決議を下院が可決したことを伝えた。次いで民主党のチャック・シューマー上院院内総務が、過激派勢力「イスラム国」(IS)の復活を防ぐには米軍がシリアに残ることがいかに大事かという、ジェイムズ・マティス前米国防長官の発言を読み上げた。

すると、トランプ氏はシューマー氏をさえぎり、昨年末まで国防長官だったマティス退役海兵隊大将を、「世界で一番過大評価された将軍」と呼んだと、米メディアは伝えている。

さらにトランプ氏はペロシ氏に対して、「自分はあなたよりISIS(ISの別称)を憎んでる」と告げたという。

シューマー氏に、IS掃討のためシリアとトルコを頼るというのが大統領の計画なのかと尋ねられると、トランプ氏は「アメリカ国民の無事を守る」のが計画だと答えた。これに対してペロシ氏は、「それは目標であって計画ではない」と反論したという。

シューマー氏によると、トランプ氏はこれに対してペロシ氏を「三流の(third-rate)政治家」と罵倒した(ペロシ氏自身は後に、「三級の(third-grade)」と言われたと述べている)。

この時点で、民主党のステニ・ホイヤー下院院内総務が割って入り、大統領にそのような侮辱は議論の「役に立たない」とたしなめたとされる。

民主党幹部はこの後、会議を中断して退席した。

それからどうなった
会議のあとにホワイトハウスの外で記者団を前にしたペロシ氏は、「きわめて残念」なやりとりだったと話した。

「2対1で共和党も、自分のシリア政策に反対した。それがまったく受け入れらず、対応しきれなくなったので、あとはもうただ逆上するだけだった」とペロシ氏は、トランプ氏について話した。

シューマー氏は、ISについてどういう計画があるのか大統領に尋ねても「大統領には計画などなかった」とツイート。さらに、大統領は「無礼だった。特に、下院議長に対して無礼だった」と批判した。

https://twitter.com/SenSchumer/status/1184601926060654597

トランプ氏が話題の写真をはじめ、会議室での一連の写真を次々とツイートし始めたのは、民主党幹部たちが報道陣を前にこうして自分を批判した後のことだった。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1184597281808498688

もう1枚の写真には、「この人たちは僕のことが好きかな?」と書き添えている。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1184595335794036737

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1184600576245583873

3枚目の最後の写真は、民主党幹部が退席した後の、3つの空の椅子のものだった。ペロシ氏とシューマー氏を「何もしない民主党」と呼び、ペロシ氏は「今すぐ助けが必要だ」と書いた。

「(ペロシ議長は)今日ホワイトハウスで完全に逆上して我を失っていた。とても悲しい光景だった。彼女のために祈ろう。とても病んでる人だ」と、トランプ氏は書いた。

この写真がソーシャルメディアで次々と拡散すると、「#PelosiMeltdown(ペロシ逆上)」というハッシュタグで大統領に同調する人たちが出ると同時に、「#BeNancy(ナンシーのようになろう)」と下院議長を手本にしようと呼びかける人たちも続出した。

(英語記事 Trump and Pelosi: The 'meltdown' photo showing Washington divides / Turkey's Erdogan 'threw Trump's Syria letter in bin')

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-50092996
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17677
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/558.html

[経世済民133] 消費税率アップで日本経済は悪化するのか? 世界経済は「大停滞」局面入り、30年代連想させる−ダリオ氏 クラリダFRB副議長、米経済は良好な状況−顕著なリスクも指摘 米鉱工業生産指数:製造業が5カ月ぶり大幅低下−GMストが影響 中国経済、7−9月は6%成長と予想超える減速−世界経済に試練 中国経済は「懸念水域」 G20財務相、デジタル通貨の厳格規制で合意 深刻なリスク懸念 政策余地ある、必要なら追加緩和検討=黒田日銀総裁 中央銀行の政策をゆがませるインフレ目標2% 斜陽のドル円
消費税率アップで日本経済は悪化するのか?
2019年10月18日(金)18時45分
野口旭(専修大学経済学部教授)

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あの手この手の対策のせいか増税前の駆け込み買いはそれほど見られなかった TORU HANAI-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

<電子マネー還元や教育無償化で増税分を帳消しに――優遇措置で不況の本格化は避けられる?>

政府が行う経済政策の中で、税金ほどわれわれの生活に直結するものはない。税金の必要性は、社会全体の観点からは明らかである。

経済には、公的インフラや公共サービスのように、民間企業では適切に供給できないものが存在する。また、社会の安定化のためには社会保障も必要である。現代社会では、それらは政府が担うことが当然と考えられている。

しかしそれには資金が必要になる。政府はその資金を取りあえず国債の発行で賄うこともできるが、それには限度がある。その政府債務の限度がどのくらいかは実際にはよく分からないが、それが行き過ぎると、財政破綻や悪性インフレが生じると信じられている。そうならないために必要と考えられてきたのが、増税を通じた「財政再建」である。

他方で、われわれ個人の観点からは、税金は単に「政府による所得の収奪」だ。所得税は文字どおり政府への直接の所得移転である。消費税はそれを、物品売買ごとに間接的に行う。従って、増税すなわち税率の引き上げが行われれば、われわれの可処分所得は確実に減少する。そのため、われわれは支出の切り詰めを余儀なくされる。

つまり増税は、仮にそれが財政再建に必要であったとしても、ほぼ常に経済全体の需要を減らすように作用する。それは場合によっては、深刻な景気悪化につながる。

実際、1997年4月に行われた消費税率の3%から5%への引き上げは、厳しい景気悪化をもたらし、その後に続く長期デフレ不況の引き金となった。また、第2次安倍晋三政権によるアベノミクスの発動によって進展していたデフレ脱却を頓挫させたのは、2014年4月に行われた消費税率の5%から8%への引き上げであった。

財政に振り回された経済
消費増税の場合には、単なる可処分所得減少による支出減少のみではなく、「増税前の駆け込み需要の反動減」が加わるために、増税実行後の経済の落ち込みは、より一層大きくなるのである。

消費増税問題は、バブル経済が崩壊した1990年代以来、日本の経済政策の一大争点であり続けてきた。その長年にわたる論争と合意、そして延期の結果、2019年10月に因縁付きの増税が実行されるに至ったのである。

消費増税が政策課題としてクローズアップされた発端は、バブル崩壊後の税収減と財政支出によって急拡大した財政赤字を背景に、1994年に提起された「国民福祉税」構想だ。この構想は頓挫したが、増税方針自体は生き残り、1997年4月に消費税増税が実行された。

次のページ財政再建VS景気回復
この増税により、日本経済は戦後最悪の経済危機に陥った。それは、1996年頃までの緩やかな景気回復の中でそれなりに消化されているようにもみえた金融機関の不良債権が、景気の悪化によって一気に表面化したからである。その結果、1997年末から98年にかけて、日本を代表する金融機関が次々と破綻した。そのようにして生じた金融危機は、その後の日本経済に、デフレという厄介な病を定着させる契機となったのである。

日本経済は、この消費増税を契機とした経済危機の後、一時的な景気回復は見られたものの、経済停滞と財政悪化が同時進行する長期デフレ不況に陥った。そこで生じたのが、「増税による財政再建」論と「デフレ脱却と経済成長を通じた財政再建」論との路線対立だ。

これは要するに、財政再建を優先するか、景気回復を優先するかの対立である。財政再建派は、増税が一時的には景気悪化をもたらすことは認めるが、それは財政破綻を防ぐために甘受すべきとする。

それに対して景気優先派は、財政再建のためにもまずは増税ではなく景気回復によるデフレ脱却が必要だとする。それは、デフレとは物価や所得が継続的に下落することであるから、その物価や所得に依存する税収はデフレが続く限り減少して当然だからである。

こうした財政緊縮論と、反緊縮論すなわち景気優先論の対立は、景気悪化が続けば、日本に限らずどの国でも必ず生じている。2008年9月に米投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻し(いわゆるリーマン・ショック)、それを契機に「100年に1度」と言われる世界的不況が生じたとき、各国は一斉に景気回復のための拡張的財政政策、すなわち財政支出や減税を行った。

しかし、多くの国の財政状況は、厳しい景気悪化に伴う税収の減少と、この財政支出拡大の相乗効果によって、急激に悪化した。その結果生じたのが、2010年春のギリシャ危機を発端として欧州各国へと拡大した、欧州債務危機である。世界各国はこれを契機に、今度は逆に財政再建のための緊縮財政へと舵を切った。

そうした財政政策の右往左往を象徴する国の1つは、イギリスである。イギリスは、リーマン・ショック直後の2008年12月に、景気回復のため、付加価値税(日本でいう消費税)の17.5%から15%への引き下げを、各国に先駆けて実行した。

しかし、財政悪化懸念の高まりを背景として、2010年1月には税率を15%から17.5%に戻し、その1年後の2011年1月にはそれをさらに20%にまで引き上げた。つまりイギリスは、わずか2年の間に5%もの増税を行ったのである。

次のページ軽減税率が楽観論の根拠
今回の日本の消費増税の根拠となっている、旧民主党政権下の2012年6月に民主党・自民党・公明党によって取り決められた「社会保障と税の一体改革に関する合意」、いわゆる消費増税の3党合意も、ギリシャ危機以降の世界的な財政懸念を受けて成立したものである。そこでは、財政再建のために、5%であった消費税率を2014年4月から8%へ、さらに2015年10月から10%とすることが定められた。

しかしながら、その増税の完遂は結局、当初の予定から4年遅れることになった。それは、3党合意成立直後の2012年12月の総選挙によって、自民党・公明党が政権に復帰し、アベノミクスすなわち「金融政策、財政政策、成長戦略という3本の矢を用いたデフレ脱却」を掲げる第2次安倍政権が成立したからである。

安倍政権は、2014年4月の消費増税は予定どおり実行したものの、2015年10月に予定されていた2回目の増税は、難航するデフレ脱却をさらに困難にするという判断により、2度にわたり延期した。従って、今回の増税実施は3度目の正直ということになる。

駆け込みの反動減を警戒
今回の消費増税の影響については、専門家の間でも悲観論と楽観論が交錯している。悲観論の最大の根拠は、これまでの前2回の増税がいずれも事前の想定以上の負の影響をもたらした事実にある。間が悪いことに、好調を維持していた世界経済も今年に入って明らかに減速している。最も懸念されるのは、デフレ脱却がいまだ不十分であり、人手不足が喧伝されつつも、十分な賃金上昇までには至っていない点にある。

消費増税によって人々の実質所得がいったん減少したとしても、賃金が上昇し続けている限り、その負の影響は時間とともに打ち消される。諸外国では消費増税の下押し効果が一時的でしかないのは、そのためである。

竹下登政権下の1989年4月に導入された3%という最初の消費税が、ほぼ何の影響ももたらさなかったのも、当時の日本経済では毎年5%弱程度の賃金上昇が実現されていたからである。

それに対して、デフレによって賃金が十分に上昇しないなかでは、消費増税による実質所得の減少は、打ち消されることなくそのまま永続する。

他方で、消費増税の下押し効果は、今回はそれほど大きくないという楽観論もある。その最大の根拠は、これまでとは異なり、経済の落ち込みを回避するために、軽減税率をはじめとした数多くの対策があらかじめ準備されている点にある。軽減税率は納税を極めて煩雑化させるため、制度それ自体に対する関係者の評価は高くはない。しかしそれが、少なくとも納税者の負担を軽減することは明らかだ。

次のページ優遇措置で「駆け込み買い」回避
この軽減税率が人々の実質所得減少を恒久的に抑制するためのものとすれば、期限付きで行われるキャッシュレス決済のポイント還元やプレミアム付商品券は、駆け込み需要の反動減を抑制するためのものである。

高額なために税率引き上げの影響がとりわけ大きい自動車や住宅にも、さまざまな優遇措置が準備されている。これらの対策の結果、場合によっては増税以降に購入したほうが安くなるケースさえ生じている。今回は増税まで1カ月を切っても「駆け込み買い」が前回ほど見られなかったのは、おそらくそのためだろう。

損をしない消費のために
今回の増税のもう1つの特徴は、消費増税によって大きな負担を受ける子育て世代に対して、さまざまな還元措置が準備された点にある。1人につき最大2万5000円分の商品を2万円で購入できるプレミアム付商品券は、住民税非課税者と子育て世帯のみが購入可能だ。

さらに大きいのは、増税と同時に開始される保育料無償化(幼児教育無償化)だ。これによって、幼児1人当たり年間数十万円の負担が軽減される。世帯所得による差は出るものの、高等教育の無償化も実現される。それに対して、単身勤労者世帯や年金世帯が得られる恩恵は多くない。

今回の消費増税は、これまでとは大きく異なり、実質所得の減少や駆け込みの反動減による支出の急激な落ち込みを抑制するため、政府によりさまざまな対策が準備されている。個人の立場からは、煩雑ではあっても、それらをよく調べた上で、何をどこでどのタイミングで購入するのが最善かを、それぞれの商品ごとに検討する必要がある。

キャッシュレス決済のポイント還元は期限付きなので、購買はその期限内に行う必要がある。また、中小店舗へのシステム変更負担の軽減のため、5%の還元率が適用されるのは登録された中小店舗のみであり、コンビニ、外食などのフランチャイズチェーン、ガソリンスタンドでは還元率2%、大手スーパーや百貨店、現金支払いの店舗などでは還元なしとなっている。

つまり、損をしないためには「どこで買うのか」にも十分に注意する必要がある。

手厚い対策が講じられてはいても、増税後の消費の落ち込みは避けられないであろう。問題は、それが本格的な不況に転じはしないのかである。その点に関しては、基本的には政府の政策対応に頼る以外にはない。

そもそも第2次安倍政権は、デフレ脱却を最優先の政策目標に掲げてきた。政権の残りの期間中にデフレ脱却が宣言できるか否かは、政権の歴史的評価に関わる。もはや3党合意の縛りは存在しない以上、仮に今回の増税によってその実現が危うくなった場合、安倍政権はおそらく財政政策をフルに活用しようとするだろう。

<本誌2019年10月8日号:特集「消費増税からマネーを守る 経済超入門」から転載>

【参考記事】低成長、消費増税、少子化......それでも日本人は楽観していい
【参考記事】消費増税が痛い今こそ見直したい、不合理で結局は損な消費行動
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13216_4.php


世界経済は「大停滞」局面入り、30年代連想させる−ダリオ氏
Jeff Kearns、Piotr Skolimowski
2019年10月18日 14:56 JST
典型的なサイクル終了時の崩壊に向かっているわけではない
政治の二極化が1930年代に似る、来年の米大統領選は重要な意味持つ
ヘッジファンド運用で世界最大手の米ブリッジウォーター・アソシエイツを創業したレイ・ダリオ氏は17日、世界経済は政治が二極化し1930年代を連想させる「大停滞(great sag)」局面に入っているが、典型的なサイクル終了時の崩壊に向かっているわけではないと述べた。

  国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会に合わせてワシントンで開かれたCNBC主催のパネル討論会に参加したダリオ氏は、世界の債務水準や来年の米大統領選挙などの議論に加わり、マネーがあふれる世界経済に「大きく特異なことが起きつつある」と語った。

Key Speakers At The 2019 Milken Conference
レイ・ダリオ氏(5月)
  利下げや減税などの刺激効果は衰えつつあると指摘。その上で「サイクル終了時に古典的クラッシュを引き起こすような状況にはない」との認識を示した。

  長期の債務償還規模は大きく膨らみ、年金やヘルスケア関連などで「多くの支払い義務が生じ、負担になる」と主張。これらを背景に「現サイクルは消えつつあり、私に言わせれば大停滞とも呼ぶべき世界にわれわれは入った」と論じた。 

  ダリオ氏は政治の二極化が来年の米大統領選を市場と米経済にとって極めて重要なものにしているとし、「資本主義か社会主義かという問い掛けになる可能性が高く」、法人税に大きな影響を及ぼすだろうと予想。「米国と世界中で見られるのは、左派ポピュリズムと右派ポピュリズムの高まりに伴う対立拡大で、30年代にとてもよく似ている」と述べた。

原題:
Dalio Says Global Economy Is in a ‘Great Sag’ and Evokes 1930s(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-18/PZJPW9T1UM0Z01?srnd=cojp-v2


 

 

クラリダFRB副議長、米経済は良好な状況−顕著なリスクも指摘
Craig Torres
2019年10月19日 3:22 JST
FOMCは「成長持続に向け適切に行動する」
クラリダ氏、世界的なディスインフレ圧力のリスクを挙げる
米連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長は米成長見通しは好ましいが、リスクがある中で景気拡大を支えるため米金融当局は「適切に行動する」と述べ、3会合連続利下げへの可能性を残した。

  クラリダ副議長は18日、ボストンで講演。講演原稿によると、「米経済は良好な状況にあり、ベースライン見通しは好ましい」と発言。ただし、民間設備投資は「著しく」減速しており、「世界的な成長見通しの引き下げが続いている」と話した。

Fed Vice Chair Richard Clarida Speaks At Peterson Institute for International Economics
クラリダFRB副議長Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
  さらに、「世界的なディスインフレ圧力が米国のインフレ見通しを曇らせている」と指摘。米連邦公開市場委員会(FOMC)は「景気見通し、および見通しへのリスクを会合ごとに検証し、成長持続に向け適切に行動する」と付け加えた。

原題:
Fed’s Clarida Says Economy in Good Place With ‘Evident’ Risks(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-18/PZKWKA6K50XS01?srnd=cojp-v2

 


米鉱工業生産指数:製造業が5カ月ぶり大幅低下−GMストが影響
Katia Dmitrieva
2019年10月17日 22:20 JST 更新日時 2019年10月18日 4:37 JST
9月の米鉱工業生産指数(製造業、鉱業、公益事業の生産を対象、季節調整値)のうち、製造業生産は5カ月ぶりの大幅なマイナスとなった。ゼネラル・モーターズ(GM)の労働者ストライキや世界的な需要低迷、貿易戦争が押し下げ要因となった。

キーポイント
製造業の生産は前月比0.5%低下
ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は0.3%低下
前月は0.6%上昇(速報値0.5%上昇)に修正
自動車・同部品を除くベースの製造業生産は0.2%低下
前月0.7%上昇
全体の鉱工業生産は前月比0.4%低下
前月は0.8%上昇(速報値0.6%上昇)に上方修正
Output at U.S. factories slumped in September on GM work stoppage
インサイト
複数の要因が重なり、製造業生産の減速につながっていることが浮き彫りになった。GMの全米自動車労組(UAW)によるストの影響は工場だけにとどまらず、サプライチェーンにも拡大。製造業者は中国との関税合戦や世界的な需要低迷、国内投資の抑制といった課題にも直面している
GMとUAWがスト終結に向け暫定合意に達したことに伴い、製造業生産は今月か来月には持ち直す可能性も
自動車・同部品の生産は4.2%低下−1月以来の大幅マイナス
一次金属や機械、プラスチックの生産も低下
詳細
鉱業の生産は1.3%低下−過去3カ月で2度目のマイナス
石油・ガス田の掘削が5.5%低下−第3四半期(7−9月)では年率27.1%低下
公益事業は1.4%上昇−3カ月連続でプラス
鉱工業設備稼働率は77.5%に低下−前月は77.9%
製造業の設備稼働率は2年ぶり低水準の75.3%−GMのストを反映
統計の詳細は表をご覧下さい
原題:
U.S. Factory Output Falls Most in Five Months on GM Strike (1)(抜粋)

(統計の詳細を追加し、更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-17/PZISTHT0G1KX01?srnd=cojp-v2


フィラデルフィア連銀製造業景況指数:10月は5.6に低下−予想7.6
Dominic Carey
2019年10月17日 21:38 JST
エコノミスト40人の予想レンジは0.0−13.4だった。前月は12.0。

統計表
原題:
U.S. Oct. Philadelphia Fed Index Falls to 5.6, Est. 7.6(抜粋)

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-17/PZIQW8DWLU6E01?srnd=cojp-v2


 

中国経済、7−9月は6%成長と予想超える減速−世界経済に試練
Bloomberg News
2019年10月18日 11:16 JST 更新日時 2019年10月18日 14:55 JST
• 9月の工業生産は上振れも世界経済を後押しするには力不足
• 最高指導部が近日開く会議は刺激策の在り方を検討する機会となるか
中国経済は7−9月(第3四半期)に一段と減速した。9月の工業生産が予想を上回り、小売売上高も着実な増加を示したが、投資の伸び悩みが響き、世界経済を後押しするには力不足だった。
  18日発表された7−9月の国内総生産(GDP)は前年同期比6%増と、1990年代前半以降で最も小さな伸びにとどまり、エコノミスト予想の6.1%を下回った。4−6月(第2四半期)は6.2%増だった。
  9月の工業生産は前年同月比5.8%増。市場予想は同4.9%増加だった。小売売上高は前年同月比7.8%増と予想と一致。1−9月の固定資産投資は前年同期比5.4%増。予想(5.5%増)には届かなかった。

  7−9月の成長率は鈍化したが、1−9月で見ると6.2%成長となっており、中国政府は2019年の成長率目標(6−6.5%)を達成できるとなお示唆している。中国当局は既に高水準にある債務の拡大を警戒し、預金準備率の引き下げや与信支援など限定的かつ対象を絞った措置をこれまで講じてきた。
  共産党最高指導部が近く開く会議は刺激策の在り方を検討する機会となるかもしれない。
  HSBCホールディングスのアジア経済調査共同責任者、フレデリック・ニューマン氏は「中国経済は国内外の逆風に見舞われている」と指摘。「不安定な世界の需要と米国による関税強化で輸出はここにきて減少に転じている。9月の小売売上高と工業生産は幾分安定していたが、全般的な需要は減速が続いており、比較的タイトな信用状況が続いていることを反映している」とコメントした。
  1−9月のインフラ投資の伸びは4.5%に加速。9月の失業率は調査ベースで5.2%と横ばいだった。
  ブルームバーグ・エコノミクスの舒暢、曲天石両氏は「7−9月のGDP成長率は6%割れを回避したとはいえ、コンセンサス予想が楽観的なようだとのわれわれの見方と一致した。9月の工業生産は予想外に力強く伸びたが、投資の一段の減速はインフラ投資を使った景気下支えという難題を浮き彫りにした」とコメントした。

原題:China’s Economy Slows on Weak Investment, Testing Global Growth(抜粋)
(詳細を追加し更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-18/PZJSB7T0AFB501?srnd=cojp-v2

 


コラム2019年10月18日 / 16:59 / 6時間前更新
中国経済は「懸念水域」に、減速ペースが予想上回る
Christopher Beddor
2 分で読む

[香港 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国経済の減速は懸念すべき段階に達した。第3・四半期の経済成長率は6%に低下し、中国の当局者は見通しを引き下げている。一部の歴史に照らせば、中国の発展段階にとってあまりに低い伸びであることが示唆されている。

李克強首相は先月、中国のGDP(国内総生産)伸び率が少なくとも6%を維持するのは「非常に困難」になるだろうと発言。さえない結果を見込んだシグナルとして容易に解釈できる。一部のエコノミストは年内に6%を割り込むと予想し始めている。

一定程度のいわゆる構造的な減速は自然な現象だ。全ての途上国は米国の所得水準に近付くにつれてコピーできる裕福な国のアイデアを使い果たす。オックスフォード・エコノミクスによると、中国の成長率は2030年までに4%に低下し、その後は40年までに2.8%に低下する見通しだ。

しかし、中国は予想されているよりも速いペースで減速している。国際通貨基金(IMF)のデータに基づくと、購買力で調整した中国人1人当たりのGDPは米国人の約30%に過ぎず、依然として比較的貧しいままだ。ピーターソン国際経済研究所のニコラス・ラーディ氏によると、日本は米国の所得水準の約25%に達してから、さらに20年にわたって年平均9%超の伸び率を維持した。韓国は同じ期間に平均7.7%の伸びを達成。台湾とシンガポールはそれぞれ伸び率が8.4%と8.7%だった。

最近ですらエコノミストはより大きな伸びを予想していた。IMFは約10年前に始めた5年見通しで、中国の成長率は15─18年に平均で9%になるとみていた。実際は7%未満だった。

中国の経済規模は14兆ドルで、言うまでもなく既にアジアの他国を上回った。米国との貿易戦争や世界的な景気停滞も要因となっている。ただ、刺激策を巡る日々の激しいやり取りの中、政策立案者らは自らのまずい決断で潜在成長率が早く低下していることが見えなくなっている可能性がある。

カーネギー国際平和財団のユーコン・フアン氏によると、成長率が4─5%に低下すれば、予想されていた米国人の所得水準との「コンバージェンス(収束)」は事実上行き詰まるかもしれない。注意が必要なのは中国政府が経済開放という厳しい選択肢を取るのではなく、「新常態(ニューノーマル)」を受け入れることだろう。

●背景となるニュース

*中国国家統計局が18日発表した第3・四半期の国内総生産(GDP)は前年比6.0%増と、少なくとも27年半ぶりの低い伸びとなった。米中貿易戦争の影響で製造業の生産が不調となり、内需外需ともに低迷した。[nL3N2730MC]

*中国政府のウェブサイトで9月16日に公表されたロシアメディアとのインタビュー内容によると、李克強首相は中国経済が6%以上の成長を達成するのは「非常に困難」だと述べた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/china-economy-breakingviews-idJPKBN1WX0I9

 
コラム2019年10月19日 / 07:55 / 6時間前更新
ファーウェイ、足元好調でも厳しい局面が間近
Robyn Mak
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[香港 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)にとって追い風の時代が間もなく終わりを迎える恐れがある。国内のスマートフォン販売が堅調だったため、1─9月売上高は前年比で24%も増加した。たが来月には米政府による制裁が復活し、その全面的な影響をこれから受けることになる。国内需要も当てにならないと判明するかもしれない。

ファーウェイは今年5月、特別な許可がないと米企業と取引できなくなる米政府の輸出禁止対象に追加された。それでも今月16日に発表された最新の業績を見ると、事業は順調だ。1─9月売上高は6110億元(862億ドル)に達した。同社は限定的な財務データしか開示していないが、ロイターが計算したところでは第3・四半期の売上高も前年同期比27%増の1650億元と悪くない。

ありがたいことに、ファーウェイ創業者の任正非氏は中国国内に同社製品をずっと使ってくれる消費者を抱えている。世界全体のスマホ市場が縮小しているにもかかわらず、市場調査会社カナリスによると、中国におけるファーウェイの第2・四半期のスマホ出荷台数は3700万台と、前年同期比で31%増と実に目覚ましい伸びを示した。その犠牲になったのがアップル(AAPL.O)や、OPPO(オッポ、広東欧珀移動通信)、小米科技(シャオミ)(1810.HK)などで、いずれも第2・四半期にシェアが低下した。ファーウェイは、中国のスマホ市場で現在38%のシェアを50%に引き上げることを目指している。

こうした動きはファーウェイのライバルたちにとって悪いニュースだが、ファーウェイはかつてないほど足場が脆弱な様相だ。足元の増収は恐らく、米国の制裁発動前に登場したスマホにけん引されたのだろう。

またファーウェイは目下、米政府から制裁を猶予されているところで、11月には猶予期限を迎える。再延長がない限り、同社は通信機器とスマホの双方にとって重要な部品やソフトウエアのツールを利用できなくなる。ファーウェイが規制当局に提出した今年上半期の報告に基づいてジェフリーズのアナリスト、エディソン・リー氏が試算したところでは、在庫は3カ月分をやや超える程度だ。

同時に中国の景気が減速する中で消費は鈍っているだけに、ファーウェイが掲げる国内市場での野心的な戦略も達成は危うく見える。同社にとって、冬の訪れは予想より早いかもしれない。

●背景となるニュース

*ファーウェイが16日発表した1─9月売上高は6100億元(862億ドル)で、前年同期比24.4%増加した。この間の純利益率は8.7%だった。

*米政府は5月、ファーウェイを輸出禁止対象に加えた。米国の安全保障や国益に反する行為に関与したとの理由だ。その結果、特別な許可を得ない限り、米企業との取引は禁止される。ファーウェイ側は、自社製品が米国の安全保障の脅威になっていないと繰り返し主張している。

*ただファーウェイは8月、米政府から制裁発動の猶予が認められ、既存の通信ネットワーク維持や自社スマホのソフトウエア更新が可能になった。猶予期限は11月18日。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/china-huawei-breakingviews-idJPKBN1WX03S

ワールド2019年10月19日 / 07:00 / 8時間前更新
IMF、増資決定を23年に先送り 中国の影響拡大に米が懸念
Reuters Staff
1 分で読む

[ワシントン 18日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は18日、加盟189国がIMFの総融資能力を1兆ドルで維持し、資本増強に向けた決定を2023年12月まで先送りすることで合意したと発表した。

増資に向けた加盟各国の出資比率見直しに伴い中国の影響力が拡大することを警戒する米国が反対し、折り合いが付かなったもよう。

ゲオルギエワIMF専務理事は融資能力を巡る決定を受け、景気減速に対処する加盟国にIMFが十分な支援を実施できるという信頼感を与えると述べた。
https://jp.reuters.com/article/imf-world-bank-funding-idJPKBN1WX2NG


 


 

ビジネス2019年10月19日 / 07:05 / 8時間前更新
G20財務相、デジタル通貨の厳格規制で合意 深刻なリスク懸念
Reuters Staff
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[ワシントン 18日 ロイター] - 20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁は18日、米ワシントンで開いた会議で、フェイスブック(FB.O)が導入を計画している暗号資産(仮想通貨)「リブラ」などを含むステーブルコイン(法定通貨を裏付けとしたデジタル通貨)に対する厳格な規制を導入することで合意した。

ステーブルコインについては、主要7カ国(G7)の作業部会が、広範な規模で発行された場合に世界の金融システムと金融安定が脅かされる可能性があると警告していた。

G20財務相・中央銀行総裁は、ステーブルコインで恩恵がもたらされる可能性はあるとしながらも、公的政策と規制の面で「深刻な」リスクをはらむ恐れもあると指摘。声明で「こうしたプロジェクトが開始される前に、特に資金洗浄、違法資金、消費者と投資家の保護などに関連したリスクについて検証を行い、適切に対応する必要がある」とした。

日銀の黒田東彦総裁は、金融安定理事会(FSB)や金融活動作業部会(FATF)などの金融規制を担う機関の提案に基づき、ステーブルコインをどのように規制していくかG20として討議を開始すると表明。G20議長国として日本が設定した記者会見で、「ステーブルコインが持つ様々なリスクについて政策当局者から懸念が示された。こうした懸念が対応されるまで、ステーブルコインは発行されてはならない。こうしたことがG20で合意された」と述べた。

FSBとFATFは来年、G20に対しステーブルコインに関する報告を取りまとめるとみられている。

またG20は国際通貨基金(IMF)に対し、通貨主権の問題を含むステーブルコインの経済的な影響について調査するよう要請。黒田総裁は「新興国の間で、大規模な顧客ベースに裏打ちされたステーブルコインが国際的に広く利用されるようになった場合、何が起こるか懸念が出ている」と指摘。「こうした問題は新興国に限られたものではない。金融政策、および金融システムの安定に対し広範な影響が及ぶ可能性がある」と述べた。
https://jp.reuters.com/article/g20-libra-idJPKBN1WX2NQ


 


ビジネス2019年10月19日 / 06:40 / 3時間前更新
政策余地ある、必要なら追加緩和検討=黒田日銀総裁
Reuters Staff
1 分で読む

[ワシントン 18日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は18日、日本の金融緩和余地はまだあるとして、2%の物価目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れがある時は、当然、金融緩和を検討すると従来の方針を繰り返した。

20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議はこの日、2日間の討議を経て閉幕した。

黒田総裁は会議後の記者会見で「現時点で日本の金融政策の余地が非常に限られているということはない」と説明。「経済・物価動向をみて、2%の物価目標に向けたモメンタムが失われる恐れがある時は、当然金融緩和を検討する」と語った。

日本経済については「緩やかな拡大を続けており、このような状況が続けば消費者物価指数(CPI)も2%の目標に向け徐々に上昇率が高まる」との見通しを示したが、「それにはなお時間がかかる」とも指摘。「かなり強力な緩和を粘り強く続ける必要がある」と強調した。

その上で「経済・物価情勢を慎重に点検して、必要かどうかを決定する。緩和余地がないということはない」と繰り返した。

会議では参加者から「今後さらに緩和する余地は少なくなっている」との発言もあったという。これについて黒田総裁は「それぞれの国の財政や金融、経済の状況をみないと(判断できず)、一般論として金融政策の余地が少なくなってきたと割り切ることはできない」と述べた。

大規模な金融緩和を続ければバブルが発生するリスクと金融仲介機能が損なわれるリスクがあるが、黒田総裁はバブルについて「日本にそういうリスクは見当たらない」と指摘。金融仲介機能が損なわれるリスクについても「日本の金融機関は毎年2─3%融資残高を増加させている」として、「金融仲介機能が低下しているリスクも今のところ見当たらない」と語った。

*内容を追加しました。

木原麗花 志田義寧 編集:田中志保
https://jp.reuters.com/article/kuroda-boj-idJPKBN1WX2MA

 


欧州中央銀行の政策をゆがませる、インフレ目標2%の呪縛
THE EUROZONE’S 2% FIXATION

2019年10月19日(土)13時40分
ダニエル・グロー(欧州政策研究センター研究部長)

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ECBが大盤振る舞いの旗を振れば、ユーロ圏の公的債務は拡大する D-KEINE/ISTOCKPHOTO

<経済見通しの悪化を理由に金融緩和を再開、ユーロ各国に財政支出の拡大も促す危うさ>

欧州の経済政策をめぐる議論でこれまでよく引き合いに出される数字は3だった。GDP比の3%という財政赤字の上限だ。マーストリヒト条約が定める財政ルールはそう単純ではないが、政策論議では3%という数字が独り歩きしていた。

それが今や2という数字が幅を利かしている。ECB(欧州中央銀行)のインフレ目標2%だ。マーストリヒト条約に定められたECBの最優先課題は、「ユーロ圏の物価の安定」だが、ECBは何年か前に中期的にインフレ率を「2%未満だが、2%近く」にすると決定した。

ECBはこの目標を神聖視してきたが、長らく達成できなかった。ECBだけではない。この10年近く、多くの先進国では中央銀行がどう頑張ってもインフレ率は2%に届かない。

とはいえ、物価が思うように上がらないことが経済に悪影響を及ぼしているかと言うと、そうは見えない。ユーロ圏の雇用は着実に拡大し、失業率は記録的レベルまで下がっている。それでもなおECBは2%の旗を降ろそうとはしない。

そればかりか、今やECBはユーロ圏の景気が陰りを見せ、緩やかな景気後退もあり得るとして、マイナス金利の深掘りなどあらゆる手を使って金融緩和を推し進めようとしている。

経済見通しが悪化したから、金融緩和を推進する――この主張には何の問題もなさそうだが、よく考えてほしい。ECBの役割は中期的に物価の安定を維持することであり、好不況の波に対処することではない。景気に陰りが見えたからといって再び金融緩和に舵を切る理由にはならない。景気循環がもはや物価に影響を与えないような現下の経済状況ではなおさらだ。

金融危機は時間の問題
インフレ率が「2%近く」に達する見込みがないため、ECBはユーロ圏各国に財政支出を拡大するよう盛んにハッパを掛けてきた。これにはあきれる。マーストリヒト条約は、物価の安定を財政政策ではなく、金融政策で実現するよう定めているからだ。

ユーロ圏の雇用状況は引き続き良好なのに、「財政赤字を増やせ」と言うに等しい呼び掛けはいかがなものか。「財政赤字はGDP比3%以内」というユーロ圏の鉄則すら無視していいと言わんばかりだ。

次のページ低インフレは経済停滞の兆候?
何が何でもインフレ目標を達成すべきだという主張の論拠は単純だ。低インフレは(潜在的な)経済停滞の兆候だ、というのである。経済が成長し、失業率が下がっていても、政府と中央銀行はこの理屈で財政出動と金融緩和を正当化しようとする。

だが残念ながら、この理屈は通らない。近年では、ほぼどの国でも経済の停滞と物価上昇率の相関関係は見えにくくなっているからだ。インフレ率が2%に届かないからといって大盤振る舞いをする理由にはならない。

にもかかわらず、今や拡張主義的な見解が大きな影響力を持っている。特にこの何年か金科玉条のように「財政規律」が叫ばれた欧州では、各国政府はようやく支出拡大の理由を見いだし、世論もそれを歓迎している。

ECBもそれを後押ししている。公然とは言わないまでも、より積極的な財政政策を呼び掛けることで、金融政策のみではインフレ目標を達成できないことを暗に認めているのだ。

ECBの政策的なブレのせいで公的債務は拡大する。超低金利のおかげで当面は破綻を免れても、金融危機を招くのは時間の問題だろう。今度ばかりは違うって? さて、どうなるかは見てのお楽しみだ。

©Project Syndicate

<本誌2019年10月22日号掲載>
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/2-155.php


 

イタリア中銀総裁、ECBマイナス金利の一層の深掘りに消極姿勢
Piotr Skolimowski
2019年10月18日 6:48 JST
ビスコ総裁:最近の金融刺激策で全ての要素を支持したわけではない
マイナス金利の副次的影響にECBは非常に注意すべきだ
イタリア銀行(中央銀行)のビスコ総裁は、欧州中央銀行(ECB)の最近の金融刺激策について、自身は全ての要素を支持したわけではないと述べ、追加利下げの支持に消極的な考えを示唆した。

  ECB政策委員会メンバーのビスコ氏は17日にワシントンで、経済を後押しする上では量的緩和が依然としてマイナス金利よりも効果的だと指摘。マイナス金利の副次的影響にECBは非常に注意すべきだと警告した。

  ビスコ氏の見解は、成長率とインフレ率を再び押し上げるためのECBの最新の取り組みを巡る政策当局者の意見の隔たりを映す新たな側面だ。資産購入の再開は当局者の論争の主要部分で、9月の会合での反対は3分の1程度だったが、意見の溝はさらに深まりつつあると見受けられる。

  これまでのところマイナス金利は銀行に大きな打撃を与えておらず、実施された他の措置とともに悪影響を埋め合わせていると同総裁は指摘。「しかし、最終的に銀行収益にマイナスの影響を与え、銀行がローンの供給を縮小しかねないため、マイナス金利の意図しない結果を避けるために金利階層化のシステムを導入した」と説明した。その上で「われわれは懸念する一方で、この方向にさらに進むことに極めて慎重なのはこれが理由だ」と付け加えた。

原題:
Italy’s Visco Draws Line on Cutting ECB Rates Deeper Below Zero(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-17/PZJBSMDWRGG001?srnd=cojp-v2


 


ワールド2019年10月18日 / 14:14 / 7時間前更新
焦点:英経済に「相当厳しい」新ブレグジット協定案
Reuters Staff
2 分で読む

[ロンドン 17日 ロイター] - ジョンソン英首相が17日に欧州連合(EU)と合意した英EU離脱(ブレグジット)協定が発効すれば、メイ前首相の案に比べてEUとの経済障壁は高まり、国は貧しくなりそうだ。

合意した協定案を実行に移すには19日の英議会採決で承認を得る必要がある。ジャナス・ヘンダーソンを運用するポール・オコナー氏は「ジョンソン首相が(議会承認を得て)合意を最終締結することができたとしても、相当厳しいブレグジットになるという認識が広がり、投資家の歓迎ムードはすぐに冷え込むかもしれない」と言う。

英財務省と大半の外部エコノミストの試算によると、EUとの貿易障壁が高まれば、EUに残留した場合に比べて英経済の成長率は低くなり、障壁が高ければ高いほど悪影響は大きくなる見通しだ。

先週示されたジョンソン氏の案に基づき調査会社「変わる欧州の中のUK」が試算したところ、EU残留の場合に比べ英国民1人当たりの所得は中期的に6%、年間2000ポンド(2570ドル)相当減少する。

メイ前首相案の場合には所得減少率は5%未満にとどまり、「合意なき離脱」になると8%超減少する。

これに対しジャビド英財務相は17日、ジョンソン氏とEUの合意によって企業の設備投資を阻んでいた不透明感が晴れるのは「自明の理だ」と反論した。

<金融市場>

金融市場は、「合意なき離脱」のリスクが低下したとして17日の合意を歓迎した。

しかしUBSウェルス・マネジメントのエコノミスト、ディーン・ターナー氏は、これで英国の成長率は一時的に押し上げられるかもしれないが、長期的な通商環境が不透明過ぎて設備投資の回復には結びつかないとみる。「まだ祝う気にはなれない。経済活動は少し持ち直しそうだが、英経済が低成長トレンドから抜け出せるほど有意な回復ではないだろう」

シンクタンク、欧州改革センターの推計では、2016年の国民投票でEU残留を選んでいた場合に比べ、英国経済の規模は既に約3%小さくなっている。

ジョンソン氏が合意した協定案はメイ氏がEUと合意した案と概ね同じだが、付随する「政治宣言」の内容が薄まったとアナリストは指摘する。

メイ氏の案では今後EUと結ぶ貿易協定について「可能な限り密接な」貿易関係を目指すとしているが、修正案では「野心的な」の一言に置き換えられた。

シンクタンク、インスティテュート・フォー・ガバメントのアレックス・ストジャノビッチ氏は「メイ氏の案であれば、単なる自由貿易協定(FTA)よりも柔らかい協定になっていただろう。現政権が望んでいるのはFTAだとみられ、様相はかなり異なる。英国とEUの間で、特にモノの貿易における規制障壁が残るということだ」と話す。

ホーガン・ラベルズの金融サービス分野専門弁護士、ラケル・ケント氏によると、当初の政治宣言案でも、英国はEU市場にアクセスするためにはEUの規制に縛られるはずだったが、修正案ではその点がよりあからさまになった。英規制当局は、EU離脱後は「ルールを受け入れる」のではなく「作る」立場に立ちたいとしているため、英国とEUの金融市場が分断される可能性が高まるという。

ストジャノビッチ氏は、英国は世界中の国々と二国間貿易協定を結ぶ自由を得るが、ブレグジットによって失われる経済活動を穴埋めすることはできないとみる。「英国がすべての国と協定を結ぶとしても、15年後に英国の国内総生産(GDP)を0.2%押し上げる程度だろう。大半のFTAはGDPにさほど寄与していない」

(David Milliken記者、Mark John記者)

*カテゴリーを追加して再送します。
https://jp.reuters.com/article/uk-brexit-idJPKBN1WX0B4

 

 

ビジネス
2019年10月18日 / 13:29 / 1日前
焦点:斜陽のドル/円、取引減止まらず 値動き乏しく魅力低下
基太村真司
4 分で読む


[東京 18日 ロイター] - 為替市場でドル/円の存在感が低下している。取引高は依然としてユーロ/ドルに次ぐ第2位だが、最近の調査では主要通貨間で唯一、減少傾向に歯止めがかかっていないことがわかった。主因と考えられているのは、値動きの悪さ。今年も年間値幅が過去最低を更新する見通しであるなど動きが乏しく、投資対象としての魅力が低下。投資の減少が値動きを抑制するという循環に陥っている。
<取引高は3%減、ユーロ/ドルは3割増>
国際決済銀行(BIS)が3年に1度実施している為替取引高調査によると、2019年4月のドル/円の取引高は1日平均で8710億ドルと、前回16年調査から3%減少した。主要通貨間で16年に続いて、取引が減少したのはドル/円のみ。新興国通貨を含めても、連続減はユーロ/トルコリラなど数えるほどしかない。
前々回調査の13年、為替取引は円のみならず世界的に増加した。16年はその反動で多くの通貨が減少したが、それも一巡し今年は軒並み復調。取引高トップのユーロ/ドルは13年に34%増、16年には5%減少したが、19年は30%増だった。
ドル/円取引減少の要因は、端的に言えば儲からないためだ。「相場が動かないので儲からない。投資が少なくなれば値動きも鈍るという循環になっている」(バークレイズ証券のチーフ為替ストラテジスト、門田真一郎氏)という。

<「フラッシュクラッシュ」含めても値幅は8円>
今年のドル/円の高値は4月につけた112.40円。安値は1月3日に日本勢不在の中で瞬間的につけた104.10円だ。値幅は8.30円。変動相場制移行後に初めて年間値幅が10円を割り込んだ昨年を、現時点ではさらに下回っている。
1月3日や8月26日など、ドルが安値を更新した際でさえ、自動売買システムが介在していたことが多く、実際の取引高は少なかった。特に正月休みだった1月3日は、短時間で5円近い値動きとなったものの、市場筋によると、下落・反発局面で成立した取引高は10億ドルにも満たなかったという。
取引がほとんど成立せず、気配値だけが大きく振れた日を含めても値幅が8円強。「実質的には105─110円プラス誤差、の上下5円ぐらい」(都銀)というのが市場参加者の実感だ。

<アベノミクスへの失望>
ドル/円が動かなくなった一因は、海外投資家の「アベノミクス」に対する期待感の後退にあるとみられている。
2013年、日銀の大規模緩和と巨額財政出動、海外投資の活発化といったアベノミクス効果で、ドル/円は年始の安値86円から年末高値の105円まで20円弱急騰。取引量も10年対比で72%増とほぼ倍増した。対ドル以外も含む円の取引シェアは23%まで拡大。10年調査ではシェア39%と20%ポイントあった2位ユーロとの差を、一気に10%ポイントまで詰めた。
しかし、景気回復は他国に比べ遅く、物価も2%の目標に到達していない状況が続く。当初は日本の大変革に期待した海外勢の期待も薄れ、ドル/円は16年6月に一時100円を割り込んだ。その後は、年を追うごとにレンジは小さくなっている。
「期待した成長戦略は一向に進まず、失望をあらわにする海外投資家も少なくない」(外資系証券)という。アベノミクス以降の海外勢の日本株累計買い越し額(現物と先物の合計)もぼぼ消滅。円売りと日本株買いを組み合わせた「ダブル・デッカー(二階建て)取引」はすっかり鳴りを潜めている。
ドル側の要因もある。金利の低下したドルがキャリー取引の調達通貨として使われる機会が増え、円と同じ特性をドルが持ち始めたことだ。これによって、ドルと円は市場心理の明暗に応じて同じ方向へ動くことが増え始めた。
4月の通貨オプション市場では、ドル/円の1年物予想変動率(インプライド・ボラティリティー)が過去最低を更新した。

<光明はクロス円>
斜陽の円相場にも光明はある。ユーロ/円や豪ドル/円といった、クロス円の取引は増加していることだ。主要クロスだけでなく、対新興国通貨も増加している。BISによると「高金利通貨の対円取引は日本の個人投資家に魅力があり、世界平均より取引高の増加ペースが早い」という。
BISの集計では、トルコリラ/円と南アフリカランド/円、ブラジルレアル/円を合計すると、今年4月の1日平均取引高は120億ドル。ドル/円の取引規模にはまだ遠く及ばないが、16年の70億ドルからほぼ倍増した。取引通貨の広がりを受けて、クロス円取引に占めるユーロ/円の割合は、04年の8割超から19年に5割を割り込んだ。
しかし、その理由も日本経済の「低温度」にある。国内の低金利環境が長引く中、運用難に悩む国内大手機関投資家が、リスクは高くても金利収入が見込めそうな国や発行体をやむなく対象とし始めるなど、投資先を広げているためだ。
通貨の安定は、企業にとっては収益の安定につながるため、必ずしも悪いことではない。むしろ安定を望む声の方が多いだろう。しかし、通貨の動かない理由が日本経済への失望では、明るい未来は描けない。

(編集:青山敦子)

https://jp.reuters.com/article/dollar-yen-trade-idJPKBN1WX0D4


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/422.html

[経世済民133] 35歳からの転職で「やりたいこと探し」をしてはいけない理由
35歳からの転職で「やりたいこと探し」をしてはいけない理由
丸山貴宏:株式会社クライス・アンド・カンパニー代表取締役

キャリア・スキル 転職で幸せになる人、不幸になる人 丸山貴宏
2019.10.14 5:45
 
転職
35歳からの転職で「やりたいこと探し」を避けたほうがよい理由とは?

35歳以上の転職で
「イチから勉強します」はNG
 新卒時の就職活動では、自己分析を行い、それに基づいてやりたいことを定めたり、応募先を決め志望動機を作成したりするといったアプローチがよく取られます。

 その癖が身についているせいか、あまり自覚のないまま転職活動においても、新卒時の就活と同様のアプローチで行う人がいます。しかし第二新卒者は別として、転職者はすでにビジネスパーソンとしてさまざまな経験を積んでいるのですから、それらを生かすことを考えたほうがよいと思います。

 ましてビジネス経験を積んだ30代半ば以降、とりわけ40代の転職活動ともなれば、自分のやりたいことを探しに行こう、その機会を与えてもらおうといった“就職的な感覚”で行わないほうがよいでしょう。そうではなく、自分の実力をいかんなく発揮するために新しい職場へ行くという感覚が必要で、転職先選びもこの視点で行うことが重要なのです。

 ベテランのビジネスパーソンなら長年、業務に従事するなかで培った知識や人脈など、持っている「財産」がたくさんあるはずです(ない人は論外です)。それを有効に活用できる職場かどうか、という視点から転職先候補の企業をチェックするのです。

 つまり、自分が築いたキャリア資産を「どの会社に持っていけば最も活性化できるのか」という発想で会社選びをするということです。35歳以上は、即戦力として期待されています。転職してからいろいろ新しく勉強をして、いままでできなかったことをできるようにするための時間はそれほどありません。

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35歳からの転職は「自分は何で役立てるか」で考える
もちろん勉強しなければいけないことが出てきたり、本人が積極的に学び直したいことがでてきたりすることもあると思いますが、それが仕事の100%になってしまっては、つらくなります。私見ですが、新たに勉強する、身につけることは35%くらいが上限で、残りの65%くらいは今までやってきたことがおのずと生きるくらいのバランスがちょうどよいと思います。

 これまで蓄積してきたものを新しい職場に行って発揮することで周りに価値を提供しつつ、新たな環境ならではの学びや経験をキャリアに付け加えていく。35歳以上の転職はそのような形にする必要があると思います。

35歳からの転職成功のカギは
「自分は何で役立てるか」を考えること
 これは単純に同じ業種、業界に転職せよという話ではありません。重要なのは、即戦力としてこれまでのキャリアの蓄積を生かす部分と、新たに学ぶ部分のバランスが適切になっていることです。

 たとえば、パッケージソフト会社の事業部長をやっていた人がクラウドサービスの会社に転職し、前職で築いたネットワークを活用してどんどん受注を獲得する一方、マネジャーとして前職よりも大きな組織を動かす新たなチャレンジに取り組む、というように。

 40歳を過ぎてからの転職でうまくいっている人を見ていると、このバランスがうまくとれている人が多いと感じます。

 では、これまでの蓄積を生かせる仕事かどうかを判断するにはどうすればよいかといえば、転職先候補の会社を調べたり面接を受けたりするときに、「自分は何をやりたいか」というより、「自分の何をもってお役に立てるのか」という視点で見ていくことです。

 もちろん、自分が強烈にやりたいことがあって転職を考えているなら、それができる会社や職場を探せばよいでしょう。しかし30代半ばを超え、強烈にやりたいことがあるわけではないのに「自分がやりたいことは何だろう」と考え続けているのなら、「自分は何で役に立てるだろうか」という発想に切り替えて、そこに集中したほうがよいと思います。

 よい意味で、「諦める」ことも必要なのです。

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やりたいこと探しの呪縛を解く発想とは?
やりたいこと探しの呪縛を解く
「求められていることをやる」という発想
 実は私自身、7〜8年くらい前まではいまの仕事が本当にやりたいことなのか、正直わかりませんでした。やりたいこと探しをしていたわけではないのですが、「本当に自分がやりたいと思うことをやらなければいけない」という考えにとらわれていたのかもしれません。

 しかし日々、さまざまな業務に取り組む中で、関わった皆さんが喜んでくれたり感動してくれたりすることがたくさん起こるのは、転職やキャリアという分野においてでした。

 ということは、限られた時間のなかで最も私が世の中のお役に立てることは、おそらく転職やキャリアに関する仕事である。何か猛烈にやりたいことや成し遂げたい目標がないのであれば、潔く自分が求められている仕事に集中しよう。そう思った瞬間からとても気が楽になり、仕事で喜んでもらえることも増えたという実感があります。

 人間は自分がやったことに対する反応がないと、それを継続するのは難しいです。そうであるからには、自分が役に立てるのがわかっている仕事をやるのが賢明です。35歳以上、とくに40歳以上ともなれば多くの経験を積み、キャリア資産を築いているのですから、「やりたいこと」軸ではなく「役に立てる」軸で考えていったほうがいいのです。

(株式会社クライス・アンド・カンパニー代表取締役 丸山貴宏)

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丸山貴宏
https://diamond.jp/articles/-/217416?page=3

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/427.html

[経世済民133] マイナス金利の独国債、スイスや中国が購入する理由 緩和必要なら短中期金利を「確実に」引き下げ=黒田日銀総裁
トップニュース2019年10月20日 / 08:51 / 12時間前更新
焦点:
マイナス金利の独国債、スイスや中国が購入する理由
Dhara Ranasinghe
2 分で読む

[ロンドン 17日 ロイター] - 利回りがマイナス圏に沈んでいるドイツ国債に対して、外国人投資家の買い越しが続いている。買い手はスイスや中国の外貨準備運用当局ではないかとの観測がもっぱらだ。

ドイツの残存10年ゾーンの国債は3月以降、大半の銘柄がマイナス利回りとなり現在はマイナス0.4%前後と、1年前から1%ポイントも低い。8月上旬からは、全てのドイツ国債の利回りがマイナスで推移している。

ほとんどの投資家にとっては、たとえ長期保有を志向する向きであっても、こうした状況は投資先として魅力がない。満期まで持っていれば損失が発生するからで、資産運用会社や保険会社などはドイツ国債の保有を減らしている。

ただドイツ連銀によると、外国人のドイツ国債購入は増加しており、4月には2015年初め以来初めて買い越しを記録。最新データとなる今年7月時点では、資金流入額が前年比3.6%増と15年3月以降で最大の伸びになった。

コメルツ銀行が社内の取引に基づいて集計した別のデータでも、今年第1・四半期の外国人によるドイツ国債買いが4年余りぶりに増加したことが示された。

4─7月だけでドイツ国債利回りが40ベーシスポイント(bp)下がったことと併せて考えると、マイナス利回りを気にしない特定の投資家の存在が浮かび上がってくる。

コメルツ銀行の金利戦略責任者ミヒャエル・レスター氏は「謎が完全に解けたわけではないが、さまざまなデータから外国人による相当な規模のドイツ国債購入があったとかなり安心して結論付けられる」と述べ、該当する公算が大きいのは機関投資家ではなく、特に最近数カ月で言えば中央銀行だろうと付け加えた。

<中銀が買う理屈>

中銀など外貨準備の運用担当部門は秘密主義で、通常は戦略転換があっても公にせず、ドイツ政府も具体的にどんな外国人が国債を買ったのかは明らかにしない。それでも各種伝聞情報から、複数の中銀が買いに動いた様子がうかがえる。

根拠の1つとなるのは、主な資産運用会社と異なり、中銀は利回りの絶対水準にそれほど敏感にならず、金融政策ないし外貨準備保有のために国債を買うことが挙げられる。

実際、国際通貨基金(IMF)の最近のデータでは、第2・四半期の世界の外貨準備構成におけるユーロの比率は前期の20.23%から20.35%に高まった。もっともこの間にユーロが約1.6%上昇しており、そうした値上がりがシェア上昇に反映された面もある。

ユニオン・インベストメントのチーフエコノミスト、Jorg Zeuner氏は「ほとんどの外国中銀の外貨準備におけるドイツ国債の比率は大きく、外貨準備が増える限り、ドイツ国債の需要は継続するだろう」と予想した。

特にドイツ国債を積極的に買っているのは、スイス中銀だ。スイスフラン高を抑える為替介入を実施するたびに、いつもドイツ国債を購入している、と専門家は話す。

同中銀は各銀行の口座に新たに創造したスイスフランを入金し、それと引き換えに外貨、通常はユーロを購入する。この口座の6月末時点の残高は4710億フランと、11年7月の560億フランを大きく上回っている。

最近数カ月は、スイスフランの対ユーロ相場が堅調に推移するのと軌を一にして、口座残高が急増した。

米外交評議会で国際的な資金フローと中銀の準備政策を長年研究しているブラッド・セッツァー氏は「スイスが外貨準備を拡充する場合、資金がドイツ国債に向かうと予想できる」と強調した。

中国とドイツ国債の直接的な結び付きはより乏しいとはいえ、同国は8月、対米貿易摩擦激化の中で米国債保有を過去2年余りで最低の水準に引き下げた。債券アナリストは本当に中国が米国債保有をそこまで削減したとデータで確実に裏付けられたと主張することはためらいながらも、中国政府が一部の資金をユーロ圏に移したという事態は十分にあり得ると指摘する。

セッツァー氏は「最新データは中国が8月に米国債をかなり売却したことを示唆しており、資産構成多様化の一環としてユーロ圏の資産を買った可能性はある」と述べた。

一方、普段ならトリプルA格のドイツ国債は安全志向の年金基金や保険会社を引き付けるはずだが、現状彼らは新規購入に後ろ向きのように見える。

足元で実施されたドイツ30年国債入札は低調で、ドイツメディアは同国保険協会のチーフエコノミストの発言として、現在国債を買っているドイツの保険会社はほとんど存在しないと伝えた。

日本勢は米国債に資金を振り向けており、マイナス利回りの債券は敬遠。ネットベースで7月に226億円相当、8月も3744億円相当のドイツ国債を売却した。「今の利回り水準ならドイツとフランスの国債には投資できない」(大樹生命幹部)との声が聞かれた。
https://jp.reuters.com/article/germany-bonds-analysis-idJPKBN1WX0MW

 

2019年10月20日 / 08:46 / 3時間前更新
EXCLUSIVE-緩和必要なら短中期金利を「確実に」引き下げ=黒田日銀総裁
Leika Kihara and Kieran Murray
2 分で読む

[ワシントン 19日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は19日、ロイターのインタビューに応じ、追加の金融緩和が必要になれば短期・中期の金利を「確実に」(certainly) 引き下げると語り、高まる海外経済のリスクに対し、マイナス金利の深堀りが主要な選択肢との考えを示した。

また、市場が大きく動けば現状の枠組みでも上場投資信託(ETF)の買い入れを増やすことは可能と述べ、景気に悪影響を与えかねない株価下落に対応する準備があることを示唆した。

20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議出席のため、米ワシントンを訪れている黒田総裁はロイターに対し、「世界経済の見通しは、総じてより活発さに欠けている。成長が回復する時期は幾分後ずれしている」と語った。

その上で「もし追加の金融緩和が必要なら、確実に短期・中期の金利を引き下げる。超長期金利の低下は望まない」と述べた。

黒田総裁のこうした発言は、米中貿易摩擦と世界的な需要の落ち込みに対する日銀の懸念を裏付ける。市場関係者の間では、こうした海外経済の減速を受け、日銀が10月の金融政策決定会合で追加緩和に踏み切るとの観測が出ている。

さらに黒田総裁の発言は、緩和に踏み切る場合、短期金利を一段と引き下げ、マイナス金利を深堀りする可能性が最も高いことも強く示している。

黒田総裁は、短期・中期金利の引き下げは経済にプラスに作用する可能性がある一方、超長期ゾーンを過度に引き下げると、年金や生命保険の運用に悪影響を与え、消費者心理を冷やしかねないと語った。

日銀はイールドカーブ・コントロール(YCC)の枠組みの下、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導している。国債とともに、ETFなどのリスク資産も購入している。

日銀が前回の会合で、海外リスクの高まりを警告し、政策対応に踏み切る可能性を示唆したことで、市場では日銀が10月30、31日の金融政策決定会合で追加緩和するのではとの観測が強まっている。

10月会合で緩和が必要なほど海外のリスクは高まっているか、との問いに黒田総裁は「確定的に言うのは少々難しい」と答えた。

黒田総裁は、米中協議に多少の進展が見られる一方、対立は続く可能性があり、英国の欧州連合(EU)離脱の先行きもまだ不確実だ、と指摘。「世界経済の下振れリスクが非常に高まったとか、非常に縮小したとか言うことはできない。リスクの高い状況が続くと思う」と語った。

そのような海外リスクと国際通貨基金(IMF)による世界経済見通しの下方修正は、日銀の日本経済の見通しに影響を与えるとも付け加えた。

黒田総裁は、2%の物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれる場合、日銀はちゅうちょせず金融緩和するという従来の見解を繰り返したが、いつ行動するかについて前もってアイデアがあるわけではないと述べた。

「あらかじめ政策を決めていることはない。すべて経済データ次第だ」とし、今月の政策決定は既定路線ではないと示唆した。

日銀は追加緩和する場合の政策オプションとして、短期政策金利の引き下げ、長期金利操作目標の引き下げ、資産買い入れの拡大、マネタリーベース拡大ペースの加速の4つがあるとしてきた。

黒田総裁はマイナス金利の深掘りが主要なオプションの1つだと発言してきたが、アナリストらはマイナス金利のさらなる低下は地方銀行の資金繰りを悪化させ、消費者マインドを傷めると警告している。

マイナス金利深掘り以外ではどんな政策ツールがあるかとの質問に黒田総裁は「いくつかのオプションの組み合わせや応用がある」と指摘したが、詳細は語らなかった。

「資産買い入れプログラムを拡大することもできる。われわれの資産買い入れプログラムは長期国債だけでなくETFなども含む」と述べ、「金融緩和によって経済に影響を与える様々なツールがある」とした。

日銀は現在の資産買い入れプログラムの下で、保有残高が年間6兆円のペースで増えるよう、ETF買い入れを行っており、市場の状況に応じてそのペースは変動するとしている。

Slideshow (2 Images)
黒田総裁は「われわれのETF買い入れは非常に柔軟だ。現在の制度の下でも、必要ならETFの買い入れを大幅に増やすこともできる」と発言。年間6兆円のペースで買い入れを増やすという現在のコミットメントの下で、ペースを拡大することも可能との考えを示した。

インタビューは英語で行われました。
https://jp.reuters.com/article/interview-boj-kuroda-idJPKBN1WY0RC
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/430.html

[国際27] 米国民、上位1%の金持ちに入るには少なくとも5600万円の年収必要 米IRS、仮想通貨取引巡る新たな納税ガイダンス発表−課税強化へ G20が「ステーブルコイン」規制の必要性を主張、リスク抑制へ
米国民、上位1%の金持ちに入るには少なくとも5600万円の年収必要
Alexandre Tanzi、Ben Steverman
2019年10月17日 12:59 JST
• 上位1%に入るのに必要な年収額は2011年から33%上昇
• 上位0.001%のエリートの17年年収は6340万ドル以上
金持ちの定義の一つは上位1%に入ることだが、そこに到達するのはかつてより難しくなっている。
  今週発表された米内国歳入庁(IRS)のデータによると、2017年の所得で上位1%に入るには年収が51万5371ドル(約5610万円)なければならない。これはインフレ調整後でも前年を7.2%上回る。
  「ウォール街を占拠せよ」運動が「われわれは99%」というスローガンを掲げた2011年以降、上位1%に入る基準額はインフレ調整後で33%上昇した。上位0.1%に入るには、17年の年収240万ドルが必要で、これは11年から38%増えていた。上位0.01%のしきい値は46%上昇した。
  全米で1433人いる上位0.001%のエリートの17年年収は6340万ドル以上で、これは11年より51%高かった。
  納税者の中央値では、年収は11年以降20%増加だった。
.001% Club
Americans need $63.4 million to join the top .001%; $41,740 to be in top half

Source: IRS
Note: AGI= Adjusted gross income
  不平等の拡大は、民主党の大統領選挙キャンペーンの最重要項目だ。
  同党のサンダース上院議員(バーモント州)は15日の討論会で「所得と富のこれほどの不平等を放置することはできない。45年にわたり米国の勤労者世帯を虐げてきた富裕層の貪欲と腐敗を容認することはできない」と訴えた。
Tax Burden
Top 50% of taxpayers pay 96.9% of income taxes

Source: Internal Revenue Service
Note: AGI = Adjusted gross income share (percentage)
Average Tax Rates
Average tax rate for the top 1% was 26.8% in 2017, up from 23.3% in 2008
Source: IRS
原題:
Americans Now Need at Least $500,000 a Year to Enter Top 1% (1)(抜粋)
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-17/PZHYH0T0AFB901?srnd=cojp-v2


 

米IRS、仮想通貨取引巡る新たな納税ガイダンス発表−課税強化へ
Laura Davison、Allyson Versprille
2019年10月17日 14:18 JST
ルールと質疑応答形式の資料を公表、新たなガイダンスは14年以来
「ハードフォーク」や「エアドロップ」の場合の納税義務も明記
米内国歳入局(IRS)の新たな指針のおかげで、仮想通貨保有者の納税申告書に何が期待されるかについて一段の詳細が分かった。

  IRSは9日、ルールと質疑応答形式の資料を公表し、仮想通貨投資家とその税務アドバイザーに仮想通貨取引に絡んだ申告方法を説明した。こうしたガイダンスは2014年以来。税務当局は個人の仮想通貨投資家の調査をますます重視している。

  サンフランシスコの税務弁護士、ジェームズ・クリーチ氏は「コンプライアンスが欠如していた投資家に順守を促すものだ」と指摘。「仮想通貨取引について、やらなくてはならない実際の事務作業がどっさりある」ことに人々はすぐに気付くだろうと述べた。

  IRSは幾ら買ったかを証明し売却時に発生する納税額を確定させるため、納税者に仮想通貨の売買記録を義務付けている。「ウォレット」と呼ばれる口座間でのコイン移転についても、非課税であることをIRSに証明するには記録を残す必要がある。

  新たな指針には、保有期間が1年未満の資産を短期キャピタルゲイン課税の適用対象とする長年のルールも含まれている。より長期の保有者は23.8%の優遇税率の対象となる。

  また、「ハードフォーク」と呼ばれる取引で新しい仮想通貨が誕生した場合や、「エアドロップ」と呼ばれるものを通じて仮想通貨が分配された場合について、所得税の納税義務が生じるとしている。

  仮想通貨投資の人気と価値が高まる中、IRSはここ数年、その税法執行に当たって困難に直面してきた。今回のガイダンス発表までIRSからの情報が比較的少なく、投資家と税務アドバイザーは仮想通貨取引に伴う申告・納税方法について経験から推測するしかなく、中には申告を怠る納税者もいた。

  ジョンソン・ムーア法律事務所のパートナー、グィネビア・ムーア氏は仮想通貨のアカウント所有者と提出される納税申告書の数には「大きなギャップ」があり、その差は「実に驚くほどだ」と述べた。

原題:
Cryptocurrency Investors Get New IRS Income-Reporting Rules(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-17/PZ5B1YT0AFB601


 

G20が「ステーブルコイン」規制の必要性を主張、リスク抑制へ
野原良明、Enda Curran、Yinan Zhao
2019年10月19日 6:43 JST
価格変動を抑えるため法定通貨と連動するなどした「ステーブルコイン」と呼ばれるデジタル通貨について、20カ国・地域(G20)は同通貨を実際に発行する上では、リスクに対応する規制が整備されなくてはならないとの見解を示した。

  ワシントンで開催されていたG20財務相・中央銀行総裁会議は18日の閉幕後のプレスリリースで、「われわれは、金融技術革新による潜在的な便宜を認識しつつも、グローバル・ステーブルコインおよびその他のシステム上大きな影響を与え得る類似の取り組みが政策および規制上の一連の深刻なリスクを生じさせることになるということに同意する」と表明。こうしたリスクにはマネーロンダリングや不正な金融が含まれるとしている。

  日本銀行の黒田東彦総裁は記者会見で「適切な規制というのを考えないといけない」と発言。仮に巨大な基盤をもつステーブルコインがグローバルに使われるようになると「金融政策や金融システムの安定にも影響を及ぼす可能性がある」と述べた。

  黒田総裁はまた、金融政策の限界がきている、もしくは金融政策の余地が狭まったかどうかに関してG20でコンセンサスはなかったと指摘。日銀は必要に応じて追加緩和を実施するとの自身の見解をあらためて示した。

原題:
G-20 Says Stablecoin Regulation Needed to Curb Risks: IMF Update(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-18/PZL71WDWRGG101?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/563.html

[自然災害22] 台風20号北上 本州で再び大雨のおそれ • 22日(火) 秋雨前線の活動が活発に 東海や関東で大雨の恐れ • 台風21号発達へ 24日(木)頃は小笠原諸島で大荒れの恐れ
台風20号北上 本州で再び大雨のおそれ
藤野 勝成日本気象協会 
2019年10月20日18:31

22日(火)は台風や前線の影響で、先に被災した地域も含めて再び大雨のおそれがあります。今後の情報に注意して下さい。

ポイント解説へ
台風20号は北東進
あす21日は沖縄で荒天
身の安全確保を

台風20号は北東進
画像a
強い台風20号は、20日午後3時には沖縄の南にあって、1時間に約20キロの速さで北北東へ進んでいます。中心の気圧は975hPa。中心付近の最大風速は35メートル。中心から半径70キロ以内では、風速25メートル以上の暴風となっています。
強い台風20号は、今後北東へ進み、あす21日には暴風を伴ったまま、沖縄地方や奄美地方に接近するでしょう。その後、22日の朝には四国の南で、低気圧に変わる見通しです。
あす21日は沖縄で荒天

沖縄地方や奄美地方では、台風の接近に伴って次第に風が強まり、沖縄地方では、あす21日の昼過ぎにかけて、非常に強い風が吹き、海上はしけとなるでしょう。あすにかけて予想される最大風速は、沖縄地方で25メートル、予想される波の高さは沖縄地方で6メートルなどとなっています。沖縄地方では暴風やうねりを伴った高波に警戒して下さい。
また、台風周辺の発達した雨雲のかかる所があり、大雨となるおそれがあります。あす夕方までに降る雨の量は多い所、九州南部で100ミリとなっています。台風が近づく地域では土砂災害や低い土地の浸水などに注意して下さい。
身の安全確保を

あす以降、台風の北上とともに日本の南にのびる前線も北上してきます。22日(火)は、台風が持ち込んだ暖かく湿った空気の影響で、前線の活動が活発になりそうです。四国や近畿から関東、東北南部の太平洋側では雨が降りやすく、風が強まるでしょう。台風19号による甚大な被害が発生した関東甲信や東北でも、復旧作業が終わらない状況のまま、再び雨となりそうです。台風から変わる低気圧の動きや前線の活動具合によっては雨・風ともに強まり、大雨になるおそれがあります。
たとえ大雨にならないにしても、堤防が損傷している川では、少しの雨でも氾濫するなど、洪水の危険度が高まるおそれがあります。今後の気象情報と自治体から発表される避難情報を確認しながら、引き続き、身の安全の確保に努めて下さい。
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週間 台風20号・21号と秋雨前線の動向
https://tenki.jp/forecaster/k_fujino1023/2019/10/20/6360.html


 
台風20号・21号と秋雨前線の動向に注意
白石 圭子日本気象協会 本社白石 圭子
2019年10月20日13:59
週間 台風20号・21号と秋雨前線の動向に注意
強い台風20号は21日(月)には沖縄に接近する恐れ。22日(火)は本州の南岸で秋雨前線の活動が活発に。台風21号は非常に強い勢力まで発達し、24日(木)頃に小笠原近海を通る見込み。
ポイント解説へ
強い台風20号 21日(月)にかけて沖縄へ
22日(火) 秋雨前線の活動が活発に 東海や関東で大雨の恐れ
台風21号発達へ 24日(木)頃は小笠原諸島で大荒れの恐れ

強い台風20号 21日(月)にかけて沖縄へ
画像a
強い台風20号は、風速25メートル以上の暴風域を伴って、21日(月)にかけて沖縄に接近する見込みです。沖縄では北風が強まっています。風はさらに強まり、21日には瞬間的に沖縄本島地方と大東島地方30メートル、先島諸島25メートルと、風に向かって歩けなくなり、転倒する人も出る程の風が吹くでしょう。21日にかけて、台風周辺または本体の雨雲がかかり、沖縄本島地方では多い所で1時間に40ミリ、大東島地方で1時間に30ミリの激しい雨が降る見込みです。台風の進路等によっては沖縄本島地方と大東島地方では、21日にかけて暴風となる恐れがあります。また、沖縄本島地方では警報級の大雨になる恐れがあります。今後、最新の台風情報をご確認下さい。
22日(火) 秋雨前線の活動が活発に 東海や関東で大雨の恐れ

台風20号は、沖縄付近を過ぎる頃は勢力を弱め、低気圧に変わる見込みです。台風から変わる低気圧は本州の南に進むでしょう。22日(火)は、本州の南岸に延びる前線に向かって、台風が持ち込む非常に暖かく湿った空気が流れ込む見込みです。このため、前線の活動が活発になり、前線がかかる東海や関東を中心に発達した雨雲がかかるでしょう。雨は、ほぼ丸一日降るため、雨量が多くなり、大雨になる恐れがあります。
23日(水)以降も、本州付近は湿った空気の影響を受ける見込みです。九州から北海道は、雲が広がる日が多いでしょう。24日(木)から25日(金)頃は、上空の気圧の谷の通過で、本州を中心に雨雲がかかる可能性があります。
台風21号発達へ 24日(木)頃は小笠原諸島で大荒れの恐れ

トラック諸島近海にある台風21号は、西よりに進んでいます。海面水温27度以上の所を通り、21日(月)にはマリアナ諸島付近で、強い勢力になる見込みです。23日(水)には非常に強い勢力になり、北よりに進むでしょう。24日(木)頃に小笠原近海を進み、小笠原諸島では大荒れや大しけ、大雨の恐れがあります。台風21号は、その後も勢力はあまり衰えずに、北上する見込みです。
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https://tenki.jp/forecaster/k_shiraishi/2019/10/20/6358.html
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/768.html

[自然災害22] 気候工学で地球を冷やせるか 記録的不漁 昨年の1割 天災級の事態 地球を救うための「太陽光の操作」が生態系を破壊?「気候工学」の知られざるメカニズム 特効薬か劇薬か?気候工学・ジオエンジニアリングへの懸念
気候工学で地球を冷やせるか
科学記者の目 編集委員 滝順一
滝 順一 コラム(テクノロジー) 科学&新技術 編集委員
2019/10/21 2:00日本経済新聞 電子版
保存 共有その他
米ハーバード大学のデビッド・キース教授は成層圏に微粒子を散布して太陽光をさえぎるソーラー・ジオエンジニアリング(気候工学)の研究が必要だと主張する。気候工学はこれまでタブー視されてきたが、地球規模の気候危機を抑制できるかもしれない。「気候変動がもたらすリスクに比べ、気候工学の副作用のリスクを小さくとどめられる可能性がある」という。

気候を制御する気候工学のアイデアは古くからある。微粒子散布により…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50987100V11C19A0000000/

春秋
記録的不漁 昨年の1割 天災級の事態
2019/10/19付
午前3時半。眠い目をこすりつつ約束の場所に向かう。北海道根室市の花咲港。サンマの水揚げを見るためだ。岸壁に着くと、船に搭載した集魚用の明かりがこうこうと輝くなか、銀色の魚体が大きな網で次々とトラックに移されていく。おこぼれを狙って海鳥が騒ぐ。

▼しかし、働く人たちの表情はどこかかげっている。記録的不漁で始まった今季。10月に入りまとまった漁はあったものの、トータルでみると昨年の1割強。天災級の事態という。魚群を追って、例年より遠い漁場へ出て船が転覆、乗組員らが犠牲になる悲劇も起きた。サンマだけではない。スルメイカも食卓から遠ざかる。

▼イカの漁獲も9年前の20万トンが昨年は4分の1ほど。値もグンと上がっている。コンビニのあたりめやスーパーの塩辛の量が年々減っていく感じがするわけだ。殿様が「サンマは目黒に限る」とうなずく落語のオチも、●(歌記号)肴(さかな)はあぶったイカでいい、と歌う八代亜紀さんの叙情も、理解できなくなる日が近く来るかもしれぬ。

▼不漁の原因は海水温の上昇やら海流の変化など、さまざまに取りざたされる。大型船を仕立てて、大量に捕っていく周辺諸国もその1つに数えられよう。環境の変化や競争の激化に応じた改革を、我が魚食の民はなし遂げられるか。●(歌記号)あれからニシンはどこへ行ったやら。ニシンの代わりにいろんな魚が入っては困るのだ。

