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[ペンネーム登録待ち板7] ひずみ広げる緩和ドミノ 危うい債務膨張 変調・世界景気 リスクを探る(下)
ひずみ広げる緩和ドミノ 危うい債務膨張
変調・世界景気 リスクを探る(下)

経済 中国・台湾 ヨーロッパ 北米
2019/9/25 23:00
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米ウーバーテクノロジーズが9月に発行した社債が市場の話題をさらった。金利7.5%の10年債に人気が集まり、発行額は当初予定の7.5億ドル(約810億円)から12億ドルへ上積みされた。ウーバーは成長期待があるとはいえまだ創業10年の赤字企業。格付けは債務不履行(デフォルト)の可能性が高いとされるトリプルCだ。1桁の金利で10年間も借金できるのは極めて異例だ。

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日欧ではマイナス金利の国債が急増し、ドイツやオランダでは8月、30年債までマイナス圏に沈んだ。9月には独シーメンスがマイナス0.3%台の社債を発行し、企業ですらお金を借りて利子を受け取る例も欧州で出てきた。

マイナス金利でも市場金利がさらに低下(債券価格が上昇)すれば売り抜けて利ざやを稼げる。世界中で金利が消えゆくなか、利回りに飢えた投資家はリスク覚悟で手を伸ばす。

8月下旬、アルゼンチン・ショックがヘッジファンドを揺るがした。一時的にデフォルト状態だと認定され、通貨ペソや国債価格が急落。同国の100年債に投資していた英ヘッジファンドのオートノミー・キャピタルは1カ月で10億ドルもの損失を出した。あふれるマネーは危ういところにまで及んでいる。

マイナス金利は金融機関の利ざやを圧迫し、経営体力を奪う。独大手コメルツ銀行では9月下旬、4300人規模の人員削減案が判明した。最大手ドイツ銀行も7月、株式売買業務からの撤退や1.8万人の削減が柱の再建計画を発表。ゼービング最高経営責任者(CEO)は「マイナス金利は最終的に金融システムを破壊する」と訴える。

米連邦準備理事会(FRB)によると米企業の借金は15兆ドル超と過去最高に達した。借り入れしやすい金融環境が本来は破綻していた企業を延命させてきた面もある。国際決済銀行(BIS)は18年9月、主要国の上場企業の12%が「ゾンビ企業」だと分析した。

著名投資家のガンドラック氏は「景気が悪化すれば格下げが増えて、混乱が広がる」と警鐘を鳴らす。景気が後退局面に向かえば、借り換えなど資金繰りに苦しむケースが続出し、それが景気をさらに悪化させる悪循環に陥る懸念がある。

中国はさらに事態が進む。当局は7月、国有銀行を通じて地方銀行の錦州銀行を事実上救済した。過剰債務に悩む中国は景気減速と米中対立に見舞われ、金融機関の資産内容が急速に悪化。6月の不良債権と要注意先債権の残高はあわせて5兆8千億元(87兆円)超と、5年前の2.5倍に膨らんだ。不良債権処理を進めれば短期的な景気に悪影響を与え、先送りすれば金融リスクをさらに膨らませる。習近平政権はジレンマを突きつけられている。

FRBは18日、米景気の下振れを防ぐ狙いで7月に続き利下げを決めた。欧州中央銀行(ECB)も12日、量的緩和再開を決めた。目先の景気や株価には一定の支えになるが、膨張した債務の調整なしで世界の中銀が「緩和ドミノ」を繰り広げていけば、金融のひずみがさらに拡大し、世界景気の波乱の芽を膨らませる。(景気動向研究班)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50184640V20C19A9MM8000/
http://www.asyura2.com/13/nametoroku7/msg/836.html

[国際27] 焦点:トランプ氏の電話記録、ウクライナに痛手 勝者はロシアか
https://jp.reuters.com/article/ukraine-trump-idJPKBN1WB0A1
焦点:トランプ氏の電話記録、ウクライナに痛手 勝者はロシアか
Pavel Polityuk Andrew Osborn
3 分で読む
[キエフ/モスクワ 25日 ロイター] - トランプ米大統領は25日、来年の大統領選での政敵追及のため、ウクライナのゼレンスキー大統領に協力するよう圧力をかけたとされる問題で、ゼレンスキー氏と7月に行った電話会談の記録を公開した。

これにより米国内の政治的緊張の激化は必至だ。しかし、それ以上に、ゼレンスキー氏が受けた外交的な痛手は深刻で、破滅的な悪影響をもたらしている。明らかになったゼレンスキー氏の発言は、米野党・民主党を怒らせ、ウクライナが必要としている米国からの超党派の支援を危うくするだけでなく、電話会談で批判されたフランスやドイツのいら立ちも避けられないからだ。

<頼みの欧米支援を危うくする恐れ>

ウクライナは、ロシアが2014年にクリミア半島を編入し、ウクライナ東部の武装勢力を支援して以来、この隣国と抜き差しならない対立関係にある。そのため、国際社会でできる限り友好国を確保する必要に迫られている。

特に米国からの支援や外交的な手助けに大きく依存。フランスやドイツなどの欧州諸国は、停滞したままのウクライナ東部の和平協議を進展させようと努力を続けてくれている。

ところが今回の電話会談記録が判明した結果、ウクライナが有害な国家だとみなされかねない、と同国のシンクタンク、ニュー・ヨーロッパ・センターのアルヨナ・ゲトマンチュク氏は指摘する。

16年の米大統領選への介入疑惑で広がったロシアへの嫌悪感ほどではないにしろ、ウクライナの印象もかなりひどくなりそうだ、と同氏は付け加えた。

ゼレンスキー氏にとって何とも間の悪いことに、今回の問題はウクライナ東部紛争終結のための和平協議の一部再開に自らが積極的になっていた、まさにその時に発覚した。こうした取り組みには、米国や欧州の外交的な協力が欠かせない。

しかし会談記録によると、ゼレンスキー氏は、バイデン前米副大統領の息子が役員を務めていたウクライナ企業への捜査再開をトランプ氏に約束したほか、フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相が対ロシア制裁実施を後押ししてくれないと不満を口にしていた。

またゼレンスキー氏は、米民主党政権時代の駐ウクライナ大使が「良くない外交官だった」とのトランプ氏の主張に同意していた。

<必死の弁明>

ブルーベイ・アセット・マネジメントのシニア新興国市場ストラテジスト、ティモシー・アッシュ氏は「ゼレンスキー氏は、米国の元大使やメルケル氏や欧州諸国を足蹴にした上に、バイデン氏に対するトランプ氏の政治工作に手を貸した。これは良い印象はもたらさない。まるでトランプ氏に取り入っているように見受けられる」と指摘した。

ゼレンスキー氏がウクライナを腐敗や汚職のない完全に透明な民主主義国家に生まれ変わらせるという公約を達成してくれるだろう、という世界の投資家の期待とは裏腹に、アッシュ氏のコメントからはそうした道筋の実現に懐疑的な見方が広がっていることがうかがえる。

ゼレンスキー氏はこれまで、ウクライナが電話会談記録を公開するべきだとの声に抵抗してきた。25日にはニューヨークで記者団に対して、トランプ氏が自身の発言だけを開示するとばかり思っていたと語り、独立国家の首脳同士の詳しいやり取りは表に出すべきでない時もあるはずだと強調した。

ゼレンスキー氏はまた、バイデン氏の息子に関する捜査の詳細は知らなかったと弁明するとともに、トランプ氏からの要請があったとしてもそれは世界中の首脳との会話でよくあるケースの1つだと指摘。ウクライナの新検事総長は全ての事案を政治の干渉を受けずに捜査してほしいと付け加えた。

一方で、独仏との関係維持にも気を配り、メルケル氏とマクロン氏の助力には感謝しているなどとし、「私はだれの悪口も一切言いたくない。われわれに手を差し伸べてくれる全ての人をありがたいと思う」とゼレンスキー氏は話した。

<ほくそ笑むロシア>

それでもウクライナ国内からは、同国は既にダメージを被っているとの声が聞かれる。

シンクタンク、ペンタのボロディミル・フェセンコ氏は「当然ながら欧州の首脳、特にメルケル氏との関係で状況は悪化するだろう。(ホワイトハウスが用意した電話会談記録の要約に)直接的な批判はなかったとはいえ、ゼレンスキー氏の発言の文脈や調子からは、トランプ氏にメルケル氏への不満をぶつけたように聞こえる」と話した。

今回の問題でウクライナの対米関係が損なわれ、米国からの軍事支援などに支障が出てくる可能性があり、それがロシアに利することを心配する向きもある。

ポロシェンコ前大統領の派閥に属するある議員は、ウクライナにとって単独でロシアと向き合わなければならない恐れが出てくるという大変危険な事態で、ロシアは必ずこの好機を活用するだろうと警戒感をあらわにした。

「トランプ氏が事実上ゼレンスキー氏にバイデン氏の弱点探しを依頼し、ゼレンスキー氏が同意したように見える。バイデン氏がウクライナの改革に全力を注いだ後で、ゼレンスキー氏が背後からバイデン氏を刺して、米国の元大使やメルケル氏も道連れにした」と、ブルーベイ・アセットのアッシュ氏はいう。そして、「勝者は誰かと言えば、(ロシア大統領の)プーチン氏だ」と断言した。
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/432.html

[不安と不健康18] 電磁波ヘッドギア、わずか2か月でアルツハイマー病の認知機能低下が改善 携帯で治療?
電磁波ヘッドギア、わずか2か月でアルツハイマー病の認知機能低下が改善
2019年9月26日(木)19時40分
松岡由希子

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専用ヘッドギアによる電磁気療法で、アルツハイマー病患者の認知パフォーマンスが向上 NEUROEM THERAPEUTICS, INC.
<アメリカの研究者が独自の専用ヘッドギアを用いた経頭蓋電磁気療法の臨床実験において、アルツハイマー病患者の認知パフォーマンスが向上したことが明らかに......>

米南フロリダ大学で教授を務めた経験を持つゲイリー・アレンダッシュ博士は、米アリゾナ州フェニックスで医療機器会社「ニューロEM・セラピューティックス」を創設し、アルツハイマー病などの神経変性疾患に対する新たな治療法として経頭蓋電磁気療法(TEMT)の研究開発に取り組んできた。

「ニューロEM・セラピューティックス」は、2019年9月17日、独自の専用ヘッドギア「メモルEMTM」を用いた経頭蓋電磁気療法の臨床実験において、アルツハイマー病患者の認知パフォーマンスが向上したことを明らかにした。

一連の研究成果をまとめた研究論文は、医学雑誌「ジャーナル・オブ・アルツハイマーディジーズ」で公開されている。

2ヶ月、1日2回、各1時間の装着で認知機能が向上した......
「ニューロEM・セラピューティックス」と南フロリダ大学との共同研究チームは、軽度から中等度の63歳以上のアルツハイマー病患者8名を対象に、2ヶ月にわたり、1日2回、各1時間、「メモルEMTM」を患者の頭部に装着させ、経頭蓋電磁気療法を実施させた。ヘッドギアの中に複数の特殊なエミッターが配置された「メモルEMTM」は、介護者によって家庭でも簡単に経頭蓋電磁気療法を実施でき、治療中もほとんど制約なく、自由に動き回ることができる。

研究チームは、各被験者について、治療前、治療直後、治療完了から2週間後のそれぞれの認知機能の状態を診断した。その結果、経頭蓋電磁気療法は被験者8名全員に安全であり、そのうち7名は、認知機能を評価する「ADAS-cogスコア」において認知パフォーマンスの向上が認められた。その度合いは、アルツハイマー病患者の1年間の認知機能低下とほぼ一致。つまり、アルツハイマー病が1年間で認知的思考に与えた影響が、たった2か月で戻ったことになる。

このような臨床実験の結果は、マウスを対象とした実験結果とも合致している。アレンダッシュ博士は、2010年に公開した研究論文において「携帯電話と同等の電磁波を長期間にわたってマウスに照射した結果、若齢マウスの記憶障害を防止し、老齢マウスの認知パフォーマンスが改善した」との実験結果をすでに示している。

安全性や認知機能への効果をさらに検証していく
研究チームでは、今回の臨床実験の結果をふまえ、「経頭蓋電磁気療法は、脳や脳細胞にたやすく浸透し、アルツハイマー病につながる『アミロイドベータタンパク質』や『タウタンパク質』が脳細胞内で凝集するのを防ぐことにより、アルツハイマー病に直接作用する」と考えており、経頭蓋電磁気療法が「アミロイドベータタンパク質」や「タウタンパク質」のみを標的とする新たな治療法になりうると期待を寄せている。

ただ今回は、わずか8名という臨床実験でもあり、「ニューロEM・セラピューティックス」では、2019年末までに、軽度から中等度のアルツハイマー病患者150名を対象に、「メモルEMTM」を用いた経頭蓋電磁気療法の臨床実験を実施し、安全性や認知機能への効果をさらに検証していく計画だ。

次のページ動画:ヘッドギアによる電磁気療法をめぐって
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/09/2-150.php
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/786.html

[経世済民133] 日韓貿易戦争、市場の想定上回る大きな問題−S&Pが警告 
日韓貿易戦争、市場の想定上回る大きな問題−S&Pが警告
Min Jeong Lee、Finbarr Flynn
2019年9月27日 18:17 JST
• アジア太平洋チーフエコノミスト、ローチェ氏がインタビューで発言
• 韓国が日本よりも厳しい状況に見舞われる可能性
日韓の貿易戦争激化は中国を含むテクノロジーのサプライチェーンを混乱させる可能性があり、市場が織り込んでいる以上の大きな波及効果を及ぼすと、S&Pグローバル・レーティングが警鐘を鳴らした。
  S&Pのアジア太平洋チーフエコノミスト、ショーン・ローチェ氏は東京都内でのインタビューで、影響を受けない勝ち組も株式市場に見られるかもしれないが、進行中の対立はグローバルに波及すると分析。日本が輸出許可を付与しないケースがあれば、韓国は生産を縮小するか重要な原材料確保で「相当高い」支払いを迫られるだろうと指摘。最終的に中国にも影響すると付け加えた。
  同氏は「日韓の2国間貿易の妨げになるものがあれば、中国のテクノロジーサプライチェーンが混乱に陥る。上流での小さな混乱であっても、下流に行けば極めて大きなインパクトが生じ得る」との認識を示した。

  最善のシナリオは今回の日韓対立が完全になくなることだが、たとえ対立が解消されても長期的に信頼の問題は残る可能性があるとも分析。
  ローチェ氏は「両国間の信頼とグローバルな取引システムへの信頼に持続的なダメージを与えことになるだろう。すでにわれわれはそれを目にし始めている」とし、「信頼感が低下し、企業のリスクと戦略についての考え方に恒久的な影響を及ぼす」と警告した。
  S&Pは、韓国の方が日本よりも厳しい状況に見舞われる可能性があるとみる。同社は韓国の成長率を今年が2%、2020年は2.6%と見積もっているが、現在の「膠着(こうちゃく)」が続けば、直接的な混乱が最小にとどまっても、同成長率見通しに緩やかな下振れリスクが生じるだろうとしている。
  日本への影響については、10月の消費増税後に見込まれる景気減速を悪化させる可能性はあるものの、韓国よりも「マイルド」とみる。S&Pによる日本の成長率予想は19年が0.8%、20年が0.1%。
原題:Japan-Korea Trade War Is Bigger Problem Than You May Think: S&P (抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-27/PYHBOQT1UM0X01?srnd=cojp-v2



http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/254.html

[エネルギ3] アングル:韓国、難路続く燃料電池車対策 水素社会に高い壁
トップニュース2019年9月30日 / 11:09 / 1時間前更新
アングル:韓国、難路続く燃料電池車対策 水素社会に高い壁
Hyunjoo Jin Jane Chung
4 分で読む

[ソウル 25日 ロイター] - 燃料電池車(FCV)の普及をめざす韓国政府の取り組みに乗じようと、ソン・ウォンヤンさんは昨年9月、蔚山市内に水素補給ステーションを開設した。わずか1年後、彼はもう廃業を検討している。

蔚山にはヒュンダイ・モーターズ(005380.KS)の主力工場が立地し、市内を走るFCVは韓国の都市で最多の約1100台。ソンさんが新設した水素補給ステーションは、蔚山市内5カ所のうちの1つだ。

建設費は電気自動車向けの急速充電設備に比べ6倍以上の30億ウォン(250万ドル)だが、政府が負担してくれた。ソンさんが経営するガソリンスタンドの隣に設置された2基の水素補給ポンプには、毎日ヒュンダイ製のSUV「ネクスコ」が確実に訪れる。

だが、それでも経営は赤字だ。1日に補給できる台数に限度があり、また消費者のFCVへの乗り換えを促すために政府が水素小売価格を低く設定していることも制約となっている。

ソンさんはロイターに対し、「政府が運営コストを補助してくれない限り、どこの水素補給ステーションでも、閉鎖する以外に選択肢がなくなる」と語った。「さもなければ、ここは30億ウォンもかけた鉄クズということになる」

こうした採算面での障害にさらに追い打ちをかけるように、今年は水素貯蔵タンクの爆発事故で犠牲者が出たことで、「ゼロ・エミッション」燃料を推進する政府・ヒュンダイによる野心的なキャンペーンに対する抗議行動が発生した。

<日本を上回る大胆な導入目標>

アジア第4位の経済規模である韓国では、水素エネルギーを「未来の社会基盤」と位置づけ、文在寅大統領自ら水素テクノロジーの推進役になることを宣言、2030年までに85万台のFCVを導入するという目標を掲げている。

これまでの販売台数が3000台に満たないことを考えれば、決して容易な目標ではない。やはりFCVの普及に熱心で、自動車市場の規模は韓国の3倍もある日本でさえ、同時期の導入計画は80万台だ。

電気自動車が環境に優しい自動車としての注目をもっぱら集めている中、韓国内での水素補給インフラ構築の困難さは、FCVが広範囲での普及に向けて直面する長く苦しい戦いを象徴している。

韓国政府、そして国内でFCVを発売している唯一の自動車メーカーであるヒュンダイにとって、FCVの普及は、巨額を投じるわりには成功する保証のないプロジェクトだ。

ロイターの試算では、現在の補助金水準を続けた場合、文政権は2022年までにFCVの販売と水素補給ステーションの建設に対して総額18億ドルの国費を投じることになる。

補助金のおかげで「ネクスコ」の価格は約3500万ウォン(2万9300ドル)と半額に下がり、2018年3月に発売された同車種の販売台数は今年に入って急増している。これに比べて、日本政府による補助金はトヨタ自動車(7203.T)が発売するFCV「ミライ」の価格の3分の1にすぎず、実勢価格は約4万6200ドルとなっている。

政府による熱心な支援の恩恵を受けているのは主にヒュンダイだという批判も一部にあるが、同社自体も大きなリスクを背負っている。同社は2030年までに、サプライヤー各社とともに水素関連の研究開発や施設に65億ドルを投資する計画だ。

ヒュンダイは電子メールで送信された声明のなかで、「(FCV)生産施設の建設、サプライチャネルの確保、販売網の確立には大規模な投資を行う必要があるが、それにはリスクも伴う」と述べている。

<住民側の抗議行動が激化>

5月、地方都市の江陵で、政府研究プロジェクトが保有する水素貯蔵タンクが爆発した。サッカー場半分ほどの規模の研究施設が破壊され、2人が死亡、6人が負傷した。予備調査によれば、タンクに酸素が混入した後、火花によって爆発が生じたという。

研究所を相手取った訴訟で2人の死者のうち一方の遺族の代理を務める弁護士は、「犠牲者の1人は爆風で吹き飛ばされ、岩に叩きつけられて死亡した」と語る。

1ヶ月後、ノルウェーの水素補給ステーションでも爆発事故が起きた。今週には韓国国内の化学プラントで水素ガスが漏洩し、その後の火事で従業員3人が火傷を負った。

こうした安全性に対する懸念により、韓国では、近隣での水素関連施設の建設に不安を抱く住民グループによる抗議行動が激化している。

江陵での爆発事故の2日前、港湾都市・仁川市で計画中の燃料電池発電所に反対して、キム・ジョンホさんが1ヶ月のハンガーストライキを開始した。キムさんは、江陵での爆発事故によって、住民の不安は水素生産による環境汚染リスクから安全性への疑念に向いている、と話す。仁川市ではその後、発電所の安全性と環境への影響を再検証することに同意した。

複数の爆発事故を受けて、水素補給ステーションの経営を考えていた人々も浮き足立っている。

平沢市では4月、水素補給ステーションの設置先としてガソリンスタンド2事業者を選定したが、3ヶ月もしないうちに両者とも辞退を決意し、市は選定作業を再開せざるをえなかった。

設置先候補の1つだった事業者は、匿名を希望しつつ、「最初はとても興味をもった。しかし注意深く検討してみると、とうてい利益にならない事業を政府が推進していることが分かった」と語る。

「いつ爆発が起きるかとヒヤヒヤしながら暮らすことはできない」。こうした不安に対処するため、政府は住民向けの説明会を開催している。またヒュンダイは、ユーチューブやソーシャルメディアを通じて情報を発信しつつ、消費者に水素の安全性を理解してもらうよう取り組んでいると話している。

<「政府の散財の尻拭い」>

水素補給ステーションはFCVの広汎な普及に不可欠の要素であり、政府は2019年末までに114カ所を整備する計画だが、まだ29カ所しか完成していない。コストの半分を肩代わりするための地方自治体・企業からの資金集めが難航していることや、用地選定や住民の反対運動もステーション整備の障害になっている。

水素補給ステーション整備に当たる事業者も、前途多難を承知している。

 ソウル市内のステーションで水素を充填するヒュンダイの「ネクスコ」。8月13日撮影(2019年 ロイター/Kim Hong-Ji)
100カ所のステーション設置を受注したコンソーシアムのCEOユー・ジョンスー氏は6月に行ったプレゼンテーションのなかで、「非常に厳しい時期、いわば『死の谷』が待ち構えているだろう」と述べ、2025年まで黒字転換は期待できないとしている。

このコンソーシアムにはヒュンダイも参加しているが、政府に対して、水素補給ステーションの運営コストを補助するよう求めている。韓国産業通商資源省の当局者は、計画が未完成であることを理由に匿名を希望しつつ、そのような措置も検討中であるとロイターに語った。

元ヒュンダイ技術者で自動車アナリストのリュー・イェンファ氏は、「水素社会をめざす政府の散財の尻拭いを強いられている納税者の負担がさらに増すだけだ」と言う。FCVは商業的に成立しないというのがリュー氏の見方だ。

文政権は先月、来年度予算で「水素経済」関連の支出を2倍以上の5000億ウォン超にすると発表した。予算には、FCV及び水素補給ステーション関連の3590億ウォンが含まれており、今年度と比べても52%増、2018年の298億ウォンに比べれば飛躍的な伸びとなっている。

<ドライバーの苛立ち>

「ネクスコ」を「走る空気清浄機」と宣伝するヒュンダイにとって、規模の経済を実現してコストを削減するためには、韓国政府の野心的な目標が大きな頼りだ。

ヒュンダイは、補助金適用前のFCVの生産コストを、年間生産台数が3万5000台に達した時点で5000万ウォンまで削減することを目標としている。来年は1万1000台を生産する予定で、2022年までに年間4万台まで増やしたいと希望している。

だがその一方で、水素補給をめぐる制約と補給ステーションの少なさが、かなりの苛立ちを引き起こしている。

水素補給ステーションを運営するソンさんによれば、補給そのものには約5〜7分しかかからないが、次のドライバーは、水素を供給する貯蔵タンクの圧力が十分に高くなるまで、さらに20分ほど待たなければならない。さもないと、FCVのタンクが満タンにならないからだ。

今のままでは、ソンさんのステーションは1日に約100台のFCVにしか対応できない。これに比べ、彼のガソリンスタンドであれば最高1000台に対応可能だ。また、水素補給を求めてやってきた多くのドライバーは、20分も待っていられず、満タンにせずに出て行ってしまう。

燃料費の安さに惹かれて「ネクスコ」を購入したチョイ・ギューホさんによれば、他の地域では水素補給ステーションがないため、蔚山市を離れるのは難しいという。

「非常に不便だ。いつ市外にまでドライブできるようになるか待ち遠しい」と彼は言う。

(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/autos-hydrogen-southkorea-idJPKBN1WB06J
http://www.asyura2.com/16/eg3/msg/165.html

[戦争b22] 日本は平和ボケで自滅!?日本人が知るべき米中戦争「アメリカの本気」
日本は平和ボケで自滅!?日本人が知るべき米中戦争「アメリカの本気」
北野幸伯:国際関係アナリスト

国際・中国 ロシアから見た「正義」 “反逆者”プーチンの挑戦
2019.9.30 5:35

 
トランプ大統領(左)と握手する習近平(右)
戦闘行為こそ行われていないが、米中の関税引き上げ合戦は、れっきとした「戦争」である Photo:AP/AFLO
いわゆる「米中戦争」が始まってから、1年以上が経過した。これは、ただの「関税引き上げ合戦」ではない。世界の覇権をかけた、米国と中国の真剣な戦いである。しかし、「平和ボケ」している日本政府は、米中対立の本質が理解できない。それで日本は、また「敗戦国」になる可能性がある。(国際関係アナリスト 北野幸伯)

米中覇権戦争のきっかけは
15年の「AIIB事件」
 まず、米中戦争が始まった経緯について知っておこう。

 この戦争が始まったのは、2018年7月とされている。米国は18年7月6日、中国からの輸入品340億ドル分に25%の関税をかけた。同年8月23日、160億ドル分に25%、9月24日、今度は2000億ドル分に10%の関税をかけた。

 ペンス副大統領は同年10月4日、「ハドソン研究所」で「歴史的」ともいわれる演説をした。激しく中国を非難するこの演説を聞き、世界中の多くの専門家は、「米中冷戦時代が始まった」と判断した。

 18年7月以前に何が起きたかも、書いておこう。筆者は、15年3月の「AIIB事件」がきっかけで米中戦争が起こったと見ている。

「AIIB事件」とは、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、オーストラリア、イスラエル、韓国など親米諸国群が、中国主導の国際金融機関「AIIB」への参加を決めたことを指す。米国は、親米諸国に「AIIBに入らないよう」要求していた。ところが彼らは、米国を完全に無視して、AIIB参加を決めた。

 これは、米国の没落を象徴し、中国が覇権一歩手前まで近づいていることを示す歴史的大事件だったのだ。

 これでオバマは、生まれ変わった。彼は、大統領就任後、08年から始まった「100年に1度の大不況」対策で多忙だった。危機を克服した後は、主敵の定まらない外交をしていた。

 11年、リビアを攻撃。
 13年8月、シリア攻撃を決意するが、翌月変心して戦争をやめ、世界を仰天させた。
 14年3月、クリミア併合で、プーチン・ロシアが最大の敵に浮上する。
 14年8月、ISの暴れ方があまりにもひどいので、空爆を開始した。

 このように、オバマの主敵は、頻繁に変わってきた。しかし、15年3月以降は、中国を最大の敵と定め、熱心にバッシングするようになった。

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核兵器の登場で戦闘をしない「戦争」の時代に
核兵器の登場で
戦闘をしない「戦争」の時代に
 17年1月、トランプが大統領に就任する。彼は選挙戦中、中国を厳しく批判してきた。ところが、17年は金正恩の暴走がひどく、トランプは習近平の協力を必要としていた。それで、米中関係は17年、比較的良好だったのだ。

 しかし、18年になると、トランプは「習近平は、北朝鮮問題を解決する気が全然ない」ことに気がついた。同年6月、シンガポールで金正恩と直接会談。中国抜きで、核問題を「沈静化」させ、翌7月から本格的な「米中関税戦争」を開始したのだ。

 米国と中国は、武器を使った戦闘行為をしていない。だが、これは世界の覇権をかけた戦争なのだ。

 日本人は、核兵器の登場で、戦争の形態が変わったことを自覚していない。米国とソ連は、共に相手国を破滅させるのに十分な核兵器を保有した。それで、両国の大規模な戦闘がないまま、冷戦は終結した。

 米国と中国の関係も、米ソ関係と本質は変わらない。両国共に核大国なので、破滅を恐れて大規模な戦闘には発展しづらい。その代わりに、さまざまな形の戦争が行われる。

「米中戦争」と聞いて、まず思い出されるのは、「米中関税引き上げ合戦」や「ファーウェイ排除」などだろう。しかし、注意深く観察していると、他にもさまざまな形態の戦いが起こっていることがわかる。

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ウイグル問題、香港デモ…米国による「情報戦」が活発に
ウイグル問題、香港デモ…
米国による「情報戦」が活発に
 たとえば最近、「中国政府は、ウイグル人100万人を強制収容所に入れている」という話が、突然盛り上がってきた。

<国連、中国政府がウイグル人100万人拘束と批判
BBC NEWS JAPAN 18年09月11日
中国政府が新疆ウイグル自治区でウイグル人を約100万人、テロ取り締まりを「口実」に拘束していると、国連は懸念を強めている。
国連人種差別撤廃委員会は8月末、最大100万人のウイグル人住民が刑事手続きのないまま、「再教育」を目的とした強制収容所に入れられているという指摘を報告した>

 もちろん、これは残酷な事実である。しかし、中国政府によるウイグル族弾圧は、18年に始まったわけではない。もっと昔から行われていたことだ。だが、米中戦争が始まったので、突然クローズアップされたのだ。つまり、ウイグルにおける中国の悪事は、「情報戦」に使われているのである。

 さらに、中国政府が「香港デモの黒幕は米国」と考えていることをご存じだろうか?

<香港のデモは「米国の作品」、中国が指弾
CNN.co.jp 8/1(木) 19:15配信
香港(CNN) 中国の華春瑩報道局長は8月1日までに、「逃亡犯条例」改正案の撤回を求めるデモなどが過去2カ月間続く香港情勢に触れ、「誰もが知っているように、米国の作品である」との見解を示した>



<香港情勢に関連し、中国政府当局者による米国の介入への直接的な指弾では最も強い表現となっている。中国国内ではここ数カ月間、香港のデモの背後に西側勢力の工作があるとの臆測が流れていた。

香港の抗議デモの一部では過去に参加者が米国国旗を掲げる場面も見られた。

中国の国営メディアも、香港の混乱を米国の責任とする社説などが再三取り上げられている。

国営紙の環球時報は最近、香港の民主主義勢力の指導者と西側政府との間に前例のないレベルの接触があったとも報道。「逃亡犯条例改正案に抗議する勢力は米国の支援を受けていることは香港で公然の秘密」とも断じていた>(同前)

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オバマも認めたウクライナ革命への関与
オバマも認めた
ウクライナ革命への関与
 これについて、日本人なら普通、「中国政府が血迷ってウソをついている」と考えるだろう。しかし、実をいうと、米国が独裁国家の民主勢力を支援していることは、研究者の常識である。

 たとえば、03年の革命で失脚したジョージアのシェワルナゼ元大統領は、こんなことを言っている。朝日新聞03年11月29日付。

<前大統領は、議会選挙で政府側による不正があったとする野党の抗議行動や混乱がここまで拡大するとは「全く予測しなかった」と語った。

抗議行動が3週間で全国規模に広がった理由として、「外国の情報機関が私の退陣を周到に画策し、野党勢力を支援したからだ」と述べた>

 また05年の革命で失脚したキルギスのアカエフ元大統領は、以下のように発言している。
時事通信05年4月7日付。

<「政変では米国の機関が重要な役割を果たした。
半年前から米国の主導で『チューリップ革命』が周到に準備されていた」>

 11年12月、モスクワで大規模なデモが起こった時、プーチンは米国を非難した。

<ロシアのプーチン首相、デモを扇動と米国を非難

CNN.co.jp 11年12月9日
【モスクワ(CNN)】ロシアのプーチン首相は8日、先の下院選をめぐる不正疑惑に対する抗議デモを米国が扇動していると非難した>

 さらに、オバマは、米国が14年2月のウクライナ革命を主導したことを認めている。「ロシアの声」15年2月3日付から。

<オバマ大統領 ウクライナでの国家クーデターへの米当局の関与ついに認める

昨年2月ウクライナの首都キエフで起きたクーデターの内幕について、オバマ大統領がついに真実を口にした。

恐らく、もう恥じる事は何もないと考える時期が来たのだろう。

CNNのインタビューの中で、オバマ大統領は「米国は、ウクライナにおける権力の移行をやり遂げた」と認めた>

「YouTube」で「Obama admits he started Ukraine revolution」を検索すると、オバマの発言が確認できる。

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香港デモ支援の裏にある米国の思惑とは?
香港デモ支援の裏にある
米国の思惑とは?
 というわけで、米国が香港デモに絡んでいたとしても、何の不思議もない。もし香港デモの背後に米国がいるとすれば、同国は、香港情勢をどう利用しようとしているのだろうか?

 たとえば、香港デモが長期化し、中国が弾圧すれば、どうなるだろうか?米国は、「第2の天安門事件が起こった」と非難し、日本や欧州を誘って、中国に「経済制裁」を科そうとするだろう。「クリミア併合」後の「対ロシア制裁モデル」である。

 また、デモが長期化することで、「世界の金融センター」としての香港の地位が低下する。中国にとって香港は、外国からの資金を集める「財布」だ。この「財布」を奪うことで、中国経済は大きな打撃を受ける。

 習近平には、夢がある。12年11月29日に語った、いわゆる「中国の夢」だ。

<誰しも理想や追い求めるもの、そして自らの夢がある。現在皆が中国の夢について語っている。私は中華民族の偉大な復興の実現が、近代以降の中華民族の最も偉大な夢だと思う>

 そして、もっと具体的な夢もある。それが、台湾統一だ。これを成し遂げれば、習近平は建国の父・毛沢東を超えることができる。彼は今年の年初、その決意をあらわにした。

<習氏、中台統一で軍事力行使を排除せず 「一国二制度」も迫る

【1月2日 AFP】中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は2日、中国が台湾に平和統一を呼び掛けた「台湾同胞に告げる書」の発表40年に当たり演説し、台湾との「再統一」を確実にするための選択肢として軍事力の行使を排除しないと言明した。台湾は最終的に中国本土に統一されることになるとも強調した>

 米国は、中国の台湾統一を阻止すべく、台湾への武器輸出を拡大している。トランプ政権は7月8日、台湾に100両を超える戦車や地対空ミサイルなど、2400億円分の武器を売却することを決めた。さらに8月16日、今度はF16戦闘機66機(約8500億円)を、台湾に売却することが決まった。

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日米同盟の重要性を理解していない日本政府
日米同盟の重要性を
理解していない日本政府
 このように、米中対立の現状を見ると、

・関税引き上げ合戦
・ファーウェイ排除
・ウイグル問題を使った情報戦
・香港デモ
・台湾の防衛力強化

 など、さまざまな戦いが行われている。まさに、米中は、「世界の覇権をかけた」戦いをしているのだ。

 一方、日本は、どうだろうか?日本政府の動きを見ると、この戦いの切実さを理解しているとは思えない。たとえば日本は、米中戦争が公式に始まった18年、中国との関係を劇的に改善させた。つまり、米国が中国と戦い始めたまさにその時に、同盟国の敵に急接近している。

 これは、米国から見れば、深刻な「裏切り行為」だろう。それで日米関係はギクシャクし、トランプも日米同盟の不平等さを頻繁に口にするようになってきた。

 また米国は、6月にホルムズ海峡で日本のタンカーが攻撃されたケースなどを踏まえ、「タンカー防衛有志連合」結成を呼びかけた。日本は、友好国のイランに遠慮して、「自国のタンカーを防衛するため」に自衛隊を出すこともしようとしない。

 つまり日本政府は、同盟国・米国と友好国・イランをほとんど同じレベルに見ていることになる。これはとても愚かなことだ。

 尖閣有事の際、米国からのサポートがなければ、尖閣はほぼ確実に中国に奪われる。なんといっても、中国の軍事費は日本の5倍であり、向こうには日本を破壊しつくせるだけの核兵器がある。だから、米国との関係は、死活的に重要だ。

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日本が取るべき方針は、実にシンプルである
日本が取るべき方針は
実にシンプルである
 ところで尖閣有事の際、イランとの関係は、何か役に立つのだろうか?

 こう考えると、米国との関係は、イランよりもはるかに重要であることは、明らかだろう。しかし、「皆に好かれたい」日本政府は、結果的に同盟国を裏切る動きをし、日米同盟を傷つけている。

 日本政府は、これからどうするべきなのだろうか?

 まず第1に、世界情勢は現在、「米中覇権戦争」を軸に回っていることをはっきり自覚すべきだ。第2に、米国との関係をますます強固にし、米国の敵である中国やイランとは、距離を取るべきだ(わざと関係を悪化させる必要はないが)。

 言ってみれば、簡単なことだ。しかし、激動の時代には、こんな簡単なことも難しいのである。

 日本がナチスドイツの同盟国になったのは、第2次大戦が始まって1年がたった1940年9月27日だった。当時は調子がよかった「負け組」に参加することで、日本の敗北は決まった。

 米中覇権戦争が始まって1年と2ヵ月が過ぎた。日本は、同盟国・米国と、その敵・中国を天秤にかけているようにみえる。日本は、ナチスドイツに付いて負けた過去の愚かさをはっきり自覚し、同じ間違いを繰り返さないようにするべきだ。


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モスクワに28年住み、アメリカや平和ボケした日本メディアとはまったく異なる、独自の路線で国際関係を分析し続けてきた筆者が、米中覇権戦争の深刻度と、日本政府が取るべき対策について解説しました。

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https://diamond.jp/articles/-/216037
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/842.html

[国際27] 共和党上院議員35人がトランプ弾劾に賛成か 政府高官300人が弾劾を支持 伏兵に嵌ったトランプ大統領弾劾へ
共和党上院議員35人がトランプ弾劾に賛成か
情報機関職員が内部告発、ホワイトハウスの隠蔽工作も明らかに
2019.9.30(月)
高濱 賛
アメリカ 政治

ニューヨークで行われた米ウクライナ首脳会談。左がウクライナのゼレンスキー大統領
ウクライナ大統領をマフィアの手口で脅す
「ウクライナゲート」疑惑が炸裂した。

 爆弾を投げつけたのは、トランプ政権の情報機関職員。米議会にお恐れながらと「申し立て書」を提出したのだ。

 このホイッスルブローワー(内部告発者)は「明智光秀」か、それとも正義の愛国者か――。

 申し立てを一言で表現すれば、「2020年米大統領選に向けてドナルド・トランプ大統領が外国を巻き込んだ『悪だくみ』を企てていた」ということになる。

 米メディアは一斉に飛びついた。それを「ウクライナゲート」と名づけた。「爆弾」の中身はこうだ。

「ドナルド・トランプ米大統領が7月24、25の両日、電話でウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領にジョー・バイデン民主党大統領候補(前副大統領)に関する調査を要求していた」

「さらにロシアの軍事侵入に備えて米国からの武器支援が欲しいウクライナに『俺の言うことを聞けば支援してやる』とまで言っていた」

 民主党が直ちに動き出したのは言うまでもない。今度こそトランプ大統領を弾劾に追い込める決定的な材料が出てきたからだ。

 トランプ弾劾をこれまで虎視眈々と狙ってきたアダム・シフ下院情報委員会委員長は、「まるでマフィアの親分のような言い草だ」と吐き捨ているように言っている。

ハンター・バイデン氏の「汚職容疑」…
ハンター・バイデン氏の「汚職容疑」
 トランプ氏がなぜ、バイデン氏に関する調査をゼレンスキー氏に要求したのか。

 すでに旧聞に属するが、バイデン氏の息子ハンター氏(49)が役員をしていたウクライナの大手天然ガス会社「ブリスマ」に汚職容疑がかけられ、同国の検察当局が捜査していた。

 当時副大統領だったジョー・バイデン氏は、同国の検察官が汚職収賄まみれなことを知り、解任を要求。

 つまりハンター氏に容疑が及ばないようにウクライナ検察当局の捜査を妨害したというわけだ。

 米国はウクライナにとってはロシア対策では不可欠な後ろ盾。それだけにトランプ氏だけでなく米要人は、こうした内政干渉的なこともできた。

 ウクライナの新大統領は外交のガの字も知らない俳優出身。一般大衆の人気だけで当選したポピュリストだ。

 トランプ氏は政敵を貶めるためにはありとあらゆる手段を使う。同氏がバイデン氏に関する「醜聞」を見逃すわけがない。

 大統領になったばかりのゼレンスキー氏は、凍結されている米国からの軍事支援欲しさにトランプ氏の要求を一も二にもなく承諾した。

 付け加えれば、目下のところこのバイデン氏を巡る「伝聞」を裏づける証拠は一切出て来ていない。


政府高官300人が弾劾を支持
 トランプ大統領の行為のどこが弾劾に値する犯罪なのか。

 米司法次官補(国家安全保障担当)だったディビッド・クリス氏は法律専門サイトにこう書いている。

「米外交にとって伝統的なツールは『飴とムチ』。国益を追求するために不可欠なツール(道具)だ」

「ところがトランプ大統領はそれを国益のために使うのではなく、自分のため、政治目的のために使ったのだ」

「国家が持つマシーナリー(権限)を自分の利益や政治目的のために使う行為は国家権力の乱用以外の何物でもない」

https://www.lawfareblog.com/how-understand-whistleblower-complaint

 ブッシュ(子)、オバマ両政権で外交、国防、諜報活動に携わってきた政府高官300人が27日、共同声明を発表した。

 その声明で元政府高官たちはこう宣言している。

「トランプ大統領の行為は著しく国益に反するものだ。我々は議会の弾劾手続き開始を支持する」

 言うまでもないが、米議会が現職大統領を弾劾できる権限は、憲法修正20条に明記されている。

「国家権力の乱用」が立証されれば、トランプ弾劾の要件は十分に満たされる。

ペロシ下院議長の背中を押した 「ホィッス…
ペロシ下院議長の背中を押した
「ホィッスルブロワー」
 米下院の6つの委員会はこれまで「ロシアゲート」疑惑や「司法妨害」(Obstruction of Justice=正義追及に対する妨害行為)を巡って解明を進めてきた。

 議会だけではない。司法省も渋々特別検察官ポストを新設して2年余にわたり捜査を続けた。その結果、モラー報告を作成、公表した。

 だが、結果は「大統領の厚い壁」に阻まれてしまった。

 民主党が今一歩弾劾手続きに踏み切れなかったのは、過半数を占める下院では可決できても、共和党が多数派の上院*1では可決できないという政治状況があるからだ。

*1=上院の現勢力は共和党53、民主党45(無所属2を加えて47)。弾劾に必要な票は全議席の3分の2、67議席。

 ところが今回、「ウクライナゲート」が急浮上するや、事実上の民主党の党首、ナンシー・ペロシ下院議長が弾劾手続きに入るための徹底調査を正式に決定した。

 その理由は2つあった。

 一つは、前述のクリス元司法次官補が指摘している「国家権力の乱用」容疑。

 もう一つは米情報機関職員が内部告発者として米議会に「申し立て書」を提出したことだ。

 米主要メディアの議会担当記者は筆者にこう説明する。

共和党議員たちはいつまで 「おんぼろ神輿…
「(リチャード・)ニクソン大統領のウォーターゲート疑惑以後、米議会は『大統領の犯罪』を監視するために2つの法的措置をとった」

「一つは上下両院で大統領の外交政策を徹底的にチェックする情報委員会*2を格上げしたことだ」

*2=上院情報委員会は1976年、下院情報委員会は77年に通常の委員会と同格の常任委員会に格上げしている。

「もう一つは政権内部に不正を暴く告発者が出てくることを奨励して立法化した『内部告発者保護法』(Wistleblower Protection Act)だ」

 この法律の推進者の一人がペロシ氏だった。それだけに今回の「申し立て書」には感慨深いものがあったのだろう。

「政権内部からの不正告発者の登場がペロシ議長の背中を押した」(ペロシ氏周辺筋)のだ。

共和党議員たちはいつまで
「おんぼろ神輿」を担ぐのか
 だが、現状では上院で3分の2を取るのは難しい。

 かといって上院の共和党議員全員が100%トランプ支持ではない。与党共和党が選んだ大統領だから自分たちも恩恵を被っている。だから文句を言わないだけだ。

 だが、トランプ大統領の「国家権力の乱用」がここまであからさまに暴露されるとなると、共和党内にも動揺が走って不思議はない。

「ウクライナゲート」発覚直後、かって共和党大統領候補だったミット・ロムニー上院議員(ユタ州選出)は真っ先に「非常に当惑している」(Deeply troubling)と発言。

 また共和党の良識派とされるベン・サッス上院議員(ネブラスカ州選出)もロムニー氏に同調している。

 共和党議員たちがトランプ大統領という「おんぼろ神輿」をいつまで担いでいられるか。彼らもまた選挙という「洗礼」を受ける政治家だ。

 百歩譲って、トランプ大統領があくまでウクライナ大統領との電話でバイデン氏の息子ハンター氏の汚職容疑の徹底捜査を要求していなかったという証拠がなかったとしよう。

内部告発者が暴露した 「もう一つの犯罪は…
内部告発者が暴露した
「もう一つの犯罪は隠蔽工作」
 だが、内部告発者の議会に提出した「申し立て書」にはもう一つ重要な「嫌疑」が記されている。

「ホワイトハウス高官たちはことの重大性に気づき、やり取りをすべて記録しているコンピューター・システムから電話でのやりとりの一部を削除、あるいは極秘システムに移動させた」

「隠蔽工作」である。

 かってニクソン氏がウォーターゲート事件では民主党全国本部への侵入だけでなく、事件が発覚した後、それを隠蔽しようとしたことが下院での弾劾決議案の重要なポイントになった。

 今回もトランプ氏の「隠蔽工作」がクローブアップされることは間違いなさそうだ。

 共和党の選挙戦略に長年携わってきた政治コンサルタント、マイク・マーフィ氏はテレビ・インタビューでこう言い切っている。

「上院での弾劾決議案採決が(記名投票ではなく)無記名で行われたら少なくとも30人の共和党議員は同決議に賛成するだろう」

「特に再選が危ぶまれているコロラド、メーン、アリゾナ各州選出の現職議員が寝返る可能性大だ」

 さらに大胆な予想をする共和党員も出てきた。ジェフ・フレイク前上院議員(共和党、コネチカット州選出)だ。

「共和党の現職上院議員から聞いた話だが、無記名なら少なくとも35人の共和党上院議員が弾劾決議案に賛成すると言っていた」

https://www.foxnews.com/media/jeff-flake-35-gop-senators-impeach-trump.amp

ベット・サイトに「弾劾買い」殺到…
ベット・サイトに「弾劾買い」殺到
 米各種メディアが常に注目している政局の先と先を占い、カネを賭け合うサイト『プリデクテット』(Predict it)がある。

 ニュージーランド・ウエリントンにあるビクトリア大学が始めた世界の政治経済情勢を予測して参加者間でベットし合う(カネを賭け合う)取引サイトだ。

 ワシントンに拠点を置き、ハーバードやエールなど米著名大学もパートナーになっている。

 同サイトは27日現在、予測機関『ビアンコ・リサーチ』(Bianco Research)の情報を参考にした顧客の動向を次のように報告している。

「2019年内にトランプ大統領が弾劾される可能性は42%、弾劾されない可能性は14%」

「任期中(再選された後も含め)トランプ大統領が弾劾される可能性は64%、弾劾されない可能性は29%」

 トランプ大統領は再度ツィッターで反撃している。

「(ウクライナゲートについて)完全な魔女狩りだ」「オレは何もやましいことはしていない」「内部告発したヤツは名を名乗れ」

 ホワイトハウス担当の主要紙の記者によれば、今度ばかりはホワイトハウスで働く高官たちも浮足だっているという。

 大統領の指示でウクライナとの交渉役を務めていたカート・ボルカー・ウクライナ問題特別代表は27日、辞表を提出した。

 弾劾手続きを正式に決めた民主党は、情報委員会をはじめ6つの委員会が次々と高官や元高官たちを召喚する計画のようだ。

 あるいは委員会を一本化して「ウクライナゲート聴聞会」を開くのか。ニクソン氏を弾劾・辞任に追い詰めた「ウォーターゲート聴聞会」の再来のような様相になってきた。

もっと知りたい!続けて読む

文在寅氏、NYで米大統領に土下座外交
日韓関係ばかりか、米韓関係にも暗雲が立ち込めるなか、韓国の文在寅大統領は、1159キロの長旅を厭わず、ニューヨークに飛び、ドナルド・トランプ大統領と会談した。6か月ぶりの米韓首脳会談は1時間余にわたって行われた。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57772 

 

伏兵に嵌ったトランプ大統領弾劾へ
ペロシ下院議長もついに動くが、実現へのハードルなお高し
2019.9.30(月)
堀田 佳男
アメリカ 政治
 

今年9月25日、国連総会に合わせて行われた米ウクライナ首脳会談(提供:Shealah Craighead/White House/ZUMA Press/アフロ)
 ロシア疑惑を乗り越えたドナルド・トランプ大統領(以下トランプ)は、まさかウクライナ疑惑で弾劾調査が始まるとは思っていなかっただろう。

 弾劾という点では、トランプの周囲にいる複数の関係者が起訴されたロシア疑惑の方が危機感は強かったかもしれないが、ロバート・モラー特別検察官は今春「シロ判定」を下した。

 今回、ナンシー・ペロシ下院議長はウクライナ疑惑で、連邦下院の6つの委員会にトランプの弾劾調査を命じた。だが同議長はトランプの弾劾には反対だった人物である。

 今年3月の「ワシントンポスト・マガジン」とのインタビューでこう述べている。

「弾劾は国家を分断させます。やむにやまれぬ証拠があったり、圧倒的と言えるような超党派の力で弾劾を推し進められない限り、すべきではないと考えます」

 なぜ態度を変えたのか。

 ウクライナ疑惑はロシア疑惑よりも違法性が高く、超党派でトランプを弾劾できると判断したためか。

 当欄では今後の弾劾の具体的な手続きと、トランプが弾劾される可能性を分かりやすく記したい。

 米国史上、連邦議会が大統領の弾劾手続きに入ったのはトランプで4人目である(アンドリュー・ジョンソン、リチャード・ニクソン、ビル・クリントン、ドナルド・トランプ)。

 だが誰一人として罷免された大統領はいない…
 だが誰一人として罷免された大統領はいない。ニクソン大統領は途中で辞任したし、ジョンソン大統領は1票差で罷免を逃れている。

 弾劾はまず連邦下院議員がトランプ弾劾の決議案を提出するところから始まる。

 トランプ政権誕生後、すでにカリフォルアに州のブラッド・シャーマン議員やテキサス州のアル・グリーン議員などが、トランプ弾劾の決議案を出したが頓挫している。

 というのも前述したように、ペロシ議長が弾劾に前向きでなかったため、下院の民主党議員の間で統一した政治勢力が生まれなかったのだ。

 しかし今回、同議長は考えを改めた。

 というのもトランプの内部告発者が、トランプとウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話内容を公開し、その内容が「違法行為」であると判断したことが大きい。

 トランプがゼレンスキー大統領に対し、民主党ジョー・バイデン氏の調査要請をすることは大統領としての「職権の乱用」にあたるとした。

 トランプが民主党レースで首位を走っているバイデン氏を蹴落とすことができれば何でもするとの思惑だったことは、容易に想像できる。

 筆者も政権側が公表した5ページの電話内容を読んだが、実際はさらに深度のある内容が話されており、ペロシ議長は民主党の有力議員と会議を開いて弾劾を決意したわけだ。

 その場で、「鉄は熱いうちに打て」と述べた…
 その場で、「鉄は熱いうちに打て」と述べたという。年内に結果を出したい意向も漏らしている。

 これまでの弾劾決議案が頓挫したのは、ペロシ議員が躊躇したからにほかならない。下院トップの人間が動かない限り、全体の流れは一本化されない。

 しかし今回、同議員が本気モードに入ったことで、下院では弾劾決議案が可決される可能性が高くなってきた。

 実際の数字を眺めたい。

 連邦下院の定数は435。多数党は民主党で現在235人。共和党議員は198人。無所属が1人で欠員も1。

 いわゆる安定多数が218なので、ペロシ議員が音頭をとれば、弾劾の決議案を通すことは難しいことではない。今年中に実現できるかもしれない。

 下院を通過した決議案は連邦上院に移される。上院では裁判の形をとる。

 最高裁判事が上院本会議場に来て、上院議員は陪審員の役回りとなる。下院では過半数で決議案を通過できたが、上院では定員100人の3分2以上の票が必要となる。

 現在上院では共和党が多数議席を占めており53。民主党が45。2人が民主党寄りの無党派だ。

 20人ほどの共和党議員がトランプに反対票…
 20人ほどの共和党議員がトランプに反対票を投じない限り3分の2には至らない。ここに弾劾の難しさがある。

 クリントン大統領の弾劾裁判では1999年、セクハラ問題での偽証罪と司法妨害罪の2点で争われた。

 偽証罪では上院の民主党議員55人すべてが「無罪」の判断を下し、司法妨害罪では50対50で割れたが、3分の2である67票には届かず、クリントン氏は無罪となった。

 ここで弾劾の法律的解釈を考察したい。弾劾は合衆国憲法第2条第2節に次のように記されている。

「大統領は反逆罪、収賄罪、その他の重罪または軽罪によって弾劾され、有罪の判決を受けた時は罷免される」

 憲法上は軽罪によっても弾劾される可能性があるのだ。

 クリントン大統領の偽証罪と司法妨害罪は、重罪と軽罪の両方に相当するとして裁かれたが、党派的な対立が解決せず、罷免には至らなかった。

 トランプの場合も同様に、上院で弾劾裁判が行われても、現時点では罷免される可能性は低いと言わざるをえない。ペロシ議員の言う「圧倒的といえるような超党派の力」をどう生み出すのか。

 共和党の上院議員が反トランプに回る時というのは、全米レベルでトランプ弾劾の機運が高まってトランプ支持では自身の選挙も危ない状況になるか、大統領選でトランプが負けることがほぼ確実視される状況でないかぎり、難しいかもしれない。

 連邦下院アダム・シフ情報特別委員会委員長…
 連邦下院アダム・シフ情報特別委員会委員長(民主党)は、トランプがゼレンスキー大統領に迫った内容を確認した後、米記者たちに述べた。

「私や同僚が思っていた以上に罪深い内容で、外国首脳に対してマフィアが使うような強圧的な態度をとった」

 当件については今後、新しい情報が公開され、トランプを追い込む流れが強まるだろうが、政権側もトランプを擁護するために司法妨害なども含めてあらゆる手立てを打ってくるはずだ。

 トランプの行状を見る限り、弾劾されるべき大統領であると考えるが、実際にはハードルは予想以上に高いのが現実である。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57764?page=5


http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/452.html

[政治・選挙・NHK266] 内閣府がひっそり公表した日本経済「不都合な真実」小泉進次郎は総理になってやっていけるだろうか・・・
内閣府がひっそり公表した日本経済「不都合な真実」小泉進次郎は総理になってやっていけるだろうか・・・
2019.9.30(月)
田代 秀敏
政治 経済

入閣後に記者会見する小泉進次郎環境相(写真:ロイター/アフロ)
 滝川クリステルとの結婚を8月7日に披露してから36日目の9月11日、小泉進次郎が環境大臣に起用されて初入閣した。38歳での大臣就任は、小渕優子が34歳で少子化担当大臣に就任し、野田聖子が37歳で郵政大臣に就任したのに次いで、戦後3番目の若さである。男性に限ると、54歳で総理になった田中角栄が39歳で郵政大臣に就任したよりも若い戦後最年少での大臣就任である。

 安倍晋三が自民党総裁の第3期目の任期を終える2021年9月20日に、小泉進次郎が40歳で総裁そして総理に就任したら、伊藤博文が44歳で総理に就任したのを抜き、憲政史上最年少での総理就任となる。それは決して夢物語ではない。

未来の総理がたどる道
 実際、日本経済新聞社・テレビ東京が9月11〜12日に実施した世論調査によると、「次の首相にふさわしいのは誰か」との問いに対し、小泉進次郎は20%で最も多くの支持を集め、2位の安倍晋三総理の16%、3位の石破茂元自民党幹事長の15%を凌駕した。*1

 こうして「次の総理」の最有力候補として認められているからこそ小泉進次郎は、自身の結婚という私事を、「この場所は正に政治の、権力の中枢」と自ら語った総理官邸で堂々と発表したのだろう。実際、総理官邸での結婚発表は、1929年に旧官邸が竣工して以来の90年の歴史で、おそらく初めてであった。

*1:“「次の首相」小泉氏20%で首位 安倍首相、石破氏続く 日経世論調査” 2019/9/12 22:32日本経済新聞 電子版https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49760730S9A910C1PP8000/

ひっそりと公表された試算…
 もし仮に小泉進次郎が2021年に40歳で総理に就任し、現在の第2次安倍晋三政権のように約7年もの長期政権となったとしたら、「小泉進次郎総理」の下での2021〜2028年度の日本の経済そして財政はどうなっているのだろうか? 実は、それを試算した結果をすでに内閣府が発表している。その中身を見てみよう。

ひっそりと公表された試算
 今年の参議院選挙が終わってから10日後の7月31日に経済財政諮問会議が開催された。この会議は安倍総理が議長を務める重要なものである。その会議に、内閣府が『中長期の経済財政に関する試算』(以下、『試算』と呼ぶ)の最新版を報告した。

『試算』は、日本政府が発表する唯一の公式の中長期経済予測である。2001年から毎年1度発表されるようになり、第2次安倍政権が発足した翌年の2013年からは毎年2度、冬(1〜2月)と夏(7〜8月)とに発表されている。

 昨年の夏は7月9日に発表されたが、今年の夏はそれより22日も遅かった。それは今回の参院選の投票日が7月21日であったからだと筆者は睨んでいる。事実、前回の参院選が行われた2016年には、『試算』は7月10日の投票日から15日後の7月26日に発表された。また、前々回の参院選が行われた2013年には、『試算』は7月21日の投票日から18日後の8月8日に発表された。今回も『試算』は参院選の投票日の後に発表された。

 このことが示しているのは、もし『試算』の内容が選挙前に多くの国民に知られたら、国政選挙の結果に大きく影響しかねないと、政府内で考えられているからではないか。なぜならこの試算をつぶさに分析すれば、この試算はバラ色の未来を示すものではなく、悪夢のような未来を示していることが分かるからである。

内閣府試算が示す日本経済の行方…
内閣府試算が示す日本経済の行方
『試算』最新版は、2019年度から2028年度までの日本の「マクロ経済の姿」そして「国・地方の財政の姿」を、2つのケースに分けて予測している。
 1つのケースは、アベノミクスが目標とする2%の物価上昇率が達成される「成長実現ケース」である。もう1つのケースは、1%強の物価上昇率が達成される「ベースライン・ケース」である(ベースラインとは本来、測量の際の基準となる線のことである)。
 物価上昇率が0%前後で推移する「ゼロ成長ケース」や、物価上昇率がマイナスで推移する「成長失敗ケース」の試算は(おそらく行われているのだろうが)公開されていない。
【図1】:物価上昇率および国内総生産(GDP):実績(2000〜2018年)と内閣府試算(2019〜2028年度)
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 消費者物価の上昇率を見ると、「成長実現ケース」では、2020年度から上昇を続け2024年度から2%で安定的に推移する(【図1】@青い曲線)。
 このとき、日本銀行の黒田東彦総裁が2013年4月4日に「現時点で考えられるあらゆる政策を総動員して、2%の『物価安定の目標』について、2年程度を念頭に置いて実現する」と力強く宣言したことが、最初の想定の5倍の長さの10年を掛けて達成されることになる。
 経済活動の規模を表す国内総生産(GDP)の物価調整をしない名目値の試算を見ると、「成長実現ケース」では、2018年度に550.3兆円であったのが、2023年度に600兆円を超え、2027年度に700兆円を超え、2028年度には729.0兆円に達する。この間の年度平均成長率は約2.9%となる(【図1】B青い曲線)。
 この試算は相当に強気である。約2.9%の成長率は、2000〜2018年度の年度平均成長率の約0.2%の約14.5倍、アベノミクス下の2013〜2018年度の年度平均成長率の約1.8%を1.1ポイント上回る。つまり経済成長がこの時期に比べ、約6割もスピードアップすることになる。
 これに対して、「ベースライン・ケース」では、消費者物価上昇率が2023年以降は1.1%で安定的に推移し、黒田総裁の宣言は15年後の2028年度になっても達成されないままとなる(【図1】A赤い曲線)。
「ベースライン・ケース」の名目GDPは2018年度の550.3兆円から2024年度に600兆円を超え、2028年度には635.1兆円に達する。この間の年度平均成長率は約1.4%となる(【図1】C赤い曲線)。
 この試算はかなり弱気である。約1.4%の成長率は、2000〜2018年度の年度平均成長率である約0.2%の7倍であるものの、アベノミクス下の2013〜2018年度の年度平均成長率である約1.8%を0.4ポイント下回る。つまり経済成長が同時期に比べ約22%もペースダウンすることになる。
成長と金利上昇のジレンマ…
成長と金利上昇のジレンマ
 約1.4〜2.9%の経済成長率は、世界的には低い水準である。しかし、それでもプラスの経済成長が持続すれば、消費も設備投資も住宅投資も次第に活発となって資金の借り入れ需要が高まり、「経済の体温」である金利は上昇していく。
【図2】を見てほしい。日本の長期金利について、これまでの「実績」と『試算』最新版の結果とを描いたグラフである。
 日本の長期金利(新発10年国債の流通利回り)は、1980年から2018年までの38年間、下落基調を続けてきた。
 2001年には長期金利の下限とされてきた2%(年利)の水準を下回った。それから10年後の2011年には1%の水準を下回った。さらに5年後の2016年には0.1%の水準を下回り、2018年には遂に0%の水準を下回ってマイナスとなった。古代バビロニア以来の金利の歴史において、未曾有の超低金利が現在の日本に出現しているのである(【図2】の黒い曲線)。
【図2】:日本の長期金利:実績(1966〜2018年)と内閣府試算(2019〜28年度)
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 しかし、未曾有の超低金利にも終わりがあり、いずれ金利が上昇に転じることを、『試算』は示している。
 金利が上昇局面に入ると、日本は経済危機のリスクが高まる。政府の債務残高が、今年6月末時点で、1100兆円を超えているからである。単純計算すると、金利が1%ポイント上昇するだけで、政府が支払う利子は11兆円以上増えることになる。
 内閣府の『試算』の最新版によると、長期金利は2023年度から上昇基調に転じる。2022年度に0%であったのが、「成長実現ケース」では2028年度に2.9%に上昇し、山一証券と北海道拓殖銀行とが破綻して金融危機が起きた1997年度の前年度の2.76%を、32年ぶりに上回ることになる(【図2】の青い曲線)。
 一方、「ベースライン・ケース」では2028年度に1.7%に上昇し、安倍晋三が52歳で総理に就任した2006年度の1.67%を22年ぶりに上回ることになる(【図2】の赤い曲線)。
 2006年は分水嶺であった。その翌2007年に米国でサブプライム危機が起き、さらに翌2008年には米国発の世界金融危機が起きて日本では戦後最大の景気後退が起きた。そして、翌2009年には政権交代が起きて民主党が自民党から政権を奪い、安倍総理が言う「悪夢のような民主党政権」が成立した。
 それぞれのケースでの試算結果を、単純に延長する(具体的には回帰分析で算出される回帰直線を将来に延長する)と、長期金利は「成長実現ケース」の延長では2040年度に7%弱に上昇し、空前絶後のバブルが崩壊した1990年の6.41%を上回ることになる。2050年度には長期金利は10%強に達し、狂乱物価が起きて高度経済成長が終焉した1973年の8.19%を上回ることになる(【図2】の青い点線)。
 一方、「ベースライン・ケース」を単純に延長すると、長期金利は2040年度に4%強に上昇し、為替レートが1ドル=100円の大台を割り込んで超円高が始まった1994年の4.57%に迫る。2050年度には6%強に上昇し、バブル景気のピークであった1989年の5.75%を上回ることになる(【図2】の赤い点線)。
内閣府試算が警鐘を鳴らす金利上昇…
内閣府試算が警鐘を鳴らす金利上昇
 金利が上昇すると、債権者(資金を貸している者)は受け取る利息が増えるが、債務者(資金を借りている者)は支払う利息が増える。日本最大の債務者は日本政府である。今年3月末で、合計1103兆3543億円の債務を抱えている(内訳は、国債の残高が976兆8035億円、借入金が53兆2018億円、政府短期証券(短期国債)が73兆3490億円である)。さらに政府が保証している債務が38兆1087億円ある。
 債務がこれだけ巨額だと、金利が人類史上かつてない異常な低水準であっても、債務の償還(払い戻し)・利払い・借り換えなどの費用の合計である「国債費」は、財政運営において無視できないほど大きくなる。
 実際、国債費は、令和元年予算で23兆5082億円が計上されている。これは前年度より2062億円増加しており、101兆4571億円の一般会計予算総額の23.2%を占める。
 つまり、政府の一般会計からの支払いの約4分の1は、債務の返済、利払いや借り換えのための国債費に当てられているのである。もし万一、国債費の支払いが1円でも不足したり1日でも遅れたりすると、日本政府は債務不履行(デフォルト)したことになってしまう。
 金利が上昇すると財政の「自転車操業」は一段と苦しくなる。新規に発行する国債の利払いが増えるだけでなく、過去に低い金利で発行した国債を借り換えると金利が高くなってしまうからである。
 実際、安倍総理が議長を務める経済財政諮問会議で、内閣府が『試算』を報告する際に用いたと思われる全4ページのレジュメ『中長期の経済財政に関する試算(2019年7月)のポイント』には、「長期金利の上昇に伴い、低金利で発行した既発債のより高い金利による借換えが進むことに留意が必要である」という注が記されている。
債務膨張の連鎖…
債務膨張の連鎖
 ここで【図3】を見てほしい。これは、日本の長期金利そして国債費のこれまでの「実績」および内閣府による『試算』最新版の結果を描いたグラフである。
【図3】:金利と国債費:実績(2000〜2018年)と内閣府試算(2019〜28年度)
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 国債費は、長期金利が0.7%であったアベノミクス元年の2013年度に21.3兆円であった。それが年度平均1.3%で増加し、長期金利が0.0%であった2018年度に22.7兆円となった。これは、歳出101.4兆円の22.4%、税収59.9兆円の37.9%の水準であった。
「成長実現ケース」では、2019年度から「国債費」は年度平均4.5%で増加して、2028年度に35.2兆円へ増加し、一般会計歳出130.1兆円の27.1%、税収86.4兆円の40.7%を占めるようになる。アベノミクスが成功しても、国債費の「重荷」は歳出の22.4%から27.1%へ、税収の37.9%から40.7%と増えることになる。
 一方、「ベースライン・ケース」では、「国債費」が年度平均3.3%で増加して、2028年度に31.4兆円に達し、一般会計歳出119.1兆円の26.4%を、税収75.0兆円の41.9%を占めるようになる。この場合も国債費の「重荷」は歳出の22.4%から26.4%へ、税収の37.9%から41.9%へと増えることになる。
 結局どちらのケースでも、国債費は膨張し、一般会計歳出に占める割合も、税収に対する比率も高まり、財政の「自転車操業」はさらに厳しくなるのである。
 単純に延長すると、2040年度に国債費は「成長実現ケース」では45兆円を超える(【図3】の青い点線)。「ベースラインシナリオ」でも40兆円に迫る(【図3】の赤い点線)。
 しかし、金利が上昇すると利払いは雪だるま式に増えていく。おそらく国債費は「単純な延長」を遥かに超えて膨れ上がっていくことだろう。国債費は絶対に支払わらなければならないので、社会保障費や国防費や教育費に大鉈を振るわなければならない事態へ政府が追い込まれるリスクは高まっていく。
民間企業に波及する悪夢
 金利上昇は国家財政だけでなく金融機関も直撃する。金利が上昇する時には債券の価格が下落する。国債や地方債や社債などの債券を大量に保有する金融機関には、大きな損失が発生する。また、企業の資金調達コストが高まり、株価は下落しやすくなり、株式を大量に保有する金融機関にも大きな損失が発生しかねない。国債と株式(ETF)とを猛然と買い進んできた日本銀行も例外ではない。
 日本銀行の『金融システムレポート』の最新号(2019年4月号)によると、全ての年限の金利が一律に1%ポイント上昇したとすると、(日本銀行を除く)金融機関全体で約2兆円の損失が発生すると試算されている。これは金融機関全体の自己資本の約10%の水準である。
 とりわけ、長期の債券を保有する比率が高い信用金庫では、損失は自己資本の約25%の水準に達する。これで金利が数%上昇したら、信金が「貸し渋り」どころか「貸し剝がし」を復活しても不思議ではない。
自民党政権が「悪夢」と言われないために・・…
 超低金利を前提に資金を借り入れ長期のローンを組んだ人達は本当に大変なことになるだろう。住宅ローンを払えなくなりマイホームを手放す家庭が出てくるだろうし、人口減少による人手不足は深刻となるばかりだろうから、本業の利益から金利を支払えなくなるゾンビ企業が続出するだろう。
 安倍総理は「悪夢のような民主党政権」と呼んだが、内閣府の『試算』が正しいとすれば、「悪夢のような自民党政権」だったと言われる日が近未来に待ち受けていることになる。
自民党政権が「悪夢」と言われないために・・・
 10月からの消費増税の影響を考慮するために、景気の現状について見ておこう。
【図4】は、「景気の現状判断」そして「景気動向指数」のそれぞれの推移を描いたグラフである。
 コンビニ店長、スナック経営者やタクシー運転手といった景気動向に敏感な様々な職種2050人を内閣府が毎月調査している「景気ウォッチャー調査」によると、「景気の現状判断」は2018年1月から横ばいを示す50を下回り、低下し続けている。これは、「景気が良い」と感じている人よりも「景気が悪い」と感じている人の方が増え続けていることを示している。
【図4】:景気現状判断と景気動向指数
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 一方で、各種の経済指標を集計して作成される「景気動向指数」のうち、景気動向とほぼ一致して動く「一致指数」は2018年4月から下落基調である(【図4】の青い曲線)。景気動向に遅れて動く「遅行指数」は高止まっている(【図4】の緑の曲線)。しかし、景気動向に先行して動く「先行指数」は2018年6月から下落基調である(【図4】の赤い曲線)。
 こうした局面で、今年10月に消費税率を10%に引き上げることは、2017〜9年の世界金融危機の時のように3種類の景気動向指数が一斉に低下する本格的な景気後退を招きかねない。
 だからこそ、安倍総理は消費税率引き上げを再延期して、「国民に信を問う」として衆議院を解散し、衆参同日選挙に持ち込むのではないかと盛んに観測されていた。
 しかし、安倍総理は解散を回避し、消費税率を予定通り今年10月1日に引き上げることを選択した。消費税率を引き上げれば、2014年のように景気が大きく腰折れし、「成長実現ケース」どころか「ベースラインシナリオ」も達成できなくなり、金利が上昇し(国債価格が下落し)続け、「悪夢のような自民党政権」と言われる日が来るのを先延ばしできる・・・。3年に1度しかない衆参同日選挙のチャンスを安倍総理が敢えて捨てたのは、そうした深慮遠謀があったのかもしれない。
 だが、1100兆円を超えて膨らみ続ける政府債務の途方も無い巨大な「山」が永遠に崩壊しないまま持続するという保証はどこにもない。財政のあり方を現状のまま放置していれば、いつか「山」は崩壊し、制御不能な事態がやって来ることを、日本の全ての政治家は覚悟しなければならない。
 だからこそ自民党は、「国債価格が急落するという悪夢」が起きる「X-day」に「政府・日銀や市場関係者がとるべき対応」をまとめた『X-dayプロジェクト報告書』を、「悪夢のような民主党政権」下の2011年にまとめたはずだ。
『X-dayプロジェクト報告書』には、「債務残高が大きく、金利上昇に脆弱な我が国で仮に金利が上昇すれば、危機が急速に深刻化するおそれがある」と明記されている。それから8年が過ぎ、「深刻化」の規模は一段と拡大している。
「X-day」を先送りするのではなく、政府債務の「山」そのものを何とかする「痛みを伴う改革」を行うのは、自身の結婚を総理官邸で発表しても少しも奇異とされないほど総理就任が強く待望されている小泉進次郎こそが取り組むべき第一の課題であるだろう。
(文中敬称略)
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日本人が知らぬ現実、今や世界は米国より中国を支持
G20大阪サミットで顔をそろえたトランプ大統領と習近平総書記。あまり注目されていないが、両大国の指導者の言動は対照的だった。相変わらず「アメリカ・ファースト」の主張を展開するトランプと、「世界経済の開放的発展」を唱える習近平。いま世界の支持は急激に中国に傾き始めている――。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57762?page=7

http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/111.html

[経世済民133] 蟻地獄に落ち込んだJDI、這い上がるすべはあるのか 官民ファンドの限界とシャープ支援への期待
蟻地獄に落ち込んだJDI、這い上がるすべはあるのか
官民ファンドの限界とシャープ支援への期待
2019.9.30(月)中田 行彦
経営 IT・デジタル 電機・半導体 IT・通信 製造業
「日の丸液晶」JDIはどこへ向かうのか?
 経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は、9月26日に中国ファンドの嘉実基金管理グループ(ハーベストGr)から、金融支援を見送る、との通知を受けたと発表した。株主総会の前日である。
 これでJDIの再建案は、二転三転どころか、七転びし白紙に戻った。
 中国ファンドに翻弄されてきたJDIは、蟻地獄に落ち込み這い出せなくなっている。これは「中国式交渉」である。契約を重んじ、契約条項に則ってすすめる「西洋式交渉」とは全く異なる。
 JDIは、このままずるずると砂の渦に飲み込まれていくのだろうか。それとも、何か這い上がる術は残されているのだろうか?
不幸にも当たってしまった予想
 まず中国ファンドが離脱したJDIを巡る状況を【図1】に示しておく。
【図1】中国ファンドが離脱したJDIを巡る状況(筆者作成)
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 JDIは、8月に嘉実基金と香港ファンドのオアシス・マネジメントで構成する企業連合「Suwaインベストメントホールディングス」と800億円の支援受け入れで契約を結んだ。800億円のうち嘉実基金が約600億円(米アップルからの100億円強含む)、オアシスが160億円以上出資する計画であった。
 著者は、嘉実基金がJDIへ出資する確率は非常に低いと予測したが、不幸にも当たってしまった。その根拠は、企業連合「Suwa」のウィンストン・リー最高経営責任者(CEO)のインタビュー時の発言に信ぴょう性が無く、むしろ不安をあおってしまったからだ。
参考記事;中国製有機EL採用でiPhoneは復活できるのか」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57470
「仕掛け人」リー氏の退場…
「仕掛け人」リー氏の退場
 今回の支援見送りのキープレイヤーも、ウィンストン・リー氏である。
 そもそもウィンストン・リー氏とはどんな人物なのか? 一言で言えば「仕掛け人」である。
 台湾出身の投資銀行マンだが、投資ファンドの代表などを名乗ることもある(『週刊ダイヤモンド』6月1日号)。だが、正式には投資ファンドには所属せず、自分で名乗っているだけというのが実態のようである。リー氏は、要するに、この金融支援プロジェクト全体の「仕掛け人」なのである。
 このプロジェクトは、最初は、中国浙江省で有機ELパネル工場を建設する構想を打ち出して、浙江省の袁家軍省長を巻き込んだ。しかし、中国中央政府が難色を示して事実上、有機ELパネル工場計画は頓挫してしまって、他の方向に動いている。
 さて、JDIは支援見送り理由について「ガバナンス(企業統治)に対する考え方における重要な見解の不一致が生じた」と説明した(日本経済新聞2019年9月27日)。
 JDIが2019年9月26日に発行した「お知らせ」は下記のように記している。
<Harvest Techより、同社と割当予定先との間で、当社のガバナンスに対する考え方における重要な見解の不一致が生じたことを理由に――>
 リー氏は、ハーベストGrのDirectorであり、また一部門であるHarvest TechトップのGM(General Manager)であり、かつ企業連合「Suwa」のトップCEOと、3つの顔を持つ。
 そのリー氏と、出資の割当予定先であるハーベストGrのトップとの間で、JDIに対するガバナンスに不一致が生じたのが理由だ。判り易く言えば、リー氏はハーベストGrのDirectorでありながら、ハーベストGrトップの了解を得ずに、ハーベストGrとは別の投資家が加わる可能性に言及するなど、Suwaの立場で独自の立場で動いたこと等が問題とされたと考えられる。
 結局、リー氏は、9月2日付でHarvest TechトップのGMを辞任したという。
JDIへの新たな出資者は?…
今回の支援見送りの原因となった、リー氏の独断専行については、以前「中国製有機EL採用でiPhoneは復活できるのか」で触れたので、同記事を引用しておこう。
《JDIと800億円の金融支援で契約した企業連合Suwaのウィンストン・リー氏が、2019年8月23日に日本経済新聞社の単独インタビューに応じた(日本経済新聞2019年8月24日)。(中略) 
 リー氏は、「今回企業連合であるSuwaのトップとして発言する」と、発言の立場を限定した。
 JDIが2019年6月17日に発行した「お知らせ」では次の内容を記している。
<出資予定者のうち「Harvest Tech」からは、(中略)出資の実行に必要とされる内部の機関決定に諮る旨の報告を受けました。(中略)Harvest TechのGeneral ManagerであるWinston Henry Lee氏からは、(中略)Harvest Fundから当該不足額を出資するために必要とされる内部の機関決定に諮る旨の報告を受けております>
 このことは何を意味しているのか?
 JDIは、出資予定者の一つは「Harvest Tech」であり、そのトップはウィンストン・リー氏である。リー氏からは、不足額が発生した場合は内部の機関決定、つまり嘉実基金の了解を得るという。しかし、リー氏は、ハーベストGrの一部門の長でDirectorに過ぎず、ハーベストGrの機関決定を取る必要がある。
 リー氏は、今回、資金を出すハーベストGrの立場でなく、資金の受け手であるSuwaのトップとして発言した。
 JDIに払い込む資金の確保について、リー氏は「もちろん確実だ」と話した(日本経済新聞2019年8月24日)。
 しかし、資金を出すハーベストGrの立場をさけた言葉に信ぴょう性はない。むしろ不安をあおってしまった》
参考記事:中国製有機EL採用でiPhoneは復活できるのか
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57470
 これらのリー氏の行動が、嘉実基金が金融支援を見送ることにつながり、「仕掛け人」リー氏の退場となった。
JDIへの新たな出資者は?
 嘉実基金が企業連合「Suwa」から抜けたことにより、支援を予定していた最大800億円のうち、約630億円が消えたことになる。
 次期社長に就任予定の菊岡稔氏は「オアシスや顧客、サプライヤーから4.3億ドルを調達するメドが付いている。10月〜11月にほぼ確保できる」と当面の資金繰りに懸念はないとした(日本経済新聞2019年9月27日)。
 香港のファンドであるオアシス・マネジメン…
 香港のファンドであるオアシス・マネジメントからの出資予定約160億円に変更はない。
 他にアップルと思われる顧客から、200億円強の出資が通知されている。その他を合わせて4.3億ドルの予定であるが、当初予定額800億円の半分強までしか達していない。
 JDIが2019年9月26日に発行した「お知らせ」では、当社顧客より、取引の支払条件を緩和するとともに、2億ドル(200億円強)の出資の通知があったとしている。この当社顧客とは、アップルを指すと考えられる。ただし、2億ドルの出資の条件として、2019年12月までに、他社からを含め4.5億ドルを集めることが条件となっている。アップルらしい条件の付け方だ。
 JDIはアップルに、白山液晶工場建設のために借りた債務約1000億円が残っている。これに「トリガー条項」という条件が付いている。「トリガー条項」とは、JDIの現預金が300億円を下回った場合、アップルは債務残高の全額を即時返済することを求めるか、白山工場を差し押さえることができるというものだ。
 私は、アップルが2020年iPhoneの新モデル3機種に有機ELパネルを採用しても、アップルはJDIに出資すると思っている。アップルは、自社の意向に沿う液晶工場を確保しておきたいはずだからだ。
 しかし、アップルが2020年iPhone3機種に有機ELパネルを採用すると、JDIの液晶生産は限定され、現預金残高はたちまち枯渇して、「トリガー条項」にかかるリスクが高まる。今後の経営再建の過程でも、アップルはJDIの「生殺与奪」の権利を握り続けることになる。
 一方、官民ファンドの(株)INCJからは、リファイナンスを含めた引き続きのサポートを受ける意向が伝えられている。しかし、すでに4月〜9月に、運転資金として合計600億円の追加融資を受けている。内訳は、4月19日実行(返済期限2020年12月31日)の200億円、8月8日実行(同2020年8月8日)の200億円、9月3日実行(同2020年9月3日)の200億円だ(東京商工リサーチ2019年9月27日)。本業でのキャッシュ創出力を欠くJDIは運転資金を外部から調達して賄う厳しい資金繰りだ。東京商工リサーチには、「近日中の法的手続きの可能性はあるのか」との問い合わせが相次ぐなど、緊張が一気に高まっているという。
 また、(株)INCJの担当者は26日夕、今年実行した合計600億円の融資の返済について、「(現時点で)期限の利益喪失などで、返済期限前にJDIに返済を求めることはない」とコメントした(東京商工リサーチ2019年9月27日)。ただ、追加の出資や融資については、「現時点で決定したことはない」と述べるにとどめた。
(株)INCJの資金は、国民の税金から出ており、打てる手は限られている。
(株)INCJは、設立時に2000億円出資し、2014年のJDI上場により1674億円を回収している。2019年4月には、債務の株式化と返済長期化を合わせた約1500億円を支援した。要するに、(株)INCJは、JDIの普通株と優先株、そして長期貸付を行っている。また、JDI関係者の間では、法的整理、つまり「倒産」の可能性について声があるという(日本経済新聞2019年9月28日)。
(株)INCJは、JDIに出資することも、法的整理することも選択が難しい。
 JDIとしては、出資についてハーベストGrとHarvest Techと引き続き協議および交渉をおこなうとしている。また、Harvest Techに代わる新たな資金調達先も検討するとしている。
 しかし、この苦境で、約400億円の新たな出資者を見つけることは至難の技だ。
無意味なJDIの株主総会…
無意味なJDIの株主総会
 ところで9月27日に開かれたJDIの臨時株主総会だが、総会直前に中国ファンドの嘉実基金から金融支援を見送るとの通知を受けたと発表したため、混迷する経営状況に株主からは困惑の声が相次いだ。
 それでも総会では800億円相当の新株発行などの承認を得た。JDI側は、嘉実基金との交渉を続けるとしたものの、交渉が成立しなかった場合、それに変わる出資者は見当たらない。今後、出資者が変わる場合などは改めて株主総会を招集する方針である。
 また、新社長に就く菊岡稔常務執行役員の人事議案を承認した。
 ここまで追い詰められた経営陣の提案だけに、株主も受け入れるしか方法が残っていなかった。
最後の切り札はやっぱりシャープ
 この様な苦境に立つJDIへの支援の最後の切り札がシャープだと、私は思っている。というのも、以前にも書いたが、以下のような感触を得ているからだ。
 2019年6月25日にシャープ株主総会に引く続き行われた経営説明会で、私はシャープ会長兼社長の戴正呉氏にJDIへの支援を直接依頼した。
「6月17日の日本経済新聞によれば、JDIの支援について『要請があれば検討する』と言われています。それ以降、台湾の支援者が離脱し、JDIは瀕死の状態になっています。以前に、シャープへの投資について、鴻海と官民ファンドが争い、鴻海が勝ったことによって、シャープとJDIの統合が消えました。しかし、状況は大きく変わっています。怨念を超えて、シャープからJDIへ支援を提案されてはいかがでしょうか?」
 私の依頼に対して、戴社長から次の言葉が得られた。
「日本の国と社会に同じ意識があれば援助したい」
「日本のような大きな国で、シャープとJDIの2社のディスプレイの会社が生き残れないのはおかしい」
 これらの真意は、官民ファンドや経済産業省などの国から要請があれば手を差し伸べる用意はある、という意味だ。
参考記事:シャープ社長が株主総会で見せたJDI支援への関心
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56852
『シャープ再建 鴻海流スピード経営と日本型リーダーシップ』(中田行彦著、啓文社書房)
 蟻地獄に落ち込んだJDIが、生死の淵から這い上がる術として、過去の怨念を越えて、官民ファンドや経済産業省は、最後の切り札であるシャープに対して、JDI支援の協力を要請して欲しいと強く望んでいる。
「あの男は信用できないな。やつがいる限り、私は出ていかないよ」
 シャープを傘下に入れた鴻海(ホンハイ)グループの総裁郭台銘(テリー・ゴウ)の言葉だ(週刊ダイヤモンド』6月1日号)。「あの男」とは、企業連合「SUWAコンソーシアム」のまとめ役だったウィンストン・リー氏のことだ。
 ウィンストン・リー氏が退場した今こそ、シャープがJDIを支援する絶好の機会とも言える。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57774?page=5

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/257.html

[国際27] 建国70周年の中国、批判封じ込めが経済リスクに 香港駐留の中国部隊が2倍超に増加、抗議激化に備え 香港でまた大規模デモ
コラム2019年9月30日 / 15:34 / 9時間前更新

建国70周年の中国、批判封じ込めが経済リスクに
Pete Sweeney
2 分で読む

[香港 30日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国は10月1日に建国70周年を迎える。習近平国家主席は汚職を摘発し、政府に批判的な動きを抑え込んできた。ただ、批判の封じ込めは経済の耐性へのリスクになりつつある。


2019年現在の中国は経済規模が14兆ドルと、国民党との内戦などで経済が疲弊した1949年の建国時とは雲泥の差だ。中国共産党も昔とは異なる。外国との貿易や民間による資産保有を受け入れるようになり、自由への許容度を高め、インフラや学校の建設および金融市場の構築を担わせるため、成長志向の官僚を育成してきた。

こういった現実主義の官僚らが外国から累積で1兆6000億ドルの投資を呼び込み、国内企業の国際的な地位を高めるのに役割を果たしてきた。

一部の官僚はあまりにも実利主義だったため、地位を利用して私服を肥やした。習主席は2012年の最高指導者の地位について以降、汚職を一斉に取り締まり、同時に権力を固めてきている。

エコノミストのアンディー・シエ氏は、汚職によるコストは国内総生産(GDP)の約10%に相当する経済的損失をもたらしたと推計。ただ、何十万人もの当局者の粛清を受けて国内に恐怖が広がった。

多くの地方政府官僚はリスク回避姿勢が余りにも強いため、経済の減速を受けて刺激策を打ち出そうと必死だ。さらに悪いことに、政府関係の職は違法な賄賂で所得を水増しできなくなった後も給与水準が引き上げられなかったことなどから、専門家よりもイデオロギー信奉者が志願するようになった。金融規制当局から民間に人材が流れたことは、2015年の株価暴落で当局が対応を誤った一因だった。

米中貿易摩擦で米国が予告どおり対中関税を引き上げた際、中国商務省は経験豊富な交渉官が十分にいないと認めた。

習主席は自身への忠誠を重んじてきた。それと同時に外部の助言に対して政府の耳をふさいだ。楼継偉元財政相のような改革派官僚は主流から外され、リベラルなシンクタンクである「天則経済研究所」は今年、強制的に閉鎖された。

取り締まり強化は中央政府内や地方で情報空洞化の拡大を引き起こしている。トランプ米大統領の貿易戦争に関するツイートに反応して中国株式市場が急落した際は、その理由を知らない投資家が本土に多数いた。指導部でさえ十分な情報を得ていないため、巨大経済圏構想「一帯一路」への批判や香港での大規模デモに意表を突かれている。

この結果、投資先としての中国の官僚をかつては理性的と考えていた投資家は、信頼を失いつつある。中国政府は高い代償を払うことになるかもしれない。

9月30日、中国は10月1日に建国70周年を迎える。写真は上海の街頭に設置された建国70周年のインスタレーション。26日撮影(2019年 ロイター/Aly Song)
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/china-anniversary-breakingviews-idJPKBN1WF0GT


 

ワールド2019年10月1日 / 00:30 / 27分前更新
香港駐留の中国部隊が2倍超に増加、抗議激化に備え=外交筋
Reuters Staff
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[香港 30日 ロイター] - 中国政府が香港に駐留部隊を秘密裏に2倍以上に増やしていることが分かった。「逃亡犯条例」改正案を巡る抗議活動のさらなる悪化に備えた動きとみられる。

中国は先月、数千人規模の治安部隊を香港に移動。国営新華社通信は、1997年の香港返還以降行われている定期的な部隊の入れ替えだと伝えていた。

ただ、アジアや西側諸国の外交筋7人は8月後半に行われた部隊移動について、通常の入れ替えではなく増強だったのは明らかと指摘。また、うち3人の関係者は、6月に抗議活動が始まって以来、香港駐留の中国軍関係者は2倍以上に増加していると明かした。増加前は3000─5000人だった規模は、現在1万─1万2000人に上るという。

この結果、香港に展開されている人民解放軍や機動隊の規模は過去最大になっているとみられる。

さらに、5人の関係者によると、増加した駐留部隊には中国人民武装警察(武警、PAP)も含まれるという。PAPは人民解放軍とは別組織で、本土の騒乱防止や治安維持向けの部隊。香港への展開はこれまで公にされていない。

中国国防省や人民解放軍の香港駐屯部などはコメントに応じていない。

また、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官のオフィスもコメントしていない。香港警察の報道官はロイターに、警察部隊は法と秩序の維持が可能で、香港の公共の安全を回復する決意だと述べた。

ロイターの報道後、香港政府の保安局報道官は声明を発表。人民解放軍の香港駐屯部の活動は法を厳守しているとし、規模を含む部隊入れ替えの詳細は明らかにしないと述べた。
https://jp.reuters.com/article/china-army-hongkong-military-idJPKBN1WF1PT


ワールド2019年9月30日 / 09:49 / 12時間前更新
香港でまた大規模デモ 行政長官は北京での中国建国式典へ
Reuters Staff
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[香港 29日 ロイター] - 中国政府への抗議活動が続く香港で29日、再び大規模なデモが発生、警察が放水砲やゴム弾、催涙ガスで制圧、逮捕者が出た。28日も警察とデモ隊の衝突が起きており、中国の建国70周年となる10月1日までにさらなる抗議活動が予定されている。

一方、香港政府によると、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は30日、翌日の中国建国70周年を祝うため、北京に向かう。長官は、香港での祝賀イベントのために中国側に招待状を送っていたが、変更の理由は明らかになっていない。

デモ隊に対し警察は立法会(議会)の建物の屋根から催涙ガスを発射。デモ参加者らは傘を使って身を守り、警官に火炎瓶を投げつける者もいた。タクシーの窓ガラスを割る者や店舗にスプレー缶で落書きする者もいた。

地下鉄を運営する香港鉄路(MTR)によると、一部のデモ隊が車両後方の運転室に侵入するなどし、運行サービスが一時停止した。デモ隊は、反中のスローガンを叫び、民主的な普通選挙など5つの要求に応じるよう政府に訴えた。

行政長官の北京訪問について、デモの参加者は、予想していたと語り、「この3カ月、キャリー・ラムは抗議者らのことを実際に気にしたことはない。彼女が気に掛けるのは『ボス』の中国共産党だけだ」と批判した。
https://jp.reuters.com/article/hongkong-protests-idJPKBN1WF019
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/454.html

[経世済民133] 米金融当局が想定のバランスシート拡大、ウォール街の期待にとどかず NY連銀総裁、銀行の準備金増やす必要も−レポ金利高騰受け 米レポ金利高騰、その意味を探る
米金融当局が想定のバランスシート拡大、ウォール街の期待にとどかず
Rich Miller
2019年9月30日 15:05 JST
• 当局と市場との見解の隔たりで10月FOMCは危険をはらむものに
• 「自律的」拡大を想定の米金融当局、QEとの違いの強調に腐心
金融アナリストは、米連邦準備制度がバランスシートを拡大し、短期金融市場の混乱のリスクを減らすには、米国債約2000億−5000億ドル(約21兆6000億−54兆円)相当を購入する必要があると指摘する。
  これほど多額のオペとなれば、金融当局者の多くが現在話しているバランスシートの「自律的」拡大を大幅に上回ることになると考えられる。

ワシントンのFRB本部
  それはさらに、金融当局が先の金融危機の際に活用し、トランプ大統領が肯定的に語っているような量的緩和(QE)プログラムとの類似点を想起させるのは確かだろう。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iWjOgG_j6JXk/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/-1x-1.png
  金融当局者はこれに対し、資産購入を再開することになっても、経済規模の拡大に伴う通貨および流動性需要の増大への当然の対応だとして、QE再開に当たるとの考えを否定しようとしている。
  連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は18日の記者会見で、「バランスシートの自律的な拡大をいつ再開させるのが適切か、われわれは点検する方針だ」と述べるとともに、10月29、30両日の次回連邦公開市場委員会(FOMC)会合の際にこの問題を議論すると話した。
  こうした議長の発言は今後1年間の米国債購入が約1000億−2000億ドル相当となることを意味し、問題であるとアナリストは指摘。10月の次回FOMC会合後にウォール街が発表を期待している額を大きく下回るからだ。
  「それがメッセージ上もしくは政治的意味合いを持たないのであれば、まとまった額の米国債をざっくばらんに購入するのが明白な選択肢となるだろう」と、ライトソンICAPのチーフエコノミスト、ルー・クランドール氏は電子メールでコメント。「ただ、FOMCにそのような意欲があるか、全く分からない」と記した。
  さらに、「これにより、10月の会合は市場にとって危険」をはらむことになり、金融当局が利下げを見送る場合は特にそうだと付け加えた。
  JPモルガン・チェースの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェロリ氏もこれに同意する。金融当局がずっと小規模なバランスシート拡大に着手するなら、投資家の失望は「極めて大きい」ものとなる恐れがあるとの見方を示した。
  フェロリ氏は、金融当局が10月に今年3回目となる利下げに踏み切ると予想。ただし、投資家にはそれほど確信はない。フェデラルファンド(FF)金利先物市場の取引を踏まえると、投資家が織り込む10月利下げの確率は5分の2程度となっている。
原題:Fed Backs Organic Balance Sheet Rise, Wall Street Wants Whopper(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-30/PYMNZW6JIJUO01?srnd=cojp-v2

NY連銀総裁、銀行の準備金増やす必要も−レポ金利高騰受け
Simon Kennedy
2019年9月30日 20:22 JST
ウィリアムズ総裁はNYT紙とのインタビューで語った
シカゴ連銀のエバンス総裁はCNBCのインタビューに応じた
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)とのインタビューで、短期金融市場が最近見舞われたような混乱を繰り返すリスクを抑えるため、将来的には銀行の準備金を恐らく増やす必要があるだろうとの認識を示した。

  同総裁は「システム内には多額の準備資金があるが、動いていない」と指摘。「こうした環境では流動性が容易に動かないことをわれわれは目の当たりにしている。つまりわれわれが狭い範囲内に金利を自律的にとどめたいのであれば、それを支えるだけの準備金の量を確実にしておく必要があるということを意味している」と語った。

  ニューヨーク連銀は今月、レポ金利の急騰で約10年ぶりに翌日物システムレポの実施を余儀なくされた。ウィリアムズ総裁は連邦準備制度が新たなツール、いわゆる常設翌日物レポファシリティーを始動させる可能性があるとも述べた。

  シカゴ連銀のエバンス総裁は30日、ニューヨーク連銀が行ったレポは「うまく設計されたプラン」を備えた「強力なプログラム」だとCNBCとのインタビューで評価。「タームレポは極めて有益だ。最も重要なのは潤沢な準備金の提供だ」とコメントした。

  同総裁は「適切な金融政策に必要なフェデラルファンド(FF)金利目標の正しい水準について、予断を持つことは決してない」とも言明した上で、経済ファンダメンタルズ(基礎的諸条件)は引き続き良好だが、脆弱(ぜいじゃく)性も高まっていると分析。「われわれがすでに実施したことは十分かもしれないが、データを見極める際、われわれにはもっと必要かもしれないという示唆に対して私はオープンマインドだ」と話した。

原題:Fed’s Williams Sees Need for More Reserves After Repo Spike (1)、Evans Is Open-Minded About Right Level of Fed Funds Rate: CNBC (抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-30/PYMZXVT1UM1O01


 

為替フォーラム2019年9月30日 / 16:24 / 9時間前更新
コラム:米レポ金利高騰、その意味を探る=井上哲也氏
井上哲也 野村総合研究所 金融イノベーション研究部主席研究員
5 分で読む

[東京 30日] - 米国でレポ取引(国債等を担保とする短期資金の取引)の金利が高騰した。そのタイミングが、折り悪く金融政策を決定する9月の連邦公開市場委員会(FOMC)と重なったこともあって、現地の市場で様々な波紋を呼んでいる。

その直接的な理由については、既に幅広く報道されているように、連邦政府による税金の収納と国債発行に伴う資金決済が重なった点にある。これらはいずれも、連邦準備銀行(FED)に置かれた民間金融機関の当座預金から、連邦政府の当座預金への資金の振り替えを伴うため、民間銀行による資金繰りに使用できる資金の量が減り、金利に上昇圧力がかかった訳である。

しかし、レポ金利が最初に高騰した9月中旬の時点で、民間金融機関は1.4兆ドル弱の超過準備(預金準備の制約を受けることなく裁量的に運用しうる資金)を抱えていただけに、上記のような要因だけで金利の高騰を招くというのは奇妙でもあるし、しかも連邦政府による資金の引き上げは、十分に予見できた点とも整合的でない。

筆者は9月の最終週にニューヨークを訪問したが、その際に現地の市場関係者が共通して指摘した理由は、世界金融危機後の規制強化に伴う影響であった。

1つ目の要因は、米国でも既に導入されている流動性比率規制(LCR)に関連する。LCRの下では、余裕資金を銀行間市場で運用するよりも、中央銀行であるFEDの当座預金に置いておく方が規制上の比率は好転する。

2つ目には、自己資本比率規制の中で「グローバルな金融システムで重要な金融機関(G─SIFI)」に課される付加的な自本資本賦課(Capital surcharge)の算定においても、同様に銀行間市場での運用は不利に扱われる。

つまり、これらの規制による諸比率を集計する各四半期末にかけて、民間金融機関にはデータを良く見せるべく、余裕資金をFEDの当座預金に抱え込んだままにするインセンティブが強く働く訳である。

加えて米国の大手金融機関は、いわゆる「ドット・フランク法」の下で自己勘定によるマーケットメイクには総じて消極的になっている。こうした結果、市場全体では巨額の超過準備が存在しても、実際に取引される金額が少額になることで金利に上昇圧力が生ずることになる。

<連邦準備銀行の対応>

もちろん、FEDもこうしたメカニズムを十分に理解していると思われる。実際、パウエル議長も9月のFOMC後の定例会見において、短期的な要因な要因だけでなく、構造的な要因に関しても流動性比率規制に言及するかたちで説明した。

もっとも、FEDが9月の最終週を中心に実際に講じた対応は、レポ市場での数百億ドル規模という巨額のレポオペ(資金供給)を連日実施することであり、とりあえず10月初めまでこうした措置を継続することが表明されている。FEDはいわば対症療法のみで対応しており、市場の資金調節を専門的に担当するニューヨーク連邦準備銀行のウイリアムス総裁は、こうした対応で十分との考えを再三にわたって強調している。

確かに構造的な要因が金融規制の強化にあったとしても、それだけの理由で金融規制を修正することは現実的とは言えず、FEDがまずは対症療法に依存せざるを得ないことにも仕方がない面がある。

一方で、四半期末ごとに短期金利が高騰するリスクが存在し続けることは、金融システムの安定の観点からは、決して望ましいこととは言えないし、起点が米国内の金融市場であったとしても、日本を含む海外のプレーヤーにとって、ドル資金調達の場である為替スワップの利回りも含めて、裁定を通じて幅広い金融市場に影響を及ぼすことも考えられる。

金融政策に焦点を絞った場合にも、FEDが市場金利を適切にコントロールし得ないようであれば、利下げの効果が意図通りに波及し得ないことになる。

上記のようにFEDは、レポオペによる資金供給を機動的に行うとしているが、市場関係者からは、今回の対応が後手に回ったことに加えて、金融政策の正常化を開始した時点から生じていた短期金利の上昇圧力を軽視してきたとの批判も含めて、FEDの対応に不信感を示す向きもみられる。

<望ましい対応>

こうした状況を踏まえ、FEDは「定期的な資金供給」を行うべきとの議論が市場で強まっている。具体的には、一定額の国債買い入れ復活による資金供給を想定する向きが多い。

実は、FEDも今年3月のFOMCでバランスシート縮小を今年9月末に停止することを決定した際に、こうした対応を検討しており、この点はFOMCの声明文(バランスシートの運営方針)から明らかである。

しかし、市場関係者のこうした議論にも留意が必要だ。なぜなら、今回のような市場金利の高騰は資金の総量が不足しているためというよりも、民間金融機関による資金の抱え込みによるものだからである。国債買い入れによって資金を供給しても、民間金融機関はそれによって調達した資金をさらに抱え込むだけで、実際に市場で運用される資金の量には、大きな改善が生じない可能性が残る。

もちろん、FEDは資金供給の規模をさらに増やして、民間金融機関による資金需要が飽和する状況を作り出すことは可能であり、そうなれば市場での資金取引が活性化し、金利形成が安定化することも考えられる。

しかし、それはもはや市場金利の安定化のための技術的な資金供給ではなく、大規模な量的緩和そのものである。実は、市場関係者はなし崩し的な量的緩和の復活を期待しているのかもしれないが、少なくとも現在の米国経済の堅調さを考えると適切とは言えない。

しかも、上記のようにFEDが定期的で比較的少額の国債買い入れの復活を示唆したのは、銀行券に対する需要の伸びが想定以上に強いことに対応する面も強いとみられる。つまり、これは長期的な問題への対応として議論されている面が強く、今回のように四半期末ごとに生じうる問題への対応としては、間接的に有用であったとしても、的を射た対応とは言えない訳である。

これらの検討から明らかなように、今回のような市場金利の高騰を抑制する上では、民間金融機関が抱え込んでいる余裕資金について、より円滑に融通されるようにすることが、最も抜本的な対応である。そうした状況さえ実現できれば、現状よりもはるかに少額の超過準備の下でも、FEDが市場金利を安定させることができる。

そのことは、金融危機前の超過準備の水準が、20億ドルを下回るケースが一般的だったことからも明らかである。

そのためには、直接的には金融規制の修正が考えられ、例えば民間金融機関がFEDに保有する当座預金については諸比率の算定上で上限を設けるとか、capital surchargeの算定を四半期末でなく期中の平均にするといった対応がありうる。ただ、本来の金融システム安定との関連で慎重な検討が必要であろうし、いずれにしても時間を要する。

こうした点を考えると、FEDとしては資金供給のやり方に工夫を加えて、例えば、市場での裁定取引に対する制約の少ない主体に資金が回るようにオペの対象先を柔軟に見直すとか、常設のレポ・ファシリティのように民間金融機関に発動のオプションを付与する資金供給の仕組みを導入するといった対応をまず進めることが望ましい。 

今回の問題は、金融危機の際と様相は異なるが、市場機能の低下という点では共通している。従ってFEDには「市場機能の最後の担い手(Market Maker of Last Resort)」としての役割が再び求められている。

*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

井上哲也氏
*井上哲也氏は、野村総合研究所の金融イノベーション研究部主席研究員。1985年東京大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。米イエール大学大学院留学(経済学修士)、福井俊彦副総裁(当時)秘書、植田和男審議委員(当時)スタッフなどを経て、2004年に金融市場局外国為替平衡操作担当総括、2006年に金融市場局参事役(国際金融為替市場)に就任。2008年に日銀を退職し、野村総合研究所に入社。主な著書に「異次元緩和―黒田日銀の戦略を読み解く」(日本経済新聞出版社、2013年)など。 

(編集:田巻一彦)
https://jp.reuters.com/article/column-tetsuya-inoue-idJPKBN1WF0LN
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/259.html

[経世済民133] ドラギ総裁:ECBには追加措置の余地あるが、財政政策の支援が必要 ユーロ圏失業率、8月は7.4% 11年超ぶり低水準 ドイツ:9月のインフレは予想外に減速、ほぼ3年ぶり低水準 「弱さの窓」入り世界経済、景気後退五分五分

ドラギ総裁:ECBには追加措置の余地あるが、財政政策の支援が必要
Piotr Skolimowski
2019年9月30日 22:00 JST
政府の財政出動なければ、金融緩和の効果は薄れる−ドラギ氏
10月末の任期満了迫るドラギ総裁、FTとのインタビューで発言
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、インフレ率押し上げに必要ならECBはさらに措置を打ち出すことが可能だと述べ、この取り組みを財政出動で支援するようユーロ圏加盟国にあらためて呼び掛けた。

Spring Meetings Of The International Monetary Fund And World Bank
ドラギECB総裁
  ドラギ総裁は英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで、「金利や資産買い入れ、フォワードガイダンスまで全ての措置を調整する用意がある」と発言。ECBが目標とする物価安定の追求は「対称的」だとも述べた。

  10月末の任期満了が近づくドラギ総裁は、政府が支出を拡大するならECBの責務遂行が「大いに後押しされるだろう」との見方を再度表明。現在の金融緩和は「財政政策からの支援がなければ、長期にわたり続く可能性がある」ほか、財政政策の支援があった場合と比べ効果も薄くなると警告した。

原題:
Draghi Says ECB Has Room to Do More, But Needs Fiscal Backup(抜粋)


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-30/PYN6ZBDWRGG001?srnd=cojp-v2

ドイツ:9月のインフレは予想外に減速、ほぼ3年ぶり低水準
Piotr Skolimowski
2019年9月30日 22:13 JST
• 9月CPI上昇率は0.9%、市場予想は1%
• ECBはインフレ率が目標付近に収束するまでQE継続の意向
ドイツの9月のインフレ率は予想に反して減速し、ほぼ3年ぶりの低水準となった。欧州中央銀行(ECB)は数週間前に新たな金融緩和策を打ち出したばかりだが、物価上昇圧力に乏しい証拠が増えている。
  ドイツ連邦統計局が発表した9月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比0.9%と、ECBが目標とする2%弱を大きく下回った。市場予想は前月と同じ1%だった。
  ECBは今月の政策委員会会合で金融緩和パッケージを発表した際、インフレ率が目標付近にしっかりと収束するまで債券買い入れを継続すると表明した。

原題:
German Inflation Unexpectedly Slows After ECB Stimulus Drive(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-30/PYN96PDWX2PW01?srnd=cojp-v2


ビジネス2019年9月30日 / 19:39 / 34分前更新
ユーロ圏失業率、8月は7.4% 11年超ぶり低水準
Reuters Staff
1 分で読む

[ブリュッセル 30日 ロイター] - 欧州連合(EU)統計局が発表した8月のユーロ圏の失業率は7.4%で、7月の7.5%から予想外に低下し、2008年5月以来、11年超ぶりの低水準となった。

ユーロ圏の失業率は、2014年8月(11.5%)以降、5年にわたり、低下ないし横ばいで推移してきた。

ロイターがまとめたエコノミストの予想平均は、7月から変わらずの7.5%だった。

域内で特に失業率が高い国で改善がみられ、スペインが13.9%から13.8%に、イタリアは9.8%から9.5%にそれぞれ低下した。

INGのエコノミスト、バート・コリーン氏は「製造業生産は悪化し続けているものの、失業率低下はサービスセクターに引き続き成長する猶予を与えている」と述べた。


日銀、10月買いオペ方針−必要に応じ回数変更も、25年超の下限ゼロに
山中英典
2019年9月30日 17:42 JST 更新日時 2019年9月30日 17:58 JST
日本銀行は30日、10月の長期国債買い入れオペの運営方針を発表した。中期から超長期債までの5ゾーンの買い入れ額レンジを大幅に変更。残存期間25年超の下限はゼロまで引き下げた。オペ実施頻度については、前回までは増やすこともあるとの表記から、必要に応じて回数を変更するに修正した。

  今回のオペ方針の大幅変更について、SMBC日興証券の竹山聡一金利ストラテジストは、「超長期金利が急速に低下するようなことがあればいきなりオペをスキップすることもあるのかもしれないが、可能性は示しつつも、そうならないようけん制しているのではないか」と指摘。「カーブがせっかくスティープ(傾斜)化したので、フラット(平たん)化は避けたい意図があるだろう」と述べた。

  残存25年超のレンジ下限をゼロまで引き下げたことについて、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは、「全く買わない可能性があるということで、ややインパクトを持って市場には受け止められた」と話した。

  オペ方針の発表を受けて、金利市場は売り優勢の展開。長期国債先物市場で中心限月12月物は夜間取引で155円00銭付近から一時154円91銭付近まで下落。円金利スワップ市場では、30年物など超長期金利を中心に上げ幅を拡大。2年物と30年物の金利格差は50ベーシスポイント(bp)と前日の46bpから上昇している。

10月の国債買い入れ予定(単位は億円、金額は程度)
年限 購入額レンジ(中央値) 直近オペ 回数
1年以下 100〜1000(550) 500 2(2)
1−3年 3000〜5500(4250) 4200 4(4)
3−5年 2000〜4500(3250) 3400 4(4)
5−10年 2000〜5000(3500) 3500 4(4)
10−25年 500〜2000(1250) 1200 3(3)
25年超 0〜500(250) 300 3(3)
  月間のオペ実施回数はいずれのゾーンも前月から変わらず。月2回程度の物価連動債や偶数月に実施する変動利付債も変更はなかった。
https://jp.reuters.com/article/eurozone-employment-idJPKBN1WF12I

「弱さの窓」入り世界経済、景気後退五分五分−PIMCOフェルズ氏
John Gittelsohn
2019年9月27日 14:30 JST
米国の経済成長率は今年の2.2%から2020年には1.25−1.75%に低下
中国経済は6.1%成長から5−6%成長に減速すると見込む

世界の経済成長は「弱さの窓」に入ろうとしており、今後1年でリセッション(景気後退)に陥るか持ち直すかは、ほぼ五分五分の確率だと米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)が、新たな経済見通しで分析した。

  同社のグローバル経済アドバイザー、 ヨアヒム・フェルズ氏はブルームバーグテレビジョンとの26日のインタビューで、「景気は極めて不安定な状態になると予想される」と語った。

ヨアヒム・フェルズ氏が語る

  フェルズ氏とPIMCOのグローバル債券担当最高投資責任者(CIO)アンドリュー・ボールズ氏はリポートで、「リセッションはわれわれの基本シナリオではないが、失速する経済をひっくり返すにはあまり多くを必要としない。この窓に入っている間は、資本の保全を重視し、ポートフォリオにおけるトップダウンのマクロリスクテークを比較的控えめにし、企業のクレジットと株式に慎重になることが賢明だと思う」と指摘した。

  PIMCOの主な予測は次の通り:

米国の経済成長率は今年の2.2%から2020年は1.25−1.75%に低下
中国経済は6.1%成長から5−6%成長に減速
リセッションリスクを注視すべき主な地域として挙げられるのが欧州
「恐らくすでにテクニカルなリセッションに入っているドイツがユーロ圏の足を引っ張る可能性が高い」とフェルズ氏がテレビインタビューで発言
貿易を巡る米中間の緊張が制御不能になったり、米連邦準備制度が市場の期待に沿わなかったり、不確実性が拡大する中で企業投資が鈍化したりすれば、リセッションリスクが高まる
原題:Pimco Sees Low-Growth ‘Window of Weakness’ for World Economy (1)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-27/PYGZMXT0G1KW01?srnd=cojp-v2


 

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/260.html

[経世済民133] 消費税の呪われたジンクスとMMTの信憑性
消費税の呪われたジンクスとMMTの信憑性
竹中正治:龍谷大学経済学部教授
政策・マーケット DOL特別レポート
2019.10.1 5:40
消費増税後に景気後退ともなれば、財政赤字拡大を容認するMMT派が勢いづきそうだ 

 消費税率の8%から10%への引き上げが10月施行された。振り返ると、日本の消費税は経済・政治両面で暗い記憶を引きずっている。
 消費税の経緯を振り返り、併せて「均衡財政へのこだわりは根拠なき神話」と説くMMT(現代貨幣理論)派の主張の信憑(しんぴょう)性を考えてみよう。
消費税と内閣退陣のジンクス
 消費税の導入は竹下登内閣の下で1989年4月に実施された(税率3%)。ところが、竹下首相は「リクルート事件」で89年6月に退陣となり、消費税導入とリクルート事件で人気が落ちた自民党は参議院選挙(89年7月)で与野党の議席が逆転する敗北を喫した。
 この時、経済面では日経平均株価指数が1989年12月末を高値に翌90年初から急落となり、不動産市況も91年をピークに暴落、90年代前半はバブル崩壊不況となった。政権の人気急落とバブル崩壊不況が消費税導入に絡んで記憶されることになってしまった。
 次は1997年4月の橋本龍太郎内閣による消費税率の5%への引き上げだ。97年7月にタイの通貨バーツ相場の急落で始まったアジア通貨危機の波及と銀行の不良債権問題で、97〜98年は金融危機型の不況となり、橋本内閣は98年7月の参議院選挙で敗れて退陣した。
 この時も不況の原因として消費税率の引き上げは、実証分析では極めて限定的であることが指摘されているが、金融危機型不況と内閣退陣に関連して記憶されることになった。
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2020年には日本も景気後退の可能性が高い

そして、民主党政権では2012年に野田佳彦内閣の下で与野党の「3党合意」で消費税の2段階引き上げ(5%から8%、10%)が決まるが、同年12月の総選挙で民主党は大敗、今に至る自公連合による安倍晋三政権に替わった。
 安倍政権の下での2014年4月の消費税率引き上げ(5%から8%)では、想定通りの駆け込み消費増と4月以降の消費減が起こったが、個人消費の動向は2015〜16年にかけても弱く、これを消費税率引き上げの影響が中長期化しているためと説く論者もいる。
 消費税率引き上げ後の消費の減退は、長く見積もっても1年程度で終了し、その後は2015年から16年にかけて中国経済の失速と世界景気の鈍化の中で起こった株価の下落による負の資産効果などが強く影響していると筆者は判断しているが、その詳細は別の機会に譲りたい。
 この時、安倍内閣は消費税増税を実施しながらも「生き延びた」初めての内閣になったわけだが、いわゆるリフレ政策で円高是正(円安)と企業利益や株価回復、雇用増を伴う景気回復にともかく成功していた結果だろう。
 そして、今10月、消費税は8%から10%に引き上げられた。食料品に対する軽減税率、キャッシュレス決済へのポイント還元、幼児教育・保育無償化などとセットになっており、実質的な家計の負担総額としては2014年に比較してずっと小さい(もっとも、運用ルールを複雑にするだけで消費税の逆進性を修正する効果の乏しい軽減税率には筆者を含む多くのエコノミストや経済学者が反対している)。
 しかし、世界経済は米中欧を中心に目立って減速しており、筆者は2020年には日本も景気後退の可能性が高いと考えている。そうなれば今回の消費税率引き上げも暗いジンクスとなってしまうだろう。
均衡財政へのこだわりは「根拠なき神話」か
 消費税率の歴史を振り返ると、それが直接、景気後退の原因になるとは言い難いのだが、景気と政治的なリスクを伴って実施されてきたことは否定できない。
 そこで問題になるのが最近米国を中心に話題のMMTの「均衡財政へのこだわりは根拠なき神話である」という主張だ。消費税率の引き下げや撤廃を主張する政党が飛び付きそうな主張である。
 まず今年8月に邦訳が発刊された「MMT現代貨幣理論入門」(L・ランダル・レイ著、補注1)に基づいてMMT派の主張を確認してみよう。この著作に書かれていることを対象にする限り、MMTは思っていたほど「トンデモ」ではない。むしろオールドケインジアン(1980年代以降のネオケインジアンではなく)の流れをくむ既知の枠組みにすぎない。

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少数派ゆえに気分が「カルト化」したか

自国通貨建て債務なら政府は全くの制約なしにいくらでも発行して良いとMMT派が主張しているかのように受け止められているが、著者レイ氏は「政府支出を制約する正当な理由」として次の5点を指摘している(同書p356、表現は私が簡潔化している)。

(1)過度なインフレを引き起こさない範囲であること
(2)過度な自国通貨下落を引き起こさない範囲であること
(3)民間との間で経済資源の競合が起きない範囲であること
(4)民間経済主体のインセンチブを歪めない範囲であること
(5)政府のプロジェクトを管理、評価する手段を確保すること
 これらがきちんと順守されるなら、金融政策で政策金利をゼロまで引き下げても完全雇用が達成されない(失業率が自然失業率より高い)ような不況の場合には、財政政策で有効需要を創出すべきだと主張するポール・クルーグマン氏やローレンス・サマーズ氏に代表されるネオケインジアンの政策主張と一見ほとんど変わらない。私も賛同できる範囲だ。
 ただ、そのようにMMT派が受け止められずに、異端的に過激な主張をしているように受け止められているのは、彼らが反体制運動に身を投じている過激派のように、あえて異端的な言い方を振り回しているからかもしれない(この点は同書の巻末の解説で松尾匡教授も指摘している)。確かに、MMT派は今の米国の経済学の主流から理論的な枠組みが乖(かい)離しており、極少数派としてやっているうちに彼らの気分が「カルト化」してしまったのかもしれない。
 例えば、同書第1章「マクロ会計の基礎」では、政府、家計、民間企業、金融機関、海外の主要部門の資金収支がトータルでゼロになる原理が説かれている。これは先進国ならどこでも中央銀行が作成している資金循環表の原理にすぎず、財政赤字(資金不足)には国内民間部門か海外部門の黒字(資金余剰)が見合っている(バランスしている)というマクロ経済学の基礎知識にすぎない。
 ところが、レイ氏によると、これは「MMT派や、ウェイン・ゴドリーの部門収支アプローチを使ったレヴィ経済研究所の研究者を除いて、ほとんど理解されていない」原理(p97)であり、まるで主流派によって封印された「真実に至るための秘儀」であるかのように語られており、失笑を禁じ得ない。
MMT派に欠けているリスク認識

https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/6/9/-/img_69b1ad2ff45e56c1951615f1f2259e78117369.jpg
 図表は上記の主要部門の資金収支を日本の資金循環表に基づいて示したものだ。
 日本では1990年代から非金融法人部門が資金不足から貯蓄超過に転換し、それとほぼ見合う形で政府部門が資金不足(財政赤字)に転じているのが分かる。
 各部門の資金過不足の収支がバランスするのは、会計論的な必然である。しかし、同書で語られるMMT派の主張は次の2点で大きな欠点を抱えているように思える。

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極端な思考実験:日本の人口が1人になったら

第1は部門間の資金過不足のフローが見合っていることは、その金融債権・債務(この場合は国債とマネー双方を「政府債務」として扱っている)の価格、あるいは実質価値の安定性を保証するものではない。
 例えば、株式の売買でも売買毎に売りの金額と買いの金額は当然一致している。しかし、その一致が生じるためには、価格は時に高騰あるいは暴落する。そして、株価全般の高騰が起こればバブルにもなり得るし、暴落が起これば深刻な不況も起こり得る。政府債務についてもそのような変動を免れない。
 ちなみに、中央銀行は先進国では組織的には政府から独立しているが、経済論的には政府の一部門であり、この統合政府ベースの視点では中銀発行のマネーも政府債務に他ならない。
 第2は実体経済の規模との比較で特定の債権・債務の残高(ストック)が著しく大きくなるほど(「金融不均衡」と一般に表現される)、何かしらの内生的、あるいは外生的ショックが生じた時に当該金融資産の価格は不安定になり、暴落も起こり得る。政府債務もその例外ではない。
 ただし、政府債務の特殊性はMMT派が強調するように、それが自国通貨建ての国債として発行された場合、その償還は別の政府債務形態であるマネー(ペーパーマネー)と交換されるだけだ。中央銀行が国債を買い、マネーを供給する限り償還に懸念はない。これは政府債務の特殊性の「表の顔」であり、このこと自体は正しい。
政府債務の「裏の顔」
 しかし、政府債務の特殊性には「裏の顔」がある。それはしばしば語られる次のような極端な思考実験をすると分かるだろう。
 日本の人口減少が続いて日本人が最後の1人となったとしよう。単純化のために海外との関係は考えないでおく。その時、政府債務は1000兆円の残高だとしよう。最後の日本人は1人で1000兆円の国債(金融資産)と政府債務の双方を保有していることになる。債権・債務は相殺されるだけで、何か新たにコストが生じるわけではない。だから国内で自国通貨建て政府債務がすべて保有されている限り、問題は生じないはずだ。これが「表の顔」である。
 ところが、これは真実の半分でしかない。もしあなたが最後の日本人なら債権・債務相殺されて無価値になる金融資産など保有し続けるだろうか。当然保有せず、相殺されない他の資産にシフトしようとするだろう。そして、そのようなシフトは日本人が最後の1人になるよりはるかに早期の時点で起こる。シフトの対象は実物財、実物資産、そして海外資産だ。すなわちインフレや通貨安で政府債務(国債や通貨)の実質価値の暴落が起こる。

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MMT派が許容するインフレ率は?

