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[不安と不健康18] 玄米食べてカロリー消費!1日分で約30分の運動に匹敵
【第333回】 2017年3月16日 井手ゆきえ [医学ライター]
玄米食べてカロリー消費!1日分で約30分の運動に匹敵

 玄米など全粒穀物食は、肥満を防止して慢性疾患のリスクを減らすといわれている。

 米国では、国の「食事ガイドライン」で全粒穀物製品を少なくとも毎日3オンス(85グラム相当)食べるよう推奨しており、全粒穀物=健康の図式は定着したようだ。

 ただし、全粒穀物食が「なぜ」健康に良いのかは明確ではない。精製過程で廃棄されるミネラル分を余さず摂取できる点なのか、食物繊維がカロリーの吸収抑制に働くことがポイントなのか。米タフツ大学の研究者らがこの「なぜ」に注目し、全粒穀物と健康について検討している。

 比較試験は40〜65歳の81人──男性49人、閉経後の女性32人を対象に行われた。

 対象者を2群に分け、最初の2週間は同じ内容の食事を提供。その後、片方には「全粒穀物食」を、もう一方に「非全粒穀物食」を6週間食べてもらった。食事内容の違いは、全粒穀物製品の有無と食物繊維の摂取量で、総摂取カロリー量やミネラルの摂取量などはほぼ同じだった。

 対象者は、比較試験の始まりと終了時に体重やエネルギー代謝率、血糖値、および吸収しなかったエネルギー量(ふん便中の排せつ量で測定)などを計測している。身体活動量に関しては、普段通りに続けてもらった。

 その結果、推奨される量の全粒穀物を食べた群では、余分なカロリーの摂取が抑制された一方、食事誘発性熱産生を含む安静時のエネルギー代謝が促進されたことが判明。つまり、消化時の熱産生で対照群より1日あたり「100キロカロリー」も多くエネルギーを消費していたのである。空腹感や食事の満足度については、両群で差は認められなかった。

 ちなみに、100キロカロリーは30分のウオーキングで消費されるカロリー量に匹敵する。ダイエットのために我慢していた「缶コーヒー」を1本飲んでも許される消費量なのだ。

 厚生労働省は週2回以上1回30分以上の運動を推奨している。運動が苦手なら、週に2〜3日、白いご飯を「玄米ご飯」か「全粒パン」に置き換えるのも手である。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)
http://diamond.jp/articles/-/121338
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/434.html

[国際18] 米共和党の一部下院議員、地球温暖化対策に前向き サウジ米に二千億ドル超投資 日本サウジに  豪失業率は予想外上昇、雇用減
米共和党の一部下院議員、地球温暖化対策に前向き−トランプ氏と一線
Eric Roston
2017年3月16日 10:28 JST

17人の米共和党下院議員は15日、地球温暖化によるリスクを認める考えを表明し、トランプ大統領や同党の以前からのスタンスとは一線を画す姿勢を示した。
  17人は声明で環境保護主義への考え方や気候科学への支持、経済的に持続可能な政策の呼び掛けなどを盛り込んだ決議案を発表したが、本質的には2015年にクリス・ギブソン下院議員(当時)が提案した内容と同じ。
  共和党が多数を占める下院で同党議員17人が賛同しても、同決議案が可決される可能性は極めて低い。
原題:Republicans Break Ranks With Pledge to Fight Climate Change(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMVCJ06TTDS901


 


 
経済のグローバル化離れの傾向としての日本とサウジの協力 © AP Photo/ SPA
オピニオン
2017年03月15日 19:29(アップデート 2017年03月15日 21:37) 短縮 URL
タチヤナ フロニ
29921013
日本は、経済を立て直し石油依存から脱却する意向のサウジアラビアを支援する。サウジは日本企業の進出を促す特区を創設し、日本企業は有利な条件を得る。これらの意向は、3月13日に東京で日本とサウジアラビアの首脳が発表した両国の合意「日・サウジ・ビジョン2030」に盛り込まれている。共同通信が報じた。

サウジアラビア諮問評議会経済・エネルギー委員会のアブデル・ラフマン・アルラシディ委員長は「スプートニク」に、サウジは日本の投資家による国営企業民営化プログラムへの大規模な参加に関心を持っていると語った。日本は石油依存度の低い経済を構築するために、他に何をサウジに提案することができるのだろうか? 匿名を希望するロシア人アラブ専門家は、「スプートニク」に次のような見解を示した−


Saudi Arabia's King Salman. (File)
© AP PHOTO/ YOAN VALAT, POOL,
サウジ王族来日、爆買い期待外れ、ショッピング控えめ
「以前サウジアラビアは石油収入が大規模プロジェクトへ投資されていた時に国家資本主義型経済を構築した。新国王の下では経済の自由化と多角化の方向に方針が変更されている。そして日本との協力はちょうどこのような自由化に向けられている。石油大国ではなく、まさに日本の資本参加を得たサウジ経済の多角化を使って世界の経済関係にサウジを引き入れるというものだ。日本にとっては同国がサウジ市場を獲得するという点で有利だ。これは高い購買価値を持つ3000万人の市場だ。さらにアラビア半島の他の国の市場への進出。合わせると4800万人となる。」
なお日本はサウジで採れる石油や鉱物を強く必要としている。日本は同分野に投資する用意があるのだろうか?高等経済学院の日本専門家、アンドレイ・フェシュン氏は、次のような見方を示している−

「私は日本が新たな技術を提供する用意を示す目的は、より安価な炭化水素だと考えている。まずサウジアラビアで採掘されているガスの液化に技術を提供できる。安価な炭化水素の他にこれも日本を大きく後押しするだろう。サウジアラビアからの巨大タンカーによる石油輸送は日本の造船業界にとってよい刺激となる。これが日本経済にとっての2つの主なプラス面だ。」

雑誌「エクスペルト」の金融アナリスト、アンナ・コロエヨワ氏は、サウジアラビア国王の訪日はすでに歴史的なものと呼ばれていると指摘し、次のように語っている-

「国王の訪問には500人のビジネスマンや役人が同行している。サウジは自国製品の日本への輸出を軌道に乗せることに興味があるはずだ。今日これは特に切実なことだ。なぜなら昨年、原油価格下落を背景に日本とサウジの貿易額が著しく減少したからだ。共同経済ゾーンの企業はちょうど様々な特権を使用することができる。それはまず減税と金融支援だ。これはサウジアラビア製品を日本市場で促進するための素晴らしい可能性を提供する。また税制上の優遇措置や税関手続の簡素化は、日本企業がサウジアラビアで工場や研究センターを建設する刺激となる。すでに明らかになっているのは、サウジアラビアの政府系ファンドと日本の通信サービス会社『ソフトバンク』が協力し、2500万ドルでテクノロジーに投資するファンドを立ち上げるということだ。これらの計画は、原油価格の下落で過去2年間財政赤字となっているサウジの経済多様化計画と完全に一致している。」

A handout picture released by the Saudi Press Agency (SPA) on February 2, 2015 shows Saudi new King Salman bin Abdulaziz chairing the cabinet meeting in the capital, Riyadh
© AFP 2017/ HO/SPA
サウジ国王、日本に到着 高級ホテルで千室以上を予約【写真】
日本経済も長い間不況に陥っているため、それに劣らず輸出や投資の増加に務め、外国の新たな市場を模索している。アンナ・コロエヨワ氏は、さらに次のように続けている-
「すでにトヨタ自動車がサウジアラビアでスタッフの教育を開始しようとしていることが知られており、サウジに自動車組み立て工場を建設することについても検討する可能性がある。これらの大規模なプロジェクトは両国にとって間違いなく有益だ。協力分野にはエネルギー、産業、医療、社会インフラ、投資、金融など9つの方向性が含まれている。合意は合わせて30件以上のプロジェクトに関係している」。

なおコロリョワ氏は日本とサウジの協力について、世界経済における現在の非常に強い傾向として見なすことができるとの考えを示し、次のように語っている-

「今多くの国がグローバル化離れしており、グローバル化を信じるのを止め、さらに積極的に地域化を目指している。そのためサウジアラビアと日本の同盟はその道における非常に成功した例の一つになると考えている。両国は良好な産業と、産業企業の競争力のある協力の連鎖をつくる力を持っている。今日、世界経済はこのような例やプロジェクトを必要としている。なぜなら世界経済の成長率は極めて低いからだ。サウジには主要なプレーヤーとなり、米国や中国の代わりとなる力が十分にある。」

また日本とサウジは、世界最大の石油会社「サウジアラムコ」の株式を東京証券取引所に上場させる可能性についても協議を続けることで合意した。日本とサウジの協力はスケールの大きなものになることが約束されているとの結論を、確信をもって導くことができる。これが実り多き協力になるかは、時間の経過と共に明らかになるだろう。
https://jp.sputniknews.com/opinion/201703153434910/

 

[FT]米・サウジ経済協力、2000億ドル超の投資へ
2017/3/16 13:57日本経済新聞 電子版
Financial Times
 トランプ米大統領がサウジアラビアの対米投資を高める計画に支持を表明し、ホワイトハウスは15日、インフラ整備などに2000億ドル超の投資が行われる可能性があると強調した。

ホワイトハウスでサウジアラビアのムハンマド副皇太子(左)と会談するトランプ米大統領(14日)=AP

 トランプ氏が14日にサウジのムハンマド副皇太子を迎えて昼食会を催した後、「米国サウジ・プログラム」が発表された。サウジ政府は、この会談を対米関係の「歴史的転換点」として称揚した。

 ホワイトハウスによると、「エネルギーや産業、インフラ、技術分野における比類のない取り組みで直接・間接投資が今後4年間に2000億ドルを超える可能性がある」計画に対して、トランプ氏が支持を表明した。

 ホワイトハウスは、それ以上の詳細は明かさなかった。ここ数週間、トランプ政権の歓心を買おうと投資計画を修正する外国の企業や政府の動きが目立っている。

■米・サウジ関係の大きな転換

 サウジの新たな対米投資は、両国関係の大きな転換を意味することになる。両国は長年の同盟国だが、オバマ前政権の下で関係がこじれていた。特に、サウジと対立するイランとの核合意を米国がまとめたことで関係が悪化した。

 サウジ側の顧問は、トランプ氏とムハンマド氏の会談で、米国に対する「サウジの莫大な投資」が重要な部分になったと語った。原油安を発端とする経済の悪化に耐えているサウジは、米国からの投資を引き付けようともしている。

 この事案について正式な説明を受けた複数の関係筋によると、サウジ政府当局はインフラを中心に1000億ドル超の対米投資を検討している。サウジ政府は長期的なリターンを狙い、米国に拠点を置くプライベートエクイティ会社を通じて資金を提供することを考えているという。

 米ワシントンにあるサウジのシンクタンク、アラビア財団のアリ・シハビ専務理事は、「サウジは米国のために大規模な投資計画を用意している。米経済と雇用創出に対する大きな貢献を認識することが重要だ」と言う。

 サウジは原油安の影響を穴埋めするために外貨準備を2000億ドルほど取り崩したが、まだ中央銀行に5000億ドル超の資金がある。また、国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)で1000億ドルを超える資金調達も見込む。

 サウジ側の顧問は15日、トランプ氏とムハンマド氏の会談は「物事を正しい方向に向け、政治、軍事、安全保障、経済のすべての分野にわたる関係に重要な転換を画した」と述べた。

 「この会談は、多くの問題で見解が分かれる時期を経た両国関係の歴史的転換点と見なされる」と、この顧問は語った。

■イラン政府への「警告」

 サウジをはじめとするペルシャ湾岸諸国は、2015年に米国など主要国が署名したイラン核合意がイランを強気にしたと受け止めている。サウジなど湾岸諸国は、イランが中東の紛争をあおり、シリアやイラク、イエメンなどのアラブ諸国に介入していると非難する。イスラム教シーア派が主体のイランは、そうした非難をはねつけ、サウジがスンニ派過激主義をイスラム世界全体に広めていると主張する。

 トランプ氏は、イラン核合意を「最悪の取引」と評して批判を繰り返している。さらにイランの企業や個人に新たな制裁を科し、イラン政府への「警告」だとしている。この姿勢が、オバマ氏に裏切られたと感じていたサウジ政府に歓迎された。ムハンマド氏の父のサルマン国王は、トランプ氏が大統領就任早々に電話会談した国家元首の一人だ。

 「米政府もサウジ政府も、このリセットが利益になることを期待している。サウジ側にとって、イランと過激派組織『イスラム国』(IS)に対するトランプ氏の強硬姿勢は朗報だ」と、米アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所のアンドルー・ボーエン客員研究員は言う。

By Simeon Kerr & Shawn Donnan

(2017年3月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/

(c) The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO14139520W7A310C1000000/

 

 
日本とサウジの経済協力が強化 サウジが石油依存以外にも変わるべき点とは
2017.03.15
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日本とサウジの経済協力が強化 サウジが石油依存以外にも変わるべき点とは
サウジアラビアにあるイスラム教の聖地メディナ

《本記事のポイント》
日本企業がサウジへのインフラ整備と投資を進めている
サウジは、働くことへの意識と前近代的な司法制度を変えるべき
日本とサウジはwin-winの関係を築ける

日本企業のサウジアラビア進出が進みそうだ。サウジのサルマン国王の来日を機に、日本とサウジは政府間で11、民間で20のプロジェクトに合意した。

政府間においては、安倍晋三首相とサルマン国王は13日に会談し、「日・サウジ・ビジョン2030」に合意。互いを「戦略的パートナー」と位置付け、日本企業のサウジ進出を容易にする「特区」をつくることで一致した。

民間では、トヨタ自動車は車や部品の現地生産を検討し、三菱東京UFJ銀行など3メガ銀行は投資促進の提携を決めた。東洋紡は淡水化プラントの技術開発で協力することで合意し、ソフトバンクグループもサウジ系ファンドと共同で巨額ファンドの設立を計画している。


新産業をつくろうとしているサウジ

これまでサウジは石油収入だけで経済が成り立っていた。そのため国内に産業が育っておらず、さまざまな規制によって外国企業の進出も阻まれてきた。だが、最近は石油価格が低迷し、サウジの財政赤字は膨らんでいる。

危機感を覚えたサウジは「石油頼み」から脱却を果たすため、外資を誘致して産業を多角化しようとしている。サウジが目下、進めようとしているのが「インフラ整備」と「投資の呼び込み」だ。

そもそもサウジはインフラ整備が不十分で、電気やガスも安定供給されていない地域があり、都市間交通網も整備されていない。今回合意したプロジェクトによって、サウジのインフラ整備が進められることになるだろう。

また、サウジは外国からの投資を呼び込み、「投資立国」に生まれ変わろうとしている。サウジ国営で世界最大の石油会社、サウジアラムコも新規株式公開を行い、株式の5%、10兆円規模が売り出される予定だ。

日本企業が進出してインフラ整備をしたり、投資したりして、サウジの近代化を後押しするのはよいことだろう。


サウジが変わるべき2つの点

サウジは新たな国に生まれ変わろうとしているが、石油依存以外にも変わらなければいけない点がある。

1つ目は、サウジ人の働くことに対する意識だ。これまでサウジ国民の約7割は公務員で、給与も安定。労働時間も極めて短く、サウジの閣僚は「(公務員の労働時間は)1時間を超えない」とも発言していた。つまり、サウジ人の大多数はほとんど働かなくとも暮らしていくことができた。そのため、サウジの"働き方改革"は難航が予想される。

資源が乏しいために、コツコツとした努力と智慧によって、大きな産業をつくり、経済発展した国といえば、他ならぬ日本だ。経済協力するだけでなく、二宮尊徳に代表されるような「勤労の美徳」を伝えることも、日本の大事な役割になるだろう。

2つ目は、コーランに基づくイスラム法によって国の統治が行われているため、サウジの近代化が遅れている点だ。

酒やポルノを持ち込めば重刑が科され、窃盗すれば手首が切断される。殺人や麻薬使用、同性愛は死刑だ。ヨーロッパに留学したサウジの王女は、ある男性と恋人関係になって、石打の刑で殺された。こうした前近代的な司法制度が続いており、人権は蹂躙されている。

サウジの司法制度は、時代の変化に合わせて変える必要がある。それには、状況は違うが、日本の明治維新が参考になる面もあるはずだ。日本は明治政府のもと、天皇を中心としつつ、近代的な民主主義体制をつくることに成功した経験がある。しかも日本は、イスラム教国と対立するキリスト教国ではないため、サウジも日本からの助言に耳を傾けやすいはずだ。

日本には石油はないが技術はあり、新たな投資先を探している。サウジには石油はあるが最先端の技術がなく、投資が欲しい。そうした日本とサウジであれば、win-winの関係を築くことができるだろう。この関係を、日本の中東の平和への貢献につなげていきたいところだ。
(山本泉)

【関連書籍】
幸福の科学出版 『正義の法』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1591

【関連記事】
2016年9月13日付本欄 メッカ大巡礼にイラン人は参加できず シーア派とスンニ派の対立の背景にあるものとは
http://the-liberty.com/article.php?item_id=11918
http://the-liberty.com/article.php?item_id=12716


 


豪州:2月の失業率は予想外の上昇、雇用者数減少−豪ドル下落
Michael Heath
2017年3月16日 10:27 JST更新日時 2017年3月16日 12:14 JST

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• 失業率は5.9%と、昨年1月以来の高水準
• 雇用者数は前月比6400人減、予想は同1万6000人増

オーストラリアの2月の雇用統計で、失業率は予想外の上昇となった。余剰生産能力が依然として労働市場の問題となっているほか、賃金と物価は抑えられた状況が続く公算が大きいことが示された。
  豪統計局の16日発表によると、雇用者数は前月比6400人減少。エコノミスト予想では同1万6000人増が見込まれていた。失業率は5.9%と、前月の5.7%から上昇。2016年1月以来の高水準となった。エコノミスト予想は5.7%だった。
  フルタイム雇用者数は2万7100人増え、パートタイム雇用者数は3万3500人減少。労働参加率は横ばいの64.6%で、エコノミスト予想と一致した。
  豪ドルはシドニー時間午後0時42分(日本時間午前10時42分)現在、1豪ドル=0.7693米ドル。統計発表前は0.7714米ドルだった。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i0dTSV8FH0GM/v2/-1x-1.png

  キャピタル・エコノミクスのアシスタントエコノミスト、ケイト・ヒッキー氏は「特に金融安定性をめぐる懸念が和らいだ場合、失業率が大幅に上昇すれば豪中銀の追加利下げにつながることは十分にあり得る」と予想。「実際に豪中銀は労働市場の動向を注視していると示唆しており、労働市場の悪化は一段の利下げにつながり得るとロウ総裁はかねて指摘している」と述べた。
  一方、オーストラリア・コモンウェルス銀行の証券部門シニアエコノミスト、クレイグ・ジェームズ氏は「長期にわたり金利据え置きが続きそうだ。今回のデータに利上げか利下げの可能性を高める要因は何もない」との見方を示した。
原題:Aussie Jobless Rate Unexpectedly Jumps to 5.9%; Currency Drops(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMVUXV6K50XS01


http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/635.html

[政治・選挙・NHK222] 働き方改革、経済界に協力要請 官房長官が経団連会長と懇談 朝鮮半島は危機的状況「安定政権」日本の役割 孫社長の戦略を真似
働き方改革、経済界に協力要請 官房長官が経団連会長と懇談
2017/3/16 10:18
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 菅義偉官房長官は16日、都内で開かれた経団連の榊原定征会長との懇談会で、働き方改革の推進に協力を求めた。菅氏は「安倍政権の最大の挑戦は働き方改革だ」と述べた上で、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の実現の必要性を強調。「皆さんに厳しい問題もあると思うが、労使に胸襟を開いていただき、何としても実現したい」と理解を求めた。

 政府は月内に働き方改革の実行計画を策定する。菅氏は計画を踏まえた関連法案について「速やかに国会に提出したい」と述べた。

 懇談では榊原氏が2017年春季労使交渉に関し「昨日発表があった企業のほとんどがベースアップ(ベア)を実施し、一時金はほぼ満額(回答)だ。高く評価でき、失速という状況ではない」と説明した。菅氏は「ベア実施は4年連続だ。皆さんの協力に感謝したい」と表明。「政府としてそうしたものを注視しながら、経済を再生軌道に乗せていきたい」と語った。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS16H0G_W7A310C1EAF000/


 

働き方改革は有名無実か?「労働後進国」日本を直視せよ  トランプ自動車各社に雇用拡大要求 日銀金融政策維持 中国金利引上
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/239.html

 

 
2017年3月16日 田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
朝鮮半島は危機的状況、「安定政権」日本が果たせる役割


 東アジア情勢は緊迫の度を加えてきた。北朝鮮は3月6日に4発のミサイルを日本海に向けて発射し、日本の米軍基地を標的とした実験であることを匂わせた。2月13日のマレーシアでの金正男暗殺事件は北朝鮮の関与が濃厚である。

 一方韓国では3月9日に朴大統領の弾劾が決定され大統領選挙が60日以内に行われる。在韓米軍へのTHAADの配備が始まるとともに、米韓合同軍事演習が3月1日から2ヵ月間実施されている。中国では国会にあたる全国人民代表大会が15日閉幕し、秋の党大会に向けて政治の季節の幕開けである。トランプ政権の東アジア政策は未だ不透明であるが、ティラーソン国務長官は15日からの日本を皮切りに、日韓中の三ヵ国を訪問する。日本はどう情勢を認識し、どういう戦略を構築していくべきなのか。

緊迫の度合いを増す東アジア情勢
北、2、3年で長距離弾道ミサイル?

 北朝鮮脅威認識は二つの面から高まり、朝鮮半島は新たな危機的段階に達している。

 第一に、金正恩政権は衝動的行動が目に付く。金正日時代の「先軍体制」(国権の最高機関が軍人を中心とする国防委員会)から党中心体制(最高機関が党国務委員会)へと変化し、権力基盤を固めるため金正恩政権は大々的な粛清を行い、不満分子の排除にかかっている。異母兄の金正男の存在も体制を脅かすと考えたのであろうか。しかし結果的に体制の安定度が増しているとは考えにくい。実力を持った軍が潜在的な不満分子(先軍体制時代の特権は取り上げられているのだろう)であることは不安定要因なのだろう。

 第二に、北朝鮮の核ミサイル開発は武器としての精度を相当に高めてきた。ミサイルも短距離、中距離、長距離のミサイル・弾道ミサイルや潜水艦発射ミサイルまで多様な実験を繰り返してきた。2000年代は核・ミサイル実験を西側から支援を得るための政治的カードとして使った面が強かったが、今や武器としての精度を上げるという観点が濃厚である。この2、3年のうちに核弾頭搭載の長距離弾道ミサイルが完成するのではないか。

韓国新大統領は対北融和策をとるか
トランプ政権は軍事的措置も検討

 韓国朴大統領弾劾の成立、60日以内の選挙は保守・革新の間の激しい分断をもたらすだろう。この期間に軍事挑発を行うと選挙戦において保守を利するという考慮が働くため、北朝鮮が軍事挑発を行うことは考えにくいのかもしれない。優勢が伝えられる革新派の野党が勝利すれば金大中、盧武鉉政権のような対北朝鮮融和政策をとるのではないか、THAADの配備も見直すのではないか、中国との関係も再び緊密化に繋がるのではないか、といった見通しが語られ始めている。

 しかし北朝鮮の政権は危うい存在であり、米国のトランプ政権も場合によっては強硬措置も取り得る政権であるという認識はあるだろうし、北朝鮮融和政策が必然ということはない。ただ選挙戦を含む今後数ヵ月の間、韓国は北朝鮮問題解決に向けた当事者能力を発揮できないのは想定しておかなければなるまい。

 トランプ政権はオバマ政権の「戦略的忍耐」(北朝鮮が核放棄に向け行動を改めるまで動かない)政策を放棄し、新たな選択肢を検討しており、それには先制攻撃などの軍事的行動やサイバー攻撃も含まれていると伝えられる。北朝鮮のような国に対し選択肢を増やし、場合によっては軍事的措置も含まれることを示すのは賢明である。

 ただ軍事的措置の発動自体についてはよほど慎重でなければならない。核施設を空爆で破壊するのは施設が地下に建設されてもぐっている可能性が高い以上至難であり、効果は限られている。また、北朝鮮の反撃はソウルや日本に向けられるであろうし、韓国や日本が攻撃されることになればコストはあまりに高い。しかし、軍事的措置についてはもちろん北朝鮮の行動次第であることも自明であろう。

 北朝鮮を核放棄に至らせるために、今一度外交戦略を練り直すべきと思う。これまで北朝鮮に対して繰り返し安保理は制裁を科してきたが、これは決して北朝鮮を孤立させる全面的なものではなく、また抜け道が多いものであった。特に中国との国境貿易を通じる抜け道は半ば公然であり、制裁の効果は限られてきた。北朝鮮に対し、孤立を抜け出て経済的危機を回避するには核放棄を前提とした交渉しかないことに向き合わせる必要がある。このためには中国の協力が不可欠である。

中国の協力をどうとりつけるか
危機管理計画を作り、駐韓大使帰任を

 中国はこれまで北朝鮮を追い詰めると暴発するとか、北朝鮮の現体制の崩壊は中国の安全保障にとって西側とのバッファーを失うことを意味し、不都合であると考えてきたのだろう。しかし、昨今の北朝鮮の行動は極めて危うく、国際社会の嫌悪感も高まっており、北朝鮮は中国にとって大きな重荷となっていることも事実だろう。北朝鮮の政権が仮に崩壊したとしてもただちに中国の不利益につながるものではないことを中国に納得させることも必要である。

 このような道筋をたどっていくためには、いくつかのことを達成しておかなければならない。第一には日米韓の完璧な危機管理計画の策定である。北朝鮮が暴発した時に各国がどういう役割で行動するのか計画を有している必要がある。新安保法制は、従来は可能でなかった日本による支援を可能にする。また、危機管理計画にはある段階には中国やロシアも巻き込んでいくべきなのだろう。

 第二に、このような道筋を実現するため、北朝鮮を除いた5者協議(日米韓ロ中)を開催するべきだろう。従来、中国は5者協議を開催すると北朝鮮を刺激しすぎるので反対という態度を示してきたが、傍若無人な振る舞いを続ける北朝鮮を擁護する理屈はない。

 また、朝鮮半島を巡る安全保障環境がこれほど緊迫の度を加え、関係国、特に日米韓の強い連携が必要とされている時に、駐韓日本国大使が未だ帰任していないということで良いのだろうか。もちろん慰安婦像を巡る韓国の態度が不誠実であるとして日本がとった対抗措置であることを理解しないではないが、日本の意図は明確に示されたわけであるし、韓国の大統領選挙の実施を含め事情が大きく変更した今、大使を帰任させる十分な理由が整ったと考えるべきではないか。日本国土国民の安全のため万全を期する措置をとることの優先度は高いのではないか。

 上で述べたように北朝鮮問題の鍵は引き続き中国が握っていると言って過言ではない。そして中国は今後米中の全体的な関係の中に北朝鮮問題を置いて態度を決めるだろうという事も想像に難くない。秋の第19期共産党大会は今後5年の体制を決める重要な会議であり、習近平総書記の行動は更なる統治に向けて万全を期することが最大のプライオリティとなるのだろう。このためには経済成長を大きく減速させないことであり、対外的に弱腰と見られるような行動を避けるということなのだろう。

鍵を握る米中関係の行方
長期安定政権の日本、役割は大きい

 ここで米中関係が中国にとって大きなリスク要因となる。即ち米国が中国の通貨・貿易政策は不公正であるとして関税の引き上げなどの圧力を強めれば中国はおそらく報復に踏み切り、結果的に貿易戦争となる。安保面についてはオバマの米国との間でも南シナ海などで緊張関係が存在していた訳であり、中国が拡張的行動を自制しない限り緊張関係は続く。しかし、中国のプライオリティが経済成長であることを考えると中国も貿易戦争と安保の緊張は避けたいはずであり、米中間で大きな合意が達成される可能性が皆無ではない。ただし、ここでは中国による南シナ海・東シナ海での行動の自制と北朝鮮問題での全面的な協力が含まれていなければならない。

 朝鮮半島問題を軸とした東アジア情勢は日本にとって当面最も重要な課題となる。先に見たとおり、韓国は大統領選挙に向けて課題解決の当事者能力が低下するだろうし、米国の政権は未だ副長官以下のスタッフを欠き、不完全な政権である。この中で、他の先進民主主義諸国と比して最も安定した強い安倍政権下の日本の果たすべき役割は大きいと言わざるを得ない。柔軟な発想で能動的戦略を得っていく事を期待したい。日本にとって長い懸案である拉致問題についても朝鮮半島の安定という大きなコンテクストの中で対話を続けることが解決の近道であると思う。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)
http://diamond.jp/articles/-/121428

 

【第9回】 2017年3月16日 三木雄信
孫社長の戦略を真似して、「ほんとうに大成功」した話

「仕事が進まない」「今日も残業だ」「結果が出ない」……こうした問題を、すっきり解決してくれる手法がある。PDCAを超スピードで回す「高速PDCA」だ。ソフトバンクでは6万人超の社員がこの手法を使い、わずか三十数年で8兆円企業を誕生させた。
そんな夢のような方法があるなら今すぐ真似したいが、果たして誰にでも真似できる方法なのだろうか。安心してほしい。法則さえつかめば、誰にでも真似できる!
9年にわたり孫社長の右腕として活躍した元ソフトバンク社長室長・三木雄信氏の話題沸騰の新刊『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごいPDCA』から一部抜粋して紹介する。

私の事業が創業1年で黒字化できたワケ

 私はソフトバンクを退職後、自分の会社を起こしました。ここでも高速PDCAの仕組みを使うことで、事業を軌道に乗せることに成功しています。

 2015年5月に英語学習サービスの「トライズ」という事業を始めました。

 まだスタートして1年ほどですが、すでに会員数は350人を超えています。サービス開始時は、わずか3人のモニターしかいなかったことを考えると、我ながら驚くべき数字です。

 受講希望者への無料カウンセリングも、最初は自社のこぢんまりとした一室で行っていましたが、現在は東京の六本木一丁目と新宿、田町三田、大阪の堂島の4ヵ所に学習センターを設けています。近日中に、都心の赤坂に5ヵ所目をオープンする予定です。

 トライズは、従来の英会話スクールと比較すると、まさに常識外のサービスです。

「1年で1000時間の英語学習により、使える英語が身に付く」。これがトライズの最大の特徴です。

 私自身、まったく英語が話せない状態から、1年で1000時間の学習をこなして英語をマスターした経験があることから誕生した事業です。

 また、米国人が日本語を習得するには最低でも2200時間の学習が必要という学術的な裏付けからその逆も真なりという裏付けもありました。

 そこから、多くの人が学校教育で約1200時間の授業を受けていることから、大人であれば残り1000時間の勉強が必要だという根拠もありました。

社内外から反対意見が噴出したが……

 ところが、このビジネスのプランを提案すると、社内外ともに反対が相次ぎました。

「忙しいビジネスマンが、1年で1000時間も勉強するのは無理だろう」

 それが多くの意見でした。

 さらに、専属トレーナーがマンツーマンで受講者をサポートするというサービス内容にも疑問符がつきました。

 一人ひとりにパーソナルトレーナーがつくようなものですから、そのぶん人件費がかかり、受講料は高くなります。「他の英会話スクールに比べて高すぎる」という声も相次ぎました。とはいえ、私には勝算がありました。

 英語学習業界では常識外かもしれませんが、他業界ならすでに同じビジネスモデルが成功しています。

 パーソナルトレーナーがついて、必ずダイエットを成功させると謳ったフィットネスジムが大ブームを巻き起こしたことは、皆さんもご存じの通りです。だから、「トレーニングが厳しくても、料金が高くても、必ず結果が出るならニーズはあるはずだ」という確信がありました。

 ビジネスモデルだけでなく、「顧客1人当たりの獲得コスト」を設定する際も、このジムをお手本にしました。

 ジムの運営会社の財務諸表を分析したり、フィットネス業界に詳しいコンサルタントに話を聞いたりして、業界の仕組みを徹底的に研究したのです。

 その数値をもとに、「1人の受講者に入会してもらうまでに、いくらお金をかけていいか」の指標を決定できたので、目標を設定する段階で余計な手間や労力を費やすことなく、私たちのビジネスは一気にスタートダッシュを切ることができました。

出資者を納得させた「失敗前提」の戦略とは?

 事業の立ち上げにあたっては、あるインキュベーションの会社から出資を受けました。

 そこで私が出資者に約束したのは、「1年後の2016年6月には必ず単月黒字にします」ということ。つまり、めざすゴールを設定したわけです。

 ただし、こうも付け加えました。

「その代わり、最初は高いコストをかけて、集客のためのプロモーションをすべて試します。そのため一時的には顧客1人当たりの獲得コストが高くなりますが、試した方法の中からいいものを選んで、1年後には目標値に収めます」

 その宣言通り、私はあらゆる集客方法を試しました。

 WEB広告やFacebook広告はもちろん、タクシーに広告を出したり、チラシを配ったりもしました。

 インターネット広告代理店は4社使いました。

 代理店を複数使ったのは、運用能力に差があるからです。同じWEB広告でも、テキストの書き方やサイトへの誘導の仕方は代理店によって異なります。

 会社の規模や売上が大きくても、誤発注やミスが多いこともあるし、同じ代理店の中でもスキルが低い担当者なら成果が出ないこともあります。

 こればかりは、やってみないとわからないのです。

 あるとき、新規の入会と無料カウンセリングの申し込みが、10日間ほどピタッと止まった時期がありました。

 そこで原因を探ったところ、今月も前月もオーディエンスネットワークという手法の広告を出した期間に申し込みがゼロになっていたのです。

 もちろん、すぐにその広告はストップをかけました。

 代理店からは、「多数のターゲット層に安価で接触できる非常にコスト効率の高い広告です」と説明されていましたし、出稿後のインプレッション(広告が表示される回数)も好調でした。だから「たくさんの人に見てもらっているから、申し込み数も増えるだろう」と期待していたのですが、現実は逆だったわけです。

 他の事業でなら、この広告が効果を発揮するケースもあるでしょう。

 ただ、このビジネスにはマッチしなかったということ。世間一般で良いとされていても、自分の仕事で結果が出るとは限らないのだと改めて実感しました。

 こうして広告のチャネルごとに効果とコストを測定しながら、私は事業の改善を続けました。

新規会員を安定して増やしたプロセス管理術

 もちろん、プロセスごとの数値も管理しました。

 顧客獲得までのフローをプロセスに分けると、「広告による集客」→「無料カウンセリング」→「入会」となります。

 そこで、「無料カウンセリングに来た人のうち、入会するのは何%か」を割り出し、その数値の変動も確認しました。

 もし先週は50%だったのに、今週は30%に下がったとしたら、何か原因があるはずです。

 広告がターゲット層とずれていて、英語学習への意欲がそれほど高くない人まで無料カウンセリングに来ているのかもしれない。あるいは、無料カウンセリングを担当するスタッフのスキルが未熟で、お客さまが入会したいと思うようなプレゼンができなかったのかもしれない。

 理由はいろいろと考えられます。

 その場合は、広告の種類を見直したり、スタッフの研修を強化したりといった改善策を実行し、また数値の変化を確認します。

 こうして「高速PDCA」を回し続けた結果、1年後の今年6月には、約束通り黒字化を果たすことができました。

 顧客1人当たりの獲得コストも、1年前に比べて約40%も下げることに成功しました。これもあらゆる集客方法を試し、どれが「いちばんいい方法」なのかわかったからです。

 ソフトバンク流の高速PDCAを実践すれば、周囲が「無理だ」と反対するようなチャレンジでも、自分に経験のない仕事でも、確実に結果を出すことができる。

 今回の経験を通して、私は改めてその効果を確信しています。

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http://diamond.jp/articles/-/120577?


 
【第1回】 2017年3月16日 下地寛也
上司が理解できるのは、資料1ページに情報1つが限度

仕事ができる、できないは、その人がつくった資料を見れば、すぐわかります。話題のビジネス書『一発OKが出る資料 簡単につくるコツ』著者・下地寛也氏に、決裁者の心をつかむ資料のつくりかたを教えていただきます。まず初回は、資料に盛り込む1ページあたりの情報量についてのテクニック。
上司は一度に1つのことしか
理解できない
 資料に盛り込む情報は、少なければ少ないほどいい――。
 情報が少ないほうが、相手が理解しやすいからです。具体的に言えば、伝えるべき情報は「資料1ページにつき、情報を1つに絞る」が基本。
 人は「一度に1つのことしか理解できない」からです。
 1ページに2つ以上の情報があると、読み手は混乱するだけ。だから、1つに絞る。一発OKが出る資料の鉄則と言っていいでしょう。
 具体例をあげましょう。実際に私が見た「残業削減の提案資料」です。その資料には、1ページにじつにたくさんの情報が盛り込まれていました。つまり、非常に理解しづらい資料だったのです。
 具体的には、あるページでは、冒頭に次のようなメッセージから始まっていました。
「残業が特に多いのは、組織変更が多く家具の発注が増える需要期の3月。残業削減に対する上司の意識はまだ低いと言える」
 このメッセージの下、そのページには、月次の残業推移の表と、残業に対する社員アンケート結果のデータが貼られていました。資料のつくり手は、残業の問題点をいろいろと盛り込もうとしたのでしょう。
 しかし、これでは、読み手にとっては「3月の残業が多い」ことと「上司の意識が低い」ことの2つの情報の因果関係がわかりません。
1つのことをしっかり理解しながら
ページをめくってもらう

http://diamond.jp/mwimgs/d/7/-/img_d777323810a869bf0f03721e5d922c4161758.gif
 ただ、この資料も「資料1ページにつき、情報を1つに絞る」と、一気に読みやすくなります。
 まず1ページ目で「残業が特に多いのは需要期の3月」ということだけを伝えます。
 残業時間の月次グラフを添えるとわかりやすいでしょう。そうすると読み手は、「残業の問題を解決するには、特に需要期の3月をどうするべきかを考えればいいのだな」と理解できます。
 次に2ページ目で、「残業に対する上司の意識はまだ低い」ということだけを伝えます。管理職と一般職のアンケート結果の比較を行なうと、説得力が高まるでしょう。
 そうすると読み手は、「残業の問題を解決するには、管理職に対して何かしなければいけないのだな」と理解できます。
 1ページに入れる情報を1つに絞ることで、読み手は1つひとつのことをしっかり理解しながらページをめくることができます。ページをめくるペースと情報を理解するペースが合って、資料の内容がリズムよく頭に入ってくるのです。
(コクヨ株式会社 ワークスタイルコンサルタント 下地寛也)
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http://diamond.jp/articles/-/121174


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[医療崩壊5] がん難民を食い物にする自由診療クリニック 患者はなぜ受診するのか、被害を避ける処方箋とは
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がん難民を食い物にする自由診療クリニック
患者はなぜ受診するのか、被害を避ける処方箋とは
2017.3.16(木) 小杉 和博

手術をする外科医〔AFPBB News〕
 あなたがもし「がん」になったらどんな治療を受けたいですか?
 現在、全国の病院で一般的に提供されているがんの治療法は、「標準治療」と呼ばれるものです。
 「標準」と聞くと、「普通」や「並」と思われるかもしれませんが、これまで行われてきた数多くの臨床試験の結果導かれた、現時点での最も有効性の高い治療法のことを指します。標準治療は手術、放射線、抗がん剤の3つを組み合わせたものがほとんどです。
 一方、そうした従来の医薬品とは全く異なる「再生・細胞医療」が新たな治療法として大きな期待がかけられ、今後の成長分野として大きく注目されています。2012年にノーベル賞を受賞した「iPS細胞」を利用した治療もこの1つです。
 残念ながらこうした再生・細胞医療の多くはまだ研究段階ですので、一般的な治療に導入されるような安全性や有効性は確認できていません。

推奨されない治療に1000万円請求も
 しかし、そうした研究段階の医療が実は、保険適用外の自由診療の名のもとに日本では数多く行われているのです。
 主な対象疾患は「がん」で、行われているのは「免疫細胞療法」という治療法です。2015年時点の再生・細胞医療市場は約140億円。その約8割は免疫細胞療法が占めています*1。
 免疫細胞療法とは患者さんから採取した免疫細胞(リンパ球)を体外で培養・活性化させ、体内に移植しがん細胞を攻撃する、というものです。
 古くから行われている治療法ですが、昨年12月に発表された日本臨床腫瘍学会のガイドラインでは、適切な臨床試験が行われていないため、治療法として推奨されないとされています*2。
 にもかかわらず免疫細胞療法を提供するクリニックは全国で300か所以上あり、受診する患者さんが後を絶ちません。治療の1回あたりの費用は50万〜60万円、複数回受けることが勧められており、総額では300万〜500万円かかります。
 1000万円を越える事例もあるようです*3。当然、保険適用外ですので費用はすべて自己負担。患者さんは身体的、精神的にも辛い状態に加えて、経済的にも大きなダメージを負ってしまうのです。
 このような効果が不確かな治療を、患者さんはなぜ高額な費用を払ってまで受けるのでしょうか?
 その原因の1つには、現代日本のがん治療と緩和ケアの深い溝が関係しています*4。
 がんは発生した臓器や組織型によって治療法や経過が異なりますが、一般的に早期がんであれば、多くは前述の標準治療により治癒(完全に治ること)が目指せます。
 一方、進行がんになってしまうと治癒の可能性は急激に下がります。また、転移や再発がんでは多くの場合、治癒を目指すことは困難になりますので、抗がん剤などでがんの進行を抑えながら「がんとの共存」を目指すことになります*5。
 しかし、抗がん剤の効果も永続的なものではないので、投与中に効果がなくなったり、あるいは副作用による辛い症状のため継続が難しくなったりして中止せざるを得なくなります。
 そうなるとがんへの直接的な治療ではなく、がんによる辛い症状を和らげる「緩和ケア」へ移行することになります。

転院先がなく難民となるがん患者
 通院中の病院に緩和ケアの専門家がいないと、「もううちでできることはない」「早く次の病院を探しましょう」と半ば追い出されるような形で、転院させられる方も少なくありません。
 このようなケースは「がん難民」とも呼ばれ、お聞きになったことがある方も多いのではないでしょうか。
 一方、転院先となる専門的な緩和ケアを提供できる病院は全国的に不足しています。緩和ケア病棟を持つ病院は全国で308しかなく、1年間にがんで亡くなる約37万人(2015年統計)のうち緩和ケア病棟で亡くなった人は、10%しかありません。
 また在宅で亡くなるがん患者も約10%と報告されており、全国的には約8割のがん患者は一般病院で亡くなっているのです。
 緩和ケア病棟での死亡割合は下の図1に示すように地域格差が大きく、トップの高知県は26%、次いで福岡県の24%、熊本県22%に対して、福島県4%、埼玉県3%、最低の和歌山県は2%しかありません*6。
図1 「ホスピス緩和ケア白書2015」より引用

 私が働いている神奈川県では緩和ケア外来の受診まで1〜2か月程度かかることもあり、受診を待っている間に亡くなってしまうことも珍しくありません*7。
 先日も血液内科の先生から「2月に緩和ケアがある病院へ患者さんを紹介したら、外来受診は5月になると言われた。それまで持たない」と相談を受けました。
 また「緩和ケア」=「死が近い」という負のイメージが強く、緩和ケアへの移行を拒否されることもしばしばです。私も抗がん剤で治療中の患者さんに緩和ケアへの移行の話をしたら、「先生、それだけは言わないで」と泣かれたこともあります。
 もうできる治療はないと追い出され、がん難民となった方が、緩和ケアへは行きたくないし、待ち時間も長い。何かできる治療があるはず、と必死になって治療法を探した結果、たどり着くのが実は免疫細胞療法なのです。

遅まきながら国も法整備に乗り出す
 そのような患者さんにとって治療の有効性や費用などは大きな問題ではないのかもしれません。
 これまで国はこうした免疫細胞療法を提供する自由診療クリニックに対して、規制を設けていませんでした。しかし、2014年に「再生医療安全性確保法」が制定されたことで状況が多少変わってきています。
 この法律は再生医療の安全性を確保するため、再生医療を提供する医療機関に対して国への治療計画の提出を義務づけ、細胞加工施設の要件などを定めたものです。
 昨年10月、法律で定められた基準を満たさない無許可施設で細胞を加工し、治療を行ったなどとして、厚生労働省は都内の自由診療クリニックに治療の一時停止と細胞製造の停止を命じました*8。
 このような安全性に関する規制は必要ですし、弱みにつけ込んだ営利目的の自由診療で損をするような患者さんが減ることを切に願います。
 しかし、規制を強化したところで問題の根本的な解決にはならず、患者さんの希望が満たされるわけではありません。そのような自由診療を希望してやまない患者さんの気持ちを、標準治療を提供している一般の医師はもっと真摯に受け止めなければならないと思います。
 がん難民を生んでしまう、現代日本のがん治療と緩和ケアの深い溝を埋める方法がもっと必要なのではないでしょうか*4。
 1つには、専門的な緩和ケアを提供できる医師・病院が圧倒的に不足している状況の改善が必要です。緩和ケアの専門医は全国でわずか136人しかいません。いまだに県に1人もいないところもありますし、他領域の学会専門医が1000人単位であることと比較しても圧倒的に少ないのです。
 また、がん難民の94%が医師の説明に不満を持っており、がん難民はそうでない患者さんと比べて治療の説明時間が有意に短かった、という報告があります*9。つまり、医師と患者さんの間のコミュニケーション不足も一因となっているのです。

 医師と良好なコミュニケーションを取るにはどうしたらよいでしょうか?
 正直これはかなり難しい問題です。がんの検査結果や治療の選択肢などはすべて医師側が把握しています。例えるなら、医師はスポーツの先生のようなもので、新しい競技を教え、そのルールや道具の使い方を教えるのも医師なのですから、患者は受け手になるしかありません。
 その結果、「先生にお任せします」という方が多くいらっしゃいます。しかし、最近は「自己決定を尊重する」ということが医療界の大前提とされており、「それでは困る、自分で決めなさい」と、突然提示された選択肢を選ぶよう医師から迫られます。

納得できるまで医師に相談する
 腑に落ちないまま選んではみたものの、それが医師の考えと合わないと嫌な顔をされ、時には怒り出す医師もいるようです。患者側が完全に不利な状況で、医師とどのようなコミュニケーションを取ればいいのでしょうか?
 結論を言えば、納得できるまで医師に説明を求めて、納得できる治療を選んでいくしかないと思います。
 本当はいろいろと聞きたいことはあるが忙しそうなので相談しにくい、また何を聞いたらよいか分からない、と遠慮されてしまう方もいらっしゃるでしょう。そんなときでも、その心配な気持ちを思い切って医師に伝えてみてください。治療を受けるのは自分なのですから遠慮する必要などありません。
 それでも答えてくれないようなら、ぜひセカンドオピニオンやがん相談支援センターを利用して治療について納得するまで相談できる医師を探しましょう。
 私は、納得できないまま治療が進み、後悔をされる方に多くお会いしてきました。また医師と患者も人間同士ですから、どうしても合う合わないはあると思いますし、そういう私も、考え方が合わず離れていってしまった患者さんは何人もいらっしゃいます。
 がんと戦う、共存するのは簡単なことではありません。余計な人間関係でストレスを抱えず、ご自身が納得できる治療を受けられる、それが当たり前の世の中になってほしいと思っています。
 ただ最後に1つお願いがあります、同じ検査を何回もやることは身体にとって負担になってしまいますので、別の医師を受診するときは、必ず紹介状をもらうようにしてください。
*1=シード・プランニング. 再生・細胞医療研究の現状とビジネスの展望 −調査結果−2016-9-27
*2=日本臨床腫瘍学会編. がん免疫療法ガイドライン. 金原出版,2016,118p
*3=選択. 2017,3月号,p104-105
*4=Kosugi K, Tsuda K, Higuchi A, et al. Bridge the deep chasm between patients with cancer and palliative care in Japan. BMJ Supportive & Palliative Care 2017. doi: 10.1136/bmjspcare-2017-001329
*5=勝俣範之. 「抗がん剤は効かない」の罪. 毎日新聞社,2014,198p
*6=ホスピス緩和ケア白書2015,http://www.hospat.org/white-book_2015-top.html
*7=ハフィントンポスト.2016-07-12.http://www.huffingtonpost.jp/kazuhiro-kosugi/terminal-care_b_10935710.html
*8=厚生労働省. 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について. 2016-10-31
*9=日本医療政策機構. 政策提言vol.5「がん患者会調査報告−『がん難民』解消のために−」https://www.hgpi.org/handout/2010-04-16_34_317692.pdf


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http://www.asyura2.com/16/iryo5/msg/571.html

[国際18] 原告はチンパンジー、法的権利訴えNYで審理「人」と認めさせたい動物愛護団体 国旗デザインの盗用を27年間主張し続ける国
原告はチンパンジー、法的権利訴えNYで審理
法的な「人」と認めさせたい動物愛護団体

https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-SL664_NYCHIM_J_20170313162621.jpg
おりに入れられた状態で暮らしているチンパンジーのトミー(ニューヨーク州グラバーズビル) PHOTO: FRAZER PENNEBAKER
By CORINNE RAMEY
2017 年 3 月 16 日 12:52 JST 更新

 ニューヨーク州マンハッタンの控訴裁は16日、意外な原告の審理を行う。チンパンジーのキコとトミーだ。

 原告自身は出廷しないが、自ら弁護を買って出たスティーブ・ワイズ氏が法廷に立つ。ワイズ氏は、16日にキコとトミーの代わりに行う弁論が、一部動物の法律上の扱いを徐々に変える可能性があると信じている。

 ワイズ氏は、動物愛護団体「ノンヒューマン・ライツ・プロジェクト(NhRP、非人間の権利プロジェクト)」の代表を務めている。NhRpのアプローチは異例で、動物の幸福の保護ではなく、その法的権利を巡って争っている。同団体が目指すのは、チンパンジーをモノではなく、法律上の人間として認めさせることだ。キコやトミー、その他チンパンジーの代理人として、ニューヨーク州の下級裁や控訴裁に提訴したが、ことごとく退けられている。

 ワイズ氏は以前「結果は毎回、良くなっている」と述べ、審理を認められたことは勝利とみなしていると話していた。

「人身保護令状」を請求

 NhRPの法廷戦略が奇抜なのは「人身保護令状」を請求している点だ。人身保護令状は、不当に拘束されている者の自由を回復するために裁判所に求める令状のこと。この交付を受けるには法律上の「人」でなければならない。ワイズ氏は、自分たちの主張を支持する判決が下されれば、最終的にチンパンジーがフロリダ州の自然保護区に開放される道が開けると期待している。

 ワイズ氏によると、人であること――生物学上ではなく法律上の区別において――は、会社、奴隷、船などにも認められてきたという。

 NhRPが最初に裁判を起こしたのは2013年。全米50州と他国の法律を調べた上で、ニューヨーク州が最も自分たちの主張に好意的だと判断した。

 同州オールバニの控訴裁は2014年、チンパンジーが義務や責任を負うことはできないとして、トミーは人ではないとの判断を下した。ワイズ氏は16日の審理では、義務や責任を負えなくても法律上の人として認められ得ると主張するつもりだと述べた。

 判事が同意しない場合に備え、ワイズ氏は、チンパンジーが家族生活などに関して義務や責任を遂行していると述べた複数の専門家からの宣誓供述書を準備している。

 原告を見つけるにあたり、NhPRはニューヨーク州のチンパンジーを探した。

 法的文書によると、トミーはニューヨーク州グラバーズビルでおりに入れられた状態で暮らしている。トミーのオーナーであるパトリック・ラベリー氏は、トミーはもう同州にいないと述べたが、詳細は明かさなかった。ラベリー氏は、トミーが同氏や妻になつき、絵を描いたり、しゃぼん玉を飛ばしたりするなどいろいろな活動をし、良好な環境にあったと説明した。

判事は常識に逆らえるか

 一方のキコは、法的文書によると耳が聞こえず、映画に出演したことがある。今はニューヨーク州ナイアガラフォールズで店頭のおりに入れられた状態で生活しているという。

 キコのオーナーであるカルメン・プレスティ氏は、キコの生活環境は検査で申し分ないとの報告を受けており、ワイズ氏がまだ裁判沙汰にしようとしていることが信じられないと述べた。

 今回の訴訟に関与していない弁護士のクレイグ・ユーエイジアック氏は、ワイズ氏は従来の法令や判例は柔軟だと論じている点で判事に対して説得力ある主張をしているとの見方を示した。しかし、常識がチンパンジーに有利な判決を下すことをためらわせている可能性があるとも指摘。「どの判事も最初に一線を越えたくはないだろう」と述べた。

 ワイズ氏は敗訴すれば上訴する意向だ。いずれにしろ、他州でも象やシャチを含め原告を探していると話した。

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チンパンジーは法的「人間」にあらず=NY州高位裁判所
米シーワールド、シャチのショーを教育的に―VRも導入
ペットは人と共に埋葬されるべきか
愛犬とのキスで飼い主が注意すべきこと
米シーワールド、シャチの繁殖とショーを中止へ
http://jp.wsj.com/articles/SB10990999303708163871104583025351195268768


 


 
国旗デザインの盗用を27年間主張し続ける国
類似する国旗の争いを解決する機関は存在しない
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ルーマニアの国旗は青、黄、赤の3色。チャドの国旗も同様だ。類似する国旗に関する争いを解決する機関は存在せず、できることはあまりない(英語音声のみ) Photos: Getty Images and AFP/Getty Images
By DREW HINSHAW
2017 年 3 月 16 日 12:47 JST

 【ブカレスト(ルーマニア)】ルーマニアの首都ブカレストでは先月、抗議デモの参加者が街の中心部に集まり、ルーマニア国旗を掲げた。ソーシャルメディアには、このデモの様子を写した色鮮やかな写真が並んだ。このニュースはこうしてサハラ砂漠にまで伝わった。

 これを見たアフリカ中部の国、チャドの人たちは、ある問題を改めて指摘した。ルーマニアの国旗は、同国の独占物ではない。チャドに所有権があるというのだ。

 チャドは27年間にわたって、ルーマニアがチャドの旗を盗用したと苦情を言い続けている。1989年(ルーマニア革命の年)に国旗を採用したルーマニアの政治家は、チャドが既に青、黄、赤の3色の国旗を使っていることを認識していると述べていた。当時フランスの大統領だった故フランソワ・ミッテラン氏は、ルーマニアに対しその国旗を採用しないよう促していた。

 「だが、それ(国旗の問題)よりも対処すべきもっと重要なこと(国家再建)があった」と、当時のルーマニア大統領、イオン・イリエスク氏は語った。

 チャドの議会は遠方からの抗議を続けている。また、旗について研究する専門家には、旗泥棒だとしてルーマニアを非難する向きもある。

デモでスマホのライトを使ってルーマニア国旗を表現(2月、ブカレスト)
デモでスマホのライトを使ってルーマニア国旗を表現(2月、ブカレスト) PHOTO: AP
 だが、ルーマニア人たちは意に介していない。先月、ブカレスト中心部で行われたデモで、参加者の1人は、「なぜ気にする必要があるのか。チャドはあまりにも遠い国だ」と述べていた。

 現代の世界秩序は、国同士の対立をなだめるため、さまざまな制度や組織を確立した。だが、ある国が他の国の旗が気に入らないという場合、それに介入する権限をもつ組織は存在しない。

 こういった問題は繰り返されている。ハイチの選手団は第2次世界大戦前の1936年ベルリン五輪に出場したとき、リヒテンシュタインが自国と同じ旗を採用していたことに気付いた。これを受け、リヒテンシュタインは翌年に旗を変更した。

 バルカン地域では、1992年の旗をめぐる騒動がいまだに尾を引いている。当時独立したばかりのマケドニアが、16本の光を放つ星を描いた旗を新しく採用した。これはアレクサンドロス大王のシンボルだった。

 だが、ギリシャはアレクサンドロス大王がギリシャ人だと主張し、マケドニアに対する経済封鎖に出た。マケドニアは最終的に星を削除し、同国民がアレクサンドロス大王の子孫ではないという公式声明を出した。

 旗について研究する米国の学者、デービッド・F・フィリップス氏は、「ギリシャ人はこの話題になると感情的になる」と話す。

マケドニアの国旗を掲げて抗議する人々(2015年)
マケドニアの国旗を掲げて抗議する人々(2015年) PHOTO: AP
 これ以外にもある。オランダとルクセンブルクは、ほぼ同一の旗に敬意を払わなければならない。インドネシアとモナコも同様で、双方とも、14世紀から赤と白の図柄を使っていると主張している。コソボは旗にコソボの地図を載せることになった。政府がデザイナーたちに双頭のワシの図柄は使えないと告げたからだ。隣国のアルバニアが先に使っていたためだ。

 国際的な財産法によると、国が旗を商標登録することはできない。にもかかわらず、ジャマイカのある団体はそれを検討している。この団体は、外国の靴メーカーがジャマイカ国旗の図柄を入れたビーチサンダルを販売しているのが気に入らないとして、国連の機関に苦情を申し立てた。

モルドバの国旗
モルドバの国旗 PHOTO: VADIM GHIRDA/ASSOCIATED PRESS
 東欧のモルドバの大統領は、国旗の変更を提案している。モルドバの国旗は、チャドおよびルーマニアの3色旗に紋章を加えたものだ。大統領は先月に国旗の変更を提案したが、議会からの強い抵抗に遭った。そしてもちろんルーマニアは、この3色にこだわっている。

 チャドの政党「共和国のための行動連合」の代表を務める議員は、「現在に至るまで何もなされていない。国連の怠慢だ」とし、「これは不条理だ。2つの国が国旗として同じ旗を持つことはできない」と指摘する。

 国連事務総長室の広報担当者は電子メールで、「自国の旗の選択は、加盟国に任せている」と回答した。

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http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/637.html

[社会問題9] 「私は忙しい」という自慢の心理 あなたに構っていられないという失礼なシグナル、改善法は
• ライフ
「私は忙しい」という自慢の心理
あなたに構っていられないという失礼なシグナル、改善法は?

https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-SL504_BONDS_J_20170313102212.jpg


ILLUSTRATION: THOMAS PITILLI
By
ELIZABETH BERNSTEIN
2017 年 3 月 14 日 16:18 JST
 筆者は最近、数カ月会っていない友人に会って近況を報告し合おうと誘った。開店したばかりの近所のベトナム料理店でカクテルを飲みながらおしゃべりをする、あるいは筆者が彼女に夕食を作ってもいいかもしれないと考えていた。
 ところが、彼女の返事は「いいわよ。月曜の夜8時半ごろ、45分から1時間ほどうちに立ち寄っては?」というものだった。
 それはどうも。でもあなた、本当にそんな時間を確保できるの?
 確かにわれわれは忙しい。かつてないほど働いているし、オフィスにいない時も働いているという人も多い。育児に熱心な親でもある。それ以外の時間の大半はハイテクに費やされる。われわれは怠惰を嫌う傾向があるという研究結果もある。たとえそれが強制された忙しさでも、忙しい人の方が暇な人よりも幸せだというのだ。
 問題は次の点にある。ほとんどの人は愛する人のための時間も取れないというほど忙しいわけではない。携帯メールに返信したり、電話を折り返したり、ゆっくりとおしゃべりをする時間を作ったりできるはずだ。しかし忙し過ぎてできないという印象を与えている。自分は忙し過ぎて電話や食事や訪問などでほんの数分以上の時間を割くのは難しいと誰かに言うとき、相手には次のように聞こえているはずだ。「忙し過ぎてあなたになど構っていられない。あなたはそれほど重要ではない」
「忙しい」を誇りに思う理由
 「私は忙しい」という発言は昔から「私は切羽詰まっている」または「大混乱に陥っている」を意味する暗号として用いられてきた。われわれの文化では、特に男性は自分の怒りの感情や悩みを他人にぶつけることを潔しとしないので、そのことを話さなくて済むように忙しいと主張するわけだ。筆者に小一時間しか時間を割けないと言った友人にどういうことなのかを問いただすと、仕事の締め切りと出張が迫っているということもあり、子供と過ごす時間をこれ以上減らすことには罪悪感を覚えてしまうと彼女は説明した。
 今やわれわれは忙しいことを自慢するのに忙しい。会話やメールでもそうだ。「忙しい母親」のようなツイッターのハンドルネーム、「超多忙な1日を過ごした後、この美しい夕日は私の気持ちを落ち着かせてくれる」といったフェイスブックへの投稿も見受けられる。 
 ノースダコタ州立大学でコミュニケーション学を教えるアン・バーネット教授の発表前の研究によると、2000〜2016年の年末に書かれた家族ぐるみの友人宛ての手紙50通を分析した結果、忙しさに関する自慢は2番目に多い自慢だった。「今年もまたこれまでで最も忙しい年だった」という表現が典型的だ。人々は自分が成し遂げたことより忙しいこと自体を自慢していた(手紙での自慢で最も多かったのは「新しく孫が生まれました。本当にかわいくてよく眠る女の子です」のように、所有物に関するものだった)。
 われわれはなぜ忙しいことを誇りに思うのか。その方が成功している、重要で興味深いと人に思われる、と考えるからではないか。その考えは正しいようだ。ハーバード・ビジネス・レビュー誌の2016年12月号に掲載されたコロンビア大学経営大学院、ジョージタウン大学、ハーバード大学経営大学院の研究者たちが執筆した論文によると、忙しい人は高い地位にあると見なされているということがわかったという。 
 ニューヨークの組織心理学者ウッディ・ウッドワード氏は「われわれは勤勉さと努力に報いることに重きを置くが、これは実際には活動に対する評価であり、成し遂げたことへの評価とは限らない」と指摘する。
多忙の反対語は「怠惰」?
 われわれはまた、途中で投げ出すとき、あるいは単純にかかわりたくないときの言い訳として忙しさを使う。これは最近痛感したことだ。普段は毎日電話で話すめいのソフィアに、なぜ1週間も電話をくれなかったのかと聞いたら、彼女はすかさず「忙しかったの」と答えた。ソフィアは5歳である。
 ではわれわれはどうすべきなのか。
 その言葉を追放するのだ。結婚・家庭セラピストでミネソタ大学家族社会学部の教授でもあるウィリアム・J・ドハティ氏は「忙しいという言葉を肯定的な意味で使ってはいけない」と話す。その言葉には美徳の意味合いが含まれてきたが、それは間違っているし、誤解を招きかねないとドハティ教授は主張する。
 忙しいという言葉を使わずに具体的に説明しよう。最近どうかと聞かれたときには、「予定よりも少し遅れている」「今はイライラしている」というようにより正確に答えるべきだ。
 切羽詰まっているときはそう言えばいい。最近起きていることについてあまり話したくない場合はそう説明すればいい。そうすれば、今は自分のことだけで精いっぱいなだけで相手を軽視しているわけではないということが分かってもらいやすくなるだろう。
 不測の事態は必ず起きるので、スケジュールに余裕を持たせることだ。「家族や友人と過ごす時間をなくしているのはスケジュールに詰め込んだイベントや用事だ」とドハティ教授は指摘。友人や家族との時間を作るために前もって決まっている用事を減らすことを提案している。
 暇であることが恥ずかしいという考えは捨てるべきだ。われわれには「忙しい」の反対語を「怠惰な」だとみなす傾向がある。それは誤った通念だとバーネット教授は言う。
 「あなたは自分の墓石に〈彼は多忙だった〉という言葉を刻みたいだろうか」
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http://www.asyura2.com/12/social9/msg/771.html

[経世済民120] 日銀ライブ〜現状維持 HFはしご外されドル予想裏目 ドル↓金油↑ 物価連動債インフレ警戒 低賃金泊まれず西欧の東欧運転手
日銀ライブ
2017,03,16
 日銀の黒田東彦総裁は16日、金融政策決定会合後の記者会見で強力な緩和策を推進していく考えを強調した。同日の決定会合では緩和策の現状維持を決めていた。春季労使交渉での賃上げの動きを歓迎。米連邦準備理事会(FRB)による利上げの評価は避けつつ、新興国経済への影響を見守る考えを示した。
KEY POINTS

01. 政策決定会合では現在の金融緩和策を維持。物価2%実現のため推進

02. 多くの企業で4年連続賃上げ。ただ、全体の賃金動向は見極めが必要

03. 米国経済は先行きもしっかりしている。新興国経済への影響見守る

日銀LIVE
トピックスタイムライン
3/16 16:39
黒田総裁の会見が終わりました。米利上げ直後の会合でしたが、日銀は物価目標の達成に向け、粛々と強力な金融緩和を続けるとの考えを繰り返す会見になりました。総裁は日米金利差で円相場が決まるわけではないと述べましたが、市場は日米の金融政策の温度差を意識しながら取引することになりそうです。
3/16 16:32
黒田総裁の会見が終了しました。
3/16 16:28
黒田総裁は会見で、日米経済対話について「経済政策協力、貿易投資ルールが柱だと承知している」としたうえで「現時点で強力な金融緩和を継続していくことは変わらない」と述べ、日米対話に金融政策は影響されないとの考えをにじませました。 http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK16H2Z_W7A310C1000000/
3/16 16:22
黒田総裁は会見で、4年前の就任時と比べた金融政策の位置づけについて

「金融政策の効果が低下したなどとは考えていない」と述べ、強力な緩和推進姿勢に変わりがないことを強調しました。 http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK16H2X_W7A310C1000000/
3/16 16:19
為替相場の決定要因について日米金利差が意識されていることについて

「為替相場は単なる2国間の金利格差だけで決まるものではなく、あまりいろいろと言うことはない」と述べ、金利差と為替相場の関係についての懐疑的な持論を改めて披露しました。
3/16 16:13
黒田総裁は会見で、最近の為替動向について

「為替は様々な要素で動く」としたうえで「日銀は現状よりも円高になるとか、円安になるとか、特定の見通しは前提としてない」と述べ、言及を避けました。 http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK16H2T_W7A310C1000000/
3/16 16:11
黒田総裁は会見で、総裁の任期が残り1年になり、後継候補などが取り沙汰されることについて「私が決める話ではなく、私から(後任などについて)何か申し上げることはない」と発言を控えました。
3/16 16:06
黒田総裁は会見で、マイナス金利政策について

「経済、物価、金融市場への影響を勘案して緩和策を実施している。マイナス金利をさらに深掘りする可能性はゼロとはいえないが、現時点で考えられることではない」と現行の緩和策を継続する考えを強くにじませました。
3/16 16:01
黒田総裁は会見で、長期金利の操作目標の変更を検討するタイミングについて


「ある数字になれば機械的に変更するというものではない。物価の基調的な変動を考慮する」との考えを示しました。 http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK16H2P_W7A310C1000000/
3/16 15:49
黒田総裁は会見で週末のG20財務相会合で為替相場について議論された場合について「為替政策は財務省の所管であるが、とくに現在の考え方を変えたとは感じていない」と述べ、現在のG20方針の維持が望ましいとの考えをにじませました。
3/16 15:45
黒田総裁は会見で0%程度に置いている長期金利の操作目標について「毎回の金融政策決定会合で判断していくことになる」と前置いたうえで

「現状では物価2%目標まで距離があり、現在の方針の下で強力な金融緩和を推進していくことが重要だ」と強調し、現行の操作目標を維持する考えをにじませました。
3/16 15:42
黒田総裁は会見で3カ月ぶりに利上げに踏み切った米連邦準備理事会(FRB)の決定について

「米国の経済・物価動向を見極めながら適切な金融政策運営を行っていくと思われる」と評価したうえで、新興国経済への影響について「注意深く見ていきたい」との考えを付け加えました。
3/16 15:40
黒田総裁は会見で物価2%目標をできるだけ早期に実現するため現在の強力な金融緩和をしっかり進めると語りました。
3/16 15:39
黒田総裁は会見で金融政策について


「これまでの金融調節方針を維持する」と述べました。 http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK16H1V_W7A310C1000000/
3/16 15:39
黒田総裁は会見で物価2%目標について

「モメンタムは維持されているがなお力強さに欠ける」と述べました。
3/16 15:38
黒田総裁は会見で今春闘の結果について

「全体の賃金動向はまだ見極めが必要だが、多くの大企業では4年連続でベア実施が見込まれている」として「経済の好循環の動きを後押しするものだ」と期待を示した。
3/16 15:31
市場の予想通りだった日銀決定会合の結果を受け、為替・株式市場とも大きくは動かないとの見立てが優勢です。 http://www.nikkei.com/article/DGXMZO14139660W7A310C1000000/

3/16 15:31
黒田総裁の記者会見がはじまりました。
3/16 14:29
あと1時間で黒田総裁の記者会見が始まります。発言の注目点はこちらの記事から確認できます。 http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK16H1D_W7A310C1000000/

3/16 12:56
黒田日銀総裁の記者会見は予定通り午後3時半からです。注目点は@FOMCでの米利上げ決定を受けた反応A長期金利の誘導目標に影響する先行きの景気・物価見通し――です。会見内容は「日銀ライブ3・16」で同時並行で詳報します。

3/16 12:43
16日午後の日経平均株価は一時、前日比で小幅ながらプラスに転じました。日銀決定会合が現状維持で終わり、為替市場と同様にひとまず安心感が広がったようです。

3/16 12:38
日銀が金融緩和策を引き続き維持するのは物価2%目標への道筋が見えてこないためです。消費者物価は1月に前年同月比プラスに戻りましたが、先行きは依然として不透明です。 https://vdata.nikkei.com/economicdashboard/macro/#c-m

3/16 12:10
日銀は16日の決定会合で、金融緩和策の現状維持を決めました。詳しい中身は日経電子版でご確認ください。 http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL14HNO_U7A310C1000000/

3/16 12:05
日銀が市場の予想通り金融緩和策の現状維持を決めたため、朝方まで円高が進んでいた外国為替市場では安心感からドルを買い戻す動きがやや優勢になっています。
3/16 12:01
「原稿」→「現行」の誤りです。
3/16 11:59
日銀は決定会合で、景気と物価の判断も据え置きました。
3/16 11:55
日銀決定会合は原稿の金融緩和策の現状維持を決めました。
3/16 11:38
16日の日経平均株価は前日比25円安で午前の取引を終えました。円高を受け、株売りが優勢でしたが、前引けにかけて徐々に盛り返してきました。

3/16 11:14
通常の流れであれば、そろそろ日銀決定会合の議論も佳境に入っている頃でしょうか。ちなみに総裁のネクタイの色は「平時の青」です。(写真は16日朝に日銀本店に入る黒田東彦総裁=代表撮影)

3/16 10:42
「日銀ライブ3・16」もうすぐ始まります。通常なら、正午前後には日銀決定会合の結果が出てくるはずです。

3/16 10:05
米国の利上げを受けた東京市場では1ドル=113円台前半まで大幅な円高が進んでいます。今年の米利上げ見通しを年3回に据え置いたことで、年4回に増やすと予想したヘッジファンドがドルを売っているようです。 http://www.nikkei.com/article/DGXLASGN15H2L_V10C17A3000000/

3/16 0:20
明日は「日銀ライブ(@nikkeilive)」の日。前回1月31日に続き、日銀の金融政策会合と黒田総裁会見について、結果発表前の午前11時頃から会見終了後の午後5時頃まで同時並行でツイートします。今回もご期待ください。


取材・制作小栗太、三田敬大、安田翔平、清水正行、映像報道部

変調 マクロ経済(NIKKEI)
日経編集委員とトップエコノミストたちによるマクロ経済オンライングループ討論。日本経済新聞社の編集委員らパネリストとなるトップエコノミストが、マイナス金利政策や消費増税策など、先行きが見通しにくいマクロ経済について議論を繰り広げます。
Visual Data 一覧へ戻る
NIKKEI Nikkei Inc. No reproduction without permission.

https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/boj_live/

日銀総裁、物価「2%へのモメンタム維持も力強さに欠ける」 
2017/3/16 15:41

 黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、日本経済について「景気は緩やかな回復を続けている」との認識を示した。個別項目では海外経済の緩やかな成長が続くなかで輸出が持ち直し、個人消費は雇用や所得の環境改善を背景に底堅く推移しているとの認識を改めて示した。

 住宅投資は「横ばい圏の動き」とし、前回の「持ち直し」から見方を引き下げた。急増していた住宅着工の一服を反映した。一方、企業収益は「改善している」と指摘した。1月末にまとめた経済・物価情勢の展望(展望リポート)では企業業績を「高水準」としていた。その後、法人企業統計などで増益傾向が確認されており、やや強めの見方を示した。

 日本経済の先行きについて黒田総裁は「緩やかな拡大に転じていく」との見方を示し、物価上昇率は「2%に向けて上昇率を高めていく」とし、物価については「2%に向けたモメンタムは維持されているが、力強さに欠ける」と述べた。

 2017年の春季労使交渉で、トヨタ自動車や日立製作所などの主要企業が4年連続でベースアップ(ベア)実施を決めたことに関しては、経済の好循環へ「前向きな動きを後押しする」と述べた。

 今後の金融政策運営については「物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続する」との考えを重ねて説明した。

 日銀は同日の金融政策決定会合で、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する金融緩和策(長短金利操作)の現状維持を決めた。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

http://www.nikkei.com/article/DGXLNSE2IEC01_W7A310C1000000/

黒田総裁、日米経済対話「見守っている」
2017/3/16 16:24

 日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、4月にも開かれる日米経済対話が金融政策に与える影響について「具体的な内容、体制については今後両国の政府間で調整されると承知している。具体的にどうなるかは存じていない。現時点では見守っている」との認識を示した。

 (対話では)「経済政策、強力、貿易投資ルールが柱と承知している」としたうえ、現時点で日銀としては「強力な金融緩和を継続していくことは変わらない」と繰り返した。


黒田総裁、「金融政策の効果低下せず」
2017/3/16 16:17

 日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、4年前の就任時と比べた金融政策の位置づけについて「金融政策の効果が低下したなどとは考えていない」と強調した。当初は2年で2%の物価安定目標を達成したいとの方針を掲げていたことを念頭においた質問だが、黒田総裁は引き続き強気の姿勢を示した。

 任期が残り約1年となったことで、黒田総裁が続投するかどうかにも市場の注目が集まる。この日の質問には「私から申し上げる立場にない」とかわした。


黒田総裁、国内金利目標「上げる必要はない」
2017/3/16 16:07

金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の黒田総裁(16日午後、日銀本店)
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金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の黒田総裁(16日午後、日銀本店)
 日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、最近の世界的な金利上昇が金融政策に与える影響について「米金利が上がったからといって国内金利を上げなくてはいけないということはない」と発言した。市場の一部では、海外金利や為替の変動が日銀の金融政策に影響するのではとの思惑が根強い。

 さらに黒田総裁は為替動向について「為替は様々な要素で動く」としたうえ「日銀は現状より円高になるとか円安になるとか特定の見通しは前提としてない」として円相場の変動から距離をおく姿勢を示した。


黒田総裁、長期金利の操作目標引き上げ「物価変動を考慮」
2017/3/16 15:58

 日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、将来に長期金利操作目標(現在の目標はゼロ%程度)の引き上げが可能となる条件について問われ、「(金融政策について)わかりやすく説明することは重要だが、2%の物価安定目標の実現に向けてはなお距離がある」と述べ、具体的な言及を避けた。目標の変更を検討するタイミングについて「ある数字になれば機械的に変更するものではない。物価の基調的な変動を考慮する」と述べた。

 現時点では「強力な金融緩和を継続することが重要」との立場を繰り返した。


黒田総裁、米利上げ「新興国経済に深刻な影響ない」
2017/3/16 15:47

 日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、15日に米連邦準備理事会(FRB)が利上げを決めた影響について「現時点で新興国経済に深刻な影響を与える状況ではない」との認識を示した。


黒田総裁、物価上昇の実績「なお力強さに欠ける」
2017/3/16 15:39

 日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、足元の物価上昇率について生鮮食品やエネルギーを除いたベースでは「一進一退」とし、「モメンタムは維持されているが、なお力強さに欠けている」との認識を示した。

 ただ、先行きについては「2%に向けて上昇率を高めていく」とし、従来の立場を堅持した。

黒田総裁、金融政策「これまでの方針を維持」
2017/3/16 15:37

金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の黒田総裁(16日午後、日銀本店)
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金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の黒田総裁(16日午後、日銀本店)
 日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で金融政策について「これまでの金融調節方針を維持する」と述べた。短期金利はマイナス0.1%、長期金利はゼロ%程度で推移するよう操作していく。長期国債の買い入れペースも「年間約80兆円をメドとする」とした。

 「2%の『物価安定の目標』の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』を継続する」とし、金融緩和を粘り強く進める考えを示した。


黒田総裁会見へ 政策維持に関心薄く?
2017/3/16 15:34

 日銀の黒田東彦総裁の記者会見が午後3時半と目前に近づいている。この日の金融政策決定会合では金融政策の現状維持を決めた。午前に公表した資料上は、国内景気の認識についても前回会合から大きな変化はなかった。

 決定を受けた外国為替市場や債券市場、株式市場の反応は乏しく、会見場に集まる報道関係者の雰囲気も冷めている。前回会合後の記者会見よりも空席が目立ち、金融政策への関心はやや薄れているようだ。


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http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK16H2Z_W7A310C1000000/
 


 


 

土壇場で心変わりしたヘッジファンド、はしご外される−ドル予想裏目
Andrea Wong
2017年3月16日 16:13 JST

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ヘッジファンドはいったん決めた方針を見直すことがいかに高くつくかを15日に思い知ったかもしれない。

  下落し続けてきたドルのネットロング(買い越し)が8週間ぶりに増加したわずか数日後、米連邦公開市場委員会(FOMC)は利上げを決めた上で、金融政策の引き締めは引き続き緩やかなものになるとの予測を示した。これを受けてドルは昨年7月以来の大幅な下げを記録した。商品先物取引委員会(CFTC)のデータによれば、ドル高に賭けるポジションがドル安を見込むポジションを17万2639枚上回っていた。前週は14万4507枚だった。

  今回のFOMC前、イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長を含む高官らは口々に強気のコメントをしており、ドル強気派はドル上昇に再び勢いをつける材料を期待していた。
  INTL・FCストーンの通貨・金利担当マネジングディレクター、エリック・ドノバン氏は「市場は15日のFOMCに向けて築かれ、皆が発表時間の午後2時(日本時間16日午前3時)を待った。だが当局は何もせず、何も言わなかった」と述べた。
原題:Hedge Funds’ Last Minute Change of Heart on Dollar Proves Costly(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMWAG16TTDS001

News | 2017年 03月 16日 15:34 JST 関連トピックス: トップニュース

 焦点:脚光浴び始めた物価連動債、投資家のインフレ警戒感台頭

[ロンドン 15日 ロイター] - 世界的な物価上昇圧力を背景にもはやデフレの脅威は過去のものになったと受け止めた投資家は、物価連動国債で身を守ろうとし始めている。

ニュージーランドは今月、2年余りぶりに物価連動債を販売。イタリアも先週、需要が上向いてきた機会をとらえる形で30億ユーロ規模の物価連動債をシンジケート方式で発行した。

イタリアの案件に携わったあるバンカーは「今年に入ってから、物価連動債に対する引き合いが大幅に高まった」と語り、物価連動債の地合いは「完全に一変した」と指摘した。

指標となるバークレイズ世界物価連動国債指数は昨年12月に付けた9カ月ぶりの低水準からは約2%上昇している。

ほんの1年前まで投資家や中央銀行を苦しめていたのはデフレ懸念で、だからこそ多くの先進国で政策金利がマイナスに突入した。

足元でも市場はまだ長期的な物価上昇率は低いと想定している。しかし物価圧力の高まりと米トランプ政権の財政支出拡大見通しを背景に、昨年6月の英国民投票で欧州連合(EU)離脱派が勝利した後に見られた投資家の超弱気の物価観は修正されてきた。

市場の予想物価の指標となる物価連動債と通常国債の利回り差(ブレークイーブン・インフレ率=BEI)は過去半年間、欧米で拡大しており、予想物価が上がってきていることが分かる。

米国の場合、期間10年のBEIは約2%で、1月には2014年9月以来の高水準を記録。米連邦準備理事会(FRB)が向こう10年は2%の物価目標を達成できないと見込まれていた昨年7月のBEIは1.5%前後だった。

ドイツの10年BEIも現在1.41%と、欧州中央銀行(ECB)の物価目標(2%弱)には届かないが、昨年の1%足らずからは改善した。

平均的な物価上昇率がBEIを上回れば、物価連動債は通常国債をアウトパフォームする。

JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル債券責任者ボブ・ミッチェル氏は「われわれは今、物価連動債を購入している。インフレは過小評価されていると思う。米国であれ、欧州や日本であれ、物価は上がっている」と述べた。

FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数は1月のコアベースの前年比上昇率が1.7%で、前年比の伸びは過去最大だった。ユーロ圏の2月消費者物価の前年比上昇率は2%と4年ぶりの高さで、ECBの目標を上回った。

<注目は欧州>

もっともアナリストによると、何年も弱い経済成長が続いたことから物価の持続的な持ち直しが実現するかどうか市場は懐疑的で、それが物価連動債を投資家が一挙に買わず、恐る恐る購入している理由だという。

例えば期間30年のユーロ圏のBEIは1.60%で、長期的な物価見通しはなお落ち着いていることがうかがえる。それでも過去最低圏だった昨年7月の1%強は上回っている。

ECBは先週、ユーロ圏にもはやデフレのリスクは見当たらないと宣言し、年内に金融緩和を縮小するかもしれないとの観測を高めた。

ニュートン・インベストメント・マネジメントのグローバル債券ポートフォリオマネジャー、ジョン・デー氏は「今のところ欧州が最も興味深い地域だ。政治リスクが予想物価を低い水準に抑え続けているが、これらのリスクが払しょくされれば、インフレに関心が戻るとわれわれは見込んでいる」と話した上で、ユーロ圏のインフレヘッジ手段としてスペインの物価連動債を買っていると付け加えた。

ユーロ圏では5年後からの5年間の予想物価上昇率も、直近ではフランス大統領選を巡る全般的な資金避難を反映してやや弱含んだとはいえ、投資家の物価見通しの上振れを示している。

パイオニア・インベストメンツの欧州債券責任者コジモ・マラシウロ氏は「実際に出てくる成長とインフレに関するニュースは予想より強くなり続けるし、市場は経済の先行きに対して弱気過ぎる、というのがわれわれの考えだ」と主張した。

(Dhara Ranasinghe、Abhinav Ramnarayan記者)

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http://jp.reuters.com/article/markets-bonds-inflation-idJPKBN16N0L0?sp=true


 

ドル円一時113.01レベル、アーリーロンドン勢が下値を試す=ロンドン為替

配信日時 2017年3月16日(木)16:30:00 掲載日時 2017年3月16日(木)16:40:00
ドル円一時113.01レベル、アーリーロンドン勢が下値を試す=ロンドン為替

 ロンドン早朝、ドル円は113円割れを試す動きとなっている。一時113.01レベルまで下落。

USD/JPY 113.04 EUR/JPY 121.34 GBP/JPY 138.94 AUD/JPY 87.09


ドル円113円台前半、日銀総裁会見には反応薄=ロンドン為替

配信日時 2017年3月16日(木)16:26:00 掲載日時 2017年3月16日(木)16:36:00
ドル円113円台前半、日銀総裁会見には反応薄=ロンドン為替

 ドル円は113.25近辺での揉み合い。東京市場からのレンジは113.16から113.55レベルまでに留まっている。前日の米FOMC後の安値圏での取引が継続している。

 黒田日銀総裁は会見で、G20では米国の政策に深い関心、と述べた。また、マイナス金利の深堀については現時点では考えられないが、可能性はマイナスではない、とした。

USD/JPY 113.25

NY金 時間外取引 1226ドル台、米FOMC後の上昇継続

配信日時 2017年3月16日(木)16:22:00 掲載日時 2017年3月16日(木)16:32:00
NY金 時間外取引 1226ドル台、米FOMC後の上昇継続
東京時間16:19現在
NY金先物4月限(COMEX)(時間外取引)
1オンス=1226.30(+25.60 +2.13%)


NY原油 時間外取引 49ドル台前半で一段高

配信日時 2017年3月16日(木)16:20:00 掲載日時 2017年3月16日(木)16:30:00
NY原油 時間外取引 49ドル台前半で一段高
東京時間16:19現在
NY原油先物4月限(WTI)(時間外取引)
1バレル=49.24(+0.38 +0.78%)
http://klug-fx.jp/fxnews/


2017.3.16視聴時間?01:35
低賃金で泊まる場所もなく――西欧で働く東欧の運転手たち
KEYWORDSキーワード
最低賃金?東欧?イケア?賃金?場所?西欧?運転

イケアなどの商品を配送する会社が、人件費が低い東欧の運転手たちを、より物価の高い西欧で賃金を上げずに業務を行わせていることが、BBCの取材で分かった。運転手たちは、宿泊費などを払えず、トラックの中で寝起きし、食事も道端で準備している。BBCのゾーイー・コンウェイ記者が取材した。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49459


http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/242.html

[経世済民120] 日米金融政策のギャップ、拡大後も円安進まぬ3つの理由 日銀総裁、世界経済「上振れリスクより下振れリスク大」機械的利上ない
Business | 2017年 03月 16日 18:39 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

 日米金融政策のギャップ、拡大後も円安進まぬ3つの理由

[東京 16日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が利上げする一方、日銀は政策維持。日米で金融政策の「ギャップ」が広がっているにもかかわらず、ドル/円JPY=が下落している。政策決定内容が織り込み済みというだけではなく、円キャリートレードの拡大や米長期金利の上昇が見込みにくいことも要因だ。

日銀は依然として「出口戦略」を示さないが、それが緩和効果を減じるとの指摘もある。

<織り込ませ過ぎて逆反応>

タカ派のニュアンスを市場に織り込ませ過ぎたのかもしれない。15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定された後、金融市場では米金利低下、ドル安/円高、米株高が進行。利上げ後の通常の反応とは真逆な動きを示した。

「FRB幹部が、3月利上げを急に織り込ませ過ぎた。その裏には大きな変化があるのではと警戒されていたが、景気や物価の見通しはほとんど変わらず、ポジションの巻き戻しが入った」(三井住友銀行チーフ・マーケット・エコノミストの森谷亨氏)という。

このため、ポジション調整が一巡すれば、2年物など金融政策に敏感に反応する米国債利回りが上昇する可能性はある。15日の米2年債US2YT=RR利回りは1.31%で引けたが、今回示されたドットチャートでのフェデラルファンド(FF)金利適正水準は18年末時点で2.125%。このペースでの利上げができるかはともかく、織り込む余地はまだ大きい。

しかし、素直にドル高/円安が進むとは限らない。第1に今のドル/円との連動性が高いのは、2年ではなく10年の日米金利差だ。長期金利に影響を与えるFRBの中立金利(Longer Run)は今回も3%で据え置かれたほか、経済や物価見通しもほとんど変わらなかった。

市場では「見通しが変わらない中で急いで利上げするのは、トランプノミクスが失敗したときに、利下げする余地を作るためではないか」(邦銀)との声も聞かれる。

<円キャリートレードは期待薄>

さらに、円を調達通貨として米債などに投資するキャリートレードが、今回の利上げによって増加する可能性も低い。

日米欧の中銀が、金融緩和を競い合った時代は過ぎ去り、FRBは金融引き締め方向に舵を切り始めた。今局面3度目の利上げでドルの短期金利が上昇(3カ月物はほぼゼロから0.7%台に)する一方、日本の短期金利は日銀のマイナス金利政策が影響し、依然としてゼロ%以下だ。

「ドルと円のどちらが調達金利かという議論は、すでに終止符が打たれている」とSMBC日興証券の為替・外債ストラテジスト、野地慎氏は指摘する。今さら25ベーシスポイントの利上げがあっても、ドルから円に調達金利を乗り換える動きは強まりそうにないという。

むしろ今のドルは投資通貨であり、10年米国債など長いゾーンの利回りがキャリートレードに影響を与える。しかし、今回のFOMCを受けて、米国債市場では10年債US10YT=Rや30年債US30YT=RRRの利回りは低下した。

為替スワップ取引では、1カ月物の円投/ドル転スワップによるドル調達コストが1.99%に上昇、1月2日以来の高水準に達した。経済状況が好調だからこそ、FRBは利上げに踏み切ったのであり、投資先として日米欧の中で最も魅力的ではあるが、コスト面では厳しい環境となっている。

<「出口戦略」にも日米差>

市場で根強いドル高/円安期待の背景は、日米金融政策の方向性の違いだ。片や正常化に向けて前進中。もう一方は、時期尚早として出口戦略に距離を置いている。

しかし、将来の出口への道筋を示すことが、今の金融緩和の効果を高めるという実証的な分析があると、ニッセイ基礎研究所のチーフエコノミスト、矢嶋康次氏は話す。「出口戦略の不確実性が高いと、現在の消費や投資を控えてしまうからだ」という。

FRB幹部は、量的緩和政策の途中だった2010年ごろから、すでに正常化に関する発言を開始。FOMCでは、将来的な金利見通しを示すとともに、膨らんだバランスシートの縮小に関する議論にも着手している。

今回のFOMCでは、バランスシート縮小に関する文言に変更はなかったが、イエレン議長は15日の会見で、償還が到来する米債に関して、再投資の方針をいずれ変更することについて今回協議したと明らかにしている。「市場金利の上昇を恐れていない」(国内シンクタンクのFEDウオッチャー)スタンスは明確だ。

一方、日銀の黒田東彦総裁は16日の会見で、物価目標の2%にまだ距離があるとして、長期金利目標の引き上げを含め、出口政策に至る明確なヒントを与えなかった。

将来への不安から消費が伸びず、インフレ期待が高まらなければ、実質金利は低下せず、円安圧力も強まらない。日米金融政策の「ギャップ」を放置することにより、ネガティブな影響が出かねないことにも注意する必要がありそうだ。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

http://jp.reuters.com/article/boj-fed-cross-market-idJPKBN16N11A


 

 

News | 2017年 03月 16日 18:26 JST 関連トピックス: トップニュース
日銀総裁会見:識者はこうみる

[東京 16日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、現在ゼロ%程度としている長期金利目標の引き上げは「物価上昇率が1%に達すれば引き上げるとは機械的に考えない」と明言し、米利上げなどを背景とした長期金利引き上げ観測をけん制した。市場関係者の見方は以下の通り。

<メリルリンチ日本証券・チーフ金利ストラテジスト 大崎秀一氏>

黒田東彦日銀総裁の会見は目新しさがなく、相場への影響は限定的だろう。

黒田総裁は現状について、物価2%目標に距離があるとして強力な金融緩和の推進が適切と強調し、市場にくすぶる長期金利の操作目標(ゼロ%)の引き上げ観測をけん制した。しかし、物価が1%を超えて2%への距離が近づいてきた段階で、その議論が出てきても不思議ではない。

物価2%達成がいつになるか分からず、それを待っていたら、出口論を議論する機会を逸することになりかねない。そこまでゼロ%を維持する必要もないだろう。また、円安が進行した場合、コストプッシュ型インフレにつながり、消費を落ち込ませる可能性がある。黒田総裁は、行き過ぎた金融緩和を修正した上で任期満了を迎えることになるのではないか。

<FPG証券 代表取締役社長 深谷幸司氏>

日銀は目下、マクロ経済からも金融面からも、金融政策を動かす必要性に駆られていないだろう。ただ、海外金利の上昇からくる国内長期金利の上昇圧力を警戒しているようだ。

今回は、米利上げと日米金利差拡大を市場が事前に織り込んで、115円半ばまでドルが買い進まれていたため、ドル/円は反落している。

さらに、今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)後はドル高要因がしばらくないとの見方も、ドル/円の重しとなっている。

ただ、米経済のファンダメンタルズに鑑みて、米10年金利は年末に2.8―3.0%まで上昇する余地があるとみており、ドル/円が110円台まで下落する理由も見当たらない。

足元で、ドル高の推進力がいまひとつ弱いのは、市場が米予算教書などの政治リスクを意識しているためだとみている。

トランプ大統領が16日に公表する2018会計年度の予算教書では、財政出動や減税などの景気刺激策について、具体的な財源や実施予定期日などが織り込まれない可能性があり、これまで膨らんできた市場に失望を招きかねない。

<岡三証券 シニアストラテジスト 小川佳紀氏>

大きなサプライズはなかったが、黒田総裁からは海外の金利が上昇しても国内金利を上げる必要はない、といった発言があった。FOMC(米連邦公開市場委員会)後の米金利の急低下は過剰反応で、かつ短期的な動きだと考えている。米金利の先高観がある中、ドル高/円安の流れが完全に変わったという訳でもない。

総裁からは、二国間の金利差だけでは予測も当たらないといった発言もあったが、それでも日米金利差は市場が意識する部分だ。ドル/円が115円を上抜けるような動きがないとしても、110円を割り込むような展開は見込みにくい。ただ森友学園と安倍政権を巡る問題に対しては注視が必要。為替が大きく乱高下する局面では業績予想を据え置く国内企業も出てくるが、本決算発表に先駆けて上方修正を発表する企業が相次げば、日本株にはプラスだ。

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http://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-markets-views-idJPKBN16N100?sp=true


 



Business | 2017年 03月 16日 17:54 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
物価1%達成でも機械的利上げ考えない=黒田日銀総裁

[東京 16日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、現在ゼロ%程度としている長期金利目標の引き上げは「物価上昇率が1%に達すれば引き上げるとは機械的に考えない」と明言し、米利上げなどを背景とした長期金利引き上げ観測をけん制した。

為替は日米金利差のみでは決まらないとも指摘し、米トランプ政権による円安誘導批判にも反論した。

黒田総裁は「ある物価指標が、ある水準になれば機械的に変更するというものでない」とし、金利目標の引き上げは、あくまで複数の物価指標や、経済の潜在的な成長率のかい離を示す需給ギャップなどを総合的に考えて判断すると説明した。

日銀が政策の目安としている消費者物価指数で生鮮を除くコアCPIは、1月に前年比0.1%と1年1カ月ぶりにプラスに浮上している。今後も昨年との比較で高くなっているエネルギー価格によりプラス幅が拡大すると見られており、米連続利上げと並び、日銀の利上げ観測が広まる要因となっている。コアCPIが年後半にも1%程度に達するとの観測については黒田総裁は「そうかもしれない」と認めた。

15日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利の誘導目標を0.75━1.00%に引き上げ、年内3回の利上げを示唆した。市場では米利上げに伴い日本の長期金利も上昇すれば、日銀がゼロ%で抑えるのが難しくなり、引き上げざるを得なくなるとみられている。黒田総裁は「米金利が上がったから、日本も金利が上がることにはならない」と強調した。

(竹本能文 伊藤純夫)

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黒田総裁、緩和に伴う収益悪化「適切な考慮が必要」
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 日銀の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、日銀が国債の大量購入を続けていることから将来の収益が悪化する可能性があることについて「財務状況は適切に考えていくことが必要」と述べた。日銀の目標は物価の安定であって日銀自身の財務健全性を保つことではないとしつつ「国庫への納付金が振れることも国民にとって望ましいことではない」と配慮する姿勢をにじませた。

 ただ、現在の日銀法では旧法にはあった、政府が損失を補填する条項が削除されている。新たに規定や制度を設ける可能性については「考えていない。必要もない」とした。

 会見は午後4時半ごろに終了した。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK16H32_W7A310C1000000/

日銀総裁、金融政策「海外金利に左右されず」 物価力強さ欠くと説明  
2017/3/16 16:54
保存 印刷その他
 日銀の黒田東彦総裁は16日、政策の現状維持を決めた金融政策決定会合後に記者会見した。最近の消費者物価については「生鮮食品とエネルギーを除くベースでは一進一退となっている」との認識を示した。2%の物価安定目標に向けたモメンタム(勢い)は維持されているとしつつ「力強さに欠けている」と指摘した。

金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の黒田総裁(16日午後、日銀本店)
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金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の黒田総裁(16日午後、日銀本店)
 日銀が重視する生鮮食品を除いた消費者物価指数は1月に1年1カ月ぶりに前年同月比で上昇に転じたが、伸び率は0.1%にとどまる。黒田氏は「(日銀が掲げる)2%の物価安定目標についてはまだ距離がある」と認めたうえで、早期に目標を実現するためには現在の強力な金融緩和の推進が適切との姿勢を改めて示した。一方で物価の先行きについては「マクロ的な需給バランスが改善して2%に向けて上昇率を高めていく」との見通しを述べた。

 現在、ゼロ%程度としている長期金利の操作目標をめぐり「何かの指標が特定の数字になったからといって機械的に変更することはない」と述べた。2%の物価安定目標の早期実現に向け、基調的な物価や経済動向を評価しながら、毎回の会合で適切に操作目標を判断するとの考えを示した。「海外の金利が上がったからといって国内の金利を引き上げることは考えていない」とも語った。

 為替相場については「金利格差に則しているように動くときがあれば、そうでないときもある」と語った。そのうえで「いろいろな要素が影響するもので、単なる2国間の金利格差だけで予測しても当たらない」との見方を示した。

 大手企業の回答が始まった春季労使交渉に関しては「(集中回答日だった)15日の結果をみると、多くの企業で4年連続のベア(ベースアップ)の実施が見込まれている」と述べ、経済の好循環の後押しにつながると評価した。賃上げの伸び率が前年に比べて減速していることについては「全体の賃金設定動向にはなお見極めが必要だ」と述べるにとどめた。

 米連邦準備理事会(FRB)が14〜15日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げに踏み切った点にも言及した。米国経済は雇用や所得環境が改善するなかで現状も先行きも堅調との見方を示した。「現時点で米国の利上げが新興国の経済に深刻な影響を与える状況にはない」とも語った。

 一方で「今後も国際金融情勢が新興国に与える影響については、注意深く見ていかなければいけない」と強調。足元で米国や中国の経済が堅調に推移している半面、世界経済は「依然として上振れリスクよりも下振れリスクが大きい」との認識を示した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL16HR7_W7A310C1000000/ 

 


http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/243.html

[経世済民120] 残業代で会社が傾く前に: ピンチをチャンスに変える! ヤマト労使交渉合意、環境改善 Fリテイリ首位ZARA並リードタイム
2017年03月07日 10時00分 更新

残業代で会社が傾く前に:
ピンチをチャンスに変える! 