 むかしの売れっ子作家はいろいろミスをしたらしい。海辺の町のはずが高...
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https://www.nikkei.com/article/DGXKZO51174850Y9A011C1MM8000/


2018.02.09 FRI 09:00
地球を救うための「太陽光の操作」が、生態系を破壊する? 「気候工学」の知られざるメカニズム
地球温暖化を食い止めるために、地球に降り注ぐ太陽光を科学的に操作する構想がある。画期的にも思えるこの「太陽放射管理(ソーラージオエンジニアリング)」と呼ばれる手法だが、実は思わぬかたちで生態系に大きな影響を及ぼす可能性があるという。地球を救う可能性と、破滅させる危険性の両方があるという気候工学のメカニズムに迫った。
TEXT BY MATT SIMON TRANSLATION BY MIHO AMANO/GALILEO WIRED(US)

PHOTO: GARY DAVIS/EYEEM/GETTY IMAGES
一緒にタイムトラヴェルをして2100年まで行こう。そこでは人々の最大限の努力にもかかわらず、気候変動は人類を脅かし続けている。
干ばつ、スーパーストーム(巨大暴風雨)、そして沿岸都市を襲う浸水──。何としても地球温暖化を止めようと、科学者たちは飛行機で成層圏に二酸化硫黄を散布する。これが成層圏で硫酸塩エアロゾルに変化し、日光を反射する。そう、「ケムトレイル」(化学薬品による飛行機雲)によって、地球温暖化は食い止められるのだ。
これは気候工学の一種で「太陽放射管理(ソーラージオエンジニアリング)」と呼ばれ、地球に降り注ぐ太陽光を操作する手法である。まだ実現してはいないものの、科学者たちが壊滅的な気候変動を阻止する戦略として模索している。そのメリットは明らかだが、潜在的な危険もある。しかもそれは人類だけでなく、自然界全体に及ぶ危険なのだ。
『Nature』の「Ecology & Evolution」に1月22日付で発表された研究では、人類が気候工学で地球を操作し、その後それを突然中止した場合に起こると考えられることをモデル化している。地球温度が急上昇して生態系が大混乱に陥り、多くの種が一斉に絶滅するというのだ。
だからといって、気候変動に取り組むべきではないと主張したいわけではない。ただ、気候工学が抱える多くの理論的問題に、生態系が壊滅する可能性が追加されるというだけのことだ。
この研究が提示している仮定のシナリオでは、気候工学を利用して毎年500万トンの二酸化硫黄を成層圏に追加し、これを50年間続ける。そして50年後、二酸化硫黄の散布を完全に停止する。このシステムがハッキングされたり、あるいは物理的に攻撃されたなどの理由でだ(なお、50年という期間は説得力のある気候シミュレーションを行うには十分な長さだが、計算上扱いにくいほど長くないことから選択された。これを100年間継続した場合の研究も計画されている)。
ラトガース大学の気候科学者アラン・ロボックは、50年後に突然散布が停止されたあとについて、こう語る。「急激に温暖化が進むでしょう。エアロゾルの寿命は1〜2年で、かなり短時間で消滅してしまうからです。その後は遮断されていたすべての太陽光が降り注ぐようになり、気候工学による操作を行わなかった場合の気温へとすぐに戻ってしまうでしょう」
地球の表面温度は現在、10年でほぼ1度ずつ上昇していると言われている。「気候工学による操作を5年間行ったとしても、この急激な温暖化は進行を続けます」とロボックは言う。
急激な変化に生物は対応できない
地球上で生きる生物のさまざまな種は、35億年間をだてに生き延びてきたわけではない。気候変動が緩やかであれば、さまざな種は気温の上昇や低下に耐えられるよう順応できるだろう。だが、気候工学手法の停止によって急激に大量の太陽エネルギーが地球を襲えば、不意をつかれて対応できない種もいるはずだ。
また、種が順応しなければならないのは気温だけではない。降水量の劇的な変化によっても、新たな地域へと即座に移動しなければ全滅するといった状況に追い込まれることになる。気温と降水量の変化に敏感な両生類のような種は、その地域から移動せざるを得なくなるだろう。もちろん、あらゆる種が逃げられるわけではない。逃げることができない樹木や貝類、珊瑚といった種は、かなりひどい状態になるはずだ。
このような変化に特に強い種がいるとしても、キーストーン種(中枢種)の全滅によって生態系全体が崩れる可能性がある。例えば、「珊瑚がいなくなれば、珊瑚礁のなかで生活している種がいなくなり、その種を餌としている種がいなくなります。つまり、すべてのプロセスが緊密に連鎖しているのです」と、生物多様性センターの「Climate Law Institute」に勤める科学者、ジョン・フレミングは説明する(同氏は今回の研究には携わっていない)。
こうしたリスクがわかっているのだから、一度始めた気候工学的な取り組みを人類が突然停止することはあり得ない、と考える人もいるかもしれない。二酸化硫黄を際限なく空中に送り込み続けて、地球の生命維持を続ければいいではないか、と。
これに対してロボックは、自分たちが使用したシナリオは決定的なものではなく、あくまで可能性のある選択肢のひとつだと述べる。そして気候工学による操作を停止せざるを得ない状況になる可能性もあるのだ、と説明する。
政治的な思惑も大きな要因になる
例えば、世界全体が一体となって、人間が生き残る唯一の希望は太陽放射管理であると判断したとしよう。飛行機は赤道の上から飛び始め、大量の二酸化硫黄を散布し、地球は冷え始める。だが悲しいことに、これがどの国にも同じような影響を及ぼすわけではない。降水量の増加の恩恵を受ける国がある一方で、干ばつに見舞われる国も出てくるのだ。
そのような状況で、中国やインドのような巨大な国が悪影響を被った場合、気候工学による操作を非難し、停止を要求する可能性がある。論文の筆頭著者であるメリーランド大学のクリストファー・トリソスは、「地球規模での太陽放射管理の展開方法に関しては、複数の国が一団となって、力の弱い国々よりも自分たちにとって有利に働くよう強大な権力を振り回す可能性があります」と述べる。
あるいは、地球そのものが重要な鍵を握る可能性もある。これまでの歴史で、火山は常に二酸化硫黄を大気中に排出してきた。つまり、ある程度の規模の大噴火が起これば、気候の大変動が引き起こされる。
実際、1815年5月にはインドネシアのタンボラ山が大噴火し、世界全体に多大な影響を及ぼした「夏のない年」につながった。1783年6月にはアイスランドのラキ火山が噴火し、これが原因となって重要な季節風が弱まったため、インドや中国などに飢饉が起こった(日本では同年8月に浅間山が大噴火を起こした影響もあり、天明の大飢饉が起こった)。
英イースト・アングリア大学の環境科学者フィル・ウィリアムソンは、「火山噴火が立て続けに起こって地球を冷やす効果が生じれば、人々が『太陽光のコントロールを止めた方がいい』と言う理由になるかもしれません。そして結果としてリバウンド効果が起こります」と述べる。彼は今回の研究論文の筆者ではなく、この論文の比較解析を執筆した人物だ。
環境は人間が予測できないほど複雑
公平を期すために言うが、科学によって太陽光をコントロールする探究はまだ始まったばかりだ。実際には、それを行うための技術はまだ存在さえしていない。たぶん科学者たちは、エアロゾルを散布することが危険すぎることを知っているのだろう。
二酸化炭素隔離のほうがいい方法かもしれない。あるいは、空気中に水分を加えることで雲を成長させ、雲によって太陽光を宇宙に跳ね返すマリンクラウド・ブライトニング(Marine Cloud Brightening)という方法もある。
だがいまは、こうした戦略を遂行することの倫理的な、そして規制面での落とし穴について考え始めるべき時期だ。2017年12月、ジェリー・マクナーニ下院議員(民主党、カリフォルニア州選出)は、米国科学アカデミーに対して2種類の報告書を作成するよう求める法案を提出した。ひとつは気候工学の研究方法について、もうひとつは監視について検討したものだ。
ラトガース大学のロボックは、「気候工学による操作を行うことの有益性と危険性については、より早く検討したほうがいいと思います。そうすれば社会は、そもそもこれが選択肢に入るのかわかりますから」と語る。「危険すぎて実現不可能であれば、われわれにはずっと大きなプレッシャーがかかるようになるでしょう。すぐにでも温暖化を緩和しなければならないからです」
「気候工学による操作の根本的な懸念は、人類には複雑すぎて本当の意味では予測できないシステムを変えようとしているのではないか、という点です。これをやってしまったら、現在よりもっと悪い状態に陥る可能性があります」と、生物多様性センターのフレミングは言う。
いずれにしても、こう考えることはできるだろう。「温室効果ガスを大幅に減らそう。そうすれば地球上のあらゆる生物が間違いなく感謝してくれるはずだ」
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スタッフの日々
特効薬か劇薬か?気候工学・ジオエンジニアリングへの懸念
2019年5月21日 伊与田

京都事務所の伊与田です。

懸念が高まってきている気候工学(ジオエンジニアリング)についてこの機会に考えてみましょう。

気候工学(climate geoengineering)とは
気候工学とは、気候変動を緩和するため、気候や大気や海などの地球システムを大規模かつ人為的に操作することを指します。その代表的な手法は、下表にまとめた通りです。

分類
温室効果ガス(CO2等)の除去
Greenhouse Gas Removal (GGR), Carbon Dioxide Removal (CDR)

太陽放射管理
Solar Radiation Management (SRM)

概要 化石燃料の燃焼などによって排出された温室効果ガス(CO2等)を大気中から除去する。効果を発揮するには少なくとも数百年貯蔵されなければならない。 地球に到達する太陽光を減らす、地球の反射率を増やす等の方法によって、地球に出入りするエネルギーの流れを管理することで、熱量を下げる。海洋酸性化対策にはならない。
技術の例
海洋肥沃化(OF: Ocean Fertilization)…海に鉄を散布することなどによって海中生物の光合成を促し、CO2吸収を進める。海洋生態系への影響が懸念される。
炭素回収貯留(CCS: Carbon Capture and Storage)…化石燃料燃焼時に排出されるCO2を工学的に回収し、貯留する。回収したCO2を利用する炭素回収利用貯留(CCUS: Carbon Capture Use and Storage)という考え方も。多くのエネルギーとコストがかかる。海洋貯留の場合は海洋酸性化のリスクもある。
バイオCCS(BECCS: Bioenergy with Carbon Capture & Storage)…大気中のCO2を吸収する植物をエネルギー源として、その際に排出されるCO2を回収・貯留する(マイナス排出になる)。
成層圏エアロゾル注入(SAI: Stratospheric Aerosol Injection)…成層圏にエアロゾル(硫酸の微粒子等)を散布することで寒冷化の効果を得る。他の気候工学の手法と比べると比較的費用が少なくて済むとの見解もあるが、継続的な実施が必要。SAIに温室効果ガスを減らす効果はないため、いったん開始したあとに何らかの理由で中断せざるをえなくなった場合、短期間で急激な気温上昇を招く恐れがある。
海洋上の雲の白色化(MCB: Marine Cloud Brightening)…雲量を人為的に操作してより多くの太陽光を宇宙に反射し返すようにする。海水を海洋上の雲に向けて吹き上げる等の方法が提案されている。
出典:Geoengineering Monitor等より筆者作成

「ふつうの対策」だけでは止められない?
気候工学が議論されるようになったのは、省エネや再エネなどの「ふつうの対策」だけでは危険な温暖化を避けられない可能性があるから、とされます。

確かに、現在の各国の排出削減目標はパリ協定の1.5〜2℃目標に遠く足りず、このままでは気候危機は避けられないという現実は重く受け止める必要があります。

うまくいく見通しも立っていない
他方、気候工学がうまくいく見通しも立っていません。IPCC第5次評価報告書には「…提案されているジオエンジニアリング手法の全てにはリスクと副作用が伴う。SRMとCDRはともに科学的理解の水準が低いため、これ以上の結果はまだ予想できない。」とあります。

化石燃料を使い続ける口実?
さらに、気候工学の熱心な推進者は米国やサウジアラビアに多く、過去に地球温暖化の懐疑論を唱えてきた論者と重なる部分もあるとされ、「本当は化石燃料を使い続ける口実がほしいだけではないか」との不信感を招いています。

なお、日本国内では、経済産業省や環境省などが気候工学のひとつに分類されうるCCUSなどを推進しています(気候工学に含まない分類の考え方もあります)。政府は、このような技術のイノベーションによって将来の経済成長につなげたいとの思惑があるようです。

気候工学への批判
他方、研究者や環境NGOなどから、数多くの批判や懸念が提起されています。

第1に、そもそも実現不可能という指摘です。現時点では、気候工学は、実施できる段階にありませんし、そうなる見込みもたっていません。

第2に、地球・周辺の環境への悪影響です。気候工学によって、生態系や人類社会に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、SAIは、将来的に何らかの理由で実施できなくなった場合、10〜20年という短期間に急激で破滅的な気温上昇を招くリスクがあります(終端問題と呼ばれます)。

第3に、民主的なガバナンスが困難という点です。ごく一部の先進国のごく一部の科学者や企業の手に地球の気候全体をコントロールしうる気候工学の実施を委ねてよいのか、仮に委ねるとしてもどうやるのか、という問題です。

第4に、費用の問題です。省エネや再エネは投資回収が見込まれますが、気候工学は持ち出しであって投資回収は不可能です。安価な手法もあるとの見解もありますが、比較対象や割引率次第で、一概に安価とは言えないとの指摘もあります。また、外部費用(気候工学の実施によって発生する環境への悪影響及びそれに起因する被害への対処の費用等)を考慮に入れれば、費用が想定よりも膨れ上がる恐れもあります。

第5に、国際平和への脅威です。天候パターンを改変できるようなある種の気候工学は兵器に転用されるリスクがあるとされています。この観点からは、研究を進めること自体にも問題があることになります。

気候工学をめぐる国際社会の対応
気候変動枠組条約(UNFCCC)のCOPのサイドイベントなどで気候工学のリスクについて議論されてきました。しかし、排出削減の具体策について各国の裁量に任せているUNFCCCのプロセスでは、現時点では気候工学の実施を奨励したり禁じたりする決定はありません。

他方、2010年の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10名古屋会議)は、科学的知見の不足などを理由に、海洋肥沃化を念頭に、気候工学の一時凍結(モラトリアム)を求める決定を出しています。

2019年3月にケニアで開催された国連環境総会(UNEA)でも気候工学に関する議論がありました。全く国際管理やルールのない状態で気候工学の実験が進められていることを問題視したスイスなど10ヶ国以上が、気候工学の科学的知見やリスク、不確実性等について評価し、国際管理のやり方について検討することを求める提案をしたのです。しかし、ガーディアンの報道によれば、日本、米国とサウジアラビア、その他の国々が反対し、合意が得られませんでした。

気候工学の議論にどう向き合うか?
気候工学の実施や研究には賛否両論あります。気候工学の研究に補助金を充てることや、実際の自然環境で実験することを禁止すべきという主張もあります。ギャンブルのような気候工学よりも、脱化石燃料と再エネ100%への転換という「ふつうの対策」にこそ限られた資源を割り当てるべきという考えもあります。

気候ネットワークを含む世界の気候変動NGOは、特効薬になる保障もなく、劇薬となるリスクが大きい気候工学には重大な懸念を持っています。他方、日本政府は、すでに商業運転されている再エネには抑制的である一方、リスクの大きい未知の技術には積極的です。危険な賭け事よりも、堅実な再エネにこそ税金を使って支援すべきではないでしょうか。

手段に過ぎないはずの技術が目的化し、逆に技術のために人々が犠牲になる…そのような光景は、私たちは原発問題ですでに目にしてきたのではないでしょうか。

参考文献・ウェブサイト
IPCC第5次評価報告書第1作業部会 よくある質問と回答「FAQ7.3 ジオエンジニアリングは気候変動に対抗できるか?副作用はどうなのか?」

ジオエンジニアリング・モニター

江守正多『異常気象と人類の選択』角川SSC新書、2013年

杉山昌広『気候工学入門 新たな温暖化対策ジオエンジニアリング』日刊工業新聞社、2011年

IPCCおすすめジオエンジニアリング気候工学気候科学
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[経世済民133] 少子高齢化で日本の景気変動が小さくなる理由 世界秩序は「競争的多極化」へ――日本が採るべき進路とは(前編)
少子高齢化で日本の景気変動が小さくなる理由

2019/10/21

塚崎公義 (久留米大学商学部教授)

 日本の景気変動が小さくなり、大不況が来にくくなる、と久留米大学商学部教授の塚崎公義は説きます。


(kevron2001/gettyimages)
高齢者の消費は安定している
 高齢者の消費は安定しています。主な収入は年金ですから当然安定していますし、老後のための貯蓄を取り崩すとしても、毎月一定額を取り崩して生活する人が多いでしょう。したがって、個人消費に占める高齢者の消費が増えると、個人消費が安定するので、景気が安定するのです。

 高齢者の消費が安定しているということは、高齢者向けの仕事をしている人の収入も安定している、ということですから、彼らの消費も安定しているでしょう。労働者に占める高齢者向けの仕事をする人の比率も上がって行くでしょうから、これも個人消費を安定させる要因となります。

 極端なことを言えば、現役世代が全員高齢者向けの仕事に従事している国では、景気の変動は一切ありません。もちろん、これは極論ですが、方向としては少しずつそちらに日本経済が近づいていることは間違いないでしょう。

少子高齢化によって労働力不足となる
 少子高齢化が進むと、労働力不足になり、失業が生じにくくなります。理由の第一は物を作る人が減ること、第二は労働集約的な消費が増えることです。ちなみに本稿で物というのは財とサービスの両方を指します。

 物を作る人である現役世代の人数が減る一方で、物を使う人である総人口はそれほど減らないため、物不足になり、「現役世代は全員働いて物を作れ」という圧力が加わるわけです。

 加えて、若者が好んで買う自動車等は生産の機械化が容易ですが、高齢者が使う医療や介護のサービスは機械化が難しいので、同じ100万円の個人消費でも多くの労働力を必要とするのです。

 労働力不足が進むと、景気が良い時には猛烈な労働力不足、景気が悪くても少しは労働力不足、といった時代になるでしょう。そうなると、景気が悪いことが今より気にならなくなる、ということも言えそうです。

失業が生じなければ個人消費は落ち込まない
 景気の波が大きくなるのは、「景気が悪くなると倒産が増えて失業が増えて失業者が物を買わなくなるから個人消費が落ち込む」というメカニズムによるのです。

 たとえばリーマン・ショックの時には、輸出企業が労働者を解雇したので、解雇されて収入が得られなくなった人々が消費を減らし、それが景気を一層悪化させた、というわけです。

 しかし、労働力不足の時代になると、製造業を解雇された労働者は、飲食業等々がよろこんで雇ってくれるので、失業することも収入を失うこともありません。そうなれば、個人消費は落ち込まずに済むわけです。

製造業に労働力が回せない
 バブル崩壊後の長期低迷期、日本経済の最大の問題は失業でした。輸出が減ると失業が増えてしまうので、輸出は極めて重要だったのです。しかし、労働力不足の時代になり、状況は変わりました。

 輸出企業が労働力不足で十分な物を作れない時代が来るかもしれません。労働集約的な生産ラインはすでに途上国に移っていますが、その流れは加速して行くでしょう。

 これまでは、「海外の不況で注文が減ったから輸出が減った」ということでしたが、今後は「労働力不足で十分な品物が作れない。したがって、海外からの注文が増えても減っても生産量も雇用も増やせない」という時代に近づいて行くのかもしれません。

 「現役世代は、介護や医療に加え、国内で消費される物を作るので精一杯だから、最低限輸入に必要な外貨を稼ぐだけの輸出は行なって欲しいが、それ以上の輸出は不要」というイメージですね。

 もちろん、政府が経済計画で輸出量を調整するわけではありませんが、輸出企業にとっても、海外の景気の変動によって輸出数量が増減するより、海外の景気にかかわらず一定量の輸出を続けるという方が望ましいかもしれません。

 海外が好況の時に無理をして生産量を増やしても、海外が不況になれば減らさざるを得ないのであれば、最初から無理をしない、ということでしょう。

 そうなると、生産設備の投資も安定するでしょう。淡々と同じ量を生産し続けるだけなら、設備量も一定(あるいは決められたペースで増えて行く)でしょうから。

輸出が減り続けることは考えにくい
 最後は余談です。輸出企業が生産を増やせないとなると、輸出が減り続けて輸入に使う外貨が不足する、という懸念を持つ読者もいるかもしれませんが、それは大丈夫でしょう。

 輸出がある程度以上に減り、輸入に使う外貨が不足するようになれば、ドルが値上がりします。そうなれば、輸出企業が「高い時給で労働者を集めても、それで生産を増やせれば儲かる」と考えて時給をあげるでしょうから。

 その時に、どの業種から労働者が奪われるのでしょうか。筆者の懸念は介護士の給料が今のような低い状況だと、介護業界から(直接なのか玉突きの形なのかはともかく)労働者が奪われて介護を必要とする人が困るのではないか、ということです。杞憂だと良いのですが。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17681


 
世界秩序は「競争的多極化」へ――日本が採るべき進路とは(前編)

ポスト冷戦の世界史−−激動の国際情勢を読み解く
2019/10/21

中西輝政 (京都大学名誉教授)


(SEAN GLADWELL/GETTYIMAGES)
 世界史の劇的な転換点である「ベルリンの壁崩壊」から11月9日で満30年になる。当時は冷戦の終焉(しゅうえん)で平和な時代が訪れる、という期待感が高まったが、今日の世界情勢は大きく暗転している。「なぜ、こうなったのか」。世界情勢の未来を見渡すためには、まずは大きく変転してきた国際秩序の波動を検証することが必要である。以下、この30年の世界情勢をそれぞれ様相が異なる10年(デケッド)ごとに区切って振り返ってみる。

 最初の10年間は、ベルリンの壁が崩壊した翌月の1989年12月に開かれたマルタ会談から始まった。そこで米国のブッシュ(父)大統領とソビエト連邦のゴルバチョフ書記長が「冷戦は終わった」と正式に確認した。当時は米国もソ連も和解して手を結び、欧州はECからEUへと統合が進み、もう一つの超大国となるのではないかとみられていた。

 また、アジアでは日本が「隆々たる経済大国」として躍進を続けており、将来的には米国に肉薄するほどの経済力をつけ、政治大国としても世界で大きな役割を果たしていくのでは、と言われていた。他方、中国は同年6月に天安門事件を起こして孤立しており、「冷戦後の平和と協調」の流れの中で生き延びるためには、国際協調に努めざるを得ない立場にあった。

 このように冷戦終結直後の世界は、幾つもの大きなパワーが互いに協調し合う多極化した「協調型・多極世界」というイメージがあった。パックス・アメリカーナ(米国による覇権)が終わり、国連を中心とした「パックス・コンソルティス」(多国協調による国際秩序の維持管理)という言葉を国際政治学者は好んで使っていた。

 しかし、1年も経たずして、複数の国が協調して国際秩序をガバナンスすることは大きな壁にぶつかった。90年7月に開かれたG7のヒューストン・サミットをブッシュ大統領が取り仕切ったが、各国の首脳は、「米国はもはや盟主ではない」といわんばかりに、特にフランスのミッテラン大統領やドイツのコール首相が、米国に対して多くの厳しい注文をつけ米国に挑戦するような議論を行った。日本も海部俊樹首相が日米の経済問題による窮状を世界に訴えた。冷戦の終結によって、国際政治の場における米国の影響力には大きな陰りが見えたかに思われたが、まさにその瞬間、事態は大きく変転していく。

 91年1月に始まった湾岸戦争だ。前年夏、サダム・フセインのイラクがクウェートに侵攻し、米国は外交力、政治力、軍事力の面で圧倒的なリーダーシップを発揮する。イラク制裁の国連決議を取りまとめ、50万人を超す米軍を中東湾岸に派兵し、トマホーク・ミサイルなど最新のテクノロジーや秘密兵器を投入し、数週間でイラク軍を蹴散らした。


米国の湾岸戦争勝利を祝った軍事パレード(1991年6月、ワシントンDC)。「米国一極」の時代の幕が開けた
(JOE SOHM/VISIONS OF AMERICA)

 軍事力を中心とした覇権的な力のある大国だけが「世界秩序の主宰者」になるべきだ、という米国の主張を世界にまざまざと見せつけた戦争だった。つまり、この湾岸戦争によって米国は文字通り”目にモノを見せ”て、「多極化する世界」という潮流を逆転させ、「一極の世界」へと変質させたのであった。

米国の脅威に怯え軍拡に突き進む中国

米国のパワーを世界に見せつけた湾岸戦争で中東に派兵される米軍(LANGEVIN JACQUES)
 しかし、その結果、多極協調型の新秩序の模索は潰(つい)え、欧州や中ロなど他の大国の間に「いかにして米国に対抗するか」という長期国策を植えつけることにもなった。また、湾岸戦争以後、逆に中東秩序の流動化が始まり、「9・11」、イラク戦争へとつながってゆく。

 米国の一方的な力の行使を見せつけられたソ連では、マルタでの「米ソ協調による平和」という誓約が反故(ほご)にされ、「米国に裏切られたのではないか」という思いが湾岸戦争後、ロシア人エリートたちに定着し始め、米国の意図に強い危機感を抱くようになった。

 中国も同様で、人民解放軍を中心に、湾岸戦争で見せつけられた米国の先端的な軍事技術について深刻な脅威感が広がり、さらに米国の「覇権への意志」を痛感した中国は、対米対抗心を強め、ここから大規模な軍拡へと突き進んでいった。

 このように冷戦の終焉直後は「協調型・多極世界」に移行していくと思われていたが、湾岸戦争を機に世界秩序の潮流は、表面的な一極構造の底に潜在的な対立を含んだ「競争型・多極世界」への流れへと変わった。かくして、「物事の本質というのはその誕生のときにすべて現れる」という格言が示すように、この30年を顧みたときに、ベルリンの壁崩壊から湾岸戦争を経て、91年12月のソ連崩壊までのわずか2年という短期間で、今日の世界秩序の基本的な構図がすでに明瞭に映しだされていた。

21世紀を模索した「五つの世界像」
 それにも拘わらず、その後、21世紀の世界像について、互いに大きく異なるおよそ五つのモデルが90年代中頃までに専門家から提示された。一つ目がフランシス・フクヤマの有名な『歴史の終わり』論である。つまり、冷戦後の世界は市場経済と民主化が世界の隅々まで普及し、米国を中心とした「西側」の主導による安全保障や国際政治の枠組みが形成され、そこではもはやイデオロギー対立や国家間の対立はなくなり、大戦争や世界革命といった現象は永遠に過去のものになるというものだった。

 二つ目がサミュエル・ハンチントンの『文明の衝突』論で、21世紀の世界は、もはや国家間の対立ではなく、文明間の対立が基調となる世界像を示した。当時はイスラム教徒とキリスト教徒の対立によるユーゴスラビア紛争や、インドではヒンズー教とイスラム教の血みどろの紛争が起こり始めていた。それまで、21世紀は非常に明るい未来が訪れ、民主化と市場経済により繁栄の世界が広がるはずだと思っていた人々は、いわば「ハンチントン・ショック」といってもよい歴史的な悲観論を、衝撃をもって受け止めた。

 三つ目としてリージョナリズム(地域主義)による新しい世界秩序形成の可能性が唱えられた。90年代を通じ欧州の統合は進み、北米は北米経済圏、東南アジアでもASEANが急速に統合を深め一つの経済圏を作り始めた。それらがやがて社会や文化の統合につながっていき、世界の各地域で同時並行的に統合が進み、その地域間の調整により、世界経済の運営や、世界秩序の調整も可能になるのでは、という世界像が日本を含む各国でもてはやされた。APECが発足したのも、マレーシアのマハティール首相が東アジア経済協議体(EAEC)を提唱したのもこの頃だ。

 四つ目は文字通り「ボーダーレスな世界像」が主に欧州の知識層や国際機関、そして先進国のメディアを中心に広まった。日本でも”宇宙船地球号”とか”グローバルビレッジ”とかいう言葉が語られた。経済的だけでなく社会的、さらにはやがて政治的にも国境がなくなる世界が現出するのではというイメージである。21世紀は人類共同体としてのグローバル社会が地球市民によって支えられる、というユートピアニズムによるこうした楽観的な世界観が大手を振って唱えられた。しかし、今の時点から見れば、これら四つはいずれも「的をはずして」いたと言わねばならない。

 他方、五つ目として、米国の国際政治学者キッシンジャーらが早い段階から提唱していた諸大国から成る世界、いわゆるバランス・オブ・パワーの世界だ。超大国の米国に加え、欧州や日本、そしてやがて再浮上するであろうロシアや大きく成長した中国という諸大国による、多極化した世界での勢力均衡的な外交によって秩序が形成される世界像が示されていた。

 90年代に圧倒的な力を誇った米国のクリントン政権は当初、覇権国としてソマリアやユーゴスラビアへの介入やハイチの人道支援など、地域紛争に積極的に関与しようとした。しかし、米国世論やメディアの一部では、そうした紛争は当事国の責任で対処するべきだとして米国の介入に反対する「草の根」の声がふつふつと湧き出した。トランプ政権の「アメリカ・ファースト」や「カムホーム・アメリカ」という孤立主義への大きな流れが浮上し始めていたのである。

 それゆえ、私は今こそ90年代の米国を今一度深く検討することが、トランプ政権を生んだ今日の米国を深く理解する上で重要な手掛かりだと考えている。当時、米国は世界をどう見ていたのか。経済と対外コミットメントのバランスをどう捉えていたのか。米国経済の持続可能性をどう見積もっていたのか。これらは「世界の警察官」でいる気持ちがえていくプロセスと深いところで相互作用があったのではないだろうか。

*「世界秩序は「競争的多極化」へ――日本が採るべき進路とは(後編)」へ続く
(10月25日公開予定)
現在発売中のWedge11月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■ポスト冷戦の世界史 激動の国際情勢を見通す
 中西輝政、遠藤 乾、飯田将史、小泉 悠、村野 将
Part 1  NATION STATE 世界秩序は「競争的多極化」へ 日本が採るべき進路とは
Part 2 USA VS CHINA 米中二極型システムの危険性 日本は教育投資で人的資本の強化を
◆ビル・エモット氏(英『エコノミスト』元編集長)インタビュー
Part 3 EU 危機を繰り返すEUがしぶとく生き続ける理由
Part 4 CHINA 海洋での権益を拡大させる中国 米軍の接近を阻む「太平洋進出」
Part 5 RUSSIA 勢力圏の拡大を目論むロシア 「二重基準」を使い分ける対外戦略
Part 6 SPACE WAR 宇宙を巡る米中覇権争い 「見えない攻撃」で増すリスク
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17614
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/434.html

[国際27] 痩せ細ったクマ見つかる サケ遡上の記録的減少が原因か カナダ裁判所、炭素税「合憲」 州の訴え退ける カナダ総選挙、与党が苦戦 成長鈍化に首相醜聞も打撃 10月21日のカナダ総選挙直前まで激戦を続ける自由党と保守党

全部門を通じてトップ評価を受けた中国人写真2019年10月07日 11時46分 JST | 更新 2019年10月07日 12時03分 JST


https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191006/K10012115201_1910061655_1910061706_01_02.jpg
痩せ細ったクマ見つかる サケ遡上の記録的減少が原因か カナダ
2019年10月6日 17時06分
カナダの大自然で痩せ細った3頭のハイイログマが見つかり、餌にしているサケの遡上(そじょう)の記録的な減少が原因だとして、地元では養殖のサケを餌に与える動きも出ています。
カナダ西部のブリティッシュ・コロンビア州で先月、写真家の男性が痩せ細った3頭のハイイログマを見つけ、写真をSNSに投稿しました。

3頭は親子とみられ、このうち2頭は地面に頭をつけて餌を探しているようにも見え、写真を撮影したロルフ・ヒッカーさんもSNSに「川にはサケが1匹もいない。サケなしでクマたちは冬を乗り切れるのだろうか」と書き込んでいます。

ハイイログマは冬を前にしたこの時期に餌をたくさん食べる必要がありますが、ことしは餌にしているサケの遡上が記録的な減少となっていて、多くのクマが栄養不足になっている可能性があるということです。

「グリズリー」の名で知られるハイイログマが川に入ってサケをとる姿はこの時期の風物詩でもあるだけに、地元では驚きを持って受け止められ、養殖のサケを餌に与える動きも出ています。

地元メディアは、餌のサケの減少の背景として地球温暖化がサケの生態を変化させているとするカナダ政府の報告書などを引用して伝え、問題の深刻さを訴えています
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191006/k10012115201000.html


ガリガリに痩せた野生のクマ。衝撃的な写真がカナダで撮影される。
写真家がFacebookに投稿。「クマは飢えて苦しんでいる。それを目の当たりにするのはとても辛い」と心情を明かした。

M田理央(Rio Hamada)
カナダ西部のブリティッシュ・コロンビア州で9月、がりがりにやせ細ったクマが見つかった。餌であるサケの遡上の記録的な減少が原因とみられている。
写真家の男性が9月24日にFacebookに投稿し、話題になっている。
投稿したのは、写真家のロルフ・ヒッカーさん。
写真には、親子とみられるクマ3頭が写っており、がりがりにやせ細っている。
ヒッカーさんは投稿の数週間前に母親クマと子熊2頭を目撃し、数日前にも母親のクマを見たという。
ヒッカーさんは投稿で「ブロートンで記録的なサケの遡上の減少という情報をみたが、私は信じる」と切り出した後、近くを流れる川にサケの姿が全くないと報告した。
「クマは飢えて苦しんでいる。それを目の当たりにするのはとても辛い」と心情を明かした上で、「餌のサケなしでどうやって冬を越すことができるのか、想像もできない」と心配した。
写真を公開した理由をについてこうつづった。
「美しい野生動物や大自然の写真を見てもらいのはもちろんだが、写真家の責務として、こうした側面も見せることも重要だ」
サケを捕食することもある鯨への影響も懸念した。
最後に「私たちは天然のブリティッシュ・コロンビア産のサーモンを守らないといけない」と呼びかけた。
CNNは、気候変動の影響がクマにも起きていると伝えている。カナダの漁師らの8月に発表した気候変動の影響に関するレポートも紹介し、問題の深刻さを報じている。
クマを監視しているママリリクラ(Mamalilikulla)先住民族の男性マネジャーは、「クマはここ数カ月で劇的な変化が起きている。クマは苦境に立たされている」とCNNの取材に述べた。
訂正の連絡はこちら

M田理央(Rio Hamada)ハフポスト日本版ニュースエディター。「キャリア」ディレクター、「#だからひとりが好き」担当

#クマ
これが熊か?
まるで、狼だ。
ガリガリ。
地球環境は危機に。
グレタさんに迷惑メール送ってる暇ではない!
ごきげんマウス(@antonio_luno) - 10/07

こんなに痩せた熊初めて見た😟
真剣に地球温暖化🌏のこと考えなあかんね。
今までは頭の隅にあるってぐらいだったけど。
あっきー@ラッキーの召使い(@luckiko) - 10/07

ガリガリ熊さん>
はっぴ〜まん(@happymanjp) - 10/07

結構衝撃的。
どらったら!(@Chuoinfom) - 10/07

泣いた。
ぽえたQ(@poetaq50) - 10/07

http://huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5d9a8bede4b03b475f9b9883

 


カナダ裁判所、炭素税「合憲」 州の訴え退ける
2019/5/4 5:28
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【ニューヨーク=高橋そら】カナダの裁判所は3日、連邦政府による炭素税の導入について「憲法に違反しない」との判断を下した。トルドー政権は昨年、温暖化ガスの排出規制を打ち出していない4つの州などを対象に2019年4月から炭素税を徴収する方針を示し、一部州が「憲法に反する」として裁判所に訴えを起こしていた。

カナダ・サスカチワン州政府のモー首相は連邦政府による炭素税の導入に反発=ロイター
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カナダ・サスカチワン州政府のモー首相は連邦政府による炭素税の導入に反発=ロイター

カナダ中西部のサスカチワン州控訴裁判所の裁判長が同日、温暖化ガスに対して一定額を徴することは「連邦政府の管轄内だ」と述べた。同州政府のモー首相は「炭素税は州の管轄権への侵害であり、カナダ憲法の秩序を乱す」と主張していた。

カナダ連邦政府のマッケナ環境・気候変動相は「裁判所は気候変動が人為的なものであり現代の大きな問題の一つであると認めた」と裁判所の決定を歓迎した。地元紙グローブ・アンド・メールは「トルドー首相の政治的な勝利だ」と報じた。

トルドー氏は18年、オンタリオ州、サスカチワン州など4つの州を対象に炭素税を導入すると宣言。連邦政府の定める基準を満たせなかった場合、19年4月から炭素1トン当たり20カナダドル(約1600円)を課し、22年まで毎年10カナダドルずつ金額を引き上げる計画を示した。人口が多く炭素税の影響を大きく受けるオンタリオ州では、炭素税の撤回を求める訴えが最高裁判所で審理されており、近く結論が出る見通しだ。

気候変動対策を巡り与党・自由党と野党・保守党の溝は深い。トルドー氏は「汚染の対価を支払わせることが気候変動対策として最も効果がある」と強調する。ただ、カナダでは冬季の家庭用暖房や車移動など日常生活への負担が増えるとして反発も根強い。保守党は10月の総選挙で勝利すれば炭素税を撤回すると公約している。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44424170U9A500C1000000/


カナダ総選挙、与党が苦戦 成長鈍化に首相醜聞も打撃
北米
2019/10/18 20:26
【ニューヨーク=高橋そら】10月21日投開票のカナダ下院選挙で、ジャスティン・トルドー首相(47)が率いる中道左派の与党・自由党が苦戦している。9月の解散前には単独過半数の議席を占めていたが、直近の世論調査では最大野党・保守党が支持率で自由党をわずかに上回った。背景には経済成長の鈍化や先進的な環境政策への反発があるとみられ、トルドー氏の醜聞も打撃となっている。

下院(338議席)は解散前時点で、自由党が177議席と単独過半数を占め、最大野党で中道右派の保守党は95議席で第2党だった。しかしカナダ放送協会(CBC)の17日時点の調査では、保守党の平均支持率は32.1%と、自由党(31.1%)をやや上回った。

カナダ経済は、原油価格の低迷や最大の貿易相手である米国の保護主義政策の影響などで減速気味だ。国際通貨基金(IMF)によると2017年に3%だった実質成長率は19年に1.5%に半減する見通しだ。経済減速への有権者の不安は強い。

自由党を率いるトルドー氏個人の醜聞も同党に打撃となった。2月に地元ケベック州の大手企業の贈賄事件をめぐり、刑事訴追を控えるようトルドー氏が司法当局に圧力をかけたことが発覚した。9月中旬には同氏が過去に顔を黒く塗る人種差別的な仮装をしていたことも分かり、中道左派のリーダーとしてのイメージが大きく悪化した。

現状ではいずれの党も単独過半数を確保するのは難しいとの見方が大勢だ。第1党が単独過半数に満たなかった場合は、少数政党の閣外協力が不可欠となる。

カナダは環太平洋経済連携協定(TPP)加盟国で、米と安全保障上の機密情報を共有する5カ国「ファイブアイズ」のメンバー国でもある。カナダの総選挙の結果は日本の経済や安全保障にも少なからぬ影響を与えることになりそうだ。

仮に政権交代すれば環境や移民、対中政策が大きく変わる可能性が高い。トルドー氏は50年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を実現すると公約した。

対策が遅れている4州に排出量に応じて課税する「連邦炭素税」も新たに導入した。一方、保守党のアンドリュー・シーア党首(40)は「企業や国民の負担が重い」として同税の撤廃を主張している。

イプソス社が9日発表した世論調査結果(複数回答)によると、有権者が投票先を決める際に重視する政策のうち「気候変動」は29%で「医療」(35%)に次ぐ2位に入った。経済が減速するなかで気候変動の対策コストを巡っては世論の賛否が割れている。

対中外交の分野でも政策が異なる。カナダ当局は18年12月に中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)幹部を逮捕し対中関係が急速に悪化した。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51162810Y9A011C1FF8000/?n_cid=SPTMG002


10月21日のカナダ総選挙直前まで激戦を続ける自由党と保守党
(カナダ)

トロント発

2019年10月18日

添付資料PDFファイル(139 KB)

カナダ連邦下院議会選挙は10月21日に投開票日を迎えるが、世論調査による政党支持率では、ジャスティン・トルドー首相率いる与党・自由党と、アンドリュー・シアー党首率いる野党第1党・保守党が拮抗(きっこう)した状況が続いており(添付資料の図1、図2参照)、両党とも過半数を獲得できないとの見方が強まっている。

CBCニュースの調査(10月17日)では「自由党が過半数の議席を確保する可能性」が11%、「自由党が最多の議席を確保するが、過半数の獲得には至らない可能性」が49%、「保守党が最多の議席を確保するが、過半数を獲得には至らない可能性」が37%、「保守党が過半数の議席を確保する可能性」が2%となっている。CBCニュース(10月17日)、ローリエ世論公共政策研究所(LISPOP)(10月16日)による各党の獲得議席の予測は添付資料の表1のとおり。

このような情勢の中、新民主党のジョグミート・シン党首は10月13日にブリティッシュ・コロンビア州で行った演説で、自由党など他党との連立政権への参加を含め、保守党政権の樹立を防ぐために「必要なことは何でも行う」と述べた。これに対し、トルドー首相は、連立政権の可能性に関して、記者らからの質問に直接回答することはなく、過半数の議席の獲得を目指すとの発言に終始した。

今回の選挙戦の主な争点の1つである気候変動と環境問題に関し、トルドー政権は2018年、温暖化ガスの排出規制を打ち出していない4つの州(オンタリオ、サスカチュワン、マニトバ、ニュー・ブランズウィック)に対し、2019年4月から1トン当たり20カナダ・ドル(約1,660円、Cドル、1Cドル=約83円)の炭素税を課した。炭素税は2022年まで年10Cドルずつ引き上げ、最終的に50Cドルにすることとしている。これに対し、新民主党、緑の党、ブロック・ケべコワは炭素税支持の方針を示しているが、保守党は炭素税の廃止を公約に掲げている。

通商分野では、最大の貿易相手国である米国が保護貿易的な政策を打ち出し、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉や鉄鋼、アルミニウム製品への追加関税賦課などの課題が発生した。トルドー首相は選挙戦で、そうした課題に対して粘り強く交渉を続け、大きな譲歩もせずに合意、解決に至ったことや、そのような環境下でも積極的に在カナダ企業の設備投資への補助なども行うことで、国内経済も成長を継続させた実績を強調している。そして、そのために財政赤字が拡大しているとし、2020年度も274億Cドルの赤字予算を組むことを公約に掲げている。主要政党の主な公約は添付資料の表2のとおり。

(酒井拓司)

(カナダ)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/10/752cb065b5fcd6e1.html

http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/574.html

[経世済民133] 消費税2%の増税でトイレットペーパーを買いだめするのに、もっと「大増税」には騒ぎもしない不思議「みんなで話し合う」と無能な者にひきずられる 
2019年10月21日
消費税2%の増税でトイレットペーパーを買いだめするのに、もっと「大増税」には騒ぎもしない不思議【橘玲の日々刻々】
 消費税引き上げ直前の駆け込み消費で、レジで長い行列をつくってトイレットペーパーなどを買いだめすることが話題になりました。「1万円分買っても200円しか節約できない時間のムダ」という辛辣な意見もあるようですが、休日に家でテレビを見るだけだったり、車で近所をドライブするくらいなら、「消費税増税」というイベントに参加し、1時間並んで大量のトイレットペーパーを持ち帰って、「得した!」という“達成感”を得たほうがずっといいのかもしれません。

 それより不思議なのは、消費税が2%上がっただけでこんなに大騒ぎするのに、誰もがそれ以上の「増税」に無関心なことです。それが年金や健康保険など社会保険料の引き上げです。

 消費税が3%から5%に引き上げられたのが1997年の橋本龍太郎政権のときで、これが景気を失速させ「デフレ不況」を招いたとバッシングされたことから、8%への引き上げは2014年の安倍政権まで待たなくてはなりませんでした。「一強」といわれるその安倍政権でも、消費税をさらに2%引き上げるのに5年半かかっています。

 サラリーマンなどが加入する社会保険料は2003年にボーナスを含む総報酬制に変わったため単純に推移を比較できませんが、賞与を5カ月分として同時期(1997〜2019年)の引き上げ幅を概算すると、厚生年金は12.2%から18.3%(1.5倍)、健康保険は5.8%%から10%(1.7倍)、介護保険は0.98%から1.73%(1.8倍)になりました。同じ時期に消費税は5%上がったわけですが、社会保険料は、合計すると11%も引き上げられたのです。その結果、年金と健康・介護保険を合わせた社会保険料率は報酬の30%に達するまでになりました(労使折半)。

 ところが、こんな「大増税」が行なわれたにもかかわらず、国会で問題になることもマスコミが大騒ぎすることもいっさいありませんでした。なぜなら消費税とちがって、社会保険料は国会審議なしに、厚労省の一存でいくらでも引き上げることができるからです。

 給与から天引きされる社会保険料が増えれば、当然、その分だけ手取りの収入が減ります。これは誰でもわかりますが、見過ごされているのは、会社負担分は企業にとって人件費で、保険料の引き上げは給与や賞与の減額によって調整されることです。こうして「給与が減らされ、手取りはさらに減る」という踏んだり蹴ったりの事態になります。

 平成のあいだにサラリーマンの平均年収が下がったり、同じ年収でも手取りが減りつづけていることが指摘されますが、その原因の一端は「社会保険料の大増税」にあるのです。

 年収500万円のサラリーマンの場合、国に支払う社会保険料の総額は95万円から150万円に増えました。本人負担分だけでも年75万円ですから、多少給料が上がったくらいでは焼け石に水で、いくら働いても生活が苦しくなるのは当たり前です。

 トイレットペーパーの買いだめで「自己実現」するのもいいですが、100円や200円節約したくらいではどうにもならない現実についても、たまには考えてみたほうがいいのではないでしょうか。

『週刊プレイボーイ』2019年10月15日発売号に掲載

橘 玲(たちばな あきら)

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作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『「言ってはいけない?残酷すぎる真実』(新潮新書)、『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)、『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)、『もっと言ってはいけない』(新潮新書) など。最新刊は『上級国民/下級国民』(小学館新書)。

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消費税2%の増税で トイレットペーパーを買いだめするのに もっと「大増税」には騒ぎもしない不思議 【橘玲の日々刻々】[2019.10.21]
「みんなで話し合う」と無能な者にひきずられる 【橘玲の日々刻々】[2019.10.15]
「Siri、デモクラシーって何?」と問いたくなるイギリスの現状。 議院内閣制か独裁制か? あるいはAIによる統治か? 【橘玲の日々刻々】[2019.10.07]
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https://diamond.jp/articles/-/218185

2019年10月15日
「みんなで話し合う」と無能な者にひきずられる
【橘玲の日々刻々】
 私たちは学校で、なにかあるごとに「みんなで話し合って決めましょう」といわれてきました。もちろんこれは日本だけのことではなく、近代の成立以降、欧米では「自由な市民による討論」こそが民主的な社会の基盤とされ、アメリカでは議論に勝つための「ディベート」というテクニックを学生たちが一生懸命学んでいます。日本の学校の「みんなで話し合う」も、敗戦によってアメリカの「民主教育」が移植されたものです。

「三人寄れば文殊の知恵」は、一人の限られた知識で問題を解決しようとするよりも、さまざまな知識をもつひとたちが集まって協力したほうがよい結果を生むということわざで、たしかにそのとおりにちがいありません。

 しばらく前に『「みんなの意見」は案外正しい』という本が話題になりましたが、そこでは「素人による多数決は専門家に勝る」と論じられました。早くも19世紀に、ダーウィンのいとこであるフランシス・ゴールトンが、牛の品評会で行なわれた体重当てクイズの投票用紙を集め、素人の参加者の投票の平均が専門家よりもずっと正確に牛の体重を予測することを示しています。素人判断は極端に重かったり軽かったりするものの、多数の投票で間違いが相殺されて平均が正解に近似していくのです。

 だったら、「みんなの話し合い」によって世の中はどんどんよくなっていくのでしょうか。

 インターネットの誕生で誰もがバラ色の未来を夢見ていた頃ならいざ知らず、いまではこういう楽観派は少数でしょう。話し合うほどに意見が対立し、やがては憎悪の応酬になっていく有様をSNSで日々目にしているのですから。

 いったいどちらが正しいのか? 最近では認知心理学が、巧妙な実験によってこの問いに答えようとしています。

 実験では、視覚の俊敏性を必要とする課題で、能力の高い被験者と低い被験者をさまざまな条件で組み合わせました。すると、不思議な現象が判明したのです。

 自分と相手がどの程度の能力をもっているかがわかれば、当然のことながら、能力の低い者が高い者の判断に従うことで正解率は上がります。ところがこの条件で参加者に話し合いをさせると、正解率が逆に大きく下がってしまうのです。

 その理由を研究者は「平均効果」で説明しています。話し合いでは、ごく自然に、参加者のすべてが「平均的な能力」をもっていることを前提にします。そうなると、能力の低い者は実際より有能に、能力の高い者は実際より無能に評価され(自分でもそう思い)、いつのまにかとんでもない判断に至ってしまうのです(会社の会議などで思い当たるひとがたくさんいそうでず)。

 これを読んで、「だからリベラルな教育はダメなんだよ」と思ったひと(保守派)もいるでしょう。しかし問題はさらにやっかいです。

 研究者は文化的な偏りをなくすため、この実験をデンマーク(西欧)、中国(東アジア)、イラン(中近東)で行ないました。それぞれの国の「リベラル度」はかなりちがうでしょうが、驚いたことに、どこでもまったく同じ「平均効果」が生じたのです。

「その場を丸く収めるために無能な者にひきずられる」というのは、どうやら人類に共通の性向のようです。

参考:Bahador Bahrami, Karsten Olsen, Dan Bang,Andreas Roepstorff, Geraint Rees and Chris Frith(2012)What failure in collective decision-making tells us about metacognition,Philosophical Transactions of the Royal Society B
『週刊プレイボーイ』2019年10月7日発売号に掲載

橘 玲(たちばな あきら)
https://diamond.jp/articles/-/217610
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/440.html

[国際27] 中南米諸国で政治リスク再燃−緊縮財政措置への抗議デモ拡大 チリ暴動7人死亡非常事態宣言 ボリビア大統領 勝利宣言で混乱 エクアドル燃料補助金巡り混乱 予算削減にアルゼンチン国民反発
中南米諸国で政治リスク再燃−緊縮財政措置への抗議デモ拡大
Juan Pablo Spinetto
2019年10月22日 9:39 JST
チリはデモ激化で非常事態宣言、エクアドルでは燃料補助金巡り混乱
予算削減にアルゼンチン国民反発、大統領選控え野党候補がリード
金融市場で伝統的に政治リスクの典型として挙げられることの多い中南米が再び投資家の懸念材料になりつつある。

  チリのピニェラ大統領は19日、公共交通機関の運賃引き上げに対する抗議デモの激化を受け、非常事態宣言を発令。それに先立ちエクアドルでは、モレノ大統領が燃料補助金を打ち切ったのを受け、国民の間に混乱が広がった。

  一方、アルゼンチンでは資本規制が導入され、有権者はマクリ大統領の予算削減に反発。27日の大統領選挙を前に、世論調査では野党候補が圧倒的にリードしている。

CHILE-TRANSPORT-METRO-PROTEST
チリのサンティアゴでの抗議デモで燃えた地下鉄駅(10月19日)
  投資家や国際通貨基金(IMF)などが求める緊縮財政について、中南米の市民は所得格差の縮小や社会福祉事業の改善にはほとんど効果がないと主張し、再び反対している。指導者らは緊縮財政の必要に迫られる状況にあるものの、実施すれば政治的混乱に拍車を掛け、自身が立場も危うくなる公算が大きいことも承知している。

  ユーラシア・グループの中南米担当マネジングディレクター、ダニエル・カーナー氏は 「大統領らは調整の必要性と調整の実行不可能な状況との間で板挟みだ」と指摘した。

  中南米の指導者にはなじみ深いこんなジレンマは、 商品ブームの終わりや経済成長の減速、政府債務の増加で深まっている。IMFのデータによると、南米の政府債務は今年、国内総生産(GDP)比78%と、10年前の51%から上昇する見通し。

Less Room to Maneuver
Debt to GDP ratio on the rise


Source: IMF World Economic Outlook, October 2019

General government gross debt/GDP for 12 South American countries

  投資家はすでに政治的リスクを織り込みつつある。各国にはそれぞれ特定の火種があるが、いずれのケースでも市場寄りの政策課題への政府のサポートや歳出削減の機運が弱まる公算が大きい。

Demonstrators Continue Protest As Ecuador Government Holds Talks To End Chaos After Fleeing
エクアドルの首都キト(10月9日)
原題:
Political Risk Revived in Latin America as Protests Spread (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-22/PZQWG0T0G1L001?srnd=cojp-v2


 


南米ボリビア大統領 現職の勝利宣言で混乱
2019年10月21日 17時35分

南米のボリビアで、20日行われた大統領選挙で地元メディアは、開票作業の途中ながら1回目の投票で当選に必要な過半数の票を得る候補は出ない見通しだと伝えましたが、現職のモラレス大統領が支持者を前に勝利を宣言し、不正を疑う声が上がるなど混乱が広がっています。

南米のボリビアで20日、5年に1度の大統領選挙が行われ、4期目を目指す反米左派のエボ・モラレス大統領と親米のカルロス・メサ元大統領などが、大統領の座を争いました。

開票作業は続いていますが、開票率およそ84%の時点で現職のモラレス大統領は、全体の45.7%の得票と優勢なものの当選に必要な過半数には届いていません。

地元のメディアは今後も50%は超えず、大統領選挙のルールにより2番手につけるメサ元大統領との間で決選投票が行われる見通しだと伝えました。

しかし、現職のモラレス大統領は支持者を前に、1回目の投票で大統領に当選したと勝利を宣言し、決選投票になったと主張する野党側と対立しているほか、不正を疑う声もあがるなど、混乱が広がっています。

モラレス大統領は、ボリビアで初めての先住民族出身の大統領で2006年から3期13年務め、任期を制限する憲法の規定に反して例外として4期目を目指しており批判も強まっています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191021/k10012142381000.html


 
南米チリの暴動で7人死亡 APEC首脳会議への影響懸念
2019年10月21日 13時34分

来月、APEC首脳会議が開かれる南米チリの首都サンティアゴで、地下鉄の運賃の値上げに反対するデモ隊の一部が商店に火を放つなど暴徒化し、これまでに7人が死亡しました。

南米チリでは政府が今月、財政の悪化を食い止めるため地下鉄の運賃の値上げを打ち出したのに対し、学生などが抗議デモを始め、18日には一部が暴徒化して地下鉄の駅構内などに火をつけました。

ピニェラ大統領はサンティアゴに非常事態を宣言し、軍を動員して鎮圧に当たりましたが抗議活動は収まらず、暴徒化した一部がさらにスーパーマーケットや衣料品店などに火を放ち、内務省によりますと、20日までに合わせて7人が死亡しました。

現地からの映像では若者が商店のシャッターを壊そうとしたり、道路をブロックして木材を燃やしたりする一方、軍が催涙弾などを使って強制排除を進めています。

ピニェラ大統領は事態の収束に向けて地下鉄の値上げを見送ると発表しましたが、激しい抗議活動はやまず、来月、サンティアゴで予定されるAPEC首脳会議への影響が懸念されています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191021/k10012142061000.html

http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/576.html

[経世済民133] G20閉幕、Facebook「リブラ」潰し鮮明に 中銀の合成デジタル通貨「考察に値する」英中銀副総裁 ECBは早過ぎた利上げと米テーパリングを忘れるな−フィンランド中銀総裁
G20閉幕、Facebook「リブラ」潰し鮮明に
2019年10月21日 07時00分 公開
[産経新聞]
 
 18日閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、議長国・日本は、米フェイスブックの暗号資産(仮想通貨)「リブラ」に主要国が厳しく対処すべきだとの論調をとりまとめた。成果文書では、国家が発行する通貨に代わる「通貨主権にかかわる問題」が生じかねない側面に踏み込み言及。リブラを早期発行させる同社の計画は風前のともしびだ。

 フェイスブックが公表した構想によると、リブラはドルなどの通貨をはじめとする金融資産で価値を担保した「ステーブルコイン」と呼ばれる種類の仮想通貨だ。投機性の高さが問題視された「ビットコイン」などとは性格が異なる。

 合意文書では、通貨を発行する権限を独占する「通貨主権」が、リブラの浸透により侵されかねないとの懸念を踏まえ、G20が国際通貨基金(IMF)に問題点を調査するよう依頼。G20内の厳しい警戒感が浮き彫りになった。

 リブラは利用者が送金・決済をスマートフォンで手軽にでき、急速に普及する可能性がある。リブラによって「自国通貨の信用が損なわれ、駆逐されるとの懸念が小国にあった」(財務相同行筋)。リブラが乗り越えるべき課題は、犯罪などへの流用のリスク対処だけでは済みそうにない。

 高まる包囲網に対抗し、フェイスブック側もリブラ責任者のデビッド・マーカス氏を16日のIMFの関連イベントに出席させ、懸念払拭につとめた。運営団体から米クレジットカード大手ビザなどが離脱したが、マーカス氏は強気の姿勢を貫き、「現状維持は選択肢ではない」などと述べ、欧米各国が中国などに先を越される危機感もあおった。

 フェイスブックは各国の規制当局と足並みをそろえ発行に向けた準備を進める方針だが、議長国として開いた記者会見で、日銀の黒田東彦総裁は「(関連規制の)検討中に発行するのは許されない」と断じた。

 同社のザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は近く米議会で証言する予定で、発言が注目される。(ワシントン 塩原永久)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/21/news043.html

 

 


中銀の合成デジタル通貨「考察に値する」
ラムズデン英中銀副総裁

Lucy Meakin、David Goodman (London)
2019年10月21日 10:05 JST
ブルームバーグとの17日のインタビューで述べた
カーニー英中銀総裁が8月に米ジャクソンホールで示した提言を踏襲
イングランド銀行(英中央銀行)のラムズデン副総裁は、同行が他の複数の中銀と合成デジタル通貨を何らかの形で開発することは「考察に値する」との認識を示した。 

  決済とフィンテックを担当する同副総裁はブルームバーグとの17日のインタビューで、民間のイノベーションを促す公共インフラの提供で成すべきことを英中銀は「非常に重視」していると説明、国境をまたぐ「決済のコストと効率性に絡む大きな問題があるため、考察に値する」と明言した。

  ラムズデン副総裁は「先進国経済と新興市場国経済のいずれにおいても消費者が求めているのは、効率性の向上だ。そのため、われわれは常にもっと何ができるか挑んでいく必要がある」と話し、「そこに大きな価値がある」と指摘した。

  同副総裁はカーニー英中銀総裁の提言を踏襲。米カンザスシティー連銀がワイオミング州ジャクソンホールで8月下旬に主催したシンポジウムで同総裁は、国際的な準備通貨の役割をドルに代わって米フェイスブックの「リブラ」のような価値安定を意図して設計される仮想通貨に委ねるアイデアを示した。

原題:
BOE’s Ramsden Says Central Bank Digital Currency Worth a Thought(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-21/PZP4JXT0G1KW01?srnd=cojp-v2


 

ECBは早過ぎた利上げと米テーパリングを忘れるな−レーン氏
Kati Pohjanpalo
2019年10月22日 11:49 JST
レーン・フィンランド中銀総裁が新著で呼び掛け
レーン氏はかつて経済・通貨担当の欧州委員として欧州危機を体験
欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーを務めるレーン・フィンランド中銀総裁は、ECB当局者に対し金融政策を最終的に引き締め始める際には2011年の早過ぎた利上げと13年の米連邦準備制度による債券購入テーパリング(縮小)に伴う市場の混乱を心に留めておく必要があると呼び掛けている。

  レーン氏はヘルシンキで21日出版された新著の中で、「コアインフレ率は依然として低く、ECBの物価安定目標を明らかに下回っている」と指摘、ユーロ圏の債務危機とリセッション(景気後退)が深刻化する前のトリシェ総裁時代のECBによる11年の2回の利上げを振り返った。

  同年11月に就任したドラギ総裁は、先の利上げを打ち消す形で連続利下げを断行。その2年後、当時のバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が債券購入を徐々に縮小する可能性があると発言すると、世界の金融市場は混乱に見舞われた。

ECB's Rehn Says FT Story on QE Advice Is 'Greatly Exaggerated'
レーン・フィンランド中銀総裁Photographer: Roni Rekomaa/Bloomberg
  かつて欧州連合(EU)の欧州委員会で経済・通貨担当の委員として欧州危機を体験したレーン氏は今年、米中貿易戦争や英国のEU離脱を巡る不確実性に伴うユーロ圏の減速を克服するための金融刺激策を早くから支持してきた。

  ECB政策委メンバーとしてのこうしたスタンスは、緊縮策の提唱で評判を高めた政治家からの立場の変化を如実に示している。

原題:
Rehn Says ECB Rate Hikes Must Wait Amid Memories of 2011, 2013(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-22/PZQXGZDWX2PV01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/442.html

[経世済民133] ソフトバンクG:CDS連日高、WeWorkでLTV悪化とSM日興 ソフトバンクG、ウィーワーク救済で株式過半数取得探る 金融庁・日銀がLIBOR利用で実態調査、廃止控え洗い出し急ぐ
ソフトバンクG:CDS連日高、WeWorkでLTV悪化とSM日興
森田理恵
2019年10月21日 13:26 JST

• ウィーワーク支援で懸念、18日に241.8bpと1月中旬以来の高水準
• 金融支援実現でLTVは2%ポイント以上悪化−原田アナリスト


Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
ソフトバンクグループの社債保証コスト(CDS)の上昇が止まらない。投資先のウィーワークを巡る不透明感が広がっている。
  CMAによるとCDSは3日連続で上がり、18日には241.8bpと1月中旬以来の高水準を付けた。ウィーワークを巡っては、新規株式公開(IPO)計画の撤回や、来月にも資金が枯渇する可能性が伝えられ、懸念が広がっている。ソフトバンクGは、1月時点で470億ドルだったウィーワークの企業価値を80億ドル未満に下げる可能性があることも週末に表面化した。日本企業128社の平均CDSは横ばいの47bp程度が続いている。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iDgLFcy6lba8/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/576x-1.png

  これに先立ちソフトバンクGはウィーワークへの50億ドル程度の支援案が明らかになっている。この支援案を受けて、ソフトバンクGの投資資産価値(LTV、純有利子負債を保有株式価値で割った比率)が影響を受けるとの見方も出始めた。LTVは孫正義社長が決算発表時に言及している経営指標の1つ。
  SMBC日興証券の原田賢太郎シニアクレジットアナリストは21日付リポートで、金融支援が実現した際のLTVについて「2%ポイント以上の悪化が予想される」と指摘した。現在は18%程度とみられる。このメインシナリオでも運営目線の25%以下に抑えるのが難しくなるほどの影響は及ぼさないとしながら「さらなる追加支援となれば、25%に近づきかねない」とも予想した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-21/PZPBCJT0AFB801?srnd=cojp-v2

 

ソフトバンクG、ウィーワーク救済で株式過半数取得探る−関係者
Stacie Sherman
2019年10月22日 5:15 JST 更新日時 2019年10月22日 8:49 JST
JPモルガンが別のファイナンスパッケージを提案する見通し
プロセスは流動的だが21日夜にも判断が下される可能性
Members sit around a communal working table inside the WeWork office space in Yokohama, Japan.
Members sit around a communal working table inside the WeWork office space in Yokohama, Japan. Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
ソフトバンクグループは米ウィーワークに対して同社の株式過半数取得を提案した。資金繰りに苦しむウィーワークの取締役会が検討する2つの救済パッケージのうちの1つとなる。事情に詳しい関係者が明らかにした。

  取締役会の考えを知る関係者によれば、ソフトバンクGの提案が一部取締役の間で支持されており、プロセスは流動的だが21日夜にも判断が下される可能性がある。非公開協議だとして関係者が匿名を条件に語った。

  別の関係者によれば、米銀JPモルガン・チェースが別のファイナンスパッケージをウィーワーク取締役会に提示する見通し。同行はジャンク(投機的格付け)債50億ドル(約5430億円)の起債に向け投資家に打診しているが、詳細はまだ詰めていないという。

  ソフトバンクGの提案は、ウィーワークの親会社ウィー・カンパニーの価値を約80億ドルもしくはそれ以下と評価する公算が大きいと、事情を知る複数の関係者がブルームバーグに先週述べていた。ソフトバンクGは1月時点で同社を470億ドル相当だとしており、大幅な評価引き下げとなる。ウィーワークは来月にも資金が不足する可能性がある。  

WeWork Looks to Sell Private Jet, 3 Side Businesses
アダム・ニューマン氏Photographer: Michael Nagle/Bloomberg
  関係者の1人によると、ソフトバンクGの計画には、予定しているファイナンス(15億ドル規模)の前倒しや最大30億ドル相当の株式を株主から買い取る案が含まれる。保有株売却に応じる株主の数に応じ、ソフトバンクGのウィーワーク持ち分が60−80%となる見込みだという。

  ソフトバンクGによるファインナンスとなれば、創業者に大きな議決権を付与している特別株式権が廃止され、ウィーワーク共同創業者であるアダム・ニューマン前最高経営責任者(CEO)の議決権は10%未満となる。

  50億ドルのデットファイナンスも盛り込まれ、これにはみずほフィナンシャルグループなどからの拠出もあるとされている。

  JPモルガンとソフトバンクG、ウィーワークの担当者はコメントを控えた。ソフトバンクGによる計画の一部詳細はCNBCが21日、先に報じていた。

原題:SoftBank Seeks Majority Stake in WeWork With Bailout Deal (4)(抜粋)

(計画詳細などを追加して更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-21/PZQQDKT1UM1701


 

金融庁・日銀がLIBOR利用で実態調査、廃止控え洗い出し急ぐ
伊藤純夫、浦中大我
2019年10月21日 19:15 JST
銀行・証券・保険が対象、貸し出しやデリバティブなど利用状況把握
経営主導の体制整備促し、混乱回避・円滑移行を目指す
金融庁と日本銀行は、2021年末にロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の公表が停止される可能性が高まっていることを踏まえ、銀行や証券会社、保険会社を対象に、貸し出しやデリバティブ、証券投資などでLIBORがどう利用されているのかを把握するための合同調査に乗り出した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

  LIBORを基準として使う取引の利用状況を詳細に洗い出した上で、廃止に備えた各社の体制整備を促し、混乱の回避と代替指標への円滑な移行を目指す考えだ。

  LIBORは貸し出しやデリバティブなどの基準金利として膨大な金融取引に使われており、機関投資家や事業法人などを含めて利用者も多岐にわたる。金融取引における重要なインフラとなっているLIBORの廃止を十分な備えのないまま迎えれば、利息の受け払いに支障が生じるなど深刻な混乱も起きかねない。

  調査ではLIBORの利用状況で、1)貸出金や投資している債券、株式、投資信託などの運用サイド、2)預金や債券、株主資本などの調達サイド、3)金利・通貨スワップなどデリバティブ取引について、円やドルなど通貨毎に残高と想定元本、契約件数などを報告するよう要請。廃止時にLIBORに代わる指標を定めたフォールバック条項を盛り込んだ契約数の報告も求めている。


対応状況も調査

  また、関係部署が対顧客部門にとどまらず、法務や財務、システム、リスク管理など広範にわたることから、それぞれの部門における対応状況も調査。LIBOR廃止に対応する専門的なチームの設置の有無も調べる。

  日銀の河西慎金融機構局金融第一課長はブルームバーグ・ニュースの取材に対し、「今回の合同調査は、各金融機関におけるLIBOR参照取引の規模、LIBOR後継金利の採用状況、検討態勢の整備状況などを日本円当局として正確に把握するとともに、円滑な移行に向けた対応がさらに促進されることを期待して行うもの」とコメントした。金融庁からはコメントを得られなかった。

  LIBOR廃止という重大な事態への危機感が乏しい金融機関もあり、金融庁と日銀は一連の調査を通じ、経営陣がしっかり関わる形で各企業が早急に対応することを促す考えだ。

  日銀によると、金融商品・取引におけるLIBORを利用した契約金額は5通貨(円、米ドル、ユーロ、英ポンド、スイスフラン)合計で、2014年に約220兆ドルに達している。

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  LIBORの後継となる代替金利指標の策定作業は日本を含め世界的に進められている。このうち円に関しては、日銀が事務局を務める「日本円金利指標に関する検討委員会」が代替金利指標などについて検討を進めており、パブリックコメント(意見公募)も募った上で11月中にも方針を取りまとめる予定だ。

  日銀の雨宮正佳副総裁は10日の講演で、LIBORの公表が停止された場合には影響が幅広く及ぶ可能性があるとし、機関投資家や事業法人などが「代替金利指標への円滑な移行という共通の目的に向かって必要なアクションを起こしていかなければならない」と訴えた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-21/PZMCNFT0G1KW01?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/443.html

[経世済民133] ヤマトがアマゾン向け運賃を値下げ!2年前の値上げから一転の事情 ヤマトDM配達は時給換算「400円」実質で最低賃金を下回り不満噴出 「日本人はなぜアマゾンに怒らない」潜入ジャーナリストが暴く現場の絶望
ヤマトがアマゾン向け運賃を値下げ!2年前の値上げから一転の事情
ダイヤモンド編集部 柳澤里佳:記者

ビジネス 週刊ダイヤモンドSCOOP
2019.10.22 5:42
  
ヤマト運輸がアマゾンと宅配運賃の一部値下げで合意したことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。27年ぶりの値上げを断行してから丸2年。両者そして運輸業界に何が起こっているのか。(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)

2017年に4割値上げ
400円前後になっていた
 国内宅配便最大手であるヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸が米インターネット通販最大手アマゾン(日本法人はアマゾン・ジャパン)との交渉により、宅配の荷受け量を増やし、一部運賃を値下げしたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。

 ヤマトは2017年に取扱数量を制限する「総量規制」を導入し、同年10月1日、27年ぶりに基本運賃を改定して値上げを断行した。なぜ今、この流れから逆行するのか。

 急増する荷物に対して人手が足りず、ドライバーが疲弊する“宅配クライシス”が顕在化したのは2016年8月のこと。ヤマトの元ドライバーがサービス残業を強いられる“ブラック職場”であることを世に訴え、ヤマトは横浜北労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けた。

 翌17年の春闘では労働組合が提示した荷物の総量規制などの条件を経営側が受け入れ、妥結。従業員約4万7000人に対して未払い残業代190億円が一時金として支払われた。

 前代未聞の事態は、業績にも大きな影響を与えた。例年は600億円強あった営業利益が、17年3月期決算では半減した。ヤマトは働き方改革を推し進めるため、総量規制と共に運賃値上げと人員増を打ち出した。

 実に27年ぶりに基本運賃を改定し、大口法人1000社に値上げ交渉を行った。ダイヤモンド編集部の取材によると、アマゾンとの交渉は従来の1個当たり280円前後からヤマトが450円前後への変更を提案し、最終的に4割増にあたる400円前後で決着した。

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据え置きか300円台に値下げ
減少した数量の拡大を優先
運賃は据え置きか300円台に値下げ
 これを受けてアマゾンは、地域に密着した中堅配送業者に配送を委託するかたちで自社配送網の強化に動き出した。「デリバリープロバイダ」と呼ばれる提携業者に委託する割合を増やすことで、ヤマトに頼らず、物流コスト全体をコントロールしようと試みたのだ。

 当初、デリバリープロバイダは問題が多かった。「日時指定通りに届かない」「配達員の態度が悪い」などサービス品質の面で、利用客の苦情が後を絶たなかった。クレームを受けてアマゾンは、デリバリープロバイダの担当地域と業者の入れ替えに追われた。

 その後、デリバリープロバイダはアマゾンの自前輸送網として成長していった。アマゾンのサードパーティーロジスティクス(企業物流の一括請負)だったファイズホールディングスや、SBSホールディングス傘下のSBS即配サポート、丸和運輸機関(宅配事業ブランド「桃太郎便」)、ロジネットジャパングループの札幌通運などはアマゾンの倉庫や宅配業務で急成長を遂げた。株式市場でも「アマゾン関連銘柄」として人気だ。

 一方のヤマトは、働き方改革のための人件費や、外部業者に委託する「下払い費」がかさむ中、「荷主離れ」が想定以上に進んだ。減り過ぎた取扱量を取り戻そうにも、思うように戻らなくなった。

 足元の業績を見ると、19年1〜3月期、4〜6月期が四半期ベースで2期連続の営業赤字。物流業界では高収益体質で知られたヤマトにとって、「こんな体たらくは過去に記憶がない」(ヤマトOB)緊急事態である。

 アマゾンに対する値上げに成功したヤマトは当初、20年以降に再び値上げする予定だった。しかし、緊急事態を受けて方針を転換した。アマゾンのデリバリープロバイダの広がりに対する危機感もあっただろう。8月頃から両者は交渉に臨み、関係者によると数量拡大を優先し、400円前後の据え置きあるいは300円台への値下げで合意した。

 ヤマトは2四半期連続営業赤字の対策として、「プライシングの適正化」や「集配キャパシティに応じて取扱数量を拡大」を表明している。従って、アマゾンへの運賃交渉と数量拡大は経営陣の施策通りではある。が、「採用しても定着しないので人が増えた実感はない」と現場のドライバー。また、「集配数に応じた歩合給や残業代が削られたことで収入が大きく減り、中堅やベテランのドライバーの間には不満が渦巻いている」(関係者)。ヤマトの労働組合もこの点を最重要テーマに掲げており、経営陣がこれに応えたと見ることもできる。

 いずれにしても集配体制を盤石にしないまま数量を増やせば、働き方改革が元の木阿弥になる可能性もある。11月に創業100周年を迎えるものの、社内は決して祝賀ムードではなく、むしろ赤字からの脱却、そして株価下落により時価総額でSGホールディングス(中核子会社に佐川急便)に追い抜かれたことに大きな焦りを感じているという。

 10月末に発表される7〜9月期の決算では、営業赤字からは抜け出すものの、20年3月期通期の営業利益は、従来予想から下振れる可能性が高い。創業100周年にあたる今期に、売上高1兆6950億円、営業利益720億円の過去最高益を計上することで、業績回復と会社の信用回復を同時に叶え、鮮やかに完全復活を遂げる算段だったが、夢に潰えそうな状況だ。

 荷物1個あたりの単価が低くても、数を増やせば収益を上げられるというのが創業者・小倉昌男の考え方だった。ヤマトは郵便局に対抗して全国津々浦々に営業センターを増やし(現在は約7000カ所)、それぞれが取り扱う荷物の数を増やすことで、「配達密度」を高め、利益を上げてきた。それでも「昔も今も、地方は密度が足りない」(関係者)。アマゾンが地方でも自前網を整備してしまえば、ヤマトのビジネスモデルも存在意義も根底から覆される。まさに100年目の危機である。

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あおりくらった地方業者「全てがおじゃん」

「せっかく準備を進めていたのに、残念で仕方ない」。ある中堅運送会社の幹部はがっくり肩を落とした。

 アマゾンは東京、大阪、名古屋の大都市圏でデリバリープロバイダによる配送を増やしてきた。10月からは地方10県以上にエリアを拡大しようと、地場運送会社を選定していた。

 この運送会社も誘いを受け、車とドライバーの手配に奔走していた。ところがサービス開始直前になり、「全てがおじゃんになった」(前出の幹部)。裏では宅配最大手ヤマト運輸とアマゾンの運賃交渉が進んでおり、この合意を受けてデリバリープロバイダの地方拡大にストップがかかったもようだ。

