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[経世済民133] アマゾン、アナリストの大半は前向きな見解維持−減益で株価下落でも 全米で小売店の「アマゾン化」着々と 傘下のスーパーで割高イメージの払拭 現金払いを急ピッチで導入 
アマゾン、アナリストの大半は前向きな見解維持−減益で株価下落でも
Kit Rees、Joe Easton、Erin Roman
2019年10月26日 3:53 JST
米ネット小売り最大手アマゾン・ドット・コムの株価が25日の米市場で下落、一時は前日比4.8%安となった。7−9月(第3四半期)決算が四半期ベースで2017年以降で初の減益となり、10−12月(第4四半期)の見通しがアナリスト予想を下回ったことが響いた。

  決算を受け、ゴールドマン・サックス、RBCキャピタル・マーケッツ、ベアードなどのアナリストが同社の目標株価を引き下げた。それでも、アマゾンの長期成長見通しに対するウォール街の見解は引き続き、圧倒的に前向きだ。ブルームバーグの集計データによると、アマゾンへの投資判断は「買い」が54社、「ホールド」2社、「売り」ゼロとなっている。アナリストは、翌日配達サービスへの投資、広告、クラウド部門「アマゾンウェブサービス(AWS)」の貢献を期待している。

Shares fell in the wake of its third-quarter results
  アマゾン決算に対するアナリスト見解の一部は以下の通り。

ゴールドマン・サックス、ヒース・テリー氏
(投資判断「買い」、目標株価は2350ドルから2200ドルに引き下げ)

  AWSの減速で、競争面についての懸念がいくらか浮上。それでも引き続き、クラウドへの業務のシフトが比較的初期の段階にあることや、従来型小売業のウェブへの移行、広告事業の継続的な進展があることを信じる。アマゾンがセクター内で屈指のリスク・リワードを提供するとの見方を維持。

RBC、マーク・マハニー氏
(投資判断「アウトパフォーム」、目標株価は2600ドルから2500ドルに引き下げ)

  AWSにとってやや低調な四半期だったが、これは大企業への拡大と、おそらくは価格面の圧力も受けたためと考えられる。現時点ではAWSの成長と利益の見通しが最も注目に値するが、それ以外のアマゾン買いの論拠は健在だ。

ベアード、コリン・セバスチャン氏
(投資判断「アウトパフォーム」、目標株価は2150ドルから2080ドルに引き下げ)

  「プライム翌日配達のコストが織り込まれる中」、アマゾンは押し目で買うべき銘柄だ。成長の減速が示唆されたが、これが中核事業セグメントの大きなトレンドの変化を反映するとは考えない。

原題:
Amazon Analysts Keep the Faith as Stock Falls on Profit Drop (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-25/PZXTXM6JIJUR01


アマゾン、全米で小売店の「アマゾン化」着々と
大手チェーン3社と提携し、EC商品の店頭受け取り大幅拡大
2019.10.25(金)
小久保 重信
マーケティング IT・デジタル
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アマゾンのロゴ。2019年2月ニューヨーク。(写真:ロイター/アフロ)
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 米アマゾン・ドット・コムは10月23日、全米で提携店舗を拡大すると発表した。

 サプリメントやスポーツ栄養食品などを扱う小売チェーンの米GNC、ドラッグストアチェーンの米ヘルス・マート、百貨店など様々なブランドの小売チェーンを傘下に持つ米ステージ・ストアと提携し、同社のeコマース商品の取り扱い店舗を拡大する。

6月に始めた店頭受け取りサービス「カウンター」
 これにより、アマゾンの顧客は、数千に上る米国の店舗でネット注文した商品を受け取れるようになるという。

 同社は今年(2019)年5月に英国とイタリアで「カウンター」と呼ぶ店頭受け取りサービスを始めた。今年6月には米ドラッグストアチェーン大手のライト・エイド(Rite Aid)と提携し、米国でも同サービスを始めた。

 ライト・エイドとの提携は、まず、約100店舗でこの店頭受け取りサービスを開始し、今年の年末までに対応店舗数を約1500店に増やすというものだった。

 そして今回の提携で、上述した企業の店舗が加わる。その数は「さらに数千店舗増える」という。

競合のウォルマートやターゲットに対抗
競合のウォルマートやターゲットに対抗
 アマゾンの「カウンター」とは次のようなサービスだ。

 顧客はアマゾンのサイトで買い物をする際、配達先に最寄りの提携店舗を選ぶ。そして商品が店に到着するとバーコード付きの電子メールが顧客のスマートフォンに届く。これを店頭でスキャンすると手続きが完了し、商品を受け取れる。商品は店に届いてから2週間、保管する。

 対象となる商品は数千万点で、一部では即日便や翌日便、翌々日便などの急ぎ便サービスを利用できる。有料プログラム「Prime」の会員以外でも利用でき、料金はかからないという。

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アマゾンの競合である米ウォルマートや米ターゲットは以前から数千に上る自社店舗でネット通販商品の受け取りサービスを提供している。実店舗数ではこれら大手にかなわないアマゾンは複数の小売チェーンと提携し対抗していくようだ。

顧客との接点を拡大
 アマゾンは同社商品を取り扱う実店舗を増やすことで、顧客との接点拡大を図っている。例えば、2017年には米百貨店大手のコールズ(Kohl’s)と提携し、「Amazon Smart Home Experience」と呼ぶ、約90平方メートルほどの売り場で、アマゾン製品をはじめとするスマートホーム関連製品を展示、販売した。

 コールズは2017年に、アマゾンが販売したeコマース商品の返品代行サービスを始めたが、今年4月にその取扱店舗を米48州に拡大すると発表。7月には、同サービスを約1100店舗で利用できるようにしたことを明らかにした。梱包などの返品に必要な作業をすべて無料で行うというもので、コールズは来店客数の拡大を狙っているという。

 また、アマゾンは2017年に買収した高級スーパーマーケット「ホールフーズ・マーケット」とネットとの相乗効果を狙っている。ホールフーズの商品をネットで注文したあと、店舗の駐車場で受け取ることができるサービスは現在、全米30都市で展開している。

 (参考・関連記事)「アマゾン、ラストマイル配送の選択肢を拡大」

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アマゾン、傘下のスーパーで割高イメージの払拭図る
段階的な値下げで競合との価格差を縮める
2019.8.29(木)
小久保 重信
マーケティング IT・デジタル
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アマゾン第2本社、ニューヨークとバージニアに建設へ 米紙報道
米アマゾン・ドットコムのロゴ(2018年11月8日撮影、資料写真)。(c)Ina Fassbender / dpa / AFP〔AFPBB News〕

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 米アマゾン・ドット・コム傘下の高級スーパーマーケットチェーン「ホールフーズ・マ ーケット」で商品の価格がさらに引き下げられたと米CNBCなどの米メディアが8月27日に報じた。今年(2019年)8月時点の価格は昨年から平均で2.5%下がったという。

買収直後から大規模値下げ戦略
 アマゾンが米国やカナダ、英国に約480店舗を持つホールフーズの買収手続きを完了したのは2017年8月末。このスーパーは、その割高なイメージから「ホール・ペイチェック」と揶揄されていた。給料のほぼすべてが高額食料品への支出で消えてしまうという意味だ。

 そこで同社は、買収直後からバナナやリンゴ、アボカド、レタス、卵、サーモン、牛肉といった人気の自然食品など、数百に上る商品を対象に値引き戦略を展開した。

 その後も段階的な値下げを実施。今年4月には、買収後最大規模という平均20%の値下げを行った(発表資料)。

 (参考・関連記事)「アマゾン、傘下の高級スーパーで大規模な値下げ作戦」

 ただ、オーガニック食品などを扱っているせいか、ホールフーズの価格は今でも競合のスーパーと比べて高いようだ。

 米モルガン・スタンレーの最新の調査ノートによると、ホールフーズは他のスーパーよりも平均で12〜13%高い。大手スーパーマーケットチェーンのクローガー(Kroger)との比較では同27%高いという。しかし、かつてこれらの価格差は、それぞれ約20%と約40%あった。これまでの段階的な値下げにより、競合との価格差を縮めているという。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58055


アマゾンが現金払いを急ピッチで導入する理由
eコマースやレジ不要のコンビニで決済手段を多様化
2019.9.20(金)
小久保 重信
マーケティング IT・デジタル
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サンフランシスコのAmazon Go(写真:AP/アフロ)
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 米アマゾン・ドット・コムは9月18日、eコマースでの商品購入の支払いに現金を使えるようにする仕組みを米国で導入すると発表した。

ネットで注文、最寄の店舗で支払い
 「Amazon PayCode」と呼ぶもの。顧客はまず、サイトでの注文確定時にPayCodeを選択し、QRコードと番号を受け取る。それを米送金サービス大手ウエスタンユニオンの店舗で見せ、現金で支払う。その後、自宅に商品が届くという仕組みだ。ウエスタンユニオンの1万5000店舗がこの決済サービスに対応する。

 このサービスは今年(2019年)2月から南米やアフリカ、東南アジアなどで開始し、今は世界19カ国で提供しているが、米国でも今後数カ月かけて順次展開していくという。

チャージ方式の「Amazon Cash」も展開
 また、アマゾンは2017年から「Amazon Cash」と呼ぶサービスを提供している。

 あらかじめ店舗で、顧客のアカウントに5ドルから500ドル(約540円〜5万4000円)の範囲でチャージしておき、アマゾンでの買い物時に利用するというものだ。

 その米国における対応店舗数は約10万店。前述したウエスタンユニオン、CVS/ファーマシーやライト・エイドといったドラッグストア、セブンイレブンなどの店舗で利用できる。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57693


米国で激化、小売り大手の「翌日便」競争
アマゾン、Prime会員向け翌日配達の対象商品を1000万点に拡大
2019.6.5(水)
小久保 重信
経営 マーケティング IT・デジタル 小売・卸売 物流・運輸
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米アマゾン、時価総額で初の世界首位 マイクロソフト抜く
米アマゾン・ドットコムのロゴ(2014年11月11日撮影)。(c)John MACDOUGALL / AFP〔AFPBB News〕

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 米アマゾン・ドットコムは、米国の「Prime」会員向けに提供している無料の翌日配送サービスを急ピッチで拡大していると、米ウォールストリート・ジャーナルが報じている。

翌日配達の実現には物流ネットワークの拡大が不可欠
 アマゾンでは、このほど翌日配達の対象商品が約1000万点になったという。同社は今年(2019年)4月25日に開いた決算会見で、米国のPrime会員に、追加料金なしで提供している配達サービスを迅速化すると発表した。

 日本のPrime特典には急ぎ便として、当日配達や翌日配達があるが、国土の広い米国では、注文日の翌々日に商品を届ける「Two-Day Shipping」が標準的な配送特典。しかし、今後は翌日に届ける「One-Day Shipping」を標準にすると発表したのだ。

 現在、翌日配達の対象となっている商品は、美容関連商品や掃除用品、ビーチタオルなどアマゾンで売れているベストセラー商品。1000万点という商品点数は、翌々日便の対象となっている1億点に比べると、ごくわずか。だが、対象商品は新サービス発表時の4月下旬から急速に増えていると、アマゾンは説明している。

 こうして、翌日配達の対象商品や対象地域を増やすためには、物流拠点を拡大する必要がある。アマゾンは先の決算会見で、これを実現するため、今年4〜6月期に8億ドル(約860億円)を投じ、物流施設や配送ネットワークの拡充、強化を図るとしていた。

ウォルマートがアマゾン対抗の翌日便サービス
 一方、アマゾンがPrime会員向け翌日配達を明らかにした次の日、競合の米ウォルマートは、ツイッターへの投稿で、アマゾンへの対抗姿勢を示した。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56615
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/489.html

[不安と不健康18] 気候変動がメンタルヘルスに影響、欧米で広がる「環境不安」 欧米でいきなり「環境」が重要政策になった事情なぜ選挙戦を左右するほどになったのか

気候変動がメンタルヘルスに影響、欧米で広がる「環境不安」
(字幕・23日)
2019年 10月 24日 Thursday - 02:10

皆さんは「環境不安」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは気温や海面の上昇、さらにはハリケーンや台風といった深刻な自然災害の急増に伴い、不安感を感じるようになるメンタルヘルス上の問題だ。こうした悩みを訴える人が欧米や豪州、カナダなどで急増している。

https://jp.reuters.com/video/2019/10/24?videoId=616686810

 
欧米でいきなり「環境」が重要政策になった事情
なぜ選挙戦を左右するほどになったのか
安井 明彦 : みずほ総合研究所 欧米調査部長2019年06月14日

来年のアメリカ大統領選に名乗りをあげたジョー・バイデン前副大統領がぶち上げた環境政策とは(写真:Jordan Gale/ロイター)
保護主義やポピュリズムで騒がしい米欧の政治情勢だが、ともすれば見過ごしがちなのが地球温暖化をはじめとする環境問題への関心の高まりである。

ヨーロッパでは欧州議会選挙で環境系の政党が躍進し、来年に大統領選挙を控えるアメリカでは、民主党の指名候補を決める予備選挙で、環境問題が大きな争点になっている。異常気象の頻発による地球温暖化への関心の高まりはもとより、格差の是正などを含めた左派の主張を結集させる論点として、環境問題の存在感が高まっていることは見逃せない。

バイデン前副大統領の「宣言」
「大統領就任初日には、われわれを正しい方向に導くために、オバマ―バイデン政権時代の提案をはるかに超え、前例のない新たな一連の大統領令に署名する」

この何とも勇ましい宣言は、アメリカの大統領選挙で民主党の予備選挙に出馬しているバイデン前副大統領が、6月4日に発表した環境問題に関する公約の一文だ。

民主党の候補者争いで支持率のトップを走るバイデン氏だが、本格的な公約を発表したのは環境問題が初めてである。自らが副大統領を務めたオバマ政権の取り組みを上回り、「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」とうたうなど、極めて意欲的な内容が盛り込まれた。

数ある政策のなかで、まずバイデン氏が環境問題での公約発表を選んだのは、民主党の予備選挙において、この問題が熱い注目を集めている証しである。世界の関心は米中貿易摩擦などに集まりがちだが、2020年の大統領選挙に向けた予備選挙の現場では、環境問題が見逃せない争点に育ちつつある。

環境問題の存在感が高まっているのは、アメリカだけではない。ヨーロッパにおいても、5月23〜26日に投票が行われた欧州議会議員選挙において、緑の党などの環境系政党が大きく議席を増やした。イギリスのガーディアン紙が「静かな革命がヨーロッパを席巻した」と報じたように、欧州議会では4番目の会派となる議席数を獲得、国別でもフランスでは第3政党、ドイツでは第2政党となるなど、予想外の躍進を果たしている。

アメリカとヨーロッパで同時に進行する環境問題への関心の高まりは、世論調査にも明らかだ。ピュー・リサーチセンターの調査によれば、アメリカで「気候変動(温暖化)は自国にとって深刻な脅威である」と答える割合は、2013年の40%から2018年には60%近くにまで上昇している。ヨーロッパの主要国でも、フランスで同様の回答が50%台から80%台にまで大幅に上昇したのを筆頭に、イギリスで約20%ポイント、ドイツでも約15%ポイントの上昇を記録している(図1)。


興味深いのは、アメリカとヨーロッパ主要国の双方において、環境問題が左右の政治勢力を分かつ争点になっている点だ。ピュー・リサーチセンターの調査によれば、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスのいずれの国においても、気候変動を自国の深刻な脅威と指摘する割合は、右派の支持者ほど低く、左派の支持者では高い傾向がある(図2)。


とくに左右の違いが大きいのは、アメリカである。2018年の世論調査では、民主党支持者の9割近くが、気候変動を自国の深刻な脅威と指摘している。その一方で、同様の回答を行う共和党支持者の割合は、3割程度にとどまっている。

アメリカではほぼ民主党に限られた「現象」
アメリカにおける地球温暖化問題への関心の高まりは、ほぼ民主党支持者に限られた現象だ。2013年からの世論調査の変化をさかのぼると、気候変動を自国に対する深刻な脅威と回答する共和党支持者の割合は、20%台での微増にとどまっている。

一方で、民主党支持者による同様の回答は、60%弱から80%を上回るまでに増加している。あまり共和党支持者の意見が変わらない一方で、民主党支持者の意見だけが大きく変わり、その結果として党派対立が厳しくなる構図は、民主党の支持者が寛容になり、共和党支持者との意見の相違が広がった移民問題と似通っている(『日本人が知らない欧米のきわどい「移民問題」』)。

党派的な立場による意見の分裂からは、既存の政治に不満を抱える有権者のうち、左寄りの主張を持つ人々を惹きつける政策として、環境問題の魅力が高まっている様子がうかがえる。

左派の政策といっても、富裕層増税や大企業批判だけでは、どうしても新味に欠ける。その一方で、各地での異常気象の頻発により、地球温暖化の影響が実感され始めている。政府による対応が求められるなど、「大きな政府」との親和性が高いこともあり、左派勢力にとっては環境問題のもつ吸引力が際立ちやすい環境である。

とくにアメリカでは、グリーン・ニューディールの名の下で、環境問題を中心に据えて、左派的な政策を結集させていく試みが進んでいる。

グリーン・ニューディールは、2018年11月に投開票が行われたアメリカ議会中間選挙で、史上最年少の女性下院議員となったアレクサンドリア・オカシオコルテス氏が公約に掲げ、一躍有名になった構想である。アメリカ有力紙の記事件数をみると、中間選挙直後から件数が急増している。2019年に入ると、かねて民主党支持者に関心の高かったメディケア・フォー・オール(国家主導の国民皆保険制)を上回る月があるほどだ(図3)。


グリーン・ニューディール構想の特徴は、大胆な地球温暖化対策であるだけではなく、温暖化対策の強化を突破口にして社会・経済システムの広範な改革を実現しようとする点にある。具体的には、まず温暖化対策の強化により、新たな技術の開発や、関連産業による雇用の増加が目指される。

次に、創出された新たな雇用に関しては、労働者の権利保護や職業訓練の充実など、格差の是正を意識した取り組みが盛り込まれている。さらには、国家を総動員した政策が目指す理想像として、政府が働きたい国民すべてに雇用を保証する仕組み(『米民主党がブチ上げた「雇用保証」とは何か』)や、メディケア・フォー・オールといった大掛かりな改革を、グリーン・ニューディールの延長線上に位置づける向きもある。

対中政策とも連動している
バイデン氏の公約発表は、民主党の予備選挙における環境問題の吸引力の強さを表している。

左傾化が指摘される民主党において、環境政策以外の分野では、バイデン氏は中道寄りの立場を鮮明に打ち出してきたからだ。大胆に斬新な政策を打ち出すというよりも、「オバマ時代への回帰」を印象づけるのがバイデン氏の戦略であり、サンダース上院議員やウォーレン上院議員など、左寄りの性格が強い候補者と一線を画すセールス・ポイントである。

例えば医療の分野では、バイデン氏はメディケア・フォー・オールへの支持を明確にしておらず、オバマケアの漸進的な発展を主張するにとどまってきた。

ところが、環境問題は勝手が違った。実はバイデン氏にとって環境問題は、「オバマ時代への回帰だけでは物足りない」とする批判の象徴的な存在になりかねなかった。同氏のアドバイザーが、化石エネルギーの選択肢を残すなど、中道寄りの提案を模索しているとの報道が流れ、サンダース氏などから厳しい批判を受けていたからだ。

そうした批判の高まりからほどなく、バイデン氏は今回の公約の発表に踏み切った。医療の分野では左傾化圧力を受け流してきたバイデン氏も、環境問題が争点に浮上するや否や、直ちに「オバマ時代超え」を宣言した格好である。

バイデン氏の公約では、医療保険制度までをも含む社会・経済システムの改革を求めているわけではない。しかし、グリーン・ニューディールの考え方については、「非常に重要な枠組みである」と評価している。また、単なる温暖化対策にとどまらず、新技術・新産業の発展と、それによる雇用の創出を目指している点などでは、ほかの候補者と共通した広がりがある。

興味深いのは、対中政策との関連である。バイデン氏は、中国を名指ししたうえで、温暖化対策への取り組みが不十分な国からの輸入に対し、課徴金や輸入制限を行うよう提案している。また、産業政策や一帯一路構想を通じ、国内外で石炭エネルギーを補助していると批判し、国際的な連携によって対中圧力を強める方針も明らかにしている。

これまでバイデン氏は、「中国とは競争にならない」と発言したと伝えられるなど、対中政策の手ぬるさが批判されてきた。今回の公約からは、環境政策を手掛かりに、対中政策で反転攻勢に出ようとするバイデン氏の思惑がうかがえる。

もちろん、民主党の予備選挙で盛り上がったからといって、アメリカの環境政策が大きく変わるとは限らない。環境政策は、党派によって大きく主張が分かれる論点である。たとえ2020年の大統領選挙で民主党の大統領が誕生したとしても、議会で共和党の賛同が得られない限り、グリーン・ニューディールを推進するような法律を成立させることは難しい。

トランプ氏は「社会主義」と批判
また、それ以前の問題として、大統領選挙の段階において環境政策を軸とした論法が、民主党の命取りとなる可能性がある。その実現に巨額な財源が必要であるだけでなく、左派的な政策を結集させる論点になっている以上、「大きな政府」に対する反感を呼び起こしやすいのは間違いない。実際にトランプ大統領は、グリーン・ニューディールを「社会主義」と批判している。

しかし、共和党も油断は禁物である。安全保障や健全財政など、伝統的に共和党が重視してきた政策分野と、環境問題の結びつきが強まっているからだ。地球温暖化問題は、基地の立地や航路の変更を強いられる点などから、安全保障上のリスクとして位置づけられていると同時に、災害対策費用の増加につながる点で、財政上のリスクとしても意識され始めている。

それだけではない。アメリカとヨーロッパに共通した特徴として、環境問題への関心の高まりは、若い世代に牽引されている。アメリカでは、全体としては環境問題への関心が低い共和党支持者ですら、1980年代以降に生まれたミレニアル世代は、支持者の主力であるベビー・ブーマー世代(1946〜1964年生まれ)よりも、「現在の温暖化対策は不十分」と考える割合が高い。

環境問題への関心の高まりは、左派にとっては、既存の政治に対する批判を取り込み、若い世代を惹きつける格好の機会になりえる一方で、右派にとっては、世代交代に取り残されないために、足掛かりを模索しなければならない試練となる。

かねてアメリカでは、共和党の支持者に占める高齢者の比率が着実に高まっている。次世代の関心事項を取り込めるかどうかは、目先の選挙への影響を超えた意味合いを持つ。共和党としても、「大きな政府」に頼らない切り口で、右派なりの環境政策を語る知恵が求められている。
https://toyokeizai.net/articles/-/286755

http://www.asyura2.com/16/health18/msg/791.html

[国際27] アングル:急増する欧米の廃タイヤ輸出、インドの村が処理場に
トップニュース2019年10月26日 / 08:49 / 11時間前更新
アングル:急増する欧米の廃タイヤ輸出、インドの村が処理場に
Reuters Staff
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[ナビプール(インド)/クライ(マレーシア) 18日 ロイター] - インドのナビプール村では、日が暮れると焼却炉が動き出す。西側の国々から持ち込まれたタイヤが燃やされ、刺激臭のある煙が立ちこめ、土はすすで真っ黒になる。

インド北部に位置するナビプール村が静かな農村だったのは、それほど昔の話ではない。だが、今では少なくとも12基の焼却炉が設置され、絶え間なく持ち込まれるタイヤを燃やし、熱分解と呼ばれるプロセスで低質油を生産している。

国際連合(UN)の税関データによれば、廃タイヤの取り引きは過去5年間で倍増している。輸入国は主としてインドやマレーシアといった新興国だ。

一方、最大の輸出国は英国、これにイタリアと米国が続く。国連のデータによれば、輸入国として圧倒的な首位がインドであり、グローバルな総輸入量に占める比率は、5年前の7%から昨年は32%へと増大している。

廃タイヤの多くは、排出物・廃棄物処理に関する規制をクリアしたリサイクル業者に送られる。だがインド当局によれば、そうした規制に適合しない非正規の熱分解施設を相手にする取引も膨大にあるという。

ロイターは5月、マレーシア南部の大規模汚染が、熱分解処理に携わる企業に関連していることを突き止めた。

地元当局や医療の専門家によれば、国際的な廃タイヤ貿易の増加が、処理施設のある地域を汚染している。ロイターは非公開の税関データのほか、数十人に上る業界関係者へのインタビューを通じて、これを確認した。

多くの先進国にとって、廃タイヤを国内でリサイクルするよりも輸出するほうが安上がりである。ゴム製品廃棄物の国際貿易は、2013年の110万トンから2018年には200万トン近くに増大した。これはタイヤ2億本分に相当する。

こうした貿易量の増加は、インドなどにおける産業炉用燃料の旺盛な需要、価格が低い中国製の熱分解設備の登場、国際的な規制の甘さにも支えられている。

<処理設備はネットで買える>

廃棄物の輸出入を規制するバーゼル条約の定義では、廃タイヤは有害廃棄物に含まれていない。つまり、輸入国による指定がない限り、国際的な貿易に対する制約がほとんどない。

中国や米国を含む大半の国では、廃タイヤの大多数は国内で処理されており、埋め立て地に捨てられるか、セメントや製紙工場の燃料などとして再利用される。

熱分解処理の支持者は、廃タイヤを処分し有益な燃料に転換する方法としては、このプロセスは環境への負荷が相対的に少ないと話している。だが、さまざまな化学物質や合成ゴム、天然ゴムで構成される廃タイヤの燃焼に伴う排出物の抑制や、残った物質の処理にはコストが掛かり、大規模な設備で収益性を確保するのは難しい。

最新鋭の処理プラントを建設するには数千万ドルもかかるが、簡素な中国製の熱分解処理設備であれば、インターネットで3万ドルもあれば購入できる。

インド政府の監査によれば、2019年7月の時点で認可を受けた熱分解処理プラントは全国に637カ所あり、そのうち270カ所が環境基準を満たしておらず、116カ所が閉鎖に追い込まれた。

このときの監査によれば、大半の事業者は原始的な設備を用いており、作業員は微粒子炭素に暴露、周辺に粉じん、油脂、大気汚染物質が漏れ出している。業界関係者によれば、これ以外にも無認可の熱分解処理事業者がインド全体で数百社も操業しているという。

同じく業界関係者によれば、マレーシア南部ジョホール州でも熱分解処理プラントが過去10年間に急増しており、船舶向け燃料を供給しているという。

ロイターが取材したジョホール州クライのプラントでは、すすまみれになったバングラデシュ系の移民が、オーストラリアとシンガポールから輸入された廃タイヤを中国製の焼却炉に運び入れていた。彼らは焼却炉に隣接する宿舎に住み込みで働いている。

サムという呼び名だけ教えてくれたプラントのオーナーは、「古タイヤの行き先など誰も知らない」と言う。「だが私の工場が存在しなければ、古タイヤはいったいどこに行くのか」 

彼は操業の認可を得ていると話していたが、ロイターは確認できなかった。

インドやマレーシアなどで熱分解処理の影響が広がっていることについて、廃タイヤを輸出する側の国でも関心が高まりつつある。

東南アジア、インドに廃タイヤを多く輸出するオーストラリアは8月、期限を明示しないながらも、廃タイヤを含む廃棄物輸出を禁止する意向を示した。

廃棄物削減問題を担当するトレバー・エバンス報道官は、オーストラリアは「一部の輸入国における持続可能性のない廃タイヤ処理への告発を認識している」とした上で、「そのような営為に関与することを望まない」と述べた。

インド国内の健康問題を調査する「インド州レベル疾病負担イニシアチブ」を主宰するラリット・ダンドナ氏によれば、適切な管理を行わずに廃タイヤを燃やすと、多量の有毒化学物質、ガス、粒子状物質が周囲に放出されるという。

ランドナ氏によれば、廃タイヤを焼却した煙に接した人への短期的な影響として皮膚炎や肺感染症が見られ、暴露が長期にわたった場合、心臓発作や肺がんの恐れがあるという。

米環境保護庁(EPA)をはじめ、世界各国の政府機関も似たような結論に達している。EPAは1997年にまとめた報告書で、廃タイヤ焼却による排出物には、ダイオキシンや硫黄酸化物のほか、水銀やヒ素などさまざまな金属が含まれるとしている。

<英国が最大の輸出国>

ナビプールのようなインドの村で最期を迎える廃タイヤの多くは、英国生まれだ。インドが輸入した廃タイヤのうち、英国からのものを見ると、2013年が4万8000トン。これが2018年には26万3000トンに増加した。世界中で取引される廃タイヤの13%に相当する。

Slideshow (5 Images)
ほとんどの欧州諸国はタイヤメーカーや販売会社に回収・処分を義務づけており、自国内でリサイクルするケースも増えている。しかし、英国にはそうした義務付けがないため、廃タイヤを回収し、他国に輸出する認可を簡単に取得できる。

英環境・食糧・農村地域省(DEFRA)は、バーゼル条約の規定を完全に履行しているとしつつも、廃タイヤについてはもっと対策が必要だとしている。同省は、メーカーの責任を拡大し、輸出の監視強化を計画しているという。

廃タイヤの輸出入業者たちによれば、インド国内のタイヤ引き取り手は建設材料としてタイヤを破砕するリサイクル業者、低コスト燃料としてセメントやレンガの製造に利用する企業、そして合法・非合法の熱分解処理プラントに分かれる。

インド自動車タイヤ製造業協会のビネイ・ビジェイバルジア副会長によれば、同協会では、輸入廃タイヤのほとんどは最終的に熱分解処理プラントに行き着くと推測されるという。

環境保護団体や熱分解処理プラントの近隣住民からの反発が強まるなかで、インドは最も先端的なものを除いて全面的に熱分解処理を禁止することを検討している。禁止案については、インド環境裁判所が来年1月に判断を示すとみられている。

<呼吸困難、目に炎症>

今から6年前、ニューデリーの南70キロに位置するナビプールに熱分解処理プラントは1つも存在しなかった。今は10カ所を数え、住民によれば、ほとんどが人目を避けて夜間に操業しているという。

ロイターは村内の小規模プラント3カ所に足を運んだ。

あるプラントでは、「ドイツ製」、「米国製」と刻印されたタイヤが雑然と積まれ、パイプから濃い廃液がポタポタと流れ落ちていた。

労働者は何の安全装備も身につけておらず、肌や衣服は黒いすすまみれになっていた。オーナーのパンカジ氏によれば、輸入商社が海外から輸入した廃タイヤを売ってくれるのだという。

村の住民は、熱分解処理プラントが建ち始めてから、呼吸困難、目や喉の炎症に悩まされている話す。農家は、土壌に黒い粉じんが混ざっているのに気づいているという。

ロイターは、こうした主張を個別に検証することはできなかった。村のプラント事業者が認可を得ているかどうかも確認できなかった。

ナビプールで建設機械のリース業を営むシバ・ショウダリーさんは、「地元で中古タイヤは手に入らない。彼らは外国から輸入している」と話す。「外国は自国をきれいにしようとして、自分のゴミを我々のところに投棄している」

(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/asia-waste-tyres-idJPKBN1X303U


 


欧米でいきなり「環境」が重要政策になった事情なぜ選挙戦を左右するほどになったのか

気候変動がメンタルヘルスに影響、欧米で広がる「環境不安」 

http://www.asyura2.com/16/health18/msg/791.html

投稿者 鰤 日時 2019 年 10 月 26 日 21:54:00: 
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/605.html

[国際27] ルワンダの大虐殺後に加害者側を援助し、報道したメディアと そのフェイクに興味を示さなかった世間の不都合な真実 ”悲惨な現場”を求めるNGOの活動がアフリカで招いた不都合な真実 ルワンダは治安よく気温も快適で都市化された "アフリカのシンガポール"だったが観光スポットは少ない
2019年10月24日
ルワンダの大虐殺後に加害者側を援助し、報道したメディアと そのフェイクに興味を示さなかった世間の不都合な真実
【橘玲の世界投資見聞録】

 今年5月にはじめてルワンダを訪れた。「百聞は一見に如かず」というが、東アフリカのこの小さな国は現在、「アフリカの奇跡」「アフリカのシンガポール」と呼ばれる驚異的な経済発展をつづけており、高層オフィスビルや5つ星ホテル、高級レストランなどが次々とつくられている。

 なにより驚いたのは治安のよさで、地元の中産階級が暮らす住宅街を若い白人女性がごくふつうに歩いている。アフリカを知っているひとなら、これがどれほどありえないことかわかるだろう。

 南アフリカのヨハネスブルクなどが典型だが、高級住宅地は高いコンクリートの塀と電流の流れる有刺鉄線で囲まれて、中の様子を伺い知ることはできない。富裕層はちょっとした外出でも車を使い、「散策」できるのは外の世界からかんぜんに隔離された高級ショッピングモールのような場所だけ、というのが当たり前なのだ。

[参考記事]
●ルワンダは治安よく気温も快適で都市化された"アフリカのシンガポール"だったが観光スポットは少ない

 ルワンダと聞いて多くのひとが思い浮かべるのが1994年代のジェノサイドであり、映画『ホテル・ルワンダ』だろう。大きな困難を体験した国が、わずか四半世紀でなぜここまで発展できたのか。そんな興味でこの国の歴史をすこし調べてみた。


ルワンダ、キガリの「ジェノサイド・メモリアル」に刻まれた犠牲者の名前     (Photo:?Alt Invest Com)

「フツ族」と「ツチ族」はどう違う
 ルワンダの悲劇を説明するには、この国を構成する「フツ族」と「ツチ族」という2つの民族から始めなければならい。とはいえ、これはそうかんたんなことではない。この地域がヨーロッパの考古学者や歴史家、人類学者によって研究されるようになったのは19世紀になってからで、民族の起源を示すような史料はきわめて少ないのだ。

 約1万年前、最後の氷河期が終わるとアフリカの高地の氷が溶け、ヒトが住めるようになった。最初にこの土地を訪れたのは狩猟・採集で暮らすピグミー属のトゥワ族で、いまもルワンダで伝統的社会を維持しているが、その割合は1%程度しかいない。

 トゥワ族のあとに中央アフリカから大湖地域に移住してきたのがバントゥー系の民族で、森を焼いて農業を始めた。バントゥーはアフリカ最大の民族グループで、ルワンダでは「フツ」と呼ばれるようになった。

 ここから「民族の起源」は大きく2つの説に分かれる。「フツ=ツチ同族説」と「ツチ移住説」だ。
「フツ=ツチ同族説」では、バントゥー系の移住者のなかで農業をつづけた者がフツ族になり、牧畜に移行した者がツチ族になったとする。遺伝子解析ではフツとツチは父方に共通の遺伝的変異を持っていることがわかっており、この説の有力な証拠とされる。

 同族だったバントゥー系が異なる民族として対立するようになったのは最近のことで、19世紀末から1961年までのドイツ、ベルギー統治時代に、「分断して統治せよ」の原則にのっとって、白人官僚たちが少数派のツチを「支配民族」として優遇し、多数派のフツ(従属民族)を効率的に支配しようとしたからだとされる。

「ツチ移住説」では、現在のソマリアなどアフリカの紅海沿岸、あるいは北方のエチオピア高原から牧畜民族が牛とともに移動してきたとする。その祖先はアラビア半島南部から紅海を渡り、アフリカに牧畜をもたらしたのだ。

 ヒトは成長すると牛乳などに含まれる乳糖(ラクトース)を分解する消化酵素ラクターゼを失うが、牧畜の開始によって乳糖への耐性を持ち、成人しても家畜の乳を飲みチーズを食べられる遺伝的変異が広まった。牧畜民族であるツチ族は4人のうち3人がこの乳糖耐性を持つが、農耕民族であるフツ族は3人に1人だ。両民族にははっきりとした遺伝的差異があるが、フツ族の乳糖耐性は農耕民のなかではきわだって高く、フツとツチのあいだで遺伝子の混交が進んだことがわかる。現在のフツとツチが共通の遺伝的祖先をもっているのはこのためだ、とする。

 さらに近年の遺伝子解析では、15世紀に大湖地域の牧畜民族が急激に増えたとされる。この頃、ルワンダにはツチとフツの小国家が並立し、その後、牧畜民のツチの王が農耕民のフツを支配する「ルワンダ王国」へと統一されたのだ――。

 こうした論争は、インドにおいて、カーストによる差別が古来のものか、イギリスの統治によって人為的につくられてものなのかが「歴史問題」になるのとよく似ている。どちらも「国民/国家(ネイションステイト)」のアイデンティティにかかわる話だからこそやっかいなのだろう。

 フツとツチでは外見が異なるとされる。典型的なツチはルワンダ大統領ポール・カガメで、その写真をネットで検索してもらえばわかるが、長身で棒のように痩せており、たしかにエチオピア人やソマリア人(ソマリ族)によく似ている。ルワンダでは、背が高く、首が長く、鼻筋の通ったツチの女性は美しいとされており、金持ちのフツの男性はツチの女性を妻に娶った。

 ルワンダにおける民族比率はフツが85%、ツチが15%だ。牧畜を行なうツチは農耕民のフツよりもゆたかで、ルワンダ王国の時代は支配民族であり、植民地時代は白人に重用された。こうした民族的・歴史的経緯、さらには外見のちがいがルワンダの社会を不穏なものにした。


ベルギーの植民地政府は住民の顔を測って「ツチ」と「フツ」を区別した   (Photo:?Alt Invest Com)

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映画『ホテル・ルワンダ』でも描かれたフツ族による虐殺が始まった
 ルワンダ王国では1896年の王の死によってツチ貴族の内紛が起こり、それに乗じたドイツによって保護領に組み込まれた。第一次世界大戦の敗北でドイツがアフリカの植民地を手放すと、現在のブルンジとともにベルギーの委任統治に置かれ、公用語はフランス語になった。

 第二次世界大戦後の「民族独立」の熱気のなかで1959年にフツ族による反乱が起こり、混乱のなかでツチ族への大規模な虐殺に発展した。その犠牲者は2万人から10万人とされ、15万人におよぶツチ族がウガンダ、ケニア、ブルンジ、コンゴ民主共和国など近隣諸国に難民となって逃れた。

 現ルワンダ大統領のポール・カガメもこのときの難民で、幼少期を難民キャンプで過ごしたのち、10代でウガンダ反政府軍に加わった。ウガンダはイディ・アミンの独裁政治で大混乱に陥っており、タンザニアとの戦争に敗れてアミンが失脚したあとに内戦が勃発した。このウガンダ内戦を制して1986年に大統領に就任したのが国民抵抗運動のヨウェリ・ムセベニだが、新政府軍の2割はルワンダ出身者が占めており、カガメは軍諜報部長の要職にあった。

 ウガンダで政権を獲得すると、次にカガメはルワンダ愛国戦線(RPF/Rwandan Patriotic Front)を結成し、ルワンダを「解放」する武装闘争に取り掛かった。1990年10月、RPFの軍隊がルワンダ北部に進行すると、ルワンダ国内のフツとツチの関係は一気に緊張した。

 1994年4月6日、ルワンダのハビャリマナ大統領とブルンジのンタリャミラ大統領が搭乗する飛行機が、キガリ国際空港への着陸寸前にミサイル攻撃を受けて撃墜され、両大統領は死亡した。この攻撃が誰によって行なわれたのかは現在でも不明のままだが、これをきっかけにラジオは「ゴキブリ(ツチ)を駆除せよ」と連呼し、インテラハムウェと呼ばれる民兵がフツの男たちを組織して、マチェーテ(山刀)を手にフツの穏健派やツチ族を片っ端から殺しはじめた。

 ジェノサイドは首都キガリやRPFに脅かされる北西部から始まり、その後、全国に拡大した。このジェノサイドについては、日本でも公開された映画『ホテル・ルワンダ』や『ルワンダの涙』で描かれている。

 ルワンダ国民のほとんどは敬虔なキリスト教徒で、1959年のルワンダ革命では教会に逃れたツチは虐殺を免れた。そのため1994年も、ツチの住民たちは家族を連れて近くの教会に避難した。

 だが今回は神の威光はなんに役にも立たず、男たちはマチェーテを手に教会になだれ込み、女子どもまで皆殺しにした。南部のニャルブイェではフツ族の市長が暴徒を率いてブルドーザーで教会を破壊し、4月15日と16日の2日間で2万人を虐殺した。キガリの南30キロのほどのところにあるニャマタでも、4月14日からの3日間で教会に集まった5000人の避難民が虐殺され、その後、5月14日までのあいだにツチ系住民およそ5万9000人のうち5万人が殺された。避難民になんの保護も提供できなかったのは学校や病院も同じで、南東部のムランビでは2000人を超えるツチ族が病院に集まったが、4月16日に暴徒によって皆殺しにされた。


マチェーテ(山刀)を手にするフツの男     (Photo:?Alt Invest Com)

100日間で730万人のルワンダ国民のうち117万4000人が殺害された
 ムランビの虐殺は、アメリカのジャーナリスト、フィリップ・ゴーレイヴィチが『ジェノサイドの丘 ルワンダ虐殺の隠された真実』(WAVE出版)で詳細を述べている。警官たちから「明日の朝に攻撃がある」と通告されたあと、病院にいた牧師たちは教区議長のンタキルチマナ牧師に手紙を書いた。

 その手紙は、「我々は明日、家族と共に殺されるだろうと聞いたことをお伝えいたします」と述べ、「今打ち壊されようとしている会衆の指導者」として市長との仲介を懇願するものだった。この手紙に対するンタキルチマナ牧師の返答は「おまえたちの問題にはもう解決策が見つかっている。おまえたちは死なねばならない(あるいは「おまえたちは消えねばならない。主はおまえたちを求めておられない」)だった。――ゴーレイヴィチの原書タイトル“We wish to inform that we will be killed with our families”はこの手紙の文面から採られている。

 ジェノサイド後、ンタキルチマナ牧師はアメリカ、テキサスで心臓麻酔医をしている息子のもとに逃れた。タンザニアのアルーシャに置かれた国連ルワンダ国際裁判所から3件のジェノサイドと3件の人道に対する罪で起訴されたンタキルチマナ牧師を、ゴーレイヴィチは息子の自宅でインタビューすることに成功した。

 牧師は、「すべて100パーセントまるっきり嘘だ。わたしは誰も殺していない。ヒトを殺せと命令したことなどない。わたしにそんなことはできない」と述べた。「わたしはこれまでもずっと、なによりもツチ族を助けようとしてきた」が、なぜかツチ族に感謝されず、あまつさえ告発までされている。「もはや正義などないかのようだ」というのだ。

 インタビューの翌日、牧師はメキシコに向けて車を走らせているところを、尾行していたFBI捜査官によって拘束された。だが弁護士が「牧師を国際法廷に送致するのは米国憲法の精神にもとる」と主張し、連邦地方裁判所がこれを認めたため、14カ月刑務所に収監されたあと付帯条件なしで釈放された。ジェノサイドの罪で訴追された牧師の逮捕と裁判は、アメリカ国内でなんの話題にもならなかった。

 ルワンダ全土でジェノサイドの大混乱が起きると、ルワンダ愛国戦線がツチ系住民の保護を名目にウガンダから進軍し、7月19日に全土を掌握した。この100日間のあいだに、730万人のルワンダ国民のうちツチを中心に117万4000人が殺害されたとされる。愛知県や埼玉県ほどの人口の国で、1日におよそ1万人が死んでいったことになる。


「ジェノサイド・メモリアル」に安置された犠牲者の頭蓋骨   (Photo:?Alt Invest Com)
加害者側の難民キャンプを人道支援し、報道する欧米NGOとメディア
 ルワンダ愛国戦線が政権を樹立したことで虐殺は終わったが、その後、事態は奇妙な展開を見せることになる。フツ系の住民が報復をおそれ、大挙して西のコンゴ民主共和国に向けて逃げはじめたのだ。

 ルワンダとコンゴ民主共和国とのあいだにはキブ湖があり、湖の北端、国境を越えたすぐのところにゴマの町があった。ここに、着の身着のままで逃げ延びたフツ系ルワンダ人の巨大な難民キャンプができたのだ。

 ルワンダ虐殺を報じる欧米のメディアは、マチェーテで惨殺された死体の山のあとに、家財道具を抱えて国境へと向かう長い列を映した。それを見た視聴者は、当然のことながら、虐殺の生存者が難民キャンプに逃げ延びたのだと思った。だがそこにいたのは、ジェノサイドを行なった「加害者」だった。

 欧米の人道支援団体が、この誤解をさらに煽ることになった。ゴマの難民キャンプには多くの報道陣が集まり、なおかつ滑走路があった。ルワンダ国内でツチの犠牲者を支援するより(この活動はほとんど報道されない)、難民キャンプにいるのが「殺戮者」だということを隠して“人道支援”した方が(こちらは大きく報道される)、寄付を集めるのにずっと便利だったのだ。

 欧米のメディアも、いまさらこのとんでもない“フェイクニュース”を釈明することができなくなり、人道支援団体の“ウソ”に加担した。ゴーレイヴィチなど一部のジャーナリストが偏った報道に抗議したが、それらはすべて黙殺された。こうして“人道”の名の下に、犠牲者を放置してひたすら「犯罪者集団」の世話をすることになったのだ。

[参考記事]
●”悲惨な現場”を求めるNGOの活動がアフリカで招いた不都合な真実

 ちなみにこの難民キャンプには、緒方貞子国連難民高等弁務官から要請を受け、日本も「ルワンダ難民救援派遣」として自衛隊を派遣している。


ジェノサイド後、西へと逃れるフツ族の難民   (Photo:?Alt Invest Com)

加害者側を支援したフランスの不都合な真実
 ルワンダの虐殺に関しては、それ以外にも「不都合な事実」がいくつもある。

 フランスはフツ系のハビャリマナ政権を公然と支援したが、これはウガンダが旧イギリス植民地で英語圏だったからだ。カガメをはじめとするルワンダ愛国戦線(RPF)のメンバーは、すべて英語ネイティヴだった。

 フランスのアフリカ政策は一貫して、フランス語圏の旧植民地(フランサフリック)の既得権を死守することだった。フランスから見ればRFAは、「英語帝国主義」による侵略の手先にすぎなかった。

 ゴーレイヴィチは『ジェノサイドの丘』で次のように書いている。

 1975年にフランスとルワンダのあいだで結ばれた軍事協定は、フランス軍がルワンダ人の戦闘、軍事訓練、警察行動に参加することをはっきり禁じていた。だがミッテラン大統領はハビャリマナの友人であり、ミッテランの息子、武器商人でありフランス外務省のアフリカ政策顧問をもつとめるジャン=クルストフもまた彼の友人だった(中略)。フランスはルワンダに大量の軍事物資を送り込み――1994年の殺戮までずっと――90年代の前半を通じてフランス軍兵士はルワンダ軍の外人部隊となり、航空管制やRPF捕虜の尋問から最前線の戦闘まですべてを指揮した。

 ルワンダの虐殺が国際社会に報じられると、フランスはルワンダ南西部に部隊を展開し、RPFに追われるフツの難民(虐殺者)を「保護」した。そのことをルワンダ政府から批判されると、2006年には大統領機撃墜事件の容疑でカガメ大統領をはじめとするRPFの指導者9人に逮捕状を発行した。ルワンダはフランスとの外交関係を断絶し、サルコジ大統領が2010年にルワンダを訪問し、「フランスはジェノサイドの時に"誤り"を犯した」との認識を示したことでようやく国交が回復した(ただしフランスは謝罪はしていない)。

 ジェノサイドによって荒廃した国家を建て直すという困難な事業に取り組むことになったポール・カガメがまずやったことは、フランス語を一掃し英語を公用語にすることだった。これはグローバル化する世界のなかで、国民が英語を話せる方がはるかに有利なことに気づいていたからだろうが、いまなお植民地主義的介入をあきらめないフランスへの「歴史問題」の清算でもあったのだろう。その結果、ルワンダでは小学校から授業が英語で行なわれ、キガリの街には英語の看板があふれ、駐車場の整理をしている若者まで英語で道を教えてくれる。

 ルワンダは2009年にイギリス連邦に加盟したが、こちらは明らかにフランスへの意趣返しだろう。ちなみに、かつてはルワンダと同じくベルギーの植民地だったブルンジは現在もフランス語圏だが、急速に経済発展する「英語圏」のルワンダに比べて、いまでもアフリカでもっとも経済開発が遅れた最貧国のままだ。


右上の写真はハビャリマナ・ルワンダ大統領とミッテラン・フランス大統領    (Photo:?Alt Invest Com)

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国際社会(欧米先進国)による“アフリカ援助”とは何だったのか
 国連はベルギー部隊を中心とする国際連合ルワンダ支援団 (UNAMIR)を1993年に首都キガリに派遣したが、94年4月の大統領機撃墜につづく混乱でベルギー軍部隊に10名の犠牲者が出ると、この中核部隊が撤退してしまった。
 UNAMIRの司令官だったカナダのロメオ・ダレール少将は、94年1月11日、国連の平和維持活動本部宛に、ルワンダ軍高官からの機密情報として「(情報提供者の軍高官は)キガリ在住のすべてのツチ族をリストアップするよう命じられている。これはツチ族を皆殺しにするためではないかと思われる。情報提供者は例として、20分間で自分の配下だけで1000人のツチ族を殺せる、と述べた」との緊急のFAXを送った。
 そしてダレールは、36時間以内に武器集積所の摘発に向かう意図があると述べたうえで、FAXにフランス語で「意志あるところに道は開ける。やろうぜ!」と書きつけた。
 この時点でダレールは3カ月後に起こる悲劇を正確に予測し、それを阻止する覚悟を決めていた。だがニューヨークからの返事は「やめとこう」だった。
 当時の国連平和維持活動の責任者はアフリカ出身で、その名をコフィ・アナンといった(ゴーレイヴィチ『ジェノサイドの丘』)。
 だがさらに「不都合な事実」は、ジェノサイド後のルワンダが驚異的な経済成長を遂げたことだろう。
 国連や欧米のリベラルな政治家や官僚にとって、「ジェノサイドに加担し、殺戮者を保護した」とのルワンダ政府の批判はとうてい受け入れられるものではなかった。そのため、アメリカはながらくジェノサイドの存在そのものを認めず、ゴマの難民キャンプを運営していた人道団体はルワンダ政府を「難民への加害者」と非難した。ルワンダには国際機関の援助も人道団体への支援もほとんどなかったが、それにもかかわらず「アフリカの奇跡」ともいわれる大きな成功を収めたのだ。
「だったら、これまでの国際社会(欧米先進国)による“アフリカ援助”とは何だったのか」は誰もが感じる疑問だろう。だが国際援助の専門家たちは、いまだにこの「納税者の正当な疑問」にこたえていない。
 さらに不都合なのは、(私も含め)ほとんどの人間がルワンダで起きたことになんの興味もなかったことだ。無辜のひとびとが1日に1万人も殺されているのを放置したばかりか、人道支援団体は犠牲者と虐殺者を取り違え、メディアもそのウソを積極的に広めた。こんなことがなぜ起きたのだろうか。
 そのこたえは、わざわざいう必要もないだろう。ジェノサイドが起きたのがアフリカで、殺されたのが「黒い肌」のひとびとだからだ。
リワンダ、キガリのジェノサイド・メモリアル   (Photo:?Alt Invest Com)

橘 玲(たちばな あきら)
作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『「言ってはいけない?残酷すぎる真実』(新潮新書)、『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)、『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)、『もっと言ってはいけない』(新潮新書) など。最新刊は『上級国民/下級国民』(小学館新書)。

ルワンダの大虐殺後に加害者側を援助し、報道したメディアと そのフェイクに興味を示さなかった世間の不都合な真実 【橘玲の世界投資見聞録】[2019.10.24]
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2014年1月16日 橘玲
”悲惨な現場”を求めるNGOの活動がアフリカで招いた不都合な真実
[橘玲の世界投資見聞録]
?ほんとうは昨年末にアップしたかったのだが、遅ればせながら2013年に読んだ本のなかでもっとも印象に残ったリンダ・ポルマンの『クライシス・キャラバン』(東洋経済新報社)を紹介したい。
?著者はオランダのフリージャーナリストで、世界各地の紛争地帯で国連やNGO(非政府組織)の活動を取材している。前著『だから、国連はなにもできない』(アーティストハウス)は、ソマリア、ハイチ、ルワンダ、ボスニアなどの現場から、自国の利害と保身のために国連の安全保障理事会が機能不全に陥っている現状と、PKO(国連の平和維持活動)がなんの役にも立っていないばかりか、現地の状況をさらに悪化させているという実態を描いて大きな反響を呼んだ(安倍政権が唱える「積極的平和主義」を考えるうえでも参考になる)。『クライシス・キャラバン』では、「紛争地における人道援助の真実」という副題が示すように、NGOなどの援助活動がアフリカでどのような事態を招いているかを告発している。
民間人の四肢を切断する反政府組織
?アフリカ西部の大西洋岸に位置するシオラレオネはかつてのイギリス領で、首都フリータウンは、18世紀後半の奴隷廃止運動を背景に、解放された奴隷たちの定住地(自由の町)として開発された。その後はイギリス統治下で大学などの教育制度が整えられ、西アフリカの中心地として発展したが、1961年に独立してからは内戦とクーデターを繰り返すことになる。
?紛争の原因はダイヤモンド鉱山の利権で、貧弱な軍事力しか持たない政府は南アフリカの鉱山開発会社からPMC(民間軍事会社)の派遣を受け、反政府組織RUF(革命統一戦線)と衝突した。RUFを率いたアハメド・フォディ・サンコーはイスラム教徒で、リビアのカダフィ大佐のもとで軍事訓練を受け、ゲリラの支配下にある鉱山から産出したダイヤモンド(ブラッドダイヤモンド)で武器を購入し、1991年から8年間に及ぶ内戦に全土を巻き込んだ。
?RUFは拉致した子どもたちに麻薬と銃を与え、少年兵として戦闘に参加させたが、それと並んで世界を震撼させたのは民間人を襲撃して鉈で手足を切断したことだ。その惨劇は新聞や雑誌に写真入りで報道され、テレビニュースでも何度も放映されたから記憶に残っているひとも多いだろう。
?ところでRUFはなぜ、民間人の四肢を切断したのだろうか。
?ルワンダやボスニア・ヘルツェゴビナのような民族紛争では、敵対する民族を絶滅させようとする「民族浄化(エスニック・クレンジング)」が起こる。これは悲惨な出来事だが、人類史をひも解けばけっして珍しいことではない。旧約聖書を読めばわかるように、ヒトは紀元前の昔から集団を「俺たち」と「奴ら」に分け、「奴ら」を皆殺しにする蛮行をえんえんと繰り返してきた。
?伝統的社会の戦争では、敵の身体の一部を切断するという風習が広く知られている。だがその「身体の一部」とは首のことで、台湾や南太平洋の狩猟採集社会は“首刈り族”と呼ばれていたし、戦国時代の日本でも敵将の首を獲ることが最高の武勲とされていた。それに対して、敵の手や足を切断する風習はどのような伝統的社会でも知られてはいない。
?それではなぜ、アフリカの一部でだけ、それも20世紀末になって、手足の切断が始まったのだろうか。これは一般には、「農作業をできなくしてゲリラ組織に依存させるため」などと説明されるが、これではゲリラ組織の負担は重くなるばかりだ。奴隷として働かせるか、殺害して土地を奪うのならわかるが、四肢のない人間を生かしておいても経済的な利益はなにもないように思われる。
?リンダ・ポルマンは本書でこの謎を解き明かすのだが、その衝撃的な結論を紹介する前に、国際人道援助を行なうNGOとはどういうものかを説明しておく必要がある。

ルワンダ難民は虐殺した当事者たちだった
?1994年に起きたルワンダの虐殺では、多数派のフツ族によって少数派のツチ族が殺害され、100日という短期間にルワンダ国民の約2割、80万人が犠牲になった。第2次世界大戦以降で最悪の惨事のひとつとなったこの事件は、映画『ホテル・ルワンダ』や『ルワンダの涙』によって日本でも広く知られている。
?ルワンダからの難民が集まったもっとも有名なキャンプが、コンゴ民主共和国(当時のザイール)の国境、キブ湖の畔にあるゴマだ。ポルマンは事件直後、この難民キャンプを取材してなんともいいようのない違和感を覚えた。
?ルワンダ虐殺を報じるテレビニュースを観た欧米のひとびとは、鉈で惨殺された死体が道路脇に積み上げられ、川や湖を埋める映像に大きな衝撃を受けた。やがてそれは家財道具を抱えて国境へと逃げ延びるひとびとに変わり、次いでゴマの難民キャンプが大々的に報道された。この一連の流れを見れば、誰もが虐殺の対象となったツチ族のひとたちが難民となって隣国に逃れたと思うだろう(実際、そうして難民化したひとも多かった)。
?だが現実はもっと奇怪で複雑だった。
?フツ族とツチ族は宗主国だったベルギーが統治のために人工的に生み出した民族で、少数派のツチ族を支配民族として優遇したため1962年の独立前から両者の紛争は始まっていた。このときツチ族の一部が隣国のウガンダに逃れ、そこで軍事組織「ルワンダ愛国戦線(RPF)」を組織した。ルワンダでフツ族による虐殺が始まると、その混乱に乗じてRPFは国内に侵攻し、全土を制圧した。その結果、報復を恐れたフツ族の民衆が大挙して国境を越えて難民化することになったのだ。
ヨルダンのアンマン近郊にあるシリアからの難民のキャンプ??(Photo:cAlt Invest Com)
?欧米のひとびとがテレビで見たゴマの難民たちは、ルワンダでツチ族を虐殺した当事者たちだ。彼らが人力車などで運んできた「家財道具」は、皆殺しにしたツチ族の家から強奪したものだった。だがこうした事実はほとんど報じられず、「虐殺→難民→人道の危機」という構図に短絡化されることになる。ニュースの限られた時間では、ここで述べたような複雑な背景を説明できないからだ。視聴者は単純でわかりやすい話を求めているのだ。
?ゴマの難民キャンプの近くには大型輸送機が発着できる仮設滑走路があった。ルワンダの虐殺と、200万人ともいわれる大量の難民の存在が知られるようになると、その現場を取材しようとジャーナリストたちが飛行機に乗ってやってきた(ポルマンのその一人だ)。
?それと同時に、ルワンダ難民を“援助”すべく多くのNGO団体がゴマに殺到した。彼らが人道援助の対象にゴマを選んだのはフツ族を支援したいと考えたからではなく、滑走路があって報道陣がいたからだ。
?NGOの寄付者(ドナー)は、自分が出したお金が有効に使われ、「人道の危機」にあるひとびとが救われる場面を(安全な場所から)確認して満足感を味わいたいと思っている。これは「消費者」として当然の要求だから、批判しても意味がない。
?ドナーから多額の寄付を募ったNGOにとって、難民キャンプの近くに滑走路があるというのはまたとない好条件だ。輸送機をチャーターし、スタッフと援助物資を詰め込めばたちまち「援助」を開始することができる。おまけにそこには欧米のジャーネリストやテレビ局のクルーが待っていて、彼らの活動を報道してくれるのだ。
?虐殺の被害者であるツチ族の難民がどこか別の場所にいたしても、NGOはそんなところには行こうとはしないだろう。援助を開始するまでに何カ月もかかり、おまけに報道もされないのではドナーが納得しないからだ。
?NGOにとっては、援助の対象が虐殺されたツチ族であろうが、虐殺したフツ族であろうがどうでもいいことだ。人道主義の原則は「中立性」(二者のどちらかを優先して協力することはない)「公平性」(純粋に必要に応じて援助を与える)「独立性」(地政学的、軍事的、あるいは他の利害とは無関係である)で、人道の危機にあるひとが目の前にいれば助けるのが当然だとされている。この原則は一見素晴らしいが、どこか偽善的でもある。「あなたのお金で救われたのは、ついこのあいだまでルワンダでツチ族を虐殺していたひとたちです」という事実はけっしてドナーには伝えられないからだ。
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NGOの国際人道援助とは…
?ゴマの難民キャンプでポルマンは、NGOが行なう国際人道援助とは、紛争や虐殺などを「商材」にしてドナーから寄付を募り、“よいことをして満足したい”という願望をかなえるビジネスだと気づく。本書のタイトルである「クライシス・キャラバン」とは、 “悲惨な現場”を求めて世界じゅうを転転とするNGOのことをいう。
?ビジネスである以上、成功したNGOは大きな利益を上げることができる。紛争の現場にいる「人道援助コニュニティ」の白人たちは、破壊された町のレストランやバーで毎日のようにパーティを開き、10代の売春婦を膝の上に乗せている。彼らは自分たちが“特別”だと考え、その法外な特権を疑うことはない(国連職員の特権意識はさらに肥大している)。
?こうしたNGOの腐敗も欧米では広く知られていて、その結果、自分個人のNGOを立ち上げるひとたちが増えているという。こうしたNGOは「モンゴ(MONGO)」と呼ばれている。“My Own NGO”の略だ。
?典型的なのはアメリカ南部の教会の敬虔な信者で、彼(彼女)はアフリカの悲惨な現状と堕落したNGOの実態を知って、自ら教会で寄付金を集め現地に赴く。
?しかしここでも、同じ問題が起きる。信者のお金を預かってアフリカまで来たからには、なんらかの成果を出さなければ帰れない。そこで難民キャンプにある病院に行き、手足を失った“かわいそうな子ども”を紹介してもらう。その子どもたちに義手や義足を与えて、喜ぶ姿をビデオや写真に撮るためだ。そのため難民キャンプには、義足ばかり何十本も持っている子どもがいる。そののたびにいくばくかの現金をもらえるから、いい商売になるのだ。
?その後、MONGOたちは手足のない“かわいそうな子ども”をアメリカに連れ帰るようになった。教会のドナーたちの前で、最新型の人工装具をプレゼントするセレモニーを行なうのだ。だが成長期の子供の装具は数年で取り替えなければならず、子どもたちをアフリカに戻せばすぐに役に立たなくなってしまう。
?なかには障害のある子供を養子にしてあちこちの教会を連れ回したり、テレビに出演させたりするMONGOもいる。養子縁組は、字の読めない両親の代わりにシオラレオネの行政府が許可している。賄賂と引き換えに子供を両親から引き離し、NGOに売っているのだ。
?この“誘拐”がなくならないのは、人道援助の証拠を地元に持ち帰ることがきわめて宣伝効果が高いからだ。教会の信者たちは、“かわいそうな子ども”が自由の国アメリカで幸福を手にする姿を目の当たりにして随喜の涙を流すのだ。
?これはシオラレオネだけのことではなく、アフリカ各地で孤児院が大きなビジネスになっている。たとえばリベリアでは、孤児院に住んでいる子どもたちの大半は孤児ではなく両親がいる。国際援助を引き寄せるために、孤児院の所有者によって人買い同然の方法で集められてきたのだ。
?こうした子供たちはアメリカやヨーロッパの養親のもとに送られるが、扱いにくいことがわかると即座に「返品」されてしまう。そうすると別の人権団体が、この「返品」を反人道的だとして抗議活動を行なうのだという――。
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NGOの利益の源泉は「悲惨な現場」
?国際人道援助の問題は、それが巨大ビジネスになっていることにある。ビジネスである以上、利益は大きければ大きいほどいい(それを原資により多くのひとを救うことができる)。
?NGOの利益の源泉は「悲惨な現場」だ。そこで彼らは、テレビニュースで“悲惨”に見えるひとたちを追い求め、同じように悲惨な生活をしていても“絵にならない”ひとびとを見捨てる。
?これはそうとうに歪な状況だが、個々のNGOの努力ではどうすることもできない。ドナーから得られるパイ(寄付金)は限られているが、NGOは乱立しており、彼らを批判するMONGOたちも控えている。ドナーが喜んでお金を出すような演出ができないNGOは、競争から脱落して消えていくしかないのだ。
?ところで人道援助が大金の動くビジネスだとしたら、それを受ける側はテントや衣服、食糧だけで満足するだろうか。
?難民というと“かわいそうな一般市民”を思い浮かべるが、ゴマにはフツ族の民兵が相当数紛れ込み、難民キャンプを支配していた。難民を援助するにはまずキャンプに入らなければならないが、支配者である民兵たちはその際、NGOに対して「入場料」を徴収する。それ以外にもさまざまな名目でNGOから金銭を巻き上げ、ルワンダに反攻するための武器弾薬を購入していた。
?もちろん援助のために現金を支払うことは原則として禁止されているが、ここでも負の競争原理が働いている。支配者に現金を払わない真っ当なNGOは肝心の援助活動ができず、ドナーから見捨てられてしまうのだ。
?民兵たちは援助物資を独占し、NGOが支払う給与から“税金”を徴収し、運転手、料理人、清掃人、施設の管理責任者などの仕事を独占した。病院の医師は、朝になるとフツ主義に批判的な患者が消えており、空いたベッドに民兵の家族が寝ていることに気がついた。フツ族の看護師に聞いても、夜中になにが起きたのかはぜったいに口にしなかった。
?1995年末時点で、ゴマにある4つの主要難民キャンプではバー2324軒、レストラン450軒、ショップ590軒、美容室60軒、薬局50店舗、仕立屋30軒、肉屋25軒、鍛冶屋5軒、写真スタジオ4軒、映画館3軒、2軒のホテルと食肉解体場が1カ所あった。これらはすべて、NGOの援助でつくられたものだ。難民たちはNGO関連以外のなんの仕事もしていなかったのだから。
?ゴマの難民キャンプの民兵たちは、「ゴキブリ(ツチ族)を叩きつぶすことは犯罪ではない。衛生手段なのだ!」というラジオ番組をキャンプ内で流し、夜になると国境を越えてルワンダ領内に入り、ツチ族を殺していた。その結果、ツチ族のルワンダ軍がゴマの難民キャンプを攻撃することになり、キャンプはルワンダ軍の支配下に移り、国連軍の監視の下、ルワンダへの“移送”が始まった。
?難民キャンプ解体の様子は、ポルマンの『だから、国連はなにもできない』に臨場感溢れる描写がある。
?国連軍の役割はただ「監視」するだけで、故国への帰還作業はルワンダ軍に任されていた。ルワンダ軍は1000人で、帰還する難民は15万人いた。
?ルワンダ政府は難民が途中で新しいキャンプをつくるのを恐れて、徒歩での移動を許可しなかった。それにもかかわらずルワンダ軍にはトラックがなく、国連軍は移送を手伝うことを許されていない。
?こうした状況にもかかわらず「帰還作戦」は始まった。難民たちは移送を拒否して暴れはじめ、それを見てパニックに陥った政府軍兵士は難民に向かって手榴弾を投げ、迫撃砲を打ち込んだ。こうして、国連軍の目の前で数千人の難民が殺害されることになった。そのときNGOはすべて引き上げており、キャンプには誰も残ってはいなかった(戦闘後、国境なき医師団が45分間だけやってきて、暗くなる前に帰っていった)。
?これが、人道援助の「成果」だ。
次のページ>> インパクトのある「絵」
「絵」になる悲惨な現場とは…
?NGOの商材は「悲惨な現場」だ。そうすると、援助を受ける立場からすれば、悲惨であればあるほどNGO(クライシス・キャラバン)が集まってきて大きなカネが落ちるということになる。
?では、悲惨な現場とはどういう状況をいうのだろう。
?死体の山はボスニアやルワンダでさんざん報道されてしまった。いまでは欧米の「こころやさしき」ひとたちは、多少の“虐殺”くらいでは驚かなくなった。
?こうして、国際人道援助におけるイノベーションが起こった。敵を殺すのではなく、四肢を切断して生かしておけば、その方がずっとインパクトのある「絵」になるのだ。
?死体には見向きもしなくなったすれっからしの報道カメラマンも、手足のない子どもたちが泣き叫び、地面を這いずり回る場面には殺到する。欧米のメディアで大々的に報道されれば、NGO(クライシス・キャラバン)が大挙してやってくる。このようにして、ドナーの寄付金は子どもたちの四肢を切断した者たちの懐に落ちるのだ。
?本書の最後でリンダ・ポルマンは、シオラレオネの反政府軍RUFのリーダー、マイク・ラミンにインタビューする。
?ラミンは、「すべてが壊され、あんたたちは修復するのにここにいなかった。あんたたちが気にしていたのは、ユーゴスラビアにおける白人の戦争とゴマのキャンプだった。あんたたちはただ我々に戦い続けさせたんだ」と欧米社会を批判する。そして欧米の注目をふたたびシオラレオネに向けさせ、戦争を終わらせるために「両手切り落とし団(カット・ハンド・ギャングズ)」を組織したのだというのだ。
「かつてないほど多くの四肢切断者を見て、はじめてあんたたちは我々の運命に注意を向け始めたんだ」
?罪もないひとたちの手足を無残に切断するのは、NGOからカネをかすめ取ろうと考える者にとってはきわめて「経済合理的」な行動だった。国際人道援助に携わるひとたちは、誰もがこのきわめて不都合な真実に気づいている。
?しかし、ふだんは立派なことばかりいっている彼らは一様に口をつぐみ、ポルマンが『クライスシ・キャラバン』で告発するまで私たちが真実を知ることはなかった。
?一人でも多くのひとに読んでもらいたい、衝撃的なノンフィクションだ。
https://diamond.jp/articles/-/47247?page=5


2019年5月31日 橘玲
ルワンダは治安よく気温も快適で都市化された
"アフリカのシンガポール"だったが観光スポットは少ない
【橘玲の世界投資見聞録】

 令和への改元にともなう「10連休」を利用してエチオピアとルワンダを訪れた。エチオピアについては前回書いたので、今回はルワンダの旅を紹介したい。
[参考記事]
●エチオピアを観光するなら「公認ガイド制度」を活用してぜんぶ任せておくと快適な旅行ができる!
 そもそもルワンダに行こうと思ったのは、エチオピアの観光地を回ってもまだ日程に3日ほど余裕があったからだ。Google Mapを見ながらどこか行けそうなところはないかと探していて、この小さな国が目に留まった。
 ルワンダはコンゴ民主共和国(旧ザイール)、ウガンダ、タンザニア、ブルンジに囲まれた東アフリカの内陸国だ。とはいえ、私のルワンダについての知識は映画『ホテル・ルワンダ』と、近年は経済開発に成功して「アフリカのシンガポール」「アフリカの奇跡」などと呼ばれているという程度しかなかった。
 この旅をひと言でいうならば、「百聞は一見に如かず」だ。
アディスアベバからルワンダの首都ギガリへは非効率な航空ルート
 まず、ルワンダにはどのように行くのか。
 アディスアベからはエチオピア航空を使うしかないのだが、出発の1週間ほど前になって搭乗予定の便がキャンセルされ、1時間ほど後の便に振り替えるとの連絡があった。それはいいとして、現地到着がずいぶん遅れている。
 不思議に思って調べると、アディスアベバからルワンダの首都キガリに直行するのではなく、ブルンジのブジュンブラを経由するのだという。
 タンガニーカ湖の北端にあるブジュンブラはキガリの南150キロほどのところにある。これは羽田から大阪に向かうのに岡山を経由するような話で、ものすごく非効率的だ。そのうえ、帰りもけっきょくこの不合理なルートになってしまった。
 なぜこんなことになるかというと、ルワンダとブルンジに大きな「経済格差」があるからのようだ。航空会社とすればルワンダとブルンジの客をいっしょに運びたいが、機体整備などの事情で出発点/終着点をキガリにする必要がある。その結果、乗客にとっては迷惑きわまりないUターンルートになるらしい。
 この原稿を書きながら調べると、キガリ国際空港にはカタールのドーハから大型機が乗り入れているほか、イスタンブール、アムステルダム、ブリュッセルなどからの直行便がある。またルワンダ航空がアフリカ各地のほかドバイ、ムンバイ、ロンドン、ブリュッセルなどに就航している。帰りはキガリからアディスアベバ経由でドバイに向かったのだが、ルワンダ航空の直行便を使えばよかった。――ただし午前0時半出発8時半到着(飛行時間6時間)の深夜便になる。
 キガリ国際空港は地方都市の小さな空港といった感じで、ターミナルを出たところに両替所やATM、売店があり、その隣がタクシー乗り場になっている。
 スーツケースを持って建物を出るとタクシー運転手が声をかけてくるので、行き先を継げる。車は新車同然で、運転手はスーツを着ていて、受け答えもちゃんとしている。空港から市内中心部のホテルまでは15000ルワンダフラン(約1500円)だった。
 市内に向かうときは気づかなかったが、空港に入るときのチェックはものすごく厳重で、乗客はもちろん運転手もいったん降りて、車を強力な危険物探知システムに通す。ツチ族主導の現政権へのテロを警戒しているからのようだが、この手続きにかなり時間がかかるから、搭乗客が増えると大変だろう。
小さなキガリ国際空港。出るのは簡単でも入るのは大変   (Photo:@Alt Invest Com)
ルワンダは若い白人女性がごくふつうに道を歩いている稀有なアフリカ
 正直にいうと「アフリカのシンガポール」と聞いても半信半疑で、「そんなわけないでしょ」と思っていた。ルワンダの旅の驚きは、空港から市内に向かうところから始まる。
 道路が整備されているのは当然として、まさにシンガポールのように、道路脇は芝生がきれいに刈り整えられ、ヤシやシュロなどの樹が植えられている。
 市街地に近づくと驚きはさらに広がる。ビルはどれも新しく、看板や表示はすべて英語だ。しかしほんとうに驚いたのは、若い白人女性がごくふつうに道を歩いているのを見たときだ。
 残念なことに、アフリカの都市のなかで旅行者が街歩きできるところはそれほど多くない。私はこれまでケープタウン(南アフリカ)、ハボローネ(ボツワナ)、アンタナナリヴ(マダガスカル)、アディスアベバ(エチオピア)を歩いたが、どこも白人の姿を見たことはほとんどなかった(ケープタウンはビーチ沿いに白人地区がつくられ、ダウンタウンは黒人の町になっており、インド系のひとをたまに見かける程度だ)。白人の、それも若い女性が歩いているなどというのはちょっと信じがたいのだ。
 下の写真はキガリ中心部で、オフィスビルやショッピングセンター、政府系施設などの新しいビルが建ち並び、広い歩道がつくられている。ここでも地元のひとたちに混じって、ビジネスで滞在しているらしいスーツ姿の白人女性が、連れ立って世間話をしながら歩いていた。
キガリ中心部。新しいビルが立ち並んでいる  (Photo:@Alt Invest Com)
歩行者天国になっている市役所の前に「ジェノサイド25周年」の表示があった   (Photo:@Alt Invest Com)

 もうひとつ驚いたのは、地元の若者がごくふつうに英語を話すことだ。
 映画『ホテル・ルワンダ』の舞台になったのは老舗ホテルのミル・コリンズだが、坂の下のわかりにくいところにあって、地図を見ながらうろうろしていると、オフィスビルの駐車場の管理をしている若者が「どこに行くの?」と訊いてきた。「ミル・コリンズを探してるんだ」というと、「ああ、それなら通りの向こうの道をちょっといって、左手に階段があるからそこを下って、ふたつ並んだ建物の向こう側だよ」と教えてくれた。
 もともとルワンダは第一次世界大戦以降ベルギーの植民地で、独立してからもフランスの影響が強く、ブルンジとともにフランス語圏だったが、ジェノサイドのあとに権力を掌握した現政権が強力な英語化政策を進め、若者たちの多くは小学校から英語で授業を受けているのだという。
 ルワンダではジェノサイド後にベビーブームが訪れ、人口の6割がその後に生まれた。会話のなかにも“before Genocide”“after Genocide”という言葉がふつうに出てくる(日本の「戦前」「戦後」と同じだ)。ルワンダの虐殺についてはあらためて取り上げたいが、彼らの親の多くは国外難民で、現政権とともに移住してきたため、その子どもたちにとってジェノサイドはまったく体験のない「歴史」なのだという。
映画『ホテル・ルワンダ』の舞台となったミル・コリンズ。ここはフランス語表示     (Photo:@Alt Invest Com)
ホテル・ミル・コリンズのプール。宿泊客のほとんどは白人  (Photo:@Alt Invest Com)
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治安もよく快適なルワンダの難点は観光する場所が少ないこと
 ルワンダのキガリにはマリオットなど高級ホテルのほか、洒落たブティックホテルも次々とできて、レストランもクオリティが高い。2日目の夜はホテルで勧められたインド料理店に行ったのだが、メニューやサービス、味も銀座の高級店と遜色のない本格派だった(価格はお酒を入れて1人4000〜5000円程度)。
 平日の夜にもかかわらず、8時を過ぎる頃には店内は半分以上埋まっていた。ほとんどは外国人で、白人が7割、アジア系(中国人)が3割という感じだが、日本人のグループもいた。旅行者というよりビジネスでこの国を訪れているようだ。
 フレンチ、イタリアン、アメリカン(ステーキ)など、ほとんどがホテルに併設しているものの、このクラスのレストランが市内にはいくつもあるようだ。
キガリのインドレストランは本格派    (Photo:@Alt Invest Com)

 ルワンダはほぼ赤道直下に位置しているが海抜1500メートル程度の高地で、気温は1年じゅう20度前後で安定している。雨期と乾季に分かれていて、私が訪れた5月中旬までは雨期だが、強い雨がしばらく降ると青空が広がる。治安もよく美味しいレストランもあって快適そのものだが、旅行者にとっての難点は観光する場所が少ないことだ。
 ガイドブックを見ても、キガリの「観光名所」は虐殺記念館くらいしか載っていない。ホテルのツーリストデスクに聞いてみたが、提案されたのは日帰りのサファリだけだった。
 私は動物にさしたる興味があるわけではなく、サファリも南アフリカ(ヨハネスブルク)とボツワナ(チョベ国立公園)で体験したのであまり気が進まなかったのだが、ほかにやることもないので、タンザニアとの国境にあるアカゲラ国立公園に行ってきた。
 ここはインパラ、シマウマ、キリンなどのほか、乾季なら水場でアフリカゾウが間近で見られるようだ。草食動物が多いのは、ライオンやチーターがいないからだという。まる1日ガイド兼ドライバーと四輪駆動の車を借り切って300ドルだった。
アカゲラ国立公園のシマウマ     (Photo:@Alt Invest Com)

 ルワンダ観光で有名なのはキガリの北西にあるヴォルカン国立公園で、コンゴとの国境に接する火山群の山裾に広がっている。この一帯はマウンテンゴリラの生息地で、現在は8群が観察可能。旅行者は公園内のロッジに宿泊し、ガイドに連れられて割り当てられたゴリラ群を求めて森の中を歩く。キガリのホテルでは、ビジネスマン以外ではアウトドア系のヨーロッパ系白人をよく見かけるが、みんなゴリラに会うためにこの国までやってきたのだ。
 鉱物資源や観光資源があるわけでもなく、輸出用の農産物としては最近ようやく認知度が上がってきたコーヒーくらいしかないルワンダが、なぜここまで発展したのだろうか。
 それは“独裁者”ポール・カガメ大統領が、この小国をアフリカ投資のハブにすることを目標に、徹底した治安対策や英語公用語化を断行したからのようだ。そのきわめて合理的な開発独裁はシンガポールの建国者リー・クアンユーとよく似ており、しばしば並び称される。
 ルワンダへの投資は中国が先行しているが、アフリカ進出を考える欧米企業にとっても、安全確保に大きなコストをかけることなく従業員と家族を派遣できるのは大きなメリットだろう。
 こうした戦略は、ルワンダ航空がアフリカの主要都市だけでなく、ジュバ(南スーダン)、ルーブルヴィル(ガボン)、ルサカ(サンビア)などにも定期便を運航していることからもわかる。キガリにヘッドオフィスを構えれば、従業員をアフリカじゅうに出張させることができるのだ。
キガリの中心部にある近代的なオフィスビル   (Photo:@Alt Invest Com)

 ルワンダは「千の丘の国」といわれるほど丘陵が多く、キガリの市街地を取り囲む丘の上は高級住宅街になっている。下の写真のような住宅には外国人が住んでいるが、地元の中産階級向けのマンションや住宅地も続々と開発されている。
キガリの郊外にある高級住宅街   (Photo:@Alt Invest Com)
キガリ虐殺博物館から市街地を望む   (Photo:@Alt Invest Com)
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イスラーム圏の旅行はラマダンを外したほうがよい
 ルワンダのあとはドバイに1泊した。宿泊したのは空港にちかい「フェスティバルシティ」という大型ショッピングコンプレックスで、3つのホテルが併設されている。その周囲はさらなる開発計画があるようで、夜は建築途中のビルがライトアップされている。
 これらの大規模開発は、おそらくは2022年にカタールで開催されるサッカー・ワールドカップを見据えたものだったのだろう。
 ドバイとカタールの首都ドーハは300キロ程度しか離れておらず、東京―大阪間より近い。旅行者で混雑するカタールを避け、ドバイ空港近くのホテルに宿泊して日帰り観戦することもじゅうぶん可能だ。
 ところが2017年に、サウジアラビアがイラン(およびシーア派の武装組織)を支援しているとしてカタールとの国交断絶を発表すると、ドバイを含むアラブ首長国連邦もそれに追随した。現在はドバイ―ドーハ間の直行便も運航を停止しており、2022年までに国交が回復するかどうかはわからない。
ドバイ空港に近い再開発地域    (Photo:@Alt Invest Com)

 じつは今回の旅行は、最初はイランに行くつもりでドバイまでの往復便を押さえたのだが、そのあとになって5月5日からラマダンが始まることに気がついた。地元のひとたちが断食するなかで、旅行者用のレストランでこそこそと朝食や昼食を食べるのは楽しくなさそうなので、行き先を変更したのだ。
 ラマダンの時期にマレーシアを訪れたことはあるが、アラブ圏は初めてだった。今回知ったのだが、外国人も利用するドバイのホテルやショッピングセンターでは、日が高いうちは黒いカーテンで店内を隠すことになっている。ラマダンに関係ない「異教徒」は、このカーテンをくぐって飲食するのだ。
ラマダンのスターバックス。黒いカーテンで店内を隠している   (Photo:@Alt Invest Com)
日が落ちるとカーテンが開けられ、ふつうのスターバックスになる   (Photo:@Alt Invest Com)

 昼食はホテルのレストランで食べたのだが、黒いカーテンで遮られているにもかかわらず、店内のいちばん奥のテーブルにアラブ系の男女4人グループが座っていた。コーヒーと水で談笑しているだけだが、ラマダン中は人前で飲料を飲むことさえはばかられるようだ。
 そんな彼らの横で白人のグループが赤ワインのボトルを入れてステーキを食べている。その光景を見て、やはりイスラーム圏の旅行はラマダンを外してよかったと思った。
ラマダン中は日が落ちると一気にお祭りムードに。ビルに映し出されたRAMADANの文字      (Photo:@Alt Invest Com)
橘 玲(たちばな あきら)
https://diamond.jp/articles/-/204235?page=4

http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/606.html

[国際27] インドネシア、人権侵害疑惑の元将軍が国防相に 強まる保守色ジョコ大統領 革新か癒着かゴジェック創業者が閣僚  政党力学で妥協の人事は前途多難
インドネシア、人権侵害疑惑の元将軍が国防相に
政治 東南アジア FT
2019/10/24 16:39日本経済新聞 電子版

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は23日、4月の大統領選挙で野党候補だったプラボウォ・スビアント氏を国防相に指名した。元陸軍戦略予備軍司令官であり、過去に人権侵害があったと疑われるプラボウォ氏の入閣で、ジョコ政権を支持する穏健派の間に失望が広がりそうだ。

4月の大統領選挙で再選を決めたジョコ大統領が20日に2期目の就任式を終え、閣僚名簿を発表した。

投資家にとっての朗報となった閣僚人事もある…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51342850U9A021C1000000/


 


ワールド2019年10月23日 / 12:41 / 4日前
インドネシア新内閣、国防相に最大野党党首プラボウォ氏 財務相留任
Reuters Staff
1 分で読む

[ジャカルタ 23日 ロイター] - 2期目に入ったインドネシアのジョコ大統領は23日、閣僚名簿を発表した。元世界銀行エコノミストのスリ・ムルヤニ財務相が留任したほか、最大野党グリンドラ党のプラボウォ・スビアント党首を国防相に任命した。

新内閣では、ジョコ大統領が掲げる成長・投資促進のビジョンの推進役になるとみられるテクノクラート(専門技術官僚)がどれだけの割合を占めるかが注目されていたが、34人の閣僚のうち、約半数という結果となった。残る半数は政党に所属するか、つながりがある顔ぶれとなった。

ジョコ大統領は閣僚らに対し、「第一に、腐敗してはならない。クリーンな制度を創ろう。次に、閣僚個別の展望や使命はない、あるのは大統領の展望と使命だけだ」と語った。

ジョコ大統領とプラボウォ氏は4月の大統領選で熾烈な戦いを繰り広げた。元陸軍戦略予備軍司令官のプラボウォ氏は人権団体から人権侵害に関わっていたと批判されている。

同氏はまた、4月の大統領選の結果について、組織的な不正や権力乱用があったとして憲法裁判所に異議を申し立てた経緯があるため、ジョコ氏の支持者の多くがプラボウォ氏の入閣に反発する可能性がある。

ただ、プラボウォ氏の入閣によって、ジョコ氏はグリンドラ党の議員を含め、議会議席の約74%を占める議員を味方につけたことになる。

ジョコ大統領はまた、同国配車サービス大手ゴジェックの共同創業者で、前最高経営責任者(CEO)のナディム・マカリム氏を教育文化相に指名した。マカリム氏は21日、入閣するためCEOを辞任したと発表。同社の今後の運営について、アンドレ・ソエリスティオ社長と共同創業者ケビン・アルウィ氏が担うと説明した。

イタリアのサッカークラブ「インテル・ミラノ」の元会長で、大統領選でジョコ氏の選対本部長を務めた資産家で実業家のエリック・トヒル氏は国営企業相に起用された。

ジョコ氏の長年の側近であるルフット・パンジャイタン調整相(海事)は留任。同相は天然資源や国内投資も管轄する。
https://jp.reuters.com/article/indonesia-politics-cabinet-gojek-idJPKBN1X2087


 

インドネシア、第2期ジョコウィ政権発足 政党力学で妥協の人事は前途多難
2019年10月23日(水)19時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

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今回の組閣での目玉といえるのがゴジェック元CEOのナディム・マカリム氏の起用だ Willy Kurniawan - REUTERS

<パプア人への警察官の差別問題に端を発したデモや、公人への批判を取り締まる法案への反対運動など、政治不信が高まるインドネシアで、ジョコ・ウィドド大統領が再選後の新内閣を発足させた>

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は10月23日、首都ジャカルタの大統領官邸で第2期ジョコウィ内閣(2019年〜2024年)の閣僚を発表した。

焦点となっていた大統領選を戦った対立候補の野党「グリンドラ党」のプラボウォ・スビアント党首(元軍幹部、スハルト元大統領の女婿)は国防相として閣僚入りし、同党は野党から与党に転換、ジョコ・ウィドド政権は国会で575議席中427議席を与党が占めるという圧倒的多数による安定政権となることが確実となった。

10月10月に暴漢に襲われて重傷を負ったウィラント調整相(政治・法務・治安担当)は再任されず、人権侵害の疑いで再任に反対していた人権団体や民主化組織の「要求」が通った形となった。しかし、国防相に任用されたプラボウォ氏は、ウィラント前調整相と同じく陸軍出身で同様に民主化運動活動家などへの弾圧に関与した疑いがあり人権侵害容疑が完全に払しょくされていないことから、人権団体などから強いは反発が出ることが予想されている。

さらに8月以来、差別問題などで騒乱状態が続いていたインドネシア東端のパプア地方の状況に関してジョコ・ウィドド大統領は大統領官邸にパプア人小学生を招いた席で「パプア人閣僚の登用したい」としていたものの、新閣僚にパプア人は含まれておらず「約束」が反故にされた形となっている。投資調整庁のバフリル・ラハダリア長官がマルク州出身ながらパプア州のファクファク育ちであることから、パプア人を「自称」しているが、彼をしてパプア人の入閣とするには無理があり、パプア人が「裏切り」と感じてさらに不満を高める懸念も出ている。

若手、経済専門家を多く起用
閣僚の顔ぶれをみると、オンライン配車・宅配サービス大手の「ゴジェック」社CEOだった35歳のナディム・マカリム氏(教育文化相)、ビジネスマンのエリック・トヒル氏(国有企業相)、NETテレビ創設者のウィヌスタマ氏(観光創造経済相)などの若手起業家や経済専門家の起用はジョコ・ウィドド大統領が事前に公言していた通りになり、一般の経済人と政党人の割合も55%と45%となり、これまでにないビジネス専門家内閣という性格も新しいものとなった。

政党別ではジョコ・ウィドド大統領の後ろ盾となっている最大与党「闘争民主党(PDIP)」から実質的に5人が入閣、与党「ゴルカル党」、「ナスデム」「国民覚醒党(PKB)」からそれぞれ3人、「統一開発党(PPP)」から1人が入閣した。

さらにプラボウォ党首率いる最大野党「グリンドラ」から党首以下2人が入閣を果たした。与党入りが噂されていた「民主党」からはゼロとなり、「国民正義党(PKS)」「国民信託党(PAN)」とともに野党にとどまることになった。

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随所に政党への配慮が垣間みえる人選
ジョコ・ウィドド大統領は8月に開かれたPDIPの党大会で党首のメガワティ・スカルノプトリ元大統領から「総選挙で最大議席を獲得したのだから閣僚の数もPDIPは最大数であるべきだ」と釘を刺され、「最大数になる」としていた「約束」も最大数の5人をPDIPから選んだことで果たした形となった。

さらに経済専門家で日本大使からエネルギー鉱物資源相に抜擢されたアリフィン・タスラム氏はメガワティ元大統領とは旧知の仲。同氏起用にも元大統領の推薦があったものとみられ、依然として元大統領の政界への強い指導力、影響力が改めて印象付けられた人選ともいえる。

与党入りの情報が飛び交っていた民主党も党首のユドヨノ元大統領はメガワティ元大統領とは犬猿の仲であったことは有名で、和解したとみられていたが、まだ完全には関係修復ができていなかったことが入閣ゼロになったとみられている。

最大の焦点だったプラボウォ氏の入閣にはナスデムのスリヤ・パロ党首が強い反対を示していたとされるが閣僚ポスト3つで「手を打った」との観測も出ている。

難問山積のジョコ・ウィドド政権
ジョコ・ウィドド大統領は新たな顔ぶれの内閣で直面する数々の諸問題に解決の道筋をつけることが待ったなしで求められている。

パプア地方の騒乱状態への対応、中東などから流入するテロ組織メンバーや地元テロ組織などとのテロとの戦い。さらに再び状況が厳しくなり、マレーシアやシンガポールに多大な影響を与えているスマトラ島などの森林火災による煙害への対応。ジョコ・ウィドド大統領が1期目で推進してきた港湾、空港、高速道路、鉄道網などのインフラ整備の目標達成、そして突然大統領が言いだした「首都移転問題」など、やるべき問題は山積している。

10月20日の大統領就任式での就任演説で「インドネシアは2045年までに世界経済5大国入りを目指す」と高らかに宣言した。その一方で国内に残る数々の人権侵害事件への言及が皆無だったことから人権団体や民主化組織、学生団体などが反発する事態になっている。

1998年の民主化実現の前後や、1999年の東ティモールのインドネシアからの独立を問う住民投票前後に多発した人権侵害事件のほとんどが未解決であり、さらに独立運動が続いたアチェ州や現在も独立運動が続くパプア地方でも人権侵害は続いている。

こうした人権問題への真摯な取り組みも2期目のジョコ・ウィドド大統領には求められているが、人権問題への関与疑惑が残るプラボウォ氏の国防相就任で人権問題への対応がどこまで進められるか、その指導力が問われることにもなりそうだ。


教育文化相になったゴジェック元CEOナディム・マカリム氏とは?

ナディム・マカリム氏はインドネシアから世界的なユニコーン企業「ゴジェック」を立ち上げたことで世界的に有名だ。 Bloomberg Markets and Finance / YouTube

otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/2-156_3.php
 


 
庶民派 強まる保守色 インドネシア・ジョコ大統領

2019年10月21日 朝刊


20日、ジャカルタで、就任式で宣誓するインドネシアのジョコ大統領=AP

写真
 【バンコク=北川成史】四月のインドネシア大統領選で再選を果たしたジョコ・ウィドド大統領(58)が二十日、首都ジャカルタで二期目の就任式に臨んだ。任期は五年で、憲法規定で三選はできないため締めくくりの任期となる。人口二億六千万人のさまざまな民族が暮らす地域大国で、国是の「多様性の中の統一」を守りつつ民主主義を推進できるか、課題は少なくない。

 就任式でジョコ氏は「能力を尽くし、できる限り公平な方法で、大統領の職務を果たす」と誓い、「二〇四五年までに先進国入りを目指す」と述べた。十日に治安担当の閣僚が刺される事件が起きたため、軍や警察から三万人以上が配置される厳戒下の式典となった。

 同国東部ニューギニア(パプア)島では八月以降、パプア人らのデモが頻発。九月には暴動に発展し、約三十人が死亡した。パプア人への差別的発言を伝える情報の拡散が発端とされるが、長年の独立運動が激しくなる恐れがある。

 ジャカルタなど主要都市でも九月以降、汚職捜査機関の権限を弱める法改正に抗議するデモが続いた。参加者らは、大統領への不敬を刑罰対象とし、婚前交渉の禁止を盛り込んだ刑法改正案にも反発した。

 庶民出身でイスラム穏健派のジョコ氏だが、今回の大統領選で保守層に浸透するため、副大統領候補に国内最大のイスラム団体の指導者マアルフ・アミン氏を選んだ。法改正にはジョコ氏の強権化と保守層の影響力拡大の思惑がちらつく。

 ジョコ氏は政権基盤である与党連合の拡大を図り、大統領選で戦った元陸軍幹部プラボウォ氏が党首を務める野党との連携も探る。

 シンクタンク「インドネシア経済改革センター」のモハマド・ファイサル氏は「一期目より多くの政党が政権に加わり、ポストの要望に応えるため、閣僚に専門家が少なくなる」と政策能力の低下を懸念する。

 日本貿易振興機構アジア研究所の川村晃一主任研究員は「法改正でジョコ氏は支持基盤だった市民社会グループの意向を無視する態度を取った。エリートとの関係を重視し続ければ、『庶民派』のイメージは失われ、後ろ盾だった世論の支持は低下し、政権運営は困難に直面する」と指摘する。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201910/CK2019102102000107.html

革新か癒着か、ゴジェック創業者がインドネシア閣僚に

飯山 辰之介
バンコク支局長
2019年10月23日
0 100% 2626文字
 インドネシアを拠点にライドシェア・配車サービスを展開するゴジェックの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のナディム・マカリム氏が第2期ジョコ政権に入閣することが明らかになった。ジャカルタ・ポストなど現地報道やゴジェックの発表によれば、21日、ナディム氏はジョコ大統領と会談。この場で入閣要請を受けたという。


ゴジェックCEOを退任し、第2期ジョコ政権で閣僚に就任する共同創業者ナディム・マカリム氏(写真:ロイター/アフロ)
 1984年生まれのナディム氏は米ハーバード大学経営大学院で経営学修士号(MBA)を取得後、2010年にゴジェックを創業した。配車・ライドシェアから、これらを利用した配送サービス、料理の出前サービス、それに電子決済サービスなどを相次ぎ展開し、ナディム氏は創業から10年もたたずしてゴジェックを世界有数のスタートアップに育てた。その評価額は100億ドル(約1兆900億円)と、世界で20社前後しかないデカコーン(評価額100億ドル以上の未上場企業)の一角を占める。

 もっとも、インドネシアのスタートアップ業界は今回の人事を大きな驚きをもって受け止めてはいないようだ。「ナディム氏とジョコ大統領との関係は極めて近く、(入閣について)噂も随分前から出ていた」(インドネシアのスタートアップ業界関係者)からだ。

 ジョコ大統領はナディム氏をはじめとするインドネシアの有力起業家との関係を重視し、定期的に昼食会を開き彼らの意見に耳を傾けてきた。また関係者によれば、ナディム氏は近年、政界でのロビー活動に注力してきたという。ゴジェックが規制の対象になりやすいライドシェアを国内で急拡大させるのに成功し、さらにライセンスが必要な決済事業にも進出できた背景に、ジョコ大統領とナディム氏との強いパイプがあったと見る向きがある。

古くて新しい関係
 ゴジェックのライドシェア・配車サービスには200万人余りのドライバーが登録し、アプリのダウンロード数は1億3000万回を超える。公共交通機関が未発達のインドネシアにおいて、既にゴジェックは「国民の足」として定着している。さらに同社が手掛ける決済サービス「ゴーペイ」は銀行口座を持たない人々にも現金に代わる新しい決済手段を提供した。その利用者の数は約1000万人に上ると言われる。「ゴジェックは(規模、影響力ともに大きくない)日本のスタートアップ企業の目線ではもはや捉えられない。人々の生活を支える巨大インフラ企業とみるべきだ」(同)。

 ゴジェックを巨大インフラ企業に成長させたナディム氏の起用は、インドネシアをデジタル経済大国にすることを目指すジョコ大統領の切り札と言える人事だ。しかも政治家と起業家とが緊密にタッグを組む戦略は、東南アジアの経済成長をけん引したモデルを踏襲しているとも言える。

 東南アジアではかつて開発独裁を志向する政治と国営企業や財閥グループとが緊密な関係を構築し、強力に、時に強引に経済開発を推し進めた。そのモデルは癒着、汚職のまん延や非効率な経営、特定企業グループの肥大化など負の影響をもたらした一方、政治と企業が一体化したことで各国の経済成長が加速したこともまた事実だ。

 ただ「伝統的」な国営企業や財閥グループが、シェアエコノミーとか自動運転、暗号資産(仮想通貨)、人工知能といった日進月歩のテクノロジーにキャッチアップしていくの容易ではない。そこでジョコ大統領が新しいパートナーとして選んだのが起業家であり、世界有数のデカコーン企業を生み出したナディム氏だった。

 政治と企業とが一丸となって経済開発を進める「アジア流」とも言えるモデルでジョコ大統領はインドネシアのデジタル大国化をもくろむ。もともとインドネシアは2億6000万人という世界第4位の人口を抱えているため内需の規模は大きい。一方で企業の事業環境は整っているとは言えず、数多くの規制があるほか「既存産業でも非効率な部分がかなりある」(同)。

 逆に言えば、インドネシアは新しいテクノロジーが拡大する余地が大きいとも言える。ナディム氏の「目利き」を生かしてテクノロジーの普及を阻む規制を緩和すれば、国内のみならず国外から参入するスタートアップも活気づく。さらに新しいテクノロジーが既存産業にも浸透することで経営効率が高まり、生まれ変わった既存産業や新しいサービスを手掛けるスタートアップが巨大な内需をてこに急成長する。これが現状で想定される典型的な成功パターンだろう。

 既にこうした枠組みはでき始めている。16日、競合関係にあるゴジェックとグラブは、国営電力会社PLNや同石油大手プルタミナ、それにタクシー大手ブルーバード、大手財閥傘下の商業施設運営企業、さらに日本や中国の自動車メーカーなどと電気自動車(EV)の充電ステーション設置の推進で覚書(MOU)を交わした。PLNの公式発表によれば、調印式には政府要職の海洋担当調整大臣などが列席している。こうしたスタートアップと国営企業、財閥、政府を巻き込んだ枠組みが今後活発化していくだろう。

 政治家と企業経営者とが一定の距離を置き、それぞれの立場から意見をぶつけ合う欧米流の「ドライな関係」ではなく、双方が顔を近づけて話せる「ウェットな関係」を築いて開発を進めるアジア流のモデルは、新しいテクノロジーが「ディスラプティブ(破壊的)」であればあるほど力を発揮する。

 一方で、ウェットな関係には上述のような負の側面もついて回る。1990年代後半には非効率な経営を続けていた国営企業や、際限のない拡大路線を歩んでいた財閥グループがアジア通貨危機で大きな打撃を被り、政界と企業との強い結びつきは「クローニー(仲間内、身びいき)資本主義」として世界的な批判を浴びた。

 ジョコ大統領とナディム氏のタッグがうまく機能すれば、インドネシアは「東南アジアの大国」から、世界のテクノロジー競争で存在感を発揮する「デジタル大国」へと変貌を遂げるかもしれない。一方で、このタッグは政界と密接に結びついた新たな巨大グループの誕生につながり、クローニー資本主義が再生産される契機にもなるかもしれない。どちらに転ぶかはまだ分からない。可能性と危うさの両方を内包した内閣は近く発足する見通しだ。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/102300797/?P=2

 
インドネシア、ジョコ政権2期目始動 インフラに注力
東南アジア
2019/10/20 18:36
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20日、2期目の就任式で宣誓するインドネシアのジョコ大統領=AP
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20日、2期目の就任式で宣誓するインドネシアのジョコ大統領=AP

【ジャカルタ=鈴木淳】インドネシアで20日、ジョコ大統領の2期目の就任式が行われた。米中貿易戦争の影響で世界経済に減速感が出る中、規制緩和や構造改革を進めてインドネシアの経済成長を加速させることが最大の課題となる。2045年に世界トップ5の経済大国になるという目標に向けて、インフラ開発や産業誘致を進める。

ジョコ氏は就任式で「45年の先進国入りに向け、懸命に働かなければならない」と述べた。副大統領にはイスラム教指導者のマアルフ・アミン氏が就任した。21日にも内閣改造を行うほか、海外からの投資を伸ばすために、関連省庁の再編や新設をする見通しだ。ジョコ氏の任期は24年までの5年間で、憲法の規定により次の大統領選には出馬できない。

ジョコ氏は6月末の日本経済新聞とのインタビューで「経済成長のために、インフラをもっと早く、多くつくる必要がある」と述べ、1期目に進めたインフラ開発を継続する姿勢を示している。首都をジャカルタからボルネオ(カリマンタン)島東部に移すことも決めた。3兆円規模の巨大プロジェクトで地方開発も加速させる。

インドネシアはジョコ政権下で5%程度の安定した経済成長を続けてきた。ただ、最低賃金が年8%のペースで上昇を続けるなど、外資が投資しにくい環境になっている。国際協力銀行(JBIC)が日本の製造業に有望な進出先を聞いた調査では、インドネシアは5位で、周辺国のタイやベトナムの後じんを拝する。成長に欠かせない海外からの投資獲得に向け、改革が急務だ。

就任式には中国の王岐山(ワン・チーシャン)国家副主席やシンガポールのリー・シェンロン首相、マレーシアのマハティール首相らが参加した。日本からは中山展宏外務政務官が出席した。首都ジャカルタでは政権に対する抗議デモやテロを警戒して、国民協議会や大統領宮殿周辺の道路が閉鎖された。治安部隊約3万人が展開して安全確保に努めた。
 
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インドネシア大統領選、投票始まる ジョコ政権に審判
2019/4/17 10:27

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51204180Q9A021C1FF8000/
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/611.html

[国際27] 米国は好況か不況か、支持政党で景況感に大きな差 米国民、仕事に満足していない−景気拡大で賃金増えても 米、3回連続利下げ検討 FRB、30日に政策決定 ノーベル経済学賞のシラー氏が米国の景気後退を警告、ビットコイン(BTC)が逃避先に? CLOの火薬庫、くすぶる危険性−高債務の米企業に迫るトラブル
トップニュース2019年10月27日 / 08:11 / 11時間前更新
アングル:
米国は好況か不況か、支持政党で景況感に大きな差
Reuters Staff
2 分で読む

[ワシントン 24日 ロイター] - 米国はこれまで大統領選の結果を占う上で景気動向が確固たる手掛かりになってきた。しかし来年の大統領選ではそうはいかないかもしれない。新たに行われた消費者景況感に関する大規模調査で、トランプ氏を支持するかどうかなど政治的性向が違うと景気に対する見方が大きく異なっていることが明らかになったためだ。

調査を行ったのはデータ分析会社モーニング・コンサルト。消費者景況感に関する著名な統計「ミシガン大消費者信頼感指数」と同じ5項目についてオンライン経由で2年近く調べたが、対象者は月約21万人とミシガン大指数の同500人程度を大幅に上回り、政治的性向に関する質問も含まれている。

23日公表された初の調査結果では政治的性向によって回答に非常に大きな食い違いがあり、景気動向が2020年の大統領選にどう影響するかを読み解くのが難しくなりそうだ。

有権者は経済について低失業率や貿易紛争など同じ事実を目の当たりにしている。調査では全体の信頼感指数は108で楽観と悲観の分岐点となる100をわずかに超えたが、トランプ氏支持層が136とはるかに楽観的だったのに対して、非支持層では88と大きな差が生じた。

景気認識についてはどのメディアを視聴・購読するかでも差がみられた。景気の現状に関する指数は、保守派寄りのフォックス・ニュースの視聴者では139で、トランプ氏に批判的なMSNBCの視聴者では89だった。ニューヨーク・タイムズの読者は107、フェイスブックとツイッターでニュースを読む層はそれぞれ110、112だった。

調査結果は年齢、人種、性別などで比重を設定され、全国レベルの代表性を持つように調整される。調査は継続中だ。

モーニング・コンサルトのアナリスト、ジョン・リア氏は、失業率の記録的低下や低インフレ、ほどほどに鈍い賃金伸び率などの要因は従来は大統領選の結果を予想する上で役立ってきたが、「基調的な経済情勢と政治的傾向を峻別することが重要だ」と指摘。消費者信頼感とニュースの受け止め方には隠れた関係性がありそうだとした。

<強まる政治的性向>

このような調査は各項目の間に因果関係を打ち立てるものではなく、例えば情報を手に入れているメディアが景気認識を左右するのか、政治的なスタンスが視聴するメディアを決めるのかは不明だ。しかしこうした各要因の関係の解きほぐしに着手する基礎となる。

とりわけトランプ氏は経済を巡る政治的に影響された見方によって政局を大きく変えてしまったとみられているだけに、こうした因果関係の分析は重要だろう。

ミシガン指数も1980年にレーガン氏、2008年にオバマ氏、16年にトランプ氏がそれぞれ勝利した3回の大統領選の投開票前後に所属政党に関する調査を実施した。いずれの調査でも所属政党により景気認識に大きな差があり、選挙で勝った政党に所属していると景況感が良く、負けた政党に所属していると景況感が低かった。

ミシガン大調査のディレクターのリチャード・カーティン氏によると、レーガン氏とオバマ氏の場合はこの差が統計的に取るに足りない範囲にとどまったが、トランプ氏では民主党所属と共和党所属の間で極めて大きな74.6ポイントの開きが出た。

カーティン氏は10月初旬のリポートで、トランプ氏が大統領に就任した後も共和党員は成長に楽観的で民主党員は景気後退を見込んでいる状況が続いていると指摘。従来は消費者景況感が良好だったり改善したりすれば現職に有利に働き、景況感の低迷は挑戦者に追い風となっていたが、「最近は政治的性向が強まり、関連性が失われるかもしれない」という。

<FRBも苦境に>

政治的性向と景況感の関連性の変化や政治的性向の実体経済への影響を心配しなければならないのは政治アナリストだけではない。

消費者の景況感や景気見通しに関する調査は経済予測に使われ、特に米連邦準備理事会(FRB)は消費行動やインフレ動向、消費者景況感の将来の動きなどを見極める際に消費者景況感調査に頼っている。

景気に関する見解が実際の経済の動きではなく政治的な信条で決まるのであれば、こうした項目について分析する上で問題になる。

モーニング・コンサルタントのリア氏は、景況感が良好であれば消費者は将来の見通しが明るいかのように消費を続けることがあり得るとみている。消費者は理由如何に因らず「楽観的に感じれば景気を支え続ける」という。

一方、消費者景況感と実際の消費の関係は乏しいとの調査結果もある。プリンストン大のアティフ・ミアン氏とシカゴ大のアミール・サフィ氏は2017年の研究で、2016年11月の大統領選ではトランプ氏支持層で景気認識が大幅に改善したが、選挙後にこの層で実際に支出が大きく増える状況は確認できなかったと分析した。

(Howard Schneider記者)
https://jp.reuters.com/article/us-economy-party-idJPKBN1X40IG

 


米国民、仕事に満足していない−景気拡大で賃金増えても
Reade Pickert
2019年10月24日 13:09 JST
• 米国の被雇用者で良い職を持っていると感じているのは40%
• ギャラップが6633人の働く成人を対象に調査

Photographer: Spencer Platt/Getty Images North America
米国では景気拡大が続く中で、数百万人の雇用が創出され賃金上昇は加速している。しかし、米国民は自分の仕事が大好きというわけでない。
  23日に公表されたギャラップの世論調査よると、米国の被雇用者で良い職を持っていると感じているのは40%にすぎなかった。中くらいは44%、悪いは16%だった。仕事の質のランク付けは生活の質と強い相関があった。良い職を持っていると感じている勤労者の79%が、生活の質も高いと答えた。仕事について悪いとの認識の人で生活の質が高いのは3分の1だけだった。
  ギャラップは6633人の働く成人を対象に調査。福利厚生や給料、雇用の安定など10の側面について現在の仕事の質を評価した。より重要な項目の比重を高め5点満点で評価。4以上は良い、3以下は悪いと判定される。
Pay Differences
Share of workers in good jobs increased with income

Source: Gallup
  所得が上位10%の年収14万3000ドル(約1550万円)以上の人は、約3分の2が自分の仕事を「良い」に分類。2万4000ドル以下の人では3分の1未満だった。全体として、勤労者の約半数が現在の賃金に満足しているが、過去5年に報酬が増加したとの回答は3分の2未満だった。
  調査は2月8日から4月1日にかけて郵便で実施された。誤差率は1.9ポイント。
原題:
Americans Are Unhappy at Work After Years of Economic Gains (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-24/PZUY5BT0AFB601

米、3回連続利下げ検討 FRB、30日に政策決定
2019.10.25 16:41経済金融・財政
金融緩和政策 
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長(AP=共同) 
 【ワシントン=塩原永久】米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は29〜30日、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。米中貿易摩擦や世界経済の減速が米景気にも影を落とす中、3会合連続となる追加利下げを検討する。米国は今月中旬の対中制裁強化を見送り、利下げの是非で難しい判断を迫られる。

 FRBは米景気拡大を持続させる「保険」として、9月に2度目の追加利下げを決めた。ただ、FOMCの参加者は、利下げの是非や金利の下げ幅で見解が割れていた。

 月末のFOMCに向け、米中による追加関税応酬が製造業の景況感を大きく下押ししていることなどを踏まえ、「明確なリスクに直面している」(クラリダ副議長)として利下げを主張する意見がある。

 一方、トランプ米政権は今月15日に予定した対中関税の引き上げを見送り、米中対立が緩和するとの期待もある。参加メンバーが貿易摩擦による景気見通しへの影響をどのように考慮するかが焦点となりそうだ。また、年末商戦を控える個人消費の強さが判断要因となる可能性もある。

 FRBのパウエル議長は金融政策の判断が「データ次第だ」との立場を繰り返し強調してきた。金融市場ではFRBが30日に3度目の利下げを決めるとの観測が強い。FOMC参加者の間で意見の隔たりが大きくなった場合、パウエル氏の調整力が問われる局面も想定される。

https://www.sankei.com/economy/news/191025/ecn1910250027-n1.html
 

ノーベル経済学賞のシラー氏が米国の景気後退を警告、ビットコイン(BTC)が逃避先に?
著者 長瀬雄壱 -2019年10月24日

  

資産価格に関する研究で2013年のノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー(Robert Shiller)氏がこのほど、米国の景気後退は不可避となっており、多分その期は切迫していると語りました。暗号資産(仮想通貨)業界の中からは、景気後退によってビットコイン(BTC)は安全な避難先としてますます人々の関心を集めるだろうとの推測も出ています。

目次 [非表示]

1 「いつ景気後退になってもおかしくない」
2 景気後退は安全な避難先としてビットコイン(BTC)への関心を高める
3 現状は景気後退というより景気減速の状態
4 FRBが経済拡大、低失業率の中で金利を切り下げる矛盾
「いつ景気後退になってもおかしくない」
シラー氏はタイム誌とのインタビュー(2019年10月14日)で次のように語っています。

「景気後退はあるだろう。問題はそれがいつかということだ。今回の展開は歴史上最も長引くだろうという理由から、いつ景気後退になってもおかしくなく、機は熟していると言いたい。それは経済がまだ景気後退に入っていないと仮定しての話である」

「私は今、聞いた話について考えている。景気後退の話は高まっていると思う。そのような話になっているのは、恐らく(米中の)貿易危機と関係しているのだろう。振り返って1930年代の関税戦争、貿易戦争の話に戻れば、人々は動揺し、一部の人々は日常支出を抑える事態を招いた」

景気後退は安全な避難先としてビットコイン(BTC)への関心を高める
暗号資産(仮想通貨)コミュニティーの一部有力者は、景気後退が安全な避難先の資産としてビットコインへの関心を一層高めることにつながると推測しています。金融取引プラットフォームのイートロ(eToro)のアナリストであるサイモン・ピーターズ(Simon Peters)氏は、ロンドン・エコノミック(The London Economic)とのインタビューで、小口投資家はビットコインを金(ゴールド)に類似したヘッジとして見始めているとの見解を示しています。

同氏によると、金(ゴールド)は長年にわたり経済あるいは政治危機の際に、安全な逃避先資産と考えられてきました。その理由は、金の供給量が限定され、有用性があり、中央銀行の金利決定の影響を受けないことです。ビットコインは同様の特質を持ち、供給量は2,100万枚と限定され、非中央集権型、インフレの影響を受けないこと、さらに保管コストが金より低いことから、非常時にビットコインに賭けてみる理由は十分あるという訳です。

現状は景気後退というより景気減速の状態
もちろんこのような見方に反対する見解もあります。ブロックチェーン・キャピタル(Blockchain Capital)のジェネラルマネジャーであるスペンサー・ボガート(Spencer Bogart)氏は、そのような話は早計であると述べ、ビットコインが安全な逃避先になるのはまだ先のことだと語ります。

米金融機関イー・トレード(E-Trade)のリサーチャーは、景気後退、金融危機のタイミングについて、現在までのデータが示すものは、完全な景気後退というより景気減速の兆候だと分析しています。

FRBが経済拡大、低失業率の中で金利を切り下げる矛盾
同社の10月リポートは、失業率が50年間で最も低い状態が続いているにも関わらず、製造業の不況(景気後退)が進行中であることを認めて、以下のように分析しています。

「中国製品に関税を課した結果、製造業の材料価格はかなり高騰し、供給チェーンを混乱に陥れ、企業収益を縮小させた。世界貿易機関(WTO)は最近、2019年の世界貿易の成長予測を下方修正した。このような予測が当たれば、2009年以来、貿易は最悪の年になるだろう」

「結論として、経済シグナルは明らかに混在しており、投資家を混乱させるだろう。米連邦準備制度理事会(FRB)は、経済が拡大し失業率が歴史的に落ちているにもかかわらず、景気後退を恐れて金利を切り下げている」

★ビットコイン(BTC)の価格・相場・チャート

参考
・Bitcoin Play? Nobel-Prize Winning Economist Robert Shiller Says a Recession in the US Is Coming

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https://coinchoice.net/nobel-prize-winner-economist-warn-recession-bitcoin-could-be-safe-haven_201910/

CLOの火薬庫、くすぶる危険性−高債務の米企業に迫るトラブル
Lisa Lee、Sally Bakewell、Katherine Doherty
2019年10月25日 13:12 JST
• 信用度が低い企業への安価な資金提供で景気拡大持続に寄与
• CLOによるレバレッジドローン一斉売りで借り換え困難にも
ローン担保証券(CLO)はウォール街の魔術が編み出した金融商品の1つで、数十年前から存在している。よく似た債務担保証券(CDO)と同様に、高リスクの債権をまとめてパッケージ化するためのツールだ。
  CDOと異なり、 CLOはほぼ無傷で金融危機をくぐり抜け、その後の10年間にブームになった。この期間に3兆5000億ドル(約380兆円)という過去最大規模のプライベートエクイティ(PE、未公開株)投資会社による買収と、米国の超低金利を背景とした投資家のリスクテーク意欲に後押しされ、CLO市場は2010年に比べ2倍以上の6600億ドル規模に成長した。信用度が低めの借り手に安価な資金を豊富に提供することで、CLOは米史上最長の景気拡大に寄与した。
  しかし、20年にリセッション(景気後退)入りする可能性が高まるのに伴い、信用格付け引き下げがCLOによるレバレッジドローン一斉売りをもたらすリスクがある。多くの企業が借り換え困難に見舞われ、存続が脅かされる恐れもある。
  CLOを含め複数のファンドを運用するZキャピタル・グループのクレジット部門責任者、アンドルー・カーティス氏は「低格付けローンに対する価格面の支えがなくなれば、時間と共に新規ローンおよび借り換え市場に反映され、最低格付けの借り手は資本市場へのアクセスを失うことになるかもしれない」と述べた。 市場の不安定性は高利回り債市場にも波及し、経済全体に影響し景気後退を深刻化させたり長引かせたりすることさえあり得ると付け加えた。
Wall Street's CLO Machine
Size of the U.S. collateralized debt obligation market

Data: Securities Industry & Financial Markets Association
  問題の核心は、そもそもCLO市場の成長を加速させたのと同じ現象、つまり超低金利だ。CLOはレバレッジドローンと呼ばれるローンの債権をパッケージしたもので、同ローンは基本的に、伝統的な銀行が容認しないほどの債務を企業のバランスシートに積み上げる。こうしたローンを数百集めて組成されるCLOは、利回りとリスクの異なる複数の部分に分けて投資家に販売される。
  これがうまくいくのは、金利が10年にわたって歴史的な低水準にあり、大量の債券がマイナス利回りとなる世界で投資家が利回りに飢えているからだ。しかし、その低金利が今、問題を引き起こしている。低金利の中で利回りを求める投資家のおかげで、PE投資会社は買収した企業の債務をどんどん膨らませることができ、CLOマネジャーはこうした高リスクのローンを購入せざるを得ない。
  一部の推計によると、レバレッジドローンの29%がS&Pグローバル・レーティングでは「B−」、ムーディーズ・インベスターズ・サービスで「B3」の格付けになっているという警戒すべき数字がある。両社とも、これはデフォルト(債務不履行)直前の格付けであるCCCのすぐ上だ。
  ほとんどのCLOは、CCC以下の格付けのローンが7.5%を超えないように契約で制限されている。このため、アナリストの多くが恐れるように景気が悪化し、レバレッジドローンの格下げが増えると、CLOマネジャーは困ったことになる。CCCになってしまったローンを急いで売るか、条項が発動されてCLO保有者への支払いを止めざるを得なくなる。
Warning Signal
Upgrade-to-downgrade ratio (Values below 1 mean more down than up)
Data: Compiled by Bloomberg
  CLOはレバレッジドローン残高の約54%を保有している。CLOマネジャーらはトリプルCの危険地帯に近いローンを売り始めている。TCWグループのマネジングディレクター、ドルー・スウィーニー氏は、信用力が悪化したB3格付けローンには居場所がないとして、「B3からCCCに格下げされれば市場はすぐに反応する。CLOマネジャーが売ろうとするからだ」と話した。
  一方、業界団体であるローン・シンジケーション・アンド・トレーディング・アソシエーション(LSTA)のエグゼクティブディレクター、リー・シャイマン氏は心配していないと言う。「CLOがCCC格付けのローンを売ることを選択した場合、喜んで購入する投資家が大勢いる」と同氏は述べた。
  ではその買い手は誰かというと、CCCのローンを売らなければならないという制約のないレバレッジドローン投資信託などだ。しかしこうしたファンドからは過去48週中47週で資金が流出しており、頼りになる需要源とは思われない。
  ディストレスト債に投資する資金のあるファンドも社債投資には慎重さを増している。財務状況について情報を開示しない借り手が増えているためだ。CLOを販売する資産運用会社、サウンド・ポイント・キャピタルの最高投資責任者、スティーブン・ケッチャム氏は「車台にさびがあるかどうかを確認できずにオンラインで車を買おうとするようなものだ」と述べた。
  レバレッジドローンの借り手の財務状況を承知しているのは既にローンを購入している投資家だけだが、こうした投資家も買い増すつもりはないだろう。
  S&Pによる格下げが09年以降で最も格上げを上回るペースとなっており、状況は悪化するばかりだ。ムーディーズによる格下げと格上げの比率も似たような状況。ブルームバーグがまとめたデータによると、トリプルCまたはそれに近い格付けの企業は向こう5年間に5080億ドルの借り入れが返済期限を迎える。
Barreling Toward the Danger Zone
Biggest share of leveraged loan market is now at edge of lowest ratings tier

Data: Moody's Investors Service data compiled by Nomura
(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
原題:CLO Powder Keg: Trouble Brews for America’s Debt-Laden

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-25/PZTSZH6JTSE801

 
米国株】S&P500が小幅高、ハイテク銘柄けん引
Rita Nazareth、Claire Ballentine、Vildana Hajric
2019年10月25日 5:44 JST 更新日時 2019年10月25日 6:19 JST
24日の米株式市場ではS&P500種株価指数が小幅続伸。テクノロジー株を中心に買いが入った。世界的な景気減速が意識される中、一連の企業決算に注目が集まった。

米国株は上昇、ハイテクが主導−ダウ平均は小反落
米国債はほぼ変わらず、10年債利回り1.77%
NY原油先物は3日続伸、主要パイプライン稼働停止
NY金先物は続伸、1500ドル台を回復−米耐久財統計が低調
  S&P500種株価指数は3000台で推移し、最高値に近づいた。市場予想を上回る決算を発表したマイクロソフトが上昇。ラムリサーチの明るい見通しを手掛かりに、半導体銘柄も軒並み高い。テスラは予想外の黒字転換が好感され、急伸した。一方、ダウ工業株30種平均は小反落。構成銘柄の一つである3Mの決算で、産業界の減速が引き続き同社業績を圧迫していることが示された。ツイッターも下落。見通しが市場予想を下回った。

  S&P500種は前日比0.2%高の3010.29。ダウ平均は28.42ドル(0.1%)安の26805.53ドル。ナスダック総合指数は0.8%上昇。ニューヨーク時間4時59分現在、米10年債利回りはほぼ変わらずの1.77%。

  TIAAの世界市場担当プレジデント、クリス・ギャフニー氏は「ほとんどのフォワードガイダンスが、一部で予想されていたほど悲観的ではなかった」と指摘。「これまでのところ素晴らしい決算シーズンとは言えないが、リセッション(景気後退)が近づきつつあると投資家を怖がらせるものではない」と述べた。

  米中貿易摩擦の新たな展開も注目された。ペンス米副大統領は香港での民主化デモ参加者に対する中国の行動を批判した。同時に、米中両国が関わり合いを強めることが必要との認識も示した。中国は、米国との部分的な貿易協定に調印した場合、1年目で少なくとも 200億ドル(約2兆1700億円)相当の米国産農産物を購入することを目指している。事情に詳しい関係者が明らかにした。

S&P 500 approaching record high
  ニューヨーク原油先物相場は3営業日続伸。北海の主要パイプラインの稼働停止が手掛かり。前日には予想外の米在庫減少が示されていた。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物12月限は26セント(0.5%)高の56.23ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は50セント上げて61.67ドル。

  ニューヨーク金先物相場は続伸。2週間ぶりの高値となった。9月の米耐久財受注統計で、設備投資の先行指標となる航空機を除く非国防資本財(コア資本財)が2カ月連続で減少したことが背景。世界成長見通しの悪化が新たに示唆された。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は0.6%高の1オンス=1504.70ドルで終了した。

原題:Tech Leads Stock Gains on Earnings; Pound Falls: Markets Wrap(抜粋)

Oil Rises After Stock Draw, Pipe Outage Temper Economic Fears

PRECIOUS: Platinum Hits Three-Week High; Gold Tops $1,500

(第4−5段落を追加し、更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-24/PZW64VT1UM0Y01

http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/612.html

[経世済民133] 成人おむつ市場が世界で拡大、羞恥心払しょくで成長余地
トップニュース2019年10月27日 / 08:11 / 8時間前更新
アングル:
成人おむつ市場が世界で拡大、羞恥心払しょくで成長余地
Richa Naidu Ritsuko Ando
3 分で読む

[シカゴ/東京 22日 ロイター] - 世界的に高齢化が進むなか、おむつを必要とする大人が新生児よりも多くなる日はそう遠くない。おむつを含む失禁対策グッズを売るメーカーにとっては非常に大きなビジネスチャンスだ。

おむつを含む失禁対策グッズを売るメーカーにとっては非常に大きなビジネスチャンスだ。ただし、長年にわたって売上拡大を阻んできた顧客の羞恥心を払拭できれば、の話である。

成人用おむつや使い捨て下着、吸収パッドの市場は急速に成長している。ユーロモニターによれば昨年は前年比9%増の90億ドル(約9800億円)に達し、過去10年間で2倍に拡大した。

だが、エシティやキンバリークラークなど市場を先導するメーカー各社は、尿漏れの可能性のある成人4億人以上のうち、適切な商品を購入しているのは半数にとどまるとみている。購入を恥ずかしく思っているせいだ。

各社は、おむつやナプキンといった表現を避ける、ベビー用品のコーナーではなく制汗・制臭商品や生理用ナプキンなどに隣接したパーソナルケア用品の棚に商品を置くーーなど、さまざまな試みをしている。

また、広告を通じて、このテーマを気軽な話題にしようと努めている。

日本では、急速な高齢化に伴い、成人向け失禁対策商品の売上高が2013年前後に乳幼児用おむつの売上高を上回った。同市場で首位を走るユニチャームでは、この問題を気軽に考えられるよう、広告で「ちょいモレ」(少量の漏れの意味)というフレーズを採用した。

https://graphics.reuters.com/DIAPERS-ADULTS-LJA/0100B2K71X7/diapers-adults.png
Reuters Graphic

ユニチャームで広報を担当する渡邊仁志氏は、「我々は、若い人たちの失禁でさえ珍しいことではないと人々に知ってもらおうと努めている」と話す。

ユニチャームでは、特に軽い尿漏れの問題を抱えている人々に注目している。より活動的な生活を送れるようになり、最大の成長が見込めるからだ。こうした市場をターゲットにした同社の尿漏れを吸収するパッドや裏地の売上高は昨年8%増大した。

