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[不安と不健康18] 「死にたくなければ女医を選べ」日本人の論文が米で大反響 暴言・逆ギレ「モンスター医師」恐怖の事例集 フリー外科医は可能か
 
DOL特別レポート
2017年1月13日 井手ゆきえ [医学ライター]
「死にたくなければ女医を選べ」日本人の論文が米で大反響

「女性医師(内科医)が担当した入院患者は男性医師が担当するよりも死亡率が低い」――。米国医師会の学会誌で発表された日本人研究者(米国在住)の論文が、現地のワシントンポスト紙、ウォール・ストリート・ジャーナルなどの有力一般紙がこぞって取り上げるほどの騒ぎとなった。『死にたくなければ女医を選べ!』という報道まであったという。果たして、女性医師に診てもらった方が安全なのだろうか。日本でも当てはまることなのだろうか。その論文を書いたハーバード公衆衛生大学院の津川友介氏に取材してみた。(医学ライター 井手ゆきえ)

 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況(厚生労働省)によると、2014年12月31日現在の医師数は31万1205人で、このうち病院や診療所で働いている医師は29万6845人、男性医師が23万6350人、79.6%、女性医師が6万495人、20.4%だった。

 診療科別では圧倒的に内科医が多く、全体の2割6万1317人を占めた。内科の男女比は男性81.1%、女性が18.9%で、ほぼ全体像をなぞっている。

 さて、男女比に注目したのにはわけがある。

女性内科医が担当した入院患者は
男性が担当するより死亡率が低い

 昨年12月、米国医師会の学会誌のJAMA Internal Medicineに「女性内科医が担当した入院患者は、死亡率や再入院率が低い」という調査結果が掲載された。

 調査対象はメディケア(高齢者・障害者向けの公的保険)に加入している65歳以上の高齢者で、肺炎や心疾患、COPD(慢性閉塞性肺疾患)など日本でもおなじみの内科の病気で緊急入院した患者およそ130万人。

 対象患者の入院後の経過と担当医の性別との関連を解析するため、メディケアに登録されたデータから病状や診療に関するデータを入手し、入院日から30日以内の死亡率(30日死亡率)と退院後の30日以内に再び入院する確率(30日再入院率)を女性医師と男性医師とで比較した。

 この際、患者の重症度や年齢、入院の原因以外に持っている病気など患者の特性と、医師の特性(年齢、出身医学部など)、入院している施設をそろえるなど、結果に影響を与えそうな条件を補正したうえで比較を行っている。

 条件を補正した後の30日死亡率をみると、女性医師の担当患者は11.1%、男性医師は11.5%、再入院率はそれぞれ15.0%と15.6%で、女性医師が担当した患者のほうが死亡率、再入院率ともに「統計学的に有意」に低いことが判明したのだ。

「どうせ、女性医師のほうが軽症患者を診ているんだろう?」という疑いの声が聞こえてきそうだが、同調査はこうした批判を事前に想定し、米国特有の職種である「ホスピタリスト」のデータも分析している。

 ホスピタリストとは、入院患者の診療しか行わない病棟勤務の内科医のこと。勤務時間内に入院した患者を順番に担当するので、軽症患者を意識的に選ぶことはできないし、逆に「この先生がいい」と患者が医師を指定することも不可能だ。どの医者が誰を担当するかは「くじびき」のようなもので、必然的に各ホスピタリストが担当する患者の重症度は同じレベルにそろうと考えていい。

 この結果、対象をホスピタリストに限定した場合でも女性医師が担当した患者の30日死亡率は10.8%、男性医師では11.2%、再入院率は女性医師14.6%、男性医師15.1%とこちらも「統計学的に有意に」女性医師のほうが低かったのである。

 実はこの「統計学的に有意に」がミソ。つまり、偶然や計算上の誤差では説明がつかない「明らかな理由」で、女性医師に担当してもらったほうが命拾いする確率が高い、ということが示されたのだ。

 研究者の一人が「この死亡率の差が真実であれば、仮に男性医師が女性医師なみの医療を提供すれば、メディケアの対象者だけでも年間3万2000人の命を救える」とコメントしたこともあり、日本と同じく「男性医師>女性医師」と見なす米国では、調査結果が公表されたとたん、ワシントンポスト紙、ウォール・ストリート・ジャーナルなど米国の一般紙がこぞって取り上げる騒ぎになった。

 いったい男女の違いの何が、明らかな有意差につながったのだろうか。

慎重にガイドラインを遵守する女性
リスクを取りガイドラインを逸脱する男性

 研究チームの一員であるハーバード公衆衛生大学院の津川友介氏は「一般紙では『男性医師は3万2000人を殺している』とか『死にたくなければ女医を選べ!』みたいな極端な扱いをされてしまってちょっと困っています」と苦笑しながら、「例えば、医学部で受けた教育プロセスが同じで勤務先や診療スタイルも同じ、しかも周囲の評判に差がなければ男性医師よりも女性医師のほうが質の高い医療を提供している可能性がある」という。

 津川氏の説明によると、一般に女性医師は、診療ガイドライン(GL)などルールの遵守率が高く、エビデンス(科学的根拠)に沿った診療を行うほか、患者とより良いコミュニケーションを取ることが知られている。また、女性医師は専門外のことを他の専門医によく相談するなど、可能な限りリスクを避ける傾向があるようだ。

「ここにあげた理由は先行研究で示されたことですが、今回の調査でも女性医師のほうが、より詳しい検査を行うなど慎重に診療を進めている可能性が示唆されています」

 ただ、米国でも医療界は「男社会」で、医学部卒業生の男女比は1:1なのに、実際に働いている女性医師はまだ全体の3割ほど。給与面にも格差があり女性医師の給与は男性医師よりも平均8%低い。質の高い医療を提供できる女性医師が実力を発揮できる場は、かなり狭いのだ。

「現実に死亡率を0.4%下げようとしたら、並大抵のことでは達成できません。女性医師はもっと評価されてしかるべきです。一般の方も『男性、経験豊か』が良い医師だというステレオタイプの思い込みは捨てたほうがいい」

 米国の調査結果を一律に日本に当てはめて良いかどうか議論の余地はあるが、ステレオタイプを見直したほうがいいのは日本でも同じ。

 ただ、現時点で主治医の性別に一喜一憂する必要はない。第一、日本の内科医の8割は男性なので、残念ながら女性医師に当たる確率は少ない。むしろ男女によらず、様々な研究で示唆された女性医師の長所──エビデンスに基づく診療を心がけ、決して独りよがりにならない柔軟性と謙虚さを持ち合わせているか、を見極めるほうが現実的だ。

医師個人の医療の質を評価
科学的根拠に基づく選択が可能に

 津川氏は医師個人を客観的に評価する目安になるエビデンスの創出を目指しており、今回の調査結果はその第一弾だ。今後は対象を他領域や外来患者にも拡げていくという。

「一般の方は病院を選ぶ際に、病院ランキング本や口コミを参考にしていると思いますが、評価の根拠は曖昧です。また、評判の良い病院で働いているからといって医師個人の医療の質が高いとは限りません。米国でも事情は同じです」


つがわ・ゆうすけ
ハーバード公衆衛生大学院(医療政策管理学)研究員。東北大学医学部卒業後、聖路加国際病院、世界銀行を経て現職。ハーバード公衆衛生大学院でMPH(公衆衛生学修士号)、ハーバード大学で医療政策学のPh.D.を取得。専門は医療政策学、医療経済学。ブログ「医療政策学×医療経済学」において医療政策におけるエビデンスを発信している。
 確かに、群馬大学附属病院の特定機能病院取り消し事例を目の当たりにすると、病院の機能評価=医師個人の医療の質ではないことは痛感する。

「同じ疾患を診ているにもかかわらず、医師の間で死亡率や再入院率にばらつきがあるなら、それは何故なのかを科学的に評価することで修正できるようになります。一般の人がエビデンスに基づいて医師を選択できる指標を提供する一方で、どの病院でどの医者にかかっても標準化された高い質の医療を受けられるというのが研究の最終的な目標ですね」。機会があれば、日本でも同様の研究を行いたいという。

 医療者にとって「個人の評価」はあまり歓迎できないかもしれない。しかし、エビデンスに基づく評価基準とビッグデータの活用で医師の「診療成績」を見える化できれば、医療者と患者・家族の間にある情報格差が生み出している医師への過度な期待や極端な不信もなくなるだろう。患者・家族が求めているのは“神の手”ではなく、標準化された質の良い医療を「いつでも、どこでも」提供してくれる医師なのだ。

DIAMOND,Inc. All Rights Reserved.

http://diamond.jp/articles/-/114029


 


2016年11月25日 池田園子
暴言・逆ギレ「モンスター医師」恐怖の診療事例集

誰にとっても無縁ではいられない「お医者様」。医者嫌いな人でなくても、なんとなく嫌な思いをしたことのある人も多いのでは。ぶっきらぼうだったり、やけに偉そうだったり……くらいであればまだマシかもしれない。20〜50代男女が「ひどい」「心ない」「関わりたくない」と困惑する、患者として絶対に対峙したくないモンスター医師の事例を集めた。(取材・文/池田園子、編集協力/プレスラボ)

絶対に診てもらいたくない
モンスター医師

 今季だと『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』に『メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断』など、医療ドラマは話題作になることが多い。人が生きていくにあたり医療は欠かせないものであり、そこで主人公となる医師もある意味で身近な存在ゆえ、気になってしまうのだろう。

 医師という選ばれし者しか就けない職業に対し、患者となる私たちは敬意を抱き、「先生」と呼ぶことも少なくない。確かに「神の手を持つ」と表現される医師、全国から患者が殺到する医師など、素晴らしい医師が数多く存在するのは確かだ。

 しかし、言葉は悪いが、医師といっても玉石混交であるのも事実。実際に悪どい医師もいれば、「ヤブ医者」と揶揄される医師もいる。難関試験にパスした人間が必ずしも、全員優れた人であるとは限らず、恐ろしい話だが"ダメな人"が混じっていることはある。皆さんはこれまでの人生で、どのような医師と出会い、診てもらってきただろうか。

 筆者は、これまでダイヤモンド・オンラインで、「モンスター◯◯」を度々取り上げ、実録として紹介してきた。今回は、通常の感覚では理解しかねるような「モンスター医師」のケースを20〜40代男女に聞いて集めてみた。こんなモンスター医師にあたったことはないだろうか。

患者の心を
平気で傷つける医師

 まずは、モンスター度・初級(「筆者が集めたエピソードの中では比較的軽度であり、初級と分類してみた」と補足しておく)の事例から見ていきたい。

「低用量ピルを飲み始めた2年前の話です。初めて処方されたピルを飲むと不正出血が起き、その症状を相談するために、ピルを処方してくれた婦人科を受診しました。自宅から近い小さな病院です。そこで高齢の男性院長から告げられたのは『不正出血の症状が出る人なんて珍しい。100人に1人くらいだよ。ほかの病気でもあるんじゃない?』という、勝手な決めつけであふれる言葉でした。

 専門家から『異常だ』的な発言をされたことに、苛立ちをおぼえました。私はピルについてすこし勉強していたので、不正出血の症状が出る人もそこそこいる、と知っていたんです。それに、そもそも初診で『ピルを飲むと不正出血の可能性はあります』とも言われませんでしたし。患者の心を平気で傷つける医師がいるんだな、と絶望したのを覚えています」(30代女性)

 薬には必ずベネフィットとリスクがある。リスクは言い換えると副作用。診察時にそれを説明しないのも不親切であるし、なにより言葉を選ばずに発言する姿勢は、医師としていかがなものだろうか。

「大学生の頃、風邪っぽいなと感じたので、近所の内科に行ったんです。風邪気味である、いつからどんな症状が出ている……と詳細を説明していると、ぼくを一瞥もせずに『それくらいで病院に来てたらきりないよ。寝てたら治るでしょ』と衝撃の一言が。

 しかも、その先生、すごく嫌そうな顔をしていて、『じゃ、次の方っ!』と、私のことをさっさと追い払おうとまでするんです。視線が合うことはただの一度もありませんでした。何様なんでしょうか……。

 2〜3年前に、当時住んでいた街へ行く機会があったんですが、病院はなくなっていて、別のテナントが入っていました。近くの書店の店長に聞くと、経営が立ちゆかなくて、撤退したとか。院長があの態度だとつぶれて当然ですね」(30代男性)

 医師は患者という客を相手にするという意味で、接客業的な要素も持っているといえる。しかし、患者の目も見ずに、邪険な扱いをする医師がいるとは、呆れるしかない。そんな上から目線なやり方が支持されるわけもなく、廃院したのは因果応報ともいえよう。

わざわざ検査したのに
検査結果を無視って何!?

 続いて、モンスター度・中級(筆者独自の判断)の事例を見ていこう。

「自宅の近所に、昔かかりつけにしていた内科がありました。そこでは息子が2ヵ月のうちに2回もインフルエンザだと診断されたんですよね。検査結果は陰性だったにもかかわらず担当医が『今の時期はインフルエンザが大流行しているから、陰性が出ちゃったけど、インフルエンザだね』と、真面目な顔で言うんです。

 本当のところは、普通の風邪だったんですが。結果を無視して診察するなんて、そもそも検査する意味、ありますか? と唖然とした気持ちになりましたね。ものすごく適当な医者もいるんだな、と悟ってからは、病院を替えましたね。また誤診されても困りますから」(40代女性)

 世の中にはヤブ医者や適当なことを言う医師もいる、ということを示す事例だろう。検査結果をスルーして、自分の"感覚"だけに従って判断するなど、専門家のすることではない。素人でもできることだ。医師ならではの知識や知見をもとに、医師らしいふるまいをしてほしいと、私たち患者は願うのだが……。

「以前、月経になると本当に体がつらくて、仕事中もしんどすぎて、会社で横になりたいほどでした。トイレでぐったりすることもありました。でも、なんとなく産婦人科に抵抗があり、ずっと行けずにいたんです。産婦人科=妊婦が行く、というイメージが強すぎて。

 ただ、そろそろ限界かも、なんとかならないか……と感じるようになりました。ネットでいろいろ調べた結果、妊娠していなくても気になることがあれば、気軽に産婦人科に行くべきだという記事を読んで、思いきって会社近くのウィメンズクリニックを受診したんです。

 診察はけっこう年配の女性院長でした。その方に『月経中は寝込みたくなったり、会社を休みたくなったりするほどつらいです。吐き気を感じることもあります』など、悩みを打ち明けたんですね。

 そうすると『おっしゃることはわかりますけど、月経は女性なら誰でも経験することですよね。皆、それなりにつらいこともあります。多少は我慢しないと。出産はもっと大変なんですから』と的はずれな回答をもらい、なんだこの人は!と怒りと悲しみを同時に感じたのを覚えています。

 優しさの欠片もない答えしかもらえなかったので、後日別のクリニックへ行きました。月経中のつらさを打ち明け、かつそのときに傷つけられた話もすると、『そんなひどい医師がいるなんて』と一緒に怒ってくれました。いろいろな医師がいるんだな……と勉強になりましたね」(20代女性)

 月経のつらさには女性によって個人差がある。それを「皆、それなりにつらい」「我慢するのがあたりまえで、皆もそうしている」と乱暴にまとめてしまうのは、はたして許されることだろうか。患者に寄り添う視線が皆無ではないか、と思えてならない。

「逆ギレ」する医師・歯科医師
「手術しても意味はない」と言う獣医師

 最後は、モンスター度・上級(筆者独自の判断)の事例を見て締めたい。

「3年ほど前に歯列矯正をしていたときのことです。歯の裏側に矯正装置をつける裏側矯正という治療で、月1度通院して、装置の調整をしてもらっていました。大きな口をあけて、先生がワイヤーやゴムを調整し終わるのを待っているんですが、あるとき舌と唇に違和感が。

 装置の調整を行う際に使っている治療器具で、舌と唇の一部が切れてしまったようでした。手を上げて『痛っ!』と叫ぶと、『もうちょっと口を大きくあけてくれないと困ります』とプチ逆ギレされたときは、戸惑いましたね。私、悪いことしましたか? と(笑)。

 そもそも矯正歯科には、頻繁に通わなければならないですし、矯正装置を調整してもらった後も、ワイヤーが舌にあたって痛みを感じたり違和感が出たり、すぐに再調整してもらう必要が生じることもあります。

 そのため、できるだけ自宅からすぐ行ける矯正歯科を……と選んだクリニックだったんですが、先生の腕が悪く、失敗でしたね。たぶん不器用なんだと思います。後から判明したことですが、患者からのクレームも少なくないクリニックだったようです」(30代女性)

 ほかにも「逆ギレする医師」の事例は取材するなかで耳にした。確かに医師も人間であり、ときにはミスをすることはあるだろう(それが死や大事故につながるミスだと困るが)。ただ、そこで患者からミスを指摘されたからといって、キレるべきではない。それは単なる八つ当たりでしかないからだ。

「昔、実家で飼っていた犬が体調不良になったときに、近場の動物病院に連れていったところ『このワンちゃん、もう死んじゃいますよ。手術しても意味はないと思いますが、どうされますか?』と、びっくりするようなことを言われたんです。そのとき、ぼくは小学校高学年くらいで、涙ボロボロですよ……。

 一緒にいた母親に『絶対に助かるよ。ほかの病院で診てもらいたい!』と号泣しながら訴えて、隣町の動物病院へ急行ところ、優しそうな医師から『手術をすれば治りますよ』と、まったく正反対のことを言われました。

 信じられない気持ちでしたね。今でこそ『ペットも家族』といわれますが、当時のぼくもそう思っていました。あんなひどい言い方、人間に対してはしないでしょう。あんな医師に獣医を名乗る資格はない、とぼくは今でも思っているほどです」(30代男性)

 獣医=動物が好きでその道を選んだのだろう、と想像できるが、なんとも心ない、暴言といっても過言ではない言葉を普通に吐く獣医がいるのだ。震災が起きたとき「ペットと一緒に避難したい」と涙ながらに訴える人もいるくらいである。家族の一員とみなされるペットに対し、簡単に「死ぬ」と宣言するのもおかしな話だ。

モンスター医師に
あたったら?

 くり返しになってしまうが残念ながら、すべての医師が人としても、医療従事者としても優れているわけではない。なかにはとんでもない医師もいるのだ。周囲の噂や口コミで正しく判断し、モンスター医師を避けて通るのが理想だが、そうはいかない場合もある。緊急時のように切羽詰まっているときには当然、そんな余裕はないだろう。

 もし、モンスター医師にあたってしまったらどうするか。方法は一つだ。それ以上深入りしないこと。つまりは、別の医師を探し、再診してもらうことだろう。モンスター医師とかかわっていると、誤診されたり、心身ともに傷つけられたりと、メリットになることは何ひとつ発生しないはずだから。

 医療現場では最悪の場合、命を落とすこともある。そんな真剣勝負ともいえる現場で、あえて危ない橋を渡る必要はない。不安や心配の念を増大させる医師に遭遇してしまったら、そこから早々に立ち去る勇気と決断力を持ってほしいと思う。
http://diamond.jp/articles/-/109206


 
 
ニュース3面鏡
2016年10月21日 真野俊樹 [多摩大学大学院教授、医師]

「ドクターX」フリー外科医は実在したら活躍できるか

テレビドラマ『ドクターX 〜外科医・大門未知子〜』の視聴率が好調なようだ。米倉涼子氏が演じる大門未知子というフリーランスの天才外科医が、既存の権威主義的な医療界で痛快に活躍する物語だ。現在の日本の医療界では、大門未知子のようなフリーランス外科医は活躍しているのだろうか、また今後、増えるのだろうか。(多摩大学大学院教授、医師 真野俊樹)

「ドクターX」は再び大人気
現実に日本で活躍できるのか?


大門未知子は実在しうるが「極めて特殊な例になる」といえそうだ
 シリーズ第4作となる、『ドクターX 〜外科医・大門未知子〜』の第1話が10月13日に放送され、平均視聴率20.4%(ビデオリサーチ調べ)をマークしたという。

「私、失敗しないので」「いたしません」などの名セリフで有名だが、果たしてドクターXは日本で活躍できるのであろうか?

「失敗しないこと」を担保するには、高度な技術がいるし、「断る」ことができるのには組織やチームに属していないことが条件(属していてもやめることが容易)になる。

 番組は、相変わらずの人気であるが、最近、大門未知子ばりのフリーランス医師という言葉を聞くようになった方も多いと思う。

医局の人事権崩壊で
フリーランス医師が増加

 フリーランス――。保守的な業界や医療界の場合、あまりいい響きではないのかもしれない。定職を持たない、常勤の勤務先がない、というイメージがあるからだ。しかし一方、高度専門職の場合には、フリーランスはマイナスばかりではない。自らの高度な技量を、市場原理に則った価格で販売し、対価を得る。さらに、会社の「社畜」にならず自由も獲得する。

 大門未知子のドラマに人気が出るのは、自由と金の両方を獲得している爽快さ、にあると思う。実際、高度専門職である医師にもフリーランス医師が増加してきた。

 山崎豊子の名作「白い巨塔」に描かれたように、医療界には大学病院の教授を頂点とするヒエラルキーのある組織、「医局」が存在した。教授は医師の人事権を握っていたために、医局の存在が極めて大きく、フリーランス医師は存在しにくかった。

 ところが、2004年4月に医師の研修制度が変更となり、研修先の病院は研修医が自ら選べるようになるなど、医局の人事権が崩壊したために、現在はフリーランス医師が生まれやすくなっている。

 しかし、学会などの重鎮の医師の間では、今なお「フリーランス医師はけしからん」といった発言が相次ぐ。

 今後、大門未知子のようなフリーランス医師は増えるのであろうか。そして、その「医療の質」は大丈夫なのであろうか?

現在のフリーランス医師をみれば
大きく3種類に分類できる

 フリーランス医師と言ってもさまざまだが、現在、日本で活躍している人をみれば、大きく3種類に分類できる。

  1つ目は医療技術の専門性があまり高くない人。主に健康診断など技術よりコミュニケーション重視の医療に従事しているパターン。

  2つ目は、定型的だが、質が求められる技術をうまくこなす人。内視鏡や麻酔、お産などが典型的だ。

  3つ目は「神の手」(god hand)などともいわれる名医。難度が高かったり、特殊な手術をこなす医師である。大門未知子はこの3に当てはまる。

 1つ目の類型については、健診は日本が世界に誇りうる制度であるし、医師の働き方の多様性という意味もあり、今回は触れない。

 3つ目の類型も、そんなに数が多いわけではないし、多くは米国などの海外でのトレーニングに基づいたり、海外での勤務の傍ら日本で手術を行ったりする医師なので数が多くない。だが、高度な技術には高い需要があるので、大門未知子ばりの技術を持つスーパードクターならば、日本でも活躍できるだろう。

 日本の医療において重要なのは、数が少なくない2番目の類型である。特に麻酔科や産科に多いという。現実的に「フリーランス医師は日本で活躍できるかどうか」という問題を考える場合、この類型が重要になる。

微妙なフリーランス医師の立場
本来は米国型医療の一つ

 日本の医療制度は、後述する米国とは異なり、多くの医師への報酬が保険者から直接支払う仕組みにはなっていない。勤務医は病院からの給与である。開業医の場合は、勤務医とは異なり経営責任を伴うが、直接保険者から支払われる。この場合、基本は出来高払いなので、行った医療行為に対して支払われる公定価格になっている。

 日本におけるフリーランス医師は、この中間ともいえる存在で、病院勤務をしておらず、独立した存在ではあるが、病院から支払いを受ける形になる。

 フリーランスは、大学や病院といった組織から離れ、あくまでも手術の腕といった「技術」で勝負する。技術で勝負する医療の中心地は米国であり、フリーランス医師は米国型医療の一つの形と言えよう。

 ここで、米国医療の様子をフリーランス医師の視点から見てみよう。

米国とは異なる実情
公的保険下では活躍しにくい

 米国では、純粋な勤務医といわれる医師(ホスピタリストといわれる)が少なく、日本でいう勤務医の数は少なく、大半が独立した医師である。これは診療報酬体系の違いによる。つまり米国では、医師はDr Fee(独立請求権)という形で、保険者から直接、診療報酬の支払いを受けることができる。言い換えれば、米国のほとんどの医師はフリーランス医師であるということになる。

 ただ、実情は必ずしも幸せではないようだ。

 というのも、独立しているがゆえに、報酬の交渉はすべて自分で行わねばならない。日本のように、公定の診療報酬の8割とか場合によっては10割を、病院からもらうというわけにはいかない。

 例えば、米国で公的な保険制度である高齢者医療保険(メディケア)の場合、支払われるDrFeeは公定価格であり、あまり高くはない(正確には、日本よりは高いが、独立した開業医として組織を運営するには必ずしも十分ではない)。

 また、民間医療保険の場合には、自分のレベルの高さを個別に保険会社と交渉しなければならないので、非常に大変であり、そのために米国の医師は急速にグループ化した。

 また、シンガポールや英国といった国でも、国の制度を離れた自費診療や民間医療保険下で、米国的に病院と契約するというフリーランス医師は存在するが、公的な保険制度下でのフリーランス医師はあまり聞いたことがない(米国は公的皆医療保険制度ではない)。

フリーランスの問題点
「チーム医療」への対応など

「米国と日本は違うのではないか」という意見もあろうが、それ以外にもフリーランス医師ならではの問題がある。

 一つは、チーム医療が難しい点である。病院の指揮命令系統にはない業務委託であるとすれば、病院に雇用されている看護師などとのチーム医療は成立しにくい。

 実は、米国でもこの点は問題視されており、「メイヨークリニック」などの世界的に有名病院では、「病院の理念に医師も共鳴すべきだ」という考え方のもとに医師を雇用している。

 もう一つは、紹介される医師の「医療技術の質」をどう担保するのか、という点である。公的な保険制度がない米国では、お金の支払元である保険者(保険会社等)が医師を評価して、医師に支払う値段を決定する。

 筆者は、お金次第で医療が変わってしまうこのやり方には必ずしも賛成するものではないが、フリーランス医師がまったく第三者の評価を受けないのも問題ではないかと思う。特に問題になるのは、現在、特に高度な医療で重視されているチーム医療の一員になれるかどうか、つまり「人物評価」の点である。

 かつては、医局という大学病院を中心にした仕組みが、人物評価も含めて行っていた。ただ、あまりに俗人的であり不透明であった。しかも、現在は先述した通り、医局の人事権は著しくは低下している。

医師を仲介する人材紹介会社が
フリーランス医師紹介に意欲

 さて、ドラマの大門未知子には、仕事をとってくるマネージャーがついている。民間企業の会社員の転職でも、人材紹介会社を使うケースはよくあるはずだ。

 実は医師や看護師、薬剤師などの医療業界にも同じような紹介会社があり、医局の崩壊に伴う市場の拡大とともに参入が増加している。

 医師の紹介会社は給与の20〜30%の紹介料をもらっている。医療関連が通常の紹介会社と違う点は、フリーランスの医師の紹介でも紹介料は結構な金額になるために、常勤の部長職などを紹介するだけではなく、フリーランスの医師を紹介する場合も多い。特に、先述した類型1や2のフリーランス医師の紹介に、紹介会社も目をつけている。

 医師の紹介会社は、単価が高いこともあり、急速に市場を拡大している。このため、M&Aも盛んだ。例えば、大阪で麻酔科医の専門紹介サイトとして有名であった、医師が起業した「アネステーション」は、上場企業であるエムスリーに2016年8月13日に買収された。

 筆者は、医療においても他業種と同様に紹介会社の存在は必要だと考えているが、米国のように第三者が医師を評価する仕組みがない以上、特に常勤医や第2の類型のフリーランス医師を紹介する場合には、医師の技術の評価し担保もした上での紹介を行うべきではないかと考えている。

 筆者は一時期、民間企業に就職していたこともあり、紹介会社を経由して医師ではなく、あくまでも「会社員」としての転職も経験した。その折には、人物の評価も含めかなり詳細に調査されたことを記憶している。

 逆に言えば、医師専門の紹介会社が医師を他の病院に紹介する場合には、「内視鏡が上手い」「麻酔の専門医である」といったスペックがわかりやすいために、チーム医療への参画も含め、人物評価が曖昧になりがちである。

大門未知子は実在しうるが
極めて特殊な例になる

 私も医師であるので、1人の医師として考えた場合には、フリーランス医師は魅力的である。業務が明確であり、それに対する最大限のパフォーマンスが要求され、それをこなしていくという、まさに、古くはブラックジャック、近年では大門未知子を例とする医師の理想の一つだろう。

 しかし、国民皆保険制度があり、財政上厳しくなっているという大きな流れでとらえた場合、フリーランスでの医師の存在は、自由診療の分野か、大門未知子のような第3類型の一部を除けば、難しくなっていくかもしれない。

 結論は、大門未知子は実在しうるが「極めて特殊な例になる」である。“絶滅危惧種”であるフリーランス医師を増やすのであれば、医師紹介会社をはじめ、さまざまな雇用環境の変化が、一つのカギと考える今日この頃である。

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http://www.asyura2.com/16/health18/msg/296.html

[政治・選挙・NHK219] 中国大使館前の「脱北者少女像」設置運動はダメ? 慰安婦少女像問題 「中国を刺激してはならない」「設置すれば撤去」
中国大使館前の「脱北者少女像」設置運動はダメ?
慰安婦少女像問題
2017/01/13
崔 碩栄 (ジャーナリスト)
 2016年の年末に釜山の日本総領事館前に韓国市民団体が慰安婦を象徴する少女像(以下、少女像)を設置したことに対する対抗処措置として、日本政府は在韓大使を召還、日韓スワップの再開に向けた協議の中断を明言。日韓関係は再び、急速な冷え込みを見せている。

 これまで、少女像に関しては遺憾表明程度の反応しか示してこなかった日本による今回の強硬な措置に、韓国政府およびマスコミは当惑している。日本がこれほどまでに素早く、強い姿勢で対応するとは予想していなかったのだろう。


ソウル日本大使館前の慰安婦像(GettyImages)
 実のところ、この問題に関しては韓国政府の責任によるところが大きい。2015年末、日韓慰安婦協定合意以降、日本は元慰安婦たちのために10億円の基金を拠出したが、韓国側はこれを受け取り、一部を元慰安婦たちに支給するなどして消費する以外、何の動きも示さなかったからだ。韓国政府は、例えばソウルの日本大使館前の少女像問題を解決するために市民団体や国民を説得するなり、少女像のために他の場所を提供するなどの努力をするべきではなかったのか。受け取れるものだけを受け取りながら、この問題を放置し続けた結果が今回の混乱を招いたのである。

少女像設置に対して「遺憾」表明をすることもなく
日本の対応だけを「批判」する韓国マスコミ

 日本側が大使召還および日韓スワップ協議の中断措置に踏み切った直接要因は何か? 間違いなく釜山領事館前の少女像設置である。だが、ほぼ全ての韓国マスコミは無許可で不法造形物を設置した市民団体に対して遺憾はもとより、批判意見を述べることなく、強硬措置にでた日本側だけを非難している。

 それどころか「日本が屈辱的な措置(通貨スワップ協議中止)に出たのに消極的な論評を出すに留まった韓国外務部と強気の日本に対抗できなかった韓国政府」という批判までも始めるような有り様だ。マスコミが一口同音にこのような論調を繰り広げているため、ほとんどの韓国人はこれをそのまま受け止め、日本の対応に問題があると考えている。

 もちろん、今回の韓国市民団体の行動やそれを政府が放置したことに対して、「韓国側がやり過ぎた」と、韓国外交の失敗を指摘する人もいないわけでないが、これらの声は、あくまでもSNS上などで辛うじて見つけることのできる、ごく少数派の意見にすぎない。残念なことに「多数=民意=正義」である韓国社会においては、少数派の意見は何の影響力も持たない。

あまりにも対照的な中国大使館前の「少女像」対応
「中国を刺激してはならない」「設置すれば撤去」

 実は、韓国には外国大使館前に「少女像」を設置しようとする市民運動がもう一つある。それは、中国大使館前に「脱北者少女像」を設置しようとする運動だ。北朝鮮から脱北を図る人々が現在も絶え間なく中国へと渡っているのだが、中国当局は彼らを保護することなく、北朝鮮に送り返している。これに対して抗議する人権団体の運動である。

 中国から北朝鮮に送還された脱北者たちは収容所に連れて行かれ処刑されるケースが多い。このような脱北者の人権を考えない中国を非難する意味で「脱北者少女像」を中国大使館前に建てようというのだ。この運動は北朝鮮脱北者を支援する市民団体により始められた。北朝鮮と中国を同時に批判するという意図が込められた活動である。

 ところが、(慰安婦問題とは異なり)現在も被害者が続出しているこの問題に対して韓国政府もマスコミも無関心だ。外交部は「中国を刺激してはならない」と設置に対して憂慮を示し、中国大使館が位置するソウル市中区庁は「脱北少女像を道路に設置することは不法であり、設置されれば撤去せざるを得ない」(国民日報 2014.3.10)と設置を認めない方針を明らかにしている。「国民感情」を理由に日本大使館前への少女像設置を黙認する対応とはあまりにも対照的な反応である。

 日本大使館、領事館前の少女像設置は黙認しておきながら、中国大使館前の少女像設置に対しては厳格な措置をとる。この韓国の対応が示唆しているのは以下の二点である。

 一点目、中国に対する怯え。同じ行動をしたとしても日本は我慢するだろう、あるいはすべきだという意識があるが、中国にはそんな甘えが通用しないことを知っているのだ。韓国がサード(米国の高高度ミサイル防衛システム/THAAD)配置を決定すると、中国は直ちに韓流コンテンツの制限に踏み切ったように、中国が具体的「報復」行為に踏み切ることを恐れているのだ。

 二点目、現在進行形の深刻な人権問題にも関わらず、韓国マスコミが無関心であるために、あるいは無関心を装っているために、ほとんど話題になっていないという点である。この問題が話題になれば、中国も北朝鮮も国際的非難を浴びることになるのは間違いない。それなのに韓国の主要マスコミはこの運動にほとんど触れずにいる。同じ市民運動でも日本ではなく、中国や北朝鮮を批判する活動は韓国マスコミの支持を得ることができない「ジャンル」であるということだ。

第3の公館 済州日本総領事館
既に少女像設置運動が進行中

 今、韓国政府は釜山に建てられた慰安婦少女像のために、にっちもさっちも行かない状況に陥っている。去年9月の世論調査によると国民の76%がソウル日本大使館前の少女像撤去に反対しており、前野党代表であり、次期大統領選挙支持率1位を走っている文在寅氏は「少女像撤去は親日行為だ」とまで明言した。「撤去=親日」という社会的雰囲気が確立してしまった中で、大統領不在の「代行体制」が撤去に踏み切るというのは簡単なことではない。

 だからといって、今の状況を放置すれば通貨スワップ交渉の中断という損失は免れず、もたもたしているうちに、もう一つ残っている日本公館である済州日本総領事館前にも少女像が設置される惧れがある。これはもはや杞憂などではない。2015年には既に「済州大学生が建てる平和碑建立推進委員会」が結成され、幾度にもわたり少女像の設置を要求するデモが済州で行われるなど、活動が続けられているのだ。

 大統領不在中に起きた日韓の葛藤。韓国側がこれまで時間稼ぎをしてきたのが裏目に出たのだ。韓国側の選択肢は二つに一つだ。「法」と「外交」を重視し銅像を撤去するのか、あるいは、「民意」と「情」に従い銅像を放置するのか。ただ、結果の責任は誰が取るのか問題だ。

 前者を選択した場合、批判を浴びる悪役になるのは撤去を進める政府か自治体になるだろう。しかし、民意に従って後者を選択し、そうこうしているうちにスワップ中断による経済的な打撃を受けるような事態に陥った場合、誰が責任を取るだろうか。おそらく誰も責任を取ろうとしないだろう。となるとその怨望は「韓国を苦しめた日本」に向けられるに違いない。それが韓国の「民意」の習性だ。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8656
http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/119.html

[国際17] トランプ新政権の前途を覆う「ロシア疑惑」 トランプ政策、中心は強いドルと国境税 世界の失業者、今年340万人増加の見通し
コラム:トランプ新政権の前途を覆う「ロシア疑惑」

 1月12日、ドナルド・トランプ次期米大統領(写真)の政権はまだ始まってすらいない。それでも、今週が「狂気の沙汰」のピークだったのかもしれない。ただ、これはまだ序章にすぎないというのも、また十分ありそうな話だ。写真は2016年12月、ペンシルバニアで撮影(2016年 ロイター/Lucas Jackson)

Peter Apps

[12日 ロイター] - それほど深刻でなければ喜劇だし、それほど悲喜劇的でないとすれば、恐らく深刻なのだ。アメリカの政界が今週経験した状況を、作家や脚本家が提案していたら、現実味がないと確実に却下されていただろう。

トランプ政権はまだ始まってすらいない。それでも、今週が「狂気の沙汰」のピークだったのかもしれない。対抗するグループや権力中枢(報道機関、情報当局、政党、海外の超大国)が、政権が本格稼働する前に、出せる限りの情報を暴露したからだ。ただ、これはまだ序章にすぎないというのも、また十分ありそうな話だ。

オバマ大統領がシカゴにおいてよく練り上げられた最終演説を行う一方で、後継者となるトランプ次期大統領は、大文字ばかりの激烈なメッセージをツイッターに投稿していた。モスクワにおけるトランプ氏の性的乱行の猥褻な詳細を提示したロシアの情報機関に、トランプ氏が弱みを握られたのではないかという疑惑に対応せざるを得なかったからだ。

インターネット上でも11日の記者会見でも、トランプ氏はその疑惑を「フェイクニュース」と一蹴した。「フェイクニュース」とは、ネットとソーシャルメディアを舞台に増加しつつある虚偽のオンラインニュースを表現する用語だ。

しかし実際の状況はより複雑のようだ。複数の報道によれば、米ニュースサイトのバズフィードが10日遅く公開した、ワシントンの政治調査会社に雇われた元英国情報機関関係者が出所とされる文書は、ホワイトハウスも含め、ワシントンの最高レベルで議論されるほど、真剣に受け止められている。

トランプ氏は、情報機関当局者が先週提出した機密報告のなかで、この疑惑に関する2ページの要約を受け取ったと言われているが、その会議の場で何を言われたかは話題にしないと述べている。

疑惑が真実であるかどうかは誰も分からない。それが、他の報道機関の多くが疑惑を報道しなかった理由だ。それに問題の文書はいかなる意味においても、世界で最も重要な出来事ではない。たとえ今週に限定したとしてもだ。

11日には中国の航空母艦が台湾海峡に針路を取った。インド洋では、今週初めに起きた事件の影響で、米国とイランの部隊がにらみ合っている。欧州の大国は依然として、複雑に絡み合った危機を切り抜ける道を探すのに必死だ。それは難民危機に始まり、ブレグジット(英国の欧州離脱)、ユーロの将来、極右勢力の台頭、そして欧州諸国自身のロシアとの対立と広範囲に及ぶ。

それでもまだ足りないと言わんばかりに、2017年の最も深刻な火種になるかもしれない北朝鮮が、これまでで最も先進的な弾道ミサイルの発射実験へと歩を進めている。

もちろん、外交がトランプ氏にとって最優先課題になったことは、ほとんどない。大統領選挙に勝利して以来初の記者会見において、彼は明らかに、経済と雇用政策、そして彼の経営するトランプ・オーガ二ゼーションの今後について重点的に語ろうとしていた。だが、ほぼすべてのメディアの質問は対ロ関係に集中した。

トランプ氏にとってのリスクは、疑惑の真偽が話題にならなくなることである。その疑惑が広く知られているという事実自体が、彼の信頼性を損なっている。

バズフィードが、怪しげであると思われても無理のない文書を発表する根拠として挙げたのは、その文書がワシントンの権力中枢、さらにはその外部でも出回っているから、ということだった。もっともな理屈である。しかし、疑惑をさらに拡散したことによって、この話題が決して消滅しないことはほぼ確実になった。

これはいくつかの理由で重要である。まず、政権が続くあいだ、トランプ氏とロシアの関係をめぐる問題がずっと付きまとう可能性が高い。ちょうど、ビル・クリントン氏に関して、不倫やその他いくつかの疑惑が、彼の大統領在任中ずっと付きまとったのと同じである。

すでに複数の議会幹部は、選挙期間中のハッキング、そして恐らくはもっと広範な米国政治に対するロシアの干渉に関する公聴会の実現をめざしている。最も穏便に事を運んだとしても、トランプ氏は冷笑の的になり、たえまない噂話や風刺に悩まされることになるかもしれない。

確かに、過去においてはそれで済んだ。しかし、ネットとソーシャルメディアを夜中にざっとチェックするだけでも、問題の文書に含まれるもっと露骨な内容が、何年にもわたって世間の記憶に残るように思われる。英国のキャメロン前首相と豚に関する下品な示唆と同様に、それが真実であるか否かはほとんど問題にはならない。

もちろん、これが一貫してロシアのプーチン大統領の戦略だったという可能性はある。つまり、トランプ氏を持ち上げてホワイトハウスに送り込み、その後彼の評判を落とすということだ。だが、これほどの悪巧みをプーチン氏や彼の配下のスパイたちの功績とするのは、買いかぶりすぎかもしれない。

真実だった場合、最も大きなダメージを与える疑惑があるとすれば、トランプ陣営の上級幹部らが選挙期間中に直接ロシア当局者と接触していたことを示唆するものだろう。公開された文書のうち、トランプ氏の知人とロシア当局者との会合があったという複数の主張については虚偽である公算がすでに高い。

記者会見の最後でトランプ氏は、自身の陣営とロシア当局者のあいだに接触があったかという質問に対して、あからさまに回答を拒否した。

仮に、問題の文書全体が真実であったとしても、それ自体は必ずしも、トランプ氏が何らかの「弱みを握られた」ことを意味しない。実際のところ、これらの話が世に出てしまったという事実により、ロシア政府の誰であれ、米大統領を脅迫することは難しくなってしまったとも言えるだろう。「(女性の)性器に触れても」云々の発言が録音されていても選挙に勝てたのであれば、モスクワのリッツカールトンホテルで彼が何をやっていようと、そのせいで破滅する可能性は低いだろう。


ロシアがトランプ次期米大統領に関する不名誉な証拠を集めていたと一部報道機関が報じた問題で、報道の根拠となったレポートを執筆した英民間情報会社オービスの共同創設者であるクリストファー・スティール氏が、英諜報機関MI6出身であることが関係者への取材で分かった。
*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

コラム:トランプ氏のトヨタ批判ツイート、神通力に限界 2017年 01月 09日
コラム:トランプ相場でドル125円へ=田中泰輔氏 2017年 01月 10日
焦点:トランプ時代の米中対立、想定される中国の報復シナリオ 2016年 12月 16日

http://jp.reuters.com/article/trump-russia-column-apps-idJPKBN14X0AF


 


コラム:トランプ政策、中心は強いドルと国境税の組み合わせか

田巻 一彦

[東京 13日 ロイター] - 11日のトランプ次期米大統領の記者会見に世界の市場関係者は失望した。最も知りたかったマクロ経済政策の全貌が不明のままだったからだ。

これまでの発言から、あえてその全体像を描けば、「強い米国」と「強いドル」を標ぼうし、世界から米国にマネーを吸い寄せ、インフラ投資などに投入する一報、ドル高の弊害は「国境税」(ボーダータックス)で遮断するというポリシーミックスだ。

『前代未聞』のこの政策が果たして継続できるのか、今のところ全くわからない。しかし、当面は日本に円安と日本株高をもたらし、新しい「何か」をするための「時間」を与えてくれるだろう。この時間を無駄にせず、政府と民間は一丸となって、潜在成長率・ゼロ%からの脱出を図るべきだ。

<会見で明らかにしなかった強いドルとその効果>

マーケットには、トランプ氏の保護主義的な発言を懸念し、ドル安/円高になるとの見方が根強くある。

確かに国境税のところだけを取り出してみれば、円高材料にみえるだろう。しかし、トランプノミクスの本質は、この会見で言及しなかったところにあると考える。

トランプ氏が米大統領選で訴えてきたのは、大幅な減税、インフラ投資、規制緩和、医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃など。特に市場が注目してきたのは、減税とインフラ投資、規制緩和の部分だ。

米の昨年12月の失業率は4.7%、時間当たり平均賃金の伸び率は前月比2.9%増と7年半ぶりの高水準となっている。

労働需給がタイトな中で、大幅な財政出動が展開されれば、米長期金利と期待インフレ率は上昇。これがドル高のエンジンとなり、同時に財政出動の効果で名目国内総生産(GDP)は跳ね上がり、米株高の要因にもなる。

こうしてマネーは、米国に向かって流入し続ける構図ができる。集まったマネーを国内のインフラ投資に振り向ければ、米政府は自らの財政資金を100%投入しなくても、海外からの資金でインフラを更新。関連したビジネスで雇用が生まれ、不満が蓄積していた中間層をなだめることが可能になる。

<ドル高の弊害遮断する国境税>

ただ、ドル高は米製造業の競争力を削ぐ効果も持つ。11日の会見でトランプ氏が貿易赤字に言及したため、ドル高懸念の発言が出るのではないかとの観測が市場では根強くある。

しかし、それは国境税などの存在を否定した「自由貿易主義」が前提の話ではないか。国境税で安い輸入品を遮断すれば、ドル高の弊害を少なくとも米国内に持ち込むことを防げる。

また、国境税は米国内での輸入品価格を押し上げる要因になるが、ドル高効果でそれをある程度、相殺することも可能だ。

つまり、強いドル政策と国境税の組み合わせは、短期的に米国に「富」を生み出す構図を造り出す。

<アメリカ・ファーストの影>

だが、それは典型的な近隣窮乏化の政策とも言えるだろう。すでに一部の新興国では、通貨と株価の下落が継続。景気後退のリスクを承知で金利引き上げに踏み切っている例もある。特に非資源国では、このスパイラルを止める手立てが見つからない。

そのうえ最大の市場である米国が、国境税で輸出障害の「壁」を造れば、通貨安のメリットを生かす場も失われる。

「アメリカ・ファースト」の政策が、アメリカだけ繁栄する政策になりかねないリスクを内包していると言える。

果たして、私の想定通りにトランプノミクスが展開されるのか、今の段階でははっきりしない。しかし、その兆候は確かにあると指摘したい。

<日本に与えられた猶予期間>

日本にとって最大の関心事の1つである為替は、米国のマクロ政策が大きな方向性を決めるため、ドル高/円安が次第に進むと予想する。保護主義への懸念で円高方向に振れる局面があっても、大きなトレンドを形成するのは難しいと考える。

円安が進めば、株高も同時に進行するのではないか。日本政府がさしたる努力をしないまま、円安・株高を享受できる構図が完成することになるだろう。

ただ、この「絶好機」を無為に過ごしては、「悔いを千載に残す」ことになりかねない。今の日本経済は、潜在成長率が0.1%台まで低下し、少子高齢化の基調にも変化がない。生産労働人口の減少基調が変わらないまま、生産性の伸びが高まらなければ、長期的に経済規模の縮小に直面するリスクが高まる。

AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)への投資では、日本企業は米、独などに大きく水をあけられている。「リスク」ばかりを言い訳にしていては、次の大きなショック発生時に本当の意味での「老成国」になってしまうだろう。

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http://jp.reuters.com/article/tamaki-idJPKBN14X0MH

 


世界の失業者、今年340万人増加の見通し=ILO
[ジュネーブ 12日 ロイター] - 国際労働機関(ILO)は11日、2017年版「世界の雇用および社会の見通し」を発表し、経済成長の鈍化、先行き不透明な政治や経済、投資不足などにより、2017年に世界の失業者が340万人増加するとの予測を示した。

ロシアや南アフリカ、ブラジルなど資源輸出に依存している新興国で特に失業が増える見通しだという。

雇用創出不足により、世界の失業者は2017年に340万人増加して合計2億0100万人となり、失業率は16年の5.7%から5.8%に上昇する見通しという。

ILOのガイ・ライダー事務局長は記者会見で「新興国を中心に労働市場の状況が悪化していることが、こうした傾向を招いている」と指摘し、「比較的高水準の現金を保有しているにもかかわらず、企業は投資に不安を抱いている。投資は必要な水準に達していない」と述べた。

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トランプ氏、ロシアめぐる指摘に不快感 「米情報当局が情報流した」
中国政府系紙がトランプ氏に警告 「一つの中国放棄なら報復」
http://jp.reuters.com/article/economy-employment-idJPKBN14X0W3
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/277.html

[政治・選挙・NHK219] 安倍首相、ドゥテルテ大統領の地元ダバオを訪問−朝食会に参加 酒飲みに住みにくい日本、悪行コスト世界最高 ベネルクスは安い
安倍首相、ドゥテルテ大統領の地元ダバオを訪問−朝食会に参加
Andreo Calonzo
2017年1月13日 17:22 JST

外国の現職首脳がダバオの大統領私邸を訪れたのは初めて
12日にはマニラで首脳会談が行われた

フィリピン訪問中の安倍晋三首相は13日午前、ドゥテルテ大統領の地元ダバオ市を訪れ、同大統領の私邸での朝食会に参加した。外国の現職首脳がこの私邸を訪れたのは初めて。
  安倍首相は前日、マニラでもドゥテルテ大統領と会談。フィリピンでの事業をめぐり日中が競い合う中で、安倍首相は同大統領との個人的関係を温めることで、対フィリピン関係の強化を図っている。
  アジア地域での中国の強引な行動が一段と目立つようになる一方で、安全保障面でのフィリピンと米国の関係はドゥテルテ政権で悪化。安倍首相はドゥテルテ大統領に日米との協調を続けるよう促したい考えだ。
  マニラで12日行われた首脳会談後、安倍首相は南シナ海の領有権をめぐる対立と地域の平和の間には関係があると述べ、領有権が争われている海域の非軍事化の重要性をドゥテルテ大統領と共に確認したと説明した。
原題:Abe’s Soft Power Play Wins Him Breakfast in Duterte’s Home (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-13/OJPKQO6JIJVK01


 
酒飲みに住みにくい日本、「悪行」コストが世界最高−ベネルクスは安い
Vincent Del Giudice、Wei Lu
2017年1月13日 17:25 JST

薬物や飲酒、喫煙といった「悪行」にふけるのに、日本では週に1441.50ドル(約16万5500円)もかかる。一方、ラオスではたったの41.40ドル。ブルームバーグ・バイス(悪行)指数が示した。
  ブルームバーグはたばこ、アルコール飲料、アンフェタミン(中枢神経興奮剤)、大麻、コカイン、オピオイド(合成麻酔剤)といった商品バスケットの価格について、100カ国以上を米国と比較した。米国での価格は約400ドルでこれは平均的な週当たり所得の約3分の1に相当する。
  絶対的な価格で最も安いのはコンゴ、ホンジュラス、ラオス。最も高いのは日本で、ニュージーランドとオーストラリアがこれに続いた。
  週間所得に対する割合を見ると、ルクセンブルクやスイスといった高所得国で、悪行にふけるのが容易だと分かる。ベルギーとオランダも所得との比較で悪行コストが低い。
原題:Bloomberg Vice Index Shows Cheapest Places for Drugs, Alcohol(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-13/OJPJZ16S972W01
http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/126.html

[経世済民117] トランプ氏をすでに見限り始めた市場 急転換リスク、際立つポジ偏り オバマの果実得るトランプ 閣僚候補とのズレ お構いなし
トランプ氏をすでに見限り始めた市場
この1カ月余り株式市場に生じていた動きが確認された
米大統領選後、初めての記者会見を開いたドナルド・トランプ氏
By JAMES MACKINTOSH
2017 年 1 月 13 日 15:33 JST

――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト

***

 ドナルド・トランプ次期米大統領が11日に行った散漫な記者会見に対して、市場はトランプ氏を見限る反応を示した。ドルと製薬・バイオテクノロジー関連株が売られ、債券は買われた。一方、トランプ氏を嫌気して下げていた株がアウトパフォームした。

 投資家は大統領らしい大統領を好むことがここに表れていると言える。また、この1カ月余りの間、株式市場に生じていた動きがこれで確認されたとも言える。期待感の減退を背景に、大統領選後の株高は昨年12月中旬までにその勢いを失っていたのだ。

 選挙後の1カ月間、市場は経済成長の加速を期待した。急騰したのは景気変動に敏感なシクリカル株で、景気動向の影響を受けにくいディフェンシブ株は大きく後れを取った。だがその後1カ月の間に楽観的な見方は薄れ、ディフェンシブ株がシクリカル株を追い抜くようになり、債券の利回りはやや低下した(シクリカル株は、予想を上回る経済データの好転という追い風を受けていたにもかかわらずだ)。

 だが、経済成長への期待感が変化したというだけでは、この反トランプ相場は説明がつかない。市場マインドの変化は、次期政権への期待や失望が反映される幅広い銘柄で多く見て取れる。

 防衛関連企業の株価は当初、上昇した。軍事費に関する共和党の従来通りの政策と、2013年に設けられた防衛費の強制削減措置を廃止するとしたトランプ氏の選挙公約が背景だ。ボーイングやレイセオン、ゼネラル・ダイナミクス、ロッキード・マーチンの株価が急騰し、防衛セクターは9%高をつけたものの、12月中旬には下げに転じた。トランプ氏は21世紀の公権力――つまり、ツイッター――を使い、ロッキードの最新鋭ステルス戦闘機「F-35」の費用が高すぎると攻撃。その後、同セクターは迷走を始めた。

 インフラへの支出はトランプ氏の看板政策の一つだ。当然ながら、建設業や建材サプライヤーの株価が大統領選後に急伸。1カ月後には建材セクターが13%上昇した。USスチールは72%高、USコンクリートが30%高をつけたほか、大手以外のサプライヤーの多くも2ケタ台の伸びをみせた。だがその後、次期政権による実際の支出額と支出時期に懐疑的な見方が出てきたことから、4%下落した。 

 IT(情報技術)大手のフェイスブックとアマゾン、ネットフリックス、アルファベット傘下のグーグルの頭文字をとったFANG株は選挙後に下げた。理由は2つある。経済が急速に成長すれば他の企業も成長しやすくなるためFANG各社の魅力が薄れることと、IT業界が広く民主党を支持していたことだ。株が上伸していた選挙後の1カ月間、FANG株をはじめとするITセクターは下落。だがその後は持ち直している。12月中旬にトランプ氏がIT大手の幹部らと会ったことも一因だろう。

 オバマケア(医療保険制度改革法)関連株は選挙結果を受けて大きく下げた。医療保険のセンティーンや、病院経営のHCAホールディングス、ユニバーサル・ヘルス・サービシズ(UHS)の株価は12月9日までに9〜14%下落。その後、センティーンとHCAは8%余り上伸したものの、UHSの伸びは小幅にとどまっている。

 中小企業は共和党の税制案のおかげで、2つの点で大手よりも有利になるだろう。トランプ氏がポール・ライアン下院議長の案とどう折り合いをつけていくのかは不明だが、両者とも税制を簡潔にし、法人税率を引き下げ、輸入品に対する罰則として税制を利用したいと考えている。多国籍企業に比べ、規模の小さな企業は税制の抜け穴を利用できる組織構成にするのが難しいため、法人税率の引き下げの恩恵をより多く受けることになる。また中小企業は国内に焦点を絞る傾向にあり、輸入に対する規制に関して大手ライバル企業より有利だ。中・小型株の指数であるラッセル2000は選挙後から12月9日までに16%上昇した一方、大型株の指数ラッセル・トップ50は5%の伸びにとどまった。2000年にITバブルがはじける以前から見ても、同じくらいの期間にわたってラッセル2000が大型株の指数をこれだけアウトパフォームしたことはなかった。その後、大型株は持ち直し、ラッセル2000はやや下げた。

 学資ローンを手がけるナビエント(2014年に学生金融公庫のサリー・メイから分裂)はトランプ相場の勝ち組の一角を占めていた。ヒラリー・クリントン前国務長官による学資ローン債務免除案はナビエントに打撃を与えていたことだろう。トランプ氏の当選で同社株は1カ月で29%急騰した。だが、やはりここにきて流れは反転。ナビエント株はその後3%下げている。

 メキシコのペソは明らかに例外的な動きを見せている。選挙後にペソはつるべ落としを演じ、11日に行われたトランプ氏の記者会見の最中には史上最安値をつけた。だがその後はドルの下落に連れて持ち直し、12日朝にはクリスマス以前からこれまでで最高の伸びを示した。ただ、ペソがトランプ次期大統領の犠牲者であることに変わりはない。

 こうした市場の流れの反転はあるものの、6日の市場でS&P500種株価指数は最高値を更新し、ダウ工業株30種平均は2万ドルまであと1ポイント弱に初めて迫った。

 いま株を買うべき理由があるとすれば、こういうことだ。トランプ氏に対する熱狂が市場で弱まっているのは期待先行で相場が盛り上がった後の小休止にすぎず、投資家は次期大統領の今後の動きを見極める手がかりを待っている。

 懸念すべきはトランプ相場の反転が示すシグナルである。それは、ツイートによる個別企業への攻撃や中国に対する強硬な外交姿勢、貿易面での反動リスクといった、将来起こり得るトランプ政権のマイナス面に、市場がすでにより多くの関心を向けているということだ。

 いずれにせよ、トランプ氏の11日の記者会見が役に立たなかったことは確かだ。

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トランプ相場に急転換のリスク、際立つポジションの偏り
12日の金融市場の動きは、トランプ相場のリスクを浮き彫りにした
By INYOUNG HWANG
2017 年 1 月 13 日 16:29 JST

 12日の金融市場の動きは、ドナルド・トランプ氏が第45代米大統領に選出された直後から始まった強気相場が抱える重大なリスクを浮き彫りにした。それはあまりに人気を集めているため、急激な巻き戻しの影響を受けやすいことだ。

 12日はダウ工業株30種平均が前日比63.28ドル(0.32%)安の1万9891.00ドルと反落。金融株の下落が響いた。10年物米国債利回りも2.358%に低下し、昨年12月上旬以来の低水準となった。

 こうした下げは、11月8日の大統領選以降に主流となった投資テーマに逆行する。投資家はこのテーマに基づき、次期政権の減税や歳出拡大、規制緩和がもたらす経済成長の加速やインフレの上昇で最も恩恵を受けそうな資産に資金を投じた。

 そのプロセスで最も大きく上昇した資産が、12日に最も大きく崩れる展開となった。その一因は、小型株や金融株、商品(コモディティー)といった人気の高い投資先の先物市場でいわゆる「クラウディッド・トレード(混雑した取引)」が起きていたことだ。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の週間統計によると、投機筋は2014年3月以降、米小型株先物を売り越してきた。だが選挙後は一転して買い越しが4倍に拡大した。

 これと同様、先月は銅先物とオプションの買い越しが少なくとも06年以来の水準に拡大した。石油輸出国機構(OPEC)が昨年11月に減産で合意したことを受け、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油の買い越しは年末時点で14年7月以来の高水準に達した。当時のWTIは1バレル=100ドル程度で取引されていた。

 こうした傾向は市場の期待を際立たせている。ダウ平均がこのところ2万ドル手前でもたついているにもかかわらず、投資家は間もなく上昇すると信じ続けている。

 バンクオブアメリカ・メリルリンチのリサーチアナリスト、ジュエ・ション氏は「リスク志向は依然高い」と指摘。投資家が大幅な買い越しを巻き戻した場合に突然の下げに見舞われかねない市場として、米小型株、原油先物、銅を挙げた。

 他にももっと微妙な構図も統計で浮き彫りになっている。債券市場では、年金基金などの機関投資家とヘッジファンドの動きが食い違っている。CFTCのデータを06年までさかのぼって見ると、5年物米国債は機関投資家の買い越しが最高に達しているが、ヘッジファンドは逆に売り越しが最高となっている。これほど劇的ではないが、10年債先物とオプションにも相違は存在する。

 ヘッジファンドなど大口の投機筋は、メキシコペソの先物やオプションを1年以上も売り越している一方、ロシアルーブルの買い越しは10月に過去最高に達した後に半減している。ペソはドルに対する最安値を更新しているが、ルーブルは新興国通貨の中でも際だったパフォーマンスを示している。

 CFTCの統計ではまた、日本円の売り越しが15年8月以来最大に近づいていることも明らかになっている。これは投機筋が金利上昇と米経済の改善を背景としたドル高を想定しているためだ。

 マクロ・リスク・アドバイザーズのデリバティブ(金融派生商品)担当チーフストラテジスト、プラビット・チンタワンバニック氏は、投機筋は市場心理の転換にいち早く反応する傾向があると指摘した。

 同氏は「人々は利回りが上昇していくことを完全に織り込んでいる」としたうえで、いずれ金利が上昇するにしても、短期的な巻き戻しに巻き込まれやすくなっていると語った。

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オバマ政権の経済レガシー、果実得るのはトランプ氏
戦後最長の景気拡大期を率いるのは次期大統領

米経済が金融危機からほぼ完全回復するタイミングでオバマ大統領は退任する PHOTO: NAM Y. HUH/ASSOCIATED PRESS
By
GREG IP
2017 年 1 月 13 日 16:07 JST
――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター
***
 2008年の金融危機は、ほとんど誰にも感謝されない形で、バラク・オバマ大統領の任期8年間を決定づけたと言える。金融危機の影響がオバマ政権の規制と経済政策を動かし、政治と政策における分断を強め、生産拡大と賃金上昇を阻害し、そして最終的に、ドナルド・トランプ次期大統領の誕生を手助けした。
 皮肉なことに、金融危機からの回復がほぼ完了する時にオバマ氏は退任する。第2次世界大戦以降で最長の景気拡大期を率いる場に居るのは、後を継ぐトランプ氏ということになりそうだ。
 米ハーバード大学のカーメン・ラインハート氏とケネス・ロゴフ氏は、金融危機後の景気回復は典型的なリセッション(景気後退)後の回復よりも弱いことを過去の事例から立証した。両氏によると、金融危機後の1人当たり国内総生産(GDP)が危機前のピークまで回復するのに平均で8年かかるという。
 2008年金融危機後の米国は、危機前のピークを2013年に回復した。6年しかかからなかったので、相対的には優秀だ。それにもかかわらず、この景気拡大期における年間成長率は平均2.1%と、戦後で最も弱い数字だ。
 そのいくつか要因は構造的なものだ。高齢化で労働力の増加が一段と緩やかになり、1990年代と2000年代初めに起こった新技術による生産性拡大の波は弱まった。これ以外では、金融危機に原因を求めることもできる。米金融大手ゴールドマン・サックス・グループの投資管理部門は最近のリポートで、景気拡大期には、家計と金融機関が所得に対する負債の比率を高める「レバレッジ」に出ることが多いと指摘。対照的に今回の拡大期では、家計と金融機関は次の危機を恐れ、こうしたレバレッジを一斉に解消し、予防的に現金を積み上げたという。
 これにより投資マネーが収縮する。今日でさえ、住宅投資、消費者の耐久財支出、企業の設備投資がGDPに占める比率は24%にとどまり、過去の景気ピーク時における28%かそれ以上を下回っているとゴールドマンは指摘する。こうした投資不足が成長と労働生産性(就業1時間当たりの生産量)の両方を抑制し、賃金の伸び悩みにつながる。
 他の国々と同様、金融危機は米国の政治を分裂させ、分断させた。銀行のベイルアウト(第三者による救済)とオバマ政権による広範な経済介入に対する怒りが、保守派の草の根運動「ティーパーティー(茶会)」系の共和党議員の議会での台頭を後押しした。彼らは、まだ刺激策が必要とされていた2011年に、オバマ大統領を緊縮財政に向かわせた。一方、オバマ政権は左派の優先政策に対応し、金融機関に対する規制と監視を大幅に強化し、住宅ローンと中小企業向け与信を制限した。
再びレバレッジをかける準備は整った
左グラフは家計における負債の対GDP比率、右は金融セクターにおける負債の対GDP比率。オレンジの線は第2次世界大戦後の回復期の中央値、青は現在の回復期を示す
https://si.wsj.net/public/resources/images/NA-CN200_CAPACC_16U_20170111123006.jpg

 逆説的だが、過去8年間の景気拡大の勢いが弱かったことが、それを持続させるかもしれない。景気拡大は年月がたつにつれて自動的に死滅することはないが、致命的な状況に対して一段とぜい弱にはなる。投資家と企業、家計が長引く好景気の後に過剰投資し、調整のお膳立てをするからだ。
 今年半ばまでに、現在の景気拡大期は第2次大戦後で3番目の長さとなる。失業率は5%を下回り、米連邦準備制度理事会(FRB)は金利を引き上げている。株価と住宅価格は前回のピークまで回復するか、それを上回っている。これら全てがリセッションの前提条件なのだ。
 人間と同じように、景気拡大の期間は「食事と運動」で長引かせることができる。金融危機後のレバレッジ解消と金融規制の強化により、米国経済には一掃されるべき明確な過剰投資は残されていない。(石油・ガス掘削ブームは幅広く経済を落ち込ませることなく沈静化したし、農地価格の急騰は経済にほとんど痕跡を残していない)
 ゴールドマンのリポートによると、最近はレバレッジ解消の動きが弱まっており、「トランプ次期政権下の財政と規制環境が家計と金融セクターにとってより有利なものとなり、(レバレッジ解消が)近く反転する」かもしれず、「実際に、この『ハングオーバー』状態はすでに終わっているのかもしれない」という。またリポートは、住宅価格と株価が上昇すれば消費者が貯蓄を減らして消費を増やすよう促されるはずだとし、これは景気拡大期に通常起こることだが、今回はまだ起こっていないと指摘した。
 雇用の伸びのペースは、米経済の余剰労働力が減りつつあるがために鈍化するだろう。ただ、それは長く先送りされた生産性の回復によって相殺されるかもしれない。全米自営業者連盟(NFIB)による調査から、中小企業の楽観度指数が大統領選以降に急上昇したことが分かったが、恐らく、ここにはホワイトハウスが一段とビジネス寄りになるとの期待が反映されているのだろう。現在、賃金は2009年以降で最も速いペースで上昇しており、これも省力化技術への投資を促すだろう。FRBは利上げを急がない姿勢を鮮明にしている。
 オバマ氏を苦しめてきた政治対立も、同氏の望む方法ではないにしろ緩和された。上下両院とホワイトハウスを共和党がコントロールすることになるため、財政赤字に対する不安は薄れるだろうし、融資の障害となる規制は弱まるだろう。ゴールドマンは、2017年に米国経済がリセッションに陥る確率を15%と見積もっている。(通常の年なら、この確率は18%だ)
 これら全てが示唆しているのは、オバマ氏の経済的レガシー(遺産)がさらに数年続く可能性だ。ただ、オバマ氏はそれを謳歌(おうか)することはできないのだが。
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【社説】トランプ氏、閣僚候補とのズレ お構いなし
国防長官候補のマティス氏は米ロ関係改善に懐疑的
米上院軍事委員会の承認公聴会で証言する次期国防長官候補のマティス氏(12日) ENLARGE
米上院軍事委員会の承認公聴会で証言する次期国防長官候補のマティス氏(12日) PHOTO: ZUMA PRESS
2017 年 1 月 13 日 15:05 JST

 読者の皆さんはおそらく、トランプ政権という姿をしたファシスト的服従の暗闇が米国を覆うことになると聞いたことがあるだろう。本当にそうなったらお知らせしよう。しかし、今週開かれた承認公聴会で注目すべき点は、ドナルド・トランプ次期米大統領から指名を受けた候補者たちの見解がどれほどトランプ氏と食い違っていたかだった。

 例えば、トランプ氏が次期国防長官に指名した退役海兵隊大将、ジェームズ・マティス氏だ。マティス氏は12日、上院軍事委員会で開かれた公聴会で3時間にわたり証言した。トランプ氏はこれまでロシアのウラジーミル・プーチン大統領をことさらに称賛し、ロシアとの関係改善に意欲を示してきた。

 しかし、マティス氏は「ロシアとの協働を全面的に支持するが、われわれは現実を把握し、ロシアが何をしようとしているのか認識する必要がある」と述べ、懐疑的な見方を示した。「米ロが協調できる分野は減っている一方、ロシアとの対立を迫られる分野は増えている」とも指摘した。

 さらに同氏は、プーチン氏が「北大西洋条約機構(NATO)の破壊を試みて」おり、ロシアは米国の主要な脅威の一つだと述べた。これはわれわれの見解からすると正しい。マティス氏はNATOの旧東側諸国への新たな軍事配備を続けると約束し、ロシア北西の国境に接するバルト3国への恒久的な米軍駐留を支持するとした。

 別の例を挙げると、次期国務長官に指名されたレックス・ティラーソン氏は、米石油大手エクソンモービルの最高経営責任者(CEO)の立場から環太平洋経済連携協定(TPP)を支持すると述べた。トランプ氏は既にTPPから離脱する意向を表明している。また、次期中央情報局(CIA)長官に指名されたマイク・ポンペオ氏は厳しい尋問方法について否定。トランプ氏は選挙期間中、テロ容疑者への水責めを復活させるべきだと訴えていた。

 政策の最終決定権は大統領にある。しかしこのような意見の相違をみる限り、米国人は、トランプ氏が新閣僚としてしっかりした考えを持つ真面目な男女を選んだと安心できるはずだ。さらに、 トランプ氏の見解に対する考えはどうあれ、異論をいとわずに唱えるアドバイザーを意に介する様子は本人にはないようだ。アドバイザーたちは恐らく、十分な自信を備えており、統治を巡る難しい問題を議論する際にも気後れすることはないだろう。

トランプ次期政権

米次期国防長官候補、ロシア巡り警戒姿勢示す
次期国防長官マティス氏、いざ出陣
【社説】国務長官にティラーソン氏を
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http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/753.html

[経世済民117] FRBに「生産性とは何か」を教えた男 中国保険会社高リスク投資 ECB批判ドラギ正念場 ドル120円は年後半
FRBに「生産性とは何か」を教えた男
サンフランシスコ連銀のジョン・ファーナルド氏。生産性の研究に定評がある
By SHAYNDI RAICE
2017 年 1 月 13 日 15:39 JST

 米サンフランシスコ地区連銀のシニア・リサーチ・アドバイザー、ジョン・ファーナルド氏は1990年代半ば、職場でのインターネット利用の恩恵について連邦準備制度理事会(FRB)の上司に報告する際、途方に暮れてしまった。

 ファーナルド氏は最近のインタビューで「何が恩恵が良く分かっていなかった」と当時を振り返る。

 現在、同氏の見解は明確で影響力は大きい。同氏の調査で90年代のIT(情報技術)ブームが03年頃まで企業の効率化に寄与したことが判明した。だが、そうした効果は04年までに薄れ始め、現在は技術革新の恩恵がソーシャルメディアやスマートフォンのアプリなど余暇活動へ流れている。

 生活水準向上の鍵は、労働1時間当たりの生産、つまり生産性を大幅に上げることではなく、余暇を増やすことかもしれない。

 ITブームが生産性に与えた影響に関する同氏の研究を受け、FRBは経済成長や金利、インフレのとらえ方を改めている。

 FRBはグレートリセッション(大不況)後の数年、超低金利政策でてこ入れしたにもかかわらず経済成長が期待を裏切ったため困惑していた。今では生産性の伸びの減速が一因だったとみているが、これが長期的問題か危機後の一時的問題かで意見が分かれている。

 ファーナルド氏は、08年の金融危機のかなり前から生産性は低迷し始めていたとFRB幹部に納得させる重要な役割を果たした。

 これは、危機の影響が消えても生産性の伸びは回復せず、経済成長が大きく回復しないことを示す。つまり、インフレ抑制のためFRBが大幅に利上げする必要はないことになる。

 ジャネット・イエレン議長などFRB当局者は、ファーナルド氏に何度も言及している。サンフランシスコ連銀のジョン・ウィリアムズ総裁は「(同氏の)研究で、生産性の伸びの原因や尺度、動きに関する重要問題を理解できた」と評価した。

 スタンフォード大学のロバート・ホール教授は「最近の生産性低迷の原因や将来の生産性拡大の見通しに関する議論で(ファーナルド氏は)健全な声だ。成長を巡る不確実性をきちんと強調している」と語る。

 長期景気拡大は、労働人口増と技術や設備などへの投資、そして効率性を高めるため両者を新手法で組み合わせることで実現する。最後の要素は「全要素生産性(TFP)」と呼ばれ、技術革新の経済への貢献度を示す。TFP成長率は95年末から04年まで平均1.8%だったが、その後年平均0.5%まで失速している。

 ファーナルド氏の念頭にあるのは、今日の技術革新が事業効率でなく余暇活動の改善に重点を置いていることだ。

 「ITやインターネット、ソフトウエアなどに関しシリコンバレーなどで途方もないことが起きているが、生産性を本当に変えるにはこれらが経済全般での事業運営方法に結びつけられねばならない」と言う。

 生産の伸びの弱さは、労働力拡大の減速や学歴が安定していることの反映でもあるという。同氏は米経済成長率のニューノーマル(新常態)を1.5%〜1.75%としている。これは戦後から05年まで一般的だった3%〜4%の約半分だ。

 現在52歳のファーナルド氏は、ハーバード大で博士号取得後、93年FRBに入行。ここ15年は生産性を重点的に研究している。

 多数のエコノミストと同様、同氏も成長減速を解明しようとしている。各学派が生産性減速はグレートリセッションの深刻さによるところが大きいとしている。

 同氏は自らについて、一部の学者のように自説に固執してはいないと語る。例えば、将来の生産性の伸びについてノースウエスタン大学のロバート・ゴードン教授ほど「独断的考えではない」という。ゴードン氏は、高度成長を経験した1870年〜1970年のような時代は二度と来ないと言う。この時代は電気や州間幹線道路、屋内配管などの画期的革新が効率を大幅に押し上げた。

 ゴードン氏は、かつて年3%だった生産性の伸びが年1%の範囲で「比較的低位にとどまるとの持論にきちんとした理由がある」とし、技術革新が今後20年の経済成長に与える影響は革命的でなく漸進的なものになるとみている。

 一方、ファーナルド氏は、90年代半ばには職場のインターネット活用の価値が自分にもすぐに分からなかったように、企業が自社の利益となる技術革新の活用法を今後見いだす余地はあると言う。

 「FRBに他人の意見をただ受け入れる人はいない」中、自身の理論は急速に受け入れられているようだと述べた。

 同氏の2014年の論文は頻繁に引用されるようになったが、この研究を開始した当初、同氏の考えに人々は「面白い」といった驚きの反応を示したという。

 だが「(研究が)公になった頃までには、人に聞いたら『常識でしょう』と言われていただろう」と同氏は振り返る。

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米FRB特集
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中国の保険会社、高リスク投資で当局に懸念
中国当局は保険会社が高リスク商品を販売して高リスクの投資に振り向けていることを懸念している
By JAMES T. AREDDY
2017 年 1 月 13 日 15:48 JST

 【上海】中国の27歳のある男性は、貯蓄のうち1万5000ドル(約172万円)を生命保険に充てることを決めた時、子どもを持つことは予定していなかった。その代わり、中国のインターネット主導の投資ブームの最新トレンドに飛び込んだ。だがこれは、規制当局を心配させる行動の一つだ。

 この男性が前海人寿保険から購入した保険商品は、保険と呼ばれているものの、むしろ高利回りの1年物預金に近く、利回りは銀行預金金利の2倍を超えている。

 前海人寿やその他の保険会社は、最新の投資商品の販売で調達した多額の資金を、他の中国企業の株式の大量取得や海外事業の拡張に投じている。

 中国の規制当局は、長期の安心を与えるという主要な使命からそれた行動をしている保険会社を公然と批判し、前海人寿を含む少なくとも10社を処罰した。

 証券当局の責任者は昨年12月、保険業界の積極的な資金調達と短期的な投資を指して、保険会社を企業の乗っ取り屋に例えた。30年前に米投資会社が高リスク・高利回りのジャンク債(投資不適格債)で資金調達し、企業を買収した後に分割して処分していたことに言及して、「野蛮人」という言葉を使った。

 前海人寿は一部の資金調達をやめるよう命じられた。同社を含む処罰された保険会社は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のコメント要請に応じなかった。ただ発表文で、事業戦略と財務状況の健全さへの自信を表明したほか、業界の安定化を目指すと繰り返し述べた。

 保険業界のこうしたうたげは、すでに不安定化している中国金融システムに難題をもたらす恐れがある。中国では債券のデフォルト(債務不履行)が増え、アナリストは銀行融資の5分の1が不良債権と見積もっている。このことは、ヘルスケアなど将来有望な業界の先行きを脅かすことになりそうだ。こうした業界は保険会社との高度な連携を必要としている。

 懸念されるのは、保険会社が手元資金を増やしていても、多くの顧客が保険は安心を得るためではなく利益を得るための手段と見なしていることだ。

 中国政府はこれまで、保険業界を発展させ、それによって一般の中国人にセーフティーネットをもたらすとともに長期的な投資の考え方を育てようとしてきた。中国保険監督管理委員会(CIRC)は2年足らずの間に30件の保険事業免許を付与し、さらに200件の申請が審査を待っている。

 コンサルティング会社オリバーワイマンのアナリストによると、インターネットを通じた保険販売が増えたため、業界全体の2015年の保険料収入は20%増の3700億ドルとなり、20年には7000億ドルに達すると予想されている。

 保険専門の格付け会社AMベストは、中国の保険会社は昨年10月末時点で、貯蓄部分と生命保険部分から成るユニバーサル保険に関わる預金を1570億ドル保有していたと見積もっている。この金額は2年前の3倍を超える。

 AMベストのクリスティ・リー氏によると、こうした保険は短期的な資金調達と長期的な投資契約がバランスを欠く恐れがあるとの懸念が高まっている。同氏は「投資での見込み違いがあれば、生命保険会社の支払い能力を著しく脅かす恐れがある」と指摘している。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiK_O7h7b7RAhUFsJQKHe_CCEkQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10558161838683014507104582556431396652666&usg=AFQjCNE2x6cy1iYwKdEYbsS5tS1E9UYxRA

 


 

 
アングル:ソブリン債に強まる格下げ圧力、皮切りはイタリアか

[ロンドン 12日 ロイター] - 世界全体で今、かつてないほど多くのソブリン債が格下げリスクにさらされている。経済は徐々に上向いているものの、各地で高まる政治的な不透明感や、2年余り続いたコモディティ安が影を落とす。

主要格付け会社がカバーする120─130カ国のうち、およそ25%に現在格下げリスクが存在する。

S&Pの格付け見通しは「ネガティブ」と「ポジティブ」の件数が30対7、比率で言えばほぼ4対1だ。フィッチではこの比率が6対1になる。トリプルA格付けのソブリン債は減少の一途で、S&Pの格付けのうち「BBBマイナス」以上の投資適格級が占める割合は、過去最低の52%に低下している。

こうした中でカナダのDBRSが13日、イタリアの格付け見直しを行う。

DBRSの格付けは、欧州中央銀行(ECB)が資金供給オペで銀行から差し入れられる担保国債の評価基準に採用されている。格下げとなればECBの評価引き下げを通じて、イタリアの銀行の資金調達コスト増大につながりかねないだけに、今年最も注目される事案の1つになりそうだ。

スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)キャピタルIQのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を使った推計モデルによると、イタリア国債に対する市場の実際の評価はDBRSの「A(低=Low)」より4段階も低く、通常であれば格下げされることを示唆している。

ただ、DBRSの首席アナリスト、ファーガス・マコーミック氏は、銀行大手モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)(BMPS.MI)の支援計画からは安心感を得たと発言。目下の鍵を握る問題は、モンテ・パスキの資本増強がイタリアの銀行システムに対する投資家の信頼回復につながるかどうかにあるとした上で、月内に決まる選挙法見直し案の内容が政局見通しにとって重大な要素になると予想した。

13日にはムーディーズによるポルトガルの格付け見直しも予定されている。また27日はムーディーズが、欧州連合(EU)離脱派が勝利した国民投票結果を受けて「ネガティブ」とした英国債の格付け見通しについて、判断を下す。

今年、投資適格級から転落する恐れが大きいとみられているのは、政治対立が続き経済が低迷している南アフリカだ。

S&Pは1年以上、格付けを投資適格最下位の「BBBマイナス」、見通しをネガティブとしている。ただ、正式な見直しは6月2日以降になる。S&Pより格付けが1段階高いムーディーズは、4月7日に見直す予定。S&Pと同じ格付けのフィッチは、その中間に見直しを行うだろう。

これら3社はいずれも、南アフリカが景気後退に突入するかどうか、中央銀行や財務相が政治圧力によって独立性を損なう事態になるかどうかを注視している。

一方、S&PキャピタルIQのモデルからは、一気に2─3段階の格下げがあると予想される。

欧州はイタリアを別にすれば、総じて格付け見通しは改善している。それでも英国のEU離脱(ブレグジット)問題は言うに及ばず、オランダ、フランス、ドイツと相次いで国政選挙が実施される状況を踏まえると、見通しが急速に悪化してもおかしくない。

(Marc Jones記者)

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選挙年の欧州でECB批判、ドラギ総裁の正念場
欧州諸国で選挙がある2017年は、ドラギ総裁にとって正念場となりそうだ

By TOM FAIRLESS
2017 年 1 月 13 日 16:45 JST

 【フランクフルト】ユーロ圏の大国で緊迫した選挙が相次ぐ2017年は、欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁が域内の政治家からやり玉に挙げられる恐れがある。

 ECBが量的緩和の規模を約5000億ユーロ拡大すると発表し、17年はほぼ現状維持とする考えを示唆してからまだ一月もたっていないというのに、欧州連合(EU)各国での反EU派の台頭を受け、ドラギ総裁に再び注目が集まっている。

 12日に公表された昨年12月分のECB理事会議事録によると、債券買い入れの延長期間を大方の予想よりも長い9カ月としたのは、「とりわけ政治環境に端を発する衝撃」によって生じかねない不安定な状況に対処するためだった。

 17年中に総選挙が行われるドイツ、フランス、イタリア、オランダの政治家は最近、ECBに対する「口撃」を強め、10兆ユーロ規模のユーロ圏経済に対する支援が不十分、あるいは支援が行き過ぎといった正反対の批判を展開している。いずれの国でもユーロ懐疑派政党が得票率を大きく伸ばす見通しで、主流派政党は重圧にさらされている。

 南欧諸国が景気低迷にあえぐ一方、12日発表の統計によると、ドイツは16年の経済成長率が1.9%と5年ぶりの高水準に加速し、財政収支も3年連続で黒字となった。3年連続で黒字を計上したのは少なくとも40年ぶりのことだ。

 ユーロ圏は各国の経済見通しに大きな差がある(失業率を見てもギリシャの23%からドイツの4%まで幅広い)ことが原因で右傾化が進んでおり、ドラギ総裁の市場との対話は難しさを増している。定例理事会後の総裁記者会見は、次回は1月19日を予定している。

 ドラギ総裁は、政治面で混乱が予想される17年を通して「冷静を保つ」と断言している。それでも、ドラギ総裁に次の一手を求める圧力は高まりそうだ。

 投資家はそのうち、現行の債券買い入れが期限を迎える17年12月以降にECBがどう動くつもりなのかについて情報を求めてくるだろう。

 ECBが債券買い入れを延長する、あるいは買い入れ規模を拡大する兆しを見せれば、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」などドイツ国内の反ECB派にとって格好の批判材料となるだろう。逆に、債券買い入れを終了する可能性を示唆すれば、債券市場に混乱が広がり、南欧諸国の国債利回りは急上昇しそうだ。その場合、イタリアなど景気低迷に苦しむ加盟国でユーロ懐疑派の勢いが増すことになる。

 ドイツ銀行のチーフ為替ストラテジスト、ジョージ・サラベロス氏は「米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げしても、それは米経済成長が加速するという見通しを反映したものであるため、ドルにとって好材料となる」が、「ECBが利上げすればイタリアは大変なことになる。ECBには良い選択肢が残されていない」と述べた。

 13年半ばにFRBのベン・バーナンキ議長(当時)が量的緩和縮小に着手するとほのめかした際、米国債の長期債利回りは急上昇し、ドル相場は大幅高となった。「テーパリングかんしゃく」として知られる出来事だ。

 ECBへの批判が再燃しているが、ユーロ圏経済は長年の低迷から抜け出しつつあるようだ。12日に発表された11月のユーロ圏鉱工業資産は前年同月比3.2%増となり、10月の0.8%増から伸びが加速した。また、域内の失業率は7年ぶりの低水準にある。さらに、ユーロは対ドルで等価(1ユーロ=1ドル)近辺まで下げ、域内輸出業者の追い風となっている。

 しかし、ユーロ圏の16年12月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比1.1%上昇と、3年ぶりの高い伸びとなったことで、欧州北部諸国から再び不満の声が出ている。これら諸国の政治家は以前から、低金利は貯蓄者を犠牲にして南欧諸国の借り手の負担を軽くしていると訴えてきた。

 あるドイツ紙は8日付の紙面に、赤目の怪物がユーロ紙幣を飲み込む姿を描いた風刺画を掲載し、インフレが「ドイツ国民の貯蓄をがぶ飲み」していると論じた。ドイツのアンゲラ・メルケル首相の側近、マーカス・ゼーダー氏は今月、ドイツの貯蓄者にとってECBの政策とインフレの上昇は「大惨事」だと忠告した。

 ドイツのIfo経済研究所のクレメンス・フュースト所長は「ドイツ経済はほぼ完全雇用状態にあるため、需要を刺激する必要など全くない」と話した。

 ドイツ以外のユーロ圏諸国では、ECBが導入した政策の景気刺激効果が限られていることに批判が集中している。

 フランスの極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首は先日、ユーロが経済成長を阻んでいるとして、フランスはユーロ圏から離脱すべきとの考えを示した。同氏は5月のフランス大統領選・決選投票に進むと目されている。

 イタリアのピエール・カルロ・パドアン経済・財務相は先月、異例の措置に出た。世界最古の銀行であるイタリアのバンカ・モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)について、ECBが約90億ユーロの資金調達が必要との判断を示したことを批判したのだ。コメディアン出身のベッペ・グリッロ氏率いるポピュリズム(大衆迎合主義)政党「五つ星運動」は、イタリアはユーロ圏から離脱すべきで、同国はECBと交戦中だと指摘している。同党の支持率は30%をうかがう勢いだ。

 グリッロ氏は最近のブログで、「ドイツ人が何もかも阻止している。(中略)ドイツ人のためだけに周縁国はユーロ圏という檻(おり)の中に閉じ込められている」と述べた。

 ドイツの懸念に配慮したかのように、ECBは昨年12月、月額800億ユーロとしている債券買い入れ規模を17年4月から600億ユーロに減額すると発表した。議事録では、複数の理事が債券買い入れの延長自体に反対したことも明らかになった。同措置に批判的なドイツ連邦銀行(中央銀行)総裁のイェンス・バイトマン理事もその一人だった。

 だが、毎月の買い入れ額を減らすだけでは不十分だったようだ。ドイツでは今年、銀行員やエコノミスト、政治家らが結束してECBに路線変更を求めている。フュースト所長は、ユーロ圏のインフレ率が1.5%に達したなら、ECBは4月にも債券買い入れの縮小に着手すべきだと提言した。ECBはインフレ率を2%弱で維持することを目標としている。

 ドイツ経済研究所(DIW)のマルセル・フラッシャー所長は、ドイツではECB関係者から出口戦略をにおわすような発言がないか誰もが耳を澄ましていると述べた。

 ECBは次第に量的緩和の縮小に傾いていく、といのがエコノミストらの見立てだ。ECBの債券買い入れは対象債券が徐々に減っており、副作用に対する懸念も高まっている。12月分の理事会議事録によると、買い入れ対象を拡大するため銘柄ごとの買い入れ上限を33%から引き上げるという選択肢は、法的リスクや信用面のリスクを伴う恐れがある。ドラギ総裁は加盟国政府に対し、成長支援策をより積極的に講じるよう繰り返し求めている。

 今のところ、量的緩和縮小について議論するのは時期尚早のようだ。ドラギ総裁によれば、ECB理事会では量的緩和縮小は議論すらされていない。

 JPモルガン・アセット・マネジメントのストラテジスト、サシュカ・マラハジ氏は「ECBがメッセージを調整するのはまだ早い」とし、食料品とエネルギー品目を除くコアのインフレ率が一貫して低い点を理由に挙げた。そうした懸念は昨年12月のECB理事会でも出ていた。

 それでも3月ごろには、量的緩和縮小に関してもっと情報を提供するよう求める声が投資家から出始めそうだとマハラジ氏は述べた。

 エコノミストの間では、ECBが量的緩和縮小に言及するのであれば、フランスの選挙後かつドイツの選挙前である夏場がふさわしいとの意見もある。

 元アイルランド中央銀行副総裁で、現在はBSI銀行のチーフエコノミストを務めるステファン・ゲルラッハ氏は「買い入れ縮小に言及し始めた時点で市場は大荒れとなるだろう」とし、「それでも、ECBはチェスの駒を動かし始めた」とし、今後、記者会見の雰囲気は変わり始めるだろうと述べた。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwj9idW57b7RAhUMtJQKHa0PAQMQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10558161838683014507104582556513060916878&usg=AFQjCNELBEvAK6fE4WlwoEivwuljFpt3Sw

 


コラム:
ドル120円は年後半まで持ち越しか

鈴木健吾みずほ証券 チーフFXストラテジスト
[東京 13日] - ドル円相場は今週に入り、2016年終盤の急激な上昇にブレーキがかかり、年初につけた1ドル=118円台から一時113円台まで調整した。

ここから103円方向か、それとも123円方向か。ロイター外国為替フォーラムの直近のバックナンバーリストを見ても、「強いドルが復活へ」「最強通貨は円か」などの表題が並び、専門家の見方も割れている。筆者もここで2017年のドル円相場の基本ビューを示しておきたい。

<想定レンジは110―125円>

結論から言うと、筆者は2017年9月までのドル円の想定レンジを110―125円としており、基本的にはドル高円安派だ。理由を3つ挙げるとすれば、1)世界的なリスクの後退、2)米国への期待、3)日銀の緩和継続、となろう。

2016年前半にドル円は20円以上もの大幅下落を演じたが、この間のドル指数はほぼ横ばいで、円指数が2割ほど円高になっていることを考えると主語はドルではなく円だ。

1月の日銀によるマイナス金利導入にもかかわらず円高になっていることから、ドライバーは金融政策ではなく原油価格下落や中国経済に対する懸念、これらが転じて米国経済の腰折れ観測につながったことや英国の欧州連合(EU)離脱決定などといったさまざまなリスクの高まりが「リスクオフの円高」をもたらしたと考えている。

しかし、世界経済のリスクは大きく後退した。原油価格は産油国の減産合意を経て安定に向かいつつあり、それ以外の商品市況も反発に転じている。中国は政策総動員で景気下支えに躍起だ。特に今年は秋に5年に1度の共産党全国代表大会を控えるなか、経済の大幅減速は政府が何としても抑え込むとみられる。

米国経済も緩やかな回復が確認され、トランプ次期政権下では加速期待が高い。英国のEU離脱問題はくすぶるものの、ソフトブレグジット(穏健な離脱)がメインシナリオだ。

足元、米国への期待が新興国・資源国からの資金流出につながるとの懸念もあるが、バーナンキショックのあった2013年頃とは環境が違ってきている。政策努力や通貨安によって経常収支など経済の耐性が高まっている国が増加しており、経済協力開発機構(OECD)が発表する景気先行指数を新興国・資源国の加重平均値で見ると、2011年以降の低下傾向がようやく止まり、昨年初を境に上昇に転じている。このような環境の改善はリスク回避の円高圧力を後退させるだけではなく、「リスクオンの円安」に向かう可能性も秘めている。

<110―117円が当面の主戦場>

米国に対する期待は、言わずもがなではあるが、トランプ次期政権の政策や連邦準備理事会(FRB)による利上げに対する期待だ。完全雇用のもとでの積極的な財政政策の発動は良くも悪くもカンフル剤となって株・金利・ドルを押し上げ、物価の上昇は利上げペースを加速させるとみられる。

すでに期待が先行しており、またFRBの利上げも1―2回程度にとどまる可能性はあるものの、それでもトランプ次期米大統領が選挙戦中に披露した景気刺激策を一定程度実行に移せば、相応のドル高圧力になるとみている。

一方で、日銀は現状維持を継続するだろう。日銀は昨年9月の金融政策決定会合で、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するオーバーシュート型コミットメントを導入している。昨年末に公表された11月の消費者物価上昇率は0.5%。安定的に2%を超えるにはまだ相応の時間がかかるだろう。

ただ、ドル円が120―125円を達成するのは年後半になるとみている。目先は、「昨年終盤の大幅上昇に対するテクニカル的な調整」「FRBの利上げ実施やトランプ氏の大統領就任による材料出尽くし感」「急激なドルや金利の上昇による米経済指標の悪化」などに加えて、3月にかけては英国のEU離脱問題に対するリスクが意識される可能性もある。

目先、1―3月期は予想レンジの下半分110―117円近辺が主戦場になる展開を想定、その後、トランプ新政権の政策やFRBの利上げペース、欧州での選挙結果などを確認しながら上昇する展開をメインシナリオにしている。

<テールリスクは3つ>

リスクシナリオとしては、「欧州の政治」「トランプ氏の言動」「米中の対立先鋭化」の3点を特に注視している。

英国のEU離脱がハードブレグジット(強硬な離脱)となる懸念や、今年予定されるオランダ、フランス、ドイツ(もしかするとイタリアでも)の選挙でポピュリズム・反EUの流れが強まれば世界経済の混乱の火種となりかねない。

また、昨年終盤以降の株・金利・ドルの上昇はトランプ新政権の政策に対する期待が原動力だ。今後のトランプ氏の発言や行動が米国の大統領にふさわしいものとならず、その政策の実現性に市場が疑問を抱けば、一気に期待は崩れるだろう。

加えて、トランプ政権下では中国との対立が強まりそうだ。すでにトランプ氏は南シナ海問題に言及し台湾の蔡英文総統と電話会談を行っている。初めての記者会見で言及した貿易赤字問題でも米国の対中貿易赤字額はダントツでトップ、3位の対日赤字の5倍を超える規模だ。実際、新政権の国務長官や米通商代表部(USTR)、新設された国家通商会議のトップには対中強硬派が指名されている。

一方で、前述の通り、中国では今秋に5年に1度の共産党大会が開かれ、習近平氏が党中央の「核心」として総書記に再任される予定だ。これがイコール2期目の国家主席への道となる。それだけに、中国は米国に対して弱気姿勢を示すことはできないだろう。中国と米国の摩擦や対立の先鋭化がドル円相場にどのような影響を及ぼすかは不透明要素が多いが、世界経済にとって大きなリスクとなる可能性がある。

これらはあくまでテールリスクであり、メインシナリオは前述の通りドル高円安方向だ。しかし、そのシナリオを狂わせるリスクとして、この3点に注目している。

*鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)


東京マーケット・サマリー・最終(11日) 2017年 01月 11日
コラム:「トランプ時代」の勝ち組と負け組、日本はどちらか 2016年 12月 05日
コラム:日ロ関係の複雑化招く「米中」要素=斉藤洋二氏 2016年 12月 27日
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-kengo-suzuki-idJPKBN14X0DG

 


 

【債券週間展望】長期金利は低下か、米大統領就任式や国債入札にらみ
船曳三郎
2017年1月13日 17:07 JST

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トランプラリー調整がポイント、米株に注視−マスミューチュアル
大統領就任演説、リスクアセットが好感する内容も−パインブリッジ

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iUef7ATWwIRY/v2/-1x-1.png

来週の債券市場では長期金利に低下圧力がかかりやすい展開が見込まれている。トランプ次期米大統領の就任式を20日に控え、政策期待で先行した株高・円安を修正する流れが続くとの見方が背景にある。一方、国内では20年債や5年債入札を控えて金利低下余地は限定的との指摘も聞かれている。
  マスミューチュアル生命保険運用戦略部の嶋村哲金利統括グループ長は、「基本的にはトランプラリーの調整がポイント」だとし、「鍵になるのはダウ工業株30種平均の2万ドル台乗せで、達成できれば心理的な節目から米株が調整売り優勢になる公算が大きい。トランプ大統領就任前の調整売りもありそうだ」と説明。米10年債利回りについては「2.2%以下にある窓を埋めなければ金利上昇は困難」とし、「円債にも金利低下圧力が加わりそう」とみる。
  今週の新発10年物国債345回債利回りは3連休明けの10日に付けた0.06%が上限となり、トランプ氏の会見内容を受けた株安・円高を背景に12日には0.04%まで低下した。

  来週20日には米国で第45代大統領の就任式が行われる。トランプ氏は11日の記者会見で、「米国を離れ、好き勝手に振る舞う企業には多額の国境税が課されるだろう」と発言。市場が注目していた財政拡大やインフラ投資など景気浮揚につながる政策に踏み込んだ内容に乏しく、失望につながった。
トランプ次期米大統領
トランプ次期米大統領 Bloomberg
  パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、「トランプ氏の記者会見では、具体的な政策がなかったということで債券が買われたが、オーバーリアクションだった」とし、「米長期金利は2.3%ちょうどをボトムに反転しかかっており、これ以上の金利低下は難しいのではないか」と指摘した。
  来週は17日に20年利付国債、19日には5年利付国債の入札が予定されている。岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、「入札が続くことが、相場の上値を抑える要因になる」と予想。その上で、「中短期国債には根強い投資家の需要が見込める一方、超長期国債利回りの低下余地は限定的と思われる」としている。
市場関係者の見方
◎マスミューチュアル生命保険運用戦略部の嶋村哲金利統括グループ長
*20年債入札、仮に米小売売上高が悪くてダウ平均が2万ドル達成ならずとも債券積み増しとなった場合は好調な結果になり得る
*基本的には不透明感が高い中、一定の需要に支えられ、金利上昇要因にはならない
*長期金利の予想レンジは0.00%〜0.06%
◎岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジスト
*米景気拡大期待や米利上げ観測の継続で米債利回りの大幅低下は見込みづらいが、株安・円高基調が回復するにはしばらく時間かかる
*日銀支店長会議では国内景気の緩やかな拡大基調が確認されよう。金融緩和姿勢に変化ないと思われるが、引き続き上値追いには慎重な投資家が多いだろう
*長期金利の予想レンジは0.03%〜0.07%
◎パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長
*20年債入札はショートカバーニーズが高く、無難に吸収される見込み
*ただ、5年債入札もあり、好調でも相場は上がらない展開か
*長期金利の予想レンジは0.03%〜0.08%
*T
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-13/OJPJT46KLVS501



きょうの国内市況(1月13日):株式、債券、為替市場
Bloomberg News
2017年1月13日 16:06 JST

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●日本株反発、決算評価の7&iなど小売買われる−円高一服で安心感も

  東京株式相場は反発。セブン&アイ・ホールディングスが急伸するなど好決算が評価された小売株が上げ、情報・通信や電力、パルプ・紙株など相対的に内需セクターが買われた。為替市場での急激な円高一服が安心感につながり、精密機器やゴム製品など輸出株の一角も堅調。
  TOPIXの終値は前日比9.48ポイント(0.6%)高の1544.89、日経平均株価は152円58銭(0.8%)高の1万9287円28銭。
  明治安田アセットマネジメントの杉山修司チーフストラテジストは、「日本株の買い圧力は想定以上に強い。日本銀行が1月末の金融政策決定会合で、長期金利のゼロ%誘導目標を解除する可能性を織り込み始めたのかもしれない」と言う。日銀が動けば、為替のドル安・円高要因になり得るが、「日本の景気の良さを投資家に印象づけるため、企業業績の改善期待が一段高まる」との見方も示した。
  この日の取引開始時は株価指数オプション1月限の特別清算値(SQ)算出で、ブルームバーグ・データの試算によると、日経平均型で1万9182円28銭。12日終値を47円58銭上回った。株式需給面での不透明材料を通過したことも、株価の堅調な動きにつながった。東証1部売買高は16億20万株、売買代金は2兆2566億円。SQ日だったが、代金は前日より5%減った。上昇銘柄数は1211、下落は613。
  東証1部33業種は小売やパルプ・紙、電気・ガス、精密機器、石油・石炭製品、ゴム製品、通信など30業種が上昇。その他製品や非鉄金属、鉄鋼の3業種のみ下落。売買代金上位ではKDDIやアスカネット、JR東海、長谷工コーポレーション、ディップが高い。発表した新ゲーム機「スイッチ」の価格は想定通りとみられた任天堂は、午後の取引で下げ幅を拡大。大株主の米投資会社が一部保有株を売却した西武ホールディングス、ニッケル需給の悪化が懸念された住友金属鉱山、台湾半導体大手の設備投資横ばい計画が嫌気されたSCREENホールディングスも安い。

●債券反落、米金利低下一服や日本株高で売り−超長期ゾーンには買いも

  債券相場は反落。前日の米国市場ではトランプ次期米大統領の経済政策に対する不透明感から債券高・株安の展開となったものの、その後米金利低下が一服し、日本株式相場が反発したことが売り材料となった。
  長期国債先物市場で中心限月3月物は、前日比変わらずの150円33銭で取引を開始した。いったん4銭高の150円37銭を付けた後、水準を切り下げ、150円19銭まで下落。結局は6銭安の150円27銭で引けた。
  みずほ証券の山内聡史マーケットアナリストは、「寄り付きは先物などはしっかりだったが、次第に上値の重い展開になった」と説明。「中期ゾーンの調整は今週序盤に買われた反動ではないか。米長期金利の低下が一服していることや、来週の20年債入札も意識されている」と述べた。
  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の345回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より0.5ベーシスポイント(bp)高い0.045%で始まり、一時0.055%まで上昇した。新発2年物の372回債利回りは0.5bp高いマイナス0.22%。11日にはマイナス0.25%と、新発として昨年11月以来の水準まで買われた。
  新発20年物の159回債利回りは横ばいの0.595%で開始し、0.60%を付けた後、0.59%に下げた。新発30年物の53回債利回りは0.5bp低い0.73%を付けている。
  財務省がこの日に実施した残存期間1年超5年以下を対象とした流動性供給入札の結果は、募入最大利回り較差がマイナス0.005%、募入平均利回り較差がマイナス0.013%となった。投資家需要の強弱を示す応札倍率は4.88倍と、前回の同年限入札の4.95倍から低下した。

●ドル・円が上昇、米金利持ち直しで一時115円台−米小売売上高に注目

  東京外国為替市場ではドル・円相場が上昇。トランプ次期米大統領の会見以降のドル売り・円買いの流れが一服し、今夜の米小売売上高や20日の米大統領就任式に注目が移る中、米金利の持ち直しや日本株の反発を背景に一時1ドル=115円台を回復した。
  午後3時半現在のドル・円相場は前日比0.1%高の114円86銭。前日の海外市場では113円76銭と昨年12月8日以来の水準までドル安・円高が進んだ後、米国株の下げ渋りや米金利の低下幅縮小を背景に114円台後半に戻した。この日の東京市場では、米金利の上昇を背景に一時115円18銭まで値を切り上げる場面が見られた。
  外為オンライン情報サービス室の佐藤正和顧問は、「ドル・円はトランプラリーが終わりそうな気配を見せているが、まだ完全に終わったとは言えない」と指摘。「来週の大統領就任演説で経済政策について何も発言しないということはないだろう」と言い、「すべてはトランプ氏次第というところもある」と語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-13/OJP9DS6K50XU01

http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/754.html

[IT12] コールセンターはあなたをどこまで知り得るか AIソフトで特徴を探り、相性の良いオペレーターを選ぶ
 


コールセンターはあなたをどこまで知り得るか
AIソフトで特徴を探り、相性の良いオペレーターを選ぶ

コールセンターの仕事は受け付けた注文を順番に処理することだったが、最新の人工知能ソフトのおかげで顧客に最も適したオペレーターにつなぐことが可能になった 
By RYAN KNUTSON
2017 年 1 月 13 日 15:42 JST

 次にカスタマーサービスに電話するとき、どのオペレーターが答えるかは、あなたのフェイスブックの書き込みで決まるかもしれない。

 米カジノ運営のシーザーズ・エンターテインメントや米携帯電話サービスのスプリントなどは、個々の客に合わせたきめ細かい対応をするため、ソーシャルメディアやその他の個人情報を一段と詳細にチェックしている。

 コールセンターの仕事は過去何十年も、受け付けた注文を順番に処理することだった。

 しかし、新進企業のアフィニティ・インターナショナル・ホールディングスはこれに変革を起こしたいと考える。同社の人工知能(AI)ソフトウエアは既に、数十社の計150カ所以上のコールセンターに導入済みだ。固定電話や携帯電話の番号で検索できる100種類のデータベースを調べ、電話をかけてきた客と最も相性の良いオペレーターを選び出す。こうしたマッチングにより、顧客満足度が高まり、売り上げが伸びる可能性があるという。

顧客のSNS投稿もデータに

 アフィニティの技術は顧客の利用履歴や信用状況といった情報だけでなく、フェイスブックやツイッターの投稿、リンクトインのページをくまなく探り、その行動について洞察を得ようとする。例えば販売業務であれば、特徴が似ている客との間で取引を成立させた実績があるオペレーターを選んでマッチングするのだ。

 「顧客に関してどれほど多くの情報を蓄積できるかを知ると、ちょっと圧倒され、時には怖くなることもある」。米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズの元幹部で、アフィニティの取締役ラリー・バビオ氏はこう話す。しかし、この技術のおかげで消費者体験の向上というメリットが得られるという。

 単純化した例で言うと、カリフォルニア州南部に住み、メキシコ旅行について頻繁に書き込みをする高所得者からの電話に対し、あるオペレーターが好成績を上げたとする。アフィニティのシステムでは、同様の客から今度電話がかかってきたらそのオペレーターにつなぐことになる。

 個人情報は、客とオペレーターを結びつける目的だけに使われ、オペレーターには相手の情報がわからず、マッチングの理由も知らされない。

 アフィニティの創業者であるジア・チシティー最高経営責任者(CEO、45)は、オペレーターが何千回か電話をとることで「その行動を正確に予測できるようになる」と話す。「機械学習の要領でわれわれはパターンを引き出すことができる。偶然よりも効率的な方法で」

個人情報をめぐる懸念も

 ただ、個人情報をめぐる懸念もある。デジタルマーケティングを研究するペンシルベニア大学のジョゼフ・トゥロー教授は「企業はわれわれの知らないデータを集め、どういう人物かに基づいて、偏見のある方法、もしくは有利な方法で、不当に選別するかもしれない」と話す。

 アフィニティの話では、検索に使うのは合法的に購入できるデータベースだけだという。情報サービス会社のエクスペリアンやアクシオムなどから得られる情報のことだ。ソーシャルメディア上の情報(旅行に出掛けた、特定の商品を購入したなど)は、アカウントが公開されている場合のみ利用する、とチシティーCEOは話す。顧客に関する情報はクライアントのシステムに保存し、アフィニティのサーバー上にはないという。

 アフィニティのシステムは、利用したときの売り上げの伸びに応じて料金がかかる仕組みだ。同社のソフトを利用している企業は、コールセンターの契約成功率が最大6%上昇したという。

 チシティーCEOは昨年の売上高を明らかにしなかったが、今年には黒字になる見通しで、新規株式公開(IPO)を検討していると述べた。2013年以降、4回の資金調達ラウンドで計6000万ドル(約68億円)以上を調達した。関係者によると、直近の資金調達ラウンドでの評価額は18億ドルだった。

 次にアフィニティが目指すのは、同社の技術をコールセンターだけでなく小売業界に導入することだ。開発中の顔認識ソフトは、店舗に入ってきた顧客を見分け、最適の販売員が応対に向かうことができるようにするものだという。

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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjC6dzo7b7RAhWCNJQKHbokAOEQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10558161838683014507104582554594086475680&usg=AFQjCNEjXCiHLSxXEygTbu_SANDxLgy18A



http://www.asyura2.com/14/it12/msg/222.html

[経世済民117] 16年の企業倒産件数、26年ぶり低水準 太陽光倒産、過去最多、撤退も ユーロ圏インフレ懸念行過 米卸売物価、小売売上上昇
16年の企業倒産件数、26年ぶり低水準 東京商工リサーチ
2017/1/13 14:35
 民間調査会社の東京商工リサーチが13日発表した2016年の全国企業倒産件数は、15年比4%減の8446件だった。8年連続で前年を下回り、1990年以来26年ぶりの低水準となった。金融機関が中小企業に対して、返済計画の変更要請に柔軟に応じていることが倒産件数の減少につながっている。「景況感の改善で企業の財務状況も改善の兆しがみられる」(東京商工リサーチ)という。

 産業別では全10業種の内、7業種で前年を下回った。建設業と小売業が8年連続で減少したほか、製造業と情報通信業も7年連続で減少した。

 負債総額は5%減の2兆61億円と2年ぶりに前年を下回った。製造業としては戦後最大となったパナソニックプラズマディスプレイ(負債額5000億円)が昨年11月に特別清算を申請したものの、負債1億円未満の小規模倒産件数が全体の7割を占めたこともあり、総額は減少した。

 中国景気の減速による倒産件数は15年(101件)とほぼ同数の100件だった。為替相場が円高基調で推移したことで、円安による倒産は92件と前の年に比べ4割減った。

 同時に発表した16年12月の倒産件数は、前年同月比2%増の710件と4カ月ぶりに増加に転じた。産業別に見ると全10業種のうちサービス業や建設業、卸売業など6業種で倒産件数が前年同月を上回った。一方で大型倒産が少なかったこともあり負債総額は55%減の1716億円にとどまった。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

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太陽光関連企業の倒産、過去最多に 撤退も相次ぐ (2017/1/12 17:24)

16年の倒産 建設は増加基調、出版関連の不振目立つ (2016/12/21 2:00) [有料会員限定]

「人手不足倒産」じわり増加 11月 (2016/12/8 17:33)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL13HI8_T10C17A1000000/

太陽光関連企業の倒産、過去最多に 撤退も相次ぐ
16年民間調べ
2017/1/12 17:24
 東京商工リサーチは12日、2016年の太陽光関連事業者の倒産件数が65件と調査を始めた2000年以降で最多となったと発表した。負債総額は242億4100万円にのぼる。政府が設けた再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)で、太陽光で発電した電力の買い取り価格が引き下げられたことなどが響いた。

 太陽光パネルの製造・販売や設置工事、コンサルティングを手掛けたり、同パネルを使って発電・売電したりする事業者の倒産状況を調べた。件数は15年から20.4%増え、12月は単月としては過去最多となる10社が倒産した。

 昨年の倒産企業の原因としては「販売不振」が最も多く、53.8%。「事業上の失敗」(16.9%)、「運転資金の欠乏」(12.3%)が続いた。

 福島第1原子力発電所の事故をきっかけに盛り上がった「太陽光バブル」はFITの買い取り価格引き下げで崩壊に向かっている。太陽光の1キロワット時あたり買い取り価格は2016年度にピークだった2012年度の40円より4割安い24円まで下落。2017年度にはさらに21円まで引き下げられることが決まっており、東日本大震災を契機に太陽光事業に参入した企業では撤退も相次いでいる。

 東京商工リサーチは「2017年は2016年以上のペースで淘汰が進むことが危惧される」とみる。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ12HQ0_S7A110C1000000/


 


ユーロ圏インフレへの懸念は行き過ぎ−ECBのビルロワドガロー氏
Carolynn Look、Alessandro Speciale
2017年1月13日 19:18 JST
欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバー、ビルロワドガロー・フランス銀行(中央銀行)総裁は、ユーロ圏のインフレ率上昇についての懸念は現時点では行き過ぎたものだと指摘した。
  同総裁はパリで金融業界幹部に対する年頭の辞で、「一部の人はインフレの再来を懸念しているようだ」と述べた上で、その懸念は「行き過ぎている。ECBが目指す2%の水準にも達していないのだから」と語った。
  ユーロ圏インフレ率の上昇ペースが「緩やか」にとどまるとともに、各国のインフレ率が2017年中に収束するだろうとの見通しも示した。
  次回のECB政策決定は19日の予定。
原題:ECB’s Villeroy Says Inflation Fears Are ‘Greatly Exaggerated’(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-13/OJPPUH6JIJUP01


 

ギリシャ支援で再交渉必要になるリスク、ドイツ総選挙控え−独財務相
Nikos Chrysoloras、Rainer Buergin
2017年1月13日 22:18 JST

ドイツのショイブレ財務相は、同国が総選挙を控えた時期にギリシャ向け金融支援で再交渉が必要になる可能性に言及した。国際通貨基金(IMF)がギリシャ支援から離脱すれば、新たな支援策への支持を議会に求めざるを得ないと発言した。
  ショイブレ財務相は南ドイツ新聞とのインタビューで、IMFが「何らかの理由で参加をやめると決定した場合、欧州通貨制度の中での解決」が代替策になるだろうと語った。その場合は支援についてギリシャと新たな交渉が必要になるとともに、「合意した条件を履行させることにおいて、欧州は大いに改善しなければならないだろう」と述べた。
  ドイツは2010年以来のギリシャ支援を承認する際、IMFの参加を前提条件としてきた。今回の発言はこの姿勢の転換を示唆する。ギリシャを持続可能な軌道に戻すため必要な支援の規模をめぐり、メルケル政権とIMFは不一致が続いていた。
原題:Schaeuble Sees New Greek Bailout Risk as German Elections Loom(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-13/OJPWDG6KLVRP01


 


12月の米卸売物価、0.3%上昇=労働省【1/13 22:31】
【ワシントン時事】米労働省は13日、12月の卸売物価指数(PPI、2009年=100)が110.9となり、季節調整後で前月比0.3%上昇したと発表した。エネルギーと食品を除いたコア指数は0.2%の上昇となった。前年同月比では全体が1.6%上昇、コアは1.6%上昇だった。

市場予想(ロイター通信調べ、中央値)は全体が0.3%上昇、コアは0.1%上昇だった。

一方、エネルギーと食品、貿易サービスを除いた指数は0.1%上昇した。

12月の卸売物価指数のうち、モノは0.7%上昇、サービスは0.1%上昇。モノのうち、エネルギーは2.6%上昇で、このうちガソリンは7.8%上昇した。食料品は0.7%上昇、医薬品は0.1%低下。乗用車は1.1%上昇、小型トラックは1.3%上昇。

サービスのうち貿易は0.2%上昇、運輸・倉庫は0.4%低下、医療保険が0.2%上昇だった。

この他、個人消費は0.2%上昇。建設は0.1%低下。輸出はモノとサービス全体で0.5%上昇、政府部門は0.5%上昇した。

情報提供:株式会社時事通信社株式会社時事通信社

12月の米小売売上高、0.6%増=商務省【1/13 22:30】
【ワシントン時事】米商務省が13日発表した12月の小売売上高は季節調整後で4690億9200万ドルと、前月比0.6%増加した。

小売売上高は、変動の激しい自動車・同部品ディーラーを除くと0.2%増、ガソリンを除くと0.5%増、自動車・同部品とガソリンを除くと横ばいだった。

市場予想(ロイター通信調べ)は全体が0.7%増加、自動車・同部品を除くと0.5%増加で、いずれもこれらを下回った。

部門別に見ると、ガソリンスタンドが2.0%増(前月横ばい=改定)、自動車・同部品は2.4%増(同0.2%減=同)。食品・飲料は0.3%減(同横ばい=同)、衣料は横ばい(同横ばい)。一般量販店は0.5%減(同0.1%増)、このうちデパートは0.6%減(同0.2%減)。ネットなど無店舗販売は1.3%増(同0.3%増=同)、電子機器・家電は0.5%減(同0.1%増)、建築資材関連は0.5%増(同0.6%増=同)だった。

また、前年同月比では全体が4.1%増、自動車・同部品を除くと3.4%増。11月は当初発表の0.1%増加から0.2%増に改定された。

12月の米卸売物価、0.3%上昇=労働省【1/13 22:31】
【ワシントン時事】米労働省は13日、12月の卸売物価指数(PPI、2009年=100)が110.9となり、季節調整後で前月比0.3%上昇したと発表した。エネルギーと食品を除いたコア指数は0.2%の上昇となった。前年同月比では全体が1.6%上昇、コアは1.6%上昇だった。

市場予想(ロイター通信調べ、中央値)は全体が0.3%上昇、コアは0.1%上昇だった。

一方、エネルギーと食品、貿易サービスを除いた指数は0.1%上昇した。

12月の卸売物価指数のうち、モノは0.7%上昇、サービスは0.1%上昇。モノのうち、エネルギーは2.6%上昇で、このうちガソリンは7.8%上昇した。食料品は0.7%上昇、医薬品は0.1%低下。乗用車は1.1%上昇、小型トラックは1.3%上昇。

サービスのうち貿易は0.2%上昇、運輸・倉庫は0.4%低下、医療保険が0.2%上昇だった。

この他、個人消費は0.2%上昇。建設は0.1%低下。輸出はモノとサービス全体で0.5%上昇、政府部門は0.5%上昇した。

情報提供:株式会社時事通信社株式会社時事通信社
Copyright(c) JIJI PRESS LTD., All Rights Reserved.
12月の米小売売上高、0.6%増=商務省【1/13 22:30】
【ワシントン時事】米商務省が13日発表した12月の小売売上高は季節調整後で4690億9200万ドルと、前月比0.6%増加した。

小売売上高は、変動の激しい自動車・同部品ディーラーを除くと0.2%増、ガソリンを除くと0.5%増、自動車・同部品とガソリンを除くと横ばいだった。

市場予想(ロイター通信調べ)は全体が0.7%増加、自動車・同部品を除くと0.5%増加で、いずれもこれらを下回った。

部門別に見ると、ガソリンスタンドが2.0%増(前月横ばい=改定)、自動車・同部品は2.4%増(同0.2%減=同)。食品・飲料は0.3%減(同横ばい=同)、衣料は横ばい(同横ばい)。一般量販店は0.5%減(同0.1%増)、このうちデパートは0.6%減(同0.2%減)。ネットなど無店舗販売は1.3%増(同0.3%増=同)、電子機器・家電は0.5%減(同0.1%増)、建築資材関連は0.5%増(同0.6%増=同)だった。

また、前年同月比では全体が4.1%増、自動車・同部品を除くと3.4%増。11月は当初発表の0.1%増加から0.2%増に改定された。

http://fx.dmm.com/market/news/

ドル円は米経済指標発表後に上下に振れる=NY為替
配信日時 2017年1月13日(金)22:48:00 掲載日時 2017年1月13日(金)22:58:00
 ドル円は、12月の米小売売上高と12月の米生産者物価指数の発表後にいったん114.19近辺まで下値を切り下げたが、すぐに115円手前まで反発する場面もあるなど、上下に振れている。
 
USD/JPY 114.68

米国経済指標【小売売上高】
配信日時 2017年1月13日(金)22:30:00 掲載日時 2017年1月13日(金)22:40:00
小売売上高(12月)22:30
結果 0.6%
予想 0.7% 前回 0.2%(0.1%から修正)(前月比)
結果 0.2%
予想 0.5% 前回 0.3%(0.2%から修正)(自動車除くコア・前月比)


米国経済指標【生産者物価指数】
配信日時 2017年1月13日(金)22:30:00 掲載日時 2017年1月13日(金)22:40:00
生産者物価指数(12月)22:30
結果 0.3%
予想 0.3% 前回 0.4%(前月比)
結果 1.6%
予想 1.6% 前回 1.3%(前年比)
結果 0.2%
予想 0.1% 前回 0.4%(食品エネルギー除くコア・前月比)
結果 1.6%
予想 1.5% 前回 1.6%(食品エネルギー除くコア・前年比)
http://klug-fx.jp/fxnews/
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/757.html

[不安と不健康18] ゆるやかな糖質制限食「ロカボ」で健康的に痩せられる理由 心のもやもや不快な気分を一瞬でスッキリする!思考を現実化するコツ
THINK!来月の健康
【第1回】 2017年1月14日 西田佐保子 [ライター]
ゆるやかな糖質制限食「ロカボ」で健康的に痩せられる理由
今年こそはダイエットを! そう誓いながらも、ビールやから揚げ、ケーキの誘惑に負け、新年早々に挫折してしまう――、そのような経験はありませんか。「お酒も揚げ物もスイーツも食べて大丈夫」。そう話すのは、ゆるやかな糖質制限食「ロカボ」を提唱する北里大学北里研究所病院糖尿病センター内分泌・代謝内科センター長の山田悟さんです。おいしく痩せて健康になるロカボについて山田さんに聞きました。

ダイエットだけじゃないロカボの効果


「ロカボ」で正月太りを解消!
 糖質制限という言葉を耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか。私の提唱するゆるやかな糖質制限食「ロカボ」は、英語で低糖質の意味を持つ「ロー・カーボハイドレート(Low Carbohydrate)」の略称です。毎日の食事から糖質を抑え、たんぱく質、脂質などを満腹感が得られるまで食べて、無理せず、おいしく、ダイエットできる食事法です。

 2012年、国際肥満学会(ICO)の機関紙『Obesity Reviews』に掲載された、最も信頼性の高い研究試験法である無作為比較試験のメタ解析(複数の研究を統計的に分析する手法)の結果によると、糖質制限食は体重減量だけでなく、脂質、血糖、血圧の改善にも有効であるとされています(*1)。

 糖質とは、多糖類(デンプン、グリコーゲンなど)、二糖類(麦芽糖、ショ糖など)、単糖類(ブドウ糖、果糖など)、そしてオリゴ糖、糖アルコール類に分類されます。糖質を多く含む食品は、ごはん、芋類、根菜、果物、お菓子、ジュースなどで、みりん、蜂蜜などの調味料にも多く含まれます。

 一方で、糖質含有量の少ない食品は、肉、魚、大豆製品、葉野菜、ナッツなどです。

http://diamond.jp/mwimgs/c/5/600/img_c58797a1616d2acbe8fbea0b82206a5d348296.jpg
出典:一般社団法人 食・楽・健康協会
糖質量を守れば満腹感を得るまで食べてOK

 ロカボは、1日3食とし、1食当たりの糖質量を20〜40g、おやつとしてのスイーツは糖質10gまでとし、トータルの糖質を1日に70〜130gとする食事法です。日本人は平均で、一食当たり90〜100g、1日270〜300gの糖質を取っているので、その半分弱と考えてください。

 ごはんやパンなどを通常の半分〜3分の1程度にして、おかずを満腹感が得られるまで食べます。肉、野菜、乳製品、植物性脂質、動物性脂質などは、栄養バランスやカロリー、コレステロールを気にせずに摂取してください。

 なお、マーガリンやショートニングなどのトランス脂肪酸、過酸化脂質は避けましょう。食品100g当たりの糖質量(g)については、「食・楽・健康協会」サイト内の表「食品100g中の糖質量」(PDF)が参考になると思います。

 お酒も「百薬の長」程度であれば、ロカボの面では問題ありません。比較的糖質の多い日本酒でも1合に含まれる糖質は8〜9gなので、主食を抜けば2合程度までは楽しめます。スイーツも大丈夫。糖質の少ない人工甘味料の活用した「ロカボスイーツ」もコンビニや洋菓子店でも販売されています。

血糖値を上昇させるのは糖質のみ

 糖質制限の目的は、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)の上昇を抑えることです。血糖値を上げる唯一の栄養素である糖質は体内でブドウ糖に変換され、血糖値を下げることができるホルモン「インスリン」により、細胞のエネルギー源として活用されます。

 しかしエネルギーとして使い切れないブドウ糖は肝臓と筋肉にグリコーゲンとして貯蔵され、さらに余剰のブドウ糖は脂肪細胞(特に内臓脂肪)に運ばれ、中性脂肪として蓄えられます。糖質の摂取過多がメタボリックシンドロームにつながるのはこのためです。

 通常、食後約2時間で血糖値は低下し、空腹時の状態に戻ります。食後高血糖とは、インスリンが何らかの原因で効かず、血糖値が140mg/dL以上に上昇することです。食後高血糖や極端な血糖値の上下動は、血管を傷つけ、心臓病や脳梗塞などのリスクを高めます。

 さらに、食後高血糖により生じる酸化ストレスは、がんの発症に関わっています。また、食後高血糖は糖尿病の初期にみられ、放っておくと空腹時血糖値も高い状況が続く糖尿病へと進行していくのです。

 日本人は、約2000万人、6人に1人が血糖異常であると言われています。特に、東アジア人は欧米人に比べ、インスリンを分泌する力が弱い人種です。糖質を抑えることで、血糖値を低く抑えるのが特に日本人で大切なのはそのためです。

 血糖値を上げないためには、食べる順番も重要。最初に脂質とたんぱく質、最後に炭水化物を取ると血糖値の上昇を抑えられます。ご飯も単品ではなく、魚や肉などと一緒に食べましょう。

 100gの糖質を単独で摂取した時に比べ、同量の糖質を「たんぱく質と一緒に摂取したとき」の方が、さらに「たんぱく質と脂質と一緒に摂取したとき」の方が、血糖値が上がりにくくなります。ご飯だけよりも卵かけご飯、卵かけご飯よりチャーハンの方が血糖値は上がりにくいのです。

栄養バランス、カロリー制限神話を疑え

 食事は栄養バランスが大切、と聞いたことはありませんか。厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(15年版)』では、三大栄養素の構成比率を、たんぱく質13〜20%、脂質20〜30%、炭水化物50〜65%と定めています。しかし、この数値にそもそも科学的根拠はありません。

 カロリー制限食に関しても同様です。肥満症の人が治療目的で医師のもと安全性を確保しながら行うのであればその意義を否定しませんが、一般の人にはお勧めできません。

 13年に米国糖尿病学会(ADA)で報告された「Look Ahead研究」では、10年間、腹八分目のカロリー制限を続けた結果、体重は減り、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー:1〜2ヵ月の血糖の平均値を示す数値)も低下しましたが、心臓病のリスクは全く減っていませんでした(*2)。逆にカロリー制限により、大腿骨近位部の骨密度は減少してしまっていたのです(*3)。

ゆるやかな糖質制限を目指す理由

 ロカボでは糖質の摂取量に下限(1食20g、1日70g)を設けていますが、それには理由があります。

 細胞はブドウ糖と脂肪酸をエネルギー源にできるものの、赤血球はブドウ糖のみをエネルギー源とします。また、脳には血液脳関門という障壁があり、脂肪酸が入れません。脳と赤血球が使うブドウ糖の量は1日約130g〜150gです。一方、たんぱく質や脂質の摂取により、肝臓は150gのブドウ糖を生成できるので、理論的には、糖質を口から摂取する必要はありません。

 ただし、糖質の摂取量を50g以下に抑えると、肝臓は脂肪酸からケトン体という物質を生成します。ブドウ糖が枯渇すると、ケトン体は脳のエネルギー源となります。そのため、糖質摂取量が少ない際にブドウ糖を利用するのは赤血球だけとなり、脳を含め、赤血球以外の細胞はブドウ糖の利用を避けることができるのです。

 しかし、ケトン体産生食により血管内皮細胞に障害を起こす可能性(*4)や、ケトアシドーシスという危険な状態を引き起こす可能性もあります(*5)。そのため、現時点では安全性は担保されていないと考えられ、私はケトン体の生成を避けるべく、糖質摂取量の下限を設けています。

 今年、米国糖尿病学会の機関誌『Diabetes Care』に、血糖降下作用を持つ「SGLT2阻害薬」の投与により、体内で増加したケトン体が心臓や腎臓でエネルギー源として利用された結果、心不全、心血管死亡や腎臓病を防いだ可能性があるという2つの報告が掲載されました(*6)。

 これから、ケトン体が生体内に及ぼす医学的な影響についての研究がさらに進展することになるでしょう。その結果を待ってから、改めてケトン体産生食の意義、安全性を判断したいと思っています。

 一方、野菜や乳製品などにも糖質が含まれています。厳密に糖質をカットするとビタミン不足になる恐れがあり、サプリメントが必要になります。さらに、食べられる食品が極めて限られてしまうことになり、食事の楽しみを奪う可能性が高くなります。これらが極端な糖質制限食の最大の問題点だと言えるでしょう。

なぜ糖質制限は批判されてきたのか


山田悟(やまだ・さとる)/北里大学北里研究所病院糖尿病センター内分泌・代謝内科センター長。一般社団法人 食・楽・健康協会理事長。1970年東京都生まれ。慶応大学医学部卒業後、同大学内科学教室に入局。東京都済生会中央病院などの勤務を経て、02年から北里研究所病院で勤務。07年から現職。主な著書(編集・共著含む)に、『緩やかな糖質制限 ロカボで食べるとやせていく』(幻冬舎)、『正しくやせて健康になる Dr.山田の新・糖質制限食事法』(高橋書店)、『糖質制限食のススメ』(東洋経済新報社)など。
 1970年代に糖質制限を世界で初めて実践したのは、アメリカ人医師のリチャード・K.バーンスタインです。同時期に、アメリカ人医師のロバート・アトキンスも、肥満の治療食として糖質制限を導入し、『ダイエット・レボリューション』という書籍を出版しました。

 しかし当時、脂質の摂取量と動脈硬化の発生頻度が比例関係にあるという研究データが報告されており(*7)、糖質制限食は批判されました。

 時を経て07年3月、米国医師会雑誌『JAMA』に、BMI値(Body Mass Index:日本肥満学会ではBMI25以上を肥満と定義(*8))27を超えるアメリカ人女性311人を対象に行われた4つの食事法の比較試験(ATOZ試験)において、糖質制限食が最も減量に成果があったとする研究論文が掲載されました(*9)。

 08年には、糖質制限食の検証試験(ダイレクト試験)の結果が臨床医学雑誌『The New England Journal of Medicine』に報告されました(*10)。

 BMI値27を超える322人のイスラエル人を対象に行われた減量法の実験において、体重減少に最も一番効果があったのが「C.カロリー、脂質、たんぱく質を気にせず摂取。糖質のみ上限120g」、続いて「B.脂質をしっかり摂取するカロリー制限食」、最も効果がなかったのが「A.脂質を控えたカロリー制限食」でした。また、最も血糖中の中性脂肪、HbA1cを低下させ、善玉コレステロールを増やしたのもCでした。

 私たちも、200人の日本人にロカボを実践してもらい、体重と血糖の改善度合いを体格別に見ました。すると体格にかかわらず、ロカボ食によって血糖が改善。肥満度の高いグループは大幅に体重が減り、肥満度が中程度のグループでも体重は減り、普通体形では変化なし、低体重のグループでは体重が増えました。ロカボは全ての人を理想的なプロポーションにする食事法であることが判明しました。

 私自身も、カロリー制限でダイエットを試みた経験がありますが失敗しました。その後、糖質制限を実践して成功。米国糖尿病学会では08年から糖質制限食を糖尿病の正規の治療法として取り入れています。そこで私も糖尿病の患者さんにもロカボを勧めたところ「これなら続けられる」と喜んでくれました。

 私たちは、おいしく楽しく食べて、健康になれる世界を実現し、広めていくことを目的に、一般社団法人食・楽・健康協会を設立しました。ロカボを実践しやすいロカボフーズや、ロカボメニューのあるレストランなどの最新情報を提供しています(https://locabo.net/dictionary/)。

 手軽に誰でも実践できるロカボでおいしく健康な毎日を実現しましょう。

(*1)Obes Rev 2012,13,1048-1066
(*2)N Engl J Med 2013,369,145-154
(*3)Diabetes Care 2014,37,2822-2829
(*4)Br J Nutr 2013,110,969-970
(*5)N Engl J Med 2006,354,97-98
(*6)Diabetes Care 2016,39,1108-1114、Diabetes Care 2016,39,1115-1122
(*7)J Mt Sinai Hosp NY 1953,20,118-139
(*8)BMI=体格を表す指数。算出方法は、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
(*9)JAMA 2007,297,969-977
(*10)N Engl Med 2008,359,229-241
(取材・構成/西田佐保子)
http://diamond.jp/articles/-/114199

そうか!これが思考を現実化するコツ
【第5回】 2017年1月14日 エスター・ヒックス ジェリー・ヒックス,秋川一穂
心のもやもや、不快な気分は、
こうすると一瞬でスッキリする!
不快なことが起こったり、苦手な人と接したり、人から愚痴を聞かされたりして気分が落ちた時に、みるみる心が晴れる画期的な方法がある。それは「感謝する」こと。その具体的なやり方を紹介しよう。


 誰だって、いい気分で常にいたいものですが、不快なことが起こったり、苦手な人と接したり、人から愚痴を聞かされることもあったりして、なかなかそうはいかないものです。
 気持ちが落ちてしまった時に気分を上げて、心をスッキリさせたいならば、まずは「感謝してみる」ことを試してください。

「感謝する」ことや「ありがとう」と言うことが幸運を呼び込むコツだということはよく聞きますが、それは「引き寄せの法則」でも例外ではありません。
 ここでは、引き寄せの法則の第一人者であるヒックス夫妻が提案している「感謝する」プロセスを紹介します。

「感謝する」プロセスの
具体的な方法とは

 この「感謝する」プロセスは、次のような場合に効果を発揮します。

*いい気分をもっとよくしたいとき
*誰か、もしくは何かとの関係を深めたいとき
*今のいい気分を維持したい、あるいはもっとよくしたいとき
*今よりも気分をよくする事柄に焦点を定めたいとき
*車を運転中、歩行中、あるいは列に並んでいる最中に何か生産的なことをしたいとき
*いやな感情が湧きそうなときに、自分の発する波動をコントロールしたいとき
*あなたの思考、もしくは一緒にいる誰かの言葉がよくない方向に向かう恐れがあり、その方向をよい方向に向けたいとき
*いやな感情が湧いていることに気づいていて、気分を変えたいとき

 このプロセスはいつ、どこででも実践できます。頭の中で思考を快適な方向に定めるだけの簡単なものです。
 思考を紙に書き出せばより効果的ですが、必須ではありません。

 周囲に目を向けることから始めて、喜びを与えてくれるものに少しずつ気づいていきます。
 心地よい対象に関心を向け続け、それがどんなに素晴らしいか、美しいか、役に立つかを考えてみましょう。長く関心を向けているうちに、その対象についての肯定的な感覚が増します。

 気分がよくなったことに気づいたら、その感覚を認めましょう。
 最初と比べていい気分が強くなったら、次に肯定的な関心を向ける対象、喜びを与えてくれる対象を選びます。
 感謝の気持ちが無理なく湧いてくる対象を選びましょう。このプロセスの目的は、問題を見つけて正すことではなく、よりいい気分に至ることです。気分のいい物事に長く焦点を定めていれば、それだけいい気分を保つのが楽になります。

 このプロセスを始めたときに目指したいい気分へと短時間で楽に上がっていけるようになれば、時間が許すかぎり、またいい気分が続くかぎり、「感謝する」プロセスを続けてください。

 最初はこのプロセスに一日10〜15分、あてるとよいでしょう。数日間、いい気分を意図的に保つことに恩恵が感じられたら、あまりの心地よさに毎日、短時間ずつ何度でも実践できるようになるはずです。

 たとえば、郵便局で順番待ちをしながら、次のように考えるかもしれません。

 この建物はとてもすてき。
 この場所はいつも清潔に保たれていて素晴らしい。
 郵便局の職員が親切でうれしい。
 お母さんと子どものやりとりがほほえましい。
 今日も順調だわ。

 あるいは車で通勤中に、こう考えるかもしれません。

 私はこの車が気に入っている。
 この新しい高速道路は快適だ。
 雨が降っていても、楽しい時間を過ごしている。
 私の車は頼りになる。
 私は自分の仕事に感謝している。

 感謝する対象に焦点を定めて、別の理由を見つけてもいいでしょう。
 たとえば、次のように。

 この建物はとてもすてき。
 前の郵便局よりも駐車スペースがずいぶん増えた。
 カウンターも増えて、順番待ちの時間が短くなった。
 窓が大きくて解放感がある。
 この新しい高速道路は快適だ。
 信号がないので、速度を落とさずにすむ。
 以前よりもかなり速く走れる。
 途中で美しい景色を楽しめる。

 感謝する対象を見つけることに心が向くようになると、あなたの一日は感謝できる物事にあふれているのに気づくでしょう。感謝する思考と感情が自然に湧いてくるようになります。

1つ感謝すると、
次々と感謝できるものがやってくる

 何かに感謝し、称賛し、気分がよくなるたびに、あなたは宇宙に「感謝できる対象をもっと与えてください」と言っているのです。
 とはいえ、このような思いを口にする必要はなく、あなたがいつでも感謝ばかりしているなら、あらゆるいいことが流れてきます。

 たびたび次のような質問を受けます。
「感謝するというよりも、愛という言葉のほうがふさわしくありませんか?
 愛のほうが“見えない世界のエネルギー”をうまく表現してはいませんか?」

 愛と感謝は波動が同じです。
 ありがたいという感覚で表現する人もいますが、いずれの言葉も“無上の幸福”を言い表しています。感謝したいという思いは最初のステップとして好ましく、「ありがとう」と言いたくなる対象が増えれば、たちまち勢いが生まれます。感謝の気持ちを感じたいと思えば、その対象が引き寄せられます。感謝すれば、他の感謝できる対象が引き寄せられ、やがてあなたは次々に感謝するようになります。

嫌いな人を変えることはできない。
そんな時は感謝してみよう

 怒り、失望、あるいは苦しみを表現している不幸な人に出会う日があるかもしれません。
 そんな人にいやな感情を向けられたら、彼らに感謝するのは難しいかもしれません。いやな感情を向けてきた人に感謝できるだけの強さがないという理由で、あなたは自分を責めるかもしれません。
 私たちは何も、望まないものを直視して、いい気分でいなさいとは言いません。そんな人や出来事に出会ったら、気分がよくなるものを探してください。

 感謝する対象を探しているとき、人にどう思われるかではなく、自分がどう思うかに関心を向ければ、自分の経験をコントロールできます。
 今日、彼らの離婚の原因を作ったのが誰か、彼らの銀行口座から金を盗んだのが誰か、あなたは知りません。よって彼らが否定的な反応を示す理由もわかりません。あなたはその状況をコントロールできないのです。
 自分の気分がよくなる以上に重要なことはないと決意すれば、また、今日は感謝する対象を意識して探そうと決意すれば、あなたが関心を向けた対象が感謝の気持ちをもたらしてくれます。

人生経験は、
あなたの送るエネルギーに左右されている

 あなたの経験に影響を及ぼすのは、エネルギーをどう送っているかだけだということを理解せずに、チャンスや運や偶然や統計が経験を左右すると考えているとします。
 その場合、たとえば殺人犯が逃走中で、車から発砲しているとニュースで知ったとしたら、あなたの幸せ、すなわち“無上の幸福”は犯人の行動に左右されると考え、自分は無防備だと感じるでしょう。
 あなたの“無上の幸福”が犯人の行動によって決まり、あなたにはその男をコントロールできず、男の居場所もわからないとなると、無防備だという思いはいっそう強くなります。

 悪い人が戻ってきても状況は変わらないと思い出すのです。
 感謝することに集中していれば、感謝する気持ちはすぐに戻ってきます。感謝の気持ちが戻ってくるのを期待するのではなく、その気持ちを意図的に自分の中に湧き出させるのです。
http://diamond.jp/articles/-/113600

http://www.asyura2.com/16/health18/msg/300.html

[経世済民117] ドキュメンタリーWAVE「マイホームを奪わないで〜モスクワ 経済危機の冬」 支援くれ、外貨建ローン膨れ、市民ら怒りの集会
ドキュメンタリーWAVE「マイホームを奪わないで〜モスクワ 経済危機の冬〜」地域: 東京 ステレオ
BS1
番組ホームページへ シェアするhelptwitterfacebookgoogle
チャンネル [BS1]
2017年1月15日(日) 午後10:00〜午後10:50(50分)
ジャンル ドキュメンタリー/教養 > 社会・時事
ニュース/報道 > 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 > ドキュメンタリー全般
詳細原油価格の急落などを背景に、ロシアでは、貧困層が年間300万人増加。リーマンショック以来のマイナス成長に陥り、ルーブルはドルに対して約半分に下落した。外貨建てで住宅ローンを借りた人たちは、ルーブルの下落で返済額が膨れ上がっている。住宅ローンが払えなくなり、住み慣れた家の立ち退きを迫られる人も増えている。モスクワで経済危機に直面した人々の“冬”を見つめる。
番組内容原油価格の急落などを背景に、ロシアで貧困層が年間300万人急増。住宅ローンが払えず、立ち退きを迫られる人も増えている。経済危機に直面した人々の“冬”を見つめる。
https://bh.pid.nhk.or.jp/pidh07/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20170115-11-29116


 
「日本でも中国でもいいから支援くれ」 制裁で外貨建てローン膨れ、モスクワで市民ら怒りの集会


5日、モスクワ市中心部の地下鉄駅前で集会を開く外貨建てローンの債務者ら(黒川信雄撮影)
 【モスクワ=黒川信雄】ドルやユーロなどの外貨建てで住宅ローンを組み、通貨ルーブルの暴落で返済が困難になった人々が5日、モスクワ市内で政府に支援を要請する集会を開いた。

 ロシアでは、2008年のリーマン・ショック以前に銀行が積極的に外貨建てローンを提供したとされる。ルーブルの価値は原油安や欧米の経済制裁の影響で、14年以降急落。過去10年間では対ドルで半分以下に落ち込んでおり、外貨でローンを組んだ人はルーブルでの返済額が膨れあがっている。

 シングルマザーで幼い子供を育てているというユーリャさんは07年にローンを組み、現在も6万4千ドル(約730万円)の残債がある。「銀行から、ドル建てでなければローンを組めないといわれた。リスクについては何も説明がなかった」と憤った。中年の女性は記者に「日本でも中国でもいいから人道支援をしてくれ」と訴えた。

 6万ドルの残債があるロマンさんは「銀行は学生にすら住宅ローンを貸していた。借りた方にも責任があるが、危険な状況を知りながら放置していた国にも責任がある」と主張した。
http://www.sankei.com/world/news/160306/wor1603060012-n1.html
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/771.html

[政治・選挙・NHK219] 2020年までに全面禁煙? 飲食業界、一律規制に反対の声 石破茂「知恵がない」 9割が恋愛に影響 ロシア、買えないように

2020年までに全面禁煙? 飲食業界、一律規制に反対の声 TBS News i 2017年1月12日 19時12分 (2017年1月13日 07時50分 更新)

 
 レストランなどで気になるたばこの煙。世界的にみると、全ての公共の建物内での喫煙を国の法律で禁止しているのは49か国。欧米は州ごとに規制していますから、先進国の中での日本の遅れは際立っています。政府は、東京オリンピックに向けて飲食店などでの禁煙を検討していますが、業界からは反対の声があがっています。
 こちらは都内の居酒屋。売りは、厚切りの真鯛を贅沢に盛り付けた「ひつまぶし」など、築地直送の新鮮な食材です。日本酒は入場料を払うと原価で飲める仕組み。ただ売りは、それだけではありません。

 「全席禁煙、たばこが一切吸えない」(日本酒原価酒蔵 奥村敬三ブランドマネージャー)

 自慢の料理やお酒を最大限楽しんでもらうため、店内を全席禁煙にしているのです。

 「(たばこのにおいが)髪の毛や洋服につかないのがいい」(お客さん)
 「たばこのないところの方がお酒のおいしさを感じる」(お客さん)

 でも、売り上げに影響はないのでしょうか?