 もっとも、アマゾンが自前で宅配網を構築する気がなくなったわけではない。

 19年からは個人事業主のドライバーに業務委託を直接行う「アマゾンフレックス」という仕組みを本格スタートさせている。

 この仕組みでは、軽ワゴン車を持っていて、指定の窓口で事業用ナンバーを取得すれば配達業務を行える。軽ワゴン車はアマゾンからリースでも借りられる。「働く時間を自分で決める自由な働き方」をウリに、「月額37万〜44万円以上の報酬」を得られると宣伝している。

 フレックスのドライバーによると、スマホでアプリをダウンロードし、契約書の同意欄にクリック回答すればすぐに始められる手軽さで、指定の配達ステーションで担当分の荷物をピックアップし、アプリでルート確認しながら配達すればいいので、宅配未経験者でもできるという。登録数は1200程度、常時稼働しているドライバーは350〜400人程度と見られる。

 東京都と神奈川県でスタートし、現在、品川区と大田区はほぼ全て、フレックスが担っているもよう。名古屋、仙台、札幌エリアでもドライバーを大募集している。

 アマゾンOBによると、フレックスは事業リスクがあり、数年前までは導入に乗り気ではなかった。しかし右肩上がりに増えるユーザーと、反比例するかのように宅配事業者が荷物を運べなくなる現状に業を煮やし、導入に踏み切ったという。

 フレックスを拡大できれば、早晩、デリバリープロバイダの方は抑制されるだろう。というのも、アマゾンはデリバリープロバイダ各社と、実際の運び手との「差益」を問題視している。各社は、個人事業主と契約してアマゾンの荷物を運ばせているところが多い。運送業界の“下請けピンハネ構造”を、アマゾンは非効率的で無駄が多いと見ているのだ。

 結局のところ、国内運輸業に対し、アマゾンが一枚も二枚もうわ手。サービス品質が高く全国規模で展開するヤマトから荷物量増大と共に運賃据え置きあるいは値下げを勝ち取り、自社網の構築も着々と進めている。

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週刊ダイヤモンド編集部,柳澤里佳
https://diamond.jp/articles/-/218222?page=3


ヤマトDM配達は時給換算「400円」、実質で最低賃金を下回り不満噴出
週刊ダイヤモンド編集部 柳澤里佳:記者

政治・経済 inside Enterprise
2019.1.23 5:00

 
ヤマト運輸「クロネコDM便」未配達の背景には配達員の労働環境問題があった
ヤマト運輸「クロネコDM便」未配達問題の背景には配達員の厳しい労働環境があった Photo:DOL
 次々と明るみになる不祥事の背景にはいったい何があるのか――。

 ヤマト運輸は1月8日、岐阜県内の営業所において、「クロネコDM便」(企業が発送するダイレクトメールなど)が約2万3000冊、未配達だったと発表した。この営業所の委託配達員(ヤマトではクロネコメイトという。以下、メイト)が2004年から18年の間に請け負ったDMの一部を、配達せず自宅にため込んでいたことが、DMを発注した荷主からの連絡で判明したのだ。ヤマトは「該当する荷主にお詫びし、全社一丸となって再発防止策に取り組む」という。

 だが、こうした話は初めてではない。過去にも同様にDMの大規模未配達が明らかになっている。

 例えば一昨年は青森県で、約1万5000冊の未配達があった。12年〜17年の間、配達員がDMを自宅に持ち帰っていたのがアパート隣人の通報により発覚したのだ。この件で営業所や支店の幹部4人が、配達員に対する稼働状況の確認や定期的指導を怠っていた責任で減給の処分を受けている。(この件を含むヤマト運輸の懲戒事案については「週刊ダイヤモンド」2018年8月25日号(「ヤマト宅急便不正の実態」)で詳細を報じている)

 どうして不祥事は繰り返されるのか。首都圏のある営業所で長年働くクロネコメイトは、「配達員の怠慢だけが原因とは思えない。メイト業務の仕組みや給料、働き方全般の問題が根底にある」と語気を強める。

DM配達単価は1通あたり平日18円
 業務内容は大まかにはこうだ。

 毎朝、ヤマト営業所のドライバーやスタッフがメイトの自宅に50通から多い時では100通ほどのDMを届けに来る(量は地域やメイト個々人によって異なる)。DMは旅行会社の広告冊子や百貨店の中元・歳暮の案内、通販会社のカタログなど多岐にわたる。

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給与に換算されない業務も加わる
 それを徒歩や自転車で宛先の住所に届ける(バイクや軽車両を使うこともある)。郵便受けに投函すればいいので住人のサインをもらう必要はない。

 メイトは営業所近辺に住む主婦が多い。給与は出来高制で、配達単価は1通あたり平日18円、土日が23円(地域によって異なる)。子供の習い事の費用や、小遣い稼ぎが目的の人が多いという。

 実際、求人広告の謳い文句は「誰でも出来る簡単な仕事です」「事務所に通勤しなくてOK」「働く時間は自由です!」など家事の合間に手軽にできて、拘束性が低いことを強調している。

 ところが、「最近は辞める人が多くて、新しく入る人もいない。補充人員が見つからないとメイト一人当たりの配達量や担当区域を広げるしかなく、メイトも営業所もかなり困っている」(前出のメイト)。

 人が集まらない理由の一つは賃金が低いからだという。DMを配達するにはまず、住所別などに仕分けし、地図を見ながら配達ルートを考える作業が発生する。単に配達している時間だけなら1時間強だが、そうした準備・片付けを含めた総労働時間は2時間から3時間弱になる。そのため出来高を時給に換算すると400〜500円程度で最低賃金よりも低くなるというのだ。

 確かに一般的なパート・アルバイトに比べれば拘束性は低く、自由な働き方とも捉えられる。ただ、決して「楽な仕事」というわけでもない。真夏の炎天下だろうと大雨の日だろうと配達は行わなければならないし、DMを適切に保管する義務もある。

 近年は雇用情勢の改善が続き、有効求人倍率が上昇しているのは周知のとおりだ。それに伴い人手不足感が強まり、パート・アルバイトの時給は増加傾向にある。ところがクロネコメイトの配達単価は上がっていない。要するに、地域の主婦が魅力的に思うような職は他にいくらでもある状況だ。

給与に換算されない業務が加わった
 ヤマトでは宅急便荷物の急増とドライバーの人手不足を背景に、2017年秋、値上げに踏み切った。そして違法なサービス残業が常態化していた配達現場を適正化しようと、全社を挙げて働き方改革に取り組んでいる。しかしそうした動きからDM業務、クロネコメイトは取り残されている。

 むしろ最近、給与に換算されない負荷を助長する業務が加わった。もともと宅急便のドライバーが運んでいた「ネコポス」を、メイトが配達するようになったのだ。

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「ドライバー」と「メイト」、待遇に決定的な違い
 ネコポスとは小型荷物を郵便受けに届けるヤマトの独自サービス。宅急便のように翌日配達が可能で、料金が手頃なことからヤフオクやメルカリなど個人間取引サイトのユーザーが商品を発送する際に多く利用されている。ヤマトが毎月発表する輸送実績データでも対前年比2倍の勢いで伸びている。

 ポストに投函する点はDMと同じだが、配達状況を客が即時確認できるサービスのため、メイトは配達が完了したら専用の端末を使って報告処理したり、ポストに入らず持ち帰る場合は連絡票を記入あるいはドライバーに連絡して再配達扱いにしたりと、DMとは異なる付随作業が発生する。にもかかわらず、配達単価はDMと全く同じだ。

「ネコポスをメイトが配達するのは、ドライバーの負担軽減の目的もあると営業所長は言う。だけど、ネコポスもDMと同じ単価では、何だかメイトに“押し付けている”感じがする」と前出のメイトは不満を募らせる。

配達員の「ドライバー」と「メイト」に決定的な違い
 振り返れば宅急便ドライバーの疲弊も似たような状況があった。配達前は大量の荷物を少しでも配達効率が良くなるように仕分け、営業所に戻った後も伝票処理や諸々の書類作成、片付けなど、配達以外にも関連業務は山ほどある。配達中も夕方〜夜のコアタイムともなれば再配達を依頼する電話がひっきりなしに鳴り、それら全てに対応するほど長時間労働とサービス残業が常態化していた。

 ただし、ドライバーとメイトには決定的な違いがある。雇用形態だ。基本的にヤマトのドライバーは正社員で、報酬は基本給プラス配達量などに応じたインセンティブと、各種手当で構成される。

 一方、メイトは業務委託契約である(ごく一部パートもある)。営業所長とメイト個人が契約を結び、報酬は完全出来高制だ。働く側に労働基準法は適用されず、企業に使用者責任や社会保険料の義務はない。

 業務委託契約は企業が効果的・効率的に外部人材を活用して事業を行う手段であると同時に、見方を変えれば、“使い勝手の良い、安い労働力”を確保できる手段でもある。メイトが「営業所に通わないので“同僚”のメイトを知らず、横のつながりが無い。不満があっても誰にも言えず、ヤマト側に都合よく使われている気がする」とぼやく背景には、こうした契約形態が根底にあるだろう。実態はヤマトの指示で働く“労働者”だが、契約上は個人事業主だからだ。

 もちろんヤマトもメイトの働く環境に対して全くの無関心というわけではない。

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「休憩を取れなければ始末書を書かされる」
 例えば数ヵ月に一度、営業所はメイトを集めた会合を開いて、メイト同士でコミュニケーションを図り、情報共有する機会を設けている。年4回発行されるメイト向け社内報では「病気や家庭の事情などで割当数が配り切れない時には営業所に相談しよう」などと記されているし、「メイトホットライン」なる電話対応窓口も用意している。

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 また、メイトに対する働き方改革の一環として、今年は1月1日と2日が公休日になった。合わせて昨年12月30日から今年1月3日の期間は配達単価が30円に引き上げられた。年末年始の“特別手当”である(地域によって異なる)。

 しかしながら、「年末年始は毎年、DMの量が極端に減る。メイトにとって実のある改善ではない」(メイト)と、ウケは今一つだ。

「休憩を取れなければ始末書を書かされる」
 宅急便では値上げが奏功し、業績は堅調に回復している。ただし、値上げで得た収益が、労働環境の改善へ十分につながっているのかは疑問が残る。「荷物が多いのに人が少なく、休憩が取れない状況はさほど変わらない。休憩を取れなければ始末書を書かされるから、取ったことに偽装している」と首都圏で働くドライバーは証言する。

 また、正社員ドライバーに代わって夕方から夜間の配達を担う契約社員制度(アンカーキャスト)を始めたが、「応募が少ない。目標採用数1万人の達成はそうとう厳しい」(本社関係者)と諦めの声が挙がる。

 ヤマトは今年11月、創立100周年を迎える。そしてこのタイミングで営業利益720億円(19年度)の過去最高益を達成する計画を打ち出している。

 ただし、宅急便もDMも最終的に運ぶのは「人」である。「働く人を大切にする姿勢」をしっかりと示さなければ、真の意味での「完全復活」にはならないはずだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)
https://diamond.jp/articles/-/191559

 

「日本人はなぜアマゾンに怒らない」潜入ジャーナリストが暴く現場の絶望
ダイヤモンド編集部

ビジネス DOL特別レポート
2019.9.20 5:35


圧倒的な品揃えと便利さで消費者を魅了するアマゾン。しかし、その労働現場の実情を知ってなお、日本人は無批判にアマゾンを受け入れられるのか。「潜入ルポamazon帝国」(小学館)を発表したジャーナリストの横田増生氏に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 津本朋子)

時間に追われながら
毎日20キロを歩いた
横田増生氏
よこた・ますお/1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。93年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。99年よりフリーランスとして活躍。主な著書に、『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』、『評伝 ナンシー関「心に一人のナンシーを」』、『仁義なき宅配 ヤマトvs佐川vs日本郵政vsアマゾン』、『ユニクロ潜入一年』など
――2005年に「アマゾン・ドット・コムの光と影」という、やはりアマゾン潜入ルポを出版しましたが、今回2冊目を書こうと思った理由は?

 前著の文庫版が在庫切れになったことで、小学館に増刷話を持って行ったんです。最初は少しだけ加筆すればいいかなと思ったんだけど、「せっかくだったら改めて書きましょう」と提案されました。

 アマゾンは取材をあまり受けない会社です。特に僕の場合は完全にNGらしく、日本ではもちろん、シアトルの本社に行くと伝えても、絶対に受けない。

 その上、またあの倉庫に潜入するだなんて、正直嫌だなと思いました。ただ、いつまでアマゾン批判の本を出せるのかなって。アマゾンの存在感はどんどん増しているから、出版社だって批判本は出しにくくなってきています。今がラストチャンスかもしれない。そう思ったんです。

――前回は6ヵ月、今回は2週間の潜入取材でした。

 前回はまだ30代でしたからね。今は6ヵ月なんて絶対無理。体力が持ちません。2週間、ネタを集めるために行きましたけどね。毎日涙目でしたよ(笑)。

――アマゾンのバイトは、どのあたりが一番辛かったですか?

 たくさん歩くことでしょうね。歩数を計測できる機能のついた時計を身につけて測ったんですが、6時間45分の労働時間で歩行距離は20キロを超えるんです。10時間働いている人は30キロ以上になるんじゃないでしょうか。

 しかも、ハンディー端末でピッキング時間を管理される。「あと30秒、25秒、20秒」…時間切れになるとピピッとアラームが鳴るわけです。ただ歩くだけならまだしも、こうやって常に追い立てられるわけですから、そりゃあ辛いですよ。「そんなの無視すればいいじゃない」という人もいるけれど、僕みたいにお金のためじゃなくて、期間限定でネタ集めのために働いているような人間だって、気にしないではいられなかった。全部記録が残って、後で指導されたりしますしね。

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倒れてもすぐには救急車を呼んでもらえない
倒れてもすぐには
救急車を呼んでもらえない

『潜入ルポ amazon帝国』(小学館)
 今回、本を書くにあたって、欧州に飛んで、イギリスやフランスでアマゾンの物流センターに潜入取材した現地の記者たちにも話を聞きました。例えば、イギリスのジェームズ・ブラッドワース氏はアマゾンの物流センターと介護士、コールセンター、そしてウーバーの運転手の4つの仕事に潜入した人物ですが、どこが一番ひどかったかと聞くと、間髪入れずに「アマゾンが飛び抜けてひどかった」と断言していました。

 別の記者はフルマラソンで3時間を切るタイムを出すようなスポーツマンですが、それでもやっぱりきつかった、と。たった2週間とはいえ、50代の僕がどれだけ頑張ったか、わかっていただけるでしょう(笑)。

――日本の小田原(神奈川県)の物流センターでは、わかっているだけで業務中に5人の従業員が亡くなっています。

 BBCのアマゾン潜入番組では、仕事におけるストレスを研究する第一人者が「この種の仕事では、心身の病気のリスクが増すというエビデンスがある」と証言していました。もちろん、業務中に少なくとも5人もの方が亡くなっているという事実も重いけれども、取材を進めてさらに驚いたのは、救急車を呼ぶまでにずいぶん時間がかかっている点です。

 くも膜下出血で亡くなった59歳の女性の場合、倒れてから救急車が到着するまで1時間前後もかかっていました。なぜかというと、アルバイトは携帯電話の持ち込みが禁止されているし、アマゾンの物流センターでは、こうした場合の連絡系統が厳格に決まっているんです。発見者からリーダーに報告し、次にスーパーバイザー、そしてアマゾン社員…といった具合に。この連絡網をすっ飛ばして119番するわけにはいかないというのです。

 これはさすがに空恐ろしい話です。人命よりルールが優先するわけですから。物流センターの壁には、いろんな健康に関するポスターが貼ってあるんです。中には「早く救急車を呼びましょう」みたいなのもあったんですが。ゾッとしましたね。

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「人間扱いされていない」、潜入記者たちの本音
「人間扱いされていない」
潜入記者たちの本音
――物流センターの現場だけでなく、例えばマーケットプレイスの出品者の打ち明け話でも、アマゾンは無機質な対応をする会社なんだな、という感想を持ちました。

 マーケットプレイスの出品者の多くは「アマゾンに生殺与奪権を握られている」と訴えていました。商品の著作権侵害など、外部からクレームが来た場合、アマゾンはロクに出品者と話し合うこともなく、一方的にアカウントの閉鎖や削除を通告してくるのです。

 普通なら、出品者と連絡を取り合って、何がまずかったのか、どうすればいいのかを話し合うと思うんですが、アマゾンはそれをしない。実は消費者に対してもそうで、アマゾンでの買い物で何か問題が起きた場合、彼らはコールセンターの電話番号すらあまりオープンにしていませんから、お客はどうしていいか困ってしまう。

――それだと、「人」がいる意味がなさそうですが。

 そう。アマゾンの仕事は、アルゴリズム的、あるいはテンプレートを貼り付けたみたいなやり方なんですよ。きっと、業務の9割とかは「テンプレ通り」でうまく回るんじゃないですかね。でも、イレギュラーな出来事が起きたとき――例えば物流センターで人が倒れるとか、マーケットプレイスの出品者にクレームがつくとか、そうしたテンプレでは処理できない事態が起きると大変です。救急車を呼ぶのに1時間もかかってしまったり、出品者を問答無用で切り捨てるなんてことになるのです。

 物流センターのバイトは時給だってそこそこだし、食堂の定食は350円、サラダは100円、メニューのブラッシュアップもしているし、センターの壁には、これでもかというくらいに健康を啓発するポスターが貼ってある。これのどこが非人道的なのか、とアマゾンは言うのかもしれない。

 でも、アルバイトを人間としてリスペクトしているとは到底思えない。いくら定食が安かろうが、そういうことでカバーできないですよ。人を人として見ていないんだから。イギリスやフランスの潜入記者たちも、僕と全く同じ感想を持っていたのが印象的でした。

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欧米の政治家がアマゾンに突きつける「NO」
欧米の政治家たちが
アマゾンに突きつける「NO」
――欧米では、政治家や労働組合、消費者団体などがアマゾンに対して異を唱える場面が多いみたいですね。

 ええ。例えばアメリカでは、バーニー・サンダース上院議員がアマゾン従業員の時給の低さを指摘し、アマゾンは15ドルに引き上げると表明しました。ドイツでは、労働組合が週1回ものハイペースでストライキをしています。イギリスでは、政治家が組織した委員会がアマゾンの租税回避を指摘し、それがきっかけで「デジタル課税」に踏み切りました。

 アマゾンは日本でも租税回避をしています。法律を犯しているわけではないから「脱税」ではないものの、税制の抜け道を上手に探して納税額を最低限に抑えているわけです。これは、アマゾンを追及したイギリスの政治家・ホッジ氏が指摘するように、「抜け道を無理やり見つけて悪用している」といえます。

 しかし、日本では政治家もマスコミも、こうした指摘をほとんどしていません。労働者の地位向上に関しては、せめて労組があればと思いますが、今はまだアマゾンで活動していない。アマゾンにとって、日本は世界で3番目に大きな売り上げをあげている国ですが、誰も何も言ってこないわけです。唯一、公正取引委員会がちょっとうるさいな、という程度かな。正直、こんなおいしい国はないんじゃないでしょうか。

 残念ながら、アマゾンは間違いを自ら進んで正すようなカルチャーの会社ではありません。欧米の例を見ても、政治家や法律などが「NO」を突きつけてはじめて、渋々変わる、という感じです。業績は突出していて、企業カルチャーはクレバーではあるけれど、社会的責任を果たすという観点では、かなりみっともない会社なのです。

 アマゾンで買い物することが悪いとは思いません。確かに便利ですしね。でも、反対すべき点は、きっちり反対してもいいんじゃないでしょうか。税金をちゃんと払えとか、労働者を大切にしろとか。便利だから無条件・無批判に受け入れるということで本当にいいのかと問いたい。

 欧米みたいに、大新聞やテレビ局など、大きなメディアに、もっとこの問題を報道してもらいたいものです。僕みたいなフリージャーナリストが1人で騒いでも、広がりがないですからね。
https://diamond.jp/articles/-/214964
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/444.html

[政治・選挙・NHK266] 即位礼「政教分離に違反」と主張 日本の皇室、命運は13歳少年の肩に ライブ映像:きょう即位礼正殿の儀、天皇陛下が即位を内外に宣言へ 
即位礼「政教分離に違反」と主張
共同通信
1 分で読む

 即位の礼を22日に控え、キリスト教関係団体が21日、東京都内で記者会見し、宗教色の強い即位関連行事に公金を支出して国事行為として行うことについて「政教分離の原則に反して違憲だ」と主張した。

 会見した日本キリスト教協議会などプロテスタントやカトリックの各団体は、一連の儀式の中でも特に11月14日からの大嘗祭は天皇を神格化し、宗教色が強いと指摘。「宗教的儀式に国が関与することは国家神道の復活を意味し、信仰の自由を脅かす」と訴えた。

【共同通信】
https://jp.reuters.com/article/idJP2019102101002430

 
2019年10月22日 / 06:48 / 6時間前更新
アングル:
日本の皇室、命運は13歳少年の肩に
Linda Sieg
2 分で読む

[東京 18日 ロイター] - 新天皇の即位から約3カ月たった8月、日本の皇室で最も若い13歳の悠仁さまが初の海外訪問としてブータンを訪れた際、未来の天皇による世界の表舞台へのデビューと受け止められた。


羽織袴姿でブータン国王を表敬し、伝統の弓矢も体験した悠仁さまの訪問は、日本の皇室の未来を背負った少年が公の場に出てくる、珍しい機会の1つとなった。

悠仁さまの伯父である新天皇の徳仁さま(59)は、父・明仁上皇の天皇退位に伴って5月1日に即位した。10月22日、内外の代表を招いた「即位礼正殿の儀」が行われる。

<議論は棚上げ>

皇室典範は、男系男子にのみ皇位継承を認めている。この改正には、安倍晋三首相の支持基盤である保守層の強い反対がある。

悠仁さまは、同世代でただ一人の男性皇族で、父の秋篠宮さま(53)に次ぐ皇位継承順位2位にある。

朝日新聞は5月、「今のままでは、秋篠宮家の長男悠仁さまが伴侶選びを含めて、皇室の存族を一身に背負わされることになる。その重圧はあまりに大きい」と社説で指摘した。

2006年の悠仁さま誕生は、男系男子による皇位継承を守りたい日本の保守層から奇跡とみなされた。

1965年以降、皇室では男子の誕生がない。皇后の雅子さまは、結婚からおよそ8年で第一子の愛子さまを出産。女性の皇位継承を可能にするため、皇室典範の改正に向けた議論が動き出そうとしていた。

悠仁さま誕生により、その議論は棚上げとなった。

慶応義塾大学の笠原英彦教授は、「(保守層の)研究者も神社関係者もこれは天の啓示だととらえた」と言う。

<皇室の役割と皇位継承>

ここ最近、専門家やメディアから、悠仁さまが将来に備えて適切な教育を受けているか疑問視する見方が出ている。

「国民と触れ合い、幼いときから国民の考えに接する中で、自分が将来即位する立場であることを自覚していただくことが重要だ」と、笠原教授は言う。

第2次世界大戦後に制定された現行憲法では、天皇に政治的権限はなく、「日本国および日本国民統合の象徴」と位置付けられている。

悠仁さまは現在、お茶の水女子大付属中学校に通っている。現在の皇室典範の下で、皇族が学習院中等科以外の中学で学ぶのは初めてだ。

平和と民主国家の象徴として、そして戦時日本による侵略行為の被害者との和解に向け、積極的な役割を果たした祖父の明仁上皇と異なり、悠仁さまには将来の即位に備えた教育を行う特別な指導役がいない。

明仁上皇には、慶応義塾の塾長を務めた小泉信三氏などの教育係がいた。そして明仁上皇自身が、長男である今上天皇、徳仁さまのロールモデルとなった。

関東学院大学の君塚直隆教授は、「21世紀の現代にとって君主とは、あるいは君主制とはどうあるべきかをしっかり一緒に考えられるような補導役が必要だ」と指摘する。

「このあたりのことを、秋篠宮や宮内庁がどの程度真剣に考えているのか、まったく伝わってこない」

実際に悠仁さまが皇室存続の責任を1人で背負うことになるかどうかは、まだはっきりしない。

国会は2017年、明仁上皇の天皇退位を認める特例法を成立させた際に、 安定的な皇位継承のたの諸課題の検討を行うよう政府に求める付帯決議を可決した。

選択肢の一つは、愛子さまや悠仁さまの姉2人を含む女性皇族が結婚後も皇籍にとどまり、自ら、または子供が皇位を継承できるようにすることだ。世論調査によると、一般的な日本人の多くがこの選択肢を支持している。

一方、保守層は戦後に皇籍から離れた旧皇族の復帰などを求めている。

安倍首相は、厄介な議論に手をつけそうにない。

政権はこの議論をできるだけ先延ばしにしようとしていると、複数の専門家は指摘する。

(翻訳:山口香子、編集:久保信博)
https://jp.reuters.com/article/japan-emperor-prince-idJPKBN1X00J3

ライブ映像:きょう即位礼正殿の儀、天皇陛下が即位を内外に宣言へ 
警視庁、都心を厳戒態勢
 「即位礼正殿の儀」が行われる22日、警視庁は警視総監をトップとする最高警備本部を20年ぶりに設置し、全国各地の警察から招集された特別派遣部隊を含め、最大2万6千人の厳戒態勢を敷いた。

11:24AM JST

きょう午後、天皇陛下即位の礼
 天皇陛下が内外に即位を宣言する「即位礼正殿の儀」が22日午後、国事行為として皇居・宮殿で執り行われる。陛下が玉座「高御座」に立ち、即位を宣言。

10:48AM JST
https://jp.reuters.com/news/video/live
http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/643.html

[経世済民133] もう銀行なんていらない!銀行はお金を持っている人にお金を貸すんですか? 銀行は次の景気悪化までに改革を 預金したら手数料を取られる?銀行の常識は変わるのか 中国の銀行不良債権処理、1─9月は1.4兆元 首都圏中心に中古マンション需要が過熱する理由 金利
もう銀行なんていらない!銀行はお金を持っている人にお金を貸すんですか?
上念 司
経済・政治 もう銀行はいらない
2019.10.22 4:35
かつては安定企業の代表格だったメガバンクも、
いまや数千・万人単位と大量の人員削減を余儀なくされている。
地銀の凋落ぶりは、もはや目を覆わんばかりだ。
なんだかんだと金融行政に守られ、
誰がやっても儲かるような護送船団方式のなかで安穏と過ごしてきた銀行に
市場競争へ立ち向かうまともな力量はない。
いまやAIや仮想通貨といったまったく異質の金融技術が、
銀行業務の独占に容赦なく襲いかかってきているのだ。
どんなビジネスアイデアも、本来は経営者の個人保証や担保がなくても、
アイデアそのものがお金を生み出しそうかどうか、「事業性」を評価して融資されるべき。
その事業性を審査する能力こそ銀行のコアスキルであるべきなのだが、それがない。
いまごろになって事業性評価に基づく融資の拡大を標榜する銀行も増えつつあるが、
これまで担保主義で融資してきたのだから、必要な審査能力は備わっていないのだ。
こぞって消費者金融を手掛けるも、焼け石に水。もはや八方塞がり。
不動産などの担保を確保して融資するという質屋のような銀行業務は、もういらない。
『もう銀行はいらない』を上梓した経済評論家・上念司氏が、
確かな見識と舌鋒鋭い指摘で、銀行業界を“筆刀両断”する。
Photo: Adobe Stock
上念 司(じょうねん・つかさ)
1969年東京都生まれ。1993年中央大学法学部法律学科卒業。在学中は日本最古の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年より、経済評論家・勝間和代と「株式会社監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任。現在は代表取締役。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一名誉教授に師事し、薫陶を受ける。リフレ派の論客として経済政策、外交防衛政策など著書多数で、『もう銀行はいらない』(ダイヤモンド社)、『経済で読み解く日本史 文庫版五巻セット』(飛鳥新社)、『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』(講談社+α新書)などがある。テレビ、ラジオなどでも活躍中。
【前回】からの続き――
銀行にとって、融資の審査能力こそが自らの価値を生み出す「コア(中核)スキル」であり、腕の見せどころのはずです。
ところが、それを持ち合わせていない。
それでよくお金を貸せるものだと思いますが、現実にないものはないとしか言いようがありません。
では、銀行はどうやって審査して融資しているのでしょうか?
銀行が融資を判断する基準は極めて単純です。
大変残念ですが、もともと返せるお金を持っている人かどうかを判断しているだけなのです。
つまり、不動産など担保になる資産を持っている人であれば、お金を貸して利子を得る。
ブランド物の時計やバッグを質(しち)として預かる代わりに、お金を貸して利子を得る質屋とやっていることは変わりません。
事業の将来性なんて、誰にもわかったものではありません。
失敗するリスクだってあります。
そこで、銀行は仮に失敗しても「とりっぱぐれのない人に貸す」と開き直っているわけです。
逆に、お金(担保)を持っていない人には貸しません。
だって、失敗したら借金を返せないじゃありませんか。
銀行の審査業務は、言ってみれば初心者でもできる単純な仕事です。
そもそも人間がやる必要があるのかどうかも疑わしくなってきました。
(このことについては後述します)
とはいえ、不動産担保を押さえていても問題は起きます。
その不動産価値が下がってしまった場合、とりっぱぐれてしまうからです。
バブル崩壊後の90年代、このケースが数えきれないほど発生しました。
当時、土地の価格は右肩上がりで、「土地の値段は上がることはあっても、下がることはない」という“土地神話”がありました。
みんなこの神話を信じていたのです。
だから、銀行はその下がるはずのない土地を担保にお金を貸しまくりました。
ところが、土地の価格上昇が止まり、下落に転じると「担保割れ」を起こすようになったのです。
銀行はバブル崩壊後、2年だけ我慢しましたが、それ以上は無理でした。
土地価格の下落で帳簿上担保不足になった個人や企業から、容赦なく借金を取り立てたのです。
これは、たとえ返済が滞ったことがなくても、融資を減額したりやめたりして、強引に回収する「貸しはがし」というやつです。
また資金を必要とする企業や個人への「貸し渋り」も始まり、多くの人が路頭に迷ったのです。
さすがにいまでは、この手の貸しはがしはなくなりました。
しかし、担保を持っている人に貸すという銀行のスタンスは変わっていません。
多少変わったとしたら、その基準が時の経済情勢と監督官庁の指導に応じて多少緩くなったり、厳しくなったりするぐらいです。

実はそんな変化が、統計データにも表れています。
上のグラフが示す通り、2013年から日銀による大規模な金融緩和が始まり、確かに銀行融資の総額は増えています。
ところが、これを業種別にみてみると面白いことがわかります。
結論を先に言うと、この融資の伸びをけん引していたのは「不動産業」だったのです。
次のグラフで確かめてみましょう。

貸し出しは全体的に伸びています。
特に中小企業の設備資金向けの貸し出しは、全体で前年比8%まで伸びています。
これ自体は決して悪いことではありません。
しかし、問題は中小企業向けの融資であっても、一番伸びているのが「不動産」であることです。
このグラフから読み取れることは、日本の工業力の礎である製造業への貸し出しの伸びが極めて低いということです。
【次回へ続く】

次のページ
【著者からのメッセージ】

【著者からのメッセージ】
経済評論家の上念司です。
このたび、『もう銀行はいらない』を上梓しました。
銀行の9割が消え、銀行員は99%リストラされるという近未来像は、暴論でもなければ、絵空事でもありません。
大真面目にあり得る未来、いや近未来です。
銀行業界が抱えるさまざまな問題をすべて解決するための方法は、1つしかありません。
それは、銀行業務から人を排除することです。
これで銀行が抱えているあらゆる問題は解決し、弱点がすべて強みになるかもしれないのです。
バブル崩壊やリーマンショックなど、銀行業界はこれまで数々の金融危機を乗り越えてきましたが、それらとは質が異なり、より深刻な危機が襲いかかっています。
地銀の大半は赤字続き、メガバンクもこぞって数千人・万単位の人員削減や、支店・ATM網の統廃合に乗り出しています。
それだけではありません。
銀行の存在意義そのものが根底から揺らいでいます。
AIやフィンテックといった金融技術の進化によって、銀行業務の独占が崩れ始めているのです。
銀行業務そのものが「消える」可能性が高い。
私はそう見ています。

特に資金決済など、伝統的に銀行が担ってきた業務は、急速に新たな仕組みに置き換わりつつあります。
ブロックチェーンと呼ばれるシステム上の帳簿技術や、それを使ったビットコインなど仮想通貨が広まれば、ますます伝統的な銀行業務は消えていきます。
これからほんの数年で、金融業界が一変する可能性を秘めているのです。
そのことを私は『もう銀行はいらない』に著しました。
単に銀行を非難するだけではなく、日本が金融立国になる秘策も提言しています。

絶望的な状況を一発逆転する秘策を考えついたのです。

否応なしに日本の銀行が変わり、金融立国になるという“究極のプラン”です。
そのプランについては、ぜひ本書でお読みください。
ご購入はこちらから!
[Amazon.co.jp][紀伊國屋書店BookWeb][楽天ブックス]
<目次>
序 章 質屋と同じ銀行なんていらない
第1章 非効率極まりない銀行業務
第2章 銀行の消える日がやってくる
第3章 消費者金融も焼け石に水
第4章 銀行経営はがんじがらめ
第5章 銀行と裏社会
第6章 何も変わらない銀行の体質
第7章 「銀行大崩壊時代」の結末
終 章 日本の銀行が変わる究極のプラン
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【上念司】もう銀行なんていらない!
取り返しがつかないくらい
銀行に抜け落ちている能力とは?
上念 司


【上念司】もう銀行なんていらない!
銀行が融資するときに
実績や将来性より重視すること
上念 司


銀行員が生き残る道は、金持ち客を抱えて他人に渡さないことだ
山崎 元


日本の「お金持ち」を激減させた
2つのリセット
冨田和成

https://diamond.jp/articles/-/216607?page=2

 

投資信託2019年10月22日 / 12:33 / 11分前更新
銀行は次の景気悪化までに改革を=マッキンゼー
Reuters Staff
1 分で読む

[21日 ロイター] - 大手経営コンサルティング会社マッキンゼーは21日に公表した銀行業界に関するリポートで、世界の銀行の3分の1は深刻な景気悪化局面で生き残ることができず、ビジネスモデルの抜本的な刷新が必要と指摘した。

世界金融危機から10年経ち、世界の銀行では利ざやが縮小し、収入や融資の伸びが鈍化しており、投資家の信頼感は再び低下しているとしている。

リポートの執筆者の一人であるマネジング・パートナーのKausik Rajgopal氏は「銀行の60%は資本コストを上回る収益をあげておらず、銀行業界は非常に健全とは言えない。行動を起こすべき時とわれわれは考える」と述べた。

新興フィンテック企業や大手ハイテク企業が銀行業や決済業務への参入を目指すなか、景気低迷が長期化し金利が低水準だったりマイナスになっている状況は銀行業界に打撃を及ぼす可能性があると指摘。

銀行は、AI(人工知能)に投資し、業務の外注でコストを削減し、顧客サービスを改善して収入拡大を図るべきだとした。
https://jp.reuters.com/article/banks-mckinsey-idJPL3N2770I0?il=0


 


預金したら手数料を取られる? 銀行の常識は変わるのか
有料会員限定記事

笠井哲也 2019年10月21日07時00分

 
写真・図版3メガバンクの看板。銀行業界は日本銀行のマイナス金利政策で貸し出し収益が低迷している=東京都内
写真・図版日本銀行の鈴木人司審議委員(元三菱東京UFJ銀行副頭取)=2019年8月

写真・図版
写真・図版
経済インサイド
 銀行にお金を預けると、(最近は超低金利ですずめの涙の金額とはいえ)利息が付くのが当たり前――そんな常識が覆る日が近づいているのかもしれない。日本銀行の超低金利政策で、銀行はお金を貸しても収益を上げられない状況が続いている。預金を持つコストがかさむため、利息を払うどころか、逆に「口座維持手数料」を預金者から徴収するのでは、との観測が出ている。導入は預金者の反発は避けられそうもないが、日銀の追加緩和でさらに金利が下がり、銀行の経営が悪化すれば、そんな話も現実味を帯びてきそうだ。

これまでの「経済インサイド」
銀行ATM、月30万円の維持費が重荷 共通化の時代へ
どんな手数料なのか
 口座維持手数料は、銀行が預金者から預金の「保管料」を徴収するイメージだ。国内銀行の場合、データ管理や通帳の印紙税などで、一つの預金口座あたりで年間2千〜3千円のコストがかかるとされる。収益が厳しい中、この一部を預金者にも負担してもらえないか、というのが銀行側の言い分だ。

 議論に火をつけたのが、日銀の鈴木人司審議委員だ。元三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)副頭取の鈴木氏は8月末、熊本市での講演で、日銀が追加緩和でマイナス金利幅を拡大するなどして金利が一段と下がれば、収益が減る銀行が口座維持手数料を課す可能性に言及した。

 この発言をきっかけに、銀行業界では「お客様の理解を得るのは難しいだろうと考えてきたが、更なる追加緩和という環境変化があれば正当化されるのではないか」(大手行幹部)との考えが出始めた。

 大手行に比べて経営体力が劣る地方銀行の関係者からも、「マイナス金利を深掘りするなら、日銀には利用者に(預金コストを)転嫁できるように言ってほしい」との声が漏れるようになった。かりに大手行が手数料導入を決めれば「地銀も一斉に入れるだろう」(大手行幹部)との見方がある。

かつても議論が浮上
 実は口座維持手数料はかつて導入されたことがある。

 東京三菱銀行(現・三菱UFJ…
https://www.asahi.com/articles/ASM9Z3T7JM9ZULFA012.html


 
ワールド2019年10月21日 / 17:53 / 20時間前更新
中国の銀行不良債権処理、1─9月は1.4兆元
Reuters Staff
1 分で読む

 10月21日、中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)の黄洪副主席は、1─9月に銀行が処理した不良債権が1兆4000億元(1979億7000万ドル)だったと明らかにした。写真は銀保監会。北京で2月撮影(2019年 ロイター)
[北京 21日 ロイター] - 中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)の黄洪副主席は、1─9月に銀行が処理した不良債権が1兆4000億元(1979億7000万ドル)だったと明らかにした。

銀保監会の祝樹民副主席によると、中国5大銀行の小規模企業向け融資残高は9月末時点で2兆5200億元で2018年末時点を47.9%上回った。

銀保監会は、インターネット上で貸し手と借り手を仲介するピア・ツー・ピア(P2P)融資仲介業者とオンライン融資プラットフォームをマイクロファイナンスにシフトさせる計画を研究中という。
https://jp.reuters.com/article/china-banks-idJPKBN1X00U5


 

首都圏中心に中古マンション需要が過熱する理由

青木斗益・住友不動産販売副社長に聞く
2019/10/22

中西 享 (経済ジャーナリスト)

 首都圏のマンションを中心に、中古物件の成約件数が2016年から18年まで3年連続で新築を上回るなど活発になっている。不動産業界では中古マンションの流通、リノベーションなど中古関連ビジネスが拡大する中で、7月に都心の高級マンションを専門に取り扱う店舗を開設するなど、中古市場に力を入れている住友不動産販売の青木斗益副社長に、その背景と狙いを聞いた。


(voyata/gettyimages)
首都圏、近畿圏ともに中古価格が上昇
 2018年(1月〜12月)の首都圏中古マンション(70平方b)の成約件数は、3万7217件(前年比0.3%減)と過去最高の件数だった前年をやや下回ったが、3年連続で3万7000件台。成約価格は3334万円(同+4.3%)で6年連続上昇した。近畿圏の中古マンション成約件数は、1万7644件(2.1%増)と2年連続で前年比増加し、価格は2184万円(同+5.2%)で6年連続の上昇、3年連続で2000万円台をキープしている。

 東京カンテイの調査によると、今年9月の首都圏の中古マンション価格(速報値)は前月より0.6%上昇して3726万円、東京都内は2.7%増の5164万円で最高値を更新、23区内は2.2%増の5763万円と高水準になっている。前年同月で比較すると、首都圏は2.5%の上昇に対して、都内は5.5%、23区内は6.9%上がっており、都心志向強いことを裏付けている。近畿圏の9月は前月比変わらずの2367万円。中部圏は2.1%増の1989万円で続伸、名古屋市中心部は3000万円前後の相場になっている。

 これを同じ立地、広さの新築マンションと比較すると、東京都内の場合で新築は2000万円以上高い7000万〜8000万円となる。この価格帯だと、共働きでも2人合わせて2500万円以上の年収が必要となり、購入できる層は限定される。東京カンテイの井出武・上席主任研究員は「東京23区では中央3区(千代田、港、渋谷)の水準が依然として高く、これに引っ張られて中古マンションの価格はジリジリ上昇している。新築マンションの価格は依然高水準で、富裕層は都心3区のビンテージマンションを求め、実需購入者は築20年前後で城北・城東エリアで比較的安価な中古マンションに流れる状況となっている」と分析している。

強い都心志向

青木斗益(あおき・ますみ)氏 1984年に住友不動産に入社、2014年に住宅分譲事業本部長、16年に取締役、18年6月から住友不動産販売副社長。東京都出身。57歳
Q 中古マンションの販売が伸びている理由は何か。

青木副社長 過去に新築として供給されたマンションは2000年前後に大量供給されたものと、この10年以内に供給されたマンションがボリュームとして多くを占めており、これらのマンションは立地、規模感で稀少性の高い物件が多いことが挙げられる。この2、3年は首都圏では新築と中古マンションを合わせてほぼ半数ずつの年間7万戸ほど成約されているが、今後、大規模な土地の放出が少ないと思われることなどから新築が減れば、比較感の中で中古が選ばれることが多くなるのではないか。

Q どういう層が中古マンションを買っているのか。

青木副社長 コアとなっているのは、高齢者と共稼ぎのパワーカップルと呼ばれる人たちだ。高齢になると郊外の一戸建てよりも駅に近いマンションが便利なので、戸建てを売って購入するケースが多い。もう一つは共稼ぎの場合、2人の勤務する場所に近いところに住みたいため、通勤に便利な立地の都心のマンションが好まれる。新築にするか中古にするかは悩まれるが、親会社である住友不動産と顧客の情報を共有して、新築、中古のどちらでも対応できるようにしている。都心の新築マンションは今後供給量が増加するとは考えづらいので、都心を希望する顧客の場合は、立地・規模感で優良な中古物件を検討するケースが増えてくるだろう。

Q 駅に近い中古マンションが選ばれるのは首都圏以外でもその傾向がみられるか。

青木副社長 関西でも大阪の梅田周辺を含め中心部に建てられたタワーマンションの人気が根強く、中心部に回帰する動きがみられる。阪神間では山の上に高級な住宅が建てられた時期があったが、いまは山の上から降りてきて駅の近いところに移り住む傾向だ。

拡大するリノベ市場
Q そうした需要をとらえて、都心の高級(プレミアム)マンションの仲介をする専門店を設けたがその狙いは。

青木副社長 6月に新宿、日本橋、麻布の3か所、7月に渋谷、品川の計5カ所に「マンションプラザ」を設けた。都心のマンション1500棟を紐づけており、それぞれのマンションの特性を把握したプロフェッショナルのスタッフを配置して、物件に密着した仲介サービスを提供する。新築・中古の双方の市場動向を踏まえた提案や、中古物件に欠かせないリフォームなどもサポートする。首都圏はしばらく人口も減らないので、中古物件を含めたマンション需要は衰えない。

Q 中古物件の契約が増えれば、リフォーム需要も伸びるのか。

青木副社長 住友不動産は5年連続マンションリフォーム売上ナンバーワンを記録するなど実績がある。リフォーム市場は右肩上がりで、5、6年前と比べると3倍くらいになっている。購入した中古マンションの部屋の間取りまで変えてしまう大掛かりなものから、キッチンだけを更新するなどいろいろある。マンションの永住志向の高まりと中古マンションの流通の増加がリフォーム需要の拡大につながっている。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17663


 
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/446.html

[経世済民133] 会社にぶら下がる「働かないオジサン」問題 トヨタも悩む新50代問題 日経ビジネスからの提言は 50代は飛び越される世代、雇用改革の一丁目一番地 もうリストラでは解決できない「終身雇用難しい」 日本景気にリスクは見えるか?悪化する製造業と好調な非製造業 

 
会社にぶら下がる「働かないオジサン」問題 トヨタも悩む新50代問題 日経ビジネスからの提言は・・・
2019年10月12日 | 本と雑誌
会社にぶら下がる「働かないオジサン」問題・・・。

いつの時代も中高年の処遇について、20〜30歳代の若手社員からの批判や不平不満が噴出しています。
毎日残業して一所懸命仕事しているのに、何で50歳代のオジサン、オバサンたちは楽してるの???

まあ、そう言いなさんな。
「働かないオジサン」たちだって君らの年齢の頃、ブラック職場の中で社畜として夜討ち朝駆けで仕事してたんだよ。
役職定年でポストがなくなり給料も下がり、定年・・・再雇用でさらに給料は減額・・・そりゃ、モチベーションは下がるわな。
「働かないオジサン」の言い訳、理屈です。

今週号の日経ビジネス誌の「目覚めるニッポン」特集は、「トヨタも悩む新50代問題」。
サブタイトルには、「もうリストラでは解決できない」とあります。
日経ビジネス創刊50周年と、50代の「働かないオジサン」をかけたということもあるのでしょうが、今ふたたび中高年にスポットライトが当たっています。

PART1 50代問題はこう変わった 「終身雇用難しい」トヨタ社長の焦るワケ

PART2 「目覚める中高年をどうつくる?」アンフェアを正せ 難題に一筋の光明

PART3 リカレント教育、副業、出向 外に出てキャリア再考

PART4 流動化で真の終身雇用へ 人口減少を奇貨に 独自の雇用モデルを

「働かないオジサン」問題の背景にあるのが、年功序列、終身雇用、企業内組合、職能資格制度、総合決定給といった「昭和」の仕組み。
この30年間、ニッポンの企業はほとんど成長せず、悲しいことに、その間、給料も上がっていません・・・。

日経ビジネスの論調・・・日本型のメンバーシップ雇用を欧米型のジョブ型に変えていかなければならないというのがベースになっています。
それを具体化したケースが紹介されています。

◆ソニー・・・役職定年後に社内兼業で輝く 週に1日は別の業務に携わる

◆日清食品・・・管理職復帰へ「抜擢」に50代参戦 中高年と若手を競争させる

◆サントリー食品・・・仕事は「おせっかい」新たな職務を開発 マネジメント経験者を若手の相談役に

◆SCSK、サトーHD・・・事実上の定年廃止 やる気があればいつまでも働ける制度

◆森下仁丹・・・第4新卒採用 10年後は50歳代採用?

◆連合会長・・・雇用の流動性を高められる安全網を

日生を経て60歳でライフネット生命を創業、70歳で立命館アジア太平洋大学の学長に就任した出口治明さんのコメントも紹介されています。

「人、本、旅」で今すぐ学びなおせ!
今までやってきた「メシ、風呂、寝る」から、「人、本、旅」・・・広い世界に出て、毎日コツコツと「人、本、旅」で学び続ければ人は変われますよ。Knowledge is powerですよ。

そして、この特集のまとめは、次のようになっています。
企業は年齢や性別を問わずフェアに雇用し、個人は会社にぶら下がることなく常に学び、自らキャリアを築いていく。この二点さえ押さえれば、雇用モデルに定型はいらない。各企業が自由な発想で、再び成長していくためのモデルを作ればいいはずだ。

なるほど。
すべてのサラリーパースンに読んでいただきたい今週の日経ビジネスです。
#働かないオジサン#日経ビジネス#50代問題#出口治明
https://blog.goo.ne.jp/tomitomi111/e/75c1d6242bf5b1672d8af868749cb9bf

 

50代は飛び越される世代、雇用改革の一丁目一番地とは?

島津 翔 他 2名
日経ビジネス記者
2019年10月22日
1 58%
全4158文字

日経ビジネスは10月14日号の特集「トヨタも悩む新50代問題」で、これまでのような人件費抑制では対応できない中高年の処遇に関する問題を指摘した。

特集でも触れた通り、日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)や経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)が終身雇用の限界について相次いで指摘している。今年に入って企業経営者がタブーを口に出した理由は何なのか。専門家に聞いた。

>>「目覚めるニッポン」記事一覧へ


大久保幸夫氏
リクルートワークス研究所所長
1983年一橋大学経済学部卒業。同年株式会社リクルート入社。1999年にリクルートワークス研究所を立ち上げ、所長に就任。2010〜2012年内閣府参与を兼任。2011年専門役員就任。人材サービス産業協議会理事、Japan Innovation Network 理事、産業ソーシャルワーカー協会 理事なども務める。専門は、人材マネジメント、労働政策、キャリア論
大久保幸夫氏(リクルートワークス研究所所長):正社員を簡単に解雇できないという、いわゆる「解雇ルール」は変えられません。いや、変えられないと思われてきました。「変えよう」なんて政治家が言ったら次の選挙で落選するくらいのタブーだったんです。国民は安定を求めており、解雇ルールは圧倒的な支持基盤を持っています。だからこれまで、思っていたとしても誰も公には口にしなかった。アンタッチャブルでした。

 しかし、今年に入って、ついに豊田章男さんや中西宏明さんなどの企業経営者がこの問題を口にし始めた。少なくともこの問題についてより合理的に考えるのは政治家ではなく経営者だということでしょう。そして、タブーを口にしなければならないほど危機感が強くなっています。

 その危機感は、シニアの問題に起因しています。

 日経ビジネスが創刊した50年前、一般的な定年は55歳でした。年齢構成上、この55歳という年齢は合理的でした。その後、定年は60歳に延長されました。政府は多少強引にこの改正を通したのです。その後、多くの企業は55歳前後を「役職定年」としました。つまり、55歳から60歳までの5年間はサッカーで言えばロスタイム(アディショナルタイム)みたいなものでした。この状況がしばらく続きました。

 ところが2004年にさらに法律が改正され、企業に65歳定年を求めました。これに経済界は反対しましたが、結局、改正されました。この改正によって、多くの企業は60歳から64歳まで、再雇用という形で雇用を延長し始めました。ロスタイムがさらに延びたわけです。

 でも、企業はシニアの活用策をまだ詰めきれていません。実際に、できていないんです。そんな状況で「今後は70歳定年だ」という議論が始まっています。これに対して「冗談じゃない」というのが企業側の本音だろうと思います。

 終身雇用を含む日本型雇用は成長を前提にしたモデルです。高い成長率が続けば、質の高い労働力を安定的に得られるという点で非常に優れたモデルでした。だから1980年代までの日本には非常にフィットしました。

 ところがバブルが弾けると、日本型雇用は「放っておいたらコストが増えていく構造を持つ」と批判されました。給与が年功で膨らんでいくので、企業が成長しなければどんどん重くなっていく。いろんな人が疑問を持つようになりました。ただ、成功体験があるのでなかなか抜け出せなかったのです。

 その後、景気の山谷がある中で、日本型雇用は「限界を迎えている」「いや、再評価すべきだ」という声が行ったり来たりして、それが失われた20年の間、ずっと続きました。限界が見えつつ、次の最適解が見えないまま、建物で言えば増築改築を繰り返している状況です。

 ただ、今度こそシニアの問題が引き金になって、日本型雇用が崩れていくのではないか。私はそう考えています。

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50代は「飛び越される世代」
 私は現在58歳ですが、50代は大きな問題を抱えています。上は「逃げ切り世代」、下は「逃げ遅れ世代」と呼ばれていますが、私は50代を「飛び越される世代」と呼んでいます。

 パラダイムシフトが起こるときには、いわゆる世代のジャンプが同時に起こります。非常に若い世代が新しいサービスを生んだり、企業内でも世代がジャンプしてバトンが引き継がれたりしていきます。今の60代からバトンを引き継がれるのは、30代、40代の若い世代でしょう。デジタル化などによって競争環境が変わる中で、我々は「つなぎ目」としての役割をしっかり果たしていくというのが使命なのだと思います。

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https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00067/101600047/?P=2&mds


「終身雇用難しい」発言の舞台裏 トヨタ社長が焦るワケ
「50代問題」はこう変わった


大竹 剛 他 5名
日経ビジネス副編集長
2019年10月11日
 

トヨタ自動車の豊田章男社長から飛び出した「終身雇用難しい」の真意とは何か。労使双方を取材すると、トヨタですら悩む「50代問題」の実相が見えてきた。銀行、電機、通信──。あらゆる企業が日本型雇用の限界に喘いでいる。

>>「目覚めるニッポン」記事一覧へ

50代は働かない?

出所:日経ビジネスの独自調査(コラム「独自調査の結果で見る 「働かない50代」のリアル」参照)(写真=左:時事、右:South_agency/Getty Images)
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 トヨタ自動車の労使交渉が異例の展開だ。10月に「春季交渉の延長戦」を開く同社史上初の異常事態である。

 春の交渉で、労使のかみ合わなさがあらわになった。13年ぶりに集中回答日まで決着がずれ込み、結局、一時金について年間協定が結べなかった。「夏季分のみ」という会社提案を組合がのみ、結論を先延ばしにした格好だ。

 混乱の経緯をひもとくと、雇用に対するトヨタの焦りが見えてくる。

 事業環境の変化による危機感を訴える経営側と、一律配分にこだわった組合側。一義的には両者の意見が真っ向から割れたことが原因だが、もう一つの背景がある。

 豊田章男社長の怒りである。

 きっかけは、その1週間前──。3月6日に開かれた第3回の労使協議会は、異様な雰囲気に包まれていた。「今回ほどものすごく距離感を感じたことはない。こんなにかみ合っていないのか。組合、会社ともに生きるか死ぬかの状況が分かっていないのではないか?」。緊迫感のなさに対して、豊田社長がこう一喝したからだ。

 組合側からの「モチベーションが低い」などの意見を聞いての発言だが、重要なのはそのメッセージが、非組合員である会社側の幹部社員にも向けられた点にある。

「働かない50代」問題が顕在化
 労使交渉関係者は次のように証言する。「社長は、若手が多い組合側よりも、ベテランを含むマネジメント層に危機感を持っていたようだ」

 豊田社長の発言を受けて急きょ、部長などの幹部側が集まった。危機感の不足を議論し共有するのに1週間を要した。これが、会社回答が集中日までずれ込んだもう一つの理由だった。

 労使交渉の関係者などへの取材によると、トヨタにはいまだ、年次による昇格枠が設定されている。

 総合職に当たる「事技職」では、40歳手前で課長、40代後半で部長というのが出世コースで、このコースから外れると挽回はほぼ不可能とされる。

 「あぶれた50代も肩書が付く場合があるが、部下はいないし、与えられる仕事も大きくない。相当モチベーションは下がっている。それでも年収で1200万円はもらっているから誰も辞めない」と40代社員は言う。

 トヨタは、この「50代問題」を座して待っていたわけではない。例えば工場などの製造部門。同社の試算では、10年後には50代が数割増加する。

 これまでは、体力が低下しがちな50代は生産ラインの外での作業に職務を変更してきたが、人手確保のためにライン内での作業が必要になる。そのため、2012年から評価制度見直しや健康面の対策を講じてきた。若手が減るなかで、50代も戦力として計算に入れる必要があった。

次ページ動き始めた評価制度見直し
動き始めた評価制度見直し
 問題は総合職だ。関係者は語る。「リーマン・ショックまでは拡大路線が続き、働いていなくても職場の中で隠れていられた。最近はそうはいかず、中高年の『働かない層』が目立ち始めた」

 5月13日に豊田社長が日本自動車工業会の会長として発言した以下のコメントも、こうした50代問題の文脈で読むと違う景色が見えてくる。

 「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」

 トヨタ社内には「業界の課題としての一般論」との見方がある。だが、「だぶつく50代を意識しての発言」(トヨタから50代後半で転籍したグループ会社社員)と見る向きも少なくない。

 「経営者よ、クビ切りするなら切腹せよ」──。

 奥田碩元社長のこの発言に象徴されるように、トヨタは終身雇用の象徴的存在だった。そのトヨタですら、もはや変わらざるを得ないということか。

 もっとも豊田社長は「我々のビジネスモデルも変えなければならない」「瀬戸際の時代だ」など、トヨタの現状を厳しく表現する発言を繰り返している。自動運転や電動化などを表す「CASE」や、次世代移動サービス「MaaS」などの新しい概念が自動車業界を揺さぶっており、危機感を社内に共有するのが狙いとされる。

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https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00246/?P=2&mds

「終身雇用難しい」トヨタ社長発言でパンドラの箱開くか

北西 厚一
日経ビジネス記者
2019年5月14日
48 83%
全1499文字
 トヨタ自動車の豊田章男社長の終身雇用に関する発言が話題を呼んでいる。13日の日本自動車工業会の会長会見で「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べた。


トヨタ自動車の豊田章男社長(写真:共同通信)
 背景にあるのは、グローバルでのコスト競争の厳しさ。国境や業種を越える競争が激しくなるなか、企業は労働者に優しいとされる「日本的雇用」との向き合い方を模索せざるを得なくなっている。

 豊田社長は「今の日本をみていると、雇用をずっと続けている企業へのインセンティブがあまりない」と指摘した。経団連の中西宏明会長も「企業からみると(従業員を)一生雇い続ける保証書を持っているわけではない」と話し、雇用慣行の見直しを唱えている。

 終身雇用は年功序列と並び、日本企業における特徴的な雇用制度とされる。また、懲戒解雇に該当するような理由がない限り、日本では解雇することが難しい。「新卒で採用された会社に定年になるまで働き続ける」という働き方は徐々に変わってきてはいるが、今もなお、日本の人材の流動性は諸外国と比べて緩やかだ。

 ただ、グローバル化と急速な技術革新により、日本的雇用の前提は崩れ始めている。トヨタの場合、連結の新車販売台数の国内比率は25%。「100年に一度の大変革期」(豊田社長)にあっては、今後の競争力維持のためにはコネクテッドや自動運転など「CASE(参考記事はこちら)」への対応が不可欠で、研究開発費などのコストも膨らむ。

 米ゼネラル・モーターズが北米5工場の閉鎖を発表するなど、ライバルは大胆なコスト圧縮で新たな時代への適応を図る。自動運転分野などでは米グーグルなど、世界中の頭脳を集めるIT(情報技術)大手との競争も本格化する。豊田社長は「世の中が日々変わる中、全ての変化に神経を研ぎ澄ませる必要がある」と語っており、今年の春闘では、回答日当日まで労働組合とのギリギリの交渉を繰り広げた。

 今のところ、自動車業界や電機業界の労働組合に、豊田氏や中西氏の発言を受けた動きはない。ただ、ある上場企業の元人事担当役員は「終身雇用は新卒一括採用や春闘など、日本的な雇用制度の根っこにある。グローバル経営を突き詰めれば、労働組合も人事部もいらなくなる」と指摘する。

 ある労組幹部は豊田社長の発言について、「これまでのやり方では生き残れないという危機感の現れだと思っている」と話す。働き方改革が進む日本だが、世界の競争原理は「茹でガエル状態」(前出の元人事担当役員)を許してくれない。豊田社長の発言は、雇用維持への政府支援の必要性を訴えているようにも映る。「パンドラの箱」が開き始めているのは確かなのだろう。

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トヨタも悩む 新50代問題 もうリストラでは解決できない
全4回 2019年10月11日

大竹 剛

他 5名
日経ビジネス副編集長

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00245/g1.jpg

バブル崩壊から平成の30年間、その綻びが指摘され続けてきた日本型雇用。かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を支えたモデルが、いよいよ行き詰まった。背景にあるのは、少子高齢化とデジタル化というパラダイムシフト。ひずみが最も顕在化しているのが、バブル入社組を含む50代の社員だ。会社にぶら下がる「働かないオジサン」は、いつの時代にも存在する。だが、今度の「50代問題」はわけが違う。雇用モデルを刷新するときが来た。

CONTENTS
PART1
「50代問題」はこう変わった
「終身雇用難しい」発言の舞台裏 トヨタ社長が焦るワケ
トヨタ自動車の豊田章男社長から飛び出した「終身雇用難しい」の真意とは何か。労使双方を取材すると、トヨタですら悩む「50代問題」の実相が見えてきた。銀行、電機、通信──。あらゆる企業が日本型雇用の限界に喘いでいる。
>>「目覚めるニッポン」記事一覧へ
50代は働かない?

出所:日経ビジネスの独自調査(コラム「独自調査の結果で見る 「働かない50代」のリアル」参照)(写真=左:時事、右:South_agency/Getty Images)

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 トヨタ自動車の労使交渉が異例の展開だ。10月に「春季交渉の延長戦」を開く同社史上初の異常事態である。
 春の交渉で、労使のかみ合わなさがあらわになった。13年ぶりに集中回答日まで決着がずれ込み、結局、一時金について年間協定が結べなかった。「夏季分のみ」という会社提案を組合がのみ、結論を先延ばしにした格好だ。
 混乱の経緯をひもとくと、雇用に対するトヨタの焦りが見えてくる。
 事業環境の変化による危機感を訴える経営側と、一律配分にこだわった組合側。一義的には両者の意見が真っ向から割れたことが原因だが、もう一つの背景がある。
 豊田章男社長の怒りである。
 きっかけは、その1週間前──。3月6日に開かれた第3回の労使協議会は、異様な雰囲気に包まれていた。「今回ほどものすごく距離感を感じたことはない。こんなにかみ合っていないのか。組合、会社ともに生きるか死ぬかの状況が分かっていないのではないか?」。緊迫感のなさに対して、豊田社長がこう一喝したからだ。
 組合側からの「モチベーションが低い」などの意見を聞いての発言だが、重要なのはそのメッセージが、非組合員である会社側の幹部社員にも向けられた点にある。
「働かない50代」問題が顕在化
 労使交渉関係者は次のように証言する。「社長は、若手が多い組合側よりも、ベテランを含むマネジメント層に危機感を持っていたようだ」
 豊田社長の発言を受けて急きょ、部長などの幹部側が集まった。危機感の不足を議論し共有するのに1週間を要した。これが、会社回答が集中日までずれ込んだもう一つの理由だった。
 労使交渉の関係者などへの取材によると、トヨタにはいまだ、年次による昇格枠が設定されている。
 総合職に当たる「事技職」では、40歳手前で課長、40代後半で部長というのが出世コースで、このコースから外れると挽回はほぼ不可能とされる。
 「あぶれた50代も肩書が付く場合があるが、部下はいないし、与えられる仕事も大きくない。相当モチベーションは下がっている。それでも年収で1200万円はもらっているから誰も辞めない」と40代社員は言う。
 トヨタは、この「50代問題」を座して待っていたわけではない。例えば工場などの製造部門。同社の試算では、10年後には50代が数割増加する。
 これまでは、体力が低下しがちな50代は生産ラインの外での作業に職務を変更してきたが、人手確保のためにライン内での作業が必要になる。そのため、2012年から評価制度見直しや健康面の対策を講じてきた。若手が減るなかで、50代も戦力として計算に入れる必要があった。
次ページ動き始めた評価制度見直し
動き始めた評価制度見直し
 問題は総合職だ。関係者は語る。「リーマン・ショックまでは拡大路線が続き、働いていなくても職場の中で隠れていられた。最近はそうはいかず、中高年の『働かない層』が目立ち始めた」
 5月13日に豊田社長が日本自動車工業会の会長として発言した以下のコメントも、こうした50代問題の文脈で読むと違う景色が見えてくる。
 「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」
 トヨタ社内には「業界の課題としての一般論」との見方がある。だが、「だぶつく50代を意識しての発言」(トヨタから50代後半で転籍したグループ会社社員)と見る向きも少なくない。
 「経営者よ、クビ切りするなら切腹せよ」──。
 奥田碩元社長のこの発言に象徴されるように、トヨタは終身雇用の象徴的存在だった。そのトヨタですら、もはや変わらざるを得ないということか。
 もっとも豊田社長は「我々のビジネスモデルも変えなければならない」「瀬戸際の時代だ」など、トヨタの現状を厳しく表現する発言を繰り返している。自動運転や電動化などを表す「CASE」や、次世代移動サービス「MaaS」などの新しい概念が自動車業界を揺さぶっており、危機感を社内に共有するのが狙いとされる。
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PART2
「目覚める中高年」はどうつくる? 
アンフェアを正せ 雇用の難題に一筋の光明
カゴメの人事制度がここ数年でがらりと変わった。仕掛けたのは「フェアであれ」がポリシーのプロ人事マンだ。苦悩しながらも日本型雇用にメスを入れた事例に、光明を見る。

写真左:カゴメでCHO(最高人事責任者)を務める有沢正人常務執行役員。4社を渡り歩いた人事のプロ。写真右:※年収はイメージ(写真=吉成 大輔)

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 カゴメのある営業部員の評価シートを見て、有沢正人常務執行役員は驚いた。同社に転じたばかりのころだ。
 上司からのコメントは「よくできている」の一言だけ。それでも評価は「B」だった。他の部員も同様に定性的なコメントが並んでいた。まるで、小学校の通信簿じゃないか──。
 有沢氏は、典型的な日本型雇用の会社を次々と改革している「人事のプロ」だ。カゴメに入社したのは2012年1月。半年かけて国内外の拠点を回り、数えきれないくらいのヒアリングを重ねて、こう確信した。「こりゃ、良くも悪くも典型的な日本企業だな。今までであれば良い企業。でも、時代遅れだ」
 絵に描いたような年功序列だった。年間の人事評価ではAが5ポイント、Bが4ポイント、Cが2ポイントで、累計16ポイント獲得すると次のグレード(等級)に昇格する。当時、社員の85%がB評価でC評価は数人だけ。つまり、同期なら同じように4年に1段ずつ階段を上がる。結果、50代が多くのポストを押さえ、下の層が滞留していた。
 役職定年制度もなく、どうしたらこの状況を変えられるか。現場をけん引する30〜40代のモチベーションを考えると、「50代の処遇をどうするかが、喫緊の課題だった」(カゴメ関係者)。
役員から「ジョブ型」へ転換
 有沢氏の仕事人生は波瀾万丈だ。1984年に協和銀行(現・りそな銀行)に入行し、米国で経営学修士(MBA)を取得した後、長らく人事・経営企画畑を歩いた。転機は2003年。経営難に陥ったりそなホールディングスの会長に就いた細谷英二氏から「人事こそが悪の権化だ」と名指しで指摘された。
 人事部副部長兼総合企画部副部長という肩書で経営の中枢にいた有沢氏は、平均4割の給与カットと1100人のリストラの計画を立て、実行した。尊敬する先輩や、目をかけていた後輩……。最後の1人が辞めると、有沢氏はその責任を取って辞表を出した。
 この経験から、有沢氏はプロの人事マンとして3つのポリシーを決めた。
 一、現場に足を運ぶ
 二、改革は経営トップから
 三、フェアであれ
 その後、光学部品メーカーのHOYA、AIU保険会社と渡り歩き、抜本的な改革を実行。そして今、カゴメでCHO(最高人事責任者)として辣腕を振るう。ゴールはどれも同じ。「ジョブグレード(職務等級)制度」の導入だ。
 日本企業の多くが採用しているのは職能資格制度など、「人」に給与を支払う方式だ。経験とともに個人の能力が上がるという前提に立ち、年功序列に陥りやすい。
 対照的に、職務等級制度は「仕事」に給与を支払う。営業部課長、生産部部長といった仕事の中身を分解してグレードを分け、それに応じた報酬を決める。欧米では主流で、「ジョブ型」と呼ばれる。
 12年夏、有沢氏は経営陣にこう宣言した。「まずは役員陣から職務等級制度を導入したい」。そうしなければ現場は納得しないからだ。
 カゴメのポストは役員が20、部長が80、課長が270。合計370の「仕事」の内容を8項目のスキルを軸に分析し、12のグレードに格付けした。その上で、13年に役員、14年に部長、15年に課長と、上から順に導入。典型的なジョブ型の制度に3年でがらりと変えた。
 評価も是々非々で判断する枠組みに見直し、年齢ではなく成果に応じた昇給とした。
 年功的要素の廃止で、「50代問題」は理論上なくなった。職務に見合う仕事をしている50代は引き続き要職に残り、子会社の社長などに若手が抜擢されるなど、年齢を問わずフェアな人事が実行されるようになってきた。
 立教大学経営学部の田中聡助教は「年齢主義を廃止すれば、そもそも50代問題は起きなくなる。だが、カゴメほど抜本的にジョブ型に移行した事例は日本ではまだ少ない」と話す。
 雇用改革は個人の人生を左右するほどの重みがある。有沢氏のような外部出身の“プロ”ならしがらみはないが、多くの企業は現実解を導き出そうと試行錯誤中だ。ここからは一筋の光明を見いだした5社の事例を見ていこう。
全7340文字

 「こんなことを経験できる場所は世界のどこにもない」
 シェフの美しい盛り付けを再現するロボットの開発に関わるソニーの向井暢彦シニアエレクトロニクスエンジニアは充実した表情を浮かべる。向井氏の本業は生産技術の開発。所属は製造子会社だが、ソニーコンピュータサイエンス研究所が取り組む、食の世界にAI(人工知能)やロボットを応用するプロジェクトで「社内兼業」している。

ソニーの生産技術部門で統括部長を務めていた向井暢彦氏(56歳)は役職定年後、本業に加えて週に1日はソニーコンピュータサイエンス研究所のロボット研究プロジェクトに携わる(写真=吉成 大輔)
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00247/p4.jpg

 メンバー間の公用語は英語。向井氏は「工場では使わなかった技術に触れ、今まで出会えなかった人たちと仕事をするのは刺激的」と話す。
 社内兼業の一番の収穫は、転職も含め、キャリアの選択肢が広がったと感じられることだ。人材の流出につながりそうなものだが、人事センターEC人事部の大塚康統括部長は意に介さない。「活躍の場がソニーの中か外かに限らず、皆が自分を成長させようと挑戦している状態が理想」だからだ。
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00247/?P=2
PART3
リカレント教育、副業、出向…… 外に出てキャリア再考
 「あなたたちは定年同期です」──。
 2019年7月18日、東京・西新宿にあるテルモ東京オフィスの会議室に集まった28人の同社社員は、こう言われて互いの顔を見合わせた。共通点は今年50歳の誕生日を迎えることだけ。部署も役職もバラバラだ。参加者は、ニックネームで呼び合うのがルールだ。定年を迎える「同期」として現実と向き合わせるのが目的だ。
 テルモが50歳になる社員を対象とする1日半の研修を始めたのは昨年から。19年度は約200人が対象で年6回に分けて実施する。社員アンケートから、50歳前後の社員がキャリア形成の不安を抱え、成長意欲が低下している様子も浮かび上がっていたからだ。
 研修では「社外に通用する得意分野を持っているか」「周囲の人たちはあなたの判断を信頼しているか」などの設問に答え、人生の充実度の推移をチャートにするなどしてキャリアを棚卸しする。「研修で自身の価値観や能力、可能性に気づいてもらいたい」と人財開発室の神田尚子課長代理は期待する。

テルモが7月に実施した50歳を迎える社員向けのキャリア研修資料。キャリアの棚卸しを促す
 会社から与えられてきたキャリアを、自ら切り開くものとして再定義しなければならない──。そんなパラダイムシフトが中高年社員に訪れている。
 環境に応じて変幻自在のキャリア(プロティアン・キャリア)を築くことを提唱する法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔教授は、「会社の名刺や肩書は一時的な借り物にすぎなかったと自覚するために、まずは『解毒』が必要だ」と話す(下図参照)。

日経ビジネス電子版で全文掲載(写真=竹井 俊晴)

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 キャリア研修はその第一歩となる。国も中高年向けのキャリア形成支援に乗り出す。20年度から全国でキャリアコンサルティングを実施する予定で、関連費用17億6200万円を20年度予算概算要求に盛り込んだ。
 こうしたキャリア研修を経て解毒した中高年社員が向かう先は、会社の外での自己研さんだ。その一つが学び直し、いわゆる「リカレント教育」である。

 東京・中野にある社員数百人の建築設計会社に勤める秘書室長の小林幸隆氏(仮名)は今年、56歳になり役職定年の対象になった。昨年、会社が定年制を廃止。今夏、上司に「長く働きたいなら社会人大学にでも行ったらどうか」と勧められた。小林氏は「最初は戸惑った。でも、いつまでも働き続けたいとの思いは前からあり、チャンスだと考えた」と笑顔を見せる。外での学びも生かし、これまでの経験やノウハウを部下に継承していきたい考えだ。
 一方、役職定年など厳しい現実に備え、早めに学び直してキャリアを磨き直そうという人もいる。大手化粧品メーカーに勤める高橋博氏(仮名)は、47歳で自身の専門性を深掘りするために社会人向け大学院に入学した。「それまで現場で培ってきた暗黙知を、理論的に体系づけたかった。そうしないと会社がグローバル化を進める中で、この先、社内外で通用しなくなる」と話す。
 学び直しを実践する社会人の割合は、ほかの先進諸国に比べて日本は極端に小さい。経済協力開発機構(OECD)によると、日本ではわずか2.4%。14〜15%台の米英と比べると雲泥の差で、OECD平均の10.9%にも程遠い。
教育機関で学ぶ日本人(25〜64歳)の割合は国際的にみて低い
●教育機関で学ぶ者(25〜64歳)の割合

注:調査年は2012年または15年(OECD“Education at a Glance”)
(写真=Mark Reinstein/Getty Images)
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 だが、変化の兆しはある。MBA(経営学修士号)など上位層のビジネスパーソンを対象にしてきた大学院だけではなく、平均的なビジネスパーソンの学び直しを支援する方向へと裾野が広がってきている。文部科学省の調査では、03年度以降に1万〜1万3000人で推移していた大学への社会人入学者数は15年度以降は1万5000人を超えている。文科省担当者は「転職や社内でのステップアップのために学ぶ人は確実に増えている」と話す。
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00248/?P=2
PART4
人口減少を奇貨に独自のモデルを
雇用の流動化で真の「終身雇用」へ
 企業向けにインターネットサービスを手掛けるガイアックスは今から7年前、ある事件をきっかけに日本型の雇用モデルと決別した。

日本型雇用システムと決別したガイアックス。「社員総会」にも外部から自由に参加できる。右端が上田祐司社長(写真=吉成 大輔)
 「この会社を自分のものにしたい」。発言の主は、スマートフォンなどについての総合サイトを運営するAppBank事業を担当していた村井智建氏。2012年当時はガイアックスの一事業部だったが、株式会社として独立する「カーブアウト」を希望した。
 当時の経営陣の大半は、社員のわがままな主張にあぜんとした。ガイアックスはメディアマーケティングやシェアリングエコノミーの領域で多数のサービスを展開する。村井氏の独立を許し、社員がそれぞれ同じようなことを言い出したら組織が空中分解しかねない。
 ただ、上田祐司社長は別のことを考えていた。「担当者が事業を持っていってもいいんじゃないか? もう企業が雇用を維持する時代じゃない」
 経営陣で議論を重ねたが平行線をたどり、最後は上田社長がゴーサインを出した。
 「あり得ない」
 上層部約20人のうち半数以上が、この決断に反発しガイアックスを去った。だが、上田社長に悔いはない。
 この“事件”を機にガイアックスは、「自律的にキャリアを築こうとする個人」を前提にゼロから組織をつくり替えていく。その結果、これまでの常識に囚われない“自由すぎる”制度が、続々と誕生した。

 全ての事業部長に稟議(りんぎ)なしでの独立権を認め、事業のカーブアウトを制度として全社に展開した。
 キャリアは個人が自立的に築くもの、という前提に立った場合、給与の金額はどうやって決めるべきか。突き詰めると、社員自らが決めるのがベストだ。5〜6年先の中期目標を自身で設定し、成果に応じた給与を上司と相談して事前に決める。年功序列は消滅し、究極の成果主義になった。
 それぞれの仕事について、社員として取り組むか、業務委託の形で個人事業主として取り組むかも、自由に決めていい。社長に事業をコントロールする力はほぼなくなり、別の事業の担当に異動させるといった人事権も消え失せた。上田社長は、「経営者も執行役員も、社員という『個』に対するメンター役くらいに捉えている。もはやどこまでが社員かすら、把握が難しい」と話す。
 会社に忠誠を誓う代わりに安定した雇用を保証してもらうという、日本型雇用の関係性はそこにはない。逆に言えば、ガイアックスは雇用の流動化がなければ成り立たない組織になった。
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00245/

 