米国市場で首位に立つキンバリークラークは今年、35年の歴史を持つ「ディペンド」ブランドを刷新し、より薄くソフトでフィット感の良い、しかも目立たずに着用できる商品を導入した。受け入れられやすくするためだ。

この10年、顧客獲得のために様々な取り組みが試されてきた。

最初は「おむつ」という分類をやめることから始まった。高齢の顧客が「おむつ」という言葉に感じる「自分の暮らしを制御できない」という連想を解消するためだ。

それでもなおメーカー各社は、顧客に納得してもらうのに苦労している。

キンバリークラークで成人・女性向けケア商品部門を率いるフィオナ・トムリン氏は、「人は自分が失禁することがあるという事実を、愛する人、夫や兄弟姉妹に対して秘密にしている。それは多くの消費者にとって重大な秘密だが、その一方で、人生では起こりがちなことで、生理学的にみた現実だ」と語る。

メーカー各社は特に女性顧客の獲得に熱心だ。女性の場合、出産の影響もあり、男性より2倍以上も尿漏れの問題を抱える可能性が高いからである。

キンバリークラークでは、ここ数年、女優のウーピー・ゴールドバーグやカースティ・アレイを起用した明るい調子の広告キャンペーンを通じて女性消費者に直接働きかけている。

<もう秘密にしない>

キンバリークラークの「ポイズ」ブランドは、メイン州のエミリー・フォスターさん(31)のような、まだ若い女性を対象としている。フォスターさんは1年半前に最初の子どもを産んで以来、尿漏れに悩まされていたが、効果のありそうな商品を購入するのは恥ずかしかった。

「最初は買ってみたが、自分で使うために成人用おむつを選ぶのは非常に妙な気分だった」とフォスターさんは言う。「自分が高齢女性の仲間入りしたような気がする」

グローバル市場で首位に立つスウェーデンのエシティも、「ティーナ」ブランドや、「シルエット・ノワール」と名付けた、黒い薄手の使い捨て下着の新シリーズによって、若い層にアピールしようとしている。

広告のキャッチフレーズは「もう秘密にしない。女性の3人に1人は失禁に悩んでいる」

エシティが後援する「失禁症状に関するグローバルフォーラム」によれば、女性の12%、男性の5%は、何らかの形での尿失禁を経験している。軽微で一時的なものから深刻で慢性的なものまで、状況はさまざまだ。

エシティは、加齢との連想を避けるように、商品のパッケージや販売方法を工夫していきたいと述べている。

「女性向けにはなるべく女性らしく、しかも目立たないように、男性向けにはなるべく男らしく、しかも目立たないように、そういう商品のデザインやパッケージが効果的だ」と語るのは、エシティの健康・医療ソリューション事業部のウルリカ・コルスラッド社長。

潜在的な顧客にメッセージを届けることがなかなか容易でない場合もある。2017年にエシティをスピンオフしたSCAは、数年前、55歳以上のスウェーデン人男性を対象として自社商品のサンプルを送付したが、膨大な苦情を浴びるだけに終わった。

だが、そうした努力は実を結びつつある。調査会社カンターによれば、ターゲットにしたフランス及び英国の成人女性のうち、成人向けの失禁対策商品の使用率は、5年前には約13%だったが、現在では20%に迫っている。

もちろん、さらに売上高を成長させる余地は非常に大きい。コルスラッド社長は言う。「失禁に悩む人を集めた国があるとすれば、人口にして世界第3位の大国になる計算だ」

(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/diapers-adults-idJPKBN1X40OX

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/494.html

[国際27] チリ大統領、全閣僚に辞任要請 抗議デモ受け内閣改造へ 100万人が街中を埋め尽くす。チリ史上最大のデモ「南米の優等生」チリで非常事態宣言、治安悪化の背景にある経済問題 
チリ大統領、全閣僚に辞任要請 抗議デモ受け内閣改造へ
2019.10.27 Sun posted at 16:50 JST

抗議デモを受け、ピニェラ大統領が、内閣改造を見すえて全閣僚に辞任を要請した/Marcelo  

(CNN) 長期化する反政府デモの対応に苦慮する南米チリのピニェラ大統領は26日、内閣改造を見すえ全ての閣僚の辞任を要請した。テレビ演説で述べた。

地下鉄の運賃値上げに端を発した抗議デモに揺れるチリを今後前進させるためには新内閣が必要と主張。また、状況次第としながらも今月18日に発令した非常事態宣言の27日の解除も提案した。

大統領は25日深夜、ツイッター上で「我々全員は大規模な抗議活動が発するメッセージに耳を傾けた」と述べ、「我々全員が変わった。団結と神の助けで我々は国民すべてにより良いチリを築く道を進むだろう」と続けた。

チリ軍当局は声明で、サンティアゴ首都圏で7日連続で出していた夜間外出禁止令を解いているとも説明。首都は通常の機能を取り戻しつつあるとも述べた。

反政府デモは全国各地で1週間以上続き、25日も夜遅くまで発生した。サンティアゴでは同日夜、数十万人規模の市民らが街頭で抗議活動を行った。同市の北西部に位置するバルパライソにある国会では25日に退避の措置が講じられた。

デモに絡む死亡者はこれまで19人に達し、数百人が負傷。警官隊は催涙弾、ゴム弾や放水でデモ隊の排除を試みている。


チリ
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https://www.cnn.co.jp/world/35144486.html

 

2019年10月26日 17時42分 JST | 更新 2019年10月26日 17時50分 JST
100万人が街中を埋め尽くす。チリ史上最大のデモ、大統領は「国民のメッセージを聞いた」(動画)
経済改革や大統領辞任を求めて、国旗を振りかざしたり、踊ったり、木製のスプーンでポットを叩いたりした。
M田理央(Rio Hamada)
チリで起きた100万人の抗議デモ
IVAN ALVARADO / REUTERS
チリで起きた100万人の抗議デモ
100万人の国民の渦が、街中を埋め尽くす。南米のチリでいま、繰り広げられている光景だ。

首都のサンティアゴで10月25日、セバスチャン・ピニェラ大統領の辞任や経済改革を求めた、チリ史上最大規模の抗議デモが繰り広げられた。


Karla Rubilar Barahona

@KarlaEnAccion
Chile hoy vive una jornada histórica. La RM es protagonista de una pacífica marcha de cerca de 1 millón de personas que representan el sueño de un Chile nuevo, de forma transversal sin distinción. Más diálogo y marchas pacíficas requiere nuestro país ❤! #ArribaStgo💪 #RMdeTodos

埋め込み動画
26,958
6:24 - 2019年10月26日
Twitter広告の情報とプライバシー
17,975人がこの話題について話しています
ロイター通信によると、この日のデモは、ここ1週間と打って変わり、平和的に展開された。参加したおよそ100万もの人たちが、国旗を振りかざしたり、踊ったり、木製のスプーンで鍋を叩いたりした。政治や社会の変化を要求するプラカードを掲げ、数キロに渡って通りを練り歩いた。

人口約1873万のチリで、100万人という数字は国民全体の5%以上に当たる。日本に置き換えてみると、630万人以上が参加した計算になる。

サンティアゴのカルラ・ルビラル市長は、Twitterで「チリにとって歴史的な日。首都州は、新たなチリを夢を表現する100万もの人たちの平和な行進の主役だ」と歓迎している。

ピニェラ大統領も「国民が平等と支援を求めた、大規模で活気にあふれた平和的なきょうのデモ行進は、希望ある将来への道を開いた。メッセージを聞いた」と前向きに受け入れた。


Sebastian Piñera

@sebastianpinera
La multitudinaria,alegre y pacífica marcha hoy,donde los chilenos piden un Chile más justo y solidario,abre grandes caminos de futuro y esperanza.Todos hemos escuchado el mensaje.Todos hemos cambiado.Con unidad y ayuda de Dios,recorreremos el camino a ese Chile mejor para todos

40,574
9:25 - 2019年10月26日
Twitter広告の情報とプライバシー
45,712人がこの話題について話しています
ロイター通信によると、チリでの抗議デモは、公共交通機関の料金値上げを発端に始まった。生活の困窮や経済的不平等の訴えから、暴動に発展。17人が死亡、数百人がけが、7000人以上が逮捕される事態となり、14億ドル相当の経済損失を招いた。

BBCによると、国家非常事態宣言の下、軍隊や2万以上の警察による厳戒警備体制が敷かれ、夜11時以降の外出が禁じられている。

訂正の連絡はこちら
M田理央(Rio Hamada)ハフポスト日本版ニュースエディター。「キャリア」ディレクター、「#だからひとりが好き」担当
MORE:
デモ プロテスト チリ
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5db3f6eae4b079eb95a3f120

「南米の優等生」チリで非常事態宣言、治安悪化の背景にある経済問題
西M 徹:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト
政策・マーケット 西M徹の新興国スコープ
2019.10.25 5:10 会員限定
Photo:Claudio Santana/gettyimages
地下鉄料金引き下げ(上げの間違い)が学生デモ起こす 暴徒化で放火も
 南米のチリでは、10月に入って以降に首都サンティアゴで学生デモが発生して一部が暴徒化した結果、ピニェラ政権がサンティアゴ周辺に非常事態宣言を発令する異常事態となっている。
 昨年来の国際金融市場の動揺などに伴い通貨ペソ相場が下落し、輸入物価への押し上げ圧力が強まったことで燃料価格への上昇圧力が強まるなか、政府が財政悪化に歯止めを掛けるべく地下鉄料金を引き上げたのが学生デモのきっかけである。

拡大画像表示
 同国ではここ数年、景気減速に伴う歳入減などの影響も重なり、財政赤字の拡大傾向に拍車がかかっている。輸出低迷などを受けて経常赤字も拡大し、「双子の赤字」に直面している。ピニェラ政権にとっては経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の改善が喫緊の課題となっていた。


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1人あたりGDPは比較的高いが、銅依存の経済体質変わらず

https://diamond.jp/articles/-/218383?page=2

http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/614.html

[IT12] Apple Watch、性的暴行犯から女性を救う。寝たふりでSOS送信 またしてもApple Watchが命綱に。今回は「声を出さずに送れる」手段が幸いした
ビジネスが作る未来
2019年10月27日 15時24分 JST
Apple Watch、性的暴行犯から女性を救う。寝たふりでSOS送信
またしてもApple Watchが命綱に。今回は「声を出さずに送れる」手段が幸いした
Engadget 日本版
Apple
ENGADGET 日本版
心臓疾患の早期発見やひどい転倒事故の際の通報など、様々な形で人命を助けてきたことが報じられてきたApple Watch。新たに性的暴行を目的として押し入った犯人から女性を救ったエピソードが伝えられています。
カナダの地元紙カルガリー・ヘラルド(Calgary Herald)報道によると、夜勤の疲れでリビングのソファーに寝ていた女性が目を覚ますと、誰かの影が部屋の中にいると気づいたとのこと。iPhoneに手を伸ばそうとしたものの、離れた場所に置かれて使えない状況にあったそうです。

女性はApple Watchを装着していたことを思い出し、ボーイフレンドにテキストメッセージを送信。恐怖におびえた彼女は警察に電話するよう懇願したものの、はじめ相手はエイプリルフールのジョーク(ちょうど4月1日)だと思いましたが、ことの重大さをすぐに認識し、911(緊急通報番号)に電話したと語られています。

それから15分もの間、女性は下着に毛布をかぶった姿のまま、侵入者の激しい息づかいを感じるほど近くにいたなかで、寝ているふりを続けることに。警察が到着して家のドアを叩いたとき、侵入者は彼女の上に立ったままでした。そして警察が2回目のノックをすると、ようやく侵入者はキッチンに移動。その後、警察により、台所のパントリーに隠れているところを発見されたとのことです。

侵入者の持っていたバッグには、バラクラバ(目出し帽)やバックナイフ、手錠がわりのジップタイ、コンドームや潤滑剤、ボールギャグなどのアイテムが入っており、性的暴行の意図を示すものばかり。さらに被害者のカードキーをコピーし、前月に8回も部屋に侵入していたことも判明しています。

Apple Watchからも、メッセージを送信することは可能です。その中でも指書き入力など「声を出さずに送れる」手段があったおかげで、犯人が間近にいながら女性がSOSを送れたわけです。

つい先日も、Apple Watch Series 4以降に搭載された転倒検出機能が、崖から転落して背中を骨折した男性の命を救っていました。寝ているときや転倒したときも身体から離れにくいApple Watchは、今後も多くの人にとって命綱となりそうです。

(2019年10月25日 Engadget 日本版「Apple Watch、性的暴行犯から女性を救う。寝たふりでSOS送信」より転載)

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Apple Watchの転倒検出がまたもお手柄。救急車を呼び女性の命を救う
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story-apple-watch-sos_jp_5db532b6e4b079eb95a4dd8d?ncid=other_trending_qeesnbnu0l8&utm_campaign=trending
http://www.asyura2.com/14/it12/msg/296.html

[社会問題10] 「マイノリティーの居場所を守りたい」 女の子向けアニメの“常識”を覆した、プリキュア初代プロデューサー・鷲尾天さんの原点
はじめてのSDGS
2019年10月27日 08時00分 JST
「マイノリティーの居場所を守りたい」 女の子向けアニメの“常識”を覆した、プリキュア初代プロデューサー・鷲尾天さんの原点
女の子向けアニメとして高い人気を誇る「プリキュア」。何と戦い続けてきたのか。
https://img.huffingtonpost.com/asset/5db3c738210000df2c34b191.jpeg 

加藤藍子

© ABC-A・東映アニメーション「ふたりはプリキュア」「Yes!プリキュア5」
放送開始から15年以上、女の子向けアニメとして高い人気を誇る「プリキュア」シリーズ(毎週日曜、ABCテレビ・テレビ朝日系列)。2019年2月から放送中の16作目の「スター☆トゥインクルプリキュア」では、宇宙人のプリキュアが登場したり、キャラクターの肌色などがそれぞれに異なったりと、多様性を意識した内容が話題だ。
だが、そのメッセージ性の高さは、今に始まったものではない。プリキュアは、何と戦い続けてきたのか。「プリキュアらしさ」の核はどこにあるのか。
シリーズ初代から5作目までのプロデューサーを務め、現在もアドバイザー的な立場で企画に携わる東映アニメーションの鷲尾天(わしお たかし)さんにインタビューした。

HUFFPOST JAPAN鷲尾天さん

「女の子向けだから」という決め付けを捨てた
――2004年に放送が始まった「ふたりはプリキュア」は、タイトル通り、中学生の女の子2人がプリキュアという戦士に変身して戦う物語です。女の子向けであるにもかかわらず、本格的なアクションを取り入れた斬新さが注目を集めました。シリーズとして15年以上支持され続けている理由はどこにあると思いますか。
当初はこんなロングランではなく、半年〜1年で終了する予定だと聞かされていたんです。私自身、女の子向けの作品を担当した経験もなかったので、とにかく「女の子向けアニメとはこういうモノだ」という決め付けを捨てることにしました。
企画書に書いたコンセプトは「女の子だって暴れたい」。ヒットを狙って逆張りをしたわけではないんです。自分自身がこれまで見てきたこと、感じてきたことを信じた結果、生まれてきた言葉ですね。
私は子どもの頃、身体は弱かったし、足も遅かった。同級生の女子のほうがむしろ活発でした。だから「女の子だからおしとやかにするべきだ」「男の子は泣いてはいけない」などという大人の言葉に、違和感を抱いていました。
受け入れられる確信はありませんでしたが、そういう実感に素直になったことが、結果的に子どもたちの支持を得ました。
「ふたりはプリキュア」で何より大事にしていたのは、主人公の2人がそれぞれ自立した存在であるということです。全く異なる個性を持つ2人が、プリキュアとして戦う中で認め合い、絆を育んでいく。
「アクションもの」ではありますが、力で敵を打ち負かして「最強」への階段を上がっていくような男の子向け作品とは、一線を画していました。

© ABC-A・東映アニメーション「ふたりはプリキュア」
プリキュアの「チーム」には序列がない
――4作目「Yes!プリキュア5」(2007〜2008年)から、基本は2人組だったプリキュアが「チーム制」になりました。
物語の設定や登場人物が「代替わり」する仕組みを、その一つ前の作品から取り入れていました。これと併せ、「チーム制」を採用したことはシリーズに持続的な発展性を持たせることになった大きな転換点でした。現在に続くプリキュアの「チーム観」を打ち出すきっかけにもなったと思います。
――その「チーム観」、実はあるヤンキー漫画を参考にしたと聞きました。
「湘南爆走族」(湘爆)ですね。暴走族の高校生たちの友情や恋愛を描いた青春漫画で、1980年代に人気を博しました。
暴走族をプリキュアの参考にしたと言うと驚かれるかもしれませんが(笑)、注目したのは彼らの「関係性」のカッコよさです。「湘爆」の主人公は一応、族のリーダーではあります。しかし、仲間を力でねじ伏せるようなキャラクターではないし、一人ひとりの力関係には序列がない。互いに馴れ合わず、その絆のベースには個としての「自立」がありました。
例えばメンバーの一人が、別の暴走族につかまった自分の友人を助けに行くエピソードがあります。ところが、ここで同族の仲間には声をかけない。これは自分の問題だから、と一人で立ち向かおうとするんです。するとその道すがら、仲間たちがポツン、ポツンと立って待っている。彼らはそれぞれの判断で、加勢する。
決して依存はしないけれど、言わなくても「分かる」。そんな絆で結ばれたチーム像が、自立した女の子同士の関係を描いた「ふたりはプリキュア」の発展型として、ふさわしいと感じました。

HUFFPOST JAPAN鷲尾天さん
「プリキュア5」では、春日野うらら(キュアレモネード)というキャラクターが敵に一人で対峙する状況に追い込まれ、絶体絶命のところで仲間たちが駆け付けるエピソードがありました。
制作陣には「うららの方から、助けが来るのを期待していたように駆け寄るのはNG。絶対に仲間たちの方から駆け寄る画にしてください」とお願いした。それぞれが逃げずに前を向き、同時にお互いを支え合う。そんな関係性が、プリキュアの友情の原点なんです。
――まさに「シスターフッド」(女同士の絆)。「湘爆」的な関係が、男同士に特有のものだとは考えなかったんですね。
マーケティングとして当時の女の子向けコンテンツの傾向は押さえつつ、だからといって「それが全て」という考え方はしませんでした。
もっと、もっと多様であっていいという思いがあった。
政治や社会においてもそうですが、アニメの世界でも女の子はマイノリティー(少数派)です。つまり、単純に「女の子向け」とされる作品の数が少ない。特にアクション系は、男の子向けの作品を女の子も一緒になって見ている状況がありましたから。

© ABC-A・東映アニメーション「Yes!プリキュア5」
戦うのは「勝つため」ではない
――互いに異なること、そして自立していることをプリキュアらしさの「核」として挙げていましたが、確かにプリキュアのチームは一人ひとりの個性が際立ちます。「多様性」という言葉が世の中に浸透する以前から、その可能性を体現していたように感じます。
もちろん、「プリキュア5」などを担当していた当時は、ダイレクトに「多様性」というテーマを意識していたわけではありませんでした。ただ、振り返ると、今につながるメッセージを発信していたのだと実感します。
「敵に勝つために戦う」のではなく、「自分たちの居場所である日常を守るために立ち向かう」という姿勢も一貫していると思います。
――「守るために立ち向かう」。この発想はどこから生まれてきたのですか。
「勝ち負け」によって、能力の序列や価値観の正しさを決めたくなかったんです。これは、初代の構想段階から念頭にありました。一つの物差しで決着をつけるということは、つまり、物ごとを「一元的」に見るということ。逆にいえば、多様性の否定につながります。
私は高校時代、かけっこが遅いというコンプレックスをどうにかしたくて陸上部に所属していたんですよ。陸上の世界こそ一元的な「勝ち負け」の世界だと思うでしょう。でも、実際は違う。レースには負けても、自己ベストが出ればいい。人を倒さなくても、押しのけなくても、自分の成長が実感できればいいと思うんです。なぜなら、努力はそこにあらわれているんですから。
また同じ頃、本多勝一さんの「殺される側の論理」や、近藤紘一さんの「サイゴンから来た妻と娘」など、ベトナム戦争を経験したジャーナリストたちのルポルタージュをよく読んでいて、その影響もあると思います。そこには当時の自分が知らないことばかりが連綿と書かれていて、世界を「強者ではない側」から見る感覚に衝撃を受けたんです。圧倒的多数派の影に隠れてしまっている、マイノリティーの意見、価値観こそが重要なのだと。

マイノリティーの「居場所」を守る
――プリキュアが、強大な力を持つ敵に対して「あなたが力が強いからと言って私たちが言うことを聞くと思ったら大間違いだ」と抗う場面はシリーズを通して何度も出てきますね。
背景にはマイノリティーの居場所を守りたい、という思いも込めました。力は、強い人が振りかざすものではなく、意志を持つ人、勇気を持つ人のところに集まるのだということです。
――子どもたちに引きつけてみても、学校では個性を大切にと言われながら、結局は一元的な物差しで評価されがちで、息苦しい感じがします。
そうですね。テストの点数では測れない個性を持っていたり、学校の外に得意なことや好きなことがあったりする子どもたちもいますが、そういう多様性も含めて受け入れられる場があるといいと思います。
現実でそれが満たされているのが一番ですが、プリキュアという作品を送り出していく側として、能力とは序列ではなく「違い」であり、誰もが尊重されるべき存在なのだというメッセージはこれからも伝え続けていきたいですね。
実は、プリキュアのチームの「真ん中」にいる子は、これといった特技がないというキャラクターも多いんですよ。

HUFFPOST JAPAN「スター☆トゥインクルプリキュア」
――プリキュアが訴え続けてきた「多様性」の大切さは、今や当たり前に重視されるべき価値として世の中に浸透しつつあります。今後、さらに何をメッセージとして伝えていきますか。
プリキュアシリーズのもう一つの転換点となったのが、「Go!プリンセスプリキュア」(2015〜2016年)です。この作品では「プリンセス」、その後も「HUGっと!プリキュア」(2018〜2019年)では「子育て」……というように、各作品にモチーフを設定するようになりました。様々な世界観をプリキュアの中に取り込む。言い換えれば、世界観は変わっても、「これはプリキュアである」と納得してもらえるだけのメッセージを出していく。
――そのためには何が必要ですか。
女の子が自立していること、りりしくあること。それに尽きます。
例えば、一見すると「プリンセス」というモチーフはプリキュアらしくないと言われるかもしれない。でも、企画当時はディズニー映画「アナと雪の女王」が大ヒットしていたこともあり、やはりプリンセスを好きな女の子は多いのだという実感がありました。ならば、王子様に依存するのではなく、自らの手で道を切り開く強いプリンセス像を新たにつくり出せれば――。そんな風に考えを積み上げて、モチーフ自体をプリキュア流にアップデートしていきました。
現在放送中の「スター☆トゥインクルプリキュア」は「宇宙」をモチーフに、史上初めて、プリキュアのチームメンバーに宇宙人がいるといったチャレンジもしています。多様性というテーマに真正面から取り組んでいます。
――多様な価値観が尊重されるべきものであることは前提としたうえで、近年はそれがコンテンツへの激しい批判にもつながる風潮があります。作り手としてはやりにくくないですか。
フィクションの中に、現実の複雑性をどれくらい取り入れるべきなのか。さらに、子どもたちに向けて何を、どこまで伝えていくのか。「伝わる」ラインはどこか。
どれも常に頭を悩ませている問題ですが、何より大切なのは、作り手側の主体性と責任感。100%の正解なんてない。それでも考え抜いた上で作品を届けていく姿勢を、これからも貫いていきたいと思います。

エードット提供インタビューが行われた10月11日には、女性の健康や生き方について考えるイベント(「Ladyknows Fes 2019」)に鷲尾さんがゲスト出演。シリーズの制作背景などを語った。

(取材・文:加藤藍子 @aikowork521 写真・編集:生田綾 @ayikuta)
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訂正の連絡はこちら

加藤藍子フリーランス編集者・ライター
MORE:アニメ はじめてのSDGs プリキュア スター☆トゥインクルプリキュア ふたりはプリキュア 鷲尾天
https://www.huffingtonpost.jp/entry/precure-washio-takashi_jp_5db3b61ee4b006d4916ee649?ncid=other_trending_qeesnbnu0l8&utm_campaign=trending

http://www.asyura2.com/18/social10/msg/254.html

[経世済民133] 米財政赤字1兆ドル時代「双子の赤字」再び強まる 大型減税 財政赤字は前年度比26%拡大4年連続悪化 日本の財政赤字の維持可能性 財政赤字拡大容認論を問う 

米財政赤字1兆ドル時代 「双子の赤字」再び強まる 大型減税 財政赤字は前年度比26%拡大4年連続で悪化
2019/10/26 20:53
トランプ大統領は貿易赤字の縮小を切望している=AP
【ワシントン=河浪武史】米財務省が25日発表した2019会計年度(18年10月〜19年9月)の財政赤字は9840億ドル(約107兆円)と7年ぶりの水準に悪化した。20年度以降は赤字額がさらに膨らむとされ、財政赤字は「1兆ドル時代」となる。過去最大のモノの貿易赤字とともに「双子の赤字」の色彩が強まり、中長期的にはドル相場など米経済・市場のゆがみをもたらしかねない。
19年度の歳出は国防費の積み増しなどで8%増え、財政赤字も前年度比26%拡大した。トランプ政権と連邦議会は17年末に10年で1.5兆ドルという大型減税を決定。過去最長の景気拡大局面にもかかわらず歳入は伸びず、財政赤字は4年連続で悪化した。

https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2FDSXMZO5145645026102019EA2001-PB1-2.jpg?auto=format%2Ccompress&ch=Width%2CDPR&fit=max&ixlib=java-1.2.0&s=a7ba513ae00ced1c213a810bcb57257e 

米議会予算局(CBO)は20年度の財政赤字額を1兆80億ドルと予測する。赤字幅はその後も広がり、28年度には1兆4790億ドルに膨らむと試算する。トランプ政権と連邦議会は8月に20、21年度の歳出を合計3200億ドル積み増す予算関連法を成立させたばかりだ。CBOの予測は景気拡大がさらに続くという前提だが、赤字額は08年の金融危機直後並みに悪化しそうだ。
もっとも、米10年物国債利回りは9月に一時1.4%台と、2%弱とされる潜在成長率を大きく下回る水準になった。米財務省は低金利環境を超長期国債の好機とみて、これまでなかった50年債と100年債の発行を「真剣に検討している」(ムニューシン財務長官)。経済成長の底上げへインフラ投資などを求める声が経済界、学界からも上がっており、政界も共和党、民主党ともにもう一段の財政支出に前向きだ。

画像の拡大
ただ、米連邦政府の利払い費(利子受け取りを含むネット)は低金利にもかかわらず3760億ドルと16%も増え、CBOの予測では28年度には7580億ドルとさらに2倍に膨らむという。トランプ氏は「米連邦準備理事会(FRB)が政策金利をゼロにすれば、政府債務の利払いが減る」と主張。低金利が財政の生命線とみて、露骨に利下げを要求する。
米国は18年のモノの貿易赤字が過去最大になった。経常赤字も10年ぶりの水準に悪化しており、米経済は再び「双子の赤字」の色彩を強めている。好況時は消費や投資が活発になって貿易赤字は増えやすいが、本来は税収が伸びて改善するはずの財政も悪化するのは異例だ。米経済は世界最大の純債務国だが「双子の赤字」が強まれば、不足するマネーを海外からさらに取り込まなければならない。
1980年代のレーガン政権下でも、大型減税で内需が過熱して双子の赤字が発生した。経済のゆがみは日米貿易摩擦などに発展し、最終的にはドル高是正へ日米欧の「プラザ合意」という荒療治を余儀なくされた。トランプ氏も貿易赤字の縮小を切望しており、政権内で異例のドル売り介入論が浮上するなど、通貨高の是正に駆られやすい状況だ。
双子の赤字の解消には、本来は米国の過剰消費と過剰投資を改める必要がある。ただ、国際通貨基金(IMF)は19年の世界経済の成長率見通しを、危険水域に近い3.0%まで引き下げた。世界景気をけん引する米経済が財政・金融で引き締めに動ける状況にはなく、17〜18日の20カ国・地域(G20)財務相会議でも財政再建論や金融引き締め論を封印した。世界経済はひずみを抱えつつも、米国の財政拡張路線に寄りかかったままだ。
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米財政赤字1兆ドル超 予算教書、インフラ投資盛る
2019/3/12 4:57
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51453710W9A021C1EA2000/?n_cid=NMAIL007

19年度米財政赤字、26%拡大して約1兆ドル−トランプ氏の減税が影響
Katia Dmitrieva
2019年10月26日 4:32 JST
歳出が09年度以来の大幅な伸び、歳入の伸び上回る
財政赤字は9840億ドル、12年度以来の高水準
米財政赤字は2019会計年度(18年10月−19年9月)にほぼ1兆ドルに拡大。12年度以来の高水準となった。トランプ大統領が実施した減税や歳出増加が背景。

  財務省の25日発表によると、19年度の財政赤字は26%拡大して9840億ドル。これは国内総生産(GDP)の4.6%に相当する。財政赤字の増加はこれで4年連続となり、このままのペースで行くと、トランプ政権下で歴史的水準に拡大することを裏付けている。

Bulging Deficit
America's budget gap widened to almost $1 trillion in latest fiscal year

Source: Treasury Department, data compiled by Bloomberg

  19年度の歳出は8.2%伸びて計4兆4500億ドルと、伸び率は2009年以来の最大。軍事関連やヘルスケア、教育への支出が増えた。歳入は4%伸びて3兆4600億ドル。708億ドルの関税収入に支えられた。9月の財政収支は828億ドルの黒字。前年同月は1191億ドルの黒字だった。

  ムニューシン米財務長官は統計に合わせて、「トランプ大統領の経済アジェンダが奏功している」とのコメントを発表。「米国が持続可能な財政軌道を進むためには、無駄で無責任な支出の削減に向け大統領の2020年予算案のような提案を実行に移さなくてはならない」と続けた。

  9月の財政収支の詳細は表をご覧下さい。

原題:
U.S. Annual Budget Deficit Nears $1 Trillion With 26% Increase(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-25/PZY1IE6K50XS01

 

日本の財政赤字の維持可能性
執筆者 深尾 光洋 (ファカルティフェロー)

研究プロジェクト 経済成長を損なわない財政再建策の検討

ダウンロード/関連リンク • ディスカッション・ペーパー:12-J-018 [PDF:766KB]

このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

社会保障・税財政プログラム (第三期:2011〜2015年度)
「経済成長を損なわない財政再建策の検討」プロジェクト

金融市場と金融システムの安定性を維持するためには、巨額の残高となった日本国債の信用を維持するのが必要不可欠である。銀行の自己資本比率規制でも、国債の信用リスクはゼロとされているが、2012年春に発生したギリシャ政府による実質的なデフォルトやアイルランド、ポルトガル両国政府に対するEUとIMFによる財政支援は、先進国においても、国債の信用リスクが無視できないことを示している。

日本政府のグロス債務GDP比率は2011年末で233%(IMF見通し)と推定されており、財政危機に陥った166%のギリシャよりも遙かに高い水準にある。 負債から金融資産保有高を差し引いた純債務でみても日本は131%と、153%のギリシャに急速に近づきつつある。毎年の財政赤字も2011年には48兆円程度とGDP比10%に達したと推定され、きわめて高水準にある。仮に消費税を10ポイント引き上げて15%にしたとしても、税収増は24兆円程度であり赤字を半分に減らすのが精一杯である。このように日本の財政状態は、財政危機に陥って金融支援を受けた欧州周辺国以上に悪化している。しかし日本は、いくつかの点でギリシャとは異なっている。
図:主要国とギリシャの政府総債務・GDP比率

https://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/data/12j018_f1.gif

まず通貨制度をみると、ギリシャは独自の通貨と中央銀行を持っていない。同国政府は、資金調達の最後の手段である中央銀行からの借り入れに頼ることができない。これに対し日本政府が財政危機に直面すれば、最後の手段として日銀法等の改正を行って日銀借り入れで支払いを続けることも可能である。これは、インフレを引き起こすリスクを伴うが、政府がデフォルトを避けるためであれば、実行される可能性はゼロではない。
国際収支の面でも、ギリシャと日本はかなり異なった状況にある。同国は経常収支の赤字が続いてきており、2010年までの10年間の累積経常収支は、ギリシャでGDP比111%(IMF統計、以下同じ)の赤字となっており、対外債務国である。また、その債務の大部分は独自の通貨ではなく共通通貨のユーロ建てである。これに対し日本は、同じ期間に28%の黒字を累積している対外債権国である。日本政府債務の大部分は国内で保有される円建て債務である。また日本は債権国であるため、仮に国内投資家が日本政府に対する信用リスクを考えて、保有資産の円を売って外貨を買っても、それによる円安で、外貨建て資産を持つ企業・家計や金融機関は利益を得られる立場にある。政府も外貨準備を1兆3000億ドル保有(2012年2月末現在)しているため、円安になれば相当の利益が得られる。

このようにギリシャと日本の状況には大きな違いがあるため、震災復興のための財政赤字拡大を考慮しても、近い将来に日本政府が現在のユーロ圏型の財政危機に陥る可能性は小さい。しかし、別の危機シナリオを考えることは可能である。具体的には、政府が政府債務の累増を放置し続け、国民が政府に対する信頼を無くす場合である。日本の家計部門は財産の相当部分を銀行預金や生命保険などで保有しているが、銀行や保険会社は、その資金を貸出や国債への投資などで運用している。このため、政府に対する信用が低下すると、銀行預金や貯蓄性の保険に対する信用も低下し、家計は銀行預金から株式、不動産、外国の国債や外国銀行の預金などに資金をシフトし始める。すると銀行は預金の流出を不安に思い、国債の買入に消極的になる。これは長期国債金利を上昇させる。国債金利の上昇は、政府の利払い負担増を招くため、政府に対する信用がさらに低下して、預金の流出がさらに拡大する。また、外貨への資金シフトは円安を招く。小幅の円安であれば、景気の拡大に繋がるため問題はないが、大幅な円安になると、物価の上昇要因になる。物価上昇は固定金利の運用を不利にするので国債価格を下落させ長期金利を押し上げる。

現在は、日本だけでなく米国やEUも財政赤字に苦しんでいるため、円から外貨への大規模な資金シフトは発生しにくいだろう。しかし米国やEUが財政健全化に成功すると、円から外貨への資金シフトが拡大し、国債金利の上昇要因になり得る。このため、将来着実な赤字削減ができるという見通しを打ち出せなければ、「日本政府」の信用は低下していく。日本政府に対する信頼を維持して長期金利を低位に維持するためには、政府債務の着実な削減のめどを示すことが必須となるだろう。

本稿では、日本経済をマクロ的な観点からとらえ、日本の長期的な潜在成長率の低下、長期化するデフレの実態、政府債務と利払い負担などの現状を概観する。政府債務のGDP比率を安定化させて、財政に対する信頼性を取り戻すためには、現在民主党が提案している消費税の5%引き上げでは大幅に税収が不足しており、少なくとも消費税で20%引き上げに相当する50兆円程度の歳出削減ないし増税が必要であることを示す。また金利低下による利払い負担の減少が一巡したため、今後は負債の増加に伴って利払い負担が急増する見通しであることを指摘する。政府債務が巨額になってしまった現在では、デフレからの脱却は政府の利払い負担を急増させることで政府信用を悪化させかねないことも説明する。
図:一般政府利払いGDP比率の将来予想

https://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/data/12j018_f2.gif

論文
• ディスカッション・ペーパー(日本語)
• ディスカッション・ペーパー(英語)
• ポリシー・ディスカッション・ペーパー(日本語)
• ポリシー・ディスカッション・ペーパー(英語)
• テクニカル・ペーパー(日本語)
• テクニカル・ペーパー(英語)
• ノンテクニカルサマリー
https://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/12j018.html


財政赤字拡大容認論を問う(上) 債務、コスト限定的で効果大
ピーターソン国際経済研究所 オリビエ・ブランシャール・シニア・フェロー 田代毅・客員研究員
経済教室 コラム(経済・金融)
2019/10/7付日本経済新聞 朝刊
保存 共有その他
ポイント
○国債金利が名目成長率を下回り前提変化
○政府支出は供給サイド強化のため活用を
○金利上昇時は財政・金融政策で対応可能
10月1日、安倍政権は消費税率を8%から10%へ引き上げた。筆者は消費税増税をすべきではないという立場だった。日本経済の現状からすると、たとえしばらくの間、公的債務残高の国内総生産(GDP)比率を下げられないにしても、巨額の財政赤字を維持することは十分に正当化できる。

その根…
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO50597290U9A001C1KE8000/

財政赤字拡大容認論を問う(中) 超低金利下でも維持不可能
星岳雄 東京大学教授
経済教室 コラム(経済・金融)
2019/10/8付日本経済新聞 朝刊
保存 共有その他
ポイント
○利子率が成長率を下回る状況は想定せず
○超低金利下でも基礎的財政赤字には限度
○財政健全化のための具体的計画作り急げ
2014年に伊藤隆敏氏(現米コロンビア大教授)と共著の論文で、日本国債の量が家計の保有する金融資産総額を上回ることで、10年以内に財政が破綻する危険性があると論じた。日本の国債はほとんど国内で消化されているので財政は心配ないとの見方に対し、限界があることを示した。

だが現在で…
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO50695290X01C19A0KE8000/


財政赤字拡大容認論を問う(下) 既に債務危機と現状認識を
植田健一 東京大学准教授
経済教室 コラム(経済・金融)
2019/10/9付日本経済新聞 朝刊
保存 共有その他
ポイント
○現状認識を間違うと奇異な政策も現実に
○国債の削減や高インフレは経済混乱招く
○他国の外需拡大政策に協力する必要なし
財政を巡り百家争鳴の状況だ。意見が割れる理由はロジックでなく、現状認識と目的にあると思われる。それらは往々にして明示されていないために、結論だけを見ると全く違うことを言っているように見える。

まず現状認識が重要だ。例えば第2次大戦末、負け戦を認めどう収束を図るかという作戦と、…
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO50740780Y9A001C1KE8000/
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/495.html

[自然災害22] アマゾン森林火災と地球温暖化 気候変動で慢性化した異常気象 米カリフォルニア州が非常事態宣言、山火事がワイン生産地に延焼「キンケード火災」制御不能 20万人避難命令、3万エーカー焼失
Tarcisio Schnaider / Shutterstock.com
2019.9.24 Tue

アマゾン森林火災と地球温暖化
気候変動で慢性化した異常気象

世界的にみると森林や植物などで形作られる熱帯雨林は、人類が大気中に放出する二酸化炭素の25-30%を吸収してきたと考えられ、しかも、アマゾンはそうした世界の熱帯雨林のほぼ半分を占有している。しかし、2019年のアマゾンでの森林火災によってすでに2億2千800万トンの二酸化炭素が大気中に排出されており、二酸化炭素吸収源としての熱帯雨林の本来の役割は大きく低下している。しかも、アマゾンの火災は世界中で続発する森林火災の一つに過ぎない。(チーザム)

気候変動に派生する異常気象が引き起こす災害への対応コストは膨れあがり、いまや短期的な緊急対応能力だけでなく、長期的な投資や経済成長も脅かされつつある。しかも、異常気象は1度きりの出来事ではなく、いまや慢性化しており、これを管理していくには、現在の政策決定者の気候変動に対する捉え方とはまったく異なるアプローチが必要になる。・・・異常気象が、一過性の風邪ではなく、慢性疾患化していることを認識した上で、それに即した計画で備える必要がある。(ゴードン、フリードマン)

多くの環境保護派は完全に失敗した過去のやり方で現在の問題に対処しようとしている。うまくアプローチできていない目標にこだわるのではなく、再生可能エネルギー、原子力、そして有望な新しい二酸化炭素回収テクノロジーを導入し、二酸化炭素排出量の削減努力をさらに強化すれば、たとえ気温上昇を2度以下に抑えられなくても、気候変動リスクは大幅に緩和できる。(ノードハウス)

CFR In Brief
アマゾン森林火災と地球温暖化
2019年10月号 アメリア・チーザム CFR.org エディトリアル・アシスタント


気候変動で慢性化した異常気象
―― そのダメージとコストに対処するには
2018年11月号 ケイト・ゴードン リッジ・レーン パートナー ジュリオ・フリードマン コロンビア大学グローバルエネルギー政策センター シニアリサーチフェロー


気候変動対策の不都合な真実
―― 破綻したアプローチを繰り返すな
2018年9月号 テッド・ノードハウス ブレイクスルー研究所 エグゼクティブ・ディレクター

https://www.foreignaffairsj.co.jp/focalpoints/2019-9-24-tue/

 


米カリフォルニア州が非常事態宣言、山火事がワイン生産地に延焼 「キンケード火災」制御不能 住民20万人に避難命令、3万エーカーが焼失
David R. Baker、Mark Chediak
2019年10月28日 15:37 JST
• ワイン生産地ソノマ郡の住民20万人に避難命令、3万エーカーが焼失
• 80棟近い建物と少なくとも1つのワイナリーが焼失、幹線道路も閉鎖
米カリフォルニア州北部の大規模な山火事「キンケード火災」が制御不能となる中、ニューサム州知事は27日、州全域に非常事態を宣言した。サンフランシスコ北部の有名なワイン生産地ソノマ郡の住民に避難命令が出されたほか、多くの住宅が焼失し、幹線道路が閉鎖されている。
  キンケード火災は電力会社PG&Eの送電線が23日夜に故障した後に発生。強風にあおられて火が燃え広がったソノマ郡では、住民約20万人が避難を余儀なくされ、80棟近い建物と少なくとも1つのワイナリーが火にのまれ、幹線道路101号線が閉鎖された。

ソノマ郡ヒールスバーグのソーダロック・ワイナリーで消火活動に当たる消防士(27日)
撮影:Phil Pacheco / Bloomberg
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ihOdFIB8SvaM/v0/-1x-1.jpg
  数マイル東では27日朝に別の火災が発生。州間高速道路80号線が閉鎖されたほか、クロケットの町に避難命令が出た。
  PG&Eは送電線からの発火を防ぐため91万8000の住宅と企業(約270万人に影響)を対象に計画停電を実施。エジソン・インターナショナル傘下のサザンカリフォルニア・エジソンは16万2000の顧客アカウントへの電力供給を停止すると警告している。
  キンケード火災により3万エーカー(約121.4平方キロメートル)が焼失。今のところ鎮火したのは10%にとどまっている。

ヒールスバーグを襲ったキンケード火災(27日)
写真家:Phil Pacheco / Bloomberg
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iDyzuKpgnBgw/v0/-1x-1.jpg
原題:
California in State of Emergency With Wine Country Fire Raging(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-28/Q02C02T0AFB501?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/772.html

[経世済民133] 中国の工業利益、9月も前年割れ−生産者デフレ加速響き5.3%減 香港、景気後退入り 米消費者マインド下方修正 増税対策の対象外の中間層の消費冷え込み、懸念する声も=西村再生相
中国の工業利益、9月も前年割れ−生産者デフレ加速響き5.3%減
Bloomberg News
2019年10月27日 12:45 JST
1−9月の工業利益は前年同期比2.1%減−統計局
工業製品価格の下落加速と売り上げの伸び鈍化を統計局は指摘
中国の工業利益は9月も前年割れとなった。国内経済の減速に加え、生産者物価の下落幅拡大が響いた。

  国家統計局が27日発表した9月の工業利益は前年同月比5.3%減の5756億元(約8兆8530億円)。1−9月では前年同期比2.1%減の4兆5900億元となった。

  9月の工業生産は持ち直したが、デフレ圧力の増大が企業の利益と債務返済能力にとって重しとなり続けている。

  統計局は発表資料で、「工業製品価格の下落加速と売り上げの伸び鈍化により9月の減少が大きくなった」とコメントした。

原題:China’s Industrial Profit Widens Drop on Economy, Deflation、China Sept. Industrial Companies’ Profit Falls 5.3% Y/y(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-27/Q00H6CT1UM0Z01?srnd=cojp-v2

 

ワールド2019年10月28日 / 14:33 / 4時間前更新
香港、第3四半期に景気後退入り 通年もプラス成長見込めず
Reuters Staff
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[香港 28日 ロイター] - 香港の陳茂波(ポール・チャン)財政官は27日、約5カ月にわたる反政府デモの影響で香港経済が第3・四半期にリセッション(景気後退)に陥ったと指摘した。2019年の成長率がプラスになる可能性は低いとの見方も示した。

陳氏はブログへの投稿で、一連のデモによる「経済への打撃は広範囲に及ぶ」とし、31日発表の第3・四半期の域内総生産(GDP)速報値は景気後退の定義である2四半期連続のマイナス成長になると明らかにした。

また、デモ発生前に政府が予想していた年間0─1%の成長を達成することは「極めて困難」とした。

6月に始まったデモは21週に及び、デモ隊は中国系ビジネスや地下鉄運営の香港鉄路(MTR)(0066.HK)を標的に妨害を繰り返している。MTRは過去数週間、通常より早く運行を終了、高級ショッピングモールから個人経営の店まで小売店が数日にわたって休業を強いられる事態も生じている。

また、10月の香港訪問客は50%近く減少し、観光客の落ち込みが加速。陳氏はこうした状況を「非常事態」と表現した。

香港当局は中小企業支援策を発表しているが、陳氏はこれらの措置について、経済への「圧力をわずかに軽減する」に過ぎないとの見方を示した。

その上で「市民が普通の生活を取り戻し、商工業が通常の業務を行えるようにすべきだ」と訴え、「理性的な対話の余地を広げる必要がある」と主張した。
https://jp.reuters.com/article/hongkong-protests-idJPKBN1X70D4


 


米ミシガン大消費者マインド指数、10月確定値は95.5に下方修正
William Edwards
2019年10月25日 23:07 JST 更新日時 2019年10月26日 1:30 JST
10月のミシガン大学消費者マインド指数(確定値)は、速報値から下方修正された。ただ前月からは上昇しており、製造業の弱さにもかかわらず、個人消費が米経済を引き続き支える可能性が示唆された。
キーポイント
• 10月のミシガン大消費者マインド指数(確定値)は95.5に上昇
o 10月速報値、および確定値のエコノミスト予想中央値はともに96だった
o 9月は93.2
• 10月の現況指数は113.2に上昇
• 期待指数は84.2に上昇
o 速報値の84.8からは下方修正

インサイト
• 5−10年先のインフレ期待は2.3%と、過去最低に並んだ。速報値の2.2%からは上昇した
• 1年先のインフレ期待は2.5%と、速報値と変わらず。前月の2.8%から低下
• 10月のミシガン大消費者マインド指数確定値は速報値から下方修正されたものの、なお3カ月ぶりの高水準。ただ通商対立が長期化し、世界的に景気の弱さが見られる中、経済見通しに対する米消費者心理がやや冷えていることも示された
• 家庭向け耐久消費財の購入環境に関する指数は、今年に入ってからの最高水準に一致
ミシガン大の見解
  消費者調査ディレクター、リチャード・カーティン氏(発表資料で):
  「消費者の関心は所得と雇用の伸びに集中しており、他のニュースはおおむね無視されている」
  「不確実性を生むさまざまな要因が間違いなく、消費者の楽観の広がりに対する潜在的な脅威となり続けるだろう」
• 統計表
原題:U.S. Consumer Sentiment Pares Gains as Economic Outlook Dims (1)(抜粋)
(詳細やミシガン大の見解を追加して更新します)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-25/PZXO9BT0AFBA01?srnd=cojp-v2


 

トップニュース2019年10月28日 / 18:23 / 19分前更新
増税対策の対象外の中間層の消費冷え込み、懸念する声も=西村再生相
Reuters Staff
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[東京 28日 ロイター] - 西村康稔経済再生相は28日の経済財政諮問会議で、消費増税前後の日本経済について、全体としては2014年の前回増税時と比べて影響は小さいとの認識を示す一方、増税対策の支援対象から外れる消費者に対する悪影響を懸念する声もあると指摘した。同会議後の記者会見で明らかにした。

西村再生相は同会議で「税率引き上げ前後の経済は、各種政策効果もあり、全体的には駆け込みや冷え込みは前回より小さく、影響は前回ほど大きくなく、消費の回復も早いのではないか」と発言。今後についても「ラグビー・ワールドカップや即位の礼による消費者心理の改善がある」と楽観的な見方を示した。

一方、低所得者層や子育て層と異なり、プレミアム商品券など増税対策の支援対象に含まれない「中間層の消費の冷え込みを懸念する声がある」と指摘したという。

その上で「米中貿易摩擦や欧州の政治情勢など経済の下振れリスクが大きく、海外需要などの先行きを不安視する見方も多い」と述べたことも明らかにした。

竹本能文
https://jp.reuters.com/article/japan-tax-idJPKBN1X70S3
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/499.html

[国際27] 米石油大手がシリア油田操業も、トランプ大統領が言及 原油先物はしっかり、ロシアが協調減産の継続確認 イラン、原油が195ドルに上昇なら来年の財政赤字解消可能=IMF ロシア中銀が0.5ポイント利下げ、2年ぶり大幅−追加緩和も示唆
ワールド2019年10月28日 / 08:32 / 10時間前更新
米石油大手がシリア油田操業も、トランプ大統領が言及
Reuters Staff
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[27日 ロイター] - トランプ米大統領は27日、エクソンモービル(XOM.N)を含む米石油メジャーにシリアで油田操業を担わせる可能性に言及した。これについて法律やエネルギー業界の専門家からは違法で非倫理的などという批判の声が上がっている。

トランプ氏はシリアでの米軍特別部隊による軍事作戦に関する記者会見で「エクソンモービルあるいは他の米国の偉大な企業にシリアで適切な形で事業を担わせ、富を拡散させる可能性を念頭に置いている」と表明した。米軍の軍事作戦によって、過激派組織「イスラム国」(IS)の最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者がシリア北部で死亡した。[nL4N27C0D1]

中東に展開するエクソンモービルとシェブロン(CVX.N)はトランプ氏の発言についてコメントを控えた。

米エモリー大学ロースクールのロウリー・ブランク教授は「国際法はまさにこのような搾取の阻止を狙っている」と指摘。

元米中央情報局(CIA)分析官で米有力シンクタンク、ブルッキングス研究所のシニアフェロー、ブルース・リーデル氏は「法的に疑わしい動きというだけでなく、中東地域や世界に対し、米国が石油を盗むつもりだというメッセージを送ることになる」と批判した。

米ブラウン大学の政治・国際関係学准教授、ジェフ・コルガン氏は「米国がエクソンモービルなどの米企業を通じて『石油を手中に収める』というのは非倫理的で、違法の可能性もある」と分析。また、米企業はシリアで操業するのに「数多くの実務上の課題」に直面するだろうと予想した。

オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は米NBCニュースの番組で、シリアの油田を守るためには米軍の駐留が必要だと述べ、油田収入についても米国に発言権があって然るべきとの考えを示唆した。

「われわれは油田の管理を継続するため一定の期間シリアに駐留する考えで、ISが再び台頭することがないよう監視し、クルド人勢力がシリアの油田収入の一部を得られるよう見守る必要がある」と述べた。
https://jp.reuters.com/article/syria-oil-us-idJPKBN1X60UI

 
ビジネス2019年10月28日 / 12:02 / 7時間前更新
原油先物はしっかり、ロシアが協調減産の継続確認
Reuters Staff
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[東京 28日 ロイター] - 28日の原油先物価格は、引き続きしっかり。ロシアが石油輸出国機構(OPEC)との協力を続け、原油生産を管理し、価格を下支えする方針を確認したことから、先週の堅調を維持している。

0055GMT(日本時間午前9時55分)時点で、ブレント先物LCOc1は0.01ドル安の1バレル=62.01ドル。先週は4%超上昇し、9月20日以来の大幅な上げを記録した。 米WTICLc1は0.04ドル安の56.62ドル。先週は5%超上昇し、同様に9月20日以来の大幅上昇となった。 ロシアのエネルギー省は25日、サウジアラビアやOPEC、OPEC非加盟国との協力を続け、市場の安定を図る方針だと明らかにした。 前日には、ロシア国営石油会社ロスネフチ(ROSN.MM)のイーゴリ・セチン最高経営責任者(ECO)が、サウジの石油施設への攻撃で、信頼できる原油供給国として同国の立場に疑念が生じていると述べていた。
https://jp.reuters.com/article/global-oil-idJPKBN1X704S

 
ビジネス2019年10月28日 / 16:13 / 3時間前更新
イラン、原油が195ドルに上昇なら来年の財政赤字解消可能=IMF
Reuters Staff
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[ドバイ 28日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は28日付の報告書で、イランが来年、財政赤字を解消するには、原油価格が1バレル=194.6ドルまで上昇する必要があるとの見方を示した。

報告書によると、イランは米制裁強化を受け、今年の財政赤字が国内総生産(GDP)比で4.5%に、来年は5.1%に膨らむ見通し。

北海ブレント先物LCOc1は前週の取引を62ドルを若干上回る水準で終了している。

イランは2015年に、欧米の制裁解除と引き換えにイランが核開発を制限する内容の核合意を米欧など6カ国と締結。これを受けて原油収入が大幅に増えた。ただ、トランプ米大統領は昨年、核合意から離脱し、その後に対イラン制裁を大幅に強化した。

IMFはイラン経済が今年、9.5%のマイナス成長になると予想。従来はマイナス6%成長を見込んでいた。ただ、来年はGDPの実質成長率が横ばいになるまで回復するとみている。

IMFのジハド・アズール中東・中央アジア局長はロイターに対し、「昨年再開され、今年強化された制裁は来年には、追加的影響はない見通しだ」と説明した。
https://jp.reuters.com/article/iran-oil-imf-idJPKBN1X70H4


ロシア中銀が0.5ポイント利下げ、2年ぶり大幅−追加緩和も示唆
Anna Andrianova
2019年10月25日 20:43 JST
• 1週間物レポ金利を7%から6.5%に引き下げ
• 今後数回の会合の1回で一段の利下げの必要性について検討する
ロシア中央銀行は25日、0.5ポイントの利下げを発表した。インフレ率が4%の目標を大きく下回る兆候を受けて利下げペースを加速させ、追加緩和の可能性も示唆した。
  中銀は政策金利の1週間物レポ金利を7%から6.5%に引き下げた。0.5ポイントの幅の利下げはほぼ2年ぶり。ブルームバーグのエコノミスト調査では40人中18人が0.5ポイント利下げを予想、残りはより小幅な利下げを見込んでいた。
  中銀は声明で、「短期的にはインフレ率の低下リスクが上昇リスクを上回る」とし、「今後数回の会合の1回で、一段の利下げの必要性について検討する」と表明した。
  中銀は年末のインフレ率予想を3.2−3.7%と、4−4.5%から下方修正。2020年1−3月には3%を「小幅に」下回る水準にまで低下する可能性があり、同年末には3.5−4%になるとの見通しも示した。
How Low Can You Go?
Russia's inflation is at risk of going under the target for prolonged period

Source: Federal Statistics Service, Forecast by Bloomberg Economics
原題:Russia Delivers Biggest Rate Cut Since 2017, Signals More Easing(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-25/PZXGOE6S972A01?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/621.html

[経世済民133] 日銀による追加緩和、その課題と枠組み再調整の行方 ドラギECB総裁、在任中最後の理事会に見る金融緩和策の「有効性と限界」 日経平均は6連騰、米中協議進展で輸出関連高い テスラ決算、経費節減を実現 ようやく朗報 ECBウンシュ氏:政策の副作用顕著ならガイダンスの免責条項検討も

為替フォーラム2019年10月28日 / 16:13 / 2時間前更新

日銀による追加緩和、その課題と枠組み再調整の行方

井上哲也 野村総合研究所 金融イノベーション研究部主席研究員
4 分で読む

[東京 28日] - 今月末に開催される金融政策決定会合で、日銀がマイナス金利の深掘りによる追加緩和に踏み切るのではないかとの見方が根強いようだ。

景気は力強さを欠くといっても、消費は堅調であり、企業も輸出や生産に減速がみられるものの、設備投資への前向きな姿勢は失われていない。焦点である海外経済の先行きの不透明性も、米中の貿易摩擦やブレグジットを展望すると、夏ごろに比べて不透明性が低下している。物価の基調にも大きな変化はみられず、日銀は景気や物価の見通しを概ね維持するとみられる。

そうした環境にもかかわらず、追加緩和への思惑がみられる最大の理由は、日銀によるコミュニケーションにある。

黒田東彦総裁は、9月中旬以降、様々なインタビューを通じて、マイナス金利政策には強化の余地があることを強調している。この点が、10月の金融政策決定会合における経済情勢の再点検についての予告と結びつけられ、市場では経済見通しの下方修正と追加緩和がセットで実現するとの見方につながったようだ。

<コミュニケーションの背景>

黒田総裁が、ここへ来てマイナス金利の深掘りに言及していることには、いくつかの理由が考えられる。

第1に追加緩和への否定的な見方を払拭(ふっしょく)することである。筆者が米欧の市場関係者と面談した際にも、世界経済が減速した場合、主要国の中央銀行の中では政策対応の余地の面で、日銀が最も難しい状況に陥るとの見方が示されることが多かった。

加えて、経済や政策の環境の違いを無視した議論ではあるが、FRB(米連邦準備理事会)やECB(欧州中銀)が金融緩和に動く中で、日銀は政策対応に消極的との印象もあるようだ。

そうした理解が市場で共有されてしまうと、内外経済に関する下方リスクが顕現化した場合、円高圧力や資産価格への下落圧力につながりやすい。その意味で、日銀は追加緩和の余地や実際の発動に向けた柔軟なスタンスを強調することで、市場の理解の修正を図ろうとしていると理解できる。

第2はイールドカーブのスティープ化の意図を示すことである。実際、日銀は国債の買い入れ額の引き下げを継続しているだけでなく、特に長期─超長期ゾーンの買い入れ抑制を進めている。マイナス金利の深掘りによって、短期ゾーンの金利を引き下げることと合わせれば、イールドカーブ全体をスティープ化させる意図が推察される。

この点は、黒田総裁が最近強調している長期金利が低過ぎることに伴う副作用(年金などの利回り低下による家計マインドへの悪影響)への対策という面があろう。

また、スティープ化が鮮明になれば、長短金利差による利ザヤの拡大を通じて金融機関の収益にも好影響が及ぶ。低金利環境に伴う収益面での負担を軽減できれば、金融仲介機能への副作用を抑制することも期待できる。

その意味で、スティープ化は金融緩和の副作用対策でもあり、副作用への配慮が日銀による追加緩和の制約になるとの思惑をぬぐい去ることにもつながる。

<日銀の課題>

その一方で、日銀の対応には課題も少なくなくない。

まず、これが金融緩和と整合的かという点である。欧米の市場参加者からは、日銀は強力な金融緩和を維持すると言いつつ、いわば「逆ツイストオペ」を行っているとの見方が示されることも少なくない。

そうであれば、日銀による一連のコミュニケーションは、追加緩和というより「政策の再調整」という意味合いを持つことになる。

今夏に急低下した長期ゾーンの金利水準を市場にストレスのない形で調整できるのであれば、将来の低下余地を確保する点で意味を持つと思う。

実際にマイナス金利を深掘りすれば、将来にわたる政策金利の予想経路が変化することで、長期金利にも当然に低下圧力がかかるからである。

そのような意義を対外的にどう示すかという課題は、コミュニケーションのやり方だけにとどまらない。なぜなら、イールドカーブの形状全体をどう運営するのかは、現在のイールドカーブ・コントロールの下でも明らかではないからである。

日銀が明示的に目標を置いているのは、オーバーナイトと10年の金利だけであり、それ以外は市場の動きに委ねることになっている。しかし、実際は超長期ゾーンの金利も10年の金利と密接な関係を有するし、今回のように過度な低下は避けたいという意向を示唆するのであれば、超長期ゾーンの水準が暗黙の政策目標になっていることになる。

一方で、上記のように国債の買い入れ額の調整などによって、イールドカーブ全体の形状に実質的な働きかけを行っているとすれば、政策運営のガバナンスの点でも気になる面が残る。

<政策の再調整>

政策の再調整という観点からこれらの要素を考えると、イールドカーブ・コントロールにおける目標金利を10年から5年といった中期にシフトさせることが考えられる。もともと、2016年の「総括的検証」の中で、日銀は実体経済への波及効果を有するのは、こうした中期ゾーンであることを確認していたはずである。

一方で、残念ながら超長期ゾーンの金利が低下しても、米国のように住宅投資が活発化するという効果は期待しにくい。

同時に、長期─超長期のゾーンについては、国債買い入れの柔軟性を高めることで市場の動きに委ねる姿勢をより明確にすることが考えられる。少なくとも当面を展望すれば、このゾーンの金利に低下圧力がかかるのは、今夏のように海外経済の不透明性が高まる局面であり、それは日本にとっても金利の低下が必要な局面である。

もちろん、日銀がそうしたスタンスに円滑に移行するには、機関投資家や財政当局との間で、このゾーンの国債の需給について適切な理解を持つことが必要であるが、これは現在の対話の枠組みの下で十分に可能と思われる。

他方、マイナス金利の深掘りを行う際には、金融機関に対する副作用にさらに配慮することも重要である。日銀は最近公表した「金融システムレポート」で、金融機関に対して様々な収益改善策を促しているが、その実現には時間を要する。

金融緩和の重要な波及経路である金融仲介を維持する上でも、また、銀行が預金関連の手数料によってコストを転嫁し、結果的に家計のマインドに悪影響が及ぶ事態を避ける上でも、少なくとも一時的に収益面への影響を軽減する必要があり、イールドカーブのスティープ化だけでなく、当座預金の階層構造の運営について、見直しを図るといった対応も必要となろう。

いずれにしても、金融緩和は持久戦となっているだけに、政策運営に関する日銀のコミュニケーションや国債買い入れの変化が、最終的にはこうした枠組みの再調整につながることを期待したい。

*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

井上哲也氏
*井上哲也氏は、野村総合研究所の金融イノベーション研究部主席研究員。1985年東京大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。米イエール大学大学院留学(経済学修士)、福井俊彦副総裁(当時)秘書、植田和男審議委員(当時)スタッフなどを経て、2004年に金融市場局外国為替平衡操作担当総括、2006年に金融市場局参事役(国際金融為替市場)に就任。2008年に日銀を退職し、野村総合研究所に入社。主な著書に「異次元緩和―黒田日銀の戦略を読み解く」(日本経済新聞出版社、2013年)など。 

(編集:田巻一彦)
https://jp.reuters.com/article/column-tetsuya-inoue-idJPKBN1X70GJ


ドラギECB総裁、在任中最後の理事会に見る金融緩和策の「有効性と限界」
土田陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査本部 研究員

政策・マーケット DOL特別レポート
2019.10.28 15:15


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退任するドラギECB総裁が行ってきた大胆な金融緩和は、欧州にとってどんな有効性と限界を示したのだろうか Photo:REUTERS/AFLO
大胆な金融緩和に努めた
ドラギECB総裁が退任へ
 欧州中央銀行は10月24日に定例の金融政策理事会を開催し、前回9月12日の理事会での決定通り、11月から月額200億ユーロのペースで資産買取プログラム(APP)を再開することを確認したほか、政策金利を既往の水準(貸出金利は0.25%、主要金利は0.00%、預金金利は▲0.50%)に据え置くことを発表した。

 10月末に任期を迎えるドラギ総裁にとって、今回は最後の理事会であった。11月から後任を務める国際通貨基金(IMF)のラガルド元専務理事も、10月の理事会には出席した模様だ。ドラギ総裁の就任は今から8年前の2011年11月、当時の欧州は債務危機に喘いでおり、ドラギECBは非常に困難な局面での船出を余儀なくされた。

 ドラギ総裁の任期を改めて振り返ると、最大の功績は大胆な金融緩和に努めて欧州債務危機の収束を促したことに他ならない。12年7月、ドラギ総裁は講演で「ECBはユーロを守るためにあらゆる手段を準備している」と発言し、金融緩和の大幅な強化を示唆した。この発言以降、実際に債務危機は収束に向かうことになる。

 その前からドラギ総裁はLTROと呼ばれる長期の資金供給オペレーションを2回(11年12月と12年2月)行い、債務危機に陥った諸国の銀行の資金繰りを支えた。14年6月には主要中銀で初となるマイナス金利政策を実行し、15年3月にはドイツなど健全財政志向が強い国の反対を押し切って、量的緩和に相当するAPPを導入した。

欧州景気の復調も支えた
ドラギECBによる金融緩和
 その後もドラギ総裁は、LTROやマイナス金利、APPのそれぞれを局面に応じて拡大することで、金融緩和の強化に努めてきた。債務危機以降、財政健全化に努める欧州諸国は緊縮に努めざるを得なかった。各国政府による財政拡張が望めない一方で、ドラギECBによる金融緩和が欧州景気の復調を支えた側面は大きいと言えよう。

 ドラギ総裁が自らの功績を語るとき、度々言及されるのが雇用の増加だ。債務危機によってユーロ圏19ヵ国では500万人近い雇用が失われたが、足元の雇用者数は約1億6000万人と、最悪期であった2013年中頃に比べると1000万人近く増えている。失業率も7%台半ばまで低下し、債務危機前の水準に近付いている。

 物価の安定に関しては、目標に定める2%に届いた局面は限定的であった。19年に入ると、景気の減速に伴いディスインフレの傾向が鮮明になっている。しかしながら、マイナス金利やAPPを導入する論拠となったデフレ懸念の払しょくには少なくとも成功しており、その意味では一定の成果を見たとも言えるだろう。

 欧州景気は2014年頃から持ち直し、ユーロ圏19ヵ国の実質経済成長率は2017年に2.5%増の高水準を記録した。この間、ドラギ総裁は大胆な金融緩和の手仕舞いを模索していたが、19年の成長率は1%程度にまで落ち込む見通しと、欧州景気は減速が鮮明となり、9月の理事会で再び緩和の拡大に舵を切ったのである。

財政拡張への期待に言及し
金融緩和の限界を暗示
 世界的な金利低下の流れもあり、欧州の長期金利も軒並み低下している。そうした環境の下で金融緩和を強化する合理性は確かに見出しにくい。にもかかわらず、ドラギ総裁がECB内の反対を押し切って緩和を強化した理由の1つに、財政拡張を渋る欧州連合(EU)の執行部に対しプレッシャーを与える意図があったと考えられる。

 ドラギ総裁は9月の理事会後の記者会見で、常態化している低金利を脱するためには財政拡張が必要であるという認識を初めて表明した。それ以降も、たとえば10月1日のアテネアカデミーでの講演で、財政拡張への期待を口にしている。中銀としては、金融緩和に関してはもうできる限りの術は尽くしたというところだ。

 確かに景気を刺激するという観点では、ドイツを中心に長期金利が低下し切ってしまっている以上、金融緩和はもはや限界に直面している。財政拡張によって需要が創出されると同時に、金利が多少なりとも上昇するなら、金融緩和もある程度は力を発揮して景気に浮揚効果が生じると見込まれる。

 債務危機を経験した欧州諸国にとって、財政再建は止むを得ない選択であり、ECBも金融緩和で低金利環境を演出してそれを支援してきた。一定の財政再建は達成されたのだから、いい加減、金融政策にばかり負荷をかけるのは止めて欲しいという願いは、ECBだけではなく低金利に苦慮する欧州の金融業界に共通した認識だろう。

ラガルド新体制は
ドラギ総裁以上の苦悩を味わうか
 冒頭で述べたように、ドラギ総裁が就任した2011年11月は欧州が債務危機の真っただ中にあった。ドラギ総裁でなくとも、ECBは大規模な金融緩和に努めざるを得なかったことだろう。もっともハト派であったドラギ総裁だからこそ、ECBは矢継ぎ早に金融緩和を強化することができた。まさに「ドラギ・マジック」である。

 しかしながら中央銀行の責務は、景気や物価の安定だけに置かれているだけではなく、金融の安定を維持することにもある。将来的な金融不安が発生する可能性がある中で、9月の追加緩和は残り少ない弾を景気下支えや財政拡張への期待のためだけに用いてよいのかという、政策運営上の疑問を残す決定だった。

 事実、複数の関係者の証言によると、9月理事会での追加緩和の決定に関しては、ECB内でも反対の意見が少なくなかったようだ。ドラギ総裁はそうした反対意見を押し切って、APPの再開やマイナス金利の深掘りを決めたことになり、後任のラガルド体制に禍根を残すものであったと言えよう。

 結果として、緩和からの出口も遠のいてしまった。撤退戦略を描けないまま後任にバトンを譲ることはドラギ総裁の本意ではなかっただろうが、無責任と評されても致し方がないところではある。債務危機の克服に貢献した功労者であるドラギ総裁の退任が、必ずしも「勇退」とならないところに、現代の金融政策が抱えるジレンマが読み取れる。

(三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査本部 研究員 土田陽介)


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“合意ある”ブレグジットでも「関税の壁」復活の懸念は消えず
田中 理
https://diamond.jp/articles/-/218777?page=3


 

 


 
日経平均は6連騰、米中協議進展で輸出関連高い−食品など内需は安い
牧綾香
2019年10月28日 8:09 JST 更新日時 2019年10月28日 15:50 JST
• 米中の通商交渉、さらに進展と米USTRが声明
• EUは英離脱期限の3カ月延長を協議へ、TOPIXは小安い
28日の東京株式市場では日経平均株価が6連騰。米中通商協議の進展や英国の合意なきEU離脱への懸念が後退し、世界景気の先行きに対する厳しい見方が和らいだ。電機や機械などの輸出関連が買われ、市況高から非鉄金属も上昇。食品や陸運など内需関連は下落。
• 日経平均株価は前週末比67円46銭(0.3%)高の2万2867円27銭−昨年10月10日以来1年ぶり高値
• TOPIXは同0.01ポイント安の1648.43
〈きょうのポイント〉
• 米中通商協議の第1段階で進展、仕上げに近づく−米通商代表部(USTR)声明
• EUは英離脱期限の来年1月31日までの延長を検討
• 米原油先物は0.8%高の1バレル=56.66ドル、銅などLME金属市況も高い

東証
Photographer: Toru Hanai/Bloomberg
  岩井コスモ証券投資調査部の有沢正一部長は、「米中協議に対する期待などで景気に対する過度に悲観的な見方が後退した。日本株にプラスであるものの、利益確定の売り圧力もある」と述べた。今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げを「市場は織り込んだ。企業決算を見ながらの循環物色で、指数は横ばい圏で推移する」と同氏はみている。
  TOPIXは前日終値付近で終始小動き、日経平均も日中値幅が65円65銭にとどまり、相場は明確な方向性が出なかった。
  米中協議への期待で25日の米10年債が下落。東海東京調査センターの仙石誠シニアエクイティマーケットアナリストは「リスクオンの相場で景気敏感株が買われ、内需ディフェンシブ株が売られる局面」と説明した。
• 東証33業種はゴム製品や非鉄金属、電機、証券・商品先物取引、ガラス・土石製品、鉄鋼が上昇
• 保険や食料品、不動産、建設、陸運は下落

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ikgqTmOP311Q/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/576x-1.png
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-27/PZYXQ7DWLU6E01


 

コラム2019年10月24日 / 11:43 / 1日前

 テスラ決算、経費節減を実現 ようやく朗報
Antony Currie
2 分で読む

[ニューヨーク 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米電気自動車(EV)メーカー、テスラ(TSLA.O)の株主にようやく朗報がもたらされた。23日の株式市場引け後に発表された第3・四半期決算は、純損益が1億4300万ドルの黒字。小幅とはいえ、黒字は予想外だ。売り上げの急拡大が黒字の要因だった1年前と異なり、今回はコスト削減が奏功した。これは歓迎すべき変化と言える。

一般管理費と販売費がそろって減少し、前期に1億1700万ドルに上ったリストラ費用はゼロになった。不振の太陽光発電部門、ソーラーシティの経費が全般に好転したことも勘案すると、テスラは約4億5000万ドルの余資を得た格好。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が約束し続けてきた経費節減が、ついに実現し始めたのを見るのは心強い。

経費節減の実行は、必要でもあった。第3・四半期の自動車販売台数は過去最高だったが、売上高の大幅増加には結びつかず、売上高は前期比で微減、好調だった前年同期に比べると12%減少している。価格の安いセダン「モデル3」の納車が増えたことが原因だ。

テスラの成功の鍵は今、1桁台前半の伸びに減速した売り上げを再度てこ入れするとともに、経費管理を続けることになった。加えて、経費を節減しても、安全性と品質の面で妥協しないことも重要だ。これらの問題は同社をここ数年間悩ませてきた。またマスク氏はソーシャルメディア上でおとなしく振舞うことを学んだようで、この新たな習慣も続けると良いだろう。

テスラ株は時間外取引で約20%も跳ね上がっており、投資家はマスク氏がついに良い軌道に乗ったとみているようだ。楽観派はこれまで幾度も失望させられてきた。彼ら彼女らが正しかったと証明できるのはマスク氏だけだ。

●背景となるニュース

*テスラが23日発表した第3・四半期決算は、株主に帰属する利益が1億4300万ドル。希釈化後1株損益は0.78ドルの黒字。リフィニティブがまとめた予想平均によると、セルサイドアナリストは0.42ドルの赤字を予想していた。売上高は63億ドルで、アナリスト予想とほぼ一致した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/tesla-breakingviews-idJPKBN1X306K


ECBウンシュ氏:政策の副作用顕著ならガイダンスの免責条項検討も
Piotr Skolimowski、Jana Randow
2019年10月28日 10:08 JST

9月の決定「全体」支持したメンバーの正しさをデータ悪化が裏付け
政策の副作用に注意を払い、プロポーショナリティーを検証する必要

欧州中央銀行(ECB)の政策委員会メンバー、ベルギー国立銀行(中銀)のウンシュ総裁は、利下げと量的緩和(QE)再開を決定した9月12日の政策委の決定を擁護し、「全体」を支持したメンバーの正しさが、その後のデータ悪化で裏付けられたと主張した。ただその一方で、金融刺激策の追加投入については、利益が減少しつつある点を指摘し、期待を弱める発言を行った。

relates to ECBウンシュ氏:政策の副作用顕著ならガイダンスの免責条項検討も
ベルギー国立銀行のウンシュ総裁出典:ECB
  ウンシュ総裁はワシントンでのブルームバーグとのインタビューで、「われわれの政策の副作用に注意を払い、われわれが行っていることのプロポーショナリティー(均整)を検証すべきだ。副作用が顕著になるような場合には、フォワードガイダンスについて何らかの免責条項を検討する必要があるかもしれない。だが、まだその状況に至っていないのは明らかだ」と語った。
 

原題:ECB’s Wunsch Suggests Escape Clause If Stimulus Causes Damage(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-28/Q0236BT1UM1001?srnd=cojp-v2


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/501.html

[経世済民133] 少子化のペースが速すぎる「日本消滅」を回避せよ 日本と中国と韓国が直面する「少子化」、特に深刻なのは 金融・財政政策の「日本化」傾向に違和感−白川前日銀総裁 10月も低迷続く中国経済 韓国経済に潜む危機、高水準の家計債務は韓国銀行のアキレス腱
少子化のペースが速すぎる。「日本消滅」を回避せよ


 現行の少子化対策は手緩い、思い切った対策はこれだ
2019.10.28(月)
朝比奈 一郎
政治 時事・社会

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(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO)

 衝撃的な予想が公表されました。今年、出生数が90万人を割りそうだというのです。

 厚労省の人口動態推計速報によると、今年1月から7月までの出生数合計が51万8590人で、このペースでいくと今年1年の出生数は90万人を割ることになりそうです。

 私の生年である1973年に約210万人だった出生数が半分以下の100万人の大台を割ったのが2016年。それからわずか3年で90万人を割るという、政府の予想を大幅に超えるハイペースでの減少です。出生数がこの調子で下がり続ければ、極論ですが、あと30年もたたないうちに、日本はほぼ新生児のいない国になってしまうかもしれません。

もはや少子化対策は日本の最優先課題
 人口が増加するためには、合計特殊出生率(一人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに産む子どもの数の平均)が2.08以上なければならないとされています。ここでは分かりやすくするために、2以上としましょう。夫婦など男女のカップルで子どもを2人以上もうけなければ、将来的に人口が減っていくということは直感的に分かると思います。

 ところが2018年の合計特殊出生率は1.42しかなく、こちらも今年は減ると予測されています。これでは日本の人口は減っていく一方です。

 政府も手をこまねいているわけではありません。この状況を何とか打開しようと、あの手この手を考えています。この10月に実施された消費増税にしても、安倍政権はその眼目の一つとして、まさに子育て支援を挙げているほどです。具体的には増税によって増えた財源を、幼児教育の無償化、待機児童解消、結婚支援や不妊治療支援などにあてるとされています。そもそも安倍政権が2015年に公表している「新・三本の矢」の政策の一つが、「夢をつむぐ子育て支援」で、そこではまさに合計特殊出生率を1.8まで引き上げることを目標にしています(それが実現できても人口は減り続けるわけですが)。

80年後、日本は人口3000万人台の国に…
このように政府も少子化対策についていろいろ頑張ってはいるのですが、正直、効果は出ていません。合計特殊出生率の目標である「1.8」についても、最近はほとんど言及されることもなくなりました。数字は逆に下がってきているのが実態です。
 逆に10月に誕生した安倍改造内閣で最近クローズアップされているのは、「全世代型社会保障」ですが、その中身は70歳まで働けるようにする環境整備や、現在、職に就いている高齢者への支給年金が減らされる月収の基準を47万円以上から月収62万円以上に引き上げて、できるだけ働く高齢者を増やすといった、どちらかというと高齢者向けの対策が取り沙汰されています。少子化対策、子ども向け対策、若者世代向け対策は「もう終わった」とばかりに後回しにされている印象です。
 これでは日本の将来が本当に心配です。今、かなり思い切った少子化対策をしないと、極端な話、日本は消えてなくなってしまうかも知れません。実はこれは、どんな経済対策、どんな安全保障対策と比べても喫緊の課題だと思うのです。
80年後、日本は人口3000万人台の国に
 日本の人口推移を長期のスパンで眺めてみると、明治維新の頃は3300万人くらいだったものが、その後急激に増え、1億3000万人近くになりました。ところが今後の推移については、低位推計だと2100年ごろには明治維新当時の水準(3000万人台)に戻ってしまうことになります。80年後には、日本の人口がそれなりの確率で3000万人台になってしまうのです。ついこの間まで1億3000万人近くいたわけですから、わずか100年ほどの間にその大半の1億人が消えてしまう計算です。
【図1】: 日本の人口推移(超長期)<出典:総務省「国勢調査報告」、同「人口推計年報」、同「平成12年及び17年国勢調査結果による補間推計人口」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)」、国土庁「日本列島における人口分布の長期時系列分析」(1974年)をもとに、国土交通省国土計画局作成>
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 西暦2100年に恐らく私は生きていませんが、私の子どもたちの世代は十分生きている可能性があります。彼らが生きているうちに、人口3000万人台の日本が出現する可能性があるわけです。これは絵空事ではなく、かなり現実的なシナリオなのです。
もう「金銭的インセンティブ」で出産を促すし…
 図2を見てください。赤い線で示された出生数の推移を詳しく見てみると、2005年に合計特殊出生率は1.26の史上最低の数字をマークしました。その後、若干ですが、数字が少し盛り返したものの、後述しますが、このままだと再び減少していくと言われています。
【図2】:出生数及び合計特殊出生率の年次推移<出典:令和元年版 少子化社会対策白書>
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 出生率の若干の上昇に伴い、出生数も一時は若干上向いたのですが、その後はじりじり下がり続け、冒頭で触れたように、今年はついに90万人を割りそうです。一時的に出生数が増えていた時期があったのは、そこがちょうど団塊ジュニア世代が出産適齢期だったからです。私はまさにその世代にあたります。先述のとおり、同級生が210万人ですから、単純に言えば女性100万人以上いる世代です。その私は現在46歳。さすがに同年代の女性で出産する人は少なくなってきました。これからさらに、このボリュームゾーンの女性が子どもを産まなくなってきますので、合計特殊出生率も、全体の出生数も放っておくと下がり続けることが予想されます。
 これは、日本にとってかなり深刻な問題です。
もう「金銭的インセンティブ」で出産を促すしかない
 なぜ日本ではこんなに急激に出生数が減ってきたのでしょうか。さまざまな要因がありますが、私が注目している要因の一つが、「見合い結婚」の激減です。
 日本では「男性が草食化したことが未婚者の増加、ひいては出生率の低下につながっている」と説明されることもあります。もちろんそうした説明にも首肯できる部分がありますが、実態的には、恋愛結婚の数は1970年代あたりから55〜65万件の間を推移していてあまり減少していません。国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、一方で、かつては結婚の主流のスタイルだった「見合い結婚」が減っていき、特に1970年代に、それまでの40〜50万件から、大きく落ち込みだしていることが分かります(現在は4万件以下)。
 昔は、出会いの機会がない独身者に、職場の上司や親せき、周囲の世話焼きの人々が、「あの人はどうだ」「こういう人はどうか」と、適齢期の異性を紹介してくれました。そのお見合いのシステムはどんどん細り、いまは結婚全体の数%にまで落ち込んでいるのです。
【図3】:結婚年次別にみた、恋愛結婚・見合い結婚構成の推移<出典:国立社会保障・人口問題研究所 第15回出生動向基本調査>
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 例えばフランスなどでは、結婚しないカップルが産む子ども、いわゆる婚外子が出生数全体の半数以上になっていて、これが出生数を押し上げる効果を発揮しています。フランスの場合、カップルが入籍という手続きを取らずに共同生活しながら子どもを育てる、というスタイルが公式な制度としても確立しています。
 現代の日本では価値観も制度もそこまで達していません。今でも多くの人が想定しているのは、「結婚して出産」というスタイルです。順序として、「子どもが出来たから結婚」という、いわゆる「でき婚」は増えていますが、それでも「結婚」が出産の前提となっています。ということは、日本で少子化対策を打ち出す場合、結婚と出産をセットで考える必要があります。
「理想の子どもの数」と実際の「出生率」の差…
 政府も、結婚相手紹介事業に乗り出しはじめ、例えば、各都道府県が手掛けている結婚相手紹介事業に交付金を出すなどしていますが、お世話焼きが激減している中、かつての仲介機能を役所や民間企業が代替するだけでは、十分な対策とは言えません。
 もちろん、こうした地道な努力も必要ですが、私は現在の少子化の急ピッチな進展を見ていると、もっと思い切って大胆な手を打たなくてはならない時期に来ていると思うのです。
 では、どうすればよいのか? はっきり言えば、もう「金銭的インセンティブ」しかないと思うのです。
「理想の子どもの数」と実際の「出生率」の差はなぜ生じる?
 結婚したらどれくらい子どもが欲しいかという、理想の子どもの数を夫婦に訪ねてみると、年々その数は減少傾向にあるものの、2002年の調査でも2.56人、2015年でも2.32人となっています。要するに平均値でも2人以上は欲しいと考えているわけです。ところが実際の出生率は1.42になっている。この差はどんな原因から生じているのでしょうか。
【図4】: 平均理想子供数と平均予定子供数の推移<出典:平成30年版 少子化社会対策白書>
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 実はその調査もあります。聞いてみると、子どもを持たない理由の中で圧倒的に多いのは、「費用」の問題なのです。「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」子どもを持たないというのです。であるならば、その費用負担を軽くしてあげれば、子どもを持つ夫婦が増え、すでに子どもを持っている夫婦もさらに多くの子どもを持つようになる可能性は極めて高いのです。
【図5】: 妻の年齢別にみた、理想の子供数を持たない理由<出典:平成30年版 少子化社会対策白書>
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 もちろん安倍政権も「教育無償化」と言ってそこにサポートする姿勢を見せています。しかし、現在の危機的状況を鑑みれば、これは手ぬるいと言わざるを得ません。もっと直接的に、子どもを生んだ世帯にドーンとお金を支給すべきだと思うのです。自治体によっては子どもが生まれたらその親に一時金を配っていますが、まずはこれをさらに思い切って出すのです。
財源は捻出できる…
 私が代表を務める青山社中でもこの件について試算したことがあります。2015年、まだ毎年子どもが100万人生まれる前提で計算したものですが、目標は「出生率を2以上」にすることですから、第一子、第二子が生まれたらそれぞれ100万円、そして第三子が生まれたら300万円を配るというプランを実行したとします(第四子以降も100万円前提)。するとかかる予算は年間1兆2000億円ほどです。日本の国家予算はいまや100兆円規模ですから、国家的課題であれば、そのくらいは出せるはずです。(とはいえ、財源案については後述) なお、北海道福島町や福島県矢祭町など、自治体レベルでは第3子に100万円以上の祝い金を給付しているところは既にいくつか存在します。
 さらに、教育を全部無償にしたらどれくらいかかるか、という試算もしたことがあります。すなわち、学校教育費・給食費以外の、塾代等の平均費用(学校外活動費の平均費用)として、小学生一人につき年額で21万円、中学生一人につき年額28万円を補助したらどうなるか(他に流用されないように教育バウチャーとしての支給が前提)。かかる費用はおよそ2兆5000億円になります。これくらいの予算規模だったら、政府が決断すればできない施策ではありません。
 もしかしたら、お子さんいらっしゃらない世帯やもう子育てが終わった世帯から、「なぜそんなに子どものいる家庭を優先するんだ」と不満が噴出するかもしれませんが、このまま効果的な手を打たなかったら、日本という社会がなくなってしまうかもしれないのです。われわれは、もうそれくらいの危機感を持たなければならない時期に差し掛かっているのです。
 中国やインド、インドネシアは元々日本より人口が多い国として認識されていますが、このままでは我が国はベトナムやフィリピンにも人口では抜かれていくでしょう。中国は人口減少局面に入りつつありますが、その他のアジアの国々は人口ピラミッドも正三角形に近いところが多くあります。日本の人口ピラミッドは死に向かう「棺桶型」(上が少し膨らんでいるが先細り)と揶揄(やゆ)されることもありますが、経済的のみならず社会的にもアジアや世界の国々に埋もれる存在になりかねないのです。
財源は捻出できる
 では財源はどうするか。私には2つ、アイデアがあります。
 1つは「資産課税」です。金融資産を中心に、資産課税をしたらよいと考えています。消費税については税率を上げるのに世論は敏感ですし、逆進性が高いとされます。非裕福層の負担が重くなり不公平だとう意見が強くなるでしょう。
 それが資産課税だったら、資産がある人だけが負担することになります。居住用の不動産まで資産課税の対象にすると、多くの人が重税感を覚えることになるでしょうから、金融資産だけにするのが現実的かもしれません。
 例えば、現在1800兆円ほどある個人金融資産に「未来のため・子どものため」と仮に1%の資産課税を実施したとすれば、それだけで18兆円の税収になります。所得との兼ね合いなどで調整したとしても、10兆円くらいは確保できるでしょう。0.5%でも5兆円です。それだけで、先ほどの出産一時金や学校外教育費の無償化の財源は十分に賄える計算になります。
 もう1つ、検討すべき財源捻出策があると思っています。「コンソル債」です。
 コンソル債とは、元本を償還せず、利子だけを受け取れるという債券です。イギリスでは戦時にかつて発行されたことのある国債ですが、償還されることはないので、設定利率にもよりますが、購入した投資家はほぼ間違いなく儲かりません。では、なぜこれが売れるのかというと、この債券を持っていることが名誉とされるからです。購入者の気持ちにうまく訴求できれば、わずかな利子の支払いしかなくても、購入者が多くあらわれるのです。
 この仕組みを利用し、「この国を救うため」という側面を強調し、投資家に購入を呼び掛けるのです。おそらく趣旨に賛同して購入してくれる富裕層の人々もいると思います。かつてイギリスで発行された際は変動利率でしたが、後年度負担がはっきり分かるように固定利率(しかも低利)でも良いかと思います。極端な場合、「利子」は、感謝状とか、恩賜の記念品とかでも良いかも知れません。無税であるだけで、いわゆるアングラマネーが表に出てくるという説もあります。
 いずれにしても、財源は考えようです。税負担が増える一部の層からは反発が出るかもしれませんが、いま思い切った少子化対策を行わなければ、取り返しのつかないことになります。安倍首相の決断に期待します。
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日本の「地方創生」がさっぱり進展しない理由
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過去最大の人口減、経済戦略は本質的な発想転換を
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中国の自動車市場、完全に成長が止まった模様
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米大使館にまたも韓国人侵入、甘い取締に世界唖然
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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58067


 

 

日本と中国と韓国が直面する「少子化」、特に深刻なのは・・・=中国メディア
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2019年10月2日 10時12分 サーチナ
中国メディアは、日中韓の出生率について分析する記事を掲載した。(イメージ写真提供:123RF)
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 韓国・ソウル新聞が先月発表したところによると、2018年の韓国の合計特殊出生率は0.98人と、出生率1人未満になったことが分かった。出生率の低さは日本と中国でも問題となっているが、中国メディアの今日頭条は27日、日中韓の出生率について分析する記事を掲載した。

 韓国の2017年の合計特殊出生率は1.05人だったが、今回初めて1人台を割り、統計以来最低の数字を記録したことになる。人口維持には2.1人が必要とされ、超少子化基準の1.3人という数字から見ても、かなりの低水準であることが分かる。

 記事は、1.42人だった日本と比べると、「日本は恋愛も結婚も出産もしない低欲望社会だと毎日言われているが、韓国ほどではなかった」と指摘。合計特殊出生率に関して言うと、2005年に1.26人の最低記録を出した後はわずかながら上昇もしており、「欲望は上昇している」と分析した。

 一方の中国の合計特殊出生率は1.48人と、数字だけでみれば3カ国の間では最も高い数字を示している。しかし「出生率の右肩下がりぶりでは世界一」で、韓国どころか世界でもこれほど急激に低下している国はないという。昨年の出生率だけを見れば韓国が最も厳しいように見えるが、一人っ子政策を緩和させたにもかかわらず少子化が加速している中国は、もしかしたら日本や韓国以上に危機的状況なのかもしれない。

 この話題は中国人の強い関心を引いたようで、多くのコメントが寄せられている。例えば「出産は女性にとって代償が大きすぎる」、「子どもを産んで育てるのは費用がかかりすぎる。誰が産む勇気があるというのだ?」など、中国でも出産を望まない人が増えている様子がうかがえた。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)
サーチナ

外部サイト
これが日本の新幹線か・・・プレミアムシートに乗った中国人の感想は=中国メディア
初めて訪日した中国人が「目の前の情景が信じられなかった」と語った理由=中国
経済が停滞している日本に英独仏が追いつけない理由はなんだ? =中国
「少子化」をもっと詳しく

日本が「消えてなくなってしまう」少子化対策は最優先課題と指摘
途上国でも少子化が問題に 世界が直面する「人口減少時代」
日中より深刻な出生率低下 中国「韓国は人口崩壊に向かっている」
https://news.livedoor.com/article/detail/17169843/

 

 
金融・財政政策の「日本化」傾向に違和感−白川前日銀総裁
Bloomberg News
2019年10月28日 0:57 JST
政策立案者らは「依然としてデフレという妖怪に取りつかれている」
金融・財政緩和の目標は「将来の需要を今に持ってくる」ことだけ
日本銀行の白川方明前総裁は27日、日本以外の国々に金融・財政政策の「日本化」が見受けられると述べた上で

、低金利・高債務戦略が経済的問題の解決に向け機能するか懐疑的な見方をしていることを明らかにした。

  白川氏は上海でのフォーラムで、「悲しいことに日本の外でこの種の日本化が今見受けられる」と指摘。「

政策立案者と主流派の学者らは依然としてデフレという妖怪に取りつかれている」と語った。

Bank Of Japan Governor Masaaki Shirakawa Farewell News Conference
日銀の白川方明前総裁
  日本は生産性低下といったより根本的な問題にもっと迅速に取り組む必要があっと同氏は分析。金融・財政

緩和の目標は「将来の需要を現在に持ってくる」ことだけであり、こうした前倒し戦略はグローバルな経済問題

の解決策ではないと話した。

原題:BOJ Former Governor Says ‘Japanification’ Policy Trend Misguided(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-27/Q01065DWLU6K01?srnd=cojp-v2


 


10月も低迷続く中国経済、わずかながら安定化の兆しも−早期指標
Bloomberg News
2019年10月28日 14:14 JST
• ブルームバーグ・エコノミクスが最も早めに入手できる指標を集計
• 販売担当者はここ1年7カ月で最も強気−ワールド・エコノミクス
中国では7−9月(第3四半期)の景気減速が10月に入っても続いている。ただ、ほぼ30年ぶりの低成長となる中で、わずかながら安定化の兆しも見える。
  金融市場や企業などから最も早めに入手できる指標を集計したブルームバーグ・エコノミクスの指数によれば、中国経済は10月に6カ月連続で冷え込んだ。貿易と生産者物価、鉄鉱石、銅の指数が全て悪化した。
Worsening Results
China's economy continues to slow

Source: Bloomberg Economics
  中国の対米貿易を巡る緊張は9月と10月に緩んだが、その効果が表れるのはまだ先だ。それでも、ワールド・エコノミクスによれば、市場の成長や人材の項目別指数が引き続き弱い活動を示す中でも、販売担当者はここ1年7カ月で最も強気になっているという。
  
Business Pickup
But trade and factory downturn

Source: Bloomberg Economics, South Korean Ministry of Trade, Energy & Industry, World Economics, Standard Chartered Bank
  スタンダードチャータードによると、中小企業のデータは10月に改善の兆しを示した。
  同行の申嵐、丁爽両エコノミストはリポートで、「現在の業績と期待、与信環境のサブ指数が今月上昇し、継続的なカウンターシクリカル措置の下で第4四半期(10ー12月)の緩い回復の可能性を高めている」と分析。対外貿易は引き続き大きな逆風だが、「建設・製造セクターの強い業績が主にけん引し、国内需要が若干回復した」と記した。
Stock Prices Rebound

Source: Bloomberg economics, data compiled by Bloomberg
原題:
China’s Slowdown Rolls On Into October, Early Indicators Show(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-28/Q02F4IDWRGG001?srnd=cojp-v2

韓国経済に潜む危機、高水準の家計債務は韓国銀行のアキレス腱
長井滋人:オックスフォード・エコノミクス在日代表

連載 数字は語る
2019.10.28 4:10 会員限定


韓国の家計債務の対GDP比率(2019年第1四半期)
数字は語る 93%
出所:韓国銀行
 韓国経済の減速が目立ち、デフレの懸念すら台頭してきた。輸出や設備投資中心の不振が消費など内需に波及していくと総崩れになってしまう。

 心配なのが右肩上がりで拡大を続けている家計債務だ。今年初めには対GDP比で93%という、サブプライム危機前の米国に匹敵する水準に達した。増加のペースも懸念材料で、2008年末には73%にすぎなかった。可処分所得対比で見ても、ここ10年で117%から158%に急拡大している。

 金融当局は家計債務の増加にブレーキをかける施策を17年から実施している。与信判断の際の債務返済比率の縛りを厳格化したほか、複数の住宅を保有する家計に対する値上がり益課税を導入し、ソウル市内で住宅投機防止の重点地域を指定した。この結果、住宅価格や家計向け与信の減速といった効果が徐々に見られている。

 高水準の債務は成長の重しとはなるが、今後一段と景気が悪化しても、家計債務危機に陥る可能性は現時点では小さいとみている。銀行の預金/貸出比率を見ても過度なレバレッジはかかっていない。債務は高所得で信用スコアの高い家計に集中しており、ショックへの耐久性は高い。高リスクの借り手についても貸出の9割近くは担保でカバーされている。何よりも低金利環境は当分の間続きそうだ。

 ただ、気になるのは中小企業向けローンの中に家計が事業主として受けた借入が含まれていることだ。韓国では高齢者に対する年金や社会保障が手厚くなく、40〜50代で退職した労働者がローンを組んで簡単な飲食店などを開業するケースが多い。そうした素人経営の多くが激しい競争の中で失敗し、債務不履行に陥っている。

 アジア危機以降、韓国経済をけん引する財閥企業は金融市場から直接資金調達を行い、韓国の銀行は残された中小企業と家計向けビジネスで食べていくしかなくなった。そうした収益性の限られる市場で無理をすると、03年のクレジットカード危機のような金融システムの混乱を招いてしまう。韓国の銀行にとってのアキレス腱ともいうべき家計債務の動向から目が離せない。

(オックスフォード・エコノミクス在日代表 長井滋人)


数字は語る
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https://diamond.jp/articles/-/218512


 
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/502.html

[経世済民133] 韓国経済を襲う恐ろしき「半導体不況」GDPもヤバい状況に… 利益9割減の企業もある 中国の自動車市場、完全に成長が止まった模様 新エネ車バブルは崩壊、電池メーカーも打撃 自動運転開発で「低速」のトヨタ、テスラ事故後は競合も失速
韓国経済を襲う恐ろしき「半導体不況」、GDPもヤバい状況に…
利益9割減の企業もある
真壁 昭夫信州大学経済学部教授
プロフィール
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足元で世界的に半導体市況の低迷が鮮明化している。

それに伴い、半導体産業への依存度が高い韓国経済は一段と厳しい状況に追い込まれつつある。

10月24日、世界第2位のDRAMメーカーである韓国のSKハイニックスが発表した7〜9月期の決算では、営業利益が前年同期比93%減となった。

世界最大手サムスン電子の業績も減益続きだ。

それに加えて、韓国にとって最大の輸出先である中国経済は、これまでのインフラ投資主導型の経済成長の限界を迎えている。

中国では、今後、積み上がった債務問題が深刻化することも懸念される。

中国向けの輸出が短期的に回復することは考え難い。

中国など海外への輸出依存度の高い韓国経済は、これからさらに厳しい状況を迎えることが懸念される。

文在寅政権の経済政策の運営が一段と重要になるはずだ。

〔PHOTO〕Gettyimages
厳しさ増す韓国半導体企業を取り囲む環境
近年の韓国経済は、中国などへのIT関連部品などの輸出によって景気の拡大を維持してきた。

それを主導したのが、サムスン電子とSKハイニックスの大手エレクトロニクス企業だった。

ただ、ここへ来て、両社ともにドル箱の半導体事業の業績が悪化している。

特に、SKハイニックスの業況は深刻だ。

7〜9月期SKハイニックスは、DRAM価格の下落が大きく響き大幅な減益に陥った。

同社では半導体の在庫が積みあがっており、生産能力の調整も避けられないと見られる。

同社の経営陣は徐々に半導体市況が持ち直すとの見通しを示しているが、今のところ先行きは不透明だ。

半導体の需要が激減

その背景には、世界的に米中貿易摩擦への警戒感が高まったこともあり、半導体需要が弱含んでいることがある。

米国ではマイクロン・テクノロジーが設備投資計画を縮小した。

テキサス・インスツルメンツも顧客からの発注減少に直面している。

投資を先送りする半導体関連企業が増え、動作制御機器を手掛けるわが国の安川電機も減益に陥った。

こうした状況を見ると、韓国半導体産業の先行きは楽観できない。

それに加えて、米中の貿易摩擦にはIT先端分野での覇権国争いの側面がある。

米中の覇権国争いが落ち着くまでには相応の時間がかかり、直ぐに事態が大幅な改善に向かうことは考え難い。

世界全体で設備投資が減少し、世界の半導体市況が更に冷え込むリスクは過小評価できない。

今後、さらなる成長率低下の懸念
半導体輸出に依存してきた韓国経済の先行きは不安だ。

韓国経済は外需という輸送機にけん引されるグライダーに例えられる。

中国など外部環境が好転すると、財閥企業が輸出競争力を発揮し韓国の景気は上向く。

反対に外部環境が悪化すると輸出は減少し、景気減速が鮮明化する。

足元のSKハイニックスなどの業績悪化は、韓国経済にとっての成長のけん引役が力を失いつつあるといえる。

GDPも落ち込む

そうした状況が続くと、SKハイニックスなどの企業は設備投資を手控えざるを得ない。

最近の韓国経済を見ると、所得・雇用環境が悪化し内需の脆弱さも鮮明化しているようだ。

その結果、7〜9月期の実質GDP成長率は前年同期比で0.4%と前期から0.6ポイント落ち込んだ。

目先、米中が特定分野での合意にこぎつけることができれば、一時的に韓国経済の先行き懸念が低下する可能性はある。

ただ、それが長続きするか否かは不透明だ。

今のところ、韓国は半導体に代わる成長産業を育成できていない。

また、左派の文政権は企業経営を支援するのではなく、むしろ企業を圧迫するような政策をとり景気下押し圧力を助長してしまった。

世界経済を概括すると、債務問題の深刻化などにより中国経済の減速懸念は強い。

今すぐではないにせよ、世界経済を支えてきた米国の景気後退懸念も高まることも懸念される。

外部環境の悪化に伴い、韓国の経済成長には一段の下押し圧力がかかるものとみられる。

その場合、労組が賃上げを求め企業経営が追い込まれる展開も考えられる。韓国経済の先行きに楽観は禁物だろう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68069?page=3

 

中国の自動車市場、完全に成長が止まった模様 新エネ車バブルは崩壊、電池メーカーも打撃
2019.10.28(月)花園 祐
中国 自動車
2019年4月に開催された上海モーターショー(写真:Featurechina/アフロ)
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(花園 祐:在上海ジャーナリスト)
 乗用車市場信息聯席会(以下「乗聯会」)の発表によると、中国の2019年第1〜3四半期(1〜9月)におけるライトバンを除いた狭義の乗用車累計販売台数は、前年同期比8.6%減の1478万台でした。9月単月の販売台数も前年同月比6.4%減の178万台となりました。
 中国の自動車市場は、28年ぶりに通年でマイナス成長を喫した昨年(2018年)に引き続き、縮小に歯止めがかからない事態を呈しています。
 また中国政府の支援を受けて急拡大してきた新エネルギー車(以下、新エネ車)市場も、第3四半期に入ってからついに前年割れをみせるなど、中国自動車市場全体で不安な様相を見せています。
 今回は、こうした激震する中国自動車市場の現況を報告します。
消費活況期でも市場はマイナス成長
 前述の通り、中国の9月単月における狭義の乗車販売台数は、前年同月比6.4%減の178万1411台でした。
中国での乗用車(狭義)販売台数推移(2019年1〜9月)
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 今年6月に4.7%増で一度盛り返したものの、それ以外の月は昨年7月以降ずっとマイナス成長が続いており、反転成長にはなかなか至れずにいます。
 特に9月の実績に関しては、市場から落胆する声が聞かれました。中国では9〜10月の期間は「金九銀十」と呼ばれる消費活況期に当たります。そんな時期にもかかわらず、需要が上向く気配がまったくなかったからです。
 一部メディアからは、10月は建国70周年記念式典など国家イベントが重なっており、販売台数も好転する可能性があるとの指摘がありました。けれども、こうした見方は楽観的すぎると筆者には感じられます。
車が売れない原因は?
車が売れない原因は住宅か中古車か?
 では一体なぜ、これまで急成長の続いてきた中国自動車市場が昨年から縮小し続けているのでしょうか。
 乗聯会の報告書では、自動車販売不振の原因は「住宅価格の高騰」にあると指摘しています。
 中国では現在も全国各地で住宅価格の高騰が続いています。住宅価格の高騰によって家計支出に占める家賃やローンの割合が高まった結果、自動車への消費が控えられるようになったというわけです。
 特に所得の低い中西部地域における住宅価格高騰が激しく、これにより、低価格車両を製造する中国メーカーが直撃を受けたとしています。
 一方、ある業界関係者は別の見方として「中古車市場の発達こそが真犯人」と指摘しています。
 中国では近年、中古車価格の査定基準やオンライン取引プラットフォームが整備され、中古車市場が急速に拡大しました。2018年には取引台数が前年比11.5%増の1382万台を記録。こうした中古車市場の拡大によって新車市場が縮小しているという分析も出ています。中古車市場の拡大が新車市場縮小の一因になっていることは、おそらく間違いないでしょう。
東風本田が大躍進
 第1〜3四半期におけるメーカー別販売台数を見ると、上位はいつも通り独フォルクスワーゲン(VW、中国名「大衆」)系列の一汽大衆、上汽大衆が1位と2位、米ゼネラルモーターズ(GM、中国名「通用」)系列の上汽通用が3位という並び順になっています。
 しかし米中貿易摩擦の影響からか、上汽通用の販売台数は前年同期比14.2%減と大きく落ち込みました。
メーカー別・中国乗用車販売台数(2019年1〜9月、上位15社)
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セダン首位争い、1位は?
 日系メーカーでは、東風日産(1.0%減)と一汽豊田(0.3%減)が微減となった一方、東風本田(25.2%増)、広汽本田(8.8%増)、広汽豊田(15.7%増)が市場の逆風にかかわらず高成長を保ちました。特にホンダ系列の東風本田の急増ぶりは、中国メディアからも「ダークホース」と評されるなど、大きな驚きとともに受け止められています。
 東風本田の躍進の背景としては、主力セダンの「シビック」が新規ユーザー、既存ユーザーを問わず好調であることと、一時はリコール問題で販売の滞っていたスポーツタイプ多目的車(以下、「SUV」)「CR-V」の人気に再び火がついてきたことなどが指摘されています。
2019年4月に完成した湖北省武漢市の東風本田・第三工場(ホンダのホームページより)
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シルフィとラヴィーダがセダン首位争い
 次に車種別に見ていきましょう。中国で売れている乗用車はセダンとSUVです。
中国での車種別自動車販売台数(2019年1〜9月)
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 第1〜3四半期におけるセダン、SUVの車種別販売台数を見ると、東風本田の躍進を裏付けるように、「シビック」が前年同期比17.7%増、「CR-V」が115.6%増という高い成長率を記録しています。
中国でのセダン販売台数順位(2019年1〜9月)
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 セダンは前年に引き続き東風日産の「シルフィ」と上汽大衆の「ラヴィーダ」が激しい首位争いを繰り広げています。
 シルフィは昨年は年間1位でしたが、今のところ2位に後退しています。業界関係者はシルフィについて、「価格の低さによるコストパフォーマンスが売りのモデルであり、粗利は高くない」と言い、販売台数こそ多いものの「それほど儲かる車ではない」と指摘しています。
 筆者の目からしても、ホンダの「シビック」、トヨタの「カムリ」などの中高級車と比べ、日産のこのクラスの車種は見劣りする感が否めません。日産がどんな次の一手を打つのか密かに注目しています。
中国でのSUV販売台数順位(2019年1〜9月)
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新エネ車が3カ月連続の前年割れ
新エネ車、とうとう3カ月連続の前年割れ
 自動車市場全体の縮小もさることながら、今季、最も市場関係者を慌てさせたのは、「新エネルギー車」市場の腰折れでしょう。
中国での「新エネルギー車」販売台数推移(2019年1〜9月)
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 中国の新エネ車販売台数は、政府の大々的な購入支援もあって、ここ数年間、急拡大を続けてきました。しかし今年6月に購入時の補助金の多くが打ち切られて以降、前年同月比で7月が4.8%減、8月が15.8%減、9月に至っては34.2%減と、3カ月連続で前年割れしています。
 なお6月は、補助金打ち切り前の駆け込み需要もあってか同81%増と急増しており、消費を先食いした感があります。
 中国自動車市場全体が落ち込み続ける中、新エネ車にはその穴を埋める役割が期待されていました。それだけに、市場関係者からは今季の結果に落胆する声が聞かれます。また中国政府も、新エネ車市場の補助金からの独り立ちを期待していただけに、今後の環境政策になんらかの影響が出るかもしれません。
打撃を受ける電池メーカー
 世界最大の新エネ車市場の腰折れとあって、その影響は川上業界にも波及しつつあります
 動力電池最大手の寧徳時代新能源科技有限公司(CATL)は第3四半期業績予測において、すでに最大20%の減益見込みを発表しています。同社に限らず、新エネ車市場とともに近年急拡大を続けてきた電池業界にとって、今季の新エネ車市場の腰折れは今後大きな打撃となることは間違いないでしょう。市場からは、中国政府の新たな政策追加を期待する声も出ています。
 昨年の楽観的な予測とは裏腹に、中国自動車市場の縮小は歯止めがかからない状態が続いています。今後市場は反転するのか、それとも落ち込み続けるのか、環境車政策はどうなっていくのか。さらなる注視が必要となってくることでしょう。
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米国が新次元の対中政策、中国をソ連と同じ敵性国に
厳しく規制されることになる中国外交官の行動
古森 義久


中国のアイドルはどこが「惜しい」のか
「国産化」が進み盛り上がる中国アイドル市場
花園 祐


外資メーカーが中国脱出、動きが遅すぎる日本企業
“脱中国”で加速するアジアの工場用地争奪戦
姫田 小夏

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58029?page=4


 


ビジネス2019年10月28日 / 10:32 / 6時間前更新
焦点:自動運転開発で「低速」のトヨタ、テスラ事故後は競合も失速
白木真紀
3 分で読む

[東京 28日 ロイター] - トヨタ自動車(7203.T)は来年、高級車ブランド「レクサス」初の電気自動車(EV)を発売する。高速道路で自動運転できる「レベル2」以上の技術を搭載する計画だ。自動運転車の商品化では競合他社に後れをとってきたかにみえたトヨタは着実に歩を進めているが、一方でその技術の複雑さは、先行する日産自動車(7201.T)などで開発目標時期の後ずれを余儀なくさせている。

<レベル4には「少し時間かかる」>

「来年、高速道路の入口から出口、合流も含めて『レベル2』以上の自動運転ができる商品を出す」――。トヨタの友山茂樹副社長は23日、記者団にこう述べた。レクサスEVの発売に加え、夏には、東京都内の公道で人の操作が不要な自動運転技術「レベル4」搭載車の試乗も一般向けに実施する。

ただ、この試乗はマイカー以外の各種交通サービスを統合するMaaS(Mobility as a service)分野を想定したデモ。友山副社長は、一般の消費者が「レベル4」の車を買えるまでには「少し時間がかかるだろう」とみている。

もっとも、競合も開発の目標時期を後ずれさせている。商品化でトップを走る米テスラ(TSLA.O)のEVによる死亡事故で技術の複雑さが露呈し、事故後、多くのメーカーや各国政府が、AI(人工知能)や自動運転車に対し、より長期的な視野に立って慎重に進める姿勢に転換した。

友山副社長は、多くの車メーカーやベンチャー企業が「タイムラインを現在見直している」と指摘。トヨタとしては「もともと『レベル4』の自動運転車の商品化は時間がかかるのではと考えていた。それは戦略に織り込み済み。特に今、開発や投資のあり方、タイムラインを見直すことはない」と話した。

トヨタは2020年をめどに高速道路で、20年代前半に一般道で、それぞれ自動運転の実用化を目指して開発を進めている。21年には米ウーバー・テクノロジーズ(UBER.N)と組んで、「レベル4」の自動運転車をライドシェアサービスに導入する計画だ。

<日産「20年までに一般道で」の目標断念>

自動運転は0から5までのレベルに分けられる。「レベル1」(加減速どちらかを支援)と「レベル2」(加減速の両方を支援)は、システムがハンドルを操作するが「運転支援」という位置づけだ。自動運転にあたるのは「レベル3」以上で、レベル2と3の間には、事故発生時などの責任主体が人かシステムかという違いがある。

「レベル3」は特定の環境下ではシステムがすべて操作するが、緊急時には人が操作するという条件付き自動化。「レベル4」は緊急時もシステムが対応する高度な運転自動化となる。「レベル5」は場所を問わずシステムがすべて操作する完全自動運転だ。

日産自動車は、自動駐車や高速道路での手放し運転が可能な「レベル2」以上の車を発売済み。ただ、20年までに一般道で自動運転できる車を発売するという当初の目標の実現は断念した。より高度な「レベル3」の開発には、少なくとも20年代後半までかかる――。同社の総合研究所で先端技術開発担当のエキスパートリーダー、上田哲郎氏は今月、記者団にこう話した。

米ゼネラル・モーターズ(GM.N)の自動運転部門クルーズも今年初め、車両試験がさらに必要になったとして、今年を目標にしていた商用車への展開を遅らせると発表した。情報筋によると、物体が動いているかどうかを車が認識することが困難といった課題があるという。

トヨタグループのサプライヤー最大手デンソー(6902.T)も、理想の自動運転の実用化にはまだ数年かかるとみている。

自動運転技術の開発拠点「グローバル・R&D・トーキョー」を総括する執行職の隈部肇氏は「一般道で普通に運転されている車と混在するような環境(に対応させること)が難しい」と指摘、「周りは予期しない動きをする。ドライバーも予期しないカットインをされると対応に遅れが生じたりする。不確実な要素が多い」と語る。

日本では今年5月、一定条件下での「レベル3」実用化に向けた法整備は完了したが、「法規制がクリアできればすぐに自動運転車を出せるという技術レベルには、まだ来ていない」(隈部氏)。日本が準拠している国際ルールでも、レベル3はまだ認められていない。

<シンガポールも自動運転車の受け入れ急がず>

慎重姿勢なのはメーカーだけではない。自動運転車の実用化を後押ししてきたシンガポール政府も同様だ。同国のコー・ブンワン運輸相は先週、「最初の自動運転車受け入れ国になろうと急いでいるわけではない」と述べ、「自動運転車の技術の大規模な採用を楽しみにはしているが、近い将来そうなるとは思っていない」と語った。

運輸相のこうした見解は、シンガポールを一流のインフラを持つ無人自動運転車の実証地域と評価していた業界の専門家らを驚かせた。豪メルボルンのスウィンバーン大学フセイン・ディア教授(未来の都市型モビリティ専攻)は「シンガポールがそう言うのなら、他の政府も追随するだろう」と話した。

テスラのイーロン・マスク氏最高経営責任者(CEO)は先週、年末までに「完全に機能する完全自動運転」を可能にするソフトウエアをリリースできると投資家に語った。ただ、車は依然、人に「監督」される必要があるとも指摘。来年末までに、テスラが「(人が)注意を払う必要がないほど十分に信頼できる」自動運転ソフトをリリースすることに期待を示しつつも、「管轄によって、規制当局の受け入れ姿勢は異なる」とも付け加えた。

取材協力:田実直美、白水紀彦、Aradhana Aravindan and John Geddie in Singapore 編集:平田紀之、田中志保
https://jp.reuters.com/article/autodrive-toyota-idJPKBN1X7034
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/503.html

[経世済民133] 日銀会合は現状維持が過半数、マイナス金利深掘りは3割 ボラティリティー切望のドル円トレーダー、この冬は一段と厳しい VIXオプションに大口取引、08年並みの米国株ボラティリティー予想 強もちあいFOMCが分岐点になる可能性
日銀会合は現状維持が過半数、マイナス金利深掘りは3割
サーベイ
日高正裕、Cynthia Li
2019年10月28日 9:30 JST
• 地銀決算が出る直前に利下げ策などは取り得ない−マネックス大槻氏
• 本来やる必要ないが後に引けなくなっている−東海東京調査の武藤氏
日本銀行が30、31両日開く金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決めると予想するエコノミストが過半数を占める一方で、3割はマイナス金利の深掘りを見込んでいることがブルームバーグの調査で分かった。
  エコノミスト47人を対象に18−23日に実施した調査で、10月会合での政策据え置きの予想は28人と60%を占めた。追加緩和を予想するのは19人で、全体の30%に当たる14人は現在マイナス0.1%の短期政策金利の引き下げを見込む。12月と来年1月の会合での追加緩和予想を合わせると7割に達している。
調査の結果はここをクリックしてください
日銀追加緩和をエコノミストの大半が予想
7割が来年1月会合までの実施見込む

Source: Bloomberg
  日銀は前回9月会合で、2%物価目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まればちゅうちょなく追加緩和に踏み切るとした上で、その恐れに「より注意が必要な情勢になりつつある」と指摘。10月会合で経済、物価動向を再点検すると表明した。
  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、円高傾向が止まっていることや内需が今のところ底堅いことなどを踏まえると、追加緩和の可能性は低いとみる。
  マネックス証券の大槻奈那チーフアナリストも「地方銀行の決算が出る直前で利下げなど刺激的な施策は取り得ない」と指摘。フォワードガイダンス(政策金利の指針)の強化程度が「妥当な線ではないか」と予想する。
  クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは、消費増税後の景気を判断する材料がそろっておらず、銀行が口座維持手数料を導入するリスクを甘受しても金融緩和に踏み込むべきだといった合意が「政府・日銀で共有される段階にはまだない」と指摘。今会合ではなく12月会合での深掘りを見込む。
5割前後の確率で利下げ織り込み
  一方、国内金融市場では、日銀の政策金利予想を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)が5割前後の確率で利下げを織り込んでいる。
  東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは、日銀は市場次第で緩和パッケージを正式に発動する心づもりだったと思われるが、思いのほか市場が先取りして織り込んでしまったため、「この環境なら本来やらなくてもよいところが、もはや後には引けなくなっている」とみる。
  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは、マイナス金利深掘りを温存する可能性があるなら、「ここまで思わせぶりな黒田東彦総裁のコミュニケーションは考えづらい」と指摘する。
  見送りなら金融市場の反動を予想する声もある。ナットウエスト・マーケッツ証券の剱崎仁シニアエコノミストは、10月は展望リポート公表月で経済・物価を再点検するのは自明である中、あえて思わせぶりな文言を追加したにもかかわらず追加緩和を見送れば、限界感が市場にまん延し、「想定以上に円高や株安が進む可能性も否定できない」と指摘する。
スティープ化策の行方は
  黒田総裁はたびたび超長期金利の下げ過ぎに警告を発しており、9月の会見では、追加緩和に踏み切る場合は過度の防止策を取る考えを示した。しかし、オックスフォード・エコノミクスの長井滋人在日代表は「10年金利のコントロールもままならない中で、さらなる目標設定やオペの調整で超長期金利低下を防げるのか疑問が残る」と言う。
  元審議委員の須田美矢子氏はインタビューで、マイナス金利深掘りに踏み切るのであれば、短期国債の買い入れと同額の長期国債を売却するツイストオペを行うことで長期金利の過度の低下を防ぐべきだと提言した。
  クレディ・アグリコル証券の森田京平チーフエコノミストは「日銀が本気であれば、超長期ゾーンで日銀が売り手に回ることも考え得る」と指摘。ソニーフィナンシャルホールディングスの菅野雅明チーフエコノミストも「長期・超長期債の買い入れの停止、あるいは売却と同時に短中期債の買い入れ増額を実施することでスティープ化は可能」とみる。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-28/PZX731DWX2PZ01


 

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
ボラティリティー切望のドル円トレーダー、この冬は一段と厳しい公算
David Finnerty
2019年10月28日 9:56 JST
• 3カ月物インプライド・ボラティリティー、今年最低を更新の方向
• 直近の注目材料は日銀が30−31日開催する金融政策決定会合
ドルの対円でのボラティリティー復活をもたらす起爆剤を探すトレーダーは、そのような材料登場を来年まで待つ必要があるかもしれない。
  米中貿易で部分合意への楽観が強まる中、ドル円のインプライド・ボラティリティーはあらゆる期間で低下してきた。英国の合意なき欧州連合(EU)離脱の可能性も薄れ、3カ月物のインプライド・ボラティリティーは7月以来の低水準を付け、今年これまでの最低を更新しそうだ。
  イベントリスクは長続きせず、1ドル=108円65銭のスポット参照レートを基にすれば、オプションは年内105円39銭から110円99銭で推移する確率75%を示唆する。これは円強気派には悪いニュースだろう。中には100円に近い水準で今年を終えると予想する向きもあるためだ。

  最も強気派の中では、モルガン・スタンレーが1ドル=101円への円相場回復を期待している。BNPパリバの見通しは102円、ゴールドマン・サックス・グループは今月、年末に向け103円を目標にドルをショート(売り持ち)とする取引を勧めた。
  直近の注目材料は日本銀行が今月30−31日に開く金融政策決定会合。黒田東彦総裁は前回会合で、今回「経済・物価動向を改めて点検していく」方針を表明したことから、追加緩和が決まるとの観測も一部にある。そのような動きが実際にあれば、円相場を抑えるのみだ。
原題:Volatility-Starved Yen Traders Feel Chills as Winter Comes Early(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-28/Q026006JIJV701?srnd=cojp-v2


 
VIXオプションに大口取引、08年並みの米国株ボラティリティー予想
Gregory Calderone
2019年10月28日 12:28 JST
米国株のボラティリティーが2008年の金融危機時並みに高まると見込む投資家がいる。
  シカゴ・オプション取引所のボラティリティー指数(VIX)のコールオプションが25日、プットオプションを2対1以上の割合で上回った。同日の米国株は上昇し、VIXは7月以来の低水準。目立ったのは5万枚の大口取引で、行使価格65ドルの4月限のコールオプションが1枚10セントで購入された。これはVIXが現行水準から500%近く急上昇すると利益が出るオプション。
  マクロ・リスク・アドバイザーズのデリバティブストラテジスト、マクスウェル・グリナコフ氏は、行使価格の高さに加え4月の行使期限が興味深いと指摘。それまでの間に、リセッション(景気後退)入りや米中貿易交渉決裂、民主党の大統領候補選びやトランプ大統領の弾劾手続きなどに関するさまざまな政治的リスクが生じる可能性があるとインタビューで述べた。
  VIXが前回65付近だったのは世界的金融危機のさなか。25日は13付近だった。08年10月には過去最高の89.53に達している。

原題:
Big VIX Options Trade Braces for 2008-Like Volatility Surge(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-28/Q02CGBDWRGG101

トップニュース2019年10月28日 / 08:07 / 8時間前更新
強もちあい、FOMCが分岐点になる可能性も=今週の東京株式市場
Reuters Staff
2 分で読む

[東京 28日 ロイター] - 今週の東京株式市場は、強もちあいが想定されている。日経平均が年初来高値を更新した後も強い基調を継続、さらなる上値追いに対する期待も高まっており、2万3000円台回復も視野に入ってきた。だだ、テクニカル面で高値警戒感が台頭しているだけに、米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言次第では、高値波乱となるとみる関係者も少なくない。FOMCが分岐点になる可能性があるとの見方も出ている。

日経平均の予想レンジは、2万2500円─2万3100円。

外部環境が落ち着く中、「下方修正銘柄を、現時点がボトムで今後は回復に向かうというロジックで物色している」(キャピタル・パートナーズ証券・チーフマーケットアナリストの倉持宏朗氏)などの声が聞かれ、明らかに市場のムードは好転している。テクニカル面ではオシレーター系指標で過熱感が強まり、ある意味「理外の理」とも言える状況だ。「明確な理由がない中での株価上昇から、金融相場に差し掛かっている」(SBI証券・シニアマーケットアドバイザーの雨宮京子氏)との見方もある。

そうした中、当面のスケジュールで注目されるのが、29日、30日に開催されるFOMCと31日の日銀金融政策決定会合だ。このうちFOMCについては、利下げは既定路線とされながらも、その後の金融政策を占う意味でパウエル議長の発言が見逃せない。

市場では「下方修正銘柄を買うといった金融相場の兆候がある以上、ここで注目されるべき材料は金融政策。パウエル議長が継続的な利下げというマーケットの期待感をつなぎ止める発言をしなければ、株価が一気に崩れる可能性も否定できない」(三菱UFJモルガンスタンレー証券・チーフ投資ストラテジストの藤戸則広氏)との声も聞かれる。

直近では、7月、9月と2回の利下げ後、世界的に株式市場が崩れただけに、FOMC後の株価動向が年内の株価を占う上でも重要な局面となりそうだ。

そのほか、タイムテーブルでは、3月期企業の上半期決算発表が本格化するが、下方修正銘柄まで買われる最近の相場から警戒する向きは少ない。

FOMCをきっかけに利益確定が加速する可能性がありながら、環境面のみならず、今年4月の信用高値期日を通過して需給面でも好転している。「日経平均は昨年10月のバブル後最高値(終値で2万4270円62銭)を上抜けておかしくない」(大和証券・チーフテクニカルアナリストの木野内栄治氏)との声も出ていた。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-stx-wklyoutlook-idJPKBN1X60U0
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/504.html

[政治・選挙・NHK266] 軽量≠フ「即位礼」米代表団、冷戦終結30年、同盟の脆い土台
軽量≠フ「即位礼」米代表団、冷戦終結30年、同盟の脆い土台

2019/10/29

樫山幸夫 (元産經新聞論説委員長)

 天皇陛下が即位を宣明される「即位礼正殿の儀」は先週、滞りなく終了した。華やかな祝賀外交≠燗W開された。

サプライズ≠ヘ、なんといっても米国の参列特使だった。各国の国王、元首クラスが顔をそろえる中、米国は、大統領でも副大統領でもなく、運輸長官を派遣したにとどめた。 「世界で最も重要な2国間関係」の相手の、国をあげての慶事に対してだ。

 冷戦終結30年≠ニいう節目の年にあって、重みを増している日米の同盟関係が盤石かといえば、必ずしもそうとはいえまい。これまでの両国関係を顧みれば、脆弱さを暗示する大小の問題が、起きては消え、消えては起こるーいわば摩擦の繰り返しだった。今回の即位の礼代表団問題は、その典型的な例だろう。

 この機会に、両国の間に見えない形で横たわる根源的な相違を再認識し、日米関係の在り方を内省するのも悪くない試みだろう。


(bee32/gettyimages)
当初はペンス副大統領派遣を検討
 米国代表、イレーン・チャオ運輸長官は、大統領職継承順位13位、日本でいえばヒラ大臣≠セ。

 お祝いに駆けつけてくれた海外の特使について、あれこれいうのは非礼極まりないことは承知のうえだが、前回、上皇さまの即位の礼の際は、当時のクエール副大統領が参列した。

 今回も当初、ペンス副大統領が出席する方向で検討されていたが、ウクライナ疑惑への同氏の関与も指摘されるなど政治情勢が考慮され見送られた。

 米国以外の主要国からの顔ぶれを見ると、チャールズ英皇太子、アレクサンダー・オランダ国王夫妻、フィリップ・ベルギー国王夫妻、アウン・サン・スー・チー・ミャンマー国家顧問兼外相、サルコジ前フランス大統領ら絢爛たる顔ぶれ。関係が改善しつつある中国は王岐山・国家副主席、いわゆる徴用工問題で関係が極度に悪化している韓国も李洛淵首相を派遣した。