 このことが意味することは、投資家が政府債務を保有するのは、それが自分にとって独立した金融資産であり、「その支払いを自分がするわけではない(将来の世代がする)」と思っているからだ。その認識が揺らいだ時には政府債務の暴落が起こる。これが「裏の顔」である。
 そして、積み上がった政府債務残高が巨額であるほど、その衝撃は大きくなり、高インフレと通貨相場暴落を伴った金融危機にもなり得るだろう。そうした出来事は比較的稀ではあるが、ご承知の通り先進国では1920年代のドイツや戦後直後の日本で起こった。
 増税で国債を償還し政府債務を縮小するのも、高インフレによる実質価値の急減で政府債務の実質価値が縮小するのも、それを保有していた国民の負担になる点は同じである。後者のケースが「インフレタックス」と呼ばれる所以である。
 敗戦直後の日本では戦時中に発行された莫大な国債が償還を迎え、そのマネーが消費に回れば戦災で激減した供給力の下ではハイパーインフレになっただろう。そこで新円交換と預金封鎖が行われ、マネーとして引き出せる範囲が厳しく制限された。それでも数年で100倍を超える物価上昇となり、政府債務の実質価値は急減し、インフレタックスで国民は過去の政府債務のつけを払ったわけだ。
 そのような事態の再現は巨大災害か戦争で経済の供給力が大きく損なわれない限り起こり難いかもしれない。しかし、国家100年の計としてはそうした事態も現実のリスクとして考えておく必要がある。
MMT派が許容するインフレ率は?
 レイ氏があげる政府支出が制約されるべき上記の5条件に話を戻そう。例えば「過度なインフレにならない」というのがどの程度のものを示すのか、同書では明示されていないのだが、MMT派の認識は他のエコノミストを含む一般的な認識からは大きく乖離している可能性がある。
 というのはレイ氏が次のように語っているからだ。「年率40%未満のインフレ率から経済への重大な悪影響を見出すことは困難である」(p445)。
 これを文字通りに受け止めると、仮にMMT派に経済政策を任せた場合、年率20〜30%というインフレになっても「大丈夫、問題ない」ということになる。この感覚の乖離こそむしろ重大かもしれない。

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気になる米民主党左派とMMT派の連携

 過去のインフレ高騰現象を振り返ると、総需要が総供給を上回る状態と信用の膨張(マネーの増発)が併発するとインフレの累積的な高進が起こる。賃金と諸物価がスパイラルに上昇することだ。そのような累積的な不均衡現象は、新古典派の理論的枠組みでは説明できず、日本では岩井克人教授が強調し、「不均衡動学」として取り組んできた(補注2)。
 そうしたスパイラルなインフレ高進が生じると、厳しい金融引き締めで深刻な景気後退というコストを払わずに高インフレを鎮静化できないことは、例えば1970年代から80年代初頭の米国の教訓でもある。しかし、MMT派にはそうしたリスク認識は欠落しているようだ。
 結論として、財政収支の均衡に短期、中期の時間軸でこだわるのは百害あって一利なしであるが、長期では政府債務残高の対国内総生産(GDP)比率を持続可能な状態(決して債務ゼロを意味しない)に抑制することが経済運営に欠かせない。この常識を外すわけにはいかない。
気になる米民主党左派とMMT派の連携
 MMT派の政策的主張としてもう1つの論争点は、同書第8章の「就業保証プログラム」の現実性だろう。不況下では働く意欲のある失業労働者には政府が最低賃金で雇用を提供するプログラムを運営し、何かしらの政府サービスなどを担わせるというアイデアだ。
 あくまでも最低賃金だから、景気が回復してくれば最低賃金以上の賃金で民間部門がこの労働力プールから労働力を吸収していく。したがって、その限りでは民間と競合せずに、不況下での雇用と有効需要を補完するプログラムになるはずだという。本当に機能するかどうか、現実的に機能させるためにはどのような細目設計が必要か、議論検討する価値はありそうだが、そう簡単ではなかろう。
 この対象となるのは、景気後退で失業する可能性の高い日本では労働人口の2〜3%、米国では4〜6%程度の限界的な労働者である。日本では介護や保育分野で人手不足が深刻だが、それぞれ専門的な訓練と資格を要する職業分野であり、誰でも従事できるわけではない。地道な職業訓練とセットで実施しないと、ほとんど付加価値を生まないサービスをただ失業対策目的で行うことになるだろう。
 米国ではMMT派のステファニー・ケルトン氏(ニューヨーク州立大学教授)が次の大統領選に候補者名乗りをあげている民主党のバーニー・サンダース上院議員の政策顧問に就き、またもう1人の大統領候補アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員もMMT派に傾斜するなど、民主党左派とMMT派が関係を強めている。彼らが実際に民主党候補となって大統領選で勝つ見込みは、現状では低いと思うが、注意しておいた方が良いだろう。
(龍谷大学経済学部教授 竹中正治)
補注1:L・ランダル・レイ著「MMT現代貨幣理論入門」東洋経済新報社、2019年8月30日
補注2:岩井克人著「不均衡動学の理論」(新版)岩波オンデマンドブックス、2016年1月13日
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https://diamond.jp/articles/-/216132?page=6


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/264.html

[経世済民133] 消費増税が直撃する生活保護の暮らし、バスに乗れない・牛乳も買えない… 消費増税で始まる「大不安時代」の生活防衛術
消費増税が直撃する生活保護の暮らし、バスに乗れない・牛乳も買えない…
みわよしこ:フリーランス・ライター

ライフ・社会 生活保護のリアル〜私たちの明日は? みわよしこ
2019.9.28 5:12

生活保護の暮らしに、消費増税はどのような影響を与えるのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA
生活保護女性の「駆け込み消費」は
トイレットペーパーだけ
 2019年10月1日から、消費税率は現在の8%から10%へと引き上げられる。生活保護の暮らしに、消費増税はどのような影響を与えるだろうか。

 北海道の小都市に住み、生活保護で暮らすアキコさん(仮名・50歳)には、消費増税までに購入しておきたいものがある。北海道のコンビニチェーン「セイコーマート」、通称「セコマ」のトイレットペーパーだ。近隣のどのスーパーや商店よりも安価なのだという。

 2018年冬から、トイレットペーパーなどの家庭紙の価格はジワジワと上昇している。原材料や物流の費用上昇により、メーカーの出荷価格が上昇したからだ。当初の影響は、「店頭での安売りが減る」という形で現れたが、今年春過ぎからは、店頭価格の値上げが目に見えてきた。「セコマ」の12ロール入りトイレットペーパーも、298円から340円へと値上がりしたという。

 しかも10月1日からは、消費税率が10%になる。トイレットペーパーは、紙おむつや生理用品と同様に、どう考えても生活必需品であろう。しかし、消費税率を8%に留める「軽減税率」の対象にはなっていない。

 なお、筆者がふだん使用しているトイレットペーパーは、12ロールで198円だ。住まいがあるのは、東京都内の住宅地で、年金生活の高齢者が多い。徒歩10分の範囲に、スーパー4軒・コンビニ10軒以上があり、過当競争状態となっている。オーナーや従業員の生活に少しだけ心を痛めつつ、結局は、最も安価なトイレットペーパーを購入している。

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痛手は交通費、バスはひかえるしかないのか
 もちろん、アキコさんの住む地域にも、遠く離れたショッピングモールやドラッグストアに車で買い物に行けば、より安価な選択肢が存在する。しかし現在の生活保護は、原則として、車の所有と運転を認めていない。アキコさんにとって最も安価なトイレットペーパーは、「セコマ」の12ロール入りの商品だ。それが、アキコさんの唯一の「駆け込み消費」になる。

痛手は交通費
バスはひかえるしかないのか
 さらに痛手となるのは、鉄道やバスの運賃値上げだ。JR北海道は、3kmまでが170円から200円へ、約18%の値上げとなる。「便乗値上げ」どころではないのだが、過去に見送られてきた値上げが積もりに積もった末の、止むを得ない値上げである。鉄道に比べるとバスの値上がり幅は小さいため、鉄道よりバスを選択する地域住民が増えそうだ。それは、鉄道の赤字路線がさらに赤字化することにつながりかねない。もともとアキコさんが住む地域では、車社会化が進んでいる。それは、大都市部以外の日本の「ふつう」の光景だ。

「交通費が痛いから、極力、歩いています。雨や雪が激しいときはバスに乗りますが、ちょっとくらいなら傘をさして」(アキコさん)

 中心街まで片道3キロメートル、往復6キロメートルの距離を、アキコさんは毎日のように、数年前に手術を受けた脚で歩いている。バス料金が値上がりすると、荒天の日には「出かけない」という選択が増えるかもしれない。もともと、身体や精神の疾患を抱えている人は、さらに出かけにくくなりそうだ。

 そしてアキコさんは、精神疾患の治療を受け続けている精神障害者でもある。もともと学校の養護教員、いわゆる「保健室の先生」だったけれども、結婚による離職、そして夫によるDVから心を病み、生活保護以外の選択肢がなくなる成り行きをたどった。けれども今、アキコさんには「障害者作業所に通う」という日課がある。

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牛乳からコーヒーへ、値上がりが変えた生活習慣
 アキコさんの「就労したい」という意欲は強い。就労を試みたことは数回あったけれども、短期間のうちに心身の調子を崩し、勤務を継続できなくなったりした。

 現在、通っている障害者作業所は、居場所機能を中心としたB型。作業内容は、木彫りの土産物製作の下請けで、工賃は1時間あたり200円。午前9時から午後3時まで、1時間の休憩をはさんで5時間の勤務だ。昼食代の実費が差し引かれるため、1カ月あたりの手取り収入は、1万円を超えるか超えないかだという。それはほぼ、召し上げられずに可処分所得の増加となるが、「小遣いが増える」程度だそうだ。

 アキコさんが作業所に通っている目的は、主に生活のリズムをつくることである。また、夏の暑い日には、作業所の扇風機で涼むこともできる。というよりも、その工賃では、収入のために働くこと自体が無理だ。

 今回の消費増税が、「出費が増えて暮らせなくなった」という理由で、社会とのつながりや生きがいとなっている活動を、生活保護で暮らす人々から奪うことは、十分に予想される。消費増税によって「ただちに」ではないとしても、厚労省が想定している消費増税対策ではカバーできない出費が、ジワジワと生活を締め付け、「諦める」という選択を強いる可能性がある。しかも、直後には現れにくいだけに、実態把握は困難だろう。

牛乳からコーヒーへ
値上がりが変えた生活習慣
 アキコさんは、消費増税の数ヵ月前に買い控えするようになったものがある。牛乳だ。

 牛乳が好きなアキコさんは、おおむね週に2本、1リットル入りのパックを購入していた。しかし、今年春の乳製品の値上がりで、牛乳を毎朝飲むことを断念した。現在、朝の飲み物はコーヒーだ。コーヒー豆を挽いた粉を購入し、毎朝、自分で1杯だけ淹れるという。

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消費増税対策も生活保護受給者には無関係
 言われてみると、確かにコーヒーの方が安価だ。350円程度の1袋が、おおむね30杯程度のコーヒーに相当する。1本約200円の牛乳は、1カ月あたり8本購入すると、1600円になる。

 アキコさんが牛乳をコーヒーに切り替えた話を聞いて思い出したのは、インドネシアの最近の話題だ。貧しい両親が、1歳2ヶ月の我が子のために十分な量のミルクを購入できないため、砂糖を入れた薄いコーヒーを飲ませていた。その乳児の身体には目立った問題はないが、夜眠りにくくなるなど、カフェインの影響は現れているという。SNSでは両親への非難が殺到した。行政も、ミルクなどの物資を携えて両親のもとを訪れ、育児指導を行ったと報道されている。

 アキコさんは成人だが、健康に対して好ましいのは、コーヒーよりも牛乳の方だろう。しかし今、コーヒーが日常の飲み物となり、牛乳は嗜好品の位置に追いやられてしまった。

 もちろん、元養護教員のアキコさんは、乳製品の重要性を認識している。牛乳に代わって朝食に登場するようになったのは、1食分ずつパックされたヨーグルトだ。4食120円程度で購入できるヨーグルトが、牛乳の不在を不完全に埋め合わせている。

数々の消費増税対策も
生活保護受給者には無関係
 消費増税の前に、値上がりが生活を圧迫している。しかし、食料品には軽減税率がある。低所得層には「プレミアム商品券」、年金生活者には「年金生活者支援給付金」がある。クレジットカード利用者には、ポイント還元もある。

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北海道の灯油価格はさらに上昇
 政府が準備している対策は、消費増税そのものや便乗値上げに対して、十分な手当てにはならないかもしれない。しかし一般低所得層の人々は、それらを並べて「まあ、これで、なんとかしなくては」と考えることができる。

 生活保護で暮らす人々には、そのすべてが無縁だ。もしも、2万円で2万5000円の商品券が購入できる「プレミアム商品券」を購入したら、差額の5000円が召し上げられる。年金生活者支援給付金を得たら、その分が生活保護費から減額される。クレジットカードの使用は禁止されているため、ポイント還元の恩恵もない。

 理由は、生活保護費が「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しており、生活保護で暮らす以上、その「最低限度」の範囲で生活することが求められていることにある。

北海道の灯油価格は
中東情勢の悪化でさらに上昇

本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中
 その生活保護費は、もちろん消費増税を考慮して増額される。消費税が8%から10%へと引き上げられることを考慮すると、1.9%の増額が必要なはずだ。しかし、今回の増額幅は1.4%に過ぎない。厚労省が理由としているのは、軽減税率の対象となる食料品などの消費も含まれることである。とはいえ、やりくりが厳しくなった時、生活保護で暮らす人々が最初に削るのは、その食料品なのだ。さらに便乗値上げ、消費増税を見越した値上げ、気候不順による食料品価格上昇が重なると、食料品の買い控えや内容の劣化が起こることは、容易に予想できる。

 間もなく、冬がやってくる。北海道の灯油価格は、もともと本州以南より高い。アキコさんの住む地域では、すでに明け方の気温が5℃前後まで下がっている。生活保護の暖房費補助(冬季加算)は10月からだが、9月にすでに灯油ストーブを使用する日が数日あったという。

 中東の不安定な政治状況は、すでに原油価格を上昇させている。そこに、消費増税が重なる。

(フリーランス・ライター みわよしこ)

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荻原博子氏が伝授!消費増税で始まる「大不安時代」の生活防衛術
ダイヤモンド編集部 小尾拓也:副編集長

ライフ・社会 DOL特別レポート
2019.10.1 5:20


いよいよ消費税率が10%へと引き上げられた。景気後退懸念のなかでの増税が、国民生活にもたらす影響は小さくなかろう。ただでさえ将来の不透明要因が多い時代に、私たちはどのような生活防衛策を考えればいいのか。経済ジャーナリストの荻原博子氏が徹底解説する。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 小尾拓也)

消費者の不安が前回より
高まりそうな2つの理由
荻原博子氏が伝授、消費増税で始まる「大不安時代」の生活防衛術
経済ジャーナリストの荻原博子さん。増税後の生活防衛術を教えてくれた
――10月1日から消費税率が10%へと引き上げられました。今回は増税幅が2%であることに加え、軽減税率やキャッシュレス決済時のポイント還元といった対策が実施されるため、2014年の増税時と比べて消費者の不安は小さいのではないかという見立てもあります。

 確かにそのような報道もあるようですが、ちょっと違うと思います。結果的に見れば、今回の消費増税が国民心理に与える影響は前回より大きく、景気悪化は避けられないと見ています。本当に、最悪のタイミングでの増税といえます。

 その理由の1つは「税率の違い」です。10%への消費増税は過去2回も延期され、その過程で増税をめぐる議論もたくさん行われたため、国民の多くは増税という言葉に慣れてしまい、危機感が薄れているように感じます。なかには、「前回は3%の増税だったけれど今回は2%だから、まあいいや」と諦めに近い気持ちを持っている人もいるでしょう。

 ところが消費税率が10%になると、8%のときと比べて「いくら負担が増えたか」という実感がわきやすいのです。たとえば、1万9800円の商品に8%の消費税がかかると言われても、それがいくらかすぐには計算できない人が多かった。ところが10%と言われると、「1万9800円の1割だから1980円……。え?2000円近くも税金でとられるの!?」とすぐに暗算できる。このインパクトの違いは大きいと思います。

 こうして「税金をたくさんとられる」という意識が格段に強まる結果、家電1つとっても「大事に使って何年も持たせよう」と節約志向を強め、財布の紐をきつく締めてしまう人が続出すると思います。

 2つ目の理由は「景況感の違い」。前回の増税時は、「これから景気がよくなり、給料が上がっていくかもしれない」という期待が、何となく世の中にあった。しかし、今回は全くそれがありません。

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安倍政権は直前まで増税延期を模索していた?
今年春先に「日本はすでに景気後退局面にあるのではないか」という観測が広がりましたが、それに加えて直近では、日韓問題の経済への打撃が懸念されています。また、米中貿易摩擦の影響が深刻視され、世界的に見ても景気は下り坂に向かっています。そんななか、日銀短観などを見ても企業経営者のマインドは悪化傾向にあり、へたをするとビジネスパーソンの給料は、これから増えないどころか減っていく可能性だってある。いざ増税が始まると、人々は改めてそうした現状を再確認し、不安を募らせることでしょう。

――増税が始まるまでは、国民にとってある意味「自分事」ではない。増税が始まって、初めて「自分事」になるということですね。

 そう、実際に増税が始まると、みんな事の重大さに気づくのです。実は、前回もそうでした。2014年4月1日から始まった8%への消費増税では、5月過ぎまでほとんど「買い控え」が見られませんでした。消費者の財布の紐が猛烈に締まり始めたのは、7月に入ってからのことです。

 今回は、参院選前に「老後資金2000万円問題」が噴出したこともあり、駆け込み需要は前回の増税時と比べて盛り上がりに欠けています。それを見ても、国民の潜在的な危機感はむしろ大きいかもしれません。

安倍政権が直前まで
増税延期を模索していた可能性
――そもそも政府が、こうした時期に増税に踏み切った背景には、どういう考えがあったと思いますか。

 過去、消費税率引き上げに関与した内閣は、選挙で大敗するのが普通でした。だから政権にとって、増税は本来やりたいものでない。それを必要に迫られてやらなくてはいけないとき、最も重視するのは、自分たちにとって一番都合の良いタイミングを見極めることです。

 安倍政権にとって、それは選挙のタイミングです。彼らは過去2回の選挙で「増税延期」を表明して大勝しました。政権にとって鬼門である消費増税を先送りすることによって、政権基盤を強めてきたのです。だから今回も、7月の参院選に影響が出ないよう、つい最近まで消費増税の延期ができないかを探っていたフシがあります。

 今年4月、萩生田光一氏(元自民党幹事長代行)が増税延期をほのめかす発言をしたのが、よい例です。あれは実のところ、安倍首相の意を汲んだ観測気球で、国民が増税延期発言にどう反応するかを見たかったのでしょう。そうした観測も通じて、最終的に「このままもっていけそうだ」という考えに至り、増税に踏み切ったのだと思います。

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軽減税率もポイント還元も効果は限定的
――選挙といえば、年金財政検証の公表が遅れ、参院選後になったことも、「老後2000万円問題」が燻るなかで選挙に影響が出ることを恐れたためではないか、と言われましたね。

 財政検証で行われる試算はこれまでも「厚化粧」のようなものばかりでしたが、今回はそれを通り越して、「プチ整形」の域に入ったと思います。たとえば、「パートやアルバイトであっても月収が5万8000円以上ある人を厚生年金保険に加入させ、さらに支払い期間を延長すれば、将来的に所得代替率が最大で10%以上上乗せされる」といったオプション試算です。ここでは、パートやアルバイトの給料から保険料が天引きされた場合、どれくらい手取りが減って苦しくなるかは言及されず、楽観的な見通ししか述べられていない。老後どころか、手元のお金が心配になってしまうような内容です。

 こうした「プチ整形」のような財政検証を参院選前に公表することは、さすがにできなかったのでしょう。安倍政権の政策運営は、「何だかおかしいな」と思うと、みんな選挙対策に紐づけて考えれば合点がいきます。彼らは、選挙のことしか考えていないのですから。

軽減税率もポイント還元も
あまり負担軽減にならない
――では、軽減税率やキャッシュレス決済時のポイント還元は、どれくらい増税のインパクトを埋めることができるでしょうか。

 正直言って、生活の負担軽減効果は限定的だと思います。

 まず軽減税率ですが、飲食料品はイートインなら10%、テイクアウトなら8%と、とにかくわかりづらい。それに、せいぜい「調理の際にみりんを買うか、みりん風調味料を買うか」くらいの問題であり、普段の生活にそれほど影響はないでしょう。そのうちどこの業者も「安売り」を始めるだろうから、そうした機会に安くまとめ買いするほうがお得なのでは、と思ってしまいます。

 欧州のようにインボイス制度(適格請求書等保存方式)が整っているならいいですが、まだ制度が整っていない日本では、事業者側も税務の際に税率が違う物品の仕分けで混乱すると思います。政局絡みとはいえ、安倍内閣はよくもこんな制度を導入したものです。

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結局、最も有効な生活防衛策とは
 また、キャッシュレス決済時のポイント還元は、加盟する中小商店を中心に最高5%の還元が行われますが、2019年10月1日から2020年6月いっぱいまでの期間限定となります。「PayPay」「LINE Pay」などのスマホQRコード決済を使えばさらにポイントが上乗せされますが、やはり時期が限定されている。そうなると消費者は、「期限までにポイントを使い切らなくては」と焦り、本来必要のないものまで買って、逆に支出が増えてしまうことになりかねないため、注意が必要です。

 さらに、キャッシュレス決済のためだけに新しくクレジットカードをつくったりすると、ポイントは貯まってもカードの年会費をとられたりして、いつの間にか差し引きで損をしているケースも出てきそうです。このように、ポイントは損得を正確に判断することが難しいものだということを、覚えておくほうがよいでしょう。

不透明要因が多いこの時代、
最も有効な生活防衛策とは
――軽減税率やポイント還元も効果は限定的のようですが、そもそもの増税が家計に与えるマイナスの影響は大きいと見られます。ただでさえ将来が不透明な時代、これから私たちは、どのような生活防衛策を考えていけばよいでしょうか。

 景気後退懸念により、これから給料は増えないか、減っていく可能性もある。また、働き方改革の名の下に残業代がどんどん減らされていくという、社会構造面での向かい風もあります。そこに、今回の増税です。こうした不透明な時代の生活防衛策としては、とにかく「お金を使わないこと」が一番。私はそれをバブル崩壊以降、ずっと唱え続けているのです。

 なぜかというと、日本はいまだにデフレから脱却し切れていないからです。デフレ下ではお金の価値が上がるため、事実上、借金が増えていきます。だからできるだけ借金をせず、お金も使わず、とにかく現金を貯めていくことが肝要です。

 日本企業の多くは、幾多の不況に見舞われるなかで内部留保を厚くしていき、そのお陰で今、財務がピカピカになっています。家庭の防衛もそれと同じ理屈なのですが、多くの人がそれに気づいていないことは、危機的な状況といえます。

――貯めるだけでなく、お金を増やすために株式投資などをしてはいけないのでしょうか。

 投資も無理にやる必要はありません。実は私も株式投資が好きなのですが、今までの経験から言えることは、「個別株も投資信託も、一般人がやるべきものではない」ということです。

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株式投資も不動産投資もお勧めできない理由
 投資には「長期投資神話」があります。短期で企業・業界を判断せず、長期でじっくり将来性を吟味しようというものですが、リーマンショック到来、英国のブレグジット騒動、米国でのトランプ大統領の登場といった世界的なリスクを、たとえば30年前から見通していた人など、いるでしょうか。

株式投資も不動産投資も
お勧めできない理由
 また、「分散投資神話」というものもある。リスク回避のために投資先を1つに限定せず、複数の投資先にお金を入れるという考え方ですが、これもリーマンショックのような経済危機が10年に1回程度の割合でやってくるご時世では、無意味です。ひとたび大きな危機が襲ってきたら、バスケットの中に入れた卵は、種類が違っていても全て割れてしまうのだから。

 そんなリスクの高い投資を、家庭を守るべき主婦や、PCの使い方がよくわからない高齢者がやって、どうするのでしょうか。

 また、今の金融機関は本当にあくどいです。銀行はマイナス金利などによる収益悪化に際し、様々な金融商品を少しでも多くのお客に買わせ、高い手数料を手にしようとしています。最近、さかんに宣伝しているNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)も、十分注意が必要です。

――借金がダメということは、住宅ローンもダメということですか。

 純粋に「この家に住みたい」という目的で、将来の返済計画をきっちり考えた上で住宅ローンを組むならいいと思いますが、実際は自分が住む不動産物件への「投資」と同じことです。不動産投資こそ、素人が絶対に手を出してはいけないもの。その意味では、資産形成の目的で自宅を購入し、住宅ローンを組むような考えは、持つべきではありません。

 ちなみに、素人がやってはいけない不動産投資の最たるものが、自分が住むわけでもない物件をローンで購入し、入居者を募って賃料を得ようとするマンション投資です。私も以前、自分でやって失敗したことがありますが、賃料収入が安定しないことが多く、ローンを自腹で返済していく状態が続きました。そして、ようやくローンを完済して自分のものになったときには、建物が劣化して何の資産価値もなくなっていた。自分で実際にやってみて、「儲かる理由がない」ということがわかったのです。

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実は老後資金は2000万円も要らない
老後資金が2000万円なくても
十分暮らしていける
――そうなると、手元のお金をできるだけムダ遣いせずに暮らすしかありませんね。「老後資金2000万円問題」が噴出したときには、「実際には2000万円どころでは足りない」と唱える専門家もいました。いったい、いくら貯めておけば安心なのでしょうか。

「老後資金2000万円問題」で、一気に生活不安に火が付きましたが、あれは杞憂です。もともと金融庁が投資を促すために吹聴しているだけなので、信じてはいけません。世間を見渡すと、月20万円くらいで生活している家庭はたくさんある。本当は、その程度の生活費でやっていけるのです。

 たとえば、元会社員と専業主婦の高齢夫婦2人の家庭をイメージしてみます。夫の退職金が世間一般の水準でおおむね1500万円とすると、それを老後資金と考え、普段は生活費に充てず、貯金しておきます。いざというときに使うお金の内訳は、夫婦の介護に1000万円、医療費に200万円、葬式代やその他雑費に残り300万円、といった具合です。

 一方で、日々の生活には年金を充てるようにします。夫婦2人の平均的な年金受給総額を20〜30万円と考えても、それで十分暮らしていけるでしょう。

――節約のための最も重要な心得とは何でしょうか。

 生活防衛のためのキーワードは、「夫婦仲良く」。夫婦が普段から色々なことを相談できる状況にあれば、節約がスムーズにいくからです。同じ場所で過ごし、同じ食卓で食事をし、一緒にお風呂に入れば、さまざまな生活費を節約できることでしょう。

 また、男性は光熱費や通信費などを「高い目線」から見直すことが得意なのに対し、女性は買い物のときに10円でも安いものを選ぶといった「生活目線」からの節約が得意。それぞれ異なる目線を持った夫婦が協力すれば、家計の見直しは万全です。

 とにかく節約は、夫婦仲が良くないとうまくいかない。万一熟年離婚なんかして年金分割をしようものなら、その後の人生は真っ暗です。

荻原博子(おぎわら・ひろこ)
1954年生まれ。長野県出身。経済事務所勤務後、1982年からフリーの経済ジャーナリストとして、新聞・経済誌などに連載。女性では珍しく骨太な記事を書くことで話題となり、1988年、女性誌『hanako』(マガジンハウス)の創刊と同時に同誌で女性向けの経済・マネー記事を連載。難しい経済やお金の仕組みを、生活に根ざしてわかりやすく解説。ビジネスマンから主婦に至るまで、幅広い層に支持されている。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞、雑誌などの連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。著書多数
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[戦争b22] 「吸血鬼ボルトン」更迭、安全保障のプロが次々退場し東アジアに忍び寄る影 ボルトン解任で「4つの戦争」の危機がいささかなりとも弱まった
「吸血鬼ボルトン」更迭、安全保障のプロが次々退場し東アジアに忍び寄る影
牧野愛博:朝日新聞編集委員

国際・中国 DOL特別レポート
2019.10.1 4:57


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「吸血鬼ボルトン」更迭 、安全保障のプロが次々退場し東アジアに忍び寄る影
Photo:Chip Somodevilla/gettyimages
 トランプ米政権の安全保障政策を指揮してきたボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)が9月10日に更迭され、後任にオブライエン大統領特使(人質問題担当)が任命された。

 最強硬派の退場が、北朝鮮非核化交渉やイラン情勢にどう影響するか。

 トランプ政権では「安全保障政策のプロ」が次々に政権を離れることになっている。

 同盟関係軽視のトランプ大統領が、来年の大統領選の「再選第一」で成果を焦り「Bad Deal(無分別な取引)」をするのを懸念する声も少なくない。

「リビアモデル」で大統領と“溝”
北朝鮮は「吸血鬼」と非難
 トランプ大統領は、ボルトン氏を更迭した翌11日、記者団に「ボルトン補佐官は、金正恩朝鮮労働党委員長に対し、リビアモデルに言及する大きな失敗を犯した」と語り、北朝鮮政策で見解の相違があったことを強調した。

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制裁解除に核の完全廃棄求める
「リビアモデル」とは、最初に大量破壊兵器を放棄させてから、支援を行うという試みだ。

 核兵器などの大量破壊兵器開発の疑惑があったリビアのカダフィ政権が、米国や英国との交渉で非核化を宣言、国際原子力機関や米国などの査察に応じ、米ブッシュ政権はリビアの核兵器やミサイルを無力化、核開発の完全廃棄を確認したうえで、制裁解除などを行った。

 カダフィ政権はその後、欧米との関係を深めたが、民主化運動の弾圧などから内戦に突入。カダフィ大佐は、米仏などからの支援を受けた暫定政権の兵士らに殺害されたとされる。

 ボルトン氏は当時、安全保障担当の国務次官としてリビア非核化を主導しており、北朝鮮との非核化交渉でも制裁解除などの条件に核の完全廃棄を求め、段階的な放棄を主張する北朝鮮との対立が続いてきた。

 初めての米朝首脳会談を控えて実務者の折衝が行われていた2018年5月には、北朝鮮側は崔善姫(チェ・ソンヒ)第1外務次官の談話を発表、ボルトン氏をこう批判した。

「リビアの轍を踏まないために高い代価を払って強力で頼もしい力を育てた。この現実を理解せず、悲劇的な末路を歩んだリビアと我々を比べている。米国の政治家は朝鮮をあまりにも知らない」

 ボルトン氏はそれにもかかわらず、同年6月にシンガポールで第1回米朝首脳会談を終えた後の7月、米国メディアとのインタビューで、「北朝鮮の大量破壊兵器と弾道ミサイルを1年以内に解体する案」をまとめたと言及。北朝鮮のさらなる怒りを買った。

 筆者は2015年3月、ボルトン氏にインタビューしたことがある。

「北朝鮮を訪れたことはないのか」と尋ねると、同氏はにやりと笑い、「私は北朝鮮から人間のくずと呼ばれている。行けるわけないだろう」と答えた。

 同氏は国務次官を務めていた2003年当時、ソウルでの講演で「金正日(総書記)は数百万人を飢え死にさせた。北朝鮮の人々は地獄のような悪夢のなかで暮らしている」と強調。

 北朝鮮が同氏を「人間のくず」「吸血鬼」とこき下ろしたこともあった。

後任オブライエン氏
手腕は未知数
 ボルトン氏の更迭で、米国の北朝鮮政策はどうなっていくのだろうか。

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トランプ政権の人事に特殊な要素
 後任のオブライエン氏は、2018年5月、人質問題を担当する特使に就任した。トランプ大統領は、起用の理由を「人質の交渉で素晴らしい仕事をした。多くの人が彼を尊敬している」と説明した。

 温厚な性格の一方、ボルトン氏らネオコングループとも良好な関係を築いているとされる。

 一方で、カリフォルニア州出身の弁護士でもあるオブライエン氏がなぜ、国家安全保障担当の補佐官に就任するのか、疑問視する声もある。

 オブライエン氏は共和党議員の外交政策顧問も務めているから、外交に明るい人物と評することはできるだろうが、他にも適任者は数多くいたと思われる。

 安全保障専門家の知人は、スウェーデンで暴行容疑で訴追された米国人ラッパーの解放が、同氏の就任に多少なりとも影響したとの話を聞いたという。

 知人は「この問題には、トランプ氏の長女、イバンカ大統領補佐官も強い関心を寄せていたため、オブライエン氏の就任に追い風になったと聞いた」と語る。

 ホワイトハウスのこれまでの人事を見ると、専門家としての知識のほか、トランプファミリーとの関係が影響している印象を受ける。

 イバンカ氏の助言があったのかどうか、真偽は不明だが、そのような解説が出るのは、トランプ政権の人事に特殊な要素がからんでいる証左でもあると思う。

 いずれにしろ、オブライエン氏の手腕は未知数だ。

トランプ大統領の「Bad Deal」を懸念
非核化より米朝改善重視
 知り合いの米国務省元当局者は、「ボルトン氏は問題の多い人物だったが、トランプ大統領が北朝鮮と『Bad Deal(無分別な取引)』することを防いできたのも事実だ。トランプ氏が北朝鮮とおかしな取引をするかもしれない」と懸念する。

 米国の朝鮮半島専門家たちは、「トランプ氏は、北朝鮮の非核化よりも米朝関係の改善を重視している」「彼の関心はノーベル平和賞」などと手厳しい。

 北朝鮮の核問題に焦点を当て続けてきたボルトン氏の退場で、トランプ氏が、北朝鮮から非核化で成果を得られないまま過度な譲歩をすることを憂慮しているのだ。

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「核武装」などの軽率発言目立つ
 ただ、トランプ大統領も今年2月のハノイでの2回目の米朝首脳会談後、記者団に対して、北朝鮮が少なくとも寧辺核施設以外の核関連施設を明らかにする必要があるとの考えを示している。

「寧辺核施設を放棄するから、国連制裁決議の一部を緩和してほしい」という北朝鮮の要求を退けたのはトランプ氏自身だ。

 この時の記者会見の映像は残っており、さすがのトランプ氏も方針を変えるのは簡単ではないはずだ。トランプ大統領が考えを変えるとしたら、北朝鮮側が新たな提案を行う必要があることは確かだ。

「中距離ミサイルアジア配備」や
「核武装」の軽率発言
 朝鮮半島情勢に対する米国内の関心がかつてのようには高まっていない今、ボルトン氏が退場したからといって、米朝関係が劇的に変化すると考えるのは、時期尚早かもしれない。

 それでも、今、日本の安全保障専門家の間でささやかれているのは、ボルトン氏をはじめ、その前任者だったマクマスター元米大統領補佐官や、各国から厚い信頼を得ていたマティス前国防長官らの、「安全保障のプロフェッショナル」たちの相次ぐ退場による、東アジアの安保情勢への悪影響だ。

 オブライエン氏の東アジア情勢や北朝鮮問題に対する姿勢はまだ見えない部分があるが、例えば、エスパー国防長官のアジアへの中距離ミサイル配備発言は、日本の安全保障専門家にかなりの衝撃をもって受け止められている。

 エスパー長官は8月、米記者団に対して、中距離核戦力(INF)廃棄条約から離脱したことを受け、アジアに中距離ミサイルを比較的早期に配備したい考えを示した。

 この発言を日本の専門家の1人は「東京をかつてのベルリンにする気なのか」と当惑する。

 この専門家が言ったのは、米国が1980年代、旧ソ連のSS20型ミサイル配備に対抗して、西ヨーロッパにパーシング2型ミサイルと、トマホークを配備しようとした動きのことだ。

 欧州への中距離ミサイル配備で、旧ソ連が欧州を攻撃しても、「モスクワとベルリンで相討ちになっても、ワシントンは生き残ってしまう。それでソ連はINFの締結に乗り出した」と説明。米国はINF条約から離脱したことについて、「かつてのベルリンとモスクワの関係を、東京と北京に置き換えようとしているのではないか」と懸念する。

 米国の真意はまだ見えないが、そうした軽率な発言をするエスパー氏の国防長官としての資質を疑う声も上がる。

 別の専門家は、「エスパー氏は、軍事産業と関係があった人物。ミサイルを売りたい意識が潜在的に働いたのかもしれない」と語る。

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エスパー氏、ビーガン氏に懸念の声
 北朝鮮との実務協議を担当する米国務省のビーガン北朝鮮政策特別代表についても、懸念する声がある。

 ビーガン氏は9月に行った講演で、「北朝鮮の非核化に失敗すれば、日本と韓国で核武装論が持ち上がる可能性がある」と語った。

 この発言も、日本の専門家の間では悪評紛々だ。専門家の1人は「米国は核不拡散に全力を挙げてきたのではなかったのか。核の傘を含む拡大抑止を強調してきた姿勢と矛盾するし、同盟国に対しても不用意な発言だ」と語る。

 日米関係筋はビーガン氏の発言について、「米朝協議がうまくいかないことへの焦りがあったのだろう。非核化に十分協力していない中国への警告という意味もあったのだろう」と解説したが、同時に「発言のトーンが強すぎるのも事実だ。私がスピーチライターだったら、あんなことは言わせない」。

 一方でボルトン氏は、時に過激な主張が目立ったが、現実も常に見据えていた。

 筆者がインタビューをした際にも、南北軍事境界線に近い板門店を訪れた時のことに触れ、「ソウルからヘリコプターで、わずか数十分の距離だった」と話し、北朝鮮のソウルに対する攻撃を完全に防ぐのは難しく、北朝鮮と事を構えることは現実的ではないとの考えを示していた。

 軍縮を担当していた国務次官時代、北朝鮮が核物質や弾道ミサイルなどをシリアやイランなどに輸出することを防ぐため、関係国と協力して「大量破壊兵器の不拡散構想」(PSI)の枠組みを広めたことでも知られる。

最初の試金石は
9月末の米朝実務協議
 トランプ政権は、今後、オブライエン氏を加えて、「吸血鬼」のいない体制で北朝鮮との非核化交渉を仕切り直しすることになる。

 北朝鮮は9日に、崔善姫第1外務次官の談話を発表し、今月末に米朝実務協議を開く考えを示した。

 談話では「米国が新たな計算法と縁のない古いシナリオを再びいじくり回すなら、朝米間の取引はそれで幕を下ろす可能性もある」と、新たな譲歩を示す動きは示していない。

 一方で北朝鮮が望んでいる制裁の緩和をするにしても簡単ではない。

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トランプ大統領の“暴走”を抑えられるか
 国連制裁決議の場合、関係国との調整が必要になるし、米国の独自制裁については米議会の同意が必要だ。北朝鮮から何らかの対応を引き出さない限り、難しい。

 日韓両政府のビーガン氏の交渉力に対する評価は決して低くはないが、プロフェッショナルな外交官ではないだけに、思わぬところで、手だれの北朝鮮から逆に足元を救われないかという懸念も残る。

 交渉が膠着状態になった時に、大統領選再選のために早く成果を誇示したいトランプ大統領が、また何かを言いださないとも限らない。

 ハノイでの米朝首脳会談で、段階的な非核化に応じようとしたトランプ氏を、ボルトン氏とともにいさめたポンペオ国務長官は最近も、「北朝鮮が完全に非核化するまで、制裁の緩和はない」と繰り返し、言及している。

 しかし、所詮、トランプ氏が我を通せば、ポンペオ氏もオブライエン氏も最後まで抵抗することは難しいだろう。トランプ大統領の意向に沿って動くタイプであり、ボルトン氏のように強硬に持論を主張して大統領を抑え込もうとするとは考えにくい。

 トランプ氏が安全保障や同盟関係に無関心だという指摘を受けて久しいが、トランプ氏の“暴走”を抑えながら、現実的な「解」を探ってきた「安全保障のプロフェッショナル」たちの退場が、東アジアの安全保障に影を落とす事態にならないことを祈りたい。

(朝日新聞編集委員 牧野愛博)

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写真:CNP/時事通信フォト
北朝鮮、イラクへの先制攻撃
ベネズエラ介入の危険は軽減
 トランプ米大統領は9月10日、ジョン・R・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)を解任した。

 これまでのトランプ政権の閣僚や大統領補佐官らの解任や辞職は、合理的で事情通の穏健な人物が退けられ、強硬派が取って代わることが多かった。

 だが今回のボルトン氏解任(本人は「自分から辞意を申し出た」と主張)はそれとは逆で、さすがのトランプ氏もボルトン氏のあまりのタカ派ぶりに愛想をつかしてクビにしたのだ。

 来年の大統領選を前に、北朝鮮との非核化交渉などで成果を演出したいトランプ大統領には邪魔者だったようだ。

 トランプ大統領は解任を発表後、「私はこれまで彼の多くの提案には、他の政権幹部と同様に強く反対してきた」と述べた。

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就任後2年8ヵ月で学習したトランプ氏
以前からトランプ氏は側近に、「もしジョン(ボルトン)の言う通りにしていたら、今ごろ米国は4つの戦争を抱えていたところだ」と漏らしたという。

 2019年1月1日に辞職した前国防長官ジェームズ・マティス海兵大将は、ボルトン氏を「悪魔の化身」と評したこともある。歴戦の智将にとっては、戦争を知らない超タカ派の外交官は腹立たしい限りだったろう。

 ボルトン氏を切り捨てたことは、トランプ政権が北朝鮮、イランに対する先制攻撃を行わず、ベネズエラへの介入を避け、アフガニスタンの和平交渉を進展させる方向にかじを切りつつある兆候と思われる。

 今後それらの交渉や和解がうまくいくか否かは予断を許さないが、戦争の危険が若干なりとも減じたとはいえよう。

 米国の大統領は第1期の辞任直後には強硬論を唱えるが、事情を知った第2期には穏健になった例が多い。トランプ氏も就任後、約2年8ヵ月で学習したことも少なくはないのだろう。

 もちろんトランプ氏には任命責任がある。

 ボルトン氏の前任者、ハーバート・R・マクマスター陸軍中将は湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争で功績を挙げ、実直な性格で軍事史の博士号も得た智将だったが、大統領に状況を説明してもなかなか理解してもらえず、その苦労を周囲に漏らすうち、馬鹿にしたような言辞もあって更迭された。

 その後任につとに超タカ派で知られていたボルトン氏を据えたのは、乱暴な人選だった。

 彼は名門イェール大学を最優等の成績で卒業した法学博士だが、高校生の時代から共和党タカ派で公民権法(人種差別禁止)に反対したバリー・ゴールドウォーター上院議員を支持、1964年の大統領選挙を手伝ったが、ゴールドウォーター候補は惨敗した。

 司法省など官界に勤務したのち、ジョージ・W・ブッシュ(子)大統領により国務次官(安全保障担当)に任じられ、イラク攻撃を推進した。

「ネオ・コン(新保守派)」の1人といわれるが、本人は「私はずっと以前からの保守派。ネオ・コンではない」と強調した。筋金入りのタカ派だ。

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安保理決議に逆らってイラン制裁
大使時代は「国連軽視」
イラン経済制裁を継続
 その後、国連大使になったが、「国連軽視」の姿勢が際立った。

「国連などというものはない。あるのは国際社会であり、それは唯一の超大国である米国によって率いられる」とか「国連本部の10階以上(事務総長室などがある)がなくなっても困ることはない」など傲慢不遜で他国があきれるような発言が多く、礼儀を重んじる外交官には不適だった。

 オバマ大統領の広島訪問を「恥ずべき謝罪の旅」と非難、原爆投下を「トルーマン大統領の勇断」と評価した。

 こんな人物をトランプ氏は安全保障担当の大統領補佐官にしたから、その進言は安全保障どころか戦争推進に向かうのは当然だ。

 イランの核開発を大幅に制約する見返りに経済制裁を解除する「イラン核合意」は、米・露・英・仏・中・独の6ヵ国とイランが2015年7月14日に調印し、同月20日、国連安全保障理事会は決議2231でこれを承認した。安保理はすべての国連加盟国がその履行に協力するよう求めた。

 その後、IAEA(国際原子力機関)はイランの核施設の査察を行い2016年1月16日、イランが核合意を完全に履行していることを確認した。

 これにより経済制裁は解除されるはずだったが、トランプ政権は2018年5月8日、イラン核合意からの離脱を宣言、経済制裁を続行した。

 他国も貿易決済は米国の金融機関を経由することが多いから、イランとの貿易を再開しにくく、実質的には広範囲の経済制裁が続くことになった。

 だが米国の行動は安保理決議に逆らい、国連憲章第25条(安保理決議は法的拘束力を持つ)に違反する。

 米国大統領への安全保障政策の指南役が国連を軽侮し、「国際社会は米国に率いられる」と公言するのだから、米国は安保理決議を無視するのも平気で、世界の独裁者であるかのように振る舞うこととなった。

唯我独尊の対外政策で
米国の孤立を深める
 冷戦時代なら米国が同盟国を「率いる」ことがある程度可能だったが「東側陣営」が消えたから、「西側陣営」も形骸化している。

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核全面廃棄主張し米朝会談決裂
 米国自身も、日本の財務省の昨年5月5日の発表では、対外純債務が885兆円にも及ぶ世界最大の債務国になった。経済での弱者が頼る「保護貿易」に向かわざるを得ない。

 ボルトン氏はその変化に目を閉じ、唯我独尊の対外政策を、トランプ大統領に勧め、米国は孤立を深める結果となった。

「イラン核合意」の破棄にはどの国も追随せず、米国が提唱した、海上のイラン包囲網「センチネル作戦」に参加する国は少ない。形だけ参加してもホルムズ海峡周辺で自国のタンカーを護衛するだけで、イラン攻撃に加担する気配はない。

 ボルトン氏は、米軍12万人を対イラン攻撃に投入することを主張したが、トランプ政権の他の幹部は同意しなかった。

 トランプ政権は昨年5月14日、在イスラエル米国大使館をテルアビブからエルサレムに移転したが、その後1年以上たっても、米国に追随して大使館を移したのはグアテマラ1国だけだ。

 1967年の第3次中東戦争でイスラエル軍は東エルサレムを占領、国連安保理がイスラエル軍の占領地からの撤退を決議したのに従わず、エルサレムを首都と宣言した。

 だから他国は大使館をテルアビブに置いていたのだが、米国はエルサレムへの大使館移転を強行、国際社会の反発を受けた。

 まともな安全保障担当の大統領補佐官なら、「そういうことをすれば米国は孤立し、指導力を失います」と諫言すべきだが、ボルトン氏は逆にトランプ氏をあおり立てた。

リビア方式で核全面廃棄を求め
米朝首脳会談決裂の原因に
 北朝鮮との交渉でも、ボルトン氏は「オール・オア・ナッシング」を唱え、北朝鮮が完全に核放棄をするまで経済制裁を強化して追い詰めるよう主張した。

 今年2月27・28日、ハノイでの2度目のトランプ・金正恩会談が決裂に終わったのは、北朝鮮が段階的に核放棄を行い、それに応じて米側が経済制裁を徐々に進めるよう求めたのに対し、米国側はボルトン氏の論に沿って、「まず全面核放棄をせよ」との立場を譲らなかったため、とされる。

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アフガニスタン和解工作でも対立
 ボルトン氏は国務次官補時代にリビアとの交渉に当たり、非核化を達成した実績を誇り、北朝鮮にも「リビア方式」を適用するよう勧めていた。

 リビアはウラン濃縮のための遠心分離器を輸入していたものの、核開発をできる技術や工業力がないため、それを倉庫に放置していたことが後に判明した。

 不要品を放棄することで経済制裁を解除させ、2006年5月に米国との国交正常化にも成功したから、リビアの指導者ムアンマル・カダフィ大佐の方が実際は得をしたのだ。

 だがボルトン氏はそれを自分の成功体験とし、北朝鮮側との会談でもリビアの例を持ち出した。

 2011年にリビア内戦に米国、フランスなどが介入し、リビア政府は倒れ、カダフィ大佐は殺された。

 核開発を止めて殺された指導者の話を北朝鮮にするのは全く逆効果だ。会談決裂後トランプ氏が、ボルトン氏について「最悪だ。賢くない」と言ったのも当然だった。

 トランプ氏はイランの穏健派のハッサン・ロウハニ大統領と会談し、得意の「取引」をしようとしたが、ボルトン氏はそれに反対、「攻撃すればイラン政府はすぐに倒れる」と主張したといわれる。

 イラク戦争前にも彼は同じことを主張。2003年3月の開戦から2011年12月の米軍撤退まで8年9ヵ月のイラク戦争に米国を引き込むことになった。

 この戦争で米軍は死者約4500人を出し、財政危機を招いたが、そのことへの反省は彼にはないようだ。

 トランプ氏はアフガニスタンの武装勢力タリバンが2001年10月以来18年間の米軍との戦いに屈せず、支配地を広げる形勢に終止符を打つため、和解工作を進め、タリバンの代表を米国大統領の公式別荘キャンプ・デービッドに招いて会談しようとした。

 この時も、ボルトン氏は「テロリストを招待するとはもってのほか」と反対し、大統領と対立していたとされる。

大統領選を意識したトランプ氏
政権内で中庸の議論増える可能性
 トランプ氏は強硬論を唱えて大衆の人気を得たものの、来年11月の大統領選挙を前にイラン、北朝鮮、タリバンなどとの交渉の成果を演出したいから、好戦的なボルトン氏は邪魔者だったろう。

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日本にも対北強硬論は危険だった
 もちろんトランプ氏自身も、慎重論者ではなく、思いつきで首尾一貫しない言動をしてきた。ボルトン氏が政権を去っても、米国の対外政策が穏健で合理的なものになるとは限らない。

 北朝鮮、イラン、タリバンなどとトランプ氏が「取引」をしても、満足のいく合意に達せず、決裂になる可能性は低くない。

 とはいえ、超タカ派のボルトン氏が切り捨てられたことは、米政権内で中庸を得た議論が行われる余地を生む効果はある程度あるように思われる。

 外交をつかさどるマイケル・ポンペオ米国務長官は、CIA長官時代に北朝鮮の金正恩委員長排除を示唆したことがあり、イラクでの捕虜などの拷問について、それをした者は「拷問者ではない。愛国者だ」と言ったこともあり、米国でも「ボルトンに次ぐ危険人物」ともいわれる。

 だがポンペオ氏はトランプ大統領に徹底的に忠誠で、トランプ氏が「私はポンペオ氏以外とは誰とも争った」と言ったほどのイエスマンだ。

 大統領が対話、和解に目を向け、更迭したマクマスター前補佐官の意見も徴していると知れば、それに向かって努力するのではないか。

日本にとっても
対北強硬論は危険だった
 ボルトン氏更迭の翌日、9月11日の記者会見で、菅義偉官房長官は「ボルトン氏は日米同盟の強化や北朝鮮問題の対応を含むインド・太平洋地域と国際社会の平和と安定に尽力した。これまでの貢献に感謝したい」と述べた。

「米国第一」のトランプ大統領は、北朝鮮が米国本土に届くICBMの配備さえしなければ、「米国に対する北朝鮮の核の脅威を除去した」と米国民に実績を誇れる。

「完全な非核化」の目標に対し満点ではないが90点は取れる形だから、北朝鮮が射程300キロ級の短射程弾道ミサイルの発射をしても不問に付す姿勢だ。日本に届く中射程のIRBMにも関心は薄い様子だ。

 日本では「米国がICBM廃棄だけで北朝鮮と和解すれば最悪の事態」との声が強い。

 もちろん北朝鮮の核の完全廃棄が望ましいから、「オール・オア・ナッシング」を唱え、「核の完全廃棄まで経済制裁の手を緩めるな」と主張するボルトン氏を日本政府が頼りにしたのは自然なことではある。

 だが真の「最悪の事態」は、核戦争だ。

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自暴自棄にしないことが重要
滅亡の淵に追い込まれた北朝鮮が自暴自棄になり、「死なばもろとも」の心境から、核ミサイルを日本の米軍基地(横須賀、佐世保、三沢、横田、岩国、嘉手納など)に発射し、さらに東京、大阪などが狙われれば、日本が滅びかねない大惨事になる。

 核攻撃に対して報復能力を示し、攻撃を諦めさせる核抑止戦略は、相手の理性的判断を前提とし、自暴自棄の相手には効果がない。

「自爆テロの犯人は死刑に処す」と言っても効き目がないのと同然だ。

 同盟の強化もあまり効果はない。

 通常兵器による戦争なら同盟国軍と協力し、侵攻して来る敵軍を陸でも空でも撃退することが可能だが、核ミサイルは戦線を飛び越え、直接こちらの心臓部に落下して来る。

弾道ミサイル迎撃は難しい
自暴自棄にしないことが重要
 相手が弾道ミサイルを発射する前に、航空機などによる先制攻撃で敵ミサイルをすべて破壊できればよいが、北朝鮮の弾道ミサイルは移動発射機に載せて、山岳地帯のトンネルに隠され、いざとなればトンネルから出てミサイルを直立させて発射する。

 旧式の「ノドン」では発射まで約1時間、燃料を充填したまま待機する新型だと数分で発射できる。しかもその詳細な位置を事前に知ることは困難だ。

 ダミーのトンネルもあるだろう。また山腹のトンネルを上空からの爆撃でつぶすことも容易ではない。

 偵察衛星が常時敵地の上空にいてトンネルなどから出てきたミサイルを発見できるように思う人も少なくないが、偵察衛星は時速2万数千キロの速力で周回し、1日に約1回各地の上空を通過する。

 カメラの首振り機能やレーダーの能力を生かしても、1日に1分程度しか撮影はできない。 

 静止衛星は高度3万6000キロの赤道上空を周回し、地球の自転と釣り合うから静止しているように見える。だがこの高度からではミサイルは見えず、発射の際に出る赤外線を感知できるだけだ。

 しかも先制攻撃をするなら、すべての目標をほぼ同時に破壊する必要がある。そうでないと相手は残ったミサイルを発射してくる。

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北の弾道ミサイル阻止は難しい
 湾岸戦争(1991年1月〜2月)では、イラク軍は88発の「アル・フセイン」(スカッド改)弾道ミサイルを発射した。これに対し米空軍など有志連合軍は1日平均64機を「スカッド・ハント」に出動させたが、目標を発見するのは困難を極め、発射前に破壊できたのは偶然発見した1基だけだった。

 イラク軍はミサイル発射を続け、停戦の3日前、2月25日にダーランの米軍兵舎に落下した「アル・フセイン」は、死者28人、負傷者97人を生じさせた。

 飛来する弾道ミサイルを迎撃するのも容易ではない。日本の弾道ミサイル防衛に当たるのは、イージス艦6隻(他に2隻進水、艤装中)と航空自衛隊の弾道防衛用ミサイル「PAC3」34両だ。

 イージス艦は各種のミサイルを垂直発射機に最大90発ないし96発を積めるが、弾道ミサイル防衛用の「SM3」ミサイルは各艦8発しか搭載していない。今後増やす予定だが「SM3」の新型は1発40億円もするから、そう多くは買えない。

「PAC3」は射程20キロ程度だから、地点防衛にしか役立たず、発射機1両に16発積めるが4発しか積んでいない。日本のミサイル防衛は政府が言う「万全の備え」どころか、気休めにすぎない。

 米海軍は、横須賀に空母1隻、揚陸指揮艦1隻、巡洋艦3隻、駆逐艦7隻を配備し、うち巡洋艦2隻、駆逐艦5隻は弾道ミサイル防衛能力がある。だが米軍艦も各艦6発ないし7発しか「SM3」ミサイルを積んでいない。

 一方で、北朝鮮が保有する日本に届く弾道ミサイルは「数百発」と政府は言っており、日米が協力してもその一部しか阻止できないだろう。

 北朝鮮の核弾頭は20ないし30発と推定されるが、火薬弾頭のミサイルと交ぜて、多数を発射されれば、どれが核弾頭付きかは分からないから突破される公算は大だ。

米国が無謀に走らないことは
日本の安全にも寄与
 かつて日本は1941年7月から米国による在米資産の凍結と石油輸出全面禁止の経済制裁を受け「備蓄石油のある間に一暴れして見せる」と、真珠湾攻撃に打って出た。

 核ミサイルの時代にそんなことが起きては大変だ。

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ボルトン氏に感謝する必要はない
 残念ながら北朝鮮を追い詰め、自暴自棄にしないことが安全保障の良策と考えざるを得ない。

 トランプ政権が、北朝鮮に対して、米国に届くICBMさえ配備しなれば、経済制裁を徐々に緩める政策を選ぶとすれば、日本にとっては腹立たしい。

 だが北朝鮮にICBMがなければ、米国は、もし北朝鮮が日本や韓国に対して核攻撃をした場合、自国が核攻撃を受ける心配をせずに報復攻撃を行うことができる。

 米国が核兵器を極東に持ち込まなくても、アラスカ沖で常に待機している弾道ミサイル原潜から核ミサイルを発射できるから、北朝鮮が自暴自棄になっていなければ、十分に抑止力を保てる。

 そう考えれば、日本の官房長官がボルトン氏に「感謝」する必要はない。

 むしろ彼の更迭は米国が無謀な戦争に向かう危険をいささかなりとも減じ、日本の安全にも寄与する、と内心歓迎すべきではないか。

(軍事ジャーナリスト 田岡俊次)
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[国際27] 憎悪の個人攻撃、「激しさ増している」 気候変動訴えるトゥーンベリさんが反発
憎悪の個人攻撃、「激しさ増している」 気候変動訴えるトゥーンベリさんが反発
2019年09月30日
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ジャスティン・ロウラット、環境担当主任編集委員
https://ichef.bbci.co.uk/news/936/cpsprodpb/1575B/production/_108999878_056743053epa.jpg
Image copyrightEPA
スウェーデンの環境保護活動家グレタ・トゥーンベリさん(16)は怒っている。それは、気候変動についてだけではない。

トゥーンベリさんは26日、ソーシャルメディアに「ヘイター(憎悪をまき散らす人)が今まで以上に活発になっている」と投稿した。トゥーンベリさんによれば、ヘイターたちは気候危機について話す代わりに「私の見た目、服装、癖、他の人との違い」などを追いかけているという。

それが彼女の活動を止めるわけではない。トゥーンベリさんは翌27日、カナダ・モントリオールで行われた大規模な気候変動ストライキを先導し、大手航空会社にカーボン・フットプリント(企業活動による二酸化炭素(CO2)などの排出量)を減らすよう求めた。

しかし、トゥーンベリさんが非常にいらだっているのは確かだ。自分を非難する人のことを、うそや陰謀論を使って気候変動への注目をそらそうと「あらゆる一線を越えてくる」と批判している。

もちろん、彼女に注目が集まっていることは驚くに値しない。過去1年、グレタ・トゥーンベリさんは他の誰よりも、気候に関する世界的な活動を盛り立てるために動いてきたのだ。

そして、人々を物怖じさせるようなその言葉の力が、トゥーンベリさんの若さから来ている面があるのは間違いない。


「裏切ったら私たちは絶対に許さない」 トゥーンベリさん、国連で気候変動対策を要求
トゥーンベリさんが23日に発した「How dare you! (よくもそんなことを)」というメッセージが強烈だったのは、冷房のきいたニューヨークの国連本部という場所に、彼女はあまりにもそぐわない存在だったからだろう。

若者が大人の世界に対してこれほど強引に、これほど公に責任を求めることは珍しい。そして明らかにこのことを嫌がっている人たちがいる。

ドナルド・トランプ米大統領がその一人だ。トランプ氏はツイッターで、トゥーンベリさんは「輝かしい素敵な未来を楽しみにしているとても幸せな少女に見える」と述べ、トゥーンベリさんをからかおうとした。

これに対しトゥーンベリさんは、スウェーデンのテレビ番組で「何か私について言おうとしたのは分かった」と話し、大統領の皮肉を笑い飛ばした。

Image Copyright SVTSVT
もっと攻撃的な人は、トゥーンベリさんが怪しげな勢力に操られていると指摘する。

イギリスの大衆紙サンは、そうした勢力には「大手エネルギー企業や、強引なセレブリティーの両親も含まれる。(トゥーンベリさんの)母親は名声を欲していて、かつてユーロヴィジョン(欧州で人気の歌合戦番組)にも出ていた」と報じた。

また、オーストラリアのヘラルド・サン紙は、トゥーンベリさんは「大きな精神疾患を抱える地球温暖化をめぐる活動の救世主」だと書いた。

コラムニストのアンドリュー・ボルト氏は、「こんなに多くの精神疾患を抱え、こんなに多くの大人にグルとして扱われている少女を見たことがない」とつづっている。

では、グレタ・トゥーンベリという少女は本当にこうした批判者の言うような、精神疾患を抱えた陰気で危うい子どもなのだろうか。

私はトゥーンベリさんに、彼女がアメリカへ渡るためのヨットに乗り込んだプリマスで会ったが、陰気な人物では全くなかった。

トゥーンベリさんはちょうど強風の中、防波堤の先までヨットで行って帰ってきたばかりで、明らかにその体験にワクワクしていた。

そして本人に会ったことで、トゥーンベリさんが誰かから気候変動について話せと強制されているという考えが、空想だということが分かった。


温暖化対策訴える16歳少女、ヨットでニューヨークへ
トゥーンベリさんは8歳の時に世界の気候が変わっているということを聞き、ほとんど対策がなされていないことが理解できなかったと語った。

11歳の時までにトゥーンベリさんは、非常に強い不満と不安を抱えるようになった。食べるのをやめ、成長が止まり、誰とも話さなくなったという。

「私だけが気候や生態系の危機を心配しているように感じていた。両親も、クラスメイトも、親戚も、誰もこれについて心配していなくて、私だけだと思っていた」

トゥーンベリさんはこの事実を変えようと決意し、まず家族を相手に、気候変動に対する活動を開始した。

初めに、肉食をやめるよう両親を説得した。それから著名なオペラ歌手であり、仕事で旅行が欠かせない母親のマレナ・エルンマンさんに、飛行機の利用をやめさせた。

その次に行ったのが学校ストだった。ちょうど1年ほど前の2018年8月20日の金曜日、トゥーンベリさんは1人でスウェーデン議会の建物の前に立ち、今ではすっかり有名になった「Skolstrejk För Klimatet(気候のための学校スト)」というプラカードを掲げた。


15歳少女、気候変動に抗議で2週間座り込み スウェーデン
その後に起きたことは歴史的といっていい。トゥーンベリさんはたちまち、世界で最も称賛され、同時に嫌悪される人物となった。

トゥーンベリさんはそれから、気候学者や活動家など、助言をくれるネットワークを構築した。でも采配を振るのはトゥーンベリさん自身だ。

Image copyrightREUTERS
トゥーンベリさんの近くにいる人々は、彼女が演説の内容を全て自分で書いていると認めている。プリマスで会った時、トゥーンベリさんは大西洋をわたる2週間の旅の間に、国連気候サミットで何を話すかを考えると話してくれた。

「危機が迫っていることを伝え、サミットの参加者こそが責任者なんだと言いたい。リーダーシップを見せろ!と」

23日の演説でトゥーンベリさんはそれを果たした。世界の指導者らに対して「私の夢と子ども時代を奪った」と批判し、「未来の世代の目はあなたたちに注がれている。もし私たちを失望させる道を選んだら、『絶対にあなたたちを許さない』と言うだろう」と警告した。

では、トゥーンベリさんの心の健康については? そもそも、それについてコメントする権利のある人はいるのだろうか?

トゥーンベリさんのすごいところは、科学に照らし合わせた上で、すぐにでも対策を取ることが必要だと冷静に述べている点だ。

トゥーンベリさんが、自身の精神状態が疑問視されているのを怒るのは当然だ。

「人と違うことは病気ではないし、現時点で手に入れられる最も科学的なものは意見じゃない。事実だ」と、トゥーンベリさんは述べている。

トゥーンベリさんは、過去にとても苦しい思いをしたことを認めているが、気候問題に立ち向かったことで、絶望から浮き上がったと話した。

「闘っているのが私独りじゃないというのは嬉しい。私の人生が後から何か意味のあるものになる、私のやっていることは意味があると感じている」

トゥーンベリさんは自身のアスペルガー症候群を、雑音を排除し、問題の中心が見えるようになる「超能力」と呼んでいる。

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自閉症の慈善団体「Autistica」の科学担当ディレクターを務めるジェイムズ・キューザック博士は、トゥーンベリさんがアスペルガー症候群を患っている人々の非常に重要なロールモデルになっていると話した。

「彼女の勇敢で、冷静で、科学に基づいて活動する姿は、多くの人を勇気付けている」

トゥーンベリさんはまた、気候変動への取り組みについて時に感情的になることについては、世界が十分な対策を取っていないことに憤慨し失望するからだと話している。

トゥーンベリさんは家族にしっかりと支えられている。父親のスヴァンテ・トゥーンベリさんは大西洋横断に同行し、その不自由な生活を分かち合った。母親のエルンマンさんと妹のベアタさんはスウェーデンに残っている。

近い将来にこの活動をやめるつもりは、トゥーンベリさんにはない。

また、世界が産業革命以前からの気温上昇を1.5度未満にとどめられるかどうかは、向こう数カ月が非常に重要になると語ってくれた。

さらに、CO2排出量は来年末までに減少に転じなくてはならず、そうでなければ、気候変動を食い止められる分岐点を越えてしまうと警告した。

しかし、昨年の全世界のCO2排出量は2.7%増加し、史上最高の371億トンを記録した。

国連本部での各国首脳の対応に、トゥーンベリさんはいら立っていた。首脳らはトゥーンベリさんの演説に丁寧な拍手を返したものの、温室効果ガスを大幅に減らすための新たなイニシアチブを打ち出さなかった。

そして、そのほとんどがトゥーンベリさんのメッセージや、サミットの数日前に何百万人もの人々が世界各国で道路を埋め尽くし、気候変動への措置を訴えたことに言及しなかった。

つまり、トゥーンベリさんにとっては気候変動への活動はなお進行中の仕事だということだ。

トゥーンベリさんは先に、ツイッターにこのように書いている。

「たぶん、(批判する人たちは)私たちに脅されているように感じているんだと思う。でも世界の目は開き始めている」

(英語記事 Greta Thunberg calls out the 'haters')

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[戦争b22] 北朝鮮の飛翔体は潜水艦発射弾道ミサイルだった可能性−韓国軍 韓国がミサイル情報共有要請 GSOMIA通じ日本に

北朝鮮の飛翔体は潜水艦発射弾道ミサイルだった可能性−韓国軍
延広絵美、Shinhye Kang、Jihye Lee
2019年10月2日 10:39 JST 更新日時 2019年10月2日 12:45 JST
島根県沖北約350キロの排他的経済水域に落下も−日本政府
SLBMなら2016年、日本のEEZ到達なら17年11月以来
北朝鮮は2日、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した可能性がある。韓国軍合同参謀本部が発表した。北朝鮮は発射の数時間前に、米国との実務者協議を再開すると表明していた。

  同本部によると、飛行距離は450キロメートル、最高高度は910キロメートル。日本政府は島根県沖北約350キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられると発表した。菅義偉官房長官は当初、2発との見方を示していたが、午前11時半すぎの記者会見で「現時点においては1発の弾道ミサイルが発射され、2つに分離して落下した可能性がある」と修正した。

  北朝鮮は5月から陸上発射ミサイルの短距離発射試験に着手していた。SLBM発射となれば2016年以来で、韓国によれば当時の飛行距離は約500キロ。日本のEEZ内に北朝鮮の弾道ミサイルが到達するのは17年11月以来となる。

  安倍晋三首相は2日午前、弾道ミサイルの発射は関連する国連安全保障理事会決議に違反しており、「厳重に抗議し、強く非難する」と述べた。菅官房長官も記者会見で「極めて遺憾」として直ちに北京の大使館ルートを通じて北朝鮮に抗議したことを明らかにした。

  首相は国民への迅速・的確な情報提供、航空機・船舶などの安全確認の徹底に加え、不測の事態に備え万全の態勢を取るよう指示した。政府は国家安全保障会議を開き、今後の対応を協議した。

  韓国は現地時間午前7時50分(日本時間同じ)、鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長が主宰する国家安全保障会議(NSC)を開催。5日の米朝実務者協議を前に北朝鮮がミサイルを発射したことに強い憂慮を表明した。発射の意図を分析するとしている。米政府高官はブルームバーグに対し、北朝鮮によるミサイル発射の報道は承知しており、引き続き状況を監視し、地域の同盟国と緊密に協議していくとコメントした。

  外為市場ではドル・円相場が午後12時45分現在、1ドル=107円84銭近辺で取引されている。

  北朝鮮は16年から17年にかけ、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)級を含めた弾道ミサイル発射を繰り返し実施。17年11月に米国全体を射程に入れたとするICBM「火星15」発射後に「核戦力の完成」を宣言していた。

Where's North Korea's Missile Could Reach - Japanese
北朝鮮ミサイルの到達可能範囲Bloomberg
  18年以降は3回の米朝首脳会談を行うなど対話路線に転じていたが、19年に入ると短距離ミサイルの発射を繰り返し行っている。防衛省は先月、北朝鮮が5月以降発射したミサイルには2種類の新型ミサイルが含まれていたと分析。もう1種類、別の新型を発射した可能性もあるという。同省は発射準備に時間が掛からない固体燃料が使用されるなど、北朝鮮がミサイル関連技術の能力向上を図っているとしている。

  北朝鮮による最近の短距離ミサイル発射について、日本政府は国連安保理決議違反だと非難しているのに対して、トランプ米大統領は「比較的小型のミサイルしか試験していない」と問題視しない姿勢を再三示していた。

  

(菅官房長官の記者会見での発言を第2、4段落に追加し、更新します)
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-02/PYQ3NHT0G1L101?srnd=cojp-v2

 
韓国がミサイル情報共有要請 GSOMIA通じ日本に
日韓対立 朝鮮半島
2019/10/2 11:53
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【ソウル=恩地洋介】韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相は2日、北朝鮮による潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射を巡り、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に基づいて日本側に情報共有を要請したと明かした。韓国政府は8月23日にGSOMIAの破棄を日本に通告したが、情報共有は11月22日まで継続する。

北朝鮮がミサイルを発射した場合、日韓は米国の早期警戒衛星を通じて得た情報と合わせ、レーダーを使って軌道や弾種を分析する。ただ、日韓は地理的な条件から把握できる情報が異なるため、情報交換が必要となる。韓国の場合、ミサイルが日本列島を越えると、着弾時の情報収集が難しくなる。

【関連記事】 北朝鮮が弾道ミサイル発射 「SLBM」と韓国軍
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50484940S9A001C1MM0000/


北朝鮮が弾道ミサイル発射 「SLBM」と韓国軍
北朝鮮 政治
2019/10/2 7:59 (2019/10/2 9:26更新)
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2016年8月、北朝鮮の労働新聞が掲載した、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射実験の写真=共同
2016年8月、北朝鮮の労働新聞が掲載した、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射実験の写真=共同

【ソウル=恩地洋介、ワシントン=永沢毅】韓国軍合同参謀本部は2日、北朝鮮が午前7時11分ごろ、江原道の元山(ウォンサン)北東部の海上から日本海に向けて弾道ミサイルを発射したと明かした。飛行距離は約450キロメートル、最大高度は910キロメートルで、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)とみられる。北朝鮮がSLBMを発射するのは2016年8月以来。

韓国大統領府は2日午前の国家安全保障会議(NSC)で「北朝鮮がSLBMを試験発射した可能性に重きを置く」と判断した。北朝鮮が16年8月に発射したSLBM「北極星」は距離、高度ともに約500キロメートルだった。今回は高度が900キロメートルを超えた。意図的に高角度で打ち上げた可能性もある。

専門家は通常の角度で発射すれば射程は数千キロで日本をはじめ米国の一部が射程に入る可能性があると指摘する。潜水艦からの発射は攻撃を把握しにくいほか、奇襲もしやすくなるため脅威が高まるのは必至だ。

【関連記事】
・米朝、5日に実務者協議開催へ 北朝鮮高官が表明
米政府高官は「北朝鮮がミサイルを発射したとの報道を把握している。状況を注視し、地域の同盟国と緊密な連携を続けている」と語った。

菅義偉官房長官は2日朝の記者会見で、飛翔体を「2発の弾道ミサイル」と指摘した。この後、1発が発射されて2つに分離して落下した可能性があると修正した。

河野太郎防衛相は2日午前、1発が島根県隠岐諸島の島後沖約350キロメートル付近に落下したと発表した。日本の排他的経済水域(EEZ)内にあたる。ミサイルが日本のEEZ内に落ちたとすれば、17年11月以来となる。

菅氏は記者会見で、現時点で船舶や航空機への被害は確認されていないと説明した。海上保安庁は同日朝、船舶に航行警報を出し船舶に注意を呼びかけた。

安倍晋三首相は国連安全保障理事会の決議違反だと訴えたうえで「厳重に抗議し、強く非難する」と語った。米国など国際社会と連携しながら「国民の安全を守るために万全を期す」と強調した。首相官邸で記者団に答えた。政府は2日午前、首相官邸でNSCを開き、対応を協議した。

北朝鮮の飛翔体発射について記者の質問に答える安倍首相(2日午前)
北朝鮮の飛翔体発射について記者の質問に答える安倍首相(2日午前)

政府は北京の大使館ルートを通じ北朝鮮側に抗議した。外務省の滝崎成樹アジア大洋州局長は米国のビーガン北朝鮮担当特別代表と電話で協議し、日米や日米韓で緊密に連携すると確認した。

一方、菅氏は記者会見で、北朝鮮による日本人拉致問題の解決に向け、前提条件をつけず日朝首脳会談を目指す方針に変わりはないと説明した。


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[経世済民133] 2つの顔が同居する日本経済、グループB再生策に世界も注目
2つの顔が同居する日本経済、グループB再生策に世界も注目
竹生悠子、Hannah Dormido
2019年9月24日 7:00 JST
グループAの東名阪には最新技術やビジネス・富が集中
それ以外のグループBでは若者流出で過疎化・高齢化が進行
日本経済は大きく二つのグループに分かれる。最新技術やビジネス、富が集まる首都圏、中京圏、近畿圏の3大都市圏で構成する「グループA」と、若い世代の流出が止まらずに高齢化が加速するそれ以外の大部分の地域「グループB」だ。グループBでは今後も過疎化が進み、「限界集落」現象の増加も避けられそうにない。

  世界の先進各国も似たような道をたどっているだけに、高齢化や人口減少で先頭を走る日本から何らかの教訓を得られるかもしれない。

A Rural Community as the Two Economies of Japan Have a Cautionary Lesson for World
「お互いさまスーパー『みせっこあさみない』」で合唱する五城目町浅見内の住民Photographer: Noriko Hayashi /Bloomberg
  秋田県南秋田群五城目町浅見内にある「お互いさまスーパー『みせっこあさみない』」は3年半前、買い物難民対策として県の補助金などを受けて開店した。そこは日用品が買えるだけでなく、店内で焼きそばやカレーライスなどの食事もでき、地域住民にとって憩いの場となっている。新鮮な魚が店頭に並ぶ毎週木曜日には、住民が集まって一緒に歌う。

  みせっこあさみないは、ここで働く工藤悦子さん(66)のような地域住民のために開設された。 今は楽しく暮らす工藤さんだが、「何年こうやってできるべか、心配なところもある」と話す。同世代の多くが感じているように、運転ができなくなる将来、買い物や病院に通うのが難しくなることに工藤さんは不安を募らせる。

  国際連合のデータによると、日本の地方人口は2018年からのわずか12年間で17%も減少する見通し。地方人口の減少ペースはその後さらに加速し、30年代には年2%程度のペースでの減少が見込まれている。一方、米国の地方人口は18年から30年の期間に7.4%減少する見通しで、ドイツの地方人口は同期間に7.3%、イタリアは15%それぞれ減ると予想されている。

  日本の地方人口の減少ペースは40年代にはブルガリアとアルバニアを除いて全ての国を超えると予測されている。一部では人口の半分以上を65歳以上が占める限界集落の状態を超え、何百という地方市町村が消滅するシナリオを描く専門家もいる。  

Tokyo Shoppers and Cityscapes Ahead of Japan's Revised Second Quarter GDP Announcement
若い買い物客でにぎわう原宿のショッピング街Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  既に人口減少の影響が出ている地方市町村は少なくない。昨年実施された農林水産省のアンケート調査によると、回答した市町村のうち8割超が買い物難民への対策が必要と感じており、大多数が高齢化を理由に挙げた。

  文部科学省によれば、国内では02年から17年にかけて7000校を超す公立学校が廃校となった。出生率が低下する中、高齢化が先行する地方での廃校が大都市圏を上回る。学校の減少やその他社会インフラに課題を抱える地方では、若い世代が都市へ向かいやすい。

  若い世代がグループBからグループAへ移ると、家計資産も相続を通じて大都市圏に流れやすくなる。三井住友信託銀行の試算によると、14年を基点とする20年から25年の間に、世代間相続による家計資産の流出率が47都道府県のうち30県で20%を超える見込みだ。

  富や人が都市部に流れるのを止めるのは不可能に近いというのが日本の現状から得られる教訓かもしれない。一部の日本人エコノミストらは、政府はこうした流れを止めるよりも、むしろこの流れに沿って政策を進めるべきではないかと話す。

  政府は首都圏から地方へ移住・起業した場合に最大300万円の一時金を支給するなど、多様な支援策で地方創生に取り組んでいる。ただ、政策効果の検証では、若者の雇用創出などで成果が出ている項目は多数あるものの、人や資金の根本的な流れは変わっていない。

  安倍晋三首相が進めてきた経済政策のアベノミクスでは過去6年間、 グループBよりもグループAが主に恩恵を受けてきた。国土の14%に人口約1億2600万人の約半分が住むグループAに力点を置くことは、政治的には成功した。その結果、安倍首相は11月に首相在任期間が歴代最長になる見通しだ。

  しかし、アベノミクスはこれまでグループBの目立った再生にはつながっておらず、日本銀行による異次元緩和の副作用は首都圏よりも地方で積み上がっている。

The Two Economies of Japan Have a Cautionary Lesson for World
五城目町を歩く住人Photographer: Noriko Hayashi /Bloomberg
  「金融政策では副作用は完全に地方に大きく出ている」。大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストはこう語り、さらに「地方銀行がマイナス金利政策導入後どんどん収益を低下させ弱っていき、行政主導で統廃合、大変な道をこれからひたすら進んでいくしかない」と指摘した。

  一方、日本は大陸国家よりもシンガポールのような都市国家に近い方針を採る方が良いとする見方もある。「21世紀、世界中の人々はどんどん都市に住んでいく、都市に固まっていく」と予想する野村総合研究所の桑津浩太郎未来創発センター長は、「都市間競争の観点で日本が今やるべきことは東京の強化ではないか」と指摘した。

  東京都出身の柳澤龍さん(32)はこの意見に反対だ。柳澤さんが会長を務める一般社団法人ドチャベンジャーズは秋田県五城目で起業・就業や移住の促進、自立の支援などを行っている。20世紀は競争の時代だったと振り返る柳澤さんは、「21世紀はたぶん、人がそれぞれ楽しく暮らしていければよいのではないか」と語る。

A Rural Community as the Two Economies of Japan Have a Cautionary Lesson for World
「BABAME BASE」内の「いちご美容室」Photographer: Noriko Hayashi /Bloomberg
  ドチャベンジャーズは旧馬場目小学校を改装して設立した地域活性化支援センター「BABAME BASE」内で活動を行っており、みせっこあさみないからは車で40分ほどの場所にある。柳澤さんが暮らす五城目には、都市よりも豊かな生活があるという。

  グループAとグループBの溝が広がる状況では、人や資金の流れが止まるシナリオを描くのは難しいのかもしれない。

  岐阜県出身の大谷翔さん(33)は12年前に上京。東京大学で航空宇宙工学を専攻した後、ビッグデータや人工知能(AI)関連の企業で働いている。地元にはもっと活用できる資産があると言うが、そこに戻るつもりはない。「すぐには岐阜の良いところが思い浮かばない」からだ。

原題:A Tale of Two Japan Economies Is a Cautionary Lesson for World
(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-23/PY08XLDWRGG001?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/270.html

[自然災害22] 海面上昇、従来予測の2倍に 氷解が加速 南極で3150億トンの巨大氷山が分離 佐渡島の2倍「気候崩壊」から世界救う最終判断を

海面上昇、従来予測の2倍に 氷解が加速
英研究
2019年05月21日
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マット・マクグラス、環境担当編集委員

Image copyrightGETTY IMAGES
グリーンランドや南極大陸の氷解が加速していることから、海面の高さがこれまでの予測を大きく上回り、2100年までに最大2メートル上昇する可能性があることが、最新の研究で明らかになった。

これまで、海面は2100年までに最大でも1メートル弱しか上昇しないと考えられてきた。

しかし今回「米国科学アカデミー紀要」で発表された専門家の評価に基づく研究によると、実際にはこの2倍ほど高くなる可能性があるという。

研究者は、これによって数億人が住んでいる土地を失うかもしれないと指摘している。

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海面上昇は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2013年に発表した第5次評価報告書の中で最も議論を呼んだ問題だ。

この報告書では、排出ガス削減が進まず地球温暖化が続けば、海面は2100年までに52〜98センチ上昇すると指摘した。

しかし多くの科学者が、この試算は極めて保守的な数値だとみている。

また、海に浮かぶ大きな氷床の影響を予測するために使われている現在のモデルでは、氷床が解けていく際の不確定要素全てを考慮に入れられないことを問題視している。

審判の日
より明確に状況を把握するため、この領域の科学者が集まり、専門家による組織的な評価研究を行った。この研究では、科学者がグリーンランドや南極大陸で起こっていることに対する知識や理解をもとに、推測を行った。

その結果、もし温室効果ガスの排出が現在と同じように続けば、世界の海は2100年までに62〜238センチ上昇するという試算が出た。その頃には世界の気温は5度ほど上がっていることになる。これは、地球温暖化の中でも最悪のシナリオのひとつだ。

研究を主導した英ブリストル大学のジョナサン・バンバー教授は、「2100年までに、氷床の融解による海面上昇は7〜178センチとなる可能性が非常に高いが、これに氷河や氷床の周りの冠氷の影響、さらに海水の熱膨張を含めれば、200センチを超えることはたやすい」と説明した。

Image copyrightJONATHAN BAMBER
Image caption
グリーンランドの氷河と冠氷
IPCCの第5次評価報告書は何が起こる「可能性が高いか」だけを記しており、これは科学的には17〜83%の確率だという。

一方、今回の研究ではより広範囲の可能性をカバーしており、確率は5〜95%に広がった。

2100年までに地球の気温が2度上がった場合、海面上昇の主原因はグリーンランドの氷床のままだ。しかし気温がこれ以上、上がった場合は、より大きな南極の氷床も考慮に入れなくてはならないという。

バンバー教授は、「こうした確率は低いがなお説得力のある事象を見ていった結果、西南極(南極大陸のうち西半球に位置する部分)はとても不安定な状況になり、東南極も海面上昇の原因になることが、小さいながらも統計的には重要な可能性として見えてきた」と話した。

「しかしこうした現象が始まる可能性が高くなるのは、気温が5度上昇した場合だけだ」

それでも、このシナリオは地球にとって大きな示唆になると研究チームは指摘している。

氷が解けることで、地球は179万平方キロメートルもの陸地を失うことになるからだ。これは、リビアの国土と同じ大きさだ。

水面下に沈んでしまう陸地の大半は、ナイル川のデルタのような重要な農業地域だ。バングラデシュも大部分が人間が住み続けられない場所になるだろう。ロンドンやニューヨーク、上海といった世界的な大都市も脅威にさらされる。

「シリア危機では100万人の難民が欧州にやってきたが、海面が2メートル上昇した場合、住む場所を追われる人はこの200倍になる」とバンバー教授は指摘した。

Image copyrightJONATHAN BAMBER
Image caption
南極の氷床
研究チームは、向こう数十年にわたって温室効果ガスの排出を大幅に削減すれば、このシナリオを回避する時間はまだ残されていると強調している。また、このシナリオの上限が現実のものとなる可能性は5%と小さいものだとしている。

しかし、バンバー教授はこの低い確率を楽観するべきではないと話した。

「もし道路を渡るときに20回に1回の確率で車にぶつかると言われたら、道路には近付かないだろう。1%の確率だって、あなたが生きている間に100年に1度の大洪水が起こる可能性を示している。5%という可能性は、なかなかどうして、深刻なリスクだと思う」

(英語記事 Sea level rise could be much larger than expected)

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環境科学気候変動
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南極で3150億トンの巨大氷山が分離 佐渡島の2倍の面積
• 2019年10月1日共有する
ジョナサン・エイモス科学担当編集委員

HTTPS://ICHEF.BBCI.CO.UK/NEWS/660/CPSPRODPB/B48F/PRODUCTION/_109032264_BODY-NC.PNG
1/@STEFLHERMITTEImage caption南極大陸のアメリー棚氷から分離した氷山「D28」の人工衛星写真
南極大陸東岸のアメリー棚氷から、過去50年以上で最大の氷山が分離した。
分離した氷山「D28」の表面積は1636平方キロメートルと、スコットランドのスカイ島より一回り小さいサイズだ(編集注:日本の佐渡島の2倍弱の面積)。
今後、船舶航行の妨げとなる可能性があるため、動きを追跡する必要があるという。
アメリー棚氷は南極で3番目に大きく、大陸の東側における重要な排水路となっている。
棚氷とは、大陸から海に流れ込んだ氷河の一部のこと。氷河の上流が雪で増えると、棚氷から氷山が分離して均衡をとっているという。
科学者はアメリー棚氷から近く、氷山が分離すると承知していた。興味深いのは、科学者が注目していたのは「D28」のすぐ東側にある別の部分だったことだ。
この部分は、人工衛星写真が今にも抜けそうな乳歯に似ていたことから「ぐらぐらの歯」と呼ばれていた。「D28」と「ぐらぐらの歯」は、同じ亀裂で分かれている。
Image copyrightNASAImage caption2000年代前半に撮影された「ぐらぐらの歯」。今回分離した「D28」はその左側に見えている
文字通りぐらぐらとしているものの、「ぐらぐらの歯」はまだ氷河にくっついている。実際に分離したのは「D28」だった。
米スクリップス海洋研究所のヘレン・フリッカー教授はBBCの取材で、「乳歯に対して、(D28は)臼歯のようだった」と説明した。
フリッカー教授は2002年の時点で、「ぐらぐらの歯」が2010〜2015年に分離すると予測していた。
「それからずっと、この分離を楽しみにしていた。いつかは起こると分かっていたけれど、我々の気を引き締めたのは、それが期待通りの場所では起きなかったことだ」
フリッカー教授は、今回の氷山分離と気候変動には関連がないと強調した。アメリー棚氷は夏の間、急速に表面が溶け出すものの、人工衛星のデータでは1990年代から、周囲とさほど変わらない状態を維持している。
「南極大陸について心配すべきことはたくさんがあるが、この棚氷については警告する要因はない」とフリッカー教授は語った。
Image copyrightRICHARD COLEMAN/UTASImage captionアメリー棚氷
しかしオーストラリア南極観測局は、アメリー棚氷が「D28」分離にどのように反応するのかを注視している。同局はこの地域の観測に必要な計器一式をそろえている。
これほどまでに大きな氷山を失ったことで、棚氷の最前線にかかる圧力が変わる可能性がある。その結果、亀裂の入り方や、「ぐらぐらの歯」の安定性に影響が出ることも考えられる。
「D28」は厚さ210メートルで、3150億トンの氷を含んでいるとみられている。
「D28」という名前は、アメリカの国立氷センターによる分類法によるもので、南極大陸をABCDの4つに分けている。D地区は東経0〜90度の範囲で、アメリー棚氷から東ウェドル海辺りを含む。
南極大陸では2017年、ラーセンC棚氷からも大きな氷山が分離した。この時に分離した「A68」の表面積は、「D28」の3倍以上あるという。
「D28」は現在、沿岸の潮流と風によって西向きに流れている。この氷山が瓦解し、完全に溶けるまでには数年かかるとみられている。
(英語記事 315 billion-tonne iceberg breaks off Antarctica)
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提供元:https://www.bbc.com/japanese/49888359

「気候崩壊」から世界救う最終判断を=地球温暖化報告書
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マット・マクグラスBBC環境担当編集委員(韓国・仁川)
Image copyrightGETTY IMAGES
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は8日、韓国の仁川で開いた会合で、早ければ2030年に1.5度の気温上昇が起きるとする特別報告書を発表した。会合に出席した科学者は、世界的な気温上昇による危険性が最も広範囲に及んでおり、これが最後の呼びかけだと話している。
気温上昇を摂氏1.5度に抑えることを目標とする劇的な報告書は、世界は同目標への軌道から完全に外れており、むしろ3度上昇に向かっていると主張している。
産業革命前の水準から1.5度の気温上昇に留めるという望ましい目標を維持するためには、「迅速で広範囲に及ぶ前例のない変化が、社会のあらゆる側面で」必要になると報告書は指摘した。
報告書は、変化には多大な費用がかかるだろうが、可能性はまだ残っているとした。
3年間の調査と、科学者と政府当局者が韓国で1週間にわたって開いた協議を経て、IPCCは地球の気温が1.5度上昇した場合の影響に関する特別報告書を発表した。
重要部分を33ページにまとめた政策立案者向けの概要には、研究で示された結果に忠実であろうとする気象学研究者と、経済や生活水準をより心配する政治家の代表の間で展開された難しい議論の証が示されている。
妥協は避けられなかったものの、いくつかの重要なメッセージは大きく、明確に示された。
IPCCの共同議長を務めるジム・スキー教授は、「第1に、気温上昇を摂氏1.5度に抑えることだ。上昇上限を2度にした場合と比べ、多くの利点が期待できる。かなり重要な点で気候変動の影響を大きく減らす」と述べた。
「第2に、もし気温上昇を1.5度に抑えようとするなら、前例のない性質の変化が求められるということだ。電力システム、土地管理の方法、交通機関による移動の方法、それぞれに変化が要求される」
1つの大きな成果
Image caption気温上昇とリスクの関係。2度上がった場合、1.5度上がった場合、0.87度上がった場合をそれぞれ示している。気温が2度上昇すると、多方面で「非常に高い」もしくは「高い」リスクが生じる可能性がある
「科学者は大文字でこう書きたいかもしれない。『いま行動しろ、ばかども』と。ただ科学者がそれを言うには、事実と数字を一緒に述べる必要がある」と総会にオブザーバーとして出席した環境団体グリーンピースのカイシャ・コソネン氏は話した。「そして科学者はそれらを持っている」。
研究者はこれらの事実と数字を使い、人類が引き起こした危険な熱を帯びた世界の絵を描いた。
かつて人類は、今世紀中の気温上昇を2度以下に抑えられれば、我々が経験することになる変化は対処可能だと考えていた。
しかしもはやそうではなくなった。今回発表された新しい調査によると、気温が1.5度上昇すれば、人類が地球で暮らせなくなる大きな危険が生じる。この気温1.5度という「ガードレール」は、2030年までの12年で超過してしまう可能性がある。
上昇を1.5度以下に抑えられる可能性もあるが、それには、政府や個人による迅速で大規模な変化が求められる上、世界の国内総生産(GDP、生産された商品とサービスの総額)のうち約2.5%もの巨額を毎年、20年間投資する必要がある。
その上でさらに、機会、木々、植物に空気中から炭素を取り込んでもらい、地中深くに埋める必要がある。永遠にだ。
個人ができること
Image copyrightGETTY IMAGES
報告書は、4つの世界的なシステムに急速かつ大きな変化を起こさなければならないとしている。エネルギー、土地利用、都市、産業の4つだ。
しかし、個人が変わることなしに世界は目標を達成できないとも報告書は付け加えており、下記の内容を呼び掛けている――。
 肉、牛乳、チーズ、バターの購入を控え、地元で採れた旬のものを購入し、これらを無駄にしない
 電気自動車を運転する。ただし、短い距離は徒歩で行くか自転車を利用する
 飛行機の代わりに電車やバスを使う
 出張の代わりにビデオ会議を活用する
 洗濯物を乾かす際には、回転式衣類乾燥機でなく物干しを使う
 住宅を断熱処理する
 消費財すべてに低炭素を求める
ライフスタイルの変更は、大きな違いを作る可能性があると、IPCCのもう1人の共同議長デボラ・ロバーツ博士は語った。
「これは個人に対する、非常に力を与えるメッセージだ」と博士は述べた。「これは遠く離れた科学に関する話ではなく、私たちが生活し、仕事をする場所に関する話だ。そしてこれは、大きな変化に私たちがどう貢献できるかを教えてくれている。というのも、私たち全員が関わらなければいけないことだからだ」。
「自分は土地利用をコントロールする力など持っていないというかもしれない。しかし自分が食べるものを決める力は持っている。それが土地利用を決定するのだ」
「都市での移動手段も選べる。もし公共交通機関を使えないのであれば、公共交通機関という選択肢を与えてくれる政治家に投票すべきだ」
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Tap or click to explore the data
Source: Robert A. Rohde/Berkeley Earth. Map built using Carto
2018年は記録的な猛暑が続いている。今年5月から7月にかけて、観測史に残る気温を記録した都市を地図で示した。「観測史上、同日の同地点で最も高い気温を記録した」場所がオレンジ、「観測史上、同月の同地点で最も高い気温を記録した」場所が赤、「観測史上、同地点の最高気温を記録した」場所が茶色の点で示されている。
出典:ロバート・A・ロード氏(米バークレー地球研究所)地図は一情報サービス「Carto」で作成

1.5度に向けた5つの段階
1. 2030年までに、全世界での二酸化炭素(CO2)の総排出量は、2010年の水準から45%削減する必要がある
2. 2050年までに、世界の総電力の最大85%を再生可能エネルギーで供給できると推計されている
3. 石炭使用量はゼロ地殻までに削減が期待されている
4. 発電燃料の調達に必要となる土地面積は、最大で700万平方キロになる計算。これはオーストラリアの面積よりやや小さい規模
5. 2050年までに世界の温暖化ガス総排出量を正味ゼロに

経費はどのくらいかかるか
安くはない。気温上昇を摂氏1.5度に抑えるには、2016〜2035年の間に「電力システムに必要な年間平均投資額が約2兆4000億ドル(約273兆円)」と報告書は推計している。
専門家は、この数字を文脈の中でとらえる必要があると考えている。
IPCCでかつて英国の交渉担当を務め、現在は世界自然保護基金(WWF)に所属するスティーブン・コーネリウス博士は「経費と利点をてんびんにかけなければいけない」と指摘する。博士は、排出削減は短期的には金銭コストになるが、CO2の除去を今世紀の後半に進める場合にかかる金額よりは安く済むとしている。
「報告書は、気温上昇を1.5度に抑える方が、目標を2度にする経済成長が大きいため利点があるとも述べている。さらに、気温上昇を1.5度に抑えられれば、壊滅的な影響によるリスクは2度の気温上昇よりも低くなる」
How years compare with the 20th Century average
1925
10 warmest years
10 coldest years
JFMAMJJASONDMonths-0.8-0.6-0.4-0.220th Centuryaverage+0.2+0.4+0.6+0.8+1.0+1.2ColderHotter
Source: NOAA
REPLAY
20世紀の平均気温と、過去10年で最も暖かかった年、最も寒かった年を比較したグラフ。2018年(茶色太字)は史上4番目に暖かい年となっている
行動しないと起きること
気温上昇を1.5度以下に抑えられなかった場合、世界には大きく危険な変化がいくつか起こると、研究者らは主張する。
サンゴ礁には別れを告げなければならなくなる。報告書は、2度の気温上昇で基本的にサンゴ礁は全滅するとしている。
気温上昇が2度になると、世界の海面は約10センチ上昇する。たいしたことがないように響くかもしれないが、気温上昇を1.5度に抑えると、洪水のリスクを背負う人が1000万人減ることになる。
また、海水の水温や酸性度、米、とうもろこし、小麦といった農作物を育てる能力にも、大きな影響が生じる。
「1度の上昇でもすでに危険区域にいる」とグリーンピースのコソネン氏は述べた。「南北両極の氷は加速的な速さで溶けており、何百年も生えていた古代からの木々も突然枯れてきている。夏は今年私たちが経験したとおり、基本的に世界全体が炎に包まれてしまった」。
北極海の氷、減少の推移
Image caption北極海に浮かぶ氷の面積は過去15年で減少傾向
全ては小さな島国を救うためなのか
地球の気温上昇を1.5度に抑えるという考え方は、気温が2度上がると洪水で水浸しになると恐れる小さな島国や海抜の低い国にとって、心理的に非常に重要だ。
しかし報告書が作成されていた3年の間に、気温上昇を1.5度近くで抑えることの利点が太平洋に浮かぶ島国のためだけではないと示す、さらなる科学的根拠が発表されてきている。
IPCCによる報告書を執筆した1人、モルジブ出身のアムジャド・アブドラ博士は、「小さな島国を救えば、世界を救うことになる」と述べた。「報告書が明確に主張しているように、気温上昇に影響を受けない人などいないのだ。道徳心の話であり、人間性の話だ」。
残された時間は
長くはない。しかし問題は現在、政治的指導者たちの手中に委ねられている。報告書は、もはや難しい決断をこれ以上先延ばしにはできないと述べている。もし世界の国々がすぐに行動を始めないと、空気から炭素を排除するための技術に、さらに多く頼らざるを得なくなるだろう。技術は確証されておらず、高くつく、不確かな道だ。
「本当にすぐに手を打つ必要がある。2030年に向けたパリ協定で決めた約束を各政府が果たすだけでは十分ではないと、報告書ははっきりと書いている。1.5度の地球気温上昇を考えるのは、非常に難しくなっていく」とジム・スキー教授は述べた。
「報告書を読み、目標をより高く持ってすぐに動き始めれば、1.5度は手が届く範囲にある。私たちが直面する選択肢の性質はこういうことだ」
今回の報告書を歓迎する活動家や環境保護主義者たちは、議論する時間は残されていないと話す。
「今がまさに決断すべき時だ」とコソネン氏は述べた。「クリーン・エネルギーや持続可能な生活スタイルに転換したいはずだ。森林や動物を守りたいはず。今この時が、将来振り返った時に『転機になったのはこの年だった』と思い出す時だ」。
Image copyrightGETTY IMAGESImage captionCoral reefs face extinction in a 2-degree world
<解説>結局この計画は現実的なのか?――デイビッド・シュクマン BBC科学編集長
最悪の地球温暖化へのカウントダウンが加速したようだ。深刻な損害をもたらす影響はもはや、今世紀の後半という遠い地平線の彼方にあるのではなく、不快なほど近いように思える時間内にある。
同様に、報告書で示された気温上昇を防ぐ「方法」はすべて、難しい決断を遅らせるわけにはいかないことを示している。
 21世紀中盤までに化石燃料の使用中止
 石炭の段階的な使用中止は、これまで提案されていたよりずっと迅速に行う
 膨大な土地を森林に当てる
ショッキングな内容だ。どうしようもないほど非現実的で、気候科学者の幻想だと言う人も中にはいるだろう。それで、この中で妥当なものはあるのだろうか? 一方では、世界経済は炭素に頼り、重要な活動は炭素に依存している。もう一方で、風力タービンやソーラーパネルの価格は暴落し、ますます多くの国やカリフォルニアなどの州が、意欲的な環境目標値を設定している。
最終的に、政治家は難しい選択肢に直面するだろう。報告書に概要が記された革新的な変化を急いで行う必要があると有権者を説得するか、科学者が間違っていると言って無視するかだ。

(英語記事 Final call to save the world from 'climate catastrophe')
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https://www.bbc.com/japanese/45794174

http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/729.html

[不安と不健康18] 小中学生の「近視」有病率が20年前のおよそ倍に、慶大の調査より 医師581人実名ランキング」これでロボット手術熟練者にたどり着く
小中学生の「近視」有病率が20年前のおよそ倍に、慶大の調査より
井手ゆきえ:医学ライター

健康 カラダご医見番
2019.10.2 4:35

 家にこもってスマホにゲーム、夜遅くの塾通いなど、今どきの子どもを取り巻く環境はおよそ視力に良いとは言い難い。

 もともと人間の赤ん坊は遠視なのだが、成長とともに眼球が伸びてきれいな球形になり、角膜、水晶体を通した光が網膜で像を結ぶようになっていく。

 しかし、成長期の環境の影響で眼球が伸びすぎると、網膜の手前にピントが合ってしまい、遠くが見えにくくなる(軸性近視)。ほかに角膜や水晶体のレンズ機能に問題がある屈折性近視もあるが、子どもの近視の多くは軸性近視だ。

 慶應義塾大学眼科学教室の研究グループは、東京都内の公立小学校の児童726人と、私立中学校の生徒752人のうち、親から同意を得た1429人の屈折値(光を集める力)と眼軸長(角膜から網膜までの距離)を検査。児童・生徒の平均年齢は10.8歳で、男子が55.9%だった。

 その結果、小学生の近視有病率は76.5%で、小学1年生の時点で6割を超えていたのである。また、マイナス6ディオプトリー(D)以上の「強度近視」の有病率は4%だった。

 中学生の近視有病率は94.9%で、1〜3年すべての学年で9割を超えた。また強度近視の有病率は11.3%だった。

 ちなみに、1999年に実施された12歳児対象の調査では、有病率は43.5%だった。わずか20年のうちに激増したわけだ。

 強度近視の場合、視力検査表の一番大きな文字を読み取ることができない。個人差はあるが表に2〜3メートル近づいて、ようやく読めるくらいだ。また、長い間に眼球がもろくなり、黄斑変性や網膜剥離などの合併症で将来の失明リスクが上昇する。15歳までに10人に1人が強度近視になるというのは、かなり深刻な事態だろう。

 研究者らは以前、屋外で1日2時間以上過ごす子どもは、両親が近視でも近視になりにくいという研究結果を報告しており、今回も屋外で過ごす時間の減少が関係していると考察している。

 ちょうど過ごしやすい季節でもあるし、子どもと一緒に散歩に出ませんか?

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)
https://diamond.jp/articles/-/215853

「医師581人実名ランキング」これでロボット手術熟練者にたどり着く!
ダイヤモンド編集部 臼井真粧美:副編集長
特集 選ばれる薬・医者・病院
2019.10.2 5:50 有料会員限定Photo Edward Olive/EyeEm/gettyimages
がんなどのロボット支援手術が急増している。普及の過渡期であるが故、執刀する医者によって技術格差が生じている。腕を磨いた医者は誰か。どこにいるのか。独自調査で581人の医者を実名でリスト化し、手術数をランキングした。実名リストは本記事3ページ目のリンクからダウンロードできるので、ぜひ参考にしてほしい。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
前立腺がんでは6割超シフト
ロボット手術が大衆化&急増
 9月9日午前9時30分。大型の台風15号の直撃で首都圏の公共交通機関の多くがストップした日の朝、東京医科歯科大学医学部病院(東京・お茶の水)の手術室では予定時刻ぴったりに直腸がんの手術が始まった。
 そこには直腸がんのロボット支援手術で日本トップの手術数という実績を持つ、東京医科歯科大学教授で大腸・肛門外科科長の絹笠祐介医師の姿があった。
 ロボット支援手術とは、「ダヴィンチ」という手術支援ロボットを使った手術だ。2018年度に公的医療保険の対象が一気に広がり、先んじて保険適用になった前立腺がんや腎がんに、食道がん、胃がん、直腸がん、肺がん、縦隔腫瘍、膀胱がん、子宮体がんなどが加わった。自由診療で100万、200万円を全額自己負担する“セレブ医療”が大衆化され、自己負担額(3割の場合)は50万円くらい。高額療養費制度を利用すれば10万円くらいになる。

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 18年度、ロボット支援手術数は急増した。「2倍、3倍になった」「5倍になった」など医者や医療機関によって幅はあるが、この1年、日本の外科医療には強いダヴィンチ旋風が吹いた。

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熟練レベルの目安となる手術数は?


https://diamond.jp/articles/-/216309

http://www.asyura2.com/16/health18/msg/787.html

[国際27] 先進国の「好況下の政治不安定」、カナダでも続くのか 首相スキャンダル次々発覚、支持率急落。野党保守党を下回る
先進国の「好況下の政治不安定」、カナダでも続くのか 首相スキャンダル次々発覚、支持率急落。野党保守党を下回る
末澤豪謙:SMBC日興証券金融財政アナリスト
政策・マーケット 経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層
2019.10.2 4:50
Photo:PIXTA
 9月11日、カナダのジュリー・ペイエット総督はジャスティン・トルドー首相の助言の下、カナダ議会下院(小選挙区制、第42議会解散時点議員数356)を解散した。
 10月21日に投開票が行われるが、数々のスキャンダルが発覚して与党自由党の支持率が低下していることもあって、4年ぶりの政権交代の可能性がある。
 景気の好況のもとでも、政治が不安定化している状況はこのところの先進国に共通するものだ。
トルドー首相らのスキャンダルで
与党自由党の支持率急落
 2015年の総選挙で保守党に大勝し、約10年ぶりに政権交代を実現したトルドー首相は、インフラ投資拡大などの積極財政政策に加え、ダイバーシティー(多様性)を重視した組閣や環境保護政策、寛容な移民・難民政策等を推進し、高支持率を誇ってきた。
 直近までは、再選の可能性が高いとみられていた。

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SNCラバリン社の刑事訴追に介入


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 だが、今年に入り、トルドー首相自らが関与するスキャンダルが次々と発覚し、支持率が急落。野党第1党の保守党を下回る状況が続いている。

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 支持率急低下の背景には、カナダ・モントリオールの建設大手で、ケベック州で8000人以上を雇用するSNCラバリンの刑事訴追問題に、トルドー政権が介入した疑惑が表面化し、政権内で閣僚らが相次いで辞任したことが挙げられる。
 SNCラバリンと傘下の2社は、2001〜2011年にリビア政府高官に4770万カナダドルの賄賂を渡したとして、詐欺と汚職の罪で訴追された。
 有罪判決が下れば、10年間にわたってカナダの国有事業への入札が禁止される可能性があり、大きな打撃となることから、同社は起訴延期合意(DPA)と呼ばれる司法取引を求め、積極的にロビー活動を行っていた。
 この問題に関連して、ジョディー・ウィルソンレイボールド退役軍人相(前法相兼司法長官)、ジェリー・バッツ首席補佐官が2月に辞任、そして3月4日にはジェーン・フィルポット予算庁長官が相次いで辞任する事態になった。

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人種差別的メーク問題が追い打ち

 ウィルソンレイボールド氏は2月の下院司法委員会で、法相兼司法長官を務めていた際、SNCラバリンの訴追手続きに対する介入を試みたトルドー氏とその側近から、「遠回しな脅迫」を含む「不適切な」圧力を受けたと証言していた。
 ウィルソンレイボールド氏が、カナダ紙グローブ・アンド・メールの報道を受けて辞任した数日後には、トルドー氏の上級顧問を長年務めたジェラルド・バッツ氏も辞任。
 3月4日には、ウィルソンレイボールド氏と親しい閣僚のジェーン・フィルポット氏が、「この問題に対する政府の対応を信頼できなくなった」と述べ、辞任した。
 この「SNCラバリン・スキャンダル」(SNC-Lavalin scandal)に関しては、8月14日に、連邦倫理委員会の報告書が発表され、トルドー首相と側近がウィルソンレイボールド法相兼司法長官(当時)に対し、刑事訴追された同社を不起訴にするよう圧力をかけたと認定している。
追い打ちをかけた
人種差別的メーク問題
 この報告書自体の自由党に対する支持率への影響は限定的だったものの、その後、今度は、トルドー首相自身の「ブラックフェイス・ブラウンフェイス・スキャンダル」(black face and brownface scandal)が発覚、首相が謝罪に追い込まれる事態となっている。
 このスキャンダルは、トルドー氏が学生時代や教師をしていた時代に、人種差別的なメークをしていた問題で、少なくとも3回、そういうメークをしていたことが明らかになっている。
 直近は9月19日にカナダのテレビ局グローバル・ニュースが公開した動画で、顔を黒く塗る「ブラックフェイス」のメークをし、破れたジーンズとTシャツを着て両腕を上げるトルドー氏が映っている。
 トルドー氏の選挙陣営はAFPに対し、動画が「1990年代初め」に撮影されたトルドー氏本人のものと認めている。
 トルドー氏は、前日の18日夜に、「千夜一夜物語(アラビアンナイト)」をテーマにした18年前のパーティーで顔を茶色く塗るメークをした自身の写真が米誌タイムに報じられたことを受け、謝罪していた。
 さらに、高校での演芸大会で、ハリー・ベラフォンテさんの1956年のヒット曲「バナナ・ボート・ソング(デイ・オー)」を歌った際にも、同様のメークをしていたことを認めている。

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保守党へ4年ぶり政権交代の可能性

 トルドー氏は、自身の黒塗りメークを映した新たな動画が浮上したことを受け19日、マニトバ州ウィニペグで記者会見し、「これは完全に容認できない行為であることは認識している」(20日付AFP)と表明。
 多くの人が「肌の色や歴史、出自、言語や宗教を理由に」差別されていると語り、「特権を身にまとった私は、そのことが分からなかった。それに対し、深く謝罪する」(同)と述べた。
「ブラックフェイス・ブラウンフェイス・スキャンダル」の発覚で、自由党の支持率は再度、下落に転じた。
 IPSOSが9月21〜23日に実施した調査では、「明日選挙があるとしたらどの政党に投票するか」という質問に対し、自由党と答えた人は32%と、9月11〜13日調査の35%から、3ポイント下落。
 一方、アンドリュー・シーア党首率いる保守党と答えた人は36%と、同1ポイント上昇し、保守党が支持率トップになった(図表2)。
 IPSOSの調査で、「ブラックフェイス・ブラウンフェイス」の動画を見たと答えたのは76%で、この問題について知らないと答えた人はわずか10%だった。
 有権者の関心は、「SNCラバリン・スキャンダル」以上に、「ブラックフェイス・ブラウンフェイス・スキャンダル」の方が高かった。
「多様性:ダイバーシティー」の重視などをかかげてきたトルドー氏にとって、2つのスキャンダルはいずれも深刻な問題だ。仮に、コアの支持者が総選挙で棄権をすることになると、支持率の差以上に、選挙では「厳しい結果」になり得る。
保守党へ政権交代の可能性
移民や環境政策、180度転換も
 カナダ下院の選挙制度は小選挙区のため、支持率がそのまま獲得議席につながるわけではないが、4年ぶりに政権交代が起きる可能性が高まったといえそうだ。
 また、自由党も保守党もいずれの政党も、過半数をとれない、いわゆる「ハング・パーラメント」になる可能性もある。
 そうなれば、中道左派で社会民主主義政党の「新民主党(NDP)」や、ケベック州の地域政党の中道左派で社会民主主義政党の「ブロック・ケベコワ(BQ)」、もしくは、近年世界的に支持率が上昇している「緑の党(GP)」などと、自由党との連立政権が発足することも想定される。

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好況なのに政治は不安定化

 一方で保守党に政権交代することになると、現在、G7諸国で最も寛容とみられる移民・難民政策が厳格化方向に大きく変化する可能性もある。
 また、気候変動対策等環境政策も、連邦炭素税や燃費基準の廃止等180度転換する可能性があり、注視が必要だろう。
 近年、好景気にもかかわらず、世界的に政治が不安定化している。
 過去4年間で、G7諸国では、カナダ、英国、イタリア、米国、フランスで首脳が交代し、ドイツのメルケル首相も、与党(CDU)党首を退任している。
 継続して、首相と与党党首の座にあるのは安倍首相だけだ。ちなみにこの4年間で、英国とイタリアでは首相が3人目に代わった。
 また、当初、予定されていなかった総選挙も各国で実施されている。
 7月7日にはギリシャで前倒し総選挙が、9月17日にはイスラエルでやり直し総選挙が実施された。9月29日にはオーストリアでも前倒し総選挙が実施された。
 また11月10日にはスペインでやり直し総選挙が実施され、英国でも10月31日のEU離脱期限が延期となれば、年内にも前倒し総選挙が実施されると予想される。
 来春には、ドイツやイタリアでも前倒し総選挙が実施される可能性がある。
好況なのに政治不安定化
格差拡大と移民難民増
 足元の世界経済は新興国主体に減速感が強まっているものの、リーマンショック後の2009年6月から続く米国経済の拡張期間はすで10年3ヵ月に達し、戦後最長を更新している。
 通常、好景気は国民生活も豊かにするものだから、与党にとって選挙では有利だ。米国の戦後の歴代大統領12人のうち、再選できなかったのは3人だけで、落選の主因は景気の悪化だった。
 ではなぜ、今、「好景気下の政治不安定」が生まれているのか。
 その背景として、大きく2つの問題が挙げられる。第1は、所得や富の格差拡大であり、第2は移民・難民問題だ。

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IT化やグローバル化で格差拡大

 所得や富の格差が拡大している背景は、IT化などの技術進歩やグローバル化とともに、その波に乗った層やそうでない層の間で二極化する一方で、先進国経済の場合、「長期停滞」がいわれるなど、低成長とディスインフレの影響で全体のパイが増えないといったことが大きいと考えられる。
 また技術進歩といっても、省力化やダウンサイジングには貢献したかもしれないが、市場のフロンティアを拡大する本格的なイノベーションは乏しい。
 今から50年前の1969年7月、アポロ11号で、人類は初めて月に着陸したが、ただし1972年12月のアポロ17号以降、47年間、火星はおろか、月に降り立った人類もいない。
 アポロ計画は米ソ冷戦下での覇権争いの産物であり、ある意味採算どころか、リスクも無視して実施された経緯がある。このあたりは本年2月に公開された映画『ファースト・マン』に詳しい。
 この間、コンピューターや携帯電話の小型化は進んだが、「ドラえもん」のように、空を飛んで通勤・通学しているわけではない。乗り物も、第2次世界大戦中に改良された自動車や船舶・鉄道、大戦中に開発されたジェット機が進歩しただけである。
 フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が記した『21世紀の資本』によると、資本収益率(r)は歴史的に見ると、ほぼ常に経済成長率(g)より大きく、結果的に、雇用所得よりも資産の増加額が大きくなり、富の集中が生じ格差が拡大するとしている。
 20世紀に入り、一時、格差は縮小したが、それは、第1次及び第2次の世界大戦で資本が毀損した影響と、戦後のインフレにより、実質的な資産価値の伸びが鈍化した影響ということだ。
 第2次世界大戦後、地域紛争は増加しているが、「核の抑止力」の効果もあり、先進国を巻き込む大戦は発生していない。
 一方で抜本的なイノベーションの欠如や少子高齢化の影響もあり、世界的にディスインフレが進み、近年は大規模な金融緩和の影響で金利はほぼゼロの状況が続いている。
 結果、リーマンショック後の過去10年間、世界的に、株価と都市部の不動産価格が賃金の上昇を大きく上回るスピードで上昇している。
 人手不足も深刻化しているといわれるが、IT化などによる省力化に加え、欧米では移民・難民の流入が最下層の労働者の供給要因となり、賃金上昇を抑制する形になっている。

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欧米と同じ流れが続くか、それとも

 移民・難民の移動が増加したのは、2010年以降の「アラブの春」と、その後の中東・アフリカ地域の政情不安の影響が大きい。
 2015年には欧州に地中海経由で100万人を超える難民が流入した。2014年以降の累計では194万人(9月25日現在)と、200万人近くに達している。

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 また、治安悪化に加え、気候変動による砂漠化や災害の発生が、発展途上国から先進国への移動を促進している面もある。
10月の総選挙で
欧米と同じ流れ続くか
 こうした「所得及び富の格差拡大と移民・難民問題の深刻化」が、2016年以降の欧米の政権交代の大きな要因になっている。
 こうした流れはカナダの総選挙でも続くのだろうか。
 それとも、むしろ、政治の不安定化を背景に強まってきているポピュリズム的な風潮に対する反発、いわば反トランプ などの「逆バネ効果」が発揮されるのだろうか。
 ちなみに9月29日に前倒し選挙が行われたオーストリア国民議会(下院定数183)では、セバスティアン・クルツ前首相率いる中道右派の国民党が71議席(予備的最終結果、2017年総選挙から9議席増)を獲得し勝利した一方で、中道右派の社会民主党は40議席(同12議席減)にとどまり、極右の自由党は31議席(同20議席減)と大敗した。
 そうした中で、緑の党が26議席(同26議席増)を大きく議席を増やした。緑の党の躍進は欧州全域で見られる傾向で、気候変動問題が若者主体に大きな関心を集めている証左だろう。
 米国でも、「地球温暖化はでっちあげ」とするトランプ大統領に対抗して、民主党の大統領候補は大規模な気候変動対策を公約に掲げている。気候変動問題は来年の大統領選・議会選挙で大きな争点になりそうだ。
 トルドー首相は、インフラ投資や中間層への減税を推進することで、所得の再分配を行う一方、移民・難民問題では寛容な政策を実施してきた。
 また、資源国であるにもかかわらず、環境政策も地球温暖化防止等に努めてきたが、保守党に政権交代すれば、こうした政策が大転換する可能性もある。
 スキャンダルという特殊要因が背景にはなっているものの、カナダ総選挙は、世界の今後の移民・難民問題や環境問題の動向を占う意味でも重要だろう。
(SMBC日興証券金融財政アナリスト 末澤豪謙)
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2019年は国際関係が緊迫!世界が抱える「6つの地政学リスク」
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世界景気が減速局面の今こそ考えるべき「原油価格の上昇リスク」
新村直弘

「世界経済の現状」を超わかりやすく説くとこうなる
ヤニス・バルファキス,関美和

米中貿易戦争は世界経済を揺るがしかねないレベルまで緊張が高まった
真壁昭夫

EUを離脱するのではなく、内から壊すポピュリスト政党の新たな戦略
田中 理
https://diamond.jp/articles/-/216290?page=7


http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/464.html

[経世済民133] 老いやすい日本企業 「稼ぐ力」は十代前半がピークか インバウンド需要の主役は中国「草食系」ニューリテールは中国人消費者をどう変えたか
 
BizGateリポート/経営

老いやすい日本企業 「稼ぐ力」は十代前半がピークか
清水洋・早稲田大商学学術院教授に聞く(上)
2019/9/4

 「失われた20年」の後に来るのは「老いやすい」企業社会か――。日本企業の「稼ぐ力」が早い段階でピークを迎え、加速度的に劣化していくことが指摘されている。少子高齢化や老朽化が進む生産設備ではなく、決定的な要因は企業のイノベーション不足と、イノベーションを生み出すヒトやカネの流動性の欠如だという。「野生化するイノベーション」(新潮選書)を著した清水洋・早稲田大商学学術院教授に聞いた。

 ■日本企業30歳の硬直性、100歳の米企業と同じ

 ――日本の企業は米国企業に比べ「稼ぐ力」が早く衰えることを新著で分析していますね。

 「営業利益ベースの総資産利益率(ROA)で日米のいわゆる大企業(東京証券取引所の1部・2部上場企業とニューヨーク証券取引所上場企業)を比較すると、企業の年齢と本業での稼ぐ力の間に大きな違いが生じています。米国企業は設立から40年を過ぎた『中年期』でも10~12%のROAを維持しています。日本企業は十代前半で約11%のピークを迎え、加齢とともにどんどん力を落としていきます。五十歳代には4%の維持も難しくなります」

 「もちろん米企業も老います。1歳加齢するとROAは0.03~0.08下がります。対して日本企業は0.07~0.09です。もともと日本企業の方がROAの水準が低いために、加齢のインパクトが大きいのです。しかも、じわじわ差が広がっていきます」

 ――日米の差はどこから生じているのでしょうか。

 「ROAを営業利益率(収益性)と総資本回転率(効率性)で細かく分析すると、加齢と共に日本企業の収益性は衰えていくのに対して、米国企業ではそのようなことは見られません。効率性で見てみると、米国企業は加齢と共に低下していくのに対して、日本企業にはそのような動きは見られませんでした」

 「さらに研究開発のポートフォリオから新しい技術を生み出す領域の硬直性を調べました。この結果は驚くべきもので、30歳の日本企業と100歳の米企業が、ほぼ同じだったのです。予想を上回る日本の柔軟性の無さでした」 ■「失われた20年」の貸し渋りで生じたイノベーション不足

 ――組織が硬直していると、経済成長の重要な源泉のひとつであるイノベーションも生じにくくなりますね。


清水洋・早稲田大商学学術院教授は「日本の企業は効率性は向上するが収益性が劣化していく」と説く
 「イノベーションは、カリスマ経営者や天才研究者による偶然の産物ではなく、持続して生み出される条件や性質が、約100年の研究から、ある程度まで明らかになってきています。欠かせない条件がヒト・モノ・カネの高い流動性なのです」

 「日本企業はこれまで安定的な株主の存在で、収益性が低くとも合併や買収のプレッシャーから比較的自由だったのでしょう。同じ領域で長期間ビジネスを展開すれば学習が進んで業界にも精通し、より企業経営は効率的になるでしょう。しかしいつまでも高い収益性を維持できるマーケットはなかなかありません」

 「米企業は株主からの圧力が高く、収益性を高くしておかなければなりません。また、経営資源の流動性が高く、イノベーションが閉じ込められずに、新分野に挑戦する『脱成熟』が次々と生まれてきました」

 ――ただ日本企業はイノベーションに熱心に取り組んでいます。経営目標に「イノベーション推進」を掲げたり、イノベーション部長、イノベーションオフィサーといった役職を設けたりしています。


 「イノベーションは経済的な価値を生み出す新しいモノゴトを意味します。課題解決の結果であって、イノベーションを起こすのが目標になると本末転倒ぎみです。社内で『イノベーションっぽいこと』探しが始まりかねません。そうなったら組織としてはそうとうまずい状況でしょう」

 「『失われた20年』の影響は、現在の日本のイノベーション不足に表れています。2000年代初めの金融機関による貸し渋り・追い貸しはITやバイオ、人工知能(AI)といった不確実性は高いものの今後の成長と高い収益性が見込まれる領域にうまく流れなくなり成長が抑えられてしまいました」

 「生産性の低い企業などに経営資源が配分されたのです。日本が成長を取り戻すためには、イノベーションを活性化させる必要があります。投資を呼び込めるような、新しいチャレンジ自体を増やすことです」

 ■「イノベーションのジレンマ」が日本で人気がある理由

 ――一方で、もともと日本人にはイノベーションに不向きだという声もあります。

 「米ソフトウエア会社が、米英独仏および日本で各国1000人の成人に行った聞き取り調査で、『自分は創造的である』と答えた日本人は2016年で13%と五カ国中最低でした。平均は約40%でした。しかし『どこの国が最も創造的か』という問いでは、34%が日本と答えて五カ国最高でした。自己評価が低い反面、世界からは認められています。実は創造性に関する国際比較で、日本人が低いという実証的データは示されていません」

 ――日本人の集団主義的な生き方が、人々の生活までを変えるラディカルなイノベーションを遠ざけているという指摘もあります。


「野生化するイノベーション」(新潮新書)はイノベーションを巡る誤解や俗説を指摘する
 「同じ印象を持つビジネスパーソンは少なくないでしょう。ラディカルなイノベーションに対する障壁になり得ます。しかし明治期の日本では、より良い就業機会を求めて次々と職場を変えるジョブ・ホッピングも多かったのです」

 「第1次・第2次大戦の戦間期に始まった長期雇用と年功序列の組み合わせは、日本人の特質でなく、日本企業で働く人々が直面する制度が原因です」

 「米ハーバード・ビジネススクールのクリステンセン教授が唱えた『イノベーションのジレンマ』は、欧米よりも日本で突出した人気があります。リーダー企業が新しいイノベーションによって競争力を大きく低下させるというイノベーションのジレンマは、日本の大企業にとって大きな問題だからです」

 「自社のビジネスの根幹を揺るがすような新しい技術が登場してきたケースでも、日本ではビジネスの整理に伴って簡単に人員削減できません。だからこそ、用意周到に準備してジレンマ自体を回避しようとします」

 「米国のように労働市場や金融市場が流動的であれば、企業にとってはビジネスの組み換えも比較的用意になります。不採算の事業は早く切り離し、高い収益性が見込まれるビジネスを外部から経営資源を調達し、素早く構築すれば良いのです。個人にとっては、自分の能力に合った就業機会が見いだしやすいということにもつながります。米国ではイノベーションのジレンマは日本に比べそれほど深刻ではないのです」

 ――日本企業にとって必要なのは、何よりもヒト・カネ・モノの流動性を高めることでしょうか。

 「流動性が高まればビジネスチャンスの追究も進み、社会全体でも適材適所が進みそうにも思えます。しかし簡単ではありません。イノベーションのコストや格差などに対応していく必要が出てきます」

(聞き手は松本治人)

https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO4933454003092019000000?

インバウンド需要の主役は中国「草食系」
2019/9/19

 日本への中国人観光客が、7・8月に連続して月間100万人を超えた。2019年は年間で1000万人目前にまで達しそうだ。韓国からの訪日客数の減少とは裏腹に、中国プチ富裕層の日本人気は根強く、現段階では米中貿易摩擦などの影響を感じさせない。その中心は若い20〜30代層で、とりわけ「仏系」(=ぶつけい、日本の草食系と似た意味)と呼ばれる中国若者層がインバウンド需要をけん引しているという。上海と東京に拠点を置き、観光情報を発信している袁静・行楽ジャパン社長に聞いた。

■中国人訪日客、年1000万人時代へ

 ――2019年上半期(1〜6月)の中国からの訪日客は453万人でした。これまでの定番だった2月の「春節」、10月の「国慶節」以外のシーズンにも訪日するケースが増えています。

 「観光庁の『訪日外国人消費動向調査2018』では、中国人の1人当たり旅行支出は約22.4万円(平均15.3万円)でオーストラリア、スペインに次いで3位でした。遠方からの観光客は滞在日数が長くなり、宿泊費の占める割合が高くなります。買い物にあてた金額だけでみると、中国人は11.2万円と突出しています(2位はベトナム人の6.3万円)」

 ――米中貿易摩擦の影響や中国経済の減速予測をどうみていますか。

 「米中間の摩擦は全く先行き不透明で、予断を許しません。しかし直近をみると日本企業への追い風となりそうです。基本的に欧米志向だった中国のリッチ層の目が日本に向いているからです。富裕層からは『景気が不透明なのでポルシェを諦めてレクサスで辛抱しておくか』などといった声が聞かれます。中国の自動車販売台数は7月まで13カ月連続で減少しているのにトヨタの販売台数は17カ月連続で前年同月を上回っています」

 「今後は医療ツーリズムや長短期の留学などで、米国に代わって日本の需要が増えてくると読んでいます。ただ中国リッチ層はパイとしては人数が少ない。日本のインバウンド需要をけん引するのは約3.5億人の中国・中間層のうちの上位1億人のプチ富裕層でしょう。例えば年収が20代で1000万円を超え、何度も日本へ個人旅行できる人々です」

■新しい「聖地」は秋葉原駅ホームのミルクスタンド

 ――週末の東京・銀座には若い中国人観光客の姿が絶えませんね。


中国の20代訪日客に注目する袁静・行楽ジャパン社長
 「日本の法務省のデータでは中国人観光客は20歳未満が12.3%で20代が25.7%。さらに30代が29.2%と若い層で過半数を大きく上回っています。特に1980年代、90年代に生まれた20〜30歳代は中国国内でも高額消費のけん引役です。奢侈(しゃし)品を購買する層の割合は、18〜24歳が36%、25〜30歳が32%、31〜35歳の層が13%というデータもあります。これら若いプチ富裕層が、何度も日本を訪れていると分析しています」

 ――中国の文化大革命を知らずに、「改革・開放」以降の高度経済成長期に育った世代ですね。

 「1979年に一人っ子政策が始まっており、若いプチ富裕層は不動産バブルや株バブルの恩恵を受けた親元に同居しているケースが多いのです。実家に生活費を入れる習慣はなく、中国には相続税も贈与税も現在はありません。一人っ子同士で結婚すれば、自由に使えるお金はさらに増えます。裕福な家庭に育ち、自らも起業する『富二代』も増えています」


秋葉原のミルクスタンドでは、牛乳を飲む4人の中国人の若者グループも
 「滞在日数は4〜6日のケースが多く、さっと来てさっと楽しみ買い物をして帰るパターンが目立ちます。ある30歳代半ばのOLは毎月訪日し、日本酒の利き酒師の資格を取得しました。子供が幼いとあまり遠くに行けないため、家族旅行で年に3〜4回訪れるケースも少なくありません」

 「若いプチ富裕層は、日本人が気付かないヒット商品を発見したりしています。中国人観光客の新しい『聖地』に、JR秋葉原駅の5番ホームにあるミルクスタンドがあります。健康志向の強い若者層の間では、現在ちょっとした牛乳ブームが起きています。しかし中国国内では種類も乏しく、以前の粉ミルク混入問題もあって手を出しにくい。日本の牛乳は種類も多く、濃厚でおいしく安心というわけです」

■「仏系」は恋愛に消極的でガツガツせず

 ――20代の若者層は、上の世代とは違うニーズがあるでしょうね。

 「モバイル決済、スマホ注文のデリバリー、タクシー配車アプリなどを、中国の大都市に普及させたのは1990年代以降に生まれた20代の層です。物心ついた時にはネットが整備されており、日常生活でスマホが手放せないデジタルネーティブの世代です」

 「ガツガツしていないので『仏系』と呼ばれます。恋愛に消極的で、他人と争ってまでの上昇志向はありません。他方、消費マインドは旺盛でローンにも抵抗がありませんが、モノであふれ返った世界で育っているから、誰でも知っているメジャーなブランドの価値は低いのです」

■アリババ創業者・マー氏の「働き方」論はネットで炎上

 「ひとつ上の世代の30代にとって、アニメやドラマといえば日本を連想するくらい『スラムダンク』『ワンピース』『東京ラブストーリー』などは特別な存在です。しかし20代にとって、日本文化はネットを通して世界中のコンテンツが入ってくるワンノブゼムにすぎません」

 「その代わり良いと認めたら思い入れは深い。京都アニメーションの放火事件にはネット上で『全人類の損失』といった悲鳴が上がり、直後からSNS(交流サイト)では、どうやって支援金を送るかという話題で持ちきりでした。中国では多額な海外送金は当局にチェックされます。結局、京アニのネットショップで買う形にする(商品は受け取らない)か、米ファンドの募金に寄付するのがベストという結論になっています」

 ――就職や仕事に対する考え方も上の世代とは違うようですね。

 「この春に『996』論争が起こりました。朝9時から夜9時まで週6日働くのは中国版ブラック企業というわけです。日本でドラマ『わたし、定時で帰ります。』が放送されていて、ネット上では働きバチの日本でさえ定時に帰宅できる時代なのに……と嘆く書き込みもあらわれました」


新たな中国人消費者層を分析した「中国『草食セレブ』はなぜ日本が好きか」(日本経済新聞出版社)
 「これに反論したのが、アリババ創業者のジャック・マー氏です。『個人的に996で働くことは幸せだと考えている。多くの人が996で働きたいと願ってもそのチャンスがないのだ。若いときに働かなくていつ働くのか』というものです。マー氏自身が、休み無く1日12時間仕事して成功した典型例です。ただ『8時間だけ気持ち良く働きたいなんて若者はうちの会社に必要ない』とまで踏み込んで、ネットで大炎上しました」

 ――仏系の若者層を日本に引き付けるポイントはどこでしょうか。

 「ポイントはモノ消費からコト消費への転換です。仏系世代は知識に対してお金を払う世代なのです。英語アプリなど学習アプリのメーンユーザーで、書籍購入費が最も多いのも20代です。ただの海外旅行でなく文化の香りがする『文旅』(=文化旅行)がキーワードになります。日本の場合、古い独特の文化と現代アートが共存している点を強みとして生かせます」

 「すでに瀬戸内国際芸術祭が、仏系若者の間で人気を呼んでいます。欧米ブランドを購入するより安藤忠雄氏や草間弥生氏の作品を見る方が格好いい旅行になります。アートの力で島全体を包もうとする直島のプロジェクトは中国ではまだ試みられておらず新鮮に映るのです」

 「次の文旅の候補地のひとつとして、有力なのは九州です。観光列車を初めとする魅力的な交通網がコンパクトに整備されているエリアは貴重です。古代からの歴史的な文物も多い。現在は上海からを除けば九州各県への直行便が少ないことがネックですが、北京の最新空港である『北京大興国際空港』で整備されれば人気を集めるでしょう」

(聞き手は松本治人)
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO4992832018092019000000?


ニューリテールは中国人消費者をどう変えたか
2019/9/25

ネットとリアルを融合したスーパー「フーマー」はニューリテールを代表する小売店
 中国人消費者の購買スタイルが変化している。中国国内で進んでいるニューリテールと呼ばれる小売革命が背景にある。リアルの体験とネットの利便性を融合させた、いいとこどりの購買スタイルだ。しかし、そうした新たな消費に対応している日本企業は多くはない。こうした変化にどう対応すればよいのか?中国人消費者の動向に詳しい中国市場戦略研究所の徐向東代表に聞いた。

ネットとリアルを融合

――中国市場で進んでいるニューリテールとはなんですか?