 「禁煙の店に変えた結果、毎月の売り上げが1.5倍くらいの推移。好評です」(日本酒原価酒蔵 奥村敬三ブランドマネージャー)

 飲食店の全面禁煙。これが当たり前の姿になるかもしれません。厚生労働省は現在、飲食店やホテルなどについて、喫煙室を除き建物内を禁煙にし、違反した場合の罰則を設ける対策を検討しています。他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙を防ぐのが目的です。

 対策を急ぐ理由の一つが3年後に迫る東京オリンピック。海外から来た旅行客に、たばこ事情について聞いてみると・・・

 「日本では、どのレストランでも誰でもたばこを吸うことができる。本当に驚いているよ」(アメリカ人)

 海外で先行する禁煙。対策の遅れが指摘される日本としては、オリンピックまでにルールを作りたいのです。ただ、全ての飲食店が歓迎しているわけではないようです。

 香川の焙煎所で煎られたコーヒーと、この一服。国が進める禁煙策について客は・・・

 「コーヒーとたばこを一緒に楽しめることが目的。もう来なくなる可能性もある」(お客さん)

 一方、店の店主も、喫煙室の設置は難しいといいます。

 「喫煙室を設置する場所はない。正直、困ります。(屋内の喫煙が)ダメと言われたら、廃業、潰れます、店」(スモーカーズカフェ・さばとら 高沖きげん店長)

 こんな声を受けて12日、業界団体が緊急集会を開きました。

 「(完全禁煙が大前提というのは)これはムリじゃないかと思っております」(全国生活衛生同業組合中央会 大森利夫理事長)

 参加したのは外食チェーンの業界団体などです。国が進める一律の規制に反対の意見が相次ぎました。

 「どうしても喫煙を要求するお客様もいる」(飲食店経営)

 「零細企業にとっては困ることだと思います」(スナック経営)

 “分煙などこれまで飲食業界が行ってきた自主的な取り組みに任せてほしい”としています。会には大物政治家も・・・

 「“みんなやめちゃえ”というのは、知恵のある人が言うことではない。どんな知恵があるかが一番のポイント」(石破茂前地方創生相)

 厚生労働省は、早ければ今年の通常国会にも規制に必要な法案を提出したい考えです。(12日18:27)
http://www.excite.co.jp/News/economy_g/20170112/Tbs_news_80294.html


 


飲食店の禁煙案に石破茂氏「みんなやめちゃえは知恵がない」

2017年1月14日 16時0分 NEWSポストセブン
受動喫煙防止の規制強化には慎重論も根強い(石破茂衆院議員)
写真拡大
 厚生労働省が「罰則付き」の規制強化を進めようとしている受動喫煙防止対策。非喫煙者が他人のたばこの煙を吸い込んでしまう機会をなくそうと、学校や病院など公的施設内は全面禁煙。そして飲食店やホテルなどのサービス業にも、喫煙専用ルームの設置以外は禁煙を義務付けるというものだ。

 違反した場合には、施設管理者だけでなく喫煙者本人にも罰則を科すという案が「たたき台」として昨年持ち上がったのだが、これに「選択の余地がない一律規制には断固反対!」と業界団体が決起した。

 1月12日に開かれた《受動喫煙防止強化に対する緊急集会》。大小さまざまな飲食店やホテルが属する業界団体のほか、理容・美容・興行・公衆浴場など16業種が連携した団体の代表が、政府に見直しを求める意見を表明。

「分煙先進国ニッポンとして進めていかなくては。“1億総活躍”とうたっていて、廃業に追い込まれるような人たちを増やすのはどうなのか」(大森利夫・全国生活衛生同業組合中央会理事長)という声を皮切りに、「細かいところまで配慮した法体系を」と訴えた。

「飲食店によっては、お客様の大半が喫煙者ということも少なくない。業界としても分煙の徹底やステッカーを店頭に貼るなどさまざまな受動喫煙防止対策を講じてきた。日本人は多様性を重んじる国民性を持っている。これまでの取り組みを徹底することにより、たばこを吸う方も吸わない方にも十二分にご理解いただいているものと思っている」(森川進・全国飲食業生活衛生同業組合連合会会長)

「公共施設と、自分の嗜好に合わせた施設を選択することができる飲食店に、同質性の高い規制をかけるのは相応しくない。全部禁煙にしてしまえばいいという乱暴な意見もあるが、日本は分煙が進んでいる国。各店舗がお客様のニーズや提供するサービスを考えた結果、自律的に生まれてきたのが分煙スタイル。これをもっと進めていくことが日本において必要なアプローチではないか」(菊地唯夫・日本フードサービス協会会長)

 各団体の代表が共通して口にしたのが、「多様性」だ。もちろん、喫煙ルームの設置には、店の規模によってスペースの確保や導入費用の負担など現実的に困難なところも多い。だが、それ以前に、喫煙環境を含めた店側のサービススタイルと客の嗜好性によって成り立ってきた飲食業界の多様性、いってみれば魅力が今回の規制案によって失われてしまうとの危機感が強い。

 そうした懸念は、新たな法案づくりを審議する立場の国会議員も持っている。昨年12月に行われた自民党の厚生労働部会では、「嗜好品にそこまで規制をかけるのはどうか」と、法案化に慎重な姿勢を見せる議員が相次いだという。

 今回の緊急集会でも、自民党の穴見陽一氏や公明党の上田勇氏など与党の衆院議員が、それぞれ受動喫煙防止対策の重要性を強調しながらも、規制強化のあり方については、「現実に寄り添った形で」「ケース・バイ・ケースで柔軟に」と熟考を促す。

「喫煙者の自由権に目を向けた場合、あまりにもバランスを欠いたものなのではないか」(穴見氏)

「個人店舗の経営に支障をきたすことのないように、十分に考えていかなくてはならない」(上田氏)

 そして、遅れて駆けつけた自民党の石破茂議員は、歴代総理大臣が嗜んだたばこの銘柄や、自身も長年の愛煙家であることを打ち明けたうえで、こんな持論を述べた。

「(喫煙室設置など)現実的な議論をしていると、『経済的負担をみなさんにお願いするよりも、全面禁煙にしたほうがラクじゃないですか』となる。

 でも一番のポイントは、皆がそれぞれ持っている楽しみや価値観を、いかに他人に迷惑をかけることなく実現できるか。これが知恵の出しどころなのであって、『みんなやめちゃえ』というのは、そんなに知恵のある人のいうことではありません」

 会場となった都内の会議施設は、加盟店舗の経営者ら約550人で立ち見がでるほどの熱気に包まれ、「サービス業に対し、一律に『原則建物内禁煙』を課すことなく、これまで取り組んできた業界の自主的な取り組みについて、一層の理解と支援と賛同を求める」との決議を採択した。

 すでに14府県の地方自治体でも、事業者の経営の圧迫を懸念した請願書が提出されているが、塩崎恭久厚労大臣は1月13日の会見で、〈受動喫煙のない社会に向けて必要な準備を行なうということで、ご理解をいただきたい〉と話し、あくまでも1月20日に召集される通常国会に、法案提出をゴリ押しする構えを見せた。

 公的施設にもサービス業施設にも一律の規制をもうけようとしたことから、強い反発があがっている受動喫煙防止の強化案。このままでは、それぞれが行ってきた分煙対策などの自助努力が台無しになりかねない。

NEWSポストセブン
外部サイト

公園の受動喫煙裁判 判決は「非喫煙者が喫煙者から離れよ」
飲食店に喫煙室設置の新法案 BOXも置けない店は死活問題に
東京の受動喫煙対策「強制なら経営苦しくなる」と飲食団体ら
http://news.livedoor.com/article/detail/12541322/


 

喫煙率世界一のロシア。2015年以降に生まれた人はタバコを買えないようにしようとしている

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2017年1月13日 7時2分 ギズモード・ジャパン


思い切った法律ですが、果たして効果はあるのでしょうか?

アメリカ大統領選挙に介入したと報じられているロシアですが、ロシアには心配事が尽きないようです。最近は喫煙問題に悩まされているとのこと。

世界保健機関(WHO)によると、ロシアの喫煙率は世界トップ。もちろんロシアのタバコの箱には、注意書きのラベルが貼ってありますがあまり効果がないのか、2010年の調査ではロシアの15歳の12%は毎日タバコを吸うという結果が出ています。

さて、ロシア政府はいろんなことを禁止することで有名なのですが、今度は2015年以降に生まれた人はタバコを買えないようにしようとしているそうです。そうなると世界で1番厳しいタバコ関する禁止事項のひとつとなります。ちなみに他の厳しい禁煙に関する法律と言えば、ブータン。ブータン国内でタバコの売買を禁止しています。

このタバコ購入禁止の提案は、ロシアの新聞「Izvestia」によって入手されたもので、現在はまだ赤ちゃんである2015年生まれの子達が、喫煙年齢の18歳になる2033年から施行されるとのこと。この政策の目的は、ロシアの喫煙率を2025年までに25%までに下げ、その先もさらに下げていくということだそうです。タバコ購入禁止の提案の中には、2009年に39%だった喫煙率が2016年には33%まで落ちているとも記載されています。

しかし禁止案を施行することで、偽造タバコなどが出回る懸念もされています。また、禁止案が通ったとしてもどうやって取り締まっていくのかと疑問を持つ人も少なくないそうです。

また、2015年生まれ以降の人たちのタバコ購入禁止が始まる前に、現在タバコを吸える人たちの「吸える場所」というのも限定する法律も購入禁止案に含まれています。若い世代が喫煙を好むロシアで、購入禁止がどのような影響をもたらすかはまだ不明ですが、禁止すると逆に喫煙者が増えないか心配ですね。

もっと読む:
・「トランプがロシアから直接支援を受けていた」とするメモ、公開される。トランプはフェイクニュースと一蹴
・CIA「ロシアは米大統領選を選挙操作してた」

image by Stasia04 / Shutterstock.com
source: Izvestia
参考: Tobacco Labelling Regulations, DW.COM

Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文]
(岩田リョウコ)

ギズモード・ジャパン
外部サイト

小島監督の最新ゲーム『デス・ストランディング』からシングルLPが登場。予約受け付け中
成長から成熟へ。iPhone10周年のこれまでと、これから
星空のよう。NASAが捉えた最新のブラックホールの姿

http://news.livedoor.com/topics/detail/12535000/


 


9割が恋愛に影響すると回答! 好きな人のタバコ、気になる?

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2017年1月13日 8時0分 ヒトメボ
恋人に「タバコをやめて」と伝えたことはありますか?
写真拡大
 タバコの臭いや煙はできれば避けたい、と思う非喫煙者は多いと思います。でももし、好きな人が喫煙者だったら…。喫煙は、恋愛にどのくらい影響するのでしょうか? そこで20歳以上のヒトメボ読者に、タバコに関するアンケート調査を行いました。(有効回答数:233件 喫煙者87人/非喫煙者146人)

Q.好きになった人や恋人の喫煙についてどう思いますか?

1位「できれば吸わないでほしい」84人(喫煙者12人/非喫煙者72人)
2位「関心がない/どちらでもよい」71人(喫煙者55人/非喫煙者16人)
3位「絶対に吸わないでほしい」61人(喫煙者4人/非喫煙者57人)
4位「できれば吸ってほしい」12人(喫煙者12人/非喫煙者0人)
5位「絶対吸ってほしい」5人(喫煙者4人/非喫煙者1人)

 非喫煙者の9割は、「できれば吸わないでほしい」「絶対に吸わないでほしい」と考えているようです。一方で、喫煙者の8割は「関心がない/どちらでもよい」を選んでいました。「吸ってほしい」と考えるのは、喫煙者の中でも少数派ですね。

Q.相手が喫煙者や非喫煙者であることは恋愛に影響しますか?

1位「やや影響する」84人(喫煙者29人/非喫煙者55人)
2位「すごく影響する」72人(喫煙者6人/非喫煙者66人)
3位「まったく影響しない」77人(喫煙者52人/非喫煙者25人)

 恋愛に影響すると答えた人は全体の約7割で、そのうち非喫煙者が8割を占める結果に。喫煙者は非喫煙者の前での喫煙は避けた方が良さそうですね…。喫煙者は、好きな人が吸っていようがいまいが気にしない傾向にあるためか、「影響しない」と答えた人が7割で、相手の喫煙に対して寛大なようです。

 ちなみに、非喫煙者の半数以上にあたる92人は「やめてほしい」と伝えた経験があるようですが、その理由を聞いてみると…。

●過剰反応してしまうから
「私がタバコの臭いに対して、過剰反応してしまうから。でも、現在付き合っている彼は、喫煙者。必死にやめてほしいと伝えています。やめないと別れるとまでは言ってませんが、彼との結婚を考えると、正直難しい…」(大阪・32歳女性)

●どんなときでも毎回きになるから
「車の中や密室・話すとき・近くにいるとき・キス等…毎回気になるから。私の健康にも影響するし。前の彼には『私と付き合いたいならやめて』と伝え、禁煙に成功させました」(新潟・24歳女性)

●健康に悪いから
「すごく気にすることではないが、彼女の健康を考えるとできれば吸ってほしくないから」(21歳・福岡男性)

 といった意見が。非喫煙者の中にも喫煙に寛容な声もありましたが、それでもやはり「子供がいる前で吸ったり、歩きタバコをするなど、マナーの守れない喫煙者には幻滅してしまう」など、良識ある喫煙が絶対条件という意見も寄せられました。

 一方で、「吸ってほしい」という17名の少数派の意見はというと…

●我慢の限界
「こちらがタバコを控えるのにも限界があるので、喫煙者かどうかを最初にチェックし、最近禁煙したと言う人には誘惑して再開させてる(笑)」(神奈川・40歳女性)

●気を使わなくて済む
「自分が喫煙者なので、たばこが嫌いな方とデートしたり、無理矢理禁煙させられるのは嫌。食事の際や出先での喫煙などに気を使わなくて済むので、基本的には相手も喫煙者の方が楽でいいです」(大阪・25歳女性)

●自分が吸いたい
「一番に自分が吸いたいから(笑)。タバコ・コーヒー好きとは足並みが合う人が多いので居心地がいいです」(愛知・22歳女性)

●吸っている姿が好き
「男性がなにげなくたばこを吸ってる姿が好きだから」(愛知・36歳女性)

 じつは、「吸ってほしい」と答えた9割は女性の喫煙者! 自分が喫煙者だからという理由で相手に喫煙を求めることが多いようですが、その傾向は女性特有のもの!?

 今回の結果から、喫煙は恋愛に大きな影響を与えると言えそうです。あなたは好きな人の喫煙、気になりますか? 気になりませんか?
(冨手公嘉/verb)
ヒトメボ
外部サイト

お正月が狙い目!? 男性が結婚したくなる瞬間
「武勇伝」「自虐風自慢」はタブー!? 角が立たない自慢話の仕方
http://news.livedoor.com/article/detail/12535174/
http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/184.html

[自然災害21] 熊本地震 過去の噴火で積もった軽石が壊れた可能性 
熊本地震 過去の噴火で積もった軽石が壊れた可能性
1月14日 19時25分
去年4月の熊本地震で激しい揺れを観測した熊本市では、これまで比較的固いと考えられていた地下の地層が局所的に沈み込んで、建物が大きく傾くなどの被害が出たと見られることが専門家の調査でわかりました。専門家は過去の噴火で積もった地下の軽石が地震の揺れで壊れた可能性が高く、ほかの地域でも詳しい調査が必要だと指摘しています。
去年4月の熊本地震で震度6強の揺れを観測した熊本市東区などでは、地震の揺れによって局所的に地盤沈下が発生し、水道用の地下水をくみ上げるための複数の井戸の建屋が大きく傾く被害が相次ぎました。
建屋はそれぞれ別々の方向に傾いていて、地震による揺れや地盤のずれでは説明がつかず、周辺では液状化が起きた痕跡も見つかりませんでした。

地震工学が専門の横浜国立大学の小長井一男教授の研究グループは、地下の地盤に注目して詳しく分析しました。その結果、地盤沈下が起きた場所では、いずれも地表から20メートルから50メートルほどの深さに過去の阿蘇山の噴火で出た軽石を含む層があり、地震の激しい揺れによって穴が多い軽石が砕けて局所的に地盤沈下が発生した可能性が高いことがわかりました。

小長井教授によりますと、軽石を含む層でこうした地盤沈下による被害が確認されたことはなく、これまでは比較的固い地層と考えられ、地盤沈下の影響も考慮されていないということです。

小長井教授は、同様の地層がある地域では、地震の激しい揺れによって地盤沈下が発生し、建物などを支える地下のくいが折れたり、状況によっては建物が傾いたりする被害の可能性もあるとしています。

小長井教授は「同様の地層は、阿蘇山の周辺以外にも九州や関東など火山がある各地に分布していると考えられ、詳しい調査を行うなどして今回の教訓を生かしていく必要がある」と話しています。
井戸の建屋の傾きがきっかけに
今回の調査は、去年4月の熊本地震で上水道に利用する地下水をくみ上げる井戸の建屋が大きく傾く被害が確認されたことがきっかけでした。

熊本市では市内の上水道に地下水を利用していて、熊本市上下水道局によりますと、去年4月の地震の直後に水に濁りが確認されたため給水を停止して見回りをしたところ、鉄筋コンクリート製の井戸の建屋が傾いているのが見つかったということです。被害が確認されたのは、96の建屋のうち揺れが激しかった熊本市東区の益城町との境界付近にあるおよそ20棟で、このうち8棟は傾きが大きく建て替えが必要だと判断されました。

熊本市上下水道局の坂田憲盟水相談課長は「くいを支える地下の層が動かなければ、建物自体は安定するはずだと考えているので、これだけ傾くというのは予想しておらず、まさかと思いました」と話しています。

また、地震工学が専門で横浜国立大学の小長井一男教授の研究グループが調べたところ、建屋の傾きは最大で3度に達していました。建屋は四方にある長さ20メートル前後の4本のくいで支える構造になっていますが、一部の建屋では地震後に柱が最大で40センチ程度沈下していたということです。

小長井教授によりますと、地下水をくみ上げている長さ200メートルほどの「ケーシング」と呼ばれる管がつっかえ棒のようになって、建物が傾いたと見られるということです。地盤沈下が起きた場所では、いずれも地表から20メートルから50メートルほどの深さに、過去の阿蘇山の噴火で出た軽石を含む層があるということです。

軽石は噴火の際に溶岩が急速に冷えてできたもので穴が多く、小長井教授は地震の激しい揺れによって穴が多い軽石が砕けて、局所的に地盤沈下が発生した可能性が高いと分析しています。

一方、震度7の激しい揺れを観測した益城町では、地震後の去年6月に大雨で町を流れる木山川の堤防が決壊して浸水する被害が発生しました。

小長井教授が航空機を使ったレーザー測量のデータをもとに解析したところ、地震の揺れによって周辺で1メートル前後の地盤沈下が起きていたということです。小長井教授によりますと、地盤沈下は多くは地震による地殻変動の影響と見られますが、軽石を含んだ層も影響している可能性があるということで、洪水は堤防が低くなったうえに地盤沈下した場所がくぼ地のようになって水がたまりやすくなったことが原因と考えられるということです。

小長井教授は「特殊な建物があったことで、地下の地層の状況によって地盤沈下が起きる可能性が初めて明らかになってきた。建物に加えて橋脚や地下のインフラなど、さまざまな影響が考えられるので、さらに詳しく調べる必要がある」と話しています。
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http://www.asyura2.com/15/jisin21/msg/744.html

[政治・選挙・NHK219] (共産党大会)アレルギー払拭に懸命の志位和夫委員長だが…蓮舫代表は「政権打倒まで」  全国最年少28歳の市長誕生 四條畷

【共産党大会】アレルギー払拭に懸命の志位和夫委員長だが…蓮舫代表は「政権打倒まで」 見えぬ連合政権


共産党の第27回党大会で民進、自由、社民3党の幹部が初めて来賓として出席、壇上で手をつなぐ(左から)民進党の安住淳代表代行、共産党の志位和夫委員長、自由党の小沢一郎代表、社民党の吉田忠智党首=15日午後、静岡県熱海市の共産党伊豆学習会館(酒巻俊介撮影)
 15日開幕した共産党大会は、来賓の民進党の安住淳代表代行らが満場の拍手で迎えられるなど、野党共闘ムードに包まれた。しかし、民進党は次期衆院選で共産党が求める候補の相互推薦は断る方向で、民共で候補が競合する197選挙区の調整の難航は必至だ。共産党の志位和夫委員長は日米安全保障条約の廃棄など党独自の立場の主張を控える意向だが、党綱領は堅持する方針。目指す「野党連合政権」への道筋は見えない。

小沢代表が急遽登場、4野党で手携え

 「3年前の前回大会は『自共対決の始まり』が標題だった。今回は歴史的意義を持つ大会になった」

 志位氏は、95年間の党史上初めて他党を迎えた意義を強調。これに応えて、安住氏は「違いをことさら強調するのでなく大局観に立って一致できる点を見いだす」とあいさつした。

 自由党は森裕子参院会長の出席を予告していたが、急遽(きゅうきょ)、小沢一郎代表に変更、共産党重視の姿勢を示した。社民党の吉田忠智党首も交え壇上で4野党の幹部が手を携えてみせる一幕もあった。

 共闘の流れを確実とするため、志位氏がこだわったのが「共産アレルギー」の払拭だ。

 党綱領では日米安保条約の廃棄などをうたうが、志位氏は「党独自の立場を共闘に持ち込まない」と強調。「当面の国民の利益で力を合わせれば野党間の多様性は弱みでなく強みになる」とも訴えた。

 しかし民進党は、共産党との共闘を否定する支持団体の連合も意識し、次期衆院選で候補の相互推薦は拒むというのが本音だ。民進党幹部は「候補者調整は接戦区だけ。共産が自主的に候補を取り下げる形式で頼む」と語る。

「政権構想の責任」の裏に…苦しい台所

 共産党大会では党員数なども発表されたが、党員や党機関紙の購読者数は減少傾向が続いている。民進党は、共産党が共闘路線を打ち出す背景には党内の苦しい台所事情があると足元をみているのだ。

 志位氏は党大会で「安倍晋三政権を打倒した後の政権構想を示す責任がある」と語ったが、民進党の蓮舫代表は、出張先の北九州市で記者団に「安倍政権を倒すことに一番力を注ぐ。そこから先の話は残念ながら共産党と考え方が違う」と否定的な考えを示した。

 目先の選挙協力目当ての民進党に、共産党の訴えは響いてはいないようだ。(水内茂幸)
http://www.sankei.com/politics/news/170115/plt1701150021-n1.html


 


全国最年少28歳の市長誕生 大阪・四條畷市長選

現在の35歳を大幅更新

 
四條畷市長選に初当選し、現職最年少市長となることが決まった東修平氏
 15日に投開票された大阪府四條畷市長選で、無所属新人で元外務省職員の東修平氏(28)が無所属現職の土井一憲氏(61)を破り、初当選した。現職としては全国最年少市長が誕生する。

 東氏の市長就任は20日の予定で、28歳3カ月での市長就任となる。全国市長会によると、現在、全国最年少市長は北海道夕張市の鈴木直道市長の35歳10カ月で、東氏はこれを大きく下回る。

 これまで市長就任時に最年少市長だったのは、平成6年5月に就任した東京都武蔵村山市の志々田浩太郎氏で、28歳0カ月だった。

 東氏は昭和63年10月3日生まれ。大阪府四條畷市出身。京大大学院を修了後、平成26年4月に外務省入省。その後、経営コンサルティング会社員を経て、今回の市長選に立候補した。
http://www.sankei.com/west/news/170115/wst1701150066-n1.html


 
http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/216.html

[政治・選挙・NHK219] 日インドネシア首脳会談 首相、南シナ海問題などで支援表明 地方への移住、450団体がPR 都内でイベント
日インドネシア首脳会談 首相、南シナ海問題などで支援表明
2017/1/15 22:35
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 【ジャカルタ=上林由宇太】安倍晋三首相は15日、インドネシア・ジャカルタ近郊のボゴールにある大統領宮殿でジョコ大統領と会談した。鉄道高速化や新港建設などインフラ整備のほか、海上警備の人材育成で支援すると伝えた。南シナ海問題に関連して、中国漁船の違法操業が問題になっているナトゥナ諸島周辺で離島支援策を新たに打ち出した。

共同記者会見で握手する安倍首相(左)とインドネシアのジョコ大統領(15日、ボゴールの大統領宮殿)=ロイター
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共同記者会見で握手する安倍首相(左)とインドネシアのジョコ大統領(15日、ボゴールの大統領宮殿)=ロイター
 ナトゥナ諸島の排他的経済水域(EEZ)は中国が主張する「九段線」と重なり、中国漁船が侵入する事例が増えている。インドネシアは対抗策で離島開発を重視しているため、首相は会談後の共同記者発表で「海洋分野の協力は最優先分野の一つだ」と強調した。

 海洋安全保障の協力を強化するため、年内にジャカルタで外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開くことで一致した。日本側は防衛装備品の移転協定に関する交渉を加速させたい考えだ。

 首相はインフラ整備の一環として、ジャカルタとジャワ島東部のスラバヤを結ぶジャワ島横断鉄道(約750キロメートル)の高速化を支援すると表明した。移動時間を現在の10時間超から半分に短縮するため「日本の技術を活用したい」と語った。日本は高速鉄道の受注で中国に敗れた経緯があり、巻き返しをめざす。

 ジャワ島のパティンバンでの新港建設計画の支援も継続する。インドネシア国内の灌漑(かんがい)事業への円借款供与などで「約740億円のビジネス機会を創出する」と表明した。

 ジョコ氏は会談で「インドネシアにとって日本は様々な分野における戦略的なパートナーだ。経済、貿易、投資の分野で重要だ」と語った。両首脳はトランプ次期米大統領と密接に意思疎通を図ることも確認した。

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政府、安倍晋三、南シナ海問題、インドネシア、ジャカルタ、ジャカルタ近郊、ボゴール

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http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS15H0U_V10C17A1PE8000/


 

地方への移住、450団体がPR 都内でイベント
2017/1/15 21:36
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 地方への移住や田舎暮らしについて自治体の担当者らに直接相談できるイベント「移住・交流&地域おこしフェア」が15日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれた。47都道府県から、過去最多となる約450団体が参加。過疎地域の活性化に取り組む「地域おこし協力隊」を募集するブースもあり、小さな子どもを連れた家族や若者らでにぎわった。

 和歌山県日高川町などは、特産品のミカンにちなんだオレンジ色のこたつを置き、住環境や都市部へのアクセスなどを紹介。長野県伊那市は、地元産木材を使ったおもちゃによる教育を子育て世代にPRした。三重県の担当者は「回を重ねるごとに移住に関心のある人が増えている」と手応えを語った。

 友人と訪れた東京都北区の会社員、松田祐平さん(29)は「自分にもできる仕事が地方にあると分かった。直接話を聞けて良かった」と話した。

 イベントは移住・交流推進機構や総務省が主催し、今年で4回目。〔共同〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG15H3D_V10C17A1000000/
http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/218.html

[政治・選挙・NHK219] 小池知事、「豊洲市場を争点に」今夏の都議選 ベンゼン基準の79倍、シアン初検出−移転判断に影響必至  有害物質なぜ急拡大
 
 

小池知事、「豊洲市場を争点に」 今夏の都議選
2017/1/15 20:16
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 東京都の小池百合子知事は15日、今夏の都議選で「豊洲市場(江東区)のあり方が大きな争点になるべきだ」と述べた。同市場の地下水から環境基準を大幅に上回る有害物質が検出され、都は再調査を進める方針。築地市場(中央区)から豊洲への移転は都議会自民党が推進した経緯がある。知事は「(過去の議会の)審議を見直す必要がある」と話し、争点と位置付ける姿勢を示した。

 14日公表された調査結果は、最大で環境基準の79倍の濃度のベンゼンが検出されるなど、過去8回に比べて急激に数値が悪化した。知事は15日、都内で記者団の取材に「改めて再調査の必要がある」と発言。結果について「重く受け止めている」とも述べ、築地市場から豊洲への移転を慎重に判断する姿勢を示した。

 調査結果は都議会各会派も問題視する。公明党の東村邦浩幹事長は14日の知事との緊急会談で原因分析や情報公開の徹底を要望。民進党は原因の究明に向けて、強い調査権限を持つ百条委員会の設置を提案している。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE15H0S_V10C17A1PE8000/

 


ベンゼン、基準の79倍=豊洲地下水、シアン初検出−移転判断に影響必至・都

豊洲市場の地下水調査結果を受け、記者団の質問に答える小池百合子東京都知事=14日午後、東京都豊島区
 東京都の築地市場(中央区)からの移転が延期された豊洲市場(江東区)をめぐり、都は14日、2014年11月から定期的に行ってきた地下水調査の9回目の結果を公表した。前回に続き、有害物質のベンゼンとヒ素を検出。ベンゼンは最大で環境基準の79倍と、前回を大幅に上回った。加えて、検出されないことが基準のシアンが初めて出た。
〔写真特集〕小池百合子氏〜築地を視察〜

 小池百合子知事は同日、都内で記者団に「想定を超える数値が出て驚いている。厳しい結果だ。専門家会議の議論を参考にしたい」と述べるにとどめたが、今夏にも下す移転の可否判断に影響を与えるのは必至だ。
 移転が遅れれば市場業者への補償金をはじめとする経費が膨らんだり、築地市場周辺に予定する、20年東京五輪・パラリンピックの選手村と都心を結ぶ都道「環状2号」の暫定道路整備が遅れたりする可能性もある。
 調査結果は、14日に開かれた専門家会議に報告された。平田健正座長(放送大学和歌山学習センター所長)は席上、「あまりにも今までの傾向と違う。なぜこうなったのか、原因究明が必要だ」と語った。終了後の記者会見では、4月をめどとしていた報告書の取りまとめが「若干遅れる」との見通しを示した。

豊洲市場に関する専門家会議を終え、記者会見する平田健正座長=14日午後、東京都中央区の築地市場
 同会議は、従来は3カ月程度だった間隔を1カ月程度に短くした上で、調査を続けることを決定。地下水の採取方法などにミスがあったことも考えられるとして、複数の検査機関でチェックするよう都に求めた。
 今回の結果について、都はこれまでの数値から大きく変動しているため、「暫定値」として公表した。1回目から7回目までは有害物質が検出されたものの、いずれも環境基準以下だった。16年9月公表の8回目は、201の調査地点のうち2地点で基準の最大1.4倍のベンゼンが、1地点で1.9倍のヒ素が出た。
 これに対し今回は、72地点で基準を上回るベンゼン、ヒ素、シアンのいずれかを検出。基準超えが大幅に増えた。ヒ素は最大で基準の3.8倍、シアンは最大で1リットル当たり1.2ミリグラムだった。(2017/01/14-20:04)
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 豊洲市場地下水調査 有害物質、なぜ急拡大

2017年1月15日


 築地市場(東京都中央区)の移転先となる豊洲市場(江東区)で、72の観測地点から環境基準を超える有害物質が検出されたことに、分析する専門家たちも当惑を隠せなかった。突然の濃度の急上昇や汚染地域の拡大はなぜか−。858億円を投じた土壌汚染対策の効果を実証するはずの調査が、皮肉にも不安を生じさせている。 (榊原智康)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2017011502000137.html
http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/219.html

[政治・選挙・NHK219] 「百害あって一利なし」の日韓スワップ 早読み 深読み 朝鮮半島 真田幸光教授に「慰安婦像への対抗措置」を聞く(1)
「百害あって一利なし」の日韓スワップ

早読み 深読み 朝鮮半島

真田幸光教授に「慰安婦像への対抗措置」を聞く(1)
2017年1月16日(月)
鈴置 高史

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/010800087/aflo_CHQA051612.jpg
1月4日、釜山の日本総領事館前。慰安婦像の前で安倍首相のお面を付け、ひざまずくパフォーマンスが(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
(前回から読む)

 「そもそも韓国とのスワップは日本に必要なのか」――。真田幸光・愛知淑徳大学教授と話し合った(司会は坂巻正伸)。

「冷静さ欠く」と朝日が批判

慰安婦合意を覆し始めた韓国政府。さすがに日本政府も怒り、1月6日に「4つの対抗措置」を発表しました(「『民衆革命』は軍事クーデターを呼んだ」参照)。

■日本の「慰安婦像」への対抗措置
・長嶺安政・駐韓大使と森本康敬・釜山総領事の一時帰国
・通貨スワップ再開に向けた協議の中断
・次官級による日韓ハイレベル経済協議の延期
・釜山総領事館員の釜山市関連行事への参加見合わせ

真田 幸光(さなだ・ゆきみつ) 愛知淑徳大学ビジネス学部・研究科教授(研究科長)/1957年東京生まれ。慶応義塾大学法学部卒。81年、東京銀行入行。韓国・延世大学留学を経てソウル、香港に勤務。97年にドレスナー銀行、98年に愛知淑徳大学に移った。97年のアジア通貨危機当時はソウルと東京で活躍。2008年の韓国の通貨危機の際には、97年危機の経験と欧米金融界に豊富な人脈を生かし「米国のスワップだけでウォン売りは止まらない」といち早く見切った。
真田:ソウルの日本大使館前と釜山の日本総領事館前の慰安婦像を韓国が撤去するまで、日本は「4つの対抗措置」を粛々と進めるべきです。

 韓国側は「いずれ日本は対抗措置を取り下げる」と考えています。実際、日本側にも「日本のやり方は大人げない」と言う人がいて、政府がどこまでこの措置を貫くかは疑問です。

「大人なげない」などと言う人がいるのですか?

鈴置:朝日新聞は1月7日の社説「韓国との外交 性急な対抗より熟考を」で「ここまで性急で広範な対抗措置に走るのは冷静さを欠いている。過剰な反発はむしろ関係悪化の悪循環を招くだろう。日本政府はもっと適切な外交措置を熟考すべきである」と主張しました。

 それに日本が1月9日に実行に移した「大使らの一時帰国」も「一時帰国」であって「招還」ではありません。いずれ大使らは韓国に戻ります。

真田:対抗措置を最後まで貫かないのなら、むしろ中途半端に拳(こぶし)を挙げない方がよいと考えています。日本政府は自国民を意識してこうした措置をとった側面もあるでしょう。

 それは理解できますが、でも中途半端なやり方は韓国に舐められてしまいます。逆効果になります。発表した以上はきちんと貫いていただきたい。

鈴置:同感です。韓国人は「日本に対しては何をやってもいい。本気で反撃してはこない」と考えています。

 「対抗措置」を下手に取り下げたら、その認識をますます強化してしまいます。すると韓国はさらに日本を侮蔑する行為に出るでしょう。

苦しみ続ける韓国

「4つの対抗措置」は実際に効果があるのでしょうか。

鈴置:「大使らの一時帰国」は韓国人を驚かせはしました。でも、仮にそれが長引いても「大使がいなくても別段、実害はないではないか」との認識が広がるでしょう。日本の大使には失礼な見方ですけれど。

真田:しかし「通貨スワップ中断」は効きます。米国の利上げにより今後、世界からドルが米国に引き上げられていきます。

 これによる新興国の金融破綻が懸念されています。テール・リスク――可能性は高くないけれど起こったら大ごとになる、という危険性が高まっています。

 韓国はいざという時に外国からドルを借りられる通貨スワップ協定を積み上げておく必要があります。これは「保険」なのです。

 2016年8月に日本との通貨スワップ協定の協議再開を決めたのも、それが目的でした。というのに、韓国は日本とケンカしてスワップは宙ぶらりんになりました。

 韓国は苦しみ続けることになります。テクニカル・デフォルト(債務不履行)を起こす可能性が高まりました。韓国の銀行は恒常的なドル不足に悩んでおり、邦銀などからドルを借りてしのいでいます。

 何かの拍子に、オーバーナイトの貸し出し――翌日渡しの当座貸し出しを受けられなくなったら、ドルの「超短期の借金」が返せなくなります。

 これがテクニカル・デフォルトです。銀行が1行でもデフォルトすると、韓国すべての金融機関が取引を打ち切られてしまう可能性が高い。もちろん、貿易にも支障をきたします。

日本が幇助したウォン安

鈴置:国際金融市場が大きく荒れれば「日本に見捨てられた韓国」は狙い撃ちにされるでしょう。ウォンが売られたうえ、ドルの貸し渋りが始まる。

 今のところはまだ、大量のウォン売りは出ていないようですが。日本政府は「対抗措置」と呼んでいますが、はっきり言えば「スワップ交渉中断」は制裁措置なのです。

「ウォンが急落したら日本の輸出競争力が落ちる。だからスワップを結んでウォン安を食い止めるのだ」とメデイアは説明してきました。

鈴置:官僚や政治家は真顔でそう言うのですが、大いなる誤解です。国際金融市場が荒れた際、韓国は死に物狂いでウォンの価値を守ろうとします。ウォン安政策をとり続ければ、制御不能になって暴落――通貨危機に陥りかねないからです。

 でも、日本とのスワップがあればウォン安政策をとってもウォンは売り浴びせられない。いざという時にドルを供給する日本が後ろに控えているからです。韓国は安心してウォン安誘導できる。それを日本が幇助するわけです。2008―2012年がまさにこの状態でした。

経団連はムシロ旗を

とは言え、スワップを与えず韓国が通貨危機に陥ったら、極度のウォン安になるでしょう。

鈴置:その際は韓国の金融システム全体が破壊され、企業倒産が多発します。韓国がいくら安い通貨を武器に輸出ドライブをかけようにも、モノを作る工場が消滅してしまうのです。1997年から1998年にかけてこの状況が現出しました。

 日本がマレーシアやインドネシアにスワップを付けても問題はありません。これらの国と日本は産業構造が異なるからです。

 しかし、日本を真似して成長してきた韓国にスワップを与えると、日本が損害を受けることが多いのです。ウォン安とは、すなわち円高だからです。

 ウォン安・円高になるといかに日本経済が疲弊するか――。2013年1月14日に日経新聞がそれをデータで裏付けた記事を載せています。「『最強連動通貨』と日本株の不思議な関係」です。

 この記事によると、日経平均株価とウォン・円レートはほぼ完全に連動します。円に対しウォンが安くなるほどに日経平均は下がるのです。相関係数は何と0.98。少なくとも「この頃は完全連動していた」と言い切ってよいでしょう。

 つまり日本政府はスワップにより、自国経済を弱体化させながら韓国経済を支えてきたのです。2016年8月に財務省が韓国とのスワップ協議再開を発表しました。その時、本当なら経団連がムシロ旗を立てて財務省に押し掛けるべきだったのです。

恩を仇で返す国

韓国との通貨スワップは「百害あって一利なし」ですね。

真田:経済的な損害だけではありません。韓国はいくら助けても「日本のスワップなど意味はない」「日本のせいで通貨危機に陥った」と吹聴して回ります。恩を仇で返す国なのです。

 1997年の通貨危機の際、事実上破綻していた韓国に邦銀は最後までドルを供給しました。それなのに韓国人は「日本が逃げたから通貨危機が起きた」と言い張っています。

 米国や欧州の銀行が早々と韓国を脱出した後、孤軍奮闘、韓国に踏みとどまったのは邦銀です。最後まで残っていたからこそ、IMFの救済金融を求めることを内定した際、融資を打ち切らざるを得なかったのです(「『人民元圏で生きる決意』を固めた韓国」参照)。

最近も中央日報の日本語版で「日本のせいで通貨危機になった」という記事を読みました。

鈴置:イ・ジョンジェ論説委員が書いた「韓日通貨スワップは政治だ」(1月12日、日本語版)ですね。以下のくだりがあります。

(国際金融専門家の)S氏は「日本は一度も韓国が絶対に必要な時、望む時に助けてくれたことがない。むしろ最初にお金を抜き出し、不意打ちを食らわせた」と話した。通貨危機が押し寄せた1997年、(日本は)真っ先に韓国からドルを抜きだした。
真田:当時、韓国の内実を知る金融界の経営陣は、最後まで踏みとどまった我々に深く感謝していました。ところが今ではこのありさまです。

加害者は言うことを聞け

なぜ、こんな言説がまかり通るのでしょうか。

鈴置:危機を起こした金泳三(キム・ヨンサム)政権が、責任逃れのため「日本のせいだ」と言い出したのです。ただ20年前は、もちろん専門家は事実を知っていました。政権の言い訳を批判した議員もいました。

 2008年に通貨危機に陥った際、韓国人は日本にスワップ締結を要求しようと「1997年の通貨危機は日本のせいで起きた。加害者であることを反省して、今度はさっさとスワップを寄こせ」という理屈をひねり出した。

 それが今や「定説」となりました。まあ、韓国では「何か問題が起きたら日本のせい」にするのが常道なのですけれど。

疲れますね。

鈴置:だから、米国のアジア専門家も「韓国疲れ」(Korea Fatigue)と言い出しているのです。中国だけは韓国を取り込んでやろうと、脅しつつ付き合っていますが。

左派政権なら中国からスワップ

表「韓国のスワップ」を見ると、完全に「中国頼み」です。

韓国の通貨スワップ(2017年1月15日現在)
相手国 規模 締結・延長日 満期日
中国 3600億元/64兆ウォン(約560億ドル) 2014年
10月11日 2017年
10月10日
豪州 50億豪ドル/5兆ウォン(約45億ドル) 2014年
2月23日 2017年
2月22日
インドネシア 115兆ルピア/10.7兆ウォン(約100億ドル) 2014年
3月6日 2017年
3月5日
CMI<注> 384億ドル 2014年
7月17日
<注>CMI(チェンマイ・イニシアティブ)は多国間スワップ。IMF融資とリンクしない場合は30%まで。
資料:ソウル新聞「韓国の経済体力は十分」(2015年2月17日)など
真田:でも、その中国と関係が悪化しスワップを延長してもらえるか、不安になった。そこで韓国は日本に頼んできたのです(「『中国のスワップ』を信じられなくなった韓国」参照)。

 ただ、中韓関係はまた状況が変わりそうです。朴槿恵(パク・クンヘ)大統領への弾劾で、政権交代が早まる見込みです。

 今年前半にも左派政権が誕生すると思われます。そうなったら中国から「心配するな。スワップは続けるから」と言ってもらえると韓国は考えています。

 左派のすべての候補者が在韓米軍へのTHAAD(地上配備型ミサイル防衛システム)配備に関して反対か、見直しを主張しています。中国との関係悪化はこのTHAADが原因でした。

 次期政権が米国に対し「THAAD配備を認めない」と言えば、中国とのスワップは確保できるというのが韓国の目論見でしょう。

(次回に続く)=1月17日掲載予定

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■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録

『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』『米中抗争の「捨て駒」にされる韓国』 に続く待望のシリーズ第9弾。10月25日発行。

このコラムについて

早読み 深読み 朝鮮半島
朝鮮半島情勢を軸に、アジアのこれからを読み解いていくコラム。著者は日本経済新聞の編集委員。朝鮮半島の将来を予測したシナリオ的小説『朝鮮半島201Z年』を刊行している。その中で登場人物に「しかし今、韓国研究は面白いでしょう。中国が軸となってモノゴトが動くようになったので、皆、中国をカバーしたがる。だけど、日本の風上にある韓国を観察することで“中国台風”の進路や強さ、被害をいち早く予想できる」と語らせている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/010800087
http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/234.html

[国際17] トランプ氏:NATOは時代遅れ、EU離脱続くと予想 メルケルは「悲惨な誤り」 ドイツ支配のためのEU、崩壊しても関心ない
トランプ氏:NATOは時代遅れ、EU離脱続くと予想
−ビルト紙
Rainer Buergin
2017年1月16日 07:12 JST 更新日時 2017年1月16日 08:55 JST

Photographer: Sean Gallup/Getty Images
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メルケル独首相の難民政策は「悲惨な誤り」−英EU離脱を称賛
BMWにメキシコ工場建設計画を撤回するよう警告

トランプ次期米大統領は独紙ビルトとのインタビューで、北大西洋条約機構(NATO)は時代遅れだと指摘するとともに、英国の欧州連合(EU)離脱に他のEU加盟国も追随するだろうと予想した。また、独BMWが計画するメキシコ工場からの輸入車に高率の関税を適用すると警告した。
  ビルトが英語で行われたインタビューのドイツ語訳を掲載した。それによると、トランプ氏は英国のEU離脱が成功例になると予想。EUは米国を国際貿易で打ち負かすことを目的としたドイツ支配のための道具だと主張した。こうした理由から、EUが存続しようが崩壊しようがほとんど関心がないと述べた。
20日の大統領就任式の準備が進む首都ワシントン

  インタビュー発言は、トランプ氏が大統領選の公約を維持することはほぼ確実であり、長年の米外交政策の一部を転換させる可能性を示唆する。自由貿易や難民問題、安全保障、世界でのEUの役割などをめぐり、ドイツのメルケル首相と根本的に意見が食い違うことを示している。トランプ氏はウクライナをめぐって実施されている対ロ制裁について、ロシアとの核軍縮交渉の材料として使う可能性を示唆した。
  トランプ氏はNATOについて、「時代遅れだ。まず第1に、構想から何年もたっていることだ。第2には、加盟国が相応の負担をしていない」と語り、NATOが「テロに対応してこなかった」と指摘した。
  同氏はメルケル首相の難民政策を「悲惨な誤り」とする一方、英国によるEU離脱の選択を称賛。人々と国家は独自のアイデンティティーを望み、部外者にそれを「破壊」されることを望んでいないと指摘。EUは「基本的にドイツの目指す目標のための手段であるため」、英国が離脱するのは賢いことだと述べ、他の国も追随するだろうと予想した。
  トランプ氏は、米国外で製造されるBMWの車には35%の輸入関税を課すと述べ、同社がメキシコの新工場建設計画を撤回し、米国に工場を建設すべきだと述べた。
  同氏はさらに、ブッシュ政権によるイラク進攻は恐らく米史上最悪の決断だったと指摘。一部の欧州諸国の国民を含め、米国に入国する人に対し厳しい保安検査を行う方針を示した。また、自らの考えを支持者に直接伝えるため、就任後もツイッターを含むソーシャルメディアを利用する計画だと述べた。
原題:Trump Calls NATO Obsolete and Dismisses EU in German Interview(抜粋)
最新の情報は、ブルームバーグ端
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-15/OJUDO16K50XS01
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/307.html

[国際17] 今年のダボスは反省の場−ポピュリズム招いたとエリートら自問自答か 

今年のダボスは反省の場−ポピュリズム招いたとエリートら自問自答か
Matthew Campbell、Simon Kennedy
2017年1月16日 11:02 JST
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国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストを務めた経歴を持ち、現在は米ハーバード大学教授のケネス・ロゴフ氏は、ドナルド・トランプ氏が米大統領選に当選するのではないかと心配し始めた瞬間を正確に覚えている。それは、昨年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で当選はあり得ないと出席者らが話したときだ。
  ロゴフ氏は「ダボスを離れてから1000人には話した冗談だが、ダボスでの常識は常に間違っている。どんなにあり得なさそうなことでも、実際に起きる可能性が非常に高い事態はダボスでのコンセンサスの逆だ」と語る。
ダボス会議場
ダボス会議場 Photographer: Michele Limina/Bloomberg
  英国民投票での欧州連合(EU)離脱選択を含め、実業界や政界のエリートらは昨年の展開を正しく予想できず、今月ダボスに戻ってくる彼らはこの事実を面白おかしく捉えることができない。まさかの政治展開で金融市場が荒れ、ダボス会議常連のキャリアが絶たれた2016年を経て、今年の会議参加者を危惧させるのはダボスでの予想がしばしば外れるという認識ではなく、むしろ、その世界観が間違っているのではないかという懸念だ。
  約40年の歴史を持つダボス会議は、グローバリゼーションと開かれた市場を良しとする幅広いコンセンサスを育んできた。その中心には、財やモノ、ヒトは国境を越えて自由に移動すべきだとの考え方がある。この原則は高学歴で資金を持つ者には多大な恩恵をもたらす可能性があるが、持たざる者には脅威に映るようだ。17日から20日まで3000人が集まる今年の会議は、これについて深く考える場になるかもしれない。彼らが自問するであろうことは、ダボスでは知識人が世界で最も金をかけて思考回路を増幅するのがせいぜいで、最悪の場合、問題の一部になっているかもしれないということだ。
  調査会社IHSマークイットのチーフエコノミスト、ナリマン・ベーラベシュ氏は「リセッション(景気後退)以降の景気拡大は高所得層に恩恵を与えたが、中間層あるいはそれより下の人たちはほとんど何も得られなかった。それが反感につながった。ダボスの世界観は広範囲に及ぶ経済回復をもたらしてこなかった」と述べた。
  世界が長年かけて築いた絆をずたずたにしかねないポピュリズム(大衆迎合主義)の時代にわれわれが入りつつあるのは、疑いようがない。バンク・オブ・アメリカ(BofA)メリルリンチが先月実施した調査によると、債券投資家の3分の1近くがポピュリズムを最大の懸念材料に挙げた。この割合は10月の調査では9%だった。
  世界各地で見られるポピュリズムの波は、「文明の衝突」の著者である故サミュエル・ハンティントン氏がかつて「ダボスマン」と呼んだ世界のエリート層に最大の脅威を突き付けているかもしれない。08年に死去した同氏は米国人が増え続ける移民、特にメキシコからの移民や多国籍企業の影響力拡大にいずれ反発する可能性を指摘していた。
  ダボスの常連の一部は、ポピュリズムによって米国をはじめとする各国の先行きが暗くなるのではないかと懸念する。英オックスフォード大学のブラバトニック公共政策大学院のナイリー・ウッズ学長は「グローバリゼーション、スタグネーションおよび貧困、インターナショナルに関する3つの懸念が前回そろって出現したのは1929年の大恐慌の後だ。われわれは本当に、1930年代から教訓を学ぶ必要がある」と話す。
  今年のダボス会議の議題は、懸念の度合いをはっきり示している。例えば、心理学の専門家が「ナショナリスト的ポピュリズムの時代に適切な感情を育む」ことを考えるための材料を提供するセッションがあったり、「追い詰められて怒れる中間層の危機にどう対処するか」と題するセッションには国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事やヘッジファンド運用者のレイ・ダリオ氏が出席の予定。また今回の会議は、中国の習近平国家主席が初めて参加することでも注目されている。
  ダボスの参加者らは過去数十年支持してきた政策が依然として繁栄をもたらす最善の方法だと信じ、これを唱えるのをやめることはないとしている。それでも、そろそろ反省すべき時期かもしれない。ウッズ学長は「幾分か謙虚になる必要はあるだろう。エリート層は30年間、『誰にとっても機能するようにグローバリゼーションを進めていく』と話してきたが、その言葉をそのまま繰り返すわけにはいかないだろう」と述べた。
原題:Davos Wonders If It’s Part of the Problem(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJPJAB6JIJV301

http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/308.html

[経世済民117] ダボス会議、「トランプ時代」到来に広がる不安感 「トランプ流」保護主義はドイツに伝染するか 国境税、中国「資金逃避」加速
焦点:ダボス会議、「トランプ時代」到来に広がる不安感
[ダボス(スイス) 15日 ロイター] - 世界経済はここ数年なかったほど好調で、株価は上がり、石油価格も上昇、中国の成長減速懸念も後退している。しかし、今月17─20日に各国要人や企業トップが参加してスイスのダボスで開催される世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)では、最終日の20日に予定されるトランプ次期米大統領の就任や、政治環境の悪化を背景に不安感が広がりそうだ。

英国が欧州離脱を決めて半年もたたないうちに米大統領選でトランプ氏が勝利したことは、ダボス会議の参加者が抱く、グローバリゼーションや自由貿易といった信条にパンチを食らわす結果となった。

トランプ氏は、先進国に広がり戦後のリベラル民主主義への脅威となっているポピュリズムの動きを体現した存在といえる。今年はオランダ、フランス、ドイツ、そしておそらくイタリアでも国政選挙が実施されるとあって、参加者は神経質になっている。

国際研究機関インターナショナル・クライシス・グループのジャンマリー・ゲーノ最高経営責任者(CEO)は「トランプ氏に対する見方がどうであれ、今回の米大統領選の結果は根深い不透明感をもたらしており、ダボス(での年次総会)に大きな影を投げかけることになる」と予想する。

4日間の会期中に予定されているパネル討論は、抑圧され怒りに満ちている中産階級の問題や、ポストEU時代など混乱をもたらしている現在の状況を想起させるテーマが多い。

核となる問題はおそらく、政府や企業のトップが、大衆の怒りの根源的な原因に対する見方で一致し、対策に着手できるかどうかだろう。WEFは年次総会を前に発表した報告書で「公共的な機関に対する信用の低下」を強調し、政治や指導者に対する信頼を取り戻すことの難しさを指摘している。

安定した職業や収入を持たない「プレカリアート」と呼ばれる人々に関するいくつもの著作で知られるガイ・スタンディング氏は、自由市場に基づく資本主義には見直しが必要だと考える人々が増えていると指摘。「いわゆる主流的な企業は、トランプ氏も極右勢力による支配も望んではいない。ビジネスが可能な、安定した世界経済を求めており、そうしたトップらの中には、自分たちがやりすぎてしまったと感じている人も増えている」と話す。

一方、政治リスクコンサルティング会社、ユーラシア・グループのイアン・ブレマー社長は、最近訪問した米金融大手ゴールドマン・サックスのニューヨークの本社で社員らが株価上昇やトランプ氏による減税・規制緩和の見通しを喜んでいたことを挙げ、ダボスで資本主義が根本的に壊れていると訴える人たちには出会えないと指摘する。

また、「現代に合ったグローバリゼーションは可能ではあるが、人々がそうしたことに気づくには時間がかかる」(欧州復興開発銀行のスマ・チャクラバルティ総裁)といった前向きな見方がある一方で、技術変革のスピードの速さや複雑に絡み合った世界経済は、指導者の対応を難しくしているとの声も参加予定者からは上がっている。

グローバリゼーションと開発の専門家であるオックスフォード大のイアン・ゴールディン氏は「国際的な政治状況は、これまで長期間なかったほど悪化している。気候変動などの問題に対し、さらなる協調が求められているのに、世界は内向き志向を強めている」と話した。

(Noah Barkin 記者)

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今年のダボスは反省の場−ポピュリズム招いたとエリートら自問自答か 
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/308.html


 

焦点:「トランプ流」保護主義はドイツに伝染するか

[ベルリン/フランクフルト 9日 ロイター] - 中国企業による自国企業の買収が多発したことを受けて、ドイツは外資による買収を制限する政府権限を見直している。とはいえ政権内では戦略的技術が国外に流出する懸念よりも自由貿易を支持する声が強く、変更が行われるとしても限定的なものに留まるだろう。

中国からの買収に対してドイツの警戒感が高まったのは昨年だ。独産業用ロボット製造大手クーカ(KU2G.DE)の買収に中国企業が名乗りを上げたため、政府は欧州企業による入札で対抗させようと積極的に動いたが、成功しなかった。

メルケル独首相は、ドイツの最先端企業の代表例としてクーカを称賛しており、2015年にアウグスブルクの本社を訪問した際、「たとえばクーカのような企業がドイツにあることを、私たちは誇ることができる」と従業員たちに語りかけている。

中国の家電大手の美的集団(000333.SZ)によるクーカ買収は、その誇りを傷つけた。その結果、ドイツ政府は外資による企業買収を制限する法的手段を見直しつつ、欧州として重要技術を保護する方策を推進することになった。

政府による検討の先頭に立っているのはガブリエル経済相である。同氏が率いる中道左派の社会民主党(SPD)は、メルケル首相の保守派キリスト教民主同盟との連立政権に参加している。最終的には、メルケル首相がジグマール経済相を抑えることになりそうだ。

「何か改革が行われるとしても、根本的なものにはならないと思う」と語るのは、ベルリンのメルカトル中国研究所(MERICS)のミッコ・フオタリ氏。「首相が推進しない限り何も起きないだろう」

メルケル首相は自由貿易を深く信奉しており、今年ドイツが20カ国・地域(G20)の議長国を務めるに当たって「相互に結びつく世界の形成」をテーマに掲げている。これによって同相は、ドナルド・トランプ次期米大統領の保護主義的な衝動に抵抗することを狙っている。

クーカ買収の際にも、メルケル首相は、一般論としてドイツが中国からの投資に対して開放的であることを強調していた。ただしその見返りに、中国が市場を開放し、同様の投資条件を提供することを期待しているとも述べている。

昨年6月にこのような発言をして以来、メルケル首相は概ね中国企業による投資をめぐる問題から距離を置き、ガブリエル経済相に制限措置の検討を主導させ、波風を立たせる役目を任せている。11月の訪中時には、同経済相は中国の高虎城・商務相と意見を戦わせた。

「どちらの側も遠回しな言い方はしなかった」とガブリエル経済相は中国側との会談後、記者団に語っている。会談で同経済相は、中国が国内市場へのドイツ企業のアクセスを制限する一方で、中国企業がドイツ企業を買収していることについて懸念をぶつけた。

<急ブレーキ>

ガブリエル経済相の強気姿勢は目に見える効果をもたらした。ドイツの照明大手オスラム(OSRn.DE)の買収案件に詳しい2人の関係者によれば、政治的な向かい風が強まる兆候を受けて、オスラム買収に対する中国側の関心は低下したという。

中国でも企業買収・合併(M&A)案件への監視が強まっている。外貨準備と対外収支への圧迫が強まることを懸念して、中国当局は違法な国際為替取引に対する取締りの一環として、対外投資プロジェクトの調査を始めている。

こうした調査が行われることで、中国企業としては、戦略上の明確な妥当性がない限り、ドイツ企業の買収を正当化することが難しくなる、と投資銀行関係者は指摘する。

「ドイツ・中国双方ともブレーキに軽く足をかけている」とドイツ銀で国内コーポレートファイナンスの共同部門長を務めるベルトホールド・フュルスト氏は語る。

昨年、中国企業はドイツにおいて4件の買収案件から撤退した。トムソン・ロイターのデータによれば、このうち3件の買収額合計は5億7900万ドル(約664億円)に達している。残りの1件の買収額についてはデータが得られなかった。

トムソン・ロイターのデータによれば、中国企業が昨年ドイツ国内で行ったM&Aは56件、100億ドル近くに相当する。ドイツ政府は戦略的な技術の流出を、そして労働組合は雇用の喪失を懸念している。

ドイツ政府が中国からの買収に対する対応策を見直すなか、投資銀行関係者は、ドイツ国内における中国関連の買収は、しばらくのあいだ落ち着くものと予想している。

「買い手となる中国企業は当面は慎重に行動するものと予想され、少数株式の取得など代替ディールに取り組む可能性がある」と英バークレイズのドイツ部門を率いるアレクサンダー・ドール氏は語る。

<強気姿勢の裏で小細工も>

ガブリエル経済相は昨年6月、外資による買収を阻止する政府権限の見直しを開始するにあたって次のように述べた。「市場を開放するためにドイツ企業・ドイツ国民の雇用を犠牲にすることはできない」

ドイツが外国企業による買収を制限・阻止するための手段としては「外国貿易及び決済法」がある。

だが、グローバルな自由貿易を堅持し、それによる恩恵を得ているドイツでは、大幅な変更は考えにくい。ドイツ当局者が口にするのも、海外からの買収に対するルールの「厳格化」ではなく「調整」だ。

現時点で、上記の法律によってドイツ政府ができることは、その買収が「ドイツ連邦共和国の社会的秩序又は安全保障を脅かす」場合に、「制限又は義務」によって介入することだけである。

同法では、こうした制限や義務は、軍装備品に対して、また「国家の機密資料を処理するセキュリティ機能」を備えたIT技術製品を製造する企業に関して「特に課すことが可能」と定めている。

政府がこのような基準をあまりにも広義に解釈してしまえば、結果として、司法による抵抗を受けることになろう。ドイツ政府は、国内における外国企業による買収については全般的に不干渉を貫いてきた。

2008年以降、海外からの投資に対する338件の政府監査のうち、政府側が開始したものはわずか1件であり、それ以外はすべて、コンプライアンス条件をクリアする必要があった、買い手側の外国企業による要請に応えたものである。

近年のドイツ政府による介入としては、2014年、カナダの通信機器大手ブラックベリー(BB.TO)による暗号化技術企業セキュスマートの買収に対して政府が制限を課した例がある。このときは、機密情報が海外の情報機関に漏れないことをブラックベリーが保証したことで、ようやく買収許可が下りた。

ドイツ政府が中国企業による買収を却下した例はまだない。ただし、中国の投資会社、福建芯片投資基金(FGC)は先月、半導体製造装置メーカー、アイクストロンの買収を取り下げた。米国が安全保障上の理由で買収を阻止したためである。

政府筋が匿名を条件に語ったところでは、経済省は9月に予定されている総選挙前に、外国企業による企業買収の精査に関するルールの改訂案を提出する可能性があるが、選挙前に法制化されるかどうかは不明であるという。

MERICSのフオタリ氏によれば、ドイツ政府がルールをやや厳格化する可能性があるという。「政府がやるとすれば、いつ買収案件を調査するかについての基準の変更だ。重要技術のリストに軍事・民生両用品を追加するかもしれない」

欧州連合(EU)レベルでの審査強化を実現するのも難しい課題だ。技術的ノウハウが中国に流出することを懸念している主な国はフランスとドイツだが、それ以外の国は投資誘致に熱心で、そうした懸念をあまり抱いていないからである。

ドイツ政府が中国からの買収への注目を高めていることについて中国はどの程度気にしているのか質問すると、中国外交部の報道官は、中国とドイツのビジネス取引は「ウィン・ウィン」の関係だと答えた。

<企業の反発>

多くのドイツ企業にとって、中国は引き続き非常に重要な存在である。

ドイツの自動車メーカーは依然、世界最大の自動車市場における成功を味わっている。昨年末にフォルクスワーゲン(VOWG_p.DE)が発表したデータによれば、今後数カ月にわたり、同社中核ブランドの販売が中国市場の需要に牽引されると見込まれている。

だが中国が海外で戦略的技術を持つ企業を手中にする一方、海外の自動車ブランドは同国において、現地パートナーとの合弁による自動車生産しか許されていない。それもパートナー候補は通常2社に限られる。

さらに中国政府の「中国製造2025」計画は、先進的な情報技術・ロボットといった部門において国内部品の使用率を段階的に高めていくことを求めている。

こうなると、ここ数年ドイツの経済力の源泉だった中国向け輸出は、中国企業が優勢になっていく一部の部門においては、リスクに転じていくことになる。最近では、世界最大の太陽光発電用セルのサプライヤーだったドイツ企業が、すでにその座を中国企業に譲りつつある。

独政府当局者は、中国はパートナーではなく、技術やハイエンドの工学におけるノウハウを取得することにより、ドイツ自身と衝突する利害関係をもつ国だとみている。

「これまでは、さほど強くは感じていなかったが、中国は友人もパートナーも求めていない。中国にとって大事なのは自国の利益だけだ」。11月、ドイツ経済相の中国訪問に同行した代表団の1人は、訪問中にそう語っていた。

だがドイツ産業界のリーダーは、中国によるM&Aを自国政府が制限することについて、おおむね消極的だ。多くの企業が投資を必要としており、中国企業は信頼できるパートナーだと考えている。

ドイツのコンクリートポンプ製造会社プツマイスターは、2012年に中国のライバル企業、三一重工に買収されて以来、従業員の雇用が確保され、売上高も3分の1近く増大した。

「中国企業による投資をめぐる状況は、一貫して良好だ」とドイツ機械装置産業連盟(VDMA)のティロ・ブロッドマン代表は語る。

産業界の声を意識して、メルケル首相は、経済相による見直しが進むなかであっても、中国からの買収についての状況説明を補佐官に求めている。同首相が投資の流入を妨げる可能性は低い。

ガブリエル経済相が制限措置の見直しを進める一方で、メルケル首相は側近に、中国企業による企業買収についての状況説明を求めている。ある政府筋は「角を矯(た)めて牛を殺す」ことがあってはならないと話している。

(Paul Carrel記者, Gernot Heller記者 and Arno Schuetze記者、翻訳:エァクレーレン)

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コラム:トランプ氏の国境税、中国からの「資金逃避」を加速

James Saft

[12日 ロイター] - ドナルド・トランプ次期米大統領と共和党が導入を検討している「国境税」は、中国からの資本逃避を招き、大きな波紋を与える可能性がある。

下院共和党が支持している国境税調整プランでは、輸入に対して20%を課税、逆に輸出に対しては補助金を給付するという内容になっている。

共和党とトランプ氏は、国内生産を優遇する手段の1つとして、すべての輸入品に対する国境税の適用を求めているものの、一方でトランプ氏は、生産拠点を海外に移す企業の輸入に対して直接重税を課すという脅しの意味でもこの言葉を使用している。例によって、トランプ氏の意図や目論見はきわめて不透明だ。

トランプ氏は過去にも、中国からの輸入品に45%の関税を課すという考えを示したことがあった。国境税について議論されているよりもさらに高い税率である。

これは、中国だけでなく、金融市場にも問題を引き起こすだろう。米国が輸入する中国製をはじめとする外国製品の競争力を低下させるというだけの理由ではない。

国境税は、すなわち「ドル高」を意味する。ローレンス・サマーズ元米財務長官は今月、ドルの「急上昇」に対して警鐘を鳴らした。

もし他のすべての条件が変わらなければ(そういう状況はめったにないが)、20%の国境税を導入すれば、ドル相場も同じような割合で上昇するだろう。他の国もこぞって、独自の国境税その他の手段を講じるだろうから、実際にはそうなる可能性は低いだろうが、それでも、ドル高が大幅に進むのは確かだ。

すると、中国は複雑な問題に直面することになる。ドル建ての借入コストは世界中で上昇するが、さらに深刻なのは、これに応じて人民元への押し下げ圧力が高まることだ。

「中国が、ただでさえ今後の貿易の混乱に伴う資本逃避を抑えるのに苦労している現在、(国境税が)中国経済にとってさらなる不安定要因になるという懸念は当然だ」と、ジェローム・レビー・フォーキャスティング・センターのデービッド・レビー会長はインタビューに答えている。「現段階で、何であれ貿易の流れを妨げるような動きが生じるのは、中国にとっても世界経済の安定にとっても、タイミングが悪い」

懸念されるのは、人民元の保有者がドル急騰を見込んで、中国のルールに従いつつ、あるいはそれを回避しながら、他の通貨や資産へと資金を移動することで、人民元への影響を「先取り」するのではないかという点だ。

中国政府が定める変動幅の範囲内で取引されている人民元の相場は、主として国内経済の要因により、2016年には対ドルで6.6%下落した。

<資本の移動は常態だが>

確かに、中国市場はドル高に対して必ずしも脆弱性が高いとは言えない。脆弱なのはむしろ、経常収支が赤字で、資金調達のためにドルを集めなくてはならないような新興市場だ。

とはいえ、顕著な資本流出が2年にわたって続いたことで、かつて(あるいは今でも)巨額であった中国の外貨準備高は減少した。2016年の中国の外貨準備高は、前年比3200億ドル減の3兆110億ドルとなった。2015年の前年比5130億ドル減と比べれば小幅の減少とはいえ、中国はその間、資本逃避を防ぐためにさまざまな手段を講じてもいた。

資本規制を回避するため、中国の人民元保有者はオンライン通貨「ビットコイン」に走ったため、ビットコインの価格は9月から1月4日までのあいだに倍増している。今週、中国当局がビットコイン取引所の「抜き打ち検査」を実施したことにより、ビットコインは12%下落した。いずれにせよ、あらゆる経路をたどって資本が逃げ出そうとしているのは確かだ。

中国は依然として巨額の外貨準備高を維持しているが、IMFの適正水準によれば、中国が保有すべき外貨準備高は約2.7兆ドルである。昨年の減少率を見る限り、その水準に達する日は近そうである。国境税によって資本逃避が加速すれば、問題の緊急性はすぐに高まるだろう。

資産管理会社大手のPIMCOは12日、中国は2017年に、もっと通貨の流動性を高める可能性があると語った。また、中国人民銀行の元顧問として大きな影響力のあるYu Yongding氏も同日、「人民銀行は、2017年の人民元の下落水準に25%という『下限』を設けるべきだ」と発言した。

人民元が変動相場制に移行すれば、「中国は通貨を不正に操作している」と糾弾してきたトランプ氏にとっては、自らまいた種ということになる。ただ、その一方で、きわめて大規模な資本流出を招く恐れもある。外貨準備高は維持できても、資本逃避が問題となり、その他の政策にも影響が出てくるかもしれない。

中国は中央統制が非常に強い準閉鎖経済であり、金融危機の最中も、その後でも、自国の経済刺激策によってさまざまな混乱を切り抜けてくることができたという意味で特殊である。しかし、資本が逃避し、変動相場制の有無にかかわらず人民元の大幅安が生じる状況では、中国の打つ手も限られてくるかもしれない。

忘れてはならないのは、中国に関してこうした状況が発生するかもしれない一方で、他の新興市場の多くが同じ原因に由来する危機を経験していることだ。

米国の輸出にどのような影響を与えるかはさておき、「国境税」はグローバル市場にたやすく大混乱を巻き起こす可能性があるのだ。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
http://jp.reuters.com/article/markets-saft-idJPKBN15009X?sp=true

http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/811.html

[経世済民117] サブプライム危機の再来か、米PACEローン(前編) 返済能力の軽視や勧誘方法に問題あり 背後には政府がついていると安心
サブプライム危機の再来か、米PACEローン(前編)
返済能力の軽視や勧誘方法に問題あり
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排水管の浸食で家が水浸しになり、1万6732ドルのPACEローンを組んだカリフォルニア州サンノゼ在住のシンディー・ベンチュラさん(左)と母親 PHOTO: PRESTON GANNAWAY FOR THE WALL STREET JOURNAL
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KIRSTEN GRIND
2017 年 1 月 16 日 06:49 JST
 米カリフォルニア州イングルウッド在住のディアナ・ホワイトさんは業者から勧められた改装工事費用4万2200ドル(約490万円)のローンを抱える余裕はないと伝えた。その業者はホワイトさんに、このローンは「政府プログラム」であり、問題ないと言ったという。そこでホワイトさんはローンを申請し、承認された。
 2年後の今、ホワイトさんはローンの支払いに苦しんでいる。ホワイトさんが抱えるローンは、1万件を超える同様のローン債権とまとめて証券化されており、組成された債券が投資家に販売されている。現行制度の下では、ホワイトさんがデフォルト(債務不履行)に陥れば、寝室が5部屋の自宅が差し押さえられる可能性がある。
 ホワイトさんが利用したのは、戸建て住宅向けのPACE(Property Assessed Clean Energy=不動産として評価されるクリーンエネルギー設備)と呼ばれる公的ローン制度だ。省エネ設備の設置に融資するもので、太陽光パネルやエネルギー効率の良い窓やエアコンなどの購入を促進させる制度として、全米各地で導入されている。
 これまでに住居用として約34億ドルが同制度を利用して融資された。業界からは向こう1年以内に融資総額がこの2倍に膨らむと予測する声も出ている。そうなればPACEは米国で最も急成長を遂げるローンとなるだろう。
 PACEローンの利用が拡大するに連れて、サブプライムローン危機と似たような問題も広がっている。ローンに関する書類や数十人におよぶ借り手および業界幹部らの話によると、現場では配管工や修理工といった作業員がローンのブローカーとして機能しており、貸し手から仲介手数料を稼いでいる。だが十分な訓練や当局の監督を受けてはいない。
 貸し手にとっては借り手の信用力はほとんど問題ではない。ローンは不動産価値に基づいているためだ。PACEローンは通常、頭金を必要とせず、固定資産税に上乗せする形で債務を返済する仕組みになっている。このためホワイトさんの固定資産税を含む支払額は年間1215ドルから6500ドルに跳ね上がった。
PACEローン融資額の推移(単位:10億ドル)

https://si.wsj.net/public/resources/images/P1-BZ737_ENERGY_16U_20170105174505.jpg

 PACEローンの急成長はこのローンから証券化された債券への旺盛な需要も一因だ。とりわけ、投資信託会社や保険会社の間で引き合いが多い。投資家はこの債券の比較的高い利回りや環境問題に取り組んでいるという良い印象、信用格付けの高さを好感している。一方、格付け会社はPACEローンの将来のデフォルト率を予想する長期データが十分にあるわけではないと説明する。
 クリーンエネルギーを普及させる手段としてPACEローンを採用した地方政府のなかには、ホワイトさんが抱えているような厄介な成り行きを予想していなかったところもある。
 カリフォルニア州の複数の市と郡で構成される団体で、最大のPACEローンの運営を手助けしているウエスタン・リバーサイド・カウンシル・オブ・ガバメンツの責任者、リック・ビショップ氏は「われわれが今耳にしている(PACEローンの)欠点は、何らかの方法で誤った情報を教えられたように感じている人がいることだ」と述べた。
 同団体は借り手が抱える問題の解決を試みている。同州リバーサイド郡はPACEローンの勧誘方法に関する調査に着手。同州のジェリー・ブラウン知事は昨年9月、統一された情報開示の確立を新たに義務づける法律に署名した。これは融資条件を住宅ローンに近づけるものだ。PACEローンを組む債務者は3日以内であればローンの取り消しが可能だ。
 PACEローンの最大の貸し手であるリノベート・アメリカは昨年11月、借り手から3件の訴訟で訴えられた。争点は、利子や管理手数料の二重取りをしていたなどの点だ。原告は集団訴訟を目指している。一方で同社は原告の主張を否定したうえで、「PACEと自社、そしてプログラムを積極的に守る」としている。
 米エネルギー省は昨年11月、ローンの運営事業者に対し、借り手が負担する費用や条件を明確に説明することや、一定期間内であれば解約を認め、仲介業者へのキックバック(見返り)を防止するよう求めた。
*この記事は後編に続きます>>
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サブプライム危機の再来か、米PACEローン(後編)
背後には政府がついているとの安心感

自身を「資本主義者のヒッピー」と表現するシスコ・デブリーズ氏(中央、2015年7月21日、ニューヨーク) PHOTO: GETTY IMAGES FOR NEW YORK TIMES
By
KIRSTEN GRIND
2017 年 1 月 16 日 09:21 JST
 エネルギー効率の良い設備の設置を促進させる制度として、全米各地で導入されている公的ローン制度のPACE(Property Assessed Clean Energy=不動産として評価されるクリーンエネルギー設備)。同制度の利用が拡大するに連れて、サブプライムローン危機と似たような問題も広がっている。
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 PACEローン最大の貸し手リノベート・アメリカの創業者、JP・マクニール最高経営責任者(CEO)によると、「消費者の利益にならない事態を防ぐため」、ローンの貸し手は消費者団体と協力して全国的な統一基準を作成中だ。
 業界関係者は、こうした成長痛はPACEプログラムが始まってまだ日も浅いことが主因だと指摘する。最初のPACEプログラムは2007年にカリフォルニア州バークレー市長の首席補佐官を務めていたシスコ・デブリーズ氏によって始められた。
 ニューヨーク州にある業界団体PACEネーションによると、これまでに34の州と首都ワシントンの地方議会がPACEプログラムの採用を承認している。
 自身を「資本主義者のヒッピー」と表現するデブリーズ氏は現在、カリフォルニア州オークランドに本拠を置くクリーンエネルギー設備に特化した融資を手がけるリニュー・フィナンシャル・グループのCEOを務めている。同氏は「われわれが成し遂げたことを本当に誇りに思う」とし、次にこう述べた。「お金とエネルギーを節約する手助けになることを目指した。今それが進行中なのだ」
 昨年7月に米住宅都市開発省が、PACEローン付き物件について連邦住宅局(FHA)が保証するローンで購入することを認めたことで、PACEローンの広がりに一段と弾みがつくかもしれない。
 PACEローンの融資額は5000ドル〜10万ドル超と幅広いが、平均は約2万5000ドルだ。金利は6%〜9%で、返済期間は通常5年〜25年となっている。
 返済は毎月ではなく年に1回〜2回、固定資産税と一緒に支払う。市や郡の当局は返済額をまとめて融資業者に受け渡す仕組みだ。
PACEローン制度を採用した州の数

https://si.wsj.net/public/resources/images/P1-BZ739_ENERGY_16U_20170105174810.jpg

 地方政府は融資業者から手数料を受け取る。昨年6月30日までの1年間で、ウエスタン・リバーサイド・カウンシル・オブ・ガバメンツは710万ドル(予算規模の約15%)の収入をPACEプログラムから得ている。
 PACEローンのもう一つの特徴は、住宅ローンよりも優先される債務であることだ。これはPACEローンでデフォルト(債務不履行)を起こした場合、物件は担保として差し押さえられ、資金回収のために売却されることを意味する。
 この仕組みは地方政府を複雑な立場にさせる。デフォルトが発生し、物件の価値が債務の額を下回っていた場合、税金による穴埋めが起こりかねないからだ。ただこれまでのところ、そうした事態には至っていない。
 投資家らは、背後に政府がついているとの安心感がPACEローンを担保にした債券に引きつけられる主因だと話す。
 アイオワ州ウェストデモインにあるファーム・ビューロー・インシュランスの親会社、FBLフィナンシャル・グループでポートフォリオ管理担当のバイスプレジデントを務めるマイク・ウォーマス氏によると、同社は昨年9月末時点で、2200万ドル相当のPACEローン担保債券を保有している。利回りは4%前後だという。
 米格付け会社クロール・ボンド・レーティング・エージェンシーによれば、PACEローンのデフォルト率は1%未満だ。同社のシニアディレクター、セシル・スマート氏は、投資家ではなくローンの貸し手が損失を負担するような仕組みになっていると指摘した。
 PACEローン債権の証券化で最大級の規模を手がけた金融機関のひとつはドイツ銀行だった。昨年12月中旬には予想をはるかに上回る2億8400ドル相当の需要があった。関係者によると、同行はブローカーによるローンの仲介から生じている問題を認識している。
 現在および元従業員の話によると、仲介業者は戸別訪問の際にPACEローンを案内することが多く、契約者1人あたり最低500ドルの手数料を稼ぐことができる。ローン契約者は、地元のイベントや勧誘電話でもローンを勧められたと話す。
 リノベート・アメリカはこの数カ月間、消費者団体と協力して全国的な統一基準の策定に取り組んでいる。新たな基準には、経済的苦境に陥っているローン契約者に1年間の返済猶予を設けることが盛り込まれる可能性がある。
 カリフォルニア州イングルウッド在住のディアナ・ホワイトさんは、ハウス・ネクスト・ドアという業者の担当者は2年前に、4万2200ドルのローンの支払いで心配することはないと言ったと話す。その際、「あなたのポケットから出て行くものではないから」だと説明したという。 (前編テキストリンク貼る)
 ホワイトさんのローンは1万1282件のPACEローンとともにまとめられ、ウエスタン・リバーサイド・カウンシル・オブ・ガバメンツが発行する債券の担保となっている。その債券をドイツ銀が「HERO Funding Trust 2015-1」として証券化し、2億4000万ドルを集めた。同証券は格付け会社クロールから3番目に高い「AA」の格付けを与えられている。
 次の返済日を4月に控えたホワイトさんは、どうお金を工面すればいいのか分からないと話した。
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[国際17] ロシアはトランプ氏への影響力を確保したか トップ機密も相互確証破壊の時代 バズフィードはそれほど悪いことをしたのか
【オピニオン】ロシアはトランプ氏への影響力を確保したか
トップ機密も「相互確証破壊(MAD)」の時代
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トランプ次期米政権の閣僚人事に関する議会公聴会とロシア文書が与える影響について、「ビジネスワールド」欄担当コラムニストのホルマン・ジェンキンス・ジュニアに聞く(英語音声、英語字幕あり)Photo: Zuma Press
By HOLMAN W. JENKINS, JR.
2017 年 1 月 16 日 09:22 JST

 ソ連が崩壊を始め、米国がサダム・フセインをクウェートから追い出そうとしていたころ、ありもしないモノをあり得ないほど大量に売り出すファックスが世界中を飛び交った。売りに出されたのは、イラク通貨のディナールやソ連の「白いルーブル」、大量に備蓄されたソ連製アルミニウムに対する権益、大量のアトロピン(イラクの神経ガスから国連の多国籍軍を守るために需要があったと言われている)だ。

 この世で一番簡単にでっち上げられるのは、人を驚かすような文書だ。売り手は米中央情報局(CIA)との関係をほのめかした。世界を揺るがすような地政学的な混乱が起きているときに、国を助けながら、一夜にして大金持ちなれるチャンスだという。記者は周辺をかぎまわった。話をしてくれる人には不自由しなかった。分厚い調査書類がまとめられた。

 そうした話は十分もっともらしく聞こえた。そのため、だまされやすいある欧州の(われわれも知っている)銀行関係者が、今ならナイジェリアのメール詐欺やコンピューターを使ったなりすまし犯罪をはたらいているような輩にあおられ、そうした詐欺まがいのチャンスを追いかけて銀行もろともトラブルに巻き込まれた。

 そして今、メディアと法執行機関はドナルド・トランプ氏に関するロシアの匿名筋からの情報が満載された文書を追いかけている。

「裏付けが取れていない」情報

 彼らは何カ月も前から情報の真偽を確認しようとしているが、確認できないと話している。当然ながら、なかったことを証明することは困難だ。その結果、おそらく今回の情報は虚偽だろうが、偽の情報ではなく「裏付けが取れていない」情報として伝えられている。文書を作成したのが「英国の元情報部員」とされることにあまり感心してはいけない。元情報部員のほうが記者や会計士、弁護士など情報収集のプロより情報に通じていたり、コネがあったり、へまをする可能性が低いかと言えば、必ずしもそうではない。

 しかしながら、文書の情報が真実であると考えることのほうがある意味、興味深い。ロシア政府はこの情報のおかげで、トランプ次期大統領に対して影響力を確保すると言われている。本当にそうだろうか。

 トランプ氏はいくつかの点で、上品とは言えない人生を歩んできた。その軽率な行為を目撃した人達が誰かに話したくなったと考えるのはおかしなことではない。外国の情報機関がそうした情報を追いかけていたとしてもあり得ないことではない。(文書で指摘されたように)トランプ氏がミスユニバースのイベントでモスクワを訪れた際にロシアの情報部員がハニートラップを仕掛けたというのもあり得ない話ではない。ロシアがトランプ氏に事業への資金提供をちらつかせることもあり得なくはない。ただし、問題の文書によると、興味深いことにトランプ氏はこの話には乗らなかったという。そう書かれているのは、文書の作成者がこの一件については、ないことを証明することが可能であると分かっているからなのだろうか。いずれにしても、トランプ氏が所有する資産の裏側には必ず負債がある。その出所を確認することは可能だ。

 だからなんだというのだろう。文書の内容が真実だとしても、この情報でロシア政府は本当にトランプ氏に対する影響力を確保できるのだろうか。

互いに機密を盗み合う主要国

 われわれは、あらゆる主要国政府が互いに機密を盗み合う世界に生きている。漏れ聞くところによると、米国政府は対象国の通話を全て録音し、1カ月間取っておくことができるという。米国はドイツのアンゲラ・メルケル首相の携帯電話を盗聴していたとされる。中国は米人事管理局のコンピューターシステムに侵入し、米国政府の現・元職員と応募者2200万人について個人情報を盗み出した。北朝鮮はソニーのシステムに侵入し、デジタル機密を探し回った。ウクライナ危機が始まったころ、ロシアは外交を担当する2人の米政府高官の通話の録音をリークした。ロシアはヒラリー・クリントン氏側近のジョン・ポデスタ氏と民主党全国委員会(DNC)の電子メールを盗み出し、全世界にばらまいた。オランダの捜査当局はウクライナ上空でマレーシア航空機がミサイルで撃墜された事件で、ミサイルの発射台をロシアが提供していたことに関して数えきれないほどの通信傍受を引用することができた。報道によると、ノルウェーとスウェーデンは西側の情報機関のためにロシアのインターネット通信を監視している。

 世界の主要情報機関が握る情報量は膨大で、そのほとんどは外部と共有されていない。米国の情報機関はロシアによるDNCのハッキングについては熱心に自分たちの業績を明確に語っていたのに、プーチン時代に起きたその他の犯罪に関する膨大な情報については口を閉ざしている。これらの情報は暴露されれば、プーチン氏にとって非常に厄介なことになるだろう。

 世界主要国の政治家の間では、「相互確証破壊(MAD)」に似た考え方が広がっている。モスクワのホテルの一室での下品なエピソードのおかげで(それが本当に起きたとして)、トランプ氏が米国大統領としてロシアに対して持つような影響力を、ロシア政府がトランプ氏に対して持つことはないだろう。

 米大統領選へのロシアの干渉に関して言えば、民主党政権がこの問題に熱心だったのは党派的要素が関係していることは間違いない。しかし、この問題には別の側面がある。米国で現在起きているのは、こういうことだ。米国政府はプーチン氏に対して、プーチン氏が自らやロシアの情報活動にこれだけ注目を集めることで、MADの領域に踏み込んだということを必死に伝えようとしているのだ。

 メディアや議会の一部がこの機会を利用して、ロシアが関係する殺人や暴力に関する情報を開示するようCIAに改めて要求することは全くの見当違いとは言えない。こうした情報が暴露されれば、プーチン氏の権力維持が危うくなるとは言わないまでも、西側政府と仕事がしにくくなるのは確実だろう。

 米国が対処する必要があるのは、プーチン氏の活動の厚かましさと傲慢(ごうまん)さだった。ハッキングなど情報時代の破壊行為に関する限り、われわれはMADの世界に生きている。米国は改めて他の主要国が尊重しなければならない、超えてはならない一線を定めるべきだ。早いに越したことはない。

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バズフィードはそれほど悪いことをしたのか
トランプ氏「ロシア文書」公開で思い出す名編集者の言葉
記者会見に臨むトランプ次期大統領(11日)
By SETH LIPSKY
2017 年 1 月 16 日 11:23 JST

――筆者のセス・リプスキー氏はニュースサイト「ニューヨーク・サン」の編集長

***

 故ロバート・L・バートリー氏ならどうしただろうか。筆者はジャーナリスト倫理を巡って迷った時にこう自問することが多い。ドナルド・トランプ次期米大統領に対する裏付けのない醜聞がつづられた35ページのメモ全文を公開した米ウェブメディア、バズフィードのベン・スミス編集長は、まさにそうした局面に直面していたといえるだろう。

 バートリー氏は20世紀の最後の数十年間、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の論説トップを務めた。それは伝統的な新聞ジャーナリズムにとって最後の輝かしい時期だった。同氏は欧州、アジア、米国の各版で社説面を統括していた。

 バートリー氏を思い出させる出来事は11日に起きた。バズフィードがトランプ氏に関するメモを公開したことを受け、米紙ニューヨーク・タイムズが「メディアとの、そしてメディア内部での戦争」と呼んだ事態は、大統領選後初めて開かれた記者会見を席巻した。

 トランプ氏は集まった記者たちの前で、メモの存在を暴露したCNNを「偽ニュース」だとあざけり、バズフィードを「できそこないのゴミの山」と切り捨てた。それはメディア新時代にある種の教訓をもたらすような瞬間だった。

 バートリー氏なら若いスミス氏に何とアドバイスしただろうか。それは推測するしかない。この偉大な人物はバズフィードが創設された3年前の2003年に死去したからだ。ただ、バートリー氏が若い編集者だった筆者に語ったことは思い出せる。当時、筆者は極めて弱い情報源を頼りにした特ダネを抱えていた。

不確かなスクープの思い出

 それは1990年代初めのことだった。記事はジューイッシュ・フォワード紙の故デービッド・トワーズキー記者(ワシントン担当)が執筆し、筆者が編集していた。内容は中東におけるブッシュ一族のビジネスのもつれについてだ。詳細は忘れたが、筆者が優柔不断だったことは忘れていない。

 フォワード紙はスクープを切望していた。そしてトワーズキー氏はいくつかのスクープをものにしていた。例えば、大統領選に勝利したビル・クリントン氏の政権移行チームのメンバー1人が「ベンセレーモス旅団」の全国委員会に仕えていたという特ダネを書いた。同旅団はキューバ情報機関の最前線だと米連邦捜査局(FBI)がにらんでいた組織だ。また、クリントン氏が司法省市民権局の局長に指名したラニ・グイニア氏が、複数の法律専門誌で、少数派(マイノリティー)の選出が公民権法により求められていると主張していたことも報じた。クリントン氏はグイニア氏の指名を撤回した。

 ブッシュ一族の事業に関する情報は人目を引くはずだったが、トワーズキー氏は情報の裏を取ることができなかった。そこで、筆者は印刷の準備が整えられている間に試し刷りを1枚持って外出し、ウイスキーを購入し、午後9時半にウイスキーの瓶でバートリー邸のドアをたたいた。

 バートリー氏はドアまでやって来た。筆者が訪問の目的を告げてウイスキーを手渡すと、同氏は笑顔で筆者を中に招き入れた。グラスと氷を取りに行っている間、同氏はリビングのソファに座るよう指示した。

 試し刷りを上から下まで読みながら、バートリー氏は記事の文章一つ一つに対し特徴的な甲高い声で笑った。その後、同氏は顔を上げ、「私ならきっとウォール・ストリート・ジャーナルには載せないだろう」と断言した。

どの新聞にもそれぞれの使命

 筆者は「恐れていたことだ」と言いかけ、フォワード紙の一面をどのようにして差し替えるかで頭がいっぱいになった。

 バートリー氏は不意に「しかし」と言葉を差し挟み、「だからといって、あなたがフォワード紙に載せるべきではないという意味ではない」と話した。そして、そのネタはまさに小さな新聞(当時のフォワード紙の発行部数は2万8000部)が報じるべき内容だと述べた。

 トワーズキー氏の記事は掲載されたが、石のように埋もれていった。ただ、バートリー氏が示したポイントは、数年も筆者の心に残っている。どの新聞にもそれぞれの使命があり、どの記事を掲載すべきかは内部の編集者以外には誰も決めることができない。

 ベン・スミス氏は彼の世代で最も優秀なジャーナリストの一人だ。筆者が率いていたフォワード紙でキャリアを開始し、米紙ニューヨーク・サンでも記事を書いていた。CNNがその存在を明かしたが内容の公開には踏み切らなかったメモを、バズフィードが伏せておくことなどできるものか――スミス氏はそう結論付けた。

 そもそもメモはバズフィードが作成したものではない。ワシントンに出回っていたし、極秘情報でもなかった。一連の出来事に関係のある当事者で、それを知らなかったのは一般市民だけだったようだ。このためメモの公開でいいことがあるかもしれない。

 米国はトランプ氏が毎日立ち向かわねばならない世界を間違いなく理解し始めている。バートリー氏はこの壮観を見て甲高く笑っていることだろう。

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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwi78qfSqcbRAhVBTJQKHVXOAecQFggdMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10558161838683014507104582556602740522484&usg=AFQjCNGuGoXP3Uz1SbB4CL9nlCBBcyDxJw


http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/313.html

[経世済民117] ゴールドマン出身者の相次ぐ政権入り、その意味とは 米財務長官の不在長期化 新プラザ合意、今必要か 為替発言しないトランプ
ゴールドマン出身者の相次ぐ政権入り、その意味とは
トランプ氏の米大統領選勝利を受け、ゴールドマン・サックスは恐らく同行が望む以上に世間の注目を集めている

By ADAM CREIGHTON
2017 年 1 月 16 日 17:29 JST

――筆者のアダム・クレイトンはWSJオーストラリア経済担当コレスポンデント

***

 米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利を受け、ゴールドマン・サックス・グループは世間から恐らく同行が望む以上の注目を集めてきた。トランプ氏が現職も含め多数のゴールドマン出身者を政権の要職に指名したことで、同行は「ガバメント・サックス」とやゆされるほど政権と密接につながっていた金融危機当時の姿をよみがえらせている。

 同行出身のスティーブ・バノン氏とスティーブン・ムニューチン氏はトランプ氏の首席戦略官と財務長官にそれぞれ指名された。同行ナンバー2のゲーリー・コーン最高執行責任者(COO)は退社して国家経済会議(NEC)委員長に就く。米証券取引所委員会(SEC)委員長に指名されたジェイ・クレイトン氏は、同行を顧客に持つ弁護士だ。

 だが、同じくゴールドマン出身のロバート・ルービン、ヘンリー・ポールソン両氏がたどった足跡がそのままトランプ政権に反映されると仮定するのは、時期尚早であまりに単純だ。両氏は財務長官として、金融規制緩和と金融機関救済にそれぞれ重要な役割を果たした。

 まず第一に、トランプ氏に指名されたゴールドマン出身者らは、米金融業界、特にゴールドマンに有利になるように規則を変更しているとは見られたくないという意識が強まる可能性がある。

 だがより重要なのは、ゴールドマン出身者の世界観が必ずしも米金融業界のそれと相関しているわけではないことだ。ミネアポリス地区連銀のニール・カシュカリ総裁はゴールドマン出身だが、「大きすぎてつぶせない」銀行に対する規制強化を在任中の最大目標に掲げており、2016年には大手銀行の最低自己資本基準について驚くほどの引き上げを提案した。

 30歳でゴールドマンのパートナーになったゲーリー・ゲンスラー氏は90年代末に財務省幹部として、商業銀行業務と投資銀行業務を分離させるグラス・スティーガル法の廃止に貢献したが、金融危機後は米商品先物取引委員会(CFTC)委員長(09年〜14年)として厳しい姿勢でデリバティブ(金融派生商品)市場の規制強化に尽力した。

 また、バノン氏が在籍していた80年代のゴールドマンは今とは全く違う姿だった。負債率は今よりもはるかに低く、組織形態として株式会社ではなくパートナーシップ制を取っていた。パートナーシップ制では、パートナーである幹部が組織としての決断に対し個人的責任を負う。実際、バノン氏は14年、「われわれは08年の問題を一度も深く掘り下げて調べたことがない」として、自己資本基準の引き上げやトレーディング業務の縮小など「銀行バランスシートの基本的な立て直し」を求めている。こうした規制強化はゴールドマンにとって受け入れがたいものだ。

 ムニューチン氏は99年の株式公開を経験し、02年にゴールドマンを退社した。02年といえば、金融危機の引き金となったサブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン債権の「バブル」崩壊の何年も前だ。

 ムニューチン氏は10年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)について、一部見直したいとの意向を確かに示してはいるものの、「あまりに複雑で、銀行融資を減らすことになる」とも述べている。だが、自己資本基準など、大手金融機関に関わる規制問題についての同氏の見解は定かではない。

 トランプ政権の要職に指名された人たちはすでに莫大な個人資産を築いており、キャリアをスタートさせた頃に抱いていたかもしれない仲間意識はすっかり薄れ、数十年前のゴールドマンの同僚を助けたいと考える理由はそれほどなさそうだ。トランプ政権が大手金融機関をどう扱っていくかを見極める上で、政権を担う人々の経歴は手掛かりになりこそすれ指針にはならない。

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米財務長官の不在が長期化する公算−20日発足のトランプ政権
Saleha Mohsin
2017年1月16日 13:05 JST 
上院の指名承認公聴会は米東部時間19日午前(日本時間20日午前)
財政委の規定は最終承認が月内に行われる可能性が低いことを示唆 
米国で20日に発足するトランプ政権で、財務長官不在が長引くかもしれない。
  上院財政委員会はスティーブン・ムニューチン次期財務長官の指名承認公聴会を東部時間19日午前10時(日本時間20日午前0時)から開くが、同委の規定は最終的な承認が月内に行われる可能性が低いことを示唆している。
  
  ゴールドマン・サックスのパートナーだったムニューチン氏は他の閣僚候補より多くの個人的な納税データの提出を求められており、議会承認で厳しい状況に直面。これまでの政権発足時に比べ、財務長官不在の期間が長くなるとの見方が強まっている。
原題:Mnuchin Start Date Iffy as Congress Scours Wall Street Past (3)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJUSSW6KLVR401

 

【寄稿】新「プラザ合意」、今こそ必要か
強いドルに経済成長を阻害させるな
ドル高によって輸出が減速し、ポピュリスト的な怒りが一段と高まる可能性も

By SEAN RUSHTON
2017 年 1 月 16 日 15:30 JST

――筆者のショーン・ラシュトン氏は米上院の元上級政策顧問で、ジャック・ケンプ財団と共同で立ち上げた「為替レートとドルプロジェクト(Project on Exchange Rates and the Dollar)」代表

***

 米経済が2008年の金融危機の後遺症である低成長からようやく立ち直りつつある中、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融政策の緩やかな引き締めに着手している。ドナルド・トランプ次期米大統領と議会共和党は、規制緩和と法人減税・所得減税を通じて経済成長を後押しする構えだ。ただ、レーガン政権時代からの教訓は、経済成長を妨げるもう1つの脅威、すなわちドル高にも目配りを忘れてはいけないことだ。

 1980年代初頭、FRBの金融引き締め策とレーガン政権の減税によってドルは他の主要通貨に対して劇的に上昇。80-85年の上昇率は50%を超えた。ドル高騰の一方でインフレ率は80年の13%から83年は4%弱に低下。その後物価は上昇せず、歓迎すべきディスインフレが続いた。

 ドル安とインフレの70年代から一転、消費者はその恩恵を受けた。経済学者ロバート・マンデル氏(後にノーベル経済学賞を受賞)やアーサー・ラッファー氏が唱えたサプライサイド重視の政策も奏功し、米経済は活況に沸いた。84年の実質GDP(国内総生産)成長率は7.3%に達した。

マンデル氏が鳴らした警鐘

 しかしインフレが落ち着くと、マンデル氏や彼と親交があったジャック・ケンプ下院議員(ニューヨーク州)は、急騰するドルという新たな危険に警鐘を鳴らした。ドル高はインフレ抑制には有効なものの、米多国籍企業の収益を悪化させ、自動車や電気製品などの国内メーカーの競争力を低下させた。また原油や農産物、鉄鋼といった商品(コモディティー)価格も落ち込んだ。

 その結果、80年代には労使双方の立場から世界貿易に対するポピュリスト的な怒りが沸き上がった。自動車メーカーの労働者は日本の国旗を燃やし、ハンマーで日本車をたたき壊した。米議会では日本製品を破壊するパフォーマンスが行われ、「バイ・アメリカン」が合言葉となった。資源国の景気悪化や中南米諸国などドル建て債務を抱える国々が苦境に陥り経済に深い傷跡を残したことで、世界的な金融システムが不安定になった。

 今日の状況は当時とあまりによく似ており、警告を促すのに十分だ。筆者が2011年に本欄に寄稿したように、マンデル氏は、2008年の金融危機の原因はFRBが過度に引き締まった金融状況を作ったことだと主張する。消費者物価指数は08年6月の5.5%から同年12月はゼロに低下、09年3月にはマイナス2%に落ち込んだ。その結果ドルの過大評価が進み、FRBが「量的緩和策」による資産購入を終えるたびにドルは急騰した。

 この傾向は持続しており、14年の量的緩和第3弾(QE3)終了以降、ドルは対ユーロで25%上昇した。ドル先高観は08年の金融危機後ずっと米経済をむしばんでいる。金利や物価、国内総生産(GDP)の正常化を阻み、1990年代以降の日本と同じ状況に陥らせるからだ。マンデル氏の考えでは均衡を取り戻すにはドル高予想を覆す必要がある。筆者も同感だ。

さらにドル高ならどうなる?

 15年以降のドル高は既に多国籍企業や国内製造業、商品生産者に打撃を与えている。マイクロソフトやIBM、エマソン・エレクトリック、ファイザー、キャタピラーなど米国を代表する企業は昨年、業績が下振れした一因としてドル相場を挙げた。16年1月、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、為替のせいで14年の海外売上高100ドルが15年換算では85ドルになるとこぼし、「この期間に為替がこれほど動くと、わが社にとって有意な違いになる」と語った。

 一方、多額のドル債務を抱える国々にも債務不履行(デフォルト)への圧力となる。国際決済銀行(BIS)の試算では、昨年の世界の債務残高は9兆7000億ドルだ。BISは仮に新興国にデフォルトが広がれば、世界金融システムを揺るがしかねないと警告している。中国やサウジアラビアなど自国通貨がドルと連動する国では、ドルペッグを廃止して通貨を切り下げるようにとの圧力が高まる。資本流出を防ぐため資本規制を導入する国も増えている。

 米連邦準備制度理事会(FRB)が17年の利上げペース目標を引き上げる一方、他の先進国では金融緩和策が維持され、米次期大統領が17年に大幅減税を約束していることから、ドルは危険な水準まで高騰するリスクがある。昨年11月の大統領選投票日からドルは5%以上上昇している。

 既に高水準のドルが一段と上昇すれば、低インフレで資金の動きも鈍く、景気回復の途上にある米経済にどのような影響があるのか? 米国の輸出や製造業、商品市場、ブルーカラー労働者の雇用にいかなる効果を及ぼすのか? 世界中でデフォルトがどのくらい発生し、銀行にはどう影響するのか? 中国が人民元を大幅に切り下げ、貿易戦争が勃発する可能性はあるのか? トランプ新政権が減税などサプライサイド政策を実施しても、強いドルがそのプラス効果を打ち消すのか? あるいは金融市場が先に崩壊し、FRBは金利正常化方針を撤回せざるを得なくなるのか?