 これらに比べると、米国代表団の存在は率直に言って見劣り≠フ印象を否定できない。

 儀式への参列者が誰だったとか、いわば感情論で日米の同盟関係を論じる愚を犯すつもりはないが、些細に見えるものの、実はそれが、文化、習慣、互いに相手を敬うという基本的な価値観にかかわる深刻な問題であったということは、過去、現在少なからず見られる。

いまさらながらの「安保ただ乗り論」
 いくつか具体的な例をあげよう。

 ことし6月、米ブルームバーグ通信の記事に驚いた人も多かったろう。

 トランプ大統領が側近らに対して、日米安保条約に関して、日本が支援された場合だけ米国が助けることを「一方的で米国に不公平だ」と強い不満を漏らした。条約の破棄にまで言及したという。同じ時期、大統領はホルムズ海峡での船舶航行に関して、日本、中国などを名指し、「米国はなぜ無報酬で航路を守っているのか。自身で防衛すべきだ」と厳しく注文をつけた。

 1980、90年代に米国内でやかましかった「安保ただ乗り論」そのままであり、日本が多額の経費負担をしている今ごろになって蒸し返されるとは驚きだった。

 日本政府は安保廃棄について、「ホワイトハウスかららは、条約の見直しは考えていないという話だった」(当時の河野外相)と否定、ホルムズ海峡の防衛については「中東の緊張緩和と安定に向けて努力を続ける」(菅官房長官)と述べるにとどまったが、当惑は隠せなかった。

 トランプ氏は2016年の大統領選の期間中も、防衛費問題や貿易不均衡で日本非難を展開した。安保破棄やホルムズ海峡に関する発言もこうした持論を持ち出しただけなのだろう。

 北朝鮮の短距離弾道ミサイル発射実験についても、トランプ大統領は容認姿勢に転じ、脅威に直接さらされる日本を一顧だにしない姿勢を見せている。ことし10月2日、北朝鮮が海上構造物からミサイルを発射した際も、安倍首相が強く非難したのを知ってか知らずか、「様子を見てみよう」とやはり寛容な発言ぶりだった。

「日本嫌い」を公言する国務長官
 いずれも、日米安保体制の根幹を揺るがしかねない重大な発言だが、トランプ大統領の言葉だけに、あきらめムードも日本国内にはあるだろう。しかし、こうした言動は、実のところトランプ氏に限ったことではない。

 1993(平成5)年から2期8年間続いたクリントン政権(民主党)で、女性初の国務長官を務めたマデレン・オルブライト女史。回想録のなかで日本についてこう書いている。「日本に滞在すれば歓迎されるし、(指導者たちと)幅広い知的な会話を交わすことができるだろう。しかし、笑顔でお土産を、そしてポケットにはフォークを忍ばせておいたほうがいい」―。日本人は退屈だから、フォークで体をついて痛い思いをしなければ居眠りしてしまうーということらしい。

 その2代後、息子ブッシュ政権(共和党)でやはり国務長官を務めたコンドリーザ・ライス女史の対日観は、もっとひどかった。

 回想録の中で「小泉首相の退任後、日本は合意政治に逆戻りした。国を前進させるとは思えないような、誰とでも取り替え可能な首相が何人も続いた。日本を訪問するのがどんどん憂鬱になっていった。日本は停滞、老化しているだけでなく、周辺諸国からの憎悪に呪縛されているようにみえた。個人的に日本人と相性がいいとは言えなかった」―。

 両国務長官をご記憶の方が少なくないだろうが、これほどまでの嫌日≠ニは知らなかった。こうなればもう、個人的な好き嫌いの次元であり、理性でどうこうすることはできまい。こういう人たちと同盟関係の発展を話し合うことなど、どだい無理な話だろう。トランプ氏といい、オルブライト、ライス女史といい、「グローバル・パートナーシップ」などという言葉とは全く異なる、別な感情を日本に抱いているように思える。

 メディアの報道ぶりでも同様なことがみられる。

 今回の「即位礼正殿の儀」について、ニューヨーク・タイムズ紙は、 5月に御代替わりがあったにもかかわらず、今回、あらた儀式が行われたことについて、「もう済んでいたのではなかったのか」という見出しで、5月の剣璽等継承の儀は「序曲」にすぎなかったと皮肉まじりに報じた。万歳三唱や礼砲が憲法違反の疑いがあるという批判的な一部見解も伝えた。

 20年以上も古い話で恐縮だが、1997(平成9)年、日本で橋本龍太郎首相(当時)が、中国人女性通訳と不適切≠ネ関係を持っていたのではないかーという疑惑が指摘されてことがあった。

 ワシントン・ポスト紙は、東京特派員発でこれを報じたが、「首相と同年配の多くの日本人男性は愛人をもっており、妻はそれを簡単に受け入れている」というくだりがあった。日本の中年、初老男の多く≠ヘそれほどふしだらとは思えないし、それほどもてるとも思えない。愛人を持つ財力もないだろう。多くの妻が簡単に℃け入れることもありえない。日本の夫を中傷し、妻の名誉を傷つける意図しか感じられなかったが、わずか20年前まで米の大新聞は日本に対して平気でこういう記事を掲載していた。

真の同盟関係への認識不足
 米国の驚くべき対日観、日本への理解不足については、まだまだ書くべきことが山ほどあるが、一方で、日本における同様な問題も考えてみなければならない。

 もう40年近くも前の1981(昭和56)年、鈴木善幸首相(当時)が「同盟に軍事的側面はない」と発言して日米両国で大騒ぎになった事件があったが、さすがにいまはもう、そんなことをいう政治家はいない。

 だが、本当に大丈夫かと疑念を抱かせたのが、2015(平成27)年の安保法制をめぐる騒ぎだ。

 集団的自衛権の行使を容認し、日米の安保協力を高めようとした安倍政権の方針に対して、一部野党は「戦争法」という驚くべき表現で強く反発。1960(昭和35)年の安保反対闘争以来ともいえる国論を2分する対立に発展した。

 米国は「同盟での協力関係に対する日本社会の亀裂は米議会の期待とは異なるものだった」(外交評議会の知日派、シーラ・スミス研究員)として、日本の安保への認識に失望を示し、安保体制の円滑な運営に懸念を隠さなかった。

 日米同盟に反対する勢力が対立をあおるならともかく、認めている政党が反対するというのだから、米国も苦々しく感じたろう。

大物大使≠ヨのはしゃぎぶり
 米国の駐日大使が交代するたびに、くりかえされる日本国内の反応も米国を呆れさせている。

 このポストは1970年代末から、大物が次々に派遣されてきた。1977(昭和52)年、日本でもよくその名を知られたマイク・マンスフィールド元民主党上院院内総務の着任をはじめ、ウォルター・モンデール元副大統領、トム・フォーリー元下院議長、最近ではケネディ元大統領の長女、キャロライン・ケネディ女史らだ。これだけ大物が送り込まれる国はほかにあるまい。

 こうした人事が決まるたびに日本のメディアは「日本重視の表れ」などと報じる。ブランド≠好む日本政府、国民の心情を米国はよく知っている。

 重要なことは適材かどうかということであって、有名人であるかどうかではない。フォリー氏の大使起用が決まった時、国務省幹部が筆者に対して「日本人はハッピーだろう」とからかい半分で語りかけてきた。「日本には名の知れた人物を派遣しておけばいい」と米国が考えているとしたら、日本に責任があるというべきだろう。

異常なトランプ厚遇が物議
 安倍首相はトランプ大統領との良好な関係を誇っているが、喜んでばかりでいいというものではない。

 2016(平成28)年11月の米大統領選でトランプ氏が当選を決めたわずか9日後、安倍首相はわざわざニューヨークのトランプタワーに駆けつけ、会談した。人種差別、性差別ともいえる発言を繰り返すトランプ氏の当選に各国首脳が当惑、様子を見ているときだっただけに、氏にとってはうれしいことだったろう。

 その後の両者のかたい友情♀ヨ係は周知のとおり。今年5月、トランプ大統領が国賓訪問した際の厚遇ぶりは日本国内で物議をかもした。

 大相撲観戦の際、ほかの観客の迷惑を顧みず、土俵近くに椅子を持ち込んで升席をとりはらってしまったことなどは異常だった。

 ニューヨーク・タイムズは「トランプ訪日に安倍、へつらいを重ねる」という見出しで「報われるのか疑問視されている」と報じた。

 たしかにトランプ氏の発言など見る限り、本当に信頼できるのかという疑念を抱かざるをえない。いざというとき不本意な結果をまねくことになれば、うわべだけの親しい関係に幻惑された結果として深刻な事態になるだろうだろう。

 各国から、日本の首相は、トランプ大統領と同じ価値観を持っているようだという憶測をも生むという恐れもあろう。

「カゲの部分」無視で同盟深化ありえぬ
 筆者は心ならずも、日米関係のネガティブな側面ばかり論じてきた。日米同盟関係に対する米国の思惑と本音については、これまでもすでに『仮面の日米関係』(春名幹夫著)などすぐれた著作で分析されてきた。それだけに、「いまさら、そんなこといちいちあげつらって論じる意味があるのか」「他国との間に認識の違いがあるのは当然ではないか」「日米関係はそんなことに拘泥されないくらい深化・進化している」といわれるかもしれない。

 筆者が指摘したいのは、米国の政策上の打算だとか、条約上の不備、在日米軍への日本側負担が大きすぎるとか、そういう政治的、政策的な問題ではなく、2国間に横たわる根の深い疑問だ。

 こうした問題は、「グローバル・パートナーシップ」などという響きのいい言葉や、安全保障上の必要性という差し迫った事情から、いつの間にかどこかに埋没≠オてしまったのではないか。根本的な問題を放置して同盟関係の実際だけが進展していってしまえば、いつの日か同盟関係を揺るがす事態にも発展しかねない。ちょうど脆い土台の上に建設されたビルにいつか亀裂が入るようにだ。

 もっとも、土台が脆いからといって、手を加えることは危険を伴う。そのうえに建つビルを傷つけるかもしれない。

 しかし、同盟が高度に成熟した今だからこそ、あえて問題提起する意味があるだろう。国家の命運を共にする同盟関係に身を置きながら、相手がどういう思考方法の人間なのか、何をどう感じているのかーわかっていないというのでは情けないし、本当の意味での関係深化にはつながらないだろう。

 日本でも令和という新しい時代が到来した今、一歩引いて冷静に日米関係のカゲの部分に恐れずにみつめ、真の同盟深化には何が必要か、じっくり考える機会にしてはどうだろう。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17748
http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/838.html

[経世済民133] 生活保護の現物支給を考える 上野公園で出会った年金をもらうホームレス 年収160万円からの脱出、60歳からのハローワーク3
生活保護の現物支給を考える

2019/10/28

塚崎公義 (久留米大学商学部教授)

 生活保護を現物支給にして、専門の福祉施設を作れば良い、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は説きます。


(VictorHuang/gettyimages)
生活保護には両サイドからの批判あり
 健康で文化的な最低限度の生活を送る権利は、すべての国民に憲法が保証しています。したがって、生活保護の制度を政府が設けることは、当然の事です。しかし、この制度には両サイドからの批判があります。

 一つは、受給者に甘すぎる、というものです。40年間国民年金保険料を払い続けて来た高齢者が受け取る老齢年金よりも、年金保険料を一度も払わなかった高齢者が受け取る生活保護の方が多いのは、明らかに不公平である、等々の批判です。

 最低賃金で毎日しっかり働いている人よりも、生活保護を受けている人の方が良い生活をしている、という批判もあるようです。

 一方で、申請者に対する認定が厳しすぎるため、本当に支援が必要なのに受けられていない人がいる、という批判もあるようです。

 これは制度への批判ではないのでしょうが、制度の存在を知らない「情報弱者」を食い物にする「貧困ビジネス」の存在も問題とされています。ホームレスの生活保護申請を手伝ってやり、ホームレスに法外な家賃でボロ家を貸して儲ける、といったビジネスのようです。

刑務所に入りたい人がいる
 ホームレスが、冬になるとわざと犯罪を犯して刑務所にはいり、冬の寒さを凌いでいる、という話を耳にします。家族がいれば「彼らを犯罪者の家族にしたくない」、ということで犯罪を自粛する人は多いでしょうが、身寄りのないホームレスにとっては、合理的な行動なのかもしれませんね。

 しかし、これは政府にとってみれば大きなコストです。犯罪者を捕らえて裁判をし、刑務所を建て、看守を雇い、といったコストがかかるわけです。

 それならばいっそのこと、刑務所の独房と同じ広さの公営住宅を建て、刑務所の食事と同じものを無料で提供すれば良いのです。そうすれば、彼らが犯罪を犯す必要がなくなり、冬の間はそこで暮らすようになるはずです。

 その方が、政府にとっては遥かに安上がりです。警察官も裁判官も関与せずに済み、鉄格子も看守も不要なわけですから。

諸問題を一気に解決するのが「現物支給」
 こうした問題を一気に解決する妙案として、筆者は「生活保護の現物支給」を提唱しています。「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するだけの狭い部屋と美味しくない食事を用意し、希望者に無料で提供するのです。

 まず、不正受給がなくなります。金持ちにとっては、財産を隠して不正受給するインセンティブがないからです。広い家で美味しい食事をする金があるなら、わざわざ申し込まないでしょう。これは素晴らしいことです。

 一方で、厳しすぎる認定によって支援されるべき人に支援が行き届かない、ということもなくなります。必要な人に必要な支援が行き渡るわけです。

 貧困ビジネスも、成立しにくくなります。ホームレスには、貧困ビジネスが声をかけるより先に行政が声をかけて生活保護住宅に住まわせれば良いからです。

 最低賃金でしっかり働いている人でも、希望すれば住めるわけですから、「働かずに生活保護を受けている人の方が良い生活をしている」ということにはなりません。

 年金生活者も希望すれば住めるわけですから、「若い時に年金保険料を払わなかった人の方が良い生活をしている」ということにもなりません。

 働いて得た賃金や受け取った年金は、時々美味しいものを食べたりする「ささやかな贅沢」に使えば良いのです。もちろん、孫への小遣いにしても良いでしょう。

 誰でも希望者が住めるようにすると、生活保護の受給者が今より増えてしまい、財政が圧迫される可能性もあります。しかし、その多くは本来権利がある人が権利を行使していなかった分でしょうから、問題視すべきではないのかもしれません。

 むしろ、それによって「満足に食事も食べられていない母子家庭の子が食事にありつける」「金がないので自殺したり犯罪に走ったりする人が減る」といったことが見込まれるのであれば、財政支出の用途としては望ましいものだと言えるのではないでしょうか。

 以下は細かいことですが、わざわざ家を建てなくても、空き家が多くありますから、それを譲り受けて使えば良いでしょう。監獄を作って犯罪者を住まわせるわけではないので、周辺住民の抵抗も大きくないはずです。

 国境付近の離島に生活保護住宅を建てて、日本がその島を実効支配しているということを国際社会にアピールする、という手もありますね。その場合は、「僻地手当」として、美味しい食事をドローンで配達する必要があるかもしれませんが。

 ハローワーク等と連携して、住民には適当な仕事を紹介するようなシステムも設けると、一層良いですね。少子高齢化による労働力不足が深刻化して行けば、彼等も貴重な労働力として大事にされるようになるかもしれませんから。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17732

 
上野公園で出会った年金をもらうホームレス

年収160万円からの脱出、60歳からのハローワーク3
2019/07/12

風樹茂 (作家、国際コンサルタント)

 年金に関する記事を目にする機会が多いが、新聞、雑誌、ネット記事のいずれも暗い内容のものが多い。夢のある記事はない。そんなときに思い出すのは、上野公園で出会った年金をもらうホームレスである。


(Irina Griskova/gettyimages)
上野公園の出会い
 バブル崩壊後、今と同様に仕事のない私は取材もかねて、上野公園や代々木公園で野宿することがたびたびあった。若い人は知らないだろうが、当時、上野公園には600人を越えるホームレスが住み、ブルーテントがひしめいていた。

 私は、東大大学院卒のホームレス、路上の哲学者、イラストレーター、元コンビニ経営者、大手化学企業の元エリート社員、自称修行僧など、多くのホームレスと親交を結んだが、その中でも悠々自適でバラ色のホームレス生活を送っていたのが、「年金」(あだ名)という北海道出身の元造林業者である。

 私が公園で眠るときは、ダンボールの切れはしで風をよけるだけだったのに、「年金」は羨むべき新築の仮小屋を持っていた。それは、高さ1.5メートル、幅1.5メートル、長さ3メートルほどの木造一戸建。表面に青いビニールシートを被せている。最初に彼の家屋の特異性に気付いたのは、当時一緒にホームレス取材をしていた3歳の息子のほうだった。

 「これ電車だよ。車輪がある」

 底に目を這わせると、家の土台に4つの車輪がある。移動可能なホームレス住居!? ホームレスは皇室の方々が上野公園を訪れる度に目に触れないように家財道具を持って公園外に出る必要があった(山狩りと呼ばれる)。世帯主は元大工かと想像したが、そうではなかった。

 その小屋の後で、ステテコ姿でバケツに水を入れて下着を洗っていたのが、その後「年金」と私があだ名をつけた家主だった。

 「ご自分で作ったんですか」

 「いや、違う。大工に作ってもらったんだよ。手間賃は5万円かな。材料費は3万円かかったよ。土台の台車が一番高かったな」

 自慢の住居なのかもしれない。「年金」は客商売に慣れているのか、好奇心に駆られた私の目の色に気付いたのか、オモテナシの精神をいかんなく発揮し、愛想良く、

 「部屋の中も見るかい」

 おしげもなくベニヤ板の両開きの門をあけてくれる。息子と一緒に中を覗いた。

 きちんと板でしきりがつくられ、寝る場所は一段高くなっている。その上の空間にひもを吊り、洗濯物が干されている。小屋の作りは、北海道で冬に子供たちが雪でつくる、雪合戦用の滞在可能な基地に似ている。まことに合理的なのである。

 私はさりげなく聞いた。

「年金をもらっているの?」

 ホームレス界の頂上に立つ、裕福な彼の噂は上野公園に鳴り響いていた。

「ああ、そうだよ」

 今もってある意味羨ましい。私は築50年の家に住み、地震がくると危ういので、「はやく建て直せ」と家人に責められているが、月7万円の年金収入では実現不可能だ。それに公園ならば土地はロハだし、固定資産税もいらない。

 だからといって羨ましいだけで非難するわけではない。

 企業でまじめに働いてきた人間ほど、「公園に住むなどけしからん」とか、「生活保護をもらいやがって」などと怒るが、公園に永遠に住むわけではない。公園には避難所という機能があり、戦争、地震などの自然災害の時に利用される。だからその機能を果たしているに過ぎない。「年金」を含め、彼らはバブル崩壊後の経済難民だったのである。

北大卒からホームレスになったわけ
 「年金」とは同郷ということがわかり、話が弾むことが多かった。彼は北海道の造林業者だった。造林とはあまり聞かない言葉なので彼に説明してもらうと、造林は土地を買って木を植え、それを販売することだという。

 「バブルのときに造林に手を出して入札で2億円の山を買ったんだよ。でも木材が育つのは何10年と時間がかかるし、値段的に輸入材に勝てない。バブルが崩壊して土地の値段は下がるし、結局借金の金利が払えなくなった」

 目論見が甘かったのである。銀行にも金を借りてくれとけしかけられたに違いない。

 「ブルやダンプやユンボを全部売っぱらっても、借金返済には足りなくて、保証人には悪いことをした」

 造林会社の社長だったわけだ。でもホームレスのいうことは眉つばも多い。そんな私の疑いの表情に気がついたのか、年金は別のホームレスにあずけてある1.5メートル長のセルロイド製の衣装ケースをわざわざ持って来させ、さっそくケースを開け、「これ、これ」といってその中の小箱を開けた。年金証書ほか重要な書類が入っている。

 年金はまず、北海道大学の卒業名簿を見せ、次に植林関係の認定業者の目録をとって自分のかっての企業を「これがそうだよ」と指差し、次に筒に入った、賞状をうやうやしく披露した。賞状には農林大臣の文字がある。年金は誇らしげである。日付はそう遠い昔ではない。

 「全国で10社ぐらいだよ。選ばれたのは。女房といっしょに上京して大臣に会って金杯までもらったんだ」

 人は頂点から一気に転げ落ちる。

年金をもらえるわけ
 住所がなければ生活保護ももらえないし、年金ももらえないはずだが。

「年金はね、あれさ、高田馬場のアパートの住民表を見せればこっちでも手続きできるのさ」

 年金は東京に出て来て、4年ほど野村系のコンピュータ会社に勤務し、60歳で定年退職したのだという。職務はというと、

 「会計とかいろいろな紙、スリップが出るだろう、その仕分けをやっていたんだ」

 野村系ならば、少なくとも退職金が出たであろうし、失業保険ももらっていたわけだ。そして年金もある。今の私と違い、彼は60歳から国民年金を満額もらっていたに違いない。安定した収入のある生活が羨ましくなる。

 「家族はここにいるのを知ってるの?」

 「ああ、知ってるよ。女房と子供はね。孫は知らないけど」

 なるほど、家族公認の元社長の年金ホームレス…

「年金」の年金哲学
 ある日、「年金」といっしょに、専門家、有識者による自然保護に関する対談を聴きに銀座へ足を運んだ。植林実践者の「年金」は、彼らの話は現実離れした机上のおとぎ話でしかないと、不満げだった。帰路、なぜ公園に住むのか、年金の年金哲学を聞いてみた。

 「年金っていってもたかがしれているよ。アパートを借りたら、安くても年50万ぐらいかかるだろう。もうそう長くはないんだから、年金で旅行をしたり、好きな競艇にでも行ったほうがいいよ。でも、まあ、戸田や江戸川に行って損ばかりしているけどな。時々、これならアパートに住んだほうがよかったかもって思うけど」

 年金を博打で散財しているのである。そして幾分ズルがしそうな目を私に伸ばし、

 「でも、もしアパートに住むならば、ちょっと働かなきゃねぇ」といい、付け加えた。

 「こづかいでもいいからおれを使ってくれないかい? 給料はいらないんだよ。アパートさえ用意してくれれば。会計とか、会社設立とかはみんな分かるよ。でもパソコンはできないけどね」

 当時、失業者でごった返していたハローワークに行った時、説明会で私を含めた求職者は係官に厳しくいわれたのである。

 「35歳以上の人はここにきても仕事はありません!」

 ならば、起業するしかない。そこで元社長の「年金」に私はあれこれ相談していた。だが、今のところただの失業者なのだから、「年金」のためにアパートを借りるような余裕はなかった。

 そこで話題を変えた。

 「北海道には帰らないの?」

 「もうそろそろ帰えるさ。女房の年金が出たらね。年金事務所にいって調べたけど、あと数年たたなきゃもらえないんだよ。おれ一人の年金じゃろくな暮らしできないからな。それまでは帰れないよ。保証人は借金を返しただろうから、顔を合わせたくないけど」

夢のある年金生活の勧め
 このところ日本の政府は「働け!」、「働け!」、国民も「働きたい」、「働きたい」、家人などは「死ぬ瞬間まで働け」と叱咤してくる。日本という国は、いつの間にか働くだけの国になったようだ。いや、「働かざる者食うべからず」と上野公園に住む托鉢で働く自称修業僧がいっていたのだから、昔からそうだったのかもしれない。

 しかし、私は恥ずかしい。60歳を越えてあくせく働くなどというのは、ある意味人の道に反している。

 だからこそ年金の年金哲学とその実施方法を、自分自身の状況にあてはめて活用するほうがいい。

 “低い年金ならば、単身でそれなりの生活を行い、趣味に使える額を残す。そして妻が年金をもらったときに、再度いっしょに住む”

 これは一般的でないが、私の場合は、妻が年金をもらうまで一人でフィリピンの奥地や南米の奥地で悠々自適の生活をし、そのうち帰国するということになる。これも一考だ。

 一方、万人に活用できるのは、

 “住宅費にお金をかけるよりも、好きな競艇にお金をつぎ込む”

 人によっては競艇かと、あざける人もいるだろう。けれども年金を何に使おうが個人の自由。目くじら立てる必要はない。年金を生活費のたしにする話ばかりではまことにせちがらく、せこい。

 競艇を自身の趣味に言い変えてみるとよい。海外旅行、全国自転車旅行、孫へのプレゼント、妻へのプレゼント、再入学した大学の授業費、書籍購入費、天体望遠鏡の購入費、株式への投資(ずぶの素人には勧めない!)、愛人への貢物― それぞれ趣味や趣向がある。年金はそのためのお金と思えば夢が広がる。

 私が前倒しで年金をもらい始めたのも、夢の実現のためでもある。今のところ生活費にあてるのがやっとだが、良いバイトや仕事が決まれば、年金80万円をまるまる自分の好きなことに使える。実は次のカタールでのワールドカップ観戦の資金に充てる思惑があってのことでもある。

 ブラジルワールドカップは訪れる余裕があったが、ロシアワールドカップは日本にいてそんな余裕はなかった。もともとカタールではワールドカップのための電力増強のために汗水たらして働いたのである。そんな因縁さえある。

 年金の夢のある活用のためにも、いい仕事なりバイトなりを見つけ、生活費は別に稼ぐ必要がある。でも、ああ、やっぱり働くのか!(続く)

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/16759
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/509.html

[国際27] 不満噴出によるデモも改善見せないイラク
不満噴出によるデモも改善見せないイラク

2019/10/29

岡崎研究所

 イラクでは10月1日に各地で反政府デモが発生し、発生から1週間で、死者は100人を、負傷者は3000人を超えたと報じられている。10月2日、アブドルマハディ首相は、首都バグダッドに外出禁止令を発令するなどしている。

 今回のデモの理由はいくつかある。直接的な契機の一つには、モスル攻撃をはじめ、ISとの戦いで大きな功績を挙げたアブドゥル・ワハブ・アル・サアディ将軍が9月に左遷されたことがある。サアディと彼の部隊が米国の特殊部隊の支援を受けるなど、米国と緊密な関係にあったことを、イラン系の国民動員軍(Popular Mobilization Forces: PMF)が快く思っていなかったことが左遷の背景にあるらしい。PMFはイラクでの影響力を拡大しようとしており、サアディの左遷はイラク軍の解体を示唆しているとも考えられる。サアディは国民的英雄でもあったので、彼の左遷に反対するイラクの若者が街頭に繰り出した。それ以外に、イランや米国、サウジの干渉に対する愛国主義的反応、バグダッドのグリーンゾーン(元米軍管轄区域)に対する反発などが指摘される。

 しかし、根底にあるのは、国民の窮状への不満の鬱積と、それに対して何もしない政府への怒りだろう。イラクでは社会インフラの整備が進んでおらず、電気や水の不足が深刻とのことである。雇用状況は悪い。イラク中央統計局の発表では2017年の失業率は14.8%であったとのことであるが、イラクの統計の信憑性の問題もあり、実際にはもっと高いことが容易に想像できる。イラクは世界で13番目に腐敗した国である。イラクでは電気、水が不足し、衛生状態が酷い。子供の4人に1人が貧困であり、就学期児童の90%が学校に行っていないとの統計もある。2007年の宗派間の暴力的対立、2011年の動乱、2014年のISの台頭の根底にあったのは、いずれも国民の窮状への不満であった。

https://wedge.ismedia.jp/mwimgs/9/d/900/img_9d1cb7cd7bb33b4ca32065a986dcd8d8241014.jpg
イラク・バグダッド市内の貧しい地区、2019年6月29日。
(RobertoDavid/iStock Editorial / Getty Images Plus)

 イラクに必要なのは腐敗を無くすための思い切った改革と、公共サービスの向上など国民生活の窮状に対する対策である。しかし、イラク政府は腐敗しきっており、有効な対策をろくに打ち出せずにいる。このような状態に対して国民が不満を持ち、反政府デモをするのは、いわば当然のことと言ってよい。デモの一部が政府の交代を要求していると報じられているが、不思議ではない。

 デモは主としてシーア派の住民が行っている。シーア派の最高権威アリ・シスタニ師が「政府は、腐敗と戦い具体的行動を望む人々の期待に応えていない」と苦言を呈している。国会最大勢力の政党連合を率いるシーア派の有力指導者ムクタダ・サドル師は10月4日、これ以上死者を出さないためにもアブドゥル・マハディ政権が退陣し、国連監視下の総選挙の実施すべきである、との声明を出したと報じられた。このように政権に対する圧力が増しているが、政権は国民の不満に耳を傾け、不満の根底にある国民生活の窮状の改善に取り組みそうにない。アブドゥル・マハディ政権は、デモが政権打倒を目指していると考え、デモを厳しく弾圧している。今回のデモは多少落ち着きを見せて来ているようではあるが、イラクの経済危機と政情不安は当分続くと見なければならないだろう。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17710
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/629.html

[経世済民133] トラック内の39遺体、一部はヴェトナム人か 悲しみに暮れる家族 「ママ、私は売られた」女性が少ない中国へ、国際人身売買の闇 人身取引・売買は日本の子どもたちにも起こっている?日本の法規制や対策、行われている支援とは
トラック内の39遺体、一部はヴェトナム人か 悲しみに暮れる家族

2019/10/28

BBC News


ジョナサン・ヘッド東南アジア特派員

レ・ヴァン・ハさんの家族は、悲嘆に暮れている。息子が、孫が、夫が、イギリス東部エセックス州でトラックの冷凍用貨物コンテナから39人の遺体が見つかった事件の犠牲者の1人だという可能性を、家族は受け入れようとしているのだ。

レ・ヴァン・ハさんの祖母は宙を見つめ、両手で顔を覆っている。妻のハさんは黙ったまま座り、何か食べた方がいいという忠告を拒否している。父親のレ・ミン・トゥアンさんは絶望して、孫を抱きしめ泣いている。

この悲惨な結末に至るまで、レ・ヴァン・ハさんの物語は、ヴェトナムの貧しい農村の若者にとってごくありふれたものだった。

30歳のレ・ヴァン・ハさんは、これまでに何千人もの若者が歩いた道をたどった。海外でよりよい働き口を見つけるため欧州へと旅立ったのは3カ月前。2人目の息子が生まれる直前だった。

一家はすでに家の建築費を借金していたが、レ・ヴァン・ハさんが欧州へ行くにはさらに2万ポンド(約280万円)を密入国あっ旋業者に支払わなくてはならなかった。そのため、父親のレ・ミン・トゥアンさんは土地の2区画を抵当に入れた。

すべてはレ・ヴァン・ハさんが良い仕事に就き、貯金してローンが返せるかどうかにかかっていた。しかし、レ・ヴァン・ハさんの世界は崩壊した。

この事件では当初、犠牲者は全員、中国人だとの見方が広がっていたが、少なくとも6人がヴェトナム人である可能性が浮上している。ヴェトナムの警察は行方不明者の家族からDNAのサンプルを採取し、犠牲者の身元の特定に協力している。

「息子は大きな借金を残していった」と、レ・ミン・トゥアンさんは話した。

「いつ支払いが終わるのか分からない。私は年寄りだし、身体も悪いし、孫たちを育てる手伝いもしなくてはならない」

レ・ミン・トゥアンさんは息子の死を確信していた。レ・ヴァン・ハさんは事件の直前、もうすぐイングランドへ向かうとフェイスブック経由で父親に伝えていた。

コンテナの中で死亡していた人たちのほとんどが、レ・ヴァン・ハさんと同じイェンタイン出身だとみられている。

近所の人たちが手伝いにやってくる。行方不明者の写真を持ってきて、家の祭壇で一緒に祈りを捧げていく。ブイ・ティ・ヌンさん(19)の家には、ほほ笑むヌンさんの大きな写真が飾られていた。家族はなお、ヌンさんがあのコンテナの中にいないよう祈っている。

姉妹のブイ・ティ・ロアンさんによると、10月21日にヌンさんとフェイスブックでやりとりした時、ヌンさんは「倉庫の中にいる」と言っていたという。

「確定した情報はない。インターネットとソーシャルメディアの情報だけなので、まだ望みはあります」とロアンさんは話した。

「当時、イングランドに向かっていたトラックは3台あった。なので魔法によって、彼女は実は別のトラックに乗っていたということになるかもしれない」

ヌンさんは4人きょうだいの中で一番頭が良く、旅のための資金作りにはたくさんの友人が手助けをしてくれたという。家族が借金をしたり何かを売る必要はなかった。

ヌンさんの家族は今、良い知らせを待っている。最悪の事態だった場合、ヌンさんの遺体をヴェトナムに戻すには、誰かの支援が必要だ。

この地域で見かける新築の家は、海外で働いた家族がお金を稼いで貯金した証拠だ。イギリスは出稼ぎ先として、人気らしい。ロシアやルーマニアで働いたという人もいるが、両国で高給の仕事はなかなか見つからないという。

出稼ぎから戻った人たちによると、フランスでは不法滞在について警察から執拗な嫌がらせを受けたという。一方、イギリスにはすでに強力なヴェトナム人コミュニティーがあり、ネイルサロンやレストラン、農業などで仕事に就くことができる。

海外に出稼ぎに行くには、世界中にネットワークを持つ裏社会の密入国斡旋業者とやり取りする必要がある。業者は大金と引き換えに、依頼者の違法な越境を手配する。金額はまちまちで、1万ポンドから3万ポンド。高いほど「VIP待遇」が受けられるとされている。

ヴェトナムから欧州へ密入国する人の多くが中国を経由する。しかし、英仏海峡を渡るための確実な手段はたったひとつ。払った金額に関わらず、コンテナの中に隠れて密入国するしかない。

エセックスでの悲劇を受け、ヴェトナムのグエン・スアン・フック首相は、人身売買ネットワークについて捜査を指示した。しかし人身売買はもうずっと前から、深刻な問題だ。多くの場合、女性や子どもが被害者になる。米国務省が今年発表した人身売買に関する報告書で、ヴェトナムは降格されている。

ヴェトナム政府がどんな方策をとったとしても、人身売買で得られる法外な金額を思えば、ヴェトナムで人身売買はビジネスとしてしぶとく成長し続けるはずだ。

(英語記事 Lorry death agony builds for Vietnamese families)

提供元:https://www.bbc.com/japanese/50204661
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17752


 

「ママ、私は売られた」 女性が少ない中国へ、国際人身売買の闇
ニューヨークタイムズ 世界の話題
2019.10.02
Nyo, 17, an ethnic Wa girl who became a victim of human trafficking, with the baby she was forced to carry, in Mong Yal, Myanmar, March 30, 2019. With women far outnumbered by men in China, some Chinese men are importing wives from neighboring countries, and using force to do so. (Minzayar Oo/The New York Times)
人身売買の被害者で、ミャンマーの少数民族「ワ」出身のニョ(17歳)と彼女の赤ちゃん=2019年3月30日、Minzayar Oo/©2019 The New York Times
彼女は、自分がどこにいるのか分からなかった。彼女は、その言葉を話せなかった。当時16歳だった。

その男は、彼女の夫だと言った。少なくとも(スマホの)翻訳アプリにはそうあり、彼女に体を押し付けてきた。彼女の名前はニョ。ミャンマーのシャン高原にある山村出身の少女で、妊娠するとどうなるのか、確かなことは知らなかった。だが、それは起きた。

生後9日の産毛の赤ちゃんは、間違いなく中国人に見える。「父親似だ」とニョは言い、「唇が同じ」と言った。

「中国人」。ニョは悪態をつくように付け加えた。

中国の「一人っ子」政策は、マルサスの悪夢(訳注=制限されなければ人口は幾何級数的に増加するが生活資源は算術級数的にしか増加せず、生活資源は必ず不足するとの説。英の人口学者トマス・マルサス<1766〜1834>が唱えた)に向けた人口爆発を食い止めたとして指導者たちから礼賛された。ところが30年以上にわたり、中国では男子だけを持ちたいという家族がその思いを確実に実現するため、性別によって中絶などの方法を用いたことで何百万もの女子の誕生を阻んできた。

そうした男の子たちは今や大人になり、裸の枝と呼ばれる男になった。嫁不足で家系が途絶えてしまいかねないからだ。中国の人口統計によると、男女出生比の不均衡がピークに達した2004年は女子の出生100人に対し、男子は121人を数えた。

これに対処するために、中国の男性たちは近隣諸国から妻を迎え入れるようになった。時には無理やりにだ。

「花嫁売買は、ここシャン州ではとても一般的だ」とゾウミンタンは言う。シャン北部の町ラシオにある警察の人身売買阻止隊員だが、「でも、人身売買のことに本当に気づいている人はほんのわずかしかいない」と指摘する。

Ethnic Shan farmers work at a watermelon farm in a village on the outskirts of Lashio, Myanmar, March 30, 2019. With women far outnumbered by men in China, some Chinese men are importing wives from neighboring countries, and using force to do so. (Minzayar Oo/The New York Times)
ミャンマーのラシオ郊外の村で、スイカを育てるシャンの農民たち=Minzayar Oo/©2019 The New York Times。軍政時代、少数民族が中心のシャン州は分離独立などを掲げ、中央政府軍との内戦が長く続き、土地が荒廃、民情も荒れた
米ジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院と(タイに拠点を置く女性人権NGOの)「タイ・カチン女性協会(KWAT)」による研究は、2013〜17年の間、ミャンマー北部から中国のある一つの省だけでも計約2万1千人の成人女性や少女が無理やり結婚させられたとみている。

ミャンマー北東部のシャン高原にあるモンガイ地区の集落は小規模な軍の駐屯地で、兵士とその家族はほこりっぽい道に設けた金属屋根の小屋で暮らしている。

学校を昨年卒業したニョと同級生のピュ――2人とも未成年のため、ニックネームで呼ぶ――は、この退屈な駐屯地で得られる以上の何かがほしいと思った。

隣人のドーサンチー(訳注=ドーは既婚の女性につける敬称)は、もう一人の村人ドーニンワイの関係を通じて、ニョらに中国との国境でのウェートレスの仕事を2人に約束した。

ニンワイは村で一番立派でどこよりもしゃれた家を持っていたから、ウェートレスの仕事の提案には重みがあった。

「私たちは彼女たちのことを信用した」と現在17歳のピュは言う。

2018年7月の、ある早朝、モンガイに一台の小型トラックが来て少女たちを乗せた。ピュは山道で車に酔った。サンチーはピュに酔い止めの薬だとする錠剤を4粒渡した。1錠はピンク色で、あとの3錠は白色だった。

その後のピュの記憶はぼんやりしている。誰かが彼女の腕にも何かを注射した、と彼女は言う。その間に彼女を撮った写真を見ると、顔が腫れていて、目はうつろだ。

「今回のことが起きる前は、ピュは幸せそうで活発だった」と母親のドーエイウーは言う。「ところが、彼女たちが娘に記憶を奪い、性欲を刺激する何かを与えた。娘を殴った。娘はめちゃくちゃにされることに気づかなかった」

同じく現在17歳のニョは錠剤を飲むのを拒んだ。彼女の記憶はもっとはっきりしているが、同じく混乱がある。中国国境沿いのゲストハウスに立ち寄り、働くことになっていたレストランが大雨で閉鎖されたという話があった。ボートに乗り、さらに何度か車にも乗った。

10日以上かけて移動した後、レストランで働くという考えは遠ざかってしまった。ニョとピュは2度、逃げようとしたが、どこへ行けばいいのか分からなかった。人身売買業者はニョたちを捕まえ、部屋に閉じ込めた。スマホにシグナルは届かなかった。

中国語を話す男たちが会いにやって来た。ある男が少女を指さし、別の男はもう一人の少女に指を向けた。

「私は売られたことに気づいたけど、逃げられなかった」とピュは振り返る。

人身売買業者の一人はピュに、お前はラッキーだと言った。彼はピュに、男たちの中から(好きな男を)選ぶのを許したのだ。ピュは、太った男や年配の男を拒否した。彼女は泣きだしたが、業者は泣くのをやめるよう告げた。将来の夫にかわいく見えるようにするためだという。

「結婚したくないと言った」とピュ。「ウチに帰りたかった」

国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」が今年発表した報告書は、ミャンマーから中国への花嫁の人身売買を勢いづかせた要因を、次のように指摘している。「抜け穴だらけの国境や双方の司法機関の対応能力の欠如が、人身売買業者がのさばる環境を生み出した」

少女たちはいずれも国境を越えたという覚えがなく、(気づいたら)突然、中国内にいた。少女たちは離ればなれにさせられ、それぞれ夫となる男とペアを組まされた。ただし、少女たちが知る限り、婚姻書類には何も記入していない。列車に長時間乗せられ、最後は北京まで来たと思った。ピュを買ったのはユアン・フォンという男で、21歳だった。

その街にはたくさんの明るい照明やエスカレーターがあった。「建物はすごく高くて、てっぺんが見えなかった」とピュは語る。

ユアンは彼のスマホの翻訳機能を使って会話しようとしたが、ピュは話すのを拒んだ。彼女はテレビがある部屋に閉じ込められた。夕方になると彼がやって来て、ピュの腕に注射をし、無理やりセックスさせられたと彼女は言う。

「私は何も感じなかった」とピュ。「彼は酸っぱい臭いがした。彼はたばこを吸った」と語った。

ピュが言うには、最終的に彼女は幸せそうなふりをし、注射を打たれなくなった。2人はショッピングセンターに出かけたが、ユアンはどこまでも付いてきて、トイレにさえ追いかけてきた。ユアンの姉妹とその小さな子どもたちも一緒に遊園地に行ったこともあった。ユアンは乗り物に乗ったが、ピュは乗らなかった。

ピュは中国語の成句をいくつか学んだ。「『ブクラー(不哭了)』は泣くなという意味だ」と彼女。

ピュは夫のスマホのパスワードを覚え、彼が酒に酔って帰宅した夜、通信アプリを使って母親に電話をかけた。

「娘の顔を見られてうれしかったけど、あの子のようには見えなかった」と母親のエイウーは振り返る。「娘は、『ママ、私は売られたの』と言っていた」

一方、ニョは中国のどこに連れていかれたのかはっきりしなかったが、その場所を特定しようと考えた。最初、夫のカオ・チーも彼女を部屋に閉じ込めた。その部屋ではインターネットができなかった。殴られた、ともニョは言う。

The father of Nyo, an ethnic Wa girl who became a victim of human trafficking, holds a picture of the accused broker Daw Hnin Wai who has been fleeing at large with a police warrant, in Mong Yal, Myanmar, March 30, 2019. With women far outnumbered by men in China, some Chinese men are importing wives from neighboring countries, and using force to do so. (Minzayar Oo/The New York Times)
人身売買業者の一人とされ、逃走中のドーニンワイの写真を持つニョの父親=Minzayar Oo/©2019 The New York Times
しかし、日が経つにつれ、彼はニョを信頼するようになり、中国版のLINE「WeChat(微信)」などソーシャルメディアを使わせてくれた。

同居しているカオの母親は、ニョが子どもを産むには痩せすぎていることにやきもきしていた。母親は、外国人である義理の娘の体力強化にコメがゆや小麦の太麺、蒸しパンなどをつくった。

「彼女はいつも食べるという意味の中国語を使って、『チー、チー(吃、吃=食べろ、食べろ)』と言っていた」とニョは振り返った。

ニョは自分が持っていたスマホを使って、その居場所がどこかを特定できる対象をひそかに写真に撮った。カオのスクーターの後部の車道、家族の車のナンバープレート、彼らが住む2階建て家屋の入り口などだ。ニョは動画や静止画にそれぞれ位置情報を記録した。

その場所は、中国中央部の平原に位置する河南省項城市だった。河南省は中国で最も人口が多い省の一つだ。ミャンマーの人口の2倍に当たる1億人を抱える。

2005年の国勢調査によると、河南省は男女比の開きも最大の省の一つで、女子100人に対し男子は142人(しかし、女の子の場合は当局に届けないケースもあるため、実際の男女比の開きはもっと小さい可能性がある。中国は現在、人口制御規制を緩めている)。

河南省項城市の周辺地域には女性の人身売買の歴史がある。河南の報道メディアによると、今年はミャンマーからの女性3人、ベトナムからの女性1人が救出された。

ピュがいた場所も、北京ではなく項城市だったことが判明した。ミャンマーの寒村出身の少女からみれば、項城市でも立派な大都市である。

住まいも大きかった、とニョは言う。カオがニョを無理やり押し倒す時に彼女が叫び声をあげても、カオの親には聞こえないほど広い家だった。

「私は、カオが金持ちだと思った」とニョ。「だって、そうでなければ、妻を買ったり、そうした大きな家を持てたりしないだろうから」

実際には、人身売買の女性を妻として買うような男は貧しい方の中国人だ。それでも、かなりのカネを払わなければならない。ニョの事件を追ったシャン州の警察幹部ミョゾウウィンによると、ニョの場合は2万6千ドルで売られた。

ミョゾウウィンは、中国に売られて性の奴隷になっていた少女たちの救出を支援するあるシャンの女性を通じ、カオのWeChatのアカウントで、ニョのきょうだいを装ってニョと連絡を取り始めた。

中国当局とも連絡を取り合ったミョゾウウィンが、動いた。カオは疑心を抱き、ミョゾウウィンに何者なのかと聞いた。ミョゾウウィンは英語で、「警察だ」と一言。

少女たちが河南省項城市に連れてこられて2カ月後、中国の警察が少女たちそれぞれの夫の家に踏み込んだ。

項城市警察の広報官ニウ・ティエンホイによると、ユアンもカオも法律に基づいて少なくとも30日間、身柄を拘束された。

「夫たちの家族はいずれも、たいそうなカネをつぎ込んだうえ、嫁を失ったと怒っている」。ニウは、そう話していた。

中国人のチャオ・モウモウが2人の少女を無理やり性的奴隷にしたとして逮捕された。

一方、ニョとピュが自分たちを誘拐したと言っている隣人のサンチーは現在、ラシオの刑務所に入っている。地元の人身売買業者とされるもう1人の女ニンワイは逃走中だ。(抄訳)

(Hannah Beech)©2019 The New York Times

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人身取引・売買は日本の子どもたちにも起こっている?日本の法規制や対策、行われている支援とは

この記事を要約すると

#人身取引 投稿日:2019.04.25 更新日:2019.08.20
人身取引は世界中で行われている忌むべき犯罪です。余り知られていませんが、日本でも人身取引は行われています。

今回の記事では、人身取引の危険性と、人身取引された子どもたちに対してどのような支援ができるのか解説していきます。

人身取引・売買問題とは?
子どもの強制労働や売春、誘拐への対策や支援について知ろう

わずか2万円で売られる少女たち、児童買春の問題を無料で支援できる方法とは?
gooddo×認定NPO法人かものはしプロジェクト目次
日本でも人身取引・売買は行われている!


日本は安全な国というイメージが強いですが、決して人身取引が行われていないわけではありません。毎年のように人身取引による検挙が行われています。まずは、過去どのくらいの検挙数なのか見ていきましょう。

平成30年までにおける人身取引事犯の検挙状況

検挙件数
平成28年(44件)、平成29年(46件)、平成30年(36件)

検挙人員
平成28年(46人)、平成29年(30人)、平成30年(40人)

被害者数
平成28年(46人)、平成29年(42人)、平成30年(25人)

(出典:警察庁「平成30年における人身売買事犯の検挙状況等について」)

子どもや若い女性だけがターゲットではない
平成30年になり被害者数は減りましたが、それでも検挙される人数は増えています。
法律などが強化され、罰則の対象となる人身取引ですが、強制的な労働や性行為のために悪質な需要があるため撲滅するのは難しいのが現状です。
さらに、人身取引のターゲットとなるのは「子どもや若い女性」だけに留まらず、最近では海外出身の日本滞在者もターゲットになっています。

日本にやってきた海外出身者は日本に慣れていないためにだまされてしまうことが多く、安い賃金で重労働や長時間の労働をさせられることが増えています。
また、臓器の売買目的などで男女関係なく人身取引のターゲットにされることも少なくありません。
人身取引は子どもや女性だけでなく、誰にでも危険が及んでいることを理解しなければなりません。

主に売春や性的搾取の目的
日本における人身取引の目的は基本的に以下のようなものになります。

売春、風俗
児童ポルノ
アダルト動画出演
いわゆる性的搾取が目的ということです。最近では、児童ポルノに関しては取り締まりが厳しくなったため検挙数は減ったものの、風俗やアダルト動画への出演強要が増えています。
人身取引・売買された女性や成熟しきっていない年齢の子どもたちは違法風俗で働かされたり、接待と称した性的交渉、裏アダルト動画への出演なども強要されます。そのようなことを強いられている被害者は劣悪な生活環境しか用意されないケースも多く、性病や感染症、栄養失調になることも珍しくありません。

先述したとおり、日本では児童ポルノに対する取り締まりは厳しくなっています。そのため、小学生などの小さい子どもは人身取引されにくくなりました。その代わり、女子中高生くらいの世代が人身取引・売買のターゲットとして狙われることが増えました。流行にもなったJKビジネスが要因の一つです。
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日本の人身取引・売買の対策とは


日本では、人身取引・売買に対する法律が定められています。

人身売買罪
人身売買を行った時点で取り締まられる刑罰です。刑法226条2項目に記載されており、人身売買を行った者に対して、以下の罰則が与えられます。

人身を購入した者は、3年〜5年以下の懲役が科される
未成年者を購入した者は、3年〜7年以下の懲役が科される
営利目的、または性奴隷、結婚、身体に危害を与える目的で、人身を購入(または売却)した者は、1年〜10年以下の懲役が科される
国外へ人を売買した者は、2年以上の有期懲役に科される
人身売買はもちろん、人身売買による性奴隷や強制的な結婚、暴力・殺人なども防ぐための法律です。

人身取引対策行動計画とは
日本はこれまで、女性や子どもの性的搾取を目的とした人身取引の大きな受入国でありながら、政府が積極的な対策を行っていなかったことに国内外から批判の声が上がっていました。
そうした背景を受けて、政府が発表したのが「人身取引対策行動計画」です。

この計画では、人身取引被害者を保護の対象とし、被害者が心身ともに過酷な状況に置かれていたことを配慮した上で被害者の状況に応じてきめ細かな対応を行うとしています。
同時に、加害者(ブローカーや雇用主)の処罰に関して刑罰法令の整備を図るとともに取締を一層強化することを明確にしています。

人身取引は人権侵害であり、早急な発見、対応が求められています。人身取引対策行動計画は、そうした認識のもとに政府が策定した人身取引に対する行動計画を記したものです。

人身取引・売買された子どもを救う支援活動

人身取引によって傷ついたサバイバー(人身売買、レイプなど過酷な状況を生き延びた人)には救いが必要です。
人身取引により精神的に苦しんでいる人、身体的に苦しんでいる人などすべてのサバイバーに対して、『シェルター』と呼ばれるものを運営している団体があります。
シェルターには、緊急および一時的施設として利用できるので、心の安寧を保つのに有効です。
シェルターには1日24時間、シフト制でマネージャーが常駐していますので、しっかりとした安全確保が行えます。
そんなシェルターでサバイバーに与えられるのは以下のようなものです。

利用者の安全
人身取引の状態から逃れたということは、加害者に発見されたら連れ戻される、最悪の場合命を奪われる危険があります。そうならないためにも、シェルターを設置する場所、監視体制、サバイバーのアフターケアなどを徹底しています。

スタッフ・組織の安全
加害者がスタッフを傷付ける可能性もあるため、サービス提供者の安全も課題の一つ。スタッフの情報などが外部に漏れないように、徹底した管理が行われます。

スタッフ・トレーニング
サバイバーの多くは、身体的なものよりも精神的なもので苦しんでいる人が多いです。安全な場所だと分かっていても、少しのことでフラッシュバックしてしまったり、精神が安定しなかったりします。
そんなときは、スタッフが寄り添ってケアしなくてはいけません。
そのため、話せる言語だけでなく、その人に合ったケアの方法を見つける必要があります。言語、文化、心理学など多くのことを学ばなくてはいけません。

支援活動をバックアップするための寄付
人身取引の被害者を救済するためのシェルターや様々な支援活動、また人身取引を未然に防ぐための活動などが行われるためには、多くの資金が必要です。
私たちにできることは、そうした活動を寄付や支援でバックアップすることです。
寄付は各団体に直接送ることができ、継続的に寄付を行う方法もあれば単発でできる寄付もあります。
金額は数千円の少額から寄付することができるため、自分の都合に合わせて選べます。

日本の人身取引・売買を防ぐために支援し、身近に潜む犯罪を食い止めよう


日本をはじめ世界にはびこる人身取引は、個人の力だけで防ぐことはできません。
しかし、一人でも多くの人が人身取引の問題を知り、意識することが大きな変化へとつながります。
人身取引の被害にあった子どもや女性を救うために、少し行動するだけでも人身取引撲滅へ近づいていくのです。

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https://gooddo.jp/magazine/peace-justice/human_trafficking/903/

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/511.html

[経世済民133] 「石が浮かび木葉が沈む」今が底の期待が株高の原動力に 日本株は上昇、米中通商協議への楽観と円安 日銀現状維持ならバリュー相場第2幕 気候変動対応、中銀には負担大きく独立性脅かす=独連銀総裁   ドルは109円前後、FOMC待ち 債券は続落、日銀緩和期待はく落やオペ対象除外を警戒−スティープ化
ビジネス2019年10月29日 / 13:20 / 8時間前更新
アングル:
「石が浮かび木葉が沈む」、今が底の期待が株高の原動力に
Reuters Staff
2 分で読む

[東京 29日 ロイター] - 東京株式市場は強気の相場展開を続けており、日経平均株価は29日、約1年ぶりに一時2万3000円を回復した。外部環境も追い風だが、とりわけ目立つのは、業績悪化銘柄が上昇する物色動向だ。反対に好業績銘柄が売られるなど、市場は現在の状況を「石が浮かび木の葉が沈む」と例える。その背景には「今が業績の底」という期待感があり、株価上昇の原動力になっている。

日経平均株価は寄り付きから間もなく2万3000円台を回復し、立ち会い時間中としては昨年10月以来の高値水準を付けた。米中通商合意への期待による米国株式の上昇、1ドル109円台まで振れた円安が好感されている。

一方、3月期企業の上半期決算の発表が本格化し企業業績にも関心が集まっているが、その反応に違和感を覚える市場関係者が多い。通常であれば、好決算銘柄が買われ内容が悪化した銘柄が売られるところ、正反対の動きとなっているためだ。

第1・四半期に続いて再度の業績予想下方修正となり「復活の兆しのようなものがみえたら良かったが、それがなかった」(あかつき証券の投資調査部長・藤井知明氏)と指摘されたファナック(6954.T)[nL3N27D0RG]はさすがに軟化したものの、ショック安を引き起こすことはない。むしろ、下げ率が1%前後にとどまったことが市場に安心感を与えたほどだ。

象徴的なのは、29日の東証1部値上がり率ランキングで上位に入っている日本航空電子工業(6807.T)だ。前日に通期見通しの下方修正を発表しながら急騰、4月につけた年初来高値1898円を大幅に更新した。

その半面、アイチ コーポレーション(6345.T)は上半期の営業利益が46%増と大幅増益を発表したものの、株価は東証1部値下がり率ランキング上位となっている。

こうした動きについて大和証券・チーフグローバルストラテジストの壁谷洋和氏は「決算で悪いものが出ても、そのまま受け止めないというトレンドになっている。年度後半への回復期待が勝っているイメージだ」と指摘する。今が業績のボトムだとすれば、株価は先行きを見通すため、これ以上は売れないというロジックだ。

もっとも、下半期の業績回復期待の背景には、米中対立の緩和に対する期待感があるのは語るまでもない。みずほ証券・シニアテクニカルアナリストの三浦豊氏は「根底には、米中対立の緩和によって下期から収益環境が好転するとの読みがある」とした上で、「期待感が崩れた時は警戒する必要が出てくるだろう。報復合戦にピリオドが打たれるにしても、既存の関税が残るようならその影響に注意しなければならない」とみている。

また、当面の注目材料として米連邦公開市場委員会(FOMC)がある。市場では「悪い内容のものまで買うというのは金融相場の特色。金融相場で最大の材料は金融政策であるため、FOMCでネガティブサプライズがあった場合は、再び警戒感が高まることになりそうだ」(SBI証券・投資調査部長の鈴木英之氏)との指摘もある。

*見出しを修正しました。
https://jp.reuters.com/article/kabuto-tokyo-stx-idJPKBN1X80BK

日本株は上昇、米中通商協議への楽観と円安−金融や輸出高い
牧綾香
2019年10月29日 7:55 JST 更新日時 2019年10月29日 15:36 JST
• 中国との合意署名に向け予定より早く進んでいる−トランプ米大統領
• EUは英離脱延期に合意、円は対ドルで109円台に下落
29日の東京株式相場は上昇。米中協議に対する楽観的な見方が続く中、為替相場も円安方向で推移し業績の先行き期待が高まった。銀行や保険といった金融、輸送用機器や精密機器など輸出関連、鉄鋼など素材関連が高い。
• TOPIXの終値は前日比14.25ポイント(0.9%)高の1662.68
• 日経平均株価は同106円86銭(0.5%)高の2万2974円13銭
o 一時2万3008円43銭と2018年10月11日以来の2万3000円台回復
〈きょうのポイント〉
• 米国は中国との取引の非常に大きな部分の署名に向けて、予定より早く進んでいる−トランプ大統領 
• EUは英国の来年1月末までの離脱期限延期に合意
• ドル・円相場は一時1ドル=109円台乗せ、8月1日以来

東証
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  ちばぎんアセットマネジメントの奥村義弘調査部長は「米中問題への警戒感が一層和らぎ、相場の先高観が強まった。株価に出遅れ感がある銀行や保険など景気に敏感なバリュー株に資金が向かっている」と話した。
  発表が本格化してきた企業決算も買いを促した。野村証券投資情報部の伊藤高志エクイティ・マーケット・ストラテジストは「米中対立の影響を受けやすい素材、機械、自動車、電機、精密機器セクターで主要企業が決算を迎え、下方修正があっても限定的で安心感が広がっている」と指摘した。

• 東証33業種はその他金融、非鉄金属、精密機器、鉄鋼、保険、ガラス・土石製品、銀行、輸送用機器が上昇率上位
• 空運、電気・ガス、陸運は下落

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-28/Q03S1RT0AFB401?srnd=cojp-v2


日銀現状維持ならバリュー相場第2幕−追加緩和でも銀行株は魅力
長谷川敏郎、Min Jeong Lee
2019年10月29日 8:30 JST 更新日時 2019年10月29日 11:13 JST
• 業績と景気ボトム重なり大きなバリュー相場−三菱モルガン・古川氏
• マイナス金利深掘りでも銀行株は16年1月の急落とは異なる反応も
日本銀行が今週に追加の金融緩和を見送った場合、8月末から9月にかけて到来した銀行など景気敏感で割安なバリュー株相場が第2ラウンド入りする可能性がある。米中通商懸念が後退する中、景気や企業業績に対する悲観が行き過ぎたと再認識されそうだ。
  ブルームバーグが10月30、31日の日銀金融政策決定会合についてエコノミストに調査したところ、全体の過半数が現状維持を予想した。関係者によると、日銀は2%の物価安定目標に向けた勢いが毀損(きそん)されるリスクが著しく高まっているとは判断しておらず、金融市場の急変などが起こらなければ追加の金融緩和策を見送る方向で検討している。
日銀会合のサーベイはこちらをご覧ください

黒田日銀総裁
  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の古川真チーフ・ポートフォリオストラテジストは「マイナス金利の深掘りにならなければ、景況感悪化で追加緩和が織り込まれた8−9月が長期金利のボトムだったと市場で受け止められる可能性がある」と述べた。そうなれば「景気に対して過剰反応だったとの反省が強まり、バリュー系の下げ過ぎの反動が継続するのではないか」とみる。
2016年のバリュー相場の記憶
  TOPIXは8月から戻り歩調となり、決算発表が本格化する中で10月28日には昨年12月以来の1650ポイントを一時回復した。その中で、TOPIXのグロースをバリューで除したレシオは8月末から9月中旬にかけて大きく低下しバリュー相場を形作ったが、足元ではグロースが盛り返している。半導体やゲーム、サービスなど独自の成長力を持ち相対的に景気変動に左右されづらいグロース株に対し、バリュエーションが割安なバリュー株は素材や商社、銀行といった景気敏感業種に多い。
  バリュー銘柄は景気に業績が左右されやすく、景気の先行きに対して市場心理が強気に傾いた際にアウトパフォームしやすい。英国の欧州連合(EU)離脱決定とトランプ米大統領が誕生した2016年7月から12月までは大きなバリュー相場が到来した。三菱モルガンの古川氏は「足元ではバリュー相場がワンセット終了した形だが、発表が本格化する7−9月期決算で業績のボトムが見えてくれば、業績と景気の両方のボトムのサイクルが重なる。16年と同様に大きな流れでのバリュー投資への目線が強く広くなる」と話す。

  いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員も、米長期金利の上昇がバリュー相場の引き金になると予想する。今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが行われれば、「予防的利下げが奏功してリセッション(景気後退)が回避できるとの見方になり、米長期金利は2%を超える可能性がある」と指摘。その場合、「景況感が悪過ぎたことで売られた機械などのシクリカルバリューに続き、素材や銀行などのバリューまで相場が及ぶ。早ければ11月中旬、遅くとも12月には来るだろう」と語る。
追加緩和でも銀行は買われる公算
  一方、エコノミスト調査では3割がマイナス金利の深掘りを見込み、前回9月会合に関する調査での6%から増えた。マイナス金利付き量的・質的金融緩和を導入した16年1月は銀行株が売られたが、たとえ追加緩和となった場合でも銀行株の反応は当時と異なるとの声がある。
  野村証券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストは、副作用への配慮から「マイナス金利深掘りとともにしっかり超長期金利を立たせる政策が出て、イールドカーブが立つのであれば銀行にポジティブ。マイナス金利が深くなると口座維持手数料を導入する余地があり、全体としてマイナスにならない」との見方だ。深掘りのネガティブな面についての市場認識から銀行株は「最初は売られるかもしれず、押し目買いは良いかもしれない」と述べた。
  同証券では、為替のドル・円相場の2%上昇、20年債金利の10ベーシス上昇という前提で、TOPIXは1週間から1カ月程度で約2%上昇、銀行株は約4%上がると試算した。
  29日の東京株市場では銀行や保険など金融、鉄鋼や非鉄金属、ガラス・土石など素材株といった景気敏感のバリュー株が軒並み値上がり上位となっている。バリュー相場で有望な業種について、三菱モルガンの古川氏は「売り込みの反動という点では鉄などの素材株。金利がボトムを打つという点でみると金融株で、株価純資産倍率(PBR)水準が低過ぎる銀行はそのど真ん中。長期金利が立つと生保など保険が加わる」とみていた。
(最終段落にきょうの市況とコメントを追加します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-28/Q02XV1DWRGG501?srnd=cojp-v2

ワールド2019年10月29日 / 20:06 / 2時間前更新
気候変動対応、中銀には負担大きく独立性脅かす=独連銀総裁
Reuters Staff
1 分で読む

[フランクフルト 29日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーであるワイトマン独連銀総裁は29日、ECBが気候変動問題への取り組みで明確な役割を担うのは政策運営上、負担が重すぎるとし、ECBの独立性や中立性を脅かすと指摘した。

異常気象による金融リスクを論じる政策担当者が増えるなか、ラガルド次期ECB総裁は最近、中銀や規制当局は気候変動の緩和への貢献について考えることを優先課題にすべきと主張した。

ワイトマン氏は会合で、気候変動リスクは十分資産価格に織り込まれておらず、大半の銀行はそのリスクを考慮していないが、政治的目標を達成するのに銀行規制や金融政策を利用するのは誤りだと指摘。

「環境目標を明確に追求する金融政策は過度な負担というリスクをはらむ。長期的には(中銀の)独立性が疑問視される可能性がある」と述べた。

一部ECBウォッチャーが主張する、ECBによる不相応な規模のグリーンボンド(環境債)購入は、市場の中立性の原則に違反すると指摘した。

環境目標達成のため金融資産のヘアカットへのリスク掛け目などの銀行規制を活用することについては、規制は実際のリスクに即したものであるべきとし、「環境保護のインセンティブは政治の世界で取り組む問題だ」と述べた。

ワイトマン氏は、3分の2の銀行がリスク管理において気候変動リスクを考慮しておらず、気候変動に伴うコストを市場が完全に織り込んでいないことを認めた。

また、異常気象が成長やインフレの不安定な動きにつながり、金融政策運営をさらに難しくする可能性があると述べた。
https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-climatechange-idJPKBN1X8179


 
ECBバイトマン氏、「グリーンQE」に警告−中銀には過剰な負担
Piotr Skolimowski、竹生悠子
2019年10月29日 21:17 JST
量的緩和、市場にとって中立であるべきだ−バイトマン氏
ラガルド次期ECB総裁は気候変動対策に積極的に関与する姿勢
欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのバイトマン・ドイツ連邦銀行総裁は、量的緩和(QE)実施の際にグリーンボンドの優先購入が義務付けられるなら中央銀行にとって過剰な負担となりかねず、最終的には独立性が脅かされるリスクがあると警告した。

  バイトマン氏は29日にフランクフルトで、いわゆる「グリーンQE」は物価安定の維持という主要目標と相反を起こす可能性があると主張。気候変動問題の対策を打ち出すのは選挙民によって選ばれた政府の仕事で、中銀が環境政策を推進する民主的な正当性はないと続けた。

  バイトマン氏は「われわれの責務は物価の安定であり、金融政策の実施においては市場の中立という原則を尊重しなければならない」と指摘。インフレ率が低い間だけ気候変動対策を続けなければならない理由は、ほとんど理解されないとも述べた。

  この慎重なアプローチは、ラガルド次期ECB総裁の見解とは対照的だ。ラガルド氏は気候変動の緩和に中銀がいかに貢献できるか議論することが「優先課題として」捉えられるべきだと語っていた。

原題:
ECB’s Weidmann Warns Green QE Could Overburden Monetary Policy(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-29/Q04ROVT0AFB801

 
ドルは109円前後、FOMC待ち−米中合意期待で一時3カ月ぶり高値も
小宮弘子
2019年10月29日 12:04 JST 更新日時 2019年10月29日 15:26 JST
東京外国為替市場のドル・円相場は1ドル=109円ちょうど前後。米中通商合意への期待からリスク選好ムードが広がる中、約3カ月ぶり高値を更新する場面も見られたが、きょうから始まる米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に小幅な値動きにとどまった。

ドル・円は午後3時20分現在、前日比ほぼ横ばいの108円99銭。仲値公示にかけて8月1日以来の高値109円07銭を記録
5月以降で初めて200日移動平均線(109円06銭)を上回った後は伸び悩み
ポンド・ドルは0.1%安の1ポンド=1.2854ドル。欧州連合(EU)による英国のEU離脱延期承認を受けて上昇した海外市場の流れは一服
200日移動平均線付近でFOMC待ち
市場関係者の見方
三井住友信託銀行ニューヨークマーケットビジネスユニットの持田拓也調査役

米中交渉がうまく進んでいるとのトランプ米大統領の発言を受けたリスクオンで、ドル・円は上昇してきたが、FOMCを控えてここから積極的に買いにいくのは難しい
米中も第一段階合意だけで、手放しに飛びついていいのか疑問。その観点からドル・円もこの辺りがいったんの上限かなという気がしている
外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長

ドル・円は仲値の思惑のような買いが入ったと思うが、月末のスポット応当日で仲値後はどちらかというと輸出企業のドル売りが強かった印象
FOMCは利下げはするが追加利下げに対する言質は与えない、タカ派的利下げとなりそうとの見方が強く、ドル売りにはなりそうにない。そのシナリオに沿った展開であれば、ドル・円も8月高値(109円32銭)を上抜けていくが、いずれにしろ明日以降だろう
背景
28日の米株式市場ではS&P500種株価指数が最高値を更新。トランプ大統領が中国との貿易合意署名に向けて予定より早く進んでいると述べたことや、好調な企業決算、米利下げ期待が追い風に
29日の東京株式相場も上昇し、日経平均株価は106円高で終了。米株価指数先物もアジア時間の取引で上昇し、米10年債利回りは1ベーシスポイント(bp)高の1.85%程度
29、30両日に開かれるFOMCでは、3会合連続となる利下げが見込まれており、注目点はパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が緩和サイクルの終了を示唆するか、追加緩和の可能性を残すか。翌31日には日本銀行が金融政策決定会合を開く
EUは28日、英EU離脱について来年1月31日までの3カ月延長を認めることで合意。一方、英下院による早期総選挙実施の提案否決を受け、ジョンソン首相は次期総選挙の日程を12月12日に変更するという一行だけの法案を29日提出する方針を表明
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-29/Q03Z1ET0G1KX01?srnd=cojp-v2


 

債券は続落、日銀緩和期待はく落やオペ対象除外を警戒−スティープ化
船曳三郎
2019年10月29日 7:41 JST 更新日時 2019年10月29日 15:55 JST
債券相場は続落。米中通商協議合意の期待などを背景とするリスク選好の動きや日本銀行の追加緩和期待のはく落で中長期ゾーンへの売りが先行した。明日の国債買い入れオペで新発債が対象銘柄から外されるとの警戒感から超長期ゾーンにも売り圧力がかかり、利回り曲線はスティープ(傾斜)化した。
• 新発10年国債利回りは前日比2ベーシスポイント(bp)高いマイナス0.115%、新発20年債利回りは0.27%と、いずれも6月以来の高水準
• 新発5年債利回りはマイナス0.235%、新発2年債利回りはマイナス0.20%と、ともに8月以来の水準まで上昇 •
• 長期国債先物12月物の終値は23銭安の153円67銭。一時153円64銭と、日中取引ベースで8月1日以来の水準まで下落
SMBC日興証券の竹山聡一金利ストラテジスト
• 中長期ゾーンは日銀オペへの依存度が高い中で、かなり減額されているため、海外金利上昇や緩和期待のはく落などで相場が崩れると、支えが弱く調整幅が大きくなりやすい
• しっかりしていた超長期ゾーンも軟調になっており、フラットナーの取引を閉じる動きも推測される
• 30日の残存10年超の日銀オペで新発20年債や30年債が対象から除外されることは想定しているが、市場の反応には不透明感もある
• 前回のオペで新発30年債が除外された理由がはっきりせず、日銀がどういった対応をしてくるか分からない面もある

2年債入札
• 最低落札価格100円62銭と、ブルームバーグがまとめた市場予想の中央値100円61銭を上回る
• 応札倍率は4.81倍と前回の3.75倍から上昇。小さいと好調な入札を示すテール(最低と平均落札価格の差)は前回1銭2厘から昨年8月以来のゼロに縮小
• SMBC日興の竹山氏
o しっかりした結果、ショートポジションをカバーする需要があったのかもしれない
o ただ、金融政策の見通しに自信が持てず、積極的に買う理由は見当たらない
• 備考:過去の2年債入札の結果一覧
背景
• トランプ大統領:中国との合意署名に向け、予定より早く進んでいる
• 28日の米10年国債利回りは営業日比5bp高い1.84%程度で終了。この日の時間外取引では1.85%台に上昇
• この日の日経平均株価は0.5%高の2万2974円13銭で終了。東京時間の円相場は1ドル=109円付近で推移
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
-0.210% -0.240% -0.115% 0.270% 0.420% 0.450%
前日比 +1.0bp +1.5bp +2.0bp +2.0bp +2.5bp +2.5bp
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-28/Q02LEWT0G1KZ01?srnd=cojp-v2

 

野村HD:7−9月期純利益は1386億円、17年ぶり高水準に
谷口崇子、中道敬
2019年10月29日 15:12 JST 更新日時 2019年10月29日 18:15 JST
野村総研株の売却益733億円の計上寄与、02年1−3月期以来の水準
難しい市場環境に加え、構造改革進める中でまずまずの成果とCFO
国内証券最大手の野村ホールディングスが29日発表した2019年7−9月期(第2四半期)の連結純利益は1386億円(前年同期は112億円の損失)だった。収益体質の改善に取り組んでいるホールセール部門が堅調だったほか、野村総合研究所の株式売却益733億円も計上。四半期別の純利益では過去最高を記録した02年1−3月期の2440億円以来の高水準となった。

Nomura Holdings Inc. Reports Second-Quarter Earnings
株式売却益も寄与し、高水準の利益となった野村HDPhotographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  同日会見した北村巧財務統括責任者(CFO)は「難しい市場環境に加え、構造改革を進める中でまずまずの成果」と述べ、株式売却益の計上などもあり「非常に強い決算」と総括した。中間配当金は1株当たり15円(前年同期は同3円)とする。

7−9月期のセグメント別税前利益:(増減は前年同期との比較)
ホールセール     :3.8倍の189億円
国内営業        : 57%減の53億円
アセット・マネジメント:13%増の100億円
  7−9月期のホールセール部門、国内営業部門、アセット・マネジメント部門の3セグメント合計の税引き前利益は前年同期比31%増の342億円だった。米州のフィクスト・インカム分野では金利商品が前四半期に続き堅調だったほか、エクイティ分野も増収となった。

  北村CFOは「低収益ビジネスを削減し競争優位性があるビジネスに注力した結果、収益の安定性が増した」と述べた。一方、国内営業部門は米中貿易摩擦による景気減速懸念などから個人投資家の様子見ムードが続き、総募集買い付け額(金融商品の総販売額)が同14%減少した。

7−9月期の主な収益:(増減は前年同期との比較)
収益合計は28%増の5739億円
委託・投信募集手数料は13%減の653億円
投資銀行業務手数料は17%増の223億円
アセットマネジメント業務手数料は4.5%減の599億円
トレーディング損益は39%増の1056億円
  海外拠点の税前損益は2四半期連続の黒字となった。米州が11億円の黒字(前年同期は216億円の赤字)、アジア・オセアニアは105億円の黒字(同10億円の黒字)だったが、欧州は15億円の赤字(同116億円の赤字)となった。海外合計の損益は102億円の黒字(同322億円の赤字)。

  野村HDは4月、海外トレーディング部門など低成長・低収益ビジネスの縮小や欧州事業を見直すことなどを柱とした構造改革を発表した。北村CFOは22年3月期までに全社で1400億円としていたコスト削減目標について、9月末時点で「6割強まで進捗(しんちょく)させることができた」と述べた。

  S&Pグローバル・レーティングの主席アナリスト、松尾俊宏氏は海外を含むホールセール部門について「第1四半期ほど強くはなかったが、十分に堅調」と評価。構造改革の効果が出ているとみる。一方、今後は国内リテールを「注意してみていく必要がある」と指摘した。

  かつては収益の振れ幅が激しい海外部門をリテールも含めた国内部門が支えていてたが、現在は市場環境もあり厳しい状況が続いていると分析。収益力改善への取り組みが課題だとの認識を示した。

(アナリストコメントを追加するなどして記事を更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-29/PZVBQIT1UM0X01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/514.html

[経世済民133] 「米国人のキリギリス体質」が世界の命運を握る 米国株から現金・債券へのシフト、2008年以来の規模−ゴールドマン
「米国人のキリギリス体質」が世界の命運を握る

ミネソタ州の失業率上昇など気になる動きもあるが……

上野 泰也
みずほ証券チーフMエコノミスト
2019年10月29日
0 66%全3446文字 
米国の過剰消費体質が、世界経済を支えている
 中国やユーロ圏を中心に、世界経済は全体としては停滞色を強めている。IMF(国際通貨基金)が10月15日に発表した最新の世界経済見通し(WEO)で、世界全体の成長率見通しは19年と20年のいずれについても引き下げられた。19年の新たな予想数値は前年比+3.0%。これを下回ると世界経済で全体に不況色が強まるとされる、大きな節目である。
 世界で最も経済規模が大きい米国でも、景気はスローダウンしてきている。世界的な経済減速・米中貿易戦争・地政学的リスクを巡る先行き不透明感などを背景に、米国の輸出・生産・設備投資や企業の景況感が悪化している。その一方で、後述するように、大黒柱である個人消費の足取りには底堅いものがある。
 こうした「二面性」を十分認識している米連邦準備理事会(FRB)は、彼らの経済見通しに対するリスクがダウンサイドにあることを踏まえた予防的措置として、あるいは2%の目標対比でインフレ率の実績下振れが常態化しており、それが期待インフレ率の不可逆的な下方シフトに結びつかないようにするための保険的措置として、7月と9月に「予防的」あるいは「保険的」な利下げを実施した。
 FRBが今後追加する利下げの回数を決めるのは、上記の「二面性」がどのように展開するか次第であり、中でも個人消費が底堅さをどこまで維持できるかが非常に重要なポイントになる。消費の伸び鈍化が大きなものにならなそうであれば、米国経済がリセッション(景気後退局面)入りするリスクは小さいとみて、予防的な意味合いの利下げ局面は近く終了するだろう。
 これに対し、景気腰折れリスクが増したと判断される場合は、政策金利はゼロ%近くまで引き下げられ、量的緩和の再開も現実味を帯びる。
 米国の景気のベクトルは下向き(=後退)にまでは至らず、上向きの角度が緩やかになる(=減速)ところまでだというのが、市場の内外で、現在はメインシナリオになっている。
 とはいえ、気になる動きがいくつか出てきている。
次ページミネソタ州は全米の先行指標
 米国経済がリセッション入りするかどうかを探る上で市場参加者が注視しているインジケーターはいくつもあるが、一番手っ取り早いのは、米調査機関コンファレンス・ボードが毎月発表している景気先行指数である。その動きを見ると、10月18日に発表された9月分は市場予想比下振れの前月比マイナス0.1%。1つ前の8月分は同マイナス0.2%に下方修正されており、最近では珍しく2カ月連続でマイナスになっている。
 過去最長の景気拡張を成し遂げた米国では折に触れて、「さすがにそろそろ景気の拡大は終わりではないか」的なセンチメント(市場心理)から、リセッションが警戒されやすい。
 もう1つ、ここでご紹介しておきたいのは、中西部ミネソタ州の失業率が全米に先駆けて底を打って水準を切り上げたことである。
 米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は10月8日、「ミネソタ――経済界で輝く長年のスターが、今後の展開に戦々恐々(Minnesota, Long a Bright Economic Star, Wonders What’s Next)」と題した記事を掲載した。
ミネソタ州は全米の先行指標
 米国全体よりも一段低い失業率を実現し続けるという目覚ましいパフォーマンスを見せてきたミネソタ州の失業率が、直近のボトムから0.5ポイントも上昇。好悪双方の材料がある中で経済のベクトルがどちら向きなのかが分かりにくくなり、地元経済界に気迷いが生じているという内容である。
 全米失業率の最新データは9月分の3.5%で、1969年12月以来、約50年ぶりの低水準である。一方、ミネソタ州の失業率は7月分が3.4%で、次の8月分では3.3%に小幅低下した。それでも、直近ボトムである2.8%(18年6〜10月に記録)からは0.5ポイント高い水準である。もっとも、10月18日に発表された9月分では3.2%へさらに下がり、やや安心感が漂っている<図1>。
■図1:ミネソタ州と米国全体の失業率比較(季節調整値)

(出所)米労働省・セントルイス連銀、全米経済研究所(NBER)

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 ちなみに、WSJの記事にある通り、ミシシッピ州とノースカロライナ州でも失業率は8月時点で直近ボトムから0.5%ポイント上昇した。ただし、これらの州では全米よりも失業率が高い(ちなみに次の9月分では、ミシシッピ州が5.4%に上昇、ノースカロライナ州は4.1%に低下)。
次ページ個人消費には底堅さ
76年以降のデータを見ると、上記WSJ記事が「製造業・農業・金融業・小売業・その他企業向けサービス業のミックス」と形容した、米国経済の縮図と言える面もありそうなミネソタ州の失業率には、全米のそれに対して先行性が認められる(81〜82年の景気後退局面直前のケースを除く)。
 そして、全米の失業率は景気サイクルの代表的な遅行指標であり、これが上昇トレンドに入ったときには、米国の経済はすでにリセッション入りしてしまっている可能性が高い。
 前回の事例(住宅バブル崩壊)では、ミネソタ州の失業率ボトムは2006年5〜7月(3.8%)、全米の失業率ボトムは06年10月・12月および07年3月・5月(4.4%)で、景気の山は07年12月だった。
 このときはミネソタ州の失業率がボトムをつけてから米国全体が後退局面入りするまでのラグが、約1年半だった。この前例を今回のケースに仮に単純にあてはめると、20年春頃のリセッション入りが警戒されるという話になる。
個人消費には底堅さ
 もっとも冒頭で述べた通り、米国経済の個人消費には底堅さがある。ミネソタ州での動きは、この州の経済の動きが好調過ぎた反動という固有の事情が大きいのかもしれない。
 話を戻すと、IMFが発表した最新の世界経済見通しでは世界全体の成長予想が下方修正されたわけだが、米国の見通し数値の動き方は少し変わっていた。
 具体的には、19年が0.2ポイント下方修正されて前年比+2.4%になる一方、20年は0.2ポイント上方修正されて同+2.1%になった。共和・民主両党による2年間の財政合意(歳出の上積み)およびFRBの2度の利下げによる景気刺激効果で、20年の数字が上方修正されたのである。
 グローバルな景気減速が進んで企業部門が弱まっても、米国経済のいわば大黒柱である個人消費がしっかりした動きを続けている根底にあるのは、(日本人とは異なり)抱えている借金の重みを残高(ストック)ではなく月々の利払い負担(フロー)で認識する傾向が強い、「キリギリス的」とやゆされることもある米国人の過剰消費体質だと、以前から筆者は整理している。
次ページリセッションはまだ先か
 米国の家計の可処分所得に占める借金の利払い費などの比率は、ヒストリカルに見て低い水準にある。19年4〜6月期のDSR(デット・サービス・レシオ;可処分所得に占める住宅ローン・消費者ローンの利払い費比率)は9.69%。これに自動車リース、賃借、自宅保険料、資産課税を加えたFORは15.03%にとどまっている<図2>。
■図2:米国の家計可処分所得に占める借金利払い費などの割合

(出所)米FRB

[画像のクリックで拡大表示]

 さらに、米家計・非営利団体における資産と負債のバランスを見ると、両者の差である純資産(net worth)は右肩上がりであり、個人消費に資産効果が及びやすいことが分かる<図3>。
■図3:米国の家計・非営利団体における資産と負債のバランス(ストック)

注:総負債の金額はマイナスで表示
(出所)米FRB

[画像のクリックで拡大表示]

 長期好況の中で家計が抱える負債の絶対額が膨らんでも、低金利+良好な賃金環境が家計にとって追い風になっており、さらに、高い水準にある株価および住宅価格が個人の支出行動に資産効果を及ぼしている。
 FRBが利上げを継続してローン金利上昇・株価下落が大きなマグニチュードで起こっていれば、そうしたある意味危ういバランスは大きく崩れてもおかしくなかった。だが、FRBは利下げに転じ、そのバランスシートは(量的緩和ではなく銀行準備預金を増やすテクニカルな措置としてではあるが)再拡大することが決まった。
リセッションはまだ先か
 パウエルFRB議長が「パウエル・プット」という言葉(株価が急落してもFRB議長が金融緩和で対処してくれるから大丈夫だという市場サイドの一種の楽観論)をどこまで意識しているのかは不明である。だが、米国が戦争状態に入るといった何らかのリスクイベントの発生で米国の消費マインドが大きく落ち込むようなことでもない限り、「キリギリス」的な米国人の過剰消費体質はFRBのこのところの金融緩和措置によって、少なくとも当面は温存されそうだ。
 要するに、米国経済のリセッション入りと世界経済の一段の悪化といったところまでは、まだ見えてきていないということである。

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米国株から現金・債券へのシフト、2008年以来の規模−ゴールドマン
Christopher Anstey
2019年10月29日 9:06 JST
• 米国株ファンドからは今年これまでに1000億ドル流出
• 債券ファンドは3530億ドル流入、現金は4360億ドル増
ゴールドマン・サックス・グループによると、今年の米国株ファンドからの資金流出は、現金および債券への流入との比較で2008年以来の大きさだった。
  ただ、それでも現金比率は「歴史的低水準」に近いと、デービッド・コスティン氏らゴールドマンのストラテジストは指摘。現在の現金配分比率は12%と、過去30年の5パーセンタイルに当たるという。
  ストラテジストらは25日のリポートで「高い不確実性、リセッション(景気後退)に対する投資家の懸念、もともと低かった現金比率」のため、2020年に株式配分が大幅に増加する可能性は抑制されそうだと記した。
  ゴールドマンがまとめたデータによると、米国株ファンドからは今年これまでに1000億ドル(約10兆9000億円)が流出し、過去15年で2番目のペース。一方、債券ファンドには3530億ドルが流入し、現金は4360億ドル増えているという。
   来年についてゴールドマンは、米株買いの主役は今年と同様に企業だとみている。個人と外国人投資家も買い越し、年金基金は株式への配分を減らし続けると予想した。

原題:Goldman Says Rush From Stocks to Cash, Bonds Biggest Since 2008(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-29/Q031326JIJUO01?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/515.html

[経世済民133] 民主主義脅かすポピュリズム 「現役」に迫る保険料30% 都合よい財布やめよ「中国標準も悪くない」変心した米国育ちの中国人 やがて世界は2つの「OS」で動く時代に? 中国、国家半導体ファンドを新設−米テクノロジー依存の低減狙う 
民主主義脅かすポピュリズム
 ヤシャ・モンク氏
米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院准教授
グローバルオピニオン
2019/10/24付日本経済新聞 朝刊

欧米でポピュリズム(大衆迎合主義)が民主主義の脅威になっている。右派、左派ともにポピュリズム指導者は自らを国民の唯一の代表と見なす。反対する者を「国民の敵」「裏切り者」と切り捨てるなど、政治手法に独裁的な要素がある。民主主義体制を防衛するため、国民の危機への認識を広げ、価値観の違いを超えた幅広い層の結集を促さなければならない。

Yascha Mounk 米ハーバード大博士(政治理論)。同大講師を経て現職。18年、ポピュリズム政治に警鐘を鳴らした「民主主義を救え!」(翻訳は19年)を発表。37歳

米国のトランプ大統領が就任した当初は、同国の民主主義の機関により大統領の暴政は抑えられるという楽観論が目立った。だが、トランプ氏は共和党など一部の機関を手なずけ、(米大統領選に向け、政敵の攻撃材料を調査するようウクライナ政府に圧力をかけた疑惑を巡る)弾劾調査に至るまで権力の乱用を繰り返している。自らの意図に反する司法や自分の疑惑を捜査した米連邦捜査局(FBI)など独立機関を攻撃し、米国の民主主義を損なってきた。

「敵」に対する場当たり的なトランプ氏の言動に米国は救われた面もある。もし、トランプ氏が欧州の一部のポピュリストのように国民の目の届かないところで計画的に独立機関の支配に動いていれば、民主主義の危機はより深まっていただろう。例えばハンガリーのオルバン首相は2010年の政権樹立以来、司法機関を掌握し、メディア支配を進め、選挙制度も自分に有利なように変えて権威主義的な体制を固めている。

ポーランドでは先の下院選で、(ばらまき政策に加え反同性愛など伝統的な価値観を主張した)右派ポピュリズム与党が圧勝した。司法への介入やメディアへの圧力を批判される与党支配が続くことで、ハンガリーと似たような権威主義に拍車が掛かる恐れがある。

東欧と比べ、西欧の民主主義体制がより強固であることに異論はないが、ポピュリズムの脅威が想像以上に大きいのは確かだ。欧州の真ん中に位置するポーランドは人口4000万人近い大国だ。30年前の共産主義体制の崩壊から民主主義が確立した国と見なされ、経済的にも安定していたポーランドにおいて、民主化が逆回転している衝撃は大きい。例えばイタリアやカナダでも同様の事が起きないと言い切れるだろうか。

ポピュリストが台頭した背景として、既存の政治エリートに対する不信感の高まりがある。グローバル化のなかの格差の広がりや企業・富裕層に有利な状況に対し、自分たちの立場が反映されないことへの怒りがある。トランプ氏らは既存の政治家とは違う印象で人気をひき付け、反移民や伝統的価値観の固持など「文化」ポピュリズムに訴え、人々の怒りや不安を操る。支持者に反対側の政治勢力に対する嫌悪感を植え付け、社会を分断している。

20年に米大統領選を控え、野党・民主党はいままでのところ戦略的に失敗しているのではないか。主流から外れたトランプ氏に対し、民主党も急進的な主張を押し出す候補が目立つ。格差を是正する経済の左派政策は受け入れられる余地が広がっているものの、文化面でもこうした傾向を強めれば、社会の分断は埋まらず幅広い層に働き掛けることはできない。

我々は民主主義の将来を議論すると同時に、ポピュリズムの先行きについても考える必要がある。経済停滞などにより、支持が落ちたとき、ポピュリストは選挙で権力を明け渡すのかどうか。報道の自由への圧力を強めたり、選挙を無効にしたりと、抑圧に動く危険性がある。

こうした時にポピュリズムを支持した民衆も離れ、権力の正当性は失われ、さらに弾圧に頼るという負の連鎖を迎えることになる。実際にベネズエラの左派ポピュリズムは独裁に走り、トルコなども似たような瀬戸際にあるようにみえる。(談)

30年後の岐路に

モンク氏はポピュリズムの本質を、反対者を切り捨てる「独裁」と早い段階から指摘してきた。ハンガリーのオルバン首相らは、ナショナリズムを求心力にしながら議会、司法、産業界までを支配して独裁体制を固めたロシアのプーチン大統領の統治手法を手本にしているともいわれる。

1989年に冷戦が終結すると、自由・民主主義が勝利し「(政治理念を巡る対立の)歴史は終わった」という論調がもてはやされた。民主主義以外の選択肢はなく、グローバル化が加速して資本主義が民主化を促すという「必然性」の考え方がポピュリズムの台頭を許した面は否めない。

東欧では強権ポピュリズムに対する市民運動も広がっている。スロバキアでは、ジャーナリスト暗殺事件への抗議デモを機にリベラル派の女性大統領が誕生した。ルーマニアでは2年越しの市民デモの末、司法に介入した与党党首が投獄された。東欧に自由をもたらしたベルリンの壁崩壊から30年。世界は新たな岐路に立っている。

(編集委員 古川英治)

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「現役」に迫る保険料30% 都合よい財布やめよ
上級論説委員 大林 尚核心編集委員
2019/10/14 2:00 
清濁併せ呑(の)むタイプという人物評を聞くことが少なくなったように思う。
下村健(たけし)。通称シモケン。2006年に75歳で亡くなったこの昭和の厚生官僚は、みごとに清濁を併せ呑んだ。
1956年(昭和31年)に入省し、社会保険庁長官を最後に89年(平成元年)に退官した。健康保険組合連合会の副会長に天下ると、国民医療費を差配する中央社会保険医療協議会の支払い側委員として辣腕をふるった。
ところが、である。歯医者に有利な診療報酬が必要だという趣旨を中医協の席で述べる見返りに、日本歯科医師会の別動隊ともいえる日本歯科医師連盟から賄賂をもらったかどで、贈賄側などとともに東京地検に逮捕されたのが04年4月。本人は罪を認め、同年暮れ東京地裁で懲役2年6月、執行猶予5年、追徴金629万円の判決が確定した。

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健康保険料を月々払っている国民と経済界、さらには患者の側を代表する立場なのに診療報酬をもらう側を利すべく動いた。「濁」の真骨頂であろう。この日歯連事件は、のちに中医協の役割を制限する法改正につながった。
「清」はどんなところに表れたのか。医療政策通のあいだに定着しているのは、99年に健保連が展開した老健拠出金の不払い運動はシモケンが旗をふったからこそ成就したという評価である。
企業の健保組合が高齢者の医療費として拠出する額が集めた保険料の4割を超え、全体の8割強の企業健保が赤字に陥っていた。異常事態に業を煮やした健保連は、全国の企業健保に拠出金を延滞するよう働きかける。共鳴して運動に参加した企業健保は全体の97%におよび、日経連と連合がこれを支持した。
高齢者の医療費が足りなければ現役世代に出させればいい――。政府にとって都合のよい財布とみられることがあった企業健保の反乱は、08年に導入された後期高齢者医療制度をはじめとする一連の医療改革につながった。
同年6月の参院決算委員会で福田康夫首相が答弁している。「これ(延納)は大変だということで(中略)翌年、老健制度は変えると参院委員会で決議した。何としても変えなきゃいけないということになった」。見ようによっては、これも「濁」の一面が出たといえるかもしれない。
それから11年がすぎた。いびつな老健制度を正したはずの後期医療制度だが、高齢者医療に充てるべき税財源が慢性的に不足する状況は、かえって深刻になった。そのツケを回された企業健保は、またもや政府に都合のよい財布と化している。
およそ1400の企業健保が18年度に高齢者医療に拠出した総額は、3兆4500億円。義務的経費の46%を占める巨費だ。個別にみると、この割合が50%以上の企業健保は397を数える。
戦後ベビーブーム期に生まれた団塊世代の1期生が後期高齢者になる22年度を境に、拠出額は急速に増大する。同年度は加入者と家族の医療費に充てる分が4兆円、拠出金総額は3兆9300億円と、ほとんど差がなくなるというのが健保連の見立てだ。
このとき、厚生年金と介護保険を含めた社会保障3本柱の平均保険料率は、労使合わせて30%を突破する。現役世代と経済界にとっては明らかに負担の限界である。
ただでさえ現役世代は狙われやすい。小泉進次郎環境相がかつて提唱したこども保険は、財源を現役世代と経済界に出させる構想だった。今回の消費増税分の一部を幼児保育・教育の無償化に充てるという首相裁断で、小泉構想は沙汰やみになったが、取る側からみれば社会保険料は今も魅力的な財源である。
それは、消費税と違って高齢者に負担がおよびにくいからだ。自民党のある1年生議員は地元の駅頭で辻立ちすると、消費税は金輪際上げてもらっては困るという高齢者の声をひしひしと感じる。官僚出身の彼は社会保障財源としての消費税の優位性を熟知しているが「10%より先の話など考えられない」という。
かたや社会保険料は健康保険にかぎらず引き上げがたやすい。04年に13%台だった厚生年金の保険料率を、厚労省は毎年律義に0.354%ずつ上げてきた。17年に18.3%に達したところで固定したが、年金の水準がこの先、政府公約を下回る事態になれば引き上げ論が再び俎上(そじょう)に載る可能性がある。
マクロ指標をみれば、平成年間はそれが積もり積もった時代だったことがわかる。国民所得に対する社会保険料の比率を示す社会保障負担率は10.2%から17.6%に上がり、租税負担率は27.7%から24.9%に縮んだ。
なすべきことは言い尽くされている。後期高齢者向け医療サービスへの規律を高めるために低年金者などに配慮しつつ窓口負担を原則20%に上げる▽花粉症薬など薬局でも売っている薬は患者負担を上げたり保険適用外にしたりする▽生活習慣病の薬は有効性・安全性の確保を前提に低コストの処方指針を取り入れる――などだ。
何より公費を充てるべき医療費には、現役世代の保険料や借金に頼らず裏付けある税財源をつぎ込む。都合のよい財布あつかいされていることに、経済界と労組団体はもっと声をあげてしかるべきだ。いくら言ってもわからなければ、時に「清」のシモケンに学ぶことも必要だ。
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「中国標準も悪くない」変心した米国育ちの中国人
やがて世界は2つの「OS」で動く時代に?
2019.10.29(火)
姫田 小夏
 

上海・南京東路にあるファーウェイの販売店
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(姫田 小夏:ジャーナリスト)

 10月14日、中国の金融情報紙『上海證券報』は、中国政府がマカオ証券取引所の設立案に向けた研究を進めていることを報じた。人民元建て決済の証券取引所をマカオに設立するという計画で、中国政府が進める一国二制度のもと、香港やマカオを中国の発展に取り込む「広東・香港・マカオビッグベイエリア構想」に位置付けられている。

 マカオ証券取引所について今のところ具体的な公式発表はないが、広東省地方金融監督管理局は「中国版ナスダックになれば」という希望を伝えている。広東省には4万5000社のハイテク企業があり、上場企業は1.8%程度にとどまっているという。

 ニューヨーク証券取引所(NYSE)および米ナスダック市場には150以上の中国企業が上場している(2019年2月時点)。だが9月末に、トランプ政権が米株式市場での中国株の上場廃止を検討しようとしていると伝えられたことから、米国株式市場が下落した。米中貿易戦争が長期化すれば、ホワイトハウスの“くしゃみ”で中国銘柄が暴落する懸念が増す。

 浙江省に拠点を置く新興企業の経営者、汪建民さん(仮名)は「“中国版ナスダック”を進めるのは“自前主義”の強い現れ。香港の機能低下を見越して、中国政府の意向に従うマカオをテコ入れするのではないか」と語る。

ファーウェイとアップルが新機種で激突
 10月上旬に訪れた上海では、スマホの新機種がしのぎを削っていた。中国信息通信研究院によれば、国産メーカーなどを含め、9月は前月の2倍に相当する90の新モデルが登場したという。

iPhone11が好スタートダッシュ
 トランプ政権による締め付けで米国への輸出を禁止されたファーウェイも、9月26日、上海で新型スマートフォン「Mate30」を発表した。「Mate30」は高性能のカメラが売りだ。ハイエンドの「Mate30 pro」には高性能チップの「Kirin990」が搭載され、5G規格にも対応する。中国で同日18時08分から発売を開始したところ注文が殺到し、1分間で5億元を売り上げた。

 アップルも負けてはいない。中国では近年、iPhoneは勢いを失い、ユーザーのアップル離れが進んでいた。だが、9月11日に発表した「iPhone11」は予想外の好スタートダッシュを見せた。9月13日の20時から予約販売の受付を始めたところ、ECプラットフォーム「京東」では前年の新モデル(「iPhoneXS」「XS Max」)発売時よりも5倍近い伸びを見せ、「Tモール」でも1分間で1億元を超える注文が入ったという。「iPhone11 Pro」に至っては5分で“品切れ”となった。

 中国市場での好調な売れ行きについて、上場企業の専門調査会社、e公司は「iPhone11は価格を抑え、トリプルレンズ搭載でカメラ性能を高めている」ことが要因と評した。国金証券研究所が作成した「9月の機種ごとの販売台数」のグラフからは、iPhone11が100万台を超え、20機種中3位となったことが見て取れる。

 10月上旬の上海は、建国70周年を祝う国慶節と前後して「祖国愛」を強調する“紅い広告”が氾濫していた。スマホについても、トランプ政権に叩かれるファーウェイを支持する機運が広がっているという。


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南京東路のアップルとファーウェイの販売店には最新機種の実機を手に取ろうと多くの人が集まっていた。圧倒的ににぎわっていたのはアップルのほうだ

いずれ中国標準に慣れる?
 米中の対立に翻弄され、対立のはざまで不便を強いられているのはユーザーだ。

 よく知られているように、中国のインターネットではフェイスブックやメッセンジャーなど米国のSNSサービスが使用できない。ファーウェイの「Mate30」も「Gメール」や「グーグルマップ」などグーグルの主要ソフトは使えない。

 上海で暮らす名古屋出身の柴崎美紀さん(仮名)は、2年前、アップルからファーウェイのスマホに乗り換えた。だが、グーグルのソフトがダウンロードできない。「日本に帰省したときに不便なので、次回はiPhoneに買い替えたい」という(ちなみに日本、香港、台湾などでは、グーグルやフェイスブックの機能が使えるファーウェイ製品を購入できる)。

 一方、米国に在住する中国人の鄭宇祥君(仮名)のケースは興味深い。米国で幼少期から教育を受けた鄭君は、今年、中国の大手IT企業でのインターンシップのために中国に帰国した。中国での生活を再スタートさせるに当たって、最も抵抗があったのは「ネット環境の制限」だったという。

 だが、鄭君の考え方は時間の経過とともに変わっていった。

「最初はグーグルやフェイスブックが使えない環境が信じられず、有償のVPNサーバーを使って海外の情報を取りにいっていました。けれどもそれを続けるのがだんだん面倒になり、『微信』(ウィーチャット)で友達とつながることができれば十分だという気持ちに変わっていきました。自分だけではなく周囲の友人たちもフェイスブックは使っていません。『微信が使えるならいいか』と思うようになったんです」

 アメリカ育ちの鄭君だが、現在は「中国標準も悪くない」という心境に達しているようだ。

 上海に十数年にわたって駐在する総経理職の如月剛さん(仮名)は、冗談混じりにこう語る。「パソコンも、いずれ米中の2つのOSが存在することになるかもしれない。そうすると、私たちのように日中を往復する駐在員は二刀流でこれを使いこなさなければならなくなるでしょうね」。

外来語を使わない中国の意地

外来語を使わない中国の意地
 筆者は、羽田空港から搭乗した中国行きのフライトで、「初めて中国に行く」という日本人と隣り合わせになった。上海の空港に降り立って初めて飛び込んできたのは「手机銀行」の看板。「『てづくえ』って何ですか」と聞いてくるその人に、筆者は説明した。「机」は「機」の簡体字、「手に持つ機械」だから「手机」はモバイル(携帯電話)となる。つまり、「手机銀行」はモバイルバンキングサービスという意味だ。

 中国では改革開放後、新しい言葉が数多く生まれた。1990年代に普及し始めたパソコンは「電脳」、2000年代に発達したインターネットは「互聯網」と漢字に置き換えられた。「卡拉OK」(カラオケ)や「咖喱」(カレー)などのように音で意味を表記することもあるが、中国は外来の文化を自国の文化に融合させ「中国版」の言葉を作り出す能力が高い。

 今に始まったことではない「中国版××」は、西側に決してくみしない中国の強いプライドの表れなのだろう。米国ではデジタル通貨「リブラ」に議会が懸念を示すが、中国は同様の構想の立ち上げを急ピッチで進めている。貿易戦争の激化とともに米中対立が先鋭化しているが、これまでの流れを見通すと対立は宿命だったのかもしれない。


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連続強姦の犯罪者が涙を流した刑務官の言葉
性犯罪者と性犯罪被害者を減らすために必要なこと
原田 隆之

ラグビー「ワン・チーム」が教える多民族共生
移民は「まつろふ」日本人になって初めて受け入れよ
森 清勇

大統領選の対敵抜擢で物議、インドネシアの新内閣
2期目のジョコ大統領、新内閣の顔ぶれに高まる不安と微かな期待
大塚 智彦

前代未聞の新ジャンル!現代アジア怪談の誕生
HONZ特選本『亜細亜熱帯怪談』
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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58038


 

中国、国家半導体ファンドを新設−米テクノロジー依存の低減狙う
Bloomberg News
2019年10月29日 16:47 JST
設計から製造まで自前のサプライチェーンを構築する取り組み加速
中国は14年に集積回路で最初の国家ファンド設立
中国は国内半導体産業に投資する2040億元(約3兆1500億円)規模の国家ファンドを正式に新設した。米テクノロジーへの依存を減らす目標達成を後押しする。

  中国は世界最大の半導体輸入国。政府が支援する新たなファンドの立ち上げで、設計から製造まで自前の半導体サプライチェーンを構築する中国政府の取り組みを加速する。同ファンドは全般的な戦略に加え、スマートフォンやデータセンターに使われるプロセッサー、ストレージ半導体など集積回路セクターへの投資のかじ取りで重要な役割を果たす。

  トランプ米政権が事実上の禁輸リストに掲載する中国企業を増やし、華為技術(ファーウェイ)や商湯科技(センスタイム・グループ)などを標的とした半導体の供給を絶とうとする中、中国にとって米国製品への依存低減は急を要する問題となっている。

  中国は2014年に集積回路で最初の国家ファンドを設立していた。

原題:China to Funnel $29 Billion Towards its Chip Ambitions(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-29/Q04J2G6TTDSB01?srnd=cojp-v2

 

民主主義脅かすポピュリズム ヤシャ・モンク氏
米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院准教授
グローバルオピニオン
2019/10/24付日本経済新聞 朝刊
保存 共有 印刷その他
欧米でポピュリズム(大衆迎合主義)が民主主義の脅威になっている。右派、左派ともにポピュリズム指導者は自らを国民の唯一の代表と見なす。反対する者を「国民の敵」「裏切り者」と切り捨てるなど、政治手法に独裁的な要素がある。民主主義体制を防衛するため、国民の危機への認識を広げ、価値観の違いを超えた幅広い層の結集を促さなければならない。

Yascha Mounk 米ハーバード大博士(政治理論)。同大講師を経て現職。18年、ポピュリズム政治に警鐘を鳴らした「民主主義を救え!」(翻訳は19年)を発表。37歳

米国のトランプ大統領が就任した当初は、同国の民主主義の機関により大統領の暴政は抑えられるという楽観論が目立った。だが、トランプ氏は共和党など一部の機関を手なずけ、(米大統領選に向け、政敵の攻撃材料を調査するようウクライナ政府に圧力をかけた疑惑を巡る)弾劾調査に至るまで権力の乱用を繰り返している。自らの意図に反する司法や自分の疑惑を捜査した米連邦捜査局(FBI)など独立機関を攻撃し、米国の民主主義を損なってきた。

「敵」に対する場当たり的なトランプ氏の言動に米国は救われた面もある。もし、トランプ氏が欧州の一部のポピュリストのように国民の目の届かないところで計画的に独立機関の支配に動いていれば、民主主義の危機はより深まっていただろう。例えばハンガリーのオルバン首相は2010年の政権樹立以来、司法機関を掌握し、メディア支配を進め、選挙制度も自分に有利なように変えて権威主義的な体制を固めている。

ポーランドでは先の下院選で、(ばらまき政策に加え反同性愛など伝統的な価値観を主張した)右派ポピュリズム与党が圧勝した。司法への介入やメディアへの圧力を批判される与党支配が続くことで、ハンガリーと似たような権威主義に拍車が掛かる恐れがある。

東欧と比べ、西欧の民主主義体制がより強固であることに異論はないが、ポピュリズムの脅威が想像以上に大きいのは確かだ。欧州の真ん中に位置するポーランドは人口4000万人近い大国だ。30年前の共産主義体制の崩壊から民主主義が確立した国と見なされ、経済的にも安定していたポーランドにおいて、民主化が逆回転している衝撃は大きい。例えばイタリアやカナダでも同様の事が起きないと言い切れるだろうか。

ポピュリストが台頭した背景として、既存の政治エリートに対する不信感の高まりがある。グローバル化のなかの格差の広がりや企業・富裕層に有利な状況に対し、自分たちの立場が反映されないことへの怒りがある。トランプ氏らは既存の政治家とは違う印象で人気をひき付け、反移民や伝統的価値観の固持など「文化」ポピュリズムに訴え、人々の怒りや不安を操る。支持者に反対側の政治勢力に対する嫌悪感を植え付け、社会を分断している。

20年に米大統領選を控え、野党・民主党はいままでのところ戦略的に失敗しているのではないか。主流から外れたトランプ氏に対し、民主党も急進的な主張を押し出す候補が目立つ。格差を是正する経済の左派政策は受け入れられる余地が広がっているものの、文化面でもこうした傾向を強めれば、社会の分断は埋まらず幅広い層に働き掛けることはできない。

我々は民主主義の将来を議論すると同時に、ポピュリズムの先行きについても考える必要がある。経済停滞などにより、支持が落ちたとき、ポピュリストは選挙で権力を明け渡すのかどうか。報道の自由への圧力を強めたり、選挙を無効にしたりと、抑圧に動く危険性がある。

こうした時にポピュリズムを支持した民衆も離れ、権力の正当性は失われ、さらに弾圧に頼るという負の連鎖を迎えることになる。実際にベネズエラの左派ポピュリズムは独裁に走り、トルコなども似たような瀬戸際にあるようにみえる。(談)

30年後の岐路に

モンク氏はポピュリズムの本質を、反対者を切り捨てる「独裁」と早い段階から指摘してきた。ハンガリーのオルバン首相らは、ナショナリズムを求心力にしながら議会、司法、産業界までを支配して独裁体制を固めたロシアのプーチン大統領の統治手法を手本にしているともいわれる。

1989年に冷戦が終結すると、自由・民主主義が勝利し「(政治理念を巡る対立の)歴史は終わった」という論調がもてはやされた。民主主義以外の選択肢はなく、グローバル化が加速して資本主義が民主化を促すという「必然性」の考え方がポピュリズムの台頭を許した面は否めない。

東欧では強権ポピュリズムに対する市民運動も広がっている。スロバキアでは、ジャーナリスト暗殺事件への抗議デモを機にリベラル派の女性大統領が誕生した。ルーマニアでは2年越しの市民デモの末、司法に介入した与党党首が投獄された。東欧に自由をもたらしたベルリンの壁崩壊から30年。世界は新たな岐路に立っている。

(編集委員 古川英治)

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2018/12/25 2:00
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO51303030T21C19A0TCT000/

かんぽ生命:オープン外債や国内株で徐々にリスクテークー19年度下期
野沢茂樹
2019年10月29日 18:00 JST
かんぽ生命保険は2019年度下期の資産運用で、世界的な金利の低迷と景気の底割れ回避見通しを背景にリスク許容度を高め、為替差損の回避措置を講じない外国債券や国内株式を積み増す。中長期的な収益性向上のため、オルタナティブ(代替)投資の残高も引き続き増やす方針だ。

  福嶋亮介運用企画部担当部長は29日の記者説明会で、下期は米国の利下げがあと1回程度にとどまる中で「ドルが強含む」とみており、為替水準などを踏まえて米国やアジアの国債、新興国に投資するファンドに為替リスクを取って機動的に資金を振り向けると述べた。上期は円高を警戒して売却で残高を減らしていた。

  国内株は調整局面での購入で残高を増やした上期に続き、日本株は「グローバルにみて割安」として一定額を積み増す。高配当銘柄や中小型株、環境・社会・企業統治の非財務情報にも着目したESG関連など「まんべんなく良い銘柄があれば買う」方針だ。景気後退が絶対にないと言い切る確証もないので「恐る恐る」取り組むと話した。

  オルタナは下期も「粛々と」残高を積み増すが、ファンドを通じたプライベート・エクイティが残高増の中心になる見通しだ。

  外債残高の約8割を占める為替ヘッジ付き外債は、投資対象の大幅な金利低下とヘッジコストの低下余地が大きくないとの見方から残高減となる。信用リスクを取る分、国債より高い利回りが得られる米国の社債などはあまり動かさず、ヘッジコスト差し引き後の利回りが悪化したソブリン債の残高を減らす。

  国内債は上期に続いて残高が減る見通し。クレジット物には一定額を投じるが、国債などの償還が多いためだ。超長期国債については保険契約の予定利率を踏まえると、30年物の利回りで0.5%程度が1つの目安になると説明。その後、仮に同金利がさらに上がる場合には「1%の方に向かって投資を増やしていく」と述べた。

【2019年度下期の運用計画一覧】

単位:億円 国内債 外債
ヘッジ

外債

オープン

外債

国内株 新規成長等
かんぽ 減少 減少 増加 増加
日本 増加 減少 増加 横ばい 増加
第一 横ばい
金利水準

次第

為替水準

次第

減少
明安 やや増加 やや増加 横ばい 横ばい
住友 増加 横ばい 増加 増加
富国 ▲200 300 ▲300 200 100
大樹 数百程度
▲数百

程度

1100程度

(販売動向次第)

横ばい 100程度
日本10年債

(%)

日本20年債

(%)

米国10年債

(%)

日経平均

(円)

ダウ

(ドル)

ドル円

(円)

ユーロ円

(円)

かんぽ
▲0.20−0.10

(▲0.10)

1.60−2.10

(1.80)

21000〜25000

(23000)

25000〜29000

(27000)

105〜115

(110)

110〜125

(118)

日本
▲0.40〜0.00

(▲0.20)

1.10〜2.10

(1.60)

17000〜25000

(21000)

22000〜28000

(25000)

95〜115

(105)

110〜130

(120)

第一
▲0.40〜0.00

(▲0.20)

1.00〜1.80

(1.50)

18000〜24000

(21000)

24000〜28000

(26000)

100〜110

(105)

105〜125

(118)

明安
▲0.30〜0.05

(▲0.25)

1.20〜2.00

(1.60)

20000〜23000

(21500)

24500〜28500

(27000)

102〜111

(107)

113〜125

(118)

住友 ▲0.35
〜0.10

(▲0.15)

1.30〜2.30

(1.80)

19000〜24500

(22000)

24000〜29000

(27000)

100〜115

(109)

110〜130

(119)

富国
▲0.30〜0.20

(0.00)

0.10〜0.60

(0.30)

1.30〜2.30

(1.80)

19000〜24000

(22000)

24000〜29000

(27000)

100〜115

(108)

110〜130

(120)

大樹
▲0.30〜▲0.05

(▲0.20)

0.05〜0.35

(0.20)

1.10〜1.90

(1.50)

19800〜22600

(21200)

24500〜27500

(26000)

100〜110

(105)

109〜120

(113)

※かんぽ生命、日本生命、大樹生命(旧三井生命)は年度末レンジ(年度末見通し)
※第一生命は想定レンジ(年度末中心)
※明治安田生命、住友生命、富国生命は年度レンジ(年度末)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-29/Q04FCODWLU6L01
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/516.html

[経世済民133] 年金の基礎知識と、受給額が激減するシビアな未来を生き抜くヒント 都心ではっきり見えてきた、経済力がなければ子を持てない格差の拡大
年金の基礎知識と、受給額が激減するシビアな未来を生き抜くヒント
2019年10月29日(火)12時39分

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年金の基礎知識と、受給額が激減するシビアな未来を生き抜くヒント
そもそも日本の年金制度は老後の生活を完全にカバーできるものではない YAGI-STUDIO/ISTOCKPHOTO

<一部の富裕層以外は定年後も働くしかない。生活水準の維持に不可欠なのは、今から「後半戦」キャリアを意識すること>

年金2000万円問題をきっかけに、公的年金への関心がこれまでになく高まっている。だが、公的年金の仕組みは複雑なので「正直なところ年金の話はよく分からない」という人が多いのではないだろうか。以下では、公的年金の仕組みや年金減額の見通し、世代間格差の現実について可能な限り分かりやすく説明する。

日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金(公務員共済等含む)の2階建てになっている。国民年金は全員が加入することになっており、サラリーマンは、これに加えて厚生年金にも加入する。国民年金と厚生年金では、保険料の徴収や年金の支払い基準が異なるので、まずは両者の違いについて知っておくことが重要だ。

国民年金は毎月一定額の保険料を支払い、支給開始年齢(現在は65歳)に達したときから、毎月一定額の年金を受け取る仕組みである。一定額を支払って一定額を受け取るので、シンプルで分かりやすいルールと言ってよいだろう。現時点における国民年金の月額保険料は約1万6500円で、受け取る年金の額は約6万5000円。つまり、毎月、1万6500円を40年間支払っていれば、月額6万5000円の年金を受け取れる。

一方、厚生年金の保険料や年金の給付額は収入によって変わってくる。

厚生年金は、年齢によっても異なるが、大ざっぱに言うと、現役時代の平均年収が約530万円(モデル世帯の年収を流用)だった場合、国民年金と合算した月額給付額は現時点で約15万5000円となる。内訳は国民年金が一定額の6万5000円で、年収に応じて支払われる厚生年金が9万円である。

年収530万円ということは月収約44万円だが、この収入に対して毎月徴収される保険料は約8万円である。もっとも会社員の場合には、保険料の半分を会社が負担してくれるので、自己負担分は約4万円で済む。つまり個人ベースで見れば、4万円の保険料を40年間支払っていれば、毎月15万5000円の年金がもらえる計算になる。

今後も段階的削減は続く
この数字だけを見ると、意外と多いと感じたかもしれないが、ここにはカラクリがあるので注意が必要だ。

まず、年金の計算で使われる年収というのは、厚生年金加入期間全体の平均年収であって、個人の退職時の年収を示したものではない。日本企業の多くは年功序列の給与体系なので、若いときの年収は低い。退職時に800万円くらいの年収がなければ、40年間の平均年収は530万円にはならないと考えたほうがよいだろう(将来、年功序列の賃金が崩れれば平均年収はさらに低くなる)。

また政府の説明には、多くの人にとってなじみのある額面収入ではなく、どういうわけか、税金や保険料などを差し引いた手取り年収が使われている。従って、現役世代の平均年収に対する年金受け取り開始時の年金額の比率を示す「所得代替率」についても、「額面どおり」には受け取らないほうがよい。

次のページ問題は世代間格差ではない
先ほど、40年間の平均月収が44万円(年収が530万円)だった人は、毎月15万5000円の年金がもらえると説明したが、政府は手取り月収である約36万円を収入と見なしている。36万円に対して15万5000円の年金が支払われるので所得代替率は43%になるが、額面ベースで所得代替率を計算すると35%にしかならない。

さらに言うと、政府は「所得代替率50%を維持する」と説明しているが、これは専業主婦世帯を基準にしたものなので、単身世帯の場合には当てはまらない。「給料の50%が給付される」という先入観で年金額を判断しないよう注意してほしい。

では今、大問題となっている年金の減額についてはどう考えればよいのだろうか。

日本の年金制度は賦課方式といって、現役世代から徴収した保険料で高齢者の年金を賄う仕組みなので、現役世代の人口が減ると制度の維持が難しくなる。政府は、現役世代の人口減少に合わせて高齢者への給付を減らす「マクロ経済スライド」を導入している(物価に応じて年金額を増やす「物価スライド」とは別なので注意が必要)。この制度は既に2度発動されており、2019年の年金は本来もらえるはずだった金額よりも大幅に減額された。

今後もマクロ経済スライドが発動される可能性が高く、段階的に年金は削減されると思ってよい。

問題は同世代間での格差
政府は19年8月に最新の年金財政検証を公表しており、厳しめの経済見通しでもモデル世帯における所得代替率は50%を維持するとしている(現在の所得代替率は61.7%)。しかし、この財政検証は前提条件を極めて甘くしたものであり、現実的な数字とは言えない。全てを現実的な数字に置き換えた場合、経済が比較的良好に推移しても2割から3割の減額となるのはほぼ確実だ。

ストレートに言ってしまうと、相応の資産を持ち、利子や配当、家賃収入がある人や、高額の貯蓄を持つ人以外は、定年後も何らかの形で所得を得ない限り、それなりの暮らしを維持することはできない。

若い人は世代間格差を気にしているかもしれないが、日本の年金制度はそもそも老後の生活を完全にカバーできるものではなく、今の高齢者は相対的に若年層よりも有利というレベルにすぎない。実際、所得代替率が60%を超えていても、現時点における年金生活者のうち、年間100万円以下しか年金をもらっていない人は全体の4割、150万円以下まで条件を拡大すると何と全体の6割が該当する。問題の本質は世代間格差ではなく、同世代の中での年金格差だと考えるべきだ。

年金減額という厳しい時代を生き抜くためには、可能な限り長く就労することが最も重要な対応策となる。できるだけ早い段階から、後半戦のキャリアを強く意識して仕事をする必要があるだろう。

職業人としての人生には、前半と後半があると割り切り、前半戦は、後半戦において有利な仕事に就くための、長い就職活動期間と捉えたほうがよい。

営業成績など単純な成果を追うよりも、後半戦でのキャリアにつながるのか、という観点で仕事に取り組んだほうが自分のためになるだろう。当然のことだが、所得の一定割合を長期的な資産運用に充てるという取り組みも同時並行で進めていく必要がある。

<本誌2019年10月8日号「経済超入門」特集より>
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プロフィール

加谷珪一
経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

http://k-kaya.com/
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2019/10/post-83_2.php

都心ではっきり見えてきた、経済力がなければ子を持てない格差の拡大
2019年10月30日(水)16時20分

舞田敏彦(教育社会学者)
近年、東京23区内でも特に都心の地域で出生率があがっている FatCamera/iStock.
<東京都心の出生率を地域別に比較してみると、今世紀に入ってから出生率の傾向に明らかな変化が見られる>
日本の人口動態が減少局面に入って久しいが、首都の東京では人口が増え続けている。都心部では少子化など「どこ吹く風」、子どもが増え続けて地域の学校が悲鳴を上げている。タワーマンションが増えていることなどもあって、子育て世代がどっと流れ込んでいるためだ。
これは人口の社会増だが、自然増もある。人口千人あたりの出生数(出生率)を見ると、中央区では2002年では8.5だったのが、2017年では13.1に上昇している。15年間で4.6ポイントも増えている。
隣接する千代田区と港区も、出生率の伸びが大きい。都内23区では出生率が上がっている区が多いが、減っている区もある。<表1>は、23区の出生率の動きを整理したものだ。

2002年と2017年の比較だが、出生率上位の顔ぶれが変わっている。黄色マークは上位3位で、2002年では城東エリアなどで高かったのが、17年では都心の3区に様変わりしている。中央区、港区、千代田区だ。
これらの区では出生率の伸びが大きい。一方、城東エリアの区は出生率が下降し、23区の中でも順位も下がっている。足立区は、この15年間で2位から22位へと大幅に落ちている。
一昔前は地価が安いエリアで出生率が高かったが、最近はその逆になりつつある。地域単位のデータだが、出生率と経済力がリンクする傾向すら出てきている。藤田孝典氏の名著『貧困世代』(講談社新書)の帯に「結婚・出産なんてぜいたくだ!」と書いてあったのを思い起こさせる。
次のページ男性の経済力と子持ち率の関連が強い日本
上記の出生率は人口ベースの粗出生率で、都心のエリアでは子育てファミリーが多いからではないか、という疑問もあるだろう。そこで、出産年齢の既婚女性ベースの出生率を計算し、上位の区に色を付けた地図にすると<図1>のようになる。資料の『国勢調査』の実施年に合わせて2000年と2015年を比較した。

精緻化した出生率で見ても、地域差の構造が変わっているのが分かる。今世紀の初頭では城東エリアで出生率が高かったが、最近では都心エリアで高くなっている。
同じ出産年齢の既婚女性であっても、子を産もうという意向が地域によって異なるようだ。そういう違いはいつの時代でもあるが、最近の特徴は、住民の経済力とリンクする傾向が強くなっていることだ。当然ではあるが、不妊治療にも費用がかかる。
以上は都内23区の傾向だが、日本全国でも経済格差の拡大によって出産と経済力の関連が強まっているのではないか。国際比較で見ても、日本は男性の経済力と子持ち率の関連が強い国でもある(拙稿「今の日本で子を持つことはぜいたくなのか?」本サイト、2018年1月11日)。2020年の『国勢調査』のデータでは、出生率が相対的に高い濃い色の地域がますます一部のエリアに凝縮されているかもしれない。
上記地図の2015年の出生率は、各区の既婚女性のフルタイム就業率とプラスの相関関係にある。夫婦二馬力で稼げることの効果があるようだ。いやそうでないと、子を持つことは難しくなっているのかもしれない。
今月から幼児教育・保育の無償化が始まったが、上記のような実態を考慮すれば、無償化より優先すべきは保育士の待遇を改善して受け入れ枠を増やすことだ。消費増税で得られた財源の使い道を誤ってはならない。
<資料:『東京都人口動態統計』、
    『東京都統計年鑑』、
    総務省『国勢調査』>
次のページ【画像】東京都心の地域別出生率の変遷チャート

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13289_3.php
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13289.php

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/519.html

[自然災害22] 米 温暖化シミュレーション 被害地域の人口は想定の3倍か「温暖化を否定する者に隠れ家ない」国連事務総長 ゾウが大量死 厳しい干ばつで餓死 地球温暖化考慮の水害対策に転換へ 国交省

米 温暖化シミュレーション 被害地域の人口は想定の3倍か
2019年10月30日 5時03分

気候変動による海面の上昇によって影響を受ける人の数は、これまでの想定の3倍に上る可能性があることが、アメリカの団体のシミュレーションで明らかになり、専門家は「私たちが生きているうちに、都市や経済のありかたに大きな影響を与える可能性がある」と警告しています。

今月29日付けのイギリスの科学雑誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された論文によりますと、気候変動の研究者が参加するアメリカのNPOはAIの開発などに使われる「機械学習」を応用してこれまでのシミュレーションの精度を高める新たな手法を開発しました。

この手法を使って世界135か国のデータに基づき、気候変動に伴う海面上昇の影響を再検討したところ、2050年までに水没するなどの影響を受ける可能性がある海沿いの地域の人口は、古いシミュレーションモデルによる想定のおよそ3倍になったということです。

中でも、アジア地域での影響が大きく、仮に温室効果ガスの排出量がおおよそパリ協定で目標としたレベルに削減されたとしても、現在、2億3700万人が住む地域が定期的に洪水に見舞われるとしています。

このうち、中国ではこれまでの想定の3.2倍にあたる9300万人、バングラデシュでは8.4倍の4200万人、インドでは7.2倍の3600万人が影響を受けるとしています。

また、日本はこれまでのシミュレーションより70万人多い530万人が影響を受けるとしています。

論文の著者のスコット・カルプ博士は「私たちが生きているうちに、気候変動が都市や経済のありかたに大きな影響を与える可能性がある。各国は、住民を守るため、沿岸部の水害対策を絶えず迫られることになる」と指摘しています。

あわせて読みたい


アフリカ南部でゾウが大量死 厳しい干ばつで餓死
2019年10月23日 20時02分

厳しい干ばつが続くアフリカ南部のジンバブエとボツワナで、先月から今月にかけて合わせて150頭以上のゾウが死んでいるのが相次いで見つかり、地球温暖化による生態系への影響が懸念されています。

アフリカ南部のジンバブエの国立公園で、先月から今月にかけて、少なくとも55頭のゾウが死んでいるのが見つかりました。

国立公園が調査した結果、厳しい干ばつによる食料や水不足で、ゾウが餓死したとしていて、国立公園の担当者は現地メディアの取材に対し「これまでの状況の中でも極めて悪く、生きているゾウも食料不足に苦しんでいる。乾季に入れば状況はますます悪くなるだろう」と話しています。

また隣接するボツワナの政府はこの2か月で国立公園で生息していたゾウおよそ100頭が死んだことを明らかにしました。

政府はゾウが長時間にわたって食料を探し続けて餓死したことや、草が枯れて土まで食べてしまい、土の中の細菌に感染した可能性があるとしています。

環境保護に取り組む国際NGO、WWFジャパンによりますと、アフリカ南部にはおよそ29万頭のアフリカゾウが生息しているものの、象牙の密猟や違法な取り引きで個体数が減り続けているということです。