 「インターネットを基盤にビッグデータなどを活用し、商品の生産、流通、販売の各プロセスでイノベーションをおこし、オンライン、オフラインと物流の融合を進めることで体験をベースにした新しい消費のスタイルを実現することです。例えば、店頭で衣服を試着してその場でネットを通じ購入、夜に自宅で受け取るといった買い物のイメージです。アリババを創業したジャック・マー氏が提唱しました。代表的な店舗の1つがアリババグループが展開するスーパーのフーマーです。フーマーではスマートフォンのアプリを使って快適に買い物ができます。商品には鮮魚を含めバーコードがついています。商品を実際に手に取りバーコードをスキャンすれば産地など商品情報がわかります。商品はアプリの『買い物カゴ』に入れてレジでキャッシュレス決済をすれば自宅に届けてもらえます。店舗内で手ぶらで買い物ができるわけです」

 「中国の消費市場の変遷をとたどると、ニューリテールの登場は必然だったことがわかります。1990年代半ばに外資のカルフールが進出、快適な環境のなかで、大量の商品を見比べて買い物をするというスタイルは、多くの中国人消費者を魅了しました。カルフールの進出をきっかけに、スーパーや家電量販店で海外の良いものを買うというスタイルが定着しました。ただ、一方でそうした小売店は商品価格が高いという不満がありました。そうした不満を解消したのが、アリババなどのネット通販でした。価格が安いうえ商品を届けてくれる利便性で一気に普及し、リアルの店舗を脅かすまでに成長しています。しかし、ネット通販の普及にともない、やはり、商品は実際に手に取って選びたいという従来のニーズが顕在化してきました。そこで店頭での体験とネット通販を融合させたスタイルがでてきたのです。カルフールがニューリテール戦略の一環としてアリババに買収されたのは象徴的な出来事だといえます」

――中国でニューリテールが普及した背景は?

 「ネット通販の拡大で中国に宅配の仕組みが普及したことが大きく寄与しています。高速道路などインフラが整備されたうえ、トラック版ウーバーのような仕組みが登場したことで、多くの運送事業者を確保し、迅速に商品を運べるようになりました。キャッシュレス決済で決済が容易になったこともニューリテールの拡大を支えています」

買い物のしやすさ追求


徐向東氏(じょ・こうとう) 北京外国語大学講師を経て文部省奨学金で来日し博士号取得。日本で大学講師などを経て、中国市場戦略研究所を設立。訪日中国人客を含む中国人消費者の動向に詳しく、マーケティング戦略など日本企業の中国事業を支援している。
――ニューリテールは中国人の消費をどう変えていますか?

 「買い物がしやすくなったことで消費を後押ししています。所得など消費を左右する要因はいろいろとありますが、大事なのは買い物がしやすいかどうかです。欲しいと思ったときにすぐに買える、店頭で見て気に入ればすぐに購入し自宅に届けてもらえる、といった仕組みはとても便利で、一度慣れてしまうと店頭で精算のために列に並ぶことがいやになってしまいます。中国人消費者はスマホで注文しすぐに自宅に届けてもらうという買い物スタイルにすっかり慣れてしまっています。日本のように自宅の近くに多くの小売店があり、いつでもすぐに買い物できるいう環境にあるわけではないことも背景にはありますが、ここ数年で消費者の買い物スタイルや意識は大きく変わりました」

――外資系でこうした中国人の消費行動の変化に対応している企業はありますか?

 「ユニクロです。店舗とオンラインを融合させたニューリテールを確立しています。中国全土に展開した多くの店舗がEC(電子商取引)の倉庫としての役割を担い、注文が入ると店舗在庫から発送しています。SNSによるマーケティングも進めています。中国ではネットの口コミが購買を左右しており、新商品などの情報をウィーチャット(WeChat)やウェイボー(Weibo)などのSNSで発信しています。こうした戦略をとれる外資系企業はほかにありません」

――メーカーはどう対応すればよいですか?

 「ニューリテールの進展で商品のライフサイクルがさらに短くなっています。商品の人気はネットの口コミなどのトレンドで決まっており、従来の商品開発プロセスは通用しない局面も増えてくるでしょう。市場調査して設計・生産して市場に投入するのは1年後というようなプロセスでは遅すぎます」

――日本企業はニューリテール時代の中国人消費者にどう向き合えばよいですか?

 「ニューリテールは中国人消費者を理解し、中国市場を攻略するためのチャンスになります。ネットを通じて中国人消費者の動向がよくわかるからです。SNSには中国人消費者の生の声があふれています。例えばいま、寮生活をする女子大生に消臭剤が売れています。理由を探ると、共同トイレを利用した後、次に利用する人のために使っているのです。こうしたことがわかれば、どうアプローチすべきか戦略が立てられます。さらにKOL(キー・オピニオン・リーダー)と呼ばれるインフルエンサーなどとのやりとりを見ていれば、最新の人気商品や人気の理由がわかります」

 「消費市場としてみれば中国は世界の最先端にいます。この動きはいずれ日本にも波及していく可能性があることを念頭に中国人消費者の変化をみていくことが重要です」

(聞き手は町田猛)
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO5004649020092019000000/?
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/273.html

[自然災害22] 人類の炭素排出量、火山より「100倍多い」人為的CO2排出量2018年だけで37ギガトン 壊滅的変化に匹敵
人類の炭素排出量、火山より「100倍多い」
国際研究
2019年10月2日 17:01 発信地:パリ/フランス [ フランス ヨーロッパ ]
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人類の炭素排出量、火山より「100倍多い」 国際研究
工場の煙突から立ち上る煙(2016年10月24日撮影、資料写真)。(c)TOBIAS SCHWARZ / AFP
【10月2日 AFP】人的活動によって毎年大量に排出される地球温暖化原因物質の炭素量は、世界のすべての火山から放出される炭素量の最大100倍に達するとの研究結果が1日、発表された。

 科学者500人強で構成される国際共同研究機関「深部炭素観測(ディープ・カーボン・オブザーバトリー、DCO)」が発表した一連の論文では、自然過程と人為過程によって炭素がどのように貯蔵、排出、再吸収されるかを説明している。

 DCOの研究は10年に及んだ。この中で研究チームは、進行する温暖化への寄与の度合いでは、人為的な二酸化炭素が火山の二酸化炭素を大きく上回っていることを明らかにした。温暖化ガスを噴出する火山は、気候変動に大きな影響を及ぼす要因として指摘されることが多い。

 学術誌「エレメンツ(Elements)」に発表された今回の研究では、地球に存在する全炭素のうち、海洋、陸地、大気に含まれる炭素量は全体のごく一部で、約4万3500ギガトン程度であることが分かった。残りの18.5億ギガトンの炭素は、地球の地殻とマントル、核に貯蔵されている。これは、数十億年前に地球がどのように形成されたかに関する手掛かりを科学者らに提供するものでもある。

 1ギガトンは10億トンで、ボーイング747(Boeing 747)型旅客機約300万機分の重量に相当する。

 DCOの研究チームは、世界各地の岩石サンプルに含まれる特定の炭素同位体を評価することで、炭素が陸地と海洋と大気の間をどのように移動したかをマッピングし、5億年前にさかのぼる時系列図を作成した。

 その結果、地球では概して、主要な温室効果ガスのCO2の大気中濃度が大きな地質学的時間スケールにおいて自己調整されることをチームは突き止めた。この傾向の例外は、恐竜を絶滅させた隕石(いんせき)の衝突や巨大火山の噴火など、地球の炭素サイクルに対する「壊滅的かく乱」の形でもたらされたという。


■地球は自らバランスを取り戻すが…

 英ケンブリッジ大学クイーンズカレッジ(Queens' College Cambridge)のマリー・エドモンズ(Marie Edmonds)教授(火山学・岩石学)は、「過去にはこれらの大規模な炭素の大気流入が温暖化を引き起こし、海洋の組成と酸素の可用性の両方に大きな変化をもたらしたことを確認している」と話す。

 研究チームは今回、地球上の全生物種の約75%を絶滅させた6600万年前のチチュルブ(Chicxulub)隕石衝突では、425〜1400ギガトンのCO2が放出されたと推定した。

 一方、人為的CO2排出量は、2018年だけで年間37ギガトンを超えたという。こうした状況についてエドモンズ教授は、「この10〜12年間に人為的活動によって大気中に排出されたCO2の量は、過去に確認されるこれらの事象の際にみられた壊滅的変化(に匹敵する)」とAFPの取材で語った。

 米アーカンソー大学(University of Arkansas)のセリーナ・スアレス(Celina Suarez)准教授(地質学)も、現代の人為的排出量が、大量絶滅を誘発した過去の大規模事象と「同程度」だと指摘している。

 それに比べ、火山から放出される年間のCO2量は0.3〜0.4ギガトン前後で、人為的排出量のほぼ100分の1だ。そして人為的な炭素排出が始まってからは、CO2濃度が200〜300年で約6割増加している。

「気候変動否定論者らは決まって、地球が常に自らバランスを取り戻すと主張する」と、スアレス准教授は話した。

「確かに地球はこれまでそうしてきたし、今後も自らバランスを取り戻すに違いない。だがそれは、人類にとって意味のある時間スケールで行われることはない」 (c)AFP/Patrick GALEY
https://www.afpbb.com/articles/-/3247513?page=2


https://deepcarbon.net/
Deep Carbon Observatory science is categorized into four broad theme-based communities. These communities provide a flexible research framework in which DCO scientists can be part of multiple communities and collaborate with colleagues across community boundaries.

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Extreme Physics And Chemistry
Dedicated to improving our understanding of the physical and chemical behavior of carbon at extreme conditions, as found in the deep interiors of Earth and other planets.
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Reservoirs And Fluxes
Dedicated to identifying deep carbon reservoirs, determining how carbon moves among these reservoirs, and assessing Earth’s total carbon budget.
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Deep Energy
Dedicated to understanding the volume and rates of abiogenic hydrocarbons and other organic species in the crust and mantle through geological time.
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Deep Life
Dedicated to assessing the nature and extent of the deep microbial and viral biosphere.

Humanity's emissions '100-times greater' than volcanoes

dpa/AFP/File / Federico Gambarini
Manmade carbon emissions have seen CO2 levels rise two thirds in a span of a few centuries
Human activity churns out up to 100 times more planet-warming carbon each year as all the volcanoes on Earth, says a decade-long study released Tuesday.

The Deep Carbon Observatory (DCO), a 500-strong international team of scientists, released a series of papers outlining how carbon is stored, emitted and reabsorbed by natural and manmade processes.

They found that manmade carbon dioxide emissions drastically outstrip the contribution of volcanoes -- which belch out gas and are often fingered as a major climate change contributor -- to current warming rates.

The findings, published in the journal Elements, showed just two-tenths of 1 percent of Earth's total carbon -- around 43,500 gigatonnes -- is above the surface in oceans, the land, and in our atmosphere.

The rest -- a staggering 1.85 billion gigatonnes -- is stored in our planet's crust, mantle and core, providing scientists with clues as to how Earth formed billions of years ago.

One gigatonne is equivalent to around 3 million Boeing 747s.

By measuring the prominence of certain carbon isotopes in rock samples around the world, the DCO were able to create a timeline stretching back 500 million years to map how carbon moved between land, sea and air.

They found that in general the planet self-regulated atmospheric levels of carbon dioxide, a key greenhouse gas, over geological timeframes of hundreds of thousands of years.

The exceptions to this came in the form of "catastrophic disturbances" to Earth's carbon cycle, such as immense volcanic eruptions or the meteor strike that killed off the dinosaurs.

"In the past we see that these big carbon inputs to the atmosphere cause warming, cause huge changes in both the composition of the ocean and the availability of oxygen," said Marie Edmonds, Professor of Volcanology and Petrology and Ron Oxburgh Fellow in Earth Sciences at Queens' College, Cambridge.


AFP/File / FERDI AWED
The CO2 released annually by volcanoes hovers around 0.3 and 0.4 gigatonnes -- roughly 100 times less than manmade emissions
The team estimated that the Chicxulub impact 66 million years ago, which killed off three-quarters of all life on Earth, released between 425 and 1,400 gigatonnes of CO2.

Manmade emissions in 2018 alone topped 37 gigatonnes.

"The amount of CO2 pumped into the atmosphere by anthropogenic (manmade) activity in the last 10-12 years (is equvalent) to the catastrophic change during these events we've seen in Earth's past," Edmonds told AFP.

Celina Suarez, Associate Professor of Geology at the University of Arkansas, said modern manmade emissions were the "same magnitude" as past carbon shocks that precipitated mass extinction.

"We are on the same level of carbon catastrophe which is a bit sobering," she told AFP.

- 'Not a human timescale' -

By comparison, the CO2 released annually by volcanoes hovers around 0.3 and 0.4 gigatonnes -- roughly 100 times less than manmade emissions.

"Climate sceptics really jump on volcanoes as a possible contender for top CO2 emissions but it's simply not the case," said Edmonds.

"It's also the timescale."

Whereas Earth's atmosphere has frequently contained higher concentrations of CO2 than the present day, outside of catastrophic eruptions it has taken hundreds of thousands of years for such levels to accumulate.

In contrast, manmade carbon emissions have seen CO2 levels rise two thirds in a span of a few centuries.

"Climate deniers always say that Earth always rebalances itself," said Suarez.

"Well, yes it has. It will rebalance itself, but not on a timescale that is of signficance to humans."
https://www.afp.com/en/news/826/humanitys-emissions-100-times-greater-volcanoes-doc-1kw9so1

http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/731.html

[政治・選挙・NHK266] GSOMIA 韓国が要請、日本から求めず 北朝鮮に配慮、韓国「国軍の日」が反日イベント化「反日」デモンストレーションの翌日に日本に協力要請の厚顔
GSOMIA 韓国が要請、日本から求めず
北朝鮮 政治
2019/10/2 21:00
韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相は2日、韓国から日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に基づく情報提供を求めたことを明らかにした。日本側は対応の有無を明確にしていないが、防衛省幹部は「お願いされれば断る理由はない」と語った。

韓国がGSOMIAの破棄を決定してから、北朝鮮が弾道ミサイルを発射するのは今回で3度目になる。

ミサイルが発射された場合、日韓はまず米国の早期警戒衛星を通じて情報を入手する。その後、レーダーを使って軌道や弾種を日韓それぞれで分析する。発射地点に近い韓国と、落下地点に近い日本では得られる情報が違う。照合しあうことで分析精度は上がる。

菅義偉官房長官は発射直後の記者会見で2発のミサイルが発射された可能性を示唆した。韓国軍合同参謀本部の分析は1発だった。菅氏は改めて開いた記者会見で事実関係を修正した。

GSOMIAは11月22日に有効期限が切れる。


ミサイル、落下地点は島根沖約350キロ 防衛相

河野太郎防衛相は2日午前、北朝鮮が発射した弾道ミサイル1発が島根県隠岐諸島の島後沖約350キロメートル付近に落下したと発表した。日本の排他的経済水域(EEZ)内にあたる。飛行距離は450キロメートル、高度は900キロメートルだった。「わが国の安全保障に対する深刻な脅威だ。弾道ミサイルの発射は関連する国連安保理決議に違反する」と強調した。

韓国軍合同参謀本部が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)と発表したことについては「日本としてはまだ関連情報の分析をしている。そのように断定するには至っていない」と説明した。日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に基づく日韓連携の有無に関しては「いかにして情報入手しているか手の内をさらすことは控えたい」と述べるにとどめた。防衛省内で記者団に答えた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50485450S9A001C1000000/?n_cid=SPTMG002

北朝鮮に配慮、韓国「国軍の日」が反日イベント化「反日」デモンストレーションの翌日に日本に協力要請の厚顔
2019.10.3(木)
李 正宣
韓国・北朝鮮

「国軍の日」記念イベントで敬礼する文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
 先端兵器を総動員して軍事大国を誇示した中国の国慶節行事が開かれた10月1日、韓国では「国軍の日」71周年記念イベントが開かれていた。

「国軍の日」の起源は1950年10月1日、韓国軍が南侵した北朝鮮軍を反撃しながら北へと前進し、38度線を突破した出来事にある。韓国政府はこの日を韓国軍の創設日とし、国家的な記念式典を行ってきた。

 歴史的な意味から、この日は徹底して北朝鮮軍に向けて韓国軍の威容を誇示するイベントを開催するのが韓国歴代政権の慣例だった。特に5年ごとに開催される閲兵式と街頭行進は、韓国人の安全保障に対する自負心を高める意味も持つ大々的な「国軍パレード」だ。

「反日イベント」と化した韓国「国軍の日」記念行事
 しかし、南北関係改善を至上課題に据えている文在寅(ムン・ジェイン)政権は、北朝鮮を刺激する恐れから、これまで国軍の日イベントを大幅に縮小して開催してきた。70周年を迎えた昨年も閲兵式を省略したまま、夕方の時間帯に室内で開いた人気歌手の記念公演で国軍の日の記念行事を代替したほどだ。

 ところが、この70周年行事が韓国内で、「過度に北朝鮮の顔色をうかがいすぎだ」「弱軍パレードだ」といった激しい非難を呼んでしまった。南北和平ムードに執着するあまり、韓国軍の士気を落としたという指摘もあった。

 その反省からなのだろうか。文在寅政権は、今年の10月1日には、北朝鮮の代わりにまるで日本を「仮想敵国」にするようなスタイルで、大々的にイベントを開催してみせた。

「反日の象徴」デニー太極旗…
 今年の国軍の日の記念式典は、初めて大邱の空軍基地で開催された。記念式典に出席した文在寅大統領は朝鮮戦争ではなく、独立運動を強調し、韓国国軍の根が独立軍にあるという主張を繰り広げた。

「約100年前の新興武官学校から始まった陸軍、大韓民国の臨時政府の飛行学校から始めた空軍、独立運動家と民間商船の士官たちが自発的に創った海軍まで、韓国軍の根は独立運動と愛国にあります」

「韓国軍は独立運動に根ざした『愛国軍隊』であり、南北和解と協力を率いる『平和の軍隊』であります」

 ニュース通信社である連合ニュースは、文大統領の同日の祝辞が「強軍、和合、克日の3つのメッセージを含んでいる」と評価した。

「反日の象徴」デニー太極旗
 閲兵式と街頭行進の代わりに繰り広げられた韓国空軍の飛行パレードも露骨な「反日イベント」となった。「領空防御任務」という名前で進められた飛行パレードは、F-15K戦闘機4台がそれぞれ独島(竹島)、稷島、済州島を約20分間哨戒飛行し、操縦士らが任務遂行状況を大型スクリーンを通じてリアルタイムで報告するという内容だった。

 F-15K戦闘機は米空軍がボーイング社のF-15を変形して開発した対韓国輸出用の戦闘機で、韓国空軍の主力戦闘機である。最大射程が500kmに達するタウラス・長距離空対地ミサイルを装着し、重さが2.5トンにも達する地下施設物破壊に特化されたGBU-28バンカーバスターも搭載されている。韓国空軍はこれを計60機導入したが、その1機が2018年に墜落事故を起こし、現在は59機が運航中だ。この日、北朝鮮の領空からはるかに離れた独島(竹島)上空に2機、韓国領海の西南に位置した稷島、そして済州島にそれぞれ1機というF-15Kの出動は、明確に日本を狙ったイベントだった。

 イベントで使われた太極旗(韓国の国旗)も反日を象徴する「デニー太極旗」が選ばれた。

 デニー太極旗とは、最も古い太極旗で、大韓帝国最後の王である高宗によって、1890年にアメリカ人の外交顧問オーウェン・デニーが本国に帰国する際にプレゼントされた太極旗だ。2018年、旭日旗掲揚問題をめぐって日本の自衛隊が参加を見送った済州の観艦式で、独島艦がこのデニー太極旗を掲揚した。当時の行事を企画したタク・ヒョンミン大統領行事企画諮問委員は「デニー太極旗は旭日旗に対抗する韓国の国旗」と説明したほどだった。

 そういう経緯があるからだろう。今年の国軍の日のイベントにデニー太極旗が使われたことについて、東亜日報系列のケーブル局のチェンネルAは、「国軍の日の行事に対する北朝鮮の反発を考慮し、デニー太極旗の掲揚を通じて、北朝鮮ではなく周辺国、特に日本を狙ったイベントだというメッセージを与えるという意図だ」と分析した。

北朝鮮に配慮した「反日イベント」の翌日に北…
2019年1月に公開された文在寅政府の最初の国防白書には「北朝鮮は主敵」という言葉が削除され、韓国を威嚇するすべての勢力について敵と規定した。鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防長官は9月、韓国の国会で、「北朝鮮のミサイル挑発が敵対行為か」と問う野党議員の質問に対し、「そうだとすれば、私たちが(ミサイルを)試験・開発することはどう表現すればいいか」「直接的な挑発だとは表現できない」など、回答を避けして波紋を呼んだ。

 反面、竹島問題を巡って、日本政府を刺激する軍事行動に出て、緊張感を高めている。国軍の日の前も、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄直後の8月25〜26日には、大々的は独島上陸訓練を実施し、日本を刺激した。

北朝鮮に配慮した「反日イベント」の翌日に北からミサイル1発
 文在寅政府のこのような親北反日政策は韓国人の世論にも多大な影響を与えている。9月28日に発表された週刊誌「時事ジャーナル」の世論調査によると、「現在、韓国にとって、日本のほうが北朝鮮よりも脅威的か」という質問に対し、韓国人の69.4%が「そう思う」と答えた。

 しかし、日本を主敵に想定した国軍の日イベントは北朝鮮から思わぬ非難を浴びた。

 次の日の2日、北朝鮮は弾道ミサイル1発を発射した。北朝鮮労働党の機関紙である「労働新聞」は論評を通じて、「南北関係が膠着状態に陥るようになった根本的な原因は、一言で言って、南朝鮮当局の裏切り行為にある」、「南朝鮮当局は、表では北南関係の改善と朝鮮半島の緊張緩和に向けて共同で努力することを合意しておきながら、後ろでは外勢と野合して隠蔽された敵対行為を続け、南北関係の発展を厳しく阻害した」と主張し、国軍の日のイベントに対する抗議的な挑発であることを暗示した。

 米国務省関係者もVOA(米国の国営放送「ボイス・オブ・アメリカ」)に送ったメールを通じて「韓国と日本間の最近の意見の衝突を考慮すると、リアンクル・ロックス(竹島の中立的名称)で行われた軍事訓練や規模などは、(現在、韓日間の)進行中の問題を解決するのに、生産的ではない」と批判した。

 当の韓国はと言えば、北朝鮮によるミサイル発射に際して、自ら破棄を決定・通告しながらも、まだ効力が残っているGSOMIAに基づき、日本に北の弾道ミサイルに関する情報提供を求めたという。大々的な「反日デモンストレーション」の翌日にこれでは、韓国という国家をどの国が信頼してくれるのだろうか。

 日本はもとより、北朝鮮や米国までが非難に乗り出した文在寅政府の国軍の日の反日イベントは、韓国の外交的孤立をさらに招くことになるだろう。

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なぜスキャンダル当事者を法相に、不思議の国の韓国
ともに東アジアの一員で、漢字文化圏の国、そして第二次大戦後に民主化し、経済の急成長も成し遂げたーー日本と韓国には共通する点が多い。しかし、現在の韓国は日本人にとって理解しにくい国になっている。なぜこんな不思議な国になってしまったのか。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57804
http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/178.html

[経世済民133] 「ドル破滅」シナリオに備えはあるか 「現代金融の柱」壊すマイナス金利−ブラック・ショールズ機能せず

「ドル破滅」シナリオに備えはあるか?

長期投資のパラダイムが変わる可能性、超低金利も永遠ではない

2019.10.3(木)
Financial Times
世界情勢 アメリカ 経済 マネー (英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年9月30日付)


 世界の貯蓄者、特に老後に備える米国の貯蓄者は、もう何十年も前から、お金の大半をS&P連動ファンド――最大級の米国企業の動きを追跡する指数連動ファンド――に預け、定年が近づいてくるまで忘れておくべきだと教えられてきた。

 1980年代半ば以降、これはおおむね良い助言だった。

 何しろ、米国の多国籍企業への投資はグローバル化を買う一番の方法であり、グローバル化は多くの大企業の株価にとって非常に良いことだった。

 しかし最近、筆者は考え始めた。もし長期投資のパラダイム全体が変わるのだとしたら、それは何を意味するのだろうか――。

 我々の知るグローバル化は保留されている。それだけは分かっている。

 だが、非常に長い「金融抑圧」の期間、つまり金利の低下がもう一つの根本的な真実を覆い隠した時代の終わりも近づいてきているのだとしたら、どうか。

 世界における米国の地位は変わり、米国企業の潜在的な成長力も変わった。もしこれが事実だとすれば、我々は米国の多国籍企業の株価だけでなく、ドル自体の調整も迎えようとしているのかもしれない。

 であれば、米国の個人貯蓄者から欧州とアジアの巨大年金基金まで、世界中の投資家に甚大な影響を及ぼす。

 これは為替調査会社AGビセット・アソシエ…
これは為替調査会社AGビセット・アソシエーツが「Doomsday Dollar(破滅を迎えるドルの意)」と名づけたシナリオだ。

 一見する限り、米国株とドルが同時に下落するという考えは疑わしく思える。

 一つには、米国株とドルは反対方向に動くことが多い。近年そうだったように、ドルが安くなると、多くの米国企業の輸出品が世界市場で競争力を増すからだ。

 もっと言えば、中国やロシアのような一部の国が政治的、経済的な理由でドル建て資産から離れ始めているにもかかわらず、ドルは依然、世界の準備通貨だ。

 米ブルッキングス研究所が先日公表した調査が指摘しているように、世界の外貨準備高に占めるドルの割合は2007年以降、2ポイントしか低下していないのに対し、ユーロの割合は6ポイント低下している。

 そして、周知の通り、米国の政治家も多くの米国企業もその間、栄光を誇ったわけではない。

 だが、世界の外貨準備制度における変化は、起きるのに長い時間がかかる。

 為替の動きはもっと素早い。実際、AGビセットのウルフ・リンダール最高経営責任者(CEO)が指摘するように、世界の主要通貨は15年周期で上下する傾向がある。

 1970年代初頭以降からの為替動向を追跡…
 1970年代初頭以降からの為替動向を追跡したリンダール氏の計算によれば、我々は2017年1月に新たなサイクルに入っており、2018年4月以降のドル高にもかかわらず、このサイクルはまだ崩れていない。

 もしこの理論が正しければ、ドルは向こう数年間でユーロと円に対して下げ、下落率が最大で50〜60%にのぼるという。

 そのような変化には、どんな影響があるのか。

 まず、欧州と日本の年金基金のような米国外の投資家や、裕福な個人の資産を管理するファミリーオフィス、大手の金融機関がドル資産の下落によって大打撃を被る。

 もしこうした投資家が投資ポートフォリオを見直し、ドル資産から転換し始めたら、米国株の下落基調を悪化させる可能性がある。

 米国株が過去150年で2番目に高い時期を迎えていることから、これは多くのアナリストが、いずれにせよ訪れると考えている展開だ。

 そうなると、今度は老後の備えの大半をこうしたS&P連動ファンドに預けている米国の貯蓄者が打撃を受ける。

 一部の抜け目のない投資家はすでにこの兆候を見て取り、金にシフトしている。ほかのコモディティー(商品)も相場が上昇すると筆者は見ている。

 もし「破滅の日」シナリオが実際に展開すれ…
 もし「破滅の日」シナリオが実際に展開すれば、投資家はユーロと円にも殺到するかもしれず、そうなると米国の債券利回りが上昇せざるを得なくなる。

 これはほとんど誰も予期していない出来事だ。世界は永遠に低金利環境から抜け出せないというのが一般的な見方になっている。

 だが、もし債券利回りが上昇すれば、株式よりも債券を保有している貯蓄者の助けになるかもしれない。ただし、債務に苦しむ企業を罰することにもなる。

 また、すでに国際決済銀行(BIS)が警鐘を鳴らしたように、金利が上昇した場合に債務を返済して事業を継続するのに苦労する「ゾンビ企業」が世の中にたくさん存在する。

 過去数十年間で、我々は米国株の強気市場だけでなく、巧妙な財務戦略もふんだんに見てきた。企業は税制から自社株買いまであらゆる手段を使い、経済の重力に抗うためにできることをやってきた。

 そして中央銀行が金融緩和政策でこうした企業を手助けしてきた。

 筆者の意見では、これこそが、政治経済における幾多のリスク要因と企業にとっての難題にもかかわらず、米国株とドル建て資産の価格がこれほどの高値を維持してきた理由だ。

 究極的には、もし米国企業がもはや世界一の競争力を持たないと見なされるようになれば、株価が下落し、ドルも下げるだろう。

 我々はその段階を迎えたのだろうか。それは…
 我々はその段階を迎えたのだろうか。それはまだだ。

 だが、米国の技術基盤の衰えや老朽化するインフラ、研究投資の不足を考えると、もうすぐその段階に到達するのではないかと思える。

 企業自身がその考えを行動で示しているように見える。

 コンサルティング会社アーンスト・アンド・ヤング(EY)の最近のリポートは、「フォーチュン・グローバル500」に入っている米国企業の数が2000年の179社から121社に減少する一方、中国に本社を置く企業の数が10社から119社に増えたことを示している。

 これは、企業が将来の成長を見込む場所に変化が起きていることを表すシグナルだ。

 つまり、アジアということだ。もしそうだとすれば、多くの人には、新しい世界のための新しい投資戦略が必要になる。

By Rana Foroohar

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ブレグジットは再度延期しなければならない
闇の中に一筋の光がようやく差し込んできた。英国が政治的に不安定な「バナナ共和国」の状態に向かってずるずる転落していくのを、最高裁判所が食い止めた。英国の欧州連合(EU)離脱についての議会審議をやめさせようとするボリス・ジョンソン首相の試みが権力の濫用であることが暴かれた。


「米中離婚」を真剣に考えているトランプ大統領
冷戦どころではない、2大大国のどちらかを選ぶよう迫られる世界
Financial Times

ドイツとユーロと具合の悪い真実
欧州統合の最大の受益国、有権者に対価を説明しなかった原罪
Financial Times

ボルトン解任、トランプ政権のタカ派フェーズの終焉
次のホワイトハウスは「ミニ・ミー」政権、世界平和には朗報?
Financial Times

借金漬けの大学生、米国の静かな債務危機
経済の足を引っ張り、反エスタブリッシュメントの政治を助長
Financial Times 

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57800?page=5

「現代金融の柱」壊すマイナス金利−ブラック・ショールズ機能せず
Brandon Kochkodin
2019年10月3日 12:20 JST
• 数学モデルが機能しなければ金融商品のリスク評価が問題になる
• 「どのような影響が出るか。数学モデルはどうなるか」と問い合わせ
マイナス金利は「現代金融の柱」の一つをまさに文字通り壊したようだ。
  マイナス金利の利点と欠点、そのグローバルな影響について、エコノミストやセントラルバンカーが比較検討する中で、トレーダーはより日常的だが、根本的な問題への取り組みを迫られている。マイナス金利によって複雑な数学モデルが機能しなくなる事態に直面し、金利スワップのような数兆ドル相当の金融商品のリスクをどのように評価するかという問題だ。
  過去40年のデリバティブ(金融派生商品)の発展を支え、対数正規分布が重要な役割を果たすブラック・ショールズ・モデルの一部のバリエーションが使えなければ、代用となるのは、19世紀にさかのぼるものさえ含む近似法の寄せ集めだ。
  現状は深刻な問題というよりむしろ厄介であり、これまで日本と欧州におおむね限定されてきたことも確かだ。だが、マイナス金利が長期にわたる経済的特徴となり、マイナス利回りの債券が15兆ドル(約1606兆円)相当に達しようとする状況で、米国を中心にますます多くのトレーダーが問題の理解に努めるようになった。
  バンク・オブ・アメリカ(BofA)メリルリンチの金利ストラテジスト、スピア・サリム氏(ロンドン在勤)は「『マイナス金利でどのような影響が出るか。数学モデルはどうなるか』知りたいと考える米国の顧客から問い合わせを受けるようになり、かなり驚いた」と語った。
マイナス金利について論じるダドリー前NY連銀総裁

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iENMCascbfZw/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/576x-1.png

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iSakOZycVpZE/v1/576x-1.png
Black Scholes Calculator - Good Calculators
https://goodcalculators.com/black-scholes-calculator/
原題:How Negative Rates Broke Black-Scholes, Pillar of Modern Finance(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-03/PYORMH6JTSE901?srnd=cojp-v2



http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/280.html

[経世済民133] 米国、対EU報復関税を18日発動−エアバス「米雇用にも悪影響」日本株は大幅安、米国の雇用鈍化や対EU報復関税−全業種安い 地銀にのしかかる重圧、利益維持にリスク不可避
米国、対EU報復関税を18日発動−エアバス「米雇用にも悪影響」
Vivek Shankar
2019年10月3日 6:35 JST 更新日時 2019年10月3日 10:02 JST
通商担当欧州委員:EUは来年のWTO判断後に報復行う
航空機に10%、その他の輸入品に25%の追加関税
President Trump Makes Announcement On EU Trade
Photographer: Kevin Dietsch/UPI
米国は2日、対欧州連合(EU)報復関税の最終リストを発表した。世界貿易機関(WTO)はこの日、EUによるエアバスへの不当な補助金への対抗措置として米国が年間で最大75億ドル(約8000 億円)相当のEU産品に報復関税を課すことを認めていた。

  承認された報復関税の規模はWTO史上最大。

  米通商代表部(USTR)の発表によれば、フランス、ドイツ、スペイン、英国からの大型民間航空機に10%を上乗せするほか、ワインやアイリッシュウイスキー、スコッチウイスキー、オリーブ、チーズ、特定の豚肉製品、バター、ヨーグルトなどの他の輸入品に25%の追加関税を課す。

  ただ暫定リストにあった皮革製品は除外され、ジバンシイやLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンなど高級ブランドは影響を免れた。ルイヴィトンやレミーコアントロー、ペルノ・リカール、ディアジオのワイン・蒸留酒は対象とされた。

  USTRによると、米政府はWTOに対し、関税の正式承認のため今月14日の会合開催を要請。関税は18日に発動される見込み。

  米通商当局の高官は2日の記者説明会で、トランプ政権が報復関税を導入するのは、交渉を通じて合意に達するようEUを説得するためだと述べた。

報復
  ライトハイザーUSTR代表は声明で、「提訴から15年たってついにWTOは米国がEUの不当な補助金に対し対抗措置を取ることができると認めた」とした上で、「米国の勤労者に恩恵を与える形での問題解決を目指し、EUと交渉に入ることをわれわれは期待している」と述べた。

  一方、EUの行政執行機関、欧州委員会のマルムストローム委員(通商担当)は、エアバスに関連して関税が導入されれば米国のボーイング補助金を巡るWTO判断が来年初めに下された時に報復を行うと、米国の報復関税リスト発表に先立ちコメントした。

  ただ同委員は、互いに対抗措置を講じれば米欧の企業や市民ばかりか、難しい時期にある世界貿易と航空業界にも打撃を与えるだろうと述べ、EUは「それぞれの航空業界のための公正でバランスの取れた解決策」に向け米国と取り組む用意があるとも語った。

「不安と混乱」
  エアバスのギョーム・フォーリ最高経営責任者(CEO)はWTOが米国の対EU報復関税を認める判断を下した後、報復関税が発動すれば「米航空会社だけでなく、米国の雇用やサプライヤー、航空旅客にも悪影響を及ぼす」と発言。幅広い航空産業全体に「不安と混乱」をもたらすだろうと指摘した。

  航空機への追加関税率は農産品などよりも低いものの、航空機は表示価格ベースで最低でも1億ドル程度するため、航空業界は関税引き上げに脆弱(ぜいじゃく)だ。ジュフリーズのアナリスト、サンディ・モリス氏(ロンドン在勤)は、「ワインに10%上乗せしてもボルドーワインの愛好家は購入をためらわないだろうが、エアバスの航空機の場合は納入を保留する可能性がある」と述べた。

  エアバスによれば、同社の航空機は平均して部品の約40%を米国から調達しており、同社は過去3年間に総額500億ドルを支出し、40州の計27万5000人の雇用を支えてきた。さらに今後10年間で支出額の倍増を目指している。

  同社はさらに2016年以降、アラバマ州モビールの工場の最終組み立てラインからA320を納入しており、今年8月にはA220も加わった。 

原題:U.S. to Put Tariffs on Europe Planes, Whiskies After WTO Ruling
   Airbus Says Trump Tariffs After WTO Ruling Will Cost U.S. Jobs (抜粋)

(欧州委員やエアバスCEOのコメントなどを追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-02/PYRNCC6KLVRD01?srnd=cojp-v2

日本株は大幅安、米国の雇用鈍化や対EU報復関税−全業種安い
河元伸吾
2019年10月3日 7:59 JST 更新日時 2019年10月3日 11:50 JST
• 9月の米民間雇用者数は3カ月ぶり低い伸び、市場予想も下回る
• ドル・円相場は一時106円97銭と円高、米は対EU報復関税発動へ
3日の東京株式相場は大幅に続落。米国の民間雇用者数が市場予想を下回ったほか、対EU報復関税の発動決定で景気悪化が警戒された。為替相場が円高に振れて自動車など輸出関連、保険など金融中心に全業種安い。
• TOPIXの午前終値は前日比31.61ポイント(2%)安の1564.68 •
• 日経平均株価は同440円67銭(2%)安の2万1337円94銭
o 一時500円超下落
<きょうのポイント>
• 9月の米ADP民間雇用者数は13万5000人増、3カ月ぶりの低い伸び
o 市場予想は14万人増、前月は15万7000人増に下方修正
• 米国が対EU報復関税を18日に発動ー世界貿易機関(WTO)が承認
• ドル・円相場は一時1ドル=106円97銭、前日の日本株終値時点は107円80銭
  岩井コスモ証券投資調査部の有沢正一部長は、雇用者数や製造業指数など低調な米経済指標が続いたことから、「今夜のISM非製造業指数やあすの米雇用統計も市場予想を下回る可能性が警戒され、利益確定の売りが出ている」と話した。米国の対EU報復関税で「米中貿易摩擦に加えて米欧の対立が深まれば、投資家マインドは悪化する」と指摘した。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-02/PYQHBHT0G1KZ01

地銀にのしかかる重圧、利益維持にリスク不可避−チャートが示す苦境
萩原ゆき、浦中大我
2019年10月3日 5:00 JST
• 国内融資や海外投資で損失拡大続けば簡単に重圧にさらされる
• 自己資本比率の低下で含み損の損失処理が困難な地銀も
長引く超低金利政策の影響で地方銀行の稼ぐ力は弱まり、一定のリスクを取ることを余儀なくされている。利回りがマイナスで推移する国債保有を大幅に減らす一方、外国債券や証券化商品の保有を増やしている。不動産や中小企業への融資も増加傾向にある。チャートとともに苦境にあえぐ地銀の状況を読み解く。
  地銀への逆風は、日本銀行によるマイナス金利政策だけではない。少子高齢化が急速に進展した結果、総人口は2008年をピークに減少に転じており、地域の経済規模は縮小し、労働力不足も顕著だ。金融庁は2019事務年度(19年7月ー20年6月)の金融行政方針で、銀行法改正や監督指針の改正によって経営改革を促すとした。
  金融調査会社クレジットサイツのアジア銀行調査共同責任者のデービッド・マーシャル、イスマエル・ピリ両氏は「日本の銀行はいつ事故にあってもおかしくない」と9月24日付のリポートで指摘。「国内融資や海外投資が損失拡大につながるという不運な環境が続けば、いとも簡単に重圧にさらされることになる」と見る。
  SBI証券の鮫島豊喜シニアアナリストは、地銀の経営環境について「資金利益が回復する見込みもなく、与信費用も増加傾向で収益的にも厳しい」と語る。自己資本比率も低下していることから、含み損を抱えた有価証券ポートフォリオを再構築するための損失を計上することすら難しい銀行もあると指摘する。
チャートが示す地銀の苦境
(1)利益縮小
  金融庁によると、地銀や第二地銀を合わせた100余行の19年3月期の純利益合計は7年ぶりの低水準となった。貸付利息など銀行の主要業務から得られる資金利益は過去10年間減少しており、09年度比で約17%減となっている。一定利益を確保するために保有株式や債券の売却を増やす傾向にある。
  米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは8月、七十七銀行など地銀12行のベースライン信用リスク評価(BCA)を引き下げ方向で見直すと発表。静岡銀行を除く11行については、預金を遅滞なく返済する能力を示す長期預金格付けを格下げ方向で見直しの対象とした。事業環境の厳しさが増す中、さらなるリスクを取らなければ利益維持が困難であることが見直しの背景だと説明している。

減少傾向にある利益
地銀の純利益合計は7年ぶりの低水準に

出所:金融庁
注:横軸は3月期、縦軸の単位は兆円
(2)外債投資残高が上昇
  国内金融機関は長くデフレ環境下で安全運用が見込める国債保有を続けてきたが、13年に日銀が量的緩和政策を導入してから保有残高は減少している。全国地方銀行協会の統計によると、加盟64行による19年3月期の国債保有残高は約19兆円で、13年度比で45%減少した。
  一方、増加したのは外債などの外国証券の保有残高。外債の保有増は各国の金利動向や地政学リスクにさらされることにつながり、債券市場の変調や為替変動が収益圧迫要因となりかねない。
日本国債からシフト
外債などの比重が高まる地銀の運用先

出所:全国地方銀行協会
注:横軸は3月期
(3)膨らむ与信費用
  アベノミクス政策下での倒産件数減少もあり、国内銀行はここ数年、与信費用を低水準に抑えてきた。しかし、貸出残高を伸ばすために、相対的に信用力の低い貸出先への融資も増やす傾向にあり、地銀105行を合計した19年3月期の与信関係費用は3473億円と前の期と比べて3倍強に急拡大した。

急速に悪化
引当金増加で地銀の与信費用は3倍に拡大

出所:金融庁
注:横軸は3月期、縦軸の単位は10億円

物価モメンタムが損なわれること、未然に防ぐ必要−布野日銀審議委員
伊藤純夫
2019年10月3日 10:12 JST 更新日時 2019年10月3日 10:45 JST
世界経済の下振れリスク大きい、持ち直す時期とペースを注視
消費増税の個人消費に対する影響、注視が必要
日本銀行の布野幸利審議委員は3日、松江市(島根県)で講演し、先行きの金融政策運営について、「物価安定の目標」に向けたモメンタム(勢い)が損なわれることが予見される場合には、それを未然に防ぐことが必要と述べ、予防的な政策対応の必要性に言及した。

  布野委員は、米中貿易摩擦の長期化などを背景に世界経済の減速が続く中で、「世界経済を巡る下振れリスクは高まりつつある」とし、「世界経済の持ち直す時期やそのペースについて、注意深くみていくことが必要」と指摘。

  日本経済は緩やかな拡大基調を続けるとみられるものの、当面は海外経済の減速の影響を受けるほか、1日からの「消費増税の個人消費に対する影響は注視が必要」との認識を示した。

  こうした内外経済の展望を踏まえ、日銀が重視する物価2%目標に向けたモメンタムが損なわれる可能性には「注意が必要」と警戒。「モメンタムが損なわれる場合には、それを未然に防ぐことが必要」と述べ、「次回の金融政策決定会合では、経済・物価動向を改めて点検していく」考えを表明した。

  また、物価目標の実現に向けて、現在のプラスの需給ギャップを維持していくことの重要性を指摘するとともに、持続的な経済成長を実現するためにも「強力な金融緩和を息長く続け、幅広い主体の取り組みをしっかりと支えるべきだと考えている」と語った。

背景
日銀は、重視している物価2%に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には「躊躇(ちゅうちょ)なく、追加的な金融緩和措置を講じる」と表明しており、世界経済の減速が続く中で、そのリスクに「より注意が必要な情勢になりつつある」と判断している
黒田東彦総裁は9月24日の大阪市での講演で、先行きリスクに対して予防的・保険的な対応を意識していると発言。市場では10月30、31日に開かれる日銀の金融政策決定会合に注目が集まっている
(第2段落以降に布野委員の発言を追加して更新しました)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-02/PYON7RT0AFB401?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/281.html

[政治・選挙・NHK266] 最低賃金1000円」実現で、これから日本で起きるヤバすぎる現実 最悪の格差社会へ…? 衝撃! 日本人の賃金が「大不況期並み」に下がっていた アベノミクスとはなんだったのか…
最低賃金1000円」実現で、これから日本で起きるヤバすぎる現実 最悪の格差社会へ…?

中原 圭介経済アナリスト
 
10月「最低賃金引上げ」でほんとうに起きること

2019年度の最低賃金の改定額が10月から各都道府県で発効されます。

最低賃金を引き上げ続けるといえば、反対する国民はほとんどいないでしょう。同じように、最低賃金の引き上げペースを加速するといえば、低所得者層はみな喜んで期待することになるでしょう。

しかし、引き上げのペースを上げ過ぎると、救済されると思っていた低賃金の人々が真っ先に解雇されてしまうというパラドックスをご存知でしょうか。

〔photo〕iStock
その理由というのは、大半の中小零細企業は人件費を大幅に引き上げる余裕がないため、廃業・倒産の道を選択するか、社員・アルバイトの人数を減らす選択をするか、基本的にはこの二択を迫られるからです。低賃金の人々にとって最低賃金は、最低限の収入を補償するという役割を果たしているのです。

債務超過になっていないかぎり、多くの経営者は後者を選択し、事業の継続に努めようとします。その時に初めに解雇される対象となるのは、誰でもできる仕事しかできない人々、低賃金だから仕事がある人々です。

これでは最低賃金の引き上げが、経済・社会にとって期待できる政策ではなくなってしまいます。

もっとも社会が救済しなければならない低賃金の人々をかえって苦しめ、格差拡大を推し進める原動力になってしまうというわけです。

5%という数字
最低賃金引き上げの「副作用」
新しい最低賃金は全国平均で901円と前年度比で3.1%上昇し、4年連続で約3%の引き上げを達成しています。

都道府県別では、1位の東京が1013円、2位の神奈川が1011円、3位の大阪が964円となり、東京と神奈川が初めて1000円の大台を超えています。その一方で、最下位が青森、岩手、秋田、長崎、熊本、鹿児島など、東北・九州の各県を中心に15県の790円となっています。


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今年6月に寄稿した『最低賃金の「早期1000円引き上げ」で、失業と倒産が激増する…!』(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65149)で私は、「最低賃金を大幅に引き上げるべきだ」と考える識者が増えてきているなかで、政府内では菅義偉・官房長官が、経済財政諮問会議の民間議員では新浪剛史・サントリーホールディングス社長が「5%程度を目指す必要がある」と主張していることに対して、強い懸念を申し上げました。

最低賃金の引き上げ自体は問題ないのですが、日本経済の実力を超えて引き上げてしまうと副作用のほうが大きくなってしまうからです。

実際に、政府が6月21日に閣議決定した経済財政運営の基本方針「骨太の方針」では、最低賃金の引き上げペースをこれまで以上に上げるということが示唆されました。

そのような政府の方針があるなかで、7月30日に開かれた中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)が徹夜の激論を経て、最低賃金の引き上げ率を前年度並みの3.1%で決着させたのは評価したいと思っています。

5%という数字が遠のいたことで、過度に目先の副作用を懸念する必要がなくなってきたからです。

やる気を出せば…?
「生産性向上」という精神論…
「5%程度を目指す必要がある」という主張の背景には、「最低賃金を5%ずつ10年連続で引き上げれば、日本の生産性はきっと高まるはずだ」という誤った考え方があります。

最低賃金の引き上げペースを拡大すれば、日本で大多数を占める中小零細企業が生き残るためには、有無を言わさず生産性を高める必要性に迫られるという論法なのです。

その結果として、生産性を高められた企業は存続することになるし、高められなかった企業は淘汰されてしかるべきだという思考経路が働いているというわけです。

果たして、中小零細企業が生産性を高める必要性に迫られることで、本当に生産性を高めることができるのでしょうか。

これは少し考えればわかることですが、5%を主張する識者の論理では「中小零細企業の経営者がやる気を出せば生産性を高められる」と言っているのと何ら変わりがないのです。「インフレになると信じればインフレになる」というインフレ期待と同じで、昨今の経済の実態を無視した単なる精神論の類にすぎないのです。

そもそも、多くの中小零細企業の経営者が人件費の負担が増え続けるなかで、やれることはすでにやっています。決して識者の言うように、怠けているのではありません。

地方の経営者でも収益が上がるというのであれば、雇用を削減すること以外のことはすでにやっているのです。中小零細企業にとってセルフレジやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの自動化投資の負担は決して軽くはないですが、従業員の作業を減らして経営の効率化を図っている、または考えている経営者が少なからずいます。

しかしながら、大多数の中小零細企業は自動化投資を目前にして、大きな壁に突き当たってしまいます。

たとえば、小売業では自動化投資をしても回収の見込みが立たないことが多いですし、製造業では大量生産から少量多品種生産へと生産体制が変わってきているため、自動化投資の障害となっているのです。仕事の受注先の大手企業の方針に中小零細の製造業が逆らえるわけがありません。

史上最悪の格差水準
生産性の高い国は「貧困率も高い」
このような荒唐無稽な考え方が受け入れられてしまうのは、日本の現状をしっかりと把握することなく、生産性が低いという数字だけを見てしまっているからです。

〔photo〕iStock
その数字の背景には、それぞれの国々によって生活様式や価値観、文化、税制、社会保障などに違いがあり、一概に並べて比較するのが適当であるとはいえません。生産性の計算にしても統一した基準で計算されてはいないので、絶対的な数字というわけではないのです。

そこで注目しなければならないのは、各国の国民の生活水準はどうなのか、国民はその生活水準に満足しているのか、生活が苦しい国民の割合はどのくらいなのか、ということです。

また、日本人と比べてアメリカ人やイギリス人などが豊かな暮らしをしているのかといったことにも目を向ける必要があります。そうすれば、生産性という数字を引き上げるためだけに、何を犠牲にしなければならないか理解ができると思います。

アメリカ政府の公式見解では、アメリカ人の6人に1人は貧困層、3人に1人は貧困層および貧困層予備軍です。今のところ、格差の拡大は史上最悪の水準にあるといわれています。

イギリスでも大都市と地方の格差が拡大し、地方を中心に生活苦に悩むイギリス人が増えています。アメリカでトランプ大統領が誕生し、イギリスがブレグジットで混乱しているのは、両国の国民の生活水準から見れば必然だったのかもしれません。

生産性より大切なこと
「大企業」と「地方企業」
経済財政諮問会議で5%引き上げを主張した新浪剛史・サントリーホールディングス社長は、超エリートとして大企業の世界しか知らないのが残念なところです。

〔photo〕gettyimages
グローバルに競争している企業は、最低賃金が5%上がろうが10%上がろうが、業績にほとんど関係がありません。ところが、地方の企業はグローバル企業とまったく経営環境が異なりますし、とくに地方でそれなりに大きい企業では、雇用を守らなければならないと考えている経営者が実に多いのです。

雇用を守るということは、なかなか生産性や利益率まで手が回らないのが現状です。利益率を上げるには雇用を削減すれば達成できますが、経営危機でもないのにそうする地方の経営者は稀でしょう。

東京の大企業は利益を第一に求めて株主に報いようとしている一方で、地方の企業の多くは生産性を上げるより今の雇用を守るほうが大切であると考えています。生産性の議論をする際は、大企業と地方企業の経営者の視点は違うということを認識するべきです。

日本も最低賃金は2003年度から2018年度までの15年間で32%引き上げています(2019年度を含めると36%上がっています)ので、決して上げてこなかったわけではありません。

日本では最低賃金の引き上げが生産性の引き上げに関係しているという効果は、少なくともこれまでのところ確認されていません。

そうであるならば、やはり真に注目するべきは生産性という数字ではなく、国民が今の生活水準や生活環境をどう思っているかです。

安全策
「やればできる」は危険だ…
常日頃から企業の経営現場を見ている立場から言わせていただくと、収益性が高い大企業は最低賃金を5%上げても10%上げてもほとんど影響がありません。しかし、最低賃金の引き上げに余力がない中小零細企業は、社員やアルバイトの人数や労働時間を減らすしか選択肢がありません。

冒頭に申し上げた通り、その時に苦境に追い込まれるのは、低賃金だからこそ仕事にありつける、特別なスキルを持たない人々です。結局のところ、最低賃金の大幅な引き上げは、もっとも社会が助けなければならない人々をさらなる窮地に陥らせてしまうのです。

最低賃金の引き上げが進むにつれて、その水準に近い時給の人々が増えてきています。最低賃金の改定後にその賃金水準を下回った労働者の割合を示す「影響率」という数値が、その状況をよく表しています。

影響率は2008年度から2012年度にかけて2%〜5%の水準にあったのですが、2016年度は11%、2018年度は13.8%にまで上がってきているのです。政府は全国平均1000円をより早期に実現することを目指していますが、900円を超えてくると影響率の加速度が高まってくるので、今後は雇用への悪影響を意識しておかねばなりません。

そのように考えると2020年度以降の最低賃金に関しては、できるかぎり緩やかな引き上げにとどめていくのが無難です。日本は他の先進国より物価上昇率が低いので、いっそうの気配りが求められます。

その際に、どの程度の引き上げが適切なのかと聞かれることがありますが、それは誰にもわからないことです。ただ、敢えて申し上げるとすれば、2%程度の引き上げに縮めるのが安全策のように思われます。

深刻なことになる
アルフレッド・マーシャルの教え
最低賃金を毎年引き上げ続けていくことで、生産性の低い企業が徐々に淘汰されていくのが避けられない流れですが、そこに勤める人々の多くはスキルに乏しいので、簡単には再就職することができないでしょう。

ですから、そういった人々にスキルの習得を促し、労働市場に戻していくシステムを早急に整備しなければならないと考えています。

若年層や低学歴層にスキルを身に付けてもらい人材育成の底上げをすることこそ、生産性の引き上げに直結する可能性が極めて高いからです。

2019年度の国の一般会計では、公共事業関係費は6兆596億円(臨時・特別の措置8503億円を含めると6兆9099億円)となっていますが、そのうち1兆円だけでも恒常的に人材教育に回すことができれば、若年層や低学歴層だけでなくすべての層のスキルアップに役立つはずです。

生産性という数字を引き上げるために深刻な格差社会になるよりは、人材教育の底上げによって低スキルゆえの失業を回避すると同時に、生産性も上げていくという前向きな政策のほうが、大多数の国民が賛成してくれるでしょう。

ケインズの師匠でもあるケンブリッジ大学のアルフレッド・マーシャル教授は、学生たちをロンドンの貧民街に連れて行き、そこで暮らす人々の様子を見せたうえで、「経済学者になるには、冷徹な頭脳と暖かい心の両方が必要である」と教え諭したといわれています。最低賃金を大幅に引き上げるべきだと言っている識者は、冷徹な頭脳ばかりが鍛えられて、人としての心や感性が鈍くなっているのではないでしょうか。マーシャル教授の言葉をぜひ心に刻んでいただきたいところです。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67370?page=7


衝撃! 日本人の賃金が「大不況期並み」に下がっていた
アベノミクスとはなんだったのか…

中原 圭介経済アナリスト


毎月勤労統計の不正が発覚したことによって、日本の賃金上昇率がかさ上げされていたことが明らかになり、国会が紛糾している。野党は「アベノミクス偽装」だと言うが、じつは問題の本質はそんなところにあるのではない。独自試算をしてみると、日本人の賃金がすでに「大不況期並み」になっていることが明らかになったんです――そう指摘するトップ・アナリストで、『日本の国難』の著者・中原圭介氏による緊急レポート!
野党の言う「アベノミクス偽装」は本当か?
厚労省の一連の不正統計において、とりわけ野党が問題視しているのは、2018年1月から「毎月勤労統計」の数値補正を秘かに行っていたということです。

たしかに、2018年からの補正によって賃金上昇率がプラスにかさ上げされていたのは紛れもない事実であり、厚労省が集計しなおした2018年の実質賃金はマイナス圏に沈む結果となったので、野党が「アベノミクスは偽装だ」と追及するのは間違いではないといえるでしょう。
しかし私は、野党が2018年の実質賃金だけを取り上げて、「アベノミクスは偽装だ」というのは、大きくポイントがずれているし、国民をミスリードしてしまうと考えております。
というのも、2018年だけの実質賃金を取り上げるよりもずっと重要なのは、アベノミクス以降の実質賃金、すなわち2013年以降の実質賃金がどのように推移してきたかという事実だからです。統計の連続性を担保したかたちであれば、補正を行っても行わなくても、賃金に関するアベノミクスのごまかしが露見することになるというわけです。

2013年〜15年に「リーマン級」にまで暴落していた

そのような視点から、2000年以降の賃金の推移を独自の試算(2000年の賃金を100として計算)で振り返ってみると、名目賃金は2000〜2004年まで大幅に下がり続けた後、2006年までは小幅な上昇に転じたものの、リーマン・ショック前後の2007〜2009年に再び大幅に下がり、その後の2017年まではかろうじて横ばいで踏ん張っていることが見て取れます。
中原氏の著書『日本の国難』より

そうはいっても、2016〜2017年の名目賃金は2年連続で小幅ながらも増えているので、政府によって「賃金はいよいよ上昇トレンドに入ったのだ」と力強く語られるのは致し方ないのかもしれません。しかしながら、物価の変動率を考慮した実質賃金の動きを名目賃金に重ねて眺めると、政府の主張が明らかに間違っていることがすぐに理解できるようになります。
そのように容易に理解できるのは、実質賃金は2000年以降、名目賃金とほぼ連動するように推移してきたのに対して、2013年以降はその連動性が完全に崩れてしまっているからです。2013年以降の5年間の実質賃金の動向を振り返ってみると、2013年は0.8ポイント減、2014年は2.6ポイント減、2015年は0.9ポイント減と3年連続で減少を続けた後、2016年には0.7ポイントの増加に転じたものの、2017年には再び0.2ポイントの減少へと逆戻りしているのです。
ここで注目したいのは、日本は2012年12月から戦後最長の景気拡大期に入っているにもかかわらず、2013〜2015年の実質賃金の下落幅は累計して4.2ポイントにまでなっていて(※厚労省の当時の統計では4.8ポイント減/2015年=100で計算)、その下落幅というのは2007〜2009年のリーマン・ショック前後の5.2ポイントに迫っていたということです。そのうえ、2014年の2.6ポイント減という数字は、2008年の1.9ポイント減や2009年の2.2ポイント減を上回り、2000年以降では最大の下落幅となっているのです。

景気は国民の実感のほうが正しい

2013〜2015年の実質賃金が未曽有の不況期に迫る落ち込みを見せた理由は、同じ期間に名目賃金がまったく増えていなかった一方で、大幅な円安が進行したことで輸入品の価格が大幅に上昇している過程において、消費増税までが追い打ちをかけて実質賃金の下落に拍車をかけてしまったからです。
私の試算では、2013〜2015年の実質賃金の下落幅4.2ポイント減のうち、輸入インフレの影響は2.5ポイント減、消費増税の影響は1.7ポイント減となっているのです。
〔photo〕iStock
その結果として、2014〜2016年の個人消費は戦後最大の水準まで減少することになりました。
円安インフレによりガソリンや食料品など生活に欠かせない必需品ほど値上がりが目立つようになったので、多くの家庭で財布を握る主婦層はそれらの必需品の値上がりには敏感に反応せざるをえず、ますます節約志向を強めていくことになったのです。
円安によって大企業の収益が飛躍的に高まったのに対して、国民の賃金上昇率は物価上昇率に大きく割り負けしてしまい、購買力が加速度的に落ち込む事態になったというわけです。
経済メディアのお決まりの説明では、「実質賃金より名目賃金のほうが生活実感に近い」といわれていますが、私は少なくとも日本人にとってはその説明は当てはまらないと確信しています。というのも、日本人の消費の動向は実質賃金の増減に大きく左右されていることが明らかになっているからです。
著書『日本の国難』より
現に、実質賃金と個人消費のグラフを重ねて相関関係を検証すれば(上グラフ)、実質賃金が大幅に下落した時にのみ個人消費が減少するという傾向がはっきりと表れています。とりわけ2013年以降は名目賃金と実質賃金の連動性が逆相関の関係になったことにより、かえって実質賃金と個人消費の関係がわかりやすくなったというわけです。
実質賃金と個人消費に強い相関関係が認められる今となっては、経済学者も経済官僚も「名目賃金が国民の生活実感に近い」という間違った常識を改める必要があります。そのうえで、いかに実質賃金を上昇させていくのかという発想を取り入れて、国民の生活水準の向上を考えていかねばならないのではないでしょうか。

国民の8割はアベノミクスの蚊帳の外にいる

安倍晋三首相の言う「平均賃金」とは名目賃金のことを指しており、「史上最高の賃金上昇率」とは連合の発表している数字を根拠にしています。
しかし、これまで申し上げてきたように、普通の暮らしをする国民にとって重要なのは、決して表面上の名目賃金などではなく、物価を考慮した実質賃金であります。おまけに、連合に加盟している労働者は日本の全労働者のわずか12%にすぎず、労働組合がない圧倒的大多数の中小零細企業の労働者は含まれていないので、史上最高の賃金上昇率は一部の大企業の正社員に限定されて行われていたと言っても差し支えはないのです。

戦後最長の景気拡大なのに…

私は2013年にアベノミクスが始まった当初から、「アベノミクスの恩恵を受けられるのは、全体の約2割の人々にすぎないだろう」とざっくりとした感覚で訴えてきましたが、その後のメディアの世論調査でも概ねそれに近い結果が出ていたということは興味深い事実です。
私がなぜ約2割の人々だといったのかというと、富裕層と大企業に勤める人々の割合が大まかにいって2割くらいになるからです。
アベノミクスが円安によって株価や企業収益を高めるかたわらで、輸入品の価格上昇によって人々の実質賃金を押し下げるという弊害をもたらすことは、最初からわかりきっていたのです。
要するに、普通に暮らす残りの8割の人々は、未だにアベノミクスの蚊帳の外に置かれてしまっているというわけです。日本は戦後最長の景気拡大が続いているとはいっても、いずれの世論調査においても国民の約8割が「景気回復を実感できない」と答えているのは、実は至極当然のことといえるでしょう。

不正統計があぶり出した「実質賃金の真実」

私はこれまでの著書や連載のなかで、経済統計のなかでいちばん重視すべき統計は決してGDP成長率の数字そのものではなく、国民の生活水準を大きく左右する実質賃金であると、たびたび訴えてきました。
アベノミクスの最大の問題は、政府が国民に対して名目賃金(とりわけ大企業の賃金上昇率)の成果ばかりを強調し、実質賃金にはいっさい触れてこなかったということです。
さらにひどいことに、安倍首相は「勤労統計の伸び率のみを示して、アベノミクスの成果だと強調したことはない」「連合の調査では今世紀最高水準の賃上げが続いている」と2月1日の参議院本会議で答弁しました。連合に加盟しているのは大企業ばかりで、その賃上げ率を日本全体に当てはめて説明している首相の姿は、あまりに国民の暮らし向きに鈍感ではないかと感じました。
それに加えて、名目賃金にしても実質賃金にしても、調査の対象は「事業所規模5人以上」となっているので、零細企業は調査対象外となっており、実態を正確に反映しているとは言えないところがあります。零細企業は中小企業よりも財務的にも経営的にも行き詰っているところが多く、零細企業を調査対象に入れれば、実態はもっと厳しい結果が出るはずだからです。
今回の不正統計の問題における大きな成果は、メディアが多少は実質賃金に注目するようになったということです。そういった意味では、野党が政府を追及しているポイントがずれているとはいっても、結果的には好ましい形になったのではないかと思っております。
政府には「国民の暮らし向きは良くなっていない」という現実をしっかりと直視してもらったうえで、国民の暮らしが良くなる経済政策や社会保障制度を構築することに期待したいところです。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59692?page=3

http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/185.html

[経世済民133] 若田部副総裁、低金利やマイナス金利長期化望まない−「出口」急がず 利下げと超長期金利の低下防止の両立困難、量拡大の公約が足かせ 

若田部副総裁、低金利やマイナス金利長期化望まない−「出口」急がず
Katherine Greifeld
2019年10月4日 7:34 JST
大規模金融緩和を終わらせる「出口」に急いでいるという意味でない
長期にわたりいつまでも低金利を維持することは望んでいない
日本銀行の若田部昌澄副総裁は3日、ニューヨークでの講演後の質疑応答で、低金利やマイナス金利の長期化は望まないと語った。

  追加緩和に前向きなリフレ派として知られる若田部副総裁はジャパンソサエティーでの講演後、理想をいえば2%の物価目標を達成し、現在のマイナス金利政策をできるだけ早くやめたいが、それは大規模な金融緩和を終わらせる「出口」に急いでいるという意味ではないと発言。長期にわたりいつまでも低金利を維持することは望んでいないと述べた。

  若田部氏はまた、危機対応時の政策協調について、財政政策当局と金融政策当局が協力して状況に対処する必要があると指摘した。

関連記事
若田部副総裁:金融緩和そのものが、成長力の強化に貢献できる
relates to 若田部副総裁、低金利やマイナス金利長期化望まない−「出口」急がず
原題:BOJ’s Wakatabe Wants to Get Out of Negative Rates as Soon as Can(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-03/PYTH97T0G1L101?srnd=cojp-v2


利下げと超長期金利の低下防止の両立困難、量拡大の公約が足かせ
日高正裕、Chikako Mogi
2019年10月4日 8:59 JST
超長期債市場は国内だけでなく海外からの投資資金で需給逼迫
日銀は政策枠組みの「弾力運用」に踏み切る内容示すー三菱モルガン
日本銀行の黒田東彦総裁が9月に利回り曲線の傾斜化誘導を示唆する発言をしたのを受けて、マイナス金利の深掘りと同時に超長期金利の低下防止策が打ち出されるとの観測が市場に台頭している。ただ、金利低下を抑えるには国債購入を減らすしかなく、両立は難しいとみられている。物価目標達成のために資金供給を拡大させるという日銀の公約が制約となるからだ。

  日銀の超長期債の買入額は月4500億円と、マイナス金利を導入した2016年2月当時の月2兆2000億円程度から大きく減っているが、超長期物の取引の中心である20年金利は足元で0.2%前後と当時の4分の1程度の水準にとどまっている。世界経済の下振れリスクの高まりや日銀の国債保有額増大で金利低下圧力が強まっていることが背景だ。

BOJ to Review Prices and Economy After Standing Pat for Now
Haruhiko KurodaPhotographer: Akio Kon/Bloomberg
  日銀は前月末に公表した10月の長期国債買い入れ方針で、残存25年超の下限をゼロとし、場合によってはオペを見送る可能性を示唆した。野村証券の中島武信シニア金利ストラテジストは、買い入れをゼロにしても超長期金利の上昇余地は「限定的」とみる。

  日銀には物価上昇率が安定的に2%を超えるまでマネタリーベース拡大方針を継続するというオーバーシュート型コミットメントの公約がある。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、世界的な金利低下圧力が高まると、需給の逼迫(ひっぱく)を和らげて超長期債利回りの低下を抑制する手法とマネー拡大の公約の共存が「徐々に難しくなってしまう」と指摘する。

  超長期債市場では、運用難の生命保険会社や年金など国内投資家だけではなく、海外からも利回りを求めた投資家の資金が流入しているため、需給の逼迫した状態が続いている。世界的に金利が再び低下基調を強める中で、黒田総裁の思い通りに国内の利回り曲線が傾斜化へ進むのは難しいと指摘する市場関係者は多い。

  日銀が10月に開催する金融政策決定会合を巡っては、JPモルガン証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、SMBC日興証券、東海東京証券などはマイナス金利の深掘りを予想している。

  市場では、長期・超長期金利の過度な低下の防止、地域金融機関への収益悪化への対応など政策の持続性を高めるための副作用対策も同時に打ち出すとみられている。三菱UFJモルガン・スタンレー証の六車治美シニアマーケットエコノミストは、オーバーシュート型コミットメントについても「弾力運用」に踏み切る内容を示すと予想している。 
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-03/PYQEVJT0AFB601?srnd=cojp-v2



http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/294.html

[経世済民133] 主要債券市場、世界経済成長失速とインフレ期待鈍化のシグナル 日経平均が2%安のスピード調整ーガス抜きか世界株安の始まりか 米金融当局に追加利下げ圧力強まる、弱い経済指標の発表相次ぎ 豪中銀:世界成長見通し不透明感増す、外的ショックに言及 ECB経済は想像より悪い、期待制御不能の危険は冒せない
主要債券市場、世界経済成長失速とインフレ期待鈍化のシグナル
Liz Capo McCormick、John Ainger
2019年10月4日 10:26 JST
• ISMの非製造業と製造業の景況指数振るわず懸念拡大
• 最も深く流動的な債券市場への大規模な動きが見られると市場関係者
世界の主要国債市場は、世界の経済成長の失速とインフレ期待の急速な鈍化を示す明確なシグナルを発している。
  米独国債の利回りは大幅低下、債券市場のインフレ指標は物価圧力の一段の低下を示したほか、投資家が長期債の大量購入にさらなる対価を必要としていないことも示された。さらに米供給管理協会(ISM)が3日発表した9月の非製造業総合景況指数は市場予想を超える大幅な低下となり、1日発表のISM製造業総合景況指数が2009年6月以来の低水準となったことで広がった懸念は一段と強まった。
  2020年にかけての世界経済成長のリスクが高まる中で、投資家は安全資産の購入を増やしている。米下院によるトランプ大統領の弾劾調査開始や1カ月を切った英国の欧州聯合(EU)離脱期限、長引く貿易戦争など経済への逆風は強く、今月の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げが行われたとしても特効薬にはならない見込みだ。
  エバコアISIのポートフォリオ戦略責任者デニス・デブシェール氏は、「各債券市場に一貫して見られるテーマは、リセッション(景気後退)下でのディスインフレ・シナリオという悪い結果のリスク上昇だ」と指摘。「金融政策の効果はまずます弱まっているため、リセッション時にはインフレ期待が非常に低水準で固定されるリスクがある。最も深く流動的な債券市場へ向かう大規模な動きが見られる」と説明した。

原題:Bond Markets’ Tea Leaves Send Sobering Signal: Trouble Is Ahead(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-04/PYTQCR6JIJUP01?srnd=cojp-v2

日経平均が2%安のスピード調整ーガス抜きか世界株安の始まりか
河元伸吾
2019年10月3日 17:32 JST
Final Trading Day Of The Year At The Tokyo Stock Exchange
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
3日の東証1部市場で9割の銘柄が下げ、日経平均株価は前日比2%安の2万1341円だった。貿易摩擦問題の世界経済に与える悪影響が見えてくる中で、自動車や資源といった景気敏感株を売却する動きが広がった。海外要因で株式相場の先行きへの不安が高まったが、一方で国内要因からみれば上昇が一服しただけとの見方もある。

  「日経平均の2万1000円割れも視野に入ってくる」。JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジストは、雇用統計の悪化によっては米国株安が波及するとみる。

日経平均株価の推移
  米経済指標の不振が日米欧といった世界株安を招いた。米供給管理協会(ISM)が1日発表した製造業総合景況指数が10年ぶり低水準になったのに加え、米ADPリサーチ・インスティテュートが2日公表した9月の米民間雇用者数も市場予想を下回った。

  JPモルガン・アセットの重見氏は、4日の日本株も「ポジション調整の売りが続く可能性がある」と慎重だ。ADPで小規模事業者雇用者数の伸びが弱かったため、3日発表のISM非製造業指数も市場予想を下回る結果になる可能性があるとみる。

  一方、大和証券の壁谷洋和チーフグローバルストラテジストはISM非製造業指数や米雇用統計について「予想を下振れてもこれ以上の下落にはなりにくく、反対に予想通りなら一気に今回の下落を取り戻す可能性がある」と話す。中国の国慶節や米中交渉の中断、日米企業の決算発表前とマーケットが真空地帯にあり、いつも以上に経済指標が注目されただけに過ぎないと考えている。

  通商問題などが与えた日本経済への影響はまだはっきりとしていない。野村証券投資情報部の若生寿一エクイティ・マーケット・ストラテジストは「企業決算の本格的な発表前のガス抜きの売り」とみる。東証1部の上昇・下落銘柄数の百分比を示す騰落レシオが前日までに141%と買われ過ぎのサインが出ていたからだ。

2日には141%まで上昇していた
  野村証券は企業業績の回復を見込む。ラッセル野村大型株(除く金融)で2019年度下期は前年同期比12%の経常増益と、上期の減益から好転する見通しだという。「業績回復ストーリーが変わらないと確認されれば、相場が弱気に変わることはない」と若生氏はみる。日経平均株価は75日や200日移動平均水準までスピード調整したが、主要企業の開示が進めば見直し機運が出る可能性もある。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-03/PYS6Q1DWLU6H01?srnd=cojp-v2

債券上昇か、米ISM低調や米利下げ観測で買い先行−日銀オペに注目
日高正裕
2019年10月4日 7:58 JST
債券相場は上昇が予想されている。米供給管理協会(ISM)非製造業総合景況指数の低調や米利下げ観測の高まりを受けて米長期金利が低下した流れを引き継ぎ、買いが先行する見通し。市場では日本銀行が実施する国債買い入れの減額の有無やオペ結果が注目されている。
長期国債先物(12月物) 155円00銭台半ば〜155円20銭台前半か(前日155円01銭)
新発10年物国債(356回債)利回り マイナス0.215%〜マイナス0.20%程度か
(前日マイナス0.195%)
  先物夜間取引で12月物は、米長期金利低下を受けて水準を切り上げ、一時155円21銭まで上昇。結局は前日の日中取引終値比15銭高の155円16銭で引けた。
市場関係者の見方
東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジスト
• きょうの債券相場は続伸と見込む。日銀買い入れ額が注目される
• ただ、新発10年国債利回りはマイナス0.20%まで低下、押し目を拾えた参加者に追っかける必要性は感じない
• 先物中心限月の予想レンジは155円05銭〜155円22銭

日銀オペ
• 残存期間5年超10年以下
• 前回の買い入れ額は3500億円
• 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊シニア債券ストラテジスト
o 今日の通知額は据え置きの可能性の方が高いとみる
o 9月後半の5ー10年の2回連続減額や、10月オペ方針を受けて、債券市場参加者の日銀はいつでも減額に動く、との印象は既に十分に強まっている。オーバーシュート型コミットメントとの整合性に対する配慮も考え併せると、貴重な減額カードを切ってくることはないのではないか
o 据え置きで、結果にもサプライズがなければ、オペが長期債の売り材料になることはないだろう
• 備考:過去の日銀オペ結果一覧
海外市場の流れ
• 米供給管理協会(ISM)が発表した9月の非製造業総合景況指数は3.8ポイント低下の52.6と2016年8月以来の低水準
• 米利下げ観測の高まりを受けて、3日の米ダウ工業株30種平均は前日比0.5%高の26201.04ドルで終了
• 米10年物国債利回りは7ベーシスポイント(bp)低い1.53%程度
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-03/PYRRYRDWLU6H01?srnd=cojp-v2

 


米金融当局に追加利下げ圧力強まる、弱い経済指標の発表相次ぎ
Steve Matthews
2019年10月4日 12:29 JST
市場に織り込まれた10月追加利下げの確率87%に急上昇
製造業減速がサービス分野に波及、10月利下げ確率高まる−ハウス氏
パウエル議長
パウエル議長 Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、追加利下げについてコミットしていないが、経済指標の悪化や不安定な市場動向、トランプ大統領からの持続的なバッシングを受けて、3会合連続利下げを迫る一層大きな圧力に直面している。

  今週発表された製造業と非製造業、雇用のデータの落ち込みを受け市場では10月29、30両日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25ポイントの利下げ確率は87%程度と織り込まれており、9月30日時点の40%から上昇した。リセッション(景気後退)懸念が強まる中で米国株は3週連続安となるペースだ。

Federal Reserve Bank of Chicago President Charles Evans says he is “very concerned” about the outlook for inflation.

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)の米国担当シニアエコノミスト、ジョゼフ・ソン氏は「公表された経済データを受けて10月の利下げの論拠は著しく強まっており、市場はそれを織り込みつつある」と指摘。「今後のデータも引き続き弱ければ、穏健派もタカ派も経済に何らかのバッファーを提供する方向に賛同する可能性がある」と付け加えた。

  シカゴ連銀のエバンス総裁は3日、最近のデータではまだ追加利下げの必要性を確信してはいないとコメント。ハト派姿勢を取ることの多い同総裁はマドリードで行われたブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、決定についてオープンな姿勢だと語った。

2-year yields fall reflecting expectation of more Fed rate cuts
  パウエル議長は9月18日のFOMC後の記者会見で、当局は「会合ごとに金利を決める」と述べ、追加利下げは今後発表されるデータ次第だと言明。9月発表の最新経済予測では年内の追加利下げを予想したのはFOMC参加者17人中わずか7人だった。パウエル議長は10年にわたる景気拡大が後退局面に転じることのないよう保険として利下げを決めたと説明していた。

  しかし、それ以来、先行きは暗くなっており、今週は特にそうだった。米供給管理協会(ISM)が1日発表した9月の製造業総合景況指数は10年ぶりの低水準に落ち込んだ。企業は米中貿易戦争や関税合戦を受けて投資を抑制している。ADPリサーチ・インスティチュートの2日のデータでは、米企業の雇用減速が示された。フォード・モーターなどの自動車メーカーの四半期販売台数も懸念を強める内容だった。さらに、3日発表の非製造業の指数は3年ぶりの低水準だった。

  ウェルズ・ファーゴのシニアエコノミスト、サラ・ハウス氏は「製造業の減速がサービス分野に波及している状況が見られる。弱さは工業セクターにとどまっておらず個人消費の展望にリスクをもたらしている。このため、早ければ今月に追加利下げする確率は高まっている」と指摘した。

U.S. gauge falls to 10-year low as sector's contraction deepens
原題:Fed Pressured to Cut Rates Again as Factories, Stocks Slump (3)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-04/PYTTPI6JTSEB01?srnd=cojp-v2

クラリダFRB副議長:米経済、消費者は全体的に良い状況
Katherine Greifeld、Craig Torres
2019年10月4日 8:13 JST
米連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長は3日、ニューヨークでの会合で、FRB当局者が世界経済の減速などの状況を政策決定に織り込んでいると語った。

  同副議長はFRBが経済を維持するために「適切に行動」するだろうと発言。

  副議長は労働市場について「健全な状態」にあり、「過熱」の兆候はないと述べた。

原題:Fed’s Clarida: U.S. Economy, Consumers Generally in Good Place(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-03/PYTN676JIJUW01?srnd=cojp-v2

豪中銀:世界成長見通し不透明感増す、外的ショックに言及
Emily Cadman
2019年10月4日 10:52 JST 更新日時 2019年10月4日 13:18 JST
国内金融機関の行き過ぎたリスク回避に警鐘、景気抑制の可能性指摘
全体として豪金融システムは回復力ありショック乗り切れると分析
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は4日発表した金融安定報告で、米中の貿易戦争や香港情勢を巡る緊張のエスカレート、欧州連合(EU)からの英国の無秩序な離脱といった外的ショックが、国内経済に打撃を与える可能性に言及し、前回の安定報告公表以降、世界経済の成長見通しの不透明感が増したとの認識を明らかにした。

  国内経済については、既に鈍化しつつある景気の抑制につながりかねないとの懸念から、銀行に対し融資審査の際に厳格になり過ぎないよう求め、「融資は常に一定のリスクを伴うが、金融機関の行き過ぎたリスク回避により経済成長を促す信用供与が抑えられる恐れがある」と説明した。

  半年前の前回報告で住宅価格がさらなる下落を続けるリスクを懸念していた豪中銀は、そうした不安は後退したものの払拭(ふっしょく)されていないと分析。現在の不良債権比率が世界的な金融危機後の高水準を上回っていることに言及した。

  ただ、全体として豪州の金融システムは「なお回復力があり、ショックを乗り切る能力が引き続き培われている」と指摘。主要銀行の資本保有は「過去のほとんどの国際的銀行危機に伴う規模のショックに耐えられる十分な水準にある」との認識を示した。

原題:After Cutting Rates, RBA Tells Banks Not to Be Overly Cautious(抜粋)

(2段落目以降で詳細を追加して更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-04/PYTUJ26S972801?srnd=cojp-v2


ECBビスコ氏:経済は想像より悪い、期待制御不能の危険は冒せない
Alessandro Speciale
2019年10月4日 11:27 JST
過度に緩和的で手に負えない物価上昇につながると考えるメンバーも
「高水準の公的債務の下でのデフレという重大な危険は無視できず」
欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーであるイタリア銀行(中央銀行)のビスコ総裁は、ECBの政策担当者の一部が金融政策について「過度に緩和的」であり、手に負えない物価上昇のきっかけになる恐れがあると主張していることを明らかにした。

  イタリア中銀が公開した発言記録によれば、ビスコ総裁はローマで行われたイベントで、自分を含む他の政策委メンバーは「経済情勢は想像以上に悪く、インフレ期待が制御不能になる危険を冒すことはできない」という立場だと説明した。

  ビスコ氏はその上で、「われわれは物価リスクに注意を払う必要はあるが、高水準の公的債務の下でのデフレというより重大な危険を無視することはできない」と語った。

原題:Visco: ECB Can’t Risk Losing Control of Inflation Expectations(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-04/PYTS6M6S972801?srnd=cojp-v2


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/295.html

[経世済民133] 「地球にやさしい」労働時間は、週9時間!?  「温室効果ガスゼロ」は豊かな国のエゴイズムだ 地球温暖化に適応するインフラを整備せよ
「地球にやさしい」労働時間は、週9時間!?
2019年10月4日(金)18時15分

松丸さとみ
https://www.youtube.com/watch?v=fjuuxrpLGmA

9月、スペイン南東部は過去100年で最大の豪雨に見舞われた......  Susana Vera-REUTERS
<英国の独立系シンクタンクは、気候変動を抑えるためには、1週間あたりの労働時間は週9時間程度にまで削減する必要があるとする報告書をまとめた......>

気温上昇を2度に抑えるために

9月に米ニューヨークで開催された国際連合(UN)気候行動サミットが話題になったこともあり、地球温暖化について、これまでよりも考えるようになった人も多いのではないだろうか。個人の力でできることは、肉食を減らす、車ではなくなるべく自転車で移動する、など複数あるが、「労働時間を減らす」ことも効果があるようだ。
「働くこと」に特化した英国の独立系シンクタンク「オートノミー」はこのほど、気候変動を抑えるためには、1週間あたりの労働時間は週9時間程度にまで削減する必要があるとする報告書をまとめた。
オートノミーは、現在の経済活動で排出される温室効果ガスを考慮したとき、気温の上昇が2度で済む程度にまで排出量を削減するためには、週当たりの労働時間をどこまで短縮する必要があるのかについて調べた。
報告書は、労働時間と温室効果ガス排出量の関係性についてこれまで行われてきた、複数の調査を分析。その上で、経済協力開発機構(OECD)のデータに基づき、OECD全体、英国、スウェーデン、ドイツについて、地球環境が持続可能となる労働時間を算出したも。

余暇時間は贅沢ではなく必須

報告書は、スウェーデンのようにすでに炭素効率性の高い国であっても、労働時間は週12時間以下に抑える必要があるとしている。英国は週9時間、ドイツ週6時間、OECD平均では週に約6時間に短縮する必要がある。スウェーデン、英国、ドイツの平均だと週9時間となる。ドイツの数値が高い理由は、現在の時間当たりの生産水準が高いために、より大きな削減が必要となるためだ。
オートノミーが分析で使用したデータは、産業革命以前と比べたときの気温上昇を2度に抑える前提で行われた研究だ。パリ協定では、さらに厳しい1.5度を「努力目標」としている。
オートノミーは、労働時間の短縮のみでは目標を達成することは不可能であり、製造業や化石燃料抽出などのセクターから、森林管理などより「グリーン」なセクターや、サービス業などに経済活動をシフトする必要があるとしている。また、もはや「余暇時間は贅沢というより、緊急に必要なこと」とも述べている。
とはいえ、定時で仕事を終えても週40時間ほどになる日本を含むほとんどの国では、週9時間にまで減らすなどとてもムリな話だ。オートノミーは、本報告書が非現実的であることを理解していると示唆した上で、「悲惨な状態になるのを避けるには、今のまま続けることの方がもっと非現実的」だとしている。

次のページ労働時間1%減でもCO2排出削減効果が
労働時間1%減でもCO2排出削減効果が

ただ報告書には、こんなデータも掲載されている。2015年に発表された研究では、労働時間を1%減らすことで、温室効果ガスの排出量が0.8%削減できると示唆されたという。また、2012年に発表された研究では、労働時間の1%短縮が、カーボンフットプリントの1.46%削減、二酸化炭素の排出量0.42%削減につながるとしている。
週9時間に減らすことが無理でも、1%減らすことならなんとかできそうな気がしてくるのではないだろうか。
環境問題対策だけが原因ではないが、労働時間の短縮は世界的なトレンドになりつつある。英BBCによるとドイツでは2018年、100万人近い鉄鋼業従事者が1週間当たりの労働時間を、それまでの35時間から28時間に短縮する権利を勝ち取った。また英国では野党労働党が、全国的に週4日勤務を実施する考えを検討している最中だ。
英ガーディアン紙は2015年、スウェーデンにある介護施設の試みを紹介していた。看護師の1日の就業時間を6時間に短縮したことで、効率が上がった上、離職者を減らすことができたという。
気候変動問題の解決に向けて、技術イノベーションの重要性が増しているが、「働き方」をめぐっても、さまざまな議論が生まれている。オートノミーは今回の報告書の中で、地球の生態系が取返しが付かないほどに変わってしまうようになるまでに残された時間は少ないと述べており、この報告書が、議論のための刺激になれば幸いだと結んでいる。
次のページ動画:労働時間を少なくすることは地球を救う
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/9-30_3.php

 

「温室効果ガスゼロ」は豊かな国のエゴイズムだ 地球温暖化に適応するインフラを整備せよ
2019.10.4(金)
池田 信夫
環境 時事・社会

ニューヨークで開催された「第74回国連総会 気候行動サミット」の様子(2019年9月23日撮影、写真:TT News Agency/アフロ)
(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)
 国連の気候行動サミットで話題を呼んだのは、スウェーデンの高校生、グレタ・トゥーンベリの演説だった。彼女は去年(2018年)から学校を休んで世界各国でデモに参加し、これまでにもイギリス議会、フランス議会、EU議会、アメリカ議会、COP(国連気候変動枠組条約会議)などで演説してきた。
 16歳の高校生が、世界各国の議会や国際機関で演説するのは異例だ。この背景には、グレタを「人類の未来の代表者」として利用する世界の環境NGOの動きがあるが、彼らの運動で世界の環境はよくなるのだろうか。

豊かさが命を救う
 グレタの演説は絶叫調で、その内容は単純である。
人々は苦しんでいます。人々は死にかけています。生態系全体が崩壊しています。私たちは大量絶滅の始まりにいます。それなのにあなたがたが話すのは、お金と永遠の経済成長のおとぎ話ばかり。よくそんなことがいえますね!
 地球温暖化で人類を含む生物が「大量絶滅」するというのは誤りである。人類は絶滅どころか、人口が激増している。地球上の種が減るという意味の大量絶滅は起こっているが、その原因は温暖化ではなく、人類が環境を破壊してきたことだ。1970年から今までに行われた環境破壊は、4℃の気温上昇に匹敵する。
 人類以外の多くの動物にとって地球環境は悪化しているが、人類の生活環境は大きく改善された。産業革命前には人類の94%が1日の所得が2ドル未満の最貧層だったが、今は最貧層は10%以下になった。乳幼児死亡率は43%から4.5%に下がった。
 生活環境が改善した最大の原因は、豊かになったことだ。日本の最近の災害で被害が最大だったのは、昨年の西日本豪雨の死者227人だが、1959年の伊勢湾台風の死者は5238人だった。昔の台風の被害が大きかったのは台風が大きかったからではなく、堤防などのインフラが整備されていなかったからだ。

温暖化は熱帯の防災問題


 グレタは「30年以上にわたり、科学が示す事実はきわめて明確でした」というが、残念ながら事実はそれほど明確ではない。1981年から2010年にかけて地球の平均気温は0.3℃上昇したが、ここ数年で0.1℃下がった。今後も上昇すると予想されているが、不確実性が大きい。
 温暖化の1つの原因が人間の排出する温室効果ガスであることは確かだが、その影響も不確実だ。9月25日に発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の海洋・雪氷圏特別報告書(SROCC)では、第5次評価報告書の気温上昇予測にもとづいて、今後の海面上昇を予測している(下のグラフ)。
2300年までの平均海面上昇の予測(m)(出所:SROCC)

https://www.ipcc.ch/srocc/home/
https://jbpress.ismedia.jp/articles/gallery/57829?img=img_45daf2b369a18f0e035b989adb31db8955048.jpg

 今世紀末までに地球の平均気温が今より4.8℃上昇する最悪のシナリオ(RCP8.5)では、北極や南極の氷が溶け、2100年に世界の海面は60〜110cm上昇する。地球温暖化に関するパリ協定の2℃目標が実現した場合(RCP2.6)には、30〜60cm上昇する。
 パリ協定が実現される見通しはないので、RCP2.6は除外してよいが、何もしないで化石燃料をどんどん燃やすRCP8.5も過大評価だろう。大方の専門家の見方は、2100年までに2〜4℃上昇というものだ。それ以降の予測は参考値で、厳密な計算ではない。
 最悪の場合、2100年までに何が起こるだろうか。SROCCの予測では最大84cm海面が上昇し、熱帯では洪水が増える。太平洋の小島が水没し、サイクロンや豪雨が増える。海洋熱波は20倍から50倍に増え、熱帯では漁獲が減るが、南極海では増える。
 被害は熱帯に集中しており、先進国で考えられるのは(最悪でも)毎年1cmぐらいの海面上昇である。これは長期間かかって起こるので、インフラ整備で対応できる。地球温暖化は先進国では緊急の問題ではなく、熱帯の防災問題なのだ。


世界にはまだ成長が必要だ

 温暖化サミットでは「2050年までに温室効果ガスの排出ゼロ」という目標が掲げられ、それに77カ国が賛成したが、この中には日本もアメリカも中国もインドも含まれていない。国連が語らないのは、温暖化を止める具体策である。
 パリ協定で日本は「2030年までに温室効果ガスを2013年の水準から26%削減する」と約束したが、そのためには電力に占める再生可能エネルギーの比率を22〜24%、原子力を20〜22%にしなければならない。
 これは不可能である。再エネ比率は(水力を含めて)16%でピークアウトし、原子力は3%で再稼働の見通しが立たない。それより最大の問題は、電力は最終エネルギー消費の26%を占めるに過ぎないことだ。
 1次エネルギー供給の87%は(石油化学や自動車を含む)化石燃料であり、その消費をゼロにすることはできない。CO2ゼロという目標は、物理的に不可能なのだ。世界全体をみると、経済成長はまだ足りない。
 堤防などのインフラ整備のコストは、CO2を削減するコストよりはるかに安い。ビル・ゲイツや潘基文などは、地球温暖化に適応する投資を促進する世界適応委員会という財団を設立した。
 地球規模で最大の問題は、温暖化ではない。今も地球上では毎日1万人以上が、感染症で死亡している。大気汚染でも同じぐらい死亡している。その原因は貧しさである。まともな水が飲めず、家の中で木を燃やして暖を取るしかない人々が、世界にはまだ何億人もいるのだ。
 グレタのようにヨットをチャーターして大西洋を渡れる金持ちの白人には、お金も経済成長もいらないだろうが、 地球上の温室効果ガスの半分以上を出す途上国(中国やインドを含む)にとっては、地球の平均気温より生きることが大事だ。
 日本が地球環境に貢献できるのは、無理やりCO2を減らすことではなく、熱帯のインフラ整備に投資することだ。世界にはまだ経済成長が必要である。
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恐るべき無人機攻撃、世界最強の防空システムも突破
「サウジアラビアが配備しているアメリカ製防空システム、それもアメリカ防衛産業が誇る高額な防空システムが全く役に立たなかった」という事実が国際社会に明らかになってしまった。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57829

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/296.html

[政治・選挙・NHK266] 小泉氏、桃の菓子食べ福島PR 小泉環境相、福島第1など初視察「風評への強い懸念」小泉語、政権内に懸念も=野党「意味不明」と批判
国内政治ニュース(共同通信)2019年10月4日 / 19:05 / 34分前更新
小泉氏、桃の菓子食べ福島PR
共同通信
1 分で読む

 小泉進次郎環境相は4日、中高一貫校「福島県立ふたば未来学園」(広野町)の生徒が作った洋菓子を省内で試食した。福島特産の桃を使ったマドレーヌをほおばると「すごくおいしいね。桃の香りがすごい」と感嘆。風評被害に苦しむ福島の食材をPRした。

 同学園は東京電力福島第1原発事故後に開校。形が悪かったり、柔らかくなったりした桃の使い道に悩んでいた同県伊達市の依頼で、桃の風味を生かした洋菓子に仕上げた。

 この日は、ともに高校2年の星亜沙美さん(16)、青木茄奈有さん(17)が代表して、環境省を訪ねた。小泉氏は規格外の桃を使っているのは食品ロス対策にもなっていると称賛した。

【共同通信】
https://jp.reuters.com/article/idJP2019100401002359?il=0

小泉環境相、福島第1など初視察「風評への強い懸念」
政治 環境エネ・素材 北海道・東北 経済・金融
2019/10/2 17:39 
小泉進次郎環境相は2日、東京電力福島第1原子力発電所と中間貯蔵施設などを就任後、初めて視察した。視察後の記者会見で原発構内で保管されている処理水について「この問題を最も心配しているのは福島の漁業の皆さんだ。風評への強い懸念がある」と述べた。福島の復興に向けては、地元住民の理解を重視する姿勢を改めて強調した。

小泉環境相(右から2人目)は汚染土壌の中間貯蔵施設などを視察した(2日、福島県大熊町)
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小泉環境相(右から2人目)は汚染土壌の中間貯蔵施設などを視察した(2日、福島県大熊町)

午前は放射性物質に汚染された土壌をフレコンバッグに入れて保管している仮置き場や、中間貯蔵施設(大熊町)などを視察した。午後は福島第1原発を訪れ、2019年4月に使用済み核燃料プールからの燃料の取り出しが始まった3号機の作業の進捗などを確認した。

福島原発構内には放射性物質トリチウムを含む処理水が1000基近くのタンクに約115万トンたまっている。小泉環境相は「必ず解決していかないといけない問題」と強調。現実的とみられている海洋放出については「様々な観点から総合的に検討していかないといけない」と慎重な姿勢を示した。

中間貯蔵施設の汚染土については「(保管する)量を減らし、再利用を進めていくためには、地元の方々の理解をどう得ていくかがまず大事だ」と述べた。

小泉環境相が9月11日に就任してから福島訪問は今回で3回目。早期に続けて訪問することで、福島復興を重視する姿勢を強調する狙いもある。
 

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2019/8/8 18:02

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50504260S9A001C1000000/

小泉語、政権内に懸念も=野党「意味不明」と批判
2019年09月26日12時55分

国連総会に併せて開かれる「国連気候行動サミット」などに出席するため、ニューヨークへ出発する小泉進次郎環境相=21日、成田空港
国連総会に併せて開かれる「国連気候行動サミット」などに出席するため、ニューヨークへ出発する小泉進次郎環境相=21日、成田空港

 小泉進次郎環境相の発言が物議を醸している。気候変動問題への取り組みの必要性を「セクシー」と表現し、野党が「意味不明」などと批判。原発問題への対応でも具体性を欠く発言が相次ぐ。政府・与党内からも、答弁能力を不安視する声が出始めた。
<第4次安倍再改造内閣 関連ニュース>

 「気候変動のような大きな問題は、面白く、クールでセクシーでなければならない」。小泉氏は22日、訪問先の米ニューヨークで海外メディアと記者会見し、独特の「小泉語」で地球温暖化対策への意気込みを語った。
 小泉氏は環境相に就任後、有力な「ポスト安倍」候補として、その言動に一段と注目が集まっている。ただ、個別の政策をめぐっては、踏み込みを避ける姿勢が目立つ。
 東京電力福島第1原発事故に伴う汚染土の処理を記者団に問われ、小泉氏は「30年後の自分は何歳かを(東日本大震災の)発災直後から考えていた」などとはぐらかした。放射性物質を含む処理水の処分に関する質問にも、福島県内の漁協関係者と「ノドグロ」の話題で盛り上がったエピソードを披露し、けむに巻いた。
 10月4日召集の臨時国会では、閣僚としての答弁能力が本格的に問われる。自民党幹部は「あの答弁では国会が持たない」と指摘。公明党幹部も「もっと勉強しないと野党に突っ込まれる」と懸念する。
 小泉氏は官僚が用意した原稿を読まない場面も多い。政府関係者は「あの調子で話したらどんどんぼろが出る」と不安を口にした。
 野党は手ぐすね引いている。立憲民主党の福山哲郎幹事長は「セクシー」発言について「意味が分からない」と酷評。共産党の小池晃書記局長も「大臣としての資質、資格に関わる」と指摘、臨時国会で追及する考えを示した。

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2019092501241&g=pol
http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/205.html

[国際27] ミニ・スタグフレーションへの警戒 景気急減速のユーロ圏:ドイツリスクと世界への影響 アルゼンチンのデフォルト不安をどう見るか
media.monex

ミニ・スタグフレーションへの警戒
広木隆の米国株投資戦略
広木 隆 2019/10/04
米国株式市場でダウ平均は3日ぶりに反発したが、一時は300ドルを超える下落となった。ISM非製造業景況感指数が52.6と、2016年8月以来の低水準となったことを受けて景気の悲観論が強まった。ただ、その前の2日間で800ドル超も下げ、200日移動平均にワンタッチしたことから押し目買いが入った。200日移動平均は市場が低迷していた8月、底値形成期に下値支持線となった水準だ。

出所:Bloomberg
今週の急落は1日に発表されたISM製造業景況感指数の悪化がきっかけだ。製造業に続いて経済の大部分を占める非製造業も悪化したことで追加緩和期待が台頭、それが株式相場の反発を支えた。
しかし、僕は、事はそう簡単ではないと思う。これまでFEDは市場の要求に屈して2回利下げをした。それで市場には一定の満足感が得られ利下げ打ち止め機運も出ていたはずだ。ここからさらにカードを切るのは相当慎重にするべきだ。
確かに景気は悪化している。それは製造業の景況感が悪いとか、そういうことではなく、9月6日のレポートで指摘した労働市場のピークアウト感が顕著になってきたことだ。振れの大きなNFPではなく、ISM非製造業景況感指数の雇用指数が完全に下抜けた。今回の景気循環のなかで最低である。非製造業は全米の民間雇用の9割を占める。追って、政府の雇用統計も悪化してくるだろう。

出所:Bloomberg
そうしたなかインフレの懸念が高まっている。ISM製造業景況感指数の10年ぶり悪化ばかりが喧伝されるが僕が注目したのは仕入れ価格の上昇だ。内訳のなかでは最大の変化幅。仕入れ価格指数自体はまだ50以下で価格の低下が続いているが変化率が鈍化に転じた。来月は50を超えてくるかもしれない。
ISM非製造業景況感指数でも価格指数は上昇した。再び60に乗せてきた。経済の太宗を占める非製造業の価格指数はFEDがウォッチしているコアPCEデフレーターとの相関が高い。

出所:Bloomberg
8月のコアCPIは前年同月比2.4%と1年ぶりの高さと報じられたが、下2桁までみれば実に2008年以来の高い伸びだ。

出所:Bloombergデータよりマネックス証券作成
至るところでインフレの上昇が目立つが背景は対中関税だろう。関税引き上げで中国製品が値上がりすることによるインフレは、ちょっと考えれば誰もが思いつく話である。第一弾、第二弾の段階では米国経済に与える影響が軽微にとどまりインフレが高まらなかったが、第3弾の2000億ドル分が今年5月から25%になった。それがさすがにじわりと来ているのだろう。今後ますます関税が上がったり発動されたりしてくる。その分の価格転嫁が進む来年には誰も想像していなかったインフレ率になる可能性が高いと思う。
そうなったら利下げどころの話ではない。労働市場のピークアウトも来年には明らかになるだろう。本来、景気が弱ければインフレ圧力も弱いものだが、今回のインフレは景気とまったく関係ない貿易戦争によって引き起こされている。ディマンド・プルではなく、まったく余計なコストプッシュ・インフレである。人災といっていい。下手をすると景気減速下のインフレという「ミニ・スタグフレーション」に陥るリスクさえある。
年内はまだいいだろう。「パウエル・プット」が相場を支えることもあるだろう。だが、来年になったらそんなことは言っていられないだろう。米国株は年内の戻ったところで、いったん利益確定も考えたい。
https://media.monex.co.jp/articles/-/12482


 

景気急減速のユーロ圏:ドイツリスクと世界への影響
グローバル・マクロ・ウォッチ
大槻 奈那 2019/10/04
• マネックス

• ドイツの成長見通しは大幅低下
• ドイツの不動産は“バブル度”が高く、景気減速は金融機関に痛手
• 景気サイクルの悪化を食い止められるか…
• 当面の注目点:主な景気指標と10月末からの銀行決算がカギ
・今週、ドイツの経済成長見通しが大幅に引き下げられ、7-9月期は11年ぶりのリセッション入りが確実に。GDPで3割を占めるドイツのリセッション入りはユーロ圏にとって大きな節目。
・一方、ドイツの地価上昇は著しく、今年のバブル・インデックスではミュンヘンが初めて世界一となった。フランクフルトも2桁の上昇と、個人の経済力対比での上昇が著しい。
・先月ECBが利下げに踏み切るも、ドイツでは2大銀行がそろって再建途上にある。さらに景気後退で不動産価格が下落に転じたら、それ以外の銀行の体力も弱め、利下げ効果は効きにくくなる。
・業務構造も変化しているため、銀行が経営難に陥ってもリーマンショックほどの波及はないだろう。それでも、当面のリスクは大きく、ユーロ関連のポジションは落としつつ、ドイツの銀行決算(10月末)や3QのGDP(11/14)、ブレクジットの行方を慎重に見守りたい。
ドイツの成長見通しは大幅低下
10/2、ドイツの5大経済研究所が経済見通しを大幅に引き下げ、2019年は4月の予想0.8%から0.5%へ、2020年については1.8%から1.1%へとした(図表1)。世界的な需要減速や長引く貿易問題を理由に挙げている。


四半期ベースでも、ドイツは、既に4-6月期でマイナス成長となっており、7-9月期もマイナス成長が確実視されている。2四半期連続でマイナス成長となると、「テクニカル・リセッション」とみなされる。7-9月のドイツのGDP速報値は11/14に発表されるが、今のところ11年ぶりのテクニカル・リセッション入りはほぼ確実とみられている。
ドイツのGDPは、ユーロ圏全体の3割を占め域内最大である。これまでユーロ圏の経済を牽引していたドイツがリセッション入りするということは、大きな節目といわざるをえない。


ドイツの不動産は“バブル度”が高く、景気減速は金融機関に痛手
一方、低金利の影響でドイツの地価上昇は著しい。今週発表されたUBSの「不動産バブル・インデックス2019」では、ミュンヘンが初めて世界一となった(図表3)。ミュンヘンの不動産価格は過去10年で2倍以上となった。フランクフルトも、英国のEU離脱後の受け皿としての人気もあって、昨年も2桁上昇と、近年、世界有数の上昇率となっている。


一見、不動産価格の上昇は資産効果を生むなど、悪くないことにも思える。しかし、この指数は、住宅を貸した場合の家賃や、個人の収入に対して住宅価格がどの程度割高になっているかを示すものだ。個人の経済力に見合わない不動産価格の上昇は危険をはらんでいる。景気が後退期に入り、賃金や景況感が悪化すれば、たとえローン金利が多少安くなろうと、不動産価格は打撃を受けることになるだろう。その場合、銀行の不良債権が増加し、財務を直撃する。
景気サイクルの悪化を食い止められるか
そこでドイツ経済が踏ん張れるかどうかは、銀行の体力がどこまで健全性を維持でき、資金供給を続けることができるかにかかってくる。ところが、ドイツの場合、2大銀行であるドイツ銀行とコメルツ銀行がそろって再建途上にある。他行との統合等の再建案が報じられて1年以上になるが、解決策は未だに見えない。
そこにさらに、景気後退と不動産価格の下落が発生した場合、日本同様、1000を超える中小金融機関全体までもが弱体化し、景気の足を引っ張る可能性がある。
先月、ECBが先手を打って政策金利を0.1%引き下げたが、銀行が健全でないと、貸出も伸びず、金融緩和の効果は発揮されにくい。
財政出動も効果はあるが、残念ながら時間がかかる。「ブラック・ゼロ」をスローガンに黒字財政を堅持しているドイツ政府が、財政出動を決めるのは容易ではなく、かつ、実際にお金が出てから景気に効いてくるまでの間にもラグが生じる。
当面の注目点:主な景気指標と10月末からの銀行決算がカギ
ドイツ銀行等大手行のデリバティブ取引等は大幅に縮小しており、リーマンショックの時に見られたようなスピルオーバーはないという考え方が一般的である。しかし、短期的にはユーロ圏のリスクは沈静化しにくいだろう。ドイツの銀行決算(10月末)や第三四半期のGDP(11/14)、並行してブレクジットの行方等を見定めつつ、当面は欧州リスクは回避する方向で考えたい。
https://media.monex.co.jp/articles/-/12481


 
アルゼンチンのデフォルト不安をどう見るか
総合商社の眼、これから世界はこう動く
丸紅株式会社 2019/10/04
• 大統領予備選挙後にアルゼンチン通貨、株式が急落
• A.フェルナンデス候補も債務減免は目指さないとしているが
• 欧州に波及か、日本も対岸の火事ではいられない
大統領予備選挙後にアルゼンチン通貨、株式が急落
10月27日に行われる大統領選挙に向けて、8月11日に行われた予備選挙の結果、野党のペロン党急進派候補であるアルベルト・フェルナンデス(A.フェルナンデス)元首相が、再選を目指すマウリシオ・マクリ現大統領に予想以上の差をつけた。
これをきっかけにアルゼンチン通貨(ペソ)、株式指数(MERV)は共に急落(図表1)。同国政府は為替安定のための市場介入を余儀なくされ、外貨準備高も急減している。同時に一部債務の返済期限延長策や資本規制策も発表し、沈静化に躍起になっている。
【図表1】アルゼンチン通貨と株式指数の推移

出所:リフィニティブ
なぜ予備選挙の結果で、ここまでアルゼンチンの金融環境が一変するのか?ペロン党とはどういう政党なのか?
ペロン党は第二次世界大戦後にファン・ペロン元大統領によって設立され、正式名称は正義党(Partido Justicialista)だが、創始者の名前からペロン党とよばれることが多い。
元々は左派右派入り混じった政党だったが、2003年に同党の実権を握り大統領となったネストル・キルチネル元大統領、及びその妻でネストル氏死去後に大統領職を継いだクリスティーナ・フェルナンデス・キルチネル(C.Fキルチネル)前大統領のもと左傾化した。
現在ペロン党は主に中道左派のキルチネル派と中道の穏健派に分類される。尚、C.F.キルチネル前大統領は今回の大統領選で、A.フェルナンデス前首相と組んで、副大統領候補として出馬している。
2001年からマクリ大統領が誕生する2015年までの14年間、アルゼンチンはペロン党政権下にあった。その間、財政規律の緩みと国際通貨基金(IMF)の支援停止の結果、テクニカル・デフォルトも含め、2度デフォルトを起こし、国際金融社会から孤立することになった。
また為替相場の急激な変化や外貨準備高の急減などにより、インフレが高騰し社会不安が蔓延、市民による銀行取り付け騒ぎや暴動も発生。政策面では輸入制限や輸出税などの貿易規制や電力会社再国有化など政府による大幅な市場介入が行われ、それらを原資にバラマキ政策が続けられた。
つまりA.フェルナンデス元首相が大統領になれば、アルゼンチン経済はこのような状況に戻ることが想起されたのだ。
A.フェルナンデス候補も債務減免は目指さないとしているが
A.フェルナンデス元首相は両キルチネル政権で重要な役職を務めながらも、穏健派に属する人物であり、C.F.フェルナンデス前大統領が穏健派の票を確保するために大統領候補にたてたともみられている。またA.フェルナンデス陣営の経済ブレーンからは、債権者との協議に慎重な発言も出ており、デフォルトを回避する姿勢がみられる。
ペロン党政権になったとしても、必ずしも以前のキルチネル時代の政策が復活するわけではないだろう。A.フェルナンデス候補自身も最近になり、債務減免は目指さないとしている。
しかし、最悪の事態を考えれば、対外債務のモラトリアムやデフォルトを想定しなければならない。アルゼンチンの対外債務残高は2019年6月末時点で、政府・民間合わせて約2,840億ドルになる。
それでは誰がアルゼンチン債権を保有しているのだろうか。マクリ政権は8月末に既に短期国債やIMFからの融資を含めた1,010億ドルにのぼる債務の「リプロファイリング」を提案。短期国債の満期延長や、債権者に自主的な返済条件の変更を求めた。
これを受け、9月上旬にはアルゼンチン債権を保有する機関投資家などが非公式な協議を開始した模様。報道では、このなかには米国資産運用会社のT. Rowe Price、Eaton Vance、GMOなどが含まれているといわれている。また米債権ファンド運営会社のPacific Investment Management Co(PIMCO)は6月にアルゼンチン・ペソ建国債へのエクスポージャーを高めたばかりで、ペソ急落を受けリスク分散に追われた模様である。
逆に英国の投資会社Ashmoreは、「次期政権が穏健になる可能性があることを考慮すれば、現在のアルゼンチン国債はデバリュエーションだ」として、アルゼンチン国債を買い増す方針を示している。
アルゼンチン国債がデフォルトになれば、まずこうした新興国向けエクスポージャーを持っている資産運用会社及びそこに投資している投資家が影響を受けるだろう。
欧州に波及か、日本も対岸の火事ではいられない
他方、国際決済銀行(BIS)統計によれば、2019年3月末時点で、外国金融機関(最終的な親会社ベース)が保有するアルゼンチン債権は521億ドルとなっている。
うち半分近い225億ドルは旧宗主国であるスペインの金融機関が保有しており、他の欧州地域の金融機関を合わせると保有高は374億ドルにのぼる(図表2)。
スペインは11月のやり直し総選挙を含め、4年で4回の総選挙が行われるという政治混乱が続いている。英国のEU離脱協議も不透明感が依然強く、中国経済の減速を受け、ドイツを中心として経済の減速が鮮明になるなか、アルゼンチンのデフォルト不安による金融機関への影響が加われば、年末にかけて欧州の混乱にさらに拍車がかかりかねない。
【図表2】各国金融機関のアルゼンチン債務保有高

出所:国際決済銀行
日本も対岸の火事ではいられない。図表2の通り日本の金融機関も4.7億ドルの債権を抱えている。また日本企業は2015年のマクリ政権誕生以降、同国向けに約10億ドルの投資を行っている他、国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)も同国向け融資や保険引受を再開している。
当分は10月中旬の国際通貨基金(IMF)の年次総会前に判断が下されるだろう、6回目のスタンドバイ融資(約54億ドル)実行の可否が注目される。

コラム執筆:阿部 賢介/丸紅株式会社 丸紅経済研究所

2019/09/20「100年に1度」の次に起こること
• 米国はGDP増加、金融緩和によって格差が広がる
• 1929年の世界大恐慌後の政治動向に酷似する
• 1929年の12年後、日本が真珠湾を攻撃したが…
米国はGDP増加、金融緩和によって格差が広がる
100年に1度の危機と呼ばれたリーマン・ショックから11年が経つ。
米商務省経済分析局の公表データによると、米国のGDPは2009年の14.4兆ドルから2018年の20.6兆ドルへと約42%増加した。ニューヨーク株式市場のダウ平均株価も2009年初の9,034ドルから2019年8月末の26,403ドルへと上昇している。
多くのエコノミストが指摘しているように、米連邦準備制度理事会(FRB)による強力な金融緩和が大きな追い風となったと言えよう。
一方で、米国政治を見ると対中貿易摩擦、移民規制など何かと騒がしい。米国経済が約10年間にわたり好調に推移してきたにも関わらず、なぜ政治は騒々しいのだろうか?
この背景にはもちろん様々な要因が働いている。トランプ大統領の登場にその原因を見出す読者も多いだろう。だがここで注目したいのは、経済危機から回復する際の強力な推進力だった金融緩和によって、持てる者がさらに富み、持たざる者との格差が広がったことだ。
それを如実に物語っているのが下記の図である。株価と被雇用者の時間当たり平均賃金について2009年1月を100と置いて推移を見ると、株価が約300にまで上昇している一方で被雇用者の時間当たり平均賃金は27しか増えていない。つまりこの10年間で持てる者の資産価値は、持たざる者の収入よりもはるかに上昇したのである。
【図表1】ダウ平均株価と時間当たり平均賃金の推移

出所:筆者作成
1929年の世界大恐慌後の政治動向に酷似する
格差が拡大すると、とにもかくにも持たざる者たちが政治に対して不満を表明する。そして、経済グローバル化や移民に制限を加える自国第一主義を唱え、反グローバリズムに突き進むことになる。このような現在の状況は、1929年に世界を襲った大恐慌の後の政治動向と3つの点で酷似している。
1つ目は、関税の引き上げである。トランプ大統領は2018年3月に1962年通商拡大法232条に基づき鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を発動し、2018年7月からは1974年通商法301条に基づいて対中関税引き上げを実施した。大恐慌後も、スムート・ホーリー法が成立し、国内産業保護のために農産物のみならず工業製品を含めた多くの品目で輸入関税が大幅に引き上げられている。
2つ目は、移民規制である。トランプ大統領は厳格な移民政策を提唱し、不法移民の一斉摘発を実施した。メキシコ国境の移民流入に対応するために壁を建設するとも主張している。大恐慌後も、移民が厳しく制限され、約200万人が米国からメキシコに送還されたと推計されている。
3つ目は、自国第一主義である。中国の習近平国家主席は「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と発言し、太平洋を米国と中国で二分しようとする膨張政策を示唆した。1930年代には日本がアジアで膨張政策を進め、米国が対日経済制裁として石油の禁輸や在米資産凍結を行っている。
1929年の12年後、日本が真珠湾を攻撃したが…
FRBのグリーンスパン元議長が2008年のリーマン・ショックを受けて「100年に1度」と発言した際に比較対象としていたのは、まさにこの1929年の大恐慌であろう。来年の2020年がリーマン・ショックの12年後となることから、1929年の12年後の1941年を振り返ってみると、石油の禁輸措置などによって困窮した日本が真珠湾を攻撃している。
おそらく中国が2020年に米国を攻撃することはないだろう。だが、ペンス副大統領が非難したように、中国政府は政治、経済、軍事的手段とプロパガンダを用いて米国に対する影響力を高めており、米中の覇権争いが続いていく確度は高い。
したがって、もし米国が覇権争いの過程で保護主義的な政策を継続するのであれば、貿易、投資の減少、生産活動の低下などによって長期的な景気の停滞が起こる可能性が高いだろう。

コラム執筆:重吉 玄徳/丸紅株式会社 丸紅経済研究所

バックナンバー
• 2019/09/06中国の「燃費・NEV規制」が2年ぶりに改正
• 2019/08/30もう影が薄いとは言わせない – 高まる米国副大統領の存在感

https://media.monex.co.jp/articles/-/12485

http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/477.html

[経世済民133] 米経済の悪化ペースは想定以上、日銀もぎりぎりの判断か 米雇用者増は予想下回る、賃金の伸びも鈍化−減速の新たな兆候 米金融当局に追加利下げ圧力強まる、弱い経済指標の発表相次ぎ パウエルFRB議長、米経済にはリスクあるが良好な状態と評価
コラム2019年10月4日 / 13:52 / 1日前

米経済の悪化ペースは想定以上、日銀もぎりぎりの判断か
田巻一彦
3 分で読む

[東京 4日 ロイター] - 米供給管理協会(ISM)が3日に発表した9月の非製造業総合指数は、市場予想を下回り、2016年8月以来の水準に低下した。米中貿易摩擦の悪影響が、ついに米国の非製造業にまで波及し、関税引き上げ「効果」の大きさをまざまざと見せつけた。

今月10日から始まる米中の閣僚級による通商交渉がまたもや「協議継続」となった場合、両国を含む世界経済は景気後退リスクをはらんだ強い逆風にさらされるだろう。

日本政府もこのまま外需が失速した場合、12月ごろにも何らかの経済対策の策定に追い込まれるリスクが出てきた。今月末に金融政策決定会合を開く日銀は、10月に追加緩和に踏み切るのか、それとも内外情勢を見極め、年末に政府と一体となったポリシーミックスを展開するのか、米中交渉をにらみ、ギリギリの決断をすることになりそうだ。

<非製造業も急速に悪化>

9月のISM非製造業の指数悪化は、1日に公表された製造業の軟調な指数に続くものだ。生産が落ち込めば、荷動きも鈍くなる。ビジネス全体が停滞し、ホテルの稼働率が低下するなど非製造業の指数押し下げ要因となる。

世界貿易機関(WTO)は今月1日、2019年の世界貿易の伸び率を4月予想の前年比2.6%から同1.2%へと大幅に引き下げた。2018年の伸びが3.0%だったことと比較すると、世界貿易に急ブレーキがかかっていることがわかる。関連してWTOは「貿易見通しの下振れリスクは大きい。通商政策が大半を占める」と分析した。

また、米連邦準備理事会(FRB)のクラリダ副議長は3日、通商政策を巡る不確実性が投資に影響を与えていると表明。世界経済は減速しており、米輸出・製造業に影響を与えていると指摘した。

とは言え、これほど早く非製造業にまで「悪い数字」が波及するとは、多くの専門家も予想していなかったに違いない。米中貿易摩擦の激化による貿易量の縮小圧力が、製造業の生産と設備投資を悪化させ、思った以上のペースで米国の非製造業の景況感に及んできたと考えるべきだろう。

<じわじわと強まる後退色>

10日からワシントンで米中の閣僚級による通商交渉が再開される。トランプ大統領は9月25日、「中国は合意を切望しており、皆が考えているよりも早期に合意に至る可能性がある」と語った。

もし発言どおりに米中合意が発表された場合、市場は「予想外の展開」と反応し、リスクオン相場が展開され、世界中で株高現象が起きるだろう。

しかし、トランプ大統領が焦って合意を決断しない限り、米中が劇的な妥結に至る可能性は低いだろう。米国が中国に求めている補助金政策の転換や知的財産権保護の強化などは、中国の政策体系の大胆な転換が必要で、中国が簡単に受け入れるとは思えないからだ。

市場も「協議継続」がせいぜいではないか、と予想する声が多い。もし、多数説の予想する結果になった場合、引き上げられた関税は放置されるため、貿易量の縮小傾向は続く。

その場合、市場は短期的には大きく反応しないだろうが、弱いマクロ指標が発表されるたびに、株価水準を小刻みに切り下げていく可能性がある。真綿で首を絞められるように、世界経済はじわじわと後退色を強めていくだろう。

<日銀「10月緩和」は>

この影響は当然、日本の景気にも大きなダウンサイドリスクとなる。

中国依存度の高い日本の工作機械のデータをみると、今年8月の対中受注額は前年同月比40.5%減、1─8月は同46.8%減と大きく落ち込んでいる。中国向け需要の落ち込みは中国以外の地域にも広がり、今や内需の落ち込みも顕在化してきた。工作機械受注全体でも、1─8月は前年比30.6%減まで減少し、年内に回復する見通しが立っていない。

10月1日から実施された消費増税が、そこに追い討ちをかける恐れがある。政府は11月末から12月にかけ、大型の景気対策を策定し、輸出・生産の落ち込みをカバーし、企業と消費者の心理悪化を防ごうとするのではないか。

こうした中、日銀は10月30、31日に金融政策決定会合を迎える。世界的な景気減速を予期できるなら、10月の段階で予防的に追加緩和に踏み切るべき、という声が日銀内で上がっていても驚くべきことではない。

他方、株価や為替動向をみつつ、さらに慎重に事態の推移を見極め、12月に政府・日銀一体となった政策を打ち出すほうが総合的に効果が大きい、という判断もありそうだ。

どのような選択肢を選ぶのか、日銀は月末まで内外情勢を注意深く見守り、ギリギリの決断を迫られる。
https://jp.reuters.com/article/us-economy-idJPKBN1WJ08A

 


 

米雇用者増は予想下回る、賃金の伸びも鈍化−減速の新たな兆候
Katia Dmitrieva
2019年10月4日 21:38 JST 更新日時 2019年10月4日 23:59 JST
失業率は3.5%に低下−1969年以来の低水準
GMの大型スト、9月統計に含まれず−10月に影響する可能性も
9月の米雇用統計では、雇用者数の増加幅が市場予想に届かず、賃金の伸びも鈍化した。一方、失業率は半世紀ぶりの水準に低下した。

キーポイント
9月の民間部門の雇用者数は前月比11万4000人増−市場予想の中央値13万人増
前月は12万2000人増(速報値9万6000人増)に上方修正
非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は13万6000人増−市場予想(14万5000人増)下回る
9月の雇用者数には、2020年国勢調査の準備で政府機関が雇った臨時従業員1000人が含まれる
平均時給は前年同月比2.9%増、ここ1年余りで最も低い伸び−予想も下回る
前月比では変わらず−市場予想は0.2%増
家計調査に基づく9月の失業率は3.5%と、前月(3.7%)から低下し1969年12月以来の低水準
U.S. economy added 136,000 workers in September as jobless rate fell to 3.5%
エコノミストの見方
ドイチェ・バンク・セキュリティーズのトルステン・スロック氏:
「全体的には、やや強弱まちまちな内容だ」
非農業部門全体の雇用者数や製造業の低調を踏まえると、貿易戦争が「雇用と経済の両方に下向きの圧力」をかけている兆候は強まった
詳細
過去2カ月分の非農業部門雇用者数は計4万5000人の上方修正−ただ3カ月平均は15万7000人増と、前回(17万1000人増)から鈍化
業種別ではヘルスケアやプロフェッショナル・ビジネスサービスで特に雇用が増えた。小売りは8カ月連続で減少。建設業は引き続き小幅な伸びにとどまった
製造業の雇用は2000人減
ゼネラル・モーターズ(GM)のストで、製造業の雇用は今後数カ月に一段と減少しそうだ。GMでは9月15日に約4万6000人がストに突入。今回発表の9月の統計には含まれなかったが、10月分の統計に影響する可能性がある
「U6」と呼ばれる不完全雇用率は6.9%に低下し、2000年以来の低水準−前月は7.2%
U6にはフルタイムでの雇用を望みながらもパートタイムの職に就いている労働者や、仕事に就きたいとは考えているものの積極的に職探しをしていない人が含まれる
統計の詳細は表をご覧ください
原題:U.S. Payrolls, Wages Miss Estimates in New Sign of Downshift (2)(抜粋)

(統計の詳細を追加し、更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-04/PYUO2NDWRGG301?srnd=cojp-v2

 


米金融当局に追加利下げ圧力強まる、弱い経済指標の発表相次ぎ
Steve Matthews
2019年10月4日 12:29 JST
市場に織り込まれた10月追加利下げの確率87%に急上昇
製造業減速がサービス分野に波及、10月利下げ確率高まる−ハウス氏
パウエル議長
パウエル議長 Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、追加利下げについてコミットしていないが、経済指標の悪化や不安定な市場動向、トランプ大統領からの持続的なバッシングを受けて、3会合連続利下げを迫る一層大きな圧力に直面している。

  今週発表された製造業と非製造業、雇用のデータの落ち込みを受け市場では10月29、30両日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25ポイントの利下げ確率は87%程度と織り込まれており、9月30日時点の40%から上昇した。リセッション(景気後退)懸念が強まる中で米国株は3週連続安となるペースだ。

Federal Reserve Bank of Chicago President Charles Evans says he is “very concerned” about the outlook for inflation.