世界的なポリシーミックス

 1985年にはマンデル氏やケンプ議員らが議論を重ねた末、レーガン政権は当時のジェームズ・ベーカー財務長官を交渉役に「プラザ合意」をまとめた。ドル相場を低水準で安定させるため、主要国が協調行動をとったのだ。「大いなる安定(グレート・モデレーション)」と記憶されるこれ以降の期間は物価や金利が抑えられ、ドルは健全な取引水準に戻り、世界経済は順調に成長した。保護主義への圧力は後退し、貿易が拡大した。

 当時よりはるかに大きく、相互に依存する現在の世界経済にも、新たなプラザ合意が必要なのではないか。欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は昨年6月の会議で、通貨政策の協調を進め、安定性を高める必要性を訴えるなかでこう述べた。「グローバル化が進んだ世界では、世界的なポリシーミックスが重要だ」

 ドルが跳ね上がる見込みをなくせば、長期的な経済の生産性にとって計り知れない恩恵をもたらす。共通の外部目標を設け、通貨政策のルールを共有するなどの手段を通じて主要通貨の変動を抑えることは、危機に陥りやすい現在のシステムを安定化に導き、正常な金利水準を回復し、貿易摩擦を緩和し、世界経済を成長軌道に戻すための大きな一歩となるだろう。

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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjS-MCpucbRAhUDo5QKHXeBB-sQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10504433381807684657504582562222857748632&usg=AFQjCNHYAcJfikWCJzXz2nbOt_Qvs4QhZw


 


山崎前財務官:為替発言しないトランプ氏はリスペクトに値する
下土井京子、Connor Cislo
2017年1月16日 06:00 JST 更新日時 2017年1月16日 14:53 JST

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1ドル=120−125円は深刻な問題生じるレベルではない−日本経済
尖閣に安保適用のティラーソン発言で「日米関係は決まった」

前財務官の山崎達雄・国際医療福祉大学特任教授は、ツィッターを駆使して米国の貿易赤字などに不満を表明しているトランプ次期米大統領が、為替相場について発言を控えていることは「リスペクトに値する」との見解を示した。
  山崎氏は12日、ブルームバーグのインタビューで、米大統領選後の円安ドル高について、「米国企業の利益に敏感なトランプ氏が内心では嫌だなと思っているに決まっている」とし、「トランプ氏が為替について何も言わないのはすごいことだ」と語った。
  トランプ氏は12日未明(日本時間)にニューヨークで開いた記者会見で「中国との貿易で年間で数千億ドルの損失を被っているのに加え、日本やメキシコとの間にも貿易不均衡が存在している」と、日本を名指しした。しかし、市場が注目していたドル高のけん制までは踏み込まなかった。
  昨年11月の米大統領選後、円は対ドルで約8%下落した。同氏は円安が進んでいた2015年には日本の為替操作についてコメントをしたこともあるが、足元の円安には沈黙を守っている。一方で、昨年12月には人民元の価値引き下げに対する懸念をツイッターに投稿していた。

  山崎氏はドル円相場について「ドルはベーシックに高い感じが続く」と予想。その上で、「多くの日本企業の社内想定レートは100円の前半だ。それが120円、125円になったところで、日本経済全体でみると深刻な問題が生じるレベルではない」とし、為替相場は安定していることが大事だと強調した。
  ドル=円相場はトランプ氏が12日の記者会見で経済財政政策の具体策に言及しなかったことから一時1ドル=113円と約1カ月ぶりの円高となり、足元では114円台で推移している。

中国への批判は「当たり前」

  トランプ氏の中国の通商政策に対する批判は「当たり前だ」と言う山崎氏は「一見市場ルールに従っているが、目に見えないところで不公正な貿易を正すんだと言っている。決して保護主義をやると言っているわけではない」とみる。日本も欧州連合(EU)も利害は共通しているとの見解を示した。
  一方で、トランプ氏が環太平洋連携協定(TPP)からの脱退を表明していることに対しては、「米国企業に競争力を戻し、米国を輸出基地にするような発想があるのであれば、マルチで高いレベルの通商基準を他の新興国にも守らせることが本当は大事だ」と述べ、多国間での通商ルールが必要との考えを示した。

米国経済の高成長に期待

  インフラ投資や減税などを柱としたトランプノミクスへの期待値は高まっている。経済協力開発機構(OECD)は昨年11月発表の半期経済見通しで、トランプ次期政権の経済財政政策によって米国の成長率が17年の2.3%から18年には3.0%に伸びると予想。同年の世界成長率予想は3.6%と11年以来の高成長を見込んでいる。
  政策の不確実性はあるものの、山崎氏はトランプ氏の経済政策が米国の成長自体を高めるとの予想は日本をはじめ「世界経済にも当然プラスだ。米国の成長率が高まれば、米国の輸入も増える。世界経済全体が拡大する」と期待感を示した。
  トランプ次期政権は輸出入を基準とした法人税の調整も検討しており、日本の輸出企業に一時的に影響を与える可能性もある。山崎氏は日米の「経済関係は同じ船に乗っている。通商問題については意見を言わなければならない部分もあるかと思うが、できるだけ協力してやっていった方が良い」と述べた。

尖閣への日米安保適用

  山崎氏が注目するのは上院外交委員会の公聴会でのレックス・ティラーソン氏の発言だ。国務長官に指名されたエクソンモービル前会長兼最高経営責任者(CEO)の同氏は日米安全保障条約を守る考えを示した上で、尖閣諸島が同条約の適用範囲だとする姿勢を示唆した。
   山崎氏は日本政府が求めていた安全保障上の重要方針を早々とティラーソン氏が明言したことで「日米関係は決まった」と評価。トランプ次期政権は「少なくとも中国に言うべきことは言う体制。ロシアに対してはプーチン大統領と関係改善の可能性を探ると言っている」ことから、安倍晋三政権と歩調が合うとの見方を示した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-15/OJP1JR6K50XS01
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/823.html

[経世済民117] 世界的デフレ終焉、今回は本物か ドル高再開不安「ポスト真実」  米実質利回低下トランプ政策に疑問 ECB、今年は緩和継続
コラム:
世界的デフレ終焉、今回は本物か

嶋津洋樹MCP シニアストラテジスト
[東京 16日] - デフレの終焉――。筆者がマクロ経済や金融市場の分析に関わって、この言葉をこれほど目にしたのは初めてだ。ほぼ同じ文脈で、債券の強気相場が終わったとの指摘も多い。いずれも半年前には少数派だった。一体、何が変わったのだろうか。

米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利が1つのきっかけになったとの見方に異論はないだろう。だが、それがなぜデフレに幕を下ろすことにつながるのか、明確な説明は見当たらない。

もちろん、トランプ氏の掲げる大規模な財政支出は、米国景気を押し上げ、需給ギャップの縮小を通じてデフレを終息させる可能性がある。その財源を米国債の発行に頼れば、国債市場の需給が緩み、債券価格には下落(金利には上昇)圧力がかかるだろう。

そして、米景気回復は連邦準備理事会(FRB)に金融緩和の縮小を促すため、米金利には一段と上昇圧力がかかる。さらに、米国以外の国・地域のファンダメンタルズに変化がなければ、ドルは上昇。米国の低金利を嫌気して国外へ向かっていた資金の一部は再び米国へ戻り、他の国・地域では資金流出と通貨下落が顕在化するだろう。

通貨下落は輸入物価の上昇を通じて、インフレ圧力を高める。通貨下落を阻止しようと為替介入に踏み切れば、外貨準備の減少が避けられない。外貨準備は通常、米国債をはじめとする主要先進国の債券で運用されている。米国以外の国・地域での為替介入は、国債の売りを通じて、米国を含む主要先進国の金利を上昇させるだろう。

金融市場間の連動性を踏まえれば、事の発端は米国でも、世界的な金利上昇となることに違和感はない。確かに、トランプ氏の掲げる大規模な財政支出は、デフレを終わらせ、債券相場を圧迫するだろう。

<トランプ氏よりオバマ政権の財政政策にヒント>

しかし、最も肝心なトランプ氏の財政政策は今のところ実現していない。それどころか、いつから、どの程度の規模の財政支出が、どのように具体化するかには高い不確実性がある。

トランプ氏の財政政策が人々にデフレの終焉(しゅうえん)を想起させるきっかけの1つになったことに疑いはないが、決定的とまでは言えなさそうだ。逆説的だが、このことが、今や少数派であるデフレ継続、債券強気派の根拠なのだろう。

筆者はトランプ氏よりも、オバマ米大統領の財政政策に注目している。実際、国際通貨基金(IMF)が2016年10月に公表した「財政モニター」によると、米国のプライマリーバランス(基礎的財政収支、景気循環調整済み)は対潜在国内総生産(GDP)比で2015年のマイナス1.42%から16年にはマイナス1.94%まで赤字幅が拡大。その分だけ、財政再建が後退したと言える。

米国でプライマリーバランスが悪化するのは6年ぶりだ。2016年はユーロ圏でも前年のプラス1.06%からプラス0.61%へ、日本でも前年のマイナス4.54%からマイナス4.80%へプライマリーバランスが悪化し、20カ国・地域(G20)では2年連続で赤字幅が拡大した。

中国の生産者物価指数(PPI)やユーロ圏の消費者物価指数(HICP)、米国の平均時給の伸び加速は、まだ見ぬトランプ氏の財政政策よりも、すでに実現した財政政策によってもたらされたと考えられる。

こうした財政政策の積極化とデフレ圧力の後退は、リーマン・ショック後にも確認できる。実際、米国のプライマリーバランスは住宅市場の崩壊が顕在化し始めた2007年以降、2010年まで4年連続で悪化。G20全体でも2007年にマイナス0.50%だったプライマリーバランスは2008年にマイナス1.52%、2009年にマイナス3.67%と急速に悪化した。

そして、金融緩和に積極的な財政政策が重なったことで、世界景気は2009年の前年比マイナス0.1%から2010年の同プラス5.4%へV字回復。2011年は同プラス4.2%へ鈍化したものの、世界景気の堅調さを示すとされるプラス4%台を維持した。

しかし、その後、ギリシャの財政問題などを受けて、欧州で財政再建への取り組みが本格化。米国でも財政均衡を主張する共和党茶会派が台頭し、リーマン・ショック後の積極財政路線は大幅な修正を余儀なくされた。当時、G20のプライマリーバランスは2010年にマイナス3.90%まで悪化した後、2011年にはマイナス2.83%と大幅に改善。2014年にはマイナス1.14%まで赤字幅が縮小した。

筆者は2016年にかけての世界的なデフレや低成長の原因について、構造問題よりも、拙速な財政政策の転換や金融緩和の修正にあったと考えている。2016年以降、それが再び修正されたのだから、デフレや低成長が終息するのも当然だ。

<欧州で強まる緊縮財政への拒否反応>

むろん、逆に言えば、このことは、今後の政策次第でデフレや債券の強気相場が再び訪れる可能性を示す。今の段階で、デフレや債券の強気相場が終焉したと結論付けることは難しい。

とはいえ、足元で2011年から2014年にみられた財政政策の急速な転換は起きそうにない。当時、いち早く緊縮財政に舵を切った英国は、欧州連合(EU)離脱への対応で景気を下支えする方針を明確にした。大陸欧州では、南欧諸国を中心に緊縮財政への拒否反応が強まっている。

これまで財政健全化に固執してきたドイツでさえも、国内では総選挙後の減税方針を示し、ギリシャのクリスマス手当の支給を阻止することができなかった。欧州各国の政治家にとって、難民に衣食住を提供する一方で国民に緊縮を求めることは難しい。

米大統領選でのトランプ氏の勝利は、各国政府が国民に不人気な政策を先送りせざるを得ない現実を改めて浮き彫りにしたと言える。財政再建の取り組みはいずれ避けて通れない道とはいえ、明日の生活に不安を抱える失業者や不安定な雇用環境にいる労働者などにとっては、理想論にしか聞こえないだろう。低成長と所得の伸び悩みは、緊縮財政に伴う国民の負担を一段と大きくする。

筆者はトランプ氏の勝利後、多くの国・地域で予想物価上昇率が上昇したことについて、緊縮財政への転換に時間がかかることを反映したと解釈している。そして、予想物価上昇率の上昇は、金融緩和の効果や原油価格の安定などとも相まってデフレの終焉を確実なものとするだろう。今回の債券相場の下落は、短期的なスピード調整があったとしても長期化する可能性があり、強気相場を終わらせるだけの材料もそろっているようにみえる。

*嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントなどを経て2016年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネジャーとしての経験を活かし、経済、金融市場、政治の分析に携わる。共著に「アベノミクスは進化する」(中央経済社)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

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ドル高再開へ、不安は「ポスト真実」

山口曜一郎三井住友銀行 ヘッド・オブ・リサーチ
[東京 16日] - 昨年12月に、筆者は今年のドル円相場について、第1四半期に112円まで調整したあと、第4四半期には125円まで上昇するという見通しを立てた。現在は、まさにその調整の過程にある。相場はもうしばらく調整が続いたあと、反転上昇に向かうと見る。

そこで、改めて、今年のドル高円安見通しを支える要因とそれに対するリスクを考えてみたい。まず、ドル円の上昇見通しを支えるストーリーは以下のようなものだ。

1)米経済は財政政策なしでも2%前半の成長が可能

2)減税や財政支出による景気刺激が加われば、2%台後半を超える成長とインフレ上昇が見込まれる

3)米連邦準備理事会(FRB)が年3回の利上げを行う可能性がある一方、日銀はイールドカーブ・コントロールによる金融緩和を継続することから、日米金利差は一段と拡大。米国で財政刺激が実施されれば、金利差拡大の確度はより高まる

4)トランプ次期大統領による「米国第一主義」が強い米経済と強いドルを実現する

これに対するリスクを考えると、以下の5点が挙げられる。

1)楽観的な米成長見通しは期待先行であり不確実

2)期待先行でドル高、金利高が大きく進んでしまうことが、先行きの米経済にネガティブな影響を与える

3)財政政策がどの程度の規模となるか不透明

4)トランプ次期大統領は保護主義であり、国内企業と雇用を守るためにドル安政策を取る

5)欧州の政治イベントがリスクオフ要因となって円高が進む

確かにどれも一理ある。だからこそ今年のドル円見通しは上下に大きく分かれているのだ。よって、これらのリスクをどう評価するかが重要なポイントとなる。筆者は次のように考えている。

<足元の調整はかえって望ましい>

まず、トランプ政権はまだ始まってもおらず全ては期待にすぎないと言うには、最近の米経済指標の強さには目を見張るものがある。

景況感などのソフトデータが中心ではあるが、12月のISM製造業指数は54.7と2年ぶりの水準に跳ね上がり、12月のNFIB中小企業楽観指数は105.8と12年ぶりの水準まで急上昇。1月のミシガン大消費者信頼感指数も98.1と約13年ぶりのレベルでの推移が続いている。企業や家計の初期の行動やセンチメントは間違いなくポジティブに動いている。

また、期待先行で金融市場が動いているのはその通りであり、筆者はドル高と金利上昇があまりに先に進んでしまうことを心配していた。期待先行で通貨高と金利上昇が進み過ぎると経済活動に負の影響を及ぼし、年後半から来年にかけて財政政策が実行される前に経済活動が減速してしまう恐れがあったからだ。

しかし、足元では為替、金利ともに調整が入った。財政政策の中身が見えてくるまでしばらく間が空いてしまうことを一部の市場参加者が嫌気したためだが、これによって期待が実体を押しつぶしてしまう展開は避けられたと考える。2月下旬以降になると思われる予算教書演説と、その後の上下院による予算案作成あたりから、財政政策や税制改革に関する具体的な絵が見えてくるだろう。

その財政政策に関する規模の不透明性が、具体化した際に失望を招くという見方もあるが、市場参加者が100%の楽観を織り込んでいるようには見えない。ゼロ回答であれば当然失望だが、インフラ投資には不透明性があるものの、所得税や法人税の減税は実施される公算が大きく、一定の景気刺激効果は期待できると考える。

大統領案と下院共和党案の差異などを指摘する声もあるが、大統領選後にトランプ氏と共和党のライアン下院議長が関係修復した意味は大きい。ライアン議長は今後のキーマンの1人となるだろう。

確かに、保護主義によるドル安政策への転換リスクには警戒が必要だ。ただし、現在のトランプ氏は、国内企業の国外進出けん制、海外進出企業に対する国内回帰圧力、中国やメキシコなどへの攻撃、といった手段を用いて保護主義的な行動を取っており、必ずしも為替レートに焦点を当ててはいない。大統領就任後にスタンスが変わってくる可能性は排除できないが、「強い米国」の実現にはある程度「強いドル」が必要と考えている側面もあり、経済にマイナスの影響が出てくるまで、為替については放置するのではないか。

FRBが発表するドル実質実効為替レートを見ると、足元の102.82は、直近2016年1月の高値を抜け、2003年以来の高い水準だが、過去の最低値が80.26、最高値が128.44であることを考えると、必ずしも今すぐ対処が必要というレベルではないだろう。

また、為替レートは水準とともにスピードも重要となる。2014年からのドル高局面では、一時前年比プラス14%までドルが上昇したが、足元では前年比プラス4%程度にとどまっている。この点においても年始に調整が入っているのは望ましい。年明けから一段のドル高が進むようだと、水準、スピードともに無視できない展開となるところだった。

むろん、欧州の政治イベントがリスクオフ要因となる可能性は排除できない。特に、フランス大統領選で極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首が勝利した場合、欧州は大混乱に陥り、グローバルな金融市場に大きな影響を与えることになるだろう。

ただし、それ以外のケースについては、政治的なショックがドル円に与える影響は永続的ではないと見る。政治イベントによる為替レートへのショックは短期間にとどまることが多く、また為替市場でユーロが大きく下落した場合、円と同様にドルも買われる可能性が高い。円独歩高が続く公算は大きくないだろう。

<事実に基づかない政治がもたらす危険>

なお、今回は深く触れないが、為替に限らず今後の市場・経済動向を読み解く上で、筆者が注視している論点が2つある。1つは米中関係であり、もう1つは「ポスト真実(post-truth)」の政治行動がもたらす危険性だ。中期的にはこれらがストーリーの構成要素として台頭してくると考える。

ポイントだけを簡単に述べると、前者は、通商担当に対中強硬派をそろえ、厳しい姿勢で臨むことにより米中で貿易摩擦が発生する。中国からの輸入規制や関税引き上げによって米国内の製造業と雇用を守ろうとした場合、国内のコスト増加要因となる。

この行き着く結果は企業収益の減少か、販売価格の引き上げか、IT化の促進による生産コスト削減であり、家計にとっては雇用削減や購買力の低下につながる恐れがある。加えて、中国側が報復措置を取って米経済に打撃を与えたり、中国の景気減速がグローバル経済にマイナスの影響を与えたりする可能性もあるだろう。

次に、ポスト真実の政治とは、真実のように感じられるが実は事実無根の主張に依拠した政治のことを指し、英エコノミスト誌などがしばしば懸念を示している。

ポスト真実の政治の下では、客観的な事実よりも感情的な主張が人々の判断基準となり、為政者が情報操作や扇動といった行動に走りやすくなる。そうなれば、真実がますます見えにくくなり、経済や社会の摩擦が高まり、将来的に政治経済に大きな混乱が生じる恐れがある。

むろん、景気が拡大している間は、恐らく問題は表面化しないと思われるが、トランプ次期米政権がこうした政治手法を取るならば、水面下で歪みが大きくなり、2018年以降のリスクとして台頭するシナリオには警戒が必要だ。

*山口曜一郎氏は、三井住友銀行市場営業統括部副部長で、ヘッド・オブ・リサーチ。1992年慶應義塾大学経済学部卒業後、同行入行。法人営業、資本市場業務、為替セールスディーラーを経て、エコノミストとして2001―04年にニューヨーク、04―13年ロンドンに駐在。ロンドン大学修士課程(金融学)修了。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)

(編集:麻生祐司)
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米実質利回りが低下−トランプ政策の景気浮揚効果に疑問
米国債の実質利回りが急落している(写真は米財務省)

By MIN ZENG
2017 年 1 月 16 日 13:44 JST

 米国債の実質利回りがこの1カ月で急落している。ドナルド・トランプ次期米政権の経済政策に対する市場の期待が後退しつつあることをうかがわせる最新の兆候だ。

 実質利回りとは債券利回りからインフレ率を差し引いたもの。10年物米国債の実質利回りは2016年12月半ばに米大統領選後で最も高い0.74%をつけたが、足元で0.38%に低下している。実質利回りは景気改善に伴い上昇する傾向があることを考えると、トランプ氏が11月8日の選挙で勝利して以降の実質利回りの急伸は、経済活動の世界的な拡大を示唆していたといえる。

 利回り低下や最近のドル安を見る限り、投資家は当初抱いていた「トランプトレード」への意欲を見直しつつあるようだ。トランプ氏の当選後しばらくは、経済成長やインフレが加速するとの期待を背景に米主要株価指数やドル、コモディティー(国際商品)価格が軒並み急伸した。

 ダウ工業株30種平均の終値が1万9974.62ドルをつけて最高値を更新した16年12月20日から4日後、実質利回りは直近の高水準をつけた。

 ペン・ミューチュアル・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジーウェイ・レン氏は実質利回りとドル相場の下落について、「トランプ氏の政策に経済成長押し上げ効果は期待できず、せいぜいインフレに影響を与えるだけだと人々が考えているしるし」との見方を示した。

 10年物米国債の実質利回りは現在、大統領選前の水準よりもまだはるかに高い。選挙投開票日の16年11月8日には0.15%だった。この先も世界的に超低金利と成長低迷が長く続くとの懸念を背景に、同利回りは16年中に一時、マイナス圏に沈んだ。

 大統領選以降、トランプ氏が公約に掲げる大規模なインフラ投資や減税、規制緩和に注目が集まり、経済成長やインフレの押し上げにつながるとの期待が高まった。米主要株価指数は何度も最高値を更新し、10年物米国債利回りは12月16日、2年ぶりの高水準となる2.6%をつけた(選挙当日は1.867%、先週末の終値は2.38%)。また、主要6通貨のバスケットに対するドルの価値を示すICEドル指数は17年1月初め、02年以来の高水準に上昇した。

 債券市場が予想する将来のインフレ率は実際、この数週間で上昇している。10年物ブレークイーブン・レート(名目国債と物価連動国債=TIPSの利回り差)は直近で2%と、12月16日の1.873%を上回る。

 SEIインベストメンツの債券部門責任者、ショーン・シムコ氏は「債券市場はトランプ氏の政策やその実行性を疑問視しているようだ」と指摘。実質利回りが下がり始める前は、債券市場は「全ての政策が完全な形で実施されると見込んでいた」という。

 トランプ政権が中国からの輸入品に高関税を課す可能性について懸念する向きもある。これが導入されれば中国が報復措置を講じる恐れがあり、そうなれば米国では経済成長の勢いがそがれる一方、輸入品の値上がりでインフレ圧力が高まりかねない。

 一部のアナリストは、市場の動きを深読みしすぎるべきではないと警告している。流動性の変化などの要因でゆがみが生じ、急に取引が膨らんでも価格に影響しない可能性があり、直近の相場はヘッジファンドや債券トレーダーの短期的なポジション調整の表れということも考えられるからだ。

 今月初め、米国債先物が08年以来の大幅な売り越しとなった。一斉に買い戻しが入れば、国債利回りの低下が加速する可能性がある。

 TD証券の金利戦略部門グローバルヘッド、プリヤ・ミストラ氏は「トランプトレードが終わったと言うのは時期尚早だ」と述べた。

 だが今のところ、多くの市場関係者は、経済成長が小幅にとどまる一方でインフレが加速する可能性が高いとみている。このシナリオが現実化すれば、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ計画は複雑なものになりかねない。

 資産運用会社アッシュモア・グループの調査部門責任者、ジャン・デーン氏は「インフレが進めば、米消費者の実質所得は減り、FRBは利上げせざるを得なくなるだろう。そうなれば株高基調は崩れ、長らく心配されてきた経済のリセッション(景気後退)入りがいよいよ現実味を帯びる恐れがある」と語った。


https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwif29W9qcbRAhXDqJQKHUyCBEwQFggdMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11163456931573304514904582562294079145520&usg=AFQjCNFTTaNISxbBFivh45z-ffyTofDRVw


 

ECB、今年遅くまではテーパリング検討せず−エコノミスト予想
Alessandro Speciale、Andre Tartar
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エコノミストは2018年入り後も当分は債券購入継続と予想
選挙控えたドイツは量的緩和に反対強める公算大

欧州中央銀行(ECB)は今年遅くになるまでは債券購入の縮小を検討しない。2018年に入っても当分の間、購入プログラムを継続する。ブルームバーグの調査に答えたエコノミストらがこのように予想した。
  調査ではエコノミストの75%がECBの景気刺激策の大きな変更が発表されるのは早くても9月との見通しを示した。3分の2の回答者はECBが月々の購入額を減らすとともに期間を今年12月より先まで延長すると予想した。19日の政策委員会後に新たな措置が発表されると考えるエコノミストは皆無だった。
  物価上昇が加速し始める中で、ドイツなど景気の堅調な国からの政治的圧力は増す公算が大きい。ドラギ総裁はコアインフレ率を重視しているほか、ユーロ参加国の選挙に伴う波乱の可能性や英国の欧州連合(EU)離脱交渉、トランプ米新政権発足の影響を懸念している。
  ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、トマス・ホリンカ氏は「ドイツでのインフレ率上昇は量的緩和(QE)反対派を勢いづかせる公算がある」としつつも、「購入縮小の議論は時期尚早だと思われ、物価上昇が持続的になり政治的不透明が和らぐまでECBが待つだろうと、当社は考えている」と述べた。
  調査によれば、ECBが購入額を減らすが期間は延長しないとみるエコノミストも約20%いた。18年に入ってからも現行ペースで継続するとの予想は4%にすぎなかった。60%余りがQE縮小が始まるのは早くても12月14日の会合後と予想した。
  ドイツの消費者物価は昨年12月に1.7%上昇と、前月の0.7%上昇から加速し13年以来の高いインフレ率となった。新聞や評論家は迅速なQE縮小を呼び掛けている。ドイツでは秋に総選挙が実施される予定。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iHbxdRTBfUKQ/v2/-1x-1.png

原題:Draghi Seen Staying Strong on QE With Faster Inflation No Bar(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJV5QN6VDKHS01

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●日本株反落、円高警戒し景気敏感中心広く下げる−売買代金2兆円割れ
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  東京株式相場は反落。20日に控えるトランプ次期米大統領の就任会見に加え、英国の欧州連合(EU)からの強硬離脱リスクが懸念される中、為替の円高を嫌気する売りが広がった。鉄鋼や海運、鉱業、機械など景気敏感株中心に幅広い業種が安い。政府保有株の追加売却観測で、日本郵政も下げた。
  TOPIXの終値は前週末比14.25ポイント(0.9%)安の1530.64、日経平均株価は192円4銭(1%)安の1万9095円24銭。米国株市場の休場を控え海外投資家を中心に取引が細り、東証1部の売買代金はことし初めて2兆円を下回った。
  大和住銀投信投資顧問・株式運用部の小出修グループリーダーは、「トランプ氏の大統領就任以降の発言による金融市場の方向感を見極めたい」と指摘。「電子部品など自動車以外でも保護主義的な話が出てくれば、グローバルでサプライチェーンが混乱する恐れがあり、関連株も調整しかねない」と懸念を示した。
  東証1部の売買高は14億6955万株、売買代金は1兆8873億円にとどまり、代金は前週末から16%減少。2兆円を割り込んだのは昨年の大納会以来だ。上昇銘柄数は323、下落は1601。
  東証1部33業種は鉄鋼、海運、鉱業、その他製品、石油・石炭製品、不動産、保険、非鉄金属など32業種が下落。上昇は空運の1業種。鉱業など資源株は、前週のニューヨーク原油先物が昨年11月以来の大幅安となったことが響いた。
  売買代金上位では任天堂やファーストリテイリング、新日鉄住金、SMCが売られ、UBS証券が投資判断を下げた小野薬品工業も安い。財務省が最大1.4兆円規模で追加売却すると日本経済新聞が16日午後に報じた日本郵政が午後に下げ幅を拡大、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の郵政グループも下げた。半面、野村証券が目標株価を上げたロームが買われ、さくらインターネットや大塚ホールディングス、リクルートホールディングス、メガネスーパーも高い。
●長期金利が小幅上昇、20年入札控えて売り圧力−米大統領就任に警戒感
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  債券市場では長期金利が小幅上昇した。20年利付国債の入札を翌日に控えて投資家需要に対する警戒感から売り圧力が掛かった。
  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の345回債利回りは、日本相互証券が公表した前週末午後3時時点の参照値より0.5ベーシスポイント(bp)高い0.05%で寄り付き、その後も同水準で推移した。新発20年物の159回債利回りは0.5bp低い0.585%で開始した後、横ばいの0.59%に戻した。新発30年物53回債利回りは1bp高い0.74%となっている。
  メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、「20年債入札を前に同利回りが0.6%を割り込む水準では若干不安があり、積極的になりにくい」とし、やや弱い相場展開になっていると説明。「0.6%を超えてくれば押し目買い需要も期待され、無難な入札になる可能性もあるが、そこまで調整できるのかが一つのポイントになる」と付け加えた。
  長期国債先物市場で中心限月3月物は前週末比1銭安の150円26銭で取引を開始。いったん5銭高の150円32銭まで水準を切り上げたが、午後には150円24銭まで売られる場面も見られた。結局は1銭高の150円28銭で引けた。
  
●円全面高、英強硬離脱懸念でドルは114円台割れ−ポンド急落
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  東京外国為替市場では円が全面高。英国の欧州連合(EU)からの強硬離脱を懸念してリスク回避の動きが強まったことが背景で、ドル・円相場は1ドル=114円を割り込み、昨年12月以来の安値を付けた。
  午後3時57分現在のドル・円相場は前週末比0.6%安の113円79銭。早朝のポンド急落でいったん114円67銭までドル高に振れた後は、対ポンドでの円買いが波及し、114円10銭付近までドル安・円高が進行。その後、しばらく一進一退の展開が続いたが、徐々に円買いが優勢となり、欧州市場に向けては113円63銭と昨年12月8日以来の水準まで円高が進んだ。
  先週末に1ポンド=139円台だったポンド・円相場は、早朝に昨年11月21日以来となる136円台後半まで急落。137円台後半まで反発した後は伸び悩み、午後には再び137円を割り込んだ。
  ソシエテ・ジェネラル銀行東京支店の鈴木恭輔為替資金営業部長は、ドル・円の下落について、単体というよりも「英国発のリスクオフ的な材料に対するクロス円(ドル以外の通貨の対円相場)の軟調が重しになっているのだろう」と説明。「ひとまずは欧州勢が英国材料にどのように反応するかが目先の鍵になりそう」と語った。 
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJUYID6S972901
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/824.html

[経世済民117] 社債購入で気を付けることとは? 中国政府系のCICトランプで対米投資好機 米ブラックロック収入伸び悩み低コスト商品に集中
社債購入で気を付けることとは?
 
By
AMEY STONE
2017 年 1 月 16 日 16:31 JST
 社債は昨年、ほぼ年間を通じて素晴らしい投資先となった。低リスクの投資適格債は平均6%、高リスクのジャンク債は17%それぞれ上昇した。一方、ドナルド・トランプ氏が大統領選で当選し、米連邦準備制度理事会(FRB)が昨年12月、より積極的な利上げプログラムに着手したことを受けて、米国債は下落した。
 しかし最近、無リスク資産の米国債と社債の利回り差(スプレッド)の縮小によって、バリュエーションに大きな関心が集まっている。ジャンク債の利回りは6%と、20年間の平均値(9%)を下回る。投資適格債も3%と、長期的な平均値(5%)を下回っている。これらの利回りはまずまずと思われるかもしれないが、信用リスクがない10年物米国債の利回り(2.4%)と比べると魅力に劣る。
 USバンク・ウェルス・マネジメントの債券ストラテジスト、ダン・ヘックマン氏は「高利回り債と投資適格債の強気相場の峠はおそらく越えたと思う。スプレッドがこれ以上縮小するのはとても難しいだろう」と述べた。
 リーマン・リビアン・フリッドソン・アドバイザーズのマーティー・フリッドソン最高投資責任者(CIO)は、経済情勢と金利を踏まえると、高利回り債は「極めて過大評価されている」と考えている。だからといって、大惨事が迫っているわけではない。デフォルト率は低下し、経済は力強さを増しつつある。ジャンク債にとって最大のリスクはリセッション(景気後退)だが、トランプ氏が財政出動の拡大を計画していることから、リセッション入りすることは当分なさそうだ。
 だがフリッドソン氏は、これらはまだ計画にすぎず、「今は楽観的な見方が強い」と指摘する。もし企業利益の伸びが鈍化したり、トランプ氏の政策の導入ペースに対する失望感が広がったりした場合、リスクオフの地合いが社債だけでなく、株式にも打撃を与える恐れがある。
 アライアンス・バーンスタインで高利回り・投資適格債部門を統括するガーション・ディステンフェルド氏は、「株式市場が下落すると、高利回り債は軟調になる傾向があり、投資適格債のスプレッドは縮小する」と指摘。相場が転換してもリターンを確保し続けるには債券の選別が重要としている。
 投資適格債は、市場がリスクオフに傾いた時の耐性がジャンク債をはるかに上回るが、リターンは金利に左右されるため、FRBの追加利上げによる影響を受けやすい。ディステンフェルド氏は、金利リスクを抑えるために、満期が5〜10年の投資適格社債を保有することを推奨している。
 インベスコの優良社債投資責任者、マット・ブリル氏は、優良社債の価格は適正水準にあるが、トランプ氏の政策が実行されれば、さらに上昇する可能性があると考えている。
 ウェルズ・ファーゴ・ファンズのチーフ債券ストラテジスト、ジェームズ・コーチャン氏は「トランプ効果は2017年のワイルドカードだ」と述べた。ブリル氏と同様に、経済成長が緩やかなままであっても、社債のバリュエーションは「正当化できる」とみている。また、大幅な価格上昇は見込めないものの、「大きな打撃を被らない限り、高利回り債はそこそこのパフォーマンスを見せる」との見方を示した。
 ウェルス・ストラテジーズ・アンド・マネジメントのトーマス・バーン氏は、上値が期待できそうにないこうした状況下では、格付けが「シングルB」以上の債券を保有する投資家はファンド投資家より有利だと語った。なぜなら、発行体がデフォルトに陥らないとすれば、価格下落を心配せずに利息を受け取ることができるからだ。
 ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのチーフ投資ストラテジスト、マイケル・アローン氏は、投資適格級の企業の債券ではなく、ローン債権を購入するファンドへの投資を推奨している。ローン債権は企業の資本構成の中で優先順位が高く、通常は変動金利型だ。つまり金利が上昇すると、利息も上昇する。
 社債のバリュエーション問題のもう1つの解決策は、単純に価格が下がるまで社債の買い増しを待つことだ。ヘックマン氏は「価格が下落した時に購入することをお勧めする」と述べた。


https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-RQ454_ONBY91_NS_20170116024000.gif

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiFzP7CucbRAhUHlpQKHW0VBnkQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11163456931573304514904582562531775515426&usg=AFQjCNHc03TQ9s1pcx8TGeZl-oqluUWE3Q

 
中国政府系のCIC:トランプ政権で対米投資の好機増える−丁会長
Bei Hu
2017年1月16日 18:56 JST
中国の政府系ファンド、中国投資(CIC)の丁学東会長は16日、トランプ次期米政権下での財政支出とインフラ投資の拡大がCICにとってより多くの対米投資の機会を生み出す可能性があるとの認識を示した。
  丁会長は香港で開かれたアジア金融フォーラムで、米国のインフラに投資したり、製造業の買収に参加したりする機会が増えるだろうと述べた。
  丁会長はまた、CICが米国でプライベートエクイティ(PE、未公開株)とヘッジファンドへの投資、それに直接投資を増やすと見込んでいると話すとともに、不動産とテクノロジーは有望な分野だと指摘。CICにとって最大の海外投資対象は米国だとも語った。
原題:China’s CIC Says Trump Creating U.S. Investment Opportunities(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJV8RP6JTSEA01


 


米ブラックロック、収入伸び悩み−低コスト商品に資金が集中
Sabrina Willmer、Charles Stein
2017年1月16日 11:36 JST
16年は全タイプの投資家に一段とパッシブ戦略に向かう動き−CEO
16年10−12月の総収入、1%増の28億9000万ドル−予想に届かず

資産運用で世界一の米ブラックロックが投資家資金を記録的ペースで集めている。だが問題が一つある。指数連動型の低コスト商品に資金が流れ込み、収入が圧迫されているのだ。ブラックロックは昨年10−12月(第4四半期)、辛うじて収入を伸ばす中で、なんとか利益を増やした。

  上場投資信託(ETF)にとって記録的な年となった2016年に最も大きな恩恵にあずかった1社がブラックロックだ。同社の「iシェアーズ」事業は昨年、1400億ドル(約16兆円)を集めた。ETF事業で2番目に大きなバンガード・グループが集めた資金は930億ドルに上った。ただ資産運用各社間で投資家を獲得するための手数料値下げ競争が激しくなっており、ブラックロックは昨年12月にスマートベータETF6本のコストを引き下げた。

  ブラックロックのローレンス・フィンク最高経営責任者(CEO)は今月13日の決算発表後のインタビューで、「16年は全てのタイプの投資家についてパッシブ戦略に一段と向かう動きがあったと言うのが妥当だろう」と述べた上で、「値下げで利益率と市場シェアを高めることができる場合には、それを行う。重要な要素は規模だ」と説明した。
  同社が発表した16年10−12月決算によれば、1株当たり利益は5.14ドルと、予想を上回った。総収入は1%増の28億9000万ドルと、アナリスト予想の29億3000万ドルには届かなかった。運用報酬の減少とドル高が収入伸び悩みの理由だとしている。
原題:BlackRock Sees Record Flows Into Low-Cost ETFs as Passive Rules(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJUNC16S973T01



http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/826.html

[政治・選挙・NHK219] 「中国側に寝返る韓国」にスワップは追い銭  米国を動かし、中国をてこに 厳しいときは後頭部を叩く日本の鼻をぺしゃんこに
「中国側に寝返る韓国」にスワップは追い銭

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真田幸光教授に「慰安婦像への対抗措置」を聞く(2)
2017年1月17日(火)
鈴置 高史

トランプ次期米大統領は「従中」を加速する韓国に何を求めるのか。それとも見捨てるのか(写真:AP/アフロ)
(前回から読む)

 「義のない国は見捨てられる」――。真田幸光・愛知淑徳大学教授の韓国を見る目は実に冷ややかだ(司会は坂巻正伸)。

食い逃げの達人

鈴置:前回は、韓国に左派政権が登場しそうだ。すると中韓関係が一気に改善されるので日本との通貨スワップなど不要になる――と韓国は踏んでいる、との話で終わりました。真田先生の御説です。

となると「韓国が中国側に行くのを防ぐために、日本は韓国にスワップを付けるべきだ」と言う人が出そうです。

鈴置:荒唐無稽な理屈です。日本がスワップを与えるかどうかに関係なく韓国には左派政権が登場し、ますます「離米従中」します。韓国の大統領選挙を左右する力など日本にはありません。

 それどころか韓国にスワップを与えると「日本から獲れるものは獲った」と考えて、ますます「やりたい放題」になるでしょう。韓国には食い逃げの実績が多々あるのです。

 2012年8月、李明博(イ・ミョンバク)大統領が竹島に上陸しました。さらに天皇陛下に謝罪も要求しました。

 その前年の10月に日本にスワップを700億ドルに積み増してもらい、辛うじて通貨危機を乗り切った直後のことでした(「5年前、韓国は通貨スワップを『食い逃げ』した」参照)。

「約束破る」と宣言

 2015年12月に結んだ慰安婦合意も同じです。「慰安婦像の撤去」に動かないことを理由に、日本が10億円を支払わないのではないかと韓国政府は心配していました。

 ところが、撤去もしないのに2016年8月、日本が10億円支払うことに合意した。その瞬間、韓国は手のひらを返しました。国会議員10人が竹島に上陸するなど、国を挙げて「卑日」に邁進しました(「『慰安婦の10億円拠出合意』直後の動き」参照)。

●「慰安婦の10億円拠出合意」直後の動き(2016年8月)
12日 日韓両外相、慰安婦合意に基づく10億円拠出で合意
15日 韓国与野党の国会議員団10人、竹島に上陸
19日 ソウル中央地裁、元徴用工裁判で新日鉄住金に1億ウォンの支払いを命令
25日 ソウル中央地裁、元徴用工裁判で三菱重工業に14人の遺族に1人当たり9000万ウォンの支払いを命令
27日 日韓財務対話で、通貨スワップ再開に向けた協議開始で合意
 「ここまで来れば、何をやっても韓国のせいで慰安婦合意が壊れたとは言われない」と考えたのです。

 というのに8月27日、日本は「スワップ協議再開」で合意しました。韓国はその思いをますます強めました。

 9月6日、外交部の林聖男(イム・ソンナム)第1次官は国会答弁で「政府も国民世論を把握しながら動くため、今の段階では政府が前に出てこの問題を推進する考えはない」と述べました。堂々と「約束は破る」と宣言したのです(「5年前、韓国は通貨スワップを『食い逃げ』した」参照)。

日本の扇動に乗るな

韓国は慰安婦合意を初めから守る気などなかったのですね。

鈴置:その通りです。2017年1月6日に日本が「4つの対韓措置」をとって以降、以下の説明が広まっています。

■日本の「慰安婦像」への対抗措置
・長嶺安政・駐韓大使と森本康敬・釜山総領事の一時帰国
・通貨スワップ再開に向けた協議の中断
・次官級による日韓ハイレベル経済協議の延期
・釜山総領事館員の釜山市関連行事への参加見合わせ
韓国では朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が国会で弾劾され職務停止処分となった。今は大統領の権限代行しかいないので、韓国政府は釜山の慰安婦像設置に適切な処理がとれなかった。
 でも、これは韓国側の言い訳に過ぎません。さきほど言いましたように、韓国政府はそもそも合意を本気で守る気はなかった。

 朴大統領が「少女像(慰安婦像)の撤去など、合意の中で一切言及されていない問題だ。(日本は)そんなことで扇動してはならない」と公言していたからです。

「一切言及されていない」のですか?

鈴置:完全に事実に反します。慰安婦合意に関する尹炳世(ユン・ビョンセ)外相の発表に以下のくだりがあります。日本の外務省の発表(日本語)でも韓国の外交部の発表(韓国語)でも読めます。

韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する。
声が大きい者が勝つ

なぜ、こんなにはっきりと言及しているのに「一切言及されていない」と主張するのですか?

鈴置:朴大統領がそう説明を受けていたのか、そう思い込んだのか、あるいは「撤去の約束」に対し韓国で批判が高まったので居直ることにしたのか――。それは分かりません。

居直ると言っても、これだけはっきりと約束したのですから……。

鈴置:韓国では嘘でも大声で主張すれば真実になるのです。声の大きい者が勝つのです。ことに大統領が「約束などしていない」と言えば、下僚は「日本や米国が怒ってくるだろうな」と思っても、従うしかありません。

 ただその意味では、朴大統領の不在が続く現在の方が、役人は慰安婦像の撤去に動きやすくなったはずです。大統領から叱責される危険性は減りましたからね。

野党も「大統領の食言」を批判

朴大統領はいつ「一切言及されていない問題」と言ったのですか。

鈴置:2016年4月26日、韓国メディアの編集・報道局長との懇談で語りました。同日付の聯合ニュースの記事「朴大統領 言論懇談会B」(韓国語版)がこの発言を伝えています。

 翌27日、菅義偉官房長官は「日韓それぞれが今回の合意を、責任を持って実施することが重要だ」と述べ発言を批判しました。が、朴大統領は馬耳東風でした。

 9月12日に与野3党代表と会った際にも、全く同じ発言をしています。同日付の中央日報「朴大統領『少女像撤去など日本の言論操作に丸めこまれては』」(韓国語版)で読めます。

 なお、「大統領の食言」は韓国で政争の材料になりそうです。大統領レースの先頭を走る文在寅(ムン・ジェイン)「共に民主党」前代表が「日本と裏合意したのではないか」と朴政権を追及し始めました。

「裏合意があった」とは?

鈴置:日本政府に対し「日本大使館前の慰安婦像は世論が落ち着いた後、どこかに移す」と韓国政府がこっそりと約束したに違いない、との批判です。

 が、「こっそり」も何も「努力する」とはっきりと約束しているのです。先ほど引用した尹炳世外相の発表を普通に読めば誰だって「日韓両国は可能な限り、移す方向で合意した」と見なします。「裏合意」などと陰謀が企まれたかのようにおどろおどろしく表現するのは、国民を扇動するためです。

 聯合ニュースの「慰安婦合意は『無効』=韓国次期大統領候補の文氏」(1月11日、日本語版)は文・前代表の以下の発言を伝えています。

(日本との間で)裏合意はなかったか、堂々と公表すべきだ。国民をだましているのではないか、疑わしい。
中国は韓国を助けられる?

騙す方も騙す方ですが、騙される日本政府も相当なものですね。

鈴置:ええ、誠に残念ながら。さて、真田先生に質問です。中韓スワップはウォンを担保に人民元を借ります。いざという時、ドルではなく人民元でウォン防衛が可能なのでしょうか。


真田 幸光(さなだ・ゆきみつ) 愛知淑徳大学ビジネス学部・研究科教授(研究科長)/1957年東京生まれ。慶応義塾大学法学部卒。81年、東京銀行入行。韓国・延世大学留学を経てソウル、香港に勤務。97年にドレスナー銀行、98年に愛知淑徳大学に移った。97年のアジア通貨危機当時はソウルと東京で活躍。2008年の韓国の通貨危機の際には、97年危機の経験と欧米金融界に豊富な人脈を生かし「米国のスワップだけでウォン売りは止まらない」といち早く見切った。
真田:実際に韓国がドル資金を調達せざるを得ない状態に陥ると、中韓スワップは絵に描いた餅に終わる可能性が高いと思います。

 前回に申し上げたテクニカル・デフォルトを防ぐにはドルが要ります。韓国の外貨建て債務もほとんどがドル建てです。人民元を貸してもらっても意味はありません。

鈴置:中国から借りた人民元をドルに転換すればいいのでは?

真田:韓国が必要になるであろう数百億ドル規模のドルへの交換は一気にはできません。そんなに大きな人民元のマーケットはないからです。

それに今、中国自体が資本逃避――人民元売りに悩んでいます。外貨準備が急速に減っているのがその証拠です。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/011400088/China-FER.PNG

 人民元を防衛するために中国は「人民元売り・ドル買い」取引の規制をもっと強化しようとしています。そんな時に、韓国にだけ大量の「人民元売り・ドル買い」取引を許すのか甚だ疑問です。

鈴置:中国は仮想敵の日本にまでスワップを頼んできています。よほどドルが欲しいのでしょう。韓国を助ける余力があるとは考えにくい。要は人民元のスワップである限り、韓国にとって中国とのスワップは効力がない、ということですね。

IMFに行けばよい

「一部の邦銀が韓国に貸し込んでいる。だから韓国がデフォルトしないよう、スワップを与えるべきだ」という人もいます。

真田:理屈になりません。それは民間金融機関の個別リスクです。韓国の危険性を見落とした銀行の責任なのです。

 日本の金融機関の韓国への債権が不良債権化し、それが日本国経済を著しく毀損するという場合を除いて、そうした議論が出ることはあり得ません。私の認識するところ、今はそんな状態にありませんので、理屈にならないと申し上げたのです。

鈴置:デフォルトを起こせば金融だけでなく貿易取引もできなくなり経済全体が崩壊します。韓国だってそれは避けたいでしょう。本当に困ったら、IMF(国際通貨基金)にドルの緊急貸し出しを頼めばいいのです。

 IMFも1997年のように厳しい条件は付けないでしょう。処方箋を間違えて韓国などの状況を悪化させた、と批判されましたから。

米国が日本に対し「韓国とスワップを結んでやれ」と言ってこないでしょうか。

真田:まずないと思います。米国だって、中国に鞍替えしようとしている韓国に甘い顔はしません。

 在韓米軍を守るためのTHAAD(地上配備型ミサイル防衛システム)配備を拒否し、米国が苦労してまとめた日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)や慰安婦合意を蹴り飛ばす――。そんな韓国を助けるほど米国はお人好しではないと私は見ています。

 万が一、私の見通しが外れて、米国が韓国とスワップを結んでやれと言って来たなら、その時はおもむろに再締結すれば済むことです。

鈴置:仮想敵の陣営に走る国の危機は助けない、ということですね。当たり前の話で、日本もそうあるべきです。

真田:むしろ今後、日本が韓国にスワップを与えようとしたら、米国は止めてくるかもしれません。1997年の通貨危機の際もそうでした。

鈴置:あの時、日銀が韓銀にスワップを付けようとした。すると直ちに米国が「やめろ」と言ってきました(「米国は『日韓スワップ』を許すか」参照)。

 邦銀は最後まで韓国にドルを供給していた。しかしその邦銀に対しても、日本政府経由ですが米国政府が供給を止めさせました。

もう、米韓同盟は持たない

なぜ、米国はそれほどに厳しい姿勢をとったのですか?

鈴置:米韓関係が悪化していたからです。でもこれから、当時とは比べものにならないほど関係は悪くなります。米韓同盟の打ち切りもあり得ます(「『キューバ革命』に突き進む韓国」参照)。

真田:1月20日、トランプ(Donald Trump)政権がスタートします。就任前から、実利を徹底的に追っています。

 トランプ氏はツイッターを通じ、米国企業やトヨタのメキシコへの工場移転を露骨に牽制しました。前例のない話です。そんな米国にとって韓国は経済面でさほどプラスになる存在ではありません。

 軍事的には完全なお荷物です。ニクソン(Richard Nixon)政権(1969―1974年)の時から、在韓米軍の縮小・撤収が米国の課題でした。トランプ政権はそれを加速する可能性が高い。

 この政権は軍人が支えることになります。その軍が韓国に極めて厳しい。米国はこれまで以上に韓国に冷たい姿勢で対することになるでしょう。

鈴置:2010年頃から「米韓同盟はもう、長くは持たない」との米軍幹部のつぶやきが日本にも伝わって来ました。

 中国と敵対の度を強める米国。一方、恐怖心から中国との関係をとにかく良くしたい韓国――。米韓の間で主敵が完全に異なったのです。韓国が在韓米軍へのTHAAD配備を長い間、拒んだのも米韓同盟のきしみの象徴です。

 興味深いことに、同じ頃から米国の機関投資家が韓国株を手放し始めた。ペンタゴン(国防総省)だけではなく、ウォール街も韓国と距離をとり始めたのです。

真田:そこが注目点ですね。米国の軍と金融界は地下茎でつながっていて、この2つが外交の中軸です。

 そもそも「義」のない国は信用されません。いくら国際政治が利害で動くといっても、平気で約束を破ったり、同盟国の仮想敵にすり寄る国は見捨てられるものです。

日本の鼻をあかせ

韓国人はそこをどう見ているのでしょうか。

鈴置:韓国紙にはいまだに「日本など相手にせず、スワップは米国に頼もう」という記事があふれています。

 前回に引用した中央日報の「韓日通貨スワップは政治だ」(1月12日、日本語版)もそうです。この記事は「米国に上手に根回しすれば、スワップを勝ち取れる」と檄を飛ばすのが目的でした。日本語を整えつつ、その部分を引用します。

日本にとって韓国は大した考慮の対象ではない。THAADをめぐる葛藤に巻き込まれた今、中国も活用するのが難しい。2017年10月に満期となる韓中通貨スワップの存続をむしろ心配するべきだ。
結局、残るのは米国だ。そのズボンの裾にしがみついてでも、トランプ大統領に食い込まなければならない。
トランプ氏の大統領在任期間中、米国との間で300億―500億ドルの通貨スワップを維持するだけで、韓国の外国為替・金融市場は大いに安定する。
それに成功すればついでに、我々が厳しい時に常に裏切る日本の鼻をぺしゃんこにできるのだ。
真田:うーん。これを読む限り、米国の冷ややかな視線に韓国人はまだ、気がついていないということですかね。この記事は米国に対するアピールかもしれません。いずれにせよ、米国が今の韓国にそこまでの価値を見出しているとは思えません。

(次回に続く)

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このコラムについて

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朝鮮半島情勢を軸に、アジアのこれからを読み解いていくコラム。著者は日本経済新聞の編集委員。朝鮮半島の将来を予測したシナリオ的小説『朝鮮半島201Z年』を刊行している。その中で登場人物に「しかし今、韓国研究は面白いでしょう。中国が軸となってモノゴトが動くようになったので、皆、中国をカバーしたがる。だけど、日本の風上にある韓国を観察することで“中国台風”の進路や強さ、被害をいち早く予想できる」と語らせている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/011400088/


 

 


【時視各角】韓日通貨スワップは政治だ(1)
2017年01月12日09時07分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版] comment125 sharemixi
通貨スワップこそ政治だ。協定は中央銀行同士で結ぶが、決定は財務長官、またはさらに上のラインでする。あらゆる政治・外交の計算が根底に敷かれている。最も残念なことない国はもちろん基軸通貨国、米国だ。米国は日本、英国、欧州連合(EU)、カナダ、スイスの5カ国とだけ協定を結んでいる。簡単には増やさない。だれとでもするならだれもドル不足を恐れなくなる。中国、日本、韓国が数千億〜数兆ドルずつ米財務省債券を買っている理由がなくなる。世界最大の財政赤字国の米国経済が壊れかねない。

まねっこの日本も米国ぐらい通貨スワップを政治的に使う。先週安倍晋三首相は釜山(プサン)の少女像を問題にして通貨スワップ交渉を中断した。問題は政治・外交から生まれたのに筋違いの経済に矢を放った。韓国の弱点、外国為替のトラウマに触れたのだ。元高官のS氏は「そんなことだと思っていた。日本は一度も韓国が絶対に必要な時、望む時に助けてくれたことがない。むしろ最初にお金を抜き出し不意打ちを食らわせた」と話した。S氏は何人もいない国際金融専門家だ。

日本はちょうど20年前にもそうした。通貨危機が押し寄せた1997年、真っ先に韓国からドルを抜き出した。実に150億ドル。同年の外貨準備高が多い時で約250億ドルだったので半分を超える。林昌烈(イム・チャンリョル)経済副首相が日本の財務省を直接訪ねて行ったが門前払いした。三塚博蔵相は「米国が便宜を計らうなと言っている」として1銭も出さなかった。林昌烈副首相は「日本がお金を引き揚げなかったら韓国経済がこのようになっただろうか」と抗弁したが効果はなかった。いま韓国経済はその当時くらいに厳しい。米中紛争が激しくなれば外国為替のトラウマが再発しかねない。韓日通貨スワップはないよりもある方が100倍良い。それでもこうした状況で日本にぬかずくことはできない。方法はないか。S氏は「過去から学ばなければならない。韓国がすがれば百戦百敗だ。日本が先に手を差し出すようにしなければならない。そうするには米国を動かし、中国をてこに使わなければならない」とした。


http://japanese.joins.com/article/592/224592.html?servcode=100§code=140

【時視各角】韓日通貨スワップは政治だ(2)
2017年01月12日09時07分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版] comment96 sharemixi
過去を振り返ろう。初めて韓日通貨スワップが結ばれたのは2001年だ。日本が先に提案した。当時日本はアジア通貨基金(AMF)を作って盟主になろうとしていた。人民元牽制のために韓国の支援が必要だった。韓国が別に必要でもない時に20億ドルの通貨スワップを結ぶことになった理由だ。2008年の金融危機当時はどうだったか。日本は最初はあれこれ除いた。そうするうちに同年10月に300億ドルの韓米通貨スワップ交渉が妥結して状況が変わった。より積極的に乗り出した。韓日通貨スワップはその後一気に700億ドルまで増えた。

日本にとって韓国の立場は大きな考慮対象でない。米国の顔色、中国の牽制がもっと重要だ。高高度防衛ミサイル(THAAD)をめぐる葛藤に巻き込まれたいま、中国を活用するのは難しい。10月に満期となる韓中通貨スワップをむしろ心配するところだ。残ったのは米国だ。そのためズボンの裾にしがみついてでもトランプを捕まえなければならない。もちろん容易ではないだろう。3つをうまく活用しなければならない。(1)北朝鮮の核とTHAAD(2)ウォール街の人脈(3)国民年金だ。

(1)米国の昨年末現在の韓国証券市場への投資額は約189兆ウォン、圧倒的1位だ。北朝鮮の核とTHAADで韓国市場が揺らげば米国の打撃も大きい。こうした論理でトランプ政権の米国を説得しなければならない。(2)ウォール街の人脈をてこに使わなければならない。2008年に姜万洙(カン・マンス)の経済チームはシティーグループのロバート・ルービン顧問(元財務長官)を攻略して成功した。ルービンは当時の財務長官ティモシー・ガイトナーの直属の上司だった。秘線活用が好きでウォール街出身が多いトランプ氏の経済チームにはより有効でありうる。(3)500兆ウォンを超える国民年金は投資・雇用を渇望するトランプ氏には良い誘引策になれる。

トランプ氏の大統領在任期間に300億〜500億ドルの通貨スワップだけ維持できても韓国の外国為替・金融市場は大きく安定させられる。内外から危機の嵐が押し寄せる時期に資金流出の心配なく経済再生にだけ集中できる。厳しいときは後頭部を叩く日本の鼻をぺしゃんこにするのはおまけだ。

イ・ジョンジェ(コラムニスト)

【時視各角】韓日通貨スワップは政治だ(1)
http://japanese.joins.com/article/593/224593.html
http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/268.html

[国際17] 「少年王・トランプ」は1950年代の米国を目指す トランプ陣営、会見場移動、記者協会反発 対中強硬姿勢、政権内で不一致
日経ビジネスオンライン
「少年王・トランプ」は1950年代の米国を目指す

インタビュー

ピュリツァー賞受賞の米フリージャーナリストが解説
2017年1月17日(火)
飯塚 真紀子

「新政権で米国はこう変わる! トランプ解体新書」
 2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。トランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで──。

 日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が発売されました。今回のインタビューは「トランプ解体新書」にも収録したものです。本書もぜひ手に取ってご覧ください。
 「トランプ本」が出版ラッシュとなっている。中でも注目すべきなのは、ピュリツァー賞受賞ジャーナリストらが手がけた書籍だ。昨日は、米ワシントン・ポスト紙のシニアエディターであるマーク・フィッシャー氏のインタビューを掲載した(詳細は「トランプの素顔『本当は孤独に過ごしたい』)。フィッシャー氏は新大統領について、メディア向けの顔と隠された素顔には大きなギャップがあると指摘した。

 今回話を聞いたのは、新聞記者時代にピュリツァー賞を受賞し、10冊以上の本を上梓したマイケル・ダントニオ氏。ダントニオ氏は、数年にわたるリサーチとトランプ氏への5時間に及ぶインタビューをベースに、『熱狂の王ドナルド・トランプ』を上梓。その邦訳版が2016年10月に、日本でも出版された。ダントニオ氏は、フィッシャー氏とは異なる視点でトランプ氏を評価する。ダントニオ氏に話を聞いた。


日本では2016年10月に発売された書籍『熱狂の王 ドナルド・トランプ』(クロスメディア・パブリッシング、税込み1922円)。
トランプ氏にインタビューし、どのような印象を持ちましたか。

ダントニオ氏(以下、ダントニオ):トランプ氏について数年間調査し、彼本人にも5時間、インタビューをしました。その中で気づいたのは、彼があまりにも成熟していない人間だということです。子供時代で成長が止まっているように感じられました。


マイケル・ダントニオ氏。フリージャーナリスト、ライター。プルトニウム汚染の脅威を追及した『アトミック・ハーベスト』(小学館)、感染症の恐怖を描いた『蚊・ウイルスの運び屋』(共著、ヴィレッジブックス)をはじめ、これまで10冊以上の本を上梓。米紙Newsdayの記者時代にピュリツァー賞を受賞。
 それは感情的な発言を繰り返す彼のツイートからも見て取れます。彼は常に威厳を感じたがっており、人に寛容ではありませんでした。

どんな子供だったのでしょう。

ダントニオ:友達をいじめるような、とてもひどい少年でした。

 見るに見かねた父・フレッド氏は、彼を軍隊式学校に入れたのですが、攻撃的な態度は変わるどころか、強化されてしまいました。軍隊式学校では、軍隊的なヒエラルキーを重視する人物がリーダーになります。与えられる特権も、地位によって異なります。彼はそんな環境の中で、権力を持たなければならないという考え方や、自分のすることはすべて正しいという観念を植え付けられました。そうやって生まれた独裁的で未熟な人格が、彼のやることなすことに影響を与えてきたのです。

 父のフレッド氏も影響を与えました。ビジネスでは、自分に有利になるように政府のローンを操作して余分な利益を得ていました。例えば中流層や第2次世界大戦の退役軍人の住宅に使われることになっていたお金を操作し、我がものにしていたのです。自分が利益を得るためなら、法に抵触しないギリギリのことまで進んで乗り出す。またアフリカ系米国人を自分のアパートに入居させないなどの人種差別もありました。トランプ氏もビジネスでは同じようなことをしていますが、それは父という悪しきロールモデルがいたからです。

兄の死が反面教師に?

母親や兄姉弟からも、影響を受けているのでしょうか。

ダントニオ:トランプ氏には、フレッド・ジュニア氏という兄がいました。兄はトランプ氏とは対照的に仕事がうまくいかず、42歳の時にアルコール依存症で亡くなりました。トランプ氏が兄について話すのは、人の心を動かせるからでしょう。これも彼の人心操作の一つなのです。

 確かに兄の死は悲劇的でしたが、彼が兄の死を悼んでいるのかは疑問です。むしろ兄のことを敗者だと感じ、自分はああなりたくないと反面教師にしているようです。彼は兄の死の前から、兄とは違う生き方をすると宣言していましたが、兄の死はそれを再確認させ、彼にこれまでの生き方を続けるようしむけたのです。

 母のメアリー氏は、トランプの女性観に多大な影響を与えたと思います。母は病弱で、彼が軍隊学校に入学した13歳の頃からは別々に暮らしていました。母から十分に得られなかった愛を、彼は女性に求めるようになったのだと思います。

 しかし彼は、女性を複雑な人間であるとは考えておらず、自分が求めるものを与えてくれる存在だと考えています。ですから女性と成熟した関係を築くことができません。そのため何度も離婚を繰り返すことになったのです。

 同じことは、子供たちとの関係についても言えるでしょう。彼は、子供たちが小さな時分は、あまり彼らに興味を示しませんでした。妻に育児を任せて、働いていればハッピーだったのです。子供たちが大人になって初めて、良い関係が築けるようになった。そんなところも、彼の未熟さの現れだと思います。

何度破産しても苦しまなかった

彼の人格は、ビジネスには、どのような影響を与えたのでしょう。

ダントニオ:彼は何度も破産していますが、面白いのは、彼自身は一度も苦しんでいないということです。ビジネスで失敗すると逃げて、ほかの人に責任を負わせてきました。

 例えば彼は、メキシコのある半島に大きなリゾート住宅を作ろうとしたのですが、結局開発できず、頭金を払った人々は大損しました。この時もトランプは、「自分の責任ではない」と逃げました。彼が創設した不動産セミナー「トランプ大学」でも、彼は特別なことが学べると宣伝して学生に多額の授業料を求めましたが、蓋を開けてみれば、公立図書館で無料で得られるようなレベルの内容でした。

 問題は、こういう悪事をやってのけても、全く反省しないことです。彼にはとても強いナルシシズムがあるのでしょう。もちろん政治家は、多かれ少なかれナルシシズムを持っているものです。しかし通常ならば同時に、「過ちは恥ずべきことだ」と反省する能力も持ち合わせている。

 けれどトランプ氏に「恥だ」と思わせることは難しい。彼はどんなことが暴露されようとも、責任を感じて自分のやり方を変えるようなことはないですから。

トランプ氏、“象徴的な”大統領に?

トランプ氏はなぜ政治に興味を持ったのでしょう。

ダントニオ:彼はニューヨーク市の政治家に献金するような家庭で育ったのです。子供心に、世渡りには政治家の権力が必要だと分かっていました。政治に興味を持ったのは権力が欲しいからです。彼に純粋な政治課題や確固たる政治哲学があるからではありません。その証拠に彼は、ある時はリベラル、ある時は保守、またある時は無党派と、支持政党をころころと変えてきました。

 つまり彼にとっては、自分が成功しさえすれば、どの政党でもよかったわけです。これはとてもひどいことです。彼は「賞」を追求することが何より重要なわけですから。そして彼にとって、最大の「賞」が大統領の椅子だったのです。

トランプ氏はどんな大統領になると思いますか。

ダントニオ:これまでの彼の生き方を考えると、就任後に彼がまっとうな人間に変わることは、期待できません。政治でも、わずかな決断は彼自身が下すでしょうが、具体的な政策を実行する時には側近に権力を与えることになると思います。その意味では、英国の女王のような象徴的な存在になるのかもしれません。もちろん英国女王以上の意思決定権は持つでしょうが、象徴的な役割の方が大きくなると読んでいます。

トランプ政権の下で、米国はどんな未来図が描かれるのでしょう。

ダントニオ:彼は、未来図は描いていないと思います。描いているとすれば、彼が幼少期に目にした、米国が力を持っていた1950年代の過去の姿でしょう。

 当時、世界の50%の製造業が米国に集まり、大きな富が米国に集中していた。ほかの国々の産業は戦争で破壊されていたけれど、米国だけはリッチでパワフルな状態を維持していた。

 しかし現在は富とパワーは世界中に広く分配されています。トランプ氏はそれを受け入れられないのでしょうが、米国が50年代に戻ることは不可能です。それでもあえて後戻りしようとするなら、最終的に世界で大きな混乱が生じることになります。

 減税措置と赤字を生み出す財政出動で経済は活気づき、インフレが起こり、一時的には、経済が回復したように思えるかもしれません。けれど、それも長続きはしないと思います。彼が4年の任期を終えるまでには、たくさんの危機に見舞われることになるでしょう。

世界のリーダーは、トランプ氏にどう対応したらよいのでしょう。

ダントニオ:トランプ氏は一言で言えば、“Boy King”、つまり「少年王」なのです。歴史的に“Boy King”の周囲には、とてもパワフルな側近たちが集まります。そのため世界のリーダーたちは“Boy King”の発言は無視し、「トランプ内閣」にいる側近たちとやりとりをして最善を願うほかないのかもしれません。

日経ビジネス 「トランプ解体新書」発売中

「新政権で米国はこう変わる! トランプ解体新書」
 2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。2人のピュリツァー賞受賞ジャーナリストによるトランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで──。2016年の米大統領選直前、連載「もしもトランプが大統領になったら(通称:もしトラ)」でトランプ新大統領の誕生をいち早く予見した日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が発売中です。ぜひ手に取ってご覧ください。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/230078/011300072/

 

トランプ氏の素顔「本当は孤独に過ごしたい」

インタビュー

ピュリツァー賞受賞の米ジャーナリストが暴いた正体
2017年1月16日(月)
飯塚 真紀子

「新政権で米国はこう変わる!トランプ解体新書」
 2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。2人のピュリツァー賞受賞ジャーナリストによるトランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで──。日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が発売されました。今回のインタビューは「トランプ解体新書」にも収録したものです。本書もぜひ手に取ってご覧ください。
 「トランプ本」が出版ラッシュとなっている。中でも注目すべきなのは、あるピュリツァー賞受賞ジャーナリストが手がけた書籍だ。米ワシントン・ポスト紙のシニアエディターであるマーク・フィッシャー氏は2016年、国内報道部門でピュリツァー賞を受賞、調査報道記者であるマイケル・クラニッシュ氏や総勢20人以上のワシントン・ポスト紙の取材班と、25時間以上におよぶトランプ氏へのインタビューを敢行し、著書『トランプ』を上梓した。フィッシャー氏が見たトランプ氏の実像とは。話を聞いた。


日本では2016年10月に発売された書籍『トランプ』(文藝春秋、税込み2268円)。トランプ氏自身は、この本について「ワシントン・ポスト紙が、奴らの不正確な記事を混ぜこんだ俺についての本を緊急出版した。買うな!退屈な本だ」とツイートした。

マーク・フィッシャー氏。ワシントン・ポスト紙のシニアエディター。30年以上同紙で活躍し、ベルリン支局長などを歴任。フィッシャー氏の執筆した記事は、2014年には公益部門、2016年には国内報道部門で、ピュリツァー賞を受賞
トランプ氏はビジネスの成功者だと自負していますが、経営者としての半生をどう評価していますか。

フィッシャー氏(以下、フィッシャー):トランプ氏はまるでジェットコースターのようなビジネス人生を送ってきました。最初のニューヨーク・マンハッタンのホテル開発では成功しましたが、アトランティックシティーのカジノリゾートホテル開発では大きな負債を抱え、6回もの破産を繰り返しました。

 彼がビジネスで注力したのは、イメージ作りやブランディングです。トランプ氏のパーソナルブランドを作り、人々を奮い立たせるような存在になれば、消費者は自分の売るものを買うと考えたわけです。

 もともとトランプ氏は、父・フレッド氏から大きな影響を受けています。フレッド氏は、ニューヨークのブルックリンやクイーンズで、アパートなどの不動産を開発して成功しました。けれどフレッド氏はあの時代では珍しく、離れ業によって人々を魅了した。例えば夏、観光客でごった返すビーチの上空にセスナを飛ばして、開発中の物件を宣伝しました。ビジネスではビッグに売らなければならない。トランプ氏は、父の背中からそんな哲学を学んだわけです。

 母のメアリー氏も彼に大きな影響を与えました。母はパーティーなどの社交の場では常に中心にいたがるような、華やかでパフォーマンス好きな女性でした。トランプ氏もパフォーマンス上手ですが、それは母親譲りだと彼自身も話しています。

 彼は、舞台のようなパフォーマーとしてのビジネス人格を生み出して人々を引きつけることで、物を売ることができると考えたのです。つまり父からは宣伝の重要性を、母からはパフォーマンスの重要性を学んだと言えます。

偽名使って自分でメディアに“売りこみ”

具体的にはトランプ氏は、どんなブランド作りをしたのでしょう。

フィッシャー:彼が生み出したのは「トランプ」というゴージャスなライフスタイルブランドです。彼自身のようなリッチなプレーボーイが送っているライフスタイルを提供するブランドを生み、それをメディアで宣伝すれば消費者が飛びつくと考えた。「トランプ」の名を冠するゴルフ場やホテルに来たり、マンションを買ったりしてくれるだろう、と。

 父は中流向けの住宅を開発していましたが、彼はもっとハイレベルのライフスタイルにフォーカスした。「ライフスタイルブランド」という言葉は、近年でこそ注目されていますが、1970年代からこの切り口でマーケティングし、消費者を獲得していたという点で、彼は時代のはるか最先端を行っていたと思います。

 ブランドを売るため、トランプ氏はメディアを巧みに利用しました。彼自身、偽名で自らの宣伝をしたほどです。例えば、彼は「ジョン・バロン」や「ジョン・ミラー」という偽名を使ってニューヨークの新聞記者に電話し、「トランプが今夜スタジオ54(ニューヨークにあるクラブ)に、ホットなセレブと現れる」と情報を流してメディアを集めたこともありました。自分の派手な生活を、メディアを活用して消費者に知らせるマーケティング戦略を取ったわけです。

カメラマンが消えると女性への興味を失う?

つまり我々が目にしてきたトランプ氏の姿は、彼が生み出したビジネス人格である、と。本来のトランプ氏はどんな人物なのでしょう。

フィッシャー:トランプブランドの中の彼は、本来の姿とは異なります。

 今回取材して分かったのは、彼が一人で行動するタイプの人間だということです。彼はああ見えてとても孤立した生活を送っている。

 1970〜90年代に彼と交流した女性たちに話を聞いたのですが、トランプ氏は、いったんカメラマンがいなくなると、取り巻きの女性たちには興味を示さず、そそくさと一人で自分のアパートに帰り、テレビを見ていたそうです。

 基金集めのパーティーに参加した時も、アシスタントに「すぐに家に帰るには、いくらの小切手を書けばいいんだ?」と聞いたとか。つまり、彼は、本来はあまり人々とは交わりたがらず、一貫して一人で家にいたいと思っている。

「100倍返し」を教えたある弁護士

あのアグレッシブな姿からはとても想像できません。

フィッシャー:トランプ氏のアグレッシブな姿勢に影響を与えた人物として、ロイ・コーン氏という、マッカーシズム時代に赤狩りの急先鋒に立った悪名高い弁護士がいます。彼はトランプ氏に、法律的な攻撃を受けたら、100倍で反撃すべきと教えました。そのため彼は黒人にアパートを賃貸しないという問題で司法省から訴えられた時にも、コーン氏のアドバイスに従って反訴を起こして司法省を攻撃しました。

 またコーン氏は、議論を引き起こすようなネガティブな報道でも宣伝効果があるので喜んで受け入れるようトランプ氏に教えました。トランプ氏はそれに従い、離婚話などの個人的なスキャンダルが新聞の一面を飾っても受け入れてきたのです。

 トランプ氏は表舞台ではアグレッシブですが、舞台裏でははるかに穏やかで柔軟性があります。例えば彼はよく「訴訟は解決しておらず、激しく戦っている」と表向きには言っています。けれど実際には訴訟の多くは解決しているのです。

 私がインタビューした時も、選挙戦で見せた激しい姿勢ではなく、ずっと温厚で、理性的で、人の話に耳を傾ける謙虚な対応でした。彼と交渉したことのある人たちも、「彼は楽勝で交渉しやすい相手だ。自分が譲歩したことが世間に知られなければ譲歩もしてくれる」と話していました。

 つまりトランプ氏の場合、メディアに見せる人格と、舞台裏の実際の人格の間には大きな隔たりがある。彼の会社の幹部も「トランプ氏がなぜあんな言動をするのか、動機は何なのか、疑問に思うかもしれません。けれど彼は常にショーマンだと考えれば理解できます」と言っていました。過激なパフォーマンスは、人々に刺激を与えて楽しませ、「セレブ」という虚飾に磨きをかけるために行っているのです。

トランプ氏は「本は最後まで読まない」

ほかにも取材を進めて、意外に感じた部分はありましたか。

フィッシャー:彼は、皆が思っているほど有能なビジネスマンではないということです。ブランディングに力を入れているため、日々の細かい商売には関わっておらず、企業経営については幹部らに任せています。

 そのため幹部たちは自由裁量で働いているのですが、問題が起きることもあります。例えば幹部たちが仕事の実績をトランプ氏のものとせずに自分のものだと奪おうとする場合。トランプ氏は、あくまで自分に忠誠を尽くす部下を好みます。それは新体制の人選にも表れています。

 またトランプ氏は、ビジネスでは報告書を読まず、そのことに誇りを感じている点もユニークですね。彼は部下に、「本は最後まで読まないんだ」と自慢したそうです。私たちに対しても、「大統領になっても報告書やブリーフィングは読まない」と言い張っていました。

 驚いたので、「ではどうやって、複雑な問題に対して、迅速に対処するのでしょうか」と聞くと、「アドバイザーに数十秒話してもらえば、決断力があるから適切な対処法が分かるんだ」と答えました。つまり彼は、自分の直感と決断力に最高の自信を持っている。これまでも、その直感と決断力で物事を決めてきたのでしょうね。

忠誠を尽くして助言する存在といえば、今後は長女のイバンカ氏が重要な役割を果たしそうです。

フィッシャー:実際トランプ氏は、イバンカ氏は自分の一部なのだと考えているような、子供っぽいところがあります。彼に「危機に直面した時は、誰に相談するのか」と聞いたのですが、彼は友人の名前は全く思いつかず、「親しい友達はいないから、イバンカと2人の兄弟だ」と答えました。それだけ彼は、イバンカ氏を深く頼っている。彼女を、政界やビジネスから外すという考えにも反対していて、両方に関わらせたいようです。しかし明らかに、反倫理的な利益相反に直面することになります。

言葉通りのポピュリスト、トランプ氏

トランプ氏はビジネス上はリッチなライフスタイルを演出していますが、大統領としてはどんなイメージを打ち出すのでしょう。

フィッシャー:今のところ、彼は選挙戦で主張していたイメージを維持しようとしています。だから、今も不適切なツイートも続けています。

 また、当選させてくれた国民に謝辞を述べるためのラリーにも行っています。これはオバマ大統領とは対照的な動きです。オバマ大統領は当選後、選挙戦で見せた人格を完全に失ってしまった。ラリーも行わず、国民にも話しかけず、大統領選で勝った後のオバマ氏は、完全に選挙戦の時の姿を消してしまった。そして注意深く、駆け引き上手な、如才ないリーダーに納まった。

 けれどもトランプ氏は、当選後も選挙の時の「熱狂モード」を維持しようとしている。政治的には非常に賢明な判断です。もっとも、そんな選挙モードを選挙時の公約と結びつけるには巧妙な術が求められますから、なかなか難しいかもしれません。

 実際、当選後の彼の主張は、既に選挙公約から遠ざかっているものも多い。もともと彼には、主義や価値観といったイデオロギーが全くありません。非常に実利的で、状況主義者で、人々がいるところに行くという、辞書にある通りの「ポピュリスト」そのものなのです。そのため彼自身、選挙公約をいかに政策にするのかという難しさを感じ始めていることでしょう。

 また大統領の重要な仕事の一つが「説得」です。彼がこれから、議会や国民をどう説得していくのか分かりません。当選したことで、ある程度は国民の信頼を得られたはずです。けれど彼は、これまでの大統領と比べると最低レベルの人気度と信頼度からスタートを切ることになる。

大統領就任後には混乱が予想される、と。

フィッシャー:見ての通り、混乱は既に始まっています。彼はビジネスでやってきたことを、政治でもやろうとしていますから。彼はこれまで、自分に忠実な人材ばかりではなく、敵対する人材も同時に雇ってきています。賛成者と反対者の両方を競わせ、クリエーティブなアイデアを生み出そうとしてきた。

 同じように政治でも、味方と敵を閣僚に入れて良いアイデアを得ようとしています。しかし政治とビジネスとでは全くスケールが違います。

「これからは国民のために」と語ったトランプ氏

富裕層のトランプ氏に、国民感情を理解できるのでしょうか。

フィッシャー:難しいでしょうね。私も疑問に感じて、彼に聞いたのです。「あなたは長い間、競争相手を傷つけたり、建設業者から訴えられたりしてきました。あなたの成功の陰にはたくさんの傷ついた人たちがいるのです」と。するとトランプ氏は、「私はこれまですべて、“ドナルド・トランプ”のためにやってきた」と説明しました。

 「では、どうやって3億人の国民の代表になるのでしょう」と問うと、こう答えたんです。「変わらなければならないな。“ドナルド・トランプ”のためにしてきたことを、これからは国民のためにするよ」。彼は、自分が変われると純粋に信じているようでした。

 しかし、これまでの彼のビジネス人生を見ると、本当に変わることができるのかは疑問です。金銭面においても振る舞いにおいても、彼はこれまで、自分以外の人々の利益にかなうよう思いやったり、自ら進んで犠牲になったりするようなことをしてこなかった。そんな彼が、自分の人気を犠牲にしてまで、国民の将来のためになるステップを踏むでしょうか。それを考えると、彼にとっては大統領という職務は全く新しい挑戦になるでしょう。

トランプ氏に世界のリーダーはどう対処すればいいのでしょう。

フィッシャー:世界のリーダーにとっても、対処の難しい存在になるでしょうね。リーダーの中には、彼のビジネスの良いパトロンになることで、優位に立とうとしている人も出てきています。明らかに利益相反が生じている。

 繰り返しますが、トランプ氏は報告書を読みません。個人的な面談やテレビなどを通した口述情報を重視するタイプなので、トランプ氏にアピールするために必死にメディアに出るリーダーもいます。そういう意味では、日本の安倍首相が真っ先に面会に駆けつけたのは、賢明な判断だったと言えるでしょう。

 今後も、面談を通してトランプ氏との関係を構築しようとするリーダーは、アドバンテージが得られると思います。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/230078/011300071/?ST=print
 


 

 

トランプ陣営、ホワイトハウスの会見場移動検討 記者協会は反発

[ワシントン 15日 ロイター] - ドナルド・トランプ次期米大統領の陣営は、現在ホワイトハウスのウエストウイングにある記者会見場を移動する可能性がある。プリーバス次期大統領首席補佐官が15日明らかにしたもので、より多くの内外報道機関を受け入れるためという。

14日付のエスクァイア誌は、次期トランプ政権はプレスルームをホワイトハウスに隣接するアイゼンハワー行政府ビルに移動する計画と報じていた。同ビルは、ホワイトハウスの敷地内にある。

プリーバス氏は15日、ABCの番組に対し、次期トランプ政権の陣営は会見場を手狭なウエストウイングからアイゼンハワービルに移動する可能性を検討したと述べた。

現在の会見場は大統領執務室から至近距離にあるため、移動が実現すれば記者にとって取材アクセスが変化することになる。

プリーバス氏もペンス次期副大統領も、何の決定も下されていないとしている。

ホワイトハウス記者協会は「大統領や顧問らをホワイトハウス内部の報道陣の目から遮断するようないかなる動き」にも反対するとの声明を発表。現状の会見場維持と、政府高官に対するアクセスの開放性維持を目指して戦うと述べた。

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韓国特別検察、サムスングループ経営トップの逮捕状請求へ
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-media-idJPKBN1500UO


 


 


焦点:対中強硬姿勢のトランプ氏、次期政権内では意見不一致も

[ワシントン 13日 ロイター] - 20日に発足する米国のトランプ次期政権は、中国に対し強硬姿勢を示したことで、安全保障から貿易やサイバー空間に至るまで広い範囲で対決することになった。だが、トランプ氏にどの程度準備があるのかは不透明であり、次期政権内部からは矛盾するメッセージも発せられている。

トランプ氏が次期国務長官に選んだティラーソン氏は11日、米国は中国に対し、南シナ海の人工島へのアクセスを認めない姿勢を示すべきだと発言し多くの議論を呼んだ。

トランプ氏の政策顧問によるとティラーソン発言は、武力衝突のリスクを伴う人工島の海上封鎖を、新政権が意図していることを示したものではないとする。ただ、別の政権移行チームのメンバーはこの見解を否定。ティラーソン氏が中国の人工島アクセスを認めない態度を表明したのは「失言ではない」と主張した。

移行チーム内部では、政策上の対立がうかがえる中、南シナ海での中国の台頭に対抗する計画が練られている。

政権移行顧問はロイターに対し、南シナ海への2隻目の空母配備ならびに駆逐艦、攻撃型潜水艦の追加投入、ミサイル防衛システム用の電源拡充、さらには日本やオーストラリアでの基地増設などを検討していることを明かした。北朝鮮と国境を接する韓国で、米空軍に「長距離打撃爆撃装備」を配置することも考えているという。

トランプ氏自身は海軍の艦船を350隻に増強する意向を示しているものの、ほかにも巨額の支出が見込まれており、政権移行チームは海軍増強資金をどう手当てするか明らかにしていない。

中国外務省は、ティラーソン発言の意図は不明だとした。ただ、中国共産党機関紙「人民日報」系の国際情報紙は13日、人工島へのアクセスを米国が阻止するなら「大規模な戦争を行う」覚悟が必要だと警告した。

ティラーソン発言は政府が長年コミットしてきた「航行の自由」に矛盾するとみられ、国防長官に就任する予定のマティス元中央軍司令官は賛同していない。

マティス氏は、中国の南シナ海における活動は世界の秩序に対する攻撃につながると述べた。ただ、米国と国防省は「不完全もしくは一貫しない戦略に対応する必要が生じないよう」、調和のとれた政策をまとめ上げる必要があるとも話した。

トランプ氏は選挙戦中に再三、中国は貿易面で米国に「性的暴行」を加えていると激しく非難してきた。同氏が直面する最大の外交的問題へ新政権はどうアプローチするのか。相反するメッセージは、そこに困難があることを浮き彫りにしている。

<リスクと報復>

移行チームに非公式に助言をしている政府元高官は、米国が軍事や貿易で中国に圧力をかけた場合のリスクをチームは十分考慮していないと指摘。ロイターに対し「中国からの報復などを過小評価すべきではない」とくぎを刺した。

トランプ氏は中国製品への報復関税も示唆しており、両国だけでなく世界経済にも悪影響を及ぼすリスクが出ている。

トランプ氏は国家安全保障に関連して、アジア地域に関する経験を豊富に有する高官をまだ指名していない。より安定したアジア政策を策定するためにレトリックを行動に変換する専門知識が、新政権には不足するのではないか――アナリストにはそう考える向きもある。

だがトランプ氏は、中国に対し批判的な考えを持つロバート・ライトハイザー氏を米通商代表部(USTR)代表に指名。新設する「国家通商会議」には、著作「Death by China」(中国が破滅をもたらす)で知られる対中強硬派エコノミストのピーター・ナバロ氏をトップに据えることを決めた。

トランプ氏の顧問らは、「力による平和」を追求する姿勢は米国のアジア政策を強化すると主張。こういったアプローチが危険であり逆効果を生むとの懸念を一蹴してみせる。

トランプ氏と閣僚候補者らは、北朝鮮の核やミサイル問題に関しても、解決に向けて中国に圧力を強めていく考えだ。だがアナリストらによれば、米国がサイバー攻撃などの問題に関し中国への圧力を増すのであれば、中国側は協力する気はないという。

今年は5年に1度の中国共産党全国代表大会を控えており、権力基盤の強化を狙う習近平国家主席の下、台湾や南シナ海といった重大な国家主権の問題は強い反応を引き起こすとの見方は多い。

北京大学のZha Daojiong教授は、文明間の衝突というテーマは中国社会で一段と取り沙汰されるようになっており、悪い前兆だと指摘。「南シナ海を巡って、米国で士気を鼓舞する太鼓が鳴り続けても、問題解決にはまったくつながらない」と語った。

(Michael Martina記者、Christian Shepherd記者 翻訳:田頭淳子 編集:高木匠)

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http://jp.reuters.com/article/usa-trump-china-idJPKBN1500YH?sp=true

http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/318.html

[政治・選挙・NHK219] 高齢者の運転免許返上は平均寿命を短くする!?  無責任な「女子力」願望が強要する女性の社畜化 
高齢者の運転免許返上は平均寿命を短くする!?

和田秀樹 サバイバルのための思考法

専門外コメンテーターの印象論に感じる危険性
2017年1月17日(火)
和田 秀樹
 昨年暮れからのニュースで気になることに、65歳以上の高齢者ドライバーによる交通事故報道がある。当たり前のことだが、超高齢社会というのは、高齢者の比率の多い社会ということである。毎年敬老の日にちなんで、総務省が高齢者の統計結果を発表しているが、2016年8月15日現在の高齢者数は3461万人で、人口に占める割合は27.3%となっている。


高齢者ドライバーによる運転事故は、ほかの年代と比べて本当に多いのか?(©PaylessImages-123RF)
高齢者の事故が増えたのは、単に高齢者比率が高まったから

 高齢者の事故が増えたという場合、人口が増えた以上に事故の割合が増えたのでなければ、高齢者が危ないということにはならないだろう。もちろん高齢者の免許保有率は、現役世代よりは低い。2014年の統計では、免許総数8207万人に対して、1639万人。それでも全免許保有者の20%は高齢者となっている。今はもう少しその割合が高いだろう。

 交通事故死者数が2016年はついに4000人を下回り、3904人になったとのことだが、高齢者のドライバーがその2割(約780人)であったとすれば、高齢ドライバーが現役世代より危険でなくても毎日2件以上は高齢者による死亡事故が起こってもおかしくない。

 しかし、ニュースで「今日もまた高齢者による死亡事故が起きました」と報じ、「しかも2件続けて」ということになれば、おそらく見た人のほとんどは、「やはり高齢者の運転は危ない」と感じ、「免許を返上させるべきだ」という話になるだろう。もちろん、統計数字を見れば分かるように、それは素人による印象論だからと言っていい。

 本来なら、ニュースの解説者やコメンテーターは、高齢者の割合が増えていることに伴って生じているのだと冷静な解説をすべきなのだが、日本では、特にテレビのコメンテーターと称する人が、そのまま「本当に怖いですね」と言ってしまうところがまさに異常としかいいようがない。

高齢者に免許返上を求めるなら、若者の免許取得年齢を引き上げるべき

 警察庁は、免許保有者の年齢別の事故割合も発表している。平成27年の統計をみると、免許保有者10万人当たりの死亡事故割合は、65歳以上で5.84件、70歳以上で7.37件、75歳以上で10.53件だ。30〜39歳であれば3.41件なので確かに高い。

 高齢者の死亡事故割合が多くなるのは、運転者本人が事故で死ぬ確率が高いという背景があるからだ。ただ、75歳以上の高齢ドライバーが1万人いたとして、9999人は死亡事故を起こしていないという見方もできる。それでも免許を返さないといけないのだろうか?

 死亡事故率が高いから免許を返せというのなら、16〜24歳は7.66件で70歳以上の高齢ドライバーより死亡事故を起こしているのだから、免許の取得年齢を25歳まで引き上げろというのでなければ、高齢者差別と言われても仕方ない。

 死亡事故でない事故全体をみても、75歳以上で免許保有者10万人当たり768件で、100人に一人も起こしていないし、これは16〜24歳どころか、25〜29歳の人よりも低い数字だ。

 インターネットを調べればすぐ分かる数字なのに、この程度の下調べもしないで、高いギャラをもらっている神経が私には信じられない。私もワイドショーのコメンテーターをやっていた時期があるが、事前にどのニュースをやるかは教えられるし、打ち合わせもある。本番までにスマホでだって調べられるだろう。

車を取り上げると就労率が下がり、平均寿命も低下する

 こうした素人がコメンテーターを務めることで、我々プロ(私の場合は老年精神医学)にとって困るのは、75歳以上だって1万人に一人しか起こさない死亡事故に対して、この人たちから免許を取り上げた際に生じる悪影響を語る人がいないことだ。

 高齢者から自動車の免許を取り上げると、多くの高齢者の認知機能にかなりの悪影響を及ぼしかねない。本当に認知症などになってしまった人であれば、デイサービスなどで外出できるが、そうでない場合、特に地方の高齢者は、自動車がないと外に出る手段がなくなってしまう。電車やバスが充実している大都市でも、80代以上の高齢者の場合、手押し車やカートでは電車やバスに乗りにくいという理由で、動かなくなる高齢者も多い。高齢者専門の精神科医の立場から言わせてもらうと、外出が減ることによる刺激のなさが認知機能を落としてしまうのだ。

 家の前に車がある地方の高齢者のほうが、私の見るところ、外出の機会が多い。現実に、交通の便のいい大都市より地方のほうが、平均寿命が長い地域が多いのだ。

 確かに環境の違いもあるが、意外に、平均寿命、特に男性の平均寿命との相関が高いのは、高齢者の就労率だ。沖縄などは高齢者の就労率が日本最下位のために、家事労働のある女性は平均寿命がトップクラス(それでも1位から陥落している)なのだが、男性のほうは日本の平均にも満たない。気候も食生活も、あるいは遺伝子も女性と大差がないはずなのに。

 地方のほうが歩くから、山歩きをするから平均寿命が長いと考える人もいる。長野が長寿県にランクインした際に、そのような解釈がされた。しかし、軽自動車の普及で、高齢者が歩かなくなってからのほうが、むしろ平均寿命が延びしているし、順位も上げている。ちなみに長野は高齢者の就労率はトップである。

 こうした理由から、高齢者には積極的に社会に参加してほしいのに、1万人に一人の死亡事故のために、免許を取り上げることで高齢者が家に引きこもりがちになる危険について論じられないのは残念なことだ。

運転が危険な認知症患者なら、そもそも車を動かせない

 もう一つ、痛感するのは、素人のコメンテーターが高齢者の脳機能や認知機能についてさっぱり分かっていないということだ。認知症の人に運転させると危ないということが常識のように言われているが、例えば、果たして認知症になればアクセルとブレーキを間違えるのだろうか?

 初期認知症では記憶障害が生じ、自動車でショッピングセンターに来たことを忘れて車を置いて帰ったという患者さんを私も診たことがあるが、ブレーキとアクセルが分からなくなるとすれば、相当重度な認知症である。そのレベルの認知症であれば、ウィンカーもハンドブレーキも、あるいはキーの操作でエンジンをかけることも分からなくなって、そもそも車を動かすことはほぼ不可能である。

 ブレーキとアクセルを間違えるのは、恐らくパニックを起こすからだろう。高齢者のほうがパニックになりやすいという医学的根拠は現時点ではない(前頭葉機能が衰えるので、あり得ない話ではないが)。警察が免許を取り上げる口実に使う認知機能検査による運転能力の判断は、私のような老年精神医学のプロからみて、まず役に立たない。認知機能検査でパニックの起きやすさの予想はできないし、この検査で判定する能力が落ちていたところで、ブレーキとアクセルの区別がつかなくなることはあり得ないからだ。

 つまり、認知症=事故と短絡するのは医学的に妥当でないと私は考えるが、こうした見解が紹介される機会もほとんどないように思える。

ニュースの印象でなく確率論で制度を考えるべき

 日本は、統計数字よりニュースで法律が変わる、極めて感情的な国にみえる。飲酒死亡事故にしても、統計的には減り続けていたのに、福岡市の職員が起こしたセンセーショナルな事故がきっかけとなり、飲酒運転の厳罰化につながったという経緯がある。恐らくスマホ運転にしても、事故の数はかなり多いはずだが、ニュースの絵になるような事故が起こっていないから厳罰化されていないのだろう。あるいは、教育政策にしても学力低下や校内暴力の数という数字のデータより、ニュースになるような「いじめ自殺」(いじめが自殺の要因にはなり得るが、いじめだけが原因の自殺はまずないはずだ)の報道によって、教育政策が変わってしまう。

 そもそもニュースというのは珍しいことだからニュースになるのに、その出来事が制度変更のきっかけになるのは理解しがたい。本当に対策をしなければいけないのは、高い確率で起こることだろう。

 私が知りたいのは、むしろ自動車産業のプロの解説だ。実際、人口が高齢化しているのに交通死亡事故が減っているとすれば、その最大の要因は、自動車の性能の向上だろう。今の危険認識システムがどこまで進んでいるとか、自動運転がどの程度実用化しつつあるのかをきちんと解説してもらえれば、拙速に高齢者から免許を取り上げるより、その開発に期待するという考え方もあり得るはずだ。

 いずれにせよ、高齢者の運転免許の問題については、客観的な統計データに基づき、高齢者の生活への影響を冷静に検討したうえで判断すべきだろう。


このコラムについて

和田秀樹 サバイバルのための思考法
国際化、高齢化が進み、ストレスフルな社会であなたはサバイバルできますか? 厳しい時代を生き抜くアイデアや仕事術、思考法などを幅広く伝授します。
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無責任な「女子力」願望が強要する女性の社畜化

河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学

女性特有の視点、気遣い…そんなもんないワ!
2017年1月17日(火)
河合 薫

 ここのところ女性社員を対象とした講演会やセミナー、懇談会、フィールド・インタビューが続いた。企業も、業種も、年齢も違う女性たちなのだが、彼女たちに共通していたことがひとつだけあり、少々困惑している。

 いや、困惑ではない。

 彼女たちの話を聞けば聞くほど、女なんだか男なんだか、オバさんなんだかオジさんなんだか“正体不明”になってしまった私は(苦笑)、彼女たちが気の毒になってしまったのだ。

 その“共通していたこと”とは……、彼女たちが一様に「女性」という言葉で語られるテクストに抱いていた「憎悪」です。

 これまでにもさまざまな角度から、“女性活躍”だの“女性が輝く社会”など、“女性”だけに特化したやり方の問題点を指摘してきた。

 ところが、問題「点」と絞れないほど問題は複雑化していて、20代から40代、さらには50代に至るまで「画一化された女性活躍像」にプレッシャーを感じ、出口の見えない廻廊に迷い込んでいたのである。

 たぶん…、周りの人たちには、彼女たちがナニに悩んでいるかはわからないと思う。
だって、絶対に口にしないから。

 遠回しには言うかもしれない。でも、決して根っこを明かすことはない。

 であるなら、なんで私に打ち明けたかのかって?

 “モヤちょい”したからです。

 はい、モヤちょいです。具体的な質問を、ちょいちょい投げかけることで、モヤモヤを引き出す方法が、“モヤちょい”であります。

 実は昨年末、女性誌の編集者の方たちと飲んだときに、

「女性たちは『こんなこと思ってしまったり、モヤモヤしてていいんだろうか?』って考えちゃうんです。ブラックな自分が顔を出すことに、罪悪感を覚える。だから、上手くちょいちょい突ついてもらえて、やっと自分の気持ちが話せるんですよね。河合さんの連載(日経ウーマンオンライン「 河合薫の「女性のリアル人生相談」」)、ニケさんにちょいちょいするでしょ?だから面白いんです」

というようなことを言っていたのだ。

 そこでモヤちょいを実際やってみたところ、「話を聞いてもらって、私のモヤモヤがやっとわかりました」と涙をポロポロ流す女性まで出てきてしまいまして。

 男性にも是非、モヤちょいで明らかになった彼女たちのホンネを聞いてもらいたいと思った次第です。

 テーマは「女性たちの心の叫び」。ただし、心の叫びは属性により多種多様。そこで今回は、その中の一つだけを取り上げ、その他は今後、さらに深化させてから紹介します。

 では、“モヤちょい”第一弾をお聞きください。

「女性ならではの視点…なんて期待されても」

「私は今年、31歳です。会社には同年代の女性はたくさんいますけど、管理職の女性は少ないです。結婚はしたいですけど、彼氏はいません。河合さんはいろんな方をインタビューしているそうですが、他の会社の独身女性ってどうしてるんでしょうか?」

「どうしてるって、どういうことですか???」(河合)

「……私、仕事はずっと続けていきたいと思っていますし、普通に暮らせればいいんです。でも、私、普通じゃないみたいなんです」

「えっと……。普通じゃないというのは、どういうことなのか具体的に話してもらえますか?」(河合)

「女性は結婚して、子どもを産んで、それで働くのが普通なんです。私は結婚していないし、子どももいない。会社に居場所がない。そう感じることが度々あります」

「でも、まだ31歳ですよね?」(河合)

「はい。結婚したいとは思っていますけど、ものすごく結婚したいわけではないし、この先結婚できる保証もない。それに……周りの男性たちからは“女子力”を期待されますが、私にはこれといった女子力もありません」

「女子力……?女性らしく振る舞うことを期待されるってことですか?」(河合)

「いろいろです。女性ならではの視点、女性ならではの気づかい、女性ならではのコミュニケーション力です」

「そんなに期待されてもね。“女性ならでは”なんて言われても困りますよね(笑)」(河合)

「そうなんです。本当、困るんです。……私、バリキャリでもないので、上司からは何か楽しいことはないのか、ってしょっちゅう言われます。前向きに、楽しくないとダメなんでしょうか?」

「(笑)私なんて外ではこんなですけど、普段は家から出ることもなく、地味〜に暮らしてますよ〜」(河合)

「え、そうなんですか?毎日バリバリ生きてるんだと思ってました。あ、すみません(苦笑)。実は先日、一般職だった40歳の女性がいきなり管理職になりました。女性活躍の一環だそうです。

 その女性が一般職だったときには、たまにランチに一緒に行ってたんですけど、今は行けなくなってしまいました。忙しくてランチをとる時間がないんだそうです。その人の上司も女性なんですけど、ものすごい“ハイスペック”な人で。結婚して子育てもして、それでうちの会社で初の女性部長なったんです。

 彼女は部長から『後輩たちのロールモデルになりなさい』って言われているらしく、人が変わったように仕事しています」

育児休暇?時短勤務?そんなの独身女性には関係ない

「その人にも子どもがいるんですか?」(河合)

「中学生ですけどいます。会社は彼女のように子育てもし、一般職だった人でも管理職になれるというロールモデルを作って『女性が活躍する会社』をアピールしたいんです。

 育児休暇や時短勤務を充実させることを、『女性の働きやすい職場』って言うんですよね?

 でも、私のように独身で、活躍する気もないと全く関係ない話です。女性をひとくくりにしないで欲しい。独身者には何の恩恵もないわけですから。

 男性の場合は、バリバリ出世を目指していく人もいれば、一生ヒラで終わる人もいます。結婚してない人だっているし、子どものいない人もいる。なのに、なぜ女性はひとくくりにされてしまうのでしょうか。元気に、明るく、おしゃれして、女性目線の意見を言って。子育ても仕事もがんばらないと、ダメダメ人間のように思われます」

「そうね〜。働け!って言われてんのか、子ども産めって言われてんのか、わけわからないですよね。産めや増やせやの時代に通じる脅迫的なモノがありますよね〜」(河合)

「このまえ、どうしても終らせなきゃいけない仕事があって、休日出勤したんですね。そしたら、たまたま上司も来ていて『そんなにがんばらなくていいのに』って言われてしまったんです。

 私は別にがんばったわけでもなんでもなく、家にパソコンがなく会社でしかできないから出社しただけなんです。おそらく上司は休日に会社以外、行くとこないのか?っていう意味で言ったんだと思います」

「ごめんなさい。ちょっと理解できないんですけど……」(河合)

「会社なんか来てないで、彼氏見つけて結婚しろってことです。ストレートに言うとセクハラになるから言わないだけです。でも、周りには私のような生き方は理解されない。ひょっとすると休日出勤する心意気があるなら、普段からもっとバリバリやる気を見せろ、ってことなのかもしれません……」

 以上です。

 彼女の心の叫びをリアルに感じて欲しくて、実際のやりとりを出来る限りそのまま再現したのだが、わかっていただけただろうか?

 おそらくみなさんは、「周りのこと気にし過ぎ」だの、「結婚なんてひょんなことからできる」だの、「婚活とかすればいいじゃん」とか、アレコレ思ったに違いない。

 でもね、30になるとみんな悩むのですよ。かくいう私もそうだったから。

「お天気おねえさん」の頃、毎晩泣いていました

 30代の頃は「私は何かの病気かもしれない」と、自分で自分のことが心配になるほど毎晩泣いていた(苦笑)。スッチーを辞め、久米宏さんの横で天気予報をやり、他人からみれば「絶好調じゃん」と思われていたのに、とにかく不安で。

 子どもを絶対欲しいとも思わなかったかわりに、絶対欲しくないとも思わなかった。友人たちが子どもを産み、家庭を作っているのに、私は何をやっているんだろう?と。

 私は「普通じゃない」と感じることも多かった。中学生のときに日本に帰ってきてから、「日本人の普通」に散々窮屈さを感じていたのに、何故か「女性の普通」にひっかかった。

 矛盾する気持ちに折り合いを付けるために、「テレビに出てる人が普通だったらおもしろくない。誰も見ない。だから普通じゃなくていいんだ」と必死で思い込もうとしたり……。

 なので、彼女が会社で居場所がないという気持ちも、なんとなくわかるのです。問題は、それが30代に限ったことじゃないってこと。

 件の女性の話にも登場していたけど、「後輩のロールモデルなれ!」だの、「パイオニアになれ!」だの上から言われ、釈然としない思いを抱えていた40代もいたし、 “ハイスペック女性上司”の存在そのものが、プレッシャ—になっていた人もいた。

 この辺りはまたいずれ詳しく取り上げるとして……。

 とにかく彼女たちはみなさんが想像する以上に、

•女性=結婚、出産
•女性=女子力
•女性の活躍=管理職
•女性の働きやすい職場=育休・時短勤務の充実
•女性=休日はプライベートを充実させる
etc、etc……

といったキーワードで女性を語るテクストに辟易している。

 「働く女性はこうに違いない」という見方が強くなってきていることに憤り、戸惑い、疲弊しているのだ。

 「女性が働きやすい職場問題」や「女性活躍問題」はデリケートな部分もあり条件反射的に反応する人がいるので、念のため断っておくけど、私は女性たちに“風”が吹き始めたことはおおいに歓迎している。今進んでいる政策や取り組みを否定する気はさらさらない。

 いかなる変化もすべての人に一様には起こらない。なので変化の途中で生じるしわよせが、一部の人(独身女性や男性)にいってしまうこともあるだろう。

 なのでモヤモヤ自体はあって当然である。問題はモヤモヤの中身ではなく、「そんなこと思っちゃいけない」と罪悪感をいだき、「そんなこと考える自分はダメな人」と自己否定するほど、女性の画一化が暴力的に広がっていることだ。このままでは“吹きだまり”にはまる女性が量産される。

「みんな」の先に「女性」がいる

 ワークライフバランス―。おそらくこの言葉を知らない人はいないはずだ。

 生活と家庭の調和と略されるワークライフバランスの始まりは、いわゆる「女性の働きやすい職場」を目指したものだった。

 1980年代、アメリカでは技術革新による産業構造の変化で、高度なスキルを持った女性たちが労働市場に求められるようになった。

 もっと女性たちに働いて欲しい―、と女性を積極的に雇用し、育児と仕事を両立できるようにと保育サポートを中心に行う企業が増えていった。これらは「ワーク・ファミリー・バランス」や「ワーク・フレンドリー・プログラム」と呼ばれた。

 ところが、この取り組みは思うようには広がらなかった。独身者や子どものいない女性、あるいは男性たちから「子育て女性だけが福祉を受けられるなんて、不公平だ」という不満が相次いでしまったのだ。

 そこで「いかなる人も恩恵を受けられるように」と、すべての従業員の私生活に配慮した制度やメニューが作られ、「ワークライフバランス」と呼ばれるようになる。

 介護支援、従業員の私的な悩みに対処するカウンセリング、従業員の心身の健康に寄与するフィットネスセンターの開設、生涯学習などの支援などの施策を整備し、ワーキング・マザー以外の従業員も広く利用できるようにしたのである。

 従業員の不満は改善したものの、実際にはワークライフバランスを取り入れたのは一部の企業のみ。あくまでも「福祉的な取り組み」であったために企業はできるだけコストをかけたくないと考え、働く人たちも「困っている人だけが利用するもの」と考え利用を躊躇した。ワークライフバランスは、風前の灯火と化したのである。

 ところが米フォード財団の調査研究がきっかけとなり、再びワークライフバランスに注目が集まった。

 「仕事の再設計」をすれば、会社が掲げる業務目標を達成しながら、従業員にも私生活を充実させるだけの時間の余裕をもたらすことができるとする報告書を、米フォード財団が1993年から3年間かけて行った調査研究をもとに発表したことで、いっきにワークライフバランスが広がったのだ。

 ワークライフバランスとは「福祉政策」ではなく、企業の生産性を高めるもの。会社も従業員もウィンウィンになるような「仕事の再設計」が、ワークライフバランス。

 ワークライフバランスが可能となるような「仕事のやり方」を考えるという視点が革新的で、人びとを魅了したのである。

 「仕事の再設計」というトレーニングプログラムはチーム、個人、管理職、経営トップが一丸となって次の3段階を実行することにより、従業員のワークライフバランスを実現する。

(1)仕事と理想的な従業員像についての既存の価値観・規範を見直す。
(2)習慣的な仕事のやり方を見直す。
(3)仕事の効率と効果を向上させ、同時に仕事と私生活の共存をサポートするための変革を行う。

 プログラムを完成させるには、従業員からの要望と企業からの要望を一つひとつ丁寧に組み合わせる作業が重要になる。実に手間のかかる作業だ。その作業はまるで「ジグソーパズルを行うのと同様である」と言われるほど、頭と労力を使う。

 もし、本気で「女性の働きやすい職場」を目指すなら、仕事の再設計をやらなきゃダメ。今のように「ムード」や「福祉」でやっていたのでは、ウィンウィンならぬ、フヒ〜フヒ〜。女性たちは疲弊し、不満を蔓延させるばかりか、企業もいずれヘタっていく。

 それに男性たちだって、女性たちと同じように、閉塞感を抱いているんじゃないだろうか。

 「男性の場合は、バリバリ出世を目指していく人もいれば、一生ヒラで終わる人もいます」には笑ってしまったけど、男性は男性で、
「女性は結婚するっていう選択があるからいいよな」 と鬱屈する。

 “ハイスペック上司”に辟易している男性もいるし、「そこそこ働いて、食べて生きていければいい」という人は圧倒的多数だ。社畜という言葉を彼らが多用するのも、ザ・昭和の仕事観への反発である。

 企業が目指す“女性の働きやすい職場”が、“社畜を量産する職場”にならなぬよう、ムードではなく根本的な問いかけから始めないと……。

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このコラムについて

河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学
上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/011300087/?ST=print
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[政治・選挙・NHK219] テクニカルなゲーム? 日本の予算編成 実は止まった国債発行減少記録  復活する独裁主義、共通する不吉な経済兆候  
テクニカルなゲーム? 日本の予算編成

上野泰也のエコノミック・ソナー

実は止まった国債発行減少記録
2017年1月17日(火)
上野 泰也
17年度予算案と16年度第3次補正予算案、20日から国会で議論へ

 政府は昨年12月22日、2017年度当初予算案と2016年度第3次補正予算案を決定した。1月20日召集の通常国会で議論された上で、与党の賛成多数で可決成立する見通しである。

 2017年度当初予算案では、高齢化による社会保障関係費の膨張を2016年度当初予算比で5000億円程度に抑えようとした結果、医療・介護分野で所得の高い高齢者の自己負担額が増すことになった。消費税率引き上げが2019年10月まで再延期されたこともあり、こうした苦しいやりくり(というよりも負担可能な層により多い負担を求める動き)が、今後も毎年度の予算編成で繰り返されていくことが確実な情勢である。


政府は昨年12月22日、2017年度予算案を閣議決定した。一般会計の歳出総額は97兆4547億円と5年連続で過去最高を更新した。1月20日召集の通常国会に政府は予算案を提出し、3月末までの成立を目指す。(写真:PIXTA)
取れるところから取る

 昨年12月に放映が終わったNHK大河ドラマ「真田丸」は最終回で、徳川家康の重臣として活躍した老境の本多正信が自らの領地の様子を真田信之に見せるという、意外だが実に印象的なシーンで幕を閉じた。領民に慕われている本多正信は「戦と同じ。人の心を読むのが肝要で、領民には無理をさせず、というて楽もさせず、年貢だけはきっちりと取る。その上で、領主たるものは決してぜいたくをしてはならん。これでござりまするよ」と、国づくりの根本的な考え方を信之に説いた。

 だが、これは脚本家の三谷幸喜氏がインタビューで述べていた通り、「百姓は生かさず殺さず」という有名なアイディアにほかならない。慢性的な財政赤字に苦しんでいる日本の毎年度の予算編成にも、通じるものがあると言えはしまいか。

 税制改正以外でも、高齢者医療制度支援のための負担金が膨らむ中で、大企業の会社員らが加入している健康保険組合の保険料率は9年連続の上昇。健保全体の平均保険料率(原則として労使折半)は過去最高を更新中である。「取れるところから取る」という考え方に沿って国民の負担が増している事例が、近年どんどん増えている。もっとも、これは国政選挙を経て日本の有権者がそうした政策コースを選択したことの帰結にほかならないのだが・・・。

国債利払いの積算金利を引き下げることで、国債費を抑制

 閑話休題。2017年度予算案に話を戻すと、防衛費は過去最大の5兆1251億円になった。また、公共事業関係費は2016年度当初を26億円だけ上回る5兆9763億円。当初予算ベースでなんとか5年連続増にしたことには、財政出動論が根強い自民党への配慮があったのだろう。

 歳出面でつじつま合わせに使われたのは、補正予算編成時に「財務省の隠しポケット」と揶揄されることもある国債費である。国債利払い費の前提となる積算金利を2016年度の1.6%から0.5%ポイント引き下げて2017年度は過去最低の1.1%にすることで、2016年度当初予算を下回る額に財務省は国債費を抑制した。

国債新規発行額と、赤字国債発行額の連続減少記録は途切れた

 新しい年度の当初予算案が編成される際の比較対象は一種の慣例で、前年度の当初予算になっている。だが、前年度の数字は補正により、さらに決算時点でも変わってくるので、これはミスリーディングである。今回は「国債新規発行額が7年連続減少」「赤字国債発行額が5年連続減少」と報じられてしまうわけだが、2016年度は第2次補正予算で建設国債が2兆7500億円増発されたほか、第3次補正予算案では赤字国債が1兆7512億円、建設国債が1014億円増発されるので、実態としては、国債新規発行額および赤字国債発行額の連続減少記録はすでに途切れている。

 報道に接した際に、そうした細かい事情までわかる人は少ないのではないか。当初予算ベースでの国債発行減少だけをとらえて「財政再建は順調に運んでいる」と考えるのなら、それは明らかに誤りである<■図1>。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/011100077/zu_ueno_01.jpg
■図1:毎年度の国債(新規財源債)発行額

注:2015年度までは決算、2016年度は第3次補正予算案、2017年度は当初予算案ベース
(出所)財務省


2017年度当初予算案の税収は高めの見積もり

 さらに言えば、2016年度の税収が円高ドル安などを背景に当初予算計上額(57兆6040億円)を下回って推移しているため(2016年度の一般会計税収は11月末時点で前年同期比▲3.6%)、同年度の税収は第3次補正予算案で1兆7440億円下方修正されて55兆8600億円となる。にもかかわらず、「トランプラリー」の下で為替が急速に円安ドル高に動いたことによる企業収益増加見通しを主たる根拠にしつつ、2017年度当初予算案の税収見積もりとしては、2016年度当初予算を若干上回る数字(57兆7120億円)が掲げられることになった。なお、税収を見積る際に材料の1つになる、政府経済見通しの2017年度名目GDP(国内総生産)は前年度比+2.5%で、民間予測よりも高い。

 そうした国債費と税収見積もりのテクニカルな「調整」、および「市況頼み」の色彩が濃い外国為替資金特別会計(外為特会)から一般会計への繰り入れの大幅増額によって、国債発行額の連続減少記録を「延命」させて予算編成の表面を取り繕っても、生産的なことは何もないのではないか。

財政規律が緩みやすくなっていることは大きな問題

 また、日銀が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の下で、長短金利の「ピン留め」と保有残高増加年間80兆円をめどとする長期国債の大量買い入れを実施していることの副作用として財政規律が緩みやすくなっていることも、実は大きな問題である。国債発行による金利負担や借金残高増加が意識されないと、財政はどうしても拡張方向に傾きやすくなる。

 麻生太郎財務相は上記の2つの予算案を閣議決定した後の12月22日の記者会見で、国債利払い費の積算金利を大幅に引き下げた理由について、「国債費は日銀が当面長期国債(の金利)は0.0(%)でイールドカーブ等々抑えるという話をしておられますんで、低金利の環境が今後も続いていく、また日本銀行も続けると言っているので、それでいくと積算金利をわれわれとしては1.6(%)から1.1(%)に引き下げた」と返答していた。

日銀が市場金利を抑え込み続けることが、予算編成の前提に

 要するに、日銀が市場金利を抑え込み続けることが、もはや予算編成の前提になってしまっているわけである。日銀の異次元緩和はもはや臨時異例の政策ではなく、長期的に継続される政策という位置付けだということである。日銀が2年という「短期決戦」に失敗して9月に「長期戦・持久戦対応」へと金融緩和の枠組みを切り替えたことが、かえって財政規律のさらなる弛緩につながりかねないという、皮肉な状況が現出している。

 なお、麻生財務相はこの記者会見で、「マーケットで見れば、国債を発行すればもっと金利が上がらなくちゃおかしい。しかし、金利は下がり続けている。出してるにもかかわらず。昔に比べれば3倍にも4倍にもなっているのに比べて、金利はあの頃6%、7%だったのが、いまは0コンマ何%という話まで落ちているんだから、それは間違いなく、世界から見たら内容が良いというのを意味していますから(後略)」とも述べていた。

 だがそれは、日銀が大量の国債買い入れによって市場の需給を締めあげて、債券市場の健全な価格形成機能をマヒさせていることの帰結に他ならない。

国債全体に占める日銀保有分はすでに4割近くに

 日銀が保有する長期国債の残高は、日本銀行券の発行残高を上回らないという「銀行券ルール」の下で、以前は抑制されていた。日銀のバランスシート上、長期の負債である日銀券に見合う部分には長期の資産である長期国債を充てるという考え方がベースにあったわけである。だが、日銀は2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した際、このルール適用の一時停止を決定。国債全体に占める日銀保有分はすでに4割近くまで膨張している<■図2>。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/011100077/zu_ueno_02.jpg

■図2:日銀保有長期国債残高と日本銀行券発行残高の比較

(出所)日銀


テクニカルなゲームのような予算編成が繰り返される

 筆者が毎年感じることだが、日本の予算編成は縦割り色が濃く、過年度に決まった事業の延長線上で歳出が計上される部分も大きいなど、かなり硬直的である。歳出に優先順位をしっかりつけて、日本経済が地盤沈下を続けている根源である人口減・少子高齢化の流れを食い止めることにしっかり注力していかなければ、日銀による人為的な低金利状態の維持を当然の前提にしたテクニカルなゲームのような予算編成が、これからも毎年繰り返されていくことだろう。


このコラムについて

上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/011100077


 


 

コラム:復活する独裁主義、共通する不吉な経済兆候

Edward Hadas

[ロンドン 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 世界各国の政治体制に独裁主義が復活しつつある。ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、トルコのエルドアン大統領といったあたりがその先駆けだ。主要国の指導者として権力を手にし、個人崇拝的な支持を確立している。

これらの支配者には多くの共通点があるが、マクロ経済政策となると話は別である。

かつては、強権的な政府というものは似たり寄ったりの経済目標を掲げていた。独裁体制が台頭した過去の時期として最も近いのは1930年代だが、イタリアのファシスト党も、ドイツのナチスも、雇用創出と産業振興を表明していた。スターリン率いるソ連とアタチュルク率いるトルコは、性急な近代化を推進した。少し時代は後になるが、毛沢東体制下の中国も同じ課題を掲げた。いずれも自給自足的な経済を支持し、不正な蓄財を嫌悪していた。

今日では、独裁政権が掲げる目標はさまざまである。プーチン氏は、2000年に初めて政権の座に就いたときは経済改革に関心を持っていたようだが、2003年には方針を変更した。それ以来、同氏は力強い現代的な経済を構築することにはほとんど関心を示していない。国際通貨基金の試算によれば、2006年の時点でロシア国民1人あたりの国内総生産(GDP)はドイツの53%だったが、10年後でも54%でしかない。

経済制裁が響いていることは確かだが、成長が見られない理由の大半は自業自得である。石油価格が10年間にわたって高水準を続けたことの恩恵は、投資に回されるのではなく、不当に誰かの懐に収まるか、浪費されてしまった。医療、教育、物理的インフラといった主要な公共システムは荒廃したままである。

2008年と2014年に石油価格が急落しても、プーチン氏の政策は変わらなかった。石油・天然ガスへの依存を減らすという点で、プーチン氏はほとんど何の手も打っていない。カーネギー・モスクワ・センターの2015年の分析によれば、ロシアGDPの57%、政府歳入の60%は、石油・天然ガスに依存しているという。

これと正反対に近いのが中国の成長志向だ。貧しかった中国にとって、ここ数十年はGDPの成長がすべての基準とされてきた。習主席は自称「新毛沢東主義」を掲げるものの、それが持続的な経済拡大という公約を妨げる様子は見られない。

この中国の体制のもとで、過去10年間、GDPは年平均10.2%の成長を遂げてきたとされている。だがGDPに執着するあまり、環境汚染や、GDP成長を押し上げるだけの無意味な投資など、それ以外の経済的問題がまん延する結果になっている。債務も急速に拡大しており、中国の金融システムは、定員オーバーの老朽化したジェットコースターのような状況を呈しつつある。

次にエルドアン政権下のトルコだが、これもやはりまったく違う状況だ。前首相の立場から現在では大統領となったエルドアン氏のもとで、独裁政権ならではの経済無策ぶりは驚くほどのひどさだ。プーチン氏同様、当初は経済の改善に関心を示していたエルドアン氏だが、その後はずっと経済以外の問題が優先されている。

結果として、国民1人あたりGDPはこの10年間で対ドイツ比40%から44%に伸びただけで、経済成長の実績はあまりパッとしないが、それさえも巨額の経常赤字に支えられている状況だ。同じ時期、経常赤字は対GDP比で平均5.7%となっている。インフレ率は年平均8.3%と政治不安を招きかねない水準だが、恐らくこれにも貿易不均衡が影響している。

だがエルドアン氏は、危機的なインフレや外国からの資金流入の途絶を心配するどころか、経済安全保障をますます低下させている。大半が高学歴であるギュレン運動支持者を政府から(最近では経済界からも)追放したことで、トルコ経済の能力と信頼性は確実に低下するだろう。

このように、現代では独裁体制をとる諸国の経済は非常に多様になっているが、1つ重要な共通点がある。

それは、独立心に富む企業の不在である。ロシア、中国、トルコの3カ国には、いずれも活発な民間部門が存在するが、どれほど資金と機会に恵まれていても、あえて政府の方針に楯突こうという起業家はいない。強力で恣意的な指導者に抵抗することはあまりにもリスクが大きいからだ。トランプ次期米大統領のツイートを見て投資計画を変更した米国企業も、同じ問題を抱えつつある。

新たな独裁体制のもとでは、厳しい締め付けの代わりにご褒美もある。政府内部であれ民間部門であれ、国家経済の内部に食い込めれば、米国企業のCEOでさえ引け目を感じるほどの巨富を得ることができる。自由な民主主義体制の国では「腐敗」と呼ばれる状況だ。

ロシア、中国、トルコでは、民衆から搾取する半ば公的な許可(ただし気まぐれに取り消されてしまう可能性もある)により、臆病な貴族社会が生まれている。政府に取り入るチャンスがある以上、習主席の進める腐敗撲滅キャンペーンの成功も限定的なものにとどまりそうだ。

独裁体制の復活はまだ最近の話である。だが、経済への関心よりも国内政策を優先する風潮は、グローバルビジネスにとっては不吉な兆候だ。それはより多くの腐敗をもたらすだけでなく、自国の独裁者のご機嫌をとる必要のために国際的な協力が低下してしまうからだ。トランプ氏とその新政権は、「プーチノミクス」を模倣することのコストを慎重に考えるべきだ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

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[経世済民117] 日銀地域報告、3地域が景気判断引き上げ 海外・消費持ち直しで  無印が福袋をやめたワケ「余り物を詰める」へのアンチテーゼ
日銀地域報告、3地域が景気判断引き上げ 海外・消費持ち直しで

[東京 16日 ロイター] - 日銀が16日公表した地域経済報告(さくらリポート)では、全9地域のうち東北、関東甲信越、東海の3地域が前回の昨年10月調査から景気判断を引き上げた。新興国経済の減速の影響が和らぎ輸出・生産が持ち直しているほか、株高も背景に個人消費の改善も指摘されている。

3地域が景気判断を引き上げるのは2015年4月調査以来、7四半期ぶり。他の6地域は判断を前回から据え置いた。東海が景気は「緩やかに拡大している」と最も強く表現しており、他の地域も「回復」との認識を示している。

今回の調査では、これまで地域経済の下押し要因に作用していた「新興国経済の減速の影響」への言及がなくなった。新興国懸念が消えたのは2015年7月調査以来、6四半期ぶり。

こうしたアジアを中心とした新興国経済の底打ちを背景に、輸出や生産に持ち直しの動きが見られており、今回の調査では東北、北陸、関東甲信越の3地域が生産の判断を上方修正した。

また、景気全体の判断の引き上げた3地域は個人消費も上方修正。これらの地域からは、雇用・所得環境の改善が続く中で「株価の下落や夏場の天候不順の影響が薄れた」ことが消費改善の背景に指摘されている。

日銀・調査統計局関幹部によると、「株高で負の資産効果が薄れ、高額消費に改善の改善の動きも見られる」という。

こうした株高や円安はトランプ次期米大統領の政策期待への高まりを反映している面もあるが、米新政権に対する見方について各支店からは「拡張財政による米景気回復への期待感がある一方、具体的な政策が分からず、不透明感も強い」(同)との報告が聞かれ、大統領に正式就任後の政策展開に注目が集まっている、としている。

(伊藤純夫)

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http://jp.reuters.com/article/boj-sakura-report-idJPKBN1500SP


 

無印が福袋の店頭販売をやめたワケ

記者の眼

「余り物を詰める」へのアンチテーゼを込めた施策
2017年1月17日(火)
染原 睦美
 昨年12月に無印良品で買い物をした際、レジで会計をしていると、ふとある表示が目に入った。「今年は福袋の店舗での販売はございません。本年度の福袋は、ネットストア限定の抽選販売のみとなります」。記者自身は無印のみならず福袋自体を購入した経験はない。一方、無印の福袋が人気を博していることはなんとなく知ってはいた。レジ打ちをするお姉さんに「これ、今年からなんですか?」と何気なく聞いてみると「確かそうだと思います」との返事。なるほどと思いながら、その場はお会計を済ませ、売り場を後にした。

 考えてみれば、そもそも福袋は、もはや店頭で売る意味が薄れてきている。店頭での混み具合や公平性を考えるなら、ネットで予約抽選した方が店側・顧客双方にとってよい。中身が見えないことが前提として定着している特性上、普段は、試着ができない、素材が確認できないといった理由でオンラインでの購入をためらう顧客でさえ取り込める可能性もある。

 さらにいえば、福袋は、元来、メーカーや小売店における在庫処分の意味合いが強い。つまり、在庫コントロールができず、余った商品が多いというのは、メーカーとして在庫コントロールができていないことの証左。それをあたかも価値があるように見せて売ってきたのが「福袋」だとも言える。あるアパレルメーカーの社員は「接客しても売れない商品を売る最終手段。我々関係者はプライベートでは絶対に買わない」と言い切る。

 さらに「リーマンショック以降、無駄なものは買わないというお客様が増え、百貨店自体で取り組む福袋の数は減っている」(高島屋)。にもかかわらず、メーカーによっては「中身を見せる」「サイズを限定する」といった工夫をしながら福袋を“延命”させてきた。

 そのある種の煽りによって期待度が高まり、メーカーがクレームを受けることも増えた。一昨年はアパレルメーカーのマークスタイラーが展開する「アングリッド」の福袋で、“炎上”が起きている。クレームを総括すると「中身がひどい」という話だ。その「ひどさ」の内訳をみると「夏物が入っていた」「80パーセントオフのものがはいっていた」といったものも見受けられる。そもそもが「余剰在庫」を詰め込むのが福袋であることから、セール品が入ったり、季節外れの商品が入ったりすることは、やむを得ない側面がある。一方で、これはメーカーの責任ともいえるはずだ。メーカーが煽り続けたゆえに顧客の期待度との乖離が起きているのだ。

 福袋は、メーカー側のやり方次第ではコストにさえなってしまう商品になっている。

「福袋商戦へのアンチテーゼ」

 記者は、今回の無印の施策は、そうした流れに問題提起をしたのではないかと感じた。無印良品は、今回福袋の店頭販売をやめた理由に関して、「在庫コントロール精度の向上により、全国の無印良品店舗分の福袋用在庫が確保できなかった」としている。そもそも福袋は、余剰在庫を詰めるもの。福袋が用意できないというのは、在庫コントロールができていたという証左であり、企業にとって評価されることだ。余剰在庫がなければ、福袋はなし、というのは当然の判断だろう。無い袖は振れない。一方、社内には限られた数でも来店する顧客に対して販売するべきではという議論があったが、それでも公平性や安全面の観点から、ネットストアでの予約抽選販売にしたという。

 その代わり、店頭では日本各地の郷土玩具の面白さを紹介する商品や無印良品のギフトカード2017円分などをセットにした「福缶」を発売。数量を前年比で約1.7倍に増やしたり、「体にフィットするソファ2017円引き」など人気商品の価格プロモーションを行ったりすることで賑わいを作った。


無印良品が発売した「福缶」。昨年の福袋の売上額を上回った。
 結果はどうだったか。オンライン限定発売した福袋は、20種類、合計1万7000個を用意し、12月9日〜15日に抽選販売の受付を行ったが、応募件数は述べ49万件を超え、倍率30倍。店頭販売の福缶は、販売したほぼすべての店頭で即日完売が相次いだという。福缶の売上額は、昨年の店頭での福袋の売り上げ額を上回った。

 1月5日に行われた「無印良品」を展開する良品計画の決算発表では、今回の施策に関して「福袋へのアンチテーゼ」という主旨の説明があった。個々の消費者にとって必要か分からない商品が入る福袋よりも、福缶に入っているギフトカードで必要なものを購入してもらった方が消費者のためでもあるという同社の提案というわけだ。

変わり始めた福袋

 無印だけではない。例えば、百貨店をとってみても、福袋の様相は変わってきている。三越伊勢丹ホールディングスでは、すでに数年前に、それまで展開していた全館共通の総合福袋(紳士/婦人でそれぞれブランドにかかわらずアウター、インナーなどが入って1万円、といった福袋)はやめているという。高島屋でも同様の福袋は減少傾向にあるという。


いわゆる百貨店が提供する「福袋」は少なくなってきている(写真:Bloomberg/Getty Images)
 筆者も地元へ帰省した際に、今年の初売りを見に行ったが、いわゆる「福袋」と書いた紙袋があちこちで見られるというひところの初売りとは様子が違っていた。ブランドの名称が書かれた、おそらく福袋として買ったであろう袋を持ち歩く若い女性をちらほら見かけた程度だった。

 一方で、人気を博しているのは、「モノよりコト」。J.フロントリテイリングでは、各店舗ごとに独自の福袋を販売。例えば、大丸東京店で発売した「箱根富士屋ホテルペア宿泊券と鈴廣かまぼこの里でのかまぼこ手作り体験」を2万170円で発売した結果、100倍の募集があったという。ほかにも、大丸梅田店で販売した帝国ホテルクリニックでの日帰り人間ドックは、3.5倍以上の申し込みがあった。他の百貨店もいわゆる「体験型福袋」に力をいれており、もはや「余りもの」の色彩は一切ない。

 江戸時代に呉服店が1年の裁ち余りの生地をまとめて売ったことに端を発するとされる福袋。400年以上の歴史を経て、「余り物」を売るだけではありがたがられない時代の到来で、その姿は変貌を遂げようとしている。


このコラムについて

記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/011300387/
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/839.html

[経世済民117] IMFトランプ氏の財政刺激策、成長押し上げ効果は小さいと想定 中国経済成長率予想引上 独財相トランプ路線に警鐘 BM反論
IMF:トランプ氏の財政刺激策、成長押し上げ効果は小さいと想定
Andrew Mayeda
2017年1月16日 23:00 JST 
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独BMWがトランプ氏に反論−メキシコ生産車への関税発言に対応
今年と来年の世界経済成長率見通し、共に据え置き
日本の17年は0.2ポイント上げ0.8%、中国は0.3ポイント上げ6.5%

国際通貨基金(IMF)は16日、最新の世界経済見通しを発表し、今週米大統領に就任するドナルド・トランプ氏の政策については、同氏が公約している財政刺激策による米経済の押し上げ効果は小さいと想定するなど慎重な見方を示した。
  IMFは今年と来年の世界成長率見通しを昨年10月時点の予想から共に据え置き、それぞれ3.4%、3.6%とした。
  トランプ政権誕生の影響は世界経済が直面する最大の不確定要素の1つだ。トランプ氏は減税とインフラ支出拡大を公約する一方で、中国やメキシコなど貿易相手国からの輸入品への関税賦課も辞さないと主張している。このような懲罰的措置が報復を招いた場合、成長を圧迫しかねない。トランプ氏の政策の優先順位は20日の大統領就任後に一層明確になる見通し。
  IMFのチーフエコノミスト、モーリス・オブストフェルド氏は添付文書で、米国の経済政策がどうなるか極めて不透明なため、「リスク要因の上下の振れ幅が通常より広い」と指摘。「2017年にかけての米経済の勢いと、政策の組み合わせが変わる可能性を考慮して、われわれは米成長率の2年間予想を若干引き上げた」とした上で、「しかし今後の財政法制の具体的内容が引き続き不透明であり、政府支出の純増がどの程度であるかや、その総需要や潜在産出量、連邦財政赤字、ドルへの影響も不明だ」と説明した。
米利上げペース加速も
  IMFは今年の米成長率予想を0.1ポイント引き上げ2.3%に、来年の同予想を0.4ポイント引き上げ2.5%とした。米利上げについては、昨年10月のIMFスタッフ予測よりもペースが速まるとしたが、年内に見込む利上げ回数は明らかにしなかった。
  今年のユーロ圏の成長率見通しは前回予想から0.1ポイント引き上げ1.6%とした。日本の17年見通しは0.2ポイント上方修正し0.8%。中国の17年予想も0.3ポイント引き上げ6.5%。
  一方、メキシコの今年の成長率見通しは「米国に関連した不確実性」を理由に0.6ポイント下げ、1.7%とした。インドは政府が高額紙幣を廃止した影響で消費が低迷するとして、0.4ポイント引き下げ、7.2%と予想した。ブラジルも0.3ポイント下げ、0.2%とした。
  IMFは米国ないし中国で予想以上に力強い刺激策が講じられた場合は世界経済の成長ペースは加速し得ると分析。しかし保護主義へのシフトや与信の引き締まり、地政学上の緊張の高まり、中国経済の予想以上の減速があった場合、世界の成長の勢いは予想よりも弱まる可能性があると指摘した。
原題:IMF Assumes Only a Modest U.S. Boost From Trump Stimulus for Now(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJUTTT6S972A01


 

IMF、中国の17年経済成長率予想を6.5%に引き上げ−債務膨張を警告
Enda Curran
2017年1月16日 23:34 JST

国際通貨基金(IMF)は16日発表した最新の世界経済見通しで、今年の中国経済の成長率予測を6.5%とし、昨年10月時点の予測から0.3ポイント引き上げた。政府の景気浮揚策が続くとの見方が理由。
  2016年の中国経済は波乱のスタートを切ったものの、堅調の様相で一年を締めくくった。IMFは「継続的な刺激策が下支えし、中国の成長率は予想をやや上回った」としつつ、信用膨張による景気回復はより根の深い問題を蓄積させているだけかもしれないとの警告を繰り返した。
  「当局による刺激策への依存が続き、信用が急速に拡大している。さらに企業債務への対処、特に国有企業の財務への制限強化が遅れていることが、景気の急減速や突発的な調整のリスクを高めている」と指摘した。
  ブルームバーグ・インテリジェンスによると、中国の総負債は過去10年間で5.65倍に膨張し、2015年時点で国内総生産(GDP)の247%と、05年の160%から拡大していた。企業債務のGDP比も105%から165%へと上昇した。
  IMFは18年の中国経済成長率見通しを6%とし、10月時点の予想を据え置いた。
原題:IMF Upgrades China 2017 Growth Forecast to 6.5%, Warns on Debt(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJVMA16S972G01


 
独財務相、トランプ政権の基本路線に警鐘 減税も示唆
ドイツのショイブレ財務相(写真)は、米国のトランプ次期政権が掲げる保護主義路線に批判的な見解を示した
By ANTON TROIANOVSKI AND BERTRAND BENOIT
2017 年 1 月 16 日 22:32 JST 更新

 【ベルリン】ドイツのウォルフガング・ショイブレ財務相は、保護主義的な経済政策や、西側の民主主義国をないがしろにするロシアの台頭が招く脅威に警鐘を鳴らした。ドナルド・トランプ次期米大統領と重要な同盟国であるドイツとの間の溝が浮き彫りになった。

 ショイブレ財務相はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、トランプ政権と「できる限り建設的に」協力する考えを示した。だが国家主義的な経済政策を追求したり、ロシアが干渉してくる脅威を過小評価したりすることは間違いだと述べた。

 「(トランプ)政権は成長を優先するはずだと信じているが、成長を望むなら誰しも開放された市場を支持しなければならない」とし、「保護主義は短期的に利点を確保し得るが、長期的には必ずと言ってよいほど悪影響を生む」と語った。

 米国や英国が法人税の減税に動こうとする中、ショイブレ財務相はドイツも同じ方向へ進む可能性があると話した。国際的な競争力を高めるため、複雑な法人税制の簡素化が必要だとの見方も明らかにした。

 先進国が互いに税率の低さを競う近隣窮乏化政策には反対するとした上で、必要であればドイツも法人税を引き下げる姿勢を打ち出した。

 ショイブレ財務相は「われわれの持つ減税余地を生かしたい」と述べた。

 今回の発言は、減税にはほぼ一貫して批判的な立場で財政緊縮路線を推し進め、2014年以降の財政黒字を実現してきたショイブレ財務相が、大きく方向転換したことを意味する。

 同相は減税について、9月の総選挙で自ら所属する与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が勝利すれば実施可能だと述べた。最近の世論調査によると、CDU・CSUは支持率で他党を大きく引き離して首位に立っている。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwj0_M-PvMfRAhVBI5QKHXvFBrUQqOcBCB0wAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11163456931573304514904582562943999269300&usg=AFQjCNGEhck6LgKzGxacaIx2oR--dJcyJQ


独BMWがトランプ氏に反論−メキシコ生産車への関税発言に対応
Elisabeth Behrmann
2017年1月16日 23:36 JST
ーBMWは16日、同社の米工場は世界最大であり、小規模なメキシコの新工場は米州だけではなく世界市場を視野に入れたものだと説明。メキシコで生産し米国に輸出される車に35%の関税を課すとしたトランプ次期米大統領の発言に反論した。
  BMWはメキシコ中部に工場を建設中で2019年にセダン「3シリーズ」の製造を開始する予定。トランプ氏が15日に独紙ビルトとのインタビューで述べた内容に対しBMWは16日に電子メールで、メキシコでの「生産は世界市場向けだ」とコメント。また、同社は米国に「深く根を下ろしている」とし、サウスカロライナ州の工場は同社にとって世界最大だと指摘した。
原題:BMW Pushes Back After Trump Threatens Tariffs on Its Mexico Cars(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJVK7X6VDKHU01
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/842.html

[国際17] 豪環境相、日本の南極海での調査捕鯨再開を批判 インド:12月卸売物価指数は伸び鈍化−食品低下、高額紙幣廃止も響く 
豪環境相、日本の南極海での調査捕鯨再開を批判

[シドニー 16日 ロイター] - オーストラリアのフライデンバーグ環境相は16日、反捕鯨団体が死んだクジラの写真を公表したことを受け、日本が南極海で調査捕鯨を再開したことに「深く失望した」と述べた。

オーストラリアは、商業捕鯨であれ調査捕鯨であれ、全ての捕鯨に反対の立場。関係筋によると、オーストラリアのターンブル首相と日本の安倍晋三首相との14日の会談でも捕鯨問題が議題に上った。

フライデンバーグ環境相は「日本がいわゆる『科学的』捕鯨を実施するために南極海に戻る決定をしたことを、オーストラリア政府は非常に残念に思っている」とした上で、「調査のためにクジラを殺す必要はない」と述べた。

反捕鯨団体「シー・シェパード」は15日、日本の調査母船「日新丸」のデッキ上で死んでいるミンククジラの写真を公表。日新丸が南極海にあるオーストラリアのクジラ禁漁区で捕鯨を行っていたと主張している。

フライデンバーグ環境相は、死んだクジラの正確な捕鯨場所は確認していない。

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南シナ海の行動規範、今年半ばまでの策定を期待=フィリピン外相
http://jp.reuters.com/article/australia-japan-whaling-idJPKBN1500TB


 


インド:12月卸売物価指数は伸び鈍化−食品低下、高額紙幣廃止も響く
Jeanette Rodrigues
2017年1月16日 21:51 JST
インドの卸売物価指数(WPI)の伸びは市場予想を下回った。食品価格の低下が影響した。
  モディ首相が高額紙幣廃止を打ち出して以降、1カ月全体が経過した初の統計である12月のWPIは前年同月比3.39%上昇した。商工省が16日、発表した。ブルームバーグがエコノミスト23人を対象にまとめた予想中央値では、3.5%上昇と見込まれていた。先週発表された同月の消費者物価指数(CPI)は、需要低下で2年ぶりの低水準に落ち込んでいた。
  WPIでは食品価格が0.7%低下。小売価格の伸びも1.4%と、11月の2%から減速した。モディ政権は2月1日に予算案を提示するが、消費低迷で刺激策を盛り込むよう首相には圧力が増しそうだ。
原題:Wholesale Inflation Slows as India Cash Ban Damps Food Costs (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJVHJC6S972E01

http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/321.html

[政治・選挙・NHK219] 日韓対立は米国にとって障害、トランプ政権は見放しかねない 韓国との関係安定が米国の信頼 駄々っ子ぶりは日本の外交にプラス

元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」
【第17回】 2017年1月17日 武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]
日韓対立は米国にとって障害、トランプ政権は見放しかねない

トランプ政権発足後の外交は、米国、中国、北朝鮮との関係など東アジアを取り巻く全体像で考えていく必要がある。日韓の対立は米国との協力の障害となりかねない
トランプ政権の朝鮮半島政策は
日韓の協力が前提

韓国「中央日報」は1月14日、「トランプ新政権の韓米同盟強化政策に注目する」という社説を掲載、トランプ政権の朝鮮半島政策が輪郭を表しており、韓米同盟の重要性を再認識し、北朝鮮の核・ミサイル脅威には強硬対応するものと要約される、と安堵感を示している。

しかし、韓国大統領の諮問機関・民主平和統一諮問会議が調査会社に依頼し、昨年11月1921日に行った電話アンケートでは米大統領選の結果が北朝鮮核問題に与える影響が大きいと考える人は60.5%であり、北朝鮮が挑発を強めてくる「可能性が高い」との回答は73.0%であった。韓国の多くの国民はトランプ政権に不安を抱いていることがうかがえる(1月15日付「韓国連合ニュース」)。

中央日報の社説が安堵感を抱いた根拠は、国防長官候補のマティス氏、国務長官候補のティラーソン氏、中央情報局局長候補のポンペオ氏が一斉に米韓同盟を強調したことにある。マティス氏は北朝鮮が挑発する場合には「いかなることもテーブルから排除してはいけない」と述べ、先制攻撃の可能性も示唆した。トランプ次期大統領自身、北朝鮮が核弾頭を搭載し、米本土に到達可能なミサイルを開発していることに触れ、「それはあり得ない」と強い口調で非難している。トランプ氏は大統領選挙期間中「在韓米軍撤収」の可能性に言及し、「北朝鮮の金正恩労働党委員長と核交渉する」と述べていた。中央日報は、当時とは雰囲気が明確に違うと論じている。

しかし、日韓は米国の雰囲気の変化に甘んじてよいのであろうか。日韓が自身の防衛努力を行わず、米国との協力に及び腰と映れば、トランプ次期大統領の東アジア政策にも影響を与えかねない。それは、韓国国民や日本国民の不安でもある。

トランプ氏が選挙運動中の4月2日、ウィスコンシン州ロスチャイルドで行った演説で、在韓米軍と在日米軍の朝鮮半島紛争不介入の方針について経済的理由を挙げて説明している。トランプ氏は「19兆ドルにのぼる米国の国家負債が21兆ドルに増え、耐えられなくなるだろう」「2万8500人の米軍が韓国に配備されていることについては、「『狂った北朝鮮』を阻止するために韓国に米軍を配備して得られるものは何か。わたくしたちが『愚か者』と見られるのをやめる時だ」と述べている。そして日本の軍事力強化を促し、北東アジアの秩序維持にかかる米軍の負担を減らすことを主張している(4月4日付「韓国東亜日報」)。

日米韓の安保協力に関わる米国の経済的負担についてトランプ氏の見解は変わったのであろうか?米軍の東アジアにおける役割を継続してもらうためには、日韓両国は、これまで以上に米軍との協力関係強化に努めていく必要がある。

しかし、日米韓協力の強化にあたって、韓国の政治状況は極めて混沌としていることが大きな障害となっている。

韓国の次期大統領は
トランプ氏よりも大きな変数

朴大統領は国会の弾劾決議を受け、職務停止の状況にある。昨年のAPEC会合において、各国が首脳外交を繰り広げる中、朴大統領に代わって出席した黄教安(ファン・キョウアン)首相(大統領代行)は主催国以外の各国とは首脳会談を行わないまま帰国した。トランプ大統領になっても、韓国はトランプ大統領に直接韓国の立場や置かれた状況、米韓同盟の重要性を訴える機会は得られないであろう。

それにも増して深刻なのが、韓国の次の政権である。憲法裁判所において朴大統領の弾劾が決定されれば、60日以内に大統領選挙が実施される。仮に弾劾が不成立でも本年12月には大統領選挙がある。現在の韓国の国内政治情勢では、ポピュリズムの風が吹き荒れており、「国家大掃除」「財閥総帥の財産没収」「ソウル大学廃止」などの公約が噴出している。目先の大衆の人気ばかりを追う近視眼的な政治家が勢いを得ている。

現在、最も有力な候補と言われる「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表は代表的な対北朝鮮融和派であり、北朝鮮とは対話の強化を主張している。前回の大統領選の候補者であった時に、当時在韓国大使であった私が面会したが、日本は北朝鮮政策をどうするのかと尋ね、日本の北への対応如何で韓国の対日政策を考えるとの雰囲気であった。

仮に次の大統領が北朝鮮に対する政策を全面的に見直す場合、トランプ大統領の反応はどうなるのか。また、韓国が最新鋭の地上配備型高高度ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備を見直す場合、トランプ大統領はどう反応するのか。

中国は1月11日に初めて公表した安保白書で、THAAD反対の立場を北朝鮮の核問題の次の項目で紹介し、「各国は自国の安保利益を考慮する時、同時に他国の安保利益を尊重しなければならない」として米韓を名指しで批判している。そうした中で、北朝鮮との対話を重視する政権は中国の役割を重視し、THAAD配備に慎重になることも考えられる。

こうした状況を捉え、ソウル大学国際大学院長の朴母、(パク・チョルヒ)教授は、リーダーシップ不在の韓国外交が「複合危機」に直面していると指摘している。

「周辺の大国はトランプ氏、安倍晋三首相、習近平国家主席、プーチン大統領と強力なリーダーたちが『強い国の復活』を叫んでいるのに、韓国は政治的混乱と分裂の中で自分の首を絞めるようなことばかりしている。米国による保障がなければ、韓国の安保は揺らぐ。それこそがTHAADの配備を先送りできない理由だ。圧力に負けて配備を先送りすれば、この先、中国による圧力は逆に強くなるばかりであろう。北朝鮮の『槍』は鋭くなる一方なのに、韓国は自ら『盾』を下ろすことになるのだ。中国は北朝鮮を動かす『てこ』になるかもしれない。だが、韓国の安全を保障してくれる国ではない。韓米日の協力は、北朝鮮核問題の対応において欠かせない」

まさに、私が現在の韓国について抱いている懸念を鋭く指摘している。

問題は、朴教授の指摘する正論が、現在の韓国における国内政治の雰囲気では正しく反映されていない点である。ただ、心強く思うのは、韓国でポピュリズムが蔓延する中、韓国の主要メディアが寄稿とはいえ、こうした正論を掲載していることである。これまでのメディアであれば、読者やポピュリズムに迎合し、読者受けのする記事のみ掲載してきたが、そうした正論がまかり通るようになったことは評価してよいのではないか。

日韓の対立は
米国との協力の障害要因に

朴教授は日韓関係においても勇気のある指摘を行っている。

「慰安婦問題を巡る2015年末の韓日合意は、両国の葛藤を解消しようとするものだった。合意内容に不満を持つ人はいるかもしれないが、これを無効にして再交渉しようという主張は、一部の国民には受け入れられても現実的ではない。外交には相手がいる。状況が変わったからと交渉のやり直しを求めれば、『韓国は必要ならゴールポストを動かす』という日本の右翼の論理を私たち自ら証明することになる。韓国の国際的信用は低下し、国際社会の非難は韓国に向かう公算が大きい」

オバマ政権の頃より、米国は頻繁に日韓関係の改善を求めてきた。中国や北朝鮮が日米韓の離間を図る中、慰安婦問題で日韓が対峙することは、日米韓協力の根幹を揺るがすことになるからである。

朴大統領の弾劾決議以降、韓国の政治活動家団体「韓国挺身隊問題対策協議会」は慰安婦問題に対する合意を反故にしようとその活動を強化させてきた。それが、釜山の日本総領事館前の慰安婦を象徴する少女像の設置になったのである。

これまで、韓国では約40体の少女像が設置されたと聞く。しかし、このことはあまり知られていない。韓国では、慰安婦問題に対する日常的な関心は薄れてきていると思う。しかし、いったん問題が顕在化すると、国民感情に火をつけるところは未だ変わっていない。そこで、政治活動家たちは日韓の問題を再度顕在化しようと釜山総領事館の前に少女像を設置したのであろう。

少女像の設置に対し、日本政府が大使の一時帰国を含む強い措置で対抗したことは恐らく予想外であっただろう。韓国政府は政治活動家との間に入って困惑している趣である。大使の帰任時期が問題になっているが、抗議の意思は伝わった。これからは、大使が帰任して日本の厳しい雰囲気を日本で感じたままに韓国で伝えることも重要になる。また、韓国の野党政治家は慰安婦合意の再交渉などと好き勝手なことを言っているが、それが非現実的であることを説得することも大使の役割である。

日韓の歴史問題を巡る対立は、日米韓協力の大きな障害となっている。米国のトランプ政権の東アジア政策が定まらない中、日韓が対立を繰り返せば、オバマ政権の時のようにこれを仲介するどころか、日韓を見放すことさえ考えられる。

外交は日韓関係のような二国間関係だけで考えられるのではなく、米国、中国、北朝鮮との関係など東アジアを取り巻く全体像で考えていく必要がある。日韓の対立は米国との協力の障害となりかねない。日韓の関係の離間を画策する中国や北朝鮮を喜ばすことになる。こうした地域戦略を考えて行動するべきである。それが朴院長の主張でもある。

米国との緊密な協力なくして
東アジアの安定はない

最後に日米関係である。昨年12月、トランプ次期大統領と安倍首相との会談が行われたが、大統領就任式直後には、再度、両国の首脳として会談する予定である。トランプ大統領のように思い込みで発言するタイプの人とは首脳同士の信頼関係が何より重要である。最初の出会いは良かったようであるが、それでも直後に就任式後TPPを破棄する意向を述べている。

日米同盟関係について、集団的自衛権の行使やガイドラインの改定など、日本が米国との協力関係を深めていることは好材料であるが、在日米軍に対する日本の貢献についてどれだけ理解があるのか懸念される。仮にそれについて理解が深まったとしても、これまでのトランプ氏の発言から推測すると、日本の防衛費がGDP比で1%程度であり、米国の3%強と比較して自助努力が足りないことを指摘してくる可能性がある。

いずれにせよ、米国との緊密な協力なくして、中国の海洋進出に対抗するすべはなく、北朝鮮の脅威からも国を守ることはできない。また、韓国との関係の安定を図ることが米国の信頼を勝ち得ることにもつながるのである。こうしたことを肝に銘じながらトランプ政権の誕生を迎える必要がある。

(元駐韓大使武藤正敏)
http://diamond.jp/articles/-/114428


 


【第462回】 2017年1月17日 真壁昭夫 [信州大学教授]
韓国の“駄々っ子”ぶりは日本の外交にプラスになる

Photo:YONHAP NEWS/AFLO
国家間の約束を破ってでも
有利な条件を引き出す!