中堅中小企業の働き方改革に必須の2大ポイント

中堅・中小企業にとってこそ、働き方改革への取り組みがピンチにもなり、業容拡大と収益アップの大きなチャンスにもなり得る。しかし「どこから手をつけていいのか分からない」と悩んでいる経営者は多い。ポイントとなるのは「制度とITの両軸」――MXモバイリングと「職場マイスター」岩崎仁弥氏に聞いた。
[PR/ITmedia]
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通知
 2016年に突如浮上した「働き方改革」。政府も「働き方改革実現会議」を発足させ、17年は法制面でもさまざまな改革が実施される見通しだ。その一方で、多くの中堅中小企業の経営者や業務部門の幹部は「なぜ今、働き方改革なのか」「これは大企業の話で、当社にはあまり関係ない」「当社にはまだ働き方改革を進める余裕はない」と考えているのも事実である。

 しかし、政府の“本気度”を考えると、働き方改革は企業の規模を問わず待ったなしの状況になっている。そして中堅・中小企業にとってこそ、この働き方改革への取り組みがピンチにもなり、業容拡大と収益アップの大きなチャンスにもなり得るのだ。

 「今が昭和型の雇用システムから抜け出すラストチャンス」と語るのは、「職場マイスター」として、主に制度面から、中小企業でも対応可能な働き方改革に向けたアドバイスをする社会保険労務士の岩崎仁弥氏だ。


「職場マイスター」社会保険労務士の岩崎仁弥氏
 「多くの企業に共通する働き方の問題は、昭和時代の働き方をいまだにベースにしているということです。昭和型の働き方が成功していたのは、高度経済成長期からバブル崩壊までのごく短い期間にすぎない。もう通用しないのです」(岩崎氏)

 昭和型雇用システムの特徴は、終身雇用と年功賃金。かつてはうまくいった仕組みも今となっては、長時間労働と低い労働生産性を生み出すことにつながっている。男性は一つの会社で定年まで「モーレツ」に働き続け、女性は家庭で家事や子育てを担当するという考え方は、職場が男性だらけになり、体力がある男性に合わせた長時間労働につながる。さらに、「チームの皆で頑張ろう」という“ノリ”が重視され、生産性が上がらない傾向も生み出す――と岩崎氏は語る。

 「こうした働き方が今でも残っているのは、『失われた20年』やリーマンショックの影響で日本経済が停滞し、企業に働き方を変える余力がなかったから。抜本的見直しを先送りし、年功序列なのに昇給をさせなかったり、正社員を増やさずに非正規雇用を増やしたり……と、どんどん歪(いびつ)な構造になっていったからです。それがまた、新しい労働問題を生み出したのです。しかし近年、景気が落ち着き、企業が働き方変革に着手できるようになってきました。今を逃してはもう変革できません」(岩崎氏)

残業代で会社が倒産する!?

 経営者の中には「働き方改革はコストがかかる」「従業員を甘やかせるだけだ」と考えている人も少なくない。しかし、岩崎氏は「働き方改革をしないことで、会社が倒産することがあるのです」と強調する。実は大きなリスクになり得るのだ。

 「早ければ2019年には、中小企業も60時間以上の残業に対して5割増しの残業代を支払う義務が課せられるようになります。長時間労働は生産性を下げる要因といわれています。にもかかわらず賃金は多く支払う結果になるのです。このまま長時間労働を続けていると、人件費で会社が倒産してしまうかもしれない。それまでに自社の働き方を見直すのは喫緊の経営課題。今のうちから準備をしていかないと間に合いません」(岩崎氏)

 もちろん、残業代をごまかすことは立派な犯罪行為。残業を減らすべく対策をしていかなければならない。とはいえ「残業をしないようにしろ」という声掛けだけでは、根本的な問題は解決しない。

 人手不足、生産性が低い、社風の問題、評価制度の問題、仕事の振り分け不足、給料が低いので残業代で底上げしたいと考える「生活残業」……自社が抱えているさまざまな問題を見つけ、それに合わせた対策をしていく必要がある。いわば「制度面」からのアプローチである。

 「本来、日本の法律では、“残業禁止”が原則。例外として、36(サブロク)協定を結んで、労使の話し合いを経て、残業を命じることが可能になる。しかし日本企業はそのプロセスが完全に抜けているし、36協定の存在自体知らない経営者もいます。残業が必要な理由を話し合うだけで、残業は減るんですよ」(岩崎氏)

 例えば、残業の理由が「煩雑な業務が多く、対応しているうちに残業が増えてしまう」という企業の場合、効果的なのは「仕事の見える化」だ。「1日にどんな仕事をするか」「この月にはどの仕事をするか」と“仕事の種類”をリストアップし、責任の程度や誰が担当するべきなのかを書き出していく。そうすると、同じような業務を複数人がやっていたり、1人にまとめた方がいい仕事が散らばっていたりといった状態が見えてくる。

 また、1日に行う仕事を先に宣言する「朝メール」を上司に送り、「夕メール」でその進捗を報告することも、少ない手間で効果がある。自身で仕事をマネジメントできるようになるのと同時に、自分や部下のスキルや状態を把握できるようになる。

 「しかし、一番効果があるのは、根本的に人事制度を変えること。残業せず効率的に働くことが評価につながる制度にしていけば、社員の残業時間はぐっと減ります。結果として、生産性もぐっと上がるはずです」(岩崎氏)

「どこから手をつけていいのか分からない」

 岩崎氏は制度の面から企業の働き方改革をサポートするが、「ITツールの活用よる生産性向上」という切り口でこの働き方改革をサポートしているのが、スマートフォンの導入支援やネットワーク構築といった法人向けソリューションを提供するMXモバイリングだ。同社執行役員常務の大橋歳幸氏は、「ここ半年で、大きく風向きが変わりました」と語る。


MXモバイリング執行役員常務の大橋歳幸氏
 「2016年に政府が『働き方改革』の方針を大きく打ち出して、テレワーク、女性の活用、柔軟性のある働き方に注目が集まっています。また労使ともに長時間労働に対する意識も変わってきました。こうした状況の中で、いち早く『働き方改革』に本気で取り組み始めた企業とそうでない企業との二極化が進んでいます。これは規模の大小は関係ありません」(大橋氏)

 ある大手企業は、数千台のiPadを営業に配布し、自社開発の業務アプリを活用して営業の効率化を進めた。中小企業でも、マイクロソフトのOffice 365を導入し、チャットやビデオ会議を活用して、業務の生産性を上げている例があるという。

 MXモバイリングは早くから“モバイルワークで支える働き方改革”を提案してきた。16年、日本マイクロソフトと共同で『働き方改革』をテーマにセミナーを複数回開催。テレワークを実現するためのWindows Phone、SurfaceなどのモバイルデバイスやOffice365をはじめとするクラウドサービス、シングルサインオンソリューションなどを組み合わせた最新の事例、活用法を紹介してきた。「毎回反響は大きかった」と大橋氏は語る。

 また、16年1月には、豊洲の自社オフィスにデモルームをオープン。最新のモバイルデバイスやソフトを実際に使ってみることができるほか、Skypeによるビデオ会議を体験できる。


豊洲の自社オフィスにオープンしたデモルーム
 今や、サーバやPCなど従来の社内環境とスマートフォン、タブレット、2in1 PCといったスマートデバイスやクラウドサービスを組み合わせれば短期間、低コストで『働き方改革』を実現できる。

 しかしこの改革はITだけで完結できるものではない。在宅勤務、モバイルワークなどの新しい働き方に関しては、それに合った人事評価制度や就労規則などの見直しがなければ、せっかくの改革も絵に描いた餅になってしまう。真の改革の実現には「制度」と「ITの活用」を同時に検討する必要があるのだ。

 「中堅・中小企業の経営者の方々からは、働き方改革について『どこから手をつけていいのか分からない』といったご意見を多くいただきます。差し迫ったニーズはあるけれど、具体的に何から手を打ったら良いのか分からないと悩むお客さまが多いのです。これは制度とITを同時に相談できる相手がいなかったからではないでしょうか」(大橋氏)

 そこでMXモバイリングは、社会保険労務士の岩崎氏とタッグチームを組み、「制度」と「ITツール」の両軸で『働き方改革』を全面支援する体制を整えた。

 「制度とITは寄り添ってこそ真価を発揮するもの。両者の適切な融合が改革成功のカギだと考えます。今回タッグチームを組む岩崎先生は、早くからこの『働き方改革』に着目し、社会保険労務士の立場で企業に対し、改革の意義、今後の法制度改正の企業への影響、それに対する打ち手などについてセミナー等を通じてアドバイスを行ってきています。弊社はこのタッグチームで中堅・中小企業様の改革推進を全面的に支援して参ります」(大橋氏)


働き方改革には、制度とITツールの両軸が必要
 MXモバイリングは「制度とITの両軸から考える働き方改革」をテーマとしたセミナーを、4月5日を皮切りに月次ベースで開催。同時に、豊洲デモルームで少人数を対象とした体験型のセミナーも随時開催するという。

 働き方改革には、「制度改革」と「ITツール」の両軸が必要だ。制度だけ、ツールだけ変えてもうまくいかない。「どうしていいか分からない」と不安を抱えている経営者や業務部門の担当者は、社会保険労務士とMXモバイリングの強力なタッグチームに相談し、“不安の棚卸し”をしてみてはいかがだろうか。

関連リンク
MXモバイリング
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1703/07/news010.html


 

ヤマト:労使交渉合意、配達時間帯の見直しや休息時間確保で環境改善
松田潔社
2017年3月16日 23:17 JST
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ヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸は大口法人顧客との配達契約内容を見直して取扱数量を抑制する。さらに、配達の一部時間帯指定サービスの廃止や商品を見直すことで労働環境の改善に取り組む。ヤマト運輸が16日夜、労使交渉妥結後に文書で発表した。
  サービスの見直しでは、6月中に正午−午後2時までと午後8−9時の時間帯指定の配達を廃止し、新たに午後7−9時の時間帯を新設して運転手などの負担を緩和する。4月24 日からは、労働時間を引き延ばす要因となっていた再配達の受付締め切り時間を午後8時から午後7時に1時間繰り上げる。また、アマゾン・ジャパンなど複数の大口顧客との契約内容を見直し、取り扱う荷物の量を抑制する。
  さらに、来年度の総労働時間を今年度比8時間減らし2448時間とした。在宅勤務制度の導入検討や、10月からインターバル制度を導入し、最低10時間の休息時間を確保することも合意内容に含まれた。基本給のベースアップや定期昇給相当分を含んだ賃金の引き上げについては平均6338円とし、前年の5024円を上回った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMWTQ96KLVR501


 
Fリテイリ柳井氏:リードタイムを大幅短縮、首位ZARA並みに
黄恂恂、Kazunori Takada
2017年3月16日 13:30 JST 更新日時 2017年3月16日 16:17 JST
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商品企画から製造に必要な期間を13日間に−従来半年から1年程度
中国と東南アジア、毎年100店ずつ出店へ
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「ユニクロ」ブランドを展開するファーストリテイリングは、これまで六本木(東京・港区)のオフィスでユニクロの主要業務を担当していた社員を物流施設に併設した有明(江東区)に移転。これに伴い従来半年から1年程度かかっていた商品の企画から販売までに必要なリードタイムを13日間に短縮する方針だ。
  同社はアパレルチェーンで世界首位の「ZARA(ザラ)」ブランドを展開するスペインのインディテックスを売上高で超えることを目指している。Fリテイリの柳井正会長兼社長は10日のブルームバーグのインタビューで、13日間に短縮できればリードタイムが短いことで知られるインディテックスと「同じくらい」になると話した。また、16日には記者団に対し「リードタイムの短縮はコスト削減に寄与する」と述べた。
柳井正会長兼社長
柳井正会長兼社長 Photographer: Akio Kon/Bloomberg
  同社は1月に「ユニクロ」ブランドの商品開発やマーケティングなどの業務を東京で担う社員約1000人を、湾岸地域の倉庫の最上階フロアにある新オフィスに移転させた。目指すのは、消費者の声を瞬時に反映させられる商品作り。そもそも「ファーストリテイリング」という社名には「要望した商品を早く届けられる、早い小売業」との思いが込められていると柳井氏は語る。「楽しく仕事ができて、すぐ打ち合わせできる場所がある」ことが有明のオフィスの利点だ。
  モーニングスターのアナリスト、チェルシー・タム氏は「有明に期待されるのはサプライチェーンの効率化」だと話す。商品の輸送にかかる時間を短縮できれば、スペースが限られる店舗に必要以上の在庫を抱えなくて済むというメリットもあると指摘した。
  ユニクロは現在、着丈や袖丈を消費者が自分好みに指定できるセミオーダー式のジャケットやシャツを販売している。今後、色やフィット感など消費者が好みに合わせてカスタマイズできる商品を増やすことも計画している。スマートフォンなどの普及により、消費者の好みをくみ取りやすい環境ができあがったことに対応する。商品の開発から製造、販売までの流れを再構築し、消費者の声を聞きながら「瞬時に商品を作って瞬時に売る」仕組みづくりを目指すという。
  柳井氏によると、今では人々はお店で買う前に「スマホやタブレット、PCでものを見て、それで買いに行く」ため、「店舗とデジタルがシームレスにつながる環境」が必要だという。消費者が商品に対してコメントできる機能もウェブサイト上で構築する考えも明らかにした。
ライフウエアを提供
  同氏は「ZARAの場合、お客さまの要望というよりファッション自体を売っている」と指摘する。一方で「われわれはライフウエアというお客さまの生活に根ざしたもの」を扱っていることから、消費者の声を聞きそれに沿ったものを売りたいと話した。
  スピードと正確性を追求するため業務の過程に自動化を積極的に取り入れ、出荷や配送の状況を細かく追跡し、人工知能(AI)を使った商品の売れ行き予測などを行うことも検討している。有明の施設には自動化を積極的に取り入れており、こういった次世代の物流施設を今後2−3年で海外にも設ける考えを明らかにした。
有明の新オフィスの光景
有明の新オフィスの光景 Photographer: Akio Kon/Bloomberg
  デジタル化とグローバル化を成長戦略に掲げる同社は、国内での人口減少を背景に海外への店舗展開を加速させている。柳井氏は今後、毎年100店舗ずつ中国と東南アジアでそれぞれ出店していくと明らかにした。中国については2017年8月期の出店計画と同じペースになる見通しだが、経済成長が著しい東南アジアの出店数は同計画比で約3倍になる見通しだ。赤字の米国事業では、ブランドの価値を高めるために店舗を商圏の大きい地域や大都市の中心地に集中させる考えを示した。
海外が国内を上回る体制に
  度重なる値上げによる客離れなどで国内事業が伸び悩んだFリテイリは昨年、5兆円としてきた21年8月期の売上高目標を3兆円に引き下げた。このうち、柳井氏は1兆円が国内、1兆円がアジア、残りの1兆円がその他の海外市場になるとし海外売上高が国内を上回る見通しを示した。しかし、同社の16年8月期の実績では国内売上高は全体の6割弱だった。
  Fリテイリ株の年初来下落率は14%。日経平均構成銘柄では35%下落した東芝に次いでワースト2位となっている。同社は4月13日に上半期(9−2月期)の決算を発表する予定。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OML6BZ6S972B01
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/255.html

[経世済民120] 同じ方向に進み始めた日米欧金融政策 利上に透けるFRBの変心 金融庁、検査監督局統合 英中銀8対1で金利0.25%に維持
FX Forum | 2017年 03月 16日 20:36 JST 関連トピックス: トップニュース

コラム:同じ方向に進み始めた日米欧金融政策


佐々木融JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長
[東京 16日] - 14―15日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)は予想通り25ベーシスポイント(bp)の利上げを決定し、政策金利のターゲットを0.75―1.0%とした。2月末頃から米金融政策当局高官の発言が急にタカ派的となり、利上げ期待が急速に高まっていたことから、今回の決定はすでに織り込み済みだった。

一部の市場参加者の間では、声明文もタカ派的なものとなり、FOMCメンバーの2017年中の政策金利見通し(ドット)中央値が12月FOMC時の年3回の利上げ予想から、年4回の利上げ予想に上方シフトするのではないかとの期待も高まっていた。

しかし、声明文は設備投資、インフレに関する部分で上方修正があったものの総じて見ればタカ派的とは言えず、またドットの中央値も年3回の利上げ予想にとどまった。フェデラルファンド(FF)金利先物市場は、もともと今年の利上げ回数を2.7回程度と織り込んでいたが、ドットが変わらなかったことを受けて、(今回の利上げも含め)2.5回程度の織り込みに後退してしまった。

市場はそもそもドットで示されるFOMCメンバーの利上げ予想を割り引いて見ている。なぜなら、例えば2014年12月、2015年12月のFOMCでは、どちらもドットの中央値は翌年中に4回利上げを行うことを予想していた。しかし、実際にはどちらも1回しか利上げは行われなかった。

つまり、FOMCメンバーの政策金利に関する予想はあまりあてにならないとして、市場はこれをある程度割り引いて見ているのだろう。だから、ドットの中央値が3回にとどまったので、市場の織り込み度合いは2.7回から2.5回に後退したのだ。

過去の経験則から言えば、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを行うと、米長期金利、ドルともにピークを打ち、反落する傾向が強い。市場の期待に比してタカ派的とは言えなかったFOMCを受け、今回も米長期金利とドルが反落基調入りする可能性は高いだろう。

結局、ドル円相場は1月中旬以降のレンジ(111円半ばから115円半ば)上抜けに失敗し、今度はレンジの下限を試しに行く展開となるだろう。

<ユーロドル上昇がドル円上値を抑える可能性>

当社は引き続き、米国の保護主義的な姿勢の強まりや欧州の政治的な不安定化が、ドル円相場をドル安・円高方向に向かわせると予想している。こうした政治リスクが顕現化した場合には、レンジを下抜ける可能性もあるだろう。

ただ、実は金融政策も同じドル安・円高方向を指し始めているのではないかと筆者は考えている。なぜなら、日米欧の金融政策は基本的に同じ方向を向き始めているからだ。

2014年から2015年にかけては、「金融政策の方向性の違い」が明確となり、ドルは対円、対ユーロで上昇した。しかし、足元を見ると、先に利上げを行い、市場の期待も過度に高まった米国の金融政策に比べて、日欧の金融政策はこれから正常化に向けた動きが出始めると予想される。政策の方向性が同じになった上に、その温度差がドルを対円や対ユーロで弱い通貨にさせる可能性もありそうだ。

欧州中銀(ECB)は3月9日の理事会で金融政策を予想通り据え置いたが、ドラギ総裁の会見からは、理事会がこれまでに比べて先行きの見通しに満足してきており、差し迫っているわけではないが、徐々に出口に近づきつつある印象を受ける。また、スタッフの経済見通しも、コアインフレ率について2018年に1.5%、2019年に1.8%まで上昇するという強気の見方を示している。

当社はECBが2017年末頃にはテーパリング(緩和縮小)開始を宣言し、2018年第4四半期から緩やかな利上げを開始すると予想している。状況が順調に進めば、こうした期待が今年半ば頃から盛り上がり始め、ユーロドル相場を大きく押し上げるかもしれない。対ユーロでのドル安は対円でのドルの上値を抑えることにもなるだろう。

<金融引き締めに近いのはECBより日銀か>

日銀は15―16日開催の金融政策決定会合で金融政策を据え置いた。日本の場合、コア消費者物価上昇率が年末に向けてプラス1%程度まで上昇していくとの予想が多いため、10年物国債金利に関するコントロール目標である「ゼロ%」を日銀が引き上げるのではないかとの思惑が徐々に高まっている。

しかし、黒田東彦総裁は記者会見で、「物価上昇見通しは2%の目標に向けモメンタムは維持されているが力強さに欠ける」「ヘッドライン、コア、あるいはコアコアの数字がある水準になったからといって、ただちに長期金利の操作目標を変えることにはならない」などと発言し、市場の思惑を否定するような慎重な姿勢を強調した。

日銀はECBに比べれば引き締め方向への動きが遅れているように見えるが、昨年9月の時点ですでに量的緩和政策を事実上止めて、イールドカーブ・コントロールに移行している。国債の買い入れ額については、「概ね現状程度の買い入れペース」として、金利操作を目標としている。

ECBは量的緩和をまず停止し、かなりの期間が経過した後、利上げを行うとの見方を示しているが、日銀はインフレ率など条件が整えば、すぐにでも政策目標である10年の金利を引き上げる可能性がある。こうして見ると、日銀の方がECBより金融引き締めに近いと言えなくもない。

当社のドル円相場に対する弱気な見方は、基本的には米国の保護主義的圧力が高まるとの予想を背景にしたもので、金融政策の方向性によるものではないが、現実の日米欧中銀の動向や市場の思惑も考えると、金融政策の方向性から見ても、ドル安・円高方向へと進む可能性が出てきたのではないだろうか。

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

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FX Forum | 2017年 03月 16日 19:53 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:地ならし後の利上げに透けるFRBの変心

永井靖敏大和証券 チーフエコノミスト
[東京 16日] - 今週は、イベント満載のなか、日米の金融政策決定会合が開催された。ただ、市場の最大の関心事は14―15日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)であり、結果として、春闘の集中回答、米政府債務の法定上限適用停止期限の終了、オランダ総選挙、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に対する関心を弱める形になった。

3月のFOMCでの利上げは、金融政策に関する発言を控えるブラックアウト期間の数日前に、イエレン議長を含む複数の連邦準備理事会(FRB)高官が講演などで利上げの地ならしを行ったことで、事前の予想通りという結果になった。

逆に言えば、地ならし前に、市場が利上げをさほど織り込んでいなかった点が特徴的で、1月の雇用統計が発表された2月3日時点では3割程度しか織り込んでいなかった。記者からも、利上げの地ならしが遅すぎたのではないかとの質問が出たが、イエレン議長はFRBの情報発信にぶれはなかった点を強調。暗に、市場の受け止め方が間違いだったと説明した。

イエレン議長の説明に反論したい市場参加者も少なくないと思われるが、ここでは、市場が間違った理由を探ることで、金融政策の先行きを見る上でのポイントを考察したい。

<FRBは物価の実績値を重視か>

筆者は、市場が1月の雇用統計で時間給上昇率の伸びが鈍化したことを重視し、2月15日に発表された消費者物価の伸び加速を軽視したため、FRB高官による地ならしが始まるまで、3月利上げの織り込みが進まなかったと見ている。

市場が、1月の時間給上昇率を重視したのには、それなりの理由がある。議長が、1月統計発表前の時点で、賃金の伸びが加速していないことを根拠に、これまでの利上げペースが極めて緩やかだったことを正当化したためだ。

今から考えると、FRBは賃金や雇用など、さまざまな経済指標を分析しているが、物価の実績値を重視した政策運営に舵を切りつつあるように思える。低インフレで苦しむ日欧の様子を横目で見て、FRBも、早すぎる対応に伴うリスクを意識した政策運営が必要と判断した可能性がある。

声明文で「物価目標を依然下回っている」としていた表記を、「目標に近づいている」に修正した点からも、FRBが足元の物価水準に満足している様子が読み取れる。物価が上昇を目指す局面から安定を目指す局面にシフトし、利上げペースの加速につながったようだ。

本来、中央銀行はフォワードルッキングな対応が望まれる。物価は遅行指標なので、物価の上昇を待ってから行動すると、政策運営が後手に回り、景気の変動が大きくなる。ただ、中央銀行は、利上げという、物価を押し下げる有効な手段を保有する一方、確実に押し上げる手段を持たない。このことを踏まえ、望ましい政策運営に対する考え方が変化したのではないだろうか。

ただ、FRBとしては、物価の実績値を重視する姿勢を表明し難い状況にある。近年、議会から、金融政策は「テイラー・ルール」のような機械的な手法で実施すべきという意見が浮上し、これが「FRB不要論」にもつながっているためだ。

FRBは物価だけに着目して政策運営を行っているわけではないが、従来よりも(さらにはFRBの説明よりも)物価の実績値が政策運営の先行きを見る上で重要になったと筆者は考えている。

<バランスシート政策議論は初期段階>

イエレン議長は、今回のFOMC後の記者会見で、バランスシート政策に関する議論が行われたことを明らかにした。バランスシート政策は、前回FOMC議事録で今後の会合で議論すると予告していたことから、市場の関心を集めており、記者からも最初にバランスシート政策に関する質問を受けた。イエレン議長は、まだ決定に至らず、今後も討議を続けると説明している。

FRBは、2014年9月に発表した「金融政策正常化の原則と計画」で、保有資産の正常化を、「予見可能な手法で行う」としており、これが方針決定までの議論の長期化につながっているようだ。すなわち、予見可能な手法で実施するためには、正常化に向けて動き出す前に、ゴール(適正なFRBのバランスシートの規模)と、ゴールに至るまでの期間を米国債と住宅ローン証券(MBS)について、それぞれ事前に決める必要がある。

3月のFOMC実施前に、「予見可能な手法で行う」という従来の方針に対しても、FRBの高官が問題提起を行った。イエレン議長が、今回の記者会見で従来の方針に沿った説明を行ったことから、問題提起は方針修正にはつながらなかったようだが、バランスシート政策は論点が多岐にわたることから、FRBのメンバーのコンセンサスが出来上がるまでには、なお時間がかかりそうだ。

討議の遅れからか、今回の声明文では「フェデラルファンド(FF)レートの水準が十分に正常化されるまで」再投資を維持するとした、これまでのバランスシート政策に関する表現を踏襲した。記者からの「十分に正常化」の具体的な水準に関する質問に対し、イエレン議長は「景気見通しに対するリスクと自信が均衡した時」と、特定の金利水準をイメージしていないことを明らかにした。

イエレン議長の発言により、バランスシート政策の開始は、「FRBの景気見通しに対する自信の表れ」と市場は解釈し、市場に少なからぬ影響を与える可能性がある。実際のインパクトは、事前の織り込みの方法により異なる。今回の利上げのように急速に織り込まれると、相場の波乱要因になる恐れがある。今後も、バランスシート政策に関する議論の行方が注目されそうだ。

<日銀も後手に回る必要あり>

一方、15日―16日に開催された日銀政策決定会合は、短期金利をマイナス0.1%とし、長期金利目標をゼロ%程度とする金融政策の現状維持を決めた。市場では、物価が緩やかながら上昇することで、年内にも長期金利の操作目標を引き上げるとの見方がある一方、物価上昇は日銀の想定を下回ることで、追加緩和(短期金利のマイナス幅拡大)を実施するとの見方が共存している。

ただ、長期金利の操作目標の引き上げは極めて困難だと筆者は予想している。物価上昇に応じて小幅な引き上げを実施すると、市場は次の引き上げを予想するため、長期金利の操作が難しくなる。

「物価安定の目標」達成前に、操作不能の状況に追い込まれることは避けたいはずだ。日銀の金融政策も後手に回る必要があるが、引き上げ後の市場への影響は、FRBとは比較にならないほど大きいだろう。

*永井靖敏氏は、大和証券金融市場調査部のチーフエコノミスト。山一証券経済研究所、日本経済研究センター、大和総研、財務省で経済、市場動向を分析。1986年東京大学教養学部卒。2012年10月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

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http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yasutoshi-nagai-idJPKBN16N11D

 


Business | 2017年 03月 16日 21:05 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

 金融庁、検査・監督局統合へ 手法改革の報告書受け=関係筋


[東京 16日 ロイター] - 金融機関への検査・監督のあり方を議論してきた金融庁の有識者会議が、同庁の組織再編を17日に提言する。これを受けて金融庁は機構改革の検討を本格化させ、検査局と監督局を統合して「金融モニタリング局」を新設し、金融行政の司令塔役を担う官房長ポストも設置する方向だ。

激変する金融環境に、縦割りの弊害を除いて機動的に対応できる体制を整える。早ければ2018年7月からスタートさせたいとしている。

複数の関係筋が明らかにした。大規模な組織改革は、前身の金融監督庁が1998年に発足して以来。

ロイターが入手した有識者会議の報告書の最終案によると、形式主義に陥らず、フォワードルッキングにリスクを把握して金融機関が抱える問題の本質に切り込む検査・監督手法が重要であると指摘。そのために同庁の内部組織の見直しが必要だと提案した。

具体的には、金融行政の「総合司令塔機能」の強化や、オンサイト(立ち入り調査)・オフサイト(聞き取り調査)モニタリングの一体化が必要だと明記した。

有識者会議(座長、吉野直行・アジア開発銀行研究所所長)は昨年8月に発足。非公開で議論してきた。

金融庁は、17日に同会議の報告書を公表する予定。

金融庁は報告書を受けて、組織再編の議論を本格化させる。複数の関係者によると、検査局と監督局を統合して「金融モニタリング局」を新設するほか、金融行政の司令塔となり、他省庁などとの連絡調整にあたる局長級のポストとして官房長も設置する案が有力となっている。

金融庁は近年、検査局・監督局が一体となって金融機関をモニタリングし、リスクの早期把握や新たなニーズへの対応などについて、金融機関と話し合ってきた。

しかし、財務健全性などの把握は画一的な基準の適用で対応が可能だが、新しいビジネスモデルをどのように打ち出し、顧客ニーズを吸い上げるのかといった議論や、金融環境の急速な変化に応じた機動的な検査は、検査局と監督局の縦割りのままでは難しいという声も、部内の一部から出ていた。

金融庁は今年8月に提出する機構定員要求に機構改革案を盛り込む方針。早ければ2018年7月から始まる事務年度から新体制に移行することを目指している。

この件について、金融庁の広報担当者のコメントは得られていない。

(和田崇彦 編集:田巻一彦)

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日銀、金融政策の維持決定、景気判断を据え置き
http://jp.reuters.com/article/fsa-idJPKBN16N1IH?sp=true


 

英中銀:8対1で金利0.25%に維持−フォーブス氏が利上げ主張
Fergal O'Brien
2017年3月16日 22:00 JST 更新日時 2017年3月16日 22:56 JST

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中国人民銀、オペ金利とMLF利率引き上げ−米利上げ後
MPCは8対1で金利据え置きを決定、過去最低の0.25%
何人かは小さな上向きのニュースがあれば姿勢を変えるだろうと言明

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iNl3gFfdVMS4/v2/-1x-1.png


イングランド銀行は16日、政策金利の据え置きを発表した。決定は8対1で、フォーブス委員が利上げを主張した。
  金融政策委員会(MPC)は政策金利を過去最低の0.25%で据え置いた。フォーブス氏は0.5%への利上げを支持した。債券購入プログラムの現状維持は全会一致で決めた。決定はエコノミストの予想通りだったが、票が割れたことは予想外だった。
  MPCは成長促進の必要性と通貨安に起因するインフレ加速への懸念をてんびんにかけた。フォーブス氏はバランスがシフトしたとの見解を示した。同氏はインフレ率が向こう3年にわたり中銀目標を上回ると予想。一方で成長減速の確固とした兆候は見られないことから直ちに政策を変更すべきだと主張した。
  会合の議事録によれば「インフレ率が急速に上昇する中、国内経済活動の減速の兆候はまだら模様でしかない。一部メンバーは経済活動とインフレの見通しについて相対的に小さな上向きのニュースがあれば、より早期の景気支援策縮小が妥当である可能性を検討するのに十分だとの見解を示した」という。
  ポンドは発表後に下げを消し、ロンドン時間午後0時16分現在は前日比0.4%高の1ポンド=1.2344ドル。
  インベステック・セキュリティーズのエコノミスト、クリス・ヘア氏は「わずかばかりのムードの変化が感じられる。しかし、私としてはあまり気にしない」と述べた。
  金利決定で票が割れたのは国民投票で欧州連合(EU)離脱が選ばれた後の昨年7月会合以来。当時は1人が直ちに利下げすることを主張し、中銀は結局8月に利下げした。

原題:Forbes Votes for BOE Rate Hike as Hawkish Views Gain Traction(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMWQR46JTSEM01
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/256.html

[経世済民120] 米利上げ「遅れはリスク」 FRB、3カ月ぶり引き締め トルコが貸出金利上げ 0.75%、インフレ見通し悪化で 
米利上げ「遅れはリスク」 FRB、3カ月ぶり引き締め
2017/3/16 23:48
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 【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で3カ月ぶりの利上げに踏み切った。イエレン議長は「利上げが遅れればリスクになる」と強調し、6月との当初予想より早く引き締めに動いた。ただ、利上げ回数を年4回に加速させるとの観測には「年3回」と答え、市場に安堵感を与えた。

 「今年見込む利上げ回数は3回。経済の見方は全く変えていない」

 イエレン氏は利上げが急加速する可能性を現時点で否定した。米国は想定以上に雇用が拡大し、市場には利上げペースが年4回に加速するとの見方も浮かんでいた。「金融政策はなお緩和的だ」とのイエレン氏の発言は市場の警戒感を解いた。 ただ、それだけ慎重姿勢で知られるイエレン氏が、今回の利上げに突如踏み切った理由は明示しなかった。利上げは3カ月ぶりで、このペースなら年4回の利上げがある計算になる。2月中旬の議会証言では、3月、5月、6月のいずれかの会合でと示唆したが「3月」と明示したのは、今月3日に入ってからだ。

 「緩和縮小が遅れると将来に急激な利上げが必要になり、景気後退に陥る可能性がある」

 イエレン氏は利上げの理由の一つに「利上げが遅れるリスク」を挙げた。FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数は1月に前年同月比1.9%まで上昇。同指数は1年前の昨年1月は1.1%にとどまっており、物価上昇圧力は着実に強まっている。

 米景気は7年半も拡大局面が続き、バブルの懸念もにじむ。商業不動産の全米価格指数は、08年のリーマン・ショック前の高値を2割も上回る水準だ。中央銀行の首脳経験者は「FRBが利上げを今回急いだのは、引き締めが後手に回っていると懸念し始めているためだ」と推し量る。

 「経済政策が変わる可能性については、深く議論しなかった」

 トランプ政権は1兆ドルのインフラ投資を公約し、議会と大幅減税で調整する。政策効果で景気が上振れすれば、利上げ加速が視野に入る。イエレン氏は「利上げが1回増えても『緩やか』と言える」とも言う。「年3回」のシナリオに安堵した市場は早合点の可能性がある。

 イエレン議長は来年2月に任期満了を迎えるが、再選は微妙だ。FRB議長は退任前に懸案を片付ける慣例がある。「金融政策の正常化」を掲げるイエレン氏の仕上げは利上げを軌道に乗せて資産圧縮の道筋をつけること。FRBの金融政策は、トランプ政権の人事に左右されそうだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14185640W7A310C1EE8000/


 トルコが貸出金利上げ 0.75%、インフレ見通し悪化で
2017/3/16 23:32
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 【イスタンブール支局】トルコ中央銀行は16日開いた金融政策決定会合で、事実上の上限金利として使用する「後期流動性貸出金利」を0.75%引き上げ11.75%とする引き締め策を実施した。同金利の引き上げは2会合連続。主要な政策金利である翌日物貸出金利は9.25%、1週間物レポ金利は8%で据え置いた。

 中銀は16日の声明で「インフレ見通しの悪化を封じ込めるため金融引き締めの強化を決めた」と1月会合と同じ表現で決定理由を説明した。中銀の発表を受け、通貨リラの対ドル相場は上昇した。

 米連邦準備理事会(FRB)は15日、0.25%の利上げを決めた。ただ市場の一部であったFRBが利上げを加速するとの見方が後退したことで、リラなどの新興国通貨を売る動きは起きなかった。このためトルコ中銀は今回は主要な政策金利の引き上げは不要と判断したもようだ。

 リラは米国へのマネー回帰の動きに伴い、昨秋以降急速に下げ幅を広げてきた。通貨安はインフレ率の上昇や外貨で借り入れを行う企業の資金繰り難を招き、景気の減速要因となっている。

 抜本的なリラ防衛には、ローン金利の上昇などの犠牲を払ってでも主要な政策金利を大幅に引き上げる必要性が指摘されている。

 トルコでは4月16日にエルドアン大統領の権限を強化する憲法改正案の是非を問う国民投票が迫る。中銀は建設投資や消費の冷え込みを嫌うエルドアン氏の意向にも目配りしなければならない事情を抱える。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM16H7L_W7A310C1FF2000/
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/257.html

[政治・選挙・NHK222] 首相、賃上げ「欲言えばもう少し力強く」 東電郵政賃金据置 麻生自由貿易大事 炭素税で日本強化 世界景気雨 雇用保険料下げ
首相、賃上げ「欲言えばもう少し力強く」
2017/3/16 18:59
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 安倍晋三首相は16日、都内で開いた日本商工会議所の通常総会であいさつし、春季労使交渉の賃上げについて「昨年に続き、企業収益が過去最高水準にあるなかで、欲を言えばもう少し力強い賃上げを望みたかった」と語った。一方で「多くの企業において4年連続のベースアップ(ベア)が実現した」と歓迎した。

 春闘労使交渉で首相は「少なくとも昨年並み」の賃上げを求めてきた。トヨタ自動車が昨年の1500円を下回る1300円にとどめるなど、ベアを昨年以下に抑える企業が相次いだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS16H58_W7A310C1PP8000/

 


 
東電、賃金据え置き コスト抑制を優先
2017/3/16 21:37
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 東京電力ホールディングス(HD)の2017年春季労使交渉は16日、17年4月からの組合員の年収を前年度並みに据え置くことで合意した。労組の2%増要求に対し、会社側は福島第1原子力発電所事故の処理費用がかさむだけにコスト抑制を優先。人材流出につながりかねないとして賃下げには踏み込まなかったが、16年度まで3年続いた改善の流れを止めた。

 東電は年俸制で16年度の平均年収は約558万円。筆頭株主の政府機関と共同で作った再建計画に定めたとおり、東日本大震災前に比べ5%減の水準に回復させていた。

 中部電力はベースアップ(ベア)をゼロとすることで妥結した。前年は1人あたり1000円のベアだった。年間賞与は1人当たり152万1000円。九州電力も2年連続で要求があったベアは見送る一方、2年連続で年間一時金の支給を決めた。労組の年4.1カ月の要求に対し年3.68カ月を支給する。

 東電は介護などを理由にした時短勤務や在宅勤務を認める制度の導入も決めた。パート社員については法定最低賃金の上昇を受けて時給の上限を引き上げる。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ16I6E_W7A310C1TJC000/


 

日本郵政、2年連続ベア見送り 収益低迷で
2017/3/16 23:24
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 日本郵政は16日、2017年の春季労使交渉でグループ社員のベースアップ(ベア)を見送ると発表した。見送りは2年連続。日本郵政グループ労働組合(JP労組)は平均2%にあたる月額約6000円のベアを要求していたが、低金利や郵便物の減少で収益が低迷しており実施は難しいと判断した。年間一時金は昨年と同じ4カ月分とする。

 15万人の期間雇用社員に対しては夏季一時金に最大5000円を上積みする。昨年の上積みは1万円だった。JP労組の組合員は約24万人で単一労組としては国内最大。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS16H7I_W7A310C1EE8000/

麻生氏「自由貿易確立が大事」 G20財務相会議へ
2017/3/16 19:52
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 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が17日(日本時間18日未明)、ドイツで開幕する。麻生太郎財務相は16日、羽田空港で記者団に「自由貿易をきちんと確立することが大事だ」と述べ、反保護主義を訴える考えを示した。米国や中国で財務相が交代しており、デフレ脱却に向けた日本の経済・金融政策を説明して理解を得たい考えだ。

 日本からは黒田東彦日銀総裁も参加する。G20財務相会議はトランプ米政権発足後初めて。会議後の共同声明では「保護主義に対抗」との文言が削除される公算が大きく、米国に配慮したとの見方がある。

 米国は共同声明に「通貨安競争の回避」を明記するよう強く要求。貿易赤字の削減を政策目標に掲げ、他国の通貨政策をけん制している。G20の参加国からは「(経常黒字の)根本はドイツ経済の競争力だ」(ショイブレ独財務相)との反論も相次ぐ。麻生氏はムニューシン氏と17日にも会談し、日本の為替政策を説明する見通し。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS16H4M_W7A310C1EE8000/


 

企業人事が評価、慶大が首位 ビジネススクール調査
2017/3/16 23:39日本経済新聞 電子版
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 日本経済新聞社が実施した「企業人事に聞くビジネススクール調査」で、社員に通わせたい学校の1位は慶応義塾大学大学院の経営管理研究科だった。2位に一橋大学大学院、3位に早稲田大学ビジネススクールが入った。カリキュラムの充実や実務経験の豊富な教授陣をそろえている点などが高く評価された。

 日経HRの協力を得て主要企業149社に調査票を送り、76社から回答を得た。国内62校から3校を選んでもらった。1位に…
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14184060W7A310C1TJC000/


 

世界景気、1月も「雨」 日本経済研究センター
2017/3/16 19:14
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 日本経済研究センターが16日発表した1月の世界景気インデックス(天気図)は、主要国・地域の景気を示す指数が前月比で1.8ポイント上昇し、マイナス2.7だった。4カ月連続で改善したが、天気図は2015年3月以来続く「雨」のままだった。

 日本は新車販売が好調だった小売りのほか生産、輸入も改善した。日本の天気図は14年4月以来の「薄日」になった。米国も消費が堅調で4カ月連続で指数が改善したほか、東南アジアや中国も上向いた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS16H4O_W7A310C1EE8000/

 


雇用保険料率、来年度から下げ 法改正案が衆院通過
2017/3/16 19:08
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 2017年度からの雇用保険料率の引き下げなどを盛り込んだ雇用保険法改正案が16日、与野党の賛成多数で衆院本会議で可決された。育児休業を最長2年間に延ばすための育児介護休業法改正案や、ブラック企業の取り締まりを強める職業安定法改正案などとの一括法案で、今月中に成立する見込みだ。

 雇用保険料は労使が折半で負担しており、失業給付などの財源になっている。17年度から3年間、収入の0.8%から0.6%へと引き下げられ、企業と従業員には負担減となる。倒産や解雇で離職した30〜44歳の人の失業給付も延長する。

 育児休業は原則1歳までの休業期間を6カ月延長しても保育所に入れない場合、さらに延ばして2歳まで再延長できるようにする。職業安定法改正案にはブラック企業の求人をハローワークで受けつけない仕組みの導入を盛り込んだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS16H59_W7A310C1PP8000/

 

厚労省、労基署業務委託に難色 「複雑な仕事」
2017/3/16 21:03
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 政府の規制改革推進会議は16日、企業に立ち入り検査する労働基準監督署の業務の一部を民間に委託する検討会の初会合を開いた。民間委員は「監督官の不足で監督業務が不十分」と主張したが、所管の厚生労働省は「事業所の違法行為を見つけるのは複雑な仕事だ」などと難色を示した。同会議は6月の答申に委託解禁を盛る方針だが、調整が難航する可能性もある。

 会議では、民間委員が「監督が放置されている事業所に民間人が行くなど官民は補完関係にある」と指摘。「民間人が書類閲覧を拒否された事業所に国の監督官が集中的に行けば効率も良くなる」と強調した。これに厚労省は「監督官が来るまでに証拠書類を処分されたらどうするのか」などと慎重な姿勢を示した。

 同会議によると、事業所や労働者が集中する東京や大阪では監督官の不足が顕著だという。社会保険労務士らに業務の一部を委託し、欧州の主要国に比べて劣る監視体制を強化することで、安倍政権が進める働き方改革を後押しする狙いだ。

 同検討会主査の八代尚宏・昭和女子大特命教授は会議後の記者会見で「定期監督できている事業所は全体の約3%だけ。民間活用で監督者を増やし、労働者の安全性を担保すべきだ」と述べた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS16H5Z_W7A310C1PP8000/


 

 
米スティグリッツ教授「炭素税が日本経済を強くする」
2017/3/16 19:04
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 ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授は16日、環境省が都内で開いた地球温暖化対策の有識者会議に出席した。「炭素税など炭素の価格付けが日本経済を強くする」と述べ、早期に導入すべきだと訴えた。

 有識者会議は炭素の価格付け制度が有効とする報告書を取りまとめるにあたり、同制度に詳しいスティグリッツ氏を招いた。同氏は会合で「炭素税は温暖化対策のための技術開発投資を誘い、経済成長を促す」として、「初めは高い価格を設定し、次第に下げて温暖化ガス排出量1トンあたり50〜100ドルにするのが適正だ」と述べた。

 また「総需要が少ない日本にとって、支出を減らす消費税は良い税ではない」と指摘した。

 会合後の記者会見でも「炭素税が化石燃料を使わない再生可能エネルギーの導入を後押しする」と強調。原子力発電所には「リスクを伴う。社会全体で負担することになる」と否定的な見解を示した。トランプ米大統領が地球温暖化対策に消極的であることに触れ、「日本が環境分野で世界のリーダーシップを発揮することが大切だ」と期待を示した。
http://www.asyura2.com/17/senkyo222/msg/474.html

[経世済民120] 部下の残業で書類送検された人の末路 8年前から金曜は4時終業のアステラス 一生懸命なら誰でもできる 
部下の残業で書類送検された人の末路

キーパーソンに聞く

弁護士の多田猛氏に聞く
2017年3月17日(金)
鈴木 信行
 国を挙げて働き方改革が進む中、部下の残業で書類送検される企業幹部が相次いでいる。2016年暮れの大手広告会社の幹部社員に続き、今年1月には大手電機メーカーでも労務管理を担当する社員が労働基準法違反の疑いで書類送検された。同様の事案は分野や地域を越えて広がっており、地方の運送業者や小売業などでも営業所長や労務担当取締役などが摘発される事例が発生。企業の生産性を何とか改善しようとする当局の意気込みが伝わってくる。

 だが、摘発を残業削減に本気でつなげるなら、書類送検された“残業強要上司”がそれをきっかけに、自らの行いを多少なりとも反省することが欠かせない。「会社の利益と自分の出世欲のため、部下を過剰労働で追い詰めてきたが、こんな目に合うなら割に合わないな」――。そんな気付きを当事者に与えて初めて、書類送検の意味がある。果たして部下の残業で書類送検されると人生はどうなるのか。労務問題に詳しい弁護士に話を聞いた。

聞き手は鈴木信行

 人間には様々な「末路」があります。書籍『宝くじで1億円当たった人の末路』では、「宝くじで1億円当たった人」「事故物件借りちゃった人」「キラキラネームの人」「自分を探し続けた人(バックパッカー)」といった、やらかした人々の末路や、「友達ゼロの人」「子供を作らなかった人」「電車で『中ほど』まで進まない人」「8時間以上寝る人」「体が硬い人」といった気になる人々の末路まで、23編の多様な「末路」を1冊にまとめました。右の書影をクリックいただければ購入できます。是非ご覧ください。


「末路本」の詳細が気になる人は…

多田 猛(ただ・たけし)
弁護士法人Next代表弁護士。1998年3月淳心学院高等学校卒業。2002年3月京都大学法学部卒業。2011年3月一橋大学法科大学院卒業。2013年4月第二東京弁護士会、子どもの権利に関する委員会幹事。一般社団法人シニア総合サポートセンター理事。子ども・家庭の法律問題をはじめ、幅広い分野で活躍中。
というわけで先生、そもそも書類送検とは、法律的にはどういうものなのでしょう。

多田:書類送検というのは法律用語ではなく、マスコミ用語なんです。法律用語で最も近い言葉は「送致」と言います。法律を犯した恐れのある人物がいた場合、当局には、その人物を検察に送って「この人間は法律を犯した可能性があるので判断して欲しい」と要請する権利があります。当局は法律によって異なり、刑法ですと警察に、労働基準法ですと労働基準監督署にその権利があります。

なるほど。

多田:その際、被疑者に逃亡の恐れなどがある場合は、逮捕し拘束できます。そうやって逮捕して本人を物理的に検察に送るのが「身柄の送致」です。一方、被疑者に逃亡の恐れもなく逮捕する必要まではない場合は、身柄の拘束はせず、検察に報告だけすることになります。これが書類送検と言われるもので、労働基準法違反容疑の場合、よほど悪質でない限り、身柄の送致はありません。

本当は「1時間オーバー」でも違法行為

どの程度、残業させたらアウトなんですか。

多田:厳密に言えば、労使協定で定めた残業時間を1時間でも越えれば法律違反として送致する権限が労基署に生まれます。

1時間オーバーでアウトなら、日本中の企業幹部が連日、書類送検されることになってしまいますが。

多田:1時間オーバーでも送致の権限は生まれます。生まれますが、労基署にもマンパワーの限界がありますから、書類送検するのは全体の一部に限られます。捜索の対象になるのは往々にして、労働者による告発があった場合か、過労自殺などの死者が出た場合です。こうなると労基署は対象企業に捜索に入り、資料を差し押さえるなど証拠を固め、普通はまず「指導」、次に「勧告」、それでも改善が見られない場合は、法人と個人の「書類送検」へと進むことになります。

どうやって白黒の判定をするのですか。

多田:出勤簿、PCのログ、タイムカードなどです。

それでは不十分ではないでしょうか。出勤簿が自己申告制の悪徳企業の多くは、従業員にウソの申告をさせています。出勤簿には「ノー残業デー」と書きながら、普通に深夜残業している企業もあります。

多田:その場合は、出勤簿にウソを書くように指示した証拠を探します。

指示は基本、口頭だと思います。それも「出勤簿をごまかせ」ではなく「工夫して書け」など曖昧な言い方で圧力をかけるケースが多いかと。あるいは無言の圧力で、「有給取ったら、ただじゃ済まさない」的な“空気”を作って、社員を威圧している企業もあるはずです。

多田:それでも、本当に過剰残業が常態化していれば会社のどこかに証拠はあるものです。労基署もプロですし、たとえ物的証拠がなかったとしても、例えば従業員の証言なども立派な証拠になります。

仮に証拠を突きつけられても、“残業強要上司”の中には「自分は早く帰れと言ったのに、従業員が自発的に残業した」とシラを切る人もいるかと。

多田:その言い逃れは、労働基準法事案ではあまり意味がありません。強制であろうとなかろうと、従業員が過剰な仕事を抱え、過剰な労働をしていれば、法律違反と見なされ、「使用者」の責任が問われます。口頭で指示していようが、空気を作って圧力をかけていようが、あまり関係ありません。

「現場が勝手にやった」では言い逃れできない

責任を問われる「使用者」はどうやって特定されるんですか。

多田:簡単に言えば、「従業員が過剰な残業をせざるを得ない状況を作り上げた者」あるいは「その環境を改善できたはずの者」が、責任を問われる「使用者」となります。

最近の書類送検事案を見ると、個人として書類送検されているのは直属の上司や現場の長、労務担当役員で、社長が挙げられるケースは少ない気がします。やはり、一番偉い人は「全部現場が勝手にやった。俺は一切知らない」としらばっくれるんですか。

多田:社長の場合、「知らなかった」と言い逃れすると今度は管理者としての責任が問われると思います。そうではなく「知っていた」と主張しているはずです。

どういうことですか?

多田:つまり「現場の勤務データは緻密に管理し、一生懸命指導もしていた。でも勤務データ自体を現場が改竄していた。自分は現場に騙された」という主張です。

くぅぅ、ウソばっかり〜。おのれ、偉い人め。

でも、基本は分かりました。ここからが本題です。最近目立つ「部下の残業による書類送検」ですが、摘発を残業削減につなげるなら、書類送検された“残業強要上司”がそれをきっかけに、自らの行いを多少なりとも反省することが欠かせない、と思うんです。部下の残業で書類送検されると人生はどうなるのでしょう。まずは当局から連絡が来るんですよね?

多田:ケースバイケースですが、検察から「あなたが送致されてきました」と電話が来ることもあれば、労基署から「あなたを送致しました」という連絡が来ることもあります。

それは、家の電話それとも携帯、あるいは会社ですか。

多田:それもケースバイケースです。一般的には労基署が捜索に入った段階で、関係者の事情聴取をしますから、その時点で被疑者の連絡先は聞いています。

衝撃の結論 書類送検された人の末路は…

それからどうなりますか。

多田:検察から呼び出しがきます。本来はこの時点で被疑者に出頭義務はないんですが、意味もなく拒むと「証拠隠滅の恐れあり」などと判断されかねませんから普通の人は従います。そして事情聴取されます。

検察から連絡が来て、呼び出し食らって、事情聴取。ここまででも相当なプレッシャーです。そこから先はどうなります? 「会社の利益と自分の出世欲のため、部下を過剰労働で追い詰めてきたが、こんな目に合うなら割に合わないな」――。“残業強要上司”にそんな気付きを与える末路が待ち受けているのでしょうか。

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多田:検察の事情聴取で終わりです。

え…。そこから先は何も起きない?

多田:労働基準法違反では、よほどの特殊事情がない限り、書類送検されても個人は不起訴処分になります。

不起訴ということはお咎めなし?

多田:使用者が従業員に強制した残業の結果、重大な事故や死亡者が発生した場合は、起訴の可能性もありますが、普通は不起訴です。前科も付かず、戸籍に傷が付くようなこともありません。とはいえ、芸能人などの場合は、最終的に不起訴になっても、「書類送検された」と報道された時点で、イメージダウンなどのダメージを負うケースが多いと思います。

でも一般人の場合は、そこまでの影響はありませんよね。子供の受験に影響もなければ、クレジットカードが作れなくなることも、一部の国に入国できなくなることも、住宅ローンが組めなくなることも、奥さんがママ友の間で窮地に立たされることも、ない?

多田:ありません。不起訴ですから。法人には罰金刑が課されますし、大企業の場合、報道で法人としての信用力が低下したり、ブラック企業との噂が立つかもしれません。でも、書類送検された本人に、重大なダメージはないです。

昨日と同じ今日、今日と同じ明日が続いていく、と。でも、さすがに出世の道は閉ざされますよね。

多田:どうでしょうか。飲酒運転とか刑事犯罪では出世は難しくなると思います。でも残業事案は別ではないでしょうか。

それって、例えば「従業員に過剰労働させて利益を搾り出すべきだ」という価値観が蔓延している会社の場合、残業で摘発されることは「勲章」になるし、書類送検された人間が「英雄」になる可能性もあるってことですか。

多田:あるかもしれません。

その場合、反社会勢力のジギリ(自切り、組織のために体を張ったり、服役したりすること)のように、「お勤めご苦労様」とばかりに、かえって優遇されるなどということも起こり得る?

多田:どうでしょうか。ただ、あくまで不起訴ですから、「確かに書類送検されたが不起訴だった。これは検察が無実と証明したのと同じである」という理屈で、そうした人物を重用する企業があったとしても、不思議ではないとは思います。付け加えると「不起訴だから無実」という考え方は本当は正しくありません。同じ不起訴でも、「無実」と証明されて不起訴になる場合もあれば、「グレーだけど起訴には及ばない」と判断されて不起訴になる場合もありますから。

部下の残業で書類送検されても大したことない!?

言い方は乱暴ですが、何だか部下の残業で書類送検されても大したことない気がするんですが。

多田:そういう言い方もできるかもしれません。不起訴になれば書類送検された記録も残りません。正確に言えば検察に履歴は残りますが、一般人がそれを閲覧することはできません。

そうなんですか。だとすれば、残業の強要で体を壊して亡くなられた方は浮かばれないと思います。

多田:でも、これからは変わってくるかもしれません。

本当ですか?!

多田:確かに、これまでは労働基準法違反で書類送検されても個人は不起訴になるのが普通でした。でも、こんなに世の中で「違法な残業は許さない」という機運が盛り上がってくると、悪質な事案は起訴される事例が出てきてもおかしくありません。起訴されて有罪になれば、労働基準法の罰則には懲役刑まで明記されています。

前例を踏襲せず、法律を厳密に運用すると、“不届き者”に、もう少しだけ反省してもらえるようにもなる、と。

多田:そうです。ただ、違法な残業を根絶するには、今は労基署のマンパワーが足りません。少ないマンパワーで社会全体の残業を抑制するには、ある程度、「狙い撃ち」が必要になります。その意味で、これからは、社会的影響力の大きい企業と使用者を、“見せしめ”的に書類送検する事例が増える可能性があります。厚生労働省もこれだけ残業問題がクローズアップされてきている以上、今まで以上に力を入れてくると思います。そうなれば少なくとも現在の状況は変わってくる可能性があります。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/031500242/stamp_04_500.png

「末路本」の詳細が気になる人は…
http://business.nikkeibp.co.jp/special/matsuro/


このコラムについて

キーパーソンに聞く
日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/031500242


 


8年前から「金曜は4時終業」のアステラス製薬

ニュースを斬る

2017年3月17日(金)
上木 貴博
今やあらゆる企業で経営上の最重要課題となった「働き方改革」についての新連載。残業削減にテレワーク、ダイバーシティー……。いち早く取り組んできた企業の「実践」に学ぶ。第1回は「金曜日午後4時終業」を8年続けてきたアステラス製薬。「早帰り」を定着させるための秘訣とは。

品質保証部の日室桂史主任は「(金曜早帰りは当然なので)最近はあまり妻に感謝もされない」と話す(写真=的野 弘路)

海外拠点にも制度を説明し、会議の時間などを調整している(写真=的野 弘路)
 2月24日金曜日。東京都中央区にあるアステラス製薬の本社では、午後4時を過ぎると社員が席を立ち始めた。

 同社は2009年、毎週金曜は午後4時終業とする「ファミリーフライデー制度(以下FF)」を導入。対象は国内で働く社員の約半数。

 この日は、経済産業省らの提唱で始まった、月末の金曜日に早帰りを促す「プレミアムフライデー」の初回。大手企業を中心に導入する機運が高まっているが、アステラスでは同様の取り組みを8年前から続けてきた。現在は午後5時までに約半数、午後6時までには約7割の対象社員がオフィスを後にする。

単身赴任でも家族と夕食

 品質保証部の日室桂史主任は3年前に転職してきた。当時は家族を福島県に残し、平日は東京で単身赴任。金曜午後4時に東京・日本橋の本社を出ると、7時前にはいわき市の自宅で家族と食卓を囲むことができた。

 現在は家族と同居しているものの、子供は2歳から9歳まで4人いるため、早帰りは妻の負担を軽くする。「夕食前に散歩しながら、子供から学校の話を聞くのが楽しみ」と日室主任は話す。

 アステラスは藤沢薬品工業と山之内製薬による合併翌年の06年頃からワークライフバランスに配慮した制度を拡充してきた。FFはその一環だ。08年度から「金曜は定時前に帰ろう」と呼び掛け、翌年にFFを正式導入。月曜から木曜の勤務時間は午前8時45分から午後5時45分だが、金曜は終業時間を午後4時に1時間45分繰り上げた。

 もちろん日室主任のように制度の趣旨通り家族と過ごす必要はない。独身社員や育児に手がかからなくなったベテランは、趣味や自己研鑽、旅行などに充てられる。日室主任の同僚である西岡ゆかり課長は、午後5時からバレエを習っている。語学習得や資格取得のために学校に通ったり、同僚と食事に出かけたりするなど過ごし方は多様だ。

 月に1度のノー残業デーすら形骸化している企業が少なくない中、なぜアステラスでは「毎週金曜の早帰り」を7割の社員が実践できているのか。

 まず経営陣の関与。FFは産業医から人事部長への助言が契機の一つだった。「十分な睡眠、週に1度の運動、平日の家族との食事がメンタルヘルス(心の健康)には大切」というものだ。当時の人事部長で、FFの旗振り役だったのが御代川善朗副社長。今でも労働時間管理に関する社内研修で登壇する。


http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/031000616/10-04.png

金曜午後4時過ぎ、混み合うオフィス出口。最近は半数が午後5時までに退社(写真=的野 弘路)
 次に管理職への教育がある。新任マネジャーには部下の健康管理などに関する2日間の研修を義務付けている。一般に残業削減で抵抗勢力となりがちなのが、昼夜を問わず働き、今の地位を築いた上司だ。アステラスでは裁量労働制を取り入れているので、残業時間を減らしても収入は原則減らない。それでも、昨今のワークライフバランス重視の風潮に自分の成功体験を否定されたような気持ちを抱く人もいる。

 前述の日室主任は以前、金曜の午後4時以降も海外とのテレビ会議のため会社に残ることがあった。そんな時、上司が海外拠点のマネジャーにFF制度について説明し、会議時間の調整に動いてくれたという。

 取材当日、品質保証部の部長が席を立ったのは午後4時18分。上司が率先して動かなければ部署全体の早帰りは進まない。

 上司の意識改革は全社的な業務改善において必須だが、出発点にすぎない。「常に手を抜かずメッセージを発信してきた」と安本光朗・人事部部長(制度企画グループ統括)は語る。

 その一つが12年4月に導入した「健康管理時間」だ。オフィスの入退出記録から出退勤時間を、旅費精算システムで出張時の勤務時間を把握するなど、異なるデータを集約して全社員の「実際に働いている時間」を算出。労働基準法より厳しい基準で残業時間を「見える化」し、社員や部門長に注意を促して削減につなげている。

メールの結論は冒頭2行

 さらに、16年からは職場単位のワークショップで働き方改革を進めてきた。品質保証部でも「メールの結論は最初の2行にまとめる。挨拶は抜きにして本題に入る」などの決まり事を設けている。ワークショップでは部長から若手までが平等な立場で意見を交わす。

 ブームとなりつつある「金曜早帰り」。アステラスは数年がかりで組織に定着させ、併せて結婚時同居支援*や在宅勤務などの多様な働き方を認める制度を取り入れてきた。17年3月期は3期連続の増益を見込むなど業績も堅調。もともと低かった離職率は10年の2.2%から16年には1.1%に改善した。早帰りを掛け声倒れに終わらせないためには、全方位での取り組みが欠かせない。

*=一定の条件を満たした場合、配偶者と同居できる地域への異動を認める制度
(上木 貴博)

残業減の即効薬は1つにあらず
 どうすれば残業を減らせるか──。

 日本労働組合総連合会(連合)が実施した現場社員1775人に対する調査では、「適正な人員配置」が1位に挙がった。

 残業が多い職場で社員を増やせば各自の負荷は減るはずだ。だが、その業務に特定の技術や資格、経験が必要な場合、担当者は簡単に増やせない。人手不足が顕著な昨今、人員補充はそもそも難しい。2位以下が団子状態なのは残業を減らす正解は1つでないことの証左だ。

 アステラスでも労働時間の実態把握に力を入れている。本人が申請した労働時間と実態との乖離であるサービス残業は業界を問わず問題視されてきた。経営目標として取り組むなら、業務改善サイクルの起点は正確な数値の把握のはずだ。

 総務省が2月中旬に発表した労働力調査では、16年の転職者数が前年比8万人増の306万人となり、09年の320万人以来の大台回復となった。今後、優秀な人材の囲い込み策として「金曜早帰り」が広まる可能性がある。

 製薬業界ではアストラゼネカ日本法人も昨年3月から毎週金曜午後4時の退社を奨励する「ハッピーライフフライデー」を導入。それまで21時間だった月間平均残業時間を19.3時間に減らした。長時間残業にメスを入れない企業は、人材の“草刈り場”となるリスクを負うことになる。

全社的なカイゼン活動が欠かせない
●「どうすれば残業を減らせると思うか」への回答

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/031000616/10-03.png

注:3つまで複数回答が可能
出所:日本労働組合総連合会

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ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/031000616/


 


一生懸命なら誰でもできる

ベンチャー最前線

業界の異端児、喜代村(すしざんまい)社長、木村清(後編)
2017年3月17日(金)
日経トップリーダー
急成長企業「すしざんまい」を率いる名物経営者、木村清。かつて弁当店やカラオケ店、レンタルビデオ店まで手掛けていたことはあまり知られていない。バブル崩壊後、手元に残ったのは200万円。45歳の再出発だった(文中敬称略、前編はこちら)。
 急成長企業「すしざんまい」を率いる名物経営者、木村清は航空自衛隊出身という変わり種。入隊3年目で大学入学資格検定に合格し、空曹候補生の資格も得た。が、交通事故で目を患い、5年9カ月で自衛隊を退官する。

 大学の通信課程で法学を学びながら飛び込んだのが、大洋漁業(現マルハニチロ)の子会社だった。これが水産業に関わるきっかけになる。木村が21歳のときのことだ。

弁当店やカラオケ店、レンタルビデオ店まで展開

 ここでビジネスの面白さに目覚める。当時の水産会社では、8本あるタコの足が傷つくなどして7本以下になると商品価値がなくなり、捨てられていた。「でも、スライスして一切れずつ使う分には問題がないはず」。そう考えた木村は身を適当な大きさに切って、安い値段で寿司店に売り込んだらこれが大当たり。捨てられていたモンゴウイカの耳をすり身に加工し、ちくわの材料として販売したらお客に喜ばれたこともある。

 自分の独創的なアイデアに自信を持った木村は1979年、27歳で独立し、木村商店(現在の喜代村)を創業する。水産物の売買だけでは飽き足らず、弁当店、カラオケ店、レンタルビデオ店など様々な事業を手掛け、そのすべてを成功させたという。


元首相、田中角栄を彷彿とさせる迫力のあるダミ声で木村は豪快に笑う(写真:菊池一郎、以下同)
 だが好事魔多し。バブルが崩壊する。木村もこのあおりを受けた。

 メーンバンクから融資の一括返済を求められ、木村は泣く泣く全部の事業を整理し、返済に充てた。

 それでも、木村はくじけなかった。手元に残った200万円で97年、築地に海鮮丼の店「喜よ(きよ)寿司」を開く。45歳の再出発だった。

 持ち前の発想力とガッツで、再び事業を軌道に乗せた木村に、築地場外で店を開くチャンスが訪れる。現在の本店の土地を持つ地主から声をかけられたのだ。

 当時はデフレが進行し、寿司といえば回転寿司。築地はお客を奪われ、かつての活気を失っていた。業務筋の買い出しが終わる昼前には閑散としてしまう。そこで木村が考えたのが、話題性十分の現在のスタイルだった。

 それから15年、はた目からは急成長に思えるが、木村本人としてはスローペースで店を増やしてきたという。旧知の間柄である星文雄(三井住友銀行顧問)は木村をこう評する。

「豪放磊落(ごうほうらいらく)な部分もあるが、本当は実に緻密。むやみに事業を拡大しようとは考えていない。特に出店にはとても慎重だ。ただ、やるとなったら一気呵成(かせい)に進む。自衛隊仕込みなのか、その機動力はすごい」

職人を自前で育成


寿司職人を育成する「喜代村塾」。運営コストは年間で3億円に及ぶ
 店数を増やすには、職人も必要だ。木村は優秀な人材を確保するため、寿司職人を2年間かけて育成する「喜代村塾」を2006年に開講。3カ月間、座学や実習で技術を身に付け、残り1年9カ月は店に入って実地で経験を積ませる。年間約50人の喜代村塾出身者が社員としてすしざんまいに加わるという。人手不足の今、この塾の存在価値は大きい。

「生徒1人につき、天然物をまるまる1匹与えて、さばかせる。相当な材料費だ。大抵の調理学校は数人のグループで1匹なのに」。有名調理師学校で指導した経験がある講師は、喜代村塾の教育の濃さを明かす。

「入塾2日目から包丁を握り、魚に触らせてもらった。すしざんまいの中でもとりわけ忙しい本店での実地研修はいい勉強になった」。喜代村塾出身で入社8年目の35歳、現在は新橋SL広場前店(東京・港)で副店長を務める林康太郎は、自身の修業時代をこう振り返る。

 ただ、木村が社員に最も求めるのは技術よりも一生懸命さだ。上手に接客したり、おいしい寿司を握ったりするには、経験も必要だ。「でも一生懸命に走り回るのは、今日入った新人も、ベテラン社員も同じようにできる。一生懸命にお客様に接して、頭からつま先まで動かせばいい」。

ずっと向こうにいるお客が振り向いた

 すしざんまい本店が開店したとき、木村は深夜、お客がいなくても「いらっしゃいませ」と呼び込みをしていたという。すると、通りのずっと向こうにいるお客が1人振り向いて店に来てくれた。そうやって1人また1人とお客が集まり、気が付くと行列ができていた。

 自分自身、職人ではない。それでも、一生懸命に商売に身を投じることで、寿司業界で生きてきたという自負がある。だから、一生懸命さが足りない社員を見ると、思わず声を荒げてしまう。取材中も、覇気が足りない社員を叱り飛ばす場面があった。


月2回開催される店長会。参加者は居住まいを正して木村の話に聞き入る
 喜代村では毎月2回、新入社員の人数に関係なく、入社式が開催される。木村は毎回必ず出席し、1時間ほど一生懸命に熱弁を振るう。木村の思いに共感し、新入社員の表情がみるみる変わっていく。

「自衛隊に入るために家を出るとき、亡くなった母に『後ろ指をさされるようなことはするな。天と地と己が見ている』と言われた。どんなときも手を抜いたら絶対に駄目。お客様にもっと喜んでもらえるように、これからも一生懸命、頑張っていきたい」

(この記事は日経BP社『日経トップリーダー』2016年7月号を再編集しました。
構成:荻島央江、編集:日経トップリーダー)

4月25日に「プラチナフォーラム2017 経営者懇談会」を開催
「日経トップリーダー」では木村清・喜代村(すしざんまい)社長のほか、オリックスの宮内義彦シニア・チェアマン、川淵三郎・日本サッカー協会最高顧問、津村佳宏・アデランス社長、鈴木貴子・エステー社長らを講師に招き「プラチナフォーラム2017 経営者懇談会」を開催します。日経トップリーダープラチナ会員の方は無料で参加いただけます。詳細はこちらをご覧ください。

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ベンチャー最前線
攻めるオーナー経営者のための情報誌『日経トップリーダー』編集部から、創業・起業や事業拡大など、ベンチャー企業の経営に役立つトピックスをお届けします。拡大する政府の起業支援、勃興するニュービジネス、大企業によるベンチャーへの投資や提携、ビジネスの芽を探す異業種交流など、日々刻々と変化するビジネス環境の中から、見逃せない情報を選りすぐっていきます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/269655/031400023/
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[政治・選挙・NHK222] 森友問題に見る、自浄できない自民党の限界 軍民両用技術「デュアルユース」研究は悪か THAAD、止まらぬ中国のロッテ叩き
森友問題に見る、自浄できない自民党の限界

田原総一朗の政財界「ここだけの話」

2017年3月17日(金)
田原 総一朗

(写真:つのだよしお/アフロ)
 今、学校法人「森友学園」をめぐり、小学校の設置認可、小学校新設のための国有地の取り引きなど、数多くの問題が話題を呼んでいる。

 中でも大きな問題は、森友学園が小学校を開設するにあたって、財務局が鑑定価格9億5600万円の国有地から地下のごみ撤去費として8億1900万円などが差し引かれた約1億3400万円で購入した。民進党によると、国は汚染土除去費用として1億3176万円を支払ったと指摘している。これを考えると、学園の負担はたった200万円ということになる。

 どうしてこんなことになったのか。これにはやはり、政治的関与があったのではないかと思わざるを得ない。国有地の問題も、なぜ売却費がこんなに下がってしまったのか。

 この点に関しては、近畿財務局と学園側との交渉の記録や報告書がすでに破棄されていることが分かった。こんな大事な記録を破棄することなどあるのだろうか。第一、最終報告書は破棄したとしても、それを作成するための計算書は残っているはずだ。それを「破棄した」として提出しないというのは、「表に出すと非常に都合の悪いこと」だと疑われてもおかしくないだろう。

 まだ疑惑がある。森友学園が大阪府豊中市で建設中の小学校について、府私立学校審議会(私学審)に報告した校舎の建築費と、国の補助金を申請する際の建築費も食い違っている。

 国有地の問題だけでなく、国民の疑惑をかき立てるような事柄が次から次へと起きている。その1つが、稲田朋美防衛大臣の言動だ。

 稲田氏は、国会で野党から「かつて弁護士として森友学園のための弁護活動をしたのではないか」と問われて、「同法人理事長の籠池夫妻から法律相談を受けたことはない。裁判を行ったこともない」と答えていた。提示された署名入りの書面についても「初めて見た。同じく弁護士である夫との共同の事務所であるから、連名で資料を出しただけだ」と説明した 。

 ところが翌日、稲田氏はこれまでの発言を覆した。「記憶になかったが、やったことがある。弁護士の夫の代わりに出廷したのではないかと推測している」と訂正して謝罪した。

 こんなおかしなことがあるだろうか。記憶になかったというだけでは済まされない問題だ。国会答弁があまりにも軽々しすぎる。野党は当然、稲田氏の辞任を強く要求している。

 さらには、稲田氏は籠池理事長夫妻から政治献金を受け取ったことまで露呈してしまった。常識的に考えれば、当然、稲田防衛相は辞任すべきだと思う。

 共同通信社が11、12日に行った世論調査によると、森友学園への国有地売却問題について、86.5%が「適切だと思わない」と回答したという。また、籠池氏を国会招致して説明を求めることに「賛成」と回答した割合も74.6%に上った。

 さらには、政府が十分に説明していると思うとの回答は5.2%しかなく、「思わない」は87.6%に達したという。学園との関係をめぐる安倍晋三首相のこれまでの説明を「納得できない」と答えたのは58.3% という結果になった。

 つまり、国民のほとんどが森友問題には疑惑を抱いているということだ。

籠池理事長はなぜ会見をドタキャンしたのか

 森友学園の籠池泰典理事長は3月9日、大阪府私学課による現地視察に立ち会った際、集まったマスコミに対して「悪意ある批判に対しては、園として今後も断固として戦う」と何度も絶叫した。

 ところが翌日の夕方に開かれた記者会見で、籠池氏は一転して「苦渋の決断だが、認可の申請を取り下げる。理事長を退任する」と言った。

 これはどう考えればいいのか。前日まで「断固戦う」と言っていた人物が、なぜ翌日には申請を取り下げて、断腸の思いで理事長を降りると言ったのか。

 これは何らかの政治的圧力がかかったのだと思わざるを得ない。15日も、籠池理事長は日本外国特派員協会の記者会見を行う予定だったが、直前に延期されることとなった。これも背景に何らかの圧力があったのではないかと感じる。

自民党は当初、籠池理事長の参考人招致を拒否

 これほど謎の多い森友学園問題について、野党は籠池理事長を国会への参考人招致を強く要請していた。ところが、安倍首相をはじめ自民党は当初、これを拒否した。

 安倍首相は、「自分も妻も森友学園の問題には全く関与していない」と言っている。だが、本当にそうであるならば、籠池理事長の国会招致を最初から認めるべきだった。招致しないとする姿を見た国民の多くは「招致すると都合が悪いことが隠されているのではないか」と思っただろう。

 そんな中、16日に突然、籠池氏の国会招致で与野党が合意した。しかも、証人喚問で一致したという。なぜ自民党の方針が変わったのか。籠池氏による「爆弾発言」が飛び出したからだ。16日、大阪で参院予算委員会のメンバーによる現地調査が行われた。そこで実施された籠池氏への聞き取り調査で、彼は安部首相サイドから、建設費の寄付金として「100万円をもらった」と述べたという。菅義偉官房長官は即座に安倍首相による寄付を否定したが、もしもこれが事実であれば大問題だ。

 安倍首相は一切の関与を否定していた。もし関係があったとすれば辞任するとまで国会で答弁している。それだけに、今回の「名指し」での関係性をしっかりと否定するために、急遽証人喚問での合意がなされたようだ。

安倍首相に意見できない自民党

 結果的に、証人喚問が実現する見通しだが、自民党の対応は誉められたものではなかったように思う。どうしてここまで後手に回ったのか。それは、自民党内には安倍首相にそのような指摘をする者がいないからだ。これが一番の問題だ。

 かつて自民党内には主流派、反主流派、非主流派があった。僕が若い頃は、自民党の主流派と反主流派との激しい論争があった。反主流派・非主流派が存在していたからこそ、自民党には多様性がある。自由な意見が飛び交っていた。主流派の考えに異を唱え、対案を出して政策のバランスが保たれるというわけだ。実は、自民党の総理総裁は、党内での派閥争いに敗れて代わっていたのだ。当時は野党の追及などより、自民党内部での戦いの方が激しかった。

 ところが1996年の衆議院議員選挙から、中選挙区制に代わり小選挙区制が導入された。小選挙区制とは、1つの選挙区から1人だけが選ばれる制度だ。小選挙区制になると、自民党から立候補するためには、執行部からの推薦がないと公認されない。執行部が承認するということは、反主流派・非主流派であってはならない。こうして、主流派のみが存在する自民党、自由な意見が言えない自民党になってしまったのだった。

 僕は、ある自民党の幹部たちに「元の中選挙区制に戻すべきだ」と提言したことがある。彼らは「田原さんの言う通りだが、戻すのは反対だ」と答えた。

 「なぜか」と再度問うと、「中選挙区制で選挙をすると、どうしても1回の選挙で1億数千万円の費用がかかる。すると、表に出せない金を集めざるを得ない」と言うのだ。中選挙区だと、選挙区内で自民党同士の戦いが生まれる。そうすると、いろいろとお金を使わなければならないらしい。だが、今は多くの議員がそのような選挙資金を持っていない。小選挙区制になったお陰で、そこまでの費用はかからなくなったという。

森友問題は、安倍政権の根幹を揺るがす可能性がある

 今回の問題でも、自民党内から「籠池理事長を国会に招致すべきだ」という意見がもっと早い段階で出ていいはずだ。だが、それはなかった。

 自らの組織の中で、ダメなものはダメと言える「自浄作用」が働く組織でないと、与党として健全に機能しなくなるだろう。このまま国民の疑惑がどんどん深まれば、「自民党ではなく、民進党に票を入れよう」と考える人も増えるかかもしれない。

 今は残念なことに、党内で安倍首相に反対意見を言える人物がいない。中堅の議員たちに頑張って欲しいが、難しいようだ。

 支持率も高く、自民党総裁任期の延長を決めて万全の状態で長期政権を狙っていた安倍首相。だが、今回の問題を軽視しては大やけどを負うことになる。

 国民の声を無視し続ければ、その代償を、安倍政権だけでなく、自民党そのものが支払うことになりかねない。


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田原総一朗の政財界「ここだけの話」
ジャーナリストの田原総一朗が、首相、政府高官、官僚、財界トップから取材した政財界の情報、裏話をお届けする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/031600012


 


軍民両用技術「デュアルユース」研究は悪か

「軍民両用技術」の曲がり角

防衛装備庁からの研究費巡り学会で激論
2017年3月17日(金)
寺井 伸太郎
 防衛用にも民生用にも使える軍民両用技術「デュアルユース」。ロボットやAI(人工知能)、通信などの各分野で防衛用と民生用の境目がますます薄れつつある中、自衛隊向け装備の調達などを担う防衛装備庁はデュアルユース技術を重視。研究委託費の大幅拡充をテコに、有望な研究を抱える大学や民間企業への接近を図る。

 一方、第二次世界大戦への反省から、学会では「軍事研究」への根強い警戒感がくすぶる。研究者の全国団体である日本学術会議は4月にも、防衛装備庁への対応などについての基本方針を公表する。

MRJの尾翼の複合材は戦闘機向けの技術から生まれた(写真:田中正秋/アフロ)
 「今の時代、技術に防衛用も民生用もない。厳密に区別するのは難しい。資金の出所がどの役所でも、研究に役立つのであれば科学の進歩のために活用するのは当たり前だ」。ある有力国立大学の副学長はこう指摘する。

 防衛装備品に関わる研究は従来、防衛省の研究機関や三菱重工業など伝統的な防衛企業を中心に開発が進んできた。対象は戦車や艦艇、航空機などだ。

 だが、ロボットやAI、通信、自動運転、高機能な複合材……。民生分野で激しい競争が繰り広げられる最新技術の数々は、そのまま、防衛装備の高度化にとっても重要なカギとなる。この多方面に広がる技術に、防衛省や防衛産業がすべて自前で対応することは難しい。世界各国の防衛当局もデュアルユース技術への関心を高めつつある。日本周辺の安全保障情勢が緊迫の度を強める中、無関心ではいられない。

防衛装備庁、2015年度から研究費を提供

 こうして防衛装備庁が2015年度に立ち上げたのが「安全保障技術研究推進制度」だ。防衛装備庁が興味を持つテーマを対象に、一般の大学や研究機関、企業などに研究資金を提供する仕組み。これならば使えそうなデュアルユース技術をゼロから開発するよりも効率的に手に入れることができる可能性がある。

「軍事」と「民生」の垣根が薄らいでいる

●防衛装備庁が求める研究テーマの例

光学センサーの高感度化
レーザーシステム用光源の高性能化
再生エネルギー小型発電
高出力電池
音響・可視光以外の水中通信
サイバー攻撃自動対処
遠隔作業を円滑化する触覚・力覚
昆虫、小鳥サイズの小型飛行体
水中移動を高速化する流体抵抗低減
3D造形による軽量で高耐熱性を持つ材料

 2016年度までの2年間で153件の応募があり、うち19件の研究を採択。文部科学省が予算を抑制したため研究資金の確保に苦しむ大学の受け皿となっている面もあり、採択された研究が各地で進んでいる。

 防衛装備庁・技術戦略部の野間俊人部長は「非常に手応えがある。資金を受け取る研究者と相互に利点のある形で進めていきたい」と評価する。2017年度からは2016年度の20倍近い110億円に予算を増額する。「デュアルユース(技術)が日本の新たなイノベーションを促進するきっかけとなる」(三菱総合研究所の河野伸一氏)との見方もある。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/031500046/031600002/g1.png


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(注)2015年度と16年度の合計。防衛装備庁資料から本誌作成

学術会議、50年ぶり「声明」で慎重姿勢表明へ

 防衛装備庁の政策を受けて、科学者の代表機関とされる日本学術会議は2016年6月から「安全保障と学術に関する検討委員会」を設け、デュアルユース技術の研究に関する議論を始めた。第二次世界大戦への反省を踏まえ、同会議は1950年と1967年の2度、「戦争を目的とする科学の研究には今後絶対に従わない」とする声明を出している。しかし防衛用と民生用の垣根が薄れる中で、より時代に合った考えを示すべきとの意見が浮上したためだ。

 だが、防衛装備庁が予算の大幅増額という積極姿勢を打ち出したこともあり、却って慎重な対応を求める声が強まった。3月7日に学術会議の委員会が公表した「声明案」は、安全保障関連の技術研究に従事することは学問の自由への国家介入を招きかねないといった危機感を強くにじませ、関与を慎むよう求める内容となった。

 防衛装備庁は技術部門トップの技監名で、学術会議に「受託者による研究成果の公表を制限することはない」とする文書を送付し、懸念払しょくに努めたものの、効果は上がっていない。

防衛省との協力に否定的な方向

●日本学術会議「安全保障と学術に関する検討委員会」がまとめた声明案の要旨

日本学術会議が1950年(戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない)、1967年(軍事目的のための科学研究を行わない)に出した声明を継承
「軍事的安全保障研究」と学術の健全な発展は緊張関係にある。政府による研究への介入を懸念
防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」は研究の進捗管理などについて、政府による介入が著しく問題が多い
大学などは軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、適切性を技術的・倫理的に審査する制度を設けるべき
科学者の自主性・自律性が尊重される民生分野の研究資金充実を求める
 学術会議は4月13〜14日に開催する総会で、この声明案に対する賛否を問う見通し。学術会議による意見表明にはランクがあり、「声明」が最も権威があるとされる。大学などに対して強制力を持つ性質のものではないが、成否いずれにせよ、大学や個々の研究者の行動に一定の影響を与えるのは間違いない。

 すでに反対論を具体化する動きも出始めた。法政大学は1月末、同制度への応募を当面認めないとする方針を発表。関西大学なども同様の考えだ。

大学の関与なくなれば制度が瓦解する可能性

 仮に、現行の声明案が総会の承認を得て採択された場合、安全保障技術研究推進制度への応募を容認する大学は、反対派を説得する説明責任を従来以上に課せられる可能性がある。結果として、大学からの協力が得られにくくなり、大学の役割が大きい同制度が実質的に骨抜きとなる展開もありうる。


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「軍民両用技術」の曲がり角
 防衛用にも民生用にも使える軍民両用技術「デュアルユース」。ロボットやAI(人工知能)などの最先端分野を中心に、軍民の境目は薄まりつつある。防衛装備庁は2017年度、デュアルユースの活用に向け、有望な研究を手掛ける大学や企業などに提供する資金を大幅に拡充。だが「軍事」への警戒感を持つ研究者らが反発し、激しい議論が起こっている。有識者へのインタビューを交えつつ、現状をリポートする。

 

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/031500046/031600002

 
THAAD韓国配備開始、止まらぬ中国のロッテ叩き

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

中国内の店舗閉鎖、大規模事業中断、ねつ造文書の拡散も
2017年3月17日(金)
北村 豊

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/101059/031500092/p1.jpg

ロッテマート、次々と営業停止に(写真:Imaginechina/アフロ)
 3月6日、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(Terminal High Altitude Area Defense missile、 略称:THAAD)」が韓国の烏山基地に到着した。翌7日、米韓両軍は北朝鮮の弾道ミサイル攻撃に備えてTHAADの韓国配備を開始すると発表したが、当初予定していた年末までの配備を大幅に前倒しし、早ければ5〜6月にも運用を開始するものと思われる。

中国人に人気の「楽天集団」だが

 THAADが配備されるのは韓国南東部の慶尚北道星州郡にあるゴルフ場「ロッテスカイヒル星州カントリークラブ」(以下「星州ゴルフ場」)の敷地である。その名からも分かるように星州ゴルフ場は、韓国第5位の財閥「ロッテグループ」(以下「ロッテG」)が所有していたが、2月28日にロッテGが韓国国防部との間で星州ゴルフ場と京畿道南揚州市にある国有地とを交換する契約に締結したことによりTHAADの配備が本格化することになった。昨年11月16日、両者は星州ゴルフ場と国有地を交換することで合意し、国防部は1月にも正式に契約を締結する積りだったが、THAAD配備に対する中国の反発が強かったためにロッテGの手続きが遅れ、2月末にずれ込んだのだった。

 11月16日にロッテGが国防部と土地交換で合意し、星州ゴルフ場がTHAAD配備地に確定したと報じられると、中国はロッテGを標的とするバッシング(叩き)を開始した。

 ロッテGは中国では“楽天集団”(略称:楽天)と呼ばれ、楽天は多くの中国国民にとって非常に身近な存在なのである。2017年の“春節(旧正月)”休暇(1月27日〜2月2日)には615万人もの中国人観光客が韓国を訪れ、前年比7%増の史上最高を記録したが、彼らの多くが免税品を購入したのは“楽天免税店(ロッテ免税店)”であった。ある分析によれば、ロッテ免税店で中国人観光客が消費する金額は1日当たり6000万元(約9億9000万円)前後に上り、年間では219億元(約3614億円)という計算になる。

 そればかりではない、楽天は中国国内にデパートの“楽天百貨(ロッテデパート)”5店舗とスーパーマーケットの“楽天瑪特(ロッテマート)”113店舗を運営しており、多くの人々が楽天で生活用品を購入しているのである。また、楽天は食品や飲料の製造販売、ファーストフードチェーンの“楽天利(ロッテリア)”などの事業を通じて中国国民に親しまれている。

 韓国が中国と国交を樹立したのは1992年であった。その2年後の1994年に中国に進出を果たしたロッテGは、中国に累計10兆ウオン(約1兆円)の投資を行って事業を拡大してきた。今ではその市場は24の一級行政区(省・自治区・直轄市)に及び、中国における売上高は3.2兆ウオン(約3200億円)に達し、中国国内の従業員数は2万人に上っていると言われる。ロッテG、すなわち楽天が中国国内で展開する主要な事業の詳細は<表1>、<表2>および<表3>の通り。


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ロッテマート、次々と営業停止に

 12月に入るとこれら楽天の中国国内にある店舗や企業に対するバッシングが目に見える形で本格化する。中国政府は楽天の中国本社を含む全事業所に対する税務および消防検査を実施する方向に舵を切った。中央政府の意向をくんだ地方政府は楽天に対する監督を強化し、各地の“消防局”を動員してロッテマートの消防安全検査を実施し、不合格として店舗に対し営業停止を命じた。ロッテマートに対する消防安全検査は徐々にその件数を増し、12月中は数店舗だったものが、1月、2月と月を追うごとに増大した。

 韓国の通信社「聯合ニュース」が3月8日付で報じたところでは、THAADの韓国配備が報じられた3月7日までに営業停止を命じられたロッテマートは39店舗であったが、翌8日には55店舗に増大したという。営業停止を命じられた店舗では正門に「“臨時査封決定書(臨時封鎖決定書)”」が貼られ、扉やシャッターには「〇〇市消防大隊“封条(封印紙)”」と書かれた紙が交差する形で貼られ、店舗は法的に封鎖された。

 一方、3月3日の午前中にインターネットのコミュニティサイト“凱迪網絡”の投稿サイト“猫目看人”に、“藍心閣”というハンドルネームの人物が投稿した『楽天集団会長:中国人は“市儈(利に敏く)”、我々が値段を下げれば、彼らはすぐに買う』と題した文章が掲載された。同投稿サイトには多数の文章が掲載されており、同文章はほとんど読む人もなく放置されていたが、3日の夕方に“微博(マイクロブログ)”のブロガーで自称「作家」の“唐文立”が自身のブログに転載したことにより、次々と転載されて全国へ伝えられた。その全文は以下の通り。

作家 唐文立 03-03-19:29

 韓国紙「環球新聞眼」はロッテG会長の“辛東彬”<注1>をインタビューした。目下中国人が楽天をボイコットしていることについて、ロッテGはどうする積りかと記者が質問すると、辛東彬は笑みを浮かべながら、「心配は要らない。中国人は非常に利に敏く、“無骨気無血性(気骨もなければ気概もない)”、我々が値下げすれば、彼らはすぐに買う。従来の経験から言って、中国人のボイコットは一時的で、突風が吹くようなものだ」と述べた。

<注1> 辛東彬(シン・ドンビン、日本名:重光昭夫)
 ここまで言うと、辛東彬はカメラに向かって笑いかけ、「《Super Star K5》<注2>の中のパフォーマンスや気取り、激情のほとばしりなどは一時的な興奮に過ぎず、終わってみれば何もない。我々はひたすら値引きすればよく、そうすれば中国人はもうけものだと蜂のように群がってやって来る。数年前に日本の商品やフィリピンの果物のボイコットが行われたが、その結果、突風が吹き抜けた後は、日本商品もフィリピン果物も販売量が急増した。君は中国人を知らない。彼らは非常に功利的だから、我々は何も心配することはない。中国人がより重視するのは自分の利益であり、国家に対する責任感は希薄で、我々韓国人とは異なる。(転載)

<注2>《Super Star K5》は、韓国No.1の新人発掘オーディション番組
ねつ造文書も拡散

 唐立文が転載した文章を読んだ多くのネットユーザーは、辛東彬の中国人を馬鹿にした傲慢な言葉に憤り、「楽天許すまじ」と決意を新たにしたが、一部の冷静なネットユーザーは、韓国に「環球新聞眼」などという新聞は存在しないし、新聞記者のインタビューを受けた際に、ロッテGの会長ともあろう者がこのような不用意な発言をするはずがないなどとして、当該文章の信憑性に疑問を呈した。その後、中国メディアも当該文章は韓国に対する反感を煽るためにねつ造されたものと断定したし、韓国紙「Newsway」も「ロッテG会長はいかなるメディアのインタビューを受けていない」と報じたことで、事態は沈静化した。しかし、文章の内容がねつ造であろうとも、扇動により燃え上がった楽天に対する敵愾心は容易に消えることはない。

 3月4日付の“江蘇網(ネット)”は、3月3日の午後と夜に江蘇省“連雲港市”に6店舗あるロッテマートのうちの3店舗を取材した記事を掲載した。その記事によれば、平日で客は少ないと思っていたら、驚くことに、店内は買い物客で溢れ、レジは行列ができるほどに盛況だったという。楽天に対する反発が強まる中、ロッテマートにこれほどの買い物客が殺到しているのはなぜかと訝(いぶか)しく思っていたら、疑問が解けた。買い物客の9割以上はロッテマートの“購物卡(商品券)”を手にし、「商品券を全て使い果たしたら、ロッテマートには二度と来ない」と口々に言明しながら大量の商品を購入し、中には数万元(約50〜80万円)の買い物をした客もいたという。

「反楽天」のデモ隊も

 3月6日には河南省“鄭州市”の管轄下にある“新鄭市”のショッピングセンター“万佳時代広場(万佳タイムズスクエア)”に組織された「反楽天」を標榜するデモ隊が中国国旗を掲げて押しかけた。2階建ての万佳時代広場の屋上からは5本の垂れ幕が下げられ、1階の壁面には横断幕が掲げられた。そこには次のような標語が書かれていた。

(1)「“楽天”操你祖宗  “楽天”我日恁娘  老子不売了」
 (“楽天”FUCK YOU “楽天”FUCK YOU 俺たちは“楽天”の商品を売らない)
(2)「万佳人憤怒了  下架併銷毀楽天所有商品  楽天滾出中国去!」
 (万佳時代広場の従業員は憤っている。全ての楽天商品を棚から下ろして廃棄しろ。楽天は中国から出て行け!)