日本景気にリスクは見えるか?悪化する製造業と好調な非製造業

鹿野達史:三菱UFJ モルガン・スタンレー証券 景気循環研究所 副所長
政策・マーケット DOL特別レポート
2019.10.22 5:00

製造業は景況感が悪化
一方、非製造業は堅調
 製造業と非製造業の経済活動や景況感がかい離する状態が続いている。企業の景況感を示す日本銀行の「短観」の業況判断DIを見ると、製造業のDIは、中小企業を含む全規模ベースで、2017年12月調査でプラス19まで上昇していたが、その後低下基調となり、19年9月調査ではマイナス1まで低下している(図1上段点線参照)。
 業況判断DIは、景気が「良い」とする企業の比率から「悪い」とする企業の比率を差し引いたもの。業況判断DIがマイナスであることは、景気が「悪い」とする企業が相対的に多いことになり、「不況」とも判断される。こうした状況は、12年の景気後退後の回復期に当たる13年9月調査以来となる(同)。
 一方、非製造業の業況判断DIは、同じく全規模ベースで見ると、18年3月調査以降、ほぼ横ばいで推移。19年9月調査でもプラス14と、景気が「良い」とする企業が、依然として「悪い」とする企業を大幅に上回っている(図1上段実線参照)。
 製造業の景況感の悪化は、世界経済の減速に伴う輸出や生産活動、企業収益の弱含みによりもたらされたといえるが、輸出が落ち込む一方、国内需要(内需)は堅調である(図1下段)。こうした中、非製造業の景況感は底堅く推移し、製造業と非製造業の景況感は対照的な動きになっている。

https://diamond.jp/mwimgs/e/c/-/img_ecc9bd93b62e8748671dda679656fdc3159575.jpg

 経済全体の成長ペースを見ると、18年10−12月期は、前期比年率でプラス1.8%、19年1−3月期が同プラス2.2%、4−6月期は同プラス1.3%となっており、輸出や生産、製造業が不調だが、内需や非製造業の活動が堅調で、経済全体の成長が保たれている格好になっている。
 過去を見ると、輸出や生産活動、製造業部門の落ち込みがその他に波及し、経済全体が弱含むのが景気悪化の典型的なパターンだったが、今回は製造業の不調と非製造業の好調の並走が比較的長く続いている。政府の景気判断を示す月例経済報告でも、政府は10月に「輸出を中心に弱さが長引いている」との判断を示しつつ、全体としては、「緩やかに回復している」との見方を維持している。

過去は製造業の悪化が全体に波及
今回も同じパターンとなるか

 先行きについては、強弱の見通しがあるが、輸出・製造業と内需・非製造業の対照的な動きが、いずれ崩れるとの見方で一致している。弱めの見方については、先に述べた、輸出・生産の落ち込みが他に波及する典型的な景気悪化のパターンを辿るとの予測だが、ここにきては、世界全体の製造業の景況感を示す、製造業景況指数(PMI)が、8、9月と上昇するなど、世界経済の悪化に歯止めがかかる中、輸出が持ち直している。
 貿易統計を基に推計した月次の実質輸出(筆者推計)は、5月にボトムをつけており、四半期では4−6月期に前期比でほぼ横ばいとなった後、7−9月期は前期比で1.3%増加している。世界経済が持ち直した背景の1つとして、次世代通信規格「5G」の普及に伴う半導体需要の拡大が予想以上となっていることが挙げられる。
たとえば、大幅に落ち込んでいた日本製の半導体製造装置の販売額は、6月をボトムに増加に転じており、7−9月期は前期比で11.5%増(筆者推計の季節調整値)と急回復している。
 輸出の減少が内需に波及する経路として、輸出企業を中心とした製造業の設備投資の抑制が考えられていたが、輸出に持ち直しの動きが見えるなか、機械設備投資の先行指標である機械受注(製造業・内需)は増加している。製造業からの受注額は、月次では3月にボトムをつけており(図2点線参照)、四半期ベースでは4−6月期が前期比2.5%増、7−8月平均は4−6月期比で1%増えている。
また、9月値まで発表となっている工作機械受注(内需)を見ると、7月以降急増しており、9月までの3ヵ月間で22%近く増加している(図2実線参照)。

https://diamond.jp/mwimgs/3/d/-/img_3d2d781e0e4ea0a6f743261b8a553e47185397.jpg

 輸出の減少を起点とした景気の下押し圧力は、輸出の持ち直しで製造業の設備投資に増加の兆しが見えるなど、和らいでいる。むしろ足元では、景気が上向く動きを支える可能性が出てきているとも言えるが、こうした中、懸念されるのは、やはり10月に実施された消費税率引き上げの影響となる。

懸念される消費税率の引き上げ
中規模の補正予算編成が必要

 消費税率引き上げ後は、引き上げ前の駆け込みの反動に増税効果が加わる形となる。駆け込み需要については、税率の引き上げが14年4月に比べて小幅なほか、軽減税率の導入もあって相対的に小規模となるものの、一定程度は発生している。
 まず住宅着工を見ると、持ち家の着工戸数は、前回の税率引き上げ前の13年10−12月期の前年比19.7%増に対して、19年4−6月期は同9.6%増となっている。乗用車販売は、前回の税率引き上げ直前の14年1−3月期に前年比でプラス20.9%まで上昇したのに対して、足もとの19年7‐9月期は同プラス7.5%となっている。
スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、大型小売店などの週次の販売額を、SRI一橋大学消費者購買指数でみると、14年3月第4週に前年比で23%近い増加となっていたのに対して、今回は19年9月第4週に同13.3%増となっている。
 増税効果は、税率の引き上げが小幅なことに加え、引き上げに合わせた教育の無償化・社会保障の充実や経済への影響の平準化に向けた施策などが実行されることから、相対的に小さくなると見られている。
負担増の規模について、政府は税率引き上げによる負担増が5.7兆円程度、たばこ税などの見直しによる財源確保による負担が6000億円程度で、合計6.3兆円程度としている。これに対し、軽減税率導入などによる負担減やその他の施策の規模の合計は6.6兆円となり、規模としては釣り合う形となっている。ただ、経済への影響の平準化に向けた施策には、税率引き上げ直後に効果がフルに表れないものもあると見られており、やはり一定程度は経済へのマイナス効果が残ると考えられる。
 こうしたなか、政府は19年度の補正予算を編成する方針を示しており、「令和元年台風19号」の被害からの復旧・復興に加え、追加経済対策を併せて盛り込むことを検討している。消費税率引き上げのマイナスの影響が一定程度残ることに加え、米中摩擦の激化への懸念は根強く、世界経済の持ち直しの動きが盤石とは言い切れない状況にある。大規模とまではいわないものの、中規模な補正予算の編成が必要と言えよう。
(三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所副所長 鹿野達史)
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[自然災害22] 台風19号の教訓、意思決定を惑わすバイアスの正体 上陸せずとも台風影響 大雨に警戒  台風被害のりんご出荷しないよう 自宅が床上浸水140センチ境界地域で何が
台風19号の教訓、意思決定を惑わすバイアスの正体

河合 薫
健康社会学者(Ph.D.)
2019年10月22日
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(写真:shutterstock)
 台風19号の猛襲から一週間以上が経ったが、いまだに被害が拡大している。

 17日の時点で、65人死亡、14人行方不明、349人負傷。全半壊の住宅は94棟、浸水家屋は3万3600棟以上(総務省消防庁)。堤防が決壊したのは7県の59河川90カ所で、水が堤防を越えて浸水した河川も、国管理のもので22河川、都道府県管理では194河川だ(国土交通省)。

 さらに週末には雨が降り、朝晩は急激に冷えるようになった。何をどこから手をつけ、どうやって生きていけばいいのかと厳しい状況に追い込まれている方々のことを思うと、うしろめたい気持ちでいっぱいになる。

 「自然の猛威に人は屈するしかない」と大きな災害に見舞われるたびに、誰もが思う。だが、今回の台風ほど、重要な情報を切り捨ててしまう「バイアス(思考の偏りやゆがみ)」の存在を意識させられたことはない。

 もし、「心はバイアスから逃れられない」という人の本質的特徴をもっと理解できていれば、もっと何かできたんじゃないのか? もっと救える命があったんじゃないのか? そう思えてならないのである。

 「台風など気象による災害は地震とは異なり、予想し備えることができる唯一の災害」。それを信条に気象予報士として若い頃に報道番組に関わってきただけに、悔しくてしかたがないのである。

 そこで今回は、人の判断や意思決定の罠(わな)となる「バイアス」について考えてみようと思う。

生かせなかった東日本大震災の教訓
 「台風当日の夕方から緊急メールはガンガン届いていたのですが、対象が『郡山市全域』と広域だったため、たかをくくっていました。ところが、12日の夜半、暴風雨が吹き荒れ始めた後、居住町名が記載された避難指示メールが届きはじめ、さすがに慌てました。

 ただ、何に対してどう対処していいのか、まったく頭が働かず、あたふたするばかりで。避難所に歩いて行ったらずぶぬれになる雨量だし、ぬれたまま避難所にいたら寒くてつらいし、高台だし川からも距離があるから、今夜は家で待機しよう、と身勝手な判断をしました。

 幸い、私も自宅も被害はありませんでしたが、周辺は崩落や陥没、浸水により主な道路は封鎖されました。翌朝、惨状を見て初めて、豪雨被害とはこういうことか、と実感しました。

 福島県内の本宮市では、深夜からの増水により、自宅で命を落とされた方や、深夜0時すぎに自宅に戻られ、亡くなった方もいて、自分にも起こり得たことなのだと気づき、青ざめました。

 東日本大震災の被災経験から、地震時の緊急対応はできているつもりでしたが、氾濫や豪雨にはまったく生かすことができない自分にぼうぜんとしました」

 これは私のメルマガの読者から送られてきたメールである。

次ページ知らないうちに都合の良い情報を選んでいる
 時間経過とともに紡がれるリアルな言葉からは、台風の恐さと、それに備えることが「想定を超えた」ものだったことを痛感させられるが、この心の動きこそが「バイアス」である。

 今回の台風は強さと規模ともに、これまでにないパワーを持っていたことに加え、台風の暴風圏の右半径に入るコースが予想されていたので、東京湾や丹沢山地などの地形的な影響も加わり、風や雨が予想以上になることは気象の専門家であれば分かったことだ。

 私自身、フェイスブックなどで個人的に警戒を呼びかけていた。だが、正直なところ、ここまで河川の氾濫や堤防の決壊が広範囲にわたるとは、全く想像していなかった。

 バイアス。そう、数週間前の台風15号が千葉県にもたらした被害の多くが暴風によるものだったことで、バイアスがかかった。「想起ヒューリスティック(利用可能性ヒューリスティック、想起しやすい情報を優先して判断してしまうこと) 」の罠にはまってしまったのだ。

 想起ヒューリスティックとは、「人が判断や意思決定をする際、無意識に使っている法則や手がかり」を指し、理詰めで正しい答えを探るアルゴリズムと対比される概念である。

 平たく言えば、「物ごとを直感的にざっくりと捉える」心の動きであり、この働きのおかげで私たちは迅速に意思決定をし、合理的な行動につなげることができる。

 件のメルマガ読者から寄せられたメールの「東日本大震災の被災経験から、地震時の緊急対応はできているつもりでしたが、氾濫や豪雨にはまったく生かすことができない」というのがまさにこれだ。

知らないうちに都合の良い情報を選んでいる
 ところが、想起ヒューリスティックでは、記憶時のインパクトが大きかった情報、何度も経験している情報、身近な人の具体的な情報を手がかりにするため、誤った判断につながるリスクも大きい。たとえそれが「極めてまれ」な現象であっても「経験則」として優先される。過去の事象より最近の事象の方を、不相応に高く評価してしまうのだ。

 最大の問題は「想起ヒューリスティックでは情報が単純化される」こと。知らず知らずに大切な情報が無視され、想定外の出来事に対処できなくなる。

 しかも、人間の心には「確証バイアス」という、確信や仮説に反する情報を無意識に排除する動きもあるため、「『郡山市全域』と広域だったため、たかをくくっていました」(前述のメールより)という意思決定が下されてしまうのである。

 つまり本来であれば気象庁から「狩野川台風並み」と注意喚起されたときに河川氾濫の怖さと被害をイメージすべきだったのが、台風15号により千葉県で発生した長時間かつ広範囲にわたる停電や断水、なぎ倒された鉄柱や、倒壊したゴルフ練習場の鉄柱に押しつぶされた民家といった、映像や情報が知らず知らずにインプットされてしまっていたのではないか。

 SNS(交流サイト)では停電のときにツナ缶が役立つ、断水のときのために風呂に水をためておこう、窓が割れないように粘着テープえお張ろうといった情報があふれたけど、洪水や堤防決壊に役立つ情報は少なかった。

 メディアでは狩野川台風での死者数の多さばかりが報じられたので、「とんでもなく危険な台風が来る」という危機意識は伝わったけど、もうひとつの重大な情報が落ちた。狩野川台風については後述するが、「狩野川台風並み」という情報が単純化され、結果的に被害が拡大してしまったのだ。

次ページ過去の被災情報を自分ごととして認識できるか
 個人的な話になるが、私がテレビ朝日やTBSでお天気キャスターをやっていた2000年前後は、ゲリラ豪雨、集中豪雨という言葉が市民権を得るなど「水害」が頻発した時期だった。

 1999年8月14日には、玄倉川の中州でキャンプをしていた家族ら13名が死亡(玄倉川水難事故)。2000年9月11日には、秋雨前線を台風14号が刺激し、愛知県名古屋市内のおよそ37%が浸水し、都市水害の恐怖を実感させた東海豪雨が起きた。

 当時の私が、豪雨が予想されるとき真っ先に注意喚起したのは、洪水だった。

 日本の川はジェットコースター並みの勾配だと言われる。洪水は目の前で雨が降っていなくても起こる。上流の雨が川の水位をあげ、下流付近に洪水をもたらす。降雨が峠を越した後に水かさが瞬く間に上がるので、とにかく高台に、空振りでもいいから高台に避難してほしい──。

 私は何度も、何度も、数え切れないほど、この文言をテレビで言った。

 だが、今回の台風19号では私の頭の中は「風の被害」で埋め尽くされた。「風がひどくなるっていうから、恐くなって避難所に行ったんだ。それで次の朝、家に帰ったら家が流されていて。畑ももうダメだし、家もないし、この先どうすればいいのか」とNHKの報道番組で絶望する男性が映し出されていたが、おそらく気象の専門家も含めて多くの人たちが「想起ヒューリスティックの罠」に、悲しいかな落ちてしまったのではないだろうか。

過去の被災情報を自分ごととして認識できるか
 そもそも気象庁が過去の台風を引き合いに出すのは、減災(災害被害の軽減)が目的である。

 同じような勢力、同じようなコースをたどった過去の台風の具体的な被害が分かれば、備えることができる。日本は起伏に富んだ複雑な地形をしているため、狭い地域の中で雨の降り方や風の吹き方に違いがあり、道一本挟んだだけで被害のリスクと種類が変わる。

 富士山レーダーに代表されるように、日本の気象技術の発展はハード面の観測を強化し予測精度を上げることの歴史だった。だが、どんなにコンピューターが正確に雨量や風の強さをはじき出したところで、「自分の頭の上に降りかかる出来事」に変換できないことには意味がない。

 その「頭の上感覚」を一人でも多くの人に持ってもらいたい──。そんな気持ちが天気を予報する人たちの願いだと私は理解しているし、私がお天気キャスターのときに一番力を入れたのもまさにそこだった。

 狩野川台風は大規模な治水対策のきっかけになった台風である。

 狩野川台風は「100年に一度の風水害」と呼ばれた台風で、伊豆半島中央部を流れる狩野川上流で鉄砲水や土石流が集中的に発生し、約1200カ所の山腹や渓岸が崩壊。激しい水流で山が2つに割れる現象が起こるなど壊滅的な地崩れが起きた。一方、狩野川下流では川の堤防が破壊され、広範囲の住宅が浸水し、橋梁には大量の流木が堆積し、浸水する地域はさらに拡大した。

次ページハザードマップで予想されていた浸水地域
 堤防が崩壊し、当時避難所となっていた修善寺中学校には鉄砲水が押し寄せ、さらに下流の大仁橋の護岸を削った。濁流が町を飲み込み多数の大切な命が奪われることになった。

 「眠りから覚めると、家の中にはごんごんと水が湧いている。水はもう胸まで来ている。鼻腔に悪臭を放ってねとつくものがある。誰かの糞便だった。……水が階段の最上部に達したとき、ドドーと百挺の掛け矢で物を叩くような音がして、家中の雨戸やガラス戸がはじけ飛び、汚水が奔流となって家の中を流れ過ぎる。タンスをはじめ家の中のあらゆる物が一瞬の内に流れ去った。

 2階の窓を開ければどうだろう、目の前に急流が忽然と出現している。目の前を人が押し流されていく。『助けて』と必死の形相でこちらを見る。 流されていく人々の頭へ流木が矢のように襲いかかり、鈍い音を発して人が水中に没していく。

 地獄という言葉が私の頭をかすめた。……どの遺体も着衣をはぎ取られて全裸で、しかも傷だらけ、それが水を含んでぱんぱんに膨れている。まるで芥川龍之介の『羅生門』で、紛れもない地獄だ」(三島市在住者)。

 これは気象業務に関わった人なら一度は聞いたことがある『狩野川台風手記』に記された61名の体験談の一部である。

 狩野川台風では今回の台風19号同様、広範囲に被害が拡大。関東地方南部でも浸水被害が多発し、東京の死者・行方不明者は46人。浸水家屋は33万戸近くで、静岡県全体の20倍だった。

ハザードマップで予想されていた浸水地域
 そして、この未曽有の水害を教訓に、7年後、狩野川放水路が完成し、全国各地でさまざまな水害対策が進められたのである。

 今回の台風では、大雨による被害を想定したハザードマップと実際の浸水地域がほぼ一致している。「頭の上で起こる水害」の可能性が、地形や地質、過去の被害からかなり正確に予測されていたのだ(一部予想されてなかった地域があったと週末に報じられたが)。

 繰り返しになるが、「人の判断、意思決定にはバイアスがかかる」という心のやっかいな機能を理解し、気象庁の「狩野川台風並み」という注意喚起の真意に向き合うことができていれば……。

 狩野川台風のときの川の氾濫や洪水、浸水被害の知識が共有されていれば、救えた命もあったのではないか。もっとできることがあった……、そんな忸怩(じくじ)たる思いでいっぱいになる。

次ページ思い込みと周囲からの批判がバイアスを高める
 バイアスによる罠は私たちの日常のいたるところにあふれている。

 会社、組織も例外ではない。もっとも気をつけなくてはならないのが、計画錯誤(楽観バイアス)と呼ばれるものだ。

 これは「時間や予算など計画完遂に必要な資源を常に過小評価し、遂行の容易さを過大評価する傾向」のこと。「マラソンと競歩を北海道で開催」することになるなど最初から最後までゴタゴタ続きの東京オリンピック・パラリンピック計画は、計画誤差の典型といえる。

 たとえば人類史上最悪の悲劇的なプロジェクトと揶揄(やゆ)されたシドニーの「オペラハウスプロジェクト」もその1つだ。

 ジョセフ・ケーヒル率いるニュー・サウス・ウェールズ州政府と、デンマークの建築家ヨーン・ウツソンは、大規模な建設プロジェクトにありがちな工期の遅れと予算オーバーに着目し、コンクリート製の柱やセラッミック製のタイルなどを組み立てる工程を詳細に検討。リスクを最小限に抑える措置を講じて1959年に建設に着工した。

 ところが完成予定の4年後にできていたのは、コンクリート製の枠組みだけ。手順の変更やら、甘い見積もりやら、労働者の問題などが次々と発生し、完成に14年もかかってしまったのだ。総工費は当初予定の数倍から十倍以上にも上ったと言われる。

 そこで研究者たちがプロジェクトの失敗原因を検証したところ、「そりゃあ、失敗するだろう」と予測できる要因が計画の段階で山ほどあったことが発覚。しかも、興味深いことにプロジェクトを進めたケーヒルやウツソンだけでなく、周りの人たちもが「計画は万全。リスクはすべて排除した」と一点の曇りなく確信していたのである。

思い込みと周囲からの批判がバイアスを高める
 人間の脳には情報を処理する限界があることに加え、「これをやりたい! やらねばならぬ!」という思い込みが、バイアスを高める。

 個々人のバイアスは、集団浅慮(集団で会議する際に不合理が容認されやすいこと)と合意形成を経て増幅される。不都合が生じた後でさえ「いやいや、大丈夫。たいしたことない」と楽観的に捉え、周りから批判が高まれば高まるほど「当初の予定どおりに進めれば問題なし」と自己を正当化する確証バイアスが高まってしまうのだ。

 世の中で生じる問題の多くは外部からではなく、私たちの「心」から生じているという不都合な真実を「私」が忘れないことが最悪を回避する唯一の方法なのかもしれない。


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『他人の足を引っぱる男たち』(日本経済新聞出版社)


権力者による不祥事、職場にあふれるメンタル問題、
日本男性の孤独――すべては「会社員という病」が
原因だった? “ジジイの壁”第2弾。
・自分の仕事より、他人を落とすことばかりに熱心
・上司の顔色には敏感だが、部下の顔色には鈍感
・でも、なんでそういうヤカラが出世していくの?
そこに潜むのは、会社員の組織への過剰適応だった。
“会社員消滅時代”をあなたはどう生きる?


コメント37件
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塩見五郎

会社員

ここのところ、毎年異常気象が起こるのが通常となっており、あらかじめ災害の危険性があるという警告が出ていても、(自分のところは)さしたる被害もなく、結果論としては肩透かしになることが多々ある。そんなことが続き、今回も気象庁が大げさに言っているだけで、どうせ大丈夫だろうと思ってしまっている自分を戒めないといけない。
2019/10/22 08:09:463返信いいね!


ジム8

バイアスというより、実際その場に遭遇すると恐怖から金縛りに近いものがあり身動きできないのでは?

一般市民にとって災害における役所の避難アナウンスや指示が曖昧で、指示出た時はもうどうしようもない状況下に置かれ手遅れ状態。
一方、役所にとっては日頃から市民に注意喚起しているつもり。

双方、普段から避難訓練等真摯に対応しないと、いざという時に心身共にパニックに陥る。
2019/10/22 08:17:312返信いいね!


良学

無し

日本はバイアスによる安全神話はいっぱいあり、災害だけではありません。これだけコンビニ強盗やひったくり、個人の住宅侵入のニュースが増えているのに、自宅のドア無施錠、女性一人住いの窓無施錠、オレオレ詐欺の電話につい乗せられる、自転車の前かごに財布の入ったバッグを入れて走る、日本と同じ感覚で外国の非安全地帯に踏み入る、安全対策をよく考えずにオンライン取引をしている。更には、交差点でスマホを見ながら渡る・自転車で走る、街中を曲芸さながらに車の間を縫って走るオートバイ、軽車両であるにもかかわらずその自転車で逆走する法規違反。その当事者は皆自分は安全だと思っています。一つ一つを挙げていたら記事は書けます。それよりその日本文化に切り込むことをお勧めします。
2019/10/22 09:38:292返信いいね!


I'm ignorant

路傍のゴミ

西日本豪雨で避難しなかった人もこのバイアスのせいでしょう。
ハザードマップを作ったから安心してしまうという錯覚もあったのか?
ハザードマップをストリートビューとでVRを作り自分の周りがどういう状況になるのか疑似体験できたらどうだろう。

2019/10/22 09:39:501返信いいね!


codeblueline

本文中に書かれているバイアスの話っていうのも確かに重要なことなんでしょうけど、自分は災害の専門家ではないし、所詮はただの一般ピープルですよ。なので、目に入って来たことと言えば、むしろ、メディアが「今までに経験したことの無い規模」の何たら〜みたいなことを盛んに言うから、台風がやって来る前日のスーパーとか、夕方時点で何にも物がなくなってた訳ですよ。特に酷かったのは、肉、乳製品、パンの類で、自分が足を運んだ夕方6時頃には残量が未だあって買物カゴに入れることも出来たけど、夜の7時頃来た人には何にも残って無いんですよ。で、子連れの若いお母さんとか、明らかに何も買えなくて困ってる・・、その時、自分はたまたま前日に結構な量を買い込んでいたんで、そのお母さんに買物カゴ見せて、コレとコレとこのあたり要らないから持ってってもらえます?と言ってみたら、すんごく感謝されたw

その時思ったんですけど、自分は荒川土手沿いに住んでますんで、今回は本当に覚悟してたんですよ。ある意味不安でしょうがなかった。ところが、そういうことやってみたら、意外と自分って余裕あるのかな?って思えるようになったと言うか、変な不安がなくなったんですよね。それって、多分脳が錯覚しているだけかも知れないんですけど、それはそれで良いんじゃないか。不安に駆られて必要以上に過剰反応するよりは、まずは自分のメンタルを正常に保っておくという、それが自分のためであるのと同時に、結果的に社会のためではないかと。これから台風の度にスーパーが空っぽになっててもしょーがないじゃないですか?

なので、
千葉県で発生した停電や断水の情報があったから→「狩野川台風並み」と注意喚起された河川の氾濫に思いが至らなかった、と後悔する前に、例えば今回は、千葉県では台風襲撃中に震度4の地震が起こってるんですよ。
これが、次の台風時に、都内で震度5以上の地震が起きた時に、そう言えば前回の台風の時に千葉で地震が・・とか言ったところで、専門家はそれに対してシミュレーションしておく必要はあると思いますが、自分みたいなパンピーはですよ、そうなった時でも、精神的に正常心を保てるようにするにはどうすれば良いか、ってことを考えってった方が、自分のためでもあるし、結果的に社会のためにもなると思うのです・・「健康社会学」的に言ってもw
2019/10/22 09:51:517返信いいね!


フライヤ

普段から訓練していればそういった緊急運動ができるだろうが
私も含め一般人は緊急時を想定できていない
していたとしても低いレベルだと思うので、適切な対応はむずかしい
火災、地震、水害、それぞれ避難先も対処も違うことの理解から
始めないとと感じました。
農業をしていますが、親には田んぼに行くなと毎回言っていますが
行きたそうにしてます。
ドローンやWEBカメラなど確認できる環境をつくり自分で納得できるようにする必要があるのかもしれない・・・
2019/10/22 10:18:573返信いいね!


daishi

シドニーオペラハウスのデスマっぷりをWikipediaで見ましたが、新国立競技場も当初案で強行してたら同じ結果になってたでしょうね。

災害の安全バイアスとプロジェクトの混乱は異なるような気がします。
プロジェクトの混乱は不安がありつつも作業が進行していく中で奇妙な安心感と不安を抱え込んでいますが、災害は自分が当事者にならないと思い込んでいます。
2019/10/22 11:25:56返信いいね!


あんころしゅうくりーむ

万年現場人

労働災害防止に係る業務で、しばらく前に「正常化の偏見」と言う言葉を聞いた。「Normalcy Bias」の和訳だそうだが、何の根拠もなく、自分だけは災害に遭わない。と言う「思い込み」だそうです。どこか心の中で、「明日も生きている」「災害は大丈夫だろう」と思っていないと不安にかられるので、そう思い込む人間の特性なのでしょうか。東日本大震災の釜石の奇跡、と言われるように、常日頃の防災意識と訓練、備えがとても大事な教訓なのでしょう。
2019/10/22 16:44:483返信いいね!


男なら泣くな

そういうバイアスを減らしていくにはどう働きかけるといいんでしょうね? ハザードマップがあっても見ず、もちろん断層も調べないし、緊急時対応の準備は一切しない、後で「自分のところは大丈夫だと思ってた」と言う方々には理屈を説いても通じる気がしませんがそういう方は結構な数いますよね、きっと
2019/10/22 18:49:325返信いいね!


Take.Haya

台風19号の接近に際して、気象庁が「狩野川台風並み」という発表をしたときの第一印象は「何、それ?」でした。60年も前の台風の事を覚えている人は少ないでしょう。そもそも狩野川がどこに有るのか知っている人がそれほど多いとは思いません。関東在住の70歳以上の方であれば記憶の中にあったかもしれませんが、危機感を想起させたか疑問です。気象庁がそのような発表をしたのは、気象関係者の間では「狩野川台風の被害」がよく知られているものであったという事を、今回の記事で認識しました。これこそ、気象関係者における「バイアス」と言えるのではないでしょうか。情報提供者は、伝えたい効果を持つ伝え方になっているかに注意することが必要なのだと思います。
2019/10/22 18:51:399返信いいね!


ちゃた

いいコラムだと思いますが、バイアスを高める要因としてやはりメディアの責任もあると思います。
テレビの天気予報は普段から危機感を前面に出し煽ること多数。
それが当たれば皆さんは信用するけど、外れることが多ければオオカミ少年になってしまい信用されなくなる。
衛星を何個も打ち上げ、最新コンピューターを導入しても今ひとつ天気予報が当たらない難しさがありますね。
2019/10/22 19:09:40返信いいね!


駒鳥

>「自然の猛威に人は屈するしかない」と大きな災害に見舞われるたびに、誰もが思う。

私はそんなこと思わないので、「誰もが」は間違いです。
地球規模で増加し深刻さを増し続ける天災が、
人災であることを認めない人類の愚かさに絶望するだけ。
バイアスはむしろ「私たちは何の悪いこともしていない」という思い込みの中にあると思います。

底引き網で一網打尽に獲りまくり、
海に河川に汚れた排水を流しまくり、
コンクリートで固めて産卵環境を破壊しまくり、
人類規模での私利私欲のため地球温暖化を引き起こして、
それで漁獲量が激減してさえまだ、人災だと認めない人がいくらでもいるよね。
天災も同じでしょ。
記録的な酷暑も台風も火災も、立て続けに起きても、増え続けていても、まだ、人災だと認めない。
人災であるところの災害を減らす努力をするべき時に、災害から人を守る努力が足りなかったと反省する論調には絶望しか感じられません。
河合さんだけが間違ってるわけじゃないからこその絶望です。

純粋な天災ももちろんあるにせよ、近年のは、人災の方が多いと思います

2019/10/22 19:52:162返信いいね!


sf0307

どんな災害でも、 直前にならないと自分のいる場所が危険か分からない。
いや、ほとんどの災害になって初めて自分が被災者だと分かる。

ということは、答えはひとつ。
被災者になる前に行動するしかない。
これは2つの意味がある、
まず、今回のように被災の恐れがある場合、危なくなる前に貴重品や人の移動を始めること、
そして、そのためには動き出すための基準を明確にしておくこと。

例えば、50年に一度の大雨での浸水想定区域なら、その雨が降ると分かった時点で準備をし、特に夜に掛かる場合、子供やお年寄りがいる場合は、夕方に避難所に移動しておく、
こういうことを決めて連絡おくしかない。
判断を平常時にしておくのだ。
災害の恐れを見極めるまで待つのは愚かだし、移動が遅れれば移動中に被災する恐れも大きくなる。

約束事は先にしないと意味がない。
2019/10/22 21:18:155返信いいね!


47

長々と考察されていますが、一言で表現すれば「平和ボケ」という言葉になってしまいます。

2019/10/22 23:09:53返信いいね!


forte

まだ道半ば

学者さんはいつも難しく解析なさるが、結局のところ、
・必要な情報を集められない
・集めた情報で正しい判断ができない
のが根本的な今の日本人の問題。

タチが悪いことに、それでうまくいかなかった場合、
適当なタイミングで適当な情報を与えてくれなかったと発信者を責める気質。
自分の身は自分で守るという大前提が欠如している。

バイアスも1つの要因かもしれないが、
この他力本願とリスキーシフトの国民性の方が問題かと。
2019/10/22 23:52:552返信いいね!


cyc-lo

万年平社員

以下のように読み替えてみると。

・自分にとって都合のいい情報を選り好みする
・自分にとって都合のいい情報の解釈、判断の仕方をする

河合氏がいつもやっていることですね。

2019/10/23 11:13:101いいね!


子育て主夫

記事で言われているように、マスコミの報道が若干偏っていたように思えます。「風」だと。養生テープが売り切れとの報道でそう思いました。あとは「水」「ガソリン」といった停電対応。これも15号の影響でしょうね。それも気象庁は「出来れば木曜日までに準備を」と発表していましたが、多くの人は金曜日の準備…。
私の住む群馬県は台風の時、竜巻以外では大きな風の被害はなかなか有りません。これはおそらく内陸部ということだと思ってます。浸水被害の有った友達の家に片付けに言ったのですが、窓に養生テープは貼って有るのに、浸水の対策はとってなかったそうです。そしてお決まりの言葉、「ここまで水が来るとは思わなかった」「ずっと住んでいるけど、こんなことは初めて」

21世紀になり自然災害が増えるのは間違いないと言われていても、災害に興味を持たない人は、情報の受け取りがちゃんとできません。まあこれは行政も含めての話でもありますが。

あくまでも私の感覚ですが、浸水予想されているところに住む人よりも、そうでないところに住む人の方が危機感が有るように思えます。やはり「自分のところは大丈夫、被害が有ってもちょっとだろう」という正常化バイアスなのかな?と。

今までは、言い出しっぺになって忙しくなるのを避けていたのですが、今回の事をきっかけに地域で「減災」を呼びかける活動を始めようと思ってます。
2019/10/23 00:33:182返信いいね!


K.Gotou

情報処理従事者

ほぼ、本能に近い行動と解釈しています。
危機に対して能動的であるのか逆であるのか。どちらも、生き残る確率は低い。それが、太古であったと思うのです。

現在は、テクノロジーが発達しているので ”安全圏” へ逃れるのが生き延びる ”知恵”。ですが、現実に危機の中に身を置くと ”本能” が行動を司ります。

その時が来るまでに行動する事。それを ”本能” にまで落とし込めるか。それを成しえるのは ”訓練” だと思っています。小脳にたたきこむように繰り返し訓練するのです。いわゆる、”消えない記憶” にしてしまうのです。

もう、これはスポーツに近い。避難を繰り返し訓練し、災害という鬼から逃れるというスポーツ。被災された方にしてみれば、”不謹慎” とお叱りのことと思いますが、敢えて、書いてみました。

もう、「50年に一度の災害」が常態化していると認識したほうがよろしい。日常的に災害が発生する時代に入りました。それを、本能で対峙する工夫が必要なのです。
2019/10/23 04:26:294返信いいね!


ダメおやじ

痴呆公務員

室戸台風、伊勢湾台風のように今回の数十倍の人的被害を出した災害から学び防災対策を行ったので、かつてより格段に安全な国になりました。
でもそれで水害が身近なもでなくなってしまいました。
私もですが日本人の多くが、戦争と同じく水害に対して脳内お花畑になっているのでしょうね。
2019/10/23 06:57:433返信いいね!


BANDIT

私は情報化社会として来るべき状況と捉えています。
情報の流通が少なかった時代は、新聞などに掲載されても、実体験として過去に自分の周囲で起こった災害の認識がほとんどであり、その情報の範囲で行動判断していたと思います。
情報の流通が増大し、離れた場所での災害もリアルタイムで報道できるようになると、実体験でなくても一時的には危機感が増大しますが、やはり実体験でないので、映像などに対する「慣れ」が生じてしまいます。
いつ起きるかわからない地震やどの程度の被害になるかわからない台風に対し、始終怯えて生きていくこともできません。状況に対する危機感は主観的に判断し、情報に対する判断は客観的に対応する。こういうことを瞬時に頭の中で実行することが「本能」なんでしょうかね。
2019/10/23 09:43:041返信いいね!
1件の返信を表示


たけさん

Eng

風速30m〜40mを基準に電信柱、建物を設計させているのだから、風速が超えれば被害がでる。浸水した場所はほぼハザードマップ通り。バイアスというあいまいな概念を持ち出しても被害は防げないのでは?今起きている災害は想定通りで、足りないのは金と覚悟。
2019/10/23 09:57:031返信いいね!
2件の返信を表示


bearbear

業務効率化プログラム開発

「伊野川台風並み」と言われても、気象予報士でも無い身では大昔(?)に起こった台風の実態は分かりません。(ググれば良かったんでしょうが)なので、「〇〇並み」だけでは無く、確証バイアスを少しでも軽くする為には、もっと具体的な情報を発するべきなのでは無いでしょうか?
2019/10/23 10:15:271返信いいね!


LIonKingdom

Scientist

財務省の緊縮財政で国土強靭化を怠ってきたツケが廻って来たんです.何しろ消費税に加えて復興税を課すなんていう馬鹿げた政策を与野党こぞって推進してるわけですから,既に日本はインフラが不十分な発展途上国どころか,それに加えて脳みそは後進国よりも劣る未開人以下ですよ.いずれ中韓北露の切り取り放題となってウイグル&チベット化でしょう.
2019/10/23 10:31:373返信いいね!


z

現状維持バイアスは動物の基本機能に組み込まれたものですし、それをどうにかしようとするのはムダでしょう。
治水工事にお金をかけるほうが建設的です。

2019/10/23 10:57:164返信いいね!


cyc-lo

万年平社員

1ページめで読むのをやめました。
被災者に対して後ろめたい?
災害なんかなくたって、毎日赤ん坊が生まれて老人が死んでますよ。
1億人の人間がいるんだから、毎日何かしら起こっている。
ありとあらゆることに配慮していては、何もできなくなります。

そのくせ、本題については、
(私は、今回の記事は読んでませんけどね)
自分の都合のいい情報を選り好みしているんですからね。
それができるのなら、被災者のことだって
これはこれ、それはそれ、と扱うこともできるでしょうに。
二枚舌とかダブルスタンダードって、こういうことじゃないでしょうか。

世間のバイアスをどうのこうの言う前に、
ご自身のバイアスを詳細に検討してみることをオススメします。
2019/10/23 11:11:192返信いいね!


日の当たる場所に出たい

このようなことが起こるたびに同じようなことを書かれてませんか?
バイアスは人間である以上、回避するのは非常に困難です。
まして訓練を受けていない多くの方を対象して講釈をたれていても、読んでいるこっちが食傷気味です。

2019/10/23 12:29:011返信いいね!


cyc-lo

万年平社員

まあ、河合さんが書かれていることは、
「なんで、世の中は自分の頭の中と同じでないのか」
というグチだけですからね。

2019/10/23 13:31:511いいね!


みっとさん

元IT系

 都内の荒川氾濫時に浸水するエリアに住んでいます。今回は降水量が記録的に多いことは数値予報のガイダンスなどから把握し、大規模河川では氾濫は大雨の翌日以降に起きうること等の知識もありました。それでも避難しなかったのですが、後から思ったほど余裕がなかったことに気づきこれで良かったのかと自省しています。専門的な知識があっても正常バイアスは生じるものと身をもって感じました。
 一方で、荒川が本当に耐えられる降雨量がわかりにくく(現状だと下流部は200年に1回レベルの豪雨でようやく洪水になると誤解しやすい)事前避難の判断が難しいとか、せっかく洪水について事前にすべきこと(タイムライン)を整備したのに事前の避難を促せず、降水量がさらに増えてたら大混乱が必至だったとか、行政や専門家側で改善できそうな部分も多くありそうです。のど元過ぎたら、にせず対策を考えていかないと。
2019/10/23 13:27:411返信いいね!


YH

河合さんご指摘の通り、私はバイアスかかりまくりで「うちは大丈夫」と思っていました。 今回の台風では、次男に「浸水はしなくても、停電したらどうするの!!」と怒られ、彼は水や食料、電池など買ってきてくれました。 いつになくきびきびした彼の行動に感謝と自分に反省。
これを読んで、市役所のHPにあったハザードマップをはじめて確認しました。
2019/10/23 13:55:53返信いいね!


GK2

一般

「正常化(楽観)バイアス」と「抑うつリアリズム」を考えると、何とも言えない気持ちになりますね。
猛獣や災害、飢饉や疾病に怯えないですむようになったのは、精々ここ数百年。
今以上に不安や恐怖に満ちていた中で、楽観的すぎるぐらいじゃないと精神が保たなかったんだろうなあ、と……
2019/10/23 14:57:20返信いいね!


たけさん

Eng

強い信念と意志を持って完成させた世界遺産オペラハウスをバイアスの結果とするのは乱暴ですね。例が悪すぎます。当初のデザインでは建設不可能と思われた建造物ですが、技術革新、コンピュータ使用により実現しました。国立競技場の当初案を捨てた日本とは大違い。
2019/10/23 15:34:39返信いいね!


ワタリガラス

キャリアコンサル

正常化のバイアスは、おそらく人の脳の働きであって、避けて通ることはできないものなのだと思います。しかし、正常化のバイアスは極力減らすことを努力しないといけないと思います。
私も、かつて山奥で川釣りをしているときに、ちょっとした夕立に会いました。川幅は山といっても100メートル近いので、あまり気にかけず釣りをしていると、宿の主人が飛んできて、すぐに川から上がるように言われました。川を見ていると、15分ほどで濁流が3メートルほどの深さで、大きな倒木が何本も流れてきていたのを覚えています。
それ以来、川の近くで何かするときは常に天候に気を配っており、ちょっとでも、雨がふったときはすぐに川から上がるように心がけています。
正常化のバイアスを減らすには、日ごろからの訓練が大事で、常にこうした場合はこう、と行動を決めておき、時々実際に行動してみることが重要だと思います。
アウトドアで行動することが趣味なので、常に頭の隅には、何か危険なことが起こったらどう行動するかを、考えながら活動しています。
2019/10/23 15:49:541返信いいね!


SHIn

関連会社の工場が千曲川近くの工業団地にあり、今回、甚大な被害を受けました。関係者曰く、全く警戒していなかった、とのこと。確かに、太平洋側からやってくる台風で、長野市が被害を受けるとは、今までの経験からして、警戒心が薄れるのも頷けます。まぁ、警戒していようが、防ぎようが無い被害でしたが。。。
ところで、工業団地のようなもの…各地域に様々存在しますが、河川添いに位置するもの、非常に多いと思います。これら、各自治体が開発し、誘致しているものですが、今後、同様の被害が多発するかもしれないかと思うと、非常に危険ではないでしょうか?経済的損失も、莫大になります。
これら、誘致している自治体にも、少しは責任もあるでしょうが、責任問題云々よりも、それらの危険性をランク付けし、全国的に早急に対処した方が良いのではないでしょうか?
是非、本誌でも調査して、何らかの提言をしてください<m(__)m>
2019/10/23 16:04:261返信いいね!


satです

バイアスとは方向が異なりますが、確率の問題で100年に一度とか1000年に一度とかいわれますが、今年起きたら来年は起きないなんてないですからね。また過去最強クラスに耐えるのが対策になっていません。安倍首相や小泉進次郎が大丈夫といっても地球温暖化の影響で来年はもっと大変になると思います。
河合さんもエルニーニョ現象あたりからわかっていたとは思いますが。
2019/10/23 16:41:32返信いいね!


tkhs教授

バイアスの存在自体は、当然であり、高齢化が進むほど、自分は大丈夫という思い込みや、別に、自分はどうなっても良いから、とりあえず自宅の修理、畑の見回りをしたい、という意識が強まっていくことになるのでしょう。

よって、それを前提として今後は、特定の個人や世帯の携帯端末やLINEなどに対して
AIが直接、避難の手順を送付して、対応を強制するような仕組みが開発されていくことが期待されます。

今後PersonalAIが普及すれば、それが当然の時代になるでしょう。

2019/10/23 17:53:19


https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00045/

 


上陸せずとも台風影響 日差しの少ない1週間
小笠原諸島の近海を北上中の台風21号ですが、接近・上陸はしなくても、影響が出てきそう。週末にかけては曇りや雨の所が多く、日差しが少ないでしょう。
ポイント解説へ
あす 小笠原諸島 台風最接近
土曜日にかけては 大雨に警戒
 
https://tenki.jp/forecaster/a_aoyama/2019/10/23/6387.html

 

 

台風被害のりんご 出荷しないよう呼びかけ 長野県
2019年10月23日 7時30分

台風19号では、りんごの産地で実が落下したり泥水につかったりするなどの被害が出ています。泥がついたりんごは、カビによって食品として安全面で問題が生じるおそれがあるため、長野県では出荷しないよう生産者団体に呼びかけています。

台風19号では、りんごの実が強風で落ちたり、浸水して泥がついたりするなど、各地で被害が相次いでいます。

農林水産省によりますと、りんごの実が土や泥水に触れると、カビによって食品として安全面で問題が生じるおそれがあるため、食品衛生法で果汁の利用に厳しい制限を設けています。

こうしたことから、長野県では消費者に安全な農作物を提供するため、文書を出して水をかぶって泥がついてしまったりんごを出荷しないよう生産者団体に呼びかけています。

JA長野中央会などによりますと、水をかぶったりんごをJAが取り扱うことはなく、ジュースやジャムの加工品としても流通することはないということです。

長野県は「被災したのは県内のりんご産地の一部で、被災した地域の農家は国などの協力も得ながら支援していく」と話しています。

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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191023/k10012144221000.html

 

台風19号で自宅が床上浸水140センチ。多摩川近くハザードマップ境界地域で何が起きたか
伊藤 有

伊藤 有 [編集部] 

保険の査定のため職員が訪れたときの様子。地下だろうとも「床上浸水」扱い。建物そのものの外観被害が見当たらないように見えるため、140cmの床上浸水と聞いて驚いていた。

撮影:伊藤有

「床上浸水、140センチ」

自宅を訪れた職員は、家財がなくなった空っぽの薄暗い部屋でメジャーを片手に数字を読み上げた。

10月12日、関東地方や東北地方を中心に日本各地に台風19号が直撃、甚大な被害を及ぼした。多摩川から徒歩数分という立地にある僕の自宅も、台風19号の直撃による水災を受けた。

台風直撃から10日以上経ったが、近隣には今も道路脇に災害ゴミが積まれ、ボランティアの方々と地域住民で協力しあいながら、再建のため住戸や地域の「掃除」を続けている家もある。

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ご近所・友人総出で運び出してくれた自宅の家財の一部。浸水すると、砂も一緒に入ってくるためすべてが泥だらけになる。

撮影:伊藤有

一級河川がすぐ目の前という立地のため、幸いにも自宅は水災対応の火災保険をかけていた。金銭的な損失は最小限に済む見込みだが、それでも「床上浸水140センチ」の自宅、家財を復旧して被災以前の生活に戻るには半年から1年はかかりそうだ。

今回は自分が体験した「河川氾濫にあうと何が起こるのか」「被災してわかった洪水ハザードマップの重要性」を現在進行形でまとめてみよう。

家は無事でも、排水が逆流して浸水
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12日の午後、早めに地域から避難した時の様子。突然、ワイパーを全速力で動かしても前が見えないほど、雨が強まってきていた。

撮影:伊藤有

12日の台風直撃の日の夜は、近所の2家族とともに、その実家に避難していた。水源から離れた都心にあり、多摩川沿いにいるよりは安全だと判断した。

数十年に一度という巨大台風が頭上を通り過ぎていくというのに、他人の実家の居間でテレビの台風情報を見ながら、案外冷静だった。今から心配しても何もできることがないからだ。

夜中になると、二子玉川・多摩川地域周辺の驚くような映像が流れてきた。住宅街が冠水、消防などによるボート救助が続いていると報道された地域は、自宅から歩ける距離の、見慣れた場所だ。

心配だが徹夜で起きていても何もできることはない。諦めて、日付が変わる頃には寝てしまった。

台風一過の翌朝、快晴の天候のなか、正午前に自宅に戻った。

雨が降り止み、水が引いたあとの地域は、別の町のように姿を変えていた。床上浸水した多数の住宅からは、家財が運び出されて道路に積み上げられ始めていた。

災害ゴミの集積場

各戸から大量に出る災害ゴミは、いったん地域ごとの集積所に集められるようだ。この公共駐車場は、一時的に災害ゴミの集積場になっている。

撮影:伊藤有

早めに避難から帰宅した隣家の人からは、「自分の家は何も被害がなかったけど、近所で地下が水没している家が複数ある」という連絡をもらっていた。

それを聞いて胸騒ぎがした。数年前に引っ越した自宅は、1Fが少しかさ上げしたような構造で、その下にささやかながら地下室がある。地下には仕事部屋やバスルーム、衣服を置いていた。近所のほぼ同じ構造の家は、その部分が水没しているという情報も入ってきた。

自宅に着くと、一見すると影響はなさそうだった。駐車場は冠水による泥を被っていて、強風対策で寝かせておいた自転車などは被害を受けていそうだったが、水に浸った跡を見ると、せいぜいくるぶしまで浸かる程度だ。深刻さはない。

「うちは大丈夫なんじゃないか」

そう思って玄関から入ると、灯りがつかない。室内に入ると、からっと乾いた1階に少し下水臭がする。慌てて階段を降りると、目の前にはこんな光景が広がっていた。

浸水した部屋

排水をはじめる直前の写真。この時点ではドアノブの下くらいの水位だが、濡れている階段の状況をみると、最大水深は階段にして3段分ほど上まできていたことがわかった。

撮影:伊藤有

水面下のものは、あらゆる「上面」が川砂のような目の細かい厚さ1mm程度の泥でコーティングされていた。

あとからわかったことだが、水の侵入経路は「下水の逆流」のようだった。逆流でも、これだけの水が入ってくるのだ。地域が分流排水であることと関係があるかは不明だが、匂いは思ったほどはない。少しなまぐさい、という程度だ。

帰宅当日は3連休の2日目。週明けからの予定を考えると、途方にくれている時間はない。

すぐに心当たりの大きなホームセンターに電話して、汚水用の排水ポンプがあるか問い合わせた。

奇跡的に業務用の機種を1台、在庫しているという(3万円くらいだった)。すぐにクルマを走らせて買いに行き、浸水を逃れた隣家から電源を借りて、午後2時過ぎには排水を開始した。

排水性能にして最大245L/分の業務用水中ポンプが、水を吸う限界の水深10mm程度まで排水しきったのは午後5時半ごろ。途中、吸い込んだゴミを取るため一時停止させた時間も含めて、ざっくり3時間かかった計算になる。

「無色」「薄い色」「濃い色」のはざまで何が起こるか
街の様子

この写真は、台風直撃から10日目のもの。一時期より減ったとはいえ、それでも道路脇には大量の災害ゴミが置いてある。

撮影:伊藤有

ポンプが電動で仕事を続ける間、やることがないので周辺の状況を少し見て回った。なにせ、浸水被害の大半はプールのようになった地下にある。

近所の人同士で情報交換をしていると、半径200m程度の「ご近所」地域でも、被害の程度が天と地ほど違うことがわかってきた。

ある近所の家屋(徒歩2分程度)は、1階が腰まで浸かるほどの床上浸水になっていた。その周辺のマンションでも、1階の浸水がひどく、住戸の被害はもちろん、立体駐車場が不動になってクルマが出せなくなっていた。

わずか徒歩1〜2分圏内というのに、この違いは一体何なのか?

ピンときたのは、スマートフォンで近隣の洪水ハザードマップを見てみたときのことだ。

flood_hazard_map

世田谷区が配布している洪水ハザードマップ。段階としては5段階あるものの、多くの地域は0.5〜3m、3m〜5mの浸水が予想される地域になっている。

出典:世田谷区

自宅付近の多摩川の堤防周辺地域は、おおまかに言って「無色」「薄い色(浸水0.5〜3m)」「濃い色(浸水3m〜5m)」の3段階の地域がある。

自宅周辺でも、水災の難を逃れた土地は、「薄い色」だった。逆に、胸まで浸かるほどの床上浸水になった地域は、「濃い色」だ(ちなみに自宅は薄い色地域だった)。引っ越す前にもハザードマップは見ているが、なぜ「近所なのに色の違いができるのか」は、よくわかっていなかった。

周辺を歩いてみると、濃い色の地域は、普段は気づかないほどの「なだらかな下り坂」になっていて、周囲より低地にあるケースが多かった(細い川が近い、など別の要因もあるかもしれない)。

ここには1つ、水災に遭ったからこそ実感できたある種の教訓があると思う。

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1Fが浸水被害を受けると、災害ゴミの種類も変わる。自転車のほか冷蔵庫や洋服ダンス、机など、生活必需品も出てくる。

撮影:伊藤有

土地が5mも低ければ普段から気づくが、50cm〜1m程度の高低差は日常ではほとんど意識することがない。

洪水にまで至らなくても、堤防を水が超える「越水」や、堤防の内側で水が溢れる「内水氾濫」が起こると、この少しの高低差が浸水被害の度合いを変えることがある。水というのは、低い土地に集まってしまうからだ。

「どういう立地に住むか」は個々の事情もあるから一概に言えないし、川が近い地域は景色がよかったり、遊べる場所が多いなど日常生活にメリットも多い。とはいうものの、水辺が近い場所に住む以上、少なくとも洪水ハザードマップを事前に見ておかなければならないと痛感した。

万が一、水災が発生した時、洪水ハザードマップが予想する「被害の軽重」は、普段の生活から想像もしないほど実態に近い。

「もし、水災にあったら」知っておくべき5つのこと
自宅の再建計画はまだこれからだが、火災保険の請求も含めてある程度道筋がついてきた。この10日間程度のなかで気づいた、水没した家でやるべきこと、わかったことをまとめた。

1. 地下の人力排水は無理。機械を使って迅速に排水
水中ポンプで排水する様子

手に入れた業務用水中ポンプで排水する様子。表で排水を見ていた人からは「すごい勢いで水が出てくる」と声があがったものの、見た目の水は全然引かない。それほど多い。

撮影:伊藤有

1Fと違って、地下の場合、排水しない限り、水がずっととどまってしまう。そして水没した場合の水量は莫大だ。

ざっくり計算したところ、地下に溜まっていた水の量は(容積の計算が間違っていなければ)数万リットル。とてもじゃないがバケツリレーでどうにかなる量じゃないのだ。

家の基礎にかかる水圧、浸水による腐り、傷みも放置するほど進行する。

そこで電動の水中ポンプが登場する。買うまで気づかなかったが、ポンプでは最後まで水を吸えない。手に入れたポンプも、動作する最低水深は10ミリ程度。つまり、残りは人力作業で排水するか、水深2ミリ程度まで吸える特別なポンプを併用することになる。

2.フローリング下の水も抜かないと家の損害が広がる
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フローリングを剥がしたところ。フローリングが顔を出しても、下にはまだびっしりと水がたまっている。

撮影:伊藤有

フローリングが見えるようになったら一安心……してはいけなかった。

木造家屋のフローリングの下には、家を支える木材が張り巡らされている。

浸水後に見積もりにきた工務店の人に聞いたところ、ある程度、基礎に水が残るのは仕方ないにしても(多少の自然乾燥はできる)、水位は少なくとも「基礎に乗った木材よりは下」になるようにしておかないと、構造材の傷みの点で不安があると教えてくれた。

今回は、フローリングに穴を開け、基礎部分にたまった水もしっかりとポンプで抜いた。

3. 災害ゴミは随時回収にまわってくれる
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撮影:伊藤有

水災に遭うと、大量の災害ゴミが出てくる。浸水でダメになった家財や衣類、家電、なにもかもだ。

家の復旧のためにとにかく道路の端や駐車場に災害ゴミを並べるしかなかったが、世田谷区に問い合わせたところ、「明日とは言えないが、1カ月後ということもない。なるべく早く回収に向かう」とのことだった。

実際に自宅周辺に回収がまわってきたのは水災から3〜4日経ったころ。

災害時の緊急事態ということで、ゴミの分別は関係なく持って行ってくれた。

周囲一帯の家から運び出された大量の災害ゴミの回収作業にあたった区の職員の方々には、心から頭が下がる思いだ。

4. 広範囲の水災では火災保険の査定が「簡易査定」になるケースがある
使うことはないだろうと思っていた保険会社の対応も、勉強になった。加入していたのは、某保険会社の一般的な水災対応の火災保険だ。

連絡した1週間後にやってきた2人の担当者によると、通常は、細かく査定をして保険金の支払い金額を決めるが、同じような地域で広範囲に被害が及んでいるため、「簡易査定」とすることで、支払いに要する時間と手間を短縮しているそうだ。

具体的には、過去の浸水被害の支払い実績から割り出した「保険金額」にあてはめて計算する。例えば床上浸水140cmの場合は、「家屋全体の保険金額 x 23%」程度が、その保険会社の簡易査定金額ということだった。例えば家屋に2000万円の保険をかけていれば460万円ほどになる計算。家財保険の支払い分は個別に計上する。

保険会社は計算した金額でまず迅速な支払いをし、仮に実際の修復費用が不足している場合は、改めて見積書を送ってほしいという。見積書の金額が必要コストと認められれば、差額が追加で支払われるとのことだ。

5. 罹災証明書をもらう際の「写真」は、スマホの画面で良い
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区が発行する「り災証明書」。1枚の発行につき、それぞれ手書きで記入する必要があるが、被害状況の確認は柔軟な対応をしているようだ。

撮影:伊藤有

会社への提出や、さまざまな減免措置の証明書類として必要とされる罹災証明書。

発行開始の初日、朝一番に並んだ。世田谷区の場合、午前8時30分からの発行開始時点では、発行待ち行列は10人程度だった。

煩雑な手間があるのかと思いきや、その場で記入するだけ。必要書類として「写真」というものがあるようだが、これはスマートフォンの画面上での確認でも代用できた。地域によるかもしれないが、わざわざ印刷した実物は必要ないようだ。

「ご近所付き合い」が被災から町を救う
こうして記事にはしたものの、僕自身、現在進行形の被災者でもあるので、この先どんなことが発生してくるかはまだわからない。保険会社とのやりとりはまだ続くし、そもそも今回のようなケースで、簡易査定の保険金額で修繕が事足りるのかもよくわからない(見積もりは今まさに待っている最中だ)。

自身が被災して実感したのは、いざとなると大事なのは近隣住人同士の協力だということだ。

自分の場合、たまたま「隣家でまったく被害がなかった家が複数件あった」おかげで、掃除や浸水した家財の運び出しなどを、近所の人たちが手伝ってくれた。なかには、立ち話程度しかしたことのない人もいて、一気に仲良くなってしまった。おかげで3日ほどでゴミはすべて出し切れた。助けがなけば、1週間以上はかかりきりになっていたはずだ。「感謝」という言葉では足りないほど感謝している。

不幸中の幸いだが、災害をきっかけに電気や風呂を借りたり、足りないものを融通したり、保健所や罹災関連の知識を情報交換したりなど、突然、昔ながらの町内会的付き合いが復活したようになり、活気が出てきた。

もしものための保険加入は大事だが、それ以上に、助けあえる町をつくっておけるかどうか。災害の多い日本だからこそ、これは気にしておくべき点なんだろうという気がしている。


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武蔵小杉の台風被災で注目。タワマンは災害に弱い?知っておくべき6つのこと
(文、撮影・伊藤有)
https://www.businessinsider.jp/post-201140
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/770.html

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近づく令和大恐慌と「預金封鎖」なぜアメリカのために日本国民が血を流すのか?
2019年10月20日


戦後の日本を金融植民地にしている国際金融資本が、「そろそろですな」と日本側のカウンターパートである財務省、財界、金融財閥に目くばせしたとき、預金封鎖のトリガーは引かれます。「デフォルトは起こるものである」との前提で考え方を改め、何が起こっても動じることのないよう、生活を組み立て直す必要があるのです。(『カレイドスコープのメルマガ』)

※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2019年10月3日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

※不許複製・禁無断転載(本記事の著作権はメルマガ著者および当サイトに帰属します。第三者サイト等への違法な転載は固くお断り致します)

預金封鎖の兆候を見逃すな。日本政府はあなたの資産を守らない
国内での海外送金チェック、より厳重に
先週、銀行の国際部・外為センターから一通の確認書が郵送で送られてきました。米国のメガバンクから私宛の海外送金が完了したことを示す送金計算書です。

「たいした額でもないのに、なんとも仰々しい」……いったい日本の金融機関で何が起ころうとしているのだろうか?

ある確信を持って、この記事を書くことにします。

海外の法人向けの仕事の対価としてドル→円で振り込まれるのですが、そのときに銀行は本人確認のために受取人に対して電話をします。

米国の銀行の場合、小切手を例外として、比較的少額の海外送金(振り込み)については直接銀行が振り込むのではなく、振り込み専門を業務とするペイメント・プロバイダーを通じて行われます。

あらかじめ、そのプロバイダーから海外送金を実行する旨を通知するメールが来ていたのですが、受け取り手の日本の銀行で「待った」がかかったのです。

日本の銀行までは届いているのですが、その銀行がペイメント・プロバイダーが指定する口座に振り込む前に、日本側で口座名義人に対して、今まで以上のチェックを行うよう金融庁から通達を受けているのです。

以前、海外送金を受けたときも、日本の銀行から本人確認の電話を受け取ったのですが、わずか20秒程度の会話で「確認が取れた」と言ってきました。

しかし、今回は、銀行の担当者も微に入り細にわたり訊いてきて、かなり厳重なチェックを受けることとなりました。

長電話になることを覚悟して、相手にじっくり説明すれば事足りるのですが、逆に「これはいい機会だ」ということで、直接、銀行に出向いて担当者に会うことにしました。

大義名分は「マネーロンダリング対策」だが…
銀行の担当者の話によれば、「海外から送金を受けるすべての口座保有者に対して、マネーロンダリングの疑いがないかどうか確認するための聴き取り調査をするよう金融庁から求められている」とのこと。

担当者との会話の内容は公開できませんが、「こんな少額なのにマネロンとか、なんと大げさな」と内心では呆れ果てながら、銀行の担当者の疲弊し切った表情をがうかがうと気の毒にも思えてきます。

もちろん、金融庁の狙いは、受取人個人に対してというより、海外からの不正送金の手伝いをしている金融機関のあぶり出しです。

つい最近まで、関東の地銀が北朝鮮への送金を引き受けていたことが分かりましたが、こうした案件ひとつひとつを把握しておきたいという当局の狙いは、「朝鮮半島有事に備える」ことであるはずです。

北朝鮮への送金などに使用されている口座を全凍結した場合、どれほどの経済的ダメージを与えることができるのか……円の兵器化の可能性を模索しているものと推察されます。

預金封鎖は「ある晴れた朝、突然、起こる」
さて、もうひとつ重要なことがあります。

日本でドル建ての小切手(外国小切手)の取り立て(円に両替した後の現金化)サービスは、すでSMBC信託銀行などの外為投資を取り扱っている金融機関以外では事実上廃止されました。

メガバンクでは今年の春頃から1行、また1行というように徐々にサービスの停止が発表され、地銀でも6月28日をもって完全に終了しました。

金融庁のこうした措置は、キュッシュの国際間の流れ(トランザクション)を追跡したいとする金融当局のDNAから出てきたものですが、ここまで厳密に行うというのは少し異常です。

意外にも、その銀行の担当者は「政府のデフォルトの可能性」について私に水を向けてきましたが、私の方としては、それで十分です。

政府の債務不履行の可能性について、各々の金融機関内部でも話題になっているということが確認できたからです。

しかし、私の不安は別にあります。

「最近の金融庁の動きから察するものがありながら、日本の銀行はデフォルトのプロセスについて理解していない」ということが明確に分かったことです。

したがって、金融機関は、それが民間であろうと公的機関であろうと、「あなたの預貯金、資産を守らない」ということです。

政府が日本中の銀行に「明日、数日後に預金封鎖を行うように」と指示すれば、彼らは黙ってそれに従うでしょうから。

銀行は、あなたが億万長者でもない限り、事前に通知するなどしません。それは、村上春樹の小説のように、「ある晴れた朝、突然、起こる」のです。

ですから、「かもしれない」ではなく、「デフォルトは起こるものである」との前提で考え方を改め、何が起こっても動じることのないよう、生活を組み立て直す必要があるのです。

Next: 日本人が富を搾り取られ、アメリカの生贄にされる理由

「100年債」の発行を計画するアメリカ
米・連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ決定によって、世界中の中央銀行がいっせいに量的金融緩和に逆戻りしています。<中略>

9月12日、欧州中央銀行(ECB)がFRBに続いて利下げを行いました。ただし、現行のマイナス0.4%からマイナス0.5%へのマイナス金利の深堀り(拡大)です。

米国は、まだ1.8〜2.0%のプラスの金利ですから、利下げの余地はあります。

それでも、米財務長官のムニューシンは、100年債の発行に踏み切る計画があることを明かしました。

すでに50年債の発行が具体的な工程に入っていますが、その上で、米国が存在しているかどうかも分からない100年後に満期を迎える超長期債券の発行を真剣、かつ具体的に検討しているというのです。

22兆ドルもの返済不可能な巨大な債務を抱え、実質的には、すでに破綻している米国の財政リスクを軽減するためだとか……。

元本が返済されない(償還されない)国債など、いったい誰が買うのでしょう?10年、あるいは20年後には「永久国債」と名前を替えたうえ、無利子国債に転換されてしまうでしょう。

つまり、米国民の富がFRBによって「凍結」されるのです!

“踏み倒し国債”を買わされるのは日本
いや、50年債だの100年債だの、おだを上げるのは勝手ですが、日本の現政権の売国イエスマンぶりからわかるように、米国の植民地、いや、国際銀行家の忠実な奴隷である日本に強引に買わせようとしていることは明らかです。

米国債の国別保有残高を見れば、それが、すでに始まっていることが分かるでしょう。

トランプ政権になってから、日本政府は米国債を少しずつ売って米国債の保有残高を減らし、その保有残高では第一位だった日本と第二位だった中国が逆転して、しばらくの間、中国が第一位でした。

しかし、日本の米国債の保有残高は、2018年10月の最低残高1兆185億ドルを境に再び増え続け、直近の7月のデータでは1兆1308億ドルと、111%も増えているのです。10月には、さらに増えているでしょう。

反対に、中国は米中貿易戦争への対抗措置を口実にしながら、米国債を少しずつ売り崩して米国政府に脅しをかけ続けています。

しかし、中国はドルが安いときに、膨大な額のドル建ての借金をしているので、それを返済する意思を世界に示すためにも、これ以上、米国債を売ることは難しいでしょう。

この間、円は対ドルで113円台から107円台と、円高ドル安が進んだので、日本の米国債の保有残高が111%に増えても、実質的な価値はほぼ同じです。

つまり、その価値は日本から米国に流れたということなのです。

Next: 米国債は実質的に紙クズ。さらに日本でも「永久債」を発行か

米国債は実質的に紙クズ
トランプ政権によるいいかがりによって、この調子で、さらに日本が実質的な紙クズである米国債を買わされることは明らかです。

しかも、今度は「50年債を買え、100年債を買え」です。

断定しますが、50年どころか30年もしないうちに、米国は影も形もなく消滅しています!

行数が足りないため、詳しく書くことができないのは大変口惜しいのですが、ビルダーバーグ会議と米国を実質的に運営している陰の政府、外交問題評議会(CFR)グループは、「米国という国家の廃止に向けて」加速度を上げてスケジュールを前倒しにしています!

「米国の終焉」は、それが建国された時点で決まっていたということです。これは、世界の運営方針を勝手に決めているビルダーバーグ会議で10年以上前に再確認され、合意がとれていることです。

さらに日本でも「永久債」を発行か
満期償還期限の定めがなく、保有者からの償還の要求を受け付けず、場合によっては無利子扱いされる可能性がある債権のことを「永久債」と言います。

永久債の歴史は古く、280年前のフランスに遡ります。

やや遅れて、1751年に、英国でも国債の一種であり、永久公債の典型として挙げられているコンソル公債が発行されています。

比較的最近では、アルゼンチン、メキシコなどが金融危機を回避するために発行しましたが、今年1月に、中国の中国農業銀行などの金融機関も、こぞって永久債を発行を決めました。

中国の場合、永久債の90%は国や地方の資本が入っている公的企業によって発行されているので、「永久国債」と呼ぶべきなのですが、投資家たちに説明が不十分のまま見切り発車してしまったためか、さっそく早期償還に応じない企業が出てきたようです。

これは、CDSやレバレッジド・ローン、CLO、ハイ・イールド債と並んで、今後は債券暴落に誘導するほどの大きな問題になるでしょう。

政府が発行する永久国債は、実質的にFRB元議長のバーナンキが日本を実験台にしようとして果敢に推奨しているヘリコプター・マネーと同じような性質を持っています。

永久債とは、国や企業などが資金調達を行うために発行する、あらかじめ元本の満期償還の規定が定められていない債権の総称です。

発行主体(政府や企業)が、満期、あるいは一部の償還を言い出さない限り、永久債の保有者の側からは償還を要求することができない、という、ほとんど事業体への出資金と同じ株式の性格を帯びていますが、本質は借金なので、あくまでも債券です。

もっとも「永久債」を発行する計画は、日本でも動き出そうとしています。

Next: 日本国債は「飽和点に達しつつある」元日銀審議委員の見解

「もはや飽和点に達しつつある」元日銀審議委員の見解
日経新聞(2017年8月17日付)のオンラインは、元日銀審議委員の中原伸之氏にインタビューしたときの記事をアップしています。記事の要点は以下のとおり。

日銀の国債保有残高は、すぐに500兆円を突破する。もはや飽和点に達しつつあり、将来、バブル崩壊などが起きた場合、対処できなくなる。

そこで日銀は、財政出動と金融政策の融合を考えなければならない。

つまり、日銀が保有する国債の一部を無利子の永久国債に転換して、利払いの負担から自由にしておかなければならない。

そうすれば、償還の必要がなくなるので、政府には新たな建設国債を発行する余地が生まれる。

それを、たとえば地震に備えて国土強靭化計画を進めるための財政出動に使うのである。

そのために償還期限が60年の建設国債を発行して、これを民間銀行に引き受けてもらってから、日銀は市中から、これを購入すればいいのである――

一見して理屈が通っているように見えますが、大きな間違いが含まれています。「無利子の永久国債など存在しない」ということです。

国債の償還を無期限(本質的には「借りたものは俺のもの。永久に返えせん!」ということ)にすることはできますが、市場原理における金融秩序を守ろうとするなら、政府は実質的な利払いから逃れられないはずなのです。

政府が国債を発行しておきながら、利払いを拒否できるのは、日本が資本主義を終わらせて共産主義の国になった場合だけです。

それは、私が数年前から言ってきたように、「中央銀行と政府が統合された世界政府を頂点とする独裁政治」。世界政府なので、各国の政府と主権は奪われます。つまり、国単位の政府がなくなるのです。

「元本を返さないようにすればいい」東大大学院教授の開き直り
同じように、元財務官僚(旧大蔵省に入省)で東京大学大学院客員教授の松田学氏は、「赤字国債発行残高のうち300兆円分を今後10年かけて消し去る。具体的には日銀保有国債が満期を迎えるたびに、これを永久国債に転換すればいい」と主張しています。

つまり、すでに「発行済みの国債の満期が来ても、元本を返さないようにすればいい」と言っているのです。

彼は、2009年に、藤井厳喜(国際問題アナリスト)氏とともに『永久国債の研究』を共著で出版しています。

共著とはいえ、全体の6割以上、永久債の理論編のすべてを書いているので、実質的には松田氏の著書と言ってもいいでしょう。

この『永久国債の研究』の四六判(絶版)は、一時、10万円の値がつくほど人気化しました。

本人の弁によると、きっかけは「バーナンキ元FRB議長が、非公式に首相官邸と日銀を訪れてヘリコプター・マネーの導入を薦めたとき、永久国債にも言及した」とかで、気を良くしているようです。

Next: 麻生財務大臣の「心変わり」 すでに悲劇は始まっている

麻生財務大臣の「心変わり」
バーナンキのヘリマネにアレルギー反応を示したのは、麻生財務大臣です。

平成28年6月14日「麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要」の中で、「バーナンキのヘリマネについて、どう思うか」との記者の質問に対して以下のように答えています。

ヘリコプターマネーというのが一時期、いつ頃でしたか、中川秀直先生や竹中平蔵先生を含めていろいろ言っておられましたし、あの頃も日本銀行が30兆円のお金を出しましたが、市中銀行までお金は行くのですけれども、そこから先、市中からお金が広がらないということは既に証明済みですし、今現在でも問題なのは、お金があるないという話ではなく、実体経済における需要の絶対量が不足しているところが問題なのですから、そういった意味で金利を安くしたからといって特に需要がなければ、そのお金は生きてこないというのは、これまでで既に証明は終わっていると思いますけれども――

つまり、ヘリマネをやっても経済は浮揚しないと結論付けているわけです。

しかし、最近になって、松田学氏の熱意ある説得に心を動かされたのか、超・長期国債もやむなし、と考え方を変えたようです。

なにしろ、「満期が来ても償還しない」というのですから、やがて日本の債券市場は流動性を失って、完全にブラックボックス化することは明らかです。

その上、場合によっては無利子にして利払いまで拒否すればいい、というのですから、いったい誰が買うのでしょう。

ですから、必然的に、すでに議論沸騰の貯蓄税や法人税100%などが適用され、相続税対策のために無理やり買わされる、というようなことが起こるはずです。

つまり、絞っても一滴も出なくなるまで、国民の富を搾り取るのが永久国債です。

(続きはご購読ください。初月無料です)

マイナス金利の導入から「5G」までの流れ
2024年に渋沢栄一の1万円札が登場する重大な意味
 
https://www.mag2.com/p/money/792280


ダイソン撤退、中国で販売急減 EVバブル崩壊か

大西 綾
日経ビジネス記者
2019年10月23日
全1431文字
この数年で一気に膨らんだ「EV(電気自動車)バブル」がはじけつつある。英ダイソンはEVの開発を取りやめ、中国でも補助金削減により販売台数に急ブレーキがかかっている。長期的にはEVが次世代環境車の本命となる可能性は高いが、本格普及を前に淘汰の波が到来している。
EVの本格普及まで数年かかる見通し
●主な電動車の販売予測

出所:富士経済(写真=ロイター/アフロ)

[画像のクリックで拡大表示]

 「商業的に軌道に乗せることは不可能だった。自動車のプロジェクトは中止すると判断した」。ダイソンは10月10日、2020年までの投入を目指していたEVの開発プロジェクトを取りやめると発表した。創業者ジェームズ・ダイソン氏の声明が示す通り、開発費用がかさんだことに加え、買い手を見付けることができずに事業の継続が難しくなっていた。
 自動車大手による本格参入が始まる19年はもともと、「EV元年」とも言われてきた。現実はその逆で、「EVバブル」がはじけつつある。要因の一つは補助金頼みの構図だ。世界最大の中国市場の失速がその事実を物語っている。
 中国自動車工業協会が10月14日に発表した9月の新車販売統計。EVやPHV(プラグインハイブリッド車)など「NEV(新エネルギー車)」の販売は前年同月比34.2%減の約8万台となった。減少は3カ月連続で、その幅も8月の同15.8%減から拡大した。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00379/?n_cid=nbpnb_mled_mre


 

ヤマトHD、離れる顧客と消えた調整弁
証券部 松川文平
サービス・食品
2019/10/23 2:00日本経済新聞 電子版
ヤマトホールディングス(HD)が業績の回復軌道を描けずにいる。値上げによる収入増を原資に人手を確保したうえで、荷物の取扱量を安定的に伸ばす狙いだったが、荷物の取扱量が想定よりも大幅に減少。コスト高が先行してしまい、2019年4〜9月期の連結営業利益は前年同期比8割減の50億円程度となったようだ。ヤマトHDが宅配便市場の構造変化に対応できずにいることが背景にある。

「通期の会社目標(営業利益で過去…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51260480R21C19A0000000/?n_cid=TPRN0026


 
ヤマト赤字転落、株価は1年で半減へ。Amazonに媚びない3つの改革で業績復活なるか?=栫井駿介
2019年10月6日ニュース

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ヤマトHD<9064>の株価下落が続いており、この1年で株価は半分になりました。ネット通販の拡大で需要は旺盛な中、いったい何が起きているのでしょうか。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
ヤマトは「豊作貧乏」に陥った?働き方改革に踏み切った結果は…
ついに赤字転落、株価は1年で半減
ヤマトHD<9064>の株価下落が続いています。この1年で株価は半分になりました。

ヤマトホールディングス<9064> 日足(SBI証券提供)
ヤマトホールディングス<9064> 日足(SBI証券提供)

直近の四半期では赤字に転落し、先が見通せない状況となっています。

ネット通販の拡大で需要は旺盛な中、いったい何が起きているというのでしょうか。

第1四半期は低調な季節
まず、直近の業績を見てみることにしましょう。以下は四半期ごとのグラフです。

出典:マネックス証券
出典:マネックス証券

ヤマトHDの業績は、第3四半期(10〜12月)をピークに山型を描くことがわかります。それもそのはずで、この時期はクリスマス・お歳暮と言った年末商戦にあたり、荷物量が急増するのです。

次に需要が大きいのがお中元のある第2四半期(7〜9月)、逆に第1・第4四半期(1〜6月)は需要が減少する傾向があります。

そう考えると、直近の第1四半期の業績が低調なのはそれほどおかしなことではありません。このように、業績を見る時には季節ごとの特性を頭に入れておかなければなりません。

Next: ヤマトは「豊作貧乏」に陥った? 働き方改革に踏み切った結果は…
https://www.mag2.com/p/money/780581

 

ヤマトHD、「夜間配達員1万人採用」先送り

2019/10/22 19:56日本経済新聞 電子版
ヤマトHDは配達員の採用計画を見直す

ヤマトホールディングス(HD)は宅配便の配達員の採用計画を見直す。夜間中心の配達員「アンカーキャスト」について2019年度中に1万人の確保を目指してきたが、計画の達成時期を先送りする。宅配便の取扱数が想定を大きく下回り、人件費などのコスト増が利益を圧迫し軌道修正を迫られた。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51272950S9A021C1TJC000/?n_cid=NMAIL007


ヤマトHD、営業益8割減の50億円 4〜9月
【イブニングスクープ】
2019/10/16 18:00日本経済新聞 電子版
保存 共有その他
ヤマトホールディングス(HD)の業績回復が遅れている。2019年4〜9月期の連結営業利益は50億円程度と、前年同期比で約8割減となったもようだ。前期に戦略的に絞った宅配便取扱量の戻りが鈍い。採用増に伴う人件費や外注費などのコスト増を補えない。17年の値上げ以降、数量の確保とコスト管理に苦戦している。

20年3月期の営業利益は前期比約1割増の600億円台前半と、従来予想の720億円から下方修正とな…



ヤマトHD株急落の「怪」 浮上した大株主の売り観測 (2019/9/20 15:16) [有料会員限定]
ヤマト引っ越し一部再開へ、17日から単身向け受注 (2019/9/6 17:28)
「空飛ぶトラック」試験飛行に成功 ヤマトHD (2019/8/27 10:19) [映像あり]

割れる「置き配」戦略 アマゾンは推進、ヤマトは慎重[有料会員限定]
2019/9/24 11:00

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ヤマトHDトップ交代、グループの統治が課題
2019/2/21 19:01
佐川の荷受量は増加基調に
宅配3社18年4〜12月実績、佐川増加 日本郵便減少
2019/2/1 19:37
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51029690W9A011C1DTD000/?n_cid=SPTMG053


 


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/454.html

[経世済民133] 老後資金に1000万円単位の差がつく!?「取り崩し運用」のすごい効果 銀行・証券を不適切営業に走らせる、顧客の「無理な注文」4パターン トップ営業マンがやっている「お客様のタイプ別接客法」
老後資金に1000万円単位の差がつく!?「取り崩し運用」のすごい効果
上地明徳:信州大学経営大学院特任教授
ライフ・社会 ニュース3面鏡
2019.10.23 4:55
今年ニュースで話題となった「老後2000万円問題」。実際、老後資金がいくらあれば安心できるのか不安になった人も多いのではないでしょうか。これを機に、老後資産を用意する方法として「投資」への関心も高まっているといいます。そこで前回に続き、新刊『老後の資金 10年で2倍にできるって本当ですか?』(青春出版社)から、そんな投資にまつわる誤ったイメージや疑問について解説していきます。
複数のファンドに分散することでリスクはコントロールできる
 前回は、「長期・分散・積立」投資がいかに老後資金作りに向いているか、そして、リーマンショック級の暴落が来ても心配いらないか、を解説しました。今回は、実際に老後資金を作るにあたって、「長期・分散・積立」投資をより効果的に活用する方法をご紹介しましょう。
──ぜひ、お願いします。
 前回は、外国株式インデックス1本で説明してきました。でも、投資信託には多くの種類があります。基本的なものを挙げるだけでも、「日本株式インデックス」「日本債券インデックス」「外国債券インデックス」「新興国株式インデックス」「J-REITインデックス」などがあります。それぞれをどういう割合で保有するかをポートフォリオと言います。
──ポートフォリオに分散する意味って何でしょうか?