昨年12月30日、在釜山の日本国総領事館前に、慰安婦問題を象徴する少女像が設置された。その行為は明らかに、2015年末の日韓政府の合意に反している。当時の政府間の合意は、慰安婦問題の“最終的かつ不可逆的な解決”だったはずだ。その合意に従えば、韓国政府は可及的速やかに少女像を撤去すべきだ。

政府間合意が守られないことに抗議し、わが国政府が長嶺駐韓大使の一時帰国を決めた。当然の対応だろう。すでに、わが国は政府間の合意に基づいて韓国政府が設立した財団に10億円を一括拠出した。政府は約束をしっかりと果しており、非難を受ける立場にはない。

わが国政府は、日韓の合意が遵守されなければならないとの立場を堅持し、米国を中心とする国際社会の理解を得ることに注力すればよい。それによって、国際社会からわが国と韓国との関係が理解されることが期待できる。

今回の少女像設置を振り返ると、当初、地元の自治体は少女像の設置を認めず撤去した。ここまでは、日韓合意を遵守する意思はあったようだ。ところが、その後、市民団体からの非難が相次いだため合意は反故にされ設置が認められた。

少女像の設置を取り締まる義務は韓国政府にある。それにもかかわらず、韓国政府が設置を容認したことは、“最終的かつ不可逆的な解決”の約束を破ったことになる。政府間の正式な約束が簡単に破られてよいはずはない。

それでも韓国政府には事態の解決に向けた措置は見られない。そうした事実は、韓国に「国家間の約束を遵守する」という“国際社会の基本的なルール”が通用しないことを示す。約束が守れないのでは、信用できないことになってしまう。それでは、誠実な国際関係を作ることはできない。

それは、国家間の約束を破ってでも自国に有利な条件を引き出そうとする“甘え”としか言いようがない。韓国では、大統領の弾劾訴追案が可決され憲法裁判所の審議が進んでいる。当面、政治家は反日姿勢を煽り、国民からの支持を得ようとする面が強いのかもしれない。

そうした“駄々っ子”のような態度では、中長期的な国家の安定は実現できないはずだ。当面、韓国の政治スタンスが変わると考えづらい。そうした状況下、わが国は冷静に自国の利益を考え、“駄々っ子”に対して大人の対応をとることが求められる。

国際社会の常識が
通用しない韓国

釜山の日本国総領事館前に、慰安婦問題を象徴する少女像が設置されたことに関し、韓国政府は「責任は自分たちにはない」との態度をとっている。朴槿恵(パク・クネ)大統領の職務が停止されている中、代行を務める黄教安(ファン・ギョアン)首相は市民団体に自制を呼びかけている。

日韓合意が“最終的かつ不可逆”であることを考えれば、韓国は自制を求めるだけではなく、国家間の合意を遵守し二国間の関係改善に努めるべきだ。今のところ、韓国が日韓の合意を守ろうとしているとは感じられない。むしろ、世論に押されている面が強いように思う。

現代の国際社会において、「政府間の合意」を遵守するのは中長期的な関係を深めるための常識であり、最低限のルールだ。「国際社会の常識」が通用しなければ、経済連携協定や安全保障面での協力などを進めることは難しい。今回の少女像の設置を通してはっきりとしたことは、韓国には「国際社会の常識」が通用しないということだ。

駐韓大使の一時帰国が決まって以降、韓国は自国の発想で、自分勝手な主張を繰り広げている。最大野党である“共に民主党”の幹部は、日本が拠出した10億円を返還すべきだと主張している。政府間の合意は金銭の授受によって解決されるものではない。

それは、相互の信頼関係、問題解決へのコミットメントの共有によって成立している。「お金を返せば合意を守る義務はない」とは言えない。合意が成立した以上、遵守の義務がある。こうした韓国のスタンスが短期のうちに変わるとは考えづらい。

特に足元では、国家の最高権力者である大統領が不在だ。その中で、次の大統領選挙を視野に入れた支持獲得競争がし烈化している。野党を中心に今回の駐韓大使の一時帰国を取り上げ、与党の怠慢と反日姿勢を強調し、支持獲得を目指す動きは増やすい。すでに、次期大統領の有力候補らは日韓合意の無効化、再交渉が必要とまで主張し始めている。

大国にすり寄る
“駄々っ子”韓国

これまで韓国は、国際社会での存在感を示していくために大国に寄り添い、その時々の状況に合わせて大国のご機嫌をとろうとしてきた。これは今後も続くだろう。リーマンショック後、一時、米国はアジア軽視の姿勢を取り、その隙をついて中国が南シナ海に進出した。そこで韓国は、米国に加え、中国との関係も強化しようとしてきた。

特に、朴政権は中国との関係強化を重視した。アジアでの影響力を強めている中国の陣営にすり寄ることで、朴大統領は経済力を高め求心力を強化しようとしたと見られる。加えて、中国の流通市場にアクセスし、家電や自動車販売の増加につなげたいとの考えもあっただろう。

中国にとって、朝鮮半島の安定を維持することは、朝鮮半島を巡る影響力を徐々に高めるために不可欠だ。中国は韓国との関係を強化し、北朝鮮に対して核開発やミサイル発射の自制を求めるという圧力をかけようとしている。抗日戦勝70年の記念パレードの際、中国が韓国をロシアに並ぶ国賓として扱う一方、北朝鮮を冷遇したのは、そのよい例だ。それ以外、中国が韓国との関係を重視する理由は見当たらない。

韓国の大国寄りの外交政策が裏目に出たのが、北朝鮮のミサイル発射への対抗措置だ。韓国が米国のミサイル迎撃システムを配備したことを中国は批判している。年明け以降、中国は爆撃機を韓国の防空識別圏に飛行させ、韓国を牽制している。中国にとって韓国は、朝鮮半島の安定とその地域への影響力を拡大するために必要なのである。

こうした状況を見ると、韓国の政策に一貫性はみられない。米中と戦火を交えたベトナムは、政治体制と経済面を中心に中国との関係を改善しつつ、国防面では米国との関係強化を選択した。中長期的な安定のために、ベトナムは中国よりも米国を重視している。しかし韓国の対応は“優柔不断”に見える。それでは国際社会の信頼を得るのは難しい。

日韓関係と
わが国が取るべきスタンス

北朝鮮の核開発の脅威、中国経済の減速、ミサイル防衛システムを巡る中韓関係の不安定化を考えると、韓国は中国寄りの態度を続けることは難しい。どこかの時点で、韓国は米国やわが国との距離を縮めることを考えるはずだ。

わが国にとって、そうした韓国政府の方向の変更は、アジア太平洋地域諸国との連携を進めるチャンスになるはずだ。トランプ次期大統領の下、アジア太平洋地域の安定がどのようになるかは不透明だが、わが国をはじめアジアの各国は、米国との安全保障を基礎にして連携を進めていくべきだ。

韓国の政治を考える上で、最も注意すべきポイントはリーダーシップの欠如だ。事実上、朴槿恵政権が行き詰った中、政治家の関心は次期大統領選に向かっている。その中で冷静に外交問題に対処し、中長期的な視点で必要な対策を進めることは難しいかもしれない。今後も、韓国の政治家からは日韓の合意を無効にすべきとの一方的な主張が出される可能性は残る。

しかし、わが国は、韓国からの一方的、かつ、感情的な主張に応える必要はない。

まず、少女像の設置など韓国が一方的に主張する問題に関して、わが国は国際社会の常識が通用しない国を相手にしているとの認識をしっかりと持つことだ。その上で、政府間の合意は政権が代わっても遵守されなければならないとの姿勢を貫く。

同時に、自国の対応が正当であるとの理解を国際社会から取り付け、数の面でもわが国の正しさを示すことに注力する。それが国際社会の常識を理解した大人の対応だ。その一方で、時間をかけて韓国の政治、世論動向を見極めるのが現実的だろう。

駐韓大使の一時帰国に合わせ、日韓スワップ協定の協議中断、日韓ハイレベル経済協議の延期も決定された。いずれも、韓国経済の安定には不可欠だ。韓国が冷静に自国の置かれた状況を認識し、国際社会の常識を理解するまで、わが国は静かに状況を見守ればよい。

その間に、アジアを中心とした経済外交を進め、親日国を増やして多国間での経済連携を進めるべきだ。その意味で、韓国の“駄々っ子”ぶりが露呈するのは、わが国の外交にとってプラスの作用をもたらすことになるかもしれない。

(信州大学教授真壁昭夫)
http://diamond.jp/articles/-/114390


 


http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/284.html

[政治・選挙・NHK219] 安倍政権の「同一労働同一賃金」は懐古趣味的で現実味がない 欧米型の明確な契約関係を結ぶ制度で実現すべき
上久保誠人のクリティカル・アナリティクス
【第148回】 2017年1月17日 上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
安倍政権の「同一労働同一賃金」は懐古趣味的で現実味がない 欧米型の明確な契約関係を結ぶ制度で実現すべき

?安倍晋三政権が「働き方改革」を推進し、その目玉として、「同一労働同一賃金」を打ち出している。その目的は、正社員に比べて少ない非正規労働者の給料を増やすことで、個人消費の拡大につなげ、停滞感が漂うアベノミクスを再び浮揚させる起爆剤にすることだという。これは、いまや形骸化しつつある、高度経済成長期に「誰もが正社員」であった年功序列・終身雇用の「日本型雇用制度」を復活させようということだといえる。

?本稿は、安倍政権の「同一労働・同一賃金」が、世界の潮流である「懐古趣味的ナショナリズム」であり、それは米大統領に就任予定のドナルド・トランプ氏が「米国を再び偉大な国にする」として企業をツイッターで攻撃して米国内の雇用を守ろうとすることと、類似性があることを指摘する。

トランプ氏の「懐古趣味的ナショナリズム」では
雇用は増えず、経済は動かない

?1月20日に米国大統領に就任予定のドナルド・トランプ氏がツイッターで企業を攻撃する投稿を頻発している。GM、フォードのメキシコの新工場建設計画を撤回させて、遂には日本のトヨタを批判した。トヨタも同じくメキシコ新工場建設計画があるが撤回はしなかった。しかし、豊田章男社長は「今後、5年間で米国に100億ドル(約1兆1600億円)を投資する」ことを表明せざるを得なかった。

?トランプ氏は、「最も多くの雇用を作り出す大統領になる」と宣言した。だが、オバマ政権の関係者が「オバマ政権と同じだけの雇用創出をするには、個別企業約800社と交渉しなければならないだろう」と皮肉ったという。高コストの米国内の工場で生産しても、米国内の消費者の不利益だし、海外に輸出しても売れるわけがない。雇用は増えるどころか減っていく。結局、企業を脅しても、自らの首を絞めるだけになるだろう。

?トランプ氏は「米国を再び偉大な国にする」という。だが、過去の米国の栄光を再びという「懐古趣味的ナショナリズム」(Financial Times“Trump, Putin, Xi and the rise of nostalgic nationalism”)で国民の感情に訴えるだけでは、雇用は増えず、経済が動かないことに、すぐに気づかされることになる。

安倍首相はG7最初の
懐古趣味的ナショナリスト

「懐古趣味的ナショナリズム」を打ち出すのは、トランプ氏だけではない。中国の習近平国家主席やロシアのウラジーミル・プーチン大統領も「強い国家の復活」をアピールしてきた。英国のEU離脱でも、「英国を欧州一部ではなく、世界屈指の大国だった時代への懐古」を訴えた「離脱派」が勝利した(第134回)。

?EUでも昨年、イタリアではマッテオ・レンツィ首相が国民投票で敗れて退陣に追い込まれた。今年も、フランスの極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペンが大統領選に勝利する可能性があり、ドイツやオーストラリアなどで極右政党が支持を増やしている。懐古趣味的ナショナリズムは、いまや世界的な潮流となっている。

?昨年、懐古趣味的ナショナリズムの勢いによって、英国、イタリア、米国と3人のG7首脳が交代した。今年のフランス大統領選、ドイツ総選挙の結果によっては、更に懐古趣味的な首脳が登場する可能性がある。

?安倍首相は、G7の首脳で古株のほうになった。今年、既に大統領選に出馬せず、退陣する意向を表明しているフランソワ・オランド仏大統領に続いて、総選挙でアンゲラ・メルケル独首相が退任に追い込まれる可能性が取りざたされている。安倍首相は一挙に最も古株の首脳となる可能性がある。

?だが、安倍首相はナショナリズムに対抗する「自由民主主義陣営」の「最後の砦」というわけではない。「美しい国、日本」「日本を取り戻す」と訴えてきた安倍首相は、むしろG7で最初に登場した「懐古趣味的ナショナリスト」なのではないだろうか(「5つのポイントで占う2015年」)。

アベノミクスは
懐古趣味的な経済政策だ

?実際、安倍政権は2012年12月の発足以来、「懐古趣味的」な経済政策を続けてきたと考える。この連載で指摘してきた通り、金融緩和・公共事業で株高・円安に導き輸出産業に一息つかせる「アベノミクス」は、つぎ込むカネの量が異次元だというだけで、旧態依然たるバラマキ政策である。それは「失われた20年」の緊縮財政と改革に疲れた国民に、単純に「高度成長の夢よ、もう一度」と思わせるものだった(第129回)。

?だが、政権発足から4年経ったが、結局経済は復活しない。異次元緩和「黒田バズーカ」の効き目がなければ、更に「バズーカ2」を断行し、それでも効き目がなく、「マイナス金利」に踏み込んだ。これは、「カネが切れたら、またカネがいる」という、かつて何度も繰り返されたことと全く同じである(第133回・p2)。

?安倍政権の懐古趣味的な性格が最も現れたのが、再三に渡って繰り返された「企業への賃上げ要請」だろう。安倍首相や麻生太郎副総理・財務相ら経済閣僚が、再三に渡って企業に「賃上げ」を要請し、事実上産業界に「圧力」をかけてきたことだ。

?この連載では、安倍政権の産業界に対する度重なる賃上げの「圧力」と、首相の祖父・岸信介元首相が商工省のエリート官僚時代に実行した「国家総動員体制」との類似性を指摘してきた(第80回・p6)。国家総動員体制下では、軍需品の生産を優先するために、企業の利潤追求が「悪」であると否定された。それは、企業が内部留保をため込み過ぎているとして、利益を上げた分は「賃上げ」すべしとする、安倍政権の強硬姿勢とよく似ているのだ。

「同一労働同一賃金」は格差拡大への嫌悪と
高度経済成長期への回帰願望に支持される

?そして、「働き方改革」である。この改革には、電通の新人社員の自殺で社会問題となった「長時間労働」の是正や、「女性の社会進出」を促進する政策などが含まれ、その部分では世界の水準から遅れた部分を取り戻そうとするものと評価できる。

?一方、「正社員」と「非正規労働者」の不合理な待遇の格差をなくす「同一労働同一賃金」だが、それが非正規労働者を正社員に近づける方向性で行われるならば、「誰もが正社員だった高度成長期に戻りたい」という、国民の懐古趣味的な感情に訴えるものとなってしまう。

「同一労働同一賃金」は与党のみならず、民進党、共産党など野党や労働組合も支持している。その支持の構図も「懐古趣味的」だ。なぜなら、80年代以降続いてきた「新自由主義的改革」に対する嫌悪が背景にあるからである。

?日本で派遣労働者が増えたのは、バブル経済の崩壊とグローバリゼーションによる「失われた20年」と呼ばれる長期的な経済停滞に対して、国内の正社員の年功序列・終身雇用の「日本型雇用システム」を頑なに守ろうとしたことで起こった。

?グローバリゼーションによって、日本企業は国際競争力を維持するために多国籍化し、開発途上国の安いコストで生産する体制を作ったが、一方で国内の労働需要は激減してしまった。これに対して、日本企業は既存社員の雇用維持に努め、新規採用を抑制し、派遣や請負等の「非正規労働者」を増加させた。

?その結果、若年層の多くが新卒で正社員として採用されず非正規労働者となった。そして、既存社員の年功序列・終身雇用が守られる一方で、非正規労働者として社会人をスタートした若年層が、その後に正社員の職を得ることは極めて難しくなった。正社員と非正規労働者の格差は固定されることとなったのだ(連載第47回)。

「同一労働同一賃金」とは、このような「グローバリゼーション」「新自由主義改革」による正社員と非正規労働者の格差拡大とその固定化に対する嫌悪感がある。そして、その嫌悪感の裏返しには、「新自由主義改革」以前の「誰もが正社員」で、年功序列・終身雇用を謳歌できた「高度経済成長期」に回帰したいとの願望がある。

「非正規動労者の待遇を正社員に
近づける」は論理的整合性を欠く

?しかし、「同一労働同一賃金」が復古趣味的で、国民の感情に訴える政策であるために、トランプ氏の雇用拡大策と同様に、論理的整合性を欠いたものとなっている。

?安倍政権は、昨年12月20日に「同一労働同一賃金ガイドライン(案)」を発表し、「同じような能力・経験・成果を上げた労働者は、給与・賞与はもちろん、各種の手当等についても平等に処遇されなければならない」という基本的な考え方を打ち出している。

?この考え方自体は目新しいものではない。安倍政権登場前の、民主党政権期から、何度も導入が検討されてきたが、実現が難しかっただけである。導入が難しい理由は、日本企業では正社員に対する「職能給(能力に応じた賃金)」制度が定着しているからだ。その上、勤続年数を重ねると賃金もアップするという年功序列的な賃金制度が採用されてきた。

?これは欧州で一般的であり、同一労働同一賃金導入の前提となっている「職務給(仕事に応じた賃金)」とは異なるものである。換言すれば、現行の年功序列の賃金制度は「特定の人に仕事をつける」仕組みであり、「特定の仕事に賃金が結びつく」仕組みである「同一労働同一賃金」とは、なじまないものなのだ。

?また、日本企業においては、総合職(現在でも主に男性)の「正社員」は、勤務場所を自ら選択できなかったり、頻繁な配置転換があったりする。それは企業にとって、将来の幹部候補生を、さまざまな経験を積ませることで育成する仕組みである。つまり、正社員の給与には、単なる業務に対する賃金ではなく、会社にとって重要な、高度な経営業務に就くための準備をする部分が加算されている。それが年功賃金の上昇カーブとなり、非正規労働者との「格差」を広げることになっている。

?要するに、日本型雇用システムの下では、正社員と非正規労働者の格差解消は、単純に給与を同じにすればいいわけではないのだ。それならば、勤続年数が同じ非正規労働者に、正社員と同じ年功賃金を適用すればいいのかというと、そういうわけにもいかない。有期雇用の非正規動労者は、年功賃金のメリットが生じる前に雇用期間が終了してしまうので、格差解消に効果がないからだ。

?そして何より問題なのは、前述の通り、そもそもグローバリゼーションの世界的な大競争に生き残るために、企業は労働コストを下げる必要があり、非正規労働者を増やしてきたのだ。非正規労働者の待遇を、正規動労者に合わせるのでは、人件費が増大し、企業は経営が成り立たなくなる。それを「懐古趣味的ナショナリズム」で国民を煽り、首相の圧力で無理やり企業にやらせようというのであれば、安倍首相は「髪型がまだマシなトランプ」(英国のボリス・ジョンソン外相のこと)ならぬ、「体形がまだマシなトランプ」と言われても仕方のない、ポピュリズム的政策ではないだろうか。

「同一労働同一賃金」は欧米型の明確な契約関係を結ぶ制度で実現すべき

?そもそも、「働き方改革」とは、解雇規定を緩和して、労働力の流動性を高めることだったはずだ。現代の技術革新が急激なスピードで進む時代には、年功序列・終身雇用の社員によって企業内に蓄積された技術・知識では対応できない。外部からプロジェクトの責任者を招聘し、専門的な知識を持つ中途採用を集められるようにしなければ、企業は生き残っていけない。要するに、年功序列・終身雇用の「日本型雇用システム」からの脱却こそが、働き方改革の核心だったはずなのだ。

?この連載では「終身雇用」「年功序列」が、世界的に見ると極めて珍しい制度だということを指摘してきた(第97回・p4)。欧米のみならず、中国や東南アジアでも、大学卒の一括採用というシステムはない。学生は、大学在学中に就職活動をせずに勉学に集中し、卒業してから、インターンシップを皮切りにキャリア形成を始める。インターンで評価されれば就職できるが、最初から正社員の待遇はなかなか得られない。つまり、日本でいう「非正規労働者」としてキャリアをスタートさせる。若者は30歳くらいまでは転職を繰り返して、自分の適職を探していくのが通常である。

?また、企業・行政機関で役職者のポジションに空席が生じた時、組織外にオープンに人材を募る「公募」が行われる。平社員として契約している者が役職者になりたければ、「公募」に応募して、外部からの多数の応募者と競争しなければならない。もちろん、社内の人間が昇格することはあるのだが、それは社外からの応募者と能力を比較して、役職者にふさわしいと社外に明確に説明できる場合である。

?日本でも働き方改革は、欧米やアジア諸国の企業・官僚組織のように、雇用者・労働者間で、明確な報酬・労働条件を合意した契約関係が結ばれることが、目指されるべきではないだろうか。日本型雇用システムの下では、雇用者・労働者間の契約は曖昧だ。もちろん日本にも雇用契約はあるのだが、筆者は内定式か入社式で、雇用契約書を配られ、その場で即、印鑑を押させられたのを覚えている。内容はほとんど確認しないで印鑑を押したし、契約書の修正など申し出る余地はなかった。新卒一括採用の場合、現在でもそれはほとんど変わらない。

?そのような曖昧な雇用者・労働者の契約関係だから、電通の新入社員の自殺事件のような、まるで奴隷のような労働を強いる「ブラック企業」の問題が出てくるのだ。日本型雇用慣行というのは、労働者を守ってくれるものとはいえない。終身雇用の慣行を廃し、契約関係を明快にする新しい制度を導入すれば、ブラック企業は減る。また、派遣労働者が奴隷のような扱いを受けることも減るかもしれないのだ。「同一労働同一賃金」は、派遣労働者を正社員扱いしろという、企業経営の難しさを無視した乱暴な話ではなく、正社員・派遣労働者の区別を撤廃し、全ての雇用が明確な契約関係によって成立する制度を導入することで実現すべきなのである。

日本にとって懐古趣味的
ナショナリズムは命取りとなる

?繰り返すが、安倍首相の「同一労働同一賃金」は、高度成長期の「誰もが正社員」だった時代の夢をもう一度見せることで、国民の支持率を上げようという懐古主義的な政策だ。それは、トランプ氏や、習近平主席やプーチン大統領が「強い国家の復活」という懐古趣味的ナショナリズムを掲げるのと同じ世界的潮流である。

?しかし、この連載で論じてきたように、世界は「ブロック経済化」に向かっている。米国、中国、ロシア、英国は、自前の「生存圏」を確保できる。これらの国々は、内向きになり、懐古趣味的なムードなっても、生きていくことはできる。

?しかし残念ながら、日本が内向きになり、「日本型雇用システムはやはり素晴らしい」などと懐古趣味的になったら、自滅への道だということを自覚すべきだ(第145回)。自前の資源も経済圏も持たない日本は、「ブロック経済」の間で極東の一小国に成り下がってしまうからである。日本はグローバル経済の相互依存の中で、世界標準のシステムに合わせて生きていくしかないことを自覚すべきだ。日本にとって、懐古趣味的ナショナリズムは、命取りであることを忘れてはならない。

(立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長?上久保誠人)
http://diamond.jp/articles/-/114384
http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/285.html

[経世済民117] 元日経エース記者の著書『バブル』に高杉良氏が抱いた違和感、具体性欠く構造改革、無責任な新聞 首相夫人も支持「医療用大麻」
2017年1月17日 高杉 良
元日経エース記者の著書『バブル』に高杉良氏が抱いた違和感 具体性を欠く「構造改革」 無責任メディア

元日本経済新聞社の証券部エース記者で編集委員も務めた永野健二氏が著したノンフィクション『バブル・日本迷走の原点』(新潮社)が話題を呼んでいる。もはや30年前になろうとする1980年代から90年代前半のバブル経済の実相を、その当時最前線で取材していた永野氏が生々しく伝えている。しかし、経済小説、ビジネスマン小説の巨匠として知られ、バブル時代をテーマにした作品も数多く手がける作家の高杉良氏は、この『バブル』が描く論調に違和感を禁じ得ないという。高杉氏の緊急・特別寄稿をお届けする。


たかすぎ・りょう/1939年生まれ。出光興産をモデルにした『虚構の城』でデビュー。綿密な取材に基づき、リアリズムを追求した重厚な作品で経済小説の新境地を開く。『小説 日本興業銀行』『青年社長』『腐食生保』ほか著書多数。
Photo by Yoshihisa Wada
 元日本経済新聞社のエース記者・永野健二氏のベストセラー『バブル・日本迷走の原点』は、我が国が“失われた20年”に陥った原因とされる1980年代から90年代前半の“バブル経済”の深層に迫ったノンフィクション作品だ。政治家・官僚・財界のエスタブリッシュ・トライアングルやバブル紳士と言われた新興不動産会社の経営者たちを実名で記すことで、最後には日本全体を巻き込むに至ったバブルの熱狂を生々しく再現している。

 日本経済新聞社(日経)というインサイダー情報が集積する組織に属し、財界総理とも言われる日経連(現在の経団連)会長を父に持つサラブレッドにして自身も証券部のエース記者として名を馳せた著者ならではの、アングラ情報を散りばめたストーリー構成は読者を唸らせるものがある。読み応え十分と言っても過言にはならないだろう。

 しかし、全編を通じて違和感を拭えないことも厳然とした事実だ。官僚の中の官僚と言われた大蔵省、通貨の番人たる日銀、そして銀行界、更には金融界のエスタブリッシュメントとして君臨した日本興業銀行(興銀)が、自らの支配する旧態依然とした制度を堅持せんとしたことがバブルの最大の要因とする著者の論調は、極めて大衆受けするものだ。著者本人も認めているように、銀行の下の地位に見られていた野村證券を筆頭とする証券会社を、既存秩序の改革者として肯定的に描いていることも、身贔屓ではあるものの許容範囲といえる。

 それでは何が一番の違和感かといえば、自身が“社会の木鐸”として検証機能を果たすべき大手新聞社、その中でも財界の中枢に最も近い位置にいる日経に所属していながら、その本来果たすべき役割を全く実践することなく、むしろバブルを煽る役割を担ったことに対する懺悔が皆無であることだ。

日経ほど自家撞着に
長けた会社は他にない


およそ30年前まで遡り、バブル経済の深層に迫ったノンフィクション『バブル・日本迷走の原点』だが、作家・高杉良氏は読後、違和感を覚えたという
 バブル期を象徴する事件として『リクルート事件』を挙げておきながらも、リクルート子会社の未公開株を受け取った政官財のエリートに連座した当時日経社長の森田康について一切触れていない。森田社長の辞任後、日経が本来社長の器にはない鶴田卓彦を社長にいただくはめになり、日本経済と歩調を合わせるかの如く迷走したことを忘れたとは言わせない。

 そもそも日経という組織は、スキャンダルを起こした企業の経営者には極めて厳しいが、自らはコーポレートガバナンスから最も遠いところにいる。“株式の持ち合い”を経営チェック機能の空洞化と批判しながら、日経は従業員持ち株会に参加した従業員に一株百円で購入させ、退職時や死亡時には同額で持ち株会が買い戻すという、同族経営の零細企業のようなことを延々と続けている。

 また、競争による消費者メリットの追求を主張しながら、自らの商品である新聞については、独禁法の例外として値引き販売を不可とする再販制度の上に胡坐をかいている。新聞が再販制度を維持する必要性の主張や購読料引き上げ時の正当性の主張など、新聞紙面を一面使って辟易とするような理論を展開する。日経ほど自家撞着に長けた会社は他にないのではないか。その組織にどっぷりと漬かった著者もまた、自家撞着そのものである。

 本書では、証券部記者としてこの斯界に精通した立場から、証券界、特にそのガリバー企業たる野村證券に天皇として君臨した田淵節也氏を改革者として持ち上げている。本書にも触れている通り、91年8月29日に田淵節也当時野村證券会長は、衆議院の証券・金融問題の特別委員会で証人喚問を受けている。東急電鉄株をめぐる稲川会会長への便宜供与と法人顧客に対する損失補てん問題についての喚問だ。この証人喚問を指南する役割を著者が担っていたという事実は、本書のどこにも触れていない。つまり、著者と田淵元会長は昵懇の間柄ということだ。

 本書は著者の個人的な付き合いの濃淡、もう少し分かりやすく言えば好き嫌いがベースになっているということだ。自分の廻りにいる親しい人たちは、皆バブル後の“失われた20年”という悲惨な末路を想像し、改革に微力を尽くしたが、大蔵、日銀、興銀、銀行界という時の支配階級の守旧層に立ちはだかれ、志半ばで力尽きたという。これもまた極めて大衆受けしそうな論理構成だが、私には当時のバブルを誰かの責任とすること自体に、強い抵抗がある。

 後講釈で「あの時こうしておけば」的なことはよく言われるが、まさに結果を見て後悔しているだけであって、上がった株を見て「買っておけばよかった」というのと何ら変わりない。勿論、当時の大蔵にしろ、日銀にしろ、興銀にしろ、組織防衛の意識が働いていなかったと言うつもりはない。そのような組織防衛が働くことも含めて歴史は作られ、動くのではないか。組織防衛の専売特許といえる日経のエース記者が、どうしてそのようなことを言えるのかと思う。

随所に見受けられる
独りよがりの後講釈

 本書への更なる違和感を指摘するとすれば、後講釈にも独りよがりの点が多いことだ。例えば、興銀には大蔵省証券局長の慧眼で投資銀行に転換するチャンスがあったという。長信銀という形態が歴史的な使命を終えていたという事実はあるにしろ、産業界のあらゆるところにメインバンク、準メインバンクという立場で根を張っていた当時の興銀が、銀行の立場を捨てて証券会社に転換することなど、無い物ねだりにもほどがある。それにもかかわらず、エリート興銀マンは下に見ていた証券会社になることを受け入れられなかったかのような解釈をする。

 私は、著書の参考文献にも挙げられている「小説日本興業銀行」の著者として数えきれないほどの興銀マンにインタビューしてきた。OBから現役の若手まで様々な人間と会話をしたが、バブル前後の興銀マンには共通して近い将来の興銀のあり方について危機感があった。

 ある頭取は、「新人が小説日本興業銀行を読んで感動し、興銀を志望したと言うので『あれは遠い昔のお伽話だ』と説明している」と話していた。投資銀行についてもう少し踏み込むと、歴史を辿ればリーマンショックを経て、世界中の投資銀行が消滅したという事実を著者はどのように理解しているのだろうか。興銀が万が一にも投資銀行に転換できていたら、リーマンショックで長銀破綻時と同様に、税金を費やしていたのではないか。

 著者は「会社は株主のもの」という教科書通りの考えをベースとする一方で、株主となる投資家が「金儲けばかりに執着した」結果が本質的な会社の価値を逸脱した株価形成を是認し、バブルに至ったと説明する。投資家は基本的に金儲けのために株式投資を行うのであって、投資した会社を社会貢献させるために投資する訳ではない。金儲けを目的とした投資家が形成する市場には、常にバブルを醸成する要素が存在することは、もはや自明なのではないか。

具体性を欠く
「構造改革」という言葉


『バブル 日本迷走の原点』
永野健二著
新潮社
1836円(税込)
288ページ
「株式の持ち合い」や「土地本位制」が本来働くべきチェック機能を不全にし、金融の暴走を促したという主張も、幼稚としか言いようがない。不動産担保には、信用力の低い本来であればリスクマネーでしか調達できない会社が、低利の借入金を可能とする効能がある。

「銀行の目利き」などと無責任に唱えるマスコミも多いが、一方で「国民の大事な預金を預ける以上」などと平気で矛盾したことを言う。基本的に銀行融資は元本を毀損しない前提で実行されなければならないのであって、リスクマネーを供給することはできない。その間を埋めるのが不動産担保なのだ。株主のチェックが利かない日経がよく暴走するからといって、「株式の持ち合い」をバブルの原因とするのは、悪い冗談としか思えない。

 幼稚な主張ということでは、本書の中にもしばしば登場する「構造改革」という言葉も、日経の元エース記者の著書としては極めて残念な誤魔化しだろう。日本の課題を語るときに「構造改革」「規制緩和」という言葉があちこちで繰り返されるが、それが具体的にどのようもので、どのようにして経済成長に結びつくのかを明確に語ってくれる人に出会ったためしがない。

 郵政民営化で全てが上手くいくと言った小泉純一郎元首相や規制緩和を唱えつつあらたな利権を作り出し私服を肥やす竹中平蔵のようなたぐいの人間の話であれば許されるのだが。

 イギリスのEU離脱やトランプ大統領の誕生など、世界の潮流がポピュリズムに傾いている。つまり世界の先進国の中間層が、資本主義の必然とも言うべき格差の拡大に反旗を翻しつつある中で、日本における市場経済の黎明期に発生したバブルの後講釈は、一体どれほどの意味があるのだろうか。 (文中一部敬称略)

(作家 高杉良)
http://diamond.jp/articles/-/114314


 


2017年1月17日 木原洋美 [医療ジャーナリスト]
安倍昭恵首相夫人も支持「医療用大麻」は解禁すべきか

大麻取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕された元女優の高樹沙耶容疑者(本名・益戸育江・53歳)が昨夏の参院選で医療用大麻(薬)の必要性を訴えて出馬したことは記憶に新しいPhoto:AFLO
昨秋、元芸能人の逮捕でも話題になった「医療用大麻」解禁の是非の議論が続いている。医療用大麻の解禁については安倍昭恵首相夫人が前向きなことでも知られている。実際に、現在の治療では治らない慢性疼痛の患者にとっては「藁(ワラ)にもすがる」存在である。果たして、医療用大麻は有効なのか。専門医である東京慈恵会医科大学附属病院ペインクリニックの北原雅樹医師に取材した。(医療ジャーナリスト木原洋美)

医療用大麻解禁を訴えた
安倍昭恵首相夫人

「あのぅ、慢性痛には医療用大麻を使用したらいいんじゃないでしょうか?」

か細い声で質問を発したのは、安倍昭恵首相夫人だった。

2016年9月29日、衆議院第一議員会館国際会議室で開かれた『慢性の痛み対策議員連盟総会』でのことだ。

その日は、米国や北欧、中国など、世界各国から慢性痛診療に取り組む医師や研究者が集まり、最新の研究成果や、かなり後れをとっている日本の現状等について報告がなされ、主催者側からの「最後に、ご意見やご質問はありませんか」との呼びかけに対して、安倍氏が手を挙げたのだった。

ただ、この質問はいささか唐突だった。なぜなら会議では、「慢性痛の原因は非常に複雑である。その治療は、学際的治療(多くの専門職が連携して行う)でなければならない」という結論が出ていたからだ。

つまり、「○○さえあればいい的な、単純な治療でなんとかなるほど慢性痛は甘くない」と、居合わせた誰もが考えていた。安倍氏はかねてより、"医療用大麻解禁論者"で知られている。この総会に参加したのも、"持論"を広めるためだったのかもしれない。

とはいえ、首相夫人の質問をないがしろにするわけにはいかない。司会者は、米国から参加した研究者と医療従事者に発言を求めた。

以下、主催者より入手した、医療用大麻に関する簡単なまとめの一部を紹介する。

「大麻の使用については、2001年にカナダで、2003年にオランダで、植物としての大麻に関する法律が標準化され、慢性疾患を抱える患者さんのために整備されました。アメリカの州政府の中にも医療用大麻の使用を合法化しているところはありますが、アメリカ連邦政府はまだ許可していません。

大麻にはカンナビノイドと呼ばれる二つの有効成分があります。テトラハイドロカンナビノル(THC)と、カンナビジオール(CBD)です。この二つの成分は、大麻からの抽出成分(ハシシとかハシシオイルとか呼ばれます)の中に、様々な濃度と割合で含まれているため、一定の濃度にしたり混合物からの用量-効果を調べたりすることが、難しかったのです。人間の身体には、この二つの物質に対する受容器が中枢神経や身体のほかの部位にあることはわかっています。

大麻や大麻の合成剤の臨床的効果は、これまでも研究されてきましたが、研究が小規模で研究期間が短い(訳注:薬剤の中には短期の使用では有効でも、長期に使用すると無効であったり有害であったりするものもあります)ために、もっと研究が必要だと考えられています。効果と副作用の検証がこの研究規模では難しいからです。使用対象となる症状については、以下のようなものです:

・多発性硬化症や脳卒中の後の筋肉の痙攣(カナダでは常用されています)
・様々な神経障害性疼痛(エイズ、癌、抗がん剤の副作用、糖尿病、手術を含む外傷、多発性硬化症や脳卒中、などに伴うもの)
・エイズやがん患者における吐き気
・小児のてんかん
・エイズやがん患者の食欲不振
・鎮静剤や睡眠薬として

などです。

研究では、プラセボ(偽薬)より効果があることはわかっていますが、既存のほかの薬より有効性が高いことは証明されませんでした。臨床試験ではよくあることですが、非常に効果がある人が少数いますが、まったく何の効果もなかった人もたくさんいて、誰に効果が出るのかを知ることは困難です。たくさんの患者さんは、他の薬の場合と同様に、副作用によって摂取をやめてしまっています」

その回答を聞いた安倍氏は、「ありがとうございます」と謝辞を述べた以外、何も語らなかった。

解禁論者が期待するほど
医療用大麻は効くのだろうか?

それから約1ヵ月後の10月25日、元女優の高樹沙耶容疑者(本名・益戸育江・53歳)が、大麻取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕された。彼女が昨夏の参院選で医療用大麻(薬)の必要性を訴えて出馬したことは記憶に新しい(選挙結果は落選)。その主張は確か、「大麻には、認知症予防やリウマチなど約250の疾患に効くというエビデンス(科学的根拠)があり、医療用として販売されている国もある。日本でも合法化して研究を進めるべき」というものだった。

また安倍氏は「医療用大麻を必要としている人たちがいるのなら、日本でも認可されていいのではないか」と述べている。

あながち、“反社会的な主張”ではないと思う。

そこでなぜ、医療用大麻は解禁されないのか、なぜ解禁を求める声は止まないのか、冒頭の『慢性の痛み対策議員連盟総会』の主催者の1人であり、昨年開催された『第9回日本運動器疼痛学会』で会長を務めた東京慈恵会医科大学附属病院ペインクリニックの北原雅樹医師に話を聞いた。


きたはら・まさき
東京慈恵会医科大学附属病院、ペインクリニック診療部長および麻酔科准教授。1987年東京大学医学部卒業。専門は難治性慢性疼痛。帝京大学医学部附属市原病院麻酔科、帝京大学医学部附属溝口病院麻酔科勤務後、米国ワシントン州立ワシントン大学集学的痛み治療センターに臨床留学。帰国後、筋肉内刺激療法(IMS)を日本に紹介する。2005年より現職。
――医療用大麻の解禁を求める人たちはなぜ、あんなに懸命に訴えるのだと思いますか?

北原解禁を求めているのは、慢性の痛みを抱えている方々や、その周囲の人たちが多いと思うのですが、結局、これさえあれば簡単に治る的な「奇跡の治療」を求めているのではないでしょうか。「まだ使われていない薬だから上手くいくんじゃないか」という期待が一番だと思うのです。

かつて、モルヒネ(「医療用麻薬」に分類されている鎮痛薬の一種。日本では1989年にがん疼痛治療薬として認可された)が自由に使えなかった時代には、「モルヒネさえ解禁されれば、みんな痛みから解放されるに違いない」と期待されていました。でも実際は、一部の疾患には明らかに効くものの、全部を解決するには至りませんでした。大麻もその繰り返しだと思います。残念ながら、慢性痛に「奇跡の治療法」はないんです。

――複数の疾患に対してエビデンスがある、効果が実証されているというのは本当でしょうか?

北原そこも問題があります。漢方薬と同じで、。例えば、みなさんご存じの「葛根湯」という薬があります。初期の風邪に効く薬ですね。効くことは分かっていても、なぜ効くのかというエビデンスは証明されていません。

というのも一つひとつの成分を分析しても分からないのです。漢方薬は有効成分の集まりではなく、それぞれの成分が絶妙のバランスで配合されており、相乗作用で効果を発揮します。単独では効果がなくても、ある割合で一緒になると効果を発揮する成分が多々あります。これは西洋医学では太刀打ちしがたい。

それと同じで大麻も、一部の成分を取り出しただけではエビデンスは測れません。それに一口に大麻と言っても、種類も産地もたくさんあるので、対応しきれません。いわゆる自然物というのは、実は何がどう効いているのか、わからないものなんです。

ましてや、大麻は効く人もいれば、効かない人もたくさんいる。エビデンスがあるとは言い難い。

――医療用大麻の解禁には、ほかにどのような問題があると思いますか?

北原流用、横流しは大きな問題です。実は国際疼痛学会でも、テーマになりました。

イスラエルのデータでは、医療用として大麻を処方されている人の3割が、娯楽用として快楽目的で友人や家族に大麻を分け与えたりしていました。驚きましたよ。

あともう1つは、本来医療用大麻には、吸ってから何時間かは車を運転してはいけない、といったような禁止事項があるのですが、ハイになって運転してしまう人が少なくない。しかも、アルコールや覚せい剤とは異なり、大麻は分解が早いので、血液検査をしても検出されません。へらへらしていて明らかにおかしいからと捕まえても、何も出ないのです。そういう面で、特にアメリカで社会問題になっています。ある意味、規制のしようがないのです。

――大麻の毒性は、ニコチンよりも低いから安全だという人もいますね。

北原とんでもないですよ。煙草はもともと非常に有害な代物です。百害あって一利なし。それと比較したら、なんでも安全になりますね。

日本の慢性痛患者は
見捨てられている

――医療用大麻解禁の声があるのは、そんな大麻にさえ、期待せずにはいられないほど、日本の慢性痛医療が不十分だからなのでは?

北原まさにそうでしょね。統計では、慢性痛で病院を受診した患者さんの7割は、治療に不満を持っています。

実は日本では、痛みに対して一般の医療者はまったく教育を受けていません。だから慢性の痛みをどう扱ったらいいのか分からない。肩が痛い、腰が痛い、首が痛いと整形外科へ行っても、レントゲンを撮られて問題ありませんよと診断され、鎮痛剤や湿布薬を出されておしまい、というのが実情です。

本来であれば、それぞれの痛みに対して、身体のどこで何が起きているのかを適切に説明するべきですし、どう治療し、付き合っていくかといったインフォームドコンセントもなされるべきなのです。急性痛と違って慢性痛は生活習慣病ですからね。

でも、一般の医師には教えられません。知らないからです。

――大学では、痛みについて教えていないのですか?

北原今、まさに作っているところです。文部科学省から助成金をもらい、現在、いくつかの大学で共通の、イーラーニングを中心とした教育システムが実施されようとしています。

あとは、全国81大学ある医学部の中で8つの大学が、教え始めています。

――それは、諸外国と比べて遅れているのでしょうか?

北原そうですね、一部の先進国の医学部では、慢性痛について学ぶことは必須になっています。また、そうでない国でも、選択科目には必ず慢性痛がありますし、科を特定して必須にしている国もあります。例えば、スウェーデンでは麻酔科医とリウマチ内科、救急の学生は全員、痛みについてひととおり勉強しています。

教育以上に差があるのは、行政の対応です。

ドイツ、スウェーデン、デンマークといった国々では、日本でいう県のレベルが医療を担当しています。オーストラリアは州ですね。責任の所在がしっかりしている中で、痛みの医療に取り組んでいるわけです。

すると州や県の財政に大きく響くため、改善に対して真剣かつスピーディに取り組みが進みます。

例えば、オーストラリアのある州では、州政府とNPOが一緒になって医療者に教育を行っているのですが、なんと慢性痛に関するプログラムの、GPE(かかりつけ医)の受講率が90%を超えているそうです。別に、お金がもらえるわけでもないし、ペナルティもないのにですよ。

オーストラリアでは、国民の慢性痛医療に対しる意識が高いので、知識が乏しいGPEは、患者がいなくなってしまうらしいです。

GPE制度がしっかりした国は、人口に対する頭数が決まっており、患者数が少ないとGPEとしての権利を失ってしまいます。だから医師も必死になるんですね。

それも極端ですが、日本の場合は、できるだけ患者さんをこじらせて、いろんな薬を使って、いろんな手術をする医師の方が、お金をもらえる制度になっています。短期間で、手術等をせず、上手に治す医師が評価されるような制度を作らないと、慢性痛医療は進歩しないでしょう。

――慢性痛で病院に行っても治っている人は少ないですよね。

北原日本できちんと治せる医者は100人いるかいないかでしょう。最近、「慢性痛には心理社会的な要素が大きい」という研究結果が明らかにされていますが、慢性痛がわかっている精神科医は10人いません。

さらに困ったことには、「心理的」というと、「イコール気のせい」だという発想がある。本当は痛くないのに痛いと感じるんだ、と。

そうではない。精神には身体を痛むように変えてしまう力があるんです。それが心理的という意味なんですが、分かっていない。

――結論として、医療用大麻は解禁されるべきでしょうか?

北原アメリカでは家中に麻薬性の鎮痛薬があるので、高校生の10%が「娯楽目的で薬を使ったことがある」というデータがあります。日本がそうなってもいいんですか。ご自分の子どもや孫が、大麻を吸っているところを想像してみてください。

医療用大麻解禁を渇望している人がいるし、実際に効く人がいるのは認めます。でも、中途半端な覚悟で解禁すると社会のためには悪いことになるのではないか、と心配しています。

今現在、慢性痛に苦しんでいる人たちにとって、医療用大麻の解禁は「藁にもすがる想い」の「藁」のような希望だ。効果が望めないわけではないが、大して期待もできない。

もし、行政がもっと慢性痛に対して本腰を入れて取り組み、治療に精通する医師が増えたなら、「こんな藁はいらない」と主張を翻す人は多いのではないだろうか。
http://diamond.jp/articles/-/114387
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/848.html

[経世済民117] 社債に灯る危険信号、債券ポートフォリオの守り方 利回上昇、地政学リスク株価上昇は限定的 中小企業楽観指数急上昇は期待過剰

• バロンズ/株式市場展望
社債に灯る危険信号、債券ポートフォリオの守り方
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AMEY STONE
2017 年 1 月 17 日 07:52 JST
• この1年で利回りは大きく低下
 昨年は、ほぼ年間を通じて、社債投資が素晴らしい結果を生んだ。2016年、低リスクの投資適格社債は平均6%、ジャンク債は17%の上昇となった。どちらも、トランプ氏の勝利や米連邦準備制度理事会(FRB)の12月の利上げ開始を受けて下落している米国債より明るい輝きを放っているようだ。

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ここにきてリスクのない米国債と社債との間の利回り格差が縮小していることで、バリュエーションに大きな懸念が生じている
 しかし、リスクのない米国債と社債との間の利回り格差が縮小していることで、このところバリュエーションに大きな懸念が生じている。過去20年間の平均が9%というジャンク債の利回りは6%に低下し、投資適格社債も3%と、長期的な平均である5%を大きく下回っている。これらは妥当な水準に見えるかもしれないが、信用リスクなしの10年物米国債利回りが2.4%であることを考えると、とても魅力的とはいえない。
 USバンク・ウェルス・マネジメントの債券ストラテジスト、ダン・ヘックマン氏は、「ハイイールド債や投資適格債の強気相場はピークを過ぎたとみている。利回り格差のさらなる縮小は予想しにくい」と述べている。
 リーマン・リビアン・フリッドソン・アドバイザーズの最高投資責任者(CIO)、マーティ・フリッドソン氏によると、経済状況や金利に基づいて判断するとハイイールド債は極度に過大評価されているという。だからといって、危機が迫っているわけではない。デフォルト率は低下し、経済は力強さを増している。ジャンク債にとっての最大のリスクは景気後退だが、トランプ次期大統領による財政刺激策の強化案をみると、その可能性は過ぎ去ったように思える。
 しかしながら、それらはまだ計画にすぎず、「今のところ、楽観的な見方がかなり強い」とフリッドソン氏は話す。もしも、企業利益の伸びが低迷し、トランプ氏の構想が実行に移されるペースへの失望が深まれば(既に浸透し始めている)、「リスクオフ」のセンチメントが株式や社債に打撃を与える恐れがある。
• 相場の反転への備え
 アライアンス・バーンスタインでハイイールド債と投資適格債を担当するガーション・ディステンフェルド氏は、「株式相場が下落すると、ハイイールド債は弱含み、投資適格債のスプレッドは拡大する」と述べている。ディステンフェルド氏によると、相場が反転した際に、損失を免れるためのカギとなるのは銘柄選択だという。同氏の調査もこのことを裏付けている。それは、「アクティブ運用のジャンク債ファンドは、弱気相場の時にベンチマークをアウトパフォームする」というものだ。

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 市場に「リスクオフ」のセンチメントが戻ってきた場合、投資適格社債が持ちこたえる力は、ジャンク債に比べてはるかに強いだろう。しかし、投資適格社債のリターンは金利との連動性が高いため、ハイイールド債に比べてFRBによる追加利上げの影響を受けやすい。ディステンフェルド氏は、金利リスクを限定するために、5〜10年で償還される投資適格債への投資を推奨している。
 このセクターのバリュエーションは妥当であるものの、もしもトランプ氏の政策が実行されたら、さらに値上がりする可能性があるとの見方を示すのは、インベスコで高格付け社債投資を担当するマット・ブリル氏だ。また、ウェルズ・ファーゴ・ファンズのチーフ債券ストラテジスト、ジェームズ・コーチャン氏は、「トランプ効果は2017年のワイルドカードだ」と述べている。同氏はブリル氏と同様に、経済成長が緩やかな状況が続いたとしても、社債のバリュエーションは「正当化できる」とみている。また、大幅な価格上昇は予想していないものの、極めて深刻な問題に直面しない限り、ハイイールド債はある程度良いパフォーマンスを上げられると考えている。
• その他のアイデア
 このような、さらなる価格上昇が期待しにくい環境の中で、シングルB格以上の債券を保有する投資家は、ファンドに投資する投資家よりも有利であると指摘するのは、ウェルス・ストラテジーズ・アンド・マネジメントのトーマス・バーン氏である。発行体がデフォルトに陥らないと仮定すると、債券投資家は、値下がりの心配をすることなくクーポンを得ることができる。
 ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのチーフ・インベストメント・ストラテジスト、マイケル・アローン氏のお薦めは、債券ではなく、ジャンク債級の格付け企業向けのローンに投資するファンドだ。ローンは企業の資本構成の中で返済順位が高い。また、変動金利のものが多く、その場合、金利の上昇に合わせてクーポンも上昇する。平均利回りは5%程度だ。
 社債のバリュエーションに対する不安感を解決するもう一つの方法は、価格が下がるまで買うのを待つという単純なものだ。ヘックマン氏は、「値下がりしている時に買うことを勧める」と述べている。

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• バロンズ
投資のプロによる2017年市場見通し
債券利回り上昇、地政学的リスクで株価上昇は限定的か

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2017年のバロンズ・ラウンドテーブル参加者。左からジェフリー・ガンドラック氏、スコット・ブラック氏、フェリックス・ズラウフ氏、マリオ・ガベリ氏、メリル・ウィトマー氏、ブライアン・ロジャース氏、オスカー・シェーファー氏、アビー・コーエン氏、ウィリアム・プリースト氏 PHOTO: BRAD TRENT
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LAUREN R. RUBLIN
2017 年 1 月 17 日 07:53 JST
• バロンズ・ラウンドテーブル 
 本誌は1月9日に、ニューヨークのハーバードクラブで毎年恒例の世界トップクラスの投資家9人によるラウンドテーブルを開催した。今年は、かなりの意見の一致が見られた。35年続いた債券市場の強気相場が終わり、地政学的リスクは一層高まり、バリュエーションが高くなっている株式市場では、1桁台半ば以上のリターンを上げるのは難しくなる可能性があるという。ラウンドテーブル3回シリーズの第1回となる今回は、大局的な見通しの他、フェリックス・ズラウフ氏とウィリアム・プリースト氏による推奨取引を紹介する。
• 参加者と所属
1 スコット・ブラック、デルファイ・マネジメント創設者で社長
2 アビー・コーエン、ゴールドマン・サックス証券のシニア・ストラテジスト
3 マリオ・ガベリ、ガベリ・ファンズCIO
4 ジェフリー・ガンドラック、ダブルライン・キャピタルCEO兼CIO
5 ウィリアム・プリースト、エポック・インベストメント・パートナーズCEO兼共同CIO
6 ブライアン・ロジャース、T.ロウ・プライス会長
7 オスカー・シェーファー、リビュレット・キャピタル会長
8 メリル・ウィトマー、イーグル・キャピタル・パートナーズのゼネラル・パートナー
9 フェリックス・ズラウフ、ズラウフ・アセット・マネジメント(スイス)社長

• 変化の方向
 本誌:世界が変化しつつように見えるが、今年の見通しは?
 ガベリ氏:トランプ次期大統領の勝利は、資本主義の再生と、忍び寄りつつあった社会主義の後退を意味する。共和党の両院支配の下で規制の見直しや改革が行われる。税制改革によって米国企業の世界的な競争力が高まる可能性がある。金融刺激策は終了し、今後は財政刺激策が実行される。インフラ投資や軍備増強も含まれる可能性がある。私が調査した企業の予想によると、米国の技術革新が脚光を浴びるという。米国全体で楽観主義が大勢を占めつつある。問題は、株式市場がどの程度まで好材料を織り込んでいるかにある。今年は金融企業が好業績を上げ、原油のエコシステムは改善するだろう。しかし、ドル高が一部の企業の業績に悪影響を及ぼしている。私は引き続き、市場で無視され、嫌われている銘柄を探している。
 ロジャース氏:ガベリ氏の意見に大いに賛成だ。最も重要なのは次期大統領ではなく、税制改革法案の作成と可決に力を貸すライアン下院議長だ。法人税や個人所得税の税率が引き下げられ、海外利益の還流が容易になり、経済成長を促すだろう。インフラ投資も経済成長に良い兆候だ。ライアン議長が寄与することで、思慮分別が保たれるだろう。
 ズラウフ氏:税制改革は2017年の収入から適用されるのか、それとも2018年からになるのか?
 ロジャース氏:多くの変革が遡及(そきゅう)的に実行され、2017年にも影響を及ぼすと思う。株式市場は、全般的に上半期は好調だと思うが、既に株式市場の株価収益率(PER)は約17倍で、今後の上昇余地は不明だ。
 シェーファー氏:レーガン大統領の場合、当選(1980年11月)から1981年1月の就任までの間に株価は9%上昇し、その後1982年8月までに約30%下落した。今回もそうなるとは言わないが、市場は既に浮き足立っている。
 プリースト氏:株式のリターンの要素は、配当、利益、PERの三つしかない。過去5年間でMSCIワールド指数は87%上昇したが、うち74%ポイントはPERの拡大が原因だ。利益は2%ポイント押し下げ、配当が約15%ポイント押し上げた。量的緩和により、利益やキャッシュフローの割引率が低下したことの影響が非常に大きい。選挙はまさに転換点だった。債券の利回り上昇でも示されている。PERは逆風に直面するが、税制改革を含めた利益成長加速で克服できるし、配当も予想以上に増加するだろう。
 Q:ガンドラック氏は、去年のラウンドテーブルでトランプ候補の勝利を予想した。今は何を予想する?
 ガンドラック氏:2016年半ばに、金利は当分上昇しないと人々は思っていた。そういう時こそ、それが起きようとしている時だ。7月初旬に、私自身は債券価格の上昇がもうすぐ終わると思っていた。7月に通常国債とインフレ指数連動国債(TIPS)とを比較すると、織り込まれていたインフレ率は今後30年間で1.5%だった。そんなことはあり得ない。コモディティー価格は既に底を打った。アトランタ連銀の賃金上昇率予想は4%だ。原油価格は2016年1月から2倍になった。消費者物価指数(CPI)は4月にも3%に近づく公算が大きい。
 将来振り返ると、金利の底は2012年7月で、2016年7月が2番底だったと分かるはずだ。今年中には10年債利回りが3%を超え、30年物の利回りは4%となるだろう。2016年7月には連邦準備制度理事会(FRB)の金利予想のドットチャートが低下したが、12月には一転して利上げに動いた。
 数カ月前にイエレンFRB議長は高圧経済もそう悪くないといった発言をした。失業率が低下し、賃金が上昇している。大規模な財政刺激の公算も大きい。インフレ率は予想を大きく上回る可能性がある。金利ウォッチャーのジム・グラント氏によると、現在の状況は1940年代を思い起こさせるという。当時の長期金利は2〜2.5%、インフレ率は2%程度の水準が長く続いていたため、もうインフレ率は上昇しないとあきらめた頃に突然8%に上昇した。
 ドル高はインフレ率を抑制する効果があり債券市場には追い風で、ドル安は債券市場の助けにならない。トランプ次期大統領は、「ドル高に一定の利点があるのは確かだが、実際よりも過大評価されているように思える」と述べたが、トランプ氏がドル高をもたらすというのは本当なのだろうか?
• 税制改革の影響は予想より小さい可能性
 ブラック氏:法人税率引き下げは、ラッセル2000指数やラッセル2500指数構成銘柄のような国内中心企業には追い風となるかもしれないが、S&P500指数のような時価総額加重にはさほどの影響はないのではないか。大型株は海外事業の比率が高く、アップル(AAPL)やアルファベット(GOOGL)の実効税率は既に25%より低い。
 コーエン氏:2017年中に税制改革が実施される公算が大きい。実際、5年以上前から検討されてきたが、民主党が個人所得税の改革と組み合わせようとしていたために遅れていた。通称オバマケア(医療保険制度改革法)の撤回も幅広く議論されている。廃止には特別多数が必要だ。先日のFRBの政策発表には、米国経済は成長しており、労働市場が改善しているという重要な発言が含まれていた。国内総生産(GDP)成長率は今年2%を超えるだろう。ゴールドマン・サックスの予想は2.3%だ。財政赤字は2020年までに2倍になる可能性がある。経済成長が追い付かず、財政赤字のGDP比は現在の約2.5%から5%程度になるかもしれない。
• 財政出動のタイミングやその影響
 Q:大規模なインフラ投資で経済が押し上げられることはないのか?
 コーエン氏:インフラ投資については、税制改革法案の一環として小型のプロジェクトは短期間に承認され、税控除や、官民パートナーシップで資金調達される可能性がある。大型プロジェクトは来年も承認される公算は小さい。
 ロジャース氏:政府債務増加で、民間の借り入れが抑制される「クラウディングアウト」の議論が再燃しそうだ。複数年に及ぶ債券の弱気相場になりそうな気配だ。
 コーエン氏:まだ利回りは低い。多くの国でマイナス圏になっているが、マイナス金利が功を奏している国は、主に通貨下落を通じてのことだ。マイナス金利は混乱につながり、銀行システムの助けになっていない。
 ガンドラック氏:マイナス金利は銀行システムにとって毒薬だ。消費者はより多く貯蓄する必要が生じて、消費することもできない。名目GDP成長率は金利の長期傾向を読む上で最高の指標だ。財政刺激で今年のGDP成長率が押し上げられ、インフレを勘案すると名目GDP成長率は5%程度の計算になる。債券利回りは2.4%ではいられない。
 コーエン氏:景気後退でもないのに、世界的に財政刺激が実施されるという奇妙なことになっている。本来なら、失業率の高かった2009〜2010年にやる方が良かったのではと思う。また、米国は国として、特に公共インフラや労働への投資が不足している。1950〜1960年代の黄金時代には、GDPの4.5%程度を基礎研究や企業の研究開発に費やしていたものだが、今や2.5%しかない。
 コーエン氏:景気後退でもないのに、世界的に財政刺激が実施されるという奇妙なことになっている。本来なら、失業率の高かった2009〜2010年にやる方が良かったのではと思う。また、米国は国として、特に公共インフラや労働への投資が不足している。1950〜1960年代の黄金時代には、GDPの4.5%程度を基礎研究や企業の研究開発に費やしていたものだが、今や2.5%しかない。
 ブラック氏:産業革命期から2006年頃まで、生産性は技術革新によって一貫して上昇してきた。しかし、ベンチャーキャピタルやウォール街の動きを見れば分かるように、最近の技術革新はソーシャルメディアやカジノ産業に向かっており、生産性向上への実効性はない。
 米国経済は低成長から抜け出せないと思う。ドル高が続けば売上高の44%、利益の20〜25%を国外で稼いでいるS&P500指数構成企業の収益は圧迫される。最近ウォール・ストリート・ジャーナルで読んだ興味深い記事によると、閣僚クラスにビジネス界の大物を選んだ政権ほど、GDP成長率は低くなっている。トランプ氏は規制緩和などで一部に恩恵をもたらすかもしれないが、米国が以前のような高い成長率に戻る保証はない。
 最近の株価上昇は浮かれ相場だ。ミシガン大学消費者信頼感指数が2004年1月以来の高水準となっていることからも分かるように、次期政権への期待には浮かれ気分が入り込んでいる。だが、政策が本当に実現するかどうかはまだ不明だ。
 ロジャース氏:債券投資のリスクの話があったが、それは株式も同じだ。昨年のこの時期は全てが良好に見えた。ところが、その後中国の成長不安で米国株は10%以上下落した。浮かれ相場といえば、現在の金融市場にもそんなムードがわずかながら入り込んでいる気がする。
• 世界的混乱がマイナス要因に
 Q:市場と世界は今年どこへ向かおうとしているのか?
 ズラウフ氏:私もトランプ氏への期待はやや行き過ぎているように思う。オバマ大統領は反ビジネスだったが、在任中に株価は3倍に膨れ上がった。スタート地点が低かった上に、FRBが非常に協力的だったからだ。一方、トランプ氏はスタート地点が非常に高く、FRBもオバマ大統領に対するほど協力的ではないだろう。そうなると、株式のリターンは今よりはるかに低くなる。トランプ政権は事業会社にとって天国でもウォール街にとってはそれほど良くないかもしれない。
 世界は劇的に変化しており、第一次世界大戦前との類似点は多い。オバマ政権下で始まった世界の警察としての米国の役割の縮小は、シリアやトルコで地政学的空白を生んだ。トランプ氏はその方針を引き継ごうとしている。そして保護主義的な貿易政策により、両大戦前にも見られた世界貿易の減少を招くことになる。
 Q:中国では何が起きているのか?
 ズラウフ氏:中国は2008年まで全てが正しい方向へ進んでいたが、その後は高い成長率を維持しようとするあまりに政策当局が次から次へと過ちを繰り返している。そして債務バブルのわなにはまっている。国内の事業機会が減り、不動産などの資産のリターンが落ち込むにつれ、富裕層の投資家は国外へ目を向け始めた。中国ほどの経済規模なら富裕層の投資先に占める国外比率は通常25〜40%になるはずだが、中国は恐らく10%にも達していない。つまり資本流出は加速する見込みで、人民元安が進む。対ドル相場は現在の6.90元から8元または9元まで下落する可能性がある。
 もう一つの問題は欧州だ。私が長年訴えてきたように、欧州連合(EU)のユーロ導入は誤りだった。ユーロのせいで多くの国の経済が苦しんでいるほか、数百万の雇用が失われている。共通通貨の失敗の結果、3月に総選挙が行われるオランダではポピュリスト政党が現時点でリードしている。さらに、フランスでは4月末から大統領選挙が始まるが、極右政党である国民戦線のルペン党首が勝つ可能性は、大方の見方よりはるかに高い。今年前半は市場の関心がトランプ氏に集中し、その施策を評価するだろう。しかし、米国の外には多数のリスクが存在する。
 プリースト氏:イタリアは欧州経済のアキレス腱だ。世界8位の経済大国だが、公的債務残高は世界で5番目に大きい。(ユーロ圏の中央銀行間決済システムである)ターゲット2においても巨額の債務を負っている。資金はイタリアから流出しており、銀行システムは非常に危うい状況にある。
 ズラウフ氏:ドイツは断トツの勝ち組に見えるが、ユーロ圏が崩壊すればターゲット2で保有する7500億ユーロもの債権の回収が難しくなるなど、実は危険と隣り合わせにある。
 ガンドラック氏:そのドイツではEUの経済政策に対する不支持率は38%にとどまっているが、フランスとイタリアでは国民の3分の2超が不満を抱いており、爆発寸前の状況にある。
ズラウフ氏:EUに対する抗議の声は欧州中で高まっているものの、EU解体の手続きを定めた規則がない。解体となれば、大混乱は必至だ。
 Q:英国のEU離脱はスムーズに進むか?
 ズラウフ氏:EUはこれ以上の離脱を防ぐため、強硬姿勢を取るだろう。そのプロセスは高いコストを伴い、大きな混乱を招く。それは世界の経済成長にとって良いことではない。世界貿易は引き続き減少するだろう。
 Q:米国株式相場はブレグジット(英国のEU離脱)を決めた国民投票後に一時下落したが、その後回復して最高値を更新した。反ユーロ政党の勢力拡大に対しては、どう反応するか?
 ズラウフ氏:ユーロ圏崩壊のリスクが50%を超えれば相場はたちまち下落し、それも短期間では終わらないだろう。
 ガンドラック氏:確かに、2012年には正反対のことが起きた。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁がユーロ圏の死守を宣言して不安を概ね解消すると、米国株は反発した。
 ズラウフ氏:ドル高は続くと予想する。ドル以外の選択肢が乏しいからだ。
 Q:話を戻して2017年への期待と懸念は?
 事業が上向けば、企業は雇用を増やすだろう。一方で、株式のバリュエーションは幾分上がり過ぎている。ただし、まだ割安な銘柄やセクターは残っている。
 ガンドラック氏:トランプ氏への期待は、ネガティブからポジティブへと急激に振れた。今度は逆方向へ一気に戻らないか心配だ。支持者の多くは何かが変わることを期待している。賃金の上昇や、偉大な米国の復活を期待している。7月か8月までに何も変わらなかったとしたら、どうなるだろうか。利上げも考慮に入れると、米国民の心理はガラッと変わるかもしれない。
• 株式市場見通し
 Q:市場予想を聞きたい。2017年の米国株式市場はどの程度上昇すると予想するか?
 シェーファー氏:株式市場全体は年初から4%上昇するとみている。しかし、銘柄によって大きな差が付くだろう。
 ブラック氏:S&P500指数は約5%の上昇になると予想する。配当利回りの2%弱を加えるとトータルリターンでは約7%になる。銘柄選択が重要になるという点は同意する。例えば、地方銀行などの多くのセクター、そして個別銘柄では農機大手のディア(DE)や建設機械大手のキャタピラー(CAT)は株価が行き過ぎている。バリュー志向が重要だ。バリュー株がグロース株をアウトパフォームする。
 ズラウフ氏:今年の半ばにかけて、市場はさらに10%上昇する可能性がある。しかし、市場が軟化した後で国債利回りが再度上昇して10年債利回りが3%、あるいはそれをわずかに上回る水準になれば、株式市場の大幅な調整の引き金になり、今年のS&P500指数はわずかにマイナスとなる。
 ロジャース氏:年初のPERが約17.5倍の高水準にあり、また特に金利上昇の環境を考えると、S&P500指数は上昇してもせいぜい6〜7%程度だろう。今年は多くの逆風があり得る。中国発の不安の再燃など、今年の前半に株価の下落を招く何かが起こる可能性もある。
 プリースト氏:S&P500指数の配当利回りが2%、名目GDP成長率が3〜5%、現在のPERと金利上昇の逆風を考慮に入れて株式市場の収益は5〜6%の上昇と予想する。地政学的リスクはここ数年来で最高であり、ボラティリティも平均を上回る可能性がある。
 ガベリ氏:インフレ率が3%に上昇し、実質GDP成長率が3%であれば、米国企業の売上高は名目ベースで6%成長になる。賃金上昇によって粗利益率は低下するかもしれないが、一般管理費はすぐには上昇しないため、営業利益率はわずかに上昇する。税率の引き下げも利益には大きなプラスになる。金利上昇によって年金の割引率が上昇して企業の拠出が減少することもあり、米国中心の企業のキャッシュフローは今後数年にわたって利益を大幅に上回る。問題は財政赤字などの構造的な課題への対処だ。株式市場は0〜5%の上昇になると予想する。
 コーエン氏:予想が難しい年だ。経済は2〜2.5%の成長が見込まれる。企業利益も約10%増加すると予想している。しかし、地政学的な環境や、米国の税制や規制の変更などが不透明だ。今年前半の株式市場は、経済予想が織り込まれるため良好だとみているが、後半は米国外の地政学的リスクの高まりによる懸念がある。ゴールドマンでは今年の大半の期間においてS&P500指数が2300〜2400のレンジ内にあるとみている。個人的にはこの予想に対するリスクは下振れの方向にあると考えている。
 ガンドラック氏:過去6〜7年において、量的緩和やその他の常軌を逸した金利政策にもかかわらず、GDP成長率は2%で安定していた。今年はこの安定と決別する年になる。2018年までにはインフレ面でサプライズが起き、これは株価のバリュエーションにとってはマイナスになる。株式市場は今年前半に新高値を付けると予想しているが、金利が上昇して株価は反落する。通年では株価は1桁のマイナスになると予想する。
 Q:見通しに大きな幅がある中で、ポートフォリオはどのように対処すべきか?
 ガンドラック氏:避けるべき幾つかの事項がある。今年の大きな取引の一つはドイツ国債のショートだ。ポートフォリオは長期的に成功してきたデフレ志向から脱却する必要がある。債券への約30%の配分を推奨するが、債券インデックスのような配分は推奨しない。また実物資産への配分を20%に高める。コモディティー・ファンドでも良い。50%を株式に配分するが、米国外への配分を高める。日本とインドが良いとみている。
 コーエン氏:リフレをポートフォリオの基本的なテーマにする必要がある。金利上昇の可能性が高く、イールドスプレッドが急速に縮小している状況では、債券市場は危険度が高い。ゴールドマンでは株式は一部で考えられているほど割高ではないとみている。GDPが今後1〜2年間は最低でも2%成長となり、S&P500指数の利益が上昇すると考えるのであれば、株式市場は割高ではない。また、運用業界に関して言えば、過去20年間におけるパッシブ運用へのシフトに何らかの逆転がある可能性がある。PERの拡大に乗った容易な運用は終わり、今年は優れたアクティブ運用のマネジャーが優位となる可能性がある。また、欧州の長期的な成長率と政治的リスクに懸念がある。日本市場は良好となる可能性がある。多くの投資家が日本市場を、中国市場のような会計や開示に関するリスクがなく、アジアの成長に投資する方法としてみている。日本円は既に対ドルで大幅に下落しているため為替ヘッジの必要はない。
 ガベリ氏:インフレ率が上昇しつつある中で、価格決定力のある企業に投資したい。ポートフォリオへのインフレ連動資産の組み込みも購買力を維持する一つの方法だ。また公益企業も良好だ。金利上昇があれば公益業界でまた統合の動きがあるだろう。合併買収の標的となる可能性のある企業を選好する。
 ロジャース氏:ポートフォリオ構築の面では、短期デュレーションのハイイールド債を選好する。ただし、銘柄選択は厳しく行う。変動利付債、バンクローン商品、新興国債券も選好する。また、フロンティア市場と、日本などの米国以外の先進国も良い。米国株式では、大型グロース株を選好する。バリュエーション面で小型株は良くない。不動産市場では一部で10年前を想起させる異常な事態が進行しており、懸念している。
 Q:1年後のラウンドテーブルでの話題は何か?
 ガベリ氏:規制改革の成功、税率の引き下げ、ロシアに対する制裁の解除。
 プリースト氏:欧州の巨大な地政学的リスク。
 ロジャース氏:中間選挙。予想外だがポジティブな展開として、中国や北朝鮮と米国の関係改善の可能性がある。
 コーエン氏:政策変更に対する期待の色あせ。
 ウィトマー氏:規制緩和による米国企業の生産性向上と株式市場に対する好影響。
 ガンドラック氏:ユーロ圏の問題。
 シェーファー氏:議会や大統領に関係なく米国は正しい方向に向かっていること。
 ブラック氏:トランプ氏の政策案の実施状況。米国例外主義の再浮上と地政学的なリーダーシップの改善が必要だ。
 ズラウフ氏:地政学的な混乱に向かう中で、金が資産の保護を提供できるかどうか。個人的にはできると考えている。
• ズラウフ氏の推奨取引
 Q:まず、ズラウフ氏に2017年の投資の推奨について聞きたい。
 ズラウフ氏:今年の半ばにかけて、アニマル・スピリットによって株式は世界的に上昇する。その時点で市場から退出する必要がある。今年の後半には株式は下落し、恐らくは年初水準を下回ることになる。最善のアプローチは大統領選挙後において好調なセクター、グループ、市場に投資することだ。調整の可能性はあるが、再上昇が予想される。バンガード・バリュー上場投資信託(ETF、ティッカーはVTV)と小型株ETFのiシェアーズ・ラッセル2000(IWM)を推奨する。バリュー株と小型株は好調となる可能性がある。金融株もイールドカーブのスティープ化の恩恵を受ける。ファイナンシャル・セレクト・セクターSPDR(XLF)を買う。
 欧州はバリュートラップの可能性があるため回避する。日本の方がファンダメンタルズははるかに良好だ。日本株と円は両方とも行き過ぎており、反転の可能性がある。円は1ドル=112円までいったん上昇し、その水準まで行けば再度反転して125円まで下落する可能性がある。過去5年間における日本企業の利益成長率は米国の3〜4倍であり、日本市場は過小評価されている。為替ヘッジ付きのウィズダムツリー・ジャパン・ヘッジド・エクイティETF(DXJ)を買う。
 先物市場で10年のイタリア国債とドイツ国債をショートする。10年イタリア国債の先物は134ユーロ、10年ドイツ国債は163ユーロだ。ドイツのインフレ率は、現在は1.7%だが、2%を上回る可能性がある。10年国債の利回りは0.25〜0.3%だ。イタリア国債の利回りは1.90〜1.95%だが、ユーロシステムが崩壊すればイタリア国債市場も崩壊する。ショートは欧州混乱に対するヘッジだ。
 Q:金は混乱のヘッジになるか?
 ズラウフ氏:金は2011年の1オンス=1920ドル以降長期的な弱気市場にあり、2015年12月には1オンス=1046ドルを付けた。その後1350ドルまで反転したが、名目金利と実質金利が上昇しており、金を買う時期ではない。金を買うのはより大きな混乱が起きた時だ。今年の後半、あるいは来年の始めには、金を再び長期的なベースで買う時期になるとみている。
• プリースト氏の推奨銘柄
 Q:次はプリースト氏に推奨銘柄を聞きたい。
 プリースト氏:米国中心の投資を選好する。米国以外では日本を選好する。欧州には問題がある。まず、グーグルの親会社であるアルファベット(GOOGL)を推奨する。最大の検索エンジン広告会社であり、最大のオンライン・ビデオ・サービスのYouTube(ユーチューブ)を保有している。時価総額は約5600億ドルで、バランスシート上の純現金保有高を除いたベースではPERは17〜18倍だ。フリーキャッシュフロー利回りも純現金を除いたベースで2018年には7%台が予想される。2桁台のキャッシュフロー利回りも予想されることから、株価には大きな上昇余地がある。
 アプライド・マテリアルズ(AMAT)も選好しており、保有している。半導体製造装置のメーカーであり、資本集約的な事業だ。2014年に出版された『第二の機械時代(Second Machine Age)』という本があるが、技術による経済の変革に関する良書だ。半導体チップの性能が18〜24カ月で倍増するというムーアの法則があるが、それは実際に起こっている。それによってクラウドコンピューティングや無人自動車が実現しており、アプライド・マテリアルズはまさにこの時代の絶好の位置にある。2019年度には1株当たり3ドルのキャッシュフローを予想しているが14倍の株価キャッシュフロー倍率を想定すると株価は42ドルになる(現在は32ドル)。
 次の銘柄は、ユニバーサル・ディスプレイ(OLED)だ。同社は次世代携帯電話、テレビ、その他の用途で使われるOLED(有機発光ダイオード)を開発しており、企業がOLED画面を製造する際にロイヤルティとライセンス料を得ている。同社は次世代画面で使用されるりん光発光材料で独占的な地位にある。株価は約57ドルだが、1年後の目標株価は85ドル、長期的には100ドルを上回る可能性がある。
 次の銘柄は、ヘクセル(HXL)だ。主に航空宇宙用途での高グレードのカーボン・ファイバーと先進複合材料の数少ないメーカーの一つだ。時価総額は50億ドル足らずにすぎない。2017年予想PERは17〜18倍、2018年予想PERは16倍だ。同社はボーイング(BA)やエアバス(AIR.フランス)から8年分の受注残を抱えており、今後数年間で生産の拡大が予想される。これは、航空業界における受注残解消に対する投資銘柄だ。航空機の機体だけではなく、翼やエンジンなどにおける複合素材の採用を考慮すると、同社の売上高は1桁台後半で伸びる可能性がある。売上高と利益の増加に伴って、恐らく自社株買いを増額するとみられる。

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjqvcfr_MfRAhXFopQKHcG3D_8QFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11163456931573304514904582561963072673128&usg=AFQjCNEoBZbis18XlZG-JXgpEsfJpevLIw

 


バロンズ/コラム
中小企業楽観指数が急上昇、トランプ氏への期待で 米金融市場はトランプ政権への楽観を織り込み過ぎか
12月の米中小企業楽観指数は、トランプ次期政権への期待から、前月比で7.4ポイントという1980年7月以来の大きな上げ幅を記録

By RANDALL W. FORSYTH
2017 年 1 月 17 日 07:48 JST
? 消費者信頼感、ブルベア指数も依然として高水準

 オバマ氏の2008年の大統領選挙戦のポスターを覚えているだろうか。オバマ氏の肖像が赤、ベージュ、青で描かれ、その下にはボールド体の大文字で「HOPE」と書かれていた。そのオバマ氏がホワイトハウスを去ろうとしている今、金融市場、中小企業、消費者の楽観に関する指標がそれぞれの過去最高水準近辺にあるというのは少なからず皮肉なことである。

 全米独立企業連盟(NFIB)が先週発表した昨年12月の中小企業楽観指数は、前月比で7.4ポイントという1980年7月以来の大きな上げ幅を記録した。同指数は11月にも3.5ポイントの上げ幅を記録しており、12月は2004年以来の最高水準である105.8となった。NFIBのチーフエコノミスト、ビル・ダンケルバーグ氏は「12月の数値は、大統領選直後にわれわれが報告した急上昇を確認するものだ」とコメントした。「中小企業のオーナーたちは2カ月連続で経済に関する非常に明るい見通しと自分たちの業績への高い期待を報告した」。

 ミシガン大学が1月13日に発表した1月の消費者信頼感指数(速報値)は昨年12月に記録した12年ぶりの高水準近辺にとどまるなど、消費者も同様に楽観的である。分析会社MFRのチーフ米国エコノミスト、ジョシュア・シャピロ氏は「この指数もコンファレンスボードの消費者信頼感指数も今やグレートリセッション(大不況)前の水準に戻っており、米大統領選挙の結果が総じて非常に肯定的に捉えられていることが、両指数の最近の上昇に表れている」と書いている。同氏はまた、「(信頼感指数の)上昇には、次期政権に対する過去に類を見ないほど強い肯定的感情と否定的感情の両方が伴っている」としたミシガン大学の解説には、「当然のように高度に分極化した」考え方が反映されていると指摘した。

 本誌の読者は十分承知していると思うが、金融市場に目を向けると、ダウ工業株30種平均(NYダウ)が2万ドルの大台に肉薄するなど、米国の主要株価指数は過去最高値水準にある。コンサルティング会社ウィルシャー・アソシエイツによると、米国株は米大統領選挙があった昨年11月8日の終値から約7.4%も上昇しており、米国株保有者の含み益は約1兆9000億ドルになっているという。

 調査会社インベスターズ・インテリジェンスが先週の強気派の割合を58.6%――2014年7月以来の最高水準だった前週の60.2%からはわずかに低下した――と報告するなど、ブルベア指数も直近の最高値近辺で推移している。その一方で直近の集計の弱気派の割合は2015年8月以来の最低水準となる18.3%に低下した。「調整」を予想している人々の割合は2014年6月以来の低水準を記録した2週間前の20.6%から23.1%に上昇した。

 そうした強気派の考え方は、ドイツ銀行の2017年に対する見解レポートで説明されている。「トランプ氏の大統領選出は第2次世界大戦後の時代の経済、金融、安全保障などに関する取り決めの根本的転換を意味することになる。われわれは新政権が米国第一のアプローチに忠実であり続けるとみており、既存の取り決めについては、米国にどのような得があるのか、という視点で再評価されることになる。米国が保護貿易主義に転じることへの懸念もあるが、われわれは国際貿易の混乱を予想していない」。

 「それどころか、トランプ氏の経済計画は政策の配分をリバランスし、米国を大きく変えることになるだろう。従ってわれわれは米国の成長にとても強気である。財政刺激策や広範囲にわたる規制緩和で弾みが付けば、米国経済はより高い成長率、インフレ率、金利の長期的な均衡状態に向かうことが見込まれる」。

? 遅過ぎるぐらいの調整

 ところが、トランプ次期大統領が先週半ばに選挙後初の記者会見を開いたことで、そうした強い楽観はやや弱まったようだ。「偽のニュース」をめぐる言い争いやその後の気まずい雰囲気のせいで、税制改革やインフラ支出については全く語られなかった。

 実際に調査会社BCAリサーチは1月11日の記者会見が「大統領選挙後の市場のトレンドに遅過ぎるぐらいの調整をもたらす材料」になる可能性があると指摘した。そうした調整は数週間で米国の株価、米国債の利回り、ドルの価値などを同時に低下させるという。「万一、そうなったら、われわれはそれを大きなサイクルの反転の始まりではなく、テクニカル分析で買われ過ぎの水準を受けての健全な調整と見なすことになるだろう。市場は楽観を織り込み過ぎており、そのうちの一部は巻き戻される必要がある」とBCAは述べている。

 そうした調整をより悲惨なものと見ている専門家たちもいる。ホライズン・インベストメンツのチーフストラテジスト、グレッグ・バリエール氏は「大統領就任式の1週間前だというのに、トランプ氏への批判が既にかなり高まっている」と述べる。例えば、著名な米評論家チャールズ・クラウトハマー氏はワシントン・ポスト紙に「蜜月期は既に終わった」と書き、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のコラムは「市場が早くもトランプ銘柄の投げ売りを始めた」と主張した。

 「そうした批判は、経済刺激策に何の進展もないというばかげた根拠に基づいているが、そもそもトランプ氏はまだ大統領になっていない」とバリエール氏は反論している。

市場は常に成果を即座に出すことを求めるが、税制改革には時間がかかり、法案が可決されるのはおそらく今年の終わりになると同氏はみている。規制緩和、インフラ支出の拡大、とりわけ税制改革の経済への好影響は2018年まで実感できないだろう。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwi60bnj_MfRAhUGGZQKHUDgA3YQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11163456931573304514904582562234165176626&usg=AFQjCNHsZRIGxY8qr-gbcMt4Dvue7BwA0w


http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/850.html

[経世済民117] ダボス会議:エリートが直面する不確実な世界  有権者の不満と超えられない4%の壁 習主席のダボス参加、表向の顔と裏の意図
ダボス会議:エリートが直面する不確実な世界
2016年は歴史に新たな章が始まった年だった
2016年はトランプ氏の米大統領選勝利や英国のEU離脱決定など、歴史に新たな章が始まった年だった

By STEPHEN FIDLER
2017 年 1 月 17 日 12:34 JST 更新

 今年は違う――。金融機関や企業、政界のエリートが一堂に会し、世界が直面するさまざまな問題を話し合う世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)が、17日から20日までスイスの保養地ダボスで開かれる。世界の経済秩序はほころびが生じており、問題はそれを救えるかどうかだ。

 2016年は、歴史に新たな章が始まった年だった。米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利し、英国が欧州連合(EU)からの離脱を決定し、第2次世界大戦以降進展してきた世界経済統合の潮流が反転した。

 欧州大陸各国では、ユーロ圏債務危機からの経済回復が遅々として進まず、多くの国で賃金は低迷し、失業率は高水準のままだ。それを受け、反既成勢力の政治運動が勢いを強めている。今年は、フランスやドイツ、オランダ、さらにはおそらくイタリアで国政選挙が行われる。反既成勢力の影響力が一層強まる恐れがある。

 こうした動きについて、疎外されていた人々が自らの運命を再び自らの手で切り開けるようになる兆しだと歓迎する向きは多い。これに対し、ダボス会議に参加する世界のエリートなどは、空前の富を産み出した国際的つながりを解体してしまう危険があると懸念している。

戦後経済の根源的な矛盾

 この歴史的転換の中心には、戦後の世界経済の根源的な矛盾がある。自由貿易や相互依存の深化、急速な技術革新により、開発途上国では何十億人もの人々が貧困から抜け出し、中間層が急増した。一方で先進国もさらに豊かになったが、その恩恵は少数にしか行き渡らず、多くの人が取り残されたり、疎外されたりしていると感じている。モノやカネの自由な移動と国際的規範の受け入れを特徴とするグローバリゼーションは、富の創出はできてきたが、人々の福祉を最大化するのにはそれほど成功していない。

 過去のグローバリゼーションを研究している歴史学者の中には、現代版グローバリゼーションがもたつきながらも進むことができるのか疑問を投げ掛ける向きもある。プリンストン大学のハロルド・ジェームズ教授は「私の勘では、どうやっても乗り切ることはできないだろう」と悲観的な見方を示す。

 同教授は、第1次大戦前などに起きた過去のグローバリゼーション崩壊の特徴は「新たな断層線を浮き彫りにする予想外の危機が突然発生したことだった」と指摘。その上で、昨年のトルコ駐在ロシア大使の暗殺のような事態がエスカレートし制御不能になりかねない出来事に対し、「世界は今や非常にぜい弱になっている」と警鐘を鳴らす。

APEC首脳会議の開催地リマで反TPPのプラカードを掲げるデモ参加者 ENLARGE
APEC首脳会議の開催地リマで反TPPのプラカードを掲げるデモ参加者 PHOTO: RODRIGO BUENDIA/AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
 多くの先進国の内側では、何かが間違った方向に向かっている。2008年の金融危機以降、多くの西側諸国では経済不安が強まり、所得格差が拡大。所得格差の一因は技術革新で、高いスキルを持つ高学歴な人たちはその恩恵を受けている。勝者は世界的都市の中心に集中し、多くの生活困窮者は農村部や小都市に取り残されているように見える。

 英国のシンクタンク、リゾリューション・ファウンデーションは、英国のEU離脱と米大統領選のトランプ氏勝利の間にはいくつか重要な類似点があると指摘する。米大統領選では、相対的に貧困な地区の有権者は、前回大統領選と比較すると、共和党候補(トランプ氏)支持に大きく振れた。英国ではそれほど裕福でない地区の住民の間ではEU離脱賛成が多かったという。

 欧州では各国でも同じような傾向がある。脱工業化した地域の多くでは、比較的高齢かつ低学歴の有権者は移民への不安感が高く、反グローバリゼーション政党への支持が強い。ピュー・リサーチ・センターは昨年行った調査報告書で、「年配の欧州人は若い欧州人に比べると内向きになっている」と結論付けた。欧州では有権者の平均年齢も上昇している。

所得格差とテロへの不安

 格差拡大は、国によってそれぞれ違う形で表れている。米国では、失業率は低く、平均賃金は金融危機以降上昇しているが、労働参加率はほぼ40年ぶりの低水準だ。多くの成人が、職探しをあきらめていることがうかがえる。英国では、失業率は低く、平均賃金も上昇しているが、実質賃金は金融危機以降10%低下している。欧州大陸の大半の国では、失業率は依然として高いままだ。

 先進国では所得格差に加え、移民やテロへの不安もあって、主流政治家やエリート層に対する反発が高まっている。

 西側当局者によれば、そうした傾向を煽っているのがロシアだ。トゥスクEU大統領は昨年10月、「ロシアは何にも増して、EUの政治プロセスに偽情報キャンペーンやサイバー攻撃で介入することで、EUを弱体化させようとしている」と警告した。米情報機関も、トランプ氏の勝利に手を貸すため、ロシアが米大統領選に介入したと前代未聞の調査結果を公表している。

 こうした潮流の恩恵を受けているのは、反移民や排外的なレトリックを多用し、文化的アイデンティティーと反既成政治の訴えを結び付ける政党だ。こうした政党はナショナリスト的な姿勢を打ち出しているが、協力し合うことが多い。英独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ前党首は、他の欧州諸国の反既成政党の集会に定期的に参加しており、米大統領選後にトランプ氏と会談した最初の外国の政治家となった。

必要とされる新たな牽引役

 強引なナショナリズムは、左派・右派双方の経済政策と混ざり合うことが少なくない。トランプ氏は大統領選で、通常は右派が唱える減税と、通常は左派が訴える社会福祉の維持や保護貿易を公約に掲げた。大半の主流派経済学者は、貿易障壁を構築すれば、経済成長を阻害するとの見方で一致している。成長がなければ、所得分配に関し政治的な決定を下すのは難しくなる。したがって多くの経済学者は、ポピュリスト政党が提案している解決策では、むしろ問題を悪化させる可能性が大きいとみている。

 グローバリゼーションは牽引役を必要とする。19世紀にはほぼずっと英国がその役割を担い、現代では米国が取って代わっている。だが目下、米国は内向きとなっているようだ。ロシアは長年にわたり米国の指導力に盾突いてきた。しかし、周辺国を不安定化させせる大国ではあるが、経済的な影響力はない。EUはと言えば、解体するか、少なくとも縮小する公算の方が大きい。

 米国に取って代われる可能性があるのは中国だけだ。習近平国家主席はダボス会議に参加する初の中国首脳となる。だが、中国が世界の指導者役を引き受ける用意が出来ているかどうかは疑問だ。起こりそうにないことだが、トランプ氏がそれを容認するつもりがあったとしてもだ。かくして、世界はますます不確実性が高まっていくだろう。

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有権者の不満と超えられない4%の壁
労働力あるところに資本は流れず
https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-RN240_0106da_M_20170106143755.jpg
1984年の共和党全国大会でのレーガン氏(左)とブッシュ氏 PHOTO: CORBIS VIA GETTY IMAGES
By
GERALD F. SEIB
2017 年 1 月 17 日 13:26 JST
――筆者のジェラルド・F・サイブはWSJワシントン支局長
***
 1992年の米大統領選で現職のジョージ・H・W・ブッシュ氏が再選に失敗した数日後、側近の1人だったエド・ロジャーズ氏は「4%の経済成長率さえあれば、選挙戦略に間違いはなかった」と振り返った。
 不満を抱いた有権者たちが各国の既存体制を次から次へと混乱に追い込む中、現代の先進国首脳たちもロジャーズ氏のこの嘆きに共感できるだろう。有権者から継続的に攻撃を受けても力強い経済成長を記録していれば世間は落ち着きを取り戻し、感情的になることもない。しかし各国政府はその絶対的な防御策を失っている状態だ。
 それどころか経済の低成長が続く中で、各国指導者は生き抜くために必死だ。ここ数カ月の間にも米国でドナルド・トランプ氏が当選し、英国では国民投票で欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が決定し、イタリアでも与党の敗北があった。これらが生じた背景にはいくつかの理由があるが、根底には長期的経済動向に物足りなさを感じている有権者の不満がある。「低成長、それによる経済活動の低迷、そしてそこから生じる収入減こそが、2016年の政治を動かした」とロジャーズ氏は今、話す。
 先進国では高度成長が持続しない期間があまりにも長く続いているため、貧弱な成長が当たり前のようになってしまっている。米国の情勢を見れば、それは一目瞭然だ。
 ロナルド・レーガン元大統領が一期目の任期に就いていた1983年から米国は3年連続で4%以上の経済成長を記録し、その後の17年のうち9年間は政治的に重要なその目標を達成した。実はブッシュ氏が再選を狙った際も、2年間の小康状態を経て経済は上昇気流に乗っていたのだが、変化の表れが遅すぎて有権者は気づくことができなかったのだ。
 だが2000年代への突入を契機にこの流れは終わりを迎え、過去15年間にわたって米国経済の年間成長率は一度も4%を超えたことがない事態となっている。
 しかしこれは米国内に限られたことではない。国際通貨基金(IMF)のデータによれば、過去15年の間に従来の先進7カ国の中で一度でも4%の成長を達成したことのある国は2010年の日本を除いて存在しない。つまり先進国である程度の頻度で見られていた力強い経済成長率は、今や死に絶えてしまったと言えるだろう。

先進7カ国の経済成長率
https://si.wsj.net/public/resources/images/WO-BC664_SEIB_16U_20170113142408.jpg

 経済低成長時代において、政治指導者たちは二つの厄介な任務を託されている。ひとつは不満を感じている有権者に対し、経済がひ弱な理由を説明すること。そしてもうひとつは、どう対処すべきか政府は分かっていると国民を納得させることだ。
 先進国の有権者たちは経済のグローバル化から得られる恩恵の大半を「自分たちのものにすることに慣れてしまっている」。ジョージ・W・ブッシュ政権で経済問題に取り組んだ経歴を持つトニー・フラット氏はそう話す。しかしこれまでは利益をもたらすと考えられていたグローバル化や技術の進歩が今は懸念や不安材料となり、場合によっては負債となる可能性があると多くの人が結論付けている。そのことに気付いたのは、政治指導者たちよりも有権者の方が早かった。
 ジョー・バイデン副大統領の経済顧問を務めたジャレッド・バーンスタイン氏は、「付加価値の高い製造業に依存していた地域社会の人たちは、何年にもわたってグローバル化が痛手となっていると政府に訴えてきた。しかし誰もその声にしっかりと耳を傾ける人はいなかった」とし、次にこう述べた。「むしろ政治エリートは、次の貿易協定を結べば新たな機会がもたらされると約束し続けた」
 その結果、政治や経済のエリート層が有権者の利益のために働いてはいないという考えに共感する人物が支持を受けることとなった。トランプ氏はその一例であり、ブレグジット運動のリーダーであるイギリスのナイジェル・ファラージ氏もそこに含まれる。そして欧州各国のナショナリズムを掲げる政党リーダーたちも、同じ道をたどろうとしている状況だ。
 しかしここで問題となるのが、これらリーダーたちが実際に経済の低成長を改善できるかどうかという点だ。トランプ氏は減税と規制緩和、強硬的な貿易政策、そして移民政策の強化によってそれがもたらされると計算している。しかし中には、この考え方では現実問題は解消されないだろうと不安を口にする人もいる。
 2008年の大統領選で共和党候補だったジョン・マケイン上院議員の経済顧問を務めたダグラス・ホルツ・イーキン氏もそのひとりだ。同氏は、資本は先進国にあるが労働力は途上国に存在していると話し、世界経済にミスマッチが生じていると指摘する。
 資本が労働力のある国に流れ込むとする経済学者の考え方は、正しいとは言えなかったとホルツ・イーキン氏は話す。そのため今は移民などを通して労働力が資本のある国に流れ込もうとしているが、ナショナリズムをうたう政治運動がその阻止を狙っている状況だ。
 「人が増えなければ4%(の経済成長率)を達成することはできない」と同氏は言う。
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習主席のダボス参加、表向きの顔と裏の意図グローバル化の擁護者を演じる筋金入りのナショナリスト
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ダボス会議に中国のリーダーとして初めて参加する習近平国家主席(英語字幕のみ) Photo: Getty
By
ANDREW BROWNE
2017 年 1 月 17 日 11:44 JST
――筆者のアンドリュー・ブラウンはWSJ中国担当コラムニスト
***
 【上海】世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)に参加する世界のエリートに、今年は中国の習近平国家主席が加わる。英国が欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を決定したり、米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利したりと、エリートたちが推進してきたグローバル化に疑念が生じていることを踏まえれば、習氏の参加は妙に時宜を得ているように思える。
 毎年スイスのこの山岳リゾートに集結するコスモポリタン(国際人)の中で、習氏は場違いな存在になるだろう。ハーバード大学の政治学者サミュエル・ハンティントン氏は「ダボスメン」という呼び方をはやらせた人物だが、この言葉は同じ国の同胞よりも互いの企業の中で居心地の良さを感じ、地元の地域社会より人類全般に思いをはせるような人々のことを皮肉たっぷりに表現したものだ。
 ダボス会議に中国のリーダーとして初めて参加する習氏はダボスメンとは正反対の人物だ。筋金入りのナショナリストである。
 しかも、世界の富の配分が裕福な先進諸国から新興諸国へと劇的に変化した結果、中国は他のどの国よりもその恩恵を受けた――数億人の中国人が貧困から脱却した――にもかかわらず、習政権のグローバル化に対する姿勢には相反する二つの側面がある。
 それでもダボスでの習氏は、グローバル化の偉大なる擁護者としての自分を演出してみせるだろう。
習氏が嫌うエリートの説教
 だが、いったい何からグローバル化を守るのか。習氏のダボス参加の最たる皮肉は、同氏がグローバル化への懐疑心を欧米の一部有権者と共有していることだ。彼らは文化・経済の両面で最も大事にしてきた理想を捨て去ろうとしている。
 習氏は説教じみたエリートとそのリベラルな価値観を特に不快に思っている。告発サイト「ウィキリークス」で暴露された外交公電によると、習氏は政権の座に就く前、メキシコで珍しく無防備に、これらの「肥えた外国人はわれわれの問題を批判すること以外、何もすることがない」と表現した。昼食会議の席で、「中国は第一に、革命を輸出していない。第二に、貧困や飢餓を輸出していない。第三に、あなた方に迷惑をかけていない」と話した。
 中国政府の公式な見解を映し出す大勢の中国人アナリストがトランプ次期政権に対して驚くほど楽観的な見通しを持っているように見えるのは、こうした欧米エリートへの敵意があるためだ。彼らはトランプ氏を気の合う人物として見ているのだ。
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APEC首脳会議に出席するためペルーのリマに到着した習主席(2016年11月21日) PHOTO:GUADALUPE PARDO/REUTERS
 確かに、トランプ氏が最近示した台湾支持の姿勢は中国人アナリストらを警戒させはした。中国を相手に貿易戦争を起こしかねないような発言も同様だ。しかし彼らの慎重ながらも楽観的な見方は変わらず、トランプ氏は実利的なビジネスマンとして統治にあたると考えている。国民の大きな一角を置き去りにしてきたエリート主導のグローバル化への邁進は国の結束に危険であることを、同氏は自分たちと同様に理解すると彼らは考えている。
 習氏は昨年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、グローバル化を最初から作り直さなければならないと述べた。「その回復力や包括力、持続力を向上させ、人々がその恩恵から公平な分け前を得られるように、また自分たちもそこに関わっているという認識を持てるように」するためにだ。
トランプ氏とそっくりな政策
 習氏が人前で見せる慎重さとトランプ氏の情熱は対照的だが、両者の政策は驚くほど似ている。2人とも自国を最優先に置く。トランプ氏のスローガン「米国を再び偉大に」は、習氏の大きな野心「チャイナドリーム」とそっくりだ。
 このため中国の影響力ある識者の中からは、同国をおびえさせている米国主導のグローバリズムをトランプ氏が弱めるだろうとの見方も出ている。こうしたグローバリズムは、中東や中・東欧の旧共産圏諸国で起こった一連の政権交代やいわゆる「色の革命」をあおってきた。
 習氏はグローバル化を全く別の方向に持って行きたいと望んでいる。中国は国境をまたいだサプライチェーンにつながることと、外資を受け入れることで今の繁栄の大部分を築いてきた。にもかかわらず習氏は国境のない世界という経済ビジョンを快く思っていない。この開放性と中国式の国家資本主義は容易に交わらない。中国は国有企業を肥大化しつつある一方で、IT(情報技術)セクターの多国籍企業を閉め出している。
 多文化主義についてはどうか。習政権は人種を基にした国家アイデンティティーを恥じらいもなく強調する。チベット族や大半がイスラム教徒のウィグル族など少数民族は、これを漢民族の優越主義だと批判している。
 何よりも習氏は絶対的な国家主権を主張している。中国政府は社会主義制度の転覆を謀っているとする欧米諸国の「敵対勢力」を激しく非難。そして、ネット上の「国境」を確保し、破壊活動につながりかねない情報の流れを管理する「インターネット主権」の世界的な推進者となった。
 習氏は昨年、グローバル化の旗手の中でも外国NGO(非政府組織)に照準を合わせ、すべてを警察の管理下に置いた。
 習氏は当然ながら、グローバル化の動きが丸ごと反転することを望んでいるわけではない。経済成長が失速し、資本が国外に流出している中国は今、安定した輸出と外資の流入をかつてないほど必要としている。ダボス会議で同氏は目玉政策の「一帯一路」構想を売り込むだろう。港湾や鉄道、通信網といった貿易インフラを陸路と海路に沿って整備し、アジアから中央アジア、中東、アフリカを経由して欧州まで続く交易ルートを形成するという構想だ。
 しかし、この野心的な計画にも重要な注意点がある。中国の意図は国境を崩壊させることよりも、周辺諸国を地政学的に影響が及ぶ範囲に引っ張り込み、自国が抱える余剰生産力の受け皿として新たな市場を創出することにあるのだ。
 習氏の世界観の中心にあるのは結局、中国だ。ダボスメンと呼ばれる聴衆を前に、同氏は矛盾しているが大胆不敵な技の披露を試みるだろう。グローバル化の救世主というポーズをとりながら、グローバル化の死を祝うのだ。
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• ダボス会議:エリートが直面する不確実な世界
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http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/854.html

[経世済民117] トランプ税制改革の盲点、軽視される関税 金融当局衝突 世界CEO景気楽観 美味しい電力債 トルコ下落−ブ中銀レアル下支え
バロンズ/株式市場展望
トランプ税制改革の盲点、軽視される関税

投資家は減税公約に期待しているが――
By KOPIN TAN
2017 年 1 月 17 日 07:48 JST
?トランプ相場は続くが…

 ミュージシャンのガース・ブルックスあるいはエルトン・ジョンが、ドナルド・トランプ氏の大統領就任式に出演しなかったとして、何の問題があるだろうか。各国首脳はカレンダーの1月20日に印を付け、トランプ次期大統領の政策が自国の経済、通貨、市場にどのような影響を及ぼすのかを注視している。

投資家は国境税の議論にあまり注意を払っていない PHOTO: Pixabay
投資家は国境税の議論にあまり注意を払っていない PHOTO: Pixabay
 これまでのところ、市場では誰も貿易戦争どころか通商上の小競り合いさえ予想していないようだ。ナスダック総合指数は2017年に入り終値ベースで6回も最高値を更新し、S&P500指数は過去最高値をわずか0.1%下回る水準にある。好調なのは米国だけではない。英国の代表的株価指数であるFTSE100指数は、前途多難な英国のEU離脱交渉をものともせず1月13日に12営業日連続で最高値を更新し、MSCI世界指数も11月8日以降5.4%上昇して、当然のように最高値を更新した。

?トランプ氏の税制改革案はGDPに打撃

 投資家は法人税率引き下げや企業の海外利益の本国送還(レパトリ)奨励策など、トランプ氏の市場寄りの税制改革案を好感している。ただ、税収基盤を仕出地(生産・出荷が行われる国・地域)から仕向地(最終消費地)にシフトするという比較的複雑な提案についてはあまり注意を払っていない。この提案によって、ソフトウエア企業や映画会社などの輸出業者が恩恵を受ける一方で、輸入品を販売する小売業者は打撃を被る可能性がある。

 理論的には、こうした国境税調整は国内生産と輸出を促進し、輸入品に対する課税は減税の穴埋めに役立つはずだ。しかし、シティグループで為替戦略グループのグローバル責任者を務めるスティーブン・イングランダー氏は、「国境税の議論は、相手国が同じことをする可能性を無視している」と論じる。

 米大統領は議会の承認なしで関税を課すこともできる。バークレイズのチーフ米国エコノミストのマイケル・ゲイペン氏は、「次期政権が関税を課すとの公約を実行する意思があるという、強いシグナルが発信されている」と述べる。トランプ氏は、詐欺師と見なす貿易相手国に対して強硬な政策を採るよう主張するピーター・ナバロ氏を、新たに設置する国家通商会議の代表に指名した。

 輸入品は米国の国内総生産(GDP)の約15%を占め、輸入品が多い消費財はコア消費者物価指数(CPI)の25%を占める。ゲイペン氏は、国境税調整はインフレ率を前年比で約1ポイント押し上げる可能性があると予想する。バンク・オブ・アメリカのグローバルエコノミスト、イーサン・ハリス氏が引用した経済協力開発機構(OECD)の調査によると、米国、欧州、中国がいずれもモノの貿易コストを10%引き上げた場合、輸出と輸入が急減し、それぞれの国・地域のGDPが2〜3%減少する。これを10年間で割り振ると年間で0.2〜0.3%の打撃が及ぶ計算になる。しかも、この数値には貿易紛争が企業や消費者の信頼感に及ぼす影響が織り込まれていない。

?米中関係の悪化が最大のリスクに

 では、他の国々は強硬な貿易政策にどう反応するのだろうか。中国の習近平国家主席は5年にわたる第1期目の最終年を迎え、第2期目への円滑な移行を望んでいるが、自らが世界の舞台で姿勢を後退させていると見られたくはないだろう。

 トランプ氏は中国をいら立たせる一方で、ロシアには擦り寄る姿勢を引き続き示している。USトラストのチーフ市場ストラテジスト、ジョセフ・クインラン氏は、二大貿易大国である米国と中国の緊張の高まりが「2017年の世界経済に対する最大のマクロ・リスクになる」と述べている。

 同氏は、米中関係が厳しい方向に進むと見られる一方で、米ロ関係は「ある種のハネムーン」状態にあるため、米国企業に「非対称のリスク」をもたらすと論じる。中国の消費者の購買力はロシアの6倍に上り、米国の月間対中輸出額(97億ドル)は対ロ輸出額(71億ドル)を上回り、米国企業の中国拠点はロシア拠点の5倍に上る。そして、忘れてはならないのは、米連邦債務の対GDP比が100%を突破して増加する中で、中国は1兆1000億ドルに上る米国債を保有しており(ロシアの保有額は750億ドル)、米国のクレジット市場に影響力を持っているという点だ。
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トランプ氏と米金融当局は衝突へ、2桁のドル上昇も−エコノミスト
Alessandro Speciale、Mark Deen
2017年1月17日 07:29 JST

ゴードン教授とアイケングリーン教授がパリの会合で指摘
トランプ氏がイエレン議長を再任しないのはほぼ確実−ゴードン氏

トランプ次期米大統領と米連邦準備制度との間では衝突が予想されるとともに、双方の政策はほぼ確実にドル高につながるだろうと、著名エコノミスト2人が指摘した。

  米ノースウエスタン大学のロバート・J・ゴードン教授は16日にパリで開かれた会合で、「トランプ政権が3−4%の成長を望む一方で、2%の物価目標を掲げる連邦準備制度はインフレ台頭に注目を強めることから、向こう1年か1年半に両者の間で大きな衝突が起こる可能性があると思う」と分析。米カリフォルニア大学バークレー校のバリー・アイケングリーン教授はトランプ政権による財政出動や税制改革、保護主義的な通商政策の結果として「2桁」のドル上昇の可能性を予想した。

  トランプ氏の経済目標はフランス銀行(中央銀行)主催の「長期停滞論」に関する会合の焦点となった。先進国が緩慢な成長と生産性の停滞に長期間見舞われるとする同理論とは対照的に、トランプ氏はインフラ投資や減税、米国に雇用を取り戻す政策を通じて米経済成長をてこ入れすると公約している。

  ゴードン氏によると、既に賃金上昇圧力や労働力不足が生じている中でトランプ氏のこうした政策が実施されればインフレ加速につながり、米金融当局は利上げペースを速めることになるという。

  同氏は「トランプ氏がイエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長を再任しないのはほぼ確実だ。再任するかどうかが問題となる今から1年後には、議長は既に利上げをしてトランプ氏をいら立たせているだろう」と予想。「金利上昇に伴うドル高は貿易赤字の拡大要因となり、貿易赤字削減を望むトランプ氏の望みを台無しにする。トランプ氏の成長目標達成に大きな障害となろう」と分析した。

  アイケングリーン教授は「既に高水準にある現状に比べても大幅にドルが強まる可能性がある」と論じた上で、「市場や世界の金融システムがそうした結果に準備ができていない危険がある」との見解を示した。

原題:Trump, Fed Headed for Clash Amid Dollar Surge, Economists Say(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJW5K06JIJUP01


 


Business | 2017年 01月 17日 10:13 JST

世界のCEO、景気・業績に楽観的見方広がる=PwC調査


 1月16日、会計監査大手プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が公表した調査によると、企業の最高経営責任者は1年前よりも景気や目先の業績について強気な見方を示していることが明らかになった。写真は世界経済年次フォーラムが行われるスイス・ダボス。15日撮影(2017年 ロイター/Ruben Sprich)
[ダボス(スイス) 16日 ロイター] - 会計監査大手プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が16日公表した調査によると、企業の最高経営責任者(CEO)は1年前よりも景気や目先の業績について強気な見方を示していることが明らかになった。

調査は約1400人のCEOを対象に実施、17日に始まる世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)を前に結果が公表された。それによると、CEOの29%は世界の経済成長率が2017年に加速すると予想、1年前の27%から上昇した。

今後1年で自社の売上を伸ばすことに非常に自信があると回答したCEOは38%と、前年の35%から上昇。

PwCのグローバル会長、ボブ・モリッツ氏はロイターに対し、前年は原油価格の長期下落や中国の景気減速、米大統領選をめぐる不透明感を映してCEOの見通しが特に弱かったと指摘。

米大統領選はトランプ氏の勝利という劇的な結果となったが、一部のCEOは法人税の削減や規制緩和など企業に好意的な政策に期待感を示した。

モリッツ氏は「世界は複雑化しているためCEOの懸念材料は増えている。CEOが懸念するリスクは長期リスクだ」と指摘。調査は向こう1年しか反映していないため、トランプ氏の大統領就任や英国の欧州連合(EU)離脱の影響を全面的に織り込むことはできないと述べた。

調査では英国のCEOの41%が目先の売上の伸びに強い自信を示すとともに、63%は向こう1年で社員を増やすとの見通しを示した。

世界のCEOの半数以上は今年、社員の増加を見込んでおり、比率は前年を上回った。

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焦点:分岐点のドル高/円安相場、トランプ発信で振れ幅拡大も
http://jp.reuters.com/article/ceo-forecasts-idJPKBN151037


 

トランプ氏と米金融当局は衝突へ、2桁のドル上昇も−エコノミスト
Alessandro Speciale、Mark Deen
2017年1月17日 07:29 JST

ゴードン教授とアイケングリーン教授がパリの会合で指摘
トランプ氏がイエレン議長を再任しないのはほぼ確実−ゴードン氏

トランプ次期米大統領と米連邦準備制度との間では衝突が予想されるとともに、双方の政策はほぼ確実にドル高につながるだろうと、著名エコノミスト2人が指摘した。

  米ノースウエスタン大学のロバート・J・ゴードン教授は16日にパリで開かれた会合で、「トランプ政権が3−4%の成長を望む一方で、2%の物価目標を掲げる連邦準備制度はインフレ台頭に注目を強めることから、向こう1年か1年半に両者の間で大きな衝突が起こる可能性があると思う」と分析。米カリフォルニア大学バークレー校のバリー・アイケングリーン教授はトランプ政権による財政出動や税制改革、保護主義的な通商政策の結果として「2桁」のドル上昇の可能性を予想した。

  トランプ氏の経済目標はフランス銀行(中央銀行)主催の「長期停滞論」に関する会合の焦点となった。先進国が緩慢な成長と生産性の停滞に長期間見舞われるとする同理論とは対照的に、トランプ氏はインフラ投資や減税、米国に雇用を取り戻す政策を通じて米経済成長をてこ入れすると公約している。

  ゴードン氏によると、既に賃金上昇圧力や労働力不足が生じている中でトランプ氏のこうした政策が実施されればインフレ加速につながり、米金融当局は利上げペースを速めることになるという。

  同氏は「トランプ氏がイエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長を再任しないのはほぼ確実だ。再任するかどうかが問題となる今から1年後には、議長は既に利上げをしてトランプ氏をいら立たせているだろう」と予想。「金利上昇に伴うドル高は貿易赤字の拡大要因となり、貿易赤字削減を望むトランプ氏の望みを台無しにする。トランプ氏の成長目標達成に大きな障害となろう」と分析した。

  アイケングリーン教授は「既に高水準にある現状に比べても大幅にドルが強まる可能性がある」と論じた上で、「市場や世界の金融システムがそうした結果に準備ができていない危険がある」との見解を示した。

原題:Trump, Fed Headed for Clash Amid Dollar Surge, Economists Say(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJW5K06JIJUP01


 
新興市場:トルコ・リラが下落−ブラジル中銀、レアル相場下支えへ
Cecile Gutscher、David Goodman
2017年1月17日 08:47 JST
16日の新興市場では、トルコ・リラが2.4%安と、昨年7月以来の大きな下げ。リラはトルコ中央銀行が流動性を引き締める措置を講じたのを受けて12日と13日に計3.7%上昇していた。また、ブラジル中央銀行は通貨レアル下支えのため為替スワップ入札を再開すると発表。2月1日に満期を迎える1万2000枚のスワップ契約(6億ドル=約680億円相当)のロールオーバー入札を17日に実施する。
株式
ブラジルのボベスパ指数は前週末比0.3%高。鉄鉱石価格の上昇で鉄鉱石生産会社や鉄鋼メーカーが高い
チリ、コロンビア、メキシコの株価は下落。メキシコ市場ではセメントメーカーのセメックスや同国最大の携帯電話サービス会社、アメリカ・モビルの下げが目立った
債券
モザンビークの2023年1月償還債は額面1ドル当たり55セントに下落。同国政府は利払いを履行しない意向を示し、年内いっぱい債務返済に苦労するとの見通しを明らかにした。
商品
金価格は0.4%高の1オンス=1202.78ドルと、先週の上げを拡大
原油価格は0.5%高の1バレル=52.64ドル
原題:Brexit Plans Rattle Pound and Stocks as Gold Rises: Markets Wrap(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJWBA26K50YJ01