 万佳時代広場の前庭には店内から運び出された楽天製の食品や飲料が大量に積み重ねられていたが、工事用のホイールローダーがそれらを粉々に踏みつぶした。それを見ていたデモ隊や万佳時代広場の従業員、そしてそれを取り巻く野次馬たちはどっと歓声を上げたのだった。こうした楽天商品排斥の動きは今後全国で次々と展開される可能性が高い。

 3月8日には中国の動画サイトに「“抵制楽天(楽天ボイコット)”」と題するわずか10秒間の動画が掲載された。その動画には中国の某小学校の講堂に集められた小学生たちが映し出され、彼らが壇上に映し出された「おやつを拒絶して、楽天をボイコットしよう。我が中華を愛するのを我々から始めよう」という標語を大声で唱えると、教師が生徒たちに「私たちは楽天のおやつを買うのを止めねばならない。それを自分の行動で示そう」と呼びかけていた。某小学校がどこにあるのか不明だが、小学生に対して「楽天ボイコット」を強要して洗脳していることは明白で、文化大革命(1966〜1976年)時代の“紅小兵”<注3>を想起させる。こうした動きは中国全土の小・中学校に波及しているものと思われる。

<注3>7〜14歳の小・中学生で構成され、中国共産党の指導下で活動した組織。
 この動画を見たネットユーザーの1人は、「私の子供にこのような教育は不要だ。もしあんたがこのような馬鹿げた教育を自分の子供が受けるのを好きならば、誰も止めはしないけど」とネットの掲示板に書き込んだ。また、別のネットユーザーは、「久しく人を罵(ののし)ったことはないが、昨日この動画を見て我慢ならなかった。これも父親になったためだろうか、そこにあるのは絶望だけだ。あの教師は豚と同様だ」と書き込んだ。

2つの大規模プロジェクトも中断

 しかし、こうした声を上げるのは一部の冷静な人々だけで、大多数の中国国民はお上の意向に沿って楽天ボイコットを叫ぶと同時に、THAADを配備する韓国からの進出企業や韓国製品に対し十把一からげで排斥を行うのである。それは上述したハンドルネーム““藍心閣”が投稿した文章に書かれていたように、「数年前に日本の商品やフィリピンの果物のボイコットが行われた」のと同様に、国民全体を巻き込んだ反楽天、反韓国の動きへと発展して行くのだ。

 楽天が建設を進めていた2つの大規模プロジェクト、遼寧省“瀋陽市”の“瀋陽楽天世界”(投資額:3億ウオン=約3000億円、竣工予定:2018年)と四川省“成都市”の“成都楽天世界”(投資額:10億ドル、竣工予定:2019年)は、すでに工事の中断を余儀なくされた。中国政府“国家旅游局”は国内の旅行業者に3月15日以降は韓国行き団体旅行の取扱いを禁止するよう指示を出したと言われている。それが本当ならば、ロッテ免税店が莫大な損失を被ることは火を見るより明らかである。

 3月15日は“国際消費者権益日(世界消費者権利デー)”だが、当日夜に中国国営テレビ“中央電視台(中央テレビ)”は「消費者の友特別夜会」を放映し、各種商品の問題点を厳しく指摘し、それが当該商品の販売に大きな影響を与える。今年の同番組では楽天商品を含む韓国製品および韓国進出企業の製品がやり玉に上がる可能性は大きいが、原稿締切日の関係で本稿ではその結果について言及することができない。果たして楽天は中国で生き残れるのか。


このコラムについて

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」
日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/101059/031500092
http://www.asyura2.com/17/senkyo222/msg/482.html

[政治・選挙・NHK222] 「教育勅語」を愛する人々 韓国の禁輸が解けねば、今年もホヤが大量廃棄 「新生東芝」を信じるほかない銀行団 
「教育勅語」を愛する人々

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小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明


2017年3月17日(金)
小田嶋 隆

 3月14日、ということは、いまこの原稿を書いている現時点から数えて2日前に相当するのだが、その3月14日に開かれた会見の中で、文部科学大臣の松野博一氏が、不可思議な見解を漏らしている。

 松野大臣は、教育勅語について、憲法や教育基本法に反しないような配慮があれば「教材として用いることは問題としない」と表明したのだ(こちら)。

 なんとまあ不用意な発言ではあるまいか。

 念のために解説すればだが、教育勅語は、既に効力を失った教材だ。

 というよりも、教育勅語は、単に効力を失ったのではなくて、より積極的に、教育現場から「排除」され、「追放」された過去の亡霊だ。歴史上の悪夢と申し上げて良い。

 事実、この勅語に関しては、「憲法の理念に反する」として1948年に衆議院で「排除決議」が採択され、あわせて参議院でも「失効決議」が採択されている。

 してみると、このたびの松野大臣の発言は、一旦国会の場で、「憲法の理念に反する」として「排除」され「失効」した歴史的な教材を、文部科学大臣の名において「憲法や教育基本法の理念に反しないような配慮」を条件にしているとはいえ、「有効」であるとして再び召喚しようとした措置に見える。

 こういうことをポロッと言ってしまって、果たして文部科学行政の一貫性は保持できるものなのだろうか。

 たとえばの話、腐っていることが認定されて、食べてはいけないことになった食品について、「腐敗に気をつける配慮」があれば、「食材として用いることは問題としない」てなことを保健所の所長がドヤ顔で言ってのけるような世界で、果たして食卓の衛生は防衛できるものなのだろうか。私はそうは思わない。こういうことが起こったら、その世界に住む人間は、腐った食べ物を再び食べさせようとしている人々の意図と狙いについて、あらゆる方向から考え直す努力を怠ってはならない。でないと、早晩食中毒で死ぬことになる。

 どうして、一部の人々は腐ったリンゴに執着するのか。

 腐ったリンゴからでなければ摂取できない栄養素が存在するということなのか。それとも、リンゴを腐っていると認定した体制自体を転覆せんとする運動が、いまわれわれの周囲で起こりつつあるということなのか。

 
 真相はいずれにあるのだろうか。

 今回は、教育勅語について考えてみるつもりでいる。
 思うに、教育勅語は、昨今話題の森友学園騒動を解読するためのキーのひとつだ。

 疑惑の核心はカネの動きと職務権限にある。政治家の関与と官僚の忖度がどのような経路で発生し、誰と誰がどんな決断に影響力を行使し、誰が利益にあずかり、誰が便宜を供与し、どんな機関が背後で動いていたのか、ジャーナリストや運動家が究明せねばならないのは、そのあたりの行ったり来たりなのだろうし、国会や捜査機関を動かすべくメディアが焦点を当てるべきポイントもその界隈に散在しているのだと思う。

 が、一歩引いた場所から観察すれば、森友学園問題の背後には、常に「教育勅語への賛意」という不可思議な感情が底流している。というよりも、カネや利権に直接のかかわりを持たなかったより多くの人々も、森友学園がその中心的な理念として強調していた教育勅語の扱いに関しては不用意かつ積極的に関与していたわけで、とすれば、森友学園の問題をより深く理解するためには、教育勅語が現代に突きつけようとしている問題について問い直さなければならないはずなのだ。

 普通に考えて、自分が現場を見ていない問題はよくわからないし、よくわからない問題についてあれこれ憶測を語るのは、愚かな態度なんではなかろうかと、毎度のことながら、実はそこのところを恐れてもいる。

 文章を書くのにいちいち書き手の資格をでんでん、じゃなかった云々するみたいな硬直的なツッコミは、この際無視するのだとしても、この種の疑獄事件に関して、自分の足で取材しない人間が関与する余地をあまり多く持っていないことは、いかんともしがたい事実ではあるわけで、とすれば、私のような書き手は、事件そのものや事実関係についてではなく、事件に関与していた人間たちが共通して抱いている思い込みみたいなものに話の焦点を持っていかざるを得ない。で、それが今回の場合は、教育勅語だということになるわけだ。

 わたくしども日本人は、教育勅語について、それぞれに大量の硬軟取り混ぜた思い込みを抱いている。
 その陳腐でありながら多様な思い込みを解明しないと、この問題は先に進まない。

 さて、発言の内容自体もさることながら、私は、松野大臣が、あえてこの時期によりにもよって教育勅語についてコメントしたという事実に、なによりもまず驚かされている。あまりにも軽率だからだ。

 ヤブヘビというのか、火中の栗を拾いに行ったようにしか見えない。

 教育勅語が、ホットな話題になっている背景には、現在進行中のスキャンダルがある。

 後日読み直す読者のためにあえて具体的に説明すると、教育勅語に注目が集中しているのは、経営する幼稚園の園児に教育勅語を朗唱させていることで注目を集めた森友学園という学校法人に関連する一連の疑惑報道が、いままさに進行中だからだ。

 その延焼中のスキャンダルのさなかで、文部科学大臣という容易ならざる立場にある人間が、わざわざ教育勅語の意義についてコメントする狙いが那辺にあるのか、そのあたりの裏事情を考えると、私は、自分のアタマが混乱して堂々巡りをはじめるのを止めることができない。大臣はいったいなんでまたこんな問題にクビを突っ込んだのであろうか。彼は誰に対して何をアピールしたかったのだろう。

 つい1週間ほど前の3月8日には、稲田朋美防衛大臣が、参院予算委員会で社民党の福島みずほ議員の質問に答える中で

 「教育勅語の核である、例えば道徳、それから日本が道義国家を目指すべきであるという、その核について、私は変えておりません」
  「私は教育勅語の精神であるところの、日本が道義国家を目指すべきである、そして親孝行とか友達を大切にするとか、そういう核の部分ですね、そこは今も大切なものとして維持している」
 「教育勅語に流れている核の部分、そこは取り戻すべきだと考えている」

 という主旨の発言をしている。
 これまた驚愕すべき答弁だ。

 いったいアタマの中にどんな味噌が入っていれば、こんな言葉を考えつくことができるのだろうか。

 私の耳には、稲田大臣のこの応答は、ご自身のクビを絞める発言にしか聞こえない。

 というよりも、ただでさえ窮地に追い詰められつつある状況下で、問題の発端である教育勅語を擁護しにかかるみたいな発言をすれば、ますます苦しい立場に追い込まれることが自明であるにもかかわらず、それでも、稲田大臣が教育勅語への愛と信頼を表明した理由を解明することは、現状の私には不可能だ。自分のアタマの中にある味噌を入れ替えてからでないと、到底理解できない。

 そんなわけなので、ここで、一旦、自分の思い込みをリセットしてみることにする。
 でないと、この謎にはアクセスできないだろうからだ。

 私の思い込みというのは、すなわち教育勅語が邪悪な思想だという決めつけのことだ。
 その私の思い込みからすると、教育勅語のようなあからさまに邪悪な愚民教導ツールを積極評価するのは権力志向のファシストに決まっているのであって、そのファシストが公の場で教育勅語への賞賛と支持の気持ちを表明するのは、彼らが、そうすることで何らかの利益にあずかろうとしているからだ、という理屈になる。

 稲田防衛大臣や松野文部科学大臣が、この困難な時期にあえて教育勅語へのゆるぎない愛情と信頼を吐露したのは、彼らがそうすることで、政権の中枢を担う勢力への忠誠を明らかにしたからなのだと、そういうふうに邪推してかからないと、事態を飲み込むことができないということでもある。

 しかし、おそらく、真相はそんなに見え透いたお話ではない。
 もっと見え透いている。

 つまり、稲田防衛大臣は、野党側の質問にさらされて、うっかり自分の本心を表明しただけだということだ。

 それも、彼女は、どちらかといえば、誇らしいというのか晴れがましい気持ちで自分の道徳観を開陳していのだと思う。ご本人の自覚としては、断じて誰かに媚びるために過去の禁じられた徳目を称揚してみせたのではないのだろう。

 松野文科相にしてもおおむね同様だ。政権の中枢への目配りがなかったとは言えないものの、彼自身、教育勅語が道徳的に優れた文書である点は疑っていない。

 私が当初から感じている薄気味の悪さは、実にここのところにある。
 この物語に登場する人物は、誰もがテンから教育勅語を「良いもの」だと信じ切っているのだ。

 それだけではない。
 観察するところでは、現状の日本人の多数派は、どうやら、教育勅語を悪いものだとは思っていない。
 これは、私には受け容れにくい状況だが、事実なのだから仕方がない。

 多くの日本人は、教育勅語について、多少古くさいところはあっても、基本的には昔ながらの古き良き日本人のつつましやかな奥ゆかしさを体現した、素晴らしい遺産だぐらいに評価している。

 おばあちゃんの知恵袋が、いくつか時代にそぐわなくなってしまった迷信(風邪をひいたら喉にネギを巻いて寝るんだよ、みたいな)を含んではいても、総体としては輝かしい先人の知恵であるのと同じように、教育勅語も、天皇に関する部分だけを取り除けば、十分現代にも通用する好ましい徳目だと、そう思っている日本人は少なくない。というよりも、日本人の多数派がそう思っているからこそ、文部科学大臣や防衛大臣が、公然と支持を表明したのであって、赤旗がどう言おうが、朝日新聞があきれてみせようが、実に世の趨勢は既に、教育勅語復活に傾いているのである。

 われわれは、既に戦前の世界で暮らしているのだ。
 なんということだろう。

 松野文科相が教育勅語擁護発言をした3月14日の夜、私は、以下のようなツイートを連投した。

《教育勅語が若い世代を含む多くの日本人をいまだに魅了してやまないのは、並列された文言の背景に一貫している「個々の人間の個別の価値よりもひとまとまりの日本人という集団としての公の価値や伝統に根ざした心情の方がずっと大切だぞ」という思想が、根本的にヤンキーの美学だからだよ。》(こちら)

《より大きな集合の一員であることの陶酔に挺身するのがヤンキーの集団主義道徳で、その彼らを結びつけている文化が友情・努力・勝利の少年ジャンプ的なホモソーシャルである以上、教育勅語はど真ん中の思想ですよ。》(こちら)

 これらのツイートに寄せられた反響を眺めるにつけ、私の確信はいよいよ深まりつつある。

 森友学園が小学校建設のために購入した土地の譲渡の経緯やその地価の算定のいきさつに何があったのか、私は詳しい事情を知らない。
 ただ、私が興味をひかれている点は、そこではない。

 私は、森友学園が推進する教育勅語を中心とした戦前ライクな道徳教育に賛同し、その理念を実現する小学校の設立のためにひと肌脱ごうとした人たちが、彼らを通じて作り上げようとしていた世界を知りたいと思っている。

 彼らが必ずしももう一度戦争をしようとしているのだとは思わない。

 ただ、彼らが、占領軍によって全否定された(と彼らが考えている)戦前的な美しい日本を「取り戻そう」としていることはどうやら間違いのないところで、その「美しい日本」の価値を根本のところで支えているのが教育勅語であることも動かしがたいポイントではある。先に挙げた国会における排除も、それが行われたのが占領下であったことを、得々として指摘することだろう。

 その「教育勅語」のキモというのか、核心に当たる根本思想は、「個」よりも「集団」を重んじ、「私」よりも「公」に高い価値を置き、個々人の自由よりも社会の秩序維持に心を砕く社会の実現ということで、これは、実は、任侠でも暴走族でも体育会の野球部でもブラック企業でもお役所でも同じことなのだが、要するにわれらが日本の「強いチーム」の鉄則そのものだったりする。

 うちの国で組織が強いチームとして機能するためには、個よりも集団が優先されなければならず、自由を秩序が圧迫していなければならず、私心が公益によって滅殺されていなければならない。で、そういうチームの中で何より美しいとされるのは、自分以外の何かや誰かのために自分の命を捨てる人間の姿だってなことになっている。これは神風特攻の昔から、ワンピースの漫画に至るまで、まったく変わっていない美学で、さらにそのルーツをさぐれば、たぶん白虎隊や忠臣蔵の時代まで遡ることができる。

 戦前の日本の子供たちを皇軍の兵士に仕立て上げるにあたって大きな役割を果たし、そのことで一度は教育現場から追放された教育勅語が、いままた復活への道を歩みはじめている現今の状況は、私の思うに、大げさに言えば、戦後の平和教育ならびに戦後民主主義の敗北ないしは解体を意味している。

 実際、教育勅語の復活を主張している人々は、そのまま日本国憲法の経年劣化と無効化を言い募る人々でもある。

 で、われわれはまたしても、八紘一宇の理想に舞い戻るわけだ。

 自民党の憲法改正案をめぐる議論を読み返していると、あらゆる場面で「行き過ぎた個人主義」という言葉が、実に数多くの議員の口から、何度も何度も繰り返されていることに驚かされる。

 それほどに、彼らは、個人主義を憎んでいる。

 このことは 自民党の憲法草案の中で、日本国憲法の中の「個人」という言葉が、すべて「人」に置き換えられていることを見ても明らかなことだ。

 ちなみに、「公共の福祉」というフレーズは、一つ残らず「公益及び公の秩序」という文言に改められている。

 さらに私を憂鬱な気持ちにさせるのは、自民党の議員の間に広がっている個人主義嫌いが、決して彼らにだけ共有されている特殊な思い込みではなくて、現代の若い世代をも含めた平均的な日本人のごく当たり前な多数派の思想でもあるという点だ。

 われわれは、ひとつになることが大好きで、寄り添うことが大好きで、自分たちがひとかたまりの自分たちである状況に強い愛着を抱いている。

 戦前の常識では、教育勅語が体現する思想を貫徹するためには、中心に天皇を持ってこないと話のスジが通らなかったものなのだが、21世紀に教育勅語を召喚しようとしている人々は、あるいは、天皇抜きでも中央集権が可能だと考えているのかもしれない。

 まあ、真ん中が空洞でもドーナツは丸いわけだし、不可能ではないのだろうし、この様子だと、その彼らの理想が実現する時代は、そんなに遠い未来ではないのかもしれない。

 その世界の中で、ドーナツの一部になる事態を、私はできれば回避したいと願っている。
 一片のパン屑として生涯を閉じることができるのであれば、それで不満はない。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

「世界はひとつになれない そのままどこかにいこう」by 星野 源
そして生活は続くのです。そうあってほしい。

 当「ア・ピース・オブ・警句」出典の5冊目の単行本『超・反知性主義入門』。相も変わらず日本に漂う変な空気、閉塞感に辟易としている方に、「反知性主義」というバズワードの原典や、わが国での使われ方を(ニヤリとしながら)知りたい方に、新潮選書のヒット作『反知性主義』の、森本あんり先生との対談(新規追加2万字!)が読みたい方に、そして、オダジマさんの文章が好きな方に、縦書き化に伴う再編集をガリガリ行って、「本」らしい読み味に仕上げました。ぜひ、お手にとって、ご感想をお聞かせください。

このコラムについて

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明
「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たやすいこと」「取るに足らない出来事」「チョロい仕事」ぐらいを意味している(らしい)。当欄は、世間に転がっている言葉を拾い上げて、かぶりつく試みだ。ケーキを食べるみたいに無思慮に、だ。で、咀嚼嚥下消化排泄のうえ栄養になれば上出来、食中毒で倒れるのも、まあ人生の勉強、と、基本的には前のめりの姿勢で臨む所存です。よろしくお願いします。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/031600086/

 


韓国の禁輸が解けねば、今年もホヤが大量廃棄に

証言

阿部 誠氏[宮城県漁業協同組合理事]
2017年3月17日(金)
震災による津波で壊滅的な被害を受けた宮城県の水産業。名産品の養殖ホヤもその一つだった。 復活に向け努力を続けてきたが2013年、韓国の禁輸措置が実施され苦境に。 新商品の開発などで国内販売は伸ばしたが、最終的に7600トンが販売できず処分する事態に陥った。
[宮城県漁業協同組合理事]阿部 誠氏

1956年生まれ。千葉県にある全国漁業協同組合学校を卒業後、76年、宮城県信用漁業協同組合連合会(2007年、宮城県漁業協同組合に吸収合併)に入社。2013年から経済事業本部長、2014年7月から現職。
宮城県産ホヤ、大量処分の概要
宮城県は全国有数の養殖ホヤの産地。キムチの具材として人気があり、生産量の7〜8割が韓国に輸出されていた。だが2013年9月、東京電力福島第1原発事故による汚染水流出問題を受けて、韓国が宮城や岩手、福島、茨城など8県の水産物に対して輸入を全面的に禁止した。その影響から生産過剰となり、7600トンのホヤの廃棄を余儀なくされた。

昨年6月から、生産過剰となった宮城県産のホヤの処分が産地の女川町などで始まった。漁業者が水揚げしたホヤは冷凍保管されたのち県外に運ばれ焼却処分された(写真=読売新聞/アフロ)
 東日本大震災から間もなく6年になろうとしています。津波によって宮城県の漁業は壊滅的な被害を受けました。ですが、漁業者をはじめ関係者の方々と復興に努めてきました。ホヤの養殖はその象徴的存在でもありました。

 宮城県は全国有数のホヤの産地です。石巻市の牡鹿半島や女川町、南三陸町などで養殖され、国や県の復興補助事業などを活用しながら再度、量産に努めてきました。その結果、年間1万トンを生産できるレベルにまで復活することができました。

 ところが昨年、そのホヤを大量に廃棄しなければならない事態に追い込まれました。震災の大きな被害から立ち直り、漁業者がホヤ養殖の復興のために努力をしてきた。手塩にかけてここまで育ててきた名産品を捨てなければいけない。本当に苦渋の決断でした。

輸出再開のめど立たず

 廃棄したのは7600トンと大量でした。なぜ、こんな事態になってしまったのか。それは、2013年9月、宮城県産ホヤの最大の売り先である韓国が宮城や岩手、福島、茨城など8県の水産物に対して輸入を全面的に禁止したことが原因でした。

 東京電力福島第1原子力発電所事故による汚染水流出問題に対する措置で現在も禁輸は解かれていません。韓国への輸出は宮城県産ホヤ全体の水揚げ量の7〜8割を占めます。それが全面的に販売できなくなってしまったのですから、生産過剰となり処分するしかなかったのです。

 ホヤは養殖を始めて3年目に水揚げをするのが基本です。震災後に養殖を再開したホヤは2015年に3年目を迎えました。しかし、韓国へ輸出できないことから多くは水揚げをせず、2016年に繰り越し4年目を迎えました。また、2016年に3年目となるホヤもあります。こうして昨年、約1万3000トン分のホヤが水揚げを待つ状態になりました。

 一方、韓国側が禁輸措置を解くかどうかについては水産庁、外務省、韓国領事館など関連機関に働きかけ、情報を集めていますが状況は芳しくない。2015年、日本政府は輸入禁止を見直すよう世界貿易機関(WTO)に提訴していますが、規制は解かれていません。

 ホヤの輸出を手掛ける仲介業者の中には「少なくとも韓国の政権が変わるまでは禁輸は続くだろう」と見る人もいます。いずれにしろ、これ以上、ホヤの水揚げを繰り越すことはできませんでした。

 ホヤは4年以上、成長すると重さでほとんどが養殖場から海中へ落ちてしまいます。そうなると漁業環境が汚染されることになりますし、網を破るなど他の漁業にも悪影響を及ぼす可能性もあります。水揚げをしないと新たにホヤの種付けをすることもできません。どうしても陸上に揚げて廃棄処理する必要がありました。

 ホヤの養殖は宮城県全体で漁業者400人程度が関わり、合計で年間10億〜15億円程度を売り上げる産業だけに、補償がなければ廃棄できません。

東京電力に補償求める

 廃棄については2015年から検討を始めました。同時に、韓国の禁輸措置の要因となった原発からの汚染水流出問題を起こした東京電力とも補償について話を始めました。

 補償額を決める上で過去の販売データは欠かせません。ですが、そのデータの多くが震災で失われ残っていませんでした。また震災前は漁業者個人が輸出仲介業者と直接取引をすることが多く、宮城県漁協としてまとまったデータを持っていません。そのため協議が進みませんでした。

 いろいろと手を尽くして、最終的に仲介業者の協力を得て、韓国への販売データを提供してもらい、販売価格の基準値を決めることができました。話し合いを始めて既に数カ月が過ぎていました。

 ホヤは年中、水揚げが可能ですが、ピークは毎年6月です。そこに向けて東電との協議を続け、補償の見通しがなんとか立ったことから昨年6月、その年に水揚げするホヤの内、過剰分を廃棄する決定を漁協としてしました。

 1万3000トンの内、例年、国内には約4000トンが出荷されるので、廃棄対象は約9000トンと試算しました。これだけの量のホヤを廃棄するのは一筋縄ではいきません。かなりの苦労がありました。最初は肥料にしたり、畜産や養殖の餌にしたりできないか方法を検討しました。そのまま捨てるより何か活用できないかと考えたからです。

 受け入れてもらえる業者を探し話し合いをしました。ところが、処理の方法や採算性の問題で実現は難しいことが分かりました。そうなると焼却処分するしかありませんが、塩分が強いことなどから一般の焼却施設では処理できないことが判明しました。対応できる業者を探し、昨年8月、宮城県外でようやく焼却可能な場所を見つけました。場所が限られることから大量には焼却ができず、処分し終わるまで今年1月までかかってしまいました。

禁輸が解けなければ今年も大量廃棄に

 廃棄には数億円の費用がかかりました。焼却費用だけでなく、焼却を待っている間の冷凍保管費用や運搬費なども必要になりますから。

 ホヤは韓国で刺し身やキムチの具材として人気があります。震災前は韓国での需要が拡大しているため販売業者から増産の依頼を受けていたほどです。その韓国向けの販売が止まったため、今は国内向けの販売に力を入れています。薫製や酒蒸しなど新たな加工食品のアイデアを出し合って商品を開発し、販売量や販路の拡大に努めました。

 その結果、昨年は5500トンまで国内販売を伸ばすことができ、処理した過剰分を7600トンまで抑えられました。ですが、韓国への輸出分をさらに国内向けに切り替えて販売することは、とても困難で限界があります。

 一方、カキやホタテなど別の種類の養殖に転換するのは漁業者にとっては難しく、換えるにしても時間と費用がかかります。補償があるとはいえ漁業者の生活にも影響が出始めています。

 今年もホヤの水揚げがあります。韓国の禁輸が続けば再度、大量に廃棄せざるを得ません。高齢の漁業者はこれを機に廃業する可能性もあります。引き続き、打開策を模索していかなければなりません。


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証言
時代を切り拓き、その先に見えるものを。誰もが忘れ去ろうとしているものを、今なお思い起こしつつ。あるいは、わずかな人だけが見ることのできる地平に立ち、その眼に映るものを。語り得る人たちのその言葉を、問わず語りで、ありのままにお伝えします。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/279177/031600017/

 


「新生東芝」を信じるほかない銀行団

ニュースを斬る

財務制限条項に抵触していても支えきれるのか
2017年3月17日(金)
田村 賢司

東芝の綱川智社長は苦しい立場に追い込まれている(写真:竹井 俊晴、以下同)
 何が語られたのか──。

 東芝は3月15日、取引銀行向けの説明会を開いた。米原子力子会社、ウエスチングハウス(WH)の内部統制問題で監査法人から2016年4〜12月期決算の承認が得られず、前日の予定だった発表を再延期したのを受け、資金繰りに協力を求めるためだ。

 15日には東京証券取引所が、東芝株を内部管理体制の改善が必要として指定していた「特設注意市場銘柄」から、上場廃止の恐れがある「監理銘柄(審査中)」へ指定替えも実施。説明会の内容は開示されていないが、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友信託銀行など主力行の動きに市場は強い関心を寄せている。

半導体分社化で危機を回避するというが・・・

 市場が動向を注視するのは、銀行団が4月以降も協調融資を継続するかどうか。だが、結論から言えば、銀行団には東芝を救う以外の考え方はないように見える。

 例えば、銀行の東芝への融資の一部には財務制限条項がつけられている。財務制限条項とは、銀行など金融機関が貸し付けを行う際に、借り手(債務者)に対して付ける条件である。金融機関が借り手の財政に条件をつけ、借り手側が業績悪化などによって、それを下回る状況になると、即座に返済を迫られる。

 財務制限条項の内容自体は公表されていないが、東芝の有価証券報告書を点検すると、「連結純資産」「連結営業損益」「格付」か、その比率などと見られる。となれば、昨年後半以降、格付け機関から数度にわたって格下げを受け、既に約1500億円の債務超過になっている東芝は、明らかに「即座に負債を返済」の対象になるはず。

 ところが、銀行団がそれを求めた形跡はない。あるメガバンク関係者は「財務制限条項に抵触するのは確かだが、今、それを執行する気はない」と漏らす。「債務超過になったとしても、資産売却による利益などで早期に回復できるといったメドがあれば、いったん猶予してもおかしくない」。ある銀行アナリストはこう読む。

 東芝は、4月1日付けで半導体メモリー部門を分社化し、全株放出も視野に入れて株式の売却を進めるという。すべて売れば、1兆5000億円に達すると見られる。半導体新社の純資産は約5000億円だから、売却に伴う利益は約1兆円。これを使えば、債務超過を一気にクリアできる計算になる。その辺りを睨んでのことだろう。

 一方で銀行団には、融資の継続に大きく関わる債務者区分は引き下げる方向で動いている。債務者区分は、融資相手を信用状況によって分類するもの。上から(1)正常先、(2)要注意先、(3)破綻懸念先、(4)実質破綻先、(5)破綻先となっている。要注意先の中に「要管理先」があり、これ以下が「不良債権」とされる。

 下に行くほど信用力が低いわけで、当然、貸出金利は高くなる。だが、銀行自身にとっても、貸し倒れに備える引当金計上を迫られ、負担は重くなる。東芝に対する主力行の融資額は、昨年3月末時点では、みずほ銀行が1834億円、三井住友銀行が1768億円、三井住友信託銀行が1310億円、三菱東京UFJ銀行が1112億円に上っており、地方銀行の一部や日本政策投資銀行、農林中金なども融資している。

 このうち、既に「みずほ銀行が今年1月、東芝を正常先から一段階下げて要注意先に替え、他の主力行も引き下げを検討しているようだ」(ある銀行関係者)と言われる。だが、本来、債務超過になれば破綻懸念先になるのが普通だ。

 それでも、みずほが要注意先にとどめ、「他行も大きくは下げないだろう」(ある銀行アナリスト)と言われる。その理由は、1つには仮に破綻懸念先となると、融資額から担保額を引いた金額の50%以上の引当金を積む必要に迫られる。銀行にとっては、100億円単位の負担増になる。

 そして何より、破綻懸念先となると融資の継続ができなくなるという大きな問題がある。だから、東芝の危機を拡大させないよう、“寸止め”にしているのだろう。

東芝融資を不良債権には認定できない理由


CFO(最高財務責任者)を務める平田政善専務
 この2つの動きから読み取れるのは、「銀行としては東芝を支えるほかないという判断だ」(ある銀行アナリスト)。

 東芝の危機がここまで深刻になると、一定の負担増は覚悟しても債務者区分を引き下げざるを得ない。ただし、不良債権に認定するところまでは踏み切れない。不良債権認定をして追加融資ができなくなれば、東芝は本当の危機を迎えかねない。

 そうなれば、これまでの融資自体も回収が容易ではなくなる。当面、東芝の再生計画を信頼すればその理屈はつけられる、といったところではないか。

 東芝は14日、半導体新社の株式売却のほか、「WHの過半の株を売却して非連結化し、海外原子力事業のリスク遮断」「その後、社会インフラ部門を軸にした新生東芝として再生する」というプランを発表した。これによって2019年度には売上高4兆2000億円、営業利益2100億円の「健全企業」に戻るとしている。

銀行団が頼る前提は大幅に変わることになる

 だが、15日付けの本欄(「ひねりだした『新生東芝』という絵空事」参照)でも指摘したとおり、WHの売却は極めて難しい上に、数千億円規模で追加損失が発生する可能性もある。

 虎の子の半導体新社を売却して得られる資金も、今後、生き残るために社会インフラなどの事業の設備投資に使い、自己資本も充実する必要があることを考えると、追加損失の規模によっては、再生計画の見直しも必要になるかもしれない。そうなると、銀行団が頼る前提は大幅に変わることになる。

 「次は、融資額の下位行から融資引き上げの動きが起きるかもしれない。その際は、みずほ銀行や三井住友銀行など主力行にその分の引き受けを求めることになる」。ある銀行関係者はこう指摘する。

 過去、大企業の経営危機の際にしばしば見られた「メイン寄せ」と呼ばれる動きである。しかし、東芝の危機が去らない限り、みずほ銀行や三井住友銀行にしても、そのリスクは避けたいはず。「新生東芝」計画は銀行にとっても、本当は不安のかたまりのはずだ。


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日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
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[経世済民120] 米FRB利上げ決定、トランプ氏の帝王化に備え 移民政策は公約比で満点 嫌われヒラリーはハーマイオニ 経済学でふるさと納税
米FRB利上げ決定、トランプ氏の帝王化に備え

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トランプ大統領の「本気」の議会演説で警戒感漂う
2017年3月17日(金)
武田 紀久子

 米連邦準備制度理事会(FRB)は3月15日、今の正常化局面で3度目となる利上げを決定した。今回の利上げを巡る最大のサプライズは、米連邦公開市場委員会(FOMC)での決定そのものにはなく、FRBが3月利上げに向けてやや唐突に思えるコミュニケーションを2月末以降の数日間で集中的に行った点にある。

 2月末には地区連銀総裁などによる利上げ支持発言が相次ぎ、続いてハト派筆頭格のブレイナード理事などがこれに加わった。更に3月3日にはフィッシャー副議長とイエレン議長という2人の重鎮がダメ押し的に利上げを示唆する、という念の入ったコミュニケーションで、難なく市場に3月利上げを織り込ませた。

 1月のFOMC議事録が発表された2月22日の時点では、「今年の初回利上げは6月」がコンセンサスであったことを思うと、この間に一体何があったのか、改めて気になるところである。

利上げ決定は「トランプ演説」がきっかけか

 もっとも、FRBにしてみれば、方針の急変更をしたつもりは全くなく、あくまで市場が早期利上げのシグナルを読み誤っていただけ、ということになるのだろう。後付けだが、完全雇用に近い現在の米国において、最近の株高や消費者・企業センチメントの急上昇、そして、融資の高い伸び等は確かに要警戒域にあると言えるし、今回声明では物価に対する上方修正が目立ち、ほぼ目標を達成しつつあると宣言してもいる。

 ただ、FRBがこうしたコミュニケーションを開始した時期に重なる2月28日には、トランプ大統領による初の上下両院での議会演説が行われている。以前からトランプ政権による財政拡張路線に警戒的な立場を取ってきたイエレンFRBにとって、これが利上げ実施の背中を押すきっかけの一つになった可能性をどうしても連想してしまう。

 この演説は、特に政策の詳細が示されたわけではないものの、就任演説などと全く異なり伝統的な大統領らしさを意識したいわば「本気度が伝わる」内容であった。本気度が高まったトランプ政権が打ち出すであろう財政刺激策は、景気過熱、インフレ上振れ、そして財政赤字拡散などが懸念され、警戒は怠れない。牽制的な意味を込めて、FRBが3月利上げに動く決意を一気に固めたと考えるのは、見当外れであろうか。

「チェック・アンド・バランス」が機能?

 話は急に変わるが、周知の通り、トランプ大統領の就任直後に大量の大統領令が矢継ぎ早に交付された。しかし、例えば「イスラム系国民の入国禁止」に対しては「最高裁判所=司法府」が、「閣僚任命」については「議会=立法府」が、それぞれ施行や承認に待ったをかけている。

 これを見る限り、当然とはいえ、米国憲法に書き込まれた「チェック・アンド・バランス=三権分立による抑制と均衡」の理念が機能していること、及び、制度としての米国政治そのものが麻痺したわけではないことがうかがわれる。

 米FRBはこの三権分立の理念に必ずしも位置付けられるものではないが、それでも、大統領府=行政府の動きをチェックしている様子は、心強いものに思われる。財政政策の先行き不透明感が極めて強い中、中央銀行が政権方針と一線を画し、毅然と超緩和政策の正常化を進めることは健全なことと言えよう。

 日本語では適切な訳語がなく耳慣れないが、米国政治用語には「帝王的大統領=Imperial Presidency」という表現があり、「憲法で規定された以上の権力を振るう大統領」といった意味合いで使われる。先に触れた通り、米国憲法には、政治権力の集中と暴走を回避するためのチェック・アンド・バランスの精神が盛り込まれ、大統領権限の発動などに対しては、憲法で幾重にも歯止めがかけられる仕組みになっている。

 にもかかわらず、「帝王的大統領」の概念が浮上したのは、20世紀になってからのこと。大恐慌から第2次世界大戦まで大統領を務めたルーズベルトが、これら国難に向かう中で、大統領権限の集中と強化を進めたことが最初の事例となった。大統領補佐官や国家安全保障会議(NSC)の原型が設置されたのもルーズベルト政権下でのこととされる。

 その後、帝王的状況が極まったのがニクソン大統領時代。ニクソン大統領は少数の限定スタッフによって構成されるNSCを事実上の外交政策決定機関に格上げしており、これを機に米国の外交権は完全に議会=立法府から、大統領府=行政府へ移るなどしている。その後も冷戦が続く中で、最後に帝王的大統領と呼ばれたのはレーガン大統領であった。

トランプ大統領の「帝王化」への備え

 ちなみに、この3人の大統領時代にはそれぞれ、金融政策の歴史上節目となる極めて重要な政策が打ち出されている。大恐慌の下、ルーズベルト時代にはケインズによってFRBが国債市場へ介入し長期金利を低下させる提言などがなされた。これはその後、戦費調達対応の形で1942年に実現する。ニクソン時代にはマネタリズムが影響力を高め、FRBは1970年にマネーストックや銀行信用を重視するマネタリー・ターゲティング的な方針を明らかにした。そして、レーガン時代には、マネタリー・ターゲティングから改めて金利コントロールへ移行。1987年にはM1(マネーサプライの統計の1つ)の目標値設定が中止されている。

 こうしてみると、FRBは目下、トランプが強権的に経済運営を行う「帝王的大統領」になる事態に備えているようにも見える。トランプ政権が異色の政策運営で議会と衝突し政治空白が経済を失速させるのか、あるいは、財政拡張路線が行き渡りインフレリスクが高まるのか、その見極めは未だ難しいが、それは、従前のチェック・アンド・バランスの中に留まるか、帝王的大統領になるか、の選択に重なるようにも思われる。後者の場合、歴史上の教訓は「金融政策に非連続が起きること」と言えるが、この点は別稿でもう少し検討したい。

 日経ビジネスはトランプ政権の動きを日々追いながら、関連記事を特集サイト「トランプ ウオッチ(Trump Watch)」に集約していきます。トランプ大統領の注目発言や政策などに、各分野の専門家がタイムリーにコメントするほか、日経ビジネスの関連記事を紹介します。米国、日本、そして世界の歴史的転換点を、あらゆる角度から記録していきます。

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「移民政策は公約比で満点が付けられます」

トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く

米専門家がトランプ政権を採点
2017年3月17日(金)
篠原 匡、長野 光
 トランプ政権が発足して早2カ月。最初の100日間で成果を出そうとスタートダッシュをかけたが、現状では混乱の方が目立つ。

 2月28日の施政方針演説は「大統領らしい」と高評価だったが、その直後にジェフ・セッションズ司法長官が大統領選中に駐米ロシア大使と接触していた事実が判明、その後もトランプ大統領が「オバマ大統領に盗聴された」と爆弾ツイートを投下したため、再びホワイトハウスは喧噪に包まれている。

 それでは専門家はここまでのトランプ政権をどう見ているのか。政治リスク分析に定評がある米ユーラシア・グループのジョナサン・リーバー米国政治担当ディレクターに話を聞いた(取材は3月9日)。

(ニューヨーク支局 篠原 匡、長野 光)
ここまでのトランプ政権をどう評価しますか。

ジョナサン・リーバー氏(以下、リーバー):トランプ政権はいわゆる移行期間、ハネムーン期間にあり、政権を評価するのはまだ早すぎると思います。実際のところ、現在はハネムーン期間というよりはむしろ婚約期間のようなものだと思います。トランプ大統領は強力な政策チームが不在の状態でホワイトハウスに来ましたので、結婚自体が始まっていないように感じます。それが現在の遅さにつながっています。

 そのため、新政権の立法面や行政面を評価するにしても、現時点ではかなり限定的になります。トランプ大統領は新しくホワイトハウスに入ったリーダーであり、彼自身、同じように政権に入ったばかりのアドバイザーに囲まれています。また、彼はワシントンDCのエスタブリッシュメントから多くの抵抗を受けています。そういう事情を考えれば、移行期間は大目に見てもいいのではないでしょうか。


ジョナサン・リーバー 米ユーラシア・グループ米国政治担当ディレクター。ミッチ・マコーネル上院議員の主席経済政策アドバイザーを務めるなど、連邦議会での豊富な経験を有する。(写真:Mayumi Nashida 以下同)
 あと1カ月、2カ月もたてばトランプ大統領は立法上の“勝利”を手に入れると思います。例えば、オバマケアの撤廃法案であり、暫定予算案の期限切れに伴って4月末に出される歳出法案です。確かに、行政という面では移民関連の大統領令もあってスタートは不安定でしたが、トランプ政権は大統領令を修正しました。これまでに、間違いから学んでいる面もあります。よって、選挙公約や期待されていることをベースにここまでの成績をつけるとすれば、現時点では「保留」という評価になります。

「やる」と言ったことをすべて実行している

オバマケアの撤廃や大規模減税などの個別公約はどうでしょうか。

リーバー:オバマケアも現時点では「保留」という評価ですが、いい方向に進んでいると思います。税制改正も大した修正がなければ、2017年末、あるいは2018年初に関連する法案が議会を通過すると見ていますが、大きな変更がある場合は現時点では分かりません。ゆえに、これも「保留」です。移民に関しては、彼らは「やる」と言ったことをすべて実行しており10点満点だと思います。

満点?

リーバー:そう思います。トランプ大統領は不法移民に断固たる措置を執ると述べていました。あくまでも選挙公約との比較という意味ですが、満点だと考えています。

 貿易については、まだ政策を実行するための人事が承認されていません。とりわけ、米通商代表部(USTR)の代表に指名されているロバート・ライトハイザー氏が承認されていません(※編注:取材時点)。商務長官のウィルバー・ロス氏も承認されたばかりです。彼らが仕事を始めるにはもう少し時間がかかるため、貿易の評価も「保留」とします。

 インフラ投資も同様です。インフラ投資という公約を実現するために動き始めているようですが、今後、トランプ政権は議会の抵抗に遭うと思います。そのため、ここも評価は「保留」ですが、インフラ投資はオバマケアと違って、間違った方向に向かっていると感じています。

外交政策はどうでしょうか。

リーバー:日本については10点満点がつけられるのではないでしょうか。トランプ政権は日本を米中関係の中心に置き、アジア太平洋地域のキープレイヤーに位置づけました。予断ですが、トランプ大統領に対する安倍首相の扱いは極めて上手い。ここは最高得点でいいと思います。

 中国とロシアについては、やはり「保留」です。米中は貿易や安全保障で懸念材料があります。北朝鮮問題など心配すべき案件もありますが、まだ何も始まっていません。ロシアも同様で、マイケル・フリン前安全保障担当補佐官が辞任するなど、トランプ大統領の周辺とロシアを巡って様々な話が渦巻いています。ただ、その真相はまだ何も分かっていません。「保留」だと思います。

政権運営という面ではどうでしょう。だいぶ混乱しているように見えます。

リーバー:確かに、政権運営にはコミュニケーション不足や調整不足など明確な不安定さがあります。さらに安全保障担当補佐官が辞任したり、国務省が脇に追いやられたり、といった状況を見ると、そこから何が出てくるのかを語るのは難しい。政権運営のところは5点といったところでしょうか。

 付け加えれば、ホワイトハウスの報道官には改善の余地があると思う。トランプ大統領はツイートで自身のメッセージを発しており、政権として組織的なコミュニケーション戦略を持っていないように見えます。ただ、改善の兆候も見えるため3点はつけられるのではないかと思います。

閣僚は合格点、次官級以下に課題残す

閣僚の顔ぶれはどう評価しますか。

リーバー:これは本当に上手くやったと思っています。指名候補で一人辞退者が出ましたが、上院で拒否された人はいません。トランプ政権は保守派が心地よく感じる真の保守内閣を作りました。民主党は反対していますが、それは問題ではありません。国務省や国防総省をはじめ、トランプ政権が仕事を遂行する上で、クオリティーの高い人材を見出したと思います。ここは8点。

 もちろん、次官級以下のレベルでは問題を抱えています。ティラーソン国務長官やムニューシン財務長官を支える人々はまだ埋まっていません。今の状態が続けば、2カ月後には問題になるでしょう。内閣のキャパシティ不足は政権に打撃を与え始めていると思いますが、切り抜けられるのではないかと現時点では思っています。それについてはものすごく心配しているわけではありません。

就任当初、イスラム圏の人々の入国禁止など物議を醸すような大統領令を連発しました。ここについてはどう思いますか。

リーバー:全体的に、トランプ大統領は「やる」と言ったことを実行していると思います。まさに選挙期間中に見た姿そのままと言えます。大統領令にしても、話題を提供しているだけでしょう。

リーバー:トランプ大統領が何を成し遂げられるかということを考えるときに重要なのは議会との関係です。議会との関係がよく、コンセンサスが得られれば、トランプ大統領は多くのことができる。一方で、彼のしたいことに議会が協力しなければ、トランプ大統領は何もできなくなる。この政権の成功や失敗を考える時に重要なのは、議会との関係で何が起きるかということです。

 彼は議会のコンセンサスを得ることができるのか、彼は議会共和党をまとめあげることができるのか。政権の不安定さとコミュニケ―ションにおける問題、政策の選択に関してはっきりとしたガイダンスを提示する人がいないという事実は、共和党が多数派を占める議会が彼らの政策目標を成し遂げられないということを意味するのか、などなど。こういった疑問はこれから明らかになっていくと思いますが、政権全体としては現時点で7点はつけられるのではないでしょうか。

個別の政策についてもう少し詳しく教えてください。足元を見ると、オバマケアの撤廃と置き換えに時間がかかっているように見えます。

リーバー:オバマケアはコンセンサスがまだないため、大きな試練に直面しています。ただ、厄介な状況にはありますが、代替案がコンセンサスを得られる可能性もあり、私としては外部から見るほど悪い状況ではないと思っています。次の2〜3週間で撤廃・置き換え法案は下院を通過すると思います。上院は下院とは選挙区などで事情が異なりますので、もう少し時間がかかるでしょう。

国境調整は通せないが、法人税25%減は可能

トランプ大統領が公約している大規模減税はどうでしょう。トランプ大統領は法人税15%、ライアン下院議長は20%の実現を目指しています。


リーバー:両者の数字は大きすぎると思います。今の35%という法人税を考えた時に、1%の法人税が下がるごとに10年間で1200億ドルの税収を失います。仮に法人税20%とすれば1.8兆ドルですよ。これは大きすぎる。ただ25%程度であれば十分に達成可能な数字だと思います。共和党には財政赤字を心配しているメンバーもいますが、この辺であれば達成可能でしょう。それでもトランプ大統領の政治的勝利になると思います。

ライアン下院議長など下院共和党の執行部が提唱している国境調整なしでも大規模減税は実現するでしょうか。

リーバー:まず国境調整が議会を通る可能性は低いと思います。共和党の議員は国境調整をガソリン税、つまり消費者に対する新たな課税、あるいは彼らが最も嫌忌する新たな関税と見なし始めていますので、本当に難しい作業になると思います。確かに、国境調整が導入されれば大幅な減税が可能になりますが、25%でも十分に勝利だと言えますので、それ以上税率を引き下げる必要はないと思います。

 国境調整がなくても、トランプ政権は政府債務の拡大を通して減税を実現させると思います。確かに共和党には、とりわけ下院には財政赤字の拡大に制限をかけたいと考える財政タカ派がいます。一方で、減税をまず実行して、その後に財政支出の削減を実行するという順序でもいいと考えている共和党議員もたくさんいますので。

インフラ投資はどうでしょう。トランプ大統領は熱心ですが、議会共和党は前向きとは言えないようです。

リーバー:トランプ政権が掲げている政策の中で、インフラ投資の優先順位はかなり後ろの方だと思います。とりわけ議会はインフラ投資に関心がありません。

 トランプ大統領は国境の壁、国防費の増額、インフラ投資という大規模な支出を伴う3つの政策を訴えています。私は物理的な壁ではなく、国境警備のための支出は可能だと思っています。10%の増額は無理だと思いますが、国防費の増額も可能でしょう。ただ、インフラ投資は難しいと思います。仮に実現するとすれば、連邦政府の巨額支出ではなく、税制上のインセンティブを民間企業に与えるというものだと思います。

市場のインフラ投資への期待は過大だ

インフラ投資に対する市場の期待は大きいと思いますが…。

リーバー:市場は過大評価していると思います。小さなインフラ投資、そして穏当なサイズの減税になる可能性が高いのではないでしょうか。

最後に、貿易についてはどうでしょう。「国境調整は難しい」という話ですが、NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉など企業にとって懸念材料はいろいろとあります。

リーバー:議会の共和党議員はNAFTAを支持していると思いますよ。彼らは自身の州にとってNAFTAは効果的だと思っていますし、北米の統合されたサプライチェーンの価値を認めています。実際、NAFTAに依存した仕事はかなりありますし。そういった現実がトランプ政権の動きを縛ると思っています。

 既に、ウィルバー・ロス商務長官はNAFTAの改善点についてビジョンを述べています。電子商取引に関わる項目を入れたり、原産地規則を見直したり、恐らく為替操作に関する拘束力のある文言も入れたいと思っているでしょう。また、トランプ政権はメキシコに対して労働法や環境法の改善を求めています。そのあたりがネゴシエーションのベースになると考えています。

 メキシコは米国の要望に対応しようとすると思います。輸出の8割が米国向けと、彼らは米国に大きく依存しています。もちろん、国境の壁の費用は払わないでしょう。関税の引き上げも米国が主張すれば容認するとは思いますが、米議会もそれを望んでいませんので、そこまではしないと思います。ただ、メキシコは米国の要求をほとんど容認する可能性が高いとみています。


このコラムについて

トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く
1月20日に第45代米大統領に就任したドナルド・トランプ氏。通商政策や安全保障政策など戦後、米国が進めてきた路線と大きく異なる主張をしているトランプ大統領に対する不安は根強い。トランプ氏は具体的に何を実施し、何を目指しているのか。新大統領が率いるアメリカがどこに向かうのか。それをひもといていこうというコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/012700108/031600015/


 


 

「嫌われヒラリー」は、ハーマイオニーだった

著者に聞く

対談:渡辺由佳里×小田嶋隆(後)
2017年3月17日(金)
日経ビジネス編集部
アメリカでも日本でも、「正論」を語り、ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)を意識した発言をする人は「インテリぶっている」「嘘つき」「隠し事がある」と嫌われる――今回の米国大統領選挙戦を現場で追いかけ、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』を著した渡辺由佳里さんが、「ア・ピース・オブ・警句」でお馴染みの日経ビジネスオンラインの人気コラムニスト、小田嶋隆さんと語り合います。(文中敬称略)

小田嶋隆(以下小田嶋):渡辺さんの『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』を読ませていただいて印象的だったのが、トランプの「インテリっぽさを極限まで減らした選挙活動」の威力と、ヒラリーのものすごい嫌われっぷりです。


『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』
渡辺由佳里(以下渡辺):トランプのような、ある意味やんちゃな“ガキ大将”とは反対に、“優等生”って、「いい子ぶりっこ」として、からかわれたり嫌われたりするじゃないですか。ファーストレディになった1990年代から、メディアが「ヒラリー嫌い」を娯楽化してきたんですが、今回は、腐敗しているとか、嘘つきだとかの反発が加わりました。

小田嶋:サンダースの支持者が、彼が引っ込んだ後に、同じ民主党のヒラリーに行かないでトランプに行っちゃったという話もありましたね。


渡辺 由佳里(わたなべ・ゆかり)エッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家。助産師、日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)、『暴言王トランプがハイジャックした大統領選、やじうま観戦記』(ピースオブケイク/Kindle版)など。翻訳には、糸井重里氏監修の『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。
渡辺:私が取材していたときにも、「トランプにするかサンダースにするか迷っている」という人がいて。政策からは正反対の候補者なんですけどね。

 なぜかといえば、「トランプもサンダースも、言葉を飾らない、正直だ」と。それは、「思っていることを口にするから」というだけなんですけど。ヒラリーは、発言が優等生過ぎて、「本当にそう思っているのか信用できない」と怪しまれる。「ヒラリーは、何か隠していることがあるんじゃないか」、そんな発言をよく耳にしました。

小田嶋:つまり、「正論を言うエスタブリッシュメント」に対する反発があるという。

渡辺:そうなんです。左も右もそういう様子がすごくよく似ていました。でも、今回こうまでヒラリーが嫌われたのは偽ニュースの影響が大きいです。右も左も、「ヒラリーは犯罪者ですごい金まみれだ」と思いこんだ人がすごく多かった。トランプもとんでもないが、ヒラリーなんかに票は投じられない。という。

小田嶋:俺もその部分の噂はちょっと信じてたかもしれない。

おばかペイリンのほうが愛される

渡辺:ベンガジ事件への関与、メール疑惑、嘘つき、腐敗、とかですね。すべて、綿密な調査の末、懲罰の対象になるような違法な行動をした証拠がないという結論が出ています。でも、結果的に、「はっきりした証拠はないけれど、きっと隠していることがある」、「嫌な女だ」というイメージが定着してしまった。直接本人に会うと、「嫌な女」とか「お高くとまっている」というイメージは全然ないんですけれどね。それを出せなかったのは、マーケティングが下手くそということです。

小田嶋:サラ・ペイリンでしたっけ、スピーチで「米国は北朝鮮と共同せねばならない…え、韓国?」とやっちゃった女性。アフリカが国名だと思っていた、とか。「アラスカからロシアが見える」とか。ちょうど彼女と対照的な感じですよね。

渡辺:ええ。2008年、彼女を副大統領候補にしたマケインは敗北しました。でも、オバカなキャラの彼女にはファンがまだ大勢いますよ。

 今回の大統領選挙で言えば、具体的で綿密な政策を持っていたのは、ヒラリーただ1人でした。外交、雇用、環境、医療、彼女のサイトに行けばなんでも事細かに書いてあった。でも、それはトランプの「言って欲しいことを代弁してくれる」能力に全然敵わなかった。

小田嶋:トランプのあれ、場末のスナックでオヤジが管(くだ)まいているみたいだな、と思ったんだけど。

渡辺:家でテレビを見ながら、ニュースにぐちゃぐちゃ毒づいている親父さんがいるでしょう、そういうの人の言葉を拾ってきた感じです。ソーシャルメディアで発散される、恨み辛みやグチを集めてきた。

小田嶋:ソーシャルメディアは、場末のスナックの会話が全世界にばらまかれる場所ですからね。

渡辺:その場末のスナックが、アメリカでは、お金持ちの集まる「カントリークラブ」だったりします。トランプのファンは、低学歴、低所得の人だけじゃないんです。ハーバード大ビジネススクールで学んだ私の舅(米国人)は、トランプが大統領になる前に亡くなったのですが、生きていたら、きっと彼に投票していたと思います。

渡辺:毎日Foxニュースを観て、お金持ちの白人男性が集まるカントリークラブで、自分と似た境遇の人とだけ話をするタイプでした。一緒にいるとき耳にするその内容が「メキシコ人が悪い」「イスラム教徒は危険だからアメリカに入れないほうがいい」と、トランプが今言っているようなことなんです。トランプも、実生活でそういう場面が多かったんじゃないでしょうか。そこで、「そうか、みんなこういう不満を持っているんだ」と、肌感覚のマーケティングリサーチをしたんだと。

小田嶋:本当は「メキシコ人を壁を造って締め出してしまえ」と、内心で思っていたり、スナックやクラブで言っていたやつはたくさんいたんだけど。

渡辺:それは仲間うちだけで、外では口にしなかったわけです。

小田嶋:「ポリコレ」、ポリティカル・コレクトネスがあっておおっぴらには言えないと。

渡辺:そう。トランプの暴言として伝えられたことは、プライベートな場所で白人がこっそり言っていたこととほとんど変わらない。でも、王様の耳はロバの耳という感じで言ってのけたことで「この人は嘘をつかない」という印象が生まれた。

小田嶋:それは日本でも今、書店の一番いい場所に並んでいるヘイト本と同じロジックだな。憂国の思いから真実を語る、みたいな。

渡辺:やり方がヒラリーのまったく逆だったんです。「ストロンガー・トゥギャザー」というヒラリーの選挙スローガンは、「異なる背景の国民が敵対するよりも、手をつなぐほうが強くなれる」という、多様性を謳歌するものでした。つまり、誰にとっても均等に正しいことを言っている。だから、かえって情熱的なファンを作れず、多くの有権者がわざわざラリー(遊説)に行く行動を起こさなかったのかもしれません。

小田嶋:そうですね。ぼんやりと正しいことを言っているよりは、間違っているかもしれないけど心に響くことを言っている人の方が支持できる、みたいなことはあるんですね。

渡辺:そうなんですよ。身もふたもない話ですが。

魔法のお勉強をして主人公を助けて、嫌われる…

渡辺:私、こうしてヒラリーの擁護発言をするたびに叩かれるんですよ。「ばばあ」とか、「ブサヨ」とか、お決まりの(笑)。女性を攻撃するにはこういった言葉が有効だと思っている男性、ネットには多いですよね。そういう方々には理解できないと思いますが、私がヒラリーを推したのは、大統領候補の中では彼女が最も適任だったからです。ごくシンプルな理由。

 これは私の説なんですが、ヒラリーは「ハーマイオニー」なんですよ。

小田嶋:『ハリー・ポッター』の。

渡辺:そう。主人公を支えるものすごく優秀な、ガリ勉の女の子。ハーマイオニーがいなかったらハリーはヴォルデモートに勝てなかった。なんせ、主要キャラ3人の中で、真面目に魔法のお勉強をしたのは彼女だけなんですから。

 打倒ヴォルデモートのためには重要な人物なのに、好かれない。ストレートにガリ勉の女って魅力的じゃないですからね。でも、大統領って、そんな愛されキャラ、ラブリーなキャラクターである必要はないよね。

小田嶋:それは全くその通りですね。

渡辺:ヒラリーは、くそまじめで、勤勉な公務員なわけです。「大統領に勤勉な公務員がなることのどこが悪い?」と私なんかは思うんですよね。仕事してくれればいいわけで。愛嬌もカリスマ性もなくていい。

小田嶋:でもアメリカ人は大統領にカリスマだったり、愛嬌だったり、親近感だったりを求める。ブッシュ(息子)が、頭は悪いけど愛嬌のあるおじさんだったり、とかね。渡辺さんの本を読むと、歴代大統領がどんな「愛され方」「嫌われ方」をしたかがよく分かります。

渡辺:私も大統領としてのジョージ・W・ブッシュは尊敬していません。でも、彼が大統領じゃなくて普通のおじさんだったら、きっといいお友達になれたと思います(笑)。

小田嶋:大統領に求めるものというのが、例えばドイツの、それこそメルケルさんなんかは、くそまじめな方の人でしょう。素晴らしくまじめで頭がよくて勤勉で、誠実に政治をやる人じゃないですか。ドイツ人というのは、取りあえずそっちを選ぶ。だけどアメリカ人はメルケルみたいな人はちょっとつまらないというか、「インテリが、気取りやがって」と。

渡辺:そうなんです。

小田嶋:先ほど、ヒラリーを支持するとすごく嫌われると言っていましたけど、あれはアメリカでですか、それとも日本ですか?

渡辺:日本人からの罵倒のほうが多いですね。トランプのファンだけじゃなく、熱心なサンダース支持者からも(笑)。


小田嶋:俺も、ヒラリーだとかそれを応援してるメリル・ストリープだとかについて肯定的な文脈で言及すると、反発が返ってくる感じはありましたよね。まあ、私がヒラリーそのものを好きか嫌いかはどうでもいいんだけど、そのときにどうして俺が「気取りやがって」と言われるのが分からなかったんです。で、相手が俺を気取っていると思うのはなぜかというと、本当は支持なんかしてないくせに、ヒラリーを支持した方が利口に見えるとお前は思っているんだろう、という、そういう心理が働いているんですね。どうやら。

正論を言うヤツは嘘つきだ!

渡辺:すごく屈折していますね(笑)。

小田嶋:そういう言い方だと思うんです。気取っているという言い方は。つまり、「お前は建前しか言ってないだろう」「いい人ぶっているだろう」「利口ぶっているだろう」という非難の仕方なんです。

渡辺:多様性を肯定すると、「ポリコレ信奉者」とレッテル貼られて、攻撃されるみたいな感じですね。

小田嶋:そうそう。ポリコレについても、「お前、本当は韓国人を差別したい気持ちが満々なのに、それを口にしないということは、気持ちを無理に押さえ付けて嘘をついているだろう」と見ている人がいるんです。何というんだろうな、「ポリコレ的に悪いことこそが、本音である」と。

渡辺:そうそう、それ、あります。

小田嶋:その本音を隠しているお前はうそつきだ、仲間はずれにするぞ、という。

 昔話で、サラリーマン社会の一番下っ端にぶらさがっていた時代の話ですが、男だけが集まってワイワイやるような機会があると、「本当はみんなスケベなんだ」というポーズを強要される場面がある。たとえば猥談が始まるんです。と、誰もが何かえげつのないスケベな話をしないといけない。俺、それにまったく付いていけなかったんですね。大嫌いで。そうすると「気取りやがって」ってなことになる。ぶっちゃけて、「俺も本当はこういうバカな男なのさ」というところを見せないと、分かり合えないという。

渡辺:まさに、「ピアプレッシャー」というやつですよね。

小田嶋:正しいっぽいことを言うと、気取っていると思われちゃう。正しいから正しいと言っているだけなのに、「何、お前、“正しい”ことを言っているの」と。

 担当編集者ですが、横から失礼します。小田嶋さん、昔はそういう、ポリコレ的に「言ってはいけないこと」を好んで言う人だったんですよね。だから余計に「いい子ぶりやがって」と思われるんじゃないですか。

小田嶋:もちろん今でも「言いたいこと」を言っているわけだけど、当時は「人は学歴で差別される」とか、そういう本当のことを書く人があまりいなかった。世の中に出てない「面白い」ことだと思うから書いたわけで、言ってしまえば、そのほうが本だって売れる。

 今は、当時の小田嶋さんみたいなことを言う人が増えてしまって、“正しい”ことを言うと、よってたかって攻撃されるような気がします。

小田嶋:そう、ポリコレ的なことが、むしろ言いにくくなっている。じゃあ、今だったら、そういうことを書くほうが面白いじゃないかと。そもそも政治家と、無責任な物書きの発言を同レベルであれこれ言うもんじゃないです。

 冷静に考えて、総理大臣が小田嶋さんになったら日本はおしまいですよね。

小田嶋:うん、おしまいだと思う。そんな国に住みたくない(笑)。でも、大統領や総理大臣が「本音」で発言することを評価するって、冷静に考えてどうなのだろうか。

渡辺:それなんですよね。今回、あれだけトランプがうそを言っても、みんな彼は信用できると言っていましたでしょう。「彼は正直だ」と。データで見れば、彼の言っていることって7割以上はウソだともう分かっているんだけど、「心に浮かぶ差別的なことを、プロの政治家はポリコレで隠す。それを気にせずにどんどん口にしちゃうのは、トランプが正直な人だから」という解釈になる。

小田嶋:本音を言う人はいい人で正直で信用できる。普通の社会人なら別にかまわないけれど、仮にもアメリカの大統領で、それってアリなのか。

渡辺:本当は、自分が言いたいけど、言うと叩かれるから言わないできたこと。それをずけずけ言ってしまうトランプに好感を覚えているみたいです。相手の心を考えずにどんどん傷つくようなことを言う人が、かえっていい人みたいに思われているのは奇妙な現象ですけれど……。

小田嶋:心を開いてくれているように見えちゃうんだろうね。

建前ってすごく大事

渡辺:だけど、特に、多様性があるアメリカの社会では、ポリティカル・コレクトネス、つまり「建前」って、すごく大切なんです。建前って、別に悪いことじゃないんですよ。敢えて言えば必要悪です。


 建前を除いちゃって、本当に差別心とかがどんどん出てきたら、社会は危険になります。そう思わないのは、「自分が差別する側にいる」という安心感がある人たちです。自分が集団リンチに合う危険を少しでも想像できたら、建前としてのポリコレの重要性がわかるはず。なのに、今のアメリカでは、国のトップにいる「国民のお手本」の大統領が率先してポリコレを批判しているわけです。ですから、全米の学校で「差別してはいけません」と子どもたちに教えなければならない先生たちが頭を抱えてますよ。

小田嶋:それこそメリル・ストリープがスピーチで話していたことですね(こちら)。

渡辺:そうなんです。アメリカの小学校は大統領の写真を掲げているんです。大統領や候補の演説やディベートも聞くように躾けられます。アメリカの子どもはそうやって育つものなのですが、下品で聞かせられないんですよ、トランプの演説は。

小田嶋:「気取りやがって」と言うんだけど、人間どこか気取ってないと、どこまでも落ちていくよという。

渡辺:たとえたどり着けなくても、高みを目指さなきゃいけませんよね。

小田嶋:実際どう思っているかということはともかく、少し気取って、本来の自分よりは少し高い位置に立ったぐらいのところを目指していこうじゃないでしょうか、と。

渡辺:それが教育というものじゃないですか。外交でもそうですよね。本音で「お前なんか信用するか」とか言っちゃったら、本当におしまいです。

小田嶋:そんな「本音」を装うトランプの演説や物言いって、言葉もロジックも単純な分、変化に乏しくないですか。

渡辺:中身もしゃべり方も、わりと一本調子です。抑揚があって、バラエティーがあって、というものではありません。

小田嶋:就任からもう2カ月か。我々はそろそろ飽きてきているというか、「またかよ」という感じがしてきましたけど、アメリカの人たちは食傷しないのかな。

渡辺:いや、そろそろ飽きてくると思います。彼は見事なマーケティング感覚でラリーやツイッターを活用して勝ったわけですが、その過程で「聴衆に受ける言葉」を選んで残していきました。それらを繰り返すのが選挙では有効でした。


 彼は基本的に愛されたい、皆にちやほやされたい人なので、「こういう言葉をこう言えば、みんなから愛が戻ってくる」という成功体験から、抜けられなくなってしまった。私は、そう見ています。大統領になってもあまりモードが切り替わらないのは、この成功体験のせいですね。でも、中身がないのに表層的に大統領らしくなろうとしたら、物言いに冴えがなくなります。すると、愛が戻ってこなくなる。それは、彼には耐えがたいはずです。

「助さん格さん、逃げますよ!」

小田嶋:ある種の講演芸人に時々いるパターンですね。受けるフレーズを初めにどーんとやってばっと受けて、それがだんだん練れていって見事な講演をするんだけど、こっちから見ていると、「ああ、またやっている」という。

渡辺:それについてですが、私は、トランプが勝つための発言を繰り返しているうちに、自分で自分をオルタナ右翼に洗脳しちゃったんじゃないかと思うんです。もともとトランプは、右寄りの人ではなかった。ところが、大統領選では右よりの発言をしたほうが聴衆から愛されたし、オルタナ右翼の側近が活躍してくれたおかげで大統領選に勝ちました。その効果に自分自身が説得されてしまったんでしょう。

 鏡を見て、「あなたは美しい、あなたは素晴らしいと言い続けていたらそうなれますよ」といった自己催眠をうまくやり過ぎてしまったとも言えます。

 ですが、そろそろ、見ている方は飽きてくると思います。記者会見を見ていると、トランプは冷静さを失いつつありますし。

小田嶋:昨日、俺、ABCで見ていたけど、ひどかったです。記者に向かって「黙れ」「座っていろ」みたいな感じで、返事もせずに去っていったでしょう。

渡辺:彼が名を売った「アプレンティス」は、最後に本人が放つ「ユー・アー・ファイアード(お前はクビだ)」が決め言葉でした。水戸黄門的に、ばばーんと。そこに威厳があったわけですよ。けれども、質問から逃げる姿はかっこ悪いですよね。

小田嶋:水戸黄門の最後で印籠を出せなくて、「助さん格さん、もう引き上げますよ」と逃げちゃうみたいな。

渡辺:それだと水戸黄門の魅力台なしですよね(笑)そういう、かっこ悪いところが見えてくると、有権者も変わるんじゃないでしょうか。ロシア問題もありますし。

 もっとも、たとえトランプが弾劾・罷免されるようなことになっても、今の共和党は泥沼状態です。民主党のほうも打倒トランプでまとまるどころか急進派が党を分断しかけていて、まったく油断はできません。その辺は本を読んでいただければ(笑)。

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著者に聞く
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http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/book/15/101989/031500021


 

経済学で考える「ふるさと納税」

「日経ビジネスベーシック」から

今回のキーワード:機会費用
2017年3月17日(金)
飯田 泰之
この記事は、「日経ビジネス」Digital版に掲載している「日経ビジネスベーシック」からの転載です。連載コラムは「飯田泰之の『キーワードから学ぶエコノミクス』」。記事一覧はこちらをご覧ください。詳しい説明はこちら 。

 経済学の基本原理は、「人々はインセンティブに基づいて行動している」というものです。

 インセンティブ、というと偉そうですが、要は損得感情に基づいて動いているというわけです(「インセンティブ」そのものについては、日経ビジネスベーシックの連載から、こちらをご参照ください)。

 このように書くと、「ああ、やっぱり経済学は金銭的な損得だけを考える、非人間的な学問なんだね」と思われてしまうかもしれませんが、それは誤解です。損得勘定は、お金だけの話ではありません。

 経済学においては、「損」も「得」も、個々の人が持っている“主観的な評価”で決まると考えます。当然そこには心理的、社会的な損得も含まれることになるのです。そのなかで、今回は「損」について考えてみましょう。

 経済学において判断の基準となると考える費用・コストについて、経済学用語と日常用語の間にはちょっとした違いがあります。例えば、3000円の飲み会に出席するコストはいくらでしょう?

 「そんなの3000円に決まっているじゃないか」と思われるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか?


飯田泰之(いいだ・やすゆき)
明治大学政治経済学部准教授
1975年東京生まれ。マクロ経済学を専門とするエコノミスト。シノドスマネージング・ ディレクター、規制改革推進会議委員、財務省財務総合政策研究所上席客員研究員。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。著書は『経済は損得で理解しろ!』(エンターブレイン)、『ゼミナール 経済政策入門』(共著、日本経済新聞社)、『歴史が教えるマネーの理論』(ダイヤモンド社)、『ダメな議論』(ちくま新書)、『ゼロから学ぶ経済政策』(角川Oneテーマ21)、『脱貧困の経済学』(共著、ちくま文庫)など多数。
 飲み会に参加するコストは参加費だけではありません。飲み会に参加せずに残業していたならば得られたであろう残業代、その時間を使って他のこと(デートなり、勉強なり)をしていたら得られたであろう便益……これらの全てを犠牲にした上、さらに3000円を支払ってあなたは飲み会に参加することになるのです。このように、ある選択の裏で犠牲になるモノ・コト・カネを含めた費用が「機会費用」です。

 ちなみに、経済学の入門編では、教師は必ず機会費用の話をすることになっています。

 それはなぜか。もちろん重要だからなのですが、それ以上に経済学者はこの機会費用の説明が大好きなのです。

 経済学の父、というとアダム=スミス(英1723−1790、主著『国富論』)と相場が決まっている…ような気がしますが、スミスの議論と現代の経済学にはかなりの距離があります。その著作も道徳や倫理に関する話題や、今日ではむしろ経営学に分類されそうな話も多く、いわゆる「経済学」という感じはうけません。数学的なモデルを立てて、そこから政策提言を導くという意味での経済学はリカード(英1772−1823)に始まるといった方がしっくりきます。

 リカードの主要業績である「比較優位説」で発見されたのがこの機会費用の概念です。現代の経済学が生まれたきっかけが機会費用の発見というわけですから、なぜ経済学者がこの機会費用の概念を大切にするか、ご理解いただけるのではないでしょうか(学生たちの思い込みの意表を突けるので、話していて楽しいこともあるかもしれませんが…)。

 それはさておき、日常用語の費用は単に金銭的な負担だけを指し、経済学における費用はその裏側で犠牲になるものまで含めて考えているわけですから、むしろ「金銭以外にまで注意を払っているのは、むしろ経済学の方だ」と言ってよいかもしれません。そして、この機会費用に注目すると、ビジネスや政策に関する見方も大いに変わってくるのです。

 例えば、ごく身近で機会費用の意識が役立つのは「会議のコスト」でしょう。

 スタッフをあつめて長々と近況報告をし、参加者のほとんどが発言しない会議。そのコストは日常用語で言うならば「0円」ですね。会議の開催で、直接お金はかかっていませんから。しかし、この会議の存在によって後回しになる業務、誰も真剣には読まない会議資料を作る時間、そういった機会費用を考えると、「(ムダな)会議ほどコストの大きい行事はない」というケースは大いにありそうです。

 見落としてしまいがちな会議の機会費用を忘れないために、会議参加者たちの時給換算した給料総額を、会議の最初に示すというのはどうでしょう。「今回の会議は1時間あたり10万円かかっています」と宣言してから始まる会議ならば、実のある議論をしないと損だという意識を明確化できるのではないでしょうか。そして、それ以上に会議そのものが減少するでしょう。

 政策についても、機会費用の意識によって見えてくる風景が変わることがあります。ここでは、近年拡大著しいふるさと納税を例に考えてみましょう。

 ふるさと納税は、地方部の財政収入にとって重要な役割を果たしていると思われている人が多いようですが、本当にそうでしょうか。

 ふるさと納税で財政収入を集める際のコストは、返礼品の代金だけではありません。ふるさと納税の担当者をおいて、寄付者からの連絡に答え、時に返礼品の確保に奔走する……ふるさと納税は市役所等の職員の時間という機会費用を大きく消費します。寄付件数がさして大きくない多くの自治体は落ち着いて計算してみる必要があるでしょう。よくよく考えてみたら、「担当者に外でめいっぱいアルバイトをしてもらってその時給を役所に納めてもらった方がマシ」という自治体さえあるのではないでしょうか。

[3分で読める]ビジネスキーワード&重要ニュース50

(日経ビジネスベーシック編)
 今さら聞けないけど、今、知っておきたい――。ネットや新聞、テレビなどで日々流れている経済ニュースを読みこなすための「ビジネスパーソンのための入門編コンテンツ」がムックになりました。

 新進気鋭のエコノミスト、明治大学政治経済学部准教授・飯田泰之氏による「2017年の経済ニュースに先回り」のほか、「ビジネスワード、3ポイントで速攻理解」「注目ニュースの『そもそも』をすっきり解説」「日経会社情報を徹底活用、注目企業分析」「壇蜜の知りたがりビジネス最前線」などで構成されています。

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このコラムについて

「日経ビジネスベーシック」から
このコラムでは、「日経ビジネスBasic」に掲載した記事の一部をご紹介します。日経ビジネスBasicは、経済ニュースを十分に読み解くための用語解説や、背景やいきさつの説明、関連する話題、若手ビジネスパーソンの仕事や生活に役立つ情報などを掲載しています。すべての記事は、日経ビジネスの電子版である「日経ビジネスDigital」を定期購読すれば無料でお読みいただけます。詳しくはこちらをごらんください。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/041300033/031500020/?
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/260.html

[社会問題9] 「認知症700万人時代」にどう立ち向かうべきか 避けられない認知症「破壊的増加」今こそ抜本的対策を 落下の日本学
「認知症700万人時代」にどう立ち向かうべきか

避けられない認知症「破壊的増加」、今こそ抜本的対策を

パラシュート無き落下の日本学「首都圏2030」
2017年3月17日(金)
山本 一郎

 形あるものはいずれ終わりを迎える。人の人生も星の一生も始まりがあれば終わりがあるのは世の理であって、この宿命から逃れることはできない。高齢社会と一口に言っても、人が亡くなることは自明として、人がどう終末を迎えるのか、周りがどう送るのかが高齢社会問題に対するひとつの視点だ。幸せを感じて安寧のうちに幕を閉じることができる人を増やせる社会が望ましいことは言うまでもない。人が人として生きていくにあたって、その最期にあたっては人として尊厳ある終わり方を迎えたいと願うのもまた、意識という恵みを持つ存在であるが故の理であろう。
 本稿では認知症が引き起こす社会問題について、主に都市政策にまつわる視点から取り上げる。いままでも、高齢社会を考えるにあたって重要なパートであった認知症を患う高齢者は重要だという認識は強かったが、九州大学久山町研究を通じて2025年に日本で認知症が700万人を超える推計が発表[1]され、概ねその進捗通りの認知症を患う高齢者の増加が確認されるようになると、対策の遅れや不徹底が改めて浮き彫りになる面も出てくるようになってきた。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/022700044/031500002/g1.png?

医療、地域、家庭でどう受け止めるか
 とりわけ、日本社会における認知症の破壊的な増加は、一口に高齢化社会現象と片付けることのできない強いインパクトを持つ。それは、高齢に差し掛かった一個人が生産をやめ社会に富を生み出さなくなることだけでなく、それを支える医療や地域、家族のリソースを消費し続けることになるからだ。介護も終末期医療の問題も、突き詰めれば「人間としての社会性を失いゆく高齢者をどのように社会は受け止めるべきか」という深淵な事実に向かい合わなければならない。
 その立脚点として、少なくとも2012年(平成23年)の段階ですでに自律的な生活に支障をきたしている認知症有病者が日本に462万人存在する[1]。このうち、精神科など医療機関に入院して治療を受けている人数は22万人ほどで、その過半は入院後一か月ないし半年しないうちに退院して家庭や地域に舞い戻ることになる以上、不便を感じながら自宅で家族や施設で暮らしている高齢者がそれだけいるということになる。つまり、だれか健常者の手を借りながら暮らしている認知症患者が生きていくためには、生活力や所得の乏しい本人だけでなく、本来であれば働きに出るなどして生産的な活動をしていたかもしれない誰かを巻き込んで暮らしている可能性がある。
 調査結果によって推計値や結論に差はあるが、厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成25年)では認知症高齢者の家族との同居は61.6%(うち、子供や子供の配偶者の合計は33.0%)、事業者は14.8%である。自立した生活を送れている認知症患者の割合は少ない。老齢に差し掛かって伴侶・配偶者からの支援(26.2%)以外の人の手を借りて暮らしている高齢者は、年金など社会保障の収入とは別にそれだけの生産可能人口からの支援を受けながら生活していることになる。逆算すると、2012年すでに300万人ほどの日本人が認知症患者の生活支援を何らか行いながら暮らしており、2025年にはそれが500万人以上になるのであって、人口のおよそ4.6%が認知症患者を家族に持ち生産性を発揮せずに患者本人が亡くなるまで暮らしていく構図が浮かんでくる。
 一連の調査において、特に認知症との関わり合いの深い疾患として糖尿病が挙げられている。認知症有病率が2012年以降一定であると仮定した場合、推定認知症患者数は2025年に675万人とされる一方、将来糖尿病の頻度が2012年以降20%上昇すると仮定した場合、将来の認知症患者数は2025年には730万人に達すると推計されている[2]。また、主たる認知症の症状であるアルツハイマー病の患者数は、各年齢層の認知症有病率が一定と仮定した場合は2025年466万人と推計され、将来の認知症患者の過半がアルツハイマー病となる予測になり、認知症予防や治療にあたっては、このアルツハイマー病由来の認知症状を緩和したり、何らかの改善を促す施策を積極的に取らなければ大量に発生する認知症患者由来の高齢者問題が続発してしまうことになる。まさに認知症対策の策定と実施は高齢化する日本社会の急務と言えよう。
 また、軽度認知障害(MCI)を認知症予備軍として見込む調査も多い一方、かかりつけ医や物忘れ外来など軽度認知障害である所見がないまま、何となく家族が高齢者の物忘れに認知したころには相当程度の認知症状の進展が起きているケースも無視できない割合存在する。特に若年性認知症では本人の自覚もないうちに急速に進む症例は多数報告されており、効果的に把握したり、症状を認識して防ぐ治療を行うということがなかなかむつかしい。
 もっとも重要な政策の骨子は、2015年(平成27年)に取りまとめられた「認知症施策推進総合戦略」、通称「新・オレンジプラン」だ[1]。ここでは「認知症高齢者等にやさしい地域の実現には、国を挙げた取組みが必要」としたうえで、国家が策定する認知症対策の7つの柱に沿った政策パッケージを構成しているのが特徴であり、全体としては認知症に対する理解を促す普及・啓蒙と、認知症の事前・事後の治療など医療に関する政策支援、そして認知症患者を家族に持つ人たちに対するケアという色分けがなされる。本稿で前回述べた通り、認知症を発症後、本人が意図せず犯罪を犯してしまうケースが後を絶たないことも踏まえて、医療、地域、家庭で高齢者を受け止める中で認知症問題が一際クローズアップされざるを得ない。
 生まれたばかりの赤ちゃんがいきなりは社会性を備えないのと同じように、これから寿命を全うしようとする高齢者も死に向けて様々な機能を失いながら生活している。何らか保護者の世話を受けなければ生活が立ち行かない。認知症の進行の程度によっては社会性を完全に失うような状況にも容易に陥るうえ、本人の自覚症状の有無にかかわらず認知症患者が家族にいるだけで相当な家計的負担を強いる。
 子供の発育状況に個人差があるように、認知症の原因や経緯も様々であって、認知症患者を保護する家族の受け入れ度合いや症状の進行スピードも異なるため、認知症患者がいるからといって介護事業のようにどこまで踏み込んでよいかの線引きが極めてむつかしい。それゆえに、認知症対策には介護問題とは別の体制が必要とされる。2015年(平成27年度)予算案から盛り込まれている内容から見ると、医療・介護専門職による認知症初期集中支援チームの配置、医療・介護連携のコーディネーター(認知症地域支援推進員)の配置等、早期診断を行う認知症疾患医療センターの整備と、生活支援コーディネーターの配置等に予算が大きく振り分けられている[4]。家族のいない認知症患者に対するケアを行うためにも民生委員やコーディネーター、認知症サポーターといった制度に従事する人たちを増やすことは急務だが、そのほとんどは薄給か無報酬でのボランティアに近い状態であって、人数的な充足も、一人当たりの活動時間の確保も、認知症その他に対るケアのスキルや知識も、爆発的に増加する認知症患者の前には追い付かない状況に陥りかねない。
「to be」と「can be」をいかにすり合わせるか
 認知症対策を考える上で、特に問題となるのは認知症がもたらす生活上の機能低下がどのレベルで発生するかである。まさに政策上の「to be」(おこなうべきこと)と「can be」(起きるであろうこと)のすり合わせが求められる局面であるが、日常生活動作(ADL)レベルと要介護認定のレベルで調査する場合、脳卒中などの疾病の後遺症やがん治療中の患者などと並行してスパイラルな機能低下を起こした高齢者が不可逆に症状を悪化させ、高次脳機能障害を引き起こす状況が多数報告されている[3]。現状では、厚生労働省が介護度レベルを決定するための「1分間タイムスタディデータ」が基準となっており、根拠となっているのは高齢者約3,500人を対象として48時間にどのような介護サービスがどれ位の時間をかけて行われたかを調べて算出したデータが中心である。
 しかしながら、臨床例でしばしば報告されるのは「認知症の具体的な進行度合いと、介護保険で認定されるスタディデータが必ずしも一致しない」ことにある。簡便な例では、判定員という見知らぬ人物からヒヤリングされる痴呆症高齢者が、外部の刺激を受けることでその受け答えや動作テストのときだけ「シャキッとして、普段できないこともできてしまう」ことや、日常で困っていることが口頭では「できる」と説明してしまい要介護認定のレベルが下がる傾向にある。それ故に、要介護認定のレベルで認知症問題という人間の内面、脳の機能を調査しようと思っても、なかなか実態にたどり着かないという問題を引き起こす。
 認知症の進捗度を示す日常生活自立度と、介護保険を受ける上で必要な要介護認定のレベル判定とで差がある以上、本来であれば心・知覚能力と身体・生活能力とを分けて高齢者を判断し対策を打ってきた従来の政策方針を微修正する必要が出てきているのだ。
 それ故に、厚生労働省が策定した「新・オレンジプラン」の中では、日常生活自立度のランクに基づいて認知症の進行度合いを示すアプローチを「発症予防」「発症初期」「急性増悪時」「中期」「人生の最終段階」としたうえで、医療、地域、家庭の役割を明確にしながら対策を立てるとしている[4]。認知症の早期鑑別の重要性についてはかねてから指摘がなされており、とりわけ「物忘れ外来」で対応されることの多いBPSD(認知症の行動・心理症状)については、入院の95.2%が患者本人での対応が困難で生活に支障をきたすため診療即日入院とする措置が取られる。
 一方で、入院経過に伴い認知症症状が快癒するケースも少なくなく、入院1ヶ月時点でBPSDはほぼ改善し、BPSDの治療に要する期間は約1ヶ月が妥当と考えられるため、入院後すみやかに退院に向けてサービス調整を行う必要がある[5]。妄想や幻覚、強い抑うつ症状と不快感などNPIスコア(Neuro Psychiatric Inventory)の改善は入院後、適切な投薬治療が行われれば83%から87%程度の患者の精神状態は快方に向かう。その人たちは改善が見られれば退院してくるものの、処方される薬を飲み続けなければ再び深刻な認知症状に陥ることになるため、退院後も誰かがケアしてあげなければならない。すなわち、認知症を社会的に受け止めるためにはどうしても医療機関だけでなく家庭や地域の受け皿が必要になるのだ。
 しかしながら、医療機関として入院期間が満了したとして認知症高齢者を受け入れる家庭にはその対応余力がないケースが多い。実際に、先の厚生労働省分類における「急性増悪時」から「中期」以降の認知症患者を家庭が受け入れるとき、極端に困難が訪れる事例報告はむしろADL(日常生活動作)よりもIADL(手段的日常生活動作)に顕著に表れる。認知症患者を抱える家庭の大きなストレスは介護そのものよりもこのIADLの欠落や、認知症状が進んだ結果としての人格の喪失や徘徊に対するケア、さらには家庭内でところ構わず行ってしまう排泄の処理だ。人としての尊厳を失わないうちに進行した認知症患者を適切に対処や処置する仕組みが求められる点は、本人だけでなくそれを支える家族のためであって、それが2025年には500万人以上の苦悩を引き起こすことは目に見えている。
要介護認定から漏れ、経済的に逼迫、合併症も
 すなわち、日々の活動の中で歩いたり、ベッドから起き上がる、歯を磨くあたりから、排泄、入浴ぐらいまでであれば実施可能だという認知症患者は多数存在する。これらは、先に述べた厚生労働省の要介護認定のレベルからすれば、要介護度さえつかないレベルで日常生活は可能と判断されることになる。認知症がある程度進んでいると見られるのに、要介護認定がつかずに行政の目が行き届かなくなるケースが多い理由はここにある。実際に、事例研究でも80代女性の日常生活に不便はないと判断されたにもかかわらず、買い物に出かけられず栄養失調になるケースは事欠かない。高齢者本人が「できる」けれども日常的に「している」とは限らないうえ、バランスの良い食事を摂れているかや医師から処方された服薬が決められた通り飲むことができるかは、実際に生活の中に立ち入ってみない限りなかなか判然としないのだ。老々介護の現場においては、本人も配偶者も一緒に認知症になる悲惨なケースは特にケアが必要だと考えられる。

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 加えて、人間が社会生活を送るうえではこれらの初歩的な生活動作だけでは暮らしていけない。電気代ガス代水道代は払わなければならないであろうし、買い物や口座管理といった、普段使いのために必要なお金の出し入れを本人が意志として充分に実施できる状況にない限り、文化的な生活を送る健常な人間とは言えなくなってしまうのも現代社会の特徴である。認知症患者はこの急性増悪期以降、個人差もあるが数か月から一年半程度でIADLの機能を喪失する可能性が指摘される。精神病床における認知症入院患者に関する調査概要では、認知症が原因として入院せざるを得なくなった高齢者454名を対象に実施した調査の結果が事態の困難さを示している[6]。すなわち、食事の用意が困難と判断された高齢者が95.4%にのぼったのをはじめ、金銭管理が困難と判断される高齢者が97.4%。家事全般が同92.9%、薬の管理が96.0%である。
 認知症以外の合併症を患っている高齢者は447名中388名の86.8%にも及ぶ。もっとも認知症状との合併症を起こしているのは上位から脳血管障害、高血圧、肺炎の順であり、基礎的な生活疾患である糖尿病、心疾患を含めると認知症を押し留めるにも医療で措置を行うには限界があることが良く理解できる。認知症の進行は、重度な他の合併症を呼び込んでいるということでもあり、円滑で安定した社会生活を送っていても糖尿病や高血圧その他の生活習慣病疾病の慢性化を伴って認知症にいたり取り返しがつかなくなるケースや、脳内出血など脳に関わる重篤な病気の後遺症として高次脳機能障害を経て認知症に至るケースも充分に想定する必要があろう。
 一方、認知症における割合が増加していくことが見込まれるアルツハイマー型認知症について、現状では決め手となる寛解、治療、予防の手段が確立していない。アルツハイマー型認知症による認知症の症状が出現する場合は、その出現の十数年前から脳内では特定のタンパク質の異常な蓄積が既に始まっている。自覚症状もなく、定期的な医療検診でアルツハイマーの初期症状を見つけることは極めてむつかしい。具体的に認知症と診断される時期には、相当の神経細胞が機能不全に陥り脳の委縮が相当程度進んでしまっていると考えられている[7]。そうである以上、今後激増が予想される認知症患者の、生活習慣由来であれアルツハイマー型であれ、これらの認知症予防は大変に困難であって、立てるべき対策も極力生活水準を維持するためのアプローチと受け皿づくりでどうにかしなければならない、という結論にならざるを得ないのが実情なのだ。
 認知症のケアや緩和で問題をハードランディングさせることなく対応を図っていくことが政策上重要な観点となる一方、具体的に生活能力を失っていく高齢者を地域や家庭で受け止めると言っても相当な困難を伴う。排泄が不可能になったり、徘徊が始まったなどの症状が具体的に出る患者数が、都市部を中心に今後激増することが予想される[8]。
 首都圏各都県および自治体でも、各々保健衛生プログラムの一環として認知症対策を目的とした調査や政策プログラムを実施している。具体的な事例として、東京都でも独居高齢者でもある認知症患者のケーススタディを公開しているが[9]、近隣住民との深刻なトラブルが認知症特有の妄想や周囲に頼る人がいないなどの事情で地域の問題に発展しかねない事例が後を絶たない。
人身事故、その責任と賠償…対策は急務
 また、首都圏でも地方同様に比較的事例として見られた認知症ドライバーが引き起こす悲惨な事故が続発していることに加え[10]、都市型の認知症対策で必須とされているのは鉄道など公共交通機関を巻き込んだ人身事故が頻発する可能性は捨てきれない。最高裁判所まで争われた[11]事例では、徘徊を頻発するなど重篤な認知症患者を介護する家族に賠償責任があるかは重要な論点となった。最高裁の判決では、生活状況などを総合的に考慮して決めるべきだとする初めての判断が下されたものの、認知症患者がどのような事故を起こしても必ず家族が監督義務者に当たらないと司法の判断が下されるかは微妙なところだ。
 行政としては、認知症患者が起こす事故そのものを減らしていかなければならない。事故に巻き込まれて尊い犠牲を払わされる本人や遺族はたまったものではない。先ほど警察庁は高齢者ドライバーの事故が相次ぐことから、免許更新の際の認知機能検査に関する結果を公表している[12]。認知機能検査を受けた運転免許保有者の高齢者約166万3,000人のうち、判定の結果「認知症の恐れ」があるとされた第1分類は暫定値約5万1,000人あまりで全体の約3.1%。調査が厳格化された効果もあるが、2010年の約1万6,000人と比べると実数で3倍以上、免許保有者に占める割合で言えば実に70%増という結果になった。
 この警察庁が自動車免許更新の際に高齢者に対して行う認知機能検査は、極めて簡単なものである[13]。絵を見て覚えているものを答えたり、指定された時刻を時計に書き込むなどの設問が中心であって、これが素早く解けなければ日常生活自立度は極めて低いものと判断される。そのぐらいハードルを低くしても3%の高齢者ドライバーが問題を解けないというのでは、自動車が容易に走る凶器になってしまう危険性は否定できない。
 東京都の事例では、これらの危険な高齢者ドライバーの分類を含めて、何らかの認知症状のある高齢者や見守りまたは支援の必要な認知症高齢者の実態調査を継続して行っている[14]。2013年(平成25年)の調査では、都内で何らかの認知症状を持つ高齢者数は378,192人(前回調査2010年から3年で16%増)、東京都の高齢者人口に占める割合は13.7%であり、全国ペースに迫る勢いで増加を続けている。増加ペースをコホート分析してみると、2030年には東京都の高齢者が現在のペースで増えた場合、65歳以上の高齢者人口は3,497,774 人であり、このうち20.8%、約73万人が認知症状を持つ高齢者となると予想される。この高齢者を支えるために45万人の労働人口が介護やケアのために動員される。
 首都圏全体で言えば、2030年の高齢者人口は一都三県で990万人(神奈川:2,557,863人、埼玉:2,016,056人、千葉:1,821,515人)。高齢化率は千葉の31.4%をピークに平均28%前後になると予想される。ここに、何らかの認知症状を持つ22.1%の高齢者がいるとき、首都圏だけで約219万人が存在する。2025年に700万人、2030年には820万人いると見込まれる認知症患者の4人に1人が首都圏で暮らし、認知症患者の生活を支えるために115万人が何らかの社会保障系の仕事に従事したり、家庭で介護をするという生活を送ることになる。
 問題は、東京都や首都圏がそのような都市設計になっているのか、という点もさることながら、社会的、産業的、経済的にそのような状況に陥って持続可能なのかという根源的な問いがある。単純に確率の問題として、家庭のある認知症高齢者が行方不明になるような徘徊や路上での事故に遭ったり引き起こす割合は年間約45人に1人だが[15]、母数が2030年に認知症219万人となったとき年間4万7,000人ほどの高齢者が何らかの問題を起こしたり行方不明になったりする。毎日130人以上の高齢者が首都圏のどこかで何かを引き起こす計算になり、これを防ごうとするならば社会制度やインフラに抜本的な対策を打たなければ大変なことになるのは容易に想像がつくだろう。
 単純に高齢社会だから交通機関や歩道をバリアフリーにすればよいだろうというだけの問題ではない。都市に住む認知症高齢者問題に悩む家庭に対して、監視や保護を適切にできる社会制度やインフラ、仕組みを提供できるようになって初めて「都市計画における高齢化対策」が可能になるといっても過言ではないのだ。
難易度高い「独居老人」対策、求められる集住化
 しかも、これは配偶者や子供夫婦など何らかの家庭内での手助けや監視がきちんとあっての数字である。帰るところがあってケアを家族にされてもなお、進んだ認知症患者は問題を起こすのであって、一人暮らしの認知症高齢者が目の行き届かないところで何をしてしまってもおかしくはない。2030年ごろの高齢者問題は家族から切り離された独居老人の認知症対策というさらに難易度の高い問題に直面することになる。
 現在、東京オリンピックにおけるレガシーについて議論が重ねられているが、実際の東京の未来を想像したときにこれらの高齢者のケアと、それを支える労働力の効果的運用が可能になるような都市設計を行わない限り、点在する空き家に住む独居老人の認知症対策が後手に回ると悪夢を引き起こす危険性は早くから考えておかなければならない。
 また、高齢者対策を行うための社会制度・ソフトウェアとして、しっかりと意志表示できる状況から行政ときちんと確認を行う事項を把握しておく必要は出てくるだろう。今後、予算的な事情もあり過疎地域における福祉系の公共サービスは切り下げざるを得ない状況も起き得る。その際に、点在する空き家対策のために公共サービスを行える施設への転居を余儀なくされる高齢者も少なくない数出よう。警察庁の発表通り、免許更新のたびに3%以上の自動車運転に適格でない高齢者が出たときの免許返納と、住む地域によっては自動車なしには買い物にもいけない生活の不便を強いるときの支援策など、自治体レベルでの政策では到底追いつかない、あるいは国、都県、自治体の連携で対処するべき事例が発生する際に、どのように持続可能な公共サービスを設計するかは、まさに首都圏が2030年に向けて大きく問われる政策分野なのだ。
 実際には、政策面での結論としてはひとつしかない。持続可能な公共サービスが展開できるエリアと、公共サービスが行われない居住をお薦めしないエリアとに分けていくことだ。人の住まない生産性のない地域を切り捨てるのかという批判は承知の上で、人が活動し機能的にやっていける地域にのみ公共サービスを展開できるような、人口減少時代の社会制度を実現し、採算に合い持続可能なところまで生活圏を限定しない限り、いつまでも大切な財源を捨てる政策ばかりが温存されることになるだろう。
 また、認知症患者については医療ケアの効率化のためにも集住可能な仕組みを行政が主体となって行える環境づくりがさらに重要になっていく。認知症患者の尊厳と、彼らが最後まで豊かに暮らせる仕組みを並立させるには、結局は限られた財政と労働人口をより効率的に使い、適切なケアが充分に行き渡らせられる仕組みが必要だ。生活の自立が難しくなった高齢者を医療施設に近い集住拠点へ引っ越しする制度作りは不可欠である。
 そして、この問題を厄介にするのは社会的な独身傾向が独居老人の割合を高からしめ、医療、地域、家庭の鼎状の仕組みのひとつが欠けてしまうことにある。次回本稿では日本人男性の3人に1人までになる「生涯未婚」のインパクトと未来の首都圏について論じる。
<参考リンク>
[1] 認知症施策推進総合戦略の概要
[2] 日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究
[3] 【参考】総合戦略に関連する平成27年度予算(案)
[4] 介護保険における要介護疾患と要介護未認定期間(健康寿命)
[5] 中医協(平成23年度) 精神科医療について
[6] 精神病床における認知症入院患者に関する調査概要
[7] 介護予防マニュアル(改訂版)本文について
[8] 「要介護者数・認知症高齢者数等の分布調査」の結果について
[9] 事例:一人暮らしの認知症
[10] 認知症ドライバーの事故で「家族は崩壊する」:PRESIDENT Online - プレジデント
[11] 認知症JR事故、家族に監督義務なし 最高裁で逆転判決:朝日新聞デジタル
[12] 免許保有の高齢者「認知症の恐れ」5万人超|佐賀新聞
[13] 認知機能検査マニュアル 警察庁
[14] 「要介護者数・認知症高齢者数等の分布調査」の結果について
[15] 警察庁 統計資料


このコラムについて
パラシュート無き落下の日本学「首都圏2030」
少子高齢化が進み、人口減少時代を迎えた日本。課題は多く、即効薬はない。しかし、手をこまぬいているわけにはいかない。パラシュートを付けずに落ちるに任せるわけにはいかない。まずはリアルなデータを基に現状を見つめ直すところから始めよう。例えば、声高に叫ばれる「地方の衰退」だけでなく、「首都圏の老朽化」も深刻だ。貧困、孤立がもたらす「高齢者犯罪」などもまた、暗い影を落とす。もう、浮かび上がってきた難題から目を背け、やり過ごそうとするのはやめよう。打つべき手を、打つために。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/022700044/031500002/


http://www.asyura2.com/12/social9/msg/772.html

[社会問題9] 息子の志望校合格が、躓きのきっかけだった 音まで味わう手料理、買います オランダ下院選、トルコ問題が流れを変えた かすむ
息子の志望校合格が、躓きのきっかけだった

ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」

2017年3月17日(金)
山本 直人

「よく、この程度でうちの会社に入って来られたな」

 3月は人が動く。街には新生活のスタートに向けた広告が溢れて、週末ともなれば都心の店舗には人が群がる。そして、会社員にとっては異動や昇進という大イベントもある。

 恒例の人事通達を告げる社内システムの画面を見ながら、Bさんは心の中で呟いた。

「そうか、Hさんは“あの街”に行くのか」

 現在課長職のBさんは4月から次長に昇進する。そして、Hさんはかつての上司で今年で55歳になる。Hさんが異動する支社は、一昨年新たな新幹線が開通した北陸の都市だ。

「なんか不思議な縁なのかな……」

 Bさんがそう考えるのには理由があった。それは、今から7年ほど前に遡る。Bさんにとっては忘れられない経験があったのだ。

 その頃、Hさんは営業セクションの課長でBさんはいわば「番頭格」の部下だった。課の業績は比較的安定していて、Bさんにとっては居心地の良い部署だった。

 Hさんは元々はバランス感覚の優れた人で、仕えていて大きな不満はなかった。ところが、ある時期からHさんに妙な「癖」のようなものが強くなった。

 新入社員などの若手に対して、やたらと辛く当たるのだ。Bさんのように30代半ばの中堅には普通に接しているのに、若手にはきついことを言う。

「よく、この程度でうちの会社に入って来られたな」

 そんな言いぐさはまだいい方で、ある時、きちんとした挨拶ができなかった新人にこんなことを言った。

「いったい、どんな育てられ方をしてきたんだよ!」

 この時は、言われた新人も顔色が変わった。慌てたBさんたちが、「いや、いろいろ忙しくて気が回らなかったんでしょう」と諫めたほどだった。

 何で変わってしまったのか?部下や同僚も首をひねるばかりだったし、Bさんにもその理由はわからなかった。

「育成下手」という烙印

 そんな状況が続けば若手の間では不満が募るし、「どうも、やりにくい人だよな」という評判は広まっていく。

「Hの下じゃ、若手は伸びないよ」

 上の方からはそんな声が聞こえるようになった。実際にパフォーマンスの低い部下が、異動したとたんに成果を上げるケースもあった。

 人事部もHさんの部署に新人を配属するのを避けるようになり、課の平均年齢は上がっていく。また、全社的に人材育成を重視するようになり、課長職の評価においても、育成力に重きが置かれるようになった。

「お前のところは、若手が育たないな」

 上からそう評価されてしまえば、管理職としては致命的だ。だからHさんが本社に異動しても、周りは驚かなかった。見た目は横滑りだが、明らかに第一線を外れた感じだった。

 そして、後任はBさんとなった。

 異動に当たっては、いろいろと引き継ぎがある。当然のように「メシにでも行くか」ということとなった。

 Bさんは、Hさんに確かめたいことがあった。そう、「若手に辛く当たる」理由である。

 それまでも、Hさんが叱った若手のことをかばって「いつもはきちんとやってるんですよ」とフォローすることはよくあった。そういう時、Hさんは「わかってるよ」と言う。しかし、若手を前にすると感情が抑えられないように見えるのだ。ただ、「なぜですか?」とは聞けなかった。

 その晩も、なかなかその話は切り出せなかった。Bさんが逡巡していると、Hさんが唐突に言った。

「そういえば、お前はX大学だったよな?」

 「はい」と答えて、Bさんは次の言葉を待った。

きっかけは息子の中退だった

 Hさんが話し始めたのは、彼の一人息子のことだった。それは、4年前にX大学の付属高校に合格した、という話から始まった。

 X大学は私立の名門で、社内にも出身者が多い。Hさんも都内の私大出身だが、X大学の方がいわば「格上」だ。

「いや、本当に嬉しかったよ。オレを超えてくれたと思ってさ」

 Hさんは、飾らずにそう話した。若手に苛立っているような時とは別人のようだった。

 そして、その話は意外な展開を迎える。

 家族中で喜んだ息子さんの合格だったが、1年生の途中で様子がおかしくなった。学校に行きたがらなくなり、結局中退したのだという。いじめのようなものがあったわけでもなく、学校も熱心に対応してくれた。

 勉強についていくのは結構大変だったらしいが、それだけで中退に至ったとも思えないという。「理由については、今でもはっきりしないんだよな。"青春の病"みたいなものなのかな」とHさんはこぼした。

 当然だが、その時は相当ガッカリしたようだ。それは、そうだろう。期待が高かっただけに反動も大きいはずだ。

 そして、その頃から、若い社員に苛立ちを感じるようになったのだという。まだまだ仕事は穴だらけなのに、能天気に一人前のような顔をしている元気な若手を見ると、悔しさとかも哀しさともつかない妙な感情が高まってしまったという。

「ある種の“嫉妬”とか、もしくは”八つ当たり”みたいなものなのかね」

 自分で分かってはいても、どうしようもなかったらしい。そして、「育成下手」との評価を受けていることも、十分にわかってはいた。

「よく『仕事を家庭に持ち込まない』って話は聞くけどさ、俺の場合『家庭を仕事に持ち込んじゃった』ってことなのかな」

 「だから、今回の異動も仕方ないんだよ」と悟ったように語るHさんに対し、Bさんは何も言えなくなってしまった。

息子に投影した自らのコンプレックス

「でも、大学には進学できたんだよね」

 中退した息子さんだが、その後一念発起して高卒認定の試験に挑戦。遠回りしたものの、今年北陸地方のとある大学に合格したそうだ。

「まあ、この話をするのは初めてだったし、これからも、話すことはないだろうな」

 Hさんは、別れ際にそんなことを言った。他言してくれるな、という気持ちもあったのかもしれないが、もちろんBさんも話すつもりはない。というよりも、誰にも話せないなと思う。

 そういえば、とBさんは思い出す。以前、X大学出身の新人が配属された時のことだ。Bさんと打ち解けて話す様子を見た後で、Hさんがポツリと言った。

「いいなあ、X大は仲が良くて」

 いまにして思うと、その言い方に妙な棘を感じたのだが、きっと、息子さんが岐路に立っていた時期だったのだ。

 息子が自分を超えた嬉しさと、そこからの落胆。彼の中のある出身大学へのコンプレックスと、周囲への嫉妬心。それらが絡み合って相当にこじれて、若手に対する厳しい言動として「噴出」したのだ。

 Hさんの息子は、きっと、もう大学を卒業して社会人になっているはずだ。そして、ふと自分のことを振り返れば、息子の高校受験が来年に迫っている。X大学の付属高校や、さらに格上の学校にも挑戦するという。合格してほしい気持ちはもちろんだけれど、どんな結果でも受け入れてやりたいと思う。

 学校の”ブランド”が、その後の人生に影響を与えることは多少はあるだろう。しかし、「どの学校を出たのか」という経歴だけで、社会に出てからのキャリアが決めるわけではない。会社員を30年もやっていれば、そのくらいのことはよくわかる。同じX大学の出身者でも、順調にキャリアを重ねる者がいる一方で、不遇をかこつ者もたくさんいる。

 社会で求められていることは、「今の自分の力」を磨き続けることだ。「未来を見つめる意欲」は、過去の経歴から得られるものではない。

 そういう、人生で本当に大切なことをいつか息子にも伝えてやりたい。そんなことを考えながら、BさんはHさんのことを思い出す。彼はこの会社でのキャリアを、自分の期待に背を向けた息子が暮らした街で終えることになるのだろう。

 Hさんはあの後、自分自身の中にある葛藤を上手に消化できたのだろうか。息子さんとの関係は、どうなっているんだろう。穏やかな気持ちで過ごされればいいな、とBさんは改めて思った。

■今回の棚卸し
 妙に学歴にこだわったり、気にしたりする人がいる。就職活動から、昇進あるいは商談の成否などに関し、意に沿わない結果だった原因を出身校に求めるケースが多いように思える。

 出身校のブランドが、人生に何ら影響を及ぼさないとまでは言わない。ただ、出身校のおかげで被ったと感じられるデメリットの数々は、その原因が別にもある場合が少なくないのではないだろうか。また、同様に、得られたと思っているメリットも、単なる自己満足のレベルに過ぎないかもしれない。

 はっきりしているのは、他人の学歴を羨んだとしても、自らの学歴を誇示したとしても、得られるものはさしてないということ。場合によっては、自分の首を絞めることになる。

 また、消化しきれない自分の思い、もしくは自己満足感を子どもに強く“投影”しても、子どもが必ずしも、その期待に応えてくれるとは限らない。異なる道を選んだ場合に双方が負う心の傷は、想像以上に深くなるかもしれない。

■ちょっとしたお薦め
 「親と子」は、歴史においても文学においても、繰り返し取り上げられるテーマだ。誰しも、自分の親、もしくは子との間には様々な思い出や葛藤がある。特に「父と息子」「母と娘」は、同性ならではの複雑な綾もあるだろう。

 「父子」をテーマにした作品の中でも、有名なのがツルゲーネフの「初恋(はつ恋)」だ。若い頃に読んだ人も多いだろうが、時を経て、自分の人生を振り返りながらいま読み返すと、また異なる思いが行き来するかもしれない。

このコラムについて

ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」
50歳前後は「人生のY字路」である。このくらいの歳になれば、会社における自分の将来については、大方見当がついてくる。場合によっては、どこかで自分のキャリアに見切りをつけなければならない。でも、自分なりのプライドはそれなりにあったりする。ややこしい…。Y字路を迎えたミドルのキャリアとの付き合い方に、正解はない。読者の皆さんと、あれやこれやと考えたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/032500025/031000025


 


音まで味わう手料理、買います

遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」

恐るべしママ友ネットワーク、新ビジネスを熱望
2017年3月17日(金)
遙 洋子

ご相談

将来、人間が働かなくていい時代が来る。そんな話題をよく耳にするようになりました。働かなくてもいいと聞けばうれしいですが、必要とされないと考えると、不安にもなります。「私だからできること」を身につけたいと思いますが、それが何かは見えてきません…。(20代女性)

遙から

 先を読め、社会のニーズをつかめ。ビジネスの世界でよく聞かれるフレーズだが、さて、社会のニーズとは何か。真正面から世間の人々に聞いて回って、ニーズなるものがわかれば、皆、ベンチャー起業で大成功!となるはずだが、世間はそれほど甘くない。多くの人に聞けば聞くほど、ニーズは十人十色で、かえって答えは見えにくくなる。そんなケースも少なくないだろう。

 そんなときは、逆を行ってみてはどうか。自分のニーズをとことん掘り下げてみる。自分が求めていることは何か。なぜそれが必要なのか。何かで代替できないか。代替できないなら、どう実現すればいいのか――。そんなことをこれでもかと考え抜いてから、周りの人に聞いてみる。すると、「うわー、それ、私も欲しい!」といったところにたどり着いたりする。「漠然と皆が求めていそうなもの」より、「誰かが猛烈に求めているもの」のほうが、きっとニーズは強いのではないか。

 そんなことを考えたのは、私がまさに、強烈に求めているものがあり、それがビジネスとして提供されるなら、しっかりお金を払って利用させていただきたいと思っているからだ。

 話が何やら先走ってしまったので、少々時間を戻して、私の「外注遍歴」からお話ししたい。

 かつて私は20代の頃から掃除・洗濯は外注していた。自分でなくてもできる仕事は徹底的に他人に代替してもらってきた。当時、家政婦協会さんしかなく、あるいは大手掃除メーカーの大規模掃除や徹底的にガスレンジを綺麗にするといった専門的なものしか選択肢がなかった時代だ。

 私は近所に住む主婦の方たちに時給1000円でそれらの仕事をお願いしてきた。今は、大手もベンチャーも、"家事代行"を打ち出した企業が多くの支持を集め、人手不足に悩むほどと聞く。文字通り"家事の担い手“を必要とする時代になったのだ。

 私個人が必要とするものが、やがて時代が必要とするビジネスになった。そして今、私個人が必要とするものは、"手作り料理の担い手"だ。

手料理、お願いします

 正直に言おう、私はもう、お料理をするのが面倒になった。一人暮らしで忙しい日々が続くと、気づけば冷蔵庫には腐りかけの野菜と、いつ冷凍したか覚えていない肉や魚が居座っていたりする。もったいないけれど、このままではいけない。そう思って処分した数日後、疲れ果てて帰宅した日に冷蔵庫を開け、今度は何もないことに気づいて呆然とする…。

 そういうことを幾度も経験して、私はどうすればいいのか考えた。そして、事務所のスタッフの女性にお願いした。「募集をかけて。主婦の力が必要なの」と。

 結果、募集をかけるまでもなく、スタッフのママ友が即、「子育ても終わったし」と、来てくれることになった。お願いしてから一週間もたたないうちに。

 改めて、"ママ友"というネットワークの強靭さに驚いた。実は近所に私の幼なじみも住んでいる。無職だ。その女性に頼むと「忙しい」と断られた経緯があった。子供の頃からの知人であっても、あっさりと私の願いは却下された。が、ママ友ネットワークでは、「OK」と即動いてくれる女性がいた。ママ友とはいったい何だ!?