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金融資産の組み合わせ方、株式と債券を半々で持つといい

 金融資産の組み合わせ方しだいで、リスクやリターンをコントロールできるからです。債券は株式よりもリターンが低い代わりにリスクも低いので、株式と債券を半々で持つといいと言われています。教科書的には。
──教科書的には……というと?
 私は、個人的には債券を組み入れる必要ないと考えています。債券を入れないぶん、「新興国株式インデックス・ファンド」を組み入れたほうがといいというのが、私の考えです。
──新興国株式インデックス・ファンドですか?
 そうです。新興国株式インデックスは、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)、フィリピン、インドネシア、タイ、韓国、台湾、その他中南米、東ヨーロッパなど、今伸び盛りの23ヵ国の株式を組み込んでいます。
──今後さらに経済発展していくことが期待できる国々ということですね。
 はい。しかし同時に、まだまだ経済的に不安定な要素も大きい国々なので、下落幅も大きくなりやすいというデメリットがあります。外国株式インデックス、新興国株式インデックスそれぞれ1本の場合と、2つを半々で運用した場合の違いを見てみましょう。(図1)をご覧ください。

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新興国株式を外せない理由

──投資リターンだけで見ると、新興国株式の成績のほうが圧倒的に優れていますね!
 そうなんです。長期的なパフォーマンスは新興国株式のほうがはるかにいいです。一方で、価格の変動も新興国のほうが圧倒的に大きいことが見て取れるはずです。半々のポートフォリオでは、その中間くらい。チャートの中で大きく落ち込んでいるのがリーマンショックの暴落ですが、半々のケースでは、かなりリスクを軽減できていることがわかると思います。これが分散・積立の効果なんです。
──なるほど。
 もう一つ、新興国株式を外せない理由をお話ししましょう。(図2)は、国連関連機関の世界のGDP推移の予測です。これを見ると、現在は「先進国:新興国=6:4」なのが、2050年になると「3:7」と大逆転が起こります。

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──中国、インド、その他のアジア諸国の躍進がめざましいですね。それに比べて日本は……
 日本人は投資というと、日本株や日本債券を中心に据えたがりますが、現実的に考えると、将来的な日本経済の潜在力はそんなに高くないんです。あまり喜ばしい話ではないですが……。でも、だからこそ、新興国株式をポートフォリオに組み入れたほうがいいんです。

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新しい資産運用のカタチ=「取り崩し運用」のすごい効果

新しい資産運用のカタチ=「取り崩し運用」のすごい効果
 では、実際にどう積み立てて、どう老後資金に活用するといいかの実践的な話をしましょう。(図3)では、外国株式インデックスより平均リターンが少し落ちる、日本株式を含む「世界株式インデックス・ファンド」(日本株式の占める比率は約8%)でシミュレーションしています。それでも、過去50年間の年率平均リターンは円ベースで7.0%です。外国株式インデックスだと7.6%なのでそれより少し落ちますが、シミュレーションでは控えめな数字で計算するほうが手堅い見通しを立てられるからです。もちろん、基本的な運用の考え方は外国株式インデックス1本でも、外国株式インデックス+新興国株式インデックスの半々の場合でも同じです。
──いまどき7%でも十分に高い利率ですからね。
 はい。(図3)をご覧ください。1979年に50歳になった人が、世界株式インデックスで毎月2万7000円を20年間積み立てると、1998年、70歳になったときに実際に2000万円になりました。
 その2000万円を、70歳から20年間、90歳まで生活費として少しずつ取り崩していったらどうなったのかを見ていきたいと思います。年末残高の5%を取り崩す、「定率」取り崩しと言われる方法で、シミュレーションします。

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 1998年の年末の残高が2016万円、その5%が約100万円ですから、それを取り崩して、生活費に回します。このように、毎年末の残高の5%を20年間取り崩していくと、20年間での取崩額の合計が、1587万円になりました。その結果、20年後にはいくら残っていたと思いますか?

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高齢化・長寿化社会を迎える日本では最もニーズの高い運用方法

──普通に考えたら500万円……と言ってしまいそうですが、残ったお金は変わらず運用し続けるんですよね。ということは、500万円より多いんですよね?
 そうです。残高は、1583万円です。取り崩した金額と、残った金額を合計すると、3170万円になりました。
 図3の山の形の直線が示すのは、毎月同額の2万7000円をタンス預金していた場合です。コツコツ20年間積み立てた総額は、648万円。その後、20年間にわたり、毎月2万7000円を取り崩せば、当たり前ですが20年間で底をつきます。
 しかし、分散・積立投資で、「取り崩し運用」を続けていたら、1500万円以上生活費に回せて、しかも90歳時点の残高は1500万円。これは圧倒的な差です。
 この取り崩し運用は、これから高齢化・長寿化社会を迎える日本では最もニーズの高い運用方法になっていくことが予想されます。そのためにも、まずは「長期・分散・積立」投資をいますぐ始めておくことをお勧めします。
________________________________________
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銀行・証券を不適切営業に走らせる、顧客の「無理な注文」4パターン
山崎 元:経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員

経済・政治 山崎元のマルチスコープ
2019.10.23 5:10


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写真はイメージです Photo:PIXTA
金融機関側にモラルを求めたくなるが
「顧客のニーズ」に問題があるケースも
 金融機関で投資信託や生命保険などの不適切な販売があった場合、金融機関側は「お客さまにニーズがあったので、販売したまでです」と言い張る場合が多い。大規模な不祥事を起こした金融機関でも、経営者は当初こう言って違法な販売の存在を認めなかったから、ご記憶の読者もおられよう。

 複雑で、投資家がおそらく理解もできない運用商品や、高齢者が必要としているとは思えない生命保険のようなものを販売した場合、「顧客側にニーズがもともとあったのではなく、営業担当者が顧客を誘導したのだろう。それ以外にあり得るとは思えない」と言いたくなる。ところが、顧客の署名・捺印のある念書など、後で「顧客側のニーズ」の証明になるものを売り手の側で用意している周到な場合もある。個別のもめ事にあっては、事後的には顧客側が勝てないケースがほとんどだろう。

 もちろん、金融機関の側にはより高度なモラルを求めたくもなるのだが、そもそも「顧客のニーズ」そのものに問題がある場合も少なくないように思われる。

 そこで今回は、問題や不都合、そして端的に言って損につながる可能性のある「顧客のニーズ」について、パターン分けしてご紹介する。もともと顧客側が不適切なニーズを持たなければトラブルに巻き込まれることもなく、ひいては金融機関側も不適切な営業行為に及ばずに済むのだ。

 顧客側の不適切なニーズは、主に4つのパターンに分類できる。

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パターン1:実現不可能な希望を持つ
【パターン1】
実現不可能な希望を持つ
「最近の低金利では、ほとんどお金が増えません。あまり欲張る気は無いのですが、安全に2%くらいの利回りで運用できる方法はないでしょうか?」

 これは、ある書籍の編集者が、このような方法を本にしたいと言って企画を持ち込んだときに最初に発した質問だ。

 彼が質問した相手が、金融機関の営業マンではなくて本当に良かったと思う。筆者のそのときの答えは、「あなたくらいの小さな欲を持っている人が、金融マンにとっては一番だましやすい。2%の利回りが安全に得られるなんて、思わないほうがいい」というようなものであった。

 現在、個人が安全に運用できる利回りはほぼ0%なのだから、「2%を安全に」というのは、相当な欲張りなのだと思う必要がある。この編集者はまだ若い人だったから、「2%」くらいが「自分で小欲だと思う利回り」だったが、年代によってはこれが「3%」や「4%」になることもある(高金利時代を知っている高齢者の方が「小欲な利回り」は高い傾向がある)。

 金融マンなら、こういう人に外貨建ての保険や投信、仕組み債などを「元本保証ではないが、ほぼ損をしない商品」という印象を与えながら、「リスクの説明もした」という証拠を残しつつ売るのは、そう難しいことではあるまい。実は、2%はそこそこに大欲なのに(投信なら株式40%以上の組み入れ率でないと目指せない)、小欲だと思っているところに隙ができる。リスクもあれば手数料もたっぷり払う、といった商品を買うことになる公算が大きい。

 誤って何を「実現不可能な希望」として持つかは人それぞれだが、いずれも危険だ。希望を実現可能なものだと思い込みたい心理が、墓穴を掘ることにつながる。大雑把でスケールの大きな希望としては、「老後の安心が得られるように不労所得を作る」といった希望を持つサラリーマンが、勝算の小さい不動産投資に引っ掛かるようなケースが思い浮かぶ。

 希望の実現可能性に対しては慎重であるべきだし、何よりも、解決策を金融機関や不動産業者のような「あなたに商品を売るともうかる人」に相談してはいけない。

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パターン2:本当は得にならない状態を望む
 金融マンの側としては、例えば「安全に2%の利回り」がひどく難しい条件であることを親身になって教えて、今の状況で本当に安全な運用を望むなら「個人向け国債変動金利型10年満期」でも買っておくことを勧める(詳しくは、「マイナス金利下の優れもの!機関投資家がうらやむ個人の『鉄板運用術』」参照)。これくらいが、真に「顧客本位」なのだろうが、現在の金融機関の収益事情を考えると、これを彼らに求めるのは、ハイエナから餌を分けてもらうくらい大変なことだろう。

【パターン2】
本当は得にならない状態を望む
 例えば、毎月定期的に一定の現金が入ってくるような状態を望む高齢者は少なくないだろう。だが、そのための手段として、頻繁に分配金が支払われる投信などを使うのは、顧客本人の経済的な利益にとっては「損」であり「不適切」だ。

 仮に、現在リタイアしている70歳の人が、毎月分配金が出る投信を2000万円購入しようと金融機関の窓口に出向いた場合を考えてみよう。すると、信託報酬だけで1.5%(税抜き)程度のものを勧められる可能性が大きいが、この手数料だけで毎年約30万円の手数料を支払うことになる。

 約2000万円の元本に対して、毎月数万円単位の分配金が支払われる投信を見つけ出すことは容易であるし、金融機関の支店向けの雑誌には「お客さまのニーズに応じた利回りの投信を見つける手順」(自社取扱商品の分配金利回りのランキングやスクリーニングを行えばいい)などが書いてある。そのため、条件を満たす商品はあっという間に見つかるだろう。

 ところが、金融機関に勧められるままに前述のような投信を購入すると、不安定な元本を抱えつつ、毎月数万円の分配金を受け取るために信託報酬だけで毎月2万5000円も支払うことになるわけだ。それはつまり、「手数料2万5000円のATM(現金自動預け払い機)で、自分の小遣いを下ろしている」という状況に近い愚挙だ。

 周囲に親切な人がいれば、「低コストで本人に合った大きさのリスクの運用方法」を教えてあげるのと共に、例えば毎年1回、投信等を計画的に部分解約して、これを生活費の一部に充てる方法を教えてやればいい。同じ資産に対する年間の支払い手数料は、例えばインデックスファンドが半分と個人向け国債が半分で運用した場合、インデックスファンドに掛かるせいぜい年率0.2%で済むので、年間約2万円だ。

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パターン3:?真の解決にならない商品・サービスを望む
 年間で30万円と2万円の差が付くことを丁寧に説明するなら、高齢者でも大半が問題無く得な方法を理解してくれるだろう。

 問題は、「不適切なニーズを持っている人」を周囲がどう扱うかだ。

 ここでも「高齢者には、分配金に対して一定のニーズがある」と言い張って手数料が高い商品を売ることをいとわない人もいるだろうし、「そのニーズは、損です。別のもっとうまいやり方があります」と教えようとする親切な人もいることだろう。人間性で差が出る場面だ。

 後者の方が人間としてまともな行いだと思うが、金融庁等が前者を法的に禁止することも難しかろう。この場合、金融庁の立場でできる「良い行い」は、国民に広く、正しい方法を分かりやすく啓蒙することだと筆者は考えている。

 顧客の側が誤ったニーズを持たなくなれば、金融機関は一時的にもうけにくくなるだろうが、金融機関の営業担当者は悪質な商売に手を染めずに済むようになるのだ。金融業界全体にとっては、その方がずっと幸せだろう。

【パターン3】
真の問題解決にならない商品・サービスを望む
 本来、効率的ではない商品を顧客が直接欲しがる(通常はセールスされて、であろうが)以外に、一見役に立つようでいて、実は顧客が抱えている問題の解決に役立たないサービスに対するニーズがある。

 例を挙げると、資産運用を金融機関側に一任する「ファンドラップ」を含むラップ運用や、ロボアドバイザー(ロボアド)のようなサービスだ。

 資金の運用方針の判断について、専門家を自称する運用担当者やプログラム(厚かましくも「AI(人工知能)」と称しているかもしれないが)に任せたとしても、二つの難点が残る。一つは、自分の資産運用がブラックボックス化すること。さらに何よりも、全財産を預ける人はまれだろうから、最終的な運用の全体像を自分で考える必要があり、結局問題の解決にならないという点だ。「専門家」や「プログラム」に対して、中途半端な期待や依頼心を持ったことで、運用を複雑化させたり、余計な手数料を払ったりするだけに終わるのだ。

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パターン4:金融の問題ではないニーズの解決を望む
例えばロボアドは、幾つかの質問に答えることで顧客のアセット・アロケーション(投資先の資産配分)を決めるが、これは顧客の資産の一部について運用方針を決めたに過ぎない。顧客がどれだけリスクを取るかについては、あくまでも運用の全体像に基づいて決めなければならないから、ロボアドでは問題解決にならない。

 それでも、「運用が何も分からないお客さんには、運用を始めるきっかけになるし、一定のニーズに応えている」と言い張る向きがある。しかし、「運用が何も分からないお客さん」のような、自分よりも愚かな人を設定して自己正当化を図るのは止めた方がいい。

 ロボアドでいうなら、せめて顧客のファイナンシャル・プランニング全体をサポートするツールを提供すべきだろう。

 しかし、そのツールが真に役に立つ実用的なものであれば、そもそもロボアドを使う必要がなくなる。顧客が適正なリスクを取る良い商品に直接投資すればいいからだ。

 一方、対面営業の金融機関が提供するラップ運用の手数料の高さや中身の不適切さ(ファンドラップではしばしば手数料の高い商品が選ばれる)は言うまでもない。

 顧客の側では、「専門家」や「プログラム」を少々利用することが、本当の問題解決になるのか否かをよく考えるべきだ。

【パターン4】
金融の問題ではないニーズを金融で解決しようとする
 最後のパターンは、実は、最もケースが多いのかもしれない。

 一番分かりやすいのは、話し相手が欲しい人が(高齢者が多いかもしれない)、話の相手をしてくれる人を求めて金融機関のセールスマンと話し込む関係になり、時々セールスに付き合って金融商品を購入するようなケースだ。こうした場合には、金融商品の検討自体をセールスマンに委ねるようなことが起こりやすく、そうなると必然的に手数料の高い不適切な商品を購入したり、頻繁に売買して多額の手数料を支払ったりしやすくなる。

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本人や家族が問題に気付きやすくする方法
 本人なり、問題に気付いた家族なりが、取引金融機関にどれだけ手数料を支払っているのか記録を取ると問題に気付きやすくなるはずだが、手数料の高い商品はたいてい市場変動のリスクが大きいので、市場変動に紛れて手数料には関心が向きにくい。

 ここでも「顧客のニーズに応えているまでだ」という言い分はあり得る。また、金融マンからは、「例えば、バーやクラブのような飲食店では、店員(バーテンダーやホステス)に構ってほしくて、原価の何倍ものお金を払う客がいるではないか」という声が出るかもしれない。

 確かに現実はその通りだ。ただ、他業界にも同じような例があれば、顧客が金融商品で気付かぬ無駄を重ねることを正当化できるわけではないというのも、一方の事実だろう。

 金融取引で動くお金は概して一晩の飲食よりも大きいし、取引も繰り返されることが多く、「人間関係」を目的に金融取引を行うことはお勧めしにくい。お金を人間関係そのものに直接使う方法を考える方が賢かろう。

 もちろん、金融マンの側で手加減してくれることは期待しない方がいい。

 顧客の側で、自分が「実は金融の問題ではないニーズの解決を金融取引に求めているのではないか」と自省してみることが、ときには必要だろう。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

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上地明徳
https://diamond.jp/articles/-/218153?page=6

 
トップ営業マンがやっている「お客様のタイプ別接客法」に挑戦すべき理由
菊原智明:営業サポート・コンサルティング代表取締役

キャリア・スキル News&Analysis
2019.10.23 5:05

お客様の性格を分類して接客方法を変えてみる

多くの営業マンは「行きあたりばったりの接客」を行っているのはないだろうか。これを、わずか2種類でもいいから、お客様をタイプ別に分類して接客方法を工夫するだけで、成約率は格段に向上するはずだ。その方法とは。(営業サポート・コンサルティング代表取締役、営業コンサルタント 菊原智明)

「3つの質問」の答えを聞くだけで
契約数が倍になる?
 ある営業支援ソフトの販売をしている方とお会いした時のこと。その方の話によると「お客様に3つ質問をするだけで契約数が倍になる」という。

 さすがに「その話は怪し過ぎる」と思った。たった3つの質問だけで契約が倍になるのだったら営業マンは苦労しない。なので、話半分で聞いていた。

 ところが、よくよく話を聞くと、これはITを活用した営業手法ということが分かった。

 1つの例だが、ショールーム型店舗にお客様が来店した際、受付を兼ねて「3つの質問」が出てくる。その回答によって「接客のスタイル」を変えていくというものだ。

 当然ながら、お客様が「望んでいるスタイル」で接客すれば、うまく行く確率は高くなる。実際のデータを見せていただいたが、このシステムを導入した店舗の契約数は本当に2倍以上になっていた。

 これからは「こういった効率的な接客方法が主になっていくのだな」と実感した。

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住宅のすごい営業マンの手法
 とはいえ、あなたの会社がこのシステムをすぐに取り入れられるとは限らない。まだまだ高額だし、こういったITツールの活用をあまり信じていない上層部も少なくない。ましてや、中小企業ではまだまだ先の話であろう。

 だからといって指をくわえて見ているだけではせつな過ぎる。何かできることはないのだろうか?

 実は「タイプ別接客法」は、なにも高額なシステムがなくてもできるのだ。今回はその方法について紹介させてほしい。

初回の接客でほぼ決めてしまう
住宅営業マンのすごい手法
 以前、知人から「すごい営業マンがいるから会ってみないか」と声をかけられたことがあった。

 もちろん、断る理由はない。

 コンサルタントとしても、非常に興味ある存在だ。後日お会いすると、大手ハウスメーカーのトップ営業マンだった。

 この営業マンの方は毎月のように契約を取り、常にトップクラス。契約数もすごいのだが、私が驚いたのは「初回接客で、ほぼ決めてしまう」ということだ。

 言っておくが、この方は家を売っている。

 つまり、2000万円、3000万円という高額な家を即決させてしまうのだ。

 これがどれだけ難しいかは、詳しく説明しなくても理解できるだろう。私は11年間住宅営業マンをしてきたが、1度としてそんな経験はない。

 今までたくさんの優秀なトップ営業マンと会ってきた。しかし、ここまでの人はなかなかいない。

 いろいろな話を聞いたが、その中で一番驚いたのは「お客様を6つのタイプに分けて接客している」といったことだった。

 この方は、もともとはエニアグラムを学んで実行していたのだ。

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お客様を9つの性格に分けて接客するお客様を
9つの性格に分けて接客する
 エニアグラムとは人の性格を9つに分けるやり方だか、それを元に下記の6つに分類したという。その6つのタイプはこういったもの。

1 親分肌でお山の大将タイプ
2 神経質で気難しいタイプ
3 おせっかいタイプ
4 頭が良く冷静なタイプ
5 とにかく明るいタイプ
6 平均的タイプ
 まずお客様が来店したら、「今日は車ですか?電車ですか?」もしくは「今日はどちらからお越しですか?」などと話しかけ、軽い雑談をする。

 その雑談の中で「このお客様は『神経質で気難しいタイプ』だな」と判断する。その場合は「このお客様は『タイプ4のトーク』をする」とお客様のタイプにマッチしたトークを展開するという。

 ということは6つの接客パターンを持っているということ。

 ここまで細かく分類できれば、初回でお客様の心をつかめるのも納得できる。本当にすごい人だと感心した。

「お客様を6つのタイプに分類し、それに合わせて接客を変える」

 なかなか頭脳的だ。

 タイプ別にトークを展開すれば、うまくいく確率は格段に上がる。それは理解できるが、まねするにはなかなか難度が高い。あなたもそう感じたのではないだろうか?

難しければ
お客様を2つのタイプに分別する
 私自身もその話を聞いた時は「確かにすごいけど、とても他の人ができるスキルではないなぁ」と思っていた。

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まずは2パターンのトーク
そのことを正直に伝えると、その営業マンの方は「はじめは『説明を聞く方が好きな人か?』それとも『自分の話をするのか好きな人か?』なのかの2パターンだけでした」と教えてくれた。


「超一流の営業マンが見えないところで続けている50の習慣」(青春出版社刊)、菊原智明著、224ページ
 お客様を2つのタイプに分別する。

(1)話を積極的にしないタイプ→「こちらからリードするスタイル」で対応する
(2)話好きのタイプ→「聞き役に徹するスタイル」で対応する

 というものだ。

 どんな初心者の営業マンだったとしても、『説明を聞く方が好きか?』それとも『自分の話をするのか好きか?』といったことは判断できそうだ。

 単純な分類法だが、これだけでもずいぶんとうまくいくようになるだろう。

 私の知っている多くの営業マンたちは、行き当たりばったりの接客をしている。つまり準備することなくアドリブで対応しているのだ。これでも、たまたま気の合うお客様が現れて、うまくいくこともある。

 しかし、その確率は非常に低い。

 今後、購買層のお客様は減少傾向になる。一昔前は「数打ちゃ当たる」の営業でもよかったが、今はその「数」が少ないのだ。

 まずは2パターンのトークを考えてみてほしい。それだけでもチャンスはずいぶんと広がるはずだ。そして、もし、余裕ができたら6つまで増やしてみてはいかがだろうか?

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かつての「ずば抜けたトップ営業マン」が没落した理由
菊原智明


https://diamond.jp/articles/-/218152

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/455.html

[経世済民133] 米で広がる富裕税支持、大統領選後の導入に現実味 ミリオネアが米国で急増、日本と中国が追う 来週の日銀会合、追加緩和か見送りか依然不透明 ドラギ総裁が残すのは「3つの単語」と1100万人の雇用−最後の政策委 日本株は続伸、米中協議楽観と景気や業績期待 債券は反発
コラム2019年10月14日 / 08:02 / 1日前
米で広がる富裕税支持、大統領選後の導入に現実味
Edward Hadas
3 分で読む

[ロンドン 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国の「富裕税」構想が初めて浮上したのは今から8カ月ほど前。構想に耳を傾けたのは主に民主党の傍流だった。それも今は様変わりした。富裕税の強力な提唱者の一人、エリザベス・ウォーレン上院議員は来年の米大統領選の民主党候補者の中で今や先頭を走っている。やはり富裕税を支持するバーニー・サンダース上院議員も、民主党候補者指名争いにおける先頭集団の一人だ。

国民も負けてはいない。クイニピアック大学が4月に全米で実施した調査によると、5000万ドル超の資産に年率2%の税を課す構想を有権者の約60%が支持している。夏にニューヨーク・タイムズ紙の委託で実施された調査では、大半の共和党支持者を含め、国民の3分の2が構想を支持していた。弾劾手続きによってトランプ大統領の再選確率が下がる可能性が出てきた一方、上記の民主党候補者2人が支持率を伸ばしている現状を考えれば、大統領選後の富裕税導入は現実味を増している。

そこで3つの基本的な問いが浮上する。富裕税とは何か、導入可能か、導入すべきなのか。

第1に、富裕税とは何か。基本的な考え方はごく単純だ。純資産を算出し、そこから例えば5000万ドルといった大きな数字を差し引く。答えがプラスの数字であれば、それに2ー8%を掛けた額を米政府に納税する。翌年もこれを繰り返す。

これでは政府はやり過ぎだ、という考え方もある。なにしろ政府は、個人が資産を築くもととなった所得から既に税を徴収しておいて、2口目を頂こうというのだから。ビートルズのジョージ・ハリスンが1966年に歌った通り、「座ろうとすれば座席税、歩けば歩行税」というわけだ。

構想の主な提唱者であるカリフォルニア大バークレー校のエマニュエル・サエズ、ガブリエル・ザックマン両教授は、こうした批判に周到な反論を用意している。大半の米国民は資産の1種、つまり住宅の価値に基づく税金を既に支払っている。富裕税は不動産税をお金持ちの金融資産にまで広げるだけのことだ。

理論上はその通りだが、富裕税は現実に機能するのだろうか。一部の著名エコノミストは機能しないとみる。ラリー・サマーズ元財務長官は、スウェーデンとデンマークでは「富裕税はあまりにも課税逃れが容易で、あまりにも管理が難しいために廃止された」とし、サエズ、ザックマン教授の甘さを指摘する。

サラ・ペレ氏による昨年の調査によると、富裕税を採用する経済協力開発機構(OECD)加盟国の数は、1980年の12カ国から2017年には4カ国に減った。

富裕税が失敗したのはサマーズ氏が言うように、富裕層が租税回避地を利用できるのも一因だが、話はそれで終わらない。ペレ氏によると、各国政府が富裕税の廃止に動いたのは、最高所得層と資本に対する税率を「引き下げる大きなトレンド」に突き動かされたからこそだ。事実、当時の政治ムードは超富裕層課税の引き下げに好意的で、それに政府が乗った。

サマーズ氏のような論者は、こうした政治的解釈を不愉快に感じるだろう。世間のムードが変われば税制も変わり得ることを示唆しているからだ。

そして世間のムードは変わりつつあるのかもしれない。6月24日に「どうぞわれわれに小幅な富裕税を課してください」と訴える公開書簡に署名した億万長者18人は、確かに富裕層の中でもほんの一握りにすぎない。しかし書簡によると、世論調査では「共和党から無党派層、民主党まで米国民の過半数」が富裕税を支持している。

つまり富裕税はシンプルで、おそらく導入可能だ。そこで最も難しい問いが残る。導入すべきなのか。

その答えは、正義を巡るいくつかの判断によって決まる。すなわち富をどう配分するかと、個人の過去の経済的成功に対する金銭的報酬の適切な規模についての判断だ。

正義の問題は究極的には哲学的だが、有権者と政治家が判断を下す上では、経済学的な分析も役に立つ。例えば富裕税が企業家の労働意欲に水を差しかねないという不安であれば、経済学者がなだめることができそうだ。サンダース氏案の純資産3200万ドル以上、あるいはウォーレン氏案の同5000万ドル以上の富裕層への課税であれば、だれも野心をそがれたりしないだろう。

経済学者は提案に修正を加える役割も果たせる。ミネソタ大とトロント大の研究者5人は最近の論文で、資本に対する税率を上げる一方、資本所得への税率を下げることを提案している。粛々と資本に課税し続ければ、資本を非効率に運用している人々の資産を減らせる一方、資本所得の税率を引き下げれば、最も生産的な投資を行った人々の手元に多くの資金が残るようになる。

このような学術的な修正を加えれば、富裕税構想には正義だけでなく経済効率も備わるかもしれないが、票の獲得には大して結びつきそうにない。とはいえ、サエズ、ザックマン両氏の新著「正義の勝利」によれば、米国はかつて富裕層に今よりずっと高い税率を課していた。それを可能にしたのは大恐慌だった。

ウォーレン、サンダース両候補とその支持者らは、大恐慌ほどひどい経済環境ではなくても当時のようなムードは盛り上がると期待しているのだろう。彼らはいいところを突いているのかもしれない。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/us-tax-breakingviews-idJPKBN1WP0QV


 


 
ミリオネアが米国で急増、日本と中国が追う
クレディ・スイス調査
Patrick Winters、Marion Halftermeyer
2019年10月23日 13:36 JST
米国では昨年、67万5000人の新しいミリオネアが誕生
ドル建てでの計算に基づくミリオネアが次に増えたのは日本
クレディ・スイス・グループの「グローバル・ウェルス・レポート」によると、昨年ミリオネアの仲間入りした人の半数以上は米国人だった。株式投資とテクノロジー株の値上がりが米国民の資産を膨らませた。

  米国では67万5000人の新しいミリオネアが誕生した。ドル建てでの計算に基づくミリオネアが次に増えたのは日本、3番目は中国だった。 

Minting Millionaires
U.S. accounted for more than half of the world's new millionaires over last year


Source: Credit Suisse Global Wealth Report 2019

  全体として、世界的な富の増大は緩やかな1年で、どの資産クラスに投資したかがリターンを左右することが鮮明になった。中国での資産の伸びの大半は、不動産など非金融資産によるもので、米国では株式が資産増大の主要な原動力だった。

  自国通貨が弱くなったオーストラリアと英国では、ミリオネアの数が減少した。

原題:
U.S. Mints More Than Half of New Millionaires on Booming Stocks(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-23/PZT5ZNDWRGG201?srnd=cojp-v2


 


来週の日銀会合、追加緩和か見送りか依然不透明−決定打に乏しく
伊藤純夫、藤岡徹
2019年10月23日 12:57 JST 更新日時 2019年10月23日 13:33 JST
世界経済の持ち直し後ずれも、経済指標・市場動向大きく悪化せず
今回会合で経済・物価動向を再点検、黒田総裁「前向き」と先月発言
日本銀行の追加緩和の有無が焦点となる30、31日の金融政策決定会合が1週間後に迫っている。9月の前回会合以降に公表された経済指標や金融市場の動向からは、日銀に直ちに行動を促す決定的な材料は乏しく、追加緩和に踏み切るかどうかはなお不透明だ。

  日銀は金融政策の現状維持を決めた9月会合で、2%の物価安定目標に向けたモメンタム(勢い)が「損なわれる恐れについて、より注意が必要な情勢になりつつある」との判断の下、次回会合で「経済・物価動向を改めて点検していく」方針を表明した。黒田東彦総裁が会合後の記者会見で追加緩和に「前向き」などと発言したことで、市場の関心は高まっている。

BOJ to Review Prices and Economy After Standing Pat for Now
黒田日銀総裁Photographer: Akio Kon/Bloomberg
  この間、国際通貨基金(IMF)が2019年の世界経済の成長率見通しを世界的な金融危機以来の低水準となる3%に下方修正。当初想定した世界経済の年内持ち直しシナリオは後ずれするとの見方が、日銀内でもすでにコンセンサスになっている。

  日本経済の鍵を握る内需の動向は、9月の企業短期経済観測調査(短観)などを踏まえ、日銀内でも外需減少に伴う内需への波及は限定的にとどまっているとの見方が多い。ただ、海外経済の減速が長引く恐れが大きい現状では、輸出や生産に加え、企業マインドのさらなる悪化にも注意が必要。1日からの消費増税による個人消費への影響を含め、外需の回復まで内需が持ちこたえられるかどうかはっきりしない。

  物価自体の足取りも鈍い。9月の全国消費者物価は生鮮食品を除く総合が前年比0.3%上昇と17年4月以来の低い伸び。今後もガソリンなどエネルギー価格の下落が物価の下押し要因となる可能性が大きく、実際の物価に引きずられやすいインフレ期待への影響も懸念されている。

市場は楽観に傾く
  もっとも、全てが日本経済にマイナスの材料ばかりでもない。米中貿易摩擦は解消には程遠いものの一部で合意が成立し、迷走を続けていた英国の欧州連合(EU)離脱問題でも、月末の合意なき離脱のリスクは薄らいだように見える。IT関連財のグローバル調整も進ちょくし、世界経済の下振れリスクが顕在化したとは言い難い。

  金融市場も楽観に傾いている。日経平均株価は今年の最高値圏を維持し、為替相場も足元で1ドル=108円台後半と、政策当局の警戒レベルとみられている100円割れからは大きく乖離(かいり)している。

  UBS証券の足立正道チーフエコノミストは「黒田総裁はいつまでもファイテイングポーズを取り続けることはできない」と指摘。「今回はクロースコール(勝敗の予測が難しい接戦)。景気が非常に悪化していることを示すデータはこれまでのところなく金融市場にも少し安心感のようなものがある」と語る。

  加えて、日銀は限られた政策手段の発動には慎重にならざるを得ない状況にある。金融機関の本業収益の減少や、年金・保険の資金運用難など低金利長期化の副作用も無視できない規模にまで膨らんでいるからだ。

ゼロ回答なら信認に影響も
  ただ、市場で有力視されるマイナス金利の深掘りなどの追加緩和を見送っても、海外経済や物価動向を踏まえれば物価2%目標の達成時期はさらなる後ずれが避けられない。日銀が予防的な政策対応の可能性を発信してきたこともあり、今回会合でのゼロ回答は日銀の信認に影響する可能性もある。

  このため、フォワードガイダンス(政策指針)の修正を含めた政策対応や一段の緩和長期化を見据えた持続性強化策など幅広い対応策が会合で議論される見通しだ。

  元日銀理事でみずほ総合研究所エグゼクティブエコノミストの門間一夫氏は、今月のインタビューで、10月の日銀会合で追加緩和が決まる可能性は低いと指摘。その上で、政策金利のフォワードガイダンスについて、政策コストの相対的な低さに加え、今年4月の会合で明記した「2020年春ごろ」が近づいていることもあり、修正される可能性が相応にあるとみる。
  
  黒田総裁は先週、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議のため訪れたワシントンで「必要があれば金融緩和をさらに行うことも十分に可能」と述べる一方、金融システムへの影響など緩和の副作用に対する配慮もにじませた。経済・物価の下振れリスクとの狭間で限られた緩和カードをいつ、どのように切るのか、日銀は来週の会合に向けてギリギリまで情勢を見極めるとみられる。

(第5段落以降を追加して更新しました)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-23/PZT492T0G1KY01?srnd=cojp-v2


 
日本株は続伸、米中協議楽観と景気や業績期待−医薬品や金融高い
長谷川敏郎、牧綾香
2019年10月23日 8:05 JST 更新日時 2019年10月23日 15:53 JST
中国は第1段階の通商合意に向け協議順調を示唆とトランプ米大統領
エーザイはストップ高、来年米国でアルツハイマー病薬の承認申請へ
23日の東京株式相場は続伸。米中通商問題に対する不安が薄れる中、アルツハイマー病薬を米国で来年承認申請するエーザイを中心に医薬品株が上昇。銀行など金融、陸運や食料品といった内需関連も高い。

TOPIXの終値は前営業日比9.54ポイント(0.6%)高の1638.14
日経平均株価は同76円48銭(0.3%)高の2万2625円38銭
〈きょうのポイント〉

トランプ大統領:中国は協議が順調だと示唆、11月の通商合意に向け
バイオジェンとエーザイが共同開発しているアルツハイマー病薬、FDA申請へ
米テキサス・インスツルメンツ(TI)の10−12月売上高見通し、市場予想を下回る
英議会はジョンソン英首相が欧州連合(EU)と合意した離脱協定案を速やかに実現させる計画を阻止−10月末のEU離脱は暗礁に
Final Trading Day Before Super Golden Week Holiday
東証Photographer: Keith Bedford/Bloomberg
  アセットマネジメントOne・調査グループの清水毅ストラテジストは「米中貿易問題がエスカレートせず、英国のEU離脱問題も延期見通しが強まりつつある」とした上で、「世界景気が底割れしないという確信度が高まっていけば株価は上値を試しそう。7−9月期決算は厳しくなりそうだが、きょうは業績懸念が半導体から広がらず、最も悪い時期は通過しつつある」と述べた。

  業種別指数でTOPIXを最も押し上げたのは医薬品。米バイオジェンと共同開発するアルツハイマー病治療薬を2020年の早い時期に米国で承認申請すると発表したエーザイがストップ高配分となったのをはじめほぼ全面高だった。

  株価指数は下落に転じる場面もあった。東洋証券の大塚竜太ストラテジストは、指数寄与度が大きい東京エレクトロンの下げが指数の重しになっていると指摘し、「TIの決算で半導体需要の弱さが明らかになった。関連株は需要回復期待から上昇してきただけに、電子部品なども含めたハイテク株全般が売られている」と話した。

続伸
東証業種別指数は医薬品や海運、非鉄金属、陸運、その他金融、証券・商品先物取引が上昇率上位
精密機器や情報・通信は下落
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-22/PZSP84DWRGG001


 
ドラギ総裁が残すのは「3つの単語」と1100万人の雇用−最後の政策委
Fergal O'Brien、Jana Randow
2019年10月23日 15:31 JST
3単語は「whatever it takes」、通貨ユーロ守るため「何でもやる」
通貨同盟崩壊の確率示す指標は過去最低に近い−これが究極の遺産か
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、「whatever it takes」という3つの単語と1100万人の雇用をユーロ圏に残して去っていく。

  債務危機から共通通貨ユーロを守るために「何でもやる」と宣言したドラギ総裁は、2011年の就任以降の異例尽くしの金融緩和政策を正当性するものとして、雇用の伸びに頻繁に言及する。

ドラギ総裁

  あの手この手の努力にもかかわらず、中銀の主要な責務であるインフレ目標を達成できない現状では、総裁が雇用面での成果を強調するのも無理からぬことだ。インフレ回復への最後の取り組みとして総裁は9月に、一部の反対を押し切り大規模緩和パッケージを打ち出した。10月31日に退任するドラギ総裁は、24日に最後の政策委員会に臨む。

  12年の何でもやる宣言、マイナス金利や資産購入などの危機対策で、総裁は何を達成し、何を達成できなかったのか。

労働市場
  19カ国から成るユーロ圏が13年に不況の二番底を脱して以来の雇用創出は、ユーロを守ったことを除くとドラギ総裁の最大の功績だろう。堅調な労働市場は成長を支え、トランプ米大統領が仕掛ける貿易戦争や英国の欧州連合(EU)離脱問題に対する最大の防波堤となっている。

ECB president takes credit for post-crisis jobs growth
European Divisions
Spain and Greece the clear laggards in labor-market recovery


Source: Eurostat

Note: Graphic shows total employment

経済成長
  経済成長については国ごとの隔たりが顕著だ。ギリシャとキプロスは危機後の緊縮財政で深く傷ついたが、ドラギ総裁の母国イタリアも、国民一人当たりの国内総生産(GDP)が両国に次いで伸び悩んでいる。

Uneven Momentum
Change in GDP per capita in euros between 2011 and 2019


Source: International Monetary Fund

インフレ
  ECBの記録的低金利と安価な銀行向け長期ローン、これまでに2兆6000億ユーロ(約313兆円)規模に達している資産購入の主な目的はインフレの回復だが、これはまだ奏功していない。ドラギ総裁の任期中のユーロ圏消費者物価指数上昇率は平均1.2%と、目標である2%弱を下回った。しかし、消費者物価上昇率がマイナスだった時期もあることを考えれば、ドラギ総裁は少なくともデフレの克服を自身の功績に数えて良い。

Draghi has failed to meet ECB inflation goal of just under 2%
Inflation outlook remains bleak at end of Draghi's term
銀行貸し出し
  ECBが政策の成否を測るもう1つの重要な指標は銀行貸し出しだ。これはECBの刺激策によく反応した。 与信の伸びは4%弱とGDP成長率のほぼ3倍となっている。

Unprecendented ECB policy has bolstered euro-area bank lending
Greek Snapshot
Economy is on track but still has long way to go


Source: National Statistical Service of Greece, Eurostat, Bloomberg

ユーロの未来
  ギリシャが通貨同盟を離脱する可能性が取り沙汰された時期もあり、フランスやイタリアにもユーロに懐疑的な勢力があるが、実際には参加国は増えている。ラトビアが14年、リトアニアがその1年後に加わったほか、東欧の他の諸国も参加に意欲を示している。

  ドラギ総裁の任期の終わりに、通貨同盟崩壊の確率を示す指標は過去最低に近い。これが、総裁の究極の遺産かもしれない。

Future of euro has been questioned several times
原題:Three Words, 11 Million Jobs: Draghi’s Legacy for Euro Area (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-23/PZT9DJDWX2PU01?srnd=cojp-v2

ビジネス2019年10月23日 / 18:36 / 14分前更新
仏製造業景況感指数、10月は99 約4年半ぶり低水準
Reuters Staff
1 分で読む

[パリ 23日 ロイター] - フランス国立統計経済研究所(INSEE)が発表した10月の製造業景況感指数は99で予想外の低下となり、2015年3月以来の低水準だった。

ロイターがまとめたエコノミスト18人の予想平均(102)を下回った。前月は102だった。

航空機大手エアバスへの補助金を巡り、米国が欧州連合(EU)への報復関税発動に動く中、影響が表面化した。

サービス業の指数は106で、前月から変わらず。

製造業とサービス業を合わせた総合景況感指数は105。前月の106から若干低下したが、長期平均の100は上回った。

RAMアクティブ・インベストメンツのシニアフィクストインカムマネジャー、ジャイルス・プラデール氏は「明らかに貿易戦争が業況感を圧迫している。一部の仏製品に対する追加関税がネガティブ要因だ」と指摘。

一方で「新規制導入による自動車部門の変遷や中国経済の減速など、他の要因も影響している」との見方を示した。
https://jp.reuters.com/article/france-sentiment-october-idJPKBN1X211S?il=0

 


債券は反発、海外金利低下や超長期債への買いで−20年債入札を見極め
三浦和美
2019年10月23日 7:57 JST 更新日時 2019年10月23日 16:14 JST
債券相場は反発。英国の欧州連合(EU)離脱問題を巡る不透明感を背景に米国の長期金利低下が時間外取引で低下したことを受けて買いが優勢となった。一方、超長期債はあすの20年債入札を控えて売りが先行した後、投資家の買いが優勢となり、下げ幅を解消する展開となった。

長期国債先物12月物の終値は前営業日比7銭高の154円14銭と、8営業日ぶりに上昇。取引終了にかけて11銭高の154円18銭まで上昇
新発2年債利回りは1ベーシスポイント(bp)低いマイナス0.255%、新発5年債利回りは0.5bp低いマイナス0.275%
新発20年債利回りは一時0.26%、新発30年債利回りは一時0.425%と、いずれも6月以来の高水準を付けた後、0.25%、0.41%に下げる
新発10年債利回りは横ばいのマイナス0.14%。一時はマイナス0.135%と、8月1日以来の水準まで上昇
市場関係者の見方
バンクオブアメリカ・メリルリンチの大崎秀一チーフ金利ストラテジスト

英EU離脱問題の行方が不透明で、一方的に債券が売られる感じではない。海外市場で金利が低下する可能性もある
日本銀行のマイナス金利深掘りが完全にないとも言えず、短いゾーンは比較的小じっかり
一方、超長期債は24日の20年債入札を控えて、日銀オペからカレント債が除外される可能性が意識されて売られる場面もあったが、押し目では投資家の買いが待っている感ある
新発20年物国債利回りの日中取引推移
背景
英EU離脱、再延期の見通し−議会が短期審議を否決
22日の米10年国債利回りは4bp低い1.76%程度。この日の時間外取引では1.74%付近まで低下場面
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
-0.250% -0.275% -0.140% 0.250% 0.410% 0.445%
前営業日比 -0.5bp -0.5bp 横ばい 横ばい -0.5bp -1.0bp

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-22/PZPOEWT0AFB701?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/456.html

[経世済民133] ウィーワーク混乱に見るカリスマ創業者崇拝時代の終幕 救済で創業者ビリオネアに復帰 ソフトバンクGが一時3.5%安、1兆円支援 株式8割保有
コラム2019年10月23日 / 14:01 / 5時間前更新

ウィーワーク混乱に見るカリスマ創業者崇拝時代の終幕
Antony Currie
3 分で読む

[ニューヨーク 22日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 共有オフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーは、創業者のアダム・ニューマン氏が君臨する時代が幕を閉じた。経営危機という結果を伴ってだ。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は22日、同社取締役会が、後ろ盾となっているソフトバンクグループ(9984.T)から総額100億ドル近い支援策を受け入れる道を選んだが、ウィーの評価額はピーク時の470億ドルを83%下回ったと伝えた。これでウィーが利益を生み出せる土台を築けるかどうかはまだしばらく判明しそうにない。ただ株主らは、ニューマン氏が創業者として悪あがきするのを防ぐ態勢は確保できた。

ソフトバンクはニューマン氏から10億ドル相当のウィー株を買い入れ、同氏が抱えるJPモルガンからの借り入れの返済に充当できるように5億ドルを融資する。またいわゆる顧問料として1億8500万ドルを支払う。こうした取引を通じて、ソフトバンクはニューマン氏から経営権を買い取るのと引き換えに、事実上の「手切れ金」を渡したと言える。

ただ他の株主や社員は怒り心頭だろう。結局のところ、ウィーが一時日の出の勢いになったのも、足元で破綻寸前に陥っているのも、ひとえにニューマン氏の責任だった。支援者たちも当初は、ニューマン氏の「世界の意識を引き上げたい」などという訳の分からない発言も受け入れた。しかし、要するにウィーは不動産事業だという点をしっかり見据えなかったことで市場の熱が冷め、新規株式公開(IPO)を中止せざるを得なくなった。

利益相反の要素も多々ある。ニューマン氏が所有する不動産をウィーにリースしたり、商標料として590万ドルを受け取っていたことなどだ。もっとも後者は、アドバイザーが何とかIPO計画を救おうとする過程で、返済を余儀なくされた。一方、ウィーが昨年つぎ込んだ現金は22億ドルと総収入を上回った。

IPOの手続きを通じてウィーの内部の動きが厳しい目にさらされたおかげで、一般の投資家は泥沼にはまり込むのを避けられた。とはいえソフトバンクは、以前に出資した際と同じぐらい困った立場に置かれている。これは自らが壮大な構想を持つ投資家にとって教訓になるはずだ。

もう1つ、ある企業の誰かが外部の投資家の資金を何のチェックも受けずに自由に処分するのを許してしまう危険性も学べる。ソフトバンクも、ベンチマーク・キャピタルなどの比較的初期にウィーに出資した投資家も、そうした面では自分たち以外を責めることはできない。

ニューマン氏のようなカリスマ性を備えたハイテク企業の創業者は、まるで神のように扱われる。ところが彼らが常に大きな組織を切り盛りするのに適した人物とは限らない。例えばベンチマークは、ウーバー・テクノロジーズ(UBER.N)におけるトラビス・カラニック氏のケースでそれを認識しなければならなかったのだ。もはや創業者を盲目的に崇拝する時代ではない。

●背景となるニュース

*ソフトバンクグループは、共有オフィス「ウィーワーク」運営のウィーカンパニーの経営権取得に合意した。[nL3N2773ZV]

*WSJによると、ソフトバンクはウィーの創業者で最近最高経営責任者(CEO)を辞任したアダム・ニューマン氏から10億ドル相当の株式を購入するほか、ニューマン氏に対して5億ドルを融資し、顧問料として1億8500万ドルを支払う。同氏は取締役会メンバーからも退く。

*さらにソフトバンクは、ウィーの社員と株主から最大20億ドル相当の株式を買い取る。この取引はウィーの企業価値を約80億ドルと評価している。ソフトバンクも参加した今年1月のウィーの資金調達ラウンドにおける評価額は470億ドルだった。

*ソフトバンクは、ウィーに約束していた15億ドル規模の追加出資も加速させるとともに、50億ドルをウィーに貸し付ける。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/wework-softbank-breakingviews-idJPKBN1X205O

 

ソフトバンク救済でウィーワーク創業者「ビリオネアに復帰」へ

Sergei Klebnikov , FORBES STAFF


アダム・ニューマン (Michael Kovac/Getty Images for WeWork)

資金繰りに苦戦中のシェアオフィス「ウィーワーク」が、ソフトバンクグループの救済案を承認し、ウィーワークの経営権をソフトバンクが取得することが決まった。これにより、ウィーワーク創業者で元CEOのアダム・ニューマンは17億ドル(約1800億円)近い大金を手にして、経営から退くことになる。

ウィーワークの取締役会は10月22日、ソフトバンクの救済案を受け入れ、JPモルガンからの融資を断ったとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が伝えた。

ソフトバンクは債務の形で50億ドルを、ウィーワーク運営元のウィーに支払う。ウィーの企業価値は今年1月にソフトバンクが出資した時点で470億ドルとされたが、今回は80億ドルの評価となった。ウィーの企業価値は数カ月で83%も減少したことになる。

ソフトバンクはニューマンの持ち株を10億ドルで買い取り、4年間のコンサルティング費用として1億8500万ドルを支払う。さらに、5億ドルをニューマンに融資し、彼のJPモルガンへの借金の返済を支援するとWSJは報じている。

ウィーの取締役会長にはソフトバンク幹部のマルセロ・クラウレが就任し、ニューマンの業務を引き継ぐ。さらに現在、ウィーの共同CEOを務めているアーティー・ミンソンやセバスチャン・ガニングハムに代わる人材の候補者選びも開始し、事業再編を進めていくという。

ニューマンは今後も、ウィーの取締役会には参加するが投票権を持たないボードオブザーバーの位置にとどまる。ソフトバンクに株式を売却後の、ニューマンの持ち株比率は10%未満に低下する見通した。

ニューマンは今年7月、IPOを目前に控える中で、株式の売却などにより7億ドル以上を手に入れていたとWSJが報じていた。スタートアップの経営者は通常、上場まで株式を保有し続けるが、ニューマンの行為は異例のものとされた。

かつて、米国で最も企業価値の高いスタートアップに数えられたウィーワークは先月、IPO計画を延期して以降、強い非難を浴びている。企業の存続を図る同社にとって、新たな資金調達は喫緊の課題となっていた。

ウィーワーク創業者のニューマンの保有資産は、今年3月時点では41億ドル(約4400億円)とされたが、フォーブスは10月10日、彼の資産を最大で6億ドルに引き下げた。しかし、今回のソフトバンクの救済措置により、ニューマンの資産は再び10億ドルを超えることになりそうだ。
編集=上田裕資
https://forbesjapan.com/articles/detail/30328

 

 

 
ソフトバンクGが一時3.5%安、ウィーワークに1兆円支援
・ウィーの経営権取得へ
・クラウレ氏を会長に

Source: Bloomberg
株式 ソフトバンク 株式公開
Hajime Yamaguchi | Financial Writer, Tokyo | Wednesday 23 October 2019 15:48
23日の東京株式市場でソフトバンクグループ<9984>が大幅続落。米シェアオフィス大手のウィーワークを運営するウィーカンパニーが現地時間22日、筆頭株主のソフトバンクGから総額で最大95億ドル(約1兆円)の金融支援を受け入れると発表したことが材料になった。ソフトバンクGはウィーカンパニーの経営権を取得する。

ソフトバンクGの終値は前営業日比108円(2.51%)安の4190円。

ウィーカンパニーが支援を受け入れると伝わった午前11時前に株価は3.51%安の4147円の安値を付けた。

ソフトバンクGは当初、ウィーワークのIPO(新規株式公開)で利益を得るとみられていたが、実際にはこれとは逆に経営再建へ追加の支援を余儀なくされる格好となった。IPOは9月に撤回された。

発表によると、ソフトバンクGはウィーカンパニーに対し、新たに50億ドルを貸し付ける。また、30億ドルを上限として既存株主や従業員からのウィーカンパニー株の公開買い付け(TOB)を実施し、さらに2020年4月に期限を迎える新株予約権(ワラント)の形で15億ドル出資するこれまでの計画を進める。

ソフトバンクGのマルセロ・クラウレ副社長をウィーカンパニーの会長として派遣し、再建を主導する考え。現会長で創業者のアダム・ニューマン氏は取締役を退任する方針だ。

ウィー評価額、年初から83%減
ウィーカンパニーに対し、ソフトバンクグループは「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を通じて累計約106億ドルを出資しており、株式のおよそ3分の1を保有している。

新たな支援によりウィーカンパニーへの出資比率は約80%に高まる。一方、議決権は過半数を占めず、連結子会社にはしない方針という。

19年1月の直近の資金調達ラウンドにおけるウィーカンパニーの推定企業価値は470億ドルだった。米メディアによると、現在は83%減の約80億ドル。
https://www.ig.com/jp/news-and-trade-ideas/_g_1_softbank-to-provide-up-to--9-5-billion-lifework-to-wework-191023

ソフトバンクG、WeWorkに金融支援1兆円−株式8割保有
日向貴彦
2019年10月23日 10:57 JST 更新日時 2019年10月23日 17:00 JST
50億ドルの貸し付け、30億ドル相当の株式を公開買い付けで取得
ソフトバンクGの助言金融機関にはレイン・グループ
ソフトバンクグループは23日、シェアオフィス事業を手掛ける米ウィーワークの支援策を発表した。総額は95億ドル(約1兆円)規模となる。

  発表によれば、ソフトバンクGは50億ドル(約5400億円)を貸し付けるほか、既存株主から最大30億ドルの株式を公開買い付け(TOB)し、株式の保有比率を80%程度まで高める。すでに予定していた15億ドル相当も出資する。ソフトバンクGは傘下のビジョン・ファンドなどを通じて1兆円程度を出資し、約3割を持つ筆頭株主となっていた。

  ソフトバンクGは議決権の過半は保有せず、ウィーワークは連結子会社とはしないが、ソフトバンクG副社長のマルセロ・クラウレ氏がウィーワークのエグゼクティブチェアマンとなり再建にあたる。共同創業者で同社を率いてきたアダム・ニューマン氏は議決権を行使しないオブザーバーとして取締役会に参加する。

Masayoshi Son Delivers Keynote At Annual SoftBank World Event
ソフトバンクGの孫社長Photographer: Akio Kon/Bloomberg
  企業統治上の問題や実際の企業価値は低いとの見方が浮上したウィーワークは上場中止に追い込まれ、ソフトバンクGとJPモルガン・チェースがそれぞれ提示した資金支援案を検討していた。支援を受けなければ、来月にも資金繰りに窮するところだった。ソフトバンクGの救済策はウィーワークの企業価値を約80億ドルと見積もっており、今年1月に評価された470億ドルから大きく目減りした。

  ソフトバンクGの孫正義会長兼社長は発表文で、ソフトバンクGはウィーワークが人々の働き方の変革をけん引すると信じており、「大型の資本投入と業務支援を通じ、同社に再投資することに決めた」と説明した。

  ソフトバンクGのフィナンシャルアドバイザー(FA)は米投資銀行のレイン・グループ、ビジョン・ファンドにはラザードなどが務めた。ウィーワークのFAはペレラ・ワインバーグ・パートナーズ。

  いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は今回の支援について、ソフトバンクG本体が「1つの会社にこれほどの金額を出すとは信じられない。これはおかしいとリスクを感じている投資家もいるだろう」と分析。「ユニコーンと言われる企業に本当に価値があるのか疑心暗鬼にならざるを得ない事例だ」と話した。

株価は自社株買い発表前の水準まで下落
  ウィーワーク救済は、ソフトバンクGの孫社長が注力する10兆円規模のビジョン・ファンドへの悪影響も必至だ。現在、1号ファンドを上回る規模の2号ファンドへの出資を募っている。

  事情に詳しい関係者によると、孫社長は21日、2017年に210億ドル強のバリュエーション(株価評価)でウィーワークに出資したビジョン・ファンド1号の投資家に電話会議で陳謝した。ソフトバンクGとビジョン・ファンドの広報担当者はコメントを控えるとしている。

  ソフトバンクGの株価は23日、最大で前日比3.5%下落し、2.5%安の4190円で取引を終えた。6000億円規模の自社株買いを発表した2月以前の安値水準にある。同社の投資先では米配車サービスのウーバー・テクノロジーズや職場向けメッセージアプリのスラック・テクノロジーズの株価も下落傾向にある。

  ウィーワークは2010年設立。現在100都市の500以上の拠点でデスクや専用オフィス、本社機能を提供する。日本には18年2月に進出し、東京・丸の内北口や銀座にも拠点を持つ。日本拠点のCEOには10月、マネジングディレクターだった佐々木一之氏が就任した。

(株価を更新しました)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-23/PZT11RDWLU6C01


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/457.html

[経世済民133] セブン、24時間営業転換=深夜休業を容認−人手不足受け第1弾8店で 予備自衛官8年ぶり招集 災害対応多く、人手不足深刻 日本で就職の外国人留学生、過去最多 「スガキヤ」全体の1割の36店舗閉店  粗鋼生産3.0%減 人手不足の米企業、競って自動化技術を採用 人手不足で需要増、食品メーカーが力を入れる介護食 人手不足の警備現場に新たな救世主?日本に初上陸した警備ロボ 建設現場でも大活躍! ドローンが「少子化」解決

セブン、24時間営業転換=深夜休業を容認−人手不足受け第1弾8店で
2019年10月21日22時12分
「深夜休業ガイドライン(指針)」を発表するセブン―イレブン・ジャパンの永松文彦社長=21日午後、東京都千代田区

 セブン−イレブン・ジャパンは21日、全国で2万を超える加盟店を対象に深夜休業を容認し、従来の24時間営業を転換すると発表した。希望する場合の移行手順などを「ガイドライン(指針)」で明確化した。これまで24時間営業をてこに急拡大を続けてきたコンビニ業界は大きな岐路を迎えたと言えそうだ。
「セブンイレブン」加盟店料を減額=オーナー配慮、利益50万円改善へ

 今年2月、大阪府の加盟店が人手不足を理由に24時間営業を中止して本部との対立が表面化。社会問題への発展を受け、営業時間短縮をめぐり加盟店との対話を重ねた結果、24時間営業としてきた従来方針について事実上の転換を迫られた形だ。セブンの方針転換を受け、他のコンビニに深夜休業など時短営業が広がる可能性もある。
 新指針策定を踏まえ、現在、時短営業を実験中の200店超のうち、まず8店で11月1日から最長で午後11時〜午前7時の休業を認める。従来は24時間営業の「例外」として実験的に時短を認めてきたが、今後は深夜休業を選択しやすいよう、従業員への対応方法に加え、最長半年間の実験が可能な移行スケジュールなどを明文化。本部に毎月支払う「ロイヤルティー(経営指導料)」の減額を含む契約の一部変更内容も示した。

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2019102100744&g=eco

予備自衛官8年ぶり招集 災害対応多く、人手不足深刻
台風19号 政治
2019/10/21 21:30日本経済新聞 電子版
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台風19号からの復旧・復興にあたるため、普段は企業などで働く「即応予備自衛官」と「予備自衛官」が招集された。日本で自然災害の発生頻度が高まっており、自衛隊の出動機会が増えている。一方で自衛官の人手不足は深刻で、予備自衛官らで任務を補う必要がある。防衛省は訓練や任務で仕事を離れることへ理解を促すため、企業への給付金制度を充実させる。

政府は台風19号の被災地対応として即応予備自衛官と予備自衛官を当…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51259750R21C19A0PP8000/


日本で就職の外国人留学生、過去最多 人手不足など要因
板橋洋佳 2019年10月23日17時33分

 出入国在留管理庁は23日、2018年に日本で就職した外国人留学生は2万5942人で、過去最多となったと発表した。8年連続の増加で、労働現場での人手不足や留学生数の増加が要因とみられる。

 国籍・地域別では中国が最多の1万886人。以下、ベトナム5244人、ネパール2934人、韓国1575人、台湾1065人と続く。アジアが全体の約9割を占めた。

 職務別にみると、翻訳や通訳が約24%、販売営業が約13%、海外企業との交渉業務などが9%。月額給与は20万円以上25万円未満が約半数を占めた。

 日本の大学や専門学校などを卒業した留学生が日本で働くためには、就労可能な在留資格に変更する必要がある。18年に変更した人は、過去最多だった前年より3523人増えた。(板橋洋佳)
https://www.asahi.com/articles/ASMBR54Z5MBRUTIL02V.html



「スガキヤ」全体の1割の36店舗閉店 東海地方中心に展開
2019年10月23日 15時24分

東海地方を中心にラーメン店の「スガキヤ」を展開する会社は、深刻な人手不足が続いていることなどから、先月末までに全体のおよそ1割に当たる36店舗を閉店したことを明らかにしました。

スガキヤを展開する「スガキコシステムズ」によりますと、ことし5月から先月末までに、高価格帯の商品を扱う業態の店舗も含め、愛知、岐阜、三重などにある36店舗を閉店しました。

これは、全体のおよそ1割に当たる規模で、これによって店舗の数は327に減少します。

会社側は、深刻な人手不足が続いていることに加え、労働時間の短縮などの働き方改革も進める必要があることから、採算性の高い店舗に人材を集中させるため、大量閉店に踏み切ったとしています。

スガキヤは、魚介だしと豚骨を組み合わせた独特な味わいのラーメンが東海地方を中心に人気を集め、一時は、首都圏にも進出して店舗数が400余りにまで拡大していました。

東海地方では、景気の拡大が続いていますが、人手不足が深刻になっていて、その影響が外食の経営に及んだ形となりました。
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4〜9月の粗鋼生産、3.0%減=人手不足による建設需要低迷と台風影響
2019年10月23日15時54分

 日本鉄鋼連盟が23日発表した2019年度上半期(4〜9月)の粗鋼生産量は、前年同期比3.0%減の5066万8900トンだった。上半期としては2年ぶりのマイナス。人手不足に伴う工事の遅れで、建設向けの鋼材需要が低迷。9月に上陸した台風15号による設備の被災や操業停止の影響も表れた。
 内訳を見ると、鉄スクラップから作る電炉鋼の落ち込みが7.2%減と大きかった。鉄鉱石を主原料とする転炉鋼は1.6%減少した。

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2019102300896&g=eco


ビジネス2019年10月23日 / 14:06 / 5時間前更新
アングル:
人手不足の米企業、競って自動化技術を採用
Reuters Staff
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[ニューヨーク 23日 ロイター] - 米国の失業率が約50年ぶり低水準で推移し、人件費が上昇するなか、国内企業は健全な利益率を確保するために自動化に積極的に取り組んでいる。ロイターの企業収益分析で明らかになった。

こうした取り組みは、単に工場に産業ロボットを多く導入するということにとどまらない。むしろ企業は、人事管理から処方箋調剤に至るまで、様々な業務をこなすことができるソフトウエアや機械に投資することで、低コストの労働力不足に対処しようとしている。

例えばシティグループ(C.N)は、これまで人手を要してきた日常業務を行うクラウドシステムの拡充を進めている。医療保険会社のユナイテッドヘルス(UNH.N)も、自動化への取り組み強化で、来年は10億ドルのコスト削減が見込めると投資家に説明した。コロナビールのブランドで知られるアルコール飲料大手コンステレーション・ブランズ(STZ.N)は、自動化への投資でボトルの梱包作業の効率が高まり、コストが削減されると説明している。

米失業率が歴史的な低水準となるなか、企業のこうした取り組みにより賃金の伸びは抑制されている。10月の失業率は3.7%から3.5%に改善したが、平均時給は横ばいだった。賃金上昇率は前年比2.9%に小幅低下した。

クレディ・スイス・セキュリティーズの米国株ストラテジスト、ジョナサン・ゴラブ氏は、自動化への設備投資で生産性が向上したため「賃金からのマージン圧力を全く心配していない」と述べた。

リフィニティブのデータによると、四半期決算発表の際に企業が自動化について説明した回数は年初から1110回を超えており、前年同期から15%増加し、2016年の10月からは倍近く増えた。

先進自動化の業界団体(Association for Advancing Automation)によると、今年上期の企業からの受注はロボットだけで前年同期比7.2%増加し8億6900万ドルに達した。

ファンドマネジャーやアナリストは、企業の自動化への投資が予想以上に好調な収益の背景にあると指摘する。リフィニティブのデータによると、第3・四半期決算を既に発表したS&P500種採用企業のうち、利益が予想を上回った企業は全体の約83%で、1994年以降の平均65%を上回っている。

ジェームズ・インベストメント・リサーチのポートフォリオ・マネジャー、マット・ワトソン氏は、「バランスシートをみただけでは分かりにくい方法で企業は利益を得ている。これらの投資全てが利益率を維持する上で役立ち始めている」と説明した。

ワトソン氏は、自動化の活用で恩恵を受けている企業に投資している。自動化を提供する企業よりもずっと魅力的なバリュエーションであることが理由だという。

同氏によると、米物流大手フェデックス(FDX.N)は、配送設備の自動化に投資すると共に、配送も部分的に担うロボットをテストしている。効率性を高めるために顧客との関係を担う面で自動化を進めるブローカーのLPLファイナンシャル・ホールディングス(LPLA.O)株にも投資している。

ロボ・グローバル・ロボティックス・アンド・オートメーションETF(ROBO.P)を運用するロボ・グローバルの調査部門代表、ジェレミー・キャプロン氏は、物流とヘルスケア部門で最も自動化が進んでいると指摘。コスト低下と次世代小型システムの導入で、これらの部門の売上高は増加を続けると見込んでいる。同社のETFは年初から20%近く上昇し、S&P500指数のパフォーマンスとほぼ一致している。

キャプロン氏は、「自動化ソフトは非常に使いやすくなっており、もはや導入のために優れた技術力は必要ない」と指摘。「大手多国籍企業で自動化が進んでいるだけでなく、中小規模の企業でも自動化の技術が活用できるようになっている」と説明した。
https://jp.reuters.com/article/usa-results-automation-idJPKBN1X20CV


人手不足で需要増、食品メーカーが力を入れる介護食

白井 咲貴
日経ビジネス記者
2019年9月30日
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 人手不足が深刻な介護業界。介護食の調理の手間を省くなど、人手不足でも業務を進められる仕組みが急務になっている。そのため食品各社が相次ぎ介護食に注力している。

 マルハニチロは介護用冷凍食品を強化する。2019年3月にはムース状の冷凍ハンバーグやオムレツを発売した。蒸すだけで提供できるため、調理時間を短縮できる。さらに、食材を細かく切ったり、ミキサーで液体状にしたりするより、見た目も良く、喫食率の向上が期待できるという。


マルハニチロが提供する介護食。見た目はハンバーグだが、ムースでできている
 同社は元々、果物や野菜をムースやゼリー状に固めた商品を発売していた。だが、「想定以上に、介護現場の人手不足が深刻になった」(荒川祥一・メディケア営業部商品開発課課長)ため、ハンバーグなど完成品の発売も開始。より時短効果の高い商品を投入した。マルハニチロは介護食を成長分野と位置付けている。18年度の売り上げは16年度比で約20%増加し、19年度も18年度比13%の増加を見込んでいる。新商品の投入で事業拡大を図る。

 調理と並んで、介護者の負担が重いのが排泄ケアだ。寝たきりの高齢者の中には便秘がちの人も少なくない。便秘を解消しようと下剤を使うと下痢になることもあり、介護者は1日に何度も汚れたおむつやシーツの交換に追われる。

 ネスレ日本は、流動食「アイソカルサポート」で排泄ケアの負担軽減を図っている。食物繊維を配合することで腸内環境を整える。同商品を利用する福岡県内の看護師、種子田美穂子氏は「1日に1回もしくは2〜3日に1回、健康な便が出るようになり、介護者の負担が減った」と話す。約3500の介護施設や病院で導入が進む。

 厚生労働省によると、要介護・要支援認定者は5月時点で659万人と、10年前に比べて4割増加した。一方で、人手不足は深刻で、7月時点の「介護サービスの職」の有効求人倍率は4.33倍と職業計の1.41倍を大きく上回る。介護業界関係者は「外食など人手不足が深刻と言われる業界の中でも、人材獲得競争で負けており、外国人も来ない。集まってくる人の中には高齢者も多く、介護施設も『老々介護』状態」と打ち明ける。

 一方で、食品メーカーにとって介護食は、人口が減少する国内市場では数少ない成長市場だ。医療費削減の観点から政府は在宅介護を推進しており、今後は家庭用介護食も増加していくと見込まれる。キユーピーやアサヒグループ食品なども家庭用介護食に注力しており、今後も各社が力を入れていきそうだ。

 
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https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/093000723/


2019/10/21 05:00
ニュース解説
人手不足の警備現場に新たな救世主?日本に初上陸した警備ロボの実力は
増田 圭祐=日経 xTECH/日経コンピュータ
日経 xTECH
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 商業施設などの警備を手掛ける全日警と中堅商社のCBCは2019年10月16日、AI(人工知能)を搭載した自律型警備ロボット「Nimbo(ニンボ)」の販売に向けて業務提携したと発表した。両社によればNimboの取り扱いは日本初。人手不足を抱える警備業務を中心に、3年間で1400台の導入を目指す。


Nimbo(ニンボ)の外観、既に中国の大連万達グループや米シスコシステムズが、ショッピングモールやデータセンターのパトロールに活用しているという
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 Nimboの特徴は高さ660ミリメートル、長さ580ミリメートル、幅280ミリメートル、重さ23キログラムと比較的コンパクトな点だ。上部にはAIで物体認識をするカメラ、ディスプレー、音声を伝送するマイクやスピーカーなどを備える。AIが認識できる対象物は80種類を超えるという。

 レーザー光を照射してその反射から物体を検知する「LiDAR(ライダー)」センサーも搭載。取得した情報を基に周辺環境を把握したり自己位置を推定したりする「SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)」技術を使って、施設内の地図を自動生成できる。


SLAMを使って地図を作っている様子
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 生成した地図上でスタートや折り返しポイントを指定し、施設内を自律的に走行して見回る。各店舗の前で写真を撮影して管理者に送ったり、AIが人を検知すると録音済みのメッセージを流したりするといった使い方が可能だ。必要に応じて遠隔から人が操作することもできる。

 2017年設立のAIロボットベンチャーである米チューリングビデオが製造する。米セグウェイを買収した中国ナインボットが所有するセグウェイロボティクスの開発キット「Loomo」をベースに、パトロール機能などを拡充した。警備員が利用するための専用アプリも開発した。


「セグウェイ」のように乗車もできる、昼間の警備で警備員の移動に利用することなどを想定する(写真は米チューニングビデオのダニエル・フーバイスプレジデント)
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約5時間の充電で約7時間半稼働する、充電が必要になると自動で「チャージングステーション」に移動する
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https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/03032/

人手不足の建設現場でも大活躍! ドローンが「少子化」解決の“一翼”に

テレビ静岡
カテゴリ:国内
2019年10月21日 月曜 午前6:30

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大人から子どもまで楽しめるドローン
一定以上の大きさの機種操作には技術と知識が必須
建設現場では測量に要する時間が3日→15分に!
初心者も“ドローンならではの視界”楽しめる
2019年7月、静岡市駿河区に県内初のドローン専用の屋内練習場「ドローンパーク静岡」がオープン。


FEED 杉山輝光社長:
極端に言うと、市内でもパッと飛ばせるところは限られている。インターネットで買って、飛ばせるかというと飛ばせない


こちらでは、撮影用に使われるようなドローンから、レースや趣味などで使われる小さなドローンなど15機を保有。

FEED 杉山輝光社長:
練習場とスクール会場を自分たちで持ちたいと思い、2年半たってようやく実現したということです

最近人気なのがこちらのマイクロドローン。
ゴーグルには、ドローンに取り付けられたカメラの映像が流れる。


まるで自分が空を飛んでいるかのような世界に、のめりこむ人も多いよう。

利用している中学生A;
飛行機の一番前に立ったような感じ

利用している中学生B:
ラジコンカーだと地面を走るだけなんですけど、ドローンだと空中を飛んでいて、輪っかを通り抜けるのがあり楽しい

利用している男性;
衝撃でしたね。こんな世界があるんだとすごい楽しかった


練習場にはドローンを持ち込む人がほとんどだが、初心者が気軽に体験したいという場合は…

FEED 杉山輝光社長;
こちらの機体を貸し出すという形でおススメをしています


基本操作が大きな機体と同じ、このドローンを1日千円で貸し出している。
早速記者が挑戦してみると…

テレビ静岡 漆畑晃太郎記者;
これが右旋回、これが左旋回…ここさえ慣れてしまえば、自分で好きなように飛ばせますね

初体験でも、進行方向さえ覚えればドローンは飛ばすことが出来る。


とは言え、楽しい反面、人にケガをさせる危険性も伴うドローン。
練習場で失敗を重ねて技術を磨けば、外に出た時も安心だ。

FEED 杉山輝光社長;
一般に売られている200gを超える撮影機というのは、法律に即した飛ばし方をしないと違法になってしまいますので、まずその知識が必要だというのと、当然安全に飛ばすための技術が必要です。国に申請をする過程のなかで、しっかりとしたトレーニングは不可欠ではないかなと考えています