「おいしい」電力債、超長期金利上昇と原発プレミアム−国債代替需要
呉太淳
2017年1月17日 00:01 JST

社債利回りのベースとなる国債は8年以下マイナス、超長期プラス
信用力は「今の格付けよりは本当は高い」とみずほ証の大橋氏

日本銀行の超低金利政策の下で多くの日本の社債利回りが低迷する中、年限が長くスプレッド(上乗せ金利)も乗った電力債は相対的に利回りが高く、投資妙味があると市場関係者はみている。
  バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのデータによると国内社債の平均利回りは0.25%と、昨年1月の日銀のマイナス金利政策発表前日の0.31%を下回っている。一方、超長期の電力債は利回りが高く、13日に発行された中部電力債(2037年償還)の表面利率は0.84%。ブルームバーグのデータによると先月発行の九州電力債(36年償還)の流通利回りは0.959%。
  積極財政論者のトランプ氏が米次期大統領に選出され、米国を中心に金利が上昇基調にあるのに対し、日本では日銀が昨年9月、導入した長短金利操作の下で金利上昇は一部に限られている。社債利回りのベースとなる国債利回りは残存8年以下がマイナス圏にとどまっており、20年債と30年債は0.6ー0.7%程度の利回りが残っている。
  SMBC日興証券の伴豊チーフクレジットアナリストは、13日付のリポートで「国内金融機関の多くでは保有している大量の国債の償還が迫っている」とし、代替投資として社債が物色されるとの見方を示した。セクター別では、相対的に利回りの高い超長期の電力債や公的セクターに投資妙味があるとの見方を示した。ニッセイ基礎研究所の徳島勝幸年金研究部長は、「利回りが稼げる超長期債はありがたい」と語った。
  ブルームバーグのデータによれば、年限15年以上の電力債発行額は16年度に入ってから16日までに1100億円に上り、前年度同期の200億円を大きく上回っている。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iGbFRk2ia5vg/v2/-1x-1.png

電力プレミアム
  大型の設備投資を必要とする電力会社の社債は、鉄道やガス、不動産などと並び年限が長くなる傾向がある。そうした中で、電力債は原発リスクがあるため、他の超長期社債よりも「スプレッドが乗っている」と徳島氏は話し、その分「おいしい投資先になっている」と言う。
  みずほ証券の大橋英敏チーフクレジットストラテジストは、電力各社の信用力について「今の格付け水準よりは本当は高いところにある」とし、福島第一原発事故で拡大したスプレッドが縮小しきっていないと指摘した。電力自由化の影響があまり大きくなかったことや、一部の電力会社は原発停止による費用増を電気料金に転嫁できていることを信用力改善の理由に挙げた。
  S&Pグローバル・レーティングの主席アナリスト、柴田宏樹氏は16日のセミナーで、一部で原発再稼働が実現しつつある電力業界について「ポジティブと見ている」とし、自由化の影響は「中長期的には信用力の制約になるが、短期的にはネガティブにはみていない」と述べた。
  電力広域的運営推進機関によると、電力が自由化された昨年4月以降、新電力に切り替えたのは全体の約3%にとどまっている。また、ブルームバーグのデータでは、原発の代替電力の燃料として日本に到着する液化天然ガス(LNG)の100万BTU(英国熱量単位)当たりの価格(16年12月)は、14年の半額以下の6.8ドル。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJPPFB6KLVR601


 


http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/855.html

[国際17] 政治が混乱なら世界経済停滞のリスク インド花嫁、金不足で結婚できず  ケニア貧困救うモバイルB 英成長鈍化−個人消費低迷
政治が混乱なら世界経済停滞のリスク

−アリアンツのエラリアン氏
Denise Wee
2017年1月17日 06:33 JST

政治が一層内向きになれば、低成長からリセッションへ変わる恐れ
モハメド・エラリアン氏がアジア金融フォーラムで語る

アリアンツの主任経済顧問、モハメド・エラリアン氏は16日、政治が混乱する場合、世界的な景気停滞を引き起こすリスクがあると警告した。
  エラリアン氏は香港で開催中のアジア金融フォーラムで、世界中で政治が一層内向きになる場合、「低成長からリセッション(景気後退)へ、人為的な金融安定から不安な金融ボラティリティーへと変化するリスクがある」と語った。
  同氏は、2017年が昨年とほぼ同じ展開となり、ある程度の改善が見込めるといった見方が強いと指摘。こうした見方に基づけば、今年の世界成長率は3%未満になると予想した。
モハメド・エラリアン氏
モハメド・エラリアン氏 Photographer: Michael Nagle/Bloomberg
  ただ、米国が保護主義的な取り組みを強め、各国の選挙で反エスタブリッシュメント陣営が健闘しナショナリズムが急激に高まった場合、世界経済への痛手となる可能性があると指摘した。
原題:Allianz’s El-Erian Highlights Politics as Risk to Global Growth(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJW58T6S972A01

 


 

ケニアを貧困から救うモバイルバンキング
特に大きな恩恵を受けているのは女性
「モバイルバンキング」というイノベーションが貧困緩和に貢献している
By MELVIN KONNER
2017 年 1 月 17 日 09:06 JST

 昨年11月の米大統領選挙で十分に示されたように、グローバル化と止めどない技術変革には批判の声が多い。筆者の同僚である人類学者の多くは、これら2つのトレンドは中国に大きな恩恵を与えたが、世界の貧困層の大半を置き去りにしたと指摘する。ただ、アフリカのケニアで実施され、12月に米学術誌サイエンスで発表された調査は、それとは違った見方を提示している。

 筆者が1969年に初めて訪れたケニアは極度の貧困が一般的だった。それから人口は4倍になったが、格差はまだ残されている。2011年には、4人に1人が1日あたり1.25ドル未満で生活する「絶対的貧困層」に入っていた。いくつかの尺度から見て、男性よりも女性の方が経済的に困窮している。

 しかし、これは変化しており、新たな調査がその理由の一つを提示している。マサチューセッツ工科大学(MIT)のタブニート・スリ氏とジョージタウン大学のウイリアム・ジャック氏の経済学者2人は、長年にわたる調査で1600世帯のデータを収集。「モバイルバンキング」が並外れて大きな影響力を持つイノベーションであることを突き止めた。これを全国レベルに適用し、他の関連要因を加味した上で、両氏は2008年から14年の間に「M-PESA(スワヒリ語で『モバイルマネー』の意味)」がケニアの最低19万4000世帯を絶対的貧困層から抜け出させたと推測した。

 スリ氏はケニアで育ち、英ケンブリッジ大学と米エール大学を経てMITに移った。ただ、これは片道切符ではなかった。同氏は毎年数カ月を費やし、母国ケニアの人々の貧困緩和に役立つ方法を研究している。

 携帯電話のおかげで貧困国は、完全な地上通信ネットワークを構築する必要がなくなった。現在、伝統的な銀行も不要になりつつある。

過去10年間でモバイルマネーはケニア世帯の96%まで浸透し、小さなキオスクを営業拠点とする11万の「エージェント」が全国に散らばっている。(顧客からキオスクまでの平均距離は約1.6キロメートル、銀行までは約10キロ)そこでは現金を預けたり、引き出したりすることができる。いったん預金をすれば、ほぼ全ての場所で支払いをすることができる。スリ氏は「デビットカードを思い浮かべるといい」と筆者に話した。また、親戚に送金したり、私的な融資を行ったり、キャッシュレスで投資資産を共有したりすることも可能。つまり、これは「金融面の弾力性」を高めるのだ。

 スリ氏は「距離の要素」を強調し、携帯によって「かなり遠く離れた人との関係を構築」することができると述べた。現金を直接運ばなければならない場合、平均的な取引は約32キロ離れた人々との間で行われる。バス料金5ドルを支払う距離だが、これは多くのケニア人にとって大金であり、小口取引を行う上での大きな弊害となっている。

 スリ氏の元研究マネジャーが母親に仕送りしたい場合、彼は数回の操作で自分の携帯から母親の携帯にお金を送る。ここにはもう一つの重要な結果が映し出されている。研究者たちは因果関係を明確にはつかんでいないが、モバイルバンキングが主に女性、特に最も貧しい女性たちに影響を与えていることだ。スリ氏の調査チームは、モバイルバンキングが「18万5000人の女性を(農業から)事業や小売業に移るよう促した」と推測。また、女性が貯蓄を増やしたともみている。

 これにより女性は男性社会から解放され、リスクの高い取引を行う選択肢が与えられる。10〜20年前にもてはやされた「マイクロローン(小口融資)」は女性の進出にとって失望的な結果となったが、その一因は男性が現金を握っていたことだった。ただ、現金がなければこうしたことは起こりえない。女性の携帯を通じた取引は女性自身で行われる。モバイルバンキングは6年間で、世帯主が女性のサンプル世帯における絶対的貧困の割合を43%から36%に低下させた。世帯規模は縮小しているが、研究者らによると、恐らく全寮制の寄宿学校に通う子どもが増えていることが原因。ケニアで女性がお金を管理する割合が増えたことも、学校に行く子どもの増加につながっているのかもしれない。

 スリ氏の調査チームは、モバイルバンキングが普及しつつあるタンザニアとウガンダでも同様の調査を終えつつある。

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【寄稿】ビル・ゲイツ氏「新たな貧困地図に対応を」
http://jp.wsj.com/articles/SB11163456931573304514904582562251736128054

 

英経済、17年に成長鈍化の見通し−個人消費低迷で=中銀総裁
イングランド銀行のカーニー総裁(写真)は16日、インフレ加速で個人消費が圧迫される中、英国経済は今年減速するとの見方を示した
By JASON DOUGLAS
2017 年 1 月 17 日 08:38 JST

 【ロンドン】イングランド銀行(中央銀行)のマーク・カーニー総裁は16日、インフレ加速で個人消費が圧迫される中、英国経済は今年減速するとの見方を示した。

 総裁は今年初の講演で、経済成長は家計がけん引しているが、家計は英ポンド安で勢いを増す物価上昇の悪影響を受けやすいように見えると語った。英国が欧州連合(EU)離脱を決めた2016年6月の国民投票以来、ポンドはドルに対し約18%下落している。

 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSB)で講演した総裁は、「現在、家計はブレグジット関連のさまざまな不確実要因を完全に見て見ぬふりをしているようだ」としつつも、物価上昇が家計の支出を妨げる可能性が高く、しかも英国とEUの将来の関係が明らかになるまで様子見姿勢の企業は設備投資を控えるとみられるため、英国の経済成長率は恐らく今後数年間にわたり平均を下回るだろうと指摘した。

 イングランド銀行は16年12月、物価の伸び率が引き続き中銀目標の2%を長期にわたり上回るようであればインフレ抑制のために金利を引き上げる構えだが、経済成長見通しが著しく悪化すれば反対に引き下げる考えだと示唆した。カーニー総裁は16日、こうした姿勢を改めて強調した。

 総裁のこの日の講演はおおむね、中銀が直面するインフレと経済成長とのトレードオフ(二律背反)についての議論が中心だった。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiu6eiM-8fRAhVKtJQKHUDZAIkQqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11163456931573304514904582563882312607686&usg=AFQjCNFPhWkcEamRI97lP2f58emK195wKA



英中銀総裁:消費が今年新たな逆風に直面−ポンド安が物価に波及
Lucy Meakin
2017年1月17日 06:27 JST

英中銀のインフレ許容には限度があると再度強調
英政策当局者はどちらの方向にも対応可能とカーニー総裁

イングランド銀行(英中央銀行)のカーニー総裁は16日、欧州連合(EU)離脱を決めた英国民投票後、英経済の回復力を支えてきた消費者が今年新たな逆風に直面するとの考えを示した。
  同総裁はロンドンでの講演で、英中銀の政策当局者らは、ポンド安の影響が物価に波及し始める中で、情勢を注視していく方針だと語った。
  カーニー総裁は、「最近になって国内では消費の堅調な勢いが続く兆候が見られ、世界的には成長見通しの力強さが増している」と分析。ただ消費が最終的に収入に追いつけば、需要は家計内の雇用や所得変動に左右されやすくなることから、消費主導の成長は「比較的ペースが遅く、持続性が低くなる傾向がある」と述べた。
  同総裁はまた、政策金利は上下いずれの方向にも動き得ると述べ、英中銀金融政策委員会(MPC)の中立的姿勢をあらためて表明。中銀目標の2%を超えるインフレ率の許容には限度があるとした。また英国がEU離脱交渉を進める中で、インフレ加速への家計の対応が鍵となるだろうと指摘した。
原題:Carney Sees Brexit Consumer Slowdown Coming After Strength (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJW55K6JIJUW01

英経済、消費への依存度高まる 中銀は注視=カーニー総裁

[ロンドン 16日 ロイター] - イングランド銀行(英中銀)のカーニー総裁は16日、インフレが進むなかでも英国の消費が昨年6月の欧州連合(EU)離脱決定以来の堅調な地合いを維持するかどうか注視するとの考えを示した。

同総裁は今年初めてとなる講演をロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで実施。講演原稿によると、英国では投資や輸出よりも消費支出に対する依存度が高まっている兆候が出ていると指摘。「向こう数年間は成長率はこれまでの平均を下回ると予想されている」とし、英経済成長がこれまで以上に消費にけん引されていることがこうした見方を裏付ける1つの証拠となっていると述べた。

同総裁は、過去25年間の動向を見ると消費支出にけん引される経済の拡大は裾野の広い景気拡大ほど力強くなかったと指摘。現時点では英国の消費者はEU離脱をめぐる先行き不透明感を完全に無視しているように見えるとし、中銀金融政策委員会は今後、消費支出と家計の借り入れとの関係を注視していくとの考えを示した。

英国の家計の借り入れは昨年11月は前年比約11%増加。2005年以来の伸びとなった。

英中銀は同月の金融政策決定会合で、年内の追加利下げがあり得るとしていた従来の方針を撤回。カーニー総裁はこの日の講演で「インフレ率を目標としている2%に戻すため、景気見通しの変更に応じて金融政策をどちらの方向に傾けることもできる」と述べ、中銀の従来の見解をあらためて示した。

また、成長の鈍化に歯止めをかけるために中銀にはインフレ率が目標を超えて上昇することを容認する用意があるとの認識を表明。ただ一部政策担当者はこうした姿勢には限度があるとの立場を示しているとも述べた。

IHSマークイットの英国担当エコノミスト、ハワード・アーチャー氏はカーニー総裁の講演について「金融政策委員会が現在、中立的な政策スタンスを適切とみていることを示唆する内容だ」と述べた。

*内容を追加しました。

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英ポンド3カ月ぶり安値、ハードブレグジット懸念で売り=欧州外為終盤

[ロンドン 16日 ロイター] - 欧州外為市場では、メイ英首相が17日の演説で欧州連合(EU)からの「ハードブレグジット(強硬離脱)」を示唆するとの報道を受け、英ポンドが下落した。

ポンドGBP=D4はアジア取引時間帯に1.1983ドルまで下落。昨年10月7日のフラッシュ・クラッシュ以来の安値を付けた。このフラッシュ・クラッシュを除けば1985年5月以来の安値となる。

ただその後は幾分持ち直し、1450GMT(日本時間午後11時50分)現在は約0.8%安の1.2075ドル近辺で推移している。

三菱東京UFJの外為アナリスト、リー・ハードマン氏は「『ハードブレグジット』に関するニュースが出てくるたびにポンドに対する新たな売りが発生する」と指摘。

ただ、同氏のほかロンドンに拠点を置くアナリストは今回の報道には特に目新しいものはなかったとしており、その結果、ポンドは欧州取引時間帯に入ってから一段と下げることはなかったと指摘している。

この日は米市場がキング牧師生誕記念日のため休場となっており、全般的に薄商いとなっている。

ユーロは対ポンドEURGBP=で1.5%高の88.53ペンスと、2カ月ぶりの高値に上昇。その後は0.7%高の87.85ペンスで推移している。

ポンドは対円GBPJPY=では2.3%安の136.48円と2カ月ぶり安値を更新。ただその後は下げ幅を縮小した。

円はリスクオフ・ムードのなかおおむね上昇。対ドルJPY=で6週間ぶり高値の113.61円を付けた。

<為替> 欧州終盤 アジア市場終盤 コード

ユーロ/ドル    1.0622 1.0614 EUR=

ドル/円 115.01 114.08 JPY=

ユーロ/円 122.19 121.06 EURJPY=

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メイ英首相、EU単一市場からの撤退見通しを表明へ
Tim Ross、Robert Hutton
2017年1月17日 07:30 JST 更新日時 2017年1月17日 09:09 JST

17日の演説で関税同盟との関係見直しを見込んでいると説明
演説でEUとの関係で部分的な加盟や準加盟国には関心ないと表明

メイ英首相は17日の演説で、英国が欧州連合(EU)単一市場から撤退する見通しだと表明、EUとの全く新たな貿易関係を求めることを明らかにする。
  事情に詳しい関係者によれば、メイ首相はロンドンでの演説を単一市場撤退と関税同盟との関係見直しを見込んでいると明言する機会にする。EUとの可能な限りの緊密な関係を求めてきた同国の経済団体にとっては打撃となる。首相府が公表した演説の抜粋によると、同首相はEUとの関係で部分的な加盟や準加盟国となることには関心がないと表明する。
メイ英首相
メイ英首相 Photographer: Jasper Juinen/Bloomberg
  メイ首相は「われわれは、自治国家として独立したグローバルな英国と、EUの友人と同盟国との新たな対等のパートナーシップを求める。他の国々が既に享受しているモデルの採用は目指さない。離脱する際、加盟国として地位を部分的に維持することを求めない」と説明する。
  英国がEU単一市場から撤退すれば、銀行は他のEU加盟27カ国へのアクセスを保持するため雇用や業務拠点をロンドンから移転し始める可能性がある。また、金融機関や輸出企業が変化に対応できるよう、離脱後の移行期間を確保するようメイ政権に求める圧力が強まる見込みだ。
離脱交渉の12の主要目的
  首相府は16日夜、メイ首相が離脱交渉の12の主要目的を発表すると説明した。それには移民をめぐる権限の全面的な回復や立法権限を英議会に戻すこと、英国の法律に対する欧州司法裁判所の管轄権を終わらせることなどが含まれる公算が大きい。
  関係者によれば、メイ首相は単一市場撤退を見込んでいると述べる一方で、EU離脱後の関税同盟についてそれほど明確にせず、部分的に参加する混合形態が最良の選択肢であることを示唆する見込み。英閣僚はセクターごとに取り決めを行う部分的な同盟参加の可能性を提言していた。
  EU関税同盟の正式メンバーである限り、英国はEU域外の国と独自の自由貿易協定を合法的に結ぶことができない。関税同盟に関するメイ首相の計画の詳細は明らかにされないが、英国が世界中の国々と自由に貿易できるよう目指すという方向性は明確にする。
  メイ首相は「真にグローバルな英国になることを望む。われわれの欧州のパートナーにとって最良の友人・隣人でありたいが、欧州の域外にも手を差し伸べる国になりたい」と表明する。この演説で同首相はEU各国政府に対して、英国が「信頼できるパートナーであり、協力的な同盟国、そして親しい友人」であり続けると訴える意向。
原題:May Said Ready to Announce Britain Will Leave EU Single Market(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJW8U86JIJUS01


 


債券上昇か、円高進行への警戒感で買い圧力−20年債入札結果を見極め
三浦和美
2017年1月17日 08:06 JST

昨日の超長期弱くなかった、入札は不調を予見させまい−東海東京証
先物夜間取引は150円30銭で引け、前日の日中終値比2銭高


債券相場は上昇が予想されている。英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる不透明感を背景にポンド安主導で円の上昇圧力が強まる中、リスク回避を背景にした債券買いが優勢となる展開が見込まれている。
  17日の長期国債先物市場で中心限月3月物は150円台前半での推移が予想されている。夜間取引は150円30銭と、前日の日中終値比2銭高で引けた。

  東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、米国の株式・債券市場が休場、ドル・円相場が1ドル=114円近くと「他市場は中立に近い」と指摘。「ザラ場中にドル安・円高が進めばフォローに転じよう」と予想する。「昨日の債券市場はもみ合いに終始し、超長期ゾーンも弱くなかった。従って注目の20年債入札は不調を予見させまい」とし、この日の相場は強含みとみる。
  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の345回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値0.05%を下回る水準での推移が見込まれている。佐野氏はこの日の予想レンジを0.045%〜0.05%としている。
  メイ英首相の演説を17日に控え、15日付の英紙4紙がEUからの強硬離脱計画を説明すると報じたことを受けてポンドが急落。クロス・円(ドル以外の通貨の対円相場)取引を通じてドル・円相場に円高が波及し、16日には一時113円63銭と、昨年12月8日以来の円高値を付けた。この日の日本時間早朝は114円台前半で推移している。
  演説内容に詳しい関係者によると、同首相は英国がEU単一市場から撤退すると予想していることを明確にする見通し。
  16日の欧州債市場では、英国債が上昇。英10年債利回りは前週末比5ベーシスポイント(bp)低下の1.31%となった。 
20年入札を見極め  

  財務省はこの日、20年利付国債の価格競争入札を実施する。発行予定額は前回と同じ1兆1000億円程度となる。159回債のリオープン発行で、表面利率は0.6%に据え置かれる見込み。
  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊シニア債券ストラテジストは、今回の20年入札をめぐっては、「先週の30年債入札がさえない結果になった余韻や、昨秋からの原油高等を受けたインフレ観測など逆風の材料が多い」と言い、「強い入札は見込みにくい」と指摘。一方、「日銀が昨年12月14日に金利抑制アクションを示した時の金利水準0.65%が近づく中では、0.6%台に乗せれば一定の投資家需要は見込めそうだ」としている。
過去の20年債入札結果はこちらをご覧下さい。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJW79E6K50XS01



日本株は続落、円強含みと英メイ首相演説を警戒−金融や内需関連安い
佐野七緒
2017年1月17日 08:10 JST 更新日時 2017年1月17日 09:27 JST

17日の東京株式相場は続落して始まった。為替市場で円が強含んでいるうえ、メイ英首相の演説を控えリスク回避の売りが先行している。銀行や証券などの金融や情報・通信、小売といった内需関連を中心に幅広い業種が下落。
  TOPIXの始値は前日比4.77ポイント(0.3%)安の1525.87、日経平均株価は同56円79銭(0.3%)安の1万9038円45銭。その後両指数とも0.9%安まで下げを拡大した。
  事情に詳しい関係者によれば、メイ首相は17日の演説で英国が欧州連合(EU)単一市場からの撤退と関税同盟との関係見直しを見込んでいると明言する。首相府が公表した演説の抜粋によると、同首相はEUとの関係で部分的な加盟や準加盟国となることには関心がないと言う。
  英国のEU離脱が懸念され、16日の欧州株はストックス欧州600指数が0.8%安と反落。為替市場ではドル・円相場が1ドル=113円60銭台まで円高が進んだ。けさは114円前後で推移している。前日の日本株終値時点は114円02銭だった。
東証内の株価ボード
東証内の株価ボード Photographer: Akio Kon/Bloomberg
  また、国際通貨基金(IMF)は今週米大統領に就任するドナルド・トランプ氏の政策について、公約している財政刺激策による米経済の押し上げ効果は小さいとの見方を示した。
  SMBCフレンド証券投資情報部の松野利彦チーフストラテジストは「IMFは財政赤字との兼ね合いから政策の実現性に懐疑的ということだろう」と述べた。金融市場では「トランプラリーで傾けすぎたポジションの調整が行われている。トランプ氏が話してきた政策がきちんと出てくるのかを見極めたい状況」という。
  東証1部33業種では、銀行、不動産、ガラス・土石製品、ゴム製品、建設、情報・通信、機械などが下落率上位。 
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJW9W66KLVR401
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/326.html

[経世済民117] 米中対立で蘇る円高シンドロームの亡霊 日本トランプ衝突ない 世界経済トランプで暗転 ビットCで稼ぐ 人民銀MLF流動供給

 

FX Forum | 2017年 01月 17日 15:54 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
米中対立で蘇る円高シンドロームの亡霊

村上尚己アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト
[東京 17日] - トランプ相場が始まった2016年11月からドル高円安は加速し、一時118円台に達したが、2017年に入って一服、現在(日本時間1月17日午後3時現在)は113円前半で推移している。

ドル円だけではなく、米金利上昇が1月に止まったことを背景に、対ユーロでもドル安に戻っている。足元のわずかなドル安を後押しする要因として、日本の為替アナリストらが言及しているのが、トランプ次期米政権が保護主義的な政策を前面に打ち出す可能性である。

1月20日の米大統領就任式を経て、成長押し上げ政策である減税政策の行方が分かるのは早くても3月とみられ、それまでは個別企業の活動や中国・メキシコに対する政策についてトランプ氏が言及する場面が多くなるかもしれない。すると、「ドル安政策か」との条件反射的な言動が、特に日本の市場参加者の間で増えるだろう。

ただ、そうした反応を示すであろうエコノミストや為替アナリストの多くが、トランプ氏の大統領選勝利に前後して、「1ドル100円割れの恐れ」「トランプ相場は短命」などと指摘していたことを、投資家は冷静に認識したいところだ。結論から言えば、筆者は年初からのドル円の下落は長期化しないとみている。以下、根拠を説明しよう。

<円高シフトが起こるなら別の理由>

まず、日本にありがちな条件反射的な反応に話を戻せば、トランプ氏の政策にまつわる大きなリスクとして、同氏が、「一つの中国」の原則にこだわらない考えを示すなど中国に対して強硬な姿勢を見せていることがある。

筆者は国際政治を分析する力量を十分に持ち合わせていないので、トランプ氏の発言だけで、米中関係がどう動くのか、判然としない。そもそも、具体策が分からない段階で、為替への影響をとやかく言えるわけがないだろう。

ところが、トランプ相場の前にドル安リスクを懸念していたエコノミストやアナリストほど、米中関係の悪化を「リスク」として強調している。彼らの国際関係を読み解く力がどの程度優れているか筆者には分からないが、経済メディアのバイアスに影響されている可能性もあるだろう。

米中の経済関係と言えば、13日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、トランプ氏は中国について言及しつつ、20日の大統領就任直後には「為替操作国」には認定する考えはないとの見方を示し、就任前の公約をあっさり翻すことになった。

この経緯を筆者が知る由もないが、中国にとって足元の問題は資本流出の拡大で、通貨安が進んでいることである。トランプ氏は為替操作国と批判したいのだろうが、少なくとも人民元の下落期待を和らげる点については、米国、中国ともに利害が一致する状況だろう。

2017年に入ってから「為替操作国」というフレーズに、日本の為替市場参加者は過敏に反応している。そもそも、仮に中国がそうした対象になったところで、ドル円にどのような影響を与えるのか、筆者には全く分からない。円高ドル安要因になるという意見も聞くが、本当にそうなのだろうか。

2016年11月11日掲載のコラムでも述べたが、筆者は常々、日本の為替市場参加者の多くが「円高シンドローム」にとらわれていると感じている。

ロナルド・マッキノン氏と大野健一氏が1998年に「ドルと円」で論じた、米政権の意向によって政治的にドル安が起きるという説である。最近のドル安は、円高シンドロームが刺激されたがゆえに起きているように思われる。ただ、この円高シンドローム仮説はすでに時代遅れになっていると思っている。アベノミクス発動により日銀が米連邦準備理事会(FRB)と同様の標準的な金融政策運営を始めたと認識していることが一因だが、詳しくは別の機会に改めて論じたい。

結局、円高に反転するかどうかは、2016年のようにFRBが利上げ先送りを続ける状況になるか否かで決まるだろう。円高シンドロームにとらわれず、それらを冷静に見ておかないと、アベノミクス相場同様に、トランプ相場でリターンを高めることは難しい。つまり、米国の経済指標、FRBの政策姿勢、拡張財政政策の現実性がドル円のトレンドセッターになるということである。

確かに、13日に公表された昨年12月の米小売売上高は前月比0.6%増と4カ月連続の増加となったものの、市場予測(0.7%増程度)をやや下回った。事前に示されていた消費者センチメントの大幅な改善ほど、米個人消費のハードデータは良くなかったと評価できる。

ただ、経済をけん引する個人消費の底堅い伸びが続いているとの判断を変えるほどではない。2016年10―12月に続き、2017年1―3月も成長率とインフレ率が堅調な伸びを示すと予想され、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが実現する公算は大きい。したがって、年初からのドル円の下落は長期化せず、近いうちに上昇トレンドに復する可能性が高いと筆者はみている。

*村上尚己氏は、米大手運用会社アライアンス・バーンスタイン(AB)のマーケット・ストラテジスト。1994年第一生命保険入社、BNPパリバ、ゴールドマン・サックス、マネックス証券などを経て、2014年5月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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コラム:
世界経済成長、トランプ政策で暗転の可能性

 1月16日、トランプ次期米大統領(写真)が約束している減税は、米国と世界の経済を押し上げる力がある。だがトランプ氏が持つ保護主義的側面は、逆に成長の足を引っ張るだろう。ウィスコンシン州で昨年12月撮影(2017年 ロイター/Shannon Stapleton)
Peter Thal Larsen

[ロンドン 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 向こう2年間の世界経済成長は、政策次第で良くも悪くもなり得る──。国際通貨基金(IMF)は最新の世界経済見通しでこうした二面的な結論を下した。

トランプ次期米大統領が約束している減税は、米国と世界の経済を押し上げる力がある。だがトランプ氏が持つ保護主義的側面は、逆に成長の足を引っ張るだろう。不確実性が存在するため、経済予測は普段よりも難しい。

トランプ氏が大統領選に勝利する前の段階でも、世界経済は上向くと見込まれていた。世界経済成長率の2016年推計は3.1%と、08年の金融危機以降で最も低い。しかし経済活動は金融危機の長い後遺症をようやく抜け出しつつある兆しが出ている。中国で大規模な刺激策が打ち出され、少なくとも当面は同国の景気減速懸念は和らいだ。インドでは高額紙幣廃止で17年の成長鈍化が予想されるとはいえ、世界全体を下押すほどの影響はない。

そこにトランプ氏が登場した。具体的な経済政策はまだ分からない部分が多々ある。それでもIMFは、減税効果を織り込む形で米国の18年の成長率を従来より0.4%ポイント引き上げて2.5%とした。物価と金利も上がっていくだろう。こうしたシナリオに基づき、投資家は株高と国債利回り上昇、ドル高を演出している。

トランプ氏の税制改革はさらに広範囲に影響を及ぼす可能性もある。一部の共和党議員が支持している考えは、輸出を優遇して輸入に厳しい態度で臨む形に法人税制を変えようというものだ。これは米国市場への製品輸出に依存する国には打撃を与えかねない。ドル高が進行し、ドル建て債務を抱える新興国への重圧も一段と強まる。トランプ氏がちらつかせている中国やメキシコからの輸入製品に高額の関税をかけるという政策を考慮に入れる前でも、これだけの事態が起きてしまう。

つまり、前向きな経済見通しが急に暗転してもおかしくないということだ。英国の貿易担当相を務めたマービン・デイビス氏が先週11日に指摘したように、楽観的な金融市場と不満を抱える有権者の間にはだれの目にも明らかな断絶がある。IMFの最新見通しが間違いだったと証明されてしまう確率はいつも以上に大きい。

●背景となるニュース

*IMFは2017年と18年の世界経済成長が上向くと予想。南アフリカとインドの想定以上の落ち込みを米国の経済政策が帳消しにするという。

*IMFが示した世界全体の成長率見通しは17年が3.4%、18年が3.6%で、16年推計の3.1%をいずれも上回る。

*IMFは米国については、楽観ムードの強まりやトランプ次期大統領の減税計画がプラスに働くとの見方から、17年と18年の成長率見通しを0.1%ポイントと0.4%ポイントそれぞれ上方修正した。

*ただIMFは、米国の次期政権の政策スタンスとそれが世界にどう影響するかを巡る不透明感を踏まえると、想定される実際の成長率の着地範囲は相当幅が広い、と釘を刺した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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日本、円相場めぐりトランプ次期政権と衝突の公算小さい−サイナイ氏 日本経済を楽観
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米ディシジョン・エコノミクスのアレン・サイナイ社長兼最高経営責任者(CEO)は、日本の政策当局は円相場をめぐりトランプ次期米政権と衝突する事態を懸念する必要はないとの考えを示した。
  サイナイ氏は17日、東京都内でブルームバーグ・ニュースとのインタビューに応じ、トランプ次期政権は外国為替相場の水準決定を市場に委ねる公算が大きいとの考えを示した。サイナイ氏は当局者と会うために東京を訪問中。
  トランプ氏は11日の記者会見で中国や日本、メキシコに対する米国の貿易赤字に言及したが、この分野で一段の圧力を加えるようなことがあれば、上向きつつある日本企業の景況感は損なわれかねない。米財務省は外国為替報告書で日本を「監視リスト」に指定し、通貨問題は両国間の緊張の一因となっている。
  サイナイ氏は「日本の財界には歴史的な理由から、円安に対する政治的抵抗を心配する動きがある」とした上で、「私としては米国の政策当局によるけん制の動きをあまり憂慮していない」と話した。
  また、トランプ氏の政策案で米国の成長率とインフレ率が押し上げられ、米金融当局は年内に最大4回の利上げに踏み切るともサイナイ氏は予想。これによりドル相場は一段と上昇し、対円で年末までに1ドル=135円に達する可能性もあるとしている。
日本経済を楽観
  日本経済の見通しについて、サイナイ氏は楽観的な立場を表明した。米経済の成長の勢いが強まれば輸入需要の拡大を意味するとして、トランプ氏の景気刺激策で日本など他国も恩恵を受けると説明。「米国の成長加速を受けたドル高・円安は日本経済にとって実際に強材料となる」と述べ、「日本の将来は過去20年で最良と見受けられる」と語った。
  サイナイ氏はさらに、日本銀行がゼロ金利政策を維持し、日本政府が何らかの財政刺激策を講じると想定すれば、2017年の日本の成長率は1.5−1.75%、18年には2%に達すると予想。この数字は、国際通貨基金(IMF)が16日公表の最新の世界経済見通しで示した数字を大きく上回る。IMFは17年の日本の成長率が0.8%となった後、18年には0.5%に鈍化すると見込んでいる。
  日本はデフレからの持続的な脱却を果たし、インフレ率は低位ながらも上昇するだろうともサイナイ氏は予想。自身の見通しはトランプ氏の政策がタイムリーな形で実施されることを前提としているとしつつも、ビジネスマンとしてのトランプ氏の経歴を考えれば、同氏の計画は早急に明確になるだろうとみる。
  「彼らは時間を浪費しない。ビジネスマンや金融関係者のメンタリティーは『昨日のうちに済ませておけ』だ。これはワシントンがこれから経験する大きな変化で、世界はまだその準備ができていない」とサイナイ氏は語った。
原題:Yen Unlikely to Draw Japan Into Conflict With Trump, Sinai Says(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-17/OJWXJ26JIJUR01


 


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多数の裁定機会や取引手数料ゼロなどが有利に働く
ハッカー被害や中国当局による取り締まりなどリスク要因も

周碩基氏は仮想通貨ビットコインの信奉者ではない。従来の通貨がこの暗号通貨に取って代わられることは決してなく、ビットコイン支持者の大半は盲目的に熱狂しているとみている。

  しかし高速取引を手掛ける北京在住の周氏(35)にとって、ビットコインは抗し難い魅力を備えた存在でもある。彼が利用している複数のコンピューターは週7日、1日24時間、ビットコインを取引している。瞬時のうちに発注できるシステムを駆使し、ビットコインの受け渡しが行われる無数の場所で生まれるわずかな価格差から利益を得ている。

  「ビットコイン市場は不完全なため、ここでの取引は黄金期だ」と語る周氏は、米IBMの技術コンサルタント出身。現在はフィンテック・ブロックチェーン・グループで、ビットコインのヘッジファンドやベンチャー・キャピタル・ファンドを運用する。

  ビットコイン取引の最大80%は最先端技術で武装したプロフェッショナルがけん引。彼らはウォール街の最大手クラスが磨いてきた戦略をまねている。彼らにとってビットコインは、コンピューターで利益を獲得する条件が整った最新の資産クラスだ。数多くの取引から得られる裁定機会、コストゼロの取引、24時間終日行われる取引などが、そうした条件を満たしている。

  一方でサイバー攻撃に遭う可能性や中国当局の取り締まりなどはリスク要因だ。中国人民銀行(中央銀行)は今月、市場操作やマネーロンダリング(資金洗浄)などの問題がないかを確かめるため、大手ビットコイン取引所の数カ所に立ち入り検査を行った。
原題:Automated Traders Take Over Bitcoin as Easy Money Beckons (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-17/OJWQLH6TTDS301


 


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人民銀は先月、MLFの残高を過去最高の3兆4600億元に拡大

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中国人民銀行(中央銀行)は預金準備率ではなく、中期貸出制度(MLF)を通じて信用フローを調節しつつある。
  中国の預金準備率は約1年にわたって変更されていない。人民銀は代わりに期間の短い貸し出し手段を用いて、預金準備率の0.5ポイント引き下げで供給される流動性の約6倍に相当する資金を提供してきた。人民元の下落圧力を強めて資本の逃避を一段と促す幅広い緩和を示唆することなく資金を供給できるのが強みだ。
  人民銀は先月、MLFの残高を過去最高の3兆4600億元(約57兆円)に増やした。エコノミストらの推定によると、昨年2月の0.5ポイントの預金準備率引き下げで銀行システムに供給された資金は6000億元。MLFは3カ月物から1年物まである。

  ただMLFには代償もあり、スタンダードチャータードの中国担当チーフエコノミスト、丁爽氏(香港在勤)によれば、MLFで調達した資金では長期的な計画を立てることができず、人民銀が新たに資金を供給するタイミングが分からなければ、流動性を確保しておく必要さえあるかもしれない。
  丁氏は、「金融機関は実体経済の貸し出しコストを押し上げ得る割高な流動性の供給源であるMLFよりも、預金準備率の引き下げを望んでいる」と指摘。人民元の下落圧力が弱まれば、人民銀は預金準備率の下げに傾くだろうと付け加えた。
原題:PBOC Adopts Mid-Term Credit Tool as Old Benchmark Fades Away (1)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-17/OJWUJT6JTSE901


http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/862.html

[国際17] ダボス2017、民衆の怒りに触れた「貴族」たち トランプ企業口撃の意図 脅しEU結束を後押か ブレグジットの崖転落の影響
ダボス2017、民衆の怒りに触れた「貴族」たち

受益者とそれ以外の人々との分断が鮮明に
トランプ氏の米大統領選当選後の「感謝ツアー」集会で歓声を上げる支持者たち(12月16日)

By GERARD BAKER
2017 年 1 月 17 日 16:41 JST

――筆者のジェラルド・ベーカーはWSJ編集局長

 21世紀初めの高度に統合された世界経済において「貴族階級」があるとすれば、スイスの山岳リゾート地、ダボスに今週顔をそろえる人々だといってもほぼ間違いないだろう。

 ダボスで毎年1月に開かれる世界経済フォーラム(WEF)年次総会(通称ダボス会議)には、各国の政府首脳や中央銀行総裁、主要銀行やグローバル企業の最高経営責任者(CEO)、有力な学者、メディアや芸能界の華やかなスターが集う。そして彼らが構築し、支配してきた世界の状況を俯瞰(ふかん)し、もっとよくする方法を話し合うのだ。

 今年スイスに集まった貴族階級は、もし十分に敏感であれば、同様に金回りのよい先人が18世紀末のフランスや20世紀初頭のロシアで置かれたのとそっくりの居心地悪い立場だと感じ始めるかもしれない。

 2016年に主要経済国を席巻したポピュリズム的な怒りの潮流――英国の欧州連合(EU)離脱を決めた国民投票やドナルド・トランプ氏の米大統領選での勝利がハイライトだが――は、他の先進国でも極右政党や反エスタブリッシュメント(反支配階級)勢力への支持拡大という形で広がり、「ダボスマン」(ダボス会議に集まるエリート層)の上品にしつらえた玄関先まで押し寄せている。

怒りの矛先を象徴する集団

 WEFは今週の会議に漂うエリート臭を打ち消すのに躍起となり、これ見よがしの快楽趣味には眉をひそめ、人生の勝者としての特権よりもその責任について真摯(しんし)に話し合おうと促している。

 それでもシャンパンやキャビアはふんだんに振る舞われるだろう。1780年代のベルサイユ宮殿や1900年代のロシア帝国の冬宮と変わらぬほどのぜいたくさだ。

 いまや世界のグローバリズム主導者に向け、かつてないほど鐘が大きく打ち鳴らされている。これほどの怒りやナショナリズムの高まりの標的として最も象徴的な機関や人々の集団を1つ挙げるとすれば、ダボス会議だろう。

 ダボスは単に場所や人々の集団ではなく1つの理念だ。しかも、冷戦終結後の25年間の世界を実際に支配し、大きな成功を収めてきた理念なのだ。

 その本質はこうだ。世界は1つの巨大な市場であり、機会であり、政治形態である。世界的な経済活動への障壁は取り除くべきで、国境や国民感情、国家主権はグローバルな超国家機関に従属する必要がある。気候変動や世界的な貧困や病気といった難題に直面すると、国家は無力であるばかりかむしろ問題解決への危険な障害となり得る。

 ダボス会議のメンバーはこうした理念の主要な受益者であり、それは偶然の一致ではない。

 EUや国連といった超国家機関やWEF自身はもちろん、低コストの新興国地域に生産拠点を移転することで巨額の経済的利益を得てきた多国籍企業もそうだ。

 銀行はグローバル化を糧とし、それをあおる役目を果たした。投資や大型案件の仲介、トレーディングなどで手数料をたんまり稼いだ。

 学術界や芸術、メディア、芸能界の文化的リーダーは常に世界を駆け巡り、季節ごとにニューヨークからカリブ海のセントバーツ島、ロンドン、スイスのサンモリッツへと移住する。

ダボスで問われる2つのこと

 こうした社交クラブとそれ以外の世界との分断は鮮明だ。ここに集まる米国人、英国人、フランス人、中国人、インド人は、グローバル化の波に取り残された地元の同胞人よりも、相互に共通する部分がはるかに多い。

 問題の核心はそこにある。ダボスの理念は、世界を動き回る根無し草のようなリーダーには驚くほど効果が大きかった。しかし地元にとどまる人々、すなわち教育水準が低く、均質化した経済環境で成功するのに必要な手段や資金に縁がない人々にとっては明白な恩恵がなかった。

 グローバル化は過去4半世紀、世界経済が急成長を遂げるのに間違いなく寄与し、何億もの人々を貧困から救い出した。

 しかし多くの人々、特に西側諸国の大衆にとって代償は大きかった。そして他の地域の多くの人々には、国民の団結の対極にあるグローバルな連帯感という考え方が響かないのだ。とりわけテロの時代には、国境は人の移動や貿易を妨げる障壁というより、理解しがたい脅威から身を守る安全手段と見なされる傾向が強い。

 今年のダボス会議では2つの問いが投げかけられる。リーダーたちは境界線の維持や回復を望む有権者を今後もはねつけ、人種差別主義者や外国人嫌い、さらにはネオ・ファシストだとあざけり続けるのか、あるいは少なくともグローバル主義の考え方に対する国民感情の正当性を認めるように努力する考えがあるのか? 

 次に、それに関して何か行動するつもりだとしたらどんなことか?

 貴族階級の歴史はたいてい不幸な結末を迎えている。2017年のダボス会議参加者がこうした疑問に答える努力を始めなければ、ブルボン王朝やロマノフ王朝に起きたことの現代版が、せいぜいそれほど激しい暴力を伴わず多くの死者を出さない形で、最終的には同じ重大な結果をもたらすのを待つしかないだろう。

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CAPITAL JOURNAL

トランプ氏、企業「口撃」の意図とは

「指針の提示」と釈明も、そこにはリスクが
ドナルド・トランプ次期米大統領(写真)は米国企業に口出ししているのではなく「指針を示している」のだと釈明 ENLARGE
ドナルド・トランプ次期米大統領(写真)は米国企業に口出ししているのではなく「指針を示している」のだと釈明 PHOTO: EVAN VUCCI/ASSOCIATED PRESS
By GERALD F. SEIB
2017 年 1 月 17 日 15:49 JST

――筆者のジェラルド・F・サイブはWSJワシントン支局長

***

 セオドア・ルーズベルト元米大統領はかつて優れた外交政策はこうあるべきだと表現した。「静かに話せ、そして大きなこん棒を携えろ」

 一方、ドナルド・トランプ次期大統領の米国企業に対する政策は、こう表現できるかもしれない。「大きな声で話せ、そうすれば皆が言わんとすることを理解する」

 トランプ氏が13日夜にニューヨーク市のトランプタワーにあるオフィスで語ったのは、少なくともこういうことだ。同氏はインタビューで、防衛関連企業と直接交渉したり、メーカーに工場を海外移転しないよう公に警告したりするなど、企業の業務に口出ししているのかと聞かれ、次のように答えた。

 「口を出しているのではない。何百という企業に対して指針を示しているのだ」

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 さらに、米フォード・モーターに生産ラインのメキシコへの移転をやめるよう要求したことについて言及。「フォードにはこう伝えた。工場建設にあたってミシガン州を去り、メキシコに行って工場を建て、米国の労働者を全員解雇し、新たに労働者を雇う。その上で国境をまたいで車を売り、税金を払わないで済むと考えているなら、あなたたちは間違っている」

 その上で「実際は彼らはミシガンを去らないため、税金はかからない。去った場合にのみ税金がかかる」とし、フォードが16億(約1820億円)ドルかけてメキシコに組立工場を建設する計画を破棄し、代わりにミシガンの電気自動車(EV)製造工場に7億ドル投資すると決めたことを指摘した。

 さらに、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が米国の2つの既存工場に10億ドルを投資し、中西部で2000人の雇用を創出する計画であることも強調。

 「それでは、私がしていることは何なのか?」。トランプ氏は大げさに尋ね、こう続けた。「私がしているのはマイクロマネジメントではない。なのにあなたたちはそれを記事にしている。他の自動車メーカーも全て米国にとどまるだろう。私は残りの自動車メーカーとは話すつもりさえない。その必要がないからだ。だが、彼らは去らないだろう。したがって、これはマイクロマネジメントではない」

矛盾したイデオロギー

 つまり、1社か2社に狙いを定めて干渉すれば、波及効果でより多くの雇用が確保できると主張しているのだ。

 それは自動車業界だけにとどまらない。トランプ氏は既に米複合企業ユナイテッド・テクノロジーズ(UTC)傘下の米冷房機器大手キヤリアにも同じように干渉し、約1000人分の雇用をインディアナ州からメキシコに移す計画を阻止した。また、米航空防衛機大手ロッキード・マーチンと航空機大手ボーイングに対しても、それぞれが製造する最新鋭主力戦闘機「F35」と大統領専用機「エアフォース・ワン」後継機の費用が高すぎると公に批判した。

 これがマイクロマネジメントであるかどうかはともかく、共和党の次期大統領らしからぬ行為であるのは確かだ。トランプ氏がしたようなビジネス上の意思決定への干渉を控えることを党是としているのが共和党だ。

フォード・モーターは米ミシガン州の電気自動車(EV)製造工場(写真)に7億ドル投資する ENLARGE
フォード・モーターは米ミシガン州の電気自動車(EV)製造工場(写真)に7億ドル投資する PHOTO: REBECCA COOK/REUTERS
 実際、イデオロギー的に保守派の人たちは衝撃と恐れ入り交じる目で事態を見つめている。生粋の保守派は経済学者アダム・スミスの論理を信じている。つまり、最強の経済が誕生するのは、政府が介入したときではなく、自由市場の見えざる手によって需給が自然に均衡し、生産と効率が最大化されたときだという考え方だ。

 共和党は従来、企業の自由な意思決定に干渉する政府の行為を「産業政策」や「勝者と敗者の選択」などとやゆし、軽蔑してきた。

リスクはらむトランプ氏の行動

 イデオロギー的に矛盾すること以外にも、トランプ氏の行為は2つの実際的なリスクをはらんでいる。1つは、企業が大統領の怒りの矛先が向けられるのを避けようと疑わしい投資判断をするようになり、その過程で投資の長期的な実現可能性が損なわれることだ。

 もう1つは、企業が移転または閉鎖しない限り経済的に立ち行かない業務を大統領の要求通り移転または閉鎖しない代わりに、政府に見返りを求めるようになることだ。キヤリアについては、こうした駆け引きが少なくとも一部演じられ、インディアナ州に雇用を維持する代わりに州税に関して優遇措置を受けた。

 しかし、トランプ氏の見方はこうだ。今日のグローバル化された経済は必ずしもオープンあるいは公正ではなく、中国やメキシコなど他国政府は既に見えざる手という考え方を台無しにしている。

 特にトランプ氏が問題視しているのが中国だ。ジェイコブ・ルー米財務長官は最近のウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、中国は人民元安へ誘導する為替操作をやめていると主張したが、トランプ氏はこれに反論。

 トランプ氏は「中国の通貨は急落している」とし、「中国は『われわれは最善を尽くしている』と言っているが、そんなことはない」と述べた。

 ただし、大統領就任初日に中国を為替操作国に正式認定するとの表明については「それはしない。まずは中国と話をしてからだ」と考えを改めた。

 その上で「しかし、彼らが操作国なのは確かだ」とし、「彼らはビジネス(やるべきこと)をしているのだろう。それは構わない。われわれもビジネスをする」と述べた。だが、その「ビジネス」がこれまでと違うのは確かだ。

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コラム:
トランプ氏の「脅し」、EU結束を後押しか

 1月16日、ドナルド・トランプ次期米大統領(写真)は、そこらのEU支持者よりもEUの結束を強める役に立つかもしれない。ノースカロライナ州で昨年11月撮影(2017年 ロイター/Chris Keane)
Olaf Storbeck

[ロンドン 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ドナルド・トランプ次期米大統領は、そこらの欧州連合(EU)支持者よりもEUの結束を強める役に立つかもしれない。米国が輸入するドイツ車への課税を強化すると脅したり、ロシアのプーチン大統領との取引に期待を示していることなどが圧力として働くことで、ドイツが支出を増やし、財政が悪化している南欧諸国への大幅譲歩へとつながる可能性があるからだ。

ドイツにとって米国市場は重要だ。ドイツからの全輸出の10%を占めており、2015年にはフランスを上回って最大の輸出先となった。米国との貿易摩擦は避けたいところで、もし対米輸出が制限されれば、ドイツ経済には打撃となり、経済成長に急ブレーキをかける恐れがある。

しかし、この苦境が逆にEUが結びつきを強める上ではうまく働くかもしれない。ロシアとの関係改善に期待を示すトランプ氏は、欧州に団結することの重要性を思い出させる可能性がある。実際、過去においては、ソ連という共通の敵の存在が、西ヨーロッパ諸国が結束を強めることを促した。

長年にわたる緊縮的な財政の要求がEUを分裂させる遠心力として働いていることは、EU離脱を決めた英国の国民投票が示す通りだ。フランスの極右政党、国民戦線や、反移民政策を掲げる右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」といったEUに懐疑的な政党の興隆も、これまでの欧州統合の動きを逆回転させ離合へと導くリスクを示す動きだと言える。トランプ氏はこうした動きを押しとどめる上で役立つかもしれない。

ドイツのメルケル首相が先週、国際関係に関しては「永続の保証」などないと述べ、EU加盟国に防衛・安全保障上の連携を強化するよう呼びかけたのはいい例だろう。ドイツは2016年、60億ユーロの財政黒字を計上するなど国防支出を増やす財政的なゆとりもある。

もっとも、ショイブレ財務相は財政黒字を公的債務の返済に充てる考えを示しており、こうした積極的な財政支出に転じる兆しはあまり見られない。だが、トランプ氏がこれまでの脅しを実行に移すようなら、ドイツは支出拡大や南欧諸国の財政状況に対する姿勢を軟化させることが国益にかなうと考えるようになる可能性がある。そうなれば結果的にトランプ氏はEUの結束を後押しすることになる。

●背景となるニュース

*トランプ次期米大統領はインタビューでドイツの自動車メーカーの米国での生産は不十分だと批判し、海外から米国市場へと持ち込まれる自動車には35%の国境税を課す考えを表明した。

*トランプ氏は「世界で自動車を生産したいというのであれば、うまくいくことを祈るよ。米国市場向けの車を生産することは可能だが、米国へと輸入されるすべての自動車に対しては35%の課税を行う」と述べた。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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pecial | 2017年 01月 17日 17:41 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
英国が直面する「ブレグジットの崖」、転落の影響は

George Hay

[ロンドン 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英国は崖からの転落を回避しようとしている。だが、もし欧州連合(EU)の単一市場から撤退する「ハードブレグジット」を選択することになった場合、英国が転落の道をたどるかどうかは問題なのではない。その転落がどのようなもので、どれほど深刻かが問題なのだ。

それは断崖絶壁からの転落となりかねない。欧州司法裁判所に対する英国政府の明らかな敵対心や、貿易と人の移動における支配を取り戻すとの公約は、英国がもはや欧州経済領域(EEA)にもEUの関税同盟にも属さないことを示唆している。

したがって、EUに加盟する27カ国との無関税貿易も失うことになる。EU加盟国は韓国などと自由貿易協定を結んでいるため、英国は非関税障壁に直面することになるだろう。

もっとも厄介なのは、英国とEU間の新たな貿易協定をめぐる交渉は、離脱プロセスが完了するまで開始することさえできず、つまり英国は2019年になっても新たな自由貿易協定を結べていないだろうということだ。

昨年6月23日に実施されたEU離脱の是非を問う国民投票前の経済予測では、協定を結ばないという結末が最も経済的な打撃が大きいとみられていた。これは、英国がWTO(世界貿易機関)の関税に戻ることから、しばしば「WTOオプション」と呼ばれる。

会計監査大手プライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、そうなれば、英国の国内総生産(GDP)は2030年までに現在の動向より3.5%低下する可能性があると推定している。英財務省は7.5%下がると試算している。

これは大きな打撃だが、致命的ではない。PwCも認識しているように、ブレグジットが回避された場合ほどではなくとも、英国は今後も大きな富裕国であり続けることに変わりはない。どちらにせよ、現在このような話をするのはいささか抽象的すぎる。

さらに言えば、WTOの関税はそれほど高くはない。2015年にEUへの輸入品に課せられた平均関税率は5.1%、貿易加重平均では2.7%だった。英国民投票以降、英ポンドは貿易加重ベースで14%下落。一方、WTOによると、輸入農産物の47%、輸入非農産物の63%は無関税だった。対米輸出品の場合は、非農産物の73%が非課税だった。

WTOの条件は自動的に得られるわけではない。英国は「調整」と呼ばれるプロセスを踏むことが望ましい。そうすることで、複雑な交渉を必要最低限に抑えつつ、WTOでEUが持つ条件を引き継ぐことが可能となる。1つではなく2つの相手と取引することは、同プロセスが調整というよりも関税の「修正」であり、より長期に及ぶ交渉プロセスと混乱の拡大を招くと、WTOに加盟する第3国は主張するかもしれない。

だが、英GDPの80%を占め、2014年には100億ポンドの貿易黒字を計上したサービス産業ではあまり効果は得られない。これらを保護するためには、金融のような主要サービスにおいて、英国をEU加盟国と規制上「同等」に扱うことに欧州は賛成する必要がある。それが正しいことであっても、もしEUに加盟する他の27カ国が報復的な態度に出るなら、不正の余地が生まれる。

英国にとって、交渉における大きな決定的要因は2つ、複雑さと影響力だ。複雑さは、同時に行われる数々の交渉と既得権によって悪化している。スコットランドはEEAにとどまりたいと考えており、独立の是非を問う住民投票を求める声が再び高まる可能性がある。金融セクターは長期の移行期間を望んでおり、その間、独自に複雑な交渉が行われるかもしれない。また、一部のEU離脱派は、新しく関税を設定できる完全な自由を求めているが、それは離脱交渉をいっそう混乱させるだけだろう。

影響力については、英国は一見、不利な立場にあるように見える。英国の対EU輸出はGDPの12%を占めるが、EUの対英輸出は域内GDPのわずか3─4%にすぎない。

とはいえ、英国にまったく影響力がないわけではない。EUからの輸入総額2200億ポンドの3分の2は、ドイツ、フランス、スペイン、オランダ、アイルランドの5カ国で占められている。ポーランドのような、英国に続いてEUを離脱しそうな国が結局、EU資金の主な受益者であり、英国ではない。サービス産業においてEU単一市場に残れないことは英国にとって遺憾だろうが、そのような市場は完全とは言えない。

致命的な転落よりは、EUが協力するような可能性へと向かうべきだ。そうなれば、崖は対処可能なレベルにまで改善し、英国は国境管理と一部主権の保持によって国内の分断を和らげることができるだろう。英国はブレグジットから経済的に利益を得られることができると思い、事を推し進めてきた。英国にとっての最善の結果は、世界最大の貿易圏にとどまりながら、その改革に取り組むことだったに違いない。だが、たとえEUとの関係強化は望めなくても、離脱交渉が耐えられる内容にはできるだろう。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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活気ある地域を犠牲にしても、高齢有権者への公約を果たすのか.

トランプ氏は製造業に圧力をかけてメキシコ移転を撤回させ、自分を支持した州との約束を守る意向を示している PHOTO: JEFF SWENSEN/GETTY IMAGES
By GREG IP
2017 年 1 月 17 日 16:44 JST

――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

***

 米国と欧州で反主流派の政党に投票した人々には多くの共通点がある。高齢であること、比較的教育水準が低いこと、衰退する地域に暮らしていることだ。

 こうした共通点はそれぞれの国に難題を突き付けている。ポピュリスト(大衆迎合主義)の指導者は政権の座に就いたら、活気ある地域や産業を犠牲にしてまで自分を支持した有権者や地域への見返りを優先し、経済成長を阻害するだろうか。

 ドナルド・トランプ氏は米国の中でも成長が停滞している地域で支持された。求人サイト「インディード」のチーフエコノミスト、ジェド・コルコ氏によると、トランプ氏がヒラリー・クリントン氏にどれくらい差をつけていたかを2012年大統領選の共和党候補ミット・ロムニー氏のケースと比較したところ、民主党候補との差が最も大きく改善したのはニューヨーク、ペンシルベニア、ウィスコンシン、バーモント、ミシガン、メーンなど雇用の伸びが最も低い州だった。ジョージア、アリゾナ、テキサス、カリフォルニアなど雇用の伸びが高い州ではロムニー氏のほうが民主党候補との差が大きかった。

 トランプ氏が上回った州は特に失業が慢性化しているというわけではなかったが、コルコ氏によると、人口は伸び悩んでいるか減少している。雇用の伸び悩みは長期的な傾向に原因があった。雇用や人、投資は米国の北東部や中西部から南西部や南東部に流入しているのだ。

米大統領選でのトランプ氏の支持集会(2016年11月) ENLARGE
米大統領選でのトランプ氏の支持集会(2016年11月) PHOTO: MANDEL NGAN/AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
 トランプ氏は早くも空調大手キャリアや自動車大手フォードなどのメーカーに圧力をかけて雇用や事業のメキシコ移転を撤回させ、自分を支持した州との約束を守るつもりであることを示している。

 最近も、「メキシコやその他の場所に工場を移して、ミシガンやオハイオなど私が勝利した場所の労働者全てをクビにしたくても、もうそんなことはできない」と言い放った。

 また州の問題ではないが、トランプ氏は早い段階で共和党正統派と手を切り、メディケア(高齢者向け医療保険制度)と社会保障給付の削減に反対することを決めた。これは明らかに、自分を支持した高齢の有権者のためである。

 高齢者や従来型産業への迎合は国家主義的な動きに共通して見られる。2015年にポーランドで政権を握った与党「法と正義」は同国の中でも比較的貧しい東側半分から主に支持を集めているが、経済理念といったものはない。

 高等研究所(ワルシャワ)のスワボミール・シエラコウスキ所長によると、同党が主に使う手が歴史と感情だ。同党指導部を支持しているのは有権者というより「信者」だという。

 そのため、「法と正義」の経済政策はごった煮状態にあると言える。党はイノベーションと起業家精神を支援すると主張しているが、シエラコウスキ所長によると、同時に再生可能エネルギー業界より石炭業界を支援している。ポーランドでは高齢化が急速に進んでいるが、政府は前政権が実施した退職者年金の受給年齢引き上げを撤回した。国際通貨基金(IMF)はこの決定によって、ポーランド政府の年間年金費用は2060年までに対国内総生産(GDP)比で6.5%増えると警告した。

日本の選挙結果を左右する「スイング」県

 日本は欧州や米国で吹き荒れたようなグローバリズムへの逆風を経験していない。それには日本がこれまで移民や貿易の点で相対的に閉鎖的だったことも関係している。しかし他の地域での国家主義的な動きと同様に、日本の政治家は高齢で田舎に住む有権者の要求に応じている。

 「オリエンタル・エコノミスト・リポート」によると、日本では田舎の有権者が都会の有権者の2倍から3倍の影響力を持つ。編集長のリチャード・カッツ氏は、選挙結果を左右するのは高齢者が多く都会ではない「スイング」県であり、その結果、都会から地方へ大量の移転が行われ、地方の農業経営者は高い関税で保護されていると指摘する。

 その他の人々が負担するコストは計り知れない。カッツ氏によると、平均的な世帯の生活費に占める食費の割合は英国では9%、米国で6%だが、日本では14%に上る。

 こうした「スイング県」では兼業農家向けに失業対策の建設事業が次々と行われる一方で、日本の住宅の22%が下水道と接続しておらず、パイプでガスを供給する都市ガスが使えない住宅も多い。こうした住宅が「主要なスイング地域に含まれていない」(カッツ氏)からだ。

英国の保守党政府は「中間の道」示せるか

 トランプ氏はそもそもビジネス寄りだ。したがって、他の地域の国家主義的な政府のように産業の国有化といった政策に手を出す可能性は低い。

 しかし、もしトランプ氏が関税で米国の工場を保護する決定を下せば、他の国も米国の輸出企業に関税を課すだろう。輸出企業の多くは米国内で最も成功し、最も賃金の高い企業だ。インフラ投資で経済の停滞に悩む郡が優先されれば、成長率と密集度がともに高い都市部が犠牲にされるかもしれない。

 英国の保守党政府はその中間の道を示してくれるかもしれない。英国は主に移民の管理権限を取り戻すことを目的として欧州連合(EU)から離脱するが、自由貿易政策はこれまで通り維持する。テリーザ・メイ首相は最近の演説で、「自分のコミュニティーが変わり続けているのに意見を求められなかった」人々に共感を示した。

 メイ氏はこうした人々を変化から守るより、教育水準や医療を向上させたり、住宅の供給を増やしたり、「成長、イノベーション、投資」を奨励する「現代にふさわしい産業戦略」を実施したりすることを約束した。

 その詳細はまだはっきりしない。しかしメイ氏が保護と開放の間の道を見つけることができれば、それは他の国も進むべき道なのかもしれない。

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中国株、頭をよぎる2015年夏の悪夢
By SHULI REN
2017 年 1 月 17 日 17:01 JST
 中国・深セン証券取引所の新興企業向け市場「創業板(チャイネクスト)」の値動きを示す創業板指数が16日午後に急落したことで、中国本土の株式市場に売り圧力が掛かっているのではないかとの懸念が再燃した。

 創業板指数はこの日、一時6%余り下落し、前週末比3.7%安で引けた。同指数は8営業日続落し、11カ月ぶりの安値となった。

 17日も続落し一時は1.39%安の1805.39をつけた。ただ午後は上昇に転じている。

 バンクオブアメリカ・メリルリンチの株式ストラテジストで長年の中国株の弱気派、デービッド・キュイ氏は、中国の投資家はハイテク銘柄などを含むいわゆるニューエコノミー銘柄への関心を失いつつあり、これが創業板の押し下げ要因になっているとみている。

 キュイ氏は以下の点を指摘している。

 1)ニューエコノミー銘柄に対する投資家心理が冷えてきている。CEICデータによると、中国でベンチャーキャピタル(VC)が調達した資金の総額は、2015年は前年比180%増だったのに対し、2016年1〜9月は6%増にとどまった。また中国本土の注目度の高いハイテク企業はこのところキャッシュフローの問題を抱えていると言われている。

 2)主要株主による株式売却が顕著になってきた。特に売却制限が解除されたことや、このところの人民元相場の下落見通しが要因だ。

 3)16年10-12月期に規制当局が株式担保ローン(SCL)の規制を強化した。

 4)新規株式公開(IPO)が加速している上、IPOを実施しようとしている企業の多くが深センの中小企業板(SME)または香港の新興企業向け市場であるGEM市場を目指している。

 これらのうちいくつかの要因が絡み合っている。

 創業板指数は恐ろしいほど高い水準にあり、平均株価収益率(PER)は100倍に達している。

 さらに中国株式市場での信用取引の大部分は、小型の成長株に集中している。このことについてキュイ氏はリポートで以下のように書いている。

 信用取引の半分以上は、SME(中小企業)またはGEM(成長企業)の銘柄の比重が高い株式担保ローンを使っている。昨年は担保に使われたSMEとGEMの時価総額はこうした企業の時価総額全体の約18%を占めた。それ以外の銘柄では7%にとどまった。15年夏の経験が示すように、信用取引の規模が大きければ売りの悪循環が直ちに広がる可能性がある。

 15年の暴落時は政府が最終的に買い手に回って市場を何とか安定させた。バンクオブアメリカ・メリルリンチの見方では、今回は政府による直接の買い支えは前回に比べてかなり小さくなりそうだ。SMEとGEMの銘柄の大半は割高な民間企業で、過去12カ月でみるとPERはSMEで43倍、GEMで47倍だ。

 株式は割高で、投資家は関心を失い、信用取引が重要な意味を持ち、政府による救済は見込めないと言える。(これらの小規模で成長している企業は民間企業であり、国有企業ではない)これだけですでに恐ろしい。

 上海市場と深セン市場のA株の主要300銘柄で構成するCSI300指数に連動する上場投資信託(ETF)の「ドイチェXトラッカーズ・ハーベストCSI300中国A株ETF」は年初来3.5%高なのに対し、SMEチャイネクスト100指数に連動する「バンエック・ベクトル中国AMC SMEチャイネクストETF」は1%高。
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債券上昇、英米不透明感で円一段高−順調な20年債入札の結果も支え
三浦和美
2017年1月17日 08:06 JST更新日時 2017年1月17日 15:44 JST

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• トランプ就任演説、保貿易護主義的な姿勢への警戒感強い−岡三証
• 先物は午後一段高、10銭高の150円38銭で引け

債券相場は上昇。英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる不透明感が強まっていることや週末にトランプ次期米大統領の就任式を控えてドル安・円高が進んだことで、債券買い圧力が強まった。この日実施された20年債入札結果が順調だったことも相場の支えとなった。
  17日の長期国債先物市場で中心限月3月物は前日比2銭高の150円30銭で取引を開始。いったん150円25銭まで水準を切り下げる場面もあったが、午後は外国為替市場で円が一段高の展開になると、10銭高の150円38銭まで買われ、結局は同水準で高値引けとなった。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ikpj7qB_WVPw/v2/-1x-1.png
  岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、「今週はトランプ氏の就任式を控えてもともと手控えムードが強かったところに、英国のEU離脱に関する材料も加わり、様子見姿勢が強まった」と説明。トランプ氏の就任演説については、「財政支出の拡大や減税などの話は金利上昇圧力だが、保護貿易主義的な姿勢に対する警戒感も強く、リスク回避につながりかねない」とし、午後の取引でドル安・円高が進行していることで債券先物の戻りが促されていると指摘した。
  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の345回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値と横ばいの0.05%で推移している。
  メイ英首相の演説を17日に控え、15日付の英紙4紙がEUからの強硬離脱計画を説明すると報道。演説内容に詳しい関係者によると、同首相は英国がEU単一市場から撤退すると予想していることを明確にする見通し。
  米国では20日にトランプ新大統領の就任式が控えている。トランプ氏は11日の記者会見で「米国を離れ、好き勝手に振る舞う企業には多額の国境税が課されるだろう」と発言し、保護主義的姿勢をあらためて示した。
  
  この日の東京外国為替市場では、ドル・円相場が1ドル=113円台前半と、昨年12月8日以来の水準までドル安・円高が進んでいる。
20年入札は予想上回る

財務省

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  財務省がこの日に実施した20年利付国債の価格競争入札の結果によると、最低落札価格は100円10銭と、市場予想100円05銭を上回った。投資家需要の強弱を示す応札倍率は3.54倍と昨年8月以来の高水準となった。小さければ好調とされるテール(最低と平均落札価格の差)は8銭と前回19銭から縮小した。
過去の20年債入札の結果はこちらをご覧ください。
  三菱UFJ信託銀行資金為替部の鈴木秀雄課長は、「20年債入札はしっかりの結果だった」とし、「日銀のイールドカーブコントロール政策下で金利がそんなに上がらないとみられている中、キャリーロール効果の高い20年債は持ちやすいということではないか」と指摘。「ボラティリティの低さや0.60〜0.65%が支えられている安心感もあるだろう」と付け加えた。
過去の20年債入札結果はこちらをご覧下さい。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJW79E6K50XS01


 


HEARD ON THE STREET
米国の債券投資家、見当たらぬ「避難場所」
トランプタワーの前で支持者に手を振るドナルド・トランプ次期米大統領
By RICHARD BARLEY
2017 年 1 月 17 日 17:57 JST

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 投資家はドナルド・トランプ次期米大統領への愛情が冷め、債券に対する愛情を再び燃やしている。

 米国債利回りは1カ月ぶりの低水準となり、高利回り債のスプレッド(国債との利回り差)も2年ぶりの低水準となった。

 米国債にとってリフレトレードが反転する形となった。リフレトレードは2016年末に国債市場を打ちのめし、長期国債価格は昨年下半期に12%下落した。

 しかし、ここにきて債券価格が落ち着きを取り戻す一方、株価の上昇が一服している。投資家にとって、トランプ政権下で株式と債券のどちらを選ぶかは頭の痛い問題だ。株式は割高水準にあり、株高を正当化するには企業収益の拡大が必要だ。

 債券も割高な水準にあり、安定したリターンを挙げるのは株式より難しい。どのような逆風が吹いているかはすでに分かっている。それはインフレ期待の上昇、金融引き締め、財政政策の緩和に伴う起債増加に対する懸念だ。債券投資家の選択肢の1つは、もっと信用リスクをとり、デフォルトの可能性が高い債券を購入し、利回りを高めることかもしれない。トランプ氏の当選を受けて、米国の経済成長への期待が高まっており、これが高利回り債の需要を押し上げるだろう。

 問題は、米国の高利回り債でさえもチャンスが乏しいかもしれないことだ。それは16年のパフォーマンスによるところが大きい。昨年はバンクオブアメリカ・メリルリンチの高利回り債指数が17%上昇するなど、高利回り債市場は最もパフォーマンスが良かった市場の1つとなった。だが、バンカメメリルの高利回り債指数のスプレッドは昨年末時点の約7%ポイントから4%ポイントに縮小している。またムーディーズによると、5%を超えていた米国のデフォルト率が安定している。

 しかし、スプレッドは現在、金融危機後の最低水準を約0.5%ポイント上回っているにすぎない。数々の好材料はすでに価格に織り込まれている。ムーディーズによると、高利回り債のリターンが年率10%を上回ると、通常、スプレッドは1.5%ポイント縮小する。景気が拡大しても、このスプレッドが縮小することはなさそうだ。また、ここ数年、市場をけん引している大きなマクロ経済要因と違って、一部の企業と業界をやり玉に挙げるトランプ氏の習性はボラティリティーを高める。

 もしトランプ氏の政策が経済にダメージを与えたらどうなるだろうか。インフレ率が上昇する見込みがなければ、再び国債の需要が増えるかもしれない。やはり債券投資家が身を潜める場所はほとんどなさそうだ。

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiO4JXZ7cjRAhUDj5QKHXh9DKAQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10504433381807684657504582564662401659298&usg=AFQjCNHqkCs21997fNx1jTxbtsi2WWyOng


 


 
債券上昇、英米不透明感で円一段高−順調な20年債入札の結果も支え
三浦和美
2017年1月17日 08:06 JST更新日時 2017年1月17日 15:44 JST

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https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ikpj7qB_WVPw/v2/-1x-1.png
  岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、「今週はトランプ氏の就任式を控えてもともと手控えムードが強かったところに、英国のEU離脱に関する材料も加わり、様子見姿勢が強まった」と説明。トランプ氏の就任演説については、「財政支出の拡大や減税などの話は金利上昇圧力だが、保護貿易主義的な姿勢に対する警戒感も強く、リスク回避につながりかねない」とし、午後の取引でドル安・円高が進行していることで債券先物の戻りが促されていると指摘した。
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  米国では20日にトランプ新大統領の就任式が控えている。トランプ氏は11日の記者会見で「米国を離れ、好き勝手に振る舞う企業には多額の国境税が課されるだろう」と発言し、保護主義的姿勢をあらためて示した。
  
  この日の東京外国為替市場では、ドル・円相場が1ドル=113円台前半と、昨年12月8日以来の水準までドル安・円高が進んでいる。
20年入札は予想上回る

財務省

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  財務省がこの日に実施した20年利付国債の価格競争入札の結果によると、最低落札価格は100円10銭と、市場予想100円05銭を上回った。投資家需要の強弱を示す応札倍率は3.54倍と昨年8月以来の高水準となった。小さければ好調とされるテール(最低と平均落札価格の差)は8銭と前回19銭から縮小した。
過去の20年債入札の結果はこちらをご覧ください。
  三菱UFJ信託銀行資金為替部の鈴木秀雄課長は、「20年債入札はしっかりの結果だった」とし、「日銀のイールドカーブコントロール政策下で金利がそんなに上がらないとみられている中、キャリーロール効果の高い20年債は持ちやすいということではないか」と指摘。「ボラティリティの低さや0.60〜0.65%が支えられている安心感もあるだろう」と付け加えた。
過去の20年債入札結果はこちらをご覧下さい。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJW79E6K50XS01

 

日経平均1カ月ぶり1万9000円割れ、英米要人発言警戒し全業種下げる
佐野七緒
2017年1月17日 08:10 JST更新日時 2017年1月17日 15:43 JST

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日本、円相場めぐりトランプ次期政権と衝突の公算小さい−サイナイ氏

• 午後に円強含む、一時1ドル=113円30銭台と昨年12月来の円高に
• IMF、トランプ氏の米経済押し上げ効果を慎重視

17日の東京株式相場は続落し、日経平均株価は約1カ月ぶりに1万9000円を割り込んだ。メイ英首相、トランプ次期米大統領の発言に対する警戒感が強い上、為替市場で円高が進み、リスク回避の売りに押された。不動産や建設、証券、食料品、輸送用機器株など東証1部33業種は全て安い。

  TOPIXの終値は前日比21.54ポイント(1.4%)安の1509.10、日経平均株価は281円71銭(1.5%)安の1万8813円53銭。日経平均は昨年12月9日以来の1万9000円割れとなり、同8日以来の安値水準となった。
  アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの寺尾和之取締役は、「トランプ氏のネガティブ発言への警戒と予想された景気対策が出てこないとの不透明感から、利益確定売りが出ている」と指摘。英国の欧州連合(EU)離脱をめぐっても、「米国への不透明感があり、悪い解釈になりやすい」と話した。

東証内

Photographer: Akio Kon/Bloomberg
  国際通貨基金(IMF)は16日、トランプ氏の政策について、公約している財政刺激策による米国経済の押し上げ効果は小さいとの見方を示した。IMFはことしと来年の世界経済の成長率見通しを3.4%、3.6%と昨年10月時点の予想を据え置いた。
  また、関係者によると、メイ首相は17日の演説で、英国がEU単一市場からの撤退と関税同盟との関係見直しを見込んでいると明言する。首相府が公表した演説の抜粋によると、同首相はEUとの関係で部分的な加盟や準加盟国となることには関心がないと言う。16日の欧州株は、ストックス欧州600指数が0.8%安と反落した。
  この日の日本株は、買い材料に乏しい中で調整色を強めた前日の流れを引き継ぎ下落して開始。前引けにかけやや下げ渋ったものの、為替市場で円高基調が強まった午後の取引で下げ幅を拡大。日経平均は一時282円安の1万8812円まで売り込まれた。ソシエテ・ジェネラル証券の杉原龍馬株式営業部長は、「政治的な不透明材料が多い。トランプ氏の就任式を控えリアルマネーの投資家は動きにくく、流動性が低い中、短期筋を中心に先物主導で日本株は振れている」と言う。
  きょうのドル・円相場は一時1ドル=113円30銭台と昨年12月8日以来、約1カ月ぶりのドル安・円高水準に振れた。前日の日本株終了時点は114円2銭。アリアンツの寺尾氏は、「昨年11月からのラリーの要因となった『トランプ氏は現実主義者である』との認識が年明けからの発言で揺らいでいる」とし、これまでの修正相場の中で「為替ももう少し調整する可能性がある」とみる。
  東証1部33業種の下落率上位は不動産、建設、証券・商品先物取引、ガラス・土石製品、食料品、輸送用機器、精密機器、小売など。売買代金上位ではソフトバンクグループやみずほフィナンシャルグループ、ホンダ、野村ホールディングス、SMC、三井不動産が安く、昨年12月の受注高が前年同月に比べ減った大和ハウス工業も下げた。半面、任天堂や宇部興産、JFEホールディングスは高い。東証1部の売買高は17億1056万株、売買代金は2兆943億円。上昇銘柄数は149、下落は1799。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i9yWTjSxzh_0/v2/-1x-1.png

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJW9W66KLVR401

 


 


http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/864.html

[経世済民117] 日銀はもっと大きなクジラになれる−ETF購入で  日銀は株式減額を 中国の対日債券投資増加、記録更新 5つのドル高是正策
日銀はもっと大きなクジラになれる−ETF購入で
2017年1月18日 12:11 JST

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日本銀行は金融緩和の一環として年間6兆円ペースでのETF購入を行っている。リスクプレミアムと市場ボラティリティの低下を狙う一方で、ETF市場における日銀の保有残高は3分の2にも及ぶとみられる。その高まる存在感のコストとして、市場流動性の低下、価格形成の歪(ひず)み、保有する株式の企業へのコーポレートガバナンスなどが懸念される。日銀のETF購入ペースの減額の必要性を訴える声も聞かれる。
日銀本店
日銀本店 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  ブルームバーグ・インテリジェンスでは、直ちに減額に踏み込むことはむしろリスクが高いとみる。物価は2017年に入りようやく明確に上昇に転じることが見込まれるタイミングで、日銀が自転車のペダルの踏み込みペースを緩めるのは難しい。日銀のETF保有額は東証の株式の時価総額の2%程度であり、必要であれば日銀が望む分だけ追加発行可能で、技術的な問題には直面していない。市場流動性の低下、価格形成の歪みの兆しは見られるが、日銀は喫緊の課題ではないとみる可能性が高い。

日銀のETF購入は株価が下落した際に行われる傾向があり、株価下落のペースを緩和する効果がある。
一方で、価格形成の歪みもみられる。昨年8月にETF購入額が増額された際には、価格変動の相関が高い米国S&P500や円の対ドルレートとの相関が薄れた。

日銀が現状のペースでETF購入をする上で技術的な問題には直面していない。
日銀の保有額は昨年11月末時点で12.8兆円に達し、ETF市場の3分の2のシェアは池の中のクジラに見えるが、日銀の購入に合わせて発行額は増加するため、池はクジラに合わせて大きくなる。
上場株式の時価総額に対する日銀の保有額の割合は2%程度でETFの原証券を調達する海は大きい。
ただし、ETFの原証券となる株式は債券と異なり償還されないため、政策継続に伴うリスクは時間とともに高まる。ETF購入の減額や売却に伴う出口戦略の際には、株式市場の下落リスクに加え、日銀保有ETFの損失に直面することになる。
日銀のETF保有の昨年12月末の含み益は購入額の2割以上と推計され、日銀の資本相当額の7.7兆円との比較勘案で、債務超過となるリスクは低いが、政治的リスクを勘案して直ちに減額に踏み込む可能性は低い。
原文の英語記事はこちらをクリック
JAPAN INSIGHT: BOJ Can Become a Bigger Whale in Japan’s ETF Pond
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJYEFJ6K50Y201


 

中国の対日債券投資、再び増える公算−16年の買越額は記録更新 
Christopher Anstey、氏兼敬子
2017年1月18日 12:27 JST

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スワッププレミアムが恐らく日本国債のこれまでの魅力を説明
中国は一部の日本国債を欧州経由で購入している
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中国による日本の債券購入は2015年と16年1−6月(上期)に記録的規模に達したが、その後は一服していた。だが日米の金利差拡大が日本国債の魅力を再び高めることから、中国による買い入れがまた活発化しそうだ。
  日本銀行が打ち出した大規模な刺激策は外国人投資家に、スワップ取引を介した投融資ヘッジ付きの日本国債購入を促した。ドルベースの投資家は円を借りる際の調達コスト低下から恩恵が得られるためだ。日銀のデータは、米国以外で最大級のドル保有国である中国が日本国債の大きな買い手であることを示している。

  日銀の月次データによると、中国の日本国債購入は16年半ばに減少。日銀が長めの国債の利回りが低くなり過ぎたと示唆し始めた時期で、前例のない規模にバランスシートを拡大する日銀政策の持続可能性について疑問視する見方も強まり始めていた。
  野村証券の池田雄之輔チーフ為替ストラテジストは、対円エクスポージャーを増やそうというより、為替取引を通じて収入を得る中国の戦略という意味合いが強いと指摘した。中国の国家外為管理局(SAFE)に日本国債の購入パターンについてファクスでコメントを求めたが、今のところ返答はない。

  バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、日銀の「マイナス金利排除とか、そういうのは当分ない」と述べ、17年は日米の「金融政策の方向性は乖離(かいり)する」と分析。中国による対日債券投資の動向について、17年は「基本的には買い越しの方向」と予想した上で、買越額は「16年対比では上回ることはないのではないかと思っている」と語った。
  日銀データによれば、15年末時点で日本の債券を最も多く保有していた国はルクセンブルク。英国やベルギーも多い。これらの国に置かれる決済機関を通じ、中国などの日本国債の買い手が購入することを反映しているとみられる。

原題:China’s Japan Bond Purchases May Resume After Record Run in 2016(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJYDMR6KLVRD01

 
日銀は年央にも株式減額を、トランプ「陶酔」が好機とブラックロック
野沢茂樹、Kevin Buckland
2017年1月18日 00:00 JST

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「どこかでテーパリングせざるを得ない」と福島氏
日経平均のボラティリティはETF増額後、約3分の2に低下

日本銀行の黒田東彦総裁が悲観相場の最中で倍増させた国内株式の買い入れ。世界最大の資産運用会社、米ブラックロックは、ドナルド・トランプ次期米大統領の景気刺激策に対する「市場の陶酔」を生かし、日銀が減額できる機会が年央にも訪れるとみている。 

  ブラックロック・ジャパンの福島毅チーフ・インベストメント・オフィサーは、日銀は保有する指数連動型上場投資信託(ETF)を「7月か、少し手前ごろに減額していく選択肢も使うべきではないか」と指摘。購入額は1回750億円程度に上り、長く続けると「市場をゆがめ、株価がファンダメンタルズを反映できなくなってしまう」ため、「どこかでテーパリングせざるを得ないのではないか」とみている。 


  黒田総裁は2013年4月に導入した異次元金融緩和策の一環として、約1.5兆円だったETF保有額を2年間で2倍に増やすと決定。4年近くにわたる買い入れと規模拡大で、日銀のETF保有残高は今月10日に約11.3兆円に達した。日経平均は当時の2倍弱に上昇し、ボラティリティ(相場変動率)は昨年7月末の30超から足元で20未満に低下した。日銀が実質的に支配している国債市場を後追いしかねない情勢だ。

  福島氏は12日のインタビューで、仮に株価が大幅に下落すると、日銀の「バランスシートが傷んでしまう。中央銀行としての機能を考えれば、どこかで減らしていかないといけない」と指摘。ETFの購入を年6兆円から「5兆円や4兆円に減らしても大規模な買い入れには変わりがない」とし、本来は株高局面で「保有株を売った方が良いが、市場に『もう良いところまで来た』というメッセージを送ってしまいかねない難しさがある」と述べた。

  ブラックロックの番場悠債券戦略部長は今回のインタビューで、「米国は経済が非常に強い上、財政政策がかなりの確度で出て来る。金利とインフレ率は上がる世界観だ。リスクオンの地合いがこれから当面続くとみており、株式はオーバーウエート、債券はアンダーウエートになる」と説明。日本とアジア太平洋、新興国の株式はオーバーウエートとしている。

  福島氏は米欧で政治的な波乱を招いている「ポピュリズムのリスクは日本にはない。政治の安定は市場にとってもプラスだ」と言う。海外の株式運用責任者は昨年夏までは安倍晋三首相の「構造改革は進んでいないと日本株にネガティブだったが、英国やイタリア、米国の問題を経て、日本の安定性を評価するようになった」と説明。海外勢は「構造改革はJA全農の組織改革など、非常に緩やかにだが前進していると少し希望を持っている」と述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-17/OJX1KO6KLVRE01

 


トランプ次期大統領、「強過ぎる」ドル是正で考えられる5つの選択肢
Andrea Wong
2017年1月18日 10:59 JST

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FRB算出のドル指数は40年平均を約7%上回っている
ドルは14年半ば以降に22%上昇、米企業に「致命傷」とトランプ氏

トランプ次期米大統領の発言は的を射ているかもしれない。ドルは実際に強い。米連邦準備制度理事会(FRB)算出のドル指数によれば、40年平均を約7%上回っている。
  強いドルは必ずしも経済にとってマイナスではないが、トランプ氏が描く米製造業再生を妨げるかもしれない。同氏が米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューでドルは「強過ぎる」と発言し、米企業の競争力を考えると「致命傷だ」と語る前に、ドルは既に2014年半ば以降22%上昇し、米貿易赤字を膨らませてきた。

  トランプ次期政権がドル安を望むとしたら、何ができるだろうか。以下に5つの選択肢を列挙する。

1.口先介入
  これまでのところトランプ氏の発言は効いたが、為替に焦点を絞る具体的な政策がない場合、政府や中央銀行の当局者の発言にトレーダーが耳を傾けなくなるのは歴史が証明している。

2. 協調介入
  米財務省は世界の中央銀行と過去30年に協調介入を行った実績があり、最後の実行は11年。ただ、協調介入は近年廃れてきた。1日当たり5兆ドル前後が取引される巨大市場を動かす効果が本当にあるのかアナリストらは確信が持てず、効果があったとしても介入後の不胎化で長続きしないなどの見方がある。

3. 単独介入

  同盟国が支持しない単独介入は難しい。13年の先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の声明は、「為替レートは市場において決定されるべきこと」とし、「為替レートを目標にはしないことを再確認する」と表明した。
  ただし、「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済および金融の安定に対して悪影響を与え得ることに合意している」との文言もあり、トランプ次期政権は同様の声明を出して介入を正当化することが可能かもしれない。
  ノムラ・インターナショナルのシニアエコノミスト、チャールズ・サンタルノー氏はトランプ政権が単独でドル押し下げ介入を実施するとは考えていないが、ドルは急速に上昇してきたとして、「そのような大きく幅広い相場上昇に米経済が適応するのは難しいと政権は常に主張できる」と指摘する。
  単独介入には、全面的な通貨戦争に発展するリスクがある。米財務省が実施を決断した場合、他国も追随が許されるかもしれない。

4. ソブリンファンドの創設
  ノムラからは、ソブリンファンドの創設というちょっと変わった選択肢が浮上している。新興市場国やノルウェーなどの先進国でもソブリンファンドを通じて外国の国債や不動産など国外資産に投資している。米国が追随できない理由はない。

5. 外為市場以外への介入
  最終的にトランプ氏は、結果としてドル安につながる保護主義に単純に集中するかもしれない。同氏は貿易協定の再交渉や中国やメキシコからの輸入に高関税を課すと公約済み。これでドル相場は揺らぎ、為替レートは米輸出企業にとってもっと有利な水準になる可能性がある。
原題:Trump’s Options for Weakening Dollar Extend Far Beyond Tweeting(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJYAHR6JIJUU01

http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/887.html

[経世済民117] 英国:12月のインフレ率、2年半ぶり高水準−ポンド安で輸入物価急騰 英首相のEU離脱計画に疑念−極端な断絶リスク 株反発
英国:12月のインフレ率、2年半ぶり高水準−ポンド安で輸入物価急騰
2017年1月17日 19:09 JST
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英国では昨年12月にインフレが予想以上に 加速し、2年半ぶりの高水準となった。ポンド安が輸入物価に影響し始 めていることが示唆された。
英政府統計局(ONS)が17日発表した12月の消費者物価指数 (CPI)上昇率は前年同月比1.6%。11月は1.2%だった。ブルームバ ーグがまとめたエコノミストの予想中央値の1.4%を上回り、2014年7 月以来の高水準に達した。
イングランド銀行(中央銀行)のカーニー総裁は16日、欧州連合 (EU)離脱決定後のポンド下落が物価を押し上げることが今年の英消 費者にとって新たな逆風になるだろうと警告していた。
この日の発表によると、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコ アインフレ率は12月に1.6%に上昇し、2014年8月以来の高水準に上っ た。小売物価指数も14年7月以降で最高の上昇率を記録した。
12月の輸入物価は前年同月比16.9%上昇し、11年7月以来の高い伸 び。
原題:U.K. Inflation Surges to Fastest in 2 1/2 Years as Pound Slumps(抜粋)
--取材協力:Mark Evans、Harumi Ichikura.
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-17/OJX4CV6VDKHS01

日本国内はEU離脱交渉の行方、慎重に見極め−英首相演説
延広絵美
2017年1月18日 12:52 JST 更新日時 2017年1月18日 15:46 JST
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経済や日本企業への影響最小化へ引き続き働き掛け−政府
トヨタは英事業への影響検証へー現地政府と引き続き協力と日産
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英国のメイ首相が演説で欧州連合(EU)単一市場からの撤退を表明したことを受け、日本政府や進出企業は今後の離脱交渉の行方やその影響を慎重に見守る姿勢を示した。
  菅義偉官房長官は18日午前の記者会見で、日本政府として「世界経済や日系企業の活動に対する離脱による影響を最小限にすべく、英国およびEUに対して引き続き働き掛けをしていきたい」との考えを示した。
  菅氏は「多くの日系企業が英国を含む欧州で活動している」とした上で、「離脱に関する動向については引き続き高い関心を持って注視していきたい」と述べた。今後の英国とEUとの関係については「離脱交渉次第であると思う」との認識を示した。
メイ英首相の演説の記事はこちら
  日本は現在、EUとの間で経済連携協定(EPA)の合意に向け交渉を進めている。菅氏は交渉への影響についても問われたが、世界経済や日系企業に「どのような影響が出るのか、もうしばらく見守っていきたい」と述べた。
進出企業
  帝国データバンクの昨年6月24日付リポートによると、英国には同月時点で1380社の日系企業が進出し、業種別では製造業が40.4%と最多で、卸売業(18.7%)、サービス業(17%)、金融・保険業(11.5%)が続いている。
  トヨタ自動車はブルームバーグの取材に対し、EUとの関税などの障壁がないアクセスは「英国の自動車業界全体の競争力維持のために重要」と指摘した上で、「英国事業の影響については、今後の動向を注意深く見守りながら検証していきたい」と電子メールで回答した。
  日産自動車広報担当のニコラス・マックスフィールド氏は英国で長期的な事業や投資を確かなものとするため、現地政府と引き続き協力していくと電子メールでコメントした。
  日本政府は昨年9月、英国とEUへの「日本からのメッセージ」を公表。関税や通関手続きの負担がない物品貿易や自由な投資ができるビジネス環境を維持し、または急激な変化を緩和することで英国が企業関係者にとって「引き続き魅力ある地であり続けることを期待」すると指摘していた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJYGC06S972A01

 

 
英首相のEU離脱計画にエコノミストが疑念表明−極端な断絶リスクも
Lucy Meakin
2017年1月18日 12:27 JST

メイ英首相は自分の願望を並び立てたようなものだとコメルツ銀
実際にどう進むのか依然不透明とHSBCのウェルズ氏

メイ英首相が17日表明した欧州連合(EU)からの離脱計画は、「世界の英国」を期待させるものだったかもしれないが、一部エコノミストからは疑念の声が寄せられた。
  コメルツ銀行のエコノミスト、ピーター・ディクソン氏は電子メールで配信した顧客向けリポートで、EUの単一市場から撤退し、代わりにEUと関税協定締結を目指すとのメイ首相の計画は、英国の戦略をかつてなく明らかにするものだったが、願望を並べ立てたものにすぎないと指摘。「メイ首相が設定した目標を英国がどのように達成するかが明確になると期待する人は失望するだろう。合意の内容自体はEUへの譲歩次第だ。これに関しては、メイ首相の目標がどの程度現実的なのかをEUがまず検討するのをわれわれは待たねばならない」と説明した。

英国の将来は?

  HSBCホールディングスの主任エコノミスト、サイモン・ウェルズ氏は実際にどのように進むか「依然不透明であり、交渉という難題に挑まねばならない」と述べた。
  ベレンベルクのエコノミスト、カラム・ピカリング氏はメイ氏の「挑戦的な物言い」がより極端な形の断絶に至るリスクを高めており、英経済へのリスクは下振れ方向だと分析した。
原題:May’s Hard Brexit Plan Has Economists Questioning Her Vision(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJYEOO6S972A01

 


日本株3日ぶり反発、トランプ氏発言後の円高一服−景気敏感に見直し
鷺池秀樹
2017年1月18日 08:06 JST 更新日時 2017年1月18日 15:33 JST
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TOPIXは一時1カ月ぶりに1500割れ、午後にかけ持ち直す
ストキャスティクスなどテクニカル分析で売られ過ぎ感も
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18日の東京株式相場は3営業日ぶりに反発。トランプ次期米大統領の発言を受けたドル安・円高が一服し、企業業績への懸念が和らぐ中、午後の取引で持ち直した。鉄鋼や海運株など景気敏感セクターが見直され、原油市況の上昇を材料に石油、鉱業など資源株も高い。

  TOPIXの終値は前日比4.76ポイント(0.3%)高の1513.86、日経平均株価は80円84銭(0.4%)高の1万8894円37銭。
  ドルトン・キャピタル・ジャパンの松本史雄ファンドマネージャーは、「景況感は改善を続けており、業績回復期待は根強い。20日の米大統領就任式が終われば、悪材料出尽くしでドル・円、日本株ともに上昇基調に回帰するとの見方から、少し買いを入れたのではないか」とみていた。
東証
東証 Photographer: Yuriko Nakao/Bloomberg
  トランプ氏は米紙ウォールストリート・ジャーナルとのインタビューで、ドルは既に「強過ぎる」と述べた。これをきっかけに米長期金利が低下し、為替市場ではドル売りが加速、きょうのドル・円は早朝に一時1ドル=112円57銭と昨年11月30日以来のドル安・円高水準に振れた。前日の日本株終値時点は113円39銭。
  ただし、午前半ば以降は円高の勢いが鈍り、午後は113円台前半で推移した。東洋証券の檜和田浩昭シニアストラテジストは、1ドル=112ー113円という今の為替水準でも国内企業は利益が出ており、「今まで参加できていなかった投資家が買いに入るには良いタイミング」と言う。
  この日の日本株は、円高警戒から午前の取引でTOPIXは一時昨年12月7日以来、およそ1カ月ぶりに心理的節目の1500ポイントを割り込み、日経平均は一時163円安の1万8650円まで売られたが、午前半ば以降は徐々に反転。今週に入ってからの続落で、目先の調整一巡感が出てきたこともプラス要因となった。野村証券の谷晶子チーフテクニカルアナリストは、日経平均が17日の取引で昨年12月9日以来の1万9000円を割れたことを受け、ストキャスティクスや相対力指数(RSI)など複数のテクニカル指標から「調整は相当進んだ」と分析。目先の下値めどはトランプラリーの30%押しに当たる1万8564円とした。
  反発のリード役となったのは鉄鋼株など景気敏感セクター。ドイツ証券は、中国の需要回復や供給サイドの改革で恩恵を受けると予想し、新日鉄住金などアジアの鉄鋼メーカー4社の投資判断を上げた。東証1部33業種は鉄鋼のほか、海運、石油・石炭製品、鉱業、証券・商品先物取引、不動産、非鉄金属など25業種が上昇。ゴム製品や医薬品、サービス、食料品など8業種は下落。
  東証1部の売買高は18億1826万株、売買代金は2兆2282億円と代金は前日から6%増加。上昇銘柄数は929、下落は928。売買代金上位では、半導体メモリー事業の分社化を検討する東芝が買われ、メリルリンチ日本証券が目標株価を上げた信越化学工業、クレディ・スイス証券が目標株価を上げた三井不動産と住友不動産も高い。半面、楽天や武田薬品工業は安く、前日にデジタル広告サービスでの不適切業務の調査結果を公表した電通も売られた。

関連記事:日経平均調整進む、目先下値めどは1万8564円と野村証
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-17/OJY4C06JIJUY01
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/894.html

[原発・フッ素47] 東電、6年半ぶり社債発行へ 16年度内に1000億円規模=関係筋 原発事故対応や中小企業支援に取り組む姿勢示す 
Business | 2017年 01月 18日 16:01 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
東電、6年半ぶり社債発行へ 16年度内に1000億円規模=関係筋

[東京 18日 ロイター] - 東京電力グループが、2011年に発生した福島第1原発事故以降、中断していた電力債発行を今年度中に再開する見通しとなった。調達額は1000億円程度で、東京電力ホールディングス(9501.T)傘下の送配電子会社、東京電力パワーグリッド(東電PG)が3月にも一般担保付き電力債を発行する。東電グループによる電力債発行は約6年半ぶり。複数の関係筋が明らかにした。

東電には16年3月末時点で3兆4556億円の社債発行残高があり、約6年間の空白期間があるものの、電力会社として最大の発行規模を持つ。17年度だけで6500億円(発行額ベース)の公募債償還を控えており、巨額の資金を社債市場から断続的に調達する必要がある。

同社は東電PG債発行に向け、すでに1年以上前から全国の機関投資家を訪問してきた。今月には、発行業務を担当する主幹事候補の証券会社数社にヒアリングを実施。福島原発事故の賠償資金の援助などを担っている原子力損害賠償・廃炉等支援機構の幹部も同席し、年度内の発行や起債予定額、投資家の需要動向など全般的な起債戦略などを協議した。

東電が当初希望していた昨年9月の発行はできなかったが、12月に経済産業省の有識者会議などで同社の改革案や事故処理費用の政府試算がまとまったことで、投資家の間には同社の社債発行リスクが見通しやすくなったとして再開を求める声が高まっていた。すでに今年度の投資枠を東電PG債のために確保している投資家も少なくない。

発行体となる東電PGは配送電事業での市場支配力が強く、高い信用度を維持している。持ち株会社である東電HDはコストが膨れ上がる福島第1原発のリスクを直接抱えており、発行できる状況にないが、東電PGであれば、投資家のリスク懸念を払拭しやすいと見られている。

社債発行は従来、東電が実質国有化(一時公的管理)から離脱するための重要な評価項目に位置づけられていた。現行の再建計画では同機構が、国、東電社外取締役と協議し、今年度末に経営評価を実施することになっている。

評価の結果、「自律的運営体制への移行」が進んでいると判断されれば、機構を通じて国が持つ議決権比率を50%未満に下げ、政府による東電への役職員の派遣も終了する。しかし、廃炉や賠償など原発事故関連の費用が従来見通しの11兆円から22兆円へと倍増する見通しとなり、同機構が50%超の議決権を保有する状況が2017年度以降も続くことは確実だ。

福島原発の廃炉費用が従来想定の2兆円から8兆円に増えるとの有識者会議での試算を受けて、政府は新たな積立金制度の導入をめざしているが、今月20日に始まる通常国会に提出される関連法案の成立時期は、年度をまたぐとみられている。

こうした状況を背景に、機構内には制度変更が決まるとみられる今年6月まで東電の社債発行再開は待つべきだとの慎重論があった。しかし、東電に融資する金融機関側にも社債市場への早期復帰を望む声が根強く、機構側も今月に入って、東電が希望する年度内の再開を容認する姿勢に転じた。

*内容を追加します。

(浜田健太郎 間一生(DW編集部) 編集:北松克朗)

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原発事故対応や中小企業支援に取り組む姿勢示す=世耕経産相

[東京 4日 ロイター] - 世耕弘成経産相は4日、グループインタビューで、中小企業対策として、下請け企業の取引条件の改善や生産性向上のための支援策を考えていきたいと述べた。福島の復興再生策では、ロボット技術の集積地にするなど、未来志向の産業拠点にしていく考えを示した。

中小企業支援策では、IT導入や生産性向上、経営力強化を支援していくとともに、下請け法の運用強化により「大企業との取引条件を改善することが重要だ」とした。

東京電力(9501.T)が、福島原発事故対策で国に追加支援を要請していることについては、現段階では廃炉に向けた資金に問題はないとしながらも、「東電に責任を果たしてもらいつつ、国も前面に立って取り組む」姿勢をあらためて示した。

事故処理をめぐり、東電がメルトダウンに関する情報を隠していたとされる問題については「東電が、信頼されるに足る組織になることが非常に重要」とし、「政府としては、原子力災害対策をしっかり充実させ、その取り組みを説明していく」と述べた。

環太平洋連携協定(TPP)をめぐり、米国で議会承認が得られない可能性が懸念されていることについて、大筋合意の会合で参加各国が批准の手続きを進めることが約束されているとし、「日本としては誠実に実行していく。国会に対し条約の批准と関連法案の成立をお願いしていく」と述べ、「米国政府も同じ気持ちだと思う」とした。

出光興産(5019.T)と昭和シェル石油(5002.T)の経営統合が、出光の創業家の反対で難航していることに関し、石油の国内需要が減少しているなか、「業界の再編は必要で、合併は前向きな取り組みの1つとして評価している。経営陣と創業家の相互理解が進み、統合に向けた調整が進むことを期待したい」と指摘。「再編は、大きな流れとして避けて通れない道だ」と述べた。

(宮崎亜巳 編集:吉瀬邦彦)

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http://jp.reuters.com/article/seko-interview-idJPKCN10F0NB?rpc=188
http://www.asyura2.com/16/genpatu47/msg/323.html

[国際17] (社説) オバマ大統領恩赦の茶番劇 退任前の恩赦、機密漏えいの米兵も 35年禁錮刑で服役中、トランスジェンダーに配慮  
【社説】オバマ大統領恩赦の茶番劇
機密情報漏えいで禁錮35年のトランスジェンダー元米兵を減刑

https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-RR069_2ROjr_M_20170117172724.jpg?width=1260&height=838
トランスジェンダーとして収監されているチェルシー・マニング受刑者(写真)に対しオバマ大統領は減刑措置を発表

2017 年 1 月 18 日 14:34 JST

 バラク・オバマ米大統領は17日、告発サイト「ウィキリークス」に大量の米軍機密情報を漏えいした罪で禁錮35年の判決を受けたトランスジェンダー(性転換者)の元米兵、チェルシー(旧名ブラッドリー)・マニング受刑者の減刑を発表した。カンザス州の米軍刑務所に女性として収監されている、この善意の内部告発者の裁判が茶番劇だったことを示す証しとして、左派はこの決定を祝うだろう。だが本当の茶番劇は、何百もの人命を危険にさらし世間の注目を浴びた、この進歩的な行為に対して寛大さが示されたことだ。

 おさらいしておくと、マニング受刑者は下級情報分析官としてイラクに派遣され、そこで大量の機密情報へのアクセス権を手に入れた。2010年以降、ジュリアン・アサンジ容疑者が創設したウィキリークスに75万件近くに及ぶ書類を漏えいした。その中には、国務省の機密の公電や、イラクやアフガニスタンでの戦争に関する大量の軍事情報が含まれていた。アサンジ容疑者は複数の報道機関の記者と協力して文書を公開した。透明性の美徳に対する自己満足のためにだ。

 米外交・軍当局者は厳しい見方をしたが、それには理由があった。国務省の公電は外交上のゴシップ程度のものが多かったが、中には米国の外交官と圧政を行っている国の野党リーダーとの間のデリケートなやりとりも含まれていた。機密情報の漏えい後、ジンバブエの最大野党、民主変革運動の党首を務めるモーガン・ツァンギライ氏(2009年〜13年に首相)は、ロバート・ムガベ大統領が率いる独裁政権から捜査を受けることになった。同国の司法当局は「ジンバブエの地元住民と攻撃的な国際社会の間に背信的な癒着」があったと説明した。

 もっと危険だったのは、軍事作戦に関する機密情報が公開されたことだ。そこにはアフガンの反政府武装勢力タリバンと戦う多国籍軍のためにひそかに情報提供者として動いていたアフガン人の名前が含まれていた。国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者を殺害するため2011年にパキスタンの潜伏先を急襲した米海軍特殊部隊「SEALs」の隊員の1人は、マニング受刑者が漏えいした情報が同容疑者のコンピューターの中に見つかったと証言した。

LGBT団体が恩赦を嘆願

 当時、オバマ大統領が「ウィキリークスによる嘆かわしい行為」と非難したのは不思議ではない。ヒラリー・クリントン国務長官(当時)は漏えいされた文書は「人々の命を危険にさらし」ており、「米国の外交政策に対する攻撃」でもあると批判した。検察当局は当初、マニング受刑者に終身刑を求刑した。22の罪に問われていた同受刑者は2013年、最終的にスパイ行為や窃盗を含む17の罪で有罪判決を受けた。

 判決が下ってから24時間もたたないうちに、マニング受刑者はホルモン治療の開始と、チェルシーへの改名を求めた。陸軍は昨年、同受刑者の性同一性障害の治療にかかる費用負担で合意した。昨年12月、米自由人権協会(ACLU)や数多くのLGBT(性的少数者)団体がマニング受刑者への恩赦を求める書簡をオバマ大統領に送った。同受刑者が自殺を試みた後、独房に収監されていることも理由の一つだった。

 今回の減刑措置は、不満や他の問題を抱えているかもしれないが、国の機密情報は盗んでいない兵士たちに恐ろしいメッセージを送ることになった。性同一性障害やその他のポリティカルコレクトネス(人種・性別などの違いによる差別をなくすこと)を根拠に主張できるものを何か持っていれば、国を裏切ったとしても軽い刑で済むということだ。

 オバマ大統領は17日、米政府に対して「扇動的な陰謀」を企てた罪で有罪判決を受けたプエルトリコ人のテロリスト、オスカー・ロペス・リベラ受刑者の減刑も発表した。同受刑者は1974〜83年に米国内で70回を超える爆発事件を起こしたFALN(プエルトリコ民族解放軍)のメンバーだった。これらの爆発事件では5人が死亡、数十人が負傷した。ミュージカル「ハミルトン」の脚本・音楽を手がけたリン・マヌエル・ミランダ氏は1981年から収監されているリベラ受刑者の解放を、友人であるオバマ大統領に訴えていた。爆発事件の犠牲者の遺族に対してオバマ氏が事前に通知していたかどうかに関して、ホワイトハウスは言及していない。

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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiKkqe2tsvRAhVKFJQKHf4QDSwQqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11163456931573304514904582566193640862590&usg=AFQjCNHl0xN6n3Ingsw6tUbyIWPTFt9hcw

オバマ氏が退任前の恩赦、機密漏えいの米兵も
35年禁錮刑で服役中、トランスジェンダーに配慮

https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-RR270_170118_IM_20170118021823.jpg
後に「チェルシー」と改名したブラッドリー・マニング上等兵

2017 年 1 月 18 日 15:28 JST

 【ワシントン】バラク・オバマ米大統領による恩赦が17日発表され、機密漏えいの罪で服役中のチェルシー・マニング受刑者も残りの刑期を免除されることになった。イラクで情報分析官を務めていたマニング上等兵は2013年、内部告発サイトのウィキリークスに政府の機密文書を提供したとして35年の禁錮刑を言い渡されていた。

 今回の決定はオバマ氏の退任3日前となるこの日、他の200件以上の減刑措置や数十件の特赦とともに発表された。

ハイペースの減刑措置

 政権幹部によるとオバマ大統領は任期中に1385件の減刑を認めたことになり、それ以前の12人の大統領の合計を上回った。減刑措置の3分の1以上が麻薬犯罪で終身刑を受けたケースで、オバマ氏は最も厳しい薬物関連法が施行された数十年間に不当に重い刑を宣告されたと思われる受刑者の減刑に力を入れたという。

 一方、任期中に行った特赦は212件で、ジョージ・W・ブッシュ前大統領の189件をわずかに上回る程度だった。

 2013年8月、ブラッドリー・マニング上等兵は数十万件に上る文書をウィキリークスに提供したとして有罪判決を受けた。米軍のヘリコプターがイラクで爆撃した人々の中にジャーナリストが含まれていたとわかる映像や、アフガニスタンやイラクでの偶発事件の報告、米国務省の数十万件の機密連絡などが流出し、米国史上最大の情報漏えい事件の一つとなった。

 判決から24時間もたたないうちに、マニング上等兵はホルモン療法を開始するとともにチェルシーという女性名を使いたいとの希望を告げた。米軍は2016年、性別の違和感について医学的治療を受けることを認めた。

性的少数者への配慮

 大統領令で5月17日に釈放されるマニング受刑者への減刑措置に対し、共和党から即座に批判の声が上がった。

 トム・コットン上院議員(共和、アーカンソー州)は「われわれの軍隊や外交官、情報当局者、同盟国を危険にさらした者に大統領がなぜ特別な同情を抱くのか理解できない。裏切り者を殉教者のように扱ってはならない」と語った。

 オバマ氏の決定はトランスジェンダーが男性刑務所に収監されることで直面する困難への配慮を示す格好となった。マニング受刑者は昨年、2度自殺を試みている。

 米国自由人権協会(ACLU)とアムネスティ・インターナショナルは今回の判断を歓迎する声明を出した。

 ACLUのLGBT(性的少数者)プロジェクトに参加する弁護士でマニング受刑者の代理人であるチェース・ストランジオ氏は「この措置は文字通りチェルシーの人生を救うことになりそうだ」と述べた。

 アムネスティ・インターナショナルUSAのマーガレット・ファン理事長は「チェルシー・マニングは深刻な虐待にさらされ、その結果、彼女の人権は何年にもわたり米政府に侵害された」と語り、減刑措置は遅すぎたとの見方を示した。

 一方、上院共和党のナンバー2、ジョン・コーニン議員(テキサス州)は恩赦件数の多さに疑問を呈する。「刑事司法改革という大きな観点からすると、大統領は前例のないペースで寛容な措置を示すことでわれわれの政治資本を損なっている」と記者団に語った。

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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjhtqG-tsvRAhXItpQKHdzeCLEQqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10504433381807684657504582566290983016610&usg=AFQjCNHvBBeeN3BtUJv7y84yk6Ffz17cTg

http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/356.html

[政治・選挙・NHK219] 改憲の論点1:参院合区と一票の格差の狭間 「違憲状態」でも選挙無効の判決を出さない理由 価値対立への“行司”は政治が担う
改憲の論点1:参院合区と一票の格差の狭間

今だから知りたい 憲法の現場から

国民の価値対立への“行司”は政治が担うべき
2017年1月18日(水)
神田 憲行、法律監修:梅田総合法律事務所・加藤清和弁護士(大阪弁護士会所属)
 今月20日から通常国会が招集され、自民党は衆参両院の憲法審査会の場で、改憲項目の絞り込みを進めるという。

 憲法改正を論ずるとは、この国の望ましい統治機構の在り方を模索することでもある。憲法改正の必要はあるかないかという入り口の議論ばかりではもったいない。具体的な論点についての議論を重ねれば、たとえ改正に至らなくても、国民の憲法に対する意識や「この国のかたち」について考えが進むはずだ。

 政治家たちが憲法問題を政局化せず正面から論じ、国民はその議論を追いつつ、自らの見識を深めていく。憲法改正論議は私たち国民にまたとない政治教育の場となるだろう。

 そこで、今回から3回にわたり、各党・議員の発言の中から、興味深い憲法改正の論点について個々に取り上げたいと思う。いずれも改正するかしないかは別として、そのような議論そのものが議会制民主主義の発展に資するものである。

 今回の論点は、参議院の合区解消だ。

2016年の参院選は、島根と鳥取、高知と徳島の合区が実施されての初の選挙となった。(写真:ZUMA Press/アフロ)
「一票の格差」問題とは

 まず、参議院の「合区」解消という論点を考えたい。

 「合区」とは議員定数不均衡(一票の格差)問題に絡む話である。選挙のたびに裁判が起こされ、テレビのニュースで「今日、一票の格差が合憲と判決が出ました」「違憲と判決が出ました」などとご覧になった方も多いだろう。あれに絡む話である。

 合区を説明する前に、「一票の格差」問題を説明しよう。

 たとえばある地区の人口が100人で、そこに国会議員を1人割り当てるとする。議員数が人口に正比例するならば、1000人いる地区には議員が10人割り当てられることになる。このとき、100人地区と1000人地区の有権者1人あたりの投票の価値を比較すると「1対1」で完全に平等になる。しかしたとえば1000人いるのに1人しか割り当てられないケースが出てくると、このとき100人地区と1000人地区の投票価値は「10対1」となる。

 選挙権が「ひとり一票」ずつ与えられているのは読者の皆さんもご存じだろう。だが投票価値が「10対1」では、実質的に1000人地区では10人の有権者が集まって、やっと100人地区のひとり分に相当しているのではないか、と考えられるのである。これが「一票の格差」問題である。

「違憲状態」でも選挙無効の判決を出さない理由

 わが国は1950年に公職選挙法が制定された際に、人口比に応じて議席数が配分され、たとえば衆議院議員については人口約15万人に議員1人の割合とされた。しかし戦後の経済成長につれて人口の急激な移動が起き、とくに都市部に人口が集中するようになり、割り当て議員の数が必ずしも人口比を正確に反映しなくなってきた。

 「投票価値の平等」を求める裁判は多く起こされ、最高裁判所は1976(昭和51)年4月14日に、

《憲法14条1項、15条1項、3項、44条但書は、国会両議院の議員の選挙における選挙権の内容、すなわち各選挙人の投票の価値が平等であることを要求する》

として、「投票価値の平等」が憲法上の権利であることを認めた。「ひとり一票」だけでなく、実質的な中味も平等であることが必要としたのである。これは現在の通説・判例にもなっており、目立った異論も無い。

 参議院についても1996(平成8)年、2012(平成24)年と最高裁は「違憲状態」と判決している。「違憲状態」とは、国会が是正の義務を負う程度の著しい不平等状態という意味だ。

 「違憲状態」という奥歯にモノが挟まったような判決の仕方が、この問題の難しさを表している。これまで最高裁は違憲性を指摘しても、一度も選挙無効の判決を出したことはない。なぜなら選挙を無効にしても、議員がいなくなるだけで「投票価値の平等」を求めた人への救済にならないからである。

 本来は選挙を無効にして、正しい人口比に応じた議員定数の配分をして、やりなおし選挙をすべきだ。だが議員定数の配分は立法行為であり、それは裁判所の権限ではできない。また違法であってもそれを理由に取り消すことが公共の福祉に適合していないとき、裁判所は違法だけを宣言して請求を棄却するいわゆる「事情判決の法理」を適用する。だから最高裁は「違憲」と指摘するに留めて、具体的な解決のボールを政治に投げ返し続けてきたのである。

「合区」問題は司法判断にはなじまない

 これに対する政治の回答のひとつが「合区」なのである(やっと出てきた)。合区とは、行政区分を無視して、人口の少ない選挙区を「合」わせてひとつの選挙「区」にしたものである。2016年夏の参議院選では、鳥取と島根、徳島と高知が合区となり、最大格差は3.08倍まで縮まった(しかしそれでも全国で「一票の格差」訴訟が提起され、10判決が「違憲状態」、6判決が「合憲」となった)。

 合区の選挙区からは鳥取と高知を地元にする議員が選出されなかった。全国知事会は昨夏、「参議院選挙における合区の解消に関する決議」という声明文を発表し、合区の解消と「将来を見据え、最高裁の判例を踏まえ憲法改正についても議論すべきと考える」と主張した。

 ただ、合区を解消して、各都道府県から最低ひとりは参議院議員を出すとすると、憲法に抵触する可能性がある。憲法43条1項にこうある。

《43条1項 両議員は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する》

 各都道府県から必ず出すとすれば、それは「地域代表」ではないのか。「全国民の代表」と言えるのか、という問題である。また当然、定められた議員定数を配分するという前提から考えれば、現実的には「一票の格差」は是正されず、憲法の平等原則との調整も必要になってくる。

 「合区」の解消をしたければ議員定数を増やせば良いとの考え方もあろうが、財政支出面での合意が壁になる。一方、参議院を「地域代表院」とするならば、各都道府県選出議員は同数が基本になる。各県最低1議員のような選び方だと、やはり「一票の格差」は生じるだろう。いずれも、中途半端である。

 「投票価値の平等」は都市住民の求める声であり、「合区解消」は疲弊した地域の声を中央に届けたい地方住民の声である。国民の価値が対立しているところであり、これは司法判断ではなく、政治の場で決着をつけねばならない。もし合区を解消して参議院を地方選出議員の場とするならば、現在の衆参両議院の関係も見直さなければならないだろう。

 「一票の格差」問題は国会議員とはどういう存在なのか、衆議院と参議院の性格はどう違うのか、考える契機になる。

*1月19日公開「改憲の論点2:歯止めなき衆院解散権の是非」に続く


このコラムについて

今だから知りたい 憲法の現場から
日本国憲法が揺らいでいる。憲法解釈を大きく変更した安保法が国会で成立し、自民党はさらに改憲を目指す。その根底にあるのが「押しつけ憲法論」だ。だが日本国憲法がこれまで70年間、この国の屋台骨として国民生活を営々と守り続けてきたのも事実だ。本コラムでは、憲法史上に特筆すべき出来事が起きた現場を訪ね、日本国憲法が果たしてきた役割、その価値を改めて考えていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/120100058/122800010
http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/347.html

[政治・選挙・NHK219] 誰もがパチンコ・ギャンブル依存症の予備軍に 防げなかった自殺も まずは予算を増やすこと
誰もがパチンコ・ギャンブル依存症の予備軍に

キーパーソンに聞く

「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表理事に聞く
2017年1月18日(水)
熊野 信一郎
 2016年12月に「統合型リゾート施設(IR)整備推進法」が成立し、カジノの合法化・導入に向けた議論が本格化する。年内をめどに具体的な導入、運営のルールなどを盛り込んだ実施法案が準備される見込みだ。

 一方で各種の世論調査ではカジノの解禁について反対する声が多数を占めるなど、課題も多く残る。そのうちの一つがギャンブル依存症の問題だ。どのような支援や対策、またはそれを可能にする仕組みが必要なのか。自らもギャンブル依存症だった過去を持ち、支援・啓蒙活動を続ける一般社団法人、「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表に聞いた。

田中紀子(たなか・のりこ)社団法人・ギャンブル依存症問題を考える会代表
1964年東京都生まれ。祖父、父、夫がギャンブル依存症者という三代目ギャンブラーの妻。夫と共に、ギャンブル依存症の問題から立ち直った経験を伝えようとカウンセラーとなり、2014年2月に「ギャンブル依存症問題を考える会」を立ち上げ、代表就任。依存症問題の啓発運動と「学校教育、企業に向けた依存症予防教育の導入」を掲げ、活動している。各政党の勉強会や経団連、地方自治体の研修会等でも講師を務める。著書に『祖父・父・夫がギャンブル依存症!「三代目ギャン妻の物語」』(高文研)、『ギャンブル依存症』(角川新書)。


通常国会にギャンブル依存症対策に関する法案が提出される見込みがあるなど、改めてギャンブル依存症の問題に注目が集まっています。長年、活動を続けられてきた立場から、現状の動きをどう見ていますか。

田中:評価したいのは、カジノだけでなく公営ギャンブルやパチンコなど、既存ギャンブルについても依存症対策の対象として議論されるようになったことです。

 カジノ法案が出てきて議論が始まった当初は、「依存症=カジノ依存症」という文脈で語られることが多かったんです。それが、法案に批判が殺到したこともあって、附帯決議に「カジノだけではなく他のギャンブルに起因する依存症対策に取り組むべき」との内容が盛り込まれました。

 競馬や競輪、競艇などの公営ギャンブルは、省庁ごとに所管がバラバラで、それぞれ「ギャンブル依存症は存在しない」という前提のままここまできました。また「遊技」とされるパチンコは、依存症問題は認めていましたが、対策にはほとんど着手していません。今回、カジノ法案の議論に合わせて各省庁が慌てて依存症対策にどう取り組んでいるかを説明しましたが、実際には日本ではギャンブル依存症対策はほとんど何もやってこなかったんですね。

ギャンブル依存症で苦しむ人が多くいるという前提で議論が始まったと。

田中:そうですね。ギャンブル依存症について活動する関係者や組織の中には、カジノを含むギャンブルそのものに反対するスタンスの方々もおられます。私どもはカジノ、ギャンブルそのものに反対というわけではありません。

 パチンコ店が至る所にあるように、日本にはギャンブルが既に存在しています。ギャンブル依存症に苦しむ人が536万人もいるとういう調査もあるわけです。それを前提に、いかに依存症者を支援し、救えるかを重視して活動きました。ですからカジノの合法化の議論を大きなきっかけとして、国全体でギャンブル依存症という問題に取り組む機運が高まればいいと考えています。

1月20日からの通常国会では、ギャンブル依存症対策に関する法案が提出される方向で調整が進んでいます。国が基本的な方向性を示し、公営ギャンブルなどの運営主体となる自治体が具体的な計画を策定するという大枠が有力なようです。

田中:新たな法律が「ギャンブル依存症対策にしっかり取り組みました」という言い訳にならないよう、または内容が骨抜きにならないよう、注視しています。国が枠組みを作り、自治体が対策に責任を持つという構図は悪くはないと思います。

 懸念しているのは、それが単なる努力義務になってしまうことです。依存症対策を自治体の義務としてきっちり決めて一定の条件を定め、それよりも著しく劣るものはペナルティを課すといった仕組みがなければ意味がありません。口だけで「やっています」と言い逃れができるような内容なら、これまでとほとんど変わらないからです。

(ここで田中代表に電話が入る。自殺を示唆するメッセージを家族に残し、行方不明になっていた30代のギャンブル依存症の男性が茨城県で保護されたとのこと)

まずは予算を増やすこと

ギャンブル依存症に苦しむ人を生まない、または既に苦しんでいる人を救うために、具体的にはどのような対策・支援策が必要だと考えますか。

田中:やらなくてはならないことは多岐にわたるのですが、まずはある程度の予算を確保しなくては何も始まりません。国の予算だけではなく、既存のギャンブル運営母体が売上高の数パーセントを拠出することも必要になると思います。

 現状、ギャンブル依存症対策の予算は、厚生労働省を中心に1億円程度です。韓国での予算は22億円と日本を大きく上回りますが、それでもカジノを自国民にも開放したことも影響して、対策は必ずしもうまくいっているとは言えません。ですから単純に人口比で考えても、日本の場合は最低でも50億円は必要ではないでしょうか。

その上でどのようなことから始めるべきだと考えていますか。

田中:例えば支援現場の課題として、圧倒的に人材が不足していることがあります。ギャンブル依存症については、こちらがベストと思うアドバイスをしても、結果として自殺してしまうなどのリスクもとても高いんですね。そうなると援助職も自責の念で苦しむことも多いですし、ショックも受ける。それだけ覚悟が必要です。

 単に基礎知識や資格があればいいというわけでなくて、いろいろな事例を見てきた経験や勘のようなケースごとの判断力もとても大事なんです。最近では自治体に非常勤のスタッフを置く動きも出てきていますが、お金と時間をかけて、人材を育てていくことがまず必要です。

 ほかにも医療機関との連携などやらなければならないことは多岐にわたるので、横断的にギャンブル依存症対策を管轄する組織を作り、民間も巻き込んでいくべきだと考えています。いずれにしても、カジノが出来てから考えるのではなく、既に数多くのギャンブルが存在する今から始めなくてはいけないのです。

既存の公営ギャンブルやパチンコ産業などには、どのような対策をしてもらいたいですか。

田中:先程も申し上げたように、まずは依存症についての対策や啓発活動にもっと予算を割いてほしいんですね。例えば、年末の有馬記念でも、いろいろなところに大きな広告が出ていましたよね。それら広告のうち3本に1本でも5本に1本でもいいので、依存症について正しい知識や相談窓口などを知らしめる広告を入れなくてはいけないなどの規制を作り、依存症啓発バージョンのCMを流すなどです。

 あとは、本人や家族の自己申告に基づいてギャンブル場にアクセスできないようにする制度は海外でも効果の高い対策として定着しており、是非日本でも導入してほしいですね。

パチンコ店などではIDチェックもなく、誰でも自由に出入りできるので、難しそうですが…

田中:例えばタバコでは成人を識別するための「タスポ」カードが導入されました。少なくとも、まずああいった制度や設備を導入して、青少年を排除するなどの年齢制限には厳格に取り組むべきです。その分、新たな投資も必要になりますが、それもまた経済の循環を生むことになるのでは?と思います。

 入場制限についても、いろいろな技術を使えば決して不可能ではないはずです。業界としてやる気があるかどうか、または国としてやらせる気があるかどうかの問題です。

カジノの議論を通じ、世論の変化を感じておられますか?