 改めて考えるに、ママ友とは助け合いネットワークなのではないだろうか。お互い、子育て中、助け合わないとやってこれなかった。その、助け合い運動の流れの中で、その対象が子供から私という大人に変わっただけで、ママ友ネットワーク内では、"頼まれたら、即、助ける"という法則が働いているようだ。

 それが意味するものとは、その背景にある"子育ては大変"ということなのだと私は理解した。

ママ友たちの絆

 ママ友たちの強靭な結びつき、信頼は、自分の子供を互いに預けられる信頼であり、四の五の言わず即動くフットワークの軽さにある。そういうネットワークが、我々シングルの女性には、ない。

 ある人もいるだろうが、少なくとも私には、ない。

 働く時に作れるネットワークとは、あくまで仕事を任せられる信頼であり、信用だ。そこに"四の五の言わず駆けつける"精神はない。逆に「プライベートには踏み込まない」が徹底されてもいる。そして、なにより、いわゆるキャリアウーマンたちは忙しい。他人のことなど助けている時間があれば、ホットヨガに行かねばならないのだから。

 その希薄な関係性の中でふと孤独感らしきものを感じ、ママ友たちのネットワークの存在に素直に感心し、敗北感らしきものを味わった。

 そうしてやってきてくれたママ友主婦さんは、期待を裏切らなかった。そのお料理のすごさと言ったら、素晴らしいとか美味しいとかそういう問題ではない。

 キッチンから流れてくるお料理の音にまず驚く。

 ずーーーっと続くのだ。「トントントン」というまな板と包丁の音が。

 お料理を見たら分かるのだが、根菜類から葉野菜まで野菜たっぷり、タンパク質も肉、魚、大豆系と、多種多様だ。お料理とは"切る""皮をむく"作業なのだと、その終わらない「トントントン」で改めて気づかされた。もし、にんじんや大根を自分の歯でそのまま齧れば、誰も切らなくていい。トントントンとは、私の歯の替わりを他人がしてくれている行為だ。煮る焼くなどはレンジやIHがやってくれる。味付けもそう長時間かかる作業ではない。"お料理を作る"とは、"トントントン"を数時間、聞き続ける行為なのだと知った。

 宅配ビジネスで、各種おかずが盛られたプラスチックケース入りの弁当がある。あれを見て、「わあ、食べたい」という人がどれほどいるだろう。いや、いる。おそらくいる。だからあのビジネスが成功している。だが、お料理って「はい」と渡されて「おいしい!」となるのではなく、トントントン、の音と、やがて、グツグツグツと煮る音と、キッチンから流れてくる生姜やニンニクの香りなど、創作過程も含めて、"お料理"なのだと気づかされる。だから手作り料理はおいしく感じるのだ。時間をかけてその作品が出来上がるまで、ずっと"お料理"なのだ。

プロ主婦は違う

 出来上がった料理を見てまた驚愕し、同世代の働く友人に電話した。

 「自分でお料理して、何種類の野菜を取っている?」
 「せいぜい、2種類か、取って3種類かなぁ」
 「やろ!?私もそうだった。でもプロ主婦は違うよ」

 そう言いながら目前の料理をレポートした。

 野菜サラダの中身は、レタス、キュウリ、トマト、ブロッコリー。
 煮物は、豚とピーマンと那須。
 もう一つの煮物は、にんじん、大根、揚げ天。
 そして焼き魚。
 お味噌汁は、豆腐、揚げ、わかめ、ネギ、だ。

 「うわああああ!すごいっ」と友人が声をあげた。

 「な?プロ主婦は、これだけの労力を料理という作業に費やしている。我々キャリア組がかなうわけがない。まずこれだけの食材を揃えられない。これだけの栄養素も獲得できない。そもそも、料理が若い。若さを推し量るには、料理を見ればわかる。年齢を重ねると共に、料理が一皿一皿減っていくやろ」
 「ほんまや!」
 「実家に帰るとわかる。家庭料理を食べたくて実家に帰るのは、若い昔の、おかずが一杯あった食卓をイメージして帰るのだけれど、実際、高齢になった家族の元に行くと、おかずはきゅうりのキューちゃんだったりする」

レッツ!ビジネス化

 老いを計るには、その人の作る料理を見ればわかるし、老いと共に取るべき栄養素も落ちる。高齢社会を迎えるにあたり、これからのビジネスがこれで見えてくる。

 "手料理ビジネス"だ。

 私がそれを必要とし、感動したように、食事さえ届けばいいビジネスではなく、音と匂いから始まる料理が人を癒す時代が来る。絶対に来る。もう来ている。

 孤食の高齢者の食事がシーチキンとご飯だけ、というドキュメンタリーを見た。もう料理という労働ができない高齢者は、そうなる。

 事業化にあたっては、まず、ママ友ネットワークという、強い信頼関係があって成立するビジネスではないかと思う。

 なんせ鍵を渡すのだ。冷蔵庫権を譲るのだ。私の身体の栄養管理を他人に譲り渡すのだ。

 この肉体をつかさどるベースを頼る分、お掃除のアウトソーシングとはまた違う、信頼と腕が必要とされる。

 「子育ての大変さ」が大前提にある、と、友達に言うと、そういえば、と、友達が言った。

 「うちの母親も、高齢になっても一緒に遊ぶのは近所のおばちゃんではなく、昔、PTAとかで一緒だったお友達と旅行とかに行っているわ」
 「ほら!それくらい、子育ては大変で、PTAも戦いで、それを共有した経験は、深い関係性を生み出しているんだと思う」

 改めて感じるのは、シングルキャリアウーマンのネットワークの脆弱さだ。

 子供がいることや、夫がいることを羨ましいとあまり感じたことはない。が、今回、ママ友という強靭な連携がないことに気づかされた。ママ友がいない。

 ママ友を持つ女性が心から羨ましいと思う。ネットワークはいかにあの時、共に戦ったか、で、生涯の友ができあがるのだとすれば、シングルキャリアウーマンは圧倒的男性社会の中で、そもそも共に戦った"仲間"というものがない。ひとりを寂しいと感じたことはあまりないが、ママ友がいないことを初めて寂しく思った。

敗北感の向こう側

 友達が言うには、「知人に占い師がいてね…」

 客の7割が、機会均等法以降、シングルで働き続けた40代女性たちなのだそうだ。その未来の見えなさ、孤独、などが主な相談で、聞いていて鬱々となり、結果、励ますことくらいしかできないくらい、40代キャリアウーマンはどうやら不幸らしい。もちろん、皆がそうではないし、決めつけるのはいけないが、不幸や不安を感じるから占いに行く人も多いわけで。

 それは社会学でもとうに指摘されている傾向としてある。

 早くから自立心を持ち都会に出てきた女性ほど、家賃のために働いているのが現状で、未来を夢みているが、結果、貯蓄もできずいい年齢になると帰郷するのがオチだ、と。帰郷したら帰郷したで、そこには親の介護が待ち受ける、と。

 社会学者の指摘も、占い師の見る女性たちも、同じ姿だった、という現実。

 そして、"働く"ということを人生の最優先課題としてきた私や友達は、いざ、という時のママ友がいないという事実。幸い、実家から通って仕事できてきた分、私達にはある程度の貯蓄ができた。だからマンションも買えた。

 夢のマンションとはいえ、そこには腐った野菜しかなく、台所を賄ってくれる人がほしいと願えば、男性の夢ではないが、キャリアウーマンの夢もやがてはプロ主婦に行きつくのだ。この、圧倒的敗北感はなんだと、思わざるを得ない、"お料理"と"ママ友"体験だった。命に直結するこれらを、私たちは手に入れそこねた。

 家事代行のひとつとして料理代行を提供する企業もあるが、ここはもう手料理一点に絞り込んで、本格的に提供する企業が登場してほしい。そう切に願う。


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 上司であれ客であれ、そこにいるのが人間である以上、なんらかの普遍性のある解決法があるはずだ。それを共に探ることで、新たな“仕事がスムーズにいくルール”を発展させていきたい。たくさんの皆さんの悩みをこちらでお待ちしています。
 前シリーズは「男の勘違い、女のすれ違い」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/213874/031500044

 

オランダ下院選、トルコ問題が流れを変えた かすむEUの未来

ルッテ首相率いる与党が第1党、極右・自由党は伸び悩む
2017年3月17日(金)
蛯谷 敏

3月15日に実施されたオランダ下院選挙。投票締め切り後の出口調査によると、与党の自由民主国民党が最多の33議席を獲得し第1党となる見込み。ヘルト・ウィルダース党首(写真)率いる極右の自由党は獲得議席数が20と伸び悩んだ。
 選挙戦の終盤に勃発したトルコ問題が、結果的に与党の窮地を救う形になった。

 3月15日に実施されたオランダ下院選挙は、比例代表制の下、定数150議席を28の政党が争った。午後9時に投票が締め切られた。オランダ国民の関心は高く、投票率は82%と前回選挙の65%を大幅に上回った。現地時間の15日深夜に大勢が判明した。

  オランダメディアなどによる出口調査の結果は、与党の自由民主国民党(VVD)が33議席を獲得して第1党の座を守る見込み。注目を集めた極右政党の自由党(PVV)は20議席を獲得する。キリスト教民主勢力(CDA)と民主66(D66)が19議席でこれに続く。正式な開票結果は3月21日に発表される予定だ。

 自由民主国民党は、事前の世論調査では苦戦が予想されていた。議席数を前回の41から減らしたものの、第1党の座を守り抜いた。同党を率いるマルク・ルッテ首相は15日深夜に「オランダ国民は間違ったポピュリズムに対して明確にノーと言った」と勝利宣言。ドイツのアンゲラ・メルケル首相や欧州委員会のジャンクロード・ユンケル委員長らもルッテ首相の勝利を祝福した。

 一方の自由党。第1党になれば、欧州全土で台頭する極右勢力に勢いを与えるところだったが、選挙戦終盤で勢いを失った。世論調査では昨年から支持率トップを快走してきたが、3月に入って失速。自由民主国民党に世論調査の支持率で抜かれることもあった。

トルコ外相の入国拒否が流れを変える

 自由党のヘルト・ウィルダース党首は出口調査の結果が判明した後、「議席を増やしたことは我々にとって勝利だ!」(前回選挙の獲得議席は15)とツイッターに短く投稿した。しかし、予想(2月26日時点は29)に比べると、議席数が伸び悩んだのは明らか。

 なぜ自由党は失速したのか。「土壇場になって、極右政党に政権を任せることに有権者が懐疑的になった」「国民はルッテ首相の経済政策を評価した」など、地元メディアは様々な分析をしているが、最も有力な理由として考えられているのが、選挙の終盤に起きたトルコとの一件だ。

 オランダは3月11日、トルコのチャプシオール外相らの入国を拒否した。同外相はロッテルダムで開かれる政治集会に出席するはずだった。トルコでは4月、大統領権限を強化する改憲の是非を問う国民投票が予定されている。改憲への賛成をオランダに住むトルコ有権者に呼びかける目的だった。

 オランダ政府は「治安と秩序を保てない」ことを入国拒否の理由として説明したが、トルコのエルドアン大統領はこの対応に猛反発。「オランダはファシストの国」と強く批判した。

 両国の関係は現在も緊張状態が続いており、外交問題に発展しつつある。この動きは当初、反移民を掲げる自由党に追い風になるとの見方が強かったが、蓋を開ければ、この対応がルッテ首相の支持を急伸させる結果になった。

 国民の多くが、ルッテ首相がトルコに対して厳格に対応したことを支持。「ルッテ首相が国民に強いリーダーシップを見せる格好の場面になった」とオランダのライデン大学のハンス・ボラード助教授は言う。

 2日後の3月13日に実施されたルッテ首相とウィルダース党首の討論会でも、ルッテ首相はトルコへの対応を上手く議論に活用した。ウィルダース党首が「駐オランダのトルコ大使を追放すべきだ」と過激な批判を繰り返したのに対して、ルッテ首相は実行力を強調。「ソファに座ってツイートするのと、実際に国を統治するのとはまったく違う」と語り、ツイッターで政治的な発言を繰り返すウィルダース党首を一刀両断にした。

 討論会の後、13日夜に実施された投票前の最後の世論調査では、自由民主国民党の予想獲得議席が27と過去最高に上昇した。

 自由党は第1党の座を逃したが、それでも議席数を5つ伸ばした。反イスラムを掲げるウィルダース党首を支持するオランダ人は増えている。自由民主国民党が自由党と連立政権を組む可能性はゼロに近いが、今後も自由党はオランダ政治に影響を持ち続けることになる。

 「選挙結果がどうなろうとも、国民の気持ちを抑えることはできない」。ウィルダース党首は選挙当日にハーグでこう発言し、移民に対してオランダ人が抱く反発が、今後も広がると主張した。

フランス大統領選への影響は…

 自由民主国民党は第1党となったが、議席数を前回よりも大幅に減らしている。このため、議席の過半数にあたる76議席を確保し政権を確立するためには、複数の政党と連立を組む必要がある。

 今回の選挙では、これまで連立政権を組んできた労働党が前回の38から9へと大幅に議席を減らしている。このため、自由民主国民党は、キリスト教民主勢力(CDA=19議席を獲得)、グリーンレフト(GroenLinks=16議席)、民主66(D66=19議席を獲得)などの政党と連立交渉に入る可能性が高い。

 交渉には相応の時間がかかると見られている。過去の連立政権は、組閣に最短で1カ月、長い場合は約7カ月かかっている。このため、欧州における今年前半の最大の政治イベントである4月のフランス大統領選は、オランダが政権樹立の交渉を続ける中で実施される可能性がある。

 フランスの最新の世論調査では、極右政党である国民戦線のマリーヌ・ルペン党首が高い支持を集めているが、有力対抗馬であるエマニュエル・マクロン氏も支持を急速に伸ばしている。ルペン党首の勢いに陰りが見えているとの見方も出ている。

 国民戦線のマリーヌ・ルペン党首はウィルダース党首と関係が近く、今回のオランダ下院選挙の結果を注意深く見守っていたはずだ。結果をどう分析し、自身の選挙活動に生かすかが注目される。

 ウィルダース党首は選挙後、「連立政権入りの交渉に応じる」とツイッターで発言したが、現状はその可能性は低い。ひとまず極右政党の台頭を抑えたオランダの選挙結果が、次のフランス大統領選にどう影響するか。残り約1カ月、欧州の注目はフランスに移る。


このコラムについて

かすむEUの未来
 EU(欧州連合)離脱をめぐる英国との交渉、主要国で台頭する反EUの政治勢力、終わらない難民問題…。課題山積のEUは今、発足以来の正念場を迎えている。欧州各国で起きる政治・経済の動向を中心に、ロンドン駐在記者が現場で見て聞いたリアルな欧州の姿をリポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030900123/031600004
http://www.asyura2.com/12/social9/msg/773.html

[経世済民120] 日銀が政策据え置き、他の中銀にさらに出遅れ−米中引締め 米財務長官ドル支持再確認 米住宅4カ月ぶり高水準 G20調整難航
日銀が政策据え置き、他の中銀にさらに出遅れ−米中引締め
Henry Hoenig
2017年3月17日 06:18 JST
日本銀行は出遅れているようだ。米連邦公開市場委員会(FOMC)は15日に利上げ、中国人民銀行も16日、公開市場操作(オペ)金利と中期貸出制度(MLF)の利率引き上げで後に続いた。これに対し日銀は同日、政策を維持した。
  日銀が思い切った緩和政策を導入してから4年になるが、コアインフレ率を2%にする目標の達成はまだ遠い。最近数カ月は世界の情勢が日銀の後押しをしている。金融政策乖離(かいり)の見通しなど世界的「リフレトレード」の流れが円下落とエネルギー価格上昇をもたらした。いずれも日本のインフレ率上昇を後押しする兆候だ。
  しかし16日の政策決定後の声明にはインフレ目標達成に向けた強気の論調はなかった。日銀は2018年4月−19年3月の会計年度中の目標達成を見込んでいるが、この日の声明では現時点でインフレ期待が低下傾向にあることを認めた。
  SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは、「インフレ率はまだゼロだし、先行きも本当に2%に近づいていくかどうか日銀としても自信が持てない」と指摘した。
  米国10年債との利回り格差拡大で日本国債の利回りに上昇圧力がかかる結果、日銀は長期国債の利回り目標引き上げを年内に迫られるとの見方もあるが、第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは、この日の日銀声明は年内引き上げの可能性がほぼないことを示唆したと指摘。円安維持のため、米国が利上げをする中で日銀は緩和を続けることを明確にしようとしていると解説した。
原題:Bank of Japan on Hold Falls Further Behind Its Global Peers(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMWL7V6JTSE901


 


 

 

米独財務相会談、通商問題巡る口論をトーンダウン−衝突回避で協議へ
Saleha Mohsin、Birgit Jennen
2017年3月17日 07:52 JST

貿易戦争に足を踏み入れることは望まず−ムニューシン米財務長官
貿易黒字の協議を専門家に要請する−ショイブレ独財務相

ムニューシン米財務長官とショイブレ独財務相は通商問題やユーロ相場を巡る口論をトーンダウンさせ、両国政府が協議を重ねてあからさまな衝突の回避を目指す考えを表明した。
  ムニューシン長官は16日にベルリンの独財務省でショイブレ財務相と会談後に記者団に対し、「貿易戦争に足を踏み入れることはわれわれの望みではない」と指摘。ドイツの貿易黒字については、欧州中央銀行(ECB)がドイツだけではなく、ユーロ圏19カ国全体の金利を設定するという特殊な事情の結果だとするショイブレ財務相の主張を認めた。
  ショイブレ財務相は共同記者会見で、「複雑な欧州の構成」について長官に説明したと述べ、貿易黒字について「一緒に協議するよう専門家らに要請する」考えを示した。両氏は独バーデンバーデンで開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を翌日に控えて初めて会談した。
  トランプ政権はドイツが外国為替市場を操作していると批判。これに対しメルケル首相らドイツ政府首脳は、貿易黒字が自国製品の競争力やユーロ圏諸国経済の強さの違いの結果であって、為替操作によるものではないと米側の主張を退けている。
原題:Mnuchin, Schaeuble Seek to Defuse U.S.-German Tension Over Trade(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMXH8I6K50XT01


 

ムニューシン米財務長官、強いドル支持を再確認−初外遊で
Saleha Mohsin
2017年3月17日 06:43 JST

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NY原油(16日):小反落、米在庫減少後もなお供給超過の不安根強く
• 短期的には「特定の問題」が生じる可能性
• 就任後初のG20財務相・中銀総裁会議出席へ−ドイツで発言

ムニューシン米財務長官は16日、ドルの長期的な強さが経済にとって最大の利益であり、ドルへの信頼を反映するとの見解を示した。
  就任後初の外遊で欧州を訪問中のムニューシン長官はベルリンでショイブレ独財務相と共同記者会見し、「短期的にはドルの強さで特定の問題が生じる可能性があるが、私が注目するのは、ドルの長期的側面や世界の安定した準備通貨としての重要性だ」と説明。「長期的に最大の利益として、ドルの強さは良いことであり、長期的なドルの強さは準備通貨への信頼の表れだと思う」と指摘した。
  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は昨年11月の米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利して以来2.6%上昇している。16日の記者会見中に、ドル相場は同日の下げを一部回復した。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iGyX8bwxO2W4/v2/-1x-1.png

  為替操作の問題に関しては、同長官は「各国が為替操作をしないことが重要」とのショイブレ財務相との共通の見解で議論したことを明らかにした。また、米財務省が他国の為替政策を半年に1度検証しており、継続的に相手国や国際通貨基金(IMF)と協力しているとあらためて説明した。
  同長官は17−18日に開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席のためドイツを訪問中で、16日にはハモンド英財務相とも会談した。
原題:Mnuchin Reaffirms Support of Strong Dollar in Overseas Debut (1)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMXE2S6JIJUP01


 

米住宅着工件数:2月は4カ月ぶり高水準に増加−許可件数は減少
Shobhana Chandra
2017年3月16日 22:53 JST

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2月の米住宅着工件数は4カ月ぶり高水準に増加した。一戸建ての着工件数はほぼ10年ぶりの高水準となった。
  米商務省が16日発表した2月の住宅着工件数(季節調整済み、年率換算、以下同じ)は前月比3%増の129万戸。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は126万戸だった。前月は125万戸。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ig6vXVJTgOU8/v2/-1x-1.png

  一戸建ての着工件数は前月比6.5%増えて87万2000戸と、2007年10月以来の高い水準。変動の大きい集合住宅は3.7%減の41万6000戸だった。  
  着工件数の先行指標となる住宅着工許可件数は6.2%減の121万件。集合住宅の許可件数は21.6%減の38万1000件となった。
  地域別では全米4地域のうち3地域で着工件数が減少。集合住宅の落ち込みが響いた。西部では35.7%増加した。一戸建て住宅は南部を除き全て増加した。
  統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Housing Starts in U.S. Climbed to Four-Month High in February(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMWSZASYF01S01

 


 


G20:貿易の文言巡り調整難航、英仏伊などドイツ譲歩案拒否−関係者
Alessandro Speciale
2017年3月17日 07:39 JST
米国が「多国間」と「ルールに基づいた」貿易という文言削除を要求
保護主義を否定する表現は、米国の要求通り削除の見通し

ドイツのバーデンバーデンで17日に始まる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を前に、ドイツが米国へ配慮して提案した自由貿易の文言に関する譲歩案を一部参加国が拒否した。

  欧州委員会の他、フランス、英国、イタリア、ブラジル、シンガポールなどの参加国は、「多国間」と「ルールに基づいた」貿易への取り組みに関する文言を削除する提案を拒否した。協議が公になっていないことを理由に、事情に詳しい関係者が匿名で明らかにした。米国はこの変更の他、「公平」な国際貿易との内容が含まれるように要求していた。

  保護主義を明確に否定する表現を削除する米国の求めは受け入れられる見通しだという。この表現は中国・成都で昨年開かれたG20会合で採択された共同声明には含まれていた。

  議長国ドイツによる付属文書に関する提案に議論は移っている。同文書では、「繁栄、公平さ、開放性、包括性の保証を確実にする形で、国際的な貿易システムを強化する」ことを呼び掛けている。一部の国はこれを支持しておらず、結論は17日の財務相会合に委ねられるか、7月にドイツのハンブルクで開催されるG20首脳会議に持ち越される可能性もある。
原題:G-20 Said to Be Stuck on Trade Language After German Nod to U.S.(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMXHLD6KLVR401
 

 


 

ヘッジファンドのエレメントに2週で20億ドル、マクロに注目−関係者
Hema Parmar、Katherine Burton
2017年3月17日 06:33 JST
エレメント・キャピタル、新資金を加え運用資産は120億ドルに
シンガー氏のファンドも4−6月に資金受け入れへ

ジェフリー・タルピンズ氏のヘッジファンド会社、エレメント・キャピタル・マネジメントは2週間で20億ドル(約2260億円)を投資家から集めた。マクロ経済イベントに注目するファンドの関心が高まっている。
  新規資金を加えてエレメントの運用資産は120億ドルとなったと、事情に詳しい関係者が述べた。エレメントは同社のマクロ戦略ファンドへの資金受け入れを今月1日に再開し、15日に目標に達したためその後は投資の申し込みを断っているという。
  新規資金の大半は既存投資家からのものだと、関係者が匿名を条件に述べた。エレメントは昨年4月に1カ月で15億ドルを集め、その後追加投資の受け入れを停止していた。広報担当のショーン・パティソン氏は募集についてコメントを控えた。
  昨年の運用成績が19.4%、2015年が23%近くと、エレメントはマクロファンドとしては世界的に上位に位置する。政治的不透明が高まる中でマクロファンドの人気は高まっている。ポール・シンガー氏のエリオット・マネジメントも4−6月(第2四半期)に、マルチストラテジー・ファンドへの新資金を受け入れる。
原題:Talpins’s Hedge Fund Element Said to Raise $2 Billion in 2 Weeks(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMWY7WSYF01S01

 

 

3月16日の海外株式・債券・為替・商品市場
Bloomberg News
2017年3月17日 05:54 JST 更新日時 2017年3月17日 06:34 JST
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NY外為:ドルが下げ渋り、米財務長官が長期的に強いドルを支持
米国債:下落、欧州債に連れ安−ECB当局者発言が終盤の重しに

欧米市場の株式、債券、為替、商品相場は 次の通り。

◎NY外為:ドルが下げ渋り、米財務長官が長期的に強いドルを支持
  16日のニューヨーク外国為替市場ではドルが下げ渋る展開。ムニューシン米財務長官はドルの長期的な強さについて、米経済にとって最大の利益であり、世界の基軸通貨としての信頼を反映しているとの見解をあらためて示した。
  新たな材料がなく、ドルは主要通貨に対して高安まちまち。前日は連邦公開市場委員会(FOMC)の金融政策見通しが予想ほどタカ派的でなかったために下落し、週間でも3週間ぶりに下げる勢いだ。ユーロは午後に上昇した。欧州中央銀行(ECB)の政策委員会メンバー、オーストリア中央銀行のノボトニ−総裁が債券購入プログラムを終了させる前に利上げに踏み切る可能性に言及したことがユーロ買いを誘った。
  ニューヨーク時間午後5時現在、ドルは対円で前日比0.1%安い1ドル=113円31銭。対ユーロでは0.3%下落の1ユーロ=1.0766ドル。主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.2%低下の1229.07。
  市場は現在、年内の利上げを1.5回分、2018年については2回の利上げを織り込んでいる。一方、FOMC参加者が示した金利予測では今年、来年とも3回ずつの利上げを想定している。
  ムニューシン長官はベルリンでショイブレ独財務相と記者会見に臨み、「短期的にドルの強さは問題を生み出し、害になる可能性があるが、私が注目しているのはドルの長期的な観点で、世界の安定した基軸通貨としての重要性だ」と話した。
  ポンドは対ドルで一時0.7%上昇し、1ポンド=1.2377ドルを付けた。イングランド銀行の金融政策委員会(MPC)でフォーブス委員が利上げを主張し、他の委員も意見をそれほど異にしない可能性があることからポンド買いが入った。
  米労働省が16日発表した3月11日終了週の米新規週間失業保険申請件数は、前週比2000件減の24万1000件だった。
原題:Dollar Pares Loss as Mnuchin Says Long-Term Strength Is ‘Good’(抜粋) 

◎米国株:反落、FOMCによる騰勢失う−ヘルスケア関連が安い
  16日の米国株は反落。米金融政策当局は前日、利上げを実施したが、先行きについては従来通りの緩やかなペースの利上げ予測を維持した。金融当局のハト派的な姿勢で値上がりした後、この日はその一部に巻き戻しが見られた。公益事業とヘルスケア関連銘柄が売られた。
  S&P500種株価指数は前日比0.2%低下して2381.38と、前日の騰勢が失われた。ダウ工業株30種平均は15.55ドル下げて20934.55ドル。
  この日は金融株が0.3%高。テクノロジー関連も買いを集めた。S&P500種の取引でテクノロジー銘柄は20%を占め、オラクル株の取引は全体の3.6%に上った。同社の株価は6.2%高を記録。2016年12月−17年2月(第3四半期)にクラウド事業の売上高が62%伸びたことが買い材料だった。
  市場で織り込まれている6月までの追加利上げの確率は約50%。
  朝方発表された2月の米住宅着工件数は4カ月ぶり高水準に増加した。また週間新規失業保険申請件数は2000件減少して24万1000件。3月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は32.8に低下した。
原題:U.S. Stocks Decline With Health Care; Europe Shares End Higher(抜粋)
Post-Fed Trades Fade as U.S. Stocks, Bonds Retreat: Market Wrap(抜粋)  

◎米国債:下落、欧州債に連れ安−ECB当局者発言が終盤の重しに
  16日の米国債相場は下落。この日はイングランド銀行(英中央銀行)が利上げに近づいたとの見方から英国債が急落。またオランダ下院選の情勢判明で不透明感が後退したことを背景にユーロ圏の中核国の債券も値下がり。そうした中で米国債も売られる展開となった。また欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバー、オーストリア中央銀行のノボトニ−総裁の発言も米国債には下押し圧力となった。
  15日投開票のオランダ下院選では、ルッテ首相率いる自由民主党(VVD)が反イスラムを掲げるウィルダース党首の極右・自由党(PVV)を抑えて、第1党の座を維持した。
  ノボトニー総裁はECBの預金金利について、主要政策金利より先に引き上げることも可能との認識を示した。
  ニューヨーク時間午後4時59分現在、10年債利回りは前日比5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の2.54%。前日は米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の向こう2年間における追加利上げの予測中央値が前回から変わらなかったことに反応し、約11bp下げていた。  
  ゴールドマン・サックスは10年債利回りについて、年末までに3%に達する軌道を外れていないと指摘。「循環的な上向きの基調の継続や、米当局の緩やかな引き締め」を理由に挙げた。
  投資適格級の社債発行は2日間の減速後、再び活発になった。この日はウィンダム・ワールドワイドや豪センター・グループなどが10年物を発行した。
原題:Treasuries Pare Fed-Fueled Gains, Late Bund Selloff Weighs(抜粋)
◎NY金:上昇、イエレンFRB議長が緩やかな利上げ軌道を再確認
  16日のニューヨーク金先物相場は上昇。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が前日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、緩和解除のペースは変わらないと再確認したことから、安心感が広がった。
  シンク・マーケッツUKの主席市場アナリスト、ナイーム・ アスラム氏は、「今年3回の利上げは既に価格に織り込まれており、これは当社の基本シナリオだ」と指摘。「貴金属に関して言えば、ショートを維持するのは得策ではないかもしれない」と述べた。
  ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は前日比2.2%高の1オンス=1227.10ドルで終了。中心限月としては昨年6月24日以来の大幅上昇となった。
  銀先物は2カ月ぶりの大幅高。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のプラチナとパラジウム先物も値上がりした。
原題:Gold Party Back On as Yellen Assures Market of Gradual Rate Path(抜粋)

◎NY原油:小反落、米在庫減少後もなお供給超過の不安根強く
  16日のニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が小反落。サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は、世界的な在庫水準の高さに懸念を表明した。前日には米国の石油在庫が先週、今年初めて減少したことが統計で示された。
  プライス・フューチャーズ・グループ(シカゴ)の市場担当シニアアナリスト、フィル・フリン氏は電話インタビューで、「商用在庫は減ったが、それでも在庫水準は極めて高いことを市場はなかなか振り切れずにいる」と話した。
  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物4月限は前日比11セント(0.23%)安い1バレル=48.75ドルで終了。日中高値は49.62ドル、安値は48.45ドルで、出来高は100日平均を約12%上回った。ロンドンICEの北海ブレント5月限は7セント安い51.74ドルとなった。
原題:Crude Near $49 as Glut Worries Persist After U.S. Supply Drop(抜粋)
◎欧州株:1年3カ月ぶり高値−米金利見通しとオランダ下院選挙を好感
  16日の欧州株式相場は上昇し、指標のストックス欧州600指数は1年3カ月ぶり高値を付けた。米連邦公開市場委員会(FOMC)が将来の利上げ見通しを早めることなく利上げに踏み切ったほか、オランダ下院選挙でポピュリスト(大衆迎合主義)政党の獲得議席が予想を下回ったことから、安心感が広がった。
  ストックス600は前日比0.7%高の377.73で終了。これは2週間ぶりの大きな上げ。この日は景気動向に敏感な銘柄を中心に買われた。オランダのAEX指数は0.6%上昇し、2007年12月以来の高値で引けた。
  フランス大統領選を控える中、政治の不透明感が今年に入ってから市場の懸念材料となっている。オッズチェッカーがまとめたブックメーカーのオッズに基づくデータによれば、反イスラムで極右のオランダ自由党(PVV)が第2党にとどまった結果を受け、フランス大統領選でルペン国民戦線(FN)党首が勝利する確率は後退した。
  アクセンド・マーケッツのアナリストを務めるマイク・ファンデュルケン、ヘンリー・クロフト両氏はリポートで、「今後行われるフランスとドイツの選挙ではポピュリストがそれほど伸長しない一方、米国での刺激策拡大が同国の経済成長と金融当局の政策正常化を支え、これが世界経済を後押しする可能性を考えることが可能となった」と指摘した。
  米金融当局の政策判断を受けて金属価格が値上がりし、ストックス600を構成する鉱業株指数が3.3%上昇。原油高を背景に石油・ガス株も買われた。銀行株も大きく上げた。
  個別銘柄では、ドイツのルフトハンザ航空が5.2%上昇。2017年売上高が前年実績を大きく上回るとの見通しが買い材料。フランスの自動車メーカー、ルノーは3.4%値下がり。排ガス試験で不正を働き、これに幹部も関与していた疑いがあると報道され、罰金支払いを余儀なくされることへの警戒感が広がった。
原題:European Stocks Close at 15-Month High on Fed Hike, Dutch Vote(抜粋)

◎欧州債:ドイツ国債が下落−オランダ選挙結果で不透明性が後退

  16日の欧州債市場では、オランダ下院選挙の情勢判明で不透明感が後退したことを背景に、ドイツ国債が下落。フランス国債は朝方に値上がりしたものの、買いが続かずに下げた。トレーダーによればオランダの選挙結果で中核国でのリスクヘッジを再考する動きが広がり、ドイツ国債の2年物と5年物の利回りは3bp上昇。
  イタリア国債はフランス国債とともに大きく上下動。10年債利回りは約5bp上げた。
  英国債はドイツ国債を下回るパフォーマンス。イングランド銀行の金融政策決定会合でフォーブス委員が利上げを主張したほか、一部メンバーも上向きのニュースがあればより早期の景気支援策縮小が正当化される可能性があると示唆した。
原題:Bunds Slide on Dutch Risk Unwind; End-of-Day EGB Curves, Spreads(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMX327SYF01T01
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/267.html

[社会問題9] オトナの教養 週末の一冊 知られざる一時保護所の実態 『ルポ 児童相談所』 慎泰俊氏インタビュー 2017/03/17
オトナの教養 週末の一冊
知られざる一時保護所の実態
『ルポ 児童相談所』 慎泰俊氏インタビュー
2017/03/17
本多カツヒロ (ライター)
 昨年度、子どもの虐待に関する相談は10万件を超えた。親からの虐待の末、幼い命が奪われたといった痛ましい事件をニュースなどで耳にすることは日常茶飯事だ。

 虐待などを受けた子どもたちを児童相談所内で一時的に保護する一時保護所の内実はベールに包まれている。

 それに迫ったのが『ルポ 児童相談所ーー一時保護所から考える子ども支援』(ちくま新書)だ。

 全国10カ所の児童相談所を訪れ、100人以上の関係者を取材し、実際に2カ所の一時保護所に住み込んだ経験がある慎泰俊氏に、一時保護所の実態について話を聞いた。

――本書を手にするまで児童相談所内の一時保護所についてほとんど知りませんでした。今回、一時保護所に注目した理由とは?


『ルポ 児童相談所 一時保護所から考える子ども支援』
(慎泰俊、筑摩書房)
慎:日本国内で、社会的養護下(社会が親に代わり用意する養育環境)の子どもを支援するNPO法人「Living in Peace」を運営しています。支援している子どもたちのほぼ全員に児童相談所にいた経験があります。彼らが口々に「児童相談所はヤバイ」って言うんです。初めは何がヤバイのか理解出来なかったんですが、よく聞くと児童相談所内には、非常に厳しいルールの下で子どもたちが生活する、一時保護所という場所があることを知ったのがキッカケでした。

――一時保護所とは本来はどんな施設なんですか?

慎:本来は、虐待やネグレクトをはじめ、親と暮らすことが困難と児童相談所によって判断された子どもたちや非行少年を保護し、その後、自宅に戻るのか、児童養護施設や里親家庭に入るのかを決定するための一時的な預かり所です。

 そうした環境にいる、児童福祉法で児童と定められている0歳から18歳の子どもたちが保護されています。そのうちの半数以上が親からの虐待を受け、全体では虐待やネグレクト、貧困などの理由で保護されている子どもが7割以上を占めます。ちなみに2014年に一時保護された子どもは延べ2万2000人にも上ります。

 しかし、全体の半分ほどの施設はそうした子どもたちに対し大きな心理的ストレスを与える場所になってしまっています。

――慎さんは、実際に2カ所の一時保護所に住み込んだ経験があるということですが、具体的にどこに問題があると感じましたか?

慎:1つは、自由が著しく制限されていることです。例えば、一時保護所に入る際、私物は全て没収されます。

 また多くの保護所内は、窓は5センチほどしか開きませんし、もし保護所から逃げ出してもすぐに保護できるようにと、子どもたちは靴下で、職員はスニーカーで過ごしています。

 生活面では男女は別々に行動し、たとえきょうだいであっても話してはいけない施設が多く、プライバシーに関することを、他の子と話すことも禁止されています。またテレビを見たり、トイレへ行くのにもいちいち職員に許可を得なければいけないのも特徴です。

 また、平日は1回45分の学習時間が3回設けられています。しかし授業を受けるわけではなく、各自のレベルに合った国語もしくは算数や社会のプリントを解くだけです。

 このような厳格なルールについて、職員達はトラブルを避けるためだ、と言います。

――ほとんどの子どもたちが、保護者からの虐待やネグレクトを受けた被害者であるにもかかわらず、さながら刑事事件の被疑者が入る留置施設のような場所に保護されるんですね。

慎:まさにそうですね。

 例えばある地域の一時保護所の場合、前身が犯罪をしたり、そのおそれのある児童の自立を支援する教護院が母体となったという経緯があるので、そこでのやり方を引き継いでいます。

――勉強は限られた科目のプリントのみとのことですが、保護されなければ学校に通い授業を受けているはずですよね。

慎:現在、一時保護所の平均滞在期間は1カ月ですが、中には1年滞在する子どもいます。それだけの期間、プリントのみだと、学校に戻っても授業についていけなくなり、中退予備群や不登校予備群になる可能性が高くなります。

 こうした状況に対し、一部の人たちは「元々勉強の習慣がなかった子どもたちが、一時保護所で初めて勉強を習慣とするのだから良いじゃないか」と言います。だからといって、このような状況を許容できるわけがありません。それは物事を取り違えていると思います。例えば、学習の習慣がない学生の多い学校で、授業をきちんとしないで、プリントだけで済ませていたら大問題になりますよね。

 このように移動の自由や学習の自由といった自由権が大きく侵害されているのは、子どもたちにとって大きな問題です。

――一時保護所は、全国に数多くありますが、施設によって差はあるのでしょうか?

慎:施設間の格差は非常に大きいです。都市部の保護所を始め、全体の3割近くについては、あまり良い話を聞きません。

 ただ、中には鳥取県のようにきちんと子どものことを考えた取り組みを行っている自治体もあります。在所経験者の評価の高い一時保護所と低い保護者を比べると、例えば職員の言葉遣いは、「命令口調」と「柔らかく子どもの意志を聞く話し方」という違いがあったり、移動に関しても「窓ガラスは開かない、外鍵、外にはセンサーがついている」に対し「窓は全開で、内鍵、センサーはない」など明らかな差があります。

 要するに、保育園のように子どもが楽しく安心して遊べる施設から留置施設のようなところまでグラデーションがあるんです。

――格差が大きい背景としては、どんなことが考えられますか?

慎:情報が公開されず、内部の実態が知られていないからだと思います。全国に15年4月時点で135カ所もあるにもかかわらず、その実態はプライバシーの名のもとに明かされていません。第三者評価や監査の仕組みはあるのですが、それはあくまでも書類が整っているか、法的な手続きが守られているのかなどの点にとどまり、子どもの権利擁護がされているかという観点が見逃されています。

 個人的には子どもの権利擁護の観点から第三者評価が行われ、その成績表だけでも全国的に公開されるようにしたら良いと思っています。そうすれば、物事は改善に向かうことでしょう。

――一時保護所のある児童相談所については、最近いわゆる児相バッシングをよく耳にします。例えば、一時保護所に子どもを拉致された、などです。こういったバッシングについてはどう考えますか?

慎:数週間、子どもが一時保護所に保護される場合には、親にも原因がある場合が多いと思います。ただ、数週間も子どもが自宅にいないことを指摘された親は精神的に厳しい状態になっていますし、まさか自らの虐待が原因で児童相談所に保護されているとは言えません。そうすると、拉致されたと騒ぐんです。もちろん児相が常に正しいとは言いませんが、親の言い分だけを真に受けるのは正しくないと思います。

――実際、職員はどういった状況で仕事をしているのでしょうか?

慎:児童福祉を専門とする児童福祉司と、その他の職員がいます。

 職員に取材をして感じるのは、行政機関という権力機構ですから、いわゆるお役人目線を感じることもあります。また、行政の組織は一度運営の仕組みを決めると構造的になかなか変えられないことも問題だと思います。しかし、児相バッシングの本に書かれているような悪人ばかりかというと、一部にはいるかもしれませんが、全体的にはそんなことはありません。むしろ、献身的に子どもたちのために働いているという印象が強いですね。

――常時、職員はどれくらいの家庭で虐待などが起きていないかをチェックしているものなんですか?

慎:多くの児童相談所では、児童福祉司1人が100件ほどの案件を抱えています。多くの職員が朝9時から夜10時まで働いています。

 そういった状況で、職員たちはなかなか気が休まらないと言います。なぜなら当番中は、24時間いつ虐待の通報が入ってくるかわかりませんから。例え、きちんと引き継ぎをし、休暇で旅行に出ても、旅先で電話がなると不安になるそうです。休暇中にもかかわらず、電話が掛かってくるということは、担当している家庭で何かトラブルが起こった可能性が高いためです。

――1人が100件も抱えていて、虐待などを未然に防げるものなのでしょうか?

慎:イギリスでは、1人につき30件以下に抑えているそうです。そうでなければ、虐待死を防ぐことが難しいという理由です。そう考えると、日本の100件は多すぎます。ただ、イギリスのように30件以下に抑えようとすると、単純に現在の3倍は職員を増やさなければいけません。

――児童相談所の職員は成り手が少ないと聞きます。そうした状況で、職員を3倍に増やすのは難しいですよね。どんな対策を考えていますか?

慎:児童相談所が現在行っている子どもの見守りを、行政だけでなく民間や学校も一緒に行うのが重要だと思います。現在、神奈川県の平塚市では学校、警察、児童相談所、民間団体が協力した取り組みを行っています。そうすれば児童相談所の職員の負担が減ります。

 また子どもの貧困対策で一番重要なのが学校だとベテラン教師の方々は口々にします。例えば、給食時に子どもがどんな風に振る舞うかで、どんな家庭で育っているかが見えると。お腹を空かせてしょうがないといった振る舞いの子どもは、自宅でまともにご飯を食べていない可能性があります。もちろん中には、食いしん坊な子どももいるでしょうけどね。

 また学校内で元気がなかったり、授業中も上の空といった子どもは虐待されている可能性があるとも言います。虐待が起きている家庭の子どもは基本的に勉強に集中出来ません。なぜなら、そうした家庭の子どもは、人の顔色をうかがい、殴られないようにしようといった生存にすべてのリソースが割かれていることが多いためです。ですから、勉強を一生懸命やることで、将来の夢が叶うといったことが考えられないのです。

 このように学校で子ども達を観察することで、自宅で何が起きているかが見えやすいので、学校と児童相談所が情報をきちんと共有することで、子どもの不幸を未然に防げる可能性があります。

 ただ、貧困家庭で育っても、より良い将来を勝ち取るために必要なことは、自分を愛する心や自信などの自己肯定感です。自己肯定感を育むには、親や他の大人からの愛情や同級生との人間関係が大切になってきます。

 当たり前ですが、いじめにあっている子どもは自己肯定感が低く、家庭が大変な状況であっても、学校でヒーローになっている子どもは自己肯定感が高いのです。

 NPO法人の活動を通じて、貧困家庭や施設出身の子どもたちに多く会いますが、その後、人生で上手く行っている子どもは、勉強が出来たり、運動神経が良かったりといった同級生から尊敬を集めやすい要因を持っていることが多い。それが子どもの自己肯定感を高めるベースになっているのでしょう。

――慎さんが運営しているNPO法人はどんな活動をしているのですか?

慎:具体的には、社会的養護下にある子どもたちが入っている施設等の支援や、施設を出て行った子どもたちが進学する際に足りない学費を奨学金として支援しています。

――そうした支援を通してどんな成果が出ていますか?

慎:児童養護施設出身者の中で、大学へ進学する子どもは2割ほどです。その中で無事、卒業するのは7割ほどで、残りの3割ほどの子どもたちは途中で人間関係などに悩み中退します。我々は、奨学金を支援するだけでなく、彼らと定期的に話をする伴走者を目指しています。それでも中退や休学をする子どもはいますが、突然消えてしまったりせず、話し合いが出来る状態を維持できています。

 中には、児童養護施設史上初めて、高校卒業後、海外の4年制大学に進学した子もいます。

――NPOとして今後はどんな活動を考えていますか?

慎:まだまだ現在の支援へのニーズが大きく、施設の建て替えや社会的養護卒業後の支援は続ける必要があります。

 ただそれ以外にも、民間の団体で一時保護を受け入れる一時保護委託や、行政サービスを監査する機関設立のためのアドボカシー活動などは行いたいと考えています。

――ここまで一時保護所や慎さんのNPOの活動などについて話を聞きました。最後にメッセージをお願いします。

慎:児童相談所に関わった子ども、親、職員といった当事者たちは、それぞれの立場で一時保護所について思うところがあります。しかし、対等な関係でない当事者間では、実際にはコミュニケーションが成立しているようでしていないのです。

 例えば、ルールが厳しいのは他の子どもが問題を起こさないようにと職員側は考えてのことです。また、子どもからすれば、親と引き離されてルールの厳しい施設に数カ月も入れられたと思うかもしれませんが、職員側は、親と引き離さなかなった場合、万が一、死に至ってしまってからでは取り返しがつかないので、リスク回避のために保護するという事情もあります。そうしたギャップを、本書を通じて埋めることが出来ればと考えながら書きました。

 そのためには、事実に依拠することが非常に重要ですから、私の感想は可能な限り減らし、実際に目にしたもの、取材で聞いたこと、データとして公表されているものを丁寧にまとめ、必要に応じて解説することにこだわりました。

 WEDGE Infinityでこういった記事を読む方々は、裕福な家庭で育った人が多いと思います。そうすると、自らの恵まれたバッググラウンドに気が付かないまま、子どもの貧困と聞いても気合が足りないとか、いまいちピンとこないかもしれません。しかし、こういった世界が現実にはあり、子どもたちも苦労しています。小さなことでも、何か協力出来るのではと考えて頂ければ嬉しいですね。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9142
http://www.asyura2.com/12/social9/msg/774.html

[経世済民120] 家計金融資産、最高を更新 16年末1800兆円 GPIFや3共済リスク資産100兆突破 日本の小型株は箱入娘 日本株反落
家計金融資産、最高を更新 16年末1800兆円
2017/3/17 10:41
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 日銀が17日発表した資金循環統計(速報)で2016年末の家計の金融資産残高は1800兆円となり、4四半期ぶりに過去最高を更新した。15年末と比べ0.9%(17兆円)増え、現在の統計で遡れる05年以降で過去最高となる。昨年9月末比では2.7%(47兆円)増。昨年11月以降に進んだ円安・株高で株式や外貨建て資産の評価額が膨らみ資産を押し上げた。

 16年12月末の日経平均株価は1万9000円台と、9月末の1万6000円台から1割以上も上昇。15年12月末の水準も小幅に上回っていた。

 資産別の内訳をみると、家計の投資信託は96兆円と前年同月末比で0.2%増加した。株式は167兆円と0.4%減ったが、2.1%減だった9月末と比べるとマイナス幅が縮まった。家計の現金・預金は1.8%増の937兆円となり、過去最高を更新した。

 企業の金融資産も1101兆円と3.9%増え、過去最高を更新。このうち企業の現金・預金は7.5%増の244兆円。対外証券投資は39兆円と39.3%の大幅増となった。

 海外投資家が持つ日本国債の残高は昨年末時点で113兆円と過去最高となった。国債の残高に占める海外勢の保有比率も10.5%と過去最高を更新した。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC17H0N_X10C17A3EAF000/


 


12月末の家計金融資産、最高の1800兆円 円安・株高反映、日銀統計
2017/3/17 10:12
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 日銀が17日発表した2016年10〜12月期の資金循環統計(速報)によると、家計が保有する金融資産の残高は16年12月末時点で前年比0.9%増の1800兆円だった。15年12月末の1783兆円を上回り、比較可能な05年3月末以降で過去最高となった。金融資産のうち、52.0%を占める現金・預金の残高が1.8%増の937兆円と過去最高となったことや株式相場の上昇により投資信託や株式等の資産価格が押し上げられたことが寄与した。

 民間企業が保有する金融資産のうち現金・預金の残高は7.5%増の244兆円と、過去最高だった。対外直接投資も12.6%増の123兆円で過去最高となった。円安が寄与し、外貨建て資産の価値が上昇した。

 金融機関の貸し出しは4.3%増の807兆円で、過去最高だった。住宅ローンを中心に家計向けの貸し出しが増加を続け、3.2%増の277兆円と過去最高だった。海外向けの貸し出しは5.1%増の84兆円で、15年9月末以来5四半期ぶりにプラスに転じた。円相場が円安方向に振れ「外貨建ての貸出残高が膨らんだ」(調査統計局)という。

 国債保有者の内訳をみると、16年12月末時点で日銀が保有する国債残高は27%増の421兆円だった。保有者全体に占める比率は39.1%で16年9月末を上回り、残高・保有比率ともに過去最高を更新した。海外勢の国債保有残高も4.1%増の113兆円、比率は10.5%で、過去最高だった。国内銀行は12.1%減の209兆円だったが、減少幅は16年3月末以降、4四半期連続で縮小した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL17HRP_X10C17A3000000/


 

12月末の家計金融資産、前年比0.9%増の1800兆円 日銀統計
2017/3/17 8:54
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 日銀が17日発表した2016年10〜12月期の資金循環統計(速報)によると、家計が保有する金融資産の残高は16年12月末時点で前年比0.9%増の1800兆円だった。民間企業が保有する金融資産のうち、現金・預金の残高は7.5%増の244兆円だった。

 16年12月末で日銀が保有する日本国債の残高は421兆円。保有者全体に占める比率は39.1%だった。国内銀行の割合は19.4%、海外勢の割合は10.5%だった。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL16HPG_W7A310C1000000/
 

邦銀の対外与信残高、16年末時点で3兆7787億ドル 日銀集計
2017/3/17 10:52
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 日銀が17日発表した国際決済銀行(BIS)国際資金取引・与信統計の日本集計分によると、2016年12月末時点の邦銀の対外与信残高(最終リスクベース)は3兆7787億ドルだった。9月末時点から759億ドル(2%)減少した。米大統領選後の円安で円建ての貸出額が目減りした。米金利の上昇を受けて邦銀が米国債を売却したことも影響した。

 地域別ではケイマン諸島向けが360億ドル減った。米国が105億ドル、フランス向けが101億ドル減った。

 BISの国際与信統計は主要31カ国・地域に本店を置く銀行の国際的な与信活動を集計しており、日本の分は日銀が取りまとめて四半期ごとに公表している。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL17HSE_X10C17A3000000/


 
経財相「反保護主義、世界の根底には流れている」 G20会合控え
2017/3/17 9:55
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 石原伸晃経済財政・再生相は17日午前の閣議後記者会見で、日本時間18日未明にドイツで開幕する20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に関して「世界各国に反保護主義の機運が、根底にはしっかり流れている」と語った。従来通り自由貿易を推進する考え方が共有されることに期待を示した。

 トランプ米大統領が米通商代表部(USTR)代表に指名したライトハイザー氏が14日に「農業分野の市場拡大は、日本が第一の標的になる」と強調したことについては「一連の日米首脳会談の中で、そのような要請は受けていない」と述べた。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL17HRM_X10C17A3000000/

 

 

GPIFや3共済:リスク資産が100兆円突破、トランプ相場追い風
野沢茂樹、竹生悠子
2017年3月17日 09:48 JST 更新日時 2017年3月17日 10:51 JST

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日本株と外国証券の残高はともに最高を更新
円安の寄与が大きい、買い越し基調も継続

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や共済年金などの「公的年金」が保有する株などリスク資産の保有が100兆円を超え、過去最高を更新した。トランプ相場と呼ばれる世界的な株高・金利上昇と円安が追い風となった格好だ。
  日本銀行が17日公表した資金循環統計によると、公的年金が保有する日本株の残高は昨年末に44兆2769億円、外国証券も61兆7745億円と、それぞれ過去最高を記録。昨年6月末には両資産とも2014年末以来の水準まで残高が目減りしていたが、大幅な円安で為替換算額が膨らんだ。
ニューヨーク証券取引所のトレーダー
ニューヨーク証券取引所のトレーダー Photographer: Michael Nagle/Bloomberg
  昨年10−12月期に公的年金は日本株を564億円買い越した。買い越しは2四半期ぶり。外国証券は2594億円と2四半期連続で買い越した。同統計の公的年金はGPIFや国家公務員共済組合連合会(KKR)、地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団、年金特別会計などからなる。
  半面、国債・財融債は5893億円の売り越した。売り越しは14四半期連続。昨年末の保有残高は49兆2160億円と2四半期連続で減り、04年6月以来の低水準となった。昨年前半は日本銀行のマイナス金利政策を受けた金利低下で残高が増えたものの、7−9月期から減少基調に戻っている。
 
トランプ米大統領
トランプ米大統領 Photographer: Olivier Douliery/Pool via Bloomberg
  トランプ政権の景気対策効果を見込んで昨年11月から顕著になった世界的な株高と金利上昇は円安圧力ともなり、公的年金などの日本の機関投資家の運用環境を大きく変えた。株高と円安がリスク性資産の評価額を押し上げた半面、金利の急上昇は債券には逆風となった。
  
   
  GPIFは14年10月に国内債の目標値を60%から35%に下げ、内外株式は12%ずつから25%ずつに、外債は11%から15%へ変更。期待収益率は高いが価格変動も大きいリスク資産を増やしたため、世界的な株価の騰落や円相場の影響を受けやすくなっている。昨年10−12月期は収益額が約10.5兆円、年末の運用資産残高は144.8兆円とともに過去最高を記録した。
  資産運用に関しては、公務員や大学関係者らが加入する3共済も15年10月からGPIFに追随している。運用目標やリスク管理をGPIFと一元化している積立金が合計で約28.5兆円あり、地共済と私学共済は独自の判断で運用する資金の大半に当たる約22.5兆円にも同じ資産構成の目標値を採用。3共済による資産構成の変更が済めば、合計約50.9兆円がGPIFと似通った運用成績になる見通しだ。
  TOPIXは昨年末に1518.61と9月末から14.8%、MSCIコクサイ指数は円換算で16.9%上昇した。米国債の10年物利回りは0.85ポイント高い2.44%で、上昇幅は09年4−6月期以来の大きさとなった。円の対ドル相場は1ドル=116円96銭と15円61銭下落で、データでさかのぼれる1987年以降で最大の下げとなった。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは0.40%と約0.13ポイント上昇した。
  日銀が発表した今回の統計によると、国債・財融債と国庫短期証券を合わせた「国債等」の残高は昨年末に1076兆円だった。公的年金は全体の4.58%を保有。構成比は3カ月前から0.1%ポイント低下した。
  日銀は7−9月期までの確報値も発表。公的年金による国債・財融債の売り越し規模は速報時点の3664億円から4850億円に、対外証券投資の買い越しは1351億円から2130億円に遡及修正した。日本株は122億円の買い越しから76億円の売り越しに変わった。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-17/OMT13S6JTSEA01


 


息を吹き返す日本のバイオ業界、ペプチドリームの株価は2年で2倍超
Natasha Khan
2017年3月17日 09:15 JST

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年内にさらなる国際的提携発表−ペプチドリームのリード常務取締役
そーせいグループやヘリオスなどバイオ株はここ2年で大幅上昇

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ifebp_VNG15E/v2/-1x-1.png


バイオベンチャー企業、ペプチドリームの株価は過去2年間で2倍超となり、時価総額は約3150億円に達した。ブリストル・マイヤーズスクイブやノバルティス、ロシュ・ホールディング子会社のジェネンテックといった大手グローバル製薬会社との提携が、同社にさらに資金を呼び込んでいる。
  ペプチドリームのパトリック・リード常務取締役(研究開発部担当)はインタビューで、同社が年内にさらなる国際的提携を発表する見通しであることを明らかにした。これはバイオ業界が息を吹き返しつつある兆候の一つだと同氏は考えている。
  リード氏は、ペプチドリームやそーせいグループ、ヘリオスなどの企業が「ディールを実施しており、日本のバイオテクノロジー企業が何かを達成できることを示している」と指摘。「われわれは今後数年にわたり人々の注目を受け、日本のバイオ業界がなぜ復活したかを示す手本となることを望んでいる」と述べた。
  創薬ベンチャーのそーせいは買収を通じて業容を拡大し、株価は過去2年間で約300%上昇した。ヘリオスの株価は同期間に約53%値上がり。同社は幹細胞技術を利用して脳卒中や失明の治療薬を開発している。

  ボストン・コンサルティング・グループのパートナーでマネジングディレクターの北沢真紀夫氏は、基礎研究者が極めて高い経済的利益を得るというサクセスストーリーは、他の人が今後同じ道を進む刺激になると指摘。政府予算の逼迫(ひっぱく)、新世代の研究者やリスクマネーといった新たなプレッシャーの下で、大きな変化が起きつつあるとの見方を示した。
原題:A $3 Billion Biotech Firm That Almost Wasn’t Finds New Life(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-17/OMWBTL6S972901


 


日本の小型株は箱入り娘だ、還元力に海外勢執心−世界リスク希薄
佐野七緒、竹生悠子
2017年3月17日 06:57 JST更新日時 2017年3月17日 12:38 JST

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• 2部・マザーズ・ジャスダック売買代金が右肩上がり、1部は減退
• 過去10年の小型株の配当伸びは5.5%、大型株の4%をしのぐ

海外投資家が日本の小型株探しにご執心だ。配当や自社株買いなど株主還元力の高さが評価されているほか、欧米の政治動向や地政学リスクなどに揺れる世界の株式・金融市場への感応度が大型株に比べ小さい、との判断もある。
  東京証券取引所のデータによると、2016年以降の東証2部とマザーズ、ジャスダック市場の海外投資家の買い金額、売り金額の合計は2月3週(13ー17日)に5845億円と8カ月ぶりの高水準となった。3月に入っても5000億円台を維持。創薬ベンチャーのそーせいグループが人気化した影響で昨年4月に8000億円台に急拡大した後は反落、9月の1908億円を底に現状は増加傾向だ。

海外勢の小型、新興市場銘柄の売買意欲推移
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  一方、東証1部の海外勢は昨年2月の22兆9518億円を天井とし、その後は停滞。米国の財政出動政策やインフラ投資期待が盛り上がった11ー12月のトランプラリーで20兆円近くに急回復したが、直近は14兆円台となっている。また、TOPIXの時価総額・流動性別指数で最上位のコア30と最下位のスモールの売買高(1日平均)を比較すると、年初来のスモールは昨年1年間に比べ0.03%の減少にとどまった半面、コア30は3割減った。

東証1部銘柄の海外勢の売買意欲推移 Created by Bloomberg
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  指数連動型上場投資信託(ETF)の運用会社である米ウィズダムツリー・インベストメンツ日本法人のイェスパー・コール最高経営責任者(CEO)は、「日本の小型株は『箱入り娘』『隠れた宝石』だ。株主還元の高さには驚いている」と指摘。日本の中小企業は不動産などを持たない場合、資金調達をしにくい事情があり、「結果として大型株よりも資本をマネージメントするのがとてもうまい」との見方を示した。
  ウィズダムツリーによると、昨年までの過去10年で小型株(MSCIジャパン小型株指数)の配当は5.5%伸び、トータルリターンは3.2%だった。大型株(MSCIジャパン指数)の配当の伸びは4%、トータルリターンは0.5%。コール氏は、「小型株では創業者と経営者が同じことが多く、経営者や経営者の家族が株式を多く保有している。結果として、自然に株主と経営者が同じ立場で考えることになりやすい」と分析。配当と自社株買いが増加する傾向は、「少なくとも東京五輪までは続く」と予想する。

株主還元総額は16兆4000億円
  日本企業の潤沢なキャッシュフローに安倍政権が主導したコーポレートガバナンス(企業統治)改革が加わり、モルガン・スタンレーの調査では昨年の自社株買いと配当を合わせた株主還元総額は16兆4000億円に達した。株主を意識した経営への転換で配当性向が拡大、継続的な自社株買いのほか、取締役会に占める社外取締役比率も拡大しており、着実なガバナンス改善を評価する同社では日本株の投資判断を「オーバーウエート」としている。
  英プルーデンシャルグループのイーストスプリング・インベストメンツのファンドマネジャーで、約20年の日本株運用経験を持つマックス・ゴドウィン氏(シンガポール在勤)も日本企業は「事業の収益性や余剰資金の効率的な配分など、ROEを意識した経営へと徐々に変わりつつある」と指摘。今は過渡期で、「ガバナンスが改善した企業と改善途中の段階にある企業と両方存在する。われわれは改善方向にある会社を探しており、投資のチャンスはまだまだある」とみる。
  日本の大型株には時価総額の大きい輸出株が多く、世界経済の動向や為替変動の影響を受けやすい。ドル・円相場とMSCIジャパン指数の相関関係を示す数値(30日相関)は、0.5と2月3日に昨年8月以来の高水準となった。直近はゼロ近辺で推移、同数値は1に近づくほど連動性が強いことを示す。一方、為替とMSCIジャパン小型株との相関数値は昨年8月以降、マイナスで推移し、2日には昨年10月以来の低水準を付けた。
マクロ予測は困難、企業見極めに注力
  ゴドウィン氏は、「マクロを予測するのは難しく、われわれの投資判断に影響を及ぼすものではない。為替を予想するよりも、バリュエーションが割安な銘柄の中からその企業が本来持つ中長期的な収益力の分析に取り組んでいる」と言う。
  ウィズダムのコール氏は、小型株に注目するポイントとして国内の景気回復の恩恵を受けやすい特性にも言及。「大型株の売り上げの50%以上は海外だが、小型株の70%以上は国内」とし、国内は「デフレ脱却の時期が近づいている。景気見通しに強気」と述べた。インフレによる世帯収入の好転と需要の強さは経済成長の準備が整っているということで、「増益モメンタムと国内中小型株の利益見通しは17ー18年を通して向上していく」と予測した。
  「ウィズダムツリー日本小型株配当ファンド」の運用成績は09年2月を底に上昇基調にあり、1年間のリターンは25%と日経平均株価の15%をアウトパフォームした。組み入れ上位にはSBIホールディングス、ベネッセホールディングス、松井証券など内需関連銘柄のほか、三菱ガス化学、SUMCO、横浜ゴム、DICが並ぶ。また、「イーストスプリング中小型バリュー株厳選ファンド」の1年間リターンは29%だった。
  ドルの上値が重い為替動向や国内の政治問題リスクが懸念された17日の日本株市場では、コア30指数が一時0.6%下げたのに対し、スモール指数は0.4%安にとどまった。

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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OM2UIZ6S972901 

 

日本株反落、輸出や内需広く売られる−円安鈍さやG20、「森友」警戒
鷺池秀樹
2017年3月17日 08:17 JST更新日時 2017年3月17日 12:17 JST

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• ドイツで20カ国・地域会議、自由貿易めぐる各国姿勢を注視
• 菅官房長官、首相夫人の寄付問題「行っていない」

17日の東京株式相場は反落。為替市場でドル高・円安方向への動きが鈍いほか、20カ国・地域(G20)会合の不透明感、森友学園問題をめぐる国内の政治リスクを警戒する売りが優勢だった。輸送用機器など輸出株や海運株、電力や医薬品など内需株と幅広い業種が安い。

  TOPIXの午前終値は前日比7.45ポイント(0.5%)安の1565.24、日経平均株価は66円87銭(0.3%)安の1万9523円27銭。
  SBI証券の鈴木英之投資調査部長は、米連邦公開市場委員会(FOMC)後に円安・株高が進むとの期待があったが、「実際には米国の年4回利上げ観測が後退、きょうも1ドル=113円台前半で推移し、拍子抜けしているところがある」と指摘。また、森友問題の浮上で「東京五輪まで自民党政権は安泰との前提条件があったため、海外投資家が不安に思うかもしれない」と話した。

東証外観

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  きょうのドル・円は、1ドル=113円20ー40銭台と前日の日本株終値時点113円30銭に対し横ばい圏で推移した。ドルは10日に付けた115円51銭を直近高値に、今週は上値の重い状況が続いている。
  みずほ証券の倉持靖彦投資情報部長は、「G20で米国はドルや国境税、グローバル通商政策に対し一定の見解を求められるとみられる。内容次第で円高に振れる可能性がある」と言う。
  17日にドイツのバーデンバーデンで始まるG20財務相・中央銀行総裁会議を前に、ドイツが米国へ配慮し提案した自由貿易の文言に関する譲歩案について、一部参加国が拒否した。
  為替動向やG20への懸念に加え、前日の米国株、原油など国際商品市況の軟調もあり、きょうの日本株は朝方から売りが先行。日経平均は一時100円以上下げた。にわかに浮上した国内の政治リスクも相場の足かせ。学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる問題で、同学園理事長退任の意向を示す籠池泰典氏が安倍晋三首相からの寄付金が入っていると述べたことを受け、23日の衆参両院予算委員会で籠池氏の証人喚問を行う見込みだ。
  菅義偉官房長官は17日の閣議後会見で、安倍事務所を通じ確認を取った結果、首相夫人は個人としても森友への寄付は行っていないと述べた。みずほ証の倉持氏は、「日本株の魅力の1つが政治の安定だが、森友学園問題が拡大すれば、安倍政権の支持率に影響が出かねない」と警戒する。
  一方、株価指数の下値も限定的。岡三証券投資戦略部の山本信一シニアストラテジストは、「米国のファンダメンタルズが良好」な点を挙げている。米商務省が16日に発表した2月の住宅着工件数は4カ月ぶりの高水準、週間の新規失業保険申請件数は前週比2000件減少した。
  東証1部33業種は海運や電気・ガス、医薬品、その他金融、石油・石炭製品、陸運、不動産、輸送用機器、精密機器など30業種が下落。証券・商品先物取引、パルプ・紙の2業種は上昇、鉱業は変わらず。売買代金上位では、アステラス製薬や富士重工業、ヤマトホールディングス、りそなホールディングス、東ソー、千葉銀行が安い。半面、経営再建に公的資金案と17日付の日本経済新聞朝刊が報じた東芝は高い。ファナックやSUMCO、良品計画、M&Aキャピタルパートナーズも上げた。東証1部の売買高は8億3128万株、売買代金は9185億円。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iG342p29sHc4/v2/-1x-1.png
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMXIH66K50XU01

http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/273.html

[国際18] トランプ氏が予算案概要提出、国防強化 連邦機関向け大きく削減 米国務長官、予算削減を容認 英女王承認EU離脱可 FOMC
Business | 2017年 03月 17日 08:03 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

トランプ氏が予算案概要提出、国防強化 連邦機関向け大きく削減

[ワシントン 16日 ロイター] - トランプ米大統領は16日、2018会計年度(17年10月─18年9月)の予算案概要を議会に示し、承認を求めた。国防費を増額し、メキシコ国境沿いの壁建設費用を計上する一方、多くの連邦機関向け予算を大きく削減する。

予算案には共和党内の一部有力者らが早くも反発するなどして、紆余(うよ)曲折も予想される。

予算概要は裁量的経費だけを対象とした。トランプ氏は予算案に添えたメッセージで「米国民の安全安心」を高める狙いを説明した。

国防費は540億ドル増やす。壁建設費用として17年度に15億ドル、18年度に26億ドルの予算承認を議会に求めた。

国境対策を担う国土安全保障省の予算も6.8%増やす。

国防費を増額する一方で、他のプログラム予算を削減し、財政赤字を拡大させない考えだ。

環境保護局(EPA)予算を約31%(26億ドル)、国務省や他の国際プログラム予算を28%(109億ドル)それぞれ減らす。公共放送や芸術、地域プログラム関連で、19の独立機関向けの資金供給を止める。

オバマ前大統領が推進した、二酸化炭素(CO2)削減を目指す「クリーン・パワー・プラン」への資金拠出をストップする意向だ。

海外援助事業や、世界銀行・国連の気候変動プログラムなどへの影響が予想される。ただ、マルバニー行政管理予算局(OMB)局長は、EPAと国務省の「中核機能」は維持すると説明した。

予算骨子には、大統領が掲げる1兆ドルのインフラ整備関連費用は含まれていない。

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焦点:日銀、YCC効果極大化狙う 米欧物価上昇で目立つ緩和姿勢 
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焦点:ベア減速、物価上昇も加わり消費にダブルパンチ 春闘見直しの声

http://jp.reuters.com/article/trump-budget-idJPKBN16N333

 


World | 2017年 03月 17日 11:30 JST 関連トピックス: トップニュース

 アングル:
米国務長官、予算削減を容認 低姿勢で将来的に影響力確保か

[ワシントン 16日 ロイター] - 複数の米政府関係者によると、ティラーソン国務長官は、国務省の大幅な予算削減を受け入れるなど、ホワイトハウスとの明らかな衝突を回避することで将来的に影響力を得る戦略に徹している。

米エネルギー大手エクソンモービル(XOM.N)の最高経営責任者(CEO)だった同氏は国務長官として、いくつかの課題に直面している。そのうちの一つが、予測不可能な政策を発表し、批判や反対を受け入れないトランプ大統領への対応だ。

歴代の大統領と国務長官との関係はさまざま。だがトランプ大統領とティラーソン長官との関係は、不安定な世界情勢とトランプ氏が掲げる「米国第一主義」が相いれない可能性があるだけに、とりわけ重要だとされる。

こうしたなか、ティラーソン氏は持ち前の低姿勢を心がけ、負け戦に持ち込まれずに外交政策で主張を通す方法を模索していると関係者はみる。

一例として挙げられるのは、ホワイトハウスが16日公表した2018会計年度の予算教書の骨子で国務省と対外支援関連の予算の28%削減が提案されたことへのティラーソン氏の対応だ。

同氏は訪問先の東京で、これまでの国務省の支出水準は「全く持続可能でない」と述べ、トランプ大統領が打ち出した「挑戦」を前向きに受け入れる考えを示した。

元政府当局者は、ティラーソン長官について、財布のひもを握るのは大統領ではなく、議会であることを踏まえ、「極めて思慮深い計算を行っている」と分析する。

米政府関係者は、エクソン時代の経験からティラーソン氏がコスト削減に慣れており、予算削減の大半を自身に委ねるようホワイトハウスを説得したとみている。

国務省のベテラン職員は「ティラーソン長官は予算削減に全く反対していない。彼は大統領やその側近と真っ向から戦っても勝てないことを分かっているため、違う戦略を取っている。つまり、国務省とその予算について理解を深めるまでは削減すべき分野について賢明な判断をできないと主張している」と語った。

国家安全保障会議(NSC)のマイケル・アントン報道官は、「トランプ大統領は国務長官に全幅の信頼を置いており、長官が外交政策の活性化に向けて大胆な目標を実行に移すことを期待している」と述べ、ティラーソン氏がホワイトハウスで高く評価されていることを明らかにした。

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http://jp.reuters.com/article/tillerson-budget-idJPKBN16O089


 


 
World | 2017年 03月 17日 08:26 JST 関連トピックス: トップニュース

英、女王承認受けEU離脱法が成立 いつでも通知可能に

[ロンドン 16日 ロイター] - 英国のエリザベス女王は16日、欧州連合(EU)離脱手続き開始に向けてリスボン条約第50条を発動する権限をメイ首相に与える法案を承認、同法は成立した。

法案は議会で13日に可決していた。

これにより首相はいつでも正式にEU離脱を通知できる。ただ、首相の報道官は13日、離脱通知の時期について、今後数日内よりも月末頃になる可能性が高いと示唆している。

*カテゴリーを追加します。

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Business | 2017年 03月 16日 09:35 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

 FOMC声明全文

 3月15日、米FRBはFOMCで、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を25ベーシスポイント(bp)引き上げ0.75─1%とすることを決めた。写真はイエレンFRB議長。ワシントンで撮影(2017年 ロイター/Yuri Gripas)

[ワシントン 15日 ロイター] - 2月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降に入手した情報は、労働市場が引き締まり続け、経済活動が緩やかなペースで拡大し続けた(continued to expand)ことを示している。

雇用の伸びは引き続き堅調(remained solid)で、失業率はここ数カ月間、あまり変化がない(was little changed in recent months)。家計支出は緩やかに増加し続け、企業の設備投資はいくらか安定したようにみえる(appears to have firmed somewhat)。ここ数四半期、インフレ率は上昇し、委員会の長期的な目標である2%に近づいている。エネルギーと食品の価格を除くと、インフレ率はあまり変わらず、2%をやや下回り続けた(continued to run somewhat below 2 percent)。将来のインフレを示す市場ベースの指標は低いままで、調査に基づいた長期的なインフレ期待の指標は、総じてあまり変わっていない。

委員会は法律上与えられた責務に従って、雇用最大化と物価安定の促進を目指す。委員会は、金融政策の運営姿勢の緩やかな調整により、経済活動が緩やかなペースで拡大し、労働市場の状況はさらにいくらか力強さを増し、インフレ率は中期的に2%近辺で安定する(stabilize around 2 percent)と予測している。短期的な経済見通しへのリスクはおおむね均衡しているとみられる(appear roughly balanced)。委員会は、物価指標と世界の経済や金融の動向を引き続き注意深く監視する。

労働市場の状況とインフレ率の実績と見通しを考慮して、委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを0.75─1.00%に引き上げることを決定した。金融政策の運営姿勢は引き続き緩和的で、それによって労働市場の状況のさらにいくらかの引き締まりと、2%のインフレへの持続的な回帰(sustained return)を支える。

FF金利の目標誘導レンジの将来的な調整の時期と規模を決めるに当たり、委員会は目標にしている最大雇用と2%のインフレとの比較で経済状況の実績と見通しを評価する。この評価は、労働市場の状況に関する指標、インフレ圧力やインフレ期待の指標、金融動向や国際情勢の解釈を含む幅広い情報を考慮する。委員会は対称的なインフレ目標(symmetric inflation goal)との比較で、インフレ率の実際の進捗と予想される進展を注視する。委員会は、経済状況はFF金利の緩やかな引き上げを正当化する形で進むと予測する。FF金利は当面、長期的に到達すると見込まれる水準を下回るレベルで推移する可能性がある。ただ、FF金利の実際の道筋は、今後入手するデータがもたらす経済見通し次第である。

委員会は、保有する政府機関債とエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の償還元本をMBSに再投資し、米国債の償還金を新発債に再投資する既存の政策を維持する。そして、FF金利の水準が十分に正常化されるまで、そうすると想定している。委員会による長期証券の保有を相当な水準で維持するこの政策は、金融環境を緩和的に保つ上で役立つはずだ。

政策決定の投票で賛成したのは、ジャネット・イエレン委員長、ウィリアム・ダドリー副委員長、ラエル・ブレイナード、チャールズ・エバンス、スタンレー・フィッシャー、パトリック・ハーカー、ロバート・カプラン、ジェローム・パウエル、ダニエル・タルーロの各委員。反対はニール・カシュカリ委員で、今回の会合では現行のFF金利の目標誘導レンジを維持することが好ましいと考えた。

<1月31日−2月1日>

昨年12月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降に入手した情報は、労働市場が引き締まり続け、経済活動が緩やかなペースで拡大し続けた(continued to expand)ことを示している。雇用の伸びは引き続き堅調(remained solid)で、失業率は最近つけた低い水準に近いところで推移した(stayed near its recent low)。家計支出は緩やかに増加し続けた(continued to rise moderately)が、企業の設備投資は引き続き軟調だった。消費者と企業の景況感に関する指標は最近上向いた(measures of consumer and business sentiment have improved of late)。ここ数四半期(in recent quarters)、インフレ率は上昇したが、委員会の長期的な目標である2%は下回り続けた。将来のインフレを示す市場ベースの指標は低いままで、大半の調査に基づいた長期的なインフレ期待の指標は、総じてあまり変わっていない。

委員会は法律上与えられた責務に従って、雇用最大化と物価安定の促進を目指す。委員会は、金融政策の運営姿勢の緩やかな調整により、経済活動が緩やかなペースで拡大し、労働市場の状況はさらにいくらか力強さを増し、インフレ率は中期的に2%に向かって上昇するだろう。短期的な経済見通しへのリスクはおおむね均衡しているとみられる(appear roughly balanced)。委員会は、物価指標と世界の経済や金融の動向を引き続き注意深く監視する。

労働市場の状況とインフレ率の実績と見通しを考慮して、委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを0.50─0.75%に維持することを決定した。金融政策の運営姿勢は引き続き緩和的で、それによって労働市場の状況のさらにいくらかの引き締まりと、2%のインフレへの回帰を支える。

FF金利の目標誘導レンジの将来的な調整の時期と規模を決めるに当たり、委員会は目標にしている最大雇用と2%のインフレとの比較で経済状況の実績と見通しを評価する。この評価は、労働市場の状況に関する指標、インフレ圧力やインフレ期待の指標、金融動向や国際情勢の解釈を含む幅広い情報を考慮する。現時点でインフレ率が2%に届いていないことを考慮し、委員会はインフレ目標達成に向けた実際の進捗と予想される進展を注視する。委員会は、経済状況はFF金利の緩やかな引き上げしか正当化しない形で進むと予測する。FF金利は当面、長期的に到達すると見込まれる水準を下回るレベルで推移する可能性がある。ただ、FF金利の実際の道筋は、今後入手するデータがもたらす経済見通し次第である。

委員会は、保有する政府機関債とエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の償還元本をMBSに再投資し、米国債の償還金を新発債に再投資する既存の政策を維持する。そして、FF金利の水準が十分に正常化されるまで、そうすると想定している。委員会による長期証券の保有を相当な水準で維持するこの政策は、金融環境を緩和的に保つ上で役立つはずだ。

政策決定の投票で賛成したのは、ジャネット・イエレン委員長、ウィリアム・ダドリー副委員長、ラエル・ブレイナード、チャールズ・エバンス、スタンレー・フィッシャー、パトリック・ハーカー、ロバート・カプラン、ニール・カシュカリ、ジェローム・パウエル、ダニエル・タルーロの各委員。

<12月13─14日>

11月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降に入手した情報は、労働市場が引き締まり続け、経済活動が今年半ば以降、緩やかなペースで拡大している(has been expanding at moderate pace)ことを示している。雇用の伸びはここ数カ月間、堅調で、失業率は低下した。家計支出は緩やかに増加したが、企業の設備投資は引き続き軟調だった。インフレ率は今年の初めから上昇したが、それまでのエネルギー価格とエネルギー以外の輸入物価の下落を部分的に反映して、委員会の長期的な目標である2%を下回り続けた。将来のインフレを示す市場ベースの指標は大幅に(considerably)上昇したが、依然として低く(still are low)、大半の調査に基づいた長期的なインフレ期待の指標はここ数カ月、総じてあまり変わっていない。

委員会は法律上与えられた責務に従って、雇用最大化と物価安定の促進を目指す。委員会は、金融政策の運営姿勢の緩やかな調整により、経済活動が緩やかなペースで拡大し、労働市場の状況は、さらにいくらか力強さを増すと予測している。インフレ率は、エネルギーや輸入価格の過去の下落による一時的な影響が消え、労働市場がさらに力強さを増せば、中期的に2%に向かって上昇すると予想される。短期的な経済見通しへのリスクはおおむね均衡しているとみられる(appear roughly balanced)。委員会は、物価指標と世界の経済や金融の動向を引き続き注意深く監視する。

労働市場の状況とインフレ率の実績と見通しを考慮して(in view of realized and expected labor market conditions and inflation)、委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを0.50─0.75%に引き上げることを決定した。金融政策の運営姿勢は引き続き緩和的で(the stance of monetary policy remains accommodative)、それによって労働市場の状況のさらにいくらかの引き締まり(some further strengthening in labor market conditions)と、2%のインフレへの回帰を支える。

FF金利の目標誘導レンジの将来的な調整の時期と規模を決めるに当たり、委員会は目標にしている最大雇用と2%のインフレとの比較で経済状況の実績と見通しを評価する。この評価は、労働市場の状況に関する指標、インフレ圧力やインフレ期待の指標、金融動向や国際情勢の解釈を含む幅広い情報を考慮する。現時点でインフレ率が2%に届いていないことを考慮し、委員会はインフレ目標達成に向けた実際の進捗と予想される進展を注視する。委員会は、経済状況はFF金利の緩やかな引き上げしか正当化しない形で進むと予測する。FF金利は当面、長期的に到達すると見込まれる水準を下回るレベルで推移する可能性がある。ただ、FF金利の実際の道筋は、今後入手するデータがもたらす経済見通し次第である。

委員会は、保有する政府機関債とエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の償還元本をMBSに再投資し、米国債の償還金を新発債に再投資する既存の政策を維持する。そして、FF金利の水準が十分に正常化されるまで、そうすると想定している。委員会による長期証券の保有を相当な水準で維持するこの政策は、金融環境を緩和的に保つ上で役立つはずだ。

政策決定の投票で賛成したのは、ジャネット・イエレン委員長、ウィリアム・ダドリー副委員長、ラエル・ブレイナード、ジェームズ・ブラード、スタンレー・フィッシャー、エスター・ジョージ、ロレッタ・メスター、ジェローム・パウエル、エリック・ローゼングレン、ダニエル・タルーロの各委員。

<11月1─2日>

9月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降に入手した情報は、労働市場が引き締まり続け、経済活動の拡大が今年上半期に見られた緩慢なペースから加速したことを示している。失業率にはここ数カ月間、あまり変化はないが、雇用の伸びは堅調だった。家計支出は緩やかに増加した(has been rising moderately)が、企業の設備投資は引き続き軟調だった。インフレ率は今年の初めからやや上昇した(has increased

somewhat)が、それまでのエネルギー価格とエネルギー以外の輸入物価の下落を部分的に反映して、委員会の長期的な目標である2%を下回り続けた。将来のインフレを示す市場ベースの指標は上昇したが低いまま(have moved up but remain low)で、大半の調査に基づいた長期的なインフレ期待の指標はここ数カ月、総じてあまり変わっていない。

委員会は法律上与えられた責務に従って、雇用最大化と物価安定の促進を目指す。委員会は、金融政策の運営姿勢の緩やかな調整により、経済活動が緩やかなペースで拡大し、労働市場の状況は、さらにいくらか力強さを増すと予測している。インフレ率は、エネルギーや輸入価格の過去の下落による一時的な影響が消え、労働市場がさらに力強さを増せば、中期的に2%に向かって上昇すると予想される。短期的な経済見通しへのリスクはおおむね均衡しているとみられる(appear roughly balanced)。委員会は、物価指標と世界の経済や金融の動向を引き続き注意深く監視する。

こうした状況を背景に、委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを0.25─0.50%に維持することを決定した。委員会はFF金利を引き上げる根拠は引き続き強まった(the case for an increase in the federal funds rate has continued to strengthen)と判断するが、当面は、目標に向けて続く進展に関するさらにいくらかの証拠を待つこと(for the time being, to wait for some further evidence of continued progress toward its objectives)に決めた。金融政策の運営姿勢は引き続き緩和的で、それによって労働市場の状況の一段の改善と、2%のインフレへの回帰を支える。

FF金利の目標誘導レンジの将来的な調整の時期と規模を決めるに当たり、委員会は目標にしている最大雇用と2%のインフレとの比較で経済状況の実績と見通しを評価する。この評価は、労働市場の状況に関する指標、インフレ圧力やインフレ期待の指標、金融動向や国際情勢の解釈を含む幅広い情報を考慮する。現時点でインフレ率が2%に届いていないことを考慮し、委員会はインフレ目標達成に向けた実際の進捗と予想される進展を注視する。委員会は、経済状況はFF金利の緩やかな引き上げしか正当化しない形で進むと予測する。FF金利は当面、長期的に到達すると見込まれる水準を下回るレベルで推移する可能性がある。ただ、FF金利の実際の道筋は、今後入手するデータがもたらす経済見通し次第である。

委員会は、保有する政府機関債とエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の償還元本をMBSに再投資し、米国債の償還金を新発債に再投資する既存の政策を維持する。そして、FF金利の水準が十分に正常化されるまで、そうすると想定している。委員会による長期証券の保有を相当な水準で維持するこの政策は、金融環境を緩和的に保つ上で役立つはずだ。 政策決定の投票で賛成したのは、ジャネット・イエレン委員長、ウィリアム・ダドリー副委員長、ラエル・ブレイナード、ジェームズ・ブラード、スタンレー・フィッシャー、ジェローム・パウエル、エリック・ローゼングレン、ダニエル・タルーロの各委員。反対はエスター・ジョージ、ロレッタ・メスターの両委員で、今回の会合でFF金利の目標誘導レンジを0.50─0.75%に引き上げることが好ましいと考えた。

<9月20─21日>

7月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降に入手した情報は、労働市場が引き締まり続け(has continued to strengthen)、経済活動の拡大が今年上半期に見られた緩慢なペースから加速した(picked up)ことを示している。失業率にはここ数カ月間、あまり変化はないが、雇用の伸びは概して堅調だった。家計支出は力強く伸びたが、企業の設備投資は引き続き軟調(has remained soft)だった。インフレ率は、それまでのエネルギー価格とエネルギー以外の輸入物価の下落を部分的に反映して、委員会の長期的な目標である2%を下回り続けた。将来のインフレを示す市場ベースの指標は低いまま(remain low)で、大半の調査に基づいた長期的なインフレ期待の指標はここ数カ月、総じてあまり変わっていない。 委員会は法律上与えられた責務に従って、雇用最大化と物価安定の促進を目指す。委員会は、金融政策の運営姿勢の緩やかな調整により、経済活動が緩やかなペースで拡大し、労働市場の状況(labor market conditions)は、さらにいくらか力強さを増す(will strengthen somewhat further)と予測している。エネルギー価格のそれまでの下落を背景に、インフレ率は短期的に低いままで推移すると見込まれるが、エネルギーや輸入価格の過去の下落による一時的な影響が消え、労働市場がさらに力強さを増せば、中期的に2%に向かって上昇すると予想される。短期的な経済見通しへのリスクはおおむね安定的とみられる(appear roughly balanced)。委員会は、物価指標と世界の経済や金融の動向を引き続き注意深く監視する。

こうした状況を背景に、委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを0.25─0.50%に維持することを決定した。委員会はFF金利を引き上げる根拠は強まった(the case for an increase in the federal funds rate has strengthend)と判断するが、当面は、目標に向けて続く進展のさらなる証拠を待つこと(for the time being,to wait for further evidence of continued progress toward its objectives)に決めた。金融政策の運営姿勢は 引き続き緩和的で、それによって労働市場の状況の一段の改善と、2%のインフレへの回帰を支える。 FF金利の目標誘導レンジの将来的な調整の時期と規模を決めるに当たり、委員会は目標にしている最大雇用と2%のインフレとの比較で経済状況の実績と見通しを 評価する。この評価は、労働市場の状況に関する指標、インフレ圧力やインフレ期待の指標、金融動向や国際情勢の解釈を含む幅広い情報を考慮する。現時点で インフレ率が2%に届いていないことを考慮し、委員会はインフレ目標達成に向けた進捗と期待を注視する。委員会は、経済状況はFF金利の緩やかな引き上げしか正当化しない形で進むと予測する。FF金利は当面、長期的に到達すると見込まれる水準を下回るレベルで推移する可能性がある。ただ、FF金利の実際の道筋は、今後入手するデータがもたらす経済見通し次第である。

委員会は、保有する政府機関債とエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の償還元本をMBSに再投資し、米国債の償還金を新発債に再投資する既存の政策を維持する。そして、FF金利の水準が十分に正常化されるまで、そうすると想定している。委員会による長期証券の保有を相当な水準で維持するこの政策は、金融環境を緩和的に保つ上で役立つはずだ。

政策決定の投票で賛成したのは、ジャネット・イエレン委員長、ウィリアム・ダドリー副委員長、ラエル・ブレイナード、ジェームズ・ブラード、スタンレー・フィッシャー、ジェローム・パウエル、ダニエル・タルーロの各委員。反対はエスター・ジョージ、ロレッタ・メスター、エリック・ローゼングレンの各委員で、今回の会合でFF金利の目標誘導レンジを0.50─0.75%に引き上げることが好ましいと考えた。

<7月26─27日>

6月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降に入手した情報は、労働市場が力強さを増し(the labor market strengthened)、経済活動が緩やかな速度で拡大している(economic activity has been expanding at a moderate rate)ことを示している。雇用の伸びは5月は弱かったが、6月は力強かった。総じて、就業者数やその他の雇用市場の指標はここ数カ月間、労働力の活用がいくらか進んだ(some increase in labor utilization in recent months)ことを示している。家計支出は力強く伸びたが、企業の設備投資は軟調だった(has been soft)。インフレ率は、それまでのエネルギー価格とエネルギー以外の輸入物価の下落を部分的に反映して、委員会の長期的な目標である2%を下回り続けた。将来のインフレを示す市場ベースの指標は低いまま(remain low)で、大半の調査に基づいた長期的なインフレ期待の指標はここ数カ月、総じてあまり変わっていない。

委員会は法律上与えられた責務に従って、雇用最大化と物価安定の促進を目指す。委員会は現在、金融政策の運営姿勢の緩やかな調整により、経済活動が緩やかなペースで拡大し、労働市場の指標は力強さを増すと予測している。エネルギー価格のそれまでの下落を部分的な原因として、インフレ率は短期的に低いままで推移すると見込まれるが、エネルギーや輸入価格の過去の下落による一時的な影響が消え、労働市場がさらに力強さを増せば、中期的に2%に向かって上昇すると予想される。短期的な経済見通しへのリスクは低下した(near-term risks to the economic outlook have diminished)。委員会は、物価指標と世界の経済や金融の動向を引き続き注意深く監視(closely monitor)する。

こうした状況を背景に、委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを0.25─0.50%に維持することを決定した。金融政策の運営姿勢は引き続き緩和的で、それによって労働市場の状況の一段の改善と、2%のインフレへの回帰を支える。

FF金利の目標誘導レンジの将来的な調整の時期と規模を決めるに当たり、委員会は目標にしている最大雇用と2%のインフレとの比較で経済状況の実績と見通しを評価する。この評価は、労働市場の状況に関する指標、インフレ圧力やインフレ期待の指標、金融動向や国際情勢の解釈を含む幅広い情報を考慮する。現時点でインフレ率が2%に届いていないことを考慮し、委員会はインフレ目標達成に向けた進捗と期待を注視する。委員会は、経済状況はFF金利の緩やかな引き上げしか正当化しない形で進むと予測する。FF金利は当面、長期的に到達すると見込まれる水準を下回るレベルで推移する可能性がある。ただ、FF金利の実際の道筋は、今後入手するデータがもたらす経済見通し次第である。

委員会は、保有する政府機関債とエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の償還元本をMBSに再投資し、米国債の償還金を新発債に再投資する既存の政策を維持する。そして、FF金利の水準が十分に正常化されるまで、そうすると想定している。委員会による長期証券の保有を相当な水準で維持するこの政策は、金融環境を緩和的に保つ上で役立つはずだ。

政策決定の投票で賛成したのは、ジャネット・イエレン委員長、ウィリアム・ダドリー副委員長、ラエル・ブレイナード、ジェームズ・ブラード、スタンレー・フィッシャー、ロレッタ・メスター、ジェローム・パウエル、エリック・ローゼングレン、ダニエル・タルーロの各委員。反対はエスター・ジョージ委員で、今回の会合でFF金利の目標誘導レンジを0.50─0.75%に引き上げることが好ましいと考えた。

<6月14ー15日>

4月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降に入手した情報は、労働市場の改善ペースが鈍る一方で(the pase of improvement in the labor market has slowed)、経済活動の拡大は加速しているように見える(growth in economic activity appears to have picked up)ことを示している。失業率は低下したが、雇用の拡大は弱まった(job gains have diminished)。家計支出の伸びは力強さを増した(household spending has strengthened)。今年初め以来、住宅部門は引き続き改善し、純輸出から来る足かせは減ったように見える(drag from net exports appears to have lessened)が、企業の設備投資は軟調だった(has been soft)。インフレ率は、それまでのエネルギー価格とエネルギー以外の輸入物価の下落を部分的に反映して、委員会の長期的な目標である2%を下回り続けた。将来のインフレを示す市場ベースの指標は低下(declined)し、大半の調査に基づいた長期的なインフレ期待の指標はここ数カ月、総じてあまり変わっていない。

委員会は法律上与えられた責務に従って、雇用最大化と物価安定の促進を目指す。委員会は現在、金融政策の運営姿勢の緩やかな調整(gradual adjustments in the stance of monetary policy)により、経済活動が緩やかなペースで拡大し、労働市場の指標は力強さを増すと予測している。エネルギー価格のそれまでの下落(earlier declines)を部分的な原因として、インフレ率は短期的に低いままで推移すると見込まれる(inflation is expected to remain low in the near term)が、エネルギーや輸入価格の過去の(past)下落による一時的な影響が消え、労働市場がさらに力強さを増せば、中期的に2%に向かって上昇すると予想される。委員会は、物価指標と世界の経済や金融の動向(inflation indicators and global economic and financial developments)を引き続き注意深く監視(closely monitor)する。

こうした状況を背景に、委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを0.25─0.50%に維持することを決定した。金融政策の運営姿勢は引き続き緩和的で、それによって労働市場の状況の一段の改善と、2%のインフレへの回帰を支える。

FF金利の目標誘導レンジの将来的な調整の時期と規模を決めるに当たり、委員会は目標にしている最大雇用と2%のインフレとの比較で経済状況の実績と見通しを評価する。この評価は、労働市場の状況に関する指標、インフレ圧力やインフレ期待の指標、金融動向や国際情勢の解釈を含む幅広い情報を考慮する。現時点でインフレ率が2%に届いていないことを考慮し、委員会はインフレ目標達成に向けた進捗と期待を注視する。委員会は、経済状況はFF金利の緩やかな引き上げしか正当化しない形で進むと予測する。FF金利は当面、長期的に到達すると見込まれる水準を下回るレベルで推移する可能性がある。ただ、FF金利の実際の道筋は、今後入手するデータがもたらす経済見通し次第である。

委員会は、保有する政府機関債とエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の償還元本をMBSに再投資し、米国債の償還金を新発債に再投資する既存の政策を維持する。そして、FF金利の水準が十分に正常化されるまで、そうすると想定している。委員会による長期証券の保有を相当な水準で維持するこの政策は、金融環境を緩和的に保つ上で役立つはずだ。

政策決定の投票で賛成したのは、ジャネット・イエレン委員長、ウィリアム・ダドリー副委員長、ラエル・ブレイナード、ジェームズ・ブラード、スタンレー・フィッシャー、エスター・ジョージ、ロレッタ・メスター、ジェローム・パウエル、エリック・ローゼングレン、ダニエル・タルーロの各委員。

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[不安と不健康18] 謎の皮膚病が妻の手に、「主婦湿疹」ってなんだ
【第21回】 2017年3月17日 木原洋美 [医療ジャーナリスト]
謎の皮膚病が妻の手に、「主婦湿疹」ってなんだ


※写真はイメージです
もしや感染症?
痛痒い水泡出現

「うわっ何これ、気持ち悪ーい」

 静江さん(仮名・36歳)は小さく叫んでしまった。指や手のひらに、痛痒くて小さなプツプツができていた。熱く、ヒリヒリするような感覚もある。そういえば1週間くらい前から、右手の指の腹がやけに乾燥して、嫌な感じがあった。よく見ると、細かくひび割れ縦縞が入っている。傷というほどではないが割れてしまっているようだった。

 冬の間せっせと使ってきた保湿クリームを多めに塗ってみたが効果はなかった。特に変わったことは何もしていない。シャンプーもリンスも食器洗い洗剤も、いつもの通りだ。今までに、手荒れで悩んだことは一度もない。

 (だからきっとすぐよくなる)

 と思っていたのに症状は左手にも広がり、ついにプツプツまでできてしまった。

 夫の昭信さん(仮名・42歳)に見せると、やはり、

「うわっ、地味に気持ち悪いね。なんか感染する病気っぽいよね。痛痒そう。あっちこっち触らないでさ、すぐ病院に行った方がいいよ」

 顏をしかめて後ずさる。

 (ひどいわ、そんな気持ち悪そうにしなくても)

 内心ムッとしつつも、静江さんは皮膚科に駆け込んだ。

「原因は乾燥」?
ストレス・疲労も影響する

 手に小さなプツプツができて、痛かったり痒かったりする病気で、静江さんがなりそうなのは3つ。

 1つは「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」。特に手のひらの手首に近い部分に赤い斑点や小さな水泡、潰すと膿が出るブツブツなどができ、フケのように皮膚が剥がれ落ちたりする。

 2つ目は、手白癬(てはくせん)。簡単にいえば、「手の水虫」だ。カユミはなく、あったとしても強くない。水仕事の多い職業の人がなりやすい。

 そして、3つ目は「主婦湿疹」。ざっくり言うと「重度の手荒れ」だ。

「乾燥型」と「湿潤型」、「混合型」があり、乾燥型は皮膚がカサカサして、ひどくなるとひび割れが生じる、指紋が消える、皮膚が硬くなるなどの症状が出る。利き手の親指、人さし指、中指などよく使う指先から症状がはじまり、次第に手のひら全体に広がっていく。

 一方、湿潤型は指の腹や手のひら、手の甲に、小さな発疹や水ぶくれができる。混合型は、乾燥型と湿潤型が混在したタイプだ。

 いずれにせよ炎症が起きているため、かゆみ・傷み・赤み・かぶれ・皮むけなどの症状が出る。

 ネットで調べた静江さんは、(「手白癬」だけはヤダなぁ、水虫ってのはねぇ)と思いつつ、診断を待った。

「いわゆる主婦湿疹ですね、主婦の方に多い病気です」

 女性医師は微笑みながら、次のように教えてくれた。

「原因は乾燥です。手の表面にある皮脂膜が、お湯や洗剤を使った水仕事によって過剰に洗い流されることがきっかけで起こります。皮脂膜は、天然のバリアです。手湿疹とも呼ばれ、特に主婦の方、飲食店員、美容師、事務職員など、手仕事をされる方にできやすい傾向があります」

「そうなんですか。でも特に洗い過ぎたりして乾燥させた記憶はないんですけど、どうして今回に限って発症してしまったんでしょうか」

 率直な疑問を口にすると……。

「そうですね、体調が悪かったんじゃないですか。乾燥が原因といっても、どうして乾燥するのかはよく分かっていません。ストレスや疲労で、体全体のバリア機能が弱っている時は、普段と同じ条件でも、身体が敏感に反応してしまうことがあるので、そのせいかもしれませんね。ですから今日は、保湿効果のある軟膏と、腫れカユミを鎮めるステロイド系の軟膏をお出しします。

 ステロイドは怖いとおっしゃる方がいますが、使用法を守ってくだされば問題ありません。軟膏は手全体に、べたつきがなくなるまで、優しく擦りこんでくださいね。特に指の股のところは入念に塗ってください。あとは、手はできるだけ休ませてください。水仕事をなさるときはゴム手袋をしたほうがいいですよ。正式な病名は接触性皮膚炎といいまして、手に刺激を与えるのはよくないんです。といっても、主婦業は休めないですよね。根気よく治しましょう」

 話し終わると医師は、静江さんの手に丁寧に軟膏を擦りこみ、「こうした方が早く治りますから」と包帯でぐるぐる巻きにしてしまった。

休もうにも休めない
ついに「発熱」も

「なんか大袈裟だなぁ」

 静江さんは、痛々しい見かけになった手を隠すようにして保育園に子どもたちのお迎えに向かった。

 長男は5歳。昨年生まれた長女はまだ1歳になったばかりだ。

「おかあさん、どうしたの。お手手痛いの。大丈夫」

 案の定、息子は目を丸くして尋ねてきた。お母さん子の甘えん坊だけに、今にも泣きだしそうだ。いつもは必ず手をつなぐのに、「大丈夫だから」と言っても、怖がってつながない。

 静江さんも、息子には「大丈夫」と言ったが、昭信さんに対しては「もう大変なの。手は使っちゃいけないんですって」と大袈裟に報告した。

「わかったよ、食器洗いと洗濯は僕に任せて。明日の夕食は外食にしようか」との協力を取り付けた。内心、(そこまでしてもらうほど重症ではないんだけど)と思いつつ……。

 しかし、思ったよりも主婦湿疹はやっかいだった。

 2日間ほどは夫に水仕事を頼み、極力手を休めていられたが、それ以上は無理だ。包帯ぐるぐる巻きで仕事に行くわけにはいかないし、育児も家事も実際問題、待ったなしの状態だ。

 仕事には100円ショップでまとめ買いした白い手袋、水仕事にはゴム手袋着用した。

「手タレ(手の撮影専門のモデル)みたいでしょ」と冗談めかして笑ってはみたものの、症状は進行しているように見える。

 プツプツの水泡ができていたところは全部皮が剥けてしまった。しかも、なんだか全身が熱っぽい。

厳密には「原因不明」
産後の肥立ちも関与?