何と測量が“超時短”で完了!
ドローンの活用が最も進んでいる業界の一つが、建設現場。
安倍川の工事現場で、この日行われていたのは、ドローンによる測量。
約2000平米の測量に、これまで3日ほどかかっていたものが、15分で完了した。


アースシフト建設部 今村裕之主任;
ドローン測量を行うことによって、人が機械に近づくことがなく現場のデータをとることができる。それが最大のメリットだと思います

さらにICT技術の進歩で、ドローンから得た情報を重機に入れれば、位置情報などをもとに、熟練の職人でなくてもイメージ通りに機械を動かすことができるシステムもある。
この企業がドローンを導入したのは3年前。「人手不足」や「若者の担い手の不足」が課題となる中、積極的な活用が新たな効果も生んでいる。

アースシフト 近藤大智専務;
弊社としては、ドローンを活用していることが、逆にPRポイントにもなってきていますので、人を雇用する武器にもなりつつあるのかなと思いますね


少子高齢化・人口減少のなかで、「ドローン」が課題解決の一翼を担うことができるのか注目される。

(テレビ静岡)

【関連記事:日本各地の気になる話題はコチラ】
https://www.fnn.jp/posts/00048440HDK/201911301709_SUT_HDK
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/458.html

[国際27] 米大使、ウクライナへの「異例」な圧力を批判 議会証言 インド民主主義を揺るがすカシミール弾圧 wedge.ismedia
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米大使、ウクライナへの「異例」な圧力を批判 議会証言

2019/10/23

BBC News


アメリカの駐ウクライナ大使、ウィリアム・テイラー氏(72)は22日、ドナルド・トランプ大統領によるウクライナ政府への働きかけについて下院監視・政府改革委員会で証言し、大統領が自分の政敵への捜査着手を軍事援助の条件にしたことは、アメリカとウクライナの関係を「根本的に損ねた」と発言した。

来年の米大統領選で民主党候補になるかもしれないジョー・バイデン前米副大統領とその息子について、トランプ氏がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に捜査を要請した問題で、野党・民主党が多数を占める連邦議会の下院は、大統領への弾劾調査を進めている。

その一環として、監視・政府改革委が非公開で開いた聴聞会で、テイラー大使は証言。「我々とウクライナとの関係は根本的に、アメリカの非正規で非公式な政策決定ルート、さらに、国内政治上の理由から相手に不可欠な安全保障上の援助を差し控えたことで、根本的に損なわれていた」と述べた。

ウィリアム大使が言及した「非正規で非公式な」政策決定ルートとは、米政府のカート・ヴォルカー・ウクライナ特使、ゴードン・ソンドランド駐EU大使、リック・ペリー・エネルギー長官、そしてトランプ氏個人の顧問弁護士、ルディ・ジュリアーニ氏を意味する。

トランプ大統領は、ウクライナ政府がバイデン親子を捜査し、2016年米大統領選に当時のウクライナ政府が介入した疑いについても捜査することになったと、公式発表を求めており、その意向を明示していたと、テイラー大使は証言した。

米陸軍出身のテイラー氏は国務省のベテラン外交官で、ウクライナ大使や中東特使を歴任の後、民間シンクタンクに移っていたが、今年6月に駐ウクライナの臨時代理大使に着任していた。

大使証言を受けてホワイトハウスのステファニー・グリシャム大統領報道官は、「トランプ大統領は何も悪いことはしていない。これは極左議員や、選挙で選ばれたわけではない過激な官僚たちが、憲法に対して戦争をしかけ、連携して(大統領に)汚名を着せようとしていることにほかならない」とコメントを発表した。

トランプ大統領は、ウクライナに対して見返り条件を提示したことはないと主張している。

<関連記事>

ホワイトハウス、弾劾調査への協力拒否 「憲法上無効」と主張
トランプ氏、中国にも「バイデン氏の捜査」求める 
トランプ氏の通話記録を公表 ウクライナにバイデン氏捜査を働きかけ
米民主党、トランプ大統領への弾劾調査を正式開始 ウクライナとの関係めぐり
トランプ氏が今年7月25日、ゼレンスキー大統領との電話会談で、バイデン氏と息子ハンター・バイデン氏に対する汚職疑惑の捜査を働きかけたことは、ホワイトハウスが公表した通話記録でも確認できる。ウクライナ当局は、バイデン親子を捜査する理由はないとしていた。

バイデン氏は副大統領としてアメリカの対ウクライナ政策作成に主要な役割を果たした。この間、息子ハンター氏はウクライナの民間ガス会社ブリスマの役員に就任していた。

ウクライナのヴィクトル・ショーキン元検事総長は2016年にブリスマ社を横領疑惑で捜査していたが、副大統領だったバイデン氏は当時、複数の欧州首脳や国際通貨基金(IMF)首脳などと共に、ショーキン検事総長は汚職摘発に及び腰だと批判し、解任を求めていた。ショーキン氏の後任となったルツェンコ氏はその後、10カ月にわたりブリスマを調べたが、捜査はそこで終わった。

テイラー大使はさらに何と
下院に対して大使はさらに、ゼレンスキー大統領はトランプ大統領との首脳会談を求めており、それが実現するかは「ウクライナが、ブリスマ社と2016年米大統領選へのウクライナによる介入疑惑を捜査するかどうか次第だった」のは明白だと証言した。

「この条件を強く求めているのは非正規の政策チャンネルで、それはジュリアーニ氏が動かしているのだと私は理解するようになっていた」と、大使は述べた。

テイラー大使はさらに、ウクライナへの援助を停止するよう命令を受けたとホワイトハウスの予算担当職員が話すのを聞いたと証言。職員の発言を聞いて、「ウクライナに対するこの国の強力な支援を支える、大事な柱の一つが危うい」と気づいたのだと説明した。

「私は9月9日にゴードン・ソンドランド大使に、米国内の選挙支援を見返り条件に軍事援助の提供を控えるなど、『狂っている』とメッセージで伝えた」と大使は述べ、「当時も今もそう思っている」と強調した。

ソンドランド駐EU大使はこれまでに下院で、バイデン親子への捜査要請をめぐり国務省やホワイトハウスの関係者と「話し合ったことはない」と証言している。この日のテイラー大使の証言は、これを否定する結果になった。

議会の反応は
民主党のデビー・ワッサーマン・シュルツ下院議員は、テイラー大使の証言を受けて、「これほど決定的に(トランプ氏の)問題行動を裏づける証言は初めて聞いた」と反応した。

「大使はトランプ大統領と、外交援助の停止と、首脳会談の開催拒否との間に、一直線の線を明確に引いてみせた」

他の民主党議員も同様に反応し、テイラー大使が逐一「詳しく」メモを残していたことをたたえた。

トム・マリノウスキ下院議員は、「他の証人たちが、なぜかしら忘れてしまった詳細」を、テイラー大使の「徹底的に詳しい」証言が埋めてくれたと述べた。

一方で、トランプ大統領を強力に支持するマーク・メドウズ下院議員(共和党)は記者団に、「見返り要求や外交援助で何かを約束したという言い分」を裏づける内容は何も出なかったと述べた。

下院聴聞会に先立ち、トランプ氏は22日、自分に対する下院調査は「リンチ(私刑)」だとツイートした。アメリカでは「lynching」は歴史的に、白人集団による黒人の殺害を意味する言葉として使われてきただけに、民主党や人権団体などから強い批判の声が上がった。共和党幹部のミッチ・マコネル上院院内総務も、大統領の言葉遣いは「残念」だとして、「この国の歴史をふまえれば、私なら(弾劾調査を)リンチとは比較しない」と述べた。

弾劾調査の背景
トランプ氏とウクライナのゼレンスキー大統領は7月25日、電話で会談。その中でトランプ氏は、バイデン親子を捜査するよう圧力をかけたとされている。

この電話内容に「深刻な懸念」を抱いた情報機関の内部告発者が、情報機関監察総監に懸念を伝え、ペロシ氏が先月24日、弾劾調査を正式に開始すると発表した。

現在のトランプ氏への弾劾調査の対象は「ウクライナ疑惑」に限られているが、トランプ氏による司法妨害の疑いのある行動にまで調査が拡大する可能性もある。

民主党が多数の下院では現在、司法委員会、情報委員会、監視・政府改革委員会が弾劾調査を進めている。

合衆国憲法第2条第4節は、「大統領並びに副大統領、文官は国家反逆罪をはじめ収賄、重犯罪や軽罪により弾劾訴追され有罪判決が下れば、解任される」と規定している。

弾劾訴追権は下院が、弾劾裁判権は上院がそれぞれ持つ。下院が調査の後に単純過半数で弾劾訴追を可決した後、上院が弾劾裁判を行う。上院議員の3分の2以上が賛成すれば、大統領を解任できる。

現在の下院では、定数435議席のうち民主党が235議席を占めているため、弾劾訴追が成立する可能性は高い。

一方の上院は、定数100議席のうち共和党が53議席を占める。解任の動議成立に必要な3分の2以上の賛成票を得るには、多数の共和党議員が造反する必要があるため、大統領が実際に解任される見通しは少ない。

その一方で、トランプ氏を支持してきた共マコネル上院院内総務は、もし下院が大統領を訴追した場合、上院としては規則上、弾劾裁判を開かないわけにはいかないと表明している。

過去の大統領で弾劾されたのは、アンドリュー・ジョンソン第17代大統領とビル・クリントン第42代大統領のみだが、上院の弾劾裁判が有罪を認めなかったため、いずれも解任はされていない。

リチャード・ニクソン第37代大統領は弾劾・解任される可能性が高まったため、下院司法委の弾劾調査開始から3カ月後に、下院本会議の採決を待たずに辞任した。

(英語記事 Trump impeachment: US envoy condemns 'irregular' pressure on Ukraine)

提供元:https://www.bbc.com/japanese/50148659
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17709

wedge.ismedia
インド民主主義を揺るがすカシミール弾圧

2019/10/23

岡崎研究所

 8月にインド議会は突然憲法を改正し、ジャンムー・カシミールを自治州から中央政府が管理する領土に格下げした。それ以来、インド当局が、抗議を阻止するために政治家、実業家、活動家、ジャーナリストなど約2,000人の著名なカシミール人を拘束している。彼らは、起訴されることもなく、拘束され続けている。州の主要な人口中心地であるカシミール渓谷の700万の住民は、携帯電話とインターネットを遮断され、移動は困難で、州への出入りは当局の許可が必要である。


chelovek/champc/Martin Holverda/iStock / Getty Images Plus
 モディ首相のインド人民党(BJP)政権がそういう行動をするのは驚きではない。今年4月の国政選挙でBJPは圧勝したが、その前に発表したマニフェストで、カシミールの特別な地位の廃止を呼び掛けていた。カシミール州はイスラム教徒が多数派であるインドで唯一の州である。ヒンドゥー民族主義のBJPはイスラム教徒のいかなる特権をも嫌う。BJPはまた、カシミールの領有権を争っている相手の一つであるパキスタンへの反発がある。モディ首相とBJP指導部は、カシミールを巡り、敵に立ち向かうことを躊躇しない断固たるナショナリストぶりを示す機会としてきた。

 しかし、インド裁判所がカシミールでの問題に沈黙しているのは驚くべきことと言える。カシミールで起こっている多くの明らかな権力濫用に、彼らは沈黙したままである。デリーの最高裁判所長官は、忙しすぎて、カシミールでの政府の行動に関連するすべての案件を聴取することはできないと述べ、問題を最高裁判所の他の部局に回すなどしている。

 10月5日付のエコノミスト誌の記事’ The courts’ refusal to curb repression in Kashmir’は、「モディの権威主義的本能はカシミールだけにとどまらない。裁判所が彼を許し続けるならば、彼は間違いなくBJPの明白な目標に従ってインドを再構築し続けるだろう」「カシミールでの出来事は、政府がその行動に対する抵抗を抑えるために、インド人の公民権を踏みにじる準備ができていることを示している。もし最高裁判所が今日それから目をそらすなら、誰が政府を抑止しうるのか」と、厳しく批判している。

 インドは、日米の「自由で開かれた太平洋・インド戦略」において重要なパートナーである。そのインドが世界最大の民主主義国としてあり続けることは重要である。したがって、カシミールで今起こっていることには注意する必要があると思われる。

 民主主義は単に指導者が選挙で選ばれれば、それでよいというのではない。議会、裁判所、法の支配や人権の尊重が伴ってはじめて真正の民主主義と言える。インドにおいては、イスラム教徒とヒンズー教徒の間での平等と平和が、民主主義が適切に機能していくためには重要であると思われる。

 モディ首相は親日的で、安倍総理に大きな敬意を示しており、日本にとっては良いインド首相であるが、権威主義的傾向があり、また、ヒンズー至上主義者であるという別の側面がある。グジャラート州知事時代、2002年、イスラム教徒とヒンズー教徒の間で衝突があった際に、ヒンズー教徒寄りの姿勢をとって、批判された。

 日本がインドの内政に口出しする必要はないが、インド・太平洋戦略は民主主義国の集まりが推進していることを強調して行くことくらいはしてもいいように思われる。インドが民主主義の原則に反し、イスラム教徒苛めをしているとの認識が広まれば、インド内部で紛争が起こるし、インドの国際的イメージも悪くなる。これがインドのパートナーの評判にも悪影響を与えるように思われる。

 先日、テレビにマハトマ・ガンジーの曾孫が出演して、ガンジーの教え、ヒンズー教徒とイスラム教徒の融和の教え、がなくなってきていると嘆いていた。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17634
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/583.html

[IT12] ハロー量子世界! グーグル、画期的な量子超越を発表 離陸する量子コンピューティング なぜ深層学習AIは、そんなにバカか

Hello quantum world! Google publishes landmark quantum supremacy claim
The company says that its quantum computer is the first to perform a calculation that would be practically impossible for a classical machine.
Elizabeth Gibney

Optical image of the Sycamore chip.
The Sycamore chip is composed of 54 qubits, each made of superconducting loops.Credit: Erik Lucero

Scientists at Google say that they have achieved quantum supremacy, a long-awaited milestone in quantum computing. The announcement, published in Nature on 23 October, follows a leak of an early version of the paper five weeks ago, which Google did not comment on at the time.

In a world first, a team led by John Martinis, an experimental physicist at the University of California, Santa Barbara, and Google in Mountain View, California, says that its quantum computer carried out a specific calculation that is beyond the practical capabilities of regular, ‘classical’ machines1. The same calculation would take even the best classical supercomputer 10,000 years to complete, Google estimates.

Quantum supremacy has long been seen as a milestone because it proves that quantum computers can outperform classical computers, says Martinis. Although the advantage has now been proved only for a very specific case, it shows physicists that quantum mechanics works as expected when harnessed in a complex problem.

“It looks like Google has given us the first experimental evidence that quantum speed-up is achievable in a real-world system,” says Michelle Simmons, a quantum physicist at the University of New South Wales in Sydney, Australia.

Martinis likens the experiment to a 'Hello World' programme, which tests a new system by instructing it to display that phrase; it's not especially useful in itself, but it tells Google that the quantum hardware and software are working correctly, he says.

The feat was first reported in September by the Financial Times and other outlets, after an early version of the paper was leaked on the website of NASA, which collaborates with Google on quantum computing, before being quickly taken down. At that time, the company did not confirm that it had written the paper, nor would it comment on the stories.

Although the calculation Google chose — checking the outputs from a quantum random-number generator — has limited practical applications, “the scientific achievement is huge, assuming it stands, and I’m guessing it will”, says Scott Aaronson, a theoretical computer scientist at the University of Texas at Austin.

Researchers outside Google are already trying to improve on the classical algorithms used to tackle the problem, in hopes of bringing down the firm's 10,000-year estimate. IBM, a rival to Google in building the world’s best quantum computers, reported in a preprint on 21 October that the problem could be solved in just 2.5 days using a different classical technique2. That paper has not been peer reviewed. If IBM is correct, it would reduce Google’s feat to demonstrating a quantum ‘advantage’ — doing a calculation much faster than a classical computer, but not something that is beyond its reach. This would still be a significant landmark, says Simmons. “As far as I’m aware, that’s the first time that’s been demonstrated, so that’s definitely a big result.”

Quick solutions
Quantum computers work in a fundamentally different way from classical machines: a classical bit is either a 1 or a 0, but a quantum bit, or qubit, can exist in multiple states at once. When qubits are inextricably linked, physicists can, in theory, exploit the interference between their wave-like quantum states to perform calculations that might otherwise take millions of years.

Physicists think that quantum computers might one day run revolutionary algorithms that could, for example, search unwieldy databases or factor large numbers — including, importantly, those used in encryption. But those applications are still decades away. The more qubits are linked, the harder it is to maintain their fragile states while the device is operating. Google’s algorithm runs on a quantum chip composed of 54 qubits, each made of superconducting loops. But this is a tiny fraction of the one million qubits that could be needed for a general-purpose machine.


The task Google set for its quantum computer is “a bit of a weird one”, says Christopher Monroe, a physicist at the University of Maryland in College Park. Google physicists first crafted the problem in 2016, and it was designed to be extremely difficult for an ordinary computer to solve. The team challenged its computer, known as Sycamore, to describe the likelihood of different outcomes from a quantum version of a random-number generator. They do this by running a circuit that passes 53 qubits through a series of random operations. This generates a 53-digit string of 1s and 0s — with a total of 253 possible combinations (only 53 qubits were used because one of Sycamore’s 54 was broken). The process is so complex that the outcome is impossible to calculate from first principles, and is therefore effectively random. But owing to interference between qubits, some strings of numbers are more likely to occur than others. This is similar to rolling a loaded die — it still produces a random number, even though some outcomes are more likely than others.

Sycamore calculated the probability distribution by sampling the circuit — running it one million times and measuring the observed output strings. The method is similar to rolling the die to reveal its bias. In one sense, says Monroe, the machine is doing something scientists do every day: using an experiment to find the answer to a quantum problem that is impossible to calculate classically. The key difference, he says, is that Google’s computer is not single-purpose, but programmable, and could be applied to a quantum circuit with any settings.

Memner of the Google quantum team work on a cryostat
Google's quantum computer excels at checking the outputs of a quantum random number generator.Credit: Erik Lucero

Verifying the solution was a further challenge. To do that, the team compared the results with those from simulations of smaller and simpler versions of the circuits, which were done by classical computers — including the Summit supercomputer at Oak Ridge National Laboratory in Tennessee. Extrapolating from these examples, the Google team estimates that simulating the full circuit would take 10,000 years even on a computer with one million processing units (equivalent to around 100,000 desktop computers). Sycamore took just 3 minutes and 20 seconds.

Google thinks their evidence for quantum supremacy is airtight. Even if external researchers cut the time it takes to do the classical simulation, quantum hardware is improving — meaning that for this problem, conventional computers are unlikely to ever catch up, says Hartmut Neven, who runs Google’s quantum-computing team.

Limited applications
Monroe says that Google’s achievement might benefit quantum computing by attracting more computer scientists and engineers to the field. But he also warns that the news could create the impression that quantum computers are closer to mainstream practical applications than they really are. “The story on the street is ‘they’ve finally beaten a regular computer: so here we go, two years and we’ll have one in our house’,” he says.

In reality, Monroe adds, scientists are yet to show that a programmable quantum computer can solve a useful task that cannot be done any other way, such as by calculating the electronic structure of a particular molecule — a fiendish problem that requires modelling multiple quantum interactions. Another important step, says Aaronson, is demonstrating quantum supremacy in an algorithm that uses a process known as error correction — a method to correct for noise-induced errors that would otherwise ruin a calculation. Physicists think this will be essential to getting quantum computers to function at scale.

Google is working towards both of these milestones, says Martinis, and will reveal the results of its experiments in the coming months.

Aaronson says that the experiment Google devised to demonstrate quantum supremacy might have practical applications: he has created a protocol to use such a calculation to prove to a user that the bits generated by a quantum random-number generator really are random. This could be useful, for example, in cryptography and some cryptocurrencies, whose security relies on random keys.

Google engineers had to carry out a raft of improvements to their hardware to run the algorithm, including building new electronics to control the quantum circuit and devising a new way to connect qubits, says Martinis. “This is really the basis of how we’re going to scale up in the future. We think this basic architecture is the way forward,” he says.

Nature 574, 461-462 (2019)

doi: 10.1038/d41586-019-03213-z
References
1.
Arute, F. et al. Nature 574, 505–510 (2019).

ArticleGoogle Scholar
2.
Pednault, E. et al. Preprint at https://arxiv.org/abs/1910.09534 (2019).

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NEWS FEATURE
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03213-z


Quantum computing takes flight
A programmable quantum computer has been reported to outperform the most powerful conventional computers in a specific task — a milestone in computing comparable in importance to the Wright brothers’ first flights.
William D. Oliver

Quantum computers promise to perform certain tasks much faster than ordinary (classical) computers. In essence, a quantum computer carefully orchestrates quantum effects (superposition, entanglement and interference) to explore a huge computational space and ultimately converge on a solution, or solutions, to a problem. If the numbers of quantum bits (qubits) and operations reach even modest levels, carrying out the same task on a state-of-the-art supercomputer becomes intractable on any reasonable timescale — a regime termed quantum computational supremacy1. However, reaching this regime requires a robust quantum processor, because each additional imperfect operation incessantly chips away at overall performance. It has therefore been questioned whether a sufficiently large quantum computer could ever be controlled in practice. But now, in a paper in Nature, Arute et al.2 report quantum supremacy using a 53-qubit processor.


Read the paper: Quantum supremacy using a programmable superconducting processor
Arute and colleagues chose a task that is related to random-number generation: namely, sampling the output of a pseudo-random quantum circuit. This task is implemented by a sequence of operational cycles, each of which applies operations called gates to every qubit in an n-qubit processor. These operations include randomly selected single-qubit gates and prescribed two-qubit gates. The output is then determined by measuring each qubit.

The resulting strings of 0s and 1s are not uniformly distributed over all 2n possibilities. Instead, they have a preferential, circuit-dependent structure — with certain strings being much more likely than others because of quantum entanglement and quantum interference. Repeating the experiment and sampling a sufficiently large number of these solutions results in a distribution of likely outcomes. Simulating this probability distribution on a classical computer using even today’s leading algorithms becomes exponentially more challenging as the number of qubits and operational cycles is increased.

In their experiment, Arute et al. used a quantum processor dubbed Sycamore. This processor comprises 53 individually controllable qubits, 86 couplers (links between qubits) that are used to turn nearest-neighbour two-qubit interactions on or off, and a scheme to measure all of the qubits simultaneously. In addition, the authors used 277 digital-to-analog converter devices to control the processor.

When all the qubits were operated simultaneously, each single-qubit and two-qubit gate had approximately 99–99.9% fidelity — a measure of how similar an actual outcome of an operation is to the ideal outcome. The attainment of such fidelities is one of the remarkable technical achievements that enabled this work. Arute and colleagues determined the fidelities using a protocol known as cross-entropy benchmarking (XEB). This protocol was introduced last year3 and offers certain advantages over other methods for diagnosing systematic and random errors.


Promising ways to encode and manipulate quantum information
The authors’ demonstration of quantum supremacy involved sampling the solutions from a pseudo-random circuit implemented on Sycamore and then comparing these results to simulations performed on several powerful classical computers, including the Summit supercomputer at Oak Ridge National Laboratory in Tennessee (see go.nature.com/35zfbuu). Summit is currently the world’s leading supercomputer, capable of carrying out about 200 million billion operations per second. It comprises roughly 40,000 processor units, each of which contains billions of transistors (electronic switches), and has 250 million gigabytes of storage. Approximately 99% of Summit’s resources were used to perform the classical sampling.

Verifying quantum supremacy for the sampling problem is challenging, because this is precisely the regime in which classical simulations are infeasible. To address this issue, Arute et al. first carried out experiments in a classically verifiable regime using three different circuits: the full circuit, the patch circuit and the elided circuit (Fig. 1). The full circuit used all n qubits and was the hardest to simulate. The patch circuit cut the full circuit into two patches that each had about n/2 qubits and were individually much easier to simulate. Finally, the elided circuit made limited two-qubit connections between the two patches, resulting in a level of computational difficulty that is intermediate between those of the full circuit and the patch circuit.


Figure 1 | Three types of quantum circuit. Arute et al.2 demonstrate that a quantum processor containing 53 quantum bits (qubits) and 86 couplers (links between qubits) can complete a specific task much faster than an ordinary computer can simulate the same task. Their demonstration is based on three quantum circuits: the full circuit, the patch circuit and the elided circuit. The full circuit comprises all 53 qubits and is the hardest to simulate on an ordinary computer. The patch circuit cuts the full circuit into two patches that are each relatively easy to simulate. Finally, the elided circuit links these two patches using a reduced number of two-qubit operations along reintroduced two-qubit connections and is intermediate between the full and patch circuits, in terms of its ease of simulation.

The authors selected a simplified set of two-qubit gates and a limited number of cycles (14) to produce full, patch and elided circuits that could be simulated in a reasonable amount of time. Crucially, the classical simulations for all three circuits yielded consistent XEB fidelities for up to n = 53 qubits, providing evidence that the patch and elided circuits serve as good proxies for the full circuit. The simulations of the full circuit also matched calculations that were based solely on the individual fidelities of the single-qubit and two-qubit gates. This finding indicates that errors remain well described by a simple, localized model, even as the number of qubits and operations increases.

Arute and colleagues’ longest, directly verifiable measurement was performed on the full circuit (containing 53 qubits) over 14 cycles. The quantum processor took one million samples in 200 seconds to reach an XEB fidelity of 0.8% (with a sensitivity limit of roughly 0.1% owing to the sampling statistics). By comparison, performing the sampling task at 0.8% fidelity on a classical computer (containing about one million processor cores) took 130 seconds, and a precise classical verification (100% fidelity) took 5 hours. Given the immense disparity in physical resources, these results already show a clear advantage of quantum hardware over its classical counterpart.

The authors then extended the circuits into the not-directly-verifiable supremacy regime. They used a broader set of two-qubit gates to spread entanglement more widely across the full 53-qubit processor and increased the number of cycles from 14 to 20. The full circuit could not be simulated or directly verified in a reasonable amount of time, so Arute et al. simply archived these quantum data for future reference — in case extremely efficient classical algorithms are one day discovered that would enable verification. However, the patch-circuit, elided-circuit and calculated XEB fidelities all remained in agreement. When 53 qubits were operating over 20 cycles, the XEB fidelity calculated using these proxies remained greater than 0.1%. Sycamore sampled the solutions in a mere 200 seconds, whereas classical sampling at 0.1% fidelity would take 10,000 years, and full verification would take several million years.

This demonstration of quantum supremacy over today’s leading classical algorithms on the world’s fastest supercomputers is truly a remarkable achievement and a milestone for quantum computing. It experimentally suggests that quantum computers represent a model of computing that is fundamentally different from that of classical computers4. It also further combats criticisms5,6 about the controllability and viability of quantum computation in an extraordinarily large computational space (containing at least the 253 states used here).

However, much work is needed before quantum computers become a practical reality. In particular, algorithms will have to be developed that can be commercialized and operate on the noisy (error-prone) intermediate-scale quantum processors that will be available in the near term1. And researchers will need to demonstrate robust protocols for quantum error correction that will enable sustained, fault-tolerant operation in the longer term.

Arute and colleagues’ demonstration is in many ways reminiscent of the Wright brothers’ first flights. Their aeroplane, the Wright Flyer, wasn’t the first airborne vehicle to fly, and it didn’t solve any pressing transport problem. Nor did it herald the widespread adoption of planes or mark the beginning of the end for other modes of transport. Instead, the event is remembered for having shown a new operational regime — the self-propelled flight of an aircraft that was heavier than air. It is what the event represented, rather than what it practically accomplished, that was paramount. And so it is with this first report of quantum computational supremacy.

Nature 574, 487-488 (2019)

doi: 10.1038/d41586-019-03173-4
References
1.
Preskill, J. Preprint at https://arxiv.org/abs/1203.5813 (2012).

2.
Arute, F. et al. Nature 574, 505–511 (2019).

ArticleGoogle Scholar
3.
Boixo, S. et al. Nature Phys. 14, 595–600 (2018).

ArticleGoogle Scholar
4.
Bernstein, E. & Vazirani, U. Proc. 25th Annu. Symp. Theory Comput. (ACM, 1993).

5.
Dyakonov, M. The case against quantum computing. IEEE Spectrum (2018).

6.
Kalai, G. Preprint at https://arxiv.org/abs/1908.02499 (2019).

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https://www.nature.com/articles/d41586-019-03013-5


 
Quantum computing takes flight
A programmable quantum computer has been reported to outperform the most powerful conventional computers in a specific task — a milestone in computing comparable in importance to the Wright brothers’ first flights.
William D. Oliver



Quantum computers promise to perform certain tasks much faster than ordinary (classical) computers. In essence, a quantum computer carefully orchestrates quantum effects (superposition, entanglement and interference) to explore a huge computational space and ultimately converge on a solution, or solutions, to a problem. If the numbers of quantum bits (qubits) and operations reach even modest levels, carrying out the same task on a state-of-the-art supercomputer becomes intractable on any reasonable timescale — a regime termed quantum computational supremacy1. However, reaching this regime requires a robust quantum processor, because each additional imperfect operation incessantly chips away at overall performance. It has therefore been questioned whether a sufficiently large quantum computer could ever be controlled in practice. But now, in a paper in Nature, Arute et al.2 report quantum supremacy using a 53-qubit processor.

Read the paper: Quantum supremacy using a programmable superconducting processor

Arute and colleagues chose a task that is related to random-number generation: namely, sampling the output of a pseudo-random quantum circuit. This task is implemented by a sequence of operational cycles, each of which applies operations called gates to every qubit in an n-qubit processor. These operations include randomly selected single-qubit gates and prescribed two-qubit gates. The output is then determined by measuring each qubit.
The resulting strings of 0s and 1s are not uniformly distributed over all 2n possibilities. Instead, they have a preferential, circuit-dependent structure — with certain strings being much more likely than others because of quantum entanglement and quantum interference. Repeating the experiment and sampling a sufficiently large number of these solutions results in a distribution of likely outcomes. Simulating this probability distribution on a classical computer using even today’s leading algorithms becomes exponentially more challenging as the number of qubits and operational cycles is increased.
In their experiment, Arute et al. used a quantum processor dubbed Sycamore. This processor comprises 53 individually controllable qubits, 86 couplers (links between qubits) that are used to turn nearest-neighbour two-qubit interactions on or off, and a scheme to measure all of the qubits simultaneously. In addition, the authors used 277 digital-to-analog converter devices to control the processor.
When all the qubits were operated simultaneously, each single-qubit and two-qubit gate had approximately 99–99.9% fidelity — a measure of how similar an actual outcome of an operation is to the ideal outcome. The attainment of such fidelities is one of the remarkable technical achievements that enabled this work. Arute and colleagues determined the fidelities using a protocol known as cross-entropy benchmarking (XEB). This protocol was introduced last year3 and offers certain advantages over other methods for diagnosing systematic and random errors.

Promising ways to encode and manipulate quantum information

The authors’ demonstration of quantum supremacy involved sampling the solutions from a pseudo-random circuit implemented on Sycamore and then comparing these results to simulations performed on several powerful classical computers, including the Summit supercomputer at Oak Ridge National Laboratory in Tennessee (see go.nature.com/35zfbuu). Summit is currently the world’s leading supercomputer, capable of carrying out about 200 million billion operations per second. It comprises roughly 40,000 processor units, each of which contains billions of transistors (electronic switches), and has 250 million gigabytes of storage. Approximately 99% of Summit’s resources were used to perform the classical sampling.
Verifying quantum supremacy for the sampling problem is challenging, because this is precisely the regime in which classical simulations are infeasible. To address this issue, Arute et al. first carried out experiments in a classically verifiable regime using three different circuits: the full circuit, the patch circuit and the elided circuit (Fig. 1). The full circuit used all n qubits and was the hardest to simulate. The patch circuit cut the full circuit into two patches that each had about n/2 qubits and were individually much easier to simulate. Finally, the elided circuit made limited two-qubit connections between the two patches, resulting in a level of computational difficulty that is intermediate between those of the full circuit and the patch circuit.

Figure 1 | Three types of quantum circuit. Arute et al.2 demonstrate that a quantum processor containing 53 quantum bits (qubits) and 86 couplers (links between qubits) can complete a specific task much faster than an ordinary computer can simulate the same task. Their demonstration is based on three quantum circuits: the full circuit, the patch circuit and the elided circuit. The full circuit comprises all 53 qubits and is the hardest to simulate on an ordinary computer. The patch circuit cuts the full circuit into two patches that are each relatively easy to simulate. Finally, the elided circuit links these two patches using a reduced number of two-qubit operations along reintroduced two-qubit connections and is intermediate between the full and patch circuits, in terms of its ease of simulation.
The authors selected a simplified set of two-qubit gates and a limited number of cycles (14) to produce full, patch and elided circuits that could be simulated in a reasonable amount of time. Crucially, the classical simulations for all three circuits yielded consistent XEB fidelities for up to n = 53 qubits, providing evidence that the patch and elided circuits serve as good proxies for the full circuit. The simulations of the full circuit also matched calculations that were based solely on the individual fidelities of the single-qubit and two-qubit gates. This finding indicates that errors remain well described by a simple, localized model, even as the number of qubits and operations increases.
Arute and colleagues’ longest, directly verifiable measurement was performed on the full circuit (containing 53 qubits) over 14 cycles. The quantum processor took one million samples in 200 seconds to reach an XEB fidelity of 0.8% (with a sensitivity limit of roughly 0.1% owing to the sampling statistics). By comparison, performing the sampling task at 0.8% fidelity on a classical computer (containing about one million processor cores) took 130 seconds, and a precise classical verification (100% fidelity) took 5 hours. Given the immense disparity in physical resources, these results already show a clear advantage of quantum hardware over its classical counterpart.
The authors then extended the circuits into the not-directly-verifiable supremacy regime. They used a broader set of two-qubit gates to spread entanglement more widely across the full 53-qubit processor and increased the number of cycles from 14 to 20. The full circuit could not be simulated or directly verified in a reasonable amount of time, so Arute et al. simply archived these quantum data for future reference — in case extremely efficient classical algorithms are one day discovered that would enable verification. However, the patch-circuit, elided-circuit and calculated XEB fidelities all remained in agreement. When 53 qubits were operating over 20 cycles, the XEB fidelity calculated using these proxies remained greater than 0.1%. Sycamore sampled the solutions in a mere 200 seconds, whereas classical sampling at 0.1% fidelity would take 10,000 years, and full verification would take several million years.
This demonstration of quantum supremacy over today’s leading classical algorithms on the world’s fastest supercomputers is truly a remarkable achievement and a milestone for quantum computing. It experimentally suggests that quantum computers represent a model of computing that is fundamentally different from that of classical computers4. It also further combats criticisms5,6 about the controllability and viability of quantum computation in an extraordinarily large computational space (containing at least the 253 states used here).
However, much work is needed before quantum computers become a practical reality. In particular, algorithms will have to be developed that can be commercialized and operate on the noisy (error-prone) intermediate-scale quantum processors that will be available in the near term1. And researchers will need to demonstrate robust protocols for quantum error correction that will enable sustained, fault-tolerant operation in the longer term.
Arute and colleagues’ demonstration is in many ways reminiscent of the Wright brothers’ first flights. Their aeroplane, the Wright Flyer, wasn’t the first airborne vehicle to fly, and it didn’t solve any pressing transport problem. Nor did it herald the widespread adoption of planes or mark the beginning of the end for other modes of transport. Instead, the event is remembered for having shown a new operational regime — the self-propelled flight of an aircraft that was heavier than air. It is what the event represented, rather than what it practically accomplished, that was paramount. And so it is with this first report of quantum computational supremacy.
Nature 574, 487-488 (2019)
doi: 10.1038/d41586-019-03173-4
References
1. 1.
Preskill, J. Preprint at https://arxiv.org/abs/1203.5813 (2012).
o
2. 2.
Arute, F. et al. Nature 574, 505–511 (2019).
o
 Article
 Google Scholar
3. 3.
Boixo, S. et al. Nature Phys. 14, 595–600 (2018).
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 Article
 Google Scholar
4. 4.
Bernstein, E. & Vazirani, U. Proc. 25th Annu. Symp. Theory Comput. (ACM, 1993).
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5. 5.
Dyakonov, M. The case against quantum computing. IEEE Spectrum (2018).
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6. 6.
Kalai, G. Preprint at https://arxiv.org/abs/1908.02499 (2019).
o
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Why deep-learning AIs are so easy to fool
NEWS FEATURE 09 OCT 19

https://www.nature.com/articles/d41586-019-03173-4


 

Why deep-learning AIs are so easy to fool
Artificial-intelligence researchers are trying to fix the flaws of neural networks.
Douglas Heaven

Illustration by Edgar Bąk

PDF version
A self-driving car approaches a stop sign, but instead of slowing down, it accelerates into the busy intersection. An accident report later reveals that four small rectangles had been stuck to the face of the sign. These fooled the car’s onboard artificial intelligence (AI) into misreading the word ‘stop’ as ‘speed limit 45’.

Such an event hasn’t actually happened, but the potential for sabotaging AI is very real. Researchers have already demonstrated how to fool an AI system into misreading a stop sign, by carefully positioning stickers on it1. They have deceived facial-recognition systems by sticking a printed pattern on glasses or hats. And they have tricked speech-recognition systems into hearing phantom phrases by inserting patterns of white noise in the audio.

These are just some examples of how easy it is to break the leading pattern-recognition technology in AI, known as deep neural networks (DNNs). These have proved incredibly successful at correctly classifying all kinds of input, including images, speech and data on consumer preferences. They are part of daily life, running everything from automated telephone systems to user recommendations on the streaming service Netflix. Yet making alterations to inputs — in the form of tiny changes that are typically imperceptible to humans — can flummox the best neural networks around.

These problems are more concerning than idiosyncratic quirks in a not-quite-perfect technology, says Dan Hendrycks, a PhD student in computer science at the University of California, Berkeley. Like many scientists, he has come to see them as the most striking illustration that DNNs are fundamentally brittle: brilliant at what they do until, taken into unfamiliar territory, they break in unpredictable ways.


Sources: Stop sign: Ref. 1; Penguin: Ref. 5

That could lead to substantial problems. Deep-learning systems are increasingly moving out of the lab into the real world, from piloting self-driving cars to mapping crime and diagnosing disease. But pixels maliciously added to medical scans could fool a DNN into wrongly detecting cancer, one study reported this year2. Another suggested that a hacker could use these weaknesses to hijack an online AI-based system so that it runs the invader’s own algorithms3.

In their efforts to work out what’s going wrong, researchers have discovered a lot about why DNNs fail. “There are no fixes for the fundamental brittleness of deep neural networks,” argues François Chollet, an AI engineer at Google in Mountain View, California. To move beyond the flaws, he and others say, researchers need to augment pattern-matching DNNs with extra abilities: for instance, making AIs that can explore the world for themselves, write their own code and retain memories. These kinds of system will, some experts think, form the story of the coming decade in AI research.

Reality check
In 2011, Google revealed a system that could recognize cats in YouTube videos, and soon after came a wave of DNN-based classification systems. “Everybody was saying, ‘Wow, this is amazing, computers are finally able to understand the world,’” says Jeff Clune at the University of Wyoming in Laramie, who is also a senior research manager at Uber AI Labs in San Francisco, California.

But AI researchers knew that DNNs do not actually understand the world. Loosely modelled on the architecture of the brain, they are software structures made up of large numbers of digital neurons arranged in many layers. Each neuron is connected to others in layers above and below it.

The idea is that features of the raw input coming into the bottom layers — such as pixels in an image — trigger some of those neurons, which then pass on a signal to neurons in the layer above according to simple mathematical rules. Training a DNN network involves exposing it to a massive collection of examples, each time tweaking the way in which the neurons are connected so that, eventually, the top layer gives the desired answer — such as always interpreting a picture of a lion as a lion, even if the DNN hasn’t seen that picture before.

A first big reality check came in 2013, when Google researcher Christian Szegedy and his colleagues posted a preprint called ‘Intriguing properties of neural networks’4. The team showed that it was possible to take an image — of a lion, for example — that a DNN could identify and, by altering a few pixels, convince the machine that it was looking at something different, such as a library. The team called the doctored images ‘adversarial examples’.

A year later, Clune and his then-PhD student Anh Nguyen, together with Jason Yosinski at Cornell University in Ithaca, New York, showed that it was possible to make DNNs see things that were not there, such as a penguin in a pattern of wavy lines5. “Anybody who has played with machine learning knows these systems make stupid mistakes once in a while,” says Yoshua Bengio at the University of Montreal in Canada, who is a pioneer of deep learning. “What was a surprise was the type of mistake,” he says. “That was pretty striking. It’s a type of mistake we would not have imagined would happen.”

New types of mistake have come thick and fast. Last year, Nguyen, who is now at Auburn University in Alabama, showed that simply rotating objects in an image was sufficient to throw off some of the best image classifiers around6. This year, Hendrycks and his colleagues reported that even unadulterated, natural images can still trick state-of-the-art classifiers into making unpredictable gaffes, such as identifying a mushroom as a pretzel or a dragonfly as a manhole cover7.

The issue goes beyond object recognition: any AI that uses DNNs to classify inputs — such as speech — can be fooled. AIs that play games can be sabotaged: in 2017, computer scientist Sandy Huang, a PhD student at the University of California, Berkeley, and her colleagues focused on DNNs that had been trained to beat Atari video games through a process called reinforcement learning8. In this approach, an AI is given a goal and, in response to a range of inputs, learns through trial and error what to do to reach that goal. It is the technology behind superhuman game-playing AIs such as AlphaZero and the poker bot Pluribus. Even so, Huang’s team was able to make their AIs lose games by adding one or two random pixels to the screen.

Earlier this year, AI PhD student Adam Gleave at the University of California, Berkeley, and his colleagues demonstrated that it is possible to introduce an agent to an AI’s environment that acts out an ‘adversarial policy’ designed to confuse the AI’s responses9. For example, an AI footballer trained to kick a ball past an AI goalkeeper in a simulated environment loses its ability to score when the goalkeeper starts to behave in unexpected ways, such as collapsing on the ground.

A simulated soccer penalty shootout between two Humanoid robots displayed with and without a adversarial policy
An AI footballer in a simulated penalty-shootout is confused when the AI goalkeeper enacts an ‘adversarial policy’: falling to the floor (right).Credit: Adam Gleave/Ref. 9

Knowing where a DNN’s weak spots are could even let a hacker take over a powerful AI. One example of that came last year, when a team from Google showed that it was possible to use adversarial examples not only to force a DNN to make specific mistakes, but also to reprogram it entirely — effectively repurposing an AI trained on one task to do another3.

Many neural networks, such as those that learn to understand language, can, in principle, be used to encode any other computer program. “In theory, you can turn a chatbot into whatever programme you want,” says Clune. “This is where the mind starts to boggle.” He imagines a situation in the near future in which hackers could hijack neural nets in the cloud to run their own spambot-dodging algorithms.

For computer scientist Dawn Song at the University of California, Berkeley, DNNs are like sitting ducks. “There are so many different ways that you can attack a system,” she says. “And defence is very, very difficult.”

With great power comes great fragility
DNNs are powerful because their many layers mean they can pick up on patterns in many different features of an input when attempting to classify it. An AI trained to recognize aircraft might find that features such as patches of colour, texture or background are just as strong predictors as the things that we would consider salient, such as wings. But this also means that a very small change in the input can tip it over into what the AI considers an apparently different state.

One answer is simply to throw more data at the AI; in particular, to repeatedly expose the AI to problematic cases and correct its errors. In this form of ‘adversarial training’, as one network learns to identify objects, a second tries to change the first network’s inputs so that it makes mistakes. In this way, adversarial examples become part of a DNN’s training data.

Hendrycks and his colleagues have suggested quantifying a DNN’s robustness against making errors by testing how it performs against a large range of adversarial examples. However, training a network to withstand one kind of attack could weaken it against others, they say. And researchers led by Pushmeet Kohli at Google DeepMind in London are trying to inoculate DNNs against making mistakes. Many adversarial attacks work by making tiny tweaks to the component parts of an input — such as subtly altering the colour of pixels in an image — until this tips a DNN over into a misclassification. Kohli’s team has suggested that a robust DNN should not change its output as a result of small changes in its input, and that this property might be mathematically incorporated into the network, constraining how it learns.

For the moment, however, no one has a fix on the overall problem of brittle AIs. The root of the issue, says Bengio, is that DNNs don’t have a good model of how to pick out what matters. When an AI sees a doctored image of a lion as a library, a person still sees a lion because they have a mental model of the animal that rests on a set of high-level features — ears, a tail, a mane and so on — that lets them abstract away from low-level arbitrary or incidental details. “We know from prior experience which features are the salient ones,” says Bengio. “And that comes from a deep understanding of the structure of the world.”

One attempt to address this is to combine DNNs with symbolic AI, which was the dominant paradigm in AI before machine learning. With symbolic AI, machines reasoned using hard-coded rules about how the world worked, such as that it contains discrete objects and that they are related to one another in various ways. Some researchers, such as psychologist Gary Marcus at New York University, say hybrid AI models are the way forward. “Deep learning is so useful in the short term that people have lost sight of the long term,” says Marcus, who is a long-time critic of the current deep-learning approach. In May, he co-founded a start-up called Robust AI in Palo Alto, California, which aims to mix deep learning with rule-based AI techniques to develop robots that can operate safely alongside people. Exactly what the company is working on remains under wraps.

Even if rules can be embedded into DNNs, they are still only as good as the data they learn from. Bengio says that AI agents need to learn in richer environments that they can explore. For example, most computer-vision systems fail to recognize that a can of beer is cylindrical because they were trained on data sets of 2D images. That is why Nguyen and colleagues found it so easy to fool DNNs by presenting familiar objects from different perspectives. Learning in a 3D environment — real or simulated — will help.

But the way AIs do their learning also needs to change. “Learning about causality needs to be done by agents that do things in the world, that can experiment and explore,” says Bengio. Another deep-learning pioneer, Jürgen Schmidhuber at the Dalle Molle Institute for Artificial Intelligence Research in Manno, Switzerland, thinks along similar lines. Pattern recognition is extremely powerful, he says — good enough to have made companies such as Alibaba, Tencent, Amazon, Facebook and Google the most valuable in the world. “But there’s a much bigger wave coming,” he says. “And this will be about machines that manipulate the world and create their own data through their own actions.”

In a sense, AIs that use reinforcement learning to beat computer games are doing this already in artificial environments: by trial and error, they manipulate pixels on screen in allowed ways until they reach a goal. But real environments are much richer than the simulated or curated data sets on which most DNNs train today.

Robots that improvise
In a laboratory at the University of California, Berkeley, a robot arm rummages through clutter. It picks up a red bowl and uses it to nudge a blue oven glove a couple of centimetres to the right. It drops the bowl and picks up an empty plastic spray bottle. Then it explores the heft and shape of a paperback book. Over several days of non-stop sifting, the robot starts to get a feel for these alien objects and what it can do with them.

The robot arm is using deep learning to teach itself to use tools. Given a tray of objects, it picks up and looks at each in turn, seeing what happens when it moves them around and knocks one object into another.

Collection of clips of robots improvising with tools
Robots use deep learning to explore how to use 3D tools.Credit: Annie Xie

When researchers give the robot a goal — for instance, presenting it with an image of a nearly empty tray and specifying that the robot arrange objects to match that state — it improvises, and can work with objects it has not seen before, such as using a sponge to wipe objects off a table. It also figured out that clearing up using a plastic water bottle to knock objects out of the way is quicker than picking up those objects directly. “Compared to other machine-learning techniques, the generality of what it can accomplish continues to impress me,” says Chelsea Finn, who worked at the Berkeley lab and is now continuing that research at Stanford University in California.

This kind of learning gives an AI a much richer understanding of objects and the world in general, says Finn. If you had seen a water bottle or a sponge only in photographs, you might be able to recognize them in other images. But you would not really understand what they were or what they could be used for. “Your understanding of the world would be much shallower than if you could actually interact with them,” she says.

But this learning is a slow process. In a simulated environment, an AI can rattle through examples at lightning speed. In 2017, AlphaZero, the latest version of DeepMind’s self-taught game-playing software, was trained to become a superhuman player of Go, then chess and then shogi (a form of Japanese chess) in just over a day. In that time, it played more than 20 million training games of each event.

AI robots can’t learn this quickly. Almost all major results in deep learning have relied heavily on large amounts of data, says Jeff Mahler, co-founder of Ambidextrous, an AI and robotics company in Berkeley, California. “Collecting tens of millions of data points would cost years of continuous execution time on a single robot.” What’s more, the data might not be reliable, because the calibration of sensors can change over time and hardware can degrade.

Because of this, most robotics work that involves deep learning still uses simulated environments to speed up the training. “What you can learn depends on how good the simulators are,” says David Kent, a PhD student in robotics at the Georgia Institute of Technology in Atlanta. Simulators are improving all the time, and researchers are getting better at transferring lessons learnt in virtual worlds over to the real. Such simulations are still no match for real-world complexities, however.

Finn argues that learning using robots is ultimately easier to scale up than learning with artificial data. Her tool-using robot took a few days to learn a relatively simple task, but it did not require heavy monitoring. “You just run the robot and just kind of check in with it every once in a while,” she says. She imagines one day having lots of robots out in the world left to their own devices, learning around the clock. This should be possible — after all, this is how people gain an understanding of the world. “A baby doesn’t learn by downloading data from Facebook,” says Schmidhuber.

Learning from less data
A baby can also recognize new examples from just a few data points: even if they have never seen a giraffe before, they can still learn to spot one after seeing it once or twice. Part of the reason this works so quickly is because the baby has seen many other living things, if not giraffes, so is already familiar with their salient features.

A catch-all term for granting these kinds of abilities to AIs is transfer learning: the idea being to transfer the knowledge gained from previous rounds of training to another task. One way to do this is to reuse all or part of a pre-trained network as the starting point when training for a new task. For example, reusing parts of a DNN that has already been trained to identify one type of animal — such as those layers that recognize basic body shape — could give a new network the edge when learning to identify a giraffe.

An extreme form of transfer learning aims to train a new network by showing it just a handful of examples, and sometimes only one. Known as one-shot or few-shot learning, this relies heavily on pre-trained DNNs. Imagine you want to build a facial-recognition system that identifies people in a criminal database. A quick way is to use a DNN that has already seen millions of faces (not necessarily those in the database) so that it has a good idea of salient features, such as the shapes of noses and jaws. Now, when the network looks at just one instance of a new face, it can extract a useful feature set from that image. It can then compare how similar that feature set is to those of single images in the criminal database, and find the closest match.

Having a pre-trained memory of this kind can help AIs to recognize new examples without needing to see lots of patterns, which could speed up learning with robots. But such DNNs might still be at a loss when confronted with anything too far from their experience. It’s still not clear how much these networks can generalize.

Even the most successful AI systems such as DeepMind’s AlphaZero have an extremely narrow sphere of expertise. AlphaZero’s algorithm can be trained to play both Go and chess, but not both at once. Retraining a model’s connections and responses so that it can win at chess resets any previous experience it had of Go. “If you think about it from the perspective of a human, this is kind of ridiculous,” says Finn. People don’t forget what they’ve learnt so easily.

Learning how to learn
AlphaZero’s success at playing games wasn’t just down to effective reinforcement learning, but also to an algorithm that helped it (using a variant of a technique called Monte Carlo tree search) to narrow down its choices from the possible next steps10. In other words, the AI was guided in how best to learn from its environment. Chollet thinks that an important next step in AI will be to give DNNs the ability to write their own such algorithms, rather than using code provided by humans.

Supplementing basic pattern-matching with reasoning abilities would make AIs better at dealing with inputs beyond their comfort zone, he argues. Computer scientists have for years studied program synthesis, in which a computer generates code automatically. Combining that field with deep learning could lead to systems with DNNs that are much closer to the abstract mental models that humans use, Chollet thinks.

In robotics, for instance, computer scientist Kristen Grauman at Facebook AI Research in Menlo Park, California, and the University of Texas at Austin is teaching robots how best to explore new environments for themselves. This can involve picking in which directions to look when presented with new scenes, for instance, and which way to manipulate an object to best understand its shape or purpose. The idea is to get the AI to predict which new viewpoint or angle will give it the most useful new data to learn from.

Researchers in the field say they are making progress in fixing deep learning’s flaws, but acknowledge that they’re still groping for new techniques to make the process less brittle. There is not much theory behind deep learning, says Song. “If something doesn’t work, it’s difficult to figure out why,” she says. “The whole field is still very empirical. You just have to try things.”

For the moment, although scientists recognize the brittleness of DNNs and their reliance on large amounts of data, most say that the technique is here to stay. The realization this decade that neural networks — allied with enormous computing resources — can be trained to recognize patterns so well remains a revelation. “No one really has any idea how to better it,” says Clune.

Nature 574, 163-166 (2019)

doi: 10.1038/d41586-019-03013-5
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https://www.nature.com/articles/d41586-019-03013-5
http://www.asyura2.com/14/it12/msg/295.html

[国際27] [FT]バヌアツ、EUの懸念で「旅券販売」制度見直し 太平洋島しょ国への中国の巨額融資に警鐘 中国企業、ソロモンの島を75年賃借か 南太平洋、中国が侵食 防戦の米国は軍事拠点化を警戒
FT]バヌアツ、EUの懸念で「旅券販売」制度見直し
中国・台湾 南西ア・オセアニア ヨーロッパ FT
2019/10/23 23:00日本経済新聞 電子版

バヌアツが「パスポート販売」制度の見直しに乗り出している。大半が中国人の申請者に対して適切に審査をしていないことへの懸念が持ち上がり、欧州連合(EU)との査証(ビザ)免除の地位を失う恐れがあるからだ。

バヌアツは2016年に始めた市民権の付与制度で、2億ドル(約216億円)以上の歳入を得てきた。申請者の大半は中国人で、EUなど129カ国・地域にビザなし渡航できるパスポートを取得するのが狙いだ。



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2019/10/23 16:54


[FT]太平洋島しょ国への中国の巨額融資に警鐘
中国・台湾 南西ア・オセアニア FT
2019/10/23 16:54日本経済新聞 電子版
保存 共有その他
太平洋地域での中国の開発援助のあり方に警鐘を鳴らす報告書が出た。「一帯一路」構想に基づく同地域の弱小な島しょ国への巨額融資が「債務のワナ」にならないように、中国は開発援助の提供の仕方を抜本的に改革すべきだとしている。

オーストラリアのシンクタンク、ローウィー研究所が21日に発表した報告書では、現在中国は同地域に60億ドル(約6500億円)規模の巨額の貸し付けをしているが、このペースでの融資が当た…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51284770T21C19A0000000/?n_cid=SPTMG053


 



中国企業、ソロモンの島を75年賃借か 豪紙報道
2019/10/18 18:58更新

ソロモン・台湾断交の衝撃 旧日本軍なぞる中国[有料会員限定]
2019/9/19 11:30
James Stavridis 元米海軍大将。2009〜13年北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍最高司令官。米タフツ大フレッチャー法律外交大学院長を経て、カーライル・グループ所属。
中国の軍備増強 太平洋揺さぶる J・スタブリディ...[有料会員限定]
2019/10/19 2:00
米トランプ政権と中国の習政権は南太平洋で主導権争いを繰り広げている=ロイターロイター
南太平洋、中国が侵食 防戦の米国は軍事拠点化を警戒
2019/10/10 21:00
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[FT]EU首席交渉官、英離脱後の「関係再構築」...[有料会員限定]
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23日 17:43

[FT]グリーンボンドの累積発行額が1兆ドルを突破[有料会員限定]
FT
0:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51287610T21C19A0000000/


 

南太平洋、中国が侵食 防戦の米国は軍事拠点化を警戒
2019/10/10 21:00
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米トランプ政権と中国の習政権は南太平洋で主導権争いを繰り広げている=ロイター
 【ワシントン=永沢毅、北京=羽田野主】南太平洋を舞台に米国と中国の主導権争いが激しさを増している。中国が経済支援をテコに、島しょ国2カ国との国交を相次ぎ樹立し、台湾との断交につなげた。米国は中国による新たな軍事拠点の建設を警戒しながらも対応が後手に回っているのが実情。太平洋での米軍の優位が揺らぐ懸念が強まってきた。
【関連記事】
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中国共産党の機関紙の人民日報は10日付で、訪中したソロモン諸島のソガバレ首相と習近平(シー・ジンピン)国家主席が、にこやかに握手する写真を1面に大きく掲載した。ソロモンは9月に台湾と断交し、中国と国交を結んだばかり。習氏は北京で9日開いた会談で、ソロモンへの経済支援を表明し「中国と太平洋諸島が協力し合う『大家庭』にソロモンも加わってくれることを歓迎する」と話したという。
中国の動きで危機感を強める米国と台湾も動く。台湾の外交部(外務省)と、米国の対台湾窓口機関である米国在台協会は7日、台湾と外交関係を持つ南太平洋の4つの島しょ国への援助について協議する「太平洋対話」を台北で開いた。

https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXMZO5086796010102019FF2001-PB1-3.jpg?auto=format%2Ccompress&ch=Width%2CDPR&fit=max&ixlib=java-1.2.0&s=f11c431a04b12b883d18543a7c3ed1f1


「台湾と島しょ国の外交関係を支持する」。米国務省のオードカーク次官補代理はこう発言し、名指しを避けつつ、南太平洋での中国の影響力の広がりにクギを刺した。
太平洋対話は今回が初めての開催。台湾と外交関係を持つナウルやツバル、マーシャル諸島の駐台湾「大使」らが出席した。今春から調整を進めてきた米国は、台湾との外交関係の維持を働きかけてきたが、開催が迫った9月にキリバスとソロモン諸島が台湾との断交を相次いで決めた。中国との接近を食い止められず、米国はメンツを潰された形となった。
今年に入り、米国は中国の「一帯一路」への対抗策である「インド太平洋戦略」の一環で、南太平洋の島しょ国への関与を強めつつあった。8月にはポンペオ国務長官が現職としては初めてミクロネシアを訪れ、マーシャル諸島、パラオを含む3カ国の首脳と会談した。災害支援などを含め経済・防衛協力の強化を確認した。国防総省も6月にまとめたインド太平洋戦略の報告書で、島しょ国との連携強化を柱の一つに据えて「各国との関係を再活性化させる」と打ち出したばかりだった。ただ、ソロモンやキリバスの動きはこの地域での米国の影響力低下を印象づけた。
米国が警戒を強める理由は、南太平洋に中国が本格的な軍事進出をうかがっているためだ。「軍隊の建設や防御能力の向上を助ける」。7月に中国が発表した国防白書には、南太平洋の島しょ国と軍事交流を進める方針を明記した。
オーストラリアの北東に位置するソロモンは、米国と豪州を結ぶシーレーン(海上交通路)の要衝に位置する。キリバスの東端にあるクリスマス島は米インド太平洋軍が本拠を置くハワイの南方にある。ソロモンとキリバスでは中国の援助による軍港の建設が取り沙汰されている。両国との軍事的な連携が進めば、中国本土から遠く離れた南太平洋で、中国人民解放軍の警戒監視や戦力投射能力が飛躍的に高まり、米軍の行動に制約を受けかねない。
南太平洋で台湾はなおツバルとパラオ、マーシャル、ナウルの4カ国と外交関係があるが、盤石とは言いがたい。「インフラ整備や開発で中国に比重を置くときだ」。現地メディアによると、パラオ議会では20年までに中国と国交を結ぶべきだとの意見が公然と語られているという。
中国は17年からパラオへの観光ツアーを禁じ、圧力を強めている。米国はパラオへの財政支援と引き換えに有事の際に米軍が土地を使える盟約を結んでいるだけに、台湾と断交した場合の影響は大きい。これらの島国の動向が太平洋での米中のパワーバランスを左右しつつある。
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習主席、ソロモンに経済支援表明 北京で首脳会談
2019/10/9 18:47

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2019/9/21 20:40

キリバスも台湾断交、中国と国交へ ソロモンから連鎖
2019/9/20 16:33

中国、南太平洋で影響力 台湾断交のソロモンと国交へ
2019/9/17 19:45
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50864770Q9A011C1FF2000/?n_cid=SPTMG053

http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/587.html

[経世済民133] 日銀動かす世界成長3%ライン 過去3度は政策転換 世界成長率3.0%に減速 IMF、貿易戦争で予測下げ 世界の銀行過半数、景気下降局面への準備できていない キャタピラー、見通し引き下げ−世界的な景気減速が需要の重
日銀動かす世界成長3%ライン 過去3度は政策転換
経済
2019/10/23 11:15日本経済新聞 電子版
国際通貨基金(IMF)が2019年の世界経済の成長率見通しを3.0%に引き下げたことに、日銀が神経をとがらせている。1990年後半以降、世界の成長率が3%を下回ったのはリーマン・ショックなど経済危機時の3度だけ。いずれも日銀に金融政策の転換を迫る節目となった。長引く米中貿易摩擦などで世界景気の回復シナリオは後ろにずれ、日銀による追加緩和の検討材料となる可能性がある。

「3%を割り込む意味は大きい…

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米中の貿易戦争を受けて世界的に貿易や投資が減速している=APAP
世界成長率3.0%に減速 IMF、貿易戦争で予測...
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世界成長率3.0%に減速 IMF、貿易戦争で予測下げ
トランプ政権 貿易摩擦 経済 中国・台湾 ヨーロッパ 北米
2019/10/15 22:00
米中の貿易戦争を受けて世界的に貿易や投資が減速している=AP

【ワシントン=河浪武史】国際通貨基金(IMF)は15日改定した世界経済見通し(WEO)で2019年の成長率を3.0%と予測し、7月時点から0.2ポイント下方修正した。米中の貿易戦争を受けて世界的に貿易や投資が減速しており、金融危機直後だった09年以来、10年ぶりの低い伸び率となる。中国は20年の成長率が30年ぶりに6%台を割り込むと予測した。

IMFは四半期ごとにWEOを改定している。下方修正は5期連続だ。世界経済は3%成長が好不況の境目とされる。IMFは「世界全体の90%の国・地域で経済が減速している」と指摘した。20年の実質経済成長率は3.4%に持ち直すと見込んだが、7月時点の予測と比べ0.1ポイント引き下げた。

世界景気が急減速する最大の要因は米中の貿易戦争で、19年の世界の貿易量の伸びは前年比で1.1%にとどまりそうだ。18年(3.6%増)から急ブレーキがかかる。米国は中国製品の制裁関税を積み増す可能性があり、IMFは「経済見通しのリスクは下方に傾いている」と警告した。

中国の成長率見通しは、19年が6.1%、20年は5.8%にいずれも下方修正した。18年の6.6%から減速し、天安門事件の直後だった1990年(3.9%)以来の低さにとどまる。金融緩和や財政刺激策で景気の失速を回避すると見込むものの、IMFは「企業と家計の債務は急増している」と金融面での不均衡にも警鐘をならした。

貿易戦争を仕掛けた米国も、19年の成長率見通しは2.4%と7月時点から0.2ポイント下方修正した。企業投資などが弱含み、18年の2.9%成長から減速しそうだ。20年の成長率見通しは、米連邦準備理事会(FRB)の利下げや連邦政府の歳出拡大で0.2ポイント上方修正したものの、潜在成長率並みの2.1%にとどまりそうだ。

日本は19年が0.9%、20年は0.5%と予測をほとんど修正しなかった。19年中は消費税増税の影響を需要喚起策でカバーするが、20年は家計支出が鈍化すると予測した。成長率の停滞は中期的に続きそうで、24年時点の伸び率も0.5%にとどまると見込んだ。

ユーロ圏も輸出依存度の高いドイツは19年の成長率が0.5%、20年も1.2%にとどまる見通しだ。英国も1%台前半の低い成長率を予測するが、欧州連合(EU)離脱の動き次第では下振れが避けられない。

新興国も軒並み下方修正となり、インドの19年の成長率見通しは0.9ポイントも引き下げられた。自動車販売などの個人消費に急ブレーキがかかり、大手ノンバンクが経営破綻するなど、金融面でも資金供給が収縮している。メキシコも緊縮財政の影響で景気後退の瀬戸際にあり、各国・地域とも政策のミスマッチが目立つ。

日米欧と中国など20カ国・地域(G20)は17日から2日間の日程で財務相・中央銀行総裁会議を開く。「世界同時減速」から抜け出すための政策協調を求められるが、米国は中国だけでなく欧州連合(EU)とも航空機の補助金を巡って関税合戦の瀬戸際にある。政治リスクの解消すらできないG20に国際的な政策協調はのぞめない。

FRBや欧州中央銀行(ECB)は金融緩和に打って出たが、金利政策や量的緩和の拡大余地は極めて小さい。ドイツなど一部の国は財政拡張の可能性があるものの、日本などは国家債務の積み上がりも深刻だ。金融危機後の10年間で政策余地を十分に取り戻せないまま、世界景気は「不況」の瀬戸際に立つ。

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世界の銀行過半数、景気下降局面への準備できていない−マッキンゼー
Hannah Levitt
2019年10月23日 1:17 JST
世界の銀行の半数以上は景気下降局面で生き残るには既に脆弱(ぜいじゃく)だと、コンサルティング会社マッキンゼーが調査で指摘した。

  マッキンゼーは21日公表した銀行業界に関する年次報告で、世界の銀行の過半数はコスト上昇に株主資本利益率(ROE)の伸びが追いつかず、経済的に存続可能ではないかもしれないと警告。予期される景気下降局面が訪れる前に、技術開発や業務のアウトソーシング、合併を通じた強化などの措置をとるよう呼び掛けた。

  マッキンゼーのシニアパートナー、カウシク・ラジゴパル氏はインタビューで「現在は景気循環の後期にいると、弊社は考えている。銀行の現状はあまり良くない。このため今すぐに、大胆な動きに踏み切る必要がある」と促し、「景気循環の後期では、どの銀行も現状に満足して安穏としてはいられない」と続けた。

  マッキンゼーによると、IT予算のうちイノベーションに充てられている割合は銀行が35%なのに対し、フィンテック企業は70%以上に達する。銀行業への参入障壁が低くなった規制面の要因と合わせ、新規参入企業が従来の銀行から市場シェアを奪っていく流れになりつつあることにも触れた。

原題:Banks Must Act Now or Risk Becoming a ‘Footnote’: McKinsey (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-22/PZRRPJT1UM1001


 

キャタピラー、見通し引き下げ−世界的な景気減速が需要の重し
Joe Deaux、Luzi-Ann Javier
2019年10月23日 21:18 JST
7−9月期は四半期ベースで2016年以来の減益に
1株当たり利益は2.66ドルと、アナリスト予想下回る
鉱業・建設機械メーカーの米キャタピラーは23日、利益予想を引き下げた。同社の7−9月(第3四半期)決算は約3年ぶりの減益となり、主力である建機販売を押し下げた世界的な景気減速に対する懸念は一段と深まった。

  7−9月の売上高は前年同期比5.2%減。10−12月期の需要は横ばいと見込む。

  利益見通しからは、7月時点で同社が警戒していたアジア地域の不振が悪化したことが示唆された。

  7−9月期の1株当たり利益は2.66ドルと、アナリスト予想平均の2.87ドルを下回った。売上高は128億ドル(約1兆3900億円)と、前年同期の135億ドルから減少した。

関連記事:キャタピラー:通期調整後1株利益予想を下方修正、市場予想下回る  
  

原題:
Caterpillar Cuts Outlook as Slow Global Growth Hampers Demand(抜粋)
Caterpillar Blames Global Economic Uncertainty for Sales Diphttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-23/PZTRART0AFBD01

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/467.html

[国際27] ロシア軍、シリア・トルコ国境で巡視開始 クルド自治の夢遠のく 米・トランプ氏トルコへの制裁解除 シリアへの攻撃停止で 油田地帯を守るために、シリア国内に小規模な部隊を残留
ロシア軍、シリア・トルコ国境で巡視開始 クルド自治の夢遠のく
2019年10月24日 5:37 発信地:カミシリ/シリア [ シリア トルコ 中東・北アフリカ ロシア ロシア・CIS ]

シリア北東部コバニに向け進むロシア軍の部隊(2019年10月23日撮影)。(c)AFP

ロシアとトルコが、クルド人勢力の撤退対象地域として合意したシリア北東部の「安全地帯」を示した図。紫はトルコが作戦開始時に掌握し支配下に置いた地域。青はクルド人撤退とロシア軍部隊などによる巡視の対象地域。黄色はクルド人撤退の対象地域。(c)SOPHIE RAMIS, GAL ROMA, PATRICIO ARANA / AFP


シリア北部の対トルコ国境沿いにあるクルド人の町タルアブヤド内を巡回するトルコ軍兵士(2019年10月23日撮影)。(c)Bakr ALKASEM / AFP
シリア北部の対トルコ国境沿いにあるクルド人の町タルアブヤドで、トルコ側につく戦闘員が乗る軍用車両を見る子どもたち(2019年10月23日撮影)。(c)Zein Al RIFAI / AFP
シリア・カミシリで、トルコのシリア侵攻に抗議するデモが行われる中、警備に当たるクルド人部隊の隊員(2019年10月23日撮影)。(c)Delil SOULEIMAN / AFP
シリア・カミシリで、トルコのシリア侵攻に抗議するデモを行うクルド人たち(2019年10月23日撮影)。(c)Delil SOULEIMAN / AFP
シリア北東部コバニに入ったロシア軍の部隊(2019年10月23日撮影)。(c)AFP

【10月24日 AFP】ロシア軍は23日、シリアの対トルコ国境付近で巡視活動を開始した。ロシア国防省が明らかにした。巡視活動はロシアとトルコが交わした合意に基づくクルド人勢力撤収の監督が目的。少数民族のクルド人は撤収により、主要拠点地域を失うことになる。

 ロシアとトルコが22日にロシア・ソチ(Sochi)で交わした合意により、かつてはシリア国土の3分の1近くを支配下に置いていたクルド人勢力はほぼすべてを失った。

 合意では、トルコ軍が2週間にわたる作戦で主要標的としていた国境付近のアラブ圏地域に引き続き全面展開することが決まった。また、クルド人勢力は全長440キロにおよぶ国境から30キロ離れた地点までの撤退を求められている。クルド人は拠点としていた主要都市の一部を引き渡すことを余儀なくされ、自治実現の夢もついえることになる。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」掃討作戦で主要な同盟勢力だったクルド人勢力を裏切ったとして批判を受けている。

 トルコが今月9日に開始した軍事作戦は、国境沿いに配備されていた米軍の撤退により可能となった。米軍部隊は、トルコとクルド人民兵組織「シリア民主軍(SDF)」の衝突を抑止する役割を果たしていた。

 クルド人支配地域の事実上の首都であるカミシリ(Qamishli)では23日、住民らが怒りのデモを行った。同市はロシア・トルコ間の合意の対象外となっている。

 地元当局者は「この合意は外国に利するものであり、人民に利するものではない」と指摘。「トルコの目的はクルド人を殺し、退去させ、占領することだ」と語った。(c)AFP/Delil Souleiman
https://www.afpbb.com/articles/-/3251053


 


米・トランプ氏トルコへの制裁解除 シリアへの攻撃停止で
カテゴリ:ワールド
2019年10月24日 木曜 午後1:11
アメリカのトランプ大統領は23日、シリアでの停戦を受けて、トルコへの制裁を解除すると表明した。

トランプ大統領は、「今月14日に科したトルコへの制裁を、すべて解除するよう指示した」と述べた。

トランプ大統領は23日、演説で「トルコが、シリア北部でのクルド人勢力への攻撃を停止し、停戦を恒久的なものにすると伝えてきた」と説明し、トルコへの制裁を解除すると発表した。

トランプ大統領はその際、「アメリカによって生み出された成果だ」と強調していて、一連の対応で、国内から上がっていた批判をかわす狙いがあるとみられる。

一方、油田地帯を守るために、シリア国内に小規模な部隊を残留させる考えも明らかにした。
https://www.fnn.jp/posts/00426116CX/201910241311_CX_CX

 

シリア北部にロシアの部隊が展開
2019年10月24日 7時22分

トルコのシリア北部でのクルド人勢力に対する軍事作戦をめぐって、国境地帯からのクルド人勢力の排除でトルコと合意したロシアの部隊が展開を始めました。これに対しクルド人勢力は、アメリカのトランプ大統領から支援の約束を取り付けたと強調して、トルコやロシアの動きをけん制しました。

トルコは、シリア北部での軍事作戦をめぐって、アメリカとクルド人勢力の撤退を条件に作戦の停止に合意し、22日にはエルドアン大統領がロシアのプーチン大統領と会談し、国境地帯からのクルド人勢力の排除で合意しました。

合意では、クルド人勢力が撤退した国境の東部のおよそ120キロの範囲はトルコ軍の作戦地域として維持し、そのほかの国境地帯にはロシアとシリアのアサド政権の部隊が展開してクルド人勢力を撤退させるとしています。

現地からの報道によりますと、これを受けて23日、ロシアの憲兵隊がクルド人が多く住むシリア側の国境の町、アイン・アルアラブに到着して展開を始めたということです。

これに対しクルド人勢力主体の部隊「シリア民主軍」は23日、声明を発表し、マズルム司令官がアメリカのトランプ大統領と電話で会談して支援の約束を取り付けたと強調しました。

クルド人勢力は当初、アメリカがトルコの軍事作戦を黙認したとして反発を強めていましたが、トルコとロシアの連携を受けて再びアメリカとの協力関係を強調することでけん制した形です。

しかしアメリカはすでにシリア北部から部隊の撤退を決めていて、この空白を埋めるようにロシアが部隊の展開を始めたことで、ロシアの影響力がさらに強まっています。

米特別代表「シリア武装勢力が無差別殺害の可能性」
一方、アメリカ国務省でシリアを担当するジェフリー特別代表は23日、議会下院の公聴会で、今回の軍事作戦でトルコと連携したシリアの武装勢力がクルド人を無差別に殺害する戦争犯罪を犯した可能性があると証言しました。

それによりますと、クルド人の市民団体の女性が殺害されたほか、無抵抗の数人が腕をしばられたまま武装勢力に殺害されたという情報があり、アメリカ政府として調査を始めたということです。

ジェフリー氏は、「トルコ政府に直ちに問い合わせ、最も高いレベルでの説明を求めた。アメリカはこの件を見過ごさない」と述べ、トルコに徹底した調査を求めるとしています。

トランプ大統領はトルコが軍事作戦を恒久的に停止したとして成果を強調していますが、議会ではトランプ政権がクルド人勢力を裏切ったという批判は収まっていません。
クルド人男性 UNHCR前で焼身自殺図る
一方、各国のメディアは23日、スイスのジュネーブにあるUNHCR=国連難民高等弁務官事務所の前で30代のクルド人の男性がみずからガソリンをかぶって焼身自殺を図ったと伝えました。

報道によりますと、男性はシリアから逃れてきた難民とみられ、炎に包まれながら事務所の建物に入ろうとしましたが、警備員によって制止されたということで、現在は病院で治療を受けていますが、話をできる状態にないということです。

動機は明らかになっていませんが、地元の警察は政治的な意図があった可能性があるという見方を示しているということです。

男性が自殺を図った日の前日にはトルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領が国境地帯からのクルド人勢力の排除で合意したと伝えられていました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191024/k10012146171000.html?utm_int=detail_contents_news-related_001


トルコ軍 シリア作戦停戦に移行 クルド人勢力の撤退の動き確認
2019年10月24日 21時58分

トルコ軍は、シリア北部で行ってきた作戦について、クルド人勢力の撤退の動きが確認されたとして、恒久的な停戦に移行しました。シリア北部ではトルコと合意したロシアも、クルド人勢力の撤退を進めるため部隊の展開を始めていて、クルド人勢力は対話を求める姿勢を示しました。

トルコは国境地帯からクルド人勢力を排除するためとして、今月9日から隣接するシリア北部で軍事作戦に乗り出しましたが、17日にはアメリカと、また22日にはロシアと、クルド人勢力を撤退させることで相次いで合意しました。