田中:依存症対策が重要であるという意識が広がってきているとは感じています。ただ、相変わらず「自己責任論」が強いんですね。アルコールもそうですが、依存症にならない人が多いために、依存症を「意思が弱いから」、「自分を律することができないから」といったふうな自己責任論で終わらせてしまいがちなんですね。

 ギャンブル依存症は、長い間「存在しないもの」とされてきただけに、そうした誤解が強いかもしれません。現在のような風潮のままだと、当事者はどうしても依存症かもしれないということを隠して、または自分で認めようとせずに、やり続けてしまうのです。

 依存症を自己責任論で終わらせて放置したままだと、社会的なコストは増える一方です。離婚率が上がって母子家庭が増えれば、母子手当などがかさみますし、依存症によって仕事につけなくなれば、生活保護などの社会保障費の負担は膨らみます。医療費も増えるし、犯罪につながれば刑務所や裁判のコストもかかります。国民が依存症を自己責任論と信じ、国が対策を放置していたのでは、本来であれば受益者負担を強いられるはずのギャンブル産業の代わりに社会のコストを負担し続けなければならず、結果的にギャンブル産業の片棒を担いでいるということに気付くべきです。

そもそも、ギャンブル依存症がどのようなものなのか、イメージが湧きにくいのが自己責任論の原因の一つかもしれません。

田中:世の中の多くの人は、ギャンブル依存症と言うと一発逆転を狙った、堕落した人間をイメージするかもしれませんが、実は反対なんですね。実際には30〜40代の真面目な中堅のサラリーマンが結構多いんですね。仕事などでストレスを抱えていても、悩みを話せる環境がなく抱え込んでしまって、それがギャンブルに向かうと。

 昨年スポーツ選手のギャンブル依存症問題が度々話題になりましたが、社会的に成功している人でもギャンブル依存症には陥ります。むしろ社会で成功しているので、自分で自分をコントロールできなくなっていることを認めることができないので、重症化するケースをたくさんみて参りました。

 ですから誰もが予備軍なんですね。かくいう私も、自分と夫がギャンブル依存症と判断された時に、「え、大学出てもなるんですか」と言ったほどですから。今思えば傲慢な話ですが、それまで比較的お給料も高く、仕事で成功していたので、自分は人生の勝ち組と思っていて、信じられない気持ちでした。

最近はソーシャルゲームのアイテム課金など、子供の時からギャンブル的なものに接する機会はむしろ増えているようにも思えます。

田中:確かに最近は、小学生でも数万円の課金をして問題になったりすることもあります。若年層でネット・ゲーム依存からオンラインギャンブルなどのギャンブル依存に発展するケースも出てきています。ですから依存症について正しい知識を持ってもらうための学校教育も欠かせないと思います。

(ここで再び失踪者について連絡が入る。身柄を確保した場所に田中代表も向かうことに)

防げなかった自殺も

…自殺をほのめかしたり、失踪したりするケースも多いのですか。

田中:残念ながら2016年、私たちが相談を受けていた仲間で、3人の自殺者が出ました。大体毎年、3人ぐらいでてしまうんです。

 福島県で起きたケースでは、あるギャンブル依存の男性が2回ほど自殺未遂を起こし、その時は一命はとりとめたんです。でも、2度目の自殺未遂のあと、精神科への入院を強く要望したのに、救急病院でそれが受け入れられず家に返されてしまって、その1週間後に自殺してしまいました。助けられたのにと思うと非常に悔しい思いです。医療・救急との連携体制の強化も含め、まだまだ啓発が必要で、社会が依存症について知っておかないと同じことが繰り返されてしまいます。

確かに、ギャンブル依存症がどういう状態で、最悪の場合は自殺にまで至るということまでは知られていません。

田中:最終的には鬱になることが多いんですね。まず直面するのはお金の問題ですが、それが家庭に広がり、さらに会社での横領など仕事にも影響します。そうしていろいろな要素が絡み合うことで、一体何が根本的な原因なのかが見えにくくなり、解決がどんどん難しくなっていく。

 本来であれば、重篤な場合はすぐにギャンブル依存症の回復施設に入れて回復プログラムを受けてもらう必要があるのですが、家族も周りもそんな知識がないので、誰も的確に判断できないわけです。周りにもアドバイスができる人がいませんし。

田中さんもかつては当事者の一人だったわけですが、どのような状況になるのでしょうか。

田中:一言でいえば強迫観念です。やりたくてしょうがない。そしてギャンブルをやりだすと今度は、止まらなくなる。うまく表現するのが難しいのですが、よく例えに使うのは「水疱瘡」ですね。子供が水疱瘡になると、親は「かきむしってはだめ」と注意しますよね。でも、かきたくてしょうがなくて、我慢できない。ちょっとかくとホッとしますが、一度かきだすとかきむしってしまって傷になったりする。あの感じがすごく強くなったのが依存症です。

 私の場合は競艇でしたが、ギャンブルも水疱瘡と同じで、やり始めるとホッとして、イライラが消えるんです

勝つことではなく、ギャンブルという行為そのものが目的になると。

田中:そうですね。アレルギーと同じで、人によって状況が違うんですね。自分の場合、お酒もタバコもスパッとやめられたんですが、ギャンブルだけは自分一人ではやめられませんでした。あと買い物。この2つは行動依存なので似ているのかもしれません。ギャンブルはやめられても、買い物にシフトするケースもよく聞きます。ゲーム依存になることもあります。ただギャンブルをやめさせるだけでなく、ほかの依存症に向かわないようにも気をつけなくてはならないんですね。

 これまでギャンブル依存症の対策が進んでこなかったのは、私たちのような当事者があまり声を大きくして主張してこなかったことも原因の一つという反省もあります。これからはもっとアピールしていきたいと思っています。

(インタビューが終わるやいなや、失踪した支援者を確保した現場に向けて飛び出した田中代表。その後、無事に回復施設につなげることができたとのこと)


このコラムについて

キーパーソンに聞く
日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/011600224
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[政治・選挙・NHK219] 「日本死ね」は変えられないのか 安倍首相と黒田総裁に伝えた国の借金の返し方「ヘリマネ」政策の提唱者、アデア・ターナー氏に

「日本死ね」は変えられないのか

記者の眼

2017年1月18日(水)
西 雄大
「保育園落ちた日本死ね」

 2016年のユーキャン新語・流行語トップ10にも選ばれた待機児童問題。厚生労働省によると、待機児童者は2015年10月時点で4万5315人と増加傾向にある。保育士の有効求人倍率は1.5倍以上と高い状況が続いている。

 個人的な話で恐縮だが、私の息子は昨年認可保育園に入園できず、認証保育園に通っている。いまの保育園には3歳まで通えるが、小学校入学までの数年間は決まっていない。

 認可保育園は認証保育園に比べて園庭があったり、兄弟で通うと保育料が安くなったりするなどの特典が多い。私の息子は待機児童者数に含まれていないが、親の気持ちからすれば認可保育園へ入園させたい。“隠れ待機”も含めると、実態としての待機児童者数は統計値よりもっと多いと思う。

 先日、来年度の入園希望を役所に提出したものの、叶いそうにない。入園可能者よりも多いため選考がある。1歳児に試験を課すわけにもいかない。私が住む地域では、親の保育困難状況を点数化して決める。夫婦共働きなのか、親が遠方に住んでいるのかといった保育が困難な状況を数値化する。

 私の持ち点は「夫婦共働き、親が遠方に住んでいる」状態。今年は認証保育所に通っていたので加点がある。それでも、申し込み前から入園できる可能性がない保育園がたくさんあった。過去の実績から入園できた児童の持ち点を元にボーダーラインが設定されているためだ。その中には近所にある認可保育園も含まれており、すでに来年度もあきらめている。

ベトナムで保育士を養成

 待機児童をなくすためには保育士の確保が先決となる。しかし、冒頭で触れたように求人倍率は高く、人手の確保は困難だ。そこで、何かいい方法はないかと考えた。まず思い浮かんだのが外国人の活用だ。保育士と同様に人手不足が問題となっている看護師や介護士も活用の動きが出ている。

 都内を中心に約100の保育園を運営するグローバルキッズ(東京都千代田区)は、企業進出を支援するアセゴニア(東京都渋谷区)とともに、ベトナムへ進出する。2017年中をメドにハノイ近郊に保育園を開設。ほかにも開園を目指している。日本から保育士を派遣し指導にあたる。

 この保育園は日本人駐在員の子供ではなく、現地の子供を受け入れる。ベトナムの国民平均年齢は約28歳と若く、共働き家庭が増えている。だがベトナムには日本のような保育園がない。日本で培った教育体系や保育に関する質の高いサービスを輸出する。


グローバルグループはベトナム・ハノイ大学と提携。まず日本式の保育園を開設。保育士不足の解消を目指す。
 グローバルキッズが海外進出する狙いは保育園を運営する以外にもある。ベトナムで保育士を養成し、日本へ送りこもうとしているのだ。

 ハノイ大学と組み、保育士を養成するプログラムも開設する。プログラム参加者は来日して、同社が運営する保育園で実地研修を受けるなどして保育士に必要な知識を学ぶ。

 グローバルキッズは日本とベトナム間での保育士の相互派遣を目指している。

 日本国内の保育士は不足しているため、ベトナムで養成した保育士を日本で勤務させることを検討しているが、実現に向けては高い壁が立ちはだかる。就労する上での在留資格を満たしたうえで、日本語による保育士の資格試験をパスしなければならない。宇田川三郎取締役は「前例がないので実績を作り、将来的には外国で取得した保育士資格でも働けるよう国に働きかけていきたい」と話す。

ロボットを副担任にして負荷軽減

 もうひとつはロボットの活用だ。同じように人材不足の課題を抱える介護業界でもロボットの活用が進んでいる。園児の見守りロボット「MEEBO(ミーボ)」がそれだ。保育士の副担任を目指しているという。

 ミーボは身長28センチメートルのロボットで、音楽に合わせてダンスしたり、しゃべったりできる。目の代わりにカメラを搭載し、園児の様子を確認したり、その模様を保護者に送れる。保育士の業務には、園児睡眠中のチェック(0歳児の場合は5分おき)なども含まれており、非常に多忙。体温測定といった定常業務をミーボに任せられれば、保育士は少なくても質が高い保育を実現できる可能性がある。

 もちろん保育園の開設には人材確保以外にもハードルは多い。騒音問題で用地を取得できないなどの課題もある。「日本語が堪能でない外国人に代わりができるのか」「ロボットに任せられるのか」といった疑問も出てくるかもしれない。

 ただ今後も現状のままだと、人手不足が加速することだけは間違いない。

 トーマツベンチャーサポートによると、2040年には保育産業を含む医療福祉業界で74万人分の人手が不足すると見込む調査もある。

 保育に対する柔軟な考え方が不可欠になる。日本は保育以外にも、高齢化や介護などの深刻な課題にほかの国よりも早く直面する。課題先進国であるからこそ、試行錯誤し様々な取り組みができる。新しい保育のあり方も先行して示せる可能性がありそうだ。


このコラムについて

記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/011700389/


 

安倍首相と黒田総裁に伝えた国の借金の返し方

ニュースを斬る

「ヘリマネ」政策の提唱者、アデア・ターナー氏に聞く
2017年1月18日(水)
武田 健太郎
 1月初旬に米著名投資家ジョージ・ソロス氏と共に来日し、安倍晋三首相や黒田東彦・日本銀行総裁と経済政策を巡って議論した人物がいる。彼の名はアデア・ターナー氏。英金融サービス機構(FSA)の元長官で、イングランド銀行総裁候補にもなった金融界の大物だ。

 ターナー氏が著作「債務、さもなくば悪魔」で提唱しているのは、中央銀行が財政赤字を穴埋めするヘリコプターマネー(ヘリマネ)政策。日本政府の債務は1000兆円を超す一方、昨年末に決まった2017年度予算案では歳出の膨張に歯止めが利かない。窮地に立たされる政府財政にとって、ヘリマネは本当に「唯一無二の解決策」となるのか。ターナー氏に聞いた。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/011700539/p1.jpg

日本の財政問題は解決可能と訴えていますね。

ターナー:「マネーファイナンス」と呼ぶ経済政策が有効的だと主張している。今すぐにも検討する必要がある。


アデア・ターナー(Adair Turner)氏
英シンクタンク、インスティテュート・フォー・ニューエコノミックシンキング会長。1955年生まれ。米マッキンゼー・アンド・カンパニー、米メリルリンチ(現バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ)などを経て、2008年から2013年まで英国金融行政の監督機関である英金融サービス機構(FSA)の長官を務めた。昨年末に著書『債務、さもなくば悪魔 ヘリコプターマネーは世界を救うか?』を上梓した(写真:木村 輝、以下同)
マネーファイナンスとは、いわゆるヘリコプターマネー(ヘリマネ)のことですね。

ターナー:その通り。日本の公的債務残高は国内総生産(GDP)比で250%。国際通貨基金(IMF)が公表する純債務残高でも140%にのぼる。このうちGDP比で80%近くの国債を日本銀行が保有している。この日銀保有分を帳消しにしてしまえば、財政問題は解決するというのが私の提唱するマネーファイナンスだ。

日銀が持つ国債を帳消しすれば良い

国債の帳消しとは、どういうことでしょうか。

ターナー:日銀は金融緩和政策を通じて大量に買い入れた日本国債を、最終的には民間に売却すると説明している。私は単純に考えてそんなことは無理だ、あり得ないと思っている。

 その代わり、日銀が保有する国債を無利子の永久債に転換する。そして、その永久債を徐々に償却、つまり消していくことで政府債務を減らすことができる。

その政策では、いくらでも国債の発行が可能になります。政府の財政規律が緩み、最終的にはハイパーインフレにつながる可能性があるはずです。

ターナー:ハイパーインフレにはならないと断言できる。例えばマネーファイナンスを通じて1円を政府が手に入れても、インフレにはならない。一方。これが100兆円となるとインフレを引き起こす。要は程度の問題だ。規律を保つことでハイパーインフレは避けられる。

 インフレを考慮し、日銀が償却できる国債の限度を定期的に設定する。例えば、一定期間中にGDP比20%まで償却して良いと決めると、純債務残高は現在の140%から120%まで減らすことができる。

 問題は政治的リスクだ。「なぜ20%なのだ。60%や80%でも良いだろ」と大きな声で主張する人が出てくると、規律が崩れてしまう。そのため、政策委員会を日銀内に設置するようルールを作り、委員会だけが償却限度を決められるようにする必要がある。このようなマネーファイナンスの仕組みは、世界中どの国でも導入可能だ。

日本を見れば世界経済の先が読める

なぜあえて日本まで来て、マネーファイナンスを訴えるのでしょう。


ターナー氏は「日本に残された解決策はマネーファイナンス=ヘリマネ政策しかない」と断言した
ターナー:それは、世界の経済現象において日本が常に先駆けであるからだ。日本では1980〜90年代に不動産ブームが起き、そしてバブルが弾けた。2008年の世界金融危機でも同じことが起きた。

 日本ではバブル崩壊後、政府が財政出動を繰り返し、債務残高を積み上げてきた。同じ現象が、金融危機後の世界中で繰り返されつつある。

 これまでの金融緩和政策だけでは、政府債務問題を解決できていない。他国に先駆け債務を積み上げてきた日本にとって、残された解決策はマネーファイナンスしかない。

日銀の黒田総裁などは、あなたの提案に関心を示していましたか。

ターナー:あくまで個人的な面会だったので、議論の具体的内容については控えたい。米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ前議長と同様、私も日本にマネーファイナンスの検討が必要と感じている。

いつまでに政策を実行に移すべきでしょうか。

ターナー:可能な限り早く導入すべきだろう。国債の償却が始まれば、政府は財政規律をわずかに緩め、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標を2020年度から2025年度などに先送りするだろう。

 財政規律が緩み、政府支出の増加が適切なインフレを引き起こせば、(政府の実質債務が目減りするため)、国債の追加償却は必要なくなる。一方、インフレが起きなければ、国債償却を続ける必要があるだろう。

1月20日に米国にトランプ新大統領が誕生します。今後、世界経済にどのような影響を及ぼすでしょうか。

ターナー:就任したから急に何が変わるという事はない。何事にも時間がかかる。閣僚候補が上院で承認されるまでに時間が必要であるし、大統領の裁量の範囲も定まっていない。

 ただ、経済全般としてトランプ氏の就任はややポジティブに見ている。可能性が高いインフラ投資は、たとえ効率的に実行されなかったとしても、米国や世界経済への影響は大きい。心配なのは貿易問題だ。中国製品に高い関税を課したら、中国との間に「税戦争」が始まり世界経済を下押しする。トランプ氏が公約してきたことを実行しないことが、最も好ましいシナリオだ。


このコラムについて

ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/011700539


 

http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/351.html

[経世済民117] 調整ムードが色濃いドル円の行方 トランプ強過ぎるドル照準、米国株に脅威、ドル高転換か、変革起こすか、株主と経営幹部板挟み
田嶋智太郎の外国為替攻略法
2017年01月18日
調整ムードが色濃いドル円の行方

前回更新分で想定したとおり、目下のドル/円は一時調整の局面に突入しており、昨年11月以降にスタートしたトランプ相場は、ここで一旦"壁"にぶつかるような状況となっています。下図にも見られるように、今週16日から17日にかけてドル/円には一目均衡表の日足の「遅行線」が日々線を下抜ける『逆転』の現象が生じており、結果的に「暫くの間は調整含みの展開を続ける可能性が高い」との見方も強まっています。
思えば、ドル/円は今年の年初に一旦118.61円の高値をつけて以来、これまでずっと下値を切り下げる展開を続けており、図中にも示したように「1月3日高値とそれ以降の高値を結ぶレジスタンスラインと、それに平行して1月5日安値を通るアウトライン(サポートライン)とで形成される下降チャネル」のなかでの値動きに終始しています。
よって、足下の調整が一巡して強気トレンドに転換したとの感触を得るためには、一つにこの下降チャネルの上辺をクリアに上抜ける(下降チャネルを上放れる)ことが必要になってくるものと思われます。さらに、上方に控える21日移動平均線(21日線)をも上抜けるような展開となれば、強気のムードは再び盛り上がることとなるでしょう。
また、目先的にドル/円が急激な反発・上昇でもしない限り、このままでは一目均衡表の日足「雲」のなかに潜り込む可能性が高いという点にも要注目です。見てのとおり、この「雲」は非常に分厚いもので、それだけ過去の相場のシコリが溜まっているゾーンであると見ることもできます。よって、この「雲」のなかにひとたび潜り込めば、相応に上値の重い展開が暫く続く可能性もあると見ておく必要はあるでしょう。

ここで、当面のドル/円の下値の目安となり得る水準を幾つか想定しておきますと、それは一つに125.50-60円処ということになるものと見られます。本日(18日)のオセアニア時間帯には一時112.56円まで下押す場面があり、その後一旦113円近辺までの戻りを見た後に再度112.64円まで押し下げるといった場面もありました。
この112円台半ばという水準を下抜けてきた場合、次に注目しておきたいのは、ドル/円の週足チャート上に一目均衡表を描画すると確認できる週足「雲」上限の水準です。今週と来週は週足「雲」上限が112.12円処に位置しており、同水準が一つの下値サポートとして機能する可能性も大いにあり得るものと考えられます。
もう少し目線を下げるなら、次に昨年11月9日安値から12月15日高値までの上昇に対する38.2%押しの水準=112円処、あるいは昨年11月28日安値=111.36円などといった水準も、一応は下値の目安になり得るものとして念頭に置いておきたいと考えます。
なお、仮に昨年11月9日安値から12月15日高値までの上昇を「第3波」(5波構成の展開を想定し、その起点を昨年8月16日安値と考える)とした場合、現在の調整は「第4波」で、いずれ「第5波」の反発・上昇局面が訪れると考えることもできるのではないかと思われます。つまり、現在足下で続いている調整が一巡した後には、あらためて120円前後の水準を試す可能性も大いにあるのではないかということです。よって、当面のドル/円の調整局面にあっては、基本的に押し目買いの方針で相場に向き合いたいと個人的には考えています。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役
前の記事:トランプ相場も一旦は小休止? −2017年01月11日
http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2017/01/18.html


 
トランプ氏が「強過ぎる」ドルに照準、為替相場に追随の米国株に脅威
Luke Kawa、Sid Verma
2017年1月18日 07:38 JST

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• 「ドルは最近、主要通貨で唯一のリスクオン通貨」とゴールドマン
• 年初のドル軟調の勢い増せば株式相場へのリスク浮き彫りに

米S&P500種株価指数にとって、「王様ドル」は味方であると同時に敵にもなり得る。
  ゴールドマン・サックス・グループによれば、米ドルは主要通貨の中で唯一、国内株式相場の上昇と同時に値上がりしている。それだけに今年初めのドル相場の軟調に拍車が掛かれば、株式相場へのリスクが浮き彫りになる。
  イアン・ライト氏率いるゴールドマンのチームは「S&P500種と米ドルのローリング相関でみると、ドルは最近、主要通貨で唯一のリスクオン通貨だ」と指摘する。

Source: Goldman Sachs Group
  同チームによれば、この現象は全てトランプ次期米大統領によるものだ。トランプ氏は最近、ドルが「強過ぎる」と述べたが、実質金利上昇を後押しし、ドル相場を浮揚させてきたのは次期政権下での米景気拡大への熱い期待感であり、こうした高まる成長期待が株式相場も支えてきた。
  アナリストらは「米ドルと米株式相場の好調は、トランプ氏当選後の成長や財政政策への楽観論という同じリスク要因が主な源泉だと考えられる」とリポートで分析した。

金融データを見つめるトレーダー(17日、ロンドン)

Photographer: Luke MacGregor/Bloomberg
  外為市場は投資家が政策展開について意見を表すうってつけの場となっており、米株式相場はドルの動向を手掛かりにする可能性がある。米株式相場は過去2週間、足踏み状態にある一方、ドル相場は荒っぽい1年のスタートを切っており、株式相場が為替相場にすぐに追随するリスクは高まっている。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は大統領選挙後のピークから2.2%下落している。
  ソシエテ・ジェネラルのグローバル・ストラテジスト、キット・ジャックス氏は、米財政刺激策に関する詳細が不十分なため、ドル高基調を持続させるけん引役が「実に足りない」という。同氏は17日のリポートで「1回目の米利上げ直後でドル高だった1年前を想起させる。ドルはその後、世界的な市場の混乱で米利上げ観測が後退したことから、5月にかけて下落傾向をたどった」と指摘した。
原題:Trump Takes Aim at King Dollar and It Threatens U.S. Equities(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-17/OJY0RI6JTSEG01


 

歴代米政権のドル高政策、トランプ政権は転換するか
共和・民主両党の政権は1990年代半ば以降、ドル高を後押しする政策を維持してきた

By IAN TALLEY
2017 年 1 月 18 日 17:41 JST

 【ワシントン】ドナルド・トランプ次期米大統領はドルの価値を押し下げ、過去20年以上に及ぶドル高政策に別れを告げるかもしれない。

 共和・民主両党の歴代政権は1990年代半ば以降、金利を低く抑え、インフレを制御し、米国の高い購買力を保つために、ドル高政策を継続してきた。

 歴代の米大統領は、通貨問題については財務長官の意見に従い、自ら言及するのを避ける傾向があった。財務省の高官がこの問題について話す時は、金融市場を動揺させないよう、中立的な態度で慎重に言葉を選ぶことが多かった。

 トランプ氏は先週、ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、対中貿易に関する質問に対し「ドルは強すぎる」とし、「今や米国企業は(中国に)太刀打ちできず、(ドル高が)われわれを苦しめている」と述べた。

 また、税制改正によってドルが上昇すれば、「ドル相場を押し下げる」必要が出てくるかもしれないとした上で、「ドル高は一定のメリットはあるが、多くのデメリットもある」と語った。

 トランプ氏が大統領選で当選した後の数週間で、ドルは通貨バスケットに対し4%近く上昇。2014年以降では約25%上昇している。だが最近、トランプ氏の発言に加え、ホワイトハウスと共和党主導の議会が減税で合意できるかどうか疑念が強まっていることを受けて、ドル高の勢いに陰りが見えている。

 ドル高を維持するという古いスローガンは、ビル・クリントン政権で財務長官を務めたロバート・ルービン氏が提唱した。同氏は1998年、「われわれの政策は一貫している。強いドルは米国の国益にかなう」と述べた。後任者たちもおおむねこの方針に従ってきた。

 カリフォルニア大学バークレー校のエコノミスト、バリー・アイケングリーン氏は、米政府当局者のドル高支持発言は国内経済に対して自信があるというメッセージを送っただけでなく、通貨問題についての発言を避ける手段でもあったと指摘した。

 失言すれば大きな代償を払うことになるからだ。

 ポール・オニール財務長官は2001年、ドル高は政府が推し進めているのではなく、好景気のたまものだとドイツ紙に語った。これを受けて、ドル相場は下落した。

 金融危機以降、バラク・オバマ政権で財務長官を務めたティモシー・ガイトナー氏は国内経済に対する投資家の信頼を示す尺度としてドルの価値に盛んに言及した。

 米政府は過去に態度を急変させることがあったため、市場は通貨に関する政府当局者の発言に目を光らせている。

 トランプ氏の通商政策の顧問であるダン・ディミッコ氏は15年に出した自著で、1985年のプラザ合意は素晴らしい戦略だったと指摘。「その後、貿易が増加し、為替操作が収まった」としている。

 一部の観測筋は政策転換が迫っているとみている。ピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、フレッド・バーグステン氏は、中国や日本、欧州は米国で高まる保護主義を回避するために、通貨関連の協定の交渉に乗り出すかもしれないと述べた。

 だが、トランプ氏がドル相場を押し下げるための選択肢は限られている。為替相場の主なけん引役は経済成長と投資の見通しによって異なり、トランプ氏が左右できるものではない。中央銀行の政策も為替相場の変動要因だ。

 17日にスイス・ダボスで開幕した世界経済フォーラムで、トランプ氏の側近のアンソニー・スカラムッチ氏は、米国は「ドルの上昇に気を付ける」必要があるとしながらも、次期政権はFRBの独立性を維持すると述べ、ドル相場を軟化させる手段としてFRBの金利政策を利用することへの懸念を一蹴した。

 オレゴン大学の教授で財務省のエコノミストだったティム・デュイ氏は、特に為替の口先介入の権限は通常、財務省にあるため、トランプ氏のドル相場関連の発言は市場を動揺させる可能性があると述べた。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwji2MjLs8vRAhXDlZQKHRtNAPkQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11163456931573304514904582566642888050860&usg=AFQjCNG219gQJGMQa4WM4YeQw862OvW_kQ

 

【寄稿】米新大統領、84年ぶりの変革を起こすか 大統領選から新たな秩序が派生することはまれだが、トランプ氏は例外かもしれない
就任の宣誓を行うアンドリュー・ジャクソン大統領を描写した絵画
https://si.wsj.net/public/resources/images/ED-AV996_Gordon_M_20170112192913.jpg
By JOHN STEELE GORDON
2017 年 1 月 18 日 13:18 JST

――筆者のジョン・スティール・ゴードン氏は「An Empire of Wealth: The Epic History of American Economic Power」の著者

***

 米大統領選はニュースで大きく取り上げられ毎回大騒ぎとなるが、その結果によって国が一変するようなことは実はあまりない。これは米国民主主義の力強さを示すものであり、決して悪いことではない。選挙によって政府が左右に大きくぶれることは少なく、正しい政策もちょうど中間にある場合が多いからだ。

 しかし歴史の大きなうねりと類いまれなる政治的才能を持つ人物の登場によって、大統領選が新たな秩序がもたらすこともまれにある。過去の例で言えば1828年、1860年、1896年、そして1932年がこれに当たるだろう。そして2016年の選挙も、この中に加わる可能性が高いと言える。

ジャクソニアン・デモクラシー

 テネシー州のアンドリュー・ジャクソン氏は下院による「不正な取引」によって1824年の大統領選で落選したが、その4年後には大勝を収めて当選した。ジャクソン氏はアパラチア山脈より西側出身の初の大統領であっただけでなく、バージニア州とマサチューセッツ州以外で生まれた初の大統領でもあった。極貧の家庭に生まれた同氏は、自らの努力のみによって富を手にした初めての大統領でもあった。

 米国の政治に新たな時代が訪れたことは、ジャクソン氏の就任後すぐに明らかになった。いわゆる「ジャクソニアン・デモクラシー」は権力の中心を社会の経済階級の下層部分に移した。大半の州ではその後、選挙権を土地所有者のみに限定する要件が撤廃され、普通選挙への第1歩が踏み出されることになった。

 ジャクソン氏は現代の民主党を創設した人物でもある。また同氏の政策に激しく反対する勢力がホイッグ党に集結したことで、今も続く二大政党制の基盤が形成されるきっかけともなった。このため、19世紀に活躍した著名歴史家のジョージ・バンクロフト氏はジャクソン元大統領を「最後の建国の父」と呼んでいる。

リンカーンと南北戦争

 次の大きな転換は、エイブラハム・リンカーン氏がもたらした。1850年代には米国の政界でも奴隷制が大きな議論となっていたが、1854年に結党された共和党は奴隷制廃止を大々的に掲げ、ホイッグ党が衰退する中で一気に勢力を拡大させた。その共和党候補のリンカーン氏が1860年に大統領に当選すると、合衆国は直ちに分裂する。サウスカロライナ州は、大統領選から約1カ月後に合衆国からの脱退を決定。リンカーン氏の就任式は1861年3月4日に行われたが、同年の2月1日までにさらに6州が合衆国を去っていた。

 国家が再び結束したのは、米国史上最大の戦争を経てからのことだ。南北戦争が終わる頃には米国は大きな変貌を遂げていた。貧困や政治的混乱に包まれた南部は、その後100年にわたり先進国内における途上国のような地域となっていった。一方で北部は産業が発達し人口も増え、政治的にも絶対的な力を手に入れる。南北戦争以前に大統領に就任した人物の半数以上が南部の出身者だった。しかし南北戦争後の100年間、南部出身者が大統領に就任した例は2度しかなかった。ニュージャージー州でキャリアを積んだバージニア州出身のウッドロー・ウィルソン氏と、テキサス州出身のリンドン・B・ジョンソン氏だ。

 南北戦争後の数十年間、大統領選は僅差の勝負になることが多かった。1884年の選挙ではグロバー・クリーブランド氏がジェームズ・G・ブレイン氏をわずかな差で破った。その4年後、クリーブランド氏は一般投票での得票は上回ったものの選挙人投票でベンジャミン・ハリソン氏に敗北。そして1892年の大統領選ではこの2人が再び顔を合わせ、クリーブランド氏が僅差でハリソン氏を上回った。クリーブランド氏は連続しない2期の大統領を務めた唯一の人物となる。

マッキンリー大統領と共和党の躍進

 1896年の選挙におけるウィリアム・マッキンリー氏の決定的勝利は、その後数十年にわたって続く共和党の時代の到来を告げた。マッキンリー氏は 「健全な通貨、保護、そして繁栄」というスローガンで選挙に挑んだが、この綱領が米国内に急速に増えた富裕層の利益と一致した。対立候補である民主党のウィリアム・ジェニングス・ブライアン氏は、米政治における偉大な演説家だった。ブライアン氏は金本位制に反対を示し、債務を抱えた西部や南部の農家などを救うため、インフレを誘発する金融政策を訴えた。

 しかしマッキンリー氏は北東部や中西部の北の地域で圧勝を収め、ハリソン氏が1892年に獲得した投票数に約200万票を上積みした。マッキンリー氏は1901年に暗殺されることになるが、同氏が残した政治的遺産はその後も引き継がれることになる。1896年から1932年までの間、共和党が上院の過半数を獲得していなかったのはわずか6年だけだ。また下院でも、この期間に共和党が過半数を獲得していなかったのは10年のみだった。

 1912年にセオドア・ルーズベルト氏が党を離脱して大統領選に出馬するまで、共和党は大統領の座も独占し続けた。同年の選挙では一般投票の得票率がわずか41.8%だったウッドロー・ウィルソン氏(民主党)が当選を果たしている。

大恐慌とルーズベルト

 1933年以降は大恐慌とフランクリン・D・ルーズベルト氏の希代の才能によって民主党が再び米政治を支配する時代が訪れる。1928年の大統領選挙では共和党のハーバート・フーバー大統領が48州のうち40州で勝利を収め、議会でも共和党が過半数獲得した。しかし4年後にはルーズベルト氏が42州を奪取。議会でも民主党が過半数を大きく超え、連邦政府の権力と影響が及ぶ範囲を拡大させた。政府は富裕層に対して大幅な増税を行い、社会保障などの新たな人気政策に関しては財政赤字を生じさせながらも実現させた。

 その後48年の間にホワイトハウス入りを果たした共和党候補者はわずか2人。ひとりは国民的英雄のドワイト・アイゼンハワー氏で、もうひとりは民主党がベトナム戦争で分裂する中でわずかな得票差で勝利を収めたリチャード・ニクソン氏だ。1932年から1980年にかけて共和党が上下両院で過半数を占めたのは、合計でわずか4年間だった。

 しかし1970年代に入ると「ニューディール政策」や「偉大な社会」を支えたリベラル思想が、政治学の基本的法則によって崩れ去った。物事は両極端に進化する傾向がある。しかし1960年代の公民権運動で勝利を収めたリベラル層はそのまま同じ戦いを続け、アイデンティティー政治内における人種間の亀裂を深めさせた。組合員の数は長年にわたり減少していたにもかかわらず、過去の法律によって労働組合は巨大な政治力を持ち続けた。全体像を考えずにさまざまな政策が実行され、連邦政府の官僚主義は拡散を続けた。環境保護局などといった政府機関も、民主党の選挙民が作り上げていった。

 リベラルな政策はやがて政治エリートに向けられたものとなり、国民全体のためのものではなくなっていった。そしてそれに国民が気付く。突如現れたジミー・カーター氏は米国政治を一掃することを宣言し、1976年に民主党の大統領候補に選出。同氏は結果的には挫折するが、同じく政治の部外者を名乗るロナルド・レーガン氏がその後に大統領に就任し、国内でも海外においてもルーズベルト氏以来の影響力を持つ大統領となった。

レーガンからオバマまで

 民主党が下院を支配していたためレーガン氏は動きを制限され、ジャクソン氏、リンカーン氏、そしてマッキンリー氏やルーズベルト氏のような変革をもたらすことはできなかった。しかしその影響力は後世にも引き継がれている。レーガン政権後初の民主党大統領となったビル・クリントン氏は、中道派として選挙を展開。同氏のリベラルな政策を有権者が拒絶し1994年に40年ぶりに共和党が議会を獲得すると、クリントン氏はその流れに乗った。1996年には「大きな政府の時代は終わった」と宣言し、福祉制度などでは多くの議員に歩み寄り、約30年ぶりとなる財政黒字の達成に成功する。

 しかしそれも長くは続かなかった。議会の共和党議員たちはやがて財政規律よりも自らの再選運動に関心を持つようになり、リベラルな社会工学に基づいた住宅政策は住宅バブルと金融危機を引き起こす。そして歴史上初めて金融パニックが起こる中で実施された2008年の大統領選では、不安定と見られた共和党の候補が若くてカリスマ性のある民主党候補に敗れることとなった。

 バラク・オバマ氏が大統領に就任した際、民主党は上下両院で過半数を占めていた。オバマ氏は、極めてリベラルで極めて人気の低い政策を押し通した。その結果、オバマ政権の日々は民主党にとっては悲惨なものとなる。選挙では大きな変動が起こり、民主党は2010年には下院で敗北。2014年には上院でも過半数を失った。現在は共和党がほとんどの州で知事席を埋め、州議会でも過半数を確保している状態となっている。

2016年のトランプ

 ドナルド・トランプ氏の驚きの当選は、ジャクソン氏、リンカーン氏、マッキンリー氏、そしてルーズベルト氏のように何か普遍的な変化をもたらすのだろうか。事前の段階における共和党の躍進を考慮すれば、そう考えていいだろう。トランプ氏は確かに有権者の過半数から支持を受けていない。しかしその一方で、ヒラリー・クリントン氏の290万票のリードも極めて限られた層から獲得したものだ。クリントン氏は東海岸と西海岸の都市部や高学歴層が集まる地域、そして貧困に悩むミシシッピ・デルタの地域やアラバマ州のブラックベルト地域などでしか勝利を収めなかった。ニューヨークのスタテンアイランドを除く4つの行政区とロサンゼルス群での得票を除けば、クリントン氏は全米でトランプ氏に50万票以上の差をつけられて敗北を期している。

 トランプ氏は民主党が目を向けなかった「嘆かわしい」白人労働者階級の有権者を効果的に取り囲み、米国中部の有権者からも支持を受けた。その結果、1980年代から民主党が勝利を収めていたミシガン州、ペンシルベニア州、そしてウィスコンシン州を奪取することに成功している。2012年の大統領選において、共和党のミット・ロムニー候補はグリーンベイを含むウィスコンシン州ブラウン郡を1.8ポイント差で獲得した。しかしトランプ氏は同地域で10.7ポイントの差をつけて勝利をしている。

 その近くにある農村地区のマリネット郡では、より大きな変動が見られた。2012年にはロムニー氏が3.5ポイントで勝利したが、トランプ氏は実に33ポイント差をつけることに成功している。ミルウォーキー近くのウォキショー郡には、共和党寄りの富裕層が住む。ここではトランプ氏はロムニー氏よりも7.8ポイント低い投票率となり弱さを見せたが、その他の地域での大勝で十分に補える形勢を作ることができた。

 オバマ政権はリベラリズムが疲弊していることを露呈させただけでなく、その思想が時代遅れのもので、その提唱者が空想上の過去に取り残されていることを明らかにした。民主党がここまで貧弱になり、高齢化したことはなかった。下院における民主党の要職議員3人の中で、1番の若手は76歳だ。それに対して共和党の要職議員3人の平均年齢は49歳だ。現在は共和党が上院で過半数を占めているため、亡くなったアントニン・スカリア最高裁判事の後任の任命を遅らせることができた。これによりリベラル派の判事が最高裁で多数を占める事態は免れることになる。その他の連邦裁判所にも100以上の空席があり、新たな判事の任命が待たれている。

 トランプ氏は既存の政治体制に全く借りがない点も注目だ。ここまで影響を受けていない新大統領は、少なくともジャクソン氏以来は初めてのことだろう。トランプ氏はワシントンに広まっている政治家のための政治を変えることを目的に選ばれた。これにより、同氏はより自由な行動を取れることになるだろう。トランプ政権の閣僚メンバーも、大幅な変化をもたらせる顔ぶれだ。減税や規制緩和といったことが実現し、企業にとって好環境が整う可能性も高い。トランプ氏は国民に直接話しかける能力にもたけている。長期にわたって問題となっていたいい加減なメディアを仲介する必要もない。

 永続的変化をもたらすため、トランプ氏は理論だけではなく現実社会で成功できる政策を実現させる必要がある。より速い経済成長と収入増は、選挙ではいい結果を常に招く。次期大統領が経済政策を言葉の通りに実行すれば、疑念を持っていたウィスコンシン州ウォキショー郡の有権者たちも2020年には1票を投じてくれるかもしれない。

 社会のマイノリティーへの対応をしっかり続けることも重要だ。トランプ氏は民主党が数十年にわたり無視してきた都心部の問題にも着手すると約束している。昨年秋のある集会では、トランプ氏が同性愛のシンボルである虹色の旗を手渡される場面があった。同氏が満面の笑みで旗を掲げると、集まった人たちは歓声を上げていた。前世代の共和党からはすでに変貌を遂げたと言っていいだろう。

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トランプ氏と株主のあいだで板挟みとなる経営幹部
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 「マー氏と私は素晴らしいことをするつもりだ」とトランプ氏は述べた。 PHOTO: MIKE SEGAR/REUTERS
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DAN GALLAGHER
2017 年 1 月 18 日 17:14 JST
 米国内での事業拡大計画を発表した企業は、数カ月後の年次株主総会で、その決断を投資家にどう説明するつもりなのか。今から興味深い。
 明らかな見返りがほとんどない支出の増加は、通常その企業の株価を急落させてしまう。とはいえ、今は通常と呼べる時期ではない。たとえば、米アマゾン・ドット・コムは先週、向こう18カ月間に国内の従業員数を55%も増やすと発表した。正規従業員を10万人増やすというのだ。
 そのニュースを受けて、アマゾン株は1.8%上昇した。アマゾンの株主は支出の増加を特に気にするので、これは驚きだった。同社株は昨年10月、第3四半期決算で予想を上回る支出が示され、同社がそうした支出の年内継続を示唆した翌日、5%も急落した。

アマゾン・ドット・コムの世界の従業員数
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 自動車メーカーや他の企業は、米国での雇用を維持しながら一部の事業を海外に移す計画を推進することでうまく問題を回避した。米ゼネラル・モーターズは、そうした設備投資計画について、数年前に決めていたと述べるなど、最も正直でそつのない対応をした。
 トランプ次期大統領にとって自動車メーカーはいろいろな意味で標的にしやすい業界である。貿易がまだそれほど盛んでなかった時代の米国の製造業者として誕生し、海外での販売や製造を徐々に拡大してきたからだ。グローバル化の時代に生まれたハイテク企業、バイオ企業のほとんど、それに多くの小売業者にとっては、世界的なサプライチェーンや販売は創業当初から事業の一環だった。そうした企業がトランプ氏の要求に従うには、抜本的な企業再編が必要になるだろう。
 今のところ、トランプ氏をなだめ、その後で計画通りに事業を進めるというのが最善策のようだ。投資家向け広報活動(IR)部門の幹部がウインクで合図すれば、株主たちはそれが政治的な駆け引きだと理解してくれるだろう。
 アマゾン・ドット・コムは広大な商品発送センターのネットワークを拡大しつつあり、実際に10万人を新規雇用するかもしれないが、そのすべてがトランプ氏が創出すると約束してきたような仕事になる可能性は低い。企業調査・投資情報会社ロバート・W・ベアードのコリン・セバスチャン氏は同社の現在の求人の53%が技術部門、21%が管理部門だと指摘する。またアマゾンは大量採用を約束しても、多くの小売業者は同社のせいで大幅な人員削減を余儀なくされてきた。同社はまた、他社に先駆けて荷物の配送にドローンを使ったが、それはいずれ配送業者たちを廃業に追い込む可能性もある。

企業収益の対国内総生産(GDP)比は賃金のそれに比べ大幅に増加してきた
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 今後については大統領に就任してからのトランプ氏の行動にかかっている。トランプ氏が企業に一層の圧力をかければ、企業は約束を守らざるを得なくなるかもしれない。ただ、その場合、投資家への説明は、しやすくなるだろう。投資家はそうした資本配分の誤りを黙認して株主であり続けるか、トランプ大統領に目をつけられていない業界の株に乗り換えるかの選択を迫られることになる。
 強権的で予測不能な政府の下での企業経営に定評がある中国の電子商取引大手、阿里巴巴集団(アリババグループ)の創業者、馬雲(ジャック・マー)氏の中国でもよく知られている言葉、政府とは「恋に落ちろ、でも結婚するな」は株主たちの気持ちを代弁している。今月9日にトランプ氏と会談した後、マー氏はその製品を中国で販売することで米国の中小企業100万社を支援するという曖昧な約束をした。
 「マー氏と私は素晴らしいことをするつもりだ」とトランプ氏は述べた。
 トランプ氏が承知しているのか定かではないが、同氏の企業に対する脅しは米国経済の重大な懸念に関連している。この数十年間、企業収益の対国内総生産(GDP)比は賃金のそれに比べ大幅に増加してきた。賃金の上昇は増加してきた企業収益の一部を回すことで可能になるはずだ。
 トランプ氏の大統領就任前のツイッターでの脅しは交渉開始の号砲でしかないのかもしれない。あるいは企業収益という富を分配したいと考えているのかもしれない。全体的な経済成長が停滞し続けるとすれば、労働者の賃金を増やすにはパイの切り方を変えるしかない。
 企業の経営幹部は予測不能な大統領と要求が多い株主のあいだで板挟み状態になるだろう。経営大学院でも教わらない未知の領域である。

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwik1YLis8vRAhWIVZQKHbKcBe8QFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10504433381807684657504582566603757171334&usg=AFQjCNHEneTNJr_jtMWvPm-_mzVd2giGmQ



http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/897.html

[経世済民117] 日銀は長期金利目標を引き上げるか 超長期国債厳しい1年−日銀支援少、増発 女性と移民が日本の活力源 失敗経験からメリット
コラム:日銀は長期金利目標を引き上げるか

河野龍太郎BNPパリバ証券 経済調査本部長
[東京 17日] - 日銀の金融政策について筆者が今年注目しているのは、金融緩和ではなく、長期金利の誘導目標を引き上げるかどうかである。

円安や原油高の効果で、年央にも消費者物価指数(除く生鮮食品、以下CPIコア)は0.5%を超え、夏場にも1%に到達すると予想するが、日銀は長期金利の誘導目標をゼロ%程度のまま維持するだろうか、それとも引き上げるだろうか。これが今回のテーマである。

結論を先に言っておくと、インフレ期待を醸成することのメリットと出口の際に膨らむコストを比較考量し、日銀は長期金利誘導目標の引き上げのタイミングを決定することになる。今のところ筆者が考えているシナリオは次のようなものだ。

1)CPIコアの1%台乗せが定着する10月に引き上げると予想するが(メインシナリオ)、円安への政治的反発が強まれば7月にも実施される可能性がある(リスクシナリオ)。

2)その際、継続的な誘導目標の引き上げの思惑が広がることを避けるため、引き上げ幅は30ベーシスポイント(bp)程度の比較的大きなものになる。

3)また、誘導目標の引き上げで、長期金利が急騰するリスクが高い場合には、それを抑え込むため、短期政策金利について同時に10bpのマイナス金利の深掘りも併用する可能性がある。以下、詳しく論じる。

<長期金利誘導目標の引き上げが論点になる理由>

まず、大規模財政を掲げるトランプ新大統領の誕生で、「長短金利操作付き量的・質的緩和」に早い段階で追い風が急激に強まったことは、日銀にとって想定外だっただろう。

9月21日に導入した同政策はプラスの総需要ショックやインフレショックが生じた場合、効果を増幅させるメカニズムを持っている。短期自然利子率やインフレ期待の上昇に伴って、日本の長期金利にも上昇圧力がかかるが、それを日銀がゼロ%前後に抑え込むため、金融緩和効果が強まる。最も目に付きやすい効果は、内外金利差が拡大し、円安が促され、株高が進むことである。

日銀は、この政策を導入した際、追い風も逆風も生じないうちに、10年金利をゼロ%程度に誘導する下で、年率80兆円程度に上る長期国債の購入額をある程度減額することを狙っていたはずである。周知の通り、日銀が操作目標を国債購入額から長期金利に移行したのは、国債購入額を減額し、政策の持続可能性を高めることが主目的だった。購入額を減額する前に、大きな追い風の発生で長期金利に上昇圧力がかかり始め、減額のタイミングを逸してしまったのである。

足元では、世界的な株高や長期金利上昇、ドル高に一服感が見られる。これまではトランプノミクスへの期待だけで動いてきたが、ここからは、大統領就任後に打ち出される実際の政策の決定を確認してからということなのかもしれない。仮に、こうした無風の状況が続くのであれば、今後、日銀は長期金利の誘導目標をゼロ%に維持したまま、国債購入の減額を進める可能性がある。

実際、「年率80兆円程度」の範囲内ではあるものの、10月には長期国債の購入額をわずかに減らした。金融市場の今後の動き次第ではあるが、市場の当面の関心は、誘導目標の引き上げではなく、国債購入の減額になるのかもしれない。

しかし、筆者は長期金利の誘導目標引き上げも論点になると考える。それは、実物経済の改善のみならず、物価も今後、上昇するためである。

11月のCPIコアは前年比マイナス0.4%だったが、原油価格の反発や円高の影響が和らぎ、12月はマイナス0.3%、1月にはゼロと下げ止まり、2月にはプラス圏へ浮上する見込みだ。これまでの原油価格の上昇、円安進展を前提にすれば、その後もCPIコアは順調に上昇が続く。筆者の見通しでは、5月、6月に0.7%、7月は0.9%まで上昇し、8月以降、1%台が定着する。経済が完全雇用にあることを考えると、2017年後半はさらに速いペースでインフレ率が高まる可能性もあり得る。

マイナス金利政策や上場投資信託(ETF)購入については、結果的に手じまいの開始が2%インフレの達成後となる可能性は十分にあるが、長期金利の誘導目標については、2%インフレが展望できるようになる前に引き上げが開始される可能性が高い。

仮に2%インフレが展望できるまで長期金利をゼロ%程度に誘導した場合、その後、日銀が緩やかな引き上げを目指そうとすると、長期国債の売り圧力が相当に高まり、国債購入を減額するどころか、購入額は一段と膨らむ。インフレ率が高まれば高まるほど、長期金利には大きな上昇圧力がかかり、それを抑え込もうとすると日銀のバランスシートはとてつもなく膨らんでしまう。

<実質ベースではビハインド・ザ・カーブ政策と矛盾せず>

ではインフレがどこまで上昇すれば、長期金利の誘導目標の引き上げが開始されるだろうか。誘導目標の引き上げを遅らせるメリットは、可能な限り「ビハインド・ザ・カーブ」とする(物価上昇に対して意図的に政策金利引き上げを遅らせる)ことで、インフレ期待を上昇させることだ。

日本のゼロインフレ予想は相当に根強い。量的・質的緩和による円安誘導でCPIコアが1.5%に達した2014年4月においても、サービスを中心にCPIの約半数の品目では(シェアベース)、2012年12月から価格は全く動いていなかった。根強いゼロインフレ予想を取り除くには、ビハインド・ザ・カーブとすることで、実質金利を可能な限り低い状況に維持することが必要である。

一方、誘導目標の引き上げを遅らせることのデメリットは、前述した通り、日銀のバランスシートが大きく膨らみ、金融緩和の出口で生じるコストが膨らむことだ。実質金利のマイナス幅が広がれば、その分、長期金利の調整を始めた際に、必要な引き上げ幅は大きくなる。急激な長期金利引き上げは、マクロ経済を不安定化させるため、ゆっくりとした引き上げが望ましいが、そのためには、日銀の国債購入量が拡大し、バランスシートはさらに膨らむ。

そうなれば、短期金利引き上げ時の付利の支払い急増など、出口のコストは増大する。それを抑えようとするなら、インフレが上がってくれば、長期金利の誘導目標を早めに引き上げるべきということになる。

このように、インフレ期待が上昇するというメリットと出口のコストが膨らむというデメリットを比較考量して、長期金利の誘導目標引き上げのタイミングは決定される。国債発行残高に占める日銀の保有比率が膨らむため、長期金利はあまり上がらないという議論も可能だが、それは日銀のバランスシートが膨らんでいるから可能になっているのであり、出口のコストが膨らむことに変わりはない。

伝統的な中央銀行の発想なら、バランスシートが大幅に膨らみ、出口のコストが拡大することを懸念し、比較的早い段階で、長期金利の誘導目標の引き上げに向かうだろう。失業率は3%程度まで低下し、日本経済が完全雇用にあることを考慮すればなおさらだ。現在、需給ギャップはプラスの1%弱である。また、一般物価が上昇していないからと言って、景気過熱が生じないわけではない。金融的不均衡の拡大(バブル)という形でそれが生じる可能性もある。1980年代以降、日本を皮切りに、先進国で生じた景気過熱は、バブルという形で、いずれも低インフレの下で生じている。

むろん、黒田東彦総裁が率いる日銀はすでに伝統的な中央銀行とは異なる。いや、もはや伝統的な中央銀行はこの世に存在せず、中央銀行業界では、「非伝統が新たな伝統となる」状況だ。日銀の雨宮正佳理事が1月11日の講演で指摘する通り、我々が伝統的な金融政策と呼ぶものは、まだ200年にも満たない中央銀行の比較的短い歴史の中で、リーマン・ショック前の約20年間、主流とされていたものにすぎない。

アグレッシブな政策を採用する中央銀行なら、インフレ期待の上昇に重きを置き、出口のコストが膨らむことには多少目をつぶってでも、ビハインド・ザ・カーブを追求することで、2%インフレ達成に少しでも近づける可能性がある。

とはいえ、前述した通り、夏場以降、CPIコアは1%台に乗せてくる。実質長期金利がマイナス1%近くまで低下すれば、それは歴史的な金融緩和状況と言ってよいだろう。そこで長期金利の誘導水準を多少引き上げても、実質長期金利で見れば、金融緩和の度合いは一段と増す。実質ベースでは引き締めに動いたとは言えず、その場合もビハインド・ザ・カーブ政策とは矛盾しない。

このように誘導目標引き上げを遅らせることのメリット、デメリットを比較考量すると、日銀がアグレッシブな中央銀行であるとしても、年内の引き上げの蓋然性は高いように思われる。

<円安加速ならマイナス金利深掘りは抜かずの宝刀に>

では、長期金利の誘導目標の引き上げ幅はどの程度となるか。多くの人は10bp程度の小幅な引き上げを念頭に置いているようだが、あまりに小幅だと国債市場では継続的な引き上げの思惑が広がり、長期金利の誘導はスムーズに行かなくなる。

仮に3カ月に一度の引き上げが織り込まれれば、金融調節の現場は大混乱に直面する。このため、一度引き上げると、少なくともしばらく引き上げはないとマーケットに確信させる程度の引き上げ幅が必要となるはずだ。これが短期金利の誘導と違って、長期金利の誘導の難しいところである。だから行うべきではなかったのだと、伝統的な金融政策に郷愁を持つ中央銀行関係者も少なくないだろう。

一方、50bp程度の大幅な引き上げ幅となれば、金融市場へのショックが大きいだけでなく、国債を保有する金融機関の経営にも悪影響をもたらす。資産市場ではさまざまな裁定が働くため、損失を被った金融機関のポジション調整を引き金に、思わぬ事態が生じるリスクがある。このため消去法的に考えるなら、30bp程度の引き上げが選択されるのではないか。

その上で、調整は「長短金利操作付き量的・質的緩和」の出口の開始を意味するものではなく、その後の経済、物価の情勢次第では、再び誘導目標の引き下げもあり得ると強調することで、継続引き上げ観測の台頭による長期国債の売り圧力を回避しようとするだろう。

それでも、一度、長期金利の誘導目標の引き上げを開始すれば、長期国債の売り圧力は簡単に抑えられず、日銀は国債購入の増額に追い込まれると考える人も少なくない。日銀は10年国債や20年国債の指値オペで対応せざるを得なくなるが、1990年8月以降続いた長期金利低下が完全に終わり、もはや国債価格は下落しかないという予想が広がれば、コントロールは相当に難しくなる。

そうした事態を回避するための方策は果たしてあるのか。

実は、そのための方策がマイナス金利政策だ。短期政策金利について10bpのマイナス金利の深掘りを併用することで、長期金利の誘導目標の引き上げと国債購入額の減額をスムーズに行うことが可能となる。関係者の発言から類推すると、もともとマイナス金利政策は、将来、量的・質的緩和のテーパリング(段階的縮小)を開始する際に、長期金利の急騰を避けるためのツールとして日銀内で検討されていた。

もっとも、マイナス金利の金融機関の業績への悪影響が大きいことを考えると、長期金利の誘導目標の引き上げの際に常に行われるというわけではないだろう。できれば、抜かずの宝刀となることを、金融機関は望んでいる。発動は、長期金利急騰が懸念される場合に限られるだろう。また、長期金利急騰だけでなく、円安加速が同時に問題となる場合には、理屈上はマイナス金利の深掘りが円安を助長するため、日銀がこのオプションを採用する可能性は小さい。

前述した通り、誘導目標が引き上げられる以前の段階から、円安が進み、インフレ率が高まっていくに連れて、長期金利の誘導レンジの上限と考えられている0.1%を多少超えることを日銀が容認する可能性はあるが、誘導目標の引き上げをマーケットがいったん意識し始めれば、その途端に長期金利のコントロールは難しくなる。このため、大幅な上ぶれは容認されず、また誘導目標の変更時期が近づいても、黒田総裁は、検討することすら時期尚早と繰り返すはずだ。コミュニケーション戦略において、イールドカーブ・コントロールはもともと難しさを内包しているのである。

*河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
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http://jp.reuters.com/article/column-ryutaro-kono-idJPKBN1510F3?sp=true


 


 

超長期国債、運用には厳しい1年に−日銀支援少なく実質増発も(1)
三浦和美、山中英典
2017年1月18日 11:04 JST 更新日時 2017年1月18日 13:46 JST

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日銀、超長期の利回りどんどん下げる考えない可能性−JPモルガン
相場がいったん動き出すと超長期ゾーンは売り方向とみる−野村証

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今年は超長期国債の運用環境が厳しい年になる。日本銀行による国債の積極的な買い支えは長期債までにとどまり、財務省の発行計画では超長期ゾーンだけが増発されるため、投資家需要が盛り上がらないと市場関係者はみている。
  超長期債で今年最初の入札となった11日の30年利付国債入札は、最低落札価格がブルームバーグがまとめた市場予想を下回る低調な結果となった。17日の20年債入札では最低落札価格が予想を上回ったものの、相場への影響は限定的された。むしろ、来週に行われる40年債入札への警戒感から40年債利回りに上昇圧力がかかる場面があった。
  JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは、「10年以下のゾーンは日銀の買い入れによるサポートが厚い」とした一方で、超長期セクターに関しては、「利回りが意外に上がっているが、意外と放置されている感があり、どんどん下げていきたいという考えはないと思う」と分析。「昨年の夏以降に日銀がマイナス金利を深掘りしなかったという面から考えても追加緩和を想定しづらく、今年は金利が大幅に下がりづらい1年になる」と読む。
超長期オペ増額は一時的
黒田東彦日本銀行総裁
黒田東彦日本銀行総裁 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  日銀が昨年9月に導入した「長短金利操作」は、短期金利と長期金利に目標を設置し、イールドカーブ(利回り曲線)をコントロールすることを目的にしている。20年債利回りが昨年12月13日に約10カ月ぶりの水準となる0.65%まで上昇した際、日銀は翌日に残存期間10年超の国債買い入れ増額などで金利上昇を抑制。しかし、その後利回りが低下すると2週間程度で買い入れ額を元に戻した。
  野村証券の中島武信クオンツ・アナリストは、日銀の金融調節について、「超長期ゾーンが一番サポートされにくく、イールドカーブを立たせていくのではないか」と指摘。「20年債入札は相場が大きく動いていなかったので無難に終えることができたものの、いったん相場が動き出すと、超長期ゾーンは売り方向とみている」と話した。

  24日の40年債入札について、野村証の中島氏は、「供給が増えるゾーンにもかかわらず、水準的に安いとは言いにくく、入札が強く終わるイメージはない」と指摘し、警戒感があるとの見方を示した。
  財務省が昨年末にまとめた2017年度の国債発行計画によると、入札を通じた市中発行額は141.2兆円と16年度当初計画より5.8兆円少ない。2年債は1.2兆円、5年債は2.4兆円の減額。10年債は19年ぶりに1.2兆円減らす。超長期ゾーンは20年債は1.2兆円減らすものの、30年債は据え置き、40年債は0.6兆円増やす。既発債を追加発行する流動性供給入札が1.2兆円増となることを含めると、超長期ゾーンは実質的な増額となる。
過剰な金融緩和からの出口
  日銀の黒田東彦総裁は18年4月に任期満了を迎える。ブルームバーグが昨年12月にエコノミスト39人を対象に実施した調査では、総裁の任期中に追加緩和はないとの見方が64%を占めた。
  JPモルガンの山脇氏は、「過剰な金融緩和からの本格的な出口が18年前半に見えてくるので、今年後半からはさらに金利が下がりにくい環境になってくる」と指摘。「黒田総裁の任期終了は避けようがない材料で、年末になって後任人事に不透明感が強まる状況になれば、より日本国債から離れる動きが出てくる。全般的に買いが手控えられて、ゆっくりじわっと金利が上がってしまうような展開になる」とみている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJWYB66TTDS101


 


 
Special | 2017年 01月 18日 12:53 JST 関連トピックス: トップニュース
視点:女性労働力と移民が日本経済の活力源に

マーカス・ノーランド米ピーターソン国際経済研究所 エグゼクティブバイスプレジデント
[東京 18日] - 日本経済が活力を取り戻すためには、女性労働力の有効活用と移民受け入れ拡充が欠かせないと、米ピーターソン国際経済研究所エグゼクティブバイスプレジデントのマーカス・ノーランド氏は指摘する。

中でも女性労働力については、企業経営層におけるジェンダーダイバーシティ(性的多様性)の度合いで日本は主要91カ国中最下位であり、対策の強化が急務と説く。

同氏の見解は以下の通り

<女性労働力の有効活用>

日本は、女性労働力をもっと有効に活用すべきだ。女性の就業者数が増えているにもかかわらず、日本は、その豊富な才能を生かし切れていない。

例えば、ピーターソン国際経済研究所は最近、91カ国2万1980社の企業を対象に、ジェンダーダイバーシティと企業経営の関係に関する調査を行ったが、(取締役や経営幹部層に占める女性の割合などでランク付けすると)、日本は最下位だった。

女性の才能の不完全活用は、大きな代償を伴う。われわれの調査では、女性幹部が多いほど企業の収益性は高いことが分かっている。

では、日本はどうすべきなのか。まず、STEM(科学・技術・工学・数学)教育や大学での経営幹部養成教育から若い女性が遠ざけられないようにしなければならない。

反差別法を厳しくし、適用も強化すべきだ。産前産後や育児期間におけるサポートをさらに改善し(安倍政権下で行われてきたように)、男性の育児休暇についてもより寛容な制度を整えるべきだ。加えて、企業がより積極的な昇進昇格のポリシーを採用するように促す必要がある。

<移民受け入れプログラムの拡充>

また、日本は移民を増やすべきだ。それは、人口動態上の課題に対処する上で助けとなる。

移民は、経済成長を促す起業家精神、海外市場との新たな関係、そして新たなスキルの源泉となり得る。これを実現するためには、移民を増やして、社会に受け入れるためのプログラムを拡充する必要がある。十分な支援を与えれば、移民は日本の活力源となり得るのだ。

*マーカス・ノーランド氏は、米ピーターソン国際経済研究所(PIIE)のエグゼクティブバイスプレジデント兼研究ディレクター。2009―12年は同研究所の副所長。米大統領経済諮問委員会(CEA)のシニアエコノミスト、世界銀行のコンサルタントなどを歴任。ジョンズ・ホプキンズ大学で博士号取得。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの特集「2017年の視点」に掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

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http://jp.reuters.com/article/view-noland-idJPKBN14U0HO


 


華僑が「失敗経験」から得る3つのメリット

華僑直伝ずるゆる処世術

2017年1月18日(水)
大城 太

 40年間、無遅刻無欠勤で大過なく勤め上げるという会社人生が賞賛を得たのは、古き良き高度成長時代の日本。現代はそれとは打って変わって、目に見える形の業績貢献など数値化できるものだけが評価の中心になるなど大きく変貌を遂げようとしています。

 ですが、社員の働きをそのように評価することが本当にビジネス上において優位に立てる戦略なのでしょうか? 目に見えない貢献も相変わらずたくさんあります。仕事は数値で評価できるものだけではありません。

 目先の業績アップにだけ目を奪われるあまり、失敗を極端に恐れる人が多くなってきたのも最近の特徴かもしれません。失敗をすることによって査定が悪くなる、失敗をすることによって信用を落とす、と多くの方は考えがちです。短期的なモノの見方をすればそれは正しいと言えますが、長期的に考えると必ずしも、正しいとは言えません。

 短期的な視野に頭や行動が奪われると、上司・先輩になった時に困ることだらけになるのは目に見えています。部下の指導で頭を悩ませている読者の方も多くいらっしゃると思いますが、「失敗経験」こそが語る価値があり、部下の気持ちに寄り添える武器となることに気づかれている人は多くありません。

長期的に勝つのは、失敗経験をうまく扱う人


 うまくいった経験を部下指導や企業戦略に取り入れるのは、ある意味偏ったモノの見方だと理解する必要があります。うまくいったときは、孫子の「天の時、地の利、人の和」ではありませんが、様々な要因がうまく重なり、運が味方したときだということを忘れると痛い目にあう可能性がでてきます。

 うまくいく方法のみを伝承していくのはある意味ジャンケンの勝ち方を伝承するのに近いかもしれません。グーを出せば勝てる、パーを出せば勝てる、チョキを出せば勝てる。ですがそれは、相手が負けるものを出したとき、という前提があったり、運を味方につけることを前提にしていたりするものです。

 現代も含め、古今東西老若男女を問わず、うまくやっている人たちには、失敗の活かし方、語り方を知っているという特徴があります。たくさんの失敗経験をもっている人ほど、勝ちやすくなっていくのをご存知でしょうか?

 ビジネスの社会では、生き残ったものが最終的に勝ちを収めます。当然ですね。資本主義社会において、マーケットの大きさが同じならライバル(参入者)が多ければ多いほどパイの奪い合いは熾烈を極めます。一方ライバルが少なければ、それだけ労少なくして、多くのパイを手にできます。現在のように時代の流れが速いときほど、今の勝ちパターンはすぐに古くなってしまいます。古くなるのが目に見えている勝ちパターンを新たに覚えるよりも、失敗のパターンをたくさん知り、それと同じ轍を踏まないように工夫する方が、勝ちが少なくても生き残る可能性は高くなります。

 各所で「成功体験」を捨てなさい、とよく言われているのは読者の皆様もご存知の通り。会社対会社といっても、分解していくと結局は個人対個人になります。法人営業、個人営業と分けて研修などが行われていますが、法人営業といっても担当者対担当者ということを考えれば、分けて考える意味はそれほどないこともお分かりいただけるでしょう。結局はその人の対人能力がモノをいうのです。個人の英知の結晶が会社の判断となっていくのを考えると、個人の失敗の蓄積が会社にも役立つというのはここまでお読みの方はなんとなくお分かりいただけたかと思います。

 今回は失敗こそ財産、そのようなことをご紹介させていただきます。

失敗がもたらす3つのメリット


 失敗をすることによって得られるメリットは次の3つになります。

@失敗への免疫をアピールできる
A警戒されない
B話す内容に気を使わなくてよくなる
 1つずつ説明します。1つ目の「失敗への免疫をアピールできる」ですが、ご自身が誰かに何かをお願いする時のことを考えるとわかりやすいでしょう。

 ここに二人の部下がいます。一人は育った環境も温室育ちで何も失敗経験がない人、もう一人は育った環境は一般的ですが、たくさんの失敗を重ねてきた人。この二人のどちらかに少し難しめの仕事を頼む場合、どちらに頼むでしょうか? 失敗経験がない人を選ばれる方もいらっしゃるでしょう。それも一概に間違いではありません。

 その理由はいたって明快で失敗経験が全くない人というのは失敗をイメージすることができません。ですので、本人の中で失敗をしないような動きをしっかりとしてくれる可能性があります。ただ、この失敗経験のない人の弱点は、失敗をする可能性は最初から選択肢として除外して思考行動する、というところにあります。ただでさえ経験が浅い中で更に失敗の可能性を除外するということは、本当に限られた選択肢の中でしか思考行動しない、ということになります。ですので、このような人に何かの頼みごとをするのは単純作業に限った方が無難だということになります。

 一方、失敗経験がある人、その経験が豊富であればあるほど、いわゆる失敗慣れしており、失敗のたくさんの症例も知っていることから様々なリスク分析をした上での大胆な思考行動を期待できます。また、失敗経験がある人は、やり直しや練り直しに慣れていますので、自然とスピード感溢れるレスポンスが期待できます。

 自分が頼まれる側に回った場合を考えても、失敗経験があれば、それを活かした提案ができます。提案に対して多かれ少なかれ、反対意見や反論はつきものです。そういったときでも失敗した後の時間的、金銭的、リソースのリカバリー方法まで含めた提案ができるようになってきます。「過去にこのような失敗事例がありましたが、その対策として」と付け加えるだけで、この人はそのような不測の事態が起こっても、慌てず、落ち着いて遂行できる人と印象づけられます。

なぜ「短所は愛される」のか?


 2つ目の「警戒されない」ですが、何事も警戒されると、計算通りに物事が進まなくなってしまうのが世の常です。これも自分に置き換えると非常にわかりやすいのではないでしょうか? 安心できる人物の発する言葉と、警戒している人物が発する言葉、どのような捉え方をするでしょうか? 答えは明白ですね。安心できる人物の発言であれば、発した言葉そのまま受け取ることでしょう。ですが、警戒する人物の発言であれば、裏に何かあるのではないだろうか、いわゆる邪推するのが一般的な反応です。警戒されるということは、発言のみならず、行動、場合によっては善意まで邪推される危険性を秘めています。

 失敗経験と警戒される・されないが、どのように関係するか不思議に思われた方もいらっしゃるでしょう。これは、「短所は愛される」という人の心理からきているものです。物語や映画のヒーローを持ち出すまでもなく(ストーリーの創作には必ずそれを演出に含めるような設定をしています)、人間には弱点を応援したいという心があるのです。この心の裏には、優越感を持ちたい、という人の願望が含まれているのですが、優越感を一面的一時的にでも抱くと、警戒心は消えてしまいます。心の自然な感じ方を考えればお分かり頂けると思いますが、優越感を覚える相手に対して、それと同時に警戒心を持つことは至難の技です。

 失敗経験を多く経験している人は、短所を持っているというイメージを持たせます。これが相手の警戒心を解き、懐に飛び込むチャンスを呼び込むのですね。

失敗した人=克服方法も知っている人


 3つ目の「話す内容に気を使わなくなる」、これは意外と盲点になりがちですが、とても重要です。メールなどの普及により、ちょっとしたお願い事であればIT機器を使うことも多くなってきましたが、お客さんとの打ち合わせや、社内での重要な会議、大切な話などはやはり、人と人が直接会うことは無くなりません。ビジネス上、人と会わなくても完結できてしまう職種の人もいると思いますが、プライベートの充実にはやはり対人コミュニケーションは避けては通れません。

 そのときの会話でどんな会話が好まれないでしょうか? もっと端的に言えば、どんな人が好かれないでしょうか? そうです、自分の自慢話ばかりする人です。自慢話をときには織り交ぜることで、こちらの実績を知ってもらうことも必要ですが、その話が中心になってしまうとうんざりしてしまいます。

 ですが、それが失敗経験の話だったらどうでしょうか? 「いやあ、先日こんな失敗をしましてね」という友人知人の話は面白く聞けるのではないでしょうか? 「私も昔こんな失敗をしてね」という上司の話なら、勇気付けられるのではないでしょうか?

 そうです、失敗経験を話す限り、相手を不愉快にさせることはないのです。それどころか、話ネタに困ったときは、失敗話を話題にすればいいことになります。「お客さんに失敗話をするのはどうしたものか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、その失敗経験を乗り越えたり、克服したりしていれば、失敗を話さないよりもより信頼を得られます。「この人は困ったときも安心だ、先回りしてなんでもわかってくれている人だ」と。

 失敗経験を上記の3つのように使うだなんてずるい、と感じた方もいらっしゃるかもしれません。ですが、中国人社会では、「賢い=ずるい」「ずるい=賢い」と表現されることが多くあります。言葉が不自由な状況でもビジネスを成功させていく華僑流処世術がここにあります。ずるさを知りつつ、それを使わない。あるいは少しだけ周りの幸せの為に使ってみる。なので、「ずるゆる」なのですね。

なんとなく頭打ち…、中間管理職の憂い


 それでは“ずるゆるマスター”の事例をみてみましょう。

 中堅流通会社に勤める企画部課長補佐Cさんは、最近自分の伸び悩みを感じていました。なんとも言えない閉塞感を覚えており、「このままでいいのだろうか」と考え込んでしまうことも多くなってきました。

 課長補佐という中間管理職ですので、部長や課長からの業務命令もありますし、係長以下部下の人たちへの指導もこなさなければなりません。部長や課長は業務上の権限もあり楽しそうに仕事をしているように見え、一方で部下は呑気で楽そうに見えてしまいます。

 「僕はこのままで終わってしまうんじゃないだろうか。部長にはなれないにしても課長、次長と階段を登っていけるのだろうか。ひょっとして、部下の彼ら彼女らに抜かれていくんじゃないだろうか」

 考えれば考えるほど、気分はドンドン滅入っていきます。考え込んでも仕方ないのでインターネットで「部下育成」や「出世方法」などで検索して出てきたセミナーに参加してみたり、どこかの誰かが書いたウェブサイトやブログを熱心に読んだり、試したりしているものの気持ちは晴れません。書店や図書館にも足を運ばなければ、と思いつつも日々の業務の疲れでどうも気が進みません。

 今の状況を課長に相談すれば、「課長の器ならず」の烙印を押されそうで怖いという思いもあり、かといって同期に相談すれば、弱点を晒すようでそれはそれで危険だと感じます。部下に冗談ぽく話してみようかな、と考えたこともありましたが、それも部下からの信認がなくなりそうで怖くなりやめました。

 「そうだ、W部長に相談してみよう」。W部長は、最年少役員の呼び声高い実力者でありながら、「仏のW」と囁かれるほど、優しく面倒見がいいことでも社内で有名です。一時は閑職の立場になったこともありますが、見事復活を果たし、今ではみんなの憧れの的です。

チャンスがあるのにチャレンジできない理由とは?

 その夜、CさんはWさんとある居酒屋で向かい合わせに座っていました。

 「部長、というわけでとても悩んでおります」

 「そうなんだ、正直に話してくれてありがとう。ところでC君、社歴も15年くらいになるよね。何か最近学んでいることとかはあるかい?」

 「いえ、特にこれといって何かにチャレンジしているということはありません」

 「企画部は中小企業診断士の資格取得を奨励しているのをもちろん知っているよね? それに名乗りをあげれば受験予備校に行っている時間も残業代が出るからね。合格すれば、報奨金も出るし等級もひとつ昇格する、ということはC君の等級だったら課長になれるんじゃないのかい」

 「はい、それは知っていますが、もし何年もかかって合格しなければ、一生このままの等級に固定されるのが怖いですし、上司にも部下たちにもあの人は要領が悪い、勉強ができない、残業代ドロボーと思われそうで非常にリスクだと考えております」

 「チャレンジして、合格しなかった人をC君はそのように評価するのかい? また、チャレンジして合格した人にはどのような感情をもつのかな?」

 「はい、チャレンジして合格しなかった人を見れば、正直安心した気持ちになるかもしれません、自分が恥をかかずにすんだ、と。でもその人をバカにするようなことはありません、もしかしたらそれまで以上にその人を大切にしたくなるかもしれません。また、合格した人に対しては自分もそうなりたいと思うものの、自分とは違うコースの人だと考えると思います」

 「なるほど、合格した人は違うコースの人か。知っていると思うけど、僕は中国支社にいたことがあるんだ。今の中国支社だと出世コースだけど、20年前の中国支社といったら、何もやることがない。まあ、言ってしまえば僕は、自分から辞めると言うのを待たれる立場だった。でも僕はその時に腐らず、中国古典を一生懸命勉強したんだよ。C君も『四書五経』というのは聞いたことがあると思うけど、そのひとつの『中庸』に今のC君にぴったりの言葉がある」

 「はい、ぜひとも教えてください」

失敗を避けることは「三徳」を放棄すること

 「『学を好むは知に近く、力行は仁に近く、恥じを知るは勇に近し』。これの意味はね、〈知〉を身につけるには学ぶ意欲を持たなければならない、知っていればたくさんのことに対応できるという意味だね。〈仁〉になるには耳学問として知っているだけではなくて常に実践していること。〈勇〉つまり勇気を身につけるのは恥をかくこと。ということになる。今のC君は失敗を恐れて〈知〉も〈仁〉も〈勇〉も放棄した状態になっている。それで元気が出るわけはないよね」

 「はい、おっしゃる通りです」

 「資格試験を受けろ、と言っているわけではないんだよ。失敗を恐れていると仕事そのものや周りの仲間との関係がおかしくなっていくっていうことをわかって欲しいんだ。失敗は君の財産になる、これは僕が断言してもいい」

 「部長、ありがとうございました。失敗をしてもいいんだ、と聞いたらなんだか明日からの仕事が楽しみになってきました」


 失敗なんて怖くない。失敗しても可及的速やかに対処すればいい方向に向かっていく。“ずるゆるマスター” Wさんは、『中庸』の言葉をうまく使ってCさんのモヤモヤ感を15分で取り去ってしまいました。

 完璧ではないのに、晴れ晴れとした顔をいつもしている皆から人気のあの人は、失敗を怖がらず失敗経験をしっかりと活かし、〈知〉〈仁〉〈勇〉を持った“ずるゆるマスター”かもしれません。


このコラムについて

華僑直伝ずるゆる処世術
 世界各地に移住し、そしてその土地土地で商売を成功に導いている華僑。華僑は日本人ではなかなかマネができない“生き方のコツ”を持っている。“生き方のコツ”と一口に言ってもビジネス、家庭生活、対人関係、子育てなど多岐に渡る。本コラムでは、華僑の師から学び実践して結果を出してきた筆者が、生真面目な日本のビジネスパーソンにぜひ取り入れてほしい成功術を紹介する。華僑のずる賢くもゆるく合理的な処世術(世渡り術)はきっと仕事にも人生にも役立つはずだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/022500005/011600024/

http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/898.html

[戦争b19] 米中対立、実際の戦争に発展するリスク トランプ挑発が火種、80年代日米摩擦とは異質 予測不可能なトランプに身構える中国 
米中対立、実際の戦争に発展するリスク

トランプ氏の挑発発言が火種、80年代の日米摩擦とは異質
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貿易に関して中国から譲歩を引き出すための切り札として台湾問題を使うことを示唆するトランプ次期米大統領の発言は、中国の神経を逆なでしている(英語音声、英語字幕あり)Photo: EPA/Reuters
By ANDREW BROWNE
2017 年 1 月 18 日 11:00 JST

――筆者のアンドリュー・ブラウンはWSJ中国担当コラムニスト

***

 【上海】中国はドナルド・トランプ次期米大統領が敵視している重商主義を発明したわけではない。近隣諸国のまねをしているだけだ。

 日本は国内産業を保護する一方、輸出を推進することで豊かになった。韓国も同様だ。両国は自国通貨の為替操作を行い、政界とのつながりを持つ企業連合に有利な施策を雨のように降らせて国内の競争をゆがめた。

 だが中国との大きな違いがある。日韓両国は、輸出と投資がけん引する成長を積極的に追い求める台湾やシンガポールなど他のアジア諸国とともに、当時から米国の同盟国であり友好国だった。一方、中国は戦略的な競争相手であり軍事的ライバルである。このことが迫り来る米中貿易戦争の危険度を高めている。

 トランプ氏の大統領就任を間近に控えた今、この地域に垂れ込めている懸念は、貿易や領有権を巡る同氏の挑発的な発言が軍事衝突の引き金になるのかというものだ。

筆者の過去のコラム

中国のハイテク保護主義、トランプ氏は勝てるか
中国が破棄した南シナ海のルールブック
中国は慢心で失敗、今度はトランプ氏の番か
 ウォール街の投資家はこの危険性を見くびっているようだ。再考したほうがいい。

 今回は自動車や半導体、コンピューター、衛星などを巡って日本を相手に戦ったようなロナルド・レーガン政権時代の貿易戦争の再来にはならない。当時の対立は、日本による米国産業の乗っ取りが終わらないという米国側の妄想によって激化した。

 外交努力で日米関係への打撃は抑えられた。米軍が駐留する日本は冷戦下のソ連に対するとりでだった。しかも日本は民主国家だ。

 米政府にとって韓国との貿易摩擦の緩和にも同様の利害がかかっていた。韓国では数千人の米軍兵士が敵対する北朝鮮とにらみ合っている。

 こうしたアジア諸国だけでなく世界各国に対して、米政府は貿易を外交の道具だととらえている。つまり、ミシガン州デトロイトやオハイオ州クリーブランドなどの雇用が外国からの輸入によって失われたのは、パックスアメリカーナ(米国主導の世界秩序)を維持するための代価だったのだ。

「一つの中国」取引発言の重み

 だがトランプ氏は中国に限って、このトレードオフに終止符を打つようなシグナルを、非外交的な手厳しい言葉で発している。先週のウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、米中関係を丸ごと吹き飛ばしかねないような発言をした。為替操作などトランプ氏が略奪的とみなしている中国の貿易・投資慣行が改善されるまで、中国が主張する「一つの中国」原則には縛られないことを示唆したのだ。

 この発言は安全保障・軍事面で深い意味を含んでいる。台湾は地域の火種だ。中国は台湾を不可分の領土だととらえている。「一つの中国」は統一へ向けた政治的な熱望を表現しているだけではなく、中国のアイデンティティーの中核でもある。中国の指導者たちはこの原則を守るために戦うだろう。台湾を失うわけにはいかない。

 南シナ海でも同様に中国の国家的決意とプライドが混ざり合っている。

 このため次期国務長官に指名されたレックス・ティラーソン氏が、南シナ海の海路に沿って中国が造成した人工島への同国のアクセスを認めないとした発言も、トランプ氏の好戦的な発言を警戒する地域の各国にとっては同じく衝撃的なものだった。これは実際問題として、中国が領有権を主張する海域での海上封鎖を意味する――すなわち戦争行為だ。

 ティラーソン氏が先週行われた上院外交委員会での骨の折れる指名承認公聴会でうっかり口を滑らせたのかどうかは分からない。しかしその後、発言の撤回も釈明もない。いずれにしても同氏の発言は地域の不安を高めることになった。

 トランプ氏は周囲にいる反中タカ派の意見に耳を傾けているようだ。その中には、ホワイトハウスに新設される「国家通商会議」のトップに指名されたピーター・ナバロ氏も含まれる。同氏は「The Coming China Wars(チャイナ・ウォーズ)」や「Crouching Tiger(米中もし戦わば)」の著者として知られている。これらの書籍で同氏は、公平な競争環境を作るためだけでなく軍事的な対戦相手の能力を鈍らせるためにも、対中貿易制裁の発動を強く訴えている。

 日本は円高の容認や、自動車輸出の自主規制、米国内での工場建設と雇用創出などを通して貿易摩擦を一部緩和させた。どういう形であれ日本を脅威だとみなす米国人は今やほとんどいない。中国が日本を覆い隠してしまった。

「日本株式会社」との対決より複雑

 中国の新重商主義がもたらす結果は、その経済規模によって増幅されている。

 中国の過剰生産品――特に鉄鋼とアルミニウム――は世界市場にあふれている。さらに言えば、あまり知られていないものの、経済の保護主義は習近平国家主席の政治的土台を形成する不可欠な要素になっている。習氏はこれを国家の安全保障政策に結合させ、重要なインフラにテクノロジーを提供する外国のサプライヤーを閉め出している。さらに、米国をますます敵視する好戦的なナショナリズムと結びつけている。

 こうしたからくりを解体する試みと比べると、1980年代に「日本株式会社」と対決した米国の取り組みは単純に見える。

 トランプ氏のタカ派の顧問らは――いくらか根拠を持って――米国はすでに中国と貿易戦争の渦中にあると話す。

 中国側には停戦を求める理由はほとんどない。中国はトランプ氏の当選を、深く分断された米国が危機に陥り、世界の覇者としての時代が終わりに近づいている証しだととらえている。欧州も崩壊しかかっている今、中国は米国主導の世界秩序を作り直す歴史的好機を見いだしている。

 世界1位、2位の経済大国同士が衝突するとき、どちら側につくかの選択を迫られることはアジア太平洋諸国にとって悪夢の再来だ。米中間で貿易戦争が始まるのは確実だろうが、それが実際の戦争に発展しないことを各国は願うしかない。

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予測不可能なトランプ次期政権に身構える中国 当局者や研究者は言葉の解釈求め米国側に接触
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トランプ氏が台湾問題を中国との交渉材料に使う姿勢を見せていることに中国側では神経を尖らせている(英語音声、英語字幕あり)Photo: EPA/Reuters
By JEREMY PAGE, LINGLING WEI AND CHUN HAN WONG
2017 年 1 月 18 日 10:36 JST 更新

 【北京】米国のドナルド・トランプ次期大統領が中国に批判的なロバート・ライトハイザー氏を米通商代表部(USTR)代表に選んだ時、中国商務省は政府系シンクタンクのシニアエコノミストを呼び、「貿易戦争の影響に関する研究を指揮する」よう指示した。

 数日後、在ワシントン中国大使館は米国務省に接触し、トランプ氏が次期国務長官に指名したレックス・ティラーソン氏の議会証言についてたずねた。中国が南シナ海に造成した人工島の封鎖を同氏が示唆したのは、「政策あるいは個人的見解」の表明かと聞いたのだ。

 中国政府はこうした動きによってトランプ次期米政権に備えていると言えそうだ。次期政権には米中関係を根底からを揺るがそうと決めている気配はあるものの、具体的な政策プランに関する詳細はほとんど示されていない。

 次期大統領報道官に指名されたショーン・スパイサー氏は、中国が貿易面で報復措置に出る可能性についての質問に回答を控えた。国務省当局者らは、中国の懸念を受けた米国の対応についてコメントを控えた。中国外務省からのコメントは得られていない。

 中国の公の反応は当初こそ抑えめだったが、トランプ氏の13日の発言以来、舌鋒(ぜっぽう)を強めている。トランプ氏は同日ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、「1つの中国」の原則に交渉の余地があるとする認識をあらためて強調した。米国はこれまで、台湾を独立国として認めないこの原則を尊重してきた。

 トランプ氏の発言を受けて中国外務省は14日、1979年の米中国交正常化を支えている同原則に「交渉の余地はない」と一蹴した。

激しい応酬は不可避と警告

 政府系の英字紙チャイナ・デーリーは16日付の社説で、トランプ氏が「火遊びをしている」と警告。「トランプ氏が就任後にこの手を使う気なら、打撃を伴う激しい応酬は避けられないだろう。中国政府には本気で立ち向かう以外の選択肢しかなくなる」と論じた。

 中国外務省の華春螢報道官は16日の定例会見で、中国政府がトランプ氏側に直接抗議したかどうか、また、駐米大使など中国の当局者がトランプ氏ないし政権移行チームのメンバーと会ったかどうかを聞かれ、「以前に述べたように、われわれは現政権と次期政権に接触している」とはぐらかした。

 しかし事情に詳しい関係者によると、中国の当局者や研究者は水面下で米国側に接触し、トランプ氏や政権移行チームのメンバーがツイッターなどで中国について連発する痛烈な言葉を解釈しようと試みている。

 米国防総省の元幹部マイケル・ピルズベリー氏も相談を受けた。トランプ氏のチームに非公式に助言している同氏はこのほど北京を訪れ、中国の国際関係専門家との会合に出席し、市民や軍当局者に会った。

 ピルズベリー氏はWSJに対し、「彼らはトランプ氏の顧問らの政策の違いを理解するとともに、伝達手段を確立しようとしている」と述べた。「そして、第1ラウンドは失敗しそうだと感じている」という。

 北京訪問でピルズベリー氏が受けた印象は、中国側が譲れない問題にトランプ氏が手出ししない限り、中国はトランプ氏の最大の関心事である貿易や米経済への支援などで交渉することに異存はないというものだ。

 ピルズベリー氏は接触してきた相手に、交渉では予想されにくい存在になることを勧めるトランプ氏の著書の1節を紹介したという。

 外交官や中国の研究者の話では、中国は予測不可能な相手との交渉には慣れていない。中国政府はむしろ、自らが予想のつかない交渉相手であることや、共産党指導部の真意について米国から問いただされているほうに慣れているからだ。

中国が探るトランプ氏の真意

 米戦略国際問題研究所(CSIS)のボニー・グレーザー氏は、皮肉なことに「中国政府にとって最も意外なのはトランプ氏のこの側面だろう。安定した米中関係が両国の国益かなうとみているため、トランプ氏がなぜ米国の国益に反する行為に出るのか不思議に思っている」と述べた。

 グレーザー氏は、中国の関係者がひっきりなしにCSISを訪れ、次期米政権の中国政策について聞いてくると話した。

 中国の専門家や外交官は、習近平国家主席の国内での権威は経済減速に対処する能力にかかっているため、不確実性は習氏にとって特に厄介だと話す。

 これらの人々によれば、中国政府が最も動揺したのは台湾に関するトランプ氏の発言のようだ。中国は台湾について、必要であれば武力によって、本土と統合すべき省だとみなしている。中国が台湾について確認するまで、駐中国大使への指名が決まったアイオワ州知事テリー・ブランスタッド氏の着任を渋る可能性があるとみるアナリストもいる。

 中国は貿易戦争の観測にも懸念を募らせている。経済が一段と減速する恐れがあるためだ。

 関係者らによると、この問題に関する研究を中国商務省から依頼された冒頭のエコノミストは中国社会科学院財経戦略研究院の裴長洪氏(62)だ。

 ある関係者は「トランプ氏が選んだ閣僚はみな中国に対してタカ派に見える」と述べ、「対米貿易摩擦が激化する可能性に備える必要がある」との見方を示した。

 裴氏は、対外投資の使い方や習氏の「一帯一路」構想計画の実施など、貿易や投資に関するアドバイスを政府機関から頻繁に求められる人物だ。

 裴氏も中国商務省もコメント要請に回答しなかった。

 関係者らによれば、中国の当局者や研究者らは、南シナ海についてのトランプ氏の意向について米国の当局者や研究者に何度もたずねている。

 ある関係者の話では、中国大使館がティラーソン氏の発言を巡り米国務省に接触した際、米国の当局者は次期政権発足まで米国の政策は変わらないと請け負い、トランプ政権が自ら軌道を定めるのを待つよう促した。

 中国の当局者は米中戦略経済対話といった高レベルの米中会合の継続を確約するよう米当局者に求めてきたという。

  阿里巴巴集団(アリババグループ)の馬雲(ジャック・マー)会長は先週トランプ氏と会談し、約100万の雇用創出に協力すると約束した。

 中国の崔天凱・駐米大使は12日夜、中国商業連合会がニューヨークで主催した夕食会で講演した。この会には、トランプ氏と面識のあるヘンリー・キッシンジャー元国務長官などが出席。その隣には安邦保険集団の呉小暉会長が座っていた。

 崔氏は出席者に対し、「領海を巡る他国の係争について話す時、一部の人たちが慎重になってくれるといいのだが」と述べた。

トランプ次期政権

習主席のダボス参加、表向きの顔と裏の意図
トランプ氏のツイート攻撃 次の「標的」はどこだ?
中国の対米貿易、切っても切れない関係
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwid_JbZtsvRAhXLmpQKHfjZC9sQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10504433381807684657504582564392771733870&usg=AFQjCNFVHDKD8I9gYR-Sl67a33XiC-6ydg

http://www.asyura2.com/16/warb19/msg/535.html

[戦争b19] 中国の保護主義、外国企業の悲観論に拍車  習主席ダボス演説 国際舞台の「穴」で存在感 混乱するビットコイン管理目論む中国
中国の保護主義、外国企業の悲観論に拍車

在中米国商工会議所

[北京 18日 ロイター] - 在中国の米国商工会議所が18日に公表した年次調査によると、中国経済が減速する中、保護主義の高まりを受けて悲観的な見方を示す外国企業が増えた。

同会議所に加盟する米企業や多国籍企業462社を対象にした同調査では、外国企業が歓迎されていないと感じる企業の割合が81%と、前年の77%から上昇。

一方、中国を投資先のトップ3に挙げる企業の割合は56%と、過去最高を記録した2012年の78%から低下した。

商工会議所は「中国への投資を縮小して投資先としての中国の優先順位を下げる企業が増えている。景気減速に加え、市場参入への障壁、規制環境、コスト上昇をめぐる懸念の高まりが要因だ」と指摘。

中国が外国企業に対する「差別的な障壁」や投資規制などの撤廃に動けば、外国企業の投資は「大幅に増加する」だろうと分析した。

中国の習近平国家主席は、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、市場開放を推進する姿勢を示したが、調査では今後3年間に中国政府が一段の市場開放に注力する可能性にほとんど、あるいは全く確信が持てないとの回答が60%を超えた。

良好な米中関係がビジネスに「不可欠」との見方を示す企業は72%だったが、17年に関係改善を見込む企業はわずか17%だった。

調査は米大統領選の期間中とトランプ氏勝利後にまとめられた。

*内容を追加します。

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習主席のダボス演説、識者の目にどう映ったか?
中国の習近平国家主席は世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に同国の国家元首として初めて出席

By STEPHEN FIDLER
2017 年 1 月 18 日 11:24 JST
 【ダボス(スイス)】中国の習近平国家主席は世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に同国の国家元首として初めて出席し、経済のグローバル化を声高に擁護する演説を行った。これには、米国が世界の指導的役割から後退することで生じる空白を埋めようという意図がありそうだ。

 習主席の演説は、世界で強まりつつある懸念を念頭に置いたものとみられる。つまり、世界最大の経済大国である米国がドナルド・トランプ次期政権の下で保護貿易主義にシフトするとの懸念だ。

 1600人の聴衆を前にした1時間に及ぶ演説で習主席は、一層のグローバル化が歴史的な流れだと指摘し、中国の貢献がいかにその他の世界に恩恵をもたらしてきたか説明した。また、経済のグローバル化が世界の富を増大させた一方で、その結果として格差を拡大させつつあることも認めた。

 習主席は、世界経済を導く中国の正式な役割を拡大させるべきだとの主張を展開。だが、聴衆の間には、習主席が主張したほどの指導的役割を担う準備が中国に整っているか疑問視する向きもあった。

 英キングス・カレッジ・ロンドンのローレンス・フリードマン名誉教授(戦争学)は、「ここに集まったグローバルエリートたちは、習氏を反トランプとして受け入れている」と述べた。

 「世界のリーダーシップに空白が生じている。習氏はそれを目にし、つかもうとしているのだ」と語ったのは、スウェーデンのカール・ビルト元首相だ。

 同じく演説を聴いていた国際通貨基金(IMF)のデビッド・リプトン筆頭副専務理事は、「大切なのは中国がグローバル化には重要な恩恵があると言い、解決しなければならない問題も沢山あると認めていることだと思う」と述べた。

 欧州投資銀行(EIB)のウェルナー・ホイヤー総裁は、「とりわけ欧州では最近、リーダーシップが欠如している。それだけに、かなり印象的な演説だった」と評価。ただ、中国に世界経済の指導的役割を担える準備が整っていると思うかと聞くと、同総裁は「まだだ」と答えた。

 一部の聴衆からは、グローバル市場経済を擁護する発言が中国から出たことは皮肉だとの声が聞かれたが、ビルト氏も同じ意見だ。同氏は「世界最大の共産党の指導者がグローバル化を擁護するスピーチをすることになるとは驚きだ」と語った。

 しかし、トランプ次期政権がより保護主義的な立場を取るとすれば、中国は世界貿易を支える上で決定的に重要な国になるだろう。ビルト氏は、「米国が本当にもっと重商主義的な路線を敷くのならば、アジアと欧州が団結して世界的な自由貿易体制を維持する必要が出てくる」と述べた。

ダボス会議2017

民衆の怒りに触れた「貴族」たち
先進国の危険な綱渡り:高齢社会で成長維持
欧米有権者の不満と「成長率4%」の壁
習主席のダボス参加、表向きの顔と裏の意図
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Column | 2017年 01月 18日 12:12 JST 関連トピックス: トップニュース

コラム:中国主席、トランプ氏開けた国際舞台の「穴」で存在感

Quentin Webb

[ダボス(スイス) 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の習近平国家主席は初めて世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)に参加し、グローバル化と国際協力を擁護する講演を行った。

ダボス会議の場では聞き飽きたこの主張も、中国指導者の発言としては随分と国際的で壮大なビジョンだ。それもこれも、トランプ次期米大統領の登場によって米国が国際舞台に「穴」を開けたからこそ。米国が内向き姿勢を強めるなら、中国は気候変動から地域一帯の安全保障に至るまで、より大きな影響力を行使できるようになるかもしれない。

見方によっては、習氏がグローバル化を擁護するのは不思議ではない。国際貿易のおかげで大勢の中国市民が貧困状態から脱した。中国はグローバル派としての地歩を固めようとしている最中でもある。米国が貿易協定に背を向けようとしている一方で、中国は協定を推進し、アジアインフラ投資銀行(AIIB)も設立した。

とはいえ、グローバル化の旗手と呼ぶには習氏には欠陥が多すぎる。第一に、多国間主義や開放性を標ぼうする割に、どう見てもいいとこどりのそしりは免れない。最近では、南シナ海問題を巡る仲裁裁判所の判決を拒否。現在は中国本土での事業環境を外国企業に不利なものにしようとしている上、インターネットへの検閲も強化している。

中国はまた、米国のような専門技能や人材を欠いている。札束攻勢が多少功を奏しているようだが、相変わらずアジア近隣諸国の多くから警戒の目で見られている。米国は富裕層の市場を抱えるが、中国は貿易相手にそうした市場を提供できない。トランプ政権が誕生し、英国が欧州連合(EU)から離脱する時代においては、これまでのような密室外交も通用しにくくなるだろう。

中国は長年、国際世界を主導する役目を引き受けたがらなかった。世界の警察官になるためには、多くの人命と資金を犠牲にする必要がある。中国が本当にそうなりたいのか、あるいはなれるのかはまだ不明だ。しかし、トランプ政権がより包括的な世界観を明示できなければ、グローバル化支持者らの視線は徐々に中国へと転じるだろう。

●背景となるニュース

*中国の習近平国家主席は17日、ダボス会議で、「世界の諸問題を経済のグローバル化のせいにするのは的外れだ」と述べた。また、人民元を切り下げる意図はなく、貿易戦争を起こせば共倒れになると警鐘を鳴らした。中国の国家主席がダボス会議に出席するのは初めて。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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混乱するビットコインの「管理」目論む中国

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス

暴落危機、偽札横行に苦しむ人民元より期待大?
2017年1月18日(水)
福島 香織
 ビットコインをめぐる混乱が中国を中心に起きている。

 2017年1月5日未明、ビットコインの対人民元相場は1BTC(ビットコイン)9000元に接近するまでに高騰したあと、あっという間に暴落、13日午前までに5100元台に落ち込んだ。ビットコインはボラリティの高いことで知られるが、最近の乱高下は人民元の不安定化と合わせ鏡のようになっている。この機会にビットコインと人民元の関係、そしてその未来について考えてみたい。

大暴落、聞き取り、立ち入り、詐欺報道…

 この大暴落後の1月6日夜、中央銀行(人民銀行)の関係部門が公告を発表、ビットコイン交易プラットフォームの責任者に対してプラットフォーム運営状況について聞き取り調査するとのこと。OKコイン、ビットコイン中国、火幣ネットの3大交易プラットフォームの代表を呼び出して、ビットコイン交易において、無許可の信用貸付、支払い、為替取引などの関連業務を行っていないか、市場操作行為がなかったかどうか、資金洗浄制度に反する行為がなかったかどうか、資金安全に問題がないかどうか、などについて聞き取りを行った。さらに11日には、当局の監督管理部門が前出の3大交易プラットフォームに立ち入り検査を行った。また中央銀行は、「ビットコインは特定の仮想商品であり、法定通貨のような法的な保障性や強制性はない」という見解を再度強調した。

 こうした立ち入り調査に続いて、ビットコイン詐欺事件の報道が続いた。

 1月10日、北京商報によると、交易プラットフォームの一つ、ビットコインアジア閃電交易センターが1月5日までに突如閉鎖し、取引を停止。投資者から集めた1億元相当の資金を持ったまま連絡がつかない状況になった。同センターは9カ月前から、SNSの微信を通じて個人投資者を募り、資金を集めてビットコイン市場で運用し、一日あたり1.4%のリターンを約束していたという。元金はいつでも返金できるということだった。

 同センターに350万元を投資していた男性が1月3日に利子の償還が滞っていることに気づき、元金を取り返そうとしたが、連絡がつかなくなったため、警察に通報した。同様の被害者は440人以上おり、警察は詐欺容疑で捜査を開始。また被害者は集団訴訟の準備をしているという。

 ビットコインがなぜ高騰し暴落したか。

 ビットコインは2017年1月1日から4日までの間、毎日10パーセント前後の上昇率で値上がりし、この3年の間で最高額に達した。

小金持ちが元の暴落を恐れ、元をつぎ込む

 背景には人民元自身の問題もある。トランプ政権の登場で、中国経済の先行きの見通しがさらに悪くなり、人民元の大暴落が噂されていること。その噂によって、キャピタルフライトラッシュが加速し、外貨準備高が3兆ドルを切りそうなまでに急減していること。外貨準備高3兆ドルラインを守るために、中国の外貨管理が一層厳しくなって、庶民の不安をあおっていることなどがある。

 例えば、中国では外貨の持ち出しは年間5万ドルに制限されている。その制限額自体に今のところ変化はないのだが、その持ち出しに対する理由証明が年末年始ごろから格別厳しくなった。持ち出し額が5万ドル以下であっても、個人外貨購入証明書にその用途が何であるか、証明書を添付しなければならない。また、海外の不動産、株式、生命保険といった投機性のあるものの購入には使わないという証明書も添付しなくてはいけないという。

 これは中国人だけが対象ではなく、北京に駐在していた日本人が帰国に際して、中国の銀行に生活費用として預けていた数百万円の日本円ですら、使用目的が不明だ、という理由で送金をさし止められる例も聞いている。

 こういう当局側の厳しすぎる外貨管理に、不穏なものを感じた中国の小金持ちたちは、ますます人民元大暴落は本当に起こり得ると心配になって、資産価値を守るために、人民元を、外貨管理規制対象になっていない仮想のビットコインにつぎ込んだのが、年末以来の高騰の理由だとみられている。

 ここでビットコインについて今一度、簡単に説明しておこう。

博打好きの中国人の好みに合う?

 P2Pのシステム、つまり中央のサーバを介さずに端末と端末のネットワークで取り引きされる仮想通貨で、2009年に誕生した。法定通貨のように中央銀行のような管理者は存在せず、国家的機関も関わらないので法的な補償性や強制性はないが、権力サイドによる為替操作や取引の追跡、偽札の問題もない。

 中央支配機関が存在しない代わりに、ネットワーク参加者がその信用を担保する格好になっており、帳簿の管理は、ブロックチェーンと呼ばれる分散型のデータベースに取引の記録が維持されることで行われるという。ブロックチェーンに取引情報の書き込みと演算を行うマイニングという作業を行うマイニング企業、マイニンググループが存在し、その作業の報酬として新規のビットコインが受け取れる、という仕組みらしい。らしい、という言葉をあえて使うのは、私自身がビットコインを使っていないので、説明をいくら受けても、どういうものか、どうもピンと来ないからである。

 マイニングというのは演算であるから、コンピューター設備と電気消費が必要になる。ビットコインが増え、取引が増えれば演算は複雑になり、マイニングもそれなりの企業・グル―プの規模が必要となる。このマイニングにかける時間は10分となっており、演算能力からの逆算によってビットコイン発行上限数は2100万以下と決まっているそうだ。ちなみにこの上限に達するのは2140年で、現在は1200万くらいが流通しているらしい。

 2009年、ビットコインが登場したとき、1300BTCが1ドルの価値に相当した。ところがあれよあれよという間に急上昇し、2013年には1BTC=1200ドルとなった。

 一方、2013年ごろから中国でもビットコイン交易がさかんになってきた。当初1BTC=110人民元程度だったが同年11月に1BTC=8000元近くにまで高騰した。この異様な高騰に、人民銀行は12月5日、「ビットコインは仮想商品であり、法定通貨のような法的保障性や強制性はもたない」と宣言し、金融機関がビットコインを取り扱うことを禁止。民間決裁機関に対しても利用しないように指導した。このため、1BTC=2700元台にまで暴落した。

 しかしながら、この乱高下の大きさは、博打好きの中国人の好みに合った。しかも、2015年夏に中国の株式市場が大暴落して、その信用性が大失墜。不動産バブルは誰が見ても崩壊寸前。中国一般の小金持ちたちの資金は行き場を失っていたところだった。さらに2015年暮れに、人民元のSDR入りが決まると、誰もが人民元暴落を予想するようになり、資産価値防衛に誰もが頭を悩ませるようになった。こういった流れで、2000元台で比較的安定していたビットコインは2016年半ばごろから再び急騰してきたわけだ。

“地下換金システム”の役割も

 中国の主だった決裁機関では、ビットコインは取り扱っていないものの、ビットコインは2100万BTCという上限がある総量固定の資産という意味で、中国人は金やダイヤのように投機性があると考え始めた。さらに、今のように外貨管理が厳しい状況では、ビットコイン交易は事実上の地下換金システムの役割もある。2013年の大暴落のときは、一部の専門的な投資家たちが主役だったが、今回の高騰の背景には、一般投資家から少額資金を集めて、一定のリターンを約束するビットコイン理財(資産運用)商品の増加もあった。

 こうして、ビットコインが外貨流出の一つのルートになったことに当局が気づいたのと同時に、詐欺事件なども起こり、今回の中央銀行の公告、引き締めとなったわけだ。暴落は当局の動きを事前にキャッチした大手投機筋がビットコインの投げ売りをやったということもあるだろうし、その直前に行われた、人民元基準値の5年ぶりの切り上げを受けての反応という面もあるだろう。

 人民元の切り上げについては、トランプ政権発足前に、少しでも人民元の安定を図ろうという思惑が指摘されている。

 さて、では今後、ビットコインと人民元はどうなっていくのだろうか。

 ビットコイン相場は、6000元台に戻っている。2013年の大暴落に比べると傷は浅いといえるし、中国人のビットコインに対する信頼度は、例えば2016年夏の株価乱高下の時の政府介入で傷つけられた上海株式市場への信頼度に比べればまだましなのかもしれない。

交易の9割、マイニング企業の7割が中国

 目下、中央銀行は、ビットコイン管理を一括して行える第三者機関の設立について、業界関係者と討議しているらしく、おそらくはビットコインをうまく管理して、中国の利益を誘導したい考えかもしれない。

 というのも、ビットコインの交易の9割は中国で行われており、マイニング企業の7割も中国企業が占めているという点では、もはやビットコイン相場を支配しているのは中国当局、人民元相場であるということも言えるのだ。

 中国のマイニング企業の中には、ビル全体を演算用コンピューターと冷却装置に改造した施設をいくつも持っているような大企業も登場、月間1億8000万円相当のビットコインを採掘していた様子などをBBCが報じている。

 ビットコインは特定の管理者がなく、ネットワークでその信用性を担保するというシステムが、「自由な通貨」としての可能性を示す壮大な実験だったが、採掘も交易も中国に集中している現段階では、中国当局の公告や人民元相場がビットコイン相場に連動する、あるいは翻弄される状況になっている。

 仮に中国当局が今後、「第三者的」管理者を設立し、国内のビットコイン管理を一括するようになれば、これはビットコインに対する中国当局の管理、コントロールがさらに強まるということになるのではないだろうか。

 1月16日のフェニックステレビで「ビットコインへの投資は黄金への投資よりも有利」といった市場分析を報じているところを見ると、中国当局としてはビットコインに対してはまだまだ期待を寄せているようでもある。国内の資産が海外の不動産や証券、保険商品に逃げるよりも、そのほとんどが国内で採掘され交易されているビットコインに流れる方が、中国にとってもまだまし、ということかもしれない。

 いまだに偽札がATMから普通に出てくる人民元も、その人民元に翻弄されるビットコインも、その未来は、あんまり期待ができるという風には思えないのではあるが。

【新刊】中国が抱えるアキレス腱に迫る
『赤い帝国・中国が滅びる日』

 「赤い帝国・中国」は今、南シナ海の軍事拠点化を着々と進め、人民元を国際通貨入りさせることに成功した。さらに文化面でも習近平政権の庇護を受けた万達集団の映画文化産業買収戦略はハリウッドを乗っ取る勢いだ。だが、一方で赤い帝国にもいくつものアキレス腱、リスクが存在する。党内部の権力闘争、暗殺、クーデターの可能性、経済崩壊、大衆の不満…。こうしたリスクは、日本を含む国際社会にも大いなるリスクである。そして、その現実を知ることは、日本の取るべき道を知ることにつながる。
KKベストセラーズ刊/2016年10月26日発行

このコラムについて

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
 新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。
 中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。
 特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/011600084
http://www.asyura2.com/16/warb19/msg/536.html

[経世済民117] 英首相、経営者的手法で「EU離脱」演出 英金融界、最悪の離脱シナリオ受け海外移転加速へ EUは「いいとこ取り」警戒再燃
 


Column | 2017年 01月 18日 14:50 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
英首相、経営者的手法で「EU離脱」演出

George Hay

[ロンドン 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英国が直面している複雑で歴史的な転換局面において、メイ首相は企業経営者の手法を採用した。

新たに就任した優秀な経営者は時折、前任者の残したプロジェクトに対する多額の引当金計上から始めることがある。これで過去の問題を帳消しにして、将来の利益の見栄えを良くし、この経営者は決断力のある人物だというイメージを生み出してくれる。メイ氏が17日の演説で打ち出した欧州連合(EU)離脱の交渉方針は、それと似た効果をもたらす可能性がある。

英国のEU離脱交渉については、現状維持を出発点にして徐々に利益を放棄していく方法も考えられた。だがメイ氏はその正反対の提案をした。つまり、まずEUとのすべての関係を放棄し、それから新たな要素を積み上げる形で、これは現実を反映している。英国がEU単一市場にとどまりながら、EU司法裁判所の拘束を受けず、EU域外諸国と独自に貿易協定を結び、移民規制もできるという「いいとこどり」は不可能だからだ。

英政府は具体的なEU離脱計画を持ち合わせていないのではないかとの不安もあっただけに、メイ氏の今回の姿勢は確固たる指導者として再評価される材料になるはずだ。今や英国民とEUの交渉担当者は、英政府が「半分だけEUにとどまる」といった中途半端な形で決着をつけるつもりがないということが分かった。最悪のシナリオを確立したため、もしメイ氏が求める包括的な自由貿易協定をEUが容認すれば、事態はましになるという期待も出ている。

もっともこの問題はあたかも大きな浴槽のごとく、足元をすくわれて溺れてしまう危険性はある。EU各国が英国との合意を拒否した場合は、英国の国内総生産(GDP)は2030年までにトレンド成長率に対して著しく下振れしかねない。メイ氏が単一市場のアクセス確保を目指すと表明した自動車と金融サービス業界は心強く感じただろうが、希望がかなわない可能性は恐らくより明確になってきた。

現時点で投資家の反応は割れているように見える。ポンドは対ドルで即座に2.5%も上昇したものの、通貨オプション取引は依然としてポンド売りに傾いているもようだ。ただ、メイ氏は少なくとも、投資家が手掛かりにできる基本シナリオは設定した。次に起きる展開についてメイ氏がコントロール可能な範囲が限られる以上、基本シナリオの提示はメイ氏が市場のためにできる精一杯の行為と言える。

●背景となるニュース

*メイ氏は17日の演説で、英国がEUを離脱する際には単一市場からも撤退すると宣言した。

*メイ氏は、EUと対等なパートナーになることを模索していくが、他の国が採用している既存の自由貿易協定を導入する考えはないと述べた。

*メイ氏は「私は次の点をはっきりさせたい。つまり私の提案はEU単一市場にとどまることを決して意味しない。そうではなく、新しく包括的、野心的、大胆な自由貿易協定を通じて可能な限り最大限のアクセスを目指す。この協定には一定分野において現行の単一市場の取り決めを盛り込むかもしれない」と語り、そうした分野に自動車や金融サービスを含めたいと付け加えた。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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http://jp.reuters.com/article/britain-eu-breakingviews-idJPKBN15200N

 


News | 2017年 01月 18日 16:21 JST
関連トピックス: トップニュース
アングル:
英金融界、最悪の離脱シナリオ受け海外移転加速へ

 1月17日、メイ英首相がEU離脱に際して単一市場から脱退する方針を表明したことを受け、英金融サービス業界は一部事業の海外移転を加速させる見込みだ。ロンドンの新金融街カナリー・ワーフで昨年12月撮影(2017年 ロイター/Andrew Winning)

[ロンドン 17日 ロイター] - 英国のメイ首相が17日の演説で欧州連合(EU)離脱に際して単一市場から脱退する方針を表明したことを受け、英金融サービス業界は一部事業の海外移転を加速させる見込みだ。

各金融機関は事業拠点を見直す前に英政府がEUとの関係をどうするのかはっきりしほしいと訴え続けてきたが、現段階ではもうほとんどの大手が引き続きEU域内で活動できるようにするため、一部事業を英国から移す態勢を整えている。

そうなると今後は、金融センターとしてのロンドンの将来性が大きな問題の1つになる。なぜなら金融は英国最大の輸出産業であり、最も多くの法人税収をもたらしれくれるからだ。
メイ氏の演説を受け、ある国際的な大手行の幹部は「最悪シナリオが現在は基本シナリオになったように見受けられる」と語り、各金融機関は緊急対応計画(コンティンジェンシー・プラン)の取りまとめをさらに急ぐだろうと付け加えた。

メイ氏は、世界経済フォーラムが開催されているダボスで19日にゴールドマン・サックス(GS.N)のロイド・ブランクファイン最高経営責任者(CEO)やJPモルガン(JPM.N)のジェイミー・ダイモンCEOといった大手行首脳と会談する予定。

ただ英国の単一市場撤退がほぼ確実となり、金融機関はロンドンを拠点にEU域内すべてで活動できる「パスポートの権利」も失われる事態となった以上、その場でメイ氏が英国から一部事業を動かさないでほしいと訴えても、銀行首脳らを説得するのは難しい。

コンサルティング企業オリバー・ワイマンは昨年10月、英国の金融機関がパスポートの権利を喪失すれば、雇用が7万5000人減少し、英政府は最大100億ポンドの税収減に見舞われると警告した。
米大手5行はロンドンで計4万人を雇用しており、これはその他の欧州全体の雇用数を上回っている。
金融業界は英政府に対して、EU離脱交渉で好条件での合意が難しいことが判明したり、交渉期間が定められた2年を超えて長期化するような事態に備え、新たな段階への準備を進めるための移行期間をきっちり確保してほしいとも要望している。

メイ氏は今回、移行期間が設定できると強く確信していると初めて示唆。「われわれは新しい取り決めが段階的に実行されると考えている。その過程で英国とEU機関、加盟国は態勢を整えることが相互の利益になるだろう」と語った。

しかしメイ氏は、そうした移行期間がどう機能するのか、あるいはいつまで続くのか詳細には触れていない。金融セクターの法律専門家は、内容がはっきりしないことから移行期間が設けられるのを当てにするのは賢明ではないと助言している。

法律事務所バーウィン・レイトン・ペズナーのパートナー、ポーリー・ジェームズ氏は「英政府が移行期間を実現してくれる状況を金融機関が頼みにしていたら、実際には適切なタイミングで交渉をまとめられなくなる展開を真剣に懸念している」と話した。

その上でジェームズ氏は「だからわれわれは金融機関の顧客に対して、英国のEU離脱後も単一市場へのアクセスを確実に保つために、コンティンジェンシー・プランを練るよう提言し続けている」と説明した。
(Anjuli Davies、Andrew MacAskill記者)

英国のメイ首相は17日、欧州連合(EU)離脱の交渉方針に関する演説を行い、EU離脱に伴い単一市場からも脱退する方針を明らかにした。単一市場残留に向け妥協案を探るのではとの憶測を否定、ハードブレグジット(強硬離脱)を目標に掲げた。

持久戦のEU離脱交渉

• 英国のメイ首相はEU単一市場からの撤退を表明したが、最終的な離脱案について、議会での承認を求める考えも示した。英国の首相になったつもりで、英国の譲歩案とEU側の出方を予想してみよう。どのような取引が得られるだろうか。

起こり得る問題

「ハードブレグジット」は一部のEU離脱支持者から賛同を得ているものの、この選択肢は経済的に不利になる可能性があり、政治家や経営者や国民から、あるいはブレグジットに賛成した人からさえ反発を受ける恐れがある。

• 移民
英国はEUからの移民をどれくらい減らしたいか
• 望まれない移民の受け入れ停止(EUからの移民の純流入数を年間2万人に)
• 現状維持(同年間18万人)
• EU予算への拠出
英国はEU予算にどの程度拠出する気があるか
• まったく拠出しない
• 現状維持(平均で年間85億ユーロ)
• 2倍に増加(平均で年間170億ユーロ)
• 関税
EUは英国からの輸入品に対し、当初どの程度無関税にする気があるか
• いかなる輸入品も無関税にしない
• 現状維持(完全に無関税)
• 金融サービス
EUは英国の金融サービス企業に対し、どの程度アクセスを可能にするか
• アクセス不可
• 現状維持(完全にアクセス可能)
• 政治的影響力
EU加盟国の間で優位に立つのは誰か
• フランス率いる欧州純粋主義者
• ドイツ率いる欧州現実主義者

• ロイターをフォローする
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News | 2017年 01月 18日 16:46 JST 関連トピックス: トップニュース
アングル:
英首相の離脱方針、EUは「いいとこ取り」警戒再燃
 

 1月17日、メイ英首相はようやくEU離脱計画の青写真を示したが、EU加盟国の関係者の間では、離脱にあたって英政府に「いいとこ取り」を許すべきではないとの主張が再燃している。写真は、離脱を支持するヘルメットをかぶった女性。ロンドンで昨年12月撮影(2017年 ロイター/Toby Melville)

[ブリュッセル 17日 ロイター] - 欧州連合(EU)加盟国の指導者は英国のメイ首相がようやくEU離脱計画の青写真を示したことを歓迎しつつも、首相はEU離脱に伴う英国の負担を直視すべきだと考えている。

EU加盟国はこの数カ月、欧州大陸からの移民流入を制限すれば単一市場からも脱退せざるを得ないという事実を、英当局者が公式に受け入れないことに苛立ちを示していた。

しかしメイ首相は今回の会見で単一市場から離脱する「ハードブレグジット」を目標に掲げ、EU加盟国と包括的な自由貿易協定について交渉する方針を表明。EU加盟国の憂慮に終止符が打たれた格好だ。

トゥスクEU大統領はツィッターに「残念な推移であり、超現実的な状況だが、ブレグジットについてより現実的な発表であるのは間違いない」と投稿した。

EU加盟国の指導者は、メイ首相がEU離脱に向けた話し合いを正式に開始するまで交渉の準備を着々と進めるだろう。しかし交渉に備える当局者からは、離脱が英経済に与える多くの負の側面についてメイ首相が触れなかったとの声が上がっている。

メイ首相は、単一市場参加に伴う義務を放棄しながら財やサービスについて最大限のアクセスを維持したいなら、英国は「ギブアンドテイク」の関係を作り、妥協しなければならないと認めた。

しかしチェコのプロウザEU問題担当相はツィッターに「こちらから奪うばかりだ。差し出すものはどこにあるのか」と投稿した。

ドイツのガブリエル経済相などEU加盟国の関係者の間では、EU離脱にあたって英政府に「いいとこ取り」を許すべきではないとの主張が再燃している。

カナダなどの一部の国はEU単一市場への広範なアクセスを求めて交渉してきたが、アクセスの度合いは英国が今享受しているよりも低い。交渉期間は7年以上を要するのが普通だ。

メイ首相は、英国との自由貿易はどの国にとっても利益になり、「ゼロサムゲーム」ではないと訴えた。多くの国は、少なくとも短期的にはこの点に同意しているため、離脱による打撃を最小限に抑えようとしている。

首相は「英国を罰して政治的な主張を通そうとする」なら、欧州大陸の労働者の経済的な利益が損なわれるだろうとも述べた。しかしEUの指導者は、英政府に甘い顔をすると他の国でも有権者がEU離脱の是非を問う国民投票を目指すのではないかと危惧している。

元ベルギー首相のフェルホフスタット氏は「EUや単一市場から離脱した方が残留するよりも良いという状況を絶対に受け入れてはいけない」と主張した。

英国の高官らは、EUが英国に懲罰的な関税などを課すなら、競争力を維持できるよう法人税を引き下げる可能性を示唆している。ハモンド英財務相は「英国の競争力を維持し、生活水準を守るためには何でもする」と述べた。

フェルホフスタット氏はこの発言について、妥結への道のりを険しくするものだと指摘。英国を租税回避地(タックスヘイブン)のような場所すると脅しても無駄だと述べた。

(Alastair Macdonald記者)


英国のメイ首相は17日、欧州連合(EU)離脱の交渉方針に関する演説を行い、EU離脱に伴い単一市場からも脱退する方針を明らかにした。単一市場残留に向け妥協案を探るのではとの憶測を否定、ハードブレグジット(強硬離脱)を目標に掲げた。
持久戦のEU離脱交渉


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http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/902.html

[国際17] トランプ氏、オレンジ色の肌に宿る深い戦略 トランプ発言に学ぶ「炎上」を招く3つの心理バイアス クリントン優勢を覆えした 
トランプ氏、オレンジ色の肌に宿る深い戦略
ニュースを斬る
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2017年1月18日(水)
日野 江都子

 2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。トランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで──。日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が発売されました。今回の記事は、「トランプ解体新書」にも収録したものです。本書もぜひ手に取ってご覧ください。
 ドナルド・トランプ氏は1946年生まれの70歳。身長は6フィート3インチ(約191cm)、体重は236ポンド(約107kg)と公表している(最近では、267ポンド=約121kg=という説もある)。
 彼を支持するか否かは別にして、彼ほど「プレゼンス(存在やいでたち)」と「アピアランス(外見)」において強烈なインパクトを持つ人物はほかにない。そこで、戦略的イメージコンサルティングを本業とする立場から、トランプ氏の言動や振る舞いを分析した。彼の何が、人々に大きな印象を与えるのか。顔や髪、服装、姿勢、取り巻く環境といった非言語的な観点から次期大統領を解剖した。
オレンジ色の肌はスプレータンニング
 「あのオレンジ色は何?」。仕事柄、人の肌の色素や特徴を分析するため、大統領選のさなかにはあちこちでこういった質問を受けた。トランプ氏の肌の色のことだ。
 必要以上に黄味と赤味の強い「焼けたオレンジ色」の肌は、プロの目から見ると極めて不自然に映る。私が見たところ、このオレンジ色の肌は目の回りを避けて行ったスプレータンニング(日焼けではなく、スプレーなどで焼けているように肌色を変える施術)によるものだと思われる。
 それは下の写真を見れば一目瞭然だ。目の回りや眉、髪の生え際、そして耳は白く、これが彼本来の肌の色だ。もともとトランプ氏はうっすらとしたピンクの白い肌の持ち主で、瞳の色もブルー。色素の薄いこのタイプは太陽光に弱く、たとえ肌を焼いても、ほてるだけで健康的な褐色の肌にはなりにくい。さらに焼きすぎると皮膚ガンになるリスクもある。つまりトランプ氏は「日焼けした肌」にはなりにくい。

セルフタンニングを実施したとみられるトランプ氏の顔。目の回りや眉の生え際などの白い部分がもとの肌の色だ(写真:SWNS/アフロ)
 だが欧米では少し焼けた肌がステータスシンボルで、リッチな証しとされている。その上、焼けた肌は健康的で精悍な印象を与える。とあれば、トランプ氏がそれを利用しないわけがない。そこでスプレータンニングに挑んだのではないだろうか。
 もちろん、それでも「オレンジ色はおかしい」と感じる人も多いはずだ。だがトランプ氏のイメージ戦略にとって、何よりも優先させるべきなのは「実年齢よりも若く健康的に見せること」や「実際には顔の上に表れている“加齢の証し”から話題をそらさせること」にあるようだ。
シワ、くすみをカモフラージュ
 彼は70歳の老人である。それでも多くの人は、あのオレンジ色の肌と強烈な発言、不思議な表情に気を取られて、彼の顔をまじまじと見て「老人だな」と感じることは少ないはずだ。
 もしトランプ氏がそれを狙っているなら、オレンジ色の肌にした戦略はあまりに巧みだ。白人男性にありがちな、老化による細かなシワと乾燥による肌のかさつき、くすみ、ツヤのなさなどを、視覚的にカモフラージュしているからだ。
 テレビや写真に映る際には、このオレンジ色の肌の上に、さらにファンデーションを塗って、ほほやあごなどに濃いめのシャドーを入れているようだ。これで、あの焼けたオレンジ色の肌が完成する。人の目をそらせ、話題をすり替える作戦は大成功だ。それもこのオレンジ色の肌は、選挙戦中によく身に着けていた赤色のネクタイにぴたりと合う。
 下にトランプ氏の本当の肌の色に近い写真も掲載しよう。トランプ氏のもとの肌は白っぽいピンクで、オレンジ色の肌よりも、もっと物静かな印象を与える。逆にオレンジ色の肌の時のようなギラリとしたパワーはあまり感じられない。ぶっ飛びすぎとも思えるオレンジ色の肌だが、そこには彼の考え方や戦略などが隠されているようだ。

こちらがトランプ氏のもとの肌の色に近い写真。オレンジ色の肌と比べると、ややパワー不足に見える(写真:Splash/アフロ)
おかしな髪形だけれどカツラではない
 オレンジ色の肌と同じくらい、今回何度となく「あの髪形は何?」という質問も受けた。横から見ると分かるように、トランプ氏は頭頂部から前側に髪を引っ張り出してきて、生え際を覆い隠すように前髪を作っている。
 肌の色がオレンジ色のため、肌と髪の色の差がほとんどない。その上、頭頂部から引っ張ってきている前髪は非常に薄く、額が透けて見える状態。サンバイザーのように飛び出した半透明の前髪が、額と目元にかかっている。
 これによって、対峙する相手は、トランプ氏の目になかなか焦点が絞れない。相手の集中を妨げ、トランプ氏の表情を読み取られないようにしているのだとしたら、その戦略もあっぱれだ。

話題になった謎の髪形。サンバイザー・ヘアのお陰で、対峙する相手はなかなかトランプ氏の目に焦点が絞れない(写真:ロイター/アフロ)
 トランプ氏の髪形を巡っては、カツラ疑惑や植毛疑惑が頻繁に取り沙汰された。それを払拭すべく、トランプ氏はテレビ番組の中で子供に髪の毛を引っ張らせたり、選挙集会で聴衆の女性に髪を触らせたりして、「地毛」であることをアピールしてきた。どんなに枯れてもふさふさとした地毛があるのは現役の証し。男性としてのプライドもあるのだろう。
 実際、スプレーをしっかりかけてあのヘアスタイルを作っていることは確かである。選挙集会でトランプ氏の髪の毛を触ることになった女性に対しても、「あんまりかき回さないように。ヘアスプレーを使っているから」と注文を付けたくらいなのだから。
 カツラでないとしても、ボソボソの金髪(米国内では「トウモロコシのひげ」という表現をする人もいる)には疑問も多い。いくつもの写真を分析してみると、ツヤもなければ、真っ直ぐでもない、枯れた切れ毛のような髪の毛を、何とか前に持ってきて厚みを出し、スプレーで固めていると見られる。確かにこれではかき乱されると困るはずだ。
 この「サンバイザー・ヘア」に関する論争についても、トランプ氏は有利に活用している。本来ならば隠したい自らの弱点ともなる髪の毛をさらけ出せば、多くの人は親近感を抱く。自分から相手に近づき、直接触れさせて物理的かつ心理的な距離を縮めて警戒心を解き、コミュニケーションを生んだわけだ。この特殊な髪形も、オレンジ色の肌と同じように、人々の関心を「加齢」からそらせるには十分な効果がある。
 最も加齢が出やすい肌と髪。トランプ氏は一見奇抜とも思える戦略で、巧みに「老化」から人々の意識をそらせている。
スーツの前ボタンは留めず、若々しさを演出
 トランプ氏の振る舞いを分析する上で「正式には」とか「通常は」といった言葉は通用しない。最も象徴的なのはスーツの着こなしだ。
 彼はスーツ着用時、常に上着の前を開けっ放しにしている。どんな映像や画像を見てもジャケットのボタンを留めることなく、ジャケットの前が全開でネクタイはぶらぶらとしたままだ。大統領選後、日本の安倍晋三首相がいち早く実施した会談でもジャケットは開いたままだった。本来、上着の前ボタンは留めているのが基本で、着席時だけ外してもいい(外さなくてもいい)。
 裕福な家庭に育ち、一流のビジネスパーソンであるトランプ氏が、こうしたスーツ着用時のルールを知らないはずはない。それでも彼がジャケットを開けっ放しにする理由は何か。その着こなしによって彼は「型にはまらない」かつ「動きがある」というところを演出していると、私は分析している。
 上着がたなびく様子からアクティブな印象を植え付けたいのかもしれない。事実、忙しく動き回るビジネスパーソンの中にはジャケットをひらめかせている人がいるのも確かだ。
 一国のリーダーとしてどうなのかという疑問は残る。それでも年齢を感じさせないアクティブさを印象付ける効果は大いにあるだろう。その昔、ロナルド・レーガン氏が大統領選に出馬した際には、遊説先の空港で小走りに飛行機のタラップから下り、69歳という年齢を感じさせない若々しさを聴衆に印象付けた。
「現役感」でヒラリーに挑んだ
 同じようにトランプ氏も粗野に見える懸念はあるけれど、それ以上にアクティブな演出ができるよう、ジャケットのボタンを留めていないのではないだろうか。ここにも、「70歳」という実年齢を感じさせない演出が潜んでいる。
 またトランプ氏は、70歳の割に姿勢は悪くない。動きも軽快で、十分に「現役感」を演出できる体だ。そして彼のジェスチャーは、強烈な発言ややんちゃ坊主のような表情ともうまく連動している。
 振る舞いや姿勢で若々しさを維持できているのであれば、前述した「肌(顔)」や「髪」の老化をいかにカムフラージュして、話題をそらすかが何よりも重要になる。「装い」によってアクティブさを演出することも重視してきたのであろう。
 トランプ氏は、こうした見た目の戦略において「大統領としてふさわしく、好感度があり、国民の信頼を得て、品性があるか」を演出することは二の次、三の次にしてきた。かつて若く精悍なジョン・F・ケネディ氏が、経験はあるけれど年を取ったリチャード・ニクソン氏に勝利し、米大統領となったのは有名な話だ。
 それと同じように、トランプ氏はとにかく「現役感」を演出し、ほぼ同年齢のヒラリー・クリントン氏と戦って勝った。イメージ戦略としては大成功と言えるだろう。
イバンカ氏の「ハロー効果」
 もう1つ、選挙戦で彼を救ったのが、長女・イバンカ氏の存在だった。イバンカ氏は三児の母であり、メディアには、妻や母親の姿を見せつつ、モデル業をこなし、自らのファッションブランドを展開する実業家の一面もある。自分の好感度が低いことをよく理解しているトランプ氏は、選挙戦の間、常にイバンカ氏を近くに置いていた。美貌に恵まれ、知的で行儀の良い彼女による「ハロー効果」は計り知れない。

長女・イバンカの美貌が、トランプ氏の選挙戦を支えた(写真:ロイター/アフロ)
 ハロー効果とは、ある対象を評価する時、その対象の有する顕著な特徴に引きずられ、ほかの特徴についての評価が歪められる現象のこと。トランプ氏の場合、イバンカ氏という存在が強烈なインパクトを与え、ハロー効果によって、「イバンカ氏の実父であるトランプ氏もいい人間かもしれない」と聴衆に思わせたというわけだ。トランプ氏は自身や娘、妻が世の中からどのように評価されているのかを冷静に理解している。その上で、最も印象の良いイバンカ氏を隣に置き、そのハロー効果を期待したのだとすれば、適材適所のよく練られた戦略と言えるだろう。
好感度を高めるより、目的を果たすこと
 テレビ出演を通してメディアを熟知しているトランプ氏。強烈な肌の色や髪形によって、「老化」から人々の目をそらし、若々しさや四角四面でないという印象を付けるにはルールを逸脱した着こなしも辞さない。
 「オレンジ野郎」と罵られたりもしたが、それさえも「老化から目をそらす」という点で、トランプ氏の狙いは成功を収めたと言えるだろう。
 一般的に好感度や信頼感を高めることが「イメージ戦略」と思われがちだ。だが本来は「目的を達成する」ことこそがイメージ戦略の真の狙いだ。その点でトランプ氏は巧みなイメージ戦略によって、大統領になるという目的を果たすことができたわけだ。
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 2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。2人のピュリツァー賞受賞ジャーナリストによるトランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで──。2016年の米大統領選直前、連載「もしもトランプが大統領になったら(通称:もしトラ)」でトランプ新大統領の誕生をいち早く予見した日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が発売中です。ぜひ手に取ってご覧ください。


このコラムについて
ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/011600535/? 