 実は静江さん、長女を産んだ後、1ヵ月から2ヵ月に1回ずつ風邪をひき、38度以上の発熱で内科を受診していた。

 その日も保育園に迎えに行く前にクリニックに寄り、主婦湿疹の件も伝えると、主治医は心配そうにこう言った。

「身体が弱っているんですね。普通は38度以上の発熱なんて、年1回ぐらいです。でもあなたの場合、この1年、ほぼ毎月です。いわゆる“産後の肥立ち”がよくないんじゃないでしょうか。何か積極的な健康対策をしてみたほうがいいと思いますよ。湿疹も、少なからず関係しているはずです。実のところ、主婦湿疹とかは、いろいろと原因はいわれているものの、はっきりしたところは不明ですからね」

 言われてみれば、確かに……。

 腑に落ちた静江さんはさっそく薬局に行き、薬剤師に相談した。そして、薬剤師に勧められた漢方薬と「未病に効く」という生薬のお酒を飲み始めた。

 もちろん皮膚科でもらった塗り薬も地道に使用していたところ、症状は文字通り「薄紙を剥ぐように」改善し始めた。気がつくと手はすっかりキレイになっていたし、月1回の発熱もなくなった。

 諸々の薬が効いたから治ったのか、自然に回復したのかはわからない。ただ、体調がいいのは確かだ。出産は女性の身体に、思っている以上のインパクトを与えるようだ。

「僕たちも、年齢的には中年世代。気持ちは若くても、肉体的にはもう若くはないと自覚しなさいってことなんじゃないかな。子どもたちのためにも、健康に気を使って、自分の身体を大切にしないといけないね」

 静江さんも昭信さんも、しみじみそう感じている。

(医療ジャーナリスト 木原洋美)
http://diamond.jp/articles/-/121591

http://www.asyura2.com/16/health18/msg/436.html

[不安と不健康18] 「スマホ・ネット禁止令」で働き方改革は簡単に実現できる スマホとネットが脳に与える三つの悪影響
2017年3月17日 岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
「スマホ・ネット禁止令」で働き方改革は簡単に実現できる


生産性向上に向けた政策が
不十分な働き方改革

 新聞を見ると、毎日にように“働き方改革”という言葉が踊っています。安倍政権の現在の最重要政策なので当然ではありますが、ちょっと首を傾げたくなってしまいます。

 というのは、実際に動いている目立った政策が、同一労働同一賃金の実現に向けた非正規雇用の待遇改善と、長時間労働の是正くらいだからです。後者について、今週に入って残業時間の上限を設定することで政府・経団連・連合が合意しましたが、それを総理や官房長官が“歴史的な大改革”と自画自賛するのを見ると、いよいよ首を傾げたくなってしまいます。

 そもそも働き方改革は何のために行うのでしょうか。働く側のために賃金の上昇とワークライフバランスを実現するとともに、経済全体では生産性の向上と労働人口の増加(人口減少への対応)を実現するためになると思います。政策目的としては4つが考えられるのです。

 この観点から考えると、長時間労働の是正をはじめ、働き方改革で検討されているテーマの多く(テレワーク、女性の活躍、高齢者の就業促進、子育て・介護と仕事の両立、外国人受け入れ)が、主にワークライフバランスや労働人口増加のための政策です。逆に言えば、日本経済にとってもっとも重要な課題である生産性の向上と賃金の上昇に向けた政策はそんなに多くないのです。

 もちろん、非正規雇用の待遇改善は、非正規の賃金上昇のためにやって当然の政策です。ただ、低賃金で喘いでいるのは非正規だけではありません。最低賃金を大幅に上げることが、ブラック企業を撲滅するためにも必要なはずです。

 かつ、大事なのは、それらはあくまで賃金上昇のための政策に過ぎず、それだけで自動的に生産性も向上するなどあり得ないということです。

 真剣に労働者の生産性を向上させたいなら、やはり労働者がスキルアップできる機会を増やすことが必要です。北欧のように政府が提供する職業訓練プログラムや失業手当を充実するなど、教育・訓練の機会を抜本的に強化し、労働者のスキルアップは企業のOJT任せという高度成長期以来の仕組みを転換すべきではないでしょうか。

スマホとネットが脳に与える三つの悪影響

 ただ、そうした政策は多額の予算が必要だし、ハローワークなど既得権益も絡みますので、おそらく抜本的な改革はやらない今の政権では無理でしょう。それでは、予算をかけずに労働者の生産性を向上させる政策はないでしょうか。一つあります。それは“スマホ・ネット禁止令”を出すことです。

 既にこのコーナーで何度か軽く触れたことがありますが、スマホやネットを使い過ぎると、人間の脳には三つの悪影響が生じる可能性が高いと言われています。

 第一は集中力が低下することです。スマホやネットで画面をどんどん変えていろんなウェブサイトやソーシャルメディアを見ていると、脳が常に情報の刺激を求めるようになるので、集中して勉強したり考えるということができなくなります。

 第二は画面をスクロールしながらテキストを読んでばかりいると、読み方が“浅い読み”(字面だけを追って記憶に残らない流し読み)ばかりになり、“深い読み”(じっくり読んで内容を吸収するとともに、自分が持っている知識と新しい情報を結合して新しいアイディアを生み出す)ができなくなります。

 第三は行動全般が受け身になることです。特にスマホは、能動的に使いこなしているようで、実はだいたい決まったウェブサイトやソーシャルメディアを巡回しているだけ、ゲームも与えられたルールに従ってやっているだけと、スマホが情報を与えてくれるのに従うという受け身の状態になります。脳がそれに慣れてしまうと、スマホを使っていない時も行動が受け身になりがちです。

 ここで、恐ろしいデータを紹介しましょう。いずれも米国での調査の結果ですが、まずiPhoneユーザは1日に80回、Androidユーザは1日に110もスマホをアンロック、つまりスマホをいじっていました。平均して1日に100回として、また睡眠時間を除いた1日の時間が仕事をしている時間も含めて17時間とすると、なんと10分に1回はスマホをいじっていることになります。

 次に、スマホやネットのユーザは、平均的なウェブサイトに書かれている文章(英単語で593語が含まれている)の20%しか読んでいないそうです。

 さらに、これが一番恐ろしいのは、今や仕事ではパソコンやスマホによりマルチタスクが当たり前になり、また様々なデジタルのサービス(メール、携帯電話、メッセンジャーなど)が入り込んだ結果、人は平均して3分ごとに違ったタスクをこなしますが、一度止めたタスクに戻るには23分も要したそうです。

「歩きスマホは危険です」ではなく
「スマホは危険です」

 私自身、自分の日々の行動を思い返すと思い当たる節が多いので、自己反省を込めて考えると、おそらく日本人の行動も同じようなものだと思います。人間は、スマホやネットを通じた情報の過剰摂取により、これまでにないくらいに注意散漫になってしまっているのです。こんなに落ち着きのない行動をしていては、そもそも仕事の生産性も高まりませんし、また集中してスキルアップに取り組めるはずもありません。

 もちろん、スマホやネットは、賢く使えば生産性アップに大きく貢献する化物のような道具、手段です。でも、残念ながら今はまだ賢く使いこなすどころか、逆に人間がスマホやネットに使われてしまっているために、マイナスの影響の方が大きく出ているのです。

 そう考えると、スマホやネットの利用の全面禁止は当然無理ですが、まず使い過ぎある程度制限するキャンペーン、ムーブメントを起こすだけでも、労働者の生産性の向上に役立つのではないでしょうか。例えば、車内や公共交通機関の中ではスマホの利用を禁止するとか、オフィスや大学の教室の中ではウェブ閲覧を完全に禁止するとか…。最近は電車の中で「歩きスマホは危険です」という表示をよく見かけますが、それだけでは不十分、「スマホは危険です」というキャンペーンを始めるべきです。

 …もちろん、私の妄想レベルではこれがすぐにやれるベストの政策だと思うものの、実際にはこうした取り組みを政策として行うのは確実に無理です。ただ、少なくとも欧米では様々な調査でスマホやネットの問題点、人間に与える悪影響が明らかになりつつあるからこそ、生産性の向上が最重要課題の日本がこの問題に率先して取り組んでもいいのではないでしょうか。

(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 岸 博幸)

http://diamond.jp/articles/-/121597
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/437.html

[社会問題9] 恐怖で子どもをしつけても意味がない 「生活保護なめんな」ジャンパー事件の深層 「社内不倫」がバレたら!?悲惨な代償実例集
【第9回】 2017年3月17日 中室牧子、津川友介
恐怖で子どもをしつけても意味がない

学校などで人が交通事故にあった映像を見せられ、「道路を飛び出してはいけない」と教えられた人は多いのではないだろうか。子どもが交通事故にあわないように、事故がいかに怖いものなのか説明する親もいるかもしれない。このような教育法を「スケアード・ストレート」と呼ぶ。しかし、『「原因と結果」の経済学』の著者、中室牧子氏と津川友介氏によれば、この教育法は意味がないどころか、逆効果を生む可能性すらあるという。詳細を聞いた。

子どもを怖がらせることは
躾として効果があるか
 アメリカには「スケアード・ストレート」という教育法がある。子どもに「恐ろしい」(スケアード)と感じさせることで、正しい行動(ストレート)をとることの必要性を学ばせるものだ。交通事故の現場を再現して交通ルールの重要性を学ばせたり、非行少年に刑務所を見学させて更生を促したりすることが「スケアード・ストレート」の例である。
 日本でも「早く寝ないとお化けが出るよ!」と言って子どもを寝かしつける親がいるから、「スケアード・ストレート」はアメリカに限った教育法ではないのだろう。
 しかし、アメリカでこの「スケアード・ストレート」なる教育法が特に有名なのには理由がある。この教育法を体験したある若者グループが犯罪に関わらなくなったということが1970年代にテレビ番組で報道されたのだ。
 それ以来、多くの人が「スケアード・ストレート」には若者の犯罪を抑止する効果があると認識してしまった。
 これは、「スケアード・ストレート」を受けた前後で単純に比較している(「前後比較デザイン」と呼ぶ)。しかし、この方法では、「スケアード・ストレート」と「犯罪に関わる確率」の関係が因果関係なのか相関関係にすぎないかを明らかにすることはできない。

因果関係……2つのことがらのうち、片方が原因となって、もう片方が結果として生じる関係のこと。「スケアード・ストレート」と「犯罪に関わる確率」の関係が因果関係の場合、「スケアード・ストレート」による指導を受けた子どもは犯罪に関わりにくくなくなる。
相関関係……一見すると片方につられてもう片方も変化しているように見えるものの、原因と結果の関係にない関係のこと。「スケアード・ストレート」と「犯罪に関わる確率」の関係が相関関係にすぎない場合、「スケアード・ストレート」による指導受けても、それによって子どもが犯罪に関わる確率が変わることはない。

単純な前後比較では
因果関係を評価することはできない
 なぜ、前後比較デザインを使うことができないのだろうか。理由は2つある。1つ目は、時間とともに起こる自然な経時変化(トレンド)の影響を考慮することができないからだ。
 1970年代のテレビ番組の例で言うと、単にその若者グループが大人になったので、今までやっていたような非行行為がバカらしくなり、単に「大人になった」ため、犯罪に関わらなくなっただけかもしれない。
 そのため、「スケアード・ストレート」を受けたかどうかにかかわらず生じていた「トレンド」を、あたかも「スケアード・ストレート」の効果と勘違いしてしまうリスクがある。
 2つ目は「平均への回帰」の可能性である。これは、データ収集を繰り返していると、たまたま極端な値をとったあとは、徐々にいつもの水準に近づいていく、という統計的な現象のことだ。
 テレビ番組のために集められたのが特に非行が激しい若者だったとすれば、「平均への回帰」の影響で、犯罪に関わる確率が次第に同世代の若者の平均に近づくかもしれない。

因果関係があるかどうかを
調べる最良の方法「ランダム化比較試験」
 研究者らが「ランダム化比較試験」(第3回を参照)という方法を使い、「スケアード・ストレート」と「犯罪に関わる確率」の関係が因果関係か相関関係のどちらなのかを明らかにしようとした。
 この方法では、研究の対象者となる若者を、「スケアード・ストレート」を受講するグループ(「介入群」と呼ぶ)と、受講しないグループ(「対照群」と呼ぶ)にランダムに割り付ける。
 ランダムに割り付けることによって、若者や親は「スケアード・ストレート」を受けるかどうかを自分の意思で選択できなくなる。その結果、「犯罪に関わる確率」に影響を与えそうなほかの要素が似たもの同士になり、両者は「比較可能」になるのである。
 この状態で、将来の犯罪への関与の差を取れば、「スケアード・ストレート」と「犯罪に関わる確率」が因果関係なのか相関関係なのかを明らかにすることができるというわけである。

「スケアード・ストレート」を
受けた若者は犯罪に関わる確率が高かった
 ランダム化比較試験の結果、おどろくべきことに「スケアード・ストレート」を受けた若者は、その後の人生で犯罪に関わる確率が高かったことが示唆されたのだ。
 このプログラムは一見効果があるように見えるが、決して若者を更生させる力をもたないばかりか、かえって彼らを犯罪者にする確率を高めているということになる。
 安易に前後比較デザインを用いて政策を評価することは「スケアード・ストレート」のように期待した結果が得られないどころか、むしろ社会的な害悪となる可能性がある政策を高く評価してしまうということになりかねない。
 日本でも「ゆとり教育」のように、いきなり全国展開した後に、流行が廃れるように終了し、その後は前後比較デザインに基づく評価しかなされていないという政策が山のようにある。
 因果関係を検証することなしに、一見すると効果があるように見える政策を実施することは、何よりもその政策によって影響を受ける子どもや親に大きなリスクを負わせているのだということを忘れてはなるまい。

参考文献
P etrosino, A., Turpin-Petrosino, C. and Buehler, J. (2003) Scared Straight and Other Juvenile Awareness Programs for Preventing Juvenile Delinquency: A Systematic Review of the Randomized Experimental Evidence, Annals of the American Academy of Political and Social Science, 589, 41-62.
Farrington, D. P. and Welsh, B. C. (2005) Randomized Experiments in Criminology: What Have We Learned in the Last Two Decades?. Journal of Experimental Criminology, 1 (1), 9-38.

http://diamond.jp/articles/-/121520


 


【第82回】 2017年3月17日 みわよしこ [フリーランス・ライター]
「生活保護なめんな」ジャンパー事件の深層、行政の現場は何を怖れていたのか

ジャンパー事件を「そんなものだ」で
済ませなかった小田原市
2017年3月14日に開催された、小田原市「生活保護行政のあり方検討会」第3回会合には、有識者5名・小田原市職員6名が参加。市民39名が傍聴する中で開催された Photo by Yoshiko Miwa

 今年1月、小田原市の生活保護ケースワーカーが「チーム保護」「保護なめんな」とプリントした揃いのジャンパーを作り、10年間にわたって市庁舎内・市庁舎外で業務に就いていたことが報道され、大きな話題となった。ジャンパー着用のまま行っていた庁外業務の中には、生活保護で暮らす世帯への訪問調査も含まれていた。このことは、結果として近隣に「生活保護バレ」するリスクを含んでいる。「援助する仕事」という意識で制度運用を行っている福祉事務所では、生活保護ケースワーカーであることが分かる「見た目」どころか、役所の人間であることが分かる言動も避けるように指導するものだからだ。
 正直なところ、この報道に接した私は「ああ、またか」と思った、生活保護で暮らしている人々が、ケースワーカーに「努力不足」「自己責任」「何か悪いことをしているのでは」という視線や態度や言葉を浴びせられた話自体は、少しも珍しくないからだ。そういったことが皆無に近い地域も若干はあるが、「また○○市か」という地域も多い。「なめんな」と書いたジャンパーを着ていなくても、態度や言葉で言ったり示したりしていれば、同じことではないか。
 しかし1月中には、生活保護問題対策全国会議をはじめとする団体の申し入れが行われた。また、報道が鎮静する気配はなく、次から次へと「ジャンパーだけではなく夏服も」「グッズも」といった新事実が報道された。小田原市は事態を軽視せず、「生活保護行政のあり方検討会(以下、検討会)」の開催を決定した。全4回が予定されている検討会は、先月、2月28日に第1回、3月4日に第2回、3月14日に第3回が開催され、3月25日に予定されている第4回で一応の終了となる。

スピード開催、当事者を有識者として起用
異例づくしの検討会
 報道の翌月からの検討会開催、年度内に取りまとめると推察されるスケジュール。「役所」の対応としては、特筆すべきスピード感ではないだろうか。
開会挨拶する井手英策氏(慶應義塾大学教授・財政社会学) 有識者の一人・櫛部武俊氏(一般社団法人釧路社会的企業創造協議会 副代表)は、長年にわたってケースワーカーとして生活保護業務に携わった後、現在は広く生活困窮者支援に関わっている。温和な櫛部氏は、検討会の開会を前に、厳しい表情を見せていた Photo by Y.M.

 また検討会冒頭で、小田原市長・加藤憲一氏は、
「このたびの件を、小田原市全体が、『いのちを大切にする小田原』であるということをしっかりと外部に発信し、私たちの胸にも刻みつけていく、強力なモメンタムにしていかなければなりません」
 と挨拶した。真摯さと意欲に加え、「一部職員が問題あるユニホームを作っていた」という問題に限られる話でもなく、生活保護業務に限定した話でもなく、市政の根幹、市民の生存と生活に関わる問題であることが、市長に認識されている。「市長は」「小田原市は」重く受け止めたと考えてよいであろう。
 さらに特筆すべきは、「有識者」5名が、大学教員2名(座長の井手栄策氏および猪飼周平氏)、ケースワーカー経験者2名(団体職員・櫛部武俊氏、弁護士・森川清氏)に加え、元生活保護利用者1名という構成になっていることだ。生活保護に関する検討会や審議会に、「元」といえども生活保護で暮らした経験を持つ人が、委員あるいは有識者として参加したのは、この小田原市の検討会が初めてではないだろうか。
 なお、その有識者として参加しているのは、本連載に過去2回登場していただいた、和久井みちる氏だ。和久井氏は現在、自身の経験も活かしながら、支援の現場で働いている。

団結心とモチベーションでジャンパー作成
発端となった市役所内での傷害事件とは?
 問題の発端となった「保護なめんな」ジャンパーは、2007年に作られた。多数の報道で既に明らかにされている通り、このジャンパーが作られたきっかけは、生活保護打ち切りとなった男性が福祉事務所内で刃物を振り回して傷害事件を起こしたことだった。
 検討会の第1回・第2回においては、この事件そのもの・ジャンパーが作られて10年間着用されたことそのものについても検討が行われた。
検討会終了後、生活保護の窓口(生活支援課)に近づいてみた。市庁舎内の掲示を見ると、この方向なのだが、「生活保護」という語句はない Photo by Y.M.

 検討によれば、生活保護担当部署(名称は時期によりさまざま)は、小田原市役所内で孤立する傾向にあった。このため、困難に際して他部署の協力を得るという発想が湧きづらかった。また、「大変な業務」と認識されており、男性職員ばかりの状況が長く続いていた。生活保護ケースワーカーたちは、士気を高めるために「保護なめんな」ジャンパーを作成したという。
 発端となった事件は、2007年7月5日に起こった。加害者となったのは、当時61歳の男性である。男性は、前月までは小田原市内のアパートに住み、生活保護で暮らしていた。しかし7月の始め、保護費が振り込まれていないことに気づき、市役所を訪れた。自分の生活保護が打ち切りになっていると知った男性は興奮し、杖でケースワーカーの頭部を殴打しようとした。別の職員4、5人が取り押さえようしたものの、男性は、カッターナイフで別の職員の脇腹を切りつけ、刃物を取り上げようとした職員の手を負傷させた後、110番通報により現行犯逮捕された。
 事件の原因となったのは、事件の前月である2007年6月15日、男性が住んでいたアパートの契約を、家主の意向により更新できなかったことだった。担当ケースワーカーらは、無料低額宿泊所を含め、新しい住居を確保できるように助言はしており、男性も無料低額宿泊所へ入居する意向であったという。しかし結局、男性は転居せずに行方不明となり、アパートは契約更新されないままとなった。小田原市内での定住所が失われたため、小田原市は生活保護を打ち切りとした。
生活支援課の方向を示す掲示の一つには、「生活保護に関するもの」と書かれていた。紙が古びていないところを見ると、最近のものらしい Photo by Y.M.

 その後、男性は路上生活をしていたが、7月はじめ、保護費が振り込まれていないことに気づいて小田原市役所を訪れ、傷害事件に至った。
 このいきさつには、数多くの「ツッコミどころ」がある。また、家主が契約更新をしない意向でも、借家人の権利は手厚く保護されているものだ。通常、「契約更新されなかった=住居喪失」とはならない。「定住所がなくなり、本人の行方は不明」を理由として、即、保護打ち切りとするのも、乱暴すぎる。せいぜい「本人の所在も状況も確認できないから一時停止」であろう。
 傷害事件の日、小田原市は生活保護を既に打ち切った後ではあったが、それでも、訪れた男性に対し、その場で申請を受け付け、無料低額宿泊所等で即時保護とすることは可能だった。このような対応が行なわれていれば、男性は犯罪者にならずに済んだかもしれない。
 ともあれ、不幸な傷害事件の結果、小田原市の生活保護ケースワーカーたちは、恐怖心を募らせることになった。そして、士気を高めるため、「保護なめんな」ジャンパーを作ったのである。

小田原市の生活保護ケースワーカーは
いったい何を怖れていたのか?
生活保護の相談窓口は、壁とキャビネットの間、大人が2人並んで通ることは難しそうな通路の奥にある。ある市民は「あそこで何を言われてても、誰も気づかないよね?」と私に耳打ちした Photo by Y.M.
 検討会では、限られた時間の中で、数多くの問題点に関して白熱した議論が交わされている。問題点は、「なぜ小田原市の生活保護母子世帯は、こんなに少ないのか」「住民に向けた生活保護制度の説明が、必要でも申請しないという選択へと誘導するものではないのか」「無料低額宿泊所を利用する場合の滞在期間が長過ぎる(平均3年3ヵ月)」「不正受給の判定は妥当に行なわれていない可能性が」など数多い。また、生活困窮者自立支援事業など、生活保護に限定せず、困っている人を援助する法や制度にも視野を広げた議論となっている。
 限られた時間で議論を尽くすには、小田原市役所側の協力も必要だ。私の目には、小田原市はできるだけの対応はしているように見えた。しかし、現場のケースワーカーや査察指導員、「保護なめんな」ジャンパー問題の当事者らが検討会に参加していないため、即答できないことも多かった。
 検討会に参加した有識者5名の発言内容はそれぞれ、生命に関わる最後のセーフティネットである生活保護の意義を踏まえた、重みあるものだった。
 どの箇所も印象深かったのだが、和久井みちる氏の発言から、特に印象深かった部分を紹介したい(発言は筆者のメモによる)。
「生活保護にたどり着く人は、そもそもどういう人なのかという理解がないまま、実施に入っているような印象を受けます。どういう人がいて、何が必要なのか、理解が欠けているのではないかと思います」
「(女性職員が長年いなかったことについて)『生活保護ケースワーカーの仕事は怖いし大変だ』という意識が職員の中にあることを、『仕方ない』としてきたのでしょうか?
本連載の著者・みわよしこさんの書籍「生活保護リアル」(日本評論社)が好評発売中

 東京あたりだと、男女比が50:50は、当たり前です。4つの係があれば2つの係の係長は女性だったりします。また、相談課長が女性ということも、珍しくありません。女性だから何ができないというのでしょうか。何を怖れているのでしょうか。
 生活保護の人が、全員ナイフ振り回すわけじゃありません。困っていて、助けを求めにきているんです。何を職務だと思っているのでしょうか。
 どういう方が来ていて、何をすることが役割なのかを考えれば、自ずと適正な(男女)比率ができてきます。
 ご自分たちが何を怖れていて、どうなったら男女半数くらいの比率になって、市民が安心して相談できる環境になるのかから、考えていただきたいです」
 なお、より詳細に知りたい方は、ぜひ、小田原市が公開している資料(小田原市:生活保護行政のあり方検討会の開催)にも、目を通してみていただきたい。
(フリーランス・ライター みわよしこ)
http://diamond.jp/articles/-/121596

 

ダイヤモンド・オンライン

2017年3月17日 藤井弘美
「社内不倫」がバレたら!?火遊びの悲惨な代償実例集(上)


昨年から引き続き途切れることのない不倫報道。「社内不倫」という言葉には、甘美な響きと、それ相応のリスクを思い起こさせるものがある。会社に関係しない不倫であれば「離婚」や「慰謝料」などがそのリスクとなるが、会社に関係した不倫はここに「異動」や「社内での孤立」といったさらなるリスクが追加される。社内不倫がバレた場合、どのような措置が待っているのだろうか?経験者数名に、事の顛末を聞いた。(取材・文/藤井弘美)

誰にでも起こりうる
社内不倫の誘惑

 怒涛の“不倫”報道が続いた2016年に引き続き、今年も芸能人の不倫が報道されている。ひとたび不倫報道が起こると巻き起こるのがバッシング。昨今は特に、擁護する人はほぼ見られない。擁護すれば「もしかしてこの人も」と疑われること必至だから、致し方ないところだろう。

 しかし実際のところ、家族や友人、同僚など知り合いに1人も「不倫経験者」がいない、という人はなかなかいないのではないだろうか。以前の記事『「家族の不倫」に巻き込まれた人の苦悶煩悶エピソード集』の最後でアンケートを取ったところ、知り合いに不倫経験者がいると答えた人は半数を超えた。

 不倫は、少なくとも現代日本においては道徳的観点からいって悪であるし、リスクを考えれば余程の思いがないと踏み切れるものではない。しかし人間の恋心や性欲というものは「余程の思い」といって差し支えのない強い衝動であり、いとも簡単に不倫という高い壁を乗り越えさせてしまう。

 社内不倫という言葉には、「秘密の恋愛」といった甘美な響きや、「バレたらおしまい」といった破滅的なニュアンスを想起させるものがある。破滅の可能性は恋愛や性交を盛り上げるスパイスとして作用する節もあり、「社内恋愛」の甘美さをさらに高めている。証拠に、というわけでもないが、社内不倫はドラマや特にマンガでひっきりなしに採り上げられるテーマであり、一定のジャンル・シチュエーションとして人々がそこに何かしらの夢を見ているのが見て取れる。創作物の中で語られる社内不倫は主に甘い部分にフォーカスしている。

 では、現実の社内不倫はどのように起こり、どんな結末を迎えるのだろう。

年下社員からのアプローチ
気軽に始めた社内不倫は…

 まず紹介するのは、広告代理店勤務の40代既婚男性Aさん。独身で20代の部下と不倫関係になった。社内不倫のパターンとしては「男上司と女部下」というよくありそうなかたちだが、本人たちにしてみればそんな簡単な言葉でまとめられていいものではないという。彼らは自身の人生を賭けて社内不倫に臨んだのだ。

「彼女は同じ部署の違う課にいた社員でした。仕事上の接点はあまりなかったけれども、会社の集まりやゴルフコンペなどでは親しく話を交わす間柄で、当時からお互い悪くない感じでした」

 そんな2人だったが、ある時期を境に急速に親しくなっていく。

「入社4年目の彼女があるプロジェクトのリーダーを務めることになりました。彼女にとっては初の大きな責任を負う仕事で、本人もかなり苦労しているようでしたが『がんばってやっているな』という気持ちで遠くから眺めていました」

「ある日、ランチを食べにエレベーターに乗るとたまたま彼女がいました。『プロジェクトどう?』みたいな世間話を振ると、暗い表情で『思ったようにうまくいかなくて……』と沈黙。少し元気付けようと思って夜飲みにいかないか誘うと『ぜひ!』という返事だったのです。その日の夜は彼女の話を聞いて、アドバイスなどをして別れました」

 以降、Aさんは彼女から何度か飲みに誘われるようになった。一線を越えたのは4回目に2人で飲んだときだという。

「1軒目を出て帰ろうかというタイミングで、彼女から『今夜一緒にいてほしい』という申し出が。家族もいる身だし、こんなおっさんが若くてキレイな彼女の相手なんかできるわけないと断ると、『ずっと憧れていました』と。ここで私の理性も崩壊して、社内不倫が始まりました」

 そんな関係が続いたのは約1ヵ月間。彼女が社内不倫をしているようなことを自身で匂わすような発言をし始め、人事が内偵に乗り出したのだ。やがて事は露見した。

 しかしなぜ、相手の女性は秘すべき社内不倫の事実を周りに気づかれるような振る舞いをしたのだろうか。Aさんはこう推測する。

「自分で言うのもなんですが、私は男性社員の中でもわりと女性に人気のある方だったので、彼女は私と不倫をしているという優越感を周囲に隠し切れなかったのだと思います」

 その後Aさんは離婚。会社からはすぐに依願退職するよう指示された。Aさんは社内で白い目で見られる暇もなく、事実上のクビとなった。

「彼女からモーションがあったとはいえ、家庭があるのは自分の方だけですから、やはり悪いのは自分1人です。1ヵ月の短い不倫とはいえ、妻は私の不貞がどうしても許せなかったらしく、しばらく別居したのち、子どもは向こうが引き取るかたちで離婚が成立しました。社内的に、社内不倫は以前に泥沼化したケースが何度かあったためかなり厳しく見られていて、私の依願退職もその辺を加味しての制裁だと思います」

「彼女の方は、社内的には特にお咎めがなかったようでその後1年くらい勤めていたようですが、寿退社したと風の噂で聞きました」

 わずかひと月の甘い蜜月の代償は、Aさんの人生を大きく狂わせるものとなってしまったようだ。

 その後、Aさんは同業種の別会社への再就職に成功。年収は下がったがなんとか生活していける水準を確保できた。かつてのマイホームは売りに出し、Aさんはアパートに移り住んでしばらく一人寂しい日々を過ごしていたが、現在はお付き合いしている女性がいるという。一方、相手の女性社員は円満退社。彼女にとってはその社内不倫も「過ぎし日の思い出」くらいの、ちょっとした出来事だったのかもしれない。

中途半端な大岡裁き?
当事者3人のうち異動は2人

 2人目のエピソードは、総合商社に新卒採用された年に男性の上司2人と関係を持ったという女性Bさん。なぜそのような関係に陥ったのだろう。

 入社時から振り返ると、希望を胸に入った職場は想像以上の激務だったという。

「私が入社した会社はわりと厳しいことで評判の社風。特に私の配属された課が厳しかったみたいで…」

 新人への当たりは特に厳しく、Bさんは叱責されるたびに全身が震え、朝、玄関先で吐いてから出社することも珍しくなかったという。

「配属された課の課長が特に厳しい人で、自分がいかに何もできない存在であるかを思い知らされる毎日でした。先輩たちからは『新人はみんなそんなものだから気にするな』と励ましてもらって、幾分か前向きになれましたが、焼け石に水という感もあって……」

 ある日、Bさんは同じ課の男性の先輩に飲みに誘われた。

「すごく励まされて号泣してしまいました。そんな私を彼はしばらく眺めていましたが、やがておもむろに肩を引き寄せられて、その胸で泣くかたちに。その流れでその夜に関係を持ちました」

 お相手は結婚2年目の若手社員。Bさんは独身だったが、れっきとした社内不倫である。

「定期的な密会が始まりましたが、社内で私の立場がよくなったわけではありません。つらい日々は相変わらずでした」

 その後、状況はさらに複雑になった。

「先輩と社内不倫を始めて2ヵ月ほど経ったころ、今度は課長から飲みに連れ出されました。『すごく怒られるんだろうな』と思っていたら案の定で、その席でも私は号泣。すると課長は『お前に見込みがあると思うから、こうやって厳しくしていることをわかってくれ。俺だってつらい』と言って手を握ってきました。たぶん私はかなり流されやすいんだと思います。その夜、課長とも関係を持ちました」

 課長は40代の妻子持ち。それからというもの、Bさんは先輩と課長それぞれの求めに応じるままに日々を過ごした。

「先輩にも課長にも恋愛感情があったわけではなかったのですが、とにかく誰かから必要とされるのがすごく嬉しかった。仕事がつらかった分、そこで埋め合わせてバランスを取ろうとしていたのだと思います」

 傍から聞くと、ブラック気味の社風の中で3人はそれぞれ疑似恋愛にすがっていたようにも聞こえる。特にBさんが2人の男性からのオファーを断れなかったところに、嫌な気配がある。

>>(下)に続く

http://diamond.jp/articles/-/121592


2017年3月17日 藤井弘美
「社内不倫」がバレたら!?火遊びの悲惨な代償実例集(下)

>>(上)より続く

 やがてBさんの所属する課の雰囲気がぎこちなくなっていった。先輩と課長がBさんを取り合うような格好でいがみ合い始めたのである。既婚者2人が1人の独身女性に恋をして修羅場を演じるというのは滑稽な気がしないでもないが、修羅場には違いない。「女の嫉妬は怖い」というが、男の嫉妬も顕在化すると手に負えないくらいタチが悪い。

 課の異変はすぐに周りの知るところとなり、人事が動いた。Bさんと先輩を地方の、それぞれ別の支社に異動。課長はお咎めなしであった。課長だけ処罰を免れた理由について、Bさんはこう推測する。

「課長はすごく仕事ができる人だったので、会社的にもそこで課長を手放すことはできなかったのではないかと思います。人事部とも親しかったみたいだし。会社的には私と先輩が異動すればひとまず事は丸く収まるので」

 当事者3人のうち、2人が異動となり、この件はひとまずの解決を見たようである。当時を振り返り、Bさんはこう語った。

「どんな理由があっても私の行動は浅はかだったと思います。私への異動辞令には納得ですが、課長に何の処罰もなかったのは少し不満に思う部分はあります。ただ、会社とはそういうところなのだなという勉強にはなりました」

キャリアウーマンは諸事やり手?
バレても傷を負わない立ち回り

 3ケース目は、独身男性と既婚女性の不倫だ。

 Cさんは当時独身、電機メーカーの営業部に勤める若手男性社員だった。所属する課の課長は30代後半の子持ち既婚女性で、社内でもちょっと目を引くキャリアウーマンだった。

「課長はとにかく仕事ができる人で、下に限らず上からも恐れられていました。ただ恐がっているというよりは、『あの課長に叱られるってことは自分ができてないってことだからがんばろう』みたいな感じで、課長は周囲にいい意味で緊張感を持たせるような存在でした」

 Cさんは課長に畏れと憧れを持って接していた。厳しくされることはあってもそれも自分の糧になるはずと信じ、乗り切ってきた。そんなCさんを、課長もそれなりに評価してくれているようであった。

 入社3年目の夏、Cさんは課長の出張に同行することになった。Cさんにとっては初の海外出張、客との商談をまとめるため、課長の指示のもと資料作成等の事前準備に励んだ。

「出張は3日間で、最終日にお客さんから商談OKの返事をもらうことができました。課長も相当うれしかったらしく、お客さんらとディナーをともにしたあと、ホテルのバーに帰って2人で祝杯をあげました」

 海外出張を成功のうちに終えることができ、Cさんのテンションも上がっていた。その案件を一緒にやりおおせた課長が非常に魅力的にも思えていた。ここでCさんは初めて、課長に対して部下としてではなく、男としての一面を見せる。このあと課長の部屋に行きたいと願い出たのだった。

「課長は『いいよ』という感じで、サラッと承諾しました。そこで初めて関係を持ち、社内不倫がスタートしました。僕の方は『あの課長と……』という恋愛感情に近い興奮がありましたが、課長はその件に関してどう考えているかイマイチつかめない様子で、わりとドライな印象でした」

 週に1度の逢瀬が3ヵ月ほど続いたある日、Cさんは突然、人事部長に呼び出された。

「人事部長から『君のところの課長と君が社内不倫しているという噂があるが、本当か?』と尋ねられました。冷や水を浴びせられたような思いでしたが、なるべく平静を装って『ただの噂だと思います』と返事しました。人事部長は全てを見通したような表情で重く頷き、『もし社内不倫をしている事実があるなら会社としても何かしらの対処をせざるを得ない。くれぐれも肝に銘じておくように』と忠告されました。それで僕は、『人事部長は真相を知っているけど事が表面化する前に解決させておこうとしているのだな』とわかりました」

 Cさんが人事部からデスクに戻ろうとしたとき、廊下で課長とすれ違った。課長は周りに人がいないことを確認した。それからこんな会話をしたという。

「聞いた?」
「あ、はい…」
「そう。じゃあ、ああいうのはこれっきりね」

「それ以降、課長とは不倫のことについて一言も話したことはありません。向こうの『その話はするな!』というオーラがものすごく……。僕はまだ関係を続けたく思いましたが、向こうは家族もいますし、ここは潮時として引き下がらなくちゃいけないともわかっていました」

 その後、Cさんは同僚などから課長との社内不倫について「あれ本当なの?」と聞かれることがあった。その折を利用してCさんは逆に質問をし、舞台裏についての情報を集めていった。なぜ社内不倫がバレたのか? 普通人事にバレたら異動の措置が取られるのがCさんの会社の通例であるのに、厳重注意で済んだのはなぜか?

「逢瀬には会社から離れた駅のホテルを利用していたのですが、たまたま社員の誰かがホテルに向かう僕たちを目撃したようなのです。それでそれが噂になり……というところですね。ただの注意で済まされたのは、どうやら課長の人事への根回しがあったみたいです。普段の勤務態度や仕事の成績から課長は社内的に信頼が厚かったので、噂を耳にしてすぐ、まだ何も知らない人事に駆け込んで、『これまで社内不倫をしていたが今後は二度としないので』と許しを請うたらしいです。人事は役員まで巻き込んだ大騒動になったらしいですが、課長の態度が好感され結局お咎めなしとなりました。社内風紀を自ら正そうとする姿勢がよかったみたいです」

 課長が日ごろ培った信頼があってこそなせるわざだったのかもしれない。それ以降、課長は何事もなかったかのように振る舞った。一方、Cさんは社内不倫を快く思わなかった同僚や女性社員から冷遇されるようになり、課長から回される仕事もなんとなくパッとしないものとなった。社内で座りが悪くなったと感じたCさんは、次の異動のタイミングで異動願いを出し、営業部とは遠い畑に移っていった。

「女性は強いですね。課長は陰口を叩かれたりしているのを意に介さないふうで、相変わらずのキャリアウーマンっぷりでした。一方僕はもうへこたれてしまって、とてもじゃないが、あのままあそこで働いていくことはできなかった」

 ひょっとしたら、Cさんをさりげなく冷遇することで自主的に異動させることも課長の狙い通りだったのかもしれない。結局課長は、社内不倫がバレたにもかかわらずその一件を表ざたにされることなく、会社と家庭での自分の立場を守りきったわけである。

 不倫は社会通念として頑として悪いものとして捉えられているため、社内で行われている不倫を会社側が知ることになったら、会社は示しをつけるためになんらかの処罰を下す。

 甘く強烈な誘惑を放つ社内不倫ではあるが、会社にバレたら人生を棒に振るほどのリスクをはらんでいることを忘れない方が賢明であろう。

 Cさんの場合は密会の現場を第三者に偶然目撃されたことがきっかけとなって社内不倫が露見したが、AさんとBさんの場合は社内不倫を極秘事項として当人たちの胸に留めておけなかった隙があったための露見である。体だけの割り切った関係と双方が納得した社内不倫ならもう少し水面下で続けることができたのかもしれないが、渦中にいる当人たちの心中はそこまでドライに徹しきれるほど穏やかなものではなかったようである。
http://diamond.jp/articles/-/121716
http://www.asyura2.com/12/social9/msg/775.html

[国際18] 新興国の雄・ブラジル、銃とドラッグが蔓延する国の理想と現実 ムニューシン米財務長官、通商問題で柔軟姿勢−G20に初出席へ
2017年3月16日 橘玲
新興国の雄・ブラジル、銃とドラッグが蔓延する国の理想と現実[橘玲の世界投資見聞録]
 アルゼンチンを訪れたあとは、ブラジルのリオデジャネイロとサンパウロに移動した。今回は南米の旅の最後として、この「新興国の雄」の印象を書いておきたい。
[参考記事]
●アルゼンチンで左派ポピュリズムが定期的に台頭する理由

偶然から生まれたブラジルという「国家」
 ブラジルという「国家」が誕生したのは、ちょっとした偶然だった。
 1492年にコロンブスがインディアス(新大陸)を“発見”すると、大航海時代の両雄であったスペインとポルトガルの間で大西洋の支配権争いが起こった。これを調停したのが教皇アレクサンデル6世で、1494年のトルデシリャス条約で、西経46度37分を分界線とし、そこから東で新たに発見された地はポルトガルに、西の地はスペインに権利が与えられることとされた。
 この条約はもともとはカリブの島々を分割するためのもので、当時、南米大陸の存在はまったく知られていなかった。だがこの分界線を延長すると巨大な大陸にぶつかったことで、その東側(ブラジル)がポルトガル領となり、それ以外がスペイン領とされたのだった。
 南米は大きく3つの地域に分けられる。東北部のアマゾン川流域から南はポルトガル領で、トルデシリャス条約の分界線を大きく越えてアンデス山脈まで広がっている。カリブ海の島々をスペインに押さえられたポルトガル王室は、アフリカからこの地に大量の黒人奴隷を「輸出」しサトウキビのプランテーションを開発しようとした。
 一方、南米大陸の西側には巨大なアンデス山脈がそびえ、標高3000メートルを超える高地に原住民(インディオ)が高度な文明を築いていた。ここに莫大な銀鉱脈があることがわかって、“シルバーラッシュ”に狂喜したスペイン人は多数の鉱山労働者を送り込んだが、アフリカの黒人は高地に耐性がなく、無理な労働をさせるとすぐに死んでしまった。インディオも西洋人が持ち込んだ疫病に苦しんだがやがて免疫を獲得して人口は回復し、ペルーやボリビアでは白人とインディオの混血であるメスティーソが主要民族になっている。
 それに対して南米大陸の南(現在のアルゼンチン)には広大なパンパ(草原地帯)が広がり、ヨーロッパから持ち込まれた牛が野生化して大繁殖した。この牛の群れに寄生して暮らすようになったのがガウチョで、都市生活からドロップアウトしたスペイン系白人の男と、インディオの女性とのあいだに生まれた子孫たちだ。
 19世紀後半から20世紀はじめにかけて、港町ブエノスアイレスが大西洋貿易の拠点として発展し、貧しいイタリア南部から移民が大挙して押し寄せた。その結果アルゼンチンが、本国に次ぐ「(スペイン語を話す)イタリア人の国」になった経緯は前回述べた。
 それに対してブラジルでは、生産過剰で砂糖の価格が暴落するとともにサトウキビのプランテーションも衰退していったが、それと時を同じくしてヨーロッパでコーヒーの大ブームが始まった。亜熱帯ではコーヒーは栽培できなかったが、ブラジル南部(現在のサンパウロ周辺)の高地が良質のコーヒー栽培に適していて、アマゾン流域から黒人奴隷が大挙して南に移動しはじめた。リオデジャネイロが金やダイヤモンドの積出港として発展したこともあり、18世紀にはブラジルの重心は東北部から東南部へと大きく移動した。
 コーヒーのプランテーションはどこも多数の労働者を必要としていたため、黒人を雇い入れる際、農園主は奴隷の身分を解放して自由を約束せざるを得なかった。この自由黒人の子孫たちや、黒人と白人の混血であるムラートがブラジル国民の過半数を占めている。
リオデジャネイロのシンボル、コルコバードのキリスト像        (Photo:©Alt Invest Com)
ブラジルの犯罪発生率は世界的に非常に高いというが、実態は?
 ブラジルはBRICSの一角として近年、目覚しい経済成長を遂げ、2014年のサッカーワールドカップや2016年のリオオリンピックを成功させた。だがその一方で、いまも国内に膨大な貧困層を抱え、治安についての評判は芳しいとはとてもいえない。
 外務省海外安全センターが海外の日本人向けに提供している「海外安全情報」では、「世界的に見てもブラジルの犯罪発生率は非常に高く、日本人の被害も多発しています。また、多くの犯罪には、拳銃等の銃器が使用されており、抵抗すれば銃器で危害を加えられるだけでなく、殺害される可能性も非常に高くなりますので、注意する必要があります」と書かれている。
 リオデジャネイロやサンパウロなど都市部については、「ファベーラ(スラム街)を活動拠点とする犯罪組織間の抗争事件又はこれら組織と治安当局との間の銃撃戦が後を絶たない状況です。ファベーラ周辺での流れ弾による被害も発生する等、一般市民の犠牲者も出ており、状況は深刻化しています」「誘拐事件に対しても警戒が必要です。特に、都市部では昼夜を問わず「短時間誘拐」(「電撃誘拐」とも言われ、金品や車両を強奪するために、拳銃等の銃器を使って脅迫し、一時的に拘束するもの。ATM等で現金を引き出させ、携帯電話や車両を奪った後に連絡手段のない市街から離れた場所で解放するのが一般的な犯行パターン。)が多発していることから、防犯対策に留意し、行動する時間帯や場所等に十分注意する必要があります」と警告されている。
 これを読めば、「怖そうだから近づかないようにしよう」と思うひとが大半なのではないだろうか。では、実際にブラジルの治安はどんな感じなのだろうか。
 リオデジャネイロは、グアナバラ湾に面したビジネス街のセントロと、コパカバーナやイパネマの海岸沿いに高級住宅地が連なる南部に大きく分かれる。内陸部の小高い丘にはファベーラと呼ばれる貧困地域が広がっている。
 旅行者の多くはセントロではなく、コパカバーナなど海岸沿いの高級ホテルに泊まるのだろうが、私が訪れたときはあいにくの雨模様で気温も低かったため、ビーチにはほとんど人影はなかった。夏は海水浴客のセクシーなビキニ姿で有名だが、冬でも天気がよければビーチバレーやビーチサッカーに興じるひとたちで賑わうという。
コパカバーナ海岸。あいにくの雨模様でビーチに人影はない     (Photo:©Alt Invest Com)

 コパカバーナの海岸に沿って大通りが走り、海を一望できるホテルやコンドミニアムが並んでいる。
 メインストリートの裏手に商店や飲食店が集まっていて、日が落ちてからも人通りは多く、若い女性がスマートフォン片手に1人で歩いている。セキュリティの完備したコンドミニアムからいかにも富裕層といった男性がジョギング姿で現われたりもするが、どちらかというと、経済成長で勃興する(中の上の)中産階級の町という感じだ。
コパカバーナのメインストリート                   (Photo:©Alt Invest Com)
夜のコパカバーナ。カップルが歩道のベンチで談笑している    (Photo:©Alt Invest Com)
海岸から離れると庶民的な雰囲気になり、路上の物売りやホームレスの姿も目にする   (Photo:©Alt Invest Com)

 南部の高級住宅地とセントロのビジネス街は地下鉄で結ばれている。コパカバーナの地下鉄駅は洞窟のような斬新なデザインで、列車も真新しい。地元のひとたちがごくふつうに使っているから、観光客が利用する主要路線なら安全面でも不安はない。
コパカバーナの地下鉄駅。洞窟のような斬新なデザイン        (Photo:©Alt Invest Com)
真新しい地下鉄の列車。セントロまで3.8レアル(約130円)    (Photo:©Alt Invest Com)

 リオデジャネイロのセントロは南米を代表するビジネス街ではあるものの、北京や上海のような近代的な都市をイメージすると拍子抜けするだろう。私が訪れたのは土曜日で、人通りがなく閑散としていたということもあるが、建物がどれも古いのだ。
 アジアの新興国の都市のように高層ビルが林立するわけではなく、かといってロンドンやパリのように石造りの重厚な建物が並んでいるわけでもなく、1960年代や70年代の街並みがそのまま残っているようで「なんかぱっとしない」というのが第一印象だ。
 グアナバラ湾に面した一角は最近再開発されたらしく、広い遊歩道は家族連れで賑わっていた。「休日のセントロは治安が悪い」といわれるが、港の近くにはカフェが集まる路地もあり、このあたりを歩くのならなんの問題もない。
リオのビジネス街セントロ。土曜日なので人通りは少ない       (Photo:©Alt Invest Com)
海岸沿いにつくられた遊歩道。家族連れが散策している    (Photo:©Alt Invest Com)
港に近い路地のカフェ               (Photo:©Alt Invest Com)

 セントロの中心は地下鉄のカリオカ駅で、平日はビジネスパーソンや買い物客で賑わうのだろうが、土日はどの建物もシャッターを下ろしている。それでも地元のひとが歩いているから危険というわけではないが、人通りの少ないところはさすがにちょっと緊張する。
 セントロを代表する建物がピラミッドのようなカテドラル・メトロポリターナ(サン・セバスチャン大聖堂)。2万人を収容できる巨大な教会で、内部は床から天井まで60メートルもの巨大なステンドグラスが据えられている。その隣のキューブを積み重ねたような建物は、ブラジル最大の石油会社ペトロブラスだ。
 セントロのカリオカから歩いて5〜6分の距離だが、このあたりまでくると人通りはほとんどなくなる。なんとなく不安になったので、ここから先は行かなかった。
収容人数2万人のカテドラル・メトロポリターナ            (Photo:©Alt Invest Com)
ペトロブラス(ブラジル石油公社)の本社ビル。休日はほとんど人通りがない(Photo:©Alt Invest Com)

 旅行者のブログでは休日のセントロを『北斗の拳』や『マッドマックス』の世界であるかのように描いているものもあるが、公園や広場など観光客の集まるところには日本式の交番が設置され、街中でもホームレスの家族に通りかかった女性が話しかけるなど、危険な感じはなかった。
 とはいえ、ほとんどの建物が閉まっているので見所があるわけでもなく、ここを訪れるなら平日の昼にした方がいいだろう。
公園の脇につくられた交番                       (Photo:©Alt Invest Com)
ホームレスの家族に通りかかった女性が話しかけている      (Photo:©Alt Invest Com)
ブラジルの貧困街「ファベーラ」が今では観光名所に
 ブラジルの貧困を描いてアカデミー賞監督賞の候補にもなった映画『シティ・オブ・ゴッド』の舞台となるのがリオデジャネイロのファベーラ(スラム街)だ。ささいなきっかけから子どもたちが強盗に手を染め、殺人を犯し、やがてモレーキ(ストリートチルドレン)と呼ばれるギャング団になっていく。
 かつては麻薬組織の巣窟で警官も立ち入れないといわれたファベーラだが、1990年代からの経済成長で治安は改善して、いまでは観光客がツアーで見学できるまでになった。
 ファベーラはリオデジャネイロの後背地である山の斜面にあり、コンクリートと煉瓦でつくられた家がびっしりと並んでいる。まさに『シティ・オブ・ゴッド』の世界そのままだが、よく見るとどの家の屋根にも給水タンクの横に衛星アンテナが据えつけてある。ファベーラ=スラムのイメージが強いが、いまでは家族で衛星放送を楽しんでいるのだ。
山の斜面がびっしりと家で埋まったファベーラ        (Photo:©Alt Invest Com)
どの家の屋根にも衛星アンテナが据えつけてある           (Photo:©Alt Invest Com)

 観光客を案内するのだから当然だろうが、私が訪れたのは「貧困地区」というよりは庶民の町で、治安が悪いという感じはまったくなかった。北米ではダウンタウンがスラム化し、高級住宅地は見晴らしのいい高台にあるが、ファベーラが山の斜面につくられたのは上下水道が完備せず、衛生環境を維持するのが難しい分だけ土地の値段が安かったからだろう。
リオのファベーラには商店が並ぶ                      (Photo:©Alt Invest Com)
住民はバスに乗ってリオの中心部に向かう             (Photo:©Alt Invest Com)

 ファベーラではメインストリートに沿って商店が並び、リオの中心部に通う公共バスが走っている。坂が急なのでどの交差点にもバイクタクシーが待機していて、近距離の移動に使われている。建物のあいだは急な階段で、下りきったところが下町の商店街だ。買い物袋を提げて階段を登る高齢者とよくすれちがう。
 下町の建物には至るところに顔写真が貼ってあるが、これは地方選挙のポスターで、候補者の名前といっしょに5桁の番号が書いてある。識字率がまだ高くないブラジルでは、番号で投票できるようになっているのだという。
 ファベーラで気づいたのは、ホームレスの姿をまったく見かけないことだ。ひとびとは貧しくても、それなりに日々の生活を賄っている。家族や地域との絆を断ち切られた「貧困」はスラムではなく都市問題だという現実は、次に訪れたサンパウロで目の当たりにすることになる。
交差点や店の前にはバイクタクシーが待機している      (Photo:©Alt Invest Com)
下町の商店で買い物をして、狭い階段を上がる高齢者        (Photo:©Alt Invest Com)
選挙ポスター。候補者の名前の下に5桁の数字        (Photo:©Alt Invest Com)
下町のスポーツ施設の近くでは武装した警官の姿も       (Photo:©Alt Invest Com)
サンパウロは南米最大の巨大都市でホームレスが非常に多い
 サンパウロは人口1100万人、都市圏人口は2000万人を超える南米最大の巨大都市だが、観光客が訪れるのは近代的なオフィスビルが建ち並ぶパウリスタ大通りと、旧市街のセントロ、あとはリベルダージ地区の日本人街くらいだろう。
 サンパウロに着いたのは素晴らしい天気の日曜で、パウリスタ大通りではショッピングセンターの前でエアロビクスをやっていたり、あちこちでフリーマーケットが開かれたりで、地元のひとたちで賑わっていた。
 パウリスタ通りはリオデジャネイロのビジネス街よりもずっとモダンだが、嫌でも目につくものがある。ホームレスがものすごく多いのだ。それも、歩道の真ん中で堂々と寝ていたりする。なんというか、「人間やめますか」感が半端ないのだ。
サンパウロ、パウリスタ大通りの新市街。近代的なビルが並ぶ    (Photo:©Alt Invest Com)
ショッピングセンターの前でみんなでエクササイズ      (Photo:©Alt Invest Com)
その近くではこのような姿が……               (Photo:©Alt Invest Com)
家財道具一式を運ぶひとも……                    (Photo:©Alt Invest Com)
突然、こんなひとが現われる……                       (Photo:©Alt Invest Com)

 翌日の月曜は朝から雨が降っていたが、地下鉄に乗って旧市街のセントロに行ってみた。
 セントロのシンボルはセー広場に建つカテドラル・メトロポリターナで、ゴシック様式の尖塔を持つ美しい教会だが、それよりも驚いたのは広場のあちこちにホームレスが寝ていることだ。雨がびしゃびしゃと降るなか、まったく気にせず毛布にくるまっている(意識を失っているのかもしれない)。
サンパウロのシンボル、カテドラル・メトロポリターナ        (Photo:©Alt Invest Com)
雨のなか、毛布にくるまって身動きもしない           (Photo:©Alt Invest Com)

 セー広場の東にオペラ座(サンパウロ市立劇場)があるのでそこまで歩いてみたのだが、劇場の横が高速道路になっていて、その高架下が巨大なホームレス村になっていた。オペラ座の先にセントロの商店街があるのだが、そこでは誰が買い物客で誰がホームレスかわからないくらい渾然一体となっている。
サンパウロのオペラ座。観光客が写真を撮っている      (Photo:©Alt Invest Com)
その隣の高架下につくられた巨大なホームレス村         (Photo:©Alt Invest Com)
セントロのショッピング街。買い物客とホームレスが渾然一体となっている        (Photo:©Alt Invest Com)
こうした光景をいたるところで見かける               (Photo:©Alt Invest Com)

 ただし、ホームレスが多いからといって一概に治安が悪いとはいえない。アルコールなのかドラッグなのかはわからないが、彼らのほとんどは気力をなくし、ただ寝ているか、呆然と座っているだけだ。地元のひとたちも、ホームレスの脇をまったく気にせず歩いている。
 セー広場の近くにリベルダージの日本人街があるが、かつては「サンパウロでもっとも安全」といわれたこの地区も最近はホームレスの姿が目立つようになったという(高齢化で住民の数が減ったということもある)。
 ブラジルではルラ大統領の時代に、経済成長の恩恵を貧困層に再分配するために「ボルサ・ファミリア(家族交付金)」と呼ばれる生活保護制度が始まった。その一方でサンパウロでは、100万人以上が市内に点在するスラムで暮らしており、ワールドカップの新スタジアム建設のために労働者階級の住む住宅が取り壊され、さらに大量のホームレスが生まれたとも報道された。
 2016年のブラジルの実質国内総生産(GDP)は前年比マイナス3.6%で、とりわけ家計消費が前年比マイナス4.2%と大きく落ち込んだ。その理由は失業率の高止まりで、16年11月〜17年1月の失業率は12.6%と近年では最悪の水準となった。リオオリンピックの開催前に大規模な抗議デモが行なわれたように、経済状況の悪化でひとびとの生活が苦しくなり、ホームレスが増えたのは間違いないだろう。
 とはいえ、リオデジャネイロもサンパウロも、訪れてみれば言われているほど危険ではなかった。旅行者が歩くのはビジネス街か裕福な地区で、ほとんどのひとはふつうに暮らしているのだから、当たり前の話でもある。
 ただし、銃とドラッグが蔓延しているのは間違いなく、安全な日本に比べれば凶悪犯罪の数ははるかに多い。人通りのない場所は避け、夜に出歩くのは繁華街だけし、貧困地区に足を踏み入れないなど、最低限の注意が必要なのはもちろんだ。
リベルダージの日本人街                        (Photo:©Alt Invest Com)
日系のスーパーはどこも賑わっていた                 (Photo:©Alt Invest Com)
日本人街では歩行者用信号も鳥居の形            (Photo:©Alt Invest Com)
橘 玲(たちばな あきら)
作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(ダイヤモンド社)『「言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)など。最新刊は、小説『ダブルマリッジ』(文藝春秋刊)。
●橘玲『世の中の仕組みと人生のデザイン』を毎週木曜日に配信中!(20日間無料体験中)
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http://diamond.jp/articles/print/121120
http://diamond.jp/articles/-/121120

 
ムニューシン米財務長官、通商問題で柔軟姿勢−G20に初出席へ
Saleha Mohsin、Jeff Black、Alessandro Speciale
2017年3月17日 13:46 JST

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ムニューシン長官:米国は貿易戦争を望まず−ベルリンで会見
貿易不均衡問題でショイブレ独財務相の主張に理解示す

ムニューシン米財務長官は就任後初の外遊で、米国の新政権が為替・通商政策に関してこれまで与えていなかった安心感を20カ国・地域(G20)にもたらすかもしれない。
  ムニューシン長官はG20財務相・中央銀行総裁会議に出席するため、17日にドイツのバーデンバーデンを訪れる。トランプ政権の「米国第一」主義を巡って各国当局者は不確実性に直面しているが、ムニューシン長官は16日にベルリンでショイブレ独財務相と会談した後に共同記者会見し、「極めて生産的」な協議だったと述べた。ショイブレ財務相も会談を「良好なスタート」と評した。
  ムニューシン長官はドイツの多額の貿易不均衡の根底にある複雑さに理解を示し、米国は貿易戦争を回避したい考えだと発言。米国の680億ドルの対独貿易赤字を経済的に不公平で対抗措置が必要だと指摘している他のトランプ政権当局者とは著しく対照的な姿勢を見せた。
  長官は「ユーロは多くの国で使用され、多くの側面から影響を受ける。単一通貨を単一国家がコントロールするわれわれのような状況とは非常に異なる」と指摘した。
  米国の為替政策をつかさどるのは伝統的に財務長官の職務とされるが、ロス商務長官やトランプ大統領自身の為替発言を受け、実際に政策を引っ張るのは誰なのかという戸惑いが世界各国で生じている。
  ドルに関する米政府のスポークスマンは誰かとの質問にムニューシン長官は、「まずは大統領の話を聞くべきだが、私にも耳を傾ける必要がある」と答え、米財務省が為替操作国に指定すべき国がないか検討するため為替市場を定期的に調査すると述べた。
  
原題:Mnuchin Softens Brazen U.S. Trade Talk in Global Stage Debut (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-17/OMXUJR6TTDS001
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/640.html

[経世済民120] 仏ルノー、最大リスクはゴーン氏の「退場」クレディSとUBS株式投資まだ間に合う JPモルガンは警告 iDeCoメリットと
Column | 2017年 03月 17日 12:42 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
仏ルノー、最大リスクはゴーン氏の「退場」

Liam Proud

[ロンドン 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 仏自動車大手ルノー(RENA.PA)のキーマンが直面するリスクは、疑惑がもたれている排ガス不正に関するどのようなペナルティーよりも、投資家にとって大きな問題のように思われる。

不正行為を否定する同社の主張が偽りである場合は別だが、フランス当局による調査がもたらす財務的影響に対する懸念は現在、過度に大きくなり過ぎている。同グループにとってはるかに大きな問題は、もしカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)が窮地に立たされることになった場合だ。

16日に同社の株価が4%超下落したことは、一見すると、大きな下げ幅のように見える。

15日付の仏リベラシオン紙の記事には、ルノーのディーゼル車に対する排ガス不正疑惑の調査について実質的に新しい情報はほとんど含まれていない。また、米国でのシェアが限られていることから、フォルクスワーゲンが支払ったような罰金に見舞われる可能性は低いとみられている。

重要なのは、ルノーが排ガス不正ソフトを搭載した自社の車は一台もないと主張していることだ。経営陣が現在までに行き過ぎた操作に関するいかなる証拠も公開していることは、ほぼ確実なように見える。そのような情報を隠し続けることは、現在よりもはるかにひどい窮地に陥る可能性があるからだ。

しかしロイターが15日報じたように、フランス消費者問題監視当局は、ゴーンCEOが責任を負うべきとの考えを検察当局に示していたことが明らかになった。そのようなリスクを考えれば、投資家が動揺するのもうなずける。

ゴーン氏は3月末で約16年務めた日産自動車(7201.T)の社長を退くが、同社とルノーの提携を概ね成功させた要の人物である。両社は、エンジニアリング、サプライチェーン管理、購買、人事管理で共同運営し、2015年は年間43億ユーロ(約5250億円)のコスト削減を達成している。2018年までに、2社のシナジーを25%以上増加させ、コスト削減額を55億ユーロにすることを目指している。

投資家の目からすれば、ゴーン氏が当局のターゲットにされるかもしれないといういかなる兆しも、こうした進展を阻むリスクと映る。とりわけ、ルノーの株式20%を保有する筆頭株主であるフランス政府と同氏が対立していることを考えれば、それはなおさらである。

もちろん、ルノーが本当に不正をしていないのであれば、同社の経営者が追いやられることは想像しがたい。だが、フランス政府とゴーン氏が対立しているという証拠は、それが何であれ、ルノーにとってリスクがトップに集中していることを示している。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

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コラム:北朝鮮の核問題、トランプ政権下で最悪の事態も 2017年 02月 16日
http://jp.reuters.com/article/column-renault-ghosn-idJPKBN16O0C4

 


クレディSとUBSが富裕層にそろって助言−株式投資はまだ間に合う
Jan-Henrik Forster、Jeffrey Vogeli
2017年3月17日 15:07 JST
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債券から資金を引き揚げ株式や高利回り資産にシフトを−UBS
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株式を買うのに遅過ぎることはない−。スイスの銀行クレディ・スイス・グループとUBSグループは富裕層にこう助言している。
  世界の株式相場が景気回復を追い風に最高値を付ける中、多くの富裕層は政治リスクを懸念し傍観の構えを取っている。富裕層の資産運用を支援する担当者はまだ上昇余地のある今こそ、投資を再開して相場上昇の好機を生かすべきだと話す。
  クレディ・スイスのブルクハルト・ファルンホルト副チーフ投資責任者は2月27日にブルームバーグのチューリヒのオフィスで開かれた円卓討論会で、「運用が実に困難に感じられるときはいつでも、最終的にはより良い投資であるケースが多い」と指摘。「こうした懐疑論や懸念の壁はまだ存在するが、私には意欲をそぐものではない」と述べた。
  政治激変への不安が行き過ぎであるばかりか、見当外れであることを示す兆候もある。昨年11月8日の米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利した後、S&P500種株価指数は週間ベースで2年ぶりの大幅高になった。英国株は6月の英欧州連合(EU)離脱決定で下落した後、ポンド安を受けた輸出業者の業績改善などから反発し始めた。
  ここにきて欧州政治が関心を集めているのは、フランス大統領選で極右政党、国民戦線のルペン党首が支持を伸ばしている上、英国が月内にEUに離脱を通告する可能性が高く、混乱の火種に事欠かないからだ。富裕層投資家が問うべきなのはインフレが復活して15日の米利上げが景気回復を示唆する中でも、株式投資を避けることが妥当なほど政治リスクが非常に危険かどうかだ。
  UBSのウェルスマネジメント部門のマーク・ハーフェラー氏は、顧客に資金をキャッシュや債券から引き揚げ株式にシフトしてリターン改善を図るよう説得するため今年、世界各地を訪問している。同氏によると、多くの顧客は「利回りを追求」しているが、UBSの全体的な顧客ベースは「債券やキャッシュから資金を引き揚げ」株式や高利回りのオルタナティブ資産を移せば恩恵を受けるという。
  
原題:Credit Suisse and UBS Tell Wealthy Clients the Same: Buy Stocks(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-17/OMY2DK6KLVR801

 


JPモルガンのクオンツが警告、オランダ選挙後に現状肯定感広がる
Adam Haigh、Lu Wang
2017年3月17日 13:32 JST
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短期的な相場下落の可能性があるとコラノビッチ氏
仏大統領選を前に投資家は混乱が生じる可能性を過小評価と指摘
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オランダ下院選挙で有権者がポピュリズム拒否の姿勢を示したことを受け、株式投資家の間で現状への満足感が強まりつつある。JPモルガン・チェースは株式相場下落に備えたヘッジをする時期だとみている。
  同行のクオンツ・デリバティブ(金融派生商品)戦略のグローバル責任者、マルコ・コラノビッチ氏(ニューヨーク在勤)は、来月からフランス大統領選が始まるという時期に投資家は混乱が生じる可能性を過小評価しているとし、大幅な株安が起こり得ると予想。S&P500種株価指数が5%程度下がれば買い場が訪れると述べた。
  ゴールドマン・サックス・グループも今週、世界の株式見通しを引き下げた。アリアンツ・グローバル・インベスターズは株式相場の割高感が増しつつあるとの見方を示している。
  コラノビッチ氏は16日、顧客向けに電子メールで、米国株のポジションを減らしてより割安な新興市場株を買うべきだと助言した。米国株については、特により有利な買いの水準を待っている投資家にとっては長期的には魅力的だとも付け加えた。
  同氏は「オランダ下院選後、現状への肯定感がさらに組み込まれた可能性がある。仏大統領選に絡む不確実さは増すだろう。相場は短期的に弱含む可能性がある」と記した。
原題:JPMorgan Quant Frets Stock Complacency Too High After Dutch Vote(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-17/OMXX5V6TTDS201

 

2017年1月25日 ザイ編集部
「個人型確定拠出年金(iDeCo)」を活用すれば、
多くの人が運用利回り15〜30%の“天才投資家”に!
「iDeCo」のお得な仕組みと節税メリットを解説!

この1月から加入の条件が大幅に拡大され話題となっている「個人型確定拠出年金(iDeCo)」。気になっているけれど、イマイチ仕組みがわからないという人も多いはずだ。
現在発売中のダイヤモンド・ザイ3月号では、「個人型確定拠出年金」の仕組みや加入の方法、さらに申し込む金融機関の選び方やサービス内容をわかりやすく解説! 今回はそのなかからピックアップして、「個人型確定拠出年金」の仕組みやメリットを紹介しよう。
「企業年金や退職金が手薄」なサラリーマンに重要!
年金縮小に備えて老後資金を作る超お得な制度
 個人型確定拠出年金(iDeCo)は、自分で毎月掛け金を積み立て、自分で運用して老後資金を作る、いわば“自分年金”だ。2017年1月から、2016年まで入ることができなかった公務員や専業主婦も加入できるようになり、基本的に国民全員が対象の制度になった。
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 背景には、公的年金の厳しい財政状況がある。“破綻”はしないとしても、この先、公的年金の支給額が縮小していくのは避けられない。豊かな老後を送るためには、自分でもお金を積み立てて、備えなければならない。政府がそれを後押しするべく、作ったのがこの制度なのだ。
 加入を促すために、個人型確定拠出年金には強力な税制優遇が設けられている。例えば、掛け金の分は所得税と住民税がまるまる控除になり、運用で出た利益にも税金がかからない。
 さらに、積み立てたお金は、たとえ自己破産しても、確実に守られる決まりになっている。
「老後に対して経済的な不安があって、備えが必要と思っているなら、入るべきです」(FPで年金教育家、投資教育家の山崎俊輔さん)
 会社員にも無関係ではない。2016年まで、勤め先に企業年金がある人は個人型確定拠出年金に入ることができなかったが、これも1月から加入条件が大きく広がった。
前の会社での積み立て金が“塩漬け”の人は再加入を!
 企業年金があってもそれが手薄な場合は、個人型確定拠出年金に加入できる可能性が高い。もちろん企業年金がない場合は元から加入可能だ。つまり、企業による老後への対応が不十分な会社員にとっては、重要な備えとなる。まずは自分の会社の制度がどうなっているのか、人事部などに確認しよう。
 転職などの際に積み立てたお金を“引き継ぎ”できるのも注目点だ。
 特に、過去に「企業型の確定拠出年金」に加入していて、会社を辞めて専業主婦になった人や、転職先の企業に確定給付型の企業年金しかない人は要チェックだ。従来はこうした場合、積み立てを続けることができなかった(できるのは運用商品の切り替えのみ)。
 さらに何も手続きをしないと、資金は「国民年金基金連合会」に「自動移換」となり、運用もまったくされない“塩漬け”で手数料だけかかり続ける状態になる。これらの人も、個人型確定拠出年金に加入すれば、積み立てを再開できるようになった。
定期預金だけを選んでも税控除で実質利回り30%も! 
節税メリットが大きくて運用商品は低コストで売買も自由!
 では、改めて個人型確定拠出年金はどんな仕組みで、何がお得なのだろうかを、3つの特徴を挙げながら説明していこう。
<個人型確定拠出年金の3つの特徴>
【特徴(1)掛け金を毎月積み立てて自分で運用する】
資金の積み立てができるのは60歳まで。運用だけなら70歳まで延長できる。掛け金の額は一定の枠内で設定可能。現在は“毎月いくら”という決め方だが、18年1月からは“年いくら”という、より柔軟な形になる予定。
【特徴(2)手厚い税制優遇があり商品は何度でも売買可能】
3段階で手厚い税制優遇が受けられる(左ページの表参照)。さらに、運用商品の投信は何度でも売買可能で、たいていの場合は売買手数料もかからない(投信によっては一部、手数料がかかるものがある)。信託報酬も普通より低い専用商品が多い。
【特徴(3)積み立てた資金は60歳まで引き出し不可】
受け取り開始の時期は60歳から70歳の間で選択。積み立て期間が短いと受け取り可能な時期は遅くなる(最も遅くて65歳から)。受け取り方法は一時金か年金払いかで選択可能。一部を一時金、一部を年金といった形にもできる。
 上記の3つのメリットのうち、個人型確定拠出年金の最大のメリットは、【特徴(2)】で挙げた「手厚い税制優遇」。年収や扶養家族の有無によって異なるが、なんと節税効果だけで実質利回り15〜30%に! 以下では、3つの節税メリットを紹介したい。
<確定拠出年金の3つの節税メリット>
【メリット(1)掛け金の分は全額所得控除に!】
掛け金の分は所得税と住民税が全額控除。税率が20%なら節税額だけで実質20%の利回りが出ることに。
【メリット(2)運用での儲けがいくら出ても非課税!】
普通の証券口座で投資すると利益に約20%の税金がかかるが、いくら儲けが出ても非課税に。
【メリット(3)受け取り時も税金がゼロor減額に!】
受け取りは「退職所得控除」「公的年金等控除」の対象に。受取額が控除の枠内なら税金はかからない。
 このなかでも特に大きいのが、【メリット(1)】で紹介した掛け金の分がまるまる所得控除になることだ。実際の節税額は、年収や扶養家族の人数などによっても異なるので、下の図に示したFPの深田晶恵さんによる試算を参考にしてほしい。
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 例えば、年収600万円で扶養家族が1人、掛金額が月2万3000円なら、年に5万3900円の節税になる。それだけで、実質20%の利回りが得られるのと同じだ。こんな有利な制度は他にはない。
 ただし、もともと所得税と住民税を払っていない専業主婦(専業主夫)にはこの節税効果はないので要注意。とはいえ、“自分名義の資産”や“主婦の退職金”ができることには、大きな意義がある。
 運用は、口座を作る各金融機関に用意された投資信託などの商品から選んで行なう。このとき、いくら儲けが出ても税金ゼロ、というのもうれしい。同じく利益が非課税になるNISAでは、売却するたびに非課税枠が減るのに対し、個人型確定拠出年金は何度でも売買自由。例えば売却していったん定期預金に移すといった形で、利益確定もできる。
 売買手数料もたいていの場合、無料だ。そして投資信託の信託報酬(運用コスト)も、普通より低い専用商品が多い。投資初心者でも選びやすいようにという考えから、商品のラインナップはかなり絞り込まれているが、金融機関による本数の差は大きい。多ければいいというものではないが、申し込みの前に自分の投資したい商品があるか、よく確認しよう。
 さらに受け取り時にも、「退職所得控除」(一時金で受け取る場合)、「公的年金等控除」(年金で受け取る場合)の対象になり、受取額が控除の枠内なら税金はかからない。会社員や公務員で退職金が多いと控除の枠を超えるケースもあるが、その場合でも、多くは普通に課税されるより税金が少なくなるはずだ。
積み立てる期間が長いほどお得! 
60歳まで引き出せないがムダ遣いを防ぐメリットも
「老後のためのお金を貯めるなら、個人型確定拠出年金にすれば確実に大きなトクをするのです。使わない手はありません」(山崎さん)
 その代わり、積み立てた資金は60歳まで引き出しできない。老後資金を作るという意味では、ムダ遣いを防ぐのでむしろ安心、という面もあるが、毎月の家計に余裕がない人は、可能な積み立て額で始めるべきだ。
 ただ、始めるなら早いほうがいい。なぜなら年金の加入状況などによって月5000〜6万8000円という掛け金の上限が設置されているからだ。
「積み立て額の上限が決まっているので、多く貯めようと思うなら、できるだけ長く積み立て期間を取る必要があります」(山崎さん)
 家計を見直し、積み立てのお金を捻出する努力も重要だ。
【※関連記事はこちら!】
⇒iDeCo(個人型確定拠出型年金)の金融機関を比較!口座管理手数料や投資信託の取扱数などで比較した、iDeCo口座を開設できる、証券会社・銀行を紹介!
個人型確定拠出年金の始め方やおすすめ金融機関は、
ダイヤモンド・ザイ3月号をチェック!

 ここでは個人型確定拠出年金の仕組みやメリットを紹介したが、現在発売中のダイヤモンド・ザイ3月号には、具体的な確定拠出年金の始め方や主な証券会社や銀行の徹底比較も行っている。本気で個人型確定拠出年金の積み立てを考えている人は必見だ。
 ちなみに個人型確定拠出年金で失敗しないためには、運用商品としてラインナップされている投資信託についての正しい知識を持つことが重要だ。

 投資信託についてもっとよく勉強してみたい人には、「投信の窓口」ファンド・リサーチセンター長の植村佳延さんが解説する『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ザイと投資信託の窓口が作った投資信託のワナ50&真実50』がおすすめ! 全国の書店やアマゾン、楽天ブックスなどで、ぜひチェックを!
 ダイヤモンド・ザイ3月号の大特集は、「2017年の最強日本株」。「5万円株」や「10万円株」「高配当株」「大型株」などのジャンルにわけた2017年の主役株72銘柄を紹介している。
 そのほか、最新の「確定申告特集」、「2017年勝ち組投資信託番付」など役立つマネー情報が満載。別冊付録は「株主優待ランキング」で、人気の食品・飲料、食事券をはじめとしたタイプ別の株主優待銘柄(計119銘柄!)をランキング形式で紹介している。ダイヤモンド・ザイ3月号は、全国の書店やアマゾン、楽天ブックスにて発売中。
http://diamond.jp/articles/-/115336


2017年3月17日 山崎 俊輔
iDeCo(個人型確定拠出年金)は本当に得する制度!?3つの節税メリットと魅力をFPが徹底解説!

最近よく見かける「iDeCo」という文字、
あなたの老後の救世主になってくれるかも?
 最近、「iDeCo(イデコ)」という文字を目にする機会が増えていませんか。銀行の窓口に「税金が戻ってくる!」と書いてあったり、新聞や雑誌、ウェブなどで「お得な制度!」と書かれたりしているのをちらっとでも見かけたことがある人は多いのではないでしょうか。
 iDeCoとは、個人型(i)確定(De)拠出(Co)年金(individual-type Defined Contribution pension planの頭文字)の略で、公的年金だけでは不足する老後資金を自分で作るために用意された私的年金の1つです。「ははーん、何か金融機関が新商品でも売り込みにきたのかな?」と身構えた人もいるかもしれませんが、一度でいいので制度の中身を知ってほしいと思います。
 というのもiDeCoは、「私たちの『老後のお金』の不安を具体的に解消することのできる本当にお得な仕組み」だからです。
【※関連記事はこちら!】
⇒「個人型確定拠出年金(iDeCo)」のお得な仕組みと節税メリットを解説!

 誰もが「老後のお金」について、ぼんやりとした不安を抱えていますが、その不安は少しでもお金を残して老後に備えることでしか解消できません。「老後のお金」を残すことは容易ではありませんが、
「確実に自分の老後にお金を残すことができ」
「自分の老後に備えるほど、納める税金が少なくて済む」
 というメリットがあり、「老後のお金」を残しやすいのが「iDeCo」という制度なのです。今はまだ半信半疑かもしれませんが、もしかすると数十年後、実際に老後を迎えたとき、「これやっておいて助かった!」と思うことになるのがiDeCoかもしれません。
 そう、iDeCoこそがあなたの「老後のお金」の不安を少しでも減らす救世主となりえるのです!
 iDeCoの詳しい解説はこれから何回かに分けて行っていきますが、簡単にポイントをまとめると、以下の5つになります。
 1.自分で入りたい人だけが入る(任意、60歳未満の全ての成人が対象)
 2.好きな金融機関を選べる(手数料などのサービス競争あり)
 3.老後のために積み立てたお金は「三重の税制優遇」でお得に増やせる(利用者だけ得をする)
 4.運用は自分で決めて自分で責任をもつ(自己責任)
 5.ただし60歳まで解約できないのが原則(中途解約不可)
 上記のポイントの中でも、3つ目に挙げた「税制優遇」(節税効果)が、iDeCoの最大の特徴であり、メリットでもあります。
iDeCoの節税効果その1:掛け金が全額所得控除に!
 まず、iDeCoに加入して積み立てをするだけで、現在支払っている所得税や住民税がお得になります。iDeCoの掛金には税金がかからない(=課税所得が減る)ので、それだけで普通に預金や投資信託でお金を積み立てるより税制面で有利になるからです(月々の掛金の上限は会社員、公務員、専業主婦・主夫、自営業者で異なる)。
 ここでは仮に、iDeCoの掛金の上限が月1万2000円の場合を想定してみましょう(会社員<企業年金あり>と公務員は、月々の掛金の上限が1万2000円)。
 iDeCoに加入していない場合、税率を20%と仮定すれば、得られた給与の額面金額1万2000円には税金が2400円かかり、手取りとして受け取れる金額は9600円になります(実際の税率は所得と控除の状況によって異なります)。
 ところがiDeCoに加入して毎月1万2000円を掛金とすれば、2400円の税金が引かれることなく1万2000円分がそのままiDeCo口座に残ります。つまり、「ただ積み立てるだけ」で、すでに税金分がお得になっている、というわけです。毎月2400円を得するだけでも、30歳から60歳まで積み重ねれば、合計で72万円も税金を払わずに済むことになります(毎月の節税額2400円×12ヵ月×30年=86万4000円)。
iDeCoの節税効果その2:運用での儲けに税金はかからない!
 次に、iDeCoの制度を使って投資をしてお金を増やした場合、運用での儲けには税金がかからないというメリットがあります。普通であれば、銀行預金の利息、投資信託の収益分配金や値上がり益については、原則として約20%課税されますが、iDeCoでは運用益に税金がかからないため、その分、お金を有利に増やすことができるのです。
 仮に運用によって年4%の利回りを得られるとしましょう。通常は約20%課税されるため、運用益は3.2%分しか手元に残りません。ですが、iDeCoを活用すれば年4%の利回りがそのまま手元に残ります。
 毎月1万2000円の積み立てをして、利回り年4%での運用を30歳から60歳までの30年間行ったとき、iDeCoを活用するかどうかで積み立てた総額の差は、なんと約109万円に! そして60歳のときに受け取れる金額は833万円にもなるのですから、iDeCoを使わない手はありません!
 また、「投資なんてしたことがない」「増えなくてもいいから、投資で損をしたくない」という人も、iDeCoでは「定期預金」もできるので、元本を確保したまま、節税分だけ得することもできます(国民年金基金連合会や金融機関には手数料を支払う必要があります)。
iDeCoの節税効果その3:受取時点でも税金がゼロor減額に!
 さて、積み立て時点と運用時点で無税であったiDeCoも、さすがに受け取り時点では税金を払わなければなりません。しかし、こちらも税制の優遇が受けられます。
 一時金で受け取った場合は退職所得控除(退職金受け取りの際に使える非課税枠)が利用できますし、年金として定期的に受け取った場合は公的年金等控除(公的年金に準じた税制優遇枠)が利用できます。これにより、受け取り時点で課税されてもちょっとで済むか、まったく税金を引かれずにもらえてしまうことになります。
 さきほどの試算(掛金が月1万2000円、利回り年4%で運用)では、iDeCoを使うか使わないかだけで、国に払う税金は195万円(掛金の節税分86万4000円+運用益の節税分109万円)も少なくて済みましたが、その分はあなたの老後の財産になります。これはすごい仕組みです。一般の証券口座で運用をするなら(一般の銀行口座で定期預金を積み立てるなら)、同じことをiDeCoを使うだけで必ずお得になるからです。
 国はここまで大盤振る舞いをしてでも、皆さんに「老後のお金」を自分で準備して欲しいとメッセージを送ってきているのがよくわかります。

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国の制度といっても、「自分のお金は全部自分のもの」になる安心感
 あまり他では指摘されていない大事なポイントとして、「積み立てたお金は全額、自分のものとして将来受け取れる」ことが挙げられます。
 国の年金制度といえば、世代間の助け合いとか、保養施設の設立・運営などにお金の一部が勝手に用いられるイメージがあります。しかし、iDeCoではそうした心配はまったくありません。
 iDeCoでは、あなたが積み立てたお金について国はまったく触ることができません。iDeCoの実施主体である国民年金基金連合会は、掛金をそのまま信託銀行に預けてしまい、事務手数料以上のものを引くことはありません。
 信託銀行も顧客の財産と自身の財産は分別管理しているので、iDeCoの財産が勝手に使われることはありません。ただ私たちの出した運用指図(どの運用商品で、いくら運用するのかという指示)にもとづいて定期預金や投資信託を購入するだけなのです。
 つまり、国の制度といってもあなたが積み立てたお金が勝手に減らされる心配はありません。
「税制を大幅に優遇してもらえて」
「お金の増やし方は定期預金でも投資信託でも自分で決めることができて」
「他のことにお金を使われることもなく将来必ず受け取れる」
 のがiDeCoなのです。
(※会社が実施する企業型の確定拠出年金も同様で、積み立てたお金は会社が一切手出しできないようになっています。勤続3年以上あれば退職理由によって減らされることもありません)
世界中どこでも公的年金制度は限界!
自助努力を支援する政策がトレンドです
 今回のiDeCoの規制緩和に際し、「国は公的年金がつぶれるから、こういう制度を導入するのだろう」というような論調もありますが、これはむしろ逆です。
 公的年金がつぶれないように制度を維持しようとすれば、給付額の引き下げが避けられないため、さらに豊かな老後を迎えたいとまじめに考える人を優遇する制度がiDeCoなのです。
 世界中どこへいっても少子高齢化は基本的な流れです。少子高齢化になると公的年金制度の充実は困難で、どの国でも給付を下げるか、受給開始年齢を引き上げるかして対応しています。日本だけが公的年金の制度の運用を失敗しているわけではないのです。
 そこでいま世界中で行われているのは、「自分で自分の老後のためのお金を貯める場合には、税金を優遇することでお得になる仕組み作り」です。イギリスのNEST(国家雇用貯蓄信託)、アメリカのIRA(個人退職勘定)などがその代表格です。
 世界一の長寿国である日本が、こうした取り組みを導入するのが遅れているのはとても残念なことでしたが、2017年1月から従来の個人型確定拠出年金の加入条件を緩和して、60歳未満の現役世代は原則誰でも利用できるようになりました。そして、その仕組みを多くの人に知らせるために「個人型確定拠出年金」に「iDeCo」という愛称をつけて、制度を普及させようとしているのです。
 これを読んでいるあなたも、若いうちから頑張って積み立てた人には明るい老後が訪れる仕組み「iDeCo」の活用方法について本気で考えてみませんか? 次回からはより詳しくiDeCoの仕組みや始め方、メリットを徹底解説していきます!
【※関連記事はこちら!】
⇒iDeCo(個人型確定拠出型年金)の金融機関を比較!口座管理手数料や投資信託の取扱数などで比較した、iDeCo口座を開設できる、証券会社・銀行を紹介!
⇒「個人型確定拠出年金(iDeCo)」のお得な仕組みと節税メリットを解説!
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http://diamond.jp/articles/-/121126


http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/276.html

[経世済民120] 米利上げで国債漬けの日銀に「債務超過」の危機 FRB議長新たな難題 私大×地方の二重苦でも志望者増「金沢工業大」躍進の秘
2017年3月17日 ダイヤモンド・オンライン編集部
米利上げで国債漬けの日銀に「債務超過」の危機

 


米国が追加利上げし日米の金利差が拡大する中で、日本銀行は「デフレ脱却」の看板を下ろせず、国債買い取りもやめるにやめられない状況だ。金利急騰となれば、“国債漬け”の日銀が「債務超過」に陥るシナリオも語られ始めた。(ダイヤモンド・オンライン特任編集委員 西井泰之)

金利高、国債急落のリスク
日銀が「債務超過」に陥る?