WWFジャパンは「地球温暖化によって引き起こされる干ばつで生息地の環境が変わり、ゾウの個体数がさらに減る可能性がある」として懸念を表明しています。


地球温暖化考慮の水害対策に転換へ 国交省 
 
2019年10月19日 4時06分

今回の台風19号による豪雨など、地球温暖化の影響で水害の規模が大きくなることが懸念されています。こうした中、国土交通省は、これまで過去の最大規模の水害を基準に行っていた対策から、温暖化による気温上昇を考慮した対策に転換していくことになりました。

国土交通省は、去年4月に気象や河川の専門家などでつくる検討会を設置し、地球温暖化を考慮した水害対策について話し合っていて、18日、提言が発表されました。

それによりますと、地球温暖化によって気温が2度上昇すると、100年から200年に一度の豪雨の発生頻度がおよそ2倍になるという気象庁などの予測をもとに、これまで過去の最大規模の水害を基準に行っていた対策から、地球温暖化による気温上昇を考慮した対策に転換していく必要があると提言しています。

これを受けて国土交通省は、今回、決壊した堤防があるところを含めた全国の河川について、堤防やダムなどの施設をどう強化していくか検討し、それぞれの整備計画に反映させていくことにしています。

「温暖化を否定する者に隠れ家ない」国連事務総長が意見広告
2019年10月4日 10時23分

国連のグテーレス事務総長は、地球温暖化をめぐって、世界中の新聞や雑誌などに意見広告を出し「地球温暖化を否定する者に隠れ家(が)はない」と強いことばを使って、対策に消極的な国に働きかけを続ける考えを示しました。

国連のグテーレス事務総長は3日、地球温暖化をめぐって、イギリスの新聞「ガーディアン」やフランスの「ル・モンド」、それにアメリカの時事週刊誌「ザ・ネイション」といった世界250以上の新聞や雑誌などに意見広告を出しました。

この中でグテーレス事務総長は、先月、国連総会で開いた地球温暖化対策サミットで、70以上の国や100以上の自治体が表明した2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにする約束について、ことし12月に南米チリで開く地球温暖化の会議「COP25」で、各国から実行に移すための説明を求めるとしています。

そのうえで「あまりに多くの国が石炭火力にとりつかれている。地球温暖化を否定する者に隠れ家はない」と強いことばを使って、対策に消極的な国に働きかけを続ける考えを示しました。

最後にグテーレス事務総長は「多くの若者や市民、企業など幅広い分野の人たちが立ち上がっているが、さらに多くの人たちの行動が必要で道のりは遠い」として、温暖化対策への支持と行動を呼びかけています。


関連・注目ワード


https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191030/k10012156171000.html

海面上昇のリスク人口は従来推定の3倍 米NPO、AIでデータ修正した新研究
2019年10月30日(水)18時05分

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米国の非営利団体クライメト・セントラルは、2050年までに気候変動による沿岸冠水でリスクにさらされる人の数はこれまでに考えられていた規模の3倍以上に達するとみられ、アジア周辺や北米と欧州の複数の都市が海面上昇の影響を受ける可能性がある、との研究結果を発表した。写真は豪雨で冠水したバングラディシュのダッカで2017年7月撮影(2019年 ロイター/Mohammad Ponir Hossain)

米国の非営利団体クライメト・セントラルは29日、2050年までに気候変動による沿岸冠水でリスクにさらされる人の数はこれまでに考えられていた規模の3倍以上に達するとみられ、アジア周辺や北米と欧州の複数の都市が海面上昇の影響を受ける可能性がある、との研究結果を発表した。

同研究は、各国政府が温暖化ガス排出を大幅に抑制できたとしても、水害への予防措置が十分に施されなければ、3億人の人々が住む地域が今世紀半ばまでに少なくとも年に1回は洪水に見舞われるリスクがあると指摘した。

これまでの推定では、そうした被災人口の予想規模は8000万人前後とされていた。リスクにさらされている人口の大半は、中国、バングラデシュ、インド、ベトナムの住民という。

これまでのデータでは、人の住む沿岸地帯の多くがより高い位置にあると算出し、したがって実際より安全であると示唆していた。今回の研究では、人工知能(AI)を駆使してこの算出におけるシステムエラーを修正したという。

同社の代表であるベンジャミン・ストラウス氏は「いまわれわれは、海面上昇と沿岸冠水の脅威がこれまでに考えられていたよりはるかに大きいことを認識した」と述べた。


[ロンドン 29日 ロイター]
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/3npoai.php


 


 

【気候科学】世界の沿岸部は従来の推定よりも海面上昇に対して脆弱になっている
Nature Communications

2019年10月30日

Climate science: Coasts more vulnerable to sea-level rise than previously thought
Nature Communications
世界の海岸線で、海面上昇と沿岸洪水に対する脆弱性が、従来の推定の3倍に達していることを示唆するモデル研究について報告する論文が掲載される。

今回、Scott KulpとBenjamin Straussは、新しい数値標高モデル(CoastalDEM)を用いて、地球上で極端に高い水位の沿岸海域の影響を受ける人口の評価を行った。CoastalDEMは、従前のモデルの垂直バイアスを低減するために役立つニューラルネットワークを使用しており、全世界で現在の満潮線より低い陸地に合計1億1000万人が居住し、現在の洪水位より低い陸地に2億5000万人が居住していると推定している。この推定結果は、それぞれを2800万人と6500万人とした先行研究による推定人口とは対照的だ。

Kulpたちは、CoastalDEMを用いて、2020年までに温室効果ガス排出量がピークに達する低炭素排出シナリオでは、2100年の時点で予想海面水位より低い陸地に1億9000万人が居住し、温室効果ガスの排出量が21世紀を通じて増加する高排出シナリオでは、2100年の時点で予想洪水位より低い陸地に最大6億3000万人が居住するという見解を示している。現在は、満潮線からの高さが10m未満の陸地に10億人が居住し、洪水位からの高さが1m未満の陸地に2億5000万人が居住しているとKulpたちは推定している。

doi:10.1038/s41467-019-12808-z

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

注目のハイライト
10月30日
【気候科学】世界の沿岸部は従来の推定よりも海面上昇に対して脆弱になっているNature Communications
10月30日
【神経科学】アルツハイマー病のアミロイドベータ繊維の構造が明らかにNature Communications
10月30日
【医学研究】肝繊維症の画像化Nature Communications
10月29日
【進化学】鳥の卵の色はなぜ多様なのかNature Ecology & Evolution
10月25日
【気候科学】300年間の薄化で崩壊しやすくなったと考えられる南極の棚氷Scientific Reports
10月24日
【健康】マウスの高塩分摂取が認知機能低下に結び付いているNature
https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/13127


https://www.nature.com/articles/s41467-019-12808-z
• Open Access
• Published: 29 October 2019
New elevation data triple estimates of global vulnerability to sea-level rise and coastal flooding
• Scott A. Kulp &
• Benjamin H. Strauss
Nature Communications volume 10, Article number: 4844 (2019) | Cite this article
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Abstract
Most estimates of global mean sea-level rise this century fall below 2 m. This quantity is comparable to the positive vertical bias of the principle digital elevation model (DEM) used to assess global and national population exposures to extreme coastal water levels, NASA’s SRTM. CoastalDEM is a new DEM utilizing neural networks to reduce SRTM error. Here we show – employing CoastalDEM—that 190 M people (150–250 M, 90% CI) currently occupy global land below projected high tide lines for 2100 under low carbon emissions, up from 110 M today, for a median increase of 80 M. These figures triple SRTM-based values. Under high emissions, CoastalDEM indicates up to 630 M people live on land below projected annual flood levels for 2100, and up to 340 M for mid-century, versus roughly 250 M at present. We estimate one billion people now occupy land less than 10 m above current high tide lines, including 250 M below 1 m.
Introduction
Driven by climate change, global mean sea level rose 11–16 cm in the twentieth century1,2. Even with sharp, immediate cuts to carbon emissions, it could rise another 0.5 m this century3,4,5,6,7,8,9,10,11,12. Under higher emissions scenarios, twenty-first century rise may approach or in the extremes exceed 2 m in the case of early-onset Antarctic ice sheet instability4,8. Translating sea-level projections into potential exposure of population is critical for coastal planning and for assessing the benefits of climate mitigation, as well as the costs of failure to act.
Land topography and elevation, as represented by DEMs, lie at the foundation of such translation. High-accuracy DEMs derived from airborne lidar are freely available for the coastal United States, much of coastal Australia, and parts of Europe, but are lacking or unavailable in most of the rest of the world. By contrast, SRTM is a near-global satellite-based DEM covering latitudes from 56 south to 60 north and thereby land home to 99.7% of world population (based on 2010 Landscan data13). It is the standard choice for extreme coastal water level (ECWL) exposure analysis covering areas where high-quality elevation data are unavailable or prohibitively expensive14,15,16,17,18,19,20,21.
SRTM models the elevation of upper surfaces and not bare earth terrain. It thus suffers from large error with a positive bias when used to represent terrain elevations. This is especially true in densely vegetated and in densely populated areas22,23,24,25. Mean error in SRTM’s 1–20 m elevation band is 3.7 m in the US and 2.5 m in Australia when using DEMs from airborne lidar as ground truth26. Spaceborne lidar from NASA’s ICESat satellite27, a sparser, noisier and less reliable source of ground truth than airborne lidar, indicates SRTM has a global mean bias of 1.9 m in the same band26. This degree of error leads to large underestimates of ECWL exposure28, and exceeds projected sea-level rise this century under almost any scenario3,4,5,6,7,8,9,10,11,12.
In this article, we present ECWL exposure assessments that address this problem by employing CoastalDEM, a new DEM developed using a neural network to perform nonlinear, nonparametric regression analysis of SRTM error. This model incorporates 23 variables, including population and vegetation indices, and was trained using lidar-derived elevation data in the US as ground truth. CoastalDEM covers the same near-global latitudes as SRTM while reducing vertical bias to decimeter scale (0.01 m and 0.11 m as measured versus airborne lidar in the coastal US and Australia; −0.29 m as tested versus spaceborne lidar globally). CoastalDEM also cuts RMSE roughly in half compared to SRTM26. In low-elevation US coastal areas (where SRTM elevation is less than or equal to 20 m) in which population density exceeds 20,000 per square kilometer, including areas in 14 coastal cities such as Miami, New York City, and Boston, CoastalDEM reduces linear vertical bias from 4.71 m to less than 0.06 m. An overview of the methods used to generate CoastalDEM can be found in the methods section.
Central estimates in the recent literature broadly agree that global mean sea level is likely to rise 20–30 cm by 20503,4,5,6,7,8,9,10. End-of-century projections diverge more, with typical central estimates ranging from 50–70 cm under representative concentration pathway (RCP) 4.5 and 70–100 cm under RCP 8.53,9,10,12, though more recent projections incorporating Antarctic ice sheet dynamics indicate that sea levels may rise 70–100 cm under RCP 4.5 and 100–180 cm under RCP 8.5, and could even exceed 2 m or more in far-tail scenarios4,7,8,11. Via a structured elicitation of opinion, experts now estimate there is a 5 percent chance 21st century sea-level rise will exceed 2 m29. Essentially all estimates are below the vertical bias of SRTM. Of these, we consider two representative sea-level projections for this assessment, labeled here as K143 and K174. K14 is a probabilistic projection that is closely aligned with IPCC findings10,30, while K17 is not probabilistic and emphasizes the possibility of more rapid sea-level rise because of unstable ice-sheet dynamics31. Further details of these models are discussed in the methods section.
Both sets of projections are conditional on global carbon emissions; RCPs 2.6 (low emissions), 4.5 (moderate emissions), and 8.5 (high emissions) are considered for this analysis32. These models use 2000 as the baseline year (zero sea-level rise), which we treat as present-day with respect to sea level for relevant vulnerability estimates. The results we present here are based on median sea-level projections, along with 90% credible intervals when derived from K14, and 90% intervals from simulation frequency distributions when derived from K17 (we abbreviate both interval types as CI).
Because higher and more frequent coastal flooding is a direct impact of sea-level rise33,34, we also assess potential exposure to ECWLs resulting from annual floods added on top of rising seas. We use local one-year return level heights (RL1) from the Global Tides and Surge Reanalysis35. These return levels vary spatially from a 5th percentile of 0.2 m to a 95th percentile of 2.8 m above local mean higher-high water (MHHW)—roughly speaking, the high tide line—across the near-global set of coastal cells assessed in this study (median value, 0.7 m).
We find that assessments using CoastalDEM instead of SRTM multiply median global ECWL exposure by roughly three or more for all scenarios and models considered. The majority of people living on implicated land are in developing countries across Asia, and chronic coastal flooding or permanent inundation threatens areas occupied by more than 10% of the current populations of nations including Bangladesh, Vietnam, and many Small Island Developing States (SIDS) by 2100.
Results
Global
Given each sea level scenario analyzed (Supplementary Table 1), and alternately using SRTM and CoastalDEM, we estimate the number of people on land that may be exposed to coastal inundation—either by permanently falling below MHHW, or temporarily falling below the local annual flood height (Table 1, Supplementary Data 1). Coastal defenses are not considered, but hydrologic connectivity to the ocean is otherwise enforced using connected components analysis. Figure 1 presents permanent inundation surfaces at select locations for median K17/RCP 8.5/2100. Future population growth and migration are also not considered; rather, we use 2010 (essentially current) population density data from Landscan13 to indicate threats relative to present development patterns.
Table 1 Global populations on land at risk
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Fig. 1

Permanent inundation surfaces predicted by CoastalDEM and SRTM given the median K17/RCP 8.5/2100 sea-level projection. Locations include (a) the Pearl River Delta, China; (b) Bangladesh; (c) Jakarta, Indonesia; and (d) Bangkok, Thailand. Low-lying areas isolated from the ocean are removed from the inundation surface using connected components analysis. Current water bodies are derived from the SRTM Water Body Dataset. Gray areas represent dry land. Axis labels denote latitude and longitude
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Population exposure to projected sea level or coastal flooding is most commonly expressed as the total estimated exposure below a particular water level (total exposure)14,16,17,19,21,36, but is increasingly also presented as the difference in exposure above a contemporary baseline (marginal exposure)16,21,37. Each approach has complementary strengths and limitations, discussed later. Here, we include marginal exposure values for key findings, while focusing more on total exposure. The latter is simpler and supports a wider and more easily interpretable set of comparisons between CoastalDEM-derived and SRTM-derived results.
For the present day, CoastalDEM estimates a global total of 110 M people on land below the current high tide line and 250 M on land below annual flood levels, in contrast with corresponding SRTM-based estimates of 28 M and 65 M. These values form the basis of the difference between total and marginal exposure estimates.
For one moderate future scenario, sea levels projected by 2050 are high enough to threaten land currently home to a total of 150 (140–170) million people to a future permanently below the high tide line, or a marginal increase of 40 (30–60) million. Total and marginal exposure each rise by another 50 (20–90) million people by end of century. A total of 360 (310–420) million people are on land threatened by annual flood events in 2100, or an extra 110 (60–170) million beyond the contemporary baseline. This case reflects greenhouse gas emissions cuts roughly consistent with warming of 2 °C (emissions scenario RCP 4.5) and assumes a mostly stable Antarctic (sea-level model K14).
In the case of Antarctic instability, a total of 300 (270–340) million people today live on land indicated as vulnerable to an annual flood event by mid-century, rising to as many as 480 (380–630) million by 2100. These values represent marginal increases of 50 (20–90) and 230 (130–380) million from the present, respectively. All 90% CIs given originate from uncertainty in sea-level projections.
More broadly, the effect on estimated ECWL exposure from changing the elevation data used exceeds the combined effects of emissions level, Antarctic behavior, and incorporation of annual flooding, as assessed using SRTM. For example, based on CoastalDEM, the total median current population on land falling below the projected mean higher high water line in 2100 under low emissions and a fairly stable Antarctica (RCP 2.6 and K14) is 190 million. This figure doubles the median SRTM-based estimate of 95 million under high emissions and Antarctic instability (RCP 8.5 and K17), and even exceeds SRTM-based figures under the same scenario after the addition of areas below the annual flood level (170 million).
More straightforwardly, Supplementary Data 2 and 3 tabulate people currently occupying land from 0–10 m MHHW at 1 m intervals, according to CoastalDEM and SRTM, respectively. In previous work using SRTM18, about 640 M people have been estimated to live in the low elevation coastal zone (LECZ), defined as areas below 10 m. Defining the LECZ to reference MHHW instead of EGM96, we find SRTM predicts 780 M people below this threshold, and with CoastalDEM, the estimate rises to just over one billion people. Remarkably, this latter prediction includes 770 M below 5 m, versus 230 M from 5–10 m, illustrating a strong concentration in the lowest areas. The densest 1-m vertical band among the first ten is from 1-to-2 m, with 170 M inhabitants (or 1.7 M per vertical centimeter), pointing to a risky global pattern of development in light of sea-level rise.
National
With both SRTM and CoastalDEM, and regardless of emissions scenario or sea-level model, we find that more than 70% of the total number of people worldwide currently living on implicated land are in eight Asian countries: China, Bangladesh, India, Vietnam, Indonesia, Thailand, the Philippines, and Japan (Fig. 2, Supplementary Data 1). China alone accounts for 15–28% of global ECWL exposure across DEMs, depending upon the scenario, but CoastalDEM increases absolute estimates for China by a factor of roughly three compared to SRTM. Under K14/RCP 4.5, China could see land now home to a total of 43 (29–64) million people below MHHW by end of century, or 57 (30–100) million in the case of Antarctic instability (K17/RCP 4.5). The marginal increases in exposure from baseline are 20 (6–41) million and 34 (7–77 million), respectively. Under the same emissions scenario and either sea-level model, annual flood events at least double the corresponding estimates, threatening land occupied by over 60 million additional people.
Fig. 2

Total populations on vulnerable land. a Current population on land below projected mean higher high water level in 2100 assuming intermediate carbon emissions (RCP 4.5) and relatively stable Antarctic ice sheets (sea level model K14). Estimates based on CoastalDEM. b Factor by which CoastalDEM increases estimates of people on vulnerable land over SRTM in each country under K14/RCP 4.5. Countries wholly north of 60 degrees N are excluded because CoastalDEM is undefined at those latitudes. Source data are provided as a Source Data file. National boundaries based on public domain vector map data by Natural Earth (naturalearthdata.com)
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In several developing countries south of China, ECWL exposure may be an order of magnitude more serious than previously expected as based on SRTM. As indicated by CoastalDEM, Bangladesh, India, and Vietnam come to rival China in the median number of people living on land implicated by 2100, totaling 21–30 million even under the low emissions scenario (K14/RCP 2.6), compared to 9–19 M today, and with another 10–25 million on land threatened by annual storm surge. Bangladesh, India, Indonesia, and the Philippines see a 5-fold to 10-fold change in estimated current populations below the projected high tide line after applying CoastalDEM. Globally, application of CoastalDEM leads to increased exposure estimates for the great majority of nations (Fig. 3).
Fig. 3

CoastalDEM versus SRTM by country. Each point represents a country, and its position corresponds to estimated total current population on land below the projected mean higher-high water level in 2100 (K14/RCP 4.5) using CoastalDEM (y-axis) versus SRTM (x-axis). The total global value is designated with the red point. Very large differences typically indicate large low-lying areas hydrologically connected to the ocean under CoastalDEM, but not SRTM. Source data are in Supplementary Data 1
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Percentage rather than absolute exposure serves as a normalized metric of threat (Supplementary Data 4). In Asia, CoastalDEM indicates that even with deep cuts to carbon emissions (K14/RCP 2.6), Bangladesh, Vietnam, and Thailand may, by end-of-century, face high tide lines higher than land now home to 19 (15–25)%, 26 (23–31)%, and 17 (15–18)% of their people, respectively, before accounting for episodic flooding events. These figures correspond to marginal exposure increases of 13 (9–19)%, 5 (2–10)%, and 15 (13–16)% of national populations. Continued high emissions with Antarctic instability (K17/RCP 8.5) could entail land currently home to roughly one-third of Bangladesh’s and Vietnam’s populations permanently falling below the high tide line. It follows that some coastal municipalities within these nations will see even larger proportions of their populations threatened with displacement.
Outside of Asia and excluding the Netherlands, where an extensive flood control network is not captured by any of the elevation models studied, CoastalDEM indicates that 20 other countries are expected to see land currently home to 10% or more of their total populations fall below end-of-century high tide lines (based on median estimates), even under the deep emissions cuts of RCP 2.6. This count is up from two using SRTM. Except for Djibouti, Guyana, and the United Arab Emirates, all of these are island nations, and thirteen are classified by the United Nations as Small Island Developing States (SIDS).
Supplementary Data 1 and 4 provide results for the present, mid-century, and 2100.
Validation
The aspirational outcome of applying CoastalDEM to ECWL exposure analysis is to, as closely as possible, estimate the same amount of coastal vulnerability that a DEM derived from airborne lidar data would. We validate our results by first performing three representative ECWL exposure analyses using lidar-derived data in the US and Australia. In Fig. 4, we plot the relative differences of predicted current population exposure between lidar and each global DEM at different water heights. Values of nearly zero imply a close match between exposure computed using both lidar and the target DEM, while larger absolute values suggest under-estimation or over-estimation of vulnerability. In addition to CoastalDEM and SRTM, we also include the alternative elevation models AW3D30 and MERITDEM, discussed more below.
Fig. 4

The relative difference of computed population ECWL exposure between lidar and four global DEMs. Populations living on land below 1, 2, and 3 m are computed in the US and Australia with each DEM. Zero relative differences indicate both lidar and the given global DEM predict the same number of people below the elevation threshold whereas, for example, −0.5 and 0.5 would indicate that the global DEM underestimation or overestimated by 50%, respectively. Results are given for each US state, as well as at the national scale in the US and Australia. Source data are provided as a Source Data file
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We find that CoastalDEM strongly and consistently outperforms SRTM (as well as the other global DEMs) with this metric. At 1 m above MHHW, CoastalDEM improves linear relative difference in every state except for New York. Error is reduced from −69% (SRTM) to −43% (CoastalDEM) across the US, and from −77% (SRTM) to −23% (CoastalDEM) in Australia. Even larger improvements are seen at higher water levels, and at 3 m, relative errors in the US and Australia are smaller than −29 and 7%, respectively. We note that while the neural network that generated CoastalDEM was trained on lidar-derived data in the US, Australian lidar data is used only to validate the results, meaning strong results seen here mitigate fears that the model has been overfitted.
Error in the US is dominated by Florida, where an exceptionally large population occupies the coastal plain, and where SRTM vertical error in the southern half of the state is unusually high (exceeding 4 to 10 m). The neural network that generated CoastalDEM did not fully correct this large error. Discounting Florida, US relative error at 1 m drops from −62% (SRTM) to −30% (CoastalDEM)—a comparable improvement to that seen in Australia.
Sensitivity analysis
Spatial autocorrelation commonly characterizes DEM error, including error within SRTM38. SRTM error is strongly correlated with factors such as land slope39, dense vegetation24, and high population density40, which themselves exhibit natural spatial autocorrelation. These features could manifest at any number of spatial scales (some towns may be only a few kilometers wide, while some urban agglomerations and forests are far larger). Furthermore, there exist well-known striping artifacts present in SRTM caused by satellite microadjustments41, resulting, in cases, in multi-meter upward or downward bias across regions that may reach on the order of 100 km wide.
While CoastalDEM makes substantial improvements to SRTM, and includes, in its construction, inputs designed to reduce or eliminate striping, we anticipate that CoastalDEM also suffers from autocorrelated error. We therefore conduct a sensitivity analysis to explore the potential effects of error in CoastalDEM on our population exposure estimates, including the effects of autocorrelated error.
Monte Carlo simulations are regularly used to model DEM error and generate distributions of flood exposure estimates, from which uncertainty may be evaluated38,42,43. Such approaches typically either assume zero spatial autocorrelation, using the DEM’s documented RMSE to generate random error surfaces42,44; or use low-pass filters across the error fields to simulate small-scale autocorrelation45; or employ sequential Gaussian simulations, which require widely dispersed ground-control-point data to accurately measure error statistics across the DEM43,46. The wide range of autocorrelation scale present here makes the second option unsuitable, and with no ground-control-point data available globally, the third is not possible.
Because of our expectations around the importance of spatial autocorrelation, we apply a modified, multi-scale approach to the first of these three methods. Assuming a normal distribution of error centered on zero and using a fixed global standard deviation, we generate 100 error fields using each of 6 different block sizes within which uniform error applies, ranging from 1 pixel (3 arcseconds) to 1 degree. We add the blocked errors to the original CoastalDEM to produce new simulated 3 arcsecond DEMs for computing exposure; the resulting exposure distributions are then evaluated separately for each block resolution. We use CoastalDEM’s RMSE in Australia (2.46 m), as determined using lidar, to serve as the global standard deviation for our error distributions. We choose RMSE from Australia versus the US (RMSE 2.39 m) because the CoastalDEM model was trained in the US (albeit on just a 1% coastal sample). While vertical error will inevitably vary some from place to place, the similarity in error between the US and Australia increases our confidence in the value we employ.
We elect to use a water height of 2 m above MHHW (roughly and generally corresponding to a bad flood in the nearer term or an extreme sea-level scenario for 2100) as a case study. As in the main study, connected components analysis is used to remove isolated areas under the inundation surface before computing exposure. Unmodified CoastalDEM estimates 400 M people worldwide live below this threshold. Table 2 and Supplementary Data 5, respectively, provide global and country-level results for this sensitivity analysis.
Table 2 Global simulated error assessment results
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Smaller error-block sizes (1-pixel through 1/10-degree resolution, roughly the size of a small city) produce highly consistent exposure estimates at the global scale, though biased low relative to the 400 M predicted without simulated error. This bias may be caused by higher spatial frequency DEM alterations cutting off some low-lying inland areas connected to the ocean through narrow pathways in the original CoastalDEM. Consistent with this mechanism, bias dissipates at larger error-block sizes. Also as autocorrelation scale grows, we see that 90% confidence intervals widen. At the extreme 1 degree resolution, roughly the scale of SRTM striping, the global 90% CI reaches plus or minus 10% about the 400 M median.
Countries also experience widening CI’s across error resolutions, though considerably more rapidly than seen at the global scale. In countries with at least 1 M people below the 2 m threshold, the 90% CI’s are, on average, plus or minus 2% about the median at 1 pixel, 5% at 1 km, 23% at 1/10 degree, 32% at 1/4 degree, 41% at 1/2 degree, and 49% at 1 degree. For example, at the 1-degree-error resolution, Bangladesh, India, and Vietnam have CI’s of (−56 to 54%), (−40 to 27%), and (−34 to 23%) about their respective medians, while China is predictably less sensitive at (−21 to 21%). In general, larger areas of analysis and smaller error blocks lead to less sensitivity in ECWL exposure estimates, because each of these factors leads to larger random samples, making errors more likely to cancel out. Conversely, smaller areas and larger blocks each lead to smaller samples and more sensitivity.
These results suggest that CoastalDEM error exerts little influence on our global estimates, but reasonable caution should be applied when interpreting national scale assessments, particularly for smaller countries such as the SIDS. That said, we note that the 1-degree simulations represent worst-case scenarios, because they assume that CoastalDEM’s RMSE derives exclusively from the largest considered spatial scale. Given the known factors at many spatial scales that contribute to DEM error, this assumption is unrealistic. Assessing characteristic error autocorrelation scales is beyond the scope of this study, but realistic CIs will be considerably narrower than implied by the 1-degree scale.
Discussion
Despite improvements, elevation dataset error remains an important limitation in this study. We see that CoastalDEM still underestimates population exposure in both the US and Australia when compared to lidar-derived DEMs, suggesting the current assessment does not fully eliminate the bias in exposure estimates based on SRTM. CoastalDEM may still experience difficulty in dense cities, where exceptionally tall buildings in even the lowest-lying areas can cause SRTM elevations erroneously above 20 m. Since CoastalDEM is defined only where SRTM elevation is lower than or equal to 20 m, such areas are disregarded in this analysis, leading to some underestimation of exposure.
Older global scale DEMs, such as GLOBE47 and GTOP03048, have been used in previous work, and generally predict higher coastal flood exposure than SRTM19,20. However, their extremely high vertical errors (up to 100 m RMSE in both cases), low horizontal resolution (1 km), and spatial inconsistency in quality make them unreliable for ECWL vulnerability assessments. Their use for research has faded in comparison with SRTM, given its higher horizontal resolution and order-of-magnitude lower error. More recently, other DEM’s have been released, such as AW3D3049 and MERITDEM50. AW3D30 is a digital surface model primarily derived from stereo optical satellite imagery, and does not specifically attempt to improve vertical bias in either urban or forested areas. MERITDEM, like CoastalDEM, is based off of SRTM. It uses regression analysis to remove vertical error correlated with a number of vegetation metrics. However, MERITDEM does not seek to correct errors due to urban development. For sake of comparison, the analyses described in this article were repeated for these DEMs, and included in Supplementary Data 1 and 4. Results from both AW3D30 and MERITDEM, including US/Australia ECWL exposure error (Fig. 4), are generally consistent with those derived from SRTM, and so we maintain that these DEMs are equally inadequate for assessing coastal vulnerability.
Future modeling efforts may improve estimation of terrain elevations in tall-building districts and areas affected by SRTM striping. Ultimately, the most accurate assessments of vulnerability to rising seas, especially for smaller areas, will require development and public release of improved coastal area elevation datasets building directly off of new high resolution observations increasingly collected by satellites today.
Another limitation of this assessment comes from the population dataset Landscan, which is a 1 km2 resolution model of ambient population density. While Landscan is widely used in the research literature, it cannot capture any bias toward or away from development within the lowest-lying coastal areas at sub-kilometer spatial scales. GRUMP is another population dataset with the same horizontal resolution, though it involves less sophisticated spatial modeling and is available only through 2000. It models nighttime (rather than ambient) population density51, and has been shown to produce notably higher predictions of exposure to ECWL20. Gridded Population of the World52 is another alternative, based directly on census data without further modeling. While nominally at 1 km horizontal resolution, the data is piecewise constant between administrative boundaries, meaning its effective resolution is actually much coarser than Landscan. Newer datasets, such as Worldpop53 and the High Resolution Settlement Layer54, are anticipated to model population densities with higher accuracy at finer resolution, but are not yet available globally.
We emphasize that this analysis combines future water level projections with contemporary population densities. Results should therefore not be taken as projected impacts. Rather, they reflect the portion of presently developed land at risk in the future, which we interpret as a threat indicator. Efforts to integrate projected population growth, migration, economic development and coastal defenses into ECWL exposure projections have begun19,36,55. However, the spatial scales of socioeconomic projections remain very coarse compared to the scales at which elevation and current development data are available, posing a stiff challenge to their meaningful integration into analyses where fine-scale detail is critical. In addition, behavioral and economic responses to rising seas are likely to be unpredictable, due to the largely unprecedented nature and scale of the problem.
The vulnerability model employed in this analysis, a bathtub model where we classify all land below a given water height and hydrologically connected to the ocean as exposed to extreme coastal water levels, presents another partial limitation of the study. While this approach is reasonable in indicating land threatened with permanent inundation due to higher sea levels, it tends to overestimate exposure from episodic flooding, especially at small spatial scales56,57. It is likely that hydrodynamic models would predict less vulnerability to one-year floods than we estimate here. Areas accordingly misclassified as exposed to annual flooding would nonetheless likely face relatively frequent inundation risks.
Furthermore, this analysis assumes a static coastal topography, with the exception of a linear model of vertical land motion implicit in the sea-level projections used. Erosion, wetland migration/accretion, and other morphological processes are not considered. It is difficult to predict how these factors affect the uncertainty of our results, especially since sea-level change may trigger complex process responses. However, we note that armored, developed, and maintained shorelines in urban areas, where vulnerable populations are concentrated, may generally be less susceptible to such factors than undeveloped land.
This study focuses on estimating populations occupying land below future high tide lines or annual flood levels, but results also indicate that some 110 M people live below MHHW today (with many more below annual flood lines). Several explanations are possible. First, elevation error may drive the finding. However, in the US and Australia, CoastalDEM identifies fewer people living below MHHW (0.9 M and 69,000, respectively) than lidar-based analysis does (1.7 M and 75,000), consistent with our more general finding that CoastalDEM tends to underestimate coastal exposure relative to lidar.
Second, other sources of error may be important, including from the population data used and from the sea level data and tidal models used to determine local MHHW. A more detailed lidar-based analysis employing high resolution (block-level) US Census data58 and NOAA’s nearly continuous model for local MHHW59 within the US cuts the original lidar-based estimate of 1.7 M nearly in half, to 0.9 M residents on land below MHHW. If these US results are indicative, and global population and MHHW estimates inflate exposure values derived from lidar elevation data, they likely also inflate values derived from CoastalDEM. Higher accuracy and higher resolution population, sea level and tidal inputs are likely important for improving coastal exposure assessments in the future.
Third, many people today do in fact live on land below (or just above) MHHW, behind the protection of levees or other defenses. In the US, these account for 0.8 M out of the 0.9 M residents that our more detailed lidar analysis identifies as today occupying land below MHHW. Globally at present, levees and seawalls protect low-lying populations in many major deltas, such as around Shanghai, the Netherlands and New Orleans, and in areas experiencing rapid subsidence, such as parts of Jakarta and Tokyo. However, levee location data are not globally available, to our knowledge, and so are not incorporated into this analysis.
Fourth and finally, many people today do live in unprotected areas subject to frequent coastal flooding (if not below the high tide line), such as in Bangladesh, or in boats or structures on or above the water (such as homes on stilts). These possibilities are likely to be most common in developing countries, and to be poorly documented.
The levees, seawalls and other defenses and accommodations currently protecting tens or hundreds of millions of coastal-area residents globally point to the potential for protecting ever-larger areas as seas rise. At the same time, current coastal defenses should not be assumed adequate to protect against future sea levels and storms without continued maintenance and, likely, enhancement. These countervailing possibilities point to the merits of reporting results based both on total ECWL exposure and on marginal increases in exposure from the contemporary baseline. Total exposure recognizes the potential vulnerability of all populations on low-lying coastal lands as sea levels rise. Marginal exposure highlights new populations of concern, while leaving out populations in areas that may be defended at present, and thus may be more likely to be defended in the future.
Even in light of the limitations identified, this research, using a significantly improved model of coastal elevations, provides new best estimates of the vulnerability of populated low-lying areas to rising oceans at global and national scales. Reliability increases with the size of the area evaluated, and with the water level considered; thus, global assessments for end-of-century sea levels and floods, under high sea-level scenarios, should be considered most robust. Analysis reveals a developed global coastline three times more exposed to extreme coastal water levels than previously thought. Even with low carbon emissions and stable Antarctic ice sheets, leading to optimistically low future sea levels, we find that the global impacts of sea-level rise and coastal flooding this century will likely be far greater than indicated by the most pessimistic past analyses relying on SRTM. These results point to great need for the development and public release of improved terrain elevation datasets for coastal areas, for example via the high-resolution imagery and lidar point clouds increasingly collected by satellite today. There is also great need for improved population data; data on the location, height and condition of coastal-area levees and seawalls; and improved global sea-level and tidal models.
If our findings stand, coastal communities worldwide must prepare themselves for much more difficult futures than may be currently anticipated. Recent work has suggested that, even in the US, sea-level rise this century may induce large-scale migration away from unprotected coastlines, redistributing population density across the country and putting great pressure on inland areas60. It is difficult to extrapolate such projections and their impacts to more resource-constrained developing nations, though historically, large-scale migration events have posed serious challenges to political stability, driving conflict61. Further research on global-scale modeling of the timing, locations, and intensity of migratory responses to increased coastal flooding is urgently needed to minimize the potential human harm caused by such threats.
Methods
Sea-level projections
We use two sea-level models for this assessment. K143 employs a probabilistic approach and includes very little contribution from Antarctica in its central projections. K174 links physical models of ice sheet loss to the projection framework established in K14, thus emphasizing the possibility of early-onset Antarctic instability31. However, the ice sheet model parameters used were not derived from probability distributions. Unlike K14, the resulting projection distributions produced by K17 are therefore considered simulation frequency distributions, rather than probabilistic ones. While more recent work62 suggests that these Antarctic projections may be biased high, the resulting overall sea-level projections align roughly with the high end of what the sea level research community broadly expects29. Both models incorporate spatially explicit submodels for all climatic components of sea-level rise considered. They each also incorporate nonclimatic background contributions, such as glacial isostatic adjustment and sediment compaction. Leveraging sea-level records collected at 1022 PSMSL tide gauges worldwide, both K14 (updated in 20174) and K17 employ a Gaussian process model to estimate nonclimatic contributions at points on a 2° × 2° grid along the entire global coastline. Results for both models at the tide gauge and grid point locations are included in Supplementary Datasets 3 and 4 of Kopp et al.4.
CoastalDEM
A multilayer perceptron (MLP) artificial neural network, a computational model often used for highly nonlinear non-parametric regression, was employed to predict the vertical error present at any SRTM pixel sample. MLP’s are made up of layers of nodes in a weighted, directed graph, starting with an input layer (in our case, a 23-dimensional vector of known attributes at the target location) and ending with an output layer (1-dimensional error prediction at the target location). The neural network is trained by using lidar-derived elevation data in the US63 as ground truth, iteratively adjusting weights in the graph to most accurately reproduce desired targets given the training set of samples. Our training set was made of over 51 million samples, and the 23 variables included neighborhood elevation values, land slope, population density, vegetation density, canopy height, and local SRTM deviations from ICESat altitude observations64. After training, the MLP predicted and removed SRTM errors at every pixel in the DEM with elevation between 1 and 20 m (inclusive). Details on the implementation and vertical error assessment of CoastalDEM were published earlier26. For this report, we used median resampling to convert CoastalDEM to a 3-arcsecond horizontal resolution.
Vertical datum conversion
We convert all elevation data to a common vertical reference frame (datum) for valid intercomparisons, electing the tidal datum mean higher high water (MHHW). MHHW is roughly equivalent to local high tide line and captures spatial variation in both mean sea level (MSL) and tidal amplitude. We use the globally extensive MSL model MSS_CNES_CLS_1565, based on a 1993–2012 record of satellite sea surface height measurements from TOPEX/Poseidon, and referenced to the GLAS ellipsoid at 1-arcminute horizontal resolution. We also employ MHHW deviations from MSL provided by Mark Merrifield, University of Hawaii, developed using the model TPX0866 at 2-arcminute horizontal resolution. Using NOAA’s VDatum tool59 version 3.7, we convert CoastalDEM, SRTM, AW3D30 and MERITDEM, plus the GLAS-referenced MHHW elevations, to a common ellipsoidal datum (WGS84). This allows us to subtract the elevation map of MHHW from each DEM to produce our final elevation maps above local MHHW.
A similar approach is taken in converting 1-year return levels to MHHW. The Global Tides and Surge Reanalysis, as distributed, is referenced to local MSL, so we use the MHHW-MSL deviation surfaces to change its vertical datum to MHHW.
Exposure analysis
Employing a modified bathtub model, we threshold each pixel in the DEMs to produce inundation surfaces at 0–10 m above MHHW. These inundation surfaces are computed at 1 m intervals with SRTM and AW3D30 (equivalent to their vertical resolutions), and at 0.25 m intervals with CoastalDEM and MERITDEM (which have continuous vertical resolutions). The surfaces are then refined using connected components analysis to remove all low-lying sub-threshold areas that the analysis indicates to be isolated by topography from the ocean.
To assess population exposure, we employ the LandScan 2010 High Resolution global Population Data Set, which estimates total populations living in 1 km2 cells13. We refine this data using the SRTM Water Body Data Set, which defines land cells at up to 1-arcsecond resolution (30 m). We resample Landscan to align our DEM grids, assuming zero population in water cells, while proportionally increasing the population density in land cells to ensure total population in each original 1 km square remains unchanged.
The population density grids are integrated under each 0.25 m-interval inundation surface, and tabulated according to the smallest administrative boundaries defined by the Global Administrative Areas (GADM) 2.0 Data Set67. In general, these administrative units are roughly the size of US counties, or smaller. The local sea-level rise projections and 1-year return level heights, now referenced to local MHHW, are then computed and added at the centroid of each boundary by linearly interpolating from nearby sample points from the corresponding models. At the scale of these administrative units, the sea-level rise and RL1 gradients are relatively small, so any local factors affecting water heights are captured. Populations on land under each of these water heights are then estimated using linear interpolation between the 0.25 m interval analyses. Results are aggregated to larger administrative areas, such as states and nations, as needed.
Reporting summary
Further information on research design is available in the Nature Research Reporting Summary linked to this article.
Code availability
The methods described in this article were implemented using custom Matlab (R2017b), Python, and C++ code. Due to licensing restrictions by Climate Central, this code is not publicly available.
Data availability
All exposure analyses (national populations on vulnerable land) that support the findings of our study are available within this article and its supplementary information files. The datasets SRTM, AW3D30, MERITDEM, Landscan 2010, and GADM are publicly available from their respective owners. The 3-arcsecond (90-m) version of CoastalDEM used in this analysis is available at no cost from Climate Central for non-commercial research use.
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Acknowledgements
The authors gratefully acknowledge Maya Buchanan, Michael Oppenheimer and Claudia Tebaldi for their thoughtful insights and comments on the manuscript. This research was supported by the Schmidt Family Foundation, the V. Kann Rasmussen Foundation, as well as One Earth, a project of Sustainable Markets Foundation, in partnership with the Leonardo DiCaprio Foundation, and grants from the National Science Foundation (ICER-1663807) and the National Aeronautics and Space Administration (80NSSC17K0698).
Author information
Affiliations
1. Climate Central, Palmer Square #402, Princeton, NJ, 08542, USA
o Scott A. Kulp
o & Benjamin H. Strauss
Contributions
S.K. and B.S. conceived and designed the analysis. S.K. performed the analysis. S.K. and B.S. wrote the paper.
Corresponding author
Correspondence to Scott A. Kulp.
Ethics declarations
Competing interests
The authors declare no competing interests.
Additional information
Peer review information Nature Communications thanks the anonymous reviewer(s) for their contribution to the peer review of this work. Peer reviewer reports are available.
Publisher’s note Springer Nature remains neutral with regard to jurisdictional claims in published maps and institutional affiliations.
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http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/776.html

[自然災害22] 口永良部島 噴火警戒レベル3「入山規制」に引き上げ 火山活動の状況(口永良部島)
永良部島 噴火警戒レベル3「入山規制」に引き上げ
2019年10月28日 0時44分

鹿児島県の口永良部島では27日夜、火口付近の浅いところで規模の大きな地震が発生するなど火山活動が高まっています。気象庁は28日午前0時15分、噴火警戒レベルを2から「入山規制」を示す3に引き上げ、大きな噴石や火砕流に警戒するよう呼びかけています。

気象庁によりますと、口永良部島では27日夜9時半すぎ、新岳の火口付近の浅いところを震源とする規模の大きな地震が発生しました。

今月18日にも規模の大きな地震が起きていて、気象庁は火山活動が高まった状態となっているとして、28日午前0時15分、噴火警戒レベルを2から「入山規制」を示す3に引き上げました。

そのうえで火口からおおむね2キロの範囲では噴火に伴う大きな噴石や火砕流に、向江浜地区から新岳の南西にかけての火口から海岸までの範囲では火砕流に警戒するよう呼びかけています。

口永良部島では4年前の平成27年5月に爆発的な噴火が発生し、火砕流の一部が海岸まで達するなどして噴火警戒レベルが最も高い5に引き上げられ、すべての住民が一時、島の外へ避難しました。

その後、ことし6月には警戒レベルが2に引き下げられていました。

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全国111活火山 生活空間のすぐそばに

日本には111の活火山があります。温泉や風光明媚な風景、肥沃な土地など日本の生活ともつながりが強い火山活動。活発度は火山ごとに差がありますが、ひとたび噴火すれば大きな影響を及ぼします。
4年前に噴火した鹿児島県の口永良部島 また噴火の可能性NEWSWEB EASY 10月28日

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191028/k10012152821000.html

 

永良部島の活動状況

火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)
最近1週間以内に発表した情報
降灰予報(定時)(10月30日23時00分発表)
火山の状況に関する解説情報(10月30日16時00分発表)
火山活動解説資料[PDF形式:3.0MB](10月29日16時40分発表)
火山の状況に関する解説情報(10月29日16時00分発表)
火山の状況に関する解説情報(10月28日16時00分発表)
火山活動解説資料[PDF形式:1.6MB](10月28日02時40分発表)
火山の状況に関する解説情報(10月28日02時40分発表)
噴火警報(火口周辺)(10月28日00時15分発表)
火山の状況に関する解説情報(臨時)(10月25日16時00分発表)
火山の状況に関する解説情報(臨時)(10月23日16時00分発表)
現在の警戒事項等
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。また、向江浜地区から新岳の南西にかけての火口から海岸までの範囲では、火砕流に警戒してください。
 風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
 地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。

噴火警報の対象市町村

 以下の市町村では、火口周辺で入山規制などの警戒をしてください。
 鹿児島県:屋久島町
噴火警報・予報(1行目をクリックすると全文表示します)
令和元年10月28日00時15分 福岡管区気象台・鹿児島地方気象台発表

火山の状況に関する解説情報
令和元年10月30日16時00分 福岡管区気象台・鹿児島地方気象台発表

<火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)が継続>
 口永良部島では火山活動が高まった状態となっています。新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。
火山活動の状況
 口永良部島では、10月18日及び27日に新岳火口直下を震源とする規模の大きな地震が発生しており、火山活動が高まった状態となっています。
 
 火山性地震の回数は、28日以降少ない状態で経過しています。
 
 本日の火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、1日あたり70トンと少ない状態でした。
 
 27日からの火山性地震、火山性微動の発生回数と火山ガス(二酸化硫黄)の1日あたりの放出量は以下のとおりです。いずれも速報値であり、精査の結果、後日変更することがあります。
 
            火山性地震 火山性微動  火山ガス
                        (二酸化硫黄)
 10月27日        5回    0回  100トン
    28日        1回    0回   60トン
    29日        2回    0回  100トン
    30日15時まで   3回    0回   70トン
 
 火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、東京大学大学院理学系研究科、京都大学防災研究所、屋久島町及び気象庁の観測によるものです。天候不良や観測条件が悪いなど観測値が得られなかった日は「-」としています。
 
 GNSS連続観測では、島内の長い基線で2016年1月頃から続いていた緩やかな縮みの傾向が、2018年7月頃から停滞しています。
 
 口永良部島では、18日以降、規模の大きな地震が時々発生しており、火山活動が高まった状態になっていることから、今後の火山活動の推移に留意してください。
防災上の警戒事項等
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。また、向江浜地区から新岳の南西にかけての火口から海岸までの範囲では、火砕流に警戒してください。
 風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
 地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。
最新の火山情報
一番最後に発表した情報を掲載しています。臨時で発表した火山活動解説資料のみ過去1ヵ月分を掲載しています。

噴火警報(火口周辺)(口永良部島)令和元年10月28日00時15分
火山の状況に関する解説情報(口永良部島第110号)令和元年10月30日16時00分
火山活動解説資料(令和元年10月29日16時40分発表)
火山活動解説資料(定期)(令和元年9月)
過去に発表した火山情報
噴火警報・予報の発表状況
火山の状況に関する解説情報の発表状況
火山活動解説資料(口永良部島)
口永良部島の噴火警戒レベル
画像をクリックすると大きくなります
噴火警戒レベルリーフレット 噴火警戒レベルリーフレット
噴火警戒レベルリーフレット[PDFファイル:1.3MB]
口永良部島の防災マップ
画像をクリックすると大きくなります
防災マップ

https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/activity_info/509.html
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/777.html

[経世済民133] ユニバーサルインカムはライフラインに成り得るのか 「ユニヴァーサル・ベーシックインカム」のパラドックス:伊藤穰一
ユニバーサルインカムはライフラインに成り得るのか


2019/10/31

土方細秩子 (ジャーナリスト)

 カリフォルニア州のストックトン市が全米初のユニバーサルベーシックインカムのテスト支給に乗り出してから8カ月が過ぎた。元々18カ月の試験的導入で、対象者も全市民ではなく所得が平均値(4万6000ドル)よりも低い125人が選ばれ、毎月500ドルを受け取っていた。


(stevanovicigor/gettyimages)
 プログラムそのものはあと10カ月続くが、受給者がこの金額を何に、どのように使っているのか、という中間報告が出された。まだ限定的なデータではあるが、人々は主に支給額を食料品、衣服、電気ガス水道代など、日常に必要なものの支出に充てていることが明らかになった。

 ユニバーサルインカムへの批判のひとつが、「余分な収入が得られることで人々はそれを贅沢品、嗜好品などに使い、生活費として機能しない」「失業者が求職する意欲を失う」などだったが、今回の125人のおよそ半分はパートもしくは完全雇用の形で仕事を持つ人々で、ユニバーサルインカムがあるから、と離職した人はいなかった。つまり今回の結果はユニバーサルインカムが当初の想定通りに機能していた、ということを裏付けている。

必要なものに正しくお金を使っている
 ストックトン市長、マイケル・タブズ氏は「我が国には経済的困難と闘っている人々がまだまだ多い。また有色人種はドラッグ、アルコール、ギャンブルなどで貧困に陥る、という偏見もある。今回の中間報告は、人々が決して支給された金額をそのようなことに使うのではなく、生活に必要なものに正しく使っている、ということの例証になる」と発言した。

 ユニバーサルインカムにはフェイスブックのマーク・ザッカ―バーグ、テスラのイーロン・マスクら、支持者も多い。また、現在来年の米大統領選挙に民主党候補として立候補中のアンドリュー・ヤング氏は、ユニバーサルインカムを選挙戦の最大の公約に掲げている。同氏は「大統領に就任したら、18歳以上の米国人全てに毎月1000ドル、年間1万2000ドルを政府が支給する」としている。これは「フリーダム・ディバイド」と呼ばれている。

 今回のストックトンでのデータを分析したテネシー大学ステーシア・マーティン=ウエスト教授は、「受給者は40%の支給金を食料に、24%を衣料品などの日用品に、11%を電気ガス水道料金に、9%を車の修理、ガソリン代などに使っている。これは非常に合理的な金銭の使い道であり、貧しい人は金の使い方を間違っているから貧しくなる、という一般社会の思い込みは正しくないと証明している」とコメントした。

 ただしこの結果に疑問を唱える声ももちろんある。ストックトン市の住民は30万人以上で、今回の実験はそのうち125人というごくわずかな数字だ。これが正確なサンプルに成り得るのか、という疑問がそのひとつ。もうひとつは、500ドルはデビットカードの形で支給され、それが例えばスーパーで食料品に使われた、などのトラッキングが行われた。しかし支給されると同時に40%の人々が現金での引き出しを行っており、その現金が何に使われたのかを追跡するのは不可能だ。つまり今回のデータはあくまでデビットカードで買い物をした人のみが対象となっている。

 しかし、ユニバーサルインカムを推進する人々は、「何に金銭を使ったか、という事実よりも、ベーシックインカムの存在が人々の生活の質を向上させ、精神的な健康を保つ結果につながることが大切だ」と語る。すでに実施されているフィンランドでは人々の幸福度が上り、社会的な機構に対する信頼度が上がった、とされている。またカナダのマニトバでは医師の元を訪れる人々が8.5%減少した、という。

どのように財源をねん出するのか
 ユニバーサルインカムを実施するにおいて、最大のネックとなるのは財源の確保だ。ストックトン市は元々自治体倒産を行った市としては全米最大と話題になったところ。それだけに疲弊した経済の中から、どのように財源をねん出するのか。大統領候補のヤング氏にしても、全国民に、となればその財源が議題となるのは必至だ。

 一部には1%の国民が国の富の半分以上を保有する、というアンバランスさから、こうした超高額所得者が財源を負担し、社会の不平等さに対処すべき、という乱暴な意見もあるほどで、ユニバーサルインカムに効果が認められたとしても実現にこぎつけるのは困難だ。

 今回のストックトンの報告が今後ユニバーサルインカムの実現に対しどのような効果をもたらし、どのように議論が進むのか。またストックトン市は残り10カ月の実験導入後、本当に全市民に対する支給に向けて動くのか。ユニバーサルインカムの将来はまだまだ不透明だ。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17668


ユニバーサル・ベーシックインカムは、貧困撲滅に役立つのか?
UBI

ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)−個人が就労中か否かに関わらず、世帯所得を保障するという考え方が、最近チューリヒで開催された「仕事の未来」会議の中心的テーマであった。

UBIは何十年も経済界で議論されてきた考え方だが、人間の仕事がますます機械化され、オックスフォード大学等が10〜20年以内に雇用の半数が機械化によって失われると予測する時代にあって、再び注目されている。

UBIは様々な政治分野で、熱い議論の的となっている。中でもスイスはUBIの導入を議論しており、今年国民投票を実施する予定だ。オランダでは既に実験的に実施されており、フィンランドでも間もなく開始される。

技術革新と、特に今後数年で急増が予測されている「プラットフォーム・エコノミー」や「シェアリング・エコノミー」における新しい雇用形態の圧力にさらされて、UBIを福祉制度の万能薬と見る向きもある。労働者が短期の不安定な仕事をいくつも抱えているような経済に、いかに福祉制度を適合させるのかという問題は、雇用形態に関わらず毎月の基本所得を保障する議論の中心となっている。

「プラットフォームになり得るものは何でもプラットフォームになる」と、世界最大のカーシェアリング会社ZipCar共同創立者のロビン・チェイス氏は述べる。「父は生涯1つの仕事に従事した。私は一生のうちで6つの仕事をするだろう。娘は同時に6つの仕事をこなすかもしれない。」

チェイス氏は、全ての人がこの状況を好むわけではないことを認識しつつ、プラットフォーム・エコノミーへの移行において、多くの労働者が職を失いそうな状況を受け、UBIの考え方を支持している。

他にも、ギリシャの元財務大臣であり著名なエコノミストであるヤニス・バルファキス氏らは、経済格差が歴史的レベルに達した今日の状況は、UBIを導入するに十分な根拠であると述べる。「UBIは必要だ。」「好むか好まざるかの問題ではない。ベーシックインカムは、富の創出に対して集団で責任を負う国民への配当金だからだ。」

米国のロバート・ライシュ元労働長官は、労働力参加率がここ数年で最低水準を記録し、技術のせいでますます多くの人が低賃金労働に追いやられている事実を指摘する。「格差が生じ、総需要が落ち、不安定になる」とライシュ氏は述べる。「UBIは真剣に考える価値がある。」

UBIで想定される恩恵について、これまでのところ労働組合の中では意見が分かれている。アンドリュー・スターンSEIU前会長は、避けられないほど差し迫った失業の高まりに備えられない危険性を警告している。「10〜20年以内に津波のような破壊的状況が押し寄せてきた時、従来の小さな防波堤では持ちこたえられないだろう。」「UBIはこの問題へのまったく異なるアプローチだ。これまで聞いた政策で、UBIがなし得ることを実現できる政策は1つもない。失業保険は必要なくなるだろう。これは選択と自由と機会の問題だ。」

バルファキス氏も、「機械がチューリングテスト*に合格したら、人類史上初めて、雇用破壊が雇用創出を上回る瞬間を目にするだろう」と言っている。(*英国の数学者チューリングが考案した、コンピュータが考えることができるか判定するテスト。)「社会的セーフティネットは人々を支えるのはよいが、貧困から抜け出るには難しい」とつけ加えた。「ベーシックインカムを土台とし、そこから空高く伸びていくと考えればよい。」

スイス最大の労組UNIaのバニア・アレバ委員長は、ベーシックインカムについて懐疑的だ。「議論する価値のあるビジョンだ」としながらも、「しかし、スイスにはきちんと機能している社会保障制度があり、UBIによってこれが脅かされている」と述べる。

英国の労組ユナイト・ザ・ユニオンのアンドリュー・ブレイディ氏は、UBIの考え方に共感しつつも、UBIを特効薬と見るべきではなく、我々を取り巻くニューエコノミーに対する解決策の1つと考えるべきだと述べている。「UBIの計画と運営に労働組合を関与させること、UBIを訓練や再訓練と関連付けること、そしてより高い最低賃金および強力な労働法制と併せてUBIを構築していくことによって、より良い基準を確保し、経済的混乱を緩和することができるだろう」とブレイディ氏は述べた。

スイスは、2016年6月にUBIの国民投票を行う。

UBI

? 第49回アジア開発銀行(ADB)年次総会UNIマレーシア加盟協、新たなブレイキングスルー! ?

https://blogs.uniglobalunion.org/japan/?p=1666


 

2018.07.18 WED 20:00
「ユニヴァーサル・ベーシックインカム」のパラドックス:伊藤穰一
米国は明らかに、所得格差によって分断されてしまっている。そして、この問題に対する有効な解決策は見つかっていない。いまこそ「ユニヴァーサル・ベーシックインカム」について、きちんと考えるべきときが来た──。マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボ所長・伊藤穰一による『WIRED』US版への寄稿。

TEXT BY JOI ITO
TRANSLATION BY CHIHIRO OKA

WIRED(US)

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PHOTO: GETTY IMAGES

[編註:記事は英語による『WIRED』US版への寄稿の日本語訳]

国連特別報告者のフィリップ・アルストンは、2017年12月15日にある厳しいリポートを発表した。ニューヨーク大学ロースクールの教授であるアルストンは人権活動家で、貧困問題などの専門家でもある。

リポートでは、スタンフォード大学の貧困と不平等研究センターが算出した次のようなデータ[PDFファイル]を引用した。「労働市場、貧困、セーフティーネット、経済的な不平等という観点から見ると、米国は世界で最も裕福な10カ国のうち最下位である。そればかりか21カ国中でも18位にとどまっている」というものだ。

そのうえで、「米国における社会的な流動性は、先進国のなかで最低レヴェルにまで低下している。アメリカン・ドリームは急速に色あせ、幻想となりつつあるのだ」と書いている。

このリポートの発表に先立つ同年の12月11日、日刊紙『ボストン・グローブ』に興味深い記事が掲載された。同紙の調査報道班「スポットライト」チームの調べによると、ボストンの都市圏に住む非移民の黒人世帯の純資産の中央値は8ドル(約900円)であるのに対し、白人世帯の純資産は平均で24万7,500ドル(約2,780万円)だという。

米国は明らかに、所得格差によって分断されてしまっている。そして、この問題に対する有効な解決策は見つかっていない。

同様の懸念を抱くテック界のリーダーやカトリック教会の代表者と、働くことの未来について過去数年にわたって広範な議論を続けてきた。こういった状況のなかでよく出てきたのが、ユニヴァーサル・ベーシックインカム(UBI)という概念だ。

これまで仲間と同じように、UBIについてはっきりとした態度を取ることを避けてきた。しかしいま、これについてきちんと考えるべきときが来たと感じている。

賛否がはっきりと分かれる概念
テック業界やヘッジファンドの著名人の「仲間うち」では、米国における貧困と技術革新による雇用喪失という問題への優れた解決策として、UBIがよく取り上げられる。ただ考え方自体はそれほど目新しいものではなく、わたしが生まれる前から存在した。

UBIは、生活保護のような現金の支給か負の所得税(所得が一定水準に達していない人も税金を還元する仕組み)といったシステムによって貧困層(もしくは国民全員)の生活水準を改善し、社会改革を起こそうという概念だ。

興味深いことに、この概念はノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマンのような保守派から、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアのような改革派まで、どちらからも支持を得ている。一方で、UBIを批判する声も保守と革新の両方から聞かれる。

保守派は、社会保障費の削減が可能になるという理由でUBIに賛成する。医療や食糧支援、失業手当といった個々の社会保障の代わりに一定金額を支給して、その使途に政府が関与せず個人が決めるようにすれば、究極的には安上がりだというのだ。

これに対して、改革派はUBIを富の再分配の機会と捉える。例えば、無報酬で家事労働に従事するグループにも収入の道が得られる。さらに、UBIの支持者はこれが貧困の撲滅につながると主張する。

しかし一方では、同じくらいの反対意見も存在する。保守は労働意欲が失われると警告するし、財源をどうするかという問題もある。働く者が働かない者を養うという結果に陥るのではと懸念しているのだ。

また懐疑的な改革派は、雇用主が賃金を引き下げるのではないかと指摘する。ほかにも、国が既存の社会保障を骨抜きにし、提供する責任を放棄する言い訳に使われるのではないかと懸念する声もある。

結果としてUBIは、党派が対立する問題でありながら、超党派の支持を得るというパラドックスに陥っている。

パネリストとして最近招待されたあるカンファレンスで、司会者が「UBIについてどう思うか」と参加者に質問する場面があった。500人ほどいた聴衆の大半は、「効果があるかはわからないが、実証プログラムなどをやってみるべきだ」と考えているようだった。

UBIに対する意見が大きく異なるのは、運営方法や社会的な反応がほとんどわからないからだ。具体的に、どのようなものなのかきちんと理解している人は少ない。スマートフォンやWikipediaが登場する以前の、酒場における酔っ払いの言い争いと同じで、正確に議論できないのだ。ただ、知っておくべき基本原則や、実態を想像するのに役立つ研究がある。

シリコンヴァレーが原因で注目を集める
UBIという制度が注目を浴びるようになったのは、シリコンヴァレーが原因だ。テック界の大物や学者などが「ロボットや人工知能(AI)は、近いうちに人間の仕事を奪うだろう」と騒ぎ始めたのである。同時に「ロボットは誰もやりたがらない低賃金の単純労働を担うようになる」というポジティヴな予想もある。

一方で「ロボットが自分の能力には見合わないと判断した底辺の仕事を、人間がやらされる羽目になる」と警告する専門家もいた。そして、UBIはこの状況を救うことができるかもしれないという。

昨年の全米知事協会の会合でイーロン・マスクは、テクノロジーが人間の雇用を奪うという未来は「自分にとっては最も恐ろしい問題」で、「解決策は容易に思いつかない」と語った。

マスクや一部の起業家は、UBIによって収入が確保されれば相応の余暇ができるため、この空き時間を使い、自らを鍛え直すことができると主張する。勉強してロボットにできない技術を身に付ければいいと言うのだ。新しいタイプの起業家が誕生し、アメリカン・ドリームが再来するかもしれないとまで言う者もいる。

ただ、それは少し先走り過ぎているかもしれない。英国のバース大学政策研究所のルーク・マルティネリは「財政的に実現可能なUBIでは不十分だし、十分なUBIは費用という意味で現実的ではない」と指摘している[PDFファイル]。大筋のところでは、この意見に同意する。

財源が最大の課題に
UBIで最も大きな問題は財源だ。仕事をせず、自分の好きなことを追求するのに必要な額(給与収入がゼロになっても最低限の生活ができる額)を月1,000ドル(約11万円)とした場合、すべての国民に支給するには、たいていの国で国内総生産(GDP)の5?35パーセントに相当する予算が必要になる。これは、先進国の貧困を撲滅するコストとしても、かなり割高だ。

つまり、すべての国民が日々の生活を送るのに十分な額を本当に支給しようとすれば、社会保障をなくして浮いた金をUBIに回すしか方法はない。リバタリアニズムの信奉者と保守派の一部は賛成するかもしれないが、大方にとっては受け入れられる案ではないだろう。

シリコンヴァレーの議論を支えているのは、ピーター・ディアマンディスが『楽観主義者の未来予測』で主張しているような「科学とテクノロジーの急速な進化により、豊かな未来が訪れる」という信念だ。

ディアマンディスは医療の進歩やコンピューターの処理能力の向上、AI開発を含むテクノロジーの発展によってシンギュラリティ(人工知能が人類の知能を超える転換点)がもたらされ、世界が一変すると主張する。いまの世界が暗黒時代のように感じられる未来がやってくるというのだ。

ディアマンディスは、人間の脳はこうした未来を直感的に想像できないため、長期的な変化を過小評価する傾向にあると説明する。人類は「数十年後には、いまからは想像できないほど豊かになっているだろう」と、彼は著書に書いている。

彼は「わたしたちはすぐに、地球上のすべての人間の基礎的な需要を満たし、さらにはこれを上回る能力をもつようになる。全人類が富を手にする未来は、すぐそこまで来ているのだ」とも主張している。

ただ、テクノロジストが忘れがちな事実をひとつ指摘しておきたい。わたしたちはすでに、実際に世界全体を養うのに十分な量の食糧をもっている。その分配がうまくいかないだけだ。

テック業界とUBIの関係
テック界の富豪は「ケーキは残しておけるし、それを食べられる」と考えている。富裕層が経済的に豊かになれば、いずれは貧困層にも富が行き渡るというトリクルダウン理論を信じている。最終的には、誰も苦しまずに世界全体が豊かになると思っているのだ。では、彼らにはなぜそのような確信があるのだろうか。

テック業界に君臨する企業は、非常に短期間でトップまで上り詰めた。創業者も同様に、あっという間に莫大な富を手にしている。そして、マーク・アンドリーセンが『ウォール・ストリート・ジャーナル』への寄稿「Why Software is Eating the World(ソフトウェアが世界を飲み込む理由)」で予言したように、この快進撃に終わりはないように見える。

シリコンヴァレーのリーダーのほとんどは、急拡大する市場のおかげで、過去のゲームの勝者たちのように攻撃的な戦略を取らなくても富を築くことができた。このため、彼らは自分たちのビジネスが本質的には「よいことをしている」と感じている。そしてこの結果として、大まかに言うと恵まれない人を救うべきだと強く信じているのだ。少なくとも、そう思える。

米国やフィンランドの事例
テクノロジストは次のように考えている。自分たちの予見が正しく、機械化によってアメリカのGDPが大幅に拡大するなら、この未来に付随する問題を何とかするのも自分たちの役目であるに違いない。

テック界の大物は、UBIに関する研究を支援したり、自分の資産で実証や実験をし始めたりしている。社会秩序を保ちながら、自分の支配的な地位を維持できる未来を実現するためだ。

UBIの小規模な実証実験は、地域や組織において過去に何度も行われている。なかには労働を伴わない収入があっても、個人の勤労意欲は失われないという結果が出た事例もある。UBIを受け取ることになった人々は望まない仕事は辞めたが、よりよい職を探したり、学業を再開したりすることを選んだという。

Yコンビネーターの社長であるサム・アルトマンも、UBIの実験を進めている。「Basic Income Project」という少しばかり退屈な名前のこのプログラムでは、全米の2州からランダムに選んだ3,000人に対して実施される予定だ。

選ばれた人のうち、1,000人には月額1,000ドル(約11万円)、2,000人には50ドル(約5,617円)だけ支給される。後者はコントロールグループと呼ばれ、結果を検証する際の比較対象となる。

5年にわたるこの実験では、無条件で金をもらえる場合に人間がどのような行動を取るのかが明らかになるだろう。つまり、UBIを考える上でのひとつの科学的根拠が与えられるわけだ。UBIに関しては、エヴィデンスが絶対的に不足している。

結果はどうなるだろう。被験者は実際によりよい仕事に就こうとするのか。新しいことを学ぶための挑戦を始めるのか。子どもであれば学ぶ機会が増え、脳の発達が促進されるのか。犯罪率は低下するのか。こうした数々の疑問に何らかの答えが出るかもしれない。

ほかの大きな支持を集める理論と同じで、実際にどう運用していくかで現実のUBIの明暗が分かれる可能性がある。17年1月より開始し、大きな注目を集めているフィンランドの実験的なプログラムを例に考えてみよう。

フィンランドの社会保険庁事務所(KELA)と研究者チームが「就労の有無にかかわらず、国民に月額550?700ユーロ(約7万2,500?9万2,000円)を一律で支給してはどうか」と提案したのがきっかけとなり、スタートした。

フィンランド政府は、失業保険を支給されている非就労者のみを対象とし、この提案を受け入れた。保守政権はUBIがよりよい職の選択や新しい分野への挑戦につながるかには興味がなかったようだ。

彼らは「実験プログラムの重要な目的は雇用の促進にある」とはっきりと主張している。こうして労働を再び有意義なものとし、リベラルな価値観を推奨するアイデアは、つまらない仕事でもとにかく就業を促すための保守的なプログラムに変わってしまった。

これは、UBIを実施するには政治が大きな影響を及ぼす可能性があるという、大きな警告といえる。フィンランドの実験が終了するのは19年末だ。最終的な結果が出るまでにはまだ時間がある。

クリス・ヒューズの主張
Facebookの共同創業者のひとりで、そこそこの金持ちとなったクリス・ヒューズは、少し違った見解を示している。彼の案は、シリコンヴァレーのテクノロジーによる薔薇色の世界という未来予想と、東海岸のリベラル派の考え方のちょうど中間といえるだろう。

詳細はヒューズの新著『Fair Shot: Rethinking Inequality and How We Earn(フェアショット:不平等を再考し、いかに獲得するか)』に書かれているが、簡単に説明すると以下のようになる。

まず、UBIはいますぐにでも始められる。具体的には、給付つき勤労所得税額控除(EITC)を通じて中低所得の納税者に月額500ドル(約5万6,000円)を支給することにより、「米国の全国民に経済的安定」を与えられるという。この際には、児童手当、高齢者向け福祉、教育手当などもEITCの対象に含める(現行のシステムでは、給与所得を伴わない場合はEITCの対象にならない)。

ヒューズは、この方法で「アメリカの貧困を半分に減らせる」と主張する。EITCには現在、年間700億ドル(約7兆8,700億円)かかっている。だが彼のやり方を採用すると、費用は2,900億ドル(約32兆6,000億円)に拡大してしまう。

ヒューズはフランスの経済学者エマニュエル・サエズとガブリエル・ズックマンの「アメリカの富の90パーセントは人口の1パーセント以下の超富裕層に集中している」という研究を引き合いに出し、この上位1パーセントへの所得増税を訴える。

具体的には、年間所得が25万ドル(約2,810万円)を超える層への所得税率を現行の35パーセントから50パーセントに引き上げるというのだ。投資収益も一般所得と同様に扱い、長期的に保有する株式の売却益への課税率は高所得者層に対し、20パーセントから50パーセントに引き上げられる。

ヒューズは実際に私財を投じて、自らの理論を証明しようとしている。カリフォルニア州ストックトンで行われる実証実験に「必要な資金を提供する」と決意したのだ。

UBIは米国を救うのか
UBIは米国を救うだろうか? 議会では富裕層を対象とした減税法案が通過したし、大統領もこれに署名した。それでも、わたしはヒューズの提案はある程度は合理的だと思う。実際にEITCは評判のいい制度だ。

懸案材料は現在の政治情勢と、わたしたちがものごとを冷静かつ論理的に話し合う能力が大きく損なわれたままである、という点だろう。これに加えて、合理的なアイデアを法制化しようとするときには付きものの、さまざまな問題もある。

ひとまず、シリコンヴァレーの富裕層がついに「このままいくと将来的に自分たちのビジネスに負の影響が出るかもしれない」と気付き始めたのは、素晴らしいことだ。UBIをめぐる研究に注目が集まっているばかりか、私財を投じた実験プログラムも行われている。

いまの社会では証拠というものは軽視されがちだ。しかしこうした実験が、UBIを理解するうえで役立つ科学的なエヴィデンスを提供してくれるだろう。

わたしは楽観的すぎるだろうか? そんなことはないと思う。では、現状を打破するためにやれることはすべて試してみるべきだろうか。そして、UBIは見込みのある解決策だろうか?

答えはどちらも「イエス」だ。

伊藤穰一|JOI ITO
1966年生まれ。起業家、ヴェンチャーキャピタリスト。『WIRED』US版アイデアズ・コントリビューターも務める。2011年よりマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ所長。著書にジェフ・ハフとの共著『9プリンシプルズ』〈早川書房〉、『教養としてのテクノロジー』〈NHK出版〉など。

伊藤穰一によるコラムのバックナンバー
仮想通貨とブロックチェーン、そしてICOの狂乱に思うこと
「説明できること」の先にある科学の未来
AIは未来を予測しない。いまを映す「鏡」である
代用肉の進化と、「細胞農業」がもたらす食の未来
https://wired.jp/2018/07/18/paradox-of-universal-basic-income/

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/526.html

[経世済民133] 動くFRB、逃げ切る日銀 FRB連続利下げ、経済情勢とそぐわず 市場動向依存にリスク 黒田日銀総裁、必要あればマイナス金利の深堀りは可能 日銀、フォワードガイダンスに利下げ可能性明示−現行政策維持 脆い世界経済、火遊びする政策立案者せめて「ばかなこと」はするな
為替フォーラム2019年10月30日 / 17:48 / 1日前更新

動くFRB、逃げ切る日銀

熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト
4 分で読む

[東京 30日] - 円高になれば、躊躇(ちゅうちょ)せずに利下げする。円高リスクが遠のいている間は、現状維持。これが日銀の行動原理である。

その判断の鍵を握っているのは、FRB(米連邦準備理事会)の政策がドル/円レートJPY=EBSに及ぼす影響であるため、日銀の政策自体がFRBのさじ加減によって決まると言ってもよい。

ECB(欧州中央銀行)を見るとよい。退任するドラギ総裁は、9月にマイナス金利を深掘りした。それでも、もうそれ以上の追加的な利下げは難しいと思われている。日銀が9月に利下げしていたとしても、ECBと同じだとみられていただろう。

では、なぜ円高が進みにくいのか。様々な要因はあるだろうが、FRBの政策金利が2020年には据え置かれるとみられているからだ。7月と9月の利下げ、そして確実視されている10月の利下げは予防的なもので、先々の米経済を安定成長させる。

先手を打って利下げしたことが、かえって2020年の金利据え置きの予想を強くする。米長期金利は、9月から反転してきた。8月までの米長期金利の低下が円高予想を強める場面では、日銀は利下げする可能性が十分にあった。

<米経済と大統領の不安をどうみるか>

米経済はいまだ薄氷を踏むように不安定と言う人もいる。9月の小売売上高は、前月比の伸びが鈍かった。製造業の悪化も下げ止まらないと見る声もある。

しかし、FRBの利下げ効果はタイムラグを伴って効いてくるものだ。11月中旬から始まるクリスマス商戦の行方の方が気になる。ダウ平均株価.DJIが堅調であることは、個人消費を今後も支えていく要因になるだろう。

また、米中協議も「一発逆転」で決裂するリスクが否定できないという不確実性を重視する人もいるだろう。2019年の4、5月の協議は、すでに合意文書が出来上がったところから事態が暗転した。そのトラウマが、すべては不確実だと考えさせる。

この思考法は、2019年秋というタイミングがトランプ大統領にとって重要だという点を見落している。2020年秋に大統領選挙を控えて、トランプ大統領は何としても協議の成果が欲しい。クリスマス商戦の手前であるという認識があって、トランプ大統領本人が協議をまとめたがっている。

「トランプ大統領は何をするかわからない」と不安視するよりも、あの大統領だからこそ、今回は成果を欲しがっていると見る方が正しいと思う。

<日銀にとっての正念場>

円高という条件以外に、日銀が利下げする可能性はあるという見方は、成り立つだろうか。例えば、消費増税の反動減に対応するケースである。政府の経済対策と歩調を合わせて、利下げという可能性はどうか。安倍晋三首相が、黒田東彦総裁に暗にそのメッセージを送ると、日銀は動くだろう。

今のところ、黒田総裁は増税の影響を軽微と見ており、金融政策による対応は全く考えていない。11、12月になると、月次の経済指標の発表を見て「それなりに増税の影響は大きかった」と民間エコノミストが口々に弱気シナリオを唱えるだろう。本来は2020年前半まで評価を下すことはできないが、元々弱気派の人は過剰反応するに違いない。黒田総裁はその風向きに流されずに耐えられるかどうかが問われる。

2020年に入ると、今度は東京五輪の経済効果の方が話題となり、増税の後遺症はいったん、人々の関心事から遠のくだろう。経済対策の関心もキャッシュレス還元のような時限的対応の次をどうするかに移っていくと予想する。反動減対応の後処置という議論になっていくと、そこに日銀の利下げを加えるのは筋が違うという話になる。

このように考えると、黒田総裁は2020年初めまで約3カ月間が厳しい正念場となる。そこまでは「躊躇なく追加緩和する」という臨戦体制を敷いて、利下げを辞さない姿勢をアピールする。

<日銀は逃げ切れるか>

多くの人は、この局面で日銀は追加緩和をせずに逃げ切れないだろうとみている。筆者も、日銀が完全に逃げ切れると言う自信はない。予想として、逃げ切るつもりだと考えている立場だ。

日銀は、イールドカーブ・コントロールを採用してから、長期金利が低下するときは短期金利をより引き下げなくては逆イールド化するリスクを負ってしまった。海外経済が悪化して、米欧長期金利が下がると、マイナス金利を深掘りする対応を迫られる。短期金利を下げると、金融機関の収益に打撃を与える矛盾が生じた。これが今のように金縛りに陥る理由である。

では、この矛盾から脱出するにはどうすべきか。海外経済が良くなり、米欧長期金利が上がることである。2020年になって海外経済が好転すると、黒田総裁は「輸出環境が改善して、景気後退リスクが遠のいた」と景気認識を改めることで、「躊躇なく追加緩和する」モードをオフにすることができる。

これは出口戦略ではなく、政策スタンスをニュートラルに戻すアナウンスである。外部環境が変われば、「躊躇なく緩和」と発言したことは、うそを言ったことにはならずに済む。従来の強力な緩和を止めることでもないので、方針変更のハードルは低い。

ポイントは、やはりFRBの政策姿勢である。今は2020年に政策金利を据え置き、2021年になって利下げをゆっくり始める方針である。これが、2019年12月あるいは2020年3月のタイミングで上方修正されると、日銀にとって少しずつ外部環境が変わってきたことになる。つまり、日銀が「躊躇なく追加緩和」のモードを切り替えるのは、FRBの政策スタンスの変化を待つことになるのだろう。 

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

熊野英生氏(写真は筆者提供)
*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。
https://jp.reuters.com/article/column-frb-hideo-kumano-idJPKBN1X90TS

 


コラム2019年10月31日 / 09:54 / 6時間前更新

FRB連続利下げ、経済情勢とそぐわず 市場動向依存にリスク
Anna Szymanski
2 分で読む

[ニューヨーク 30日 ロイター BREAKINGVIEWS] - パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が金融市場の動揺を防ぐために実施する利下げ、つまり「パウエル・プット」は、むしろ「パウエル・パント」と改称するべきだろう。パントとは、アメリカンフットボールで十分に前進できなかったために攻撃権を手放す際に行うキックだ。


市場参加者は30日、追加利下げという望み通りの結果を手に入れた。だがS&P総合500種は今週、終値ベースの過去最高値を更新し、米経済は目を見張るほどではないにしてもしっかりした足取りで推移、物価も上向きだ。その意味で、FRBがデータに基づいていると明言する政策運営方針は、実際には市場の動きにどっぷりと依存している側面がより目立っている。

同日発表された第3・四半期の米国内総生産(GDP)は、年率1.9%増で、特筆するほどの強さでないとはいえ、多くのエコノミストの予想は上回った。雇用情勢もそれほど悪くはなく、失業率は3.5%と引き続き50年来の低水準だ。11月1日には最新の雇用統計が発表されるが、今年これまでを見ると雇用増加ペースは鈍化しながらも着実さを持ち、大規模減税効果がなくなっても堅調な経済動向と一致する。

そしてインフレも、反論はあるだろうが、まだ消えてしまったわけではない。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア個人消費支出(PCE)物価指数は第3・四半期の前年比上昇率が2.2%と、FRBが目標とする2%を超えた。これは持続しないかもしれなくても、足元では物価上昇率が適切な範囲の近くに収まっている。

9月は耐久財受注が打撃を受けたのは間違いない。しかし不振の多くの部分は、ボーイングの737MAX運航停止問題に帰せられる。企業投資の減少が成長率の足を引っ張ったとはいえ、その原因を貿易に関する不透明感というFRBに解決不能な要素以外に求めるのも難しい。一方でGDPの大半を占める個人消費は、底堅さを維持している。

米経済の成長軌道は、減税で加速した後の成熟段階に入りつつある。もっともこれは想定された事態だ。そこで1回の利下げであれば、保険とみなされるだろう。ところが3回連続なら、もはやトレンドの様相を帯びる。半面、データとそうした連続利下げに整合性はない。だからFRBが、金融市場が利下げを99%織り込んでいたから動いたのだとの勘ぐりが入りやすい。FOMC声明からは、将来の利下げを示唆する「適切に行動する」との文言が削除された。それでも市場にばかり目を向けていると、パウエル氏は政策運営の主導権を取り戻すのが難しくなるのではないか。

●背景となるニュース

 10月30日、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が金融市場の動揺を防ぐために実施する利下げ、つまり「パウエル・プット」は、むしろ「パウエル・パント」と改称するべきだろう。写真はニューヨーク証券取引所のモニターに映るパウエル議長の会見の様子。10月30日、ニューヨーク市で撮影(2019年 ロイター/Brendan McDermid)
*米連邦準備理事会(FRB)は30日に終わった連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の誘導目標を1.50―1.75%に引き下げることを決めた。7月以降3会合連続の利下げ。一方、声明からは景気拡大を維持するために「適切に行動する」との文言は削除され、当面の利下げ休止を示唆した。

*米商務省経済分析局が30日発表した第3・四半期国内総生産(GDP)速報値は、年率1.9%増で、主に在庫復元や消費、政府支出が寄与した。企業投資は2期連続で減少した。第1・四半期と第2・四半期のGDPはそれぞれ3.1%増と2%増だった。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/breakingviews-fed-idJPKBN1XA02U

 

黒田日銀総裁、必要あればマイナス金利の深堀りは可能
伊藤純夫
2019年10月31日 15:58 JST 更新日時 2019年10月31日 16:42 JST
緩和方向を意識した日銀のスタンスを明確にしたー指針修正
必要なら副作用対策も検討、個人の預金金利マイナスにはならない
黒田日銀総裁
黒田日銀総裁 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
日本銀行の黒田東彦総裁は31日、金融政策決定会合後に会見し、短期の政策金利について「マイナス0.1%でこれ以上深掘りできないことはない」と述べ、必要あればマイナス金利の深堀りは可能との認識を示した。

  日銀は同日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的緩和の枠組みによる政策運営方針の維持を賛成多数で決定。一方、政策金利のフォワードガイダンス(指針)について「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」とし、必要と判断した場合には追加緩和を辞さない姿勢を一段と鮮明にした。

  黒田総裁は、政策金利のフォワードガイダンス修正に関しては、「緩和方向を意識した日銀のスタンスを明確にした」と述べ、緩和スタンスが後退したということではないと説明した。

  さらに、追加緩和手段は金利引き下げなどさまざまなオプションがあり、政策金利に限られているわけではないと説明。金融政策はデータディペンデントであり、副作用などの政策コストがあるから追加緩和できないとは考えていないと指摘した。また、必要なら副作用対策も検討していくと付け加えた。個人の預金金利がマイナスになることはないとも述べた。

10月の日銀会合に関する記事はこちらをご覧ください

(発言内容を追加して更新しました)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-31/Q082RFDWRGG201


 


日銀、フォワードガイダンスに利下げ可能性明示−現行政策維持
伊藤純夫、藤岡徹
2019年10月31日 12:42 JST 更新日時 2019年10月31日 14:38 JST
長短金利は現行水準下回る推移も想定、物価モメンタムに注意必要
19年度から21年度までの成長率・物価見通し下方修正−展望リポート

日本銀行は31日の金融政策決定会合で、現行の政策運営方針の維持を賛成多数で決めた。物価目標へのモメンタムが損なわれる恐れに引き続き注意が必要な情勢として、政策金利のフォワードガイダンス(指針)を修正し、将来の利下げの可能性を明示した。

  声明文で示した新たなガイダンスは時期のめどを削除し、注意が必要な間は「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」とした。片岡剛士審議委員が「物価目標と具体的に関連付けた強力なものに修正することが適当」として反対した。前回会合までは、「当分の間、少なくとも2020年春ごろまで、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定している」だった。

  金融政策運営は、現行マイナス0.1%の短期政策金利と「ゼロ%程度」の長期金利目標を維持し、指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J−REIT)の買い入れ方針も据え置いた。ブルームバーグのエコノミスト調査では、6割が金融政策の現状維持を決めると予想。3割がマイナス金利の深掘りを見込んでいた。


  第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは、追加緩和・政策調整がなく「やや肩透かし」だったが、円の対ドル相場の安定を考慮すると、驚くことではないと指摘。ガイダンス変更については、「日本以外の国は緩和局面に入っており、日本だけ何もしないと市場に見透かされる」とし、円高リスクを回避するため、将来の利下げの可能性をにおわせたのだろうと分析した。

経済・物価見通しを下方修正  
  声明文と同時に公表した新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、実質経済成長率と消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)の見通し(政策委員の大勢見通し)を、いずれも2019年度から21年度まで全て下方修正した。こうした経済・物価見通しは、引き続き「下振れリスクの方が大きい」としている。

実質GDP 消費者物価指数(除く生鮮食品)
2019年度 0.6%(0.7%) 0.7%(1.0%)
2020年度 0.7%(0.9%) 1.1%(1.3%)
2021年度 1.0%(1.1%) 1.5%(1.6%)
(注)対前年度比、政策委員の見通しの中央値、かっこ内は7月時点の見通し

  日銀は今回会合で、前回会合で約束した経済・物価動向の再点検を行った。物価のモメンタムを構成する重要な要素である需給ギャップについて「いったんプラス幅を縮小する」ものの、「景気の拡大基調が続く下で、ならしてみれば現状程度のプラスを維持する」と分析した。

  もっとも、海外経済の下振れリスクが顕在化した場合には、「需給ギャップなどの経路を通じて、物価にも相応の影響が及ぶ可能性がある点には留意しなければならない」と注意喚起した。

  午後3時半に黒田東彦総裁が定例記者会見を行う。決定会合の「主な意見」は11月11日、「議事要旨」は12月24日にそれぞれ公表される。

長短金利操作(賛成7反対2)
資産買い入れ方針(全員一致)
短期金利:日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%適用
長期金利:10年物金利がゼロ%程度で推移するよう国債買い入れ。金利は経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動し得る
片岡剛士、原田泰両審議委員が反対
ETFとJ?REIT:保有残高がそれぞれ年間約6兆円、約900億円相当で増加するよう購入。市場の状況に応じて上下に変動し得る
(詳細やコメントを追加して更新しました)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-31/Q062ZUDWLU6C01

 

 

経済・物価情勢の展望(2019 年10 月)
【基本的見解】 1
<概要>

1 各政策委員の見通しを踏まえた経済・物価情勢の展望や金融政策運営の考え方について、10 月30 日、31 日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定されたものである。

? 日本経済の先行きを展望すると、当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需要への波及は限定的となり、2021 年度までの見通し期間を通じて、景気の拡大基調が続くとみられる。輸出は、当面、弱めの動きが続くものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくもとで、基調としては緩やかに増加していくと考えられる。国内需要も、消費税率引き上げなどの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、増加基調をたどると見込まれる。

? 先行きの物価を展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、原油価格の下落の影響などを受けつつも、見通し期間を通じてマクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。

? 従来の見通しと比べると、成長率については、海外経済の成長ペースの持ち直し時期の遅れから、幾分下振れている。物価については、原油価格の下落などを背景に、見通し期間の前半を中心に下振れている。

? リスクバランスをみると、経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、経済の下振れリスクに加えて、中長期的な予想物価上昇率の動向の不確実性などから、下振れリスクの方が大きい。2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要がある。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1910a.pdf


 

ビジネス2019年10月31日 / 13:24 / 3時間前更新
日銀がフォワードガイダンス修正、政策金利引き下げの可能性を明記
Reuters Staff
2 分で読む

[東京 31日 ロイター] - 日銀は30─31日に開いた金融政策決定会合で、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる恐れについて、引き続き注意が必要な情勢にあるとして、政策金利に関するフォワードガイダンスの修正を決定した。

これまでの「当分の間、少なくとも2020年春頃まで、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」を「物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定」に変更。「現在の長短金利の水準を下回る」という文言を新たに追加することで、政策金利を引き下げる可能性があることを明記した。

これに対して、片岡剛士委員は「政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けた強力なものに修正することが適当」として反対した。

<物価モメンタム評価>

日銀は新たなフォワードガイダンスを導入したものの、現時点では物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れは「一段と高まる状況ではない」と評価している。

モメンタムを評価する上で重要な要素となるマクロ的な需給ギャップについては「景気の拡大基調が続くもとで、ならしてみれば現状程度のプラスを維持する」との見通しを示したほか、もうひとつの重要な要素である中長期的な予想物価上昇率も「先行き、マクロ的な需給ギャップがプラスを維持していくもとで、上昇傾向をたどる」との見方を示している。

ただ「海外経済の下振れリスクが高まりつつあるとみられるもとで、成長ペースの持ち直し時期がさらに遅れたり、一段と減速するなど、下振れリスクが顕在化した場合には、マクロ的な需給ギャップなどの経路を通じて、物価にも相応の影響が及ぶ可能性がある」と警戒感も示した。

この評価については、片岡委員が「物価安定の目標に向けたモメンタムはすでに損なわれている」として反対を表明した。

<マイナス金利は維持>

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)と資産買い入れ方針は維持した。短期金利は日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用。長期金利は10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買い入れを実施する。

これについて、原田泰委員と片岡委員が反対を表明。原田委員は「長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎる」と主張した一方、片岡委員は「短期政策金利を引き下げることで金融緩和を強化することが望ましい」として反対した。

日銀は声明文で「先行き、物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく、追加的な金融緩和措置を講じる」とあらためて強調した。
https://jp.reuters.com/article/boj-forward-guidance-idJPKBN1XA0GN

 


 
脆い世界経済、火遊びする政策立案者せめて「ばかなこと」はするな
――マーティン・ウルフ
2019.10.23(水)
Financial Times
世界情勢?政治?経済
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年10月16日号)


いまやイタリアですら30年間の借金を金利2%で借りられる(写真はベネチア)
ギャラリーページへ
「Don’t do stupid shit(クソみたいなことはしない)」

 この表現は、最後の単語が「stuff(もの、こと)」という穏当なものに変えられたうえで、「ばかげたことはするな」という意味の「オバマ・ドクトリン」として知られるようになった。

 前任の大統領が進めた無益なイラク戦争からバラク・オバマ氏が学んだ教訓を反映した言葉だった。

 多くの人はこのドクトリンを敗北主義的だと受け止めた。今日、筆者にはその良さが分かる。

 あまたあるこの世の困難に対して理知的な行動を取ることができれば大変素晴らしいだろうが、それでも今は、このオバマ・ドクトリンを適用することが一つの救いになる。

 このことが特によく当てはまるのが世界経済だ。

 国際通貨基金(IMF)の専務理事に新たに就任したクリスタリナ・ゲオルギエバ氏が、米ワシントンでの年次総会に先立つ会見で述べたように、「2019年は世界全体の90%近くで経済成長の鈍化が予想される。グローバル経済は現在、同時進行の減速過程にある」。

 米ブルッキングス研究所と本紙フィナンシャル・タイムズが行った合同調査はさらに悲観的で、現状を「景気の同時停滞」と形容している。

 産業と貿易の分野で特に明確になっているこの減速の主因は何なのか。その答えの大きな部分は、不確実性の高まりに求められるようだ。

 ブルッキングス研究所の執筆陣によれば、減…
 ブルッキングス研究所の執筆陣によれば、減速は「なかなか収まらない貿易摩擦、金融政策の景気刺激の効果が限定的であることへの懸念、政治の不安定性、地政学リスク」のせいだという。

 本紙ブログに寄稿しているギャビン・デービス氏は、こうした不確実性が「定着した」と指摘している。

 IMFは最新の「世界経済見通し(WEO)」で、今年の世界経済の成長率がわずか3.0%にとどまり、2018年実績の3.6%を下回ると予想している。

 高所得国全体の成長率は1.7%で、これも昨年の2.3%を下回るという。新興国全体の成長率は3.9%で、やはり昨年の4.5%より低下すると見込んでいる。

 さらに、今年の世界貿易量の伸び率はわずか1.1%にとどまり、昨年の3.6%よりも小さくなる。貿易量の伸びは世界経済の成長率を大幅に下回り、少なくとも貿易の面では脱グローバル化の前触れとなっている。

 決定的に重要なのは、リスクがすべて下振れリスクであることだ。

 米国とその主要な貿易相手国との貿易摩擦は、さらに激しくなるかもしれない。

 もしそうなれば、統合されたサプライチェーン(供給網)はひどく混乱する恐れがある。ハイテク製品の場合は特にそうだ。

 また英国の欧州連合(EU)離脱、いわゆるブレグジットも大混乱をもたらすかもしれない。

 地政学リスクは特に中東に多いが、アジアに…
 地政学リスクは特に中東に多いが、アジアにもある。中でも、米国と中国の関係が悪化している。

 非金融法人企業による多額の債務などがもたらす、金融面の脆弱性も深刻だ。サイバー攻撃や大規模なテロの脅威もある。気候変動への対処も遅々として進んでいない。

 気のめいる話だが、世界経済を脅かしていることの大半は「ばかげたこと」のせいだ。

 ドナルド・トランプ大統領の貿易政策は、二国間の貿易収支の均衡という愚かな目的のために第2次世界大戦後の通商システムを破壊しており、そうすることで多大な不確実性を生み出している。

 ブレグジットもばかげている。英国の近隣諸国や貿易相手国との有益な協力関係を破壊してしまうからだ。

 にわかに激しくなった日本と韓国の摩擦もばかげている。中国の存在感がかつてないほど大きくなっているあの地域で、どちらの国も弱体化するからだ。

 我々の世界は火遊びをしている。さらに悪いことには、引火しやすい建物の中で火遊びに興じている。

 ローレンス・サマーズ元米財務長官が語っているように、危険なのはグローバル経済の減速ではなく、むしろそれにしっかり対処することの難しさだ。

 その文脈で見るなら、米連邦準備理事会(FRB)が先日行った金融政策の転換(利下げ)とそれに伴う金利予想の低下は、特に示唆に富んでいる。

 米国でさえ、FRBが今回の景気サイクル内…
 米国でさえ、FRBが今回の景気サイクル内に短期金利を2.5%より高くすることができず、その前に利下げを余儀なくされた。

 ほかの高所得国では、景気減速に対する従来型の金融政策を行える余地は米国以上に限られている。

 重要なことに、この状況からは総需要の構造的な不足――これについては、一部の識者が2007〜08年の世界金融危機以前から取り上げて論じている――が今日でもあまねく存在していることが読み取れる。

 そしてこの状況ゆえに、前述の「ナショナリスト−ポピュリスト−保護貿易主義者」というばかげたことのみならず、同じくらい破壊的な「世俗信仰としての緊縮政策」というばかげたことを私たちは認識せざるを得ない。

 この信仰は、積極的な金融政策に対する恐怖感だけでなく(この恐怖感については、ジャン・クロード・トリシェ前欧州中央銀行=ECB=総裁が正しくはねつけている)、それに代わる政策――すなわち財政政策――の受け入れ拒否の姿勢に垣間見える。

 資金の貸し手が利息を「払う」覚悟でいるにもかかわらず、人々は、政府がお金を借りるのを怖がっているのだ。

 価格が重要であることは経済学の基礎だ。

 驚いたことに、今日では規模の大きな高所得国の上位6カ国が――今では、あのイタリアまで含めて――期間30年の借り入れを2%近くかそれ以下の固定金利で行うことができる。

 中央銀行がインフレ目標を達成すると仮定するなら、物価上昇率を差し引いた実質ベースでは0%かマイナス金利になる計算だ。

 そんな条件でも多額の借り入れを管理するこ…
 そんな条件でも多額の借り入れを管理することは不可能だと考えるためには、経済成長の見通しについて相当悲観的にならねばならない。

 借り入れが高度な人材や無形資産、有形資産を生み出すために使われているのであれば、特にそうだ。それに即して言うなら、財政赤字の削減に執着するのは本当にばかげたことだ。

 もし実質金利が再び上昇したら、それは経済成長の機会が改善してきたと思われていることの反映だろうし、政府支出の抑制も正当化(および促進)される。

 一方では、過去の借り入れのコストは低位で固定される。さらには、経済学者のオリビエ・ブランシャール氏が指摘したように、安全資産の利率は経済成長率を下回るのが普通だ。

 今日の状況は、この現実の極端なバージョンでしかない。

 今は壊れやすい時代である。これは、ポピュリスト・ナショナリズムの波が高所得国に押し寄せていることの反映でもあるが、正統派の不毛さの反映でもある。

 緩やかな景気減速と、私たちが愚かであるがゆえに向き合おうとしない急激な景気減速とは、全く別物だ。

 IMFのゲオルギエバ氏が言うように、私たちには「国際協調を改めて約束して行動すること」が求められている。

 これは米国のブレトンウッズ委員会が先日刊行した論文集のテーマでもある。

 今日においては、これは野心的すぎる目標かもしれない。しかし、「ばかげたこと」を止めるぐらいのことは、我々にもできるはずだ。

By Martin Wolf

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米国の後退はトランプ大統領以降も続く
共産党支配の70周年を記念する式典での中国の軍事力の披露は、はっとさせられる瞬間だった。新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含む高度な兵器のラインアップは、強国を目指す中国の野望について多くを物語っていた。だが、戦車が大きな音を立てて天安門広場を進むなか、欧州はよそを向いていた。目下、ドナルド・トランプ米大統領の命運を推測することが唯一の関心事なのだ。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58012
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/527.html

[経世済民133] 日本株の投資妙味高まるか、企業の配当が記録的水準に拡大 S&Pが最高値更新、FOMC決定受け 米国株、利下げ休止示唆でも買い意欲衰えず トランプ氏で外したストラテジスト−ウォーレン氏も「逆張り指標」か
日本株の投資妙味高まるか、企業の配当が記録的水準に拡大
−野村証
Min Jeong Lee
2019年10月31日 14:37 JST
• 東証1部上場企業の配当は8月時点で14.5兆円、12年末から2倍増
• S&P500種は12年末から2倍余りに上昇、TOPIX上昇率は90%
日本企業の配当支払いはかつてないほどの規模に膨らんでおり、それがより多くの投資家を呼び込むことにつながる可能性があると野村証券はみている。
  野村のデータによれば、東証1部上場企業の配当総額は8月時点で推定14兆5000億円に達した。第2次安倍晋三内閣が発足した2012年12月当時から2倍余りに増えたことになる。
  ストラクチャード・プロダクト部クオンツ・インデックス・ストラテジーヘッドの菊川匡氏は、配当が「どんどん増えている」として、投資家にとって株式市場でリスクを取る正当な理由があると語る。
Growing Returns
Dividend payouts for Tokyo shares climb to a record high

Source: Nomura
Note: Data for stocks on first section for Tokyo Stock Exchange
  配当面で、日本株は米国株より魅力的かもしれないと菊川氏は指摘。米企業の配当支払いが不規則な傾向にある一方、日本企業は一定した配当ペースを選好していると説明した。
  にもかかわらず、米国株のパフォーマンスは日本株を上回っている。S&P500種株価指数は12年12月末以降2倍余りに上昇。同じ期間のTOPIX上昇率は90%程度となっている。
原題:Japan Stocks’ Appeal: a Growing $133 Billion Dividend Pile(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-31/Q067HRDWLU6I01?srnd=cojp-v2

日本株は小幅高、日銀緩和姿勢を確認−通信など内需高く銀行安い
牧綾香
2019年10月31日 7:57 JST 更新日時 2019年10月31日 15:53 JST
• 日銀は政策金利のフォワードガイダンス修正、利下げの可能性明示
• 米FOMCは0.25ポイント利下げ、米10年債利回りは1.77%に低下
31日の東京株式相場は小幅高。米連邦公開市場委員会(FOMC)の追加利下げに加え、日本銀行が政策金利のフォワードガイダンス(指針)を緩和の方向に修正したとの見方が広がり景気の先行きが楽観視された。情報・通信、不動産などの内需関連、化学や鉄鋼といった素材関連が高い。銀行など金融株は下落。
• TOPIXの終値は前日比1.11ポイント(0.1%)高の1667.01
• 日経平均株価は同83円92銭(0.4%)高の2万2927円04銭
〈きょうのポイント〉
• 日銀は政策金利を-0.1%に据え置き、フォワードガイダンスから時期を削除
o 現在の長短金利水準、または、それを下回る水準での推移想定
• 米FOMCが追加利下げ、3会合連続
o 今後少なくとも1会合は政策を据え置く可能性
• 米10年債利回りは7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し1.77%

東証入り口
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは日銀会合について、「フォワードガイダンスで時期に関する記述がなくなり、緩和へのニュアンスが強まった。全く変更がないことによる失望が回避された」と話した。「米中通商摩擦などのリスクに対し、日銀が早い段階で景気への影響を抑制してくれると期待された」と言う。
日銀会合についてはこちらをご覧ください
  米利下げを受けて日本株は小高く始まった。野村証券投資情報部の若生寿一エクイティ・マーケット・ストラテジストは、米金融当局が「次回会合に向けて様子見の姿勢を見せたことは、米国がある程度ファンダメンタルズに自信を持っていることを示す」と指摘した。
  午前の取引では、米長期金利の低下や日銀のマイナス金利深堀りへの警戒で銀行株が大きく下げ、TOPIXはマイナス圏で推移する場面が多かった。
  午後に入り日銀会合の結果が公表されると、金利深堀りがなかったことで収益不安が後退した銀行株が下げ幅を縮小、鉄鋼や非鉄金属といったバリュー株も買われた。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-30/Q07HDJT1UM0Y01


 
ビジネス2019年10月31日 / 06:44 / 10時間前更新
S&Pが最高値更新、FOMC決定受け
Reuters Staff
5 分で読む

[ニューヨーク 30日 ロイター] - 米国株式市場は上昇し、S&P総合500種は終値で最高値を更新した。米連邦準備理事会(FRB)は29─30日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で25ベーシスポイント(bp)の利下げを決定した。


FRBフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.50─1.75%に設定。今回のFOMC声明から、景気拡大を維持するために「適切に行動する」との文言を削除し、利下げを今後休止する可能性があることを示唆した。

パウエルFRB議長は記者会見で「金融政策は良い状況にある」と指摘。経済見通しに大きな変更がなければ政策金利が継続的に据え置かれる可能性が高いことを示唆し、終盤の株高につながった。

チェリー・レーン・インベストメンツのパートナー、リック・メックラー氏は、FRBが引き続きデータ次第という姿勢を示したとし、「柔軟性は市場が望むものだ」と述べた。

FOMC後、金利に敏感な銀行セクター.SPXBKは下げ幅を縮小したが、0.69%安。公益株.SPLRCUは0.86%高。一方、エネルギー株.SPNYは2.12%下落した。

個別銘柄では、米ゼネラル・エレクトリック(GE)(GE.N)が11.47%高。30日発表した第3・四半期決算で調整後利益がアナリスト予想を上回ったほか、通年のキャッシュフロー見通しも上方修正した。

ファストフードチェーンを展開する米ヤム・ブランズ(YUM.N)は6.22%安。第3・四半期決算は、調整後利益が1株当たり0.80ドルで、リフィニティブがまとめた予想の0.94ドルを下回った。

経済指標では、米商務省が発表した第3・四半期の実質国内総生産(GDP)の速報値(季節調整済み)が年率換算で前期比1.9%増と、市場予想の1.6%増を上回った。

企業向け給与計算サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)とムーディーズ・アナリティクスが発表した10月の全米雇用報告は、民間部門雇用者数が12万5000人増と、ロイターがまとめたエコノミスト予想の12万人増をやや上回った。

リフィニティブによると、すでに決算を発表したS&P500構成銘柄の278社の約74.1%が利益予想を上回った。ただ、第4・四半期の利益成長見通しは下方修正されている。

米医薬品・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)(JNJ.N)は2.88%上昇。米食品医薬品局(FDA)が先に検査し、微量のアスベストが検出されていたベビーパウダーのボトルについて、第三者の研究所2カ所が新たに15の検査を実施したところ、アスベストは検出されなかったと明らかにした。

「バービー人形」を製造する米玩具メーカー大手マテル(MAT.O)は13.78%高。第3・四半期の売上高が予想外に増加した。

ニューヨーク証券取引所では値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を1.15対1の比率で上回った。ナスダックでは1.01対1で値下がり銘柄数が多かった。

終値 前日比 % 始値 高値 安値 コード

ダウ工業株30種 27186.69 +115.27 +0.43 27110.7 27204. 26999. .DJI

1 36 64

前営業日終値 27071.42

ナスダック総合 8303.98 +27.12 +0.33 8284.28 8315.5 8241.7 .IXIC

1 0

前営業日終値 8276.85

S&P総合500種 3046.77 +9.88 +0.33 3039.74 3050.1 3025.9 .SPX

0 6

前営業日終値 3036.89

ダウ輸送株20種 10639.20 -190.57 -1.76 .DJT

ダウ公共株15種 860.10 +5.07 +0.59 .DJU

フィラデルフィア半導体 1661.46 -1.00 -0.06 .SOX

VIX指数 12.33 -0.87 -6.59 .VIX

S&P一般消費財 954.41 +5.72 +0.60 .SPLRCD

S&P素材 368.78 -0.05 -0.01 .SPLRCM

S&P工業 668.93 +2.22 +0.33 .SPLRCI

S&P主要消費財 628.60 +2.91 +0.47 .SPLRCS

S&P金融 478.62 -0.69 -0.14 .SPSY

S&P不動産 244.09 +1.50 +0.62 .SPLRCR

S&Pエネルギー 428.68 -9.29 -2.12 .SPNY

S&Pヘルスケア 1097.02 +8.47 +0.78 .SPXHC

S&P通信サービス 171.36 +0.33 +0.19 .SPLRCL

S&P情報技術 1468.97 +8.89 +0.61 .SPLRCT

S&P公益事業 324.36 +2.78 +0.87 .SPLRCU

NYSE出来高 8.79億株 .AD.N

シカゴ日経先物12月限 ドル建て 22940 + 100 大阪比 <0#NK:>

シカゴ日経先物12月限 円建て 22930 + 90 大阪比 <0#NIY:>
https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPKBN1X92MW


 
ビジネス2019年10月31日 / 12:49 / 5時間前更新
米国株、利下げ休止示唆でも買い意欲衰えず
Reuters Staff
2 分で読む

[ニューヨーク 30日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は30日、利下げの休止を示唆したが、同日の米株式市場ではS&P総合500種が最高値を更新。投資家の買い意欲は衰えていないようだ。

FRBは予想通り今年3度目の利下げを決める一方、連邦公開市場委員会(FOMC)声明文から「(景気拡大を維持するために)適切に行動する」との文言を削除。この文言は将来の利下げを示すものと解釈されていた。

ただチェリー・レーン・インベストメンツのパートナー、リック・メックラー氏は「(声明文は)今後も柔軟に対応するというFRBの意思を示した」と分析。「FRBは引き続きデータ次第だとの見解を示した。柔軟性は市場が望むものだ」とコメントした。

トールバッケン・キャピタル・アドバイザーズ(ニューヨーク)の最高経営責任者(CEO)、マイケル・パーベス氏も「文言と政策の変更は予想されていた」とした上で「債券市場よりも株式や信用市場の見方が正しかったことを裏付けている。債券市場はこれまでかなり悲観的な見方を示してきた」と述べた。

債券市場では、5月に3カ月物国債の利回りが10年物国債の利回りを上回る逆イールドが発生。景気後退の予兆として懸念されたが、今月11日には逆イールドが解消した。ただ、米経済への懸念が完全に払拭されたわけではない。

それでも30日の株式市場では、FRBの景気認識を好感する声が相次いだ。

FRBのパウエル議長は、世界的な貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱問題について、前回のFOMC後に「良い方向」に向かっていると発言。米経済は引き続き底堅く、現時点で大規模な金融不均衡や資産バブルは見られないとの認識も示した。

この日発表の第3・四半期の実質国内総生産(GDP)速報値が市場予想を上回ったことも、投資家の安心感を誘う材料となった。設備投資が減った一方で、個人消費が底堅かったことが明らかになり、景気後退に対する懸念が緩和した。

米中の対立が最近緩和していることも、投資家のリスク選好度を支える要因となっている。

もっとも、投資家の間では、10年に及ぶ強気相場に陰りが出てくればFRBが助け舟を出してくれるという期待も根強いようだ。

クレセット・ウエルス・アドバイザーズのジャック・アブリン最高投資責任者は「市場が景気減速を見越して失速した場合、FRBは利下げの継続で対応するだろうか。私はおそらく利下げを継続すると感じている」と語った。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-stocks-idJPKBN1XA0E4


 

トランプ氏で外したストラテジスト−ウォーレン氏も「逆張り指標」か S&P500種が約25%下落
Sarah Ponczek、Vildana Hajric
2019年10月31日 14:59 JST
• ウォーレン氏当選ならS&P500種が約25%下落するとジョーンズ氏
• 「ストラテジストの実績は世論調査会社よりさらに悪い」との指摘も
2020年の米大統領選でエリザベス・ウォーレン上院議員(民主、マサチューセッツ州)が当選した場合、どんな大変動が株式市場を襲うかについて、ウォール街の良心とも呼ぶべき人々が先を争って予想している。だが振り返って見れば、最近の分析の実績はすこぶる悪い。
  資産家のファンドマネジャー、ポール・チューダー・ジョーンズ氏は、S&P500種株価指数が約25%下落すると予測し、ディスカバリー・キャピタル・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ロブ・シトロン氏は「市場にとって単独で最大のリスク」だと主張。S&P500種指数が最大20%下げると思うと同氏は語った。
  ミラー・タバクの株式ストラテジスト、マット・メイリー氏は電話取材に対し、「大統領選の影響に関するストラテジストの予測実績は世論調査会社よりさらに悪い。最良の逆張り指標の一つといえるだろう」と指摘した。
  誰もがトランプ大統領の下で株価が急上昇したことを知っているが、トランプ氏が当選する前にそれが起きると皆が分かっていたわけではない。
  ストラテジストやエコノミストらは、2016年11月の大統領選に向け、減税など成長を促進する政策ではなく、トランプ氏の予測不能な側面や保護主義的な考え方にむしろ注目し、気まぐれなトランプ政権下で株式相場が調整局面に入ると予想する向きが多かった。

原題:Obama Will Kill Stock Market. No, Trump Will. No, Warren Will(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-31/Q07XFTT1UM1401?srnd=cojp-v2


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/528.html

[経世済民133] 「水道崩壊」なにごとにも寿命がある インフラ劣化の問題は待ったなし「違法建築だから退去せよ」中国で私有財産権の危機 中国人民銀が10月のTMLF見送り、インフレ加速が緩和方針に影響か 依然高値圏にあるリート、今後も期待 
「水道崩壊」なにごとにも寿命がある インフラ劣化の問題は待ったなし
2019.10.31(木)
新潮社フォーサイト
IT・デジタル?インフラ

日本で水道工事現場を見学する筆者の加藤氏(筆者提供)
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(文:加藤 崇)

 あなたがマンションを保有して、そこに住んでいるとする。数十年経ったある日、ビル建築のプロと称する人間から、「あなたのマンションは老朽化し、倒壊の危険性がある。思い切って取り壊し、新しいマンションを建てましょう」と伝えられる可能性は高い。ところが、一軒家なら想像しやすいが、マンションというのは、ロビーとエレベーター、自分の部屋以外、いったいどのようにできているのか見たことがある人は、実は少ない。日々行き来する場所にしか想像力が働かないのだ。

 多くの場合、新しく建てて住むことが多く、マンションが老朽化して倒壊する危険性のある代物に変わるなどと、僕たちの脳はとても想像できないのだ。ちなみに、日本のマンションの多くは高度経済成長期に建てられたもので、寿命が約50年ほどだ。

 いったいどういうことが起こるのだろう。

「マンションを買うときに、モデルルームで修繕積立金についての説明を受けて、真面目にそれを支払ってきた」と言う人がいるかもしれない。けれども、毎月毎年修繕を行っていれば未来永劫使用できるのだろうか。外壁やエレベーターの工事はできても、躯体の鉄筋コンクリートは必ず風化し、劣化していく。ではいつ建て替えるのか。その時、自分の区分所有権はどうなるのか。多くの人たちは、実はこうして、不安定な住まいに生きている。

目で見えないものをどう診断するか
 マンションのみならず、老朽化したインフラは社会問題だと言われて久しい。2012年の「笹子トンネル事故」、最近では2018年の大阪府「水道配管破裂」が記憶にある。

 崩落したトンネルに車や人が下敷きにされ、交通が麻痺し、水道配管が破裂して道路に水が溢れ、人々の通行が止まっている――こうした映像を見たとしても、その情報があまりにも断片的であるが故に、映像で目にする被害と、その本質的な原因との間にある「因果関係」を推定することはなかなかできない。結果として、多くの場合に「(この事故に関しては)何か特殊な事情があったに違いない」「これは特別なケースなんだ」と脳は都合よく解釈してしまう。

 しかし、だ。日々進行するインフラの劣化という現象、そして、その進行具合(スピード)を把握できなかったという背景が、必ずそこにはある。

特殊事情による発生割合は少ない

 特殊事情によるトンネル崩落や漏水事故の発生割合は、実は少ない。それ以上に、インフラの劣化による事故が起こる可能性の方こそ、日々高まっている。水道、ガス、電力、交通、通信、橋梁やトンネルといったインフラというのは、あって当然、年がら年中公共工事にお金が注ぎ込まれている印象があり、一口に「老朽化」と言われてもピンと来ないが、インフラ劣化の問題は、待ったなしの状況なのだ。

 人命にも関わるインフラ事故を未然に防止するためには、そのインフラがどのように劣化していくのか(劣化のメカニズム)、現在の劣化がどのくらいの程度か(劣化の状況把握・現状把握)、あとどれくらいの年月を越すことができるのか(劣化スピードの予想と、そこから逆算される余寿命の推定)について具体化することが必要だ。

 言葉では簡単だが、これが難しい。多くのインフラは、表面はすぐに確認できても、中がどうなっているかをこの目で見ることはかなわないからだ。


 たとえば橋梁やトンネルは、コンクリートの中で何が起こっているかを見ることはできない。音感センサーを使って、中身の状態を推定するのが精一杯なのが現状だ。それが地下に埋設されているインフラともなれば、状況を知る手立ては絶望的に少なくなる。

水道配管の状況を監視するソフトウェア
 道路の下に埋まっている上水道配管、ガスの配管などは、いったいどうなっているのだろう、これが見えるようになったら面白い――。

 3年前の僕はそう考えた。アメリカはカリフォルニア州レッドウッドシティ市にある僕の会社(「Fracta」=フラクタ)では、コンピューターの頭脳を使って、地下に埋設されている上水道配管が、現在どのくらい劣化しているのか、それが5年以内に破損する(つまり漏水事故が起こる)確率はどれくらいあるのかを推定するソフトウェアを開発した。

 今では、全米50州のうち21州、45社の水道会社がこれを使ってくれており、少しずつ業界のリーダーとしての地位を固めている。

 上水道配管の状況監視に関して、これまでの水道会社のやり方はどのようなものだったのだろうか。地下に埋まっているものだから、目視できないということで、アメリカでも日本でも、配管の平均寿命を使って更新時期を推定してきた歴史がある。

 ところが、これが正確ではない。

 全米水道協会では、「ねずみ鋳鉄配管」の平均寿命は100年と謳っている。ねずみ鋳鉄配管とは、材料としてねずみ鋳鉄を使用した管のことで、主に水道本管に用いられてきたが、強度の問題で、ダクタイル鋳鉄管にその存在を取って代わられた配管のことだ。アメリカではこの配管がまだ多数地中に埋まっており、これが漏水の原因となっている。

 このねずみ鋳鉄配管、実際の寿命は60年から180年(ときには200年以上)と非常に分散が大きく、この分散を把握しない限りは、その水道配管の寿命を知ることはできない。これは人間の寿命にたとえると、分かりやすいだろう。人間の寿命は、遺伝的な要因のほか、その人の生活習慣や行動の特性によって、予測値が大きく異なる。

水道配管の寿命をこれまでより正確に推定
 日本人女性の平均寿命が87歳だという事実には一定の意味があるが、これは参考値にこそなれ、自分がちょうどピッタリ87歳で死ぬ確率は、実は思った以上に低いのだ。人間の細胞が劣化していくことはわかっていても、またそれがどのように劣化していくのかというミクロな劣化メカニズムが解き明かされていても、その「スピード」を合理的に推定できない限りは、人間の寿命を正しく言い当てることはできない。

 僕の会社は、現時点で人間の寿命を言い当てることはできない(まだ試していないので、将来できないとまでは言い切れない)が、道路の下に埋設されている水道配管の寿命を、これまでより正確に推定することには成功した。

 上水道配管の素材や形状、またその上水道配管が置かれた環境(土壌や天候などの様子)など1300に及ぶ要因を1つ1つコンピューターで解析し、それがどのように配管を劣化させていくのかというパターンをコンピューターに覚え込ませた。人工知能技術による「機械学習」の1つだ。

 モグラ叩きゲームにたとえると、盤面を上下左右4つの象限に区切ったとき、右上の象限、つまり全体の25%の面積からは、25%のモグラが出てくる。統計的には「無作為(ランダム)」と呼ばれる状況で、地面に埋まっている水道配管の寿命を言い当てようとするとき、水道会社の予測が、このくらい低い確率に落ち込むことも例外ではない。たとえば米国カリフォルニア州のサンフランシスコとサンノゼに挟まれたエリア(サンフランシスコ・ベイエリア)にある水道会社のうちの1社などは、実際のところこれに近い確率にとどまっている。

40兆円以上を節約できる可能性も
 一方、僕たちのソフトウェアを使って同じ現象(モグラの発生場所)を予測すると、左上の象限(25%の面積)から75%のモグラが出てくることがあり、その情報を水道会社に事前に伝えることができる。つまり、25%の配管セクションから、75%の漏水事故が発生しますよと予測できるのだ。驚くような数字かもしれないが、コンピューターと人間の予測能力には、それくらい違いがあり、またこの経済効果は想像以上だ。

水道産業には莫大なお金が
 細かい話は今後の連載で触れていきたいが、現実問題として、水道産業には莫大なお金が注ぎ込まれている。アメリカでは、向こう30年間で110兆円ほどの資金が、上水道配管の更新(交換)だけに使われるという(そうでなければ、年間24万件発生している漏水事故を止めることができないからだ)。しかし、何の病気もない70歳に対して不要な医療を提供することが正しくないように、更新が必要ない(つまりもっと長い期間使用することに耐えられる)配管を「今」交換する必要はさらさらない。

 この不必要な更新を先延ばしにしてあげること、たとえば敷設から既に100年経っていても、あと80年寿命がある配管については、きちんと80年使ってあげることで、およそ40%ほどの予算を削減できる。これがフラクタのソフトウェアの価値ということになる。110兆円の40%、つまり40兆円以上となれば、日本の(年間)国家予算の半分弱だ。それなら興味を持つ人もいるのではないか。

 フラクタでは2019年2月から、日本の水道インフラを助けるべく、活動を開始した。手始めに神奈川県営水道、神奈川県川崎市と一緒に、僕たちがアメリカで作った上水道配管劣化予測のアルゴリズムが日本でも適用可能かどうかに関する実証実験を開始した。

 水道普及率が98%を超え、世界一低い漏水量を実現する日本。高度経済成長期に敷設した古い水道配管を問題と捉え、地震などの自然災害にも対応できるよう、積極的に更新投資を行ってきた。ところが、長く続いた経済の停滞の影響を受けつつ、更新投資は年々減少の一途を辿り(管路の更新率は平成13年の1.54%から、平成27年には0.74%まで減少)、人口減少と高齢化、節水型の洗濯機やトイレの普及とともに、水道料金収入の総額も減少している(2001年には年間2.5兆円だったものが、2016年には2.3兆円に)。特に地方部では、人口の減少幅が都心部と比べて大きく、水道事業体は施設の更新、投資に使用できる予算が非常に少ないのが現状であり、これほど真面目に水道事業に取り組んできたように見える日本であっても、問題は山積していると言える。

 今後の連載※では、アメリカ、イギリスの状況と、日本を含め世界中でフラクタが行っている事業の概要に触れつつ、日本の水道事業、とりわけ上水道事業というものが現在どのような状況に置かれているのか(配管の状況全般、他国との違い、都会と地方の違い、民営と公営の違いなど)、そして今後どのような方向に進むべきなのかを、最新テクノロジーの利用可能性を踏まえながら紹介したいと思っている。

※以降の記事は、新潮社フォーサイトの連載として公開される予定です。


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加藤崇
早稲田大学理工学部(応用物理学科)卒業。元スタンフォード大学客員研究員。東京三菱銀行を経て、ヒト型ロボットベンチャー「SCHAFT」の共同創業者(兼取締役CFO)。2013年、同社を米国Google本社に売却し、世界の注目を集めた。2015年、人工知能により水道配管の更新投資を最適化するソフトウェア開発会社「Fracta」を米国シリコンバレーで創業し、CEOに就任。著書に『未来を切り拓くための5ステップ』(新潮社:2014年)、『無敵の仕事術』(文春新書:2016年)、『クレイジーで行こう!』(日経BP:2019年)がある。2019年2月には『日経ビジネス』「世界を動かす日本人50」に、2019年4月には、『Newsweek日本版』「世界で尊敬される日本人100」に選出された。カリフォルニア州メンローパーク在住。

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新潮社フォーサイト
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58086?page=4

 

「違法建築だから退去せよ」中国で私有財産権の危機
毛沢東の土地改革が繰り返されるのか?
2019.10.31(木)
福島 香織
中国

中国の習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)
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(福島 香織:ジャーナリスト)

 ローンを組んだり退職金をつぎ込んだりして購入した不動産が、ある日突然、違法建築なので撤去します、出ていきなさい、と通知されたらどうだろう? そんなことあり得ない、と不動産所有者の権利が比較的強い日本人なら思うが、これが今、北京でまさに起きている現実だ。

 北京郊外で起きた別荘所有者たちのデモ騒ぎは、よくよく考えてみると、中国経済の暗雲到来を示す不気味なシグナルではないか。

紙切れ1枚で「強制排除」
 まず米国のラジオ放送局、ラジオ・フリー・アジア(RFA)の報道をもとに事件の概要から説明したい。

 現場は北京市郊外の、北京市 昌平区 崔村鎮 香堂村だ。この村は1999年以来の再開発で約3800戸の別荘や四合院(北京の伝統建築様式の住宅)が建設され、2003年の分譲会で都市部の小金持ちらが購入していた。

 10月18日、この村の鎮政府(「鎮」は町に相当)周辺にこの地域の別荘所有者ら3000人が押し寄せ、抗議の声を上げていた。抗議参加者がその様子をスマートフォンで撮影しネットに挙げたので、この事実は広く知られるようになった。

「我々の所有している不動産が違法建築だというのはどういうわけだ?」
「役人が来て、突然、撤去すると言われ、3日以内に退去せよと言われた。しかも何の補償もないという! 俺たちに路頭に迷えというのか」
「この別荘地は区、郷、村、3つのレベルの政府が合意したプロジェクトで、書類には3者の印と国土当局の印が押してある。鎮政府の一方的通知で、この契約が翻せるのか!」

 群衆はこう主張し、やがて「香堂村を守れ!」「強制排除に抗議する!」と叫び出し、一時は出動した警察とにらみ合いになり、一触即発の状況になった。

習近平派の官僚政治家が指揮
 10月19日、鎮政府名義の、1つの通知がこの別荘所有者たちに送られた。その通知によると、
「当該村10カ区における建築面積3万平方あまりについて、北京市計画自然資源委員会は、北京市城郷計画条例』29条規定に違反した違法建築と認定した」
「これら建物の建設業者、所有者、管理人はこの通知を受けてから15日以内に必要書類をもって、本機関に出頭し権利主張を行い、調査を受けるべし」
「期日を過ぎて権利主張を行わなかった場合、『中国城郷計画条例』関連規定に従い、強制排除を行う」・・・。

 不動産所有者が必要書類を揃えて権利主張を行えば、審査の上、多少の補償はするようなそぶりを見せているが、実際に補償があるのかは不明。こんな紙切れ1枚で、納得できるわけがない。

 仮にこれら別荘が強制撤去されると、その損失額は1戸当たり少なくとも500万元前後、全部合わせた資産価値総額は数十億元と推計される。


北京市郊外の昌平区にある明の十三陵(資料写真、出所:Wikipedia)
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習近平派の官僚政治家が指揮
 RFAが後日、鎮政府弁公室に電話取材を試みている。「なぜ彼らが合法的に購入した不動産が違法建築になるのか?」との質問に、電話を取った官僚は「村民委員会に質問してくれ。私には答えられない。私も状況は分からない。これは専門の業務部門が担当している件なので」と答えるのみだった、とか。

 RFAの取材で明らかになったのは、この別荘地強制撤去計画は、習近平派の官僚政治家、蔡奇・北京市書記が自ら指揮していること。今回、強制撤去された土地は来年(2020年)1月1日の新土地管理法執行までに更地にされ、競売にかけられること。昌平区はテストケースであり、これが成功すれば、この手法は全国に広がるらしいこと、である。

 昌平区では少なくとも百善鎮、流村鎮、南口鎮、十三陵鎮などの別荘地が撤去対象になりそうだという。こうした政策によって不動産を没収される不動産所有者は少なくとも全国で数十万戸単位になるのではないか、という噂も広がっている。

新たに財政収入が見込める手段
新たに財政収入が見込める手段
 前述したように、昌平区の不動産所有者は主に都市部の小金持ちだ。彼らはみな不動産購入証明を持っており、昌平区政府機関の認可印も押されている。2003年の分譲会の記録によると、鎮の党委員会書記が自ら司会を行い、「別荘地開発が鎮の経済発展を促進し、小康城鎮(そこそこ豊かな郊外)の建設のためのさらなるステップとなり、環境を改善することになる」と強調していた。これら不動産販売価格の5%がインフラ建設費用、管理手続き費などの名目で鎮政府に納められていた。

 あらためて言うまでもなく、地方政府のこれまでの財政収入の大半が、農地の再開発から生まれてきた。農村の集団所有の土地を郷・鎮政府、あるいはそれ以上の上級政府が、そこに住んでいる農民を追い出し、強制収用する、あるいは低い補償金で収用し、デベロッパーに譲渡あるいは貸し出して再開発し、これを都市民に高く売りつけてきた。地下鉄など公共交通の整備とセットにして付加価値を上げることもあった。

 この過程で、日本の地上げ屋も真っ青なアコギな強制土地収用が行われることもあった。村民が出稼ぎに行ってしまい、人が住まなくなった農村宅地を再開発した、というケースもあるが、強制収用は農村の“群衆事件”(暴動)の原因の上位でもあった。

 ただし、現在は大都市・中都市周辺の農村宅地はだいたい再開発が進み、新たな農村宅地の強制収用は難しくなってきている。早い話が、地方政府としては、ちょうど新しい土地管理法(以下「新土地法」)が施行されるタイミングで、すでに再開発した別荘地などを没収し、強制撤去して再開発すれば、また新たに財政収入が見込める、ということなのだ。

別荘の強制撤去の嵐が吹き荒れるか?
 一旦、再開発され分譲された別荘地の強制撤去問題として思い出すのは、陝西省西安市郊外の秦嶺北麓別荘・強制収用事件だ。習近平の直接の指示で行われたこの別荘強制撤去事件は、「生態環境保護」と「地方政府の汚職摘発」という建前があり、また背後には、元陝西省書記で元政治局常務委員兼中央規律検査委員会書記の“趙楽際おろし”という習近平の党内権力闘争の側面もあった。

 秦嶺北麓は国家公園に指定される重要な生態保護地区で、2003年に陝西省はこの地域でいかなる組織、個人も一切、不動産開発をしてはならないとし、2008年には秦嶺環境保護条例を制定した。しかし実際は2003年以降、別荘開発が行われており、その背後には陝西省党委員会ぐるみの汚職があった。

 環境保護・生態保護に力を入れている習近平は2014年、この問題に初めて言及し、2019年1月までに違法建築別荘1194棟を洗い出して1185棟を撤去、9棟を没収し、4557ムー(約3万アール)相当の土地を国有地として回収。この問題に関わった陝西省長の趙永正は失脚し、大量の陝西省、西安市の官僚が処分された。そして今行われている四中全会で、ひょっとすると当時の陝西省書記であった趙楽際にまで累が及ぶか否か、というところまで来ている。

 趙楽際は共産党のキングメーカー、長老・宋平派閥に属しており、習近平の父、習仲勲と昵懇であったこともあって、第19回党大会では習近平の後押しで政治局常務委員入りし、王岐山の跡を継いで中央規律検査委書記についた。だが、宋平と習近平の関係が険悪になるにつれ、習近平の趙楽際に対する風当たりは強くなっていた。秦嶺北麓の別荘強制収用はそのこととも関係があると言われていた。

「エコは正義」の習近平
 この事件は陝西汚職と権力闘争の面が強調されて報じられてきたが、よくよく考えてみれば、別荘購入者たちはきちんと契約書を交わし、金を払い、合法的に別荘を所得していた。だが彼らの財産所有権は、習近平の掲げる“エコ(生態環境保護)は正義”という思想と“強権”の前に完全に吹っ飛んでしまっている。この別荘所有者の多くが党の高級官僚であったこともあり、庶民から見れば、ざまあ見ろ、という感じだろうが、同じ論法をあらゆる別荘地、再開発地に当てはめれば、こんな恐ろしいことはあるまい。

 この秦嶺別荘事件を踏まえて今年5月、国務院は全国違法別荘問題精査整理プロジェクトアクション電話会議を開き、この問題に関する国務院通知を行った。この通知が今回の平昌区の別荘没収通知につながっている。習近平の「生態文明思想」の指導のもと、全国で別荘の強制撤去の嵐が吹き荒れるかもしれない。

 問題はこうした別荘の持ち主が、必ずしも汚職官僚だけではない、ということだ。昌平区の別荘地などは、都市の中間層が所有者の主流ではないだろうか。つまり、「生態文明」を建前にすれば、一般庶民が虎の子を投じて取得した私有財産をいくらでも政府が奪えるという前例を昌平区の件は作ろうとしている、ということではないか?