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)の米国担当シニアエコノミスト、ジョゼフ・ソン氏は「公表された経済データを受けて10月の利下げの論拠は著しく強まっており、市場はそれを織り込みつつある」と指摘。「今後のデータも引き続き弱ければ、穏健派もタカ派も経済に何らかのバッファーを提供する方向に賛同する可能性がある」と付け加えた。

  シカゴ連銀のエバンス総裁は3日、最近のデータではまだ追加利下げの必要性を確信してはいないとコメント。ハト派姿勢を取ることの多い同総裁はマドリードで行われたブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、決定についてオープンな姿勢だと語った。

2-year yields fall reflecting expectation of more Fed rate cuts
  パウエル議長は9月18日のFOMC後の記者会見で、当局は「会合ごとに金利を決める」と述べ、追加利下げは今後発表されるデータ次第だと言明。9月発表の最新経済予測では年内の追加利下げを予想したのはFOMC参加者17人中わずか7人だった。パウエル議長は10年にわたる景気拡大が後退局面に転じることのないよう保険として利下げを決めたと説明していた。

  しかし、それ以来、先行きは暗くなっており、今週は特にそうだった。米供給管理協会(ISM)が1日発表した9月の製造業総合景況指数は10年ぶりの低水準に落ち込んだ。企業は米中貿易戦争や関税合戦を受けて投資を抑制している。ADPリサーチ・インスティチュートの2日のデータでは、米企業の雇用減速が示された。フォード・モーターなどの自動車メーカーの四半期販売台数も懸念を強める内容だった。さらに、3日発表の非製造業の指数は3年ぶりの低水準だった。

  ウェルズ・ファーゴのシニアエコノミスト、サラ・ハウス氏は「製造業の減速がサービス分野に波及している状況が見られる。弱さは工業セクターにとどまっておらず個人消費の展望にリスクをもたらしている。このため、早ければ今月に追加利下げする確率は高まっている」と指摘した。

U.S. gauge falls to 10-year low as sector's contraction deepens
原題:Fed Pressured to Cut Rates Again as Factories, Stocks Slump (3)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-04/PYTTPI6JTSEB01?srnd=cojp-v2


パウエルFRB議長、米経済にはリスクあるが良好な状態と評価
Rich Miller
2019年10月5日 4:03 JST
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、米経済はいくらかリスクを抱えているものの、良好な状態にあるとの見解を示した。

  議長は4日にワシントンで開かれたイベントで講演し、「失業率は半世紀ぶり低水準付近にあり、インフレ率は当局の2%目標付近だがそれをやや下回った水準で推移している」と指摘。「われわれの仕事は、可能な限り長期間、その状態を維持することだ」と述べた。発言内容は事前に配布された原稿に基づく。この日の講演では、経済成長や政策金利の見通しについて踏み込んだ発言はなかった。

  朝方発表された9月の米雇用統計では、雇用者数の増加幅が市場予想に届かず、賃金の伸びも鈍化した。一方、失業率は半世紀ぶりの水準に低下した。

  パウエル議長は「誰もが経済的機会を十分に共有できているわけではなく、米経済はいくらかリスクを抱えているものの、総じて良好な状態にあるといえるだろう」と述べた。

原題:
Powell Says Economy Faces Some Risks But Is Still in Good Place(抜粋).
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-04/PYV4F76JIJUU01?srnd=cojp-v2


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/301.html

[政治・選挙・NHK266] 村上世彰氏「格差解消へ家計・企業に資産課税を」このままでは日本で暴動が起きる
村上世彰氏「格差解消へ家計・企業に資産課税を」このままでは日本で暴動が起きる

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奥 貴史
日経ビジネス記者
2019年10月7日
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全7942文字

 村上ファンド、この名前を誰しも一度は聞いたことがあるだろう。日本の株式市場におけるアクティビストの先駆けとして、「物言う株主」の存在を日本中に知らしめたのが村上世彰氏だ。資本の論理をもとにした正論を武器に、旧態依然の日本企業に次々と物言いを付ける様は時に「よく言った」と喝采を、時に「強引なハゲタカ」と批判を呼んだ。

 標的になった企業は昭栄や東京スタイルに始まり、西武鉄道、TBS、阪神電気鉄道へと広がった。そして2006年に拠点をシンガポールに移し、資本市場の表舞台から消えていた。

 ただ最近、再び物言う株主として株式市場に登場し始めたほか、2018年の出光興産と昭和シェル石油の経営統合合意では、反対していた出光創業家を説得し統合実現にこぎつける役回りも果たすなど存在感を再び増している。
 時代の寵児(ちょうじ)として絶頂とどん底を経験した村上氏から見た日本の課題は一体何か。

 村上氏の提言を踏まえ、皆さんのご意見をお寄せください。

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村上世彰(むらかみ・よしあき)
投資家。1959年、大阪府生まれ。灘中、灘高を経て東京大学法学部卒。通商産業省(現経済産業省)に入省し、在南アフリカ日本大使館一等書記官や生活産業局サービス産業企画官などを歴任。99年に通産省を辞め株式会社M&Aコンサルティング(通称村上ファンド)を設立。
最近、日本企業のコーポレートガバナンス以外にも熱心な提言があると聞きました。

村上世彰氏(以下、村上氏):今、一番気になっていることを言ってもいいですか。日本の貧富の差の拡大です。このままだと日本で暴動が起きますよ。リーマン・ショックの後に米ウォール街で暴動が起きたのと同じことが日本でも起きます。だから貧富の格差を解消しなければいけない。格差は本当に怖い。ない方が絶対いいに決まっている。格差がなく、みんなが割と穏やかに幸せに暮らせる国にすることが、行政にとっても政治にとっても一番求められることなのです。そうしないと国に安定感が出ません。

 10月から消費税が10%になりましたが、こうした間接税は低所得層を直撃しさらなる格差拡大が懸念されます。しかも消費税の限界はせいぜい20%台でしょう。となると税収はなかなか増やせません。持続的に日本が生き残っていくには消費税ではない財源がないといけません。ではどうすればいいのか。

 私がここ1〜2年、訴えているのが資産課税です。富裕層や企業の持つお金や株などの金融資産に課税するのです。つまりフローではなくストックに課税するということです。これは消費税より取りやすく、取ることに意味もあります。お金の流れを止めているところにピンポイントで課税するので、ため込んでいても意味がないと家計や企業が資金を投資などに回すようになります。資産、つまり寝ているお金が動く=回ると経済は必ず良くなります。

村上さんのことを、株で一もうけした富裕層の象徴と見る人も世の中にはたくさんいるでしょう。そういう視点から見ると、村上さんの今の主張に違和感を持つ人がいるかもしれません。資産課税は村上さんからすると税負担が増すはず。自らの腹を痛める提言をなぜするのでしょう。

村上氏:1つは人間的な問題です。同じ人間として生まれてきたのにそんな差があっていいのか、とそりゃ思いますよ。それに貧富の差が広がれば、結果的に経済活動に支障が出ると僕は思いこんでいるのです。同じ考えを持つ方はアメリカのファンドにも多いのです。(米著名投資家の)ジョージ・ソロスも、ウォーレン・バフェットもそうです。

 不遜な言い方になってしまいますが、私もこれだけお金持ちにさせてもらいましたが、自分の中で子供にお金を残したいという思いは全くない。お金は使わなければ意味がないと思っているので、お金をぐるぐる回すことに生きがいを感じているのです。ですが貧富の格差があるとお金が回らなくなり、経済自体が悪くなります。そしていずれ暴動が起きるのです。まさに今の日本がそうです。また投資という観点で見ても、長い目で見ればその方が社会全体が得をすると思っています。経済が活性化されて社会も安定するのですから。

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https://business.nikkei.com/atcl/forum/19/00024/093000035/?n_cid=nbpnb_mled_mpu
http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/265.html

[経世済民133] 山小屋約40軒が孤立、ヘリコプター便不通で浮上した「日本の山の危機」登山環境が危ない、金も人もシステムもない国立公園管理のお寒い体制

山小屋約40軒が孤立、ヘリコプター便不通で浮上した「日本の山の危機」
ダイヤモンド編集部 鈴木洋子:記者

特集 日本の山が危ない 登山の経済学
2019.10.7 5:15


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日本の山が危ない 登山の経済学#1
「登山」を取り巻く知られざる構造問題に迫る「登山の経済学」(全6回)。夏山シーズンを目前に控えた今年7月。新潟、長野、岐阜、富山の4県にまたがる北アルプス地域で登山客を迎える山小屋約40軒への物流が、ヘリ便の運休により途絶えるという事件が起こっていた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

膨張する登山市場に迫る危機
“民営国立公園”に黄信号
登山ヘリコプター
山小屋の運営に欠かせない「ヘリの荷上げ」。それを担う輸送網がこの夏危機的な状況に追い込まれた。 Photo by Yoko Suzuki
 多くの登山者の憧れの地、北アルプス。新潟県、富山県、長野県、岐阜県にかけて標高3000m級の山々が連なり、槍ヶ岳や劔岳などの名峰がそびえる。登山口から徒歩10時間かかる山奥も、シーズンともなれば団体ツアー客でにぎわう。そんな山岳地帯で営業する約40軒の山小屋が、この夏“孤立”する事件が起こっていた。

 「食料が届かず、スタッフみんなで山小屋の周りの山菜を採ってしのいでいました。夕食は毎日お芋と山菜の天ぷらばかりでした」と三俣山荘を経営する伊藤敦子さんは言う。他の山小屋では夏山シーズンを目前にして、営業開始の延期に追い込まれたところもある。

 原因は、ヘリコプターだ。

 北アルプスという、日本で最も人気の高い山域への食料や燃料などの必要物資の輸送は、山小屋ヘリ荷上げ事業でトップシェアの東邦航空が実質ほぼ1社で支えている。その頼みの綱の同社のヘリが、悪天候と機体故障の影響で7月の約1ヵ月間飛ぶことができなくなったのだ。

 かつての山小屋は数十キログラムに及ぶ荷物を人力で麓から運ぶ職業、歩荷(ぼっか)という専門職に物資の運搬を頼っていた。だがヘリの普及でこうした職業は消えた。さらに、昔は月1回程度だったヘリの荷上げ頻度は山小屋で使う物資が増えるたびに上がり、今は週数回、多いときには日に数回にもなる。今日の山小屋は、ヘリがなければ回らない。

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本来は国が行うはずの“施設整備”
 百名山ブームで登山者数がピークを迎えた1990年代、ヘリ会社は山小屋向けの荷上げ事業に次々と参入し価格競争を繰り広げた。だがその後、飛行条件が悪い山岳地帯での荷上げ事業はリスクが高く、公共工事などに比べて高い単価も望めないため利幅が薄いと判断し、各社は相次ぎ事業縮小と撤退に踏み切る。最後に残ったのが東邦航空だった。

 業界に共通のパイロットと整備士の人手不足も重なり、荷上げ事業への今後の新規参入は望むべくもない状況になっている。

 幸いにも故障したヘリの修理が何とか早期に完了し、8月までに山小屋の孤立状態はほぼ解消された。「故障と悪天候という悪条件が重なったことでこうした事態が起きた。今後、将来的なヘリの新規購入も含み再発防止策を考える」と東邦航空の担当者は話す。だが「今夏は乗り切ったものの、今後どうなるかは極めて不透明。行政や各地の山小屋経営者全体で、何らかの対策を講ずる必要があるのではないか」と雲ノ平山荘の伊藤二朗さんは訴える。

 登山者が安全に登山を楽しむための環境は、誰がどう守るのか。

 北アルプスをはじめとする日本の一級の山岳は、その多くが国立公園内にある。国立公園とは「環境大臣が指定し国が直接管理する公園」で、国が「優れた自然の風景地を保護するために開発を制限し、自然に親しみ、利用がしやすいように必要な情報の提供と利用施設の整備を行う」と環境省により定義されている。

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国立なのに民間企業が支える国立公園
 しかし、多くの国立公園で、登山者の宿泊施設や登山道の維持管理、そして自然環境の保護などを現場で実質的に担っているのは、国ではない。民間の山小屋である。

 近年の山小屋サービスの進化に紛れがちだが、山小屋は登山者に対して食事と宿泊場所を提供し、かつ登山者の安全をサポートする公共的な役目を持つ施設だ。ほとんどの山小屋が予約なしで宿泊を受け付けるのはこのためだ。また、山小屋周辺の登山道整備や、遭難発生時の一時救助を山小屋が行うのも日常茶飯事。登山者の不意の病気やけがに対応する山岳診療所を併設した山小屋も多い。

 山小屋への物流の寸断は、登山者の安全のために山小屋が担ってきた公共機能の寸断を意味する。

 しかし、山小屋が本来は国が直接管理すべき国立公園での公共機能を事実上代行していることに対して、行政の支援はほぼないに等しい。今回のヘリ問題についても環境省は「山小屋が公共的に必要な存在だとの国民全体の認識がなければ行政支援には理解が得られない」(熊倉基之国立公園課長)とするスタンスを崩さない。

 「民営国立公園」──。多くの登山関係者がこうやゆする、日本の山岳維持管理の構造問題。これが何ら解決されないまま、国は国立公園をインバウンド誘致の切り札として“活用”する方向性を打ち出している。数度の登山ブームで大きく膨らんだ登山経済。それを支えてきた土台が崩壊寸前にある。今、日本の山に何が起こっているのだろうか。

予告編

登山の経済学、日本の山が危ない
2019.10.7

次の記事登山環境が危ない、金も人もシステムもない国立公園管理のお寒い体制
#2

登山環境が危ない、金も人もシステムもない国立公園管理のお寒い体制
2019.10.7

日本の山が危ない 登山の経済学

予告編
登山の経済学、日本の山が危ない

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#1
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登山の経済学、日本の山が危ない
ダイヤモンド編集部 鈴木洋子:記者

特集 日本の山が危ない 登山の経済学
2019.10.7 5:05


日本の山が危ない 登山の経済学#0予告編
 百名山ハンターから山ガールまで、広く国民のレジャーとして広がった登山。ところが、この登山を支える環境が危機的な状況にある。背景には、日本の主要山岳が属する国立公園の管理制度という構造問題が横たわる。

 山の環境を整備して自然を保護すると同時に、登山者の安全を守るための体制は非常にもろい土台の上にある。インバウンド観光客を含めて登山者が増えている日本の山は、その脆弱な管理体制のままでは回らなくなってきているのだ。

 一方、第3次登山ブームを経て市場が膨らむ登山関連市場は、プレーヤーの新旧交代が相次ぎ合従連衡が起こっている。

 秋山シーズンのさなか、知られざる「登山の経済学」をひもといてみよう。最終配信日の11日(金)まで全6回の配信を予定している。

#1 10/7(月)配信
山小屋約40軒が孤立、ヘリコプター便不通で浮上した「日本の山の危機」
日本の山が危ない 登山の経済学#1
 夏山シーズンを目前に控えた今年7月。新潟、長野、岐阜、富山の4県にまたがる北アルプス地域で登山客を迎える山小屋約40軒への物流が、ヘリ便の運休により途絶えるという事件が起こっていた。そこで明らかになったのは、現在の登山環境を支えてきた体制の構造的限界だ。

>>記事はこちら(10月7日公開)

#2 10月7日(月)配信
登山環境が危ない、金も人もシステムもない国立公園管理のお寒い体制
日本の山が危ない 登山の経済学#2
 日本の登山を取り巻く危機は、ヘリコプター問題だけではない。登山の安全を確保する登山道などのインフラの整備が、追い付かない状況が日本の各地で続発しているのだ。国立公園でさえ予算も人も足りず、管理を行うための制度すらまともに機能していないという根深い問題がある。

>>記事はこちら(10月7日公開)

#3 10月8日(火)配信
山小屋主が訴える北アルプス登山道の窮状、国が「管理責任放棄」
日本の山が危ない 登山の経済学#3
 北アルプス黒部源流で山小屋を経営する伊藤二朗さんは「国立公園の管理体制を変えるべき」と訴える。登山者にはあまり知られていない国立公園の管理体制の問題点について、現場から声を上げている。

>>記事はこちら(10月8日公開)

#4 10月9日(水)配信
モンベルの45年、「自分が欲しい登山用品」を作り続けて840億円ブランドに
日本の山が危ない 登山の経済学#4
 登山用品ブランドとしては国内最大級に成長したモンベル。その成長の裏には徹底して「自分たちが欲しいもの」から発想したモノづくりがあった。元登山家である辰野勇会長に、その事業の要諦と経営を支える理念について聞いた。

>>記事はこちら(10月9日公開)

#5 10/10(木)配信
登山関連市場に新規参入・再編の嵐、頂点を獲るのは誰だ?
日本の山が危ない 登山の経済学#5
 登山用品の製造や専門小売店、情報誌などから成る登山関連市場は、戦後間もない頃に起こった歴史ある産業だ。だが、そのプレーヤーたちの勢力の新旧交代も起こりつつある。第3次登山ブームの後、じわりと伸びる市場を制するのは果たしてどこなのか。

>>記事はこちら(10月10日公開)

#6 10/11(金)配信
登山雑誌・登山アプリで「新興勢力」が大躍進している理由
日本の山が危ない 登山の経済学#6
 高いシェアを占め、その業界での歴史も長い競合が存在する市場に後から参入して成功するのは容易ではない。ところが登山市場においてはある2社が、これまで競合が掘り起こせていなかった新たなユーザーを発掘し、成功を収めている。

>>記事はこちら(10月11日公開)
https://diamond.jp/articles/-/216590


登山環境が危ない、金も人もシステムもない国立公園管理のお寒い体制
ダイヤモンド編集部 鈴木洋子:記者

特集 日本の山が危ない 登山の経済学
2019.10.7 5:45 有料会員限定


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日本の山が危ない 登山の経済学#2
日本の登山環境整備を取り巻く危機は、ヘリコプター問題だけではない。登山道の安全を確保する登山道などのインフラの整備が、追い付かない状況が日本全国で続発しているのだ。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

ニッポンの国立公園に迫る危機
山の管理体制は崩壊寸前
 「登山道は今後の整備はしないように」

 北海道を代表する山、大雪山。雄大な山並みに魅せられ、全国から訪れる登山者も多いが、その山の管理主体の一つの林野庁のある行政官は、現場担当者にこう言い放ったという。また、大雪山の登山道の多くを管理する北海道庁には、登山道の予算がほとんどなく「費用対効果でいうと登山者のために費用を出しても効果がない」と担当者は漏らす。

 大雪山系は人気も歴史もある国立公園。しかし2009年には8人の死者を出したトムラウシ山集団遭難という悲劇を生んだ。山の環境を整える投資がなされる理由は十分にあるはずだが、その根本が揺らいでいる。

 登山者の安全を担保するために欠かせない登山道の整備。「国が直接管理する」ことが建前の国立公園において、その基本は国や自治体が公共工事で整備し、日常的な管理運用は近隣の山小屋が担い、それに必要な費用を請求するというものだ。だが実際にはこの枠組みが機能せず、さまざまなトラブルがあちこちで起きている。

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誰も知らない国立公園の“実情”
https://diamond.jp/articles/-/216593?page=2


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/312.html

[政治・選挙・NHK266] 左派政党が労働者から支持されなくなったワケ 安倍晋三の長期政権を裏付ける「格差の縮小」と「貧困率の低下」
左派政党が労働者から支持されなくなったワケ 安倍晋三の長期政権を裏付ける「格差の縮小」と「貧困率の低下」
2019.10.7(月)
吉松 崇
時事・社会?本
 労働者の味方であるべき左派政党が労働者から支持されず、安倍政権に支持が集まるのはなぜか? 消費税が増税となり可処分所得が減るいま、労働者を救う道を経済金融アナリストの吉松崇が探る。(JBpress)

(※)本稿は『労働者の味方をやめた世界の左派政党』(吉松崇著、PHP新書)より一部抜粋・再編集したものです。

 自民党・安倍政権が選挙で勝ち続けているのは、景気を好転させて雇用状況を改善することに成功したからだ。しかしそれにしても、この第2次安倍政権下での左派政党の凋落は著しい。

 2009年8月の衆議院総選挙で、民主党が308議席を獲得して第1党となり、民主党、社会民主党、国民新党の3党連立による鳩山由紀夫政権が誕生した。反自民の左派政権の誕生である。

 この選挙時点の世論調査による政党支持率を見ると、民主党29.0パーセント、社会民主党0.7パーセント、国民新党0.5パーセント、に対し、前政権与党の自民党26.6パーセント、公明党3.3パーセントであった。この時点では、左派政党がおよそ30パーセントの支持率を得ていたわけだ。

 その後の推移を見てみよう。自民党・第2次安倍政権が誕生した2012年12月の総選挙の時点の政党支持率は、民主党16.1パーセント、社会民主党0.7パーセント、国民新党0.1パーセントであり、2014年12月の総選挙時点では、民主党11.7パーセント、社会民主党0.9パーセント、2017年10月の総選挙時点では、(民主党の後継政党である)民進党、立憲民主党、希望の党の3党合計で10.8パーセント、社会民主党0.5パーセントであった。

 さらに、最新時点(2019年5月)の政党支持率は、(同じく、民主党の現在の後継政党である)立憲民主党、国民民主党、自由党の3党合計で5.5パーセント、社会民主党0.6パーセントである。

 つまり、現在では、日本共産党(支持率3.2パーセント)を含めても、左派政党への政党支持率は合計で10パーセントにすら届かないのである。これはおそらく、左派政党のコアな支持層以外の中間層はもはや、誰もこれらの政党に「期待していない」という事態を示している。

 第2次安倍政権が誕生した2012年12月以降、左派政党や左派にシンパシーを抱くマスメディアがいくら安倍政権を批判しても、有権者は聞く耳をもたず、左派政党の政党支持率は低下の一途を辿っている。

低所得者に優しい「安倍政権」
低所得者を意識した経済政策運営
 もちろん、左派政党低迷の背景には、民主党政権時代(2009〜2012年)に経済政策で成果を挙げられず、外交・安全保障政策で現実的な対応が取れず(沖縄の米軍基地をめぐる対米交渉、尖閣列島をめぐる中国との外交)、稚拙さを露呈したことの影響が大きいのは間違いないが、それだけではないだろう。

『労働者の味方をやめた世界の左派政党』の2章初めのほうで指摘したが、私は、自民党・安倍政権のほうが左派政党以上に低所得者を意識した経済政策運営を行っているからではないかと思っている。だからこそ、中間層(あるいは無党派層)が2014年以降、左派政党から離反しているのではないだろうか?

 自民党・安倍政権のほうが左派政党より「低所得者に優しい」ことは、データを見れば明らかだ。経済格差を表す代表的な指標は、ジニ係数と相対的貧困率である。これらを、平成29年版厚生労働白書で見ていく。

 日本の所得再分配後の等価所得で見たジニ係数は、1992年に0.3074であったものが、金融危機真っ只中の1998年に0.3326でピークを付ける。この指標で見るかぎり、1998年が最悪の年である。

 その後2000年代は0.32台で推移し、民主党政権下の2010年には0.3162、そして2014年には0.3076まで低下した。これは、1995年以降では最も低い値である。ここで「等価所得」とは家計の所得を世帯人数の平方根で除して、1人当たり所得を平準化したものである。

 なお、ジニ係数のピークが1998年で、2000年代に入り緩やかに低下しているのは年金制度の深化の影響で、高齢者世帯のなかでの極端な低所得層の比率が減少しているからである【厚生労働省(2017)『平成29年版厚生労働白書』60頁】。

 したがって、2000年代の低下トレンドはある程度割り引いて見る必要があるが、それでも2010年から14年の低下幅は大きい。

「アベノミクス」による雇用の増加
貧困率を改善した安倍政権

https://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/b/f/600wm/img_bf68d10325d7e1181e9a389d50543f07101814.jpg
https://jbpress.ismedia.jp/articles/gallery/57808?img=img_bf68d10325d7e1181e9a389d50543f07101814.jpg

 この図表は、相対的貧困率の推移を表したグラフである。日本の相対的貧困率は、1985年の12パーセントから一貫して上昇を続け、2012年が最悪で16.3パーセントであったが、これが2015年には15.6パーセントにまで減少している。なお、「相対的貧困率」とは等価可処分所得の中央値の半分以下の所得層の比率を表している。

 現役世代(18〜64歳)の相対的貧困率も、そのトレンドは全世帯のものとほとんど同じで、1985年の10.6パーセントから上昇を続け、2012年の14.5パーセントがピークであった。だがその後、雇用情勢と所得の改善で、2015年には13.6パーセントにまで減少している。

 全世帯より現役世代の改善幅が大きいのは、高齢者ではなく現役世代が雇用情勢の影響を大きく受けるからである。

 また、17歳以下の相対的貧困率(いわゆる「子供の貧困率」)も1985年の10.9パーセントから上昇を続け、2012年に16.1パーセントでピークを付けたが、2015年は13 .9パーセントへと、じつに2.3パーセントも低下している。当然のことであるが、「子供の貧困率」は現役世代の所得に大きく依存する。


『労働者の味方をやめた世界の左派政党』(吉松崇著、PHP新書)
ギャラリーページへ
 相対的貧困率では、つねに1人親世帯の貧困が問題になる。シングルマザー問題である。子供がいる1人親世帯の相対的貧困率はきわめて高く、50パーセントを超えている(図表のなかで、この指標だけ右軸の目盛である点に注意)。しかしこの指標も、2012年の54.6パーセントから2015年には50.8パーセントにまで低下している。

 安倍政権の経済政策、「アベノミクス」の下での雇用の増加が、格差の縮小と貧困率の低下に寄与していることは明白である。市井の人びと、とりわけ貧しい人びとは、日々雇用の問題に直面しているのだから、このことを皮膚感覚で理解している。

 私は、これこそが自民党・安倍政権が選挙に強い理由だと考えている。

【関連記事「PHPオンライン衆知」より】

“高学歴な人”ほど左派政党を支持する「先進国の現実」(吉松崇)
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ノーベル賞経済学者が直言「高収入の人が税金を払えば解決」(ポール・クルーグマン)
https://shuchi.php.co.jp/article/6867
ノーベル賞経済学者の危惧「わずかな富裕層が政治を支配する未来」(ポール・クルーグマン)
https://shuchi.php.co.jp/article/6868
「デフレで得をしたのは年金受給者」アベノミクスを実行した元日銀副総裁の指摘(岩田規久男)
https://shuchi.php.co.jp/voice/detail/6448
年金で最もトクする"支給開始の年齢" 調べてわかった「損益分岐点」(荻原博子)
https://shuchi.php.co.jp/voice/detail/6026

もっと知りたい!続けて読む

内閣府がひっそり公表した日本経済「不都合な真実」
今年7月末、参議院選が終わるのを待っていたかのように、経済財政諮問会議において内閣府が『中長期の経済財政に関する試算』を報告した。中身を検証すると、そこにはとても参院選前には出せないような日本の「未来」が描かれていた。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57808
http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/270.html

[政治・選挙・NHK266] 不足する医療費「上級国民に払わせろ」は正しいか  実は年金よりも深刻な医療費の問題
不足する医療費「上級国民に払わせろ」は正しいか 実は年金よりも深刻な医療費の問題
2019.10.7(月)
加谷 珪一
時事・社会
 団塊の世代すべてが75歳以上の後期高齢者となる、いわゆる2025年問題を目前に控え、医療制度改革が待ったなしの状況となっている。現在、3割となっている自己負担の引き上げにはかなりの反発が予想される中、日本医師会が医療保険で優遇されている国家公務員と大企業社員の保険料率引き上げを提言している。乱暴に言ってしまえば、「上級国民」からもっと徴収すればよいという話だが、料率の引き上げは効果があるのだろうか。(加谷 珪一:経済評論家)

日本の健康保険は5種類
 医療制度について適切に議論するためには、日本の公的医療制度の全体像を把握しておく必要がある。

 日本の医療制度は、国民皆保険制度となっており、全員が何らかの健康保険に加入する必要があるが、健康保険には大きく分けて以下の5種類がある。

「健康保険組合」は主に大企業が独自に運営する健康保険で、当該企業の社員が加入する。企業が単独で設立する場合には、常時700人以上の社員が在籍している必要があり、2社以上が協同で設立する場合には3000人以上の社員数が必要となる。

 独自で健康保険組合を設立しない中小企業の社員は、全国健康保険協会が運営する「協会けんぽ」に、公務員の場合には「共済組合」に、それぞれ加入している。これらに該当しない自営業者などは、各市町村が運営する「国民健康保険(国保)」に、75歳以上の後期高齢者については「後期高齢者医療制度」に加入しているはずだ。

 各制度の加入者数は、健康保険組合が約3000万人、協会けんぽが3600万人、共済組合が900万人、国保が3300万人、後期高齢者が1600万人となっている。

日本の医療制度は驚異的!
極めて安価に病院にかかれる日本の医療制度
 日本では原則として3割の自己負担で病院にかかることができるが、これは世界的に見ても驚異的な制度といってよい。普段意識することはないかもしれないが、ちょっとした風邪で受診した場合でも、患者1人に対しては軽く数万円の費用がかかっている。自己負担の3割を除くと、これらの費用はすべて医療保険から支払われており、この制度がなければ、気軽に病院にかかれないだろう。

 がんなどの場合には、1人あたりの治療費が数千万円に達することも珍しくない。こうした重篤な病気の場合、高額療養費制度による補助があるため、患者の負担はさらに低く抑えられている。わずかな自己負担で、あらゆる医療に対応できるのは、国民皆保険制度が存在しているからである。

 だが、自己負担分を除いた7割について、すべてを保険料でカバーできているのかというとそうではない。医療費全体に占める保険料の比率は半分しかなく、足りない分については税金(国庫負担と自治体の負担)からの補填が行われている。

 今後、高齢者が急増することで医療費の大幅な増加が予想されているが、政府や自治体の財政状況は厳しく、これ以上、税金による財政支援を期待することはできない。そこで、国民皆保険制度を維持していくためには、
(1)自己負担率を上げて病院に行きにくくする、
(2)保険料の料率を上げて財政を改善する、
(3)医療の質を下げ、支出を抑制する、
という3つの解決策しかないというのが現実だ。

国家公務員と大企業の社員は優遇されている
 少し長くなったが、医師会が提言しているのは、上記のうち(2)の保険料率の引き上げということになる。

優遇されているのは誰?
 一般的に医療財政を好転させるには、自己負担率の引き上げが最も効果が高いといわれる。自己負担率が低いと、たいしたことがない病気でも気軽に受診してしまうため、どうしても医療費が増えてしまう。

 自己負担率を大幅に引き上げれば簡単には病院に行けなくなるので、確実に医療費の抑制につながる。だが、貧困化が急速に進む日本では、3割の自己負担率でも厳しいという国民が増えている。低所得層の中には、保険に加入しているにもかかわらず、自己負担分を支払えないため病院を受診できないという人もいる。

 自己負担率を大幅に引き上げた場合、貧困によって病院にかかれないという、戦後の日本ではあり得なかった問題が急拡大する可能性がある。また、高齢者を中心に自己負担率の引き上げに対する反発は大きく、なかなか決断しにくいというのが現実だろう。

 医師会としては病院の受診者が減るのは困るという事情もあり、保険料率引き上げという提言につながったものと考えられる。

 先ほど説明した健康保険は、実は制度によって所得に対する保険料率が異なっている。国家公務員の共済組合の料率は約8%、大企業の社員を中心とした健康保険組合は平均すると9.2%の料率となっており、他の制度とくらべてかなり優遇されている。

 一方、中小企業の社員が対象となっている協会けんぽの保険料率は平均すると10%、地方公務員共済は9.6%と負担率が高い。もしすべての健康保険を協会けんぽ並みの10%に上げると、保険料収入は何と1兆円もの増収となり、医療財政は大きく好転する。

 医師会の提言は、相対的に優遇されている国家公務員と大企業の社員の負担を大幅に引き上げることで、医療費を確保しようという方策であり、言葉は悪いが、優遇されてきた「上級国民」からもっと徴収しようという考え方である。

医療費の問題は年金問題よりも深刻
 年金2000万円問題に代表されるように、世の中では公的年金の財政問題に対する関心が高い。年金も医療と同様、国民から徴収する年金保険料だけでは、年金の支払いをカバーすることはできず、足りない分については国庫からの補填が行われている。

年金よりも医療の方が深刻な理由
 だが、年金の場合には150兆円の積立金があることから、年金財政が急激に悪化しても、積立金を取り崩せばよいので、すぐに給付が減るといった事態は想定しにくい。一方、医療については、徴収した保険料で、その年の医療費をカバーする必要があり、年金における積立金に相当するものは存在していない。このため、医療費が高騰すると、急激に医療財政が逼迫するという特長があり、その意味では年金よりも医療の方が深刻な問題を抱えている。

 また生活保護受給者の医療費については、医療扶助という形で一般会計から支出されているが、近い将来、年金の減額が確実視されていることから、生活保護受給者の増加が見込まれている。生活保護が増えれば、一般会計の支出も増えるので、医療保険に対する国庫支出が増加したことと同じ結果になってしまう。

 現時点で生活保護者に対する医療費の支出は約1兆8000億円と、医療費全体(約42兆円)と比較すればごくわずかだが、この金額が大きく増えてくるようだと、財源の問題が議論の対象となる可能性もある。

 いずれにせよ、今後、医療費が増大することは確実であり、医療の水準を下げるという決断を下さない限り、何らかの形で財源を確保する必要に迫られる。

「上級国民」から徴収することの是非はともかく、年金と同様、医療費についても国民的な議論をもっと活発にしていく必要があるだろう。

もっと知りたい!続けて読む

左派政党が労働者から支持されなくなったワケ
弱体化する左派を尻目に、安倍政権が有権者に支持されるこれだけの理由
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57821?page=4

http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/111.html
内閣府がひっそり公表した日本経済「不都合な真実」
小泉進次郎は総理になってやっていけるだろうか・・・
2019.9.30(月)
田代 秀敏
http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/271.html

[戦争b22] 北朝鮮の新型SLBM、日本全土が核攻撃の標的に「北極星3号」を迎撃するための2つの条件 朝中露がミサイル増強の中、韓国バッシングに興じ平和ボケの日本
北朝鮮の新型SLBM、日本全土が核攻撃の標的に
「北極星3号」を迎撃するための2つの条件 
2019.10.6(日)
数多 久遠
韓国・北朝鮮?安全保障

10月2日、北朝鮮がSLBMを発射したことを報じるテレビニュースを見る韓国・ソウルの市民。(写真:AP/アフロ)
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(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)

 10月2日、北朝鮮がSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を発射した模様です。SLBMは北朝鮮にとって、核兵器の投射手段として当面の最終開発目標と考えられており、北朝鮮は、これ(と核)さえ手に入れれば、アメリカを抑止し、攻撃されることを防ぐことができると考えていると思われます。

 このため、今回の発射は、日本ではそれほど大きく取り上げられていませんが、軍事・安全保障面では非常に大きな意味のあるものです。

 以下では、北朝鮮によるSLBM保有がどのような意味を持つのかを解説します。

報復核攻撃に用いられるSLBM
 冷戦時代、核のトライアド(3本柱)と呼ばれる主な核兵器の投射手段は次の3つでした。

(1)ICBM(大陸間弾道弾)
(2)SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)+弾道ミサイル搭載潜水艦
(3)戦略爆撃機

 ただし、核兵器保有国の中でも、このトライアドを完備しているのはアメリカくらいです。

 航空機での核攻撃には航空優勢が必要で、かつ多大なコストを要します。よって戦略爆撃機での核攻撃は戦闘爆撃機(長距離は飛べない)で一部代替したり、老朽・陳腐化した爆撃機による予備的手段とする国が多い状況です。このため、現代の核保有国の核兵器投射手段は、ICBMとSLBMが主なものとなっています。

 両者は、核戦略上、異なる特質を持っています。まずICBMは、陸上で運用することから管理が容易であるなどの点からコストが低く、数を揃えやすいため、核戦力の主力と言えます。しかし、車両などによる移動式であっても、通常は自国の国土内でしか運用できません。サイロで運用するものに至っては全く移動できないため、偵察衛星などにより敵に把握されやすく、発射前に破壊されてしまうリスクもあります。

報復核攻撃を行うSLBM
 一方、SLBMはミサイル自体が複雑となるため高価です。運用する潜水艦もその運用コストを含めて非常にカネがかかりますので、費用面では負担の大きな兵器です。しかし、いったん出航してしまえば、潜水艦の存在を秘匿しやすく、敵からするとどこから撃ってくるのか分かりません。警戒が困難なため、防衛する側に負担を強いることができる兵器だと言えます。

 こうした特徴の違いから、ICBMは、先制攻撃や敵による先制攻撃を察知した際に即座に反撃するための1次的な投射手段として多くが運用されています。かたやSLBMは、敵の1次攻撃が終了した後に報復核攻撃を行い、抑止力を強化するための投射手段として整備されてきました。

SLBMはアメリカに対する最強の抑止力に
 ただし、冷戦時代のソ連は、アメリカのSLBMを報復用ではなく潜水艦の隠密性を利用した奇襲先制兵器と捉えていました。また、地上で秘匿運用されている移動式ICBMも報復核攻撃に用いられるため、現代ではその特質はあいまいになってきています。

 それでも、SLBMが、その隠密性・生残性の高さから、報復核攻撃用として優れた兵器であることは変わりません。

 そして、このことが、北朝鮮が執拗にSLBMを開発する理由です。北朝鮮によるSLBM開発の執念についてはここでは詳しく触れませんが、技術的・資金的ハードルが極めて高いにもかかわらず、北朝鮮はかなり以前から多大な労力を払ってSLBMとそのプラットフォームである潜水艦の開発を進めてきました。

 北朝鮮、もっと明確に言えば金正日や金正恩は、アメリカによる先制(核)攻撃を恐れてきました。ICBMを手に入れても、そのICBMも含めて先制攻撃で破壊される可能性があったのでは、抑止力として不十分です。ですが、アメリカが先制攻撃を行っても、SLBMを搭載した潜水艦がどこかに隠れているのであれば、SLBMによる反撃が行えます。つまり、北朝鮮のSLBMは、アメリカに対する最強の抑止力になる可能性があるのです。

沖縄を含む日本全土が射程に
 次に、韓国軍の発表、防衛省の発表の他、北朝鮮の労働新聞が写真入りで発表した情報を元に、今回発射された北極星3号SLBMの実力を考察してみます。

北極星1号より大幅に性能向上
 防衛省は今回のミサイルについて、水平飛距離約450キロメートル、最高高度は約900キロメートルであったと発表しています。韓国軍の発表でも飛距離は同じで、最高高度は約910キロメートルというロフテッド弾道(高い角度で打ち上げて飛距離を抑える弾道)でした。もしもこのミサイルを射程が最大となる最小エネルギー弾道で発射すると、飛距離は2500キロメートルにも及ぶ可能性があります(防衛省発表)。

 今回発射されたミサイルは、北朝鮮発表では「北極星3号」となっています。2016年8月に発射された北極星1号SLBMと比較すると大幅な性能向上が図られていることになり、北朝鮮の沿岸から撃った場合、沖縄を含む日本全土が射程に入ります。

 しかし、この飛距離では、北朝鮮沿岸からアメリカ本土やグアムには到底到達できません。アメリカ本土を攻撃するためには、西岸のサンフランシスコなどが目標であったとしても、ハワイと米本土の中間付近まで進出する必要があります。静粛性に乏しい北朝鮮の潜水艦では、その位置まで到達するのは到底不可能でしょう。そのため、北朝鮮が最終目標とするSLBMによる対米抑止には不十分です。

 ただし、これは今回の発射が、このミサイルの最大性能での射撃テストであったことを前提としています。今回のテストが、意図的に性能を押さえられたものであれば、飛距離はもっと長い可能性があります。

極めて憂慮すべき存在、嘲笑するのは危険
 北極星3号の性能に関して、日本として1つ懸念されることがありました。それは、防衛省の当初発表では今回の発射が2発だったと報じられ、後に修正されたことです。

 北極星3号は、以前発射された北極星1号との比較や、北朝鮮が公開した画像から2段式のミサイルと見られています。


10月3日に北朝鮮の「労働新聞」に掲載された新型SLBMの写真
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 2016年に沖縄を飛び越えて発射されたミサイルは3段式でした。1段目は韓国西方の黄海上に、2段目はフィリピン東の太平洋上に落下し、3段目以降はさらに南方まで飛翔しています。こうした観測も行い、経験を積んだ防衛省・自衛隊が、なぜ2段式のミサイルを2発のミサイルだと誤認したのでしょうか。

 その理由としては、分離された2段目が点火しなかった、あるいは2段目に燃焼材が少ししか入れられなかったなどの理由で点火後にすぐ燃焼を停止したため、1段目と2段目が非常に近い経路を通って落下した可能性が考えられます。なお、弾頭部も分離しますが、防衛省・自衛隊が弾頭部の分離を2発のミサイルと誤認するとは思えません。

迎撃するための2つの条件とは
 なお、弾頭部も分離しますが、防衛省・自衛隊が弾頭部の分離を2発のミサイルと誤認するとは思えません。

 この推測が正しければ、2段目のロケットモーターが本来の性能を発揮した場合、飛距離は今回の発射よりも大幅に伸びる可能性があります。発射後、韓国軍が、慌ててGSOMIAに基づいた情報提供を依頼してきた理由も、2段目が本来の性能を発揮したのか否かを知りたかった可能性が考えられます。

 以上のことから、北極星3号を搭載した北朝鮮の潜水艦は、まだ米本土への直接脅威となる可能性は高くありませんが、極めて憂慮すべき存在であると言えます。

 ネット上では、最大飛距離が2500キロメートル程度に留まり、プラットフォームが静粛性に乏しい潜水艦であるため嘲笑する向きもありますが、これは危険です。防衛省・自衛隊は、レーダーの情報だけでなく、おそらく発射地点近傍で観測していた潜水艦が得た情報などを総合し、詳細な分析を進めているでしょう。

迎撃するための2つの条件
 冒頭で述べたように、北朝鮮SLBMの本来の最終的な目標が米本土であることは間違いありません。しかし、現段階のSLBMが、射程やプラットフォームである潜水艦の能力不足により米本土に対して使えない代物であれば、北朝鮮はこれを日本と在日米軍基地(あるいは韓国や在韓米軍)に対して使用する可能性を考えなければなりません。

 北極星3号は、今回の発射が最大性能のものだったとすれば、弾道ミサイルとしての能力はノドンミサイルと大差ありません。イージスSM-3とパトリオットPAC-3ミサイルで迎撃できるでしょう。

 ただし、これには2つの条件が付きます。

 1つは、北朝鮮潜水艦の位置を把握できており、弾道ミサイルを迎撃する準備ができていることです。

 詳しい説明は省きますが、弾道ミサイル警戒を行うレーダーは、あらかじめ方位を絞り集中監視を行う必要があります。(詳しい理由は、もう7年も前に書いたブログ記事ですが、こちらを参照して下さい「脅威の旧式ミサイルJL-1(巨浪1号)」)

 SLBMを搭載した潜水艦が出航し、その位置を自衛隊が把握できていない場合、アメリカの早期警戒衛星がSLBMを感知しても、弾道ミサイル警戒を行っているレーダーの設定変更が間に合わず、目標の発見が遅れた結果として、迎撃が間に合わなくなる可能性があります。

 もう1つの条件は、潜水艦が日本に近づき過ぎていないことです。

なぜこのタイミングだったのか?
 接近されていた場合、弾道ミサイルを発見できたとしても迎撃が間に合わなくなる可能性が高くなります。また、今回の発射とは逆に、到達高度の低いディプレスト弾道で発射された場合には、弾道ミサイル迎撃の主力であるイージスSM-3での迎撃が不可能となるかもしれません。

 つまり、このSLBMが日本にとって脅威であるか否かは、ひとえに北朝鮮の潜水艦の動向を常に把握し続けられるかどうかにかかっていることになります。

 現状では、日米の対潜水艦作戦能力は、北朝鮮潜水艦の能力大きく凌駕しています。ただし、「能力的にできる」ことと「実際にできる」ことは同一ではありません。北朝鮮がSLBMを開発していたことも鑑みて、海上自衛隊は潜水艦の拡充や対潜戦能力の拡充を図っていますが、複数の北朝鮮潜水艦を常時監視するとなれば、自衛隊にも大きな負担がのしかかることは間違いありません。

 なお、こうした日本にとっての問題は、韓国と在韓米軍にとっても同じです。特に、韓国の場合、北朝鮮潜水艦が出航すると、警戒・ミサイル迎撃するための方位が、地上発射の弾道ミサイルからの方位から大きくズレてしまうため、問題はより深刻です。日本にある在韓米軍や自衛隊レーダーの情報で補完できるので問題はないという意見もありますが、レーダーによる目標捜索・追尾や迎撃ミサイルの運用は、それほど単純ではありません。また、韓国の場合、角度が大きく異なるため、ランチャーの設置方位も動かす必要が出るかもしれません。

なぜこのタイミングだったのか?
 最後に、なぜ今発射実験が行われたのかについて触れておきたいと思います。

 北朝鮮は、数カ月前より、イスカンデル類似ミサイル、放射砲と呼称するロケット弾、ATACMS類似ミサイルの発射を続けてきました。これらは最大射程で撃てば日本まで届くものが含まれていたものの、基本的には短射程のミサイルでした。

 しかし、今回のSLBMは、ロフテッド弾道での発射だったため450キロメートル程しか飛んでいませんが、本来の能力では2500キロメートルも飛翔するものでした。

 当然、北朝鮮は、国連決議違反などを理由として批判を受けることを予想していたでしょう。特に、停滞しているアメリカとの交渉が決裂し、軍事攻撃を受ける可能性さえ予想したに違いありません。にもかかわらず、北朝鮮は発射を強行しました。

 今のタイミングならアメリカは動けないことを読んでいたと思われます。

 サウジアラビアの石油施設に対する巡航ミサイルと大型ドローンによる攻撃にイランが関与している疑いから、アメリカとイランの関係は急速に悪化しています。軍事行動の可能性さえ噂される状況ですが、中東に加えて、極東でも軍事行動を行うほどの余力は、今のアメリカにありません。

 北朝鮮とイランは、ともにアメリカと敵対していることもあり、弾道ミサイル開発などで協力しています。今回のSLBM発射は、1週間ほど前にはアメリカの北朝鮮分析サイト「38ノース」が発射準備の兆候を報じていましたが、実際に準備を始めたのはもっと早かったはずです。北朝鮮は、9月14日に行われたサウジアラビアへの攻撃を事前に聞いており、この機を狙ってSLBMの発射を行ったとみるのが妥当だと思われます。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57835?page=5

 
SLBM発射でトランプ揺さぶり、金正恩が高笑い
朝中露がミサイル増強の中、韓国バッシングに興じ平和ボケの日本
2019.10.5(土)
舛添 要一
世界情勢?韓国・北朝鮮?安全保障

北朝鮮のミサイル発射を報じる韓国のテレビニュース(2019年10月2日、写真:ロイター/アフロ)
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(舛添 要一:国際政治学者)

 北朝鮮は、10月2日朝、東海岸から1発のミサイルを発射し、日本のEEZ(排他的経済水域)内に落下させた。3日、北朝鮮は、発射したのはSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の「北極星3型」で、発射実験は成功したと発表した。

 今回の発射は、今年5月以降では11回目にあたり、とくに米朝実務者協議が5日に開催されることが決まったばかりのタイミングである。その裏には、北朝鮮の様々な思惑があるようである。

「SLBM実験中止」を餌にトランプを揺さぶる北朝鮮
 トランプ大統領は、これまでの度重なる北朝鮮のミサイル発射に対して、短距離ミサイルだとして容認する姿勢を貫いてきた。今回のSLBM発射については、3日、記者団に対して「どうなるか見てみよう。彼らは話したがっている。われわれは彼らと話す」と述べて、対話姿勢を貫く意向を示した。また、北朝鮮も、金正恩委員長の立ち会いがあったかどうかを報じていない。

 これは、双方とも米朝実務者協議の妨げにならないようにという配慮をして、問題をヒートアップさせないようにする意図があると思われる。しかし、国連事務総長、EU、日本などは、国連決議違反だとして厳しく批判している。

 アメリカのCNNは、今回のミサイルははしけ状の実験用海中発射台から打ち上げられたもので、潜水艦からの発射ではないと報じているが、もし実際に潜水艦からSLBMを発射することが北朝鮮に可能になれば、軍事的に大きな意味を持つ。

 戦略核のトライアド(triad、三本柱)とは、@ICBM(大陸間弾道ミサイル)、ASLBM、B戦略爆撃機の3つである。要するに、これらは、核兵器の運搬手段である。海外基地のない北朝鮮にとっては、爆撃機を対米攻撃に使うことはないが、ICBMの実験には既に成功しており、今回SLBMも成功したとなれば、アメリカにとっては大きな脅威となる。

北朝鮮が自ら核兵器を放棄する可能性はゼロ…
 今回の「北極星3型」は、発射角度を高めたロフテッド軌道で打ち上げられ、910qの高度に達し450q飛翔したが、河野防衛大臣によると、通常の角度なら2500qは飛行する性能を備えているという。これは、日本列島を射程に入れることを意味し、日本にとっては脅威が増したことを意味する。潜水艦から発射されるため、探知もされにくい。

 その際には、潜水艦の能力も重要になる。トランプが北朝鮮の短距離ミサイル実験を容認してきたのは、アメリカにまで到達しないという理由からであった。しかし、潜水艦でカリフォルニア沖まで接近し発射すれば、短距離ミサイルでも十分に米本土に到達できることになる。

 さらに言えば、トランプは、大統領再選を狙うために、「ICBMの実験は中止させた。これは自分の業績であって、アメリカは安全になった。金正恩とは良好な関係にある」と言い続けなければならないのである。

 ところが、SLBMの成功によって、アメリカ本土も北朝鮮の核の射程内に入るということになると、ICBMの実験は中止していても、何の意味も持たないことになる。安全保障の面からも、トランプ再選戦略に黄信号が灯ることになってしまう。

 北朝鮮にしてみれば、実はそれが狙いなのだ。トランプが再選を究極の目標にするあまり、「SLBM実験中止」の見返りに経済政策の解除というアメを持ち出してくるのではないかと期待しているのである。そうなると、金正恩の思うつぼとなってしまう。

北朝鮮が自ら核兵器を放棄する可能性はゼロ
 強硬派のボルトン補佐官解任の後、トランプ政権の方針は変わるのであろうか。もし、「all or nothing」ではなくて、段階的非核化・段階的制裁解除方式を採用するならば、それはヒトラーに対する「ミュンヘンの宥和」(1938年)に匹敵する愚行となろう。アメリカは、金日成、金正日によって騙され続けてきたが、金正恩によってその轍を踏まされないように交渉できるのだろうか。

 3日、北朝鮮のキム・ミョンギル首席代表がストックホルムへ向かったので、米朝実務者協議の場所はスウェーデンとなるようである。SLBM発射実験がどのような影響を及ばすか、注目に値する。

 北朝鮮は、あらゆる射程のミサイル、核兵器の開発を続行しており、その軍事的脅威が減じているわけではない。ボルトン補佐官は、北朝鮮の脅威を強調し強硬姿勢を貫くべきだと主張したために解任されたが、「北朝鮮が自ら核を放棄することはない」と断言している。

日本政府の危機意識は弛緩していないか…
 北朝鮮は、今の体制を維持するために、核兵器を保持し続ける。北朝鮮のような小国がアメリカと対等に外交交渉ができるのは、核兵器のおかげだからである。また、核兵器や化学兵器などの大量殺戮兵器を放棄すれば、リビアのカダフィやイラクのサダム・フセインのような命運が待っていることを、金正恩はよく知っている。

日本政府の危機意識は弛緩していないか
 ところで、日本政府や国会議員には、今回のSLBM発射に対する関心も緊張感もうかがえない。まさかEEZに着水するとは思ってもみなかったようである。

「トランプは短距離ミサイルのみ容認→そこで金正恩はEEZに到達するようなミサイルは発射しない」という固定観念で、日本政府はのんびりと構えていたのではないか。このような態度は、防衛体制としては最悪である。周辺海域にイージス艦が一隻も配備されていなかったという。これでは、世界に誇る日本の対潜能力も宝の持ち腐れとなってしまう。

 北朝鮮の軍事関連情報は、衛星写真の解析などでも一部は獲得可能であるが、韓国にできて日本にできないのが、「ヒューミント」、つまりhuman intelligenceである。北朝鮮には、韓国のスパイが潜入している。彼らが命がけで収集してくる情報が重要なのである。それは、ハングルという言語や生活習慣の面でも、日本人の諜報要員では入手不可能なものである。

 その意味で、GSOMIAの破棄は、韓国のみならず、日本にとっても大きな損失である。日本政府も、嫌韓派に煽られるまま無策を続けている場合ではない。

 10月1日の中華人民共和国建国70周年記念日の軍事パレードでは、アメリカ全土を射程におさめるICBM「東風41」のみならず、新型極超音速兵器「東風17」を初公開された。後者は、音速の5倍以上の速度であり、通常のミサイル防衛システムを突破する可能性がある。パックス・シニカ(中国の天下)へ向かう中国は、着実に軍事力を増強している。


『ヒトラーの正体』(舛添要一著、小学館新書)
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 ロシアもまた、INF条約廃棄などを受けて、軍備の充実を図っている。北方領土に展開する軍事力も増強している。安全保障の観点からは、ロシアが二島ですら返還する意図のないことは明白である。

 このように、極東地域では激しい軍拡競争が行われており、日本も手を拱いているわけにはいかないのである。そのような中での北朝鮮によるSLBM発射である。頼みの綱のトランプは、自分の大統領再選しか念頭にない。金正恩に対してトランプが下手な融和策を展開した場合に、どう対応するのか、安倍首相にその準備と覚悟があるのだろうか。

 トランプの保護貿易主義や対イラン、対北朝鮮政策などは、短期的には成功しているように見えても、長期的には大失敗である典型的な例である。その失敗のツケを日本が払わされるようでは、仲良しゴルフは高くつく。安倍外交は正念場を迎えている。

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ミサイル発射直後の米朝実務者協議、北は何を得るか
米朝実務者協議が始まる。北朝鮮の狙いはただ一つ、国連の制裁決議の緩和だ。そのために切れる最大のカードは遼寧の核処理施設廃棄となる。食糧事情もひっ迫し、追い詰められた北朝鮮はどのような態度で交渉に臨むのか。


https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57832


ミサイル発射直後の米朝実務者協議、北は何を得るか
東アジア「深層取材ノート」(第6回)
2019.10.5(土)
近藤 大介
アメリカ?韓国・北朝鮮

米朝実務者協議で北朝鮮側の代表を務める金明吉・前駐ベトナム大使(左)。写真は2009年8月、アメリカでニューメキシコ州のビル・リチャードソン知事(当時)と会談した際のもの(写真:AP/アフロ)
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 いよいよアメリカと北朝鮮との実務者協議が、ストックホルムで開始する。この地は北朝鮮にとって、「米朝の中間地点」にあり、かつこれまで縁起の良い場所だ。日本との「ストックホルム合意」も、2014年5月にこの地で交わされた(残念ながらいまや雲散霧消してしまったが)。

 6月30日にドナルド・トランプ大統領と金正恩委員長が、板門店で3度目の首脳会談を行い、早期対話で合意した約束が、ようやく果たされることになる。アメリカ側代表は、北朝鮮側から一定の信頼を得ているスティーブ・ビーガン北朝鮮政策特別代表、北朝鮮側代表は、アメリカ担当が長かった金明吉前駐ベトナム大使である。

 トランプ大統領が9月10日、最側近の一人だったジョン・ボルトン大統領安保担当補佐官を更迭したことが、北朝鮮に対して大きなメッセージになったことは間違いない。2月27日、28日の2回目の米朝首脳会談、いわゆる「ハノイの決裂」は、対北朝鮮最強硬派と言われるボルトン補佐官が主導したものだったからだ。

 トランプ大統領としては、イラン問題が暗礁に乗り上げ、先月の国連総会の機会に、ハサン・ロウハニ大統領との歴史的な首脳会談を逃した。さらにその後、民主党からウクライナ問題を巡って、弾劾まで持ち出されて窮地に立っている。そんな中、短期的な外交成果を得たいのである。

北朝鮮でも猛威を振るうアフリカ豚コレラ
 今回の米朝協議のポイントは、北朝鮮にしてみれば、ただの一点、すなわち国連の経済制裁が緩和されるかどうかである。寧辺の核処理施設廃棄と引き換えに、最大限の規制緩和を求めてくるだろう。いわゆる核問題の段階的解決である。

 北朝鮮に対する国連の経済制裁決議は、これまで11回も出されていて、最後に出された「決議」(2017年11月)がダメ押しとなり、北朝鮮は兵糧攻めのような状態に置かれている。私は今年正月、中国の北朝鮮専門家から話を聞いたが、「このまま行けば北朝鮮がもつのはあと2年くらいだろう」と予測していた。

 それを思えば、より窮地に立たされているのは、むしろ金正恩委員長の方と見るべきである。具体的には、食糧問題と朝鮮人民軍の問題が深刻化しているのだ。

台風で農作物も大打撃…
 まず、食糧問題については、アフリカ豚コレラの感染が、北朝鮮全土に及んでいる模様である。韓国メディアの報道によれば、9月24日、徐薫国家情報院長が、国会の情報委員会でこう証言した。

「平安北道で豚が全滅した。肉のある家はないとの不満が出るほど、北朝鮮全域にアフリカ豚コレラがかなり拡散したとの徴候がある」

 6月に朝鮮労働党中央委員会機関紙『労働新聞』が、アフリカ豚コレラへの感染に対する記事を出したが、その後、事態は深刻化した模様だ。農水省の関係者に確認したところ、こう述べた。

「日本で起こった豚コレラはワクチンがあるが、北朝鮮(及び韓国)で起こっているアフリカ産豚コレラは、新種かつ強力なためワクチンがない。そのため、感染を防ぐには殺処分するしかないが、北朝鮮のような衛生状態が悪い地域は、感染が全土に広がるのもやむをえないだろう」

 私も以前、北朝鮮で衛生状態の悪い肉を食べて死にかけたことがあるので理解できるが、とにかく想像を超える不衛生ぶりだ。

台風で農作物も大打撃
 北朝鮮の食糧問題は、豚に限らず、主食のコメにも及んでいる。北朝鮮の食糧事情というのは一年の中でも一定の周期があって、本来ならいまは、収穫を終えて最も「食糧豊富」な季節のはずだ。

 ところが、9月後半の収穫を前に台風13号が北朝鮮を襲った。朝鮮中央通信は9月8日、農地4万6000ヘクタールや住宅460棟などが被害を受けたと報じた。また、金正恩委員長が6日に緊急会議を開き、担当幹部らを叱責したとも報じている。

 北朝鮮の報道には針小棒大なものもあるが、その逆もある。同時期に韓国が受けた被害から見ても、北朝鮮全土に甚大な台風被害が出たと見るべきだろう。そうでなければ、「金正恩委員長が叱責した」などという記事が出るわけもない。

ミサイル発射が元山でなされた理由
 次に、朝鮮人民軍に関してだが、朝鮮中央通信は10月3日、前日に元山(ウォンサン)湾の水域で、新型の潜水艦発射弾道ミサイル「北極星」の試射に成功したと報じた。の発射は2016年8月以来だが、新型の「北極星」は初めてである。ロフテッド軌道で約450キロメートル飛び、日本のEEZ(排他的経済水域)に落下したことで、日本が騒然となったことは周知の通りだ。

 日本では、アメリカにプレッシャーをかけるために、米朝協議の直前にあえて発射に踏み切ったという分析がなされた。私は、それもあるだろうが、一番大きな理由は、朝鮮人民軍の不満が爆発寸前なのだと見ている。

 金正恩委員長は昨年、対米対抗から対米協調へと、大胆に舵を切り替えたが、これに強く異を唱えたのが120万朝鮮人民軍だった。金委員長は、対米協調によって経済発展をもたらそうと考え、その象徴として元山葛麻(カルマ)半島に、「元山葛麻海岸観光地区」を建設するとブチ上げた。いわゆる「北朝鮮のハワイ」計画である。

 だが、勇ましい核ミサイル建設を放棄し、観光地の土木工事に回された軍人たちは、当然ながら不満たらたらである。実際、この観光地の完成予定日は何度か延びて、現在は2020年の「太陽節」(4月15日の金日成主席誕生日)としている。昨秋には、金委員長がこの地域を視察した際、暗殺未遂に遭ったという確度の高い情報ももたらされている。

 こうした中、「安易な軍縮はしない」という金委員長の軍に対するメッセージが、10月2日の「北極星」の試射だったのではないか。だからこそ、同じ元山で試射に臨んだ。

 北朝鮮と、最大の貿易相手国である中国との関係もまた、不透明である。中朝国交正常化70周年を10月6日に控える中、4日になっても何も発表されていないからだ。

 10年前の60周年の際には、温家宝首相が訪朝し、金正日総書記との首脳会談で、新鴨緑江大橋の建設を決めた。中国側の丹東と北朝鮮側の新義州を結ぶ鴨緑江の中朝国境には、これまで鴨緑江大橋がただ一本かかっているだけだったため、もう一本通して、中朝間の物流を増やそうとしたのだ。実際、1億5000万ドルの建設費用を中国側が全面的に負担する形で、新鴨緑江大橋は2016年に完成した。

金正恩を「利用」したい2つの国…
 70周年を前にしても、9月2日から4日まで、中国の王毅国務委員兼外相が訪朝し、北朝鮮の李容浩外相と70周年記念行事について話し合った。王外相の帰国後には、北京の外交筋の間で、10月に李克強首相が訪朝するとか、いや金正恩委員長が訪中するのではといった話が飛び交ったものだ。

 だが北朝鮮側は今回、あえて中朝70周年の大事な日に、米朝協議をぶつけてきた。これは、北朝鮮側の中国に対する不満の表れと見てよいのかもしれない。金正恩外交は、常に米中両大国を天秤にかけながら進めているからだ。

金正恩を「利用」したい2つの国
 さて、そのような窮地に立つ金正恩委員長を「利用」しようとしている国が2カ国ある。その一方は、韓国である。

 韓国は、文在寅大統領が9月9日に、「タマネギ男」こと曹国(チョ・グク)法務長官を任命したことで、左派と右派が国を二分する争いを続けている。そんな中、文在寅大統領は、故郷の釜山で11月25日と26日、韓国(東南アジア諸国連合)サミットを開催する。

 これは故郷に錦を飾り、来年4月の総選挙の追い風にしようという思惑だが、私が得た情報によれば、青瓦台(韓国大統領府)は、このサミットに金正恩委員長を参加させるべく、北朝鮮側に強力な働きかけを行っているという。米朝協議が妥結し、国連の経済制裁が緩和されれば、北朝鮮との経済交流を図れるというわけだ。


『ファーウェイと米中5G戦争』(近藤大介著、講談社+α新書)
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 北朝鮮に熱い視線を向けているもう一つの国は、日本である。安倍晋三首相は、一日も早く平壌へ行って金正恩委員長との日朝首脳会談に臨みたい。そのためには、何らかの見返りが必要だ。国連の経済制裁が緩和できれば、与えられる「見返り」の範囲も広がるというわけだ。

 日本は、2002年の小泉純一郎首相の訪朝時に、25万トンの食糧援助を約束していて、いまだに果たしていない。それを渡そうとしているが、北朝鮮からすれば、それはあくまでも2002年の約束であって、今回の会談実現にはさらなる援助が必要だと主張する。例えば、安倍首相がトランプ大統領から買うと約束した275万トンのアメリカ産大豆の一部などが、その対象になるのではないかと思える。

 いずれにしても、今回の米朝協議は、東アジアの地政学を再び変える可能性を秘めているのは間違いない。

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[政治・選挙・NHK266] 幼保無償化 根強い懸念 「待機児童増」「保育の質低下」学童保育待機が最多1万8000人受け皿不足 外国人施設は対象外 保護者ら「不公平」
幼保無償化 根強い懸念 「待機児童増」「保育の質低下」
2019年10月7日 朝刊

 https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201910/images/PK2019100702100107_size0.jpg

幼児教育・保育の無償化が今月から始まった。政府は子育て世帯の負担軽減で出生率が上がることを期待する。だが、待機児童の増加、保育の質の低下への懸念は根強い。保護者らは制度見直しや保育士の待遇改善を求めている。 (坂田奈央、大野暢子)
 安倍晋三首相は四日の所信表明演説で、幼保無償化について「七十年ぶりの大改革だ」と胸を張った。衛藤晟一少子化担当相は「子育て世代に大胆に政策資源を投入する。少子化対策の大きなステップだ」と強調し、子育て層にも目配りする「全世代型社会保障」の第一歩に位置づける。
 これに対し、子育て層は「まず待機児童の解消を」と訴える。待機児童は減少傾向ながら、四月時点で約一万六千人となお高水準にある。希望施設に入れず保護者が働くのを諦めるなどした「潜在的な待機児童」は約七万三千人で、二〇一五年の公表以来最も多い。
 無償化によって待機児童が増える可能性もある。無償なら子どもを預けて仕事を始めたいと考える保護者が出てくれば、保育施設が不足するからだ。
 保育の質を確保できるかどうかも問題だ。保育士の配置が厚生労働省が定めた基準以下の認可外施設も、五年間は無償化される。保育士数や保育計画が基準を満たさない施設で子どもの人数が増えれば、目が行き届かなくなる恐れが増す。
 財源は消費税ではないものの、企業主導型保育所も無償化の対象だ。運営基準が緩く、書類審査のみで認可される。内閣府の一八年度調査では、全体の八割に問題があり、健康診断の実施や安全対策が不十分な例が目立った。立憲民主党の阿部知子衆院議員は「企業型保育所は問題点を十分に検証されておらず、保育の質も担保されていない」と警鐘を鳴らす。
 施設の種類に関係なく、保育士の待遇改善は引き続き課題となる。厚労省の賃金構造基本統計調査によると、保育士の月額平均給与は約二十四万円で、全産業平均より九万円以上低い。
 市民団体「保育園を考える親の会」の普光院(ふこういん)亜紀代表は「保育士の処遇を改善して配置人数を増やさないと、子どもにしわ寄せがいく」と指摘。「みらい子育て全国ネットワーク」の天野妙代表は「無償化財源を一部でも保育士の待遇改善に回すべきだ」と訴える。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201910/CK2019100702000130.html


学童保育待機が最多 5月時点 1万8000人、受け皿不足
2019年10月1日 朝刊

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201910/images/PK2019100102100090_size0.jpg
 共働きやひとり親家庭の小学生を放課後に預かる放課後児童クラブ(学童保育)を、希望したのに利用できなかった「待機児童」は五月一日時点で一万八千百七十六人となり、過去最多を更新したことが三十日、全国学童保育連絡協議会の調査で分かった。前年より千二百十九人増加した。
 小学校入学後に子どもの預け先に困り、母親が離職を余儀なくされる「小一の壁」が問題となっており、国は二〇二三年度末までに定員を約三十万人分拡大する計画だ。共働き世帯が増える中、学童保育のニーズは一層高まっており、受け皿の整備が追い付かず事態解消が見通せない状況が浮き彫りになった。
 学童保育は、児童福祉法に基づき市区町村などが設置する。調査は全千七百四十一市区町村に五月一日時点の状況を聞いた。
 都道府県別の待機児童は東京の三千九百十二人が最多。他に千人以上となったのは埼玉二千四十三人、千葉千五百四十五人、静岡千九十人。利用児童は百二十六万九千七百三十九人(前年比五万八千二百十七人増)、学童保育の開設数は二万三千七百二十カ所(同四百五カ所増)で、いずれも過去最多。
 同協議会は「乳幼児の保育が優先され、自治体の人手や予算が学童にまで回っていないのが現状だ。質を確保した上で数を増やしていかないといけない」と指摘した。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201910/CK2019100102000133.html


幼保無償化 あすスタート 外国人施設は対象外 保護者ら「不公平」
2019年9月30日 朝刊

 幼児教育・保育無償化の対象から外国人学校に付属する幼保施設は外れる。無償化の財源となる消費税は在日外国人も等しく負担する。保護者や専門家は、外国人幼保施設を無償化しないのは「不公平だ」と訴えている。 (大野暢子)
 無償化は幼稚園や認可保育施設などに通う子どもが対象で、都道府県に「認可外保育施設」として届け出た施設も利用料が一定額補助される。外国人学校は法律上、これらとは別の「各種学校」に分類される。
 文部科学省国際課によると、二〇一八年五月現在、各種学校の認可を受け、外国人児童を受け入れる幼保施設は八十八カ所。幼保部門を各種学校から切り離した一部施設を除き、大部分は無償化されない見通し。
 外国人幼保施設が無償化の対象になろうと認可外保育施設として届け出ても、自治体が取り消したり、受理を拒んだりする事例が明らかになっている。政府が「各種学校は認可外保育施設に当たらない」との見解を示しているからだ。
 浜松市の「ムンド・デ・アレグリア学校」などブラジル人学校二校は市の求めに応じ、今年四月に認可外の廃止届けを出した。数年前に認可外施設届けを出して未就学児を受け入れてきた両校は、廃止届けにより無償化から外れた。
 市幼児教育・保育課の山本卓司課長は「無償化制度から排除する目的で廃止届けを出させたのではなく、国の方針に従った」と本紙の取材に説明した。
 東京都荒川区の東京朝鮮第一初中級学校幼稚部は四月、無償化の準備として都保育支援課に認可外施設届けを提出した。都は一度は受理したが、五月になって受理印を押した書類の返却を求めた。同課担当者は「受理したのは認識不足だった」と本紙に話した。
 朝鮮学校幼稚園の保護者連絡会の宋恵淑(ソンヘスク)代表(43)は「国は認可外届けを取り消してまで、外国人幼稚園を無償化から外そうとしているようだ」と憤る。滋賀県立大の河かおる准教授は、認可外施設でなくなれば、都道府県の立ち入り調査も行われないことに触れ「届けの取り消しは子どもの安全を守る児童福祉法の趣旨に反する」と語った。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201909/CK2019093002000110.html

 
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http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/279.html

[政治・選挙・NHK266] 出生数90万人割れへ 今年、推計より2年早く 沖縄の出生率はなぜ高い?出生率減少を加速させる「子ども部屋おじさん」
出生数90万人割れへ 今年、推計より2年早く

社会保障・成長に影
2019/10/7付日本経済新聞 朝刊
日本の出生数(総合・経済面きょうのことば)が急減している。1〜7月は前年同期に比べて5.9%減り、30年ぶりの減少ペースとなった。団塊ジュニア世代が40代後半になり、出産期の女性が減ったことが大きい。2016年に100万人を下回ってからわずか3年で、19年は90万人を割る可能性が高い。政府の想定を超える少子化は社会保障制度や経済成長に影を落とす。出産や子育てをしやすい環境の整備が急務だ。…

目標遠ざかる出生率1.42 3年連続低下
2019/6/7 23:57

関西の出生率、兵庫 京都 和歌山が低下 18年
2019/6/7 19:59

18年の合計特殊出生率、島根は全国2位
2019/6/7 18:25

18年の出生数91.8万人、最低を更新 出生率は1.42
2019/6/7 14:32

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO50672490W9A001C1MM8000/


目標遠ざかる出生率1.42 3年連続低下
18年、出生数は91.8万人で過去最低
2019/6/7 23:57
保存 共有 印刷その他
厚生労働省は7日、1人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる2018年の合計特殊出生率が1.42となり、前年から0.01ポイント下がったと発表した。低下は3年連続だ。政府が25年度までにめざす子育て世代が希望通りに子どもを持てる「希望出生率」の1.8は遠い。晩婚や非婚化の影響が大きく、政府は少子化対策の見直しを迫られそうだ。


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厚労省が同日発表した18年の人口動態統計で明らかになった。同年に生まれた子どもの数(出生数)は91万8397人で過去最少を更新した。前年比では2万7668人減った。出生率は05年に記録した1.26に比べると高い水準にあるが、女性人口が減っており、出生数は右肩下がりで、3年連続で100万人割れとなった。

人口減は速度を増しており、18年は出生数と死亡数の差である人口の自然減が44万4085人となった。

出生数を母親の年代別にみると、44歳以下の全ての年齢層で減った。30〜34歳は前年から1万人超減り33万4906人となったほか、25〜29歳でも約7000人減の23万3754人となった。出生数は公的年金などの社会保障の前提となる国立社会保障・人口問題研究所の将来推計を1万人弱下回ったもよう。厚労省の担当者は「深刻な影響ではないが、注視していきたい」と述べた。

出生数の低下が止まらない理由は主に2つある。人口減少と出産年齢の高止まりだ。25〜39歳の女性人口は1年間で2.5%減った。第1子の出産年齢は30.7歳で過去最高水準にある。

全国で最も出生率が低い東京都では0.01ポイント低下し1.20となったほか、神奈川県や大阪府などの大都市圏は全国平均を下回る1.3台で推移した。最も高いのは沖縄県の1.89だった。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45832790X00C19A6MM8000/?n_cid=SPTMG002


 


90万人割れ、出生率減少を加速させる「子ども部屋おじさん」

武田 安恵
日経ビジネス記者
2019年10月7日
全1544文字
2019年の出生数が90万人割れする見通しが強くなった。当初の推計より2年も早まった背景には何があるのか。若年層の「未婚化」が想定以上のペースで進んだ結果であると、専門家は分析する。

(写真:PIXTA)
 2021年に90万人下回ると予想されていた日本の出生数が、2年前倒しで90万人割れとなる見込みが濃厚となった。厚生労働省がこのほど発表した人口動態統計の速報値によれば、2019年1月から7月の出生数は前年同期比5.9%減の51万8590人で、今年の出生数が90万人割れするのはほぼ確実となったからだ。国立社会保障。・人口問題研究所は17年、19年の出生数は92万1000人で、90万人割れするのは21年(88.6万人)とする推計を出していた。

 想定より早いペースで少子化が進んでいることに対しては、団塊ジュニア世代(1971〜74年)の高齢化が進み、出産適齢期でなくなったことや、20代の女性が578万人、30代の女性が696万人と、出産期の女性の数自体が減っていることが主な理由に挙げられる。しかし、こうした人口動態の変化は、17年時点である程度把握できていたはずだ。なぜ狂いが生じたのか。

 問題を見るに当たっては、少子化を考える上で注目すべきもう1つの指標、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)が重要になってくる。合計特殊出生率も、15年の1.46をピークに減少傾向が続いており、足元(18年)は1.42だ。ということは、出産適齢期とされる女性の総数が減っている上に、合計特殊出生率が想定よりも上がっていない点が、影響しているのかもしれない。

 少子化問題に詳しいニッセイ基礎研究所の天野馨南子准主任研究員は、2年前倒しで出生数が90万人割れとなった今回の問題について、「合計特殊出生率を計算する上で影響を与える、未婚率の見通しが甘かったのでは」と話す。

 直近の国勢調査(2015年)では、男性の生涯未婚率は23.37%、女性は14.06%となっている。「国立社会保障。・人口問題研究所の想定以上に未婚化が進んだのでは。とりわけ、一番出生率に影響を与えるとされる、20代後半の未婚率が増えている可能性が高い」と天野氏は分析する。

 非正規雇用の増加、給料の減少、社会保障費用の増大と、若年層を取り巻く雇用環境は厳しい。こうした経済的環境が未婚率を加速させている部分はある。だが、天野氏は未婚率の上昇は必ずしも経済的理由とは限らないと話す。「20〜40代の独身男女の6〜7割が親や親族と同居している。子どもを手元に置いておき、仕事や結婚に関してまで口を出す親が昔より増え、自立できない若者が増えている。結果、結婚しようとしない若者の“増産”につながっている」(天野氏)というのだ。男性の方が数が多いこともあって、天野氏はこうした現象を「子ども部屋おじさん」と呼んでいる。

 政府の少子化対策は、保育の無償化や待機児童対策など、子育て世代に対する支援に目が向きがちだ。もちろん重要であり、必要なことだが、一方で夫婦の最終的な子どもの数(完結出生数)は2015年、1.94人と1990年代の2.2人からさほど大きく下がっていない。結婚した夫婦が出産を控えているわけでは必ずしもないのである。

 天野氏は「20代の未婚化を食い止める方が少子化対策の効果は高い」と話す。親は生涯にわたり、子どもの面倒を見ることはできない。家族の間の意識改革も、今後重要になってくるのかもしれない。

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沖縄の出生率はなぜ高い? 若年層の既婚割合が押し上げ NIAC分析
2019年9月26日 07:00 
• 出生率 妊娠
https://030b46df30379e0bf930783bea7c8649.cdnext.stream.ne.jp/archives/002/201909/c152214d64eb51427e3bb5ff1603040d.jpg
 沖縄県内のい出生率の要因について、南西地域産業活性化センター(NIAC、大嶺満会長)は25日、国勢調査や人口動態統計などのデータを用いて分析した結果を発表した。沖縄は女性の若年層で既婚者の割合が全国を上回っており、結婚している女性の出生率も高くなっているため、全国的に少子高齢化が進む中でも高い出生率を維持している。
 1人の女性が生涯に生む子どもの数を示す「合計特殊出生率」は、2018年に沖縄が1・89と全国平均の1・42を大きく上回り、全国最高を記録している。結婚している女性の出生率は、人口千人当たりで沖縄が111・6人となっており、全国の78・9よりも大幅に高い。出生率が高い20代など若年齢層で、女性が結婚している割合「有配偶率」が全国平均より高いことも、高出生率につながっている。若年齢層の結婚している女性の出生率が高いと、年齢的にも第2子以上の出生率が上がるという。結婚していない男女間の子(婚外子)の出生数に占める割合は沖縄が約4%と、全国の約2%に比べて高いことも要因となっている。

 1972年の復帰直後ごろの第2次ベビーブーム世代以降の女性人口が減っていることから、有配偶率や出生率が大幅に上昇しない限り、今後の出生数は減少が続く可能性がある。

 NIACの金城毅上席研究員は「県内では若年での結婚・出産や婚外子なども多い。貧困対策や教育支援などの政策が必要とされている」と話した。女性が能力を発揮する環境を求めて都市部に出て行く例も他県では多いとして「女性が働きやすく、能力を発揮しやすい環境を整備しないと地方から女性がいなくなり、さらに出生率が低下していくことになる」と指摘した。
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あす消費税率引き上げ 県内量販店も混雑

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-996335.html


人口減少対策指針、一部改訂へ 岡山県、出生率など見直し検討
政治行政

 岡山県は、人口減少対策の指針「おかやま創生総合戦略」(2015〜19年度)を改訂する。最上位に

位置付ける県政中期行動計画(17〜20年度)に合わせて期限を1年延長し、出生率などの数値目標の見

直しを検討する。来年2月をめどに案をまとめる。

 同戦略は合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子どもの推定人数)を1・49から1・61へ引き上げ

るなど41項目の数値目標と対策を明記。一方、その後に作った県政中期行動計画は同出生率目標を1・6

3としている。放課後児童クラブの担い手となる子育て支援員の目標数なども異なっており、改訂で整合性

を図る。

 また、政府が6月に閣議決定した地方創生第2期の「まち・ひと・しごと創生基本方針」(20〜24年

度)を踏まえ、都市に住みながら地方と交流する「関係人口」の拡大に関する目標や施策なども検討する。

 県政策推進課は「人口減少に歯止めを掛けるため、より実効性のある内容にしたい」としている。
(2019年10月03日 15時04分 更新)
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「津山の秋」、インスタに投稿を
https://www.sanyonews.jp/article/944809

http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/281.html

[経世済民133] 孫正義氏、日本を憂う「このままでは忘れられた国に」外需低迷 景気にブレーキ8月再び「悪化」点灯する米景気後退のシグナル、最後のとどめは
孫正義氏、日本を憂う「このままでは忘れられた国に」
日経ビジネス
ソフトバンク コラム(ビジネス) スタートアップ ネット・IT AI
2019/10/8 2:00
ソフトバンクグループ会長兼社長。1957年8月、佐賀県鳥栖市生まれ。62歳。81年、日本ソフトバンク設立。96年ヤフー社長、2006年ボーダフォン日本法人(現ソフトバンク)社長、13年米スプリント会長に就任。17年、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを設立し、世界のAI関連企業に投資する。同年から現職。(撮影:村田和聡)
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ソフトバンクグループ会長兼社長。1957年8月、佐賀県鳥栖市生まれ。62歳。81年、日本ソフトバンク設立。96年ヤフー社長、2006年ボーダフォン日本法人(現ソフトバンク)社長、13年米スプリント会長に就任。17年、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを設立し、世界のAI関連企業に投資する。同年から現職。(撮影:村田和聡)

日経ビジネス電子版
世界で存在感が低下している日本企業の中で今、最も著名な経営者と言えばソフトバンクグループの孫正義会長兼社長だろう。世界の最前線で戦い続ける孫氏は今、日本の経済やビジネスの現状をどのように見ているのか。

──孫さんはたくさんの海外の会社を見ています。日本の現状をどう見ていますか。

孫正義氏(ソフトバンクグループ会長兼社長、以下、孫氏):非常にまずい。一番の問題は、戦前戦後や幕末に比べて起業家精神が非常に薄れてしまっています。「小さくても美しい国であればいい」と言いだしたら、もう事業は終わり。縮小均衡というのは、縮小しかありません。日本の中だけで、鎖国された江戸時代のような状況で完結できるならまだいいんですけど。

一方、世界は急激に動いています。米国は依然として技術革新は進んでいますし、中国は巨大化し、東南アジアも今急拡大してきている。それなのに、若いビジネスマンは国外に打って出るんだという意識が非常に薄れてしまっています。留学生もひところに比べて急激に減っていますよね。日本のビジネスマンがもう草食系になってしまった。それでは活力になりません。僕は、教育や思想的なものが非常に問題だろうと思います。

それから1980年代、90年代ぐらいまでは、日本は電子立国と言われ技術で世界を引っ張る力がありました。その勢いは全くなくなって、技術的な面で日本が世界のトップを取っている分野はどんどん減ってしまいました。今や部品や自動車が一部残っているくらいです。今は完全に影が薄れて、技術の日本というのがもう消えてなくなってしまったという感じです。

そういう状況下で、中国は欧米、日本のまねをして、安ければいいだろうというふうに言われていましたが、今や技術の面でもかなり世界のトップを争うところに来て、はるかに日本を抜いていってしまっている。これは日本が競争力を失ってしまったという意味で、非常に問題だろうと思います。半導体も日本は一時トップでしたけれども、もう今や完全にそのポジションを失ってしまった。そういう意味では日本経済は、特にこの30年間ほぼ成長ゼロで、非常にまずい状況だろうと思います。小さな村の小さな平和はいいんですけど、それでは世界から置いてけぼりになってしまう。いつの間にかもう完全に忘れ去られてしまう島国になってしまうような気がします。

──なぜ日本人はハングリーになれないと思いますか。満たされてしまったのでしょうか。

孫氏:一時日本のビジネスマンは「働き過ぎ」と非難されるくらい頑張っていました。世界のそうした声を聞いてしまい、今は働かないことが美徳のような雰囲気になっています。株式市場もバブル崩壊で「借金=悪」「投資=悪」のようなイメージが広がりました。半導体は設備投資産業ですが、それがぱたっと止まってしまいました。つまり競争意欲を持つということ自体に疲弊し、こうした精神構造が社会全体を覆ってしまいました。

2000年前後のネットバブルでは若い経営者が脚光を浴び、「お金があれば何でも買える」という発言が世間の総バッシングを浴びました。成長産業に若者が入りそうだったのに、みんなが萎縮してしまった。その中で、公務員が一番人気みたいな職種になってしまった。公務員が悪いと言っているのではなく、そこが一番人気で、若い成長産業に若者が行かなくなったら、これはもう自動的に産業構造自体が成長に向かわなくなります。

──ソフトバンク傘下のヤフーがZOZOの買収を決めました。前沢友作氏のように事業を作り出した創業者をネガティブに捉える風潮は、日本特有なのでしょうか。

孫氏:村社会のやっかみみたいなものというのは、長らくありますよね。米国では若い人たちが成功すると、「アメリカンドリーム」とたたえられますが、日本だと「成り金」と言われ、何かいかがわしいものを見るような目で見ます。「若くして成功してけしからん」とかね。

──世界で通用する日本の経営者を挙げるのが難しくなってきています。孫さんはご自身をどのように評価していますか。

孫氏:僕の実績はまだまだ上がっていない状態で、恥ずかしいし、焦っています。やっぱり米国や中国の企業の成長を見ると、この程度ではいかんという思いは非常にあります。米国や中国の市場の大きさを羨ましいと思ったこともありましたが、東南アジアのように自国市場が小さい国からも熱く燃えて急成長している会社がたくさん出てきている。僕を含めて日本の起業家が言い訳をしている場合ではないのです。

──孫さんですら道半ばですか。最終的にはどこを目指しているのでしょうか。

孫氏:僕は、今は自分の事業というより戦略的な持ち株集団をつくろうとしています。ビジョン・ファンドを通じて志を共有する起業家たちを集め、「群戦略」で大きく勢力を伸ばす。「人工知能(AI)が成長の源泉」とビジョンを絞ってグループを構築しつつあります。始まったばかりですが、非常に大きな可能性を感じています。

■AI革命は日本のラストチャンス

──その群れが世界のAIを治める、という形になるのでしょうか。

孫氏:そうです。世界では急激な産業構造の転換が起きています。米アマゾン・ドット・コムはもう完全に米ウォルマートの時価総額を抜きました。ウォルマートはまだ頑張っている方ですが、それ以外のリアルの店舗を中心とした企業は、どんどんと倒産をしている状況です。それはメディアもそうですよね。

紙媒体を中心としたところは、米グーグルや米フェイスブックなどにどんどん抜かれてしまった。特に小売りとメディアの世界でインターネットによって産業が置き換わりつつあります。それがもっと大きな流れとして、AIが残りの産業全部をひっくり返しにいくという時代が始まると思っています。既に激震が起きていますが、AIが残りの産業全部をひっくり返すと、そのインパクトははるかに大きなものになっていくでしょう。

産業革命は、人間の体で言えば手や足、目、耳、口など、いわゆる五体の各部分を拡張させました。筋肉の拡張だったと思いますが、情報革命は脳の働きの拡張です。脳の働きを大きく2つに分けると、知識と知恵というものがあります。今までのインターネット革命は知識の革命だった。ですからあんまり丸暗記しなくても、検索で済むようになりました。これからは知恵の革命になると思います。

どちらがより大きな付加価値のある働きをするかというと、肉体労働はその賃金ほどしか対価を得ないわけです。それに対して頭脳労働の人は、平均的により大きな賃金を得ます。でも同じ頭脳労働の中でも、物知りだという人が得られる賃金の対価の平均より、知恵を働かせ、人よりもたくさん考えて深く洞察し、新しいものをつくり出していく人の方がはるかに大きな対価を得ますよね。

人間が普通に知恵を働かせてやるよりも、AIを使って洞察、予測した成果物はより大きく力を発揮する時代が来ると思っています。そういう時代に日本は、ラストチャンスとして打って出るべきです。これは日本に最後に残された一発逆転のチャンスでしょう。問題は、政府や教育者などのリーダーたちが、そのことを十分に認識していないことです。

──トランプ米大統領や韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領にも会える孫さんが、日本政府に働きかけないのでしょうか。

孫氏:かつて政府の諮問委員などに名を連ねたことがありますが、最終決定する政治家に強い意識がないと難しいと思いますね。社会全体が起業家を褒めたたえる風潮にならないと政治家も動きません。ネット新興企業はいかがわしいという雰囲気が残ったままでは、言えば言うほどいかがわしいと思われてしまう。

──「物言えば唇寒し秋の風」だと。

孫氏:そうすると僕らは海外の方に出稼ぎに行ってしまう。米国や中国、東南アジア、インドの起業家たちと建設的な話をしている方が早く成果が出ます。

──AIの群戦略が完成した時、アマゾンやグーグルとは、どのような関係になりますか。

孫氏:パソコンの時代にトップを走っていた企業が、ネット時代にトップであり続けたわけではありません。同じようにネットで活躍した会社が、AI時代に成功できるかは分かりません。例えば医療や交通、建設、不動産などの産業で、必ずしも成功できないかもしれません。新しい時代には新しい若いヒーローが続々と生まれる。私はそこに賭けたいのです。

(聞き手は日経ビジネス編集長 東昌樹)

日経ビジネス2019年10月7日号特集「目覚めるニッポン」では、孫正義氏や日本電産の永守重信氏ら50人による日本の再成長に向けた提言を紹介している。

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外需低迷 景気にブレーキ動向指数、8月再び「悪化」
経済2019/10/7 23:00
景気の不透明感が強まっている。8月の景気動向指数では、国内景気の基調判断が4カ月ぶりに「悪化」となった。外需の低迷で製造業が減速していることを示す指標が続き、消費増税のあった内需とともに不安がぬぐえない。専門家の間では戦後最長とされる景気回復局面は終わり、後退局面に入っているとの見方も出ている。

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「市況が戻ると思ったら米国と中国の間で問題が起きる。中国企業は設備投資をするかどうか様子見をしている」。DMG森精機の現地法人、DMGMORI中国のフランク・ベアマン総裁はため息をつく。
米中の貿易摩擦が日本の景気に落とす影は色濃くなってきている。8月の景気動向指数は製造業の生産や出荷が鈍って下押し要因となった。農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「国内景気は18年秋に景気の山を付けた後、輸出の減少ですでに後退局面入りしている」とみる。

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今回の判断は8月までの景気指標に基づく。増税前の景気を映したものだが、足元では一段と厳しくなっている可能性がある。英調査会社IHSマークイットが発表するグローバル製造業PMI(購買担当者景気指数)は、9月まで5カ月連続で景気判断の節目とされる50を下回っている。
景気動向指数で見ても、先行きは明るくない。数カ月先の景気を映すとされる先行指数は8月に前月比2.0ポイント低下の91.7となり、約10年ぶりの低水準だった。経団連の中西宏明会長は7日の記者会見で「先が読みにくく難しい局面だ」と述べた。
外需の不振に伴う生産の停滞は、堅調だった雇用にもじわりと波及している。8月の新規求人数は前年同月比6%近く減った。中でも製造業は15.9%減と落ち込みが大きく、減少も7カ月連続と陰りが目立つ。
消費税率が上がった10月以降は、これまで日本経済をけん引してきた個人消費が足踏みする懸念もある。キャッシュレス決済のポイント還元やプレミアム付き商品券など増税後の需要を下支えする施策があるものの、消費者心理は悪化が続き、消費の基調は強くない。

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今後の焦点は外需の持ち直しだ。ある大手工作機械メーカーの幹部は「ほぼ全ての仕向け先で良くないが、半導体製造装置向けの受注は相当動き始めた」と語る。
内需をとりまく環境も今のところ底堅い。雇用は製造業の一部に陰りがあるものの、有効求人倍率は1970年代以来の高い水準にある。日経平均株価は2万1000円台にあり、市場の混乱が消費者心理を冷やすといった状況にはない。
今後、景気がしっかりした回復軌道を取り戻すには、米中貿易摩擦に伴う外需の停滞が持ち直し、消費増税後の内需が早期に回復するというシナリオが前提となる。ただ、いずれもまだ不透明な段階にあることは否めない。景気指数による「悪化」との判断が今年3〜4月と同じように一時的なものにとどまるかどうかは、微妙な局面にある。
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点灯する米景気後退のシグナル、最後のとどめは[有料会員限定]
2019/10/7 2:00

日経平均、米雇用の改善が支え
2019/10/7 6:56
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• 南武志中西宏明景気動向指数国内景気DMG森精機農林中金総合研究所IHSマークイット外需低迷動向指数ブレーキ

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50702620X01C19A0EA2000/

 
点灯する米景気後退のシグナル、最後のとどめは
 田村 正之編集委員2019/10/7 2:00日本経済新聞 電子版
米景気の今後を巡る思惑が株式相場を揺らしている。JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳氏は「米景気後退入りの事前シグナルが幾つも点灯していて、さらに最後の"とどめ"が出ると危ない」と話す。

すでに点灯しているシグナルは、過去の景気後退入りの多くの予兆となった米長短金利の逆転と米サプライマネジメント協会(ISM)による製造業の景況感指数の50割れ。今回もこの2つのシグナルがそろって点灯したこと…

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50630670U9A001C1000000/ 

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/319.html

[不安と不健康18] 日焼けサロンは同性愛者をターゲットに出店している? 日焼けマシンは皮膚がんのリスクを倍増
日焼けサロンは同性愛者をターゲットに出店している?
日焼けマシンは皮膚がんのリスクを倍増

Tanning Salons Could Be Targeting Gay Men by Opening in LGBT Neighborhoods

2019年10月8日(火)14時15分
カシュミラ・ガンダー

https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=ZpAdGDS-VjQ

日焼けマシンは皮膚がんのリスクを倍増させるとも言われる Gangis_Khan/iStock.

<同性愛男性カップルが多い都市には、日焼けサロンの店舗数が多いことがわかった>

日焼けサロンは同性愛の男性カップルが多い地域に店を構えている割合が高いという調査結果が発表された。研究者らは日焼けサロン業界が同性愛者をターゲットにしているのではないか、と心配している。

アメリカの10都市の国勢調査のデータを調べたこの調査では、男性の同性カップルが全世帯の10%を占める地区から160メートル以内に日焼けサロンが存在する確率は、男性の同性カップルが10%未満の地区の2倍になることがわかった。

チームが調査対象にしたのは、ロサンゼルス、シカゴ、サンフランシスコ、シアトル、サンディエゴ、ダラス、フェニックス、ワシントンD.C.、ポートランド、デンバーとアメリカで最もLGBT人口が多い都市だ。

米医師会の月刊オープンアクセス医学雑誌JAMAネットワークオープンに掲載されたこの結果は、住民の所得水準や人種、若い女性の割合(若い女性には日焼けサロンの愛用者が多い)とは関係ない。

調査を行ったスタンフォード大学の研究者ら以前、同性愛の男性は日焼けマシンをよく使う傾向があり、そのために皮膚癌を発症する可能性が高い。場所と料金が適切であれば日焼けサロンに魅力を感じることを発見していた。

しかし今回の調査では、ジムやアパート、ホテルなどに設置されている日焼けマシンについては調査の対象にできなかったため、結論は限定的だ。

皮膚癌の発生原因に
室内での人工的な日焼けは、年46万件を超える皮膚癌の原因と見られている。ゲイやバイセクシュアルの男性は、異性愛の男性と比較して、皮膚癌になる可能性が2倍高く、生涯にわたって日焼けマシンを使用する可能性が6倍高いといわれている。

「これは大きな問題だ。LGBTコミュニティはすでに社会の偏見や差別と関わる健康格差を経験しているからだ」と本誌に語ったのは、研究の共著者であるスタンフォード大学の皮膚科・疫学科教授エレニ・リノス博士だ。

「さらに、同性愛の男性は皮膚癌の割合が不釣り合いに高い。本研究は、同性愛者の多い地域は発がん原因としてよく知られる日焼けマシンへのアクセスがしやすい環境にあることを初めて示した」と、彼女は言う。

リノスによれば、調査対象はアメリカの主要都市だけだったため、同じパターンが世界中で見られるかどうかは定かではない。

日焼けサロン業界がLGBTのコミュニティを意図的にターゲットにしているのかどうかは不明だが、「そうだとしたら、とても心配だ」とリノスは言う。

「たばこ産業は、LGBTをはじめ健康リスクの高いコミュニティにタバコを販売していることが明らかになっている。こうした地域で日焼けマシンの数が増えていることは、健康格差を悪化させる可能性があるし、LGBTコミュニティはそのことを知る必要がある」

次のページ日焼けマシンは危険
リノスは警告する。「日焼けマシンは危険だ。皮膚がんのリスクが倍増する。そのうちに、しわ、肌の老化、むら、黒ずみなども生じる。美容の観点からも使用するべきではない」

彼女の言葉は、高レベルの紫外線に人体がさらされる室内日焼けの危険を警告する米疾病管理予防センターのアドバイスを反映したものだ。警告対象には日焼けマシン、ブース、日焼け用ベッド、ランプの使用が含まれる。

肌の色が白い、そばかすができやすい、日焼けしやすい、目の色が青や緑、ブロンドや赤毛、ホクロが多い人は、皮膚癌を発症するリスクが高い。病気の家族歴や個人歴がある人も、病気にかかる可能性が高い。

(翻訳:栗原紀子)

20191015issue_cover200.jpg
※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/ha-1.php
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/789.html

[国際27] 北朝鮮漁民は「100年前の船」で無謀な出漁......日本の漁師から同情の声も「あの恐怖は言い表せない」北朝鮮の元漁師が体験した「生死の境目」 
北朝鮮漁民は「100年前の船」で無謀な出漁......日本の漁師から同情の声も
2019年10月8日(火)14時15分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

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石川県の日本海沿岸に漂着した北朝鮮のものと見られる木造船(2018年5月12日、デイリーNKジャパン)

<北朝鮮漁船の遭難の最大の原因は、「日本なら100年前のシロモノ」と言われる粗末な木造船による強引な出漁にあると見られている>

海上保安庁によると、7日午前9時10分頃、日本海の好漁場・大和堆の周辺海域で、水産庁の漁業取締船「おおくに」(約1300トン)と、北朝鮮の漁船が衝突した。現場は、石川県・能登半島から約360キロ北西の日本の排他的経済水域(EEZ)とみられる。

漁船は衝突から間もなく沈没。漁船の乗員約20人が海上に投げ出され、一部は救助されたもようだが、なお全員の安否が気にかかる。(編集部注:日本の海保は、北朝鮮の漁船乗組員約60人全員が救助され、別の北朝鮮船に乗り込んだと発表)

大和堆周辺では近年、北朝鮮漁船や中国漁船による違法操業が問題となっていた。その一方、遭難した北朝鮮船と見られる木造船や、北朝鮮の漁民と見られる遺体が相次いで日本の海岸に漂着した。

遭難の最大の原因は、「日本なら100年前のシロモノ」と言われる粗末な木造船による強引な出漁にあると見られている。サイズが小さすぎ、構造的にも沖合での漁業に向かない木造船は、大波に遭うと簡単に転覆する。海に放り出され命を落とした北朝鮮漁民の数は、漂着が多かった2017年の1年間だけで1000人を下らないと見られる。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は昨年3月、かつて北朝鮮でイカ漁に従事したことのある脱北男性のインタビューを掲載した。男性はその中で、木の葉のように大波にもてあそばれる木造船の様子を描写。「あの時の恐怖は言葉では言い表せません」と語っている。

<参考記事:「あの恐怖は言い表せない」北朝鮮の元漁師が体験した「生死の境目」>

また韓国のデイリーNK本社とデイリーNKジャパンは昨年5月、石川・山形・秋田の各県を訪れ、イカ釣り漁師や漂着木造船を取材した。石川県漁協小木支所で行ったインタビューでは、漁師たちから北朝鮮船の漁の実態や、日朝の民間漁業協定が結ばれていた1980年代に北朝鮮の港に避難した体験談も聞いた。漁師たちは北朝鮮の違法操業を批判する一方で、無謀な出漁をせざるを得ない北朝鮮漁民の境遇について、「かわいそうや。あの人らも帰れば妻や子がおるのに」と同情の声を漏らした。

石川県での取材では、北國新聞の連載記事「戦場の大和堆」取材班からの手厚いサポートを得ることができた。タイトルの通り、日本の国益が脅かされる海の最前線を精力的に追った企画だが、徹底的な取材に基づいた、次のような指摘も見られる。

「『協調的安全保障』という考え方がある。多国間で幅広い交流を持ち、信頼関係を醸成することで、安全保障上の危機の高まりを予防しようというものだ。もしも漁業協定が結べれば、その一部として機能しうるのではないか。(中略)北風も冷たいばかりではない。大陸から吹き寄せる季節風を、能登人は「あえの風」と呼び、恵みをもたらす吉兆とした。かつて朝鮮半島から人と文化を運んだ風でもある」(同紙2018年2月9日付朝刊)

まずは今回の事故での北朝鮮漁民の全員の無事を祈り、この出来事が、日朝になんらかの肯定的な結果をもたらすことを期待したい。

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/100-45.php

「あの恐怖は言い表せない」北朝鮮の元漁師が体験した「生死の境目」
2018年05月04日
日本海沿岸では昨年から今年の初めにかけて、北朝鮮のイカ釣り漁船とみられる木造船と、北朝鮮漁民と見られる遺体の漂流、漂着が急増した。背景には、不足する外貨を稼ぎたい国家が「漁労戦闘」と呼ばれる無理な漁獲増大キャンペーンを繰り広げ、それに、一獲千金を目指す庶民が呼応している実態があると言われる。

米政府系のラジオ・フリー・アジアは最近、かつて北朝鮮でイカ漁に従事したことのある脱北男性のインタビューを掲載した。その要約を以下に紹介する。

「帰らぬ漁師、近所だけで数十人」
2004年夏、咸鏡道(ハムギョンド)のある港。キム・チョルミンさん(仮名、当時38歳)は、イカ漁で商売のタネ銭を稼ぐという希望に胸を膨らませ、疲れも忘れて漁船に乗り込んだ。

「北朝鮮では『イカ漁で1年分の食料を解決できる』と言われています。それは事実です。2ヶ月のイカ漁の時期のうち、天気の良い30日間は漁に出ます」

大漁への期待を抱いて大海原に出たキムさんは、やがて襲ってきた雨風に船が飲み込まれそうになり、恐怖に震えることになった。

「夕方に出漁したときはベタ凪だったのに、深夜になって雨が降り始め、風が出てきたんです」

急に雨風が強まり、船は荒波に飲み込まれそうになった。

「小さな木造船だったので、波に揺られると、そそり立つ大波にさえぎられて左右が見えなくなります。シケがすごくて、波の高さは数階建てのマンションほどに見えました。あの時の恐怖は言葉では言い表せません。じっと目を閉じて船に身を委ねました。なんとか大波を乗り越えても、船は揺れ続けました」

(参考記事:【写真】石川県に漂着した北朝鮮の木造船)

その年の夏、2度の台風に遭い、命からがら逃げ帰ったキムさんはそれ以降、恐ろしくなって漁に出られなくなってしまった。

「2度も台風に遭うと、勇気が出なくなるんですよ。最初は子どものことを考えて、次には妻のことを考えました」

結局、キムさんは漁に出ることを諦めた。翌年に脱北し、今は家族とともに日本で暮らす。東京でRFAの取材に応じたキムさんは、昨年末から急増した日本海沿岸への北朝鮮木造船の漂着を見て、他人事ではないと感じたと語った。

「毎年、イカ漁の時期には、私の近所だけでも漁に出て帰ってこない人が数十人いました」

(参考記事:北朝鮮の漁師300人以上が事故で行方不明に)

北朝鮮の小型漁船のほとんどは、航海に必要な基本装備を搭載していない。

「小さな木造船に5?6人が乗り込むのですが、(これと言った装備もなく)羅針盤一つで漁に出るので、方向も現在地もわからないんですよ。距離もわかりません。どこに向かっているのかぐらいしかわからず、自分たちがどこにいるのかは(見当もつきません)」

それでも大漁への期待を抱き、遠くまで漁に出ていたと語るキムさん。

「イカの群れを追いかけているうちに、陸地から遠く離れたところまで来てしまうことがよくありました。エンジンは船の大きさに見合わない小さなものを使うことが多いので、風が吹けばエンジンは無用の長物です。ほとんど役に立ちません」

木造船漂着の報道を目を凝らして見たというキムさんは、船の大きさや装備が、自分が漁に出ていた十数年前と何も変わっていないことに驚いたと打ち明けた。

「船は、装備も大きさも10年前と全く同じです。増えたのは船の数だけのようです」
https://dailynkjp.com/archives/4191?nw=1007



北朝鮮の漁師300人以上が事故で行方不明に
2017年01月04日 | 漁業
昨年の12月29日、北朝鮮の平壌で金正恩党委員長が打ち出している漁業奨励策の成果を発表、賞賛するための、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第4回水産部門熱誠者会議が開催された。

(関連記事:北朝鮮軍水産部門熱誠者会議、平壌で開催)

しかし、北朝鮮当局は「1年のうち300日漁に出よ」などと言った無茶な指示を下している。そしてこのノルマを達成するために、不十分な装備の船で悪天候の中出港することが多く、事故が多発している。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、昨年の「漁労戦闘」で300人以上の漁師が行方不明になっている。とりわけ、6月下旬からのイカ漁では200人、11月からのハタハタ漁では100人の漁師が死亡または行方不明になっているとのことだ。

情報筋によると、この数字は道の人民委員会(道庁)行政局幹部から伝えられた。各道の人民委員会は秘密裏に海難事故の発生件数と死者数、行方不明者数を集計しているようだ。

漁師たちは、大工が作った小さな船に乗って漁に出るが、沈没した船やエンジンが故障して放置された船が数万隻に及ぶという。また、小型漁船には6?7人の船員以外に、他地方から出稼ぎに来た労働者数十人が乗っていることが一般的であることを考えると、死亡・行方不明者の数は、これよりはるかに多いだろうと情報筋は見る。

このような状況にもかかわらず、地方の労働党や行政官僚は、人命救助には全く関心を持とうとせず、捜索活動は一切行わない。身内が事故に遭っても、どこにも訴え出るところはない。訴えれば、逆に「脱北したのではないか」と疑われ、保安員(秘密警察)から責められたり、監視されたりする有様だという。

唯一伝えられたのは、沈没する船で金日成、正日氏の肖像画を守り抜き、命を落としたという船長の美談だけだ。このような状況に、人々の怒りは頂点に達していると情報筋は伝えている。

(関連記事:北朝鮮メディア、命をかけて肖像画守った船員を賞賛)

そして行方不明者の一部は、日本にもたどり着いている。

共同通信の調べでは、昨年10月以降だけでも16隻の木造船と27人の遺体が発見されている。12月20日には、能登半島沖で北朝鮮の漁船とみられる木造船が漂流しているのが発見された。また、12月11日に韓国東海岸の沖で発見された北朝鮮漁船は、3ヶ月間漂流していたことが明らかになっている。

(関連記事:能登半島沖でナゾの木造船が漂流…北朝鮮の漁船か?)

金正恩氏が2017年の新年の辞で強調した「より多くの近代的な漁船を建造し、東海岸地区に総合的な漁具生産基地を築いて水産業の物質的・技術的土台を強化しなければなりません」という言葉も空しく響き渡るばかりだ。

共同通信の調べでは、昨年10月以降だけでも16隻の木造船と27人の遺体が発見されている。12月20日には、能登半島沖で北朝鮮の漁船とみられる木造船が漂流しているのが発見された。また、12月11日に韓国東海岸の沖で発見された北朝鮮漁船は、3ヶ月間漂流していたことが明らかになっている。

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金正恩氏が2017年の新年の辞で強調した「より多くの近代的な漁船を建造し、東海岸地区に総合的な漁具生産基地を築いて水産業の物質的・技術的土台を強化しなければなりません」という言葉も空しく響き渡るばかりだ。
https://dailynk.jp/archives/80546
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/495.html

[国際27] エルドアンに「言いくるめられた」トランプ、米軍シリア撤退ならISが甦る トランプ氏、トルコに警告のツイート「一線越えれば経済壊滅」また大量の避難民生む=EU、トルコ軍事作戦に警告 クルド攻撃黙認、共和党が批判
エルドアンに「言いくるめられた」トランプ、米軍シリア撤退ならISが甦る
Trump Accused of Betraying Kurds and Giving ISIS New Life in Syria
2019年10月8日(火)15時08分
タレク・ハダド
https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=UlzfXkOz-V8

トランプはやはり強権的指導者に弱かった(昨年7月、NATO本部でトルコのエルドアン大統領と)
<イスラム国掃討作戦で成果を上げたクルド人とクルド人の土地を見捨てるだけでなく、地域でのアメリカの影響力を著しく損なう決定に米軍事関係者はカンカン>
10月7日、内戦が続くシリアの北部に駐留していた米軍が突然の撤収を開始した。決定を下したドナルド・トランプ米大統領に対し、流血の惨事と地域の不安定化を招くものだと、専門家や軍事関係者の間からは非難と怒りの声が上がっている。
前日の6日、トランプはトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領と電話で会談。同日夜にホワイトハウスが発表した記者声明によれば、トランプはこの会談中に「トルコが計画しているシリア北部での作戦」について、アメリカは関知しないという意向を伝えた。トルコと国境を接するシリア北部では長年、アメリカと同盟を組むクルド人武装組織がIS(自称イスラム国)と戦ってきた。そのクルド人を事実上見捨てることになる。
トルコは国境地帯のクルド人をテロ組織と見なしており、国境のシリア側に「安全地帯」を設けてクルド人を撤退させようとしてきた。アメリカは8月、トルコとクルド人が参加してアンカラで行われた和平協議で、安全地帯の設置に合意。だがクルド人への軍事的・経済的な支援は継続してトルコから守ると約束していた。7日のホワイトハウスの発表は、その約束とは真逆の内容だ。

トランプに裏切られ、怒るクルド人


「衝動的な決定」と非難の声
ホワイトハウスは6日の声明で「トルコは近いうちに、シリア北部での計画を実行する」と述べた。「米軍は作戦の支援も、作戦への関与も行わない。すでにISは壊滅し、近接地域にとどまることもない」
かつてIS掃討を目指す有志連合の米特使を務め、トランプの「衝動的な」意思決定に抗議して昨年12月に辞任したブレッド・マガークは、この発表にすぐに反応した。
「トランプ大統領には、自分がシリアに派遣したアメリカ兵たちのために戦う気はあるのか。それとも、米軍撤収の言い訳を探しているだけか?」と、彼はツイッターに投稿した。「トルコがシリア北部を攻撃すれば米軍は危険に陥り、クルド人勢力はばらばらになり、ISが勢いを増すことになるのは明らかだ」
「ドナルド・トランプに最高司令官の資格はない。彼は一切の知識も熟慮もないまま、衝動的に決定を下している。何の支援もなく米軍を危険な場所に送り込み、都合が悪くなれば同盟相手を平気で危険にさらす」
<参考記事>
>国際社会が使い捨てたクルド人と英雄バルザニ
<参考記事>クルド女性戦闘員「遺体侮辱」映像の衝撃──「殉教者」がクルド人とシリアにもたらすもの
次のページシリアはロシアとイランの手に?
30年にわたって米軍の取材を続けているワシントン・ポスト紙のデービッド・イグネーシアスも、トランプを非難する。
「アメリカは、国境地帯から撤退すればトルコの介入を阻止するのにも役立つから、と言ってクルド人を説得したのだ」と、彼はツイッターに投稿した。「だが実際には、トルコを招き入れたようなものだ」
本誌の独占取材に対し、米国家安全保障会議の匿名情報源は、トランプはエルドアンに「言いくるめられた」と、憤る。6日の電話会談は、トルコがシリアに進攻すると発表した後に設定された。エルドアンはさらに、シリア国境のトルコ軍を増強した。電話会談でトランプは進攻を思いとどまらせるはずが、「米軍は退く」と言ってしまったのだ。米国防総省も予想もしない展開に仰天したという。
トランプの衝動的な決断の結果、何が起こるか。米軍が撤退すれば、ISが息を吹き返すかもしれない。アメリカの後ろ盾を失ったクルド人は、はるかに強いトルコ軍に攻め込まれてシリアのアサド独裁政権と手を組むかもしれない。そしてアサド政権を支援しているのは、アメリカの敵であるロシアとイランなのだ。
クルド人は、7日の発表を受けて米軍撤収の決断を強く非難。クルド人住民が過半数を占めるシリア北東部を、「どんな犠牲を払っても」守る、と言った。
(翻訳:森美歩)
https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=UlzfXkOz-V8
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/is-17_3.php

 

トランプ氏、トルコに警告のツイート 「一線越えれば経済壊滅」
2019.10.08 Tue posted at 16:48 JST

米国のトランプ大統領(左)とトルコのエルドアン大統領。トランプ氏はシリアからの米軍撤退に際し、トルコが一線を越えた場合には同国の経済を「壊滅させる」と警告した/Olivier Douliery/Pool/Getty Images/Elif Sogut/Getty Images
米国のトランプ大統領(左)とトルコのエルドアン大統領。トランプ氏はシリアからの米軍撤退に際し、トルコが一線を越えた場合には同国の経済を「壊滅させる」と警告した/Olivier Douliery/Pool/Getty Images/Elif Sogut/Getty Images

ワシントン(CNN) シリア北部からの米軍撤退を受けて、トルコが準備を進めるクルド人勢力への軍事作戦をめぐり、トランプ米大統領は7日のツイートで、トルコが一線を越えたら同国の経済を壊滅させるとの警告を発した。

トランプ氏はツイッターに、自身の「素晴らしい知恵」でトルコが一線を越えたとみなした場合、トルコ経済を「完全に破壊し、消滅させる」と書き込んだ。

米ホワイトハウスの発表によると、トランプ氏は6日、トルコのエルドアン大統領と電話で会談。トルコがシリア北部での軍事作戦を実行すること、米軍はこの作戦を支援しないことを話し合ったとされる。

シリア北部のクルド人勢力は米国の支援を受け、イラク・シリア・イスラム国(ISIS)の掃討作戦で中心的な役割を果たした。一方、トルコは長年にわたり、敵対するクルド人勢力の排除を狙ってきた。

トランプ氏の撤退表明は、トルコ軍の作戦を容認することになるとして、与党・共和党内部からも反発を招いている。

トランプ氏は7日、「終わりのないばかげた戦争から抜け出す時が来た」とツイートし、撤退の正当性を改めて主張した。


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https://www.cnn.co.jp/usa/35143697.html


 

また大量の避難民生む=EU、トルコ軍事作戦に警告
2019年10月07日20時39分

フランス北部で、食料の支援を受けるクルド人の難民とみられる人々=2018年8月、グランドシント(AFP時事)

 【ブリュッセルAFP時事】欧州連合(EU)報道官は7日、シリア北部でトルコが計画する大規模な軍事作戦について、民間人を犠牲にして「大量の避難民」を再び生み出すことになると警告した。ブリュッセルで記者団に語った。
 報道官は「新たに戦闘を激化させれば、一般市民の苦しみをさらに悪化させ、大量の避難民が生まれる」と指摘。さらに「これまで積み上げてきた政治的な努力を無駄にしてしまい、深刻な危機を招くことになる」とトルコに再考を促した。

【国際記事一覧へ】 【時事ドットコムトップへ】
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019100701040&g=int

 
クルド攻撃黙認、共和党が批判=トランプ氏はトルコけん制−米
2019年10月08日09時43分
 

 【ワシントン時事】トランプ米大統領が7日、米軍のシリア撤収を示唆し、トルコがテロ組織からの安全地帯確保を名目に計画するシリア北部侵攻を事実上黙認する構えを示したことを受け、与党・共和党からも異例の強い反発の声が上がっている。過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦で米軍に協力したクルド人勢力が、トルコ軍の攻撃対象になることが避けられないためだ。
米部隊がシリア北部から撤収開始=トルコ軍、大規模作戦準備

 トランプ氏に近いグラム上院議員は、ツイッターで「クルド人勢力を見捨てれば米国の名誉を汚すことになる」と強調。トルコがクルド人勢力を攻撃した場合、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の資格停止を求める超党派の法案を提出すると主張した。ヘイリー前国連大使もツイッターで「彼ら(クルド人勢力)を見殺しにするのは大きな過ちだ」と批判した。
 トランプ氏は7日、ツイッターで、クルド人勢力攻撃を念頭に「禁じられた行為に及べば、トルコ経済を破壊する」と警告を発したが、トルコ側はテロリストと見なすクルド人勢力排除を進める方針。同盟関係や中東の安定を重視する共和党からトランプ氏への批判の声は収まりそうにない。

【国際記事一覧へ】 【時事ドットコムトップへ】
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019100800247&g=int


 
トルコの侵攻計画に抗議するクルド人ら 


トランプ米大統領が7日、米軍のシリア撤収を示唆し、トルコのシリア北部侵攻計画を黙認する構えを示したことに共和党内からも反発の声が出ている。写真は同日、シリア・ハサカ県で同計画に抗議するクルド人女性ら。【AFP時事】

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https://www.jiji.com/jc/p?id=20191008092220-0032808408

http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/496.html

[経世済民133] 給与総額 2ヵ月連続↓ 給与総額0.2%減、響いた夏のボーナス減 実質では0・6%減 
給与総額 2ヵ月連続↓
10月8日(火)
ニュース

放送を見逃した方はこちら テレビ東京 ビジネス オンデマンド
厚生労働省がきょう発表した、8月の毎月勤労統計調査によりますと、基本給や残業代などを合わせた現金給与総額は1年前に比べ0.2%減った27万6,296円でした。2ヵ月連続で減少しました。ボーナスなど「特別に支払われた給与」が1割以上落ち込んだほか、パートタイム労働者の比率が増えたことが影響しました。
https://www.tv-tokyo.co.jp/mv/hiru/news/post_187536


給与総額0.2%減、響いた夏のボーナス減

菊池 貴之
日経ビジネス記者
2019年10月8日
2 77%

全1022文字

(写真:PIXTA)
 厚生労働省が8日発表した8月の勤労統計速報値によると、月間給与総額は27万6000円あまりと前年同月に比べ0.2%減少した。消費者物価指数を考慮した実質賃金では0.6%減と、今年に入ってから8カ月連続でマイナスになっている。

 同省によると「夏の賞与が減少した」ことが給与の減少の背景にあるという。賞与(ボーナス)など「特別に支払われた給与」は11.4%減だった。日本経済新聞社のボーナス調査でも夏のボーナスは7年ぶりの減少となった。

 一方、8月の「所定内給与」と残業代などの「所定外給与」はいずれもプラスだった。「所定外給与」に関しては、今年に入ってから1%以上のマイナスとなった月が4回あった。企業が働き方改革を進めたことにより、残業代の減少で給与総額が減ったとの声もあるが、8月の統計からはこうした構図は見られなかった。

 最近の日本企業の動きを見ると、給与総額が賞与に左右される状況は今後も続きそうだ。日本企業全体で見れば、賞与の増額を後押しする利益水準は頭打ちになっている。日経新聞によると、日本企業全体の19年3月期の純利益は前の期比で減益だ。これに伴う賞与の減少が今回の統計に反映された形だ。20年3月期に増益を見込むが、米中貿易摩擦などの影響を考えれば不透明さがなお残る。

 夏のボーナスに関しては、前期に営業増益だったトヨタ自動車が管理職以上のボーナスを減額することを決めて話題となった。「トヨタが大丈夫だという慢心を取り除く」(豊田章男社長)狙いだが、増益でもボーナスが減る現実は「正直こたえる」(トヨタ幹部)との声が聞かれる。

 今回は賞与の減少が響いた給与の減少。賞与以外の部分で増えることに期待がかかるが、「すでに大企業では働き方改革のために総労働時間を減らしている」(第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミスト)といい、毎月の給与自体はそう増えないだろう。

 物価がじわりと上がる中、10月には消費税率が10%に上がり、家計の負担は増した。こうした状況で給与総額が伸びなければ、景気への影響も懸念される。その影響を最小限にするには企業が利益水準を高め、従業員への配分を増やしていくことが欠かせない。


joh

会社の利益をきっちり確保するために、人件費を抑える。多少好調になっても「将来が不透明だから」とか「大型設備投資をひかえているから」とかいって結局人件費はおさえたまま、社内留保だけはつみあがる。平成にはいってからの負のスパイラルは経営者と株主還元や株価上昇のみを良いことと煽った投資家や経済評論家による人災だろう。収入が増えない、年金が不安となればモノやコトにお金を使わなくなるのは当然。 そこに民間にとって面倒ばかりが増えた軽減税率付きの消費増税。選挙目当てのしくみでしかなかったことに気づいて廃止の声を上げねば、いつまでも一般市民は「とられ損」から脱出できまい。
2019/10/08 18:34:171返信いいね!


hiro

「企業が利益水準を高め、従業員への配分を増やす」は、約30年間長期的に達成できていない課題。付加価値を増大させることができない国内企業が殆どであり、非正規化などにより従業員の賃金を削って利益を確保し、内部留保をため込んできたのが実態。
この記事は、寝言の類い。お為ごかしはいい加減にしたらどうか。
消費増税により、家計はダメージを受け、あまつさえ、給与総額が減れば、消費は萎縮する。この増税の毒は、来年前半には国中に回るであろう。
さらに、欧米、中国の景気動向も不透明。貿易戦争が長引けば、景気低迷も世界中を席巻し、一層深刻化すると懸念する。
日経は、今こそ内部留保を吐き出し、2%の臨時賃上げを行い消費増税分ぐらい被れと主張すべきではないか。
経済建直しには、目先の儲けに拘る企業の強欲さを改めるのが先決。
2019/10/08 19:47:40


tkhs

教授

内部留保を国内に還流したい、賃金の持続的な上昇に反映させたいというのは多くの国民や政治家の願いですが、
自分が経営者の立場だったら、超少子高齢化で市場が縮小していく日本に投資し、コストの高い正社員の賃金を上げたいとは、あまり思わないでしょう。
賃金が上がるとしたら、転職市場が活発化し、引きとめなければ、必要な人材が、どんどんいなくなってしまう状況だけであり、そのためには、さらに景気が改善し、グローバル市場での売り上げ増が期待できる企業だけでしょう。
つまり残念ながら、高齢世代に関して、それを期待するのは現状では無理なので、若年世代と賃金上昇の格差が生じて、世代間賃金格差が縮小しているのが現状です。
仮に、世界的な景気改善が継続して、グローバルな雇用市場が平衡状態に達すれば、賃金分布も安定するでしょうが、今の保護主義に向かう不安定な世界情勢では、期待しても見込みがなく、企業防衛のためのトヨタ社長らの判断は適正であると判断します。
2019/10/08 20:52:07返信いいね!


https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/100800748/

 


労働者給与、0・2%減の27万6296円…実質では0・6%減
2019/10/08 10:14
 厚生労働省は8日午前、8月の毎月勤労統計調査(速報)を発表した。労働者1人当たりの平均賃金を示す現金給与総額は前年同月比0・2%減の27万6296円で、2か月連続でマイナスとなった。

 賃金の低いパート労働者の比率が上がったことが要因。賃金の伸びに物価の変動を反映した実質賃金は消費者物価指数の上昇を受け、同0・6%減となり、8か月連続のマイナス。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20191008-OYT1T50203/

8月の実質賃金、前年比0.6%減 賞与の減少響く
経済・金融
2019/10/8 8:30
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厚生労働省が8日発表した8月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比0.6%減少した。消費者物価指数が緩やかに上昇するなか、賞与の減少を受けて名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額が27万6296円と、0.2%減となったことが響いた。

内訳を見ると、基本給にあたる所定内給与が0.3%増、残業代など所定外給与は0.9%増だった。一方、ボーナスなど特別に支払われた給与は11.4%減だった。

パートタイム労働者の雇用環境は引き続き堅調だった。時間あたり給与は前年同月比3.4%増の1177円だった。パートタイム労働者比率は0.49ポイント上昇の31.39%となった。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL07HHF_X01C19A0000000/


 

2019年10月8日注目記事
給与総額の平均
2か月連続で前年比減

ことし8月の給与総額の平均は速報値で27万6000円余りと去年の同じ月を0.2%下回り、2か月連続でマイナスとなりました。

厚生労働省が全国およそ3万1000の事業所を対象に行った「毎月勤労統計調査」の速報値によりますと、ことし8月の、基本給や残業代などを合わせた働く人1人当たりの給与総額は平均で27万6296円でした。

これは去年の同じ月を0.2%下回り、2か月連続でマイナスとなりました。

このうち、
▽フルタイムで働く人の給与総額は平均で35万7112円で去年の同じ月より0.2%上回り、
▽パートタイムで働く人は9万9111円で去年の同じ月を0.1%下回っています。

物価の変動分を反映した実質賃金は去年の同じ月と比べて0.6%下回り、8か月連続でマイナスとなりました。

厚生労働省は「ことしに入ってから消費者物価指数は上がっているのに、給与総額が減少する傾向が続いている」としています。

#給与
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http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/324.html

[経世済民133] 柳井正氏の怒り 「このままでは日本は滅びる」ユニクロ柳井氏の革命的ビジョン 日本、世界がやっと追いついた 
柳井正氏の怒り 「このままでは日本は滅びる」

大西 孝弘
ロンドン支局長
2019年10月9日
3 90%
ギフト

クリップ
全3947文字

日本の再成長への一手を考える「目覚めるニッポン」。今回は柳井正ファーストリテイリング会長兼社長。政治的な発言を控える経営者が増えるなか、柳井氏はあえて直言をやめない。怒りともいえる危機感を示し、企業経営から政治まで大改革の必要性を説く。

>>「目覚めるニッポン」シリーズ記事一覧へ

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柳井 正氏 Yanai Tadashi
ファーストリテイリング会長兼社長
1971年ジャスコ(現・イオン)入社。72年、実家の小郡商事(現・ファーストリテイリング)に転じ84年から社長。2005年から現職。01年からソフトバンクグループ社外取締役。山口県出身、70歳。(写真=竹井 俊晴)
 最悪ですから、日本は。

 この30年間、世界は急速に成長しています。日本は世界の最先端の国から、もう中位の国になっています。ひょっとしたら、発展途上国になるんじゃないかと僕は思うんですよ。

 国民の所得は伸びず、企業もまだ製造業が優先でしょう。IoTとかAI(人工知能)、ロボティクスが重要だと言っていても、本格的に取り組む企業はほとんどありません。あるとしても、僕らみたいな老人が引っ張るような会社ばかりでしょう。僕らはまだ創業者ですけど、サラリーマンがたらい回しで経営者を務める会社が多い。こんな状況で成長するわけがない。

 起業家の多くも上場して引退するから、僕は「日本の起業家は引退興行」と言っています。今、成長しているのは本当の起業家が経営している企業だけです。

 結局、この30年間に1つも成長せずに、稼げる人が1人もいない、稼げる企業が1社もない。いや、1社はあるかもしれないですけど、国の大きさからいったらあまりにも少ないし、輸出に依存していてグローバルカンパニーにはなっていない。稼いでいる人がいなかったら家計は成り立たないでしょう。30年間、負け続けているのにそのことに気付いていません。

 柳井会長はインタビューの冒頭から、怒りをみなぎらせた表情で日本の現状を語った。そして話は政治改革に向かっていった。

 日本出身ということは必要で、日本のDNAはすごく必要だけど、強みが弱みになっています。例えば、みんなと一緒にやるという強みが弱みになってしまっている。たとえば忖度(そんたく)で公文書を偽造するのは犯罪で、官僚なら捕まって当然でしょう。

 民度がすごく劣化した。それにもかかわらず、本屋では「日本が最高だ」という本ばかりで、僕はいつも気分が悪くなる。「日本は最高だった」なら分かるけど、どこが今、最高なのでしょうか。

 新聞のスポーツ欄を見たらよく分かります。日本選手が3位や4位になったという記事ばかりで、1位は結局、誰かが書いてない。オリンピックなどにたきつけたお祭り騒ぎで、ローマ帝国の「パンとサーカス」と一緒ですよ。国民がそうした生活に明け暮れ、気が付いたらパンが全部なくなり、サーカスをする費用もなくなっていくということです。

 いわゆる「ゆでガエル現象」というものが全部でき上がってしまった。私はそんな日本についてあきれ果てているけれど、絶望はできない。この国がつぶれたら、企業も個人も将来はないのですから。だからこそ大改革する以外に道はないんですよ。

 まずは国の歳出を半分にして、公務員などの人員数も半分にする。それを2年間で実行するぐらいの荒療治をしないと。今の延長線上では、この国は滅びます。邱永漢さんも亡くなる前に「日本は政治家と生活保護の人だけになる」と言っていました。でも滅びると思っている人がほとんどいません。

 参議院も衆議院も機能していないので、一院制にした方がいい。もっと言えば、国会議員もあんなに必要ないでしょう。町会議員とか村会議員もそう。選挙制度から何から全部改革しないと、とんでもない国になります。

https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00357/?P=2


 


ご縁とは本当に不思議 ファストリ・柳井正氏(17・終) (1/2ページ)
2019.10.9 07:05
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 ご縁とは本当に不思議

 〈スポンサー契約を結ぶテニスの錦織圭選手の功績に平成26年、1億円を贈呈。うち5千万円を個人で負担した〉

昭和44年に世界一周旅行をしたときの同船者から、今年6月に届いた当時の船内ディナーの献立の写しを手に
昭和44年に世界一周旅行をしたときの同船者から、今年6月に届いた当時の船内ディナーの献立の写しを手に
 いいところまでは行くんですけど、いつも肝心なところで負けている。最近も会いましたが、僕が「頑張れよ」というもんだから、プレッシャーになっているかも。

 〈趣味のゴルフは〉

 週末にやっています。ハンディと実力は違うので、ハンディは公表しません。商談でも回ることはありますが、やはりゴルフが本当に好きな人と回るのが大事だと思います。息子と回ることも時々あります。自宅に打ちっ放しのケージも作って使っていますが、これだけゴルフに投資して、これほど下手な人もいないんじゃないかな。

 〈東証1部に上場したのは11年。その5日後に父、等氏は79歳で他界した〉

 父が死んだときの定期預金の残高は6億円でした。こつこつためてぜいたくをせず、事業に金を投じ、子供たちに金を残した。私は財産を使い切って死のうと思いますが、さあ何に使うか。私もぜいたくはできないが、上場して好きなだけ高価な本を買えたことが一番うれしかったですね。

 創業は昭和24年で僕が生まれた年。結構古くなりましたね。自分は何周年とか、一度も気にしたことがない。還暦祝いとかも全て断ったんです。あんなのやるなと。健康法は、風呂に入って2キロとか軽いバーベルを回して、ストレッチしています。孫もいてかわいいんですけど、遊びに来ても僕が仕事をやっている最中が多いので、嫌がられています。

 〈経営学者P・F・ドラッカーの著書に感銘を受けたという〉

 今でも読み返しますよ。学生の頃も1回くらい読んだと思うけど、全然ぴんとは来ませんよ、仕事をやっていないと。最近は、ライシャワー元駐日大使の自伝を読んでいます。日米、日中、先の大戦、日本を中心にした世界史ですね。

〈大学4年生のとき、父から支援を受け、世界一周の旅をした。ハワイ経由の船旅で米サンフランシスコに入り、パリ、ロンドン、カイロ、ニューデリー、香港を経由し帰国。世界を認識する「原体験」だった〉

昭和44年に世界一周旅行をしたときの同船者から、今年6月に届いた当時の船内ディナーの献立の写しを手に
昭和44年に世界一周旅行をしたときの同船者から、今年6月に届いた当時の船内ディナーの献立の写しを手に
 その旅で家内とも出会いました。でもそれより、すごい手紙を今年6月に受け取りました。そのときの船で同じ部屋だった方からです。資料を整理して出てきたと、コピーを同封してくれました。私の早稲田大学時代の名刺、1969(昭和44)年8月3日に船上で出されたディナーのメニュー。平成21年10月6日掲載の前回この欄に登場したときの産経紙面も。同じページには経済学者の中谷巌氏が「正論」を執筆していますが、彼も同船者でした。この船を運航していたアメリカン・プレジデント・ラインは、客船からコンテナ船になって、シンガポール政府系ファンドが買収して、弊社の合弁相手のトップが会長になっていました。ご縁というのは、本当に不思議ですよね。(聞き手 吉村英輝)
https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/191009/wsa1910090705001-n2.htm


 
ユニクロ柳井氏の革命的ビジョン 日本、世界がやっと追いついた (1/3ページ)
秋月涼佑
秋月涼佑
2019.10.8 07:00
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 ユニクロの成長を同時代にビジネスマンとして生活者として身近に見てきました。思い出されるのは2005年。ユニクロを展開するファーストリテイリングの当時会長だった柳井正氏自身が誰よりも認め、その3年前社長につけた、評判の良い当時まだ43歳の玉塚元一氏を事実上解任した件です。「玉塚氏は安定的な成長を求めていた。私としては、もっと変化して成長したいという思いがあった」との理由を柳井氏は語りました。当時のメディアの論調や世間の反応は、オーナーの気まぐれとか、何もそこまでしなくても、というものであったと記憶しています。

ユニクロの店舗
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ドライEXポロシャツ(ユニクロ公式オンラインストアより)
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LifeWear magazine 8月23日(金)創刊号(ユニクロHPより)
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 でも今のユニクロを見れば誰もが柳井氏の当時のコメントの意味が理解できます。ああ、柳井さんには現在のユニクロの姿がビジョンとして明快に見えていたんだなと。正直玉塚さんだけではなく、我々日本のビジネスマンのほとんどが、柳井氏ほどのスケール感や具体性をもってユニクロの現在をイメージできなかったはずですし、それゆえに柳井氏はそのビジョンを実現するためには自分が陣頭指揮を執る他なかったわけです。

 そう考えると、後講釈の“しゃらくささ”でユニクロについて語ることは憚られるのですが、ここは大いなる敬意を込めてブランディングという視点でも大変優れたお手本と言えるユニクロの取り組みを振り返りたいと思います。

 「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」

 ブランディングというと、ロゴやツール、パッケージのデザインを考えたり、ユニークな企業広告を作ったりする取り組みというような、ちょっとお化粧するような感覚で受け取られることがよくあるのですが、実際にはあらゆる企業の活動に首尾一貫した企業価値を込め、それをお客様はじめとするすべてのステークホルダーに伝える取り組みです。

 つまり、メーカーで言えば商品、サービス業で言えば社員こそが企業のブランド価値を伝える最大の接点(コンタクトポイントとかタッチポイントと呼ぶ)となるのです。

 その点、ユニクロの製品の進化は年々すさまじいものがあり、今や雄弁に自らのブランド価値を訴求していますね。筆者もご多分に漏れずユニクロの製品を日常的に多く愛用させてもらっていますが、付き合いの古い友人や家族からは相当に驚かれます。実は筆者はサラリーマンの当時から、相当な無理をしてファッションにお金をつぎ込んできた人間です。どこか哲学性を感じさせる山本耀司や川久保玲をリスペクトし、海外の主なデザイナーの洋服もあらかた自腹で袖を通してきました。そんな筆者からすると、ユニクロの服はかつてアンチファッションというか、そんな服飾文化やこだわりを否定する邪悪と言って良い存在とさえ思えてならなかったのです。確かにそんな感性はちょっと極端であったにしても、世間一般にも「ユニばれ」という言葉が存在したように、安いし品質は悪くなさそうだからまあ買うかな、というやや消極的な位置づけだったように思います。

例えば、今春夏シーズン販売されていた、「ドライEX」素材のポロシャツ。まず驚くのが素材の質感、発色です。品質面で世界のハイエンドには例えばフランスのエルメスやイタリアのロロピアーナなどがありますが、それら製品の高番手(繊維が細い)綿製品と見まがうようなツヤと手触り、深い発色なのです。パターン、カッティングも考え抜かれていてディテールまで追求したデザインとなっていることが分かります。着ると襟立ちもしっかりしていますし、ドライEX素材のまさに「着ればわかる」というサラッとした爽やかさに手放せなくなるというレベルの仕上がりです。そして何よりハイエンド製品と違う点は洗濯機でも洗えることと、もちろん値段。これで1990円はやはり顧客の期待をはるかに超えています。

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 他にも、50色の靴下。靴下の色に差し色を使えるようになればファッション上級者でしょうが、今までそれだけ凝った色味の靴下は腕を磨こうにも小物にもかかわらず結構なお値段で、お試しで履くハードルは結構高かった。これも一足290円ならばどんな色味でも心置きなく試せますし、50足セットでプレゼントなんて言うのも楽しいかもしれません。

 つまり、ファーストリテイリングの「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」というステートメントを、ユニクロは年々愚直に製品に表現しているのです。私もあるときにその品質の高さに気付き、宗旨替えし今では「常識」を変えられた一人です。

 良きパートナーによる一貫したブランディング活動

 それにしても柳井氏はすいぶん孤独だったはずです。一番認める部下玉塚氏でさえ自分のビジョンの全貌までは理解できない。私の身近な転職組や業界内の事情通を通しても、もどかしがる柳井氏の様子が伝わってきたものです。でもそんなとき何人かの柳井氏をして信頼を置くCD(クリエイティブ・ディレクター)が、彼の良きパートナーとなったことは有名です。かつてのジョン・ジェイ氏や、現在の佐藤可士和氏と、スティーブ・ジョブズを彷彿とさせるスタイルでのマンツーマンコミュニケーションを経てのブランディング活動は、柳井氏のビジョンを生活者に、社員に、ジャーナリストに、株主に伝えることに大いに役に立ったことは間違いがありません。

 何より、現在のユニクロのブランドロゴデザインは圧倒的にシンプルにして新鮮です。まさに、従来のファッション業界の“○○ for men”とか“○○ pour homme”といった類の欧米社会上流階級のライフスタイルへの憧れを露わにした価値観からの決別をロゴで主張しています。海外でも“ユニクロ”というカタカナのフォントも活用し、白地に「金赤」という最も鮮烈なカラーリング。柳井氏の一見ケレン味、派手さはないけれど革命家的と言っていいほどの反骨心を感じる由縁です。

 そんな、シンプルだけれども強いメッセージをお店、ショッパー、広告などあらゆるコンタクトポイントに一貫させる姿勢の徹底さもまた、ブランディング活動のお手本のようで、力強く生活者にブランド価値が浸透していく理由かと思われます。

「LifeWear magazine」創刊で、さらに進化

 そしてユニクロブランドのさらなる進化を確信させられたのが、元ポパイの編集長をヘッドハンティングし、マガジンスタイルのリッチな無料カタログ「LifeWear magazine」を8/23に創刊したことです。

ユニクロの店舗
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ドライEXポロシャツ(ユニクロ公式オンラインストアより)
ドライEXポロシャツ(ユニクロ公式オンラインストアより)
50色ソックス
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LifeWear magazine 8月23日(金)創刊号(ユニクロHPより)
LifeWear magazine 8月23日(金)創刊号(ユニクロHPより)
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ドライEXポロシャツ(ユニクロ公式オンラインストアより)
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LifeWear magazine 8月23日(金)創刊号(ユニクロHPより)
 ユニクロが標榜する“LifeWear”(*脚注)の世界観やファッション性を具体的なビジュアルや記事で伝えるマガジン、この手法、従来は間違いなく付加価値の高いハイエンドブランドだけに許されていたものだったはずです。この常識さえもユニクロは打ち壊そうとしているようです。

 ブランディング的にも、あまりにもストイックなブランドアイデンティティの徹底は、ともするとちょっと彩のないドライなものになりかねません。そこに、このマガジン、豊かで人間味やあえて生活感を感じさせる写真や記事で、装うことの楽しさを伝えてくれるさすがに素晴らしい仕上がりです。写真や編集のクオリティの高さもさることながら、凝った印刷技法や、紙、ページ数。これを無料で配ることに震撼としない業界関係者はいないはずです。

 LifeWearというブランドポジショニングの強さ

 あらためてユニクロブランディングのすごさを振り返ると、何より“LifeWear”というブランディング活動最上位概念(ポジショニング・ステートメントと言ったりします)のスケール感、先進性と強さにあると思います。この価値観がはっきりしていてブレないからこそ一貫性のある力強いブランディングができるわけです。

 このコンセプトが革新的であればあるほど、マーケティング活動はある意味布教活動とも言えるレベルになりますし、実際にユニクロは服やファッションに対する生活者の価値観自体を変えようとしているように思います。

 今秋にはインドへ進出するなど、さらに世界へ日本発の力強いブランド価値の“布教”を加速させるユニクロに、ますます期待したいと思います。

(※)LifeWearは、あらゆる人の生活を、より豊かにするための服。美意識のある合理性を持ち、シンプルで上質、そして細部への工夫に満ちている。生活ニーズから考え抜かれ、進化し続ける普段着です。(LifeWear magazineより)

秋月涼佑(あきづき・りょうすけ)
秋月涼佑(あきづき・りょうすけ)
ブランドプロデューサー
大手広告代理店で様々なクライアントを担当。商品開発(コンセプト、パッケージデザイン、ネーミング等の開発)に多く関わる。現在、独立してブランドプロデューサーとして活躍中。ライフスタイルからマーケティング、ビジネス、政治経済まで硬軟幅の広い執筆活動にも注力中。
秋月さんのHP「たんさんタワー」はこちら。
Twitterアカウントはこちら。
【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら
https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/191008/wsa1910080700002-n3.htm
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/328.html

[自然災害22] 猛烈な勢力の台風19号、ラグビーW杯試合中止も−週末に関東直撃か 過去8大会で前例がない
猛烈な勢力の台風19号、ラグビーW杯試合中止も−週末に関東直撃か
黄恂恂
2019年10月9日 11:53 JST
JALやANAは国内便欠航などの可能性、宅配停止の注意呼びかけ
台風の現在の中心気圧915ヘクトパスカル、最大瞬間風速75メートル
Super Storm Hagibis on Oct. 8, 2019.
Super Storm Hagibis on Oct. 8, 2019. Photographer: NOAA
大型で猛烈な勢力の台風19号は3連休の初日から日本列島に上陸する見通しで、連休中に東京を含め関東地方を直撃する恐れがある。ラグビーワールドカップ(W杯)の大会運営に影響をもたらす可能性も出ている。

  気象庁が9日午前9時45分に発表した最新予報によると、台風19号は現在太平洋のマリアナ諸島地域に位置している。中心気圧は915ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は55メートル、最大瞬間風速は75メートルとなっている。

Typhoon Faxai Strikes Near Tokyo, Hitting Morning Commute
台風15号では関東地方を中心に大きな被害が出た(神奈川県川崎市)」Photographer: Akio Kon/Bloomberg
  12日土曜の午前9時以降に東京や千葉を含め関東地方が台風の中心に入る見通しとなっている。同庁によると、台風の強さは「非常に強い」よりも一段上の「猛烈な」に該当する。台風の接近に伴い、午前9時9分現在、東京湾では高潮注意報が発動されている。

  9月に千葉県で大規模停電や家屋の損害など深刻な被害をもたらした台風15号の爪痕が癒えぬまま、台風19号が関東地方に接近する中で、暮らしや企業の生産活動にも影響を与える可能性がある。

  ヤマト運輸は台風19号の状況によっては集配と営業所の受付業務を停止する可能性があるとして、ウェブサイトで利用者に事前に余裕を持って荷物の依頼を出すよう促している。

  日本航空は台風の影響でJALグループ便で遅延や欠航により発着地へ引き返す可能性があると同日に公表。国内ツアーの参加者に注意を呼びかけた。ANAホールディングスは11日から12日にかけて、羽田空港や成田空港、関西空港などで発着便すべてに影響が出ると予測されるとし、実際の運航にかかわらず搭乗便の変更や払い戻しに応じるとした。

  台風はスポーツの試合にも影響する。ラグビーW杯は13日が1次リーグの最終日で、決勝トーナメントに進出する8チームが今週末に出そろうはずだったが、台風の影響で試合中止の可能性が出ている。

  ラグビーW杯組織委員会の広報担当、坪田旨利氏は台風の影響について、動向を注視していて、安全性など確認し、試合の中止もあり得るとコメント。中止となった場合、延期や再試合はなく引き分け扱いとなるため、現在3連勝の日本はベスト8への進出が決まる。台風による影響で試合中止となるのは、過去8大会で前例がないという。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-09/PZ2YUXT0G1KY01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/737.html

[経世済民133] 「科学技術人材不足」は、作られた危機だった? その背景は...... 青山学院大、院生40人を「助手」雇用の狙い 稼ぐ人になるために、義務教育で優先すべき6つのこと
「科学技術人材不足」は、作られた危機だった? その背景は......
2019年10月9日(水)17時00分
秋山文野

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理系人材は不足している、とよく言われているが......マサチューセッツ工科大学の卒業式 Brian Snyder-REUTERS

<6年も前の「STEM人材危機の神話」の記事がまだ取り上げられているが、外国人排斥を結びつける主張も絡み、事情は複雑だった......>

8月末、IEEE(米国電気電子学会)の学会誌であり科学技術雑誌であるIEEE Spectrumが「新学期前に、これまでで最も読まれた、そして議論になった記事」というツイートをした。『The STEM Crisis Is a Myth(STEM人材危機は神話だ)』というこの記事は、米国で叫ばれているSTEM(理系)人材不足は実態を反映していないという趣旨で書かれている。ただし、2013年8月の記事だ。

STEMとはScience, Technology, Engineering and Mathematicsの頭文字をとった語で、科学技術分野とその教育を受けた人材を指す。stemは植物の幹や茎のことで、社会を支えるという意味も込められている。STEM教育を受け、科学技術分野で働き社会を支える人材が足りない、という主張は宇宙開発の分野でもよく目にする。その主張が神話で実態のないものだとすれば気になるが、とはいえ6年も前の記事がなぜ今でも読み続けられているのか。

STEM学位取得者の3分の2は、専門の「仕事の口がない」

IEEE Spectrum記事の趣旨を見てみよう。STEM人材危機の論拠として挙げられるのが、オバマ政権時代の大統領科学技術諮問委員会が発表した「今後10年間で100万人のSTEM学卒者が求められる」という報告書だ。STEM人材育成のため、2020年までに10万人のSTEM教育者の育成と1万人の新規技術者の育成が政府、産業界両方に呼びかけられた。マイクロソフトは2012年に「2010〜2020年までの10年間、学士号以上のコンピューター専門職に120万人の求人がある」という数字を挙げたという。こうした需要を満たすため、マイクロソフトなどのテック企業は、高度外国人人材の就労ビザであるH-1Bビザを毎年6万5000件発行し、累計18万人の外国の人材がこのビザで就労できるよう求めた。

そもそもSTEM人材は米国にどの程度存在しているのか。米商務省の統計では2010年に760万人がSTEM関連職に就業しており、これは米国の労働人口の5.5%に相当するという。この中には、コンピューターサイエンス分野の研究開発職からテクニカルサポート職まで幅広く含まれる。

商務省統計の760万人中、STEM分野の学位を持っているのは330万人だが、ジョージタウン大学の調査によるとSTEM学位取得者の3分の2は、「仕事の口がない」ことから学位を取得した専門分野で働いていない。米経済政策研究所(EPI)の調査によるとSTEMの中でも最大のIT分野では、コンピューターサイエンスの学位を取った人の3分の1がSTEM職についておらず、かつその3分の1は「求人がないため」と回答したという。また、STEM人材不足を裏付けるはずの「給与の伸び」も観測されていない。

人材不足が声高に叫ばれる背景は......