 米国の連邦準備制度理事会(FRB)が追加利上げを決めたが、「物価上昇率2%」の目標を掲げる日本銀行は、直後に開いた政策決定会合で超金融緩和を続けることを決めた。だが日米の金利差が拡大し、国債(長期金利)市場が不安定な動きをしかねない中で、日銀は金利上昇を抑えようとしてまた国債購入を増やすことになりかねない。借金財政をファイナンスする“国債漬け”日銀の「出口」はますます見えなくなった。

 FRBが利上げを決めた直後の16日の金融市場は、すでに利上げを織り込んでいたことから、長期金利や為替も大きな動きはなかった。だがFRBは今後、年に3回程度のペースで利上げをする見通しで、金利上昇が加速する。 日本の市場金利も引っ張られるかたちで上がる可能性がある。10年物国債の金利を「ゼロ%程度」に抑える「長期金利コントロール」に踏み出している日銀だが、金利を安定させようとするほど国債買い入れを増やさないといけなくなる。国債買い取りを減らし、「正常化」で動き出したばかりなのに、逆戻りになりかねない。

 だがそれでも日本だけが金利を低く抑えるのは、世界の金融市場が一体化している中で、至難のことだ。一方で逆に国債購入を抑えれば抑えたで、日銀が金利上昇を容認したと市場が受け止めて、金利高が加速し、国債や株式市場が不安定化するという綱渡りの舵取りだ。

「デフレ脱却」を旗印に日銀が銀行などから国債を買い取ることで、市中に出回る資金の量を増やしたり、金利を低く抑えたりする政策が続けられてきた。今や新規に発行される国債の大半を日銀が購入。その結果、ストック面でも日銀の資産の86%を国債が占める。財政赤字の膨張が止まらないだけでなく、金融政策が国債市況に縛られて柔軟性を失い、日銀がコントロールするどころか、国債市場の虜になっているかのような構図だ。

 いったん金利が急騰(国債価格が急落)すれば、財務基盤にも影響が出る。日銀のバランスシートでは、国債は簿価で評価されているので、ただちにそれで会計上は決算収益が赤字になるわけではない。購入した国債は売らずに満期まで保有するからという理由だが、逆にいえば、途中で売ると「含み損」が表面化するから、物価が上がって金融引き締め(国債を売って市中から資金を吸いあげる操作)をしようにもできなくなる。インフレが止まらなくなり、結果、国債の額面が維持されても資産価値は目減りしてしまう。そうなれば日銀だけに限らず、一般の国債保有者まで「損」をしてしまう。

 またこの間の金融緩和で金利を下げるために、日銀が国債を額面より高く買っている局面が増えているので、そうした国債については毎年、損失が計上されている。一方で、時価評価される上場投資信託や外貨資産などが値下がりすれば、評価損が出る。場合によっては自己資本が毀損し、日銀自体が「債務超過」に陥ることになりかねない。となると、政府歳入の一部である日銀納付金が計上できなくなるどころか、逆に日銀への公的資金投入という事態になってくる。

政府と日銀、一連托生
止まらない財政赤字の膨張

 中央銀行は、無利子の銀行券を発行する代わりに得た国債などの利息収入との差額が、「通貨発行益」として出るから、自力で自己資本を回復できる。民間銀行と同じように考えても意味がないという意見や、あるいは政府と日銀を一体の「統合政府」と考えるなら、両方を統合した会計で見れば、日銀が債務超過でも問題は起きないとの見方も少なくない。最近でも2015年に、スイスフラン高を抑える為替介入を停止し、巨額のユーロ資産の評価損が出たスイス国立銀行が債務超過の状況になったが、政府がしっかりしていたので問題は起きなかった。

 だが、政府が大赤字となれば事情は違ってくる。政府が増税を先延ばしし財政健全化に取り組む姿勢が見えなかったり、財政が破綻寸前だったりという国の中央銀行が発行する通貨はどうなるか。通貨の信認が崩れて超インフレになり、自国通貨を国民すら使わなくなったジンバブエなどの例でも明らかだ。

 日本はどうか。「会計上は表に出ないとはいえ、巨額の国債含み損を抱えた日銀を、投資家や国民が結局はどう考えるかだ」と熊倉正修・駒澤大学教授は言う。日本の場合は、消費税増税も先送りしたまま、借金の利払いをするために借金をするというかたちで財政赤字の拡散が止まっていない。それを、過大な成長率を前提にした甘い税収見通しで“再建計画”を作り、日銀が国債購入や納付金で政府の財布を支え、低利政策で利払い負担も軽くして財政が回っているのが実態だ。

「政府と日銀の間でお金をやりくりして表面上は取り繕っているが、金利が急騰すれば両方がおかしくなる。政府(財政)と日銀は一蓮托生の関係だ」。企業でいえば、債務超過の親会社(政府)を子会社(日銀)が必死で支えている構図だが、政府(財政)の底が開いている中では、“国債買い支え”は際限がないことになる。

短期金利ゼロで限界だった
「量的緩和はマジック」

 日銀がここまで泥沼にはまりこむことになったのはなぜなのか。

 もとはといえば、政策金利(銀行が資金の過不足を調整する短期市場で日銀が資金を出す際の金利)がゼロになった時点で、金融政策がやれることはほぼ限界にきていた。銀行の貸出金利を下げて企業の投資を促すには、銀行の短期市場での資金調達コストを下げることしかない。だが短期金利がゼロまで下がってしまえば、その効果はそこで終わる。だが「デフレ脱却」を求める自民党やリフレ派の声に押し切られて始めたのが、資金の「量」をターゲットにする金融緩和策だった。

 初めて「量的緩和」に踏み切った政策審議会の議事録に、当時の委員たちの「本音」が語られている。

「(これで)景気がよくなっていくなら良いが、ならないと地獄になる」

「そう地獄だ。(緩和を)もっともっともっと、ということになる」

「こんなことをしても意味がないことを、途中で納得してくれるのを期待することだ」

 バブル崩壊後、金利を下げ続けて、金利がゼロ近くになっていたのを利上げに転じたが、米国のITバブル崩壊で、再び緩和を余儀なくされた。自民党や政府から「時期尚早のゼロ金利解除」の批判を受けるなか、金利をゼロに戻せば、政策の失敗を認めたことになるというので、「新たな枠組み」として打ち出したのだった。

 日銀が資金をいくらでも供給するとなれば、(1)将来、物価が上がるという「インフレ期待」が生まれ、金利はゼロでも実質金利は下げられる(期待形成効果)、(2)投資家が株式などの、リスクはあるがより収益が見込まれる金融資産に買い換える(ポートフォリオリバランス効果)などの「理屈」が考えられた。

 だが、当時の日銀内で効果が信じられていたとは言い難い。「意味がなくても、市場や企業がそれで経済がよくなると期待するなら、その幻想に乗ってマジックもどきのことをやろうと考えた」(当時の審議委員の一人)のが実情だ。もともと金利がゼロとなれば、銀行に借りる気持ちさえあれば日銀からは無限大に資金を供給できる。ゼロ金利はいわば究極の量的緩和だった。それなのに、わざわざ銀行の当座預金残高を「量」の指標にして、日銀が銀行から国債などを買い取って資金を供給することで当座預金残高が積み上がっていけば、緩和が進んだように見せられるというのが、「マジック」のタネ明かしだ。

抵抗も、安倍政権で“全面降伏”
金融政策放蕩のツケはこれから

「量」の指標は、その後、「国債買い取り額」や「マネタリーベース」に変わったが、いくら量を増やしても効果に限界があるのは同じ。このところは「長期金利」を指標に戻したが、国債買い取りはずっと続く。日銀がリスク資産を直接、購入すれば、リバランス効果が強まると、買い取りの対象は上場投資信託、不動産担保抵当証券などに広がった。それらの市況が一時的に活況になったり、一部の不動産価格が上がったりしたのは確かだが、グローバル競争の激化に加え、生産性の低下や労働人口の減少などの構造問題を抱える実体経済の回復への波及はほとんどなかった。

 リーマンショック後、欧米の中央銀行が同様の量的緩和策(非伝統的金融政策)を始めると、緩和が為替引き下げ競争の様相を次第に帯びるなかで、日銀だけが、とやめるわけにはいかなかった。その時々では“抵抗”しても、結局は押し切られ、安倍政権で黒田総裁が就任すると“全面降伏”とばかり、「アベノミクス」の旗振り役を任じてきた。

 この間、政府の財政再建努力は先送りされて、日銀保有の国債残高は増え続け、財政ファイナンスの性格を帯びる。民間でも、超低利局面が長く続いてきた結果、「ゾンビ企業」が生き残って、新陳代謝、産業構造の転換が遅れ、一方で国債や上場投信などの市場は“官製”化が進んでしまった。

「中央銀行としての矩(のり)をこえたことをずっとやってきた。やめておいたほうが良かったと思っても、考えたくない状況にどんどん近づいているのが現状だ」。ある日銀OBは自虐的に語る。仮に債務超過で日銀に税金投入という議論になったら、批判は日銀に集中する。国債急落が引き金だったら、国債や株で損をした人がたくさんいるのだから、日銀だけが不公平だとなる。その時に政府は毅然とした態度をとれるのかどうか。政治問題になって動きがとれない日本を、海外の投資家はどう見るか。「結局は、そういうことにならないように国債を買い続けて、どこかで財政赤字垂れ流しの穴がふさがれ、財政健全化に動き始めるのを待つしかない」。

 かつて「微益微害」だからということで始まった量的緩和策だが、やめるにやめられず、リスクばかりが膨らむ。金融政策放蕩のツケをこれから誰がどういうかたちで払うことになるのかも見えない。

http://diamond.jp/articles/-/121602

 
イエレンFRB議長、新たな難題に直面−利上げでも金融状況緩和
Sid Verma、Julie Verhage
2017年3月17日 13:13 JST

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緩和の状態続くなら、さらなる利上げ必要になる可能性
イエレン議長はグリーンスパン氏が経験したのと同様なジレンマに

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長に対し、市場はさらなる利上げの必要性を示唆し、そうしなければ問題が生じかねないと告げているように見受けられる。
  イエレン議長率いる米金融当局は15日、金融市場の予想通り0.25ポイントの利上げを決めた。だが、連邦公開市場委員会(FOMC)参加者が示した最新の経済予測では、中期的な引き締めサイクルの見通しにほとんど変更はなく、市場参加者の想定よりもタカ派色が薄かった。

  ドル相場や債券利回り、信用スプレッド、株価の反応から判断すると、FOMC参加者のこうした見通しが金利を実質引き下げたも同然の効果をもたらした。モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックス・グループが公表した指数によれば、そのような「利下げ幅」は約15ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に相当する。
  ゴールドマンのチーフエコノミスト、ジャン・ハッチウス氏らはリポートで、「当社の金融状況指数は政策決定当日に推計14bpの緩和。約2.3標準偏差でほぼ1回のフェデラルファンド(FF)金利引き下げに相当し、現在は昨年12月初めよりもずっと緩和気味だ。この間に2回の利上げがあったにもかかわらずだ」と指摘した。
  15日の利上げ後、米S&P500種株価指数は過去最高値にあと0.5%以内まで上昇。16日は勢いを失った。

  こうした事態によってイエレン議長は、2005年2月にグリーンスパンFRB議長(当時)が難題と呼んだのと同様の状況に直面することになった。当時は金融当局が利上げする一方で、長期金利の低下が持続。世界的な貯蓄過剰にジレンマの原因があるとされた。
  今回、米国の金融状況は昨年12月の米利上げ以降に決定的に緩和が進み、米経済に刺激をもたらす一方で、金融当局の引き締めサイクルに水を差している。
  信用スプレッドの縮小やS&P500種の強気相場に加え、ドルが今年に入って昨年11月の米大統領選後の上値を維持できなかったことはいずれも景気刺激に作用する。トランプ米大統領の掲げる成長押し上げを金融状況の引き締まりが相殺するとした大統領選後の懸念に反する形となっている。
  エレン・ゼントナー氏率いるモルガン・スタンレーのエコノミストは「端的に言えば、米金融当局は金融状況を引き締めるために利上げをするわけで、引き締まりがなければ、もっとやらなければならないということだ」と記した。
原題:Yellen Faces New Conundrum as Financial Conditions Defy Hike (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-17/OMXYEB6S972801


 

2017年3月17日 井沢 秀
私大×地方の二重苦でも志望者増「金沢工業大」躍進の秘密
苦境が続く地方私大の中で、この10年で志願者を5割も増やした金沢工業大。研究レベルが高く、最新のテクノロジーを学生教育に取り入れるといった先進性が高く評価されているからだ。(「大学通信」情報調査・編集部部長 井沢 秀)

地方私大困窮の時代にあって
志望者を増やしている金沢工業大
2013年のABUロボコンで優勝した金沢工業大学。研究に力を入れているというメッセージが、こうした形にきっちり結実していることで、受験生たちの人気を集めている 写真提供:金沢工業大学
 大都市圏の大学への志願者集中が止まらない。2016年の私立大入試では、近畿大や明治大、早稲田大といった首都圏や近畿圏などの20大学で、総志願者の半数近くを占めた。そうした状況を文科省はよしとせず、地方の大学にも志願者が回るよう、都市部の収容定員が8000人以上の大学を対象に定員管理の厳格化を進めている。
 定員管理の厳格化が始まったのは16年入試から。それまでは定員の1.2倍を超えると私学助成金の不交付の対象になったが、倍率は段階的に引き下げられ、19年からは1人でもオーバーすると、超過人数分の助成金がカットされる。こうして都市部の大学の入学者が減れば、地方の、特に私立大への進学者が増えるという目論見だ。

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 それだけ地方の私立大が置かれた状況は厳しいということだが、文科省の施策に頼らずとも、志願者が増えている希有な大学がある。金沢工業大だ。今春の志願者数は8830人(3月9日時点)で、07年の5870人と比較して50%増となっている。
 志願者の増加とともに、合格者のレベルも上がっている。駿台予備学校の難易度によると、金沢工業大で最も高い学科の難易度(合格者の偏差値を基に算出される)は、07年入試の41から、17年入試は47と6ポイントも上がっている。かつて、金沢工業大は工学院大や東京電機大、愛知工業大、大阪工業大などと難易度に開きがあったが、今では、これらの工科系大学とほぼ同水準になっている。

東大や名工大を下した
ロボコンでの活躍
 受験生の地元志向が強まる中、全国から学生が集まっていることも特徴だ。

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 昨年の主要な工科系大学の合格者に占める地元高校の占有率を見ると(左図参照)、東京工業大や東京理科大など、60%を上回る大学が大半だ。そうした中、金沢工業大の合格者に占める北陸3県の割合は5割を切っている。他地域の受験生からの注目度が高いということだ。
 なぜ金沢工業大は志願者が全国から集まり、そのレベルも上がっているのか。駿台予備学校進学情報センター長の石原賢一氏は、「リーマンショック後、就職状況の悪化から文系学部の人気が下がり、理系学部の志願者が増えた時期がありました。そうした理工系大学に追い風が吹いている時に、うまく大学をアピールすることにより潮目が変わったのです。積極的な広報活動の効果もあり、優秀な受験生が目指すようになったのでしょう」と話す。
 確かに金沢工業大の難易度が大きく上がったのは、10年から12年にかけて。リーマンショックの翌年に志望校を決めた受験生の動向を反映してのことだ。
 もちろん、いくら広報に力を入れても、大学としてのポテンシャルがなければ優秀な受験生は集まらず、難易度が上がることもない。「ロボットコンテストなど、受験生に分かりやすい形で、工科系大学としての研究力をアピールできていることが、優秀な受験生が増えた要因と見ています」(駿台の石原氏)
 金沢工業大は「夢考房プロジェクト」を通じて、学生の課外活動を積極的にバックアップしている。その代表的なものが、3度優勝している「NHKロボットコンテスト」への参加。13年の大会では、準々決勝で名古屋工業大、準決勝で電気通信大、決勝では東京大を破って優勝している。プログラミングやセンサーなど、ものづくりの技術が詰め込まれたロボット競技で難関国立大を下すという、受験生に分かりやすい構図で研究力がアピールできているようだ。ちなみに、同大はNHKロボコン優勝校が参加する世界大会「ABUロボコン」でも優勝した。

研究レベルや就職先は
難関大学にひけをとらない
「夢考房プロジェクト」は、学生メンバーが立案、調査、設計、製作など、一連のものづくりのプロセスを体験するもの。ロボットの他にソーラーカーや人力飛行機など14のプロジェクトがある。
 金沢工業大の特徴は、普段の教育・研究の成果を生かして、チームによる課題発見と解決を目指す「プロジェクトデザイン教育」にある。これは知識だけではなく、社会で求められる技術者としての能力を育成するものであり、夢考房プロジェクトもこの教育プログラムの考え方に基づく。
 こうした取り組みのバックボーンもある。金沢工業大はスタンフォード大やマサチューセッツ工科大など100以上の大学が加盟する、社会で役立つ工学教育実践のための改革を進める国際組織、CDIO(Conceive Design Implement Operate)に、国内の大学で唯一参加している。
 今後注目されるであろう取り組みとして、AI(人工知能)を学生の成長に活用するプランがある。IBMが開発したAI「ワトソン」による、学生の自己成長支援システムの構築を進めているのだ。
 金沢工業大には、「ポートフォリオシステム」などによる学生の修学やキャリア等のデータに関する長年の蓄積がある。そうした学生の個人データと、先輩学生の成功事例をワトソンが結びつけ、履修すべき授業や課外活動などをアドバイスするシステムだ。

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 AIを就学支援に活用するのは日本の大学として初の試みであり、17年4月からの試験運用を経て、18年4月から本格稼働する予定だ。
 実践的なエンジニアの養成に力を入れる金沢工業大学は、研究力、就職力ともに高い次元にある。文科省が発表した16年度までの5年間の科研究費の新規採択累計数は、国内の全ての大学の中で「科学教育」分野が3位、「生産工学・加工学」分野は6位だ。
 就職力に関しても、大学通信調べの16年春の実就職率(就職者数÷《卒業者数−大学院進学者数》×100)は96.5%と、卒業者が1000人以上の大学の中で2位。就職者が多い主な企業は、JR西日本12人、東芝とJR東日本がともに7人など、就職者全体の6割が大手・上場企業に就職する。
 多くの大学が自校のポジションを上げたいと考えるが、受験生の大学選びは保守的で、大学の序列はなかなか変わらない。そうした中、地方大学である金沢工業大に広域から受験生が集まり、難易度が上がっているのは、教育力、研究力、就職力の高さが全国的に認知されているからだろう。

http://diamond.jp/articles/-/120816


http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/277.html

[経世済民120] 自動運転とAIの到来が描く「製造業に不都合な未来」 IoT時代、「移動する体験からライフスタイル」が変わる
自動運転とAIの到来が描く「製造業に不都合な未来」
IoT時代、「移動する体験からライフスタイル」が変わる
BY 朝岡 崇史

NVIDIA(エヌビディア)のジェン・スンファンCEO(2015年2月28日撮影)。NVIDIAは今年のCESで、AI搭載の自動運転車の動画を紹介し話題になった。 Photo by BagoGames, under CC BY 2.0.
2017年CES――自動運転車とAIが市場を席巻する
 2017年1月5日に米ラスベガスでスタートしたCES(家電見本市)。今年のハイライトは何と言ってもショーの主役の交代劇である。2017年はスマートフォンやウエアラブル端末が失速し、自動運転車と人工知能(AI)の存在感が一気に高まった年として長く記憶されることになるであろう。 
 そして同時に、一昨年のCESのパネルディスカションでシスコシステムズCEO(当時)のジョン・チェンバースが予言した「IoTによる破壊的イノベーション(Disruption)が、自動運転車とAIの融合した領域で確実に起きる」ということを、世界中の人々の脳裏に強く焼き付けることになったのである。
参考:「巨大企業をなぎ倒していくIoTの凄まじい衝撃」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47868

 まず、自動運転車については、2010年に米フォード・モーターが基調講演を行って以来、アウディなどの自動車メーカー、自動車関連のサプライヤーの出展が加速する傾向にあった中で、今回は実に145社もの企業がブースを設営した。
 ちなみに自動車メーカーで完成車を展示した9社のうち3社は、トヨタ、ホンダ、日産の日本勢である。
 また、AIについては、GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の有力ベンダーNVIDIA(エヌビディア)のジェン・スンファンCEOが基調講演(キーノート)を行ったことが特筆される。
 シリコンバレーのサンタクララに本拠を置くこの企業は、どちらかといえば、Xbox(2001年)やPlayStation 3(2004年)にGPUを提供したゲーム機向けチップベンダーとしてのイメージが強かっただけに、余計にそのインパクトは大きかったわけである。
 NVIDIAのプレゼンテーションでは、
・インテリジェントマシン用に特化したAI「Xavier(ザビエル)」搭載の自動運転車「BB8」(著者注:『スターウォーズ』に出てくるボール・ボットの愛称)の動画紹介
参考:AI「Xavier(ザビエル)」搭載の自動運転車「BB8」の動画 

・アウディとの提携による、2020年を目標にしたAI搭載の自動運転車の開発
参考:CES会場でデモ走行が行われていたアウディQ7ベースの自動運転車 

・地図データ提供パートナーとして欧米で圧倒的な勢力を持つHEREに加えて、中国の百度(Baidu)、日本のゼンリンとの提携
などが、これでもかと言わんばかりに発表されたのである。
 著者は、昨年5月に発刊した『IoT時代のエクスペリエンス・デザイン』(ファーストプレス)の中で「IoTという破壊的イノベーションの中で勝者になるには、自前主義を捨てて、積極的なオープンイノベーションを指向すべきである」と書いた。
 すでに表明されていた自動車部品メーカーのボッシュやZFとの提携も含めて、NVIDIAの一連の積極的な攻勢は、業界の垣根を超え、自動運転車とAIの融合で新たに立ち上がる巨大マーケットのルールメーカーとして「勝利の方程式」を地で行っているように映る。

自動運転車とAIの関係

 それでは、自動運転車とAIの関係はどんなものなのだろうか。AIが自動運転車に提供する機能的な価値として重要なものには2タイプあると考えられている。
 ひとつ目は「人間の代行として認知・判断・操作を司る機能」、そして、ふたつ目は「人間の思考や行動をアシストするHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)としての機能」である。
 前者については、平たく言えば自動車の運転を人間に代行して行う機能であるが、「自動運転化5つのレベル」を中心にウエブ記事や新聞紙上などですでに多くが語られているので、今回は割愛する。
 今年のCESでフィーチャーされたのは、後者の機能、すなわちAIが人間との対話(自然言語)によって自動車の運転に関する機械的な操作を行ったり、人間に心理的な不安を与えないようなメッセージを発信したりする、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)としての機能である。
 トヨタ自動車の「Concept-愛i」に搭載されている「Yui」、ホンダのEVコミューター「NeuV(ニューヴィー)」に搭載されているソフトバンクとの提携によるAI、日産自動車によるマイクロソフトのAI「Cortana」への対応など、日本の自動車メーカーの取り組みが注目されたと言える。
 昨年のCESでフォルクスワーゲンがコンセプトカー「eBuddy」で行った人間とAIとの対話型のデモ、同じく昨年に発表されたフォードによるアマゾンのAIアシスタントサービス「Alexa(アレクサ)」対応などと考えあわせると、人間とAIとのインターフェイスとしてはボタン操作やジェスチャーではなくて、自然な会話による音声コマンドになっていくことはほぼ間違いがないだろう。
 これらは、先述したNVIDIAのBB8のデモ映像自動運転車に搭載されるAIのHMIとしての機能を随所に表している。しかもそれは遠い未来の話ではないのである。
AIがもたらす真の破壊的イノベーション
 ここで想像力を大きく働かせなければならないことは、AIが自動運転車という閉じた空間だけで人間をアシストするのではない、ということではないだろうか。
 今回のCESで、NVIDIA以外に基調講演(キーノート)に加わって注目されたもうひとつの企業に、米アンダーアーマー社がある。
 CEOのケビン・プランクは「自社のスポーツウエアやシューズにセンサーチップを搭載し、それらから得られたライフログ(お客さまの生体データ)をAIと連携させることによって、フィットネスとウエルネスの総合サービスを提供する企業へ進化する」という趣旨のプレゼンテーションを行った。
 また、今年のCESでも自動車関連以外のさまざまな企業のブースで登場頻度の高かったアマゾンの「Alexa(アレクサ)」のデモビデオには、お客さまのライフスタイルの断片が描かれる。AIは生身の人間のように「身近にいて愛着を感じる存在」として描かれていることに留意していただきたい。
参考:Introducing Echo Dot

 優れたAIはショッピング、コミュニケーション、エンタテインメント・・・たった1台で(それを1台と呼ぶのがふさわしいかどうか疑問だが)人々のライフスタイルの全てを変える。
 つまり、ある程度、AIが成熟した段階では、自動運転車のAI、ウエルネスのAI、ショッピングのAIというのが別々に存在すると考えるよりは、単一のAIが擬人化されたエージェントのような形でひとりのお客さまのライフスタイルにずっと寄り添い、人生のあらゆる局面をアシストする状態をイメージする方が自然であろう。
 別の表現で言えば、自動車での移動の中から始まる体験が、やがてライフスタイル全体を覆い尽くすようになる。
 必然的にマーケティング視点で考えた時、マーケティングに与えるインパクトも甚大だ。
 お客さま個人の行動データは、自動車での移動にまつわるデータだけにとどまらず、生活にまつわるさまざまなデータが(ウエブの閲覧履歴やSNSのデータなどセカンドパーティ、サードパーティデータといわれるものも含めて、ある特定のIT企業によって)お客さまのIDに紐づけて集約されるようになる。
 そして、DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)に蓄積されたデータをAIが統合・解析して、お客さまの嗜好性に合ったレコメンドや改善提案の形でフィードバックされるというスタイルが確立されて行く。
 例えば、自動運転車での移動をイメージすると、AIと対話することで明日の晩に飲むワインをAIのレコメンドに沿って注文したり、見逃した人気ドラマをAIに移動時間に合わせた長さに編集してもらって車内のスクリーンで視聴したり、ということも日常的になるはずだ。
 このことは直接、破壊的イノベーションの影響を受ける自動車メーカーのような製造業の企業にとっては、これまでのように「売り切り型」のビジネスモデルではなく「AI導入を前提にモノとサービスを一体化した、持続的なサービスを提供する」ビジネスモデルへの転換を迫られることを意味する。
 そして、それ以上に深刻なのは、DMPやAIを掌握した特定のIT企業がバリューチェーンの頂点に君臨し、モノをつくるメーカー企業がサプライヤーの地位に甘んじるというワーストシナリオを暗示させることである。
 裏を返せば、2年前にジョン・チェンバースが看破したように、製造業の企業はハイテク企業(IT企業)に生まれ変わらなければ生き残ることが難しい、ということだ。
 ワーストシナリオはある意味、業界(インタストリー)の垣根を超えて体現されるという点で、何年か前にPCやスマートフォンの世界で起きたゲームチェンジよりも影響ははるかに甚大であろう。
 自動運転車とAIの関係を純粋にテクノロジーの観点から眺めるだけではなく、事業経営やマーケティングの視点から、より広く、より深く洞察していくことが、過去にトラウマのある日本企業にとっては必要ではないだろうか。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49411
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/290.html

[経世済民120] 「大学生の半数は全く読書をしない」報道のカラクリ 大学生の就職内定率90%超 平成12年以降で最高 

【第201回】 2017年3月18日 降旗 学 [ノンフィクションライター]
「大学生の半数は全く読書をしない」報道のカラクリ


 若い世代の人たちが本を読まないだろうことは何となくわかっていたから驚かないつもりでいたのだが、先月、全国大学生活協同組合連合会(東京)が行なった調査で、“一日の読書時間ゼロ”と答えた大学生が五割に達したという結果には少なからず驚かされてしまった(調査対象:全国国公私立大学三〇校・回答:一万一五五人)。

 五割ということは、大学生の二人に一人である。彼らが一日に本を開く時間がゼロということは、一年間に一冊の本も読まないということなのか――?

 最近は電子書籍もコンテンツが充実してきたみたいだから、そちらで読んでいるのかしら……、とも思ったが、読書時間がゼロなのだから電子書籍も利用しないのだろう。

 この調査は二〇〇四年から始まっているが、読書すると答えた学生の平均読書時間も“二十四・四分(前年比四・四分減)”で調査開始からいちばん低い数値になった。逆に、スマートフォンの利用時間は平均“一六一・五分”と前年より五・六分も増えているのだとか。

 参考までに、二〇一四年の調査では、読書時間ゼロと答えた学生は文系三四%、理系四四%で初の四割越えとなり、昨年の調査では読書時間ゼロが四五・二%に増加、そして今年の調査でついに五割を超えた(読書平均時間は二〇一四年が二十九・九分、二〇一六年が二十八・八分と減少)。

 とどのつまり、昨今のハイティーンは、さながら“書を捨てよ、スマホをいじろう”ということになるみたいだ。

 大学生が本を読まなくなったのは、スマホのアプリがより多機能化されて充実し、本を読むより楽しくなったからか、それとも読みたいと思えるような本を出版社が提供しなくなったからかはわからないが、おそらくはそのどちらもが若者の“読書離れ”に加担してきたようにも思う。であれば、私のようなモノ書きにもその責任の一端はあるのだが。

 紙(製紙法)を発明したのは、中国(後漢)の宦官・蔡倫で、西暦一〇五年とされている。それから約一三〇〇年を経た一四四〇年前後にドイツのヨハネス・グーテンベルクが活版印刷技術を発明した。出版文化の始まりである。

 日本の和紙が無形文化遺産に登録(二〇一四年)されたとき、いつもの如くと言っていいのだろう、韓国は和紙の技術を日本に伝えたのは我々朝鮮民族だと言い始め、中国も紙を発明したのは中国だとクレームをつけたが、中国の宣紙(手漉き技術)もユネスコの無形文化遺産に登録されている。

 活版印刷技術を発明したグーテンベルクを記念する『グーテンベルク博物館』はドイツ西部の町ハインツにあるのだが、グーテンベルクが活版印刷技術の開発に着手したのはフランスにあるストラスブールという町だったそうだ。この町にはゲーテやモーツァルト、パスツールらが暮らしたこともあるが、一七世紀初め、ヨハン・カルロスという人物がこの町で創刊した『レラツィオン』という新聞が世界最古の新聞と言われている(世界新聞協会も承認)。

 また、世界新聞協会によれば、現在も発行されている新聞の中で世界最長の歴史を持つのは一六四五年創刊の『ポスト・オック・インリーケス・ティードニンガル(郵便国内新聞・スウェーデン)』になるのだそうだ。一六四五年と言えば、日本では三代将軍徳川家光のころで、剣豪と謳われた宮本武蔵が死去し、松尾芭蕉や徳川綱吉が生まれた年代でもある。

 が、世界最長発行の新聞は、残念なことに、刊行は続いているものの、十年前に紙から撤退し、インターネットサイトに移行したとのことだ。

 まるでこんにちの出来事を予見していたかのようでもあるが、およそ六〇〇年にわたり、紙に印刷された文字が情報や知識、教養の発信源となっていた時代は終わりを告げ、いまやインターネットとスマホが新聞や雑誌、書籍に取って代わる時代になった……と言ってもいいのだろう。

 出版業界で言えば、業界全体の売上高は一九九六年の二兆六五六四億円をピークに、以降はこれでもかというくらいの“右肩下がり”を続け、二〇一三年には一兆七〇〇〇億円にまで落ち込んだ。わずか十七年で、売り上げは一兆円も減ったのである。全体の、およそ四割だ。本が売れない時代なのである。

 また、一九九九年には約二万二三〇〇店があった書店の数も、二〇一三年には約一万四〇〇〇店にまで減っている。売り上げが一兆円も落ち込み、書店が一万店も減る……、これを危機と呼ばずしてなんと呼べばいいのか。

 若者の読書離れはイコール出版界の危機でもあるのだが、総合月刊誌の『新潮45』がちょうど二年前の号(二〇一五年二月号)で、出版文化の危機についての大特集を組んでいる。

 そこで数学者の藤原正彦氏(新田次郎・藤原てい夫妻の次男 ← 本好きには説明不要の経歴)は、読書は教養を育み、その“教養”とは、〈自分を変えずに、あるがままの自分を完成するための手助けみたいなもの=生まれたときから持っているその人の個性を生かしたまま、人格をだんだんと完成していくために必要なもの〉と書いている。

 そして、感涙したり、感動のあるものは全て教養だと藤原氏は言う。

〈実体験を重ねることは非常に大切です。さまざまな人間と会い、話をして、恋をしたり、裏切られたり、騙されたり、喧嘩をしたり、悲しい別れにあったり、そういった体験すべてが教養になる。それが、後々の選択や判断にあたって効いてくるのです〉

 だが、人生は短く、経験を積むにも限界がある。実体験できないことを補う作業が“読書”だと藤原氏は説く。

〈読書を通してなら、古今東西の賢人の言葉に耳を傾けることができます。あるいは、庶民の哀歓に涙することもできる。金持ちの驕り、貧しい人々の苦しみに触れることもできる。美しいものに感動することもできる。ありとあらゆる経験をなぞることができるのです〉

 この言葉が、果たしていまの若い人たちに届くだろうか。

 私が記者になったのは一九八〇年代の後半で、バブル前夜のような時期だったが、学生時代の私は年に一二〇〜一五〇冊前後の小説を読んでいた。周りを見渡せば、つるめばナンパに精を出すか平日なのに二日酔いで講義をサボるか徹マンに興じているといった不良学生ばかりだったが、友人たちはみな私と同じくらいの読書を当たり前のようにしていた。

 記者になってすぐ、担当編集者に、きみは年間どれくらいの本を読むのかと訊かれ、実際に読んでいたとおりの数字を挙げると、たったそれだけか、と呆れられたことがある。その程度の読書量でいっぱしのモノ書きになれると思うなよとか何とか。

 でも、そういう時代だった。誰もが本を読む時代だったし、大学の友人の中には私以上に本を読んでいるやつがざらにいたから、履歴書の“趣味”の欄に“読書”と書くのが恥ずかしくて、別の趣味を記入したものだった。だが、いまなら、年に一〇〇冊くらいの読書量があれば堂々と趣味欄に“読書”と書けるのだろう。

 私はいまでも電車移動の際は文庫本だ。が、車内を見渡しても、雑誌なり文庫本を広げている人を見かけるほうが珍しくなった。あるときなどは、真向かいの席に座った全員が携帯電話を見ていた、なんてこともある。出張の新幹線に乗っても、みんな携帯に熱中している。なんだか、現代人はスマホに支配されているみたいだ。

 北野武(ビートたけし)氏が、スマホ依存に警鐘を鳴らしている。

〈オイラも、実はスマホを使わないワケじゃない。カメラ代わりに写真を撮ったり、思いついたネタやアイディアをメモしたりすることもある。だけど、アレに一日中かじりついてるってのは正気じゃない。本当に大事にしなきゃいけない自分の時間を奪われてるってことに気づかなきゃいけない(中略)コミュニケーションやエンターテインメントのツールとしてスマホが役立ってるのは認めるけど、かといって「ネットで調べればいいから知識はいらない。要はネットを使いこなす頭脳だ」みたいな風潮は絶対おかしいね〉

 スマホにかじりつく時間が増えたぶん、若者が本を読まなくなったという調査を踏まえて、たけし氏は続ける。

〈「ネットがあれば何でもできる」と思っている世代は、「世の中にはネットに書かれていないもっと深い世界がある」ということに思いが至らない。それが弱点なんだよ。そのことに気づいていればいいんだけど、そうじゃない気がするね〉(『テレビじゃ言えない』小学館新書より)

 たけし氏には何度かお目にかかったことがあるのだが、同席したオフィス北野の森昌行社長は、本人が席を外したときに、たけしの読書量にはとにかく驚かされると言っていた。軍団の若手に、たとえば嗅覚に関する本を十冊買ってこいとか、コンクリートについて書かれている文献を十冊買ってこいと命じ、それらを全部読んだうえで番組の企画などを考えているのだそうだ。

 なぜ同じような本を何冊も読むのかと森氏が訊いた際、たけし氏は、同じテーマの本を十冊読めば、だいたいの仕組みを理解できるようになるからと答えたそうだ。ともすれば同じことが書かれている本を十冊読む時間をたけし氏は惜しまないのだという。

 若い人たちがスマホに熱中するのはわかるし、そのために本に触れる時間が減るのも理解できる。大学生の五割が一日に全く読書をしないという調査結果は驚きだが、結果をくまなく見ると、それにも“からくり”があることに気づく。大学生協連の調査結果を、メディアはこんなタイトルで伝えてきた。

『大学生の四割が読書時間ゼロ 大学生協連調査』(日経新聞2014年2月26日)
『大学生四五%が読書時間「ゼロ」と回答、過去最高に 大学生協連の調査』(ハフィントンポスト2016年2月28日)
『大学生の読書時間、「ゼロ分」が五割に』(朝日新聞デジタル2017年2月24日)

 日経新聞もハフィントンポストも朝日新聞も大学生の読書時間“ゼロ”ばかり見出しに使っているが、大学生協連が調査を始めた二〇〇四年当初から、読書時間ゼロと答えた大学生が三八%前後もいるのだ。それが三五%前後に下がったり戻ったりを繰り返して、二〇一四年に初めて四〇%を超えた。

 と同時に、毎日一時間以上読書をすると答えた大学生は、調査開始当初からずっと二五%前後はいるのである。一日三〇分〜一時間は読書をすると答えた大学生も同じように毎年二五%前後はいるのだ。

 だから、調査した大学生の二人に一人は全く読書をしないが、四人に一人は毎日一時間以上の読書をし、その他も一時間以下だが毎日読書をしている――、が正しい調査結果だ。なのに、どういうわけか新聞屋さんは、“四人に一人は毎日一時間以上読書している”という事実を記事にしようとしない。

 全く読書をしない大学生が五割、とショッキングな内容ばかり報じるのはメディアの悪い癖だ。

 調査に協力した大学生の中には、いまでは“死語”になっているかもしれない“活字中毒”がいるかもしれない。若者の活字離れが問題になって久しいが、この中毒だけは歓迎だ。面接で、印刷されたばかりのインクの匂いが好きです、なんて答える受験生がいたら、私が面接官だったら即座に内定を出す。残念なことに私が面接官になることはないのだが。

 出版業界では名物編集者として知られた石井昴氏(新潮社常務取締役)がさきの『新潮45』で、かつて開高健氏が提唱した“出版人マグナ・カルタ九章”を紹介している。業界では有名な大憲章で、編集者に限らず、これからの若い人にも通じることのように思えるので抜粋する。

 一、読め。
 二、耳をたてろ。
 三、両目をあけたままで眠れ。
 四、右足で一歩一歩歩きつつ、左足で跳べ。
 五、トラブルを歓迎しろ。
 六、遊べ。
 七、飲め。
 八、抱け。抱かれろ。
 九、森羅萬象に多情多恨たれ。

 社会に出ると時間に追われたり、すべき事柄が増え、否が応でも本に触れる時間は削られる。思う存分の読書が許されるのは若いときだけなのだ。その機会を逃すのはもったいない。だから、先ず、読書より始めよ、なのである。

参考記事:日経新聞2014年2月26日付、ハフィントンポスト2016年2月28日付、朝日新聞2月24日付、NEWSポストセブン2月18日新潮45:2015年2月号

(ノンフィクションライター 降旗 学)

DIAMOND,Inc. All Rights Reserved.

http://diamond.jp/articles/-/121722


 

 

大学生の就職内定率90%超 平成12年以降で最高
3月17日 17時11分
この春、卒業予定の大学生の就職内定率は、先月1日の時点で90%を超え、比較が可能な平成12年以降で最も高くなっています。
厚生労働省と、文部科学省が全国の大学生4700人余りを抽出して調査した結果、先月1日の時点の就職内定率は90.6%と、去年の同じ時期を2.8ポイント上回りました。内定率が改善するのは6年連続で、比較が可能な平成12年以降では、最も高くなっています。

地域別では、関東と近畿がいずれも91.9%と最も高く、次いで中部が91.5%、北海道・東北が89.7%、九州が86.8%、中国・四国が86%で、すべての地域で前の年を上回っています。

厚生労働省は「人手不足への懸念から企業の採用意欲が高まっている結果、内定率が上昇した」と、分析しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170317/k10010915441000.html
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/307.html

[政治・選挙・NHK222] 慰安婦問題への日本政府の対応に感激 韓国人慰安婦をドラム缶に入れて米軍に供給 日韓、歴史問題や慰安婦問題で関係修復不能?

2017.3.19 01:00
【目良浩一の米西海岸リポート(7)】
慰安婦問題への日本政府の対応に感激

 安倍首相が自信をもって外交に当たっていることの結果だ


韓国・釜山の日本総領事館前に設置された少女像=2016年12月(聯合=共同)
 ■米連邦最高裁へ

 2016年12月28日に掲載した前回の報告では、連邦裁判所からも、カリフォルニア州の裁判所からも控訴状が却下されたことをお知らせしました。今回はその後の出来事についての報告です。

 今年1月10日に私たちは米連邦最高裁判所に上告審査の要請書を提出しました。米司法制度の頂点に立つ連邦最高裁は申請のほとんどを却下します。米国内での判例間の整合性を保つための案件か、国家的に重要な案件しか採択しない方針なので、申請案件全体の1%程度しか審議しません。

 採択される可能性が極めて低い状況で、私たちは弁護士費用を支払って申請する価値があるかどうかについて、かなりの議論をしました。その結果、やはり申請しようと決意した要因は、グレンデール市が設置した慰安婦像の撤去を求めているこの裁判に対してかなり多数の方々が終始変わらずに支援をしてくれていること、そして、若い気鋭の弁護士であれば弁護士費用を抑えることができることがわかったからでした。

 カリフォルニア州の最高裁判所にも並行して上告を準備することも検討しましたが、時間的に連邦裁判所への申請書作成の時期と重なることと、費用もかさむことなどを考慮した結果、連邦最高裁への申請書に専念するために断念しました。

 ■日本政府が意見書提出

 

 1月10日に提出した米最高裁への申請書は、提出した弁護士にとっても初めての経験であったため、登録審査に時間がかかり、23日になってようやく正式に受理されました。それから30日間は第三者が意見書(アミカス)を提出できる期間とされています。

 2月9日になって、日本からの情報で日本政府が意見書を提出する意図があることを知りました。10日には、当方の弁護士が日本政府が意見書を提出することの許可を被告であるグレンデール市に求め、市から許可を得ました。そして30日の提出期間が終わる直前の2月22日、日本政府を代表してワシントンDCの米弁護士事務所が最高裁に意見書を提出しました。

 私たちは以前から日本政府に書面での支援を要請していました。「一枚の手紙でも結構です。そこで政府の立場を明らかにしてください」とお願いしてきました。この要請はロサンゼルス総領事館にも、外務省にも、日本の政治家にも伝えてきました。色々な理由で断られていましたが、今回は実現したのは、青天の霹靂(へきれき)であり、感極まるものでありました。喜ばしい方針の転換です。また、ロサンゼルス総領事館が意見書の提出に積極的であったことに意を強くしました。

 日本政府が出した意見書を読んでさらに感激しました。指摘していることがすべて的確なのです。まず、連邦政府が外交については独占権を持っていることを確認し、連邦の下級裁判所が外交に関する意見表明を例外的にグレンデール市に許したことを過誤であると指摘しました。また、日本政府の慰安婦問題に対する態度を明瞭に述べています。特に日韓関係は微妙な状態にあることにも言及し、最高裁に上告申請の採択を提言しているのです。

 2月22日には、グレンデール市からの反論書も提出されました。その内容は肝心の憲法議論からそれて、私たちが州の最高裁判所に上告申請を出さなかったので、裁判は終了したとして手続き論でもって抵抗しています。これに対して私たちは3月10日に再反論書を提出しました。

 ■アトランタの慰安婦像

 最高裁への対応で忙殺されていた中、2月9日にジョージア州アトランタの「公民権人権センター」が4月に慰安婦像を建立するという情報が流れてきました。

 すでに同センターは、韓国系の団体と合意書を交わしているとのことでしたが、私たちはすぐにアトランタに住む日本人の仲間に連絡しました。彼らはすぐにアトランタ総領事館に連絡して相談しました。

 総領事館もジョージア州議会議員、アトランタ市議会議員などとコンタクトを取りました。特に担当領事はセンターに赴き、センターの事務長を始め多くの人に接触して慰安婦の実態を説明し、慰安婦像の設置が実は反日で日米離反だけを目的とした行為であることを丁寧に説明したそうです。真偽はわかりませんが、慰安婦像の設置によって、ジョージア州に進出している日本企業が大挙撤退するという情報まで流れたほどでした。

 そして、3月2日に朗報が入ってきました。センターが韓国系の団体との合意を翻して、慰安婦像の設置を取り消すと発表したのです。3週間で目的達成です。しかし、楽観は禁物です。韓国系の団体はほかの場所を探すからです。

 この快挙には学ぶべきレッスンがいくつかあります。当地の日本人有志が一体となって動いたことと、総領事館が積極的に広報活動を行ったことです。特に領事がジョージア州とアトランタ市の議員に連絡したことと、センター側に慰安婦問題に関する日本政府の立場を説明したことは特筆されるべきでしょう。

 ■変わった日本政府の態度 

 一連の出来事からわかるように、慰安婦問題について日本政府の態度は変化してきています。以前は、国際問題にしてはいけないという理由で慰安婦問題への介入を拒否してきました。それが昨年末に韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦像を建てられたことに抗議して、駐韓日本大使らを本国に帰国させるという明確な措置を取ったことを契機として、政府が断固とした態度をとるようになったことは大変喜ばしいことです。2015年末の日韓合意を契機として、そして今年2月の安倍晋三首相とトランプ米大統領による首脳会談会談を通して、安倍首相が自信をもって外交に当たってきていることの結果でしょう。

 ただ、慰安婦問題についてはまだ課題山積です。グレンデール市の像の問題も解決していないし、サンフランシスコにも慰安婦像が出現することになっています。さらにカリフォルニア州の歴史教科書には今秋、日本人を傷つける、誤った記述が追加される予定になっています。アトランタも予断を許しません。私たち民間人も引き続き戦っていく決意ですが、米国の日本大使館や総領事館の一層の活躍が期待されます。

■目良浩一(めら・こういち) 1933年、日本統治下の朝鮮京城府(現ソウル市)生まれ。東京大学工学部卒、同大学院修了、米ハーバード大学で博士号取得。ハーバード大学助教授、筑波大学教授、南カリフォルニア大学教授などを歴任。米国在住。「歴史の真実を求める世界連合会」(GAHT)代表。米国慰安婦像撤去訴訟の原告の1人。共著に『マッカーサーの呪いから目覚めよ日本人!』(桜の花出版)。米国では「COMFORT WOMEN NOT ”SEX SLAVES”(慰安婦は性奴隷にあらず)」を出版している。
http://www.sankei.com/premium/news/170311/prm1703110041-n1.html


 
2017.03.17
連載
渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」
韓国、韓国人慰安婦をドラム缶に入れて米軍らに供給、政府が米軍向けに売春管理
文=渡邉哲也/経済評論家
【この記事のキーワード】アメリカ, 売春, 慰安婦, 日本, 朴槿恵, 米軍, 韓国


韓国・ソウルの日本大使館前に設置された少女像(写真:Lee Jae-Won/アフロ)
 韓国では前大統領の朴槿恵(パク・クネ)氏の罷免が決定し、大統領選挙が行われることとなったが、これによってさらに混乱が増す可能性がある。

 保守系候補として期待されていた黄教安(ファン・ギョアン)大統領代行兼首相が不出馬を表明したことで、次期大統領の最有力候補は最大野党・共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン)氏となった。
 文氏は北朝鮮や中国を重視する人物であり、日米に対しては高高度防衛ミサイル(THAAD)配備や従軍慰安婦問題の日韓合意を破棄する姿勢だ。そのため、文大統領が誕生した暁には、韓国と日米の関係は最悪の状況を迎える可能性もある。
 慰安婦問題については、本連載の以前の記事で言及しているが、もうひとつ大事なポイントをお伝えしたい。2月、外務省はこれまで「少女像」と呼ばれていた慰安婦をモチーフにした銅像について、「慰安婦像」に呼称を統一すると発表したが、筆者はこれを「第五種補給品像」と呼ぶことを提唱したい。
「第五種補給品」とは慰安婦のことで、朝鮮戦争当時、韓国軍は女性たちをドラム缶や鉄製の桶に入れて韓国軍、米軍、国連軍に慰安婦として「供給」していた。これは韓国軍の正式文書の中に「○○基地に第五種補給品を20缶供給」などというかたちで出てくる記述であり、韓国軍が慰安婦に対して使用していた正式名称である。
 慰安婦について語られるとき、よく日本統治時代に「女性たちがジープに詰め込まれて運ばれた」「旧日本軍によって拉致された」などといわれるが、高級品であるジープは当時ほとんど走っていなかった上、韓国軍が陣頭指揮をとって行っていたというのが事実なのである。さらに、前述したようなやり方は人権侵害どころでは済まされない話ではないだろうか。
 韓国では、日本総領事館前に慰安婦像を設置して慰安婦問題を蒸し返す動きがあるが、慰安婦像でも少女像でもなく、今後は第五種補給品像と呼ぶべきだろう。そして、そういった動きが広まれば、韓国にとっては非常に都合の悪い事態になると同時に日本にとっては交渉カードにもなり得る。
韓国の慰安婦像は慰安婦がモデルではない?


 また、そもそも慰安婦像とは慰安婦の姿を銅像にしたものではない。もともとは米軍車両に轢き殺された韓国の少女がモデルといわれており、本来は米軍を糾弾する目的でつくられたものだ。しかし、それがいつの間にか慰安婦の像として日本を責めるために使われているのが現実である。
次のページ 韓国は政府が米軍向け慰安婦の管理を行っていた

像はアメリカのカリフォルニア洲グレンデール市にも設置され、同洲サンフランシスコ市やジョージア州アトランタ市でも設置の動きがあるとされているが、もともと米軍を批判するという性質がある以上、今後はアメリカでも韓国に対して強い反発が生まれる可能性もある。
 また、慰安所は日本統治終了後も1980年代まで韓国政府の管理下で設置されており、米軍を相手に多くの韓国人が売春を行っていた。そうした事情に鑑みる限り、慰安婦像をめぐる騒動は日本だけの問題ではないのである。また、日本統治時代の慰安婦は高齢化していてわずかしか残っていないが、米軍向けの慰安婦は比較的若いため、多くが存命中である。そのため、実は慰安婦問題は日本よりアメリカのほうが深刻化する可能性もあるのだ。
 こうした背景が周知されれば、今後は在韓米軍の慰安婦問題という新たな問題が噴出する可能性もあるだろう。
(文=渡邉哲也/経済評論家)
●「渡邉哲也公式サイト」
●公式ブログ「渡邉哲也(旧代表戸締役)の妄言」
●公式メールマガジン「渡邉哲也の今世界で何が起きているのか」

ニュースサイトで読む: http://biz-journal.jp/2017/03/post_18369_2.html
http://biz-journal.jp/2017/03/post_18369_2.html

 


元慰安婦への支援事業 今後は韓国設立の財団が実施へ
3月19日 20時19分
日本と韓国の慰安婦問題をめぐる合意を受けて、韓国の元慰安婦に医療や福祉分野での支援を行ってきた日本政府の事業が、今年度で終了することになり、今後は韓国政府が設立した財団が支援事業を行うことになります。
日本政府は、1995年にアジア女性基金を発足させて、韓国や台湾などの元慰安婦に償い金を支給し、2007年に基金が解散したあとは、フォローアップ事業として、元慰安婦を対象に毎年1000万円前後の規模で医療や福祉分野での支援を行ってきました。

慰安婦問題をめぐっては、おととし12月に日韓両政府が合意し、日本政府が拠出した10億円をもとに韓国政府が設立した財団が、今後の元慰安婦への支援を行うことになったため、日本政府は、韓国でのフォローアップ事業を今年度で終了することを決めました。韓国以外の台湾などでは、来年度もフォローアップ事業は続けられます。

日本政府から委託を受けて韓国でのフォローアップ事業を行ってきたNPO法人の臼杵敬子代表理事は19日、ソウル市内で記者会見し、「長年、元慰安婦に寄り添いながら、それぞれの要望に応えることができた」と述べ、事業の成果を強調しました。

今後、韓国の財団では、フォローアップ事業での成果を踏まえながら、元慰安婦への支援の内容を検討していくことにしています。
ただ、韓国では、両政府の合意に根強い反対があるほか、ことし5月に行われる大統領選挙の有力候補たちが日本との再交渉を主張していて、財団の事業が予定どおり進められるのか懸念する声も出ています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170319/k10010917561000.html


 

 

日韓、歴史問題や慰安婦問題で関係の修復不能? 過度な反日に不満を述べる韓国人も


2017年03月19日 22時31分 NEWSポストセブン
記事まとめ
慰安婦支援団体や過激な政治団体の目に余る行為を苦々しく思っている人は多いという
韓国のある男性は「慰安婦像を設置する行為が国際条約違反なのは明白」と話す
別の女性は「幼稚な反日をやり過ぎた結果、日本に嫌韓が根付いてしまった」と語った
一部韓国国民、慰安婦支援団体などの過度な行為に不満
2017年03月19日 16時00分 NEWSポストセブン
一部韓国国民、慰安婦支援団体などの過度な行為に不満
竹島に上陸した韓国の女子学生 Yonhap/AFLO
 日韓両国の関係はもはや修復不能なほどこじれている。歴史問題も解決の糸口が見えたかと思えば、すぐに「反日」の名のもとに大規模な抗議行動が行われ、元の木阿弥となるの繰り返しだ。韓国の国民に、過度な「反日」について意見を求めた。

 慰安婦支援団体や過激な政治団体の目に余る行為を苦々しく思っている人は多い。

「大使館や領事館前に慰安婦像を設置する行為が国際条約違反なのは明白なのに、警察や行政も『反日無罪』で手を出せないのが情けない」(50代男性・会社役員)

「日本国旗を燃やしたり、(日本の国鳥である)キジの首を刎ねたり、調子に乗って幼稚な反日をやり過ぎた結果、日本に嫌韓が根付いてしまった」(40代女性・主婦)

「経済的に困窮する高齢者がわずかなカネをもらい、誰も賛同しない反日デモに動員されるケースがある。いったい何のためのデモなのか」(70代男性・無職)

※SAPIO2017年4月号

NEWSポストセブン
関連記事(外部サイト)
『SAPIO』人気連載・業田良家4コマ「慰安婦観音像」
毎週行われる韓国の慰安婦デモ 反日の組織力と執拗さすごい
韓国の反日スレ「日本に爆弾テロする?」「お前通報シマス」
https://news.nifty.com/article/domestic/society/12180-499886/

http://www.asyura2.com/17/senkyo222/msg/600.html

[国際18] OPEC加盟を望まないロシア ロシア経済2016年総決算  クリミアがロシアに再統合されて3年 正教会と倒された皇帝
OPEC加盟を望まないロシア
2017年3月20日 マリア・クトゥーゾワ
 石油市場での外交努力が初めて実を結び、原油価格も上昇したが、アレクサンドル・ノヴァク・エネルギー相はロシアの「石油輸出国機構(OPEC)」加盟を完全否定している。
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ロシアは石油減産になぜ合意
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石油
CERAWeek in Houston
(左から右へ)サウジアラビアのエネルギー・産業・鉱物大臣のハーリド・アブドゥルアズィーズ・アル=ファーリハ、ロシア連邦エネルギー相のアレクサンドル・ノヴァク、メキシコ・エネルギー長官のアルド・フロレス、石油輸出国機構(OPEC)事務局長のモハメド・バルキンド(敬称略)。エネルギー業界の会議「セラウィーク(CERAWeek)」にて。7日3月2017 =ロイター通信
 ロシアはOPEC加盟を検討していないと、ノヴァク・エネルギー相は今月初めにアメリカ・テキサス州のヒューストンで開催された「セラウィーク(CERAWeek)」で話した。「ロシアは現在、OPEC加盟案を検討していないが、石油輸出国との相互活動で協力の必要性と有効性が示された」。ノヴァク・エネルギー相はこれまで、市場へのOPECの影響力が限られていると、何度も話していた。

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 とはいえ、昨年はロシアと他の産油国の間で協議を調整することが、ロシアの外交活動の重要な課題になっていた。OPEC加盟国は昨年11月30日、2017年初めから日量120万バレルを減産することを決定。ロシアを含むOPECに加盟していない11ヶ国は、あわせて日量55万8000バレルを減産する義務を負った。うちロシアの分は日量30万バレルである。
 「OPECとロシアは互いを信用していない。我々は競合であり、パートナーではない」と、「ロイター」通信石油市場編集者のグレプ・ゴロジャンキン氏は話す。OPEC内部の異なる目標と考え方により、ロシアにとって合意が難しいという。「サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、イラン、カタールは巨額の債務を抱えておらず、市場でのシェア拡大路線をOPECで取っている。一方で、貧しい加盟国(アンゴラ、ナイジェリア、ベネズエラ、イラク)は、何よりもうまくやりくりするために、原油価格の上昇に関心を持っている」とゴロジャンキン氏。

OPECにはシェール革命に対する答えなし

 OPECは今後、減産に積極的にはならないだろう。というのも、減産によって、アメリカのシェールオイルに対する投資が増えてしまったからだ。OPEC加盟国は現在、シェールオイルの増産を注視しており、今年5月末に減産合意を延長するかどうかを、成り行きを見て決める。

 アメリカの「エネルギー情報局(EIA)」は、同国が近々日量1000万バレルまで増産すると予測している(現在より10%多い)。これは1970年の最大量を超える。OPECが今年初めに原油価格上昇に期待して減産し、手放したシェアを、シェールオイルの生産者が奪っている。

 イギリスの大手石油会社「BP」ロシア・CIS部のチーフエコノミストであるウラジーミル・ドレベンツォフ氏によれば、アメリカでシェールオイルが枯渇するぐらいしか、OPECには良い答えがないという。「1バレルあたり120〜140ドルまで上昇しなければ、アメリカのシェールオイルについてあと何年も聞くことはなかったであろう。時すでに遅し。革命は起こり、"ジンはランプから放たれた"。蒸気がランプから出ている間は、元に戻すことはほぼ不可能」とドレベンツォフ氏。

不安定な加盟国

もっと読む:OPEC減産合意とロシアの役割
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 アメリカの「シティ」先物のアナリスト、ティム・エバンス氏によると、石油市場は現在、あらゆるネガティブなニュースで崩れ得るカードのハウスのように見えるという。OPECの加盟国イランは、市場安定化の合意によれば、日量380万バレルまで生産できるが、輸出を増やしている。経済制裁を受けていた際に備蓄していた石油を積極的に販売し、備蓄量を2960万バレルから今年初めまでに1640万バレルに減らしている。

 イラクも増産している。特に、ハイダル・アル・アバディ首相は、クルディスタンでの増産について話していた。クルド人の管理する油田からのトルコへの輸出量は昨年12月、日量58万7000バレルに達した。これは割り当てられたクォータの日量25万バレルの2倍以上である。また、アメリカの「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙は、イランが今年1月にバスラ沖の石油ターミナルを経由して、7%増となる日量353万バレルまで輸出しようとしていたことを伝えている。インドと中国にも追加的な量が輸出される予定。

 もう一つの不安定要因がある。それは今年、産油量を2倍に増やすことを計画しているリビア。国内最大のシャララ油田で増産し、ザウィヤ石油ターミナルの輸出活動を再開している。1月初めには、生産量が日量70万バレルに達した(12月の平均は日量63万バレル)。

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正教会と倒された皇帝
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http://jp.rbth.com/business/2017/03/20/721951



ロシア経済2016年総決算
2016年12月26日 アレクセイ・ロッサン、ロシアNOW
 2016年度の経済実績が発表されるのは、主な統計的指標がそろう2017年2月である。その前に、ロシア経済の主なできごとを、ロシアNOWが集めた。
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ロシア経済, 石油, ロスネフチ
石油の減産に合意

シベリアのコガリム市=ロイター通信
シベリアのコガリム市=ロイター通信

 ロシア政府は数年ぶりに、日量30万バレルの減産に合意した。これは「石油輸出国機構(OPEC)」加盟国と非加盟国が2016年12月上旬に閣僚会合を開いた際、合意するための条件になった。会合では、減産合意を各国が履行しているかを監視する委員会の設置も決まった。

 ロシアには国の産油モノポリーがあるわけではないが、このような動きをとった。石油を採掘しているのは複数の企業で、その一部の経営に国がかかわっているのみである。それでも、ロシアの大手石油会社は減産に合意した。このようにして、原油価格の上昇に期待している。

世界の金融市場に復帰

モスクワ証券取引所=セルゲイ・クズネツォフ/ロシア通信
モスクワ証券取引所=セルゲイ・クズネツォフ/ロシア通信

 ロシア連邦財務省は30億ドル(約3510億円)を公開市場で起債した。最初に17億5000万ドル(約2047億5000万ドル)を5月に、次に残りの12億5000万ドル(約1462億5000万円)を9月に起債した。この時、国はあえてロシア企業ではなく、外国人に売却した。ロシアの購入者はいなかった。

 注文台帳の総額は毎回70億ドル(約8190億円)を超え、イギリス、アメリカ、アジア諸国の投資家が購入者になっていた。対ロシア経済制裁があっても、外国人は以前と変わらず、ロシアの国債に関心を持っていると、財務省はは考えている。

 これは2013年秋以来の国際市場への参入である。この時、ロシアは得た資金を、欧州連合(EU)とアメリカの経済制裁の対象となっている企業や個人の支援に使うことを許されなかった。

5年ぶりのデフレ

スーパーマーケット=EPA
スーパーマーケット=EPA

 ロシアでは8月初め、わずかながらではあるが、5年ぶりに消費者物価が下落した。8月第1週は0.1%下落した。2011年9月以来のデフレである。ちなみに、2015年のインフレは12.9%であった。

 ロシア経済にとって、インフレ圧力が低減することは良いニュースである。これはロシア連邦中央銀行が示した2017年にインフレ4%という目標に、より早く達することができるということである。中央銀行は2014年末に、ルーブルの為替レートを自由化し、対ユーロ、対ドルで50%の下落を引き起こした。この時に設定した目標である。

ビジネス環境格付けで11ポイント上昇

 世界銀行と国際金融公社(IFC)が10月に発表した、世界のビジネス環境を格付けする「ビジネス環境の現状(Doing Business)」の2017年版で、ロシアは51位から40位へと、前年版より11ポイント浮上することができた。これは国のビジネス環境の質、経済の官僚制度の障壁の規模によるものである。


もっと読む:ロシアは金融制裁の撤廃を当てにせず
 ロシアではビジネスにかかる官僚制度の圧力が1年で大幅に低減した、と評価されている。実施された改革件数で、ロシアは上位5位に入っている。ロシアの主な優位性は、エネルギー網へのアクセス手順の簡易さ、財産登録の簡易さ、契約履行の確保のままである。
 この格付けは、ロシア政府にとって、国のビジネス環境の質を示す重要経営指標(KPI)になっている。

ロスネフチ株を外国人に売却

「ロスネフチ」のイーゴリ・セーチン社長=タス通信
「ロスネフチ」のイーゴリ・セーチン社長=タス通信

 ロシア政府は財政赤字を減らすため、国内最大手の石油会社「ロスネフチ」の株式19.5%を売りに出した。ロスネフチの株式を取得したのは、スイスの資源商社「グレンコア」およびカタールの投資ファンド「カタール投資庁」。総取引額は100億ユーロ(約1兆2300億円)を超える。

 市場関係者にとって、これは予想外だった。ロスネフチの株式を取得するのは、中国とインドの投資家だと考えられていたためだ。中国とインドの投資家はロシアネフチの経営参加を求めていた。ロスネフチ自体は、自社株買い戻しを考えていた。

 取引後も、ロスネフチへのロシアの出資比率は50%+3株。イギリスの石油会社「BP」はすでにロスネフチに19.5%出資しており、カタール投資庁とグレンコアはそれぞれ9.75%の出資となる。残りは上場株。

経済発展相を拘束

アレクセイ・ウリュカエフ氏=マクシム・ブリノフ/ロシア通信
アレクセイ・ウリュカエフ氏=マクシム・ブリノフ/ロシア通信

 アレクセイ・ウリュカエフ経済発展相は11月、自宅軟禁の処分を受けた。捜査当局によれば、ウリュカエフ氏はロスネフチに対して200万ドル(約2億1600万円)の賄賂を要求し、拒めばロスネフチが石油会社「バシネフチ」の民営化に参加できなくなると脅したという。ウリュカエフ氏は、この容疑を否定している。

 ウリュカエフ氏は以前から、ロシアで最も権威のある経済学者の一人と考えられていた。1990年代初め、経済改革の提唱者エゴル・ガイダル氏とともに活動し、その後ガイダル氏の創設した移行期経済研究所で長年働いた。

 ウリュカエフ氏が自宅軟

 

禁処分になった後、新経済発展大臣には、それまで財務次官を務めていたマクシム・オレシキン氏が任命された。オレシキン氏は、新しいポストでの経済成長を約束した。

もっと読む:軍事費を大幅にカット>>>



もっと読む:ロシアの経済危機の10の特徴
コンテンツの著作権保有者は、ロシア政府発行紙「ロシア新聞」(ロシースカヤ・ガゼータ)です。
正教会と倒された皇帝
2017年3月19日 アレクセイ・チモフェイチェフ、ロシアNOW
 ロシア革命から100年。ロシア正教会は、当時のできごとの記憶を守ることの大切さを強調している。主に、革命の暴力に対する非難が中心で、皇帝の退位につながった2月革命に対する正教会自体の立場など、革命の時代の他のできごとにはあまり触れていない。
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ロシア革命, ロシア革命100年, ロシア史
Emperor Nicholas II
ニコライ2世、 1913年= ロシア通信
 ロシア正教会の関係者の一人は最近、1917年革命を「偉大な」革命と考えることが教会にとって不可能であると話した。その後、ロシア正教会のキリル総主教は、ロシア革命を「大罪」と呼び、一連のできごとの評価を正した。

 1917年10月にボリシェヴィキが政権を奪った後で始まった内戦、レーニン主義者による好戦的な反権威主義などの革命の影響をほのめかしている。これにより、大勢の聖職者の命が犠牲となり、教会が破壊されたという。

 ところで、革命を始めたのはボリシェヴィキではない。皇帝ニコライ2世の退位を招いたのは、当時の首都ペトログラード(現サンクトペテルブルク)で2月末に起きた民衆の蜂起である。10月革命の前には、数ヶ月間の革命的騒乱、また政権の度重なる危機があった。

 キリル総主教は自身の発言の中で、皇帝の退位にのみ言及した。この時期のロシア正教会については細かいことは触れなかった――正教会が君主制を守るべく声を上げるのをやめたのが、まさしく2月革命の際であるにもかかわらず。その後、正教会は臨時政府を支持した。だが、臨時政府には国を危機から救う能力が致命的になく、その結果としてボリシェヴィキが政権に就いたとして、キリル総主教は臨時政府を正当にも批判した。

「いたしかたなかった」

 正教会は当時の条件で、あのように動くしかなかったという意見がある。首都ペトログラード(現サンクトペテルブルク)の革命の勝利には勢いがあった。2月26日には状況を政府がコントロールしていたように見えたが、翌日には蜂起した側の手中に収まっていた。

 また、正教会には正式に守る人もいなかった。皇帝ニコライ2世は3月2日には退位し、弟のミハイル大公にゆずった。弟は、憲法制定会議で承認された後にのみ皇位につくと声明した。


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 正教会は、ピョートル大帝の改革の後、独立した機関ではなく、省のような、国家体制の一部となりながら、他の国家機関と同様の活動をしていたと、モスクワ国立大学の歴史学者フョードル・ガイダ氏はロシアNOWに話す。革命が始まった当初は、一連のできごとにそれほど注目していなかったが、革命が予想外の勝利を遂げると、宗務院は他の省庁と同様、新しい政権を承認した。「宗務院が活動の基本としていた論理は、国家の崩壊と内戦を許さないこと。これには臨時政府を承認するという一つの手段しかなかった」とガイダ氏。これができなければ、専制打倒後に政権に就いた人々からの「政治的打撃」に教会がさらされたであろう。宗務院はこの条件で、他の行動を取れなかったと、ガイダ氏は考える。

臨時政府の長期持続を願い

 しかし、宗務院のこのような対応に批判的な人々は、宗務院がペトログラードで起こっていることにほとんど無関心だったし、あえて皇帝を支持しなかったと主張している。ニコライ・ジェヴァホフ宗務院長官代理は「回顧録」の中で、宗務院の長である府主教に2月26日、信徒団に対して「服従しなかった場合に教会懲罰を科すという教会のわかりやすい警告」を行うよう提案した。だが宗務院は警告を行わなかった。

 宗務院の専制の保護に対する消極さだけでなく、宗務院による新政権の早期承認への批判もある。皇帝が退位した3月2日には臨時政府との関係を結んでいる。その後、宗務院は新政府に任命された次長検事を承認し、革命後の最初の会議(3月4日)で、正教会の「新しい時代」の始まりについての喜びを表明した。その後、ジェヴァホフ宗務院長官代理によれば、新しい宗務院長官は正教会の幹部の一人とともに、象徴的な皇帝の椅子を会議場から運び出したという。この運び出しには、哀れなスピーチが伴った。

 宗務院は3月9日、臨時政府を信頼するよう呼びかけた。まもなくして、特別教会委員会は祈りの書にある皇帝に関する記述を削除し、長期持続を願う「神の祝福を受けた臨時政府」に関する祈りに変えた。

ツァーリと正教会

 ロシア国立人文大学の歴史学者ミハイル・バプキン氏の観察によれば、教会は王権との1000年にわたる「同盟」を意図的にやめている。国家の最高権力を握るのは皇帝か最高聖職者かという何世紀もの論争を有利に解決できると見たためだ。


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 このような考察から、「ロシアの君主制の打倒において聖職者が主要な役割の一つを果たした」という結論に達したという。正教会の幹部は当時の「2月以降の聖職者上層部の政治的立場」について、現代の正教会の国家機構および伝統主義に対する立場とあまり合っていないとして、沈黙している。
 ロシア正教会広報課のヴァフタンク・キプシゼ課長代理は、ロシアNOWの取材に対し、多くの点でガイダ氏の論拠を用いた。当時、ロシア帝国で正教会が置かれていた世俗的機関の一つという事実上の状態に言及しながら、正教会が独立して行動することは不可能だったと強調した。

 教会は君主制との戦いで革命家の側に積極的についたわけではないとし、正教会の立場の主な原則を説明した。「教会は国民の間の対立を深めたり、兄弟殺しとなるような分離、戦争、革命を悪化させたりするようなことを支持したことはなかった」とキプシゼ課長代理。また、「大罪」という革命についてのキリル総主教の言葉は、専制の打倒から始まる当時のすべての革命のできごと
http://jp.rbth.com/society/2017/03/19/720551


クリミアがロシアに再統合されて3年
2017年3月18日 エヴゲーニイ・レフコーヴィチ、ロシアNOW
 ソ連の一部、ウクライナの一部となり、2014年3月にロシアに再統合されたクリミア半島。当地の生活は変わったのだろうか。ロシアNOWの記者が取材を行った。
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ヤルタ=セルゲイ・メリホフ
ヤルタ=セルゲイ・メリホフ

なぜか幸せ

 私はシンフェロポリに到着した。人口33万6460人、クリミア第2の都市である。

 ここはリゾート地という雰囲気ではない。中心部には、ソ連時代に建てられた古く色あせた建物や、質屋、シャワルマ(ドネルケバブ)がふるまわれるカフェがたくさんある。

クリミア=セルゲイ・メリホフ
クリミア=セルゲイ・メリホフ

 朝のコーヒーでも飲もうと、このようなカフェの一軒に入る。あるテーブルには、4人の女性のグループがいる。そこに加えてもらい、若い頃にシンフェロポリに来たことがあるが、ロシアに編入された後ではなく、ソ連から分離した後と何ら変わっていないと私は話す。

 「私たちを見てちょうだい!私たちは幸せなの!故郷に戻ったの、またロシアと一緒よ!」とグループの1人が話す。

 「このおばかさんの言うことを聞いちゃダメ。何も変わってない。物価だけがモスクワ並みになった」と友だちが話をさえぎる。

 クリミアではこんなやりとりが普通だ。ロシアに編入された後、良くなったか、悪くなったか、という話題になると、あまり具体的な点は出てこない。すべて個人の感覚の話だ。そして怒りが伴うことが多い。前のウクライナ政府に対する怒りや、今のロシア政府に対する怒り。

クリミア=セルゲイ・メリホフ
クリミア=セルゲイ・メリホフ

法律が厳しくなった

 カフェの隣の建物は、ロシア連邦内務省クリミア交通垂直管理局。モスクワの責任者の許可と正式な書類がなければ、取材をしても答えてはもらえないだろうと思いながら、とりあえず入ってみると、対応が気さくで驚く。

ヤルタ=セルゲイ・メリホフ
ヤルタ=セルゲイ・メリホフ

 捜査部の職員エレーナさんは、記者証の提示も求めず、こう話す。「仕事がとても増えてね。ロシアの法律はウクライナの法律と全然違う。特に行政法違反の部分。はるかに厳しい」

 治安当局者が増え、厳しいロシアの法律に移ったため、クリミアで編入の喜びが冷めたところはある。ウクライナ政府を多くの人が嫌っているが、クリミアを編入したロシア政府の魅力も過去のものとなった。

ヤルタ=セルゲイ・メリホフ
ヤルタ=セルゲイ・メリホフ

 特にがっかりしているのが、キオスクの店主である。新政府はクリミアのほぼ全土でキオスクを撤去した。

 キーロフ大通りに残っている少数のキオスクの一つの経営者は、こう話す。「以前はギャングと取り決めをしていたが、今はモスクワのギャング、新しい警察、役人と取り決めをしている。やたらと高値になった。これが変わったところさ」

「ここで戦争がなくてよかった」

 私はシンフェロポリの有名なレストラン「クリミアの庭」の経営者リファト・ベキロフさんと会うため、郊外に向かう。このレストランは、主にクリミア・タタール人の集う場であり、ベキロフさん自身もクリミア・タタール人。ベキロフさんは私に夕食をふるまいながら、ロシアへの編入を当初警戒していたものの、今は喜んでいると話す。ロシアでの事業にも満足している。

リファト・ベキロフさん(右側)=Legion Media
リファト・ベキロフさん(右側)=Legion Media

 「もちろん、最初はどの事業者にとっても大変だった。登録のしなおし、新しい書類、別の法律...。だが仕事は楽になった。以前は年に10回ぐらい税務署が来て調べていた。今は行政の圧力が減った」

 クリミア・タタール人の多くが自分たちの状態に不満を持っているという噂があるのに、話が違うのではないかとたずねてみると、ベキロフさんは哲学的に答えた。

 「どんな政府になっても不満を持つ人はいるもの。クリミア・タタール人はいろいろ耐えてきたせいで、どんな国家機関にも不信感を持つようになっているからなおさら。私の祖父はここで飴工場を所有していたが、1937年に没収され、祖母と一緒に中央アジアに追放された。今はこのような問題はない。納税して、ロシアの法律を破らず、イスラム主義的な過激なプロパガンダを行わなければ、いかなる迫害も受けない」

 ベキロフさんは別れ際、クリミアのいたるところで聞くフレーズを言った。このフレーズは、新しい秩序に不満を持っている人からさえ聞こえてくる。「ここで戦争がなくてよかった」と。

「幸福の街」

 次に行った先はヤルタ。クリミアの主要なリゾートの一つで、市境に入ると、「幸福の街」という大きな文字が見える。だが汚れやゴミはシンフェロポリよりちょっと少ないぐらいで、道路はデコボコ、観光サービスは以前と変わらず悪い。

ヤルタ=セルゲイ・メリホフ
ヤルタ=セルゲイ・メリホフ

 ロシアへの編入に対する賛否は、人々の活動の種類によってはっきりとわかれている。たとえば、タクシーの運転手は失望と怒りを隠さない。物価上昇により、稼ぎが急減したのだという。

 ウラジーミルさんはこう話す。「旅行者は減っていないが、支払い能力はゼロに近くなっている。ロシアは大勢の”享受者”や”予算受給者”をここに送ってくる。つまり、何も買わないたかり屋。我々の生活はここに直接的に左右される」

「ウクライナに20年軽んじられてた」

 ロシアが数十億ルーブル(1ルーブルは約2円)の投資を行うことのできた分野で働いている人の意見は、まったく異なる。ソ連の標準的なサナトリウムと大差ない元ピオネール・キャンプ「アルテク」は、今や世界レベルの国際児童センターとして輝きを放っている。教育活動部の副部長であるエリナ・ルツカヤさんは、5万ルーブル(約10万円)の月給を受け取り、喜んでいる。

散歩しているこどもたち。国際児童センター「アルテク」=セルゲイ・マグラコフ/ロシア通信
散歩しているこどもたち。国際児童センター「アルテク」=セルゲイ・マグラコフ/ロシア通信

 「プーチンはえらいわ!私のキスを送って!ウクライナが20年かけてもできなかったことを、3年でやり遂げた。ウクライナは私たちを軽んじていた」

 ヤルタ出身で、市役所勤続15年以上になる、2014年の住民投票の主催者の一人、イリーナ・ベロジョロワさんは、ロシア政府に対する不満の質問にいらだつ。

 「不満を持っている人は、働きたくない人!でなければ、執務室まわりをして、賄賂で好き勝手できてた人。ロシアに入って、秩序がかなり高まった」

ヤルタっ子であるイリーナ・ベロジョロワさん=セルゲイ・メリホフ
ヤルタっ子であるイリーナ・ベロジョロワさん=セルゲイ・メリホフ

 住民投票については、興奮気味にこう話す。

 「自分の人生で、街があんなに熱狂してたのは初めて。嬉しくて女友だちと泣いた。ウクライナ時代にロシアのパスポートを手に取っては、『いつ私もこれを持てるようになるのか』って思ってた。ずっと、あらゆるところで、自分たちをロシア人だと感じてた。他の法律にしたがって暮らし、自分の言語ではない言語で書類を作成してた」

ロシア国籍を取らない人も

 私の訪問の最後の拠点セヴァストポリは、クリミアの他の場所と比べると別世界だ。清潔で、家の外観は改修されて白い色に塗られ、海岸通りはきれいで、身なりの良い人が多く、自転車、スクーター、おいしい食べ物がたくさんある。

 フランス南部の小さな町の静かな生活に似ているが、この街の大規模な親ロシア・デモから、クリミアの2014年の運動が始まったのである。

沈没船のモニュメント、セヴァストポリ=ウラジーミル・アスタプコヴィッチ/ロシア通信
沈没船のモニュメント、セヴァストポリ=ウラジーミル・アスタプコヴィッチ/ロシア通信

 その痕跡をいまだに見ることができる。即席バリケードの欠片、ロシアのトリコロールの色に塗られたバルコニー、窓から吊り下げられたソ連の赤旗、聖ゲオルギーのリボン、セヴァストポリの庇護者のイメージになっている壁面いっぱいのプーチン大統領の肖像画など。

 「これでも少ない方。熱狂は過ぎた」と話すのは、この街を案内してくれているユーリャさん。2014年にロシア国籍を拒んだ、数少ない地元住人の一人。今でも持っているのは滞在許可証のみ。毎年更新する必要がある上、これだけでは正式に就職できない。「自分をウクライナ人だと考えていたし、今でもそう。生まれたのはオレンブルク(ロシア)だけど、セヴァストポリに39年暮らしている」

アルタ=セルゲイ・メリホフ
アルタ=セルゲイ・メリホフ

 それでも、編入後の街を客観的に評価する。ウクライナ時代とは異なり、秩序が高まって、電気も水も常に供給されている。

 「ウクライナはクリミアを見ていなかった、クリミアの問題を理解していなかったと、よく批判されているけれど、これは本当のこと。キエフ(ウクライナの首都)はセヴァストポリにまったく注意を向けていなかった。ここはクリミアで一番親ロシア的な街で、ずっとそうだった。『ロシアよ、来て!』、『プーチンよ、取って!』、『戻りたい!』って。物心ついた時からそんな感じだった」

ロシアからクリミアへ

 ヴィクトル・エヴドキモフさんは生まれながらのモスクワっ子。豊かな首都のすべてを投げ捨てて、クリミアに家族と引っ越してきた。

 「私自身占領者」と笑う。

 ヴィクトルさんの妻クセニアさんと一緒に、海岸通りを散歩する。クセニアさんはモスクワにいた時、クラブ「ザフトラ(明日)」のアートディレクターとして働いていた。2011年に、ロシア下院選挙をきっかけにボロトナヤ広場でデモが行われた祭、反プーチン派がこのクラブに集まった(当然ながら、クセニアさんの許可あって)。

ヴィクトル・エヴドキモフさん、妻のクセニアさん、娘のダーナさん=セルゲイ・メリホフ
ヴィクトル・エヴドキモフさん、妻のクセニアさん、娘のダーナさん=セルゲイ・メリホフ

 「セヴァストポリに来る時はかなり不安だった。我が家ではクリミアがどこのものかでもめてたものだから。夫はロシアの愛国者って感じで。でもここに来て、セヴァストポリは『ロシアの水兵の街』と呼ばれるように、完全にロシアの街だってことがわかったし、編入を強制的な占領と言うことは、少なくとも愚かだってこともわかった。住民は幸せで、街は素晴らしいエネルギーに満ちている。この中には、私が言うのもおかしなものだけど、独自の快感がある」

 モスクワで泌尿器科医として成功していた夫のヴィクトルさんは、セヴァストポリでウェイターとして働いている。ゼロからの生活であるが、自身にとって重要なのは「ロシアらしさ」。とはいえ、過剰な愛国的狂乱に対しては皮肉的である。

セヴァストポリ=セルゲイ・メリホフ
セヴァストポリ=セルゲイ・メリホフ

 「今ここには特にそんなものはない。熱狂が過ぎ去って落ち着いた。給与は高くないが、物価はモスクワ並みになった。それでもセヴァストポリの人はロシアに感謝してる。多くの人にとって、言語の問題は基本的なものだった。ここの学校ではウクライナ語が強制されていたから。人々は自分たちのことをずっとロシア人だと考えていて、ロシア語で話すことのみを望んでいた」

 エヴドキモフさん夫妻は今後数年以内に、モスクワのマンションを売却して利益を貯金に加え、セヴァストポリで家を買い(現在は賃貸)、旅行者に喜ばれそうなバーをオープンする予定。

セヴァストポリ=セルゲイ・メリホフ
セヴァストポリ=セルゲイ・メリホフ

 海岸通りは暗くなり、黒海艦隊の水兵の制服を来たアコーディオン奏者はロシアの伝統的な軍歌「暗い夜」を奏で、次に「勝利の日」を奏で始める。まだ3月で、戦勝記念日のある5月ではないが、奏者のまわりに集まっている老人は、情熱をこめてこの歌をうたう。

セヴァストポリ=セルゲイ・メリホフ
セヴァストポリ=セルゲイ・メリホフ

もっと読む:編入どう思う>>>
http://jp.rbth.com/society/2014/05/14/48281

http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/663.html

[経世済民120] 中国がベネズエラへの支援を続けるワケ 深刻な食糧不足と超インフレの中、議会を無視しリコールも抑え込、大統領居座り
中国がベネズエラへの支援を続けるワケ
岡崎研究所
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 いずれマドゥーロ政権は交代するので、中国はベネズエラへの支援を止めたほうが賢明であると、ベネズエラEl Nacional紙のダニエル・ロドリゲス氏が、2月15日付ニューヨーク・タイムズ紙で述べています。その要旨は次の通りです。

(iStock)
 昨年、ベネズエラは、資産売却や輸入削減等、数々の犠牲を払って100億ドルに及ぶ国債等の利払いを行い、デフォルトを回避した。しかし、それだけでは十分ではなく、中国の資金的支援が不可欠である。マドゥーロの政策が国際的孤立と人道的危機を招きながら、また、中国への石油による債務返済が滞るなかで、なぜ、中国は忍耐強くマドゥーロを支援し続けるのであろうか。

 ベネズエラは、2001年に中国の「戦略的開発パートナー」となり、2014年には「包括的戦略パートナー」に格上げされた。それ以来、中国は石油による返済を条件に600億ドルの融資を行い、600件以上の投資プロジェクトに出資している。その見返りとして、中国企業はベネズエラ市場で優遇され、利益の上がるインフラ投資コンセッションを獲得している。中国からベネズエラへの輸出は、1999年の1億ドルから2014年には57億ドルに増加した。

 中国がグローバルな役割を拡大しようとした際、ベネズエラとの同盟は、この地域に関与するための重要な足がかりを提供するものであった。ベネズエラと同国の石油支援に依存する域内国の支援を得て、中国は素早く地域の主要なプレイヤーに成り上がり、米国を排除した金融機関や新たなパートナーシップを急増させ、台湾を制してOASのオブザーバー・ステイタスを獲得した。

 原油価格の下落を受けて、ベネズエラの寛大な石油政策は過去のものとなったが、2014年に、中国が40億ドルの石油関係借款を供与し、翌年マドゥーロの訪中の際に多くの投資プロジェクトが発表されて以来、中国は、ベネズエラに恒常的に資金協力を行っている。最近では国有石油会社に22億ドルの融資枠を提供し、食料や医薬品の配給のための数千台の車両を提供した。
反政府指導者は、政権が交代した場合、この借金はいったいどうなるのかとして中国に対し憤慨している。反政府派は、貸付条件が公表されずに承認された融資協定は無効であると主張している。

 問題は単に債務だけではなく、反政府派が政権を取れば中国はベネズエラ市場やインフラ・プロジェクトから締め出されるリスクがある。それは、中国がカダフィに肩入れしたリビアで実際に起ったことである。ベネズエラでも、昨年12月の略奪騒動では中国人が経営する店がターゲットとなった。

 今や中国がベネズエラを見捨てる時である。今日、マドゥーロを支持しているのは15%に過ぎないが、中国の支援がある限りマドゥーロ政権は生きながらえ、ベネズエラの苦しみは続く。これを変えるためには、マドゥーロ支持派と折り合うことが不可能にならないよう、反対派が一致して妥協的なメッセージを送ること、そして、中国が腐敗した無能な政権を見放すことであろう。
出 典:Daniel Lansberg-Rodríguez‘Exit the Dragon: Why China Should Stop Supporting Venezuela’(New York Times, February 15, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/02/15/opinion/exit-the-dragon-why-china-should-stop-supporting-venezuela.html?_r=0

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 ベネズエラでは、期待された大統領リコールの国民投票も抑え込まれ、大規模な国民蜂起も起こらず、深刻な食糧不足と超インフレの中で反政府派が多数を占める議会を無視してマドゥーロ政権が居座り続けています。内政的には、軍等の力の支配が確立し、経済的な破綻は中国の資金援助により回避されているということです。この記事は、中国にマドゥーロ政権を見捨てるように呼びかけていますが、このままでは、2018年の大統領選挙で果たしてスムーズな政権交代が起こるのかも怪しいです。トランプがTPPを廃棄し、メキシコと事を構える状況の中で、中南米では、中国は、「棚ぼた」的な勝利者であり、むしろ、この時とばかり同地域における影響力拡大に乗り出しています。

27億ドルの新たな投資案件

 ベネズエラについては、石油価格が持ち直せば同国の利用価値は依然として大きく、中国は、つい最近、2月14日のハイレベル協議ではベネズエラ石油用の精油所の建設を含む22件、27億ドルの投資案件を約束しました。

 NAFTA見直しに直面するメキシコとしても貿易の対米依存から脱却するため中国との貿易拡大が有力な選択肢として考えられます。産業構造が競合する両国であるので、中国の輸出超過を対メキシコ投資で補うことも考えられます。通信関係でHuaweiはメキシコでのプレゼンスを拡大しつつあり、今月はじめにはカルロス・スリムと中国企業との合弁で新規の自動車生産計画も発表されました。

 他の南米諸国にとっても米国が国境税で市場を閉ざすのであれば、代替する市場を求めなければなりません。中国外相は昨年10月、コロンビアとのFTAに関心を表明し、3月半ばに、太平洋同盟議長国のチリが開催するTPPの不成立後の方向性を議論するアジア南米会合にも既に参加の意向を示しています。

 「国境の壁」問題で南米諸国は今のところ特に発言していませんが、メキシコが望めば南米諸国は一致してメキシコの立場を支持することになり、米国と南米関係全体が対立するような構図になれば、さらに中国に付け入る隙が出て来ます。トランプ政権の迷走は、この地域にとっても憂慮に堪えません。日本は中南米の自由貿易諸国との関係でTPP合意を何らかの形で活用すべきでしょう。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9134
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/322.html

[経世済民120] 政策不透明感と保護主義、世界経済に悪影響も=中国財政相 G20と対照的−中国F 豪住宅リスク増 逆境耐えるユーロ FRB
Business | 2017年 03月 21日 10:27 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
政策不透明感と保護主義、世界経済に悪影響も=中国財政相

http://s3.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20170321&t=2&i=1177334138&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXMPED2K045

17日撮影の出席者集合写真(2017年 ロイター/Mario Draghi)

[北京 20日 ロイター] - 先週の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に出席した中国の肖捷財政相は、政策不透明感と保護主義の高まりにより、世界経済のモメンタムが抑制される可能性があると警告した。

中国人民銀行(中央銀行)のウェブサイトに20日夜、財政相の発言が掲載された。

G20声明では、これまで長らく言及してきた反保護貿易主義の部分が削除され、代わりに「経済への貿易の貢献度を高めるよう取り組む」との一文が加えられた。

肖捷財政相は「市場は現在、一部先進国の政策不透明感について懸念しており、保護主義の高まりが(世界の)景気回復に悪影響を与えるのではないかと懸念している」と述べた。一部先進国の名指しはしなかった。

同じ公表文の中で周小川人民銀行総裁は、中国経済は全体として良好であり、穏健で中立的な金融政策を維持すると改めて表明した。

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http://jp.reuters.com/article/g20-germany-china-idJPKBN16S05C

 

 


Special | 2017年 03月 21日 11:35 JST

中国、サービス・製造業・鉱業を一層開放へ━李首相=新華社

[上海 21日 ロイター] - 中国の李克強首相は20日、北京で開催された中国開発フォーラムの会合で、中国のサービス業、製造業、鉱業セクターを海外に一段と開放する方針を語った。新華社が21日伝えた。

李首相は、中国は外国からの投資のための行政手続きを簡素化し、中国で登記した企業に公平な競争条件を確保すると発言。

中国政府は、同国での上場と社債発行を目指し、同国の科学技術事業やインフラプロジェクトに参加する外資企業を支援すると述べ、外国企業に中国への投資と中国企業との協力を呼び掛けた。

また、他国が効果的な意志疎通によってグローバル化に伴う問題や衝突を克服することを願う、とも述べた。

中国開発フォーラムにはHSBCのガリバー最高経営責任者(CEO)、サマーズ元米財務長官、アップルのクックCEOも参加した。

19日の同フォーラムでは、中国の苗ウ工業情報相が市場アクセスを制限する政策は中国国内の成長にとって重要だと述べ、李首相とは対照的な見解を示した。

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http://jp.reuters.com/article/china-forum-markets-idJPKBN16S06W

 

 

インフレのオーバーシュート許容、フィラデルフィア連銀総裁も支持

[ニューヨーク 20日 ロイター] - 米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は20日、連邦準備理事会(FRB)は緩やかな利上げを進める中でも、インフレ率が目標の2%をやや上回ることを許容するとの考えを示した。CNBCに対し述べた。

FRBが注目するインフレ指標は現在1.7%に達しており、総裁は2%の「目標が手に届く範囲」にあるとの認識を表明。「われわれは正しい方向に進んでいる。インフレ率はややオーバーシュートとなるだろうが、問題はなく適切だ」と述べた。

先週のイエレンFRB議長に続き、シカゴ地区連銀のエバンズ総裁もハーカー氏に先立ち、同様の発言を行なっている。

ハーカー総裁はまた、今年3度以上の利上げの可能性を排除しないと述べたほか、保有証券の償還資金再投資を停止する前に、金利が1%を大きく超える水準、おそらく1.5%近くまで上昇していることが望ましいとの考えを示した。

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2017年3月21日 02:39 JST
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米シカゴ連銀のエバンス総裁は、年内に2回、もしくは3ー4回の利上げもあり得るとの認識を示した。一方でミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、利上げを急ぐ必要はないと指摘した。
  カシュカリ総裁は20日、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで「高インフレの脅威はすぐそこに迫ってはいない」とし、物価上昇圧力が見られないことから当局は利上げにおいて辛抱強くなることが可能だと加えた。その上で、「コアインフレ率が年内に2%に達するとすれば、私としては非常に驚きだ」と述べた。
  カシュカリ総裁は今月14−15日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利上げ案にただ一人反対票を投じた。同総裁は、金融当局が前進を続ける中で、抵抗の声としての存在を確固たるものにしている。先週の会合時点で、当局者らは低失業ならびに2%近くのインフレ率という経済予測が実現するとの想定に基づき、年内あと2回の利上げを予想している。
  カシュカリ総裁は、「データは基本的に横ばいで推移している。利上げを急ぐ必要があるのかと私は問いたい」とし、「データが現実的な必要性を示してから、緩和を解除するべきだ」と続けた。
  初めて今年投票権を持ったカシュカリ総裁が示した認識は、同様に今年投票権を持つシカゴ連銀のエバンス総裁とは対照的だ。
  エバンス総裁は、フォックス・ビジネスのインタビューで「成長見通しが固まり、インフレ率が上昇するとの自信が強まれば、年内3度の利上げはまったく理にかなっている」とし、「3度かもしれないし、2度の可能性もある。状況が極めて加速した場合は4度もあり得る」と述べた。
  このほかフィラデルフィア連銀のハーカー総裁は、自身が予測した年内3回の利上げからのペース加速の可能性を排除しないと指摘。またインフレが当局目標の2%を「若干」オーバーシュートすると見込んでいると述べた。
原題:Kashkari Emerges as Opposing Voice as Fed Voters Show Optimism(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-20/ON4G176K50XS01

 


Business | 2017年 03月 21日 11:00 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

G20、マクロ・為替でこれまでのコミットメント確認=官房長官

[東京 21日 ロイター] - 菅義偉官房長官は21日の閣議後会見で、18日までドイツで行われた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議について、「マクロ政策、為替についてG20のこれまでのコミットメントを確認することができたと思う」との認識を示した。

菅官房長官は今回のG20について「共同声明で、為替レートの過度な変動や無秩序な動きは経済および金融の安定に対し悪影響を与え得るという点を再確認することができた。ここは大きな成果だった」と評価。

保護主義に関する文言が声明になかったことについては「G20の中で、われわれの経済に対する貿易の貢献の強化に取り組んでいくという点で一致している。いずれにしろ、共同声明に盛り込まれた自由貿易の重要性というものは出席国の間で共有されたと思っている」と述べた。

(石田仁志)

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http://jp.reuters.com/article/g20-suga-idJPKBN16S05R


 

 

G20と対照的−中国の経済フォーラム参加者は保護主義反対で一致
Bloomberg News
2017年3月21日 09:19 JST
中国には一部から「重商主義的」と指摘されている行動の抑制求める
ドイツで開催したG20、反保護主義の文言を声明に盛り込めず

中国・北京での経済フォーラムに集った世界の要人はいずれも保護主義に反対する立場を示し、トランプ米大統領の政策に異を唱えた。その一方で中国に対しては、一部から重商主義的とみられている行動を抑制するよう警告した。

  ドイツで18日閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は声明に反保護主義の文言を盛り込めなかったが、19−21日開催の中国発展ハイレベルフォーラムの参加者らは保護主義反対で結束した。

  2001年の中国の世界貿易機関(WTO)加盟の際に米通商代表部(USTR)代表として中国首脳と交渉に当たったシャーリーン・バシェフスキー氏は同フォーラムで参加者らに、「低賃金国との貿易で、中国は米国の非難の矢面に立たされている」と述べた上で、「米中両国は共に、開かれた世界市場の実現で非常に大きな責任を負っている。中国にとっては国内経済のさらなる改革と開放を意味し、グローバル化が正当性を保つには差別的措置の撤回も不可欠だ」と説明した。
原題:Global Elite in Beijing Ponder Ways to Avert ‘Surly Nationalism’(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-21/ON4YHZ6JTSEA01

 

 

豪住宅市場のリスクが増大=中銀議事要旨

[シドニー 21日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(中央銀行)は21日、3月の理事会の議事要旨を公表した。この中で、過熱する国内住宅市場のリスクの高まりを指摘し、金融政策を一段と緩和する可能性が低いことを強調した。

また、政策金利の据え置きが成長およびインフレ目標と合致するとの見解を示した。

中銀は3月の理事会で政策金利を8カ月連続で過去最低の1.5%に据え置いた。

議事要旨では、中銀が鉱業投資ブームから移行しつつある豪経済について、おおむね楽観していることが示された。理事会メンバーは、経済成長は緩やかに加速し、今後2年で潜在成長率を上回ると予想。

一方で、住宅投資用の借り入れが増え、シドニーとメルボルンで住宅が急騰したことから、住宅市場の「リスクの高まり」が見られたと指摘。

債務は家計所得を上回るペースで増加しており、高水準の債務を踏まえると、所得の伸び低迷で消費が抑制される可能性があるとした。

また、住宅市場の監督強化は銀行による融資基準の「ある程度の」厳格化につながったとの見方を示した。

中銀は、豪ドルの上昇が鉱業主導の成長からの移行を難しくするとあらためて警告。弱い賃金指標やパート労働者への偏りが見られる中で、労働市場の勢いを評価するのは依然困難とした。

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豪中銀:住宅市場や家計債務めぐるリスクを警告−議事録
Michael Heath
2017年3月21日 10:59 JST
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は21日 公表した今月の金融政策決定会合(7日開催)議事録で、世界的なリフ レーションのシナリオへの信用を示しながらも、不動産市場と国内家計 債務の伸び加速の脅威を浮き彫りにした。
議事録は「最近のデータは引き続き、住宅市場に絡んだリスクの高 まりを示唆している」と分析。「家計債務の伸びは家計所得の伸びを上 回るペースだ」と指摘した。豪中銀は今月の会合で政策金利を過去最低 の1.5%に据え置いた。
割安な資金を背景に、シドニーの住宅価格は2009年から2倍余りと なり、メルボルンでも上昇。一方、西部では鉱山投資ブームの後退で不 動産価格は下落し、需要の弱さから企業破綻が続いており、経済の2極 化が鮮明になっている。
豪ドルはシドニー時間午前11時33分(日本時間同9時33分)現在、 1豪ドル=0.7731米ドルとほぼ変わらず。議事録発表前は0.7729米ドル だった。
原題:RBA Warns Over Housing Risks, Debt as Global Reflation Emerges(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-21/ON55PS6K50XU01