 これは1946年から共産党が行った「農地改革」の建前のもとの地主からの土地・財産略奪のマイルドな再来、と見る向きもある。

結局、得をするのは地元共産党政府
 もう1つ注目すべきは、来年1月1日から施行される「新土地法」の意味合いだ。

 この法律が施行されると、農村が集団所有する農村宅地の使用権を自由に譲渡・売却できるようになるため、農民たちの土地の権利、私有財産権を強化するものと歓迎されていた。だが、少なからぬ農村政府、鎮政府はすでに農村宅地に住宅や別荘を建てて、都市民小金持ちに分譲してきた。

 現在、農村に多くみられる「別荘地」などの不動産は、農村の集団所有の土地の上に建てられ、不動産権は上物の「小産権房」と呼ばれる物件に限定される。これは土地使用権とセットで売り出される「大産権房」よりも値段が安く、都市中間層が購入しやすかった。

 現行の土地法では、農村宅地は農民に居住する権利があるだけで、その土地の使用権自体は譲渡できない。だが、大都市の住民は異常な不動産高のせいで郊外に住宅や別荘を欲している。一方、農村は貨幣経済の浸透のせいで、現金収入が欲しい。双方の希望を満たす形で、大都市周辺には、土地は農村の集団所有のまま、上物は都市民個人が購入するといういびつな不動産所有(小産権房)形態が急速に広がったのだ。

市場主義経済と決別か?
 昌平区崔村鎮のケースでは 20年前、村の党幹部がこうした小産権房を都市の小金持ちに売りつけ、鎮の財政収入源にした。この財政収入モデルは当時「社会主義新農村模範」などともてはやされたものだった。

 だが、来年1月1日からの新土地法が施行されると、土地の使用権そのものが他者に譲渡できるようになる。ならば、それを機に土地使用権と上物をセットにしてより高額に競売できるではないか。折しも習近平の「生態文明思想」を打ち出せば、ほとんどの農村・別荘地が違法建築とこじつけられる。農民の土地に関する権利を強化するとされる新土地法だが、結果的には中間層市民の私有財産権を踏みにじるために利用され、「結局、得をするのは地元共産党政府」という話ではないか。

市場主義経済と決別するシグナルか
 中国の土地・不動産問題は複雑だ。目下、都市部の不動産の高騰はバブルとみられ、そのバブルがそろそろ弾けるとの懸念が強まっている。

 同時に、そうした不動産が立っている土地は公有地である。不動産と土地の使用権がセットとなっている「大産権房」であっても、その土地使用権期限は開発開始から住宅地70年、商業用地40年といった期限がついている。土地使用権期限は購入時期や不動産が商業区か社区(住宅区)にあるかによってかなり差があり、浙江省温州市などの早期の再開発地域などではそろそろ使用権期限切れになる土地もある。期限切れが来た時の対応法は地域によってまちまちだ。更新料支払いによって使用権延長を認めるところもあるが、将来、法律一つで、いつでも国や機関、地方政府に土地使用権の返納を求められることもあり得るということが、今回の昌平区の件でうかがえる。

 中国の人口の半分近くは不動産など私有財産をほとんど所有していない農民だ。彼らは一部の不動産所有者に対しては「腐敗やずるいことをして蓄財している悪い奴」というイメージを抱いている。かつて地主から土地を没収したように、都市の小金持ちから不動産を没収することは、中国共産党がかつてやってきた、きわめて社会主義的な施策と言うこともできる。

 だが、もし、こういう手法を習近平政権が取り続けるようであれば、それは中国が市場主義経済と決別の方向に舵を切る、というシグナルかもしれない。そうなれば、中国経済がさらに減速するだけでなく、財産を奪われる側の中間層の不満と抵抗が社会の安定にどれほど影響を与えるかについても注意する必要があるだろう。

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中国の自動車市場、完全に成長が止まった模様
市場の縮小もさることながら、今季、最も中国の自動車業界関係者を慌てさせたのは、「新エネルギー車」市場の腰折れでしょう。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58110?page=5


 
米中ウオッチ】1日に協議、PMI悪化、世界最大5G、合併中止か
笠原文彦
2019年10月31日 13:23 JST
米中を巡る主なニュースは以下の通り。それぞれの記事を読むには、青地のリンクをクリックしてください。
• 中国と米国の貿易交渉トップが11月1日に電話協議−中国商務省
• 米中首脳の貿易合意実現に新たな障壁−チリがAPEC開催断念
• 米財務長官「中国の約束心強い」、市場開放や投資制限撤廃−ロイター
• ムニューシン米財務長官、11月の中国との部分的貿易合意は重要な成果
• 中国製造業PMI、10月に悪化−内需低迷や貿易戦争響く
• 中国は成長安定化をさらに重視へ、不確実性高まる中で−人民日報
• 中国で世界最大の5Gネットワーク始動−月約2000円から利用可能
• 香港金融管理局も追加利下げ、米に追随−リセッション入り濃厚
• HSBC、香港のプライムレート引き下げへ−11年ぶり
• 中国、ケムチャイナとシノケムの合併取りやめる計画−英紙FT
• アリババが11月にも香港上場か、最大150億ドル調達目指す−ロイター
• 「ティックトック」IPO、早くても20年後半か−海外強化優先
• 野村、中国で資産運用事業拡大を模索−上海部門幹部
• SOHO中国、総額8700億円の商業不動産売却を検討−関係者
• 英スタンダードチャータード、7−9月利益は予想上回る−経費抑制で
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-31/Q07ZYPDWRGG001?srnd=cojp-v2

 


依然高値圏にあるリート、今後も期待できる?
プラス要因も控え、あと数年は期待できる余地がある
小島 淳/2019.10.31

 リート(REIT:Real Estate Investment Trust、不動産投資信託)の運用実績が好調を持続しています。今年4月に「好調なリート、その理由と今後の使い方」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56238)で、2018年秋ぐらいから運用実績が上昇していることを紹介しましたが、その後も好調を維持しています。
 東証に上場するリート(Jリート)の総合的な値動きを示す東証REIT指数は10月23日に今年の最高値である2254.28ポイントをつけました(2019年10月29日現在)。同じく最安値は1月4日の1750.87ポイントですから、この10カ月間で約29%も値上がりしたことになります。
 なかなかの高騰ぶりです。専門家のなかには上がりすぎという指摘がある一方で、まだ上昇余地があるという声もあるようです。運用実績が好調なので投資してみたいと考える人は多いかもしれませんが、実際の判断には迷うところです。前の記事から半年が経ち、リート投資の現状と見通しを再度考えてみます。
12年ぶりの高値圏にあるリート
 次のグラフは東証REIT指数(配当なし)の運用実績推移です(青の線)。基準日である2003年3月31日の時価総額を1000とした場合に、現在の時価総額がどの程度かを示しています。値動きの特徴がわかりやすいようにTOPIX(東証株価指数)と比べています(オレンジの線)。いずれも配当金を含んでいません。
(出典:一般社団法人不動産証券化協会、https://j-reit.jp/market/02.html
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 同指数の設定来最高値は2007年5月31日の2612.98ポイント。ただ今年7月からは2000ポイントを超えており、「12年ぶりの高値圏へ」などという報道もグラフを見るとうなずけます。
 また、2015年あたりから(グラフの右4分の1)はTOPIXと値動きが逆になっていることがはっきりしており、TOPIXに連動することをめざす投資信託(投信)やETF(上場投資信託)とリートを同時に保有することで分散効果が期待できることが見て取れます。
次ページ堅調な賃料収入と長引く低金利が背景に
堅調な賃料収入と長引く低金利が背景に
 リートの好調さの背景にはさまざまな見方がありますが、大きく2点を挙げることができます。1つめは、良好な不動産市況を背景とした堅調な賃料収入です。リートの中心的な投資対象であるオフィスビルでは、特に都市部での空室率が極めて低く、賃料も上昇傾向にあります。また、訪日外国人が増えるに従って、彼らによる物件取得が特に地方都市において不動産市況に好影響を与えているといわれています。
 2つめは長引く低金利です。現在でも国内金利は極めて低いまま。リートは基本的に銀行などから資金を借り入れて不動産を取得します。金利が低ければ資金調達コストも低くなり、リートにとっての追い風要因になります。
 リートの好調さは、国内株式だけでなく他の投資対象と比べても同様です。QUICKがまとめた2019年7月〜9月における投信の投資対象別の運用成績では、「国内REIT型」が+13.3%で1位になっています。2位は海外REIT型(+4.51%)、3位は国内株式型(+2.79%)と続いています。国内REIT型は四半期ベースでは8期連続(2年間)でプラスのリターンとなっており、これは投信全分類のなかで国内REIT型だけです。
スプレッドは過去平均より高いが減少傾向
 4月の記事「好調なリート、その理由と今後の使い方」でも述べたように、リート投資の最大の魅力は分配金にあります。2019年9月末現在、リートの平均予想分配金利回りは3.51%、東証1部株式の配当利回りは2.42%。分配金利回りは市場動向の把握や銘柄選択の大きな判断材料になります。なかでも、(イールド・)スプレッドと呼ばれるリートの予想分配金利回りと長期金利(10年国債利回り)の差は代表的な指標といえます。
 次のグラフは過去10年間の、リートの平均予想分配金利回り(青の線)、長期金利(赤の線)、東証1部株式配当利回り(オレンジの線)、スプレッド(水色の線)の推移です。2019年9月末のスプレッドは3.73%と、過去平均の3.46%よりは高いものの2019年に入ってからは減少傾向を見せています。
(出典:一般社団法人 不動産証券化協会、https://j-reit.jp/market/03.html
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 しかし、2013年のアベノミクス開始直後には、スプレッドが一時2.5%まで低下するほどリートが買われました。現在は3.7%以上あり、まだまだ健全な水準にあるという指摘もあります。ここ2年ほどの東証REIT指数の上昇は、分配金の増加と長期金利の低下という利回り面での自然な理由によるものだという考え方です。
次ページFTSEが「グローバル株式指数」へ組み入れ
FTSEが「グローバル株式指数」へ組み入れ
 さらに最近、リートにとって中期的な成長要因となることが期待できるできごとがありました。2019年10月、ロンドン証券取引所の子会社で指数算出会社であるFTSEが、2020年9月から日本のリートを「FTSEグローバル株式指数」に組み入れると発表したのです。今後、四半期ごとに4回に分けて25%ずつ組み入れ、2021年6月に組み入れが完了する予定です。
「FTSEグローバル株式指数」は世界49市場の株式やリートを組み入れており、機関投資家の間で広く使われています。同指数に連動するように運用される投信や海外ファンドなどでは、同じリートを指数と同比率分、新しく買い付けなければなりません。ある証券会社の試算によると、日本の大型リート9〜10日分の売買代金に相当する買い需要が生まれるとしています。指数の買い付けが終わるまでの2年近く、リートとってのプラス要因になると考えられます。
 リートの現状をまとめると、歴史的な高値圏にあるものの利回り水準はいまだ健全といえる水準にあり、今後のプラス要因も控えていることから、あと数年は期待できる余地がある――というところでしょうか。
リートに投資する3つの方法の長短
 個人投資家がリートに投資したい場合、(1)リートの個別銘柄を買う、(2)リートを組み入れた投信を買う、(3)リートに投資するETF(上場投資信託)を買う、の3つの方法があります。それぞれにメリット・デメリットがあります。
 リートの個別銘柄は証券会社で買うことができます。2019年10月現在、東証に上場しているリート(Jリート)は63銘柄。株式と同様に売買することができます。不動産に直接投資するよりは少額から投資できますが、最低投資金額は数万円〜80万円超まであり、10万〜20万円が多いようです。投信やETFに比べると高くなっています。
 リートを組み入れた投信を買うのが最も手軽かもしれません。モーニングスターの分類では、国内REIT型が89本、国際REIT型は231本あります。「つみたてNISA」で購入できればベストなのですが、現在は複合指数型や海外型のなかで投資対象の一部としてリートを組み入れている投信しかありません。リートだけに投資する投信を選びたい場合は別に購入する必要があります。
 リートに投資するETFは14銘柄(外国の法律で組成された外国籍ETFを除く)。「東証REIT指数」に連動することをめざしてリート市場全体に投資するETFが10銘柄、「高利回りJリート指数」に連動することをめざして予想分配金利回りが比較的高い銘柄に投資するETFが1銘柄、「東証REIT Core指数」に連動することをめざして時価総額が比較的大きい銘柄に投資するETFが3銘柄あります。
 ETFの運用コストの低さはインデックス投信と双璧でしょう。ETFはこれまで流動性の低さが指摘され、売りたいときに売れない、買いたいときに買えない可能性がありました。しかし、東証が2018年7月に「マーケットメイク制度」を導入。指定された証券会社などの専門業者(マーケットメイカー)が買い注文・売り注文をいつも出し続けることで流動性が高まり、より売買しやすくなっています。
 マーケットメイク制度の対象ETFは銘柄別に設定されています。リートETFはほとんどが対象となっていますが、購入時には確認が必要です。
 東京都心部では新しい大型オフィスビルがどんどん建ち上がり、それを見るたびに不動産市場の勢いを感じます。論理的な市場見通しで成長余地があるといわれますが、肌感として「こんなに建てて入居する企業がどれほどあるのか」と思わずにはいられません。リート投資は、長期の資産形成というより“数年間楽しめればいい”と捉えた方が賢明なのかもしれません。
 専門家のなかには「リートの価格変動リスクは株式と同程度」と指摘する人もいます。リートへの投資は、株式や債券との分散投資を基本に、少額の積み立てで時間分散も図りたいところです。


好調なリート、その理由と今後の使い方

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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58100

 


最新経済ニュース2019年10月31日 / 17:24 / 17分前更新
UPDATE 1-中国人民銀が10月のTMLF見送り、インフレ加速が緩和方針に影響か
Reuters Staff
2 分で読む

(エコノミストの見方などを追加しました。)

[上海 31日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)は31日、四半期ごとに実施していた「標的型中期貸出制度(TMLF)」を通じた資金供給を、制度導入後初めて見送った。人民銀行は今月、貸出金利の指標金利も据え置いており、景気支援姿勢に不透明感が漂っている。

人民銀行は31日、公開市場操作(オペ)を4日連続で見送った。声明では、銀行システムの流動性が「適度に潤沢」とし、TMLFには言及しなかった。

TMLFは資金繰りの厳しいセクターへの融資促進が狙いで、昨年12月に発表、今年1月に導入された。4半期に1回のペースで実施されており、市場では、10月下旬に実施されると予想されていた。

人民銀の金融政策局トップ、Sun Guofeng氏はTMLFについて、各四半期の最初の月の第4週に実施する形式は維持すると述べた。

アナリストは、景気や企業活動の支援へさらなる措置が求められるものの、最近のインフレ加速や債務拡大への懸念から当局はより積極的な措置に及び腰になっているとみる。

OCBC銀行(シンガポール)の大中華圏調査責任者トミー・シー氏は、対象を絞った資金供給措置であるTMLFの見送りは「(人民銀が)金融政策で保守的な姿勢という誤ったシグナルを市場に送る可能性がある」と指摘。

「今月のローンプライムレート(LPR)(最優遇貸出金利)は、金利スプレッドがさらに縮小する余地が限定的であることを示している」と述べた。

人民銀行は21日、市場が3カ月連続の引き下げを予想していたLPRを据え置いた。

一部市場ウォッチャーは、インフレ加速が金融緩和を阻んでいるとみている。9月の消費者物価指数(CPI)は前年比3%上昇と、約6年ぶりの上昇率だった。豚肉など食品の値上がりが押し上げ要因で、コア指数は比較的落ち着いている。

米中貿易協議や今週開催されている共産党の重要会議をにらんだ動き、との指摘もある。

みずほ証券のエコノミスト、セレナ・ゾウ氏は、数カ月前に貸出金利改革が発表された後も、貸出金利はなかなか下がらないと指摘する。

「小規模な地方銀行が融資困難なこともあって、金融政策の波及が滞っている。この状況は、中期貸出ファシリティ(MLF)金利の引き下げや定例オペでは解消は難しい」とし、銀行預金準備率の引き下げの方が効果的との見方を示した。

OCBCのシー氏は、12月に銀行預金準備率が引き下げられる可能性があると述べた。

一方で、TMLF実施の期待を捨てていない投資家もいる。

香港のポートフォリオマネジャーは「きょうは、共産党第19期中央委員会第4回全体会議(4中全会)の最終日。会議の結果を待つ必要がある」と述べ、11月初めにTMLFが実施されると予想した。
https://jp.reuters.com/article/china-markets-tmlf-idJPL3N27G25O?il=0
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/529.html

[国際27] クルド人見殺し「次は台湾」が現実味 トランプ大統領のオバマ化に備えよ 米国の後退はトランプ後も続く リーダーシップ放棄し、内向きに 中国の映画・漫画に東南アジア猛反発 子供たちの洗脳を狙った文化輸出に発禁処分相次ぐ 『ジョーカー』にヒーローを見始めた香港の若者たち  米中ウオッチ)1日に協議、PMI悪化、世界最大5G、合併中止か
クルド人見殺し「次は台湾」が現実味

トランプ大統領のオバマ化に備えよ
2019.10.31(木)渡部 悦和
世界情勢 アメリカ 安全保障
負傷した仲間を運ぶクルド人部隊(シリア北部で、10月24日、写真:ロイター/アフロ)
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 米国のドナルド・トランプ大統領は10月27日、過激派組織イスラム国(IS)の指導者アブバクル・バグダディの殺害に米軍が成功したと発表した。
 米軍のIS掃討作戦の節目を迎えたとは言えるが、トランプ大統領の「世界はこれで一段と安全になった」という主張は手前味噌過ぎるであろう。
 トランプ氏がバクダディの死亡をことのほか喜ぶのは、米国が中東政策や北朝鮮政策で迷走し、国内外から多くの批判を受けてきたからだ。
 その迷走ぶりを観察すると、トランプ氏の対外政策がバラク・オバマ前大統領の消極的な対外政策に似てきて、「トランプのオバマ化」と言わざるを得ない状況になっていることを指摘せざるを得ない。
 最近の事例では、シリア北部からの米軍の一部撤退を決めたことをきっかけに、トルコは10月9日、シリア北東部への軍事作戦を開始した。
 攻撃目標は、これまで米軍と共にISと戦ってきたクルド人勢力だ。この米軍撤退を受けて、ロシアやシリアがこの地域で影響力を拡大させる動きを活発化させていて、米国の影響力の低下は避けられない状況になっている。
 本稿においては、「トランプのオバマ化」が米国の日本などの同盟国や友好国に与える影響に言及したいと思う。 
シリアのイドリブ県。バグダディ容疑者はシリア北西部イドリブ県のトルコ国境に近い村落で殺害された(Googleマップ)
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オバマ化が顕著に
 オバマ政権時代、米国内の共和党を中心とする保守派(トランプ氏を含めて)は、オバマ氏を「危機に対処できない弱い指導者である」と徹底的に批判した。
 この弱い指導者という評価は間違ってはいないと思う。オバマ氏の危機への対処は、「まず武力を行使しない」と宣言した後に外交交渉を行うのが特徴であった。
 武力を行使しないことが分かっているオバマ氏を軽く見る中国の習近平主席、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、北朝鮮の金正恩委員長などの指導者は、米国による口先だけの警告を無視した。
 例えば、中国は米国との約束に違反し、南シナ海における人工島の軍事拠点化や米国に対するサイバー攻撃をやめなかった。
 ロシアはクリミア併合とウクライナ東部地区…
 ロシアはクリミア併合とウクライナ東部地区への侵攻を行い、北朝鮮は核ミサイル開発をはじめとする挑発行為を継続した。
 そして、これらの問題国家の乱暴狼藉に対して、「戦略的忍耐」という極めて消極的な姿勢で対応したのがオバマ氏であった。
 一方、トランプ氏は、2016年の大統領選挙において打ち出した「力による平和」を大統領就任当初においては実行した。
 例えば、シリアのバッシャール・アル=アサド大統領が反体制派に対して行った化学兵器使用に対する報復としてシリアの軍事基地を空爆した。
 北朝鮮の核ミサイル開発などの挑発に対しては、「(軍事力の行使を含む)あらゆる選択肢がテーブルにある」「最大限の圧力をかける」というフレーズを連呼して、北朝鮮の非核化を迫り、国連の経済制裁もあり、一定の効果を収めた。
 しかし、2018年6月に実施された第1回米朝首脳会談以降、「力による平和」路線を放棄したのではないかと思わざるを得ない状況になっている。
 例えば、金正恩委員長に対する甘すぎる対応のために北朝鮮の核ミサイルの開発は継続している。6月にはイランに対する軍事作戦を一度は決断したが、決行10分前に見送った。
 ジョン・ボルトン前国家安全保障担当大統領補佐官は、「軍事攻撃を見送ったために、イランに足元を見られるようになった」と批判している。
 最近では、シリア北部からの米軍の撤退を唐突に発表し、それをクルド攻撃のゴーサインと判断したトルコのシリア北部への侵攻を招いてしまった。
 以上のように最近のトランプ氏の対外政策は明らかに「力による平和」から逸脱していると思わざるを得ない。
 私は、「軍事行動を積極的にすべきだ」と主張しているのではない。しかし、世界最強の軍事力を背景とした「力による平和」を追求しないトランプ大統領は、オバマ前大統領と同様に世界のしたたかな指導者から今後も軽んじられるであろう。
 そして、米国の同盟国や友好国のトランプ政権に対する信頼感は低下するであろう。
撤退に対する評価…
撤退に対する評価
 シリア北部からの米軍撤退の決定は、トルコのエルドアン大統領が狙っていたクルド攻撃にゴーサインを出したに等しい。トルコはクルド人が居住する地域に対する攻撃を実施し、その地域を占領した。
 北部シリアに居住するクルド人に対するトルコの攻撃を抑止してきた最大の要因は米軍の存在だった。トランプ氏の撤収決定は米軍の戦友ともいうべきクルド勢力に対する裏切り行為だった。
 第一線の米軍人たちも、ISとの厳しい戦いを共に戦ってくれた勇敢なクルド人たちを見捨てる決定に憤りを表明している。
 米軍の一部撤収を受けてISが勢力を盛り返すという懸念が出るなか、トランプ大統領は10月23日、小規模の米軍部隊を「油田が存在する」シリアの地域にとどめると表明した。
 ところが翌24日には「原油の安全は確保された。米軍はシリアから別の地域に移動している」とツイッターで支離滅裂な投稿をしている。
 この米軍を過早にシリア北部から撤退させた決定は、イラクからの米軍の撤退を過早に実施し、大きな惨禍を招いたと批判されたオバマ氏の決定と極めて似た様相を呈している。
●撤退決定を批判する意見
 トランプ大統領の決定を批判する人たちは多い。
 米議会の下院は10月16日、シリア北部からの米軍撤退に反対する決議案を圧倒的多数(賛成354、反対60)で決議した。
 民主党議員は225人全員が撤退に反対し、共和党議員でも189人中の60人が撤退に反対した。共和党の反対者の中には外交委員会の共和党トップや海兵隊出身の議員が含まれている。
 共和党の有力な上院議員であるリンゼー・グラム氏は9日、「トランプ政権に恥知らずにも見捨てられた我らがクルド人の盟友のために祈ろう」「これにより、ISは確実に息を吹き返すだろう」とツイートし、撤退決定を批判した。
 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、共和党議員の大半は、米国が世界的リーダーシップを発揮し、必要があれば断固として軍事力を発揮することが適切だと思っている。
 そして、彼らは、トランプ大統領の対外政策がオバマ前大統領の非常に消極的な政策に似てきたことに懸念を示している。
 そして、実際に撤退を命じられた第一線の兵士たちも大統領の決定に憤慨したことが伝えられている。
クルド人の次は台湾か?…
●撤退決定に理解を示す意見
 イスラム政治思想が専門の東京大学・池内恵教授はフェイスブックで、次のように記述している。
「米軍がシリアの情勢を変える能力も意思もないことは明らかであり、やがては撤退しなければならず、シリア内陸国としてのクルド独立は極めて困難で、それを米国が支え続けることも困難なことは明らかです」
「トランプは必要な決定を、粗雑なやり方でやったというのが妥当な評価です」
 池内教授の主張は適切だと思う。米国の能力と意思をリアルに分析すると、トランプ大統領の決定を全面的に否定するのは適切ではない。
 ただ、この決定が政権内で事前に十分議論されて出てきた結論であったとは思えない。このことは決定後の政権内のドタバタ劇、第一線部隊の困惑を見ても明らかだ。
 米国にシリアを巡る諸問題を処理する能力がないとすれば、米国に代わって中東での影響力を拡大しようとするロシアにも能力がないことは明らかだ。
 今後、ロシアも米国と同様の苦難を経験することになろう。つまり中東を上手くコントロールできる国は存在しないのだ。
クルド人の次は台湾か?
 トランプ大統領は、なぜトルコ軍の攻撃に対してクルド人を見捨て、中東の地政学的状況をロシア、シリア、トルコなどの独裁国家に有利な状況にしたのか。彼は次のように言い放っている。
「シリアの発展は米国とは無関係であり、そこにいたテロリストたちは7000マイル離れていて、危険にさらされたアメリカ人はいなかった。なぜ米国政府が関与すべきなのか」
「第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦にクルド民族は手助けをしなかった」
 クルド人をドライに見捨てたトランプ氏の予測不能な言動の次なる犠牲になるのは台湾ではないのかと心配する人たちがいる。
 例えば、ワシントン・ポストは「トランプは…
 例えば、ワシントン・ポストは「トランプはシリアのクルドを見捨てた。次は台湾の可能性?」という記事*1を掲載している。
 ワシントンからシリア北部まで約7000マイル離れている。台湾は、ワシントンから7800マイル以上離れている。
 シリアよりもさらに遠く離れていて、台湾の人口は2300万人であり、クルド人の約半分だ。
 このデータだけを見れば、トランプ大統領が台湾を見捨てる確率は、クルドを見捨てる確率よりも高いと言えそうだ。
 習近平主席は、2012年に中国共産党の総書記に就任して以来、台湾統一が悲願であることを発言してきた。
 習氏は、中国が台湾に対する「武力行使を放棄する」ことはないと何回も発表している。彼は10月13日、ネパールでの演説でも同じ脅しを繰り返し、中国を分離しようとすれば「砕かれた体、砕かれた骨」になるとまで警告した。
 もしも、中国が台湾を攻撃し、米国が黙認したならば、日本を含むアジア諸国に衝撃を与えることになろう。
 米国の同盟諸国は、米国の安全保障上のコミットメントに疑念を抱かせ、中国、北朝鮮、ロシアを勢いづけるであろう。そして、中国の海洋権益が西太平洋にまで拡大し、中国がこの地域を支配することになる。
 中国は台湾の人々に「一国二制度」方式を提案し、資本主義と民主主義の体制を維持すると約束した。
 しかし、香港に提示した「一国二制度」方式は、中国により破られてしまい、実質的に一国一制度になっている。台湾の人たちの「今日の香港は明日の台湾」という懸念には根拠がある。
*1=John Pomfret, “Trump abandoned the Kurds in Syria. Could Taiwan be next?”, The Washington Post、Oct.19, 2019
過度な米国依存避け自助自立が重要…
 一方、トランプ大統領と彼を支えるスタッフの台湾を支持する姿勢には乖離があると思う。
 トランプ政権の中で、台湾への支持は依然として大きい。新たに任命されたマット・ポッティンジャー国家安全保障担当大統領副補佐官とランドール・シュライバー国防次官補 (インド太平洋安全保障問題担当)は、台湾の安全保障を強力に支持する2人だ。
 そして、マーク・エスパー国防長官はシリアからの撤退に関連し、「長期的な最大の脅威は中国だ、米軍は中国対策にシフトする」と主張したが適切だと思う。
 しかし、トランプ大統領は依然として予測不能だ。台湾の一部には、台湾が米国と中国との貿易交渉の人質になるのではないかと懸念する向きもある。
過度な米国依存避け自助自立が重要
 ドイツは、過度な米国依存は危険だとして、独自の中東政策を模索している。我々は、このドイツの姿勢に学ぶべきであろう。
 米国は現在、アメリカ・ファーストで内向きになり、世界の諸問題を解決する意思も能力も低下させている。
 日本や台湾は、有事において必ず米軍が来援してくれると期待することは重要だが、それ以上に重要なことは、自らやるべきことをしっかりやるという自助・自立の姿勢だ。
 まず自助により日本が経済力、外交力、防衛力、科学技術力を強化すること。自助を基盤として、日米同盟や他の国々との共助により生き残りを図ることが不可欠であろう。
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バグダディ殺害の前からすでに落ち目だったIS
IS最高指導者、アブバクル・バグダディの殺害はシリア情勢、米露やトルコなど関係各国の方針、そしてイスラム・テロの趨勢にどういった影響をもたらすのか?


https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58085

 


米国の後退はトランプ大統領以降も続く
リーダーシップを放棄し、内向きになる国
2019.10.18(金)
Financial Times
世界情勢?アメリカ?政治

(英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年10月11日付)


トルコ軍の空爆によって黒煙が上がるシリアのトルコ国境の町ラス・アルアイン(10月16日、写真:ロイター/アフロ)
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 共産党支配の70周年を記念する式典での中国の軍事力の披露は、はっとさせられる瞬間だった。

 新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含む高度な兵器のラインアップは、強国を目指す中国の野望について多くを物語っていた。

 だが、戦車が大きな音を立てて天安門広場を進むなか、欧州はよそを向いていた。目下、ドナルド・トランプ米大統領の命運を推測することが唯一の関心事なのだ。

 トランプ氏は歴史のリズムを壊した。

 我々は、確立された秩序に対する脅威は台頭する新興国からやって来ると考える。その点では、非常に素早く、非常に大きくなったとはいえ、中国も変わらない。

 しかし、戦後の「パックス・アメリカーナ」に対する攻撃を率いたのは、そう、当の米国だった。

 欧州の人々が新たな戦争の勃発について心配する時、彼らは通常、トランプ氏のツイッター・アカウントを見ている。

 シリア北部から米軍を撤収し、同盟相手のクルド人勢力を侵攻してくるトルコ軍と対峙させることにしたホワイトハウスの決断は、目的にかなっている。

 クルド人は欧米諸国にとって、「イスラム国(IS)」などのジハード主義組織との戦いで最も頼りになる同盟相手だった。

 トランプ氏は、米国はクルド人に何の借りも…
トランプ氏は、米国はクルド人に何の借りもないと判断した。

 米政府が信頼に足る相手ではないことを、米国の同盟国は改めて思い出させられた。現在クルド人が警備している収容施設からISの戦闘員らが脱走し始めたら、どんなことになるだろうか。

 トランプ氏の外交政策の中に壮大な戦略を探すことには、ほとんど意味がない。

 同氏の世界観は、感情的な直感によって形作られている。そこに一定の枠組みを探すことは、皿に盛られたスパゲッティーに対称的なパターンを探すようなものだ。

 結局のところ、これは、かつて「炎と怒り」を浴びせてやると脅した北朝鮮の独裁者、金正恩(キム・ジョンウン)氏をもてはやしている大統領だ。

 今では、金氏に代わってイランのハッサン・ロウハニ大統領が矢面に立たされている。だが、何があるか分からない。

 ホワイトハウスの来賓としてロウハニ氏の名前が挙がっても、それほど驚く人はいないだろう。

 トランプ氏が、米国は好きなことができるという前提に立っていることは分かっている。同氏にしてみると、多国間主義は米国に対するグローバリストの陰謀であり、貿易制裁は友人と敵を一様に威嚇する良い方法だ。

 ビクトリア女王のパーマストン子爵のように、トランプ大統領は恒久的な同盟関係などに全く関心がない。

 もっと心強いことに、トランプ氏は世界的な…
 もっと心強いことに、トランプ氏は世界的な緊張を燃え上がらせることについては不注意だとはいえ、あえて始める戦争には慎重だ。

 いくつかの例外――イスラエルとハンガリーが思い浮かぶ――を別にすると、大半の友好国と同盟国にとって、「米国第一」は危険の定義そのものだ。

 欧州と東アジアの安全保障は、米国の指揮下で稼働する同盟・条約システムに埋め込まれていた。繁栄は、主にワシントンで設計される多国間ルールにかかっていた。

 米国の安全保障という接着剤を取り除くと、システムは瓦解し始める。

 ロシアと中国が地域の脅威として大きくそびえ立つようになり、同盟国が互いと争う公算が大きくなる。

 戦後補償をめぐってエスカレートする日本と韓国の論争を見ればいい。国際貿易のルールへの米国の支援を取り除くと、グローバル化が逆回転し始める。

 このため、今ワシントンで繰り広げられているドラマに諸外国の猛烈な関心が集まっていても、誰も驚くべきではない。

 大半の国にとって、近い将来にすでに見えている最大の地政学的イベントは2020年の米大統領選挙だ。

 もし欧州の外交政策のエスタブリッシュメントが、世界をもっと安全な場所にするために1つだけ望みをかなえてもらえるのだとすれば、それはトランプ氏の退陣だろう。

 大統領選に向けた民主党の候補者討論会でジ…
 大統領選に向けた民主党の候補者討論会でジョー・バイデン前副大統領とエリザベス・ウォーレン上院議員を見て、ヨーロッパ人はあきらめが広がるのを許した。

 バイデン氏の時機は去った。欧州の基準で社会的民主主義者に当たるウォーレン氏は、米国にとっては左に寄り過ぎているように見える。

 もしかしたら、トランプ氏の大統領2期目は前もって定められていたのかもしれない。そうなれば、同氏は戦後秩序を完全に壊す時間を手に入れる。

 ウクライナ大統領を脅そうとしたトランプ氏の試みが焦点となっている弾劾手続きは、気分を高揚させた。

 たとえ上院を説得して大統領を有罪にできなくても、情報開示のプロセスと次第に不規則になる本人の発言によってトランプ氏はホワイトハウスを失うかもしれない。違うだろうか。

 何しろウォーレン氏は最近、同氏が危険なマルクス主義者だという批判を払拭しているように見える。もしかしたら大統領弾劾が免罪符になるかもしれない。

 現実の世界は、悲しいかな、そうはいかない。大方のヨーロッパ人は、世界が抱えているのはトランプ問題であって、米国問題ではないと教えてくれる。

 この大統領の振る舞いが比類なく移り気だという限りにおいては、その言い分には一理ある。だが、トランプ氏がホワイトハウスに到達する前の時代に時計の針を戻すことはできない。

 パックス・アメリカーナは、アフガニスタンとイラクの戦火によって、世界金融危機で露呈した経済的な弱さによって、そして中国の台頭の前代未聞のスピードによって失われていった。

 バラク・オバマ前大統領は、米国のリーダー…
 バラク・オバマ前大統領は、米国のリーダーシップを招集力によるリーダーシップとして描き直そうとした時、これを理解していた。

 トランプ氏の好戦的なユニラテラリズム(単独行動主義)は米国の後退を大きく加速させたが、米国が進む方向はすでに定められていた。

 トランプ氏がいなくなれば、世界はより安全になるはずだ。だが、筆者の考えでは、同氏の後継者について自信をもって言えることが3つある。

 次の大統領は、それが男性であれ女性であれ、誕生するのが2020年であれ2024年であれ、米国が内向きになる流れを食い止められない。

 何より技術が豊富な産業のことになれば、保護主義の傾向はさらに強くなる。

 そして、米国は海外で血を流し、お金を費やす前に、今よりはるかに国益に気を配るようになる。

 成功しようが失敗しようが、弾劾はほかの誰の問題も解決しないのだ。

By Philip Stephens

c The Financial Times Limited 2019. All Rights Reserved. Please do not cut and
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英国とEU、ブレグジットは終わりなき旅
1933年、ナチス・ドイツの宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスは次のように語った。「ドイツ国家の近代的な構造は、より高度な形態の民主主義である。ここにおいては国民の負託によって統治が権威をもって行われ、国民の意思の遂行を妨げたり不首尾に終わらせたりする議会の干渉が行われる可能性は存在しない」。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57960

 


 
中国の映画・漫画に東南アジア猛反発
子供たちの洗脳を狙った文化輸出に発禁処分相次ぐ
2019.10.31(木)末永 恵
中国 アジア・オセアニア 政治 経済 芸術文化 教育
 
事業収益の6割を海外市場で占める中国の通信機器メーカー、ファーウェイの「5G覇権」は現代のコミンテルン。経済投資の裏でソフトパワーにより東南アジアなどを”侵略”しようと画策しているといわれる(マレーシア・クアラルンプール、筆者撮影)
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 東南アジアで中国共産党の共産主義や覇権主義の台頭に反発する動きが続発している。
 米中合作のアニメ映画「アボミナブル」で中国が独自に主張する「九段線」*1が登場することから、領有権を争うベトナム、フィリピン、マレーシアの東南アジア諸国で相次ぎ上映禁止が決定され、公開中止の事態が続出している。
*1=中国が主張する南シナ海の領海を断続する9つの線(破線)によって示したもの。
 同作品は、米映画制作大手ドリームワークスと中国のパール・スタジオが共同制作した子供向けアニメで、10代の中国人少女がヒマラヤの伝説の雪男イエティの帰郷を手助けするというストーリー。
  映画の冒頭シーンで、主人公の少女が、中国の地図を広げると、地図上には中国南岸を起点に南シナ海全域を包囲するU字形の破線が描写されている部分がクローズアップされる。
 米ハリウッド映画界は、中国最大財閥の王健林率いる不動産コングロマリット「大連万達集団」が映画館大手チェーンや映画製作会社を買収するなどチャイナマネーが流入。
 こうした中国によるハリウッド爆買いの影響で、中国からの投資を目論み、中国的価値観や嗜好を反映した映画制作が急増している。
 この影響で、中国からの独立を主張するチベットのダライ・ラマ氏と親交が深いベテラン俳優で、渋谷に銅像がある忠犬ハチ公をテーマにした映画にも主演したリチャード・ギアがハリウッドで起用されなくなっている。
 中国政府の意向や趣向に沿った映画作りや俳優が登用される事態が国際社会から憂慮され始めている中での出来事だった。
 とりわけ今回のケースでは、洗脳教育の一環とも思われる子供対象のアニメ映画にまで中国共産主義の覇権を拡大させていることが問題視されている。
 東南アジア諸国で上映禁止された今回のアニ…
東南アジア諸国で上映禁止された今回のアニメ映画に登場するこの破線(九段線)は、同主張を巡って2016年7月に、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、「国際法上の根拠はない」と違法であると判断している。
 ベトナムを含む同地域のマレーシア、フィリピン、ブルネイなど少なくとも4か国は、国際法上の自国領域を侵害するとして中国が主張する九段線に異議を唱えてきた。
 しかし、中国は、国内で販売されるすべての地図に九段線を描き、国際法の決定を無視続けるどころか、今年7月からはベトナムの排他的経済水域(EEZ)内で石油探査活動を強行している。
 さらに、現地メディアなどによると、ベトナムでは中国からの輸入車に搭載されたカーナビの地図に、今回の映画と同様、南シナ海で中国が独自に主張する「九段線」が示されていることが先週末、明らかになった。
 このため、ベトナム政府は自動車輸入関係業者や団体に対して、地図のアプリを直ちに削除するよう指示した。
 東南アジアの中でも、特にベトナムと中国は南シナ海の領有権争いで激しく対立している。
 今回の映画や中国輸入車の九段線問題が拍車をかけ、2国間に新たな軋轢を生むのではないかと懸念されている。
 一方、同じく南シナ海の領有権で中国と対立するマレーシアは、11月7日から上映されることになっていた九段線が描かれた南シナ海の地図をアニメ映画で使用した映画の上映を急遽、中止した。
 さらに、これと前後して、サイフディン外相が10月17日、「南シナ海で想定する衝突に備えるため、海軍の軍事力強化が必要」と域内の活発化する中国の覇権拡大に懸念を表明。
 同外相は「中国海警局がマレーシア東部サラワク州沖の南ルコニア礁の周辺で24時間活動している」と明らかにした。
 南シナ海では今年9月、米海軍駆逐艦が中国…
 南シナ海では今年9月、米海軍駆逐艦が中国が領有権を主張する西沙(英語名;パラセル)諸島の周辺海域を航行し、緊張が高まっている。
 これを受けて同外相は「(衝突は)避けるべきだが、南シナ海で大国同士が衝突した場合、マレーシア海域の管理能力を高めるため、我々の(軍事的)資産を強化する必要がある」と述べた。
 こうした事態が続く中、マレーシア政府は10月23日、習近平国家主席が主導する経済圏構想「一帯一路」を推進する漫画本「相互利益になるウィンウィンの一帯一路(原題;Belt and Road Initiative for Win-Winism)」を発禁処分にした。
 その理由として、「共産主義と社会主義を宣伝し、マレーシアの公共秩序と社会的安全に危害を与える危険性がある」としている。同漫画の製作者と漫画家ら関係者が警察当局の取調べを受けている。
 この漫画は今年4月、習国家主席の肝煎りで北京で開催された一帯一路関連の国際会議の席上、マハティール首相らマレーシア政府団が、習国家主席に贈呈したもの。
 マレーシアでは、昨年5月に61年ぶりに政権交代し、財政逼迫、国益に相当しないなどの理由で一帯一路の大型プロジェクトを中止した経緯などから、両国間に暗雲が立ち込めていた。
 こうした背景から、同漫画が習国家主席に手渡された際、習氏がその場で目を通し、満面の笑みを浮かべる様子は中国の国営メディアなどで大きく報道された。
(参照:https://www.scmp.com/week-asia/politics/article/3034279/malaysia-bans-controversial-belt-and-road-comic-cultural
 折しも、両国は今年、国交樹立45周年の記念すべき年を迎え、同漫画は「二国間の雪解けの象徴」として、中国政府も歓迎していた。
 しかし、それから半年足らずで二国間の友好の証とみなされた一帯一路漫画が発禁処分となったのだ。
 マレーシア首相府は「同漫画の制作に首相府は一切関与しておらず、マハティール首相の顔写真が使われているが、許可は与えていない」と説明。「マハティール首相はその内容について把握していなかった」としている。
 実は、23日に政府が発禁処分を発表する直…
実は、23日に政府が発禁処分を発表する直前の21日、マハティール首相が「中国は友好国で一帯一路の開発には賛同するが、中国の思想や共産主義は受け入れられない」と同漫画を批判していた。
 同国政府は昨年12月にも、マラヤ共産党の歴史書「マラヤ共産党歴史画集(一)」を発売禁止処分とした。
 その理由は、「共産主義運動を推進する意図があり、国家の独立は共産党のおかげであったとした虚偽の記載があり、共産党に対する同情と支持を呼び込む内容が見られた」というものだ。
 今回、発禁処分になった一帯一路の漫画本は、北京に本部を置くマレーシア・中国商務理事会の首席理事で、華人系マレーシア人の丘光耀氏が編集を担当、同じくマレーシア人の張宝玲氏が作画を担当した。
 丘氏は、香港中文大学の博士号を取得、スーパーマンのTシャツを好んで着用することから「スーパーマン」としてマレーシアの華人界では知られる弁舌家。
 マレーシアの華人を支持基盤にする現与党の一角、民主行動党(DAP)の元党員で、過去の演説で「南シナ海は中国の領土」と発言し、DAPを除名されている。
 今回、一帯一路の漫画が発禁処分となった直接の引き金は、処分の前週にマレーシアの2500校の中学校や高校に同漫画(中国語、英語、マレー語版)が寄贈されたこと。
 SNSなどで内容などに関して、国内から批判や不満が噴出、警察に通報する父母も多かった。教育省はこうした批判を受け、すでに各学校から漫画の回収を命じている。
 さらに、国内の出版法に基づき、同漫画の3カ国語版の発行を禁止した。不法に印刷、出版、販売、保有した場合、最高3年の実刑判決などが言い渡されることになる。
 政府は「特に若い世代がマレーシアの歴史について正しくない認識を得る危険性がある」とする声明を発表。
 マレーシアは共産党と共産主義を禁止してい…
 マレーシアは共産党と共産主義を禁止している国家の一つだからだ。
 その背景には、他の東南アジア諸国と同様、独立の過程で中国共産党や共産主義ゲリラと闘ってきた歴史がある。
 マラヤ連邦は、のちの初代首相となるトゥンク・アブドゥル・ラーマンの下、1957年8月31日に独立したが、マラヤ共産党は1948年から41年間にわたり武装闘争を行ってきた。
 マラヤ共産党は1930年代にコミンテルン代表のホーチミンのもとで結成され、中国共産党の海外支部として、中国共産党南洋臨時委員会と称された。
 1955年、英国統治下のマレーシアで初の普通選挙が行われ、連邦自治政府が誕生、自治政府とマラヤ共産党は和平会談を行ったが、共産党は共産党のイデオロギーを放棄せず、合法的地位を求めたため、決別。
 第2次世界大戦中は、日本軍がマラヤで中国人敵視政策を導入。マラヤ共産党はマラヤ人民反日軍を組織し、反日運動を展開したが、親日的なマレー人は日本軍に協力した背景がある。
 しかし、中国共産党の毛沢東やケ小平国家主席が陳平らを北京に招聘し、資金や武器などで支援し、武装闘争はその後も20年間続いた。
 中国の策謀家で知られる「陳平」の名を借り、「マラヤの陳平」と呼ばれ、1947年3月、23歳の若さで総書記となり、共産化した中国と連携を図った。
 1989年12月のマレーシア政府との和平協定で闘争が終焉を迎え、陳平は「最後のコミュニスト」と呼ばれた。
 今回の一帯一路漫画は、こうしたマレーシアの共産主義との長年にわたる暗く長い闘いを彷彿させるからだ。
 同漫画には中国が弾圧するイスラム系民族の…
 同漫画には中国が弾圧するイスラム系民族のウイグル人に関して、「中国の国家融和を破壊する分離独立主義者」との記述がある。
 さらに「マレーシアのマレー系は、ウイグル人を支援するラディカルな民族」とマレー系を批判している。
 こうしたこともマレーシア政府が発禁処分を行った理由の一つと見られる。
 マハティール首相は国連総会でも、中国のウイグル人への弾圧を非難しているほか、マレーシア国内のウイグル人引き渡しを拒否するなど、中国との経済投資を重要視する一方、共産主義に対する断固たる姿勢を崩していない。
 圧倒的な経済と軍事力だけでなく、映画や漫画などというソフトパワーを駆使して中国の体制を正当化し、経済や政治体制が脆弱な国を覇権下に置こうと企む中国。
 しかし、中国の共産主義と長年闘ってきた歴史をもつ東南アジアの国々はそうやすやすと中国の軍門に下ることはない。
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ベトナム漁船が仰天、目の前に中国原潜が突如浮上
多数のベトナム漁船群が操業していた西沙諸島周辺海域で、ベトナム漁船のまっただ中に中国海軍原子力潜水艦が突如浮上した模様


https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58087

 

『ジョーカー』にヒーローを見始めた香港の若者たち
'Joker' Is Inspiring Some Hong Kong Protesters
2019年10月31日(木)15時55分
ジェームズ・パターソン

悪役ジョーカーは、世界中で抵抗のシンボルになりつつある(写真はボリビアのデモ参加者) Kai Pfaffenbach-REUTERS
<ゴッサムシティはまさに今の香港だ、反逆者ジョーカーは自分たちのリーダーだ、という危険なアナロジー>
スーパーヒーローのバットマンが、リドラー、ペンギンやキャットウーマンといった犯罪者や、宿敵ジョーカーとの戦いを繰り広げるゴッサムシティ。この架空の街ゴッサムと実在の街である香港が「似ている」という指摘は、これまでにもあった。
それが今回いっそう熱を帯びているのは、映画『ジョーカー』が、香港の反政府デモが何カ月も続くなかで公開されたからだ。この映画を観た香港デモ参加者の一部が、正義の味方のバットマンではなく、悪役ジョーカーに「ヒーロー」を見ている。「レジスタンス(抵抗)の象徴」「反逆者の精神的リーダー」として。
映画でジョーカーを演じたのはホアキン・フェニックス。冴えない大道芸人だったアーサー・フレックが、ゴッサムシティ有数の凶悪な犯罪者ジョーカーへと変貌していくという役どころだ。貧富の格差が広がり、荒廃したゴッサムシティで権力をあざ笑うジョーカーに、自分たちの姿を重ね合わせているのだ。

不気味なほど似た破壊の光景
そうした香港の感情を表すソーシャルメディアへの投稿を幾つか挙げると......。
「2016年に香港独立を求める『暴力的な抗議デモ』に関与したとして実刑判決を受けた活動家、梁天gはジョーカーそのものだ」
「林鄭月娥行政長官のモデルは、バットマンの父親トーマス・ウェインに違いない」──映画の中でトーマス・ウェインは、裕福で傲慢で現実を理解しない人物として描かれ、ゴッサム市の市長選に出馬する。
映画を観た学生キミー・ウーは、ジョーカーのカウンセラーを香港政府になぞらえた。「いつまでも耳を傾けないところが似ている」という。
ゴッサムシティの市民が地下鉄の駅で戦うシーンは、誰が見ても、香港の地下鉄の駅で実際に起こった警察とデモ隊の衝突にそっくりだ。
映画のラストではゴッサムシティ暴動が起きる。街ではさまざまな破壊行為が行われ、空気中には催涙ガスが漂い、店先の落書きや割れたガラスが映し出される。ここ数カ月の香港の街頭と不気味なほど似通っている。
<参考記事>『ジョーカー』怒りを正当化する時代に怒りを描く危うい映画
<参考記事>香港の若者が一歩も退かない本当の理由
次のページ悪評を懸念する人々も
デモ参加者たちの見解は分かれている。ジョーカーを自分たちと重ね合わせる者もいる一方で、そうした比較に恐れを抱く者もいる。デモや暴力に終わりが見えないなか、香港を去って別天地に移住した香港人も多い。
ジョーカーのようなキャラクターと一緒にされれば香港の評判が落ち、デモ隊の主張までが誤解されかねないと懸念する声もある。
ハロウィンでは、香港の多くの若者がジョーカーに扮することだろう。中国の人民解放軍が乗り込んでくる前に、香港版のバットマンが現れてくれることを願う。
(翻訳:森美歩)
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10月29日発売号は「山本太郎現象」特集。ポピュリズムの具現者か民主主義の救世主か。森達也(作家、映画監督)が執筆、独占インタビューも加え、日本政界を席巻する異端児の真相に迫ります。新連載も続々スタート!
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13302_2.php


米中ウオッチ】1日に協議、PMI悪化、世界最大5G、合併中止か
笠原文彦
2019年10月31日 13:23 JST
米中を巡る主なニュースは以下の通り。それぞれの記事を読むには、青地のリンクをクリックしてください。
• 中国と米国の貿易交渉トップが11月1日に電話協議−中国商務省
• 米中首脳の貿易合意実現に新たな障壁−チリがAPEC開催断念
• 米財務長官「中国の約束心強い」、市場開放や投資制限撤廃−ロイター
• ムニューシン米財務長官、11月の中国との部分的貿易合意は重要な成果
• 中国製造業PMI、10月に悪化−内需低迷や貿易戦争響く
• 中国は成長安定化をさらに重視へ、不確実性高まる中で−人民日報
• 中国で世界最大の5Gネットワーク始動−月約2000円から利用可能
• 香港金融管理局も追加利下げ、米に追随−リセッション入り濃厚
• HSBC、香港のプライムレート引き下げへ−11年ぶり
• 中国、ケムチャイナとシノケムの合併取りやめる計画−英紙FT
• アリババが11月にも香港上場か、最大150億ドル調達目指す−ロイター
• 「ティックトック」IPO、早くても20年後半か−海外強化優先
• 野村、中国で資産運用事業拡大を模索−上海部門幹部
• SOHO中国、総額8700億円の商業不動産売却を検討−関係者
• 英スタンダードチャータード、7−9月利益は予想上回る−経費抑制で
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-31/Q07ZYPDWRGG001?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/644.html

[政治・選挙・NHK266] 「プロレス国会」が官僚のブラック労働を生み出す 与野党の談合する「国対政治」はもうやめよう
「プロレス国会」が官僚のブラック労働を生み出す 与野党の談合する「国対政治」はもうやめよう
2019.11.1(金)
(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)

 10月11日、大型の台風19号が首都圏に接近していた夜、霞が関では15日の参議院予算委員会の審議に備えて数百人の官僚が待機していた。野党の質問通告を受けて答弁を書くためだ。その提出期限は17時と決まっていたが、期限を過ぎても質問が出てこない。

 これに困った1人の官僚が「森ゆうこ糞」というツイッターアカウントをつくり、国民民主党の森ゆうこ参議院議員に対して「早く質問通告を出してくれないと台風で家に帰れなくなる」とつぶやいた。これと前後して、官僚とおぼしき多くのアカウントが「早く質問通告を出してほしい」とつぶやき始めた。

「情報漏洩」騒ぎで自爆した野党

 この国会待機というのは、日本独特の習慣である。 昔は国会で野党から出てくる細かい質問には政府委員として出席した官僚が答弁していたが、この制度は「官僚主導だ」として廃止され、今は原則として閣僚が答弁する。

 しかし閣僚があらゆる問題に精通しているわけではないので、ぶっつけ本番で質問をされても答弁できない。このため前々日の正午までに質問内容を通告することが与野党の話し合いで決まった。だが、これはまったく守られていない。

 今回の森ゆうこ議員の場合にも、最初に出たのは質問項目だけで、追加の質問内容が何度も出され、最後に質問が更新されたのは12日の午前0時25分だった。ここまでは珍しいことではなく、森氏が謝罪すれば終わった話である。

 ところが16日になって彼女は「質問通告が事前に漏洩されたのは問題だ」と論点をすり替え、国民民主党の原口一博国対委員長が加わって、野党の「調査チーム」が官僚にヒアリングを始めた。

 彼らは「官僚のツイッターで質問通告が外部に漏洩された」と騒いだが、これは森氏が11日の20時22分に自分のツイッターで公開した情報だった。

 規制改革推進会議の国家戦略特区ワーキンググループ座長代理である原英史氏に内閣総務官室が送った電子メールに質問通告のFAXが添付されていたが、これは彼を参考人として国会に出席要請するための資料だった。原氏はこの話を(私を含む)数人に知らせたが、彼は民間人なので国家公務員法の守秘義務は適用されない。

野党議員の目的は?
 松井孝治氏(民主党政権の官房副長官)がツイッターで公開した参議院予算委員会の議事進行表まで「情報漏洩だ」と騒ぎ始めた。しかしこれは機密ではなく、議場で多くの人に配布されている公開情報である。

 おまけに高橋洋一氏(嘉悦大学教授)が質問の前日にその内容を知っていたと今井雅人議員や柚木道義議員が国会で質問し、北村誠吾地方創生相に「責任を取れ」と迫ったが、その根拠にしたツイートの時刻が、アメリカ太平洋時間(16時間前)だったというお粗末な話が出てきて、野党はすっかりおとなしくなってしまった。

野党議員の目的は国会で暴れて目立つこと
 これは笑い話ですむ問題ではない。国会待機は、会期中は毎日続く非生産的な仕事である。このためキャリア(国家公務員総合職)の残業は、毎月200時間近くに及ぶ。

 質問通告が遅れるのは日常茶飯事で、それも項目だけで、何を聞くのか分からない通告も多い。こういう時は議員に何度も問い合わせ、深夜までかかって答弁の分担を決める。

 担当した官僚は関係各省に問い合わせ、徹夜で資料を集めて答弁を書き、明け方に省内の決裁を取る。これを各省の局長級が翌朝8時ごろ閣僚に説明する。国会答弁のスケジュールは、担当者が徹夜することが前提になっているのだ。

 他方で野党は、法案の中身を論じる能力も意欲もない。予算案を議論しても、それが修正されたことは戦後一度もない。このためなるべく質問通告を曖昧にして、クイズのような質問で閣僚の失言を引き出そうとする。

 今の野党が、政権を取る可能性はゼロに近い。野党が政策を論じても、有権者には難しい話はわからない。それより誰でもわかる金銭スキャンダルや失言で閣僚の首を取り、テレビで騒ぎを起こして、自分の名前が選挙区に知られることが野党の最大の目的なのだ。

 こういう慣例は55年体制で確立したもので、万年野党の生き残り術としてはそれなりに合理的だが、迷惑するのは役所である。長時間労働をきらって優秀な若者は役所に集まらなくなり、霞が関の就職偏差値は大きく下がっている。

日程闘争の茶番劇はやめよう
「日程闘争」の茶番劇はやめよう
 しかし自民党は、こういう野党の騒ぎをなぜ放置しているのだろうか。その原因は、日本の国会が多数決で決まらないからである。

 国会議員の数は衆参両院ともに自民・公明が絶対多数だから、採決すればどんな法案も予算案も可決できる。しかしどんな法案をどんな日程で審議するかは、議院運営委員会で原則として全会一致で決まる。野党が同意しない限り質問者が決まらないからだ。このため国会の審議日程は、直前まで決まらない。質問者が決まるのは1週間前である。さらに答弁で閣僚の失言が出ると、野党はそれを理由にして審議を止めるので、役所は失言を恐れる。

 それを調整するのが国対委員長会談だが、国会対策委員会という組織は法律に存在しない。これは各党の国対委員長と称する議員が集まって取引する密室の会合である。これも全会一致が慣例なので、野党が1つでも反対すると国会は動かない。

 この日程闘争が、弱小野党の最大の武器である。審議が遅れて会期末までに可決できないと、審議未了の法案は廃案になるので、与党は野党に譲歩して審議をスムーズに進めようとする。自民党の森山裕国対委員長が、野党の主張に理解を示すのもこのためだ。

 こういう不透明な「国対政治」が続く根本的な原因は、憲法で「国権の最高機関であって国の唯一の立法機関である」と定められた国会が、現実にはその役割を果たしていないからだ。

 国会で成立する法案の8割以上は内閣提出法案であり、これは国会に提出する前に与党の政務調査会と各部会の事前審査で官僚や利益団体と調整が行われ、自民党の総務会で全員一致で決まると党議拘束がかかるので、法案が国会に出たときは勝負はついている。

 だから国会質疑は、最初から勝負のわかっている戦いを与野党が演じるプロレスのようなものだ。野党は悪役レスラーのように派手に暴れ、与党はそれをなだめるふりをして戦いを引き延ばす。国会は政治家の官僚に対する優位を示す見せ場なのだ。

 これを改めるのは簡単である。こんな茶番劇をやめればいいのだ。国会の日程は会期前に最後まで決めて審議時間を割り当て、審議が終わったら採決する。審議未了になった法案は次の国会で継続して審議する。

 今の国会運営は慣例で決まっているだけなので、この改革に法改正は必要ない。政府と与党が変えると決めれば変えられる。史上最強の安倍政権にとっては、憲法改正よりはるかに簡単な仕事だろう。

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クルド人見殺し「次は台湾」が現実味
米国のドナルド・トランプ大統領は10月27日、過激派組織イスラム国(IS)の指導者アブバクル・バグダディの殺害に米軍が成功したと発表した。米軍のIS掃討作戦の節目を迎えたとは言えるが、トランプ大統領の「世界はこれで一段と安全になった」という主張は手前味噌過ぎる。次に見殺しにされるのは台湾かという懸念が高まっている。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58126
http://www.asyura2.com/19/senkyo266/msg/905.html

[政治・選挙・NHK267] 今年だけで20発超、北朝鮮ミサイル「乱射」の理由 ピンチの安倍政権を救う「北風」北朝鮮、飛翔体2発発射 安倍首相「強く非難する」
今年だけで20発超、北朝鮮ミサイル「乱射」の理由
東アジア「深層取材ノート」(第9回)
2019.11.2(土)
近藤 大介
韓国・北朝鮮

10月16日、白馬に乗って白頭山に登頂した金正恩・朝鮮労働党委員長(中央)。左は妹の金与正・党中央委員会第1副部長(提供:Korean Central News Agency/ZUMA Press/アフロ)
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 10月31日午後4時35分頃、北朝鮮が再び、西部の平安南道順川付近から、日本海へ向けて短距離弾道ミサイル2発を発射した。日本のEEZ(排他的経済水域)の外に落下したとはいえ、今年5月以降、すでに12回目で、計20発以上に上る。

ピンチの安倍政権を救う「北風」
 河野太郎防衛相は、短距離弾道ミサイルの飛距離は、350〜400kmで、高度は約100kmだったと述べた。また韓国軍合同参謀本部は、飛距離は最大約370km、高度は約90kmだったと説明した。

 一方、11月1日付の朝鮮労働党中央委員会機関紙『労働新聞』は、「超大型ロケット砲の発射実験に成功した」と報じた。

 31日、安倍晋三首相は北朝鮮のミサイル発射を受け、直ちにNSC(国家安全保障会議)の4大臣会合(首相、官房長官、外相、防衛相)を招集し、15分ほど対応を協議。その後記者団に、北朝鮮に対する非難を述べた。

「北朝鮮が短距離弾道ミサイルと判断されるものを発射しました。わが国と地域の平和と安全を脅かすものであり、強く非難いたします。政府としては、わが国の排他的経済水域の外に落下したと確認していますが、今年に入って20発を超える発射が繰り返され、その目的がミサイル技術の向上にあることは明らかであります。

 政府としては、これまで以上に安全保障上の警戒監視を強める必要があります。米国、韓国をはじめ関係国と緊密に連携しながら、国民の生命、そして平和な暮らしを断固として守りぬいていく決意であります」

 同日深夜に、ある政府関係者に聞くと、こう述べた。

「また『北風』が吹いてくれた。まさに困った時の『北風』だ。安倍総理は、まだ運を持っているよ」

「北風」とは、北朝鮮のミサイル発射や核実験などを意味する隠語である。そもそもは、韓国で使われていた言葉だ。

なぜミサイル発射を繰り返すのか…

 韓国では以前、大統領選挙が近づくと、右派勢力が北朝鮮に手を回し、ミサイル発射など過激な行動に出てもらうということが行われていた。そうすると韓国国民は、「やはり北朝鮮は危険だ」と再認識し、親北朝鮮の左派候補ではなく、反北朝鮮の右派候補に投票するからだ。

 日本はもちろん、北朝鮮に後ろから手を回すことはしていない。だが偶然にも、安倍首相がピンチに陥ると、北朝鮮がミサイル発射を行うということが、これまで繰り返されてきたのだ。

 典型的だったのは、2017年7月28日である。安倍政権は、南スーダンのPKO(国連平和維持活動)に派遣された部隊の日報を陸上自衛隊が保管していた問題を巡って、大揺れだった。国会答弁で発言が二転三転した稲田朋美防衛相は、野党や国民から強い非難を浴びて、この日の午前中に辞任した。安倍首相は、どう見ても防衛相には不向きだった稲田氏の任命責任を問われ、大ピンチを迎えていた。

 だがその日の晩、北朝鮮は「火星14」というICBM(大陸間弾道弾)の発射実験を行ったのである。それまで意気消沈していた首相官邸も防衛省も俄然、緊張感に包まれ、深夜に官邸に戻った安倍首相は、記者団の前で、北朝鮮に対する怒りをぶちまけた。そしてこの「北風」によって、稲田スキャンダルは雲散霧消してしまったのである。

 今回もまた、10月31日の午前中に、河井克行法相が自身と妻のスキャンダルの責任を取って辞任。わずか一週間のうちに、菅原一秀経産相に続いて二人目の閣僚辞任ということで、安倍政権は大きな痛手を負った。するとその日の夜に、北朝鮮はまたまたミサイル発射という「北風」を吹かせてくれたというわけだ。

なぜミサイル発射を繰り返すのか
 それでは、北朝鮮はなぜ、かくも立て続けにミサイル発射を繰り返すのか? 私の見立ては、先週のこのコラムでも述べたが、金正恩委員長の「焦り」である。

 金委員長は昨年4月、それまでの「並進政策」(核建設と経済建設)を放棄し、経済建設一本でいくという大きな方針転換を行った。長年の「二つの敵」だったアメリカ及び韓国と手を組んで、経済発展に集中しようということだ。

 この「単独政策」によって、北朝鮮の最大最強勢力だった120万朝鮮人民軍は行き場を失ってしまう。それまで積極果敢に核やミサイルを量産していたのが、「北朝鮮のハワイ」こと葛麻(カルマ)半島のリゾート建設などに回されたのだ。朝鮮人民軍にとっては、屈辱だ。

 だがその後、米朝交渉は、今年2月に「ハノイの決裂」を起こし、それとともに南北関係も悪化していった。こうなると、ドナルド・トランプ大統領と文在寅大統領を信じてやってきた金正恩委員長の、国内での立場は危うくなる。その間にも、2017年に国連安保理が決議した一連の対北朝鮮経済制裁措置によって、北朝鮮は兵糧攻めのような状態に陥ったのである。

トランプにすがる金正恩…
 つまり、一連のミサイル発射は、金正恩委員長の「悲痛な叫び」とも言えるのだ。誰に対して叫んでいるのかと言えば、それはもっぱら、太平洋の向こうのトランプ大統領に対してである。

トランプにすがる金正恩
 10月27日、朝鮮中央通信は、金英哲朝鮮アジア太平洋平和委員長の興味深い談話を発表した。それは、トランプ政権に対する未練たらたらの内容だ。

<最近アメリカは、われわれの忍耐心と度量を誤判断しており、対朝鮮敵対視政策をさらに強化させている。

 先日、国連第74回総会の第一委員会で、アメリカ代表はわれわれの自衛的国防力強化措置に対していいがかりをつけ、米朝対話に目をつぶって臨まないだの、北朝鮮はFFVD(最終的かつ完全に検証された非核化)のための新たな方法論を提示しなければならないだのと、自分勝手な妄言を述べたのだ。

 一方で、アメリカは他の国々に、国連「制裁決議」の履行を執拗に迫り、お追従国家を並べて、国連総会で反共和国(北朝鮮)決議案を通過させようと策動している。

 さらには、米戦略軍司令官に指名された者が議会上院での証言で、わが国を「ならず者国家」と悪辣に述べ立てたし、アメリカ軍部の好戦的な勢力はわれわれを狙った核打撃訓練まで計画中だという。

 このような状況は、アメリカが戦略転換に関連するわれわれの要求に応じるどころか、以前よりもさらに狡猾かつ悪辣な方法で、われわれを孤立させ圧迫しようということと見て取れる。

 アメリカのこのような敵対行為と誤った慣行でもって、何度も脱線し後退したことがある朝米関係が、それでも現在まで維持されていることは、金正恩国務委員長とトランプ大統領の間で形成された親密な関係のおかげだと言わねばならない。

 だが、どんなことにも限界があるというものだ。

 朝米のトップ同士の間の親しい関係は、絶対に民心をたがえることはできないし、また朝米関係の悪化を防止し、保証するための担保ではない。

 アメリカは、われわれが信頼構築のために取っている重大な措置を、自分たちの「外交的成果」に包装して宣伝しているが、朝米関係においては、何らかの実質的な進展はなされておらず、今すぐにでも火と火が飛び交うかもしれない関係が続いているだけだ。

 アメリカが、自分たちの大統領とわれわれの国務委員長との個人的な友好関係を打ち立て時間稼ぎをしながら、今年の末を適当にやり過ごそうと考えているのであれば、それは愚かな妄想というものだ。

 私は、永遠の敵も永遠の友もないという外交上の名句が、永遠の敵はあっても永遠の友はないという格言に変わらないことを願う>

 以上である。金正恩委員長は、昨年の米朝交渉の北朝鮮側責任者だった金英哲委員長にこのように代弁させることで、トランプ大統領にすがったのである。


『ファーウェイと米中5G戦争』(近藤大介著、講談社+α新書)
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 だがトランプ大統領は、ウクライナ疑惑で大変である。10月31日には、下院で弾劾調査を進める決議案が、賛成232、反対196で可決。年末のクリスマス休暇までは、ワシントンは弾劾一色となることが確実だ。とても太平洋の向こうの北朝鮮のことなど、構っていられないのである。

 そうなると、北朝鮮もこの冬は、餓死者と凍死者が続出するだろうから、金正恩政権は大ピンチとなる。今後とも、ミサイル発射はもちろんのこと、朝鮮人民軍によるクーデターのような政変も、覚悟しておいたほうがよい時期に来ているのではないだろうか。

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「金剛山の韓国施設をぶっ壊せ」窮状に瀕する金正恩
北朝鮮の金正恩委員長がいよいよ追い詰められてきた。金剛山を視察し、そこにある韓国資本による施設をボロクソにこき下ろして「わが国の力で、名山・金剛山にふさわしい施設を作り直すのだ」と命じたのも、その窮状から来る焦りからだろう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58130?page=3


 
北朝鮮、飛翔体2発発射 安倍首相「強く非難する」
2019.10.31 19:35
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北朝鮮の飛翔体発射を受け、記者団の質問にこたえる安倍晋三首相=31日午後、首相官邸(春名中撮影)
北朝鮮の飛翔体発射を受け、記者団の質問にこたえる安倍晋三首相=31日午後、首相官邸(春名中撮影)
 【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮は31日午後、中部の平安南道付近から日本海に向けて飛翔体2発を発射した。韓国軍合同参謀本部が明らかにした。日本の防衛省は、弾道ミサイルとみられるものが発射されたと発表した。日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落下したもようだ。日米韓の当局が飛翔体の分析を進めている。

 北朝鮮によるミサイルなどの発射は10月2日に新型潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射して以来で、今年5月以降12回目。今回は陸上から発射されており、「超大型放射砲(多連装ロケット砲)」と称した事実上の短距離弾道ミサイルを含め、最近試射した新型短距離弾道ミサイルと同種の可能性がある。

 北朝鮮の非核化などをめぐる米朝実務協議が10月5日にスウェーデンのストックホルムで開かれたが、実質物別れに終わった。その後も北朝鮮はトランプ米政権に敵視政策の完全撤回などを求め、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が期限に指定した年末までに再考するよう金英哲(ヨンチョル)党副委員長名などで相次ぎ談話を出して迫っており、米側の関心を引き付ける狙いがありそうだ。

 あえて内陸を横断するコースで発射することで、新型兵器の実戦配備に向けて飛行精度を誇示する目的もうかがえる。金氏は、南北経済協力を象徴する東部の金剛山(クムガンサン)で韓国側が建てた観光施設の撤去も指示しており、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権を一層揺さぶる思惑ともみられる。

目的がミサイル技術の向上にあることは明らか

北朝鮮の飛翔体発射を受け、記者団の質問にこたえる安倍晋三首相=31日午後、首相官邸(春名中撮影)
 安倍晋三首相は31日夜、北朝鮮のミサイル発射について「わが国と地域の平和と安全を脅かすものであり、強く非難する」と批判した。官邸で記者団に語った。
 首相は「先ほど北朝鮮が短距離弾道ミサイルと判断されるものを発射した」と説明した。その上で「わが国の排他的経済水域(EEZ)の外に落下したことを確認しているが、今年に入り、20発を超える頻発な発射が繰り返され、その目的がミサイル技術の向上にあることは明らかだ」と述べた。
 さらに、国家安全保障会議(NSC)で関係閣僚らと協議したことを踏まえ「これまで以上に安全保障上の警戒監視を強める必要がある。米国、韓国をはじめ、関係国と緊密に連携しながら、国民の生命、平和な暮らしを断固として守り抜いていく決意だ」と強調した。
https://www.sankei.com/photo/story/news/191031/sty1910310020-n1.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo267/msg/123.html

[国際27] IS最高指導者バグダディ その転落の軌跡 バグダディ容疑者の死亡認める=後継者指名、報復誓う−IS
IS最高指導者バグダディ その転落の軌跡
2019年11月2日(土)12時25分

過激派組織「イスラム国」(IS)の指導者、アブバクル・バグダディ容疑者が、米軍急襲を受けて死亡した。写真は2014年7月の動画の1カット(2019年 ロイター/Social Media Website via Reuters TV)

激派組織「イスラム国」(IS)の指導者、アブバクル・バグダディ容疑者が、米軍急襲を受けて死亡した。無名の存在から身を起こし、イスラム教の預言者・ムハンマドの後継者「カリフ」を自称するまでになったが、近年は逃亡生活を送っていた。

トランプ米大統領は27日、ホワイトハウスからのテレビ演説で、米軍特別部隊の急襲作戦によって、バグダディ容疑者が自爆して死亡したと発表した。

バグダディ容疑者は1971年、イラクの首都・バグダッド北部、サマラ近辺の貧しい地域に生まれた。家族にはイスラム教スンニ派の厳格主義グループ、サラフィー主義勢力の伝道師がいる。

米主導の有志連合軍がイラクに侵攻した2003年、バグダディ容疑者はジハード(聖戦)を呼びかけるサラフィー主義勢力の蜂起に参加し、米軍に拘束された。米軍は、バグダディ氏が民間に潜む扇動者の1人ではあるが、軍事的な脅威はないと見て、約1年後に釈放した。

バグダディ容疑者が世界の注目を集めるのは、2014年7月4日になってからだった。聖職者の黒衣をまとい、イラク北部・モスルのモスクの説教壇に上った容疑者は、イスラム国の再建を宣言。「神は、われわれに敵との戦いを命じられた」と述べ、「カリフ・イブラヒム、信徒の司令官」と名乗った。

呼びかけに答え、世界中からイラクとシリアに数千人が集結。シーア派主導のイラク政府および米・西側諸国の同盟との戦いに加わるため、「イスラム国の兵士」として志願した。

ISは最盛期の2016年にイラクとシリアの4分の1の地域を支配。過激思想を掲げて少数派宗教の教徒を迫害した。中でも中東地域で最も古い宗教の1つであるヤジディ教の信者を対象に数千人を集団虐殺し、同容疑者の残虐性があらわになった。また、女性の信者は性奴隷とされた。

5大陸の数十都市で攻撃を実施し、犯行声明を出し、米国人、英国人、日本人らを人質として殺害した。

米国は、国際テロ組織・アルカイダの指導者だったウサマ・ビンラディン容疑者の時と同額の2500万ドルの懸賞金を提示し、バグダディ容疑者の拘束を図った。

バグダディ容疑者の演説は、録音された音声で配信された。秘密主義で慎重な性格に適したこの方法は、長期間にわたって偵察や空爆から逃れるのに役立った。同氏は一方で、意見が対立する者や、以前の仲間を抹殺する無慈悲さも持ち合わせた。

しかし、ここ数年でISとバグダディ容疑者の勢力は急速に衰退。2017年には「首都」モスルで敗戦してイラクでの支配地域をすべて失い、シリアでは「第2の首都」ラッカを奪還された。

「領地」を奪われたバグダディ容疑者は、イラク・シリア国境の砂漠地帯に逃亡。普通の自動車や農作業用トラックで、運転手とボディーガード2人を伴って隠れ家を転々とする生活を送っていた。

暗殺や裏切りを恐れて電話は使えず、イラク人の側近2人とは、わずか数人の密使を通じて連絡を取り合っていた。側近2人はバグダディ容疑者の有力な後継者と目されていたが、1人は17年3月に殺害され、もう1人の行方は分かっていない。


Ahmed Rasheed Ahmed Aboulenein
[バグダッド ロイター]
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/11/is-22.php


バグダディ容疑者の死亡認める=後継者指名、報復誓う−IS
2019年11月01日07時22分

過激派組織「イスラム国」(IS)の最高指導者バグダディ容疑者とされる人物=4月に公開された映像より(AFP時事)
過激派組織「イスラム国」(IS)の最高指導者バグダディ容疑者とされる人物=4月に公開された映像より(AFP時事)

 【カイロ時事】過激派組織「イスラム国」(IS)は31日、系列メディアを通じ音声声明を発表し、最高指導者バグダディ容疑者が死亡したことを認めた。ISは同時に、後継指導者にアブイブラヒム・ハシミ氏を指名したと明らかにした。
米、急襲作戦の映像公開=IS指導者アジトを破壊

 ISは声明で「新しい指導者への忠誠」を誓うようイスラム教徒に呼び掛けた。さらに、米国に対し「喜びすぎるな。新指導者はバグダディの時代が甘く思えるような恐怖を与える」と報復を警告した。
 米軍特殊部隊は26日、シリア北西部イドリブ県でバグダディ容疑者の潜伏先を急襲。トランプ米大統領は27日、バグダディ容疑者が追い詰められた末に自爆したと表明していた。ISの声明は、同容疑者の側近の一人とされ、同時期にシリア北部ジャラブルス近郊で殺害されたと伝えられたIS広報担当官の死亡も確認した。
 ISには、バグダディ容疑者の死亡をあえて認め、後継指導者を発表することで、求心力を失いつつある組織を立て直す狙いもあるとみられる。ハシミ氏については、預言者ムハンマドと同じ部族の「クライシュ族」の出身であることを示唆し、カリフ(預言者ムハンマドの後継者)としての正統性を主張したが、信ぴょう性や詳細な身元は不明だ。

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2019110100028&g=int
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/653.html

[国際27] ロンドンの街角に疲労感、「離脱の議論はもう十分」 英のEU離脱問題、総選挙で結論出るのか
2019年10月30日 / 13:07 / 4日前
ブログ:
ロンドンの街角に疲労感、「離脱の議論はもう十分」
Hannah McKay and William Schomberg
6 分で読む


[ロンドン 25日 ロイター] - 13歳のときからロンドンの街角で花を売っているビル・エリオットさんにとって、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)にかける期待はしぼみつつある。
ブレグジットに投票した露天商のエリオットさんは56歳。透明なラッピングから花束を取り出しながら、「正直なところ、少し諦めつつある。時間が掛かりすぎている」と話す。「今やブレグジットを実現するためには、どれほど不利な条件でも飲まなければならないように思える」
エリオットさんの生活の糧は、オランダの栽培農家から英国に輸入される花だ。サウスロンドンの住民が「欧州で最も長い大通り」と主張するストリータム・ハイロードの街角でその花を売るのが彼の仕事である。
経済への打撃を緩和するための移行措置の取り決めなしに英国がEUを脱退する、いわゆる「合意なき離脱」では、ロンドンの花き卸売市場に短期的な混乱が生じかねない。
だがエリオットさんは、それだけのリスクを負う意味はあるかもしれない、と言う。「ときどき思うのだが、とにかくきっぱりと別れて、その先5年間、我が国の経済がどうなるか見てみるべきではなかろうか」
「個人的には、EUはすでにその役割を終えたと思う。あまりにも多くの国が(EUから)利益ばかり得ようとして、貢献はしていない。ブレグジットが成功すれば、EUは長くは持たないだろう」
英国の有権者が史上初のEU脱退を選択することで世界に衝撃を与えてから3年4カ月が経過したが、脱退の方法や、そもそも脱退の是非をめぐって、国内は依然として割れている。
ボリス・ジョンソン首相は以前、10月31日の離脱期限の延長を要求するくらいならば「のたれ死んだ方がマシ」と話していた。この期限自体、2度の延期によるものだ。
だが、どうやらジョンソン首相にはもっと時間が必要になりそうな気配だ。
<「残留」派の拠点>
ストリータムで暮らす多くの有権者にとって、EU離脱は、国民投票が行われた2016年6月当時とまったく変わらず懸念すべきことだ。
この地域の大半はランベス特別区に属しているが、同区は有権者の5人に4人近くがEU残留を支持したという、英国で最も残留派が強い地域である。その背景には、ストリータムの多彩で多文化的な人口構成がある。
スペイン生まれだが子どもの頃から英国で暮らすジュディス・ペレスさんは、ブレグジットによって、他の欧州諸国で学び働くことを望む英国の若者にとって機会が減少してしまうことを心配している。
ペレスさんによれば、彼女の友人数人は、国民投票以後、すでにロンドンを離れ、ベルリンやバルセロナ、その他のスペインの都市に移ってしまったという。
中古の衣料品や書籍、CDを販売するチャリティショップで働くペレスさんは、「もちろん、EUだって完璧ではない。失業率も高い」と話す。
「けれども、誰もがEUの一員だ。私が初めてこの国に来たとき、どんなだったかを覚えている。それほど良い環境だったわけではない。でも、今ははるかに良くなっている。私たちは今、前進しているのではなく、逆戻りしている」
<「跳ね橋を上げる」行為>
16歳の時にジャマイカからロンドンに移住してきたカフェレ・フェアマンさん(54)にとって、ブレグジットには別の懸念がつきまとう。国境管理の厳格化を背景に人種差別が激しくなることへの恐れだ。
陽射しのなか、大通りに面したバーの店頭に置かれたテーブルでプロセッコを飲みながら、「現状でも、黒人が旅行するときには十分トラブルがある」と彼女は言う。
ストリータムにある教会の1つに所属するアンナ・ノーマンウォーカー牧師によれば、彼女の教区で暮らす人々の政治的見解はさまざまだが、共通の人間性に対するキリスト教信仰は、ブレグジットに伴う混乱によって少しも損なわれていないという。
「ストリータムで暮らすことで、普遍的で多様な、そして素晴らしいコミュニティが得られている。世界がバラバラに細分化され、跳ね橋を上げた状態へと駆け足で戻っていこうとするようで、人々は悲しんでいる」と彼女は言う。
ペンキ塗り用のハケやドリル、のこぎりなどが山積みされたDIYショップ「ADSワン」で働くブライアン・ワトキンスさん(58)は、離脱に賛成票を投じたという。だが今では、ブレグジットで英国が巨額の資金を節約できるという主張に騙されたと考えている。これは、2016年の離脱派が掲げた主要な論点の1つだった。
英国民の大半と同様に、ワトキンスさんも、国会議員らが今後の針路について八方塞がりになっている現状では、ブレグジットの結果がどうなるか見当もつかないと話す。
「どうやらまた3カ月先延ばしになりそうだし、その後さらに6カ月7カ月と延びていかないと誰が言えるだろう」とワトキンスさんは語る。「残留した方がいいのかもしれない。議員たちは、我々を離脱させようとはしていないではないか」
(翻訳:エァクレーレン)
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
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EXCLUSIVE-「ワッツアップ」通じたハッキング、米同盟国の高官ら標的に=関係筋


コラム:ベネズエラ反米政権の借金問題、無効求める暫定大統領の賭け

https://jp.reuters.com/article/britain-eu-highstreet-idJPKBN1X90A8


コラム2019年11月1日 / 12:46 / 1日前更新
コラム:英のEU離脱問題、総選挙で結論出るのか
Peter Thal Larsen
3 分で読む

[ロンドン 30日 ロイター Breakingviews] - 英国の欧州連合(EU)離脱を巡って暗礁に乗り上げた事態を、総選挙で打破する――。英議会は29日夜、12月12日の総選挙実施を圧倒的多数で可決し、こうした結論を出した。ただ有権者がきちんと答えを示してくれるかは不透明だ。選挙でブレグジット(英のEU離脱)の方向性が出てくると期待している政治家は、再び戸惑いを覚えるかもしれない。

少なくともジョンソン首相には、過去5年弱で3回目となる総選挙に踏み切る明確な目的があり、下院議員団に「今こそ国が1つになり、ブレグジットを成し遂げる時だ」と訴えた。同氏は、自身がまとめた離脱協定案を少数与党の議会のまま実現させようとするよりも、国民の負託を得る方が望ましいとの考えに行き着いた。世論調査も同氏の方針の正しさを示唆しており、与党・保守党の支持率はライバルの労働党を10%ポイント前後上回っている。

それでも選挙に打って出るのは大きな賭けの要素が残る。ジョンソン氏は繰り返し、10月31日にEUを離脱すると表明してきた。これは非現実的な約束だったが、結果的に履行できなかった以上、同氏の政敵、特に強硬離脱派の「ブレグジット党」を利することになる。

一方、来年1月末まで離脱期限が延びたことで、EU離脱派が勝利した2016年の国民投票結果の撤回をなお望んでいる有権者は勇気が湧いてくるだろう。ウェブサイト「ブリテン・エレクツ」が追跡している調査を見ると、今国民投票が行われればEU残留に賛成するという人が常に多数派を形成している。そして有権者の動向は予測しづらくなった。2010年から17年の間に行われた3回の総選挙では、有権者の約半数が投票先を変えたという調査結果もある。

とはいえ、国民の間に広がるEU残留への支持を議会の多数派に結びつけるのは難しい。特に歴史的に2大政党に有利な英国の選挙制度ではなおさらだ。有権者は、税金や医療、犯罪、教育といった従来の課題に影響される面もあるだろう。また自由民主党などの親EU勢力が健闘したとしても、16年の国民投票の決定を覆すにはやはりもう一回、国民投票をやり直す必要が出てくるのはほぼ間違いない。

ジョンソン氏が勝っても、ブレグジットに関する自身の悩みが解消されるという状況には程遠い。例えばすぐに直面するのは、来年末までに設定された移行期間を延長するか、もしくはEUと新たな貿易協定に合意する前にたもとを分かつかどうかという、論議を呼ぶ問題だ。

あるいは、12月12日の選挙でも過半数を獲得する勢力が誕生せず、新たな離脱期限が迫ってくるという展開も想定される。前首相のメイ氏は17年、ブレグジットを国民から負託されたかどうかを改めて問い、結果的に過半数を失った。今回も有権者の意見が割れ、選挙で何も決まらずに英国は身動きが取れないままになるリスクが存在する。

●背景となるニュース

*ジョンソン英首相は29日、ついに議会で早期選挙の承認を勝ち取った。同氏はこれでブレグジットを巡るこう着を打開できると期待している。

*12月12日に総選挙を実施する特例法案は、下院で賛成438、反対20で可決された。

*ジョンソン氏は下院議員との会合で「今こそ国が1つになり、ブレグジットを成し遂げる時だ」と強調した。

*労働党のコービン党首は、選挙を真の変化をもたらす機会と位置づけ、労働党政権は国民全員に寄り添うが、ジョンソン氏の保守党は少数の特権階級しか念頭にないと訴えている。

*今月実施した世論調査では、ジョンソン氏が率いる保守党が、労働党を支持率で10%ポイント前後リードしている。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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コラム:ベネズエラ反米政権の借金問題、無効求める暫定大統領の賭け

https://jp.reuters.com/article/brexit-breakingview-idJPKBN1XA0DB

http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/656.html

[国際27] ベネズエラ反米政権の借金問題、無効求める暫定大統領の賭け
コラム2019年11月2日 / 17:07 / 14時間前更新

ベネズエラ反米政権の借金問題、無効求める暫定大統領の賭け
Anna Szymanski
3 分で読む

[ニューヨーク 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ベネズエラの野党指導者で、米国が暫定大統領と承認しているグアイド国会議長が、国営石油会社PDVSAの債務を巡る「シュールな」物語の主役を演じつつある。

グアイド氏は、対立する反米のマドゥロ政権が発行し、グアイド氏側が非合法と見なすPDVSA社債の金利を、今週初めの28日までずっと支払ってきた。これはまともな話とは言えない。

問題となったPDVSAの社債は、米国に拠点を置くPDVSAの製油子会社シトゴ・ペトロリアム(年間売上高300億ドル超)の株式が担保に付いていた。だが、現在は債務不履の状態に陥っている。その社債を保有する米国の債権者からシトゴを守れる存在は、米財務省だけだ。実際に同省は前週、債権者によるシトゴの財産的処理を禁止した。

債権者側は今週、シトゴを通じたPDVSAによる9億3100万ドルの支払いが可能だったと主張。これに対してグアイド氏は、社会主義政権が長年にわたって破壊した経済の復興にその資金を充てる方が得策だと反論した。

この点ではグアイド氏に理がある。ベネズエラ経済は悲惨な状況に直面しており、マドゥロ氏と野党は昨年、実際の物価上昇率が13万%だったのか、それとも170万%だったのかという不毛な論争を繰り広げたほどだ。

もっとも、グアイド氏が道義的な議論で押し切れるのはここまでだ。その理由の1つは、同氏がこれまで、シトゴの資金を利用してPDVSA社債の利払いを実行してきたからだ。国際社会では同氏がベネズエラの最高意思決定者とみなされている以上、利払いの最終的な責任も免れない。そして法的に見れば、シトゴを財産的に処理したいという債権者側の考えは、しっかりした法的根拠に基づいている。

だからこそグアイド氏のアドバイザーは29日、「最期の賭け」としてニューヨークの裁判所にPVDSA社債の無効確認を求めて提訴した。ベネズエラ国会が承認していない起債だったというのがその理由だ。

だが、現実的にこれは成り立たない。ウクライナが英国の裁判所に同じような訴えを起こしたが、昨年却下されてしまった。また、PVDSA社債の目論見書には、国会承認の欠如がリスクとして明記されていない。グアイド氏の弁護人が単に混乱していたか、または、この問題が深刻なリスクにならないと確信していたかだろう。

また、起債権限は、起債する企業の属する国の法律で定められ、ベネズエラ最高裁が認めたとすれば、米国の裁判官がその判断を覆すのは難しいだろう。

グアイド氏の「イチかバチか」の提訴が成功しなかった場合でも、米財務省によるシトゴの保全措置が、引き続き同氏にとって助け船になる。

ただし、同措置の有効期限は3カ月間に限定されている。米政府は債権者との速やかな合意を期待しているのだろうが、その間にグアイド氏が債権者と合意に達すれば、PDVSA社債の支払いは「すっからかん」のマドゥロ政権に委ねられるという、これ以上ないほどシュールな(現実離れした)結末になるかもしれない。

●背景となるニュース

*ベネズエラ野党指導者のグアイド国会議長のアドバイザーは29日、ニューヨークの裁判所に2020年償還の国営石油会社PDVSA社債の無効確認を求めた。同社債が国会の承認を経ずに発行されたためとしている。

*同社債は、PDVSAの米製油子会社シトゴの株式50.1%が担保になっている。28日に9億3100万ドルの元利金が支払われなかったため、事実上デフォルト(債務不履行)に陥った。

*米財務省は24日、同社債に関連したシトゴ株の売却もしくは所有移転を来年1月22日まで差し止めると発表した。マドゥロ政権向け制裁措置の一環だ。シトゴは現在、米国ほか50カ国以上が正統な大統領として承認しているグアイド氏の管理下にある。

*同社債保有者にはアッシュモア、ブラックロック、T・ロウ・プライスなどの投資家が含まれている。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/breakingviews-venezuela-idJPKBN1XA0C3
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/657.html

[経世済民133] 日本投資家の利回り追求、米中貿易摩擦でも中国債購入に向かう ドル指数が5日続落、円は米中交渉の進展で下落 
日本投資家の利回り追求、米中貿易摩擦でも中国債購入に向かう
酒井大輔、Chikafumi Hodo
2019年11月1日 12:08 JST
• 同じ格付けでも運用利回り差は日本の15倍超
• 中国は新興国ではなく主要国になってきている−三菱UFJ国際
日本投資家の中国債購入意欲は、米中の貿易摩擦で市場に不透明感が漂っても薄れることはなさそうだ。日本国債と同じ格付けながら、利回り水準は15倍超。買い越しは2年続いている。国際的な債券指数への組み入れが進んでいることも、投資家の後押しをしている。
  三菱UFJ国際投信債券運用部の樋口達也エグゼクティブ・ファンドマネジャーは、中国債について、「この格付けのレベルで3%台の金利が残っている国は非常に少なく、魅力的だ」と指摘。「経済規模も大きく、貿易戦争をやりながら数カ月でもびくともしていない。そんな国は単体では、世界中にない」と語る。
  ムーディーズの中国債に対する格付けはシングルA。世界の主要な格付け会社が日本とほぼ同じ評価をしているにもかかわらず、10年物国債利回りは3%台と、日本のマイナス0.2%付近を大きく上回っている。市場規模はアジアの中で日本に次ぐ大きさだ。ニッセイアセットマネジメント債券運用部の三浦英一郎リードポートフォリオマネジャーは、「将来的に重要な市場になっていくはずだ。まだ流動性のある金融市場ではないが、中国政府がそれを目指して着実に進めているのは事実」と言う。
 

  海外の投資家がオンショア人民元建ての債券を中国本土に口座を持たなくても、香港経由で取引ができる「ボンドコネクト」が2017年7月に導入されて以降、日本投資家の購買意欲は鮮明になっている。財務省の統計によると、国内勢による中国の中長期債投資(国債以外も含む)はボンドコネクト導入後、累計で8380億円の買い越し。月ベースの買い越しは17年9月から24カ月続いている。

  日本で最大の中国債ファンドの公募投信を運用する岡三アセットマネジメントの堀川一賢シニアファンドマネージャーは、米中貿易戦争などの問題が片付いて、「ファンダメンタルズを反映するような金利の動きが形成されていくようになれば、そこでいろいろリスクを取って行こうと思う」と述べている。
  国際投資家の中国債購入の利便性につながる債券指数への組み入れも進んでいる。1月にはブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合インデックスに採用されたほか、来年2月からはJPモルガンの新興市場インデックスへの組み入れが始まる。
  三菱UFJ国際投信の樋口氏は、国際投資の観点から「中国はだんだんと新興国ではなく、世界の主要国になってきている」と指摘。「まだ日本の投資家にはなじみが薄いアセットクラスだが、今後は主要な投資先になると考えている」と話した。
 

  ただ、中国国債の保有者はいまのところ、同国国内の商業銀行が中心で流動性を不安視する声も聞かれる。
  ニッセイアセットマネジメントの三浦氏は、「総投資額で運用している基金も増えている」としながらも、「普通の機関投資家が中国の債券に魅力を感じて買っているという話は聞かない。世界第2位の経済国にしては、エクスポージャー(リスクを取る度合)は相当少ない人がほとんど。流動性は違うのでそこはネックになると思う」と言う。
  人民元の資本規制なども懸念の一つだ。FTSEラッセルはこうした理由を背景に、世界国債インデックスへの組み入れを見送っている。かんぽ生命保険の福嶋亮介運用企画部担当部長は、「中国は長期的には良い資産になるとみている。ただ、投資するのは難しく、社内のシステムでどうやるか考えないといけない」と語った。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-01/PZ59VMT1UM0W01?srnd=cojp-v2

ドル指数が5日続落、円は米中交渉の進展で下落
Susanne Barton
2019年11月2日 6:13 JST
1日のニューヨーク外国為替市場ではドル指数が5日連続で低下。米経済統計が強弱まちまちの内容となる中、ドル売りが優勢になった。円は主要10通貨に対して軟調。中国商務省は通商交渉で米中が「原則コンセンサス」に達したと説明した。

ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.1%低下。供給管理協会(ISM)の製造業総合景況指数を嫌気して、この日の安値水準に下げた。週間では0.4%低下し、ここ5週間で4週目の下げ
ISM製造業総合景況指数は48.3に上昇。予想中央値の48.9を下回った。前月は10年ぶり低水準の47.8だった。10月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が12万8000人増となり、市場予想(8万5000人増)を上回った。前月は上方修正された
経済指標がまだら模様となる中、金利先物市場が織り込む0.25ポイント利下げの時期は2020年7月と、前日に比べ2カ月ほど先送りされた
クラリダFRB副議長らの発言は、政策金利の据え置きを金融政策当局が示唆したとの見方を裏付けた
円は中国商務省の声明後に下げ幅を拡大した
米中両国は協議が「建設的」だったと評価
ニューヨーク時間午後4時49分現在、ドルは対円で0.1%上げて1ドル=108円16銭。対ユーロでは0.1%安の1ユーロ=1.1164ドル。
原題:
Dollar Falls for 5th Day; Yen Drops on Trade Talks: Inside G-10(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-01/Q0B3JHT1UM1401?srnd=cojp-v2



クオールズ副議長、FRB利下げで米経済は良好な状況に
Matthew Boesler
2019年11月2日 9:00 JST
米連邦準備制度理事会(FRB)のクオールズ副議長は1日、「フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を今年引き下げたことによって、われわれは米景気拡大の継続を支援している」と述べた。コネティカット州ニューヘブンでの講演で発言した。

  同副議長は「緩やかな経済成長と力強い労働市場、インフレ率が2%目標の近辺という見通しに今後の情報がおおむね合致する限り、われわれは金融政策の現行スタンスが引き続き適切な可能性が強いと判断する」と語った。

  同副議長はまた、「米経済が良好に推移しており、見通しに楽観的だ」と述べた。

原題:
Quarles Says Fed’s Rate Cuts Leave U.S. Economy in a Good Place(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-02/Q0BDQTT0AFB601?srnd=cojp-v2


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/544.html

[国際27] ポピュリスト政権がまい進を続けるポーランド
ポピュリスト政権がまい進を続けるポーランド

2019/11/05

岡崎研究所

 10月13日に行われたポーランドの総選挙では、保守ポピュリストの与党「法と正義」(PiS)が、下院での得票率を4年前の37.6%から約44%に伸ばし安定多数を獲得、大勝した。野党「市民のプラットフォーム」は得票率27.4%にとどまった。


Slim3D/nazlisart/iStock / Getty Images Plus
 欧州にいわゆるポピュリスト政権が複数成立してから一定の時間が過ぎ、その成否が分かれ始めている。イタリアやギリシャのように、余り何もできなかったポピュリスト政権が支持を減らしている国がある一方、今回のポーランドPiSのように大勝するものもある。勝利するのは、よかれあしかれ「実績」があると見られているということである。PiS人気を支える最大の要因は、社会的弱者への手厚い保護政策である。特に子育て世代への手厚い支援(子供一人当たり月500ズロティ、約127ドルを支給)、年金支給年齢の引き下げ(67歳であったのを男性65歳女性60歳に)、26歳以下の若者への所得税免除など、一見左派的な政策は、強い支持を獲得した。再選されれば、最低賃金をほぼ2倍にすると約束している。これら福祉政策は、ポーランドの好調な経済に支えられてきた。今やポーランド経済はEU第7位であり、2018年も5.4%の高い経済成長率を記録している。

 同時に、カチンスキーPiS党首は、巧みにポーランド人のナショナリズムに訴えてきた。彼の双子の兄弟レフ・カチンスキーは2010年4月10日に、カチンの森追悼記念式典に出席するため搭乗していた飛行機の墜落事故で亡くなった。それ以来、ヤロスラフ・カチンスキーは黒の背広と黒のネクタイで過ごしている。そもそも双子のカチンスキー兄弟は、ポーランドで人気の子役俳優であった。

 EUは、PiSの敗北を望んでいたであろう。ハンガリーのオルバン政権と並んで、「非リベラルな民主主義」に大真面目に取り組んでいるのがPiSであり、特に最高裁の権限に対して制限をかけている政策は、EUから法の支配の観点より再三にわたり注意を受けているが、ポーランドは聞く耳を持たない。10月10日には、欧州委員会が、ポーランドが司法の独立を脅かしているとして、欧州司法裁判所に提訴した。しかし、ポーランド国民にはほとんど影響がなかった。PiSは前回選挙よりもさらに得票率を伸ばした。

カチンスキーは、いわゆる「西側」のリベラリズムを否定している。これは、1990年代以降東欧諸国に対して「高圧的」に接してきた西側諸国への、旧共産諸国内の反発に支えられている。無条件、無批判に、ブリュッセルの言うまま改革を進めてきたが、それはあまりに単なるコピー「ゼロックス近代化」であった、その中で自分たちを見失ってしまった、という感覚が国民に持たれており、PiSの自己主張は、国民の支持を受けている。特にカトリック色の強いポーランドで、伝統的な家族観の復活を訴えるPiSの戦略は支持されている(カトリック教会もPiSを支持)。ドイツに対して今更のように第二次大戦の賠償を請求しているのも、同じである。PiSはポーランド国民に、「尊厳を取り戻させた」と感じられている。

 1989年の革命を支えた人々も、彼らのヴィジョンがないがしろにされたままブリュッセル(EU)主導の「改革」が無批判に勧められたと感じている。PiSは、EUで不評の「司法改革」についても、旧共産党との決別のために必要であると説明してきている。

 ただ、今回の勝利は、PiS自身が期待していたほどには大きくなかった。得票率は伸ばしたものの、下院での議席数は変わらなかった。その上、上院では野党の統一候補擁立が成功し、これまでの過半数を失った。これまで上下院で過半数を持っていたため、必要な社会保障改革法制を容易に議会で通すことができたが、これからはやや難しくなる。PiSが掲げていた憲法改正も、難しいだろう。しかし、下院で安定多数を持っている限り、政権は安泰であり、ブリュッセルは煙たい政権ともう4年付き合わねばならない。

 リベラル・デモクラシーを支持する側としては、経済原理だけでなく、最低限の生活保障、人々の誇りや尊厳と言った気持ちに対する配慮を取り戻さなければ支持を獲得することは難しいという教訓をポーランドの選挙結果が改めて示していると、認識する必要があろう。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17762
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/667.html

[国際27] 外国人留学生の闇 政府に売られた、「幸せの国」ブータンの若者たち  日本人が目を向けない「消えた留学生」の深層
外国人留学生の闇(2)
政府に売られた、「幸せの国」ブータンの若者たち


2019/11/05

出井康博 (ジャーナリスト)


ブータンの首都ティンプーにあるレストラン(REUTERS/AFLO)
 今、日本への留学をめぐって、政府高官を巻き込んだ大スキャンダルが巻き起きている国がある。「幸せの国」として知られ、今年8月の秋篠宮家の訪問先としても注目を集めたブータンがそうだ。

 ブータンは2017年から18年にかけ、政府主導で日本への留学制度を推進した。その結果、700人以上の若者が日本の日本語学校へと留学することになった。80万弱という同国の人口を考えると、その数は決して小さくない。

 政府主導の制度とはいえ、留学生は費用を借金に頼っていた。その額は日本円で100万円以上に上る。20代のエリート公務員の月収でも3万円程度というブータンでは、かなりの大金である。

 ブータン人留学生たちには母国からの仕送りが望めない。借金を返済しつつ、日本での生活費や学費も自ら稼いでいかなければならなかった。借金漬けで来日し、アルバイトに追われる生活を送る点で、ベトナムなどの“偽装留学生”と同じ境遇だ。

 ただし、ブータン人たちは“偽装留学生”とは異なり、勉強を目的に来日していた。また、日本で待ち受ける生活についての予備知識もなかった。結果、彼らは日本で不幸のどん底を味わうことになる。

 慣れない夜勤の肉体労働に明け暮れ、病を発症した者も少なくない。将来を悲観し、自ら命を絶った青年までいる。本来、留学ビザの発給対象にはならないはずの彼らに対し、日本政府が入国を認めてきた末に起きた悲劇である。

公務員以外には就職先がほとんどない
 ブータン人留学生問題が起きた経緯を振り返ってみよう。

 ブータンでは若者の失業が社会問題となっている。とりわけホワイトカラーの仕事が足りない。民間の産業が育っておらず、公務員以外には就職先がほとんどないからだ。そんななか、ブータン政府は2017年、失業対策の一環として日本への留学制度「学び・稼ぐプログラム」(The Learn and Earn Program)を始めた。

 留学生集めからビザ取得までの実務は、「ブータン ・エンプロイメント・オーバーシーズ」(BEO)という斡旋業者が独占的に担った。BEOはこんな言葉で留学希望者を募っていた。

 「日本に留学すれば、日本語学校への在籍中でもアルバイトで1年に110万ニュルタム(当時の為替レートで約178万円)が稼げる。大卒者には日本語学校の卒業後に就職が斡旋され、最高で年300万ニュルタム(同約480万円)の年収が見込める。希望すれば大学院への進学だってできる」

 こうした甘い誘い文句を信じ、職にあぶれた若者がプログラムに殺到した。

BEOに騙された
 しかし、来日した留学生を待っていたのは厳しい現実だった。日本語の不自由な彼らができるアルバイトは、夜勤の肉体労働ばかりである。母国では見たこともない弁当の製造工場や宅配便の仕分け現場などで、夜通し働く日々を強いられた。しかも留学生に許される「週28時間以内」という就労制限を守っていれば、借金の返済や翌年分の学費を貯めることもできない。彼らには、法律違反を承知で働くしか選択肢はなかった。

 筆者は昨年3月からブータン人留学生の取材を続けている。彼らの生活は、来日当初から悲惨だった。日本語学校が「寮」として用意した3DKの一軒家に、20人以上の留学生が押し込んでいたケースもあった。夜勤バイトを続けているため、顔色が悪かったり、体調に異変が起きている留学生も当時から多かった。

 「BEOに騙されたんです」

 留学生たちは口を揃えてそう話した。ただし、実名を明かして取材に応じる者は皆無だった。

 「学び・稼ぐプログラム」は詐欺に等しい制度である。とはいえ、プログラムへの不満を口にすることは、政府への批判を意味する。

 ブータンは2008年に絶対君主制から立憲君主制へと移行したが、民主主義が根づいているとは言い難い。言論の自由も保障されておらず、政府批判はタブーに近い。たとえ日本にいても、筆者のようなジャーナリストに情報を漏らしているとなれば、帰国後にいかなる仕打ちがあるか知れなかった。そのためプログラムが始まって1年以上が経っても、留学生が日本で直面していた苦境は全く明らかになっていなかった。

 そうした状況を一変させたのが、2018年12月に留学先の福岡で起きたブータン人青年の自殺だった。同年10月のブータン総選挙で、「学び・稼ぐプログラム」を進めた与党が敗北し、政権交代が起きていた。その影響もあって、ブータン国内の報道でも、次第に同プログラムの問題が取り上げられていく。

BEO経営者らが現地警察当局に逮捕
 留学生の親たちは被害者の会を結成し、同プログラムの責任追求に乗り出した。そして今年7月、BEO経営者らが現地警察当局に逮捕されることになった。さらに翌8月には、プログラムを中心になって進めたブータン労働人材省の高官に加え、同省の前大臣までも起訴された。前大臣については直接の起訴理由は別件だが、プログラムの影響も少なからずあったに違いない。ちなみに労働人材省高官と前大臣の起訴は、ちょうど秋篠宮家の現地訪問中の出来事である。

 ブータン人留学生たちの大半は今年3月、日本語学校を卒業した。その多くは「簡単にできる」と説明されていた就職や進学を果たせず、ブータンへと帰国していった。留学費用として背負った借金を抱えてのことである。

 「学び・稼ぐプログラム」では、留学費用の70万ニュルタム(同約120万円)を年利8パーセントでブータン政府系の金融機関が貸しつけていた。毎月2万円以上の返済が5年間にわたって続くスキームだ。

 ブータンへと戻った留学生たちには、半分以上の借金が残っている。だが、帰国後に仕事が見つかった者はほとんどいない。当然、借金返済の目処も全くない。日本への留学によって、彼らの人生は台無しになってしまった。

 一方、今も日本に残るブータン人留学生たちがいる。プログラム最後のグループとして2018年4月に来日し、日本語学校に在籍中の留学生たちと、日本語学校を卒業して専門学校や大学に進学したブータン人たちだ。彼らもまた、別の意味での苦しみを味わい続けている。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17754

外国人留学生の闇(1)
日本人が目を向けない「消えた留学生」の深層


2019/11/01

出井康博 (ジャーナリスト)


(B_Lucava/gettyimages)
 今年3月、東京福祉大学で過去1年間に約700人もの留学生が所在不明となっていることが発覚し、テレビや新聞で大きく報じられた。同大には出稼ぎ目的の留学生が多数入学していた。そんな留学生が学校から相次いで姿をくらました。学費の支払いを逃れて不法就労するためである。

 同大の問題は国会でも取り上げられ、政府は対応を迫られた。そして留学生の受け入れ先となっている学校に対し、監督を強化する方針が打ち出された。

 まず、法務省出入国在留管理庁が6月、文科省と共同で『留学生の在籍管理の徹底に関する新たな対応指針』を発表した。除籍や退学となる留学生を多く出し続けた大学や専門学校には、留学生の受け入れを停止するのだという。

 8月には、日本語学校の運営も厳しく監視されることが決まった。日本語学校は留学生の日本での入り口だ。各学校には今後、留学生の授業への出席率やアルバイトの時間など、これまで以上に管理することが求められる。

 こうした方針に関し、大手メディアは「日本語学校を厳格化 9月から新基準 悪質校を排除」(2019年8月1日『日本経済新聞』電子版)といった具合に報じている。だが、新たな政策によって、本当に「悪質校」は排除されるのだろうか。

 留学生の数は2018年末時点で33万7000人に達し、12年末からの6年間で16万人近く増えた。安倍政権が「成長戦略」に掲げる「留学生30万人計画」も、2020年の目標を待たずに達成された。

 その過程で急増したのが、アジア新興国出身の留学生だった。ベトナムからの留学生は12年から約9倍に増え、8万人を超えるまでになった。また、ネパール人留学生も約6倍の2.9万人程度まで増えている。こうした新興国出身者には、勉強よりも出稼ぎが目的の“偽装留学生”が数多く含まれる。

 “偽装留学生”は日本語学校に支払う初年度の学費など、留学費用を借金に頼っている。こうした留学費用を自腹でまかなえない外国人に対し、政府は本来、留学ビザの発給を認めていない。しかし、原則を守っていれば、「留学生30万人計画」は達成できなかった。だからルールを無視して、経済力のない外国人にまでビザを発給し続けてきた。

不法残留者は5年連続で増加中
 “偽装留学生”は、日本にとっては都合のよい存在だ。学費を支払ってくれるばかりか、安価な労働力としても利用できる。留学生には「週28時間以内」のアルバイトが認められるからだ。

 日本語が不自由な留学生でも、アルバイトを見つけるのは難しくない。ただし、日本人に嫌がられ、働き手が不足する低賃金の重労働ばかりである。企業にとって留学生は実にありがたい。そのため「30万人計画」は、底辺労働者を日本に呼び込むためのツールとなっている。

 そんな同計画の歪みが露呈したのが、東京福祉大の「消えた留学生」問題だった。

 独立行政法人「日本学生支援機構」によれば、東京福祉大は早稲田大に次ぎ、全国2位の5133人(2018年5月1日現在)の留学生を受け入れている。うち約2700人が、「学部研究生」と呼ばれる非正規の1年コースに在籍する。同大で所在不明となった留学生も、約7割は学部研究生だった。

 学部研究生コースは、大学などへ進学するための準備期間という建前だ。日本語能力を実質問われず入学でき、学費も年62万8000円と、一般の大学や専門学校と比べて数十万円は安い。そして大学側は、自らの裁量で定員を設けず留学生を受け入れられる。そのため日本語学校を卒業した“偽装留学生”が続々と押し寄せていた。

 留学生が学校を除籍もしくは退学になった後も、アルバイトを続けていれば違法とみなされる。また、留学ビザの在留期限が切れて日本に留まっていれば、不法残留にも問われる。

 不法残留者の数は今年1月1日時点で7万4167人に上り、5年連続で増加中だ。留学生から不法残留となった外国人も4708人と、過去1年間で約15パーセント増加した。不法残留者の増加は、法務省が最も気にかける問題の1つである。東京福祉大の問題は、同省といても見過ぎせない。

“特殊な”学校で起きた不祥事なのか?
 とはいえ、学校側に「管理の徹底」を求めるだけで、問題は解決するのだろうか。過去5年間、留学生に関する取材を続けている筆者にはそうは思えない。学校への監視の強化は、あくまで対処療法に過ぎない。根本的な解決には、“偽装留学生”の受け入れ自体を止めることが重要だ。しかし、そこには手がつけられていない。

 「消えた留学生」問題はメディアで大きく取り上げられたが、しばらく経つと関連の報道は止んだ。世の中には、東京福祉大という“特殊な”学校で起きた不祥事との印象が残った。だが実際には、同大の問題は、氷山のごく一角が露呈したに過ぎない。

 留学生の受け入れ現場では、貧しい国からやってきた外国人が「留学生ビジネス」の餌食になり続けている。その実態は、政府が「消えた留学生」問題への対策を打ち出した以降、むしろ悪化すらしている。象徴的な例が、「幸せの国」と呼ばれるブータンから来日した留学生たちの苦境である。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17753
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/668.html

[国際27] 主要株価指数が最高値、米中合意を楽観 「中国への対抗」―米議会は超党派で厳しい姿勢 習近平氏、対外開放推進と強調 米中首脳会談へアピール
主要株価指数が最高値、米中合意を楽観
Todd White、Sarah Ponczek
2019年11月5日 6:32 JST 更新日時 2019年11月5日 7:00 JST
4日の米株式相場は続伸。主要株価指数は最高値を更新した。米中通商協議に対する楽観からリスク資産の需要が高まり、米国債は下落した。

米国株は続伸、ダウ平均は7月以来の最高値更新
米国債は続落、10年債利回り1.78%
NY原油は続伸、米中通商問題が解決近い兆し
NY金先物は小幅続落、米中通商交渉の進展で
  ダウ工業株30種平均が最高値を更新するのは7月以降で初めて。先週の米利下げに加え、米中が「第1段階」の貿易合意に近づいているとの関係者の話が流れ、S&P500種株価指数とナスダック総合指数も最高値を記録した。

  企業ニュースでは、マクドナルドが最高経営責任者(CEO)解任を発表し、アンダーアーマーは会計処理を巡って連邦政府当局の調査を受けていることを明らかにした。両社とも株価は下げた。

Dow joins other major benchmarks at record highs
  

  S&P500種は前営業日比0.4%高の3078.27。ダウ平均は114.75ドル(0.4%)高の27462.11ドル。ナスダック総合指数は0.6%上昇。ニューヨーク時間午後4時43分現在、米国債市場では10年債利回りが7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の1.78%。

  TDアメリトレードのチーフマーケットストラテジスト、JJ・キナハン氏は「この決算発表シーズンはおおむね予想よりもはるかに良好だ」と指摘。「信じがたいほど強い決算シーズンではなくても、予想を大きく上回っている。関税を巡る発言は大半が前向きなものだ。特に雇用関連で明るい数字が引き続き発表されているが、経済全般の数字も良好だ」と述べた。

  ニューヨーク原油先物相場は続伸。トランプ大統領と習近平国家主席が通商協定に署名する場所について、中国当局者が米国内を検討しているとの関係者の話が伝わり、貿易問題が早期に解決に向かうとの見方が強まった。一時は2.2%上昇する場面もあったが、その後に伸び悩んだ。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物12月限は34セント(0.6%)高の1バレル=56.54ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は44セント高の62.13ドル。

  ニューヨーク金先物相場は小幅続落。米中通商交渉が進展の兆しを見せ株価が上昇したため、安全な逃避先とみなされる金の需要が弱まった。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は0.1%未満安い1オンス=1511.10ドルで終了。

原題:U.S. Stocks Rise to Records as Treasuries Slump: Markets Wrap(抜粋)

Oil at Highest in a Week on Possible U.S.-China Trade Deal

PRECIOUS: Gold Declines as Trade Optimism Curbs Haven Appeal

(コメントを追加し、更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-04/Q0GOHADWLU6J01


「中国への対抗」―米議会は超党派で厳しい姿勢

2019/11/05

斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)


(iStock.com/flySnow/Purestock)
 トランプ政権発足以来、米議会は内政外交のほとんどあらゆる問題めぐり、与野党間で激しい対立を繰り返してきた。例外は、中国に対する対抗姿勢だ。野党民主党は、対中貿易問題のみならず、安全保障面でも政府の方針を基本的に容認し続けている。米中関係は来年大統領選結果いかんにかかわらず、楽観を許さない状況が続きそうだ。


(Tanaonte/gettyimages)
 その端的例が去る10月24日、ペンス副大統領が行った語気鋭い中国問題演説だった。

 対中強硬派で知られるペンス氏が中国政策に関する主要演説を行ったのは、昨年10月以来2度目だ。今回は、貿易摩擦打開をめざす両国首脳会談の早期開催の観測も高まる中で、とくに注目されたが、結果的には融和姿勢より対抗姿勢の目立った内容だった。

 その中で際立ったのは、香港の抗議運動への言及であり、とくに中国側の感情を逆なでした以下のような“内政干渉”発言だ。

 「香港の抗議運動は、中国が『自由』を受容した時に何が起こるかを知る生きた範例living exampleだ。(抗議参加者たちに向けて)われわれはあなたがたによって魂を呼び起こされている。どうか皆さんが何百万人もの米国民の祈りと称賛の下にあることを知っておいてほしい」

 中国側はその日のうちに激しく反応した。中国外務省報道官は定例会見の冒頭、記者団からの質問を受ける前に、まず用意した声明を下に反論した:

 「ペンス副大統領のスピーチは傲慢、二枚舌、政治的偏見、欺瞞に彩られたものであり、

 到底受け入れがたい。彼は自国政府の政策の失敗について国民の関心をそらすために、中国を材料にしている……」

 米国の外交雑誌「フォーリン・ポリシー」最新号によると、ペンス演説に象徴される厳しい対中批判の背景には、トランプ政権内部で最近、香港の抗議運動と米中貿易戦争をあえて関連付ける“リンケージ戦略”が浮上してきているという。つまり、もし中国が抗議運動鎮圧のために強硬措置に出た場合、貿易協議での米側の妥協がより困難になり、逆に中国側からの譲歩を引き出しやすくなる。そのために、トランプ政権が抗議運動への肩入れを明確にすればするほど貿易協議を有利に進められるという算段だ。

 実際、米中貿易協議はその後、米国ペースで進んでおり、今月半ばには、トランプ大統領が習近平氏を農業州アイオワ州に招き首脳会談を開催、農業・金融部門に限定した「第一段階の合意」文書に署名する予定だ。

 ペンス氏はさらに演説の中で、中国側が公正な土俵での交渉に後ろ向きの態度しか見せていないことに言及「中国が(トランプ以外の)別の大統領を交渉相手に求めていることは、これまでの経済的、戦略的アクションが示しており、アメリカの世論を操作しようとしている」とまで言い放った。中国側には、両国貿易通商問題の抜本的解決のために、次期大統領選挙以後まで待つべきだとする見方もあると伝えられており、この点にクギを刺した指摘と解釈されている。

 しかし、興味深いのはこの間、ナンシー・ペロシ下院議長をはじめとする民主党幹部や議員たちが、このようなトランプ政権の対中国対抗姿勢について、ほとんど沈黙し続けていることだ。

民主党も反中
 今回の舌鋒鋭いペンス演説後も、これまでのところ、民主党のどの議員からも、異議を唱える声が上がっていない。

 それどころか、今年に入り、香港の民主化要求運動が盛り上がるにつれて、民主党議員たちの間からは支持表明があいついだ。

 そして去る9月18日には、ペロシ下院議長がわざわざ抗議運動の学生指導者ジョシュア・ウォン氏をワシントンに招待、議長室で他の民主党議員たちが同席する中で、勇気ある行動を讃えるとともにエールまで送ったため、中国メディアが一斉に「過激活動家を勇気づける越権行為だ」としてペロシ議長らを激しく非難する騒ぎにまでなっている。

 対中貿易問題でも、民主党はトランプ政権の強気の姿勢を支持してきている。象徴的だったのが、今春、予算や関税問題などに関して強大な権限を持つ下院歳入委員会がロバート・ライトハウザー米通商代表の出席を求め開いた「米中貿易問題」公聴会だった。

 民主党が多数を制する下院では通常、共和党政権閣僚が各委員会での証言に立つ場合、野党民主党側から厳しい質問が浴びせられることがしばしばだが、同公聴会では終始静まり返った雰囲気の中で行われた。そして民主党の出席議員の間からは、中国側に安易に譲歩することなく、毅然たる態度で臨むよう求める声があいついだ。リチャード・ニール委員長自らも「アメリカ経済の将来的繁栄は米中貿易いかんにかかっている。ぜひ確固たる姿勢で対中協議に臨み、良き取引をしてもらいたい」と通商代表を激励するほどだった。

 さらに民主党は安全保障政策面でも、台頭する中国の脅威を直視する姿勢を前面に打ち出してきた。オバマ政権当時の2012年1月、公表された米軍事力のアジア太平洋への「リバランス」戦略が一例だ。同戦略は中国との直接対決を決してめざしたものではなく、東西冷戦終結によって生じかねない「空白」への中国の影響力拡大に備えたものだが、その基本的考えは今日、国防総省が立案する「国家安全保障戦略」にも受け継がれて来ていると言えよう。

 これに対し、歴代共和党政権はこれまで、中国に対しては対抗姿勢より、むしろ「戦略的関与」「平和的競争」路線を踏襲してきた。冷戦最中の1972年、電撃的訪中により米中国交正常化の道を切り開いたのは、ニクソン共和党政権だった。

 共和党はその後も、米中経済関係拡大に力を注ぎ、2002年12月、中国の世界貿易機関(WTO)正式加盟が実現したのも、ブッシュ共和党政権の時だった。

来年大統領選に向けて対中国問題で“苦慮”しているのは、むしろ民主党
 今日のように両国間の貿易摩擦がエスカレートするに至ったのは、トランプ政権になってからであり、トランプ政権下の対中外交姿勢はむしろ、伝統的共和党路線より民主党側の主張に近い。

 こうした状況下で皮肉にも、来年大統領選に向けて対中国問題で“苦慮”しているのは、むしろ民主党のようだ。

 ニューヨーク・タイムズ紙は去る8月10日、「貿易問題でトランプよりいかにタフに振る舞うか―民主党の2020年問題」と題する興味ある記事を掲げた。その中で次のように指摘した:

民主党は長年、「中国を米国産業に打撃を与える『経済的侵略者economic aggressor』と位置付け、北米自由貿易協定(NAFTA)についても、米国労働者の仕事を奪うものだと非難、中国の通貨政策を『自国の製品を安価に米国市場で乱売するもの』として為替操作をやり玉に挙げてきた。
しかし、トランプ大統領は就任後、同様に中国を『為替操作国』と断定、民主党のお株を奪っただけでなく、おもちゃ、ラップトップ・パソコン、シューズなどの中国製品に対して追加関税を課した。
トランプ政権は民主党が非難してきたNAFTAについても、再交渉協議に入っており、民主党同様に“バイ・アメリカン”主義を前面に打ち出している。
この結果、民主党は気まずい立場になり、共和党政権との違いをどう出すべきか苦慮している。党内はトランプ路線と同等かそれ以上に中国に対して厳しく臨むべきだとするエリザベス・ウォーレン、バーニー・サンダース両大統領候補ら急進派と、クリントン、オバマ民主党政権当時のような対中穏健路線を受け継ぐジョー・バイデン候補らの現実派とに意見が2分されている。
 また、ロイター通信も9月9日付けで「対中貿易戦争のエスカレートにともない、民主党は発するメッセージに苦慮」との見出しの記事を配信、バイデン候補の経済担当顧問を務めるジャレッド・バーンシュタイン氏の言葉を引用しながら「トランプがこれまでやってきた対中貿易戦争が、中西部の農民や労働者に悲惨な結果をもたらしてきたと批判するのはいいが、他方で、中国に対してより寛容な態度を示すことなく協議を進展させる代替案はどうあるべきか、民主党側にとってはトリッキーな問題であることはたしかだ」と報じている。