 

ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹
【第67回】 2017年1月18日 渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
トランプ発言に学ぶ「炎上」を招く3つの心理バイアス
クリントン優勢の予測を
覆えした「社会的望ましさ」


 米大統領選のトランプ氏の勝利は、アメリカのみならず、世界で驚きをもって伝えられた。就任直前となった今でも、彼の過激な言動は常に話題になっている。

 以前にもこのコラムで述べたが、クリントン氏優勢だった前評判を覆した裏には、有権者の「社会的望ましさ」が働いていた可能性が高い。政治的に正しくないことや社会的に望ましくないことは公の場では言えない、という社会的な規範が、有権者へのアンケート調査の際に働き、本音ではトランプの政策を支持していても、それを他人には言えないという心理が、大統領選の予測失敗につながった。

 この「社会的望ましさ」が働くのは、当然ながら「自分の意見が他人に知られる」場合だ。これは他人を気にするために起こる一種の「心理バイアス」である。個のバイアスは、普段は人間関係や社会関係を円滑にするために一役買っている。一方、投票が無記名で他人に自分の投票を知られる可能性がない(あるいは非常に低い)と、社会的望ましさを気にせず、本音を表明できるため、多くの人々の予想とはちがった現象が起こったように思うのだ。

 そんな社会的な望ましさを、あまり気にせずに済む(と思われている)のが、SNSなどのネット上での発言だ。フェイスブックは別としても、ツイッターや他のネット掲示板は、匿名性が高いか、犯罪に関わらない限り、ほぼ完全に匿名だ。

 こういう状況ならば、他人の目を気にする必要なく「本音」が吐ける。程度の差こそあれ、そう思っている人が多い。少なくとも実生活で人と会っているときより、言いたいことを言う人は多いだろう。そのため、そして自身の発言をきっかけに「レスバトル」や「炎上」が始まるケースもある。

 中にはトランプ氏や他の政治家のように匿名ではないにもかかわらず、炎上を繰り返す場合もある。何がそうさせるのだろうか。

自分が望む情報だけを
得ようとする「確証バイアス」

 レスバトルや炎上が起こる背景には、さまざまな心理バイアスが関わっている。例えば社会心理学でいう「確証バイアス」と呼ばれるものがそれだ。

 確証バイアスとは、自分の価値観や信念に沿った情報のみを探そうとしたり、あるいはそれらを過剰に支持したり、逆に自分の価値観に沿わない情報を無視したりするバイアスだ。もともとある種の価値観を持っている人は、自分にとって心地良い情報だけを探そうとする。

 ネットが発達し、かつてとは比較にならないほど多岐にわたる情報が手に入るようになった。だが皮肉なことに、このバイアスのせいで、人は「自分にとって心地良い情報だけを」自由に選択することができるようになってしまった。選択肢が増えても自分の味方の選択しか見ない。トランプ氏のように影響力が大きい人物のツイートには、膨大な数の反応がある。しかし彼は自分を支持する意見だけを選択して見ることができるのだ。結果として、自分とは価値観の違う人と生産的に意見を交わすことが難しくなり、感情的な炎上やバトルに突入してしまう。

反射的なレスは感情的・
短絡的になりやすい

 またツイッターなどの短文ブログは、事故や災害のときに迅速な情報提供ができる強みもあるが、意見や考えの表明の際には、別のバイアスがかかりやすい。これはノーベル賞を受賞した心理学者、ダニエル・カーネマンのよぶ「ファストシンキング」というものだ。

 人は時間的に切迫しているとき、大きなプレッシャーがあるときなどには、熟考せず、短絡的、感情的な反応をしやすい。自分の価値観に反する書き込みを見て、頭に血が上り、すぐにツイッターに感情的な反応を書き込むのはその典型だ。当然、そういった感情的なレスの応酬は炎上につながる。

 そして大事なのは、本来言葉を最も選んで発言するべき立場にある人々さえも、そうした反応をあからさまにするようになってきた、という事実だ。トランプ次期大統領はその典型だし、日本の政治家の中にもそういった反応で問題を起こす人が増えてきたように思う。

 そういった反応がどんどん増えてくる背景には、実はもうひとつ、ある種の「集団心理バイアス」が作用している。集団意思決定における「隠れたプロファイル」という現象だ。

大勢に共有されている情報は
より重要だと思い込まれがち

 これは、集団で物事を決定するとき、メンバーは自分が独自に持っている情報よりも、皆が共有して持っている情報を重視して決定してしまいがちだという現象である。

 例えば、政治的に極端な価値観を持っている人が、上に挙げた様々なバイアスにより、自分の価値観にマッチした情報ばかりを求め、そういった人たちが集まる掲示板に書き込みをする。そこでやり取りされる情報は、自分の価値観を支持し、皆に広く共有されているものが多くなる。

 だがそこでの意見は、その限られた場でのマジョリティを占めるものの、一旦そのコミュニティを出ると、世間からは全くズレた意見になっているようなことは多々見られる。さらに悪いことに、それに対する反対意見もまた感情的なものが多く、建設的な議論の妨げになっている。異なる意見や価値観が建設的に意見を交換しあって、新しいアイディアを出すことがますます難しくなっているのだ。

感情的反論は無視
建設的反論は真摯に対応

 こういったことを防ぐには、現在のところ、各人が自分のバイアスに自覚的になるしかない。ツイッターなどに、事実を迅速に書き込むのは良いが、自分の意見を書き込むならば、時間をとってよく考えて書き込む。レスバトルや炎上にならないために、感情的な表現や揚げ足取りは控える、という行動が必要だ。

 他者からの感情的反論に対して、自分も感情的にレスするのは論外だが、だからといってブロックするのもまた論外だ。それは少数ながら存在する「建設的な反論」をも封殺する、と宣言しているようなものだからだ。そうした行為そのものも感情的レスポンスの一つなのだ。取るべきは。感情的反論は無視し、建設的反論に対しては真摯に議論する、という対応である。

 こうやって考えると、SNSやネットで発言するのは、実は非常に難しいことだとわかるだろう。筆者自身も自戒すべきことと認識しているつもりだが、気がつくと、上記のバイアスに絡め取られてしまうことも多い。

 本来、他人に与える影響力が大きい人ほど、これらの点に気をつけるべきだが、最近の政治家などの発言を見ると、とても気をつけているとは思えないことが多い。筆者は、これらのバイアスへの「無自覚さ」が危険なポピュリズムの温床になる可能性を危惧している。

(モナッシュ大学マレーシア校スクールオブビジネス ニューロビジネス分野准教授 渡部 幹)
http://diamond.jp/articles/-/114550

http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/358.html

[政治・選挙・NHK219] 日本を取り巻く地政学リスク、2017年を展望する  「電車で高齢者に席を譲る」という人が減っているワケdiamond.j
田中均の「世界を見る眼」
【第63回】 2017年1月18日 田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
日本を取り巻く地政学リスク、2017年を展望する

中長期展望に基づいたグランドデザインがなければ日本の将来的繁栄へのリスクは高い
米国──トランプ政権の三大内在リスク

 新大統領が就任して半年から1年は「ハネムーンピリオド」として議会やメディアも大統領に好意的な態度をとるのを常とするが、トランプ政権とはこの期間にも尋常でない摩擦を生むリスクがある。先般の記者会見で自らの意に沿わない報道をしたとCNNの質問を拒絶したことに象徴的に示されるように、メディアとの関係は波乱含みである。

 特に今後の「利益相反」問題の推移は注意を要する。トランプ大統領も多くの閣僚も広範な事業を営んできており、利益相反を巡り厳しい批判を生む可能性がある。議会との関係でも、共和党が上下両院の多数を占めているとは言え、例えば財政や貿易政策あるいは対露政策を巡り伝統的な共和党の政策とは相いれない場面が容易に想像され、厳しい対峙となる可能性は否定できない。メディアや議会との敵対的な関係は米国の内政を揺さぶる。

 次にトランプ政権の政治手法である。トランプ政権は、これまでのプロフェッショナルな統治手法ではなく、選挙キャンペーンから引き続きポピュリスト的なアプローチをとる可能性がある。大統領選挙での勝利後もツイッターを多用し、特定企業を名指しした批判や対中牽制などに加え、「敵か味方か」という大衆に分かりやすい二分法で衝動的なメッセージを送り続けた。果たして大統領として同じような手法を多用していくのか。それとも十分な吟味が行われたうえで政策が形成されていくのか。前者であれば米国だけでなく世界の混乱は止まらない。

 国際秩序への最大リスクは米国のリーダーシップが揺らぐことである。これまで米国は(1)強大な軍事力を、秩序維持のために使う覚悟を持ってきた、(2)強い経済力を維持し、自由貿易を含む自由主義経済体制を守ってきた、(3)地球温暖化や反テロ、抗不拡散など世界の課題設定を行いルール作りに中心的役割を担ってきた、(4)民主主義のモデルとして存在してきた。「米国第一」主義は、米国さえよければいいと捉えられ、リーダーシップの否定に繋がる。特に、民主主義のモデルとしての米国の存在が揺らげば揺らぐほど、中国やロシアは自国の体制が秩序維持に効果的であると喧伝していくだろうし、第二次世界大戦後続いてきた自由民主主義の価値観さえも問われることとなる。

中国──政治の季節における二大リスク

 2017年秋には共産党第19期党大会が開催され、今後5年の指導部の人事が決まることになる。68歳を超えて常務委員を続けられないという共産党の内規に従えば、7名の政治局常務委員中、習近平総書記・国家主席、李克強首相を除く5名が交替する。強固な習近平体制を構築してきたのは高い経済成長率、体制を引き締める反腐敗闘争、国内の批判を封じる強権的措置の組み合わせであった。

 このような体制が揺らぐとすれば、経済成長率の大幅な下落に起因しよう。習近平総書記は「中国の夢」を語り、中国人が豊かになること、当面、2020年に2010年比所得倍増を目標に掲げた。この夢を実現させるためには今後最低平均6.5%程度の成長を達成する必要がある。現在の中国には過剰生産設備、不動産バブル、不良債権、環境劣化、非効率な国有企業、地方との格差など多様な問題が山積しており、従来の高い経済成長は維持できるとは考えられない。

 成長率が下降していった時、PM2.5等の環境劣化に苦しむ都市住民や都会戸籍を持たない地方労働者の不満はこの上なく高まろう。所得不均衡の是正など経済の質の充実にソフトランディングしていくことが望ましいが、国内求心力の維持のために対外的に強硬路線を走る可能性が排除されない。

 第2のリスクは対米関係である。中国は「一帯一路」構想の下、アジア・インフラ投資銀行等を通じ対外的な投資を活発化し、国際社会における影響力を拡大してきた。同時に攻撃的な海洋政策はASEAN諸国や日米などに大きな懸念を抱かせてきた。果たしてトランプ政権が対中強硬策をとるのか、あるいは中国とのトータルな合意(グランドバーゲンと言われるような政治安保経済面における大きな合意)を求めていくこととなるのかは不透明である。

 最近の議会の指名承認公聴会においては閣僚候補者の中国に対する強硬な発言が目立つ一方、トランプ氏は「一つの中国」政策も交渉対象と発言するなど中国との大きな取引を考えている気配もある。中国は自身が政治の季節を迎えることもあり、当面は海洋政策、貿易政策、投資政策、通貨政策等において強い立場を示していくのだろう。ただ中国の最大のプライオリティは経済にあり、米国との対決は経済成長にプラスとは考えないであろうし、この1年米中関係はリスク含みで推移していくのだろう。

朝鮮半島──韓国の政治的混乱をはじめ多重的リスク

 韓国で朴大統領の弾劾が成立するかどうかは予断を許さない。しかしいずれにせよ、韓国は大統領選挙を迎えることとなる。現在の与野党の大きな違いの一つは対北朝鮮政策であり、野党が勝利すれば韓国は対北朝鮮融和策に戻り、THAAD(高高度ミサイル防衛システム)導入でギクシャクしている対中関係も再び緊密化する可能性がある。北朝鮮は野党勝利の期待を込めて韓国の政情を見守っていくのだろう。

 一方北朝鮮は金正日時代の「先軍体制」(軍の優位を認め、軍人を主体とする国防委員会を国権の最高機関に位置づけた)から人民労働党本位の体制に移行し、金正恩体制も一定の安定を保っていると見られている。この間、金正恩の権力を強化するための「恐怖政治」で多数の軍・党幹部が粛清されたと伝えられており、幹部の脱北も増加している。このような状況下で北朝鮮核問題が新しい段階に来ていることに留意する必要がある。北朝鮮は米国西海岸に到達するような弾道ミサイルを開発し、核弾頭の小型化にかなり近づいていると言われており、多くの識者の間には、今止めなければ、最早その可能性はなくなるという切迫感がある。

 トランプ政権は北朝鮮問題をどう見るのか。国家安全保障関係のポストに就いた軍出身者は北朝鮮に対して強い猜疑心を持って向き合うことになるのだろうし、北朝鮮にとってトランプ政権は怖い存在と映るのだろう。最新の国連安保理制裁は石炭の輸出を制限し、北朝鮮の外貨収入を8億ドル程度圧縮しうるという意味で実効性がある。しかし中国が本気で北朝鮮に圧力をかける方針に転換しない限り、北朝鮮を真の非核化交渉に引き出すことはできないだろう。北朝鮮問題は米国新政権の方向性、米中関係の行方、韓国政治の混迷といった多重的な要因を織りなしていく。

EU──政治とBREXITの不確実性

 2017年にEUではオランダ、フランス、ドイツで選挙が行われる。オランダ自由党やフランス国民戦線、ドイツのための選択といった極右政党が政権をとるといった可能性は高くはない。しかし、政権中枢にいる中道右派政党が反移民・難民、反EUを主張する極右政党に引っ張られていく現実は避けようがなく、EUの求心力は当面減退していくのだろう。

 EU内の政治の流れと相まってBREXITは混乱を脱しきれないだろう。最高裁でEUへの通告に議会承認が必要であると最終的に判断されても議会がこの段階で通告阻止に動くとは考えられない。しかし、英国が望むような移民制限とEU市場への従来と同様のアクセス維持は望むべくもない。今後、離脱に伴う新しいEUとの経済関係、EUの一員として結んでいた国際的な権利義務関係の更新等の作業は複雑かつ膨大であり、通告から2年でこれらの作業が完結するとは考えられない。このような将来に対する不確実性が英国の政治経済の大きな混乱要因となる。

ロシア──プーチン戦略の先鋭化

 トランプ政権の布陣は米ロ関係改善へのアプローチを感じさせる。また、トランプ政権の中心課題の一つは過激主義イスラムとの戦いであり、米ロ協調の余地は多い。特にシリアにおいてイスラム過激派組織「イスラム国」(IS)を駆逐するためアサド政権、これを支援するロシアと協力していく方向に舵を切る可能性は高い。ロシアに対する制裁についてもトランプは批判的であり、ロシアとの関係を核軍縮やエネルギー・経済面を含めた取引に置き換えて考える傾向が出てくる。ただロシアは米国に匹敵する核戦力を持ち軍事予算も増え続けている国であり、NATO(北大西洋条約機構)との対峙という基本的構図が簡単に変わっていくとは考えられず、米ロ関係改善にも一定の限度があろう。

 ロシアは米ロ関係改善をロシアの戦略を進める好機と考えるだろう。ロシアは欧州での孤立後、中国との連携を軸として米国中心の秩序を突き崩す戦略を組み立ててきたが、中東ではシリアでの軍事作戦やイラン、サウジとの関係も含め相当影響力を強め、日本との関係も16回にわたる安倍首相との首脳会談で象徴されるような強い関係を模索してきた。今後とも中国との関係を軸とした対抗軸を維持しつつ、欧州との関係調整に進むだろうし、日本との経済協力関係を迅速に拡大することを望むだろう。

中東──関係国の思惑の錯綜とテロリスクの拡大

 ISはシリア・イラクから駆逐されていくだろうが、中東外でのテロのリスクは引き続き高い。難民が殺到してきた欧州や戦闘員が帰国するインドネシア・フィリピンなど東南アジア諸国などに加え、米国内でもホームグロウンのイスラムテロの危険性は増す。

 中東全般についてはスンニ派サウジアラビアとシーア派イランの対立は尖鋭化していくのだろう。また、地域の大国トルコはエルドアン政権下で強権的な統治が続くのだろう。他方、イラク戦争の後遺症は大きく、米国の軍事力介入の可能性は限られ、側近に親イスラエル派がおり、人権などの理念より現実重視の傾向のあるトランプ政権の下でイスラエルやサウジアラビアとの関係が修復されていく可能性が高い。

 更には米イラン関係の冷却化(核合意を放棄することは考えにくいが核関連以外のテロ支援などとの関係でとられている制裁の強化は考えられる)は進むのだろうし、一方ロシアや中国の中東諸国との関係がおしなべて強化されていくのだろう。このように大国を含む関係国の思惑が複雑に錯綜し、当面情勢は混沌としたままと見るべきだろう。

日本──経済と対米関係及び近隣諸国関係のリスク

 日本については当面、円安株高の基調が続き、日本経済にとって順風となって行くのだろうが、成長戦略は十分ではない。米国の離脱によりTPP(環太平洋パートナーシップ協定)発効の見通しが薄れたことや消費税増税を含め財政再建の見通しが立たないこと、金融政策の硬直性など、日本経済に対する信頼が損なわれていくリスクがある。

 対外面ではトランプ政権下の米国との関係のリスクは高い。日米安保関係に対する正しい理解を求めることがまず重要である。TPPについては当面米国抜きで発効させ米国の将来的加入の道を開く方策を追求するべきだろう。同時にRCEP(東アジア地域包括的経済連携)や日中韓経済連携協定、日EU経済連携協定は迅速に進めていくべきだろう。米国の保護主義には有効な手立てとなる。

 米国は中国と厳しく対峙していく可能性と大きく関係進展を図る可能性が相半ばする。いずれに行っても日本の対外関係に与える影響は大きい。日本はアジア政策を見直す機会とすべきだろう。今こそ中長期展望に基づき、中国とのウイン・ウイン関係を追求することが米国の対中政策の変化に拘わらず重要なのではないかと思う。そのようなグランドデザインがなければ日本の将来的繁栄へのリスクは高い。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)
http://diamond.jp/articles/print/114549


 

あなたを悩ます「めんどい人々」解析ファイル
【第42回】 2017年1月18日 宮崎智之 [フリーライター]
「電車で高齢者に席を譲る」という人が減っているワケ

61%の人が席を譲ろうとして、相手に断られたことがあると回答している実態も
若い男性が「どうぞ」と席を譲ったその時……

 電車の中でお年寄りに席を譲る――。そんな当たり前の“常識”が、現在では通用しなくなってきている。席を譲らない人が増えてきているのだ。どうしてだろうか?

 先日、筆者が電車に乗っていると、ある駅で高齢の男性が乗り込んできた。車内は混雑とまでいかないものの、吊り革につかまって立っている乗客がちらほら、といった感じだった。高齢の男性を見るや否や、若い男性が席を立ち、「どうぞ」と席を譲った。車内には、ちょっとした緊張が走った。高齢の男性は見るからに気むずかしく、席を譲られたことに対してプライドが傷つくのではないかと思われたからだ。

 高齢の男性は、「次の駅で降りますので」と若い男性の申し出を断った。車内には、どことなく気まずい空気が漂う。誰のせいでもない。なのに、なぜ我々はこんな気持ちを味わわなければならないのだろうか。現代における“理不尽”の一つである。

 この場合は、当人たちや周囲が気まずい思いをするだけですんだが、電車の席を巡っては、時にトラブルに発展するケースもある(当然、席を譲らなかったことによってトラブルになることも)。「お年寄りを敬うべきだ」という常識の聞こえはいいが、実際には「お年寄り」の線引きは難しく、またお年寄り自身の主観によっても違ってくるため、敬う側が心理的な負担を強いられてしまう事態になるのである。

「席を譲るべき」派が2割近くも減少

 乗り換え案内サービス「駅すぱあと」を提供するヴァル研究所が2016年11月に発表した調査結果によると、「お年寄りなど優先すべき人がいた場合は、優先席では席を譲るべき」と考えている人は75.9%で、2013年に行われた同様の調査と比較すると、約17%も減少していることがわかっている。わずか3年で激減した形だ。

 また、「優先席以外でも席を譲るべき」と考えている人は全体で57.1%いたが、こちらも2013年調査と比較して約19%も減少している。ちなみに、優先席、優先席以外ともに女性のほうが男性よりも「譲るべき」と考えていない傾向が強いという。

 その一因となっているのは、やはり「譲ろうとしたが、断られた」という苦い経験だ。同調査によると、61.0%の人が席を譲ろうとして、相手に断られたことがあると回答している。つまり、半数以上の人が席を譲ろうとした経験があるにもかかわらず、なんらかの形で拒否された経験があるため、「親切にしても、相手か嫌がるなら……」と萎縮して、その後は譲るのを控えるようになったということである。

 現代においては、見た目の年齢も、本人が持っている自己イメージとしての年齢も以前の基準では測れなくなってきている。しかし、当然ながら「お年寄りに席を譲る」という常識は依然としてあるし、それをなくすべきだとは誰も思わない。だからこそ、「席を譲らなくては」という気持ちと、「いや、でも相手が不快な思いをするかもしれない」という気持ちの間で揺れ、居心地が悪くなってしまう。冒頭で紹介したエピソードは、まさにそうした乗客の心理が現れた一例だったと言えそうだ。

 また、譲らなかったら譲らなかったで、「なんで席を譲らないんだ」と文句を言われるリスクもある。いったい、どうしたらいいのかと頭を抱えている人も多いだろう。

磯野波平と藤井フミヤが同い年の違和感

 今年に入ってから、こんなニュースが世間を賑わせた。

 日本老年学会と日本老年医学会が、高齢者の新定義に関する提言を発表したのだ。それによると、従来の65歳以上という定義を改め、「高齢者」を75〜89歳とするという。さらに、65〜74歳を「准高齢者」90歳以上を「超高齢者」と定義した。

 両団体は、「高齢者、特に前期高齢者の人々は、まだまだ若く活動的な人が多く、高齢者扱いをすることに対する躊躇、されることに対する違和感は多くの人が感じるところ」とし、「65歳以上を高齢者とすることに否定的な意見が強くなって」いると指摘した。その背景には、「現在の高齢者においては10〜20年前と比較して加齢に伴う身体的機能変化の出現が5〜10年遅延して」いることがあるとしている。

 たしかに、筆者の父親も70歳を超えているが、いわゆる“よぼよぼのおじいさん”にはまったく見えない。個人差はあるものの、社会全体が「アンチエイジング」している現在において、高齢者の定義は難しい。「定年=隠居」というイメージもない。

 そもそも、高齢者に限らず世の中の全世代が若返っている印象がある。以前の社会的な年齢のイメージと現在がどれだけかけ離れているかは、「サザエさん」の登場人物の年齢を調べれば一目瞭然だ。磯野波平は54歳であの貫禄だが、同い年の藤井フミヤさんは、まだ若々しい。65歳を准高齢者とする提言にも、頷くことができる。

マタニティーマークに批判の声も

「席を譲ろう」という親切心が、相手に対し「私はまだ、老人じゃない」という不快感を与えてしまうのは、なんともやりきれない。また、相手がそう感じるのではないかと忖度し、声をかけるのを萎縮することによって、本当に席を譲らなければいけない人が不利益を被ることがあるのだとしたら、それは由々しき事態である。

 さらに、当然お年寄りだけではなく、妊婦さんにも席を譲るべきだとは思うが、見た目だけでは判断つかない場合がある。「万が一、違ったら失礼になる」と考える人も多い。妊娠を周囲に知らせる「マタニティーマーク」もあるものの、それを付けていることによって、逆に妊婦さんが不快な思いをする事態も発生しているという。

 なかにはマタニティーマークを見て、「幸せ自慢か?」「妊婦は偉いのか?」「不妊治療をしている人の気持ちも考えろ」と思う人もいるそうだ(産経ニュース2016年1月1日付)。個人的には妊婦は偉いと思うのだが、どうだろうか。少なくとも批判の対象になるのは、どう考えてもおかしい。しかし、世の中にはいろいろな考えの人がいるものだ。ますます公共の場での振る舞い方が、難しい時代になっている。

 数十年後、仮に自分が電車の中で席を譲られるようになったら、「ああ、自分もついにそういう年齢になったんだな」と自覚して、譲ってくれた若者に素直に感謝したいと思う。しかし、三十代中盤の今、お年寄りに率先して席を譲るかどうかと問われたら、答えに窮してしまう。相手を怒らせてしまって、妙なトラブルに巻き込まれるのは御免だからだ。おそらく見ないふりを決め込むか、もしくは電車が駅に到着したタイミングを見計らって黙って席を立ち、別の車両に移るかだろうと思う。

 どちらにしても、相手とのコミュニケーションを避ける戦略だ。なるべく後者を選択したいと思っているが、そんな選択しかできない自分の度量が情けなくもある。

 当連載についてご意見がある方は、筆者のTwitterアカウント(https://twitter.com/miyazakid)にご連絡いただきたい。すべてに返信できないとは思うが、必ず目を通したいと思う。

(フリーライター 宮崎智之)
http://diamond.jp/articles/-/114547
http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/353.html

[経世済民117] 「電通鬼十則」に修正を加えた「ワコールファイト十則」君らは敗残や 投資信託選びは「売れ筋」より「ブロガー」の方が当になる
ブラジャーで天下を取った男 ワコール創業者・塚本幸一
【第40回】 2017年1月18日 北 康利 [作家]
「電通鬼十則」に修正を加えた
「ワコールファイト十則」
君らは敗残兵やな

 昭和29年(1954年)に初めて公募採用された大卒の新人は、入社してすぐ、幸一から商売人としての厳しい洗礼を受けることとなった。

 ワコールが大企業として認知される以前の話である。女性下着の会社に就職するというのは、男なら誰しも抵抗感がある時代だ。就職難で和江商事しか入れなかったという者も多かった。

 そのことを小耳に挟んだ幸一は、

「言ってみれば君らは敗残兵やな」

 と、傷口に塩を塗るような言葉を口にした。

 本来なら経営者としては言ってはいけない問題発言だろう。だが実は意味があったのだ。

 戦前ほどでないにせよ、“大卒”というだけで当時は十分エリートである。彼らには内心その自負があった。事前にその天狗の鼻を折っておかないと、商売人としては使えない。幸一なりに考えた上での発言だったのだ。

 実のところは幸一が期待した以上の人材が入ってくれており、内心ほくそ笑んでいた。実際彼らは、敗残兵どころかまれに見る精鋭としてワコールの快進撃を支えてくれるのである。

 大卒の新卒組は二条通東洞院東入ルの塚本邸の離れ座敷の2階に住み込ませ、1年間、寝食を共にして鍛えることにした。当時は松下電器の松下幸之助や壽屋の鳥井信治郎など丁稚上がりの経営者がまだ多く残っている時代であり、彼らが船場などで商いの基本を身につけた話は巷間流布されていた。その教育システムを取り入れようとしたのである。

 この時の新入社員の一人に伊藤文夫(後の副社長)がいた。例の高田馨滋賀大学経済学部教授の門下生である。

 昭和29年(1954年)の暮れ、教え子がしっかりやっているか気になったのだろう。高田教授が和江商事を訪ねてきた。

 応対に出た幸一は、

「先生のおかげでいい新人に入社してもらうことができました」

 と心から礼を言った。高田も満足そうである。

「おかげさんで、うちもそこそこの規模の会社になりました。ところがこの世界では“雑貨屋とおできは大きくなるとつぶれる”という言葉がありまして、ここからが正念場やと思っております」

 この言葉は本心だった。この場合の雑貨屋には縫製業者も含まれる。種類やサイズが増えて事業が大きくなるにつれ、商品管理が難しくなって過剰在庫や不良在庫を抱えやすくなるというわけだ。

 すると幸一の悩みに高田はこう答えた。

「それはまさに私の専門分野ですな」

 高田がこの時、幸一に解説したのは、在庫管理を数理処理して効率的にしていく商品管理システムについてであった。

 大いに得るところがあると感じた幸一は、すぐにそれを採用することを決め、早速商品管理課が設置されることとなった。

 そして経理に配属されていた伊藤が商品管理を担当することとなったのである。恩師の大学での教えを実地に生かせる機会だけにやる気が出るのは当然だ。

 すぐにこの部署を取り仕切り、翌春に入社した片山、不破、鈴木、伊東という4人の大卒新人も伊藤が研修して各事業所に配置し、それぞれの事業所の商品管理を行うまでになった。

 昭和30年(1955年)に入ると、前年の不況が嘘のようになり、ブラジャー、コルセットの需要が急速に伸び出した。この年の4月、200万円増資して資本金を800万円とし、大卒社員も含め、従業員数は300人に達しようとしていた。

 そしてここから前年比3、4割増しで売り上げが増え、実際、新聞や雑誌に頻繁に「下着ブーム」の文字が躍るようになる。ようやくファンデーションに対する認識が定着し始めたのだ。これまで何度も触れてきた「下着ブーム」の到来である。

 ここで商品管理のノウハウが生きた。

ファイト十則

 下着ブームのなか和江商事は積極的な広告戦略でさらなる飛躍を果たしたわけだが、そのことについてはすでに述べた。そして和江商事を担当していた電通京都支局の村山千代を通じ、幸一がしばしば耳にしたのが“広告の鬼”と呼ばれた吉田秀雄社長の名前である。

 吉田は幸一より17歳年長である。昭和22年(1947年)、公職追放になった前社長の後を受け、43歳の若さで電通の4代目社長に就任すると、いち早くテレビの普及に目をつけ、テレビコマーシャルを広告業界の収入源とするビジネスモデルを確立した。

 大変仕事に厳しい人物として恐れられもしたが、常に業界のリーダーたることを意識した志の高さは他の追随を許さず、その情熱と腕力で部下の気持ちを一つにし、世界最大の広告会社である電通王国を築き上げた。

 幸一が着目したのは吉田が昭和26年(1951年)に制定した「鬼十則」という行動規範である。この「鬼十則」こそ電通マンを電通マンたりえさせた精神的支柱だと見抜いた彼は、それをほとんどそのまま真似て「ファイト十則」というものを昭和32年(1957年)11月に制定した。

「ファイト十則」

1、仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。

2、仕事とは先手先手と働きかけて行くことで、受身でやるものではない。

3、仕事に大小を考えるな、常に全力をたたきこめ。

4、難しく思う仕事は進んで狙え、そしてこれを成し遂げる所に進歩がある。

5、摩擦を恐れるな、切磋琢磨せよ、人間は惰性に流され易い。

6、周囲を引き摺り廻せ、引き摺るのと引き摺られるのとでは、永い間に天地のひらきが出来る。

7、計画を持て、長期の計画を持って居れば、忍耐と工夫とそして正しい努力と希望が生まれる。

8、自信を持て、自信がないから、君の仕事には迫力も粘りもそして厚味すらないのだ。

9、頭は常にフル回転、八方に気を配って一分の隙もあってはならぬ、サービスとは、そのようなものだ。

10、賢愚は他人の領分、威張っても値打に変りはない、只実行だ、でないと君は卑屈未練になる。

 これはほとんどすべて吉田の「鬼十則」をそのままコピペしたものである。いいものはいいとして取り込む遠慮のない図太さが幸一の強みだろう。彼の場合、

「あれは真似じゃないか」

 という後ろ指に耐えるだけの、自信というか厚かましさのようなものが備わっていた。

 それどころか、さらに彼独自の視点が加わる。まさにイノベーションと言っていいだろう。たとえばこの「鬼十則」をもとにした「ファイト十則」でも、幸一は三つの項目に関して内容を変えているのだ。

 これは彼の思考を知る上で興味深いので、以下、比較してみたい。

3、大きな仕事と取り組め、小さな仕事は己れを小さくする。(「鬼十則」)

3、仕事に大小を考えるな、常に全力をたたきこめ。(「ファイト十則」)

5、取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは…(「鬼十則」)

5、摩擦を恐れるな、切磋琢磨せよ、人間は惰性に流され易い。(「ファイト十則」)

10、摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。(「鬼十則」)

10、賢愚は他人の領分、威張っても値打に変りはない、只実行だ、でないと君は卑屈未練になる。(「ファイト十則」)

 3に関しては、“大きな仕事”だけを選別できる広告業界と、仕事の大小をつけずすべてに全力で取り組まねば完成品は生まれない“ものづくり”業界との違いがあるだろう。そもそも女性下着の世界を“小さい仕事”などと思う不心得者が出ないとも限らない。

「鬼十則」の5の“取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは…”というのは、「鬼十則」の中でも特に有名なフレーズなのだが、これも幸一は採用しなかった。

 商売は駆け引きの世界である。スッポンのように一度取り組んだら放さないなどという商人は早晩行き詰まる。ここは「鬼十則」の10を彼らしくアレンジして“摩擦を恐れるな、切磋琢磨せよ”としている。

 そして幸一は「ファイト十則」の10でさらに商人として大事な姿勢について説いている。外からどう見られるかなどを気にしている暇などない。只実行あるのみだと叱咤しているのだ。

 〈あの人はやり手だとか、立派だとか、信用がおける人だとかいろいろと人物評価をされるが、一番困った人間は自分で自分の評価をしている人間である。そして、人間の持つ習性と言ってもいいくらい、他人から見た実力よりもずっと高い評価を自ら行い、私は立派なんだ、皆が信用してくれているんだ、やり手なんだと思い込んでいる人間がいかに多いことであろうか。それをいい励みの材料として、そうなりたいと日々の努力を積み重ねているのなら大いに期待ができ将来が楽しみだが、何の修行も努力もしないで、出身学校だけでそのように思っている人間ほど、どうしようもない人間はない〉(塚本幸一『貫く「創業」の精神』)

 〈あれこれと考えても、実行しなければ、考えないのと同じである。そのような暇があれば、今実行できることをやった方がいい。そして、悪い結果が出た時こそ、自分を正しく評価する良き物差しと考え、素直に反省すればいい。そして、やってやってやり抜いていれば、“ヘタな鉄砲も数打ちゃ当たる”というように、自然と真の能力なり、人間形成ができるようになるのだと、戦後一貫してやり抜いてきたつもりである。また、このような生き方こそが、私の生き甲斐であると言えるし、若さとファイトを保つ私の生活態度でもある〉(前掲書)

 電通は、女性の新入社員が月間100時間を越える残業を原因として過労自殺したことを受け、平成28年(2016年)12月、社員手帳に記載のあった「鬼十則」を外すことを決めた。

 昨今、残業や働きすぎに対する社会の意識は変わりつつある。“必死になって仕事をする”“仕事人間”といった言葉は今後死語になっていくのかもしれない。

 そんな中、ワコールは「ファイト十則」を手帳から外すことはしないという。

 幸一の掲げた理想は、下敷きとした吉田秀雄の「鬼十則」に改良を加えただけのことはあって、寿命の長い普遍性を持っていたと言えるだろう。

(つづく)

(作家 北 康利)
http://diamond.jp/articles/-/113393


 
山崎元のマルチスコープ
2017年1月18日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
投資信託選びは「売れ筋」より「ブロガー」の方が当てになる

「投信ブロガー」が選ぶベストファンドと、実際の売れ筋ファンドは、まったく別物。どうしてこういうことが起きるのだろうか
投信ブロガーが選ぶファンド
ベストテンが発表!

 投資信託についてブログに記事を書き、情報を発信する「投信ブロガー」が優秀ファンド(投資信託は「ファンド」と俗称される)を選ぶ、「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016」という表彰の発表会が、2017年の1月14日に東京・渋谷のシダックス・ホールで行われた。主宰は「rennyの備忘録」という投信ブログを管理するハンドルネームrennyさんだ。

 マネーリテラシーが高く、投資信託に詳しく、また投資信託を愛する人々はどのような投信に高い評価を下したのだろうか。

 早速、ベストテンと特別賞を見てみよう。

【投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016投票結果】

1位 <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
   (設定・運用、ニッセイアセットマネジメント)
2位 たわらノーロード先進国株式
   (アセットマネジメントOne)
3位 バンガード・トータル・ワールド・ストックETF (VT)
   (ザ・バンガード・グループ・インク)
4位 iFree 8資産バランス
   (大和証券投資信託委託)
5位 セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド
   (セゾン投信)
6位 ひふみ投信
   (レオス・キャピタルワークス)
7位 ひふみプラス
   (レオス・キャピタルワークス)
8位 世界株式インデックスファンド
   (三井住友トラスト・アセットマネジメント)
9位 <購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンド
   (ニッセイアセットマネジメント)
10位 セゾン資産形成の達人ファンド
   (セゾン投信)
特別賞 ひふみシリーズ(ひふみ投信・ひふみプラス・ひふみ年金)
   (レオス・キャピタルワークス)

 特別賞は、同一の運用(同じマザーファンド)で販路が異なるだけの「ひふみ」のシリーズの獲得票数を合計すると2位相当になるので、票の分散を救済する意味合いで設けられたものだと理解した。

 表彰式の模様は、投信ブロガーの水瀬ケンイチ氏のブログ「梅屋敷商店街のランダムウォーカー」に詳しい。

 表彰式の冒頭に紹介された森信親金融庁長官のメッセージ全文も掲載されている。

 森長官のメッセージは、たとえば「良質な投資商品を普及させる上で、投資家自身が投資信託の質の向上に向けた取組みを進めていくことは、とても有意義だと考えます。皆様には、投資を行う顧客の目線に立って、投資商品を客観的・公平に評価し、広く発信していく運動を更に深化させていただければ幸いです」とたいへん好意的で力の入ったものだった。

ブロガー投票と全く違う
売れ筋投信「上位5本」

 さて、このリストを一般によく売れていて、純資産残高が大きくなっているファンドの純資産残高ランキング上位5本と比べてみよう。

 以下が純資産残高ランキングの上位ファンドだ(「ベストファイブ」と呼んでもいいのだろうが、「ベスト」という言葉は使いたくないと思う商品群だ…)。

【純資産残高上位投資信託(除くETF)】

1.フィデリティ・USリートB(H無) 1兆5448億円
  (フィデリティ社)
2.新光 US-REITオープン 『愛称:ゼウス』 1兆5016億円
  (アセットマネジメントOne)
3.ラサール・グローバルREIT(毎月分配型) 1兆1989億円
  (日興アセットマネジメント)
4.フィデリティ・USハイ・イールドF  8841億円
  (フィデリティ社)
5.ダイワ 米国リート・ファンド(毎月分配型) 7335億円
  (大和アセットマネジメント)

(※ モーニングスター社、2017年1月13日付データのランキングを参照しました。同社ウェブサイトはhttp://www.morningstar.co.jp/
 一目見てお分かりいただけるように、投信ブロガーが選んだベスト・テンに売れ筋の上位5ファンドは1本も登場しない。

 なお、投資信託全体の純資産残高ランキングでは、1位から5位までと10位のファンドはETF(上場型投資信託)であり、1位の日経225連動型上場投資信託(野村アセットマネジメント)は4兆円を超える純資産を持っているが、ETFは日銀の金融緩和政策に伴う購入で残高が膨れあがっている。必ずしも投資家が持っているとは限らないので、ランキングから除外した。

 ランキングから外しておいて言うのも気が引けるが、資産残高上位に入ったETFは(筆者は日経平均連動型よりもTOPIX連動型を好むが)、運用管理手数料(信託報酬)が低廉で、良い投資対象商品だ。日銀だけに持たせておくのはもったいない。特に、NISAでじっと持つには向いている。株式と同様の売買手数料が掛かるので、ネット証券にNISA口座を開いて持つのがいい。

売れ筋上位5ファンドに
共通する悪しき特徴

 さて、売れ筋の5商品はいずれも、(1)毎月決算を行い分配金を出す「毎月分配型」の投資信託で、(2)概ね3%台の販売手数料が掛かり、(3)運用管理手数料(信託報酬)が1%台(多くは1.5%以上)だ。

 率直に言って、これら3つの特徴は、いずれも、投信を選ぶ際に「1つでもあれば、除外すべきだ」と言える決定的欠点だ。

 利益による分配金には税金がかかる。運用で利益が出ているとするなら、利益が年1回の分配に比べて、毎月分配すると課税の時点が前倒しされるので、必ず損をすることになる。

「年金を補うのにいい」などという売り文句もあるが、投資家は銀行預金を持っているだろうから、そちらのお金を使えばいい。預金も持たずに全額をこれら5本のようなハイリスクな投信で持つのは不適当だから、分配金のためにこのようなファンドを買うことが適切な行動になる可能性はゼロだ。

 短い間隔で頻繁にある分配金が嬉しいという感じ方は、行動経済学的に説明できるが、明らかに損なのだから、これは「克服すべき非合理性」だ。率直に言って、売り手は商品開発にあっても、販売にあっても、投資家側の非合理性を最大限に利用しようとしている。

 3%を超える販売手数料も感心しない。投資信託には、「ノーロード」と呼ばれる販売手数料がゼロの商品があり、賢い投資家はノーロードの投信を選ぶのが常識だ。人間のセールスマンを通じて買うと、販売手数料が掛かるケースが多い訳だが、3%はいかにも払い過ぎだ。人がいいにもほどがある。

 また、年率1.5%を超える運用管理手数料も高い。10年保有すると単純計算で投資額の15%もの支払いになる。実際には、大幅に元本割れすることが多いだろうから、そこまで掛からないかもしれないが、元本割れはもっと嬉しくあるまい。

 純資産残高上位の5ファンドを持っている方は、「マネーリテラシーのかけらもない」と言い切って構わない。

 現実には、たちの悪いセールスに乗せられたのだろうと推測する。この純資産残高のランキングには、日本の投信販売の残念な現実が見える。

 ちなみに、これらのファンドを持っている人にとって、金融論的に正しい行動は「即刻全額売却」である。買値よりも下がっているとしても、躊躇なく売っていい(値下がりは既に起きた損であり、意思決定論的には無視するべき「サンクコストだ」)。付け加えるなら、こうしたファンドを平気で売ったセールスマンとも縁を切るべきだ。現実的な対処としては、そこまでやらなければ、また新しいダメ商品を買わされてしまうだろう。

 念のため、投資信託投資の「べからず三原則」をまとめておこう。

◆投資信託投資の“べからず”三原則

その一、販売手数料が掛かる投信を買うべからず。

その二、分配金が毎月ある投信を持つべからず。

その三、運用管理手数料が年率1%以上の投信を持つべからず。

 二番、三番に該当する投信をお持ちの方の対策は、買値・現値に関係なく「即刻売却」だ。

ブロガーが選んだ
ファンドの長所とは?

 投信ブロガーが上位に選んだファンドを見ると、「投資信託投資では、このようなファンドを選ぶといい」という特徴を何点か選び出すことができる。

 まず、販売チャネルによっては手数料が掛かる場合があるが、ベストテンの著しい特徴は、1位の「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」がその名の通り購入手数料ゼロなのを筆頭に、販売手数料がゼロのノーロード投信であることだ。賢い投信投資家にとっては、ノーロードが常識だ。

 3位の「バンガード・トータルワールド・ストックETF」(VT)は、海外上場のETFなので外国株式と同様の売買手数料と外国為替の手数料が掛かるが、ネット証券で買うと手数料は安いし、運用管理手数料が現在年率0.14%と低水準なので、まとまった金額を運用する場合、短期間で売買コストの元が取れる。この商品は、日本株(8%程度)や小型株も含めて世界の株式に広く投資するインデックスファンド(株価指数に連動する投信)だ。

 ちなみに、3位の商品は、これ一本だけで投資を済ませることに好適であり、マーケットにコメントする職業柄、自分が保有する投信を売り買いしたくない筆者は、この商品だけを持っている(お金が必要になるまで売らない方針だ)。「他人に投資を勧めながら、自分で投信を持っていないのは寂しい」という批判の声に押されて、昨年、1000口単位ほど自分のお金で購入した。

 セゾン投信とひふみ投信は、もともと共に販売会社を通さない通称「直販」と呼ばれる販売方法なので、もちろん販売手数料を取らない。5位、6位、10位に直販の商品をランクインさせた(7位の「ひふみプラス」は販売会社経由なので、販売会社によっては購入時に手数料が掛かる)。

「セゾンバンガード・グローバル・バランスファンド」や「ひふみ年金」(運用は「ひふみ投信」と同内容)には、一部の個人型確定拠出年金でも投資することが出来る。

 上位にランクインしたファンドは、いずれも運用管理手数料(信託報酬)が低廉だ。1位の「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」、2位の「たわらノーロード先進国株式」は、共に外国株式に投資するファンドであるにもかかわらず運用管理手数料が0.2%台前半と低水準だ。2位のファンドは、一部のネット証券の確定拠出年金でも投資できる。

 特に1位の「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」は過去二度にわたって運用管理手数料を引き下げている。この投資家寄りの姿勢が多くの投信ブロガーの心の琴線に触れて、大差を付けての1位となった。今後、このファンドのように、純資産残高が大きくなったファンドは運用管理手数料を引き下げることが常識となると好ましい。

 投信ブロガーによるランキングのもう一つの特徴は、インデックスファンドが多いことだろう。上位3本はいずれもインデックスファンドだし、4位、5位も中身はインデックスファンドの組み合わせだ。

 仮に、積立投資で資産形成を行いたい場合であれば、1位の「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」を6割、9位の「「<購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンド」を4割の比率で、ネット証券を使って積み立てるといい。1000円単位で積立投資の金額を指定できる。

 なお、「ひふみ投信」のシリーズと「セゾン資産形成の達人ファンド」は、それぞれ運用者の判断で個別に投資銘柄を選ぶアクティブファンドだ。もう少し運用管理手数料が下がると嬉しいが、人気のあるアクティブファンドがあること自体はいいことだ。

 投信ブロガーによるランキングを参考に、良い投資信託を選ぶための三原則をまとめておこう。

◆良い投資信託を選ぶための三原則

その一、ノーロード(購入手数料なし)が当たり前。

その二、運用管理手数料(信託報酬)が安いものがいい。

その三、内外の株式のインデックスファンドを中心に投資する。

 概ね、この通りに考えていただいて間違いない。アクティブファンドにも期待したいが、もう少し運用管理手数料が下がるまで待ちたい。バランスファンド(内外の株式・債券など複数の資産クラスを組み合わせた投信)も悪くない場合があるが、筆者の意見としては、現状では、国内・海外とも債券に投資する部分が余計に感じる(「個人向け国債・変動金利型10年満期」でも持つ方がよい)ことを付け加えておく。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
http://diamond.jp/articles/-/114551
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/904.html

[経世済民117] 外国人介護者の増加策は「移民」本格化の突破口になるか外国人ラッシュ 人類史上最速で成長する都市、深センで何が起きてるか

【第69回】 2017年1月18日 浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
外国人介護者の増加策は「移民」本格化の突破口になるか
人員不足が深刻化
外国人介護者ラッシュも
 外国人介護者への門戸が大きく開放されつつある。十数年前までは考えられなかった。介護現場での人員不足が深刻になり、「介護は日本人で」としていた従来の発想を一変させた。介護分野で今年最大の注目を集めそうだ。
「介護は日本人で」などと言っていられない
 昨年11月に新法の技能実習適正実施・実習生保護法と改正入管難民法の2法案会が成立した。これにより、技能実習生の実習先として新たに介護が加わった。農漁業や製造業と異なる「対人サービス」が初めて登場する。同時に実習期間を3年から最長5年に延ばすことにした。
 また、外国人の在留資格の「専門的・技術的分野」に介護が新しく加わり、介護福祉士の資格を取得した留学生は期間限定なく、ずっと日本で働き続けられるようになった。
 3年ごとに改定される介護保険制度の次の改定は来年4月。外国人介護者の新制度は今秋には実施されることになり、アジアからの数万人規模の介護者ラッシュが起きそうだ。
 有料老人ホームや特別養護老人ホームなどの施設運営者は、すでにアジア諸国での人員確保のパイプ作りに走り出している。現地の介護者養成機関や日本語学校、自治体などを訪ね独自のネットワークの構築を急ぐ。
 全国で約470の事業所を運営する湖山医療福祉グループは、中国から100人以上の技能実習生を受け入れる方針だ。上海で定員約600人の大型老人ホームを建設を進めており、将来、技術を習得して帰国した実習生の働く場とする。
「ベネッセ」ブランドの有料老人ホームを全国展開している大手事業者のベネッセスタイルケアは、2017年度中に約10人の実習生を受け入れ、ツクイもベトナムから150人を迎えるという。学研ココファンも2020年までにミャンマーや中国フィリピンなどから120人ほど受け入れる。
人手不足解消のための
「裏口入学」の門戸を広げただけ?
 技能実習生制度は19993年に創設された。途上国への技術移転を目的に実習生を受け入れる制度。金属プレス工、建築大工、漁船漁業、畜産など74の指定職種で、昨年6月末時点で約21万人が働いている。
 介護は「日本が特に優れている業種とは言えない」として、含めていなかったが、今回新たに加えた。
 同制度は、残業代など賃金の不払いや過酷な労働実態などの問題があり、それによる失踪や労災事故も起き、抜本的な見直しが指摘されてきた。新法では、新たに「外国人技能実習機構」を設立し、実習先の実習計画遵守や実習生の人権侵害を防ぐことにした。本部と13カ所の地方事務所を設け、約330人の職員を揃える。
 実習が4年目に入る時に、転職を認めることとし、働きやすい環境作りにも腐心した。ただ、関係者からは改善を求められていることはまだ多い。
 相手国の送り出し機関が高額の手数料を実習生から集めていたり、国内の受け入れ窓口となる監理団体が実習先から毎月数万円の監理費を徴収し、それが賃金抑制につながっている、ともいわれる。送り出し機関への指導・監督の強化を促すための相手国との協定締結は、法律の付帯事項に記されたが、努力義務に止まった。
 そして、介護事業者にとって最大の懸案は、実習生が労働者でないことだ。つまり通常の職員として、介護保険法で定められた人員配置基準の人数に含めることができない。特養や有料老人ホームでは、入居者に対する職員の比率は最低3対1とされており、グループホームの日中勤務者は、定員9人であれば3人以上の職員がいなければならない。
 実習生はこうした最低配置人員からはずれた「余剰職員」の扱いとなってしまう。働き手にはなっても、それに見合う介護保険による介護報酬が得られない。いわば、人件費は事業者からの持ち出し。それでいて、労働基準法や最低賃金法など労働関係法の順守を迫られる。経営者にとっては頭の痛いところだ。
 一方、経済連携協定(EPA)によって、ベトナムやフィリピン、インドネシアから介護福祉士の候補生として来日している職員は労働者とみなされる。従って、配置基準に含めている。
 EPAの来日者も当初は人員にカウントされなかったが、今では就労半年後か「N2」の日本語能力があれば基本人員の対象となる。とはいえ、EPAの来日者は8年間で約2800人、そのうち介護福祉士の資格を取得した勤務者は約310人に過ぎない。
 もともと関税協定のなかで登場した来日者で、厚労省も「人員不足対策とは全く異なる」としており、この先も本流とはならないだろう。
 ではなぜ、技能実習生は労働者ではないのか。国は「あくまで経済発展を担う人づくり、国際貢献が目的」と説明し、外交や経済問題と位置付けているからだ。歴代政権が「単純労働者の在留は認めない」「移民は絶対受け入れない」という原則を掲げ続けていることも背景にある。
 そのため、実習生の滞在期間を3年に限定し、母国での同種業務の経験という「前職要件」を課している。
 ところが、現場の受け入れ先では「事業を維持させるために雇う」のであり、労働者として処遇している。なかには、海がない山国から来日し、カキの養殖場や漁業に従事している実習生もおり、祖国への技術移転の趣旨にそぐわないケースもある。
 つまり、国の「建前」と現場の「本音」が大きく乖離しているのは明白である。今回の法改正が人手不足解消のための「裏口入学」の門戸を広げたのは間違いない。「移民」と言う言葉を使わないで、巧妙に「裏口」を増やして、実質的には「安価な労働力の受け入れ」への舵を切った。
介護福祉士資格取得で
日本で働き続けられるように
 技能実習生と並んで新たに突破口が開いたのは留学生の専門職への道である。在留資格に新たに「介護」が加わったことで、介護福祉士の資格さえ取得すれば、卒業後に在留資格を「留学」から「介護」に切り替え、就労ビザで長く日本で働き続けられる。
 技能実習生と違って、期間制限ない。これまでは、介護福祉士の資格を取得しても、介護の仕事はできなかった。
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 来日後に福祉施設で最長週24時間のアルバイトをして現場体験を重ねながら、介護福祉士養成施設で学んで資格取得を目指す留学生が増えるだろう。
 各地の介護福祉士の養成学校ではアジアからの留学生が急増している。専門学校や短大で構成する日本介護福祉士養成施設協会(東京都千代田区)によると、これまで20人ほどだった留学生の入学者が昨春は257人にも増えた。
 2022年度以降は介護福祉士の国家試験を合格しなければならないが、それまでは2年以上学んで卒業すれば資格を得られる。
 ベトナムやネパールからの入学者が増えており、この数年急増している両国からの在留者がますます多くなっていきそうだ。
 こうした留学生からの専門職ルートには先例がある。医療機関が看護師育成に乗り出している。
 板橋中央総合病院(東京都板橋区)を中核とするIMSグループは中国人看護師を日本に呼び入れ、日本の看護師資格を取得してもらい、その後3年間はグループの病院で働く仕組みを作った。受験に備えた教育機関とも連携し受験期間の生活費や家賃を提供している。
 2014年の看護師試験の外国人合格者176人のうちIMSグループから40人、その前年は176人のうち53人が同グループだった。相当の高率である。14年までの6年間で166人が合格しており、受験者は168人だからほぼ全員合格するという実績だ。
 外国人が看護師試験に臨むには、日本語能力が最高度の「N1」を取得していなければならない。同グループでは、中国で日本語学科を持つ学校と連携して「優秀な」看護師を留学生とすることに奏功しているようだ。
 こうした相手国機関との連携が介護分野でも大きなカギとなるだろう。
 また、経団連は、介護福祉士よりも資格取得が容易な「介護職員初任者研修終了」者が就労と在留資格の更新ができるよう求めている。そうなれば、裾野は大きく拡大することになる。
 政府は、このほかに、EPAで来日した介護福祉士の資格取得者に訪問介護
を認めることにし、この4月から実施する。
 これまでの勤務先は、日本人職員が一緒の特養などの施設に限られていた。訪問介護は1人で高齢者の自宅などを訪問し、掃除や買い物、食事、入浴、排泄介助などを行う。
 言葉や食事など生活習慣の違いがあるため、訪問介護は難しいと見られていた。受け入れ調整機関の国際厚生事業団が事業者を調査し、母国語での相談窓口を拡充して不安の払拭に乗り出すと言う。
 施設だけでなく、訪問介護のヘルパー不足も深刻になっていることへの対応だ。EPAの介護福祉士試験の合格者が極めて少なく、広がりは期待でないが、外国人介護者への抵抗感が薄れていく一助となるだろう。
単純労働の外国人受け入れも
 また、政府は遂に単純労働の外国人の受け入れに踏み出す論議を始めた。「1億総活躍社会」の実現を目指すために総理の私的諮問機関として「働き方改革実現会議」を設け、9月の初回会合で検討された。
 介護をはじめ、育児や建設、農業など人手不足の分野でそれぞれ国別、業種別に国の管理下で外国人労働者を受け入れようというものだ。2国間での交渉で詳細を詰めていく。このための制度設計や法整備を目指す。
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 現在、日本で働く外国人は、日系人や日本人と結婚した人たち、研究者や経営者などの「高度専門人材」、留学生のアルバイト、技能実習制度による実習生などがいる。合わせて2015年10月時点で90万7896人。その後の増勢で100万人は超えているだろうが、それでも、少子化による生産年齢人口の急減には追い付かない。
 今や有効求人倍率が3倍を超えた業種も出てきている。そこで、政府は重い腰を上げ、思い切った政策転換を図ろうと動き出した。
「単純労働者の入国は認めない」「移民は解禁しない」と言い続けてきた基本政策の変更となる。それだけに、労働界や政権内からの反発が予想されるが、経済成長一辺倒の政策を掲げる政権には避けられない対策となってきた。
次の議論は移民の解禁であろう。
 足元では、既に日系人に対して特別に単純労働を認めている。労働力不足に陥ったバブル期の1989年に出入国管理法を改正し、3世までの日系人に在留資格と就労を認めることとした。その多くはブラジルやペルーなど中南米諸国の日系人で、自動車や電機業界などの下請け企業で働き出した。
 ここでも先例がある。韓国は、2004年に「雇用許可制」を取り入れ、政府の管理下での単純労働者の受け入れに積極的に取り組んでいる。
 中国やフィリピンなど15カ国と覚書を交わし、単純労働者が2015年10月末には約27万7000人に達した。翌16年には、再入国者1万2000人を含めて、約5万8000人が加わるという。
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 事業者は、2週間程度の採用募集をしても採用できなかった時に外国人を雇用できる。製造業が最も多く、建設業や農畜産業、漁業などに広がっている。
 こうした施策もあって、韓国では外国人労働者が94万人となり、日本よりも多い。
 台湾でも、単純労働者の受け入れもあって約59万人にも達しており、この10年間で80%も増えている。
「外国人住人との共生」を議論すべきときが来た
 しかし、現行制度の改変では人手不足の解消策にはならないだろう。外国人をそのまま生活者として迎える方向に進まざるを得ない。移民である。
 働く意欲が高い外国人は、普通の暮らしを営む生活者でもある。技能実習生の受け入れ企業からも「職業人として一人前になれば、長く働きたい人も多い。現場もその方がありがたい」と言う声が高まっている。
 欧州諸国では人口の13〜15%が移民で構成されているが、日本ではまだ2%にも満たない。事実上の「鎖国」状態が続いている。長期的にみれば労働者に限らず、普通の市民の受け入れをも視野に入れねばならない。
 外国人が多く暮らす地域や都市からは、「外国人との共生は国レベルで早急に議論すべきだ」と訴える声が上がっている。
 浜松、四日市、上田市など25市で構成する外国人集住都市会議は、2015年12月の浜松宣言で「かつて、特定地域の一 時的なものとされた外国人労働者の受入れや外国人住民との共生は、今や国全 体で共有すべき課題となっている。外国人住民を受け入れ、多文化共生に取り組 んできた基礎自治体として、その経験や取り組みをこれからのまちづくりや地 域の活性化に生かしていかなければならない」と記している。
 今年から技能実習生や留学生がどっと増えて来ることは間違いない。実習生は5年後には帰国を迫らるとはいえ、日本で暮らす外国人は確実に増大する。日々の生活の中で共生や社会的統合の施策を自治体に委ねる時期は脱した。国としてきちんとした移民政策に取り組むべき時代を迎えたと言っていいだろう。
(福祉ジャーナリスト 浅川澄一) 
http://diamond.jp/articles/-/114546

 


News&Analysis
2017年1月18日 高須正和 [チームラボMake部]
人類史上最速で成長する都市「深セン」で何が起きているのか
わずか30年足らずで、人口が30万人から1400万人に増加するなど、人類の歴史上比類のないスピードで発展した深セン。世界の工場として知られたこの場所は、今も中国全土から若者が集まり、65歳以上の高齢者は2%しかいない。爆発的な発展が続く都市・深センの真の姿を、チームラボMake部の発起人で、深センで行われているDIYの祭典「メイカーフェア深セン」の運営委員を務める高須正和氏がレポートする。


深セン中心部の風景
若者が65%、老人は2%
30年で1400万人に膨張

 この30年、深センの周辺はおそらく世界で最も変化した場所ではないだろうか。東京都ほどの広さに人口30万人が住むさびれた漁村だった場所が、わずか30年ほどで人口1400万人を超え、珠江デルタと呼ばれる一帯まで入れると4000万人を超える「世界の工場」エリアとなった。中心部は工場の街から金融とイノベーションの街に変化を遂げつつある。

 出稼ぎ労働者や、投資マネーを当てにして一発を狙いに来る起業家を吸収し、まだ人口は増え続けている。1400万都市となった今も、20〜30代が人口の65%を占め、65歳以上の高齢者は全人口の2%しかいない。これだけ「長期間にわたって若者ばかりが住んでいる街」も、おそらく歴史上ないだろう。今やGDPが香港を抜き、中国でもっとも生活費が高い街となった深センに、退職後も住み続ける人は少ない。


深セン博物館に展示されている比較図。1985年から2012年までの約30年ですっかり変わった地形
 上の図は、深セン博物館に展示された1985年と2012年の深センの街を比較したものだ。1985年といえば、ファミコン版「スーパーマリオ」が発売された年だ。あれから20年あまりで、土地を埋め立て、大量にビルを建て、深センの地形はすっかり変わった。

 しかも、2012年以降も深センの発展はまだ続いていて、今なら上の風景の中に、世界最大のドローン企業DJIのフラッグシップショップが見えるはずだ。中国全土から稼ぎたい若者が押し寄せ、毎年新しい地下鉄の路線が通っている。この2年で深センは6本の地下鉄が開通し、路線図は倍以上になった。この10年で増えた人口は400万人以上、横浜やロサンゼルスまるごとに匹敵する規模で拡大しているのだ。


深センの地下鉄の比較。左は2014年に購入した地下鉄カード、1〜5号線しか通っていない。右は2016年のもの。11号線まで掲載されている
道ばたの露店でもスマホ決済
未来を生きる住人たち

 人々の暮らし向きも急速に変化し続けている。現在、深センで暮らす人たちの祖父の時代、中国は文化大革命期であり、都市部のインテリ青年は農村での肉体労働に下放されていて、深センには本当に何もなかった。それが今、深センでは電化されたバスや電気自動車は珍しくないし、自転車より電気スクーターを見かけるほうが多い。

 道ばたで果物を売る老人もスマホを手にしていて、決済はすべて電子決済。ぼくは深センでは、他の旅行者と割り勘するときぐらいしか財布を取り出す機会がない。


道ばたの果物の量り売りでも、スマホと電子決済で払うことができる
 目にする自転車は大半がシェア自転車で、スマホでロックが解除できる。クレジットカードやPCでのインターネット、電子メールといったこれまでの発展の歴史をすっ飛ばして、いきなり最新のテクノロジーが普及したことにより、過去のレガシーにいっさい配慮しなくていい発展が街の隅々まで行き渡っている。


並んでいるのはさまざまなサービスのシェア自転車。GPSとインターネット常時接続が組み込まれていて、スマホでチェックインし、どこで借りてどこで乗り捨ててもいい
 深センは中国最初の経済特区だ。この地で成功した経済特区のモデルはその後、中国国内各所に拡大したが、深センほどの劇的な変化は、他の都市では生まれていない。他の経済特区は元々が大都市で、多くの既存の構造や既得権益がある。

 既得権益者がいないことは政治的に新しいことのやりやすさにつながるし、やり直しが利きやすく、失敗を許容しやすいことにもつながる。

 レガシーを引きずっていないことは都市のマネジメントを変える。上海は深センよりも豊かな国際都市だが、多くの既得権益や遺産があり、深センほど早くは変化できない。北京に至っては数千年の遺産と人々を抱えている。「バスの支払いは全部電子決済にします」といった変化に、最も早く対応できるのは深センの住民たちだし、「新しいバスを全部電気自動車にしよう」のような取り組みができるのは、その地方に根付いた車の販売会社がない深センならではだ。歴史があり、過去のしがらみがあるところほどアップデートに苦労するのは、日本でも歴史ある企業や銀行のシステム刷新などで見られる通りだ。

 深センは中国の政策が改革開放に転じた1980年代、当時の最高権力者、ケ小平の号令によりゼロから発展が始まった。そのときに深センの改革を主導したのは、「銭がないなら権をくれ」(*)という名言を党中央に対して主張した習仲勲、習近平の父である。

 トライアルアンドエラーや変化を前向きに受け入れていくのは、そもそもの深センの成り立ちとも通じている。

(*)銭と権は中国語では同じチェンという音で、「補助金はいらないから、自由に工夫して商売する権利を深センに与えてほしい」という言葉。当時の中国は計画経済の全盛期で、人々が自分の意思で経済活動するという概念がそもそもなかった。

「地球の歩き方」には載っていない
日本人が知らない深センガイド

 今、深センにいる人は、このもっとも成長し、賃金も急上昇している都市に働きに来た人々だ。

 深センの発展は、世界の工場と言われるように製造業を中心に始まった。日本の大手メーカーも台湾のFOXCONN(鴻海科技集団/富士康科技集団)も深センに巨大工場を作っている。1990年代に作られた多くの工場は、すでに深センの中心部から郊外に移転し、今ではさらに中国の内陸部や、ベトナムなどに移っている。深センのGDPは香港を超え、もはや安い労働力を提供する場所ではない。

 2017年現在、深センの工場で働く工員は、毎月5000元(約8万円)の収入を得ている。基本給2030元に、平均的な残業代と休日手当を含めると、5000元ほどになるのだ。雇い主が住居と食事を供給するのが前提での話なので、この5000元はかなりの部分が手元に残る。世界のほとんどの国より貧しい状態から、世界のほとんどの国より豊かになる状態まで、ほぼ一世代で来た。

 出稼ぎの工員は給料の多くを親元に仕送りするが、投資と起業の街となった深センの中心部に住む若者たちはよく物を買う。市の中心部・南山にある「カフェ・インキュベータ」では、レイバンのサングラスをかけトールサイズのタンブラーを持った若者たちが、マックブックを前に英単語混じりの中国語会話をしている。

 こうした短期間での生活の変化も人類史上に例がないだろう。


その名も「ベンチャー投資マンション」。この一角には、インキュベーション・カフェというコーヒーショップにインテリジェント・ミルクティーというメニューが並ぶ意識の高さ
 急速に発展した都市。
 今も発展し続けている都市。
 そして、過去を引きずっていない都市。

 こういう特異な場所でなければ見ることができない、面白いものがあるんじゃないか。

 観光名所はなくても、テクノロジーや、その急成長と集中が生んだ独特の社会が好きな人にとって、深センには注目すべき場所がいくつかある。しかも、いずれも「地球の歩き方」ほか旅行ガイドには絶対に載っていない。

 僕はDIYとものづくりの世界的なイベント「メイカーフェア」の、深センの運営委員をしている。また、日本のテクノロジー好きと深センの街を巡る「ニコ技深セン観察会」という不定期イベントの主催をしている。次回から本格的に始まる連載「変化し続ける街 知られざる深セン」で、日本では知られていない深センの街の様子や、魅力的な出来事をレポートしていきたい。
http://diamond.jp/articles/-/114504
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/905.html

[経世済民117] 原油高 影響じわり…紙おむつや塗料、建材に波及も ガソリン価格130・9円、6週連続値上がり 

 原油高

影響じわり…紙おむつや塗料、建材に波及も

毎日新聞2017年1月18日 19時58分(最終更新 1月18日 21時47分)
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下落していた価格が再び上昇に転じている
石油製品値上がり
 ガソリンや灯油、化学製品の原料になるナフサなどの石油製品が値上がりしている。昨年末の石油輸出国機構(OPEC)加盟国などの協調減産合意以降の原油価格上昇を反映したもので、家計にも影響を与えそうだ。【岡大介】

 経済産業省資源エネルギー庁が18日発表した16日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は1リットル当たり130.9円で、6週連続の値上がりとなった。昨年末に1年1カ月ぶりに130円を突破し、その後も上昇傾向が続く。灯油の店頭平均価格も1リットル77.7円と13週連続で値上がりしている。

 上昇の背景には、サウジアラビアやイランなどのOPEC加盟国とロシアなど非加盟国が17年前半に原油の…
http://mainichi.jp/articles/20170119/k00/00m/020/040000c


 
ガソリン価格130・9円、6週連続値上がり
2017年01月18日 17時39分
 資源エネルギー庁が18日発表した全国のレギュラーガソリンの平均価格(16日時点、1リットルあたり)は、前週に比べ0・4円高い130・9円と6週連続で値上がりした。

 2015年11月以来、1年2か月ぶりの水準となる。

 値上がりが続くのは、中東やロシアなどの産油国が16年12月に減産合意し、原油価格が上昇基調にあるためだ。ハイオクは前週より0・4円高い141・7円、軽油は0・4円高い110・2円だった。灯油の店頭平均価格(18リットルあたり)は12円高い1399円となった。

(ここまで238文字 / 残り123文字)
2017年01月18日 17時39分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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http://www.yomiuri.co.jp/economy/20170118-OYT1T50088.html

ガソリン店頭価格、6週連続上昇 1リットル130.9円
2017/1/18 14:14
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 レギュラーガソリンの店頭販売価格が6週連続で上昇した。資源エネルギー庁が18日発表した16日時点のガソリン給油所の全国平均販売価格は1リットル130.9円。前週比で0.4円高くなった。

 原油相場の上昇傾向を背景に石油各社が卸値を引き上げたのがやや遅れて小売価格に波及した。給油所の販売競争が激しいため、上昇ピッチは小幅だ。

 都道府県別にみると、値上がりしたのは東京都、大阪府など34都道府県。岡山県など9県は値下がりし、山梨県など4県は横ばいだった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDJ18H13_Y7A110C1000000/
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/910.html

[自然災害21] 海底断層、最大65m跳ね上がる…巨大津波発生 Large fault slip peaking 東日本大震災
海底断層、最大65m跳ね上がる…巨大津波発生
2017年01月12日 13時58分
特集 大震災
 東日本大震災で、宮城県沖の海底断層が最大約65メートルずれ動いたとする研究成果を、海洋研究開発機構などの研究チームがまとめた。


 11日に論文が英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」(電子版)に掲載された。

 宮城県沖では、海側のプレート(岩板)が陸側のプレートの下に沈み込むように動いている。大震災の際には、ひずみがたまった陸側のプレートが、跳ね上がるようにずれ動き、巨大な津波が発生した。

 研究チームは、地震前後の宮城県沖約200キロ・メートルにある日本海溝付近の海底地形の変化などをもとに、地震の際に断層がどの程度動いたかを精密に計算。その結果、海溝に近づくほど断層がずれる量が増え、平均で約62メートル、海溝の最深部では約65メートル動いていたことが分かった。

(ここまで336文字 / 残り107文字)
2017年01月12日 13時58分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
http://www.yomiuri.co.jp/science/20170112-OYT1T50121.html?from=yartcl_outbrain1



Large fault slip peaking at trench in the 2011 Tohoku-oki earthquake
Tianhaozhe Sun, Kelin Wang, Toshiya Fujiwara, Shuichi Kodaira & Jiangheng He
Nature Communications 8, Article number: 14044 (2017)
doi:10.1038/ncomms14044
Download Citation
GeodynamicsNatural hazardsSeismology
Received:
31 May 2016
Accepted:
22 November 2016
Published online:
11 January 2017

http://www.nature.com/article-assets/npg/ncomms/2017/170111/ncomms14044/images/w926/ncomms14044-f1.jpg
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Abstract
During the 2011 magnitude 9 Tohoku-oki earthquake, very large slip occurred on the shallowest part of the subduction megathrust. Quantitative information on the shallow slip is of critical importance to distinguishing between different rupture mechanics and understanding the generation of the ensuing devastating tsunami. However, the magnitude and distribution of the shallow slip are essentially unknown due primarily to the lack of near-trench constraints, as demonstrated by a compilation of 45 rupture models derived from a large range of data sets. To quantify the shallow slip, here we model high-resolution bathymetry differences before and after the earthquake across the trench axis. The slip is determined to be about 62 m over the most near-trench 40 km of the fault with a gentle increase towards the trench. This slip distribution indicates that dramatic net weakening or strengthening of the shallow fault did not occur during the Tohoku-oki earthquake.

Introduction
The occurrence of very large slip on the shallowest part of the megathrust during the 2011 moment magnitude (Mw) 9.0 Tohoku-oki earthquake1,2 is considered to be of paradigm-shifting importance in understanding tsunami generation and rupture mechanics3. Clear definition of the actual near-trench slip during the earthquake is critically needed for distinguishing between different trench-breaching slip scenarios that reflect fundamentally different fault mechanics4. If the most near-trench segment of the megathrust is not only an integral part of the seismogenic zone but also underwent the greatest stress drop (coseismic weakening), the resultant slip distribution should feature a large increase towards the trench. If the shallow segment strengthens with increasing slip rate (velocity-strengthening) but is unable to fully resist a large rupture propagated from the deeper seismogenic zone5, the resultant slip distribution should feature a distinct decrease towards the trench. If the shallow megathrust exhibits velocity strengthening to resist slip at low slip rates but weakens to facilitate slip once a sufficiently high slip rate (∼1 m s−1) is attained, a phenomenon known as dynamic weakening6,7, the slip distribution may feature neither large increase nor large decrease towards the trench. All proposed models remain untested until we know the actual shallow slip.

However, despite the Tohoku-oki earthquake being by far the best instrumentally recorded subduction earthquake, the actual magnitude and distribution of the slip on the shallow megathrust are essentially unknown. A compilation of 45 published slip models, including those constrained by seafloor geodetic8,9 and tsunami wave data10,11 (Supplementary Tables 1 and 2), shows vastly different slip patterns in the most trenchward 100 km of the fault (Fig. 1 and Supplementary Fig. 1). The differences are due partly to various simplifications in inverting coseismic observations to determine fault slip. For example, many of the finite fault models, especially those used for inverting tsunami data, assume a planar fault and/or consist of rather large subfaults of rectangular shape12. Depending on how fault slip is constrained at the trench, the peak slip determined by the inversion may be located at the trench or some distance away from the trench. However, the primary reason for the poor state of knowledge is the lack of near-field observations of horizontal seafloor displacements: all seafloor global positioning system (GPS) measurements were made more than 50 km away from the trench8,9.

Figure 1: Compilation of 45 published slip models along a central corridor through the main rupture area.
Figure 1
The white band in inset shows the corridor. Each curve is labelled with its model number as in Supplementary Tables 1 and 2. Solid and dashed lines show models with and without, respectively, using seafloor GPS data as constraints. The subset of models that used tsunami data shows similar scatter of results near the trench (see Supplementary Fig. 1). In inset, red outline shows the 2-m contour of coseismic slip of the 2011 Mw Tohoku-oki earthquake from ref. 29, and star shows the epicentre. The two differential bathymetry tracks studied in this work are outlined in black. Track MY102 along the central corridor is the main focus of this study. Track MY101, ∼50 km to the north, is discussed in Discussion. GJT3 is a nearby seafloor GPS site9, and TJT1 is a nearby ocean bottom pressure (OBP) gauge site20. Red triangle shows the JFAST drilling location16 where samples of the subduction fault zone were retrieved.
Full size image
Displacement observations nearest to the trench are the differential bathymetry measured before and after the Tohoku-oki earthquake by Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology1, which were not used by any of the 45 slip models in Fig. 1. By modelling these data using a finite-element deformation model, we are able to estimate the near-trench slip distribution along the main corridor (Fig. 1, inset). The inferred slip is of a very large average value (> 60 m) for the most seaward 40 km of the fault but with only a very small increase (∼5 m) over this distance, indicating neither large net weakening nor large net strengthening of this fault segment during the earthquake.

Results
Differential bathymetry before and after the earthquake
During the earthquake, seafloors on the two sides of the trench moved in opposite directions, with the motion of the landward side much larger than that of the seaward side13. For each point of the seafloor with fixed geographic coordinates (longitude and latitude), water depth is changed because of the motion and deformation of the sloping seafloor. The differential bathymetry is this change in water depth (Fig. 2).

Figure 2: Cartoon illustration of the generation of differential bathymetry by a trench-breaching subduction earthquake.
Figure 2
Solid and dashed lines show the bathymetry before and after the earthquake, respectively. While coseismic deformation is of long wavelength, local seafloor slope variations can lead to coherent short-wavelength features of bathymetry decrease or increase.
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A SeaBeam 2112 with a frequency of 12 kHz and a beam width of 2° × 2° was used to collect bathymetry data along track MY102 (Fig. 1, inset) in 1999, 2004 and in 2011 about 10 days after the earthquake1. Using the seaward side of the track as the reference, Fujiwara et al.1 derived differential bathymetry of the landward side (Fig. 3d), hereafter referred to as the observed differential bathymetry (ODB). In deriving the ODB, only the inner beam soundings within a 45° swath width among the total available 120° swath width were used, because uncertainties in water sound speed affect the inner beam to a lesser degree than the outer beam. By cross correlating the bathymetries before and after the earthquake, Fujiwara et al.1 estimated about 50 m horizontal and 10 m vertical motion of the landward side relative to the seaward side. This rough estimate did not invoke deformation modelling.

Figure 3: The optimal SDB model along the central corridor.
Figure 3
The location of the corridor is shown in Fig. 1 inset. (a) Fault slip distribution over the most seaward 40 km. (b) Residue between the SDB (c) and 1999–2011 ODB (d). (c) SDB produced using the slip distribution shown in a. (d) 1999–2011 ODB. (e) Bathymetry acquired in 1999. The deep sea terrace segment (<3,500 m; shadowed in b–e) has large uncertainties in water sound speed and the interpreted seafloor depth. Possible submarine landslides at the trench axis are not modelled in the SDB. Therefore, these segments as well as that seaward of the trench are not included for calculating the r.m.s.d. (f) Seismic reflection section along the same track2. Thick dashed line shows the megathrust fault.
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In this work, we model the 1999–2011 bathymetry differences for track MY102 reported by Fujiwara et al.1 and quantitatively determine the near-trench slip in the main rupture area of the Tohoku-oki earthquake. The 2004 bathymetry data are not modelled except for testing purpose. The very short length of the seaward portion of the 2004 survey corridor, being only 1/5 of the 1999 survey, causes great difficulty in using it as the reference for ODB. Therefore the ODB based on the 2004 data is considered less reliable. Because seafloor displacement between 1999 and 2004 is expected to be very small, if not negligible, bathymetry differences between 1999 and 2004 provide an error estimate for ODB. The error thus estimated by Fujiwara et al.1 in terms of inferred total horizontal seafloor displacement is about 20 m, or about 10 m if resolved to the trench normal direction. This error to a large part is due to the inadequate length of the seaward section of the 2004 data. When applied to the 1999–2011 ODB, the actual error should be much less but difficult to quantify. Nonetheless, we do not expect the 1999–2011 error in the trench-normal direction to be much larger than 5 m. Bathymetry data for track MY101 (ref. 2; Fig. 1, inset), with poorer quality than the MY102 data, will be discussed in the Discussion section.

Because the pre-event bathymetry data were collected 12 years before the Tohoku-oki earthquake and the post-event data were collected 10 days after, there is a question to what degree the deformation reflected in the OBD is truly coseismic. We think it is extremely unlikely that a large part of the 1999–2011 ODB could be due to fault creep before the earthquake. To produce tens of meters of coseismic slip, the shallow megathrust must have accumulated sufficient slip deficit prior to the 2011 earthquake, due to either actual fault locking by itself or the stress-shadowing effect of a locked patch immediately downdip. Large afterslip of the shallow megathrust in this area during the 10 days after the earthquake is also extremely unlikely, given the absence of interplate aftershocks along the main rupture zone which underwent large stress drop14. Modelling of post-seismic seafloor GPS measurements does not indicate afterslip in this area, although it does suggest large near-trench afterslip to the south of the main rupture zone13.

Synthetic differential bathymetry from deformation modelling
We use a three-dimensional elastic finite element model that includes actual fault geometry and long-wavelength bathymetry (Supplementary Fig. 2). We add the model-predicted three-component coseismic displacements to the pre-earthquake bathymetry to produce synthetic differential bathymetry (SDB), in the manner illustrated in Fig. 2. This model allows us to study the role of internal deformation of the upper plate as well as its rigid-body translation along the megathrust in generating the ODB. For example, a trenchward decrease in slip causes horizontal shortening and enhances seafloor uplift, and vice versa. We have tested hundreds of SDB models. Those subsequently discussed in this article are summarized in Supplementary Table 3.

The SDB models for this small area are essentially two-dimensional, for lack of adequate constraints on along-strike variations of near-trench slip. For modelling convenience, we assign the same slip distribution over a wide along-strike range (>400 km) that is much wider than the actual rupture area of the Tohoku-oki earthquake. Because the studied near-trench fault segment is quite shallow (<10 km below sea surface), seafloor displacement is sensitive mainly to the fault slip right beneath the track and very insensitive to assigned slip more than 20 km away to the north and south.

We determine three parameters by comparing our SDB models with the ODB. The first two parameters are the average slip and the slip gradient over the most near-trench 40 km of the megathrust. The third parameter, a depth adjustment to the SDB of the landward side, is to account for a remnant depth bias in the acoustically derived ODB. Although temporal and spatial variations in water temperature, especially at shallow depths (<2,000 m below sea surface), have been accounted for in deriving sound speed structure of ocean water for ODB determination, remaining uncertainties still lead to some remnant depth bias in the bathymetry data, even after maximizing cross correlations of the seaward (reference) side of different surveys. This is reflected in the ratio of the vertical to horizontal motion (∼10 to 50 m) of the landward-side seafloor relative to the seaward side estimated by Fujiwara et al.1 This ratio would require a fault dip >10° near the trench that is much higher than the actual dip of ∼5°.

Optimal slip model along the main track
We search the model space defined by the three parameters described above to find the optimal SDB (Fig. 3c) that best matches the 1999–2011 ODB (Fig. 3d) and hence minimizes the root mean square deviation (r.m.s.d.) from the OBD (Fig. 4). We have also done the search by minimizing the mean absolute deviation of SDB from OBD and obtained the same results as with the r.m.s. Incoherent short-wavelength fluctuations in the ODB associated with sea and seafloor conditions, stability of the acoustic and navigation systems, and errors in local water temperature and salinity profiles1 are not minimized, partly responsible for the relatively large r.m.s. For our study, the useful information is from long-wavelength coseismic deformation and coherent short-wavelength differential bathymetry due to topographic shift as shown in Fig. 2. The useful information is reflected in the r.m.s. differences between different models that are based on the same data set.

Figure 4: Search for optimal SDB in the parameter space for the central corridor.
Figure 4
(a) R.m.s.d.’s of SDB models as a function of average slip and depth adjustment. Slip gradient is fixed at the optimal value (5 m increase over 40 km) for all the models. Stars represent the best models (lowest r.m.s.d.’s) given slip value. The maximum r.m.s.d. is 12.5 m (for 40-m slip and 0-m depth adjustment), but the colour scale saturates at 8.9 m. (b) Ratio of average vertical to horizontal motion (Uz/Ux) of the seafloor as a function of slip magnitude and depth adjustment. Each star–triangle pair represents one model, with the star being the same as in a (same r.m.s. colour scale) and the triangle showing the corresponding arctangent value of (Uz/Ux). The tan−1(Uz/Ux) of the optimal SDB agrees with the interpretation of the ODB (∼10.125°) through cross correlation1. In both panels, the orange dashed circle marks the optimal SDB model shown in Fig. 3.
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The optimal model for the main corridor (Fig. 3) requires an average fault slip of ∼62 m in the most seaward 40 km of the megathrust with the slip increasing towards the trench by 5 m over this distance. The resultant bathymetry change is due to a combination of the updip motion of the overriding plate along the megathrust, seaward motion of the sloping seafloor and internal deformation of the upper plate. On the background of an overall uplift, coherent short-wavelength uplift and subsidence features are generated by local seafloor slope variations (Fig. 2), such as at the slope break between the deep sea terrace and the upper slope (Fig. 3e,f). Some of the differences between the optimal SDB and the ODB, especially in the amplitude of the short-wavelength features near the trench, may be due to inelastic deformation during or shortly after the earthquake15 that are not modelled in this work. They also contribute to the relatively large r.m.s. In addition, for comparison, the optimal SDB based on the less reliable 2004–2011 ODB is shown in Supplementary Fig. 3.

In deriving the SDB, there is a trade-off between the average slip and the depth adjustment, as shown in Fig. 4 where the slip gradient is fixed at the optimal value of 5 m over the most seaward 40 km. For example, a model with a near-trench slip of ∼90 m but with no depth adjustment can also produce ∼10–20 m water depth decrease as in the ODB, but the resultant seafloor displacement poorly explains short-wavelength features in the ODB and results in a larger r.m.s.d. (Supplementary Fig. 4). The 5 m adjustment for the remnant depth bias required by the optimal average slip 62 m accounts for the problematic fault dip (>10°) mentioned above (Fig. 4b).

Slip gradient
The frictional behaviour of the shallow megathrust during the earthquake is reflected not only in the magnitude of the slip but also in how the slip changes towards the trench. The sensitivity of SDB models to the slip gradient is illustrated by Fig. 5, where the average slip is fixed at the optimal 62 m. These tests indicate that the SDB is not very sensitive to small changes in the slip gradient, such that assuming 0 or 10 m increase (over 40 km) will not produce a very different SDB from using the optimal value of 5 m. However, using the SDB results, we can confidently reject some larger slip gradient values that are more diagnostic in reflecting fault frictional behaviour. For example, increasing (Fig. 6) or decreasing (Fig. 7) the gradient by 20 m from the optimal value of 5 m over the most seaward 40 km obviously degrades the SDB’s fit to the long-wavelength ODB. In other words, to explain the OBD in the main rupture area, the required coseismic slip exhibits neither large increase nor large decrease towards the trench.

Figure 5: Sensitivity of SDB to slip gradient for the central corridor in terms of increase over the most near-trench 40 km.
Figure 5
Trenchward increase (as in Fig. 3a) is positive. Average slip is fixed at the optimal value of 62 m; the optimal depth adjustment varies with the slip gradient (not displayed).
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Figure 6: Testing SDB model for the central corridor with large trenchward increase in fault slip.
Figure 6
Otherwise the figure is similar to Fig. 3. (a) Fault slip distribution over the most seaward 40 km. (b) Residue between the SDB (c) and 1999–2011 ODB (d) showing overestimate of differential bathymetry near the trench but underestimate away from the trench. (c) SDB produced using the slip distribution shown in a and optimal depth adjustment 6.0 m. (d) 1999–2011 ODB.
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Figure 7: Testing SDB model for the central corridor with large trenchward decrease in fault slip.
Figure 7
Otherwise the figure is similar to Fig. 3. (a) Fault slip distribution over the most seaward 40 km. (b) Residue between the SDB (c) and 1999–2011 ODB (d) showing underestimate of differential bathymetry near the trench but overestimate away from the trench. (c) SDB produced using the slip distribution shown in a and optimal depth adjustment 4.0 m. (d) 1999–2011 ODB.
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Discussion
The large (>60 m) slip with a gentle updip increase (∼5 m) on the shallow megathrust shows a pattern different from nearly all the published rupture models in the main rupture area (Fig. 8a). Uncertainties in this slip distribution are reflected in the sensitivity plots of Figs 4 and 5. This result allows us to narrow the range of possible slip behaviour scenarios as outlined in the opening paragraph. On the basis of the results shown in Fig. 6, we can reject the scenario that the shallowest megathrust underwent greater coseismic weakening than the deeper part, which would cause a large slip increase towards the trench and extreme stress drop on the shallowest megathrust (green curve in Fig. 8b). On the basis of the results shown in Fig. 7, we can also reject the scenario that the shallow megathrust persistently exhibited velocity strengthening during the rupture process, which would lead to slip decrease towards the trench and stress increase on the shallowest megathrust (red curve in Fig. 8b).

Figure 8: Illustrations of different mechanical behaviours of the shallow fault and their resultant slip distributions along the main corridor rejected and supported by SDB modelling.
Figure 8
(a) Comparison between the optimal shallow fault slip of this work (blue line) and the 45 published slip models shown in Fig. 1 (grey lines). The error range (blue shading) is based on models with r.m.s.d.’s <8.55 m (Fig. 4a). Dotted part of the blue line is a hand-drawn, poorly constrained smooth connection between the near-trench slip determined in this work and the slip further downdip based on an average of the 45 slip models. Slip scenarios represented by the green and red lines are not supported by the SDB analysis. (b) Schematic illustration of stress evolution of the shallowest fault segment. Red, green and the two blue curves represent mechanically different shallow fault behaviours, corresponding to lines of same colours in a. Blue curve 2 represents a more likely scenario in which delayed dynamic weakening6,30 of the shallow fault occurred during the earthquake. (c) Similar to b but for the deeper seismogenic zone.
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The optimal slip distribution (Fig. 3a) suggests that the shallowest segment of the megathrust along the central corridor must have weakened to a degree similar to the deeper epicentral area. This can be accomplished in two ways: (1) the shallowest segment shares the same frictional behaviour as the deeper seismogenic zone (blue curve 1 in Fig. 8b), or (2) the shallow segment exhibits velocity strengthening in the early phase of the rupture but dynamically weakens only when the slip accelerates to an adequately high rate (>1 m s−1; ref. 6) (blue curve 2 in Fig. 8b).

Based on the information from drill core samples retrieved during the JFAST expedition from the shallowest part of the fault zone 7 km landward of the trench axis (ref. 16 and Fig. 1), the scenario represented by blue curve 2 in Fig. 8b is more likely. The core samples show both distributed (pervasive scaly fabrics) and localized (millimetre-scale slip zones) shear deformation within the plate boundary fault zone16,17. Co-existence of structures reflecting distinctly different modes of deformation is understood to imply rate-dependent frictional behaviour: the distributed deformation suggests low-rate velocity strengthening, while the localized slip zones may suggest high-rate (>1 m s−1) dynamic weakening17. The rate-dependent behaviour is observed also in laboratory friction experiments on these core samples18,19.

The ODB studied in this work allows us to determine shallow coseismic slip of the Tohoku-oki earthquake only in the main rupture area (Fig. 8a). The slip must have varied along the Japan Trench as controlled by heterogeneous fault properties and stress conditions. For example, SDB modelling for bathymetry track MY101 (near 38.6° N), about 50 km north of our central corridor (Fig. 1, inset), shows a smaller average value (∼40 m) but a larger increase (20 m) of slip to the trench, suggesting a higher degree of coseismic weakening of the shallow fault (Supplementary Fig. 5). The SDB results from both the central and northern tracks, together with the coseismic displacements recorded at nearby seafloor geodetic stations8,9,20, can provide a much improved view of the trench-breaching slip of the Tohoku-oki earthquake as demonstrated by the slip distribution shown in Supplementary Fig. 6, which is obtained by hand-extrapolating the results shown in Fig. 3a and Supplementary Fig. 5a.

Methods
Deformation model
We used the spherical-Earth finite-element code PGCviscl-3D developed by one of us (J.H.). The code uses 27-node isoparametric elements throughout the model domain. The effect of gravitation is incorporated using the stress-advection approach21. Coseismic rupture is simulated using the split-node method22. The code has been extensively benchmarked against analytical deformation solutions23 and was applied to many subduction zone earthquake cycle modelling studies24,25. For modelling the coseismic deformation, the entire model domain is an elastic body. Other computer codes that can model elastic deformation, fault dislocation, and realistic fault and surface geometry will also suffice, although details of the model results could slightly differ if a Cartesian (as opposed to spherical) coordinate system is used and/or the effect of gravity is ignored or simulated in a different way. It can be readily shown that given slip distribution, the effect of spatial variations in rocks’ mechanical properties on affecting elastic coseismic deformation directly above the thrust fault is negligibly small, although the effect can be larger for deformation farther away or if stress drop instead of slip distribution is prescribed to the fault. Therefore, we use uniform values for the rigidity (40 GPa), Poisson’s ratio (0.25), and rock density (3,300 kg m−3). We build a very large finite element mesh for the Japan Trench subduction zone to minimize the effect of the fixed lateral and bottom boundaries. The lateral boundaries are more than 1,000 km away from the rupture area, and the bottom boundary is set at 2,000 km depth (Supplementary Fig. 2). Subduction fault geometry is the same as in Sun et al.25 and is constrained by earthquake relocation results and seismic reflection profiles26,27,28, except that we have fine-tuned the dip of the shallowest part of the megathrust to 5° in accordance with the seismic imaging results in Kodaira et al.2

Data availability
All ODB data considered in this work have been published previously1,2. Other data such as those used to construct deformation models for SDB simulation are available on request from the authors.

Additional information
How to cite this article: Sun, T. et al. Large fault slip peaking at trench in the 2011 Tohoku-oki earthquake. Nat. Commun. 8, 14044 doi: 10.1038/ncomms14044 (2017).

Publisher’s note: Springer Nature remains neutral with regard to jurisdictional claims in published maps and institutional affiliations.

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Download references

Acknowledgements
We thank the authors of the 45 published rupture models of the Tohoku-oki earthquake for providing the digital values of their slip models. T.S. was a member of the onboard Science Party of IODP Expedition 343 (JFAST). T.S. was supported by a University of Victoria PhD Fellowship, an Alexander and Helen Stafford MacCathy Muir Graduate Scholarship, a Bob Wright Graduate Scholarship and a Natural Sciences and Engineering Research Council of Canada discovery grant to K.W. This is Geological Survey of Canada contribution 20160230.

Author information
Affiliations
School of Earth and Ocean Sciences, University of Victoria, Victoria, British Columbia, Canada V8P 5C2
Tianhaozhe Sun & Kelin Wang
Pacific Geoscience Centre, Geological Survey of Canada, Natural Resources Canada, 9860 West Saanich Road, Sidney, British Columbia, Canada V8L 4B2
Kelin Wang & Jiangheng He
R&D Center for Earthquake and Tsunami (CEAT), Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC), Natsushima-cho 2-15, Yokosuka 237-0061, Japan
Toshiya Fujiwara
R&D CEAT, JAMSTEC, Showa-machi 3173-25, Kanazawa-ku, Yokohama 236-0001, Japan
Shuichi Kodaira
Contributions
K.W. and T.S. designed the study and did most of the writing. T.S. carried out most of the deformation and SDB modelling. T.F. and S.K. prepared ODB data and conducted data error analysis. J.H. wrote the computer code and participated in deformation modelling.

Competing interests
The authors declare no competing financial interests.

Corresponding author
Correspondence to Kelin Wang.

Supplementary information
PDF files
1.
Supplementary Information
Supplementary Figures, Supplementary Tables and Supplementary References.
2.
Peer Review File
http://www.nature.com/articles/ncomms14044
http://www.asyura2.com/15/jisin21/msg/746.html

[経世済民117] 結婚の4分の1が「再婚」、晩婚化も進む 平成28年度人口動態統計特殊報告「婚姻に関する統計」の概況
結婚の4分の1が「再婚」、晩婚化も進む
2017年01月18日 21時39分
 厚生労働省は18日、2015年までの人口動態統計をもとにした、「結婚」についての分析

結果を公表した。

 男女とも結婚する年齢が上がる晩婚化の傾向が進んだほか、結婚全体に占める再婚の割合が4

分の1を占め、調査の比較が可能な1952年以降で過去最高となった。

 分析結果によると、2015年の平均結婚年齢は、夫婦とも初婚の場合、夫が30・7歳(1

4年30・6歳)、妻が29・0歳(同29・0歳)だった。1975年の平均年齢は夫が26

・9歳、妻が24・4歳で、男性が3・8歳、女性は4・6歳高くなった。晩婚化は女性が子ど

もを産むタイミングが遅くなるため、少子化が進む一因との指摘もある。

(ここまで289文字 / 残り188文字)
2017年01月18日 21時39分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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平成 28 年度 人口動態統計特殊報告
「婚姻に関する統計」の概況
厚生労働省では、このほど、平成 28 年度人口動態統計特殊報告「婚姻に関する統計」の結果
を取りまとめましたので公表します。
この概況では、毎年実施している人口動態統計をもとに婚姻の動向について多面的に分
析を行いました。

【結果のポイント】
○「夫妻とも初婚」の割合は低下傾向となっており、「夫妻とも再婚又はどちらか一方が
再婚」の割合は上昇傾向となっている(3頁 表1)。
○ 平均婚姻年齢は夫、妻とも年々上昇傾向にあり、夫妻とも初婚の場合、平成 27 年では
夫は 30.7 歳、妻は 29.0 歳となっている(4頁 表2)。
※詳細は、別紙概況をご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp//toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/konin16/dl/houdou.pdf

平成28年度人口動態統計特殊報告「婚姻に関する統計」の概況

http://www.mhlw.go.jp//toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/konin16/dl/gaikyo.pdf

2017年1月18日(水)掲載
平成30年3月新規高等学校卒業者の就職に係る推薦及び選考開始期日等について
平成28年度人口動態統計特殊報告「婚姻に関する統計」の概況
第18回厚生科学審議会生活環境水道部会の開催について
医薬品成分を含有する製品の発見について
食品中の放射性物質の検査結果について(第1016報) (東京電力福島原子力発電所事故関連)基準値超過なし


2017年1月17日(火)掲載
長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表します
「保育士確保集中取組キャンペーン」を実施します 〜未就業の保育士の保育園等での就業を促進するため、保育士の処遇改善策のPR活動など、保育士確保へ向けた取組を、3月末まで集中的に行います〜
原子力災害対策特別措置法第20条第2項の規定に基づく食品の出荷制限の解除 (原子力災害対策本部長指示)
C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品について


2017年1月16日(月)掲載
平成28年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(5月1日現在)
牛海綿状脳症(BSE)スクリーニング検査の結果について(平成28年12月分まで)
生活衛生資金貸付利率の改定について
平成28年度民生委員・児童委員の一斉改選結果について


2017年1月13日(金)掲載
海外資料調査における不適正経理事案に係る職員の処分について
戦没者慰霊事業のお知らせ(平成29年1月実施分)
障害者自立支援機器等開発促進事業「シーズ・ニーズマッチング交流会 2016」を開催します 〜1月19日(木)大阪府大阪市・2月3日(金)東京都江東区〜
「働き方改革」の実現に向けて、国民の皆さまからのご意見を募集します
水道水中の放射性物質の調査結果について(第374報)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/houdou_list.html?ym=201701
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/912.html

[国際17] トランプ政権の“チンガール”に怯えるメキシコ  イスラエル大使館移転が導く動乱  オバマ政権、米建国の理念を追求し頓挫 
トランプ政権の“チンガール”に怯えるメキシコ

ニュースを斬る

メキシコ社会人類学高等研究所の所長が分析
2017年1月19日(木)
平井 伸治

新政権で米国はこう変わる!トランプ解体新書
 2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。トランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで──。日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が発売されました。今回の記事も、「トランプ解体新書」に収録したものです。本書もぜひ手に取ってご覧ください。

 メキシコで18年間暮らしているが、いつも陽気な印象の国民性とは打って変わったどんよりした憂鬱なムードが漂う日を2回体験している。

 1度目は、2002年日韓共催ワールドカップの決勝トーナメント1回戦で、メキシコ代表と米国代表が対戦した翌日だ。この試合に勝てば、メキシコは初のベスト8進出が決まる。同じ北中米カリブ地域で戦ってきた国であり、絶対に勝たなくてはいけない大一番である。隣国の大国との政治力・経済力の差は揺るぎない現実であっても、少なくともサッカーでは、米国を上回ってきたメキシコにとって、割合楽な対戦相手のはずだった。

 ところが、この試合でメキシコ代表はまさかの敗北を喫する。翌日、道行くメキシコ人の暗い表情、昨晩のサッカーの試合のことには言及しないメキシコ人の友人。マスメディアでは、大舞台で米国代表に負けた屈辱を報道するものの、いつもはエネルギッシュなコメントばかりするスポーツ番組の解説者たちの動揺を隠せない口調も印象的であった。メキシコはサッカーでも米国に負けてしまったのだ。

 そして、2回目の体験は2016年の11月9日。米国の大統領選の投票日の翌日だ。


メキシコと米国の間にある国境。カラフルだが「SOS」と書かれている(写真:Guillermo Alonso提供)
メキシコがお通夜と化した2度目の朝

 ドナルド・トランプ氏は大統領選に出馬して以来、数々の過激なコメントをしてきた。メキシコとの移民問題に関しては、「メキシコからの移民は麻薬密売人とレイプ犯ばかりだ」「メキシコとの国境に壁を築き、費用はメキシコに払わせる」などと発言し、米国在住のメキシコ人の間だけでなく、メキシコ国内でもトランプ氏の発言に対する怒り、不快感、糾弾が噴き上げていた。

 筆者は2016年の投票日の翌日、日系企業が近年多く進出しているグアナファト州セラヤで開催されたオバマ政権下の移民政策をテーマとした学会に参加した。メキシコ人移民問題を長年研究してきた研究者たちの表情は暗く、トランプ政権の到来による今後の移民政策の転換と移民の流れの変化、それによって起こり得るであろう社会問題などが話題となったが、トランプ氏当選のニュースに対して、一様に、そして明らかに落胆していた。

 越境する当事者であるメキシコ人やその家族の視点から移民現象を理解しようとし、彼らの生活の向上や人権擁護、移民政策の改正を目指して、何らかの形で貢献しようとしてきた研究者たちは、動揺し、落胆し、そして傷つき、怯えているように見えた。

 ノーベル文学賞を取ったオクタビオ・パスはメキシコの国民性を描いた作品『孤独の迷宮』の中で、征服から生まれた精神的屈辱と劣等感を「チンガール」というメキシコ独自のスペイン語の単語分析を通して説明している。この言葉をメキシコ人の心性を理解する上で重要なキータームの一つと捉え、「メキシコ人にとって、人生はチンガールするか、またはチンガールされるかの可能性しかない」とまで述べている。

 この言葉は簡単に訳すと暴行するという意味で、スペイン人による征服という歴史が反映された言葉である。この歴史的事件はスペイン人男性による先住民女性の肉体に対する暴行とも捉えることができ、能動的で攻撃的で閉鎖的な男性が、受動的で無防備で開放的な女性をチンガール(暴行)するという2元化したレトリックから解釈される。メキシコには、この動詞を使った様々な表現がある。例えば、「イホ・デ・ラ・チンガーダ」(チンガールされた女性の子)というフレーズは、不快感、嫌悪感、怒りを表現するときに使われる。

 メキシコ史を振り返ってみると、この国がチンガールされたのは、16世紀のスペイン人の征服だけではない。1821年にスペインから独立したのち、1845年のテキサスの米国への併合に続き、1846年に始まった米国との戦争で米国軍に首都まで攻め込まれ、1848年に敗戦し、現在のカリフォルニア、ニューメキシコ、アリゾナ、ネバダ、ユタ、そしてコロラド、ワイオミング、カンザス、オクラホマの一部に相当する領土を失った。

 国土の約半分に相当する領土である。米国との国境線が確定してからも、隣の大国に様々な側面において翻弄され、チンガールされてきた。

カリフォルニアの農業は90%が不法移民

 メキシコ近代史を能動的で攻撃的で閉鎖的な米国と、受動的で無防備で開放的なメキシコの関係という視点から見直すと、100年以上続いてきた両国の力の不均衡が露骨に表れた歴史的事件をいくつか思い起こすことができる。

 米国資本による鉄道網の拡大とプランテーション経営、鉱山開発、労働搾取と貧富の拡大が顕著だった革命前のメキシコ。1929年の大恐慌を受けて、国内のメキシコ人のみならず、メキシコ系米国人をも大量に強制送還した米国政府。第2次世界大戦中には米国の食料生産地であるカリフォルニア州など南西部の労働力不足をメキシコからの合法移民で補充するため、1942年に米墨両政府の合意でブラセロ・プログラムを始めたが、1964年に一方的に終止符を打たれたこともあった。

 だが、その後も国境の南からの移民流入は止まることはなく、安価な労働力に対する需要が依然として存在していたため不法移民は増加していった。それ以降、特に米国南西部の労働市場では、不法就労者の労働力に依存する体質が作られた。例えば、カリフォルニア州の農業では現在でも90%近くの労働力は不法移民に依存している。

 1994年に発足したNAFTA(北米自由貿易協定)によって、米国やカナダからメキシコへの人・モノの動きは以前より自由になったが、メキシコから北へは決して自由な流れではなかった。

 NAFTAがメキシコ社会に与えた影響については、現在でも様々な学問分野で検討されているが、農村社会に与えた影響に関しては、この協定が始まって20年以上たった今、より明確に実感できる。

 メキシコの主要作物であるトウモロコシは、米国で効率よく大量生産され輸入された農産物に価格の面で競争できず、国内各地の伝統的な農業社会は経済的に大打撃を受けた。米国の1ヘクタール当たりの生産性はメキシコの平均の2倍だ。そして、農業の崩壊に伴って、若者たちは農業以外の職を求めるようになる。国内の都市部や米国を目指し、人口の大規模な移動が起こったのだ。

 2001年の同時多発テロ以降、米国はメキシコとの国境管理を強化し、莫大な国家予算を使って国境に強化フェンスを設置した。また、無人偵察機やレーダーやセンサーを配備し、軍事的手段をも導入している。当初はテロリストの侵入を防ぐという名目だった「国境の軍事化」は、その後、不法移民と麻薬の流入の撲滅へとターゲットを移行していった。

 本来なら労働市場の体質に焦点を与えて議論されるべき不法移民問題は、米国と国民の安全の問題として議論されるようになった。国境管理と移民政策の強化に伴って、アリゾナ州やほかの州では不法移民を社会的に排除する法案が出され、国内でメキシコ人を中心とするヒスパニック系に対する敵意が向けられる風潮が広まった。

 こうした米国の一方的な移民政策と国境管理の変化によって、多くのメキシコ人が負の連鎖に引きずり込まれた。国境警備の強化によって従来の密入国ルートは変わり、不法移民は警備の薄い砂漠が広がる越境ルートを採るようになった。不法入国者の死亡者が増加しているのはそのためだ。国境警備の強化によって不法入国者の手引きをする密入国業者の料金も高騰しており、10年以上前は2000〜3000ドルで越境できたが、現在は1万ドル近くまで相場が跳ね上がっている。

 また、以前よりも麻薬密輸が難しくなったため、メキシコのカルテルが麻薬を国内でも販売するようになり、国内の麻薬の消費量が増加した。麻薬組織の密輸ルートと国内における麻薬の販売の勢力争いが激化、2006年にカルデロン前大統領の時代にメキシコ政府がこの抗争に介入してから、メキシコ各地で治安が悪化するようになった。

不法移民を最も強制送還させたオバマ大統領

 2008年の金融危機以降、特に顕著になったのは、米国から大量にメキシコ人移民が強制送還されていることだ。あまり知られてはいないが、オバマ大統領は、米国史上最も多くの不法移民を強制送還した大統領と移民研究者の間では評価されている。国境近くで不法入国を取り締まるだけでなく、国内で十数年間米国に暮らしてきた不法移民の検挙数も増加した。強制送還という現実は、既に存在している不法移民の滞在の長期化という傾向を生み出す一方、米国生まれの子供がいる不法移民の家族を引き裂く厳しいものでもある。

 このような過去15年近くのメキシコから米国への移民現象を取り巻く状況で、特に心配なのがナショナルセキュリティーではなく、ヒューマンセキュリティーの観点から移民政策の改正を要求し議論し続けるのに適した政治的風潮から、米国社会がますます懸け離れていくことだ。

 これまで、移民家族の再統合や不法移民の若者の大学教育への機会開放など、米国とメキシコで様々な市民団体が人道的立場からより統合的な移民政策の改正を求めてきた。だが、トランプ政権下でどのように交渉するか、全くの糸口が見つかりそうにない。

 ある意味で、大規模な強制送還を行う政治的なインフラを機能させることができたオバマ政権と異なり、トランプ氏は移民問題に関して、メキシコと不法移民に対して、より厳格で敵意に満ちた態度を示している。

 これまでメキシコとその国民を能動的で攻撃的で閉鎖的な態度で一方的に翻弄してきた米国。その次期大統領は、歴代の大統領よりもその態度を大げさなほど誇示している。トランプ政権がどういう形でメキシコとその国民をチンガールするのだろうか。今この疑問を前に、多くのメキシコ人が動揺している。

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 2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。2人のピュリツァー賞受賞ジャーナリストによるトランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで──。2016年の米大統領選直前、連載「もしもトランプが大統領になったら(通称:もしトラ)」でトランプ新大統領の誕生をいち早く予見した日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が発売中です。ぜひ手に取ってご覧ください。

このコラムについて

ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/011600537/


 
トランプ政権、イスラエル大使館移転が導く動乱

キーパーソンに聞く

米・サウジ関係のカギ握るテロ支援者制裁法
2017年1月19日(木)
森 永輔
いよいよトランプ氏が米大統領に就任する。インフラ投資や減税、通商政策など経済政策に注目が集まる中で、中東政策への発言は多くは見られない。トランプ大統領の下で、中東の大国・サウジアラビアとの関係はどうなるのか。トランプ政権は親イスラエルに一層シフトするのか。中東の事情に詳しい、日本エネルギー経済研究所の保坂修司・中東研究センター副長に話を聞いた。

(聞き手 森 永輔)

保坂 修司(ほさか・しゅうじ)
日本エネルギー経済研究所 中東研究センター副センター長。専門はペルシャ湾岸地域の近現代史、中東メディア論。1984年、慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。クウェートやサウジアラビアの日本大使館で専門調査員を歴任。2006年、日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究理事。
トランプ政権の中東政策はどのようなものになるでしょう。

保坂:とても予測しづらいですね。ここ最近の大統領の中で最も予測しづらい人物です。どの大統領にも言えることですが、就任前と就任してからでは発言や姿勢が変わります。トランプ氏のこれまでの発言から今後を占うのは危険です。さらに、就任してからもいろいろな変化が予想されます。

 トランプ氏に限っては、突発事態が起こることを期待したくなる面がありますね。本来、突発事態によって政策の方向が変わるのは好ましいことではありません。例えば、中東と距離をおくと考えられていたジョージ・W・ブッシュ大統領は、2001年9月11日に起きた9.11同時多発テロを契機に中東を泥沼化することになりました。

 現在明らかになっているトランプ政権の閣僚候補の顔ぶれを見ると、これまでの過激な発言を修正する方向に向かう気がします。例えば、ムスリム移民を禁止するといった過激な発言が話題になりましたが、これはトランプ氏の公式ウェブサイトには出ていません。しかし、1月11日 に行われた記者会見を見ると、このまま行ってしまうのではという不安も拭いきれません。

中東政策を見ていく上で、最も重要なポイントは何でしょう。

保坂:イランとシリアの情勢だと思います。ここに大きな変化が起きると、周囲の他の国にも影響が波及します。

サウジはアサド政権の存続を認める方向へ

イランでの焦点は、トランプ氏の「核合意を破棄する」との方針ですね。この合意は破棄できるものなのでしょうか。

保坂:最近は、「破棄」から「再検討」にトーンダウンしていますね。破棄は難しいでしょう。この合意は米国とイランが2国間で結んだものではなく、英・独・仏など欧州の国や中国も絡んだ多国間のものなので。

 それに、破棄しても喜ぶのはイランの強硬派だけです。彼らは「破棄=核開発への規制解除」と理解するでしょうから。

 現実的に起こりうるのは合意の一部を微調整したり、核関連以外の制裁を強化したりするくらいではないでしょうか。

サウジはこの核合意をどのように評価しているのですか。

保坂:表面上は賛成しています。ただしこの賛成は、@イランが核開発を進めないこと、加えてAイランがアラブ諸国の内政に干渉しないことを米国が保証することが前提です。もちろん、核合意によってイランが国際社会での影響力を増すことは腹立たしく思っているはずです。

シリアについては、トランプ政権はどう動きそうですか。

保坂:ロシアと連携して、過激派組織「イスラム国(IS)」打倒を優先することになりそうです。「IS First」ですね。アサド政権については当面の存続を認める。ロシアの案では、いずれ大統領選挙を行うことになっています。これまで米国はアサド政権の打倒とIS打倒を同時に進める方針を採ってきました。これに代えてトランプ政権は「IS First」を明確にする。

中東の大国であるサウジアラビアは、トランプ政権のそうした動きにどう対応するでしょう。サウジはアサド政権の打倒を訴えてきました 。

保坂:追随すると見ています。サウジにとって、優先順位が高いのはシリアではなくイエメンです。南で国境を接し、サウジ主導で軍事作戦を展開しています。ある程度、面子を保つことができるなら、選挙まではアサド政権の存続を容認するでしょう。

トルコは既に、アサド政権に対するロシアの方針を認める方向に転身しましたね。トルコのエルドアン大統領は面子を保つことができたのでしょうか。

保坂:外から見ると全面降伏でした。サウジの場合は、もう少しうまいやり方をするのではないでしょうか。

トランプ政権が「IS First」に舵をきると、シリアの反体制派ははしごを外されることになりますね。

保坂:和平の枠組みに反体制派をどう取り込むか、サウジやトルコのお手並み拝見というところでしょう。反体制派は基本的には妥協せざるを得ないでしょう。そうでないとテロリストと位置づけられ、すべての関係国から攻撃されることになりますから。

米・サウジ関係のカギ握るJASTAとイスラエル

シリアにおける米国の転身をサウジが認めるのならば、オバマ時代に悪化した米・サウジ関係もリセットできるものでしょうか。

保坂:そうはいきません。サウジとしては、米国がテロ支援者制裁法(JASTA)を破棄、あるいは修正しない以上、時限爆弾を抱えたままということになります。

米国内で起きたテロを支援・扇動した疑いで、米国民が外国政府を提訴できる法律ですね。9.11同時多発テロの犠牲者遺族からの圧力の下で成立したもので、サウジ政府を標的にしたものとされています。「主権免除」の原則を揺るがすものとしても注目されています。この原則の下で各国の政府は、他の国の裁判所で起こされる訴訟の対象から除外されてきました。

保坂:もう1つの課題はイスラエルです。トランプ氏は、イスラエルの米大使館をテルアビブからエルサレムに移すと発言しています 。過去に何人かの大統領が同様の公約をしていましたが、いずれも実現に至りませんでした。なので、今回も大丈夫だとは思うのですが、先日の記者会見を思うと不安ですね。

 エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地であると同時に、イスラエルだけでなく、パレスチナも首都だと主張しています。事実上はイスラエルが1967年の第3次中東戦争以来、実効支配しているのですが 。国際社会は、イスラエルの支配を認めておらず、大使館をテルアビブに置いています 。

 仮にトランプ氏が米大使館のエルサレム移転に踏み切れば、エジプトやヨルダンといったイスラエルと国交を有するアラブ諸国がイスラエルとの断交に動く可能性があります。そうなれば、中東和平は停滞どころか、崩壊してしまいます。パレスチナ支援はアラブ諸国にとって建前にすぎないという考えかたもありますが、建前だからこそ、それぞれの国の政府の統治の正統性を担保するためにも、外せない要素です。米国による大使館移転を許せば、この正統性が崩れて政権が維持できなくなるかもしれません。

 サウジは、イスラエルが1967年の第3次中東戦争で占領した地域から撤退すれば、イスラエルと国交を持つことは可能としています。この話もないものになる。

 トランプ氏の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏はユダヤ教徒。同氏が大使館の移転に向けてトランプ氏を導く可能性もあります。彼は大統領上級顧問 という無責任に発言できる立場ですから。さらに、ネオコンに連なる人々がトランプ政権に関与するようになれば、現実味を帯びてくる。

ネオコンの論客の一人、ジョン・ボルトン元国連大使が国務長官の候補として挙げられていました。

保坂:そうですね。こうした人々が国務省や国防総省の中東担当者に配置されないか注視する必要があります。

石油と安全保障を交換する「特殊」な関係

人事に目を向けると、米エクソン・モービルでCEO(最高経営責任者)を務めたレックス・ティラーソン氏が国務長官に指名されました。石油企業トップの国務長官就任はトランプ政権の中東政策にどう影響しますか。

保坂:石油企業のトップが中東の事情を理解しているかというと、必ずしもそうではありません。我々、中東をウォッチしている者からすると、ティラーソン氏には「無理解」と映る行動がありました。例えば2011年、彼はイラクのクルド自治政府と油田開発で合意しました。当然、イラク中央政府、そして米国務省も猛反発しましたが、結局押し切ってしまいました。しかし、油田の開発は今もほとんど進んでいないと言われています。

エクソンなどの石油メジャーが米フォード・モーターや米空調大手キヤリア のように、米国での雇用を拡大するようトランプ氏から要求を突き付けられることはありませんか。

保坂:石油メジャーの元トップが国務長官として政権にいるのですから、それはないのではないでしょうか。

石油事情についてお伺いします。トランプ氏は、サウジをはじめとする湾岸諸国に対して強硬な発言をしています――ISとの戦いに地上軍を派遣するか、その戦費を融通するかしない限り、石油の輸入を停止する。例えばサウジからの石油輸入がなくなっても米国に問題は生じないのでしょうか。

保坂:米国は、その気になれば石油の自給が可能でしょう。シェールオイルを掘削する技術が進歩してきましたから。ただし、問題はあります。まず石油価格が上昇する可能性があります。米企業のビジネスに対してリーズナブルな範囲に収まるかどうかは分かりません。またシェールオイル開発は環境にかける負荷が大きい。この点をどう考えるか。なので、サウジからの石油輸入を停止するという策は得策とは思えません。

 それに何より、中東の親米国家を米国から離す方向に誘導する策は評価できるものではないでしょう。

石油の輸入停止がサウジにもたらす影響はどうでしょう。

保坂:影響は少なくありません。今でもサウジにとって米国は最大の石油輸出相手国ですし、米国にとってもサウジは最大の石油輸入相手国の一つです。サウジ・米国関係はしばしば「特殊な関係」と呼ばれます。これはサウジが石油を、米国が安全保障を相手国に提供することで相互依存になっているからです。切っても切れない関係と言っていいでしょう。

日米同盟が、基地と安全保障の交換になっているのと似ていますね。

保坂:おっしゃる通りです。したがって、サウジが米国に輸出する石油は安めの価格に設定してあり、それほど旨みがあるわけではありません。仮に米国がサウジ石油を輸入しないとなった場合、サウジが米国向けに売っていた分を市場で売却できるかというと、容易ではないでしょう。

サウジが米軍の駐留費を払う可能性はありますか。

保坂:そもそも、米軍はサウジに駐留していません。したがってバーレーンなど周辺国に駐留する米軍の経費を負担するよう求めているのだと思います。この駐留米軍が中東全体を管轄しているので。

 この経費はバーレーンはもちろん、サウジも負担できるものではないでしょう。原油価格の下落がサウジの財政を苦しいものにしています 。

2015年度の赤字は3670億リヤド、2016年度2970億リヤド(約10兆5000億円)とされていますね。緊縮財政や国債発行、外貨準備の取り崩しでしのいでいます。

アラムコ上場への口先介入あり得る

サウジのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子が注目を集めています。高圧的な性格のようですが、トランプ氏の中東政策に反発することはありませんか。

保坂:副皇太子はまだ31歳と若く、毀誉褒貶の激しい人ではありますが、少なくとも反米という傾向は見られません。むしろ、米国と積極的に関わろうという姿勢を示してきました。2016年5月に訪米しています。

 同氏は2030年を年限とする経済改革「ビジョン2030」を進めています。このプランは“米国製”、すなわち米シンクタンクのマッキンゼーが作成したものと揶揄されることもありますが、エンターテインメントやIT(情報技術)分野の産業を興し、脱石油を図る方針で、実行には米国をはじめとする外国の支援が不可欠です。

 ムハンマド副皇太子について懸念されるのは、サウジの内部、特に王族の中で批判が高まることです。彼はイエメンへの軍事介入の責任者です。これが泥沼化し、犠牲者が増大したり、戦費が高じたりすることがあれば、「ビジョン2030」が頓挫することになりかねません。

ムハンマド副皇太子とムハンマド・ビン・ナエフ皇太子との対立が漏れ伝わってきます。「ビジョン2030」が頓挫すれば、皇太子派は喜ぶのでは?