調査はSTEM人材不足が神話であることを示しているが、人材不足が声高に叫ばれる背景に何があるのか。アルフレッド・P・スローン財団の人口統計学者マイケル・タイテルバウムは、「アラーム、ブーム、バスト」というバブルと崩壊のサイクルがあると説明する。「他国は競争上優位に立っている。このままでは我が国は経済的に、また安全保障面で後塵を拝する」と人材危機が叫ばれる。1950年代のアメリカには「ソ連は9万5000人の科学者・技術者を養成しているのに対し、アメリカでは5万7000人しか育成されていない」という科学技術競争論があった。1980年代には競争相手は日本で、現在では中国とインドが脅威とされている。

次のページ移民排斥論者が、外国人材はいらないと主張

実際には、STEM危機が叫ばれ、人材育成が過多になれば得をするのは企業だ。供給の方が多ければ、高いサラリーを払ったり、企業内の教育プログラムを用意したり、何十年にも渡る安定した雇用を保証しなくても市場から必要な人材を必要なときに選べばよい。

記事の結論はシンプルだ。STEM人材不足の神話に乗じて労働市場から良いとこ取りするようなまねをするべきではない。企業は安定した職と継続的なスキル向上の機会を提供し、正当な給与を払えというものだ。この結論に反対する人はおそらくいないだろう。

移民排斥論者が、外国人材はいらないと主張

だが、現在になってIEEE Spectrum誌の報道の余波を調べてみると、記事掲載から6年経っても「議論になった」といわれる理由が見えてくる。STEM人材の中に含まれる、「H-1B」という専門知識と技能を持つ人のためのビザを取得して米国で働いている外国人の問題だ。STEMクライシスの記事で参考文献として挙げられているEPIの調査には、H-1Bビザに関連する外国人労働者の実態を調査したものがある。

H-1Bはいわば高度外国人人材で必ずしも理系を意味しないが、最も多いのは理系のインド人だ。最近でも、インドのエコノミック・タイムズ紙の記事では、H-1Bビザの取得者の70パーセントがインド系だと報じられた。

STEM人材危機が神話であるという説と、外国人排斥を結びつける主張がある。STEM教育を受けた米国人で米国内の需要は満たせるのだから、外国人材はいらないという主張だ。

2019年4月、PNAS(米国科学アカデミー紀要)に、米国でコンピューターサイエンス分野の教育を受けたアメリカ人大学生は、中国、インド、ロシアの学生に比して最もスキルが高いという調査が公表された。移民排斥論者は、こうした文献を利用して「だから外国人はいらない」と主張する。トランプ政権の元で、H-1Bビザには発給数や手続き上の制限が課されているが、アトランティック誌は、発給されたH-1Bが更新されず、大学研究者としての職を追われて帰国せざるを得なかった人のケースを報じた。

では、H-1Bビザによる移民を制限すれば、米国内のSTEMワーカーに仕事が戻るのか。2018年4月に公表されたデータでは、インドのテック系企業トップ7社のビザ発給数は2016年度から2017年度で9.5パーセント減となった。インド大手のITアウトソーシング企業Infosysでは49パーセントの大幅減となったという。だがインドIT企業による業界団体NASSCOMは、「IT系の開発業務を米国外に移すオフショア開発への移行か、イノベーションを遅らせるかの検討を迫られている」とコメントしている。米国内にIT人材を呼べないならば海外に開発拠点を移そうという発想が出てきているのだ。これは、IEEE Spectrumが主張していた米国内のSTEM雇用の問題解消にすぐにはつながらないのではないだろうか。

日本では理系分野の人材に需給ギャップはあるのか?

ここまでアメリカの事情を見てきたが、人手不足が叫ばれる日本では理系分野の人材に需給ギャップはあるのだろうか。少なくともIT分野に関しては、経済産業省が「IT人材の不足は、現状約17万人から2030年には約79万人に拡大すると予測され、今後ますます深刻化。」と発表している。だがその中身では「デジタル技術に対応した IT 人材(先端 IT 人材)は需要が供給を上回る一方で、従来型の需要に対応した IT 人材(従来型 IT 人材)は、供給が需要を上回る状況を生み出す可能性もある。」(『− IT 人材需給に関する調査 −調査報告書』みずほ情報総研株式会社より)といい、IT技術を持つ人材は「先端人材」と「従来型人材」に分けられ、先端人材では人手不足でも従来型は人あまり、ということも起きるというのだ。

先端人材とは、「AI、IoT、ビッグデータ等の先端 IT 技術の利活用に向けた需要」に対応でき、「第4次産業革命に対応した新しいビジネスの担い手」だという。「従来型 IT 人材から先端 IT 人材へのスキル転換が促進されれば、先端 IT 人材の需給ギャップが緩和される」との記述があることから、スキル転換の促進、支援が考慮されているとはいえる。ただ、スキル転換に必要なのはつまるところIEEE Spectrumの結論にある雇用者による「継続的なスキル向上の機会を提供」になるのではないだろうか。

『The STEM Crisis Is a Myth』の記事が掲載されてから6年経っても、また日米で理系人材を巡る状況が異なるとしても、今でも読む価値のある記事ではないかと思われる。

次のページSTEM人材危機という動画と危機は神話か?という動画
https://www.youtube.com/watch?v=vDpXeZ7KHiY
https://www.youtube.com/watch?v=lf1DhyOZ1FE

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/stem6.php


青山学院大、院生40人を「助手」雇用の狙い
文系の研究者育成

★ クリップ
青山学院大の青山キャンパス(同大提供)
青山学院大の青山キャンパス(同大提供)

 青山学院大学は2020年度から博士後期課程学生の約40人を“院生助手”として雇用する新制度を始める。学部生の授業補佐に対して月給16万円で、履歴書に教育歴として記せるため就職時の後押しになる。同大は英米文学や史学など文系の研究職の志望者が多く、学生の研究費支援でも採択は文系が理系の2倍だ。学生を雇用する制度は研究大学の一部の理系であるが、同大は文系の若手研究者育成を意識して全学で実施する。

 新制度の対象は11学部の入学定員に合わせた分野別の枠で、計42人分を用意した。博士研究を優先しつつ、学部生の講義や実習、国際会議の運営など、修士学生によるティーチングアシスタント(TA)より高度な補佐業務を行う。指導教員の雑務対応にならないよう学部長が監督する。他大学の非常勤講師も可能で、合わせて研究職キャリア構築の後押しになる。

 大学は給与のほか社会保険料、超勤手当、通勤費手当(学割使用後の分)などに対応する。教員増となり、きめ細かな教育の指標となるST比(学生・教員比率)がよくなるメリットもある。

 今春からの博士後期課程1年生には、給付型奨学金の形で授業料免除を始めており、この対象外となっている学生を新制度で支援する。また19年度には大学院生(博士前期課程を含む)の国際学会発表の渡航費支援を開始。最大15万円、最大60人で進めている。

 一方、若手研究者向けの「アーリーイーグル研究支援制度」を17年度に開始しており、競争率約3倍と人気が高い。18年度予算は計1000万円で22件を採択。「助手・助教1人に年70万円」の支援は理系が多いが、「博士後期課程学生に25万円」のケースは、文系が理系の倍で採択されている。


                 


<関連記事>
●国立大が生き残っていくための「卓越」という選択

●私大600校 生き残り戦略インタビュー一覧
日刊工業新聞2019年10月3日
https://newswitch.jp/p/19491


 


稼ぐ人になるために、義務教育で優先すべき6つのこと
Thumbnail allabout2019/10/08 21:40
この春から進学するお子さんをお持ちの人もいると思いますので、子の選択肢を広げて将来成功するために、重視したい子どもの教育を提案したいと思います。
この春から進学するお子様をお持ちの人もいると思いますので、子どもの選択肢を広げて将来成功するために、重視したい子どもの教育を提案したいと思います。

将来「稼げる大人」になるために、義務教育で大切にすべきことは?

◆1. 知的好奇心を育てる国語力を伸ばす
義務教育の範疇に限定しますが、学校での勉強科目で重視したいことは、まず国語です。

読み書き能力は、あらゆる学習の基礎です。テストだって問題文が正確に理解できなければ、正当は難しいでしょう。

正確に読むことができれば、正確に伝えることができます。そして読解力がつけば、自分であらゆる文献を読み解くことができますから、知識が増えます。

知識が増えると、疑問が湧きます。疑問が湧くということは、知らないことがあることに気がつくことです。知らないことがわかれば、もっと知りたいと思い、ますます知識が増えて世の中を理解する枠組みが増えるというループが起こります。

つまり知的好奇心は、正確な日本語運用能力と語彙の豊富さから生まれると言っても過言ではないからです。

◆2. 論理的思考を育てる理数系科目に注力する
次に理数系科目のウエイトを高くすることです。理系科目は論理的思考力の基礎となるからです。

もちろん文系の人でも論理力の高い人はいますが、一般論において理系人材は仮説検証の習慣があり、理路整然と思考することができ、想像力や予測力も優れています。

反対に、私が知る限り所得が低い人の多くは、数学や物理などの理系科目が苦手です。もちろん全員ということではなく、一般的にという意味です。それはつまり、論理的に考えることが苦手であることを意味します。

そのため、「とにかくダメだ」などと理由のない命令をします。感情や思いつきで判断したり、よく子どもを怒鳴ったり、自分の行動がどういう結果を招くのかという想像ができないことが多いといえます。

だから、カッとなって議論を打ち切るとか、別れを切り出すとか、チャンスや人間関係をぶちこわすということをやりがちです。一方、論理性の高さは感情の起伏を抑え、冷静なメンタルを養います。なので論理性の獲得は、日本語能力の獲得に匹敵するぐらい重要なのです。

◆3. プログラミングなど、今後必要とされる能力を磨く
他にも、プログラミングが必修化されることになっており、親の関心も高い教科です。これも根本は理数系科目と同じく、論理的思考力の育成にあります。たとえば「こういう命令を記述すれば、プログラムはこう動く」という訓練は、まさしく論理です。

それに、今後はAIやロボットなどの需要はますます高まるでしょう。そのため昨今、子どものSTEM教育(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マスマティクスの頭文字による造語)が注目を集めており、それらを教えてくれる講座は人気のようです。

STEM教育では、プログラミングやデータサイエンスなど、AIやロボットが社会を激変させる未来を生き抜くために必要な、ハイテク分野に重点が置かれています。

最近ではさらに、ArtのAを加えたSTEAM教育と呼ばれることも増えています。アート、つまりデザイン思考が重要になるという意味ですね。

◆4. 理数系科目を捨てないこと
ただ、必修科目になるのは学びのきっかけとしては望ましくても、教える側のリテラシーによってはIT嫌いになる子が増えるのではないかという危惧があります。

とはいえ、数理的な思考を必要とするのは、プログラミングに限ったことではありません。

たとえば、金融は応用数学なしには成り立ちませんし(金融工学という学問領域もあるくらいです)、生物分野では遺伝情報の解析に統計学が必要だし、行動経済学やビッグデータの活用でも統計学が必要です。

統計学を学ぶには、線形代数や微積分の知識が必要となります。つまり今後は、ますます理数的知識や数理的思考が必要になっているということです。

しかし現実では、「数学が苦手だから文系に進む」という逃げの姿勢で選択している人が多いようです。すると、新しい時代に必要な知識を身に着けることができず、その後に広がる大きなチャンスを放棄することになってしまう危険性をはらんでいます。

◆5. 算数・数学は、早めのキャッチアップで苦手意識を克服
そのため算数・数学は、苦手意識を持たないよう、キャッチアップしておく必要があります。

社会などは、どこから勉強してもキャッチアップできますが、理数系科目は前に習った知識を応用し、より高度な学習内容になる積み上げ型の教科です。そのため、どこかの学年でつまずけば、その後はずっと苦手科目になってしまいます。

だから、つまずいているところまでいったん戻って基礎からやり直し、苦手意識を克服しておきたいものです。これは学習塾などを活用する価値があるでしょう。算数・数学は、わかるようになると俄然楽しくなる科目です。

◆6. 余裕があれば英語を学ぶ
必修化といえば英語も挙げられ、こちらも親の関心が高い科目だと思います。特に英語にコンプレックスを持っている親ほど、子の早期英語教育に熱心になるようですが、余裕があればやる程度で問題ないというのが私の認識です。

というのも、コミュニケーションのための英語なら、大人になってからでも十分マスターできるからです。

それよりも、まずは日本語で論理力、自分の価値判断基準を持つことです。それがないと、母語であっても外国語であっても、人を説得したり動かすなど、信頼関係を築くことはできないからです。

外国語がペラペラだとしても、伝えたいメッセージや論理性がなければ何も伝わりません。伝わらなければ、何も話していないのと同じです。つまりその英語力は、そもそも持っていないのと同じということになります。

だからまずは日本語の軸をしっかり作る、日本語でじっくり思考できる土台を作ることが大切です。日本語で論理的思考ができ、細かなニュアンスが表現できるようになることです。

ただし、ナチュラルな発音はどうしても幼少期のほうが習得しやすいですから、やるとしたら発音でしょう。

文=午堂 登紀雄(マネーガイド)

本記事は「All About」から提供を受けております。著作権は提供各社に帰属します。

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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https://news.mynavi.jp/article/20191008-906732/
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/339.html

[経世済民133] 法人税の大幅減税を決断したインド政府の思惑 グローバル企業 税収を各国配分 OECD案公表「景気下振れリスク一層深刻」FOMC
法人税の大幅減税を決断したインド政府の思惑

2019/10/08

野瀬大樹 (公認会計士・税理士)


インド最大の都市ムンバイ(SB Stock/gettyimages)
 9月20日インド政府は従来25%もしくは30%(会社規模による)だった法人税率を22%まで引き下げると発表した。こういった税制改正はインドでは特に珍しいことではないのだが、日本の感覚では理解しにくい点が1つ。それはこの減税が「2019年4月1日から」遡って適用されることとなった点だ。

 すでに9月15日に第2回の予定納税を旧税率で済ませている会社がたくさんあるハズなので、次の12月の第3回の予定納税時にはその再計算が行われることになると予想され、私のように会計税務を生業とする者にとっては少々面倒な手続きが必要となる。

 ともかくこの減税の結果各種細かい追加税額を含めたインドの実効税率は約25%となり、新興国の中では比較的企業の税負担が重いとされていたインドは大幅な法人への減税を決断したことになる。

 さらに2019年10月1日以降に設立される製造業を業とする法人についてはその法人税率を15%とすること、加えて従来より悪名高かった最低代替税(MAT)に関してもその税率を18.5%から15%に引き下げるとの発表が続いた。 

 ドラスティックな法人税減税、しかも今年の2月、7月と2回も機会があった税制改正発表のタイミングではなく、年度も半分が過ぎようとしたこのタイミングでのいきなりの発表、そしてそれが2019年4月1日から遡及的に適用されるという点、日本からはあまり理解しにくいこれらの点を踏まえて、インド経済のおかれている状況やインド政府の意図を少し考えてみよう。

2019−20年度、インドは圧倒的に景気が悪い
 インド関連のビジネスをしている人ならばもう十分感じ取っていると思うが、2019年4月〜2020年3月のいわゆる2020年3月期、インド経済の状況は非常に悪い。

 代表的なものが自動車産業。今インドでは自動車業界はどこも売上が著しく悪く、ここ数カ月ずっと前年同月比40%近い売上減を続けている。さすがに10月末にあるディワリのお祭り以降は持ち直すとは言われているものの、それでも1年トータルで自動車産業の売上は10%以上落ちると言われている。

 実際、自動車産業で働く私の友達のインド人にも解雇される人が続出しており、私にも「日系の自動車会社で働き口があったら紹介してほしい」と履歴書を託されるケースが多い。ただ同業に転職しようとしても自動車産業はどこも不景気であり、再就職もうまくいかないのが現実だ。また、私は例年11月にインドの製造業を見学するツアーのサポートを現地でしているのだが、今年は見学を断られるケースが増えている。理由は簡単で、今多くの自動車会社が生産調整のために工場のラインを止める計画を立ており、その影響で多くの部品会社もその操業を一時的に止めたり、余剰人員の整理を始めたりしているのだ。

 これで困るのがモディ政権だ。

 モディ政権は今年5月に行われた下院総選挙で自らの経済政策の実績を大きくアピールしていた。2020年3月期の予想経済成長率は6.9%であるとし、これは中国を中心とする世界の主要新興国の中ではもっとも高い数値であるとし、政権の経済運営の大きく喧伝した。そして実際の選挙では大勝を果たしたからだ。

 しかしその選挙が終わるや否や自動車不況が顕在化し、国民の目からも6.9%といいう数字に疑問符が付き始めた。そこで、モディ政権は今回、電撃的に法人への大幅な減税を敢行することとなったという流れだ。

 従来、インドの「減税」と言えば、選挙を意識した低所得層への個人所得税の減税という「バラマキ」がメインであったのだが、さすがのインド政府もこの不景気は看過できなかったようで、経済界から強い要望もあった法人税減税に踏み切ったのである。

自動車不況以外にもインド経済が抱える問題点とは
 しかしそんなモディ政権の苦肉の策もむなしく、RBI(インド準備銀行…日本の日銀にあたる)は、10月4日インドの2020年3月期の経済成長率を従来の6.9%の予想から、6.1%と大幅に引き下げることを発表した。8月の実態経済を見ての判断とのことだが、体感としてインドのビジネスの世界で感じていた6.9%という数字とのギャップにRBIがお墨付きを与えた形になったようだ。

 RBIが懸念しているのは、6・7・8月の自動車不況に加えて「金融不安」である。

 昨年10月インドの大手ノンバンクIL&FSが社債のデフォルトを起こし、そこから金融業界全体への信用不安が広がった。この時のインド政府の対応は迅速で、即座に経営介入を発表。経営陣を刷新するなど適宜必要な手を打つことで金融危機を回避する形となった。

 その後もRBIは、

 「インド銀行業界は堅固であり、金融恐慌が来る理由は見当たらない」
 「RBIはノンバンク業界を注視し続けている」
 「ノンバンクでの次のデフォルトは起こらない」

 と声明を出し続けているが、皮肉にもこのような声明を昨年のIL&FSのデフォルトから1年たった今でも出し続けないといけないこと自体が、インドの金融不安が払拭しきれていないことへの証左となっている。このノンバンク問題は日本ではあまり有名でないが、インドの経済紙では週に一度は1面を飾るくらい注目され続けている問題で、未だに根本的解決がなされていない。

 この経済成長率の下方修正に加え、RBIはその政策金利も0.25%引き下げ5.15%になることも発表した。これで今年に入り5回連続の「引き下げ」となる。RBIやインド政府は金利引き下げによる貸し出しの増加 → 設備投資の増加を期待しているのだが、上記の自動車不況により市場全体が委縮している中でどれだけ設備投資が増えるかは不透明だ。

 さらに、政策金利の引き下げは当然貸し出し金利の下落にもつながるため、上記の金融問題で弱っている金融業界の体力を奪うことにもなりかねない諸刃の剣とも言える。逆に言うと、景気対策としてインド政府が打てる手が限られてきているとの見方もでてきている。

インド経済の長期的見通し
 とは言うものの悲観的な話ばかりではない。

 前述の自動車不況もアナリストたちの意見は「来年には改善する」という点で一致している。それは今回の自動車不況がインド経済の構造的な問題から起因するものでなく、在庫調整や景気循環由来のものだと見られているからだ。

 また「インド経済のアキレス腱」である「ルピー安」もようやくトンネルの出口が見えてきたように感じる。去年の後半の底なしのルピー安は今年に入り少し持ち直し、8月に再び大きく下落したものの、そこから大崩れすることなくまた少しずつ相場を戻している。

 そして、何よりインド経済を元気にしているのが南インドを中心に活躍している「インド発ユニコーン企業」の存在だ。日本でもビジネスを展開している世界2位のホテルチェーンOYOを筆頭に、電子決済のPaytm、ネット通販のSnapdeal、インド発のシェアライドのOLAなどは、ソフトバンクを代表とする世界中の投資家のお金を貪欲に飲み込み成長している。

 ただ私はこの「インド発ユニコーン企業」にも近いうちに少しリセッションが入るように感じている。もちろんこれらのインドのユニコーン企業はどれも素晴らしい企業だし、長期的には成長することは間違いない。ただ、世界中でダブついたお金の流れ込む先として、インドのスタートアップ企業は今のところ過剰に評価されているように感じるのだ。

 OYOは「世界2位のホテルチェーン」を名乗っているが、マリオットやヒルトンほどそのクオリティに統一性があるか? 答えはNoだ。Paytmはネットインフラが脆弱なインドでスムーズに現金より時間をかけずに支払いができるか? 答えはNoだ。SnapdealはAmazonほどの使いやすいインターフェースを備えているか? 答えはNoだ。OLAはUberほど厳格にドライバーの認証や管理を行っているか? これも答えはNoだ。

 今話題になっているWeworkのように、過度に評価されていたスタートアップには必ず一度はリセッションが入る。おそらくインドのユニコーン企業にもそのタイミングが近いうちに来るだろう。そして市場から冷静な評価を受けたあと再び力強い成長軌道に乗るのだ。

 インド経済を語る上でやはり共通のキーワードになるのは、

 「成長は早くはない。しかし確実に成長する」

 である。

 今回の自動車不況も、金融不安も確かに短期的には危なっかしいものに見える。そして将来インドのスタートアップへのリセッションがあるかもしれない。

 しかしそんな短期的な落ち込みがあっても、インドはその人口動態とその年齢構成、地政学的ポジションなど大局的な見地からゆったりとしかし確実に成長するだろう。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17563


 
グローバル企業 税収を各国配分 OECD案公表
税・予算 経済 ネット・IT2019/10/9 18:48
https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXMZO5081158009102019MM8001-PN1-6.jpg?auto=format%2Ccompress&ch=Width%2CDPR&fit=max&ixlib=java-1.1.1&s=862cdc36276b151f0594db1e088c9f18


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経済のデジタル化に対応してグローバル企業に適切な課税をするため、経済協力開発機構(OECD)は9日、新たな国際課税の枠組み案を公表した。利益のうち一部にかかる税を、その企業の国別の売上高に応じて各国で分け合う。拠点の有無にかかわらず、各国が課税できる仕組みだ。拠点ではなく消費地を起点とする法人税の仕組みの採用は、国際課税の大きな転換点となる。
OECDは11月21日からフランスで企業関係者や専門家などを集めた公聴会を開く。そのうえで議論に参加する134カ国・地域で2020年1月に大筋合意し、20年末までに詳細も含めた最終合意を目指す。
OECD案はグローバル企業からの税収を、事業展開の実態に合わせて各国で分け合うことを柱とした。各国は自国にある売上高をもとに、グローバル企業に課税できるようにする。例えばある日本企業の売上高が日本で8割、米国で2割の場合、米国は利益の2割分に課税する権利を持つ。
今のルールでは、支店や工場など「物理的拠点」がない企業に国は課税できない。ただ、IT大手などのデジタル企業は拠点を持たずに国境を越えたサービスを展開するため、大きな事業を手掛けている国でも課税されないという問題がある。
OECDは各国が課税できるのは「消費者向けの事業」からの利益とする考え方も示した。その上で、収益力の高い企業の利益はブランド力や認知度で上積みされているととらえる。上積みされた利益は国境とは関係ないため、売上高に応じて各国が分けられるという考え方だ。
上積み分の利益を正確に切り分けるのは難しいため、一定の算定率を設けて機械的にはじく。具体的にはこれから詰めるが、一般に高収益の目安とされる「利益率10%超」が候補だ。例えば利益率15%の企業は10%分が今のルールで課税され、残りに各国が課税する。
新たなルールの利点は、各国がグローバル企業へ簡単に課税できることだ。中小企業を除くすべての企業を対象とする。一方で適用は消費者向けビジネスを展開する高収益の企業に限定されるため、多くの企業は現行ルールにとどまる可能性が高い。
それでも実現に向けた課題は多い。
まずは課税対象とする利益をどう決めるかだ。例えば企業全体の税引き前利益をみると米フェイスブックは売上高の3割程度で対象になるが、5%弱の米アマゾン・ドット・コムは対象から外れる。グローバル企業は消費者向けから法人向けまで幅広い事業を手掛け、どの事業の利益をみるかで対象が変わる。
ブランドなどに基づく利益を抽出するための「利益率」も決め方が難しい。10%超とすれば対象の企業は絞られる。大幅な税収増を望むインドなど一部の新興国は「グローバル企業の利益をすべて再配分すべきだ」と主張し、隔たりは大きい。
一橋大の吉村政穂教授は「新しいルールで税収増の見込めない国が独自課税に走れば、枠組みが瓦解する」と指摘する。仮に20年に合意しても「利益率のさらなる引き下げなど、将来的な見直しが必要になる可能性がある」と話す。
国際的な税逃れの監視団体からは、途上国により税収が落ちるよう、売上高以外にも労働者数などの要素を踏まえるべきだとの意見も出ている。20年末の合意に向け、当面は予断を許さない展開が続きそうだ。
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OECD、新デジタル課税案 拠点国以外に税分配 巨大ITの利益標的
会員限定有料記事 毎日新聞2019年10月10日 東京朝刊
• アメリカ東京朝刊・経済面経済政策・財政経済紙面掲載記事
 経済協力開発機構(OECD)事務局は9日、米巨大IT企業など多国間でサービスや商品を提供する大企業への課税強化に向けた「デジタル課税」の国際ルール案を公表した。知的財産権やブランド、顧客データといった「無形資産」によって生じる利益に法人税を課し、本社や拠点がある国以外にも分配するのが柱。来年1月の大枠合意を目指し世界約130カ国で協議を進める。【藤渕志保】
 従来の国際課税ルールは原則、本社や工場などのある国に課税権を認めている。だが、インターネットの普及…
https://mainichi.jp/articles/20191010/ddm/008/020/078000c

GAFA拠点なくても法人税 OECD、課税原案を公表
岩沢志気 2019年
デジタル課税の原案イメージ
 巨大IT企業を念頭に置いた「デジタル課税」の国際ルールを検討してきた経済協力開発機構(OECD)が9日、ルールの原案を公表した。本社などの拠点がなくても、利用者がいる「市場国」が売上高に応じて法人税を課せられるようにする内容だ。来年1月の大枠合意、来年末までの正式合意をめざす。ただ、課税権の配分の仕方をめぐって各国の対立が予想され、すんなり合意できるかは見通せない。
 新しいルールがつくられる理由は、グーグルやアマゾンなど「GAFA(ガーファ)」と呼ばれる巨額の利益を稼ぎ出す国際的なIT企業に対して、利用者がいる市場国が適切に法人税を課税できていないからだ。法人税は国際的な約束で本社や支店、工場などの「物理的な拠点」がない国は課税できない。だが、巨大IT企業は必ずしも利用者がいる国に拠点をもたない。
 例えば、アマゾンは日本の消費者に動画や電子書籍を売って利益を得ても、配信拠点が海外にあるため、配信事業について日本に法人税を納めていない。
 このため原案は、こうした物理的な拠点がなくても、利用者のいる国で一定の売り上げがあれば、その国が課税できる根拠になると位置づけた。インターネット広告などは、売り上げを計上する場所がその広告を見る人がいる国とは限らないことも考慮する。
 具体的には、利益を二つに分けて課税する。利益全体のうち通常得られるとみられる「一般的な利益」には、これまで通り社屋や工場などがある国が課税する。この水準を超す部分を、ブランド力や顧客データなどの「無形資産」がもたらした「特別な利益」と位置づける。そして、各市場国が売上高の比率に応じて課税できるようにする。
 ルールの対象となる企業は、「…
https://www.asahi.com/articles/ASMB95CNFMB9ULFA01P.html


「景気下振れリスク一層深刻に」 FOMC議事要旨
経済 北米
2019/10/10 3:34
【ワシントン=長沼亜紀】米連邦準備理事会(FRB)は9日、9月17、18日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表した。「景気下振れリスクが7月以降、一層深刻になった」として参加者の大半は予防的な利下げを適切としたが、数人が景気の現状と見通しは利下げを正当化しないと主張し、意見に相違があったことを示した。

9月18日、FOMC後に記者会見するパウエルFRB議長(ワシントン)=ロイター
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9月18日、FOMC後に記者会見するパウエルFRB議長(ワシントン)=ロイター

前回の会合では、貿易戦争のリスクを警戒して、7月に続き政策金利の0.25%引き下げを決めた。しかし、投票メンバーのうち2人が利下げに反対する一方、1人はより大幅な利下げを求めて反対した。

議事要旨によると、大半の参加者が、0.25%の利下げを適切と考え、景気見通しの下振れ、リスク管理の必要性、インフレおよびインフレ予測を目標の2%に近づける重要性を理由にあげた。

これらの参加者は、貿易をめぐる不確実性が増したほか、英国の欧州連合(EU)からの合意なき離脱の可能性、香港での混乱などをリスクに指摘。さらに企業の設備投資や製造業が弱含んでおり、それが企業の雇用判断に影響し、家計収入と消費に波及することに懸念を示した。金融政策の効果は遅れて現れることから、早めに景気を支えるべきだと主張した。

一方、数人の参加者は、「基底にある景気見通しはほとんど変化していない」と指摘。金融政策はすでに緩和的であり、政策変更はマクロ経済データが正当化する場合のみ実施すべきだと主張した。

次回以降の政策判断については、決まった進路はなく、景気見通しに関する情報次第である点で参加者は合意した。数名は、金融市場が、彼らが適切を考える以上に緩和的な金利政策の道筋を予測しており、市場とFOMCの予測を一致させることが必要になるとの見方を示した。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50822460Q9A011C1000000/

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/342.html

[戦争b22] トルコ軍、シリア北部で地上戦開始=攻撃で15人死亡 トランプ氏、トルコのシリア攻撃「支持せず」英仏独、安保理緊急会合を要請 トルコのシリア攻撃で トルコ、親米クルド人勢力を攻撃 シリア北東部
トルコ軍、シリア北部で地上戦開始=攻撃で15人死亡
2019年10月10日09時17分

https://www.jiji.com/news2/kiji_photos/201910/20191010at01S_p.jpg
9日、シリア北部の町ラスアルアインで、トルコ軍の攻撃から逃れる市民ら(AFP時事)

9日、シリア北部の町ラスアルアインで、トルコ軍の攻撃により立ち上がる黒煙(AFP時事)

 【エルサレム時事】トルコ軍は9日夜、シリア北部で地上作戦を開始した。この日空爆や砲撃で始まったクルド人勢力に対する軍事作戦を本格化させた形。軍は声明で「181カ所に打撃を与えた」と戦果を誇示した。在英のシリア人権監視団によると、トルコ側からの攻撃により、北東部カミシュリなどで民間人を含む少なくとも15人が死亡した。
シリア攻撃は「悪い考え」=米大統領

 シリア北部のユーフラテス川以東の一帯では攻勢をかけるトルコ軍と、これに抵抗するクルド人勢力による応酬が続いた。地上部隊は、対トルコ国境沿いの町テルアビヤドなどに投入されたという。
9日、シリア北部の町ラスアルアインで、トルコ軍の攻撃から逃れる市民ら(AFP時事) 

 トルコ軍の激しい攻撃を受け、少なくとも数千人規模の地元住民が家を追われ、退避を始めた。軍事作戦は内戦が続くシリアで新たな大量の避難民を生み出しかねず、人道危機の深刻化が懸念される。
 クルド人勢力は、シリアでの過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦で中心的な役割を果たしてきた。同勢力をISと同列の「テロ組織」と見なすトルコの軍事作戦に対する反発は強く、欧米やアラブ諸国などからは「対ISでの安全保障、人道上の努力を台無しにしてしまう」(ルドリアン仏外相)といった批判が相次いだ。

【国際記事一覧へ】 【時事ドットコムトップへ】
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019101000223&g=int


トランプ氏、トルコのシリア攻撃「支持せず」
停止は求めず、報復措置に言及なし
トランプ政権 中東・アフリカ 北米
2019/10/10 2:33 (2019/10/10 6:26更新)

【ワシントン=中村亮】トランプ米大統領は9日の声明で、トルコがシリア北東部でクルド人勢力に対する軍事作戦を開始したことについて「支持しない」との立場を示した。一方で攻撃停止を明確に求めず、報復措置にも触れなかった。戦闘地域での民間人保護や拘束中の過激派組織「イスラム国」(IS)の扱いについてトルコが責任を負うと指摘し、米国は関与しない方針を強調した。

トランプ米大統領=ロイター
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トランプ米大統領=ロイター

軍事攻撃をめぐってトランプ氏は「悪い考えだと明確にしてきた」と明記したが、トルコを明確に非難していない。経済制裁などの報復措置をとる考えも示さず、トルコによる攻撃を暗に容認したともみなされかねない。トランプ氏に近い与党・共和党のリンゼー・グラム上院議員が「(トルコの)エルドアン大統領に重い代償を払わせる措置に向けて議会を動かしていく」と強調したのとは対照的だ。

トランプ氏は「私は政界に入った初日から、終わりがなく、ばかげた戦争を望まないと明確にしてきた」と指摘。トルコによる軍事攻撃に巻き込まれたくないとの思いを強調した。トランプ氏はトルコとの国境沿いに駐留していた米兵50人を別の地域に移動させた。

政権はこれまでIS掃討作戦でクルド人勢力と協力関係を築き、トルコによる軍事作戦に反対してきた。だが6日の米トルコ首脳の電話協議後には一転して攻撃を容認する方針に転じた。議会の猛反発を受けて、トランプ氏はトルコに攻撃の自制を求めたがトルコは軍事作戦を強行した。

英仏独、安保理緊急会合を要請 トルコのシリア攻撃で
中東・アフリカ 北米
2019/10/10 0:36 (2019/10/10 1:26更新)
【ニューヨーク=大島有美子】国連の安全保障理事会は10日に、トルコがシリア北東部で軍事作戦を開始したことを受け、緊急会合を開く。会合は非公開とし、シリアを巡る状況を議論する。英仏独など欧州の5カ国が開催を要請した。

国連の安全保障理事会(ニューヨーク)=国連提供
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国連の安全保障理事会(ニューヨーク)=国連提供

10日午前にもともと予定している安保理会合に、シリア問題を議題として加える。ロイター通信によると、英仏独は9日、共同でトルコの軍事行動を「強く非難する」との声明をまとめた。イタリアのコンテ首相も同日、トルコの行動は「地域を不安定にし、市民を危険にさらす」と述べ、自制を促した。

国連のグテレス事務総長は9日、報道官を通じて「状況を深く憂慮している。シリアの混乱の収束に軍事的な解決法は要らない」との声明を発表した。報道官は「あらゆる解決策はシリアの尊厳と主権を尊重するものでなければならない」とも強調した。

国連はシリア担当の事務総長特使を置き、和平に向けた動きを支援している。9月下旬には国連の仲介でシリアの新憲法を起草する憲法委員会の設立が合意され、10月末をめどに初会合が開かれる予定だった。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50821930Q9A011C1000000/?


トルコ、親米クルド人勢力を攻撃 シリア北東部
地域情勢の不安定化 国際社会が懸念
中東・アフリカ
2019/10/9 23:13 (2019/10/10 6:30更新)
シリア北東部ではトルコ軍の爆撃を受けて炎上する場面がみられた(9日)=AP

【イスタンブール=木寺もも子】トルコ軍は9日、テロリストとみなすクルド人主体の武装勢力「シリア民主軍(SDF)」を排除するため、シリア北東部に侵攻した。トランプ米大統領がシリアからの米軍撤収を表明してからわずか数日後の作戦実行で、国際社会から懸念や非難が相次いだ。米国の関与が弱まったことで、地域情勢は一気に不安定になりつつある。

トルコ軍が空爆などを始めたのは、現地時間9日午後4時(日本時間同日午後10時)。その後、ロイター通信によると、9日夜(同10日未明)にはシリアの反政府勢力と地上作戦を始めた。

トルコのエルドアン大統領が名づけた軍事行動は「平和の泉作戦」。その狙いは2つある。第1に、トルコを脅かすクルド人勢力をシリア国境から遠ざけること。第2に、トルコと接するシリアの国境地帯に「安全地帯」を設け、数百万人単位のシリア難民を移住させることだ。

トルコ軍のシリアへの侵攻後、シリアとの国境近くの地域住民はトルコ軍に歓声をあげていた(9日)=AP
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トルコ軍のシリアへの侵攻後、シリアとの国境近くの地域住民はトルコ軍に歓声をあげていた(9日)=AP

クルド人武装勢力はこれまで米国にとって、過激派組織「イスラム国」(IS)掃討の作戦で手を組んできたパートナーだ。今回、米国は「一線を越えるようなことがあったらトルコ経済をぶち壊す」(トランプ氏)と警告していたが、エルドアン氏は耳を貸さずに軍を進撃させた。SDFの報道官によると、市街地が空爆され、死傷者が出ている。

トランプ氏はトルコの行動を「支持しない」「悪い考えだと明確にする」などとする一方で、トルコを非難することはせず、米国は関与しない方針を強調した。

一方、欧州連合(EU)は9日、トルコの軍事作戦の「一方的な中止を求める」との声明を発表した。11日にエルドアン氏と会談するストルテンベルグ北大西洋条約機構(NATO)事務総長は「地域をさらに不安定にさせる」と懸念を表明した。

国連は英独仏など欧州5カ国が安全保障理事会の緊急会合を開くよう要請し、10日の開催が決まった。ロイターによると、エジプトもアラブ連盟の緊急会合の開催を呼びかけた。

米国内でも、トランプ氏に近い共和党のリンゼー・グラム上院議員が野党・民主党の上院議員とトルコ向け制裁法案をまとめるなど、反発が出ている。

一方、シリアのアサド政権に近いロシアのプーチン大統領は9日のエルドアン氏との電話協議で、シリア和平の進展を妨げないように「入念に状況を考慮する」よう求めた。軍事行動に明確に反対する発言は明らかになっておらず、事実上黙認したとの見方が広がっている。

トランプ氏は6日のエルドアン氏との電話協議後にトルコの軍事作戦を容認するとともに、シリアからの米軍撤収を表明した。「政策の大転換」(米紙)に与党共和党指導部が強く反発したことからトランプ氏は方針を軌道修正したものの、トルコの軍事作戦を止めることはできなかった。米国不在による「力の空白」が生まれれば、シリア情勢は一段と混迷を深める公算が大きい。

トルコ軍の攻撃対象は、SDFが掌握する国境沿いのテルアビヤド、ラス・アルアインの2つの街のもよう。トルコメディアは、当面の作戦目標は2つの街の間の約120キロの地帯だと報じている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50817670Z01C19A0FF8000/ 
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/861.html

[経世済民133] 日銀と金融庁がもたらしかねない「家賃上昇」という生活苦 一棟マンション価格が下落傾向 過去3年で最安値を更新  日銀緩和の終わらせ方、保有株は年金資産に
日銀と金融庁がもたらしかねない「家賃上昇」という生活苦
沖有人:スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント

経済・政治 ビッグデータで解明!「物件選び」の新常識
2019.10.10 5:00

日銀と金融庁がもたらしかねない「家賃上昇」という生活苦
賃貸物件の家賃が、ここにきてなぜ上がり始めているのか。背景には意外な原因が(写真はイメージです) Photo:PIXTA
物価の頭打ち要因だった
家賃が上がり始めた理由
 日銀が金融緩和を始めて、すでに6年以上が経過している。そもそもなぜ金融緩和をしているかというと、デフレ対策である。安倍政権の使命がデフレ脱却であり、アベノミクス3本の矢の「第一の矢」が金融緩和だった。

 日銀総裁に黒田東彦氏を指名し、5年の任期を迎えた後、再任させている。しかしデフレ脱却は道半ばで、インフレ目標の2%に届いていないため、行き過ぎた金融緩和を手仕舞いできずに現在に到っている。ここにきて、そんな日銀に金融庁という援軍が現われた。彼らが同盟を組むと、一般庶民を直撃する大打撃をもたらす可能性がある。

 金融緩和には副作用がある。過去の金融緩和は、1980年代のバブル経済と2000年代のリーマンショック前に、二度に渡って不動産価格の高騰を招いた。いずれも、その後の景気後退のダメージは非常に厳しいものがあった。それをトラウマに感じている人は多く、当時のようなことが二度と起こらないようにしようという思いが、経済を牽引する人たちには共通認識としてあると思う。

 私は金融緩和が始まったタイミングに拙著で「新築マンション価格は2年で25%上がる」と予言し、現実のものとなった。「金融緩和=不動産インフレ」は必ず起こることなのである。今回は金利も相当下がったので、その分価格は大幅に上がったが、現段階で行き過ぎた価格にはなっていない。

 また、資産はインフレしたが、物価はインフレしていない。物価は持ち家のような資産とはほぼ無関係で、消費者物価指数には家賃だけが直接的に関係するのだが、その家賃がずっと下がり続けていたためだ。

 しかし、その家賃が最近上がり始めた。それに最も影響を与えたのは金融庁なのである。

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日銀の政策支援を金融庁がやっている
 金融庁は不動産バブルによる銀行の破綻を避けるためにできた、といっても過言ではないだろう。彼らは、不動産融資が貸し倒れとなり多額の損失を出した銀行に公的資金を投入したり、合併・破綻処理をしたりしてきただけに、今回の金融緩和にも目を光らせていた。

 そんな折に、スルガ銀行などの不正融資事件が発覚した。そこで、不動産融資への厳しい姿勢を銀行に示し、収益不動産に対する融資を厳格化するように迫った。その結果、資金は絞られ、新規融資は昨年比で2割もの縮小傾向を示している。結果として、新規着工も同様に減少し、需給バランスが急速に逼迫し始めている。

 融資を受けずに賃貸住宅を建てる人はほとんどいない。融資を止めてしまえば、連動して新規供給は減っていく。アベノミクスの景気浮揚効果で需要が拡大しているさ中に供給を絞ると、物件の稼働率が上がることになる。現状、東京都の家賃は「値上げ」が当たり前になってきている。この需給逼迫により、消費者物価指数の一部を成す家賃が上昇を始めているのだ。

日銀の政策支援を
金融庁がやっている現状
 これまた日銀には朗報になる。なぜなら、消費者物価指数が2%になるまで金融緩和の継続を明言しているなか、物価の押し下げ要因ともいわれていた家賃が都市圏で上昇し始めたからだ。賃貸が都市圏に集中することから、全国の家賃も現状は横ばいになっている。

 通常、市場の家賃は値下がりしていくものだ。なぜなら、現状で新規着工戸数が一定割合増え続けても、ストック全体の築年数は毎年0.6年程度古くなっているため、それを家賃が反映して下がるからだ。新規供給の減少で需給が逼迫し、家賃が上がるとなれば、日銀には願ったり叶ったりの状況になる。

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不動産の「一段高」で家庭が受ける打撃
 そもそも、インフレを目指して行われていた金融緩和だが、収益不動産の新規供給に資金が大量に流れ込むと、賃貸住宅需給が緩和し、家賃デフレに拍車をかけるという矛盾に陥っていた。そんななか、足もとでは金融庁の口先介入で需給が逼迫し、家賃がインフレし始めているのだ。

 こうして日銀が抱えていた2つの悩みが、金融庁の働きによって結果として解決に向かう状況になっている。その悩みとは、1つが金融緩和で不動産にお金が流れ込み、不動産価格の過剰なインフレを招きかねないこと。もう1つは、賃貸住宅の新規供給に資金が流入し、需給が悪化して家賃が下がることだ。2つの組織がどこまで申し合わせているのか国民には知る術もないが、双方の懸念を結果として回避できていることは確かだ。

深刻な家庭への打撃
不動産の「一段高」に備えよ
 こうして、日銀にも金融庁にも都合がいい環境となったため、現状からの大きな政策転換が起こる可能性は低くなった。金利低下による不動産価格の上昇は限界まで来ている。ここからは、賃料が上がることで物件価格が上がる段階に移るだろう。不動産はもう一段高へと動き始めている。

 不動産市場は下がるどころか、当面安定的に上がり続ける様相を帯びてきた。賃貸居住者は、家賃が上がることを覚悟した方がいい。長引く不動産の好況は、持ち家の価格上昇だけでなく、賃貸物件の家賃まで上昇させ、深刻な家庭の圧迫要因になりつつある。

「大打撃」への備えはできているか――。そのことが今、問われている。

(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)

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東京を襲う家賃の値上げラッシュ、賃貸居住者が家計を守る心得
「空き家率」は上昇どころか急低下、家賃が暴騰しかねない現実
「空室ばかり」と言われる賃貸住宅の家賃が上がり続ける理由
賃貸住宅を出て、一刻も早くマンションを購入すべき理由
沖有人
https://diamond.jp/articles/-/217126?page=3

東京を襲う家賃の値上げラッシュ、賃貸居住者が家計を守る心得
沖有人:スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント

ライフ・社会 ビッグデータで解明!「物件選び」の新常識
2019.4.11 5:00
 

東京都区部の空室率に見る
「家賃値上がり」が止まらぬ現実

 東京都区部の賃貸住宅の空室率は約3%程度だ。これは全国的に見るとかなり低い数字であり、世間でいう「空き家問題」とは真逆の状態にある。

 この空室率だと、住人が退去すると次の家賃は値上げされることになる。学生から社会人まで、東京に住む多くの人が賃貸住宅に住んでおり、また定期的に賃貸間の引っ越しをしているだろう。そんな人たちにとって、家賃の上昇トレンドは家計を直撃する負担となる。どうしたらいいのだろうか。値上がりする家賃の実態と対策を見てみよう。

 通常、賃貸の平均入居期間は4年である。2年契約が多いので、1回更新手続きをして、2回目の更新で退去するのが一番よくあるパターンだ。ここでは、4年経っての前回の募集賃料と今回の変動率を「賃料変動率」と呼ぶことにする。

 スタイルアクトが保有する賃貸のビッグデータからこの賃料変動率データを作成した結果、230万件に及ぶ大量のサンプルを用意することができた。この結果から、4年での変動率は都区部平均で+1%になった。

 築年が4年経過して値上げするということは、かなり市場がよくなっていることを示唆している。なぜなら、築1年で賃料は総じて1%下がるからだ。そう考えれば、4年経過すると本来-4%になるのが当然のはずだ。それが+1%ということは、実質的に5%も相場が上がっているに等しい。

 この状態ならば、入居者が入れ替わる際は、市況に合わせてオーナー側は心おきなく値上げできる。現状では、むしろ退去してもらった方が、オーナーにとっては値上げできるので有利である。最近は家賃の値上げだけではなく、礼金も取れる月数は増えているし、フリーレント(家賃無料期間)はなくなりつつあり、入居者負担は増える一方だ。

 また、入居中の契約更新時も値上げ交渉の打診が来る。リートの投資家説明資料には、契約更新時に平均するとわずかだが値上げしている実態が数値で表現されている。

 
 
「持ち家」ならプラスになる、家賃値上げへの対抗策

 新規需要は流入人口でほぼ説明できる。これは日本人も外国人もあり、かなり高水準が続いている。日本人は20代の社会人が都市圏に集中してきている。2018年の実績は首都圏で13万人の純増であり、都区部はその半分となる6.6万人を占める。

 これに対して新規供給は、着工戸数で5.3万戸しかない。この需要が多過ぎる状況は、2011年以降ずっと続いている。これに加えて、2013年以降のアベノミクスの景気浮揚もあり、賃貸需要はセカンドハウスなどのように頭数以上に増えている状況でもある。

 現在も大卒の都市圏への就職活動は続いており、2年後までは少なくとも流入は増加傾向を続けることが今の景気水準から決まっている。これに対して供給は、スルガ銀行に端を発する賃貸住宅への融資の引き締めによって急速に減少傾向を辿っている。この需給バランスは、2年後にさらに逼迫している確率がかなり高くなっている。

「持ち家」ならプラスに
家賃値上げへの対抗策
 家賃値上げに対抗するには、まず持家取得が最善の策になる。持家を買ってしまえば、家賃が上がるのはマイナスどころか、貸す立場になる際にプラスに転じる。それができないなら、住宅系のREITファンドを買うと、値上がりの恩恵を受けることができる。

 その際の銘柄の選び方は、投資家説明資料でいかに賃料変動率が上がっているかを参考にしよう。現状の開示資料は、客観的なベンチマークとの比較がなされていない都合のいいデータであり、不十分と言わざるを得ない。今回説明している賃料変動率は、各物件単位で周辺市況との比較をすることができる。その比較によって、よいパフォーマンスを出しているかを適確に判断できるようになる。

 近いうちに我々スタイルアクトは、住宅REIT銘柄の正確な格付けを出すつもりだ。そのときに読者諸氏は、値上がりしやすい場所に物件を持ち、運用がうまい銘柄を容易に見つけることができるようになるはずだ。不動産の情報開示はなかなか進まない印象があるが、それが改善される日はそう遠くはないだろう。

(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)
https://diamond.jp/articles/-/199434?page=3

 

一棟マンション価格が下落傾向 過去3年で最安値を更新

なんでも統計局 by PR TIMES
2019年10月8日 火曜 午後3:58
プレスリリース配信元:株式会社ファーストロジック

収益物件数No.1 国内最大の不動産投資サイト『楽待』 物件統計レポート2019年7〜9月期 投資用不動産の市場動向

不動産投資サイト「楽待」(https://www.rakumachi.jp)を運営する株式会社ファーストロジック(東京都千代田区、東証一部上場)は、同サイトにおける投資用不動産市場調査7〜9月期の結果を公表いたします。 (調査期間:2019年7月1日〜同年9月30日、対象:期間中に「楽待」に新規掲載された全国の物件)


https://www.fnn.jp/image/program/000000337_000001240?n=1&s=12_l

■レポート概要
一棟マンションの価格は今年に入り全体として緩やかな下落傾向にありますが、8月には3年間で最安の1億7005万円となりました。一方、利回りはほぼ横ばいです。

一棟アパートの価格は7月に上昇したものの、8月、9月は2カ月連続で下落し6257万円に。区分マンションは3カ月下落が続き、1582万円になりました。

▼プレスリリース資料▼
https://www.firstlogic.co.jp/wp-content/uploads/2019/10/firstlogic_press_201910.pdf

■ファーストロジック会社概要
社名:株式会社ファーストロジック(証券コード:6037)
所在地:東京都千代田区有楽町一丁目1番2号 東京ミッドタウン日比谷 日比谷三井タワー 33階
設立:2005年8月23日
楽待URL:http://www.rakumachi.jp
会社URL:https://www.firstlogic.co.jp
https://www.fnn.jp/posts/000000337_000001240/201910081558_PRT_PRT

 


為替フォーラム2019年10月10日 / 12:44 / 4時間前更新
日銀緩和の終わらせ方、保有株は年金資産に

木野内栄治 大和証券 理事 チーフテクニカルアナリスト兼ストラテジスト
5 分で読む

[東京 10日] - 日本銀行による量的・質的金融緩和をいつ、どのように終わらせるか。その「出口」戦略にはインフレ期待に働きかけるという本来の政策効果を減殺しかねないリスクがある。日銀はとるべき方策を語らず、議論は封印されている印象すらある。

しかし、質的緩和の大きな柱であるETF(上場投資信託)購入策については、有効な選択肢があると筆者は考える。日銀保有のETFは9月末時点で取得額が27.6兆円の規模に達しており、緩和策の出口として市場売却されれば、株価への大きな影響が懸念される。だが、直接の市場売却ではなく、たとえば「信託型従業員持ち株制度」のような仕組みを構築し、年金資産としてプールすれば、長期にわたるなだらかな現金化が可能になる。懸念される市場の激変は避けられるだろう。

さらに、こうした保有ETFを有効活用する議論を始めること自体が、市場の関心を高め、リスク・プレミアム拡大への期待増進を働きかける効果につながる。つまり、適切な出口戦略の設計議論自体が現在の金融緩和策の強化になり得ることを指摘したい。

<ETF購入策の3つの問題>

日本銀行によるETF購入策は「筋が悪い」政策と言われる。第1の理由は、容易に売却できないため、この政策を大規模に、長期にわたって続けることは難しいとの議論だ。実際、日銀の購入により、一部の日経平均採用銘柄の浮動株が早々に枯渇するとの誤解が流布していた。

第2の理由は、そもそも株式市場に関心がある国民は少数派である、との見方に基づく。日銀の「異次元緩和」の質的な柱であるETF購入策は大胆な政策ではあっても、広く国民のマインドに働きかけているとは思えない、という指摘だ。

第3は、将来、日銀が大量保有するETFの売却を行えば市場価格を崩す、と考える投資家の不安だ。株価下落の不安は投資意欲を減衰させる。結局、現在の市場価格を押し上げるはずの政策効果は小さくなりかねない。実際、昭和40年不況における証券買い取りの後は、市場売却によって株式市場は大きく下落した。

こうした問題点があるために、株式バリュエ―ションをみると、ETF購入策がリスク・プレミアムに働きかける効果は一時期に比べて減少してしまった。しかしながら、その対応策については、前述のようにアンタッチャブルな状態だ。

<売却ショックは大きく緩和>

これら3つの問題を解消するため、まず頭の体操として、日銀保有のETFを年金資金のプールに売却する出口策を考えたい。年金の株式資産は短期に処理されることはなく、遠い将来に向け、時間をかけて現金化されるので、市場売却のショックは相当緩和できるように思われる。つまり第1の問題である市場への衝撃を緩和し、出口戦略を容易にできるので、当座のETF購入策の継続性が担保できる。

加えて、日銀ETFは9月末段階で約3.8兆円の含み益を有すると推計されるが、日銀が取得した価格で年金にETFを譲渡すれば、この含み益分によって年金財政が潤い、全国民に広くメリットが及ぶことになる。日銀のETF購入策を知らない国民にも広く働き掛ける効果が期待できるだろう。つまり第2の問題にも対処できる。

ただし、現在の年金資金には日銀保有のETFをすべて肩代わりできるほどの余資はない。また、年金資金に付け替えて売却に時間をかけたとしても、将来、市場に放出されることに変わりはない。第3の理由である市場価格に対する中立をどう維持するか、という疑問への回答にはならない懸念が残る。

<信託型従業員持ち株制度の仕組み>

では、日銀保有のETFを購入する年金資金をどのように誘導したらいいのか。ひとつの方策として考えられるのは、信託型従業員持ち株制度の応用だ。

この制度は、伝統的な従業員持ち株制度を有している企業(株式の発行会社)が信託を作り、従業員持ち株投資会が将来にわたって買うであろう当該会社の株を借入金で一括取得する仕組みだ。信託期間中は当該信託が持ち株会に市場時価で売却を行う。

信託期間終了時までに、自社株単価の上昇によって信託財産が残ったら、拠出割合に応じて配分される。つまり、株価が上昇していたとしても、従業員は信託が当初取得した安い価格で株を購入したことになる。一方、自社株単価の下落で借入金が残る場合は、発行会社が負担する。

これについては、会社が買収防衛対策に利用しかねないなどの問題点も指摘されるが、従業員にとってはインセンティブ・プランとなるので、自社株投資の増額を期待できる制度だ。

<肩代わり資金の誘導は可能>

この仕組みを積み立て型の個人型確定拠出年金(iDeCo)と日銀保有のETFに当てはめてみたらどうだろう。日銀保有のETFは、9月末時点で時価評価3.8兆円の含み益を有していると推計されるが、デフレから脱却するまでにはもっと大きな利益となっているだろう。

そこで、取得価格で、日銀が保有するETFを国民の積み立て型の確定拠出型年金に提供するという決定を現時点で行う。「日銀iDeCo」とでも名付けた制度を議論することになる。

各種の税制優遇だけでなく、割安な価格で取得できるインセンティブによって、既存の少額投資非課税制度(NISA)やiDeCoよりも多くの国民が参加するだろう。極端な仮定だが、全国民の4分の1にあたる3千万人が公務員等に適用されるiDeCo拠出限度額である年間14.4万円を投じると、6年半で現在の日銀取得のETF分の資金が集まる計算になる。10分の1の参加者であっても、64年程度で肩代わり資金を集めることができる。

売却時期の分散効果を考えると、長期にわたって募集する後者の方が望ましいかも知れない。

このように、適切な制度設計があれば、年金資金に日銀保有のETFを肩代わりする資金を誘導する策は実現できると思われる。

次に市場売却を抑制する策も考えたい。iDeCo方式ならば60歳まで引き出しができないので、まずは広く薄く、時期が分散されて売却される制度が可能だろう。

さらに、貯蓄から投資の流れを促進し、積み立て投資を日本国民に習慣付けるような制度設計が可能ならば、売却インパクトの相殺を期待できる。その制度とは、たとえば、日銀の取得価格で購入できるインセンティブを100年先の国民にも配分できるように小出しに行うべく、他の投資との抱き合わせた信託商品にすることなどだ。

<適切な出口設計議論が緩和効果を増進>

信託型従業員持ち株制度の場合、従業員にストック・オプションが提供されたのと同じ効果があるので、従業員は自社株が上昇するように努力することが期待できる。日銀iDeCoでは、広く国民の脱デフレを願う気持ちが強まろう。

こうした制度が整備されれば、日銀がETFをいくら買い進めても、出口での売却インパクトを心配する必要はなく、国民の支持もあるとなれば、たとえば、個人投資家は株式の売り惜しみをするだろう。つまり、足もとでのリスク・プレミアムに働きかける力は大きく増すことになる。

しかし、現実には出口戦略への言及は封印されている感が強い。期待に働きかける効果を減殺しかねないとの配慮からだろうが、すでにETF購入策に関してはリスク・プレミアムに働きかける効果が減退している。むしろ、日銀iDeCoのような前向きな出口計画を検討することで、現在の金融緩和策の強化になり得る。早々の議論開始が有効だろう。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

木野内栄治氏(写真は筆者提供)
*木野内栄治氏は、大和証券 理事 チーフテクニカルアナリスト兼ストラテジスト。1988年に大和証券に入社。大和総研などを経て現職。各種アナリストランキングにおいて、2003年から16年連続で市場分析部門などで第1位を獲得。平成24年度高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。現在、景気循環学会の常務理事も務める。
https://jp.reuters.com/article/column-boj-eiji-kinouchi-idJPKBN1WP0B8
 


超長期債が上昇、30年入札結果順調で買い優勢ー先物は中期債売り重し
船曳三郎
2019年10月10日 7:51 JST 更新日時 2019年10月10日 15:32 JST
債券市場では超長期債相場が上昇。この日に実施された30年国債入札が市場予想を上回る結果になったことを受けて、超長期債を中心に買いが優勢になった。一方、中期ゾーンには売り圧力が根強く、先物相場の上値を抑えた。
• 新発20年物169回債利回りは前日比1ベーシスポイント(bp)低下の0.19%、30年物63回債利回りは1.5bp低い0.36%、40年物12回債利回りは3bp低い0.405%
• 新発10年物356回債利回りは0.5bp低いマイナス0.215%、一時マイナス0.22%
• 新発5年物140回債利回りは1bp上昇のマイナス0.35% •
• 長期国債先物12月物の終値は2銭安の155円00銭。30年入札結果の発表後に一時155円05銭まで上昇場面も、その後は上値の重い展開

市場関係者の見方
野村証券の中島武信シニア金利ストラテジスト
• 30年債入札結果は強い。生命保険は金利が上がれば素直に買いたい。9月は日銀のスティープ(傾斜)化策がワークしたが、生保が期末で買い難かったためだろ
• 超長期債は10月に入って素直に買われており、9月のようなスティープ化は起こりにくいのではないか
• 一方、5年債は売られており、9月はマイナス金利深掘り観測でヘッジの買いも入ったようだが、いったん外す動きが出ているのかもしれない

30年債入札
• 最低落札価格は100円40銭と、ブルームバーグがまとめた市場の予想中央値100円25銭を上回る
• 投資家需要を反映する応札倍率は前回3.45倍を上回る3.87倍。小さいと好調さを示すテール(最低と平均落札価格の差)は前回11銭から6銭に縮小
• 備考:日本債券:30年利付国債の過去の入札結果(表)
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
-0.315% -0.350% -0.215% 0.190% 0.360% 0.405%
前日比 +1.0bp +1.0bp -0.5bp -1.0bp -1.5bp -3.0bp
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-09/PZ1KCTDWLU6801?srnd=cojp-v2

ビジネス2019年10月10日 / 16:50 / 22分前更新
今の段階で100年債の発行は考えていない=麻生財務相
Reuters Staff
1 分で読む

[東京 10日 ロイター] - 麻生太郎財務相は10日午後の衆院予算委員会で、「ただいまの段階で、100年債(の発行)は考えていない」と述べた。玉木雄一郎委員(立国社)への答弁。

玉木委員は、過去2回の増税延期時と比べて世界経済の環境が悪化しており、今回の消費増税は、日本経済だけでなく世界経済にも悪影響を与えかねないとの懸念を示した。その上で、麻生財務相に、低金利環境を活用した大規模財政出動の一環として超長期国債発行を検討するよう求めた。

安倍晋三首相は、今後の景気対策に関し、「英国のEU(欧州連合)離脱、米中貿易摩擦、消費増税の影響などみつつ、必要あれば躊躇なく対応する」と強調した。
https://jp.reuters.com/article/aso-idJPKBN1WP0N8



http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/345.html

[経世済民133] 日銀は必ず動くはずだが、一体何ができるのか 日銀利下げ期待急上昇 金利スワップ「10月会合で100%」も 政府・日銀連携し、あらゆる政策でデフレ脱却目指す=西村再生相 LIBOR停止はビッグイベント、円滑移行へ行動を−雨宮日銀副総裁 緩和度合い、日銀が突出 「影の金利」マイナス7.7% 欧米を大きく下回る 米金融当局、物価目標の達成手法巡り議論深める

日銀は必ず動くはずだが、一体何ができるのか
手詰まり感極まる中「次の一手」はどうなる?
小幡 績 : 慶應義塾大学大学院准教授2019年10月10日

黒田日銀総裁は、会見で明らかに次は動くというメッセージを打ち出した(撮影:大澤誠)
日本銀行は9月19日、金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定したが、次回10月末の決定会合では「経済・物価動向を改めて点検していく」と声明文で明確に打ち出した。黒田東彦総裁は、会合後の記者会見でも「海外経済のリスクは高まっている」「前回の会合よりも(追加緩和に)前向きだ」と発言し、明らかに次は動くというメッセージを打ち出した。

もちろん、ECB(欧州中央銀行)、やアメリカのFEDが動く中で、日本だけが動かなければ、外国為替市場を中心に催促相場的な脅しの円高、株安が起こることを恐れての発言だったという解釈はありうる。だが、そういう効果を狙いつつも、あそこまではっきりと断言すれば次は動かないと、それこそ期待を膨らませた市場は荒れ狂うことになるのは黒田総裁もわかっているはず。だから、10月は必ず政策変更があるだろう。

日銀は「4つの金融緩和手段」からどれを選択するのか
問題は、何をするか、である。何をするかはつねに問題なのだが、今回は何もすることがない、あるいは何もするべきではない、さらに言えば、やろうとしても何も実行可能なものがない、という大きな問題がある。だから「日銀はいったい次に何をしでかすのか?」が大問題になるのである。

公式見解は、日銀はつねに4つの金融緩和手段を持っている、ということになっている。黒田総裁も9月19日に繰り返し強調した。4つとは、改めて列挙すると、@短期金利の引き下げ、A長期金利の操作目標引き下げ、B資産買い入れ拡大、Cマネタリーベースの拡大ペース加速、になる。

まず、Cは絶対にない。2013年からの黒田緩和で最も激しくやり尽くしたものであり、かつ効果がないことが最もはっきりしたものだからだ。

次にBだが、これはありうるが、株式やJ-REITを日銀が買い集めることは、経済・社会にとっては最も副作用が大きい政策なので、望ましくない。日銀が上場株の多くを保有しすぎており、ガバナンスも問題になっている。

そもそも、中央銀行がリスク資産を持ち続けるということはありえず、国債のように満期もないことから、出口戦略が極めて難しいという問題がある。投資家という名の投機家たちはこれを求めているが、いつかは売却しなければならず、買えば上がると期待するなら、売る可能性は暴落をもたらすので、長期的には株式市場などにとっても非常に悪い政策である。

まさに、現在はこの罠にはまっており、買い入れは必要もないし、副作用はすでに大きいので、日銀としてもすぐにでもやめたいはずだ。だが、買い入れ量を減らす示唆だけで、短期的には暴落をもたらす恐れがあり、減らすことができないままでいる。したがって、これを増やす、というのはありえないだろう。

さらに副作用が大きいのは国債の買い入れである。実際、日銀自身が痛感している副作用はこれであろう。現在、80兆円残高増加をメドに買い入れ、という看板は下ろしていないが、実際の買い入れ額は年額20兆円増加ペースである。いわゆるステルステーパリングだが(実際は残高増加幅を減らしているので、テーパリングではないのだが)、その看板を100兆円に増やすことはありえない。

残された手段は2つのみだが…
したがって、残されたのは@の短期金利の引き下げか、Aの長期金利の操作目標引き下げしかない。実際、金融緩和政策というのは、要は長期金利を引き下げるために中央銀行が行う政策であり、国債の買い入れもまさにそれを直接的に行う、最も効果的な(最も弊害も大きい)ものである。

したがって、@かAの金利の引き下げが最もストレートな追加緩和策となるから、次回行われるとすればこの2つのどちらか、あるいは両方であろう。

しかし、Aは実効性がない。現在、10年物国債の金利0%程度を目標値とし、上下0.2%の変動は許容する、というのが、公式のスタンスであるが、実際の市場では、マイナス0.3%を超えても放置していたから、目標値を明示的に下げるとすると、マイナス0.5%ということになってしまう。だが、それはあまりに影響が大きく、マイナス0.2%を目標として、上下0.2%という変動幅はそのまま、というのが現実的にはありうる選択肢だろう。

問題は、この引き下げのメリットは実質的には何もないのに対し、デメリットは明らかに「触れる」ほどの被害を与えるということだ。現実にはこのところマイナス0.2%程度で推移しており、これをターゲットとして設定しなおしても投資も消費も何も増えない。

一方、地方銀行や運用者にとってみれば、長期債の金利は明示的にマイナスであるから、受託責任としても、これに投資するわけにはいかなくなる。したがって、長期債の運用は実質的に「禁止」されるのである。

実は、これが金融緩和の目的だ。国債から実物投資につながる融資へ資金をシフトさせることによって、需要を拡大するのである。しかし、これは、一連の黒田緩和では機能しなかった。アベノミクスは当初機能した、と思われているかもしれないが、最初から効果ゼロであった。

景気がよくなった理由は、国債から株へ資金がシフトし、株価が上昇したことによって、雰囲気がよくなり、富裕層がキャピタルゲインを高額消費に回したからである。つまり、通常の金融緩和による持続的な企業投資の支援にはなっていなかったのである。だからこそ、景気回復の実感がない、生産性が上がらないということがいわれたのである。

黒田緩和はすべて資産バブル経由の効果のみ
アベノミクス、黒田緩和はすべて資産バブル経由の効果であり、円安効果(短期には需要、会計上の企業収益にプラス、長期には日本経済全体にとってマイナス)だけだったのである。

したがって、黒田緩和で効果があったのは、異常な規模の国債買い入れによる株式、不動産市場への異常な安値を破壊するショック療法、および株式、リート買い入れによる資産価格の直接的な上昇、国債からの資金シフトによる間接的な資産価格上昇がほぼすべてだったのである。

黒田緩和は7年目を迎え、効果の持続は限界を迎えているが、そもそも当初から、通常の持続的な実体経済への金融緩和の効果は存在しなかったのである。それを今さら手段がほぼなくなってから効果を出そうとしても、無理に決まっている。

となると、最も伝統的な金融政策である短期金利の操作、今回は引き下げという、@になる。いわゆるマイナス金利の深掘りである。しかし、これは誰もが認識しているとおり、銀行が強く反対している。

2016年にマイナス金利を導入したときは、株価も下落し、大失敗といわれた。マイナス金利を解消するチャンスもわずかに1〜2回あったのだが、これを見送ったのは、引き締めと捉えられるのが怖くてできなかったのではないか、と思われる。となると、誰もがやめてほしいと思っている政策を、さらに悪化させる方向にやる意味はない。

以上のように、メリットのある緩和政策は1つもなく、どんな組み合わせにしようと負の影響しかないのである。

「アリバイ作りだけの政策」をやりかねない
しかし、今回の記者会見を見ると、黒田総裁は次回に何か絶対にやるようにしか見えない。となると、実施する政策は、どのような観点で選ぶのだろうか。

それは「最も効果がないものをやる」ということである。何かやらないといけないから、何かやる。要はやった、というアリバイ作りだけの政策である。それで、効果がゼロ、逆に言えば悪い影響も少なくて済むもの、意味のないものをやることになるだろう。

それは何か。論理的には何もない。八方ふさがりである。絶体絶命のピンチのときは、開き直って、基本に返るしかない。4つの政策の中で、伝統的な金融政策、リーマンショックが起こる前に世界で行われていた金融政策(2000年以降の日本の「革新的な」政策でなく)は、短期金利操作だけである。

つまり、@だけがオーソドックスな金融政策、本来の金融政策である。マイナス圏というのは普通ではないが、ゼロに絶対的な意味がなければ、既成概念だけを捨てれば、マイナス金利はそれほど異常な政策ではないのである。ただ、評判が悪いだけのことである。どうせ何をやっても評判が悪いのだから、最も基本に忠実な短期金利引き下げを日銀は選ぶと私は予想する。

実際、黒田総裁は9月19日の会見の中で、日銀の政策の自由度は確かに2%の金利のあるアメリカよりは少ないが、マイナス0.5%の欧州よりはある、と述べている。10月には日銀は、短期金利をマイナス0.2%まで下げるという決定をすると予想する。
https://toyokeizai.net/articles/-/307212

 
日銀利下げ期待急上昇 金利スワップ「10月会合で100%」も
2019/10/10 16:39日本経済新聞 電子版
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金融市場が織り込む日銀の利下げ期待が急上昇している。翌日物金利スワップ(OIS)から算出する市場が見込む日銀の10月の金融政策決定会合での利下げ期待が100%となった。もっとも10月の決定会合における追加緩和には懐疑的な見方もあり、実際の市場の利下げ期待と乖離(かいり)しているとの声が多い。

OISは一定期間の翌日物金利(変動金利)と固定金利を交換する取引のことで、将来の政策金利に対する市場の見…
 
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長期金利がマイナス圏、米金利低下と連動
2019/1/31 20:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50843130Q9A011C1EN2000/

LIBOR停止はビッグイベント、円滑移行へ行動を−雨宮日銀副総裁
伊藤純夫
2019年10月10日 10:24 JST
通貨スワップを通じ、ドルとの交換通貨に何らかの影響出る可能性
市場の機能度・流動性、金融政策の実効性に影響与える重要な要素
日本銀行の雨宮正佳副総裁は10日、都内で講演し、2021年末に実施される可能性が高まっているロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の公表停止を「グローバル金融史上のビッグイベント」と位置付け、幅広い金融主体が「代替金利指標への円滑な移行という共通の目的に向かって必要なアクションを起こしていかなければならない」と訴えた。

  雨宮副総裁は、世界で最も利用されている金利指標であるLIBORの公表が停止された場合、その影響は機関投資家や事業法人を含めた幅広い主体に及ぶ可能性があるとし、公表停止の重大性を認識することの重要性を指摘した。

  具体例として、通貨スワップで米ドルを調達している場合には、「米ドルLIBORからその代替金利指標への移行対応が必要になる」とし、これに伴って「ドルと交換する側の通貨も何らかの影響を受けるかもしれない」と語った。

  LIBORの公表停止に備えて日本では、日銀が事務局を務める検討会が対応策の検討を進めているほか、エクスポージャーの洗い出しが行われており、「問題意識は高まりつつある」という。

  また雨宮氏は、アジアの資本市場のさらなる発展には、中間所得層の増加に伴う投資信託や年金、保険など長期の投資資金の受け皿を含めた金融サービスの提供や、金融システムの強化に向けて「国内債券市場のさらなる育成を図り、アジア企業の資金調達手段の多様化・分散化を進めることが重要」と指摘。

  その上で、「金融政策のツールに関わる市場の機能度・流動性は、金融政策の実効性に影響を与える重要な要素」とし、「レポ取引を含む短期金融市場や国内債券市場の機能度・流動性の改善に向けた取り組みを強化していくことが、金融政策のさらなる実効性の向上につながる」と語った。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-10/PZ3P69T1UM0Z01

 

トップニュース2019年10月10日 / 12:19 / 6時間前更新
政府・日銀連携し、あらゆる政策でデフレ脱却目指す=西村再生相
Reuters Staff
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[東京 10日 ロイター] - 西村康稔経済再生相は10日の衆院予算委員会で、引き続き政府・日銀で連携しあらゆる政策でデフレ脱却を目指すと改めて強調した。井野俊郎(自民)委員への答弁。

西村再生相は「アベノミクスの3本の矢によりデフレではない状態を作り出すことができた」と述べ、具体例として消費者物価指数で基調的な動きを表すコアコア指数(生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数)が26年連続プラスであることを示した。もっともデフレから脱却したと判断するには「デフレに戻る恐れがないことを確認する必要がある」と指摘した。
https://jp.reuters.com/article/boj-policy-nishimura-idJPKBN1WP0AV


 
緩和度合い、日銀が突出 「影の金利」マイナス7.7%
欧米を大きく下回る
経済
2019/10/8 23:00日本経済新聞 電子版
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すでに金融緩和に動いている欧米よりも、いまだ追加策を講じていない日本の方が緩和の度合いが突出して強い――。量的緩和など非伝統的な緩和策の効果を政策金利の引き下げに置き換えて示す「影の金利」で比べると、そんな現状が浮かぶ。ある試算では日銀はマイナス7%台となり、欧米を大きく下回った。異次元緩和が長期化し、すでに追加緩和の余地が狭まっている日銀の実情が鮮明となっている。

「過去6年半をみてほしい」。…

追加緩和への布石?日銀、資金供給の鈍化鮮明 拡大方針との整合性に関心
編集委員 清水功哉
2019/10/9 22:00日本経済新聞 電子版
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日銀の資金供給量(マネタリーベース、平残)の伸び鈍化が鮮明だ。9月の増加率は前年比約3%で1年前の半分程度。5割以上、増えていたピーク時との差は大きい。国債購入を絞ったことが背景だ。物価上昇率が安定的に2%を超えるまで資金供給の「拡大方針」を続けるという日銀の約束との関係に関心が集まるが、実は追加金融緩和への布石だと深読みする向きもある。

マネタリーベースは日銀が国債買い入れなどの見返りに供給し…

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50766720Y9A001C1EE8000/

米金融当局、物価目標の達成手法巡り議論深める−FOMC議事要旨
Craig Torres、Catarina Saraiva
2019年10月10日 13:00 JST
• 「インフレの埋め合わせ戦略」と「目標レンジ」が2大焦点に
• 将来の当局者を縛るような約束をすることには懸念の声上がる
米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、将来の金融当局者の行動を縛ってしまうような約束を現時点ですることが果たしてできるのだろうか。
  最大限の雇用と物価安定という目標の実現に向けた最善の方策を当局者が検討するのに当たり、この質問は極めて重要な意味を持つ。9日に発表された9月17、18両日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、当局者が真剣な議論を交わしていることが示された。

パウエル議長(10月8日、コロラド州デンバー)
Photographer: Daniel Brenner/Bloomberg
  議論の中心に据えられているのは、パウエルFRB議長が「インフレの埋め合わせ戦略」と呼ぶものだ。
  具体的には、インフレ率が2%の当局目標を下回って長期間推移した場合、2%を上回るインフレとなってもしばらく容認することを約束するもので、逆に当局目標を上回るインフレが続けば、その後は2%を下回ってもしばらく容認することになる。
  しかし、これには1つの大きな問題がある。金融当局が実際にこの公約を果たそうとするときに、パウエル氏はもはや議長でなくなっているかもしれないという点だ。
  9日発表の議事要旨によれば、当局者は2つの選択肢を話し合った。その1つは2%のインフレ目標の上下にレンジを設けることで、もう1つは埋め合わせ戦略を使って平均でインフレ目標の達成を目指すものだ。
  FRBスタッフはモデルシミュレーションを用い、埋め合わせ戦略のさまざまな特性を当局者に説明してみたが、その結果には懐疑的な意見も示されたという。
  「多くのFOMC参加者は、スタッフが分析した埋め合わせ戦略に慎重な姿勢を示した」と議事要旨は記述。この枠組みでは金融当局の政策面の柔軟性についてあまりにも多くを犠牲にし、「このようなコミットメントを将来の当局者が実行するのは難しいかもしれない」との懸念の声が一部の当局者から上がったとしている。
  一方で、時間をかけて平均で2%のインフレ目標を実現する戦略には広範な支持がある様子で、これが最善の方法である可能性に大半の参加者はオープンな姿勢だったという。
  さらに、幾人かの参加者はインフレ目標レンジ設定のアイデアに支持を表明し、2%をやや上回る数値を目標レンジの中間点とするか、2%をレンジ下限とする政策を検討することに2、3人の参加者は前向きだった。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iNzkZQX6Eri0/v2/-1x-1.png
  クラリダFRB副議長とニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁はいずれも、埋め合わせ戦略の長所について話すと同時に、その短所も認めている。平均でインフレ目標を達成しようとする場合、2%を上回る期間が続いた後には金融引き締め策が求められるだろうが、将来、その時点の経済情勢次第では別の政策対応が必要とされるかもしれない。
  リッチモンド連銀のバーキン総裁は9月26日、埋め合わせ戦略について記者団から問われたのに対し、「心配な点がある。ささやかな成果を追求して過度に手を加えようとしても、首尾良くやるのは至難の業だ」と述べた。
  当局の現行のアプローチでは、2%のインフレ目標未達でも不問に付している。
  9月のFOMCでは、政策について将来の当局者を縛ることになるような約束をすることに幾人かの当局者が懸念を示した。スタッフの分析でも、こうした戦略が利益をもたらすかどうかは民間セクターの理解のほか、将来の当局者がどのようにそれを実行していくかに左右される点を強調した。 
原題:Fed Officials Getting Serious About Strategies for Low Inflation(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-10/PZ3LYQ6K50XS01?srnd=cojp-v2

 

レバレッジドローン4兆円相当の価値が急落−センチメント転換か
Katherine Doherty
2019年10月10日 14:18 JST
約400億ドル(約4兆3000億円)相当のレバレッジドローン債権が、価値を大きく下げている。
  ブルームバーグがまとめたデータによると、50社余りの企業向けローン債権は、3カ月の間に額面の少なくとも10ポイント相当の価値が失われた。さらに大きく値下がりしたローンもあり、貸し手がローン債権を売ろうとした場合、額面の3分の2を回収できれば幸運という状況だ。
  景気が減速する中で、プライベートエクイティ(PE、未公開株)取引や配当支払いなどのために巨額の借り入れを行った企業に対し、貸し手と格付け会社が忍耐を失い、エネルギーやヘルスケア、通信などさまざまな業界の企業向けローン債権の価値が下がった。
  ジェネリック(後発医薬品)メーカー、アムニール・ファーマシューティカルズの2025年満期のローン27億ドル相当の価値は8日時点で、額面1ドルに対し約80セントとなった。シードリル・オペレーティングのローンは同約53セント。

  ジャンク級のレバレッジドローン市場が本格的に崩れているというわけではないが、リセッション(景気後退)観測を背景に投資家が信用のない企業を敬遠する状況で、センチメントの転換、恐らくは潜在的な市場リスクを反映するものといえる。
  イートン・バンス・マネジメントの銀行ローン担当共同ディレクター、 アンドルー・スビーン氏は、「投資家は良好なパフォーマンスのローンを望んでおり、リスクを冒すことに慎重になっている」と述べた。

原題:A $40 Billion Pile of Leveraged Loans Is Battered by Big Losses(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-10/PZ54DM6K50XY01?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/347.html

[戦争b22] もはや米国を凌ぐ中国「サイバー攻撃」の猛威 ここ20年間で中国が最も力を入れてきた対外政策
もはや米国を凌ぐ中国「サイバー攻撃」の猛威 ここ20年間で中国が最も力を入れてきた対外政策
2019.10.10(木)
新潮社フォーサイト
中国?安全保障


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米司法省は2018年12月、中国政府と繋がりがあるハッカー2人を起訴した(写真:AP/アフロ)
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(文:山田敏弘)

 米国のあるインフラ関連企業に2019年7月、「エンジニア調査の基礎」という電子メールが届いた。

 送信者は、エンジニア関連の試験や免許を管理する「エンジニアリングと測量における全米工学測量学試験委員会(NCEES)」という実在の非営利団体。インフラ業者にしてみれば、特に疑うことなく開封してしまうメールだった。

 問題は添付されていた文書ファイルにあった。ファイルを開けると、パソコン内の情報などが盗まれてしまう仕組みになっていた。つまり、NCEESからのメールは、送信者を詐称した「フィッシングメール」と呼ばれるサイバー攻撃だったのである。

 調査の結果、この攻撃を行ったのは、中国の国家安全部のハッカーたちだったことが判明。この攻撃者らは「APT10」と呼ばれる中国政府系ハッカー集団で、米国のインフラへの侵入を狙った攻撃の一環だったと分析されている。

 実はこの集団、6月にもニュースを賑わせていた。世界各地の携帯通信会社10社にハッキングで入り込んで、中国とつながりのある軍人や反体制派である特定個人のコミュニケーションや通信データなどを盗もうとしていたのだ。それが、欧米のセキュリティ会社によって明らかにされた。

 APT10は、2006年から中国国家安全部の指示のもと、世界各地の政府機関や民間企業をサイバー攻撃してきた。おそらく目的は、中国の公安案件に関わる情報収集だったと考えられる。

 この事例のように、中国政府はこれまで、長年にわたって世界中でサイバー攻撃を実施してきた。中国共産党政権が誕生してから10月1日で70周年になるが、ここ約20年間で中国が最も力を入れてきた対外政策の1つは、間違いなくサイバー攻撃だと言える。

「中国政府のサイバー組織は、その規模をどんどん拡大している」と言うのは、さる欧米の情報機関関係者だ。「中国共産党にとってサイバー攻撃やハッキングは、国家の政策としても、軍事的にも経済的にも、非常に重要な要素となっている」

 そこで、中国の今を知る上で欠かせないサイバー政策の実態を紐解いてみたい。


台湾はサイバー攻撃の「実験場」
 中国のサイバー部隊について知るには、まず台湾での状況を見てみるといい。

 言うまでもなく、中国は台湾と非常にセンシティブな関係にあり、中国政府は、独立志向の強い台湾に対して常に鋭い目で牽制している。さらに、激しいサイバー攻撃を繰り返してきた歴史があり、それは今も続いている。

 台湾でサイバーセキュリティを担当する台湾行政院(内閣)の資通安全処(情報通信安全局=サイバーセキュリティ局)を率いる簡宏偉・局長は、筆者の取材に、「中国は、台湾をサイバー攻撃の実験場所とみなしている」と語った。つまり、中国は台湾に躊躇なくサイバー攻撃を行い、攻撃方法を試している節すらあると言う。毎月、中国から400万件ほどのサイバー攻撃を浴びているらしい。


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 台湾でサイバーセキュリティを語る際に今でも必ず話題になる事案がある。2008年に発生した大々的なサイバー攻撃である。30以上にも及ぶ台湾政府の関連機関が激しいサイバー攻撃を受け、多くが内部情報を盗まれるという事態になった。政府が管理していた個人情報のデジタルデータが盗まれたことが判明し、その数は台湾市民2200万人のうち実に半数以上の1500万人分にのぼった。中には、政府高官や首脳などの住所やネット検索履歴など、かなりの個人情報が含まれていた。

 犯人は、中国人民解放軍のハッカーたちだったことが明らかになっている。

「中国政府系ハッカーは驚くほど優れている」
 先の簡局長は、「中国は特に政府や軍の機密情報を求めている。高官が政治的に何を考えているのかを知りたいからだ。そうした情報を参考にして対台湾政策を決め、台湾市民を親中にするべくサイバー攻撃などで世論を操作するといった工作も行っている」と言う。

 台湾でサイバーセキュリティ企業を経営する知人は筆者に、「中国の政府系ハッカーらは、一般のビジネスパーソンのように9時〜5時など交代制で働き、しっかりと休暇もとっている」と言って苦笑する。「ただ」と、この人物は続ける。「中国政府系ハッカーの能力は非常に高く、驚くほど優れている。人員も多く、予算も豊富。こちらが攻撃に対処をしても、それを上回る技術で攻撃してくるのです」


 中国によるサイバー攻撃の最大の特徴は、「APT(持続的標的型攻撃)」と呼ばれるもので、犯行がバレないように持続的に標的のネットワークに潜伏し、十分に情報を盗み出す。1日、2日で攻撃するのではなく、攻撃されている側も気づかないように時間をかけて周到に攻撃する。もちろん、今のうちから敵国のインフラなどにも侵入し、有事の際に破壊工作を行う準備も実施していると見られているが、それでも中国ハッカーらの狙いは、主に先進国の政府や軍事における機密情報、または民間企業の知的財産である。

 もう1つの特徴は、中国共産党と軍、そして民間の企業が手を組んでいると指摘されていることだ。要するに、軍のサイバー部隊が共産党の指示で国外から知的財産などを盗み、中国国内の企業に横流ししていると米政府関係者などは見ているのである。

軍事技術を盗む目的でサイバー攻撃
 そんな中国政府のサイバー攻撃には歴史がある。人民解放軍は、早くからサイバー攻撃の重要性に気が付いていた。1998年には北京の国防大学でサイバー戦について講義していた記録が残されているくらいだ。

 1997年には、共産党中央軍事委員会が早々とサイバー分野のエリート組織の設置を決定している。同時期、中国が国外で不当に扱われていると怒る民間の「愛国ハッカー」と呼ばれる人たちが、日本や東南アジアへのサイバー攻撃を仕掛けるようになる。日本の閣僚が靖国神社に参拝すると、省庁をサイバー攻撃が襲うようになったのもこの頃だ。

 2000年には、150万ドルの予算で「ネット・フォース」と呼ばれるサイバー攻撃部隊を立ち上げ、国外へのサイバー攻撃を本格化させた。

 そして2003年に「タイタン・レイン」と呼ばれる大規模なサイバー攻撃を実施し、中国政府系ハッカーらが2年以上にわたって米陸軍航空ミサイル軍の駐屯するアラバマ州のレッドストーン兵器廠、防衛情報システム局、ミサイル防衛局、陸軍情報システム・エンジニアリング司令部、海軍海洋システムズセンターなどへ、軍事技術を盗む目的でサイバー攻撃を行っている。

 その後も米国を中心に、世界中で数限りないサイバー攻撃を繰り広げている。

中国系企業の台頭を下支え
 例えば、グーグルすら標的になった。NSA(米国家安全保障局)の元幹部であるジョエル・ブレナーは、「グーグルの魔法のような技術である(検索エンジンの)ソースコードが中国に盗まれてしまっている」と筆者に語った。


 米『ニューヨーク・タイムズ』のサイバー担当記者であるデービッド・サンガーも、中国政府はその「知的財産」を民間に横流しし、今となっては中国最大の検索エンジンとなった「百度(バイドゥ)」の台頭を手助けしたと述べている。

 中国政府が軍に実施させているサイバー攻撃が、中国系企業の世界での台頭を下支えしてきた部分もあるというのである。そういうことなら、大国を目指す中国共産党にとって、ハッキングなどが重要な要素だったというのも頷ける。

 最近では、2015年に「米連邦人事管理局(OPM)」が持つ連邦職員2210万人分の個人情報を盗み、米軍が誇る高性能戦闘機の設計図までもハッキングで手に入れたと指摘されている。2018年6月に米海軍の契約企業から莫大な機密情報を盗んでいたことも判明した。

 さらに、NSAの精鋭ハッカーらが作っているサイバー攻撃兵器(米国では通常兵器と同様に扱われている)にも狙いを定めて、いくつも盗み出すことに成功しているとの報告もある。NSAといえば、世界最強の能力を誇る米国のサイバー攻撃を技術的に担っている組織だ。

軍事費の2割以上をサイバー攻撃に
 では、これほどの恐るべき成果をあげている中国のサイバー部隊とは、一体どんな組織なのか。もともと、人民解放軍総参謀部の第3部と第4部がサイバー工作を担ってきた。そして第3部は、対象国などによって12の局に分けられていた。

 日本と韓国を担当するのは山東省青島市に拠点を置く第3部4局で、最重要部隊である米国担当は、第3部2局。この集団は別名「61398部隊」としても知られている。これらの部隊が世界中で暗躍していたのだ。

 転機が訪れたのは、2014年のことだ。米政府が同年、民間のセキュリティ企業などとともに、61398部隊の存在や所在地など詳細な情報を暴露し、サイバー部隊員5人を起訴したのである。この後、中国のサイバー部隊は大規模な再編を余儀なくされた。

 日本の警視庁に当たる台湾の内政部警政署でサイバー捜査員を務めた人物によれば、「中国政府は人民解放軍戦略支援部隊(SSF)を創設し、サイバー攻撃によるスパイ工作からプロパガンダ、軍事的なサイバー破壊工作まで、中国のサイバー戦略を包括的に取りまとめることになった」という。

 先に登場した資通安全処の簡局長による説明では、SSFの中でもサイバー攻撃に特化している組織は、「サイバー・コー(サイバー部隊)」と呼ばれている。その規模は、軍のサイバー兵士が7万人ほどで、民間から協力しているハッカーらが15万人ほどになるという。軍総参謀部の第3部もサイバー・コーに組み込まれており、簡局長は「中国のサイバー部隊は今、米国のサイバー軍よりも大きくなっている」とも語っている。


 前出の欧米情報機関関係者は、「今、中国は軍事費の20%以上をサイバー分野に当てているとも見られている。サイバー攻撃部隊の体制は、数百万人規模に膨れ上がっており、官民合わせた巨大な『勢力』となっている」と語る。

 最近では、冒頭のケースのように、国家安全部もハッキングに関与しているという。もはや国家を挙げた工作活動になっていると言える。

「一帯一路」とファーウェイの関係
 こうした実働部隊に加え、もう1つ、政府が実施してきたのが世界中でインターネットなどの通信インフラを支配しようとする取り組みだ。そこで鍵となるのが、「華為技術(ファーウェイ)」のような通信機器企業だ。

 習近平国家主席は2015年に「中国製造2025」を提唱し、中国を世界の工場から技術国家にする、とぶち上げた。ファーウェイはこの計画にとって重要な企業とみなされ、莫大な融資や補助金など中国政府の後押しを受けて、世界市場で安価な製品を提供してきた。

 米国としては、この「中国製造2025」は、米国の目を覚まさせる「Wake up Call(警鐘)」となった。それまでうまくコントロールできると思っていた中国に初めて脅威を感じたのである。

 ファーウェイは、米政府も力を入れ始めた次世代の通信規格である5G(第5世代移動通信システム)のインフラシェアにおいて、世界第1位に上り詰めるまでになった。中国政府は、国策として取り組んでいる現代版のシルクロード経済圏構想「一帯一路」の進路上にある国々にも、ファーウェイや中国企業を売り出しながら、5Gの通信インフラなどを提供して、独自の情報通信網を築こうと画策している――そんな現実も米国は目の当たりにする。

 そこで米国は、ファーウェイは通信インフラを拡大させることで、世界中から個人情報や知的財産などをスパイして情報を盗むことになると警告。米政府は2000年代後半からファーウェイに警戒してきた歴史があるが、2018年に「国防権限法」で政府機関からファーウェイを締め出し、2019年になるとドナルド・トランプ大統領の大統領令と、商務省の「エンティティ・リスト(ブラックリスト)」入りで、米国の企業との取引を完全に禁じたのである。

 こうした措置により、米ソフトウェアなどの製品に頼ってきたファーウェイは、どんな強がりを見せていても限界が見え始めている。


 しかし、それでもまだ米国は、ファーウェイが「一帯一路」に絡んで光ケーブル網を広げていることに憂慮している。

 ファーウェイは、子会社である「ファーウェイ・マリーン」という海底ケーブルの企業を介して、「一帯一路」の「一路」の部分である「海」の支配を目指す政府の画策の一翼をも担っている。

 海底ケーブルとは、通信容量が非常に大きく遅延も少ない光ケーブルのことで、大陸間などの国際通信の99%を担っている。

 ファーウェイ・マリーンはシェアこそ大きくないが、国同士をつなげるネットワークのインフラを「一帯一路」の国々などに安価に提供し、着々と陸(一帯)と海(一路)にケーブル網を広げている。米関係者は、そこからも情報が抜かれるとの懸念を強めている。

「サイバー空間の壁」ができる?
 米中貿易戦争が激化するなか、ファーウェイのビジネスはこれまで以上に「一帯一路」と「親中国」に向くことになる。そうなると、インターネットや通信のインフラが、「米国寄り」と「中国寄り」に分断されることになるとも指摘されている。下手すれば、有事の際には、「米国寄り」の国々は、「中国寄り」の情報や通信、ネットワークにはアクセスできないという事態も起きるかもしれない。

 インターネット利用に関しても、「西」側と「東」側との間で、規制などによる大きな壁ができる可能性すらある。ベルリンの壁ならぬ、「サイバー空間の壁」とでも言おうか。これは陰謀論でもなんでもない。

 年々、サイバー攻撃の能力を高め、国の補助金などを受けて世界の通信インフラを支配しようとする中国。サイバー空間における中国の台頭はすぐに止まることはないだろう。


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山田敏弘
ジャーナリスト、ノンフィクション作家、翻訳家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版などを経て、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のフルブライト研究員として国際情勢やサイバー安全保障の研究・取材活動に従事。帰国後の2016年からフリーとして、国際情勢全般、サイバー安全保障、テロリズム、米政治・外交・カルチャーなどについて取材し、連載など多数。テレビやラジオでも解説を行う。訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文芸春秋)など多数ある。

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 米大手格付け会社「ムーディーズ」の子会社で経済情報を扱う「ムーディーズ・アナリティックス」は、少なくとも2011年からハッカーの侵入を受けていた。

 狙われたのは、同社に所属する著名なエコノミストの電子メールアカウント。このエコノミストは大手メディアなどにも頻繁に登場するほどよく知られた人物であり、彼の元には極秘の経済情報や分析が日々集まっていた。そこでハッカーは、彼のアカウントに不正アクセスし、そこに届くメールがすべて自分の設置した別のアカウントに転送されるようルールを設定していた。

 ハッカーが最初にこのエコノミストのアカウントに不正アクセスを成功させた手口は、ほかのサイバー攻撃でもよく見られる平凡なものだった。「スピアフィッシング・メール」(特定のターゲットを狙って上司や取引先などを装うメール)を送りつけ、添付ファイルを開いたり、メール内のリンクをクリックさせたりすることで、不正アクセスを可能にするマルウェア(不正プログラム)に感染させたと見られている。

 そうしてエコノミストのメールをずっと盗み取っていた――。

謎の組織「イントルージョン・トゥルース」
 米司法省は2017年11月27日、このムーディーズの事件と、さらに別のハッキング事案2件について、犯人の起訴を発表。犯人とされる中国人ハッカー3人の名前などを公開した。ムーディーズ以外の2件でサイバー攻撃の対象になった企業は、世界的に幅広い事業を手掛ける独「シーメンス」と、全地球航法衛星システム(GNSS)の開発を行っている米「トリンブル」だった。告発された中国人3人は、中国広東省のダミー会社を隠れ蓑にしてハッキングを行っており、この会社は中国の情報機関である「国家安全部」と繋がりがあったという。

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Benjamin Robertson
2019年10月10日 13:00 JST
米プライベートエクイティー(PE、 未公開株)投資会社ブラックストーン・グループの共同創業者であるスティーブン・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)は、米国の今の政治情勢について、「内戦前夜」といえるほど過熱し、分裂した状態にあるとの認識を示した。

  シュワルツマンCEOはブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「われわれは明らかにある種異常な局面、物事で人々を合意させることに伴う非常に大きな困難を経験しつつある」と発言。現在の論争の「敵対的な特質」は、「政治において人々が文民的ですらなかった」南北戦争直前の1850年代を思い起こさせると語った。

ブラックストーン・グループの共同創業者スティーブン・シュワルツマン氏

出典:Bloomberg)
原題:Schwarzman Says U.S. Political Battles Recall Pre-Civil War Era(抜粋)


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-10/PZ4ZPD6KLVR401?srnd=cojp-v2

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米議会の弾劾調査協力拒否
バイデン氏の「中国疑惑」取り上げる
 米国のドナルド・トランプ大統領とジョー・バイデン前副大統領による「ウクライナゲート疑惑」は、今度は中国まで巻き込み、泥沼化している。

「ウクライナゲート疑惑」を暴露した米中央情報機関(CIA)職員に次いで「第2の内部告発者」の可能性が高まってきた。

 その最中、黙っていられぬトランプ大統領は、10月8日、米議会による弾劾調査への協力を全面的に拒否すると通告した。

 米下院各委員会がトランプ政権高官たちに対して出した召喚要求や関連文書提出を一切退けたのだ。

 トランプ大統領はその一方で米議会に対し、バイデン前副大統領の「中国疑惑」も調査せよと言い出している。

 トランプ氏特有の「目には目を、歯には歯を」戦術だ。

「米議会はバイデン氏が副大統領時代に息子*1と一緒に中国でやっていた不当な利益漁りも捜査すべきだ」

「中国で(バイデン親子が)やっていたことはウクライナ(でやっていたこと)と同じくらい悪い。中国はバイデン親子を捜査すべきだ」

*1=バイデン氏の息子、ハンター氏は2001年に法律事務所兼ロビーイスト会社を設立。同社パートナーとしてウクライナの電気会社だけでなく、中国政府が設立した合弁投資ファンド「渤海華美」にも投資。同氏は同社の役員も兼務。同社は新疆ウイグル自治区のイスラム教徒住民監視に使用されている顔認証プラットフォームにも投資している。同氏は若い頃にアル中、麻薬中毒、義姉との不倫などを引き起こし、バイデン氏の「アキレス腱」と見られている。

 トランプ氏はバイデン親子が中国で何をしたのかについては言及はしていない。しかしトランプ氏は大統領だ。根も葉もない情報を元に言い出しているわけでもあるまい。

 トランプ氏のこの戦術は早くも功を奏している。

 民主党大統領指名争いではトップを走ってきたバイデン氏の支持率は降下し始めている。

グラハム師が支持の説教ツアー…
グラハム師が支持の説教ツアー
「トランプ大統領、危うし」と見て取ったトランプ応援団のエバンジェリカルズが動き出している。

 2016年の大統領選でトランプ氏を大統領に押し上げた宗教右翼「エバンジェリカルズ」を率いる牧師たちが中西部、南部を中心にトランプ支持キャンペーンを始めている。

 著名な保守派テレビ伝道師で「トランプ氏の祈祷師」とも言われているフランクリン・グラハム師*2は10月2日から10日間ノースカロライナ州でバスツアー伝道を展開、7か所で説教を続けている。

*2=フランクリン師の父親は米国の最も著名なキリスト教伝道師のビリー・グラハム師。昨年他界。歴代大統領の相談相手となっていた。

 父親があくまでも福音主義を説いたのに対して、フランクリン氏は保守的な政治色が極めて強く、反同性愛主義や反イスラム教主義を全面に押し出してきた。

 10月2日に同州グリーンビルで開かれた集会には1万3800人のエバンジェリカルズが結集し、トランプ大統領のために祈祷した。

「アメリカの決断」(Decision America)と銘打ったキャンペーンのスローガンは、単純明快だ。

「我々はトランプ大統領を守るための第一線に立とうではないか」

 ツアーに同行取材したAP通信のエレナ・ショア記者との単独インタビューでグラハム師はこう語っている。

「万一トランプ大統領が弾劾されるようなことがあれば、この国は崩壊するだろう。政治家たちは(弾劾などよりも)移民問題とか貿易問題といったアジェンダに集中すべきた」

「バイデン氏も疑惑の渦中にいるようだが、彼の疑惑についても調べる価値はあるだろう」

「私の父は『政治家には注意せよ。政治家はお前を利用することばかり考えているからだ』と言われた」

「私がトランプ大統領を評価するのは彼は政治家ではないことだ。彼は政治家ではないから常にトラブルに見舞われている」

「我々はトランプ大統領を守る先兵」…「我々はトランプ大統領を守る先兵」
 エバンジェリカルズはどうしてトランプ大統領を支持するのか。生の声はこうだ。

 集会に参加したクリスティン・ジョーンズさん(44)は前述のショア記者にこう答えている。

「トランプ大統領はキリスト教の理念を守り続けているからよ。彼はそのためにベストを尽くしているわ。たとえみんなに叩かれていても」

「私はトランプ大統領を守るためにその先兵になるつもりよ」

 中年男性のフランシス・ラッセターさん(66)はこうコメントしている。

「(民主党が党利党略でやっている弾劾騒ぎは)トランプ大統領を引きずり降ろすことを狙ったガラクタだよ」

「ここまで来たら(共和党対民主党の)内戦が起こるかだって? こればかりは分からんね。しかし、おぞましいことだ」

 米国の白人エバンジェリカルズは9300万人。ピュウ・リサーチ・センターの世論調査(2019年8月現在)によれば、このうち81%、つまり7533万人がトランプ大統領の政治を支持している。

 大統領就任当初の支持率は78%だったからあれから3年ほとんど変わっていない。

 米国のクリスチャンはプロテスタント、カトリックを合わせて人口の75%(2015年)。そのうち自らがエバンジェリカルズと答えている白人は25.4%に上る。

 エバンジェリカルズという一つの宗派はなく、主流プロテスタント各宗派にクロスオーバーしている。それでもバプテスト・ファミリー派、南部バプテスト派に一番多い。

ペンス副大統領もポンペオ国務長官も…
ペンス副大統領もポンペオ国務長官も
 トランプ大統領は自称長老派だが、エバンジェリカルズではない。しかし今や超側近の一人になっているマイク・ポンペオ国務長官は長老派エバンジェリカルズだ。

 牧師代行の資格ももっており、日曜学校で教えていたこともある。説教ではこう言い切っている。

「政治家の闘争とは『推挙』(The Rapture)*3の瞬間まで終わることはない」

*3=『推挙』とはキリスト再臨の時にキリスト教徒は不死の体になり、空間に引き上げられ、キリストに会う出来事をいう。前千年王国論者や天啓史観論者の間で信じられている。

 旧教のカトリック教徒の中にもエバンジェリカルズはいる。いい例がマイク・ペンス副大統領だ。

「ボーンアゲイン」(宗教経験で信仰を新たにしたクリスチャン)のエバンジェリカルズ・カトリック教徒だ。

 トランプ氏は2人のエバンジェリカルズに守られているのだ。これもエバンジェリカルズがトランプ支持の岩盤になっている理由の一つといえる。

「Moral Majority」転じて …
「Moral Majority」転じて
「Immoral Majority」に
 そのエバンジェリカルズが台頭したのは1970年代末だ。

 保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」を創設した政治活動家、ポール・ワィリック氏とカリスマ的テレビ伝道師のジェリー・ファルウエル師(冒頭の写真のジェリー・ファルウエル氏の父親。すでに他界)と結成したのが「Moral Majority」だった。

 キリスト教の伝統的な価値観が衰退しているという危機感が2人を動かした。ファルウエル師のカリスマ力によって当初は2年間で350万人の信徒を獲得してしまった。

「Moral Majority」とは、「厳しい道徳観を持った大多数の大衆」。

 民主党の大統領だったビル・クリントン氏の不倫などに厳しい目を向け、世俗化する民主党に対抗する共和党をバックアップする政治勢力だった。

 今回紹介する新著『The Immoral Majority: Why Evangelicals Chose Political Power over Christian Values』の著者、ベン・ハウ氏は正真正銘のエバンジェリカルズの一人だった。


The Immoral Majority: Why Evangelicals Chose Political Power over Christian Values by Ben Howe Broadsite Books, 2019
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 すでに高い評価を得ている作家兼映画制作者である。同氏は本の中でこう記している。

「Moral Majorityの中核的存在だったエバンジェリカルズはどうなったのか。モラルや信仰心はどうなってしまったのか」

「トランプ氏は言ってみれば、伝統的キリスト教理念とか信仰心とは全く無縁。しかも異常なほどの女性遍歴、セクハラ疑惑や疑惑もみ消しを繰り返してきた」

「そのトランプ氏が大統領選に立候補し、あれよあれよという間に共和党予備選では他候補を押さえてしまった」

「トランプ氏の大躍進を支援したのはほかならぬ南部、中西部のエバンジェリカルズだった」

 著者は、彼らを「Immoral Majo…
 著者は、彼らを「Immoral Majority」、つまり「モラルに目をつぶり道義に反した多数の大衆」と皮肉ったのである。

 なぜ、信仰の厚いはずのエバンジェリカルズがトランプ氏を大統領として支援したのか――。著者はこう分析している。

「その理由は多岐にわたっている。一つは経済だ」

「南部、中西部の非都市圏に住む中産階層やその下の層の白人エバンジェリカルズはバラク・オバマ政権の8年間で失業や倒産に見舞われ、自分たちは経済的な恩恵を受けない『忘れ去れた存在』と考えた」

「第2は、聖書に書かれている聖句を一字一句信じるエバンジェリカルズにとって米国が向かう方向は、キリスト教の教えとは異なる方向に進んでいると感じ取ったことだ」

「人工中絶しかり、同性愛しかり。神のみ手によって創造され、支配されているこの世界が人間によって誤った方向に向かっていると信じている」

「地球温暖化を信じないエバンジェリカルズは64%。すべては神が支配する自然現象と考えている。不確かな科学的根拠で地球温暖化を問題にするのは誤りだと考えているのだ」

「大統領選予備選が始まった時、彼らはトランプ氏の主張する温暖化否定に飛びついた。さらに人工中絶反対、同性愛反対を唱えるトランプ氏を支持した」

 著者はエバンジェリカルズのこうした深層心理についてこう指摘している。

スターリンより左翼を嫌う…
「建前のモラル尊重よりも神のご意志を現世で実現するトランプ氏を指導者に選んだ。彼らは二値選択を好んだ。他の候補がトランプ氏のモラル観を批判すると、お前こそどうなんだ。偽善者が何を言うか、と反駁した」

「神様を一つの小部屋に収める一方で、実際の政治をもう一つの小部屋に入れたのだ」

「トランプ氏の政策をテレビやSNSが伝え、政治的分裂が起これば起こるほどエバンジェリカルズはトランプ氏の肩を持った。まさにWhataboutism(そっちこそどうなんだ主義)だった」

「本選挙でトランプ氏と争ったヒラリー・クリントン氏には夫ビル氏の不倫、浮気、欺瞞がつきまとって離れなかった」

「ヒラリー氏へのエバンジェリカルズの嫌悪感は反東部エリート観、反民主党観へと燃え移った」

スターリンより左翼を嫌う
「ジ・アトランティック」のピーター・ウィナー記者はエバンジェリカルズの反東部エリート(反西部エリートも含まれる)意識についてこう指摘している。

「エバンジェリカルズの生きるか死ぬかの闘争(Existential struggle)における邪悪な敵はロシアでもなければ、北朝鮮やイランでもなかった」

「彼らの真の敵は東部エリートをはじめとするリベラル派であり、左翼だった」

「私がエバンジェリカルズを取材してしばしば聞いた彼らの左翼に対する罵りや憤りはちょうどスターリン政権に対するものと相通するものがあった」

https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2019/07/evangelical-christians-ace-deepening-crisis/593353/

 そこまで東部エリートや民主党リベラル派を…
 そこまで東部エリートや民主党リベラル派を忌み嫌い、トランプ大統領を守り抜こうとするエバンジェリカルズ。

 妥協を許さぬエバンジェリカルズの生きるか死ぬかの闘争劇がここにある。

「分裂国家」を収拾する手立てはあるのか。

『ニューヨーク・タイムズ』の著名な保守派コラムニスト、デイビッド・ブルックス記者が興味深い一文を書いている。

「Urban Guy」(都会エリートの男)と「Flyover Man」(中西部の田舎者)との会話を想像して、問題の核心を突いている。

都会の男:「中西部に住む白人の被害者意識は耳にタコができるほど聞いた。それより弾劾の話をしようじゃないか」

中西部の男:「もしお前さんが俺の悩みを聞いてくれて、(弾劾を支持する)上院の共和党議員たちが(トランプ大統領に代わる)俺たちの喋る英語で俺たちの悩みを語ってくれる共和党大統領候補を見つけ出し、どうしようもない民主党を粉砕してくれれば、俺は(トランプ大統領の)弾劾についてはオープンになれるね」

「それ以外に弾劾なんてまっぴらだ。弾劾を阻止することは俺たちのアイデンティの証明であり、プライドなのだ」

https://www.nytimes.com/2019/10/03/opinion/trump-voters.html

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離反しだした韓国と米国に共通する「超格差」の反動
日本との関係がますます悪化している韓国の文在寅政権は、アメリカとの関係もギクシャクしだしている。ところが韓国とアメリカをよくよく見ていると、抱えている国内問題には共通するものがある。ずばり「超格差社会」だ。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57884

 

離反しだした韓国と米国に共通する「超格差」の反動

「弱者を支持」目当ての政権運営がもたらす矛盾と迷走
2019.10.10(木)
T.W.カン
世界情勢?アメリカ?韓国・北朝鮮

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 先ごろ二週間ほど韓国に滞在し、母国である韓国の情勢について深く考えさせられた。日本、韓国ともに、論客のほとんどがこの二国間関係を日本ないし韓国の視点からしか捉えていないのだ。しかも、最近の両国関係の悪化局面の影響から、韓国vs.日本、文在寅(ムン・ジェイン)政権vs.安倍政権、または韓国の左翼勢力vs.日本の右翼勢力という構図の枠で語られることが多い。それも、最近は激しく。

ギクシャクする韓米関係の中の不気味な韓国とアメリカの類似点
 仕事柄、1年の4分の1はアメリカに、同じく4分の1は韓国に滞在するような生活を長く続けているが、そういう経験をしていると、韓国を取り巻く違った構図が見えてくる。韓国やアメリカには、日本人がちょっと想像できないくらいの格差社会が出来上がっている。その中で、大多数を占める弱者層の声が、その国の政治家に与える影響力も大きくなっている。その力学が日本と韓国の葛藤をより激しくしている面があるのだ。

 今回、韓国滞在中に文在寅大統領の側近・゙国(チョ・グク)法務長官候補(当時)の聴聞会を十数時間見ることができた。具体的な疑惑のやり取りについてはすでに日本でも報道されているので割愛する。振り返って総合的に見ると、二つのテーマが浮き彫りになったように感じる。

 まず一つ目は、゙氏の「言行不一致」(韓国語ではオンヘンブルイルチ)、すなわち進歩的改革を打ち出しているのに、身内は保守的手法により利益を得ているということだ。もう一つは、゙氏自身の発言で、「民主主義と社会主義は両立できると思う」というものである。

「言行不一致」は矛盾ではないのか…
 ゙氏がこれからいかなる運命を辿るかは未知であるが、この二つのテーマは韓国のみならず、日本やアメリカにとっても無関係ではない。キャリアや影響力からすれば比べ物にならないが、人格的にみると、゙氏、そして現韓国政権を支えている人たちにはトランプ的な要素とアメリカの民主党側大統領候補者のサンダース、ウォーレン的要素が混ざっているように見える。すなわち、日韓に見る葛藤は複雑にアメリカや世界の格差問題や民主主義の漂流とも絡み合っているのである。

「言行不一致」は矛盾ではないのか
 韓国では、日本以上に社会の中の格差が拡大している。この弱肉強食的社会構造は、強者である保守勢力が弱者を搾取するという構図で捉えられている。そして進歩系勢力は弱者のために不公平性を生む社会の歪みを是正するのが大義となっている。その象徴的政策というのが、゙氏が青瓦台の前民情首席、そして今回の法務長官として担う司法改革である。すなわち、捜査権と起訴権を両方行使できる検察権力の改革だ。

 ところが、韓国の国民が最も公平性を求める入試の過程において、゙氏の子どもたちは不公平と思われる手法で進学していると疑われるようになり、不法行為の有無が究明されるようになった。まさに、「言行不一致」の候補(当時)が司法を司る長官職に相応しいのか、国民の過半数以上が疑問に思った。

 アメリカにも言行不一致の人がいる。お馴染みのトランプ大統領だ。最近、アメリカのメディアからは、トランプ氏が中米からの不法移民に対して厳しい処置を取り続けているのは、中米やメキシコからの移民を犯罪者や麻薬業者とする氏の差別的表現に起因していると批判した。しかし、トランプはその発言記録を突きつけられても、「わたしは世界で最も非差別的な人だ」(least racist)と躊躇なく返した。今度の大統領選に向けいくつかの放送局がトランプ支持者に「再度、氏を支持するつもりか」と聞くと、多くの人が、「嘘つきであろうが人を裏切ろうが、氏に投票する」と回答したという。

 同じように、゙氏にも熱烈なサポーターが多い。彼はけっして恵まれない環境で育ったわけではない。政府幹部の資産公開資料によれば、50億〜70億ウォン(おおよそ5億〜7億円)の資産を持っているという。しかも、教授、すなわち学問畑の人がいかにここまで蓄えたのであろうか。そうした人が、韓国の4つの蟻地獄、すなわち教育、就職、不動産、老後を改善すると主張するのだからいびつに見える。そのような人がいかに恵まれない人の境遇がわかるのであろうか。不思議なことに、進歩系でこうした「言行不一致」の人ば氏だけではない。ある文政権の青瓦台元幹部スタッフも資産公開で5億円の資産を保有していた。こちらも大学教授だ。こうした人々を韓国では「江南左派」(カンナムチョアパ)と呼ぶ。

三つのタイプの市民…
 トランプ氏のほうは、億万長者どころかビリオネアー(10億ドル以上)だ。しかも、氏の父は若いころから彼に強力な弁護士をあてがい、不動産事業などでは使用人や下請けにとって不利な条件で整理などを押し通した。弱者の涙を共有したことのない人に弱者の期待が集まったのだ。

 対極に位置するのが、民主党大統領候補のエリザベス・ウォーレン氏だ。彼女は貧しい家で育ち、兄弟は軍隊に行き、自身は授業料が払えなく、苦学してやっと大学学位を取り、学校の先生になった。その後、政治の世界に入り、有力上院議員の座に上り詰めた。CNNなどで演説会やインタビューを見たが、さすが弱者共感とはこういうことを言うのかと思った。そのウォーレン上院議員はアメリカの50億円以上保有する世帯の流動資産に2%税をかけることにより教育や福祉などの支援の財源を捻出しようとしている。


アメリカで「急進左派」とされる民主党の大統領候補エリザベス・ウォーレン上院議員(写真:AP/アフロ)
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 ゙氏とトランプ氏には共通する側面がある。それはゲームプレーヤーだということだ。目的は権力の頂点に立つこと。そのためには現存の機会を掴む。その機会とは極度に開いた格差に悩む多くの弱者が熱烈に期待する既存勢力の破壊だ。そのためには手段を選ばない。矛盾であろうが、何であろうが。そうした力学が現在韓国でもアメリカでも民主主義という仕組みを新たな方向へ変形させている。

三つのタイプの市民
 私は最近、韓国に滞在した折に、文政権のサポーターの一人と話してみた。彼の息子は韓国の大手航空会社(財閥系)の社員で、その企業の優遇措置として海外研修に行っているそうだ。このように息子が保守系企業の恩恵を身内が受けているにも関わらず、彼は政治的には保守解体を強く主張している。矛盾しているように思えるが、韓国にはこのような人は意外に多い。

 私は、民主主義体制下で市民が示す意思の裏側の態度は3つに分類できると考えている。例えば、ある人はタバコを吸わない。だから、禁煙政策を支持し、それを主張する政治家に投票する。現実的にはひとつの政策だけではなく、多くの政策の集合体で投票先が決まるのであろうが、基本的には自分の利害をベースに考える。これを「利己主義」と呼ぶことにしよう。これが一つ目だ。

 さらに、成熟した民主主義社会においては、自分の利害より社会の利害や理想を優先する考えを持つ人がいる。先ほどのタバコの喩えを続けるなら、愛煙家が、副流煙は健康に悪いから自分はタバコが吸えなくなって不便を感じても、禁煙政策に賛成するというケース。これを「利他主義」と呼ぼう。これが二つ目になる。

社会主義は20世紀に死ななかったのか…
 では、前記した、保守系の恩恵を受けながら進歩系の改革を熱烈に支持する市民はいかに捉えるべきであろうか。こうした傾向は日本でも見たことがある。経営コンサルタントとして多くの組織改革を促してきた経験からすると、日本の大企業の経営陣から次の考えが透けて見える。「企業の競争力アップのため改革は大賛成だ」。ここまでは建前だ。次の本音を言う人はたまにしかいない。「だけど私がこの仕事から転出した後にしてほしい」。一種の抵抗勢力である。現行の恩恵を受けながら、スタンスとしては改革を支持する。国籍を問わずこのタイプを「超利己主義」と私は呼ぶ。これが三つ目だ。彼らは、現在の体制から一定の恩恵を受けていても、その権力構造を破壊するためなら手段を択ばない。そしてそのことを矛盾とも考えない。超格差社会が生んだ、現状打破を願う大衆とも言える。

 実は、この超利己主義の層をいかにうまく掴むかがそれこそ政治ゲームプレーヤーの知恵比べということになる。彼らの支持を得られれば、世論の大勢を掴むことが出来るし、改革も進めやすいからだ。ただ問題は、これが果して民主主義を良い方向に導くのかどうか、だ。弱者である彼らの声を掬い上げることは、必然的に社会主義の考えに近づいていくからだ。実際、韓国はもちろん、アメリカでも社会主義的思想が市民の共感を獲得しつつある。

社会主義は20世紀に死ななかったのか
 次に、゙氏の「民主主義と社会主義は両立できる」とした発言について考えてみたい。

 日本の論客の中には、韓国はアメリカから離れ、中国に近寄っているという流れを主張する人がいる。文在寅氏が優先課題として掲げている北朝鮮融和政策と関連して、こうした傾向があることは否定しない。しかし、もう少し深く分析する必要があるのではないか。

 ベルリンの壁崩壊後、アメリカのブレジンスキー元安全保障アドバイザーが『大いなる失敗』(The Grand Failure)という本を書き、20世紀の社会主義は大規模な、そして弊害の多かった実験であったが、失敗に終わったと主張した。ところが最近、変形した社会主義が再び注目を浴びるようになってきている。これは紛れも無く極度に開いた格差のためであろう。

 こうした格差認識を決定付けた歴史的転換点がアメリカと韓国の両国にある。アメリカの場合は2008年のリーマン・ショックだ。ウォール・ストリート(金融エリート)という「1%」が弱者の「99%」を食い物にした、と人々はウォール街を占領しデモした。ちなみに、この年中国では北京オリンピックが開かれ、国民は自信を高揚させたと同時に、リーマンの悪影響を目の当たりにし、アメリカ流資本主義の限界を意識するようになった。

 韓国の場合は2016年の朴槿恵(パク・クネ)前大統領と親友崔順実(チェ・スンシル)による不正発覚である。それ以前のセウォル号沈没事件の際、高校生など乗客(弱者)の救助を朴氏は優先しなかった。それとその後親友とされる崔氏の蓄財に政権の一部を導員し、企業まで巻き込んだこととの間のコントラストが市民を極度に怒らせ、朴氏は弾劾された。これにより左派政権が誕生したのである。

 最近、欧米のメディアでは、アメリカの社会主義化に警鐘を鳴らす報道が目を引く。アメリカの民主党は極左とも言えるバーニー・サンダース上院議員、エリザベス・ウォーレン上院議員と、中道左派でオバマ政策を継承しようとしているバイデン元副大統領との間の論戦が注目を集めているが、アメリカ企業や富裕層は極左勢力の台頭に戦々恐々としている。「金持ちから奪い、貧困層に与える」(Take from the rich and give to the poor)という表現がアメリカにあるが、まさにそれを教育や福祉政策を通して実行しようとしている。

 サンダース氏もこうした中、自身をどう位置付けるか模索しているようだ。北欧の「社会主義」はうまくいっていると言ってみたり、中国は莫大な数の人々を貧困から救い出したと言ったと思えば、中国の国家主導型社会構造や経済システムには警戒心を示してみたりもする。

超格差社会が育む社会主義的思想…
 トランプ氏と習近平氏のどちらの交渉能力が上手か競い合うようになってから、アメリカの報道は、中国が自国市場や企業をガードしながら、アメリカの自由市場の弱点を突く、一見賢く、一見不公平にも見える動きを明らかにしてきた。例えば最近の取材では、中国の国家情報員がアメリカの元諜報員達をリクルートし、アメリカ企業の機密情報を巧みに取得していたことが明かにされた。最後に記者がこうした事件を調査した検察官に「どの国も諜報活動は行っているのでは」と聞いたところ、中国の場合、国家が企業のために相手国の企業機密情報まで諜報するケースがここ数年あとを絶たないと言っていた。逆に、他の国の場合は国家同士、そして民間同士の諜報活動が主となるケースが多いそうだ。

超格差社会が育む社会主義的思想
 果して、今後の世界においては、当分の間(30年サイクルを主張する学者もいる)、中国に見るような国家主導型の社会・経済システムが幅を利かすようになるのだろうか。そして、これからの「社会主義」というのは、果して20世紀に見た全体主義的色彩を必然的に含むものなのであろうか。

 現在の香港情勢を見ても分かるように、国家主導型の社会構造や経済システムは、民主主義を必ずどこかで抑圧する。一方で、自由主義経済の行き着く先に出現した超格差社会は、大衆の中の社会主義的思想を育むことになる。

 こうした動きの中、従来の北東アジアの政治構造、すなわち、中朝露対日韓米、という二つの軸はどうなっていくのであろうか。韓国だけが中朝に接近するという従来の見方の一歩先を読むとアメリカ自体どうなっていくのかを見極める必要がありそうだ。民主主義と自由経済に飼い馴らされてきた私にとってこの過渡期は心配だ。社会主義や国家主導型経済システムは経済発展や技術開発、そして人権を妨げる傾向があることを経験から知っているからだ。

 日韓米を行き来している直感からすると、かつて日本は「総中流社会」といわれたこともあり、今日本がいくら自らを格差社会と認識しようが、韓国やアメリカにおける格差の大きさに対する実感が湧きにくいのではないだろうか。仮にトランプ再選の場合においても、カリフォルニアやマサチューセッツなどで幅を利かす左派勢力がいかにアメリカの国政に影響を及ぼし、日本にはこうしたアメリカ、そして北東アジアといかに向き合うのか、巧みな舵取りが求められる。

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米民主党が多数派を占める下院だけではなく、上院の4つの委員会もトランプ政権要人の召喚に踏み切った。上院の4つの委員会とは外交、歳出、国土安全、情報活動各委員会だ。ドナルド・トランプ大統領はたまらず、10月2日のツイッターで怒りをぶちまけた。

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[戦争b22] ロシア、トルコの軍事作戦黙認か 首脳が電話協議 日本がロシアの海軍力増強に協力か 地球温暖化がもたらす軍事バランスの劇的変化
ロシア、トルコの軍事作戦黙認か 首脳が電話協議
ヨーロッパ 中東・アフリカ
2019/10/10 2:41
 
【モスクワ=小川知世】トルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領は9日、電話でシリア情勢を協議した。ロシア大統領府によると、プーチン氏はトルコによるシリア北東部での軍事作戦について、シリア和平の進展を妨げないために「入念に状況を考慮する」ように求めた。軍事行動に明確に反対する発言は明らかになっておらず、事実上黙認する立場を示したとみられる。

9月16日にアンカラで会談したプーチン・ロシア大統領(左)とエルドアン・トルコ大統領=ロイター
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9月16日にアンカラで会談したプーチン・ロシア大統領(左)とエルドアン・トルコ大統領=ロイター

電話協議はシリア北東部を掌握するクルド人勢力への軍事作戦の開始前にトルコ側が提案した。エルドアン氏は作戦開始を事前に通告し、シリアのアサド政権の後ろ盾であるロシアに理解を求めた模様だ。両大統領は「シリアの主権や領土の一体性を尊重する重要性」を確認した。様々なレベルで接触を続けることでも同意した。

ロシアはシリア内戦の解決に向けた協議をトルコ、イランと主導し、中東で影響力を強めてきた。ラブロフ外相は9日の記者会見で、ロシアがクルド人勢力と接触し、アサド政権との対話を促したと明らかにした。トルコが軍事作戦を強行したことで、クルド人勢力がロシアやアサド政権に接近し、内戦の構図が複雑化する可能性もある。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50822360Q9A011C1000000/


 

日本がロシアの海軍力増強に協力か
地球温暖化がもたらす軍事バランスの劇的変化
2019.10.10(木)
杉浦 敏広
ロシア?安全保障?経済

北極海を航行する砕氷船
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プロローグ
米国、グリーンランド購入希望
「ノルウェーは秘密潜水艦基地をロシアに売った。それもイーベイ(eBay)のようなネットオークション主体のオンライン・マーケットプレイスで。本当のことだ」

「欧州開戦」(マーク・グリーニー著 新潮文庫 2018年刊)冒頭の一節です。

 米D.トランプ大統領(73歳)は2019年8月18日、デンマーク自治領グリーンランド購入構想を発表。その直後デンマーク首相が一笑に付したため、9月初旬のデンマーク訪問を中止しました。

 トランプ大統領の意図は、温暖化により北洋航路の重要性が増すことに鑑み、同島に対する地下資源開発権と軍事戦略上の橋頭保確保および中国の進出阻止と筆者は推測します。

 この意味では、今回はあまりに唐突な発言ではありましたが、米国の「グリーンランド購入構想」自体は正しい方向性を示しており、軍事戦略としては至極真っ当な認識だと筆者は考えます。

 グリーンランドは日本の6倍の面積をもつ世界最大の島。雪と氷に閉ざされた島ですが、米軍事基地もある軍事上重要な島であり、今後同島は地下資源・軍事戦略・北洋航路要衝の地になるでしょう。

領土は不動産
 領土は不動産ですから、売買の対象になります。不謹慎な考え方と思われるかもしれませんが、歴史を顧みれば、領土売買の実例は幾つもあります。

 帝政ロシアのアレクサンドル2世は1867年、クリミア戦争(1853〜1856年)の賠償金支払いにより国庫財政が困窮したため、アラスカを720万ドルで米国に売却しました。

 売買交渉の米側当事者W.スワード米国務長官は「氷山買いの銭失い」と揶揄されましたが、購入後に金(Gold)が発見され、更に原油や天然ガスも発見され、雪と氷の世界が宝の山になりました。

 帝政ロシアは弱い立場で交渉に臨んだため、広い土地を二束三文で売却せざるを得ませんでした。

北方領土問題の原点…
 米国は1803年、ルイジアナをフランスから購入。1867年にロシアからアラスカを購入後、1917年にはデンマークから現在の米領バージン諸島を買収しています。

 米H.トルーマン大統領は1946年、グリーンランドを1億ドル相当の金塊で購入を目論みましたが、これは失敗。ゆえに、米トランプ大統領がグリーンランド購入を考えても不思議ではありません。

 否、むしろ論理的と言えるでしょう。

北方領土問題の原点
 帝政ロシアはオスマン帝国連合軍を相手とするクリミア戦争の最中、二正面作戦を避けるべく、初めから弱い立場で極東の領土交渉に臨みました。

 相手は江戸幕府、交渉対象は千島列島(クリル諸島)における国境線画定交渉。

 ですからこの時に調印された日露和親条約(正式名「日本国魯西亜国通好条約」、別名「安政条約」)は、実は日本にとり有利な条件で締結されました。

 この点は、時のロシア皇帝ニコライ1世がロシア側交渉団長たるプチャーチン提督に宛てた書簡にも明示されています。

 条約調印日は和暦(陰暦)安政元年甲寅12月21日、西暦(新暦)1855年2月7日。これが、1981年に「北方領土の日」が2月7日に制定されたゆえんです。

 日露間の国境線を画定した国際条約はこの日露和親条約のみで、1875年の樺太・千島交換条約は国境線の変更を定めた条約です。

 北方領土問題を語るとき、実はこの「日露和親条約」の原点に立ち返ることが必要ですが、交渉当事者の誰もそのような思いには至らないようです。


北極海の氷が溶けたら?…

 日本のある高名な軍事評論家のウエブサイトに、下記のような質疑応答があります。

質問:
先日、温暖化で北極の氷が解け、ヨーロッパの会社が北極回りの商業航路を開拓するというような記事を読んだのですが、これは軍事的には何か変化をもたらすようなものなのでしょうか?
特にロシアは北の海岸線が広大ですし、過去においては不凍港を求めて南下してきた等の歴史を習いましたが。よろしくお願いいたします。

回答:
それは北極海から氷が消えたら、その航路で日本からヨーロッパに貨物船で送るコストが格段に下がりますし、時間も短縮します。
特に軍事的に有利・不利は思いつきませんが、昔の日露戦争の日本海海戦のような場合、アフリカを回って極東にやってきたロシア艦隊のようなことにはならなくて済みそうです。しかし解氷が年間の一時期だけなのか、あるいは一年中かで大きく変わると思います。
すでに原子力潜水艦は北極海を自由に行き来しているので、劇的に軍事環境が変化することはないと思いますが、・・・・詳しいことはわかりません。
でも、これだけ猛暑で東京が暑いと、せめて北極海ぐらいは凍結してほしいような気がします。

 では本当に「(北極海の氷が溶けても)劇的に軍事環境が変化することはない」のでしょうか?