 来年大統領選での再選に向けて、あくまでラストベルト(さびついた工業地帯)や農村票を支持基盤とするトランプ陣営としては、今後も引き続き対中貿易政策については従来通りの厳しい姿勢を貫くことは間違いない。

 一方の民主党側も本来、保護貿易主義、国内産業重視を政策綱領の柱としてきた体質だけに、もし、民主党候補が勝利することになったとしても、果たして対中関係改善が大きく前進することになるかどうか、楽観は禁物だろう。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17811


 

習近平氏、対外開放推進と強調 米中首脳会談へアピール
2019年11月5日 12:09
 【上海共同】中国・上海で5日、外国企業が中国に売り込みたい製品やサービスを展示する「中国国際輸入博覧会」が始まった。習近平国家主席が開幕式で演説し「関税を一層引き下げる」と語り、対外開放を進めると強調した。また米国が求める知的財産権の保護について「各国共同で強化すべきだ」と述べた。

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 プレスセンターの大画面に映し出された「中国国際輸入博覧会」で演説する中国の習近平国家主席=5日、上海(共同)

 米中貿易協議で部分合意署名の場となる首脳会談に向けて、米側にアピールした格好。習氏が首都北京以外の催しに2年連続で姿を見せるのは異例で、米中摩擦を緩和させると同時に外資の投資を呼び込み、国内経済の低迷脱却を図りたい考え。(共同通信)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/493771
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/669.html

[経世済民133] ヘッジファンド運用者を不安にさせる1990年代後半の日本デジャビュ ドル・円は一段高、米中協議進展の報道受けリスクオン 日本株は大幅反発
ヘッジファンド運用者を不安にさせる1990年代後半の日本デジャビュ
Ksenia Galouchko
2019年11月5日 12:34 JST
• ニューマン氏は20年前は日本株担当、今は欧州株投資を手掛ける
• トヨタの株価収益率が20年前に高かった理由、今は理解
ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズの株式ファンドマネジャー、ルーク・ニューマン氏は、デジャビュ(既視感)の不安感を抱いている。
  20年前にキャリアを開始したころ、ニューマン氏はドイチェ・アセット・マネジメントのアナリストとして日本株を担当していた。今はヘッジファンドで欧州株投資を手掛けるが、今の欧州と1990年代後半の日本に幾つかの類似点があると感じ、不安を覚えている。
  「過去20−30年にわたって日本で目撃したものと欧州の間に非常に心配な類似点が多数ある」と、ロング・ショート株式戦略で約70億ドル(約7600億円)を運用するニューマン氏はロンドンでのインタビューで語った。
  弱い経済成長、低インフレ、債券利回りの低さと、現在の欧州の状況と日本の失われた10年の類似点は積み上がっている。ニューマン氏によると、このような環境下での主要なリスクは、強固なキャッシュフローを提供しない高レバレッジ企業が経済にあふれてしまうことだ。そこで同氏は、いわゆる成長株、つまり強力なバランスシートを持ち収益期待の高い企業に焦点を絞ることを勧める。

  「市場が少しでもデフレリスクを嗅ぎ取った場合、最悪なのは財務レバレッジだ」とニューマン氏は指摘。「勝者となるのは、成長のない世界で収入を伸ばせることを実証できる企業だ」と述べた。
  クオリティー株とグロース(成長)株が今年の勝ち組となる中で、ネスレなどの株価が割高になっている。ニューマン氏は2000年代初頭に日本企業を扱っていた際、なぜトヨタ自動車の株価収益率が他の自動車株と比較して非常に高いのか理解できなかったが、今では当時のトヨタが現在の欧州でのクオリティー成長株に相当することが分かると説明。地政学上ないし成長低迷のリスクが続く場合、こうした銘柄はさらに上昇する公算があるとみている。

原題:Hedge Fund Investor Has Tense Flashback to Late 1990s Japan (1)(抜粋)
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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-05/Q0GYQE6KLVR601?srnd=cojp-v2


 

 
ドル・円は一段高、米中協議進展の報道受けリスクオンー108円台後半
野沢茂樹
2019年11月5日 11:55 JST 更新日時 2019年11月5日 16:03 JST
東京外国為替市場のドル・円相場は午後の取引で一段高。米中通商協議が進展するとの報道を受け、投資家のリスク許容度の高まりからドル買い・円売りが優勢となった。豪ドル相場もリスクオンの流れで対ドル・対円とも上昇。

午後3時46分現在のドル・円は前日比0.2%高の1ドル=108円80銭。一時108円83銭まで上昇
ユーロ・ドル相場はほぼ変わらずの1ユーロ=1.1127ドル、ユーロ・円は0.2%高の121円09銭
豪ドルは対ドルで0.3%高の1豪ドル=0.6906ドル、対円では0.6%高の75円16銭
市場関係者の見方
みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジスト

海外政治リスクの後退とともに世界的にリスクオンの流れとなり、200日移動平均線がある109円ちょうど近辺への上昇がみえてきた。基本的には110円超えまで行くのではないか
ただ、米中貿易協議の第一段階は本当に文書化して握手してくれるか不透明で、市場は期待しつつも警戒せざるを得ない。5月の111−112円に戻るには米中の合意と12月に予定される対中追加関税の撤回などが必要
豪州は対中輸出が多いことから米中通商協議の進展との報道を受け、豪ドルは底堅く推移するだろう
三井住友信託銀行ニューヨークマーケットビジネスユニットの持田拓也調査役

東京市場は連休明けとあって、米中貿易交渉の進展を受けたリスクオンをまだ消化していない向きもいるだろうから、もう少し上値を試してもおかしくない
きょうの上値めどは200日移動平均線をにらみ、109円ちょうど近辺か。下値は108円50銭程度と予想
ただ、市場は米中交渉の進展を先月から織り込んできており、第一段階の合意に至った後に先行きもリスクオンがさらにどんどん進むとは考えにくい
ドル・円はリスクオンで上値試す展開
背景
米中、第1段階の貿易合意に向け進展示唆−習主席の訪米にも前向き
米国は中国への関税の一部、1120億ドル相当の撤回を検討−FT紙
中国国営メディア、対米貿易交渉で全ての懲罰的な関税の撤廃など「核心的な関心事」あらためて強調
豪中銀、政策金利を0.75%に据え置き−必要なら追加緩和の用意
10月の米雇用統計は非農業部門の雇用者増が前月比12.8万人と市場予想を上回る、利下げ休止の正当性示す
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-05/Q0GZW1DWLU6B01


中国人民元が上昇、8月以来の6元台−「一時的」と早くも警戒感
Tian Chen、Claire Che
2019年11月5日 17:07 JST 更新日時 2019年11月5日 21:32 JST
本土市場の人民元、0.6%高の6.9880元−1ドル=7元の節目超える
元相場予想ランキングトップの周浩氏、元高は長続きしないと予測
5日の取引で中国人民元は8月以来となる1ドル=6元台に上昇したが、この上昇は長続きしないとアナリストらはすでに警告している。

  本土市場では人民元が一時0.60%高の6.9880元、オフショア取引では最大で0.66%上昇した。1ドル=7元は8月に中国人民銀行(中央銀行)がこの水準を超える元安を容認するまで、長年にわたり下値支持線として機能していた。

China's yuan rises past key 7 level for the first time since August
  人民元相場は米中貿易協議の進展ぶりを示すバロメーターとなっている。両国が合意に近づきドルが下落した過去1カ月は上昇が続いた。一方、中国の経済成長率が1990年代前半以来の低水準にとどまり、人民銀行は5日に主要金利の1つを引き下げた。

  元相場予想ランキングでトップのコメルツ銀行、周浩氏は「1ドル=6元台への上昇は一時的にすぎないだろう」とし、「中期貸出制度(MLF)の金利引き下げは、人民銀行が元高は中国経済にとって良くないと見なしている可能性を示唆する」と述べた。

  周氏はまた、人民銀が毎日発表する中心レートを一段の元高を抑制する要因として挙げた。中心レートは4営業日連続で予想よりも元安方向に設定されている。

  シティグループのストラテジストらは、米国が中国製品に対して9月に課した関税の撤回に合意すれば、6.9元に向けて元高が進む可能性があるとみる。一方、招商銀行の李劉陽氏は合意が最終的にまとまるまで疑念は残ると語った。

  ブルームバーグが調査したアナリストの年末の元相場予測は平均で7.15元となっている。

原題:China Pros Already Calling Time on Yuan Surge Past 7 Per Dollar(抜粋)

中国:15年ぶりユーロ建て債発行へ、3本立てで計40億ユーロ−関係者
Hannah Benjamin
2019年11月5日 21:05 JST
中国は40億ユーロ(約4840億円)相当のユーロ建て債を3本立てで発行する。中国のユーロ建て起債は15年ぶりとなる。

  公に話す権限がないとして匿名を条件に述べた関係者の情報によると、投資家からの需要は195億ユーロを突破した。

  償還期限は7年、12年、20年で、5日中に発行条件が決定される見込み。

原題:
China Is Said to Raise Four Billion Euros From Three-Part Bond(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-05/Q0HKJ1T0AFB501


日本株は大幅反発、米中楽観や米雇用堅調−景気敏感中心に全業種上げ
長谷川敏郎
2019年11月5日 8:09 JST 更新日時 2019年11月5日 15:42 JST
• 米中は貿易交渉進展を示唆、米国は対中関税の一部撤回検討と英FT
• 10月米雇用者数は市場予想上回る、円は1ドル=108円80銭台に下落
5日の東京株式相場は大幅反発。米中通商交渉に対する楽観が一段と強まったことや米国の堅調な雇用情勢、為替の円高一服から業績懸念が後退した。機械や素材、原油関連など海外景気敏感中心に東証33業種は全て高くなった。
• TOPIXの終値は前営業日比27.66ポイント(1.7%)高の1694.16
• 日経平均株価は401円22銭(1.8%)高の2万3251円99銭
o いずれも昨年10月以来の高値
〈きょうのポイント〉
• 米中は第1段階の貿易合意に向けさらなる進展を示唆
o ロス米商務長官は華為技術(ファーウェイ)への米企業による部品販売のライセンス付与が「近く」行われると言明
o 中国は輸入とさらなる関税引き下げに力を注ぐ−習主席
• 米国は中国製品1120億ドル(約12兆2000億円)相当への関税を撤回するか議論−英紙フィナンシャル・タイムズ
• 10月の米非農業部門雇用者数は12万8000人増、市場予想(8万5000人増)上回る
• ドル・円相場は一時1ドル=108円80銭台、前週末の日本株終値時点は107円98銭

東証ロゴ
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  JPモルガン・アセット・マネジメントの前川将吾グローバル・マーケット・ストラテジストは「雇用統計で想定以上に景気が強い、耐えているという中で米中貿易も改善するということなら、景気後退という懸念を若干低下させるような形で動いている」と述べた。
  4日の米国株が最高値を更新した上、米中に関する楽観的な報道も後押しして日本時間5日の米S&P500種株価指数のEミニ先物や中国株が上昇。世界的な株高を背景にTOPIXは昨年10月以来の1700ポイントに接近し、売り圧力が和らぐとの期待が出ている日経平均は2%超上昇する場面があった。
日経平均が「真空地帯」に突入の記事はこちらをご覧ください
  大和証券投資情報部の石黒英之シニアストラテジストは米中通商問題について、「これまでは米国と中国の発言内容が違っていたことが多かったが、今回はそろっており合意は近い」と指摘。先週末の米世論調査では次期大統領選でトランプ氏が劣勢と伝えられているとし、「選挙まで1年を切る中でトランプ米大統領が米中の緊張を和らげるとの市場判断につながっている。日本株は業績先行き期待から上がりやすい」とみていた。

• 東証33業種は鉱業や石油・石炭製品、ガラス・土石製品、証券・商品先物取引、機械、保険、海運が上昇率上位
• 東証1部売買代金は3兆554億円、3営業日ぶりの3兆円台
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-04/Q0GRVAT1UM1701


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/562.html

[経世済民133] 日銀総裁、財政政策と一緒にやる考えがある訳ではない−金融政策 ゴールドマンCEOもマイナス金利政策に批判的−良い実験ではない ユーロ圏の成長減速、リセッションを意味せず=ESM総裁
日銀総裁、財政政策と一緒にやる考えがある訳ではない−金融政策
占部絵美
2019年11月5日 14:19 JST 更新日時 2019年11月5日 15:48 JST
財政・金融のポリシーミックス、単独よりもより効果高まる
過度な超長期金利低下防ぐのに意味ある−50年債発行や20〜40年増額
黒田総裁
黒田総裁 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
日本銀行の黒田東彦総裁は5日、名古屋市内で記者会見し、財政・金融政策のポリシーミックスはより効果が高くなるとしながらも、「財政を拡張した時に一緒にやるという考えが特にある訳ではない。あくまでも金融政策として必要がある時に必要に応じたことを行う」との考えを示した。

  黒田総裁は、世界の中央銀行で大幅な金融緩和が続く中、「財政政策の余地のある国が財政政策を活用するのが適切かつ必要ではないかという議論が欧州内であり、ワシントンでの国際通貨基金(IMF)・世銀総会でも出ていた」と紹介。その上で、「政府が必要に応じて財政政策をさらに活用することになれば、財政・金融のポリシーミックスという形で単独で行うよりもより効果高まる」と述べた。

  現行の金融緩和政策の下での国債買い入れについては、「あくまでも日銀が金融政策の一環として必要に応じて市場から国債を購入しており、全くその財政ファイナンスではない」との認識を改めて示した。

  総裁は現在の10年債の操作目標0%程度について、プラスマイナス0.1%の倍くらい変動しても「解釈としてはおかしくない。その点は、現在でも変わっていない」と指摘。「0%程度を変えることは金融政策としてあり得るが、そのことと政策金利のフォワードガイダンスとは別の話」と述べた。

黒田総裁の午前の講演に関する記事はこちらをご覧ください

  また、緩和継続の副作用として、超長期の過度な低下は年金基金や生保の収益に影響が出て消費者マインドに悪影響を及ぼす恐れがあるとし、「超長期金利はあまり下がり過ぎないようにする必要がある。イールドカーブがあまりフラットにならないのが好ましい」と指摘した。

  その上で、「政府が50年債を発行するとか、現在の20、30、40年という超長期債の発行を増やすということが仮にあるとすれば、超長期債の金利が過度に下がることを防ぐという意味では意味がある」と語った。

(第2段落以降に黒田総裁の発言を追加して更新しました)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-05/Q0A0UPDWLU6F01?srnd=cojp-v2


 

ゴールドマンCEOもマイナス金利政策に批判的−良い実験ではない
Nicholas Comfort、Matthew Miller
2019年11月5日 19:37 JST
将来に振り返った時に良い政策であったとは思われないだろう
マイナス金利が本当に建設的だとは思わない−ソロモンCEO
ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)は、欧州が行うマイナス金利の実験は地域経済のプラスになっておらず、将来に振り返った時に良い政策であったとは思われないだろうとの見方を示した。

  同CEOは「将来マイナス金利を歴史として振り返る時、素晴らしい実験だったようには見えないだろうと思う」と5日のブルームバーグTVのインタビューで語った。 欧州の「成長が世界の中で後れを取っていることは明白で、マイナス金利は成長を加速させてはいないというのが私の見解だ」 と述べた。

  欧州では5年におよぶマイナス金利政策の効果と悪影響についての議論が白熱化しつつある。市中銀行への負担は重くなり、長期的な副作用を懸念する声も大きい。ドイツ銀行のクリスティアン・ゼービングCEOは最終的に金融システムを破壊するとまで発言している。

   ソロモンCEOもマイナス金利の経済に対する恩恵に疑義を呈し、「マイナス金利が本当に建設的だとは思わない」と述べた。

マイナス金利の影響について語るゴールドマンのソロモンCEO

Markets: European Open.” (Source: Bloomberg)
原題:Goldman’s Solomon Joins Critics of Europe’s Negative Rate Policy(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-05/Q0HNSR6K50XU01


 

ビジネス2019年11月5日 / 18:39 / 3時間前更新
ユーロ圏の成長減速、リセッションを意味せず=ESM総裁
Reuters Staff
1 分で読む

[ニコシア 5日 ロイター] - ユーロ圏の救済基金である欧州安定メカニズム(ESM)のレグリング総裁は5日、昨年から続くユーロ圏の経済成長減速は予想以上に厳しい状況かもしれないが、必ずしも景気後退(リセッション)が迫っていることは意味しないと述べた。

レグリング総裁はニコシアでの会合で「減速局面にはあるが、リセッション局面ではない」と語った。

ユーロ圏経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は力強く、成長は潜在力に近い水準だと指摘。「循環的な減速がすべてリセッションにつながるのではなく、またすべてのリセッションが新たな危機を示唆するわけでもない」と述べ、「今回の成長減速は主に外的要因に関連している一方、域内需要は引き続き堅調だ」と語った。

将来的な危機に対するユーロ圏の対応能力は10年前に比べて高まっているとした上で、金融構造の強化に向けたさらなる取り組みが可能だとの見解を示した。

総裁は、ユーロ圏の構造に欠けている重要な要素である共通の預金保険や、欧州の「安全資産」の必要性が協議されるべきだと述べた。
https://jp.reuters.com/article/eurozone-esm-regling-idJPKBN1XF15Y
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/563.html

[経世済民133] 進む建設革命、6─8割の省人効果も 4次元CGや無人ロボット 経済不振の日本、今こそキャッシュレス化の恩恵必要 ビットコインの17年急騰あおったのは「たった1頭のクジラ」OPEC、今後数年間の世界シェア縮小を予想−米産シェールが躍進
トップニュース
2019年11月5日 / 15:39 / 5時間前更新
焦点:
進む建設革命、6─8割の省人効果も 4次元CGや無人ロボット
中川泉 ダニエル・ルーシンク
4 分で読む


[東京 5日 ロイター] - 建設業で生産革命が進行している。首都圏の渋谷駅再開発では、4次元CGを活用した工程管理や無人ロボットによる工事の自動化、短縮化が実現。国の公共工事でも、大規模工事の6割程度でICT工法導入が進む。先行き不透明な日本の産業界の中で、人手不足などを逆手に生産性を高める建設業は、危機的状況を乗り越えつつある。
<生産性向上、4次元シュミレーションで6割>
「100年に一度の大規模工事」―─東急建設(1720.T)が自らそう呼ぶ渋谷駅周辺の再開発工事。JR2路線、地下鉄、私鉄を含む鉄道複数路線の駅の横・縦の移動、河川の流れの付け替え、駅のリニューアル、周辺での超高層ビル5棟の建設全てが、ほぼ同時に進められている。渋谷駅の1日の平均乗車人数は約166万人。鉄道の運行と人の流れを止めることなく大規模工事を進行させる必要がある。
ここで威力を発揮したのが、デジタル測量技術を活用した正確な3次元設計図だ。
東横線の線路を一夜にして地下に移動させる工事は、終電から始発までの短い時間が勝負となった。障害物の点検は、実物大の疑似車両での試験走行に代わって、3次元レーザースキャナーによる空間計測で、正確かつ効率的に実施することが可能となった。
東京メトロ銀座線の駅移設新設工事では、3次元モデルの空間把握と時間経過を組み合わせた4次元のバーチャルシミュレーションである「BIM」を作成。これを工事関係者全員に見せることで、イメージの共有に役立てた。
平面の図面を数百枚配布する従来型の方法に比べて関係者自らの仕事の把握が格段に進み、人件費の6割削減という大幅な生産性向上が実現している。
東急建設・土木事業本部ICT推進グループの小島文寛氏は「これによって仕事の仕方が変わり、元のやり方に後戻りできなくなっている。2回目の線路切り替えの際には、現場が自らBIMを作成し、問題点を早い段階で議論することができるようになってきた」と語る。

<無人ロボット開発強化 投資増強に動く>
イメージ把握やデータ活用といった分野のほかに、大手建設会社などは独自ロボットの開発を進めている。工場で決まった動きを繰り返すロボットと異なり、建設現場は日々施工が進行し、状況が変化する。ロボットもこれに合わせて移動と作業を両方こなす能力が必要だ。
都市部で需要の盛り上がる高層オフィスビル建設では、最先端のAI・カメラ・センサーなどを搭載した建設ロボットを実装する試みが進行中だ。
清水建設(1803.T)では、「ロボマスター」と名付けたクラウドの下で、数多くのロボットがお互い干渉することなくコントロールされ、自動で作業を行うことを目指す。情報インプットはアイパッドで行い、現場の誰もが簡単に操作できる。
現在導入されている無人ロボットは、鉄鋼の溶接、資材運搬、天井のビス打ちの分野。導入現場ではそれぞれ75−80%の省人化効果を発揮した。
印藤正裕・常務執行役員は「最近の建物の外装や設備は手間のかかる仕事が増えた。ロボット活用のポイントはそこにある」と語る。過酷な仕事である資材運搬や溶接、大量のビス打ちなどをロボット化することに焦点を当て、建設業のマイナスイメージを払しょくし、若い世代を取り込みたいと狙いを明かす。
ただ、清水建設の場合でも、工事全体では何万工程もの作業のほんの一部だけがロボット化されているに過ぎない。印藤常務は「今は開発費用の回収可能なレベルまで生産性が上がってきた現場もある。もっと台数が増えれば1台あたりのコストも低減していく。今後は採算が大きく改善する伸びしろがある」とみている。
そのため「活用が広がればさらにロボットへの投資を拡大していく」として、過去3年間で累計30億円のロボット投資をさらに拡大していく方向だ。

<ICT化進む災害復旧工事>
国の公共工事でも、大規模工事の6割程度でICT工法導入が進んでいる。国土交通省によると、従来の人による測量や設計図作成、建設機械の運転と比べ、業務量はおよそ3割の縮減効果となっている。特に水害への対処に必要な浚渫工事など河川改修では約4割の業務削減効果の成果が出ている。
西松建設(1820.T)では、東日本大震災からの復旧に向けた三陸沿岸道路復興道路工事で、掘削79万平方メートル、盛土32万平方メートルの大規模土木工事にICT工法を採用した。
3Dレーザースキャナーにより一度に広範囲の面的な測量を行い、施行管理を「見える化」したほか、1日90台程度のダンプトラックの運行管理として位置情報の監視や速度管理にスマートフォンを使ったGPS運航管理システムを導入した。
<施行のICT化、課題多く>   
つい数年前までは、建設現場が自然環境に左右されること、工事内容が個々に異なることから、「建設現場を工場化する」のは不可能であると見られてきた。それを打破するために始まった「i-Construction」はまだ緒についたばかりだが、測量や設計、工程管理においてはすでにICT技術が活発に利用されている。今後は実際の構造物の施工への活用が重要になってくる。
三菱総研参与で次世代インフラ事業本部の竹末直樹氏は「構造物の施工は工程が複雑に絡み合う場合も多い。個々のケースにいかに対応して効率化できるか」と課題をあげる。
「本格化する老朽化インフラの維持・補修では、既設構造物の図面がなかったり、紙の図面しか残っていないケースもある。これらのデータを取得して3次元化するのは困難と予想される」と指摘。維持・補修に必要な現状データの作成から始めなければならず、その整理には時間がかかりそうだとしている。
それでも、「日本では産官学でi-Constructionに取り組んでおり、海外と比べても先進的だ。アプローチは間違っていない」として、竹末氏は現在の技能工不足という課題は乗り越えられるとの見方を示す。

編集:石田仁志
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」

https://jp.reuters.com/article/japan-construction-idJPKBN1XF0PB

 

コラム2019年11月5日 / 18:34 / 3時間前更新

経済不振の日本、今こそキャッシュレス化の恩恵必要
Pete Sweeney
2 分で読む

[香港 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日本政府は、国民の間にはびこる「現金中毒」について本格的な治療に乗り出そうとしている。紙幣を廃止すれば、経済活動を一時的に高める効果があるだけでなく、恒久的な生産性向上が期待できる。だがそのためには政府がキャッシュレス決済に消極的な高齢者や中小小売店に今までのやり方を変えるよう、そして彼らにやさしい銀行も対応を改めるよう、もっと強く促していかなければならない。

日本国内にある112兆円相当の紙幣と硬貨をデジタル化するメリットは計り知れない。現実に目を向ければ、日本では買い物全体の80%に現金が使われており、電子決済という面では先進国で恐らく最も遅れている。

そうした保守的な姿勢が、数多くの不必要なコストを生み出している。それは硬貨の鋳造や紙幣発行は言うに及ばず、ATM(現金自動預け払い機)の維持管理や、現金の勘定や輸送に何時間も費やしている人への給与などだ。また現金は隠しやすく、追跡が難しいので、徴税担当者や司法当局にとってはいら立ちの種になる。理論的には、現在導入されているマイナス金利の景気刺激効果を妨げる面さえもある。隠匿された現金にマイナス金利は影響を及ぼさないからだ。

ビザとルービニ・ソートラブが実施した調査では、キャッシュレス社会が実現した場合、東京と大阪だけで累積的に700億ドルの経済効果が見込まれる。より規模が小さい都市圏の相対的なメリットはもっと高くなるだろう。

日本政府は、2025年までにキャッシュレス決済の比率を今の2倍の40%に高めたい考えだ。これは第2・四半期の成長率が1.3%にとどまった日本経済に多大な恩恵をもたらしてくれる。ソフトバンク(9984.T)傘下のペイペイや、フリーマーケットアプリのメルカリ(4385.T)など、キャッシュレス拡大の波に乗ろうとしているフィンテック企業の後押しにもなる。

日本よりも人口や銀行数が少ない国は、脱現金化が迅速に進められている。一方、安倍晋三首相は、約3500万人に上る年金生活者に新技術を受け入れさせ、中小小売店には手数料徴収手続きに慣れてもらい、銀行にはATMの使用手数料引き上げを納得させる必要がある。ところがこれまでの首相のキャッシュレス推進に向けた取り組み姿勢は奥ゆかし過ぎる。10月の消費税増税の際にはキャッシュレス決済に伴うポイント還元策が打ち出されたが、とても十分とは言えない。足元のさえない経済状態を考えれば、より徹底的にキャッシュレス化を目指す上で今ほどの好機は2度とやってこない。

●背景となるニュース

*10月24日に発表された日本の製造業活動の前年同月比は、過去3年余りで最も急速な縮小を記録した。新規受注と生産の不振が響いた。

*日本政府は10月1日に消費税率を8%から10%に引き上げた。これに伴って中小小売店でキャッシュレス決済をすると、消費者にポイントが還元される制度が導入された。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/japan-cashless-breakingviews-idJPKBN1XF0HM


ビットコインの17年急騰あおったのは「たった1頭のクジラ」か−研究
Matthew Leising、Matt Robinson
2019年11月5日 14:56 JST
• ビットコイン上昇の市場操作説を発表して昨年物議、論文を更新
• テザーは論文の内容を否定、「基本的に欠陥がある」と法律顧問
米国の2人の研究者が昨年、ビットコインの2017年の天文学的値上がりは恐らく市場操作によって引き起こされたとの説を発表して物議をかもした。両氏は今回、その不正行為の背後にいたのは価格を動かす力を持つ「たった1頭の市場のクジラ」だった可能性が高いという驚くべき説を追加した。
  テキサス大学のジョン・グリフィン教授とオハイオ州立大学のアミン・シャムス教授によると、仮想通貨交換所ビットフィネックス上のある参加者は、ビットコインの価格が特定のしきい値を下回るとそれを押し上げる力があるようだ。両教授は18年に発表した当初の論文を更新し、ビットコインを押し上げる取引には、1ドルの価値を持つことになっているデジタルトークンのテザーが利用されていると指摘した。

  「われわれの研究結果は、ビットコインの価格を動かすのは数千人の投資家ではなく、たった1人の強大な投資家であることを示唆している」とグリフィン氏はインタビューで述べた。 「今から数年後に人々は、正体も分からず監督の目も行き届かない相手に、投資家が数十億ドルを手渡したと知って驚くだろう」と語った。
  テザーは論文の内容を否定。法務顧問のスチュアート・ヘーグナー氏は、論文は不十分なデータセットに基づいているため「基本的に欠陥がある」とのコメントを出した。
  ビットフィネックスとテザーは同じ幹部が運営・管理しており、これまでにも議論の的になってきた。テザーは1コインに1ドルの裏付けがあるとする主張にも、疑義を呈するトレーダーは多い。
  ビットコインが操作されたというグリフィン、シャムス両氏の仮説は、新しいテザーがドルの裏付けなしに生み出され、ビットコイン購入に使われたため、ビットコイン価格が上昇したという理論に一部基づいている。
  著者らは17年3月1日から18年3月31日までのテザーとビットコインの取引を調査し、ビットコインの価値が一定幅低下するとビットフィネックスでのビットコインの購入が増えたことを発見した。ビットフィネックス上での取引でビットコインの価格を動かしたと思われる取引主体の名前は示されていない。両氏は最新の研究内容をブルームバーグ・ニュースと共有した。
原題:A Lone Bitcoin Whale Likely Fueled 2017 Surge, Study Finds (1)(抜粋)


OPEC、今後数年間の世界シェア縮小を予想−米産シェールが躍進
Grant Smith
2019年11月5日 19:52 JST
2023年のOPEC産石油生産見通しを15%下方修正
OPEC産石油需要、2024年まで毎年縮小を予測
石油輸出国機構(OPEC)は向こう数年間の生産見通しを下方修正した。米国からのシェールオイル供給が拡大し、2020年代半ばまでは世界市場におけるOPEC産石油のシェアが縮小すると予想している。

  OPECが発表した年次報告書「世界石油見通し」によると、今後4年間でOPEC産石油への需要は約7%の縮小が見込まれている。産油量は2023年に日量平均3270万バレルまで落ち込む見通しだ。

  2019年から23年の年間OPEC産石油需要見通しは、平均で毎年日量約500万バレル、16%相当下方修正された。見通し引き下げはOPEC加盟国に変動があったことも影響した。カタールは今年初めに脱退した。

  OPECは引き続き、米国産石油の生産拡大から厳しい圧力を受ける見通し。米国はテキサス州やノースダコタ州などで使用されている「水圧破砕法(フラッキング)」により世界最大の産油国となった。

  同報告書は、「中期的にはOPEC非加盟国の石油供給の伸びをけん引するのは、今後も圧倒的に米国のタイトオイル(シェールオイル)だ」と指摘した。

  米国産シェールオイルの生産量は2025年までに40%超拡大し日量1700万バレルに到達する見込み。昨年時点の予想から日量310万バレル引き上げられた。25年には1日当たりの世界石油生産の5分の1を米国が占めると予想されている。

OPEC in Decline?
Group sees need for its oil falling each year until 2024


Source: OPEC

原題:OPEC Sees Its Market Share Shrinking for Years as Shale Triumphs(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-05/Q0HMRBT0AFBC01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/564.html

[経世済民133] 過剰なフリーマネーで「世界は狂いシステムは壊れた」空売り比率40%割れ、日本株調整招いた過去2回  孫社長「判断まずく反省」米国長期債の快進撃に陰り 米求人件数が予想外に減少、1年半ぶり低水準 米住宅ローン市場に流動性リスク、影の銀行成長
過剰なフリーマネーで「世界は狂いシステムは壊れた」
ダリオ氏
Nathan Crooks
2019年11月6日 11:24 JST
資金と信用力あればフリーマネー利用可能、なければ利用不可
富と機会、政治的な格差拡大の要因に−リンクトインへの投稿で指摘
資産家のレイ・ダリオ氏
資産家のレイ・ダリオ氏 Photographer: David Paul Morris/Bloomberg
ヘッジファンド運用者で資産家のレイ・ダリオ氏は5日、世界経済におけるフリーマネーの逆説について「世界は狂いシステムは壊れた」と歯に衣着せぬ見出しのエッセーをリンクトインに投稿した。

  投資会社ブリッジウオーター・アソシエーツの創業者のダリオ氏は「資金と信用力がある人にはマネーは基本的にフリー(無利息)だが、金と信用力のない人には本質的に利用できない。これは富と機会、政治的な格差拡大の要因だ」と指摘した。

  ダリオ氏は同日、米コネティカット州で開かれた「グリニッチ・エコノミック・フォーラム」で経済的不平等は「国家的な非常事態」になったと発言していた。


Ray Dalio

@RayDalio
My below piece “The World Has Gone Mad and the System is Broken” explains some of the crazy things that are happening, why they are happening and why I believe that they are unsustainable. I’d be interested in knowing what you think about them. http://bit.ly/RD11_5


The World Has Gone Mad and the System Is Broken
I say these things because: Money is free for those who are creditworthy because the investors who are giving it to them are willing to get back less than they give. More specifically investors...

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4,144
6:56 - 2019年11月6日
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投稿の主な引用
「ベンチャーキャピタル(VC)投資家が、既に十分な資金を持ちそれ以上の資金を求めないスタートアップ企業に資金を押しつけているケースもある。一方で投資家はこうした企業に、投資を受け入れないなら競合するスタートアップ企業に多大な支援を提供し打撃を与えると脅している」
「健全な金融を放棄したこのような全体的な動きは、特に準備通貨国とその通貨で持続し、おそらく加速するだろう」
「裕福な資本家は、富の格差や紛争が深刻でない場所にどんどん移動していく。これらの高額納税者を失った政府当局者は彼らを閉じ込める方法をますます模索するだろう」
「ほとんどの人にとって資本主義をうまく機能させるシステムは壊れている」
原題:
Ray Dalio Says the ‘World Has Gone Mad’ With So Much Free Money(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-06/Q0ITNJT0AFBC01?srnd=cojp-v2

空売り比率40%割れ、日本株調整招いた過去2回

長谷川敏郎
2019年11月6日 11:11 JST
TOPIX(上)と空売り比率(下)
東証1部の空売り比率が5日に37.2%へ一段と低下し、2018年9月21日以来の水準となった。40%を下回るのは、10月31日以降3日連続。過去1年間で空売り比率が40%を割ったのは、ことし3月4日と昨年11月30日。いずれも1日だけだ。今回の現象について、いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は「売り方の買い戻しがいったん終了したことを示す。比率の急低下は買い戻し圧力が強かったことの表れ」と語る。「株価は一本調子で上がってきたが過熱感は出ていない。景況感の改善が続いていて今回は下がりにくいのではないか」とみていた。過去2回は、その後に株価は調整局面になった。


ソフトバンクG社長、「判断まずく反省」−WeWorkで巨額赤字
日向貴彦、古川有希
2019年11月6日 17:01 JST 更新日時 2019年11月6日 19:08 JST
7−9月期決算、「台風というか大嵐」「私自身の判断まずかった」
ウィーワーク投資、「天下に恥じることはない」
ソフトバンクグループの孫正義社長

ソフトバンクグループの孫正義社長は、ビジョンファンド事業で1兆円近い巨額赤字を計上した四半期決算について「反省し過ぎて萎縮する必要はない」と述べ、設立を表明した2号に続く3号ファンドの組成にも意欲を示した。

  6日に発表した7−9月期(第2四半期)決算は、ビジョンファンドからの営業損益が9703億円の赤字となった。前年同期は3925億円の黒字。期末時点の投資先88銘柄のうち、米ウィーワークやウーバー・テクノロジーズなど25銘柄の公正価値減少が響いた。ビジョンファンド事業の収益は2017年4−6月期から公表されており、赤字は初めて。

  孫社長は会見で、「ぼろぼろ。台風というか大嵐で、これだけの赤字を出したのは創業以来ではないか」と総括し、「私自身の投資判断がまずかった。反省している」と述べた。

  巨額赤字の要因となったシェアオフィス事業のウィーワークに対する財務支援については「救済ではなく、株式価値の洗い替え」だと説明。既に投資している株式価値が高過ぎたと反省し、「もう少し価値を安く仕入れた形にしたいというのが願望だった」という。

  ウィーワークの現状については「赤字。年々急激に増えているのは事実」とした上で、損益改善のため、日本を除き新規ビルの増加を数年にわたり停止することを明らかにした。 

relates to ソフトバンクG社長、「判断まずく反省」−WeWorkで巨額赤字
ビジョンファンド事業で1兆円近い巨額赤字を計上Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  一方、投資先の評価益の計算に関しては厳正な審査を受けており、「適当にやっているわけではない」と弁明。今回の赤字決算で「多くの株主、銀行の皆さんに心配をかけた」とし、今後の投資方針については「投資先の財務はあくまで独立採算。救済しにいく投資はしない」と明言した。

  孫社長はさらに、7月に設立を発表済みの2号ファンドの規模については、慎重に考えざるを得ない投資家がいるとしながらも、「おおむねの枠としてはファンド1と同程度になるのではないか」との見方を示した。サウジアラビアの政府系ファンドからの出資交渉については言及しなかった。

  いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は、ウィーワークへの支援について「孫社長らしくない決断だった」とした上で、収益化計画は「説明不足の感が否めない」と批判。投資会社としてのソフトバンクGのガバナンスや投資姿勢についても「マーケットの疑心暗鬼は残ってしまった」と話した。

  第2四半期の全体の連結営業損益は7044億円の赤字だった。営業赤字への転落は05年4−6月期以来、14年ぶりだ。前年同期は7057億円の黒字。純損益は7002億円の赤字。ウィーワークの株式評価損が発生したとし、今期(20年3月期)の個別決算で特別損失4977億円を計上する見込みとしている。

ソフトバンクグループの決算詳細記事はこちらをご覧下さい

  ソフトバンクGは10月、経営難にあるウィーワークへの総額95億ドル(約1兆円)の金融支援を決めた。50億ドルを貸し付けるほか、既存株主から最大30億ドルの株式を公開買い付け(TOB)した上で15億ドル相当を出資し、株式の保有比率を80%程度まで高める。同社はビジョンファンドなどを通じ1兆円程度を出資し、約3割を持つ筆頭株主となっていた。

  孫社長は、ウィーワークの企業統治を巡り「売り上げは倍々ゲームで連続して伸びていた。良い点を見過ぎていたという反省はしている」と発言。上場延期などいったん成長が逆回転すると、価値の毀損(きそん)が一気に拡大したが、同社への投資は「天下に恥じることはない」と述べた。

(孫正義社長の発言内容を追記します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-06/Q0JDHFDWX2PU01?srnd=cojp-v2


米国長期債の快進撃に陰りも−デュレーション投資に巻き戻しの動き
Katherine Greifeld
2019年11月6日 19:23 JST
期間10年以上の米国債、年初来リターンは約17%−足元では失速
Mスタンレーのキャロン氏、ポートフォリオのデュレーションを短縮
米国と中国は部分的な貿易合意に近づいている様子で、成長とインフレの見通しを改善させつつある。絶好調の米国長期債にとっては、これが逆風となりそうだ。

  ブルームバーグ・バークレイズ指数によると、期間10年以上の米国債の11月4日までの年初来リターンは約17%に上り、2014年以降で最高の年間上昇率を達成するペースだ。だが、パフォーマンスは失速を始めた。10年および30年物の利回りは9月以来の高水準に達し、同指数はこのまま月末を迎えれば3カ月連続の低下となる。

  最近の長期債の売りは、2019年が終わりに近づくにつれて投資家が利益を確定しようとしている結果かもしれないと、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントは指摘する。ポートフォリオマネジャーのジム・キャロン氏は、デュレーションが長くなるほど利回り低下時には大きな利益を得られるという戦略こそ、今年の債券投資リターンの鍵だったと話す。

Long-dated Treasuries index on pace for best performance since 2014
  「デュレーションは恩恵も与えれば損失も与える」と言うキャロン氏は 「金利がまた上がるなら、人々は急いでこれまでの利益を守ろうとするだろう」と述べた。

  30年物米国債利回りは5日に2.34%に上昇。貿易摩擦への懸念が高まりインフレ期待が急低下していた8月には過去最低の1.9%を付けていた。10年債利回りは1.86%と、9月上旬に付けた3年ぶり低水準の1.43%から上昇している。

  米国の経済見通しに照らして10年債利回りは2%に近づくと考えるキャロン氏は、10月上旬から、ポートフォリオのデュレーションを短縮しているという。

原題:
Long Bonds’ Best Year Since 2014 at Risk on Trade Vibes (1)(抜粋)
Long Bonds’ Best Year Since 2014 at Risk on Trade Vibes (2)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-06/Q0J926T0AFB401?srnd=cojp-v2

 

米住宅ローン市場に流動性リスク、影の銀行成長で
Rich Miller
2019年11月6日 16:26 JST
ムニューシン米財務長官が議長を務め、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長も参加する金融安定監視評議会 (FSOC)は、11兆ドル(約1200兆円)規模の住宅ローン市場で経済に打撃を与えかねない流動性の逼迫(ひっぱく)が発生するリスクがあるとスタッフから報告を受けた。

  高リスク分野を中心とする住宅ローンの組成および債権回収業務でシャドーバンキング(影の銀行)が急成長している状況が、米金融規制・監督機関で構成するFSOCに最近示された懸念の背景にある。

  「住宅ローン市場における流動性の危機」と題する2018年の論文の共同執筆者であるカリフォルニア大学バークリー校のナンシー・ウォレス教授は「現実の脆弱(ぜいじゃく)性がここに存在する。これらの業者の多くが資金的に不安定だ」と指摘した。

  これらの金融業者は、金融ストレスが発生すれば取り下げられるであろう短期の銀行与信に依存しており、住宅ローン業務を縮小せざるを得なくなれば、住宅市場と経済全般に最終的に打撃になりかねないと懸念されるという。

Shadow Banks Dominate the Mortgage Market
They're now the source of most of the loans


Source: Urban Institute

Non-bank origination share of agency-backed mortgages

原題:Mortgage Liquidity Squeeze Flagged as Risk to Powell, Mnuchin(抜粋)


 

米求人件数が予想外に減少、1年半ぶり低水準−前月分は上方修正
Chris Middleton
2019年11月6日 0:21 JST 更新日時 2019年11月6日 2:04 JST
米労働省が5日発表した9月の米求人件数は、市場予想に反して減少し1年半ぶりの低水準となった。減少は広範な業界に及んでおり、採用活動が依然底堅いながらペースダウンしている兆候があらためて示された。

キーポイント
求人件数は前月比27万7000件減の702万4000件
ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は706万3000件
前月は730万1000件(速報値705万1000件)に大きく上方修正
離職率は2.3%に低下−3カ月ぶり低水準
労働者が職探しに引き続き自信を持っていることを示唆
U.S. job openings are at the lowest level since March 2018
インサイト
求人件数は昨年終盤に過去最高を記録して以降、下降トレンドにあり、9月は直近4カ月で3回目の減少。適材確保が難しく、景気見通しが曇る中、企業は今年、雇用に後ろ向きになっている
欠員総数は米失業者数を100万人余り上回った
詳細
州・自治体政府の求人件数は62万2000件に増加−2000年以降で最高
雇用された労働者は0.9%増えて593万人。自発的離職者と解雇者の合計であるセパレーションは、1.3%増加し581万人
求人件数は小売りやヘルスケア、専門職・ビジネスサービス、建設の各業界で減少。全米4地域のすべてで減少した
原題:Job Openings in U.S. Fall to 18-Month Low as Hiring Holds Up (1)(抜粋)

(詳細を追加して更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-05/Q0I4P1T1UM0W01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/568.html

[経世済民133] 難解な金融政策、もはや「ロジック不要」の日銀ウオッチング 債券市場に「タントラム」懸念が再燃−米中貿易雪解けの兆し 米中二極化リスクと日本の課題 「身の丈に合わない」政策を実行したチリの悲劇
難解な金融政策、もはや「ロジック不要」の“日銀ウオッチング
”森田京平:クレディ・アグリコル証券チーフエコノミスト
政策・マーケット 経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層
2019.11.6 5:00

 10月30・31日に金融政策決定会合を開いた日本銀行は、金融政策(政策金利と資産買い入れ)を据え置く一方、先行きの政策金利の方向を示す「フォワードガイダンス」を修正し、将来の利下げに含みを持たせた。
 フォワードガイダンスの修正は、追加緩和の余地の少ない中で市場の緩和期待をつなぎとめるために腐心した跡がうかがえるが、日銀の主観的な物価判断に依存する度合いが強まり、市場参加者には政策金利の先行きがますます読みにくいものになった。
新たなフォワードガイダンス
日銀の主観的な物価判断次第に
 新しいフォワードガイダンスの文言は、「日本銀行は、政策金利については、『物価安定の目標』に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」とされた。
 このガイダンスは、(1)「少なくとも2020年春頃まで」とされてきた従来の「カレンダー依存型」を「物価のリスクに依存する型」に変え、同時に、(2)CPI(消費者物価指数)の展開次第では利下げがあり得ることを明示した(図表1)。
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客観的な判断基準、何も示されず

ガイダンスの文言は修辞学的にも文学的にも難解だが、最も難解なところは、「注意が必要な間」という箇所だろう。
 客観的な判断基準が何も示されないまま、「注意が必要な間」というフワフワした表現が使われており、市場とのコミュニケーションに資する要素が見当たらない。
 一体、市場は何をもって「注意が必要な時」と「注意が不要な時」を見分けたらよいのか。結局、これは日銀の判断次第ということである。
 つまり、このフォワードガイダンスは「利下げが必要になったら利下げをするが、利下げの要・不要の判断は、その時になったら日銀が判断する」という情報しか伝えていない。
 その結果、このフォワードガイダンスには、将来の政策金利を見通すための「ガイダンス」という機能が込められていない。
「注意が必要な時」と「注意が不要な時」の見極めが日銀の主観的な判断次第となるのであれば、このフォワードガイダンスがある限り、今後の金融政策を予想するための「日銀ウオッチング」はロジック不要となる。
 文字通り日銀を「ウオッチ」するしかない。

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景気判断の修正は適度に分散


 しかも、日銀はすでに7月時点で、必要な場合は「躊躇なく」追加緩和するというコミュニケーションを始めていた。具体的には、7月の決定会合以降、日銀は「先行き『物価安定の目標』に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる」と明示している。
 今回、刷新されたフォワードガイダンスは、この「躊躇なく」というコミュニケーションの屋上屋という思いを禁じ得ない。
景気判断との整合性を欠く
日銀の物価についての判断
 とはいえ日銀が金融政策を担う以上、物価のモメンタムが損なわれるリスクについて「注意が必要な時」と「注意が不要な時」の見極めが、日銀の裁量に一定程度はゆだねられる面があることは否めない。
 ただし、それは日銀の主観的な物価判断が景気との整合性を維持していることが前提だろう。
 実は、この整合性に対して大きな疑問を呈するのが、他でもない日銀の「展望レポート」である。
 展望レポートに示される日銀のGDP見通し(景気判断)と、CPI見通し(物価判断)の修正パターンを振り返ってみよう。
 まずGDP見通しについては、これまで「上方修正」「下方修正」「据え置き」の3パターンが適度に分散しており、一方向に偏った修正パターンは見られない(図表2)。
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ずっと外れてきたCPIの見通し

ところが、CPI見通しは、黒田総裁の下で量的・質的金融緩和が始まった2013年4月以降、ほぼ下方修正しか見られない(図表3)。
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 つまり、日銀のGDP見通しの修正と、CPI見通しの修正の間に整合性は見られない。
 これは何を意味するだろうか。
 それは、日銀のCPI見通しが外れてきた背景は、景気(GDP見通し)を見誤ったことにあるのではなく、景気と物価の関係を見誤ったことにある、ということだ。
 別の言い方をすると、日銀が見誤ってきたのは景気(GDP)ではなく、フィリップス曲線(需給ギャップとCPIインフレ率の関係)の傾きと切片である。なおフィリップス曲線の切片は、需給ギャップがゼロ、つまり経済がインフレ的でもデフレ的でもない状態で実現するインフレ率を表し、おおむね予想インフレ率に相当する。
 さらに敢えて身もふたもない言い方をすれば、日銀のGDP見通しとCPI見通しの修正の間に整合性が見られないということは、日銀の物価判断(CPI見通し)の妥当性を評価する上で、日銀の景気判断(GDP見通し)は参考にならないことになる。
 この点を踏まえて、今回、修正されたフォワードガイダンスについてもう一度、考えてみよう。
 上述したように物価のモメンタムが失われるリスクについて「注意が必要な時」と「注意が不要な時」の見極めが日銀自身の物価判断に依存する。ところが、どうやら日銀の物価判断は、景気判断との整合性を欠くことが見えてきた。
 景気判断との整合性を欠く日銀の極めて主観的な物価判断に基づいてフォワードガイダンスが運用されるのであれば、市場参加者にとって、このフォワードガイダンスは「ガイダンス」にならない。

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不自然に高い2020年度物価見通し

今回の展望レポートでも
不自然なCPI見通しを公表
 景気判断との整合性を欠く日銀の物価判断は、今回の決定会合の際に発表された「経済・物価情勢の展望」(展望レポート 2019年10月)でも健在(?)だった。
 発表されたばかりで申し訳ないが、筆者は、日銀のCPI見通しは、次回の来年1月の展望レポートで下方修正されることが、早くも確定しているとみている。
 なぜならば今回の日銀のCPI見通しは不自然だからである。
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 展望レポートで日銀が示したCPI見通し(消費税率引き上げ・教育無償化の影響を除く)は、2019年度+0.5%、20年度+1.0%、21年度+1.5%だった。
 これを、各年度に属する月に線形案分してみよう。そうすることで、日銀がどのような物価トレンドを念頭に置いているかが可視化されると同時に、年度ベースのCPI予測がどの程度、実現性を持っているかを評価しやすくなる。
 まず2019年度+0.5%のインフレ率が実現するには、同年度末の2020年3月のコアCPIは前年度比+0.5%とならなくてはならない。
 エネルギー価格のマイナス効果が2020年初頭まで強く表れることを考えると、この伸び率はおおむね妥当といえる。
 これを踏まえて、2020年度+1.0%のインフレ率が実現するには、2021年3月のコアCPIが前年度比+1.5%に達する必要があり、そのためには同年度中のインフレ率は急速に高まらないといけない。
 2021年3月時点のインフレ率だけで評価すれば、これは前回7月時点の展望レポートからの事実上の上方修正である。
 ところが、このペースでインフレ率が高まるとみておきながら、今回の展望レポートで日銀は、2020年度のGDP成長率を、従来の前年度比+0.9%から+0.7%に、むしろ引き下げている。

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「日銀の主観」を追うだけの作業に

ということは、日銀のCPI見通しは、GDP(景気)ではなく、予想インフレ率(フィリップス曲線の切片)が上がることを前提としていることになる。
 しかし、例えば、直近9月調査の日銀短観では。小売り、対個人サービス、宿泊・飲食サービス業など家計向けセクターは一年後の販売価格見通しを下げている。つまり、予想インフレ率はむしろ下向きのリスクにさらされている。したがって予想インフレ率が高まるという日銀の見方は非常に主観性の強いものだと言える。
 さらに、2021年度+1.5%のインフレ率を実現するとすれば、今度は逆に同年度の各月のインフレ率は上昇ペースがかなり弱まる(「強まる」ではない!)ことになる。
予測は「日銀の主観」を
追うだけのむなしい作業に
 展望レポートで示された日銀のCPI見通しがこのようなちぐはぐな動きになるのは、2020年度のCPI予測が不自然に高いからだ。
 足元にかけてみられるCPIの毎月の変動パターンを踏まえると、2020年度のCPIインフレ率が2019年度を明確に上回るという予測は、物価に対して非常に強気であるか、月次の統計をちゃんと見ていないかのどちらかでないと、作ることはできない。
 日銀が2019年度(前年度比+0.5%)を0.5%ポイントも上回る2020年度CPI見通し(同+1.0%)を出した背景として、2020年度のCPI見通しを自然体の水準まで下げてしまうと、物価上昇のモメンタムが失われていないという日銀の主観的な物価判断を維持できなくなってしまうという事情が垣間見える。
 いずれにせよ、今回の日銀のCPI見通し(とりわけ2020年度の見通し)は不自然と言わざるを得ず、次回の展望レポートで早々に下方修正されるだろう。
 このように日銀の主観が深く組み込まれた物価判断によって、今後はフォワードガイダンスが運用される。そこでは客観的なデータに基づくロジックなどは不要である。
 市場関係者の今後の金融政策の予測や分析は、日銀の「主観」を追うだけのむなしい作業になりそうだ。
(クレディ・アグリコル証券チーフエコノミスト 森田京平)
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鈴木明彦

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市川雅浩

日銀に残された追加緩和策とは何か
木内登英
https://diamond.jp/articles/-/219557?page=6


 
債券市場に「タントラム」懸念が再燃−米中貿易雪解けの兆し
John Ainger
2019年11月6日 12:44 JST
• 仏国債利回りは7月以来初めてほぼプラスの領域に上昇
• 「15年春の売りと同じように感じられつつある」−ダンスケ銀

Photographer: NICOLAS ASFOURI/AFP
世界的な債券の売りは5日に深まった。米国が中国製品に対する関税措置を緩和し米中に雪解けが訪れるとの楽観ムードや米サービス部門の予想を上回る指標が安全資産への需要を後退させた。
  米中貿易摩擦が和らぐ兆しを受けて米国債、欧州債、日本国債は下落。10年物米国債利回りは今年の最低を40ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上回った。フランス国債利回りは7月以来初めてほぼプラスの領域にまで上昇した。

  債券相場下落に2015年の市場の「タントラム(かんしゃく)」を思い出す人もあった。当時は欧州中央銀行(ECB)がこれ以上利下げをしないと示唆したことを受けてドイツ国債利回りが2カ月足らずで0.05%から1.06%前後まで上昇した。
  今回の動きはこれまでのところそれほど極端ではないが、15年との類似を指摘する声もある。今回はECBではなく米連邦準備制度が利下げ停止を示唆している。
  ダンスケ銀行の債券調査責任者、アルネ・ローマン・ラスムセン氏は「15年春の売りと同じように感じられつつある」として、「もはや金利低下をにらんだ価格設定ではなくなった。モメンタムが変わった」と述べた。
  そうだとすれば、米国債や独国債など安全資産への需要と利回り追求の動きがけん引してきた債券市場での大きな転換となる。利回りを求める投資家はイタリア債やギリシャ債などの国債や年限の長い証券、信用リスクの高い商品などに投資先を広げていた。
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• 米金利は急上昇かマイナス圏入りへ−両極端に見方分かれるウォール街
• 中国、トランプ政権に関税撤回求める−第1段階の貿易合意の代償
原題:
Global Bond Sell-Off on China Trade Thaw Revives ‘Tantrum’ Fears(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-06/Q0IYVOT1UM0W01?srnd=cojp-v2


 


2019年11月6日
米中二極化リスクと日本の課題 ビル・エモット氏インタビュー ポスト冷戦の世界史ーー激動の国際情勢を見通す
木村正人 (ジャーナリスト)
≫著者プロフィール


 べルリンの壁が崩壊した1989年に著書『日はまた沈む?ジャパン・パワーの限界』で金融バブル崩壊を予測したビル・エモット英『エコノミスト』元編集長。その後も低迷する日本をウォッチし続けるエモット氏は冷戦後の30年をどう評価しているのか、インタビューした。
木村(以下、──)この30年をどう振り返るか。


ビル・エモット:ロンドン生まれ。英『エコノミスト』特派員として1983年東京赴任。93〜2006年同誌編集長。英シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)理事会やジャパン・ソサエティー(日本協会)の会長を務める。著書『「西洋」の終わり 世界の繁栄を取り戻すために』(日本経済新聞出版社)など多数。(撮影:MASATO KIMURA)
エモット:冷戦後の30年は世界にとってまさに前進の時代だった。多くの人々はロシアと欧米諸国の関係について失望しているが、世界を見渡すと民主主義が広がり、オープンな人の移動が進み、国家間の紛争ははるかに少なくなった。

 中国、インド、その他の国々で何億人もの人々が貧困から抜け出した。もちろん失望する部分もあるが、後代の歴史家は冷戦の終結を世界史におけるターニングポイントと見るだろう。

──フランスの国際政治学者ドミニク・モイジ氏は希望、恐れ、屈辱によって世界が形作られる「感情の地政学」を語った。文化や感情が世界の変化に与える影響をどう見るか。

エモット:私ならそこに国家としてのアイデンティティーを追加する。それは政治的にも社会的にも新しいものではない。冷戦中は旧ソ連の共産主義圏と欧米の資本主義圏との分断によって、国民的アイデンティティーや、歴史・領土問題、ナショナルプライドやその国固有の文化といったより感情的な問題に向かう自然な傾向が抑制されていた。冷戦の終結によってアイデンティティーが解放され、フラストレーションが高まり、歴史的な失敗により屈辱感を抱くようになった。

 こうした感情は特にロシアにあてはまる。一方、バルト三国やポーランドなど、ナチスやソ連から解放された国は新しく獲得した自由に希望を抱いた。この30年で感情が大きく変動し、アイデンティティーやナショナリズムの形に回帰したと思う。

 近年では、国家のアイデンティティーだけでなく宗教的なアイデンティティーも重要になってきており、状況がより複雑になっている。

次ページ ≫ 次の10〜30年、世界の新しい秩序はどうなるか
──次の10〜30年、世界の新しい秩序はどうなるか。

エモット:現在は、米外交誌『フォーリン・アフェアーズ』の元編集長ファリード・ザカリア氏が2008年の著書『アメリカ後の世界』で説明している世界だと思う。米国は依然として世界で最も強力な国だが、他の国々、特に中国のパワーが急成長している。

 世界は米ソ冷戦時代のように、紛争、冷戦、協力のいずれかの形で米中という二つの大国によって再び支配されるのか。それとも、インド、ブラジル、日本、アフリカの国々も大きな存在感を持ち、超大国による強力な覇権が存在せず、パワーが分散していく傾向が強まるのか。私は後者のパワーが分散した多極型の世界を望んでいる。

──どちらの可能性の方が高いのか。

エモット:多極型システムが形成される可能性の方が高いが、米中を中心に別々の同盟が形成された場合、二極型システムを推し進めることが可能になる。おそらく、それはドナルド・トランプ米大統領が行うような政策によって導かれる世界だ。


米中を中心に別々の同盟が形成されれば、二極型システムが進む可能性がある(REUTERS/AFLO)
 しかし、もっと先見性に富んだ対応は、単純な二極型システムを回避するため、米国と欧州ではるかに広範な同盟と友好のネットワークを形成することだ。非常に広範囲の国々の間で力のバランスを取るべきだが、二極型システムになる可能性は排除できない。

──二度の大戦を経て英国から米国に覇権が移り、基軸通貨も英ポンドから米ドルに変わった。今後、基軸通貨はどうなるか。

エモット:米国が世界最大の経済大国になり、ポンドからドルに基軸通貨が交代する前に大きな一連のポンド危機(第二次世界大戦の戦費調達の影響などで英国の財政不安が強まるなど)が発生した。米国がドル資産の流動性を低下させ、ドルを使ったビジネスのしやすさを減じるなど、通貨としての信頼性を損なう劇的な危機を経ない限り、ドルは基軸通貨のままだろう。今のところ、欧州単一通貨ユーロにも中国の人民元にもドルの地位を脅かそうという政治的な意思は見られない。

──トランプは武力行使を嫌がっているように見える。

エモット:トランプは米史上最長となったアフガニスタンや、イラクとの戦争に対する米国内の反応を見ている。イランと戦争になる恐れは残るものの、彼の戦争へのためらいは後継者にも引き継がれると思う。トランプ時代は後から振り返ると、米外交の期であり、タカ派よりもハト派が多かったと見られることになるだろう。


イラク国内の治安悪化を招き、泥沼化したイラク戦争
(SCOTT NELSON/GETTYIMAGES)
 ジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官の解任は、それを反映している。トランプは軍隊ではなく貿易を使って戦争するのを好む。米国史上初めての敗北となったベトナム戦争が米国の外交政策に影響を与えたように、米国は戦争を避ける期間に入っている。

次ページ ≫ インドは第二の中国になるのか
──中国支配が強まるのに反対して香港で大規模デモが起きた。中国はリベラルな民主国家への道を進むのか。

エモット:中国は権力を法の支配にもっと幅広く従わせ、中国共産党による一党支配を脱却し、公的な説明責任を求めるシステムに変えていかなければならなくなるだろう。豊かになるにつれ、習近平国家主席が支配を再確立しようとする手法は失敗に終わる可能性が高くなる。習近平の後、より権力が分散し、より説明責任を求められる新しい動きが出てくる。それが西洋流の自由民主主義かどうかは分からないが。

──インドは第二の中国になるのか。

エモット:インドは今後も強力に発展し、世界にとって大きな利益になるが、中国ほど速く成長するとは思わない。中国経済は5〜7年ごとに経済規模が2倍に拡大したが、インドは10〜12年ほどかかっている。インドが経済大国の地位に達し、政治的な帰結によって国際社会で支配的な経済を持つようになるまでには長く時間がかかる。

 インドは中央集権的ではない。それが中国のような速度で成長しない理由の一つだ。インドの一部地域は急速に成長しているが、他の地域は遅れている。第二に、官僚主義や部族主義など、市場の自由化を阻む強い既得権がある。識字率と高校教育のレベルは非常に不均一で、社会が不平等だ。インドは教育で大きな成功を収められなければ日本や韓国、中国の後に続くことはできない。


電車に乗り切れず、走っている車両に必死にしがみつくインドの乗客たち (AFP/AFLO)
──アフリカで人口が増え続け、アフリカ系移民の増加が欧州を脅かしている。

エモット:今後30年で非常に重要な問題となるのは、アフリカでどのような経済発展が起こるかだ。急成長するアフリカは、出生率が非常に高く、人口が急速に増加している最後の大陸だ。アフリカの闘いは、アジアの成長を実現させたのと同じ教育の発展を、経済成長と税収によって確立できるかにかかっている。

 そうすれば近代的な経済成長と出生率の低下につながる可能性がある。欧州にとってもアフリカの人口抑制が最大の課題になる。わずかな割合のアフリカ系移民が欧州に流入しただけで大問題になるからだ。深刻な貧困問題を抱えるサハラ砂漠より南のアフリカにおける教育と経済の発展がカギを握る。


イタリアのサレルノ港に上陸する1000人以上のアフリカ系移民を乗せた船 (ANTONIO MASIELLO/GETTYIMAGES)
──ロシアは経済が衰退しながらも、プーチン大統領がハイブリッド戦争や資源外交を駆使して国際社会への影響力を維持している。

エモット:ロシアは限られた経済力、軍事力の中で国際的な影響力を維持するのに長(た)けているが、石油・天然ガス、その他の資源価格に大きく依存している。ロシアにとって最大の脅威は化石燃料経済なのだ。私がロシアの指導者なら、輸出と政府収入の源泉である石油・天然ガスの重要性を減らす脱炭素経済の到来を恐れる。

次ページ ≫ 日本が抱える課題とは

──資本主義と自由民主主義に基づく秩序の未来をどう見るか。

エモット:資本主義が生き残るのは間違いない。結局のところ企業は本質的に社会的実体であり、社会的創造物だ。そして企業は変化する環境、金融、政治、技術に適応できる。予測できないのは、将来どのような種類の資本主義が支配的になるかだ。

 自由民主主義も繁栄するが、自由民主主義に基づく秩序が世界に広がるかというと話は別だ。自由民主主義国家ではない中国がルール設定の重要な部分を担うようになってくるからだ。中国がどんな形にせよ自由民主主義国として発展しない限り、自由民主主義に基づく秩序が世界に広がるとは思わない。

──ロボット、人口知能(AI)、ビッグデータの開発競争が経済的な地政学に与える影響をどう見るか。

エモット:技術開発の競争は世界にとってプラスだが、米中が競争に背を向け、それぞれ別個の開発に向かう恐れがあることを懸念する。例えば、米中、その他の国が別々の規制を持ち、完全に分離されたインターネットを持つような世界だ。米中間の不信と摩擦により完全に分離された技術発展が起きると、ガラパゴスの世界が出現する危険性がある。

──モノや資本、人の自由移動の未来はどうなるか。

エモット:米中貿易戦争や日韓貿易摩擦などモノの移動を損なう保護主義が見られるが、一時的なもので自由移動に戻る。資本の自由移動も次の金融危機が起きるまで残る。しかし、人の自由移動は移民への政治的反発があるため、すでに米国と英国で起きているように制限される段階に入り、後退するだろう。

──日本の課題は。

エモット:日本が抱える主な問題は人的資本だ。人口減少と高齢化に加えて、非正規社員、特に女性の非正規が訓練されずに雇用されている。日本の資源は人材しかない。テクノロジーを活用して生産性を上げなければならない。もっと多くの資源、私的資金、特に公的資金を大学に投入する必要がある。

 具体的には、大学を合併してより大きな大学をつくり、効率的に運用する必要がある。世界中のアイデアに自由にアクセスするため大学の国際化を進め、研究に力を入れる。それが優先課題だ。

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■ポスト冷戦の世界史 激動の国際情勢を見通す
Part 1 世界秩序は「競争的多極化」へ 日本が採るべき進路とは 中西輝政
Part 2 米中二極型システムの危険性 日本は教育投資で人的資本の強化を
 インタビュー ビル・エモット氏 (英『エコノミスト』元編集長)
Part 3 危機を繰り返すEUがしぶとく生き続ける理由  遠藤 乾
Part 4 海洋での権益を拡大させる中国 米軍の接近を阻む「太平洋進出」 飯田将史
Part 5 勢力圏の拡大を目論むロシア 「二重基準」を使い分ける対外戦略 小泉 悠
Part 6 宇宙を巡る米中覇権争い 「見えない攻撃」で増すリスク 村野 将
  
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◆Wedge2019年11月号より
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World Energy Watch
2019年11月6日
「身の丈に合わない」政策を実行したチリの悲劇
山本隆三 (常葉大学経営学部教授)
»著者プロフィール


4日、チリの首都サンチアゴで行われたデモ( REUTERS/ AFLO)
 チリは美しい国だ。アンデス山脈に沿い南北に長く伸びる国土の南部には氷河で有名なパタゴニアもある。日本からチリに行くには、まずニューヨークに飛び、そこから夜行便か、あるいは欧州経由で首都サンチャゴに入るのが普通だろう。乗り換え時間を合わせると1日半必要になる。数度仕事の関係で訪問したことがあるが、首都サンチャゴの住宅地の整備ぶりは先進国と言ってもいいほどだ。
 チリ国内の地方を訪問することになった時、知り合いのチリ人実業家から「ならば近くにあるうちの別荘に泊まればいい」と言われた。地方までの移動手段を尋ねたところ、いとも簡単に「自家用機だが別荘横には飛行場があるから心配しないでいい」と言われ驚いた経験がある。実業家は中小企業を経営しており、それほど大きな会社の経営者ではなかったが、飛行場付きの別荘を持っているのだ。実際に別荘を訪問したが、別荘といいながらかなりの数の客室が別棟で整備されており、まるでホテルのようだったので、さらに驚いてしまった。
 チリは豊かな国だが、貧富の格差が激しい国だ。所得格差を表すジニ係数(1が最も不平等が高く、0が完全に所得が平等。つまり1に近いほど格差が大きいことを表している)は、経済協力開発機構(OECD)諸国の中では最も高い。格差の拡大などに関する国民の不満は大きく円貨換算117円の地下鉄料金の4円の値上を切っ掛けにサンチャゴをはじめとした街で暴動が発生した。11月中旬に予定されていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の中止に続き、12月に予定されていた気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)も中止になり、同じスペイン語のマドリードに会議場は移されることになった。
 地下鉄料金値上げが切っ掛けとなり爆発した国民の不満の原因は、米中貿易摩擦の影響により主要輸出品である銅の価格が下落したことなどによる景気低迷だ。ペソの下落により輸入品の価格、必需品の電気料金などが上昇し生活を直撃したことも国民の不満を高めた。さらに、エネルギー・環境政策において所得が高い先進国と同じような政策をチリが実施したことにも遠因はありそうだ。
南米の優等生チリ

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 チリは南米の優等生だ。南米主要国の人口と1人当たりの国内総生産額(GDP)は表-1の通りだ。チリのGDPは2003年から2013年の間年平均4.7%の伸びを示していたが、2014年からは成長が鈍化し、2017年にかけては年平均1.8%の成長に留まっている。それでも、過去20年間で実質GDPは約2.2倍になっている。
 1975年チリの1人当たりGDPはアルゼンチン、ブラジル、ペルーよりも低かったが、2001年第2次世界大戦前世界で最も豊かな国の一つと言われたアルゼンチンを抜き去り南米一豊かな国になった。ちなみに、かつて米国では「あなたはお金持ちですね」と直接的に伝えるのが憚られる場合には、「あなたはアルゼンチン人みたいですね」と表現することがあったと、経済学者ポール・クルーグマンの著書で紹介されている。アルゼンチンは米国以上に豊かな国だったということだ。

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 国は豊かになり、1人当たりGDPも成長したが、チリは格差問題を抱えている。OECDによると、加盟国中もっともジニ係数が高い国はチリだ。がつて格差是正を訴えたウォール街占拠運動があった米国も上回る所得格差がある(図-1)。所得が多い上位0.1%の世帯が全所得の19.5%を、上位10%が41.5%を占め、下位10%の世帯所得は1.7%との推計もある。
 2014年から減速が始まったチリ経済は、米中貿易摩擦の影響を受け最大の輸出品目、銅の価格が下落し、さらに通貨ペソも下落し始めた。その影響は輸入品価格の上昇に繋がり格差が大きい社会で不満を広げることになった。
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米中貿易摩擦の余波を受けたチリ
 チリ経済は輸出に依存する比率が高い。輸出額はGDP比約25%ある。輸出品で最も多いのは銅精鉱関連で約30%を占め、ついで水産物、ワインなどの食品が約22%、木材と関連製品が8%を占めている。輸出相手国としては、中国が圧倒しており2位米国のシェア約15%のほぼ2倍、約28%を占めている。日本は3位で約9%のシェアだ。

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 米中貿易摩擦の影響による中国経済の減速を受け、銅価格は下落し銅精鉱などの輸出も減少している。さらにペソも下落することになった(図-2)。通貨の下落は当然輸入品価格の上昇を招き、大半の化石燃料を輸入に依存しているチリでは、電気料金などのエネルギー価格が上昇することになった。電気の卸売価格は昨年4月から今年4月までの一年間で18%上昇した。
 そんな中、チリ政府は10月上旬サンチャゴ地下鉄料金の値上げを発表する。混雑時の料金(ラッシュ時と非ラッシュ時の料金に差を付けている都市は世界に多くある)800ペソ(約117円)を30ペソ(約4円)値上げした。今年1月の20ペソの値上げに続くものだが、この少額の値上げが、低成長と格差問題に不満を持つ多くの国民の憤りに火をつけることになった。
COP25開催辞退に追い込んだ騒乱
 地下鉄料金値上げ後最初に高校生が回転バー式の地下鉄の改札口を飛び越え始めた。やがて多くの乗客が抗議の不正乗車を始めた。政府が犯罪とみなし対処し始めたことから10月18日午後地下鉄駅で混乱が始まり、一日当たり300万人が利用する地下鉄が閉鎖され、混乱が広がった。
 その日の夜ソーシャルメディアにセバスティアン・ ピニェラ大統領が郊外の一流レストランで食事をしている写真が投稿され、国民の憤りに拍車がかかり、地下鉄駅、バスへの放火、スーパーマーケットの略奪が始まった。夜には、電力会社ENELの本社とチリ第2位の銀行バンク・オブ・チリの支店が放火された。
 非常事態が宣言され、治安維持は警察から軍隊に移り、19日夜から6都市において1987年以来の夜間外出禁止令がだされた。同時に大統領は地下鉄料金値上げの撤回を発表するが混乱は収まらなかった。10月22日大統領は、基礎年金と最低賃金の20%引き上げ、電気料金値上げ凍結などを発表するが、23日にストライキ、25日に100万人が参加したと言われるデモ行進が行われるなど国民の怒りが収まることはなかった。
 混乱に伴う死者が20名、負傷者が数百名、逮捕者7000名と報道されるなか、28日に大統領は閣僚8名の入れ替えを発表し、さらに30日になりAPECとCOP25開催辞退の発表に追い込まれた。世界の気候変動対策を議論するCOPの会議は世界の各地域の持ち回りだ。昨年の欧州に続き今年のCOP25は米大陸の順番だった。当初はブラジルで開催される予定だったが、昨年秋の大統領選で気候変動懐疑論の立場に立ちパリ協定からの離脱を訴えたジャイール・ボルソナーロが新大統領に決まるとブラジルはCOP25開催を辞退すると発表し、チリが代わりに開催を引き受けた経緯がある。チリは南米のなかでも気候変動対策に熱心な国だ。ただ、そのための政策が電気料金上昇を加速させた側面がある。
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格差社会での気候変動対策
 チリは南北4300km、東西には平均177kmの細長い国だ。東にアンデス山脈があり、水量と風量には恵まれている。日照にも恵まれており、水力、風力、太陽光の再エネ導入には適している。政府は2035年までに発電量の60%、2050年までに70%を再エネから発電された電気にする目標を立てている。不安定な電源を導入するためには安定化の投資が必要となり電気料金を上昇させるが自給率向上には役立つ。
 気候変動に取り組むパリ協定下では、チリ政府は2030年までに2007年比GDP単位当たりのエネルギー消費を30%(国際金融支援がある時には35%から40%)削減する目標を持っているが、来年の目標見直し時には絶対量の削減を目標として提出する積極姿勢を示している。また、温室効果ガスの純排出量を2050年にゼロにする政府目標も発表されている。
 2015年の実績では、発電量の41%が石炭、25%が水力、16.1%が天然ガス、バイオマスが7.9%、風力2.9%、太陽光3.3%であり、再エネの占める比率は40%弱になる。石炭の比率が高いのは、2007年天然ガスの供給国隣国アルゼンチンの輸出禁止によりエネルギー危機を経験したため、国内にも資源がある石炭の利用を進めてきたからだ。気候変動対策のためには石炭火力の削減が必要になる。
 チリ政府は、再エネ導入、石炭削減のため南米で初めとなる炭素税導入を2014年に発表し、2017年から5万kW以上の発電所を対象に二酸化炭素1トン当たり5米ドルの炭素税の課税を始めた。石炭火力の発電であれば、1kWh当たり0.5米セント程度のコスト上昇を引き起こすレベルの額だが、前大統領は将来40米ドルに引き上げることが必要と述べている。

 世界の炭素税の導入は、北欧諸国から始まり広まったが、チリの事情は炭素税を導入している欧州諸国とは大きく異なる。一つは格差の問題だ。もう一つは税負担比率だ。炭素税の導入を行った北欧諸国は格差が小さく、高負担高福祉の国だ。一方。チリは格差が大きく、ピノチェト政権時にシカゴ学派の学者により行われた新自由主義政策の影響だろうか所得税負担がOECD諸国で最も低い国だ(表-2)。格差が大きい国で炭素税のようにエネルギーコストを引き上げる逆進性が高い税を導入すると格差を拡大することになる。税率が低い国では税負担増の影響も大きく感じるだろう。
 欧州とは経済状況もエネルギー供給事情も異なる国で、気候変動対策を最優先し、石炭火力による安定供給と価格を軽視することは正しいのだろうか。さらに、銅輸出に依存する構造では銅価格の下落が経済に大きな影響を与える脆弱さがある中での気候変動対策も良く考える必要がある。理想は大切だが、地に足がついていない政策ならば馬鹿を見るのは国民だ。他人ごとではない。
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https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17831


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/569.html

[経世済民133] 「ドル円離れ」に見る日本市場の地盤沈下 市場にリスクオフのマグマ、「恐怖指数」先物売りが過去最大 タイ中銀、景気支援へ今年2度目の利下げ 10月ユーロ圏総合PMI改定値は50.6、第4四半期マイナス成長も ユーロ圏小売売上高、9月は前年比+3.1% 伸び加速
為替フォーラム2019年11月6日 / 17:05 / 3時間前更新

「ドル円離れ」に見る日本市場の地盤沈下
植野大作 三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ為替ストラテジスト
4 分で読む

[東京 6日] - 国際決済銀行(BIS)が、今年4月に行った為替出来高調査の結果を公表した。3年に1度、世界全体の為替市場の実態を把握できる貴重なサーベイだ。為替市場の構造変化に関して、今回も興味深い結果が示されている。筆者が特に注目しているのは、以下の5つのポイントだ。

<出来高の膨張、実物経済の成長ペース上回る>

第1のポイントは為替出来高の大きな変化だ。世界全体の為替売買金額の伸びは3年前比プラス30.1%となり、意外な減少を記録した2016年調査の同マイナス5.4%から回復した。3年前の調査が示した「15年ぶりの出来高減少」は、外為市場関係者の現場感覚とあまりにも違って物議を醸した。

このときの減少は、その前の13年調査が行われた4月に「黒田緩和第1弾」が実施されて為替が激しく動いた反動だった可能性があり、今回の調査ではどう変化したか関心が集まっていた。

今回は為替出来高の増加率が当該期間中のドル建て名目国内総生産の伸びである15.1%を大幅に上回っていた。世界全体の為替市場規模が実物経済の成長速度を上回って膨張し続けている様子が改めて確認された。3年前の前回調査はやはり「黒田緩和」を背景にした異常値だったようだ。

第2に、今回の調査で判明した世界の為替出来高の絶対値をみると、全通貨ペアの合算で1日平均6兆5940億ドル、ドル円だけでも8707億ドルだった。今年4月の平均為替レートで円建てに換算、年間の営業日数を250日として年間の市場規模を試算すると、全通貨の合計で18京3940億円、ドル円だけでもおよそ2京4300億円と天文学的な数字になる。

自由な国際資本移動で決まる為替相場の変動を、少額の為替市場介入や口先介入で支配するのは、どのような国の政府や要人でもおそらく無理という時代になった。為替相場の変動に影響を及ぼす要因は沢山あるが、特定の組織や人物の意向を反映した為替市場への介入によって可能なのは、一時的なノイズを引き起こすことまでだろう。

「ドル円は米国政府の意向で決まる」といった類の議論をいまだに見聞する機会もたまにあるが、筆者は自分がもし米国の大統領や財務長官になったとしても、自分の口先介入の言霊力や微々たる金額の為替介入による需給調節だけで、為替のトレンドを思い通りに操れるとは到底思えない。為替市場の神が司る「見えざる手」の前で、我々は等しく無力だ。

<4大通貨で円だけシェア下落>

第3に、主な通貨の市場シェアの推移をみると、首位の米ドルは世界全体の44.2%と圧倒的な存在感を維持した。一方、3年前の調査で3位、10.9%だった日本円のシェアは8.4%まで低下、今回の調査で16.2%に伸びた2位ユーロとの差が広がり、6.4%のシェアを維持した4位ポンドとの差も縮まった。

「米ドル」、「ユーロ」、「日本円」、「英ポンド」が上位を占める状況に変化はなく、順位も同じだったが、4大通貨のうち、今回の調査でシェアが下がったのは円だけだった。5位以下の通貨についてこれまでの調査から大雑把な傾向をみると、豪州、カナダ、スイス、スウェーデンなど、先進国通貨のシェアが全般的に停滞あるいは低下気味なのに対し、中国の人民元を筆頭に新興国通貨は取引規模こそ小さいが、全体的にシェアが伸びている。

新興国通貨の市場規模が増す中で、シェアを食われずにいるドルやユーロに比べて円の存在感が落ちているのは、政府が目標に掲げて取り組んでいる「円の国際化」が掛け声倒れで進んでいないことを示している。このままだと、やがて死語になるかもしれない。

第4に、個別の通貨ペアごとに集計された取引額の推移をみると、今回はドル円の市場規模だけが縮小したのが目立った。3年前に行われた前回の調査では世界全体の為替売買額が目減りする中でドル円も縮小、それ以外の主要な通貨ペアでも売買金額の減少を記録したものが散見されたが、今回の調査では世界全体の為替出来高が3年間で3割増えたにも関わらず、ドル円だけが3.3%減っている。

ドル円以外の通貨ペアを見ると、ドルとのストレート取引、クロス円取引、欧州域内のクロス取引が絡む出来高上位の通貨ペアはいずれも増えた。ドル円の落ち込みだけが異様に際立っている。

発表元であるBISは、当該調査月に観測されたドル円のボラティリティーの低下を背景に、日本国内の外国為替保証金(FX)取引愛好者の売買の興味が他の通貨ペアにシフトしたことが一因と分析している。

今回の調査が行われた今年4月はドル円の実績変動率や予想変動率が近年では最も低かった特殊な時期だったため、多少は割り引いてみる必要はある。だが、やや長めの期間のチャートを見ても、最近のドル円相場は30カ月以上も1ドル=104円台─114円台のボックス相場にしっかりと捕まっている。

この間、急速に進む情報技術革新や激しい業者間競争の恩恵を受け、国内外の短期為替売買ファンが選べる通貨ペアの種類は大幅に増えている。明確な方向感も値幅も追及できない日々が長く続いたドル円は、為替リスクを積極的に取ることをなりわいや趣味にするプレーヤーの人気を落としているようだ。これは一過性の現象なのか、構造変化なのか、次回の調査結果を待って判断したい。

<日本の地位、一段と低下する懸念> 

第5に、各地域別の為替取扱金額のシェアをみると、日本市場の地盤沈下が続いている。1989年の調査開始から2010年調査に至るまで、日本は英国、米国に次ぐ3位の座をキープしていたが、13年調査でシンガポールに抜かれて4位に、16年調査では香港にも抜かれて5位まで落ちた。

今回の調査で明らかになった日本のシェアは4.5%で、6位スイスの3.3%とはまだかなりの差がある。これ以上の順位低下は当分なさそうだ。

ただ、市場規模の伸びが高い新興諸国通貨の売買拠点として、地理的には時差のハンデがあり、言語的には英語の普及面で劣後している日本がシェア回復を果たすのは容易ではないだろう。外資系の法人がアジア本社を東京からシンガポールや香港に移す動きが続くなら、為替売買拠点としての日本の地位がこの先も一段と低下する可能性がある。

こうした状況下、東京都は外資系企業の東京離れ対策として「アジアヘッドクォーター特区」を東京、新宿、品川などのターミナル駅周辺に設けるなどして外資系企業の誘致を推進している。来年夏に56年ぶりに開かれる東京五輪の成功も目指して行われている環境整備の取り組みも合わせて、国際都市としての東京の魅力を高めることに期待したい。

ただ、過去数多の先例をひもとくまでも無く、国の栄枯盛衰は太古の昔から繰り返されている歴史の必然である。現在日本で進んでいる少子高齢化と人口減少による国力の衰退が東京市場の地盤沈下の背景にあるなら、日本全体の経済成長率の底上げにつながる社会制度の改革や規制緩和に勝る処方箋はないだろう。

今後の調査結果を踏まえてそのような仮説の妥当性を判断する必要がありそうだ。

*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

植野大作氏
*植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。

(編集:北松克朗)
https://jp.reuters.com/article/column-daisaku-ueno-idJPKBN1XG0Z8


 
ビジネス2019年11月6日 / 14:35 / 6時間前更新
焦点:市場にリスクオフのマグマ、「恐怖指数」先物売りが過去最大
伊賀大記
3 分で読む

[東京 6日 ロイター] - 米中通商協議の進展期待の高まりを背景にリスクオン相場が続くなか、逆回転を起こしかねない「マグマ」も溜まっている。市場が注視するのは、過去最大規模に積み上がった投機筋のVIX指数先物ショートポジションだ。先行きへの期待感が原動力というムード先行の相場だけに、ボラティリティの急上昇には警戒感も強い。

<株高なのに上昇した「恐怖指数」>

「恐怖指数」の異名を持つシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数).VIX。米株の過去最高値更新に沸く4日の市場で、じわりと切り上がった。

5日時点で13.10ポイントと、水準自体は過去と比較して低い。米中通商協議に懸念が強まった今年8月は20ポイントを越えていた。米株の最高値更新というタイミングで、利益確定的にVIX先物のショートポジションが多少買い戻され、VIX指数が上昇しただけの可能性もある。

しかし、市場参加者は神経を尖らせてその動向を見つめている。通常、株高なら低下するボラティリティが逆に上昇したということだけでなく、VIX先物が、足元のリスクオン相場をリスクオフに転換させるだけの「エネルギー」を蓄えているためだ。

米商品先物取引委員会(CFTC)が1日に発表した、投機筋のVIX指数先物のネットショート11170E1NNETは、18万7948枚。今年4月の18万0359枚を超え、比較検証できる2006年8月以降で、過去最大に積み上がった。

「過去をみると、14万枚を超えると、ポジションの巻き戻しによるVIXの上昇を伴い、S&P500指数.SPXが下落している」と、みずほ証券のシニアテクニカルアナリスト、三浦豊氏は指摘する。

<昨年2月の「VIXショック」>

市場の一部で警戒されているのは昨年2月の再現だ。VIX指数が一時50ポイントまで急上昇。連動して株価が急落する「VIXショック」を巻き起こしたからだ。

ボラティリティと連動するファンドを組むリスク・パリティ・ファンドからの株売りが出たほか、低いボラティリティ(つまり米株が急変動しない)に賭けていた上場投資商品(ETP)の価格が急落、早期償還も相次いだ。

「リスクオフにつながるネガティブな材料が出れば、巻き戻しが必ず起きる。(投機筋のVIX指数先物のネットショートは)株価にも大きな影響を与える規模に積み上がっている」とマッコーリーキャピタル証券の増沢丈彦氏は警戒する。

ただ、一斉にリスクポジションが巻き戻された当時とは異なるとの指摘もある。野村証券のクロスアセット・ストラテジスト、高田将成氏は「ヘッジファンド全体で株式のエクスポージャーが積み上がっているわけではない」と指摘。VIX先物ショートが解消時の「マグニチュード」は、VIX指数が16─20に上昇する程度と分析している。

ショートポジションの拡大は「コンタンゴ」現象も一因だとみられている。先物の受け渡し期日が近くなるほど減価(下落)するコンタンゴ状態では、ショート(空売り)すれば利益が出る。こうした期間構造を利用したスプレッド売りがショート拡大の一因になっており、ボラティリティの低下に連動するトレードが増えているわけではない可能性もある。

またショートが14万枚を超えたからといって、ただちにVIX指数が上昇し、株価が急落するわけではない。昨年2月のケースでは、17年9月に17万枚を記録したあと、2月に8万枚超のロングに転換するまで、約5カ月かかっている。

<「期待感」が支える株高>

しかし、いまのリスクオン相場の原動力は「期待感」。米中通商協議の進展期待や企業業績の底打ち期待など、先行きが改善するとの予想が株高を支えている。

期待で買うのが株式市場ではあるが、リスクオンに傾いているマーケットでは、経済指標や企業業績を良く解釈しがちだ。7─9月期の企業業績は米国、日本とも減益の見通し。米ISM指数は、非製造業は堅調だが、製造業は10月まで3カ月連続の50割れとなった。

SMBC日興証券の野地慎氏の試算によると、米ISM製造業景気指数が示唆するS&P500は前年比マイナス5%。しかし、10月は6.9%高だった。PER(株価収益率)は21倍を超えてきている。

米株は過去最高値を更新しているが、上海総合指数.SSECは依然として3000ポイントを回復していない。「大統領選を控えた米国側は通商合意に前のめりだが、中国の習近平国家主席は、わざわざ米国のアイオワまで出かけていくだろうか」(国内証券)との指摘もある。

前月25日のシカゴ・オプション取引所で、VIXの65ポイントが権利行使水準である2020年4月物のコールオプションが成立。1枚10セントで5万枚買われ、市場の話題になった。VIX指数が65を超えると利益が出るポジションであり、いまの5倍以上に上昇すると見込んでいる取引だ。

VIX指数の30日後の変化を示すVVIX指数.VVIXはまだ低い。VIX指数が急激に動きそうだとの見方はまだ少数派だ。だが、市場のセンチメントが転換すれば、一気に逆回転する可能性のある「ムード相場」であり、警戒感も強い。

編集:佐々木美和
https://jp.reuters.com/article/japan-market-idJPKBN1XG0IU

 
タイ中銀、景気支援へ今年2度目の利下げ バーツ高抑制措置も発表
Reuters Staff
2 分で読む

[バンコク 6日 ロイター] - タイ中央銀行は6日、政策金利の翌日物レポ金利を1.50%から1.25%に引き下げた。

利下げは今年2回目。低インフレが続く中、景気を下支えする。

中銀はバーツ高の抑制を狙い、外為規制の一段の緩和を発表した。

観光業などが減速する中、バーツ高はタイ経済に打撃を与えている。

利下げは5対2で決定。2人は据え置きを主張した。

中銀金融政策委員会は声明で「大半の委員は、より緩和的な金融政策が経済成長に寄与し、総合インフレ率の目標に向けた上昇を支援するとの見解だった」と表明した。

事前のロイターのエコノミスト調査では28人中15人が据え置きを予想、13人が25ベーシスポイント(bp)の利下げを予想していた。

キャピタル・エコノミクスのアジア担当シニアエコノミスト、ガレス・レザー氏は調査ノートで「世界的な需要の弱さが輸出の足を引っ張る見通しのため、低成長が続く公算が大きい」としたうえで、バーツ高を背景に追加利下げがあるとの見通しを示した。

野村のエコノミスト、Charnon Boonnuch氏は、中銀が経済見通しを再検討するため、とりあえずは政策を据え置くと予想しながらも、「来年の追加緩和の可能性は排除していない」と述べた。

バーツTHB=THは利下げ発表後0.4%下落したが、それでも年初から対米ドルで7.4%上昇しており、他のアジア通貨のパフォーマンスをはるかにしのいでいる。

今回の外為規制緩和では、1船荷証券当たりの収入が20万ドル未満の輸出業者に、無期限で収入を海外に保持することを認めた。現在のルールでは5万ドル未満となっている。さらに個人投資家は、最大で年間20万ドルを海外証券に直接投資することが認められる。

Mathee Supapongse副総裁は、利下げと規制緩和でバーツが下落すると予想。中銀が3カ月ごとに状況を点検し、「措置が効果的でなければ、一段の緩和もある」と述べた。

キャピタル・エコノミクスは、現在の緩和サイクルにおいてもう1回利下げが実施され、翌日物レポ金利は1.00%まで引き下げられると予想。

タイ中銀は8月、市場の予想に反して2015年以来初となる25bpの利下げを決定。

9月は金利を据え置く一方、2019年の経済成長率予測を2.8%とし、3カ月前に示した3.3%から下方修正した。成長のけん引役である輸出については1%減と予測した。来年の成長率見通しは3.7%から3.3%に下方修正。昨年の成長率は4.1%だった。

中銀は6日、成長率と輸出ともに9月時点の予想を下回るとの見込みを示した。

10月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.11%上昇と、17年6月(0.05%低下)以来の低い伸び率で、中銀の目標レンジ(1─4%)を5カ月連続で下回った。

中銀は、総合インフレ率が今年と来年、目標レンジを下回ると予想した。

*内容を追加しました。
https://jp.reuters.com/article/thai-monetary-policy-idJPKBN1XG0YQ

 
ビジネス2019年11月6日 / 18:51 / 2時間前更新
10月ユーロ圏総合PMI改定値は50.6、第4四半期マイナス成長も
Reuters Staff
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[ロンドン 6日 ロイター] - IHSマークイットが発表した10月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)改定値は50.6で、前月の6年超ぶりの低水準(50.1)から上昇した。速報値(50.2)からも上方修正されたが依然、景況拡大と悪化の節目である50に近い水準にとどまった。

IHSマークイットのチーフ・ビジネス・エコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は「10月も景気停滞に近い状態となった。受注が減少し、第4・四半期がマイナス成長になる恐れもある」と述べた。

PMIの構成項目をみると、新規事業指数が48.7から49.6に上昇したが、2カ月連続の節目割れとなった。

ウィリアムソン氏によると、PMIは第4・四半期の成長率が前期比で0.1%となる可能性を示唆している。

サービス部門PMIは52.2で、9月の51.6から上昇した。しかし事業の見通しを示す指数は58.6から57.4に低下した。
https://jp.reuters.com/article/eurozone-economy-pmi-idJPKBN1XG1D8


 
ビジネス2019年11月6日 / 19:51 / 1時間前更新
ユーロ圏小売売上高、9月は前年比+3.1% 伸び加速=統計局
Reuters Staff
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[ブリュッセル 6日 ロイター] - 欧州連合(EU)統計局が発表した9月のユーロ圏の小売売上高は、前月比3.1%増加した。ロイターがまとめた市場予想(2.5%増)を上回り、ユーロ圏の内需の息の長さが浮き彫りとなった。前月は2.7%増だった。

前月比では0.1%増加し、予想と一致した。

11年ぶりの低水準にある失業率や賃金の段階的な伸びがユーロ圏の小売売上高を支えている。

統計局によると、食品・飲料・たばこは前月比で0.4%減少、食料以外の製品は0.1%増加した。

前年比では食料・飲料・たばこが1.3%増、食料以外の製品は4.6%増となり、前月の4.2%から伸びが加速した。


米EU大使が認める、ウクライナ支援の交換条件と把握していた
Reuters Staff
2 分で読む

[ワシントン 5日 ロイター] - 米国のソンドランド駐欧州連合(EU)大使は、トランプ大統領の弾劾調査を進める下院で追加証言を行い、ウクライナ政府高官に対し、同政府が米側の要求する「反汚職」に関する声明を出すまでは、保留中の軍事支援が実施されることはないと伝えていたと認めた。

ソンドランド氏は既に10月に証言しているが、記憶が「蘇った」としてウクライナ疑惑に関する新たな事実を4日に提示。民主党が多数派を占める下院の3委員会による弾劾調査のきっかけとなった内部告発を裏付ける格好となった。

トランプ氏がバイデン前副大統領親子を捜査するようウクライナ政府に圧力をかけたとされる問題で、複数の関係者はこれまで、捜査はトランプ氏が来年の大統領選を有利に進める狙いがあったようだと証言しており、ソンドランド氏の証言はこういった見方も裏付けた。

バイデン氏は民主党の大統領有力候補。息子ハンター氏は、汚職捜査の対象となったウクライナのガス会社の役員だった。

ソンドランド氏は9月にテイラー駐ウクライナ代理大使へのテキストメッセージで、トランプ氏が対ウクライナ軍事支援の「交換条件はない」ことを明確にしていると述べていた。

ただ、新たな証言で同氏は、保留となっていた約4億ドルの軍事支援について「納得のいく説明がなかった」ことから、ウクライナ政府が捜査を公にすべきとするトランプ氏の要求と関係していると9月初めまでに認識したと明かした。

ソンドランド氏はこれまで、捜査がバイデン親子を標的にしたものだと当初は認識していなかったと証言している。

ソンドランド氏は、ウクライナの大統領顧問に対し「米国の支援は、これまで何週間も両国が協議してきた反汚職の公式声明をウクライナ政府が出すまでは再開される可能性は低い」と伝えたことを明らかにした。

下院の3委員会は、これまで概ね非公表で弾劾調査を進めてきたが、今週に入って非公開証言の内容を初めて公表。3委員会は公開証言を来月開始するために準備を進めている。[nL3N27L05Y]

ソンドランド氏は、テイラー氏を含む当局者が証言したのを受け、追加で証言を行った。[nL3N278027]

下院民主党は、9月にウクライナ担当特別代表を辞任したカート・ボルカー氏の証言内容も公表。トランプ氏の顧問弁護士であるジュリアーニ氏がいかに米国とウクライナの連絡係を果たしたかについて詳しく証言した。

これまで証言した関係者らは、ボルカー、ソンドランド両氏とペリー米エネルギー長官が、トランプ氏とウクライナ政府当局者との非公式な対話チャンネルの役割を担う「スリー・アミーゴ」として知られていたと明らかにしている。

ボルカー氏は10月3日、下院の3委員会で8時間超にわたり証言した。

12月1日付で退任することが決まっているペリー長官は、これまでのところ証言を拒否している。
https://jp.reuters.com/article/euro-price-idJPKBN1XG1IU
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/570.html

[経世済民133] 巨額債務のソフトバンク、資産下落時に逆回転リスク ウーバー株急落、上場来安値 三菱自、今期純利益96%減 神戸鋼、最終赤字50億円 富士フイルム格下げ SUMCO純利益45%減
コラム2019年11月6日 / 13:10 / 19時間前更新
巨額債務のソフトバンク、資産下落時に逆回転リスク
Liam Proud and Karen Kwok
4 分で読む

[ロンドン 5日 ロイター Breakingviews] - 孫正義氏が会長兼社長として率いるソフトバンクグループ(9984.T)は、ハイテク分野の巨大投資マシーンであり、気前よく重ねた借金が潤滑油の役割を果たしている。同社が抱える資産の価値が高まっていた局面では、借り入れによる経営がうまく機能した。しかし、今後は資産価値が下がって、借金が問題になりかねない。

孫氏が好んで用いる指標に基づくと、ソフトバンクグループの債務負担は、やり繰りが可能に思われる。同氏は、借入金を総資産価値の25%未満にとどめたい考えだ。この総資産には、中国電子商取引最大手アリババ(BABA.N)の株式や、携帯電話2社、半導体メーカーのArm(アーム)、1000億ドル規模の巨額ファンド「ビジョン・ファンド」が含まれる。

これらの資産価値は、上場株の時価やソフトバンクによる未上場資産の評価を踏まえると2600億ドルに上る。6月末の純債務は450億ドルで、この17%に収まる。手元の現金は少なくとも2年間の社債返済資金をカバーしており、キャッシュフローは6月までの1年間の利払い額の2倍を超える。

だが、こうした指標で全ての状況が説明されたわけではない。まず初めに、傘下の携帯電話会社である米スプリント(S.N)と日本のソフトバンク(9434.T)は、合計で約900億ドルを借り入れている。

法的に考えると、両社の債務は返済原資が限定されるノンリコース型なので、ソフトバンクグループは万が一の場合、債権者の追及を免れることができる。とはいえ、孫氏がスプリントとすっぱり手を切るとは想像しがたい。そんなことをすれば、ソフトバンクグループの資産価値の10%強が一気に消滅し、他の子会社による将来の借り入れがより難しくなる。

実際に孫氏は最近、ソフトバンクグループの資産価値を利用して、経営難に陥っている共有オフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーの支援策を打ち出した。債権者は、資金繰りに窮している出資先企業への救済措置は、いわゆる「偶発債務(将来何らかの形で返済義務が生じる債務)」ではないかとみなす傾向にある。

ビジョン・ファンドは、配車サービスの米ウーバー・テクノロジーズ(UBER.N)など赤字企業の株式を保有しているという面で、別の重荷も背負っている。

同ファンドの資本のうち約400億ドルは優先株の形になっており、サウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンドといった出資者に年間7%の配当を支払っている。優先株は厳密には債務ではないが、孫氏はソフトバンクグループの株主への利益還元よりも、優先株の配当をきっちりと行わなければならない。

また、ビジョン・ファンドは、一部投資案件について最大41億ドルを銀行から借り入れることができる契約に調印し、優先株の配当にも活用されている。その点でも資産価値が急落すれば、事態悪化に拍車が掛かる。

最後に、孫氏自身の問題がある。ブルームバーグの報道によると、同氏は個人的な借り入れの担保として、保有しているソフトバンク株180億ドル相当の38%を差し入れている。ビジョン・ファンドへの投資資金としてソフトバンクの幹部・社員に提供された総額50億ドルの融資のほとんども、孫氏向けだ。つまり孫氏とソフトバンクグループはともに、ビジョン・ファンドのパフォーマンスに命運が左右される側面が強まっている。

孫氏が定義する狭義の純債務で判断しても、ソフトバンクグループの借り入れ負担は、見た目よりも重い。公式に発表している総資産有利子負債比率(LTV)は、かさ上げされた資産が前提になっているのだ。

例えば、アリババの持ち分26%について、処分すれば最大で30%の税率が課せられてもおかしくないにもかかわらず、時価の1200億ドルのままで評価している、とバーンスタインのアナリストチームはみている。

株式市場の投資家は適切に、より懐疑的な見方をしており、ソフトバンクグループの時価総額は、債務を差し引いた後の総資産価値の38%程度に過ぎない。

ソフトバンクグループの今後の利払い能力も、見かけほど堅固ではない。6月までの1年間に傘下企業から受け取った現金は45億ドル前後で、約21億ドルの債務返済費用を十分に賄えた。

ただ、現金の出所は2つだけだ。1つ目はビジョン・ファンドからの資産管理手数料と半導体企業・エヌビディア(NVDA.O)などの株式売却益の20億ドル。2つ目は携帯電話子会社・ソフトバンクが配当金として支払った25億ドルだ。

ウィーワークの上場中止でハイテク企業の新規株式公開(IPO)に対する需要が冷え込んだことから、ビジョン・ファンドからの現金納付はもはやほとんど当てにできない。

そこで孫氏が携帯電話子会社からの配当金だけに依存するようになれば、余裕は乏しくなる。6月までの1年間のソフトバンクグループの利払い費は、携帯電話子会社から受け取った配当金の82%に達するからだ。リフィニティブのデータに基づくと、ソフトバンクグループは、向こう3年間で債務返済予定額が140億ドルに急増するという逆風にも見舞われる。

では、孫氏は現金が必要になった場合、何ができるのか。良いニュースは、流動性のある資産に不自由はしないことだ。保有するアリババ株の4%を現在の価格で売れば、税率30%と仮定しても、来年から2022年までに満期が到来するソフトバンクグループの全社債の返済資金が確保できる。2016年に320億ドルで買ったアームなどの未上場資産を手放す方法もある。

悪いニュースは、やむを得ない形の資産売却が、売り手にとって満足のいく価格になるケースがほとんどないことだろう。ソフトバンクグループはアリババの圧倒的な大株主なので、売却に動けばアリババ株の需給自体を崩してしまう。

一方、資産価値が下落するのに伴って、借り入れによって投資を拡大するという孫氏の戦略が裏目に出てくるだろう。ソフトバンクグループの純債務は、企業価値のほぼ5分の2に上る。したがって保有資産の価値が20%目減りすれば、株価は33%程度下がるはずだ。その時点で、孫氏の巨大な投資マシーンは逆回転し始める。

●背景となるニュース

*ソフトバンクグループは6日に7─9月期決算を発表する。ブルームバーグは10月24日、ソフトバンクが傘下のビジョン・ファンドのウィーカンパニーやウーバー・テクノロジーズなどへの出資に絡んで最低50億ドルの評価損を計上する方針だと報じた。

*ソフトバンクグループの広報担当者はBreakingviewsに対して、総資産有利子負債比率(LTV)を安全な水準に保ち、適切なキャッシュポジションを維持し、子会社からの安定的な配当収入を確保して自社の財務上の安全性をしっかりと継続していくとの考えを示した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/sofbank-breakingviews-idJPKBN1XG0EM


 


ウーバー株急落、上場来安値−ロックアップ期間終了でブロック取引
Drew Singer
2019年11月7日 1:10 JST
6日の米株式市場で、配車サービスを手掛ける米ウーバー・テクノロジーズの株価が大きく下落。通常取引開始前の時間外取引で同社株が大量に売買されたと、事情に詳しい関係者が明らかにした。ウーバー株は新規株式公開(IPO)後のロックアップ期間が終了し、売買制限が解除された。

  ゴールドマン・サックスを通じてある保有者が約200万株を1株当たり26.90ドルで売却した。この売却価格は5日のウーバー株終値を4%下回る。売却した保有者の名前は明らかになっていない。提示価格は26.75−27.00ドルだった。

  ウーバー株は取引開始後に一時8.7%安の25.58ドルを付け、上場来安値を更新した。

原題:
Uber Sinks to Record Low Amid Block Trades as Lockup Expires (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-06/Q0K0AA6JIJUX01?srnd=cojp-v2

 


神戸鋼の20年3月期、最終赤字50億円 鋼材・アルミが苦戦
企業決算
2019/11/6 20:30
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神戸製鋼所は6日、2020年3月期の連結最終損益が50億円の赤字(前期は359億円の黒字)になりそうだと発表した。最終赤字は3期ぶり。従来予想は前期比72%減の100億円の黒字だった。世界景気の減速などで鋼材やアルミの販売が苦戦。投資有価証券の評価損も響く。期末配当は未定のままとした。

売上高は微減の1兆9700億円となる見通し。1%増の2兆円としていた従来予想から一転し減収を見込む。主力の鉄鋼セグメントでは海外の自動車や産業機械、建設機械向けが振るわない。

アルミ圧延品は自動車や半導体向けが苦戦するほか、国内の夏の天候不順で飲料缶用の需要も伸び悩む。人民元安・円高が進み、建設機械の円換算時の利益も縮む。

同日発表した19年4〜9月期の連結決算は、売上高が前年同期比1%減の9444億円、最終損益が62億円の赤字(前年同期は333億円の黒字)だった。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51861760W9A101C1DTB000/

 

三菱自、今期純利益96%減 加藤CEO「構造改革を実施」
企業決算
2019/11/6 20:30
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三菱自動車は6日、2020年3月期の連結純利益が前期比96%減の50億円になる見通しと発表した。従来予想の51%減の650億円から600億円引き下げた。中国やオーストラリア、北米、東南アジアで販売が落ち込む。加藤隆雄最高経営責任者(CEO)は「間接部門の人員削減、生産ライン合理化、開発モデル数絞り込みなど構造改革に取り組む」との方針を明らかにした。

加藤CEOは「世界的な景気の逆風は想定を上回り、もう一段踏み込んで改革をする」とし、「人員を適正化し、組織そのものもスリムにして固定費を減らす」と述べた。リストラ計画は詳細を検討中で年度内にも着手する見通しだ。

売上高は3%減の2兆4500億円と従来予想から1300億円引き下げ、世界販売台数見通しは127万台と3万台下方修正した。「米中の通商問題を巡る緊張で世界の景気減速への懸念が高まり、自動車需要は落ち込んでいる」(加藤CEO)。

営業利益の見通しは73%減の300億円と、従来予想から600億円引き下げた。出荷台数が落ち込む影響が利益を430億円下押しする。為替が想定より円高になったのも240億円の減益要因となる。対円での米ドル、ユーロ、豪ドルなどの通貨安が円換算した利益を目減りさせるためだ。輸出拠点であるタイの通貨バーツの上昇は、輸出競争力の面で逆風になった。

同日発表した19年4〜9月期連結決算は売上高が前年同期比4%減の1兆1279億円、純利益は95%減の25億円にとどまった。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51863090W9A101C1TJ2000/

 

富士フイルムの発行体を格下げ・ムーディーズ
2019/11/6 17:37 
富士フイルムホールディングス(4901)

発行体=A1からA2(ムーディーズ)
https://www.nikkei.com/article/DGXLNSD5ICP01_W9A101C1000000/

SUMCO 純利益45%減 19年12月期 ウエハー販売落ち込む
企業決算
2019/11/6 20:30
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シリコンウエハー大手のSUMCOは6日、2019年12月期の連結純利益が前期比45%減の321億円になりそうだと発表した。これまで今期の通期予想は開示していなかった。半導体の基板素材となるシリコンウエハーはメモリー向けの在庫調整の影響をうけ数量が落ち込む。未定としていた期末配当は前期末より22円減の10円(年間配当は35円)とする。

売上高は8%減の2975億円、営業利益は42%減の494億円を見込む。設備投資に伴う減価償却負担が増える。主力の直径300ミリメートル品は、一部で数量の繰り延べ要請はあったが、長期契約に基づいて前年同期に比べて約10%の値上げを実施。ただ全体の需要減を補いきれなかった。

同日発表した19年1〜9月期の連結決算は売上高が前年同期比6%減の2285億円、純利益が34%減の281億円だった。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51861940W9A101C1DTB000/
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/573.html

[経世済民133] 米労働生産性、第3四半期は0.3%低下 15年以来の大幅マイナス  最悪の事態に備えを、IMFが欧州に警告 ユーロ圏成長予想1.2%に下方修正 ドイツさらに減速へ 
ビジネス2019年11月7日 / 00:41 / 7時間前更新
米労働生産性、第3四半期は0.3%低下 15年以来の大幅マイナス
Reuters Staff
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[ワシントン 6日 ロイター] - 米労働省が6日発表した第3・四半期の非農業部門労働生産性(速報値)は季節調整済みの年率で前期比0.3%低下し、市場予想の0.9%上昇に反して落ち込んだ。2015年第4・四半期以来の大幅なマイナスだった。

17年の税制改革を受けた生産性の基調改善に対する一部の見方が後退する可能性がある。

第2・四半期の労働生産性は当初発表の2.3%上昇から2.5%上昇へ小幅に上方改定された。

第3・四半期の前年同期比は1.4%上昇だった。07―18年の年間伸び率の平均である1.3%を0.1%ポイント上回るが、1947―2018年の長期平均である2.1%は大幅に下回っている。

生産単位当たりの報酬を示す単位労働コストは3.6%上昇した。

労働時間は2.4%増、生産は2.1%増だった。

製造業の生産性は前期比0.1%低下し、2四半期連続でマイナスとなった。
https://jp.reuters.com/article/usa-economy-productiviy-idJPKBN1XG28C

 

7〜9月期の米労働生産性、4年ぶりマイナス 労働時間増で
北米
2019/11/7 2:25
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【ワシントン=長沼亜紀】米労働省が6日発表した7〜9月期の非農業部門の労働生産性(季節調整済み、2012年=100)速報値は年率換算で前期比0.3%低下した。低下は2015年10〜12月期以来約4年ぶり。19年1〜3月期に3.5%、4〜6月期に2.5%それぞれ力強く上昇した後での低下で、0.9%程度の上昇を見込んだダウ・ジョーンズまとめの市場予測に反した結果だった。前年同期比では1.4%上昇した。

7〜9月期の米労働生産性は約4年ぶりに低下した(米フロリダ州のかばん製造工場)=ロイター
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7〜9月期の米労働生産性は約4年ぶりに低下した(米フロリダ州のかばん製造工場)=ロイター

生産高は前期比2.1%増にとどまったが、労働時間が2.4%増加したため、生産性が低下した。時間当たりの賃金は3.3%伸び、賃金指標となる非農業部門の単位労働コストは3.6%上昇した。

経済調査会社パンセオン・マクロエコノミックスのエコノミストは、変動の激しい自営業者の労働時間の増加で生産性が押し下げられたと指摘したが「企業の設備投資の減少を考慮すると、生産性の伸びはピークを過ぎた」との見方を示した。

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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51882750X01C19A1000000/


 

米労働生産性:7−9月速報は0.3%低下−約4年ぶりのマイナス
Reade Pickert
2019年11月6日 22:38 JST 更新日時 2019年11月7日 0:34 JST
7−9月(第3四半期)の米労働生産性は市場の予想外に低下。ほぼ4年ぶりのマイナスとなった。労働コストの伸びは加速した。労働省が5日発表した。
キーポイント
• 7−9月の非農業部門労働生産性指数は前期比年率0.3%低下
o ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想は0.9%上昇
o 前期は2.5%上昇に上方修正
• 単位労働コストは3.6%上昇−前期は2.4%上昇

インサイト
• 労働生産性の低下は、生産が2.1%上昇だったのに対し、労働時間が2.4%増えたことが背景にある
• 労働時間の伸びについて労働省は、自営業者の影響が異例に大きかったと指摘
o 自営業者の労働時間は、全体と比較した場合により変動が大きくなることがある
詳細
• 7−9月の労働生産性指数は前年同期比では1.4%上昇−前期の1.8%上昇から伸びが鈍化
• 単位労働コストは前年同期比3.1%上昇−14年初め以降で最大の伸び
• 実質給与は前期比1.4%上昇−前期は2%上昇
• 統計表
原題:U.S. Productivity Unexpectedly Posts First Decline Since ’15 (1)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-06/Q0JUUJT0G1LJ01?srnd=cojp-v2

 


最悪の事態に備えを、IMFが欧州に警告−ドイツは危機説を一蹴
Nikos Chrysoloras、Birgit Jennen
2019年11月7日 3:56 JST
金融政策は使い果たし、リスクは波及−IMFの欧州域内経済見通し
ドイツには行動の用意あるが、その必要はないとショルツ財務相
ドイツは欧州経済の原動力として刺激策を講じなくとも現在の難局を切り抜けるとのスタンスを変えていないが、国際通貨基金(IMF)が発する警告は深刻さを強めている。

  金融政策を通じた対応策は使い果たされており、リスクも波及しているとして、IMFは欧州が緊急対策を講じる必要があると警告した。

  IMFが発表した欧州域内経済見通しは、「下振れリスクの高まりに鑑み、緊急対策を実行できるよう用意しておくべきだ」と提言。保護主義的な貿易や混乱を伴う英国の欧州連合(EU)離脱、地政学的問題などによるリスクの高まりを挙げ、「協調した財政対応」が必要となる可能性があると指摘した。

  ドイツは7ー9月(第3四半期)に狭義のリセッション(景気後退)に入ったとみられており、労働市場も悪化し始めている。

  しかしドイツのショルツ財務相はこうした懸念を一蹴し、成長減速を押し上げるための財政刺激策は今のところ必要ないと述べた。

  ブルームバーグがフランクフルトで開いた会合で、ショルツ財務相は「危機が現実となった場合、ドイツは行動を起こすべくあらゆる能力を備えている」と述べ、「しかし今のところ危機はなく、想定もしていない」と言明した。

  IMFはドイツとオランダに対して、成長促進のために支出を拡大するべきだと指摘。そうした「慎重な財政拡大」は前向きな波及効果をもたらし、減速を食い止める一方で、対外不均衡を軽減するとみられている。

原題:Europe Warned to Prepare for the Worst as Germany Sees No Crisis(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-06/Q0JY1XT0G1KX01?srnd=cojp-v2


 

ビジネス2019年11月7日 / 00:26 / 6時間前更新
IMF、ユーロ圏成長予想1.2%に下方修正 ドイツさらに減速へ
Reuters Staff
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[ブリュッセル 6日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は6日、ユーロ圏19カ国の今年の経済成長率見通しを1.2%とし、4月時点の1.3%から下方修正した。長引く世界貿易摩擦の煽りで製造業の不振が非製造業にも波及する恐れがあり、今年の成長率は昨年実績の1.9%から大幅に鈍化するとみられる。

20年と21年の成長率見通しも1.4%と、従来の1.5%から引き下げられた。

国別では域内最大の経済国であるドイツがさらに減速する見込み。IMFによると今年のドイツの成長率見通しは0.5%で、昨年実績の1.5%と比較して成長率は3分の1にとどまる見通し。従来見通しは0.8%だった。またフランスの成長率も1.2%と、従来の1.3%から下方修正された。欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)問題で揺れる英国は1.2%に据え置かれた。

域内のインフレ見通しは、今年が1.2%、20年が1.4%、21年が1.5%。欧州中央銀行(ECB)の目標である2%未満だがその近辺を引き続き下回る見込み。

IMFはユーロ圏各国が金融政策と歩調を合わせる形で財政政策を推し進めることが望ましいとし、ドイツ政府に政策対応を求める格好となった。
https://jp.reuters.com/article/eurozone-imf-economy-idJPKBN1XG28A

 
IMF、ユーロ圏成長率予測引き下げ ドイツ不振響く
ヨーロッパ
2019/11/7 3:09
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【ブリュッセル=竹内康雄】国際通貨基金(IMF)は6日、ユーロ圏の経済見通しを発表した。2019年の成長率を前回4月時点から0.1ポイント引き下げ、1.2%と予測した。マイナス成長だった13年以来の低水準になる。米中の摩擦による世界貿易の低迷で、けん引役のドイツが大きく勢いを落とす。外需の不振が内需にも及んでおり、先行きの不透明さが一段と拡大。20、21年の成長率も下方修正した。

IMFのゲオルギエバ専務理事=AP
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IMFのゲオルギエバ専務理事=AP


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20年の成長率は1.4%と、前回の1.5%から引き下げた。18年実績は1.9%だった。ドイツは19年が0.5%、20年は1.2%と予想した。いずれも下方修正されたが、20年は0.5ポイントの大きな下げ幅となった。ユーロ圏2位のフランスは19、20年が1.2%、1.3%だった。

下方修正の要因は保護主義的な動きが広がったことによる世界貿易の落ち込みだ。輸出主導のドイツ経済を中心にユーロ圏経済に打撃になった。輸出の低迷が機械や輸送用機器といった製造業に波及、生産の低迷につながった。

IMFは経済見通しで、輸出や生産以外の「他分野にも波及しつつある」と分析した。サービス業や消費は底堅さを保つ一方、投資が勢いを失いつつあるという。足元では堅調な雇用にも「減速の兆しが現れている」と指摘した。

ユーロ圏経済は貿易摩擦が和らぐとの見方から、19年に比べて20年は緩やかに回復するとしたものの「いくつかのリスクが残る」とした。具体的には英国の欧州連合(EU)離脱や地政学的な緊張の高まりなどを挙げた。IMFは「景気減速に対応するには一致した財政措置をとるのが適切だ」と各国に財政出動を促した。

EUを離脱する英国の成長率は、19年は1.2%、20年は1.4%とした。

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http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/574.html

[経世済民133] 日銀のインフレ目標「未達成」が安倍政権の支持率を支える皮肉 日経平均は3日続伸、終値で連日年初来高値更新 低金利とドル高が並存した訳、年明け後再び105円へ
日銀のインフレ目標「未達成」が安倍政権の支持率を支える皮肉
加藤 出:東短リサーチ代表取締役社長

連載 金融市場異論百出
2019.11.7 4:10 会員限定

チリ地下鉄運賃値上げデモ
チリの首都サンティアゴで地下鉄運賃の値上げに対して抗議するデモ参加者たち Photo:Marcelo Hernandez/gettyimages
 チリ政府は10月6日に首都サンティアゴの地下鉄運賃を30ペソ(約4.5円)引き上げると発表した。朝夕のピーク時における初乗り料金の4%に相当する値上げだ。

 これをきっかけに大規模な暴動が発生。政府は10月19日に非常事態宣言を行う。セバスティアン・ピニェラ大統領は治安の早期回復を狙って、地下鉄の値上げ撤回や年金支給額の即時20%増加、健康保険の改善、最低賃金の引き上げ、閣僚の大幅な入れ替えなどを発表する。

 しかし暴動は全国に波及、同国で11月中旬に開催予定だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議などが中止となってしまった。4.5円の地下鉄運賃の値上げでなぜこうなってしまったのだろうか?

 中道右派の現政権は、今までビジネス界にフレンドリーな政策を推進してきた。それによって海外から投資資金が流入し、チリ経済は一時好調に見えた。ところが所得格差は激しい。国際連合の2017年調査によると、所得上位1%の人が所得全体の33%を得ており、これは経済協力開発機構(OECD)の中でトップクラスだ。

 実は、チリは外国の多くの中央銀行にとって理想的な物価上昇率を実現している。日本銀行は現在2%をやや上回るインフレ率を目指しているが、チリの平均年間インフレ率は17年2.18%、18年2.32%、19年2.22%(国際通貨基金〈IMF〉推計)だ。

 しかしながら、賃金が伸び悩んでいる低中所得層にとって、公共料金などの値上げによる生活コストの上昇は深刻だ。ピニェラ政権の支持率は15%へ急落。これは民主化以来最低の数値だ。チリの調査機関によると、労働者の5割は月収40万ペソ(約6万円)未満で暮らしているという。

 今回値上げは撤回されたが、サンティアゴの地下鉄運賃は1999年に比べて185%も上昇している(朝夕のピーク時料金)。主な先進国の地下鉄運賃は同期間にどうなっているだろうか?