 

 

Column | 2017年 03月 21日 08:16 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:逆境に耐える通貨ユーロ、圏外から意外な「助け舟」

Mike Dolan

[ロンドン 15日 ロイター] - ゼロ金利、政治的リスク、不確実な将来──。これだけ圏内に悪材料が揃っている割に、欧州単一通貨ユーロは相当に持ちこたえている。恐らく、近隣諸国から少なからぬ手助けがあるおかげだ。

欧州で今年予定される一連の国政選挙によって、ユーロ懐疑派のポピュリスト政党が大陸全域での支持を拡大し、統一通貨への脅威となるのではないかという懸念が高まっているが、ユーロそのものへの直接的な影響はほとんど生じていないようだ。

実際には、欧州中央銀行(ECB)のユーロ指数は、昨年末以来0.3%上昇している。今年に入って、これまでの50営業日のうち、この指数が1%以上動いたのは1日だけであり、しかもそれはユーロ高の方向だった。

欧米間の基軸為替レートであるユーロ/ドル相場は、昨年11月の米大統領選後にドル高となって以来、ほぼ4セントの変動幅で推移している。大統領選以来4カ月となるが、1ユーロ=1.06ドルを軸に上下いずれの方向にも2%未満の振れ幅である。

通貨オプション市場から得られる3カ月物の予想変動率(インプライドボラティリティ)も10%以下に抑えられている。2011年のユーロ債務危機の最中にはきわめて大きな値が見られたが、その約半分である。

さらに深く見ていくと、ユーロ売りのプットオプションの長期価格プレミアムは、1月から2月にかけて上昇した。だがこれも、ここ3週間で反転し、2016年末の水準まで戻っている。

フランス国民戦線のルペン党首やオランダ自由党のウィルダース党首など人気上昇中の極右指導者が、ユーロに対する憤りを示しているのに、通貨市場では誰も気にしていない、ということがあるだろうか。

メルケル首相の退陣につながりかねないドイツの選挙について、あるいはこの夏、イタリア総選挙が行われる可能性について、誰もが本当に、のんびり構えているのだろうか。

いや、そういうわけではない。少なくとも、米国の商品先物取引委員会(CFTC)による週間データによれば、投機的な思惑の兆しが見られる。先週のデータは、ユーロのネット売り持ちポジションが1月初旬以来最大になったことを示している。

政治的要因はさておくとしても、米欧の2年物金利が統一通貨の誕生以来最大の幅でドル優位となっており、金融政策にかい離が見られることからも、ユーロに対する下降圧力を想定することは難しくない。

債券市場は政治的な懸念をもっと明確に反映している。ドイツを基準とした場合のフランス10年物国債利回りスプレッドは、依然として2011年のピーク時よりかなり低いとはいえ、過去4カ月間で倍増となる60ベーシスポイント以上に達している。

では、これほどしっかりとユーロを支えている要因は何なのか。

<資本流出の「止血帯」>

最も根本的な原因は、過去5年間、ユーロ圏の経常黒字が膨らんでおり、現時点では、月300億ユーロ(約3兆6500億円)を超える純流入となっていることである。2011年の危機当時は対外収支がほぼ均衡していたことに比べれば、1日当たり平均10億ユーロ程度という相当な下支えとなっている。

この経常黒字の一因は、ユーロ圏の輸入需要が比較的弱い一方で、ドイツからの輸出が好調なことだ。しかし同時に、ユーロ圏の各国政府が自国債を保有する外国人投資家に対して支払う利回りが、ゼロ又はマイナスにまで下がっている一方で、ユーロ圏の投資家が保有する同規模の外国債から得る利回りがはるかに大きいことも、背景となっている。

為替レートの安定は、政治的懸念や相対的な金利差を理由としてユーロ圏からの資本流出があるとしても、ユーロ圏への資本流入となる経常黒字を上回るには至らなかったことを示している。

こうしたズレが生じる原因の一端は、域外の大口債券投資家のあいだで、完全にユーロ圏から撤退するのではなく、ユーロ圏内で投資先を乗り換える傾向が見られることである。たとえば、日本の投資家はここ数カ月フランス国債を大量に売っているが、その2倍ものドイツ国債を買っているという報告がある。

だが、ユーロ圏からの資本流出を防いでいる「止血帯」は他にもある。ユーロの「限界的な買い手」である2大機関投資家、スイス国立銀行(中央銀行)とチェコ中銀の行動だ。

スイス中銀は、ユーロに対するスイスフランの上限を2015年に撤廃しているものの、引き続き、スイスフランの過度の上昇を防ぐために行う介入を通じて、膨大なユーロ資産を蓄積している。スイスの外貨準備は現在6000億ユーロを超えているが、過去14カ月間だけでも、20%以上、金額にして1000億ユーロ以上も増加している。

またチェコ中央銀行は、自国通貨コルナについて3年前から上限規制を設定しており(ただし今年中の撤廃を約束している)、外貨準備は昨年のスタート時以来80%、金額にして460億ユーロも増加し、2月時点で1000億ユーロ以上に達している。これはチェコの国内総生産(GDP)の約60%に相当する。

合計すると、この2カ国の中央銀行は月平均130億ユーロのペースでユーロ資産を積み上げている。その約半分はユーロ債市場に投じられており、ユーロ圏からの資本流出をかなりの程度、相殺している。

最終的に、資本逃避によりユーロが下落する可能性はある。だが今のところはっきりしているのは、そうした資本逃避が為替レートに持続的な影響を与えるためには、極端に大規模な動きでなければならない、ということだ。

*筆者はロイターの欧州市場担当エディタ−。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)


コラム:中国の外貨準備高、越えた危険な一線 2017年 02月 08日
森永製菓と森永乳業の株式売買を一時停止=東証 2017年 02月 24日
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http://jp.reuters.com/article/europe-euro-currency-idJPKBN16O0AJ?sp=true

 

EUが英国に早くも機先−首脳会議開催延期で離脱交渉の時間奪う
Ian Wishart、Tim Ross
2017年3月21日 11:15 JST

4月6日暫定予定の会議キャンセル、対英姿勢は5月初めまでの合意
メイ英首相は3月29日にリスボン条約50条発動で離脱手続き開始

欧州連合(EU)が、EU離脱交渉に入ろうとする英国のメイ首相を待たせる意向を示唆した。同首相は今月29日に離脱手続きを開始するが、EUから早くも機先を制された格好だ。
  EU指導者らは4月6日に暫定予定していた首脳会議開催をキャンセルした。同会議でEUは対英交渉姿勢の概要で合意する計画だったが、今月29日の英国によるリスボン条約50条発動では、これに遅過ぎると判断したもよう。首脳会議は4月末か5月初めの開催に日程調整され、原則2年の英ーEU交渉時間を一部減じることになりそうだ。
  双方は既に、財政面でのコミットメントや離脱協議の構造、今後の通商交渉などについて意見が一致しておらず、オランダのデイセルブルム財務相は20日、ブリュッセルで記者団に対し、英国は「物事の流れや、コスト、複雑性とそれに伴い必要とされる時間について現実的になる必要がある。これまでのところ、英政府からこうした点について多くが得られていない」とくぎを刺した。
原題:EU Makes U.K. Wait to Start Brexit Talks as May Sets Trigger Day(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-21/ON55UW6JTSEE01


焦点:北アイルランド政局、英国の新たな「亀裂の種」に

[ベルファスト 15日 ロイター] - 英国の北アイルランド議会選でアイルランドとの統一を求める「ナショナリスト」を代表するシン・フェイン党の勢力が強まった上、スコットランドでは英国独立を問う住民投票の再実施が叫ばれている。既に欧州連合(EU)離脱を巡って揺らいでいる英国の結束に、新たな亀裂が生じかねない。

EU離脱を問う昨年の英国民投票では、イングランドとウェールズで離脱派が残留派を上回った一方、スコットランドと北アイルランドは残留派が優勢で、英国内の絆を揺るがした。

スコットランド行政府のスタージョン首相は13日、英国からの独立を問う2度目の住民投票実施を目指すと表明した。もっともスコットランドの問題は英国民投票以来、大いに注目されてきたことだ。

しかし今月実施された北アイルランド議会選では、英統治を望むプロテスタント系の「ユニオニスト」の民主統一党(DUP)が1921年以来初めて過半数議席を失い、衝撃を広げた。カトリック系のシン・フェイン党はDUPとの議席差をわずか1に縮めた。

これにより、北アイルランドが長期的に英国に留まるのか、あるいはアイルランドと一体化するのかという、水面下でくすぶり続けていた問題が蒸し返されている。統一は国民投票で支持を得れば可能だ。

リバプール大のアイルランド研究局長、ピーター・シャーロウ氏は「国民投票があるとしても10年先の話で、しかも統一派が負ける可能性があった。しかし今回の選挙で北アイルランドの政治動向に変化が生じたのは明らかだ。これまでとは異なるシナリオの扉が開かれた」と話す。

シン・フェイン党のアダムズ党首はロイターに対し、アイルランド統一に対する有権者の関心が再び高まっているのを感じた、と述べた。

過去の世論調査を見ると、カトリック系住民を含めて統一への支持は限られている。これは北アイルランドが、英国政府が提供する公共セクターの職や社会保障などに依存している状況がしっかり認識されていることが一因だ。

<長期的な変化>

オックスフォード大のアイルランド近代史教授、セニア・パセタ氏は「(アイルランドの)再統一が短・中期的に実現するとは思わない。何よりもまずアイルランド側が北アイルランドの統合に慎重で、それは正しい判断だ」と言う。

ただ、英国のEU離脱と人口動態の変化が重なることで、長期的にはアイルランド統一への支持が高まるかもしれない。

人口180万人の北アイルランドはプロテスタント系が過半数を占めるが、人口動態を見ると30年前後以内にはカトリック系が多数派に転じる。人口480万人のアイルランドはカトリック系の方が多い。

EU離脱交渉という大仕事に着手するメイ英首相にとって、アイルランド統一およびスコットランド独立の機運が高まるのは最も避けたい事態だ。

しかし北アイルランドにとって、EU離脱はとりわけ大きな混乱をもたらす。アイルランドとの国境は、英国とEUの間に横たわる唯一の地続きの境界線であるため、離脱後は国境管理が厳しくなるとの見方が出ている。

アイリッシュ・タイムズ紙のノエル・ウィーラン政治論説委員は先週、ナショナリスト側にはEU離脱によって「経済的にも政治的にも、厳重な国境の後ろに置き去りにされる」ことや、北アイルランドの自治権が縮小することへの懸念があると分析した。

メイ氏は開かれた国境を維持したいと発言しているものの、EU離脱後にそれをどうやって実現するか何も明らかにしていない。

<根強い反対意見>

もっとも、北アイルランド内でも統一反対の意見は根強い。ベルファストで年金生活を送る生粋のユニオニスト、トレバー・ヘロンさんは「アイルランド統一なんてまっぴらだ。絶対に実現しない」と言う。

「南(アイルランド)では社会保障制度が異なり、医者に行くにも、処方薬をもらうにも金を払う必要がある」とヘロンさんは説明した。

オックスフォード大のペセタ教授によると、南側のアイルランドでも統一に対する関心は薄い。北アイルランドと平和的に共存する一方、英国政府から経済支援を受けている現状が気に入っているからだ。

ただ英国のEU離脱に加え、スコットランドの行方も北アイルランドにとって大きな不確実要因だ。スコットランドが英国独立を選んだ場合、多くが17世紀のスコットランド移民を祖先に持つ北アイルランドのユニオニストは、大きな心理的衝撃を受けると見られる。ユニオニストは、スコットランド、英連合王国の双方と歴史的に強い絆があると考えているからだ。

(Ian Graham記者)

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http://jp.reuters.com/article/north-ireland-uk-disunited-idJPKBN16N0LG?sp=true


 

 

 
インフレのオーバーシュート許容、フィラデルフィア連銀総裁も支持

[ニューヨーク 20日 ロイター] - 米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は20日、連邦準備理事会(FRB)は緩やかな利上げを進める中でも、インフレ率が目標の2%をやや上回ることを許容するとの考えを示した。CNBCに対し述べた。

FRBが注目するインフレ指標は現在1.7%に達しており、総裁は2%の「目標が手に届く範囲」にあるとの認識を表明。「われわれは正しい方向に進んでいる。インフレ率はややオーバーシュートとなるだろうが、問題はなく適切だ」と述べた。

先週のイエレンFRB議長に続き、シカゴ地区連銀のエバンズ総裁もハーカー氏に先立ち、同様の発言を行なっている。

ハーカー総裁はまた、今年3度以上の利上げの可能性を排除しないと述べたほか、保有証券の償還資金再投資を停止する前に、金利が1%を大きく超える水準、おそらく1.5%近くまで上昇していることが望ましいとの考えを示した。

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米ミネアポリス連銀総裁、反対の声として浮上−当局の楽観姿勢に抵抗
Jeanna Smialek、Matthew Boesler、Christopher Condon
2017年3月21日 02:39 JST
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News | 2017年 03月 21日 11:31 JST

原油先物が上昇、OPEC減産合意延長との期待で

[シンガポール 21日 ロイター] - 21日のアジア市場で原油先物価格が上昇している。石油輸出国機構(OPEC)主導の減産合意が延長されるとの期待や、需要の拡大が供給過剰を緩やかに解消しているとの見方が支援材料。

0043GMT(日本時間午前09時43分)時点で、北海ブレント先物LCOc1は0.14ドル(0.3%)高の1バレル=51.76ドル。

米ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)原油先物CLc1は0.06ドル(0.1%)高の48.28ドル。

OPEC加盟国とロシアを含む非加盟国は供給過剰の解消に向け、1─6月に産油量を日量180万バレル近く削減することで合意。しかし減産順守が一定でないことや米国などでの増産を背景に、これまでのところ減産で見込んでいた効果はそれほどみられず、原油価格は年初から10%超下落している。

関係筋によると、OPEC加盟国は、減産合意を6月以降も延長する方向に傾いている。ただロシアなどの非加盟国も減産に引き続き参加する必要があるとしている。

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http://jp.reuters.com/article/global-oil-idJPKBN16S06Q
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/337.html

[国際18] FBI長官の証言、トランプ米政権への打撃は最悪のタイミングか HSBCなど主要行ロシア発833億円資金洗浄 ソフトバンク
FBI長官の証言、トランプ米政権への打撃は最悪のタイミングか
Justin Sink
2017年3月21日 10:35 JST
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コミー米連邦捜査局(FBI)長官は20日、トランプ政権に恐らく最悪のタイミングで打撃を与える証言を行った。
  同長官は下院情報委員会での証言の冒頭で、FBIが昨年の米大統領選へのロシアの介入の可能性と、トランプ氏の側近がロシア政府と連携していなかったかを調査中だと認めた。さらに、オバマ前大統領から盗聴されていたとするトランプ大統領の主張について、それを裏付ける証拠はないと言明した。
  今週は米政権にとって重要な意味を持つ。トランプ大統領が連邦最高裁判事に指名したニール・ゴーサッチ氏について上院は承認の検討を開始、下院は医療保険制度改革法(オバマケア)撤廃・代替法案を採決する見込みで、投票結果は僅差になることが確実だ。
  また19日に公表されたギャラップの世論調査によれば、トランプ大統領の支持率は前週から8ポイント低下し37%となった。オバマ前大統領は就任中、支持率が37%まで下がったことはなかった。
  ただホワイトハウスと議会共和党は慌てる必要はないようだ。その理由の一つは、ゴーサッチ氏の指名が恐らく承認されるとみられることだ。指名承認となれば、トランプ大統領の政治的勝利となり、保守派は意を強くする見通しだ。
  またコミー長官の証言はトランプ大統領への絶好の批判材料となるのは確かだが、下院情報委のデビン・ニューネス委員長が、ロシア政府とトランプ陣営とのつながりを示唆する証拠を同委は得ていないと述べたことから、ホワイトハウスの当局者らは強気の姿勢を崩していない。
原題:Comey Deals Trump a Political Blow When He Can’t Afford It (2)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-21/ON53U36S972901


 

 
HSBCなど主要行、ロシア発833億円資金洗浄関与か−ガーディアン
Zeke Faux、Yalman Onaran
2017年3月21日 09:47 JST
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HSBCは主に香港支店経由で5億4500万ドルを取り扱った可能性
銀行取引約7万件の詳細を含む金融関連の文書をガーディアンが閲覧
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ロシアから大規模なマネーロンダリング(資金洗浄)ネットワークを通じて流出した資金の一部は、最終的に世界の主要銀行を経由しており、HSBCホールディングスなど英国に本拠を置く銀行の取扱高は約7億4000万ドル(約833億円)に達すると英紙ガーディアンが報じた。
  同紙が閲覧した金融関連の文書には、銀行取引約7万件の詳細が含まれ、このうち1920件は英国に拠点を置く企業、373件は米国を拠点とする企業が関与。2010年から14年にかけて少なくとも200億ドルがロシアから流出し、一部が海外の銀行に行き着いた状況が示されているという。この資金フローはグローバル・ロンドロマットと呼ばれるネットワークに関係し、このネットワークは調査報道グループ「組織犯罪と汚職の報告プロジェクト」の14年の報告書のテーマになったと同紙は指摘した。
  ガーディアン紙によると、HSBCは主に香港支店経由でロンドロマットの資金5億4500万ドルを取り扱った。取引の詳細は明らかにしていない。英政府が救済したロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)の取扱額は1億1300万ドル、スタンダードチャータードとスイスのUBSグループ、米銀シティグループ、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、英銀バークレイズ、オランダのINGグループは200万ドルから3700万ドルの範囲内だったという。
  同紙によれば、記事で実名を挙げた銀行はいずれもマネーロンダリングについて厳しい管理体制を敷いていると説明したが、データの真偽に異議を申し立てた金融機関はなかった。
原題:Laundered Russian Cash Went Through Big Banks, Guardian Says (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-21/ON506F6JTSI701

 

ソフトバンク:米ベンチャーのウィーワークに3億ドル投資−関係者
Ellen Huet、Pavel Alpeyev、谷口崇子
2017年3月21日 12:14 JST
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ソフトバンクは米ベンチャー企業のウィーワークに3億ドル(約337億円)出資したと、事情に詳しい関係者が明らかにした。相次ぐ調達の成功により、ウィーワーク社の現在価値は170億ドル(約1兆9000億円)以上と算定されている。
  関係者によると、ソフトバンクは今回本体から出資したが、今後さらに同社が設立したビジョンファンドから追加出資する可能性があるとしている。
  ウェブサイトによると、ウィーワークは2010年に設立された未上場の共有オフィス運営会社で、本社は米ニューヨーク州。1年前に株式を売り出した時は価値を160億ドルと算定されたが、今回は当時よりも高い株価で出資を受けた。ウィーワーク、ソフトバンクの広報担当者はコメントを控えた。
  ソフトバンクのウィーワークへの出資は、20日付ウォールストリート・ジャーナル電子版が先に報じていた。

 

日本株続落、米金利低下と円高嫌気−金融や鉄鋼下げる、自動車部品も
長谷川敏郎
2017年3月21日 08:08 JST 更新日時 2017年3月21日 12:06 JST
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世界最大「海上会員制クラブ」豪華ヨット、招待されるには自分を磨け
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米国でインフレ期待や利上げ加速観測薄れる、連銀総裁発言が契機
米長期金利は1日以来の低水準、為替一時1ドル=112円台前半
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21日の東京株式相場は続落。米国のインフレ期待や利上げ加速観測が後退、米長期金利が低下し、銀行や保険など金融株が下げた。為替の円高推移も嫌気され、トヨタ自動車系メーカーを中心とした自動車部品株、鉄鋼株も安い。

  TOPIXの午前終値は前営業日比1.51ポイント(0.1%)安の1564.34、日経平均株価は51円97銭(0.3%)安の1万9469円62銭。
  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鮎貝正弘シニア投資ストラテジストは、「米利上げに前のめりとなったドル高・円安のポジションが利上げ後に縮小し、ドル安・円高という典型的なパターンが続いている」と指摘。トランプ米政権による政策詳細公表の先送りに加え、同政権とロシアに関する連邦捜査局(FBI)の捜査などから一気にドル高・円安・日本株高となるシナリオが成り立たなくなり、当面は上値が重い状況になりやすいとの見方も示した。
株価ボード前の歩行者
株価ボード前の歩行者 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  17日に発表された3月の米ミシガン大学消費者マインド指数(速報値)の向こう5年間のインフレ期待は、2.2%と遡及(そきゅう)可能な1980年以降で最低水準となった。今後1年間のインフレ期待は2.4%と前月の2.7%から低下。20日にはシカゴ連銀のエバンス総裁が、2017年での2回ないし3回の利上げを支持する考えを示したほか、金利据え置きを主張し、先般の利上げ決定に反対票を投じたミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は米CNBCのインタビューで、成長が依然として遅すぎると指摘した。
  インフレ期待の後退から、20日の米10年債利回りは2.46%と1日以来の低水準。きょうの為替市場では、ドル・円が一時1ドル=112円20銭台と2月末以来のドル安・円高水準に振れた。18日に閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、「反保護主義」の文言を削除した。日本株市場が3連休中だった17、20日の米S&P500種株価指数は合計で0.3%下げた。
  SMBCフレンド証券投資情報部の松野利彦チーフストラテジストは、「米連銀関係者から利上げに消極的な発言が相次ぎ、今月利上げしたFOMCも一枚岩ではない」と言う。さらに、原油価格がピークアウトした中で「モノの値段は将来的に上がりにくくなる上、エネルギーセクター中心に米国株高の足を引っ張るため、米インフレ期待の低下にもつながりやすい」とも話す。
  きょうの日経平均は、投資家の短期的な採算ラインである25日移動平均線(17日時点で1万9394円)を一時割り込んだが、徐々に下げ渋り。東証1部では値上がり銘柄が優勢だった。三菱モルガン証の鮎貝氏は、「国内機関投資家の決算対策売りは先週でほぼ一巡、配当権利落ち後は年金などの再投資が予想されるなど、年度末にかけて需給は非常に良好」と分析。需給改善期待が強い中で現在は来期業績を織り込む時期にも当たり、「相場にネガティブになる状況ではない。個別では好業績に買いが入りやすい」とみていた。
  東証1部33業種は倉庫・運輸や保険、鉄鋼、証券・商品先物取引、その他金融、銀行、情報・通信、不動産など19業種が下落。その他製品や食料品、精密機器、化学、小売など14業種は上昇。売買代金上位ではソフトバンクグループや第一生命ホールディングス、三井不動産、アイシン精機が下げ、前週末の新型ゲーム機「スイッチ」生産の倍増報道は驚きとメリルリンチ日本証券が指摘した任天堂は続伸した。ゴールドマン・サックス証券が強気判断を示したブラザー工業も高い。東証1部の売買高は8億3950万株、売買代金は1兆688億円。上昇銘柄数は1023、下落は830。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ii.uD__zzGkY/v2/1200x-1.png
米10年債利回りは頭打ち傾向に
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-21/ON581R6JIJUO01

 


http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/667.html

[経世済民120] 「国の借金」は心配し過ぎてはいけない 過度の悲観論は事態の悪化を招くだけ 働き方改革は前途多難 変えたいなら説教より整頓
「国の借金」は心配し過ぎてはいけない

記者の眼
 
過度の悲観論は事態の悪化を招くだけ
2017年3月21日(火)
水野 孝彦
 「国の借金は膨大で、財政再建を急がなければならない」――。そうした意見を聞く機会は少なくない。しかし、それは心配のし過ぎではないかと記者は考える。

 例えば、3月14日時点で日本の長期金利は0.09%。期間10年の国債の利回りが指標となっている。仮に日本政府の借金が増え過ぎて本当に困っているなら、ほぼゼロ金利の国債を買う投資家はいないはずだ。しかし、30年物の国債でも金利は0.875%。40年物国債で1.055%。少なくとも投資家は、国の借金を今の時点で心配してはいないのではないだろうか。

 以前、日経ビジネス本誌のコラム「気鋭の経済論点」に寄稿をお願いしたこともあるソシエテ・ジェネラル証券のチーフエコノミスト、会田卓司氏が2月3日に開催したメディア関係者向けのセミナーで財政再建を急ぎ過ぎることの危険性を指摘した。

内閣府の試算を疑問視

 会田氏が疑問視するのは、2017年1月25日の経済財政諮問会議に内閣府が提出した「中長期の経済財政に関する試算」についてだ。内閣府の試算では2016年度の「一般政府の財政収支」の赤字はGDP対比で5.1%。2015年度は3.3%の赤字なので大幅な悪化を予測している。その赤字幅はこの数年間、徐々に減少していた。会田氏によると「一般政府の財政収支の赤字が確定するには国民経済計算確報を待たねばならず1年くらいの時間が掛かる。しかし、四半期ごとに公表されている日銀資金循環統計から傾向は追えて、2016年度の赤字が大幅に拡大する状況とは思えない」という。「2016年の後半は円安によって税収が増加するはず」(会田氏)なのも財政収支にはプラスだ。

 にも関わらず、これまでのトレンドに反して、なぜ赤字が大幅に拡大する試算となるのか疑問というわけだ。その悲観的な2016年度の予想を起点に、将来の財政赤字を予測すると結果として、政府が掲げる「2020年度の財政健全化目標の達成」も危いという予測が導かれる。追加の歳出削減が必要という声が高まることを会田氏は懸念している。それがデフレからの完全脱却を遠のかせるためだ。


ソシエテ・ジェネラル証券のチーフエコノミスト、会田卓司氏。エコノミストとしてメリルリンチ日本証券やヘッジファンドなどでの勤務を経て現職。

財政再建を急ぐ理由は見当たらない

 さらに、疑問点はあるものの1月25日提出の「中長期の経済財政に関する試算」を前提として受け入れて、将来を考えてみても財政再建を加速させる理由はないと会田氏は指摘する。「ベースラインケース」(中長期的に経済成長率は実質1%弱、名目1%半ば程度)と呼ばれる2つあるシナリオのうち悲観的なシナリオでは、2025年の「一般政府の財政収支」の赤字をGDP対比で3.9%と予測している。2025年は団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、65歳以上の高齢者が人口の3割となる時期だ。介護や医療への財政支出の増加が予想され、財政再建を急ぐべきという主張の根拠にもなっている。少子高齢化で家計の貯蓄率が下がれば、政府が発行する国債を消化できず、海外から資金を調達せざるを得なくなる。それが深刻なインフレを招いたり、国債の格下げによってギリシャの様な債務危機が起きかねないと懸念する声もある。

 しかし、内閣府の予測通りなら2025年の財政収支の赤字がGDP対比で3.9%だったとしても、家計と企業を合わせた民間の貯蓄はGDP対比で8.5%もある。その結果、経常収支も大幅な黒字になる。「これは政府の赤字を補ったうえで、資金が余っているから外国にお金を貸している状態。国債がファイナンスできないことを心配して、今の時点で財政再建を急ぐ必要はないことを示している」と会田氏は指摘する。

 少子高齢化が深刻化する時期でも民間の貯蓄が黒字という予測には意外感があるかもしれない。しかし、その理由の1つは政府が介護や医療に巨額の資金を投じれば、そこに雇用が生まれることだ。事業者や労働者は貯金もできるし、財政支出のかなりの部分は税収として国に戻ってくる。個人はお金を使えば、それっきりかもしれない。しかし、国がお金を使うことは雇用を生み出し、税収も増やす。これが「ミクロ(個人や企業のレベル)とマクロ(国家のレベル)の違い」(会田氏)になる。

大切なのは魅力のある国であり続けること

 財政再建を急ぐ必要はないのに、専門家の間でなぜ財政再建の必要性が繰り返し強調されるのか。「国の将来を想っての使命感からだろうが、危機感をあおる必要はない」と会田氏は話す。何十年か先には、民間の貯蓄で政府の赤字を補えず、経常収支も赤字続きとなり、海外の投資家に国債を買ってもらう時代が来ると会田氏は予測する。大事なのは、その時に海外の投資家にとって魅力のある国であり続けることだ。将来を過度に不安視することで、設備投資や若者への教育に十分な資金を回さなければ、それ自体が日本の経済力を弱めてしまう。考えてみれば、この「失われた20年」と呼ばれるデフレの時代はその繰り返しだった。

 ちなみに経常収支が赤字続きになったとしても、それは日本の凋落を意味しない。例えば、米国は財政赤字が続き、経常収支も赤字続きだが、アップルやグーグルを生み出し、世界のリーダー国であり続けている。「危機を意識しすぎると、さらに事態は悪化する。大切なのは将来への『抑制された悲観論』と『楽観論』を持つことだ」と会田氏。記者も同意見だ。


このコラムについて

記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/031700429


 


焦点が定まらない「働き方改革」は前途多難
上野泰也のエコノミック・ソナー
安倍首相は「人口動態に全く懸念なし」と明言
2017年3月21日(火)
上野 泰也

現在、「働き方改革」の最大のテーマは、残業時間の法定上限見直しだ。しかし本来は、「少子化対策や女性の社会進出の推進」「非正規雇用の待遇改善」ほか、改革のポイントは多岐にわたるはずである。(写真:PIXTA)
 安倍内閣は現在、成長戦略の重要な柱の一つとして、国民の多くにとり身近なテーマである「働き方改革」に注力している。
 ややトリビアめいてしまうが、この「働き方改革」という言葉が全国紙に初めて登場したのは今から13年半ほど前、2003年11月中旬のことである。4道府県(北海道・千葉・大阪・熊本)の女性知事が国に対し、男女共同参画に向けた働き方改革などを提言した時だった。そもそもは、女性の視点から出てきたスローガンだったわけである。

元々は「ホワイトカラー・エグゼンプション」がテーマだった
 しかし、その3〜4年後の「働き方改革」の議論において焦点になったのは、会社員の一部を労働時間規制から外す「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」を労働基準法の改正で実現させるかどうかだった。今度は企業経営者の側から、ホワイトカラーの労働時間規制はもはや実態に合わなくなっているから改革(法改正)が必要だという主張が展開されたわけである。
 働いた時間の長さではなく、働いたことによる成果の有無・大小で、労働の価値を判断して給料を支払う。この考え方は、ホワイトカラーの場合は合理性がある。なぜなら、ただ単純に時間と比例して残業代を払う場合、仕事を進めるペースをあえて落としてより長い時間働くことによって受け取るお金を増やそうというインセンティブが働いてしまうからである。生産性の高い働き方を実行した人は、より少ない労働時間で従来と同じ給与を受け取ることができる(はずである)。その場合、増えた余暇をさまざまな活動にあてることができ、「ワークライフバランス」改善にもつながってくる。

「残業代ゼロ」横行の懸念から、今も導入に至らず
 ただ、上記の方針を貫徹しようとする場合、現実には問題点がいくつもある。たとえば、@「成果」を公平かつ客観的に評価して給与の大小に結びつける仕組みを作ることはどこまで可能か、A制度が悪用されて「残業代ゼロ」が横行してしまう労働者が不利益を被ることにならないか、といった点である。このAのリスクをもっぱら前面に出して、労働組合の側は「ホワイトカラー・エグゼンプション」に強く反対している。
 2014年6月の成長戦略に「成果で評価される働き方改革」が盛り込まれるなど、時間ではなく成果により評価する「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入を目指す政府の取り組みは、現在に至るまで続いている。
 この間、2013年には、少子化対策の一環で「働き方改革」が注目された。政府の有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」は同年5月の提言で、出生率回復に向けた「3本の矢」として、子育て支援、結婚・妊娠・出産支援に加え、働き方改革を挙げた。これをうけて、政府は6月に「少子化危機突破のための緊急対策」を決定。具体的には、子どもが3歳になるまで育児休暇取得や短時間勤務をしやすくするよう企業に働きかけることなどがうたわれた。

そして現在の最大のテーマは、残業時間の法定上限見直し
 そして現在、「働き方改革」の最大のテーマになっているのは、周知の通り、残業時間の法定上限見直しである。政府は年720時間(月平均60時間)を基本的な上限とし、繁忙期は例外として「月100時間未満」まで認める労働基準法改正案を年内に国会に提出して、2019年度にも残業の上限規制を導入する構えである。
 安倍首相は2016年3月25日、第6回一億総活躍国民会議で、「働き方改革」について、次のように発言した。
 第一に、長時間労働の是正であります。長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や女性の活躍を阻む原因となっています。戦後の高度経済成長期以来浸透してきた『睡眠時間が少ないことを自慢し、超多忙なことが生産的だ』といった価値観でありますが、これは段々ですが、そうでもない、生産性もないという雰囲気が、この3年間で大分変わり始めているのではないかと思います。私はまだ若いサラリーマンの頃、こういう価値観があって、8時くらいに帰ろうとするともう帰るの、という雰囲気があったわけですが、企業側に聞いたところ、政府が全体の労働時間の抑制や働き方を変えていくことについて、旗振り役を期待しているかということについて期待している人が90%ということは、皆帰るのだったら帰りたいということに変わり始めている。やっとそういう雰囲気に変わり始めたので、ここは、正に我々が更に背中を押していくことが大切であろうと思います。
(官邸のウェブサイト 2016年3月25日「一億総活躍国民会議」)
 そして、同年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」には、次のくだりがある。
(長時間労働の是正)
 長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参画を阻む原因となっている。戦後の高度経済成長期以来浸透してきた「睡眠時間が少ないことを自慢し、超多忙なことが生産的だ」といった価値観が、この3年間で変わり始めている。長時間労働の是正は、労働の質を高めることにより、多様なライフスタイルを可能にし、ひいては生産性の向上につながる。今こそ、長時間労働の是正に向けて背中を押していくことが重要である。
(官邸のウェブサイト内PDF資料「働き方改革に関する総理発言・閣議決定」 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai1/siryou3.pdf )

悪しき慣行の見直しに取り組む首相のメッセージに共感
 「長時間労働が当たり前」「長時間働くのが美徳」「早く帰るのは会社の組織風土の中では異端だ」といった、筆者も見聞きすることがあった日本の悪しき慣行の見直しに取り組もうという安倍首相のメッセージに、筆者は強い共感を覚える(付言すると、日銀の金融緩和への過大な期待など、経済政策の面で意見が異なることが多い筆者の場合、これは珍しいことである)。
 しかし、この「働き方改革」は、前途多難だと言わざるを得ない。
 まず、この改革は、視点(主たる狙い)が定まっていない。
 すでに述べた経緯などから浮かび上がるように、今回の働き方改革は、@少子化対策および女性の社会進出を推進することに主たる狙いがあるのか、それとも、A社会問題と化している非正規雇用の待遇改善(同一労働同一賃金の実現)が最重要なのか、あるいは、B過労死事件の発生でやはり社会問題となっている長時間労働の是正(残業規制強化)が最大の目玉なのか、それとも、C経営サイドから要望が根強い「ホワイトカラー・エグゼンプション」など賃金制度の抜本見直しが実は最大の主役なのか。

生産性が向上しないと、「仕事が回らない」事態も
 さらに、仮に上記Bが早期に実行に移される場合、労働者の業務遂行において生産性がにわかに向上しないと、労働時間の制約から半ば強制的に退社させられて、いわゆる「仕事が回らない」事態に陥ってしまうケースも考えられる。これは当面の経済活動にとり、ネガティブとなる可能性が高い。また、エコノミストの間では、残業代の支払い額がマクロで顕著に減少した場合、個人消費に下押し圧力がかかるのではと危ぶむ声もあがっている。
 もう一つ、筆者が危惧しているのは、女性・高齢者の積極活用や「働き方改革」に政府が注力するあまり、日本経済の長期停滞さらには衰退に結びつく可能性が高い人口減・少子高齢化の着実な進行という問題への取り組みがおろそかになってしまわないかという点である。

おろそかになる人口減・少子高齢化対策
 安倍首相は2016年9月21日にニューヨークで講演した際に、次のように述べた。
 最後に、良いニュースをお伝えして、スピーチを締めくくりたいと思います。私は、日本の人口動態に全く懸念を持っていません。日本では、この3年で生産年齢人口が300万人減少しました。しかし、名目GDPは成長しました。
 今を嘆くより、未来を見つめましょう。日本は高齢化しているかもしれません。日本は人口が減少しているかもしれません。しかし、この現状が、我々に改革のインセンティブを与えます。我々は、生産性を高めようとし続けます。ロボットからワイヤレスセンサー、ビッグデータからAIまで、全てのデジタル技術、新しいものを活用しようと思い続けます。ですから日本の人口動態は、逆説的ですが、重荷ではなく、ボーナスなのです。
(官邸のウェブサイト 2016年9月21日「安倍総理と金融関係者との対話」)
 この発言、特に「日本の人口動態に全く懸念を持っていない」というくだりに、筆者はどうしても賛同できない。
 「人あっての経済」というのが、筆者の根本的な考えである。労働生産性さえ向上すれば生産年齢人口が減少しても乗り切れるはずだという主張もあるが、では、具体的にどういったタイムスパンで何をどうやれば生産性が上昇するのか。テクノロジー先進国の米国でさえ、労働生産性の伸びの停滞に頭を悩ませているのが現在の状況である。
 人口の高齢化が急速かつ着実に進んでいるため社会のムードが沈滞しがちであり、しかも「外」からサプライサイドに刺激を受けること(海外からの「よそ者」受け入れによる社会経済の活性化)には依然として消極的な日本という国が、目覚ましい生産性の伸びによって人口減・少子高齢化の重しをこの先完全に跳ね返していけるとは、筆者にはどうしても思えない。

成長力への期待はかなり薄らいでいる
 2012年12月に「アベノミクス」が開始されてから4年以上の月日が経過した。その間、日本経済全体の中長期的なビューはどう変わったか。
 家計の場合、2013年にかけて(マイナス圏の中ながら)いったん急上昇していた経済成長力DI(回答比率「より高い成長が見込める」−「より低い成長しか見込めない」)はその後、ジリ貧とでも言えそうな動きになっている<■図1>。
■図1:生活意識に関するアンケート調査 経済成長力D1

(出所)日銀
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/031600086/zu01.jpg

 企業の場合、実質成長率の今後5年間の見通しは2011年度の調査で+1.5%まで上昇したものの、直近の2016年度調査では+1.0%に下がり、2008年度の水準に逆戻りした<■図2>。
■図2:企業行動に関するアンケート調査 今後5年間の見通し 名目および実質成長率

(出所)内閣府
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/031600086/zu02.jpg

 有効求人倍率など雇用関連の数字はきわめて良好だが、これは若年人口減少と過剰供給構造温存の組み合わせの中で起きている現象であり、経済の実力が上向いた兆候だとは、家計や企業は認識していない。人口対策の本格展開が引き続き待たれる。


このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/031600086/

 

社員の心を変えたいなら「説教」の前に「整頓」
トップリーダーかく語りき
武蔵野・小山昇社長の「写真で読み解く整理整頓」―前編:整頓のツボ
2017年3月21日(火)
日経トップリーダー
 ダスキンの加盟店業務の傍ら、中小企業の経営指導を630社以上手掛ける、武蔵野(東京都小金井市)の小山昇社長。徹底した現場主義で、人間心理に即した実践的な経営哲学と手法を説く。その持論にはときにアンチの声も聞かれるが、熱烈なファンが多くいる。
 そんな小山社長が人材教育の軸に据えるのが、整理整頓。特に整頓だ。新刊の刊行に寄せて、小山社長が考える整理整頓のツボを、前後篇に分けてご紹介する。
 うちの社員を性根から変えたい。部下の根性を叩き直したい。そう願ったことが一度もない社長や幹部は、まずいないでしょう。かくいう私も未だにときどき、そんな抑えきれない衝動に駆られます。
 しかし、社長や幹部が取り組む「社員の心を変える人材教育」のほとんどが、失敗に終わります。
「ありがたいお話」では、社員は変わらない
 その理由は、私の見るところ、社員の心を変えたいと強く願うあまり、社員の心に直接、訴えかけるからです。名経営者や名僧など、人格者と定評ある人物を研修に呼んで、みんなに「ありがたいお話」を聞かせる。あるいは、良書を読んで感動を語り合う。さらには、「心を一つに頑張ろう!」と皆で叫んで気勢を上げる。
 その心意気は尊いですが、悲しいかな、効果は今ひとつです。抜本的な問題解決になりません。
 人の心は不安定なものです。研修の直後には、やる気がみなぎっていた社員の「心の風船」も、帰宅後、奥さんにちょっと一言、嫌味を言われた瞬間、プシューッとしぼんでしまいます。これくらい安定しない心に対し、どんなに良い栄養を与えたところで、効果は長続きしません。
 だから私は、社員の心に直接働きかける教育はまずしません。
 形なき心ではなく、形あるモノに働きかけます。
 その筆頭が、環境整備。特に整頓です。仕事に使うモノを所定の位置に、所定の置き方で戻す。まず、この1点に絞って徹底させます。

本来「1、2、3……」の順に並ぶべきハンガーが、「6、1、2……」と並んでいるのを、社長(右)がダメ出し。4週間に1回、全社を1日がかりで回り、整頓や整理、清掃の状況をチェックする。そこでの1コマ(写真:的野弘路)
 我が社は、整頓を徹底している――。こう書いたばかりですが、「徹底」は、曖昧なわりには乱用されがちで、混乱を招きやすい言葉です。
 私は「徹底」を、次のように定義しています。
 「他人が見たら異常と思う結果にすること」
我が社の整頓は「異常」である
 整頓の基本は「定位置管理」です。決まった場所に、決まったものを置く。向きをそろえて1ミリもずらさず、元あった場所にピタリと戻す。そのために私が経営する武蔵野の現場で、どんな工夫をしているか、ざっと写真で紹介します。
 「本当に、ここまでやる必要があるか」
 「この会社は、ちょっと異常じゃないか」
 そう感じていただけるなら、何よりです。

ポリエチレンシートを文房具の形にくりぬき、ピタリと収納。ハサミやカッターを取り出しやすいよう、立てているのもポイントだ(写真:鈴木愛子)

文房具にマグネットシートを貼って、ホワイトボードにペタリ。原寸大のカラーコピーで「貼り場所」を一目瞭然にする(写真:的野弘路)

ノートパソコンに電卓とテンキー、マウスをセットにして置くのがルール。原寸大のカラーコピーで置き場所を示せば、誰でもピタリと戻す(写真:鈴木愛子)

清掃サービスを手掛ける部署。洗剤も爪楊枝も何個の在庫を持つかをルール化して徹底。すべての備品をナンバリングする(写真:鈴木愛子)

予備のトイレットペーパーも「ココに2個置く」のがルールだと、誰もが一目でわかる(写真:的野弘路)
 武蔵野では毎朝、始業後に30分、パート・アルバイトも含めた全従業員が「環境整備」に取り組みます。当番表に従って、床にワックスがけをしたり、蛍光灯を磨いたり、窓を拭いたり、会社の周辺のゴミ拾いをしたり、各自が自分に割り当てられた場所をきれいにします。

毎朝30分、就業時間内に全従業員が、環境整備に取り組む。特に社長のチェックが入る日は、窓ふきや天井の掃除まで入念に行われる(写真:的野弘路)
 このようなことをしていると、ときどき、「全社で、掃除に取り組んでいるのですね」と、勘違いされる方がいます。
 掃除と環境整備は、一見、似ているようで、目的がまったく違います。
 大事なポイントなので、しっかり押さえてください。
自宅の掃除と、職場の環境整備の違いとは?
 掃除の目的は、ある一定の場所を「きれいにして、快適に過ごせるようにする」ことです。
 一方、環境整備は、四字熟語を分解すれば、「環境を整え、備える」ことです。
 それでは、何に備えるのでしょうか。
 もちろん、仕事に備える。
 環境整備の目的は、「仕事をやりやすくする」ことです。引いては、「生産性を高め、儲かりやすくする」ことです。
 先ほど写真も使って紹介した定位置管理は、基本中の基本です。
 決めた場所にきちっと戻せるようになったら、その場所でいいかの検証です。
 iPadで済ます業務が増え、パソコンを使う機会が減った――。そういう変化があれば、モノの置き場所を変えます。使用頻度に応じた並べ替えで、仕事をやりやすくする。
 並べ替えて新しい置き場所を決めたら、再び定位置管理を徹底します。
 この繰り返しで、現場が強くなる。変化対応能力が高まり、らせん階段を上るように社員が成長する。
 本題に戻りましょう。
 「社員の心を変えるには、何をしたらいいか?」
 私は、整頓を徹底します。なぜか?
 そもそも皆さんは、社員や部下に、どんな心を持ってほしいと考えているのでしょうか。ここが曖昧では教育の方針がブレます。
 私が何より求めるのは「素直な心」です。
 より具体的にいえば、「自分より結果を出している優秀な人がいたら、その人の仕事のやり方をそのままマネする」ことです。仕事で結果を出し、成長するには、このような「デキる人のマネ」が一番の早道です。しかし、素直に実行できる人は実に少ない。
 このような素直な行動の重要性を、社員に納得してもらうのに最良の方法が、整頓です。
整頓の極意は「形から入って、心に至る」
 なぜなら、整頓とは、先人たちが「モノをこう置けば、仕事がやりやすい」と実証したやり方を、そのままマネすることにほかならないからです。
 我が社は「文房具は向きをそろえて並べる」のが、整頓のルールです。
 慣れない新入社員にとっては、あまり気の進まない、嫌なことですが、上司が口やかましく言ううえに、できないと賞与が減るので、嫌々ながら、このルールを守るようになっていきます。
 すると、あるとき気づきます。「確かにペンの向きがそろっていると、サッと取り出せて便利だ」「だから仕事のスピードが上がる」と。こうして「上司や先輩の仕事のやり方をマネることには、確かにメリットがある」と、納得します。
 こうなれば、上司や先輩のほかの話にも耳を傾けます。素直な心を持って、上司や先輩の仕事のやり方を学びます。
 他人の勧めることを、嫌々ながらでもやってみる。
 これは、とても大事なことです。そこには、社会人として成長するための普遍のセオリーが隠されています。しかし、上司や先輩が勧める「やるべきこと」と「そのことをやるメリット」が、抽象的で分かりにくいと、部下や後輩は、その真理に気づいてくれません。
 だから、整頓です。整頓は、気の進まないことを「目に見える形で実践」することです。その結果として、「目に見えるメリット」が得られます。だから誰もが、「他人が勧めることを嫌々ながらでもやる意義」に気づきます。このセオリーを、お説教や訓話といった形で直接、社員の心に訴えても、社員の心は変わりません。一時の感動を得ても、すぐに元の木阿弥です。だから、日々の整理整頓というモノを介する形でしつこく働きかけ、社員の心を少しずつでも、確実に変えていきます。
 「形から入って心に至る」――これが、整頓を通じた人材教育の極意です。
(編集・構成:日経トップリーダー)
小山社長の新刊『小さな会社の儲かる整頓』が発売です。

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このコラムについて
トップリーダーかく語りき
自ら事業を起こし数々の試練を乗り越えて一流企業に育て上げる。引き継いだ会社を果敢な経営改革で躍進させる――。 こうした成長企業のトップはどう戦略を立て、実行したのか。そして、そこにはどんな経営哲学があったのか。日経トップリーダー編集部が創業経営者やオーナー経営者に経営の神髄を聞く。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/269473/031000074

http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/338.html

[政治・選挙・NHK222] 「教育勅語」を問題視しない人の超危険度 カミカゼの精神的支柱 サイバー攻撃で滅ぶ日本のインフラ CIA巧みなハッキング
「教育勅語」を問題視しない人の超危険度
国民皆兵と靖国神社につながる誕生の背景を忘れるな
2017.3.18(土) 伊東 乾
安倍首相、靖国神社に玉串料奉納 議員ら集団参拝
都内にある靖国神社で、集団参拝を終えて退出する「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の所属議員たち(2016年8月15日撮影)〔AFPBB News〕
前回、「教育勅語」は大日本帝国憲法と両輪として構想され、「国民皆兵」を基礎に据える近代日本国家の軍制備に必要不可欠な精神訓として整備された経緯を見ました。

(前回の記事)「幼児に教育勅語を暗唱させる時代錯誤と大問題」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49446

さて、ここで改めて考えて見ましょう。

日本という国を考えるうえで、この「国民皆兵」という考え方は、善くも悪しくも画期的なものでありました。

どうしてか?

士農工商という言葉があります。徳川幕府260余年を通じて、刀剣の類を身に帯びた「武士」が支配階級であって、その下に農民も職人も商人もかしづいた。

大名行列などの類に「頭が高い」とやられると、地べたに土下座させられるのは珍しいことでなく、無礼があれば斬り捨てご免、実に理不尽な体制が長く続きました。

それが「四民平等」と呼ばれるようになる背景は何であったのか?

江戸時代、「士農工商」で武士とされた人々の軍備は刀や槍、弓矢や馬が中心で、鉄砲飛び道具の類は微妙に卑怯、集団戦法などは邪道であって、

「やぁやぁ遠からんものは音に聴け、近くば寄って目にも見よ」

式の、牧歌的な果し合いが主流であって、宮本武蔵でも清水一角でも、剣士個人の技量がものをいい、また召抱える側からしても、個人として優秀なサムライへの評価が高かった。

それではいけない!そんなことでは欧州列強の侵略、植民地支配に対抗してはいけない、というのが大村益次郎こと村田蔵六の考え方で、そこから国民皆兵の発想も、東京招魂社、つまり後の靖国神社に至る発想も生まれてきたわけです。

この考え方の源流を探訪してみましょう。

「個性」不要の近代軍備

「太平の眠りを覚ます上喜撰(蒸気船)たった四杯で夜も眠れず」

とは「黒船」こと蒸気船で来航したペリー一行の開国要求に右往左往する江戸幕府を揶揄した狂歌で、「じょうきせん」は宇治の上等のお茶の銘柄。カフェインの強い喜撰と蒸気船4艘とをかけて、たかだか4つ黒船が来ただけで幕閣が上を下への大騒ぎをからかったものでした。

ところで、なぜ、黒船が来たとき、幕府首脳はそこまであわてたのか?

答えは「大筒」つまり大砲にあります。ペリー艦隊4隻の軍事装備を見てみると

旗艦サスケハナ号10インチ砲3門8インチ砲6問
ミシシッピ号10インチ砲2門8インチ砲8問
プリマス号8インチ砲8門32ポンド砲18問
サラトガ号8インチ砲4門32ポンド砲18問

と、単純計算しただけで70門近くの大砲を山積みした真っ黒の船が江戸湾沖にお城を狙う形で入港したわけですから、夜もおちおち寝ておられず、幕閣はまさに「たった四杯で」の状況になってしまった。

こんな近代軍装備の前で「やぁやぁ、遠からんものは・・・」なんて名乗りを上げていても意味はありません。チュドーンとやられればおしまいです。

近代軍備に個人的な武勇に優れた英雄は必要ないのです。それは軍備対軍備の戦い、装備に勝った勢力が、いずれは敵を圧倒してしまう、ある意味でまことにつまらない戦争になったと言えるかもしれません。

そこで必要とされるのは・・・個性的な剣客、佐々木小次郎や柳生十兵衛の勇猛ではなく、小銃何丁を持った何個小隊がどのように布陣しどう展開するか、というウォーゲーム的近代戦だったのです。

個人対個人の戦いではなく、装備によって決定される、いわば確率的な戦いで、最終的には期待値に勝る側が勝利を収めるという、没個性的な兵法。

古典的な果し合いとしての優雅な日本型合戦ではなく、装備さえ揃っていれば、それを操作する兵隊の個性はほとんど問われることがありません。かつて織田信長が鉄砲を大規模に導入し勝利を収めて天下人となった「長篠の戦」を大規模に再現するようなものでした。

こうした経緯を冷静に見つめていたのが、靖国神社の創設者、医師で兵法家の村田蔵六でした。

国民皆兵と靖国神社

大村益次郎こと村田蔵六は卓越した語学の力と不屈の意思をもって独学で西欧兵法を学んだ傑物でした。

と同時に、十分醒めた合理的な思考のできる人物でもあった。敵の戦力が自ら消耗するのを待つ、被害が大きいと想像される場所に薩摩兵を配し、それによって薩摩の恨みを買って最後は暗殺される、といった説が根強く囁かれるのも、そうした冷徹さに起因することかと思われます。

村田蔵六は、武士がプライドをかけて固執していた個人対個人の戦いを完全に否定して、19世紀欧州のグローバルスタンダードで軍事を思考することができました。

戊辰戦争、上野の山の彰義隊討伐に当たって、村田は見通しのよい昼間に敵を消耗させ、午後になって敵が疲れてきたあたりのタイミングから近代火器である「アームストロング砲」を撃ち始めます。

これは鍋島藩が有田焼や伊万里など、東洋の白ダイヤとして高く売れた磁器を外貨産物として手に入れた近代火器であったと思われます(私たち佐賀の人間はこのあたりに敏感です)。

こんなものをぶっ放された日には、いかに佐幕派が勇猛だろうと、白虎隊のローティーンが決死の覚悟をしようと、ひとたまりもありません。

古典的な日本武士の兵法に依存しがちだった同僚が「戦いが夜に及んでは・・・」と心配するなか、村田蔵六は全く動ぜず、懐中時計を見ながら「夕方には終わるでしょう」と落ち着いていたそうです。

果たしてアームストロング砲、いまで考えれば「ボム」ですね、これが炸裂し始め、日が傾くころ上野の山で火の手が挙がると

「もう終わりました」

と江戸城の物見から平然と言い放ち、その言葉のとおりに官軍勝利を伝える伝令が、前後して駆け込んできたそうです。

兵力はすでに、「やぁやぁ遠からんものは音に聴け」という武士の専権事項ではなくなっていた。

アームストロング銃であれ、ほかの近代重火器であれ、その操作に習熟した者であれば農民でも職人でも商人でも、誰でも操作でき、子供のころから剣道など仕込まれた侍を文字通り木っ端微塵に爆殺することができる。

同様に、日本を襲う海外列強の植民地支配にも同じ武力は効果を発揮するでしょう。

必要なのは冷徹な合理性であり、適切な練兵による「国民皆兵」のシステムで、個々の兵隊には顔はない、いや顔などあってはならない。そういう確率、統計的な思考が、長州の軍師、村田蔵六の念頭にはあったと思います。

これに対して薩摩は違った。大久保一蔵(利通)などは、郷士という形ですが、武士が戦うということに固執した典型でした。西郷もまた然り。

明治初年の10年で駆逐されてしまった「不平士族」の大半は、この勇猛果敢な武士というイメージを捨て切れなかった人たちと言っていいかもしれません。

実際、戊辰戦争を率いた西郷、大村、板垣の3人は暗殺、反乱自刃、失脚といった形で(少なくとも一度は)表舞台を去り、板垣は自由民権運動なる形で不平士族の憤懣を閥族政府に対するカウンター・パワーとしてまとめる役割をおいおい担うことになるわけですが・・・。

この、近代兵器戦で活躍するのは、個別の顔のない兵士です。剣豪はすでに不要で、命令に忠実で、一定の確率的な割合で命を失う、でもそのことに動じないという意味で勇猛果敢な、いわば部品、パーツとしての兵隊がいなければ、いかな近代火器といえども効力を発揮しません。

大村益次郎・村田蔵六は、そうした「個人の名と顔を持たない兵士」のケアをよく考えました。

医師でもあった彼は、兵站の中で陣中での食料の補給に気を配ります。例えば、せっかくのアームストロング砲を扱う兵士が空腹でフラフラしていたら、当たるものも当たりません。

また万が一、敵に砲を奪われてはとんでもないことになります。将棋でコマを取られるようなものですね。

ちなみに将棋の「駒」を取るというのは、自軍の軍馬を敵に持ってゆかれることに対応するわけで、これが重火器となると、勝敗をひっくり返す大事になってしまいます。

大村はまた、確率的に命を落とした無名戦士を合祀する、西欧重火器近代戦に対応した新しい戦没者慰霊の形を考えました。それが「東京招魂社」つまり靖国神社です。

靖国神社の発想は、決して江戸時代以前にはあり得ません。武士が軍事を担うとき、戦の勝敗は家代々の名誉であったり恥辱であったりしますが、常に名を持ち顔がついており、現実に首実検として切断して運んでいた。

私たちは日本人は1867年前後まで、東アジアの首狩り族であったことは、冷静に認識しておく必要があります。宿場の外れには「獄門台」と証する見せしめの首置き場が普通にあった。それが日本の封建時代の現実です。

大村はそういうものと決別して、モダンで名のない、集合的・統計的な「魂」を祀りました。「英霊」という概念の原点です。

間違っても「英霊」を日本の伝統などと誤解してはなりません。江戸時代まではサムライが軍事を司り、農民や職人が武器を取ることは「一揆」として厳密に警戒されていた。

それらがこぞって武器を手にして「国を守る」さらには「そのために命を懸け」実際に「見事散りましょ国のため」というのは、四民平等という一見すると近代的な平等主義と見え、その実、統計的に生死が振り分けられる「国民皆兵」のための準備でした。

しばらく前まではもっぱら畑を耕し魚を獲っていたあんちゃん、おとっちゃん連中が、いつのまにやら練兵されて「臣民」として近代装備軍の兵士として再編成されて、日本は「国民軍」を擁する東洋の雄、列強の一に加わって、日清戦争という一大キャンペーンに打って出るわけです。

このとき、一人ひとりが火器を手にする「国民軍」正確には臣民ですが、彼らが謀反を起こしたりした日には、維新政府はひとたまりもありません。

で、これを縛る精神訓として準備されたのが「教育勅語」にほかなりません。大日本帝国憲法は帝国臣民(男子)すべてに兵役の義務がある、と謳いましたが、その精神的な内実は憲法に明記されなかった

しばしば美化される12の徳目のオチの部分をよく見てみましょう

11常ニ国権ヲ重し国法に遵ヒ
12一旦緩急アレハ義勇公に奉シ以テ天壤無窮ノ皇運を扶翼スヘシ

つまり

11大日本帝国憲法を基本とする国の法を尊重して秩序・軍律を遵守し
12国家に危機が迫ったならば、忠義をもって勇敢に、公のために尽くし、これによって永遠に終わることのない天皇の国運を扶養すべく翼賛しなさい

と命じられている。この命令の一人称の主語は「朕」つまり「神聖にして侵すべからざる」天皇自身であるというのが、この作文のミソです。

平時に親孝行だ兄弟仲良くだといった秩序維持は言うまでもなく、はっきり書いてしまえば、個々人の命は有限だけれど、神聖な皇国のいやさかは永遠なのだから、そのために死ね、一身を捧げてね、と書いてある。

別段大げさではなく、徴兵は「血税」と言われた通りで、私の両親(両方とも大正生まれで父親は学徒として出陣、戦闘に参加し、殺し殺される最前線でソ連兵を撃ったりしています)の世代までは、極めて普通に常識として捉えられていたことに過ぎません。

ここで「軍国主義」という言葉を私は用いません。教育勅語の350文字ほどの文言の中に、1つでも「あなたらしく」「個性的で」「多様な価値観を遵守し」「幸せに生きて」といった言葉があるでしょうか?

ありません。

あるのは「爾臣民」とか「億兆」とか、群集を示す無名化、匿名化した標語ばかり、つまり顔がなく、名がありません。

もしあなたが、自分の子供に、その子の適性に合った自分らしい人生を幸せに全うしてもらおうと思ったら、統計的に扱われ、確率的に死ぬことを前提とする、部品としての近代装備に組み込まれるのを是とする、明確な利害目的をもった呪文を客観的、冷静に見つめる知性を、子供にしっかり教えておくことが重要でしょう。

幼稚園児に分別はありませんが、私が小学1年次に46歳で死んだ、シベリヤ抑留帰還兵だった父は、すべての理非を分別する知性の大切さを、わけも分からない幼児の私に徹底的に叩き込んで、戦後の捕虜時代に芽ができたと思しい末期の肺がんで短い命を閉じました。

一時の陶酔に騙されてはいけない。合理的に考えて自他共に納得のいくものを、自他共に長く協力して生きていくことが大切。同学年であった三島由紀夫の自殺ごっこに、父が驚くほど冷淡だったことは、幼稚園児の私の心に強く焼きついて残っています。

思考停止と不合理な自己犠牲、滅私奉公を美化するマゾヒズムを幼稚園児の心に焼きつける罪は深いと思います。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49474


 
世界に恐れられた「カミカゼ特攻隊」の精神的支柱
徳もあるから信じ込まされた「教育勅語」真の狙い
2017.3.21(火) 伊東 乾
原爆投下は必要だったのか? オバマ氏広島訪問で議論再燃
米首都ワシントンのスティムソン・センターが所蔵する、1945年8月に投下された原爆のきのこ雲の写真〔AFPBB News〕
教育勅語の問題を扱って、先週立て続けに2本、コラムを掲載する形となりました。

読者からのリアクションなどを見つつ、これは補っておかねばならないな、と思ったのは、戦前の日本では教育勅語が、法律に優先する社会道徳規範として、擬似宗教教学として義務教育において国民に強制されてきた、現実の「行為」の側面です。

この行為には舞台と道具立てがありました。

「奉安殿」と「ご真影」です。

こうした、かつては完全に日本人の常識であったディティールを全く知らずに、右傾化した議論であれ、左傾化した議論であれ、まともな考察は成立しないでしょう。

前回も今回も、私が引くのはごくごく当たり前の史実だけで「偏見に満ちた」論説などでは全くないのは、普通に関連の基礎を修めた方なら誰もが首肯してくださると思います。

すなわち「教育勅語」と「奉安殿」「ご真影」は3点で1セットにほかなりません。加えて言えば、これらへの「最敬礼」すなわち服装を正して最も深く頭を下げるという、江戸時代の大名行列よりどぎつい身体慣習の強制がなされていたこと。

これらを見ずして「教育勅語」という文章だけ取り出しても、1890年代から1945年に至る(あるいはその影響は戦後まで残っているわけですが)日本に落としたこの文書の影響を斟酌することはできないでしょう。

子を戦場に送り出したい親がいるか?

戦前、赤紙と呼ばれた召集令状が送られて来ると、青年男子は徴兵に応ずる義務があり、適所に出頭せねばなりませんでした。別段偏見でもなんでもなく、大正14年生まれの私の父も昭和19年10月に19歳で応召、満州に大日本帝国陸軍二等卒として出征しました。

こういうとき、出征兵士を送る場面をドラマなどで目にすると思います。

「なんとか君バンザーイ」「天皇陛下バンザーイ」「大日本帝国バンザーイ」

という、千人針などを持たせたりするあの風景です。

実際は、子供を戦地に送り出したくない親や家族、特に母親は決して少なくなかったはずです。しかし、世間体その他を憚って、

「お国のために立派に戦って、死んできなさい」

などと言わされる母親像は、ドラマでもしばしば見かけるでしょう。で、気丈夫に振る舞いながら影で泣き崩れるといったシーンがフィクションでは描かれます。

事実は小説より奇なり、と言いますが、実際、日本全国でこの種の出来事があって、1945年に至る戦争に歯止めが利かなくなりました。

しかしここで、あらゆる偏見を捨て、冷静に考えてみてください。

1867年、明治維新以前に、国民の8割以上を占める農民、あるいは商人職人などの町人に、武器を取ってお国のために戦う習慣、そこで命を捨てることを是とするイデオロギーや信仰があったでしょうか?

ありません。そんなもの一切ありません。

では1877年、西南戦争時点ではどうか。やはりありません。10年後の1887年、明治20年にもそういう考え方は日本全国に浸透していない。

ところが1897年、明治30年になると、形勢が変わっていることに注意すべきでしょう。日本は明治27〜28(1894〜95)年にかけて「日清戦争」を戦い、これに勝利し、関連で動いた経済などがあり、世間は大いに変わりました。

軍隊に出たことで実際に家計が助かった所帯も多く存在した。こうなると、世の中が本当に変質します。

「死んでもラッパを口から話しませんでした」という木口小平一等卒など、多数の軍国美談が語られ、メディアはそれを喧伝し、政府も学校もその色彩一色に染まっていきます。

実際に戦勝によって賠償金がもたらされ、八幡製鉄所や京都大学も建設されて、日本が近代重工業国家として大きく飛躍してゆく端緒が切り開かれた。こうなると本物になってしまいます。

さらに1907年、明治40年を過ぎると、お国のために戦って名誉の戦死という概念は完全に日本に定着していきます。

これに先立つ明治37〜38年の日露戦争戦勝までの過程で、旅順戦で命を落とした「広瀬武夫中佐」を筆頭に「軍神」と呼ばれるような軍国美談の主人公が国民に広く知られるようになり、家族が1人「名誉の戦死」を遂げると遺族は社会的に称揚され、経済的にも潤うという、リアルな現実が動いてしまいます。

こうした中で、国家神道教学を義務教育就学生に生活習慣として定着させたのが「奉安殿」ご真影への礼拝であり、「教育勅語」の奉読儀礼であったわけです。

崇拝儀礼の調教システム

「教育勅語」と切っても切れない関係にある「ご真影」について簡単に触れておきましょう。きちんと扱う際には別の稿を準備したいと思います。

亡くなられた哲学者の多木浩二さんに「天皇の肖像」(1988)という力作があります。

明治新政府が、大半の日本国民にとって未知の存在であった「天皇」なるものをいかにして「日本人」に定着させていくか、その過程をつぶさに扱う「天皇の可視化」戦略の中で「御巡幸」さらには「ご真影」というメディア形式が整えられていく過程を扱われた仕事で、当時大学生だった私は大きな衝撃をもって岩波新書の初版を手にした記憶があります。

その後、約30年の経験を通じて「ご真影」に関してもう1つ思うのは「ごしんねい(ご真影」という別の概念です。

浄土真宗では、宗祖親鸞聖人の像や画像を「ごしんねい」と呼んで尊崇の対象とします。ごしんねいの収められたお堂は「御影堂」あるいは「影堂」などと呼ばれますが必ずしも真宗ばかりのことではなく、日本に仏教が到来してこの方、ずっと踏襲されてきたものです。

例えば、奈良の唐招提寺には開山である鑑真和上の姿を刻んだ国宝の乾漆像が伝わりますが、これが収められているのも御影堂です。

ただ、真宗の場合はこの宗祖崇拝が門徒大衆の末端まで行き届いたことに特徴があります。日頃、田畑を耕しあるいは漁労に勤しむごく普通の人々、大半は文字を読むことも書くこともできません。

そんな中世近世の一般大衆の心に、文字や能書きを超えてダイレクトに働きかけた力の1つが「ご真影」でした。

浄土真宗の説教には、蓮如が三井寺に預けたご真影を返してもらうために息子の首を切って差し出した堅田の漁師源右衛門・源兵衛親子の殉教譚など、凄まじい命がけの話が多数伝わっています。

極度に堅固な運命共同体を形成した浄土真宗教団=「一向宗」は戦国大名を駆逐して加賀に自治コミューンを成立させ、近江、三河、越前、加賀、能登などに攻略不能な真宗王国を建設します。

比叡山を焼き討ちにし、僧兵の首をなで斬りにした織田信長をもってして、和議を結ぶしか方途がなかったのが、蓮如の隠居所だった石山本願寺との戦争、石山合戦でした。

何しろ、道端で手まりをついて遊んでいる女の子だと思っていたら、その子供が刺客で大将 が殺された、というほどに少年少女兵にまで「ジハード」が徹底しており、いかな信長といえどもこればかりはどうにもならなかったなどと宗門では伝えられる結束の強さ(こうした話題については、拙著「笑う親鸞」などをご参照いただければと思います)です。

明治政府が大日本帝国憲法を発布して「臣民皆兵」を謳ったとき、これに反対する層が一番最初に憂慮したのが「民百姓に武器なぞ持たせたら、必ず一揆を起こして反乱になる」というリスクでした。

この「陰謀公家」的な心配、実際、明治初年に三条実美や岩倉具視はリアルに「一揆」を懸念したと言います。

これに対して、一揆を防ぐには一揆に如かず、と日本史上最強の一揆である「一向一揆」の人身収攬技術を吸収、転用したものとして、大日本帝国が導入した「ご真影」崇拝の制度を捉え直すことが可能だと思います。

唐招提寺にもあった御影堂は一向宗門徒の「ごしんねい」崇拝という実績を経て明治期の学校に設えられた「奉安殿」へと受け継がれます。

そこに納められた天皇皇后の写真が火事で燃えたというような際に校長が死んでお詫びするという、極端なメンタリティにも、真宗の積み重ねが強く影響しているように思われます。

浄土真宗では開祖親鸞聖人の作として、編著とも言える「教行信証」が重視されますが、親鸞は同じ内容を手まりをつく少女にも理解できるように「今様」という歌に編みなおしています。

これが「ご和讃」として伝えられるものです。また中興の祖・蓮如上人は各地の門徒に多数の手紙を出しており、これを御文章(本願寺派)御文(大谷派)として尊びます。

近代の創成になる「国民皆兵」の「帝国臣民軍」に一向一揆の強烈さを備えさせるうえで、この「宗祖聖人の言葉」として機能した面を考えることができるのが「教育勅語」のもう1つの横顔ではないかと思うのです。

この種の話を欧米人とすると、首肯してもらえることが少なくありません。

すなわち、第2次世界大戦末期、確実に死ぬと分かっていながら突っ込んでくる「カミカゼ」は、理解を超えた狂信として連合軍には純然と恐怖の対象でしかなく、ついにはその制止のため、として広島長崎の原爆まで投下されてしまった。

この理不尽な命がけの「滅私奉公」は、まさに教育勅語に記されている精神具現化の極限であるとともに、蓮如以来の一向宗、あの信長が往生し和議を結ぶしかなかった浄土真宗の強烈なメディア影響力とまさに同質の側面を指摘できるでしょう。

「教育勅語」を幼稚園児に暗記暗誦させる、という一事を取り出して細かに検討すると、日本が中世から現在まで刻んできた様々な歴史の明暗、特に極端な暗部を含め、様々な要素がくっきりと浮き彫りになってきます。

これら、何一つ偏ったものの見方ではなく、各々の専門の観点からは常識とされる内容を書き綴ってきただけに過ぎません。

加賀一向一揆や石山合戦で恐れられ、第2次大戦末期に諸外国から恐怖されたのと同様の狂信的な自己犠牲、自爆攻撃にすら直結する本質のすべてが、あの短い文の中に洩れなく記されている。

「教育勅語にも良い面がある」というのは、ナチスの政策にも福祉はあったと言うのと同じで、そもそもの土台が全く分かっていない頓珍漢な欠伸のようなものと思うべきです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49479


 


米軍は臨戦態勢、サイバー攻撃で滅ぶ日本のインフラ
HONZ特選本『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』
2017.3.21(火) HONZ
本当に読むに値する「おすすめ本」を紹介する書評サイト「HONZ」から選りすぐりの記事をお届けします。

(文:久保 洋介)

ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する
作者:山田 敏弘
出版社:文藝春秋
発売日:2017-02-28
2016年のアメリカ大統領選挙でトランプ氏を援護射撃するようなサイバー攻撃をロシアがしかけていたことには驚いたが、その後、アメリカが分かりやすくサイバー空間で反撃していたのにも驚いた。ロシア政府高官のメールが暴露されたり、ロシアの銀行が大規模なサイバー攻撃を受けたりと、次々とロシアがサイバー攻撃を受けている。しかも、バイデン前副大統領がロシアへの反撃をほのめかしたすぐ後からだ(もちろん両国ともにそれぞれ関与を認めていないが)。

今ではサイバー空間を介した「見えない」国家間の衝突は恒常化しつつあり、まるで小競り合いが続いていた第一次世界大戦前のような様相を呈している。

そんな混沌としたサイバー空間での国家間の小競り合いを、各国の最前線にいるプレイヤーの言葉で臨場感溢れる描写をしているのが本書『ゼロデイ』だ。サイバー攻撃の歴史から、サイバー最強国のアメリカをはじめ、ロシア、中国、イスラエル、イラン、北朝鮮といったサイバー先進国の政策や攻撃の実態を掘り下げている。サイバー空間での国家間の攻防を理解する上でこの上ない一冊だ。

傍若無人でえげつないアメリカ

国家主導型サイバー攻撃の威力を最初に世界に知らしめたのはアメリカとイスラエル。2009年末にサイバー兵器「スタックスネット」を使い、遠隔地からイラン核燃料施設の遠心分離機を破壊させるという離れ業だった。当時アメリカ大統領で作戦を指揮したオバマは、世界で初めて破壊的なサイバー攻撃を実行した大統領として後世に語り継がれることとなろう。

本書では、第1章から第3章が、この「21世紀のマンハッタン計画」とも呼ばれるサイバー兵器スタックスネットの作戦が臨場感あふれる文体で描いている。ブッシュ・オバマ両大統領の指揮下で秘密裏に開発された経緯や、オバマ政権下で実行される様子、ドイツ人エンジニアによってその正体が発覚するまでの過程など、息をのむような展開だ。

中盤の第6章から第9章では世界最強サイバー大国アメリカの実態が深堀りされている。一部、元NSA(アメリカ国家安全保障局)職員のスノーデンの内部告発によって暴露されているが、手段を選ばずにあらゆる情報を収集し、サイバー攻撃を実施する傍若無人でえげつないアメリカの姿がこれら章からみてとれる。NSAの中でも攻撃的サイバー攻撃を最初に実行する部隊であるROCのモットーが、そのジャイアンっぷりを物語っている。

“あなたのデータはわれわれのもので、あなたの装置はわれわれの装置である ”

売買されている極秘の武器

そんなアメリカが、今、血眼になって集めているサイバー兵器があるという。「ゼロデイ」という、一般にまだ気づかれていないプログラム上の欠陥だ。その脆弱性を突いて悪用するサイバー攻撃はゼロデイ攻撃と呼ばれており、防ぎようがない。いくらセキュリティ・ソフトをインストールしていても対処不能。高性能のセキュリティ・ソフトといえども、既知のウイルスは駆除できるが、世に知られていない脆弱性を攻撃するマルウェア(悪意ある不正プログラム)はスルーしてしまうのだ。世界最初のサイバー兵器スタックスネットは、このゼロデイ脆弱性を少なくとも4つ駆使することで完璧な攻撃が実行できたという。

本コラムはHONZの提供記事です
現在、この最も危険で極秘の武器は主に闇で売買されており、一つ当たり億円単位の高値がつくこともある。各国サイバー機関はこのゼロデイを秘密裏に購入しているそうだが、なかでもアメリカの買い漁り具合は凄いという。世界最強のサイバー国として君臨すべく、いつでも秘密裏にサイバー攻撃が開始できるよう様々な用途・形態に使えるゼロデイ脆弱性を集め、隠し持っているのだ。

いつサイバー攻撃を受けてもおかしくない日本のインフラ

後半の第10章から第12章では、アメリカ以外のサイバー先進国の政策やその実態を取りあげる。ロシアによるアメリカ大統領選への介入、中国が産業スパイから軍事的工作に力をシフトしている実態、独自路線で暗躍するイランや北朝鮮のサイバー戦略など、サイバー空間がこれまで以上に混沌としている様子が伺える。とくだんロシアとアメリカの攻防は手に汗握る展開だ。冒頭のアメリカ大統領選前後の攻防はまさに戦争に発展してもおかしくない緊張感ある攻防である。

最後のエピローグでは、そんな混沌としたサイバー空間の中で日本はどう立ち振る舞うべきかを著者が指南する。

本書によると、アメリカ軍は、日本のインフラが中国のサイバー攻撃によって壊滅的被害を受けるケースを想定し、軍のシミュレーションを組んでいるそうだ。昨今のサイバー攻撃は日本にとっても対岸の火事ではいられない。日本の発電所、ダム、石油精製工場などのインフラはいつサイバー攻撃を受けてもおかしくない状況なのだ。独自に守れる体制を敷く必要はないのだろうかというのが著者の問題提起である。

インターポールで日本人ハッカーが活躍

ところでこのエピローグに登場する、インターポール(国際刑事警察機構)のサイバーセキュリティー部門で活躍する日本人ハッカー福森大喜氏の話が面白い。グーグルやアメリカ海軍学校主催の数々のハッキング大会で活躍し、今ではインタポールの精鋭として活躍する。本書インタビュー時の担当案件は「歴史上最も大胆なサイバー強盗」と呼ばれるバングラディッシュ中央銀行口座から約90億円もの預金を強盗した事件だという。

また、本書では記載されていないが、このサイバーセキュリティー部門のトップは日本人が務めているという。ぜひ次は彼らを中心としたノンフィクションを出版して欲しい。


サイバー・クライム
作者:ジョセフ・メン翻訳:浅川 佳秀
出版社:講談社
発売日:2011-10-13


久保 洋介
1985年、大阪生まれ。幼少時代を大阪・長崎・ニューヨークで過ごす。京都大学法学部在学時には、日本文化を紹介するイベントを企画し、「京都大学総長賞」「京都学生人間力大賞」を受賞。現在は総合商社にてエネルギー資源開発担当。好きなジャンルは、評伝、世界史、サイエンス。


◎こちらもおすすめ!
・宇宙植民の可能性を問う──『宇宙倫理学入門──人工知能はスペース・コロニーの夢を見るか』
・『鉄道と国家』鉄道建設に関わった男たち
・『大停滞』
・『どうすれば人を創れるか』石黒浩
・『リーマンショック・コンフィデンシャル』金融危機時の人間ドラマ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49470

 
ハッキングできないものなし、CIAの巧みな手口
シリコンバレーNext
2017年3月18日(土)
瀧口 範子
 「Wikileaks(ウィキリークス)」が、米CIA(中央情報局)のハッキング手法に関する膨大な内部文書を公開した。これは2013年にエドワード・スノーデン氏が告発した米NSA(国家安全保障局)の機密情報よりも深刻な問題とされている。アメリカのテクノロジー関係者にとってはショッキングな出来事だ。
 Wikileaksが2017年3月7日に第1弾として明らかにしたのは、943件の添付資料付きの7818ページにも上るCIAの内部文書だ。Wikileaksはほかにも大量の文書を保有しており、その中にはハッキングツールなどのソースコードが数億行も含まれていて、CIAがスマートフォンやコンピュータ、インターネットTVなへどう侵入するのか、その手口が明らかになっていると主張している。
 Wikileaksのプレスリリース(図)によると、今回の内部文書は政府の元工作員や請負業者の間で「未認可の方法で」回覧されていたという。人物は不明だが、そのうちの一人が国民の間で議論されるべき問題だとしてWikileaksに提供したという。

図●Wikileaksのプレスリリース
出典:Wikileaks
 この事件がスノーデン氏のケースと異なっている点は、今回の内部文書には手法やコードが含まれていることだ。スノーデン氏が告発した文書には、NSAが展開するプログラムの概要や規模などが記述されているだけだった。しかし今回は具体的な方法が記されており、CIAにとって痛手であるだけでなく、セキュリティ上強固とされていたスマートフォンやメッセージ・アプリなどがハッキングされていたことも明らかになった。テクノロジー企業や一般ユーザーにとっても衝撃的な事実だろう。
 Wikileaksは、名前などアイデンティティーが特定できる情報は公開した情報から省いた。またコード情報の今後の公開は、CIAのハッキングプログラムに対する「技術的、政治的性質に対してコンセンサスが得られるまで」は保留するとしている。
主要なデバイスやサービスがターゲットに
 Wikileaksは、この内部情報はCIAから漏れたものでは最大規模で、CIAのハッキングの全貌が分かるものとしている。第一弾として公開された文書だけでも、スノーデン氏が3年間に渡って明らかにしたものをページ数で超えているという。
 リークされた文書はCIAの中の「Center for Cyber Intelligence(CCI)」のネットワーク内にあった。CCIの傘下にCIAのハッキング部門があり、そのネットワークには5000人以上の登録ユーザーがアクセスして、2016年末までにトロイの木馬ウイルスなどの1000通り以上のハッキング方法を独自に開発していたようだ。
 ハッキングの対象になったデバイスは、誰もが知っているものばかりだ。米Appleの「iPhone」や「iPad」、米Googleの「Android」(ハードウエアメーカーとしては韓国サムスン電子や、台湾HTC、ソニーなど)、米Microsoftの「Windows」、サムスン製のインターネットTVなどだ。
 これらが遠隔操作された結果マイクとして機能し、諜報に利用された。また、メッセージング・アプリの「WhatsApp」「Signal」「Telegram」「Weibo」などは、暗号化される前に音声やメッセージのトラフィック情報が収集されたという。これらは我々が日常的に利用するデバイスやアプリで、対象になっていないものが考えつかないほどだ。
 それ以外にも、ルーター、USBデバイス、インターネットインフラ、Webサーバーなどがハッキングの対象になっていた。さらにCIAは、2014年時点で自動車やトラックで利用されている車両制御システムへの侵入を検討していたとも伝えている。
車両制御システムへの攻撃は暗殺のため?
 それについてWikileaksは、「その目的は特定されていないが、検知されない方法で暗殺を行うことも可能」としている。暗殺部分はWikileaks独自の考察とは言え、まるでスパイ映画のようなことが現実になり得ると驚くばかりだ。
 一般ユーザーにとってIT機器のセキュリティは把握しがたいものだが、今回の事件を通じて「やっぱり破られるのか」という感想が浮かんでくる。スノーデン氏による告発では、テクノロジー企業が政府に協力して裏口を提供していたことが問題になったのだが、今回のリークによって裏口などなくてもかなりのハッキングができることが分かった。
 それと同時に、今回のWikileaksの公開には心配なポイントもある。
 一つはWikileaksの抑制度である。スノーデン氏がかなり注意深く公開する情報や公開方法を選んでいた。しかしWikileaksは言わば奔放にこうした情報を公開する傾向が最近見られる。注意深さを無くした結果、公開された情報が悪用され悪質ハッカーによる侵入行為が増える可能性もあるだろう。
トランプ政権とCIAの対立が深まる恐れ
 もう一つの心配は、これが政治的にどう利用されるかだ。トランプ大統領はCIAへの攻撃を強めており、今回の漏洩がそれにさらなる拍車をかけることになりうる。また、今回の文書は2013年から2016年の間に作成されたものとのことで、オバマ前大統領を攻撃しているトランプ大統領にとっては、好材料になる。アメリカ国民、特に反トランプ派にとっては、攻撃ばかりを続けるトランプ大統領のツイッターでの発言がさらに増えるのかと、頭痛がするだろう。
 新政権でただでさえ落ち着かない状況に、不安定材料がまた加わった。


このコラムについて
シリコンバレーNext
「シリコンバレーがやってくる(Silicon Valley is coming.)」――。シリコンバレー企業の活動領域が、ITやメディア、eコマースといった従来の領域から、金融業、製造業、サービス業などへと急速に広がり始めている。冒頭の「シリコンバレーがやってくる」という言葉は、米国の大手金融機関、JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモンCEO(最高経営責任者)が述べたもの。ウォール街もシリコンバレー企業の“領域侵犯”に警戒感を隠さない。全ての産業をテクノロジーによって変革しようと企むシリコンバレーの今を、その中心地であるパロアルトからレポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/061700004/031300187



http://www.asyura2.com/17/senkyo222/msg/678.html

[経世済民120] 死のスパイラルに陥る「トランプケア」政権不協和音 予算案リスク管理の悪しき見本 米中経済戦争 口先介入で円高は進むか$↑
死のスパイラルに陥る「トランプケア」
最大の敗者はトランプ大統領に投票した高齢の白人有権者
2017.3.21(火) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙2017年3月16日付)

トランプ政権発足2か月、障害相次ぎ公約達成に遅れ
メキシコとの国境に壁を築く計画の大統領令に署名するためにペンのふたを取るトランプ氏(2017年1月25日撮影)。(c)AFP/NICHOLAS KAMM〔AFPBB News〕
大統領は選挙を詩で戦い、政治を散文で執り行う、という言葉がある。ドナルド・トランプ氏の場合、選挙期間中の売り口上はとても詩的とは言えなかった。しかし、分かりやすかった。トランプ氏は強い意志の力で米国を再び偉大にするという。そして、そこにはオバマケア(医療保険制度改革法)をご破算にし、もっと安くて質が高いうえ、すべての米国人をカバーする制度に置き換えるという提案も盛り込まれていた。

ところが、実際に打ち出された「トランプケア」には、ほぼ正反対の効果があることが明らかになっている。実にお粗末なこの法案で判断する限り、トランプ氏は散文どころか、回りくどくて分かりにくい駄文で政治を執り行っている。

この法案は、連邦議会で否決されて、トランプ氏にとって政治的な災難になるか、あるいは、可決されて大惨事になるだろう。

皮肉なことに、トランプ氏はすでにそれを承知しているようだ。生涯、いろいろなものに自分にちなんだ名前を付けてきた同氏だが、この医療保険制度改革法案にだけは自分の名前を付けたくない意向をはっきり示してきた。トランプケアだけは勘弁してほしい、ということだ。だが、この法案にはこの名前がぴったりだ。トランプブランドの政治をまさに体現しているからだ。

法案の最も重要なポイントは、バラク・オバマ前大統領にちなんだ通称がある法律を無効にすることにある。オバマケアの実際の中身に対する反対意見は、これを新しい法律と置き換えたいという願望の形成にはほとんど関係していない。

実際、オバマ氏が成立させた医療費負担適正化法(ACA)は、右派のヘリテージ財団が「ヒラリーケア(ビル・クリントン大統領の時に夫人のヒラリー氏が作成したが、成立には至らなかった医療保険法案)」の対案として1990年代に策定した市場本位の法案にかなり多くを負っている。オバマケアはまた、共和党の大統領候補だったミット・ロムニー氏がマサチューセッツ州知事時代に成立させた法案よりも、若干右寄りだった。

このように、オバマケアは保守派の考えをすでに利用していることから、共和党が現実味のある対案の策定に苦労してきたのは不思議なことではない。だが、オバマケアは雇用を破壊し米国経済を乗っ取る社会主義だと過去7年間形容してきた以上、何もしないわけにもいかなかった。ハッタリはもう通用しない。

新たに打ち出された医療保険制度改革法案にある2つ目のトランプ的な要素は、富める者に富を再配分する効果があることだ。この法案は、米国の所得最上位2%の税負担を今後10年間で8850億ドル軽くする一方、最も貧しい階層のための支出をほぼ同額削減する内容になっている。その結果、超党派の議会予算局(CBO)によれば、医療保険に加入している米国民の数は2026年までに2400万人減るという。

医療保険を失うこれらの人々には、トランプ氏に投票した高齢で白人の米国人が不釣り合いに高い割合で含まれることになる。これもまた、トランプ氏の典型的なおとり広告だ。公約したことと、実際にやることが大幅に異なっている。エリートは減税を享受し、貧者は保護を受けられなくなるのだ。

トランプ氏の法案にはもう1つ、思慮の欠如という特徴がある。イスラム圏6カ国の国民に対するビザ(査証)の新規発行停止という「イスラム禁止」と同様に、あるいは中国問題や北大西洋条約機構(NATO)問題などで見せた180度の方針転換と同じように、トランプ氏は明らかに、法案の中身を把握できていなかった。

政策は、トランプ氏自身だった。細かいことは後からやる、という具合だ。しかし、その詳細が明らかになった今、この思慮のなさは目に余る。トランプケアは医療保険制度とはほとんど関係がなく、もっぱら財政の再配分と関係している。あまりにもひどい内容であるために、この法案には米国の医療関係のロビイスト(医師、保険会社、年金生活者、病院などのためにロビー活動をする人々)がほぼ全員反対している。

共和党の大統領にとって、企業が一致団結して自分の計画に反対するよう仕向けるというのは、簡単にできることではない。経営者たちは、何千万人もの人々を保険の傘から追い出せば、そのツケが納税者と雇用主に回ってくると分かっているのだ。

確かに、オバマケアには深刻な問題点がいくつかある。オバマ氏はオバマケアの法案に、不法行為法改革を盛り込んでおくべきだった。そうすれば、医師が負う賠償責任に上限を設けることができただろう。

また、保険加入を拒む人へのペナルティーをもっと厳しく設定するべきだった。そうすれば比較的健康な人が加入することでリスクプールが拡大し、保険料も低くできるからだ。さらに、州の境を超えて保険を購入できるように全米をカバーする取引所を創設しておくべきだった。

しかし、現在の制度を改善することは、トランプ氏の法案が目指すところではない。自分たちは道ばたに取り残されつつあるのだとトランプ氏の支持者たちが理解すれば、世論調査の数字は悪化することになるだろう。すでに、大統領の支持率は40%を下回っている。

オバマ氏は、大統領就任後の18カ月間のほとんどを医療保険制度改革に費やした。これについては、政治資本を無駄遣いしているとの見方が少なくなかった。だが、この法律のおかげで2000万人が医療保険に加入することができ、米国は国民皆保険に一歩近づくことになった。米国の医療費インフレの進行ペースも鈍った。

その反動で、最初の中間選挙では民主党が連邦議会の主導権を失うことになった。皮肉なのは、トランプ氏がオバマケアを廃止すると、来年の中間選挙で共和党が議会の主導権を失う可能性が出てくるということだ。

トランプ氏は今、2つある災難の片方に直面している。比較的悪くないのは、共和党が法案を否決するという災難の方だ。共和党にとっては、こちらの方が自分たちの利益にかなうだろう。トランプケアでは、米国を再び偉大にするどころか、米国の最悪の特徴がさらに悪化することになる。

By Edward Luce

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49484


 

Column | 2017年 03月 21日 13:46 JST 関連トピックス: トップニュース

コラム:米政権、ゴールドマン出身の両雄に目立つ不協和音

Gina Chon

[ワシントン 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国家経済会議(NEC)のコーン委員長とムニューシン米財務長官はいずれもゴールドマン・サックス(GS.N)出身者だが、この両雄は政策姿勢の違いがどんどん大きくなってきているように見受けられる。

両氏は、米連邦準備理事会(FRB)の銀行監督担当副議長の指名で足並みをそろえられず、この重要な人事決定が遅れている。またムニューシン氏が20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で保護主義の拒絶に反対したことで、通商分野を巡る不協和音も強まっている様子がうかがえる。

コーン氏は、トランプ大統領の金融規制改革法(ドッド・フランク法)批判に同調しているが、FRBの次期副議長候補にはGEエナジー・ファイナンシャル・サービシズのデービッド・ネーソン最高経営責任者(CEO)を強く推してきた。ジョージ・W・ブッシュ政権時代に財務省で働いていたネーソン氏は、ボルカー・ルールなど一部の分野を批判しながらもドッド・フランク法全般については支持を表明した。そのネーソン氏は今月、金融危機時の公的支援において果たした役割が問題視されると指名を辞退。事情に詳しい関係者の話では、ムニューシン氏もネーソン氏起用案に良い顔はしなかったという。

直近ではFRBの次期副議長候補の1人として、ドッド・フランク法にずっと批判的で法律事務所の弁護士として多くの金融機関の代理人を務めたトーマス・バータニアン氏の名前が上がっている。バータニアン氏は、メットライフ(MET.N)の弁護団に入り、同社が米金融安定監督評議会(FSOC)によるシステム上重要な金融機関の指定を不服として争った訴訟で、裁判所の指定無効判決を勝ち取った。

バータニアン氏はムニューシン氏の支持を得ており。新たな銀行監督担当副議長になれば恐らく金融規制撤回に積極的に動くだろう。

ムニューシンとコーン氏は、通常問題でも意見が異なっているようだ。G20財務相・中央銀行総裁会議では、ムニューシン氏は10年来の伝統だった自由貿易支援を捨て去り、他国に対してこれまでの声明文に盛り込まれていた「あらゆる形態の保護主義に対抗する」との文言を削除するよう迫った。

トランプ氏は自由貿易叩きを政策の中心に据えており、ムニューシン氏の態度は実務者として申し分ない。だがコーン氏は、ホワイトハウス内の保護主義賛成論に反対している。

共和党の穏健派が期待しているのは、コーン氏とムニューシン氏が手を携えてトランプ氏の行き過ぎた言い回しを修正してくれるという構図だ。ところがFRBの次期副議長人事や米国の通商政策に関する動きを見る限り、両氏が政策面で一致して行動する保証は存在しない。

●背景となるニュース

*FRBで2009年以降実質的に金融規制を取り仕切ってきたタルーロ理事が4月5日に退任する。ホワイトハウスは、まだ同氏の代わりとして銀行監督を担当する副議長になる人物を指名していない。

*GEエナジー・ファイナンシャル・サービシズは8日、同社のデービッド・ネーソンCEOがホワイトハウスに対して、FRBの銀行担当副議長候補とされる事態をもはや望まないと伝えたと発表。

*18日に終わったG20財務相・中央銀行総裁会議では、ムニューシン財務長官の反対によって共同声明から「あらゆる形態の保護主義に対抗する」という文言が削除された。ムニューシン氏は会見で「過去の声明にあった表現は、わたしの視点では必ずしも適切ではなかった」と発言。トランプ大統領は、これまで結んだ貿易協定は米国に打撃を与えており、いくつかの協定の再交渉を表明している。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。


視点:トランプ円安は幻想、進む「米国の日本化」=青木大樹氏 2017年 01月 23日
コラム:トランプ政権の排外姿勢が米観光業に打撃 2017年 03月 03日
森永製菓と森永乳業の株式売買を一時停止=東証 2017年 02月 24日
http://jp.reuters.com/article/usa-fed-breakingviews-idJPKBN16S0CJ


 

 

Column | 2017年 03月 18日 09:41 JST 関連トピックス: トップニュース

コラム:トランプ氏の予算案、リスク管理の「悪しき見本」

Gina Chon

[ワシントン 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領が発表した2018会計年度の予算案概要は、リスク管理の悪しき見本だ。既に潤沢な国防費を一層膨らますため、ヘルスケアの研究や職業訓練、水質浄化などの予算を削る方針だが、こうした提案はあまりにも多くの経済的脅威を過小評価している。

総額1兆1000億ドルの裁量的経費を対象とした今回の予算案概要は、トランプ氏が選挙中に表明した公約に沿ってまとめられた。国防総省と国土安全保障省の予算はそれぞれ10%と7%増額され、この中にはメキシコ国境の壁建設費用が含まれる。その他の連邦省庁予算は何十年ぶりかの大規模な削減に見舞われる。

環境保護局(EPA)の予算は31%、人員は20%カットされ、五大湖浄化の取り組みなど50を超えるプログラムが消滅する。各州向けに水道インフラ拡充予算が若干上乗せされるとはいえ、農務省の扱いで地方にとって有益だった5億ドルの水資源管理プログラムも撤廃される。2016年のハーバード大学による調査では、33州で飲料水に含まれる毒性化学物質濃度が危険レベルにあることが分かっている。

トランプ氏は厚生省の予算も20%近く減らす意向だ。対象にはエボラ出血熱などのウィルスに関する国際的な調査研究を援助する機関も入っている。エボラ出血熱は2014年に米国で初めて症例が確認され、最終的には患者として十数人、うち死者は2人と報告されたほか、数百人が監視を受ける事態になった。こうした感染拡大を予防し、抑え込むためには財政支出が欠かせない。

またトランプ氏はあらゆる表現で雇用創出を訴えていながら、提案した労働省予算の20%削減によって、年齢が高く所得が低い人々や社会的に不利な立場にある若者などに新しい技術を習得させるための訓練プログラムや施設が影響を受けてしまう。予算案概要では、州による職業研修プログラムの拡充支援についてはあいまいな言い方にとどまっている。

ホワイトハウスの予算案提示は単なる出発点にすぎない。最終的には予算を決めるのは議会であり、共和・民主両党のメンバーは既に政権の提案への異論を唱えている。そうだとしても米国がどんな問題を抱え、何が必要かを判断するという面で、トランプ氏の優先順位の付け方はあまりにも目先しか見ていないことが分かる。6件の破産に関わった人物である以上、当然なのかもしれない。しかし、米国には長期的な投資を見送る余裕はほとんどない。


トランプ政権初の予算案概要が16日、明らかになった。海外援助や環境対策の予算を大幅に削減する一方、国防費を増額する内容となっている。これに対し、身内の共和党からも反発の声が上がっている。

●背景となるニュース

*ホワイトハウスは16日、2018会計年度の予算案概要を発表した。多くの省庁で予算が大幅に削減され、各種プログラムや連邦機関廃止も含まれる。

*EPA予算は31%減と最大の落ち込みに直面。約3200人の人員削減も求められる。国務省予算はおよそ29%減、農務省と労働省はそれぞれ21%減が提案された。

*国防総省の予算は10%増、国土安全保障省は7%増。

*トランプ氏は「勇気あるわが国の軍人たちが戦争抑止に必要な手段を保有し、いざ戦いを求められた際には勝利のみを達成できる態勢を確保しなければならない」と語り、今回の提案を「米国第一主義の予算」と表現した。

*さらに同氏は「このような危険な時代において、公共の安全と国家安全保障に重点を置いた予算の青写真は、世界に対して米国の強さと守りの堅さ、決意を示すメッセージになる」と強調した。

*1兆1000億ドル規模の予算案概要の対象は裁量的経費のみ。義務的経費を含む予算案は、5月に公表される。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

視点:トランプ円安は幻想、進む「米国の日本化」=青木大樹氏 2017年 01月 23日
コラム:トランプ政権の排外姿勢が米観光業に打撃 2017年 03月 03日
森永製菓と森永乳業の株式売買を一時停止=東証 2017年 02月 24日
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-breakingviews-idJPKBN16O00N

 

 


米中経済戦争勃発に新たな火種
北朝鮮リスクと中国市場悲観論に傾き始めた米産業界
2017.3.21(火) 瀬口 清之
米国務長官、中国外相と初会談 北朝鮮への対応求める
20か国・地域(G20)外相会合の開催地であるドイツ・ボンで初会談に臨む、レックス・ティラーソン米国務長官(左)と中国の王毅外相(2017年2月17日撮影)〔AFPBB News〕
米中両国は経済的相互依存関係を深めており、仮に経済戦争に突入すれば互いに報復をエスカレートさせ、双方が極めて深刻な打撃を受ける関係にある。

これは両国経済のみならず、最悪の場合、世界経済全体にリーマンショック以上の衝撃を与え、世界大恐慌を招く可能性も十分ある。

米中両国間の経済戦争がそうした深刻な打撃を与えることを考慮すれば、両国政府は経済戦争を仕かけることによるリスクを十分認識し、互いにそうした事態を回避するよう努力するはずである。