 本稿では、北極圏の資源開発の現況と北洋航路の隠された意図を考察したいと思います。

「露連邦エネルギー安全保障ドクトリン」 …
 中距離核戦力(INF)全廃条約破棄後、米露中の軍拡競争が始まり、米中貿易摩擦は泥沼化の様相を呈しています。中国は今年10月1日の建国70周年記念日に過去最大の軍事パレードを挙行しました。

 世界経済の行方が混沌としているなか、近年注目すべき現象が顕在化してきました。北極海の海氷減少傾向に歯止めがかからなくなってきたのです。

 氷が薄くなるにつれ、北極圏における北洋航路開拓と資源開発競争が激化して、北極圏は今後、世界の耳目を驚かせる地域になるでしょう。

 ちなみに、ロシア運輸省は北洋航路の2018年貨物輸送量は1700万トンであったが、2024年には8000万トンになるとの予測を発表しています。

 筆者は軍事関係は全くの素人ですが、本稿では北極海の資源開発の現況と北洋航路の隠された意図を、想像を交えて分析してみたいと思います。

「露連邦エネルギー安全保障ドクトリン」
プーチン大統領が署名・発効

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 北極圏とは北緯66度33分以北を指し、沿岸8か国が領土や領海を有する地域です。

 ロシアのV.プーチン大統領(67歳)は2019年5月13日、「露連邦エネルギー安全保障ドクトリン」に署名、同ドクトリンは発効しました。

 同ドクトリンは北極圏における天然資源開発と北洋航路の開拓を鼓舞しています。

 ロシア極東と北極圏開発を管掌するトルトネフ副首相(極東連邦管区大統領代表)は2019年7月末、プーチン大統領に対し、ロシアの国営石油会社ロスネフチと世界最大の天然ガス会社ガスプロムを批判する書簡を提出。書簡要旨は以下の通りです。

「ロシア国営石油・ガス会社に北極海大陸棚における69鉱床の探鉱・開発権を付与したが、2012年以降2019年7月までの7年半で、5本の探鉱井しか掘削していない。競争がないので、権利の上に胡坐をかいている」

「北極圏開発にはノルウェー方式を採用して、露民間石油・ガス企業と外資に北極圏大陸棚開発事業への参入を認めるべき」

 この抗議書簡に対し、ロスネフチのI.セーチン社長(58歳)とガスプロムのA.ミーレル社長(57歳)は直ちに、なぜ遅れているのかプーチン大統領に説明しました。

ロシア/北洋航路の開拓…
ロシア/北洋航路の開拓
 ロシアは近年、国家予算を投入して積極的に北洋航路開拓を推進しています。

「Yamal LNG」社は北極圏ヤマル半島東岸に液化天然ガス(LNG)生産工場を建設しました(年間550万トン×3系列=1650万トン)。

 同工場は2018年末までにフル稼働態勢に入り、2019年8月までに累計20百万トンのLNGを出荷。夏場4か月間は砕氷型LNG輸送船を投入して、東航路でベーリング海峡を通過し、アジア諸国にLNGを輸出しています。

 冬場の西航路では、砕氷型LNG輸送船は主に欧州市場向けにLNGを輸出していますが、アジア向けの場合は東航路の2倍以上の航海日数を要します。

 冬場のアジア向け航路が経済的にメリットのある航路であるかどうかは、LNG輸送船の運航費用やLNG販売価格などとの見合いの問題になるでしょう。

 なお、ヤマル半島対岸のグィダン半島でもLNG工場建設構想(Arctic LNG 2)が進行中で、日本の企業も参加して2025年までにフル稼働を目指しています(年間660万トン×3系列=1980万トン)。

 参考までに、北洋航路に投入される砕氷型LNG輸送船は「Yamal LNG」用15隻、「Arctic LNG 2」用は17隻の予定にて、「Arctic LNG 2」用17隻はこれから建造されることになります。

帝政ロシア・ソ連・ロシア海軍の歴史
 ここで、帝政ロシアとソ連海軍の歴史を概観したいと思います。

 ロマノフ王朝第5代皇帝ピョートル大帝はバルチック艦隊を創設しましたが、当時はフィンランド湾の奥深くの一部にしかロシア海軍の制海権は及びませんでした。

 内陸陸軍国家たる帝政ロシアが外洋への出口を求めたのは地政学上当然の成り行きですが、意外なことに第2次大戦終結までのソ連海軍は内海海軍であり、外洋海軍は存在しませんでした。

 本格的外洋艦隊を設立する構想は、ロマノフ…
本格的外洋艦隊を設立する構想は、ロマノフ王朝第13代皇帝アレクサンドル3世の発案によります。

 極北の不凍港ムルマンスクを海洋艦隊の根拠地とするのが彼の構想でした。

 アレクサンドル3世は、簡単に海峡封鎖されてしまうバルト海のリバウ港の地政学的・戦略的欠陥を喝破。極北の不凍港、バレンツ海ムルマンスク軍港建設構想を策定したのですが、彼の死後、その構想は頓挫してしまいました。

 ロマノフ王朝最後の皇帝ニコライ2世はリバウ軍港建設構想と本格的なバルチック艦隊建設構想を推進しましたが、その後の帝政ロシアと清国間の情勢緊迫化に伴い、極東重視政策に転換。ロシア太平洋艦隊の創設・拡充に注力しました。

 ソ連邦の時代、スターリンは1950年に外洋海軍創設を決定しましたが、その直後の1953年3月に死去して外洋海軍設立構想は頓挫。

 後継者フルシチョフ第1書記長は大型艦艇建造を中止、小型ミサイル搭載艦とミサイル潜水艦隊創設に奔走しました。

 しかし1962年10月に「キューバ危機」が勃発、米軍はキューバ海上封鎖を断行。当時、ソ連軍は米海軍に対抗できる外洋海軍を持たず、結局、キューバのミサイル撤去を余儀なくされました。

 この時、ソ連海軍は本格的な外洋艦隊の必要性を痛感し、ゴルシコフ海軍総司令官は翌1963年に外洋海軍創設を決定。ソ連邦は海洋国家を目指すことになりました。

 この結果、現在の露海軍は北方艦隊(艦隊司令部バレンツ海コラ半島セーヴェロ・モルスク)・バルト艦隊(カリーニングラード州バルチスク)・黒海艦隊(クリミア半島セバストーポリ)・太平洋艦隊(極東ウラジオストク)の4艦隊を有することになりました。

 付言すれば、ロシア海軍では北方艦隊と太平洋艦隊は「外洋艦隊」、バルト艦隊と黒海艦隊は「近海ゾーン艦隊」、カスピ海艦隊と地中海艦隊は「支援艦隊」と位置づけられています。

ロシア海軍のアキレス腱…
ロシア海軍のアキレス腱
 4艦隊を有するロシア海軍ですが、バルト艦隊が大西洋に出るためにはデンマーク・ノルウェー・スウェーデンに囲まれた2海峡を通らねばならず、NATO(北大西洋条約機構)軍に監視されています。

 有事の際には海峡は封鎖され、バルト艦隊は大西洋に進出できなくなります。

 黒海艦隊にはボスポラス・ダーダネルス海峡やジブラルタル海峡などのチョークポイント(*戦略的阻止点)があります。

 北方艦隊の東航路はベーリング海峡があり、太平洋艦隊は対馬・宗谷・津軽の3海峡を通過しないと日本海から太平洋に進出できません。

 すなわち、すべての艦隊司令部から出撃するロシア艦船はチョークポイントを通らないと、太平洋・大西洋に出られないのです(*北方艦隊の西航路はチョークポイントなしに大西洋に進出可能)。

 しかし一つだけ、チョークポイントのない天然の良港があります。

 それはカムチャッカ半島の不凍港、ロシア太平洋艦隊第7戦隊の母港ペトロパブロフスクです。

 同港からは艦船が自由に太平洋に進出でき、同港南側のヴィリュチンスクには原子力潜水艦の基地もありますが、この天然の良港は電力不足と兵站補給困難という2つのアキレス腱を抱えています。

エピローグ 北洋航路の隠された意図…
エピローグ
北洋航路の隠された意図
 上述通り2018年の北洋航路による輸送実績は1700万トンでしたが、2024年には8000万トン以上の輸送量になると予測されています。

 ロシア運輸省の予測では、2024年の輸送量予測8000万トンの主要内訳はLNGが4700万トン、原油が1200万トン、石炭が1900万トンになっています。

 では、もし北洋航路が拓けると、状況はどのように変化するのでしょうか?

 サンクトペテルブルクからウラジオストクまで約1万4000キロの航路となり、南廻り航路と比べ8000キロ以上短縮され、日露戦争の日本海海戦におけるバルチック艦隊の悲劇が避けられます。

 また北極海コラ半島からベーリング海峡を通過すれば、ウラジオストクまでは約2〜3週間の航路に短縮されます。

 北洋航路途上のカムチャッカ半島ペトロパブロフスクにはLNG積替え基地建設構想が浮上しており、日本企業も参加を検討していると報じられています。

 LNG積替え基地が建設されるとLNGを利用してガス火力発電が可能になり、ペトロパブロフスクの電力不足問題も解決されることでしょう。

 すなわち、北洋航路を活用することにより、北洋艦隊から太平洋艦隊への兵站補給が容易になり、ペトロパブロフスク海軍基地周辺のインフラが整備・拡充され、軍事力が強化されることが予見されます。

 その結果、軍事力を強化されたロシア水上部隊や原子力潜水艦部隊が、カムチャッカ半島ペトロパブロフからチョークポイントを通過することなく、自由に太平洋に進出できることになります。

 これが何を意味するのかと申せば、軍事環境が劇的に変化して、太平洋における制海権の軍事バランスがロシア側に傾く可能性もでてくるということです。

 日本の高名な軍事評論家は、「(北洋航路が拓かれても)劇的に軍事環境が変化することはないと思います」と述べていますが、軍事の専門家が上記のような認識でいること自体、日本の対露研究が遅れていることの証左ではないでしょうか。

 後世の歴史家に、「日本は(結果として)ロシアの秘密潜水艦基地強化に協力した。それも官民挙げて。本当のことだ」と言われることのないように、北洋航路の意義をコインの両面から分析・評価することが今こそ求められているのではないかと愚考する次第です。

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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57865
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/864.html

[政治・選挙・NHK266] ついに景気悪化を認めた内閣府、消費増税後に「春から不況だった」と示唆するズルさ 街にあふれる「タピオカ屋さん」早くも下火!? 過去のブーム時にならうと大不況突入か 自国通貨建て日本国債の信頼、未来も高いかは心配が必要=麻生財務相 

ついに景気悪化を認めた内閣府、消費増税後に「春から不況だった」と示唆するズルさ
斎藤満
2019年10月10日ニュース
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内閣府は7日、8月の景気動向指数の結果を公表。基調判断は再び「悪化」となり、すでに景気後退に陥っている可能性を示唆しました。その中での消費増税です。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2019年10月9日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

「緩やかな回復」はどこへ行った?増税前から景気は後退局面へ…
景気動向指数はまた“悪化”
内閣府は7日午後、8月の「景気動向指数」の結果を公表しました。

これによると、景気「先行CI」(2015年平均=100)は91.7と、前月から2ポイント低下、3か月移動平均は14か月連続、7か月移動平均は15か月連続の低下となりました。

そして景気判断の基準となる「一致CI」は99.3で、前月から0.4ポイント低下、3か月移動平均は3か月連続、7か月移動平均は10か月連続の低下となりました。

この結果、景気動向指数が示す基調判断は再び「悪化」となり、景気はここまでにすでに「後退」に陥っている可能性を示唆しました。

この指標、春先に一旦「悪化」となったのですが、その後、生産の一時的な反発もあって「下げ止まり」となっていました。しかし、指標が改定され、いま見直すと、一致CIは「下げ止まり」の条件を満たしておらず、「悪化」が続いていたことが分かりました。

これは日本の景気がこの春までにすでに「景気後退」に入っていた可能性を示し、それが今なお続いていることになります。

政府は景気動向指数の落ち込み幅が小さいとして、景気後退ではないと言いたいようです。

しかし、景気先行指数は2017年11月の102.9から足元の91.7に11.2ポイント低下し、一致CIも2017年12月の105.3から今年8月の99.3まで6ポイント低下しています。

前回の景気後退となった2012年3月から2012年11月の間では、一致CIは97.1から91.2に5.9ポイントの低下となっていました。

現在の一致CIの低下幅はこれを上回ります。前回が民主党政権だったから「景気後退」と認定し、現在は自公の安倍政権だから「後退」ではない、というのであれば、あまりに恣意的すぎます。

景気悪化の主役は輸出の不振で、これが生産や投資の一部に波及していますが、その中でGDP(国内総生産)の半分以上を占める個人消費にも負担となる消費税の引き上げを強行しました。

景気認識とともに、消費税の影響についても政府の認識に甘さが伺えます。

消費増税、最後に駆け込み
西村経済再生大臣は8日、「一部の家電で9月に駆け込みが見られたものの、全体でみると前回に比べると駆け込みは大きくない。消費税引き上げ後の食料品、日用品の売り上げは1−6日の間で前年比1.1%減で、前回引き上げ時の19%減に比べて影響が小さい」と述べました。

しかし、駆け込みは当初少なかったとしても、消費税引き上げ間際、特に9月最後の週末には結構、家族総出の買い出しも見られました。

大手百貨店の売り上げは9月に宝飾品や高額品を中心に2桁の増加となったと言い、スーパーでも最後の週末にはビールなどの酒類やトイレット・ペーパーなど、カートいっぱいに詰め込んで買う姿が見られました。

家電などは買い替えサイクルの影響もありますが、需要・購買力の面から駆け込みができなかった面があります。

そもそも食料品については軽減税率が適用されたので、この面では駆け込みも反落もありません。半面、日用品についてはできる範囲で最後に駆け込んだと見られます。

所得と置き場所の制約のなかで、できる範囲の「抵抗」は見せたようです。

Next: ポイント還元で大混乱。値引きと便乗値上げが交錯する


ポイント還元に混乱
政府が消費税対策として胸を張るポイント還元については、随所で混乱が見られます。

そもそも、街を歩いても「5%ポイント還元」の赤いポスターを張ってあるお店があまりありません。

なんでも、全国200万の中小店舗のうち、ポイント還元を実施している店は50万店にすぎず、今申請中のお店を入れても80万店にすぎないと言います。

その中で、赤いポスターを張ってあるスーパーで買い物をしてみたのですが、キャッシュレスの支払い手段はクレジット・カードだけで、スマホ決済もパスモなども使えません。

そのクレジットも、VISAやマスターが使えず、間もなくJCBが使えるようになるといっていましたが、ほとんどの人が現金決済をしていました。唯一使えると言われたクレジット・カードで支払いましたが、明細にはどこにも5%のポイントの表示がありません。カスタマーサービスの人に聞いてみても、初めての試みで、どのように還元されるのかわからないと困惑気味でした。

カードの請求書が来た時によく見てみないと、本当に還元されるのかわかりません。

値引きと便乗値上げ
イートインと持ち帰りで税率を区別したり、同じ店の中に複数の税率の商品があってレジが対応できない店もあります。

中には手書きのレシートを用意して却って手間暇がかかるケースや、複数税率に対応できないとして、8%一本にして実質値下げで店が負担するケースも少なくありません。NHKの受信料も消費税は8%のままで、実質2%の値下げとなります。

その反面、消費税率の引き上げに伴う「便乗値上げ」も見られます。

ある公営図書館に併設されるレストランでは、先月まで税込み750円だったランチが800円になり、680円のメニューが720円に上がりました。他のメニューも同様に値上がりしていますが、どう見ても消費税の引き上げ分2%を大幅に超えた値上げです。

10月になってさすがに客足は鈍っています。

Next: 最悪の環境で消費増税。さらに景気悪化が進んだら政府はどうするのか?


最悪の環境で消費増税
今回の消費税引き上げ、実施のタイミングもやり方も多くの問題を露呈しています。

政府は「緩やかな景気回復」といっても、内閣府の景気動向指数が今年の春以降、「景気後退」の可能性を警告する中で決断し、実行してしまいました。

タイミングとしては最悪の時期で、輸出の弱さに個人消費まで落ち込めば、「緩やかな回復」は通用しなくなります。

しかも、消費税の影響を緩和したいとは言え、複雑にしてしまったため、企業のコスト負担を高め、それでも対応が間に合わなくて混乱するケースが見られます。

さらに消費者の間にもキャッシュレス決済に抵抗のない人・手段を持つ人と、セキュリティの不安からスマホ決済に躊躇して現金払いで高くつく人、家も車も買う予定がなく「減税」と無縁な人など、負担の度合いは人さまざまで、不公平感も伴います。

目立った事前の「駆け込み」的な消費の盛り上がりは見られなくても、精一杯駆け込んだ可能性も否定できません。

その場合、10月以降の消費が低迷し、景気の悪化が進む可能性がありますが、その時に、政府は何と抗弁し、どんな手を打つのでしょうか。

また一部の「お友達」への利益誘導型景気対策を打つのでしょうか。

(続きはご購読ください。初月無料です)
https://www.mag2.com/p/money/786870


 

街にあふれる「タピオカ屋さん」早くも下火!? 過去のブーム時にならうと大不況突入かも
2019/10/ 9 17:00
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若い女性の間で大人気のタピオカだが、ブームの終焉の兆候がみられることが東京商工リサーチの調査でわかった。

じつはタピオカは、これまでも大不況の前後で話題になってきており、今回は消費増税が影を落としているらしい。

若い女性に大人気、タピオカミルクティー!
若い女性に大人気、タピオカミルクティー!
コンサルティングや電力会社まで参入
東京商工リサーチが2019年10月8日に発表した「『タピオカ屋さん』動向調査」によると、8月末現在で60社あることがわかった。同社が保有する企業データベース(約379万社)から、「タピオカ」専業及び関連事業を営む企業を抽出した。3月末時点では32社だったから、夏場の半年間でほぼ2倍に急増したことになる。

60社のうち、49社は2018年以前の設立だから、空前の「タピオカブーム」に乗り、新規に会社を興すより、既存企業が取扱商品を変更して参入したことが特徴だ。

財務省の貿易統計によると、2019年1〜7月の「タピオカ」と「タピオカ代用物」の輸入は約6300トンで、2018年(1〜12月)1年間の約3000トンをすでに大幅に上回っている。飲食チェーン大手でもタピオカ関連メニューを始めるところが増え、街はタピオカで溢れている。

「タピオカ屋さん」60社の本業を調べると、「パンケーキカフェ」「肉バル」「助成金コンサルティング」「売電事業」など、飲食業からコンサルティング会社、電力企業までさまざまだ。本業とは別にタピオカブームにあやかる副業的な店舗展開が特徴になっている。

60社の本社所在地は、東京都が25社で最も多く、次いで神奈川県と大阪府、福岡県が各5社、千葉県4社、沖縄県3社と続き、地方都市にも広がっている。

「例年冬場なのに、今年は夏場過ぎから売り上げが落ちた」
ただ、個別に経営者に聞くと、「もうブームは終わろうとしている」と不安の声が少なくない。中国地方で数年前から「タピオカ屋さん」を運営する企業は、「昨年(2018年)からお客さんが以前の倍になったが、毎年、冬場に売り上げが落ちるのに、今年は夏過ぎからお客さんの数が落ちている」とブーム終焉の兆しを感じている。関東地方で「タピオカ屋さん」を営む企業も「ライバルが増えて、味やインスタ映えなど戦略が重要になった」と語る。

ブームが終焉を迎えるのか、それとも落ち着くのか、分岐点に差しかかっているようだ。というのは、タピオカブームは景気悪化と微妙に関連があるからだ。第1次ブームは、バブル崩壊の1992年頃。第2次ブームは、リーマン・ショックの2008年頃だった。いずれも不況に前後してブームが起きるのが特徴だ。今回の第3次ブームは、米中の貿易摩擦、英国のEU離脱、日韓関係悪化、国内では消費税増税と重なる。

果たして景気悪化を占うブームとなるのか、今後の動きが注目される。ちなみに、タピオカミルクティーは地域によっては『バブル』ティーとも呼ばれている。

(福田和郎)

タピオカ
人気
分岐点
副業
景気悪化
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「幼保無償化」スタート 働く女性に意外に批判が多いのはなぜ? 専門家に聞いた
2019/10/ 6

https://www.j-cast.com/kaisha/2019/10/09369623.html?p=all


 


ビジネス2019年10月10日 / 13:05 / 11時間前更新
自国通貨建て日本国債の信頼、未来も高いかは心配が必要=麻生財務相
Reuters Staff
1 分で読む

[東京 10日 ロイター] - 麻生太郎財務相は10日午前の衆院予算委員会で、日本国債の現状に関し、財政健全化の努力や自国通貨建てで発行されていることなどから現在は信頼が高いが、「未来永劫もそうかは心配が必要」と述べ、財政出動と財政健全化努力の「バランスを保たないといけない」と指摘した。井野俊郎委員(自民)への答弁。

井野委員は、自国通貨建てで国債を発行している国は債務を増やしても問題は少ないとの現代貨幣理論(MMT)への見解を麻生財務相に尋ねた。その際、「自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」とした意見書を引用した。

麻生財務相は、この意見書は当時財務官だった黒田東彦日銀総裁が、2000年代初め日本国債の格付けをボツワナより下に格下げした米格付け会社への反論に作成したもので、「財政健全化を否定するものではない」と解説した。

その上で、日本の国債発行残高が増えても「金利は下がっており、経済学で考えられない奇跡的な状況が起きている。信頼が高い大前提は、消費増税など借金を返す努力をしていることだ」と説明した。
https://jp.reuters.com/article/aso-jgb-idJPKBN1WP0D8


https://kanameblog.com/inotoshiro/



http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/363.html

[環境・自然・天文板6] 中国で体験した凄まじい気候変動の前触れ「雨前線の移動」とは 信じられないスピードで進んでいる 中東で緑が復活し北米の半分が沼地に 中国全土を潤すうれしい気候変動 中国の大気汚染、貧富の差で吸う空気が違う不平等


中国で体験した凄まじい気候変動の前触れ「雨前線の移動」とは
莫 邦富:作家・ジャーナリスト

国際・中国 莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見
2019.10.11 5:05


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中国の陝西省では、これまで経験したことのない気候の変化が起きている(写真はイメージです) Photo:PIXTA
Tシャツびしょ濡れから一転、
寒さに震えるほど気温が低下
 先月、中国の陝西省西安市を訪問したとき、安康にも行ってみた。安康に行くには、秦嶺を通過しなければならない。拙著『「中国全省を読む」事典』では、陝西省の地理環境について、次のように記述している。

「同省の標高は南部と北部が高く、中部が低い。黄河流域と長江流域の分水嶺(ぶんすいれい)で、南方と北方の境目でもある秦嶺(しんれい)、喬山が省の東西を走り、陝西省はそれによって陝北、関中、陝南の三大自然区に分かれている。面積の45%を占めているのが海抜800〜1300メートルの黄土(こうど)高原だ。特に陝北地区は乾燥した気候で、年間平均降水量が300〜600ミリと少ない。土壌の浸食が深刻で、農作物を栽培してもたいした収穫が期待できない」

 安康には1泊しか滞在できる時間的余裕がなかったが、中国の西北地域でまるで南方地域か西南地域のように緑豊かな環境を実体験できたことに、私は興奮した。降雨量も多いし、湿気も結構高い安康周辺は、野生のナツメなどの物産が豊富だ。何よりも、南方と同じくらい暑いと思うほど気温が高い。夕食後、1時間くらい散歩する習慣を持つ私は、ホテルを出てそんなに歩いていなかったにもかかわらず、すでにTシャツが汗でびしょ濡れになってしまった。

 安康で1泊した翌日、また秦嶺を貫くトンネルを経由して西安に戻ってくると、雨が降っているせいか、なんとTシャツ姿では寒く感じるほど気温が下がっていた。道を急ぐ通行人を見ると、すでにコートを着込んでいる女性がいた。分水嶺の存在感を十二分に実感できた瞬間だった。

 私たちを案内する地元の関係者が、「ここ数年、秋の雨が多い。降雨期間も長くなった」と呟いていた。その時点では、私はこの呟きを特に問題にせず、そのまま聞き流した。

 しかし、日本に戻ってしばらく経ってから、気候変動に関するある情報誌を読んだとき、私は目を点にして、その情報を数回も読み直してしまった。

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凄まじい勢いで植生が拡大
凄まじい勢いで植生が拡大
「雨前線の移動」とは何か
「中国の降雨の臨界点は全地域において北へ移動」と題するこの情報は、中国の雨前線の移動に大きな変動が起きていることを取り上げている。

 それによると、中国の気候はこれまで秦嶺山脈を境界線として、片方は湿潤温暖、もう片方は乾燥寒冷地帯であった。しかし、今年は豊富な雨が秦嶺山脈を超えて降っただけでなく、青海チベット高原にも降った。青海チベット高原の全範囲を超えただけでなく、新疆の2大盆地(タリム盆地、チャイダム盆地)にも雨が降り、すでに3年間もこのような状況が続いている、ということだ。

 その降雨量の変化により、現在の新疆の植生は1年で150キロの猛烈な速度で地盤を拡大している。内蒙古の植生は、今年は40キロというすさまじい速度で回復している。一方、東北地域の黒竜江省では、森の中には多くの広葉樹が育ち始めたという報告が出ているそうだ。

 これまで、中国の降雨地域の極限は四川省の雅安だった。四川盆地の雅安地区が最も降水の多いところだった理由は、気温が高くなければ、水蒸気を含む雲は秦嶺山脈や川北高原を越えられなかったため、その水分はすべて雨となって雅安のところで降っていたからだ。

 しかし、異常な気候変動により、今は雨前線が陝西省漢中市にその勢力範囲のラインを敷いた。つまり、雨の極限が全ラインで陝西地区に進んだといえよう。

 もう1つの要素にも触れてみたい。中国政府が西北地域などで推進している「退耕還林政策」だ。

 中国では土地の過剰利用などによる土壌流失問題の深刻化、乾燥地帯の拡大による砂漠化に代表される現象に頭を痛めている。1990年代後半、自然環境が厳しく、傾斜度が25度以上などの作業条件が悪い農地などに対して、耕作をやめて植林を実施するよう、中国政府が呼びかけた。それが「退耕還林政策」である。

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信じられないスピードで進んでいる
 1998年か1999年から試みが始まり、2003年あたりから全面実施された。退耕還林に参加した農家に対しては、食糧、生活費、造林用の苗木代の補助が行われ、その生活の心配を解消するような措置が講じられている。わずか10年間で3000万ヘクタールの退耕還林や新規造林などが行われた。

 2000年に私が陝西省の北部にある延安を訪れたとき、ちょうど一部の地域では、その退耕還林運動に取り込み始めたところだった。苗木を植えた山への放牧・採草などはすべて禁止するという、「封山育林」措置も講じられていた。

 20年近く経った今は、退耕還林の対象になった山にも緑が戻り、黄土高原にもうっすら緑になった山脈が現れた。前述した雨前線の移動ラインの変動は、西北地域の生態に一層大きな変化を劇的にもたらしたのだ。

信じられない
スピードで進んでいる
 しかし、前述の気候関連の情報によれば、気候の変化はもっと私たちが信じられないほどの規模とスピードで進んでいるそうだ。中国の雨前線の臨界点も大きな範囲でゆっくり移動し続けている。予測によると、これから40年間の気候は、おそらく唐の時代(618年〜907年)ではなく、西周時代(紀元前1100年頃〜紀元前771年)のような、温暖湿潤な気候に戻るだろうということだ。

 観察資料によれば、新疆ウイグル自治区のハミ地区の植生も回復し始めている。気候の専門家グループは今年、中国全域の約半分に相当する国土で植生観察のために駆け回り、その視察を最近終えたところだ。

 タリム盆地が1つの顕著な例になっている。タリム盆地はかつて中国の高温少雨現象の最も深刻な地区で、以前は雨を降らせる雲が延々と続く砂漠地帯をまったく越えることができなかった。しかし、今では3年連続でタリム盆地全体をカバーできるくらいの降雨量がある。

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中東で緑が復活し北米の半分が沼地になる?
 この気候が続いていけば、来年から雨前線はチャイダム盆地の全域をカバーできると見られる。チャイダム盆地で雨が降れば、涸れてすでに長い古い川にも再度水が流れるだろう。早ければ10年以内に、こうした古代の河川が再びリアルの川として流れ始めるだろう。

 気候専門家グループが今年視察した地方に、若羌河流域がある。若羌河の4つの支流はいずれも水が復活して流れており、今年若羌河流域では意外にも洪水が起こった。ガリの無人居住区は樹木が生え始めた。彼らが撮った写真を見た人はみんな驚いたそうだ。というのは、ガリの樹木がすでに2000年近くも死んでいたからだ。

中東で10年以内に緑が復活し
北米の半分が沼地になる?
 気候専門家グループの意見は、雨前線の移動に見られたこの変動は長くて大きなサイクルで続き、決して短期間の断続的なトレンドではない、という。もしこのような状況が続き、世界的に広がっていくとしたら、中東は10年以内に緑が復活し、砂漠が大きく縮小していく。うまくいくと、砂漠が消失する可能性も出てくるだろう。

 降水量が引き続き増えると、北米の半分の土地が沼地になり、10年以内に昔の沼地だった状態へと戻る。海水位の上昇で海水が逆流するため、ミシシッピ流域は塩性・アルカリ地へと変化していく。

 今年の6月、ロシアで気候変動問題について意見交換をする会合が行われた。ロシアでは水蒸気がすでにウラルを越え、ノボシビルスク地区の降水を増やした。そのため、東欧地区の一年生雑草がノボシビルスク地区にまで生えるようになった。このままいくと、ロシアはアメリカにとって代わって、世界最大の穀倉地帯になる可能性さえ出てくる。一方、その温暖化によってロシアの多くの地方で凍土が溶け、ロシア人の住宅が沼地に沈んでしまうことになる。

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中国全土を潤すうれしい気候変動
 中国の長江以南の地方では、10年後には冬が訪れず、温度が次第に上がり、林が生い茂るだろう。芭蕉科の植物も秦嶺山脈を超えたところに生えるようになる。
 
 陝西省、甘粛省、寧夏回族自治区、新疆ウイグル自治区など、中国の広大な西部地区は緑豊かな山河になる。これは「10年以内に実現できる現実の風景だ」という見方も出ている。

中国全土を潤す
うれしい気候変動
 気候情報はさらに、次のような絵を描いてみせた。

「この状態が10年続けば、黄河は清らかな流れになるだろう。黄河流域はここ3年、中上流の両岸に広がる平原・高原地域での植生が回復し始めた。その植生が回復した分量は過去20年分の総量にあたる。
 
 以前は植樹に頼っていたが、樹木の下には草が生えていなかった(降水不足)。今は降水量が豊富なため、黄河中上流の両岸に広がる平原・高原地域の樹木の下には低木や下草が生え始めた。

 しかもうれしいことに、蘭の花も見かけた。蘭の花が生えるということは、土壌に含まれる水分が安定し始めたことを物語っている。そして、甘粛省の植生もそれに伴い回復し始めている。陝甘寧盆地、チベット、モンゴル、新疆の大地は緑になり、川も流れる」

 気候変動の功罪に関する評価と分析はさておき、こうした変化を想像するにつけ、今回、私は、このテーマで記事を書かないと気が済まなかったのである。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)
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中国の大気汚染、貧富の差で吸う空気が違う不平等
陳言
https://diamond.jp/articles/-/217239?page=5

中国の大気汚染、貧富の差で吸う空気が違う不平等
陳言:在北京ジャーナリスト

国際・中国 陳言の選り抜き中国情報
2016.11.24 5:00


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西安の環境保護局
空気採集口に“マスク”
?最近、西安市環境保護局に属する長安区観測所のエアーサンプラー(大気試料採集機)の採気口がガーゼのようなもので塞がれていることが、あるメディアの報道で明らかになった。

?この事件が明るみになるや、「西安のエアーサンプラーにはマスクが取り付けられている」と民衆から揶揄された。実際、同観測所の自動観測データに何度も異常が見られ、「環境観測データの捏造」などの疑いで、西安市環境保護局長安分局長と長安区観測所長などが警察に逮捕され、現在留置所に拘留されており、刑事責任が問われる可能性も出てきた。

?なぜ長安区観測所は捏造したのか。実は、環境保護データの捏造は、長年にわたって環境対策における公然の秘密となっていた。

?2015年1月1日、改訂された『環境保護法』が施行され、この機会に環境保護部も広範かつ厳格な取り締り運動を展開しようとした。2015年4月、環境保護部の呉曉青副部長(副大臣)は、全国環境観測現場会で、「一部の地方政府において、評価の圧力軽減や環境の質の目標達成などの目的で、行政管理部門が観測所に捏造や観測データの改ざんを指示したという事態が頻繁に発生しており、それによって政府や環境保護部門の社会的信頼性が著しく損なわれ、観測システムにも非常に大きなダメージを与えている」と表明した。

?環境問題専門家の王社坤氏の説明によると、環境保護データの捏造は大きく2種類に分かれる。1つは改ざんで、もう1つは偽造だ。

?偽造はありもしない物を作り出すことなので、比較的簡単に見破ることができる。政府部門であれ、企業であれ、偽造の方法や手段は大体同じで、「西安の観測所の職員が用いた捏造方法のレベルは非常に低いものだった」という。

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所得層によって大気汚染の防護対策に格差
?一方、改ざんは比較的複雑になっており、観測方式などもかかわってくる。例えば、データのサンプリングにおいて小細工をしたり、サンプル採取口を本物のサンプルのところに置かなかったり、またコンピュータウイルスを通じて管理システムを掌握するなどが挙げられる。

?欧米などの先進国や日本、台湾などでは、環境保護データの捏造は非常に深刻な違法行為とみなされているが、「中国における罰則は明らかに軽く、主に罰金や行政拘留処分が科されるに過ぎない」ということも王氏は語っている。

?西安市環境保護局長安分局長と長安区観測所長などが警察に逮捕されたような結果は中国ではどちらかと言えば非常に稀なことであり、マスコミが暴露しなければ、西安(長安)は捏造データを基に、著しく大気の浄化を進めた事例として上級機関から表彰されていたかもしれない。

所得層によって
大気汚染の防護対策に格差
?これまで、「大気汚染の前では、金があろうと権力があろうと何の役にも立たず、人々は平等だ」と言われてきた。

?だが、同じ空気を吸ってはいるが、運命を共にすることは難しい。中国社会の貧富の格差は弱者グループの健康におけるリスクをさらに拡大させていく可能性がある。そこで、政府が大気汚染対策に力を入れてようやく、人々の健康を大気汚染から守り、貧富の格差のマイナス影響を低下することができるのである。

?大気汚染による人々の健康への被害は、普通は体に長期的に潜み、しかも目に見えないところで発生している。近年、人々の健康への意識が高まってきている。政府が有力な対策で環境を改善し、国民の生活と健康に好ましい保障を提供できなければ、国民はより多くの対応策をとり、はなはだしきに至っては、引っ越しや国外脱出も考え得るだろう。

?大気汚染が深刻になればなるほど、人々の自己安全防護意識も強くなってきている。2013年末の大気質指数(AQI)が最悪の1週間を例にすると、マスクの売り上げは前週比で52.3%、空気清浄機は同じく74.1%も増えた。

?しかし、所得層によって、市民の大気汚染の防護対策にも格差が生じている。同じ都市に住んでいるとしても、富裕層は大気汚染の比較的軽い高級住宅地に住むことができ、屋外ではなく室内での仕事を選ぶ余裕がある。車があれば、外出時に車内で大気汚染による健康被害を減らすことができる。

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重い腰を上げた環境保護部門の改変
?その上、富裕層には高価かつ性能の良い防護設備を購入する財力がある。清華大学の研究によると、マスクの防塵効果はわずか33.0 %であるのに対し、空気清浄機は92.0%に達している。しかし、空気清浄機の1日当たりのコストはマスクに比べれば高く、10倍以上にもなる。

?ここで興味深い研究を紹介しよう。中米研究者の孫聡、マシュー・カーン及び鄭思斉の3氏はネットショッピングサイト「淘宝(タオバオ)」の消費データ(中国の34主要都市の1日当たりの平均ネット通販指数や、高・中・低所得層の月当たりの平均ネット通販指数など)を調査した結果、都市大気汚染の数値が高くなるにつれて、消費者はより多くの防護用品を購入するが、所得層によって防護用品の選択は異なっていることがわかった。

?中・高所得層は、高価かつ性能の良い空気清浄機などを購入するのに対し、低所得層は安価かつ効果の低いマスクなどを購入するという。また、大気汚染の濃度が警戒線を超える場合、低所得層はさらに多くのマスクは購入するが、さらに多くの空気清浄機を買うことはない。それに対し、高所得層はマスクと空気清浄機の両方をより多く購入し、二重の保障を受けられるようにしている。

?ここには、考えるに値する問題が潜んでいる。もし中産階層もお金を払うことできれいな環境を手に入れることができるというのであれば、政府に大気汚染防止や、大気質の改善を促す民衆の圧力も弱まるのではないか。大気汚染に対し、人々がみな「雪かきをするのは自分の門前だけで,他人のことには関わらない」という自己責任の態度をとれば、貧富の格差はさらに悪化する一方である。政府が大気汚染対策に大いに投資し、力を入れて取り組んではじめて、人々は健康被害から守られることが可能となる。

重い腰を上げた
環境保護部門の改変
?おそらく、これまで環境保護部門が機能して来なかったのは、他ならぬ役人たちが、一般市民と比べて悪い空気を吸わない階級に属しているからだろう。

?とはいえ、最近になってやっと、政府は重い腰を上げて行政の改革に取り組み始めた。

?さる9月22日、新華社の中央弁公庁、国務院弁公庁が印刷・発行した『省以下の環境保護機構のモニタリング・監察・執法垂直管理制度の改革テスト地点業務に関する指導意見』で、正式に市・県の環境保護機関の管理体制に対する調整が提起された。

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環境保護局がどこまで本気になれるかは未知数
?市クラスの環境保護局には省クラスの環境保護庁(局)を主とする二重管理が実行される。市クラスの環境保護局はこれまで通りの市クラス政府部門のままであるが、省クラスの環境保護庁(局)の党組織が市クラスの環境保護局局長、副局長の候補者を指名し、同市クラス党委員会組織部門と共に審査を行う。これにより、「市クラスの環境保護局の局長は市政府が任命する」という構造が変わることとなる。

?この「意見」の実施は、ずっと「牙なきトラ」といわれてきた環境保護部門を強い部門とするものであるといえる。

?環境保護部門は、一級地方政府の構成部門であり、機構の設立にあたっては、地方政府の指令を執行し、従来の体制では、その主だったポジションは地方政府により任免されるものであった。地方は発展を必要とし、環境は保護されなければならないというこの大きな背景のもとで、環境保護部門は苦しい立場に置かれてきたが、自ら違法企業の管理・監督・処罰をしたいと望んだところで、地方政府の管轄と制約を受けている。もし地方政府が一方でGDPを引き上げることを重視していれば、環境保護部門が環境法にのっとって厳しく処罰し、一部の汚染の深刻な企業を営業停止、ひいては閉鎖にまで追い込むことは、現地の経済指標に影響を与えることになる。

?ただし、環境保護局の局長がどこまで本気になれるかは未知数である。というのも、彼がもし本当に違法企業を厳しく処罰したら、地方のGDPの数字に影響を与え、現地の市の党委員会書記や市長らの幹部の怒りを買ってしまい、局長の座も危ういものとなるだろうからだ。そのため、現実では、地方の環境部門はほとんどのとき、「片目を開き、片目を閉じる(見て見ぬふりをする)」選択的な状態にあって、本当に事故が起きたときに初めて、その火を消しに行くのである。

?さらに問題なのは、環境部門は法による規制を行うための武器を持たないため、汚染企業に対するにらみが効かないことである。環境保護部門は、「自分は牙のないトラであり、自分に牙がないことを知られないかを心配している」と自嘲する。

?今度の改革では、かなりの程度、環境保護部門の「誰に対し責任を負うのか」という問題を解決している。改革後、環境保護部門は胸を張って政府システムの中の強い部門になることができる。人が強いのではなく、部門の背後にある上級部門が後ろ盾となるからである。

?2003年に筆者は日本での仕事を辞めて北京に帰り、数年ほど黄砂に悩まされた。年中満天の黄砂で10メートル先は何も見えない場合もあった。しかし、数年の植林などによって今日北京では黄砂についてはほとんど問題にならなくなった。空気などの汚染問題が本当に数年かけて黄砂問題のように解決されていくのか、今のところ本当に自信を持っている中国人はまだそう多くはない。
https://diamond.jp/articles/-/108991?page=4
http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/782.html

[自然災害22] 首都圏を直撃する台風19号、今からできる危機管理とは?
首都圏を直撃する台風19号、今からできる危機管理とは?

2019/10/11

中澤幸介 (リスク対策.com編集長、新建新聞社常務取締役)

 千葉県を中心に大きな被害をもたらした台風15号に続き、大型で猛烈な強さに発達した今年最強の台風19号が10月12日からの3連休、日本列島を直撃する可能性が高まっている。昨年、大阪を直撃した台風21号では、東日本大震災に迫る損害保険の支払額を記録するほどの被害を出した。もしこの大型台風が首都圏を直撃したらどうなるのか、どう備えればいいのか?

 災害による被害を正確に予測することは難しい。仮に予測できたとしても、予測した被害をハード・ソフト対策などにより全て予防するということも、時間的、資金的な制約があり現実的ではない。従って、予測・予防を高めながらも、万が一想定していなかった事態が生じても命を守り、被害を最小限に抑えられる行動を取るというのが危機管理のセオリーになる。


(Araya Netsawang/gettyimages)
停電

台風15号で停電した南房総市内の信号
 まず、予測しなくてはいけないことは停電である。今年9月に千葉県を襲った台風15号では、鉄塔の倒壊や倒木などによる電線の切断、電柱の倒壊、さらには火力発電所の被災などにより大規模な停電が発生した。2012年にニューヨーク市を直撃したハリケーンサンディでも大規模な停電が発生している。最も起き得るリスクとして想定すべきだろう。

 では、具体的に、どう備えればいいのか。

 まず、基本となるのが備蓄だ。これはあらゆる災害に共通している。例えば水や食料、乾電池など生活物資の見直しと買い出し。日常的に備蓄しておくことが望ましいが、台風15号での経験もあり、今回は、災害の直前に買い占めに走る人が多いことが予想される。確実に台風が来るかどうか分からなくても、備蓄量に不安があるのであれば、数日前の時点で購入しておいたほうがいい。

 ガソリンなど車両燃料も同じで、台風の接近直前、あるいは被害が出た後では入手できなくなる可能性が大きい。非常用発電機があればなおいいが、少なくともスマホやパソコン、その他、蓄電器はフル充電しておく。最接近の時間が分かれば、炊飯器のタイマーは使わず、その前に翌日のご飯を炊いておく、冷蔵庫は最も温度を低くしておく(停電したらしばらく開けないことで長期保存が可能になる)、洗濯も台風前に済ませておく。現金を多めに下ろしておいた方がいい。

 千葉県では大規模な停電で浄水場までもが被災し水道水が出なくなる地域があった。もちろん、マンションでは停電で水道が使えなくなる可能性が高いので、常にお風呂に水を入れておく(台風が来る時間が分かれば、その日は台風接近の前に入浴を済ませ、お湯を張り替えておく)。風が強まってきたら停電に備えて、なるべくエレベーターを使わないようにするのもリスク回避策の1つだ。

風害

南房総市内 被災した建物
 風害の被害も軽視できないことは、今さら言うまでもない。台風21号では、この風害により、損害保険の支払い額が東日本大震災に迫る額にまでになった。西日本全域に大きな被害を出し200人以上の犠牲者を出した西日本豪雨の保険支払い額が1956億円だったのに対し、台風21号は1兆687億円と桁が1つ違う(東日本大震災の支払額は1兆2346億円)。

 今回の台風15号も数千億円の支払い額と見積もられていることから、いかに風害が大きな被害をもたらすかが分かる。台風21号の損害保険支払い額は、その半額を超える6007億円が大阪府内での支払いとなっていて都市部での被害が大きくなることを裏付けている。

 大阪府でこれほど大きな被害が出た要因は、風速45メートルという強風によるものだ。特に大阪市内では規模の大きな建物の周辺の狭い範囲で複雑な「ビル風」が発生したと見られており、それが大きな被害をもたらしたと考ええられている。

 当然、風速により威力は異なる。気象庁によれば瞬間風速40メートルで走行中のトラックが横転する可能性があり、60メートルになると住家が倒壊、鉄骨構造でも変形する可能性がある。

 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kazehyo.html

 2005年に米国ニューオーリンズを襲ったハリケーン・カトリーナは最大風速が78mを記録したが、小石1つで住宅や店の窓が粉々に割れるなど、風害だけでも甚大な被害があったことが報告されている。風速次第では、高層ビルの窓ガラスが割れる可能性も否定できない。割れ落ちた窓や、小石、看板など町中のあらゆるものが凶器となって人々を襲う可能性もある。

 暴風対策としては、窓を守ることは台風対策の基本となる。台風15号の被害では、瓦や植木鉢が風で舞い、多くの施設の窓や壁を破壊した。割れた窓からは強風が入り込み屋根を吹き飛ばした事例もあった。風が強まる前にはシャッターや雨戸を締め、鍵もしておく。もしシャッターや雨戸がなければ、養生テープで窓全体を補強する(タテ、ヨコ、ナナメと、できるだけ窓全体がカバーできるように数本ずつ貼り付ける)。

 あるいは、窓に段ボールや板を貼る。網戸は外してしまっておき、万が一、窓が割れた場合に備え、カーテンもしめておいた方がいい。台風の接近する時間帯が昼間だと、外の風景が気になるが、シャッターや雨戸は台風が通過するまでは開けるべきではない。その他、強風で飛んでいきそうなものがあれば、しまっておくことや、しっかり固定しておくことも重要だ。企業に対しては、看板類などを週末に入る前に建物内に入れておくことをお願いしたい。

 さらに強風時は外を出歩かないことも重要だ。台風15号では、東京都内に住む50代の女性が道路を歩いていて強風にあおられ、建物の外壁にぶつかり死亡した。また、87歳男性は、倒木の下敷きになって死亡している。

 その他、個人でできる対策は以下の通り。

雨戸にガタツキやユルミがないようにする
アンテナやプロパンガスボンベをしっかり固定しておく
物干し竿をしまう
植木類をしまう、庭木に支柱を立てて補強する
自転車を固定してく
ゴミ箱や看板などもしまっておく
外に洗濯機を置いている場合は、水を十分に張って重くした上でフタを閉じ、フタをテープで本体に留めておく
豪雨・高潮
 高潮の被害も甚大だ。一般的に台風の中心部は気圧が低く、気圧が1ヘクトパスカル下がると海面が1cm上昇する。台風による「吸い上げ効果」と呼ばれるもので、さらに台風に伴う風が沖から海岸に向かって吹くと、海水は海岸に吹き寄せられて「吹き寄せ効果」と呼ばれる海岸付近の海面上昇を引き起こす。

 この場合、「吹き寄せによる海面上昇は風速の2乗に比例し、風速が2倍になれば海面上昇は4倍になる」(気象庁HPより)という。東京都が2018年3月30日に発表した「想定し得る最大規模の高潮による浸水想定区域図」では、最悪の場合、都内東部を中心に17区に浸水が広がり、23区の3分の1にあたる約212平方キロメートルが浸水するという想定となっている。台風15号ではこの高潮により、神奈川県内で沿岸部の企業や商業地で被害が相次いだ。このほか、豪雨による河川の決壊、内水氾濫なども想定される。

 http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/03/30/03.html

 豪雨・高潮対策としては、あらかじめハザードマップなどで自分のいる場所の浸水リスクを把握した上で、自治体の避難情報に従い、あるいは大雨・暴風になる前に、それぞれの判断で早めに避難をすることが重要だ。台風の特徴は、来るタイミングが分かることである。早めに避難することは最も有効な対策となる。

 自治体もぎりぎりになって避難情報を出すのではなく、今から避難所を開設しておくぐらいの対策をしてほしい。さらに、企業などで浸水が防げない場合は、コンピューターや重要な設備をなるべく高い場所で窓際からは離れた場所においておくことも有効かもしれない。

環境の変化
 もう1点、平時と異なる環境の変化についてもリスクとして挙げておきたい。それはワールドカップ開催に伴う外国人の増加である。多くの外国人には台風情報が伝わっていないことを想定しなくてはいけない。そのような中で、台風が直撃した際に外国人へどう情報を提供するのか。外国人が被災すれば、その情報は瞬く間に世界中に広がり、来年の東京2020にも影響を及ぼす。

 最後の外国人への対応については、行政が中心に多国語で今の段階からしっかり情報発信をすることが重要だ。また、公共交通機関、ホテル、飲食店などでも、外国人顧客に対し注意を呼び掛け、不要不急の外出を控えてもらうなど、注意を促していく必要がある。

 これらは対策の一例だが、台風による被害をイメージして、今のうちからできる対策をしておくことが大切だ。最後に、週末も営業をしている業種では、再度、社員に対して命を最優先に行動することを伝えてもらいたい。被害を受けてしまってから時間を巻き戻すことはできない。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17604
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/745.html

[自然災害22] また首都圏直撃か、猛烈台風が次々襲う必然性 もやは気温下げる機能失ったフィリピン海、インド洋、カリブ海
また首都圏直撃か、猛烈台風が次々襲う必然性
もやは気温下げる機能失ったフィリピン海、インド洋、カリブ海
2019.10.11(金)
伊東 乾
世界情勢 環境 時事・社会 

海水温が高くなり、発生する台風が増え、また巨大化、猛威化している
ギャラリーページへ
 またしても台風です。19号も日本上陸の可能性があるらしい。「もういい加減にしてくれよ!」と思っておられるかたが大半ではないでしょうか。

「もう10月だよ。しかも半ばに差しかかっている。どうして台風なんだよ!」

 これが「気候変動」そのものにほかなりません。地球環境は本格的に「変わってしまった」。

 セクシーとかクールとか、世迷いごとで何とかなるような話では、とうの昔になくなっている。そのことを最初に確認しておきたいと思います。

 千葉県を中心に甚大な被害を出したのが「台風15号」でした。

 それから「台風17号」「台風18号」と、連続して沖縄や朝鮮半島南部、日本各地を襲った嵐は、各地に大きな被害と爪痕を現在進行形で残し続けています。

 台風15号の被害だけで、3.11の被害額を上回る見通しというのは、早春の農閑期に襲いかかった津波以上に、収穫を待つ農作物を直撃した秋の嵐の影響の方が甚大であったことを如実に示しています。

 農作物だけではない。停電は漁業にも深刻な被害を与えました。

 停電は、冷凍庫の製氷機も、まるごと止めてしまいます。生け簀のポンプも止まってしまい、魚が窒息して死んでしまう。

 早期であれば出荷も不可能でないかもしれなかったけれど、冷凍庫も製氷機も動かない。死んだ魚を腐るに任せるしかない・・・。

温度上昇を「比熱」で考える…

 気候変動の影響というのは、7月や8月ならまだしも、9月、10月になっても夏日が続き、台風が繰り返し押し寄せる。

 そのたびに老朽化した各地のインフラを直撃し、農作物や水産物に致命的な打撃を与え、河川敷にとめた駐車場の車をまるごと水没させる目の前の現実を示しています。

「CO2削減、ピンとこないね」というリテラシーの低い層に対して「ク―ルで」「セクシーな」キャンペーンを打つといった、ポストトゥルース250%のPRで、何とかなるような話では、全くありません。

温度上昇を「比熱」で考える
 天気予報をご覧になると、南太平洋で発生した熱帯低気圧が、フィリピン近海の温度の高い海の上で発達し、台風19号は今年発生する台風の中で最大規模になったと言っているのを、耳にされたかと思います。

 千葉を直撃した台風15号よりも、もっと大きな台風がこれからやって来ると言っている。でも進路によってどのような被害が出るかはまだ分からない。まさに「風任せ」の状態です。

 どうしてこんなことになっているのかを考えてみましょう。

 正直言って、34〜35年ほど前、私自身が大学生だった頃、「地球温暖化」「CO2排出」などに関して、ピンときませんでした。

 大学4年の時(私は理学部で物理を学んでいました)、ある先生のリポートでCO2の温室効果に関する問題が出、調べたのを覚えています。しかし、あまり実感は湧きませんでした。

 気温が上昇していないわけではない。ただ、その上昇は極めて緩やかで、20歳過ぎの私の了見では、問題の所在や深刻さがよく分からなかった。

 そういう子供に対しては「セクシー」で「クール」なキャンペーンも有効だったかと思います。

バカにできない水の比熱…

 しかし「クール」にしていたのは別の要素だったのです。サイエンスを援用して冷静に考えてみます。

「空気」は比較的温まりやすく、かつ冷めやすい物質です。

 湿度100%の空気1キログラムを1度上昇させるのに必要なエネルギーは1030ジュールほどです。これが湿度0%、乾燥した空気になると1005ジュールほどと、さらに少なくて済みます。

「ほど」と書いているのは不正確ではなく正確を期すためで、実際には温度や圧力が違うことで変化します。「ボイル・シャルルの法則」として高校でも教える内容に繋がってきます。

 よく、「鉄は熱しやすく冷めやすい」と言いますね。

 鉄を1キログラム、1度温度を上げるのに必要なエネルギーは444ジュールほど、つまり空気の半分もありません。

 これが銅になると385ジュール程度、金だと129ジュールくらいと、どんどん温まりやすくなります。いま示したような「物質の温まりやすさ」を比熱と呼んでいます。

バカにできない水の比熱
 銅の鍋でシチューなどを煮込むと、熱の通りがいいわけです。欧州のシェフは「アカの鍋」を愛用する道理です。

 また歯医者さんが金冠を用いるのは、装飾品として金が高価だからではなく比熱が低いので違和感が少ないのが第一の理由と言っていいでしょう。

 さて、そんな中で「水の比熱」は4200ジュールほど、と極めて高いことが広く知られていると思います。

 水は人間の生活になくてはならないものです…
 水は人間の生活になくてはならないものですから、改めてこれを基準として、「水1グラムを大気圧のもとで、摂氏14.5度から15.5度に温度上昇させることができる熱量」として、4.184ジュールのエネルギーを「1カロリー」と定義しています。

 この「カロリー」はダイエットなどで日常生活にも登場すると思います。

「一日に必要な食物のエネルギー量は2600キロカロリー」

「ダイエットしたいのでこれを基礎代謝ぎりぎりの1500キロカロリーに絞らなくちゃ」

「糖尿病で食事制限、お茶碗一杯のごはんは約120キロカロリー」

 なんていう量です。ごはん1杯のエネルギー量とは、それを完全に消化したとき、水120キロを1度、温度上昇させることができる程度、あるいは水12キロを10度、温度上昇させることができる程度ということになる。

 意外に思われるかもしれませんが、生物、特に恒温動物が体温を維持するには、結構莫大なエネルギーが必要なのです。

 成人が1日に必要とする栄養が1500キロカロリーとか2600キロカロリーというのは、

1500=50×30 とか 2600÷36=72.2・・・などと計算してみると

 50キロの水を30度、温度上昇、あるいは体重72キロの身体を水と考えて、それが0度から36度まで体温上昇する(というのは生物学的にはナンセンスですが、物理化学のザル勘定は成立するわけで)のに必要な熱量・・・と感じが掴めるかと思います。

冷却水が熱源に変わるとき…
閑話休題。要するに水は空気よりも4倍も、温まりにくい。

 これは「温まりにくい」のと同時に、一度温まったら「冷めにくい」ことも同時に意味します。

 私たちの祖先は「湯たんぽ」にお湯を入れました。夜準備して、朝まで生暖かいことも普通でしょう。

 病気をすれば氷枕を使い、けっして鉄の枕は使わない。金属はひやりとしますが、すぐに温まってしまいます。

 ステーキ店の鉄板は、初めこそジュージューと美味しそうな音を立てていますが、1〜2分もすると急速に放熱して、食事が終わる頃には手で触ってもやけどしない温度まで冷めている。

 物理現象は正直で嘘をつきません。いままでは、熱しにくい地球の大半の表面を囲む水、海水温が上昇することで、温まりやすい気温の上昇を抑えていた。

 それが逆転してしまったことが、いま日本列島を直撃している台風の直接的な原因と考えることができるでしょう。

冷却水が熱源に変わるとき
 人類が第2次世界大戦後の高度成長期から急激に排出してきた温室ガスその他の<温度上昇効果>は、初め大半が「水」という、より温まりにくい物質が吸収してくれていた。

 つまり「海」が「冷却水」クーラーの役割を果たしてきた。別段「クールな環境対策」などというポエムは必要がなかった。

 気温は上昇しやすいけれども冷めやすい。大気と接する広範な水が熱を吸収してくれれば、気温の上昇は微々たるものとなり、海水温の上昇もほとんど目立たない。

「地球温暖化」や「気候変動」は大したことで…
「地球温暖化」や「気候変動」は大したことではないと多くの地球市民が軽く考える道理です。

 米国のドナルド・トランプ大統領のようなポピュリストは企業営利を優先させたかもしれない。

 しかし、一度温まった水は冷めにくい。

 それは北極や南極の氷を溶かし、海流に変化をもたらすとともに、赤道直下の海水の温度も確実に上昇させてしまう。

 太平洋や大西洋は、まだ北極、南極と繋がっているので「氷で冷ましてもらう」ことができますが、それができない海があります。

 例えばインド洋。赤道から北に水が流れようとしても、ユーラシア大陸がありますから「氷枕」で熱を冷ますことができません。

 つまりインド洋をクールにする熱の逃げ道がない。当然ながらセクシーな熱の逃げ道などというものもない。

 あるいはフィリピン海、やはり中国から日本列島、カムチャツカ半島に至る陸地の存在で、温められた海水は冷却されにくく「熱源」としての海が成立してしまっている。

 いままでは「冷却水」として機能していた海が、南太平洋で生まれた「熱帯低気圧の子供」を、大きく成長させる「揺籃」に変化し、巨大な台風に育て上げたうえで北半球に送り出すようになっている。

 クールではなくホット、セクシーではなくバイオレントな暴風雨となって日本や韓国を直撃し、電柱を倒し屋根を吹き飛ばしている。

 ちなみに米国テキサス州、ヒューストンなど…
 ちなみに米国テキサス州、ヒューストンなどで深刻な被害を生み出しているハリケーンや集中豪雨も、ほぼ並行するメカニズムで「育てられた」ものと理解されます。

 この場合は北アメリカ大陸、フロリダ湾など熱の逃げ場のない海域の「ひなた水」が、「人類史上かつてない規模」のハリケーンを作り出している。

 いまになってみると2017年、つまり「温暖化は虚妄」とうそぶいたドナルド・トランプ大統領が当選した年が臨界点となって、地球環境、気候はすでに「変動」してしまった。ギアは「冷却水」から「加温水」へと倒されてしまった・・・。

 このように過不足なく「気候の変動」を考える必要があります。

 日本列島の気候も同様に考えて対策を立てる必要があるでしょう。2017〜2018年以降、大型化傾向が高まっていた台風災害は、2019年、明らかに従来と違う状況を示しています。

「そういう年もあるさ、また来年は風向きが変わるだろう」と風任せ、運任せに考えていいほど、一過性の出来事でないのは、インド洋やフィリピン海の温められた水の熱を逃がしてやる「低温熱源」がないことから明らかです。

 では、そうした余剰のエネルギーはどこに行くのか・・・「台風」にほかなりません。

 エネルギー保存則は全宇宙で厳密に成立する自然法則です。日本で電柱を倒したり、屋根を吹き飛ばしたりする台風の猛威も、それにエネルギーを供給するリソースがなければ決して育つことはありません。

 フィリピンから東シナ海にかけての海は「温まりにくい」水が「冷めにくく」なるまで、すでに十分に加温されてしまっている。

 偶然や一過性の出来事で、台風が続々と生み出されて沖縄や朝鮮半島、日本列島を襲っているわけではない。加速へのギアはすでに入ってしまった可能性があります。

 2020年、またそれ以降の日本列島の気候は、もっと変化してしまう高いリスクが懸念されます。

 これに対して、中身がないポエムで執れる対策など一つもありません。実直に備える必要があります。

(つづく)

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[国際27] 焦点:トルコのシリア侵攻、ロシアの中東戦略に希望とリスク トルコ、シリア侵攻で自縄自縛か 米制裁なら経済に打撃
トップニュース2019年10月11日 / 14:22 / 9分前更新
焦点:トルコのシリア侵攻、ロシアの中東戦略に希望とリスク
Andrew Osborn Tom Balmforth
2 分で読む

[モスクワ 10日 ロイター] - トルコが9日、国境を越えてシリアへの軍事作戦を開始した。中東地域への影響力拡大をねらうロシアにとって、米軍引き揚げの隙を突く貴重なチャンスと言える。だが、プーチン大統領に近い関係者からは、トルコの軍事行動が長期化するほど、ロシア外交のリスクは増大するとの警告も聞こえてくる。

複数の関係者によると、プーチン氏は、トルコのエルドアン大統領からシリアのクルド人武装勢力を掃討すると事前に知らされた。その電話会談で、プーチン氏は期間と規模の両面で掃討作戦を限定的なものにとどめるよう強く希望したという。

「この対立は解消が早ければ早いほど、誰にとっても有益だ。トルコ側は、シリア政府軍と地上でぶつからないよう全力を挙げてほしい。ロシア兵との衝突はなおさらやめてもらいたい」と親プーチン派のロシアの有力上院議員、アンドレイ・クリモフ氏は言う。

<軍事支援と和平協議のかじ取り>

ロシアには微妙なかじ取りを迫られている。

同国はアサド政権が8年間の内戦で失った領域を空軍力を駆使して全て取り戻す手助けをするとシリアに約束し、国土の一体性が重要だと繰り返してきた。

一方、ロシアはトルコやイランと協力してシリア内戦の和平も進めている。和平を実現すれば、シリアの政治体制を左右する力を得るとともに、戦争するばかりではなく地域紛争を解決する力もあるということを証明できる。ロシアにはそうした期待がある。

だた、ロシアの和平への取り組みは「まやかし」で、アサド政権の正統性を取り戻し、欧州連合(EU)やペルシャ湾岸諸国からシリア復興資金を呼び込む手段にすぎないとの批判も聞かれる。

それでもプーチン政権にとって、内戦終結はロシアが中東で新たな政治力を確立することを意味する。特に米国がこの地域と距離を置こうとしている今、ロシアは自分たちの勢力扶植に躍起となっている。

<トルコの強硬作戦にはくぎ>

トルコ政府は、シリアのクルド人武装組織「人民防衛隊(YPG)」について、トルコ国内の反体制的なクルド人勢力と関係があるとの理由で「テロリスト集団」とみなしている。エルドアン政権による掃討作戦が長引いたり、泥沼化する可能性もある。そうなるとロシアの外交的な努力が水泡に帰すかもしれない。

全ての関係者は自制して欲しい、とプーチン氏側近のユーリ・ウシャコフ氏は言う。同氏は10日、「政治的な和解達成のために講じられた措置に打撃を与えないような現実的手段を慎重に考えることが重要だと思う」と強調。ロシアがお膳立てしているシリア憲法委員会の29日の初会合が滞りなく行われるよう求める一方、トルコの攻撃で市民に被害が出るのはロシアにとって受け入れられない、とくぎを刺した。

ロシアのラブロフ外相は10日、同国は既にシリア内戦の解決プロセスにおいて仲介者の役割を担っていると明言した。

このプロセスでは、トルコとシリアの協議、またアサド政権と国内のクルド人との協議が重要になる。シリアはトルコの国外への撤退を求めている。また、アサド政権は国内のクルド人が求める自治権を認めてこなかった。二つの難しい協議をロシアがそれぞれ取り持つ可能性があるということだ。

ラブロフ氏は記者団に、シリア政府とクルド人はいずれもロシアの行動を熱望していると指摘し、仲介を試みると表明した。

<成功すればプーチン氏に「相当な得点」>

英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のMathieu Boulegue研究員は、イスラエルやイラン、トルコ、クルド人勢力、シリアのアサド政権などこの地域の全ての当事者に対して同時に話ができるのは、恐らくロシアだけだろうとの見方を示した。

プーチン氏にすれば、各方面の仲介が成功すれば相当に意味のある政治的な得点になる。

ロシア外務省系のシンクタンク、ロシア国際問題協議会のアンドレイ・コルチュノフ所長は「プーチン氏が事態収束にこぎ着ければ、それは大きな政治的勝利とみなされる」という。「プーチン氏は米国が手に負えなかったのにわれわれが成し遂げたと主張するだろう。ロシアの和平アプローチの方が、地政学的な敵対勢力の行動よりも有効だという意味にもなる」。

今後のロシアの動きについて、元外交官のウラジミール・フロロフ氏は、トルコの軍事作戦が限定的なものにとどまり、和平への取り組みを阻む公算が小さいことがわかれば、ロシアは容認しそうだ、とみている。

また同氏は、たとえトルコが作戦を拡大しようとして和平プロセスに影響が出そうであれば、ロシアはシリア国内に配備した防空システムと航空基地によってその企図をくじくことができると明言した。
https://jp.reuters.com/article/russia-middleeast-turkey-idJPKBN1WQ0F0


トップニュース2019年10月11日 / 14:07 / 24分前更新
焦点:
トルコ、シリア侵攻で自縄自縛か 米制裁なら経済に打撃
Jonathan Spicer Nevzat Devranoglu
2 分で読む

[ベイルート/アンカラ 11日 ロイター] - トルコはシリアでの軍事作戦によって自縄自縛に陥るかもしれない。米議会の共和党指導部は対トルコ制裁をちらつかせており、実現すれば景気後退から立ち直りかけた同国経済は打撃を被りかねない。

トルコは1年前、米国による制裁と関税が一因となって通貨危機に陥ったが、ここ数カ月は通貨リラが落ち着きを取り戻してインフレ率も下がり、経済は過去20年で最悪の景気後退から脱した。

しかしシリア北部からの米軍撤収と、トルコ軍によるクルド人勢力への攻撃開始を嫌気し、通貨リラは足元で約4カ月ぶりの安値を付けている。

トルコ中央銀行は貸し出しを促進するため7月から利下げを開始し、追加利下げも期待されていたが、10日までに期待はかなり後退した。

トルコ軍による軍事作戦が泥沼化するようなら、経常収支赤字の拡大や資金調達コストの上昇、観光への打撃などのリスクが生じる。

しかし、トルコ資産にまだ織り込まれていない最大の脅威は、米共和党議員による制裁の動きだろう。

普段はトランプ米大統領の強力な擁護者であるリンゼー・グラム上院議員は、大統領による米軍撤収の決断を批判。9日には民主党議員らとともに対トルコ制裁の枠組みを明らかにした。

提案はエルドアン大統領らトルコ高官の資産を標的にしているほか、ビザ(査証)発給の制限、トルコとの軍事関連取引や同国のエネルギー生産支援に携わった者への制裁を盛り込んでいる。

グラム氏の案によれば、トルコは米国の反対を押し切ってロシア製ミサイル防衛システム「S400」を購入した件を巡っても、幅広い制裁を科される可能性がある。

<脆弱な経済>

コメルツバンク(フランクフルト)のFX調査責任者、ウルリッヒ・ロイヒトマン氏は、より幅広い制裁を科されれば「トルコ経済の景色は一変し、昨年の危機で脆弱になった経済がまた景気後退に陥る可能性も覚悟せざるを得ない」と言う。

米議会がグラム議員の案を承認するか、またトランプ大統領が拒否権を発動した場合に3分の2の賛成を得てそれを覆せるかは、定かでない。

トランプ氏は今週、トルコがシリア問題で一線を超えればトルコ経済を「壊滅」させると述べたが、その真意は明らかにしておらず、同氏が制裁を支持するかどうかも分からない。

トランプ氏は昨年、トルコに拘束した米国人牧師の解放を迫り、限定的な制裁と一部輸入品の関税引き上げを実施した。

<リラ下落、利下げ予想後退>

リラは昨年30%近くも下落した。今週に入ってからは3%超下がり、1ドル=5.90リラに近付いている。トレーダーによると、どの水準まで下がれば国有銀行が介入を始めるかは不明だ。

今週はトルコの債券と株も急落し、主要株価指数は5%以上の下落となった。

トルコの上級バンカーは「米国との関係は重要な懸案事項だが、まだ予想がつかない」と述べ、米国でエルドアン氏とトランプ氏の会談が予定されている11月13日までは少なくとも、懸念が続くとの見方を示した。

短期金融市場では先週まで、現在16.5%の政策金利が年末に13.5%まで下がると予想されていた。しかし、現在は、利下げ予想が後退し、市場が織り込む年末の水準は15%となっている。

FILE PHOTO: A merchant counts Turkish lira banknotes at the Grand Bazaar in Istanbul, Turkey, March 29, 2019. REUTERS/Murad Sezer
<民族主義>

トルコ軍のシリア侵攻により、同盟国である米国との関係に新たな緊張が走った。しかし、エルドアン氏はトランプ氏との間には「別種の信頼」があると述べている。

米議会が新たな制裁を決めれば、トルコで反感を巻き起こしかねない。エルドアン氏は9日、侵攻を非難した欧州諸国を批判し、民族主義的な感情を鼓舞する演説を行った。

オックスフォード大の客員講師、ガリップ・ダレー氏は「目下、トルコの民族主義熱はうなぎ上りだ」と指摘。米議会が制裁を承認すれば、「アンカラの市民は(ミサイル防衛システムを購入して)ロシアに近付いた決断は正しかった、自分たちにトランプ氏は同情的だが、ワシントンの他の支配者層である米議会は敵対的だと確信するだろう」との見方を示した。
https://jp.reuters.com/article/turkey-economy-kurd-idJPKBN1WQ0C6
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/516.html

[経世済民133] 日本が「生産性が低すぎる国」になった五輪イヤー 衰退への一手を打った法律とは 景気後退予想は4割、日銀追加緩和には過半数が反対 10月ロイター企業調査
日本が「生産性が低すぎる国」になった五輪イヤー 衰退への一手を打った法律とは?
2019年10月11日(金)12時30分
デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社社長)※東洋経済オンラインより転載

日本経済の問題点は、突き詰めていくと「1本の法律」に行き着くといいます(撮影:梅谷秀司)


オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼が、ついにたどり着いた日本の生存戦略をまとめた『日本人の勝算』が刊行されて8カ月。生産性を高める具体的な方法を示した新著『国運の分岐点』(講談社+Α新書)が刊行された。

日本に足りない「要因分析」とはどういうことか、生産性が低い現実を「要因分析」すると何がわかるのか。解説してもらった。
前回の記事(「中小企業の改革」を進めないと国が滅びるワケ)に対するコメントの中に、よくある誤解に基づいたものがありました。極めて重要なポイントですので、ご紹介したいと思います。

「町のラーメン屋が多すぎるといって10軒を1軒にまとめたところで中国には勝てません」

私の主張はまったく違います。今は10軒のラーメン店の裏に10社の企業があるので、10軒のラーメン店をそのままにして、それを所有している企業を2、3社にまとめようということです。

日本の生産性が低いのは「働き方」の問題ではない
さて、日本の生産性が一向に上がらず、デフレからも脱却できないという厳しい現実に対して、これは日本人に働き方に問題があるからだと主張する方たちが多くいらっしゃいます。

日本人はすばらしい能力をもっているのに、働き方が悪いのでその実力が引き出されていない。だから働き方を変えれば景気もよくなっていく、というのが彼らの主張です。

しかし、経済分析の世界では、これは「願望」というか、まったくの見当外れな分析だと言わざるをえません。これだけ大きな国の経済が「働き方」程度の問題によって、20年も停滞することなどありえないからです。

では、何が日本の生産性を低くさせているのでしょうか。これまで30年にわたって、日本経済を分析してきた私がたどり着いた結論は、「非効率な産業構造」です。高度経済成長期から引きずっている時代錯誤な産業政策、非効率なシステム、科学的ではない考え方などが日本の生産性を著しく低下させているのです。

次のページ生産性の問題を「労働者」に押し付けてはならない
ただ、日本国内ではこのような意見を掲げる人はほとんどいらっしゃいません。政治家、エコノミスト、財界のリーダーたちの大多数は経済低迷の要因を、「産業構造」に結びつけず、ひたすら「労働者」へと押し付けています。

このあまりに"残念な勘違い"を象徴しているのが、「働き方改革」です。

残業を減らし、有給休暇を増やす。女性にも高齢者にも、働きやすい環境を作る。そうすれば、労働者のモチベーションが上がって、これまで以上によく働く。その結果、会社の業績も上がるので景気がよくなる。

驚くほど楽観的というか、ご都合主義な考え方です。繰り返しますが、この程度の施策で巨大国家の経済が上向くのなら、日本はとうの昔にデフレから脱却しています。20年も経済成長が滞っているという事実こそが、労働者個人の頑張りでどうにかなる問題ではないことを雄弁に物語っているのです。

日本に欠けているのは「徹底した要因分析」だ
そこで次に疑問として浮かぶのは、なぜこうなってしまうのかということでしょう。なぜ表面的な経済議論しか行われないのか。なぜ国の舵取りをするリーダーや専門家から、泥縄的な解決策しか出てこないのか。

1つには、日本では「徹底的な要因分析」をしないという事情があります。この30年、多くの日本人と議論を交わして気づいたのは、経済の専門家を名乗る人たちでさえ、起きている現象についての知識はすごいものの、その原因を徹底的に追求することはほとんどありません。原因の説明は表面的な事実をなぞるだけで、「なんとなくこういう結論になるだろう」と直感的な分析をしているのです。

どういうことかわかっていただくため、多くの識者が唱える「女性活躍で生産性向上」という主張を例に出しましょう。

生産性の高い先進国では女性活躍が進んでいるという事実があります。一方、生産性の低い日本では、女性活躍が諸外国と比較して際立って進んでいないという、これまた動かしがたい事実があります。この2つの事実をもって、専門家たちは、日本も諸外国並に女性に活躍してもらえば、諸外国並に生産性が向上するに違いない、と主張しているのです。

確かにそういう理屈も成り立つかもしれませんが、実はここには大きな落とし穴があります。「日本の女性活躍が諸外国と比較して際立って進んでいない」ということの要因を分析できておらず、「日本は伝統的に女性が蔑視されている」「働きたくても保育所が不足している」という、なんとも大雑把な話しか語られていないのです。

このあたりの要因分析を徹底的に行えば、「保育所さえあれば女性が活躍できる」という極論がいかに表面的な分析に基づく主張かということは明白です。

海外の要因分析では、女性が活躍できていない国は、労働人口の中で、規模が小さくて経済合理性の低い企業で働く労働者の比率が高いという傾向があることがわかっています。

これは冷静に考えれば当たり前の話です。小さな企業は産休や育休、時短などの環境整備が難しいので、どうしても女性が働き続けることのハードルが高くなるのです。これが一次的な問題です。女性を蔑視する価値観や保育所の数などは、あくまで二次的な問題にすぎません。

次のページ大切なのは「産業構造」を変えること
当然ながら、まずは女性が活躍できる産業構造に変革した後で、具体的な環境作りに取り組むべきです。しかし、一次的な問題を解決せずに、二次的な問題を解決するだけでは、根本的な解決にはなりません。つまり、女性活躍というのは、女性蔑視うんぬんや保育所の数という二次的な問題より、その国の産業構造によって決まるというのが世界の常識なのです。
このような要因分析をロクにしないまま「女性活躍」を叫んで、働くように女性の背中を押しても、生産性向上につながるわけがありません。
これは同じく生産性向上が期待されている「有給休暇」についてもまったく同様です。
生産性が高い国では、有給休暇取得率が高い傾向があります。そして、日本は有給休暇取得率が低いということで、これを高めていけば、生産性も上がっていくだろうというわけです。しかしこれを本気で進めるのならば、そもそもなぜ日本の有給休暇取得率が低いのか徹底的に要因分析をしなくてはいけません。
日本では、「日本人の真面目な国民性が関係している」「日本は集団主義で職場に休みにくい雰囲気がある」と、これまた直感的な理由しか出てこないでしょうが、海外では「有給取得率は企業規模と関係する」という要因分析がなされています。大企業になればなるほど有給取得率が上がり、小さな会社になればなるほど下がることがわかっているのです。この傾向は万国共通で、日本も例外なく当てはまります。

つまり、アメリカの有給取得率が高いのはアメリカ人の国民性ではなく、単にアメリカの労働者の約50%が大企業で働いているから。日本の有給取得率が低いのも日本人の国民性ではなく、単に日本の労働者の中で大企業に勤めている人が約13%しかいないからなのです。
長く分析の世界にいた私からすれば、国民性うんぬん、労働文化うんぬんというのは、科学的な分析から目を背けて、自分たちの都合のいい結論へと誘導していく、卑劣な論法だと言わざるをえません。
日本の低迷の主因は伸びない中小企業
さて、このように日本の専門家があまりしてこなかった「要因分析」というものを、日本経済を低迷させている諸問題に対して行っていくと、驚くべきことがわかります。
実は日本経済の低迷も、女性活躍や有給取得率でもそうだったように、最後は必ず「小さな企業が多すぎる」という問題に突き当たるのです。低賃金、少子化、財政破綻、年金不足、最先端技術の普及の低さ、輸出小国、格差問題、貧困問題......さまざまな問題の諸悪の根源を容赦なくたどっていくと、「非効率な産業構造」という結論にいたるのです。
それはつまり、日本が他の先進国と比べて、経済効率の低い小さな企業で働く人の比率が圧倒的に多く、そのような小さな企業が国からも優遇されるということです。実は日本は、生産性の低い「中小企業天国」と呼べるような産業構造になっているのです。
このような話をすると、「小さな企業が多いのは日本の伝統で、普遍的な文化だ」とこれまた漠然とした主張をする人たちが多くいらっしゃいますが、実はこれも表面的な分析に基づく"残念な勘違い"なのです。
次のページ日本では「いつから、なぜ」中小企業が増えたのか
歴史を振り返れば、小さい企業が多いのは日本の普遍的な文化だと言えるような客観的事実はどこにも見当たりません。むしろ、ある時期を境にして、現在のような「他の先進国と比べて小さな企業で働く人の割合が多すぎる」という産業構造が出来上がっていったことがよくわかります。
では、その時期はいつかというと、「1964年」です。
この年、日本はOECD(経済協力開発機構)に加入しましたが、その条件として突きつけられたのが、かねてより要求されていた「資本の自由化」でした。当時の日本では、資本が自由化されれば外資に乗っ取られるかもしれないという脅威論が唱えられ、護送船団方式など「小さな企業」を守るシステムが続々と整備されました。つまり、1964年というのは、日本を「低生産性・低所得の国」にした「非効率な産業構造」が産声を上げたタイミングなのです。
日本を「生産性の低い国」にした中小企業基本法
そして、この「1964年体制」を法律面から支えたのが、前年に制定された中小企業基本法です。
同法は当時、「中小企業救済法」とも言われたほど、小さい企業に手厚い優遇策を示したものです。同時にその対象となる企業を絞り込むため、製造業は300人未満、小売業は50人未満とはじめて「中小企業」を定義しました。
しかし、これが逆効果となってしまいます。優遇措置を目当てに、50人未満の企業が爆発的に増えてしまったのです。
中には、企業規模を拡大できるにもかかわらず、優遇措置を受け続けたいということで、50人未満のラインを意図的に超えない中小企業まで現れてしまったのです。非効率な企業が爆発的に増え、なおかつ成長しないインセンティブまで与えてしまいました。
中小企業を応援して日本経済を元気にしようという精神からつくられた法律が、優遇に甘えられる「中小企業の壁」を築き、「他の先進国と比べて小さな企業で働く労働者の比率が多い」という非効率な産業構造を生み出してしまったという、なんとも皮肉な話なのです。
それでも1980年代までは人口が増加し続けたため、経済も成長を続けました。しかし1990年代に入り、人口増加が止まると、この生産性の低い非効率な産業構造の問題が一気に表面化してきました。
ちなみに、日本の生産性を議論する際に必ず出てくるのが、日本では製造業の生産性が高く、サービス業の生産性が低いという事実です。この現状を説明するためによく言われるのが「日本人はものづくりに向いている」「サービス産業の生産性が低いのは『おもてなし』の精神があるからだ」という"神話"のような話ですが、実はこれも非効率な産業構造ですべて説明ができます。これもまた、単に中小企業基本法の影響なのです。
この法律で、中小企業が製造業では300人未満、その他は50人未満と定義されて以降、日本ではこれに沿うような形で企業数が増えていきました。その影響もあって、製造業はどうしても他の業種よりも規模が大きくなりました。
次のページ1964年、日本は衰退の布石を打った
規模が大きければ生産性が高くなるというのは、先ほども申し上げた経済学の鉄則のとおりです。一方、日本のサービス業は圧倒的に規模の小さな事業者が多く乱立しているという事実があるので、当然、生産性は顕著に低くなるというわけです。
「守りに特化」した経営は暴走していく
「1964年」と聞くと、ほとんどの日本人は東京オリンピックを連想すると思います。そしてここをきっかけに、日本人が自信を取り戻し、焼け野原から世界第2位の経済大国へと成長していく、というのが小学校の授業などでも習う「常識」です。
しかし、現実はそうではありません。
オリンピックの前年からすでに景気は減退していました。急速なインフラ投資の反動で、オリンピック後の倒産企業数は3倍にも急増しています。1964年からの「証券不況」も事態をさらに悪化させて、被害拡大防止のために日銀は公定歩合を1%以上下げました。しかしこれも焼け石に水で、1965年5月には山一證券への日銀特融を決定し、同年7月には、戦後初となる赤字国債の発行も行いました。
この不況が、「資本の自由化」が引き起こす「外資脅威論」にさらに拍車をかけます。「乗っ取り」や「植民地化」という言葉にヒステリックに反応するうち、やがて財閥系や大手銀行系が手を取り合い、買収防止策として企業同士の持ち合いも含めた安定株式比率を高めていきます。1973年度末の法人持株比率はなんと66.9%にも達しました。
この「守り」に特化した閉鎖的な経済活動が、護送船団方式や、仲間内で根回しして経営に文句を言わせない「しゃんしゃん株主総会」などを定着させて、日本企業のガバナンスを著しく低下させていったことに、異論を挟む方はいらっしゃらないのではないでしょうか。
このようにとにかく「会社を守る」ことが何をおいても優先されるようになると、経営者に必要なのは調整能力だけになっていきます。数字やサイエンスに基づく合理的な判断をしないので、他人の意見に耳を貸さず、とにかく「直感」で会社を経営するようになっていくのです。その暴走がバブルにつながります。
そんな「暴走経営」がこの20年、日本経済に与えたダメージは計り知れません。
ものづくりメーカーは、社会のニーズや消費者の声よりも、企業側の「技術」や「品質」という直感が正しいと考える「product out」にとらわれ衰退しました。そしてバブル崩壊後も、データに基づいた客観的な分析をせず、直感に基づく表面的な分析をして抜本的な改革ができなかった結果が、この「失われた20年」なのです。
このように日本経済の衰退を要因分析していくと、「1964年体制」に原因があることは明白です。つまり、「1964年は東京オリンピックで日本の飛躍が始まった年」というのは残念ながら間違いで、実は経済の衰退をスタートさせてしまった「国運の分岐点」なのです。
「1964年体制」がつくった産業構造を元に戻すことは容易なことではありません。その動かぬ証が、1990年代から実行されたさまざまな日本の改革がことごとく失敗してきたという事実です。その結果、国の借金は1200兆円にまで膨らみました。
人口減少などさまざまな「危機」が迫る日本には、もはや悠長なことを言っている時間はありません。日本経済を立て直すためにも、古い常識や"神話"を捨てて、数字と事実に基づく要因分析を、すべての国民が受け入れる時期にさしかかっているのです。
『国運の分岐点』(書影をクリックすると、アマゾンのページにジャンプします)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2019/10/post-13163_5.php

ビジネス
2019年10月11日 / 10:41 / 4時間前更新
10月ロイター企業調査:景気後退予想は4割、日銀追加緩和には過半数が反対
中川泉
3 分で読む


[東京 11日 ロイター] -
10月ロイター企業調査によると、今後景気が「後退局面を迎える」と考える企業が4割強を占め、その過半数が後退は2021年まで継続するとみていることがわかった。景気悪化懸念の強まりで、日銀の追加緩和が必要と考える企業の割合は夏場に比べて大幅に増えているが、それでも「追加緩和をすべきでない」との意見が6割近くと過半数を占めている。緩和の副作用として金融機関弱体化への懸念が強まっていることが背景にある。
調査期間は9月26日─10月7日に実施。調査票発送企業は504社程度、回答社数は240社程度だった。
<景気停滞、増税巡る混乱と海外不透明感で>
10月の消費増税後から来年にかけて、日本経済は「景気後退局面となる」との回答が全体の41%を占めた。「横ばいで推移」は58%で、合わせてほぼ全社が景気は停滞するとみている。
消費増税については、政府がそれを上回る規模の経済対策を打っていることもあり、「8%に上がった時に比べて上昇率は小さく、大きな影響はないだろう」(電機)との見方がある。むしろ「税率の混在がかえって混乱を助長し、消費マインドを確実に冷やしている。影響は多大」(卸売)との指摘があるほか、「軽減税率の導入で、せっかくの税収増の効果が低下することを懸念している」(サービス)、「軽減税率は判断を誤った政策」(建設)など厳しい声も目立つ。
加えて「景気はグローバル経済の動きによる」(運輸)、「予測不可能な状態」(紙・パルプ)など不透明感が意識され、「景気拡大に向かうきっかけが想定しがたい」(機械)との見方もある。
この結果、景気底打ちの時期については、来年前半との見方は18%に過ぎず、来年末までに回復するとの見通しも半数以下に留まる。回答者の過半数となる56%が底打ちは2021年以降になるとみている。

<景気悪化でも追加緩和反対は過半数に>
米中摩擦による世界経済減速や、消費増税による景気押し下げ懸念が強いにもかかわらず、金融緩和での景気下支えには否定的な声が7月調査に続き過半数を占めた。
日銀は「追加緩和すべきではない」は57%となり、7月調査の88%から大きく減少したものの、依然として半数を上回っている。

その理由として「過去の事例において景気押し上げ効果は極めて限定的だということが実証されている」(電機など)、「緩和マネーがうまく循環していない。出口戦略がより難しくなることを懸念」(情報サービス)といった意見がある。「金融緩和よりも公共投資など実需等を喚起する政策を優先すべき」(鉄鋼)など財政出動の方が有効との声もある。
さらに追加緩和に「デメリットを感じる」企業が全体の約3割を占め、その半数以上がマイナス面として「金融機関の弱体化」を挙げている。「これ以上の負担は銀行システムを崩壊させ、マイナスの効果がはるかに大きくなる」(機械)との指摘が複数寄せられた。
追加緩和は「ほとんど経済に影響はない」との回答も42%を占めた。

一方、「追加緩和をすべき」との回答は43%を占め、今年7月調査の12%から大幅に増えた。「消費増税による影響に対応するため」(輸送用機器など)との声が目立つ。
追加緩和は「メリットが大きい」と感じる企業は3割と、デメリットを感じる企業とほぼ同程度。メリットの具体的な効果として「実質金利低下による設備投資促進」を挙げる企業が多かった。このほか円安効果をあげる声もあり「米欧の金融政策との相対関係から対応せざるを得ない」(機械)、「通商戦争に勝つためにも、通貨安競争への予防的緩和も含めて積極的な政策が必要」(卸売)などのコメントがあった。
ただそれでも追加緩和への支持は5割を下回り、景気悪化に対する金融政策への期待感はさほど高くないことがうかがえる。
物価目標の2%については目標を維持すべきとの回答が54%と過半数を占めたが、引き下げるべきが23%、目標設定をやめるべきが21%となった。

編集:石田仁志
https://jp.reuters.com/article/corporate-survey-october-idJPKBN1WQ03F

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/355.html

[自然災害22] “危険な台風” 気象庁会見から見えたものは… 気象庁「1200人以上犠牲の狩野川台風に匹敵 特別警報も」気象庁 梶原靖司予報課長が会見(全文掲載)

“危険な台風” 気象庁会見から見えたものは…
2019年10月11日 21時00分台風19号 警戒点
大型で非常に強い台風19号。12日に東海地方または関東地方に上陸する可能性が高まってきた。今の勢力で上陸すれば東日本では観測史上初めて。
気象庁は11日に開いた会見で、1200人を超える犠牲者が出た61年前の台風を引き合いに出し「それに匹敵する」と呼びかけた。
今回の台風19号。
気象庁が指摘する「危険な状況」とは、いったいどういうことなのか。
記者会見から台風の姿や警戒点を読み解いた。
(社会部記者 老久保勇太 ネットワーク報道部記者 管野彰彦 斉藤直哉)
大雨特別警報が関東・東海に?

「広い範囲で記録的な大雨となる見込みで、状況によっては大雨特別警報を発表する可能性があります」
11日午前11時からの会見序盤、気象庁の梶原靖司予報課長はこう述べ、最大級の警戒を呼びかけた。

もし、関東地方で大雨特別警報が出るとなると、平成27年の「関東・東北豪雨」で栃木県と茨城県に発表されて以来。

『特別警報』ということばが与えるインパクトや影響を気象庁が知らないはずはない。これまでの会見では質疑の中で可能性に触れることはあったが、会見の“ど頭”から言及すること自体、異例のこと。

ある幹部は「気象庁に長年いるが、関東に近づくこんな台風は見たことない」と漏らす。

会見室にいた記者(老久保)は、それだけ今回の台風に対する危機感を伝えようとする気象庁の意図を感じた。
“犠牲者1200人超 狩野川台風に匹敵か”
「12日から13日にかけて、西日本から東北地方では広い範囲で台風に伴う非常に発達した雨雲がかかるため、非常に激しい雨や猛烈な雨が降り、東日本中心に“狩野川台風”に匹敵する記録的な大雨となるおそれがあります」
梶原課長が大雨の見通しを語る中で言及したのが、61年前の「狩野川台風」だ。
昭和33年(1958年)9月に静岡県へ接近し、神奈川県の三浦半島に上陸。

台風による大雨で伊豆半島を流れる「狩野川」が決壊したほか、各地で氾濫や土砂災害が相次いだ。
犠牲者は、合わせて1200人を超えた。
年配の人の中には、今も強い記憶となって刻まれている台風だ。

この台風では、とにかく雨が降り続いて記録的な豪雨となり、伊豆半島中部では総雨量が750ミリに達した。

また1日に降った雨の量は
▽伊豆大島で419.2ミリ ▽東京の都心で371.9ミリ
▽埼玉県秩父市で288.7ミリ ▽横浜市で287.2ミリ。

東京の都心と横浜市の観測史上最多雨量は令和の今に至るまで、この時から更新されていない。

今回の台風では、接近前から東日本の太平洋側を中心に、雨が長時間にわたって降り続くと予想されている。

雨の予想は変わる可能性があり、地域によって土砂災害や洪水のリスクが高まる雨量に差はあるものの、平年の数か月分に達するような雨量に至る可能性がある。

これだけの雨が降れば、大きな河川でも氾濫の危険性が高まり、土砂災害が起きるおそれが十分にある。

そうした危険性を知ってもらうためにも、あえて「狩野川台風」を引き合いに出したという。
暴風と高波高潮の危険も
「12日から13日にかけて、西日本、東日本、東北地方の広い範囲で猛烈な風が吹き、記録的な暴風となるところもある」

会見では大雨だけでなく、風や波、高潮にも繰り返し警戒が呼びかけられた。

11日夕方時点の予想では、12日にかけての最大風速は東海で45メートル、関東甲信で40メートル。車を運転するのも難しく、走行中のトラックが横転するような風とされ、屋外での行動は極めて危険だ。

さらに最大瞬間風速は東海、関東甲信ともに60メートルと予想されている。
先月の台風15号の際、千葉市で観測した最大瞬間風速は57.5メートル。
去年、関西空港で強風に流されたタンカーが連絡橋に衝突した台風21号の際に58.1メートルを観測した。それに匹敵する風が吹く可能性があるというのだ。

また東海、関東、伊豆諸島の沿岸では、うねりを伴って波の高さが13メートルの猛烈なしけが続くと予想されている。
台風21号で被害を受けた関西空港(去年9月)
さらに、高潮。
台風の中心付近は気圧が低く、海面が吸い上げられてふだんよりも上昇する。今は大潮の時期で、満潮時刻と台風の接近・通過が重なると高潮が発生するおそれがある。

加えて、非常に強い南風が吹くと海水が吹き寄せられて海面はさらに高くなるおそれもある。高波と違い海面全体が盛り上がるため、海岸近くは非常に危険だ。
“沿岸前線”で長雨のおそれ
台風19号は多くの人が暮らす首都圏を直撃しようとしている。

会見ではふだん雨量が多くなりやすい山の南東側の斜面だけでなく、平地でも記録的な大雨になるおそれが指摘された。

その原因は、局地的なため天気図には現れにくい「沿岸前線」だ。

狩野川台風の時も、この“沿岸前線”によって大雨となった可能性があるとのこと。

今回も首都圏の平地でも長時間雨が降り続き、記録的な雨量となるおそれがあり、警戒が必要だ。
「本州上の朝の気温が結構冷え込んだりということで、大気の下層に冷たい空気がたまっているという状況がありまして、湿った暖かい南東風と陸上の冷気層との間の前線が、非常に明瞭になるということも想定されまして、そういった前線は停滞性が強いということもあり、その前線の近くで総雨量が非常に多くなるというおそれがある」
東側だけじゃない 北西側にも気をつけて
今回の台風19号、関東や東海を中心に影響が避けられないが、日本海側でも警戒が必要だ。その理由は『秋台風』と『高気圧』。

「今回の台風はいわゆる秋台風でして、大陸方面から日本海方面にかけて、勢いよく高気圧が張り出してくるということで、台風の危険範囲ではない北西側などでも、この高気圧と台風との間で気圧の傾きが急になり、台風の北側あるいは西側でも暴風あるいは強風が広い範囲で吹く。また、湿った北東風、北風の吹きつけによって、北陸から山陰地方などでも総雨量が多くなるおそれがある状況を想定しております」

反時計回りに風が吹く台風は、進路と風の向きが重なるため、一般的に東側で風や雨が強まることが知られている。

ところが今後、大陸から日本海にかけて移動性の高気圧が張り出す予想となっている。

その高気圧と北上する台風の間で気圧傾度(気圧の傾き、狭いほど風が強まる)が急になり、台風の北西側、つまり北陸や山陰など日本海側でも暴風や強風が吹くおそれがある。

また日本海側では、北寄りの湿った風が吹きつけることで雨が降り、台風が三陸沖に進んだあとも湿った空気が流れ込み続ける。

総雨量が多くなるおそれがあり、警戒が必要だ。
かなりの大雨と暴風 確実に
「難を逃れることを最優先にして、不要な外出はせずに、安全を確保していただきたい」
会見で梶原課長は、繰り返し命を守る行動をとるよう呼びかけた。

特に気がかりなのは、先月の台風15号で大きな被害を受けたばかりの千葉県や伊豆諸島だ。千葉では3万5000を超す住宅が被害を受けた。今も屋根にシートをかけた家も多く、復旧は十分に進んでいない。
「台風15号の被災地では、ブルーシートの状態の家屋もまだたくさんあるという状況です。そういった場合、今回の台風によって、まず確実に、かなりの大雨でかなりの暴風となるということで、家の中にとどまること自体、危険なことも想定されます。地元の市町村が開設している避難所をとにかくを活用するとか、あるいは早い段階で親戚といったところに退避するとか。とにかく難を逃れる方策をしっかりとってもらいたい」
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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191011/k10012123901000.html?utm_int=detail_contents_news-related_001


気象庁「1200人以上犠牲の狩野川台風に匹敵 特別警報も」
2019年10月11日 20時04分台風19号 警戒点
台風19号について、気象庁は午前11時から記者会見を開き、静岡や関東で1200人以上が犠牲となった狩野川台風に匹敵する記録的な大雨となり、大雨の特別警報を発表する可能性もあるとして、厳重な警戒を呼びかけました。
台風19号について気象庁は午前11時から記者会見を開き、梶原靖司予報課長が今後の見通しや警戒点を説明しました。この中で梶原課長は、「台風は非常に強い勢力を保ったまま、あすには東海、または関東地方に上陸する可能性が高まってきた。暴風や高波に加えて関東地方を中心に記録的な大雨となるおそれがある」と述べました。

そのうえで、「あす12日からあさって13日にかけて東日本を中心に西日本から東北の広い範囲で猛烈な風が吹いて海は猛烈なしけとなり、記録的な暴風となるところもある見込みだ。台風本体の非常に発達した雨雲がかかるため、広い範囲で記録的な大雨となる見込みで、大雨特別警報を発表する可能性がある。伊豆に加えて関東でも土砂災害が多発し、河川の氾濫が相次いだ昭和33年の狩野川台風に匹敵する記録的な大雨となるおそれもある」と述べ、強い危機感を示しました。

さらに、「全国的に、暴風、うねりを伴った高波、土砂災害、低い土地や地下施設の浸水、河川の増水や氾濫、高潮や、高潮と重なった高波による浸水や沿岸施設の損壊に、厳重に警戒してほしい。自分の命、大切な人の命を守るため、風や雨が強まる前に、夜間暗くなる前に、市町村の避難勧告などにしたがって、早め早めの避難や安全確保をお願いしたい」厳重な警戒を呼びかけました。
1200人超える犠牲者
狩野川台風は、昭和33年9月に静岡県へ接近し、神奈川県の三浦半島に上陸した台風です。

この台風では、伊豆半島や関東を中心に記録的な豪雨をもたらし、伊豆半島中部では総雨量が750ミリに達しました。

また、1日に降った雨の量は、伊豆大島で419.2ミリ、東京の都心で371.9ミリ、埼玉県秩父市で288.7ミリ、横浜市で287.2ミリ、埼玉県熊谷市で277.2ミリ、茨城県つくば市で230.1ミリに達しました。

このうち東京の都心と横浜市は観測史上最も多い記録となっています。

この豪雨で伊豆半島を流れる「狩野川」が決壊して洪水が発生するなど、関東を含む各地で川の氾濫や土砂災害が相次ぎ、合わせて1200人を超える犠牲者が出ました。
「沿岸前線」平野部でも大雨警戒
11日の会見で気象庁の梶原靖司予報課長は、天気図にはあらわれにくい局地的な前線=「沿岸前線」ができることによって、ふだん雨量が多くなりやすい山の南東側の斜面だけでなく、首都圏などの平地でも記録的な大雨になるおそれがあるとしています。

梶原課長は「朝の冷え込みで、本州付近の大気の下の部分には冷たい空気がたまる。そこへ台風から暖かく湿った南東の風が流れ込むことで冷たい空気の間に天気図には現れにくい前線ができる。これを『沿岸前線』と呼んでいるが、こうした前線は停滞しやすく、 総雨量が非常に多くなるおそれがある」と述べました。

そのうえで「台風から流れ込む湿った空気による大雨は、一般的には山間部の南東側の斜面を中心に総雨量が多くなる傾向がある。ただし、沿岸前線ができると山間部だけでなく首都圏などの平地でも記録的な大雨となるおそれがある」として、ふだん大雨になりにくい地域でも警戒が必要だとしています。
日本海側でも暴風大雨警戒
警戒が必要なのは、太平洋側の地域だけではありません。

比較的台風から離れた北陸など日本海側でも暴風が吹くおそれがあるほか、大雨のおそれがあるということです。

気象庁の梶原靖司予報課長は「台風が大型の状態を維持したまま近づくため、広い範囲で強い風が吹く。また台風は通常、進行方向の右側の『危険半円』で特に暴風に警戒が必要だと言われるが、今回は日本海側でも警戒が必要だ。大陸から日本海にかけては高気圧が張り出す予想で、この高気圧と台風の間で気圧の傾きが急になる見込みだ。このため北陸や山陰の日本海側でも暴風や強風が吹くおそれがある」と述べました。

また、大雨に関しては「日本海側では北よりの湿った風が吹きつけることで雨が降る見込みだが、台風が三陸沖に進んだあとも湿った空気の吹きつけが続く見込みだ。大雨の時間が長くなることで総雨量が多くなるおそれがある」と警戒を呼びかけました。
災害や被害の広がり 類似台風でも異なる
気象庁は今回の台風19号で予想される大雨が、昭和33年の狩野川台風に匹敵するとした一方、災害が起きる場所や被害の広がりについては、個別の台風ごとに異なる点に注意してほしいとしています。

梶原靖司予報課長は「今回、類似台風として狩野川台風を持ち出したのは、予想される現象や災害の程度が著しいことや、大きさや進路・勢力・北上スピードなどが似ていることから説明に用いようと判断した。一方で、類似台風を持ち出して呼びかけることは非常にリスクがあるとも考えている。災害の起こる場所や広がりについては事例ごとに大きく異なる」と述べ、狩野川台風で被害がなかった場所が安全というわけではないと強調しました。

台風19号について 気象庁 梶原靖司予報課長が会見(全文掲載)
2019年10月11日 19時01分台風19号 警戒点
台風19号について、気象庁は11日午前11時から記者会見を開き、静岡や関東で1200人以上が犠牲となった「狩野川台風」に匹敵する記録的な大雨となり、大雨の特別警報を発表する可能性もあるとして、厳重な警戒を呼びかけました。
会見内容は以下の通りです。
“台風19号 概要”
大型の台風19号が非常に強い勢力で日本の南海上を北上しています。
台風は非常に強い勢力を保ったまま。12日土曜日に東海、または関東地方に上陸する可能性が高まってきました。
暴風や高波に加え、関東地方を中心に記録的な大雨となるおそれがあります。大型で非常に強い台風19号は12日夕方から夜にかけて、非常に強い勢力を保ったまま、東海地方または関東地方に上陸し、その後、東日本から東北地方を北東へ進む見込みです。
12日から13日にかけて、東日本を中心に、西日本から東北地方の広い範囲で猛烈な風が吹き、海は猛烈なしけとなり、記録的な暴風となるところもあるでしょう。
また、台風本体の非常に発達した雨雲がかかるため、広い範囲で記録的な大雨となる見込みです。
状況によっては、大雨特別警報を発表する可能性があります。
伊豆に加えて、関東地方でも土砂災害が多発し、河川の氾濫が相次いだ、昭和33年の狩野川台風に匹敵する記録的な大雨となるおそれもあります。
全国的に暴風、うねりを伴った高波、大雨による土砂災害、低い土地や地下施設の浸水、河川の増水や氾濫、高潮や高潮と重なり合った波浪による浸水や沿岸施設の損壊に厳重に警戒してください。
また、落雷・竜巻などの激しい突風に十分注意し、交通障害や農作物の管理、停電、塩害などにも留意してください。
各地の気象台の発表する警報注意報など、気象情報に留意するとともに、自分の命、大切な人の命を守るため、風雨が強まる前に、夜間暗くなる前に、市町村の避難勧告等に従って、早め早めの避難、安全確保をお願いします。
“進路予想”
台風の最新の進路予想ですけれども、現在台風は非常に強い勢力を保ったまま、日本の南海上を北上しています。
このあと、非常に強い勢力を保ったまま、12日夕方から夜にかけて、東海地方、または関東地方に上陸する可能性が高まっています。
その後、東日本から東海、東北地方にかけて速度を速めながら、北東に進み、北海道の南東海上で温帯低気圧にかわると予想しております。
“暴風と高波”
暴風と高波の見通しです。
東日本・西日本の太平洋側では11日は昼すぎから大しけとなり、11日夕方から非常に強い風が吹き、11日夜までには猛烈なしけとなるところがある見込みです。
12日から13日にかけて、西日本・東日本・東北地方の広い範囲で猛烈な風が吹き、記録的な暴風となるところもあるでしょう。
太平洋側では、猛烈なしけが続きます。
また、日本海側でも暴風が吹き、大しけとなる見込みです。
先の台風第15号と同程度の暴風のおそれもあり、また、台風が大型のため、15号に比べて日本海側も含め広い範囲で暴風となる見込みです。
各地で予想している最大風速および最大瞬間風速は、東海地方では最大風速45メートル、最大瞬間風速60メートル。関東甲信地方では最大風速40メートル、最大瞬間風速60メートルなどと予想しているところです。
また波についても、東海地方・関東地方・伊豆諸島では波の高さが13メートル。
波の高さが9メートルを超える場合、猛烈なしけというふうに表現しておりますけれども、それをはるかに上回る13メートルの高波を予想しております。非常に危険な状態です。
“大雨”
次に大雨の見通しです。
11日午後から、西日本太平洋側や東日本の南東向きの斜面を中心に、非常に激しい雨が降り始めます。
12日から13日にかけて、西日本から東北地方では広い範囲で台風に伴う非常に発達した雨雲がかかるため、非常に激しい雨や猛烈な雨が降り、東日本中心に狩野川台風に匹敵する記録的な大雨となるおそれがあります。
12日12時までの24時間の雨量は、多いところで東海地方で500ミリ。
その後の24時間、13日12時までの24時間の雨量は、東海地方では600から800ミリ。
関東甲信地方と北陸地方では300から500ミリなど、広い範囲で大雨となるおそれがあります。
“高潮”
高潮にも警戒が必要です。
10月14日が満月となっております。
それに近い、大潮の時期にあたるということで、特に満潮の時刻と台風の影響による潮位偏差が、重なり合いますと非常に高潮災害の危険度は高まります。
各地の満潮時刻ですが、例えば東京湾。
東京の場合ですと、12日の満潮時刻は16時31分。13日は4時29分となっています。
今のところ、台風が予報円の中心を進む場合ですと、ちょうどこの12日の夕方、あるいは13日の明け方という満潮のタイミングとぴったり合うという状況ではありませんけれども、微妙なタイミングの違いによって、高潮の可能性は高まりますし、非常に強い南風が吹いた場合には、満潮であろうが干潮であろうが、それをりょうがするほどの潮位偏差をもたらすおそれもありますので厳重な警戒が必要です。
“非常に強い勢力”
気象衛星雲画像では、11日10時の最新の気象衛星雲画像で、台風の目がまだパッチリしている。
昨日までと比べると、この台風の中心付近を取り巻く雲域の雲頂高度が少し低くなったということで、「猛烈な」台風から、その1段階下の「非常に強い」のレベルに強さはダウンしていますが、それでも非常に強い勢力を保っております。
画像では、いまだ非常に円形度が高い真ん丸な、雲域の形状を示していて、台風の目もパッチリしているということで非常に強い勢力を維持している状況が見てとれます。
また、この台風の中心と離れた北から、北西方向にも非常に発達した雨雲が面積広く広がっておりまして、その一部が、すでに伊豆諸島にかかり始めており、伊豆諸島では雨が強まり始めております。
このあと、伊豆諸島では11日は激しい雨が降り続き、次第に雨足も、さらに強まるということが予想されております。
“前線が停滞”
また、日本の東の海上から関東地方付近にかけては、前線が停滞していまして、これに食い込むように台風が北上する。
さらに台風が北上しますと、台風の東側の湿った南東風が前線にぶつかる。一方、前線の北側は秋の冷涼な移動性高気圧いうことでこの前線の活動が活発になり、かつ停滞をするようになりまして、この前線付近で、総雨量が非常に多くなるおそれもあります。
“雨雲の様子”
現在、梅雨前線に伴う雨雲は東北地方付近にかかっている程度ですけれども、台風の北側から北西方向に広がる、非常に発達した雨雲の一部が、レーダーでも捉えられ始めてきております。
発達した雨雲の一部が、もうすでに伊豆諸島、南部方面にかかり始めていて、次第に北上してきますので、警戒が必要な状況です。
“東海または関東に上陸か”
台風の予想進路です。
現在925ヘクトパスカル、非常に強い勢力、50メートルの最大風速です。
その後、北北西進し、少し北寄りに進路を変えて、12日の朝9時には時速20キロ程度で北上する。12日朝9時の時点で935ヘクトパスカル、中心付近の最大風速45メートルと予想しております。
その後も、ほぼこの勢力を保ったまま北上し、945か950ヘクトパスカルで中心付近の最大風速45メートルという非常に強い勢力を保ったまま、東海地方または関東地方に12日の夕方から夜にかけて上陸すると見ております。
その後、東日本か東北地方方面を北東に速度を速めながら進み、13日9時には三陸沖、この時点ではまだ台風と見ておりますけれども、その後、三陸沖から北海道の南東海上を進む段階で、温帯低気圧に変わるというふうに見ております。
“予想天気図”
予想天気図です。
台風19号は非常に強い勢力を保ったまま、東海地方また関東地方に上陸する見込みです。
前線は引き続き、東北地方南部あたりにかかっていまして、広い範囲で大雨が降ると予想されます。
台風は、海面水温が非常に高い領域を北上しているということで、なかなか勢力を弱めないで、非常に強い勢力を保ったまま、日本にやってくるということが想定されます。
“狩野川台風”
冒頭で例示しました昭和33年(1958年)9月26日に上陸した「狩野川台風」ですが、狩野川が氾濫したということで、伊豆方面で1000名前後の非常に大変な死者が出ているということで、「狩野川台風」と名付けられておりますが、この台風は、首都圏を含む関東地方一帯に記録的な大雨をもたらしたということでも歴史に名を留めているものです。
東京の日降水量は371.9ミリということで、これは今もって東京の日降水量の記録第1位となっているものです。
その他、秩父とか熊谷、広い範囲で記録的な大雨となっているということで、河川の増水・氾濫も相次いだという状況があります。
“局地ではなく広範囲”
今回の台風に伴う大雨は、局地的に猛烈な雨が降るタイプとは違って、非常に広い範囲で非常に激しい雨、あるいは猛烈な雨が降ることによって総雨量が多くなる。
そのために、流域平均雨量が非常に多くなるということが想定されまして、中小河川のみならず、大河川でも、河川の増水あるいは氾濫のおそれがあるということで、厳重な警戒が必要です。

以下、会見の質疑応答です。
“北側でも総雨量増えるおそれ”
Q.
10日までに比べると、暴風域の広さ・大きさが東西に広がったように見えるが、これによってもたらされる危険な状況を教えていただきたい。
もう一点は、いま南の海上にある雨域が相当雨を降らせていると思うが、あれが関東辺りにかかってくる場合には、どこにかかるのか今わかっているのであれば教えてください。
A.
台風に伴う強風・暴風のエリアですけれども、台風が大型の状態を維持したまま北上していることと、通常台風は進行方向の右側、危険半円が特に暴風に警戒が必要ということをよく言いますけれども、今回の台風はいわゆる秋台風でして、台風の北側には高気圧が張り出してきているということもあり、予想天気図を見ますと、大陸方面から日本海方面にかけて、勢いよく高気圧が張り出してくるということで、この台風の危険半円ではない北西側などでも、この高気圧と台風との間で、気圧の傾きが急になるということで、この台風の北側あるいは西側でも暴風あるいは強風が広い範囲で吹く、かつ、湿った北東風・北風の吹きつけによってですね、北陸から山陰地方などでも、総雨量が多くなるおそれがあるというような状況を想定しております。
関東の雨と前線の関係
それから、雨雲の様子ですけれども、気象レーダーで北側の一部がやっと見えてきたというもので、これがこのあと台風の北上に伴ってどんどん北上してくるということで、どこまでどのような形で雨雲がかかるかというのは難しいですけど、基本的には、まずは関東から東海、それか関東から近畿というような形で、弧を描く形でかかってくるということが想定されますので、東海地方や関東地方で総雨量が多くなることが想定されます。
また、本州上の朝の気温が結構冷え込んだりということで、大気の下層にはですね、冷たい空気がたまっているという状況がありまして、湿った暖かい南東風と陸上の冷気層の間の前線が非常に明瞭になるということも想定されまして、またそういった前線は停滞性が強いということもあり、その前線の近くで総雨量が非常に多くなるというおそれがあり、警戒が必要です。
“伊豆諸島北部や房総半島の前線に警戒”
Q.
雨雲が同じ場所にかかり続ける可能性が高いエリアとしては、前線の位置のやや下というか前線付近というふうに考えてもいいでしょうか?
そうなると関東のふちを回るような形でかかるのかなという想像が、できるんですが、そのあたりどうでしょう?
A.
極東天気図スケールで表される前線というのは東北地方辺りにあるが、必ずしもここで強く吹く、雨が降るというより、陸地の冷地層と南東風との間の前線というのはもっとスケールが小さい、われわれ沿岸前線と呼んでるんですけれども、そういったものがこの房総半島周辺、あるいはもう少し北側かも分かりませんけれども、伊豆諸島北部や房総半島周辺に形成されてかかり続けるという、そちらのほうをむしろ警戒しているという状況です。
“関東地方の総雨量はかなり多く”
Q.
そのことばを解釈すると、関東の雨というのは相当長い時間降るという読み取りでいいでしょうか?
A.
伊豆諸島はすでに雨足が強まっていまして、この後、激しい雨が降り続くというふうに予想しております。
関東地方についても、11日の夜になりますと一部で激しい雨が降りだし、その後も、雨足が強まるいっぽうと見ていて、12日の朝6時以降は非常に激しい雨、午後になると猛烈な雨が、12日夜にかけて降り続くというようなことも想定しているということで、総雨量がかなり多くなるおそれがあります。
“平地でも記録的大雨のおそれ”
Q.
それは平野部でしょうか、それとも河川の上流部でしょうか、それとも両方でしょうか?
A.
両方と捉えるべきところです。
一般的に台風に伴う湿った南東風の吹きつけによる大雨というのは、地形性降水が卓越するということで、東あるいは南に向いた斜面を中心に総雨量が多くなるパターンですけれども、先ほど説明しました沿岸前線というものが、房総半島付近などに形成されると、その近くで非常に激しい雨、また猛烈な雨が降り続くという可能性もあり、詳細はわかりませんけど、狩野川台風で東京で377ミリというすごい雨が降ったというのも。
そういったものが影響している可能性があるということで、山地だけでなく首都圏を含む平地でも記録的な大雨となるおそれがある。
“難を逃れること最優先に”
Q.
もう、外出してはいけないレベル?
A.
そうですね。いろいろ報道を見ていますと、いろんな交通事業者が計画運休のようなものを検討あるいは計画しているというようなこともありますし、よくわれわれ、不要不急の外出は避けてと言いますが、本当、難を逃れることを最優先にして、不要な外出はしないというようなことで、安全確保をしていただきたいと思います。
狩野川との類似点は?
Q.
狩野川台風というの例で出していますけども、これは起こる現象として類似したケースということで出してきたのか?エリアとかはまた若干異なるという認識でいいのか?
A.
類似台風を持ち出すのは非常にリスクがあるっていいますか、予想される現象あるいは災害の程度を示すものとしては有効なんですけれども、それが発現する場所や広がりについては事例ごとに大きく異なりますので、ミスリードする可能性はないではない。
今回、狩野川台風を持ち出したというのは、予想される現象あるいは災害の程度が著しいということから、狩野川台風を例示したという点がありますし、また狩野川台風が取った進路や勢力、あるいは北上のスピードなども似ている点がある。
あるいは台風の大きさなども含めて、そういった類似性が高いということで、これは説明に用いるべきだという判断をしたところです。
備えへの呼びかけ
Q.
水曜日の会見では11日までに備えを呼びかけていたが、その後の呼びかけは?
A.
今回、3連休に大型で非常に強い勢力の台風が直撃するおそれがあるということ、また秋の行楽シーズンでもあり、いろんなお出かけされる方も多いだろうと、さまざまな機関がさまざまなイベントを計画しているというようなこともあり、この週末に想定される大荒れの天気を早く皆様にお知らせして、必要な判断をしていていただきたいということで、通常よりかなり早いタイミングでの水曜日に1回目の記者会見を開いたものです。
その際には、台風が近づくまでにまだ3日も4日もあるので、11日金曜日までに備えをしてくださいという具体的な表現で、内閣府が示しているような住宅に対する注意事項なども引用しつつ、備えを促しているところです。
11日までに備えをということで、もうするなということはありませんが、特に風が強まってきますと、もうその段階では、屋根の上に上がるとかそういった行為は逆に危険となりますので、その点は十分留意していただきたいと思います。
いま一度、11日のうちに備えは万全かっていうようなことについて、再点検をしていただければと思います。
上陸後の速度は?
Q.
狩野川台風についてですが、当時、上陸したあとは勢力を落としたかと思います。
最大瞬間風速のデータでも東京で30メートル吹いていないようなデータも出ていますが、今回の台風も上陸したあとは勢力を落とすのか、それともあまり落とさずに多くの被害がでるおそれがあるのかとはいかでしょうか?
A.
狩野川台風も日本の南海上にある一時期、870ミリバール台を観測するという猛烈な台風でしたけれども、上陸直前から急激に勢力自体は弱めてきたという点があり、その最大風速などの風の記録はそんな大したことない。
むしろ、この衰弱で失われたエネルギーが雨に変換されて大雨をもたらしたものと思われます。今回の台風がどれぐらいこれに似てるかっていうのは判断難しいところですけれども、少なくとも、台風19号の勢力について予想する上で、やはり上陸するとかなり勢力は落ちますけれども、それでも比較的勢力を維持したまま、三陸沖に抜けるというふうに見ているところ。
“日本海側は雨が長引く”
Q.
11日から非常に激しい雨が降り始めて12日も猛烈な雨になるということですが、雨のピークと台風が過ぎ去ってからも警戒が必要なのかどうかについては?
A.
12日12時までの24時間に予想される雨量は、関東甲信地方および伊豆諸島で250ミリなどと予想しているところで、その後、12日12時から、13日12時までに予想される雨量は多いところで、東海地方で600から800ミリ。
関東甲信地方で300から500ミリとなると予想しているところです。
雨の強さのピーク時間帯ということになりますと、やはり台風中心付近を取り巻く非常に発達した雨雲がかかる時間帯がそれに該当するということで、例えば関東甲信地方では、12日の昼前から夜のはじめ頃というのが、猛烈な雨の降る可能性のある時間帯と予想しているところです。
今回の台風は、上陸したあと東日本から東北地方を速度を上げながら北東進し、三陸沖に抜けるということで、今のところ、台風が三陸沖に抜けたあとは、関東地方など太平洋側の雨はそんなに尾を引くタイプではないと見ておりますけれども、一方、日本海側では湿った北風の吹き付けによって、台風が三陸沖に進んだあとも、大雨の状況が長時間続く可能性があるとみています。
“線状降水帯タイプではない”
Q.
沿岸前線の話があったんですが、こういったものが停滞するとその付近で線状降水帯ができやすいっていうふうに言っていいでしょうか?
A.
これは線状降水帯と分類するタイプの雨雲ではないと判断しております。むしろ、温暖前線面に近い構造ですね。
陸地側に形成されている冷気層の上を滑しょうするような形で、暖かく湿った南東風が滑しょうしていくと。
その状況が長い時間続くということでもたらされる大雨で、線状降水帯と違うタイプと見ております。
台風の速度は
Q.
台風がいつどういうふうに加速するかによって、雨量はだいぶ変わってくると思うんですが、関東を抜けるまでは少なくとも割とノロノロ行って、その後加速していくという形になる?
A.
ご指摘いただいたとおりでして、現在、北北西25キロ、時速25キロ。
12時間後も時速20キロで北北西。24時間後も北に20キロということで、台風が上陸するまでは25キロないし20キロで、加速することなく、むしろ若干減速しつつ、日本にやってくると見ております。
その後、北東に向きを転じて以降、次第に加速しますけれども、これも顕著に加速というほどのことはありません。
ただ、三陸沖の時点では、予想される進行方向・速度は北北東方向に時速45キロと予想しておりまして、時速20キロあたりで上陸したものが三陸沖では45キロと、倍ぐらいにスピードアップすると予想しております。
Q.
「狩野川台風」の上陸時の気圧と最大風速は、どういう数字だったんでしょうか?
A.
上陸したのは神奈川県三浦半島なんですが、そのときの中心気圧は965ミリバールでした。その当時は台風の解析に関しては中心気圧のみ解析してまして、最大風速は解析していませんでした。
Q.
避難するしないの判断というのは、なにに注意すればいいのか?
仮に家にとどまっている場合はどういうところに注意したほうがいいのか?