 米ニューヨークは83%上昇、米サンフランシスコは74%上昇、英ロンドンは60%上昇(地下鉄カード使用時)、ドイツ・フランクフルトは54%上昇、スウェーデン・ストックホルムは221%上昇だ。

 それらの街の低中所得層も生活コストの上昇に不満を抱いていると思われる。ただ、暴動が頻発していないのは、収入がそれなりに増加しているからだろう。

 他方、東京メトロの地下鉄初乗り運賃は、99年は160円。現在は現金購入で170円(6%上昇)、交通系電子マネー「パスモ」での支払いなら168円(5%上昇)だ。この間の消費税率5%引き上げを差し引けば、実際はほぼ値上げはないことになる。

 日銀の黒田東彦総裁は13年にニューヨークでの講演で、東京オリンピックが開催される7年後には地下鉄に160円で乗ることはできなくなっている、と自信満々に述べていた。異次元金融緩和策の効果が発揮されているはずだと当時の日銀は信じていたからだ。しかし、実際は前述のように消費税率の要因を除くと東京の地下鉄運賃はほぼ値上がりしていない。

 もっとも、賃金の伸びは緩やかで年金生活者の比率も高まっている現状において、生活コストがもし欧米並みに上昇していたら、国民の不満は著しく高まっていたと思われる。インフレ目標が依然として達成されていないが故に、安倍政権の支持率は低下しないで済んでいるともいえるだろう。

(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)


金融市場異論百出
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デフレ脱却の熱意が冷めてきたアベノミクスの行方
鈴木明彦

このままではデフレ・円高・株安に逆戻り、残された最後の回避策とは
竹中正治

日本のインフレ率が世界で段違いに低い5つの理由
加藤 出

https://diamond.jp/articles/-/219397


 

ビジネス2019年11月7日 / 15:42 / 2時間前更新
日経平均は3日続伸、終値で連日年初来高値更新
Reuters Staff
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[東京 7日 ロイター] - 東京株式市場で日経平均は3日続伸し、終値で年初来高値更新。オーバーナイトの米国株主要指数が横ばいで決め手となる材料が不足する中、早朝からドル/円がやや円高方向に振れたことが上値を重くした。前日のソフトバンクグループ(9984.T)決算を受けたネガティブショックは広がらず、オリンパス(7733.T)やトヨタ自動車(7203.T)の好決算が投資家心理を支え、大幅下落には至らなかった。

TOPIXも3日続伸。東証33業種では、精密機器、その他金融業、非鉄金属などが値上がり率上位に入った。一方、海運業、鉄鋼、石油・石炭製品などは売られた。

個別銘柄ではソフトバンクGが反落し2.22%安。同社が6日に発表した2019年4─9月期決算(国際会計基準)は、営業損益が155億円の赤字となり、前年同期の1兆4207億円の黒字から大幅に悪化したことが嫌気された。

市場からは「ウィーワークの公正価格の減少については、事前に報道されていたし、ソフトバンクGの株価は既に下がっていた。今回の決算では細かい数字が確認された程度。日経平均への影響は限定的で、ショックまでには至らなかった」(国内証券)との声が出ていた。

オリンパス(7733.T)は急騰し年初来高値を更新した。6日に発表した20年3月期の連結業績予想(国際会計基準)では当期利益を前年比7.7倍の630億円と据え置いたものの、同日発表した新たな経営戦略が評価された。

そのほか、本日午後1時25分に決算発表を発表したトヨタ自動車は後場上昇し連日の年初来高値を更新。2019年7―9月期連結決算(米国会計基準)では、営業利益が前年同期比14.4%増の6623億円となった。また、同時期に自社株買いも発表したことから、需給改善を期待した買いも入った。

東証1部の騰落数は、値上がり984銘柄に対し、値下がりが1070銘柄、変わらずが99銘柄だった。

日経平均.N225

終値      23330.32 +26.50

寄り付き    23283.14

安値/高値   23253.32─23336

TOPIX.TOPX

終値       1698.13 +3.68

寄り付き     1693.75

安値/高値    1692.21─1699.43

東証出来高(万株) 126775

東証売買代金(億円) 23894.09
https://jp.reuters.com/article/tokyo-stx-close-idJPKBN1XH0PL


 

為替フォーラム2019年11月7日 / 10:57 / 6時間前更新
コラム:低金利とドル高が並存した訳、年明け後再び105円へ=内田稔氏
内田稔 三菱UFJ銀行 チーフアナリスト
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[7日 ロイター] - 小動きに終始している点ばかりが強調される昨今のドル円相場だが、ドル/円JPY=EBSが109.57円を下回って年末を迎えた場合、4年続けて年始より年末の方がドル安・円高、すなわち4年連続の「陰線引け」となる。

足元では市場心理が好転しており、短期的にみれば、110円大台の回復があってもおかしくないが、時折見られるこうした上昇を挟みながら、ドル/円はここ数年間、総じて下落トレンドをたどってきた。

例えば、2015年6月のザラ場高値である125.86円をピークに、これまで17四半期かけて、約17円(約13%)も下落した。

ちょうど四半期ごとに1円という極めて緩やかなペースではあるが、ドルにはこの間、9回もの利上げという支援材料があったことを踏まえれば、ドル/円は上昇軌道をたどっても不思議ではなかったはずだ。

もっとも、クロス円に比べれば、ドル円の下げ幅はまだ限定的とも言える。例えば、豪ドル/円AUDJPY=は15年6月の高値96円台から、足元の75円台まで21円(約22%)も下落。対ブラジルレアルや対南アフリカランドなど、下げ幅が3割程度に及んだ新興国通貨は珍しくない。

過去1年の主要通貨のパフォーマンスをみると、1位の円にスイスフランが続き、ドルが3番手に位置する通り、ドルも総じてみれば堅調さを保ってきたことが、ドル/円の下落(円高)の程度を相当、吸収してきたとみることができる。

とはいえ、このドル高は、ドル金利の動きに照らせば、不可解な面がある。米国の長期金利US10YT=RRは昨年10月に記録した3.26%から今年9月に記録した1.42%まで、ほぼ一貫して低下基調を続けてきたからだ。

<ドルの変動要因は金利から需給に>

このようにドル金利の低下とドル高が並存し続けた事実は、ドルが金利動向より量、すなわちドル資金に対する需給の引き締まりによって支えられてきた可能性を示唆している。

その需給ひっ迫の要因として、次の4点が挙げられる。まず、米国の金融規制の強化だ。米国ではドッド・フランク法に基づくレバレッジ比率規制や自己勘定取引を禁じるボルカールール、米証券取引委員会によるMMF(マネーマネージメントファンド)への規制強化が重なり、2015年以降、総じてレポ取引やMMFを通じた米国勢によるドル資金の供給が絞られた。

次に2017年10月に始まった米連邦準備理事会(FRB)による保有資産の縮小も、同じくドル資金の需給ひっ迫に影響した可能性が高い。

また、緩やかな景気減速懸念が、投資家のドル資金の出し渋りを招いた可能性もある。過去1年、米レバレッジドローンから資金が流出し、価格もいくらか下落している。

さらに相対的にみて高金利を維持したドル建て資産への証券投資需要も、恒常的なドル需給のひっ迫を招いた側面があるだろう。このようなドル需給ひっ迫がドル高に波及する経路の1つに、為替ヘッジコストの上昇が挙げられる。

投資家が高いヘッジコストを敬遠すればヘッジ比率が低下し、ドル買い需要が喚起されるためだ。日本でも最近、公的年金や生命保険会社など機関投資家によるオープン外債積み増しへの思惑が市場ではくすぶっている。

このようにドル相場が「金利」よりも「量」によって支えられてきたとみれば、金利低下が必ずしもドル安を意味しなかったのと同様に、ドル金利の上昇が必ずしもドル高にはつながらないこととなる。

<一転してドル軟調か>

こうした中、米国では9月に入り、翌日物レポ金利が、一時10%台に急上昇するなど、短期金融市場におけるドル不足が露呈した。これを受け、FRBはレポ取引による資金供給で対応した。

また、「金融危機後の大規模な資産買い入れと混同されるべきではない(パウエルFRB議長)」と断りつつ、10月以降、米財務省の短期証券(Tビル)の買い入れを開始し、少なくとも2020年6月まで継続する方針を示した。

これに応じ、市場では「円投」や「ユーロ投」に伴うドル調達時に求められるプレミアム(例えば、3カ月物のベーシススワップのスプレッド)が急低下した。例年ならドル需要が強いこの時期にはほとんど見られない現象であり、FRBのTビル買い入れがひとまず奏功した形と言える。

それは同時に、ドル資金に対する需給の引き締まりの緩和を通じてドル高圧力の後退にもつながる動きだ。実際、10月上旬を底に米長期金利が反転上昇しているにもかかわらず、ユーロや円、ポンドなど主要6通貨を対象とするドル指数.DXYをみると、10月1日を直近の高値に、ドルは軟調に推移しており、ここまでの説明と整合的だ。

この見方が正しければ、ドル資金への需要が強い年内については、ドルの下げ幅はまだ限定的な範囲にとどまる上、時折、堅調に推移する場面もみられそうだ。

しかし、年末接近に伴う季節的なドル需要は、多くの市場参加者が年末越えの資金調達にめどを付ける米国の感謝祭前後から遅くとも12月中旬のクリスマス前までに和らぐと考えられる。

それに応じ、ドル高圧力も11月中旬から下旬をピークに緩和していく公算が大きい。そして12月中旬から下旬、または遅くとも年明け以降、ドルは一転して幅広い通貨に対し、軟調な値動きに転じる可能性が高いのではないか。

もちろん、日本では貿易収支が赤字に転じており、対外投資に絡む円売り需要も根強いことから、ドル円でみれば派手なドル安・円高は進みづらいだろう。それでも、年明け以降、再び軟調に推移し、改めて105円に迫る可能性が高いと読む。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。

内田稔氏
*内田稔氏は、三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチのチーフアナリスト。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。一貫して外国為替業務に携わり、2012年より現職。J-money誌の東京外国為替市場調査ファンダメンタルズ分析部門では2013年から19年まで個人ランキング1位。

(編集:田巻一彦)
https://jp.reuters.com/article/column-minori-uchida-idJPKBN1XH056
https://jp.reuters.com/article/column-minori-uchida-idJPKBN1XH056
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/576.html

[経世済民133] 中国当局、ECサイトに独占的慣行の停止を要求 5G米中日韓で普及 欧州出遅れ 中国モバイル決済アプリ、海外カードと提携 中国外貨準備3.105兆ドルに増 米中「第1段階」通商合意、双方同時の追加関税撤廃必要=中国商務省 米政府、来年1月のAPEC首脳会議主催を検討=マレーシア外相
ビジネス2019年11月7日 / 12:52 / 5時間前更新
中国当局、ECサイトに独占的慣行の停止を要求
Reuters Staff
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[上海 6日 ロイター] - 中国の規制当局はアリババ集団(BABA.N)や京東集団(JDドットコム)(JD.O)などネット通販大手に対し、独占的と見なされる可能性がある慣行をやめるよう要求した。

国営新華社の5日の報道によると、中国の独占禁止当局である国家市場監督管理総局(SAMR)が電子商取引(EC)サイトを運営する20社以上と会合を開き、出店事業者が競合サイトで商品を販売するのを阻止するために独占提携契約への署名を強要する慣行をやめるよう求めた。

複数のECサイト運営会社やEC事業者はこのところ、アリババの仮想商店街「天猫(Tモール)」でいわゆる「二者択一」の慣行が存在するとして批判の声を上げている。

新華社によると、SAMRの当局者は「サイト運営会社の活動によって最近、幾つかの問題が浮上した」と指摘。一例として、サイト間の競争が激化するなか、「二者択一」慣行が生まれ、多くの当事者が懸念を強めているとしたうえで、このような慣行は独占禁止やEC関連の法律に違反していると伝えた。

この慣行を巡っては、JDドットコムの子会社2社がTモールに対して訴訟を提起しており、賠償金の支払いや謝罪を求めている。北京の裁判所が先月、訴訟の詳細を公表した。

地方政府系のメディアは6日、ECサイト運営のピン多多(ドゥオドゥオ)(PDD.O)と唯品会(ビップショップ・ホールディングス)(VIPS.N)がJDドットコムの訴訟への参加を北京の裁判所に申し立てたと伝えた。3社とも騰訊控股(テンセント・ホールディングス)(0700.HK)が出資している。

JDドットコムはロイターに書面で「自由で公正かつ合法的な競争をわれわれは強く支持するが、業界の全員が賛同しているわけではない」とし、「販売事業者と消費者は介入を受けることなく、それぞれが望む場所で商品を販売したり購入できるのが当然」と強調した。

ビップショップとピン多多は訴訟についてコメントを控えた。アリババとテンセントからもコメントは得られていない。
https://jp.reuters.com/article/china-ec-idJPKBN1XH0CC

ビジネス2019年11月7日 / 17:47 / 7分前更新
中国外貨準備、10月末は3.105兆ドルに増加 予想上回る
Reuters Staff
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[北京 7日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)が7日に発表した10月末の外貨準備は、9月末より127億ドル増の3兆1050億ドルだった。

ロイターがまとめたエコノミスト調査では、76億ドル増の3兆1000億ドルと予想されていた。

米国との貿易摩擦の激化や国内経済の減速にもかかわらず、中国はここ1年、資本流出の抑制に成功している。

金準備は9月末時点の930億4500万ドルから946億5000万ドルに増加した。
https://jp.reuters.com/article/china-economy-forex-reserves-idJPKBN1XH11J

 


ビジネス2019年11月7日 / 16:42 / 1時間前更新
中国のモバイル決済アプリ、海外カードと提携
Reuters Staff
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[上海 6日 ロイター] - 中国のモバイル決済アプリ「アリペイ(支付宝)」と「ウィーチャットペイ(微信支付)」は、中国本土を訪れる外国人旅行者が海外のクレジットカードを利用して両社のサービスを利用できる体制を整えたことを明らかにした。

中国では、多くの取引がアリペイやウィーチャットペイを通じて決済されているが、これまで両社のサービスは中国の銀行口座を持つ人しか利用できなかった。

両アプリは、ビザ、マスターカード、アメリカン・エキスプレス、ディスカバー・グローバル・ネットワーク、JCBと提携。ビザとマスターカードは提携を歓迎する意向を示した。
https://jp.reuters.com/article/china-payments-idJPKBN1XH0TU


 

テクノロジー2019年11月7日 / 17:17 / 38分前更新
5G、米中日韓で普及へ 欧州は出遅れ=調査
Reuters Staff
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[ベルリン 7日 ロイター] - GSMAインテリジェンスの調査によると、第5世代(5G)モバイル通信規格は中国、米国、日本、韓国で普及が進み、2025年までには4カ国のユーザーが世界全体の半分以上を占める見通し。

欧州は5G網の敷設が遅れており、一般消費者への普及が遅れる見通しだが、「スマート工場」などビジネス分野では5Gの利用拡大が見込まれている。

韓国では、モバイル通信の66%が2025年までに5Gとなる見通し。米国は50%、日本は49%と予想されている。

ユーザー数では中国の5G利用者が6億人と、世界首位になる見通し。

世界全体では15億7000万人が2025年までに5Gを利用するとみられる。これはモバイル通信の利用者全体の18%に相当する。

インターネット・オブ・シングス(IoT)市場の規模は2025年には1兆ドルに達する見通し。これは昨年のモバイル業界全体の収入にほぼ匹敵するという。

ただ接続料金は全体の5%にすぎず、通信会社はコンサルティング会社やアマゾン(AMZN.O)、マイクロソフト(MSFT.O)など米ハイテク大手との競合を迫られるとみられる。

途上国では4Gの普及が進む見通し。2025年の世界全体のモバイル通信の59%は4Gになるとみられている。
https://jp.reuters.com/article/telecoms-5g-idJPKBN1XH0XY


 

米中、段階的な関税撤回に合意−中国商務省
Bloomberg News
2019年11月7日 16:41 JST 更新日時 2019年11月7日 17:02 JST
第1段階の関税軽減の規模は合意の内容次第−商務省の高峰報道官
合意を署名する場所と時期について交渉を続ける
TOPSHOT-US-CHINA-ECONOMY-TRADE
Photographer: Mark Ralston/AFP via Getty Images
中国商務省は7日、米中両国が相互の製品に賦課している関税を段階的に互いに比例する形で撤回することで合意したと発表した。

  商務省の高峰報道官は、今後数週間で署名される方向の第1段階の関税軽減の規模は合意の内容次第だと述べた。これ以上の詳細は明らかにしなかった。両国はこの2週間で「建設的な協議」をしてきたと高報道官は語った。

  米国側もこの事実を確認すれば、世界経済に影を落としてきた貿易戦争の緩和に向けた工程表が浮上することになる。

  高報道官は、米中両国は第1段階の合意を署名する場所と時期について交渉を続けると述べた。

  中国商務省の発表を受け、円と米国債相場は下落。ドルは対円で一時0.3%下げていたが、0.1%高の1ドル=109円05銭となった。米10年国債利回りは2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し1.85%。

原題:China Says It Agreed With U.S. to Roll Back Tariffs in Phases、Yen, Treasuries Fall as U.S.-China to Lift Tariffs in Phases

(第3段落以降を追加し更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-07/Q0L8SODWX2PT01?srnd=cojp-v2

 


ワールド2019年11月7日 / 17:22 / 33分前更新
米中「第1段階」通商合意、双方同時の追加関税撤廃必要=中国商務省
Reuters Staff
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[北京 7日 ロイター] - 中国商務省の高峰報道官は7日、米中の「第1段階」の通商合意が成立するためには、両国が互いに発動している追加関税を同時かつ同じ規模で撤廃する必要があると表明した。

高報道官は、米中は貿易戦争の過程で双方が複数回にわたって発動した追加関税を廃止することを過去2週間で合意したと指摘した。
https://jp.reuters.com/article/usa-china-tariff-idJPKBN1XH0YP


 
トップニュース2019年11月7日 / 17:42 / 13分前更新
米政府、来年1月のAPEC首脳会議主催を検討=マレーシア外相
Reuters Staff
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[クアラルンプール 7日 ロイター] - 米政府は、チリが開催を断念したアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を来年1月に米国で開催することを検討している。

マレーシアのサイフディン外相が7日、ポンペオ米国務長官の発言として明らかにした。

チリは反政府デモの激化を受けて11月16─17日に予定していたAPEC首脳会議の開催を断念。マレーシアは来年末に予定されている次回APEC首脳会議を主催する予定。

サイフディン外相は記者団に「バンコクに滞在中、ポンペオ国務長官から電話があり、マレーシアの立場を聞かれた。チリは今年11月のAPECを主催できないため、米国が1月に米国内でのAPEC開催を検討しているとの話だった」と述べた。

ただ同相は「バンコクにいた米当局者に、良い考えとは思えないと伝えた」と発言。詳細は明らかにしなかった。

米政府のコメントは取れていない。

サイフディン外相は今月、東アジアサミットなどのためバンコクを訪れていた。
https://jp.reuters.com/article/chile-protests-usa-malaysia-idJPKBN1XH10Y
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/577.html

[経世済民133] 製造業の利益縮小と賃金低下、日本経済は「縮小局面」に入った 債券小幅安、日銀スティープ化策への警戒感 世界の主要中銀「緩和のピーク過ぎた」ソブリン債利回り底打 1年前の世界よりずっと良い、米利下げと米中合意期待 過去の勝者に賭けるクオンツファンド、過去最大の資金流出に直面 日本との軍事情報協定破棄、48.3%が支持−韓国
製造業の利益縮小と賃金低下、日本経済は「縮小局面」に入った
野口悠紀雄:早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問
政策・マーケット 野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る
2019.11.7 5:10

 アベノミクスの期間に目覚ましく増加した製造業の営業利益が、いま減少している。
 また、これまではほぼ上昇を続けていた名目賃金が下落している。
 日本経済の様相が大きく変わり始めた。
米中貿易戦争の影響で、
日本の輸出も大きく減少
 アベノミクスの期間に、日本企業の利益は顕著な増加を続けた。全産業の営業利益は、第一次安倍政権が発足した2012年10〜12月期の10.6兆円から、19年1〜3月期の19.5兆円まで、ほぼ2倍になった。
 しかし、製造業の利益には、18年以降、明らかに変調が見られる。
 営業利益の対前年同期比は、18年7〜9月期以降、マイナスになっている。
 19年4〜6月期には、対前年同期比がマイナス22.4%という大きな落ち込みになっている。
 この結果、19年4〜6月期における製造業の営業利益(4.2兆円)は、15年前半頃の数字に戻ってしまった(図表1)。

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対中輸出は19年から前年比マイナス


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 なぜこのように製造業の利益が減少しているのか?
 第一に考えられるのは、米中貿易戦争の影響で輸出が減少したことだ。
 そこで輸出の動向を見ると、確かに、落ち込んでいる。
 対前年同月比の推移を見ると、図表2に示すように、17年夏頃がピークだった。
 その後、対前年同月比は低下傾向で、18年10月以降は、マイナスの月が多くなっている。
 19年9月の対前年比は、マイナス5.2%だ。

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 輸出額で見ると、18年4〜6月期には20.2兆円だったのが、19年4〜6月期には19.1兆円になった。したがって、1.1兆円の減少だ。
 なお、中国に対する輸出は、17年には大きく増えたが、19年から対前年比がマイナスになっている。
 このように、米中貿易戦争の影響は、米中間の貿易だけではなく、日本の輸出にも大きな影響を与えているのだ。

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原油価格上昇も利益の減少に影響

輸出の落ち込みと同額だけ
製造業の売り上げと利益が減少
 以上で見た輸出減少と、製造業の売り上げや利益との関係はどうか?
 図表3は、製造業の売上高の対前年同期比を示す。2018年夏以降、前年同期比が低下し、19年4〜6月期にはマイナスになっている。

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 額で見ると、19年4〜6月期では、97.9兆円だ。これは、18年4〜6月期の99.1兆円に比べ、1.2兆円(1.2%)の減少だ。
 これは、先に見た輸出減とほぼ同額だ。
 したがって、輸出減がそれと同額の売り上げ減を引き起こしたといえる。
 次に、製造業の営業利益の額の変化を見よう。
 19年4〜6月期には4.2兆円だ。これは、18年4〜6月期の5.4兆円に比べて1.2兆円の減少だ。
 したがって、対前期比で見て、売り上げとほぼ同額だけ営業利益が落ち込んでいることになる。
 以上のように、輸出、売り上げ、利益の減少は、時系列的にも、額でも同じであることから、輸出が減少して製造業の売上高を減少させ、それが営業利益を減少させたということができる。
原油価格上昇も
利益の減少に影響
 しかし、輸出の落ち込みだけが製造業の営業利益減少の原因ではない。
 なぜなら、図表3に見るように、営業利益の対前年同月比は、2018年7〜9月期からマイナスになっているが、売上高が減少するようになったのは、図表1に見るように、19年4〜6月期になってからのことだからだ。
 18年後半に売上高が減らなかったにもかかわらず、営業利益が減ったのは、図表4に見るように、売上原価の伸びが高まったからだ。
 これは、原油価格上昇の影響である。

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19年に入って名目賃金の低下続く


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 原油価格は、19年になってからは落ち着いたが、今度は、先に見たように、輸出が減少したのだ。
 これまで指摘したことをまとめると、18年には原油価格の上昇により、そして、19年になってからは輸出の減少による売上高減少のために、製造業の営業利益が減少したことになる。
 このように、世界経済の変動の影響により、日本の製造業の営業利益が減少したのだ。こうした状態は一時的なものではなく、今後も引き続くものと考えられる。
 なお、19年4〜6月期には、非製造業の営業利益の対前年比もマイナスになった。この結果、全産業の営業利益の対前年比もマイナスになった。
名目賃金の低下続く
世界経済の変動に脆弱な体質
 日本経済が縮小局面に入ったことを示すのは製造業の状況だけではない。賃金が低下している。
 非製造業では、2018年7〜9月期から、製造業では、18年10〜12月期から、1人当たり人件費(賃金)の対前年同期比がマイナスになっている(図表5)。

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 製造業では、19年4〜6月期には、マイナス2.4%という大きな落ち込みになっている。
 人件費総額の対前年同期比は、19年4〜6月期には、非製造業と全産業でマイナスになった。

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失業率や有効求人倍率にも変化

賃金の下落は、図表6のように、毎月勤労統計調査のデータでも顕著に見られる。
 名目賃金が19年になってから低下を始めたのだ。そして、6月を除けば、対前年同月比がマイナスの月が、8月まで継続している。

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 14年以降、名目賃金がこれだけの期間にわたって減少を続けたことはなかった。これは、労働市場に大きな変化が生じていることを示している。
 これによって、19年7月の名目賃金指数(118.7)は、18年7月(119.9)より約1%低下した。
 これまで、物価上昇で実質賃金が低下することはあったが、いまは名目賃金が低下し、それが実質賃金を低下させているのだ。
 最近では、失業率や有効求人倍率にも、従来の傾向からの変化が見られる。
 9月の完全失業率は上昇した。また、有効求人倍率は低下した。
 不況色が強まってくると、金融緩和や、MMT(現代貨幣理論)のような財政拡大に頼る無責任な議論が出てくることが懸念される。
 世界経済の変動によって、利益が大きく変動してしまう日本経済の体質が問題なのだ。
 こうした構造を改革していくことが、経済政策の目標とされなければならない。
(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)
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https://diamond.jp/articles/-/219590?page=5


 


債券小幅安、日銀スティープ化策への警戒感重し−米中懸念は下支え
三浦和美
2019年11月7日 15:44 JST
債券相場は小幅安。米中貿易合意の後ずれ懸念や米長期金利の低下を背景に買いが先行したものの、日本銀行が利回り曲線をスティープ(傾斜)化させる姿勢にあるとの見方から上値が抑えられた。

新発10年債利回りは前日比1.5ベーシスポイント(bp)低いマイナス0.105%で取引を開始したが、徐々に売りが優勢となり、一時は1.5bp高いマイナス0.075%まで戻した
長期国債先物12月物の終値は3銭安の153円20銭。取引開始直後に23銭高の153円46銭を付け、午後には一時20銭安の153円03銭まで売られる
市場関係者の見方
三井住友トラスト・アセットマネジメントの押久保直也シニアエコノミスト

米中の貿易合意に関しては期待に水を差す材料もある中で、日米とも金利上昇に一服感が出ている
ただ、米長期金利が低下する中でも、円債に関しては超長期債買い入れオペの減額など独自の日銀要因の影響が大きい
日銀が明確にスティープ化策のような措置を取る中では、なかなか継続的に金利低下しにくくなっている
背景
米中の貿易合意署名、12月にずれ込む可能性−会談場所は米国外か
米国の10年債利回りはこの日のアジア時間の取引で一時1.80%と、2営業日ぶりの水準まで低下
日銀買いオペ、残存10ー25年を減額−超長期金利の低下をけん制
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
-0.195% -0.210% -0.090% 0.265% 0.405% 0.430%
前日比 横ばい +0.5bp 横ばい +0.5bp +0.5bp +1.0bp

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-07/Q0L49UT0AFBB01?srnd=cojp-v2

 

世界の主要中銀「緩和のピーク過ぎた」−ソブリン債利回り底打ちか
Liz McCormick、John Ainger、David Goodman (London)
2019年11月7日 13:17 JST
米金融当局は緩和休止を示唆、ECBと日銀はもはや限界に接近
財政政策と金融政策の協調に焦点が移行−シティのヘネバーグ氏
世界各国・地域の中央銀行は今年に入り、金融緩和を進めてきた。だが、一時は奔流にも見えた緩和の動きは現在、緩流に落ち着きつつある。当局としてリセッション(景気回復)回避に十分手を尽くしたと判断しているためで、そのことが投資家にとってソブリン債利回りがようやく底に達したと考える理由となっている。

  米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は先週、今年3回目の利下げ決定後、金融政策が「適切な」水準に達したと語った。また、欧州中央銀行(ECB)の場合、マイナス金利に対する批判拡大を背景に、ラガルド新総裁には追加緩和を手控えるよう圧力がかかっており、日本銀行の黒田東彦総裁はさらに金融政策の限界に近づいている可能性がある。

Fed Chairman Jerome Powell Holds News Conference Following FOMC Rate Decision
記者会見したパウエル議長(10月30日)Photographer: Al Drago/Bloomberg
  シティグループのエコノミストが「ハト派的局面のピーク」到来を宣言し、先行き中銀による積極的な景気支援はこれまでよりも絞られてくると想定する投資家は、手持ち債券を手じまう形で対応している。

  世界的な指標である米10年債利回りは約2%と、9月に付けた3年ぶり低水準の1.43%から上昇に転じ、他国でもこれに追随する動きが見られる。

Taking Flight
Government debt yields rise around the world


Source: Bloomberg

  RBCキャピタル・マーケッツのグローバル・マクロストラテジスト、ピーター・シャフリク氏は「中銀による緩和のピークは過ぎた」と指摘。「あちこちで多少の追加利下げはあるかもしれないが、極端な利下げ局面は終わった。これに伴い、米国をはじめとする各国・地域の利回りには一段の上昇のリスクがある。今では債券について私は慎重になっている」と話した。

  一方、追加利下げをしようにもそれには限度があることを金融当局者も認識しており、マイナス金利を採用している国・地域では銀行や政治家から反発の声が強まっている。ラガルド、黒田両氏を含む金融当局者の多くは、需要喚起の必要性が生じた場合、政府にもっとそれを分担してもらいたい考えだ。

  シティグループのエコノミスト、パーニル・ヘネバーグ氏は「さらにどの程度の景気支援が可能かという点で、各国・地域の中銀は限界に近づきつつあるだろう」とコメント。「金融当局者は貿易戦争を起因とするあらゆる不確実性に対処しようとし、恐らく現時点では十分手を尽くした。焦点は今や財政政策と金融政策の協調によって何ができるかに移っている」との考えを示した。

原題:Central Banks Hitting ‘Peak Dovishness’ Prick Bond-Market Bubble(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-07/Q0KWD36JTSEA01


日本との軍事情報協定破棄、48.3%が支持−韓国の世論調査
Shinhye Kang
2019年11月7日 11:40 JST
GSOMIAを維持すべきだとの回答は37.6%
6日実施の世論調査結果をリアルメーターが発表
An honor guard member holds a South Korean flag in Washington, D.C., U.S.. 
韓国政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めたことに関する韓国の世論調査によると、回答者の約48.3%は政府の決定を支持し、37.6%は協定を維持すべきだと回答した。

  世論調査会社リアルメーターが7日、6日実施の調査結果を発表。502人から回答を得たという。

  GSOMIAは今月23日に効力を失う。

原題:CORRECT: 48.3% of SKoreans Want to End Intel Pact W/ Japan: Poll(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-07/Q0KTJDT0AFBJ01?srnd=cojp-v2

 

1年前の世界よりずっと良い、米利下げと米中合意期待で−ラジャン氏
Anirban Nag
2019年11月7日 15:34 JST
FOMCは「成長に関する多くの懸念にとても敏感」
ECBには政策をさらに緩和する余地はほとんどない

Birds fly past the Marriner S. Eccles Federal Reserve Board building in Washington, D.C.

米中貿易協議合意への期待や米連邦公開市場委員会(FOMC)による一連の利下げで、世界は短期的にずっと良くなっているとの認識のラジャン元インド準備銀行(中央銀行)総裁が示した。

  国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストも務めたラジャン氏はシンガポールでブルームバーグテレビジョンのインタビューに答え、FOMCは「成長に関する多くの懸念にとても敏感」で、「一連の保険的な利下げを行った。貿易を巡る難しい局面に対する一定の解決策を待ちながらであっても、市場を安心させたように見える」と述べた。

Opening Day Of World Economic Forum 2019
ラグラム・ラジャン氏写真家:サイモン・ドーソン/ブルームバーグ
  ラジャン氏は米中貿易協議で一定の進展があるが、恒久的な解決策にも、多くの人が望んでいるようなものにもならないと分析。

  その上で、昨年の年末に向かう時期と比べるとある意味で「われわれはずっと良い場所にいる」と語った。

  一方、欧州中央銀行(ECB)には政策をさらに緩和する余地はほとんどないとも話し、今は政治家が成長を回復させ雇用創出を促すべきだとの見方を示した。

Rajan Discusses Fed, Global Economy, BOE, Brexit
ブルームバーグテレビジョンに出演したラジャン氏Markets: Asia.” (Source: Bloomberg)
原題:
Rajan Says World Is in Better Place After Fed, Trade Moves (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-07/Q0L365T0AFBA01?srnd=cojp-v2

過去の勝者に賭けるクオンツファンド、過去最大の資金流出に直面
Sarah Ponczek
2019年11月7日 15:06 JST
• モメンタム重視のETFから10月に約16億ドルの資金引き揚げ
• ここ数年は主にモメンタムが主役、いずれ必ず逆戻りする−バーク氏
上場投資信託(ETF)の投資家は、今年の勝者が勝ち続けることに賭ける戦略の負けを認めたようだ。
  モメンタム重視のETFから10月に約16億ドル(約1740億円)が引き出された。ブルームバーグ・インテリジェンスの2012年以降のデータによると、これは月間の資金流出としては過去最大。先月のスマートベータ型の中では最大の流出で、2四半期の純流入後のペースの変化を浮き彫りにした。
Mad Dash
Momentum ETFs suffer worst monthly outflow on record

Source: Bloomberg Intelligence
  資金流出の中心は「iシェアーズ・エッジ・MSCI米国モメンタム・ファクターETF」(運用資産89億ドル、ティッカーはMTUM)。ブルームバーグの集計データによると、ロングオンリー戦略の同ファンドは、投資家が10億ドル強を引き出し、過去最悪の月となった。
  パーソナル・キャピタルのクレイグ・バーク最高投資責任者(CIO)は「この極めて長期にわたる強気相場は成長が、そしてここ数年は主にモメンタムが主役だった。いずれこうしたサイクルは必ず逆戻りする」と指摘した。
原題:Quant Trade Betting on Past Winners Suffers Record Exodus(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-07/Q0KZN1T0AFB401


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/578.html

[経世済民133] 安全資産が軒並み下落、金も国債も円も−「世界の終わり」取引が崩壊 運用のプロ、米国株高値追いでも喜べず−ベンチマーク下回る成績で 欧州のトレーダーら、取引時間の短縮求める−心の健康と幸福を求め 日本株は輸出や金融高い、決算失望の資生堂安い−指数は上げ幅縮小
安全資産が軒並み下落、金も国債も円も−「世界の終わり」取引が崩壊
Luke Kawa
2019年11月8日 13:16 JST
世界のマイナス利回り債券残高減少−仏10年債などプラス圏回復
リセッションにならないばかりか成長が上向くとの見方−ピアクス氏
投資家は今年の大半、貿易戦争と成長減速が最終的には世界経済をリセッション(景気後退)に陥れると考え、金や国債などの安全資産に逃避してきたが、「世界の終わり」を見込むこうした取引が7日、逆噴射に見舞われた。

  金は一時、1オンス当たり30ドル下落、米国債は夏以降で最大の値下がり、ディフェンシブ株も売られた。米中貿易休戦の兆候がこの動きのきっかけになった。

Three-Sigma Selloff
  ビスポーク・インベストメント・グループのマクロストラテジスト、ジョージ・ピアクス氏は「夏の終わりごろには債券やイールドカーブがリセッションまっしぐらを示唆していた」が突然、「リセッションにならないばかりか成長が上向くとの見方になった」と指摘した。

米中「第1段階」合意、関税巻き戻し盛り込むと米国

  国債は世界で下落し、10年物米国債利回りは10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇。フランスとベルギーの10年債利回りは数カ月ぶりにプラス圏を回復。世界のマイナス利回り債券残高は約12兆5000億ドル(約1365兆円)に減少した。金相場は7日に1.5%下落。

フランスの10年国債利回りがプラス圏回復、米国債利回りも上昇

French and Belgian 10-year bonds trade with a positive yield again
  円も下げ1ドル=109円台となった。週初来ではドルに対して約1%下落。アジア太平洋地域の債券も8日に値下がりし、日本の10年国債利回りは週間ベースで6年以上で最大の上昇に向かっている。

  

Gold and silver tumble as real yields rise
Japan's 10-year yield is up more than 20 basis points from a Sept. low
原題:
Havens Crushed as End-of-the-World Trade Implodes (2)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-08/Q0MQZ9DWX2PU01?srnd=cojp-v2


 
運用のプロ、米国株高値追いでも喜べず−ベンチマーク下回る成績で
Lu Wang (News)
2019年11月8日 11:58 JST
このところのリスクオンの株高で痛みの度合いを強める運用担当者も
多くが循環的な方向転換に乗れなかった−ウェルズFのハーベイ氏
米国の株式相場は新高値を追うが、プロの運用担当者は素直に喜ぶことができないでいる。自らの運用実績を考えると、夜もよく眠れないファンドマネジャーも多いだろう。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)の集計データによれば、10月末時点で大型株のアクティブ運用ミューチュアルファンドのうちベンチマークを上回る成績となっているのはわずか29%。今年1−6月(上期)の41%から低下した。

relates to 運用のプロ、米国株高値追いでも喜べず−ベンチマーク下回る成績で
  2018年終盤に大きく下げたアップル株に対して警戒感は根強いが、同銘柄による19年のリターンはS&P500種株価指数のほぼ3倍。公益株や高配当銘柄に安全性を求め殺到したマネーマネジャーは、このところのリスクオンの株高で痛みの度合いを強めている。また銀行株と工業銘柄はここ3カ月、持ち直しているが、リセッション(景気後退)懸念からベータ値の高い銘柄を敬遠していた向きには打撃だ。

  ウェルズ・ファーゴの株式戦略責任者クリス・ハーベイ氏は顧客向けリポートで、「多くが循環的な方向転換に乗れず、世界的なリセッションと低金利長期化、反中国姿勢の貿易に対して過度に買い持ちとしている」と指摘、 「こうしたポジショニングが原因のアンダーパフォーマンスは大きな損失をもたらしている」と記した。

原題:
Career Risk Flashing in Fund Land as Only 29% Beat Benchmarks(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-08/Q0MLWKDWX2PW01?srnd=cojp-v2


 
日本株は輸出や金融高い、決算失望の資生堂安い−指数は上げ幅縮小
長谷川敏郎
2019年11月8日 7:51 JST 更新日時 2019年11月8日 11:37 JST
米中は段階的関税撤回で合意と中国、為替一時1ドル=109円40銭台
短期過熱感あり加速的な上値追いは難しい−みずほ証・倉持氏
8日の東京株式相場は上げ幅を縮小し、日経平均株価はマイナスに転じる場面も出ている。米中の貿易合意が楽観視され、自動車など輸出関連、銀行など金融株が高い。半面、決算失望の資生堂など化学株、バンダイナムコホールディングスなどが下落。

TOPIXは前日比2.77ポイント(0.2%)高の1700.90−午前11時28分現在
日経平均株価は27円92銭(0.1%)高の2万3358円24銭
〈きょうのポイント〉

米中は相互の製品に賦課している関税を段階的に撤回することで合意
米10年債利回りは1.92%、9ベーシスポイント上昇
きょうのドル・円相場は1ドル=109円20−40銭、前日の日本株終値時点は108円76銭
営業利益予想を引き下げた資生堂がTOPIX下落寄与度1位
バンナムHの第2四半期営業利益は市場予想下回る
Inside the Tokyo Stock Exchange As Japanese Shares Rebound
東証入り口Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  東海東京調査センターの長田清英チーフストラテジストは米中通商問題について、「シナリオ的に良い方向に向かっている」と指摘。米国債券市場では逆イールドの流れとなっており、「景気に対する懸念が後退し、日本株にもポジティブ」と述べた。

  日経平均は260円高まで上昇したものの、一時マイナス圏となった。みずほ証券の倉持靖彦投資情報部長は日本株を巡る環境は良くなっているとしつつ、テクニカル的な過熱感から「加速的に上値を追っていくのは難しい」と話していた。

日経平均に短期過熱警戒の記事はこちらをご覧ください

東証33業種では精密機器や卸売、輸送用機器、食料品、鉄鋼、銀行が上昇
化学や電気・ガス、不動産は下落
上げ縮小


欧州のトレーダーら、取引時間の短縮求める−心の健康と幸福を求め
Viren Vaghela
2019年11月8日 10:34 JST
relates to 欧州のトレーダーら、取引時間の短縮求める−心の健康と幸福を求め
Photographer: Martin Leissl/Bloomberg
欧州のトレーダーらが、株式市場の取引時間短縮を求めている。

  90分短縮すれば、トレーダーの労働環境を改善するばかりでなく、取引が凝縮され市場の効率化を促すと、欧州金融市場協会(AFME)と英国投資協会(IA)がロンドン証券取引所グループ(LSE)および他の欧州の取引所への書簡で論じた。

  ロンドンの金融街シティーではセクハラや長時間労働、男性中心の文化が問題になっている。プレッシャーが大きく長時間労働を余儀なくされる株トレーディングの世界は、家庭を持つ人が働きにくいほか、トレーダーらの「心の健康と幸福」に悪影響があると書簡は訴えている。

  AFMEのマネジングディレクターで株式担当責任者のエイプリル・デイ氏は、「取引時間の長さを是正する業界全体の取り組みがなければ、株式トレーディングは多様性と受容性の拡大を目指す金融サービス業界全体の動きから取り残される恐れがある」と指摘した。

  LSEの広報担当者は、同取引所は提案についてメンバーおよび顧客と協議すると述べた。 CBOE欧州の広報担当者は、取引時間短縮は「議論に値する非常に興味深いコンセプト」だとコメントした。

  書簡は、取引時間をロンドン時間午前9時−午後4時と、現在の午前8時−午後4時30分から短縮することを提案している。

原題:Traders Are Calling for Shorter Hours to Improve Their Health(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-08/Q0LJQZ6JIJUW01?srnd=cojp-v2


 

 
ビジネス2019年11月8日 / 14:13 / 34分前更新
9月景気動向一致指数2.0ポイント上昇、判断「悪化」据え置き=内閣府
Reuters Staff
1 分で読む

[東京 8日 ロイター] - 内閣府が8日公表した9月の景気動向指数(速報値、2015年=100)は、指標となる一致指数が前月比2.0ポイント上昇した。

同指数から機械的に決める基調判断は「悪化を示している」で据え置いた。

先行指数は前月比0.3ポイント上昇した。

竹本能文
https://jp.reuters.com/article/keiki-doko-septemper-idJPKBN1XI0IV


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/583.html

[経世済民133] 不安増すマイナス金利、「懲罰」はどこまで広がるのか インド格付け見通し、ネガティブに引き下げ=ムーディーズ  レポ金利急騰再発に備えるジャナス−「潤沢な現金」で機会生かす狙い 米中合意で投資前提に変化、怖いのは「ちゃぶ台返し」 米中が段階的な関税撤回で合意、「第1段階」の一部と米側確認 米民主党議員がウォーレン氏より穏健な富裕税−所得2.2億円超が標的 9月景気動向一致指数2.0ポイント上昇、判断「悪化」据え置き=内閣府 安倍首相が経済対策策定と補正予算編成を指示−菅官房長官
為替フォーラム2019年11月8日 / 10:48 / 2時間前更新
不安増すマイナス金利、「懲罰」はどこまで広がるのか
大槻奈那 マネックス証券 執行役員チーフ・アナリスト
4 分で読む

[東京 8日] - 米国が10月31日、今年3回目の利下げに踏み切り、日本もマイナス金利の深掘りこそなかったものの、フォワードガイダンスを修正して利下げの可能性を示した。今年は世界の金融政策が正常化から遠のき、一気に緩和モードに逆戻りした。

これを受けて株価が堅調に推移する一方で、マイナス金利に対する不安も広がりつつある。欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利を深掘りするドイツでは、預金金利をマイナスにする金融機関が急増、その数は10月末時点で135行にも上っている。

マイナス金利を「懲罰的金利(Strafzins)」と称し、これから逃れるための「タンス預金」ならぬ「マットレス預金」の増加が話題となっている。貯金箱が水没する挿絵とともに、貸金庫の料金をその中に保管できる札束の数で割った額を預金金利と比較し、どちらが割安かなどと論じるマネーの専門誌もある。

<景気回復に大きな効果>

もちろん、マイナス金利はこれまでの景気回復に貢献している。2012年にマイナスに転じたユーロ圏の成長率は、14年のマイナス金利導入後はプラスとなり、失業率も着実に減少し始めた。

これを支えたのが銀行貸出の増加である。減少傾向にあったユーロ圏の貸出は、マイナス金利導入後は見事に増加に転じた。今日までの貸出伸び率は累積で8%に上る。

とりわけ増加が著しいのは住宅ローンで、マイナス金利導入後の約5年で17%と大きく伸長した。政策金利がマイナス0.75%とユーロ圏よりさらに低いデンマークではこの8月、ついにマイナス金利の住宅ローンが登場し、7─9月期の住宅ローン実行額は前年比で2.7倍に膨れ上がった。

金利がマイナスになっているからと言って、住宅ローンの場合は元本返済があるので、キャッシュが個人口座に振り込まれるわけではない。それでも、月々の支払いは都市部の平均家賃よりも少なくて済むため、個人の住宅取得意欲を高めるには十分なインセンティブになる。

住宅ローン増加の恩恵で、デンマークの一部大手行は10月、今年度の収益予想を引き上げた。ローンの借り換え手数料収益が増加した上、預金金利のマイナス幅の深掘りが貸出金利の低下をカバーしている。こうした好調な決算を受け、その他の銀行もマイナス金利の住宅ローンに追随する可能性がある。

<様々な歪みも表面化>

一方、マイナス金利が生む様々な歪みを指摘する声もこれまで以上に強まっている。

マイナス金利の元では預金が減っていくことになるため、人々はますます預金を増やさねばならないという思いに駆られる。ECBがマイナス金利を導入した時点で年3.4%だった預金の伸び率は、マイナス金利深掘り後の19年9月末も前年比5.0%と高止まりしている。欧州の消費者センチメント指数も、今は「貯蓄すべき時だ」と答える人の割合が「買い物をすべき時だ」と答える人を上回り、この2年で大きく増加している。

日本でも、マネックス証券が行っている日本の個人向けサーベイでは「今は貯金を殖やすべき時だ」と答える人の割合が過去2年間増加トレンドにある。これらを踏まえると、マイナス金利の消費刺激効果は限定的と考えざるを得ない。

また、マイナス金利が適用される預金の範囲にも問題がある。欧州では、マイナス金利は基本的に10万ユーロ以上の大口預金にのみ適用されている。これは預金保険のカバー対象と一致している。これ以下の預金は生活資金なので「懲罰金利」は適用しないという考え方だ。このため、金融機関からすると、小口預金は預金保険料が取られる上、マイナス金利も転嫁できないため、利益を出せない預金ということになる。長期的には、小口預金を拒むインセンティブが金融機関に働きかねない。

銀行がさらに過度なリスクテイクに走るのではないか、という指摘は多い。米国では債券発行額が過去最高レベルで推移しているが、その中で財務制限条項などが緩い債券の割合が過半を占めるまでに増加している。普通なら借りられない人に対するNon−QMと呼ばれる非適格住宅ローン(non-qualified mortgage)を裏付けとする社債も、前年比44%の急増ぶりなどと聞くと、かつてのサブプライム問題をほうふつさせる既視感がある。

しかも、消費者に恩恵を与えるはずの住宅ローンにも課題が見え隠れする。ドイツやデンマークなどの低金利の国では、住宅ローンの総額が大きく増加しているにも関わらず、国民の持ち家比率にはあまり変化は見られない。住宅ローンの増加は、物件価格の上昇によるものであり、個人の持ち家普及に貢献していない可能性がある。

<顧客への転嫁、邦銀に難題>

預金へのマイナス金利適用は、欧州では大手行にも広がりつつある。第3四半期決算後、ドイツ銀行やコメルツ銀行、イタリアのウニクレディトなども適用の可能性に言及している。環境の苦しさは日本の銀行も同じで、いよいよマイナス金利を顧客に転嫁する可能性も排除できないだろう。

仮に、欧州と同様に、預金保険上限である1000万円を超える預金にのみ0.1%のマイナス金利を転嫁した場合、国内銀行で年間合計1700億円の収益が見込める。これは、全銀行の業務純益合計の6%程度に相当する。悪くない収益源にはなるが、これによる弊害も考えざるを得ない。

2018年にオリコンが実施した利用者アンケートでは、約4割が預金金利がマイナスになったら口座を解約すると回答している。そうなると、おそらく1000万円に達しない範囲で預金を複数の銀行に分散しようというモチベーションが働く。各行は金融資産を自行に集約させ、富裕層ビジネスの強化を狙っているが、そうした戦略にはそぐわない結果を生んでしまう。

また、銀行同士の合併手続きも煩雑になるかもしれない。合併行の両方に口座を持つ預金者が、合併後に図らずも1000万円以上の残高になってしまう場合はどうするのか。その告知が必要になる上、預金が他行に逃げるという懸念もある。

これらのリスクを考えると、たとえ収益的にはプラスでも、地元密着で今後他行との統合の可能性も高い地方銀行が預金にマイナス金利を適用するのは得策ではないかもしれない。

<マイナス金利脱却にはなお時間>

各国の中央銀行も、当然のことながら、マイナス金利がもたらす様々な弊害は理解している。ならば、金利はいつ正常化できるのか。

スウェーデンのリクスバンク(中央銀行)は10月23日の金融政策決定会合で、12月の会合でマイナス金利から脱却することを示唆した。スウェーデンの民間債務の増加は著しく、国内総生産(GDP)比で280%に上り、住宅価格の上昇率も2010年から55%と先進国中有数のペースとなっている。

しかし、他の多くの先進国では経済成長に疑問符が付いており、物価の伸びも鈍い。このため、スウェーデンの利上げに追随しそうな国は現局面でみられない。現在、次回の政策会合で金利の引き上げが予想されているのは世界中でスウェーデンとメキシコのみ、との報道もある。

随所に広がる歪みを残したまま、マネーはどこまで膨らんでいくのだろうか。株高に活気づく金融市場の裏側で、マイナス金利という史上初の試みが世界経済の行く末に不安の影を落としている。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*大槻奈那氏は、マネックス証券の執行役員チーフ・アナリスト兼マネックスユニバーシティ長。東京大学卒業。ロンドン・ビジネス・スクールで経営学修士(MBA)取得後、スタンダード&プアーズ、メリルリンチ日本証券などでアナリスト業務に従事。2016年1月より現職。名古屋商科大学大学院教授、二松学舎大学客員教授、クレディセゾン社外取締役、東京海上ホールディングス社外監査役を兼務。財政制度審議会財政制度分科会委員、東京都公金管理アドバイザリー会議委員などを務める。

(編集:北松克朗)
https://jp.reuters.com/article/clumn-nana-otsuki-idJPKBN1XI063


 
ビジネス2019年11月8日 / 08:58 / 35分前更新
インド格付け見通し、ネガティブに引き下げ=ムーディーズ
Reuters Staff
1 分で読む

[8日 ロイター] - 格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、インドの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。同国の経済成長率が歴史的な低水準にとどまるリスクが高まっていると指摘した。

ムーディーズによると、景気の弱さに対して政府や政策による有効な対応が取れておらず、既に高水準にある債務残高の増加を招いた状況も格付け見通しに反映した。

格付けは外貨建て、現地通貨建てともに「Baa2」に据え置いた。

見通し引き下げを受け、株式市場ではNSE指数.NSEIが序盤の取引で0.4%下落。通貨ルピーINR=D4も前日終値の70.965ルピーから下落し、71.31ルピーとなった。

インドの4─6月期の国内総生産(GDP)成長率は前年比5.0%と2013年以来の低い伸びとなった。世界的な貿易摩擦の影響で、個人消費と政府支出が鈍化した。

こうした中、インド中銀は複数回の利下げを実施し、政府は法人減税などの景気刺激策を打ち出した。

ムーディーズは「政府の刺激策は成長減速の緩和と期間短縮に寄与する見込みだが、農村部の家計の長引く金銭的ストレスや、軟調な雇用創出、ノンバンクの間で最近見られる信用収縮を踏まえると、成長減速が定着する可能性が高まっている」と指摘した。

ノンバンク間の信用収縮が早期に解消される可能性は低いとの見方も示した。

法人減税や名目GDPの伸び鈍化などを踏まえ、2019─20年度(20年3月まで)の財政赤字は対GDP比3.7%になると予想した。政府の目標は同3.3%。

*内容を追加して再送します。
https://jp.reuters.com/article/india-outlook-idJPKBN1XH30C

 

レポ金利急騰再発に備えるジャナス−「潤沢な現金」で機会生かす狙い
Katherine Greifeld、Alex Harris
2019年11月8日 14:21 JST
ジャナス・ヘンダーソン・グループは、9月に起きた米レポ市場の混乱が2019年の最後の数週間に再発する可能性に備えている。

  世界債券共同責任者のニック・マラウツォス氏は、典型的な年末の資金逼迫(ひっぱく)でレポ金利が再び「急上昇する」と予想している。米金融当局は9月17日以降、市場に流動性を供給しているが、マラウツォス氏は十分ではないかもしれないと警告する。年末年始に向け銀行がバランスシートを整えるため貸し付けを減らすことが背景にある。

  マラウツォス氏にとって、予想される市場ストレスに備える最善の方法は現金を積み上げることだ。同氏によると、ジャナス・ショート・デュレーション・インカムETF(VNLA)は、資産の最大5%を通常現金で保有しているが、現金を増やし、銀行が消極的になった際に利用するつもりだと同氏は話した。

  「この機を生かすには潤沢な現金が必要だ。ドルは高い需要が予想され、多額のドルを持つ運用者は恐らく利益が得られるだろう」と述べた。

原題:Fearing Another Repo Spike, Janus Plans to Build Cash to Pounce(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-08/Q0MTC0DWLU6B01?srnd=cojp-v2

ビジネス2019年11月8日 / 12:43 / 2時間前更新
アングル:米中合意で投資前提に変化、怖いのは「ちゃぶ台返し」との声
水野文也
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[東京 8日 ロイター] - 日経平均.N225が年初来高値を更新、東京株式市場は強気ムードに覆われている。最大の懸念材料だった米中通商協議は、貿易戦争の過程で発動した追加関税の段階的撤廃で合意、世界的な景気悪化懸念が後退した。投資の前提が変化したことで、株買いに対する不安感が一気に解消している。合意を台無しにするトランプ米大統領からの情報発信だけが当面の懸念材料とみる関係者が多い。

中国商務省の高峰報道官は7日の会見で、中国と米国がここ2週間の間に、双方が貿易戦争の過程で発動した追加関税を段階的に撤廃することで合意したと明らかにした。一方、米政府高官も同日、匿名を条件に、第1段階の合意の一環として関税撤廃が計画されていることを確認した。これを受けて7日の米国株式市場はダウ.DJIとS&P500.SPXが最高値を更新。東京株式市場でも日経平均が高値を更新した。

市場では「米中対立で世界景気が悪化するという投資の前提が覆った。そうなると今後は、これまでと反対に景気の上向きを買うような動きになる」(東洋証券・ストラテジストの大塚竜太氏)との声が聞かれた。さらに、円安に振れる為替も株価に追い風となっている。

それを象徴したのがトヨタ自動車(7203.T)の動きだ。時価総額が25兆円を超す巨艦でありながら、前日比で2%を超す軽やかな上昇。「好決算や自社株買いといった同社独自の材料で上がったという印象ではない。日本の景気上向きを読んで、指標株であるトヨタが買われているようにみえる」(国内証券)という。

投資前提が変化したことは、マーケット全体のポジションにも大きな変化をもたらす。東海東京調査センター・チーフエクイティマーケットアナリストの鈴木誠一氏は「こまでの日経平均株価の上昇はショートカバーが中心で、ほとんどの投資家が安いところで買えていない」とし、「弱気でみていた人がこれから上昇を織り込みに行く」と指摘する。

鈴木氏は、日経平均は、2018年10月につけたバブル崩壊後の最高値2万4448円07銭を試す展開となり、勢いがつけば2万5000円近辺まで行ってもおかしくはないとの見方を示す。

財務省が8日に発表した10月27日─11月2日の対内株式投資は、4209億円の買い越し。10月13─19日は5220億円、10月20─26日は6493憶円と、大幅な買い越しが続いており、需給面の安心感も出ている。上値で年金など国内勢の利益確定売りが出る場面では、海外勢からの買いが吸収する期待も高まる。

不安材料は、米トランプ大統領の「ちゃぶ台返し」くらいという。キャピタル・パートナーズ証券・チーフマーケットアナリストの倉持宏朗氏は、リスク要因について「米中通商協議で注目すべきことは、農産物分野や知的財産分野でネガティブな方向に動くかどうか」と指摘。そのうえで「トランプ米大統領が以前のように合意の直前に、融和ムードを台無しにするツイートでもしない限り、強い基調が続く」との見方を示している。

水野文也 編集・チャート作成:佐々木美和
https://jp.reuters.com/article/stock-market-forecast-idJPKBN1XI0DX


 


米中が段階的な関税撤回で合意、「第1段階」の一部と米側確認
Bloomberg News
2019年11月7日 16:41 JST 更新日時 2019年11月8日 12:49 JST
交渉担当者は真剣で建設的な協議行ったと中国商務省
クドロー米NEC委員長も交渉の進展を確認
米国と中国は相互の製品に賦課している関税を段階的に撤回することで合意した。貿易合意に向け作業を進めている両国が共に明らかにした。

  中国商務省の高峰報道官は7日、「過去2週間にわたり交渉担当者は真剣で建設的な協議を行い、合意を巡り進展する中で追加関税を段階的に撤回することで一致した」と述べた。

National Economic Council Director Larry Kudlow Speaks At White House
クドロー米国家経済会議委員長
  クドロー米国家経済会議(NEC)委員長も同日、交渉の進展を確認し、米中両国が「第1段階の合意に至れば、関税の合意・譲許もあるだろう」と語った。  

  コンウェイ米大統領顧問はトランプ大統領が合意署名を「切望」していると話した。交渉は継続中で、合意署名の時期や場所はまだ確定していないという。

  一方、ナバロ米大統領補佐官(通商製造政策局長)はFOXビジネスに対し、「第1段階の合意の条件として既存の関税を撤回する合意は現時点でない。その決定を下せるのはトランプ大統領のみだ」と述べた。

  関税賦課を巻き戻す合意ができれば、世界経済に影を落とす貿易戦争の緩和への道が開ける。トランプ大統領による懲罰的関税の撤回は交渉の当初から、中国側の要求の柱だった。  

  北京では中国商務省の高報道官が、「米中が第1段階の合意に達すれば、双方が既存の追加関税を合意内容に基づいて互いに比例したペースで同時に撤回していくことになる。これは合意成立のための重要な条件だ」と記者会見で発言。合意に署名する場所と時期については、両国が交渉を続けているとし、それ以上の情報はないと述べた。

  ホワイトハウスがトランプ大統領と習近平中国国家主席の会談場所として提案していたアイオワ州やアラスカ州など米国内で両首脳が実際に会談する可能性はなくなったと、事情に詳しい関係者が明らかにした。関係者が匿名を条件に語ったところによると、アジアと欧州の幾つかの場所が現在検討されている。

  トランプ政権の当局者らはここ数日、包括的貿易合意の第1段階が月内にもまとまることに楽観的な見方を示し、今週の株高につながっている。

  ただ、ING銀行のエコノミスト、アイリス・パン氏(香港在勤)は「どれだけ迅速に事態が進展していくか疑問視している。関税撤回のペースは市場と米中経済に前向きなセンチメントを生み、それを長続きさせる上で鍵になる」と話している。

CHINA-US-CRIME-DIPLOMACY
フェンタニル密輸業者に有罪判決(11月7日)
原題:U.S. Says Phase-One China Deal Would Include Tariff Rollback(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-07/Q0L8SODWX2PT01?srnd=cojp-v2


米民主党議員がウォーレン氏より穏健な富裕税−所得2.2億円超が標的
Laura Davison
2019年11月8日 11:32 JST
200万ドル上回る所得に10%課税、最高税率47%と33.8%に引き上げ
立法化のチャンスはこちらの方が高いと支持者は主張している
2020年米大統領選の民主党の公認指名を争うエリザベス・ウォーレン上院議員らが、超富裕層を標的とする大々的な増税を競う中で、別の2人の民主党議員がより穏健な増税案を提唱した。立法化のチャンスはこちらの方が高いと支持者は主張している。

  クリストファー・バンホーレン上院議員(メリーランド州)とドナルド・ベイヤー下院議員(バージニア州)は200万ドル(約2億1800万円)を上回る所得に10%課税し、高所得層の給与所得とキャピタルゲインの最高税率をそれぞれ47%と33.8%に実質的に引き上げる増税案を公表

した。

  バンホーレン議員は「全ての人にとって米国の未来を強固にする投資のため、富裕層が自らの責任を確実に果たす簡素な制度だ」と説明した。

  ウォーレン氏は自らが提唱する「富裕税」が実現した場合の税収を10年で3兆7500億ドルと見積もっている。アーバン・ブルッキングス税務政策センターの試算によれば、バンホーレン議員らの増税案では、同じ期間で約6350億ドルの税収が見込めるという。

Senator Lindsey Graham Holds News Conference On Turkey Sanctions
バンホーレン上院議員写真家:アレックス・エーデルマン/ブルームバーグ
原題:Democrats Float Millionaires Surtax in Advance of 2020 Election(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-08/Q0MG3KT1UM1001?srnd=cojp-v2


 

ビジネス2019年11月8日 / 14:13 / 34分前更新
9月景気動向一致指数2.0ポイント上昇、判断「悪化」据え置き=内閣府
Reuters Staff
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[東京 8日 ロイター] - 内閣府が8日公表した9月の景気動向指数(速報値、2015年=100)は、指標となる一致指数が前月比2.0ポイント上昇した。

同指数から機械的に決める基調判断は「悪化を示している」で据え置いた。

先行指数は前月比0.3ポイント上昇した。

竹本能文
https://jp.reuters.com/article/keiki-doko-septemper-idJPKBN1XI0IV


 

安倍首相が経済対策策定と補正予算編成を指示−菅官房長官
占部絵美、延広絵美
2019年11月8日 10:17 JST 更新日時 2019年11月8日 12:55 JST
復旧復興加速、下振れリスク対応、東京五輪後の経済力維持が柱
災害対策パッケージとして予備費1316億円の使用を閣議決定
安倍晋三首相
安倍晋三首相 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
安倍晋三首相は8日の閣議で、台風19号など相次ぐ自然災害からの復旧・復興や海外経済のリスクなどを踏まえた内需の下支えに向けて、経済対策の策定と2019年度補正予算の編成を指示した。菅義偉官房長官が記者会見で明らかにした。

Abenomics Shows ECB Why Fiscal Backup Can’t Ensure Inflation
安倍首相Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  菅官房長官によると、安倍首相は経済対策について、復旧復興の加速と国土強靱(きょうじん)化の推進、経済下振れリスクに対応した中小企業などへの支援、東京五輪後の経済力の維持・向上を三つの柱とし、中長期に成長していく基盤を重点的に構築し、引き続き国内消費をしっかり下支えする考えを示した。予備費を含めた今年度予算、同補正予算に来年度予算を組み合わせた15カ月予算の考え方で策定する方針だ。

  また、菅長官は、台風19号などの被災者の生活支援などに向けた対策パッケージに関連し、予備費1316億円の支出を同日の閣議で決定したことも明らかにした。

対策パッケージ 総額1316億円
生活再建(廃棄物や土砂の撤去、住宅再建) 336億円
生業支援(中小企業の復旧支援、農林漁業者支援、観光需要喚起) 684億円
災害復旧の迅速化・二次災害防止 63億円
避難所や仮設住宅、自衛隊災害派遣 233億円
  自民党は、18年末に策定した3カ年の国土強靭(きょうじん)化対策7兆円の規模拡大や長期化を要望している。SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは、経済対策の財政支出規模が4兆−5兆円になると予想し、国内総生産(GDP)を0.4%程度押し上げるとみている。

  麻生太郎財務相は同日の記者会見で、経済対策について「少子高齢化を乗り越え、企業の生産性向上、力強い経済成長を実現するのが基本」と説明。具体的な内容は今後検討するとし、「規模感はない」と述べた。西村康稔経済再生相は、各省庁の提案の中で、「効果的な施策を吟味した結果としておのずと規模感は決まってくる」との見方を示した。

被災者支援の対策パッケージに関する記事はこちらをご覧ください

(最終段落に麻生財務相、西村再生相の発言を追加して更新しました)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-08/Q0IWG3DWRGG101?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/584.html

[経世済民133] 世界債務、過去最大の2京円に IMF 世界の億万長者資産、18年は3年ぶり減 中国の落ち込み目立つ  金から脱出せよ、JPモルガンとシティはリスク選好に傾く 米消費者マインド指数、3カ月連続で上昇−家計状況や景気を楽観 ウォーレン氏の富裕税、敵とするPE業界に資金流入促す結果も マイナス金利脱出へ動くスウェーデン、他の先進国に波及も トランプ米大統領、対中関税撤回で「何も合意せず」
世界債務、過去最大の2京円に IMF
北米
2019/11/8 10:02
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事は7日、ワシントンで講演し、世界の公的部門と民間部門の債務が計188兆ドル(約2京円)と過去最大を更新したと明らかにした。世界の国内総生産(GDP)の約2.3倍に当たる。債務の持続性や透明性の確保がより必要だと指摘し、リスク管理を強化するよう訴えた。

IMFのゲオルギエバ専務理事=ロイター

ゲオルギエバ氏は銀行融資が企業の新たな投資につながり「将来の繁栄の種をまく」重要な役割を果たしていると強調した。一方で、債務膨張に伴い政府や企業、家計が急な金利上昇に対して「弱くなっている」との分析も示した。

日米欧などの中央銀行の金融緩和で金利が低下し、お金を借りやすい状況が債務拡大の背景になっている。利払い負担増などで債務返済や借り換えが難しくなるとの懸念がある。低金利による運用難で、リスクの高い資産への投資も増えている。
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ビジネス2019年11月9日 / 06:40 / 2時間前更新
世界の億万長者資産、18年は3年ぶり減 中国の落ち込み目立つ
Reuters Staff
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[8日 ロイター] - スイス金融大手UBSと大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が8日発表した報告書によると、世界の億万長者(ビリオネア)の総資産は昨年時点で8兆5000億ドルとなり、前年比4.3%減少した。減少は2015年以来3年ぶり。

地域別では、米国の総資産が0.1%微増の3兆6000億ドル。億万長者の数は19人増の89人。

アジア太平洋(APAC)の総資産は8%減の2兆5000億ドル。中国の景気減速や米金利上昇の煽りを受けた。億万長者の数は60人減の754人。

中国の総資産は12.3%縮小して9824億ドル。人民元CNY= CNY=CFXS CNY=SAECが対ドルで約6%下落したほか、MSCI中国株指数(MCHI.O)は約20%値下がりし、2011年以降でもっと大幅な落ち込みを記録した。

ただ、過去5年間で見ると中国の総資産は約3倍に拡大。18年末時点で世界の億万長者資産の約8分の1を占めている。

欧州・中東・アフリカ(EMEA)の総資産は6.8%減の2兆4000億ドル。億万長者の数は31人減の598人。

UBSの幹部は今年の見通しについて、再び増加が見込まれるものの伸びは控えめになる見通しだと語った。
https://jp.reuters.com/article/wealth-billionaires-idJPKBN1XI2GH

 


金から脱出せよ、JPモルガンとシティはリスク選好に傾く
Joanna Ossinger
2019年11月8日 23:10 JST
• 金相場、7日に最大30ドルの下落−リスク選好モードで需要低下
• シティはドイツ債ショート開始、JPモルガンも国債への弱気強める
ウォール街の大手銀行2行が、伝統的に安全な資産を求める際に資金が向かう金のポジションを解消した。今週に入り投資家はリスク選好モードに移行しつつあり、金相場は大きく下げている。
  マルコ・コラノビッチ、ニコラオス・パニギリツオグル、ジョン・ノーマンド氏らJPモルガン・チェースの資産配分チームは、金のヘッジを解消するとともに投資判断を「オーバーウエート」から「アンダーウエート」に引き下げたと発表した。ジェレミー・ヘール氏らシティグループのストラテジストも金のロングポジションを解消したと、7日付けの資産配分に関するリポートで明らかにした。
  世界同時成長への期待が浮上し、高リスク資産が買われ安全資産の需要がほぼなくなる中で、金は週間で2017年5月以来の下げを記録する勢い。
  債券もまた売られており、2行はここでも同様の動きを取った。シティはドイツ国債に対するショートを開始し、JPモルガンは国債のポジションについていっそうの「アンダーウエート」とした。

原題:
Getting Out of Gold, JPMorgan and Citigroup Tilt Toward Risk(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-08/Q0NHNBT0G1KZ01


 
米消費者マインド指数、3カ月連続で上昇−家計状況や景気を楽観
Kristy Scheuble
2019年11月9日 0:09 JST 更新日時 2019年11月9日 1:47 JST
11月の米ミシガン大学消費者マインド指数(速報値)は3カ月連続の上昇となった。消費者は家計の状況や景気見通しへの楽観を強めており、今後も景気拡大を支える兆しがあらためて示された。

キーポイント
11月のミシガン大消費者マインド指数(速報値)は95.7
ブルームバーグ調査のエコノミスト予想は95.5
前月は95.5
11月の期待指数は4カ月ぶり高水準。現況指数は低下
インサイト
消費者マインド指数が3カ月続けて上昇するのは2年ぶり。低い失業率や最高値圏で推移する株式相場、利下げが消費者の見通しを明るくしていることを示した
家計の状況が改善したと回答した消費者の割合は55%、同調査50年の歴史でその水準を上回ったのは過去に4度だけ
ミシガン大学消費者調査のディレクター、 リチャード・カーティン氏:
「米経済の最も強い部分は雇用と賃金の伸びだ」
「消費者は支出にやや慎重になったが、リセッション(景気後退)を引き起こすほど出費を控える理由は何もないと考えている」
詳細
1年先のインフレ期待は2.5%で前月から変わらず。5年先のインフレ期待は2.4%に上昇(前月は2.3%)
家庭向け耐久財の購入環境に関する指数は153に低下(前月160)
統計表
原題:U.S. Consumer Sentiment Improves on Views of Finances, Economy(抜粋)

(詳細やミシガン大の見解を追加して更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-08/Q0NOEJT0AFBJ01?srnd=cojp-v2


為替フォーラム2019年11月9日 / 07:45 / 1時間前更新
コラム:マイナス金利脱出へ動くスウェーデン、他の先進国に波及も
Edward Hadas
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[ロンドン 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - スウェーデン国立銀行(中央銀行、リクスバンク)は今年12月に政策金利であるレポ金利を現行のマイナス0.25%からゼロ%へと引き上げる方針だ。プラン通りであれば、リクスバンクはマイナス金利からの脱却という意味でも各国中央銀行の先陣を切ることになる。その説明を裏読みすれば、「収拾がつかなくなる前に止めておく」といったところだろう。

そもそも、マイナス金利という発想は、スウェーデンが先駆者だった。リクスバンクが超過準備金に対する金利をマイナス0.25%に引き下げたのは2009年。それ以来、他の先進諸国の多くも同じ決断に踏み切った。

<マネーはとどまることなく流入>

マイナス金利からの脱却に転じようとするリクスバンクの動きは、インフレを考慮し、実質ベースの金利水準を重視する金融エコノミストらとは相いれない政策だ。彼らの考えでは、金利引き下げによる景気刺激効果は、3%から1%への引き下げでも1%からマイナス1%への引き下げでも同じである。

インフレ率が高かった1970年代の大半を通じて、実質金利はマイナスだった。彼らの考えでは、インフレ率が低い昨今では名目金利をマイナスとすることも必要かもしれないが、マイナスかプラスかという違いは本質的なものではない。

こうした議論は、長らく非現実的だと見なされていた。ドルにせよスウェーデン・クローナにせよ、融資したよりも少ない金額しか返済されないと分かっていれば、人は金を貸そうとはせず金庫にため込むだろう。それが懐疑派の主張だった。

したがって政策担当者の大半は、ゼロ金利が「下限」であると想定していた。それ以下は未知の海域であり、昔の船乗りの言葉を借りれば、そこにはどんな怪物が潜んでいても不思議はない。

だが、スウェーデンのような先駆者は、マイナス金利という海域には荒波がなく、実はとても静穏であることを明らかにした。現金をしまい込む金庫を用意するにもコストが掛かる。その結果、利回りマイナスの債券にも、マネーはとどまることなく流入した。最新のデータによれば、マイナス利回りの国債発行残高は17兆ドル。これは世界の国内総生産(GDP)の約20%に相当する。

<無謀な借り入れ招くリスク>

それにもかかわらず、スウェーデンが「プラス金利死守」という昔ながらの正統派路線に多少なりとも近づこうとする背景には、2つの理由がある。リクスバンクは10月の金融政策報告のなかで、そのうちの1つに触れている。すなわち、名目マイナス金利が相当程度に恒久的な状況だと認識されてしまえば、人々の行動が変化し、悪影響が生じる可能性がある、というものだ。

国際決済銀行(BIS)のクラウディオ・ボリオ金融経済局長が指摘しているように、無金利での融資は無謀な借り入れにつながりやすく、金融バブルに結びついてしまう。バブルが弾ければ、金融危機を招き、経済に支障が生じる。1990年代初頭にスカンジナビア諸国で不動産市場が暴落したとき、スウェーデンの商業不動産価格は3分の2も下落し、GDPは3年間で5%低下した。

この種の大惨事を防ぐには、0.25%の利上げでは十分ではあるまい。だが、国内住宅市場が過熱している国においては、そうした動きは金融機関へのシグナルになる。家計債務の上昇傾向が20年続き、家計所得の120%から180%にまで増大していることを中央銀行が懸念している、というメッセージだ。

ゼロ金利に戻す第2の理由は、現在の通貨理論に欠陥がありうるからだ。中央銀行が市中銀行に対してマイナス金利を課すことは可能だが、金融機関は一般的に、リテール顧客に対する同様の措置をためらう。利益率が圧縮されてしまうからだ。

そこで金融機関は、利益率の改善を図るなかで、たとえば住宅ローンの返済期間を延長するなど融資条件を引き下げるか、あるいは単に事業そのものを縮小する場合がある。どちらも望ましい動きではない。

プリンストン大学のマーカス・ブルネルマイヤー教授(経済学)は、「リバーサル・レート」以下に金利が低下すると、実際には事業活動が阻害されると述べている。同氏は、低金利が長く続くほど、この「リバーサル・レート」は徐々に上昇していくと考えている。過去にもっと高い金利で行われた長期融資が生み出したキャピタルゲインが、マイナス金利によって縮小していくからだ。

<特効薬ではないマイナス金利>

合わせて考えると、マイナス金利解消に向けた2つの論拠には説得力がある。そしてスウェーデンは、ゼロ金利回帰を実験するには好都合なポジションにある。リクスバンクはその知的議論のオープンさという点で定評があるだけでなく、この程度の小幅な動きであれば、クローナ高で苦しめられる懸念もほとんどない。貿易加重ベースで見れば、クローナは2013年以降、25%下落している。

マイナス金利政策が明らかに経済の追い風になっている、あるいはインフレ率を引き上げているのであれば、スウェーデンもマイナス金利脱出をもっとちゅうちょするだろう。だがマイナス金利は特効薬になっておらず、経済成長には依然として勢いが乏しい。

リクスバンクによる10月の報告書は、国内経済とグローバル経済が共に低迷し、インフレ率も低いという状況を描き出している。また、米国・英国は政策金利をプラスのまま維持しているが、それによって明らかな悪影響が出ている様子は見られない。

スウェーデンはマイナス金利を試す際にも先陣を切った。同国の最新の実験が明らかな害をもたらさないようであれば、他国もマイナス金利の世界から脱出しようという勇気を奮い起こす可能性がある。

背景となるニュース

− リクスバンクは10月23日の会合で、ベンチマークとなるレポ金利をマイナス0.25%に据え置いた。12月に0%への利上げを予定していると述べた。

− 11月5日に公表された会合議事録によれば、金利決定に関わる委員の過半数は、5年近く続くマイナス金利の実験を終了する計画を支持しているが、経済の見通しが不透明なことから、その後は慎重なアプローチを望んでいる。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/sweden-rates-breakingviews-idJPKBN1XI104


 

ウォーレン氏の富裕税、敵とするPE業界に資金流入促す結果も
Brandon Kochkodin
2019年11月9日 4:19 JST
• ウォーレン氏は10億ドル超の資産に年6%課税、皆保険実現目指す
• 富裕層は課税免れるためPE会社に資金を移動させる可能性
2020年米大統領選の民主党の公認指名を争うエリザベス・ウォーレン上院議員は、当選すれば「富裕税」を導入すると提案している。だが、この課税案は同氏が米国人を食い物にしていると非難する業界を利することになる可能性がある。プライベートエクイティ(PE、未公開株)業界だ。

エリザベス・ウォーレン上院議員
BLOOMBERG
  ウォーレン氏は10億ドル(約1090億円)を超える資産に対して年6%の税を課し、国民皆保険実現の財源とする計画だ。この新税が成立した場合に超富裕層が課税を免れる方法の1つは、ブラックストーン・グループやカーライル・グループ、KKRなどが運用する、いわゆるオルタナティブ資産に資金を移すことだろう。
 
  コロンビア大学のボイチェフ・コプチュク教授(経済学)は「富裕税は価額の測定が容易な公開市場から、それがはるかに難しい投資対象へと一定の資金の流れを生む公算が大きい」と指摘。「比較的高リスクで、期待収益の大きい投資が促される可能性がある」と述べた。
  SEIプライベート・ウェルス・マネジメントの投資戦略・ソリューションズ担当責任者を務めるヨランダ・プラザチャレス氏はさらに具体的で、「そのような新税が施行されれば、富裕層や超富裕層のポートフォリオでオルタナティブ投資の活用が増えるだろう」と電子メールで回答した。
  PE業界の抑制策を7月に発表したウォーレン氏にとって、このような展開は意図していないだろう。カリフォルニア大学バークレー校の教授でウォーレン氏とバーニー・サンダース上院議員の選挙運動で経済顧問を務めるガブリエル・ザックマン氏は、富裕税が「富裕層個人の資産配分に影響するかは」不明だと述べた。ウォーレン氏の選挙対策本部はコメントの要請に応じなかった。
Private Equity Push
Pensions have moved away from fixed income and equity and toward private equity

Source: Fitch Ratings, Center for Retirement Research at Boston College
原題:Warren’s Wealth Tax Could Drive Billionaires to Funds She Hates(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-08/Q0NVM4SYF01S01?srnd=cojp-v2


 


ワールド2019年11月9日 / 00:30 / 1時間前更新
トランプ米大統領、対中関税撤回で「何も合意せず」
Reuters Staff
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[ワシントン 8日 ロイター] - トランプ米大統領は8日、対中関税の撤回で合意していないと明らかにした上で、中国が自身に関税撤回を望んでいるとの認識を示した。米中が貿易戦争を終結させる時期を巡って疑念が再燃した。

米中双方の当局者は7日、通商協議の「第1段階」の合意の一環として、双方が貿易戦争の過程で発動した追加関税を段階的に撤廃することで合意したと明らかにした。ただ、追加関税の段階的撤廃には、ホワイトハウス内外の助言役から強い反発の声が出ている。

トランプ氏は「中国は多少の関税撤廃を求めているが、全てではない。なぜなら、私がそうしないことを分かっているからだ。私は何も合意していない」と述べた。

また、中国側が自分以上に合意を求めているとも指摘した。

トランプ氏はこのほか、中国との合意が成立すれば米国で署名したいと表明。「農業州であるアイオワなどが考えられる」との考えを示した。

トランプ氏の発言を受け米国株は下落。ドルも対円で下落し、米中通商合意を巡る楽観論を背景とするドル高の流れが一服した。

中国共産党系メディア「環球時報」の胡錫進編集長はツイッターで、トランプ氏の発言は市場で予想されていなかったと指摘。トランプ氏は全面的に否定したわけではないとした上で「関税撤廃がなければ、第1段階の合意はないだろう」と述べた。

ナバロ米大統領補佐官(通商製造政策局長)は電子メールで、米中が関税の段階的撤廃で合意したという情報を巡り、記者が中国の「プロパガンダ」に「踊らされた」と批判した。

米中通商交渉に関する報道の多くが匿名筋に頼っているとし、トランプ大統領とライトハイザー通商代表部(USTR)代表のコメントのみを取るべきと強調。「国のために匿名筋による『サーカス』はやめるべきだ」と述べた。

USTRから関税撤廃に関するコメントは得られていない。

ペンス米副大統領の首席補佐官を務めるマーク・ショート氏はCNBCに対し「第1段階の合意は年末までに調印できるとかなり楽観的に考えている」と表明。中国製品への制裁関税引き上げが予定される12月15日までの妥結は可能かとの質問には「その頃の妥結はあり得るが、特定の日程を述べて交渉を担当するムニューシン財務長官やライトハイザー代表の手を縛りたくない」とした。

*情報を追加します
https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-idJPKBN1XI1V8
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/589.html

[経世済民133] 日本経済はアベノミクスで停滞…アメリカに唆されて進んだ、円安がもたらす銀行の危機 低下を続ける景気ウォッチャーと先行き不透明感残る経常収支!「日本がダメなら世界」と商社を飛び出した若者のその後
日本経済はアベノミクスで停滞…アメリカに唆されて進んだ、円安がもたらす銀行の危機

吉田繁治
2019年11月6日ニュース

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カナダも巻き込んで世界中が、通貨の増発による低金利の金融バブルです。法律家には、デリバティブ化している銀行間金融の実情は、理解できていないでしょう。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2019年10月31日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

デフォルト予備軍の社債は19兆ドル、先送りするほど経済は壊滅
通貨増発による低金利の世界の金融バブルの真っ最中
カナダも巻き込んで世界中が、通貨の増発による低金利の金融バブルです。リーマン危機のあとの、米国、欧州、中国、日本の通貨の増発額は20兆ドル(2,100兆円)です。

欧州のECBは19年3月から金利をマイナスに下げ(ユーロの増刷)、米国のFRBは銀行システムの突然のドル不足からレポ金利が10%に急騰したことに狼狽し、0.25%の利下げをした9月18日から、再びドル増刷を開始しています。

19年9月から、毎月6兆3,000億円のドルの増発を2020年の4月または6月まで続けるという(パウェル議長)。

19年10月末にも0.25%の利下げをします(10月30日、31日のFOMC)。法律家のおじさんには、デリバティブ化している銀行間金融の実情は、理解できていないでしょう。

1990年代、2000年代と25年も株を上げてきたので、金融のマエストロと称賛された元議長のグリーンスパンも同じでした。そのあとの、恐慌学者バーナンキの知識も怪しかった。リーマン危機の直前には、「大したことではない」と声明していたからです。

日米の民間銀行のトップも、十分に理解しているとは言えません。

お金だけをもつ赤子のような農林中金(農家の預金100兆円)
農林省の天下りが多く、金融の素人だった農林中金(農協の上部団体)は、2008年のリーマン危機のときの保証保険CDSでの保証債務5兆円からの損に懲りず、今度は、社債の保証保険CLOで8兆円の米国社債の償還を保証してます。まったく…困ったものです。

金融では、原理的に、低い金利のなかでの利回りの高さは、リスクの高さと同じことです。社債の利回りが2%のとき、社債の償還を保証するCLOの利回り(保険料)が4%なら、その社債のデフォルトの確率は、4ポイントは高い(ブラックショールズ方程式)。

ところがこのデフォルトのリスクを無視して、一見では高い利回りのCLOの保証を高く見える保険料を受けとって、喜々として引き受けるのが世界の金融界で「お金をもった馬鹿と奇妙に尊敬されている日本の銀行」です。

安倍政権の政府も「ドル買い/円売り」を促しています。ユダヤ人の数学の天才が多いゴールドマンなどが介在している国際金融は、「相手(取引相手のカウンターパーティ)をごまかすことが利益になる世界」です。生き馬の目を抜くのではない。

国際的な運用を知らないお金持ち(日本の銀行)にデリバティブというめくらましを与え、マネーを奪う。

政府・FRBと結託した金融の政商であるゴールドマンは、ギリシアの国債危機のときと同じように、特に悪辣です。古来、金貸しの金融の世界は「汚い」。このため西欧の貴族は、金融と肉の扱いはユダヤ人に行わせました。

世帯と企業の預金が1,000兆円と多い日本の銀行をおだて、リスク率より高いお金を最終的に払わせます。

CDOの保険料は、ゴールドマンのクォンツ(数千万円の報酬の数理統計学者:保険のアクチュアリと同じ)が、でっち上げ(鉛筆舐め)で計算しています。

Next: 日銀の異次元緩和は、米国の経済学者による進言で行われた

FRBの子会社になった日銀
2013年4月からの異次元緩和の黒田日銀は、米国FRBの子会社同様の振舞いをしてきました。

(注)白川総裁の日銀は違っていたので、安倍首相が2期目に首を切ったのです。2期目の更迭は異常なことでした。行政改革のためとした法の改正で、首相が握った官僚高官の人事権の威力で、財務省官僚にも自主的な忖度(そんたく)をさせています。白川総裁の首切りが、その最初でした。

米国の経済学者のクルーグマンは、「日本が陥った流動性の罠(ゼロ金利で債券買いが減って現金化されること)」からの脱却に、インフレ政策を取るべきだと進言しました(2001年『日本が陥った流動性の罠』)。

安倍政権になって、米国金融の奥の院に属しているクルーグマンの政策提言が、
・日銀が国債を買ってインフレを起こすといっていた異次元緩和と、
・輸出物価を下げて、輸入物価を上げる、円安策になったのです。

この構図を描いて政策を提言したのが、現代米国経済学につながりがあると自称する浜田宏一氏でした。(この人の本を読むと、浜田氏は**は知人だということだけを書いています(普通の神経なら恥ずかしいことでしょう)。

ノーベル経済学賞を浜田氏にというのは、トランプのノーベル平和賞とおなじ筋です。白川総裁は、私の教え子だとも恥じることなく自慢しています。

ゼロ金利、マイナス金利の深層
政府と日銀は、FRBと米国政府の「円金利を下げ(マイナスにもして)、イールド(2.5%の金利差の利益)のある米国債を買って、円安にしてはどうか」という外圧に従属し続けています。

実は…安倍首相は、黒田総裁を任命するとき(2013年4月からの異次元緩和の前)、「アジア開発銀行の総裁のときから国際金融マフィアに人脈がある黒田さんが適当」と述べています(国会での公式の発言)。

国際金融マフィアとは、米国と英国そしてBIS(国際決済銀行)に巣くった「金融の奥の院」を指す言葉です。それらの銀行(大口株主は、金商人のロスチャイルドと、石油閥のロックフェラー)が、米国FRBの株主です。

つまりFRBの金融政策と同調できる人、あるいは協力できる人。本当はFRBの要求に応じて米国債を買って、ドルを上げて円安にする人が黒田さんというのが、任命理由だったでしょう。

事実、2012年10月から、民主党政権のときは1ドル80円付近だった円は、異次元緩和がピークだった2015年(日銀による1年80兆円の円国債買い)には、1ドル120円へと、50%の円安になっています。
※参考:米ドル/円(USD/JPY):外国為替レート(楽天証)

Next: アベノミクスの円安と株高を作り上げた正体とは…
円安とは、ドル買い/円売りの超過であり、米国にマネーは行く
円安は、「ドル買い/円売り」の超過によって起こります。

この間、日銀が国債を買って増発した円(日銀当座預金約400兆円:当時)のうち、60兆円くらい(1年の純額で20兆円から30兆円)が、国債を売った銀行とGPIF、生保、郵貯、かんぽ生命のドル債投資になったのです。

米国債を日本に売ってお金を得た米国ヘッジファンドは、そのお金の一部(15兆円)で、日本株を買って日経平均を8,500円から2万円に上げる引き金を引きました(2012年末から2015年)

これが、アベノミクス円安と株価上昇の正体でした。
(注)安倍首相が退陣したあとの金融史に残るでしょう。

ドル債(国債、証券、株、デリバティブ)への投資とは、ドル債を世界に売っている米国の銀行とファンドにマネーを供給することです。

米国の債券を買うには、その前に「ドル買い/円売り」が必要です。日本からの「ドル買い/円売り」が「世界からの円買い/ドル売り」より超過すると、「円安/ドル高」になります。

構図を描いた首謀者は、自ら名乗っています…
2012年12月から安倍政権の内閣官房参与を務め、異次元緩和の構図を描いた浜田宏一氏(東大教授、エール大学教授)は露骨でした。「日銀が円国債を(銀行が金利のつく国債を売り渋って)買いにくいのなら、ドル国債を買って米国にドルを供給すれば円安になる」とすら公式の席で述べていました。

この人物は、国際金融マフィアのエージェントと言っても過言ではない人です。コロンビア大学、ハーバード、MIT、エール大学は、経済学では国際マフィアの学問の牙城です。

米国の大学は、金融機関とファンドの寄付(基金)で成り立っています。ロスチャイルド家は、将来、政府と関係をもち得る優秀な海外留学生に奨学金を出して、国際金融マフィアの利益を高める学説(または論文)を作らせ、学説の発表として、ソフトに見返りを要求します。

東大の経済学部の教授が財務省の顧問等を経て、コロンビア大学の教授になるのが報酬です。財務省顧問の円安(ドル買い)を演出した伊藤隆敏氏が、もっとも露骨でした。ノーベル経済学賞も、学者としては世界で最高の権威を得ることができるアメリカの大学のポストに類似しています。

世界が貿易に使う基軸通貨である、ドル買いが有利とする学説を世界に流布させる根底の目的は、米英金融マフィアの利益になる、FRBが増刷するドル基軸通貨体制の維持のためです。

もっとも多く預金マネーをもつ日本と、オイルダラーの産油国、輸出でもっとも多くドルを受け取る中国がターゲットになります。
(注)ユーロを作ってドル圏から逃れたドイツは、ドル国債を買いません。持ち高は860億ドル(9兆円)、ほんのお付き合い…。
※参考:MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES

エール大学のときの浜田宏一氏、小泉内閣の経済財政担当大臣の竹中平蔵氏(ハーバード大学の准教授:国際経済研究所フェロー:この人物は童顔に似合わず悪人の政治家です)。

竹中平蔵氏は小泉内内閣のとき、米国のイラク戦争への協力金として、30兆円の米国債を買うときの指揮をしています。

Next: 日本は円高を避けるため、ドル国債を買い進めさせられる
ドルの罠にかかってしまった日本
積年のドル債券の買いで、日本の対外資産は1,062兆円に増えています(2019年6月末:日銀資金循環表)。

政府は、ドル建ての債権を明らかにしませんが、推計ではドル建て70%、ユーロ建て20%、他の通貨(人民元等)が10%でしょう。
※参考:2019年第2四半期の資金循環(速報)‐日本銀行調査統計局(2019年9月20日公開)

ドル買いによる円安政策を指揮した安倍政権は、自ら進んで「ドルの罠」にかかっています。罠に近づいて自分でかかったのが、米国ご忠臣のひとたちです(日本のリーダー)。

中国を超える世界一の経常収支(貿易黒字+所得収支の黒字)の大国ドイツが、決してドル国債を買わないことと好対照。
(注)2018年8月以降、中国はドルの罠から逃れようとしています。そのための金買いです。中国の金の買い増しで、金価格は上がっています。

このため中国全体の「ドル買い/元売り」の超過(=民間のドル買い─政府のドル売り)が減って、米国の銀行システムがドル不足になったのです(19年9月)。

米国債の発行は1兆ドルに増えて、これからもますます増える
米国債の発行は、(1)トランプ減税、(2)軍事費の増加、(3)公的医療費と年金の増加のため1兆ドルを超えました(2019年)。これは、米国債(産高20兆ドル:2,100兆円)の発行が、毎年1兆ドル以上に増えるトレンドになったということです。

2017年に米国の株価を上げたトランプ減税は、2017年から向こう10年間続きます。
(注)減税をすると株が上がるのは、企業の利益が同じでも、投資家の株の買いを決めている1株当たりの税引き後純益(Earning Per Share)が増えるからです。税引き前の経常利益で見る日本とは違い、米国では、企業利益は純益で見ます。企業の税金は国に納める経費だからです。P/Lの中に、法人税の費用が計上されています。

一方で、財政支出を増やす、ベビーブーマー世代8,000万人(日本の8倍)が次々に65歳を超えているため、公的医療と年金の増加は止まらない。

米国債の流通
1兆ドルの米国新規債は、いったんは米国の銀行が買って(銀行のドルは減少)、日本、中国、産油国に5,000億ドル分くらいを売ってドルの現金を回復してきたのです。

2018年8月からは、トランプから突然、関税をかけられた中国が、逆に「ドル国債の売り」に回っています。買い手は、米国の銀行です。米銀が、中国が売る米国債を買わないと、国債の価格は下がって、米国の金利は上がるからです。

米銀が中国が売る米国債を買えば、米銀システムのドルは減ります。

ドル不足になった米銀は買った米国債を「すぐあとで買い戻しますからという特約つき」で他の銀行に売って、今週の決済に不足していたドルを調達したのです。

これがレポ金融です。レポ金融の借り手(米国債の一時的な売り手)が多かったので、現金を借りるレポ金利が、突然10%に上がった(19年9月18日)。

米銀システムは、今週の決済用のドル不足からパニックになったので、当日、FRBは、銀行が持ってる国債を1,000億ドル(10.5兆円)を急遽買いあげ、当座に足りないドル10.5兆円を供給しました。1日での10.5兆円のドルの増刷は、巨額なものです。

その後、狼狽を続けた法律家パウェルのFRBは、毎600億ドル(6.3兆円)の短期国債を銀行から買い上げ、銀行にドルの現金を増加供給すると公表しています。

期間は、2020年4月から6月までの約10か月という。
(注)FRBは隠れて、ドル国債買いを増枠するつもりでしょう。このために、わざわざ1か月600億ドルという金額を言ったのです。そうでなければ、金額は言いません。FRBは、ドル増刷の金額は言わなくていいのです。

FRBは日銀にも、「このままだと、円高/ドル安になるよ。日本は困るでしょう?」とソフトにいって、裏では強力にドル国債買いを要求してるはずです。

Next: 円の価値を守るはずの日銀が円安に向かわせる行動をどう思う?
日銀の株ETFのリースという証拠
日銀は、当座のドル国債買いの資金(推計20兆円)を得るため、買ってきた株ETF(26兆円)を日本の証券会社にリース(レポ金融と同じ構造の取引)をする決定をしたのでしょう(19年10月29日:記者発表)。

日銀金融の裏を知らないノー天気な証券会社は、ETFの利回りがはいると無邪気に喜んでいます。日銀が証券会社から得る円の現金はどこへいくのか。もちろん、米銀がドル不足になっている米国です。

「円の価値を守ることが日銀のミッション」としているはずの日銀の、円安に向かわせる「円売り/ドル買い」の行動を国民から見て、どう思いますか?

「ドルトラップ」にかかってしまった日本は、ドル売りができない
ところが事態は、若干複雑です。

円安とは逆の20%の「円高/ドル安」に戻ると、「1,062兆円×20%=212兆円」の為替差損が、
(1)ドルの債券(国債、株、社債)をもつ銀行、生保、GPIF、郵貯、かんぽ生命と、
(2)国内投資を減らして、米国への直接投資(工場建設)を増やした輸出企業、
(3)外貨準備をもつ政府に、一瞬で、生じます。
(注)トヨタは海外生産が70%であることはご存知でしょうか。

瞬間の円高・ドル安(1ドル=85円)でも生じる212兆円の損は、日本に1998年のような金融危機をもたらしたスケールです。1998年の金融危機は、銀行が抱えた100兆円の不良債権から起こったものでした。

「1,062兆円のドル」の罠にかかってしまって、日本には「円安・ドル高」という選択肢しか、なくなってしまいました。

GDPが550兆円の国が、世帯と企業の総預金(1,000兆円)に匹敵するドル建ての債権をもってしまったのです。

経常収支の黒字で、1位のドイツと2位の中国
中国の外貨準備は、3.1兆ドル(330兆円)でしかない。日本の1/3です。ドイツの政府と銀行は、米国債を決して買いません。

◎長期的には、経常収支の赤字(年1兆ドルに増加)から、米国はドル安とドル切り下げに向かうからです。(注)対外負債の累積は36兆ドル(3,780兆円:2018年)

「日本経済にとっては円安がいい」といって、円マネーの流れを指揮したのが、政府と日銀です。

三菱UFJも…
円国債の入札から降り、円国債を買い増すことはしないと宣言した三菱UFJフィナンシャルグループは、円国債を日銀に売って得た円の現金で、もっとも多くドル国債・ドル株・ドル社債・CLOを買って、円マネーをドルに変換して「利益が出た」と誇っています。

円安・ドル高は、ドルの罠にかかった三菱UFJの利益になるからです。
(注)円安政策は、円の世帯所得を切り下げる政策です。

Next: 日本の平均年収は、先進国で最低ランクへ転落…
日本人の年収順位は18位に落ちた
日本人の平均年収は403万円であり、世界で18位に下がっています。1位スイス1,073万円、2位ノルウェー921万円、3位ルクセンブルグ899万円、4位デンマーク835万円、5位オーストリア791万円、6位アイルランド767万円、7位オランダ685万円、8位米国645万円、9位ベルギー641万円、10位カナダ638万円。ここまでが世界の10位。

いつの間にか、10位にカナダがはいっています。5位オーストリアの791万円(日本の1.8倍)、6位アイルランド767万円(日本の1.8倍)は、年収429万円の日本から見れば、驚きでしょう。

11位スウェーデン624万円、12位英国614万円、13位フィンランド608万円、14位オーストラリア599万円、15位ドイツ547万円、16位フランス541万円、17位イタリア431万円、18位日本429万円、19位イスラエル408万円、20位スペイン403万円…(2018年7月:当時の1ドル=113円)
※参考:外国人が求めている給料と一緒に見たい!『よく働く国ランキング』‐IZANAU BETA(2018年7月14日公開)

先進国で最低ランクに落ちたのが、日本人の現役世代の平均年収です。円安政策つまりドル買い政策の日本政府は、この事実は隠して言いません。このため、日本人の所得は世界最高ランク(1ドルが79円だった1995年でしたが…)と思っている国民が大多数でしょう。

1990年からの30年、世界は成長経済、日本は停滞経済でした。

根本の原因は、国内投資が減少したことです。海外に、1,000兆円も貸しつければ(ドル債務証券の買い=貸し付け)、国内で投資するお金はなくなります。Aさんのお家から、となりのBさんの家に、1,000兆円貸したからです

しばらくすれば、失業率が13.8%(19年8月)のスペインにも追い抜かれると知れば、国民は、どう反応するでしょう。主因は、円マネーでドルを買って、国内での投資をして円高にしなかったことです。

以上が、2012年からの安倍政権での国民にとっての円安政策の結果です(=1年に20兆円〜40兆円のドル買い/円売りの政策)。

米国企業の社債の、償還を保証するCLOまでを買った日本の銀行
日銀は、
・日本の金利をマイナスに下げ、
・金融機関の円国債を額面より高く買って、
・銀行に現金を供給する(日銀当座預金の増加:400兆円)。

国債を売って、現金を得た銀行や生保は、現金の0%の運用では困るので、金利2%台のドル国債や米国の債券、そしてデリバティブを買うか、保険料を受け取って、資産担保証券のCDS、混合証券の利払いと償還を保証するCLOという保証保険を引きうける。

農林中金だけではない。三菱UFJも2兆円分の米コカ社債の保証を引きうけて、保険料を貰って利益にしています。

米国の企業は、低い金利で社債を発行した
米国の企業は、CLOでの保証を日本の銀行が引き受けるので、
・低い金利で社債の発行ができ(4兆ドル)、
・その社債で得た現金(4兆ドル)で、
・自社株買いをして、株価を12兆ドルも上げて来たのです。

もともとは、日本の銀行が日銀に国債を売って米国株を買ったことと同じ、マネー移転でした(2011年から2018年)。

Next: 不況といえるほどの低下をみせる、原油安の原因とは
実質金利はマイナスの米国
米国は、物価の上昇が2%くらいはあるので、マクロ経済的な金利である実質金利(名目金利−物価上昇率)はマイナスになります。

日本はすでに名目金利でマイナスであり、利下げの余地がない。

このため日本政府は、米国にマネーを供給する「ドル買い/円売り」を、再び促しています。厚労省と財務省の役人が天下りしている年金基金GPIF(資金量160兆円)の「ドル株買い、ドル国債買い」もその一環です。他に、財務省の天下り先である郵貯・かんぽ生命のドル国債買いもあります。

日本よりひどいマイナス金利(-0.5%)のユーロと、FRBの利下げと米国債買いの世界は、再び通貨の増発に向かっています。理由は、2018年夏からの米国の中国関税に起因した世界経済の成長率の低下です。

80ドルだった原油の60ドルへの下落
中東でもGDPの成長が1%台に下がっています(サウジは0.2%:2019年)。これは、受け取りが減ったオイルダラーによる米国債の買いが減ることを意味します。

中東の経済成長は、
(1)中国経済の減速による原油需要の減少と、
(2)米国の50ドルの採算ラインが多いシェールオイルの増産で、原油は80ドル(18年10月)から、55ドル台に下がっているため、不況といえるくらい低下しています。

中国の経済成長の偽装
中国は、今も6%の実質経済成長と政府が発表してはいますが、これは疑問です。

中国人民大学国際通貨研究所理事兼副所長の向松祚(コウ ショウソ)氏は、2018年は1.67%の成長だった、計算方法を変えるとマイナスとも言っています(2018年12月の報道)。

中国政府は香港問題でも、強い情報統制を敷いています。政府機関の中心に属する向松祚氏が、なぜ、こうした、一見では反政府に見える発表ができるのか。普通なら、拘束されます。

おそらく中国政府の黙認、または、積極的な関与があります。高すぎる公式成長率の矛盾を順次、縮小していくことが目的でしょう。

李克強首相ですら、2018年には「中国の経済成長は公式発表より低い」と発言していたからです。

Next: 政府とメディアが2019年末から2020年を「不況」と言わないワケ
成長の減速とは言っても、不況とは言わない政府とメディア
2019年末から2020年の経済を、各国政府と主流のメディアは「不況」とは決して言わなくなっています。

「期待で動く経済(合理的形成学派の仮説)」に、不況という言葉がタブーだからでしょう。

「半年後は不況」と市場が予想すれば、投資が減り、雇用も減って、本当の不況になっていくからです。マクロ経済学が問題にするものは投資、雇用、物価、金利の4つです。

現代は、期待の経済学
現代経済学は、「不況の時期は、国債の発行による公共事業の増加」としたケインズ経済学を、期待(=市場の集合知である予想)という、投資と雇用を増加または減少させる人間の予想を加えて修正したルーカスの亜流です(ルーカスの批判という)。

合理的期待形成学派(1980年代〜)は、ルーカスによるケインズ経済学の論理的な批判から誕生しています。

ルーカス経済学の落ち度は、「金融資産=誰かの金融負債」であることの無視と、期待で上がる金融資産のバブルは、その裏では、返済と利払いができない負債のバブル的な過剰になっていることです。金融学が欠けていたのです。

金融資産バブルの崩壊
年月の確定を別にすれば(数年のスパンでは)、100%の確率で現在の金融資産バブルと負債のバブルは崩壊します。期待の高さで膨らんだ負債が、返せなくなる臨界(デフォルト)に達する時が来るからです。

そのときは、世界中でリーマン危機(推計1,000兆円)の数倍の不良債権になり、次回の回復はリーマン危機より長引くでしょう。

リーマン危機では、株価上昇というプラス効果を生んだ「中央銀行の通貨増発の効果」が、次回はないと、金融市場が見ているからです。理由は、米国の株価時価総額が3,000兆円とバブルの水準だからです。4,000兆円にあがることはないからです。

政府の対策があるが…
時期が確定できないのは、政府・中央銀行が必ずマネー増発の対策をとるからです。しかしマネー増発は、供給を受ける側にとっては「不足する現金の借り入れ」です。

すでに過剰である負債の一層の増加になるので、危機は先送りされるだけです。つぎの本格的な危機になったときの、不良債権額(返済と利払いできない負債)は大きくなっていて破壊的になります。

現在は、「中央銀行による通貨の増刷が、金融危機(=膨らんだ負債の危機)を防ぐのにいくらの金額まで有効か」という、世界史上はじめての実験を世界中がしている時期です。

Next: 人々は未来を示す情報から将来への予測を持ち、その予測で貯蓄または投資を行う
ソ連経済の崩壊
1989年に人工国家のソ連は、崩壊しています。1970年代までは、共産主義が資本主義より優れているとされ、GDPの「実は中身がなかった計画された数字」での成長率は、資本主義国より高かったのです。

ソ連の経済成長は、2008年以降、GDPの政府成長率が数ポイントは高い中国と似ています。元の増発と返済のない貸付で、超富裕層を生んだ点も似ています。香港の民主化運動は、中国の共産党富裕者が、香港の不動産を買って上げたことが主因です。

ソ連の国有企業への貸付は、返済と利払いの要らないものでした。それが共産党の仲間内金融(クローニー資本主義)でした。
(注)現代の中国では、国有銀行から国有企業への貸付金は、多くが、利払いがなく返済もない。返済と利払い額と同じ貸付を、国有銀行が増やし続ければ、不良債権になりません。

長年の通貨の増発は、ロシアになって1,000倍のインフレとなって露呈しました(1998年)。

途中でのインフレがなかったのは、ソ連の物価は政府が決める統制価格だったからです。市場の闇価格は、高騰していたのです。1998年には、ロシアは、旧1,000ルーブルを1新ルーブルに切り下げて、通貨量を1/1,000に減らしてインフレをおさめています。
(注)これは通貨単位の全部を切り下げるデノミではありません。旧通貨の切り下げです。日本も、戦後に、戦前の100円を新1円にして、通貨を1/100に切り下げ、100倍から300倍(消費財の違いで異なる)のインフレを起こし、GDPの2倍もあった戦時国債を帳消しにしています。

過去はなかった、スタグフレーションの発生(1970年代)
ところが、二度の石油危機の波及から物価が上がった1970年代からの政府財政の赤字は、経済を成長させなかったのです(=国民の実質所得は増えなかった)。不況の中で、物価が上がる経済になり、「スタグフレーション(不況下の物価上昇)」と呼ばれたのです。

原因は、高くなった石油の購入のため、先進国のマネーが産油国に流出したことでした。そのマネーの中心がドバイの金融摩天楼です。(注)来月はドバイです。

このときケインズ経済学の批判として登場したのが、ルーカスの合理的期待形成の経済学です。合理的期待(プロスペクト)とは、国語では集合知による予想のことです。

人々は、未来を示す情報から将来への予測をもち、その予測(期待)で貯蓄または投資を行うとしました。(注)これはその通りです。株価での織り込みがこの期待の現象です。

政府財政が赤字になると、将来の増税を期待(予想)して、企業と家計は支出と投資を抑制する。このため、財政赤字は経済成長をもたらすとはいえないとして、ケインズ経済学を批判したのです。ここから、期待の経済学が誕生しています。

Next: 80兆ドルの社債の打ち、19兆ドルが不良債権予備軍とIMFの発表
世界の社債19兆ドルが不良債権の予備軍
企業が借り入れを減らし、国内への投資を減らした日本を除く世界では、リーマン危機のあとの8年で、企業の社債発行(負債証券)が、世界のGDP80兆ドル(8,400兆円)と同額に増えています。低金利が、社債を増やしたのです。

IMFはつい最近、80兆ドルの社債のうち、19兆ドル(24%:1,995兆円)が、不良債権予備群になっていると発表しています。農林中金が8兆円、三菱UFJが2兆円買って保証しているCLOがかかった社債です。

2020年の企業利益が増加し、社債の不良債権は減るでしょうか?2020年の世界のGDPは不況化します(メディアは経済成長の減速と表現)。

さて、この1,995兆円の社債はどうなるか。社債は、償還期に一括返済しなければならないという恐いものです。1,000億円借りていれば、1,000億円の返済を一度に行う必要があります。

借入金は、金利が1ポイントから3ポイントは高くなるので、信用の高い企業は、社債で投資資金を調達します。日本の最大手はソフトバンクです。

世界のGDPの増加が大きく減る中では、特に、大手企業の利益は相当に減少します(30%程度)。すでに利益が少なく、返済のマネーがない企業の社債が19兆ドルの不良債権の予備軍です。2020年はどうなるか。GDPが増える方向に戻らない限り、不良債権化は深刻になります。

社債が返済されない不良債権になって損失を蒙るのは、社債を買っている金融機関です。

銀行の危機の勃発が、2020年中に起こる気配になってきました。株価の下落が伴うかどうか。社債の不良化とともに、株価が30%下がると、世界的な金融危機になり、リーマン危機よりも大きくなります。

中央銀行はリーマン危機のときのように、銀行に緊急に大量のマネーを投入するでしょう(リーマン危機のときは、8年で20兆ドル:2,100兆円)。通貨を大増発するということです。

今度は、一度に1,000兆円の規模で大増発される通貨の価値を人々がどう評価するかが問題になります。現代貨幣論の説くことの実証実験が2020年。どうなるでしょうか…。

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『ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで』(2019年10月31日号)より一部抜粋
https://www.mag2.com/p/money/807292/10


 


 


低下を続ける景気ウォッチャーと先行き不透明感残る経常収支!
本日、内閣府から7月の景気ウォッチャーが、また、財務省から6月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲2.8ポイント低下の41.2を、先行き判断DIも▲1.5ポイント低下の44.3を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆2112億億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
7月の街角景気、現状判断は3年ぶり低水準 天候や日韓関係響く
内閣府が8日発表した7月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は41.2と前の月から2.8ポイント低下(悪化)し、2016年4月以来3年3カ月ぶりの低水準となった。悪化は3カ月連続。例年と比べ梅雨明けが遅く気温が低い日が続いたことが響いた。内閣府はウオッチャーの見方を「このところ回復に弱さがみられる」から「天候など一時的な下押し要因もあり、このところ回復に弱い動きがみられる」と4カ月ぶりに下方修正した。
家計動向、企業動向、雇用がいずれも低下した。家計動向関連は3.6ポイント低下の40.0だった。「梅雨が長く、例年よりも気温がかなり低いため、ドリンク類、冷たい調理麺、アイスクリーム等が前年より2〜3割落ち込み、全体の売り上げを押し下げている」(北関東のコンビニ)といった天候不順に関する声が多かった。「韓国人の宿泊者が大幅に減少しており、しばらく続く見込みである」(九州の都市型ホテル)として、日韓関係の冷え込みの影響を指摘する声も増えた。7月は参院選があったため飲食店での会合が減少した影響もあるという。
企業動向関連は0.7ポイント減で、製造業がマイナス3.0ポイントと押し下げた。米中貿易摩擦による取引量の減少などを訴える声があった。雇用関連も2.3ポイント減の45.8で、「世界の経済情勢の不透明感から、製造業を中心に様子見感の広がりが懸念される」(東海地方の職業安定所)との声が聞かれた。
2〜3カ月後の先行き判断指数は44.3と前月から1.5ポイント低下した。「10月の消費税引き上げにより、外食産業は悪くなるとみている」(北陸地方の一般レストラン)など増税後の消費動向を懸念する声が増えた。先行きについて消費税に関するコメント数は556と6月の450から増えた。
内閣府はウオッチャーの先行きの見方について「消費税率引き上げや海外情勢等に対する懸念がみられる」とまとめた。
6月の経常収支、1兆2112億円の黒字 60カ月連続黒字
財務省が8日発表した6月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆2112億円の黒字だった。黒字は60カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆1717億円の黒字だった。
貿易収支は7593億円の黒字、第1次所得収支は4273億円の黒字だった。
同時に発表した1〜6月の経常収支は10兆4676億円の黒字、貿易収支は2242億円の黒字だった。
かなり長くなりました。これらの記事さえしっかり読めば、それはそれでOKそうに思えます。いずれにせよ、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは以下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

消費者マインドについては、需要サイドの消費医者態度指数に加えて、本日公表の供給サイドの景気ウォッチャーも、かなり大きく下げています。マインドは実体経済の先行指標ですから、この先に景気の停滞が待っている可能性が高いと考えざるを得ません。基本的には、米中貿易摩擦に起因する世界経済の停滞が背景にあるんでしょうが、直近7月統計については長引いた梅雨といった天候要因もありそうです。そこで、4月から7月にかけての3か月間において、景気ウォッチャーを構成する3つのコンポーネントの現状判断DIがどのように下げたかを少し詳しく見ると、家計動向関連が4月から▲4.7ポイント低下した一方で、企業動向関連は▲3.2ポイント、雇用関連が▲2.0ポイントの低下となっています。企業よりも家計のマインドの方がより大きく低下しているわけです。他方、人手不足を背景に雇用については家計部門の半分以下の下げ幅となっています。なお、4月から7月にかけて、家計が企業よりも大きく下げている点については現状判断DIだけでなく、先行き判断DIでもまったく同じだったりします。なお、引用した記事に見られる通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「回復に弱さ」から「回復に弱い動き」と4か月ぶりに下方修正しています。実は、この記事を見るまで、この基調判断の下方修正を見逃していたんですが、記者会見でそういった説明があったんだろうと想像しています。
いずれにせよ、上のグラフを見れば明らかで、消費者マインドはかなり長期にわたって低下を続けています。先週7月30日に公表された消費者態度指数は、大雑把に、2017年11月の44.6をピークに1年半余りに渡って下がり続けていますし、景気ウォッチャーも現状判断DI、先行き判断DIともに、細かい動きを別にすれば、2017年10〜12月期をピークにトレンドとして低下を続けているように見えます。繰り返しになりますが、マインドは明らかに実体経済の先行指標ですので、10月に消費税率の引き上げを控えて、直前に駆け込み需要が予想されるとはいえ、とても気にかかる指標のひとつです。

続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。いずれにせよ、仕上がりの経常収支の+1兆円超の黒字はトレンドとして大きな変更はなく、海外からの第1次所得収支の黒字が大きな部分を占めているんですが、先月5月の経常収支については貿易収支が季節調整済みの系列で▲4,522億円と大きな赤字を計上していましたが、6月統計では+1,585億円の黒字に転じています。でも、この先、世界経済のいっそうの停滞が予想されるとともに、韓国向け輸出の動向が不透明であり、貿易収支が従来通りの黒字を続けるかどうかは判然としません。
2019年8月 8日 (木) 20時10分 経済評論の日記 | 固定リンク
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「日本がダメなら世界」と商社を飛び出した若者のその後

津久井 悠太
記者
2019年8月26日
15 82% 全2254文字
人材の採用コストが高止まりする中、優秀な若手社員の退職に悩む企業は多い。日経ビジネス8月26日号「できる若手がなぜ辞めた 本当に効く人材定着の知恵」では、大手企業の「期待の星」だった若手社員が離職を選んだ理由と、彼らを引き留めるために企業が取るべき策を探った。

 毎年の大学生人気就職先ランキングに軒並みランクインするのが、大手総合商社。高倍率の競争をくぐり抜けて入社した新人たちは、海外経験や恵まれた待遇、高い社会的ステータスへの期待に胸を膨らませる。しかし、中には業界トップを争う企業で「期待の新人」と目されながら、3年未満で離職を選ぶ若手社員も存在する。総合商社A社を2年ほど前に退職した田代裕貴氏(仮名)もその一人だ。

 田代氏は有名私立大学に通学するかたわら、自ら語学学校にも通ってフランス語を習得。その実力は確かなもので、在学中に1年間のフランス留学も経験している。留学の前後に短期間で済ませた就職活動では、留学経験や語学力、コミュニケーション能力が高く評価され、商社以外も含め有名企業から多数の内定を獲得した。

同期の「成長株」が突然退社
 田代氏は結局、「ファーストキャリアとして最も有望だと考えた」A社に入社。入社後は自動車グループに配属となり、自動車部品の輸出などに関わる業務を担当することになる。2015〜2016年頃の資源価格の下落により、A社では非資源事業の強化が急務となり、中でも自動車グループは全社の期待を背負っていた。当時、A社の若手社員は通常業務とは別に会社から研修用の課題を与えられていたが、田代氏はそうした課題でも同期の指示系統を取りまとめるなど積極的に活動。その結果、2年目には尊敬する上司の元で徐々に重要な仕事を任されつつあったという。

次ページたどり着いたのは欧州の小国
 しかし2年目の夏、田代氏は突然、上司に退職の意思を告げる。理由は、入社時に高い評価を受けた留学経験そのものだった。

 「欧州での仕事でフランス語を活かせると期待してA社に入ったが、実際に担当になったのはアジア圏。その時点でモチベーションは低下しかけていた。それ以上に、留学中にフランス人の働き方をよく見ていたので、業務や課題漬けの非効率な長時間労働が本当に必要なのか疑問だった」(田代氏)

 田代氏が知る欧州の働き方は、「決まった勤務時間内で全力を出し、短い時間で高いパフォーマンスを出す」というもの。しかし、A社での新人の仕事は量ばかり膨大で、効率を上げて私生活も充実させようという発想は皆無に思えたという。

たどり着いたのは欧州の小国
 そうしてA社を退職した田代氏は、自らの望む働き方に近い企業を国内で探すどころか、日本を飛び出して欧州に渡る。各国を旅しながらインターネットを駆使して仕事を探し、結果的に欧州フランス語圏の素材メーカーB社への就職を決めた。B社は従業員数300人程度の規模ながら、自社製品で欧州市場をほぼ独占する優良企業。田代氏に任されたのは、日本企業からB社に出向した技術者の通訳だった。


総合商社を2年弱で退職した田代氏(仮名)は現在、欧州フランス語圏(写真はイメージ)で働く(写真=PIXTA)
次ページ「10年は日本に戻らない」
 「B社の労働環境は、日本での経験と雲泥の差だ」と田代氏は語る。朝8時に出社すれば午後4時半には仕事が終わるため、「かえって夕方以降に何をするか困ってしまうほどだ」(田代氏)。生産性を上げるために半年先まで仕事を計画し、インターン生なども活用して人員に余裕を持つ。その分、B社では社員一人ひとりが専門性を厳しく問われるが、希望に応じて新しい仕事のチャンスは与えられる。田代氏自身、通訳以外の仕事も考えてみるよう上司に勧められているという。

「10年は日本に戻らない」
 「思い返すと、組織力を強みとするA社には『個々人が身を粉にして組織のために働く』という価値観があった。B社では、社長自ら従業員の人生の充実を目標に掲げ、休暇の行き先まで気にする。自分の意思で自分のキャリアを築きたいので、今後10年は日本に戻らないつもりだ」(田代氏)

 田代氏には、A社時代の同期からしばしば連絡が来るという。内容は「自分もA社を辞めて海外で働きたいが、どうすればいいか」といったものだ。海外駐在のチャンスが多い総合商社には、その性質上、帰国子女も多い。「彼らの中には、本当は労働環境のいい欧州などで働きたいと思っている人も多い」と田代氏は語る。

 語学に長けた優秀な若手社員に対し、海外を相手に事業を広げる日本企業は大きな期待を寄せる。しかし海外転職の情報が比較的簡単に得られるようになった今、彼らの選択肢は世界中に広がっている。企業は労働環境や人材育成の面で、従来以上に厳しい目を向けられることになる。田代氏のケースが示すように、優秀人材の獲得における競争相手は、国内だけではなくなっている。

 日経ビジネス8月26日号「できる若手がなぜ辞めた 本当に効く人材定着の知恵」では、大手企業の「期待の星」だった若手社員が離職を選んだ理由と、彼らを引き留めるために企業が取るべき策を探った。

 日経ビジネス電子版の議論の場「Raise(レイズ)」では、日本が停滞から抜け出すために打つべき一手を考えるシリーズ「目覚めるニッポン」を始めています。若手社員の引き留めについても、「 [議論]若手社員、どうやったら引き留められる?」にて読者のみなさんの意見を募集しています。

 若手社員が会社を離れてしまう根本的な理由、企業が実行できる有効な引き留め策など、みなさんの考えをお聞かせください。若手社員ご自身の経験談も大歓迎です。 (注:コメントの投稿は有料会員限定です)

往復書簡

若手社員と企業の間にギャップ


本当に効く人材定着の知恵

メンター導入、面談充実…間違いだらけの引き留め策


できる若手がなぜ辞めた 本当に効く人材定着の知恵


ケーススタディー

「ガリガリ君」の赤城乳業、1000本ノックで奇抜さ育む


本当に効く人材定着の知恵

「期待の星」ほど早い決断 辞める理由の大誤解


世界の最新経営論

AIが奪う仕事vs減る人手 自動化と仕事減少の行方


日経ビジネス最新号特集から

離職率減の秘密は「社員への隠し事をやめた」こと


ケーススタディー

三井物産、「出入り自由」の組織作りで新事業創出へ

コメント15件
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オイラ524

万年課長

たいそうな夢を語りながら現実は通訳ね 笑笑)

2019/08/26 11:57:493返信いいね!


Last Penguin

表題からは彼が異端児のような印象になるが、今やこういう能力のある人ほど組織に縛られない働き方をするのが主流になるのではないか。
私の娘も大学在学中からいくつもの海外の研修プログラムに参加し、授業のない期間はほとんど日本にいない。こうなればも...続きを読む

2019/08/26 13:31:142返信いいね!


RN

この方に比べれば志は低いかと思いますが、IT系へ転職し、フレックス、私服勤務、同世代しか居ない故の風通しの良さに慣れてしまい、もう伝統的な日本企業へは戻れないと感じています。
もちろん会社の安定性と引き換えですが。

2019/08/26 14:18:00返信いいね!


Rollei40S

無駄飯くい

資格試験の点数でなない、実践英会話の能力を評価して採用した人材を、部署間の「綱引き」の挙句に国内営業部に配属して結局辞められてしまう・・・・そんな話がどこかの会社にもありますねぇ(遠い目)

2019/08/26 15:13:053返信いいね!


末端平社員

フランスの隣国・欧州在住です。
田代さんは就労ビザも取れたようですが、ワーホリからの転換なのでしょうか?以前は就労ビザを取ることが難しく、今の安易な制度が羨ましいです。

田代さんは仏語に堪能だったから、即戦力として採用され、恐らく待遇も良...続きを読む

2019/08/26 16:10:2012返信いいね!


リンダ

コンサルタント

長いスパンでの人生設計、おっしゃるとおり。ドイツ在住ですが、長く住むなら、ドイツ語の専門的な教育を受け、資格をとらないと。大卒の資格はネイティブでも難しいので、職業専門学校の道もあります。専門資格をとれば、それを生かして正社員になれ、日本語...続きを読む

2019/09/05 17:13:222いいね!


forte

まだ道半ば

「海外企業で就職」が良かったかは別として、
記載の日本人の働き方はメスを入れることが必要。
当方も海外駐在経験があるが、海外では品質80%で効率を追いかける文化があるのに対して、日本は残り20%を更に倍の時間を掛ける印象。
高齢化、少子化、労働力不足が懸念される日本で、本来手がけるべきはこういった意識レベルの働き方改革ではないかと考える。
「残業時間削減」の全てが悪いとは言わないが、あくまで出面の労働時間に注目してしまっているのは皮肉なことだ。
2019/08/26 16:45:328返信いいね!


わぐけるとまほうのき

塾講師

日本にもこういう会社はありますね。息子が勤める会社がそうです。香港駐在中に転職を決めた会社だったけれど、古い人間の僕には考えられない「労働環境」。ホワイトを通り越して日本の会社とは思えない環境。せいぜい言えるのはスーツ着用程度かな。
 財務内容も信じられないくらい良い。前の会社でずっと財務を担当してきた息子が驚いていた。僕もそう思う。
 上場もしていないので名度はないがB to Bの優良会社がたくさんあることを知りました。学生諸君はそういう会社を探していくと良いことがたくさんあるように思います。
2019/08/27 23:21:534返信いいね!


鈴木 伸二

薬学博士

現在のような国際環境かなり広いので、海外で働くこともかなり意義があるのですが、問題はその方法なのです。でももし本当に海外で活躍したいと考えた時に、一つの方法は海外の大学に転編入し、二年くらい頑張ればその大学を卒業することにより就職の可能性が広まるのです。
私の例では、イタリアの大学に途中編入することにより、二年間でその大学を卒業し、その後今日に至るまでイタリア、スイスで働くことが出来ました。この場合の言葉はその国に三か月くらい語学研修してから、大学に編入するのですが、この場合は日本での学部と同じ学部を選考することが重要なのです。つまりこのようにすると編入先の大学でも比較的問題が少なく学習についていけるからです。もっとも、国によっては他国の大学の卒業生の習得科目を全く認めてくれないところもありますので注意が必要です。
2019/08/28 05:11:032返信いいね!


Latebloomer

自分の会社は9時始まり17:30就業ですが、1時間前にシフトしてます。16時過ぎくらいから集中力・生産性は下がりますね。定時後に誰とどこに飲みに行くかそわそわしている輩もいて。就労環境わかります。職住が離れているのも原因かと思いますが。

2019/11/05 11:17:11返信いいね!


Acchie123

なし

職住が離れているのを「怪しまない」文化が、まず、基本的な問題でしょう。単身赴任も。軍隊の発想の名残かな(もっとも、軍の宿舎は駐屯地にありますが、将兵の実家は遠くですよね)。日本でも、地方なら、徒歩圏に職場ありというのは可能でしたが、バブル期に激減しました。
2019/11/05 16:47:31いいね!


日の当たる場所に出たい

語学”だけ”が達者な人なら、その言葉のネイティブを雇えば良いだけなので、語学だけが堪能は人はアドバンテージ無いです。
他になにか光るものを持っていると強いです。
変に勘違いした新人君が時々居ますけど、別な意味で転職していきますね。

2019/11/05 12:31:063
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00067/081900014/?P=3&mds

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/594.html

[経世済民133] 韓国流通業界の現金ばらまきマーケティング、不況期の日本をほうふつ
記事入力 : 2019/11/09 06:02
韓国流通業界の現金ばらまきマーケティング、不況期の日本をほうふつ

 なかなか消費が回復しない中、流通業者が直接消費者に現金をばらまく「現金性マーケティング」に取り組んでいる。商品を値引きするセールでは長期間続く内需低迷を克服するのは難しいと判断し、消費者が使える「実弾(現金)」を直接ばらまく劇薬処方に乗り出した格好だ。

 流通業者は現金同様に使える商品券や積立金を支給するイベントが売り上げ増加に効果を及ぼすと期待している。値引きイベントよりも消費意欲を直接刺激できるためだ。

 しかし、カネをばらまくマーケティングの効果は一時的なものにとどまる可能性があり、かえってマーケティング費用がかさみ、消費低迷で悪化した流通業界の業績に追い打ちをかけかねないとの指摘も聞かれる。

■ネット通販、100億−200億ウォンのばらまき作戦

 現金ばらまき競争が最も激しいのはオンライン流通業界だ。新世界グループが運営するネット通販サイト「SSGドットコム」は1日、先着15万人に1万ウォンの商品券を支給すると発表した。いわゆる「国民小遣い100億ウォン」イベントだ。ティモンは今月、全加入者に10万ウォンの割引クーポンを贈るイベントを始めた。

 ウィメプは今月1−11日に200億ウォン規模の積立金を15万人に支給するイベントを開始した。積立金は現金同様に使える。ウィメプ関係者は「昨年経営目標を収益性向上から取引額拡大へと転換し、思い切ったマーケティング戦略を展開したことで、過去最高の取引額を達成した」とし、今年は総額200億ウォンの積立金を支援するイベントで取引額が大幅に増えることに期待感を示した。

 百貨店や量販店、テレビショッピングなども現金性イベントを実施している。百貨店と大型量販店は購入金額が一定額を超えるか、イベント対象商品を購入した場合、商品券を支給するイベントを恒例で実施している。特に百貨店は今月、米国のブラックフライデーの影響で消費意欲が高まる期間、値引きではなく、商品券を支給する方式で売り上げのテコ入れを図る計画だ。

 GSショッピングは2日以内に使用可能なイベント積立金を不定期で贈り、消費の誘い水としている。同社関係者は「イベント積立金が貯れば、飲料水やトイレットペーパーなどの生活用品で積立金を使い切ろうとする傾向が強い。マーケティング効果はかなりあると判断している」と説明した。

■長期的な消費テコ入れ効果には疑問

 現金をばらまくマーケティングは深刻な不況を経験した日本のケースを思い出させる。1990年代に厳しい不況のトンネルに陥った日本政府は資金供給を増やしても国民が消費に資金を回さずに貯蓄してしまうため、一定期間内に百貨店で使用しなければならない商品券を支給した。当時日本の流通業界もそれに賛同した。

 しかし、そうした日本政府と流通業界の努力は根本的な消費テコ入れにはつながらなかった。そのため、専門家は政府の現金性福祉政策と同時並行で進む流通業界の現金マーケティングが一時的効果に終わることを懸念している。景気回復で本格的に消費心理が回復しない限り、消費テコ入れ効果は限定的なものに終わるとの見方だ。

 淑明女子大経営学部の徐繼=iソ・ヨング)教授は「消費者にカネを支給するやり方は、消費テコ入れの誘い水になり、流通業者の売り上げを増やす効果が期待される」としながらも、「現金性マーケティングが適正レベルを超え、過熱の様相を呈した場合、業界のコスト負担が高まり、サービス価値や企業の信頼が低下しかねず、長期的に懸念される」と述べた。
ヨン・ソンオク記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/11/08/2019110880103_2.html
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/602.html

[経世済民133] ゴールドマンが有給育児休暇を拡大−20週間は大手米銀で最長
ゴールドマンが有給育児休暇を拡大−20週間は大手米銀で最長
Gwen Everett
2019年11月5日 18:24 JST
• ウォール街では16週間が標準、従業員の性別や養育者の立場が左右も
• 育児の「主な担い手」区分を廃止、男親・女親ともに同等の休暇提供

Photographer: Mayte Torres/Getty Images
ゴールドマン・サックス・グループで従業員が有給で取得できる育児休業期間が、他のどの大手米銀よりも長くなった。
  ゴールドマン社員は有給育児休暇を20週間取得できるようになった。ウォール街の他の金融機関では、育児を主に担う従業員に対する育児休暇は16週間が標準。また、育児休業期間は従業員の性別や養育者の立場に左右されないと、ゴールドマンが4日明らかにした。
  金融業界では他の多くの業界同様、育児休業中の従業員を育児の「主な担い手」と「二次的な担い手」に区別し、大半の大手銀行で後者が有給で得られる育児休暇は短い。
Raising the Bar for Parental Leave
More new parents can take paid time off since Goldman expanded coverage.