トルコのアカル国防相は23日、国境沿いのシリアの町、テルアビヤドとラス・アルアインに、クルド人勢力の戦闘員は残っていないという情報をアメリカからも確認できたとして、「さらに作戦を行う必要はない」と述べました。

また、アメリカのトランプ大統領は「トルコ政府から『シリアでの攻撃を停止し停戦を恒久的なものとする』という連絡があった」と演説し、トルコに対する制裁を解除すると発表しました。

一方、ロシアはトルコとの合意に基づき、国境から30キロの幅にわたって、シリアのアサド政権と合同でクルド人勢力を撤退させることになっていて、すでに部隊を展開し始めています。

クルド人勢力は23日、声明を出し、ロシアとトルコの合意内容の一部について不満を表明し、ロシアに対し対話を求める姿勢を示しました。

クルド人勢力側「議論と対話が必要」
クルド人勢力は23日、声明を出し、ロシアとトルコが前日に行った首脳会談で合意した内容をめぐり、クルド人勢力主体の部隊「シリア民主軍」のマズルム司令官がロシアのショイグ国防相とテレビ電話で会談したことを明らかにしました。

この中でマズルム司令官は、ロシアのプーチン大統領に対し、戦いを鎮め、市民に被害が及ばないようにしたとして感謝の意を示しました。

そのうえで、合意内容の一部については慎重な姿勢を示し、ロシアとクルド側の意見の違いを埋めるため、議論と対話が必要だと伝えたということです。

合意のどの部分について対話を求めたのかは明らかにしていません。

これに先立ってクルド人勢力は、トルコの軍事作戦を黙認したとして、いったんは反発したアメリカに対し再び協力関係を強調しました。

影響力をもつ米ロ双方とともに良好な関係にあることをアピールして、トルコからの圧力を回避したいねらいがあるとみられます。
あわせて読みたい
シリア北部にロシアの部隊が展開7時22分
トランプ大統領 トルコへの制裁解除発表 シリアでの攻撃停止で1時09分
シリア北部 ロシアなどが部隊を展開 クルド人勢力に撤退促す10月23日 20時32分
トルコ クルド人勢力への新たな軍事作戦停止 ロシア協力受け10月23日 10時39分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191024/k10012147381000.html
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/590.html

[国際27] 解決見えないロヒンギャの現場 大流出から2年の今を見た 劣悪な環境 生活は変わらず、苛立ちは募るばかり
解決見えないロヒンギャの現場 大流出から2年の今を見た

2019/10/24

龍神孝介 (フォトジャーナリスト)

 2019年8月25日。バングラデシュの南東部にあるクトゥパロン難民キャンプ。午前9時から何かが起こるという情報を聞きつけた私はホテルを出発し現場へと向かった。世界最長の天然ビーチを持ち、新婚旅行のカップルや家族連れで賑わうバングラデシュ随一の観光地コックスバザールから車でおよそ1時間。目的地に近づくにつれ人が湧き出るように増えていく。うだるような暑さの中広場には数十万人の人が集まり異様な雰囲気で始まりを待っていた。


バングラデシュの難民キャンプでは、大流出から2年が経過しても何も変わらない状況に数十万人のロヒンギャが声を上げた(筆者撮影、以下同)
 ミャンマー政府による弾圧でラカイン州から逃れたイスラム系少数民族ロヒンギャたちが弾圧による大流出から2年が経過しても、帰還の目処が立たない苛立ちと母国の改善されない人権状況に対して抗議の声を上げていた。2年前の弾圧時に軍に10歳の息子が銃殺された40代の女性は「ここは食料が不足している。早く故郷に戻りたい」と語る。また少年(13歳)は「食糧が不足しているしキャンプは汚い。一日中何もすることが無く故郷のことをいつも考えている。以前のように学校に通いたい」と訴える。

 ロヒンギャの一部過激派が警察施設を襲撃したことが発端とされる軍を主体とする報復活動は、民族浄化と言っても過言ではないほどの凄惨さを極め、70万人以上のロヒンギャが隣国バングラデシュに逃れてきた。ほとんどが家族や親戚を殺されたり家を焼き討ちにされたりし、命からがら何日もかけて国境を越えて来た。また多くの女性が性的暴力やレイプされるなど非人道的な行為を受けたと報告されている。「食料もお金もいらないから武器をくれ。奴らに仕返しに行くんだ」とある青年は怒りをぶつける。

 犠牲者の数は少なくとも1万人、最大で2万5千人と推測される。ただ、ミャンマー政府が海外のメディアや調査機関の受け入れを制限しているため、被害の全容は未だ掴めない。

 私は2014年から毎年のようにロヒンギャ難民を記録している。「ミャンマーからやって来たロヒンギャという国籍を持たない民族が、国境沿いの難民キャンプに数十年にわたり暮らしている」。ロヒンギャを知ったきっかけは現地の友人から聞いた話だった。歴史、宗教、文化、人種、民族、言語などを起因とする衝突。ロヒンギャ難民は私たち人間が直面しているあらゆる課題を提起している。それはジャーナリストとして取り組まなければいけないテーマだと感じた。

 飛行機で首都ダッカに降り立ち、夜行バスに8時間乗り、車でさらに1時間ほどかけてようやく難民キャンプに辿り着いた。悪路をけたたましくクラクションを鳴らしながら、猛スピードで走るバスに揺られ私はほとんど眠ることが出来なかった。長旅の疲れで体の芯が重くなる中、初めてキャンプに足を踏み入れた時の衝撃は今でも忘れられない。

 過密な土地にゴミや汚水が散乱し、トイレや水道といったインフラは整っておらず、とても人間が住むのに適した状態とは言えなかった。そんな劣悪な環境下で数十万人が暮らしていた。現代においてこんなにも凄惨な体験をし、悲惨な暮らしを余儀なくされている人たちがいるのかと思い知らされた。それでも彼らは貧しいながらも身なりを整え、コーランを諳んじ毎日の礼拝を欠かさない。民族としてのアイデンティティに誇りを持ち、いつか故郷に帰る日を信じて気高く生きていた。


ロヒンギャ難民は、劣悪な環境での生活を余儀なくされている
「ここには仕事がない。家族はいつも空腹」
 広大な農地が広がり住んでる人もまばらで木々に覆われた丘陵地帯の、アジア象を含む豊富な野生動物が暮らす自然豊かな一帯。そうしたミャンマーとの国境近くにあるキャンプには、もともと過去にミャンマーから逃れてきたおよそ30万人のロヒンギャがいる。新たに流入した70万人を加えると100万人以上が暮らしていることになる。ごく一部のロヒンギャは国連が運営する公式キャンプで暮らしているが、残りの大多数が暮らすキャンプは劣悪な環境で食糧は慢性的に不足しており、水道やトイレなどのインフラも十分ではなく常に感染症などのリスクと隣り合わせだ。

 「ここには仕事が無い。家族全員がいつも空腹だ。米や油の援助はあるが鶏肉や魚は現金が無いと手に入らない。家は狭く雨が降るとすぐに壊れてしまう。故郷では広い土地と沢山の家畜を持っていたが全てを失った」と男性(42歳)は現在の生活を話す。彼らは就業が許可されておらず、現金収入は殆ど無い。違法に日雇い労働などをしてわずかな稼ぎを得る。キャンプでは人身売買やドラッグが蔓延するなど治安も安定しない。

 ミャンマーとバングラデシュの両国は難民の早期帰還開始に合意し、昨年11月と今年の8月に2度の帰還計画が実行された。しかし、これに応じるロヒンギャは誰もいなかった。「目の前で家族や親戚を殺された。家も焼かれ家畜も奪われ全てを失った。たとえ帰ったとしてもまた同じ目に会うのだろう」「母国での安全の保証や基本的権利が認められない限り帰るわけにはいかない」と多くの人が口にする。帰還計画は度重なる国際社会からの非難と国連での非難決議に対するミャンマー政府の単なるパフォーマンスに過ぎないとも言われている。両国は相手国の不備や不手際が原因だと責任の擦り付け合いをしている状態で計画は頓挫したままだ。

両国政府、そして日本の取り組みは
 ミャンマー政府は一貫してロヒンギャを国民として認めず、あくまでもバングラデシュからやってきた不法移民と見なし国籍を与えていない。政府は移動、就業、出生、結婚、教育、宗教の制限など様々な迫害を軍事政権発足以降数十年にわたり行ってきた。

 民主化の象徴であるアウン・サン・スーチー国家顧問に状況改善への期待が高まったものの、彼女には軍をコントロールする権利が憲法で認められていない。また大多数が仏教徒のミャンマー国民の間でも反ロヒンギャ感情が根強く、ロヒンギャをバングラデシュからの不法移民と見なし、自分たちの文化や土地が奪われると考えている。

 最近の調査では、大弾圧以降ロヒンギャが暮らしていた村は更地にされ、新たに軍や国境警備隊の施設、ミャンマー人のための住居が建設されたと報告されている。ミャンマー政府が本腰を入れてロヒンギャを帰還させる気があるのかは甚だ疑問である。

 一方の受け入れ国であるバングラデシュ政府も我慢強くロヒンギャを支援してきたが、それも限界にきている。アジア最貧国のひとつでもある同国は決して豊かではない。地元住民を差し置いてロヒンギャを積極的に支援することは出来ず多くの援助を国連、NGO、イスラム諸国に頼っている。政府はベンガル湾に浮かぶ無人島バシャンチャールに10万人を収容できる施設を建設し、ロヒンギャの移住を検討している。しかし同島は医療や教育へのアクセスが制限され、また頻発するサイクロンにより浸水、最悪の場合水没する可能性も有り安全が懸念されている。

 日本政府も河野前外務大臣がアウン・サン・スーチー国家顧問と会談し、早期の帰還に向けての協力を約束しており国連でのミャンマーへの非難決議に欧米諸国が賛成を表明する中、日本は全て棄権している。またロヒンギャという呼称も使わずあくまでラカイン州のイスラム教徒というミャンマーの立場に同調している。一方で2度にわたりロヒンギャ難民キャンプを視察しバングラデシュ政府に対し支援を強化する考えを示した。日本としては両親日国に対して独自の外交で解決への道を探り存在感をアピールしたいところだろうが、どちら側にも曖昧な日本の姿勢は決して歓迎はされているわけではない。私が出会ったあるロヒンギャの老女は「日本軍は昔、仏教徒と一緒に私たちロヒンギャをたくさん殺した。そして今でもミャンマーの味方をしている」と語った。


ロヒンギャの生活は変わらず、苛立ちは募るばかりだ
 大弾圧への公正な裁き、早期の帰還や母国での基本的な人権を求め続けていても、状況は一向に変わらずロヒンギャの苛立ちは募るばかりである。国連やNGOの援助でキャンプは整備されつつあるが、彼らの暮らしは貧しいままだ。トイレや炊事場は共同で電気はほとんど通っていない。火を起こすための薪を遠くの山まで取りに行かなければならない。

 またバングラデシュ政府は治安への不安から、キャンプ周辺での携帯電話のインフラを遮断した。自由に移動が出来ない彼らにとって唯一外の世界とつながる手段が絶たれたことにより疎外感や閉塞感が一層増している。行き場のないロヒンギャが過激な思想に陥ったりドラッグなどの犯罪行為に及ぶことも懸念される。

 最近では新たに流入したロヒンギャと過去にバングラデシュに逃れてきたロヒンギャ、地元住民との間に軋轢が生じてきており緊迫した状況が続いている。あらたに70万人ものロヒンギャが流入したことによる治安の悪化、物価の高騰、雇用の奪い合い、環境破壊といった問題がその背景にはある。

 歴史、宗教、文化、人種、国際関係など様々な要素が複雑に絡み合い、世界で最も迫害されている少数民族と言われているロヒンギャの行き先は未だ不透明である。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17708
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/591.html

[政治・選挙・NHK266] 元徴用工判決「明確に違反」安倍首相、日韓会談で批判 日韓首相「関係改善へ対話」李氏、大統領の親書手渡す 日韓バルブダンピング防止関税訴訟「両国勝利宣言」の謎

元徴用工判決「明確に違反」 安倍首相、日韓会談で批判
 

神谷毅、菊地直己 2019年10月24日18時11分

 
写真・図版韓国の李洛淵首相(左)との会談に臨む安倍晋三首相=2019年10月24日午前11時12分、首相官邸、岩下毅撮影
 
 安倍晋三首相は24日、韓国の李洛淵(イナギョン)首相と会談した。李氏は懸案の早期解決を呼びかける文在寅(ムンジェイン)大統領の親書を手渡したが、安倍氏は韓国大法院(最高裁)が日本企業に元徴用工らへの賠償を命じた判決について「国際法に明確に違反」と批判した。韓国側に改めて対応を要求しており、今回の会談が関係改善につながるかどうかは見通せない情勢だ。

日韓 相手の人生を見れば、共感できる 平野啓一郎さん
一番近い国、引っ越せないから 日韓議連の河村建夫氏
 会談は首相官邸で約20分間行われた。日本側によると、安倍氏は「日韓関係をこのまま放置してはいけないと考える」と言及。元徴用工訴訟の判決については日韓請求権協定に違反しているとの立場から、「国と国との約束を順守することにより、日韓関係を健全な関係に戻していくきっかけを作ってもらいたい」と述べ、対応を求めた。

 韓国政府高官によると、李氏は…
 
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日本語堪能、陛下にあいさつした韓国「首相」 影響力は
https://www.asahi.com/articles/ASMBS549XMBSUHBI01K.html

 

日韓首相、徴用工問題は平行線=安倍氏、判決は「国際法違反」−文大統領から親書
2019年10月24日18時13分
 
会談を前に韓国の李洛淵首相(左)と握手する安倍晋三首相=24日午前、首相官邸

 安倍晋三首相は24日、韓国の李洛淵首相と首相官邸で約20分間会談した。安倍氏は元徴用工をめぐる韓国最高裁判決を「国際法違反」と指摘し、1965年の日韓請求権協定に従い韓国側で解決を図るよう要求。李氏は、諸懸案の早期決着を呼び掛ける文在寅大統領の親書を手渡した。安倍、李両氏は悪化した日韓関係を改善する必要性では一致したものの、具体的な歩み寄りはなかった。
 安倍氏は徴用工判決について「国際法に明確に違反しており、日韓関係の法的基盤を根本から覆している」と批判。「国と国の約束を順守することで、日韓関係を健全な関係に戻すきっかけをつくってほしい」と求めた。
 これに対し、李氏は「韓国も日韓基本条約と請求権協定を尊重、順守している。これからもそうする」と反論。その上で「今回も両国が知恵を集め、難関を克服できると信じている」と語った。

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2019102400799&g=pol


日韓首相「関係改善へ対話」 李氏、大統領の親書手渡す

2019年10月24日 夕刊


会談を前に握手する韓国の李洛淵首相(左)と安倍首相=24日、首相官邸で

写真
 安倍晋三首相は二十四日午前、韓国の李洛淵(イナギョン)首相と、官邸で約二十分会談した。安倍首相は、元徴用工問題などにより悪化する日韓関係について「非常に厳しい状況だが、重要な関係をこのままにしてはいけない」と指摘。日韓請求権協定を念頭に「韓国には国と国との約束を順守することにより、健全な関係に戻していくきっかけをつくってもらいたい」と求めた。李氏は文在寅(ムンジェイン)大統領からの親書を安倍首相に手渡した。

 韓国メディアによると、文大統領からの親書では、「日本は北東アジアの平和のため協力する重要なパートナー」とし、「韓日両国の懸案が早期に解決されるよう努力しよう」とする内容が盛り込まれている。

 李氏との会談で安倍首相は、日韓が重要な隣国であることを強調した上で、関係改善に向けて外交当局間で意思疎通を続ける意向を伝えた。李氏は「対話の重要性について認識を共有する」と応じた。今回の会談は、安倍首相が天皇陛下の「即位礼正殿(せいでん)の儀」参列のため来日している来日中の各国要人らとの間で行う即位外交の一環。首相と李氏の会談は、昨年九月にロシア極東ウラジオストクで行って以来、約一年ぶり。

 安倍首相は、北朝鮮問題などへの対応で日韓、日米韓の連携が重要との考えも李氏に伝えた。韓国政府が撤回を求める日本の対韓輸出管理強化や、韓国による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)の破棄決定などについては、李氏から具体的な提案はなかったとみられる。両氏は、日韓関係の改善には国民間の交流が重要との認識で一致した。

 李氏は韓国政府ナンバー2で、韓国紙の東京特派員や韓日議員連盟の幹部などを務めた知日派として知られる。 (上野実輝彦)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201910/CK2019102402000261.html

 

日韓バルブダンピング防止関税訴訟「両国勝利宣言」の謎

WTO紛争の「勝った」、「負けた」とは?
2019/10/24

川瀬剛志 (上智大学法学部教授)

 ここのところ、WTO紛争に関する報道や政府発表が、日韓が関係するとどうも歪む気がしてならない。現下の険悪な両国関係の下ではそれも致し方ないのかもしれないが、2019年4月の福島県産水産物をめぐる日韓紛争の上級委員会判断について、政府が(おそらく意図的に)不正確な結果を公表した際は(朝日新聞2019年4月23日朝刊)、驚きを禁じ得なかった。対韓国輸出管理見直しについても、WTO訴訟の展望について一部マスコミではいささか信じがたい楽観論が展開されている。


(seolbin / gettyimages)
 そして、9月11日、韓国・空気圧バルブダンピング防止税事件のWTO上級委員会報告が公表され、また不思議なことが起きた。まず、当日の日本の新聞の見出しを見てみよう。

「WTO最終審、韓国に勝訴、日本製バルブ関税巡り」(日本経済新聞)

「韓国関税、WTOで日本勝訴、反ダンピング課税巡り 上級委」(朝日新聞)

 この点をより詳しく、世耕弘成経産相(当時)のコメントで確認したい。

「WTO上級委員会は、韓国による日本製空気圧バルブへのアンチダンピング課税をWTO不整合と判断。是正措置を求めました。日本側勝訴。

韓国製品と競合のない、高性能日本製バルブに恣意的にAD課税をした韓国の不当さが認められました。

韓国が誠実に是正を行わない場合、日本は対抗措置を取ることが可能。」

(世耕氏のツイッター、@SekoHiroshige、2019年9月11日より)

 これに対して韓国ではこう報じられている。

「日本製バルブ関税巡る通商紛争 韓国が大部分勝訴=WTO最終審」(聯合ニュース)

「韓国、日本と空気圧バルブWTO紛争の大部分で勝訴」(中央日報日本語版)

 これも韓国の担当閣僚である兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長のコメントでもう少し詳しく見てみよう。

「紛争の結果が出てから互いに勝訴を主張することは国際的によくあるが、今回の件で日本が勝訴を主張していることはやりすぎだと思う。日本が提起した13件の争点のうち10件については韓国が確実に勝った。2件は手続き面の事案だ。1件だけ適切に調整すればいいが、これをもって韓国の敗訴だというのは我田引水だ。」(聯合ニュース2019年9月11日より)

 読者の皆さんはこれらを読んでどう思われるだろうか。同じ判決を巡って同じ日に日韓両国が勝利宣言をしており、まるでパラレルワールドに迷い込んだかのようだ。これは一体どういうことなのだろうか。どちらかの政府が嘘をついているのだろうか。

今回の訴訟の争点「ダンピング防止税」とは?
 本件はダンピング防止税(「アンチダンピング税」、「反ダンピング税」などとも言う。以下「AD税」)に関する争いだ。WTO協定は加盟国による一方的な関税の引き上げを認めていないが、不当に安い価格での輸出(ダンピング)に対し、国内産業保護のために輸入国が特別に関税を課すことができる。これがAD税だ。AD税は、WTO協定の一部であるダンピング防止協定(以下「AD協定」)に定められた要件を満たしているかについて輸入国が十分に事実関係を調査した上で、課税できる。

 AD協定上、輸入国がAD税を課して国内産業を保護するには、輸入国の調査当局が以下の2点を証拠に基づき明らかにしなければならない。

@外国からの輸入がダンピングされていないか、されているとすればどの程度の値下げ幅か(ダンピングマージン)

Aその安売り輸入によって、輸入国内の競業他社に損害が引き起こされていないか(損害・因果関係)

 本件においては、韓国貿易委員会(KTC)がこの調査を行い、「日本から輸入される空気圧バルブがダンピングされている。その結果競争関係にある韓国製空気圧バルブが売れなくなり、国内産業が損害を受けているので、救済が必要」と勧告した。これに基づき、2015年1月20日に企画財政部が課税を決定し、我が国のSMC製品に11.66%、CKDおよび豊興工業製品に22.77%のAD税を課した。

日本の訴訟戦略と目的は?
 これに対してAD税で輸出減少を被る輸出国は、輸入国のAD税はこれらの条件を満たしていない課税である、とWTOに申し立てることができる。もしこれで輸出国が勝訴すると、AD税はどうなるのだろうか。

 今回日本はA、つまり損害・因果関係のAD協定違反だけを争っている。パネル・上級委員会は、Aの認定全体を否定せずに、認定に必要な条件や手順の一部だけを協定違反とする指摘を行うことがある。例えば、輸入品と国産品の競争関係を適切に評価していない、あるいは過剰設備投資や不況による需要減退といったダンピング以外の事情による国内産業への損害の可能性を見逃している、などだ。この場合、判断の履行は、調査当局が指摘した事項についてのみ再度調査を実施し、AD税課税の理由を示した調査報告書を書き直せばいい(「再調査」という)。

 Aの認定は程度問題ではなく、all or nothingなので、パネル・上級委員会の指摘が致命的でなく、単に部分的な違反なら、再調査しても結局は損害が認められ、AD税をかけ続けられる、という結論に落ち着く可能性はそれなりに高い。Aについては協定上データや証拠に支えられた調査当局の説明の合理性しか問われないので、説明の工夫で切り抜けられることが少なくないからだ。したがって、Aについての部分勝訴はだけでは意味がない場合がある。

 他方@、つまりダンピングマージンは程度問題なので、調査当局に生産コストや販売記録等の証拠の取り扱いや計算方法を見直させると、下がる可能性がある。AD税の税額・税率はダンピングマージンに応じて決まるので、再調査でダンピングマージンが下がれば、自国輸出に対するダメージを緩和できる。その意味で、@については部分勝訴でも十分に意味はある。

 それゆえ、Aのみで争うということは、調査当局の損害・因果関係認定の根拠が根本から揺らぐ結果をもたらす必要がある。これは何か致命的な論点で一つだけ勝つことでも達成できるだろうし、色々な角度から多数の違反を指摘することで、部分的な再計算や説明変更のパッチワークではとてもつじつま合わせができないようにする場合もある。特に後者の場合、稀なケースではあるが、パネルが再調査ではAD税を維持できないので撤廃するよう勧告することもあり、輸入国は再調査に持ち込めない。AD税には@、A双方が必要なので、Aを完全に否定されてしまえば、撤廃せざるを得ない。

 以上を踏まえると、Aだけ争った日本が所期の目的を達成するには、Aに関するKTCの認定をパネル・上級委員会に全否定させ、韓国のAD税を完全撤廃させる以外にない。この日本の戦略が無謀かと問われれば、本件パネル・上級委員会報告書で見るかぎり、やはりどうもKTCの調査はあまり出来が良くなく、また、日本の主張を下支えする上級委員会の判例も積み重なっており、十分に勝機はあった。そこに日本の戦略のミスはなかった。

予想外だったパネルの判断
 以上を踏まえて、本件の判断を見ると、日本はA、つまり損害と因果関係にについて請求を7つ提起したが(パネル設置要請書ベースで計算)、ここで予想外のことが起きる。パネルがこれらのうち3つの請求全体と、2つの請求のそれぞれ一部について、パネル設置要請書に十分な記載がないことを理由に検討を拒んだのである。

 あまり雑なこと言うと民事訴訟法に詳しい読者にお叱りを受けるが、パネル設置要請書はWTO紛争における「訴状」だと思えばよい。つまり、「貴国のこの通商措置がWTO協定のこの条文に違反するので、パネルに訴える」ということを、相手方およびWTOに通知する書面である。この書き込みがいい加減なら、裁判の被告に相当する側(被申立国)はどんな理由で訴えられたかわからず、自分の権利を適切に防御できない。だから、この書面にしっかり明記されていない請求については、パネルはそもそも判断してくれない(少し専門的に言えば、パネルの「付託事項外にある」とされる)。要は請求棄却でなく却下、平たく言えば「門前払い」ということになろう。

 加えて、残りの請求についても、日本が勝訴できたのはたった1つだけだった。ダンピングされた日本製空気圧バルブが韓国国内市場における空気圧バルブの価格にどのような影響を与えたかをきちんと分析しなかったので、韓国の因果関係分析に瑕疵を認める、という点だけである。

上級委員会は?
 当然日本はこの判断が不満なので上訴した。パネルの門前払いについても見直しを求め、上級委員会は日本の主張をほぼ全面的に認めた。つまり、パネルは設置要請書の読み方を誤っており、日本の請求を門前払いせずに審理すべきだった、とした。

 ここで普通の裁判であれば、上訴審が韓国の措置の協定違反の有無を判断(自判)するか、下級審で改めて事実認定をしてもらうために差戻すか、ということになる。しかし厄介なことに、WTOでは上級委員会は非常に限られた自判の権限しか持たず、差戻しもできない。上級委員会は法律審と言われ、パネルが行ったWTO協定の法解釈に誤りがあるかどうかしか検討できず、判断の全てを自分でやり直すことはできない。

 本件の場合、パネルは日本の請求の多くを門前払いしたので、それらの点については、KTCのAに関する調査・認定がどのようなものだったかの事実認定を行なっていない。上級委員会は自判しようにも協定を当てはめるための事実が明らかにされていないし、法律審なので改めて自ら事実認定を行うことも許されていない。よって、上級委員会は門前払いされた日本の請求について判断できなかった。その意味では、多少状況は違うが、冒頭でふれた福島県産水産物の事件と同じく、現行手続に差戻し手続がないことから、パネルのミスから生じる不利益を我が国が被ってしまった形になった。

 加えて、上級委員会はたった一点パネルで勝訴した因果関係の瑕疵についてもこれを覆し、日本の主張を退けた。パネルで日本の主張を認められなかった論点についても、上級委員会はパネルの判断を支持し、日本の主張を退けている。

 最終的に、日本はAに関する7つの請求について、たった1つしか勝訴できなかった。日本製品と韓国製品の価格の比較の手順が適切正確でなく、KTCが日本製品のダンピングが韓国製品の価格に与える効果をきちんと検討していない、という点(価格効果)のみ、上級委員会はパネルの門前払いを覆し、限られた権限の中で日本に有利な自判を行なった。

結局日本は勝ったの?負けたの?
 パネルの誤りに足を掬われる不運はあったにせよ、我が国はパネルが門前払いせずに審理した論点にも取りこぼしがあり、上訴で挽回するどころか、唯一勝てた因果関係分析の瑕疵に関するパネル判断も覆されてしまった。上訴では価格効果の認定に関する請求だけは辛うじて取れたが、この違反認定を「致命傷」として所期の目的どおり韓国のAD税を撤廃させられるのだろうか。

 この点を検討するために、政府の認識をもう少し詳しく確認しておきたい。経産省のプレスリリースによれば、唯一日本が勝訴した価格効果の請求について、上級委員会は次のように韓国の違反の理由を述べた、と説明している。

「(ア)日本製バルブは韓国産より高価・高機能であり、そもそも両者の価格が比較可能かどうか、適切な説明がない。

(イ)韓国産より高価な日本製品の輸入が、元々安い韓国製品の価格にさらに低下圧力をもたらすことの説明が不十分。」

 上級委員会報告書を精査すると、確かに(イ)は指摘されているが、(ア)が見当たらない。もう一点の指摘は、KTCが販売数(大口取引の場合は単価が下がる)を勘案せずに日韓製品の価格比較を行なった点であって、(ア)とは明らかに異なる。政府としては、グレードの違う日韓製品に競争関係はなく、仮にKTCが販売数を勘案して価格比較をやり直しても損害・因果関係認定はできないとだろうと踏んで、こう説明しても差し支えないと思っているのだろう。だから政府は「勝った」と説明するのだと推測する。

 しかし、繰り返すが上級委員会はこのような認定を明確に行なっておらず、グレードの違いから日韓製品が本当に比較できないかどうか、そしてその結果再説明が破綻しているかどうかは、別の話として後日改めて韓国の判断履行を確認するパネルで認定を要する。とりあえず韓国が求められているのは上級委員会の指摘事項(販売数量を勘案して日本製品による韓国国産品の価格への影響を検討すること)をクリアすることであって、その結果が政府の目論見どおり再調査不能に陥るかもしれない一方、うまく「作文」で逃げおおせてしまうかもしれない。繰り返すが、損害・因果関係だけで争ったということは、再調査を許さないところまで完勝する必要がある。それで言えば、そこまでは勝ちきれなかった、というべきだろう。このように見ると、冒頭の世耕前経産相の「勝利宣言」とは、実状はだいぶ異なる印象を受ける。

 他方、冒頭の兪通商交渉本部長の発言にも、言い過ぎのきらいはある。手続的論点を含めた13の請求のうち10で「確実に勝った」と言うが、そのうち損害・因果関係に関する7つの論点の多くは正しくは判断されなかったのであって、韓国の措置の協定適合性が認められたわけではない。ただ、韓国は負けなければ現状を維持できるので、失点を最小限に抑えた今回の結果を「勝った」と認識しているのだろう。それゆえ韓国は日本がことさら勝利を喧伝する姿勢を冷ややかに見るのは、致し方ない部分もある。

 こうした韓国の態度について、「日本の外務省幹部は『とどのつまりはWTOが韓国に是正勧告を出すかどうかなのに…』と閉口する」(産経新聞2019年9月15日朝刊)という。ならば、4月の福島県産水産物の事件も日本の勝訴ではないのか。あの事件でも我が国は、水産物禁輸措置の撤廃にはつながらないが、措置の公表義務違反に関する手続的論点1つで勝訴しており、是正勧告もきちんと出ている。パネル・上級委員会はたった1つ、どんなにマイナーな論点でも、違反が認められれば必ず是正勧告を出す。「外務省幹部」たるものが、事案によってはそうした是正勧告は実質意味がないことを知らないとすれば、日本の通商外交も甚だ心もとない。勝敗とは、結局のところ、訴訟の結果我が国の通商利益が確保できるかどうか、なのだ。

 最近、通商関係について、政府、そして世論やマスコミの一部を含めて韓国への対抗意識が先走り、冷静かつ客観的に法的視点から我が国の置かれた立場を見られない姿勢が目立つことには、強い危機感を覚える。こうした姿勢はルール外交に必要な戦略思考を妨げ、著しく国益を損なう。先のプレスリリリースもそうだが、背後にある政府の理解は妥当だとしても、上級委員会の判断そのものとは分けて説明しないと、結果を「盛った」と言われかねない。特にこの手の話は公開情報ですべて明るみに出る話だ。厳しいようだが、国を思う気持ちがあるなら、「自画自賛」や「贔屓の引き倒し」はいただけない。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17717
http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/707.html

[国際27] トルコによるクルド人地域侵攻容認というトランプの過ち 弾劾調査:新証言でトランプ大統領「最悪の日」 トランプ大統領じわり追い込む「支持層」の本音 トランプ氏の車列に中指立てて解雇された米女性、地方選立候補で再チャレンジ
トルコによるクルド人地域侵攻容認というトランプの過ち

2019/10/24

岡崎研究所

 10月6日、トランプ大統領はクルドが支配するシリア北東部へトルコが侵攻することを容認する方針を打ち出した。これは、トランプの衝動と気紛れが引き起こした騒動のようである。ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナルといった大手メディアやそれらのコラムニスト達ばかりではない。共和党のミッチ・マコーネル、リンゼイ・グラム、マルコ・ルビオといった大物政治家や前国連大使ニッキー・ヘイリーまでもが、一斉に反発し非難している。


non-exclusive/Turgay Malikli/iStock / Getty Images Plus
 10月6日のホワイトハウスの声明が言っていることは次の 2つである。

(1)トルコは間もなくシリア北東部に侵攻する。米軍はこの作戦を支持もしないし関与もしない。米軍は近接する地域には最早存在しないであろう。

(2)米国はフランス、ドイツ、その他欧州諸国に囚われているIS戦闘員を引き取るよう要求して来たが、彼等は拒否した。米国はIS戦闘員を抱えて行くつもりはない。何故なら長期間を要し、納税者にとって大きなコストになる。今後はトルコがIS戦闘員に責任を持つ。

 この声明は、トランプ大統領がエルドアン大統領と電話で会談した直後に出されたものであるが、エルドアンに何を話したのか。トルコがロシアのS-400ミサイル・システムを導入したことに対する対応を有耶無耶にしたままであるが、エルドアンとの関係はどういうものなのか、すっきりしない。

 何を考えてこの度の政策を打ち出したのか、定かでない。犬猿の仲のトルコとクルドの間を取り持ちつつ、両者との協力関係を維持するというおよそ解決可能とは思われない問題の解決に向けてある程度の進展はあったらしく、両者を引き離す「安全地帯」を国境地域に設けて米国とトルコが共同でパトロールすることも始まっていたようであるが、トランプの突然の表明はこの方針をひっくり返すものである。問題点は、次の通りである。

 第一に、これはクルドに対する裏切りである。ホワイトハウス の声明はトルコ軍がシリア北東部のクルド支配地域に侵攻することを米軍は邪魔しないと約束している。今後、ISの脅威に対処する上でクルドの協力は得られないことになる。各方面の非難に驚いたのか、トランプは「クルドは我々と共に戦った。しかし、そのために彼等には莫大なカネと装備が支払われたのだ」とツイートしたが、これは余計な侮辱である。トランプは「もしトルコが許容範囲を超えれば、トルコ経済を完全に破壊し抹消する」とツイートしたが、タガの外れたレトリックでしかない。

 第二に、クルドはトルコに太刀打ち出来ないであろうから、全面的な戦争になるとは限らないが、シリアは更に不安定化する。米軍が頼りにならないと見切りをつければ、クルドはアサド政権との取引きに走るであろう。米国のシリアにおける政治的足場は弱まるであろう。

 第三に、トルコは侵攻する地域からクルドを駆逐し、そこに国内に滞留するシリア難民を帰還せしめる挙に出るかも知れない。それは紛争を引き起こすであろうし、クルドはそれが「民族浄化」に類した事態になることを恐れているようである。

 第四に、シリア北東部の収容所に拘束されている2000人以上のIS戦闘員(その他に 7 万人の戦闘員の家族がキャンプに収容されている)は今後トルコが管理するとホワイトハウスの声明は言っているが、トルコにその意思と能力がある筈はない。トルコとの戦闘となれば、クルドは管理を放棄し(IS戦闘員を管理しているのは米軍ではない)、IS戦闘員が野放しになる危険がある。

 10月9日、トルコは越境作戦を開始した。

 これを受けて、トランプはトルコとクルドの戦いは歴史的に不可避なのだと言い訳のようなことを言い、クルドの米軍に対する協力の価値を貶めるようなことも述べた。更には囚われているIS戦闘員は欧州に逃げ出すだろうと論点をすり替えるようなことを述べた。

 リンゼイ・グラム議員は、トルコに対する制裁法案を提案する意向である。トランプ政権の信頼性は大きく傷付いた。そして、拘束されているIS戦闘員をどう取り扱うかの問題の緊急性が図らずも改めて明らかとなった。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17635


 

 
弾劾調査:新証言でトランプ大統領「最悪の日」
Taylor Testimony Marks Trump's Worst Day in Office

2019年10月24日(木)16時25分
ジェイソン・レモン

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トランプ弾劾の証拠になる証言をして一躍、注目の人になったウクライナ駐在のテイラー米代理大使 Carlos Jasso-REUTERS

<遂にトランプ政権の終わりの始まりか? 政敵の汚点捜査に同意しなければ国防に協力しない、と小国を脅した克明な証言が飛び出した>

ウクライナ駐在のビル・テイラー米代理大使が証言を行った10月22日午前の米下院の聴聞会。議場から出てきた民主党のアンディ・レビン下院議員は、待ち構えていた記者団にテイラー証言は衝撃的な内容だったと明かした。

「私はまだ議員になって10カ月ほどだが、今日は──と言っても、まだ正午にもなっていないね?──議員生活で最も動揺した日だった」と、レビンは記者団に語った。「いやあ、参ったよ」

ロナルド・レーガン元大統領のスピーチライターだったジョン・ポドレツはMSNBCに出演し、これはトランプが大統領になって「最悪の日」で、この証言でトランプ弾劾は100%可能になったと語った。

<参考記事>トランプ弾劾調査の引き金になった「ウクライナ疑惑」のすべて
<参考記事>トランプ、ウクライナの次は中国にバイデンの調査を要求 民主主義に最悪の反則と元米NATO大使

テイラーは、ドナルド・トランプ米大統領が批判を押し切って解任したマリー・ヨバノビッチの後任として今年6月に代理大使に就任。この日は大統領弾劾訴追のための調査を行う下院委員会の召喚に応じて、非公開の聴聞会に出席した。

そんな圧力は「狂っている」
たとえばEU駐在のゴードン・ソンドランド米大使に宛てたテキストメッセージで、テイラーは「安全保障上の援助は、(ライバル候補の)捜査を条件とする、と言っていいんですね」と、ストレートに質問していた。ここで言う捜査とは、2020年大統領選で民主党の最有力候補になっているジョー・バイデン前副大統領とその息子ハンターが絡むウクライナで行ったかもしれない不正ビジネス疑惑に関する捜査のことだ。ソンドランドは、やりとりの記録が残るのを避けるためか、「後で電話する」とだけ返事した。

またテイラーはソンドランドに、「米国内の選挙支援を見返り条件に軍事援助の提供を控えるなど、『狂っている』とメッセージで伝えた」ともBBCは報じている。


民主党のアミ・ベラ下院議員はCNNの取材に応じ、テイラー証言で「不明点がいくつも明らかになった」と述べた。ベラによれば、テイラーはソンドランド駐EU大使よりも事実関係を「はっきり覚えている」ようで、「かなり率直に自分の体験を話してくれた」という。

弾劾調査が始まったのは9月末。きっかけは内部告発だ。トランプは、2016年の米大統領選に介入したのはロシアではなく、民主党の依頼でウクライナが介入したという陰謀説を唱え、さらには2020年の米大統領選の民主党の有力候補の1人であるバイデンは、息子がウクライナで行った不正ビジネスを隠蔽しようとしたと根拠なく主張。これらの疑惑に関し、ウクライナ政府に捜査を行うよう働きかけたとして、政府内部の人間がトランプの「裏取引」を告発したのだ。

次のページもう「疑問の余地はない」
大統領が政敵に関する捜査で外国政府に協力を求めること自体、職権乱用だと指摘されている。

しかもトランプ政権はウクライナ向けの4億ドルの軍事援助を一時的に棚上げにしていた。ミック・マルベイニー大統領首席補佐官代行は15日に開かれた下院の公聴会で、援助棚上げは民主党とバイデンを標的にした捜査を行うようウクライナに働きかけることと関係があった、と証言した。証言後に猛攻撃にさらされたマルベイニーは、すぐさま撤回を試み、「交換条件」など存在せず、軍事援助をちらつかせて、大統領の望む捜査をさせるなどということはあり得ないと、苦しい言い訳をした。

民主党のデビー・シュルツ下院議員はニューヨーク・タイムズの取材に応じ、テイラー証言は「胸が痛むほど詳細な」内容で、トランプ個人の政治的な目標とトランプ政権のウクライナ外交の「直接的なつながり」が疑問の余地なく明らかになったと語った。

トランプ側は「魔女裁判」と抗議
アメリカの選挙では外国人や外国政府から支援を受けることは違法だ。民主党のエレン・ワイントローブ連邦選挙管理委員長は今年に入り、「選挙に関連して、外国籍の人物から何らかの価値あるものを得ようとする、もしくは受け取ることは違法である」との声明を発表した。

トランプとトランプ支持者は、弾劾調査を「魔女裁判」「リンチ」と呼び、「党派的」な動きだと批判しているが、ウクライナ疑惑については、共和党の一部有力議員も深刻な懸念を表明している。

マルベイニーが証言を撤回したことについて、共和党のフランシス・ルーニー下院議員は、政権スタッフが公的な発言を安易に「引っ込める」ことは問題だと批判した。

「今さら引っ込めても、もはや事実関係は明らかだ。既に試合終了のゴングが鳴ったのだ」
 

https://www.youtube.com/watch?v=N0WXj6i-c3o
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13256.php


 


トランプ大統領じわり追い込む「支持層」の本音
2年前とは様相が変わってきている
ジェームズ・シムズ : ジャーナリスト2019年10月24日

支持者層もいよいよ不信感を抱き始めている。トランプ大統領は2期務めることができるか、微妙な様相を呈してきている(写真:EPA=時事)
2020年の大統領選はドナルド・トランプ敗退の様相――。

少し前まではトランプの勝算は高かった。今のところは経済指標も好調で、アメリカ国民の不評を買うような海外における戦争もない。ジョージ・W・ブッシュ元大統領は不景気によって、リンドン・ジョンソン元大統領が泥沼化したベトナム戦争によって支持を失ったように、こうした要素は現職のアメリカ大統領の支持率に大きく影響する。

スキャンダルは通常、政権に悪影響を及ぼすが、現時点ではトランプ支持者や無党派層にはあまり影響を及ぼしていない。

ところが、ウクライナをめぐる新たなスキャンダルで状況は一変している。下院議会で弾劾調査が開始され、トランプの周辺人物たちを巻き込み始めた。すでに微妙な支持率に加えて、景気の先行きも不透明感を増しているほか、民主党が格差問題を取り上げ始めていることもトランプにとってはバッドニュースだ。

かつてのリアリティーテレビ番組のスターだったトランプが敗退すれば、同氏はえり抜きの一群に仲間入りする。1952年以降、1期しか務められなかった大統領はジミー・カーターとブッシュの2人だけだ。ロナルド・レーガン元大統領や、バラク・オバマ前大統領などほか6人は、2期務めている。

ウクライナ・スキャンダルという痛手
最近で最も大きいスキャンダルはウクライナ絡みで、これこそがトランプ政権最大のスキャンダルとなりそうだ。内部告発者による申し立てが調査の発端となり、トランプ政権が軍事援助を逆手にとって、ウクライナ政府にトランプ氏最大の民主党ライバルである前ジョー・バイデン前副大統領と、その息子による汚職の可能性について調べさせようとしたとして、民主党が非難している。

その申し立てによると、トランプ政権はトランプの電話内容が発覚すれば問題となりうる性質のものであることに気づき、文字起こしを隠蔽させようとした疑いが持たれている。

弾劾に向けて下院は訴追者として告発を行い、決定されれば上院が裁判を行う。2大政党間におけるトランプへの見解はほぼ固まっており、共和党優位の上院が3分の2以上の票でトランプ追放を宣告することは考えにくい。だが、予定される公聴会で証人たちに召喚され、公開されていない詳細事項や関係書類などが公にされれば、大統領選を大きく左右する要素になるだろう。

すでに9月25日に電話の内容が公開された後、何人かの現役および元国務省高官が不利な証言を下院にしたり、問題になった政策を議論するメッセージなどを公開。ミック・マルバニー主席補佐官代行がいったんウクライナの軍事支援をする代わりにトランプがウクライナに政治的な調査を依頼したと会見で認めた後、翌日これを撤回するという事態が起きている。

「今回の件は、トランプにとって重大な脅威になるだろう。真摯に対応しないとまずい」と、トランプの側近であり、保守系メディア、ニュースマックスのCEOであるクリス・ラディは話す。「トランプを弾劾すべきという人の数は急激にとは言えないが増え続けており、これは大統領にとってはいい話ではない」

注目すべきは、この1件によってトランプ氏が無所属有権者ならびに、中道共和党有権者の支持を失うかどうかだ。ほかの世論調査同様、モンマス大学の調査でも、弾劾及び解任を支持するアメリカ国民の割合は8月から9月にかけて35%から44%に上昇している。無党派有権者間では30%から41%に増えている。

支持層に広がるトランプへの「不信感」
前回選挙の2016年、トランプ氏はその人気度を上回る得票率を獲得することができた。支持率は38%だったのに対し、一般投票では46%を得票して当選したのだ。

ところが、今年10月に行われたフォックスニュースの有権者調査では、43%がトランプ氏を支持しているものの、民主党のバイデン前副大統領、バーニー・サンダース上院議員、エリザベス・ウォーレン上院議員らと比較した想定票数ではトランプ氏が下回った。

元軍人のジェラルド・エブセンと彼の妻デビーにとっては、健康保険と気候変動問題が重要な問題だ。「健康保険については、(アメリカの65歳以上向け健康保険)メディケアよりは、オバマケア的な観点のバイデンを支持している。2人にとっては、医療保険が誰に投票するか決める材料になる」と、夫妻で、アイオワ州で8月に開かれたウォーレンのキャンペーンイベントに参加していたデビーは話す。

とはいえ、2人の最終ゴールは「トランプを落とすこと」であり、最終的には民主党候補に票を投じる考えだ。

大統領に就任してからほぼ3年、トランプ氏の支持率が50%を超えたことはまだない。これは近年の大統領としては前代未聞だ。

一方で、同氏の不支持率はつねに50%を上回っている。2018年にはそれを示唆するかのように、共和党が下院議席過半数を失った。トランプ氏の行動と敵対意識を高めるような物言いによって、郊外の有権者、とくに大卒の共和党女性有権者、そして無党派有権者投票者たちに愛想を尽かされたからだ。

景気が後退し、中国との貿易戦争が農業や工業の主要地帯に大きな悪影響を及ぼすようになれば、トランプ支持はさらに弱まるものと思われる。こうした地域からの支持がトランプ氏の最大の強みの1つだからだ。9月のワシントン・ポスト/ABCニュースによる世論調査によると、対象となった有権者の59%が2020年は不景気に陥ると考えており、43%がトランプ氏の経済貿易政策によってその可能性が高まると考えている。

実際、トランプ支持層である農家でもトランプ氏に対する「不信感」は広がっている。筆者が8月に生産金額において全米最大の農業地区であるネブラスカ州の第3下院選挙区を訪れた際にも、農業団体幹部が農民たちは中国との貿易戦争や、トウモロコシと大豆を原料とするエタノールのための再生可能燃料令を緩和するといったトランプ氏の政策の一部に憤っていると話していた。

「農民たちはとても不満に思っている。先の選挙では農業コミュニティーがトランプ支持に大きく貢献したと彼らは思っているのだから」とこの幹部は言う。「トランプに見捨てられた気分だ、という声も聞かれる」。

カンザス州の元州議会議員(共和党)のウィント・ウィンターも、「トランプが中国との貿易協議で大きな成果を上げるとは最初から思っていなかったが、一連の関税引き上げやツイートなどは茶番でしかない」と話す。「トランプはおそらく大統領選直前に何らかの手打ちをし、それを自分の成果として喧伝するだろう」。

ウィンターは、2018年のカンザス州知事選の際には、トランプが支持した右派候補ではなく、民主党候補を応援にまわっており、次期大統領選でも民主党候補に投票するとしている。ただしウォーレンやサンダースといった急進派を応援するのは心情的に難しい、ともしている。

勢いを増す「格差是正」を訴える声
対して、ネブラスカ州第3下院選挙区の共和党エイドリアン・スミス議員は、農民たちがトランプ大統領を「裏切る」とは見ていない。「トランプ以外の人で、少しでもマシになるとはどうしても考えにくいんでね」と、同議員は笑いながら語る。

一方、「大企業や一握りの世界的エリートがブルーカラーの仕事をたたき潰してしまったのであり、中産階級がトランプを当選に導いた」というトランプによる大衆受けするメッセージはすでに浸透しており、これに伴って民主党ではウォーレン人気が高まってきている。同氏のメッセージは、労働者の経済的困窮を改善するには構造変革が必要だというもの。一部の世論調査では、ウォーレンがバイデン及びサンダースを抜いている。

「富の99%を上位1%の人間が握っているこの現状には大きな問題がある。アメリカはそのような国として成り立っているのではない」と、特殊教育の教師であるジェシカ・マッケナ氏は言う。同氏は8月、幼い娘とともにアイオワ州でのウォーレン氏の選挙運動に参加していた。

こうした中、トランプ氏が大衆受けする経済不満を再び振りかざすかどうかは定かではない。前回同氏に投票した国民は、トランプ氏の見え透いた口先の約束を見透かしているかもしれない。例えば、同氏のPRポイントであった1.5兆ドルの減税は、結局主として企業や上位1%の富裕層をさらに優遇するものだったからだ。

6月には、右派のアメリカン・エンタープライズ公共政策研究所が「共和党員たちは、この世の中における自分たちの立ち位置をよく考える必要がある。ますます多くのアメリカ国民が、格差を是正することに関して、国がもっと大きな役割を担う必要があると考えるようになっている」と、書いている。

同研究所が1月に行った世論調査では、回答者の55%が、貧困は各個人の努力というよりも構造的問題によって形成されていると考えており、この数字は2001年における44%から上昇している。

共和党内での支持率は依然高い
とはいえ、トランプは共和党内ではいまだに常時90%に上る支持率を維持しており、2016年がまさにそうだったように、一般投票では負けても、選挙人団のほうは同氏に優勢に動く可能性がある。共和党の政治家たちはトランプ氏を裏切ることを恐れており、一生懸命声援を送っている。

例えば、トランプが、ソマリアから帰化してアメリカ国民となった議員をはじめとする4人の少数派民族出身の女性議員について、「『国へ帰って』自分の破綻した国をどうにかしろ」と発言し、彼女たちがトランプを非難したときも、ほとんどの共和党員がそうした人種差別的発言に対してトランプを非難することはなかった。

この件の数週間後、カンザス州代表の第2下院選挙区のスティーブ・ワトキンス議員は、トランプのこれまでの発言の数々について意見を求められ、20人強の選挙人の出席したタウンホール後にこう答えている。「彼が人種差別をする人だとは思わない」。

選挙まで余すところあと1年強となったが、多くのことが起こり、民主党が2016年同様にあとひと息のところで負ける可能性もある。しかし今明らかなのは、トランプの権力掌握が日に日に弱まっている様相だということだ。
https://toyokeizai.net/articles/-/309911


 


トランプ氏の車列に中指立てて解雇された米女性、地方選立候補で再チャレンジ
2019年10月24日 19:46 発信地:スターリング/米国 [ 米国 北米 ]
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トランプ氏の車列に中指立てて解雇された米女性、地方選立候補で再チャレンジ❮ 1/6 ❯‹ ›
ジュリ・ブリスクマンさん、米バージニア州にて(左2017年10月28日撮影、右2019年10月17日撮影)。(c)Brendan Smialowski / AFP
ジュリ・ブリスクマンさん、米バージニア州にて(左2017年10月28日撮影、右2019年10月17日撮影)。(c)Brendan Smialowski / AFP
郡政執行官に立候補するジュリ・ブリスクマンさん、米バージニア州スターリングにて(2019年10月17日撮影)。(c)Brendan Smialowski / AFP
米バージニア州のトランプ・ナショナル・ゴルフクラブ近くでドナルド・トランプ大統領の車列に向かって中指を立てるジュリ・ブリスクマンさん(2017年10月28日撮影)。(c)AFP/Brendan Smialowski
米バージニア州スターリングで戸別訪問を行うジュリ・ブリスクマンさん(2019年10月17日撮影)。(c)Brendan Smialowski / AFP
米バージニア州スターリングで戸別訪問を行うジュリ・ブリスクマンさん(2019年10月17日撮影)。(c)Brendan Smialowski / AFP
郡政執行官に立候補するジュリ・ブリスクマンさん、米バージニア州スターリングにて(2019年10月17日撮影)。(c)Brendan Smialowski / AFP
【10月23日 AFP】2017年秋、自転車に乗りながらドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の車列に向かって中指を立てる姿を写真に撮られて会社を解雇された米女性が、2年たった現在、民主党の候補として地方選に立候補し、政界進出を目指している。

 バージニア州ラウドン(Loudoun)郡。フレンドリーな雰囲気とブロンドヘアが印象的なジュリ・ブリスクマン(Juli Briskman)さん(52)は、11月5日の選挙に向けて一軒一軒回りながらパンフレットを配っている。

 近隣の男性は「ああ、彼女が大統領に中指を立てた人かい?」「仕事を失い、今は選挙に立候補していると聞いていた。素晴らしい。活力が気に入った」と語り、トランプ氏なら中指を立てられて当然だと笑った。

 ブリスクマンさんは2017年10月、ゴルフ場「トランプ・ナショナル・ゴルフクラブ(Trump National Golf Club)」の外でトランプ大統領を護衛する黒いSUVの列が通り過ぎる際、トランプ氏に対して感じていたことをそのまま行動で示した。

 AFPが撮影した写真は永遠のものとなり、瞬く間に拡散された。しかし、また同時に米政府や軍関係先を顧客とする会社に勤めていたブリスクマンさんは、市場アナリストとしての職を失うことになった。

 政治的に分断した米国で、ブリスクマンさんの行為はさまざまな受け止められ方をした。ブリスクマンさんの中指が抵抗の象徴だとみなす人もいた一方、抗議や脅迫も寄せられた。

 ブリスクマンさんはまた、不当な解雇だとして以前の勤務先を提訴。言論の自由の侵害だと訴えた。

 ただ、解雇されたことによって「多くの道の扉が開かれた」とブリスクマンさんも認めている。10代の子ども2人を育てるシングルマザーは、新しい職もすぐに見つけた。そしてその後、民主党枠で郡政執行官に立候補しないかと打診を受けた。

 決断するのに時間はかからなかった。長く地域社会に関わっていたこともあり、政界への進出はブリスクマンさんにとって理解に難くなかった。

「トランプの対抗馬にはなれないけれど、この選挙に出馬し、この地で変化を生み出すことはできる」

 2年前の騒動を覚えている人はいないようにも思える。しかし、ブリスクマンさんの元には今も「臆病者」といった匿名の脅迫文が届くという。ブリスクマンさんは戸別訪問の際、民主党を支持していそうな家庭にターゲットを絞るためにアプリを利用し、不快な接触を避けるようにしている。(c)AFP/Sébastien DUVAL
https://www.afpbb.com/articles/-/3250967
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/592.html

[経世済民133] 「働き方改革」がもたらした「副作用」との向き合い方 マネージャー層への「しわ寄せ」余暇があっても増えぬ自己研鑽
「働き方改革」がもたらした「副作用」との向き合い方
若年層の育成が急務
2019/10/25
黒田祥子 (早稲田大学教育・総合科学学術院教授)

MOODBOARD/GETTYIMAGES
 2016年9月に始動した政府の働き方改革は、18年の改正労働基準法の成立を経て、その流れを本格化させつつある。19年4月からは改正労基法の施行により、まずは大企業に時間外労働の罰則付き上限規制が導入された。
 この法改正に先駆けて、既に多くの企業で労働時間の削減が始まっている。例えば、500人以上の事業所に勤める常用雇用で、いわゆるフルタイム男性労働者に占める60時間以上の人の割合は、13・6%(15年)から10・9%(18年)に減少している。(下図1)同様の傾向は女性においても、そして中小企業に勤める労働者にも観察されることから、日本全体で長時間労働是正の動きが始まっているといえる。

(注)男性雇用者のうち、週の労働時間が35時間以上の人に占める60時間以上の長時間労働者の割合(出所)「労働力調査」(総務省統計局)を基に筆者作成 写真を拡大
https://wedge.ismedia.jp/mwimgs/6/9/-/img_697f8c12d04666150a041dc05014d5a556587.jpg

 また、筆者がRIETI(経済産業研究所)で行った調査でも、法施行以前の18年時点で、働き方改革の施策として約7割の企業が業務効率化を、約6割が残業抑制を導入していることが明らかになっている。
 こうした長時間労働の是正は、これまで就労を希望しつつも、さまざまな事情から長時間労働では就労することが難しかった多様な労働力が活用されることにつながる。また、25年には生産年齢人口のうち、40歳以上の割合が6割になる。健康管理上の問題からも、長時間労働を前提とした働き方を持続することは困難だ。一連の改革は、これからの社会に即した新しい働き方に変化していくために必要なプロセスといえる。

 ただし、今後はこうした働き方改革により、意図せざる「副作用」が生じる可能性についても注意をしていく必要がある。
 副作用の一つは人的資本投資の減少だ。これまで、多くの日本企業では時間をかけて職場で人材育成(On the Job Training、OJT)を行うことで労働者の人的資本の形成を促してきたといわれている。若手にはあえて難しい仕事に挑戦させ、試行錯誤を通じて学びの機会を与え、それに対して上司や先輩がフィードバックをするといったスタイルがその典型といえる。現在においても、厚生労働省の「能力開発基本調査」(18年)によれば、重視する教育訓練について、「OJTを重視する」またはそれに近いとする企業は正社員・非正社員ともに70%を超える。

 しかし、こうした時間をかけたOJTがこれまで可能となってきたのは、職場で長時間労働が許容されてきたことが背景にある。既に多くの職場では、労働時間削減のために早帰りが励行され、職場における時間的余裕がなくなってきている。企業による従業員一人当たりのOFF−JT投資額もこの20年間で趨勢的に減少してきていることを示す研究結果もある。労働者に対する教育訓練の機会が減少し、将来職場の中核を担う現在の若年層の人的資本形成が損なわれることが危惧される。

余暇があっても増えぬ自己研鑽

 このような状況下でも、増えた余暇時間を使って、労働者が自ら、仕事に役立てるための勉強や技術・資格の取得など、いわゆる「自己研鑽」を行えば人的資本形成は維持できる。

 しかし、前出のRIETIのプロジェクトで行った筆者らの研究からは、1年間に何らかの自己研鑽を行ったと答えたフルタイム労働者の割合は41・3%(06年)から34・5%(16年)へと、この10年で大幅に減少していることが分かった。
 特に大きく減少しているのが就業時間外の職場における自己研鑽の実施率だ。残業抑制によって職場に残れなくなったことで、労働者の教育機会が減少したといえる。もちろん、職場での教育訓練の時間が減少したとしても、その分、職場外での研鑽の時間が増えればよい。実際、分析では職場での残業手続きが厳しくなった人ほど自己研鑽の時間を増やしている傾向は僅かには認められた。

 しかし、その時間の増分は年間5時間未満程度の人が圧倒的に多く、職場の教育訓練投資の減少分を補うほどではないことも分かった。また、職場外での自己研鑽を増やしているのは相対的に年齢が高い40歳以上の層で、40歳未満の若年層は自己研鑽に時間を増やしていないこともデータから明らかになった。

しわ寄せを受けるマネージャー層

 長時間労働削減のもう一つの副作用

が、マネージャー層への「しわ寄せ」だ。週労働時間が35時間以上の人に占める60時間以上の人の割合を年齢層別にみると、02年には30〜39歳が26%と突出して多かったものの、18年には40〜49歳が16・1%と最も多くなっている。(下図2)

(注)週の労働時間が35時間以上の人に占める60時間以上の男性雇用者の割合
(出所)「労働力調査」(総務省統計局)を基に筆者作成 写真を拡大
https://wedge.ismedia.jp/mwimgs/1/a/1200m/img_1ac168a44b07639abe71f088e331f2f161918.jpg

 40代は各企業でマネージャーを務めている年齢層である。労働時間管理が厳格化している中、割増賃金が適用されない「管理監督者」には、いわゆる「プレイングマネージャー」として業務のしわ寄せが起こっていると考えられる。こうしたマネージャー層の心身の健康の確保も大きな課題である。

 こうした状況下で、企業は今後どのように労働時間削減と向き合い、付加価値の向上をはかっていけばよいのか。

 まずは、今後も職場での育成、人的資本投資が生産性向上のために不可欠であることを認識する必要がある。若年層の中には、十分な教育訓練投資を受けることができていないことに危機感を抱いている人も多いはずだ。しかし、行動経済学の知見からも明らかにされているように、人間には、遠い将来のことを大きく割り引いてしまい、今の楽しみを優先してしまうという認知の歪みがある。危機感を持っていても余暇時間を自らの人的資本形成に費やすことができない若年層の育成には、職場での教育投資が引き続き重要だ。

 ただし、長時間労働を前提とした従来の教育訓練投資のスタイルは変えていかざるをえない。今後は80%程度のクオリティーで済ませても良い仕事と、120%のクオリティーまで追求すべき重要な仕事とをうまく判別し、業務内容にメリハリをつけながら若手を育成していくことが求められる。

 余裕がない企業で働く労働者には十分な教育機会が与えられず、若年層の間で人的資本の格差が拡大していく可能性も懸念される。今後は企業単位でなく社会全体での教育投資を行っていくことも重要だ。政府による副業やリカレント教育の推進に加えて、学校教育の在り方も抜本的に考え直していく必要があるだろう。

 高等教育機関は、教養を深める場であると同時に、仕事に不可欠なスキルを学ぶ場を提供することも求められる時代になってきている。企業には、労働者が必要なタイミングに応じて、一時的に仕事を中断し、学びの場に戻り勉強に専念することができるような機会を許容する体制の構築や学びへのインセンティブを与えることも望まれる。

 働き方改革は生産性向上とセットでうたわれることが多く、現在多くの現場では生産性の分母であるインプット(労働時間)を削減することに注力している。短期的には労働時間の削減により時間当たりの効率性は増すかもしれないが、重要なのは目先の生産性向上ではなく、持続的な経済成長である。労働時間の削減に注力するあまり、日本の中長期的な生産性向上が損なわれないよう、注意する必要がある。
現在発売中のWedge10月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。

■再考 働き方改革

PART 1  働き方改革に抱く「疑念」 先進企業が打つ次の一手
PART 2 労働時間削減がもたらした「副作用」との向き合い方
PART 3 高プロ化するホワイトカラー企業頼みの健康管理はもう限界
PART 4 出戻り社員、リファラル採用……「縁」を積極的に活用する人事戦略
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17716

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/476.html

[国際27] トランプが陰謀論にこだわる理由 すべての道はロシアへ 世界秩序は「競争的多極化」へ――日本が採るべき進路とは(後編) ポスト冷戦の世界史ーー激動の国際情勢を見通す
トランプが陰謀論にこだわる理由

2019/10/25

海野素央 (明治大学教授、心理学博士)

 今回のテーマは「トランプが陰謀論にこだわる理由」です。ドナルド・トランプ米大統領は自己に対する否定的なイメージを変えて、来年の大統領選挙で有利に戦うために、ある「陰謀論」に固執しています。そこで本稿では、トランプ大統領が陰謀論にこだわる理由を中心に述べます。


23日、ペンシルベニア州ピッツバーグで行われたシェールガス、オイル産業のカンファレンスに参加したトランプ大統領(AP/AFLO)
トランプの2つの矛盾点
 トランプ大統領がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に圧力をかけて野党民主党の有力候補ジョー・バイデン前副大統領と次男ハンター氏に関する汚職捜査を要請した疑惑、いわゆる「ウクライナ疑惑」に関して、トランプ氏には少なくとも2つの矛盾点があります。

 まず1つ目の矛盾点です。トランプ大統領はウクライナへの軍事支援を一旦保留した理由として同国における汚職問題を挙げました。ウクライナでは汚職が蔓延しているので、3億9100万ドル(約424億円)の軍事支援を「浪費したくなかった」と言うのです。それにもかかわらず、トランプ氏は汚職撲滅の立場をとっていたヨバノビッチ駐ウクライナ大使を5月に突然解任しました。

 次に2つ目の矛盾点です。ミック・マルバニー米大統領首席補佐官代行は17日、ホワイトハウス記者団に対して、ウクライナにあると噂されている民主党全国委員会(DNC)のコンピューター・サーバーの調査を要請するために、同国に対する軍事支援を保留したと述べました。ウクライナ政府が民主党全国委員会のサーバーに関する調査を実施すれば、見返りとして軍事支援を行うという意味になります。

 マルバニー氏はこれについて「外交政策ではよくあることだ」と語り、軍事支援を見返りとしたことを正当化しました。確かに、外交交渉では当事国間で交換条件としての見返りの提示があるのかもしれません。

 しかし、トランプ大統領はこれまでゼレンスキー大統領との間に見返りはなかったと断言してきました。トランプ・マルバニー両氏の主張は明らかに矛盾しています。

マルバニーの本音
 いずれにしても、トランプ大統領は米議会が承認したウクライナへの軍事支援をレバリッジ(てこの力)にして、民主党全国委員会のサーバーに関する調査の実施を要請をしました。もちろん、軍事支援は米国民の税金です。

 トランプ大統領は民主党に打撃を与える情報収集の目的で、ウクライナに交換条件を出したとみるのが自然です。仮にそうであるならば、再選を狙うトランプ氏は個人の利益を、国益に優先させたといえます。

 さて、マルバニー大統領首席補佐官代行は、見返りを認めた発言を即座に撤回してダメージコントロールをしました。バイデン前副大統領は、息子のハンター氏を調査していたウクライナの検事総長を解任しないと、同国への軍事支援を削減すると迫ったと反論しました。その上で、「これこそ見返りだ」と語気を強めて語りました。この検事総長を解任すれば、その見返りとしてウクライナへの軍事支援を削らないと圧力をかけたと解釈できるからです。

 これに関してバイデン氏は、汚職問題を抱えている検事総長を解任しようとしたのであって、息子とは無関係だと主張しています。

 マルバニー大統領首席補佐官代行は、トランプ大統領の本音を漏らしました。保守系の米FOX ニュースのキャスターが、番組の中でマルバニー氏に対して、トランプ大統領が解任を命じなかったのかと質問しました。マルバニー氏は否定しましたが、このキャスターも同氏がトランプ氏の本音を明かしてしまったとみていたのでしょう。

なぜトランプはサーバーを探すのか?
 トランプ大統領は「(民主党全国委員会のコンピューター)サーバーはどこにあるんだ。サーバーをみたい」とホワイトハウス記者団に繰り返し語りました。サーバーがウクライナに隠されているというのです。では、なぜトランプ氏は民主党全国委員会のサーバーを探しているのでしょうか。

 2016年米大統領選挙において民主党はカリフォルニア州に拠点を置くサイバーセキュリティテクノロジー企業「クラウドストライク」に調査を依頼しました。クラウドストライクは、ロシアが民主党全国委員会のコンピューターに侵入し、大統領選挙に介入したと報告しています。米情報機関も前回の大統領選挙でロシアの干渉があったと断定しています。

 率直に言ってしまえば、トランプ大統領は上記の事実が気に入らないのです。周知の通り、16年米大統領選挙の期間中ロシアは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で、ヒラリー・クリントン元国務長官に関する不利な情報を拡散しました。

 トランプ氏は前回の大統領選挙で勝利を収めましたが、米国民の中にはロシアの選挙介入によって勝ったかもしれないと考えている米国民がいます。つまり、合法的な勝利ではなかったと捉えている国民がいるのです。

 そこで、トランプ大統領はウクライナが民主党全国委員会と共謀して16年米大統領選挙に干渉したという「陰謀論」に固執しています。 選挙介入をしたのは実はロシアではなく、民主党と手を組んだウクライナであったということを是が非でも証明したい訳です。

 仮に証明できれば、様々なメリットが存在するからです。例えば、トランプ大統領が不正直なやり方で選挙に勝利したと信じている有権者の認識を変えることができます。ロシアの手助けなしに実力でクリントン氏を破ったと強調することも可能です。

 加えて、「2016年米大統領選挙の被害者はヒラリーではなく自分だ」と主張できます。「ロシアの選挙介入があったと断定した米情報機関の調査結果はでっちあげだ」とアピールすることもできます。「クラウドストライクの調査結果もフェイク(偽り)であり、民主党こそ腐敗している」という結論を下したいのでしょう。結局、来年の大統領選挙を有利な方向へ展開できるからです。トランプ氏はここまで狙っています。

すべての道はロシアへ
 それにしてもトランプ大統領は敵国ロシアに好意的です。繰り返しになりますが、16年米大統領選挙における介入はロシアではなく、ウクライナであったと証明しようとしています。来年の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の議長役であるトランプ氏はロシアのG7復帰を強く支持しています。今回のシリアからの米軍撤退により、中東におけるロシアの影響力拡大を許しました。

 ナンシー・ペロシ下院議長及び他の民主党議員はトランプ大統領の言動に関して、「すべての道がロシアに通じている」と指摘します。一歩踏み込んで言えば、「すべてプーチン(露大統領)に行きつく」といえます。トランプ氏がプーチン大統領に弱みを握られているという噂の現実味が増してきました。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17720


 
世界秩序は「競争的多極化」へ――日本が採るべき進路とは(後編)

ポスト冷戦の世界史ーー激動の国際情勢を見通す
2019/10/25

中西輝政 (京都大学名誉教授)

世界史の劇的な転換点である「ベルリンの壁崩壊」から11月9日で満30年になる。この間の世界情勢をそれぞれ様相が異なる10年(デケッド)ごとに区切って振り返ってみる。冷戦の終焉直後は「協調型・多極世界」に移行していくと思われていたが、湾岸戦争を機に世界秩序の潮流は、表面的な一極構造の底に潜在的な対立を含んだ「競争型・多極世界」への流れへと変わった。
『世界秩序は「競争的多極化」へ――日本が採るべき進路とは(前編)』
「大いなる挫折」を味わう米国
 冷戦終結から2番目の10年間である2000年代を振り返ると、前述のように湾岸戦争の余波としての「米国同時多発テロ」が01年9月11日に起き、21世紀はじめの世界情勢に大きな影響を及ぼした。同年の1月に発足していたブッシュ(子)政権は「テロとの戦い」を掲げ、アフガン戦争、イラク戦争へと突き進んでいった。しかし、いずれも所期の目的を達成できず、「大いなる挫折」の戦争となり、約20年経った今も尾を引いている。

 01年には9・11のほかに二つ重要な出来事があった。一つは中国のWTO加盟である。これこそが、今日の経済大国・中国の基礎を築き、「世界の工場」として凄(すさ)まじい勢いで中国が経済超大国に躍り出る大きな契機となった。そしてもう一つの重要な出来事は、ロシアにプーチン大統領が登場したことだ。冷戦後のNATOの「東方拡大」や西側のミサイル防衛網強化などに対して、ロシア人には米国や西側に「裏切られた」という感情がさらに強くなり、今もその怨念がプーチン体制を支えている。

 そして08年という年は、3番目の10年間である10年代の問題が、予めすべて出尽くした年である。まずリーマンショックに端を発した金融危機で世界経済が大きく動揺し、「パックス・アメリカーナ」もいよいよ閉幕かといった議論も出た。中国はこの危機に対して4兆元(約57兆円)もの景気対策を打って世界経済の急場を凌ぐことに大きく貢献し、経済超大国の座を不動のものにした。もっとも、この時の莫大な不動産投資や不健全な融資などが今日の世界経済の秩序を脅かすリスクになっており、今後を見ないと結論的評価はできないが、リーマンショックこそは中国が確実に米国の「背中を捉えた出来事」として後世の歴史家は評価するかもしれない。


中国は高速鉄道建設など4兆元の景気対策を打ち、金融危機で冷え込む世界経済を下支えした(2011年5月、北京−上海間における試験運転)
(写真・VCG/GETTYIMAGES)
 また、08年には北京五輪が開催されたが、その成功を機に自信をつけた中国は、外交政策を大きく転換していく。ケ小平以来の、力をつけるまでは国際社会で対立を惹起(じゃっき)しないという、あの「韜光養晦(とうこうようかい)」路線への決別は、13年以後の習近平政権の登場によって始まったのではなく、すでに前任の胡錦濤政権の時に始まっていたのである。

 10年の尖閣諸島沖での漁船衝突事件では、中国は自らの領土主張を日本に強く押し付けて、対日制裁としてレアアースの輸出を禁止するという外交手段を用いた。今日、世界情勢の潮流になっている「ジオ・エコノミクス」(経済手段を政治目的で用いること)をまさに先取りしていたといえる。東アジアの秩序と日米同盟への挑戦、米中関係の今日の緊張はこの頃から萌芽し始めた。

ロシアが仕掛ける「ハイブリッド戦争」
 さらに08年はプーチンが国際秩序に対して正面から挑戦をしてきた年である。まさに北京五輪の開会式のその日に、国際法を無視して軍事力を発動し、グルジア(現・ジョージア)戦争を引き起こした。国際社会はロシアを厳しく非難をしたが、原状回復には至らず、この出来事が14年のクリミア併合へとつながっていった。

 また、ロシアはグルジア戦争に際して、軍事力の行使に情報戦も組み合わせる「ハイブリッド戦争」を仕掛けている。これは後の英国のEU離脱を決める国民投票や、16年の米国大統領選挙でも用いられた手法で、敵対する勢力の情報空間を操作し、人々の認識を歪めることで政治・軍事目的を達することとされている。

 実際、08年に起こったこれら三つの出来事が、10年代の世界情勢に大きな影響を及ぼしている。12年には尖閣諸島の国有化により日中関係は戦後かつてない緊張状態に陥り、同年に発足した習近平政権による南シナ海などでの米国に対する挑戦は年々エスカレートしていった。

 欧州では金融危機、ギリシャ危機に直面して、EU統合にブレーキがかかった。さらに15年にシリア難民が押し寄せると極右ポピュリズムが広まり、EU統合の理想像がかき消されていく流れになってゆく。そして英国のEU離脱の行方が、今まさに欧州の未来を、ひいては21世紀の世界情勢を大きく左右しようとしている。

 こうして冷戦後の30年の国際秩序の歴史を振り返ると、今のところ、さきの五つの世界像のうち、五番目のキッシンジャー的なモデル、すなわち大国が群雄割拠する多極世界、それも協調ではなく対立が基調の「競争型・多極世界」に近づいているといえる。

 日本の安全保障にとって、中長期的にみて現状変更勢力である中国やロシアが堂々と振る舞うことは、決して望ましい状況ではない。

 米国は依然として超大国であり、今後も早期に凋落(ちょうらく)することはあり得ない。日本は日米同盟をさらに緊密化し、米国の力を利用して、日本の安全保障を担保していくことが当面、最も重要な戦略である。そして情報能力を含む外交力、防衛力の両面において早急に日本の自力をつけることも急がねばならない。これらは日本にとっての至上命題である。

 日本が自力をつけるために具体的にやるべきことは、第一に周辺環境に応じた自立した国家となるため、憲法をはじめ法令や制度、とくに情報組織を整備することである。この30年、日本のそうした面での自力の整備は、世界の潮流からも東アジアの安全保障環境の変化からも、2周も3周も遅れてきたが、このような事態を繰り返してはならない。

 第二に、当面、北朝鮮の核ミサイルに対する抑止力の向上が安保戦略上不可欠である。すでに小型化、弾頭化された核ミサイルを持ち、矛先をこちらに向けている以上、自衛のための敵基地攻撃能力について議論を急ぎ、政治的な決断が必要になる。

 第三に宇宙・サイバー分野におけるテクノロジーに投資をして、独自の防衛技術を高めていくことは待ったなしである。また安全保障と経済が表裏一体の関係になっているため、きめ細かな技術管理、貿易管理を徹底することも重要になる。

 第四に日本のシーパワーをインド洋まで展開する「インド太平洋構想」を浸透させることである。普遍的価値観、特に法の支配とルールに基づく国際秩序を広め、ASEAN、インド、豪州とも協力し現状変更を挑む中国を国際政治的に「包囲」する外交が不可欠だ。さらにオイルシーレーンを守るためにも、イランとの外交関係を維持しつつ、自国の船舶を守るために自衛隊として役割を果たすべきである。

 また日米同盟をもり立てる観点からも、「グローバル・ブリテン」を掲げる英国との安保協力をインド太平洋で恒常的に進めることは重要な点だ。英国の空母「クイーン・エリザベス」と海上自衛隊が東シナ海で共同訓練をすることで、ホワイトハウスの関心は高まり、米国の「航行の自由作戦」の効果も一層高まるはずだ。さらには、たしかにインドと豪州は必ずしも仲が良くないが、そこに英国が入ることで、英国との協力関係が強固な豪州も旧宗主国の英国に対するプライドがあるインドも積極的にインド太平洋に関与を強めることになろう。

 国際秩序が、大国同士の競争的、対立的な多極化世界に移行しようとする時代だからこそ、日本は少しでも「協調的な多極世界」をめざす外交的努力を図りつつ、他方で日米同盟と自力をそれぞれ強化し、現状変更勢力に重層的に対処できる戦略を描き、それらを体系的に実行に移さなければならない。それが日本の生命線になる。

現在発売中のWedge11月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■ポスト冷戦の世界史 激動の国際情勢を見通す
Part 1 世界秩序は「競争的多極化」へ 日本が採るべき進路とは 中西輝政
Part 2 米中二極型システムの危険性 日本は教育投資で人的資本の強化を
 インタビュー ビル・エモット氏 (英『エコノミスト』元編集長)
Part 3 危機を繰り返すEUがしぶとく生き続ける理由  遠藤 乾
Part 4 海洋での権益を拡大させる中国 米軍の接近を阻む「太平洋進出」 飯田将史
Part 5 勢力圏の拡大を目論むロシア 「二重基準」を使い分ける対外戦略 小泉 悠
Part 6 宇宙を巡る米中覇権争い 「見えない攻撃」で増すリスク 村野 将
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17662
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/598.html

[自然災害22] ものすごく「臭かった」多摩川氾濫 本質的に再検討すべき下水インフラ 地球温暖化は人間の脳も殺す ──DHA不足で
ものすごく「臭かった」多摩川氾濫
本質的に再検討すべき下水インフラ
2019.10.18(金)伊東 乾
時事・社会 インフラ
単に泥水というだけではなく、猛烈に「臭かった」・・・合流式による冠水(武蔵小杉)Photo by KT&KT.
ギャラリーページへ
 まず最初に、私の研究室の若い仲間K君たちが、台風通過直後、自宅近くの武蔵小杉に出かけ(やめたらと言ったのですが)撮ってきた写真をご紹介しましょう。
 10月13日日曜日、午前5時過ぎの神奈川県川崎市、武蔵小杉駅近在の風景です。私がお伝えしたいのは、この写真には写ってない要素です。それは何か?
 猛烈に「臭かった」のだそうです。下水の悪臭、もっとはっきり言うならば、糞便の臭いが凄まじかったという・・・。
 ここまで書けば、今回の主題が何か、はっきりご理解いただけると思います。 
 武蔵小杉といえば、駅の水没、改札が封鎖され大変な行列ができていること、またタワーマンションが停電・断水して「トイレが使えない」「仮設トイレが設置された」といった情報は報道でも伝えられています。
 しかし、インターネットが伝えることができない「臭気」という情報、というよりもこの場合はハッキリ「漏出物」があった。
 そういう現場の証言を期せずして直後に耳にしたことになります。
 漏出物が一体どこから来たのかは分かりません。タワーだけでも2000人ともいわれる住民がいるそうですし、増水した多摩川は、上流からも大量の漏出物が流されてきたことは間違いない。
 多摩川河口のあのあたりは、すべてが集積して大変なことになる可能性も考えられないわけではない。
 お台場トライアスロンのコラムなどご記憶の方もおありでしょう。大水が出ると「安全のため」未処理の下水、糞便なども直接川に「放流」されてしまう。
 そもそも、大変不衛生です。決壊した、しなかったというだけが災害ではありません。
 東京はもとより、日本全国の治水インフラ、本質的に検討し直すべき時期に差しかかっているのではないでしょうか?
 高度成長期や21世紀初頭に想定された「気候」からは、日本の現状はすでに外れた「変動」域にあることが、ほぼ間違いなく予想されるからにほかなりません。
 まず、そういうこととかなり距離のある「ポスト・トゥルース」から確認したいと思います。
何が「まずまず」なのか?…
何が「まずまず」なのか?
 台風19号の被害が続々と伝えられていますが、そんななか政治家の「まずまずに収まった」という発言が報道されていました。
 言語道断ですが、どうしてこういう発言になるかはよく分かります。より詳しく記すなら「予測されて、いろいろ言われていたことから比べると、まずまずに収まったという感じ」。
 つまり、いろいろな予測があり、そのどれをどう信用してよいか分からない。リテラシーが完全に欠如しているので、黙って静かにしているしかなかった。
 しかし、台風が過ぎてみると東京など身の回りは「大したことがない」。正確には「選挙の集票に大した影響はない」と判断された・・・という率直な感想をそのまま吐露したのだと考えれば納得できます。
 そういう政治で果たしていいのか?
 そう問われれば、全くそうは思いません。しかし、福島の復興に関わって耳にした中に、台風被害の「救済」はきりがなく、かつ票に結びつかないので、政治家はタッチしたがらないという話がありました。
 台風は毎年やって来ます。かつ、被害が出たとき救済されるのが当然と国民誰しもが考えている。当たり前です。納税者であり主権者なのですから。
 地方のインフラが破壊されているのに、ほったらかされてはたまったものではありません。
 でも、毎年やって来る台風にかけられる経費や手間暇は限られている。そこで「応援」程度にとどめておくらしい。
 真偽のほどは読者の良識に任せたいと思いますが、ともかく今回の台風19号は、日本全国のインフラが、誰の目にもすでに明らかな「気候変動」で、もう時代遅れ、使い物にならなくなりかけていることを、示唆しているのではないか?
東京の下水を考え直せ!…
少なくとも今現在、日本列島の至る所で発生している冠水、決壊、浸水、土砂災害、道路の寸断・・・例えば、東京都の秋川近在が凄まじいことになっているのは、SNS画像を見ただけですぐ分かります。
 しかし、系統だった被害状況などはほとんど報告されていないように思われます。つまり、このようなことが起きないように設計されたはずの安全対策が十分でなかったことをはっきりと示しています。
 水に浸かった新幹線車両、場合によればもう走れなくなってしまったものもある可能性もあるという。正確なところは推移を見る必要がありますが、およそ「まずまず」などではない。
 このコラムは基本的に事大主義を戒める記事が大半ですが、率直に言って「静かな国難」であることは間違いありません。
東京の下水を考え直せ!
 冒頭に示した「武蔵小杉」の写真に戻りましょう。このエリアの近くには某K大学があり、そのエリアは高台ですが、すぐ近くには日吉川などが流れており、至近の武蔵小杉駅を含む「南武線」は、多摩川に沿って走ります。
 その多摩川が今回、こういうことになった。
台風通過直後の武蔵小杉。Photo by KT&KT.
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 そこで溢れた水が、大変臭かったというのは、ほかならず未処理の下水、便や尿などの汚水がそのまま流入したからだと思われます。
 私が思うのは、この汚物はいったいどの範囲からやって来たのかというポイントです。
莫大な水量に「希釈」 だから大丈夫なのか…
多摩川は武蔵小杉から遡って、溝の口、登戸、分倍河原、府中本町、私の地元である国立、立川、日野・・・と延々上流に続き、拝島で支流の秋川と合流します。本流は福生、青梅と遡行して奥多摩湖の水源に繋がっています。
 逆に言うと、青梅からも、福生の米軍基地からも、立川からも府中の競馬場からも「汚物」は溢れてくるわけです。
莫大な水量に「希釈」
だから大丈夫なのか?
「それら」の濃度分布は全く私には分かりませんが、少なくとも多摩川のどん詰まり、最下流でゼロメートル地帯にも近い武蔵小杉では、水が東京湾に流れてくれず、街に溢れ出してしまったら、それより先に水の逃げ場がありません。
 冠水もしますし、汚物もそれなりの濃度のまま、あるいは、密度によっては1か所に固まって、路面に溢れ出していた。
「お台場トライアスロン」での猛烈な悪臭で、十分予想されたことでしたが、研究室の若い仲間の決死の(?)現地確認で、少なくとももう1点、その現場を押さえることができてしまいました。
「東京の安全は守られた」と地下に掘られた宮殿のような「首都圏外郭放水路(http://www.ktr.mlit.go.jp/edogawa/gaikaku/)」の働きが報道されるのを見ます。
 これは埼玉県の春日部から小渕にかけて掘られたもので、東京都内に流れ込む水を防ぐ働きをする利根川水系の「川」の一部です。
 なるほど、都内の洪水は防ぐことができた。それはそれで価値のあることです。しかしそれで「まずまず」なのですか?
 多摩川はどうなのでしょう。秋川は東京ではないのですか?
多摩川の一部となった武蔵小杉駅近くの工事現場。Photo by KT&KT.
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 あるいは千曲川はどうですか。さだまさしの「防人の歌」という昔のヒットソングの節にのって、本稿を書いている私自身、自問しないわけにはいきません。
 局所的に最適でも、全体を見たとき、物事が成立していない可能性がある。
 同様の疑問は今回の台風19号豪雨に際しての、ダムの緊急放流についても山のようにあるのですが、別論としましょう。
 まずは「下水」です。何とかしないといけません。
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「下痢」を起こす東京の下水道
8月17日、パラ・トライアスロンのワールドカップは、会場である港区お台場の海浜公園周辺スイムコースの水質が悪化したとして、トライアスロンを中止、ランとバイクだけによるデュアスロンに変更して競技が実施されました。国際トライアスロン連合からは、1年後に控える東京オリンピックに向けてリスクを減らす環境対策」の強化が求められました。いったい何が起きていたのか?


https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57949

 
地球温暖化は人間の脳も殺す ──DHA不足で
Climate change will kill your brain by reducing fatty acid: Study

2019年10月24日(木)18時30分
リシャブ・ジェイン

https://www.youtube.com/watch?v=sU0yfz95iEw

魚が手に入りにくくなることは、脳の材料が手に入りにくくなること StockerThings-iStock.