A.
いま私が行っています記者会見で説明したことは、日本列島スケールで各地で予想される最大風速等を説明したんですけれども、地域で予想される最大風速や最大瞬間風速は、地元の気象台が発表する府県気象情報等で詳しく予想を提供しておりますので、ぜひそういった地元気象台が発表する気象情報や警報等を参照して、どれぐらいの風が自分のところで吹きそうかっていうのを参照していただきたいと思います。
特に、例えば千葉県や伊豆諸島の被災地、台風15号の被災地などではブルーシート状態の家屋もまだたくさんあるという状況であり、そういった場合、今回の台風によって、まず確実にですね、かなりの大雨、かなりの暴風となるということで、家の中にとどまるということ自体危険なことも想定されるということからしますと、地元市町村が開設している避難所に、とにかく今回は避難所を活用するとか、あるいはもう早い段階で、親戚があるような場合には、そういったところに退避するとか、とにかく、難を逃れる方策というのをしっかりとってもらいたいなと思っています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191011/k10012123711000.html

http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/749.html

[戦争b22] 原油先物2%超上昇、イラクタンカー攻撃報道受け 米、サウジ防衛支援で中東に軍増派−トランプ氏の撤退公約と相反 トランプ大統領はトルコ制裁承認も、発動に動かず 先が見えないキューバ石油危機、ロシアとベネズエラが支援
ワールド2019年10月12日 / 05:33 / 7時間前更新
原油先物2%超上昇、イラクタンカー攻撃報道受け
Reuters Staff
1 分で読む

[ニューヨーク 11日 ロイター] - 米国時間の原油先物価格は2%超上昇した。イランメディアが、紅海で同国の石油タンカーがミサイル2発による攻撃を受けたと報じたことを受けた。また、米中通商協議への楽観的な見方も寄与した。

清算値は北海ブレント先物LCOc1が1.41ドル(2.4%)高の1バレル=60.51ドル。週間では3.7%上昇した。

米WTICLc1は1.15ドル(2.2%)高の54.70ドル。週間では3.6%上昇した。

イラン国営メディアは、サウジアラビア西部の港湾都市ジッダ沖の紅海で、イラン国営石油(NIOC)が所有する石油タンカーがミサイル2発による攻撃を受けたと報じた。イラン外務省も攻撃を確認した。紅海と湾岸地域では石油タンカーへの攻撃など事件が続いており、サウジとイランの対立がさらに悪化する可能性がある。
https://jp.reuters.com/article/global-oil-idJPKBN1WQ2N6

米、サウジ防衛支援で中東に軍増派−トランプ氏の撤退公約と相反
Anthony Capaccio、Glen Carey
2019年10月12日 4:43 JST
米国防総省は中東に米兵を増派し、イランからの「サウジアラビア防衛の確保と強化を図る」と発表した。一方でトランプ大統領は中東からの米軍撤退を開始すると公約している。

  国防総省によれば、先の増派分も合わせると新規配置、もしくは駐留延長は合計約3000人になる。同地域の米軍部隊は5月以降、1万4000人増えていると、エスパー国防長官は11日述べた。今回の増派には、ミサイル防衛システム「パトリオット」と地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備も含まれる。

  エスパー国防長官は、増派は先月起きたサウジ石油施設への攻撃を受けたものだと述べた。この攻撃については米国やサウジ、欧州数カ国がイランの仕業と見ている。

原題:
U.S. Sends More Forces to Mideast While Trump Vows Withdrawal(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-11/PZ84ET6JIJUX01?srnd=cojp-v2

ワールド2019年10月12日 / 02:22 / 4時間前更新
米、サウジに3000人増派 石油施設攻撃受け大規模配備も
Reuters Staff
1 分で読む

[ワシントン 11日 ロイター] - 米国防総省は11日、サウジアラビアへの新たな大規模軍事配備を発表した。前月のサウジ石油施設への攻撃を受け、同国の防衛能力を強化する。

発表によると、戦闘機部隊のほか、地対空ミサイル「パトリオット」、新型迎撃ミサイル「THAAD(サード)」などが配備される見通し。

同省のホフマン報道官は声明で、他の配備部隊と合わせ、3000人規模になると述べた。

今回の軍事配備が今後数週間または数カ月以内に同地域から撤退するとみられる米軍との入れ替わりなのかは不明。

*写真を追加しました。
https://jp.reuters.com/article/saudi-aramco-attacks-idJPKBN1WQ2CB


 
トランプ大統領はトルコ制裁承認も、発動に動かず−ムニューシン長官
Josh Wingrove、Saleha Mohsin
2019年10月12日 4:20 JST
トランプ米大統領はトルコに新たな制裁を科す権限を政府に与えたが、まだ制裁発動への動きはない。ムニューシン米財務長官が明らかにした。

  ムニューシン長官は11日、ホワイトハウスの記者会見室で、「金融機関には通知している」と述べた。  

  シリア北部からの米軍撤退を指示したトランプ氏は、その決定の正当性を主張している。米軍の撤退によってシリア北部への侵攻が可能になったトルコは、米国と同盟関係にあるクルド人勢力を攻撃した。米共和党議員らはクルド人勢力を見殺しにするものだとして、トランプ大統領を批判している。

原題:Trump Threatens Turkey Sanctions But Isn’t Moving Ahead Yet (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-11/PZ84EH6JIJUO01?srnd=cojp-v2


 


トップニュース2019年10月12日 / 08:33 / 3時間前更新
焦点:先が見えないキューバ石油危機、ロシアとベネズエラが支援
Reuters Staff
3 分で読む

[ハバナ/メキシコシティ 4日 ロイター] - ベネズエラから多くのタンカーが到着したことで、米国の制裁強化に伴うキューバの深刻な燃料不足は一息ついた。さらに4日にキューバを訪問したロシア首相は、エネルギー産業の発展を支援することを約束した。

だが、最も関係の近い同盟国であるベネズエラ、ロシア両国からの支援があっても、キューバのエネルギー問題が解消される見通しは暗い。キューバ政府はここ1カ月、さまざまな省エネ策を導入したが、その多くを継続した。

キューバ政府は9月11日、月末までのガソリン、ディーゼルなど精製済み燃料の供給が十分に確保できていないと警告を出した。キューバがベネズエラのマドゥロ大統領を支持していることへの報復として、米トランプ政権が対キューバ制裁を強化したためだ。

燃料不足に対応して、キューバはただちに省エネ措置を強化した。これらの措置は、主要調達先であるベネズエラの経済危機に伴うエネルギー輸入急減を受けて導入されていたものだ。

キューバ当局は先月、公共交通の運行を縮小し、一部工場で生産を切り詰め、輸送手段として家畜に荷車を引かせたり、薪ストーブの利用を拡大するよう呼びかけた。

これに対し同盟国のベネズエラは、自国の石油生産に問題を抱え、さらに制裁による制約があるにもかかわらず、キューバに向けた石油輸出を増大させた。

情報会社リフィニティブのデータと、ベネズエラの国営石油公社PDVSAの内部データによれば、9月下旬以降、少なくとも8隻のタンカーにより、約383万バレルの原油及び燃料油がベネズエラから出荷された。9月前半まではタンカー5隻、198万バレルだったのに比べると急激に増加した。

その甲斐あって、キューバでは何時間も行列しなければガソリンを給油できない状況は解消されている。ただ、軽油は品薄状態が続いている。

鉄道とバスの運行は増える見込みだが、キューバ運輸当局によると、先月に大幅削減すした分を取り戻し、「通常運行」には戻るには至らないという。

ディアスカネル国家評議会議長は、共産党機関紙「グランマ」に「目の前の岐路を恐れるな(No Fear of the current juncture)」と題する論説を寄せ、キューバが9月に大停電を回避したことを賞賛した。

4日までの2日間、キューバを公式訪問したロシアのメドベージェフ首相も、キューバは孤立していないというシグナルを送った。

メドベージェフ氏は4日、キューバ北部でロシア・キューバ両国の国営企業が開発を進めているボカデハルコ油田を視察した。ロシアの国営通信社スプートニクは、ロシア側は2年間で1億ユーロを投じ、油田内に30カ所の油井を掘削することを計画していると報じた。

ロシア政府高官はタス通信に対し、エネルギー効率の改善と石油開発をめぐる協力を通じて、キューバのエネルギー輸入依存度引き下げに向けて共に取り組んでいると話した。

ただしメドベージェフ首相は、キューバ訪問中、同国への短期的な支援措置については何も発表しなかった。

<エネルギー不足深刻化の恐れ>

キューバの石油自給率は40%程度と推定されている。ここ数年、残りのほとんどすべてはキューバが医療サービスを提供するのと引き替えに、ベネズエラから供給されている。アルジェリアやロシアといった同盟国からも若干量を輸入している。

しかし、ベネズエラとキューバはますます厳しくなる米国の制裁に苦労するだろういうのが、アナリストたちの見立てだ。

ベネズエラのPDVSA社はこのところ、長らく外洋に出ていなかった旧式船を利用してキューバに石油を輸出している。制裁でタンカーをチャーターすることが困難になっているためとみられる。

米ライス大学でラテンアメリカのエネルギー問題を研究するフランシスコ・モナルディ氏は、「状況は厳しくなる一方だ」と話す。制裁の影響で、多くの企業がベネズエラと取り引きするのを避けるようになっているという。

Slideshow (2 Images)
アナリストの中には、メドベージェフ首相のキューバ訪問の目的について、ベネズエラと協調し、キューバのエネルギー危機脱出を支援することを協議することだとみる向きがある。

このところ、ロシア、ベネズエラ、キューバのあいだでは、高官レベルの往来が頻繁に見られる。最近ではベネズエラのロドリゲス副大統領がモスクワ、次いでハバナを訪問した。

エイドリアン・アルシュト・ラテンアメリカ・センターのジェイソン・マルツァック氏は、「とはいえ、自身の経済状況を考えると、ロシアがどの程度の支援を提供できるか疑問だ」と話す。

タス通信はロシア政府の発表として、ロシアからキューバへの石油製品の供給が今年上半期に約4倍に増加した、と報じている。ただ、詳細は明らかにされておらず、トランプ政権が圧力を強めた下半期の出荷量も報じられていない。

キューバではその間も、国民の苦境が続く。

ハバナで「アトリエ」という名のレストランを営むニューリス・ヒヘラスさんによれば、当局が企業のオーナーたちを集め、使用電力量を最大で50%減らしてほしいと要請したという。

「エアコンと電気オーブンはほぼ使わなくなった」と、彼女は言う。

政府のオフィスは日中の数時間、電力の使用をやめている。コンピューターも使えないため、職員は書類作業にかかるか、カリブ海地域の暑さを逃れるため、(エアコンの使えない)オフィスを離れる。

一部の公務員は給与カットなしで自宅待機を命じられた。職場復帰の指示はまだ出ていない。ハバナ市内の映画館のなかには、上映回数を1日2─3回から1回に減らしてところも出てきた。

映画館の1つ、 「シネ・ヤラ」で清掃員として働くヨランダ・サンタナさんは、「石油不足のせいで、うちでは夜のコメディ上映をやめてしまった」と話す。「状況がいつ好転するのか、見当もつかない」

(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/cuba-economy-idJPKBN1WN0FP
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/867.html

[経世済民133] ドルや逃避先通貨に売り、米中合意やEU離脱を楽観 中国、トランプ氏はウォーレン氏より「まし」な相手か 米中分断におびえる市場、問われる緩衝役・安倍首相の手腕 米中協議不調でも急速な円高なしか、パウエル・プットに威力 トランプ氏「非常に良い交渉だった」TOPIX反発 円安 債権下落
ドルや逃避先通貨に売り、米中合意やEU離脱を楽観
Alyce Andres
2019年10月12日 6:10 JST
11日のニューヨーク外国為替市場では、ドルや逃避先通貨が下落。貿易協議で米中が部分的な合意に達するとの観測を早い時間から織り込み、午後に合意成立のニュースが流れた際の反応は鈍かった。
• ポンドはドルに対し大幅続伸。ニューヨーク時間午後3時55分現在、1.8%高の1ポンド=1.2666ドル
• 米中で部分合意が成立したとのニュースが詳細を伴わず流れた後、目立った動きはドルが円に対しこの日の高値を試した程度
o 中国は来月チリで開かれるAPECサミットに先立ち、中国での貿易協議にライトハイザーUSTR代表とムニューシン財務長官率いる米側交渉団を正式に招待した−CNN
• ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.5%低下。ドルは主要10通貨の大半に対して下げた
o ドル指数は週間ベースでも0.5%低下
o 10月のミシガン大学消費者マインド指数(速報値)は予想外に上昇、ドル安材料に

• ドルは対円で0.4%高の1ドル=108円42銭
o 一時は108円63銭に上昇、8月1日以来の高値をつけた。週間ベースでも上昇
o 米国債利回りに連れ高
• ユーロはドルに対して0.4%高の1ユーロ=1.1046ドル
o 日中高値は1.1063ドル
欧州時間の取引
  米中閣僚級会合の結果を待つ中、ドルは主要10通貨の大半に対し下落した。
原題:Currencies Price in Optimism on China Deal, Brexit: Inside G-10(抜粋)
Dollar Faces Weekly Loss on Trade, Brexit Optimism: Inside G-10
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-11/PZ85FYT0AFB801?srnd=cojp-v2


米国株は1週間ぶり大幅高、米中の貿易協議が進展
Vildana Hajric、Sarah Ponczek
2019年10月12日 6:26 JST
11日の米株式相場は3日続伸し、1週間ぶりの大幅高となった。米中の貿易協議で進展が見られたことを好感した。

• 米国株は3日続伸、アップルは最高値更新
• 米国債は下落、10年債利回り1.73%
• NY原油先物は大幅続伸、米中が貿易協議で部分合意
• NY金先物は続落、逃避需要が減退−米中や英・EU交渉が進展
  S&P500種株価指数は過去最高値まであと1.8%未満に迫った。トランプ米大統領は米中が貿易戦争の休戦につながる合意の「第一段階」に達したと発表。早ければ来月にも署名となる可能性があるという。最も厄介な問題の幾つかは依然未解決なことから、S&P500種はこの日の高値を離れて引けた。アップルは最高値を更新。同社は中国で「iPhone(アイフォーン)」を大量に販売する。英国の欧州連合(EU)離脱交渉で進展が示唆されたことも株価を支えた。
  S&P500種は前日比1.1%高の2970.27。ダウ工業株30種平均は319.92ドル(1.2%)上げて26816.59ドル。ナスダック総合指数は1.3%上昇。ニューヨーク時間午後4時52分現在、米10年債利回りは6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の1.73%。
  貿易戦争を停戦に導く包括的な合意には至らなくとも、投資家は協議での進展を評価した。今週は貿易協議を巡り相反するニュースが相次ぎ、市場を混乱させていた。
  TCWグループのシニアポートフォリオマネジャー、ダイアン・ジャフィー氏は「今回の展開を受けて本当に安心感が広がるなら、最高値を更新する可能性はある」と指摘。「相場はきょう上昇しているが、市場に植え込まれた疑いの目は、非常に強くてしつこい」と述べた。

  ニューヨーク原油先物相場は大幅続伸。米中の貿易協議進展を好感した。トランプ大統領は両国が部分的合意に達したと発表した。イランのタンカーが紅海で攻撃されたことも買いにつながった。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物11月限は前日比1.15ドル(2.2%)高の1バレル=54.70ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は1.41ドル上げて60.51ドル。
  ニューヨーク金先物相場は続落。週間ベースでは3月以来の大幅安となった。米中貿易協議や英国の欧州連合(EU)離脱交渉で進展が示唆される中、逃避需要が減退した。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は0.8%安の1オンス=1488.70ドルで終了した。
原題:Trade Thaw Sends Stocks Surging and Street Says Rally Isn’t Over(抜粋)
Oil at Two-Week High After U.S.-China Reach Partial Trade Deal
PRECIOUS: Gold Posts Weekly Drop on Hopes of U.S.-China Deal

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-11/PZ85FLDWRGG001


中国、トランプ氏はウォーレン氏より「まし」な相手か
Gina Chon
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[サンフランシスコ 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領の「米国第一」主義は結局、中国にとってさほど悪くない政策なのかもしれない。中国によるイスラム教徒少数民族ウイグル族への弾圧を巡って米政権が態度を硬化させたことで、今週の米中貿易協議への期待はしぼんだ。しかし来年の米大統領選の民主党候補として支持率を伸ばしつつあるエリザベス・ウォーレン上院議員が大統領になれば、人権問題や米製造業による中国生産について、トランプ氏以上に厳格な態度で臨むだろう。

米中貿易交渉は1歩進んで2歩下がる状態が続いている。米国務省は8日、新疆ウイグル自治区でのウイグル族拘束に関係したとして、中国政府当局者や共産党関係者へのビザ(査証)発給を制限すると発表した。7日には米商務省が同様の理由で、28の中国企業や政府機関を禁輸措置の対象に加えたばかり。貿易協議の中国側首席交渉官、劉鶴副首相による10日のワシントン訪問に暗雲が漂った。

しかしトランプ氏は、通商合意と引き換えに一定の譲歩に応じる姿勢も示している。例えば、貿易協議の一環として中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に対する禁輸措置を緩和する可能性があると述べた。香港の抗議活動を巡る中国批判も穏やかな調子にとどめているほか、ペンス副大統領による中国への強硬姿勢を示す演説も延期させたままだ。

ウォーレン氏が大統領選に勝利すれば、トランプ氏ほど「融和的」な態度は望めないだろう。ウォーレン氏は「経済愛国主義」を唱え、国内製造業を育成する「中国製造2025」を米国も見習うべきだと述べている。対中関税を支持し、リーバイス(LEVI.N)やアップル(AAPL.O)は雇用を海外に流出させていると批判。こうした動きを奨励する措置の撤廃を約束している。

ウォーレン氏はまた、国内製造を促進するために積極的にドル相場を管理する政策も支持している。トランプ氏はそうした策をちらつかせるだけで、実行には移していない。

中国と通商合意を結ぶ際の前提条件もトランプ氏より厳しいだろう。団体交渉権など労働者の権利を認めることや、人権および信教の自由の保証、数々の環境基準などが含まれる。

トランプ氏は、中国が米大統領選をにらんで貿易交渉を膠着させていると批判してきた。また同氏は日米貿易協定のような小規模な通商合意でも大きな勝利だと満足し、お世辞にも反応する。しかしウォーレン氏相手にそんな駆け引きは通用しないだろう。中国は今なら、つけ入ることが可能だ。

●背景となるニュース

*米国務省は8日、ウイグル族の弾圧に関与した中国政府当局者や共産党関係者に対し、ビザ発給を制限すると発表。

*米商務省は7日、同様の理由で28の中国企業や政府機関について、米企業による輸出を制限する対象に加えると発表したばかり。

*貿易協議の中国側首席交渉官である劉鶴副首相は10日、ワシントンで米国高官らと会談する予定。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/us-election-warren-idJPKBN1WO0BW


 

米中分断におびえる市場、問われる緩衝役・安倍首相の手腕
田巻一彦
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[東京 9日 ロイター] - 米国務省が8日、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒への弾圧などを理由に中国当局者へのビザ発給を制限すると発表し、同日の米株式市場は大幅安となった。これは単なる米中通商協議への懸念だけでなく、「米中分断」の兆しに対するマーケットのおびえではないか。分断が本格化すれば、日本企業の苦悩は深くなるだろう。

こうした中で、米中首脳とそれぞれコンタクトが取れる安倍晋三首相が、米中の緩衝役となって「第三の道」を探る外交的手腕を発揮する場面ではないかと指摘したい。甘利明・自民党税調会長は、最先端分野を除く半導体などでの日中連携が可能になると発言している。

8日の米国務省の対応は、米商務省が7日に発表した杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)(002415.SZ)などを事実上の禁輸リストである「エンティティー・リスト」に追加することに続く動き。理由は中国政府によるウイグル族などへの弾圧に関与していることで、米国が「人権尊重」を対中外交カードとして切ってきたことが明白になった。

また、トランプ米大統領は7日、抗議行動が激化している香港問題に関し「何か悪いことが起きれば、交渉にとって非常に悪いことになると思う。政治的に非常に厳しいことになると思う」と述べ、情勢次第では通商協議の阻害要因となる恐れがあるとの見方を示した。

ロイターを含めた複数のメディアは、米株式市場での中国企業の上場を廃止を検討していると報道。ブルームバーグは米公務員年金基金による中国市場への投資制限の可能性を探っていると伝えている。

米当局者は現在、検討していないとコメントしたが、マーケットでは、米国が対中政策に関し、通商・貿易問題だけでなく、幅広い分野に「戦線」を拡大し、戦略的な対立を辞さない姿勢に傾いていると受け止められている。

8日にダウ.DJIが300ドルを超す下落となったのも、10日から始まる米中の閣僚級による通商交渉が決着しないとみただけでなく、米中の分断が深刻化すれば、米中だけでなく、グローバルな経済に深刻な影響を及ぼすのではないか、という懸念が出たからだと考える。

<注目される対ファーウェイ禁輸措置の行方>

中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)HWT.ULの第5世代移動通信システム(5G)技術が典型的なケースだが、コストを最優先にした「最適」なサプライチェーンの構築が、米中分断による「高い壁」で遮られ、非効率なネットワークの形成を強いられる可能性が出てくる。

その意味で、米商務省が8月に公表したファーウェイに対する米製品の輸出禁止措置の猶予期間を90日延期するとした対応が、当面の焦点になるのではないか。

90日延期して、輸出禁止猶予の期限は11月19日となった。この期限が再延長されず、禁輸措置が発動された場合、米中分断の現実が、その一端をあらわにすることになる。今月10、11日の閣僚協議の結果にもよるが、その時点で米中関係が急速に融和的環境になっている可能性は低いと予想する。

<米中対立と日本の苦悩>

米中対立が激しさを増せば、貿易相手国の1番目と2番目の対立となる日本の影響は、市場が想定している以上に大きくなるリスクがある。

特に懸念されるのは、香港問題に中国が本格介入し、米国が対中投資を大幅に制限するようになった場合、日本にも同調を求めるケースだ。日本政府は、対応に苦慮すると予想される。

そのようなリスクシナリオに陥る前に、日本が取るべき政策のスタンスについて、どうやら政府・与党内で議論が水面下に進んでいるようだ。

自民党の甘利税調会長は9月25日のロイターとの単独インタビューで、最先端技術分野とそうでない分野を切り分け、最先端分野以外では、中国との連携が可能であるとの見解を示した。

甘利氏は、日本としても「米国に懸念を与えないという意味で、中国とはハイテクでない分野での事業協力が中心になる」と表明。最先端分野以外の半導体の請負生産や、中国との環境対応車での技術協力などが検討対象になると述べた。

こうした腹案をもとに、安倍首相の外交手腕が今こそ、問われるのではないか。完全な分断ではなく、「壁」を迂回した一定のルートを確保するルール作りなどで日本が主導権を発揮すれば、対中ビジネスのウエートが高まるなか、米国の軍事的プレゼンスの恩恵も受けたい東南アジア諸国連合(ASEAN)のいくつかの国々も、賛同することになるだろう。
https://jp.reuters.com/article/us-china-abe-idJPKBN1WO06U


 

米中協議不調でも急速な円高なしか、パウエル・プットに威力
田巻一彦
2 分で読む

[東京 11日 ロイター] - トランプ米大統領と中国の劉鶴副首相が11日にホワイトハウスで会談することになり、通商協議での歩み寄り期待が市場で広がっている。11日の東京市場は株高・円安で反応しているが、仮に合意に至らず15日に米国が関税引き上げを決めても、円高が急速に進む可能性は低いと予想している。

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がリードし、利下げや量的緩和などの追加緩和のカードを繰り出して米経済の底割れを防ぐという市場の期待感が強いからだ。決定的にリスクオフに傾くことがなければ、ドルが105円を突破して100円を目指す円高となる展開は考えにくい。短期的な「パウエル・プット」の威力は絶大だ。

10日の米中閣僚協議の進展度合いについて、双方から説明を受けた全米商工会議所のマイロン・ブリリアント副会頭(国際部門責任者)は「一段と大きな合意を模索している」、「今週の協議で通貨を巡る合意が得られる可能性もある。これにより15日付で米政府が関税措置第4弾を発動させない公算がある」と述べた。

トランプ・劉鶴会談が11日にセットされ「何も合意がないという可能性は下がった」(国内金融機関関係者)との見方も浮上。日経平均.N225は前日比200円を超す上昇となり、ドル/円JPY=EBS>もいったん108円台で取引された。

<米関税引き上げでも、リスクオフ深刻化せず>

ただ、期待しては「裏切られてきたのが、米中交渉」(国内証券関係者)との声も聞かれ、2500億ドルの中国製品に対する関税を25%から30%に引き上げる期限である15日に、「引き上げ」のアナウンスがあるかもしれないという疑心暗鬼も市場に残っている。

もし米中交渉が土壇場で合意に至らず15日に米国が関税引き上げを発表しても、大幅な打撃が市場に加わって、急速に円高が進む可能性は低いと予想する。そのケースでは、FRBが10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを決め、量的緩和に踏み込むとの期待感が市場で広がる可能性が高いからだ。

パウエル議長は8日、 民間銀行の準備預金が減少しているとの懸念に対応し、準備預金積み増しのためTビル(国庫短期証券)購入を始めるとの意思をにじませた。同時に量的金融緩和(QE)の再開との見方は強く否定したが、米中協議が不調に終われば、市場でのQE期待が盛り上がりを見せるとみられる。

このような、FRBの追加緩和への強い期待感を背景に、市場心理が強烈に「リスクオフ」へと傾く可能性は低いと思われる。

つまり、株価下落局面でダメージをコントロールする機能を持つプットオプションになぞらえた「パウエル・プット」の効果を、市場はかなり強く意識している。

その結果、ある程度の株価下落が起きても、それに連動して急速に円高が進み、その動きが再び株安を加速させる「スパイラル的」リスクオフ相場の発生を回避できると予測する。

利下げ期待で日米金利差が縮小し、それが円高を誘発するとの見方も根強く市場には存在するが、米中協議の結果公表後の市場では、日米金利差の縮小期待よりも、リスクオフの深刻化回避の方がより強く意識されるのではないか。

ただ、このパウエル・プットの効果にも、一定の限界はある。米欧の複数の金融機関が、リーマン・ショック時のように巨額損失を抱えていると分かった場合、世界の金融・資本市場は大きな衝撃を受け、一瞬のうちに深いリスクオフ相場に直面しかねない。

その時は、G7ないしG20での政策協調が求められるだろう。

当面は「底が抜ける」ような危機を、パウエル・プット効果で阻止できるのではないかと予想する。
https://jp.reuters.com/article/us-china-powell-idJPKBN1WQ06I

 


トランプ大統領、米中貿易協議の初日は「非常にうまく行った」
Laura Curtis
2019年10月11日 5:58 JST 更新日時 2019年10月11日 10:40 JST
ワシントンでの閣僚級貿易協議は11日に再開される
11日のトランプ大統領と劉副首相の会談で事態打開の可能性
トランプ大統領
トランプ大統領 Photographer: NICHOLAS KAMM/AFP
トランプ米大統領は10日、米中閣僚級貿易協議の初日について「非常にうまく行った」と述べるとともに、11日には中国の劉鶴副首相と会うと語った。

  トランプ大統領はホワイトハウスを出る際に記者団に対し、閣僚級協議は11日に再開される見通しだと話した。米中間の閣僚級の対面協議は7月以来。

Chinese Vice Premier Liu He Visits U.S. For Trade Talks
左からライトハイザー米通商代表部(USTR)代表、中国の劉鶴副首相、ムニューシン米財務長官(10月10日、ワシントン)
  トランプ大統領は「協議は非常にうまく行っていると思う。彼らはこの後も少し話すが、基本的にはきょうの議論を終え、われわれはここであす彼らと会うだろう。極めて順調だ」と語った。

  トランプ大統領のこの発言が伝えられると、S&P500種株価指数先物は上げ幅を拡大した。

  トランプ大統領は完全な合意の方が好ましいと述べているものの、米中は共に、まずは部分的な合意を取りまとめ、双方の立場に大きな開きがある問題はその後に議論することに前向きのように見受けられる。知的財産権侵害や技術移転の強制などの問題への中国側の取り組みの約束が、米国の中核的な要求。

  今回の協議で進展が見られなければ、米国は15日に2500億ドル(約27兆円)相当の中国からの輸入品への関税率を25%から30%に引き上げる予定。12月15日には1600億ドル相当の輸入品への追加関税も発動する計画だ。

  トランプ大統領の通商問題のアドバイザーを以前務め、現在は法律事務所アキン・ガンプのパートナーであるクリート・ウィレムス氏はトランプ大統領と劉副首相の会談について、「今週これまで聞こえてきた話の多くとは違い、あすの会談の発表は重要な意味を持つ」と指摘。「私はかつて貿易交渉の場にいたが、トランプ大統領が直接関与した場合は常に事態が前進した」と説明した。

通貨協定
  ブルームバーグは9日、ホワイトハウスが、中国との貿易協議の早期妥結に向けた部分的合意に、過去に合意していた通貨協定を含めることを検討していると、事情に詳しい複数の関係者を引用して報じた。この部分的合意には、来週予定している対中関税引き上げの保留も含まれる可能性があるという。

  2月に最初に発表されたこの通貨協定に詳しい関係者によれば、同協定は米国がカナダ、メキシコと調印した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に近い内容であり、20カ国・地域(G20)声明に盛り込まれた透明性のコミットメントも含んでいる。

  USMCAは調印国に対し、市場ベースの為替レート維持や、介入も含めた通貨の競争的切り下げの自制、経済・通貨安定に向けた経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)の強化を求めている。

原題:Trump: China Trade Talks Done for the Day, to Continue Friday
Trump Says Day 1 Trade Talks Went ‘Very Well;’ S&P Futures Rise、Trump Says Day One of U.S.-China Trade Talks Went Very Well (1)(抜粋)

(通貨協定に関する情報を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-10/PZ6FFODWLU6B01?srnd=cojp-v2


米中閣僚級通商協議が再開、トランプ氏「非常に良い交渉だった」
Reuters Staff
2 分で読む

[ワシントン 10日 ロイター] - 10日にワシントンで始まった米中の閣僚級通商交渉は、1日目の協議を終えた。トランプ米大統領は、極めて良好な交渉だったと述べたほか、中国の劉鶴副首相と11日にホワイトハウスで会談することを明らかにした。


ホワイトハウスによると、トランプ氏と劉副首相は米東部時間11日午後2時45分(日本時間12日午前3時45分)に会談する。

米経済団体幹部らは、米国が来週予定されている関税引き上げを見送る可能性に期待を示した。

双方の閣僚による直接協議は7月下旬以来。ムニューシン米財務長官とライトハイザー通商代表部(USTR)代表は、劉氏ら中国当局者とUSTRで約7時間にわたり協議を行った。

トランプ大統領は協議終了後、記者団に対し「非常に良い交渉だった」と述べ、11日にホワイトハウスで劉氏と会談する意向をあらためて示した。会談についてはこれより先にツイッターで言及していた。

ホワイトハウス当局者も1日目の協議は極めて順調に進んだとの見方を示し、「おそらく想定よりも良かった」と述べた。

劉氏は笑顔で記者団に手を振ってUSTRを後にしたが、質問には応じなかった。協議は11日まで行われる。

米中双方から説明を受けた全米商工会議所のマイロン・ブリリアント副会頭(国際部門責任者)は、通貨や著作権保護などの面で初期の合意が得られる可能性があるとの見方を示した。

同氏は記者団に対し、交渉団は市場アクセスや知的財産権保護などの問題を巡り「一段と大きな合意を模索している」とし、「今週の協議で通貨を巡る合意が得られる可能性もある。これにより10月15日付で米政府が関税措置第4弾を発動させない可能性がある」と述べた。

トランプ大統領は10日、比較的小規模の合意を受け入れる用意があるかとの記者団の質問に答えず立ち去った。これまでには、部分的な合意より包括的な合意を望む考えを示している。

<中国は「強い誠意」>

米国は協議再開を控えた今週、中国政府によるウイグル族などイスラム系少数民族への弾圧への関与を理由に、中国の監視カメラ大手、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)(002415.SZ)や公安機関など28団体・企業を事実上の禁輸リストに追加したほか、中国当局者に対するビザ発給制限を発表した。

これに対抗し、中国も反体制派と関係がある米国人へのビザ発給規制を厳格化することを計画しているという。

こうした動きを受け、協議に向けてムードが悪化したが、中国国営メディアは中国側が一段の対立激化を回避するため交渉に応じる構えを示していると報じた。

国営新華社によると、劉副首相は通商協議で双方が重要とみなす問題について合意を目指す考えを示し、「中国は強い誠意を持って交渉に臨む。貿易収支、市場アクセス、投資家保護などの面で米国と協力していきたい」と述べた。

米農務省が10日公表した統計によると、通商協議を前に中国が米国からの大豆と豚肉の輸入を急拡大させたことが分かった。民間輸出業者の中国への大豆販売は39万8000トン。1日の販売量が急増したのは今週に入ってから2日目となる。

<核となる問題は先送りか>

米中は、知的財産権の保護や強制的な技術移転の停止、補助金の削減、市場アクセスの拡大などを求める米国側の要求を巡って対立している。

今回の協議では最も溝の深い問題は取り上げられない見通しで、今後の協議に先送りされる可能性が高い。

 10月10日、ワシントンで始まった米中の閣僚級通商交渉は、1日目の協議を終えた。写真は米中の交渉担当者ら(2019年 ロイター/Yuri Gripas)
全米商工会議所のブリリアント氏は、知的財産権を巡り話し合われたのは主に著作権や商標権の侵害など「20世紀の知的財産権保護」で、データフローやコンピューターのソースコード、商業データなどの保護に関するものではなかったと明かした。

このほか、米中ビジネス評議会のクレイグ・アレン会長は通貨を巡る合意について、米中が2月におおむね合意したものを踏襲する公算が大きいと指摘。貿易を有利にするための為替操作は行わないとする主要20カ国・地域(G20)会議での確約に類するものになるとの見方を示した。その上で、通貨を巡り合意すれば「前向きだ。米国が合意しやすくなる」と語った。
https://jp.reuters.com/article/us-china-resume-talk-idJPKBN1WP2QD

 
TOPIX反発、米中協議の進展期待や円安−景気敏感中心広く上げ
長谷川敏郎
2019年10月11日 7:58 JST 更新日時 2019年10月11日 15:34 JST
トランプ大統領は劉鶴副首相と会談へ、「中国は非常に素晴らしい」
ドル・円は一時1ドル=108円10銭台と円安、原油や銅市況も上昇
11日の東京株式相場は上昇し、TOPIXは3日ぶりに反発。米中通商協議の進展期待や為替の円安から業績懸念がやや後退し、自動車など輸出関連、鉱業や非鉄金属など市況関連主導で内外需とも広く上げた。

TOPIXの終値は前日比13.85ポイント(0.9%)高の1595.27
日経平均株価は246円89銭(1.1%)高の2万1798円87銭と続伸
〈きょうのポイント〉

トランプ米大統領:米中貿易協議は順調に推移−劉鶴副首相と11日午後2時45分(日本時間12日午前3時45分)会談へ
米大統領:中国は非常に素晴らしい、われわれは中国と合意できるか目にすることになる
きょうのドル・円相場は1日以来の一時1ドル=108円10銭台、前営業日の日本株終値時点は107円51銭
10日の米ニューヨーク原油先物は1.8%高と反発、銅などロンドン金属取引所の金属市況も上昇
  三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは、米国はもともと協議での部分合意に反対だったとしながらも、「昨日あたりで少し変化が見られた。通貨協定と農産物の条件を入れ、産業補助金や構造問題は来年に持ち越そうというような部分合意の形になるのではないか」と話す。日本の3連休前に「ショートの巻き戻し」が出ているとみる。

  日本時間の米S&P500種Eミニ先物が堅調に推移する中、今晩の米中通商協議に対する期待が終始継続した。TOPIX、日経平均ともに2日以来の日中高値となり、15日に予定されている米国の対中関税引き上げ期限前にチャート上では2日と3日の間に付けた窓(空白)の上限を埋める格好となった。中国上海総合指数も午後に1%超まで上げ幅を拡大させた。

  みずほ証券の倉持靖彦投資情報部長は、今回の米中協議の結果に対し、市場ではミニディール成立が5割程度、何も決まらない現状維持で15日に米国が対中関税を引き上げるのが4割程度、決裂して関税報復合戦となるテールリスクが1割程度と推測。市場の米中交渉に対する事前の期待値は低いとみられるとして、「もしミニディールなら安心感が出てくる」と予想していた。

東証33業種では鉱業や海運、証券・商品先物取引、輸送用機器、非鉄金属、石油・石炭製品、鉄鋼が上昇
サービスや情報・通信、水産・農林は下落
きょう算出された株価指数オプション10月限の特別清算値(SQ)算出で日経225型SQは2万1842円63銭、前日の日経平均終値比290円65銭高−ブルームバーグ試算
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-10/PZ6H5VT0G1KW01


 


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/358.html

[経世済民133] ECB、ドイツ債の買い入れ限度に達するまであと1年 米FRB、日銀に類した長短金利操作検討の必要=ミネアポリス連銀総裁 米金融当局、月600億ドル相当のTビル購入へ−10月中旬に開始
#日本化#

ECB、ドイツ債の買い入れ限度に達するまであと1年
−ロイター
Sarah Jacob
2019年10月11日 21:07 JST
欧州中央銀行(ECB)の債券購入プログラムでドイツ債の買い入れが限度に達するまでの時間はあと1年だと、ロイター通信が事情に詳しい匿名の関係者2人の話を基に報じた。プログラムを継続するには規則の変更が必要だと指摘した。

  ロイターによると、限度額に達するのを遅らせるために、当局者らは1つの発行体当たりの購入限度を変更するよりは、域内各中銀による出資比率(キャピタルキー)を調整して購入するドイツ債を減らすことが望ましいと考えている。ECBはこの出資比率に基づいて各国の国債を購入している。

  ECB報道官はロイターに対してコメントを控えたという。

原題:ECB Has One Year of German Debt to Buy Before Limit: Reuters (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-11/PZ7L2P6TTDS701?srnd=cojp-v2

対トルコ制裁、来週のEU首脳会議で協議へ−フランス
Selcan Hacaoglu、Firat Kozok
2019年10月11日 17:43 JST
フランスのドモンシャラン欧州問題担当相が述べた
首脳会議は17日から−トルコ軍は「テロリスト」数百人死亡と発表
フランスのドモンシャラン欧州問題担当相は11日、来週の欧州連合(EU)首脳会議でトルコに対する制裁について協議すると述べた。

  ルクセンブルクで14日に開催される外相会合でも、トルコが議題になる。ブリュッセルでのEU首脳会議は17日から。

  トルコ軍によれば、9日に始めたシリア北東部での「平和の泉」と名付けた軍事作戦でこれまでに数百人の「テロリスト」が死亡した。

 
TURKEY-SYRIA-CONFLICT-KURDS
シリアの町タル・アブヤドから上がる煙(10月10日)写真家:ゲッティイメージズによるBulent Kilic / AFP
President of Turkey and leader of AK Party Recep Tayyip Erdogan
トルコのエルドアン大統領(10月10日、アンカラで)写真家:アナドルエージェンシー/ゲッティイメージズ
Operation Peace Spring in northern Syria
タル・アブヤド付近でのトルコ軍による攻撃後に上る煙(10月10日)フォトグラファー:Esber Ayaydin / Anadolu Agency via Getty Images
Turkey Moves Forces Into Northern Syria
トルコの装甲車、シリアに入る(10月10日)写真家:Burak Kara / Getty Images
Operation Peace Spring starts in northern Syria
シリアのラス・アルアインからの煙(10月9日)
Turkey’s Frontline
Erdogan wants to force Kurdish militia away from the border


Sources: Con?ict Monitor by IHS Markit, areas of control as of Sept. 30, 2019; Office of the Turkish President

原題:EU to Discuss Sanctions, Turkey’s NATO Membership, France Says、Turkey Says Hundreds of ‘Terrorists’ Killed So Far: Syria Update(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-11/PZ78XHDWRGG401?srnd=cojp-v2

ビジネス2019年10月12日 / 01:02 / 4時間前更新
米FRB、日銀に類した長短金利操作検討の必要=ミネアポリス連銀総裁
Reuters Staff
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[11日 ロイター] - 米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は11日、連邦準備理事会(FRB)は日銀が金融政策の一環として採用している長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)に類した政策を検討する必要があるとの考えを示した。

カシュカリ総裁はニューヨークで開かれた外交問題評議会(CFR)の会合で、「新たな政策措置の1つとして、イールドカーブ・コントロールの可能性を分析する価値がある」と述べた。

その上で、FRBが日銀のように10年債利回りを操作の対象とするのは好ましくない可能性があるとし、 「(イールドカーブ・コントロールは)複雑で、リスクを伴わないわけではない」としながらも、「検討の価値はある」と述べた。

イールドカーブ・コントロールについては、パウエルFRB議長も今週に入り、FRBが検討する可能性があることを示唆している。

日銀は長短金利操作のほかにマイナス金利政策も採用しているが、FRBは景気刺激に向けマイナス金利政策を採用する前に利下げと量的緩和を実施するとカシュカリ総裁は述べ、マイナス金利政策についてはそれほど支持を示さなかった。

ただ、経済を活性化させ、労働参加率と賃金を押し上げるために米金利を引き下げる必要があるとの考えを改めて強調。賃金の伸びが3.5─4%に達すればインフレ押し上げに寄与するため、この水準に達した時点で利上げを支持するとの考えを示した。

FRBは9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で25ベーシスポイント(bp)の利下げを決定。[nL3N2693NC][nL3N26U3RW]今月のFOMCでも今年3回目となる利下げを決定するとの観測が高まっている。

カシュカリ総裁は10月の利下げを支持する公算が大きいとしながらも、いかなる追加利下げも経済指標に基づき、かつ米中貿易戦争の動向を見極めた上で決定される必要があるとの考えを示した。

トランプ米大統領が繰り返しFRBを批判していることについては、金融政策担当者は政治に関与しないとし、「ノイズが大きくなればなるほど、金融政策担当者はデータを注視する」と指摘。こうした指針が振れることはないと述べた。

このほか、貿易戦争に対応するに当たり金融政策は正しい政策措置ではないが、金融政策はFRBが持つ唯一の措置であると指摘。貿易戦争がもたらす心理的な衝撃、および経済への波及をモデル化することはできないとも述べた。

また、50bpの利下げで経済にショックを与える時期は過ぎたとし、貿易戦争がどのように収束していくのか、もしくは継続していくのか、注視する必要があると述べた。

カシュカリ総裁は今年のFOMCで投票権を持っていないが、来年は投票権を持つメンバーになる。

*写真を追加しました。
https://jp.reuters.com/article/kashkari-touts-yield-curve-control-idJPKBN1WQ25K

 

米金融当局、月600億ドル相当のTビル購入へ−10月中旬に開始
Rich Miller
2019年10月12日 0:46 JST
米金融当局は11日、月間600億ドル(約6兆5000億円)の米財務省短期証券(Tビル)購入を10月中旬に開始すると明らかにした。バランスシートの拡大を再開し、9月に短期金融市場で生じた混乱の再発防止を目指す。

  発表によると、Tビル購入は「少なくとも来年の第2四半期(4−6月)」まで継続される。

  「こうした行動は米連邦公開市場委員会(FOMC)の金融政策の効果的な実行を支援するための技術的措置に過ぎず、金融政策のスタンス変更を示すものではない」と米金融当局は言明した。

  政策当局者らが10月4日に開かれたビデオ会議で今回の行動を協議したことも、今回明らかにされた。

原題:Fed Sees $60 Billion-a-Month T-Bill Buying to Start Reserve Plan(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-11/PZ7TUDDWX2Q201?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/359.html

[自然災害22] 強力化する台風 列島上陸リスク増大 地球温暖化と大雨、台風の関係 各国の台風予測モデルを徹底分析 都市型大規模災害の可能性 東京は47% 台風19号「世界史上最大級」「カテゴリー6」「2つの目」は本当か?
強力化する台風 列島上陸リスク増大

2019年9月に関東を襲った台風15号。各地で観測史上最も強い風が吹き荒れ、千葉県では鉄塔や電柱が倒れて大規模な停電が発生しました。東京湾に到達した時点で中心気圧955ヘクトパスカル、最大風速45メートルと、関東に接近・上陸した台風としては「過去最強クラス」でした。専門家は「地球温暖化が進んで海の温度も上昇すると、台風はより強くなる。関東だけでなく、ほかの地域でもこれまでにない強さの台風が接近・上陸するリスクが増大している」と警告しています。

目次
関東上陸 過去最強クラス
上陸直前まで異例の発達
進路ずれていたら東京でも…
伊勢湾台風級の高潮のおそれも
地球温暖化が台風を強化
関東上陸 過去最強クラス
台風上陸前夜、2019年9月8日午後9時すぎ。東京から南に約170キロ離れた神津島で暴風が吹き荒れていました。最大風速43.4メートル、最大瞬間風速58.1メートルを観測。気象庁は台風の強さのカテゴリーを「強い台風」から「非常に強い台風」にアップさせました。

神津島 2019年9月8日夜
台風の最大風速の統計が残る昭和52年(1977)以降、関東に接近・上陸した台風は125。このうち最大風速44メートル以上の「非常に強い」勢力に発達した台風は今回が4例目でした。(※過去には昭和57年21号、平成7年12号、平成29年21号の3つ)

台風15号 千葉県で大きな被害が出た 2019年9月
上陸直前まで異例の発達
台風のメカニズムに詳しい名古屋大学の坪木和久教授は、関東に接近してなお発達を続ける台風に驚いたと言います。


坪木教授:通常、日本に近づきますと台風は弱まりますが、この台風は上陸直前に最も強い勢力になった。この点が大きな特徴です。

関東の近海で異例とも言える発達を見せた台風15号。その要因について坪木教授は海水の温度を指摘します。そもそも台風は温かい海面から供給される水蒸気をエネルギー源として発達します。通常は、海面水温が熱帯よりも低い日本付近に来ると海からの水蒸気の供給量が減少し、熱帯低気圧や温帯低気圧に変わります。しかし、今回の台風15号が進んだコースの海水温は29度ほどと平年に比べて2度ほど高くなっていました。

日別海面水温気象庁ホームページより
やはり海の温度が高かったということが言えます。29度くらいの海面水温が関東のすぐ南まで広がっていて、これが発達の大きな要因だったといえます。また、台風の上端と下端の風速差が非常に小さかったことも発達を続けた理由だと考えられます。

進路ずれていたら東京でも…
さらに坪木教授によりますと、台風が進んだコースが少しずれていれば、首都機能が集中する東京で被害が拡大した可能性があるということです。

台風の進路の右側は危険半円と言って風が強い領域になります。眼の壁雲※のすぐ外側が最も強い風が吹くわけですが、危険半円の最も風の強い領域が千葉県の上空を通過しました。このために強風による大きな被害が出たと考えられます。もし進路が50キロほど西にずれていたとしたら、最も強い領域が横浜や東京の中心付近を通過したことになりますので、その付近の被害が拡大したと考えられます。※「壁雲」…台風の眼を囲む発達した積乱雲群


伊勢湾台風級の高潮のおそれも
東京湾が最も強い風の領域にあたり、しかも南風が吹き付ける。そうなると東京湾の湾奥で高潮の被害が発生した可能性が考えられます。東京湾の一番奥で数メートルの高潮が起きても不思議ではなかったと思います。昭和34年(1959)の伊勢湾台風(※)の時は3.89メートルの高潮が発生しましたが、台風15号が50キロほど西を通っていて大潮や満潮といった潮位の条件が重なっていれば、伊勢湾台風に匹敵するような高潮かそれを超えるような高潮が起こっても不思議ではなかった。東京湾沿岸には非常に多くの施設、交通を含む人間活動がありますので大きな影響が出ていたと考えられます。

伊勢湾台風で被害を受けた愛知県半田市
※伊勢湾台風:昭和34年(1959)9月に和歌山県に上陸した台風。進路の東側にあたる伊勢湾の沿岸部で記録的な高潮が発生、台風災害としては明治以降最悪となる5,000人を超える人が犠牲になった。

地球温暖化が台風を強化
さらに坪木教授はこう話します。

中心気圧が955ヘクトパスカルくらいの台風が関東地方にさえ来るようになった。関東地方はもちろん、それ以外の日本の各地域でこれまでにないような強い台風が上陸する可能性が増大しているということを示していると思います。


将来、より強力になると考えられている台風。その背景にあるのは地球温暖化です。気象研究所のシミュレーションでは、今世紀末に世界の平均気温が3度から4度ほど上がるというシナリオで温暖化が進んだ場合、世界で発生する台風の数は現在より3割ほど減るということです。一方で、日本の南の太平洋に限ってみると中心気圧920ヘクトパスカルほどの猛烈な台風の発生・通過は、現在10年間で平均3つ程度なのに対して、今世紀末には10年間で5つほどに増える予測となっています。

2018年台風26号 日本のはるか南で中心気圧900hPaまで低下
坪木教授:肌感覚として、非常に強い台風が日本に接近する上陸することが多いと感じることがあると思います。その延長として、今世紀末にかけて温暖化が進んでいくと強い台風がさらに強くなる、強い台風の数が増えると考えられます。すなわち、日本を含む中緯度の台風のリスクが増大しているということになるわけです。本州辺りにこれまで来なかったような強い台風が、接近・上陸することも示されてきています。地球温暖化という気候の大変動の時代に台風も強化していく傾向にあり、それに伴う災害も発生しやすくなるのが今後の予想です。これまでの経験ではなく、未来の予測を考慮した、未来の予測にあうような対策を立てていくことが重要だと思います。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/saigai/natural-disaster/natural-disaster_12.html


 


コラム・事例 
地球温暖化と大雨、台風の関係

 地球温暖化の進行に伴って、大雨や台風の発生はどのように変化するのでしょうか。

1.地球温暖化と大雨の関係について
 日本における大雨の発生数が長期的に増加傾向にあるのは、地球温暖化が影響している可能性があり、地球温暖化が今後進行した場合、さらに大雨の発生数は増加すると予測されます。
 我が国における観測結果の分析によると、過去100年において、自然災害につながる可能性のある、日降水量100mm以上や200mm以上の降水が発生する日数は増加傾向にあります。
 このように大雨が増加する傾向にあるのは、日本だけでなく東アジアの広い範囲でも共通しており、地球温暖化やそれに伴う水蒸気量の増加等の世界的な規模の変動が寄与している可能性があります。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第三次評価報告書の「中・高緯度域の大部分、特に北半球において、年総降水量に占める大雨や極端な降水現象による降水量の割合が増えつつある可能性が高い」という見解は、「日本の大雨の出現数が長期的に増加している」という観測結果と矛盾はありません。
 さらに、21世紀末頃を想定した気象庁の地域気候モデルによる地球温暖化予測実験では、「日降水量100mm以上などの大雨の発生数が日本の多くの地域で増加する」とともに、「6月から9月に現在よりも降水量が増加する」という予測結果が出ていることから、集中豪雨や台風が多発する夏期の防災が大きな課題となってくると考えられます。

https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h17/hakusho/h18/image/H1012c11.gif
 
日本の陸上における月降水量の将来(2081〜2100年の平均)と過去の再現結果(1981〜2000年の平均)
Excel形式のファイルはこちら


2.地球温暖化と台風の関係について
 地球温暖化と台風の関係については、現時点では、地球温暖化の影響が台風の大きさや強さに及んでいると結論付けることはできません。
 台風の年間発生数に対する、最大風速が毎秒33m以上の「強い」勢力を持つ台風の発生割合は、1970年代後半から80年代後半にかけて増加傾向にありましたが、80年代後半をピークに90年代後半まで減少傾向が続き、2000年代になって再び増加に転じています。このような動向は10〜20年程度で増減するものであり、地球温暖化による気温の上昇傾向と明瞭な相関があると言うことはできません。
 しかし、気象庁気象研究所や財団法人地球科学技術総合推進機構を中心とする研究グループによる21世紀末頃を想定した温暖化予測実験によると、全球的な熱帯低気圧の発生数については、現在気候再現実験における発生数よりも30%程度減少する一方、海上(地上)の最大風速が45m/sを超えるような非常に強い熱帯低気圧の出現数については、地球温暖化に伴って増加する傾向があるとされており、災害が全体として激化することを想定することが重要と考えられます。
 ただし、現在のところこのような数値実験の結果がどこまで信頼できるかを判断するためには、更なる研究が必要です。


https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h17/hakusho/h18/image/H1012c12.gif 
熱帯低気圧の強度別に示した熱帯低気圧の年平均発生数の頻度分布
Excel形式のファイルはこちら
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h17/hakusho/h18/html/H1012c10.html

各国の台風予測モデルを徹底分析
都市型大規模災害の可能性 東京は47%(8日発表)
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2019/10/08 12:41 ウェザーニュース

10月に入りましたが、今年は、もうしばらく台風への警戒が必要です。

現時点で本州の南の海面水温は、依然として27〜28℃と平年より1〜2℃高くなっており、台風が発達しやすい状況が続いています。
このため、台風19号は8日(火)9時現在で、猛烈な勢力にまで発達しています。

ウェザーニュースでは、世界各国の気象機関における気象予測モデルの精度を検証し、誤差が一番少ない気象予測モデルはどれなのかを解析しました。
5日前の精度が高いのは「イギリス気象庁」
検証方法は、海水温が高い状態となっている2019年台風14号〜18号を対象に、世界各国の気象予測モデルにおける接近・上陸の5日前の台風進路予想について分析。
5日前の段階での予想進路と実際の進路を比較して、誤差が一番少ない気象予測モデルはどれなのかを解析した結果、以下のような順位となりました。

1、イギリス気象庁(UK Met Office)
2、ヨーロッパ中期予報センター(ECMWFS)
3、アメリカ海軍(NAVGEM)
4、アメリカ海洋大気庁NOAA(GFS)
5、日本気象庁(GSM)

最も精度が高いのは「イギリス気象庁(UK Met Office)」であることが分かりました。
東京で大規模災害の可能性「47%」
今年2019年15号の千葉や昨年2018年21号の大阪など、人口密集地に台風が直撃することで被害が一層拡大することが分かっています。

そこで、数ある予測モデルの中でも、直近の台風予測精度の高かった気象予測モデルの順位による重み付けを行い、ウェザーニュースが独自で台風が東京・名古屋・大阪という大都市に向かう確率を算出し、大都市における大規模災害の可能性を出しました。(※注1)
box2
東京方面      :47%
名古屋方面     :15%
大阪方面      :22%
千葉県の東海上を通過:16%

上記の通り、東京は47%の確率で大規模災害が発生する可能性があります。
事前の備えが大切
台風が近づくにつれて予想進路が変化し、東京や名古屋など大都市圏からそれる可能性も残っており、そうなれば被害は小さくなると考えられます。
しかし、自分は大丈夫と油断することなく、最悪のケースを想定して対策をとることが大切です。

特に、今回は台風の進行方向の右側にあたる地域で、暴風被害が非常に大きくなると懸念されています。
・コンビニなどが品薄状態となる可能性があるため食料を確保
・長期間の停電に備えて電源を確保
・電車など公共交通機関が止まった場合、移動手段が自家用車となるためガソリンは満タンに
・植木鉢や物干し竿などが飛ばされると、近隣住宅に被害を及ぼすケースがあるため、飛ばされやすい物を片付ける
・断水した時のために風呂に水を張る
・断水で食器が洗えない場合に備え、サランラップ、アルミホイルの準備

など 、各自で対策を行うようにしてください。
>>最新の台風ニュース

>>台風進路 3本の予測モデル
※注1
2019年台風14〜18号を対象に、世界各国の気象予測モデルにおける接近・上陸の5日前の予想進路と実際の進路を比較して、モデルごとに予測精度の順位を算出しました。その順位による重み付けを元に、台風19号が東京・名古屋・大阪という大都市に向かう確率を解析し、都市型大規模災害発生の可能性を算出しました。その場所への接近・上陸の確率を示すものではありません。


台風19号「世界史上最大級」「カテゴリー6」「2つの目」は本当か?
森さやか | NHK国際放送局 気象アンカー、気象予報士
10/12(土) 11:15
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(写真:ロイター/アフロ)

10日の電子版Annex スポニチに、刺激的なタイトルの台風記事が掲載されていました。

「地球史上最大級か? 台風19号の勢力に世界が注目 衛星写真に騒然」と名付けられたタイトルのもと、以下のようなことが書かれてありました。

(19号は)米国内では「スーパー・タイフーン」として紹介されている。AP通信によれば、「ハギビス」と呼ばれている19号は大西洋上で発生するハリケーンの規模を示すカテゴリーでは最大級の「5」。米国内の気象専門家からは「存在しない6に相当する」という意見もSNSなどで出始めている。

(中略)あまりに急速に発達したため、最初にあった台風の目の周囲に“2つめの目”ができたことが確認されており、進路になっている日本にとっては脅威をもたらす存在になりそうだ。

ここで気になったのが、台風19号が「地球史上最大級」であり、「カテゴリー6」に相当すること、さらに「2つ目の目」が元の台風の目の周囲にできていることです。本当にそうなのでしょうか。

2つ目台風の真相
まず「2つ目の目」は存在するのでしょうか。

19号の最盛期前後の赤外画像を見てみると、元の目の周りを囲むように、まさに2つ目の目ができていました。「○」を目とするならば「◎」といった形です。強力な台風にはこうした二重の目がくっきりと現れることがあります。

これは「アイウォールの世代交代」と呼ばれ、台風の中心から遠い外側の部分に新しいアイウォール(目の壁)ができる現象です。これができると、内側の元からあったアイウォールはやがて衰弱して消滅します。「台風の科学(ブルーバックス)」によると約2割の台風でこの現象が見られ、最大風速が60m/sを超えるような強力な台風の場合は、8割で見られるのだそうです。

また多角形の目が見られることもあります。2003年のハリケーン・イザベルは五角形の目を持っていました。

カテゴリー6の真相
では、もう一つの疑問です。本当に専門家は「カテゴリー6に相当する」と言っているのでしょうか。

アメリカの気象局はハリケーン(台風と本質的には同じもの)の強さを、カテゴリー1から5の5段階に分けています。「5」が最大で、その風速の基準は風速70m/s以上です。なお、ここでいう風速とは1分平均の風速で、気象庁が使用している10分平均よりもやや(正確には1.2倍)数字が大きくなります。

では今回アメリカの気象機関は、19号の最大風速を何m/sとして解析していたのでしょうか。調べてみると、最大の勢力時でも72m/sでした。これは限りなくカテゴリー「4」に近い「5」といえ、「6」というには程遠いような気がします。

ハリケーン・ドリアンはカテゴリー6?
ただ、今年9月バハマに壊滅的な被害を出したハリケーン・ドリアンは、カテゴリー6に相当する可能性があるとScientific Americaが解説しています。

その記事には、そもそもカテゴリー6は存在しないという前提のもと、もし「6」を作るとするなら、計算上では風速80m/s以上のハリケーンがそれに相当し、最大風速が83m/sであったドリアンは、これに匹敵すると述べています。

さらに、その上のカテゴリー7があるとすれば、風速は94m/s以上となり、世界史上最強のハリケーンとして記録されている2015年のパトリシアがそれに唯一相当するとしています。

というわけで、カテゴリー5であった台風19号を「地球史上最大級」とするのは、盛り過ぎといえましょう。ただよく見ると、スポニチのタイトルには「最大級?」と書かれており、まんまとはめられてしまった感じがします。

不安な時にはデマが流れる
台風19号に関しては、この他にも「千年に一度のレベル」「23区3割浸水」などと言った、大げさともいえる噂が流れているようです。デマは人々が不安なときに、より広がるもの。混乱のなかでも冷静な目で物事を見たいものです。

ただ今回の19号に関しては、これまでに経験したことのない規模で静岡県や関東地方に上陸する恐れが高まっています。想定外の風雨や高潮が予想されます。やり過ぎと思えるくらいに準備をしておくことをお勧めします。
https://news.yahoo.co.jp/byline/morisayaka/20191012-00146455/
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/755.html

[経世済民133] 米中休戦、年末高に賭ける株式市場 米中貿易、景気懸念で一時休戦、構造問題先送り タリフマン動かすチャイナ・ショック論 「日本化」恐れるFRB 金融政策の枠組み巡り論争


https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50931370S9A011C1ENI000/?n_cid=SPTMG053
米中休戦、年末高に賭ける株式市場
(NY特急便)
NQNニューヨーク 張間正義
トランプ政権 貿易摩擦 北米
2019/10/12 6:22
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年末の株高を見込む声が増えた=ロイター
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年末の株高を見込む声が増えた=ロイター

米中貿易協議に揺れた米株式相場は今週末に大きく動いた。11日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続伸し、上げ幅は一時、500ドルを超えた。週間では4週ぶりに上昇した。農産物と通貨分野に限った「部分合意」で「休戦」となり、米経済の後退懸念が和らぐとみた投資家が一斉に買い上げた。12月にかけ相場が急落した昨年と異なる年末高シナリオへの期待がにわかに高まってきた。

中国による農産物の輸入拡大と引き換えに、米国が15日に実施予定だった対中関税第1〜3弾の関税率引き上げを見送るという部分合意でさえも株価の押し上げ要因になると市場は捉えた。追加関税の応酬による米中の実体経済の悪化が一段と進む最悪のケースが避けられたためだ。

制裁関税の引き上げの見送りが実現し、株式相場の先高観は一段と強まった。中国での売上比率が高いアップルが1年ぶりに上場来高値を更新したほか、建機のキャタピラーや工業製品・事務用品のスリーエム(3M)など中国関連とされる銘柄に買いが集まった。

米中休戦で市場の関心は米経済が景気後退に向かうのか減速で済むのかどうかに移る。一般的な景気後退の定義は「2四半期連続のマイナス成長」だ。生産関連統計の悪化などから「失速の初期段階に入った」(バークレイズのマイケル・ゲイペン米国チーフエコノミスト)との指摘もある一方、足元で2%程度の成長率を維持し雇用者数の増加も続く米国では、経済の「エンジン」の個人消費が引き続き堅調なままだ。

今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つボストン連銀のローゼングレン総裁は4日、年後半の米経済の成長見通しについて「私が潜在成長率とみている1.7%前後になる」と話した。生産関連の統計が弱含むなか、米経済は「巡航速度」だといえる潜在成長率を維持するという見立てだ。

ウォール街で弱気の「ハウスビュー」(会社の公的見解)を出すモルガン・スタンレーは、関税引き上げが続くことを前提に米国の景気後退入りを予想してきた。FTNフィナンシャルのクリス・ロウ氏は「制裁関税の引き上げ見送りで、景気後退に陥る可能性は低下した」と指摘する。

株式の需給要因も株価を下支えしそうだ。来週から本格化する7〜9月期決算発表で米主要500社の純利益は4%減少する見込みだが、シティグループの株式ストラテジスト、トビアス・レフコビッチ氏は「株式減少」に注目する。旺盛な企業の自社株買いが進む米国では18年以降、発行済み株式数が2%以上減少した。株価をみる上で重要な1株利益(EPS)を算出する際の分子に当たる純利益が減っても、分母の発行済み株式数が減少していることから、EPSの大幅な低下は生じにくいとの見方だ。

決算シーズンは米株の最大の買い手とされる企業の自社株買いが自粛される「ブラックアウト」期間に入るため、一時的に相場が調整する可能性は残る。ただ、米中休戦で先高観を強めた市場では「決算期間中に下がったところが年内最後の買い場になる」とトレーダーの鼻息も荒い。

(NQNニューヨーク=張間正義)

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トランプ氏「中国と第1段階の合意に達した」 (2019/10/12 11:17更新)
[FT]米中協議、トランプ氏の通商チームは結束保てるか (2019/10/11 15:33) [有料会員限定]
「迷走」米中貿易協議で儲ける人たち (2019/10/10 10:12) [有料会員限定]
剣が峰の米中閣僚交渉 景気減速、迫る関税上げ (2019/10/9 19:15)
ニューヨーク市場の動き
NY債券、長期債続落 10年債利回り1.73%、米中協議の部分合意を好感 (2019/10/12 6:04) [有料会員限定]
NYダウ319ドル高、米中貿易協議の合意受け (2019/10/12 5:27)
NY商品、原油が続伸 イランのタンカー爆発の報道で 金は続落 (2019/10/12 5:03)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50947240S9A011C1EA2000/
米中貿易、景気懸念で一時休戦、構造問題先送り
トランプ政権 貿易摩擦 中国・台湾 北米
2019/10/12 20:19
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11日、ホワイトハウスで習近平中国国家主席からの手紙を披露するトランプ米大統領=ロイター
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11日、ホワイトハウスで習近平中国国家主席からの手紙を披露するトランプ米大統領=ロイター

【ワシントン=河浪武史、北京=原田逸策】米中両国は中国が米国産農産品の輸入を拡大する一方、米国が制裁関税の引き上げを見送ることで合意した。関税合戦の悪化は回避したが、実態は農業や通貨など切りやすいカードだけを切った「小粒合意」だ。中国の産業補助金の見直しなど構造問題は棚上げしたままで、制裁関税を完全撤廃する貿易戦争の終結はみえない。

「中国による農畜産品の購入は過去最大だ。米国の農家はすぐに大きなトラクターを手に入れた方がいいぞ」。トランプ米大統領は11日、中国の劉鶴(リュウ・ハァ)副首相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表らをホワイトハウスに招き、口早に合意内容を記者団に説明した。

舞い上がるトランプ氏と対照的に中国は非常に冷静だ。中国側の声明は「農業などで実質的な進展があった」としただけで「合意」の表現はない。国営テレビの昼のニュース番組でも3番手の扱いにとどまった。中国には昨年5月に制裁回避で合意しながら、すぐにトランプ氏がちゃぶ台返しをした苦い記憶が残る。

米国は中国が400億〜500億ドル分の米農産品を購入すると明らかにした。これは過去最高だった12年(260億ドル)を5〜9割も上回る。

中国の報復関税の影響で、農産品の対中輸出は18年に90億ドル程度まで急減していた。穀物産地はトランプ氏の支持基盤である激戦州の中西部が多い。米国側が主張する400億〜500億ドルの対中輸出が実現すれば、苦境に立たされている米農家が受ける恩恵は大きい。


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中国も豚肉などが高騰し、庶民の不満がくすぶる。習指導部にも安い米国の農畜産品の輸入拡大は渡りに船だ。もっとも中国がこれだけの規模の米農産品を買い付けるのかどうかは不透明な面も残る。

通貨政策も米中双方の利害が一致しやすい分野だった。トランプ政権は8月、中国を追加制裁に道を開く「為替操作国」に指定し、人民元安を批判してきた。今回の交渉で中国は為替介入の実績など通貨政策の透明化を米国に提案し、米財務省は「為替操作国」の指定解除の検討に入った。

両国の部分合意を演出したのは、景気失速への懸念という共通項だ。米国は製造業の景況感指数が10年ぶりの水準に悪化した。設備投資も輸出もマイナス基調が続く。

一方の中国も貿易戦争の長期化で、7〜9月期の成長率は6%割れもささやかれる。これ以上の経済への打撃を避けようと米中が歩み寄れたのは一定の成果ともいえる。

もっとも中国のハイテク産業への産業補助金など構造問題は素通りした。米国が狙う本丸は、先端産業を育てて米国を追い越そうとする「中国製造2025」政策を潰すことにあった。

トランプ氏は「今回の第1段階が終われば、すぐに第2、第3段階に取りかかる」と、構造問題に切り込む考えを強調する。ペンス副大統領ら対中強硬派も部分合意に不満を隠さない。

中国は「(国家の)原則にかかわる問題は決して取引しない」(人民日報)との立場を堅持する。産業補助金や国有企業での譲歩には慎重で、今後の交渉は難航必至だ。

中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)への禁輸措置についても合意を先送りした。トランプ氏は「貿易戦争の終結は間近だ」とするが、米中問題は世界経済の最大のリスクであり続ける。


 

タリフマン動かすチャイナ・ショック論
Global Economics Trends 編集委員 小竹洋之
トランプ政権

米中衝突

貿易摩擦

小竹 洋之

Global Economics Trends
2019/9/29 2:00
 
Global Economics Trends
世界的な関心を集める経済学の最前線の動きやトピックを紹介します。
トランプ米大統領は「タリフマン(関税男)」と名乗ってはばからない。「私は関税のプラットフォームに立つタリフマンだ」。筋金入りの保護主義者として知られた第25代大統領マッキンリー(在任1897〜1901年)の発言に倣ったらしい。

トランプ米大統領(左)は高関税政策を繰り出し、中国の習近平国家主席に構造改革を迫る=ロイター
そんなトランプ氏が中国に仕掛けた貿易戦争の出口は見えず、内外からの批判が絶えない。しかし「米国は中国のせいで多くの雇用を失った」という主張には、認めざるを得ない面もある。これを裏付ける経済学界の実証研究が相次いでいるからだ。
■中国からの輸入増、米国の弱者に痛み
「チャイナ・ショック論」――。中国からの輸入拡大と米国の雇用減少との間に相関関係を見いだす研究は、こう総称される。英経済学者デビッド・リカードらの伝統的な貿易理論では、各国が比較優位な産業に特化し、国境を越えて生産物を売買することで、最適な資源配分を達成できるはずだった。だが現実には衰退産業から成長産業への労働移動などが円滑に進まず、低学歴や低スキルの労働者が予想以上の痛みを被っていると説く。
この分野の権威は米マサチューセッツ工科大学(MIT)のデビッド・オーター教授、スイス・チューリヒ大学のデビッド・ドーン教授、米カリフォルニア大学サンディエゴ校のゴードン・ハンソン教授だ。2013年の論文「チャイナ・シンドローム」(The China Syndrome: Local Labor Market Effects of Import Competition in the United States)や16年の論文「チャイナ・ショック」(The China Shock: Learning from Labor Market Adjustment to Large Changes in Trade)は、世界の経済学界に広く影響を与えた。
01年に世界貿易機関(WTO)に加入した中国の経済発展には、目覚ましいものがあった。米国の輸入増の衝撃はかつてないほど大きく、労働市場の調整にも多くの時間やコストがかかる。だから中国との産業競争や価格競争が厳しい地域で、失業者の増加、賃金の低下、労働参加率(働く意思のある人の割合)の落ち込みが目立つと3氏はいう。
■全産業で200万〜240万人の雇用が減少
MITのダロン・アセモグル教授やカリフォルニア大学デービス校のブレンダン・プライス助教授も執筆陣に加わった論文「輸入競争と2000年代の米国の大幅な雇用の減少」(Import Competition and The Great U.S. Employment Sag of The 2000s)は、より詳細な定量分析の結果を示した。中国からの輸入増によって、1999〜11年の米国の雇用が製造業で98.5万人、全産業では200万〜240万人減ったと試算している。
トランプ氏もチャイナ・ショック論を意識しているフシがある。「トランプ経済プランの評価」(Scoring the Trump Economic Plan: Trade, Regulatory, & Energy Policy Impacts)――。現在のナバロ大統領補佐官(通商担当)とロス商務長官が16年11月の米大統領選前にまとめ、トランプ氏が掲げる経済政策(トランポノミクス)の理論武装を試みた文書には、オーター、ドーン、ハンソン各氏の研究が引用されている。
■トランポノミクスの理論武装に活用
それだけではない。ナバロ・ロス文書は米連邦準備理事会(FRB)のプリンシパル・エコノミスト、ジャスティン・ピアース氏と米エール大学のピーター・ショット教授の研究も併せて紹介している。両氏は16年の論文「米国の製造業の驚くほど急速な雇用の減少」(The Surprisingly Swift Decline of US Manufacturing Employment)で、中国のWTO加入を機に米国が最恵国関税の適用を恒久化したため、中国からの輸入や投資などが増えて、米国の製造業の雇用が減ったと分析した。オーター氏らと歩調を合わせる主張である。
17年1月に発足したトランプ政権は、ナバロ・ロス文書をなぞるように動いてきた。高関税政策を繰り出し、中国に構造改革を迫るのも筋書き通りだ。こわもてのタリフマンを「異端児」と切って捨てるのはたやすいが、その念頭にある経済学的な知見を軽視するわけにはいかない。
■消費者や輸出増の恩恵を説く研究も

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中国からの輸入増と米国の雇用減を関連づける研究が続く(米ペンシルベニア州)=ロイター
チャイナ・ショック論の研究はいまも続く。米調査機関エコノミック・ポリシー・インスティテュートのロバート・スコット氏とザーン・モックハイバー氏は18年、「中国による深刻な損失」(The China toll deepens)と題するリポートをまとめた。中国に対する貿易赤字が01〜17年に拡大した結果、米国が340万人の雇用を喪失したと指摘している。01〜11年に限ってみると、労働者の所得を年平均370億ドル押し下げたという。
しかし一連の研究が国際貿易のマイナス面を強調しすぎているとの批判もある。エール大学のロレンゾ・カリエンド教授、米セントルイス連銀エコノミストのマキシミリアーノ・ドボルキン氏、米ジョンズ・ホプキンス大学のフェルナンド・パーロ助教授による19年の論文「貿易と労働市場の力学」(Trade and Labor Market Dynamics: General Equilibrium Analysis of The China Trade Shock)が一例だ。
3氏は中国からの輸入増が響き、米国が00〜07年に製造業の雇用を55万人失ったと試算した。一方で安価な輸入品を購入できる消費者などの恩恵に注目し、米国全体の厚生(経済的満足度)が0.2%増大したと分析している。
カリフォルニア大学デービス校のロバート・フィーンストラ特任教授と米アイダホ大学の笹原彰助教授は、中国からの輸入増だけでなく、米国の世界に対する輸出増も加味すべきだという。17年の論文「チャイナ・ショック、輸出、そして米国の雇用」(The "China Shock", Exports and U.S.Employment: A Global Input-Output Analysis)では、95〜11年にモノの輸出入で差し引き170万人の雇用を生む効果があったと結論づけた。
■新規産業の育成や安全網の強化を
チャイナ・ショック論を代表するオーター氏らも、国際貿易の拡大が米国全体にもたらすプラス面を否定しているわけではない。労働市場の調整力が鈍いために、弱者に強い負荷がかかるのが問題で、それが排外的なポピュリズム(大衆迎合主義)の温床にもなっていることを訴えたいのだ。だからこそ新規産業の育成や安全網の強化などを処方箋に挙げる。
こうした研究をトランプ政権が都合良く利用し、異様な高関税政策を正当化するのは、あまりにも危険ではないか。たとえ民意の後押しがあろうと、米経済の底上げに資するとは思えない。
国際通貨基金(IMF)によると、米中貿易戦争の激化は20年の世界の国内総生産(GDP)を0.8%押し下げる恐れがある。FRBは最近のリポート「通商政策を巡る不確実性の経済的影響」(The Economic Effects of Trade Policy Uncertainty)で、17〜18年に通商政策の不確実性が高まった結果、米国の総投資が1〜2%低下するかもしれないと予測した。

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アダム・ポーゼン米ピーターソン国際経済研究所長は成長基盤の劣化を心配する
長い目で見た成長基盤の劣化を懸念するのは、米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長だ。貿易戦争の広がりなどによる対米直接投資の減少を嘆き、「経済ナショナリズムのせいで、長期的なビジネスの場を提供してきた米国の魅力が低下した。ポストアメリカの世界経済体制が出現しつつある」と話す。
晩年のマッキンリーは、タリフマンの軌道修正を図ったという。トランプ氏が改心する日は果たして来るのだろうか。
【記事中の参照URL】
■The China Syndrome: Local Labor Market Effects of Import Competition in the United States
https://pubs.aeaweb.org/doi/pdfplus/10.1257/aer.103.6.2121
■The China Shock: Learning from Labor Market Adjustment to Large Changes in Trade
https://www.nber.org/papers/w21906.pdf
■Import Competition and The Great U.S. Employment Sag of The 2000s
https://www.nber.org/papers/w20395.pdf
■Scoring the Trump Economic Plan: Trade, Regulatory, & Energy Policy Impacts
https://assets.donaldjtrump.com/Trump_Economic_Plan.pdf
■The Surprisingly Swift Decline of US Manufacturing Employment
http://faculty.som.yale.edu/peterschott/files/research/papers/pierce_schott_pntr_2016.pdf
■The China toll deepens
https://www.epi.org/files/pdf/156645.pdf
■Trade and Labor Market Dynamics: General Equilibrium Analysis of The China Trade Shock
http://faculty.som.yale.edu/lorenzocaliendo/CDP.pdf
■The ‘China Shock', Exports and U.S. Employment: A Global Input-Output Analysis
https://www.nber.org/papers/w24022.pdf
■The Economic Effects of Trade Policy Uncertainty
https://www2.bc.edu/matteo-iacoviello/research_files/TPU_PAPER.pdf
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「日本化」恐れるFRB 金融政策の枠組み巡り論争[有料会員限定]
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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50177050V20C19A9I00000/?n_cid=SPTMG053


 
「日本化」恐れるFRB 金融政策の枠組み巡り論争
Global Economics Trends 編集委員 太田康夫
太田 康夫 Global Economics Trends
2019/9/1 2:00
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米国の金融政策の枠組みを巡る論争が活発になっている。その背景には、中央銀行である米連邦準備理事会(FRB)が金融政策の将来に不安を強めていることがある。目標としてきた物価水準に達していないにもかかわらず、米中貿易摩擦の影響などで景気悪化の兆しが出てきたからだ。インターネット経済の拡大など革新的な技術発達の影響で、物価は失業率や需給ギャップによって左右されるという伝統的な理論が揺らいでいることも影響している。

かじ取りを誤ると、政策金利がゼロ近くに張り付き、金融政策が効かなくなる日本のような状況に陥る恐れが強まっている。FRBはこうした「日本化」を回避するため、2020年前半をめどに金融政策の枠組みの見直しを進めている。新しい枠組みとして物価目標策の手直しなど複数案が浮上している。

会場近くで話すパウエルFRB議長(右)とイングランド銀行のカーニー総裁(8月23日、米ジャクソンホール)
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会場近くで話すパウエルFRB議長(右)とイングランド銀行のカーニー総裁(8月23日、米ジャクソンホール)

8月22日から24日まで地区連銀のひとつであるカンザスシティー連銀が、米ワイオミング州のジャクソンホールで「中央銀行の課題」をテーマにシンポジウムを開いた。例年は気軽な雰囲気で構造問題を話し合うが、今年はトランプ大統領が利下げを求めるなかで異様な雰囲気の会議となった。

冒頭講演したパウエルFRB議長は、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)以降の米中貿易摩擦や、香港情勢の緊迫化など地政学リスクの高まりをあげ、情勢変化が及ぼす影響を評価し、適切に行動すると述べた。

本来の長期的な課題として「政策金利がゼロ近傍から抜け出せない状況が続くリスクに直面している。そうしたニュー・ノーマル(新常態)に対処するため、われわれは金融政策の戦略、手段、コミュニケーションなどの見直しに着手し、政策手法をさらに追加する必要があるか精査している」(Speech by Chair Powell on challenges for monetary policy)と強調した。

シンポジウムでは具体論のうちコミュニケーションのあり方について議論し、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のアサナシオス・オルファニデス教授は「金融政策とそのコミュニケーション」のなかで、金融政策リポートの発表を年2回から4回に増やすことや、政策の不確実性に関してリスクシナリオのより精緻な提示などを提案している。

◇   ◇

現在の金融政策の枠組みはFRBが12年に導入した。政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導、将来の金融政策に関するフォワードガイダンス(先行き指針)、国債などの資産購入、透明性の高い情報伝達の4つの手法を用いて、長期インフレ目標値2%の達成を目指すインフレーション・ターゲット(インフレ目標)政策である。それまで内部的にPCE(個人消費支出)コア価格指数で年1〜2%上昇をめざしてきたが、目標を公表して透明性を高めるとともに、目標値をそれまでの上限の2%に設定し、FRBの使命である物価安定と完全雇用に資する適切なインフレ期待を定着させることを狙った。

その後、雇用は回復したものの、物価は目標の2%には届かず、FRBは18年11月に金融政策の戦略や手法の見直しに着手した。19年1月にはニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁がサンフランシスコ連銀のエコノミスト、トーマス・メルテンス氏と連名で「金融政策の枠組みと低金利制約」(Monetary Policy Frameworks and the Effective Lower Bound on Interest Rates)と題するスタッフリポートを発表した。そのなかで「通常のインフレーション・ターゲティングではインフレ期待がインフレ目標より下で固着し、超低金利の弊害を拡大する」と指摘し、3つの対応策をあげている。

1つ目は物価上昇への対応(利上げ幅)に比べて、物価下落への対応(利下げ幅)を小さくすることによって、インフレ期待が低下することを防ぐマイルドな手法である。銀行破綻などショックが起きた時の利下げ幅を小さめにして、できるだけ金利がゼロに近づくのを避ける考え方だ。

2つ目は平均インフレーション・ターゲティングである。現在のインフレ目標は一時点での目標に対する物価の位置を評価して、目標に近づけようとする。それに対して、平均インフレーション・ターゲティングは5年や一景気サイクルといった一定の期間をとり、期間内の平均値が目標を上回るようにする。例えば金融危機対策で低金利を余儀なくされ、その間は目標が達成できなければ、危機が去った後に目標を上回る水準が続くことを容認して、危機時の目標未達成分を埋め合わせることで、平均で目標を達成する。それによってインフレ期待の醸成をより確実なものにすることができるという。

3つ目は物価水準ターゲティングである。1930年代にスウェーデンが取り入れたことがあるが、戦後は導入例がない。今のインフレ目標は実際の結果に関係なく毎年2%の上昇を目指すのに対し、物価水準ターゲティングの場合は毎年2%ずつ物価が上がっていく水準そのものを目指す。物価水準の指標で考えると、1年目は102、2年目は104強、5年目は110強の達成を目指して、金融政策を運営する。仮に5年間1%ずつしか物価が上がらなければ、5年後には5%の物価上昇を目指すことになり、より踏み込んだ緩和が必要になる。

◇   ◇

金融政策の枠組み見直しについて、より幅広く議論するため、シカゴ連銀で6月に中央銀行論の専門家などを集めて会議を開いた。そのなかで、ストックホルム・スクール・オブ・エコノミクスのラール・スベンソン教授が、「金融政策は従来の(景気と物価の状況に応じて政策金利を変化させる)テーラー・ルールに基づくものより、(インフレーション・ターゲティングなど)予想ターゲティングの方が優れている。そのための手法を比較検討すると、ゼロ金利制約なども考慮したうえでFRBの使命を果たすためには平均インフレーション・ターゲティングが優れている面がある」(Monetary Policy Strategies for the Federal Reserve)と主張している。

議論は広がりを見せている。米大手金融機関のJPモルガン・チェースのエコノミストであるデイビッド・マッキー氏、ブラス・カスマン氏などは「インフレーション・ターゲット後の世界」と題する論文の中で、「FRBの動きは最初の一歩にすぎず、金融政策のあり方が大きく見直される」と指摘。具体的には目標は物価だけでなく複数設定される、物価目標については2%よりも高い水準にする、政策手法をより多様化する、財政や規制政策との協調を強める、などの方向性が志向されるとの見通しを示している。

目標については、名目国内総生産(GDP)の伸び率を採用するいわゆる「GDPターゲティング」の考え方がある。セントルイス連銀のジェームズ・ブラード総裁は19年4月に公表したワーキングペーパー(Optimal Monetary Policy for the Masses)のなかで「GDPターゲティングは最適な金融政策手法」だと分析している。GDPは財政政策や貿易政策の影響も受けるため、中央銀行の目標になじむかは議論が分かれている。

オリビエ・ブランシャール氏
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オリビエ・ブランシャール氏

物価目標自体を引き上げる考えは、10年に国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストだったオリビエ・ブランシャール氏が提起した論点で、14年にIMFのエコノミスト、ローレンス・ボール氏が「4%のインフレ目標はゼロ金利制約を回避し、導入に伴う経済の下押し圧力もそれほど厳しくない。最小のコストで、便益が得られるのではないか」(The Case for a Long-Run Inflation Target of Four Percent)と支持している。これに関しては、2%でも期待の醸成が難しいなかで、4%にしたからといって効果は不透明との見方も根強く、FRBは目標自体の見直しには慎重だ。

また日欧は、景気対策としてはマイナス金利政策を導入している。これも対応策の一つではあるが、金融機関経営などに対する副作用が大きいためFRBは消極的で、そうした状況に陥らないような枠組み作りに全力を挙げる方向だ。

◇   ◇

08年のリーマン・ショック前までは、金融政策に関しては足元のインフレ率と経済の強さをベースに金利水準を決めるテーラー・ルールが重視されていた。同ルールの提唱者である元米財務次官のジョン・テーラー氏はFRBが示している危機後の政策枠組みは一定の効果があったとする分析に対して、「(イールドカーブに働きかける)スロープ政策の成功の証拠は薄い」と指摘。物価目標を引き上げたり、日和見主義的なリフレ政策を受け入れたりするのではなく、ルールに基づいた正常化に取り組むべきだとしている。

シカゴ、ジャクソンホールなどで議論は熱を帯びたものの、内容は拡散気味だ。ゼロ金利制約は避けるべき現象という点は多くの学者が認めており、改革は平均インフレターゲットを軸に展開される見通しだが、実際にFRBがめざす20年前半にまとまるかどうか不透明な面もある。

【記事中の参照URL】
■Speech by Chair Powell on challenges for monetary policy
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20190823a.htm
■Monetary Policy Frameworks and the Effective Lower Bound on Interest Rates
https://www.newyorkfed.org/research/staff_reports/sr877
■Monetary Policy Strategies for the Federal Reserve(ダウンロード)
https://www.chicagofed.org/~/media/others/events/2019/monetary-policy-conference/1-svensson-strategies-pdf.pdf
■Optimal Monetary Policy for the Masses
https://doi.org/10.20955/wp.2019.009
■The Case for a Long-Run Inflation Target of Four Percent
http://www.imf.org/external/pubs/ft/wp/2014/wp1492.pdf
Global Economics Trends
「グローバル・エコノミクス・トレンズ」というタイトルで、世界的な関心を集める経済学の最前線の動きやトピックを紹介します。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49044390X20C19A8I00000/?n_cid=SPTMG053
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/368.html

[経世済民133] 台風への特別対応で日経電子版を無料公開中です 台風19号、企業活動に影響 臨時休業や工場停止 千曲川や多摩川など各地で氾濫 死者5人に 相次ぐ台風襲来、リスクと備え 専門家に聞く


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台風19号、企業活動に影響 臨時休業や工場停止
環境エネ・素材 サービス・食品 小売り・外食
2019/10/12 20:51
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台風19号の影響で、12日は企業も安全確保などの対応に追われた。臨時休業や閉店時間を早める店が相次ぎ、工場でも生産停止の動きが広がった。一部地域では停電も発生したことから、今後は被害状況の把握のほか、復旧や営業再開へ向けた取り組みが必要になる。

臨時休業したセブンイレブンの店舗(12日、東京都江東区)
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臨時休業したセブンイレブンの店舗(12日、東京都江東区)

台風で臨時休業を伝える商業施設の張り紙(12日、東京都新宿区)
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台風で臨時休業を伝える商業施設の張り紙(12日、東京都新宿区)

スーパーや百貨店などに加え、24時間営業のコンビニエンスストアでも休業する店が目立った。

ファミリーマートは12日午後7時時点で、関東や東海で約2500店が一時休業している。ローソンは午後5時時点で全国の約2200店が休業している。

セブン―イレブン・ジャパンは12日の休業店舗が1000店以上に達したもようだ。当初は約1000店の休業を計画していたが、店舗ごとに判断を委ねており、実際に休業した店舗はこれを上回ったとみられる。

イオンリテールは関東や東北、東海で運営する128店で12日の閉店時間を早めた。通常は午後9時〜午後10時だが、正午〜午後5時にした。同社は「顧客や従業員の安全確保と帰宅を優先した」と説明する。ダイエーも関東地方の78店で午後1時に一斉に閉店。13日の営業は台風の進路など状況をみながら、店ごとに判断するという。

ファーストリテイリング傘下のユニクロも12日は関東や東海を中心に350店で休業し、85店で営業時間を短縮した。しまむらも約800店で朝から休業した。

工場でも生産を停止する動きが広がった。

JFEスチールは12日、東日本製鉄所の千葉地区(千葉市)と京浜地区(川崎市)について主要生産設備の一部を停止した。日本製鉄も君津製鉄所(千葉県君津市)の設備を止めた。化学メーカーのADEKAも13日にかけて化粧品原料やディスプレー材料を生産する千葉工場(千葉県袖ケ浦市)の稼働を停止する。

明治は愛知県の工場で、通常は夜間も稼働する牛乳などの生産を午後3時に終了した。社員には不要不急の外出を避けるよう呼びかけ、安全確保を徹底する。

台風の影響で、週末に予定されたコンサートやミュージカルなど少なくとも約200のイベントが中止・延期となった。チケット販売のぴあはイベントの中止・延期情報をホームページで告知し、購入者にメールで払戻期間や方法を案内した。今後も中止・延期になるイベントは増える可能性があり、チケット購入者への周知を徹底する。

東京電力ホールディングスは復旧体制を大幅に増員した。

9月の台風15号で被害状況の把握が遅れたことから、7倍強となる1万7300人の体制を敷いた。前回は深夜のコールセンターの人数が不足して停電の対応ができなかったため営業部門も増員。すでに発電機車約160台を各拠点に配備した。12日午後5時時点で、東電管内で約3万戸が停電しており、復旧を急いでいる。

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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50947630S9A011C1000000/

台風19号、千曲川や多摩川など各地で氾濫 死者5人に
行方不明13人 停電一時43万戸
社会・くらし
2019/10/12 19:02 (2019/10/13 8:20更新)
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台風19号の影響で冠水した道路脇で立ち尽くす人(13日午前6時15分、川崎市)=共同
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台風19号の影響で冠水した道路脇で立ち尽くす人(13日午前6時15分、川崎市)=共同

台風19号は12日夜に静岡県の伊豆半島に上陸し、関東から東北を縦断して太平洋に抜けた。記録的な大雨によって長野市の千曲川で堤防が決壊して周辺の住宅地などが対規模に浸水した。他にも各地で河川氾濫や浸水・冠水、土砂崩れが相次いだ。13日朝の段階で5人が死亡、13人が行方不明となっている。

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台風の接近、通過に伴い各地で記録的な大雨が降り、気象庁は12日午後以降、計13都県に5段階の警戒レベルのうち最も高いレベル5に当たる「大雨特別警報」を発令した。13日午前7時30分時点で岩手県に大雨特別警報を出している。

増水した長野県上田市の千曲川(12日午後)=国交省北陸地方整備局ホームページから、共同
増水した長野県上田市の千曲川(12日午後)=国交省北陸地方整備局ホームページから、共同

各地で河川の水位が上昇し、東京都世田谷区では多摩川が氾濫した。長野市の千曲川のほか、宮城、福島、栃木、埼玉、静岡の各県でも河川が氾濫した。

各地のダムの貯水量が増えたため、相模原市の城山ダムや長野県伊那市の美和ダムなどでは水があふれないよう緊急放流が行われた。

神奈川県や千葉県などで停電が広がり、東京電力管内では13日午前0時の約43万戸をピークに、午前7時時点で約27万戸で停電している。中部電力管内では13日午前1時に最大約6万5千戸が停電し、同日午前5時時点で約6万戸が停電している。暴風雨や飛来物で設備が故障したのが原因とみられる。

千葉県市原市などによると、12日午前8時すぎ、同市で竜巻とみられる突風が発生。車が横転して50代の男性が死亡、8人が負傷した。この突風で全壊12棟を含め、計89棟の住宅が被害を受けた。

JR東海は13日の始発から東海道新幹線の運行を再開した。JR東日本は13日も山手線や中央線などの在来線を始発から運休し、安全確認や復旧作業を進めている。京成電鉄や東急などは安全確認を終えた路線で運行を再開した。

計画運休が解除され、増水した多摩川の上を通る電車(13日午前、東京都世田谷区)
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計画運休が解除され、増水した多摩川の上を通る電車(13日午前、東京都世田谷区)

鉄道各社は12日朝から順次、新幹線や首都圏の在来線で計画運休を実施した。

成田空港と羽田空港は12日午後までにすべての旅客便の着陸受け入れを取りやめた。全日空は12日、羽田、成田、静岡各空港を発着する国内線全便を欠航。日本航空と合わせた欠航便は国内線を中心に1300便以上、影響人員は約21万人に上った。

都内などでは12日、スーパーやコンビニの休業が相次ぎ、東京ディズニーランドなどテーマパークも休園した。

安倍晋三首相は12日午後、被害が発生した場合は人命第一の災害応急対策に全力で取り組むよう関係省庁に指示した。

東京都は台風の直撃に備え、2000年の三宅島噴火以来19年ぶりに災害対策本部を設置して対応にあたった。

多くの便が欠航し、閑散とした羽田空港の出発ロビー(12日)
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多くの便が欠航し、閑散とした羽田空港の出発ロビー(12日)

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計画運休で閉鎖されたJR東京駅の改札(12日夜)
 
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強い勢力を保った台風19号は3連休初日の首都圏を襲った。9月には台風15号が千葉県を中心に大きな被害をもたらしたばかり。高まる台風リスクにどう備えるべきなのか。専門家に聞いた。

■「スーパー台風、リスク高まる」 坪木和久・名古屋大教授(気象学)

台風19号は6〜7日の24時間で中心気圧が77ヘクトパスカルも下がり、1959年の伊勢湾台風クラスの「急速強化」をした。9月の台風15号は関東の近海で異例の発達をした。かなり高い緯度まで強さを維持した点が共通している。

温暖化が進むと長期的に台風の発生個数はわずかに減っていくが、海面水温が上がれば「スーパー台風」が本州に到達するリスクは高くなる。既に新たなステージに入ったと捉え、防災対策の見直しにつなげるべきだ。

■「企業、安全優先で休業を」 牧紀男・京都大防災研究所教授(都市防災計画)

建物の鉄筋コンクリート化や河川堤防の整備などで都市のインフラは大幅に強化されてきた。一方、道路や建物に覆われた都市部では、短時間の大雨を処理しきれずに地下街に水が流入するなどの被害が発生する恐れもある。

台風は襲来する時間がある程度予想できる。従業員などの安全を最優先し、企業は台風が接近・通過する間はしっかり休業し、通過後に迅速に事業再開に取り組む方針で対応すべきだ。

■「計画運休、訪日客への対応重要」 綱島均・日本大教授(鉄道工学)

JR東日本が2日前に計画運休の可能性を公表したことで連休中の商業施設や大型イベントの休止が早めに決まり、被災や帰宅難民のリスクを減らすメリットがあった。早めの告知は利用客に受け入れられつつあるのではないか。

海外で自然災害による計画運休の仕組みがある国は少なく、訪日外国人への対応はとりわけ重要だ。多言語で情報を提供するとともに、訪日前に旅行会社が可能性を告知するなどして早めの周知を図るべきだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50950650S9A011C1EA2000/?n_cid=SPTMG053 


 

台風19号、企業活動に影響 臨時休業や工場停止
環境エネ・素材 サービス・食品 小売り・外食
2019/10/12 20:51
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台風19号の影響で、12日は企業も安全確保などの対応に追われた。臨時休業や閉店時間を早める店が相次ぎ、工場でも生産停止の動きが広がった。一部地域では停電も発生したことから、今後は被害状況の把握のほか、復旧や営業再開へ向けた取り組みが必要になる。

臨時休業したセブンイレブンの店舗(12日、東京都江東区)
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臨時休業したセブンイレブンの店舗(12日、東京都江東区)

台風で臨時休業を伝える商業施設の張り紙(12日、東京都新宿区)
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台風で臨時休業を伝える商業施設の張り紙(12日、東京都新宿区)

スーパーや百貨店などに加え、24時間営業のコンビニエンスストアでも休業する店が目立った。

ファミリーマートは12日午後7時時点で、関東や東海で約2500店が一時休業している。ローソンは午後5時時点で全国の約2200店が休業している。

セブン―イレブン・ジャパンは12日の休業店舗が1000店以上に達したもようだ。当初は約1000店の休業を計画していたが、店舗ごとに判断を委ねており、実際に休業した店舗はこれを上回ったとみられる。

イオンリテールは関東や東北、東海で運営する128店で12日の閉店時間を早めた。通常は午後9時〜午後10時だが、正午〜午後5時にした。同社は「顧客や従業員の安全確保と帰宅を優先した」と説明する。ダイエーも関東地方の78店で午後1時に一斉に閉店。13日の営業は台風の進路など状況をみながら、店ごとに判断するという。

ファーストリテイリング傘下のユニクロも12日は関東や東海を中心に350店で休業し、85店で営業時間を短縮した。しまむらも約800店で朝から休業した。

工場でも生産を停止する動きが広がった。

JFEスチールは12日、東日本製鉄所の千葉地区(千葉市)と京浜地区(川崎市)について主要生産設備の一部を停止した。日本製鉄も君津製鉄所(千葉県君津市)の設備を止めた。化学メーカーのADEKAも13日にかけて化粧品原料やディスプレー材料を生産する千葉工場(千葉県袖ケ浦市)の稼働を停止する。

明治は愛知県の工場で、通常は夜間も稼働する牛乳などの生産を午後3時に終了した。社員には不要不急の外出を避けるよう呼びかけ、安全確保を徹底する。

台風の影響で、週末に予定されたコンサートやミュージカルなど少なくとも約200のイベントが中止・延期となった。チケット販売のぴあはイベントの中止・延期情報をホームページで告知し、購入者にメールで払戻期間や方法を案内した。今後も中止・延期になるイベントは増える可能性があり、チケット購入者への周知を徹底する。

東京電力ホールディングスは復旧体制を大幅に増員した。

9月の台風15号で被害状況の把握が遅れたことから、7倍強となる1万7300人の体制を敷いた。前回は深夜のコールセンターの人数が不足して停電の対応ができなかったため営業部門も増員。すでに発電機車約160台を各拠点に配備した。12日午後5時時点で、東電管内で約3万戸が停電しており、復旧を急いでいる。

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http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/369.html

[政治・選挙・NHK266] 台風なのに帰宅できない国家公務員の悲惨な現状 台風接近しているのに…国民民主・玉木代表、所属議員の質問通告遅れで謝罪
台風なのに帰宅できない国家公務員の悲惨な現状
室橋祐貴 | 日本若者協議会代表理事 10/12(土) 13:19

過度な長時間労働により官僚は疲弊している(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)
官僚の長時間労働はいつになったら改善されるのか?
政府が「働き方改革」を国民に求める一方、その舞台裏では、与野党の攻防のために官僚が長時間労働を強いられ、「過労自殺」にまで追い込まれている。
10月9日、総務省のキャリア官僚だった男性(当時31歳)が2014年3月に自殺したのは、長時間労働が原因だとして、男性の両親が同省に公務災害の認定を求める申請をした。
東京都内で記者会見した川人博弁護士によると、男性は2014年に行われた消費税増税の対応などに忙殺され、2013年11月の残業時間は135時間に上り、うつ病を発症したという。
こうした現状から、報道でも度々「官僚の長時間労働」が取り上げられ、筆者も何度も取材を行い、記事にしてきた。
「霞が関で働きたい人はいなくなる」官僚の長時間労働は“機能不全”な国会のせい(Business Insider Japan)
さらに、小泉進次郎衆議院議員ら自民党若手議員が、2018年6月に国会改革案をまとめ、その後超党派の「『平成のうちに』衆議院改革実現会議」でも提言がまとめられたが、大きな進展はない。
「現在の国会は、審議日程が事前に明確化されておらず、翌日に本会議・委員会を開くかどうかも含め、与野党の調整に委ねられている。その結果、自民党の野党時代もそうだったように、野党は、審議拒否を武器に、与党から譲歩を引き出すことを目指すため、国会審議は日程闘争が中心になる」
「充実した政策本位の国会審議に転換するためには、質疑前に十分な準備期間を確保し、計画的に政策討議を進めることが必要である。このため、議長・委員長は、2週間先まで審議日程を決める。与野党の合意が得られない場合、議長・委員長が職権で審議日程を決定する。また、内閣が要請した時は、委員長は委員会を開会すべきである」
出典:機能不全国会は誰のためか。理想の国会目指し小泉進次郎ら自民党若手議員が独自改革案
台風でも帰宅できない
そして、超大型台風19号の接近に伴い、スーパーやコンビニに客が殺到し、航空各社や鉄道各社も12日の運転見合わせを発表する中、週明けの予算委員会での質問が出そろわないとして、待機させられていた官僚からは悲鳴の声が上がっている。

おおくぼやまと@霞ヶ関@okubo_yamato

長い間休業してましたけど、さすがに今日は言いたいことが、、、

週明け予算委の質問通告出さずに、台風迫る中全霞ヶ関を待機させるのは、なんとかお許し頂けないでしょうか、、、
下手したら作業しながら明日を迎えて電車止まって帰れなくなります。家族が泣いてる。

3,304
22:22 - 2019年10月11日
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夢見る官僚@まだまだ若手@a_dreaming_man

流石にこれはもうおかしい。まだ問が届かない。 https://twitter.com/moriyukogiin/status/1182617583129726977

参議院議員森ゆうこ
✔@moriyukogiin
森ゆうこ参議院予算委員会質問
10/15(火) NHK放映 9時〜(90分)

障害者政策、 経済情勢と消費税増税、金融政策、関電問題、原発汚染水、 日米FTA、北朝鮮漁船衝突事件、公立・公的病院再編統合、国家戦略特区、災害対策等
応援よろしくお願い致します。https://www.nhk.or.jp/
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6,711
22:32 - 2019年10月11日
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夢見る官僚@まだまだ若手@a_dreaming_man

· 2019年10月11日


流石にこれはもうおかしい。まだ問が届かない。 https://twitter.com/moriyukogiin/status/1182617583129726977

参議院議員森ゆうこ
✔@moriyukogiin
森ゆうこ参議院予算委員会質問
10/15(火) NHK放映 9時〜(90分)

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帰りたい。帰って食料確保したい(もう売り切れているらしいけど)。風も強まってきてるみたいだから早く雨戸も閉めたい(窓割れないか怖い)。

2,639
22:36 - 2019年10月11日
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担当の官僚は質問が通告されてから、議員に質問の趣旨を確認し、答弁準備をしなければならないが、質問通告が出そろうまで、どの省庁、課が担当することになるかわからないため、基本的には全員待機せざるを得ない。
国会対応業務の流れ(出典:内閣人事局)

Inui Takayuki@takayuki_inui

国会待機が解かれました。でも、いつでも連絡をとれるようにという歯切れの悪いもの(スッパリ関係ないと判明したときはこんな但し書きはつかない)。おそらく、簡単な要旨か何かを見て、総括課の判断で当たる確率が低いであろう一部の課に苦心の解除をひねり出してくれたのではないかという感じです。

152
20:35 - 2019年10月11日
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satoshi-bo@satoshibo

多くの部署は今から森議員の質問への答弁を作らなきゃいけない。大臣答弁ならそんなにかからないだろうが、総理答弁は官邸協議などでほぼ徹夜になるだろう。オール霞が関で見たら一握りの人たちかもしれないが、その人たちにも多くの家族がいるのだよ。

337
0:22 - 2019年10月12日
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根本的には「日程闘争」を変えないと解決しない

参議院議員森ゆうこ
✔@moriyukogiin

初の理事懇談会で日程決定。10日14時
質問通告期限。11日17時
11日16時30分に通告済みです。
予算委の日程決定としては余裕が無さすぎましたね。 https://twitter.com/klortu868o/status/1182628912125202432

極度翻訳(zaqです)@klortu868o
そもそも、台風くるのわかっているのに期限の2営業日前に質問通告出さず、台風来る中ギリギリに質問通告する、こういう議員がいるから官僚志望者減るんだろうなー https://twitter.com/moriyukogiin/status/1182617583129726977


205
23:49 - 2019年10月11日
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そして、今回指摘されている国民民主党の森ゆうこ参議院議員は、質問通告期限の11日17時より前の、16時30分に通告済みだと言っているが、そもそも、前日の17時から、答弁担当の課を決め、趣旨確認、答弁作成をしていたら夜遅くになるのは確実だ。
(台風が来るのは10日時点でわかっていたのだから、もっと早く質問通告できたのでは、とは思うが)
内閣人事局が2016年12月に発表した調査結果によると、全ての議員からの質問通告が出そろうのは全省平均で前日の20時56分。通告を受けた質問について、担当課・局の割り振りが確定するのが平均22時36分。その後、答弁を作成する。当然ながら、退庁する頃に日付が変わっていることも珍しくない。
こうした現状を変えるためには、本来与野党間で取り決めされている「2日前ルール」を守れるように、国会の日程を前もって決める、「通年国会」の導入などを検討しなければならない。

玉木雄一郎
✔@tamakiyuichiro

我が党所属の森ゆうこ議員の質問通告が遅れ、霞ヶ関の皆さんに遅くまで、待機、作業を強いているとの指摘をいただきました。
事実であれば、大型の台風が接近している中問題であり、党の代表してお詫び申し上げます。
なお、本人は16時半には提出したとしていますが、週明け改めて事実関係を調べます。 https://twitter.com/jldp87/status/1182685875513069569

ずいこん@JLDP87
事実だとすれば国民民主党名義で謝罪しても然るべき案件なのでは...? https://twitter.com/I1Qc65q9DAiiqla/status/1182685291770830848


7,049
6:29 - 2019年10月12日
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玉木雄一郎
✔@tamakiyuichiro

そもそも野党側は予算委員会の開催自体を延期してはどうかと提案していました。仮に各議員が金曜日17時の期限を守って質問通告しても、この時間では各省庁と調整を経て答弁書が完成するのは深夜になるし、週末作業も出てくる。台風迫る中、危機管理の観点から月曜開催を避ける視点も必要だったと思う。

646
8:32 - 2019年10月12日
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玉木雄一郎
✔@tamakiyuichiro

私も若い頃の時間の多くを国会対応と質問作成に費やした経験のあるものとして、今の霞ヶ関の現状には強い危機感を持っています。各府省の秘書課、人事課から聞く話は悲観的です。このままでは日本の行政組織がダメになってしまいます。国会として、政党として、改善すべきは改善します。 https://twitter.com/matsuikoji/status/1182771528787644417

Koji Matsui 松井孝治@matsuikoji
私が知る限り、今まで党の幹部がこういうことを言ってくれたのは、25年前に志位書記局長が小官(内閣副参事官)に通告遅れをお詫びをして下さって以来です。私の知る森さんは本当は弱いものいじめは嫌いな方。何でこうなったのか?今後は是非見直して欲しい。現場の官僚を敵視して何の意味もありません。 https://twitter.com/tamakiyuichiro/status/1182770338268008448


1,557
6:40 - 2019年10月12日
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度々改善策が提案されているものの、いつまでも変わらない国会の「日程闘争」。
そして官僚は疲弊し続け、8月には厚労省の若手チームが緊急提言を発表。
そこには現場の悲鳴の声が集まっている。
・ 「厚生労働省に入省して、生きながら人生の墓場に入ったとずっと思っている」(大臣官房、係長級)
・ 「毎日いつ辞めようかと考えている。毎日終電を超えていた日は、毎日死にたいと思った。」(保険局、係長級)
・ 「家族を犠牲にすれば、仕事はできる」(社会・援護局、課長補佐級)
・ 「今後、家族の中での役割や責任が増えていく中で、帰宅時間が予測できない、そもそも毎日の帰宅時間が遅い、業務量をコントロールできない、将来の多忙度が予測できないという働き方は、体力や精神的にも継続することはできないと判断した」(退職者)
出典:厚生労働省の 業務・組織改革のための 緊急提言
こうした結果、国家公務員の志望者は激減している。
2018年度国家公務員総合職試験の申込者数は、国家公務員I種試験から移行した12年度以来初めて2万人を割り込み1万9609人、17年度に比べ4.8%の減少となった。国家公務員の倍率も下がり続けている。
与野党の非合理な対立が、はたして国民のためになっているのか。
国会議員一人一人は、これを機に本気で考えて欲しい。


室橋祐貴日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、慶應義塾大学政策・メディア研究科修士1年。若者の声を政策に反映させる「日本若者協議会」代表理事。専門・関心領域は社会保障や財政、労働政策、若者の政治参画など。yukimurohashi0@gmail.com
• Yuki_muro
• YukiMurohashi
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https://news.yahoo.co.jp/byline/murohashiyuki/20191012-00146503/

 

台風接近しているのに…国民民主・玉木代表、所属議員の質問通告遅れで謝罪
2019.10.12
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国民民主党・玉木代表国民民主党・玉木代表
 国民民主党の玉木雄一郎代表のツイッターが炎上している。大型で非常に強い台風19号が接近し、永田町・霞が関が対応に大わらわだった11日、同党所属の参院議員による質問通告が遅れたという指摘に対し、謝罪したのだ。霞が関の職員が遅くまで「待機と作業を余儀なくされた」というのだが…。

 《事実であれば、大型の台風が接近している中、問題であり、党の代表してお詫び申し上げます》

 玉木氏は12日朝、ツイッターでこう発信した。

 質問通告は、国会審議を円滑に行うため、与野党議員が質問の趣旨を事前に通告するもの。霞が関の職員は、通告をもとに政府答弁を用意する。国会の慣習で、職員の激務緩和のため、現在は「与野党間ルール」で、2日前の昼には通告することになっている。

 11日は三連休前で、大型台風接近もあり、同日夕までの通告が求められていたという。

 今回、当該の議員は通告期限までに《提出した》と説明しているようだが、真実はどうなのか。玉木氏は週明けに事実関係を調べるという。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/191012/pol1910120001-n1.html

http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/415.html

[政治・選挙・NHK266] 野党が政権をめざすならば 消費税10%後の財政政策をどうすべきか?玉木雄一郎×落合貴之×足立康史×森信茂樹
野党が政権をめざすならば
 
臨時国会の論戦が本格化している。野党は消費増税や台風被害の初動対応などに重点をおいて政府を追及した。他方、安倍政権が掲げる「全世代型社会保障改革」をめぐり対立軸を示せたとは言いがたい。長期的な重要課題への骨太の論争がもっと聞きたい。

旧民主党系の議員は今国会で会派をひとつにし、衆参両院で180人規模の勢力となった。立憲民主党の枝野幸男代表は、次期衆院選での政権交代をめざす考えを強調している。

野党は衆参代表質問や衆院予算委員会で、関西電力幹部の金品受領、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」への補助金不交付、かんぽ報道をめぐるNHK経営委員会による番組介入などの問題も積極的に取り上げた。

国会論戦で、有権者の関心が高いテーマについて政府の姿勢をただすのは、野党の重要な役割である。ただ、同時に消費増税後の経済運営や財政健全化、社会保障改革といった重要な政策課題の論争も深めていくべきだ。

安倍晋三首相は野党の質問に正面から答えない場面が確かに目立つ。だが、野党が難しいテーマで対案を明らかにせず、批判一辺倒の印象を与えているのも審議空洞化の一因ではないか。

首相は消費税率の10%への引き上げを契機とし、全世代型社会保障改革を実現すると訴えている。野党は消費増税への反対とセットで「給付つき税額控除」の導入を以前から掲げるが、制度設計の具体化を通じて有権者への理解を広げてきたとは言いがたい。

国民民主党の玉木雄一郎代表は10日の衆院予算委員会で、超長期国債の発行による財政出動が有効だと提案した。さらなる財政悪化に見合うだけの投資効果が見込めるのか中身を知りたい。

長期政権の緩みやおごり、アベノミクスの限界を感じる有権者は少なからずいる。野党が政権の座を本気でめざすのならば、基本政策について与党との違いをもっと際立たせていく必要がある。
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191013


消費税10%後の財政政策をどうすべきか?玉木雄一郎×落合貴之×足立康史×森信茂樹
室橋祐貴 | 日本若者協議会代表理事
10/7(月) 8:30
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「日本の財政政策」について議論した「ユース・カンファレンス2019」セッション5

2019年10月1日、消費税が10%へと上がり、軽減税率が導入された。

安倍晋三首相は7月の参議院選挙における党首討論で、「安倍政権でこれ以上引き上げることは全く考えていない」、「今後10年くらいは(10%以上に)上げる必要はない」と発言したが、今後も社会保障費は増え続け、赤字国債も増え続けることが予想される。

はたして、消費税10%後の財政政策をどうしていくべきなのか。

9月21日、日本若者協議会主催「ユース・カンファレンス2019」が開催され、国会議員と学者が「日本の財政政策」について議論を行なった。

セッション5「日本の財政政策・経済政策」

登壇者:

・玉木 雄一郎(衆議院議員、国民民主党代表)

・落合 貴之(立憲民主党 衆議院議員)

・足立 康史(日本維新の会 衆議院議員)

・森信 茂樹(中央大学法科大学院教授、東京財団政策研究所研究主幹)

ファシリテーター:室橋 祐貴(日本若者協議会代表理事、慶應義塾大学政策・メディア研究科修士1年)

出典:日本若者協議会「ユース・カンファレンス2019」
税は「公平性・中立性・簡素」が大原則
室橋祐貴(以下、室橋):

10月から消費税が10%に上がりますが、その後どうしていくべきだとお考えでしょうか?

玉木雄一郎議員(以下、玉木):

参議院選挙の時にも訴えましたが、この消費税増税には反対です。

いろんな理由がありますが、そもそもこれまでと一番異なるのは、複数税率。

つまり、8%とか10%が混在していて、この制度は何が何でもやめた方がいいと思います。

10月1日に(消費税率が)上がる直前まで反対し続けようと思っているんですが(筆者注:イベント開催日は9月21日)、世界的にも反対の多い軽減税率を伴う消費増税をするのであれば、絶対にやらない方がいい。

経済政策の観点から言っても、これから米中の貿易戦争がより一層厳しくなっていく中で、10年単位で見ると、輸出に頼れない経済にこれからなっていくと思います。

そうするとやっぱり内需が鍵で、GDPの6割を占める消費をしっかり回さなければいけない経済になってくるので、消費にマイナスになることは、できるだけやらない方がいい。

ですから、財源も消費税の一本足打法ではなく、例えば法人税についても、国際的に下げ競争をしていますが、この前の大阪で行われたG20でむしろ議論すべきなのは、最低法人税率を国際的に合意することではないかと思います。

税財源についても様々検討していくべきだと思います。

もう一つ主張しているのは、子ども国債を発行したらいいと言っています。

日本は建設国債という、橋や道路を作るための国債発行はできることになっていますが、今一番未来に残さなければならない資産は人材だと思います。

公債発行対象経費をもう一度見直して、本当に必要な、借金で賄うべき支出と、しっかりとした安定財源を充てる支出を分けて、「ワイズスペンディング(賢い支出)」という言葉がありますが、「ワイズボロイング(賢く借りること)」も大事だと思いますので、そういった抜本的な見直しも行うべきだという考えです。

落合貴之議員(以下、落合):

今までの選挙でも、消費税増税の前に、もっとやるべきことがあるだろうと、訴えてまいりました。

年々、消費税を上げられる環境ではなくなってきていると思います。

消費が弱いというのがわかっているのに、消費に税金をかける率を上げようとしている。

どんどん格差が広がっていると言われているのに、逆進性の高い消費税をわざわざ上げようとしている。

それから色々調べてみると、世界各国消費税の納税額の計算の仕方が違っていて、今の日本の計算の仕方だと、中小企業に負担がかかりやすい仕組みになっている。

もう一つ、新たな問題として、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)と呼ばれる国境を超えたデジタル企業がどんどん大きくなっています。

これは、アメリカも、フランスも、日本もそうですが、みんな経済が活性化すればするほど、GAFAに各国の富が吸い上げられていっている。

地球上のいくつかの民間企業にどんどん富が吸い上げられていって、雇用も賃金も上がらないし、税収も上がらない。

この問題には、先進国が協調して早く答えを出して、税の網をかけられるようにしないといけない、本当に大きな問題だと思います。

足立康史議員(以下、足立):

今政治が何で争っているかというと、増税、減税とか、あるいは、歳出拡大、歳出縮小という切り口を先ほどのプレゼンで紹介して頂きましたが(筆者注:このパネルディスカッションの前に学生から問題提起のプレゼンが行われた)、消費増税と消費減税で争っているんです。

10月1日から、自民党と公明党は10%に上げて、それに対して、れいわ新選組(以下、れいわ)が減税と言っている。

問題は、玉木さん、落合さんたちが、れいわの減税作戦に乗るのか、あるいは乗らずに我慢できるのか。

れいわはやっぱ人気があって、永田町は今れいわに注目している。

そのれいわが減税で突っ込んできた時に、どこまで我慢できるかという問題。

もちろん、我慢しなくて乗ってもいい。

じゃあ足立や維新はどうなのかというと、我々は先ほどの4つの軸はどうでもいいと思っている。

消費税を上げる上げないとか、消費税だけを議論しても意味がない。

法人税もあれば、所得税もあれば、資産課税、相続税もある。

僕たちは税制全般の抜本的な組み替えをしないといけないと思っています。

歳出については、給付付き税額控除という、今まで日本が導入したことのないような格差是正策を導入すべきだと、参院選の時に柱に掲げました。

増税、減税、歳出拡大、歳出縮小よりも、そもそも今の行政の仕組みが、バケツで言うと、穴が空いている状態なので、どれだけ水を貯めても漏れてしまっている。

僕らはバケツ自体を作り直す作業から始めなければ、増税しようと、減税をしようと、何をしようとダメだと言う立場です。

給付付き税額控除とは

税金から一定額を控除する減税で、課税額より控除額が大きいときにはその分を現金で給付する措置。例えば、納税額が10万円の人に15万円の給付付き税額控除を実施する場合には、差額の5万円が現金支給される。低所得者や子育て世帯への支援策としてカナダや英国で導入されている。

出典:日本経済新聞
森信茂樹氏(以下、森信):

私は元々財務省の主税局で課長を5年やりました。

特に3%から5%に消費税を引き上げる時の担当課長でしたから、全国津々浦々、消費税というものがどんなに良いものか、話してきました。

なぜ素晴らしいかと言うと、立場とかに関係なく、消費に応じて、(均等に)負担をすることになるからです。

そして今日本で一番問題なのは、将来不安なんです。

将来不安があるから、消費が伸びない。

ではなぜ将来不安があるかと言うと、社会保障の持続性に対する信頼がない。

なぜないかと言うと、結局は財源の問題に突き当たる。

年金が足りないとなれば、税率を上げるなりして、どっかから財源を持ってくるしかない。

だから財源の問題というのは、どうしても一緒に考えなければ政策として意味がない、

室橋:

先ほど足立さんから、減税に対して国民民主党や立憲民主党はどうするかという話がありましたが、玉木さんはどのようにお考えでしょうか?