保坂:国王が皇太子を解任して、実の息子である副皇太子を皇太子にするという噂がまことしやかに流れていますが、王室内部のことはまったくわかりません。

 「ビジョン2030」については国王・皇太子・副皇太子がチームとして責任を負っています。頓挫して喜ぶのはむしろ他の王子たちではないでしょうか。

「ビジョン2030」が掲げる重要政策に一つに国営石油会社アラムコの上場があります。これにトランプ氏が口を挟むことはあり得ませんか。

保坂:あるかもしれませんね。内容は2通り考えられます。一つは、ぜひニューヨーク証券取引所に上場するよう圧力をかけること。もう一つは、ニューヨーク証券取引所への上場を求めるサウジを拒否する内容です。アラムコの財務状況は明らかにされていません。「ニューヨーク証券取引所の上場基準に合っていない」「王族に対してアラムコからどれだけのお金が回っているのか明らかにしろ」などの要求を突き付ける可能性も考えられます。

トランプ政権とサウジとの関係の展望をまとめるとどのようなものになっていくでしょう。

保坂:従来の「特殊な関係」は当面は継続すると思います。サウジは米国から大量の武器を購入しており、使用している武器の大半は米国製です。米国との関係を決定的に悪化させると、サウジはスペアー部品を調達できなくなってしまいます。一方、武器の売り先を失う米国にとっても関係を悪化させるのは得策ではない。ただし関係の振れ幅は大きくなるかもしれませんね。

 当面の米・サウジ関係を見る上でのキーワードは石油、JASTA、アラムコ上場です。長期で見ると、米国は、サウジはもちろん中東への興味を失っていくでしょう。その時にサウジなど湾岸諸国はどうするか。中国やロシアへの接近はあり得ますが、その両国に米国に取って代わるだけの力はありません。

米国が中東に興味を失うのは、シェールオイルの生産が軌道に乗り、中東産の石油に依存する必要がなくなるからですか。

保坂:それもありますが、「中東に関わっているとろくなことがない」と考え始めていることも大きい。ただし、イスラエルが米国にとって死活的に重要であることは容易には変わらないでしょう。

「トランプ解体新書」発売へ

 2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。2人のピュリツァー賞受賞ジャーナリストによるトランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで−−。2016年の米大統領選直前、連載「もしもトランプが大統領になったら(通称:もしトラ)」でトランプ新大統領の誕生をいち早く予見した日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が1月16日に発売されます。ぜひ手に取ってご覧ください。

このコラムについて

キーパーソンに聞く
日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/011600223

 
オバマ政権、米建国の理念を追求し頓挫

オバマ大統領の通信簿

2017年1月19日(木)
森 永輔
1月20日、いよいよトランプ政権が誕生する。
トランプ氏の大統領就任にばかり目が向けられるが、この日はオバマ政権が終了する日でもある。
オバマ政権は、米国の歴史においてどのような意味を持つのか?
オバマ大統領は何を成し遂げようとし、何を実現したのか。
そして、何を成すことができなかったのか。
オバマ政権を総括することで、トランプ政権を評価するものさしも見えてくる。
拓殖大学の川上高司教授に聞いた。

(聞き手 森 永輔)

シカゴでの最後の演説に臨んだオバマ大統領(写真:The New York Times/アフロ)
オバマ大統領が8年にわたる任期を終了します。米国の歴史において、オバマ大統領はどのような意義を持つ存在だったのでしょう。

川上高司・拓殖大学教授(以下、川上):オバマ大統領は最もアメリカらしい大統領だったと思います。「自由」「民主」をはじめとする米国建国の理念を体現し、それを世界に流布しようとしました。私は、この理念の追求こそがオバマ大統領のキモであったと考えます。「核なき世界」の実現を目指したのも、この理念追求の延長線上に位置づけることができるでしょう。

 しかし、この理念の実現は中途半端に終わることになりました。肝心な時に武力行使をためらったために力の真空 が生まれ、リビジョニスト国家(現状打破勢力) が独善的な行動を取るのを許すようになりました。

 パスカルが言うように「カなき正義は無能」 だったからです。オバマ大統領の場合、正確には「力なき正義」ではなく、「持てる力をあえて行使しない正義」でしたが。

ジェファーソン主義を貫く

オバマ大統領が体現しようとした建国の理念とはどのようなものですか。


川上 高司(かわかみ・たかし)氏
拓殖大学教授
1955年熊本県生まれ。大阪大学博士(国際公共政策)。フレッチャースクール外交政策研究所研究員、世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授などを経て現職。この間、ジョージタウン大学大学院留学。
川上:「自由」「民主」「法治」を柱とする理念です。トーマス・ジェファーソンが米国の独立宣言に「すべての人間は平等に造られ、創造主によって生存、自由、幸福の権利を含む侵害されることのない権利を有する」 と記しました。これに集約されていると言えるでしょう。オバマ大統領はジェファーソン主義を信奉しています。

 さらに言えば、オバマ大統領は建国の父達の理念に戻り、テロとの戦争で疲弊した米国を再生し「丘の上の町」(キリスト教徒の模範的な国)に戻し、そのうえで改めてその価値観を世界に普及させたかった。しかし、その想いは道半ばで頓挫し、果たすことはできなかったのだと思います。

 オバマケアの導入はこの理念を現実化した例と言えるでしょう。生存と幸福の権利を追求する手段を低所得者に提供する制度と言えます。まだ産声を上げたばかりであるにもかかわらず、もう消滅してしまいそうですが。

 オバマケアは結果として低所得者が多い有色人種層を優遇する面があります。悲惨な奴隷制度を経験した黒人層に対する贖罪の意味もあったのではないでしょうか。これもジェファーソン主義と軌を一にします。ジェファーソンは奴隷解放を独立宣言に盛り込もうとしましたが、反対に遭い断念せざるを得ませんでした 。

 人種差別については進展がありました。アファーマティブアクションに改善が見られ、「神の下での平等」が実現に近づきました。しかし、この進歩を急ぎすぎたため、大きな反動が生じた。2014年8月にミズーリ州ファーガソンで白人警察官が黒人青年を射殺する事件が起きました 。その後も、同様の事件が相次いでいます。「居場所を失った」と感じる白人が疎外感を覚え、不満をためることになり、トランプ次期大統領を生み出す力になったと言えるでしょう 。

 この背景には人口動態上の変化もあります。2050年にはヒスパニックをはじめとする非白人の数が白人を上回ることが予想されています 。

核なき世界の実現は目標倒れに終わってしまった感が強いですね。日本としては、米大統領による初の広島訪問が実現した点が印象的でしたが。

川上:そうですね。イランの核開発はストップさせることができました。しかし、北朝鮮は依然として開発を継続しています。ロシアとの核軍縮は、当初より少し前進というレベルにとどまっています。

リビジョニスト国家とはどこを指しますか。

川上:中国が台頭し、ロシアが復活しました。中国については、言うまでもなく、南シナ海に人工島を作り軍事施設の建設を進めています。

 ロシアは2014年3月にクリミアを併合しました 。

 中東ではロシアが新たな秩序を作り上げようとしています。シリアのアサド大統領は依然としてその地位に留まっている。米国が2015年7月 、イランとの核合意に踏み切ったため、イランもこの動きに乗って動いています。

 この動向は周辺国にネガティブな影響を波及させています。米国の同盟国であるイスラエルとサウジアラビアは不満の度を高めています。オバマ政権が中東におけるロシアの動きを許している背景には、シェールオイルの開発技術が進歩し、中東への興味を失ったこともあるでしょう。

 テロとの戦いは、アフガニスタンとイラクからの撤退は実現しました。しかし、ドローン攻撃や特殊部隊による作戦が依然として続いています。

世界の警察を放棄

「肝心な時」とはいつだったのでしょう。

川上:やはり、シリアで2013年に、アサド政権による化学兵器使用が発覚した時だったと思います。あの時は武力行使をすべきでした。しかし、その是非を米議会に一任し、結局踏み切らなかった 。このためロシアや中国などのリビジョニスト国家が米国の足元を見るようになりました。

 さらに、オバマ大統領はこの時、「米国は世界の警察官ではない」と、する必要のない発言をしました。2016年1月の一般教書演説にも同様の発言を盛り込みました 。これらがロシアや中国に「何をしても米国は武力で応じることはない」「米国と全面戦争に至ることはないだろう」と思わせることになったのです。この発言が、米国が戦後築き上げてきた秩序を崩壊させるメッセージになったと思います。

 オバマ大統領が紛争の解決に軍事力を行使する気がないのは、「アジア回帰」「リバランス」政策にも表われています。軍事力をアジアにシフトさせる方針を提示したものの、アフガニスタンやイラクから撤兵させた兵士は米国本土に戻し、アジアにはあまり回さなかったようです。

 私は「リバランス」の意味が途中で変わってしまったと理解しています。オバマ政権の1期目では、台頭する中国をにらみ、軍事的に勝利すべく軍事力をアジアに移動させるというニュアンスが強く出ていました 。しかし、2期目に入ると、勝利ではなくパワーバランスを保つことが目標になった。

 これは、実は、アジアに限らず全世界的に言えることです。地域ごとに米国の基軸国を定め 、基本的にはその国に地域の安全保障を任せる 。東アジアで言えば日本が基軸国になります。そして、米国の安全保障に重大な影響が生じると判断した時のみ 、バランサー として戦力を投入する。

 米国が同盟を結ぶのは負担を分担させるため、そして、自らが紛争に介入する事態を避けるためです 。こうした方針は2012年1月に発表した新国防戦略「全世界における米国のリーダシップの堅持−21世紀の国防戦略の優先事項」に記されています 。

ジェファーソン主義は一国平和主義

オバマ大統領はどうして米国に力があるにもかかわらず、それを行使しなかったのでしょう。

川上:これもジェファーソン主義 を信奉するゆえだと思います。ジェファーソンは、世界の政治に関与することなく 、米国の防衛・国益 を最大の目標とし、最も低コストで危険の少ない外交を志向しました 。言い換えれば「孤立主義」 「一国平和主義」「米国だけが安全で反映すればよい」 という考えです。オバマ大統領の考えは「新孤立主義」、もしくは「アメリカ・ファースト」の走りと呼ぶことができるでしょう。

 加えて、リーマンショック後の経済立て直しのため膨れ上がった巨額の財政赤字を削減すべく、2013年4月に歳出強制削減措置に署名 したことも影響しています。それまで聖域であった国防費を、以降10年間で7000億ドル以上削減する必要が生じました 。米国は大規模な紛争を戦えない国になったのです 。

 米議会下院で共和党が多数を奪取したことも、歳出強制削減措置を成立させる力になりました。

 オバマ大統領が軍事力に代えて行使しようとしたのはスマートパワーです 。軍事力のみならず、外交、金融、文化、サイバー空間での対応などを、選択的かつ自在に使い分ける 。彼は、弁護士出身であることもあり、法による秩序を重視します。しかし、法を破ったものを力で罰することには熱心ではありませんでした。

もし2008年にクリントン大統領が誕生していたら

もしリーマンショックがなかったら、国防費を削る必要もなく、米国が世界の警察であり続けた可能性はありますか。

川上:そうかもしれません。しかし、やはりオバマ大統領がジェファーソン主義を信奉していることの方が影響力が大きいように思います。例えば歳出強制削減措置に署名しないという選択肢もあったのではないでしょうか。同法の成立には、「財政の無秩序な拡大を避けたい」というオバマ大統領が自らに課した面もあったように思います。

ヒラリー・クリントン氏とオバマ大統領が抱く理念は同じでしょうか。そうだとすると、オバマ氏ほど武力行使をためらわないクリントン氏が2008年に大統領になっていたら、現実は今とは違ったものになっていたかもしれないですね。

川上:ええ。オバマ大統領とクリントン氏が抱く理念はかなり近いと思います。そのクリントン氏が武力行使も辞さずに理念の実現を進めていたら、今の無秩序は生まれていなかったかもしれません。

クリントン大統領だったら、白人が疎外感を覚えることもなく、トランプ大統領が生まれることはなかったかもしれません。オバマ氏が大統領に当選した時、川上先生は同氏が暗殺される危険性を指摘されていました。

川上:そうですね。確かに2008年から、現在に至る分断が始まっていた。あの時にクリントン氏が勝利していたら、トランプ大統領は生まれていなかったと思います。

「トランプ解体新書」発売へ

 2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任する。トランプ新政権のキーパーソンとなる人物たちの徹底解説から、トランプ氏の掲げる多様な政策の詳細分析、さらにはトランプ新大統領が日本や中国やアジア、欧州、ロシアとの関係をどのように変えようとしているのか。2人のピュリツァー賞受賞ジャーナリストによるトランプ氏の半生解明から、彼が愛した3人の女たち、5人の子供たちの素顔、語られなかった不思議な髪形の秘密まで−−。2016年の米大統領選直前、連載「もしもトランプが大統領になったら(通称:もしトラ)」でトランプ新大統領の誕生をいち早く予見した日経ビジネスが、総力を挙げてトランプ新大統領を360度解剖した「トランプ解体新書」が1月16日に発売されます。ぜひ手に取ってご覧ください。

このコラムについて

オバマ大統領の通信簿
オバマ政権とは何だったのか?
1月20日、いよいよトランプ政権が誕生する。
トランプ氏の大統領就任にばかり目が向けられるが、この日はオバマ政権が終了する日でもある。
オバマ政権は、米国の歴史においてどのような意味を持つのか?
粘り強く、慎重で、言葉の力を信じる理想主義者は、何を成し遂げようとし、何を実現したのか。
そして、何を成すことができず、何を停滞させたのか。
オバマ政権誕生の時に生まれた期待。その期待の何が叶って、何が裏切られたのか。
オバマ政権を総括することで、トランプ政権を評価するものさしも見えてくる。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011700040/011700002

http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/364.html

[政治・選挙・NHK219] 改憲の論点2:歯止めなき衆院解散権の是非 今だから知りたい 憲法の現場から 内閣の解散権は「国民のため」にある 
改憲の論点2:歯止めなき衆院解散権の是非

今だから知りたい 憲法の現場から

内閣の解散権は「国民のため」にある
2017年1月19日(木)
神田 憲行、法律監修:梅田総合法律事務所・加藤清和弁護士(大阪弁護士会所属)
 今月20日から通常国会が招集され、自民党は衆参両院の憲法審査会の場で、改憲項目の絞り込みを進めるという。

 憲法改正を論ずるとは、この国の望ましい統治機構の在り方を模索することでもある。憲法改正の必要はあるかないかという入り口の議論ばかりではもったいない。具体的な論点についての議論を重ねれば、たとえ改正に至らなくても、国民の憲法に対する意識や「この国のかたち」について考えが進むはずだ。

 政治家たちが憲法問題を政局化せず正面から論じ、国民はその議論を追いつつ、自らの見識を深めていく。憲法改正論議は私たち国民にまたとない政治教育の場となるだろう。

 各党・議員の発言の中には、興味深い憲法改正の論点が含まれている。いずれも改正するかしないかは別として、そのような議論そのものが議会制民主主義の発展に資するものである。

 前回の「参議院の合区解消」に続き、今回取り上げる論点は、「内閣の衆議院解散権の拘束」だ。
(前回記事「改憲の論点1:参院合区と一票の格差の狭間」から読む)


安倍首相は2014年11月、消費増税の延期を含むアベノミクスへの信認を争点に、衆議院の解散・総選挙に踏み切った。(写真:AP/アフロ)
司法判断が下されてない衆院の7条解散

 「内閣の衆議院解散権の拘束」という論点も重要である。

 現在、衆議院をいつ解散させるのかは内閣の専権事項とされている 。総理大臣の胸の内を忖度して、政治記事の中に「解散風が吹いてきた」のような表現が使われることも珍しくない。解散があるのかないのか、総理大臣周辺の議員が記者と禅問答のようなやりとりをすることもある。

 しかし内閣の解散権が憲法上、どのような根拠に基づくのか、憲法学の世界で長く議論の対象になってきた。

 憲法で内閣が解散できる場合を明示しているのは69条しかない 。

《69条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない》

 この条文からわかることは、内閣が衆議院を解散できるのは、内閣不信任案が可決されるか、信任案が否決されたときである。戦後 、衆議院の最初の解散はまだ占領下にあった1948(昭和23)年12月23日に吉田茂内閣のもとで行われた。GHQが69条のみの解散に限定されるという解釈を示したため、与野党の話し合いで野党が内閣不信任案を提出して可決し、解散した(なれあい解散)。

 しかし戦後2回目は1952(昭和27)年8月28日、吉田首相が憲法69条によらず、同7条3号を根拠に解散をした(抜き打ち解散)。

《7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行う。
 三 衆議院を解散すること》

 7条は天皇の国事行為を定めた規定であり、天皇は政治的権能を有しないから、これを根拠に解散することができるのだろうか。衆議院議員の苫米地義三氏は「抜き打ち解散」の無効の訴訟を提起した。だが最高裁は1960(昭和35)年、

《衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であって、(中略)、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限の外にありと解すべきことは(中略)あきらかである》

 と、いわゆる「統治行為論」を示して憲法判断を回避した(苫米地事件)。ここでも司法はボールを政治に投げ返している。

憲法学では「7条を根拠にした解散も可能」

 憲法学では7条を根拠にした解散も可能としている。

《「天皇が国政に関する権能」という性質を持たないのは、助言・承認権によって内閣が実質的決定権を有するからである。ゆえに、解散権についても、それが天皇の国事行為とされていることから、内閣が実質的決定権を有すると解される》(野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利著『憲法U』)

 もっとも「7条解散説」が一点の曇りもなく論理的に明快かというとそうでもなく、日本憲法学の権威である故・芦部信喜東京大学名誉教授は著書の『憲法』の中で、

《この問題は、そもそも憲法の条文の不備に由来するもので、どの見解(注・解散を根拠づける論理)が正当であるかを決めることは難しい》

と指摘し、樋口陽一東京大学・東北大学名誉教授も結論は常識的に妥当としながらも、その論理的問題点を指摘している。

 7条解散が政治的慣行として確立しているのは、衆議院の解散がリアルタイムに民意を反映する効果があると考えられたからである。議会が常に解散の脅威にさらされている方が、議員たちに常に民意を意識した行動を取らせることが可能になるのではないか、との考え方だ。

 たしかに日本では、野党が重大な案件について、内閣に解散をして民意を問え、と要求することも多い。だがヨーロッパでは自由な解散には批判が寄せられ、議院内閣制のモデルであるイギリスも2011年に解散権を制限する法律を制定した。

 では内閣総理大臣が解散権を憲法69条に限らずに行使できるとして、その限界はないのだろうか。裁判例では1986年の衆参同日選挙について、国政上、国民に改めて信を問うべき場合に当たらないので憲法15条1項・3項、42条、47条等に違反すると裁判が起こされたケースがある。だが名古屋高裁は翌年、衆議院の解散は「統治行為」に当たると最高裁判例を踏襲し、選挙に関する事項は法律事項(憲法47条)であり、選挙の基本理念を侵害しない以上、公選法に同日選禁止規定を設けるか否かは立法政策の問題だとするなどして、訴えを退けた。

「総理大臣の胸先三寸でご破算」とはいかがなものか

 憲法学では、69条に縛られない内閣の解散権を認めつつも、一方で、党利党略、内閣の一方的な理由による解散はやはり不当だとして、総理大臣の解散権行使が許されるケースとして、「69条の場合」「総選挙の争点でなかった新たな重大な政治課題に対処する場合」「内閣が基本政策を根本的に変更する場合」などに限るべき、としている。

 これまでの憲法審査会で民進党の武正公一氏は前回の衆議院解散を「『いまのうち解散』とされたことは解散権の乱用」と発言している。

 また法学や政治学などの専門家でつくる「立憲デモクラシーの会」も、前出のイギリスの例を引きながら解散権を見直すべきだとする見解を公表した。

 内閣(総理大臣)には69条の場合に限定されない自由な解散権があるとして、それが無制限にいつでもOKというのは、憲法学云々を脇に置いても直感的に疑問がおきないだろうか。衆議院選挙は多大な費用と人手が要る。そうやって国民が総動員して投票したものが、敢えて言えば総理大臣の胸先三寸でご破算になる、というのはどうなのか。

 内閣の解散権が69条にのみ限定されないとしても、党利党略にもとづく恣意的な解散は許されないということは、7条の「国民のために」という文言からも理解されよう。このような憲法の精神を尊重してきた慣行を「憲法的習律」という。

 内閣の解散権の行使についてどのように考えるのか。この機会に各政党、各議員に今一度確認したい。

*1月20日公開「改憲の論点3:抑止力としての憲法裁判所の意義」に続く


このコラムについて

今だから知りたい 憲法の現場から
日本国憲法が揺らいでいる。憲法解釈を大きく変更した安保法が国会で成立し、自民党はさらに改憲を目指す。その根底にあるのが「押しつけ憲法論」だ。だが日本国憲法がこれまで70年間、この国の屋台骨として国民生活を営々と守り続けてきたのも事実だ。本コラムでは、憲法史上に特筆すべき出来事が起きた現場を訪ね、日本国憲法が果たしてきた役割、その価値を改めて考えていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/120100058/122800011

 
http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/366.html

[経世済民117] 林業から観光まで、「宇宙の目」が地方を救う 宇宙商売 ビッグバン JTB キモイ奴の名刺は、シュレッダーにかけなさい!

林業から観光まで、「宇宙の目」が地方を救う

宇宙商売 ビッグバン

JTBが宇宙ビジネスに取り組む理由
2017年1月19日(木)
飯山 辰之介
 2017年1月16日号の日経ビジネスの特集「宇宙商売 ビッグバン」では、宇宙の商用利用が進んでいる現状を詳報した。宇宙にロケットを飛ばしたり、衛星を打ち上げたりするのは限られた企業しか手掛けられないかもしれない。一方で、衛星データをうまく活用すれば、地上からでも宇宙は十分に活用できる。その利用方法は幅広い。「宇宙の目」をどう使うか。工夫次第では地域産業の活性化につながるかもしれない。
 2016年12月21日、熊本市内にあるホテルで内閣府宇宙開発戦略推進事務局が主催する「スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク(S-NET)」の第1回分科会が開かれた。S-NETは宇宙をキーワードに新産業や新しいサービスの創出を目指すネットワーキング組織で、全国の関心ある企業が参加している。


昨年12月に熊本市で開かれた宇宙活用の分科会
 議論された主要テーマの一つは熊本県で盛んな「林業」だ。特集でも触れた通り、既に農業では衛星画像を使って農作物の生育状況を分析する技術の実用化が進んでおり、漁業では海水温や潮流などの衛星データを集め、養殖の効率化に結び付けようとする試みがある。同様に林業でも「衛星データをうまく使えば競争力を高められる」と分科会で登壇したウッドインフォ(東京都中野区)の中村裕幸代表は期待する。

宇宙の目で森林資源を把握

 ウッドインフォは情報通信技術(ICT)を活用し、林業の効率化を進めようと取り組むベンチャー企業だ。森林を3次元レーザースキャナーで計測し、地形や立木の位置、樹木の種類や形状などを細かく正確に把握できるシステムの開発を手がけている。このデータを基に付加価値の高い木を選び出して伐採することで、林業の生産性を高めようとしている。

 この地上のレーザーを使った森林資源把握の弱点は、カバーできる範囲が限られることだ。人が歩き回って計測する必要があるため「1日2〜3ヘクタールが限度」(同)という。衛星画像があれば広大な森林を俯瞰し、土壌の質や日当たりなどが良く、立木の生育に適したエリアを見分けられる。伐採するエリアに目星をつけて、細かい状況把握には地上でやるという合わせ技を使えば、レーザー計測の弱点が補えるわけだ。

 鹿児島大学農学部の寺岡行雄教授は「昭和30年代に植林されたスギなど、国内には利用可能な豊富な森林資源がある」と指摘する。だが、実際に利用できるのは全体の3割程度といわれる。山から製材所に木材を輸送する手間を考えると、林道に近いエリア以外で伐採しても、採算が合わないからだ。

 残りの7割を使っていくためには、林道を通して搬入の手間を省いていく必要がある。この課題を克服するのにも「生育状況を俯瞰して育ちの良いエリアを特定できる宇宙の目が生きる」(ウッドインフォの中村代表)という。衛星画像があればこうしたエリアに効率よく林道を通す計画を立てられるからだ。

 ウッドインフォは既存の計測システムに衛星のデータも取り込めるよう足元で開発を進めている。農業、漁業に加え林業まで、1次産業の多くの分野で衛星の活用が見込めるようになってきた。うまくいけば、こうした産業に頼る地方経済の活性に繋がっていくだろう。

準天頂衛星使って町おこし

 地方活性という切り口でもう一つ、衛星の活用が見込めそうなのが観光だ。

 JTBコーポレートセールスは2015年10月、石川県金沢市の湯涌温泉で、衛星を使ったイベントが楽しめるツアーを実施した。この温泉地は人気アニメ「花咲くいろは」の舞台となった。いわゆる「聖地巡礼」需要を取り込もうと、2011年から観光協会などが中心となってアニメで登場する架空の「湯涌ぼんぼり祭り」を実際のお祭りとして再現。毎年1万人以上が訪れる人気イベントに育てた。

 JTBはスマートフォンの専用アプリを作り、金沢市内のアニメにゆかりのあるスポットを回るとオリジナル画像が手に入るツアーを合わせて実施。100人のアニメファンが参加し、好評を博したという。


JTBが手がけた準天頂衛星を使ったツアーのパンフレット
 位置情報を取得するのに活用したのは準天頂衛星という日本独自の測位衛星だ。米国のGPS(全地球測位システム)より精度が高く、高い建物や山々に囲まれていても正確な位置情報を取得できる。現在は2010年に打ち上げられた「みちびき」の1機しか運用されていないため、サービスを利用できる時間帯が限られるが、2018年度からは4基体制となり、いつでも利用できるようになる予定だ。

 「正確な位置情報を活用して、国内外の観光客に向けトイレの場所を示したり、(建造物などの)情報を提供できるようなサービスが展開できるようになるだろう」とJTBコミュニケーションデザインの古関和典・プロモーション事業部JTBピクチャーズマネージャーは準天頂衛星に期待を寄せる。

 宇宙から見れば、地方と都市の差はわずかなもの。農林水産など一次産業の生産性改善から観光イベントまで、業種、地域の別なく幅広く宇宙は「使える」。今後、その利用のハードルはますます下がっていくだろう。この究極の飛び道具をどう活用するかが、幅広い産業にとって成長のカギになりそうだ。


このコラムについて

宇宙商売 ビッグバン
2017年、宇宙を舞台にしたビジネスが一気に拡大するビッグバンが到来する。ロケットや衛星の打ち上げ価格が劇的に下がり、 企業によるデータ活用や輸送、資源開発などに無限の可能性が広がる。あらゆる産業を変える「宇宙商売」の最前線に迫る。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/011300103/011800003


 
キモイ奴の名刺は、シュレッダーにかけなさい!

職場を生き抜け!

2017年1月19日(木)
吉田 典史
nikkeiBPnetの人気コラム「職場を生き抜け!」は2017年1月から、日経ビジネスオンラインで掲載することになりました。これからもよろしくお願いします。過去の記事はこちらからご覧ください。

「うちの会社は、労使が難しい関係でして…」

 キモイ奴の名刺をシュレッダーで処分する。このことがいかに大切であるかー。今回は、私の経験をもとに考えます。

 まず、一例を挙げましょう。私は昨年、精神を破壊させられそうになりました。ある出版社の男性編集者と組んで、連載を数か月にわたり書いたのです。編集者が時間や予算、それぞれの記事の内容などについて一定のコントロールをします。書き手である私に助言などを機会あるごとにするのです。

 ここまでは多くの出版社で見られることであり、問題はありません。精神破壊の作用が働くのは、ここからです。結論から言えば、編集者の話すこと、メールで書くことのほとんどが信用できなくなったのです。

 例えば、労働組合の役員を取材し、記事として掲載したところ、メールを送ってきます。「部内で、この記事は左翼的という声がある。今後は、経営サイドの記事にしてほしい」。

 ところが、ほかの連載には労働組合の役員が登場しています。編集者に質問をすると、メールで回答がありました。「うちの会社は、労働組合と経営陣が難しい関係でして…」とあります。なぜか、電話では説明をしないのです。

 記事の内容と、会社の労使関係が何の関係があるのか、意味がつかめません。どうにも理解ができないので、この出版社の退職者数人に電話で確認すると、こう話していました。「労働組合は、はるか前に御用組合化している。役員らと関係が悪いなんてありえない」。

 どちらの言い分が、事実関係として正しいかは断言できないものがあります。ですが、少なくとも私からすると、釈然としない思いが残りました。

嘘の上に嘘をぬり固める編集者

 さらに気分が悪くなったのは、こんなメールです。「(原稿の中の)この言葉は、全国紙のA紙、B紙では使われていないので、うちでも使用しないようにしています」。

 奇妙に思いながらネットで検索すると、2つの新聞社はもちろん、ほかの全国紙も通信社もその言葉を使用しているのです。急いでこの編集者にメールで確認しました。

 今度は、「編集長がこの言葉を使うな、と言っています」と返信をしてきます。その都度、回答や話す内容が違うのです。本人も嘘の上に嘘をぬり固めるからなのか、何が事実で、嘘であるのか、自分にもわからなくなっているようでした。

 とどめは、こんなメールです。「今回の記事について、〜という指摘の電話が読者からありました。したがって、〜という方向で記事を書くのをやめてください」。

 正確にいえば、この編集者は数年前からこのようなことを書いて送ってきます。「読者からの電話やメールが…」というものです。なぜか、男性のところだけに電話やメールが集中するようです。魔訶不思議なことです。

 ここ10数年で90〜110人の編集者と仕事をしましたが、こんなことをメールに書いてくる人はほとんどいません。この編集者はサイレント・マジョリティー、つまり、電話やメールを送ってこない多くの読者には配慮をしないのです。こちらは考えるほどに、後味が悪く、沈んだ気分になります。

 編集者は暗闇の中、灯りのような存在となり、書き手をリードしていくのが使命です。この編集者は書き手がどこに進むべきか、わからないようにします。自分自身も心得ていないようです。ただ、社内や部内の空気などには敏感で、おびえているような感じはします。

お酒で愚痴っても、潜在意識には残ってしまう

 私はたまらず、退職者数人に改めて電話をして確認しました。10年近い付き合いになるある方の解釈は、このようなものでした。

「本人の性格によるもの、だと思う。神経症な一面があるのかもしれない。社内の雰囲気や世論めいたものを観察し、先回りをしているのではないか。それが深読みになっていて、嘘や妄想に近いものになっているのかもしれない。

 あの会社は、出版界の一流とまでは言わないが、その次に位置するセカンドグループ。一流出版社への屈折した劣等感やその反動の優越感からか、社員は自尊心が高く、互いにけん制し合いながら仕事をする傾向がある。こういう中では、空気を読んで生きていくことが必要と本人は考えているのではないか」

 私は、イメージが湧いてくるように気がしました。男性編集者は周囲が自分をどう見ているのか、と不安になりがちだったのかもしれません。それがエスカレートし、疑心暗鬼になっていた可能性もあるのでしょうか。その結果として、部署や社内の空気や世論などを先回りし、嘘や創作の回答や返信をしていたのではないか、と思えるようにもなりました。

 それにしても、気分を悪くする人でした。さすがに、よその会社である全国紙の記者のように振る舞い、語ることには、あきれました。私はその出版社と仕事をしているのであり、この際、他社のことは関係がないはずです。少々の嘘はともかく、その内容や頻度がここまでくるともはや、一線をこえているように思えたのです。

 昨年末の大掃除のとき、この編集者の名刺をシュレッダーにかけました。お酒を飲んで、「あんな編集者は…」と愚痴をこぼすことはしませんでした。それでは、意識の中に残ってしまいます。

 もう、一切の存在を消したかったのです。そのままにしておくと私の意識がいよいよ、おかしくなりそうでした。嘘だらけに見えて、何を信じるべきなのか、わけがわからないのです。

シュレッダーで “断ち切る”

 やや話が広がりますが、フリーのライターや物書きは、数年以内に多数が消えます。仕事がなく、収入が少ないからです。書くことの収入のみで生きている人は、ごく少数です。では、なぜわたしは、かろうじて生きていくことができているのか。

 理由の1つは、キモイ編集者の名刺をシュレッダーにかけているからだと思います。この“儀式”により、「マトモな人」とだけ仕事をするのだという意識を、繰り返し自分に刷り込んでいるのです。その反復が、本当に大切なのです。

 自分に何をインプットしているのか―。それがどれほどに多いか。質が高いか。フリーの身である私にとっては、これらが勝負です。

 インプットにより自己像を高いものにするためには、日ごろから、マトモな編集者で、一定のレベルを超えている人とだけ、仕事をするようにしていくことです。必ず、「仕事でつきあっていい人といけない人」の間に線を設けるのです。その線がないと、あらゆる編集者に「お客様は神様」と言わんばかりにすり寄っていかざるを得なくなります。

 「つきあっていい人といけない人」の間に線を設けると、先の男性のような編集者に違和感を覚えます。「マトモではなく、一定のレベル以下」と判断するようになります。すると、自分の潜在意識が「こんな奴の名刺はシュレッダーにかけろ!縁を切れ!」と指示をしてくるのです。ためらうことなく、シュレッダーで名刺を処分するようになります。

 縁が切れることは、一時期、その仕事の収入を失うことであり、痛手となりますが、心配はいりません。インプットの蓄積があれば、数か月以内にマトモな編集者で、一定のレベルを超えている人が不思議と目の前に現れます。しかも、はるかに上のレベルであり、収入も増えていくのです。気がおかしくなりそうな人と我満して仕事をしていると、不幸しか訪れません。

 私は自分の力を顧みず、ハイレベルなものをインプットすることが多いかもしれません。結果として、自己像を実際以上に高いものにしているはずです。

 ただ、それは、実力以上でかまわないのです。自己像を強力にするために、それを裏付けることをインプットしまくるのです。そのために、自己像を高めてくれる人とコミュニティーを作るべきなのです。

 すると、「こんな人と組まない」と思えるボーダーラインなどがますます明確になります。これが短期的には損をするものの、中長期的には大きな得をする「生き残り戦略」です。

名刺を処分して困ったことは一度もありません

 とはいえ、多くのフリーランスも会社員も、すぐには目の前の取引先や上司、先輩、同僚らとの関係を切ることはできないでしょう。だからこそ、シュレッダーで名刺を処分するのです。これで、少なくとも潜在意識の中での「服従」や「理不尽な関係」はしだいに弱くなっていくはずです。

 私は、今回のような編集者から、強烈な負のエネルギーや波動を感じるのです。いったん、それに影響を受けると、自分の心や意識、感情がマイナスの方向に向かいます。 シュレッダーで名刺を処分すると、「こんな奴は、どうでもいい」と思えるようになり、一気に爽快な気分になります。本当に、空が青々と見えるようになります。

 そのマイナスの波動を引き寄せてしまうのは、実はあなた自身なのです。「俺はこの上司の下につかざるを得ない」「ほかの会社に移ったところで、通用しない」「自分は結局、ここで埋没する」などと、潜在意識として決めてかかっているだけのことです。

 これらには、何ら根拠がないのです。まさに幻想であり、妄想であり、思い込みでしかありません。間違ったものをふだんから潜在意識にインプットしまくっているから、ゆがんだ自己像を持つのです。所属するコミュニティーも誤りである可能性があります。自分を否定したり、へこませたりするような集団には入るべきではないのです。

 あなたの評価は、上司や取引先などがします。しかし、値打ちや価値はあなた自身が決めること。潜在意識に、そんな輩たちを無断で入れさせ、価値まで下げさせてはいけないのです。

 人との出会いに、別れはつきものです。会うは別れ、と言います。その儀式として、「シュレッダーで名刺を処分しなさい!」と機会あるごとに呼びかけています。昨年夏、私立大学の大学院で話す機会に恵まれた際も、力を込めて訴えました。「キモイ奴の名刺は、シュレッダーにかけなさい!」。

 私は、この20数年で通算500〜600人ほどの名刺をシュレッダーにかけました。名刺を処分して、その後、困ったことは1度もありません。つまりは、そのレベルのつきあいだったということです。

 今年、何枚の名刺をシュレッダーにかけたか、競い合いませんか?そもそも、この世の中のつながりのすべてが、「かけがえのない、切っても切れない関係」なんてありえないでしょう。1枚もないというのは、問題かもしれません。


筆者愛用のシュレッダー

このコラムについて

職場を生き抜け!
「夜逃げした社長」から「総理大臣経験者」まで――。これまで計1200人を取材してきたジャーナリストが、読者から寄せられた「職場の悩み」に答えるべく、専門家、企業の人事担当者への取材を敢行する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011600039/011600002/
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/915.html

[国際17] 米国人学者の結論「アジアの世紀はもう終わり」政治も経済も停滞、一方で高まる戦争の危機  風雲急を告げる東アジア
米国人学者の結論「アジアの世紀はもう終わり」政治も経済も停滞、一方で高まる戦争の危機
2017.1.18(水) 古森 義久
韓国・ソウルの市街地。北朝鮮軍はソウルに通じる地下トンネルを掘っていた(写真はイメージ)
「アジアの世紀」は終わった――。こんな主張を展開する書籍がワシントンの国際問題関係者たちの間で話題になりつつある。

 アジアこそが世界の経済成長、技術革新、人口増加、そして繁栄と安定の源泉だとうたわれて久しい。しかし本書は、アジア、太平洋地域に明るい希望が満ちていた時代は終わりつつあると断言する。その代わり、アジアは経済不況や紛争危機のリスクが高い重苦しい地域になってきたというのである。

 本書『アジアの世紀の終わり』(原題"The End of the Asian Century War, Stagnation, and the Risks to the World’s Most Dynamic Region")は、2017年1月の頭にイェール大学出版局から刊行された。著者はワシントンの大手研究所「AEI(American Enterprise Institute)」で日本研究部長を務めるマイケル・オースリン氏である。オースリン氏は日本研究から始まり、最近ではアジア全般の課題について活発に論評し、気鋭の学者として注目されている。

ソウルに通じる北朝鮮軍の地下トンネル

"The End of the Asian Century"の表紙
 20世紀後半から21世紀にかけて、アジアや太平洋地域は目覚ましい経済成長を達成し、政治的、社会的、文化的にも北米や欧州などに劣らぬ大きな存在感を示すようになった。そうした実績から、20世紀、あるいは21世紀の世界は「アジアの世紀」だとも呼ばれてきた。

 だが、オースリン氏の認識は大きく異なる。アジア各地での調査と研究に基づき、アジアの実態も展望も決して明るくはないという考察を提示するのだ。

 本書の冒頭でオースリン氏は、韓国の首都ソウルのすぐ近くにある北朝鮮軍の地下トンネル跡に足を踏み入れたときの体験を記している。韓国側が発見して接収したこのトンネルは、元々韓国を攻撃するために造られ、北朝鮮領内からわずか四十数キロのソウル市に通じていた。

 オースリン氏は「地上ではソウルの繁栄と安定が目覚ましいが、地下では北朝鮮と韓国がすぐにでも戦争を始める危機が現存する。この縮図はまさにアジア全体を象徴していると感じた」と述べる。

 またオースリン氏は、アジアでさまざまな要因によって経済が停滞し、政治が不安定となり、軍事衝突の危機も高まってきたことを報告し、その状況が世界の他の地域を悪い方向へと巻き込んでいく可能性が高くなったと指摘する。

 そしてそれらを踏まえて、アジアの世紀と騒がれた時代は間違いなく終わりつつあると総括する。

アジアの時代を終わらせる5つの要因

 本書のなかでオースリン氏は、アジア、太平洋地域の繁栄や安定の終わりを告げる要因として以下の5点を挙げていた。

・奇跡的な経済繁栄の終わりと経済改革の失敗

 日本からインド、中国まで、アジア諸国の驚異的な経済成長はそれぞれ異なる理由で衰え始めた。なかでも大きいのは経済改革の失敗だろう。全世界は、とくに中国の構造的な経済破綻に備える必要がある。日本の経済もかつてのような活力を回復することはない。

・人口動態の問題が深刻化

 アジア諸国はどこも人口の縮小や偏りに悩まされている。インドのカルカッタから東京にきた筆者は、カルカッタが人口過剰なのに対して東京は高齢者ばかりというあまりの人口の偏りの落差に衝撃を受けた。日本も中国も、労働人口の減少が深刻な負の経済要因となってきた。技術革新も追いつかず、アジアの若者の未来は暗い。

・独裁制でも民主制でも政治革新が停滞

 中国の独裁政権下での政治不安はますます深刻となった。日本やインドのような民主主義国でも、腐敗、無関心、シニシズム(冷笑主義)、縁故主義などに政治が蝕まれている。とくに国民に自由のない中国や北朝鮮での政治的な不安は、爆発的な危険を帯び、全世界に危機をもたらす。

・アジア各国の相互連帯が欠如

 アジア、太平洋の諸国は欧米での北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)のような地域内相互の絆がない。文化や社会の共通性はある程度存在するが、相互を強く結びつける連帯の制度も共通の価値観もほとんどない。

・戦争の危険

 現在のアジアには軍事衝突から戦争へとつながる潜在危機の要素が19世紀のように数多くある。最大の要因は中国の軍事拡張主義といえるが、北朝鮮の挑発的な行動も大きい。アジアには核兵器保有国が北朝鮮を含めて4カ国もあるため、いったん戦争が起きると危険は容易にグローバル規模にまで拡大する。

 オースリン氏のこうした見解には反対論も提示され、ワシントンのアジア研究関係者たちの間で「アジアの世紀」をめぐって活発な議論が展開されるようになった。

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48950


 


中国に厳しい米政権誕生で風雲急を告げる東アジア
偉大さ復活競う米国と中国、日本は何をすべきか
2017.1.16(月) 樋口 譲次
尖閣問題で日本防衛確認=南シナ海で対中強硬姿勢−次期米国務長官
米上院外交委員会の公聴会で証言する次期国務長官候補レックス・ティラーソン氏(2017年1月11日撮影)〔AFPBB News〕
「偉大なアメリカの復活」VS「中華民族の偉大な復興」

 世界中に「トランプ・ショック」を与えた「大統領らしくない」ドナルド・トランプ氏が大方の予想を覆して、世界で最も影響力のある超大国米国の次期大統領に選任された。

 選挙期間中は、人種差別や女性蔑視などと非難された政治的に危うい発言や、「メキシコ国境に壁を!」「イスラム入国禁止」など、過激で誇張の多い言動を繰り返したが、それでも米国民の厳粛な審判は「歴史に残る番狂わせ」と言われる結果に落ち着いた。

 むろん、すでに終わってしまった選挙戦について云々するのは、本論のテーマではない。

 これから、トランプ新政権が採るであろう戦略や政策、その中にはTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)離脱や在日米軍駐留経費の全額負担要求といった、そのままではわが国にとって望ましくない内容も含まれるが、特に21世紀の最大の脅威である中国に対する戦略や政策が、わが国の安全保障や防衛にどのような影響を及ぼすかに大きな関心が寄せられる。

 2017年1月20日に第45代米国大統領就任式を控えたトランプ氏の戦略や政策は、就任宣誓演説や2月の最初の一般教書などで逐次明らかになろうが、選挙期間中から今日までの動きで、そのアウトラインが少しずつ顕わになっている。

 トランプ次期米大統領が示した最大の公約(国家目標)は、「偉大なアメリカの復活(Make America Great Again)」であり、それを果たすために「アメリカ最優先(America First)」の政策を採るということである。

 また、大統領選挙直後の勝利宣言において、トランプ氏は「全米国民の大統領として、米国の夢を実現する」と誓った。

 米国の夢としての「偉大なアメリカの復活」にも、また「アメリカ最優先」にも、中国などの台頭によって米国のパワーと地位が相対的に低下しつつあるとの深刻な認識が作用しているのは間違いなかろう。

 かたや中国は、「中国の夢」としての「中華民族の偉大な復興」を国家目標とし、欧米が中心になって築いてきた国際秩序に代えて、自国が中心となる国際的枠組み、すなわち「中華的新秩序」の形成を外交戦略の重要な柱に掲げている。

 両国の国家目標を比べてみると、大変似通ってきたことに気づかされるが、それは偶然の一致ではない。既存の超大国と、これに追いつき追い越そうとする新興大国との覇権的対立の構図がその根底にあるからだ。

 バラク・オバマ大統領は在任間、中国に対して、いわゆる融和的関与政策を採ってきた。

 しかし、トランプ次期米大統領がなりふり構わない姿勢で「偉大なアメリカの復活」と「アメリカ最優先」を打ち出したことで、中国との外交、経済、安全保障・軍事などの分野で、両国の摩擦や衝突は避けられず、これからの両国間の戦略・政策調整には大きな困難を伴うことが予想される。

 むしろ、事態はより先鋭化して真っ向勝負になる恐れが強まるとの見方が有力になって来るかもしれない。

 そこで、これまで公表されたトランプ次期大統領及びその周辺の対中国戦略・政策に関する発言や論調を、外交、経済、安全保障・軍事の項目に従って概観し、トランプ政権の対中国政策の行方を占ってみることにする。

より厳しい対中外交へ

 米国は、1979年の米台断交以来「1つの中国」政策を堅持してきたが、トランプ次期米大統領は、12月2日、台湾の蔡英文総統と電話で直接話し、米台の緊密な経済・政治・安保関係を確認した。

 米台断交以来初めてとなる米国次期大統領と現職の台湾総統との電話会談は、数十年にわたる米国の外交政策の慣例から明らかに逸脱するものである。

 また、トランプ氏は、その後のテレビ番組で、「『1つの中国』政策のことは十分認識している。しかし貿易などほかのことに関して中国と話がまとまらない限り、我々がなぜ『1つの中国』政策に縛られなければならないのか分らない」と語った。

 さらに、「我々は中国の通貨引き下げ、国境での重い関税、南シナ海の真ん中の巨大な要塞建設などのためにひどい損害を被っている。・・・北朝鮮があって、核兵器がある。中国はその問題を解決できるのに、我々に何の協力もしていない」と主張した。

 中国にとって最優先の「核心的利益」である台湾問題をはじめ、いずれも中国にとって重大な問題に対する主張や批判であることから、トランプ次期政権の対中外交の変化を予測させるのには十分である。

 トランプ氏は、不動産王の億万長者として有名であるが、政治的経験は全くない。したがって、その外交政策は、外交ブレーンや共和党の政策に影響される度合いが強いと言われている。

 トランプ氏の外交ブレーンは右派、タカ派で固められており、上下両院で優勢な共和党が掲げる外交政策は一貫して強硬的であり、政党の政治リーダーがトランプ氏に及ぼす影響はオバマ大統領に及ぼすより大きいと見られている。

 つまり、オバマ政権下では人権問題をはじめとする、いわゆる価値外交で中国に大幅に譲歩してきたが、トランプ政権は中国の人権や民主化等の問題について過去8年間との区別を示すことになろう。

 一方、トランプ次期政権下の駐中国米大使を巡る人事は、次期政権の対中外交政策を占うもう1つの視点として興味深い。

 トランプ氏は、次期駐中国大使にアイオア州ノテリー・ブランスタド知事を指名した。同知事は、1985年に農業視察団として同州を訪れた習近平国家主席と面識があり、指名にあたってトランプ氏は「中国指導部と相互に有益な関係を築ける」と述べた。

 台湾の蔡英文総統との電話会談や「1つの中国」政策への疑念、中国の通商政策への批判、南シナ海問題や北朝鮮の核を巡る対中抗議など、今後の中国への強硬姿勢を窺わせる一方で、習主席と面識のある駐中国大使の起用は、米中間のスムースな意思疎通のパイプを維持しようとする次期政権の意図を示すものとして注目される。

 とはいえ、前記の通り、中国との基本問題に対する対立要因がますます大きくなることが予想されることから、次期政権の対中外交は、中国の怒りを買うことも厭わない、より厳しい外交政策に転じる可能性を含んで推移することになろう。

さらに強硬な対中経済・通商政策へ

 生粋の経済人であるトランプ次期米大統領は、自身の真価を発揮するために、その経済政策において「偉大なアメリカの復活」と「アメリカ最優先」の公約を最も忠実に、また最も強力に推し進めることは間違いなかろう。

 トランプ氏は、選挙期間中から、中国の通商政策に猛烈な批判の声を上げてきた。その批判は、中国の輸出政策や人民元切り下げ、米国の知的財産の侵害など、広範な分野に及んでいる。

 特に、中国は「最も強大な為替操作国」であり、中国製品に45%の懲罰的な関税を課して輸入を規制し、不公平で不均衡な対中貿易の赤字を減らし米中貿易を均衡化させると力説した。

 人事面を見ると、トランプ氏は、米通商代表部(USTR)代表に、貿易を巡る問題を長年手がけてきた弁護士で、中国に対する強硬派として知られるロバート・ライトハイザー氏を指名すると発表した。

 また、国内対策では、外国への雇用の大量流出を阻止する戦略構築に当たる「国家通商会議」(NTC)をホワイトハウス内に新設することを明らかにし、その議長には、長く中国の経済政策を指弾してきた経済学者のピーター・ナバロ氏を充てる予定である。

 これ以上述べるまでもなく、トランプ氏の対中経済・通商政策は至って明快で、中国との間に貿易摩擦が生じるのは避けられず、通商面、経済面でさらに強硬な政策を採る可能性が高まるのは必至の情勢といえるのではなかろうか。

ロシア主敵から中国主敵の安全保障・軍事戦略へ

 トランプ次期米大統領が指名した安全保障・軍事ブレーンには、大きな特徴がある。主要ポストに3人の退役将官と保守派の論客が指名されたことである。

 大統領首席補佐官は、イラン戦争やアフガン戦争の従軍経験がある元米陸軍中将で、2012年から2014年、国防情報局(DIA)長官を務めたマイケル・フリン氏である。国防長官には、ジェームズ・マティス元中央軍司令官(元海兵隊大将)を指名した。

 「狂犬」のあだ名で呼ばれる猛将で、米軍きっての戦略家との名声が高く、同盟を重視する立場である。また、国土安全保障長官には、ジョン・ケリー退役海兵隊大将を指名した。そして、国家安全保障問題担当の大統領補佐官には保守派の論客として知られる女性のK・T・マクファーランド氏を起用する。

 このように、トランプ政権の安全保障・軍事ブレーンは、いずれも、実戦あるいは現場経験豊富なリアリストによって固められており、その戦略・政策の基本方向は、「弱腰」と非難されたオバマ政権に比べてより現実主義路線を指向することは確実である。

 トランプ氏は、中国の覇権的拡張の動きに対抗してアジア太平洋における米軍のプレゼンスを高めることに同意している。

 他方、日本や韓国に対しては、米軍駐留経費の負担増や防衛支出増を要求するとともに、日本、韓国、台湾の核武装化にも言及した。これらは、トランプ政権下で、今後予想される軍事力の大幅強化に踏み切る可能性とともに、同盟国に一層の役割・負担増を求めてくるシグナルと見ることができよう。

 台湾については、蔡英文総統との電話会談や「1つの中国」政策への疑念を述べたことで、トランプ政権と中国との対立激化の要因としてクローズアップされる恐れがある。

 オバマ大統領は、米国の2017年会計年度(2016年10月〜2017年9月)の国防予算の大枠を定めた国防権限法案に署名し、同法が成立した。

 この法案には、米台間における軍高官などの交流を国防省に促す付帯条項が含まれ、台湾との軍事関係改善や防衛協力強化を目的として、今回初めて明文化されたものである。この方向は、ねじれが解消され、共和党が上下両院で優勢なトランプ政権下で、さらに強化されていくものと見られている。

 南シナ海問題では、トランプ氏は「(中国は)南シナ海で巨大な軍事施設を建設しても良いかと我々に尋ねたか? 私はそうは思わない」と述べ、中国による南シナ海の軍事拠点化への反対を表明した。

 具体的な戦略・政策については触れられていないが、「航行の自由作戦」では埋め立て岩礁の軍事基地化の阻止・無効化にはおのずと限界があることから、それ以上の有効な対応策が練られ、実行に移されるかどうかが今後の注目点である。

 最近発行されたフォーリン・ポリシー(2016年12月20付)で、米国防省のブライアン・マッキーオン政策担当次官代理が部下に示したメモが公開された。このメモには、トランプ氏の国防省政権移行チーム長であるミラ・リカルデル女史が述べた「トランプ氏の国防優先事項」(President-elect’s Defense Priorities)が含まれている。

 オバマ政権下で発出された直近の「国家軍事戦略(2015)」では、米国の安全保障を脅かす国家(脅威対象国)として、ロシア、イラン、北朝鮮および中国を列挙し、「最大の脅威はロシア」(当時のダンフォード次期JCS議長)だと名指しで非難していた。

 しかし、トランプ氏の4つの優先事項の中には、ISIS、北朝鮮および中国が含まれているが、従来から一番の脅威としたロシアが含まれていない。もしこれが事実であり、政策に反映されるとすれば、国際情勢に重大な影響を及ぼす劇的な変化として注目せざるを得ない。

 トランプ氏は、選挙期間中から、共和党の伝統である対ロシア強硬路線を破ってロシアとの関係を改善すると約束するとともに、ロシアのプーチン大統領を称賛しまくっていた。オバマ大統領からは、トランプ氏はプーチン大統領を「ロール・モデル」にしていると批判されたほどであった。

 選挙後、オバマ大統領は、ロシア政府による大統領選挙へのサイバー攻撃で米国の国益が害されたとして、ロシア外交官の国外退去などの制裁を加えた。しかし、ロシアのプーチン大統領は、「報復措置をとる権利は留保している」として、トランプ次期政権の「ロシア・リセット」路線の行方を見定めようとしている。

 このように、トランプ氏によって対露戦略・政策の大転換が図られ、ロシアとの改善を目指す融和協調路線に動くとするならば、反対に中国の脅威が否応なしにクローズアップされ、その矛先が中国に向けられることは容易に察しがつこう。

 つまり、トランプ新政権においては、中国との戦略・政策調整の努力がなされる当分の間、その安全保障・軍事の戦略・政策に目立った変化は見られないかもしれない。

 しかし、南シナ海問題、北朝鮮の核ミサイル開発、それに「1つの中国」論と台湾などを焦点として両国の調整が不調に終われば、ロシアに代わって中国を主敵とした米中の対立が長期化・深刻化する可能性が高まると見るのが至当であろう。

日本は「自助自立の防衛体制」の確立が最優先

 今回の米国大統領選挙は、外交・安全保障の分野から見れば、大統領選挙が本格化した2016年8月にランド研究所が「中国との戦争―考えられないことを考える」と題する報告書を公表して、米中覇権戦争論が波紋を広げたように、世界における「米国の役割」を巡る論争が大きな争点であったことに特色があった。

 トランプ候補が「偉大なアメリカの復活」を最大の公約(国家目標)としたゆえんであり、中国の台頭が、超大国米国による既存の安全保障環境に大きな影響を及ぼし、その地位にとって代わろうとする挑戦と映じるからである。

 古代ギリシャの歴史家トゥキュディデスは、紀元前5世紀における古代ギリシャの既存の覇権国であるスパルタと新たに台頭するアテネの緊張関係を観察し、アテネの台頭とそれに対するスパルタの懸念が「ペロポネソス戦争」を引き起こしたと結論づけた。

 この「新たな覇権国の台頭とそれに対する既存の覇権国の懸念(fear)が戦争を不可避にする」との仮説は「トゥキュディデスの罠」と呼ばれ、これから米中関係が引き起こす可能性の高い対立局面を示唆しているのかもしれない。

 オバマ政権下の米国の政治は、「世界の警察官」としての米国の責務を果たすうえで、その意思と能力に大きな疑念を抱かせる8年間であった。しかし、第2次大戦後に米国が担ってきた「世界の警察官」としての国際社会の平和と安定を維持するという責務は、トランプ政権に移行しても一朝一夕に放り出せるものではない。

 むしろ、新政権は、オバマ政権下で弱体化した米国のパワーと地位を取り戻し、米国の存続を願う「アメリカの夢」を追求しようとしているように見える。

 しかし、それでもなお、冷戦後の米国一極支配の世界は、中国の台頭などによって多極化の世界へと変容し、米国のパワーと地位が相対的に低下していく趨勢は無視できない現実として受け止めざるを得ない。

 そのような国際安全保障環境の下で、世界第3位の経済力を持ち、東アジアひいては国際社会で指導的立場にある日本はどうすべきか――。その答えは簡単明瞭である。

 少なくとも日本は、独立国家として当たり前の「自分の国は自分の力で守る」自助自立の防衛体制を確立することを大前提として、同盟国米国の相対的な国力低下を補完する努力を惜しまず、同時に国際社会の責任ある立場で、その平和と安全の確保により実際的な行動が求められていることを自覚するにほかならない。

 21世紀における最大の脅威は、世界に中華的覇権を拡大しようとする中国である。アジア太平洋地域の安全保障環境が一層厳しくなるなか、米国にトランプ政権が登場することは、日本の安全保障・防衛そして日米同盟のあり方を今一度見つめ直すよい転機として、この際肯定的に受け止め、積極的に対応していくべきであろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48912



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[国際17] プーチン氏が本当にトランプ氏から得たいもの 狭い国益が国際的なルールに取って代わる世界 米国の諜報活動と政治
プーチン氏が本当にトランプ氏から得たいもの

狭い国益が国際的なルールに取って代わる世界
2017.1.17(火) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙?2017年1月13日付)

対日貿易赤字に不満=南シナ海人工島で中国非難−偉大な米国、鮮明に・次期米大統領
米ニューヨークのトランプタワーで記者会見するドナルド・トランプ次期大統領(2017年1月11日撮影)。(c)AFP/TIMOTHY A. CLARY〔AFPBB News〕
?クレムリンにすり寄ったら、ヤケドをしても驚いてはいけない。

?米国のドナルド・トランプ次期大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領に心酔することの危うさを認識するには、トランプ氏に近づいてその評判を落とそうとしたロシア側の取り組みについての、あの忌まわしく、裏付けのない話を信じる必要などない。トランプ氏は裕福な不動産開発業者で、プーチン氏はロシア連邦保安庁(FSB)という無慈悲な組織のトップだった人物だ。役者が違いすぎる。

?トランプ氏がホワイトハウス入りする前から、プーチン氏は早速大きな勝利を獲得した。米国の諜報機関が次回、安全保障上の脅威を感知して伝えようとするとき――例えば、ロシアがウクライナに再度侵攻するとか、選挙で選ばれた東欧諸国の政府を転覆させたりするといった事態になったら――クレムリンには反論材料がある。

?ホワイトハウスの主が中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA)、連邦捜査局(FBI)といった諜報機関を信用しないとなれば、一体ほかの誰が諜報機関を信用するのだろうか。トランプ氏は大統領の座を勝ち取るために政治のルールをすべて破ったが、米国の安全を守ることを使命とした部署と敵対する大統領とは、一体どういうことか。

?確かに、諜報機関の言うことが常に正しいとは限らない。CIAにはサダム・フセインの兵器プログラムについて判断を誤った過去がある。CIAはこのツケをさらに何年も払い続けることになるだろう。だが、大統領選挙期間中にクレムリンが民主党のコンピューターに侵入したと報告したとき、CIAなどの諜報機関はこれ以上ないほど自信満々だった。

?連邦議会における共和党の指導者たちは、諜報機関の報告を言葉通りに受け止めた。トランプ氏が次期国務長官に指名したレックス・ティラーソン氏は、そのようなサイバー攻撃はプーチン氏の承認があって初めて行われるものだというのは「もっともな想定だ」と述べている。

?ところがトランプ氏は、悪い知らせを伝えてきた人に腹を立てる方を好む。例えば、ロシア政府がトランプ氏個人の不名誉な情報や資料を集めていた疑いがあるとの情報が先日漏れたことについては、米国の諜報機関が自分を魔女狩りの標的にしている証拠だと述べていた。トランプ氏が答えを求めるでもなく「ここはナチス時代のドイツか?」と怒りをあらわにするとき、すぐに思い浮かぶ形容詞は「unhinged(錯乱した)」という言葉だ。

?11日に行われた、とりとめのない、怒りに満ちたトランプ次期大統領の記者会見を見た人でも、同氏が提案する米ロ関係のリセットがこれでどうなるのか分かったと答えられる人はいないだろう。同氏はまだ、プーチン氏と仲良くやりたいと主張している。だが、仲たがいするかもしれないとも付け加えている。

?確かに、民主党全国委員会(DNC)のハッキングは恐らくクレムリンの仕業なのだろうが、米国の諜報機関によるリークは本当に恥ずかしいことだった。また、ロシアと良好な関係を築くことは過激派組織「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」との戦いに寄与するだろう。しかし、バラク・オバマ大統領が講じた直近の対ロ制裁措置をトランプ氏が後退させることはない。

?ホワイトハウスという場でロシアの大統領に「敬意」を示せば緊張が緩和されるととの見方に、異を唱える人はほとんどいないだろう。プーチン氏は、世界的な問題を話し合う主要国のリーダーとして認められたいと思っている。批判に敏感なところはトランプ氏と同じだ。ナルシズムにおいては兄弟のようだ。トランプ氏がプーチン氏に親愛の情を示し、それでプーチン氏の傷ついたプライドが癒やされるのであれば、それは大変結構なことだ。

?米国とロシアが両者の相違を何とか管理する方法を見つけてくれれば、世界はその分安全になる。冷戦が最も激しかった時期には、そうした配慮が一定の効果をもたらしていた。両国はここ数年、東欧やバルト諸国で再び軍備を増強したが、どちらもまだ何も得ていない。また、核弾頭の数も多すぎる。両国が偶発的に対決してしまうことになるリスクは、決して無視できるものではない。

?危険が生じるのは、関与が服従の同義語になるときであり、必要な抑止が挑発だと誤解されるとき、そして、ロシア政府との「対話」が譲歩するのは常に西側だという一種の地政学的なリアリズムに変わってしまうときだ。

?トランプ氏がロシア政府から何を得たいと思っているかははっきりしないが、プーチン氏が目指すところは明白だ。

?同氏はまず、ロシアによるウクライナでの失地回復主義政策や、シリアのアサド政権を支えるために行った一般市民への無慈悲な爆撃を、西側に黙認させたいと思っている。そしてロシアに対する経済制裁を解除させること、ゆくゆくは欧州から米軍を撤退させること、最後に旧ソビエト連邦の領土にロシアの勢力圏を築くことを願っている。

?ロシア政府の高官が欧州の新たな安全保障構造について語るとき、彼らが意味しているのは米国のプレゼンスの終焉だ。冷戦は終わった、米国は故郷(くに)に帰れ、というわけだ。このプリズムを通して見れば、ウクライナはもとよりジョージア(グルジア)、ベラルーシ、モルドバ、中央アジアまでがすべてロシアに「属している」。片や、北大西洋条約機構(NATO)はもはや目的を失っており、かつてワルシャワ条約機構に属していた国々に用はないはずだ、ということになる。

?こうした野心が絵空事に聞こえるのであれば、トランプ氏が公の場でNATOを軽蔑したり同盟国への支援を気まぐれに回避したりすることが、プーチン氏につけいる隙を与えた。トランプ氏はパックス・アメリカーナ(米国の覇権による平和)を維持することよりも、ほかの大国と「取引」することの方に関心がある。欧州諸国は自衛のためにカネを払えばいい、というわけだ。

?プーチン氏が描く世界はトランプ氏が描く世界と同じだ。狭量な国益が国際的なルールや基準に取って代わる世界であり、弱い国々が強い国に服従する世界だ。欧州ではかつて、これを力の均衡(バランス・オブ・パワー)と呼んでていた。

?トランプ氏の動きを阻むものも存在する。まず、ハッキングのスキャンダルは同氏の動機や判断に対する疑念をもたらしている。また、ティラーソン氏の議会上院の指名公聴会から何かを読み取るとしたら、それはトランプ氏の所属する政党はプーチン氏とはいささか異なる見方をしているということになるだろう。

?だが、ロシア政府が緒戦の成功で満足することはない。また、トランプ氏が正式に大統領に就任したら何をするのかは、まだ誰にも分からない。どうやら、今の状況を危険な時代という言葉で表現するのは、控えめすぎるようだ。

By Philip Stephens
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48931


 


 


米国の諜報活動と政治:トランプ氏のスパイ叩き
2017.1.18(水) The Economist
   

(英エコノミスト誌 2017年1月14日号)

米CIA長官、トランプ氏は「発言に気を付けろ」 対ロ認識も批判
米首都ワシントンで開かれたシンクタンクの討論会で発言するジョン・ブレナン中央情報局長官(2016年9月14日撮影、資料写真)。(c)AFP/ZACH GIBSON〔AFPBB News〕
ドナルド・トランプ氏は容赦ない批判によって、諜報機関に対する信頼を台無しにしている。

 ドナルド・トランプ氏はあまり記者会見を開かない。だが、1月11日のように、開くときには(昨年7月以来初の会見だった)どんな次期米国大統領の記者会見とも全く異なるものになる。

 トランプ氏は原稿を読まずに話し、メキシコと医薬品業界を脅し、おだてた(製薬会社の株価は急落した)。自分の商才を自慢してみせた(そしてある程度、自身の利益相反の度合いを減らした)。ロシアの諜報機関がトランプ氏の弱みを握っており、選挙中に同氏の部下らと協力したという衝撃的な報道には、冷笑を浴びせた(問題の報告書の存在を明らかにしたニュース専門局のリポーターに対しては怒鳴り倒した)。

 これらはただのハイライトにすぎない。会見は一度にあまりに多くの方向に話が飛んだため、見ていた人は、米国の安全と安心のためにトランプ氏が即座に封じるべきドラムの音に気づかなかった可能性がある。

 米国の諜報機関に対してトランプ氏が抱き続ける敵意がそれだ。

諜報機関を敵に回す

 関係はすでに不安定だった。選挙の前、米国の諜報機関は、トランプ氏の対抗馬のヒラリー・クリントン氏に打撃を与えた文書を、ロシアがハッキングし、盗み、リークしたと結論付けたことを世間に知らせた。大半の機関は(すべてではないが)、ロシアの意図はトランプ氏が勝つのを手助けすることだったと考えている。

 トランプ氏はこれに対し、2003年のイラク侵攻前に米国の諜報機関は大量破壊兵器について間違っていたとあざ笑った。

 つい先日はさらに見苦しい事態となった。諜報機関がトランプ氏に、多くの人の多大な努力にもかかわらず、内容の裏付けが取れていない報告書の要約を提出したことがリークされたのだ。

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無から有を創り出す中国のプロパガンダ戦略 (2017.1.17 森 清勇)
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中国に厳しい米政権誕生で風雲急を告げる東アジア (2017.1.16 樋口 譲次)
「偉大な田舎者」トランプが世界経済を混乱させる (2017.1.13 池田 信夫)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48941


http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/366.html

[政治・選挙・NHK219] 前代未聞の党大会 共産党の置かれている状況とは? 「野党連合政権」を掲げるが前途は厳しい 
前代未聞の党大会 共産党の置かれている状況とは?
「野党連合政権」を掲げるが前途は厳しい
2017.1.17(火) 筆坂 秀世
日本共産党はなんとしてでも「野党共闘」を崩壊させるわけにはいかない(写真はイメージ)
?1月15日から4日間の日程で日本共産党の第27回党大会が静岡県・熱海で行われている。過去に外国の共産党代表が出席したことはあるが、日本の他の政党が出席したことはない。ところが今回の党大会には、民進党の安住淳代表代行、自由党の小沢一郎代表、社民党の吉田忠智党首が出席し、連帯の挨拶を述べた。

?最終日の18日に採択される決議案には、こう述べられている。

「『日本共産党を除く』という『壁』が崩壊した。この『壁』は、1980年の『社公合意』(筆者注:社会党と公明党の合意)を契機につくられ、1990年代前半の『自民か、非自民か』というキャンペーン、2000年代の『二大政党の政権選択』というキャンペーンなど、形をさまざまに変えながら続き、自民党政治に対抗する野党勢力の大同団結の最大の障害になってきた。しかしいまや『壁』は過去のものとなり、日本共産党は、新しい対決構図の一方の極で、重要な役割を果たしている」

?大会で志位委員長は、野党代表の出席に欣喜雀躍(きんきじゃくやく)しながら、この決議案の正しさを強調していた。

「共産党を除く壁」は本当に崩壊したのか

?だが、果たしてこれが本当に正しい分析なのであろうか。

?確かに1980年の社公合意は、「日本共産党を排除する」ことを最大の目的にしたものであった。だがもともと日本共産党と日本社会党は、1960年代、70年代に地方政治の分野で共同して東京、京都、大阪などで革新自治体を作り上げた際も、国政段階での選挙協力にまで踏み込むことは一切なかった。絶えず激しい批判合戦を繰り返していたのが、社共両党だった。

?その論争は、労働組合運動や原水爆禁止運動など幅広い分野に及んでいた。ここにつけ込まれて社会党と公明党による合意がなされたのである。その意味では、壁は共産党自身の唯我独尊的な態度が作り出してきたとも言える。

?ましてや1990年代の「自民か、非自民か」という争いや、2000年代の「二大政党の政権選択」においても共産党排除が目的であったなどというのは、どこにも通用しない議論である。

「自民か、非自民か」というのは、自民党を抜け出した小沢一郎氏らが自民党政権を倒すために設定した対立軸であった。その結果、自民党を野党に転落させ、細川護熙政権を誕生させた。「二大政党の政権選択」も同様である。安倍、福田、麻生と続いた自民党政権に国民は、辟易していた。そこに民主党が「政権交代」を対立軸に掲げて鳩山由紀夫政権を誕生させたのである。

?いずれの場合にも、政権交代、自民党を懲らしめたいという国民多数の声が反映していた。「共産党を除く」ことが主要な課題であったことなどまったくない。ただ共産党が埒外に置かれていたというだけのことである。

?まったく無関係なことまで持ち出して、何でもかんでも「共産党を除く」という路線のせいにするのは、この間の共産党の低迷の真の要因を覆い隠し、他に責任を転嫁するものだと言わざるを得ない。

「野党連合政権」という珍妙な表現の理由

?党大会では、志位委員長が行った中央委員会報告で、「野党と市民が本気で共闘をすすめるなら、野党連合政権の問題は避けられないことを解き明かし、戦後の日本政治で初めて焦眉の課題として自民党政治を本格的に転換する野党連合政権をつくる可能性が生まれていると指摘。日本共産党としてありとあらゆる努力を傾ける決意を表明」(16日付「しんぶん赤旗」)したそうである。

「野党連合政権」などという珍妙な表現は初めて聞いた。連合政権を作ることに成功したなら、それらの政党は野党ではなく与党となる。「野党連合政権」という表現には相反する意味が含まれており、そもそもあり得ない表現である。

?実はこの表現にこそ、連合政権の難しさが端的に示されている。共産党は、かつては「革新連合政権」などと言っていた。分かりやすく言えば、左派連合政権と言ってよい。自民党保守政権に対し、ともかくも明確な対立軸を提示していたのである。だがソ連崩壊、冷戦の終結、日本社会党の事実上の消滅などによって、「革新勢力」などという言葉はすでに死語になっている。

?ましてや大物保守政治家である小沢一郎氏が参加する政権が、“革新”政権であるわけもない。つまり、明確な旗印を立てるができないのが、今の野党連合だということである。

?昨年の参院選の際には、「安保法制廃止」の一点での共同ということで野党の選挙協力が行われ、それなりの成功を収めた。解散・総選挙が今年になるのか、来年になるのかは不明だが、衆院選挙の場合には、政権選択の選挙にしなければならない。そうなれば幅広い政策での一致が必要となる。だがこの面で民進党と共産党が一致するのはそう簡単なことではない。

?いまのところ一致しているのは、「反安倍」ということだけであり、政策的な中身がないのである。

?共産党の志位委員長が、「安倍晋三政権を倒した後の政権構想を示す責任がある」と述べたのに対して、民進党の蓮舫代表は、「安倍政権を倒すことに一番力を注ぐ。そこから先の話は残念ながら考え方が違う」と冷たく言い放っている。要するに“政権を共にしない”というのが蓮舫代表なのである。これでは共通政策を掲げることもできない。この困難さがあるからこそ、「野党連合政権」という珍妙な命名になってしまったということである。

?さらに付け加えるなら、共産党は「安倍暴走政権」という表現を定型句のように使っているが、国民に定着した言葉ではない。それどころか1月14日、15日に行われたJNNの世論調査では、安倍内閣の支持率は6%増え、67%にまで上昇している。政党別でも支持率が上昇しているのは自民党だけで、民進党、共産党も含め、他の政党はすべて低下している。こんな独りよがりでは、到底、政権につくことなどできないだろう。

共産党は民進党に譲歩するはず

?それでも衆議院選挙での野党間の選挙協力は、間違いなく行われるだろう。それは両党共に、選挙協力がプラスをもたらすからである。

?ただ、参院選挙のように上手くいくかどうかは微妙である。

?民進党と共産党の競合小選挙区は197ある。このうち共産党は15選挙区を必勝区と設定している。民進党は、参院選挙の時のように相互推薦はしないというのが現段階での方針のようである。しかし、だからといって民進党候補がいるところで共産党候補が立候補すれば、民進党候補が自民党候補に勝つことはほとんどの選挙区で不可能である。当然、共産党に候補者を降ろすよう求めてくるはずだ。

?共産党が必勝区と設定しているのは、15選挙区だけである。逆に言えば、残りの選挙区は、民進党など他の野党に大胆に譲歩できるということである。

?朝日新聞(1月16日付)に、「共産、共闘へソフト路線?自衛隊、独自の立場抑制/自己改革訴え?党大会」という見出しで、<綱領で将来の「解消」を明記している自衛隊も「独自の立場を持ち込まない」。さらに「国民の共産党に対する誤解や拒否感」を認め、「自己改革を進める」とした。>という記事が掲載されている。

?この記事にあるように、共産党が野党共闘関係を絶対に壊したくない、続けたいと願っていることだけは間違いない。そのためには、最終的には民進党に大幅に譲歩することになるだろう。

?共産党は今年で党創立95周年を迎える。他の政党と共闘して政権を目指すというのは、新しい方針でも何でもない。党創立以来の方針である。戦後も、社会党が存在していた時には、何度も共闘を呼びかけてきた。だが一度も実現したことはなかった。昨年の参院選が国政選挙での初めての選挙協力だったのである。これを絶対に手離したくない共産党が、民進党に大胆に譲歩することは間違いない。

?もし野党共闘が崩壊すれば、共産党はまた自主孤立の道を歩むしかなくなってしまう。共産党にとって、党の命運がかかっているのが野党共闘なのである。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48937
http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/368.html

[中国10] 無から有を創り出す中国のプロパガンダ戦略 『孫子』はいまも生き続けている  中国当局、今度はモバイルアプリを統制 


無から有を創り出す中国のプロパガンダ戦略
『孫子』はいまも生き続けている
2017.1.17(火) 森 清勇
中国「W杯出場の夢をかなえるチャンス」 出場枠拡大を歓迎
2018年サッカーW杯ロシア大会のアジア予選で、国旗を振りながら中国代表チームを応援するサポーター〔AFPBB News〕
2017年の国際社会には大変革が起きる予兆が溢れている。日本の同盟国である米国には予測が難しいドナルド・トランプ新政権が誕生する。中国の習近平政権は2期目を迎えようとしており、「中国夢」の実現に邁進するとみられる。

「覇権を目指すのではなく、平和的台頭を目指す」という中国のごまかしに米国が気づいたのは、ここ数年のことである。

中国は1949年の中華人民共和国(中共)以来、何世紀にもわたって西洋諸国から受けた屈辱を2049年までに晴らす「100年計画」を持っていた(ピルズベリー『China2049』)というのである。

かつて中国は、ソ連が覇権国であるとして日本や米国に同調と協力を求めていたが、その間にもケ小平は「韜光養晦」(才能や野心を隠して、周囲を油断させ、力を蓄えていく)戦略を堅持し、今では香港の一国二制度を定めた中英共同宣言を「無効」と言い募り、南シナ海の人工島では国際仲裁裁判所の判決を「紙屑」と称するように、覇権国家を目指していることは明確である。

しかし、米国の認識は甘いし、依然として中国の本質を理解していないと言わざるを得ない。

毛沢東が率いる中共の前には、蒋介石が率いた国民党の中華民国があった。国民党と共産党はお互いを騙しつつ政権獲得のために、時には戦い時には合作して日本に立ち向かった。

この時の最大の支援国は米国であったし、1920年代以来、中国に騙され続け、中国に同情と支援を送り続けてきたからである。

以下では、蒋介石の国民党がフランクリン・ルーズベルトの米国をいかに騙し続けたか、その延長線上に南京事件を大虐殺に欺瞞していくプロパガンダがあり、米国も共犯者の一翼を担っていたことを検証する。

中国に加担する米国

ジョン・マクマリーはワシントン会議(1921‐22年)に参加し、1925年に中国駐在公使(当時の最高位)となるが、国務省としばしば衝突し、29年に辞職した中国問題の最高権威の一人と考えられていた。

1935年に「戦争が近づいている」と警告するメモランダム(『平和はいかに失われたか』)を書き、米国がとるべき政策について提言した。

共産主義の浸透を阻止しようと戦っていた日本を米国は理解しないで、最終的には日本が担っていた重荷を肩代わりする羽目になったという趣旨のことを、のちに外交史家のジョージ・ケナンは述べ、マクマリーの先見洞察力を称賛している。

マクマリーは、ワシントン条約と決議は「中国を含む諸国が、協調して努力することが望ましい」としていたが、日本は「全関係国の協調を不可能にしているような中国の条約違反をやめさせ、規則に従って行動するよう各国が一致して中国にあたることを想定しているのかどうか」を疑問視していたという。

そこで内田康哉日本代表は、「中国は約束した国際協力を忌避して、条約署名国、その中でも特に日本に対し敵意と無責任の政策をとり続けてきた」と指摘し、「日本政府は、米国政府が中国問題に関する国際協力理念の保証人であると認識している。

中国をこの国際協力の枠組みに引き戻すよう決定的な影響力を、米国が放棄するのかどうかを日本政府は知りたいと願っている」と米国政府の見解を求める。

日本にとって身近で死活的な中国問題であったが、米国の回答は「曖昧」で「あきれるほど否定的」だったので、「米国人は結局中国びいき″なのであり、中国の希望に肩入れすることにより、協力国の利害に与える影響を無視してでも自らの利益を追求しようとする」と述べ、自国を批判する。

そして「(日本の)1930年代の新しい強引な政策は、一方的な侵略とか軍国主義のウイルスに侵された結果などではなく、それに先立つ時期の米国を含む諸国の行為がもたらしたものだ」と結論づける。

ラルフ・タウンゼントは新聞記者や大学教師を経て外交官となり、1931年に上海副領事として赴任し、翌年1月の第1次上海事変を体験する。その後福建省の副領事となるが33年に帰国して外交官を辞任する。その後は大学講師、著述と講演活動に専念し、中国の実情や騙される米国を国民に呼びかける。

「国際法から見て、戦争の原因に関して、中国は決してほめられたものではない。激戦が始まったとき、日本軍は種々の協定による正当な権利を有する地域に駐屯していた。ところが同じ時、中国兵はこのような協定に違反となる地域にいたのである。筆者の知る限り、米国の新聞・雑誌は日中戦争に百万言を費やしながら、この重大な事実について書いてあるものは、これまで一冊としてないのである。戦争犯罪に関する重大な点に言及しないとは、誠実と言われる米国のジャーナリズムも地に落ちたものである」(『アメリカはアジアに介入するな』)と慨嘆する。

タウンゼントは国際連盟の不公正についても批判する。

1931年の満州事変に関して連盟はリットン調査団を派遣するが、「調査の結果、中国に不利になる『挑発行為』が続々明るみにでた」。そこで37年の支那事変では「『同じ轍』は踏まなかった。リトヴィノフの指揮下、一切の尋問もない、通常の裁判ならば、根拠なき判決となるような横暴な手順で、モスクワの盟友である『中国寄り』の行動をとった」と述べ、「中国を侵略の犠牲者」と全く事実を反転させたことを明らかにする。

そして、「連盟の決定となれば宣伝価値は十分」として、「中国人を『平和を愛する人』と描く米国の新聞・雑誌が支持した」とのべる。しかし、「中国人は、同じ中国人同士で数十年も戦っている人間である」と述べ、連盟の決定や、それを基にした米国の中国支持を「証拠を基にしたものとは言い難い」を批判する。

実を結ぶプロパガンダ戦略

蒋介石の国民党は実際の戦闘では負けが続き、また人民の支持などもなくなっていたので、宣伝に注力する。要するに古来中国に伝わる『孫子』の「謀攻」(宣伝)や「用間」(スパイ)の活用である。

そこで宣伝処を創設し、責任者に文学者の曾虚白を据えて、3つの原則を定めた(北村稔「『南京大虐殺』に見る『歴史力』捏造のインテリジェンス」、『中国はなぜ「軍拡」「膨張」「恫喝」をやめないのか』所収)。

@誇張や出鱈目で人を騙してはならず、真実と誠意で人を動かして我々の味方を得ること。
A敵の暴虐と醜悪な姿を暴いて、国際的な同情と援助を勝ち取ること。
B組織と手段を確立すること。

組織では各国政府の政策立案者だけでなく、国策決定に影響を与える民意の代表と種々の民間団体を取り込むこと、特に大学教授や新聞記者を網羅することが大事である。

手段では文学と放送が重要であり、内容は事実報道と意見報道に分かれ、文字を通じるよりも放送が大事である。また我々が表に出ることなく、第三者の筆と口を借りて事実と意見を発表しなければならない。

その際、言語表現における技巧が重要である。宣伝対象を大衆と特定個人にわけて最大の宣伝効果を発揮しなければならない。また誠意と事実を一貫させ、一時の成功を得るために人を騙すようなことをしてはならない。

南京事件をみると、AとBの原則が見事に活用されていたことが分かる。報道に関わった人物は大学教授や新聞記者たちであり、宣伝処の責任者には文学者が配置された。また、報道内容を見ると、日本人が決してやらないような暴虐であり醜悪極まりないものにしている。

こうして「中国国民党は、海外での意見を動員することができ」(マクマリー)、中国人、特に民間人を被害者に仕立て、国際的な同情と援助を勝ち取る作戦に成功していったことが分かる。

同時に、「米国のキリスト教宣教師たちは、中国はキリスト教改宗への見込みありとして米国政府に圧力をかけ、親中政策をとらせ、日本を窮地に追い込んだ」(平川祐弘「米中日の文化史的三角関係」、『中国はなぜ「軍拡」「膨張」「恫喝」をやめないか』所収)ことも確かであろう。

実情封じの拘束

いずれにしても、米国では「何ら中国は挑発行動をとらなかったのに、(日本から)突然襲撃された」ということがプロパガンダとして広まっていたのである。

フレデリック・ウイリアムズの『中国の戦争宣伝の内幕』を読むと、「蒋介石の宣伝係はプリンター・インクで戦っている」という一文がある。「兵隊や銃ではない。しかし一般のナイーブなアメリカ人や世界の人々をうっとりさせるような大当たりをとっている」という。

一例に挙げるのが、黄河の氾濫作戦である。逃走する中国兵を追って行く日本兵をストップさせるために蒋介石の軍隊が黄河の堤防を決壊させ、周辺の中国人市民数十万人を溺死させる。宣伝係はこれを「多くの人の自己犠牲と愛国心によるものとみなされる」と取り繕ったというのである。

こうした「プロパガンダは蒋介石が高給で雇った作家たちによって毎月発表されている」と述べる。

負け戦が続くので「没落し行く蒋介石政府は絶望したあげく、アメリカ人が結果として干渉してくることを期待して、まず同情を、それから援助を獲得しようとして宣教師たちにすがり寄った」というのは、南京攻略戦についてであり、先述のように原則Aの見事な適用であることが分かる。

ウイリアムズが多数例示する中に飛行機によるプロパガンダがある。南京事件を示唆するようにさえ思える。

上海が陥落し、戦略上の要衝とされた宿県が陥落すると、蒋介石が勝利を保証していた中国人の心に重大な影響を及ぼすだけでなく、欧米から軍需品を購入しようとする国民政府の信用をなくしてしまいかねなかった。

そこで「中国の勝利、日本の大損害」の「吃驚するニュース」を作り出し、「宿県の陥落をチャラにする」必要に迫られた。蒋介石は宣伝班を緊急に集めて会議を開き、1機の飛行機でパンフレット散布することを決めた。爆弾では低空飛行を余儀なくされ撃墜される危険があり、また2機や半ダースを飛ばす余裕はなかった。

宿県陥落寸前に、日本の最南端のそのまた先っちょに到達して、一つ聳えている山に向かって降下してパンフレットをばら撒き、パイロットは無事に帰還する。その瞬間に蒋介石の宣伝班は新聞記者たちに、「6機の爆弾を持った飛行機が日本に深く侵入し、本土に到着、大工業都市である大阪(日本のシカゴ)の上を低く飛び、日本軍と市民を死ぬかと思うほど驚かした」と教えたのである。

米国では新聞の黒いインクが「中国軍機が日本を空襲」「落したのは爆弾ではなく、中国国民から日本国民への優しい訴えのメッセージ」と金切声をあげていたという。蒋介石とその政府の破滅を示す要衝の陥落を「軍事的に封印し、新聞の片隅に閉じ込め、無価値なニュース」にし、「日本空襲の記事を読んだ人の十分の一もいなかった」というのである。

「中国の勝利」と「中国人の慈悲深さ」がニュースとなって世界を駆け巡ったのであるが、これは「日本の敗北」「日本人の残虐さ」として、後日世界に宣伝される南京事件と相似形をなしてはいないだろうか。無から有を作り出し、「敵の暴虐と醜悪な姿を暴いて、国際的な同情と援助を勝ち取る」という蒋介石の宣伝処の原則そのままである。

もう1人、古森義久著『嵐に書く』を参考に河上清についてのべる。米沢中学を卒業した河上は、一時社会主義者として活躍し、渡米後はカール・マルクスに肖ってカール・カワカミと名乗る。28歳で渡米し、5年後には米国最有力紙に定期執筆するまでになる。

第1次世界大戦中の1917年には日本を含めて7か月をかけて朝鮮、満州、中国を回る。中国には4か月間いて北京、天津、青島、南京、上海、香港、台湾をつぶさに見て回っている。その後も、機会を見つけて、シベリア、中国を見て回り、また世界一周などをしている。

ワシントン会議ではニューヨーク・ヘラルドに報道・論評を書き、「中国やシベリアに関して日本が列強の中で最大あるいは唯一の罪人だというような意見には絶対に与しない。日本の外交の歴史は西欧列強のそれに比べればずっと公正である」と、堂々と書いている。

日中戦争では「中国での戦闘について日本側の情報発信が遅々としていることがアメリカ世論を親中国にしている」と日本政府に警告し、「国民政府は目下日本の空爆や海上監視につき盛んに虚偽的宣伝を行い、(中略)米国では日本に対して同情的立場にある人たちまでが少なからず当惑している」と、中国のプロパガンダの成功と米国が親中に傾いていく状況なども伝えている。

カワカミは「(中国の)抗日が事変の因″米人が納得する迄、説明せよ―外務省の説明は不十分」の見出しの記事なども書き、日中が協定を結んでも中国が一方的に破り、何としても日本を戦争に巻き込みたい意思を持っていた中国であることを、米国に知らせる努力をし、日本政府にも注文をつける。

しかし、知名と美貌に加え、英語に堪能な蒋介石夫人の宋美齢の活躍などもあり、日本の抑制した行為を悪逆非道な暴虐に転化して米国民と政府に訴え、同情と支援を得る中国のプロパガンダの方が勝っていた。

タウンゼンント、ウイリアムズ、そしてカワカミらは、日中戦争の実情が米国で誤って伝えられ、広がっていることに危惧を抱き警告を発し続けた。しかし、中国に肩入れしたいルーズベルト大統領の逆鱗に触れ、パール・ハーバー攻撃直後に収監される運命となる。

大虐殺を消し去る中国

1937年7月に起きた通州の虐殺はたった1日の出来事である。日本人居留民385人のうち225人、それに警備隊の32人、合わせて257人が虐殺され、生き残った日本人は160人であった。

しかし、現場の状況は当時の各紙(東京日日、東京朝日、読売など)が翌日から連日のように、朝夕刊ばかりでなく号外まで発刊して克明に伝えている。

関係者からの聞き取り記録なども多数存在する。刑場に連行されながら九死に一生のチャンスを捉えて通州城を脱出した同盟通信記者の安藤利男特派員もいた。

また、妊娠で身重の状態にあって重傷を負いながらも助かった浜口茂子さんや安田正子さんもいた。同室の片方では男たち8人が荒々しく斬殺されており、生きながら仏の慈悲を感じていたに違いない。

雑誌『主婦之友』は、ほぼ1か月後、作家の吉屋信子をカメラマンと共に取材に行かせた。破壊された建物、著しい弾痕などを見ながら、涙なくしては読み進めない惨状を書き残している。

中国人に嫁ぎ、事件が起きた時は通州で生活していた佐々木テンさんは、事件の一部始終を目撃していた。同胞が惨殺されるのを見るに堪えず、何度も飛び出して助けようともがくが夫に止められ、決して日本語をしゃべってはいけないと制止される。

状況が余りにも鮮烈かつ残酷で誰にも打ち明けられずにいたが、縁あって浄土真宗本願寺派洗心山因通寺の住職と知り合い50年後に告白したという(藤岡信勝編著『通州事件目撃者の証言』)。

日本人の話だけでは信用できないという人もいるであろう。そこで、先述のタウンゼントとウイリアムズにも登場してもらおう。

タウンゼントは、「日本人が最も怒りを覚えたのは、7月29日、北京郊外の町、『通州』で女子どもを含む日本人約二百名が虐殺されたニュースであった。これは戦争になる大事件であったが、アメリカの新聞は全く報じなかったり、報じた新聞も全く読者の目を引かないような記事であった」と、戦争を引き起こすほど大きな事件であったにもかかわらず、米国は目立たない報道しかしなかったことを批判したのだ。

事件ではなく「虐殺」と確言するタウンゼントは、その理由や状況につて「日本が総崩れになり中国から撤退するという報告に狂喜した中国兵士が起こしたことは明白であった。通州は戦場にはなっておらず、日本人家族は何の警告もなく虐殺されたのである。日本本土で怒りが爆発し、それ以後、中国との全面戦争は避けられないものとなったのである」と述べる。

ウイリアムズは、「私が住んでいた北支の百五十マイル以内のところに、二百名の男女、子供たちが住んでいたが、共産主義者によって殺された。二十名はほんの子供のような少女だった。家から連れ出され、焼いたワイヤーで喉をつながれて、村の通りに生きたまま吊り下げられていた。空中にぶらぶらされる拷問である。共産党員は野蛮人のように遠吠えしながら、揺れる身体を銃弾で穴だらけにした」と、惨たらしい情景描写をしている。

そのうえで「日本人の友人であるかのように警護者の振りをしていた中国兵による通州の日本人男女、子供らの虐殺は、古代から現代までを見渡して最悪の集団屠殺として歴史に記録されるだろう」と、過去に例のない凄惨な虐殺であったことを述べている。

このように、中国が一方的に戦争をしたがっていた明確な証拠、そして虐殺の事実が示されている。しかし、2016年に通州を尋ねた加藤康男氏によると、通州は北京の市域に包含され、近代都市に衣替えするために虐殺を示す現場の痕跡は一掃されているそうである(『慟哭の通州』)。

おわりに

我々は中国の外務省報道官のもっともらしい報道を日々目にしている。そこに大きな嘘が包み隠されていてもそうとは知らず、すなわち「宣伝戦」とは少しも理解せず、うまく言うもんだ位に感心したりする。

日本人ではとても言えないような嘘の発表を平然として行うさまには感心する以外にない。

日本に関わることで明らかに誤った報道に対してクレームをつけると、「日本が事実を捻じ曲げて中国を陥れようとしている」と、2倍も3倍もパンチの利いた反論でねじ伏せようとする。国際社会は確認のしようがないので、もっともらしく、時には怒りを込めて口撃する中国の言い分を信じてしまう。

昨年から今年にかけて、航空自衛隊が防御的にとったスクランブルに対して、中国は日本があたかも攻撃行動をとったかのように臆面もなく言い立てた。毒入り餃子事件や尖閣諸島沖の中国漁船追突事故で、犯人を日本人にしようとした手法そのものである。

ありもしなかった南京事件を展示館まで建設して「大虐殺」に仕立てる一方で、世界がみていた「通州大虐殺」を何もなかったことにしてしまう中国である。中国の隠蔽体質、陰謀の遺伝子は孫子以来、厳然として生き続けている。同時に、中国の甘言に騙され続ける米国は共犯と言っていいかもしれない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48918




中国当局、今度はモバイルアプリを統制
アプリ配信業者の登録義務づける新制度
2017.1.18(水) 小久保 重信
中国企業、スマホの個人情報を無断収集 セキュリティー企業が指摘
携帯電話を使いながら歩く男性〔AFPBB News〕
海外メディアの報道によると、中国当局は、スマートフォンなどのモバイル端末で利用するアプリについて、監視を強化するもようだ。

これにより今後、当局が不適切と判断するアプリは、容赦なく排除されることになりそうだと米欧のメディアは伝えている。

「万里のファイアウォール」を拡大

報道によると、中国当局はこのほど、こうしたアプリの配信業者に登録を義務づける規則を設けた。

同国では昨年8月に、中国国家互聯網信息弁公室(Cyberspace Administration of China:CAC)がこの規則を発表していたが、今年になって同政府機関は、アプリ配信業者に通達を出した。そして1月16日に、この新規制がさっそく施行されたのだという。

これは同国で行っているインターネットアクセス制限(いわゆる万里のファイアウォール)をモバイルアプリに広げるもので、当局は現在抱える問題の解決に向けて一歩踏み出したことになるという。

米ウォールストリート・ジャーナルによると、中国ではこれまでウェブのコンテンツに対する規制を強化し、ポルノコンテンツのほか、テロリズムなどの違法活動を助長するもの、当局が反政府発言とする好ましくない噂などのコンテンツを禁止してきた。

アプリ配信業者に監視の責任を

しかしモバイルアプリは、その内部で画像やメッセージなどがやりとりされている。その機能も多種多様であるため、ウェブサイトのように一元的に監視するのが困難。

中国では先頃、米アップルが同国で提供しているアプリ配信サービスで、米ニューヨーク・タイムズのニュースアプリが入手できなくなった。当局の要請に応じアップルが同アプリをサービスから削除したからだ。

この事例のように、中国当局は、コンテンツの監視や検閲についてインターネット企業に大きく依存しているとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

同じくこの話題について伝えているニューヨーク・タイムズの記事によると、今回、国家互聯網信息弁公室が出した通達は、同国のほかの規制と同様に、その説明に曖昧な部分が多く、配信業者に登録を義務づけることの具体的な目的が不明。

しかし、当局は新規制により、配信業者に何らかのアプリ監視の責任を負わせることを狙っているのではないかと、同紙は伝えている。

中国地場企業がアプリストアを運営

英フィナンシャル・タイムズによると、その背景には、スマートフォンが急速に普及したことで、当局の監視がモバイルアプリの急増ペースに追いついていないことがあるようだ。

中国では、米フェイスブックや米ツイッターのような海外のソーシャルメディアが遮断されているが、同様に米グーグルのAndroid向けアプリストアも利用できない。

こうした状況を補うかのように、同国では地場のアプリストアが多数ある。

バイドゥ(百度)、アリババ(阿里巴巴)、テンセント(騰訊)をはじめとするインターネット企業や、シャオミ(小米科技)、ファーウェイ(華為技術)といったスマートフォンメーカーもAndroid向けアプリストアを運営しており、その数は優に200を超えると、フィナンシャル・タイムズは伝えている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48949


 

http://www.asyura2.com/16/china10/msg/731.html

[経世済民117] トランポリン相場「再上昇」の条件 ゴールドマン利益3倍強 シティ収入大幅増 米物価指数5カ月連続上昇、インフレ目標に接近
コラム:
トランポリン相場「再上昇」の条件

岩下真理SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト
[東京 18日] - 1月第2週以降、トランプ相場の勢いが失速し始めた。17日には米英中のトップ発言が相場材料となり、2017年を象徴する1日となった。

今年はこの3カ国動向、具体的にはトランプノミクスの具体化、英国の欧州連合(EU)離脱手続きの進捗、中国の人民元動向と対米関係に振り回される1年となろう。

17日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルには、トランプ氏のドル高けん制発言が掲載されたが、貿易問題での最大の標的が中国であることは間違いない。今年初めてダボス会議に出席した中国の習近平国家主席は、国際化や自由貿易の重要性を強調した。2015年8月に人民元を切り下げた当時、通貨安競争が懸念されたことを思うと、中国の役割が皮肉にも大きく転換している。

筆者の懸念は、トランプ新政権の外交手腕が未知数と言わざるを得ない点だ。主要7カ国(G7)の枠組みが機能しなくなる可能性が出てくる。

<トランポリン相場第2幕は調整期>

では、トランプ相場は終ったのだろうか。確かに、ドル円相場を見ると、昨年12月15日と1月3日に付けた118円台後半をピークに、11月下旬から積み上げてきたドルロングが調整局面入りしている。米10年債利回りも12月16日の2.62%手前がいったんの上値となっている。

しかし、結論から言えば、米長期金利が再び上昇する見方が残る間は、トランプ相場は終っていないと考える。トランプ相場の起点である米10年債は、買い戻されても2.3%台前半。トランプ期待が全て剥がれたわけではない。昨年とは異なり原油価格も安定、世界経済の足取りもしっかりしている。今年も米利上げ継続が見込まれる状況下、昨年初頭のような米10年債利回りの2%割れは想定し難い。

要するに、現在は2カ月弱続いた過度な期待に対する調整期間(ドル円の調整めどは積み上げ起点の110円程度)とみる。この不安定さこそ「トランポリン相場」であり、過度な期待の第1幕は終了、現在は調整の第2幕と位置付けられよう。

20日に就任式を迎えるトランプ次期大統領だが、これまでのツイッターの書き込みや11日の記者会見を通じて示されたのは、保護主義的な姿勢のもと製造業の米国回帰、雇用拡大が一番譲れない部分であることだ。しかるに就任前に歴代大統領の中でも群を抜く支持率の低さで、不名誉な状況にある。就任演説では、挽回を図るべく国民にアメリカ・ファーストを訴えることになろう。

就任後は、閣僚メンバーとの意見のすり合わせや、具体的な減税やインフラ投資に関する共和党議会との交渉など課題は多い。その調整には当初の想定以上に時間がかかりそうだ。それがさらなる失望感を生む可能性は一時的にはある。その後は、財政政策の満額回答は無理でも方向性さえ明確になれば、景気浮揚と物価押し上げ効果にはつながるとみるべきだろう。

当面は就任100日で立法措置を検討予定の3分野(法人税改革、インフラ投資、オバマケア代替案)で具体的な話がどのように進んでいくのかを見守る時間帯となる。だが、目先で注目されるのは就任初日の実行計画に掲げた北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉、環太平洋連携協定(TPP)からの撤退表明、エネルギー規制緩和について具体的な動きが出るかどうかだ。なお、トランプ氏の大統領就任は20日だが、「営業初日」は23日かもしれない。

<2017年のけん引役は日米独>

さて、16日発表の国際通貨基金(IMF)世界経済見通しでは、世界の成長率は2017年プラス3.4%、18年プラス3.6%と3カ月前と同水準に据え置かれた。ただ、16年(プラス3.1%見込み)で減速は止まり、18年に向けて成長力を強めていくイメージだ。

17年のけん引役は日米独。日本は円安効果でプラス0.8%に上方修正されたのに比べると、米国はトランプノミクス期待があっても、利上げによる抑制でプラス2.3%にとどまる見通しだ。IMFは財政政策への不確実性を指摘している。世界のバランスある経済成長を尊重するIMFとしては、保護主義色が強まりそうな気配には慎重にならざるを得ない。

一方で、英国はハードブレグジット(強硬なEU離脱)の前提ではなく、17年はポンド安の恩恵で上方修正、18年は下方修正となった。メイ英首相は17日、昨年の国民投票結果に基づきEU離脱方針を述べたが、議会の承認を受けてEUに通告、そこから2年の期限で離脱交渉が行われるプロセスに現時点では変更はない。今後も紆余曲折があるだろう。ユーロ圏では、ドイツとフランスの底堅さに比べると、イタリアの下ぶれ感が否めない。4―5月にはフランスの大統領選挙があり、ナショナリズムが波及しないかは注意が必要だ。

他方、新興国は十人十色の動きを見せている。昨春の資源価格の底打ちにより、新興国全体として減速感は和らいだ。また、米利上げ後も資源国通貨はそれほど弱っていない。ただ、アジア周辺諸国では、独自要因で下ぶれた国がいくつか存在する。具体的には、インドネシア、タイ、韓国だ。これらの国は、中国次第ではさらに下ぶれる可能性がある。

その中国は、今回のIMF見通しで成長率が上方修正された(前回10月は修正なし)。IMFは引き続き中国過剰債務問題について警告し、上下リスクの存在を指摘しているが、17年プラス6.5%、18年プラス6.0%という成長見通しは、健全な不動産調整をこなす減速過程であり、望ましいソフトランディングシナリオと言える。

ちなみに、前回のIMF見通しで同じく予測修正がなかったサウジは、今回は下方修正となり、中国と明暗を分けた。原油減産に乗り出すほど経済が弱っていることが示された。サウジにとって、原油価格の安定は死活問題であり、今年後半も減産合意の継続が見込まれる。

<FRB内はタカ派的な雰囲気に>

最後に米国の金融政策について触れておきたい。昨年12月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録によると、トランプノミクス期待で、連邦準備理事会(FRB)内がタカ派的な雰囲気に転じているのは事実だ。ドル高についても、財政によって過熱する景気を抑制する役割を担うとポジティブに受け止めている向きがある。

6日には今年の投票権があるシカゴ地区連銀のエバンズ総裁が、トランプ新政権下で見込まれる財政刺激策を自身の経済見通しに反映させたことを明らかにし、「米経済は今年2―2.5%の成長を遂げ、インフレ率は来年までにFRBの目標2%水準に戻ると自信を深めた」「指標次第だが、上ぶれなら3度の利上げもあり得ないわけではない」と述べた。かつて労働市場の足取りが弱かった頃はハト派だったエバンズ総裁だが、現在はタカ派に傾いている。

また、12日には同じく投票権のあるフィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁が、「(FF金利が)100ベーシスポイント(bp)かこれを上回る水準になれば、まずは償還元本の再投資を停止し、その後時間とともにバランスシートを縮小することは真剣に検討すべきだ」とタカ派発言をした。

つまり、米利上げペースが速まる可能性にも目配りする必要はあろう。3月14―15日開催のFOMCに向けて、賃金上昇と緩やかな成長が持続可能であるかを点検していくしかない。米10年債利回りの重要な節目は2.6%であり、再び抜ければトランポリン相場の第3幕となろう。

*岩下真理氏は、SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト。三井住友銀行の市場部門で15年間、日本経済、円金利担当のエコノミストを経験。2006年1月から証券会社に出向。大和証券SMBC、SMBC日興証券を経て、13年10月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

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http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-mari-iwashita-idJPKBN1520US

 


ゴールドマンの10−12月、利益3倍強−債券トレーディングが好調
Dakin Campbell
2017年1月18日 22:11 JST

米ゴールドマン・サックス・グループの昨年10−12月(第4四半期)決算は、利益が前年同期の3倍強に増えた。債券トレーディング収入が拡大した。
  18日の発表によると、純利益は23億5000万ドル(約2670億円、1株当たり5.08ドル)と前年同期の7億6500万ドル(同1.27ドル)から増加。前年同期は住宅ローン問題の決着のための引当金を積んだ。
  第4四半期の債券トレーディング収入は前年同期比78%増の20億ドルと、ブルームバーグがまとめたアナリスト予想の15億9000万ドルを上回った。株式トレーディング収入は9.2%減の15億9000万ドルで、アナリスト予想平均の16億2000万ドルに届かなかった。
  全体の純収入は12%増の81億7000万ドル。予想は77億6000万ドルだった。費用は23%減の47億7000万ドルで、アナリスト8人の予想の44億8000万ドルを上回った。
原題:Goldman Sachs Earnings Climb as Trading Outpaces Expectations(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJZ7XB6KLVRR01


ゴールドマン、10-12月期は予想上回る増益
ゴールドマンは10-12月期のROEで米銀首位に踊り出た
By LIZ HOFFMAN
2017 年 1 月 18 日 22:21 JST

 米金融大手ゴールドマン・サックス・グループが18日発表した2016年10-12月期(第4四半期)の純利益は前年同期から大幅に増加した。

 10-12月期の純利益は23億5000万ドル、1株利益は5.08ドル。前年同期は住宅ローン担保証券(MBS)販売に絡む50億ドルの和解金が響き、1株利益が1.27ドルにとどまっていた。和解金の影響を除くと4.68ドルだった。

 収入は12%増の81億7000万ドル。主力4部門のうち3部門で増収を遂げた。だが投資銀行部門は3.9%の減収。株式引き受け業務の落ち込みが響いた。

 トムソン・ロイターがまとめたアナリスト予想は、1株利益が4.82ドル、収入が77億2000万ドルだった。

 株主資本利益率(ROE)は11.4%と、前年同期の3%から持ち直し、米銀大手のトップに浮上した。このところ首位に立っていたウェルズ・ファーゴは、不正な営業慣行を巡る影響でROEが低下している。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwia8Onwj8zRAhWMU7wKHUAOBJMQqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10504433381807684657504582567042217510180&usg=AFQjCNEc4_cCz2-vRs7z0tk2-ZscIq502w
 

 
ドイツ銀、シニアバンカーの2016年ボーナス支給を取りやめ−関係者
Stephen Morris、Ambereen Choudhury
2017年1月18日 21:29 JST
早ければ今週中にも決定を通知へ
若手バンカーの大半は固定給のため影響なし
ドイツ銀行は2016年が業績不振だったために同年のボーナスを恐らく支給しないと、今週中にもシニアバンカーらに伝える。同行の決定について知る関係者が語った。
  関係者が匿名を条件に述べたところによると、ドイツ銀は昨年暮れに住宅ローン担保証券販売をめぐる支払いで米司法省と合意したが、ボーナス取りやめの決定はこれと直接の関係はない。また、最高水準の成果を挙げた従業員には引き留めのためのボーナスが支払われる。若手従業員の大半は既に固定給システムに移行しているためボーナス取りやめの影響はないという。
  ドイツ銀の広報担当者はコメントを控えた。
原題:Deutsche Bank Is Said to Scrap Senior Bankers’ Bonuses for 2016(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJZ4PD6S972901


 

シティ、トレーディング収入が大幅増
シティも他の銀行同様、11月の米大統領選でトランプ氏が勝利し、相場が大幅に上昇した動きから恩恵を受けた

By CHRISTINA REXRODE AND TELIS DEMOS
2017 年 1 月 18 日 23:26 JST

 米銀行大手シティグループが18日発表した2016年10-12月期(第4四半期)決算は7%増益となった。11月以降の「トランプ相場」がトレーディング部門の追い風となった。

 純利益は35億7000万ドル(前年同期は33億4000万ドル)。1株利益は1.14ドルで、トムソン・ロイターがまとめたアナリスト予想の1.12ドルを上回った。

 収入は170億1000万ドル(同184億6000万ドル)。アナリスト予想の173億ドルを下回った。

 シティも他の銀行同様、11月の米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利した後の市場の値動きによる恩恵を受けた。

 トレーディング収入(会計上の調整除く)は前年同期比31%増の37億ドル(前年同期は28億2000万ドル)。ジョン・ガースパッチ最高財務責任者(CFO)の12月時点での予想(約20%増)を上回った。

 コンシューマー・バンキング部門の利益は2%増。北米事業の伸びが最も大きかった。

 シティ全体の費用は9%減少した。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiksJvcj8zRAhVIErwKHZ5BCx8QFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10504433381807684657504582567131295473076&usg=AFQjCNGqqndhkA3fTG7JBwyvubRzyC8EZw


 


米シティの10−12月期、利益が予想上回る−トレーディング収入31%増
Dakin Campbell
2017年1月18日 23:04 JST
純利益は7.1%増の35億7000万ドル
債券トレーディング収入は金融危機以降の最高
米銀シティグループの昨年10−12月(第4四半期)決算は、利益がアナリスト予想を上回った。トレーディング収入が31%増と同行の先月の見積もりを超えた。
  18日の発表によると、純利益は前年同期比7.1%増の35億7000万ドル(約4050億円、1株当たり1.14ドル)と前年同期の33億4000万ドル(同1.02ドル)から増加。ブルームバーグがまとめたアナリスト25人の予想平均は調整後1株利益1.12ドルだった。
  債券・通貨・商品トレーディング収入は30億1000万ドルで、会計上の調整を除き前年同期比36%増。ブルームバーグのデータによればこれは金融危機以降の最高。アナリスト予想は28億3000万ドルだった。
  株式トレーディング収入は15%増の6億9400万ドル。アナリスト予想は7億800万ドルだった。
  債券と株式を合わせたトレーディング収入は31%増の37億ドル。全行の収入は8%減の170億ドルでアナリスト予想の173億ドルを若干下回った。営業費用は9%減の101億ドル、予想は102億ドルだった。
原題:Citigroup Trading Revenue Climbs 31% as Profit Beats Estimates(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJZ9MO6JTSFA01


 

12月米消費者物価指数:5カ月連続上昇、当局のインフレ目標に接近
Shobhana Chandra
2017年1月19日 00:57 JST

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総合指数の前年比は2.1%上昇、前月を0.4ポイント上回る
エネルギー価格や居住費などが大幅上昇

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iAU5jkalzgyg/v2/-1x-1.png

12月の米消費者物価指数(CPI)は5カ月連続で上昇、金融政策当局のインフレ目標に近づいた。総合指数は前年比で2.1%上昇と前月の1.7%上昇から一気に0.4ポイント加速して2%台に乗せた。
  米労働省が18日発表した12月のCPIは前月比0.3%上昇。伸びはブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値と一致した。前月は0.2%上昇だった。エネルギー価格の他、居住費などの上昇が目立った。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前月比0.2%上昇。  
  12月の総合指数の前年比上昇率は、2014年6月以来の最大。連邦準備制度のインフレ目標は個人消費支出(PCE)価格指数で前年比2.0%とされている。11月のPCE価格指数は前年比1.4%上昇だった。

  ジェフリーズのシニアエコノミスト、トーマス・サイモンズ氏は「全体的な傾向として、インフレが加速しつつあるといえる」と分析。「広範で緩やかな物価上昇が見られる」とし、金融当局は今回の統計を好ましい内容と受け止めるとの見方を示した。
  12月のCPIを項目別に見ると、エネルギーは前月比1.5%上昇。ガソリンは3%上げた。食品は6カ月連続で横ばい。
  居住費は0.3%上昇。帰属家賃が0.3%上昇した。
  航空運賃は1.9%上昇と、2015年6月以降で最大の伸び。新車は0.1%、中古車は0.5%それぞれ上げた。一方で衣料品は0.7%低下し、これで2カ月連続での値下がりとなった。
  統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Consumer Prices in U.S. Rise for Fifth Month on Shelter, Gas (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJZCA16VDKL001

 


トランプ時代の米ドル相場〜グローバリゼーション疲れ
高島修(シティグループ証券チーフFXストラテジスト)

10MTVオピニオン


なぜグローバリゼーションの勝ち組であるアメリカやイギリスでアンチ・グローバリゼーションが強まっているのか。それに対してクリアな答えを示しているのが、エマニュエル・トッド氏だ。そう語るシティグループ証券 チーフFXストラテジスト・高島修氏。ではトッド氏の答えはどのようなものなのか。

=================================================

アメリカやイギリスはグローバリゼーションの勝ち組ではなかったのかということです。なぜそれらの国でアンチ・グローバリゼーションが強まっているのでしょうか。実際、私は米系金融機関で勤めていますので、アングロサクソン系の優位性を強く感じます。なぜこれほどうまくやってきた人たちが、国としてグローバリゼーションに反する選択をしているのか、疑問に思うのは当然だと思います。

これに対してクリアな答えを示しているのが、フランス人の人類学者、エマニュエル・トッド氏です。最近、この人の本がいろいろと売れていますので、ご存じの方もいるかと思います。彼がよく使うキーワードが「グローバリゼーション・ファティーグ」で、グローバリゼーションに対する疲弊、疲れのことです。平たくいえばアンチ・グローバリゼーションのことで、これ自体は珍しい概念ではありません。

エマニュエル・トッド氏の指摘で面白いのは次の2点です。英米はグローバリゼーションに成功しすぎたため、貧富の格差が拡大した。だから、国内でグローバリゼーションから取り残された一般の人たちが、グローバリゼーションに対する反感を他の国よりも強めた。つまり、グローバリゼーション・ファティーグは、アングロサクソン系のアメリカ・イギリスだからこそ出ているのだと主張している点です。

彼の主張によると、アングロサクソン系の社会は絶対核家族型だと言います。日本やドイツは子どもが比較的大きくなるまで家で育てるのですが、アングロサクソン系の家庭は比較的小さい頃から子どもを独立させて、個人主義を植え付けさせていきます。ですから、親が持っていた美徳や概念を子どもが引き継ぎにくい環境にあります。ですから、アングロサクソン系の社会では、数十年に一度、非連続的な大きな変化が発生しやすいのです。

その一つが1980年代のサッチャー革命、レーガン革命(あるいはレーガノミクス)であり、これらによって両国は個人主義と新自由主義を徹底していきました。また、アメリカとイギリスはもともと覇権国家としての側面もあったために、グローバリゼーションに成功していったのです。その成功が大きくなりすぎたがゆえに貧富の格差が拡大し、グローバリゼーション疲れが起きていると、彼は主張しているのです。

こうした主張が正しければ、トランプ革命やブレクジットはサッチャー革命やレーガノミクスによって加速した英米主導の個人主義・新自由主義の流れを大きく変えていく転換点になっているのかもしれません。

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トランプ時代の米ドル相場〜グローバリゼーション疲れ
提供元:10MTVオピニオン
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48906


 


「偉大な田舎者」トランプが世界経済を混乱させる
分断される世界で日本は闘えるのか
2017.1.13(金) 池田 信夫
会見で再びトランプ節さく裂、メディア叩きに支持者ら歓声
米ニューヨークで記者会見するドナルド・トランプ次期大統領(2017年1月11日撮影)。(c)AFP/DON EMMERT 〔AFPBB News〕
アメリカのトランプ次期大統領の当選後初めての記者会見が行なわれたが、口汚いだけで中身はほとんどなかった。経済については、生産拠点の海外移転に「重い国境税」をかけると主張し、「中国や日本やメキシコに対する貿易赤字で多額の損失が出ている」と日本を名指しした。

よくも悪くも、彼は平均的なアメリカ人だ。日本人の知っている知的なアメリカ人は東海岸の一部にいるだけで、中西部の白人はトランプのように太った田舎者である。普通のアメリカ人が普通の大統領を選ぶのは民主制として当然だが、世界経済への影響は大きい。

分断されたアメリカがトランプ大統領を生んだ

これまでトランプは一貫してメキシコ人を敵視し、「国境に壁を築く」という計画を今回も表明した。これは突飛な笑い話と思われがちだが、アメリカ社会の最大の問題をシンボリックに表現している。

アメリカの最大の問題は、国内が分断されていることだ。白人はキリスト教と英米文化を中心とするアメリカの伝統になじんでいるが、非白人は世界中から異質の文化を持ち込んでくる。かつてはその最大の要因は黒人で、1960年代の公民権運動以来、彼らを同化させてきた理念がポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)だった。

公民権運動は黒人差別をなくして「機会均等」を実現する運動だったが、黒人の置かれている劣悪な条件を是正するには、彼らを逆に優遇することが必要だという「結果の平等」の考え方が出てきた。それが大学の定員を人種ごとに割り当てるなどのアファーマティブ・アクション(積極的是正措置)だ。

日本語に訳せないことで明らかなように、これらはアメリカの特殊な問題だが、90年代から流れが変わってきた。どこの国でもエリートは「多文化の共生」などのきれいごとを言うが、大衆は反対する。それが冷戦期の資本主義と社会主義の対立が終わったあと、エリートと大衆の対立を招いてポピュリズムを生んだのだ。

特に重要なのは黒人ではなく、メキシコ人などのヒスパニック(スペイン語系)が増えてきたことだ。黒人はアメリカに同化しており、英語を話してキリスト教を信じているので、アメリカ的な価値を共有しているが、メキシコ人にはスペイン語しか話さない移民が多い。彼らは人口の15%を占め、そのうち不法移民が1000万人以上いる。

これは他国にはどうでもいい問題だが、アメリカ人にとっては身近で深刻な問題であり、特に白人には不満が強い。そのタブーに挑戦したのがトランプだった。

ポピュリズムで世界は「オレサマ化」する

国民がその代表を選ぶのが民主制だから、アメリカ人の低い知的水準を代表する大統領が選ばれるのは当然だが、今まではそれを官僚やメディアなどワシントンのエリートが阻止してきた。ところがインターネットでエリートが「中抜き」された結果、一種の「直接民主制」としてトランプが出てきた。

しかしトランプ大統領が暴言を実行するのは、容易ではない。合衆国憲法では大統領には予算編成権も法案提出権もなく、宣戦布告もできない。それは憲法が、民主制によってトランプのようなポピュリストが出てくることを想定してつくられたからだ。建国の父の先見の明は、200年以上たって効果を発揮したのだ。

「三権分立」というのも神話で、実際には連邦議会が強い権限をもち、与党の決定を大統領が執行するので、彼が与党を代表しているときは強いが、与野党がねじれると何も決まらない。オバマ大統領のようにずっと少数与党だと何もできないが、それは彼が無能だったからではなく、制度的な欠陥なのだ。

この点でトランプは、与党の共和党が上下両院で多数派になったので、オバマより「強いリーダー」になる可能性がある。しかし彼の立場は、共和党内では非主流の右派なので、彼が選挙で打ち出したような民族差別を共和党が法案化することは考えられない。

アメリカ人のパスポート保有率は30%で、7割は世界を知らない田舎者だ。他国といえばよその州のことだから、アメリカ合衆国全体の利益は考えるが、その外の世界情勢には関心がない。

このような孤立主義はアメリカの伝統で、第1次大戦後にアメリカが世界のリーダーになったとき、ウィルソン大統領は国際連盟を創設したが、議会は承認しなかった。アメリカのエリートの「リベラルな国際主義」と議会に代表を送る大衆の対立は、100年前から始まっていたのだ。

エリートは「世界全体の公益」を考えるというが、そんな抽象的な理念があるのは彼らの脳内だけだ。大衆は具体的な国益だけを考えるので、彼らが合理的に行動したら、世界が分断されるのは当然だ。世界が分断されて「オレサマ化」する傾向は、今後も続くだろう。

トランプを「外圧」として利用しよう

「日本との貿易で損失が出ている」と言うトランプは、いまだに1980年代の貿易摩擦のようなイメージをもっているようだ。トヨタのメキシコ工場にも介入し、ツイッターで「トヨタに35%の関税をかける」と公言したが、そんな権限は大統領にはない。

そもそもトヨタのメキシコ工場はカナダから移転するので、アメリカの雇用とは無関係だ。個別の介入で「雇用創出」はできない。雇用はGDPの従属変数だから、雇用を増やすには成長するしかないのだ。

トランプは、大統領就任の初日にTPP(環太平洋経済連携協定)から脱退すると表明したが、これは大統領には拒否権があるから可能だ。しかし「国境税」をかけるのは議会であり、大統領にはできない。NAFTA(北米自由貿易協定)から脱退することは不可能だ。

根本的な間違いは、貿易赤字は損失ではないということだ。経常収支の赤字は資本収支の黒字(海外に対する借金)と同じだが、世の中に借金をしていない企業はない。民間企業は借金が多すぎると破産するが、基軸通貨国のアメリカは破産しない。むしろ世界の投資がアメリカに集まっていることが、その活力を維持しているのだ。

トランプの政策は、1980年代のレーガン政権をまねている形跡がある。レーガン大統領も経済は何も知らなかった。「日本叩き」でアメリカの製造業を保護しようとして、日米構造協議などで圧力をかけたが、ほとんど成果がなかった。貿易摩擦で得をしたのは日本だった。

構造協議で大店法は廃止され、金融自由化が進み、非関税障壁が見直された。アメリカの日本叩きは見当違いだったが、日本人は外圧がないと動かないので、刺激があった方がいい。日本を変える外圧として、トランプ大統領を利用してはどうだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48916
 

 

トランプ時代の米ドル相場〜グローバリゼーション疲れ
高島修(シティグループ証券チーフFXストラテジスト)

10MTVオピニオン


なぜグローバリゼーションの勝ち組であるアメリカやイギリスでアンチ・グローバリゼーションが強まっているのか。それに対してクリアな答えを示しているのが、エマニュエル・トッド氏だ。そう語るシティグループ証券 チーフFXストラテジスト・高島修氏。ではトッド氏の答えはどのようなものなのか。

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アメリカやイギリスはグローバリゼーションの勝ち組ではなかったのかということです。なぜそれらの国でアンチ・グローバリゼーションが強まっているのでしょうか。実際、私は米系金融機関で勤めていますので、アングロサクソン系の優位性を強く感じます。なぜこれほどうまくやってきた人たちが、国としてグローバリゼーションに反する選択をしているのか、疑問に思うのは当然だと思います。

これに対してクリアな答えを示しているのが、フランス人の人類学者、エマニュエル・トッド氏です。最近、この人の本がいろいろと売れていますので、ご存じの方もいるかと思います。彼がよく使うキーワードが「グローバリゼーション・ファティーグ」で、グローバリゼーションに対する疲弊、疲れのことです。平たくいえばアンチ・グローバリゼーションのことで、これ自体は珍しい概念ではありません。

エマニュエル・トッド氏の指摘で面白いのは次の2点です。英米はグローバリゼーションに成功しすぎたため、貧富の格差が拡大した。だから、国内でグローバリゼーションから取り残された一般の人たちが、グローバリゼーションに対する反感を他の国よりも強めた。つまり、グローバリゼーション・ファティーグは、アングロサクソン系のアメリカ・イギリスだからこそ出ているのだと主張している点です。

彼の主張によると、アングロサクソン系の社会は絶対核家族型だと言います。日本やドイツは子どもが比較的大きくなるまで家で育てるのですが、アングロサクソン系の家庭は比較的小さい頃から子どもを独立させて、個人主義を植え付けさせていきます。ですから、親が持っていた美徳や概念を子どもが引き継ぎにくい環境にあります。ですから、アングロサクソン系の社会では、数十年に一度、非連続的な大きな変化が発生しやすいのです。

その一つが1980年代のサッチャー革命、レーガン革命(あるいはレーガノミクス)であり、これらによって両国は個人主義と新自由主義を徹底していきました。また、アメリカとイギリスはもともと覇権国家としての側面もあったために、グローバリゼーションに成功していったのです。その成功が大きくなりすぎたがゆえに貧富の格差が拡大し、グローバリゼーション疲れが起きていると、彼は主張しているのです。

こうした主張が正しければ、トランプ革命やブレクジットはサッチャー革命やレーガノミクスによって加速した英米主導の個人主義・新自由主義の流れを大きく変えていく転換点になっているのかもしれません。

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トランプ時代の米ドル相場〜グローバリゼーション疲れ
提供元:10MTVオピニオン
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48906



「偉大な田舎者」トランプが世界経済を混乱させる
分断される世界で日本は闘えるのか
2017.1.13(金) 池田 信夫
会見で再びトランプ節さく裂、メディア叩きに支持者ら歓声
米ニューヨークで記者会見するドナルド・トランプ次期大統領(2017年1月11日撮影)。(c)AFP/DON EMMERT 〔AFPBB News〕
アメリカのトランプ次期大統領の当選後初めての記者会見が行なわれたが、口汚いだけで中身はほとんどなかった。経済については、生産拠点の海外移転に「重い国境税」をかけると主張し、「中国や日本やメキシコに対する貿易赤字で多額の損失が出ている」と日本を名指しした。

よくも悪くも、彼は平均的なアメリカ人だ。日本人の知っている知的なアメリカ人は東海岸の一部にいるだけで、中西部の白人はトランプのように太った田舎者である。普通のアメリカ人が普通の大統領を選ぶのは民主制として当然だが、世界経済への影響は大きい。

分断されたアメリカがトランプ大統領を生んだ

これまでトランプは一貫してメキシコ人を敵視し、「国境に壁を築く」という計画を今回も表明した。これは突飛な笑い話と思われがちだが、アメリカ社会の最大の問題をシンボリックに表現している。

アメリカの最大の問題は、国内が分断されていることだ。白人はキリスト教と英米文化を中心とするアメリカの伝統になじんでいるが、非白人は世界中から異質の文化を持ち込んでくる。かつてはその最大の要因は黒人で、1960年代の公民権運動以来、彼らを同化させてきた理念がポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)だった。

公民権運動は黒人差別をなくして「機会均等」を実現する運動だったが、黒人の置かれている劣悪な条件を是正するには、彼らを逆に優遇することが必要だという「結果の平等」の考え方が出てきた。それが大学の定員を人種ごとに割り当てるなどのアファーマティブ・アクション(積極的是正措置)だ。

日本語に訳せないことで明らかなように、これらはアメリカの特殊な問題だが、90年代から流れが変わってきた。どこの国でもエリートは「多文化の共生」などのきれいごとを言うが、大衆は反対する。それが冷戦期の資本主義と社会主義の対立が終わったあと、エリートと大衆の対立を招いてポピュリズムを生んだのだ。

特に重要なのは黒人ではなく、メキシコ人などのヒスパニック(スペイン語系)が増えてきたことだ。黒人はアメリカに同化しており、英語を話してキリスト教を信じているので、アメリカ的な価値を共有しているが、メキシコ人にはスペイン語しか話さない移民が多い。彼らは人口の15%を占め、そのうち不法移民が1000万人以上いる。

これは他国にはどうでもいい問題だが、アメリカ人にとっては身近で深刻な問題であり、特に白人には不満が強い。そのタブーに挑戦したのがトランプだった。

ポピュリズムで世界は「オレサマ化」する

国民がその代表を選ぶのが民主制だから、アメリカ人の低い知的水準を代表する大統領が選ばれるのは当然だが、今まではそれを官僚やメディアなどワシントンのエリートが阻止してきた。ところがインターネットでエリートが「中抜き」された結果、一種の「直接民主制」としてトランプが出てきた。

しかしトランプ大統領が暴言を実行するのは、容易ではない。合衆国憲法では大統領には予算編成権も法案提出権もなく、宣戦布告もできない。それは憲法が、民主制によってトランプのようなポピュリストが出てくることを想定してつくられたからだ。建国の父の先見の明は、200年以上たって効果を発揮したのだ。

「三権分立」というのも神話で、実際には連邦議会が強い権限をもち、与党の決定を大統領が執行するので、彼が与党を代表しているときは強いが、与野党がねじれると何も決まらない。オバマ大統領のようにずっと少数与党だと何もできないが、それは彼が無能だったからではなく、制度的な欠陥なのだ。

この点でトランプは、与党の共和党が上下両院で多数派になったので、オバマより「強いリーダー」になる可能性がある。しかし彼の立場は、共和党内では非主流の右派なので、彼が選挙で打ち出したような民族差別を共和党が法案化することは考えられない。

アメリカ人のパスポート保有率は30%で、7割は世界を知らない田舎者だ。他国といえばよその州のことだから、アメリカ合衆国全体の利益は考えるが、その外の世界情勢には関心がない。

このような孤立主義はアメリカの伝統で、第1次大戦後にアメリカが世界のリーダーになったとき、ウィルソン大統領は国際連盟を創設したが、議会は承認しなかった。アメリカのエリートの「リベラルな国際主義」と議会に代表を送る大衆の対立は、100年前から始まっていたのだ。

エリートは「世界全体の公益」を考えるというが、そんな抽象的な理念があるのは彼らの脳内だけだ。大衆は具体的な国益だけを考えるので、彼らが合理的に行動したら、世界が分断されるのは当然だ。世界が分断されて「オレサマ化」する傾向は、今後も続くだろう。

トランプを「外圧」として利用しよう

「日本との貿易で損失が出ている」と言うトランプは、いまだに1980年代の貿易摩擦のようなイメージをもっているようだ。トヨタのメキシコ工場にも介入し、ツイッターで「トヨタに35%の関税をかける」と公言したが、そんな権限は大統領にはない。

そもそもトヨタのメキシコ工場はカナダから移転するので、アメリカの雇用とは無関係だ。個別の介入で「雇用創出」はできない。雇用はGDPの従属変数だから、雇用を増やすには成長するしかないのだ。

トランプは、大統領就任の初日にTPP(環太平洋経済連携協定)から脱退すると表明したが、これは大統領には拒否権があるから可能だ。しかし「国境税」をかけるのは議会であり、大統領にはできない。NAFTA(北米自由貿易協定)から脱退することは不可能だ。

根本的な間違いは、貿易赤字は損失ではないということだ。経常収支の赤字は資本収支の黒字(海外に対する借金)と同じだが、世の中に借金をしていない企業はない。民間企業は借金が多すぎると破産するが、基軸通貨国のアメリカは破産しない。むしろ世界の投資がアメリカに集まっていることが、その活力を維持しているのだ。

トランプの政策は、1980年代のレーガン政権をまねている形跡がある。レーガン大統領も経済は何も知らなかった。「日本叩き」でアメリカの製造業を保護しようとして、日米構造協議などで圧力をかけたが、ほとんど成果がなかった。貿易摩擦で得をしたのは日本だった。

構造協議で大店法は廃止され、金融自由化が進み、非関税障壁が見直された。アメリカの日本叩きは見当違いだったが、日本人は外圧がないと動かないので、刺激があった方がいい。日本を変える外圧として、トランプ大統領を利用してはどうだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48916


 

【社説】メイ英首相が表明した「誠実な」EU離脱
メイ英首相(写真)は17日の演説で完全かつ誠実なEU離脱を表明した
2017 年 1 月 18 日 19:01 JST

 英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が昨年の国民投票で決まった後、英国民の関心はブレグジットが「ハード」か「ソフト」かに奪われた。テリーザ・メイ首相は17日の演説で、ブレグジットはEUからの完全かつ誠実な離脱を意味するとし、この議論に事実上の終止符を打った。これは賢明だ。

 メイ首相は、英国は関税のないEU単一市場から離脱し、EUと新たに包括的な自由貿易協定(FTA)を結ぶことを目指すと述べた。英政府はEUの関税同盟を離脱し、EU加盟諸国に対外共通関税(CET)を適用する用意がある。首相によると、英国はモノの貿易を簡素化するためにEUと独自の関税協定を交渉する方針だ。

 この枠組みは、よりソフトなブレグジットの支持者に衝撃を与えた。先週末にメイ首相の演説内容が漏れ伝わったことから、16日のポンド相場は対ドルで1%余り下落した。彼らは何を期待していたのだろうか。国民投票後は何らかの形での離脱は避けられないというのが政治の現実であり、ポンドは17日に反発上昇した。

 EU単一市場にとどまれば、英国は引き続きEUへの資金拠出が求められるほか、EUの経済関連規則やEU司法裁判所の管轄権を受け入れなければならず、政治的に容認し難いほどの移民流入を認める必要がある。EU残留派はこうした譲歩には価値があると主張したが、国民投票では反対に遭った。

 メイ首相の戦略により、EUが離脱交渉中や離脱後の英国を無力にすることは避けられるはずだ。EU単一市場と関税同盟からの離脱は、英政府が諸外国との間で独自の貿易協定を結ぶことを可能にする唯一の方法だ。ドナルド・トランプ次期米大統領は英タイムズ紙に対し、米国は近いうちに英国との二国間貿易協定について交渉を始めるとし、この機会を逃すべきではないと述べた。

 両国が協定を結ぶ見込みであることは、EUに対する影響力という意味でも有益かもしれない。EUの一部からは、EU離脱を検討する可能性がある他の加盟国への教訓として英国に罰を与えたいかのような声が聞こえてくる。こうした向きは交渉をできる限り有利に運びたいと考えており、単一市場へ引き寄せることが切り札だった。メイ首相はこの切り札が出される前に手を打った。

 英国とEUはそれぞれの最善の利益について交渉できる。双方にとって賢明なのは、他方の成功を手助けするよう振る舞うことだ。欧州のモノにとって英国は大きな市場であり、英国は欧州の主な金融センターにとどまりたい。メイ首相は演説で、EUが英国に対して懲罰的な取り決めをすれば、欧州大陸にとって「悲惨な自傷行為」になると警告した。

 EUにとって最大の脅威は、英国が単一市場の外で成功を収めることではない。EUは不満を抱いた市民が求める経済的繁栄をいつまでも実現できずにいる。英国をEU離脱に駆り立てたのは、欧州大陸が移民統制、テロとの闘い、雇用創出や所得拡大に失敗していることだ。

 EUからの完全離脱により、英国の関心は経済成長につながる改革の必要性に集中する可能性もある。ブレグジットが失敗に終わるとの観測から、一部の保守党員は英国を資本と人材の中心地にする上で必要とされる大胆な施策から全く、あるいは少しずつ後ずさりしている。これは投資資金を呼び込むとともに新たな事業を奨励するような税率の設定と、EUが目指しているとみられる高福祉の見直しを指す。

 言い換えれば、メイ首相は国民に対し、自治における次の大きな局面に足を踏み入れているのだと伝えている。こうした考えを促した国民には、何が必要か分かっている。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjbi6CAkMzRAhVKfbwKHWgOBRkQqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10504433381807684657504582566762271056458&usg=AFQjCNE0sjJOc6Wdd9T34CQmc3qt_ID6iA


 


日銀は長期金利目標を引き上げるか 超長期国債厳しい1年−日銀支援少、増発 女性と移民が日本の活力源 失敗経験からメリット
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/898.html
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/918.html

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