<魚の減少によるDHAの減少で、世界人口の大多数が必要量を摂取できなくなる日がくる。最初に影響を受けるのは胎児や乳児だ>

カナダの複数の大学が合同で実施した新たな研究によれば、気候変動は私たちの脳も殺してしまうらしい。2100年までには世界人口の大多数が、脳の重要な材料である天然の脂肪酸を摂取できなくなるからだ。

哺乳類の脳には、脳細胞の活性化に役立つ脂肪酸「ドコサヘキサエン酸(DHA)」が豊富に含まれている。人は主に魚介類を食べることでDHAを摂取しており、オメガ3脂肪酸(DHAもその一種)のサプリメントで補っている人もいる。DHAは脂の多い魚に含まれているほか体内でも合成され、熱に弱いのが特徴だ。研究報告は、地球の温暖化によってこのDHAが手に入りにくくなると指摘している。

研究チームは数学モデルを使って、温暖化がDHAの生成と供給にもたらす影響を分析した。すると、今のペースで温暖化が進めば、22世紀までには世界の96%の人の脳の機能が脅かされることになるという結果が出た。

報告によれば、温暖化によって世界中で魚の数が減るおそれがあり、ひいてはDHAの供給量も減るおそれがある。世界人口の増加ペースを考えると、2100年までには、必要量を摂取できるのは、漁獲量の多い小さな国に暮らす人々だけになる可能性がある。

2100年までに6割減る可能性も
DHAは脳の重要な構成要素で、その不足は健康リスクをもたらす。最も影響を受けやすいのは胎児や乳児で、母親がDHA不足だと赤ちゃんの発達に影響が出る可能性が高くなるとみられている。

「我々の研究によれば、温暖化の影響で、今後80年で世界全体のDHA供給量は10〜58%減る可能性がある。その最大の影響を受けることになるのが、重要な発達段階にある胎児や乳児たち。また、北極圏と南極圏に生息する捕食性哺乳類にも影響が及ぶ可能性がある」と研究報告は述べている。

DHAは脳の大脳皮質(知覚、運動や記憶などの高次機能をつかさどる部分)の機能や形成において重要な役割を果たすだけでなく、網膜や皮膚の機能にとっても重要だ。

温暖化の影響は、主に淡水の漁業水域や海区にあらわれると予想される。研究チームによれば、アフリカの内陸部に暮らす人々がその最も深刻な影響を受けることになるという。

<参考記事>肉食を減らそう......地球温暖化を抑えるために私たちができること
<参考記事>地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

(翻訳:森美歩)

20191029issue_cover200.jpg
※10月23日発売号は「躍進のラグビー」特集。世界が称賛した日本の大躍進が証明する、遅れてきた人気スポーツの歴史的転換点。グローバル化を迎えたラグビーの未来と課題、そして日本の快進撃の陰の立役者は――。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/-dha.php
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/771.html

[経世済民133] テスラ株急騰、弱気派が「大やけど」−マスク氏の警告から1年半 原油安がもたらすサウジリスクのさらなる上昇  中国の9月原油輸入、サウジ産が最多 イラン・ベネズエラ産は減少  米10年国債利回り、1年以内に3%へ

 
テスラ株急騰、弱気派が「大やけど」−マスク氏の警告から1年半
Courtney Dentch
2019年10月25日 4:12 JST
電気自動車メーカーの米テスラが24日の米株式市場で急騰。予想外の黒字転換を遂げたことなどを追い風に、一時は日中ベースで8カ月ぶりの高値を付けた。同社株をショート(売り持ち)にしている投資家が「世紀の大やけど」を負うというイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の昨年5月の警告が、ようやく現実のものになった。

Elon Musk
?@elonmusk

Oh and uh short burn of the century comin soon. Flamethrowers should arrive just in time.

43,584
22:02 - 2018年5月4日
Twitter広告の情報とプライバシー

3,986人がこの話題について話しています

  予言的中までの道のりはマスク氏の想像以上に長かったかもしれないが、S3パートナーズのイーホリ・ドゥサニウスキー氏によると、24日のテスラ株急騰により、空売り投資家は時価評価で約13億6000万ドル(1500億円)の損失を出した。空売り投資家が今年これまでに稼いだ利益20億ドルの約7割が吹き飛んだ計算になる。

テスラの上海ショールーム
  テスラ株は寄り付きで20%上昇し304.93ドルと、日中ベースで3月1日以来の高値を付けた。
  テスラ株の値下がりを見込む空売り投資は、株価が3年ぶり安値となった6月、約51億6000万ドルの利益を生んだ。売り持ちは9月にピークをつけた後は減っているが、S3のデータによるとそれでも浮動株全体の約23%(約81億ドル相当)を占めている。
原題:
Musk Makes Good on ‘Short Burn of Century,’ 18 Months Later (2)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-24/PZW12I6TTDS101?srnd=cojp-v2


 
原油安がもたらすサウジリスクのさらなる上昇
来日をドタキャン、苦境に立たされるムハンマド皇太子
2019.10.25(金)藤 和彦
世界情勢 エネルギー・資源

サウジアラビアを訪問したロシアのプーチン大統領と会談したムハンマド皇太子(2019年10月14日撮影、写真:代表撮影/Russian Look/アフロ)
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(藤 和彦:経済産業研究所 上席研究員)
 相場が大きく上昇してもその後すぐに元の水準に戻ってしまうことを市場関係者は「行って来い」と表現するが、最近の原油価格はまさにこの表現がぴったりである。
 9月14日にサウジアラビアの石油施設への大規模攻撃があったにもかかわらず、米WTI原油先物価格は1バレル=50ドル台半ばで推移している。
 世界経済の減速懸念が重しとなり、市場関係者のセンチメントが悪化しているためだが、実際の需給面の動きはどうなっているか見てみたい。
原油需要低迷で1バレル35ドルの憶測も
 まず供給面だが、OPECと非加盟主要産油国で構成する「OPECプラス」は来年(2020年)3月まで日量120万バレルの減産を実施しており、直近の遵守率は136%と堅調である。
 ロシアのプーチン大統領は10月14日にサウジアラビアを訪問し、エネルギー分野を中心とする経済協力関係の強化で合意した。OPECプラスの枠組みを支えるロシアとサウジアラビアの関係は良好である。
 一方、OPECプラスにとって「頭痛の種」となっている米国の直近の原油生産量は、日量1260万バレルと過去最高を維持している。米エネルギー省によれば、今年の原油生産量は前年比127万バレル増の日量1226万バレルになる見込みだ。
 ただし、将来の原油生産を左右する石油掘削装置(リグ)の稼働数は低迷が続いている。また、米国の原油生産を牽引するシェールオイルの11月の生産量は過去最高の日量897万バレルとなるものの、前月比0.6%増とほぼ横ばいである。シェールオイルの主要生産地であるパーミアン鉱区ではここ数年の乱獲の反動が顕著になりつつあり(10月8日付OILPRICE)、ゴールドマンサックスは10月20日、「来年のシェールオイルの生産の伸びは今年に比べて大幅に鈍化する」との予想を示した。ロシアでも「シェールオイルの生産は近いうちに頭打ちになる」との見方が出ている(10月22日付OILPRICE)。来年以降は、この傾向が顕著になるだろう。
サウジアラビアの国庫は「火の車」
 次に需要面だが、世界最大の原油需要国である米国で原油在庫が再び拡大基調となっている。冬場の需要期に向けて、米国内の製油所が定期改修の時期に入っているのがその理由である(製油所の稼働率が86%に低下)。米国の製造業景況感指数(ISM指数)が10年ぶりの低水準を記録したことも気になるところである。
 世界最大の原油輸入国となった中国の9月の原油輸入量は日量1008万バレルとなり、今年4月以来の1000万バレル台となった。原油処理量も堅調だが、鉱工業生産が低迷していることから「実需が伴っていないのではないか」との疑念が強まっている。
 国際エネルギー機関(IEA)はこのところ世界の原油需要を下方修正し続けており、市場関係者の間では「今年末の原油価格は1バレル=35ドル前後まで下げるのではないか」との憶測も出てきている(10月21日付日本経済新聞)。
 OPECプラスは12月5日にOPEC総会を開催する予定である。原油価格の上昇が見込めないなか、「さらなる減産が必要ではないか」と予測する向きが増えている(10月10日付OILPRICE)。しかし、主要産油国の動きは鈍い。
 ロシアのノヴァク・エネルギー相は10月14日、「OPECプラスの合意修正に関する協議は進められていない」との認識を示した。サウジアラビアも「減産合意を遵守していないイラクやナイジェリアがその姿勢を正すべきである」としており(10月22日付ロイター)、現時点ではさらなる減産について慎重である。
サウジアラビアの国庫は「火の車」
 現在実施されている協調減産は事実上「サウジアラビアの大幅減産」で支えられていると言っても過言ではないが、その代償は大きい。
 国際通貨基金(IMF)は10月15日、サウジアラビアの今年の経済成長率の見通しを前回の1.9%から0.2%へと大幅に下方修正した。原油の大幅減産が災いしている。サウジアラビアの昨年の経済成長率は2.2%と比較的好調だったが、今年は一昨年と同様マイナス成長となるリスクが高まっている。国内景気を下支えしようにも国庫は「火の車」である。
 サウジアラビア政府は10月中旬に急遽25億ドル規模のイスラム債を発行するなど資金調達にあくせくしているが、頼みの綱は相変わらず国有石油会社、サウジアラムコの新規株式公開(IPO)である。
 サウジアラムコのIPOについては当初5%分の株式を広く海外に公開して1000億ドルの資金を調達する予定だった。しかし、その目論見は変更を余儀なくされている。海外の投資家のサウジアラムコに対する評価が思うように上がらない現状から、国内投資家への依存を高めることでIPOの年内完了を推し進めようとしている(10月23日付ブルームバーグ)。サウジアラビアの公務員はサウジアラムコ株の購入を義務づけられており(10月9日付OILPRICE)、「愛国的な動機による株式の強制取得で600億ドル以上を国内から調達しようとしている」との噂がもっぱらである。
フーシのドローン攻撃の脅威
 政府の強硬策に慌てたサウジアラビア通貨庁は、サウジアラムコのIPOを前に国内銀行のサウジアラムコ向けの与信状況を緊急点検している(10月9日付ロイター)。IPOに参加すると予想される多くの国内投資家(600〜700万人)に各銀行が購入資金を融資できるかどうか心配だからだ。借金してまでサウジアラムコ株を購入させられる国民のムハンマド皇太子への不満が高まることは想像に難くない。
 これを嫌気したからだろうか、国内の株式市場では「投げ売り」が続いており(10月15日付ZeroHedge)、サウジアラムコのIPOは国内でも難航している。
サウジを襲うフーシのドローン攻撃
 サウジアラビアの外交に目を転じると、イエメンを巡る情勢が複雑な様相を呈し始めている。
 サウジアラビアが主導するアラブ連合軍は、イエメンの反政府武装組織「フーシ派」(フーシ)の停戦の呼びかけにもかかわらず、イエメンのサナア等(フーシの支配地域)に対する空爆を続けている。これに対し、フーシはサウジアラビア南部でドローン攻撃に加え地上戦を展開している。
 イランメディアは10月15日、「サウジアラムコの製油所で爆発が発生し、18人が死傷したが、その原因は明らかになっていない」と報じた。この爆発は、フーシによるさらなるドローン攻撃の可能性がある。
 9月14日のドローンによる石油施設への大規模攻撃は世界の軍事関係者に衝撃を与えた。中東地域における米国やイスラエルの圧倒的な軍事力の優位が揺らいでいるが、その背景にはイランの戦略がある。イランが低コストで製造できる軍事用ドローンの開発に力を入れ、その開発技術をパレスチナやレバノンの武装組織、フーシに提供するとともに、「ドローンを操縦する戦闘員(ドローン操縦戦闘員)」をイラン・テヘラン郊外にあるイマームホセイン大学(精鋭部隊の技術者を育てる拠点)で養成、中東各地に派遣しているのである(10月18日付NHK国際報道2019)。
壁に突き当たるムハンマド皇太子の強硬路線
 フーシは10月13日、「サウジアラビア主導のアラブ連合軍は、フーシの攻撃停止案の受諾を渋っている」と批判したが、サウジアラビアでも、ムハンマド皇太子の強硬路線とは異なる動きが出始めている。
 10月18日付アルジャジーラは、「最近サウジアラビアの国防副大臣(ムハンマド皇太子の実弟)がフーシのトップとのチャンネルを開き、今後の戦闘の鎮静化、さらにはサウジアラビアとイエメンの間の国境での停戦について、合同委員会を設置して協議することを提案した」と報じた。
 また、サウジアラビアとともにイエメン内戦に介入していたアラブ首長国連邦(UAE)の融和姿勢が、このところ際立っている。UAEは既にイエメンから陸軍を撤収しているが、10月に入ると「UAEのムハンマド皇太子の弟がテヘランを訪問し、イランとの関係改善を提案してきた」という(10月18日付アルジャジーラ)。
サウジリスクが左右する原油価格
 イランの石油タンカーが10月11日、サウジアラビアのジェッダ沖で高速艇から発射された2発のロケット弾を被弾するという事案が発生したが、イラン政府は「イスラエルが関与した」との見方を強めている。サウジアラビアとイラン両国間の緊張緩和を目的とするパキスタン首相のイラン訪問(12日)直前に、タンカー攻撃が起きたことから、両国の接近を嫌うイスラエルが妨害工作を行ったというわけである。
 しかし中東地域では、シリアのクルド人勢力を見捨てたトランプ外交への不信感は高まるばかりである。米国頼みのムハンマド路線は修正を余儀なくされるだろう。
 ムハンマド皇太子はイスラエルとの協調による「イラン封じ」も企ててきたが、頼みのネタニエフ首相がレームダック化しており、水泡に帰しつつある。
原油価格を大きく左右するサウジリスク
 10月22日、日本では即位礼正殿の儀が行われ世界各国の首脳が多数来日したが、ドタキャンした首脳が2人いた。1人はトルコのエルドアン大統領であり、もう1人はサウジアラビアのムハンマド皇太子である。
 エルドアン大統領は、シリアのクルド人支配地域への軍事介入問題で急遽ロシアでプーチン大統領と会談したことが明らかになっている。皇室と親密な関係にあるムハンマド皇太子が来日しなかった理由を筆者は寡聞にして承知していないが、国内外の苦境を察すれば来たくても来られなかったのが実情だったのではないだろうか。
 このような状況で原油価格がさらに下落したら、ムハンマド皇太子に対する批判はこれまでにはないほど高まる可能性が高い。
 思い起こせば昨年10月時点で「WTI原油価格はイランリスク(米国の制裁発動)により1バレル=80ドルを超える」との予想だったが、年末には40ドル台にまで下落した(筆者は昨年夏の段階で50ドル割れがありうると予想していた)。
 今年は逆のことが起こるかもしれない。原油安がもたらすサウジアラビア情勢の不安が顕在化することにより、「年末の原油価格は1バレル=70ドルを超える」とのシナリオもありうるのではないだろうか。
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シェールブームの異変を織り込んでいない原油市場
原油市場が冷静さを保っていられるのはシェールオイルのおかげであると言っても過言ではない。だがここに来てそのブームに異変が生じていると報じられている。


世界の原油供給の2割を脅かすドローン攻撃
アラビア半島全土に広がる大規模爆撃の脅威
藤 和彦


サウジのエネルギー相はなぜ突然解任されたのか
政府に食い物にされるサウジアラムコ
藤 和彦


年末にかけて急騰する可能性が出てきた原油価格
継続する中東の地政学リスク、米国では原油増産に急ブレーキ
藤 和彦


サウジの地政学リスクを織り込んでいない原油市場
原油価格は上昇するも、決して歓迎できないシナリオとは
藤 和彦

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58027

ワールド2019年10月25日 / 14:23 / 35分前更新
中国の9月原油輸入、サウジ産が最多 イラン・ベネズエラ産は減少
Reuters Staff
1 分で読む

[北京 25日 ロイター] - 中国税関総署が25日公表した統計によると、9月の同国の原油輸入は、サウジアラビア産が引き続き最多となった。米国の制裁の影響でイラン産やベネズエラ産の輸入減少が続いていることなどが背景にある。

9月14日に起きたサウジ石油施設への攻撃による影響は10月の輸入に影響する可能性が高い。

9月のサウジ産原油の輸入は717万トン(日量約174万バレル)。前月の779万トンから減少したが、前年同月(378万4000トン)比では2倍近い水準となった。

1─9月の輸入は前年同期比55.4%増の5970万トンとなった。

一方、イラン産原油の輸入は53万8878トンと、前月の78万7657トンから減少し、前年同月の213万トンを大幅に下回った。米国の制裁や中東情勢の緊迫化が影響した。

ベネズエラ産の輸入も58万8698トンに減少。前月は145万トン、前年同月は80万8593トンだった。

中国石油天然ガス集団(CNPC)は9月、米制裁への違反を回避するため、前月に続いてベネズエラ産原油の積み込みを見送った。
https://jp.reuters.com/article/china-economy-trade-oil-idJPKBN1X40FS?il=0

 
米10年国債利回り、1年以内に3%へ−フランクリンのデサイ氏
Vivien Lou Chen
2019年10月25日 12:11 JST
• 3%に達する時期については、年内とした7月時点の予想から変更
• 信じられないほど放漫な財政政策の道を進み米国債相場は下落へ
米10年国債利回りが100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し米国債相場が2011年以降で最良の年間パフォーマンスを記録しそうな今年は、利回り上昇を予想した投資家には厳しい年だ。
  ウォール街のコンセンサスでは、米10年債利回りは21年半ばまで2%未満にとどまる見込み。世界的な成長減速と米連邦準備制度の今年3回目の利下げ観測の中でこうした予想が優勢となっている。
  しかし、フランクリン・テンプルトン債券グループの最高投資責任者(CIO)、ソナル・デサイ氏は、利回りが3%という昨年12月以来の高水準に戻るとの予想を堅持している。現在は1.75%前後。
  3%に達する時期については、年内とした7月時点の予想から向こう1年以内に変更した。同氏の利回り上昇予想は、膨れあがる財政赤字や財政・金融両面での景気刺激見通し、雇用市場の強さおよび賃金上昇加速によってインフレ率が高まるとの見解に基づいている。
  デサイ氏はインタビューで、「今年初め時点で連邦準備制度が市場にどれだけ影響されるかを読み違えていた」と語ったが、利回り3%予測についての質問には「1年以内に3%があり得ないと思うかというと、そんなことは全くない。私の見るところに基づいて、あり得ると思う」と述べた。

  同氏によれば、来年の米大統領選挙も利回り押し上げ要因だ。共和、民主両党が共に「財政について非常に緩い政策を掲げている。従って、財政赤字は選挙結果にかかわらず拡大し、米国債の発行が増え需要を上回ると予想される。緩和的な金融政策とともに、信じられないほど放漫な財政政策の道をさらに進むことによって米国債相場が下落するだろう」と同氏は語った。
原題:Franklin’s Desai Sticks to 3% Yield Call That’s Elusive as Ever(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-25/PZWSJF6S972801?srnd=cojp-v2



http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/477.html

[経世済民133] 地味だった消費増税前の駆け込み、年金世帯が主因か ユーロ圏の景気低迷、ECB緩和措置を正当化 ロシア中銀、政策金利を7%から6.5%に引き下げ 米ミシガン大消費者信頼感指数確報値は95.5(予想:96.0) 
コラム2019年10月25日 / 19:03 / 4時間前更新

地味だった消費増税前の駆け込み、年金世帯が主因か
田巻一彦
2 分で読む

[東京 25日 ロイター] - 駆け込みと反動が小さかったと言われた今回の消費増税。だが、その裏には年金受給世帯が全体の過半数を占め、個人消費からバイタリティーが失われた構造が隠されていたのではないか。実際、住宅や自動車の駆け込みがほとんどなかったのに対し、家電や日用品などに駆け込みが集中した。

政府・日銀は今後、増税後の消費への影響を精査していくことになるが、高齢化率の高い地方を中心に予想外に消費が弱くなる現象が出てくる懸念があると予想する。

<家電・日用品に偏った駆け込み需要>

冷蔵庫や洗濯機などの白物家電は、9月の出荷額が前年比20.2%増の2385億円だった。家電量販店では、大型テレビやパソコンなどの販売も前年比で2桁%増となったところが続出した。

政府・日銀のヒアリングによると、9月の最終週に家電の販売が急増。結果として家電の駆け込みの規模は、前回の2014年増税時に匹敵する規模に膨れ上がったもようだ。

また、バス・トイレタリー製品を含む日用品の駆け込み需要も活発化。9月の全国スーパー売上高は、前年比2.8%増と6カ月ぶりにプラスを記録した。

米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)(PG.N)の今年7─9月期売上高は前年比7%増の177億ドルだったが、日本での販売は同10%を超える伸びとなった。増税前の駆け込み効果とみられている。

一方、一戸建て住宅やマンション販売は9月に前年割れしているもよう。9月の自動車販売台数は前年比12.8%増となったが、1─9月でみると同2.8%増にとどまる。業界関係者は、9月の駆け込みが想定の3分の1程度にとどまったとみている。

14年と今回を比べると、値段の高い住宅や自動車などへの消費者の「食指」は動かず、手ごろな価格で購入できる身近な物に駆け込みの対象がシフトしたことがわかる。

資金的に余裕のある富裕層が宝飾品などをまとめて購入したことは、9月の百貨店売上高が前年比23%増になったことで示されている。しかし、これは個人消費全体を示したデータとはいえない。

<年金受給世帯、全体の52.3%>

なぜ、駆け込み需要が地味になったのか──。端的に言えば、高齢化の進展で年金受給者の割合が増え、家計に余裕がなくなってきているからではないか。

厚生労働省の2018年国民生活基礎調査によると、公的年金・恩給受給者のいる世帯は2668万3000世帯で、全世帯の52.3%を占める。6年前の2430万世帯から238万世帯増え、シェアも1.9ポイント上昇した。

65歳以上の高齢世帯の年間所得は、全世帯平均の550万円台の約60%にとどまっており、年金受給世帯の増加は、個人の購買力を弱める方向に作用していることをうかがわせる。

つまり、増税前、自動車や住宅などには年金世帯の駆け込み需要は集まらず、生活防衛から日用品などの前倒し購入が行われた可能性が高い。そのため、日用品などの反動減は長期化する可能性がある。

さらに2%の増税分によって、家計の収支が悪化しないよう、消費全体を長期的に抑制させることが予想される。

特に高齢化世帯が多い地方では、今年末から来年にかけて「節約」ムードが強まり、地方経済の沈滞が一層、目立つ展開になりそうだ。

米中貿易摩擦の影響で、世界貿易は前年比マイナスに転落しつつあり、輸出型の製造業野業績悪化は長期化が予想される。

そこに内需の柱である個人消費にも「重し」がのしかかることになると、2020年の国内経済はかなりの不透明感に包まれることになり、政府・日銀の適切な景気判断が一段と重要になる。
https://jp.reuters.com/article/column-tax-idJPKBN1X415D


 

 
ビジネス2019年10月25日 / 19:28 / 4時間前更新
ユーロ圏の景気低迷、ECB緩和措置を正当化=ベルギー中銀総裁
Reuters Staff
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[フランクフルト 25日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーであるウンシュ・ベルギー中銀総裁は、ロイターのインタビューで、最近の一連の弱い経済指標は、欧州中央銀行(ECB)が前月発表した緩和策を正当化し、必要ならさらなる緩和が可能と述べた。

超緩和的な政策で、金融の安定への懸念が生じるのはもっともだが必要な措置であり、次期総裁のラガルドがECBの戦略をより広範囲に見直す時間を与えることになると指摘した。

前月発表した量的緩和の再開については、通常は合議的な理事会の3分の1のメンバーが反対した。

ウンシュ氏は「現在の状況が一時的な低迷局面ではないと昨年時点で分かっていたら、(2018年に)量的緩和を停止しなかった」とし、「決定以降、前向きな内容はみられないが、今後出てくるデータもあまり前向きな内容でなかった場合、その決定の論拠が強まる」と述べた。

追加緩和を巡っては、過度な金融緩和で銀行の利ざやが圧縮し、貸し出しを止めたり、超低金利の融資が資産バブルを生むといった懸念が指摘されている。

ウンシュ氏は、そうした懸念はもっともだと認める一方で、ECBの緩和措置は限界には程遠いと指摘した。

期限を設けない量的緩和は、ラガルド次期総裁の手を縛ってしまうとの指摘がある。ウンシュ氏は「この問題は何度も蒸し返されていただろう。この決定はいずれにせよ下されていたと思う。今は強固な枠組みができている」と述べた。
https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-wunsch-idJPKBN1X418T

 
外国為替2019年10月25日 / 22:08 / 1時間前更新
ECBの金融政策決定、時宜にかなう=リトアニア中銀総裁
Reuters Staff
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[ワルシャワ 25日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのバシリアウスカス・リトアニア中銀総裁は25日、ECBによる直近の金融政策決定は時宜にかなっているという認識を示した。

ECBは24日の定例理事会で政策金利を据え置いた。また前回9月の決定通り、11月から月200億ユーロのペースで資産買い入れを再開し、「必要な限り」継続することを確認した。

総裁は当地での会合で「直近の金融政策決定はとても時宜にかなっており、中銀の中核責務とも合致している」と語った。
https://jp.reuters.com/article/poland-ecb-vasiliauskas-idJPL3N27A3FB?il=0

 

ビジネス2019年10月25日 / 19:53 / 3時間前更新
ロシア中銀、政策金利を7%から6.5%に引き下げ
Reuters Staff
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 10月25日、ロシア中央銀行は政策金利を7%から6.5%に引き下げると発表した。写真は中銀本店。2018年12月3日、モスクワで撮影(2019年 ロイター/Maxim Shemetov)
[モスクワ 25日 ロイター] - ロシア中央銀行は25日、政策金利を7%から6.5%に引き下げると発表した。

https://jp.reuters.com/article/russia-rate-idJPKBN1X41B5
 

東京外為市場ニュース2019年10月25日 / 23:03 / 8分前更新
BRIEF-10月の米ミシガン大消費者信頼感指数確報値は95.5(予想:96.0)
Reuters Staff
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[25日 ロイター] -

* 10月の米ミシガン大消費者信頼感指数確報値は95.5(予想:96.0)

* 10月の米ミシガン大景気現況指数確報値は113.2

* 10月の米ミシガン大消費者期待指数確報値は84.2

* 10月の米ミシガン大調査、1年先の期待インフレ率確報値は2.5%

* 10月の米ミシガン大調査、5年先の期待インフレ率確報値は2.3%
jp.reuters.com/article/BRIEF-10月の米ミシガン大消費者信頼感指数確報値は95.5予想:96.0-idJPZPN55PG04?il=0
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/478.html

[経世済民133] 日本郵政がゆうちょ銀株で巨額減損リスク、過去最大の2兆9000億円規模 ソフトバンクGを格下げ、ウィー問題認識「甘かった」50億ドル超の評価損計上を計画 欧州株ファンドに資金流入、2018年2月以来の高水準  今年3回目の米利下げ決定後、休止を示唆か
日本郵政がゆうちょ銀株で巨額減損リスク、過去最大の2兆9000億円規模
配当政策や第3次売り出しに影響も
ダイヤモンド編集部 布施太郎:副編集長

ビジネス 週刊ダイヤモンドSCOOP
2019.10.25 5:22

日本郵政が巨額の減損リスクを抱えている。その規模は約2兆9000億円。爆弾の火元は傘下のゆうちょ銀行株式だ。破裂すれば、国内企業で過去最大級の減損額となり、日本郵政が配当の一義的な原資に充てる利益剰余金は吹き飛ぶ。将来の配当政策だけでなく、来年以降の政府が保有する株式の第3次売り出しや、その売却資金を当てにした復興財源にも影響を及ぼしかねない。(ダイヤモンド編集部副編集長 布施太郎)

株価866円で強制減損ポイントにタッチ
「恐ろしすぎて、誰も口に出せない」――。ある国内運用会社のファンドマネジャーは小声で打ち明けた。市場関係者の間でひそかに広がっている不安の源が、日本郵政の巨額減損リスクだ。

 日本郵政は、ゆうちょ銀行の発行済み株式(自己株式を除く)の89%を保有しており、有価証券報告書によると、日本郵政単体のバランスシート(貸借対照表、BS)に計上している簿価は総額5兆7800億円に上る。日本郵政は1株当たりの簿価を開示していないが、簿価総額を保有株式数(33億3700万株)で割ると1732円。会計ルールでは、簿価の50%以下にまで下落すると事実上の強制減損になるため、仮に株価が簿価の半値である866円となった場合、5兆7800億円の半分の約2兆8900億円が吹っ飛ぶことになる。

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減損損失計上が絵空事ではない理由
 ゆうちょ銀の株価は、世界的な金利低下の流れが嫌気され、5月に1200円を割り込んだ。その後も下がり続け、年初来安値は8月26日に付けた947円。足元では1000円近辺で推移している。2015年11月に持ち株会社の日本郵政と傘下のゆうちょ銀、かんぽ生命保険の3社が同時上場した際の初値1680円を約4割下回る低空飛行だ。

 10月24日の終値は1071円で、強制減損のポイントまでは少し距離があるように見える。しかし、一度は947円まで下げているだけに、「日銀のマイナス金利の深掘りなど、何かショックがあれば到達してもおかしくない水準」と、ある銀行アナリストは分析する。日本企業として過去最大規模の減損損失計上は決して絵空事ではない。

減損回避には「株価の回復の見込み」が問われる
 もちろん、ワンタッチで減損ポイントにヒットしたからといって必ず損失計上しなければならないというわけではない。減損が必要かどうかは、時価が1年以内にほぼ簿価の水準まで「回復する見込み」があるかどうか、によるからだ。例えば、会計監査を担当する監査法人に対して回復の見込みを合理的な証拠をもって納得させることができれば、損失計上を免れることも可能ではある。どの時点の株価を基準にするのかについても「1カ月の平均」や「9月末や3月末などの期末の終値」など、企業が設けた減損処理の内部ルールが適用される余地もある。

 もっとも、強制減損による損失が発生したとしても日本郵政の連結決算には反映されない。連結BSにはゆうちょ銀が保有する資産・負債が計上されているだけで、ゆうちょ銀の株式が載っているわけではないからだ。どれだけ巨額減損を出したとしても、影響はあくまで単体決算にとどまることになる。このため「純粋持ち株会社の単体決算の損益計算書(PL)上の損失にどれだけ意味があるのか」(金融当局幹部)との見解も出る。

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「配当」という観点から問題が浮き彫りに
利益剰余金は瞬間蒸発
 だが、配当という観点で見たら、そんなことを言っていられない苦境も、一方で浮かび上がる。

 というのも、会社法上、株主に対する配当は、単体で原資となる分配可能額(配当可能利益)を確保しておかなければならないためだ。日本郵政の場合(19年3月末期)、配当に回せるのは、まず一義的な原資としての利益剰余金が7685億円だ。強制減損に追い込まれれば、この利益剰余金は“瞬間蒸発”してしまい、年間の配当総額約2000億円の原資は枯渇する。もちろん、会社法上は、「その他資本剰余金」を配当に回すことも可能だ。日本郵政のその金額は3兆6300億円に達するため、資本金や資本準備金の取り崩しに頼らずとも配当に回すことができる。

 しかし、「配当は一義的には利益剰余金から出すべき。資本剰余金から出すときはやむにやまれない場合だけ」(大手銀行のCFO〈最高財務責任者〉経験者)とされる中で、日本郵政が資本剰余金から配当を捻出するとなれば、将来の配当の「確からしさ」に疑念が生じかねない。

 さらに、日本郵政の株主にとってみると、税務上の手続きが煩雑になる可能性もある。通常の利益剰余金からの配当であれば「配当所得」として源泉徴収されるが、資本剰余金からの配当の場合は、資本の払い戻しとなり、「譲渡所得」の扱いになる。株主は自分で損益を計算して確定申告をするのが原則となる。税務上の取り扱いが異なるだけでなく、日本郵政株式の取得価額の調整も必要になる。

 実際、昨年には資本剰余金からの配当について、投資家の確定申告などが適切に処理されなかったケースが発生し、日本証券業協会が上場企業に注意喚起したこともある。

 これまでの2回の売り出しで、財務省や引き受け証券会社はもっぱら個人投資家を念頭に販売戦略を練ってきた。その結果、日本郵政の株主構成は、政府に次いで大きいのがシェア21%を占める個人だ。その数は61万人を超える。

 配当の「確からしさ」に疑念が生じ、加えて、通常の株式配当とは異なる税務上の取り扱いとなって煩わしさが生じる――。証券会社からは「個人株主が果たしてそんな面倒な手続きを受け入れるだろうか」(証券会社役員)との声も漏れる。そうした株式となったら、個人投資家に背を向けられてしまわないか。

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日本郵政株の第3次売り出しへの影響も
日本郵政株式の第3次売り出しへの影響も
 日本郵政の売り出しの行く末は、東日本大震災の復興予算にも影響を与えかねない。

 財務省は保有する日本郵政株式の第3次売り出しに向けて5月に主幹事証券会社を公表。当初は8月にも売却が実施されるとの見方も出ていたが、日本郵政グループのかんぽ生命で勃発した不正販売問題により「売却時期は来年以降にずれ込んだ」(引き受け証券会社幹部)。政府は郵政民営化法に基づいて保有する日本郵政株式を3分の1までに減らさなければならないが、これまでの2回にわたる売却で保有比率は56.9%にまで引き下がっている。最後となる3次売却では23.5%を放出する計画だ。

 ここで問題になるのは、東日本大震災を対象にした復興財源確保法で、日本郵政株の売却収入4兆円がその財源に組み込まれている点だ。2回の売却ですでに2.8兆円は確保しており、残り1.2兆円を調達する算段だが、日本郵政の株価の低迷や、投資家層の需要が盛り上がらなければその目標の達成が危ぶまれることになる。

 市場関係者が声高に日本郵政の減損リスクについて語りたがらないのは、「国の予算に関わるようなテーマを大っぴらにすることで、政府から目を付けられたくない」(運用会社の最高運用責任者)からだ。

 15年に、親子上場の批判を物ともせずに鳴り物入りで上場を果たした日本郵政グループの3社。しかし、現在見えているのは上場子会社の株式保有リスクの顕在化に立ちすくむ日本郵政の姿だ。日本郵政の民営化の道筋が、根源から問い直されるときが早晩やって来るかもしれない。

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https://diamond.jp/articles/-/218467


ソフトバンクGを格下げ、ウィー問題認識「甘かった」−ジェフリーズ
日向貴彦
2019年10月25日 17:13 JST
ジェフリーズは25日、ソフトバンクグループ株の投資判断を「買い」から「ホールド」に引き下げた。米ウィーワークの収益性と企業統治に懸念が生じて以降、担当アナリストによる格下げは初めて。

  ブルームバーグのデータによると、アナリストのアツール・ゴヤール氏は2014年9月以降、買い判断を続けてきた。今回目標株価も5570円から4530円に変更した。

  同氏はリポートで、ウィーワークへの投資が「ゼロになるのが底だと信じたわれわれは甘かった」と分析。追加出資を発表したことでリスクへの懸念が増大した、と述べた。

WeWork To Adjust Corporate Governance, Valuation Ahead Of IPO
Photographer: Drew Angerer/Getty Images North America
  また、ビジョンファンドについても1号ファンドの投資が完了してない段階で2号ファンドに焦点を当てていることは性急で、懸念材料だと指摘。2号の組成をやめるか、少なくとも遅らすことを望むとしている。

  ソフトバンクは今週、シェアオフィス事業を手掛けるウィーワークの1兆円の金融支援策を発表。50億ドル(約5400億円)を貸し付けるほか、既存株主から最大30億ドルの株式を公開買い付け(TOB)した上で15億ドル相当を出資し、出資比率を80%程度まで高める。

  ソフトバンクG株は25日の取引で2カ月ぶりに4営業日続落し、終値は4017円と1月24日以来の安値となった。

ソフトバンクグループ株の年初来推移
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-25/PZX3QWT0G1KW01?srnd=cojp-v2


 

ビジネス2019年10月25日 / 08:32 / 11時間前更新
ソフトバンクG、50億ドル超の評価損計上を計画=BBG
Reuters Staff
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[東京 25日 ロイター] - ブルームバーグ(BBG)が関係筋の話として報じたところによると、ソフトバンクグループ(9984.T)はウィーワークやウーバー・テクノロジーズ(UBER.N)など一部保有株式の価値低下を踏まえ、少なくとも50億ドルの評価損計上を計画している。

報道によると、ソフトバンクGは11月6日に7─9月期決算を発表する際、評価損について公表する見通し。

ソフトバンクGの広報担当者は報道についてコメントを控えた。

ソフトバンクGは今週、共用オフィス「ウィーワーク」運営の米ウィーカンパニーへの50億ドルの追加融資や30億ドルを上限とする株式取得などの支援策で合意。[nL3N2780TS]

格付け会社ムーディーズのアナリスト、柳瀬志樹氏は、50億ドルの評価損がソフトバンクGの投資ポートフォリオに与える影響は比較的小さいと指摘。6月時点での投資ポートフォリオは2400億ドルに上った。

ムーディーズは23日、投機的等級の「Ba1」であるソフトバンクGの格付けを確認している。

柳瀬氏は、ウィーの経営状態がさらに悪化する可能性は排除できないと指摘し、同社を救済するためにソフトバンクがさらに融資する必要が生じるかもしれないとした。

*内容を追加しました。
https://jp.reuters.com/article/softbank-loss-idJPKBN1X32T9

日本株、今後の見通し巡りアナリストの意見二分−最近の反発受け
Moxy Ying、Min Jeong Lee
2019年10月25日 10:32 JST 更新日時 2019年10月25日 16:32 JST
• 懐疑派は貿易摩擦の影響を懸念、強気派は企業収益改善見込む
• TOPIXは月初来で3.5%上昇、予想株価収益率は5年平均下回る
先進国市場で日本株はパフォーマンス最悪の投資先の1つだったが、最近の反発を受けて、アナリストの間で今後の動向を巡る見方が分かれている。
  懐疑派のブラックロックは投資家に株高を追いかけないよう助言。ピクテ投信投資顧問の松元浩常務は、日本経済は2大貿易相手国である米中両国の貿易協議が決裂する可能性に依然としてさらされているとして、市場に「ゴーサイン」を出すのは時期尚早だと語る。
  一方、モルガン・スタンレーとUBSグループのウェルス・マネジメント部門は強気派で、いずれも割安なバリュエーション(株価評価)や収益モメンタムの改善などを理由に挙げている。今のところ市場は強気派に有利に働いており、TOPIXの月初来上昇率は24日時点で3.5%と、域内2位だ。
Catching Up
Japan is the second-best market in Asia this month

Source: Bloomberg
  UBSウェルス・マネジメント・チーフ・インベストメント・オフィス(CIO)のアナリスト、小林千紗氏は、投資家は貿易摩擦による影響への懸念から日本株について悲観的過ぎると指摘。企業収益の改善と海外投資家の市場回帰を背景に、来年は上向くと予想した。
  さらに、最近の反発にもかかわらず日本株はなお割安だと同氏は分析。ブルームバーグの集計データによると、TOPIX構成企業の来年の予想株価収益率は13倍と、5年間の平均を下回っている。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iJm3kUq9G.Vs/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/576x-1.png
  野村ホールディングスでアジア太平洋地域の株式調査共同責任者を務めるジム・マカファティー氏は、自社株買い増加は日本市場にとって良い兆候だと述べたほか、収益モメンタムがポジティブになれば、日本株はバリュエーションがますます伸長しているように見える米国株との比較で、より魅力的になるだろうと語った。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iZTuGaTzsWSE/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/576x-1.png
原題:Japan’s Eye-Catching Rally Splits Wall Street Titans on Outlook(抜粋)
(最終段落で野村のアナリストのコメントを追加して更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-25/PZWGTHT1UM0W01?srnd=cojp-v2


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-25/PZWGTHT1UM0W01?srnd=cojp-v2

ビジネス2019年10月25日 / 20:09 / 3時間前更新
欧州株ファンドに資金流入、2018年2月以来の高水準
Reuters Staff
1 分で読む

[ロンドン 25日 ロイター] - バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)が25日発表した週間調査によると、23日までの週は、世界経済に対する弱気な見方が後退し、欧州株ファンドに2018年2月以来、最大規模の資金が流入した。

BAMLがEPFRのデータに基づきまとめたところによると、欧州株ファンドには3億ドルが流入。16週間ぶりの資金流入となった。

株式ファンド全体では38億ドルの流出。債券ファンドには108億ドルが流入、コモディティ(商品)ファンドは5週連続の資金流入で3億ドル流入した。

市場のセンチメントを示す「ブル・ベア指標」は1.9から2.6に上昇。「ブル・ベア指標」は7週間にわたり「極めて弱気」領域にあった。
https://jp.reuters.com/article/markets-flows-baml-idJPKBN1X41D1

 

今年3回目の米利下げ決定後、休止を示唆か−エコノミスト調査
Christopher Condon、Chris Middleton
2019年10月25日 13:26 JST
• 今月末のFOMCで0.25ポイント利下げの見通しと85%が回答
• 12月の利下げ見送りでシグナルの発信あるか、見解が分かれる
29、30両日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)について、ブルームバーグがエコノミスト40人を対象に実施した最新調査では、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0.25ポイント引き下げて1.5−1.75%とする決定が下されるとの回答が、全体の85%に達した。
  また、今月末にこのような追加利下げがあった場合、FOMC声明かパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見を通じて、次回利下げがあるにしてもそれまでしばらく休止する可能性を金融当局が示唆するだろうとの回答が56%に上った。調査は21−24日に行われた。
Prediction: Quarter-Point Cut
Median probability assigned to FOMC outcomes

  ピクテ・ウェルス・マネジメントの米国担当シニアエコノミスト、トーマス・コスターグ氏は「パウエル議長はさらなる利下げに何らかの形で抵抗を示唆する可能性があり、タカ派的な利下げとなるのではないか」との見方を示した。
  米金融当局は既に7月と9月の2会合連続で0.25ポイントずつの利下げを決定。急激な景気悪化のリスクが高まったことがその理由であり、パウエル議長は先月、世界的な成長鈍化や通商摩擦を巡る不確実性、当局目標を下回って推移するインフレ率などに言及した上で、一連の動きを「保険」になぞらえた。

パウエル議長
Photographer: Zach Gibson/Bloomberg
  月末のFOMCで今年3回目の利下げに踏み切った場合、パウエル議長ら当局者がそれで保険として十分と確信を持てるかどうかが、次の大きな焦点となるだろう。当局者がそのように考えたとしても、パウエル議長がそれを表明する保証はない。
  オックスフォード・エコノミクスのエコノミスト、キャスリーン・ボストジャンシク氏は「米金融当局が12月は利下げを見送る意向であるならば、パウエル議長が記者会見で何らかのシグナルを発するか見てみればよい」と話す。
  これに対し、ファースト・トラスト・ポートフォリオズのチーフエコノミスト、ブライアン・ウェズベリー氏は、金融当局がこれまでの利下げを正当化する根拠に挙げた一連の不確実性は残ったままだとして、こうしたシグナルの発信は見込まれないとしている。
About to Pause?
Economists' expectations for the upper bound of the fed funds target range

Median Estimate
Sept. Pre-FOMC Survey
Oct. 30, 2019
1.75
%
2.00
%
Dec. 11, 2019
1.75
1.75
Jan. 29, 2020
1.75
1.75
Mar. 18, 2020
1.63
1.75
Apr. 29, 2020
1.75
1.75
June 10, 2020
1.50
1.75
July 29, 2020
1.50
1.75
Sept. 16, 2020
1.50
1.75
Nov. 5, 2020
1.50
1.75
Dec. 16, 2020
1.50
1.75
End June, 2021
1.50
1.75
End 2021
1.63
1.75

原題:Fed Seen Cutting Rates Next Week and Then Hitting Pause Button(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-25/PZWSLS6S972801?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/480.html

[環境・自然・天文板6] 意識がある? 培養された「ミニ脳」はすでに倫理の境界線を超えた 科学者が警告
意識がある? 培養された「ミニ脳」はすでに倫理の境界線を超えた 科学者が警告
2019年10月25日(金)17時30分

松岡由希子
https://www.youtube.com/watch?v=koPBhfCllws

進化著しい人工脳「脳オルガノイド」  Madeline A Lancaster/IMBA/EPA
https://www.newsweekjapan.jp/stories/assets_c/2019/10/matuoka1025-thumb-720xauto-171836.jpg

<ヒトの多能性幹細胞から作製する豆粒大の人工脳「脳オルガノイド」は、現代の神経科学で最も注目されている分野のひとつだ......>
幹細胞を使ってヒトの器官の小さな三次元モデルを生成する技術は、この10年ほどで大幅に進歩した。とりわけ、ヒトの多能性幹細胞から作製する豆粒大の人工脳「脳オルガノイド」は、現代の神経科学で最も注目されている分野のひとつだ。
医学を一変させる可能性、しかし倫理上の懸念も
米ハーバード大学の研究チームが2017年に発表した研究論文では、「脳オルガノイドが大脳皮質ニューロンや網膜細胞などの様々な組織を発達させる」ことが示され、2018年4月にはソーク研究所の研究チームがヒトの脳オルガノイドをマウスの脳に移植したところ、機能的なシナプス結合が認められた。
また、カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームは2019年8月、「脳オルカノイドからヒトの未熟児と類似した脳波を検出した」との研究結果を発表している。
10カ月が経過した脳オルガノイド Muotri Lab/UCTV
脳オルガノイドのような「生きた脳」の研究によって医学が一変するかもしれないと期待が寄せられる一方、脳オルガノイドが十分な機能を備えるようになるにつれて、倫理上の懸念も指摘されはじめている。
意識を持つ可能性があるなら、すでに一線を超えている
2019年10月18日から23日まで米シカゴで開催された北米神経科学学会(SfN)の年次総会において、サンディエゴの非営利学術研究所「グリーン・ニューロサイエンス・ラボラトリ」は、「現在の脳オルカノイドの研究は、倫理上、ルビコン川を渡るような危険な局面に近づいている。もうすでに渡ってしまっているかもしれない」と警鐘を鳴らし、「脳オルカノイドなど、幹細胞による器官培養の倫理基準を定めるうえで、まずは『意識』を定義するためのフレームワークを早急に策定する必要がある」と説いた。
「グリーン・ニューロサイエンス・ラボラトリ」でディレクターを務めるエラン・オヘイヨン氏は、英紙ガーディアンの取材において「脳オルカノイドが意識を持っている可能性があるならば、すでに一線を超えているおそれがある」と指摘し、「何かが苦しむかもしれない場所で研究を行うべきではない」と主張している。
動物に移植する実験は、特に倫理的なガイドラインが必要
オヘイヨン氏は、「グリーン・ニューロサイエンス・ラボラトリ」のアン・ラム氏とともに、動物実験や人権侵害、プライバシー侵害などにつながる手法を排除する倫理原則「ロードマップ・トゥ・ニュー・ニューロサイエンス」を策定。「意識」が発生するおそれを特定するのに役立つコンピュータモデルも開発している。
脳オルカノイドの進化に伴って倫理上の懸念を示しているのは「グリーン・ニューロサイエンス・ラボラトリ」に限られない。ペンシルバニア大学の神経科学者チームは、2019年10月に発表した論文で、とりわけ脳オルカノイドを動物に移植する実験について、倫理的なガイドラインの必要性を訴えている。
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[経世済民133] 「武蔵小杉ざまあ」「ホームレス受け入れ拒否」に見る深刻な日本社会の分断『上級国民/下級国民』があぶり出す、現実に進行する「残酷な分断」守られてきた団塊の世代と見捨てられた若い世代 災害での死者数は、なぜ女性の方が多いのか
「武蔵小杉ざまあ」「ホームレス受け入れ拒否」に見る深刻な日本社会の分断
2019年10月25日(金)17時00分
真鍋 厚(評論家、著述家) ※東洋経済オンラインより転載

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東京側から多摩川を挟んで武蔵小杉を臨むと、河川敷には大量の流木が流れ着いていた(10月16日16時台、撮影:東洋経済オンライン編集部)

<貧富の差以前に「同じ人」でなくなっている>

台風19号がもたらした各地の水害。全容はまだ明らかになっていない。堤防決壊は7県59河川に達したが(10月16日現在)、未確認の地域もあるため今後も被害は拡大しそうだ。

東京をはじめとする大都市圏でも、近年に例のない浸水被害がもたらされた。多摩川の氾濫は誰もが予想していなかったことだろう。

東京都世田谷区の東急電鉄「二子玉川駅」付近の多摩川では、堤防の整備していない場所から川の水があふれ出し、住宅街へと流れ込んで膝の辺りまで冠水した。川の反対側の神奈川県川崎市では、水没したマンションの住人が死亡している。大田区田園調布でも浸水被害が発生。また、多摩川最大の支流とされる秋川では堤防が決壊した。

今回とりわけ世相を最もよく表していたのは、人気エリアとして知られる武蔵小杉における大規模な浸水被害と、それをソーシャルメディア上やネット掲示板などであざ笑う風潮だ。

SNSで「武蔵小杉ざまあ」との投稿が
JRや東急線などが走る神奈川県川崎市の武蔵小杉駅の東側は、再開発によってタワーマンションや大型商業施設が立ち並び、比較的裕福な子育てファミリー世帯が多い。浸水被害によるタワマンの停電や断水が盛んに報道されるようになると、Twitterなどのソーシャルメディアでは、「流行りにのって武蔵小杉に住み始めた子連れ家族ざまあです」「武蔵小杉のタワマン買った人ざまあが見れたからよかった」などの投稿が相次いだ。

また15日朝の通勤ラッシュの時間帯には、武蔵小杉駅の電源設備が浸水により故障したことから、エスカレーターやエレベーターなどが使用不能となり、数百メートルに及ぶ長蛇の列ができた。このような事態の悪化をも揶揄(やゆ)する者が少なくなかった。

なぜここまで特定の地域の被災者を叩くのか。

ノンフィクション作家のレベッカ・ソルニットは、地震などの自然災害で犠牲者が生じるなど、非常事態に直面した社会では、人々の善意が呼び覚まされ、相互扶助的な共同体が出現すると述べた。

次のページ非常事態は個人の自主性や社会的な役割が試される


「地震、爆撃、大嵐などの直後には緊迫した状況の中で誰もが利他的になり、自身や身内のみならず隣人や見も知らぬ人々に対してさえ、まず思いやりを示す」――そして、このような一時的な現象を「災害ユートピア」と名付けた。そこには、共同性そのものが成り立ちにくくなっている現状への批判が込められていた。


近年の歴史は民営化の歴史だとも読めるが、それは経済のみならず、社会の民営化でもあった。市場戦略とマスコミが人々の想像力を私生活や私的な満足に振り向け、市民は消費者と定義し直され、社会的なものへの参加が低下した結果、共同体や個々人のもつ政治力は弱まり、民衆の感情や満足を表す言葉さえ消えつつある。

"フリーアソシエーション(自由に誰とでも係わり合いになれる権利や能力)"とはよく言ったもので、それでは深い人間関係はできない。代わりにわたしたちはマスコミや宣伝により、互いを怖がり、社会生活を危険で面倒なものだと見なし、安全が確保された場所に住んで、電子機器でコミュニケーションを取り、情報を人からではなくマスコミから得るよううながされる。

だが、災害が起きると、人々は集まる。この集まりを暴徒と見なして恐れる人もいるが、多くの人はパラダイスに近い市民社会の体験としていとおしく思う。(『災害ユートピア なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか』高月園子訳、亜紀書房)

避難所のホームレス受け入れ拒否の波紋
これはいわば非常事態をきっかけにして、個人の自主性や社会的な役割が試される場であり、実際に「潜在能力」を発揮して救助や支援に奔走する人々が出てくる。

だが、ここで誤解してはならないのは、「地域のつながりらしきもの」が辛うじて残っていることが前提条件になることだ。つまり、普段から没交渉で住民同士が居住地をただ同じくしているだけでは「災害ユートピア」は立ち上がりにくいのである。

東京都台東区が避難所を訪れたホームレスの男性2人に対し、その受け入れを拒否したことがその後のネット上での"賛否"を含めて波紋を呼んでいるが、このような議論が湧き起こること自体が「社会の分断」が加速度的に進んでいることを如実に示している。もはや支援の手を差し伸べ、助けるべき「同じ人」としては映ってはいないのだ。

次のページ隣人の損得に敏感な「クレーマー」


ソルニットのいう「社会の民営化」を背景にした「社会の分断」が行き着くところまで行けば、身近な人間関係のネットワークが脆弱なゆえに助け合いが困難になることから、電力システムや上下水道などのライフラインの寸断が「万人に対する万人の闘争」状態に直結しやすくなる。台風前日の買い溜めなどの物資の奪い合いはその始まりに過ぎない。この場合、ソルニットのいう「暴徒」は、正確には被災地における油断のならない「競争相手」であり、隣人の損得に敏感な「クレーマー」である。

「災害ディストピア」が浮かび上がった
これは、被災によってもはびこる「災害ディストピア」である。

武蔵小杉の惨状について一部の人々が、「あそこはハイソっぽくてムカついてたからざまあだわ」とあざ笑うことは、構図としてはあまりにもわかりやすくて飛び付きたくなるかもしれない(某タワマンの管理組合の通常総会のレポートで「勝ち組」を自称していたことが、ネットの掲示板で嘲笑の対象になっていたことが象徴的だろう)。

だが、事態の本質は、貧富の差以前に当然のように「同じ人」ではなく「鼻持ちならないニューリッチ」という「別人種」、他者を「不愉快な種族」と決め付けていることにある。これが「ムサコのタワマン族」「ホームレス」というレッテル貼りに共通する心理なのである。

しかしながら、このような言動は「社会の分断」にブレーキをかけない限り、自然災害が起こるごとに「分断のレベル」に応じて噴出することは避けられない。ましてや同じ地域でも被災の程度に「雲泥の差」があるケースが増えている昨今、ますます「災害ディストピア」と呼べるコミュニケーションに拍車がかかることになるだろう。

そして、「災害ディストピア」に関連してもう1つ付け加えておきたいのは、少なくない人々が自然災害に「世直し」的な機能を見出しているところだ。

次のページ「終末観」と「長者没落譚」のブレンド
武蔵小杉について「セレブの町気どりで調子に乗ってるから天罰が下った」と評している書き込みが典型だ。これはある種の「終末観」と「長者没落譚」(富裕者の転落話)を都合よくブレンドしたものだと思われ、「二極化する日本社会」を"正常な秩序"に回復する「天の采配」を期待しているとも取れるのである。
民俗学者の宮田登は、「三代続く長者なし」という諺の背後にある「原初的要因として火難・水難が指摘されている」という(『終末観の民俗学』ちくま学芸文庫)。「社会の分断」がこれらの思考に絡め取られるのはまずいだろう。
ここで絶対に忘れてはならないのは、ソルニットが述べているように、どのような災害が振りかかろうとも、結局は日常生活が取り戻されるということである。そして、日常生活こそが本来わたしたちが共同性を紡がなければならない機会であり、それがなければ災害時の危機管理もおぼつかない。
「誰もが被災者になりうる」のに
地球温暖化の影響により、集中豪雨や超大型台風などのこれまで経験のなかったような異常気象が、今後ますます起こりうる可能性は各方面で指摘されている。要は、従来のように過去の降雨量のデータを参考に堤防などを整備したところで、豪雨による氾濫や堤防決壊などのリスクに対処できない可能性が高まるということだ。
「誰もが被災者になりうる」――そんな未曾有の時代に突入しているにもかかわらず、自然の猛威にさらされる被災地を他人事として眺め、いざそれが自分事になると「寄る辺ない」世界にいることに気付く。これがわたしたちの偽らざる"現在地"かもしれない。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13263.php



『上級国民/下級国民』があぶり出す、現実に進行する「残酷な分断」
  
「上級国民」と「下級国民」に分断された社会に希望はあるのか?

「日本社会は上級国民によって支配されている」

「自分たち下級国民は一方的に搾取されている」

今年になってネットで一気に広まった上級国民/下級国民という言葉。

多くの新語が生まれては消えていくなかで、なぜこの言葉が受け入れられているのでしょうか。

それは、まさしく社会が「上級/下級」に分断されていることに、みんな薄々気づいているからに他なりません。

本書の著者は、ベストセラー「言ってはいけない」シリーズの人気作家・橘玲氏。

豊富なエビデンスをもとに、バブル崩壊後、平成の労働市場がどのようにして大量の「下級国民」を生み出したのかを解き明かしながら、

‹‹平成が「団塊の世代の雇用(正社員の既得権)」を守るための30年だったとするならば、令和の前半は「団塊の世代の年金を守る」ための20年になる以外にありません。››(本書より)

と断言します。

‹‹地域社会化・リベラル化・グローバル化の巨大な潮流のなかで、現代社会は、国や歴史・文化、宗教などのちがいにかかわらず、ますますよく似てきました。なぜなら、すべてのひとが同じ目標――よりゆたかに、より自分らしく、より自由に、より幸福に――を共有しているからです。

「後期近代」になって人類史にはじめて登場したこの価値観は、今後もますます強まって私たちの生活や人生を支配することになるでしょう。

その結果、欧米や日本などの先進国を中心に、社会の主流層(マジョリティ)が「上級」と「下級」に分断される現象が起こるようになりました。アメリカではグローバル化にともなって白人中流層が崩壊し、日本では1990年代後半からの「就職氷河期」によって若い男性の雇用が破壊され、中高年のひきこもり(8050問題)が深刻化するなど、国によって「分断」の現れ方は異なりますが、その行きつくところは同じです。

このような未来をどのように生き延びていけばいいのか。››(本書「あとがき」より)

令和の時代に確実にやって来る残酷な未来=\―「下級国民」は共同体からも性愛からも排除される一方で、それらを独占するのは少数の「上級国民」――。

この分断社会に希望はないのでしょうか。

著者は「社会的に解決できない問題も、個人的に解決することは可能」だといいます。

そのためには、いまこの社会でなにが起きていて、これからどのような世界がやってくるのか、知っておくことが重要なのです。

「近代の行きつく果て」を予測するための一冊!

こちらは本書の内容の一部です。

■ ひきこもりは100万人ではなく500万人?

■ 中高年ホワイトカラーの失業はわずか5万人

■ 不都合なことはすべて若者の責任

■ 専業主婦願望と早婚傾向

■ 教育の本質は「格差拡大装置」

■ 若い女性の「エロス資本」

■ 「持てる」ことと「モテる」こと

■ 現代社会は「事実上の一夫多妻」

■ 「結婚がつらい」男たち

■ 世界を揺るがす「上級/下級」の分断

■ 「絶望死」する白人たち

■ 「新上流階級」が集まる都市

■ 「新下流階級」がふきだまる町

■ ヤンキーとエリート

■ お金は分配できても性愛は分配できない

■ 「技術」と「魔術」が区別できない世界

小学館新書

『上級国民/下級国民』

著/橘 玲

★こちらもオススメ!

・このままでは日本は年収250万円の「衰退途上国」に堕ちる!『令和日本・再生計画』

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・世界を見渡せば反日国家≠探すほうが難しい!『親日を巡る旅 世界で見つけた「日本よ、ありがとう」』

・稼げる大人になるにはどうしたらいい?『学校で学べない お金のこと』

https://www.shogakukan.co.jp/news/223631


 


薄々気づいていた、「上級国民」が日本を支配する現実。もはや止まらない分断化の原因は?
社会 2019/9/10

『上級国民/下級国民』(橘玲/小学館)
 2019年4月、東京・池袋で87歳の男性が暴走運転で死亡事故を起こした。この事故の報道に何かひっかかるものを感じた人は多いだろう。罪のない母子を死亡させたのに男性が逮捕されないのはなぜなのか。特にネットでは「元高級官僚という“上級国民”だから特別扱いされているのでは」といった憶測が飛び交い、「日本は一部の上級国民に支配され、下級国民は搾取されている」というような恨み節が聞かれるようになった。

 そもそも「上級」「下級」とは何を指しているのだろうか。『上級国民/下級国民』(橘玲/小学館)は、現代社会のデータをひもときながら、分断と格差が広がる日本のこれまでとこれからをクリアに見通す1冊だ。

■守られてきた団塊の世代と見捨てられた若い世代
 日本において「上級/下級」のように対比されやすいもののひとつが、雇用における「正規/非正規」だろう。一般的には、平成初期のバブル崩壊を境に企業がリストラを行いはじめ、そこに小泉政権の改革に影響を受けた雇用破壊で正社員が減り、非正規雇用が増えてきたとされている。

 この推移ははたして事実なのだろうか。本書で示されている日本の労働市場のデータによると、1992(平成4)年から2007(平成19)年にかけて、非正規雇用の比率は全体の5%→12%と7ポイント上がっているのに対して、正社員の比率は49%→46%と、3ポイントの下げ幅にとどまっている。正社員よりも減っているのは、実は自営業で、11%→7%と4ポイント下がっている。

 また、増えている「非正規」の多くは20代男性だという。社会の変化で自営業が減っていく中では、これまでのように親の稼業を継ぐこともままならない。景気が悪化していく一方で、それまでの「正社員」、とりわけ団塊の世代と呼ばれる中高年の雇用を守るために、若者の雇用が打撃を受け非正規化が進んだ、というのが著者の見立てである。不景気のしわ寄せが、未来を担うはずの若者に来てしまったのだ。

■分断化は止まらない。その原因は――
 本書は、このような分断や格差の広がりは、日本だけでなく、欧米など海外でも進んでいると説く。雇用形態や人種・宗教問題、さらに企業文化などの背景の違いはありながら、なぜ同じように分断が進んでいるのだろうか。

 進んできた「能力主義」や、テクノロジーの進化によってヒト、モノ、カネが自由に行き来できるようになった「グローバル化」、そして同じくテクノロジーの進化で手に入れた豊かさからくる「知識社会」において、「人びとは“知能の差”で分断される」というのが著者の見解だ。

 分断と格差が広がっていく中で、私たちはどのように生き抜いていけばよいのだろうか。本書ではそのヒントも述べられている。たとえば、専門知識を身につけることで知識社会に最適化した人材になるということや、ツイッターやインスタグラムなどのSNSでたくさんのフォロワーを集め、その「評判資本」をマネタイズしていくというアイデアだ。

 厳しい現実を目の前に突き付けられる一方で、本書から得るヒントには未来に向けた一筋の希望も見出せる。ぜひ「自分の」未来を描くきっかけとして、本書を開いてみてはいかがだろうか。

文=水野さちえ
https://ddnavi.com/review/563692/a/


災害での死者数は、なぜ女性の方が多いのか
2019年10月23日(水)13時30分

舞田敏彦(教育社会学者)


全国自治体の防災対策を検討する地域防災会議のメンバーは圧倒的に男性が多い(写真は台風19号に備えて長野で開設された避難所) Kim Kyung-Hoon-REUTERS
<地域の防災計画の策定にもっと女性が参画しなければ、女性が「災害弱者」となる現状は改善しない>
今月台風19号が猛威を振るい、各地に甚大な被害をもたらした。死者数は83人と報じられている(10月21日時点)。年齢では高齢者が多いと見られ、体力が弱って避難がままならず、スマホ等での情報収集にも慣れていないことが要因になっているのだろう。
男性より女性の死者が多いのは、多くの災害でみられる普遍則だ。2004年のスマトラ沖地震の死者を、インドネシアのアチェという村で調査したところ、女性は男性の3倍で死者の8割が女性だった地区もあるという(大倉瑶子「女性の死者が8割を占めたケースも。災害の死者に女性が多い背景とは」BUSINESS INSIDER、2019年9月1日)。
その要因として、女性や女の子は木登りや水泳に慣れておらず、サバイバルの手段が男性に比して劣っていた、また家族の面倒をみていて逃げ遅れた、ということが挙げられている。災害の死者数の性差は偶然ではなく、社会の文化・慣習、ジェンダーの問題も含んでいる。
ここまで極端ではないにせよ、日本でも同じデータがある。1995年の阪神・淡路大震災の死者は男性が2713人、女性が3980人だった。2011年の東日本大震災の死者は男性7360人、女性8363人でこちらも女性の方が多い。
高齢者に女性が多いためと思われるかもしれないが、実際にはそうではない。<表1>は、性別・年齢層別の死者数を整理したものだ。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/2019/10/23/0a98c89c41bb92749fe7f7e8fa83115b2f7113c7.jpg
ほとんどの年齢層で、男性より女性の死者が多い。右端の女性比率をみると50%超が多くなっている(赤字)。
生産年齢層の死者が「男性<女性」となっていることはベース人口の性差では説明がつかない。震災発生時に在宅率が高く、家の下敷きになったり、育児や介護をしていて逃げようにも逃げれなかった――。そんなケースが男性より女性で多かったと推測される。
次のページ避難所は危険でストレスが多い?
避難所を忌避する女性が多かったことも考えられる。先日の台風19号の際、ツイッター上で「プライバシーがなく、雑魚寝の避難所には行きたくない」「レイプ被害と隣り合わせ」といった書き込みが散見された。女性と思われる投稿者によるものだ。2016年の熊本地震の避難所で、10代の少女がレイプ被害に遭う事件が実際に起きている。
女性からすれば、公設の避難所は危険であると同時にストレスが多い場所でもある。女性用トイレは男性用の3倍必要というのが国際標準だが、これを満たす避難所はほぼ皆無だ。更衣や入浴等の気苦労も多い。生理用品等のニーズも、男性の運営責任者には言い出しにくい。
災害時の避難所生活のニーズには性差があり、それに応えるには、防災・減災行政に携わる人に女性が増える必要がある。各自治体には、地域防災計画の策定・実施を担う地域防災会議が置かれているが、委員の女性比率は低い。都道府県・市町村会議の委員は全国で4万8397人いるが、うち女性は4275人、8.8%でしかない(2018年4月1日時点)。地域差もあり、47都道府県の数値を高い順に並べると<表2>のようになる。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/2019/10/23/data191023-chart02.jpg
最も高い鳥取県でも18.9%で2割にも及ばない。女性がほんの数パーセントしかおらず、避難所の運営方針も含めた防災計画の策定が、ほぼ男性だけで行われている県もある。これでは被災者のニーズの性差を反映した計画の立案は難しい。
災害の直接的・間接的な影響で命を落とす比率には性差があり、それは偶然ではなくジェンダーの問題による部分が大きい。命のジェンダー差はデータではっきりと分かる。防災・減災の政策の立案に際しては、ジェンダーの視点が欠かせない。
求められるのは、政策を決めるプロセスに関わる女性を増やすことだ。普段から、偏狭な性役割分業をなくしておくことも必要だ。避難所の共同生活の炊事・洗濯等は、もっぱら女性が担わされているという現状もある。学校等での防災訓練の際には、性別での役割分担をしないように注意することも必要だろう。
<資料:内閣府『男女共同参画白書』(2012年版)、
    内閣府『防災白書』(2019年版)>
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13240_3.php
次のページ【データ】震災死亡者数の男女比率



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