Source: Companies
* Citigroup offers 16 weeks to birth mothers and 8 weeks to all other parents
  ゴールドマンは現在、米国に拠点を置く大手銀行の中では最も長い有給育児休暇を付与する組織となったが、大手グローバルバンクの一部も既に同等の長さの休暇を米従業員に提供している。UBSグループの広報担当ヒュー・ウィリアムズ氏は4日、同社が2020年1月から、従業員の性別や育児の担い手としての順番にかかわらず、20週間の育児休暇を与えると述べた。
  従来の方法では差別で訴えられるケースがあった。JPモルガン・チェースは今年5月、「育児の主な担い手」として休むことがないよう男性は差別されていると主張して男性社員が訴えた問題で、500万ドル(約5億4400万円)を支払って和解することに同意。この和解合意で同社は、男性社員も育児の主な担い手として休暇を取得できることを明確化すると約束した。
  ゴールドマンは4日、採卵や卵子提供を行う従業員に対する手当ての導入や養子縁組みおよび代理出産手当てのための予算の拡大、病気の家族を世話する時などに使える4週間の有給家族休暇も発表。11月1日に実施した。
原題:
Goldman Now Offers More Parental Leave Than Other Big Banks (2)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-05/Q0GWHVT0AFB501?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/603.html

[経世済民133] 中国10月の消費者物価、7年ぶりの高い伸び−豚肉価格の高騰で
中国10月の消費者物価、7年ぶりの高い伸び−豚肉価格の高騰で
Bloomberg News
2019年11月9日 12:39 JST
CPIは3.8%上昇、PPIは1.6%低下−国家統計局
豚肉価格の高騰は一時的で短命に終わるとシティのエコノミスト
中国の消費者物価指数は10月、豚肉価格の上昇を背景に7年ぶりの高い伸びとなった。

10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.8%上昇、前月は同3%上昇だった
10月の生産者物価指数(PPI)は同1.6%の低下。市場予想の中央値は同1.5%低下だった
主なポイント
国家統計局によると、豚肉価格は101.3%上昇
金融政策は供給ショックによって引き起こされた豚肉価格の上昇に対する解決策ではないが、中国人民銀行(中央銀行)は成長鈍化にもかかわらず他の主要な中央銀行と比べて比較的抑制された姿勢を維持している。人民銀は今週、市中銀行に供給する1年物資金の金利を引き下げたが、全体的な流動性の供給は中立を維持している
「豚肉価格の高騰は一時的なもので短命とみられることから、金融政策の優先順位は一時的な消費者物価のインフレよりも悪化するデフレリスクへの対処とするべきだ」 とシティグループの中国担当チーフエコノミスト、劉利剛氏(香港在勤)は最近のリポートに記述した
ブルームバーグがまとめたデータによると、CPIは2012年1月以来の大きな伸び
その他
一部のエコノミストは、豚肉価格の上昇で消費者物価の上昇率は間もなく4%に達する可能性があると述べている
原題:
China’s Inflation Rises to Seven-Year High as Pork Prices Soar(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-09/Q0OJFTDWLU6901?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/604.html

[経世済民133] 決済方法、若年層は「現金」、高齢層は「キャッシュレス」。スマホ決済は2割未満 日本と大違い!米国若者のキャッシュレス事情 決済速度、現金28秒、キャッシュレス12秒。非接触型8秒が最速 
決済方法、若年層は「現金」、高齢層は「キャッシュレス」。スマホ決済は2割未満
エコノミックニュース2019年10月2日 07:10 0

決済方法、若年層は「現金」、高齢層は「キャッシュレス」。スマホ決済は2割未満
 政府は2020年東京オリンピック、25年大阪万博にむけ、またインバウンド政策の一環としてもキャッシュレス化推進を重要課題の一つと位置づけている。キャッシュレス化によって産業の効率化が促進することは間違いないが、日本の現況は他国と比べキャッシュレス化が進展しているとはとても言えない状況だ。


 調査業のMMD研究所が「2019年9月スマートフォン決済に関する実態調査」を8月に実施、その結果を9月19日に公表している。この中で若年層ほど「現金」の利用が多いという興味深い結果が出ている。


 18歳から69歳の男女3万7040人を対象に普段の支払い方法について複数回答で聞いたところ、全世代で「現金」を利用すると回答した者の割合は90.5%、次いで「クレジットカード」71.3%、「カード型の交通系電子マネー」47.1%、スマホ決済16.4%、デビットカード5.6%、その他0.4%の順であった。海外で利用が進んでいると言われるスマホ決済は2割未満だ。


 年代別に見ると、「現金」が10代で94.0%、20代91.0%、30代90.2%、40代90.5%、50代90.4%、60代90.3%、「クレジットカード」が10代18.9%、20代57.7%、30代69.6%、40代72.9%、50代76.9%、60代80.3%、「カード型電子マネー」が10代33.1%、20代40.3%、30代44.9%、40代48.1%、50代50.7%、60代50.4%となっており若年層で現金への依存度が高く、高齢層ではクレジットカードとカード型の利用が高くなっている。ただし「スマホ決済」では20代18.1%、30代21.4%に対し50代15.6%、60代10.6%で若年層ほど利用度が高いようだ。

【次のページ】 スマホ決済を利用していると回答した者6083人に最も利用しているス

スマホ決済を利用していると回答した者6083人に最も利用しているスマホ決済サービスについて聞いた結果では、「PayPay」が26.7%で断トツに多く、次いで「LINE Pay」12.1%、「楽天ペイ」11.6%の順となっている。


 スマホ決済の利用頻度について「2〜3日に1回以上」と回答した者の決済タイプを見ると、QRコード決済を利用と回答した者は27.7%、非接触決済が33.7%となっており非接触決済で利用頻度が多くなっている。

 スマホ決済1回あたりに抵抗なく使える金額は「1万円未満」が7割を超え、「どんな金額でも抵抗がない」との回答は15.6%にとどまっている。日本でキャッシュレスが、特にスマホ決済が主流になるのは今しばらく時間がかかりそうだ。(編集担当:久保田雄城)

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決済速度、現金28秒、キャッシュレス12秒。非接触型8秒が最速
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急速に進むキャッシュレス決済 店選びにも影響か
サイバー犯罪。3分の1が高対応コストのマルウェアと内部攻撃。アクセンチュアが調査
進んでいくキャッシュレス 日本人の決済手段とは
エコノミックニュース
https://www.excite.co.jp/news/article/Economic_86868/


 

決済速度、現金28秒、キャッシュレス12秒。非接触型8秒が最速
2019年09月17日 06:08
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画・決済速度、現金28秒、キャッシュレス12秒。非接触型8秒が最速。〜JCBが実証実験。

JCBが決済速度に関する実証実験を実施。決済速度の平均は、非接触型が8秒、クレジットカードが12秒、QRコードが17秒、現金28秒。キャッシュレスの平均は12秒で現金よりも16秒速い。

 政府は消費税率引き上げに伴う需要平準化対策としてキャッシュレス対応によるポイント還元事業の支援を行っている。これは増税前後の消費需要を平準化することで増税ショックを和らげることを目的としていると同時にキャッシュレス化の普及によって消費経済の生産性の向上、利便性の向上を狙ったものでもある。

 日本のキャッシュレス化の現状は、国民のキャッシュレスシステムへの信用度が未だ十分ではないなどの理由で諸外国と比べ普及率は低い状態を維持している。信用度の向上という課題を残しつつもキャッシュレス化が経済効率と利便性を向上させることは間違いなく、様々な角度からキャッシュレス化促進の努力を行うべきであることは論を俟たない。

 キャッシュレス化が実現した場合、どの程度の生産性向上があるのか、この観点からクレジット会社のJCBが現金、クレジットカード、非接触型、QRコードの4つの決済方法について決済速度に関する実証実験を行い、その結果を8月28日に発表している。

 実験では100名の被験者が25名ずつ4つの決済方法で組分けされ、それぞれについて商品購入にかかる決済処理時間が計測された。実験の結果、非接触型の処理時間は6〜10秒で平均処理時間は8秒、クレジットカードでは9〜19秒で平均処理時間は12秒、QRコードは12〜32秒で平均時間は17秒、現金は15〜40秒とバラツキが大きく、平均処理時間は28秒となった。

 キャッシュレス全体でみると処理時間は6〜32秒で平均処理時間は12秒となる。単純に平均処理時間で比較するとキャッシュレスは現金よりも16秒処理時間が短く、非接触型に限れば20秒処理時間が短いと言うことになる。

 JCBの積算では現金決済を完全にキャッシュレスにすれば年間約3時間の自由時間が増加するとされる。また店舗側としては、1日のレジ業務において消費者の全てがキャッシュレス支払いをした場合、労働者1人あたりの労働時間は約4時間短縮されるとし、従業員の労働量削減や人員不足の解消にもつながるとしている。また、日本経済全体としてはキャッシュレス化で1日約22億円分、年間で約8000億円分の時間が短縮され、就業者1人当たり年間約1万2000円相当の価値が創出されるとしている。

 積算数値は平均値から導き出された概数であるというものの、キャッシュレス化がマクロに経済的な利益をもたらすことは間違いないであろう。(編集担当:久保田雄城)
http://economic.jp/?p=86690


 
日本と大違い!米国若者のキャッシュレス事情
知られざる「買い物」と「おカネ」への意識
原田 曜平 : マーケティングアナリスト2019年05月12日

アメリカの将来を背負うであろう、コロンビア大学の学生たちにキャッシュレスサービスの利用状況や人気の就職先など、率直な意見を聞いた(写真:LeoPatrizi/iStock)
1981〜1996年の間に生まれた、ミレニアル世代と呼ばれる若者たち。人口が多く、デジタルネイティブといった特徴を持つ彼らはいったい今、何を考えているのか?
そこで今回、コロンビア大学の学生を中心としたミレニアル世代の若者たちと座談会を行い、アメリカの若者の変わりゆく価値観や実態について議論を行った。
彼らはアメリカのトップクラスに位置する大学の学生らであり、かつ、ニューヨークという超リベラルな土地に住んでいる。つまり、ある意味で偏った層の若者たちだ。しかし同時に、彼らがアメリカの未来の知識階層になり、影響力を持っていくだろうことも事実だ。
彼らの政治への見方について聞いた前々回記事、SNSの利用実態などについて前回記事に続き、今回記事ではキャッシュレス決算やネットショッピング事情などについて聞いた。
いちばん使っているキャッシュレスサービスは?
原田:日本は先進国の中で最もキャッシュレス化が遅れている国の1つだと言われています。いまだに東京でも、現金しか受け付けない焼き鳥屋さんとか、カード決済をしたときの手数料を10%くらいとるお店なんかもあり、クレジットカードでさえ使い難い状況も多々あります。キャッシュレスが早く進んだ国の若者である皆さんは今、現金は持っているの?

アンナ:20ドルは持っているわ。使えないお店も少ないけど、あることはあるから。でも、日本に旅行に行く前は現金を一切持っていなかったんだけど、日本で現金が必要なことが多く、日本に行ってから現金を少し持つ習慣に変わったわ。

原田:キャッシュレス化が進んでいない日本で、大変遅れた習慣を染み付けてしまってごめんなさい……。

テイラー:まったく持っていないわ。

エレン:海外旅行に行くときくらいしか持たないかなあ。

キャリス:10ドルくらい。クレジットカードが使えない場所もごくたまにあるから。

原田:皆がいちばんよく使うキャッシュレスサービスは何ですか?

一同:デビットカード。

アンナ:大学生のクレジットカードの限度額は500ドルなことが多いの。だから、大学生は銀行口座と直結しているデビットカードを使っている人が多いわ。で、社会人になったらクレジットカードを使うようになる人が一般的。クレジットカードならポイントが付くし。

原田:中国の大都市部では、街のたばこ屋でもスマホのQRコードで何でも買えてしまうけど、アメリカではQRコードはどうかな?

一同:そこはアメリカは遅れています。

原田:中国より先にカードなどでキャッシュレス化が進んでしまった国では、QRコードの普及はひょっとすると難しいのかもしれないね。日本は欧米型のクレジットカード・デビットカード派か、中国型のQRコード派か、どちらのキャッシュレス化になっていくんだろうね。

ところで、日本ではまだ割り勘アプリが普及していないんだけど、銀行口座と直結していて、割り勘や個人間での支払いができるVenmo(ベンモー)という送金アプリが、数年前にロスの若者たちに調査したときにかなり使われるようになっていましたが、ニューヨークの若者の皆さんは使っていますか?


Venmoの送金アプリの使い方を教えてくれる学生たち(写真:筆者撮影)
一同:皆、使っています。

テイラー:友達に借りたお金を返すときに。

ヨータム:僕はバイトでベビーシッターをしているけど、その代金をこのアプリでもらいます。

テイラー:友達とタクシーに乗って、タクシー代を割り勘するとき。あとは、ルームシェアしている友達と電気代を割るときに。

原田:やっぱり、若者の間で割り勘をするシーンって本当はたくさんあるはずだよね? 日本でもいくつか割り勘アプリがあるんだけど、あまり普及していない。QRコード決済でも割り勘はできるんだけど、そもそもQR決済自体がまだまだ普及していない。

そもそも日本は割り勘文化だから、ファミレスなども、現金でもカードでもお客が割り勘で会計するのを嫌がらなかったりするから、この手のアプリが普及しないのかもしれない。

誰がどこでお金を使ったのかわかるのが楽しい
キャリス:自分で使ったモノを大学内で他人に売るときに使っている人も多いです。いちばん多い学生のこのアプリの使用法は、ルームシェアの共益費を互いに支払うときではないでしょうか。

テイラー:Venmoが2014年に行った地下鉄のCMはかなり印象的でした。いかにもミレニアル世代を狙っていて、「このアジア人のミレ二アル世代のLucasという若い男性が使っているから、貴方も使おう!」といった感じのものでした。

キャリス:Venmoの特徴の1つは、SNSのように皆とつながるところだと思います。つながっているから、つながった人たちが、どこでお金を使ったかなどが見られることができ、それが超楽しいです。

原田:えー! 友達がどこでいくら払ったかわかるんだ?

キャリス:いえ、使った金額まではわからないです。どこで、までです。

原田:日本の若者たちは、インスタのストーリーなどで周りの友達が何をしているのか大変気にして見るようになってきているけど、アメリカの若者も周りの友達の動向が気になるようになってきているんだね。

SNS世代である世界中のミレニアル世代をマーケティングでつかむツボの1つは、SNSでつながっている友達の動向をいかに気にさせるか、ということかもしれないね。Zenly(ゼンリー)という相手の位置情報がわかるアプリもはやっているし。

SNS以前の僕が若者だった時代には、もちろん、友達の今の状況の情報を得るツールなんてなかったし、僕個人の特徴も大きいのかもしれないけど、好きな女の子が何しているかは知りたかったけど、周りのどうでもいい友達が何をしているかなんて、まったく気にしたことなかったけどなあ。当時、こうしたツールがあったら、僕も周りを気にするようになっていたんだろうか。

エレン:私はプライベート設定にしているので、Venmoで私がどこで買ったかは非公開にしています。私はあまり人に見られたいと思いません。

原田:若者の間でも「気になる派」と「気にならない派」、あるいは、「見せたい派」と「見せたくない派」に分かれてきているのかもしれないね。

なぜAmazonで洋服や食品は買わないのか?
ちなみに、話題を変えますが、皆さんはAmazonを買い物に使っているよね?

一同:頻繁に使っています。

テイラー:日用品はAmazonでしか買わない学生も多いと思う。

原田:今回、ニューヨークに来て驚いたんだけど、マンハッタンなどの中心部からどんどんおもちゃ屋がつぶれているみたいだね。高額の家賃で、単価の低いおもちゃ屋は割りが合わないのだろうし、子どものおもちゃはネットで買うのが定番、となってきているようだね。逆に、皆がAmazonで買わないモノは何なの?

テイラー:みんな、洋服と食品はAmazonで買いません。

原田:洋服はやっぱり実際に試したいし、とくに生鮮食品なんかはやっぱりリアル店舗がいい、ということなんだろうか……。

確かにニューヨークではお店はあくまでショールームと位置づけ、洋服を店舗で試して、気に入ったらお店でお金を払い、買った商品を倉庫から自宅に送ってくれるという、ネット発のアパレルショップがかなり増えてきているようだね。

あとは洋服を買うにしても、各ブランドサイトで買い、Amazonで買わない、という面もあるんだろうね。Amazonは日用品を買う場であって、ブランドイメージの高いものを買う場ではない、ということなのかな。

また、上海などでは生鮮野菜をアプリで注文してデリバリーしてもらったりするのもはやってきているけど、アメリカはそういう現状にはなっていないんだね。

社会としてよいことかどうかはわからないけど、中国の大都市部には安い人件費で雇える人が大量に存在するから、大変低価格で多くのモノをデリバリーできる、という面もあるんだろうね。

そうそう、昨日、Amazonが出した実店舗の書店であるAmazon-BooksとAmazonで4つ星の評価がついた商品ばかりが売られているAmazon 4-starに行ってきて感動したのだけど、ニューヨークの若者の皆さんはよく行くのかしら?

やっぱり、あのAmazonでさえ、実際の書店での本のショールームを必要としていることが感じられて、本を書く立場の僕としてはなんだか安心したし、4-starに関しては、純粋にアメリカで何が売れているのかわかって楽しかったです。

テイラー:うーん、私は両店舗とも知らないわ。

数名:聞いたこともないなあ……。

エレン:あんまり良い印象ではないです。ネットで買えるからAmazonの良さがあるわけで、彼らはホールフーズも買収したし、リアルな店舗を出したらAmazonのよさがなくなってしまうように思う。

原田:EC企業が最も欲しいデータが、リアル店舗の購買データなんだよね。だから、ECサイトがリアル店舗に進出する動きが世界で加速していて、このリアルとバーチャルが合体された小売りのことを「ニューリテール」と言ったりするんだけど、まだアメリカでさえ、若者たちにニューリテールの可能性の魅力は伝わっていないんだね。

あと、アメリカである程度普及している決済サービスといえばApple Pay(アップルペイ)があると思いますが、それは使っている?

アラン:Apple Payは使っています。Paypal(ペイパル)は、ECサイトのeBay(イーベイ)などを使う際に、クレジットカード情報を入れたくないときに使います。これにはすでにクレジットカード情報が入ってるから。

キャリス:仕事をしたときに、Paypalで給料を払ってもらいます。

ヨータム:eBayとPaypalはつながっているけど、今はアメリカでECと言えばAmazonに集約されつつあるので、あまりペイパル自体も使わなくなってきていると思います。

アンナ:私はApple Payは使いません。理由は、Appleに私の情報をあげたくないからです。

原田:個人情報の流出問題もあり、アメリカにはアンチフェイスブックの人が増えていると聞くけど、アンチアップルも含め、ニューヨークの高学歴の学生たちは、個人情報に超敏感なんだね。

アメリカの出会い系アプリ事情
企業は個人情報の安全性とそれを企業が得ることによる消費者にとってのメリットをしっかりと説いていかないと、消費者に拒否されてしまう難しい時代になっているかもしれないね。ところで、日本はいわゆる「マッチングアプリ」大国です。たくさんのマッチングアプリが日本では乱立しています。

もともとナンパや恋愛が下手な国民性もあるからかもしれません。アメリカの若者の間ではTinder(ティンダー)やバンブルがはやっていると言われているけど、実際のところ、若者の間でマッチングアプリはどうなっていますか?

エレン:私のボーイフレンドはティンダーで見つけたわ。5年前に。

テイラー:OKキューピットというアプリも有名よ。

キャリス:たまに使うわ。新しい街に引っ越して来たときに、友達を増やすために使ったりするわ。

原田:恋愛だけでなく、友達作りなど、結構カジュアルに使われていそうだね。国民性の違いもあるんだろうけど、日本はどうしてもちょっとうさんくさいイメージが根強いような気がするなあ。

アンナ:新しい人と出会うのが面倒、と思っている学生も結構多いと思います。

原田:日本では「若者の恋愛離れ」なんてことが言われているけれど、アメリカでもそんな傾向が出てきているのかしら。

ヨータム:過去に使ったことはあります。会ってデートをしたこともあります。

原田:スマホゲームはどうだろう?

一同:あまりやらないわ。

アンナ:移動時間の隙間にちょっとやったことはあります。

原田:アメリカの大学生は日本の大学生より勉強で忙しいし、実家を離れて寮に住んでいる人が多いから、学校と寮との移動時間が大変少ない。東京の学生のように電車カルチャーだと毎日、隙間時間がたくさんできるけど、アメリカはそうじゃないもんね。

ところで、今、アメリカの企業の間では、マリファナ成分入りドリンクに注目が集まっています。アメリカでは州によってはマリファナや、医療用マリファナが解禁されている流れもあり、エナジードリンクの次はこのCBD(Cannabidiol)ドリンクだ、という動きもあります。若者たちの間ではこのCBDドリンクはどうなんでしょう?

エレン:確かに今、話題になってるけど、どんなものかよくわからない。CBDの入浴剤を使っている友達もいます。また、加熱式タバコのJUULにもCBD入りのものが売られるようになっています。

原田:アメリカでは有名人がマリファナを吸って捕まることが少ないけど、日本ではマリファナなどのソフトドラッグも、コカインなどのハードドラッグも違いがあまり認識されておらず、芸能人などがどちらをやっても大きな社会的制裁を受けることになります。だから、ハイになる成分が除かれているCBDドリンクであっても、日本ではなかなか是非を議論すること自体が難しいかもしれません。

アメリカの高学歴な学生が就職する企業とは?
ところで、アメリカの学生の間ではどんな就職先が人気があるんだろう?日本の報道では、アメリカで10代で起業して大金持ちになる若者や、NPO団体にこぞって就職する若者など、やや極端で特徴的な若者が取り上げられる傾向が強いので、普通の高学歴の学生がどんなところに就職をしたいと思っているのかが知りたいのだけども?

テイラー:私はもう働いていますが、私が就職活動をしていた2013年頃は大手コンサルと大手金融が大変人気がありました。

アンナ:私たちミレニアル世代の間では、世界を変えることができる仕事が尊敬されます。企業の政治的姿勢も学生から求められます。私たち世代は、高校生のときに学校での銃乱射事件、そしてその後、むちゃくちゃなトランプ政権を見てきているので、この企業の社会的な姿勢が、就職先としての選択ポイントに入っていると思います。

イラーナ:確かにそれも一理あるけど、既存の大手コンサルや銀行もいまだに人気はある。

アンナ:Tech系企業(Google、Facebookなど)もいまだに人気があると思います。

原田:今、日本の学生の間では、大企業志向が急激に高まってきています。平成不況の間は、大企業で採用を抑制していたところも多かったので、日本の学生の間では、不景気の中でも安定している公務員志向が高まっていました。しかしこの数年、景気の上向きもあり、団塊世代の大量退職と少子化があまりに長く続いたことで、人手不足が深刻化した業界も増え、大企業が採用人数を増やしたからです。

世界最高峰のコロンビア大学の学生の間でも、やっぱり、人気と言ったら超有名大手企業なんだね。

ただし、加えて、「企業の姿勢」という視点も入ってきたんだね。日本の大学生で「企業の姿勢」を重視して就職活動している学生は何%いるんでしょうね、大変少ない気がします。日本の大学生は「社風」は重視してそうですが。

話はそれるけど、日本の学生は今、上記の理由で就職が世界的に見て大変楽になってきているんだけど、アメリカの学生は景気がよくなっても、新卒一括採用はないし、世界中の学生がライバルになるし、超有名大手企業に入るのは超難しいもんね。

超格差社会、超競争社会のアメリカに比べると、少子化や景気回復などにより、競争環境が大幅に減っている日本の学生は大変恵まれていますね。問題はそのことに日本の若者があまり気づいていないことなんですけどね。

君たちのような優秀なアメリカの学生さんたちにも、若者の雇用が大変恵まれている日本に来て就職してもらえる日がくるといいなあ。まあ、アメリカの大手企業と比べると、日本の大企業の給料は大変低いので、この点は世界から優秀な人材を呼び込めていない深刻な問題点なんですけどね。

原田の総評:アメリカや日本の未来を示唆
コロンビア大学の学生を中心としたニューヨークの学生たちとの座談会はいかがでしたでしょうか? 1回目は「若者の政治意識」について、2回目は「若者とSNS」、そして3回目は「キャッシュレス社会」について主に議論しました。

ところどころ日本の若者のリアルな状況も入れさせていただいたので、日米の若者の比較論として読んでいただくこともできるのではないかと思います。日本およびアメリカで若年層を対象にマーケティングする企業の皆様には、その比較こそ、マーケティングのポイントの1つとなりうるので、是非、ご参考にしていただきたいと思います。

さて、今回座談会に参加してくれた彼らは、アメリカの中でも超優秀な、そして超リベラルなニューヨークの学生、という意味で超極端なごく一部の若者たちであることは確かです。

しかし同時に、彼らが未来のアメリカの頭脳になっていくであろうこと、そして、アメリカが日本より先に進んでいる面があり、日本に影響を与える国であるという仮定に立ってみると、今の彼らのピュアな意見や価値観が、アメリカの未来、そして日本を含む世界の未来を示唆する点が多分に含まれている可能性があると言えます。

是非、彼らの意見を参考に、今のアメリカのリアルを知り、いいところは取り入れ、悪いところは二の舞を踏まないよう、読者の皆様のお仕事にお役立ていただけると幸いです。

【座談会参加者プロフィール】
ヨータム:コロンビア大学学生。政治学専攻。イスラエル出身。軍隊に6年いた。趣味はイラストレーション。校内雑誌に掲載している。音楽が好き。将来はブランドメッセージのある起業をしたい。
アンナ:コロンビア大学4年生。趣味は旅行とネットフリックス。今後、韓国語を勉強したいと思っている。
アラン:コロンビア大学哲学専攻の4年生。ディベートソサエティに入っていて、日々、たくさんディベートする。ペンシルベニア出身。
アダム:コロンビア大学4年生、政治学専攻。週に20時間は大学の学生リーダーをしている。予算は1million(日本円で約1億1000万円)を運用していて会計担当。将来は政治家になりたい。学生リーダーをしているのは趣味と実益を兼ねている。リーダーになるために5000〜6000の学生寮の部屋を叩いて回って、自分への投票を呼びかけたことがある。少し前に健康の問題からビーガンになったばかり。でも、本当はハンバーガーが大好き。
イラーナ:政治経済専攻。大学の寮で6人で住んでいる。アイビーリーグのフェンシングのチャンピオン。
テイラー:ペンシルベニア大学出身。趣味はフィクションの小説を書くこと。最近、5万語の小説を1カ月で仕上げた。大学機関の事務局幹部育成プログラムを卒業している。いずれ大学の受験課の長になりたい。旦那さんはドイツ人のデータサイエンティストでペンシルベニア大で知り合った。
キャリス:コロンビア大学で歴史専攻の4年生。趣味は映画製作、演技。
エレン:コーネル大学を卒業してコロンビア大学ビジネススクールの研究所で働いている。歴史と政治学を専攻していた。趣味はランニングと旅行。
(協力)荻野僚子:コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所
(調査設定・通訳)シェリーめぐみ:1991年からニューヨーク在住。ジャーナリスト、ラジオ・テレビディレクターとしてアメリカのエンタメ、文化、経済、政治まで幅広く日本に情報発信。オフィシャルブログ 。連載に日刊ゲンダイ連載「ニューヨークからお届けします」。JFN On The Planet シェリーめぐみfrom NY(月〜木:全国36局ネット) など。
https://toyokeizai.net/articles/-/277994

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/605.html

[自然災害22] 災害続発、弱る地方河川 予算・人手不足で整備遅れ 豪州で深刻な森林火災続く、シドニー近郊は「壊滅的な」脅威に直面 
災害続発、弱る地方河川 予算・人手不足で整備遅れ
台風19号 社会・くらし2019/11/11 11:26

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3日、東北大大学院工学研究科の田中仁教授は宮城県丸森町で、台風19号で決壊した阿武隈川支流をドローンで撮影した(同教授提供)
3日、宮城県丸森町を流れる阿武隈川支流の河川敷から1台のドローン(小型無人機)が飛び立った。川の流れを遮るように横たわる大木、両側から決壊した堤防……。台風19号の被害調査で現地に入った東北大大学院の田中仁教授はドローンのカメラがとらえた被害の様相に目を見張った。「本流に比べ、支流の被害が大きすぎる」
10月12日に東日本を縦断した台風19号は各地に「100年に一度」の記録的大雨をもたらし、1日で421ミリの雨が降った丸森町では大規模な浸水被害が発生した。1カ月がたっても、泥水につかった住宅の片付けはまだ途上だ。
同町に災厄をもたらした阿武隈川は過去に氾濫を繰り返し、国が重点的に整備を続けてきた河川の一つだ。町内では国が管理する阿武隈川の本流部分で破堤や越水は確認されなかったものの、県が管理する新川など3つの支流の計18カ所で堤防が決壊した。
国内の河川は河川法に基づき、防災上重要とされる部分を国が、それ以外を都道府県や市町村が管理する。国土交通省によると、台風19号で決壊した国や都道府県管理の河川堤防は71河川の140カ所。そのうち国管理は7河川の12カ所にすぎず、被害は都道府県管理の河川に集中していた。

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3日、東北大大学院工学研究科の田中仁教授は宮城県丸森町で、台風19号で決壊した阿武隈川支流をドローンで撮影した(同教授提供)
国は20年度までの3カ年で河川も含めたインフラ補強を重点的に進めているが、国が管理する河川でさえ、堤防整備率は約7割にとどまる。
河川の氾濫に備え、被害想定をもとに住民の避難場所などを明示した「ハザードマップ」の作成も、国は各自治体に促している。台風19号の被害を受けて対象を広げる方針だが、これまで多くの中小河川は対象外だった。都道府県や市町村が管理する中小河川は備えが間に合わず、今回の甚大な被害につながった。
背景に地方自治体の置かれた厳しい状況がある。宮城県は15年12月に「災害に強い川づくり緊急対策事業」を策定。堤防補強などに着手したが、河川課の担当者は「東日本大震災の復旧も終わっておらず、災害が起こるペースに追いつかない。いつ整備できるか分からない川もある」と打ち明ける。
判断のもとになるデータの把握も十分とはいえない。阿武隈川流域の福島県郡山市では管理する104河川のうち、水位計を設置しているのは2河川のみ。原因は予算や人手不足で「今回の台風で、どの川がいつあふれたか正確には分からない」(河川課)という。
地球温暖化などを背景に水害のリスクは年々高まっている。国交省の統計によると、18年に氾濫危険水位を超えた国や都道府県管理の河川は475河川で、14年(83河川)から4年で5倍以上に増えた。日本の南の海水温が上昇し、強い勢力のまま列島を直撃する台風も多くなっている。
「気象災害のリスクは高まりつつある」。気候変動に詳しい木本昌秀東京大教授(気象学)は警鐘を鳴らす。「極端な気象現象が起こりやすくなるなど、もはや過去の経験は当てにならない。命を守るためにどう行動すべきか、一人ひとりが考える時に来ている」

東日本を中心に甚大な被害をもたらした台風19号の上陸から12日で1カ月。地方と都市で、水害に対する備えの「死角」を検証する。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52013500R11C19A1SHB000/

 

豪州で深刻な森林火災続く、シドニー近郊は「壊滅的な」脅威に直面
Emily Cadman
2019年11月11日 11:57 JST
AUSTRALIA-WEATHER-FIRES
  オーストラリアは今週も引き続き深刻な森林火災に備えることになる。消防当局はグレーターシドニー(シドニー都市圏)が「壊滅的な」脅威に直面しつつあると指摘している。

  シドニーのあるニューサウスウェールズ州では、2年にわたる干ばつで非常に乾燥した状態となっていたエリアで前例のない複数の森林火災が猛威を振るい、ここ数日で3人が死亡、150棟余りの家屋が消失した。

  10日はやや気温が下がり、差し迫った危険は一部和らいだものの、当局によると、12日には高温と強い風が州全体を覆い、再び状況は悪化すると予想されている。

  続きはこちらをクリックしてください。

原題:Australia Braces for Another Week of Dangerous Bushfires: Photo(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-11/Q0S8X26S972A01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/780.html

[経世済民133] 厚生年金は長く働けば増える 実は支え手も増えている 5年前より改善 専業主婦の優遇」を廃止すれば抜本的に改善
厚生年金は長く働けば増える 実は支え手も増えている
どうなる年金(2)
2019/11/11
人生を変えるマネーハック

今月のマネーハックのテーマは「年金」です。国による年金の財政検証結果(年金制度の将来見通し)から、年金に関する最新の「読み方」「つきあい方」を考えています。

いまだに年金破綻論が幅を利かせています。しかし、現実的に破綻は考えにくいというのが最新の財政検証結果の読み方である、と先週の「年金破綻リスクあるか 『5年前より悪くなっていない』」で解説しました。

今週は「支え手を増やす」というよく聞くフレーズについて、マネーハックの視点で考えてみましょう。

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年金の財政検証結果で徐々にその重要性が高まっているのは、オプション試算と呼ばれる追加シミュレーションの数字です。

5年前も同様の試算が行われていますが、今回はより情報量が増えています。現在行われている制度改正に向けた議論の論拠としても用いられています。

議論の中に、「支え手を増やす」というテーマがあります。公的年金財政は保険料収入と年金給付のバランスを長期的に取ることを目指しています。ですから、現役世代がよりたくさん保険料を納める立場になることや、60代でも保険料を納める立場であり続けてもらえることは、年金財政的に重要です。

ただ、この議論は「負担させられる」というイメージで誤解されているようにも思います。「死ぬまで働けというのか」「保険料は納めてもどうせもらえないに違いない」と批判する人がいますが、これはおそらく「支え手を増やす」という言葉が一人歩きしてしまった結果なのでしょう。

保険料を納めることは確かに年金制度の支え手になることですが、実は「将来はもらい手になる」こととセットでもあります。

年金加入者の増加は給付水準の向上につながる
私たちの年金の給付水準(給付額)は何もしなくても上がるわけではありません。現状の制度では「給付額の計算式を書き換えて全国民の年金額を増やす」ことはできません。それは保険料収入と年金給付のバランスを取るという方針に反するからです。

しかし、保険料を納める立場になることで、私たちは「自分の年金」の給付額を上げることができます。

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団塊の世代が引退しても厚生年金の加入者は増加

なぜなら、今、保険料を納めている納付履歴は受給権となり、「将来は年金をもらえる」立場に変わります。つまり、年金制度の支え手のまま人生を終えるのではなく、老後にはもらい手になれるわけです。

年金の財政検証結果でも、多くの国民が厚生年金制度に加入し保険料を納付する立場になれば、ひいては国民全体の所得代替率(現役男性の平均手取り収入額に対する公的年金の給付額の割合)を引き上げることになると示されています。

厚生労働省が示している例でいえば、現在の国民年金は1人当たり月6.5万円程度(国民年金に40年間加入したケース)にすぎません。一方、厚生年金を上乗せできると、合計で月15.6万円くらいまでアップします(平均的年収で厚生年金に40年間加入したケース)。年間100万円も年金収入が変わってきます。そしてその差が人生100年時代といわれる老後の間、一生続くことになります。

厚生年金保険料率は18.3%ですから、本人は給与や賞与からその半分である9.15%を納めます。大きな負担ですが、実はこれ、保険料をたくさん給料から引かれるという「支え手」の面と、年金を多くもらえるという「もらい手」の面の2つに影響してくるわけです。

団塊の世代が引退しても厚生年金の加入者は増加
団塊の世代の引退により、労働力人口は減少したといわれています。日本の総人口は2011年以降、継続して減少しています。また、この30年ほどで非正規雇用が増えたことが問題となってきました。

これらを考えれば、厚生年金に入っている人、つまり正社員の数は平成の30年間を通じて減少したのではないかと思われるかもしれません。

しかし、現在の方が厚生年金の加入者数は多いとしたらどうでしょうか。意外に思われるかもしれませんが、着実に増えているのです。

1990年(平成2年)3月末で厚生年金の被保険者(加入者)は2988万人でした。つまり3000万人いなかったことになります。

その後、98年3月末は3346万人、2008年3月末は3457万人、と順調に伸び、18年(平成30年)3月末ではなんと3911万人まで増えています(現在では公務員も厚生年金だが、ここでは除いている)。

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「支え手」より「もらい手」を意識しよう
この30年ほどで、女性の厚生年金加入者は約500万人増えています。平成を通じて女性の多くが働くようになりましたし、そのための職場環境が整えられたことがきちんと数字に表れています。

最近では短時間勤務の労働者も、会社に厚生年金加入を求める政策が取られており、これも加入者数の増加に寄与しました。

厚生年金が適用される対象者層を広げると、国民の所得代替率を高める可能性が財政検証結果のオプション試算で報告されており、現在の制度改正では適用拡大についての議論が続いています。

また、本来は加入義務がありながら、社員の厚生年金保険料を納めていない企業も少なからずあるとみられ、こうした会社をどう加入させていくかも検討されています。

「支え手」より「もらい手」を意識しよう
今まで私たちは「支え手を増やす」という言葉にとらわれるあまり、「将来の自分の年金が増える」という視点がなかったように思います。だからこそ、「扶養に入って社会保険料を払わない(パートなどの)働き方をしよう」と考えてしまうわけです。

しかし、厚生年金に入るかどうかは「制度としての支え手を増やす」問題を解消するだけでなく、「個人としてもらえる額を増やす」問題も同時に解消する有力な選択肢であることに間違いありません。

今は、正規雇用で働き続けるには絶好のチャンスです。全国的に人材不足は続いており、正社員の有効求人倍率は1.0倍を超えています。

働き方の多様化への企業の対応も進んでいるため、短時間勤務などの選択肢も増えています。産休や育休から職場復帰するのはもはや当たり前の働き方になりました。

正社員で働いている人はなるべく長く働き続けること(なお、家事育児を男性も担当することが、女性の働きやすさにつながることも大事な論点です)、これから働く人は正社員をできるだけ選ぶことを考えてみてください。

それはきっと、「年金制度の安心」だけではなく「あなたの老後の安心」につながっていくことでしょう。


山崎俊輔
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「スマホ1台で1000万円得する! マネーアプリ超活用術」(PHP研究所)など。http://financialwisdom.jp
 
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO51898500X01C19A1000000

5年前の想定より改善する年金財政
10

永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
2019/09/15 08:24
年金「大幅減」に潜む誤解 実質額、代替率ほど減らず|
マネー研究所|NIKKEI STYLE

公的年金の財政検証では現役男性の平均手取り賃金に対する年金額の比率である「所得代替率」が低下を続ける傾向が明らかになった。


先日、政府から5年に一度公表される財政検証が示されましたが、メディアの不安をあおる報道ばかりで、きちんと理解されている国民は極めて少ないのではないでしょうか。

実際、今回6つの経済前提の下で試算されていますが、経済前提が前回よりかなり慎重化しているにもかかわらず、所得代替率(=年金額/現役世代賃金)は前回から上昇しています。

背景には、前回公表以降の女性や高齢者の就労増等により、前回の想定よりも年金財政が改善していることがあります。

ただ、記事にもある通り、実質額は代替率ほど減らない結果となってますが、この背景には、財政検証が物価上昇率より賃金上昇率が高くなることが前提になっていることがあります。

しかし近年、賃金上昇率が物価上昇率を上回ることがほとんどなく、今後もこの状況が変わらなければ、実質年金の目減りを意味します。

こうした点に留意しつつ、給付調整圧力を緩和すべく、高齢者の就労長期化を中心とした前向きな政策を進めていただきたいものです。

#年金
#社会保障
#財政検証
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第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。あしぎん総合研究所客員研究員、跡見学園女子大学マネジメント学部非常勤講師を兼務。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事。専門は経済統計、マクロ経済分析。

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年金財政は「専業主婦の優遇」を廃止すれば抜本的に改善する
塚崎公義:久留米大学商学部教授

経済・政治 重要ニュース解説「今を読む」
2019.9.6 5:20


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専業主婦の年金見直し
年金財政の見直しをするなら「専業主婦の優遇」は避けては通れない問題です Photo:PIXTA
先日、厚生労働省が行った年金の財政検証では、改革案を考える上で参考になるオプションが提示された。しかし、最も重要な「専業主婦優遇の廃止」に触れていないのは非常に残念である。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)

財政検証が示した改革のオプション
 厚生労働省が先月発表した年金の財政検証は、「年金が2割減る」などのミスリーディングな報道もあり、話題となった。この点については前回の拙稿「『年金が2割減る』報道は誤り、ミスリードを招いた数字の罠」に示した通り、年金額が減るわけではないので、過度な心配は不要である。

 しかし、少子高齢化が進む以上、年金制度の改革は避けて通れない。そこで、財政検証はさまざまなオプションを示し、改革の議論の参考に供している。

 その大枠の1つは、「被用者保険のさらなる適用拡大」である。零細企業に勤めている短時間労働者等々も幅広く厚生年金に加入させたらどうなるか、という試算である。

 もう1つは、「保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択」である。「75歳まで働いて厚生年金保険料を払い、75歳から年金を受け取り始める」といった選択肢を労働者に与えたらどうなるか、という試算だ。

各オプションとも一時しのぎ
根本的な解決にはならず
 零細企業の短時間労働者を厚生年金に加入させれば、現役世代の払う年金保険料が今より増えるので、高齢者の受け取る年金が増える。現在の年金制度が賦課方式(現役世代が高齢者を支える制度)であるのだから、当然である。

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抜本的な対策は年金の減額が有効

 しかし、この効果は一時的である。新しく厚生年金保険料を払い始めた現在の現役世代が高齢者になったときには、今より多くの高齢者が年金を受け取るようになるからである。

 それまでの間に少子化が劇的に止まり、将来の現役世代の人数が大幅に増えていればともかく、そうでない限り、厚生年金保険料を払う現役世代と厚生年金を受け取る高齢者の比率が変わらないので、今と同じ状態に戻るだろう。

「75歳まで働いて厚生年金保険料を払い、75歳から年金を受け取り始める」といった選択肢も、同様だ。それを選択した高齢者が75歳になったときに受け取る年金額が、今の高齢者より多くなるからである。

抜本的な対策としては
年金の減額が有効
 年金財政を抜本的に改善する1つ目の選択肢は、年金支給額の大幅な引き下げである。少子高齢化で、現役世代と高齢者の比率が変化するのに伴い、高齢者への年金支給額を引き下げるのだ。

 2つ目の選択肢は、年金保険料を長く払い込ませ、年金受給開始年齢を遅らせることである。つまり、高齢者の定義を65歳以上ではなく75歳以上に変更する。

 報告書は、「75歳まで受け取りを待てば年金額が増える制度」を想定しているが、これと1つ目の選択肢を組み合わせれば、事実上、2つ目の選択肢と似たような結果となろう。

 すなわち、年金支給額を「このままでは年金だけでは暮らせない」というところまで大幅に引き下げ、「でも、75歳まで働いて年金保険料を払えば、75歳からは年金だけで生活できる」という方向に人々を誘導するのである。

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もっと抜本的な対策は専業主婦の優遇廃止

 人生100年時代であるから、20歳から60歳まで40年働いただけで、その後の40年間を年金生活でエンジョイしよう、と考えるのは虫が良すぎるだろう。75歳まで働くことが自然な時代が遠からずくるだろうから、年金制度もその方向に誘導していくのは悪くない話だ。

 これを年金制度の改悪だ、として政府を批判することは避けたい。少子高齢化の世の中では、誰が総理大臣をやっても、誰かからの徴収を増やすか誰かへの支払いを減らすか、あるいは両方をせざるを得ないからだ。

さらに抜本的な対策は
専業主婦の優遇をやめること
 しかし、それ以上に抜本的な対策がある。現在はサラリーマンの妻が専業主婦だと年金保険料を支払わなくてよいことになっているが、この制度を廃止すればよい。

 現在、900万人以上の専業主婦が国民年金の第3号被保険者という身分であり、彼らは国民年金保険料を支払わなくてよいことになっている。夫が厚生年金保険料を支払うことで、妻の分の国民年金も払ったことになるからだ。

 この制度を廃止すれば、1人あたり20万円の国民年金保険料が徴収できる。年金保険料を払う人数が16%も増えるのである。しかも、夫の給料から天引きすれば徴収漏れもない。しかも将来の年金支給額が増えることもないから、一時しのぎではない抜本的な対策である。

 これは、年金財政の健全化に大きく資するのみならず、公平の観点からも女性の労働参加という観点からも、望ましい改革となろう。

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自営業者や共働き家庭との公平のために

自営業者や共働き家庭との
公平のために
 自営業者の妻は、たとえ働いていなくても国民年金保険料を払わされる。サラリーマンが共働きだと、妻が自営業者だろうとサラリーウーマンだろうと年金保険料を払わされる。

 失業者の妻も、支払う義務が一応ある。免除等が受けられる場合もあるが、払ったことにしてもらえるわけではないので、払わなければ老後に受け取る年金が減る。その分だけサラリーマンの専業主婦より不利であることに変わりはないのである。

 それなのに、なぜサラリーマンの妻だけが優遇されているのか、合理的な理由が筆者には思いつかない。

 もう1つ、この制度が「130万円の壁」として、サラリーマンの妻のパート時間を制限しているという問題がある。

 ちなみに本稿における専業主婦は、パートで働いている主婦も含んでいる。パート等の収入が130万円未満である、といった条件を満たすサラリーマンの配偶者のことである。

 サラリーマンの妻がパートで働いて年収が130万円に達すると、年金上は専業主婦と見なしてもらえないので、年金保険料の支払い義務が生じる。それを避けるために、年収が130万円に達しない範囲に労働時間を抑えている専業主婦が多いのだ。

 これは、せっかくの妻の労働力を十分に生かせていないわけであるから、大変もったいない。特に、今後は少子高齢化による労働力不足の時代になるのだから、この制度を廃止して主婦にも130万円の壁を気にせず思い切り働いてもらうべきであろう。
https://diamond.jp/articles/-/213964
http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/608.html

[経世済民133] 10月の街角景気、現状3カ月ぶり悪化 銀行のトレーディング収入、減少止まらず 長期金利の低水準継続、終身・年金保険の維持困難に-日銀 韓国の輸出、11月1〜10日は20.8%減−半導体が33.3%減少 機械受注、9月2.9%減 基調判断は引き下げ

10月の街角景気、現状判断指数は3カ月ぶり悪化
経済・金融
2019/11/11 14:04 
内閣府が11日発表した10月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は36.7で、前の月に比べて10.0ポイント低下(悪化)した。悪化は3カ月ぶり。家計動向、企業動向、雇用が悪化した。

2〜3カ月後を占う先行き判断指数は43.7で、6.8ポイント上昇した。上昇は4カ月ぶり。家計動向、企業動向が改善した。

内閣府は基調判断を「このところ回復に弱い動きがみられる」に据え置いた。

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL11HR0_R11C19A1000000/

 

 
銀行のトレーディング収入、減少止まらず−リスク圧縮で取引規模縮小
Matthew Leising
2019年11月11日 10:50 JST
• 大手投資銀行12社のトレーディング収入、10−18年で390億ドル減少
• 銀行はリスク回避、20年前と同じ手数料率で取引可能な額は16分の1


スーザン・エステス氏はニューヨークでドイツ銀行の債券デスクを統括していたほぼ20年前、40億ドル(約4400億円)規模の米国債スプレッド取引の注文を顧客から電話で受けたものだった。
  当時から、多くのことが変わった。取引はもはや電話を必要とせず、かつてないほど高速に実行される。米国債市場は当時の4倍の大きさになった。一方、銀行はその規模のリスクを引き受けたがらなくなった。エステス氏が40億ドルの取引で請求したのと同じ手数率では、今日の顧客は2億5000万ドルの取引しかできないだろうと同氏は言う。
  「16分の1の取引しかできなくなったというのは驚くべきだ」と、モルガン・スタンレーとドイツ銀のトレーディング幹部だったエステス氏は述べた。同氏は現在、米国債取引システムを運営するオープンドア・セキュリティーズの最高経営責任者(CEO)を務めている。
  もちろん、取引の規模が小さくなれば収入も減る。 40億ドルの取引で125万ドルが得られたとして、同じ手数料率で2億5000万ドルの取引なら7万8000ドル強の収入にしかならない。
  この例は、低リスク、低収入、より少ない人員というウォール街の新しい現実を示している。投資銀行のトレーディングデスクは金融危機後、経済の他のほぼどの分野よりも迅速に回復したが、以降の新規則によってトレーダーが活用できる資金の額は小さくなった。規制当局は監視を怠らず管理職は損失回避に躍起となる中で、大きなリスクを取るトレーダーは自身がリスクにさらされている。
  危機から10年以上がたち、最新技術と厳格な資本規則の時代へと移行が進む市場は、ウォール街最大のビジネスを恒久的な衰退へと追い込みつつある。2019年もトレーディング収入は減少し、最低を更新する見込み。減収は過去7年で6回目となる。分析会社コーリションのデータによると、世界の大手投資銀行12社のトレーディング収入は2010−18年の間に390億ドル減少した。今年の分を加えると、減収幅はゴールドマン・サックス・グループとJPモルガン・チェースの2社が消えたのにほぼ相当する。
Not Keeping Up
Trading fees have slumped even as major markets have grown rapidly

Sources: Bloomberg data, Coalition
Note: Normalized with 100 representing size in 2010. 2019 figures are based on current pace for trading revenue and Sept. 30 figures for market size.
  伝統的なプレーヤーから新規参入組まで多くが債券市場に狙いを定めて競り合うが、債券こそが減収の最大の要因だ。債券市場は動きが速く、電子化され、マージンの低い株式の世界に似たものになりつつある。
  トレーディング収入が低迷した最初の数年間は、これが一時的か、恒久的かが議論されたが、今ではどこまで落ち込むかが問いかけられている。大手12社のトレーディング収入は今年1−9月に5%余り減少した。
  JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは9月に、取引の量は増え続けるだろうが、収入が増えるとは限らないと語った。「現時点で、勝敗を決するのは優秀なトレーダーを擁しているかどうかというよりテクノロジーだ」と同氏は指摘。「取引の量は増えていくだろうが、一部の取引マージンは低下するだろう。それがどのように釣り合うのか、私には分からない」と語った。
原題:Trading Slump Deepens: It’s as If JPMorgan and Goldman Vanished(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-11/Q0NH5N6JTSE801

 

長期金利の低水準継続、終身・年金保険の維持困難に-日銀主な意見

伊藤純夫
2019年11月11日 9:05 JST 更新日時 2019年11月11日 10:03 JST

年金・投信は0.1%低下で数百億円収益減、マイナス金利を実質負担
政策指針修正で緩和スタンス明確化、追加策を引き続き検討
BOJ Deploys Words Instead of New Policy Action To Fight Slowdown

日銀が11日に公表した10月30、31日の金融政策決定会合での主な意見によると、マイナス圏で推移を続ける長期金利が長期間継続した場合、終身保険や年金保険などを提供することが困難になり、「生命保険業界としての社会的使命を果たせなくなる可能性がある」と長期金利の低下に懸念を表明する委員がいたことが分かった。

  この委員は、年金や投資信託について「円債運用において、金利が0.1%低下すると数百億円の収益減になる可能性がある」とも指摘。日銀の当座預金においてマイナス金利が適用されている残高の約半分を信託銀行が占めており、「年金や投資信託からの受託財産であり、その分のマイナス金利は実質的に年金や投資信託が負担していると言える」との見解を示した。

  会合では、金融政策の現状維持を決める一方、政策金利のフォワードガイダンス(政策指針)を修正。物価目標に向けたモメンタム(勢い)が損なわれる恐れに注意が必要な間、「現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定している」とし、将来の利下げの可能性を明示した。

  物価2%目標に向けたモメンタムは維持されているものの、経済・物価の下振れリスクが引き続き大きいとの認識の下、政策指針の見直しで「政策金利の下方バイアスがあるものにすることで、緩和方向をより意識して政策運営を行っているというスタンスを明確にすることが適当」との意見が表明された。

  これを踏まえた先行きの政策運営では、「モメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、躊躇(ちゅうちょ)なく、追加の緩和策を講じることが必要」との見解が改めて示されるとともに、「下方リスクの厚い現在、追加緩和の要否を引き続き検討すべきである」と追加緩和の必要性を主張する委員もいた。

キーポイント
政策指針、緩和方向意識したスタンス明確化が適当
物価モメンタム維持されているが、より注意要する情勢と認識
物価目標実現に時間、強力な緩和継続方針を強く発信すべきだ
リスクシナリオの一環として景気後退への備えを真剣に考える必要
金融政策は銀行経営ではなく、経済全体との関係で考えるべきだ
現状長期金利の長期間継続、生保業界として使命果たせなくなる可能性
マイナス金利、実質的に年金・投信が負担していると言える
年金や投信は金利0.1%低下なら数百億円の収益源となる恐れ
日銀10月会合の関連記事
日銀、フォワードガイダンスに利下げ可能性明示−現行政策維持
黒田日銀総裁、必要あればマイナス金利の深掘りは可能
(詳細を追加して更新しました)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-11/Q0MRQJDWLU6J01?srnd=cojp-v2


 


韓国の輸出、11月1〜10日は20.8%減−半導体が33.3%減少
Shinhye Kang
2019年11月11日 11:06 JST
Media Tour Of Taesungdong Village and Dorasan Observatory Before The Upcoming Inter-Korea Summit
Photographer: SeongJoon Cho/Bloomberg
韓国の輸出は11月1−10日に前年同期比20.8%減少した。韓国関税庁が11日、電子メールで資料を配布した。

  品目別の輸出は半導体が33.3%、自動車は3.8%、石油製品は27.1%、船舶は64.4%、それぞれ減少。中国への輸出は17.1%減った。対米は18.4%、対日は15.1%、それぞれ減少した。

  全体の輸入は21.5%減で、日本からの輸入が28.1%減った。

  今年の11月1−10日は前年より営業日数が1日少なかった。

原題:
S. Korea Nov. 1-10 Exports Fall 20.8% Y/y; Chip Exports -33.3%(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-11/Q0S7QYDWLU6801?srnd=cojp-v2


 

機械受注、9月2.9%減 基調判断は引き下げ
経済・金融2019/11/11 10:11

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内閣府が11日発表した9月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比2.9%減の8502億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値(0.7%増)を下回り、3カ月連続の減少となった。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」へと引き下げた。基調判断を引き下げるのは2018年12月分以来となる。19年4月分から「持ち直しの動き」としていた。
製造業の受注額は前月比5.2%減の3604億円だった。2カ月連続の減少で、17業種のうち7業種で減少した。「非鉄金属」や「石油製品・石炭製品」の分野で落ち込みが顕著だった。
半面、非製造業は2.6%増の4898億円と、3カ月ぶりの増加に転じた。「通信業」や「情報サービス業」などの増加が寄与した。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は5.1%増だった。受注総額は4.9%減、外需の受注額は7.3%減、官公需の受注は26.3%減だった。
7〜9月期では前期比3.5%減と、2期ぶりに減少した。製造業は0.9%減、非製造業は7.3%減だった。10〜12月期は前期比3.5%増の見通しで、製造業は2.8%増、非製造業は3.7%増を見込んでいる。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
〔日経QUICKニュース(NQN)〕
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL11HR8_R11C19A1000000/


http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/609.html

[経世済民133] いやいや、米景気は加速でしょ!バブルの兆し 米債券市場、インフレ率の復調織り込む流れに拍車 主流派経済学者の間で進む財政赤字の再解釈 生産性は供給側だけで決まらない 無名の空売り投資家が小規模バイオ株で大当たり
いやいや、米景気は加速でしょ!
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永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
2019/07/27 09:41
米景気に減速感 貿易戦争で投資・生産減(写真=ロイター)
【ワシントン=河浪武史】米景気に減速懸念がにじんできた。4〜6月期の実質成長率は2.1%を維持したが、公共支出という特殊要
www.nikkei.com
昨晩公表された米国の経済成長率、報道は減速で統一されてますが、むしろ市場の捉え方としては、成長減速というより予想上振れの印象の方が強いですね。

特に個人消費は前期比年率+4.3%と急加速し、2014年4Q以降で最大の伸びとなりました。

そして何よりも、貿易と在庫を除いた国内最終需要は3.5%増と、この1年で最大の増加率となっています。

という意味では、米景気は減速どころがむしろ加速しており、これを受けて米長期金利も上昇し、ドル高の反応となってます。

米株も最高値を更新してますし、こんな状況で米国が利下げをやりすぎれば、米国経済はバブルへGO!状態になりやしないかと個人的には警戒しています。

#バブル
#GDP
#米国経済
#経済成長率
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このクリエイターのおすすめノート
経済政策の転換を促す世界の金利状況
8
永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)

対中関税だけではない1930年代以降と現在の相似形
11
永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)

開催後に判断されるラグビーW杯の成否
15
永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
https://comemo.nikkei.com/n/n88fa246fd18e


米国経済にバブルの兆し
13

永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
2019/07/28 10:12
米住宅市場に過熱懸念 ローン申請4割増(写真=AP)
【ニューヨーク=大島有美子】米国の住宅市場に復調の兆しが出ている。長期金利の低下でローン金利が下がり、住宅ローンの申請件数
www.nikkei.com
アジア通貨危機→LTCMショックを経た世界的な金融緩和でITバブルが発生したように、今回も米中摩擦やハードブレグジット等を経た更なる世界金融緩和で何かバブルが起きるかもしれません。

LTCMショックとは、ノーベル経済学賞受賞者を擁し、高度な金融技術を駆使して急成長したヘッジファンドが1998年に破綻したことです。

98年のLTCMショックの時は、足元のように逆イールドになるも、FRBの迅速な利下げによりリセッションを回避しましたが、その後はITバブルとその崩壊になりました。

今回も株価が最高値更新で利下げ=バブルの匂いがしており、98年のLTCMショック後の利下げからITバブルへの流れと似ている気がします。

ですので、LTCMショック後はITバブルに向かったように今回もバブルになるリスクがあると思いますので、米国経済がバブルにならないことを願うばかりです。

逆に投資家の方々も、利下げしすぎに伴うバブルも警戒した方がいいと思います。
https://comemo.nikkei.com/n/nc916c72a7336


 


 

米債券市場、インフレ率の復調織り込む流れに拍車も
バンガード
Katherine Greifeld
2019年11月11日 10:51 JST
• 通商摩擦が緩和の様相でブレーク・イーブン・インフレ率が上昇
• 13日発表のCPIの数字は市場の基調を強める可能性とマティアス氏
米債券市場では物価上昇率の回復を織り込む流れが今週の統計を受けて強まりそうだと、米資産運用会社バンガード・グループのストラテジスト、アン・マティアス氏はみている。
  バンガードはインフレ期待に関する市場の指標が3年ぶりの低水準から上昇を続けるとの見方を支持する立場。米金融当局が10月30日、利上げにはインフレ率の大幅な上昇が要件になると示唆したことに加え、米中貿易交渉が進展する可能性が主な材料となっている。
  2024年までの消費者物価の年率上昇率予測を示す5年間のブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は先週1.64%と、4カ月ぶりの高水準を記録し、名目利回りも急上昇した。通商分野の状況は別にしても、債券トレーダーの弱気転換は13日発表の消費者物価指数(CPI)統計に左右されそうだ。

  マティアス氏は「市場のコンセンサスは米金融当局がインフレ抑制に動くことはないとの見方に傾き始めた」と分析。BEIの上昇は「貿易摩擦が少なくとも悪化はしないとの基調的な見方と米経済情勢の2つ」が影響していると指摘した。
  10月のCPI統計はコア指数が前年同月比で2008年以来の高水準付近になるとの予想だ。マティアス氏は統計の数字が堅調なら5年間のBEIが1.7%と、5月以来の水準に上昇すると予測している。
原題:
Vanguard Braces for Test of Bond Market’s Budding Inflation Bet(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-11/Q0RYZVT0G1KY01?srnd=cojp-v2

 


主流派経済学者の間で進む財政赤字の再解釈
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永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
2019/11/10 08:58
資金循環 ゆがみ拡大 借金、政府に偏在 日米欧企業カネ余り: 日本経済新聞
家計がためたお金を企業が銀行から借り、工場などに投資をして経済を再拡大させる??。そんな循環に異変が広がっている。2000
r.nikkei.com
記事にある資金循環のゆがみが拡大する中で、海外の主流派経済学者の間で財政赤字に対する再解釈が進んでいます。

きっかけは、2013年から始まるサマーズの長期停滞論でしょう。

当時はリーマンショック4年超経過後も実質金利マイナスなのに、米国はGDP<潜在GDPで雇用者所得の回復が乏しい状況が続きました。

サマーズはこの背景に、先進国経済の過剰な設備・貯蓄・労働力を活用する投資機会不足や人口成長率鈍等による潜在成長率低下で均衡実質金利がマイナスに低下していることがあるとし、潜在力を下回る水準の成長や生産、雇用、金利が長期へ依存する恐れを指摘しました。

そして、長期停滞の処方箋として、金融政策は流動性の罠で効かないため、直接需要を引き上げることが最も有望であり、財政政策に伴うインフラ更新・補修や環境規制強化に伴う民間投資拡大や環境への好影響を期待しました。

また、元FRBのバーナンキ氏も2017年の日銀の講演で過剰貯蓄論を指摘し、これが当てはまるのが日本であり、大規模な財政政策を実施すべきとしています。

さらに、記事中にあるブランシャール氏とサマーズ氏は今年連名で出版した書籍の中で、マクロ経済政策は、事前においても事後においてもより積極的になるとともに、金融、財政、金融規制政策のバランスを再調整する必要があるとしています。

具体的には、低い中立金利は金融政策の対象範囲を狭める一方で、財政政策の対象範囲を広げるとし、このバランスの再調整を経済学の進化とするとしています。

そして、仮に中立金利がさらに低くなったり、金融規制が危機を防ぐには不十分であると明らかになった場合には、より大きな財政赤字、金融政策目標の修正、もしくは金融制度に対するより厳しい規制といったさらに劇的な措置が必要となる可能性があるとしています。

こうした資金循環のゆがみが、財政赤字の再解釈といった形で経済学に革命をもたらすかもしれないでしょう。

#経済学
#財政赤字
#経済・金融

このクリエイターのおすすめノート
デカップリングする製造業と非製造業の景況感
12
永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)

悪い景気指標と良いGDPの乖離〜GDPは一時的要因でかさ上げ〜
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永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)

消費増税のマクロ的影響
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永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)

データの分析が導く「正解」は、どのような場面や分野で人間の判断よりも勝るか

永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。あしぎん総合研究所客員研究員、跡見学園女子大学マネジメント学部非常勤講師を兼務。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事。専門は経済統計、マクロ経済分析。
https://comemo.nikkei.com/n/n357c3b9df5c9


生産性は供給側だけで決まらない
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永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
2019/07/21 17:30
「最低」に張り付く賃金 打開のカギ、生産性向上に: 日本経済新聞
日本の賃金分布に異変が起きている。最低賃金の引き上げにつれ、その水準に近い時給の人たちが増えた。人手不足の日本で多くの人が
r.nikkei.com
結局、生産性って総生産(総需要)を労働投入量で割ったものですから、完全雇用下で生産性が低いのは供給側の要因が主因となります。

しかし、需要不足で中立金利がマイナスとなっている日本のような国では、需要側の要因も大きいと思われますから、デフレを長期間放置してきたマクロ政策が諸悪の根元でしょう。

いくら高性能の設備があっても、需要がなければ生産性ゼロですから、長期デフレを放置して、民間部門が過剰に貯蓄して需要がシュリンクしてしまっていることが、日本人の低生産性の主因でしょう。

特に日本では、デフレで過剰雇用が続いたため、IT投資が欧米に比べて遅れたことも大きいと思いますが、分子の付加価値にカウントされないおもてなしの存在も少しあると思います。

記事にある通り、生産性向上には労働市場の流動化が重要かと思いますが、未だに同じ会社で長く働くほど恩恵を受ける日本的雇用慣行が残ってますから、これを打破するには、解雇規制の緩和と、スウェーデンのように解雇はされやすいけど、解雇された従業員が本人の努力次第でキャリアアップし、より高い所得を得ていくのを助けられるような充実した再就職やスキルアップに対する政府の社会保障制度も必要でしょう。
https://comemo.nikkei.com/n/n079d5cbd864d


 

無名の空売り投資家が小規模バイオ株で大当たり−臨床試験失敗で急落
Tatiana Darie
2019年11月11日 8:49 JST
• アナプティスバイオのアトピー性皮膚炎薬、主要評価項目を達成せず
• 競合薬を販売するリジェネロンの株価は上昇−デルミラも一時33%高
ウォール街でほとんど無名の空売り投資家ジョセフ・ローラー氏が、小規模のバイオ医薬品会社アナプティスバイオの株価下落に賭け、大きな利益を手にした。8日の米株式市場で同社株は72%安で終了、過去最安値に沈んだ。アトピー性皮膚炎の新薬候補エトキマブの臨床試験が主要評価項目を達成しなかったことが手掛かり。
  一方、エトキマブと競合する薬を販売するリジェネロン・ファーマシューティカルズと、新薬が開発段階にあるデルミラの株価は大きく上昇した。
  ローラー氏はJFLキャピタル・マネジメントの創業者で、テキサス州レークウェイを拠点に2億5000万ドル(約270億円)の資金運用を手掛ける。同氏はニューヨークで昨年開催された「ロビン・フッド」会議でアナプティスバイオの空売りについて説明していた。株価は当時71ドル前後だったが、この日の急落で約10ドルに落ち込んだ。

  アナプティスバイオは8日、中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者を対象とするエトキマブの第2b相試験「ATLAS」で主要評価項目を達成しなかったと発表した。
  ローラー氏は電子メールで「このプログラムが失敗する警告サインがあらゆるところに出ていた」と指摘、株価下落になお賭けていると説明した。
  アトピー性皮膚炎治療薬「デュピクセント」を販売するリジェネロンの株価は終値ベースで4.7%上昇。新薬候補レブリキズマブが第3相試験にあるデルミラは一時33%上げ、18%高で終了した。
原題:Short Seller Scores Big Win as Tiny Biotech Stock Sinks 72% (1)、AnaptysBio Etokimab Phase 2B Fails to Meet Primary Endpoint、Dermira, Regeneron Rise After AnaptysBio’s Rival Drug Fails(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-10/Q0RV5QT1UM0X01?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/610.html

[社会問題10] 「留学生を買った」日本の責任とは?外国人留学生の闇(5)

「留学生を買った」日本の責任とは?外国人留学生の闇(5)
2019/11/09

出井康博 (ジャーナリスト)


(bee32/gettyimages)
 法務省入管当局が、留学生の違法就労への監視を強めている。今年3月に東京福祉大学で起きた「消えた留学生」問題が影響してのことだ。留学ビザの更新時に「週28時間以内」を超える就労が見つかり、母国への帰国を余儀なくされる留学生も増えている。

 ブータン人留学生のダワ君も、7月に在留期限を迎えた留学ビザの更新が不許可となった。もはやブータンに帰国するしかないが、その前に在籍する上野法科ビジネス専門学校(千葉市)に対して要求があった。入学前に支払った初年度の学費65万円の一部を、返還してもらいたかったのだ。

 日本への留学時に背負った借金は、まだ60万円以上も残っている。しかも母国に戻っても仕事が見つかる当てはない。たとえ一部でも学費が戻ってくれば、借金返済の助けにはなる。

 ダワ君が学費の返還を求めた気持ちもわかる。学校には3カ月ほどしか在籍していないのである。しかし上野法科ビジネス専門学校は、学費の返還に応じようとはしなかった。入学前にダワ君が署名した「誓約書」を盾にしてのことだ。確かに「誓約書」には、こんな一文がある。

 「法律違反等により在留期間更新不許可になった場合、学費の返金は一切求めません。」

 誓約書は、ダワ君が在籍していた日本語学校に送られてきた。そして日本語学校の職員から十分な説明も受けず、ダワ君は言われるままに署名していた。

 たとえ説明があっても、彼は署名していたことだろう。借金返済のためには、進学先を確保したうえで、アルバイトを続ける必要があった。

 ただし、こうした一文の存在からして、上野法科ビジネス専門学校が留学生のビザ更新不許可を想定し、予防線を張っていたとも受け取れる。同校は東京福祉大と同様、多くの“偽装留学生”の進学先となっている疑いがある。

 上野法科ビジネス専門学校には「情報ビジネス学科」「日本語教師学科」「日本語学科」という3つの学科がある。ダワ君の在籍する「情報ビジネス学科」のクラスは、27人全員が留学生だった。同学科は全部で6クラスあるが、他のクラスにも日本人がいる様子はなかった。

 専門学校や大学の授業を理解するには、最低でも日本語能力試験「N2」レベルの語学力が必要だ。しかし、ダワ君によれば、クラスに「N2」合格者は1人もいない。クラスメイトの出身国は約半数がネパールで、他にもベトナムやウズベキスタンなど“偽装留学生”を数多く送り出している国が並ぶ。しかも1人のネパール人留学生は学校から失踪し、加えてベトナム人の女性留学生はビザが更新不許可となって帰国したという。

 上野法科ビジネス専門学校が設ける「日本語学科」は、日本語学校に相当するコースだ。こうして学校内に日本語学校を設置し、留学生を内部進学させるビジネスモデルは、専門学校や大学で広まりつつある。あの東京福祉大もそうだった。“偽装留学生”の急増でバブルに沸く日本語学校業界にあやかろうしているのだ。

留学生の割合5割ルールの撤廃
 もともと専門学校は、留学生を自由に受け入れられたわけではない。以前は留学生の割合を定員の5割以下とするよう規定があった。しかし、そのルールは「留学生30万人計画」が始まった2年後の2010年、文部科学省によって撤廃された。以降、日本人の学生不足に直面する学校では、留学生頼みが加速していく。

 『読売新聞』(2018年10月8日朝刊)によれば、在校生の9割以上が留学生という専門学校は全国で少なくとも72校、全員が留学生という学校も35校に上っている。こうした学校の大半は、“偽装留学生”の受け入れで経営を維持していると見て間違いない。

 しかも問題は専門学校に留まらない。私立大学の半数近くは定員割れの状態だ。学力や日本語能力を問わず留学生を受け入れ、経営維持を図ろうとする大学は全国各地に存在する。そして留学生の失踪や学費の返還請求といった問題を抱えているのも、東京福祉大や上野法科ビジネス専門学校に限ったことではない。

 ダワ君に関しては、上野法科ビジネス専門学校が入学前に彼の経済力を精査していれば、学費返還のトラブルも避けられた。だが、精査すれば留学生は集まらず、学校経営に支障が出る。そのため経済力など軽視して留学生の入学を認め、とりあえず1年分の学費を徴収した可能性がある。先に学費さえ取っておけば、留学生のビザが更新されず帰国となっても学校側に痛手はない。違法就労にしろ、留学生の責任として言い逃れできる。

 こうして弱い立場の留学生につけ込むやり方に、嫌悪感を覚えるのは筆者だけだろうか。上野法科ビジネス専門学校には、学費の返還問題や留学生の選考方法、受け入れ実態などについて回答を求めたが、一切の取材は拒否した。

 借金漬けの“偽装留学生”の受け入れは、日本語学校から専門学校、大学へと拡大していく一方だ。そんな現状にメスが入る日は来るのだろうか。

 東京福祉大での問題発覚を受け、法務省出入国在留管理庁などが対策を打ち出した。日本語学校に対しては、留学生の出席率やアルバイト時間をしっかり管理するように求め始めている。また、除籍や退学、所在不明者を多く出し続けた大学や専門学校には、留学生の受け入れを停止させる方針だ。しかし、すべては「対処療法」に過ぎない。

まさに「マッチポンプ」
 根本から問題を解決することは簡単だ。“偽装留学生”に対し、入管当局が入国時のビザ発給を拒めばよいのである。本来、留学ビザはアルバイトなしで日本での生活を送れる外国人に限って発給される。その原則に立ち返り、ビザ取得時に“偽装留学生”が提出する書類を精査する。親の年収や銀行預金残高の捏造など、入管行政のプロであれば見破ることは難しくない。

 ただし、それを実施すれば、留学生の受け入れは大幅に減るだろう。日本語学校の過半数は経営が行き詰まり、一部の専門学校や大学も経営面で大打撃を受ける。そんなことは政府が「留学生30万人計画」の旗を掲げる限り、起きはしない。だから入管庁も問題を十分に認識しながら、学校側に留学生の管理強化を求める程度しかできない。

 その陰で、留学生の違法就労への監視が厳しくなっている。入管当局は、留学生が「週28時間以内」のアルバイトでは日本で生活できないとわかって入国を認めてきた。そうして受け入れておきながら、実際に違法就労したからと母国へと追い返すというのは、まさに「マッチポンプ」に他ならない。

 そんなご都合主義が生んだ不幸の1つが、日本で食い物になったブータン人留学生たちの姿なのである。彼らはブータン政府が進める失業対策によって、「留学生」として日本へと売られた。詐欺同然の留学制度を進めた連中の罪は、やがてブータンで明らかになっていくだろう。一方で、彼らを買った日本側の責任が問われる日は来るのだろうか。

1回目『日本人が目を向けない「消えた留学生」の深層』
2回目『政府に売られた、「幸せの国」ブータンの若者たち』
3回目『日本語学校で横行する留学生「強制送還」の闇』
4回目『日本で地獄の日々を送った高学歴ブータン人青年』
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17758


↑対処療法などない

対処療法ではなく、根本的な解決法を考えよう。 
対症療法ではなく、根本的な解決法を考えよう。   
http://www.asahi.com/special/kotoba/quiz/SDI201505154410.html


外国人留学生の闇 政府に売られた、「幸せの国」ブータンの若者たち  日本人が目を向けない「消えた留学生」の深層
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/668.html

http://www.asyura2.com/18/social10/msg/257.html

[国際27] NATOは「脳死」状態、米国頼れず 仏大統領 マクロンの真意   NATOは「脳死」で米国も頼りにできない容赦ない世界
NATOは「脳死」状態、米国頼れず 仏大統領
2019.11.09 Sat posted at 16:06 JST

マクロン仏大統領(左)はNATO同盟国の防衛で米国を頼れないと発言/Photo Illustration/alberto mier/cnn
マクロン仏大統領(左)はNATO同盟国の防衛で米国を頼れないと発言/Photo Illustration/alberto mier/cnn

(CNN) フランスのマクロン大統領は9日までに、同国と米国などが加盟する北大西洋条約機構(NATO)の現状について同盟関係に対する米国の無関心が原因で「脳死」状態に陥っているとの認識を示した。

英経済誌「エコノミスト」との会見で表明した。欧州はもはやNATO同盟国の防衛で米国をあてには出来ないとも断じた。

米国へのこれらの厳しい見方はトランプ政権が先月、シリア北部からの部隊撤収を突じょ宣言し、欧州のNATO加盟国を困惑させたことなどが背景にある。

米軍部隊の撤退については仏政府への事前の連絡はなかったとみられる。米軍撤収で共闘していたシリアの少数民族クルド人の武装組織は見捨てられる形ともなっていた。マクロン大統領はクルド人支持を強調している。

同大統領は、同盟関係は最後の手段の担い手がそのように行動する時にのみ機能すると主張。「我々はNATOが直面する現実を米国の公約の観点から再評価すべきだ」とも説いた。

さらに、「米国は我々に背を向けている兆候がある」とし、「トランプ大統領は欧州プロジェクトで我々の考えを共有していない」とも述べた。

一方、NATOのストルテンベルグ事務総長はマクロン氏の今回の発言に距離を置き、「欧州の団結は大西洋横断の団結にとって代わることは出来ない」と主張。ドイツのメルケル首相も「マクロン氏は自説を表現するため少々劇的な言葉を用いた」とし、「私のNATO内の協力態勢の見方とは一致しない」と反論した。


ベルギー軍戦闘機がフランスで墜落、パイロットが高圧線に宙づり09/20
フランス料理の巨匠、ジョエル・ロブションさんが死去08/07
マックに強盗、特殊部隊員11人が食事中と知らず フランス06/10
成功の秘訣は「柔道の教え」、フランスの著名料理人03/03
パリの観光客「国籍別」接客マニュアル 日本人は?06/23
https://www.cnn.co.jp/world/35145168.html

コラム2019年11月11日 / 13:30 / 6時間前更新
コラム:米の同盟離れに危機感、マクロン氏「脳死」発言の真意
Peter Apps
3 分で読む

[ロンドン 8日 ロイター] - トランプ氏が米大統領に就任した2017年以来、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議はしばしば収集のつかない外交イベントに終わっている。中でも今年12月にロンドンで開かれる首脳会議は、最も波乱に満ちたものとなるかもしれない。英国と米国で結果の予想がつかない選挙が控えているからだけではない。マクロン・フランス大統領がNATOの将来に疑問を投げ掛けたのだ。

マクロン氏は7日発行の英エコノミスト誌のインタビューで、米国が戦略に関与しないためNATOは「脳死」に陥ったとし、米軍のシリア撤収は、米政府が同盟国および世界への関心を失った兆候だとも指摘した。欧州諸国は「NATOの現実を再評価」すべきだとマクロン氏は言う。

発言の真意は、明快とはほど遠い。14年にロシアがクリミアを併合して以来、NATOは特に東欧において、演習や多国籍軍の動員を劇的に増やし、多くの意味で新たな活力を得た。

しかし、明白なのは、フランス、そして程度は劣るがドイツが、欧州の防衛計画をもっと自らの手中に収めたいと望んでいること、そして、その有効な手段が必ずしもNATOによる対応ではない、と考えていることだ。

これは英国や米国の大半の安全保障当局者、一部小国の懸念を誘うだろう。彼らはいくら米政府の関与が減っても、NATOを欧州防衛の基本的枠組みとして維持する方がずっと良いと考えているからだ。しかし、トランプやブレグジット(英国の欧州連合離脱)の時代にあって、これら諸国の発言力は低下しているのかもしれない。

<紛れもない事実>

紛れもない事実は、来年の米大統領選でだれが勝つにせよ、米共和・民主両党で米軍のプレゼンスの大幅な縮小を望む層が増えていること、そして、そうした層は同盟国への感情的・知的な愛着がずっと薄まっていることだ。彼ら、彼女らがNATO第5条の規定する集団防衛を尊重するかどうかは推し量りかねるため、欧州の最強諸国が自国に最も有利な組織の構築を検討するのも無理はない。

フランスとドイツは今年1月、軍事協力条約の最新版(アーヘン条約)に調印した。相互防衛を担保しているだけなく、さらなる軍事協力にも踏み込み、実質的な合同軍につながる内容だ。これに対してトランプ氏は怒りのツイートをしたが、それは独仏に米軍抜きのシンプルな組織の必要性をさらに確信させたようだ。

カレンバウアー・ドイツ国防相は7日にミュンヘンで、フランス、ドイツ、英国の3カ国が正式に「E3」グループを結成すべきだと述べた。E3は、3カ国がトランプ政権と意見が真っ向から対立する問題について、声明を発表したいときに用いてきた形態だ。

最初に活用されたのは03年の対イラン協議で、直近ではサウジアラビアの石油施設が9月にドローン攻撃され、イランによる攻撃が疑われた際に、E3として自制を呼び掛ける声明が出された。

英独仏の外交資源を結束するのは、理にかなっている。3カ国はいずれも単独の力は米国や中国に及ばないが、手を組めばはるかに強大な勢力となる。ただ、3カ国の間に将来、意見の大きな相違が生じることになるかもしれない。ポピュリズムが台頭し、22年のフランス大統領選で極右候補が勝つ可能性が、低いにせよ現実としてあるという時代情勢を踏まえれば、なおさらだ。

<共通認識>

EUやNATOのような多国籍で官僚的な組織を運営するより、E3諸国間で共通認識を形成する方が簡単な場合が多いのは明らかだ。しかし、そうなれば、EUとNATOに属し、意見を聞いてもらえる体制を評価している欧州の小国は、警戒するかもしれない。

NATOは相互防衛や、欧州と域外の紛争において、多国籍の軍隊を円滑に展開できるように設計され、運営されてきた。

最近のNATO加盟国・トルコによるシリア侵攻と、モスクワとの関係強化に見られる通り、こうした多国籍集団の枠組みを健全に保つのは容易ではない。

しかし、現実としてロシアによる東欧での領土獲得の動きに対処する上で、NATOは唯一の指揮統制機構だ。ロシアは中でもバルト諸国に狙いを定めているようだが、NATOはこの地域で防衛協力を行っている。

現代の戦争、特にロシアが関与する戦争がハイブリッド化し、予想不能になっていることを踏まえると、このことはとりわけ重要性を帯びる。米陸軍訓練教義コマンド・マッドシー・ネットワークが今月公表したシナリオでは、ロシア政府は人工知能(AI)を駆使した偽動画「ディープフェイク」を用い、バルト諸国のロシア語系住民の対立をあおり、兵器を使うことなく同盟を弱体化させて領土を支配する手法が指摘されている。

既存のNATO組織だけでこうした事態を防げるかは不明だが、マクロン氏が訴えているのは、同盟が既にかなり打撃を受けており、これに代わる枠組みが既に必要不可欠だ、ということのようだ。

12月のNATO首脳会議に臨むにあたり、こうした挑発的な姿勢が最善かどうかは疑問が残る。しかしながら、米国がNATOへの責任を放棄する可能性も見据え、NATOをきちんと機能させていく方法について、他の欧州諸国にも真剣に考えさせることは必要だ。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/column-nato-apps-idJPKBN1XL0C2

欧州の未来、マクロン大統領の警鐘 NATOは「脳死」で米国も頼りにできない容赦ない世界
2019.11.11(月)
The Economist
世界情勢?アメリカ?ヨーロッパ?政治?安全保障?経済
(英エコノミスト誌 2019年11月9日号)


フランスのエマニュエル・マクロン大統領(8月22日、写真:AP/アフロ)
ギャラリーページへ
欧州は「危機に瀕している」というフランス大統領の見立ては正しいのか。

 今日の欧州があるのは米国のおかげだ。米国は欧州の地で2度の世界大戦を戦った。

 米国の外交は今日の欧州連合(EU)の前身が誕生するのを助けた。米国の軍隊はソビエトの侵攻から西欧を守り、米国の政治家は東西ドイツの統一を差配した。

 今、フランスのエマニュエル・マクロン大統領はすべてのヨーロッパ人に対し、米国が欧州を見放しつつあると、熱のこもった警告を発している。

 欧州は「危機に瀕している」、目を覚まさなければ「自分たちの運命をコントロールできなくなるだろう」というのだ。

 マクロン氏はエリゼ宮の執務室で、本誌エコノミストの取材に終末観的な言葉づかいで応じた。

 大西洋をまたぐ同盟である北大西洋条約機構(NATO)は「脳死」に陥っている、欧州には独自の軍隊が必要だと語った。

 EUは自分のことをただの市場にすぎないと考えているが、本当は技術やデータ、気候変動などについて一致した政策を掲げる政治ブロックとして行動する必要があると述べた。

 欧州は米国を頼るわけにはいかない、代わりにフランスを頼るべきだと主張するフランス大統領は過去にもいた。マクロン氏はこの見解を単に焼き直しているわけではない。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58198
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/698.html

[国際27] また韓国人がいやがる!実は激しかった中国人の嫌韓 ビジネスでトラブル多発、“文化窃盗”に激怒する人も
また韓国人がいやがる!実は激しかった中国人の嫌韓
ビジネスでトラブル多発、“文化窃盗”に激怒する人も
2019.11.11(月)
花園 祐
中国 韓国・北朝鮮

写真はイメージ(出所:写真AC)
ギャラリーページへ
(花園 祐:在上海ジャーナリスト)

「また韓国人がいやがる」

 かつて筆者が中国の東北地方を旅行していた際、近くを歩く韓国人団体ツアー客を見た中国人ガイドが、憎々しげにこうつぶやきました。

 ここ数年、決して良好とは言えなかった日韓関係は、レーダー照射事件や徴用工問題などによってさらに悪化しました。韓国人に対して露骨な嫌悪感情を示す日本人も増えているようです。

 実は中国でも韓国人を露骨に嫌悪する人が少なくありません。中国で暮らしていると、もしかしたら日本人以上に韓国人のことを嫌っているのではないかと思う時すらあります。そこで今回は、中国人の韓国に対する感情について、筆者が実際に見聞きした内容を交えて紹介したいと思います。

中国人をも手玉に取る韓国人
 中国人はなぜ韓国人を嫌うのか? 冒頭のセリフをつぶやいた中国人ガイドにその場で尋ねてみたところ、「韓国人はよく中国人を騙すから」との答えが返ってきました。

 そのガイドによると、中国経済の拡大とともに中国と韓国の間の取引が増えていき、韓国に近い中国の東北地方に多くの韓国系企業が進出して来たそうです。ただ、現地の中国系企業が韓国系企業と取引すると、代金支払いの不履行をはじめ、韓国企業に騙されることが多かったといいます。

「夜逃げ」していなくなる
なんでも「韓国発」が許せない
 上記の中国人ガイドも、知り合いがそうした被害を受けたことから、韓国人に嫌悪感を持つようになったと話していました(この会話をすぐそばで聞いていた筆者の知人は、「日本人をよく騙す中国人を手玉に取るとは、韓国人ってすごいんだな」と妙な感心をしていました)。

「夜逃げ」していなくなる
 実際に中国内では、韓国系企業の進出が多い東北地方や山東省出身の人のほうが、他の地方の人よりも韓国人を嫌っているように感じられます。韓国人との接触が頻繁なため摩擦も多くなることが、その一因なのかもしれません。

 また、韓国系企業に騙されるパターンとして「夜逃げ」を挙げる中国人も少なくありません。

 よくあるのが、韓国人の経営者が大量の製品を受け取っておきながら債務を履行しない、または従業員に賃金を支払わないまま行方をくらますことです。中国では夜逃げが韓国系企業の典型的な不正手段として認知されています。

(もっとも、中国系企業でも、ある日突然経営幹部が行方をくらまし、海外逃亡する例が数多くみられますので、どっちもどっちと言えるかもしれません。)

 企業間の摩擦だけでなく個人間のトラブルから韓国人を嫌う中国人も見られます。飲み屋で働くある中国人女性によると、韓国人客は酒が入ると女性店員への態度が豹変し粗野になる人が多いそうです。また、支払いの際に、あれこれ理由をつけて決済を拒もうとする人も見られるそうで、飲み屋で韓国人は嫌われる傾向があると話していました。

 なお、この中国人女性によると、日本人客は「お触りが多いけど、お金をきちんと払ってくれるのでまだ許せる」とのことでした。

なんでも「韓国発」が許せない

 日本でもお馴染みの「韓国起源説」、つまりなんでも「韓国発」にしてしまうことも、中国人が韓国人を嫌う理由でしょう。

 中国発祥の文化であるにもかかわらず韓国が勝手に起源を主張しているモノ・コトとしてよく取り沙汰されるのは、「端午節」や「漢字」などです。

 韓国は2005年、自国内の「江陵端午祭」をユネスコ世界無形文化遺産に申請、登録しました。この韓国の動きに対し、中国では「文化窃盗」だとして大きな非難の声が沸き起こり、嫌韓感情を高めることになりました。

「漢字は韓国の発明である」とする韓国側の一部主張についても、中国では、呆れながら、その根拠のなさを指摘する声が数多く聞かれます。

 ある中国人ネットユーザーは、「韓国の首都ソウルの漢字表記は長らく『漢城』だったが、2005年に発音に合わせて『首尓』へと変更された。それで、どうして漢字は韓国起源だと主張できるのか」と指摘しています。この指摘には、筆者も妙に納得してしまいました。

 こうした文化面での衝突のほか、政治面での衝突も嫌韓感情を高めています。具体的には、2017年に起きた「THAAD」(地上配備型ミサイル迎撃システム)問題です。

 中国政府は韓国のTHAAD配備に反発して、韓国に対する公式ネガティブキャンペーンを展開しました。この効果は大きく、同年に行われた英BBCの世論調査では韓国を「嫌い」と答えた中国人の割合が、2位以下を大きく突き放して71%に達し、ぶっちぎりのトップとなりました。

日中韓の間の複雑な感情

日中韓の間の複雑な感情
 ただし、中国人が韓国のことを“全否定”しているかというと、もちろんそんなことはありません。

 たとえば韓国の化粧品は比較的安価で、かつ流行にも乗っていることから、中国人女性の心をとらえ、大量に消費されています。また韓流アイドルは中国でも人気があり、韓流ドラマや映画に熱中する人も少なくありません。こうした側面を見ると、現在の中国と韓国の関係は、かつての日中間の“政冷経熱”のような状態と言えるでしょう。

 また、筆者の周りには、韓国を激しく嫌悪する中国人が確かに数多くいますが、特別な感情を持たずに「ただの隣国」としか見ていない中国人も存在します。韓国人を嫌っている人の中でも、その程度には開きがあります。よって、一概に中国人全員が激しく嫌韓であると言うことはできません。

 それを踏まえた上で最後にみなさんに伝えておきたいのは、日本人と韓国人がお互いに複雑な感情を持っているように、中国人もまた韓国人に対して複雑な感情を持っているという事実です。総じて言うと、「日中韓の東アジア3カ国は互いに仲が良くない」ということです。

 互いに仲は良くありませんが、3カ国間の経済的な結びつきは、その地理的な要因もあって非常に強固なものとなっています。今後の3カ国の関係を築いていくうえで、中国人の韓国人に対する感情をある程度把握しておくことは決して無駄なことではないと思います。

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http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/699.html

[国際27] ボリビア大統領、親中戦略の頓挫で失脚 メキシコに亡命へ メキシコ外相「クーデターだ」 警官造反 辞任表明 不正選挙疑惑 
ボリビア大統領、親中戦略の頓挫で失脚
中南米
2019/11/11 16:41日本経済新聞 電子版
【サンタクルス(ボリビア中部)=外山尚之】南米ボリビアで10日、反米左派のモラレス大統領が辞任に追い込まれた。大統領選を巡る不正疑惑で軍から退陣を促されたのがきっかけだが、13年を超える長期政権下で進めた親中国の政策が行き詰まった結果ともいえる。アルゼンチンでは10月の大統領選で親中の左派が親米の現職に勝利しており、南米の政界を舞台にした米中の覇権争いは激しさを増している。

モラレス氏は2006…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52024440R11C19A1910M00/?


辞任表明のボリビア大統領、メキシコに亡命へ
2019/11/12 6:30
【メキシコシティ=丸山修一】メキシコ外務省は11日、辞任を表明した南米ボリビアのモラレス大統領のメキシコ亡命を認めると発表した。左派政権になったメキシコはモラレス氏への支持を表明しており、辞任表明後はすぐに亡命受け入れも伝えていた。同日の会見でもエブラルド外相が辞任は軍によるクーデターだと非難していた。

辞任を表明したボリビアのモラレス大統領=ロイター
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辞任を表明したボリビアのモラレス大統領=ロイター

会見したエブラルド氏によると、モラレス氏から電話で亡命の申請があり、人道的見地から移民関連を担当する内務省が許可を出した。すでに在ボリビアのメキシコ大使館に対してモラレス氏の安全を確保するように命じたという。現在、ボリビア国内にいるとみられるモラレス氏が、いつどのような形でメキシコ入りするのかなどは明らかにされていない。

エブラルド氏は「メキシコの伝統として政治的な迫害を受ける者への配慮をしている。平和的な解決を擁護する」と話した。すでに米州機構(OAS)にはモラレス氏の亡命受け入れを連絡したという。ただモラレス氏の受け入れはベネズエラやニカラグアなどの左派政権と対立する米国とのあつれきを生じさせる可能性もある。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52055130S9A111C1000000/

メキシコ外相「クーデターだ」 ボリビア大統領辞任で
北米 中南米
2019/11/12 5:48
ボリビアではモラレス大統領の辞任を巡り混乱が続いている(11日、ラパス)=ロイター
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ボリビアではモラレス大統領の辞任を巡り混乱が続いている(11日、ラパス)=ロイター

【メキシコシティ=丸山修一】南米ボリビアで反米左派のモラレス大統領が辞任したことを受けて、メキシコのエブラルド外相は11日朝の政府定例会見で「クーデター」だとして軍などの動きを非難した。エブラルド氏はメキシコ政府としてモラレス氏をボリビア唯一の合法的な大統領だと認識しているとして支持を表明した。

エブラルド氏は「軍が大統領に辞任を求めるのはボリビア憲法に違反する」とした。ボリビアに憲法や民主主義を守るように訴えるとともに、米州機構(OAS)に事態収拾のための臨時会合を開くように要請した。メキシコ政府はすでにモラレス氏に亡命受け入れを申し出ている。

モラレス氏の辞任に対してはキューバやベネズエラ、ニカラグアといった中南米の左派政権が同様にクーデターだと非難している。アルゼンチンでは12月に就任予定のフェルナンデス次期大統領も同様の姿勢を示している。

一方でトランプ米大統領は11日、「モラレス氏の辞任は、西半球における民主主義にとって重要だ」とする声明を発表した。声明では「(辞任に関連する)一連の出来事はベネズエラやニカラグアの非合法政権に、民主主義や国民の意志が必ず勝利するという強いメッセージを送ることになる」とし独裁状態を続けるベネズエラのマドゥロ大統領などをけん制した。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52055070S9A111C1000000/?


ボリビア大統領、警官造反で野党に対話呼びかけ
中南米
2019/11/10 9:59
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ボリビアのモラレス大統領(9日、西部エルアルト)=ロイター
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ボリビアのモラレス大統領(9日、西部エルアルト)=ロイター

【サンパウロ=外山尚之】ボリビアのモラレス大統領は9日、10月20日に実施された大統領選の結果を巡って対立していた野党陣営に対話を呼びかけた。複数の主要都市で警察官が造反し、軍も介入要請を拒否して中立の立場をとるなど、強権を維持できなくなっていた。主要野党は対話を拒否しており、混乱が続きそうだ。

モラレス氏は9日、「警察官や軍人がボリビア人の血で名声をおとしめることがないよう、野党との緊急対話を呼びかける」と演説した。

反米左派のモラレス氏は憲法の規定や国民投票の結果を無視して大統領選の出馬を強行。当選要件を満たしたと主張するが、開票過程で不自然な点があり、不正の疑いが指摘されていた。全国各地で反政府の抗議活動が活発化する中、これまで政府は野党や国際選挙監視団が求める決選投票の実施を拒否していた。

地元メディアによると、8日までに選挙後の抗議活動で少なくとも3人の死者が発生し、220人が拘束されたという。

モラレス氏の強硬姿勢の転換のきっかけとなったのが、警察官による造反だ。反政府の抗議活動が活発化する中、8日に第3の都市コチャバンバなど複数の都市で警官隊が政府の命令を無視し、市民の抗議活動に合流した。

警察官の造反が全国的に広がる中、モラレス氏は「クーデターだ」として軍に介入を要請したが、軍のカリマン大将が9日に「我々は国民と対立しない」と述べ、中立な立場をとると表明したことで、モラレス氏は打つ手を失った。

選挙戦で2位だった中道メサ元大統領は9日、「我々は交渉することはない」と述べ、モラレス氏の対話の申し出を拒否した。4位だったオルティス氏も同様の構えだという。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52008620Q9A111C1000000/?


ボリビア、モラレス大統領が辞任表明 不正選挙疑惑で
中南米
2019/11/11 6:31
モラレス大統領の辞任表明を聞き、不正選挙だと批判していた人たちは歓声を上げた(10日、ラパス)=ロイター
モラレス大統領の辞任表明を聞き、不正選挙だと批判していた人たちは歓声を上げた(10日、ラパス)=ロイター

【サンパウロ=外山尚之】南米の資源国、ボリビアの左派モラレス大統領は10日、辞任を表明した。4選を決めた10月20日の大統領選で不正を働いた疑いが持たれ、強権姿勢に反発する市民の抗議活動が全土で活発化していた。モラレス氏は選挙のやり直しを表明して収集を図ったが、軍も辞任を要求して追い詰められた。

モラレス氏は10日、ビデオメッセージで「辞職することを決めた」と述べた。これに先立ち、軍のカリマン大将が記者会見を開き、「大統領に対し、職務を辞するよう勧める」と述べ、退陣を促していた。

ボリビアでは10月の大統領選を巡り、不正選挙の可能性が指摘がされていた。モラレス氏が当選を主張する一方、国際選挙監視団を派遣する米州機構(OAS)や野党は決選投票の実施を求めていた。

モラレス氏の強権姿勢に対する市民の抗議デモが続く中、8日に第3の都市コチャバンバなど複数の街で警官隊が政府の命令を無視して市民側に合流した。このためモラレス氏は10日に大統領選のやり直しを発表したものの反発の声は収まらず、閣僚らが相次ぎ辞職を表明するなど混乱が続いていた。

ボリビアは天然ガスをはじめとする豊富な天然資源を持つほか、電気自動車(EV)の普及により需要拡大が見込まれているリチウムでも世界有数の埋蔵量がある。近年は中国やドイツなどの企業がリチウム開発への投資を表明している。

2006年に先住民として初めて大統領に就任したモラレス氏は一部のエリートが富を独占する従来のボリビアの社会構造を見直し、資源輸出で得た富を低所得者に分配する政策を推進した。天然ガスをはじめとした資源価格の上昇も手伝い、任期中に年5%の平均経済成長率を記録した一方で、憲法や国民投票の結果を無視する強権的な姿勢が批判を集めていた。

ボリビアのモラレス大統領に抗議する人たち(10日、ラパス)=ロイター
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52011430R11C19A1000000/
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/702.html

[経世済民133] チュート徳井問題と「中小企業不要論」を結ぶ点と線 「中小企業消えていい」 かつての暴論、今は正論?
チュート徳井問題と「中小企業不要論」を結ぶ点と線

山田 宏逸 他 3名
日経ビジネス記者
2019年11月11日
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全2684文字
 「世間の皆様に不信感を与えてしまい、誠に申し訳ございませんでした。あらためて納税に対する意識、仕事のこと、自分自身のこと、しっかりと見つめ直していきたいと思っております」

 10月下旬、人気お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実氏が設立した会社「チューリップ」が、東京国税局の税務調査を受けて2018年までの7年間、約1億2000万円に及ぶ税金を申告していなかった事実が発覚した。吉本興業やテレビ各局は、問題発覚直後こそ徳井氏をかばおうとするかのような対応を見せていたが、世論の反発を重く見てか、厳しい姿勢に転換。徳井氏はその後、芸能活動を自粛し、出演番組の差し替えなどが続いている。


税金の「申告漏れ」への世論の反発は大きく、徳井氏は芸能活動を自粛。出演番組の差し替えなども続く(写真:共同通信)
法人成りで節税は「伝統的手法」だが……
 徳井氏は、所属する吉本興業から支払われる「ギャラ」などをチューリップにいったん受け取らせ、同社から役員報酬の形で収入を得ていた。個人でなく法人で収入を受け取るのは、その方が様々な税制上のメリットがあるためで、それ自体は「極めて伝統的な手法」(国税庁OB)とされる。

 ただ徳井氏の場合、こうした「法人成り」(自営業者の法人化)による節税メリットを享受するという次元ではなく、09年の設立以来、期限内に税金の申告そのものをしていなかったという。

 報道によると、まずチューリップは09〜11年度、期限内に確定申告せず、税務署からの指摘で12年6月に3年分を申告し納付。12〜14年度も無申告を繰り返し、15年7月に申告するものの今度は納付をせず、16年5月ごろに銀行口座を差し押さえられた。

 さらに15年以降も同様に無申告だったため、遡って12年度からの7年分の申告漏れを指摘される事態になったという。重加算税などを含めた追徴税額は約3700万円に及ぶ(現在は納付済み)。

次ページ炎上の背景に“自営業者たたき”?
徳井氏は10月23日の謝罪会見で、「税理士から納税をするよう言われていたが先延ばしを続けていた。自分がどうしようもなくルーズだった」と悪意のなさを強調した。ところが、個人的な旅行や洋服代など2000万円を会社の経費として計上したが認められず、しかも「所得隠し」にあたると判断されたことが分かると、「本当にルーズなら、領収書を管理し経費計上しようなどとするだろうか(むしろ税金に詳しいのでは)……」といった声も上がった。こうした“疑惑”は当の芸能界からも噴出。結局、今年6月に発覚したお笑い芸人の「闇営業問題」と同様の騒ぎに発展してしまった。

 さて、この徳井騒動。「ある意味で闇営業問題にはなかった意外な広がり方を見せており、それがネット世界の中での一段の炎上につながっている」という見方がある。

炎上の背景に“自営業者たたき”?
 「徳井さんの件を機に、自営業者が節税のために法人を設立すること自体が悪いことのように言われ始めている」。“自営業者たたき”への飛び火を指摘するのは、千葉県を地盤に活動する渡邉朝生税理士だ。「徳井さんが税金を納めていなかったことは論外」と前置きしたうえで、「個人が会社を設立する目的は節税だけではなく、事業拡大や信用力向上など様々な目的がある」と強調する。

 「収入をいったん法人に受け取らせ、そのうえで給与を決めて個人に無税で還流する」「法人税率と所得税率の差を利用し税額を減らす」「生活費を法人の経費に振り替え、法人は赤字にする」……。様々な節税メリットが指摘されている法人成り。「だが現実には必ずしも節税になるわけではないし、芸能人のほか、サラリーマンでも会社を立ち上げている人はたくさんいる」と渡邉氏は話す。


(写真:PIXTA)
 ただそうは言っても、税金にまつわる会社員の自営業者に対する不平不満は、仮に徳井騒動の方が終息に向かっても、おさまらない可能性が高い。

 例えば20年1月には「サラリーマン増税」が待ち受ける。22歳以下の扶養親族がいない給与所得者のうち、850万円を超える年収がある200万人超が増税の対象になる見通し。負担増の金額は、年収900万円なら年1万5千円、950万円なら3万円、1千万円なら4万5千円といった具合だ。

 金額の重さへの感じ方は家庭ごとに異なるだろうが、17年度の配偶者控除の見直しに続く負担増。それに対し、自営業者や高齢者の税負担はさほど変わっていない。会社員の間で「国と与党は“取りやすい人”を標的に税金を取る」との声がくすぶるのも当然だ。

 もっとも、会社員の不満は、増税の標的にされ続けることだけではない。そもそもの税制の設計自体がおかしいという声はそれこそ、昭和の時代からある。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00080/110700001/?P=2&mds


 
「中小企業消えていい」 かつての暴論、今は正論?

津久井 悠太 他 3名
記者
2019年11月12日
2 78%
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全2592文字
 「日本は、2060年までに中小企業の数を現在の半分以下、160万社程度まで減らすべきである」

 そんな「中小企業淘汰論」を主張し、経済界で話題を呼んでいる人物がいる。300年以上の歴史を持つ老舗企業で、国宝や重要文化財の修復などを手掛ける小西美術工芸社(東京・港)の社長、デービッド・アトキンソン氏だ。


中小企業の経営を託されたアトキンソン氏は様々な改革を進め、会社を一気によみがえらせた(写真:的野 弘路)
 ゴールドマン・サックス証券(GS)のアナリストだった1990年代に、日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表。以来、日本経済を客観的立場から分析する論客として知られてきたアトキンソン氏が、小西美術工芸社の社長に就任したのは2011年のことだった。GSを退職した後、日本の伝統文化に関心を持ち京都に住んでいたところ、後継者を探していた同社の先代社長、小西美奈氏と偶然知り合ったのがきっかけだ。

 経営を任されたアトキンソン氏は、非正規雇用だった職人を正社員にするなど様々な改革を進め、在庫管理など社内の仕組みも次々に刷新した。利益率を大幅に向上させ、従業員約80人の中小企業を一気によみがえらせた。

中小企業経営を知りぬいた上での結論
 こうして中小企業経営に期せずして深く携わったアトキンソン氏が今年9月に出版した書籍が『国運の分岐点 中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか』(講談社+α新書)だ。だが、中小企業経営を知りぬいた上で書かれたであろうその本の中身は、それこそ中小企業経営者にとって衝撃的なものだった。「中小企業こそが日本経済の停滞の原因であり、再浮揚のためにはその淘汰が不可欠」。これがこの本の骨子だ。

 「中小企業を半減させるなど、とんでもない暴論」。そう憤る人は多いはずだ。日本の企業数のうち99.7%は中小企業が占め、国民の雇用の7割を担っている。アトキンソン氏が「宝」と評価する文化財同様、中小企業もまた「日本の宝」ではないか、という声もあるに違いない。

 そんな声について、アトキンソン氏は「感情論ではなく、論理とデータを用いて冷静に議論すべきだ」と話す。

次ページOECDも日本の中小企業政策に“疑念”の目
 日本の経済成長率が1%台にとどまり、デフレが続き景気が上向かないのはなぜか。それが議論の出発点だ。アトキンソン氏は停滞の原因を「人口の急減少」と「生産性(就業者1人あたりGDP)の低迷」に分解し、とりわけ後者が日本の最重要課題だと指摘する。その上で、国が賃金の引き上げを主導し、GDPのおよそ半分を占める個人消費を刺激することで生産性を向上できる、と訴えてきた。

 この浮揚策を実現する上で最大の壁になるのが中小企業、というのがアトキンソン氏の見解だ。

 一般的に、中小企業は大企業に比べると賃金が低く、賃上げも難しい。かといって業務効率を高めようにも、小規模な組織ではIT活用や柔軟な働き方に割ける資金的な余裕にも乏しい。生産性の低い中小企業の退出を促し、本当に競争力のある企業に経済活動を集約して初めて、国全体の生産性は高まる。個人消費を増やすには毎年5%程度の最低賃金引き上げが望ましく、対応できない企業は統廃合されてよい――。


「最低賃金引き上げに対応できない企業は統廃合されてよい」というのが、アトキンソン氏の見解だ(写真:PIXTA)
 こうしたアトキンソン氏の主張は、国際統計にも裏打ちされている。例えば、OECD(経済協力開発機構)のデータによれば、従業員数20人未満のいわゆる零細企業に勤める人が働く人の全体に占める比率は、日本の製造業では18.9%(2016年)。米国(9.9%、15年)、スウェーデン(16.1%、17年)などと比べ高水準にある。そして、先進国では零細企業の比率が高いほど、国全体の生産性は低くなる傾向にある。

OECDも日本の中小企業政策に“疑念”の目
 「高水準の公的支援は資源配分をゆがめ、『本来生き残れないはずの企業(non-viable enterprises)』を市場に残すことで、改革を遅らせる」。これは、前述のOECDが2年に一度出す「対日経済審査報告書」の文言であり、17年版にも19年版にも使われたもはや決まり文句である。注目すべきはやはり「日本の中小企業政策」に向けられている点だ。

 日本には中小企業向けの「手厚い支援」があり、「生き残れないはずの企業を延命している環境」が残り、それこそが日本の成長力や競争力の足かせになっている。これは何もアトキンソン氏だけでなく、国際機関の見方でもあるのだ。

 「そもそも大企業が少なく中小企業が多い状況は規模の経済という大原則に反している」。こう強調するアトキンソン氏によれば、日本で中小企業が激増した背景には、1963年に成立した中小企業基本法があるという。


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D・アトキンソン氏「賃金を上げられない企業は退場を」


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コメント2件
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遊記

経営者 兼 技術者

 今、IT分野で一番問題になっているのが多重下請け構造である。
これによって、本来不要な中抜き企業が大量に発生し大変に効率が悪いものと化している。
 それに加えてIT技術者の派遣社員を認めてしまったため、間にある技術者が何ら技術ではない単なる技術者派遣会社となってしまい、何ら技術的蓄積がない。

 この出来事を見ただけでも、中小零細の統合にいみがあることを認めることができるだろう。
2019/11/12 06:28:52返信いいね!


holmes

庶民が歪んだ格差を感じるのは、中小企業が多いからではない。最初から大企業だった会社は国営の他にはない。経営を規模で語ることに興味を感じない。むしろ解体すべき不要な大企業があるのではないか。会社の規模による不要論は不要だ。

2019/11/12 07:06:06
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00080/110700002/?P=2&mds

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/613.html

[経世済民133] 安倍首相のレガシー、「デフレ下で消費増税」となる日 景気ウオッチャー現状DI大幅低下、増税や台風影響―3カ月ぶり悪化 英経済、2期ぶりプラス成長 企業投資鈍い 韓国大手企業の業績が「総崩れ」、文政権に経済回復はもはや不可能か 米国民の上位1%、超富裕層の富が中流階級の合計資産上回る寸前 
為替フォーラム2019年11月11日 / 15:25 / 3時間前更新
安倍首相のレガシー、「デフレ下で消費増税」となる日


嶋津洋樹 MCP チーフストラテジスト
4 分で読む

[東京 11日] - ロイターの報道によると、安倍首相は8日の閣議で財政措置を伴う経済対策を取りまとめるように指示をしたという。規模や対策が取りまとめられる時期については「関係省庁の提案で決まってくる」(西村経済再生相)とされたが、日本経済新聞(電子版)は同日、「各省庁が12月上旬までに具体策を詰める」としたうえで、「与党内には国の財政支出は5兆円程度になるとの見方がある」と報じた。

筆者は従来から世界景気の持ち直しシナリオに懐疑的で、それを前提とした国内景気の先行きに対する楽観的な見方は、数回にわたる下方修正を持ち出すまでもなく、根拠が乏しいと受け止めていた。それどころか、国内景気は「アベノミクス」を支えてきたマクロ経済政策の変質ですでに後退局面に陥っている可能性が高いと分析し、消費税率の引き上げは悲惨な結果を招くリスクがあると警告していた。

<駆け込みと反動、政策のわりに大きく>

今のところ、消費税率の引き上げに伴う駆け込みと反動は前回ほどではないとの見方が大勢。筆者も足元までの反動減については前回ほどではないと分析している。しかし、それが政府の万全を期した政策の結果かと問われれば、条件付きで効果は「あった」と答えるのがせいぜいだ。というのも、駆け込みとその反動は一部の日用品や、高額な耐久財を中心に前回並みで、お世辞にも「需要が平準化された」とは評価できないからだ。むしろ、「万全を期した」わりに大きな駆け込みとその反動があったというのがフェアな評価だろう。

実際、総務省が8日に発表した9月の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出(変動調整値)は名目で前年比+9.8%、実質で同+9.5%といずれも、比較可能な2001年1月以降で最大。「駆け込み需要が見られた主な品目等」として、家電や自動車などが紹介された。もっとも、ロイターは「9月は前年同月の消費支出が同1.5%減だった反動もかなり入っているといい、総務省は『駆け込み需要は前回増税時よりは若干弱めだった』との見方を示した」と報道。それでも「若干」と言わざるを得ないところに説明の苦しさが見え隠れする。

政府は今回の駆け込みと反動について、あくまで「全体として前回ほどではない」との立場を貫くつもりであろう。そうでなければ、野党や国民からの批判にさらされる。このことは、たとえ消費税率の引き上げそのものが、少なくとも当初は野党や国民が支持していたとしても変わらないだろう。しかし、足元の国内景気は明らかに変調を示している。たとえば、じぶん銀行日本複合PMI(速報値)は10月に49.1と、経済活動が縮小していることを示唆。とくにサービス業は49.7と2016年9月以来の50割れを記録した。

<景気変調、雇用に波及へ>

深刻なのは、こうした国内景気の変調が雇用にも及び始めるリスクが高まったことだろう。実際、新規求人数は景気の変動に先行することで知られるが、9月は季調値で92万8972人と、2016年11月(92万400人)以来の水準まで低下。それまでの2年間はやや勢いを失いつつもほぼ95万人〜100万人のレンジを維持していたが、ついに底割れした。もちろん、新規求人数の水準そのものは依然として高く、今回のトレンドの変化がそのまま企業の人員削減の増加などにつながるわけではない。

しかし、新たに職を探し始めてもなかなか条件のあう仕事が見つからなかったり、希望の仕事に就くまでの時間がかかったりする事例は増加するだろう。すでに景気ウォッチャー調査には、そうしたコメントが散見される。こうした労働需給の緩和はいずれ、パートタイム労働者の時給の伸びの抑制につながる可能性が高い。時期が時期だけに、春闘を通じて、来年の賃金に影響を及ぼすリスクもある。それは個人消費を直撃し、国内景気に一段の下押し圧力を加える。

労働需給の緩和は人手不足に悩む企業にとっては朗報だ。しかし、個人消費が減速すれば、企業は採用を絞るだろう。「失われた20年」の記憶が残る日本企業が次の景気回復を意識して、積極的な採用を続けるとは考えにくい。もちろん、人手不足に対応した設備投資も打ち切られるだろう。国内景気の変調が雇用にも及んだことで、事態が一気に悪化するリスクも無視できなくなってきたと筆者は考えている。

<政策対応の遅れ、効果を抑制>

内閣府の景気動向指数(CI一致指数)が昨年後半以降、低下トレンドにあること、その結果として8月の基調判断が4カ月ぶりに「悪化」へ下方修正され、9月も変わらなかったことを踏まえると、国内景気はすでに後退局面にある可能性が高い。CI先行指数に下げ止まりの兆しが見えないことを踏まえると、なおさらそうだろう。重要なのは、景気はいったん一つの方向に進みだすと、その範囲を広げながら、転換点まで一気に向かう傾向があるということだ。

つまり、日本では雇用と設備は景気に遅行する傾向が強く、雇用が良いとか、設備投資が強いというのは景気の先行きを判断するうえでそれほど重要ではない。それどころか、景気減速が明らかな場面での雇用や設備投資への注目は、事態の深刻さをわかりにくくし、金融政策や財政政策などでの対応を遅らせかねない。しかも、いずれも実体経済へ波及するまでには時間がかかる。雇用や設備投資の悪化を目にしてからのマクロ経済政策は「時すでに遅し」で、規模が大きいわりに十分な効果を得られないリスクがある。

<安倍政権、雇用悪化なら窮地に>

「アベノミクス」の成功を掲げる安倍政権にとって、経済運営は絶対に失敗できない分野だと筆者は考えている。とくに雇用はその中核を占める。仮に雇用の悪化が表面化する場合、安倍政権は多くの国民からの支持を失い、窮地に陥る恐れすらあるだろう。それが万が一にも政権の崩壊につながれば、安倍首相のレガシーはデフレ下で消費税率の引き上げを2回も断行したということになりかねない。それはデフレ脱却を掲げて誕生した安倍政権にとって、あまりにも不本意な終わり方だろう。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

嶋津洋樹氏
*嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントなどを経て2016年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネージャーとしての経験を活かし、経済、金融市場、政治の分析に携わる。景気循環学会監事。共著に「アベノミクスの真価」。
https://jp.reuters.com/article/column-shimazu-idJPKBN1XL0JL


 
米国民の上位1%、超富裕層の富が中流階級の合計資産上回る寸前
Alexandre Tanzi、Michael Sasso
2019年11月11日 15:43 JST
• 過去10年間の株式保有が恩恵−相場上昇で資産がさらに膨らむ
• 1%の超富裕層の資産は35.4兆ドル、中流層は36.9兆ドル−4〜6月
米国の歴史的な景気拡大は上位1%の超富裕層の富を膨らませ、彼らの資産はミドル層とアッパーミドル層の人々の合計資産額を上回ろうとしている。
Wealth Floats
U.S. household wealth become more concentrated among the top tenth

Source: Federal Reserve
  米国の上位1%の家計は過去10年間に株式相場上昇から大きな恩恵を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)のデータによると、現在では米国の公開企業と民間企業の株式の半分以上をこの層が保有している。 この株式保有のおかげで、米国民の中で超富裕層が握る富の部分は増え続けている。
  1%の超富裕層が持つ資産は4−6月(第2四半期)に約35兆4000億ドル(約3860兆円)となり、米国民の50パーセンタイルから90パーセンタイルを構成するミドルおよびアッパーミドル層の合計36兆9000億ドルに迫っている。
米国民、上位1%の金持ちに入るには少なくとも5600万円の年収必要
  富裕層向け投資サービスのレイクビュー・キャピタル・パートナーズのチーフマーケットストラテジスト、スティーブン・コラビト氏は、低金利を背景に富裕層が株式に投資せざるを得なかった状況が株式相場全体を支え、これによってさらに豊かになった富裕層がヘッジファンドやプライベートエクイティ(PE、未公開株)に投資できるようになったと説明。「金持ちになればなるほど、さらに資産を増やす機会が増える」と語った。

Bloomberg TicToc
✔@tictoc

It's a different life for the 1%.

America's wealthiest citizens now hold almost as much wealth as the upper and middle class COMBINED

46
4:16 - 2019年11月10日
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39人がこの話題について話しています

  上位1%の家計資産は2019年第2四半期に6500億ドル増えたが、50パーセンタイルから90パーセンタイルの米国民の資産増加は2100億ドルにとどまった。上位1%がミドルおよびアッパーミドル層を上回るのは遠くなさそうだ。
  ちなみに、90−99パーセンタイルの米国民は「超富裕層」ではなく普通の富裕層だが、合計資産はこのグループが最も多く42兆6000億ドル。
Assets -- 2Q 2019
Top 1% of household assets approach that of the 50-90% group

Source: Federal Reserve
Assets -- 3Q 2006
Upper middle class households held more assets than other cohorts

Source: Federal Reserve
Aged and Wealthy
American's 55 and older hold 3 times the wealth of latter generations

Source: Federal Reserve
Note: Silent and Earlier=born before 1946, Baby Boomer=born 1946-1964, Gen X=born 1965-1980, and Millennial=born 1981-1996
原題:
One-Percenters Close to Surpassing Wealth of U.S. Middle Class(抜粋)

景気ウオッチャー現状DI大幅低下、増税や台風影響―3カ月ぶり悪化
占部絵美
2019年11月11日 15:38 JST
• 前回増税時の2014年4月(15.7ポイント低下)以来の低下幅
• 台風の影響もあり単純に前回増税時との比較難しい―第一生命経済研
内閣府が11日発表した10月の景気ウオッチャー調査によると、景気の現状判断DI(季節調整値)は3カ月ぶりに悪化し、前月比10ポイント低下の36.7となった。10月の消費税率の引き上げや台風の影響が響き、前回増税時の2014年4月(15.7ポイント低下)以来の低下幅となった。
      

  現状判断DIを構成する家計動向、企業動向、雇用の3要素すべてが低下した。最も低下幅の大きいのは家計動向の前月比12.7ポイント低下で、このうち小売り関係が同18.2ポイント低下と大幅に下げた。一方、先行き判断DIは6.8ポイント上昇の43.7に改善した。
  第一生命経済研究所の小池理人副主任エコノミストは、「駆け込み需要の影響で家計部門が落ちた印象」と分析した上で、「今回は台風の影響もあり、単純に前回増税時と比較するのは難しい」と述べた。また先行きにはキャッシュレスポイント還元や軽減税率への期待も見られ、「過去の増税時に比較して施策の影響を受けて反動減の影響が緩和される可能性が高い」との見通しを示した。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-11/Q0SIOBDWLU7501?srnd=cojp-v2


 
韓国大手企業の業績が「総崩れ」、文政権に経済回復はもはや不可能か
真壁昭夫:法政大学大学院教授

国際・中国 今週のキーワード 真壁昭夫
2019.11.12 5:25


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韓国の大手企業の業績が悪化している
Photo:PIXTA
韓国企業の業績悪化が
一段と顕著になっている
 最近、韓国企業の業績悪化が一段と顕著になっている。有力アナリストの予想によると、2019年、韓国総合株価指数(KOSPI)に採用されている企業の本業からの収益は前年から30%程度減少する見込みだ。日米などの主要国と比較しても、韓国企業の業績悪化は際立っている。

 今のところ、世界的な低金利や米中貿易摩擦の“休戦協定”への期待から、韓国の株式市場はそれなりの安定感を維持しているものの、韓国企業の稼ぐ実力は想定以上に低下していると考えられる。そうした状況を考えると、韓国経済の先行きはかなり心配だ。

 韓国経済の屋台骨ともいえる半導体分野を中心に、韓国の大手企業の業績は大きく落ち込んでいる。企業業績の悪化は経済成長の鈍化につながる。韓国経済の成長に欠かせない輸出は減少トレンドにある。それに加えて、家計債務は増加し内需は盛り上がりづらい。

 韓国経済が安定するには政権の経済運営が重要なのだが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の経済政策には多くの専門家が疑問符をつけている。今後、さらに経済成長率が鈍化するようだと、徐々に国民に不満がたまり、韓国社会に閉塞感が強まる可能性もあるだろう。

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韓国大手企業の業績は「総崩れ」
韓国大手企業の業績は
「総崩れ」というべき状態
 足元、韓国大手企業の業績は「総崩れ」というべき状態にみえる。韓国経済を支えてきた半導体業界では、大手企業の業績が大きく落ち込んだ。7〜9月期、サムスン電子に次ぐDRAM世界大手のSKハイニックスでは、営業利益が前年同期に比べて93%も減少した。

 2016年から2017年にかけて、世界的にデータセンターへの設備投資などが増えた。それが、メモリ需要を押し上げ、DRAM価格も上昇した。その中で、SKハイニックスは先行きを過度に楽観して設備投資を増強し、在庫を積み上げすぎた。2018年以降、世界的に半導体市況は悪化し、SKハイニックスの業績はジェットコースターが急降下するような勢いで悪化した。液晶分野では世界大手のLGディスプレーも営業赤字に陥った。

 韓国がシェアを高めてきた造船分野でも、業績悪化が深刻だ。中国経済が成長の限界を迎え、世界的に資源輸送などのための海運需要は落ち込んでいる。それにもかかわらず、現代重工業は経営不振に陥ってきた大宇造船海洋を買収した。背景には、政府主導で経営統合が進む中国造船業界への対抗意識や危機感などがあったとみられる。

 収益力が低下している現代重工業が、大宇造船海洋の買収費用を負担したことはかなりの重荷になったはずだ。中国経済がさらに減速すれば、海運市況は一段と冷え込むことは予想できたことだ。韓国造船業界では“ゾンビ企業”が増える恐れすらある。

 また、韓国造船業界では労働組合が賃上げを求めている。これは、造船企業の経営を下押しする。自動車業界でも、労組が毎年のように賃上げを求め、研究開発が思うように進んでいない。労組が経営の自由度を制約し、韓国自動車業界がEV化や自動運転技術の研究・開発において主要国の後塵を拝していると考える経済の専門家もいる。

 韓国企業がどのように事業体制を立て直すことができるか、先行きは楽観できない。

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構造問題を露呈する韓国経済
構造問題を露呈する
韓国経済
 韓国経済は構造上の問題を露呈している。輸出依存度の高さ、厚みを欠く内需、人口の減少など解決すべき問題点は多い。

 今年10月まで、韓国の輸出は11ヵ月連続で前年実績を下回った。半導体輸出は前年同月比で3割程度減少した。石油化学製品の輸出も大きく落ち込んでいる。韓国の輸出がすぐに回復基調をたどる構図が描きにくい。

 そうした状況をみると、韓国経済は新しいモノを独自に生み出す基盤が十分に整っていなかったといえるかもしれない。一方、中国は、液晶や半導体など、これまで韓国から輸入してきたモノを国内で作る体制を急速に整えている。スマートフォン市場ではファーウェイやシャオミがシェアを獲得し、人工知能などの先端分野でも中国企業の台頭が顕著だ。

 また、韓国の内需は厚みを欠いている。日・米経済は個人消費に支えられ、景気はそれなりの安定感を保っている。一方、個人消費がGDP(国内総生産)の40%台にとどまる韓国経済は、輸出落ち込みによる景気減速のマグニチュードを吸収することが難しい。

 韓国では家計債務も積み上がっている。OECDのデータによると2017年、韓国家計の債務は可処分所得対比186%だった。景気の減速とともに、債務コストは家計にのしかかる。韓国家計の資金繰りは悪化し、個人消費が減少する展開は排除できない。

 韓国は人口の減少などにも対応しなければならない。2018年の出生率は0.98にまで落ち込んだ。それに加え、韓国統計庁は2020年から人口が減少に転じ、2065年には65歳以上の人口割合がわが国を上回るとの予測を公表している。

 少子化、高齢化、人口の減少は、経済を縮小均衡に向かわせる。労組が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)し自由な経営環境を確保することが難しい中、韓国の企業は、より高い成長が見込め、労働コストも低い海外に出ていかざるを得ない。それは韓国経済の潜在成長率を低下させる一因だ。

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主要国に秋波送る文大統領
主要国に秋波送る
文大統領
 文大統領は経済環境の悪化を食い止めるため、主要国との関係改善に動き始めたようだ。秋口から文氏は対日批判を弱め、日本との関係を修復しようとしている。文氏は市民団体などに自らの取り組みをアピールすると同時に、韓国企業が日本と取引を行いやすい環境を整えたいのだろう。

 また、韓国は安全保障を中心に、距離感が広がりつつあった米国との関係修復にも動き始めている。これまで、経済環境が大きく悪化すると、韓国はドルを調達することが難しい状況に陥った。

 すでに、洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政相は、自国経済の現状がリーマンショック時に匹敵するほど厳しさを増しているとの認識を示している。文政権は米国との関係をつなぎ、安全保障への不安解消に加え、今後のドル資金の安定調達を考えているのだろう。

 さらに、文政権は低金利環境を維持することで家計の負担および不満をやわらげ、財政出動を進めて景気を支えようとしている。すでに、韓国銀行(中央銀行)の政策金利水準は1.25%と歴史的に低い。これから、韓国は財政支出の積み増しによって景気浮揚を目指すだろう。実際に政府の支出が増えれば、経済成長は一時的に高まる可能性はある。

 ただ、国際社会との関係修復や財政支出が、韓国経済の持続的かつ、自律的な持ち直しにつながると判断するのは早計だろう。

 すでに、文政権は経済の実力を無視して大幅な賃上げを行い、企業の経営を悪化させてしまった。韓国では、半導体に代わる成長分野も育っていない。主要国との関係改善や財政出動の効果がどの程度の成果につながるかは不透明だ。

 本来であれば、文大統領は景気が落ち着いている間に、規制緩和などを進め成長が見込める分野に経営資源が再配分されやすい環境を整備すべきだった。

 しかし、労組などの支持を得てきた左派政治家の文大統領にとって、改革実行のハードルはあまりに高い。先行き懸念が高まる状況が続くと、世論は文政権への批判を強めることが想定される。国民の政治に対する不満が蓄積する可能性が次第に高まっているように見える。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
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7〜9月期の英経済、2期ぶりプラス成長 企業投資鈍い
英EU離脱 ヨーロッパ2019/11/11 21:08
【ロンドン=篠崎健太】英政府統計局が11日発表した7〜9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、季節調整済みの前四半期比で0.3%増だった。プラス成長は1〜3月期以来、2四半期ぶり。賃金が伸び個人消費は堅調だった。一方、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる不透明感から企業投資はなお鈍い。
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英経済には欧州連合(EU)離脱の不透明感がのしかかる(ロンドン中心部)=ロイター
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4〜6月期は前四半期比0.2%減と、2012年10〜12月期以来のマイナス成長だった。当初の離脱期限だった3月末にかけて企業が在庫を積み増した反動で生産が減速した。7〜9月期は自動車生産が持ち直した。
英調査会社IHSマークイットが11日公表した英企業の事業活動見通し調査によると、今後1年間の先行きを示す指数は過去10年間で最低に近い水準にとどまった。「(米中などの)貿易摩擦や英政治の動揺が脅威になっている」(IHSマークイットのティム・ムーア氏)。10〜12月期の実質成長率が再び鈍化するとみるエコノミストは多い。
7〜9月期のGDPの内訳は支出面で、6割強を占める家計最終消費が前四半期比0.4%増と、4〜6月期と同水準を維持した。賃金の上昇が後押しした。6〜8月期の賞与などを除く平均賃金は前年同期比3.8%増えた。労働需給が引き締まり、賃金は物価上昇分を差し引いた実質でも2%程度の伸びが続く。
一方、企業投資は微減だった。4〜6月期の0.4%減からマイナス幅を縮めたが2期連続で落ち込んだ。EU離脱の不透明感が拭えないなか、製造業を中心に投資の手控えムードが色濃い。
生産面では、GDP全体の1割強を占める製造業の7〜9月期は前四半期比で横ばい。4〜6月期の同1.8%減から回復したが、自動車を除けば総じて鈍かった。GDPの8割を占めるサービス業(0.4%増)頼みの構図が強まっている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52045420R11C19A1910M00/

http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/614.html

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