玉木:

複数税率付き消費税増税は止めるべきだと、参院選でも訴えましたから、仮に上がれば、戻すように言うのが整合性が取れていると思います。

税というのは3つの原則があって、そもそも税金が好きな人はいない。ただ税がないと世の中が回らないので、嫌いなんだけど、税金は必要だから、「公平性・中立性・簡素」という3つの原則を定めている。これらを満たした税にしましょう、というのが大原則。

でも複数税率というのは、公平じゃないし、中立性もないし、何よりややこしくて簡素ではない。

だから絶対経済社会に悪影響を与えるので、我々はやめろという法案の提出を検討しています。

国民民主党・玉木雄一郎代表(撮影・日本若者協議会)
「セーフティネットからトランポリンへ」
足立:

三党合意ありますよね。

玉木代表は当時1期生だったので影響力はあまりなかったと思いますが、当時、低所得者対策として、3つのアイデアがありました。

軽減税率と給付付き税額控除(か総合合算制度)と簡素な給付措置。

今3つの中で選ぶとしたら、どれなんですか?

玉木:

給付付き税額控除ですね。

最初は(軽減税率は)なかったんですが、後から公明党さんにご理解を頂くために、軽減税率を3つの検討対象の一つに加えました。

それで最終的には軽減税率になっていったんですが、問題は他の手段について検討を経ることなく、いきなり軽減税率に突っ走っていったこと。

正直言うと、自民党の先生や、中には公明党の先生に「絶対やんない方がいいよ」と言うと、「おれもそう思うんだけど」とみんな言う。

ほとんどの政治家がダメだと思う政策がまさに通ろうとしているというのは、非常に怖いことで、ヨーロッパなどで軽減税率を入れている国があって、よく成功例と言うんだけど、彼らに必ず言われるのは、「Don’t follow us」と。

本当に大変だからやめた方がいいよと。

各国の関係者から山のように言われた。

足立:

だから、臨時国会でも色んな議論があると思うけど、単に上がった消費税を下げるべきだと言うしょうもない議論ではなくて、もっと違った議論をしないといけない。

今の日本の税制の問題は、捕捉ができていないこと。

税を払う個人や事業主とか、どの人がどれだけ儲けているのか、捕捉できていない。

社会保険料も含めて、徴税が完璧にできていない。

例えば、国税と社会保険庁、年金機構が持っているデータが揃ってなかったりする。

それから、所得と資産が捕捉できてないから、本当に困っている人が誰かがわからない。

だから、マイナンバーで所得と資産をきちんと把握して、取るべきところからしっかり取って、本当に困っている人に手を差し伸べられるような仕組みが必要だと、選挙で訴えた。

その時に、所得税、法人税、消費税、資産課税を全て整理しながら再構築する。

特に消費税については安定した財源だから、社会保障などの基礎的サービスの財源にすべき。

玉木:

私もマイナンバーをしっかり使って、所得と資産を両方きちんと把握して、本当に正しい給付をしていくべきだと思います。

ミーンズテストという言葉もありますが、制度によって、資産だけを把握するとか、所得と資産両方を把握するとか、所得だけを基準に何か給付したりとか、混在している。

足立:

今後は、給付付き税額控除とマイナンバーが鍵になってこないといけない。

落合:

公平、公正な税制を実現していくためには給付付き税額控除は大変重要だと思います。

森信:

給付付き税額控除で一番わかりやすいのは、イギリスのブレア元首相(元労働党党首)が言った有名な言葉で、「セーフティネットからトランポリンへ」という言葉がある。

当時、(サッチャー政権などで)疲弊したイギリスの中で政権交代をするためには、かつての労働党のような大きな政党に戻る政策ではなく、新しい政策を打ち出さないといけないと考えた。

それが、「セーフティネットからトランポリンへ」。

セーフティネットというのは、市場経済から落ちて失業したりした人々を救う、生活保護などの社会保障。

そういったものを張り巡らさせていくと、どんどんお金がかかる。

そうではなく、トランポリンのような、上から落ちてきて、もう一回市場経済に押し戻していく新しい社会政策が必要だと。

これが、給付付き税額控除。

ベーシックインカムと違うのは、ベーシックインカムは無条件に給付しますが、給付付き税額控除はあくまで勤労が条件。

東京財団政策研究所研究主幹・森信茂樹(撮影・日本若者協議会)
なぜ軽減税率に決まったか
森信:

軽減税率に関して言うと、民主党の時に、私はアドバイザーをやっていましたが、なぜこうなったかというと、当時の状況は非常に複雑で、自民と民主が結構くっつくような状況になっていた。

そこに、突然公明党が割って入ってきて、その時の一つの柱が、軽減税率だったんです。

その後与党と野党が政権交代して、法律にはこう書いてあるんです。

次に定める基本的方向性によりそれらの具体化に向けてそれぞれ検討し、それぞれの結果に基づき速やかに必要な措置を講じなければならない。

消費課税については、消費税率の引上げを踏まえて、次に定めるとおり検討すること。

1 低所得者に配慮する観点から、番号法による番号制度の本格的な稼働及び定着を前提に、関連する社会保障制度の見直し及び所得控除の抜本的な整理と併せて、総合合算制度、給付付き税額控除等の施策の導入について、所得の把握、資産の把握の問題、執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する。

2 低所得者に配慮する観点から、複数税率の導入について、財源の問題、対象範囲の限定、中小事業者の事務負担等を含め様々な角度から総合的に検討する。

3 税率引上げ等の消費税法改正規定の施行から、1と2の検討の結果に基づき導入する施策の実現までの間の暫定的・臨時的な措置として、社会保障の機能強化との関係も踏まえつつ、対象範囲、基準となる所得の考え方、財源の問題、執行面での対応の可能性等について検討を行い、簡素な給付措置を実施する。

出典:税制抜本改革法第7条
本当は、給付付き税額控除か軽減税率、どちらがいいか議論されて、初めて軽減税率になるはずだったんです。

ところがそうはならなかった。

なぜかというと、新聞が軽減税率の対象だったからです。

新聞が軽減税率に乗っかったために、新聞紙上では給付付き税額控除がタブーになった。

私は国会でも参考人に呼ばれて、その経緯をよく知っている。

玉木:

先ほど、税は「公平・中立・簡素」を満たさなきゃいけない、と言いました。

食料品は生活必需品だから安くして、困っている人を助けましょう、と思うかもしれません。

でも新聞がなぜか8%の軽減税率の対象になっている。

しかも、家に配られる宅配の新聞だけ8%になっていて、全く同じ内容の新聞を駅やコンビニで買ったら10%。

私のような電子版でほとんど読んでいる人間は、全く同じ紙面を読んでも10%。

知識を得ることは民主主義の基盤になるから、軽減税率にしている国があるけど、ではなぜ(日本では)雑誌や書籍は軽減税率(の対象)になっていないのか。

将来の社会保障給付が足りないから消費税を上げましょうと、新聞は社説に書きますが、ではなぜ新聞が軽減税率になっているかという自己批判を見たことがない。

こんなことを税で許してはならない。

年齢ではなく、支払い能力のある人に払ってもらう社会に
足立:

森信先生がおっしゃったように、給付付き税額控除はチャレンジのためのセーフティネットなんです。

単なるセーフティネットではダメなんです。

ぜひこれを実現していくために、国会でも論戦を深めていけたらと思います。

けど、一つだけ課題があるんです。

(給付付き税額控除を実現するためには)マイナンバーをちゃんと入れることが大前提。

ところがマイナンバーには共産党が猛反対している。

さらにいうと、自民党も微妙な顔をしている。

要は公平・公正な社会だと困る人たちなんです、彼らは。

公平・公正な社会を実現する最後のチャンスが今来ていると思うので、野党も頑張っていきたいと思います。

玉木:

足立さんが言っていることは過激なんだけど、冷静に聞くと正しい。

難しい言葉でいうと、担税力という言葉がある。

支払い能力のある人には(税を)払ってもらいましょう、と。

これからまさに皆さんのような若い世代が生きていく社会は、若い人たちがどんどん減っていく。

今までの税制とか社会というのは、基本的に、お年寄りは弱い立場で、働いている人は毎月給料が入ってきてお金がある人という前提で、様々な制度が設計されています。

ただ今年金だけでも、月50万円という人もいるし、麻生さん(麻生太郎)のようにいくらもらっているか知らなくても生きていける人はいる。

その一方で、毎月手取りで20万円ももらえない給料で、ずっと増えることもなく、10年間、20年間過ごしている若者もいる。

単に今までのように若い人は負担してください、高齢者は単に受益者ですよ、というのを超えた仕組みに大きく変えていかないと、若い人が苦しくなる。

世代会計というのがあって、世代ごとに一生にわたって国から受け取る便益と、納税者として納税したり、保険料を払ったりする負担を相殺して計算すると、今の60代はだいたいプラス4000万円です。

私(50歳)がだいたいトントン世代で、今の20代がマイナス1200万円。

さらに若くなるとマイナス8000万円ぐらいになる。

つまり、今の60代と今生まれた子だと、単純に計算すると、(生まれた子の方が)1億2000万円ぐらい生涯にわたって損をしている。

これを学者の中では「財政的幼児虐待」と言っている人もいますが、若いから負担をする、働いているから負担をする、のではなくて、直接税、間接税、それぞれ全体的に見直していく必要があると思います。

これまでの自民党政治の問題点
足立:

社会保障費でさらに歳出が膨らんでいきますが、なぜこれだけ世代間の差が問題になっているかというと、もちろん人口的な変化は背景にありますが、もう一つ痛感しているのは、自民党政権がバラマキ過ぎたんです。

例えば、介護保険。

介護保険の要支援とか、今保険の対象からどんどん外していっていますが、元々カバーし過ぎていたんです。

自民党というのは「今」のことしか考えていない政党だから、安倍さん(安倍首相)は将来のことも少しは考えていますが、相対的に自民党というのはその時にできるだけ今いる有権者を最大限喜ばせる政党なんです。

僕らは、まだ生まれていない子どもたちまで視野に入れて、議論したいと思っている。

自民党は今のお年寄りに最大限サービスをする政党。

平成8年に介護保険制度を作った時に(平成8年に介護保険制度創設に関する連立与党3党(自社さ)政策合意、平成9年に介護保険法成立)、美味しい制度にしたから、今どんどん削っている。

そうじゃなくて、もっと持続可能な制度を設計し直さないといけない。

だから一回、医療保険はどうあるべきか、介護保険はどうあるべきか、基礎年金はどうしていくべきか、棚卸ししないといけない。

特にこれから基礎年金は、マクロ経済スライドの中でどんどん減っていく。

基礎年金は、給付付き税額控除で吸収した方がいいと思っているんですが、税制と社会保障と労働市場、この3つの三位一体改革をやるべきなのが今なんです。

立憲民主党・落合貴之衆議院議員(撮影・日本若者協議会)
落合:

それは賛成なんですが、増税すると景気にはマイナスになるので、景気という部分だけに焦点を当てて見ると、90年代後半以降は増税できる環境には基本的にはない。

だから本当は、給付のための財源を確保するためには、それまでの間に(90年代後半までに)、増税しなければならなかった。

にもかかわらず、今これだけお金がかかるのに、財源がないから、増税しますと言っても、景気循環を考えると縮小均衡になってしまう可能性が高い。

今いくらいい税の仕組みがあっても、増税したらうまくいくかわからない、手遅れな状況だと思うんです。

なぜこれまでにできなかったんですかね。

森信:

90年代以降、バブルが崩壊してから、普通は、(景気対策として)金融政策から入るんですが、日本は、財政政策をやったんです。2次補正、3次予算をやった。

MMTというのがありますが、まさに日本は90年代にやったんです。

MMTとは

現代貨幣理論(Modern Monetary Theory)の頭文字をとった経済理論。通貨発行権を持つ国家は債務返済に充てる貨幣を自在に創出できるため、「財政赤字で国は破綻しない」と説く。主要国は巨額の債務を抱えるがインフラや医療保険などに財政資金をさらに投じるべきとの考えにつながる。

出典:日本経済新聞
ものすごい公共事業をやった。それから、小渕減税(99年度、所得税と住民税の減税)、法人減税をやった。

つまり、歳入を減らし、歳出を拡大する、MMTを90年代にやってきた。

それで借金が増えて、これ以上財政政策ができないとなってから、金融政策をやり始めた。

これは、世界的には逆なんです。

世界的には、まず金融政策で景気を調整する。

これまで、円高、公共事業、建設業、というワンパターンが形成されてきた。これが長期的にずっとあったんだと、私は思います。

玉木:

私も財務省にいたので、森信先生と同じ気持ちで社会、経済を見てきたんですが、今なかなか消費税を上げられない社会構造になってしまった気がするんです。

例えば、日本は賃金が上がらない国になってしまっている。

ほとんどの先進国は上がっているんですが、1996年から1997年ぐらいが、物価の上昇を加味したいわゆる実質賃金がピークで、それからどんどん落ちている。

労働者の実質賃金が減っているのは(先進国で)日本だけです。

それなのに、増税してますます賃金が上がらないという悪循環になっていて、ここを突破するには、金融、財政政策をフル活用するしかないと思っているんです。

金融政策は今やっていますが、財政政策は新しい形に変えていかなければいけないと思っています。

公共事業も悪くないんですが、将来投資のようなものに変えていかなければいけない。

つまり、将来の税収増と人口増につながる分野は借金をしてやったらいいと思う。

今世界的に低金利になっているので、これを生かして、この10年間、もう一度教育と科学技術への投資を徹底的にやる。

潜在成長率という言葉がありますが、本当に実力ベースでどれだけ成長力があるのか示す数字ですが、ほとんど上がっていない。

経済成長は、どんだけの人口がいて、どんだけのお金を入れて、どれだけイノベーションが起きるかで決まるので、その3番目のイノベーションのところが日本は全然起きていない。

昭和の一番最後の予算と、平成の一番最後、この30年間の予算を比べると、予算規模は1.7倍になっているんですが、その中で年金医療介護の国庫負担分は約3.3倍になっていて、借金返しの国債発行が約2倍です。

この中で、昭和の一番最後の、教育と科学技術の予算がだいたい5兆円です。

それから30年経って、平成の最後の教育と科学技術の予算がだいたい5兆円で、全く増えていない。

税収も増えていない。

これからさらにナレッジソサエティ(知識社会)が進む中で、頭脳が経済成長、富の源泉になっていくんですよ。

やっぱり「人づくりなくして国づくりなし」だから、徹底的にここにお金を入れないといけないんだけど、社会保障の伸びがあるので、他に回す余裕がありません、とよく言われる。

と言いながら私も30年間やってきたんですが、反省していて、借金をしてでも今すぐ教育と科学技術のお金をドンと増やして、将来投資をやらないと、今後日本は急激に衰える。

政策の効果を科学的に把握する仕組みを
足立:

僕も玉木さんに賛成で、先ほど4つの軸が意味ないと言ったのは、増税減税も意味がないんだけど、歳出拡大、歳出縮小も意味がないんですよ。

大事なことは、歳出の中身なんです。

お金は使ったら良いんだけど、投資効率が良いところに使わないといけない。

教育というのは、皆さんに投資をしたら、皆さんが生産をして、社会に戻してくれるから、投資効率が良いわけです。

だけど、投資効率が悪いところに、お金をジャブジャブ入れてきたのが今までの政治。

これからは投資効率にもっと敏感になって、コストベネフィットの割合が良いものをやっていくのが大事だと思います。

今日、チャレンジのためのセーフティネットと言いましたが、やっぱり競争は必要なんです。

その時に、結果平等じゃダメなんです。

玉木さんが教育投資と言いましたが、なぜ教育かと言うと、結果平等じゃなくて、機会平等だからなんです。

どんな環境に生まれても、ちゃんと機会を与えられるという、意思なんです。

そういう政治の意思が、教育投資という形になっている。

日本維新の会・足立康史衆議院議員(撮影・日本若者協議会)
玉木:

京都大学の柴田悠准教授が政策効果の本を出していますが、例えば、1兆円出した時に、どれぐらい波及効果があるか、そういうのを我々は計算するんですが、かつては公共事業も、何もないところに道路を作れば効果があったんですが、今は公共事業の経済波及効果が極めて落ちています。

それに対して教育、とりわけ就学前教育、小学校に入る前の教育の効果が大きいと、エビデンスをもとにした調査結果がある。

これを我々は客観的に分析することが必要で、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)というのが最近流行っていますが、ある予算を投じた時に、一体どういう効果があるのか、経済的、社会的な効果を測って、効果があったものには予算を出し続けて、出なかったものはやめる。

陳情の多さとか名刺の多さで決めるような、自民党型の政治を変えていくことが大事なんです。

教育が大事と言いましたが、教育でも教育効果が出ないものもあるかもしれません。

税金なり借金で投じたお金に効果があったのか、科学的に把握する仕組みをきちんと作ることが必要だと思います。

*若者とのQ&Aなど、全編を見たい方はニコニコ動画でご覧ください。

https://live.nicovideo.jp/gate/lv321911225

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室橋祐貴
日本若者協議会代表理事
1988年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、慶應義塾大学政策・メディア研究科修士1年。若者の声を政策に反映させる「日本若者協議会」代表理事。専門・関心領域は社会保障や財政、労働政策、若者の政治参画など。yukimurohashi0@gmail.com

Yuki_muro
YukiMurohashi
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http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/416.html

[社会問題10] ホームレスの避難断る 台風19号で台東区「区民でない」 台東区のホームレスの人の避難所受け入れ拒否問題を考える
ホームレスの避難断る 台風19号で台東区「区民でない」
社会・くらし
2019/10/13 20:39

台風19号が首都圏を直撃した12日、東京都台東区が、自主避難所に身を寄せようとした路上生活者(ホームレス)の2人に対し、「区民を対象としており、それ以外の人は受け入れない」として利用を断っていたことが13日、分かった。

区によると、区が開設した自主避難所の区立忍岡小学校に避難しようとした2人に住所や名前を書くよう促したところ、2人は「住所がない」と話した。

対応した職員が災害対策本部に問い合わせをした上で、利用できないことを伝えたという。区広報課は「住所不定の方の避難所という観点がなく、援助から漏れてしまったのは事実。今後、対応を検討したい」としている。

ホームレスの支援団体「あじいる」の中村光男さんは12日、自主避難所の利用を断られた男性の話を上野公園周辺で聞いた。「ホームレスの人たちは、行政は手を差し伸べてくれないと感じている。首都直下地震が懸念される中、どう支援するか考えてほしい」と訴えた。

〔共同〕
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50957080T11C19A0CZ8000/

 
台東区のホームレスの人の避難所受け入れ拒否問題を考える
大西連 | 認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長
10/13(日) 15:30
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都内の炊き出しの様子(本記事の内容とは関係ありません)

台東区のホームレスの人の避難所受け入れ拒否問題を考える
台風19号が日本列島を通過しました。各地で河川の氾濫をはじめ、甚大な被害をもたらしています。被災された方に心からのお見舞いを申し上げるとともに、各地での早期の復興を願うばかりです。

台風などの接近が予報されると、ホームレスの人への支援や生活困窮者への支援をおこなっている多くの団体や個人は、物資を提供したり、必要な情報を伝えたりなど、なんとか被害を受けずに乗り切れるようにと尽力します。

実際に、今回の台風19号の接近にあたっても、多くの団体や個人が、支援している人に訪問したり、SNS等で情報をひろめたり、路上や公園、駅や河川敷で寝泊まりしている人に声をかけて、避難や対策を呼びかけていました。

災害においては、その人がどこに住んでいるか、お金があるのかないのか、などに関わらず、命を守るという観点から支援がなされるべきなのではないかと思います。

そんななか、台東区などのエリアでホームレスの人を支援している一般社団法人あじいるが、「ホームレスの人が台東区の避難所で受け入れを拒否された」とブログやSNSで報告しました。(東京の台東区は上野や浅草があるエリアでホームレスの人や生活困窮者が比較的多く住む地域です)


一般社団法人 あじいる(フードバンク+隅田川医療相談会)
@agile_2019
【拡散希望】台東区長が本部長の台東区災害対策本部に問い合わせると、「今後避難準備・避難勧告が出る可能性があるが、ホームレス(住所不定者)については、避難所は利用できないことを対策本部で決定済み」と言われました。事実上、台東区の災害対策は、ホームレスを排除しています。#台風19号

4,487
17:15 - 2019年10月12日
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7,175人がこの話題について話しています
現場の区の職員の方々は、住所の無い人は利用させないようにという命令を受けていました。そこで、その場で台東区長が本部長となる台東区災害対策本部に問い合わせをしました。

台東区で野宿をしている人々は避難所を利用できないという規則が本当にあるのか尋ねたところ、「台東区として、ホームレスの避難所利用は断るという決定がなされている」と、明確な返答でした。

出典:災害時における台東区の野宿者への対応
都内でホームレスの支援をしている人などの報告によれば、他の区ではホームレスの人(住所不定の人)でも避難所で受け入れ拒否などにはあわなかったところもあると言います。

この件について、台東区の対応がどのようなものだったのかを確認するべく、本日(10月13日)、台東区危機災害対策課に連絡し、下記の回答をもらいました。(この内容で記事に記載することを台東区危機災害対策課に確認済みです)

――事実関係を教えてください

今回の台風19号に関しての自主避難所において、来た人には受付で避難者カードを書いてもらっていたが、その避難者カードには住所を記載する欄があった。住所が書けない人がいて(住所がない人)、現地の職員が対応がわからず(住所がない人にどう対応するのかのマニュアルなし)、災害本部に確認の連絡があり、災害本部として「住所がない人は受けられない」と回答したところ、現地職員がその回答をその人に伝え、その回答を聞いて、その人は帰ってしまった。

――「住所がない人を受けられない」という回答により避難所に入ることができなかった人は何人いましたか?

現在、把握できているのはお二人。二人でご一緒に避難所にいらっしゃいました。

――災害などにおいては、その区の住人のみならず他区に住んでいる「帰宅困難者」などの人も避難所に避難してくる可能性があると思うが、台東区の住民以外は受け入れられないのか

「帰宅困難者」には、専用の場所を用意していてそちらにご案内するという対応をとっていたが、住所がない方、ホームレスの人については想定がなかった。

――台東区はホームレスの人やネットカフェなどで生活する人など、住まいを持たない人が多く住む地域だと思うが、そういう状況の人が避難してくることを想定していなかったのか

さまざまなご批判やご指摘をすでにたくさんいただいているが、住所不定の人の避難所への避難という視点がなかった。

――今後は台東区としてどのような対応をしていくのか

今後は他自治体の事例を参考に、住所不定の人が適切に避難所を利用できるように検討していきたい。

****

台東区からは以上のような回答をもらいました。今後は対応を改善するとのことではありますが、「想定していなかった」という理由で結果的に「排除」していた、というのは衝撃的でもあります。

上記の台東区からの回答を受け、上述した「あじいる」の今川篤子代表にも話を聴きました。今川さんは医師でもあり、台東区や山谷地域周辺でホームレスの人や生活困窮者への医療支援などの活動をしている人です。

実際に昨日(12日)に、台東区の避難所におもむき避難所でホームレスの人への受け入れ拒否について職員とやりとりをした一人であり、今朝(13日)も上野近辺などのホームレスの人たちに話を聞きに行っていました。

――今朝(13日)も上野近辺を回ってホームレスの人たちに様子を聞いていたとききました。

今朝、お話しした人のなかで、ある人(ホームレスの人)は、台東区が用意した観光客(日本人含む)の人が避難できる避難所に行ったところ「ここは観光客用だからダメだ」と断られた、と話していました。私が実際に行った避難所だけでなく、区内の同様な場所で同じようなことが起こっていたのかも知れません。

――台東区は僕には「住所不定の人の避難を想定していなかった」と話していました。

実際に避難所で現地の職員だけではなく、災害対策本部(本部長は区長)にも確認してもらって話をしましたが、そこでは、「ホームレスの人は受け入れられない、ということを台東区として決定している」と言っていました。

「想定していない」ではなく、台東区としてホームレスの方を受け入れないことを「台東区として決定している」でした。なので、大きく食い違います。「ホームレスの方を受け入れない」は明確な差別なのではないでしょうか。それに、「命を守る行動を」と言っている時に、ホームレスの人はダメ、というのはおかしいのではないでしょうか。

――高齢の方や病気や障がいを持つ人など、災害の際には、被害を受けやすい、もしくは避難しにくいなど、配慮が必要だ、とも言われます。住まいがない、お金がない、少ない、などもむしろ最も避難や支援を必要とする状況だと思うのですが

その通りです。住まいがない、所持金が少ないなどもそうですし、そうした人のなかには高齢の人や病気や障がいをもつ人もいます。ふだんは元気でも体調を崩す人もいますし、不安を感じる人もいます。そういう状況の人が困って避難をしてきたのに、結果的に追い返してしまったというのは、行政としてあるまじきことだと思います。

――台東区の対応の背景にはどのようなものがあると思いますか

台東区はホームレスの人や生活困窮者などが都内の他の地域に比べたら多い地域だと思います。そして、行政が見る「ホームレスの人」への目は冷たい。「ホームレスの方は受け入れない」というのは差別だと思います。「差別」して「排除」しています。この姿勢が変わらないといけないと思います。

****

SNS上では、「ホームレスの人を受け入れないのはひどい」「人権侵害だ」という意見だけでなく、悲しいことに、「ホームレスの人を避難所に入れたくない」などの意見も見られます。後者の意見がマジョリティだとは思いませんが、こういった意見がでること自体が、社会のなかにある「差別」を如実にあらわしていると言えます。

日本は自然災害が多い地域だと言われます。住まいがない、お金がない、少ないなどの状況で被害にあうと、甚大なダメージを受けてしまう可能性があります。被害を受けないように、ダメージを少なくするために避難や支援をおこなうことは一人ひとりのいのちを支えるという観点からとても重要なことです。

台東区は今後について「住所不定の人が適切に避難所を利用できるように検討していきたい」としていますが、今回のような「受け入れ拒否」のようなことが起こる前に、どうして何も対応できなかったのか、しなかったのか、その責任は重いでしょう。

そして、今回は、実際に避難所におもむいた野宿の方がいて、その人たちを日常的に支援したり関わっていたりする人がいたので、明らかになりました。

明らかになっていないだけで、こういった災害からの避難という文脈で、ほかの自治体で同様のことが起こっていない、とは言えません。

「住民じゃないと利用できない」などは言語道断ですし、どんな状況でも「いのち」に優劣はつけられません。避難にきた人を追い返して、その人が避難できずに被害をうけたらどうするのでしょうか。困難な状況にある人を支援しない公的機関などあっていいものなのでしょうか。

各自治体での取り組みもそうですが、ホームレスの人への差別や排除の問題について、多くの人に関心をもってもらいたいと切に思います。

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大西連
認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長
1987年東京生まれ。認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長。新宿での炊き出し・夜回りなどのホームレス支援活動から始まり、主に生活困窮された方への相談支援に携わっています。また、生活保護や社会保障削減などの問題について、現場からの声を発信したり、政策提言しています。主著に『すぐそばにある貧困」』(2015年ポプラ社)。

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https://news.yahoo.co.jp/byline/ohnishiren/20191013-00146689/
http://www.asyura2.com/18/social10/msg/251.html

[経世済民133] 最低賃金から金融危機まで ノーベル賞で学ぶ経済学 韓国、失業率が1%も改善? 実態は大半が高齢者の政府雇用、若者はむしろ悪化へ
最低賃金から金融危機まで ノーベル賞で学ぶ経済学
Global Economics Trends
ノーベル賞 Global Economics Trends
2019/10/13 2:00
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Global Economics Trends
世界的な関心を集める経済学の最前線の動きやトピックを紹介します。
スウェーデン王立アカデミーは14日、ノーベル経済学賞を発表する。経済学の理論は数式が並んだ難しいものと思われがちだが、私たちの生活に身近な内容も少なくない。2019年は最低賃金や働き方改革など旬な話題への経済学の応用も有望な受賞分野とみられる。発表を前に、仕事や暮らしに結びつく経済学を紹介する。

■環境問題にも応用進む

2018年のノーベル経済学賞を受賞したノードハウス氏(左)とローマー氏=ロイター
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2018年のノーベル経済学賞を受賞したノードハウス氏(左)とローマー氏=ロイター

まず近年の受賞をおさらいしてみよう。18年はポール・ローマー氏とウィリアム・ノードハウス氏という2人の米国研究者が栄冠を手にした。

ローマー氏は国や企業が成長するために知識が果たす役割を明らかにした。1970年代までの経済学では、経済成長のスピードを決めるのは労働、資本、技術水準という3つの要素だと考えられてきた。ヒトの数で決まる労働やモノの量で決まる資本がわかりやすい一方、技術水準がどうやって決まるのかはブラックボックスのままだった。そこでローマー氏は企業の生産や研究を通じて生み出される知識やアイデアが技術水準を決めると考えた。「大切なのは知識」という考え方は21世紀にかけて主流となり、IT(情報技術)企業が研究開発(R&D)にたくさんの投資をする動きにつながっていく。

ノードハウス氏が経済成長に対して革新的なアイデアを生み出したのも70年代のことだ。ただし注目したのは環境問題で、ローマー氏の視点とは異なる。ノードハウス氏は活発な経済活動が二酸化炭素(CO2)の排出量などを増やす副作用に注目した。地球温暖化が進めば、異常気象や耕作の不良によって成長そのものも損なわれる。ノードハウス氏は、成長の副作用としてのCO2の増加を「コスト」や「価格」で測る手法を生み出した。それまでも科学者が環境問題に警鐘を鳴らす動きはあったが、同じ「経済」という土俵で地球温暖化を語れるようになったことは、後の国際交渉などに大きな影響を与えた。

17年に経済学賞を受賞した米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授の研究も、環境問題と大きく関わっている。たとえば省エネのために節電を呼びかけるとしたら、どんな方法が有効だろうか。「地球環境に優しくしよう」と良心に訴える広告は、残念ながらあまり効果がない。代わりに「あなたの地域では平均的な家庭は20%の節電に取り組んでいます」というビラをもらった家庭は、慌てて節電を始めるようになる。人には周囲に同調しようとする心理的な傾向があるからだ。セイラー氏はこうした人間の心理を経済政策などに応用する行動経済学の手法を確立した。

■最低賃金を上げた影響は?

さて、19年のノーベル経済学賞はどんな分野が注目だろうか。慶応義塾大学の坂井豊貴教授は「労働や教育の分野が有力」と話す。坂井教授は18年にローマー氏とノードハウス氏の受賞をツイッター上で"予言"し、話題となった。今年は「労働や教育の分野に詳しいノーベル賞の選考委員が、1980年代以降の研究に注目するだろう」と読む。


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その筆頭が、米カリフォルニア大学バークレー校のデービッド・カード教授である。カード氏で有名なのは、日本でも近年引き上げが進む最低賃金に関する研究だ。

従来の経済学では、政府が最低賃金を引き上げると雇用が減ると考えられていた。企業は労働者の能力に見合った賃金を支払っているため、最低賃金を無理やり上げれば、コストに対して生産性の低い労働者を解雇し、新たに雇うのをやめると考えていたためだ。カード氏らはこの伝統的な考え方に挑んだ。

米国では最低賃金を州ごとに決めるため、引き上げた州と据え置いた州との比較ができる。カード氏らはそれぞれの州のファストフード店に調査し、最低賃金を引き上げた州で実際に雇用が減ったのかを確かめた。93年の論文「Minimum Wages and Employment: A Case Study of the Fast Food Industry in New Jersey and Pennsylvania」によれば、結果は通説に反し、雇用は減っていなかった。最低賃金を引き上げてもなお生産性に見合った水準よりも低いと、企業が雇用を増やせる可能性があることを示した。労働経済学を専門とする北海道大学の安部由起子教授は「データを注意深く分析したときに、経済学の常識にも問題がありうることを明らかにした点が画期的だった」と指摘する。

カード氏らの問題提起を受け、世界中の経済学者が自分の住む地域で最低賃金を引き上げた影響を調べ始めた。その結果、州や地域、さらには労働者の年齢層などにより、最低賃金を引き上げた効果は異なることが分かってきた。日本でも、引き上げが雇用を減らすとする研究がある一方、業種や地域によって影響が異なるという調査結果もある。

■働き方改革への視点

「新たに採用すべきは、安定した成果を期待できる人か、辞めるリスクはあっても大きなリターンを生む可能性がある人か」。今も企業の人事担当者を悩ませる課題にチャレンジしたのは、米スタンフォード大学のエドワード・ラジア教授だ。数年前からノーベル賞の有力候補に挙がっているラジア氏らは、人事や組織の運営に経済学を応用してきた。

人事担当者も、企業の門戸をたたく人も、それぞれ異なる思惑(インセンティブ)を持っている。雇う側は労働者に辞められたら困るが、雇われる側はより良い条件を求めて辞めることも選択肢に入れる。そして双方は互いの思惑を知らない「情報の非対称性」にも直面している。ラジア氏はこうした異なるインセンティブや情報の非対称性を抱える組織が、どうすればより良い成果を上げられるかを研究した。ちなみに先の問いへの答えは「辞めるときのコストが許容範囲なら、リスクの高い候補者を選ぶべきである」。ほかにもラジア氏は昇進や報酬のあり方など、現在の働き方改革にもつながる議論を展開している。詳しく知りたい人は同氏らによる書籍「人事と組織の経済学/実践編」が参考になるだろう。

■データをいかに扱うか

最低賃金の影響や組織の運営を研究する場合、問題となるのはデータの扱いだ。たとえば最低賃金を上げた後に特定の地域で雇用が減ったからといって、原因は単に景気が悪くなったからかもしれない。

こうした「原因と結果」を決めるデータをどうやってより分けるかを、計量経済学と呼ばれる分野の研究者が考え続けてきた。物理や化学など自然科学の分野では、実験で得たデータによって因果関係を調べることができる。しかし人間が一度きりの意思決定を繰り返す経済学では、実験データの観察は簡単ではない。

そこで米ハーバード大学のドナルド・ルービン名誉教授らが考え出したのが、「因果推論」と呼ばれる手法だ。たとえば企業がある商品のウェブ広告の効果を計測したいとしよう。ウェブ広告を経由して商品を買った消費者が増えたとしても、すべてが広告の効果だったとは言い切れない。単にその商品がウェブ広告を経由した消費者の好みに合っていただけかもしれないからだ。そこでデータのより分けが重要になる。この場合なら、ウェブ広告を経由したグループと、同じような好みを持ちながら経由しなかったグループに分け、両者の売り上げを比較することで初めて広告の純粋な効果を測ることができる。こうして「ウェブ広告」という原因と「売り上げ」という結果を結びつけるためのデータ処理の技術を、因果推論と呼ばれる手法は洗練させてきた。

しかし現実の人や企業の行動には、過去に参考となるデータがない場合も多くある。そこで限られたデータから将来を予測する「構造推定」と呼ばれる手法を、ハーバード大学のアリエル・ペイクス教授らが開拓してきた。たとえば似たような製品を作る企業同士が合併しようとするとき、合併が製品の価格をどれだけ変化させるかを事前に知るためのデータはない。しかし合併しようとする企業の製品や顧客についてのデータを経済学の理論に基づいたモデルに当てはめ、結果を予測することはできる。このモデルに当てはめてシミュレーションする手法は構造推定と呼ばれる。現在では政府による合併の事前審査などにも応用されている。

ルービン氏の因果推論もペイクス氏の構造推定もそれぞれノーベル経済学賞の有力な候補だ。東京大学の渡辺安虎教授は「因果推論や構造推定は、今ではIT企業などのビジネス現場でも用いられる手法となった」と指摘する。

■日本人では金融の清滝氏

ここまで挙げてきた研究者のほとんどが米国の大学に所属しているのをいぶかしく思う読者もいるかもしれない。20世紀の経済学が英語圏を中心に発展した事情もあり、過去81人いる経済学賞の受賞者の過半は米国出身者だ(ノーベル経済学賞 代表的受賞者と出生地)。アジアからはインド出身のアマルティア・セン氏の受賞(1998年)があるだけで、日本人で栄冠を手にした人はいない。

清滝信宏・米プリンストン大教授
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清滝信宏・米プリンストン大教授

数年前から有力候補に挙がっている日本人に、米プリンストン大学の清滝信宏教授がいる。清滝氏は経済への小さな負のショックが地価や住宅価格の下落を通じて不況を深刻にする金融危機のメカニズムを90年代から研究してきた。97年の論文「Credit Cycles」は多く引用され、世界の中央銀行による危機対応や、金融機関への規制などに応用されてきた。

金融分野では米連邦準備理事会(FRB)元議長のベン・バーナンキ氏も候補に挙がっている。1930年代の世界大恐慌を研究したバーナンキ氏は、不況を深刻にするのは、お金の融通をする金融機関の破綻や取り付け騒ぎであることを突き止めた。83年に論文「Non-Monetary Effects of the Financial Crisis in the Propagation of the Great Depression」を発表した。バーナンキ氏はFRB議長に在任中の08年に世界金融危機を経験した。米金融大手リーマン・ブラザーズの破綻に始まった危機の初期に、バーナンキ氏は速やかに他の大手金融機関に巨額の公的資金を投入し、破綻の連鎖を回避した。

ベン・バーナンキ元FRB議長
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ベン・バーナンキ元FRB議長

金融機関への救済には批判の声も上がったが、今では危機の広がりを食い止めたという評価が定着している。最先端の経済学の理論を現実に応用した例といえる。

最低賃金から金融危機まで、今年は経済学のどんな分野が受賞するだろうか。私たちの暮らしに当てはめて考えてみるのもいいかもしれない。

(高橋元気)

【記事中の参照URL】
■ローマー氏のノーベル賞プレゼンテーション(動画のみ)(https://www.nobelprize.org/prizes/economic-sciences/2018/romer/lecture/
■ノードハウス氏のノーベル賞プレゼンテーション資料(https://www.nobelprize.org/uploads/2018/10/nordhaus-slides.pdf
■セイラー氏のノーベル賞プレゼンテーション資料(https://www.nobelprize.org/uploads/2018/06/thaler-lecture-slides.pdf
■カード氏「Minimum Wages and Employment: A Case Study of the Fast Food Industry in New Jersey and Pennsylvania」(https://www.nber.org/papers/w4509
■ラジア氏の著書「人事と組織の経済学/実践編」(https://www.nikkeibook.com/item-detail/13470
■ノーベル経済学賞 代表的受賞者と出生地(https://www.nikkei.com/article/DGXZZO50788820Z01C19A0000000/
■清滝信宏氏「Credit Cycles」(https://www.journals.uchicago.edu/doi/abs/10.1086/262072
■バーナンキ氏「Non-Monetary Effects of the Financial Crisis in the Propagation of the Great Depression」(https://www.nber.org/papers/w1054
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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50701280X01C19A0I00000/


 

韓国、失業率が1%も改善? 実態は大半が高齢者の政府雇用、若者はむしろ悪化へ
2019年10月9日ニュース

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韓国の8月失業率は3%となり、前年同月比で1%も改善した。しかしその内訳を見ると、増加した雇用の86%が高齢者で、政府が雇ったものだった。つまり政府ドーピングだ。(『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』)

※本記事は、『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』2019年10月6日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

税金で無理やり雇用を水増しし、予算が足りなくなったら増税へ…
貿易・投資・雇用から韓国経済全体が透けて見える
今回の韓国経済メルマガでは、8月の雇用状況について見ていく。

韓国経済を見るうえで大事なのは、貿易・投資・雇用の3つだ。これら3つの数値から、韓国の経済状況が正確に読み取れる。

ただ、いくつか問題がある。

まず、そのデータが改竄されてないことが大条件だ。しかし、ここを疑うと経済分析も何もできないので、参考数値としては利用している。

あとは数値上昇の主体が、政府なのか、民間なのかも重要だ。税金を投入して政府が製品を購入したり、雇用をいくら増やしたりしたところで、民間投資まで続かないのであれば一時的なものにすぎない。その資金がなくなれば元に戻ってしまうからだ。

8月だけで40万以上の雇用増?
さて、今回の話題は失業率なので、「雇用」がテーマとなる。もっとも、タイトルに書いたとおりなのだが…。

韓国の8月の失業率は3%となり、前年同月比と比べて1%改善した。8月の失業者数は85万8,000人で、前年同月比27万5,000人も減少したという。

しかも、8月の就業者数は2,735万8,000人で、前年同月から45万2,000人も増えた。なんと8月だけで40万人以上の雇用である。

確かにこの数値だけ見れば、韓国の雇用は劇的に改善したといえる。そして、参考にした聯合ニュースでは、この数値の紹介で終わっている。

だが、雇用で重要なのは、量より「質」である。

Next: 増加した雇用の86%が高齢者。政府ドーピングによる見せかけの成果だ

増加した雇用の86%が高齢者
今回も、雇用が45万人も増えても、その39万人(86%)が高齢者だった。つまり、政府ドーピングにより、見かけ上の数値だけ良くしようとした結果である。

例を挙げると、公園の雑草取りや、伝統市場の掃除、大学の部屋の電気の消し忘れを管理など、誰でもできる単純な労働にわざと雇用を創り、それを高齢者に仕事として与えたに過ぎない。

もちろん、高齢者は仕事が貰えて助かるだろう。

しかし、逆に若者の仕事がなく、30代の雇用は9,000人、40代は12万7000人も「減少」したのだ。しかもそれは、韓国経済を支えてきた製造業や金融業の雇用減少である。

税金で雇用を水増しし、足りなくなったら増税へ
雇用の質が良くないので、今回の失業率の改善は経済活性化に繋がるはずもない。いうなれば、雇用のばらまきである。

もちろん、政府が金を払っているわけだが、そのお金は国民の税金であり、蓄えてきた基金である。

さらに、その基金が失業手当の大幅増加で枯渇しそうだからと、なんと増税をするのである。雇用保険料を10月から23%も引き上げるのだ。

10月から年間の雇用保険料を引き上げ
これはいったいどういうことを招くのか、少しだけ詳しく解説しよう。

勤労者:27万2,952ウォン → 33万5,940ウォン(6万2,988ウォン増加)
雇用主:158万8,416ウォン → 195万4,968ウォン(36万6,552ウォン増加)

そして、以下のようなループが完成する。

韓国政府「最低賃金を大幅に引き上げる。目標は10,000ウォンだ」
雇用主「最低賃金が大幅に引き上げられた。労働者を減らそう」
労働者「働く場所がない。仕方がないので失業給付で生活するしかない」

韓国政府「雇用保険基金が枯渇しそうなので、雇用主と労働者は雇用保険負担額を増やそう」
雇用主「今度は雇用保険負担額が増えた。労働者を減らすしかない」
労働者「また働く場所がなくなった。失業給付で生活するしかない」

韓国政府「雇用保険基金が枯渇しそうなので…(以下、繰り返し)」

とまあ、このような状態となっている。どう見ても、最低賃金の大幅な引き上げによっての悪循環である。

まさに働いたら負けという状態だ。

最後に韓国の景気動向で重要な発表を見ていこう。

Next: 韓国統計庁「景気の山は2017年9月で、24ヶ月連続の景気後退局面」と発表
韓国統計庁「景気の山は2017年9月で、24ヶ月連続の景気後退局面」と発表
韓国統計庁が景気の山を「2017年9月」として、現在は24ヶ月連続の景気後退局面と発表した。つまり、韓国の景気は後退しているのだ。

何度も指摘してきたことだが、韓国の景気は2017年9月がピークだったのに、それを半導体特需で見えにくくしていた。

だが、実際は半導体を除く主要産業は軒並み,ひどい有様だった。そして、ここ2年で半導体需要も落ち込んできた。半導体で韓国経済を支えることも難しくなった。

韓国経済の底は深すぎて見えない
ここで、問題なのは韓国の景気に谷(底)が見えないことだ。

景気循環では、谷が見えない限りは上向きには決してならない。谷を通り越して回復なんてことはない。

だから、私はいつ、韓国の景気が底にたどり着くかを注視している。しかし、現在も底が見えない。少なくとも向こう半年が経過しても、韓国は景気回復をしてないと推測できる。

(続きはご購読ください。初月無料です)

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https://www.mag2.com/p/money/785248/3


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/374.html

[自然災害22] 台風19号で甚大な被害、人命救助続く−保険請求額1兆円規模か 黄恂恂
台風19号で甚大な被害、人命救助続く−保険請求額1兆円規模か
黄恂恂
2019年10月14日 12:47 JST 更新日時 2019年10月14日 17:29 JST
政府は被災者生活支援チームを設置、各省庁連携し被害全容把握急ぐ
気象庁は夜にかけて被災地で広範に雨が降ると予想、警戒継続が必要

Fire department workers evacuate residents from a flooded area in Date, Fukushima prefecture on October 13, 2019, one day after Typhoon Hagibis swept through central and eastern Japan.

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iqzXlYT8J0GM/v1/600x-1.jpg

Fire department workers evacuate residents from a flooded area in Date, Fukushima prefecture on October 13, 2019, one day after Typhoon Hagibis swept through central and eastern Japan. Photographer: STR/AFP
台風19号は12日から13日未明にかけて東海、関東、東北地方を縦断し強風と豪雨で河川の氾濫や土砂災害など各地に甚大な被害を及ぼした。きょう14日も自衛隊や消防によって孤立集落での人命救助活動などが行われているほか、千葉県や静岡県などで停電、福島県などで断水が続いており生活への影響は長期化が予想される。

  菅義偉官房長官は午前に行われた非常災害対策本部会議後の記者会見で、自衛隊や消防など11万人以上で台風被害の対応をしているとしたうえで、「各省庁が連携し人命救助に全力を尽くしている」と述べた。官房長官によると、台風19号による死者は10人、台風との関係を調査中の死者19人、心肺停止5人、行方不明7人、安否不明18人、重傷24人、軽傷168人。

  また、この日に被災者生活支援チームを設置することも明らかになった。共同通信によると安倍晋三首相は「住民の生活や経済活動への影響が長期化する懸念もある。被災者に寄り添いながら対応に万全を期す」と強調。被害の激甚災害指定については、被害状況を早急に把握するように努めているとした。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ioZ49UMn.U5w/v0/600x-1.jpg
Scars of Typhoon Hagibis
救助活動を続ける消防隊(長野市・14日)
  

  気象庁では被災した静岡県や宮城県などで14日午後に天気が崩れ夜にかけて広範に雨が降ると予想しており、引き続き大雨や洪水、土砂災害といった警報、注意報を発動している。共同通信によると、国土交通省は当初6県21河川の24カ所としていた堤防の決壊について、7県の37河川で51カ所に上ることを明らかにした。またNHKによると、福島県や茨城県など13都県の13万6000戸以上で断水しているという。

  ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、スティーブン・ラム氏は、台風19号の影響が広範に及ぶことから、保険金の請求額は50億−100億ドル(約5400億ー1兆800億円)規模に達する可能性があると推定している。

首都圏鉄道の運行状況 (午後5時10分現在):

JR東日本:中央本線は土砂流入の影響で高尾〜大月駅間の上下線で当面の間運転を見合わせ。両毛線は足利〜小山駅間の上下線で長期間運転を見合わせなど
北陸新幹線は長野〜糸魚川駅間で終日運転を見合わせ再開のめど立たず、東京〜長野間で折り返し運行
私鉄各線
京王線は動物園線(高幡不動〜多摩動物公園)を除く全線で通常運転を再開
小田急線は小田原線(秦野〜新松田間)で土砂が流出し終日運転を見合わせ、17日の始発から運転再開予定。特急ロマンスカーは終日運転見合わせ
西武鉄道は横瀬〜西武秩父駅間の一部電車に運休
東武線は日光線で静和〜新大平下間の線路砕石流出および北鹿沼〜板荷間の築堤の崩壊のため、南栗橋〜栃木間および新鹿沼〜下今市間で終日運転を見合わせ
空の便:

全日空や日本航空はほぼ通常通り運航しているが、一部で遅延が発生
停電 (午後3時現在、経済産業省):

全国で約7万7630戸が停電
東京電力管内が約4万8200戸(千葉県、静岡県、東京など)、東北電力は約3600戸(宮城県など)、中部電力は約2万5830戸(長野県)
通信 (午後0時30分現在、総務省):

NTT東日本管内の福島県、栃木県、東京都などで固定電話約8450回線に支障
NTTドコモ、AU(KDDI)では関東や中部、東北など13都県、ソフトバンクは12都県の一部エリアで携帯電話を利用しづらい状況
その他企業への影響:

JXTGホールディングス傘下のJXTGエネルギーで、根岸製油所が敷地内の冠水により出荷関連設備に不具合が生じ、あすまで出荷を停止。危険物など漏洩はなし
花王の川崎工場で、鉄骨造6階建て建屋の屋上に設けられた変圧器フィン部が破損し、絶縁油470リットルが漏洩
コンビニ・スーパーは東北、関東、甲信の一部店舗で一時営業停止中。ファミリーマートは停電や浸水の被害により関東・中部・東北地方などで約50店を休業
衣料品専門店などを展開するしまむらは、宮城県や埼玉県など計8県の一部店舗で営業を休止している
ヤマト運輸は全国から宮城県と長野県の一部地域宛ての荷物の受付を停止、道路規制等の影響で東北・関東・信越地方の一部地域の集配および営業所の受付業務を停止
(堤防決壊の情報など更新しました.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-14/PZC8HLT0G1L201?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/763.html

[国際27] 右派与党が圧勝=EU懐疑、東欧で定着−ポーランド総選挙 福祉強調し多文化主義を否定 東欧革命から30年。ポピュリスト台頭で今日も続く東西間の「政治的分断」@1989年、ソ連・東欧諸国で吹き荒れる民主化の嵐A現在の「強いロシア」はソ連崩壊後の屈辱の裏返しB民主化から右傾化へ、東欧の現在地
右派与党が圧勝=EU懐疑、東欧で定着−ポーランド総選挙
2019年10月14日07時16分

https://www.jiji.com/news2/kiji_photos/201910/20191014at02S_p.jpg
13日、ワルシャワで、ポーランド総選挙の勝利を喜ぶ右派与党「法と正義」のカチンスキ党首(右)とモラウィエツキ首相(AFP時事)

 【ベルリン時事】ポーランドで13日、上下両院の総選挙が行われた。地元テレビ局の出口調査によると、欧州連合(EU)懐疑派の右派与党「法と正義」が圧勝し、下院での単独過半数を維持する見通し。EUとの摩擦にもかかわらず、同党は司法やメディアへの圧力を強める路線を続ける見込みだ。
 ハンガリーやチェコでも、EUの自由な価値観に異を唱える勢力が政権を握る。今回の選挙で、EUへの懐疑が東欧全体で定着していることが、改めて確認された形だ。
 出口調査によると、法と正義の得票率は43.6%と下院(定数460)のうち239議席を占める勢い。カチンスキ党首は「多くを成し遂げた」と勝利宣言した。中道右派の最大野党「市民プラットフォーム」は27.4%にとどまった。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019101400164&g=int


ポーランド総選挙:右派与党が勝利、福祉強調し多文化主義を否定
Marek Strzelecki、Adrian Krajewski
2019年10月14日 20:01 JST
「法と正義」が政権維持へ、出口調査で明らかに
家計ばらまきや自由主義的価値観の拒絶で支持集める
ポーランドで13日行われた総選挙は右派与党「法と正義」が勝利、この先4年間にわたり政権を再び握る。同党は近代的な福祉国家を築き、その反自由主義的な価値観を市民生活のあらゆる分野に求めていく運動を完遂させるとの公約で、有権者の票を集めた。

  法と正義は家計へのばらまきや、伝統的なカトリックの価値観に背くとして同性愛者の中傷や多文化主義排斥を訴えて勢いに乗り、下院で過半数議席を維持した。投票終了後の出口調査で明らかになった。

  投票の最終結果は15日までに確定するが、一部の結果からも法と正義の勝利が確定的となった。内閣の大幅な変更は見込まれていない。

  ポーランドのモラウィエツキ首相はワルシャワで支持者らを前に「すべての人のためのポーランド人による福祉国家を建設する上で、今後4年間が重要な段階になる」と述べ、「選挙結果はわれわれが重大な社会的責務を担うことを認めたと言えるだろう」と表明した。

Dominant Victory
Polish ruling party secures new four-year term


Source: predicted number of seats won in 460-member lower house from IPSOS late exit poll.

原題:Premier Hails ‘Huge’ Mandate to Complete Remake of New Poland(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-14/PZCZXUSYF01S01?srnd=cojp-v2

 


東欧革命から30年。ポピュリスト台頭で今日も続く東西間の「政治的分断」@1989年、ソ連・東欧諸国で吹き荒れる民主化の嵐
全3回
2019/05/29
熊谷徹
(ジャーナリスト)

 1989年は、世界史の中で特筆するべき年だ。ハンガリー、ポーランド、チェコスロバキア(当時)などで立て続けに共産主義政権が崩壊し、民主化が始まったからだ。
 革命は東ドイツにも飛び火して、同年11月9日に東西ベルリンを分割していた壁を崩壊させ、翌年のドイツ統一への道を開いた。91年にはソ連自体も解体された。
 つまりこの民主革命は、第二次世界大戦終結以来続いていたソ連による支配と抑圧から東欧諸国を解放した。第二次世界大戦中に米英ソの首脳がヤルタ・ポツダム両会談(ともに45年)を通じて築いた、欧州の東西分割体制に終止符が打たれた年でもある。
 その後東欧諸国は欧州連合(EU)や、米国を盟主とする軍事同盟・北大西洋条約機構(NATO)に次々に加盟した。彼らは、半世紀近いソ連による支配を経験したことから、将来ロシアが再び領土拡大などの野望を抱いた時に身を守るためには、西側の国際機関に属することが不可欠だと考えたのだ。これは鉄のカーテンの向こう側に強制的に閉じ込められていた東欧諸国の、「欧州への帰還」だった。西欧諸国にとって、欧州の分断終結と新たな市場の誕生は、冷戦終結がもたらした平和の配当だった。
 だが歴史の振り子は真ん中では止まらず、反対側に大きく振れる。今では、当時民主化をめざしたはずの東欧諸国の多くで右派ポピュリスト政党が権力の座に就き、民主主義の根幹である司法の独立や報道の自由をめぐって、EUや西欧諸国と鋭く対立している。東欧諸国の「造反」は、90年代に西欧諸国が全く想定していない事態だった。
 またEU拡大は、欧州内部に新たな亀裂を生んだ。たとえばEUが保障した移動の自由を利用して、ポーランドなど東欧諸国の多数の市民が英国に移住した。しかしこの変化は英国市民の間でEUに対する反感を強め、2016年の国民投票で離脱賛成派が勝つ原因の一つとなった。つまりBREXITの遠因の一つは、EUの東方拡大にあるのだ。
 政治思想と価値観の違いをめぐる西欧・東欧間の分断は今なお続いている。
東欧革命の先駆者ポーランド
 まずは、30年前、ソ連圏の東欧諸国で何が起こったのかを振り返る。東欧革命の先鞭をつけたのは、ポーランドだった。この国では80年代後半に入ってから政府の経済政策の失敗により深刻なインフレや食料不足が起き、一部の労働者がストライキを行うなど混乱が続いていた。
 この難局を打開するために、1989年2月から4月にかけて政府幹部と自主管理労働組合「連帯」、教会関係者はワルシャワで円卓会議を開催。結果、81年以来政府によって弾圧され、82年からは非合法化されていた連帯が、89年4月に合法化された。同年6月4日と18日には、第二次世界大戦後、東欧の社会主義圏で初めて部分的な自由選挙が実施され、連帯の政治組織「連帯市民委員会」が有権者から圧倒的な支持を得て勝利した。
 89年8月24日には、議会下院(セイム)が連帯の顧問だったジャーナリスト、タデウシュ・マゾヴィエツキを首相に選出。彼は9月13日に政権を樹立する。第二次世界大戦後、東欧の社会主義国で共産党に属さない人物が首相の座に就いたのは初めてのことである。
 マゾヴィエツキ政権はポーランド人民共和国という国名をポーランド共和国に改名、第3共和制を発布した。第3共和制とは、1569年から1795年まで続いたポーランド・リトアニア共和国(第1共和制)と、1918年から39年まで続いたポーランド共和国(第2共和制)に続く名称である。帝政ロシアやソ連、ナチスドイツなど他民族支配の辛酸をなめ、しばしば地図から抹消されたポーランドは、89年12月の憲法改正によって黄金の冠を戴く白い鷲の国章を再び導入し、民主的な独立国として復活したのである。
 ポーランドの民主化では、連帯の役割を無視できない。この組合はグダンスクのレーニン造船所で、労働者たちが80年9月22日に創設した。彼らは食肉などの値段の引き上げに抗議して、ストライキを開始した。当時共産主義圏では労働者のストライキはおろか、自主的な組合の創設も禁止されていた。
 グダンスクのストライキは、ポーランド全土に拡大した。レフ・ヴァウェンサ(ワレサ)が率いる連帯の組合員は約950万人に増加し、共産党(ポーランド統一労働者党)の党員の約30%が加盟するに至った。

1980年9月、グダンスクのレーニン造船所で、檀上に立ち演説するヴァウェンサ
 連帯の政治的な影響力の拡大を恐れたポーランド政府は、81年12月13日に戒厳令を発布して連帯幹部らを逮捕し、翌年10月にこの組合の活動を禁止した。だが組合員たちは民主化への希望を捨てずに、地下に潜って活動を続けた。共産主義政権の崩壊後、ヴァウェンサは政治活動に復帰し、90年から5年間にわたり同国の大統領を務めた。
 つまり89年のポーランド民主革命の基礎を築いたのは、9年前にグダンスクで労働者たちが連帯の創設という形で行った、共産主義支配に対する異議申し立てだった。ソ連の支配体制に最初の亀裂を生じさせたポーランド人たちの勇気は、欧州の歴史に永遠に刻まれるだろう。
鉄のカーテンに穴を開けたハンガリー
 ハンガリーでも80年代後半には経済状態が悪化。56年からその座に就き、2度にわたって首相を務めたこともある社会主義労働者党書記長ヤーノシュ・カーダールが88年5月に健康上の理由で辞任して以降、民主化の動きが加速した。
 特に重要なのは、ハンガリーが西側への出国禁止を撤廃したことだ。同国は89年5月にオーストリアとの国境を封鎖していた鉄条網などの撤去を開始した。同年6月27日には、ハンガリーのジュラ・ホルン外務大臣とオーストリアのアロイス・モック外相が肩を並べて両国間の国境で鉄条網を切断する模様を、西側の記者団に撮影させた。この映像はハンガリーの対外姿勢の緩和を象徴するものだった。
 当時東ドイツなど社会主義国の市民は、ハンガリーやチェコなど共産主義圏の国へは旅行できたが、西ドイツなど西側の国への旅行を原則として禁じられていた。社会主義国の国境警備兵たちは、西側への亡命を試みる者を銃撃する許可も与えられていた。ベルリンの壁など東西ドイツ間の国境を許可なく越えようとして射殺された市民の数は、200人〜300人と推定されている。
 だが89年にハンガリーが国境を事実上開放したため、同国経由でオーストリアへ脱出する東ドイツ市民が急増した。
同年8月19日には、オーストリア国境に近いハンガリーのショプロンで開かれた「汎欧州ピクニック」を名目に集まった約600人の東ドイツ市民が、国境を越えてオーストリアへ亡命した。このニュースは東ドイツ市民の間で瞬く間に広がり、同国政府を激怒させた。亡命者の増加は、東ドイツ国内での民主化要求を強め、同年11月9日のベルリンの壁崩壊につながっていく。ハンガリー政府の決断は、鉄のカーテンに最初のほころびを作ったという意味で極めて大きな意味を持っている。
 1989年10月23日には、議会制民主主義に基づくハンガリー共和国が樹立され、共産主義支配は終焉した。
チェコスロバキア、バルト三国にも飛び火
 89年11月からはチェコスロバキアの首都プラハやブラチスラバで市民の民主化要求デモが多発。劇作家ヴァーツラフ・ハヴェルらが創設した市民フォーラムは、共産党政権の退陣を要求した。11月26日に始まった市民フォーラムと政府の交渉の結果、共産党を第一党とすることを定める条項が憲法から削除され、同国での共産主義支配は終わった。12月29日に同国議会はハヴェルを大統領に選出し、翌年3月29日には議会制民主主義に基づくチェコ・スロバキア連邦共和国が誕生した。(同国は93年1月1日に分裂して2つの独立国となった)
 またブルガリアでも89年11月から民主化を求める市民のデモが始まり、91年の選挙で共産主義政権を失脚させた。さらに第二次世界大戦後ソ連に強制的に編入されていたバルト三国(エストニア、リトアニア、ラトビア)でも89年8月23日に約200万人の市民が手をつないで全長600キロメートルの「人間の鎖」を形成し、独立と民主化を要求した。これらの国々でも市民のデモが多発して、共産党支配を規定する条項が憲法から削除された。リトアニアは90年3月11日、エストニアは91年8月20日、ラトビアは翌21日にソ連からの独立を宣言した。
 東欧革命ではほとんどの国で流血の事態が避けられたが、ルーマニアでは激しい武力衝突が起きた。同国でも80年代には食糧不足が深刻化し、市民の不満が高まった。1989年12月に西部の都市ティミショアラで、チャウシェスク大統領による独裁政権に対する抗議デモが始まったが、首都ブカレストから派遣された治安部隊が発砲して市民の間に多数の死傷者が出た。暴動は他の都市にも拡大し、ヘリコプターで首都から脱出したチャウシェスク夫妻は、逃亡中に革命勢力に逮捕されて即決裁判で死刑宣告を受けた。両手を後ろ手に縛られた夫妻は兵営の中庭で壁の前に立たされて自動小銃の一斉射撃を受け、処刑された。裁判と処刑の一部始終は、ビデオカメラで撮影された。ルーマニアでの治安部隊と革命勢力の間の戦闘による死者は、約1000人にのぼると推定されている。
東欧革命を可能にしたゴルバチョフ
 東欧革命が成功した理由の一つは、東側陣営の盟主だったソ連の最高指導者がミハイル・ゴルバチョフという改革者だったことである。特に各国に駐留していたソ連軍が、革命の鎮圧命令を受けなかったことについては、ゴルバチョフの功績は大きい。
 85年から91年までソ連共産党中央委員会書記長を務めたゴルバチョフは、グラスノスチ(情報の公開)とペレストロイカ(改革)を旗印に掲げて、共産主義体制の変革と強化を試みた。彼はソ連が米国に比べて経済や科学技術などで大幅に遅れており、変革によって米国との差を縮める必要があると痛感していた。彼は対外政策や軍事政策でも大きな変化を生んだ。アフガニスタンから軍を撤退させたり、87年に米国との間で中距離核ミサイル禁止条約に調印するなど、東西対立の緩和に努めた。

ソ連初の大統領となったミハイル・ゴルバチョフ(1990年3月、モスクワ)
 特に重要なのは、ゴルバチョフがソ連の伝統的な外交路線だったブレジネフ・ドクトリンを放棄したことである。68年11月12日に、ソ連の最高指導者だったレオニード・ブレジネフは、ポーランドで行った演説の中で「東欧で共産主義体制が脅威にさらされた時には、軍事同盟ワルシャワ条約機構の盟主であるソ連が軍事介入する権利を持つ」と主張した。つまり彼は、東欧の共産主義国の主権が制限されていること、これらの国々の政府と国民はソ連に従属する義務があることを強調したのだ。
 実際ソ連は、東欧諸国での暴動をしばしば武力で鎮圧した。53年の東ドイツでの暴動、56年のハンガリー動乱、68年の「プラハの春」暴動では、ソ連やワルシャワ条約機構軍の戦車部隊が鎮圧のために投入され、市民に多数の死傷者を出した。
 もしも89年にソ連の最高指導者がブレジネフ・ドクトリンを堅持していたら、やはりポーランドや東ドイツなどでソ連軍が投入されて、体制変革の芽を武力で摘み取っていたはずだ。
 ゴルバチョフはいわゆる「新思考外交」に基づいて、このブレジネフ・ドクトリンと訣別し、「不介入主義」を表明した。それどころかゴルバチョフは、東欧諸国の政府にも体制改革を求め、一党支配に慣れ切った指導者たちを当惑させた。このことは東欧の改革勢力を勇気づけた。
 私は89年の8月にポーランドで取材していたが、市民の間でのゴルバチョフに対する人気は非常に高かった。彼らは自国の共産主義政権を軽蔑し、ゴルバチョフのペレストロイカとグラスノスチに大きな期待を抱いていた。私は、東欧諸国の共産主義支配の岩盤の底で微かな地震が起き始めていることを、肌身で感じた。
 89年11月9日の夜に東ドイツ市民がベルリンの壁に押し寄せて国境を突破した時も、同市の約30キロの所に駐屯していたソ連軍の戦車部隊に出動命令は下らなかった。東西ドイツの統一が成功したのも、ゴルバチョフがソ連の最高指導者だったからである。ゴルバチョフは、東欧革命を成功させた最大の貢献者の一人である。
●東欧諸国の独立は、「西側」の拡大をもたらすにとどまり、ゴルバチョフが掲げた「欧州共通の家」の実現には至らなかった。かつての勢力圏を奪われたロシアは今……?「東欧革命から30年。ポピュリスト台頭で今日も続く東西間の『政治的分断』〜A現在の『強いロシア』はソ連崩壊後の屈辱の裏返し」に続く。
https://imidas.jp/jijikaitai/d-40-141-19-05-g423

 
 


東欧革命から30年。ポピュリスト台頭で今日も続く東西間の「政治的分断」A現在の「強いロシア」はソ連崩壊後の屈辱の裏返し
全3回
2019/05/30
熊谷徹
(ジャーナリスト)

「東欧革命から30年。ポピュリスト台頭で今日も続く東西間の『政治的分断』〜@1989年、ソ連各国で吹き荒れる民主化の嵐」からの続き。次々と「衛星国」を失うソ連。第二次世界大戦で、多大な犠牲を払って手にした「勢力圏」を奪われ、西側からは冷戦の敗者として扱われる。その鬱屈が30年を経て……?
東欧革命とロシアの屈辱感
 1989年の東欧における民主革命は、欧州の地政学的な地図を塗り替えた。西ドイツ政府はゴルバチョフを説得し、東ドイツに駐留していた約30万人のソ連軍を完全に撤退させた。東西ドイツは90年に統一され、約8000万人の人口を持つ大国が、欧州の中心に誕生した。
 東欧諸国は次々にソ連の勢力圏を離れて西側陣営に移った。まず99年3月12日にポーランド、チェコ、ハンガリーが、米国を頂点とする軍事同盟・北大西洋条約機構(NATO)に加盟した。また2004年3月29日には、バルト三国とブルガリア、ルーマニア、スロバキアとスロベニアがNATOに加盟。また04年5月1日から13年7月1日までにポーランド、ハンガリーなどの旧ソ連11カ国(旧ユーゴスラビアの2カ国も含む)がEUに加盟している。
 ロシア人たちは、第二次世界大戦でのナチスドイツとの戦争に「大祖国戦争」という特別な呼称を与えている。この戦争でのソ連の死者数は2000万人を超えると推定されている。
 冷戦時代のソ連指導部にとって、東欧諸国に対する覇権を手に入れたことは、第二次世界大戦で多大な犠牲を払ってナチスドイツを撃退したことに対する、一種の「勝利のトロフィー」だった。
 当時ポーランドやチェコスロバキアは、「ソ連の衛星国」と呼ばれた。東側陣営の中心、はソ連であり、東欧諸国はその周囲を回転する衛星、つまり属国と見られたのだ。
 そのことは建築様式にも表れている。現在もポーランドのワルシャワや、エストニアのタリンなどには、高い尖塔を持つソ連様式の建物が残っている。モスクワ大学本館と同じ様式である。俗に「スターリン様式」とも呼ばれるこれらの建築は、ポーランドやエストニアがソ連の支配下に置かれていたことを象徴するものだ。

スターリン様式で建てられたワルシャワの文化科学宮殿(1955年完成)。写真撮影・熊谷徹
 冷戦終結後に東欧諸国が続々とNATOとEUに加盟したことは、ロシア人たちの心情を傷つけた。彼らにとってはNATOとEUの東方拡大は、大祖国戦争で確保した東欧諸国という「勝利のトロフィー」を次々に喪失することを意味し「東西冷戦に敗北した」という屈辱感を一段と強めた。
 特にNATOとEUがエストニア、ラトビア、リトアニアという、第二次世界大戦の終結以降ソ連の領土に編入されていた国々を迎え入れたことは、ロシアにとっては強い屈辱だった。一方ロシア革命後、第二次世界大戦が始まるまでは独立国だったバルト三国から見れば、NATO・EUへの加盟は、西側の国際機関に身を埋めることによって、ロシアからの自由と独立をさらに強固にする目的を持つ。NATOは集団的自衛権の原則を持っており、加盟国が外国からの軍事攻撃を受けた場合、他の加盟国は自国が攻撃されたときと同様に、反撃する義務を負うからだ。NATO加盟は、東欧諸国にとって万一の事態に備えるための重要な「保険」である。

ソ連に強制併合されたエストニアの首都タリンにもスターリン様式の建築が残っていた(1954年完成)。写真撮影・熊谷徹
ロシアの対外政策の変化
 ロシアの対外政策は21世紀に入ってから、過去に比べて攻撃的な性格を強めている。まず同国は2008年8月には隣国ジョージアに一時侵攻した。ジョージアからの分離独立を求める南オセチア、アブハチア地区の親ロシア派の住民たちを支援するためである。
 また14年2月にはウクライナで親ロシア派だったビクトル・ヤヌコビッチ大統領が失脚。彼はウクライナのEU・NATOへの接近に消極的だった。ヤヌコビッチ政権に代わる親EU政権の樹立を受け、ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、14年3月にウクライナ領だったクリミア半島に戦闘部隊を送って占領し、ロシアに併合。さらに同年4月からはウクライナ東部で分離独立勢力を支援して内戦に介入している。


ヤヌコビッチ・ウクライナ元大統領(左)とプーチン・ロシア大統領(2012年、モスクワ)
 注目されるのは、19年4月にロシア政府が、ウクライナ東部の住民がロシアのパスポートの取得を希望する場合の手続きを、これまで以上に簡易化する方針を打ち出したことだ。ウクライナ東部でロシア国籍を持つ住民の比率を増やし、ロシア軍のこの地域への軍事介入を正当化するためだ。
 ロシアは08年にジョージア領に一時侵攻する直前にも、同じようにジョージア領内の分離独立派住民のために、ロシアのパスポート取得を簡易化したことがある。このため米国やEUは、ウクライナ東部住民へのパスポート交付に関するロシアの決定を、挑発的な行為として批判している。
 またロシア軍は13年以降、バルト三国に近いカリーニングラード周辺で大規模な軍事演習を繰り返しており、バルト三国では不安が強まっている。NATOは17年1月から、バルト三国とポーランドに初めて戦闘部隊を配置したほどだ。
 ロシア政府の強硬な対外政策は同国の市民に歓迎されており、プーチンの支持率はクリミア併合直後に一時約80%に達したこともある。
西欧は「欧州共通の家」提案を無視
 ロシア政府のこうした態度の背景には、1989年の革命以降、勢力圏内に置いていた東欧諸国を次々に西側陣営に奪われたという苦い経験と屈辱感がある。80年代から、ゴルバチョフは西側諸国に対して東西冷戦の終結後に、EU・NATOとロシアが協力して、リスボンからウラジオストクまでまたがる「欧州共通の家」を作りたいと提唱していた。しかし西欧と米国がこの構想について本格的にロシアと協議することはなかった。
 ロシア側に言わせると、EUとNATOはこの呼びかけを無視して、あたかも事務作業を処理するかのように、東欧諸国を機械的に加盟させていった。ゴルバチョフは東西ドイツ統一をめぐる交渉の中で、「東ドイツにはNATOに所属している西ドイツ連邦軍を駐留させないでほしい」と要求していたが、西側はその意向も無視した。
 つまり西側陣営はロシアの共通の家構想を完全に無視し、自分たちの勢力圏を着々と拡大していった。現在ロシアが対外政策を強硬化しているのは、NATOの東方拡大に対する反動でもある。モスクワの国立研究大学・高等経済学校で国際経済学部長を務めるセルゲイ・カラガノフは、プーチンのアドバイザーでもある。つまりプーチンの対外政策の理論的基盤を提供している知識人だ。
 カラガノフは、ロシアは周辺諸国に住むロシア系住民の人権を守る義務があると主張してきた。彼は、そうした国々を「近い外国」と呼ぶ。彼は、「近い外国」については、かつてのブレジネフ・ドクトリンが限定的に適用されるという見解を持っているのだ。
 私は彼がある講演の中で「西欧は90年代にロシアと欧州共通の家を作らず、我々を欧州の一員に加えることを拒絶するという失敗を犯した。これは西側が一方的に冷戦を継続していることを意味する。ロシアは再び欧州に戦争が起きると考えて、軍事力を強化することにしたのだ」と語るのを聞いたことがある。
 この発言には、東欧革命以降の約30年間にロシアが抱いてきた被害者意識、屈辱感が凝集されている。ドイツの歴史家の間にも、EUとNATOがロシアを単に「冷戦の敗者」として扱い、同国の屈辱感に十分配慮せずに、事務的に東方拡大政策を進めてきたことは、戦略的な誤りだったとする意見がある。西欧・米国の一方的な態度が、いまプーチンの対外政策の強硬化につながっているという考え方だ。
 つまりロシアの強硬姿勢は、東欧革命への反動でもある。2005年にプーチンは「ソ連崩壊は、20世紀最大の地政学的な破局だ」と述べたことがある。ソ連解体の前触れとなった東欧革命も、かつてソ連の秘密警察KGB(国家保安委員会)の将校だったプーチンの頭の中では、祖国に屈辱を与えた大惨事と捉えられているに違いない。
●ソ連の崩壊と東欧諸国の民主化は特に西欧諸国では歓呼して迎えられた。それから時が過ぎ、現在のEUに吹き荒れる嵐とは…?「東欧革命から30年。ポピュリスト台頭で今日も続く東西間の『政治的分断』〜B民主化から右傾化へ、東欧の現在地」に続く(2019年5月31日公開)。

https://imidas.jp/jijikaitai/d-40-144-19-05-g423


 

東欧革命から30年。ポピュリスト台頭で今日も続く東西間の「政治的分断」B民主化から右傾化へ、東欧の現在地
全3回
2019/05/31
熊谷徹
(ジャーナリスト)

「東欧革命から30年。ポピュリスト台頭で今日も続く東西間の『政治的分断』〜A現在の『強いロシア』はソ連崩壊後の屈辱の裏返し」からの続き。共産主義、社会主義を否定し、民主化を求めてソ連からの独立を果たした東欧諸国。西側諸国も彼らを歓呼の声で迎え入れた。ところが欧州の変化はハッピーエンドにはならなかった。現在のEUを悩ませる深刻な分断とは。
ポーランド政府が司法の独立の制限を試みた
 さて民主主義を求めてソ連の軛から逃れた東欧諸国の一部の国々では、21世紀になってから右派ポピュリストの政治家や政党が政権に就き、EUと対立している。これは1990年代に西欧諸国が予想もしていなかった事態である。
 たとえば東欧革命の先鞭をつけたポーランドでは、右派ポピュリストのヤロスワフ・カチンスキが率いる政党「法と正義(PiS)」が2005年から2年間にわたり連立政権に参加した。さらに同党は15年の総選挙では単独で過半数を確保し、政権を握った。同党は下院(セイム)だけではなく上院(セナート)でも議席の過半数を持っている。
 この政党は、民主主義社会の基盤である司法の独立や報道の自由を露骨に制限しようとしてきた。これはEUの基本原則に反する行為である。
 たとえばPiSは、15年11月から翌年12月までの間に6つの法律をセイムで可決させて、司法制度の改革を目指した。その主な標的は憲法裁判所だった。政府は違憲問題を審議する憲法裁判所の判決には絶対に従わなくてはならないので、PiSにとって憲法裁判所は目の上の瘤だった。
 この司法制度改革の狙いは、憲法裁判所の裁判長の判事への降格や、判事の任期の短縮によって政府に批判的な判事を減らすことだった。
 また18年7月に施行された法律は、最高裁判所の判事が定年退職しなくてはならない年齢を70歳から65歳に引き下げた。この法律によって、最高裁の72人の判事の内20人以上が強制的に引退させられた。
 18年9月にEUは「この法律は司法の独立を保障したEU法に違反する」としてポーランド政府をEU司法裁判所に提訴した。EU司法裁判所は同年10月に、問題の法律がEU法に抵触すると認定。ポーランド政府はしぶしぶこの決定に従い、判事たちを復職させた。
 またセイムは15年12月に公共放送法の改正法案を可決し、公共放送局の幹部の任命権をまず国有財産省に、次いで2016年7月以降は国営メディア協議会に移すことを決めた。国営メディア協議会の5人のメンバーの内3人はPiSの党員である。
 この改革については、ポーランドの野党だけではなく「国境なき記者団」などの外国のNGOからも厳しく批判された。欧州ジャーナリズム監視機構(EJO)は、「ポーランドでは15年の公共放送法改正以来、公共放送局で働いていた136人のジャーナリストが解雇され、政府に好意的な報道を行う記者が採用された。さらに71人のジャーナリストが辞職した」と伝えている。(注1)
 国境なき記者団は「この放送法は、ポーランドの報道機関の独立性を脅かす」と指摘。13年の報道に関する自由度ランキングではポーランドは22位だったが、17年には54位に急落した。
 PiSのヤロスワフ・カチンスキ党首は、1980年代に弟のレフとともに自主管理労組連帯に所属し、共産党の一党独裁に抵抗した。(レフは2005年から2010年までポーランドの大統領だったが、2010年4月に政府専用機が墜落して死亡している)

ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相(左)と、ポーランドのヤロスワフ・カチンスキ「法と正義(PiS)」党首(2016年、ポーランド・クラクフ)
 ヤロスワフは、シリアなどからの難民受け入れについて、難民が疫病や寄生虫をポーランドに持ち込む可能性があるとして消極的な態度を表明した他、19年4月25日にはカトリック教会の会合で「同性愛者や子どもに対する性教育は、ポーランド人のアイデンティティや国家を脅かす」と発言している。(※2)
 難民や同性愛者に対する差別的な発言は、カチンスキの右派ポピュリスト的な性格を浮き彫りにしている。これらは、性別や人種、民族、思想、性的指向などに基づく差別を禁止するEU法の精神にも抵触するものだ。またカチンスキは隣国ドイツのメルケル政権に対しても批判的で、17年にはドイツに対して第二次世界大戦中の残虐行為や破壊行為について、補償金の支払いを求める方針を明らかにしたことがある。(※3)
 EUは、17年12月に、「ポーランドが司法改革などによってEUの基本条約であるリスボン条約に違反している疑いがある」として、調査を開始している。ポーランドが条約に違反していると認定され、違法状態を直ちに是正しない場合には、EUはポーランドの欧州理事会などでの議決権を剥奪するなどの厳しい措置を取ることができる。
EUに大きく依存するポーランド
 ポーランド政府やPiSはEUが重視する司法の独立や報道の自由を制限する一方で、EUの資金には大きく依存している。EU加盟国はEUに拠出金を払うだけではなく、EUから様々な資金援助つまり「見返り」も受ける。加盟国がEUに払う拠出金と、EUから受け取る補助金などの差額を、純拠出金と呼ぶ。
 EUの純拠出金リストを見てみよう。交通インフラの整備が遅れており、農業への依存度が高い国ほど、EUから多額の補助金を受け取る。このためEU内のいわば「発展途上国」は拠出金よりも受け取る額が多いので差し引き額が黒字(入超)となる。逆に交通インフラの整備が比較的進んでおり、農業依存度が低い「先進工業国」は赤字(出超)となる。

 このリストによると、17年に純拠出金として支払った金額が最も多かったのはドイツ(106億7500万ユーロ=1兆3878億円・1ユーロ=130円換算)。純拠出金の対GDP比率を比べると、ドイツはGDPの0.32%をEUに払い込んでいる。
 逆に農業など第一次産業への依存度が大きいポーランドは、EUから供与される額の方が、EUに払う額を上回るので黒字となっている。ポーランドはGDPの1.92%にあたる額をEUから受け取っている。同国がEUから受け取っている還元額は、加盟国の中で最大である。つまりポーランド政権はEUから莫大な資金援助を受けながら、EUと対立しているわけだ。
 18年11月にワルシャワで会ったポーランド人の企業家は、「PiSがコントロールする放送局では、EUについて批判的な報道が多い。ポーランドは、将来EUからの資金援助が不要になったら、EUを離脱して独自の道を歩もうとするのではないか」と語っていた。
ハンガリー政府の反EUキャンペーン
 東欧民主化の際に大きな役割を果たしたハンガリーでも、右派ポピュリストが政権を握った。ハンガリー市民同盟(フィデス)のヴィクトル・オルバン党首だ。彼は学生時代から民主化をめざす政治活動に熱心で、社会主義時代のハンガリーからのソ連軍の撤退を求める演説を行ったこともある。オルバンは1998年から2002年まで首相を務めた後、2010年以降も再び首相の地位にある。
 彼は欧州諸国にシリアからの難民を配分するEUの規定に強く反対するなどして年々EUとの対決姿勢を強めているほか、その発言には反ユダヤ的なトーンも表れている。
 19年の2月にオルバンは、1枚のポスターによって反EUキャンペーンを一挙にエスカレートさせた。そのポスターには、EUのジャン・クロード・ユンケル委員長とハンガリー出身で米国在住の富豪ジョージ・ソロスが笑っている写真が使われている。その下には大きな字で「あなたはブリュッセルの意図を知る権利がある」と書かれている。ポスターの下部には小さな字で「彼らはEU加盟国に、難民の受け入れ比率を強制しようとしている。彼らは加盟国が国境を守る権利を弱めようとしている。彼らは移民ビザの導入によって、移民を容易にしようとしている」とあった。
 オルバンは、ユダヤ人の富豪ソロスが、EUとともに欧州への移民や難民の受け入れ数を増やすことによって、キリスト教的な価値観に基づく伝統的な欧州の文化を弱体化させようとしていると主張してきた。国際的なユダヤ人の資本家が、国家を脅かしているというのは、ナチスの時代から右翼勢力がしばしば使ってきた「陰謀論」である。
 19年5月の欧州議会選挙を前に、オルバンは政府の予算でこのポスターを国内のあちこちに掲示することで、EUとの対決姿勢を一段と鮮明にした。彼は国営放送局によるインタビューの中で「現在の欧州委員会(EU政府に相当)の過半数は、欧州への移民を増やそうとしている。このことは、欧州が欧州人のものでなくなることを意味している。私がポスターによるキャンペーンを始めた理由は、ブリュッセルのそうした意図を暴露するためだ」と語っている。(※4)
 オルバンが18年7月に語った次の言葉には、彼の右派ポピュリスト的な性格がはっきり表れている。「現在欧州では、人口の入れ替えが行われている。その理由の一つは、ソロスのような投機家が沢山お金を稼げるようにすることだ。彼らは多額の収益を上げられるように、欧州を破壊しようとしている。さらに彼らはイデオロギーに基づく動機も持っている。つまり彼らは欧州を多文化地域にしようとしている。彼らは欧州のキリスト教の伝統やキリスト教徒がきらいなのだ」。
 「人口の入れ替え」という言葉は、欧州以外の地域からイスラム教徒などを受け入れることによって、欧州のキリスト教との比率を下げることを意味しており、反イスラム勢力や極右勢力が好んで使う表現だ。(※5)
 EUの報道官は「ハンガリーで行われているキャンペーンはフェイクニュースだ。滑稽な陰謀論がこのような形で流布されることは信じがたいことだ」とオルバン政権を強く批判。またユンケル委員長も、「私とオルバン首相の間には、もはや共通の理解はない。ハンガリーの政権党フィデスは、欧州のキリスト教に基づく民主主義とは相容れない」と反発した。
 フィデスはドイツのキリスト教民主同盟(CDU)など伝統的な保守政党が、欧州議会の中で形成している会派・欧州人民党(EPP)に属していたが、ユンケルはこの会派からフィデスを脱退させるよう要求した。これを受けて、EPPは19年3月にフィデスの同会派への加盟資格を凍結する処分を行った。
 確かにオルバンの右旋回は近年激しさを増している。たとえば彼は17年6月に、1922年から44年までハンガリー帝国の摂政だったミクローシュ・ホルティについて「偉大な政治家だった」と肯定的な発言を行った。第二次世界大戦中にハンガリーはナチスドイツと協力した。ホルティが摂政として事実上の国家元首だった時代に、ハンガリーの傀儡政権は約60万人のユダヤ人を強制収容所に送った。これまでハンガリーを含む欧州では、ホルティはナチスの事実上の支持者と見られてきた。このためハンガリーでホルティを肯定的に評価することはこれまでタブーとされてきた。オルバンはこの禁忌を堂々と破ることで、ハンガリーの極右勢力の間に支持者を増やそうとしているのだ。
 オルバンは、2015年に極右政党同様に死刑の復活を提案したこともある。EU加盟国では死刑は禁止されている。彼は他のEU加盟国からの激しい反発を受け、この提案を取り下げた。
報道の自由を規制
 オルバン政権は、21世紀に入って新しい法律を導入して報道機関の規制を始めた。彼は2010年に議会で可決された新メディア法に基づきメディア監督官庁を統合して、「メディア・ニュース報道に関する国家管理庁(NMHH)」という監督官庁を創設。テレビ、ラジオ、ネットマガジンなどの報道機関への統制を強化した。政府は憲法改正によって2011年以降NMHHに対して強大な権限を与えた。たとえば公共のテレビ局、ラジオ局、通信社は統合されてNMHHの管理下に置かれたほか、ジャーナリストが情報源保護を理由に当局に対する証言を拒否する権利を廃止した。またNMHHが「政治的にバランスを欠いている」とか「国家の安全保障を脅かす」と判断した報道については、メディアに対し高額の罰金を科すことができるようになった。
 このメディア改革については、2010年12月に学生などブダペスト市民約1万5000人が参加する抗議デモが行われたほか、欧州安全保障協力機構(OSCE)も「メディアの自由を規制するものであり、本来は全体主義的な政権が制定する法律だ」と述べて批判している。(※6、※7)
 オルバンのポピュリスト的な姿勢は、国民から強い支持を受けている。18年4月に同国で行われた総選挙で、彼が率いるフィデスは199の議席の約67%に相当する133議席を確保した。ちなみにハンガリー議会の第2党として26議席を確保したヨッビクは、フィデス以上に反EUの姿勢を鮮明にする極右政党だ。つまり右派ポピュリスト政党と極右政党が、議席の約80%を占めていることになる。
 しかし、オルバンは中国の一帯一路計画にも強い関心を示している。ブダペストに中国の李克強首相と東欧諸国の首脳を招いて会議を開いたり、中国のシンクタンクを設置させたりするなど、中国に急激に接近しつつある。オルバンは豊富な資金を持つ東の大国に近づくことで、EUを牽制しようとしているのだ。
民主主義の理解に関する東西分断は終わっていない
 東欧革命から約30年が経過した今、かつて共産主義支配と戦って民主化を求めた政治家たちがナショナリズムに走っている。彼らは鉄のカーテン崩壊後、自分たちを受け入れたEUに対して造反し、三権分立や報道の自由、域内での移動と就職の自由などのEUの基本的な価値を否定することもためらわない。そうした態度は、多くの国々で有権者をひきつけている。
 この事実は、東欧諸国をEUへ迎え入れた西欧諸国の政治家たちに複雑な感情を与えている。
 ソ連の影響下に置かれた東欧諸国では、社会主義政権がソ連に倣って一党独裁体制を敷き、思想や言論の自由を抑圧した。当時の議会の存在意義は党の決定を形式的に追認することだけだった。司法の独立はあり得ず、三権分立の原則も無視されていた。
 冷戦終結後、西欧の政治家たちは、「東欧に生まれた新政府、そして有権者たちは社会主義支配という暗黒時代を経験したいわば被害者なのだから、これからは思想や言論の自由、三権分立を特に重視するだろう」と期待していた。
 しかし彼らの予想は全く外れた。東欧諸国で権力の座に就いた政治家たちは、今度は自らメディアの翼賛化や司法の独立の侵害に手を染め始めたのである。多くの有権者は右派ポピュリスト政権が民主主義の原則を無視しても強く糾弾せず、支持を与えている。あたかも東欧の政治家や市民たちが、社会主義に支配された暗黒時代を忘れてしまったかのようである。
 これは、大半の東欧市民の議会制民主主義社会についての理解が、西欧と大きく異なることを示唆している。約半世紀にわたる社会主義支配は、政治家そして有権者の民主主義についての理解を変質させてしまったのだろうか。
 そして、右派ポピュリストの躍進は東欧だけに限ったことではない。この現象は、英国国民投票でのEU離脱派の勝利、ドイツやフランスでの右派ポピュリスト政党の躍進、イタリアにおける右派・左派ポピュリスト政党による連立政権の樹立などと同じ根を持っている。多くの国で、大衆がEUに代表される多国間主義、多文化主義、所得格差の拡大、伝統的な政党に対する不満を、ポピュリスト政党に票を投じることで表現しているのだ。
 さらに米国のドナルド・トランプ流の自国優先主義と排外主義は、ソーシャルメディアによって拡散されて多くの人の心を汚染する。
 しかも西欧と東欧のポピュリストたちは国境を越えて連携しつつある。フランスのマリーヌ・ルペンやオランダのヘルト・ウィルダースなど西欧の右派ポピュリストたちは、東欧の右派ポピュリストと協力して「極右インターナショナル」ともいうべき運動を起こそうとしている。
 たとえば2019年4月25日に、チェコの首都プラハで極右政党「自由と直接民主主義党(SPD)」が、欧州議会選挙へ向けた集会を開催した。ルペンとウィルダースは、SPDの岡村富夫党首を支援するために、集会に参加した。東京生まれの岡村党首は、日本と朝鮮半島にルーツを持つ父親と、チェコ人の母親から生まれた日系チェコ人で、EUの移民政策に強く反対するとともに、チェコでイスラム教を禁止することを提案している。彼の党は、結党からわずか2年後の17年の総選挙で約10%の票を確保し、議会で第4党となった。プラハでの集会でルペンは、「欧州はイスラム教徒に席巻されようとしている。それを食い止めることができるのは、我々保守勢力だけだ」と獅子吼した。
 西欧諸国自体がポピュリズムに揺さぶられる中、EUが啓発活動を展開することによってオルバンやカチンスキーのような指導者の危険性を東欧市民に理解させることは至難の業である。東欧諸国では、市民の啓発において重要な役割を果たすメディアがポピュリスト政権の強い統制下に置かれているからだ。
 鉄条網やコンクリートの壁による東西分断は終わったが、EUの東方拡大後に生じた、文化や価値観、民主主義の理解に関する溝は東欧と西欧の間で深まりつつある。今後も東欧とEUの間の対立は、一層激化するものと思われる。
欧州議会選挙でポピュリスト勢力の圧勝は起きず
 19年5月23日から26日まで行われた欧州議会選挙は、欧州の分裂の深刻さを改めて浮き彫りにした。

 保守党・社会民主党の中道勢力の会派が大きく後退し、初めて過半数を失った。保守党・社民党勢力は、自由市場派か緑の党の会派と組まなければ、過半数を確保することができなくなった。フランス、英国、イタリアでは右派ポピュリスト政党が首位に立った。ポーランドのPiSも45.4%の得票率で首位。ハンガリーのフィデスも52.3%の高得票率を記録した。
 欧州議会には3つのポピュリスト会派がある。
「ドイツのための選択肢(AfD)」やイタリアの「五つ星運動」、英国のBREXIT党が属する「自由と直接民主主義のヨーロッパ(EFDD)」、フランスのマリーヌ・ルペン党首が率いる国民連合(RN)やイタリアの「同盟(レガ)」、オランダの自由党が属する「国家と自由のヨーロッパ(ENF)」、ポーランドのPiSなどが属する「欧州保守改革グループ(ECR)」の3つである。
 今回の選挙ではENFの躍進が最も目立った。同会派の議席数は36から58議席に増えた。またEFDDの議席数も42から54議席に増えた。
 ただし、この選挙の前には、「ポピュリスト会派が過半数を占めるのではないか」という懸念が出ていたが、自由市場経済を重視する会派と緑の党の系列の会派が議席数を増やしたためにそうした事態は避けられた。EUの将来を危惧した多数の若者たちが投票所に足を運んだことから、投票率が42.6%から50.9%に大きく増えたことも、ポピュリスト勢力の圧勝を阻んだ。EFDDなど3つの会派の議席数を合わせても171で、過半数(376)には遠く及ばない。欧州の選挙では、投票率が低いとポピュリスト勢力の得票率が伸びる傾向がある。
 欧州議会選挙で、EU擁護派はポピュリスト勢力の大躍進を防ぐことに成功した。彼らはこの勝利に気を緩めず、EUを改革し市民に受け入れられる組織にしていく作業を急がなくてはならない。
[終]
(文中敬称略)

※1「EJO」2017年8月31日(https://de.ejo-online.eu/pressefreiheit/polnische-medienreform-forderte-ihre-opfer
※2「ツァイト・オンライン」2019年4月25日(https://www.zeit.de/news/2019-04/25/kaczynski-bezeichnet-homosexuelle-als-bedrohung-fuer-polen-20190425-doc-1fx723
※3「フォーカス・オンライン」2017年7月28日(https://www.focus.de/politik/ausland/deutsche-weisen-verantwortung-fuer-den-krieg-zurueck-kaczynski-will-deutsche-reparationszahlungen-fuer-polen_id_7410392.html
※4「フランクフルター・アルゲマイネ」2019年2月22日(https://www.faz.net/aktuell/politik/ausland/orban-verteidigt-plakatkampagne-gegen-juncker-und-soros-16054761.html
※5「ターゲスシャウ」2019年2月20日(https://faktenfinder.tagesschau.de/ungarn-eu-soros-101.html
※6「ハンブルガー・アーベントブラット」2010年12月22日(https://www.abendblatt.de/politik/ausland/article107903422/Pressefreiheit-gefaehrdet-Ungarn-protestieren-gegen-Mediengesetz.html
※7「デア・スタンダード」2010年9月22日(https://derstandard.at/1285042396637/OSZE-kritisiert-neues-Mediengesetz-scharf

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http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/529.html

[経世済民133] ノーベル経済学賞:バナジー、デュフロ、クレマーの米大教授3氏受賞 世界の貧困削減へ実験的手法
ノーベル経済学賞:バナジー、デュフロ、クレマーの米大教授3氏受賞
Veronica Ek、Hanna Hoikkala、Niklas Magnusson
2019年10月14日 20:56 JST
2019年のノーベル経済学賞は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のアビジッド・バナジー、エスター・デュフロ両教授、米ハーバード大のマイケル・クレマー教授の3氏に授与された。3氏は「世界的な貧困を減らすための実験的手法」が評価された。

  スウェーデン王立科学アカデミーは14日の声明で「今年の受賞者が行った研究は世界的な貧困と闘う能力を大幅に向上させた。わずか20年間で実験に基づく3人の新たなアプローチは開発経済学を変革した。この分野の研究は今では盛んに行われている」と述べた。

  バナジー氏とデュフロ氏は夫婦での受賞となった。

relates to ノーベル経済学賞:バナジー、デュフロ、クレマーの米大教授3氏受賞
原題:Duflo, Banerjee and Kremer Win 2019 Nobel Economics Prize (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-14/PZD1UDSYF01Y01?srnd=cojp-v2


A・V・バナジー E・デュフロ著 山形浩生訳

『貧乏人の経済学』
 ─もういちど貧困問題を根っこから考える─
『貧乏人の経済学』表紙

 これまで貧困問題を解決するために、貧しい人々の人権を考慮しながら、資金や物資を支援したり、自由市場への参加の機会を与えたりする取り組みが、さまざまな主体により実施されてきた。しかし、本書は、こうした取り組みは、実は貧しい人々の生活や選択と乖離して、貧困問題の根本的な原因を見逃しているのではないかと指摘する。そこで、貧困に対する先入観によってではなく、貧困問題に対する施策を実施する場合としない場合の社会経済的な影響を比較する実証実験(ランダム化対照試行*)によって、貧しい人々の行動原理を分析し、貧困の原因を明らかにしている。そして、貧困問題を従来の理念や理論で考えるのではなく、貧しい人々の視点で考えることで彼らの選択の論理を理解することの重要性を提言している。


*  無作為化比較実験ともいわれる。研究の対象者をランダムに2つのグループに分け、一方にはある介入を行い(介入群)、もう片方には介入群と異なる介入を行うか、あるいは、何もしないままとし(対照群)、一定期間後に両群に生じた結果を比較し、介入の効果を検証する実証手法。たとえば、介入群の村では蚊帳を無償で配布し、対照群の村では有償で配布した場合のマラリアの罹患率を比較し、無償支援の効果を検証する。

 以下に、本書の内容を概観する。

 第1章では、「貧困の罠」を例に挙げ、貧困を削減するためには、「援助が必要である」と「援助は自立的な発展を妨げるので、市場に任すべきである」という相反対する二つの考えだけでは、いずれも問題を解決できないとし、具体的な課題とそれぞれの課題ごとの答えを考えることが重要だと指摘している。

 第2章では、栄養摂取に関する「貧困の罠」について分析している。貧しい人々は、飢えのために生産性が低く「貧困の罠」から抜け出せないという紋切り型の考えに対して、実は貧しい人々でも成人のカロリーはほぼ足りているので、重要なのは量よりも質であると指摘し、幼児期の適切な栄養摂取が将来の収入増につながることを明らかにしている。

 第3章では、健康による「貧困の罠」について分析している。貧しい人々は健康について十分な情報をもたず、また、問題を先送りする傾向があるため、将来の医療費を抑制する予防接種の効果を理解せず、罹患した際には必要性の低い高価な医療を信用し利用することで、結果としてより貧困になると考察している。

 第4章では、教育による「貧困の罠」について分析している。開発途上国ではエリート志向の強い教育が行われるため、教師は落ちこぼれ生徒を無視し、親は子供の教育に関心を失い、子供自身も自分の能力を不当に低く評価することになり、貧しい人々が教育によって貧困から抜け出す機会を失うことを指摘している。

 第5章では、貧しい人々が子だくさんである理由について明らかにしている。子だくさんなのは、自制心の欠如や社会規範の押しつけが原因ではなく、年金や医療など社会保障制度が整っていない開発途上国では子供は老後への備えであるため、貧しい人々はより大きな家族を必要とすると考察している。

 第6章では、貧しい人々が保険を買わない理由を明らかにしている。貧しい人々にとっては日々の暮しのなかに存在する多くのリスクへの対処が重要であるが、市場が提供する保険は干ばつによる不作や大病による死亡など稀に発生する危機的な事象しか対象としないため、貧しい人々は保険を購入する意欲が低いと考察している。

 第7章では、マイクロ融資は貧しい人々の生活を変えたのかという問いに答えている。マイクロ融資は貧しい人々への融資事業が成り立つことを実証したが、リスクの高い事業や利益が出るのに時間がかかる事業に投資したい人にとっては不向きな仕組みであり、貧困から抜け出すための革命的な変化をもたらしてはいないと指摘している。

 第8章では、貧しい人々が貯蓄をしない理由を明らかにしている。金融機関の口座開設や預金の引き出しの費用が高いというためだけでなく、積立年金のように給与からの天引きによる自動的な貯蓄システムもないため、貧しい人々は確実に貯蓄することが難しいと考察している。

 第9章では、グラミン銀行創設者ムハマド・ユヌスのいう「貧しい人々は天性の起業家だ」という考えに疑問を投げかけている。貧しい人々の事業規模は小さく、限界収益率は高いが総収益が低いため、事業規模を拡大することが難しいと分析している。このことから、事業を実施している多くの貧しい人々は起業家の資質が高いというわけではなく、他に生き抜くための選択肢がないため起業しているにすぎないと指摘している。

 第10章では、制度は貧困を改善するかという問いに答えている。マクロな視点で制度をみるのではなく、細部に注目した貧しい人々の視点に立つ必要があると指摘している。そして、貧しい人々の動機と制約を理解すれば、運用の工夫次第で制度や政策を改善でき、多少なりとも貧困を削減することが可能であると述べている。


 以上が本書の概要であるが、貧困問題を理解する視点として、「貧しい人々の意思決定」に注目しているところが興味深い。開発途上国に暮す貧しい人々は、どうすればきれいな水を入手できるのか、明日はどうやって食事にありつくことができるのか、病気や農作物の不作といった災厄に対して、どのように対処すればよいのか、老後の準備はどうすればよいのか、など、あらゆることに対し自分で意思決定を下さなければならない。しかも、問題解決について十分な情報をもっていないため、正しい判断ができていないことが多い。

 一方、豊かな国に暮す我々といえば、蛇口をひねれば衛生的な水が流れ、病気に対しては公共の保険制度によって、安心して医者にかかることもできる。また、コンビニに行けば栄養バランスのとれた出来合いの食事にありつける。

 さらに、貯蓄についても社会保障負担や積立年金の天引きなど貯蓄を後押しするシステムも存在する。我々は、こうしたサービスを当たり前のように享受し、充実した社会システムに取り込まれているため、自ら意思決定を下す必要がない。そのおかげで、我々は生きるためというよりも、生活を豊かにするために、自らの時間や労力を割けるのである。このことは、逆の見方をすれば、豊かな国の人々が貧困に陥らない理由を意思決定という視点で再考することが、貧困問題の解決策を探る一つの有用な方法になりうることを示唆している。

 本書は、難しい経済理論を避け、貧困問題について貧しい人々の現実的な目線で説明を展開しているので、経済学に明るくない人にとっても読みやすく、開発途上国の貧困問題に関心のある方や援助関係者にもお薦めしたい1冊である。

 なお、本書では「貧乏な人々」と訳されているが、本稿では「貧しい人々」とした。

独立行政法人 国際農林水産業研究センター 農村開発領域 研究員 羽佐田勝美

*みすず書房刊 本体価格 3000円

http://www.jiid.or.jp/ardec/ardec48/ard48-bookinfo.html


貧困研究は、ここまで進んだ!

食糧、医療、教育、家族、マイクロ融資、貯蓄……
世界の貧困問題をサイエンスする新・経済学。
W・イースタリーやJ・サックスらの図式的な見方(市場 vs 政府)を越えて、
ランダム化対照試行(RCT)といわれる、精緻なフィールド実験が、
丹念に解決策を明らかにしていきます。

「貧困の本質への驚くほど深い洞察に満ちた本」――A・セン

「世界の貧困に関心のある人の必読書。こんなに多くを教えてくれる本を読んだのは
久しぶりだ。経済学からの最高の贈り物だろう」――S・D・レヴィット(『ヤバい経済学』)

2011年Financial Times / Goldmann Sachsベストビジネス書賞受賞作。

『ガーディアン』2011年5月18日
「バナジーとデュフロの『貧乏人の経済学』は開発援助の世界に波乱を起こしつつある。この本
が他の本と違うのは、ランダム化対照試行に着目している点だけでなく、いままで開発援助の
世界で無視されることが多かった問題や、あてずっぽうで推測されていた問題に果敢に取り組ん
でいる点だ。それらは、貧乏な人の決定に潜んでいる論理性であり、貧乏な人たちが手持ちで
最もよい決定をしているのかどうか? そして政策担当者はそれにどのように答えるべきか? と
いった問題だ」

『エコノミスト』2011年4月22日
「この熟読必死の新刊で著者たちは、大胆な研究と個人的な体験談を織りまぜながら、1日0.99
ドル未満で暮らしている8億6500万人の人々の生活を描き出している」

『フィナンシャル・タイムズ』2011年4月30日
「数々の実験の創意工夫はもちろんだが、この本に溢れているのは、最貧困にある人たちの生
活を描き出す、優しい眼差しだ。本書は、貧困にある人たちがこのうえなく辛い環境のなかで洗
練された計算をしていることを示してくれる……本書はこれから進むべき道筋を提示している。
そしてこれらは間違いなく試してみるだけの価値がある実験だ」

『ニューヨーク・タイムズ』2011年5月19日
「ランダム化試行は貧困削減の闘いのための要注目手法だ。このすばらしい本で開発援助につ
いての重大な疑問への取り組みかたが変わる。それは〈どんな援助がもっとも効くのか〉という
疑問だ」
内容(「BOOK」データベースより)
貧困研究は、ここまで進んだ。単純な図式(市場vs政府)を越えて、現場での精緻な実証実験が明かす解決策。

著者について
アビジット・V・バナジー
Abhijit V. Banerjee
カルカッタ大学、ジャワハラル・ネルー大学、ハーバード大学で学び、現在はマサチュー
セッツ工科大学(MIT)で経済学のフォード財団国際教授を務める。
開発経済分析研究所(Bureau for Research and Economic Analysis of Development)
元所長、NBERの研究員、CEPR研究フェロー、キール研究所国際研究フェロー、全米芸術科学ア
カデミーおよび計量経済学会のフェロー。グッゲンハイム・フェロー、アルフレッド・P・スローン・フェ
ローも歴任。2009年初代インフォシス賞など受賞歴多数で、世界銀行やインド政府など多くの機関
の名誉顧問を歴任している。


エステル・デュフロ
Esther Duflo
マサチューセッツ工科大学(MIT)経済学部で貧困削減開発経済学担当のアブドゥル・ラティーフ・
ジャミール教授。パリの高等師範学校とMITで学び、博士号取得とともにMIT助教となって現在に
至る。
全米芸術科学アカデミーおよび計量経済学会のフェロー。2010年には40歳以下で最高のアメリカ
の経済学者に授与されるジョン・ベイツ・クラークメダル、2009年にはマッカーサー「天才」フェロー
シップ、2010年初代カルヴォ・アルメンゴル国際賞(Calvo-Armengol International Prize)など
受賞歴多数。『エコノミスト』誌により若手経済学者ベスト8のひとりに選ばれ、2008年から4年連続
で『フォーリン・ポリシー』誌の影響力の高い思想家100人に選ばれ続け、2010年には『フォーチュ
ン』誌が選ぶ、最も影響力の高いビジネスリーダー「40歳以下の40人」にも選出。


山形浩生
やまがた・ひろお
1964年東京生まれ。東京大学都市工学科修士課程およびマサチューセッツ工科大学(MIT)
不動産センター修士課程修了。大手調査会社に勤務、途上国援助業務のかたわら、翻訳およ
び各種の雑文書きに手を染める。 著書『たかがバロウズ本』(大村書店、2003)『新教養主義
宣言』(河出文庫、2007)『第三の産業革命――経済と労働の変化』(角川インターネット講座
10、2015)ほか。訳書 ウィーラン『経済学をまる裸にする』(日本経済新聞出版社、2014)ケ
ンリック『野蛮な進化心理学』(白揚社、2014、以上共訳)ケインズ『お金の改革論』(講談社学
術文庫、2014)メネズ『無敵の天才たち』(翔泳社、2014)バナジー/デュフロ『貧乏人の経済
学』(2012)シーブライト『殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?』(2014、共訳)ピケティ
『21世紀の資本』(2014、共訳、以上みすず書房)ほか。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
バナジー,アビジット V.
カルカッタ大学、ジャワハラル・ネルー大学、ハーバード大学で学び、現在はマサチューセット工科大学(MIT)で経済学のフォード財団国際教授を務める。開発経済分析研究所(Bureau for Research and Economic Analysis of Development)元所長、NBERの研究員、CEPR研究フェロー、キール研究所国際研究フェロー、全米芸術科学アカデミーおよび計量経済学会のフェロー、グッゲンハイム・フェロー、アルフレッド・P・スローン・フェローも歴任

デュフロ,エスター
MIT経済学部で貧困削減開発経済学担当のアブドゥル・ラティーフ・ジャミール教授。パリの高等師範学校とMITで学び、博士号取得とともにMIT助教となって現在に至る。全米芸術科学アカデミーおよび計量経済学会のフェロー。2010年には40歳以下で最高のアメリカの経済学者に授与されるジョン・ベイツ・クラークメダル、2009年にはマッカーサー「天才」フェローシップ、2010年初代カルヴォ・アルメンゴル国際賞(Calvo‐Armengol International Prize)など受賞歴多数

山形/浩生
1964年東京生まれ。東京大学都市工学科修士課程およびMIT不動産センター修士課程修了。大手調査会社に勤務、途上国援助業務のかたわら、翻訳および各種の雑文書きに手を染める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

https://www.amazon.co.jp/%E8%B2%A7%E4%B9%8F%E4%BA%BA%E3%81%AE%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6%E2%80%95%E2%80%95%E3%82%82%E3%81%86%E3%81%84%E3%81%A1%E3%81%A9%E8%B2%A7%E5%9B%B0%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%82%92%E6%A0%B9%E3%81%A3%E3%81%93%E3%81%8B%E3%82%89%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B-%E3%82%A2%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BBV%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%8A%E3%82%B8%E3%83%BC/dp/4622076519


 

政策評価のための因果関係の見つけ方
エステル・デュフロ(マサチューセッツ工科大学(MIT)経済学科教授) /著
レイチェル・グレナスター(英国国際開発省(DFID)チーフエコノミスト) /著
マイケル・クレーマー(ハーバード大学経済学部教授) /著
小林庸平(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)経済政策部主任研究員)/監訳・解説
石川貴之(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)環境・エネルギー部研究員)/訳
井上領介(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)環境・エネルギー部研究員)/訳
名取淳(PwCコンサルティング合同会社 People & Organization シニアアソシエイト)/訳



経済学におけるランダム化比較試験のパイオニアであるエステル・デュフロ教授らによる、理論的解説と実践的ノウハウが凝縮。
監訳者である当社小林庸平主任研究員による解説は、難解な部分を直感的でわかりやすい解説で補いながら、近年注目されている「エビデンスに基づく政策形成(EBPM)」にランダム化比較試験をどう活かしていくかを展望。EBPM に関心のある人、経済学の実証研究に関心のある人、必見の1冊です。

書籍名 政策評価のための因果関係の見つけ方
著者 エステル・デュフロ(マサチューセッツ工科大学(MIT)経済学科教授) /著
レイチェル・グレナスター(英国国際開発省(DFID)チーフエコノミスト) /著
マイケル・クレーマー(ハーバード大学経済学部教授) /著
小林庸平(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)経済政策部主任研究員)/監訳・解説
石川貴之(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)環境・エネルギー部研究員)/訳
井上領介(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)環境・エネルギー部研究員)/訳
名取淳(PwCコンサルティング合同会社 People & Organization シニアアソシエイト)/訳
発行 日本評論社
発行年月 2019/07/25
価格 定価(本体2,300円+税)
お求め方法 一般書店で販売(オンラインストアを含む)
目次
第1章 はじめに

第2章 なぜランダム化が必要なのか?
2.1 因果推論の問題
2.2 ランダム化による選択バイアス問題の解決
2.3 選択バイアスを補正するその他の方法
2.4 実験的手法と非実験的手法の比較
2.5 出版バイアス

第3章 調査設計におけるランダム化比較試験の導入
3.1 パートナー
3.2 パイロットプロジェクト:プログラム評価からフィールド実験へ
3.3 特殊なRCTの例

第4章 サンプルサイズ、実験設計、検出力
4.1 基本原理
4.2 グループ化されたエラー
4.3 不完全コンプライアンス
4.4 制御変数
4.5 層化
4.6 実践的な検出力の計算

第5章 実際の調査設計と実施にあたっての留意事項
5.1 ランダム化の単位
5.2 横断的手法について
5.3 データ収集

第6章 「完全なランダム化」が行われない場合の分析
6.1 割当率が層別に異なる場合
6.2 不完全コンプライアンス
6.3 外部性
6.4 脱落

第7章 推論に関する問題
7.1 グループ化されたデータ
7.2 複数アウトカム
7.3 サブグループ化
7.4 共変量

第8章 外的妥当性とランダム化比較試験から得られた結果の一般化
8.1 部分均衡効果と一般均衡効果
8.2 ホーソン効果とジョンヘンリー効果
8.3 特定のプログラムやサンプルを越えての一般化
8.4 RCTの結果の一般化可能性に関するエビデンス
8.5 フィールド実験と理論モデル

解説 エビデンスに基づく政策形成の考え方と本書のエッセンス
https://honto.jp/netstore/pd-book_29705590.html


 

ノーベル経済学賞に米研究者3人 世界の貧困削減へ実験的手法
2019年10月14日 18時53分

ことしのノーベル経済学賞の受賞者に、世界的な貧困の削減のため、実験的な手法を取り入れた、いずれもアメリカの大学の研究者3人が選ばれました。

スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は、日本時間の午後7時前、ことしのノーベル経済学賞の受賞者を発表しました。

受賞したのは、
いずれもアメリカのマサチューセッツ工科大学の
▽アビジット・バナジ−氏と、
▽エスター・デュフロ氏、
それに、アメリカのハーバード大学の
▽マイケル・クレマー氏の3人です。

ノーベル経済学賞の選考委員会は、授賞の理由について、世界的な貧困の削減のために、途上国の実際のデータを使い、因果関係を分析する実験的なアプローチを取り入れたことを評価したとしています。

デュフロ氏「受賞は多くの研究者を代表するもの」
このうちデュフロ氏は46歳。ノーベル経済学賞としては、最年少の受賞者で、女性では2人目となります。

デュフロ氏は受賞が決まったあと電話会見に臨み「受賞できるとは思っておらず恐縮だ。3人の受賞は貧困問題に取り組むたくさんの研究者を代表するものだ」と喜びを語りました。

また「貧しい人たちは絶望的で怠惰だと考えられがちだが、私たちの研究のゴールは科学的な証拠に基づいて貧困に立ち向かうことだ」と述べました。
評価された「実験的なアプローチ」とは
ことしのノーベル経済学賞の受賞者に決まった3人が評価された「実験的なアプローチ」とは、実際に途上国の特定の町や村を実験のフィールドとして使い、そこにあるさまざまな社会的条件と貧困の緩和の因果関係を探る手法です。

たとえば、貧困を緩和するのに何が必要かを探るため、ビジネスを行う際に少額の資金を貸し出してもらった人と、資金の貸し出しを受けなかった人の両方のグループを観察し、結果にどのような違いが生じるか分析したということです。

その結果、資金の提供を受けたかどうかは、貧困の緩和に欠かせない人々の健康や教育、それに女性の社会参加などといった要素には、あまり影響を与えないことがわかったということです。
「貧困の削減 どういった政策が効果的か明らかに」
ことしのノーベル経済学賞に、世界の貧困の削減に関する研究を続けたアメリカの大学の研究者3人が選ばれたことについて、ノーベル経済学賞に詳しい慶應義塾大学の坂井豊貴教授は「3人は発展途上国で徹底したフィールドワークを行って、貧困を削減するにはどういった政策が効果的なのかを明らかにした。世界的に貧富の差が広がる中、こうした研究に光があたったのかもしれない」と評価しました。

一方、ノーベル賞の中で唯一、日本人受賞者がいないのが経済学賞です。これについて坂井教授は「ことしも日本人が受賞できなかったことは残念だが、不況に関する研究などで海外で活躍している研究者もいる。簡単に受賞できるとは思えないが、来年以降に期待したい」と話していました。
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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191014/k10012131111000.html


 

Indian-American Abhijit Banerjee, his wife Esther Duflo and Michael Kremer jointly won the 2019 Nobel Economics Prize on Monday "for their experimental approach to alleviating global poverty." Banerjee, 58, was educated at the University of Calcutta, Jawaharlal Nehru University and Harvard University, where he received his Ph.D in 1988. He is currently the Ford Foundation International Professor of Economics at the Massachusetts Institute of Technology, according to his profile on the MIT website.


https://economictimes.indiatimes.com/news/politics-and-nation/abhijit-banerjee-esther-duflo-michael-kremer-win-2019-nobel-economics-prize-for-study-on-poverty/videoshow/71581966.cms

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/382.html

[国際27] ノーベル平和賞、エチオピアのアビー首相に 隣国と和平実現 コンゴで増える「副業」ハンター、野生の肉が収入源 『なにかが首のまわりに』アフリカ女性が味わう苦さや孤独感は、日本に生きる私たちと地続き

ノーベル平和賞、エチオピアのアビー首相に 隣国と和平実現
2019年10月11日
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Image copyrightREUTERS
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ノーベル平和賞に輝いたエチオピアのアビー・アハメド氏は、昨年4月に首相に就任。国内外の紛争解決に力を尽くした
ノルウェーのノーベル賞委員会は11日、東アフリカ・エチオピアのアビー・アハメド首相(43)にノーベル平和賞を授与すると発表した。授賞理由として、「隣国エリトリアとの国境紛争を解決する断固たる指導力」を挙げた。

エチオピアは昨年、エリトリアとの間で和平合意を実現。1998〜2000年の国境紛争から20年間続いた軍事的対立を終わらせた。

「和平への断固たる指導力」
ノーベル賞委員会は、アビー氏への授与について、「平和賞には、エチオピアと東および北東アフリカ地域の平和と和解に関わっているすべての人々を評価する意味も込められている」と説明。

「平和は片方の当事者だけでは生まれない。アビー首相が手を差し伸べたとき、(エリトリアのイサイアス・)アフウェルキ大統領はその手を握り、両国の和平交渉を正式に進める流れをつくった。ノルウェーのノーベル賞委員会は、和平合意がエチオピアとエリトリアの全国民に好ましい変化をもたらすことを望んでいる」と述べた。

反体制派を釈放
アビー氏は2018年4月に首相に就任。極度に厳しい統制国家から、自由な国を目指し、大規模な改革に取り組んだ。

何千人もの反体制活動家を刑務所から釈放。国外追放となっていた反体制派の人々の帰国を認めた。

大胆な改革は一方で、民族間の緊張を再び高めた。暴力的な衝突が発生し、250万人が避難を余儀なくされた。

トゥーンベリさん選ばれず
今年のノーベル平和賞は、223人、78団体が候補となっていた。中でも、スウェーデンの環境保護活動家グレタ・トゥーンベリさん(16)が有力とみられていた。

ノーベル財団の規定により、最終候補は50年後まで明らかにされない。

授賞式は12月ノルウェーのオスロで開かれる。賞金は900万スウェーデンクローナ(約1億円)。

過去のノーベル平和賞の受賞者には、バラク・オバマ前米大統領(2009年)、ジミー・カーター元大統領(2002年)、受賞時17歳の教育活動家マララ・ユスフザイさん(2014年)、欧州連合(EU、2012年)、国連とコフィ・アナン事務総長(2001年)、マザー・テレサ(1979年)などがいる。

(英語記事 Ethiopia's Abiy Ahmed wins Nobel Peace Prize)

 
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https://www.bbc.com/japanese/50010746

 


#その一方でアフリカの現実は・・


トップニュース2019年10月10日 / 17:55 / 4日前 ブログ:

コンゴで増える「副業」ハンター、野生の肉が収入源

Thomas Nicolson
5 分で読む

[ムバンダカ(コンゴ民主共和国) 9日 ロイター] - コンゴ西部の街、ムバンダカで暮らすモハメド・エシンボ・マトングさんは、月に1度、自宅を離れて野生動物のハンティングに出かける。

マトングさんは政府機関の職員だが、家族を養うために殺した獲物を売る副業を手がけていると語る。

研究者たちによれば、マトングさんのようなハンターのせいで、中央アフリカの森林から野生動物が急速に減少しているという。

61歳のマトングさんは、「10代の頃は、せいぜい10キロも川を遡れば獲物を見つけられた。今では、それなりの猟場にたどり着くには、40キロ以上も行かなければならない」と話す。

ハンティングに向かうマトングさんは、丸木舟と櫂を数本借り、手製のライフルと10数発の弾丸、数日分の食糧としてキャッサバで作った伝統製法のパン「クワンガ」をたっぷり持参する。

滞在するのはコンゴ川支流に面した小屋。昼夜を問わず、何か獲物が見つからないかと森を探し回る。サルやボンゴ(レイヨウ)、ワニ、ニシキヘビ、カワイノシシなどが標的だ。

1990年代まで、マトングさんのようなハンターが動物を殺すのは自分たちで食べるためだったが、都市部でブッシュミート(野生動物の肉)への需要が高まる中、ハンティングの規模が拡大している。

現地住民や研究者によれば、野生動物の生息数への影響は明白だ。

コンゴ盆地では、アマゾン川流域に次ぐ世界第2位の規模の森林が6カ国にまたがって広がっている。そこでは年間約600万トンのブッシュミートが供給されている。

ムバンダカの地元集落が管理する森を研究する世界自然保護基金(WWF)のミシェル・バカンザ氏は、「村落の周辺ではさまざまな種の生物が姿を消しつつある」と語る。

<生計を支える副業>

ボノボ(ピグミーチンパンジー)やセンザンコウなど多くの動物は国際法で保護されているが、政府による監督が不十分なせいで、こうした絶滅危惧種も日常的に殺されている。

マトングさんは、約75ドルの月給では妻、4人の子、それに同居する兄弟2人と甥が暮らすには足りないと話す。

「これだけの人数をどうやって養って行けというのか。月末に給料が未払いになることさえある」と、彼は言う。「これがコンゴという国だ。生活を支えるためには何だってやってみる」

他のハンターはどうか。ムバンダカで自然保護を学ぶセレスティンさん(フルネームでの掲載は拒否している)にとっては、野生動物の心配よりも、世界の最貧国の1つであるコンゴで生活を維持していくことの方が重要だ。

「ハンティングが禁じられている種があるのは知っている。しかし、そのおかげで大学の学費を払えるし、家計の支えにもなっている」と、彼は言う。

マトングさんは森でのハンティングを数日間続け、ほとんどの獲物を売って5000─10万コンゴフラン(約7〜60ドル)稼ぐ。家族が自分たちで食べる分として取っておく肉は数日分だけだ。

獲物の行く先はムバンダカの市場で、毎週金曜日になると、艀(はしけ)で運ばれてくるブッシュミートを購入する客が何千人も集まる。

屋台にはワニやオオトカゲ、殺されたばかりのサル、ボンゴなどの肉が山積みされている。


(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/congo-bushmeat-idJPKBN1WP12W


 

 

『なにかが首のまわりに』レビュー】“アフリカの女性”が味わう苦さや孤独感は、日本に生きる私たちと地続きなもの
2019/10/14 17:00
文=保田夏子

――本屋にあまた並ぶ新刊の中から、サイゾーウーマン読者の本棚に入れたい書籍・コミックを紹介します。

『なにかが首のまわりに』レビュー:アフリカの女性が味わう苦さや孤独感は、日本に生きる私たちと地続きなものの画像1

■『なにかが首のまわりに』(チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ)

【概要】

 2013年発表の長編『アメリカーナ』で、アフリカ・ナイジェリア出身作家として初の全米批評家協会賞を受賞している女性作家チママンダ・ンゴズィ・アディーチェによる短編集『なにかが首のまわりに』。彼女のスピーチ音源が歌手ビヨンセの「Flawless」に組み込まれたり、クリスチャン・ディオールのTシャツにそのメッセージがデザインされたりと、作家としてだけでなく、アフリカと世界をつなぐオピニオン・リーダーの1人として注目され、幅広いジャンルに影響を与えている。

************

 『なにかが首のまわりに』は、ナイジェリア出身女性による、アフリカに生きる女性やアフリカから米国に居を移した女性の人生のひとときを切り取った短編集――と紹介すると、日本に生きる自分には遠い世界の話と感じる人が多いかもしれない。しかし、どの短編にも、特に女性ならばふと感じたことがあるような違和感や苦楽が織り込まれ、まるで親戚の話を聞いているような身近さで彼女らの日常が迫ってくる、きわめて普遍的な物語だ。

 本作に収められている短編は12で、ほとんどがアフリカ女性をメインに据えている。「アジアの女性」でくくられる範囲が非常に広いように、「アフリカの女性」といっても、肌の色や出身民族、家庭環境、経済状況、宗教など、どれをとってもバラバラだ。千差万別な女たちがいるのに、「黒い肌、縮れた髪」という外見で、中身まで印象で判断されてしまう戸惑いを繊細に表現した表題作や「先週の月曜日に」「結婚の世話人」など、米国で生きるアフリカ出身女性の物語が、特に強い印象を残す。

 表題作「なにかが首のまわりに」の女性主人公が生まれ育ったナイジェリアの公用語は英語だ。経済都市ラゴスは貧富の差も激しいが、ビルが立ち並び、車で移動する人も珍しくない。しかし、移民として米国で暮らし始めると「どこで英語おぼえたの?」「アフリカにはちゃんとした家があるの?」「車を見たことはあったの?」など、米国人から悪気のない質問攻めに遭う。アフリカについて無邪気に質問する人々――私たちも無縁ではない――がいかに滑稽に映っているか、恥ずかしくなるくらい正確に捉えている。しかし本作は、そういった先進国の傲慢をカリカチュアすることが主題ではない。本作の冒頭は「アメリカではみんな車や銃を持ってる、ときみは思っていた。おじさんやおばさん、いとこたちもそう思っていた」という、「ナイジェリアに暮らす人々から見た米国」のイメージから始まっているからだ。

 よく知らない国について、または未知の属性を持つ人について、自分の知っている大まかなイメージだけで語りがちなのは誰でも同じことだ。大抵の場合、そこに悪気すらない。しかし、「●●について無知で当然」という態度を、マジョリティーという傘に守られたままで個人に向ければ、相手の自尊心を削る傲慢な行為になる。そして、多数派であればあるほど、そのことに鈍感でいられる。本作では、米国でもアフリカでも、「女性、有色人種、後進国」と、さまざまな局面で弱い立場に属する人々が残酷に自尊心を削られていく瞬間が緻密に描かれている。そこに横たわるやるせなさ、ユーモアといたわり合いで回復しようと試みる人々への共感は、アフリカ出身者だけが感じる特有のものではなく、弱い立場に属したことのある人なら誰もが共有し、慰めを感じられるものだろう。

 本作にはアフリカの政治的・宗教的な抑圧、暴動による苦境を描いた「ひそかな経験」「アメリカ大使館」や、米国での快適な暮らしと故郷の環境の齟齬から生まれるジレンマを描いた「イミテーション」、西洋文化がアフリカにもたらしたものを家系3代を通して描いたサーガ「がんこな歴史家」など、アディーチェだからこそ説得力をもって伝わるトピックもちりばめられている。私たちが報道などで想像しがちな「アフリカ」の一面も描かれてはいるが、その苦難がことさら強調されるわけではない。ネガティブな経験と同じくらい、彼女たちの生きる普通の日常が語られているからこそ、「住む世界の違う人々」ではないことを感じさせてくれるのだ。

 年齢も、育った環境もバラバラな女性の人生を垣間見たような本作の読後には、まるで親密な女友達が遠い土地に増えたような感覚が残る。一度も行ったことのない場所にも、似たようなことで笑ったり、傷ついたりする女たちが多分いて、今日も一日を生きている。そう信じられることは、不思議と私たちを力づけてくれる。文字の羅列が、読者の想像力を思いもよらない場所まで引っぱってくれる――そんな読書の醍醐味を深く感じられる一冊だ。
(保田夏子)

最終更新:2019/10/14 17:00
https://www.cyzowoman.com/2019/10/post_253328_1.html

http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/530.html

   

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