以上が米中両国の経済関係には大量の核兵器保有国同士の間の相互確証破壊と似た関係が成立しているように見えると述べた前回2月の拙稿の主な論点である。

3月前半に米国出張した際に、以上の筆者の見方を米国の国際政治学者らに伝えたところ、概ね賛同を得られた。

ただし、米中両国間の外交問題を巡る深刻な対立による関係悪化が経済面での疑似的「相互確証破壊」の成立を妨げ、経済戦争に突入するリスクを完全に否定することはできないなど、いくつかの貴重な指摘を受けた。

本稿ではそれらのポイントについて紹介したい。

1.北朝鮮リスク

先月の筆者の論稿は米中両国の経済関係に焦点を当てたものだったが、米国の国際政治学者は以下のような外交問題が両国の経済関係に与えるリスクについても考慮する必要があると指摘した。

ドナルド・トランプ政権下において、現在、米中外交関係上の最大の懸案は北朝鮮問題を巡る対立先鋭化のリスクである。

トランプ政権は北朝鮮がミサイル発射による対米牽制行動をとったことに対し、北朝鮮に対する武力攻撃を含むあらゆる選択肢を検討し、強い態度で臨むスタンスを示していると報じられている。

早ければ4月にも行われる可能性があるトランプ大統領・習近平主席間の初の米中首脳会談において、北朝鮮への対応が主要議題の1つになると予想されている。

トランプ大統領は習近平主席に対して、中国からも北朝鮮に対してより強く厳しい対応をとるよう要求すると見られている。

しかし、中国と北朝鮮の関係はすでに冷え切っており、中国がある程度強く厳しい制裁措置を実施したとしても、北朝鮮が中国からの要求に耳を貸す可能性はほとんどないとの見方が一般的である。

そうした状況下で中国が北朝鮮に対してとり得る制裁措置は、エネルギーおよび食料の供給停止といった究極の強硬策しかない。もしこれを実施すれば北朝鮮経済は危機的状況に陥り、大量の難民が中国東北地域にあふれ出してくると予想される。

東北地域は過剰設備を多く抱える構造不況業種が集積しており、ただでさえ長期の経済停滞に苦しんでいることから、ここに難民が流入するのは中国の政治経済の安定確保に深刻な悪影響を及ぼすリスクが高い。

これほど内政上のリスクの大きな措置を中国政府が米国のために実施することは考えにくい。

そうした点を考慮すれば、中国が米国からの強い要請に応えて、米国がそれに満足する可能性は極めて低いと見られている。その場合、米中両国の対立が先鋭化し、米国側が中国に対して一段と強硬姿勢に転ずる可能性が高まる。

それが米国政府のどのような施策につながるかは未知数であるが、仮に南シナ海における軍事行動を伴う対中強硬姿勢や台湾に関する「1つの中国」論の見直しを迫るといった対応に出れば、米中関係は一気に悪化する。

そうした米国の強硬姿勢が中国国民の反米感情を煽り、中国全土で米国製品ボイコット運動や反米デモなどを引き起こし、米国政府が為替操作国の認定や関税引き上げなどで対抗するといった形でエスカレートしていくと、経済戦争に突入する可能性は否定できない。

ただし、以上のシナリオは民主党寄りの国際政治専門家が主張する、かなり極端な悲観的シナリオであり、トランプ政権の外交政策の欠陥を強調するために、あえて最悪のケースを想定している面は否めない。

これに対して、共和党寄り、あるいは中立的な立場の専門家は、これほど深刻な事態に至る可能性はそれほど高くないと見ている。

現在、トランプ政権内において対中政策をリードしているのは、ジェームズ・マティス国防長官、レックス・ティラーソン国務長官、ゲーリー・コーンNEC(国家経済委員会)委員長、ケネス・ジャスター国家安全保障会議(NSC)国際経済担当大統領次席補佐官らであると言われている。彼らはトランプ政権内では穏健派に属する。

これに対して、対中強硬路線を主張するタカ派には、スティーブ・バノン主席戦略官、ピーター・ナヴァロ大統領補佐官(国家通商会議担当)、ウィルバー・ロス商務長官らがいるが、今のところ対中政策にはあまり影響を及ぼしていないと見られている。

こうした穏健派主導の体制で対中外交を進めていくと、上述のような激突シナリオを回避できる可能性も十分あると考えられる。

ただし、これらのトランプ政権の主要メンバー間の勢力バランスの変化というリスクに加え、トランプ大統領自身の気分の変化が政策に及ぼす影響がもう1つのリスクであるとの見方がある点は考慮しておく必要がある。

このようにトランプ政権の対中外交方針は不透明で予測不可能な部分が多い。これに対して中国政府があまり過敏に反応せず、じっくりと構えて慎重に対応していくことができれば、米中衝突リスクは軽減される。

2.主要プレイヤーが政府ではないことによるリスク

当面、米中関係を悪化させる主因は上記の政治外交要因であるが、これを受けて米中関係の悪化を加速させる可能性があるのが、経済分野における主要プレーヤーである市場参加者=一般国民の動向である。

安全保障面における本来の相互確証破壊の関係を支える主要プレーヤーは両国政府である。一方、経済面での疑似的「相互確証破壊」の主要プレーヤーは市場参加者=一般国民であるため、政府同士のような制御が効きにくい。

いったん相手国に対する強い不満や憤りが国民感情として広く共有される場合、政府の力でこれをコントロールすることが難しくなる。

つまり疑似的な「相互確証破壊」の関係が成立していると分かっていても、両国の激突を招くモメンタムを止めることができなくなる可能性がある。

具体的には、中国国民による米国製品のボイコット運動や反米デモの動きが中国全土に拡散する場合、これを中国政府が短期間の間に沈静化させるのは極めて難しい。

あるいは、米国の労働者や一般国民の間で強い反中感情の高まりが生じる場合、米国政府もこれをコントロールすることは難しい。これは以前、尖閣問題発生後の日本に対する中国国民の姿勢の変化を思い起こせば容易に理解できる。

この主要プレーヤーのコントローラビリティの低さが疑似的「相互確証破壊」の成立を妨げる1つの要因となる。

3.中国ビジネスに対する米国企業の悲観論増大の影響

さらに、もう1つの指摘は、最近の米国企業の対中投資姿勢の変化である。

米国企業はこれまで、アップル、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、ファイザー、P&G、マクドナルド、スターバックスなど、様々な分野で中国国内市場の大きなシェアを確保し、巨額の売上高と利益を享受してきた。

しかし、最近になって、上海の米国商工会議所の不満に代表されるように、知的財産権の侵害、資金回収難、政府の規制の突然の変更、中国企業と外資企業との差別的な扱いなどに対する不満が強まっている。

この1、2年、これらの問題点により、米国企業にとって中国市場は以前ほど魅力的ではなくなっているとの見方が増大している。

同時に中国経済の減速を眺め、中国市場の将来に対する見方も悲観的になっていることから、対中投資が慎重化しているとの声を耳にすることが多くなっている。ただし、実際の米国企業の対中直接投資金額は減少せず、むしろ逆に増加している。

以上で指摘されている問題点は日本企業にとっては数年前からずっと直面してきている問題であるため、最近になってこうした問題点に関する懸念が高まっているという声は聞いたことがない。

米国企業が最近になってこうした懸念を強めている背景についてはさらに分析を深める必要がある。

以上のような米国企業の中国ビジネス悲観論の拡大、それに伴う対中投資姿勢の慎重化は、両国が激突することによって生じる経済的打撃に対する受け止め方の変化をもたらす。

以前であれば深刻なダメージを懸念して、米中対立が先鋭化しないことを強く望んだ人々が、今後はそれほど強く望まなくなる可能性が高い。

これも疑似的「相互確証破壊」の成立にとってマイナス要因である。

以上のように、経済面における疑似的「相互確証破壊」は上記の3つの要因によって成立しにくくなる脆弱性を内包している。

米中両国はこうした点にも慎重に配慮しながら、経済戦争への突入を回避するために、様々な努力を重ねていくことが望まれる。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49448

 

 

 

FX Forum | 2017年 03月 21日 12:43 JST 関連トピックス: トップニュース

コラム:米政府要人の口先介入で円高は進むか=植野大作氏

植野大作三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト
[東京 21日] - トランプ米新政権の発足後で初めてとなる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が先週末にドイツで開催された。ムニューシン米財務長官の「G20デビュー」とあって、国内外のドル円ファンの注目度は非常に高かった。

「ドルベア(弱気)派」はムニューシン財務長官によるドル高けん制コメントの配信を期待していた一方、「ドルブル(強気)派」は警戒して身構えていた。ただ、G20開催に先立ちショイブレ独財務相と会談したムニューシン財務長官は「長期的に見た最善の利益という点で、ドルの上昇は良いこと」などと発言、市場に失望と安堵が同時に広がった。その後の麻生太郎財務相との会談でも「日米通貨摩擦」を連想させるような発言はなかったようだ。

G20終了後に公表された声明文を見ても、為替については「過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを再確認」「通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のために為替レートを目標とはしない」など、従来の表現が踏襲されていた。ひとまず無難なイベント通過になったと言えるだろう。

<消えていない日米通貨戦争の可能性>

だが、安心するのはまだ早い。ムニューシン財務長官によるこれまでの発言履歴を見る限り、「長期的なドル高の重要性」について繰り返し述べつつも、「短期的なドル高の悪影響」に言及する時もあり、発言内容は必ずしも安定していない。

米国で為替売買介入の権限を握っているのは財務長官だが、為替口先介入の方向性に関しては、金融政策や財政政策のように、意見の違う人々の主張を多数決などのルールに則して集約する仕組みが確立されていない。このため、日米ともに財務相以外の政府要人らの為替に関する発言が、思わぬ乱高下を引き起こすケースもしばしばある。

2月の日米首脳会談のあと、トランプ大統領は日本の金融政策や通貨政策に対する「口撃」を封印しているが、面談する相手や場所によって発言の内容をコロコロ変えるのは彼の特技だ。いつまた批判を再開するのかしないのか、本人以外には分からない。

3月に入って、米国ではナバロ国家通商会議委員長が日本の非関税障壁に対する不満を述べたほか、ロス商務長官も他国の通貨安政策を批判したと解釈される発言を連発している。この先、トランプ大統領以下の米政府要人が、日時不定で為替市場に波乱を呼ぶ発言を配信する可能性は否定できない。

特に、4月から始まる日米経済対話には要注意だ。米国の通商閣僚らを中心に、日米貿易不均衡を問題視する発言が相次ぐなら、「日米通商摩擦の再燃=円高・ドル安」との連想が、為替市場の一部で盛り上がる可能性はある。対して、日本政府の要人がカウンターで発言するなら、非常に不毛な「日米通貨戦争勃発」との印象が市場に広がるかもしれない。

ただし、米政府要人による口先介入の神通力だけでは、ドル円相場に短期的なショックを引き起こすことはできても、長期的なすう勢までコントロールすることはできないだろう。そのように考えている理由として、以下4点を挙げておきたい。

<「強い米国」と合致しない「弱いドル」>

第1に、近年の為替市場の規模の膨張や参加者の多様性の増大などを勘案すると、特定の個人や組織が口先で「望ましい為替相場」の方向に対する想いを伝えるだけで、長期的な通貨のトレンドを支配するのは恐らく無理な時代になっていると思われる。

国際決済銀行(BIS)が昨年4月に行った出来高調査によれば、1日平均の「ドル円」売買金額は9020億ドルだった。当時の平均レートである1ドル=109.65円、年間の為替営業日数=約250日として換算すると、ドル円市場の売買金額は年率2京4700兆円にも達していた計算になる。

為替市場よりはるかに規模が小さい国内外の債券・株式市場でも、金利や株価は政府の意のままに操ることはできない。天文学的な金額の売買が日々飛び交っている為替市場において、日本の首相や財務大臣が言霊(ことだま)の力で円の水準や方向を操作できないのと全く同じ理由で、米国の大統領や主要閣僚であっても、ただ発言するだけでは、恐らく一時的なショックを市場に与えられるだけだ。ドル円相場のすう勢まで支配するのは難しいだろう。

第2に、トランプ政権が目指している経済・軍事政策の方向性と合致していない口先介入によるドルのトーク・ダウンには限界がある。

米大統領府のサイトで公開されているトランプ政権の公約を見ると、「経済成長率4%を実現して強い経済を取り戻す」「国防費を増額して世界最強の米国軍を強化する」などの主張が列記されている。世界最強の経済と軍隊を強化する政策を進めながら、為替市場への口先介入だけでドルの価値をすう勢的に減価させ続けるのは長期的には難しそうだ。

また、本当に実施する気かどうか分からないが、トランプ大統領は「国境調整税を導入して米国の貿易赤字を退治する」とも主張している。実際にそんな政策を実施したなら米国の貿易赤字はドル安にしなくても減る力が働くので、逆にドル高圧力が発生する可能性も指摘されている。

そもそも、国境調整税で輸入品に税負担を求めた場合、原材料や部品、生活必需品が値上がりして苦しむのは米国の企業と国民なので、税負担の上昇分と同じ割合でドル高にならないと、経済に深刻な打撃が及ぶ。「国境調整税による貿易赤字削減」は、その成り立ちからしてドル高圧力の発生を前提にした政策である。

<孤高の利上げ観測がもたらすドル高圧力>

第3に、米国の大統領に就任後、トランプ氏のドルに対する考え方が微妙に揺らいでいるきらいもある。2月9日、一部の米系メディアは具体的な日付は不明としながらも、大統領が深夜3時に国家安全保障担当のフリン(当時)補佐官に電話をして「強いドルと弱いドルのどちらが米国経済にとって良いのか」と尋ねたエピソードを紹介して話題になった。

ドル高には米国の輸出競争力を減退させる弊害がある一方、輸入物価の下落を通じて国内需要を刺激するプラス面もある。逆にドル安を進め過ぎると米国の輸出競争力が向上する一方で輸入物価は大幅に上がるので、苦しむのは米国の消費者や零細企業だ。

米国の大統領は、行政府の最高権力者であると同時に米国軍の最高司令官も兼ねている。世界中で過激派組織と戦う米国の兵隊に持たせる武器やドルは強い方が良いに決まっており、恐らく「米国にとって望ましいドル政策」に関して、様々な立場や考え方の人々からの意見がトランプ大統領の耳に入っているのだろう。

第4に、主要通貨圏で米国だけに「孤高の利上げ観測」が発生している現下の局面では、口先介入によるドル安誘導に強力な推進力を期待するのは難しい。この先、米国に景気失速懸念が台頭して利下げ観測に由来するドル安圧力が強まっている時期にドルのトーク・ダウンを試みるなら強力な効果を発揮しそうだが、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が「年内3回」の利上げ見通しに自信を示している間は、難しそうだ。

いずれにしろ、米国の現政権が実際に行っている諸政策とのチグハグ感が否めない状態では、為替口先介入によるドル安誘導に賞味期限の長い神通力を期待するのは難しい。為替相場の循環変動を決める要素はたくさんあり、人によって「何を重視すべきか」の好みはあって然るべきだが、筆者は「要人発言」にあまり重きを置いていない。すう勢判断の軸足はファンダメンタルズに置く姿勢を維持したいと考えている。

*植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。


コラム:トランプ帝国主義が招くドル高と中国衰退=武者陵司氏 2017年 03月 14日
コラム:大きすぎてつぶせない、タカタの「五里霧中」 2017年 03月 02日
コラム:米国を蝕む「縁故資本主義」=河野龍太郎氏 2017年 02月 02日

http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-daisaku-ueno-idJPKBN16S08Hsp=true

 

 

 

 

 
きょうの国内市況(3月21日):株式、債券、為替市場
Bloomberg News
2017年3月21日 16:09 JST

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日本株続落、米金利の低下嫌気し金融売られる−TOPIX一時上げも
ソフトバンク:米ベンチャーのウィーワークに3億ドル投資−関係者
HSBCなど主要行、ロシア発833億円資金洗浄関与か−ガーディアン
FBI長官の証言、トランプ米政権への打撃は最悪のタイミングか


国内市況の過去の記事はこちらです。指標はここをクリックして下さい。

●日本株続落、米金利の低下嫌気し金融売られる−TOPIX一時上げも
(記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい)
  東京株式相場は続落。米国のインフレ期待や利上げ加速観測が後退、米長期金利の低下が嫌気され、銀行や保険、証券、その他金融など金融株が売られた。原油など国際商品市況の下落を材料に、石油や鉱業、非鉄金属など資源株も軟調。為替の円高警戒感も相場全体の重しとなった。
  TOPIXの終値は前営業日比2.43ポイント(0.2%)安の1563.42、日経平均株価は65円71銭(0.3%)安の1万9455円88銭。
  三井住友アセットマネジメント株式運用グループの平川康彦ヘッドは、「原油と為替のことしに入っての推移は、昨年末に市場関係者が予想していた動きとは異なっている」と指摘。米金利の上昇に連れ1ドル=115ー120円へ向かうと予想されていた為替が現状水準で推移すれば、「企業の新年度ガイダンスの為替想定は1ドル=115円ではなく、110円になりそうで、期初の業績期待がやや縮小しかねない。当面は日本株だけが上がる独自要素に乏しい」と話した。
  東証1部33業種は証券・商品先物取引や倉庫・運輸、保険、その他金融、銀行、鉄鋼など21業種が下落。その他製品や食料品、小売、電気・ガスなど12業種は上昇。売買代金上位ではソフトバンクグループや三菱UFJフィナンシャル・グループ、第一生命ホールディングス、三井不動産、アイシン精機が安い。半面、前週末の新型ゲーム機生産の倍増報道は驚きとメリルリンチ日本証券が指摘した任天堂は続伸。ゴールドマン・サックス証券が強気判断を示したブラザー工業も高い。
  東証1部の売買高は15億9718万株、売買代金は2兆397億円。上昇銘柄数は991、下落は862となった。
 
●債券上昇、年度末控えた好需給が支え−40年入札で一定需要との見方も
(記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい)
  債券相場は上昇。長期金利は約2週間ぶりの低水準を付けた。前日の米国市場で株安・債券高となった流れを引き継ぎ買いが先行したほか、年度末を控えた好需給観測が相場を支えた。
  長期国債先物市場で中心限月6月物は前週末比11銭高の150円24銭で取引を開始。午後の取引では一段高の展開となり、150円29銭まで上昇。結局は14銭高の150円27銭で引けた。
  メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、「先週の海外材料を波乱なく通過したということで国内の需給要因がメインになっている」とし、「年度末前の買い需給が反映されている」と指摘。40年入札については、「単利では1%台だが、複利では0.9%台でもう少し金利が欲しいというのが本音と思われるものの、年度内に買わなくてはいけない投資家の買い需要が見込まれる。そんなに崩れるようなことはないとみている」と話した。
  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の346回債利回りは、日本相互証券が公表した前週末午後3時時点の参照値から0.5ベーシスポイント(bp)低い0.065%と、8日以来の低水準で推移している。

●ドル・円は小反発、重要イベント通過しドルの調整一巡−112円台後半
(記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい)
  東京外国為替市場のドル・円相場は小反発。20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議など重要イベントを通過したことでドルの調整が一巡し、徐々に水準を切り上げる展開となった。
  午後3時56分現在のドル・円は前日比0.1%高の1ドル=112円69銭。朝方に一時112円27銭と2月28日以来のドル安・円高水準を付けた。その後は時間外取引で米10年債利回りが上昇したことに伴い、徐々に水準を切り上げ、午後に入って112円86銭まで値を戻した。
  三井住友信託銀行マーケット金融ビジネスユニット為替セールスチームの西田朋広主任調査役は、「ドル・円は午前中に日足一目均衡表の雲を割り込んできたことで、チャート的に下値リスクが意識され下向きの動きが強まったが、下を攻めきれずショートカバーで反発している形」と説明。「米連邦公開市場委員会(FOMC)以降、調整でドルが売られて米金利も低下してきたが、まだ市場は年3回の利上げを織り込んでもいない。まして年3回見通しが低下する材料もないことで、これ以上米金利は低下しづらい。その意味で112円前半は堅い感じがする」と述べた。
  ユーロ・ドル相場は同時刻現在、0.2%高の1ユーロ=1.0765ドル。先週末以来の安値となる1.0719ドルを付けた後、1.0770ドルまで反発した。ユーロ・円相場は1ユーロ=120円66銭と今月9日以来の水準に下げた後、121円44銭まで反発した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-21/ON5J6J6TTDS001


http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/343.html

[経世済民120] 公示地価、住宅地9年ぶり上昇 低金利けん引 フィリピン人家事代行4時間1万円 外国人材100万光と影 米保護主義、当面静
フィリピン人家事代行、4時間1万円 パソナが入社式
2017/3/21 11:51
 神奈川県などの国家戦略特区で解禁された外国人の家事代行サービスで、事業開始に向け準備が着々と進んでいる。パソナは21日、来日したフィリピン人25人の入社式を都内で開いた。今後は職場内訓練(OJT)などを実施したのち、3月末にも事業を始める予定だ。特区を活用した外国人家事代行による初のサービス提供となる見通しだ。

 掃除や洗濯、食事の準備といった家事代行サービスを月2回(1回当たり2時間)利用する場合で、利用料金は1万円(税別)と想定する。

 パソナグループの南部靖之代表は「仕事をしつつ日本を学び、3年間有意義な生活を送って欲しい」と祝辞を送った。フィリピン人職員代表のカラスコ・キャサリン・アントリアオさん(42)は「日本でたくさんの経験をして、自分のスキルを高めたい。一生懸命頑張るので、どうぞよろしくお願いいたします」と日本語であいさつした。新入社員ら全員で日本語の歌も披露した。

 パソナは比人材派遣大手マグサイサイグローバルサービスと組み、職員らに450時間の研修を実施した。職員は今月9日に来日した。

 他社でもサービス開始に向け準備が進む。ベアーズ(東京・中央)やポピンズ(東京・渋谷)などでは職員はまだ来日していないものの、早くて4〜5月中には開始する予定だ。(寺井浩介)

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http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ21HA3_R20C17A3000000/

 

実習・バイトが主流?外国人材100万人の素顔

日本で働く外国人が初めて100万人を超えた。
この5年間で6割近く増え、工場で、オフィスで、店頭で、
戦力として存在感を示し始めた。
一方、日本で働く外国人の急増は新たな課題も生んでいる。

光と影をデータで探った。

SECTION 1
「留学生バイト」急増
5年で2.3倍

 日本で働く外国人は108万3769人――。厚生労働省は1月、16年10月末時点の外国人雇用状況を発表した。5年前と比べると全体が1.6倍だったのに対し、留学生のアルバイトは同じ期間に2.3倍となり、伸びが著しい。
全体は1.6倍 
在留資格別に見ると…


(出所) 厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」より。2011年、16年とも10月末時点
専門的・技術的分野の在留資格とは
身分に基づく在留資格とは
「技能実習+留学生バイト」が
多数派


(出所) 厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」。2016年10月末時点
 日本で働く外国人のうち、就労目的の在留資格(専門的・技術的分野の在留資格)を持つ外国人は、16年10月末時点で約20万人。一方、就労が主目的ではない技能実習生と留学生アルバイトの合計は約42万人で、就労目的の在留資格を持つ外国人材の2倍の規模になる。技能実習は開発途上国などへの技術移転、留学生は学業が主目的だが、人手不足の職場では貴重な戦力として雇用されている。特に、日本に来る技能実習生と留学生が増えているのがベトナムだ。
EPISODE 1
訓練校で日本のルール学ぶ

 「くず入れ」「水飲み場」「消火器」――。教室には日本の標識がずらり。ここは、技能実習の候補生が日本語を学ぶベトナムの訓練校。2月から勉強を始めたクラスだ。全体では約100人が寮生活を送る。日本の技能実習で得る月給は、ベトナムの大卒初任給に比べ数倍になるといい、ベトナム人技能実習生の増加につながっている。

訓練学校の教室には、仕事に必要な様々な標識が張られている(ベトナム・ハノイ)
EPISODE 2
ベトナム人留学生、
介護施設で戦力に

 広島県福山市の介護施設では5人のベトナム人留学生が働く。ファム・ヴァン・ミンさん(24)は「仕事は楽しい。将来も日本の介護施設で働きたい」と話し、帰国後は技能実習生として再来日を目指すという。日本ではこうした介護施設や飲食業など、人手不足の現場で活躍する留学生アルバイトが増えている。


ベトナムから日本に留学し、介護施設でアルバイトとして働くファム・ヴァン・ミンさん(24)=中央と、ホティ・トゥ・ハインさん(34)=左(広島県福山市の「ゆうゆう神谷川」)
「宿泊・飲食サービス」は
56%が留学生バイト


(出所) 厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」。2016年10月末時点
「建設業」は67%が技能実習生


(出所) 厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」。2016年10月末時点
 統計データを探ると「技能実習生が多い業種」や「留学生バイトが多い業種」があることがわかる。建設業で働く外国人のうち技能実習生が67%を占め、宿泊・飲食サービス業では留学生アルバイトが56%を占める。一方、情報通信業では、この業種で働く外国人の77%が「専門的・技術的分野の在留資格」を持ち、実習生や留学生の比率が少ない。
SECTION 2
違法の技能実習が増加
年に3700件

 外国人技能実習生の増加に伴い、実習生を不当な待遇で働かせる事業所も増えている。厚生労働省の調査によると、外国人技能実習生が働く事業所のうち、2015年は3695事業所で労働基準法などの法令違反があった。外国人技能実習生の受け入れを拡大する事業所の中には、人手不足を背景に、安価な労働力として採用を増やす事業所も目立つ。

2013年→15年 
違反事例が急増


(出所) 厚生労働省
「労働時間」違反は1000件超す


(出所) 厚生労働省
事例1月169時間の時間外労働

 最長で月169時間の違法な時間外労働をさせたうえ、深夜労働に対する割増賃金の支払いも不適切。業務に粉じん作業があるにもかかわらず、定められた健康診断を受けさせていなかった。
事例2月2回を超える休日労働

 最低賃金法で定められた金額を下回る賃金を支払っていた上、労使の協定の回数(月2回)を超える休日労働をさせていた。同じ所在地にあるグループ会社でも同様の実態があった。
実習生、16年は
5000人以上が失踪


(出所) 法務省
 法務省によると、16年の技能実習生の失踪者数は5058人。15年よりやや減少したものの、5年前と比べれば3倍以上の水準だ。国籍別では、中国1987人、ベトナム2025人、ミャンマー216人、インドネシア200人、ネパール109人の順。時間外労働などの不当な待遇、希望職種とのミスマッチ、生活習慣の違いがもとになる日常のトラブルなどが要因とみられる。
SECTION 3
高度人材はどこにいる?
茨城にいた

 日本政府は、単純労働に従事する外国人を「原則として受け入れない」という立場。技能実習は途上国への技術移転が主な目的だ。一方、専門的な知識や技術を持つ「高度人材」の受け入れには積極的で、15年に「高度専門職」と呼ぶ在留資格を新設した。高度専門職の在留資格は、学歴や職歴、研究実績などの項目ごとにポイントを設定し、一定の水準に達した外国人に認められ、永住許可などで優遇される。16年6月末時点で高度専門職の資格で日本に滞在しているのは2688人。日本で働く外国人総数の1%にも満たない。

高度専門職の外国人は今、
2688人


(出所) 法務省「在留外国人統計」。2016年6月末時点
高度専門職1号イ
公的機関や企業で研究や研究指導をする専門職。在留期間は5年。
高度専門職1号ロ
公的機関や企業で自然科学や人文科学の知識・技術を使う専門職。在留期間は5年。
高度専門職1号ハ
公的機関や民間企業で事業の経営や管理に従事する専門職。在留期間は5年。
高度専門職2号
「1号」の在留資格で3年以上活動し、一定の基準に達した外国人に認められる。高度人材として働く限り在留期間は無期限。
国籍は中国トップ、
インドと米国が続く

1 中国 1756人
2 インド 144人
米国 144人
4 韓国 86人
5 台湾 71人
6 フランス 50人
7 英国 42人
8 ベトナム 38人
9 オーストラリア 29人
10 カナダ 23人
11 ドイツ 17人
ロシア 17人
13 フィリピン 15人
14 インドネシア 13人
バングラディシュ 13人
16 マレーシア 12人
エジプト 12人
18 シンガポール 11人
19 パキスタン 10人
タイ 10人
(出所) 法務省「在留外国人統計」。2016年6月末時点
意外に多い茨城 
都道府県ランキング

1 東京 1334人
2 神奈川 417人
3 千葉 156人
4 埼玉 155人
5 大阪 85人
6 愛知 78人
7 茨城 72人
8 京都 56人
9 福岡 47人
10 沖縄 37人
兵庫 37人
(出所) 法務省「在留外国人統計」。2016年6月末時点
EPISODE 3
ドイツから来日、
産総研でナノテクを研究

 在留外国人統計で「高度専門職」の在留資格を持つ人を都道府県別に調べてみた。東京や神奈川など大都市圏に続き、7位に入ったのは茨城県。さらに、茨城県にいる高度専門職72人のうち「7割がつくば市にいる」(茨城県庁)ことがわかった。取材に応じてくれたのは、同市にある産業技術総合研究所の研究員、マリウス・ビュークルさん(36)。専門は「ナノテクノロジー(超微細技術)の再生エネルギーへの応用」だ。
 ドイツ生まれで、工学系では同国最高峰のカールスルーエ大学を卒業した。博士号を取得した2012年に初来日。自らの研究分野で定評のあった産総研での人材募集を知り、同年末から研究員として働き始めた。高度専門職の在留資格を取得したのは3年後。ビュークル氏は最近、産総研で働くタイ人研究者と結婚した。「ドイツより映画館やスポーツ施設が豊富で、コンビニエンスストアも便利」と話し、つくば市に住み続ける予定だという。  

分子構造を描いたパソコン画面をじっとみつめるマリウス・ビュークルさん(茨城県つくば市)
SECTION 4
魅力ない?
世界の頭脳、日本素通り

 日本で働く外国人は年々増えているが、世界に目を向けると、優秀な人材の多くが日本を素通りしている。世界の高度人材が見た日本の魅力度は低く、各国の高等教育修了者が日本を目指す割合も低い。一方、日本の高学歴女性は海外移住を目指す傾向がある。
「高度人材」から見た
労働市場の魅力度
ランキング
順位 国・地域 スコア
(満点は10)
1 スイス 9.16
2 米国 8.95
3 シンガポール 8.58
4 英国 8.32
5 UAE 8.24
6 香港 8.08
7 ルクセンブルグ 7.90
8 アイルランド 7.53
9 カタール 7.52
10 ニュージーランド 7.48



24 中国 5.63



46 韓国 3.94



52 日本 3.56
(出所) IMD World Talent Report 2016
 スイスのビジネススクール、IMDの「World Talent Report 2016」によると、外国の高度人材が見たビジネス環境の魅力度ランキングで、日本は61カ国・地域の中で52位。欧米各国のほか、アジアの中でも中国(24位)や韓国(46位)を下回る。
高等教育修了者、
日本への流入は低水準


(出所) 経済産業省「通商白書2016」
 経済産業省の「通商白書2016」では、主要国の高等教育修了程度の人材が、他の主要国にどれだけ流入しているかに注目している。人口比で見た場合、英語圏の国で流入が高いほか、ドイツやフランスといった非英語圏でも流入率が増えている。一方、日本は低水準にとどまり、高度人材が定着していない。
日本からOECD諸国への
移住、目立つ高学歴女性

(出所) OECD
 OECD(経済協力開発機構)によると、2014年に日本から他のOECD諸国へ移住したのは約3万4000人。他国に比べ海外移住率は低いものの、内訳をみると、海外移住者の6割以上が女性だった。また、高等教育修了者(大卒以上)に限った場合、女性の海外移住率(1.1%)が男性の移住率(0.6%)を上回った。
EPISODE 4
日本を飛び出しNYへ 
飲食アプリで起業

 木村仁美さん(37)は慶応大を卒業後、JPモルガン証券に入社。2010年に同社の駐在でニューヨークへ。在職中にコロンビア大で経営工学を学ぶ。その後、転職した銀行を辞職後、レストラン選びや予約サービスのビジネスを起業した。
 「日本は銀行に入行した後も『何年入社』『何大学卒業』というくくりがずっと続き、上下関係も年齢で決まりがち」と木村さんは話す。米国人と結婚し、今は一児の母。日本のことは大好きだ。だが、米国での生活を通じて、日本の窮屈さも感じるようになった。「コロンビア大に通っていた時は、仕事の都合で授業にいけないと伝えた場合、必修単位の内容を他の学科の似た授業に変更してくれた。テストの日も都合が悪ければ変更してくれるし、ほかの学生から文句も出ない。日本は平等にこだわりすぎているような気がする」。継続と変化に対する日米の意識の差も痛感した。「日本は一筋でいることが重要視される。離婚を『バツ1』と呼ぶのが典型。転職を決めた人を『やり通せない人間』と見なす感覚もある。米国は転学も転職も離婚ももう少し自由で、一度の間違った決断にいつまでも拘束されない」。


ニューヨークに渡り、現地で飲食店アプリ事業を立ち上げた木村仁美さん(写真は本人提供)
取材・制作 板津直快、川手伊織、大酒丈典、村田篤史、木寺もも子、上間孝司、久能弘嗣
朝刊1面連載(全5回)
外国人材と拓く
第1回2017.03.20
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精鋭たちが選ぶ国へ iPS研究の最前線に第2回2017.03.21
実習生という労働力 人手確保の光と影
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https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/foreignworkers/

[FT]米政権の保護主義、当面は静観が得策(社説)
2017/3/21 17:07
Financial Times
 世界の主要経済国は先週末、保護主義政策は取らないとする2008年に初めて交わした誓約を取り下げた。一見すると、トランプ米政権が強硬な主張で押し通した今回の変更は、とても気掛かりだ。米国は数十年にわたり、世界の貿易体制でリーダーシップを発揮してきた。その米国がいなくなれば、破綻をきたしかねない。

G20財務相・中央銀行総裁会議は米国の反対で保護主義政策をとらないとの誓約を取り下げた(独バーデンバーデンで)=ロイター
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G20財務相・中央銀行総裁会議は米国の反対で保護主義政策をとらないとの誓約を取り下げた(独バーデンバーデンで)=ロイター
 しかし実際には、世界金融危機の発生直後の時期に大恐慌期の貿易保護主義の報復合戦の再来を避けるうえで、この誓約そのものはほとんど役割を果たさなかったように見える。米国については、通商政策を巡る政権内部での現在の論争が空疎な言辞や象徴的な行動以上の実体的なものにつながるのかは、まだわからない。

 保護主義に関する誓約自体、国際政策の枠組みを支える最も重要な柱の一つにはほとんどなっていない。世界金融危機のまっただ中の08年11月、急きょ開かれた20カ国・地域(G20)の会議で誓約が交わされたものの、ロシアが自動車の関税引き上げでそれを破るまで36時間しかかからなかった。その後、米国の公共での調達を国内企業に限る「バイ・アメリカ」政策の導入を求める声など、保護主義の圧力が高まった際にそれを抑えたのは、世界貿易機関(WTO)や北米自由貿易協定(NAFTA)のルールだった。

 それよりも懸念されるのは、米国が保護主義政策の一斉射撃の準備に入っている可能性だ。貿易の緊急制限に関するホワイトハウスの強い権限を用いることも、単純に従来の約束を破棄することもありうる。だが、それが実際にどの程度起こるかは、政権内の主導権争いの結果にかかっている。

 国家通商会議のナバロ委員長やトランプ氏の上級顧問であるスティーブ・バノン氏など、より保護主義的な「米国第一」のグループが、ゴールドマン・サックス出身で国家経済会議(NEC)委員長のゲーリー・コーン氏が率いる一派と対峙している。

■米国内の議論に立ち入らないのが賢明

 中国など米国のいくつかの貿易相手国は、通商問題でトランプ政権を厳しく批判することに慎重な姿勢を取っている。それが賢明であるように思われる。ホワイトハウスでの論争の渦から浮かび上がってくるのは、単に貿易相手国とその企業を脅して米国により投資させようとする試みとほとんど変わらないものかもしれない。グローバルな供給網の複雑さを踏まえれば見当違いな行動だが、破滅的な事態にはならない。外国政府が米国内の論争に大きく立ち入れば、怒りを引き起こす恐れがある。

 それを考えると、米国以外のG20加盟国が先週末、共同声明から保護主義に関する誓約を削除せよという米国の要求に同意したのは、おそらく賢明だっただろう。米国の貿易相手国は原則を巡る一般論的な争いに関わるよりも、実際に個々の政策が出てきたときに反応すればいい。例えば、米国の輸入品に対する広範な国境調整税の構想が外国政府の警戒を呼んでいるが、外部からの介入を受けるまでもなく、すでにホワイトハウス内部およびホワイトハウスと議会の間の意見対立で足踏みしている。

 G20の共同声明の変更のような事案で他の国々が警戒感を強めるのは当然だ。しかし、各国は世界の開かれた貿易体制を維持するための長く危険に満ちた運動に関わろうとする前に、戦いを選ぶ姿勢でトランプ政権から出てくるものをはっきり見極めたほうがいい。

(2017年3月21日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/

(c) The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


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[経世済民120] ↑追加  公示地価、住宅地9年ぶり上昇 低金利けん引
公示地価、住宅地9年ぶり上昇 低金利けん引
2017/3/21 16:50
日本経済新聞 電子版
 国土交通省が21日発表した2017年1月1日時点の公示地価は全国平均(全用途)で前年比0.4%プラスと2年続けて上昇した。低金利でお金を借りやすい環境のもと、訪日客向け店舗やホテル用地の需要が高まった。全国の住宅地は0.022%プラスとわずかながら9年ぶりに上昇に転じた。

http://www.nikkei.com/content/pic/20170321/96958A9E93819481E0E39AE19D8DE0E3E2E1E0E2E3E5E2E2E2E2E2E2-DSXMZO1429879021032017000002-PB1-2.jpg

 商業地は1.4%上昇と、前年の0.9%上昇から上げ基調を強めた。景気回復を背景にオフィス需要が堅調に推移。訪日客が集まる都市を中心に店舗の収益性が高まり、不足するホテル用地の確保も相次いだ。三大都市圏が3.3%上昇したほか、周辺から人を集める札幌、仙台、広島、福岡の地方中核4市も6.9%上がった。
 全国の最高地価は11年連続で東京都中央区銀座4丁目の「山野楽器銀座本店」だった。1平方メートルあたり5050万円と1年前に比べ25.9%上昇した。都心でミニバブルと呼ばれた08年を3割ほど上回る水準だ。もっとも、商業地の全国平均は08年の8割強の水準にとどまっている。
 住宅地は前年の0.2%下落から下げ止まった。長引く低金利に加え、住宅ローン減税による需要の下支え効果もあり、総じて底堅く推移した。ただ商業地に比べ回復の勢いは弱く、三大都市圏の上昇率は0.5%と前年と同じ。都心などでは価格高騰でマンションの販売が鈍っており、大阪圏と名古屋圏の住宅地は上昇率を縮めた。
 住宅地1万7909地点のうち上昇は34%、下落は43%と、なお下落した地点数が上回っている。通勤や買い物に便利な駅から徒歩圏内の地価が上がり、駅から離れた不便な場所の地価は下がるという二極化が全国的に広がっている。
 三大都市圏を除く地方圏は商業地がマイナス0.1%、住宅地がマイナス0.4%だった。ともに25年連続の下落だが、マイナス幅は7年連続で縮まった。都道府県別にみると、商業地は奈良と岡山、住宅地は京都と広島が小幅な上昇に転じた。下落が続く地域もおおむね下落率は縮小し、商業地で2%以上の下落は秋田、新潟、鳥取、鹿児島の4県だけだった。
 地域ブロックのなかで人口や経済活動が集積する中核的な地方都市が高い伸びを示す傾向はより強まった。新幹線や地下鉄といった交通インフラ整備のほか、再開発による利便性の高まりが地価上昇につながったケースが目立つ。
 商業地の上昇率は札幌市が6.1%、仙台市が9.0%、広島市が4.7%、福岡市が8.5%だった。三大都市圏に比べると地価が安く、比較的高い利回りを確保できるとして投資マネーを集めている面もある。
政府統計、公示地価、地価、国土交通省、山野楽器店
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http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS21H3O_R20C17A3000000/


http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/347.html

[経世済民120] 東商取 白金限日取引スタート 初日売買高「金」上回る 国債応札義務引き上げ、全額消化を担保 日本発の新型太陽電池

東商取 白金限日取引スタート 初日売買高「金」上回る
2017/3/21 23:15
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 東京商品取引所は21日、決済期限のない白金(プラチナ)の証拠金取引「白金限日取引(愛称=プラチナスポット)」の取引を始めた。1グラム3549円の初値で始まり、清算値3485円で通常取引を終えた。同日の売買高は2万1606枚(枚は最低取引単位)で、2015年5月7日に上場した金限日取引(ゴールドスポット)の開始日を上回った。

 白金限日取引は、金限日取引と同じ個人投資家向けの商品設計で、取引単位は最低100グラムと標準の白金先物(500グラム)の5分の1に抑えた。証拠金も1万4千円前後で先物(約7万円)の5分の1。リスクとリターンを低く抑え、原則、現物の受け渡しがない差金決済型にした。

 商品先物取引に詳しいコモディティーインテリジェンスの近藤雅世社長は「初日の取引が盛況だったのは、金限日取引の定着で個人投資家の投資意欲が強いため」と指摘する。金限日取引の売買高も現在、当初目標の1日平均1万枚を超える1万6千枚程度に達する。東商取は個人を中心に投資人気を掘り起こし、流動性の向上につなげる考えだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14324670R20C17A3QM8000/

国債応札義務引き上げ、全額消化を担保 財務省が検討
2017/3/21 23:33日本経済新聞 電子版
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 財務省は特別条件で国債の入札に参加できる国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー、PD)に義務付ける応札比率を引き上げる。発行予定額の「5%」にする方向で検討。PD資格を持つ金融機関だけで発行額すべてを買い取る体制をつくる。三菱東京UFJ銀行がPD資格を返上し、国債の安定消化へ体制強化が必要となったが、優遇価格での購入枠を広げ、金融機関の負担もやわらげる。

 今、PD資格を持つ金融機関は21社…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS21H3I_R20C17A3EE8000/


 

日本発の新型太陽電池、世界の研究者が技術開発−商業化目指す
渡辺千咲
2017年3月21日 10:13 JST

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ペロブスカイト溶液の印刷や塗布で太陽電池の作製可能
世界経済フォーラムが2016年の10大新興技術に選出


  太陽電池は、長年にわたりシリコンを材料とする製品が大半を占めてきたが、各国の研究機関では「ペロブスカイト」と呼ばれる特殊な結晶構造を持つ物質を用いた日本発の次世代型太陽電池の研究が進んでいる。
  この物質を含んだ溶液を印刷したり塗布したりすることで太陽電池を作製可能な技術の研究は、桐蔭横浜大学の宮坂力教授が2006年に開始した。光エネルギーを電気エネルギーに変換する可能性を持つさまざまな物質を調べる中で、ある大学院生がペロブスカイトという聞いたことのない物質を取り上げることを提案。研究を進めてきた。
  ペロブスカイトとはチタン酸カルシウムの鉱物名で、太陽電池に用いられるのは同じ結晶構造を持つ化合物。
  宮坂教授は当初、ペロブスカイト太陽電池に関する論文を科学誌ネイチャーやサイエンスに投稿したが採用されなかったという。「効率も低いし中身のよく分からない新しいものだった」のが原因だろうと振り返る。「いろいろな所でペロブスカイトについて話したが反応が全然なかった」 。
  09年に論文が米国化学会誌に掲載された当時は、太陽光をどれだけ電力に変えられるかを示す変換効率は3.8パーセントだったが、次第に研究者の注目を集めるようになっていった。
「低コスト太陽電池の本命」
  12年に変換効率が10パーセントを超えると研究に勢いがつき、現在では英オックスフォード大学や米スタンフォード大学など世界各地の研究機関で開発が進められている。
  東京大学の瀬川浩司教授はペロブスカイト太陽電池について、「低コスト太陽電池の本命。世界中で大変な勢いで研究が進められている」と説明。シリコンのように複雑な製造工程、例えば、結晶化したりする必要がないと語った。
  瀬川教授は新エネルギー・産業技術総合開発機構が支援する15年度から5年間の「革新的低製造コスト太陽電池」研究プロジェクトの中心を担っている。
  世界経済フォーラムはペロブスカイト太陽電池を16年の10大新興技術に選出。欧州や米国、アジアの太陽光パネルメーカーや研究機関が技術の商業化を目指して競合しており、関連する論文は年間1500本に上っている。オックスフォード大学のスピンアウト企業であるオックスフォード・フォトボルタイクスは、18年末までにペロブスカイト太陽電池の商業化を目指している。
原題:The Wonder Material That May Make Spray-On Solar Cells a Reality(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-21/OMUD8F6K50XX01
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/359.html

[政治・選挙・NHK222] 遺族年金の男女差「合憲」、最高裁が初判断 賃金格差踏まえ アルバイト時給再び1000円超 2月 飲食系が過去最高に 
遺族年金の男女差「合憲」、最高裁が初判断 賃金格差踏まえ
2017/3/21 23:27
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 労災で配偶者を亡くした場合の遺族補償年金をめぐり、夫だけは55歳以上でないと受給できない規定が憲法違反がどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は21日、規定は合憲とする初判断を示した。「男女の賃金格差などを踏まえれば、(妻に手厚い)規定に合理性がある」と指摘した。

 合憲かどうかが争われたのは、1967年施行の地方公務員災害補償法の規定。妻は年齢を問わずに受け取れるため、妻を亡くした原告の堺市の男性(70)が、法の下の平等を定めた憲法に反するとして提訴した。

 同小法廷は判決理由で、男女間の労働人口の違いや平均賃金の格差、雇用形態の違いを挙げ、「妻の置かれている社会的状況に鑑みれば、妻に年齢の受給要件を定めない規定は合理性を欠くものではない」と判断した。裁判官5人の全員一致。男性の敗訴が確定した。

 民間や国家公務員の労災の遺族補償にも同様の年齢制限がある。

 2013年11月の一審・大阪地裁判決は「現在の一般的な家庭のモデルは共働き世帯で、配偶者の性別による差別的な扱いには合理性がない」とし、地方公務員災害補償基金(東京)による不支給の決定を取り消した。

 15年6月の二審・大阪高裁判決は男女間の賃金格差を理由に「夫を亡くした妻の方が、独力で生計を維持できなくなる可能性が高い」と指摘。規定は不合理な差別ではないとした。逆転敗訴した男性が上告していた。

 一、二審判決などによると、1998年、市立中学の教員だった妻(当時51)が自殺。男性は遺族補償年金の支給を申請したが、妻の死亡時点で男性が51歳だったため、受給要件の55歳に達していないとして支給されなかった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14328300R20C17A3CR8000/


 

アルバイト時給再び1000円超 2月 飲食系が過去最高に
2017/3/21 23:14
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 アルバイトやパートの平均時給が一段と上昇している。求人情報大手がまとめた2月の平均時給は軒並み1000円を上回り、値上がり傾向が鮮明だ。例年2月は高時給の募集が一服し上昇ペースは緩やかになりがちだ。今年は人手不足を背景に、外食店の店員や一般事務員などの賃金が高まり、全体の水準を押し上げた。

 リクルートジョブズ(東京・中央)が21日まとめた2月のアルバイト・パートの募集時平均時給は、三大都市圏(首都圏、東海、関西)で前年同月と比べ2.3%上昇の1001円だった。2カ月ぶりに1000円の大台に乗った。

 平均時給は2016年11月に1002円と初めて1000円を突破したものの、17年1月は993円に下がっていた。年末の繁忙期が終わると、学生アルバイトなどが入れ替わる新年度入りが近づく。1カ月未満などの短期アルバイトに比べ相対的に時給の安い長期勤務の募集が増え、賃金上昇を抑える傾向にある。

 ただ今年は早くも上昇が目立つ。人員不足で長期アルバイトの時給が高くなっていることに加え、事務系社員を中心に通年採用で人手を確保する企業が増えている。

 職種別で上昇が目立つのは、ファミリーレストランや居酒屋といった飲食店の店員だ。前年同月と比べ1.6%上昇の967円と、比較可能な11年1月以降で過去最高となった。

 人員の囲い込みの動きも目立つ。日本マクドナルドは15日、アルバイトの採用拡大を目的に店舗での仕事の体験会を全国規模で初めて開催した。「1万8千人が参加し、すでに採用が決まった人もいる」(同社)

 データ入力や受付、接客応対といった事務系は3%上昇の1029円だった。格安スマートフォン(スマホ)サービスなど成長が目立つ業種で、コールセンタースタッフを中心に採用拡大の動きがみられる。

 介護福祉士などの専門職も0.6%増の1146円。事務系と並び、1000円台の時給が定着している。業務負荷の重さから人手不足感が強い工場作業員やトラック運転手などは、2.4%上昇の990円だった。

 インテリジェンスが21日まとめた全国の平均時給も、前年同月を1.7%上回る1005円だった。6カ月連続で1000円を上回った。上土達哉an編集長は「3月は専門職やキャンペーン要員の募集が増えるため、時給が上昇する見込み」としている。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14324630R20C17A3QM8000/

http://www.asyura2.com/17/senkyo222/msg/693.html

[国際18] EUは危機打開の第1関門を通過したけれど 英国インフレ率予想を上回る伸び トランプ政権の行動原理 新興国化し始めた先進国
EUは危機打開の第1関門を通過したけれど

岡部直明「主役なき世界」を読む

「極右ポピュリズム」のドミノ倒しは防げたか
2017年3月22日(水)
岡部 直明

オランダ下院選(定数150)の投開票が3月15日行われ、現職のマルク・ルッテ首相率いる与党・自由民主党が33議席を獲得し、現有の40議席から大きく減らしたものの、第1党を維持した。(写真:新華社/アフロ)
 欧州連合(EU)の行方を左右すると見られていたオランダの下院選は、ウィルダース党首率いる極右ポピュリズム(大衆迎合主義)政党、自由党が伸び悩み、ルッテ首相率いる中道右派の自由民主党が第1党を維持した。英国のEU離脱、米国のトランプ大統領の登場で、世界にポピュリズムが蔓延するなかで、EUはともかく危機打開の第1関門は通過した。しかし、反EUの排外主義はEU全域に浸透しており、フランスの大統領選挙はなお予断を許さない。EUが危機打開できるかどうかは、EU自身が大胆な改革に踏み出せるかどうかにかかっている。

反面教師になったトランプ流排外主義

 「オランダ国民は誤ったポピュリズムに待ったをかけた」。ルッテ首相はこう勝利宣言をした。自民党は議席を40から33に減らしたが、ともかく反イスラムを鮮明にする極右ポピュリズム政党・自由党の台頭に歯止めをかけたのは、勝利だったと言えるのだろう。英国のEU離脱、トランプ米大統領の誕生に連鎖する形で、オランダで極右ポピュリズム政党が第1党になれば、フランスの極右「国民戦線」を勢いづかせる恐れがあった。それはEUの今後に深刻な打撃を与えかねないところだった。投票率が80%を上回ったのをみても、オランダ国民の間に極右台頭への警戒感が強かったことを示している。

 その背景にあったのは、トランプ米大統領が実践する排外主義をめぐる大混乱だろう。大統領令による移民排斥、難民受け入れ停止など保護主義を超えた排外主義は、米国の分裂を招いただけでなく、国際社会の批判にさらされた。そんななかで、「オランダのトランプ」と言われるウィルダース氏率いる自由党が第1党の座に就く危うさを、オランダ国民は感じていたのだろう。ウィルダース氏をはじめ欧州の極右勢力はトランプ大統領の登場を「次はわれわれの番だ」と大歓迎したが、トランプ流排外主義はオランダ国民にとって「反面教師」になったのである。

オランダの選択は時代の流れを変えるか

 では、オランダ国民の選択はポピュリズムの世界的潮流を変えられるだろうか。小さな国ではあるが、先進国のオランダが時代の流れを変えたことはある。冷戦末期の1980年代はじめ、米ソ間の軍拡競争はピークに達していた。旧ソ連の中距離核ミサイルSS20配備に対抗して、米国の核ミサイルが西欧諸国に配備されるなかで、西欧には核危機への不安が高まっていた。西欧に反核運動が広がるなかで、オランダ政府は米核ミサイルの配備延期を決断する。

 それは北大西洋条約機構(NATO)の一員として苦渋の決断だった。当時のルベルス・オランダ首相にインタビューしたが、狭い首相執務室で頭をかきむしる若き首相の姿をいまも思い浮かべる。

 NATOの結束を乱す決断に西側で一時批判が高まったが、この小さな国の選択は世界を動かすことになる。米ソ緊張から米ソ・デタント(緊張緩和)へ、そして冷戦の終結へと時代は大きく転換することになる。

 世界に蔓延するポピュリズムに対するオランダの選択もまた時代の流れを変えることになるだろうか。オランダ国民の選択がそれに続く仏独の国政選挙にどんな影響を及ぼすかにかかっている。

仏大統領選にどう響くか

 オランダの選挙結果に、仏独を中心に欧州の首脳たちは祝意を表明した。メルケル独首相は「欧州人として協力を続けられるのが楽しみだ」と民主主義の勝利を素直に喜んだ。フランスのオランド大統領は「過激主義に対する明白な勝利だ」と述べた。国政選挙を控えて、極右ポピュリズムへの防波堤になってくれたことを歓迎した。

 最大の焦点は、フランスの大統領選挙である。4月23日に第1回投票、5月7日に決選投票が実施されるが、いまのところ極右・国民戦線のルペン党首が先頭を走り、無所属でリベラル派のマクロン前経済相が追い上げる展開になっている。一方で、当初は有力とみられていた共和党のフィヨン元首相は、家族の不透明な給与問題で苦戦を強いられている。決戦投票では、ルペン氏とマクロン氏の対決が予想されるが、極右大統領の誕生を食い止めるため左派と右派が連携できるかどうかが注目点だ。

 オランダ国民の選択がルペン陣営の足を引っ張るかどうかは別にして、ルペン陣営が隣国の極右政党の台頭という追い風を受けられなくなったのは間違いない。

 もっとも、オランダ選挙でウィルダース氏率いる自由党は、第1党になれなかったとはいえ、議席を8から20に伸ばしている。当初の見積もりははずれたものの、議会で影響力を発揮できる地位を確保したともいえる。仏国民戦線のルペン党首は、この極右勢力の伸長に着目している。

 少なくともEU諸国で極右ポピュリズムはなお影響力をもっているとみておくべきだろう。移民問題などでオランダのルッテ首相はウィルダース氏の主張を一部受け入れることによって、第1党の座を維持した面はある。そこに政権に影響を及ぼすポピュリズムの本質がある。

 フランスの大統領選も英国のEU離脱とトランプ流排外主義の影響は大きいとみられる。トップを走るルペン候補が反EU、反ユーロを鮮明にしているだけに、英国のEU離脱交渉の展開は微妙な影響を及ぼすだろう。交渉の難航が避けられないうえに、スコットランドの独立機運など「英国の分裂」を招く事態になれば、仏国民も反EU、反ユーロの極右ポピュリズムを選択しにくくなるはずだ。

 トランプ米政権が排外主義を強め、地球温暖化防止のためのパリ協定を離脱する事態になれば、トランプ大統領を歓迎してきたルペン候補の足を引っ張る可能性もある。

メルケル首相は4期目に入れるか

 ドイツでも右派「ドイツのための選択肢」が勢力を拡大している。といっても、ドイツの場合、右派が政権の座に近づく可能性は皆無である。秋の総選挙でEUの盟主といえるメルケル首相が4期目を迎えられるかどうかが焦点である。

 対抗馬と目されるのは連立を組む社会民主党の新党首、シュルツ前欧州議会議長である。ここにきて急速に支持率を高めている。メルケル、シュルツ氏ともに筋金入りのEU主義者だけに、EUを主導する姿勢には変わりはないだろう。シュルツ氏は内政経験がないのがアキレス腱だが、社民党が前に出れば、財政規律より成長戦略という現実路線が期待できるという見方もある。

 しかし、英国のEU離脱とトランプ米大統領の排外主義のもとでEUを運営するには強力なリーダーシップが求められる。メルケル首相4選への期待は高まるだろう。

「2速度方式」でEUは再生できるか

 EUは反EUのポピュリズムを乗り越えて統合を進化させられるかが問われている。ユンケルEU委員長は、英国のEU離脱を受けて2025年に向けての「欧州の将来に関する白書」を公表した。そこには統合をどう進化させるか5つのシナリオを提示している。第1は現状維持、第2は単一市場の完成、第3はEU域外の国境警備などに限定・集中、第4は2速度方式(統合を進めるのに熱心な加盟国はどんどん統合を進め、熱心でない国や現状では困難な国はゆっくりで構わないという方式)、第5は連邦主義的統合、である。

 現状維持から「欧州合衆国」までかなり広い視野で統合を推進する姿勢である。EUの究極の目標であるはずの「欧州合衆国」構想を1つのシナリオと位置付けているのは、危機のなかで、EUも現実的選択を模索せざるをえなくなったことを示している。

 この5つのシナリオのうち、ユンケルEU委員長やメルケル独首相はじめEU主要国の首脳が推しているのが2速度方式である。防衛、治安対策、税制などでの統合推進を念頭に置いている。

 EUはもともと原加盟国と後発国、ユーロ加盟国と非加盟国、移動の自由を求めるシェンゲン協定加盟国と非加盟国など、2速度方式で運営されてきているが、これをさらに広げ徹底しようというものだ。

 これは現実的選択にみえるが、この構想に後発組の旧東欧圏がはやくも強く反発している。27カ国の結束を維持しながら、統合を進化させられるかどうかが問われる。

 とはいえ、EUが崩壊の危機にさらされているとみるのは悲観的すぎる。2度の世界大戦を経て創設され、冷戦終結で進化したこの平和の組織は簡単には崩壊しない。危機にあってこそEUの粘り強さに着目すべきだ。オランダ国民の選択は、そんなEU市民の粘り強さを示したといえる。


このコラムについて

岡部直明「主役なき世界」を読む
 世界は、米国一極集中から主役なき多極化の時代へと動き出している。複雑化する世界を読み解き、さらには日本の針路について考察する。
 筆者は日本経済新聞社で、ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、取締役論説主幹、専務執行役員主幹などを歴任した。
 現在はジャーナリスト/明治大学 研究・知財戦略機構 国際総合研究所 フェロー。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/032000020


 

 

英国:2月のインフレ率、予想を上回る伸び−中銀目標を突破
Fergal O'Brien
2017年3月21日 19:45 JST

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• CPIは前年同月比2.3%上昇、2013年以来の高水準
• 国民投票以降のポンド安と石油値上がりを反映

英国では2月にインフレ率がエコノミスト予想を上回る伸びとなり、過去3年余りで初めてイングランド銀行(英中央銀行)の目標を突破した。
  英政府統計局(ONS)が21日発表した2月の消費者物価指数 (CPI)は前年同月比2.3%上昇と、2013年9月以来の高水準に達した。ブルームバ ーグがまとめたエコノミストの調査中央値では2.1%が見込まれていた。前年同月にはわずか0.3%上昇にすぎなかったが、昨年6月の国民投票での欧州離脱(EU)決定以降にポンドが17%下落したことや、石油価格の値上がりが影響した。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iPb36MtMhDmk/v2/-1x-1.png

  コアインフレ率は2%と、14年半ば以来の高い伸びとなった。食品価格は前年同月比0.3%上昇と、14年4月以降で初めて値上がりし、ほぼ3年にわたった食品デフレが終了した。
  イングランド銀はこれまで景気支援を踏まえてインフレ率が2%の目標を超過することを容認する姿勢を示しているものの、国内の物価上昇圧力が高まり始めれば、その姿勢が問われることになり得る。今月の金融政策委員会(MPC)会合ではフォーブス委員が利上げを主張したほか、一部メンバーもこうした方向に傾きつつある可能性を示唆した。
  ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のエコノミスト、ダン・ハンソン氏は「近い将来にわたり、目標を上回るインフレ率が英経済動向のテーマとなる公算が大きい」とし、「BIエコノミスクスでは、インフレ率は2019年半ばまで目標水準に戻らないと予想している」と語った。
  ONSは今回の統計から望ましいインフレ指標を住居費を含めた消費者物価指数(CPIH)に移行したが、イングランド銀は引き続きCPIを政策目標に用いる。2月のCPIHは前年同月比2.3%上昇した。
原題:U.K. Inflation Gains More Than Forecast, Breaching BOE Goal (1)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-21/ON5TCC6S977H01


 

 


 
見え始めたトランプ政権の“行動原理"

トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く

ピュアな外交課題は従来路線を踏襲する
2017年3月22日(水)
篠原 匡、長野 光
 トランプ政権が発足して早2カ月。貿易・通商政策や移民政策、国境警備の厳格化など大統領選の際のスタンスを継続している分野もあるが、同盟国に対する立場や「一つの中国」原則に対する見方など、主張を修正させている分野も目立つ。端から見るとぶれているように見えるトランプ政権の主要政策。その背景にある法則について、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のマイケル・オースリン日本部長が解説した。(日経ビジネスニューヨーク支局 篠原匡、長野光)
日韓の核武装を容認したり、北大西洋条約機構(NATO)を時代遅れと批判したり、ロシアとの関係改善に強い意欲を示したり、外交・安全保障に関するトランプ氏の選挙期間中の発言は従来の米国の政策とは大きく異なるものでした。ただ、その後は「一つの中国」原則を尊重するなど、伝統的な路線に回帰しているようにも見えます。トランプ政権の外交・安全保障政策をどう整理すればいいのでしょうか。

マイケル・オースリン氏(以下、オースリン):トランプ氏が大統領選に勝利した後、誰もが彼の外交政策はラジカルなのではないか、米国の外交政策のプライオリティは大きく変わるのではないか、と考えました。ただ現実を見ると、彼が変えようとしているのは国内問題に直結する外交課題に過ぎません。


「トランプ大統領には一貫したロジックがある」と語るAEIのマイケル・オースリン氏(写真:Aaron Clamage Photography (c) American Enterprise Institute)
 例えば、トランプ大統領はTPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱やNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉を表明しましたが、これは国内の雇用問題につながるイシューとしてTPPやNAFTAを捉えているからです。イスラム圏7カ国の入国禁止を命じた大統領令も、国内のテロ対策という文脈で捉えれば一貫しています。どちらも外交課題ですが、トランプ大統領は国内問題としてみています。

 一方で、純粋な外交政策については従来の政策を踏襲しています。トランプ大統領は日米同盟の重要性に繰り返し言及していますし、(対日防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条の尖閣諸島への適用も明言しました。NATOに対する支持も表明しており、従来からの「一つの中国」という原則を尊重するとも語っています。

 もちろん、そういう伝統的な外交政策を変えようと思えば変えられます。トランプ大統領と外交政策チームは今後、変えようとするかもしれない。ただ現在についていえば、あらゆることが直ちに変わると思われてきたけれども、それは起きていません。国内問題に直結する外交課題か否か。トランプ大統領には一貫したアプローチがあるとみています。

トランプ大統領は選挙期間中からロシアに対して融和的な姿勢を取ってきました。先ほどのロジックに照らすとロシアはどうでしょうか。

オースリン:少し前に統合参謀本部のジョセフ・ダンフォード議長がシリアにおけるロシア軍との共同作業について、ロシアのカウンターパートと話し合いを持ちました。これはオバマ政権からの大きな変化です。一方で、トランプ政権はウクライナを巡る対ロ制裁は続けていますし、国連代表も国連の場でロシアによるウクライナ侵攻やシリア介入を批判しています。

 確かに、ロシアについてトランプ大統領はかなり複雑なポジションを取っており、現時点では様々なものが混じり合っています。ロシアを巡るスタンスについては、もう少し成り行きを見守る必要がありますが、ロシアに対する伝統的な政策を維持していると言えます。

彼の言う経済ナショナリズムは保護主義とは異なる

トランプ政権にはスティーブ・バノン首席戦略官のような人物がいる一方で、マティス国防長官など伝統的な立場を取る人々もいます。

オースリン:我々が知る限り、バノン氏はかなり高いレベルで政策に関与しており、トランプ大統領に強い影響力を持っています。イスラムすべてを指しているのかは分かりませんが、彼は米国がイスラムと戦争状態にあると信じています。宗教上の対立をナチュラルなものと捉えているという面で、バノン氏の世界観はかなり独特と言えます。

 一方で、トランプ大統領はマティス国防長官やティラーソン国務長官、マクマスター大統領補佐官など伝統的な志向を持つ人々を数多く指名しています。彼らは並外れた頭脳を持つ、クオリティの高い優れた人々です。彼らはバノン氏の世界観を共有していません。そのため、政権内には競争が起きていますが、意見の相違があるのは決して悪いことではありません。

 バノン氏は強固な信念を持っていますが、それがトランプ政権のすべてを形作っているとは思いません。バノン氏のビジョンに同意すべきものがあれば、大統領は自身の政策を変えるでしょうし、同意しない場合もあるでしょう。最終的に決断するのが大統領だということを考えれば、自身の政策がベターだと両方のサイドが大統領を納得させなければなりません。

 足元でみれば、純粋な外交政策については伝統的な立場を取る人が勝利を収めているように見えますが、移民や貿易など国内問題についてはバノン氏が勝利を収めているように見えます。どちらかが100%という話ではありません。バノン氏の世界観は物議を醸していますが、その裏側にある「米国に利益をもたらす」という哲学は議論されてしかるべきものだと思います。

バノン首席補佐官は経済ナショナリズムを主張しています。

オースリン:彼の言う経済ナショナリズムは保護主義とは異なるものだと思います。トランプ大統領は米国の労働者と米国経済を守りたいと考えています。そして、彼らが実際に話しているのは、現在の自由貿易がフェアかどうか、米国が経済活動の中で打撃を受けていないか、それを確認しましょうということです。経済ナショナリズムとは、こういう考え方を指す新しい言葉です。

 ご存じの通り、保護主義は海外の貿易相手に対して国境を閉ざすということですが、トランプ大統領がそれを望んでいるとは思いません。日本の方々がどう受け止めているかは分かりませんが、米国の利益のために、もっといいディールになるように交渉しようと言っているだけです。それがピュアな保護主義だとは思いません。

メキシコなど海外に製造拠点を移そうとした企業を攻撃している点はどうでしょうか。

オースリン:経済ナショナリズムという観点で見れば、トランプ大統領のしていることはロジカルだと思います。次に生じる疑問は、トランプ政権が採ろうとしている政策がいい政策なのかどうかです。彼の政策が経済を改善させるのか。それこそが問われるべき真の問いでしょう。我々は開かれた国境がベターであり、強固な自由貿易体制がベターだと考えていますが、真実はまだ分かりません。トランプ政権の下で経済に何が起きるのか、もう少し注視する必要があると思います。


このコラムについて

トランプのアメリカ〜超大国はどこへ行く
1月20日に第45代米大統領に就任したドナルド・トランプ氏。通商政策や安全保障政策など戦後、米国が進めてきた路線と大きく異なる主張をしているトランプ大統領に対する不安は根強い。トランプ氏は具体的に何を実施し、何を目指しているのか。新大統領が率いるアメリカがどこに向かうのか。それをひもといていこうというコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/012700108/032100016


 

 

新興国化し始めた先進国

倉都康行の世界金融時評

国際資本市場は何処へ行く
2017年3月22日(水)
倉都 康行
 2012年3月から開始したこのコラムもまる5年が経過し、今回の寄稿をもって終了させて頂くことにした。思い起こせば当時はまだ金融危機の爪痕が残り、主要国で徐々に感じられ始めた景気回復ムードに対しても「偽りの夜明け」といった警戒感が指摘されていた時期である。本当に世界経済が危機から立ち直ったのか誰も確信が持てず、日本ではその年末から「アベノミクス」が投入されることになった。

 その後、紆余曲折はあったが、今では世界経済は順調な成長軌道を取り戻しており、日本の昨年第4四半期GDP成長率も年率1.6%と健闘している。懸念された新興国においても、トルコのように拙い状況に陥っている一部を除けば、おおむね経済は安定状態にある。

 そうした景況感の下で米国FRBは既に3回の利上げを行うなど「金利正常化」を進めており、トランプ大統領のリフレ政策への期待感も手伝って株価は上昇を続けている。日欧ではまだ大幅な緩和政策が続いているが、日銀やECBの次の一手は「緩和の修正」という方向がコンセンサスとなっている。

 こうした全体感からすれば、現在の世界経済は危機を克服し、金利も異常な状況から脱出して健全化に向かっている途上だ、と見るのが常識的な診断だろう。格付け会社のフィッチに拠れば、昨年6月に11.7兆ドルまで拡大したマイナス利回り債券残高は既に8兆ドル台にまで減少しており、ECBは秋にもマイナス金利幅を縮小とするのではないか、との観測すら浮上している。

 経済が安定を取り戻しているのは何よりの朗報であり、非伝統的な金融政策が解除されていくのも、どこか3.11の悲劇から徐々に普通の生活を取り戻してきた生活体験と似ているような気もする。その意味では、今後の金融市場動向に対してもいたずらに悲観的になる必要はない。だが逆に、原発だけでなく金融においても、世界を震撼させた危機に対する記憶の風化があまりに早いようにも感じられる。

 今回、最後の原稿としての機会に、現在の市場がやや甘く見過ぎていると感じられる諸点について、老婆心ながら警鐘を鳴らしておくことにしよう。

世界経済は「長期不況説」を振り払ったのか

 まず金利の正常化が進む米国に関し、物価が上向いているという最近のFRBの診断に関して一言私見を述べておきたい。正直言って、米国の物価やインフレ期待が上昇して目標に近々達して2%前後で安定するという確証は、昨今の経済指標からは得られない。

 FRBが注視するコアPCEデフレーターの伸び率は、2016年1月から今年の1月までの13カ月間、1.6%と1.7%の間を行ったり来たりである。賃金上昇率は3%に近づいているが、物価を刺激するには至っていない。ニューヨーク連銀による2月消費者調査では1年先インフレ期待中央値は3.0%と横ばいで、債券市場の期待インフレ率を示すブレーク・イーブン・レートは5年で1.88%と年初の1.98%から低下、10年でも2%を割り込んでいる。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が利上げに反対したのも頷けるような気がする。

 FRBとしては、やや過熱気味の株式市場を意識しながら、トランプ大統領に拠るFRBへの政治的圧力がかかる前に、そして4〜5月のフランス大統領選挙に邪魔されないように、とやや政治的な判断で早めの利上げ時期を選択した、ということだろう。

 また「ドット・チャート」が示している今年あと2回、来年3回、再来年4回と いった利上げ見通しにも、あまりに経済に対する楽観が入り込んでいるように思われる。何故ならば、米国をはじめとする世界経済は本当に「長期不況説」を振り払うことに成功したのか、という疑念が氷解していないからだ。

株高・金利高は真の夜明けなのか

 確かに世界的に景気回復感は強まっているが、似たような状況で空振りに終わったケースもある、と英エコノミスト誌は警告している。1990年代後半の米国におけるIT主導の景気回復は「ジョブレス・リカバリー」を克服したかに見えたが、結果的には失敗に終わった。共通通貨導入に湧いたユーロ圏も、ドイツ・フランス勢などによる無節操なギリシア国債投資で行き詰ってしまった。

 確かに、株高やGDPあるいは雇用統計だけで金融危機の後遺症から完全に立ち直った、と診断するのは早計だろう。デフレ的な体質からの脱却には、貯蓄と投資の不均衡解消が不可欠である。革新的な技術革新が起きて企業が一斉に設備投資に踏み切ったり、格差拡大の解消によって中間層の所得が増え消費が増加したり、将来に果実を残すインフラ投資が実現したり、新興国が国内プロジェクトへの投資を活性化したり、といったアクションが生まれてこそ、長期不況への懸念を払拭することが出来る。

 だが現時点では、好調な経済状態にある米国ですらその兆候が見えない。金融緩和策の下でも企業の投資意欲はエネルギー業界など限定的な産業であり、株式市場には期待先行の匂いがついて回る。世界的に見た負債残高は増えているが、その大半は中国国営企業を中心とした後ろ向きの負債増であり、その危ういファイナンスが何とかデフレ感を抑制しているに過ぎないのかもしれない。

 今日のセンチメントの明るさは、トランプ効果に拠るところも大きい。だが同大統領のリフレ策は目先の需要を押し上げるだけで生産性上昇にはほとんど寄与せず、むしろ悪性インフレをもたらすリスクがある。また、同政権が議会工作に失敗する可能性もないとは言えない。

 米国の金利高が債務増ペースを加速している米家計の負担増となって消費を抑制したり、新政権による移民排斥が住宅需要を押し下げたりするリスクを指摘する向きもある。そして日本や中国などには、構造改革の遅延といった厄介な問題も残っている。昨今の株高や金利高が、真の夜明けを意味しているのか、まだ確証を抱くことは出来ない状況だ。

揺らぐ原油価格反発シナリオ

 そして、改善しつつある物価見通しに逆風となりそうなのが原油市場である。昨年2月に20ドル台まで下落した原油価格はその後徐々に持ち直してきた。昨年末にはサウジが増産放置から方針転換してOPECによる減産合意を取り纏め、これに非OPECが減産で協調し、先高観が強まった。これまで必ずしも合意を守ってこなかったOPEC諸国が足並みをそろえたことで、市場はその本気度を確認したのである。

 これに加えて、トランプ効果に拠る米国内の需要増予想が原油市況の需給改善を加速させる、との思惑も浮上した。だが、そんな楽観論を吹き飛ばすような材料が米国とサウジの双方から現れた。

 3月第2週に米国のエネルギー情報局(EIA)が発表した国内原油在庫量は前週比821万バレル増と予想だにしなかった急増となり、原油市場は一気に冷え込んだ。国内生産増、輸入増、消費減という構造での9週間連続の在庫増はWTIの50ドル割れを誘い、一時47ドル割れ寸前まで下落することとなった。

 さらにOPECの2月報告書に拠れば、加盟11カ国の生産量は日量ベースで前月比14万バレル減の3196万バレルと減産合意が遵守されており、サウジも6.8万バレル減の979.7万バレルとなっていたが、国別の申告ベースではサウジの生産量は26.33万バレル増の1001.1万バレルと増産になっていた。

 サウジのエネルギー省はOPECの報告書公表直後に「減産へのコミットは継続中だ」と異例の声明を公表し、過剰分は備蓄に回しており市場への供給量は減少している、と釈明している。だが市場の疑心暗鬼を払拭することは難しいかもしれない。親分が約束を守らないのなら、渋々従った子分が造反しても不思議ではない。

 仮にOPECなどの減産が続いても、米国のシェールオイル増産基調は継続中だ。同国内における需要増期待も「口だけ(指だけ?)大統領」の政策が頓挫すれば、一気に萎んでしまうリスクを抱えている。

 市場には景気が拡大しても、電気自動車の普及などにより原油需要は期待されるほど増えない、という構造的問題も指摘されている。それは、特に公害問題対策に苦慮する中国で顕著になるだろう。先の長い話ではあるが、少なくとも原油価格が恒常的に上昇基調を保てる可能性はそう高くないのではないか。

 原油価格反発シナリオが揺らげば、FRBなどが描いている予想物価動向の軌跡は少し狂い始めるだろう。エネルギー業界の投資計画が見直され、株価に影響することも想定される。

 原油価格の低迷期間が続けば、ヘッドラインのインフレ率上昇にはブレーキが掛かり、コア指数の頭打ちが鮮明になるかもしれない。金利の正常化がどこかで曲がり角を迎えることも有り得よう。

地政学リスクの台頭

 そして最後に政治リスクを採り上げておこう。昨年のブレグジットとトランプ氏の勝利に続く排他的、保護主義的な傾向が欧州で懸念されているが、オランダでの総選挙で見られるように極右勢力の台頭には限界が見られる。万が一、フランスでル・ペン氏が大統領選に勝利したとしても、フランスのEU離脱には憲法改正という高いハードルがそびえ立つ。フランス大統領には外交など強い権限があるものの、内政に関しては政府・議会が主役なのである。

 欧州の真の政治リスクは、メルケル首相の退陣シナリオであろう。現在、世論調査で同首相は社会民主党(SPD)のシュルツ党首に差を付けられている。その勢いが秋の連邦議会選挙まで続くかどうかわからないし、シュルツ氏は欧州議会議長を務めたほどの人物であり、仮に首相交代となってもドイツが反EUに傾くとも思えない。問題は、EUを支えてきた「一本足」の軸足であったメルケル首相が居なくなるという心理的リスクである。

 EUはそもそも国家の利害主張を排除するためにブリュッセルに行政府を置いたが、金融危機などを背景にそれが次第に独仏主導の構造へと変化し、いつの間にかドイツがEUを率いるような姿に変わってしまった。ドイツ経済の強靭さとメルケル首相以外に実力者が居ないという政治の実態が、その動きに拍車をかけたのである。

 そこで主軸が不在となれば、EUの結束力は急速に弱体化しかねない。英国との通商交渉も足並みが乱れて収拾がつかなくなる可能性もある。メイ首相率いるブレグジット・チームが右往左往することは避けられないだろう。ロシアはその失地回復作戦を一段と積極化させることも想定される。ドイツの政治リスクは、オランダやフランスの比ではない。

 また北朝鮮の暴走リスクが現実味を帯びてきたことで、東アジアも欧州や中東と並ぶ地政学リスクの対象として急浮上してきた印象もある。市場はこれまで北朝鮮問題に対しては強い関心を払ってこなかったが、今後も「たいしたことは無い」と高をくくっていられないかもしれない。

 北朝鮮を巡る問題が、現実認識に欠けるトランプ大統領と責任回避に余念がない習主席の間でどう処理されるのか、判断が付かない。韓国は事実上、大統領不在の国家となっており、当事者能力が著しく低下している。日本はといえば、現実の脅威に晒されているのに、政府は国会でつるし上げを食らっている防衛大臣を守るのに必死という惨状である。これを地政学リスクと言わずして、何と呼ぼうか。

 とはいえ足元の市場を見る限り、株価の急落や長期金利の急上昇といったパニックが起きるようには思えない。トランプ大統領の躓きで、ダウが2万ドル近辺まで押し戻されたり、ドル円が110円を割り込んだりすることもあるかもしれないが、そこはしっかりとビッドが入ることだろう。

 投資家にとって、トランプ大統領が運んできた「待ちに待った強気相場」は簡単に捨てられないのである。S&P500は2015年には下落、2016年も5.5%の上昇に留まった。20%前後の上昇を誇った1990年代の再来を夢見る個人投資家は少なくない。慎重だった機関投資家でさえもしばらく現金を株などの資産に振り向け始めている。

 ただし、その相場観は自信に満ちたものというより、買わないリスク、持たないリスクを回避しようとする姿勢が強いように思われる。筆者自身も未だに、すっきりした強気のイメージを描き切れないでいる。それは、前述したような長期停滞説の持続性、原油価格の低迷、地政学リスクの台頭といった要因がいつかどこかで投資見直し材料として浮上してくるだろう、と怯えているからだ。

新興国市場に対する不信感との共通点

 最近の投資環境への不安感は、新興国市場に対する漠然とした不信感と共通するところがある、と英資産運用大手シュローダー・インベストメント・マネジメントのステーニス氏は指摘している。新興国市場への投資にはカントリー・リスク分析が最重要であり、内外環境が政治経済に与える影響を詳細に調査する作業が不可欠となるが、投資不足や構造改革遅延、原油相場そして政治リスクが覆いかぶさる今日の先進国市場も、確かにそれに似てきたと言えよう。

 新興国経済は、苦し紛れにリフレ政策を導入して短期的に景気を底上げしてはその持続に失敗する、というサイクルを続けて久しい。ひょっとして先進国の政治経済もそんな循環に入ってしまったのではないかという懸念が消えるまで、長期的に強気な相場観には戻れそうにない。


このコラムについて

倉都康行の世界金融時評
日本、そして世界の金融を読み解くコラム。筆者はいわゆる金融商品の先駆けであるデリバティブズの日本導入と、世界での市場作りにいどんだ最初の世代の日本人。2008年7月に出版した『投資銀行バブルの終焉 サブプライム問題のメカニズム』で、サブプライムローン問題を予言した。理屈だけでない、現場を見た筆者ならではの金融時評。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/230160/031700024/
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/677.html

[原発・フッ素47] 中国の「放射能汚染」告発に無印良品が徹底反証 “小清新”は「中国産フェイクニュース」より「日本産」を支持        
中国の「放射能汚染」告発に無印良品が徹底反証


“小清新”は「中国産フェイクニュース」より「日本産」を支持

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス

2017年3月22日(水)
福島 香織

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/032000093/aflo_TBEB089059.jpg


中国中央テレビCCTVは特別番組「315晩会」で「無印良品」を告発したが…(写真:Imaginechina/アフロ)
 毎年3月15日の世界消費者デーの夜に、中国中央テレビCCTVは特番を組んで消費者目線に立って企業やブランドの問題点を暴露する。いわゆる「315晩会」である。消費者保護のためのキャンペーン番組の体をとっているが、その実、外資企業や大手企業をバッシングすることで、社会不満を募らせる庶民のガス抜きをする番組でもあり、また外資系企業の評判を落とすことで、中国国内企業を擁護する狙いもあるといわれている。とにかく視聴率は高く、その番組でやり玉に挙げられた企業は株価が一気に下がったり、クレームが殺到して、一時的にでも市場から排除されるので、外資企業も含め、この日はびくびくなのだった。

 今年は、折りからTHAADミサイルの報復として韓国企業・ブランド・韓流ドラマなどが排斥されていたので、ターゲットは韓国企業になるだろうと思われていたのだが、蓋を開けてみると、ターゲットになったのは、米国企業と日本だった。ナイキと、日本の“福島原発汚染食品”を販売していたとされた無印良品だ。

 興味深いのは、無印良品側はこの報道に対し、「誤解である」と反論、対象商品の撤去にも応じなかったことである。そしてさらに面白いことには、ネット上にはCCTVの取材のほうが怪しい、どっちを信じる?といった発言まで流れた。これまでも「315晩会」の取材の在り方には確かに不条理な部分もあったのだが、企業側はその不条理に文句を言わず、ひたすら謝罪し、“バッシング”をやり過ごす、という方法をとってきた。その方が“被害”が少ないからだ。

 では、無印良品が強気にも反論した背景は何なのか。

互動百科は謝罪、ナイキは返金を表明

 今年の315晩会で、消費者をだます悪徳企業としてバッシングされたのは大手では、中国ネット企業・互動百科、アメリカのスポーツ関連品メーカー・ナイキ、そして日本の無印良品(良品計画)である。

 互動百科は中国のウィキペディアみたいな、ネット上の知識プラットフォームだが、そこにはあからさまな商品広告が載せられていた。例えば健康食品「極核5S」の欄には、「冬虫夏草の800培の功能」といった虚偽の商品宣伝が載せられている。中国では健康食品の広告において、根拠のない功能をうたってはいけないと決められているが、互動百科という、“ネットユーザーによる知識プラットフォームにおける意見”というスタイルにすることで、その盲点をついた“広告宣伝”が可能というわけだ。

 しかも、百度百科は本来、ユーザーが無料で知識・情報を書き込んでいくもので、そこに虚偽があった場合は、互動百科側が削除・凍結するルールになっているのだが、実のところ、互動百科側に広告費を払えば、あたかもユーザーによる知識プラットフォームの体を装った広告が、削除されないまま残ることまで暴いた。互動百科はこの番組放送後、いち早く「一部社員のやったことで、今後企業管理に漏れがないようにいたします」と謝罪を表明した。

 またナイキのテクノロジーシューズ・ズームエアに内蔵されているはずのエアユニットが、中国でコービー・ブライアント北京五輪仕様復刻版と銘打って売り出されたものに関しては内蔵されていなかったことも315晩会で暴露された。国際標準のズームエアと、中国国内限定販売用のズームエアと仕様が二つあるというのだが、消費者にしてみれば納得いかない話だろう。ナイキ側は誤解を呼ぶ広告の仕方をしたとして、消費者が望めば全額返金に応じるとしているが、消費者側は消費者権益保護法にのっとって、購入額の三倍の慰謝料を支払うべきだと訴えていた。ちなみに、この番組放送後、ナイキ側は沈黙を守っている。

「なんと恐ろしいことか」

 さて、問題の日本の“放射能汚染食品”のバッシング報道だが、CCTVは中国国内1万3000以上のネットショップやスーパーで日本の核汚染食品が売られていると暴露した。例えば、カルビーのスナックの製造元は東京都。工場は栃木県。東京都も栃木県も2011年の311東北大地震以降、中国が食品輸入禁輸措置をとっている対象12都・県(現在は10都・県)に含まれている。スーパーの棚に並んでいるレンジでチンするごはんパック。中国語の製造元表示には北海道産とあるのだが、その中国語表示をめくると、製造者住所は新潟県。これも禁輸措置対象地域だ。こうした“日本の放射能汚染食品”は、良質・安全を売りにしているブランド・無印良品のスーパーで売っていることも判明した。

 からくりは至って単純で、天津や深圳の保税区留めで輸入したのち、保税区内から宅配便で保税区外に送る。よくある密輸入のパターンである。

 こうしたCCTVの調査報道映像のあと、スタジオの司会者は、「初期統計で1万3000もの店で放射能汚染食品が売られているとは。この数字はなんと恐ろしいことか。まさか輸入代理店は、国家の法律を知らないわけではないでしょう。まさか、これら食品が自分たちの同胞友人たちの健康を損なうかもしれないことを知らないわけではないでしょう」と怒りをあらわに訴えるのである。

 この放送を受けて、中国のメディアは「恐怖!日本の放射能汚染食品を我々は食べていた!」と煽情的なニュースを流し、ネットショップでは一斉にカルビー製品が姿を消し、全国のスーパーは日本産の食品を棚から撤去したのだ。だが、この番組に反論した企業があった。無印良品だった。

CCTVを信じるか、無印を信じるか

 無印良品サイドは、中国のSNS微博のオフィシャルアカウントで「輸入食品はすべて安全検査を受けている。放射能汚染食品を販売したという事実はなく、CCTVは製造会社の住所と生産地を混同しているだけであり、報道は全くの誤解だ」と表明した。そして315晩会で批判対象となった日本産食品・飲料の原産地は、実は福井県と大阪府であるとの説明をしたうえで、原産地証明を出してきちんと税関検査を受けて、合格を得た商品であるということを、税関書類の写真を添付しながら訴えた。もちろん、店舗から対象食品・飲料を撤去しなかった。

 さらに意外なことに、この無印良品の抵抗は中国のネットユーザーたちを味方につけ「無印良品の逆襲が成功!」「企業広報は無印良品に学べ!」「CCTVを信じるか?無印を信じるか?」といった発言も飛び出した。また、一部大手ネットメディアも無印良品側の言い分を丁寧に報じた。

 これはなぜかということを考えるとなかなか面白い。

 微博ユーザーのV(VIP称号、影響力のあるアカウント)アカウントの少なからずが、CCTV報道に突っ込みを入れて、無印良品サイドの立場に立って発言している。

 例えば「青年考古学生」という編集者のアカウントはこういう。

 「CCTVが何を言おうが、地方メディアが何を信じようが、無印良品が声明を出す前は、ほとんど一方的な暴露でしかなかった。さらに言えば新京報メディアは、(独自取材もせずに)“無良印品”などと揶揄した。メディアは自分で事実を求める精神で再調査・再取材しないのか?」

 とあるブログニュースはこう指摘する。

 「中国において、メディアの擬人化がひどく進んでいて、まるで視聴者・消費者を父母のように一方的に誘導するようになっている。…CCTVが発信したのだから、我々も唱和せねばならない。CCTVをそらんじておけば、どちらにしろ私たちには責任がない。こういう大衆の心の在り方は、無責任なメディアと同じである」

 中国における官製メディアへの不信は実は、ネットを駆使するような若い世代や知識層の間には根強くある。だが、メディアが共産党の喉舌であり、党の代理人としての立場にある以上、表立った官製メディア批判は党批判となるので、多くの視聴者はフェイクニュースだとわかっていても、あまり文句はいわない。そして、政治的安全を考えて、時にそのフェイクニュースにあえて乗じて、自分の利益になるように行動する。

 例えば、かつて日本で生産されているSK‐Uの化粧水に、中国の品質検査上問題のある成分が検出された、という報道があると、それが実は日中関係悪化にともなう中国サイドの一種の報復バッシングであるとわかっている消費者も、空のSK‐Uの瓶を持って返金を要求したりもした。真実は何かということよりも、どう行動すれば政治的に安全であり、個人として利益を得られるか、ということが中国大衆の判断基準でもあった。

 では、この“日本の放射能汚染食品”問題について、少なからぬネットユーザー、大衆が多少の“政治的安全”を犯して、無印良品のサイドに立ったのは、どういうわけか。

“小清新”が好む村上春樹、岩井俊二、無印良品

 ここからは私の想像なのだが、一つの背景は、“無印良品”という日本を体現するようなブランドの威力、信頼性というものがあったのではないか、と思う。中国経済の悪化にともない、外資系企業、外資系ブランドの撤退ラッシュが続く中、無印良品は怒涛の出店を展開し中国の若い世代に圧倒的な支持を受けている。中国の「名創優品」チェーンなどは、明らかに無印良品のブランド力に乗じた戦略で人気を博した。しかも無印良品の持つイメージ、たとえばシンプル、ナチュラル、エコ、オーガニック、ちょっと上質な暮らしといったキーワードは、中国のプチブル層に誕生した“小清新”と呼ばれる若い女性層の好みに合致し、いわゆるエルメスやシャネルに身を固めるセレブ層とは違う、洗練された自然派の都市民ファッションの一つの流行となった。

 そもそも小清新というイメージ自体が、非常に日本的といわれ、小清新が好む小説・映画といえば村上春樹や岩井俊二がトップに来るし、化粧も日本的なナチュラルメイク、美肌スキンケアに重点を置き、ふかひれアワビの飽食よりも、オーガニック食品やマクロビ(日本発の健康食生活法)にこだわる。つまり小清新のイメージは無印良品であり、無印良品のイメージは日本を体現しており、若い小清新な中国人にとって日本とは、シンプル、ナチュラル、エコ、オーガニック、ちょっと上質な国として、圧倒的な信頼を得ている。日本のこの無印良品的ブランド力は、中国における一つの文化形成に寄与するだけの影響力を持っていたわけだ。このあたりの背景は、拙著『本当は日本が大好きな中国人 (朝日新書)』(朝日新書)に詳しいので参照してほしい。

 そのきわめて日本的イメージの無印良品が、CCTV報道に対して「誤解だ」といち早く発信した。ここで、CCTVは嘘つきだ、といわずに「誤解だ」というあたりが奥ゆかしい。そして、わざわざ丁寧に、証拠の税関書類や品質検査合格書類などを添付して、冷静に誤解を解こうとしていることが、好感を得た。こうなってくると、普段、中国のフェイクニュースに対して正面から声を上げることが難しい中国ネットユーザーたちも、ちょっと嬉しくなってくるようだ。ネット上では「疑いなく、無印良品の勝利」と指摘する声もあった。

傲慢フェイクニュースにうんざり

 もう一つは、中国人消費者の間に、中国の“日本の放射能汚染地域生産物”の全面禁輸にうんざりしている空気があった。エコ、ナチュラル、安心、安全、ちょっと上質にこだわる中国の都市部プチブル層は、実は日本製の食品を買いたい。だから、日本旅行に行った際に食品の爆買いをするし、日本に留学・駐在している友人に頼んで送ってもらったりする。売れるから、ネットショップで、カルビーのフルグラ(栃木県産)が販売されるのだし、密輸入の真空パックごはんにわざわざ北海道産とウソの生産地を書いたシールを張ってまでスーパーの棚に並べられるのだ。

 スーパー側も消費者側も、震災後6年も経つ今なお、日本の10都県からの禁輸措置を不条理だと感じているのだ。はっきり言って、日本の放射能汚染食品の問題よりも、そろそろ北京にも飛んでくる黄砂とともに放射性セシウムを吸い込むことによる内部被ばくの方がよっぽど深刻で切実な問題ではなかろうか。

 この後、中国当局の無印良品イジメが本格化して、最終的に無印良品側が前言を撤回して謝ることになるのか、それとも無印良品の冤罪ということで決着がつくのかはまだわからない。

 だが、消費者にとって、バッシングすべき不良品は、自前取材をせずにフェイクニュースを日常的に流し、あたかも自分たちが世論をコントロールしているかのような傲慢さを隠さないメディアの方だということは、別に中国だけの話ではないということだ。

【新刊】『孔子を捨てた国――現代中国残酷物語』

 ともに儒教を文化の基盤にしているから「中国人とは理解しあえる」と信じる日本人はいまだに多い。だが、習近平政権下の空前の儒教ブームは、政治に敏感な彼らの保身のための口パクにすぎず、中国人はとうに孔子を捨てていたのだ。 「つらの皮厚く、腹黒く、常に人を疑い、出し抜くことを考え、弱いものを虐げ、強いものにおもねりながら生きていかねばならない」中国人の苛烈すぎる現実を取材した。
飛鳥新社 2017年2月15日刊

このコラムについて

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
 新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。
 中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。
 特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/032000093/
http://www.asyura2.com/16/genpatu47/msg/697.html

[経世済民120] サプライチェーンで進む「日本レス化」を防げ 運送会社の駐禁地獄 営業に効く妄想力は小説の悪役に学ぶ 男女平等の流れに反す
サプライチェーンで進む「日本レス化」を防げ

目覚めよサプライチェーン

2017年3月22日(水)
牧野 直哉

(写真:つのだよしお/アフロ)
 3月15日、一部の新聞が、シャープが液晶テレビの亀山工場での生産を2018年に終了させると報じた。同日シャープ首脳は、亀山工場で生産した液晶パネルを使って、80型以上の大型液晶テレビの生産体制を維持する方針を明らかにし、国内生産の撤退を伝えた一部新聞の報道を否定した。このニュースが大きく報じられた背景には、すべての日本企業が抱え、根本的に解決しなければならない問題がある。グローバルに展開するサプライチェーンにおける「日本レス化」だ。

アメリカも直面した問題

 サプライチェーンから「レス化」される問題は、何も日本にだけ起こっているわけではない。アメリカのトランプ大統領も、サプライチェーン上におけるアメリカ国内にある様々なリソースの位置づけが弱まっている状況にストップをかけようとしている。アメリカはITの進化によって新興企業が次々と誕生し、もっともグローバルサプライチェーンの恩恵を享受してきた国だ。

 しかし、自国以外の安価な労働力に代表されるリソースを活用して発展した結果、国内消費を支える中間層の仕事が奪われ、失業率の上昇によって購買力が減退した。企業は減退した消費者に応えるために、より安さを求めて更に安い人件費の国へと進出する。グローバル化とは、企業展開の自転車操業の様相を表しているかのようだ。走り続けないと、企業の発展はストップしてしまうのだ。

働き方改革の影で欠かせないこと

 同じく国内の高コスト化によって、中間層の所得水準の低下に悩む日本。現在具体化しつつある「働き方改革」で実現を目指す様々な施策によって人件費負担がアップし、高コスト化を是正するより拍車をかける可能性がある。それでもなお「働き方改革」を推し進めるのは、人々が使えるお金と時間を増やし、個人消費を喚起した結果で実現する日本経済の浮揚だ。しかし、想定されるプロセスには、極めて実現の難しい課題が山積みしている。中でも、国内に存在する企業のリソースを、サプライチェーンの中でどのように維持・活用するかが最大の課題である。

 冒頭の例でシャープは、80型以上の大型液晶テレビの生産体制を亀山工場で維持するとしている。JEITA(電子情報技術産業協会)が毎月発表している薄型テレビの2017年1月の国内出荷実績を参照すると、販売全体に占める50型以上のテレビの出荷数割合は18%となっている。売れ筋はひとつ小さいカテゴリーの37型から49型だ。亀山工場で生産する80型は、価格.comでも1台130万円以上(3月22日現在)、1インチ当たり単価でも60型と比較して5倍以上の販売価格だ。現時点での価格から判断すれば、80型より大きなテレビを亀山工場で生産する決定は妥当かもしれない。

 しかし、2014年以降同社を襲った経営危機は、想定よりもはるかに速いスピードで起こった液晶テレビの価格下落によって、莫大な投資の回収が大きな負担になったのが1つの要因だ。今後80型以上のテレビの価格が現状を維持するのか。それとも、より小さなサイズと同じインチ当たり単価に近づいてゆくのか。今回報じられた内容を否定したシャープは、亀山工場で生産する妥当性を追及し、より高い付加価値を創出して価格維持に努めるか、価格競争に勝ち残る妙案を見つけなければならない。シャープが構築する液晶テレビのサプライチェーンで、亀山工場が生み出す価値を維持・拡大しなければ、今回の報道がいつか到来する未来を予見する記事になってしまう。

サプライチェーン上で不可欠な役割とは

 シャープに限らず、高い人件費で悩む日本国内の工場が、サプライチェーンの中で自社の役割を維持するのは至難の業だ。外国為替レートが円高から円安基調へと移行した2014年以降、円安によってドル評価したときの日本の人件費負担が相対的に減少した。この環境変化によって日本国内に生産回帰の期待が高まった。

 しかし、ただ人件費が安くなったからといって、海外へ流出した工場が国内へ戻ってはこない。国内へ工場を回帰させるには、サプライチェーン上でどのような価値を生み出すか。国内工場に従来にはなかった新たな価値が必要だ。事実、サプライチェーンから日本がレスされないように、必死に踏ん張っている例もある。

国内生産回帰で見えた変化

 2015年に日本国内への生産回帰の機運がにわかに沸き起こった。当時大きく報じられた企業の共通点は、サプライチェーンにおける自社の国内工場の役割を再定義する動きだ。キヤノンの場合、当時国内と海外の生産比率40対60を3年かけて逆転させる計画を公表した。国内の生産比率が40%から60%へ拡大すれば国内雇用が増える、そう考えるのは早計だ。キヤノンが増やす20%の国内生産の目玉は「無人工場」にある。人件費の変動による影響を減少させ生産の国内回帰を実現させる。

 TDKでは、秋田の工場をグローバル展開に必要なノウハウの開発と蓄積を行う「マザー工場」として位置づけた。これまで日本国内の生産で培ってきたノウハウを使って、更に高い生産技術を獲得するための拠点にするのだ。

 両社の場合、取り組みは違っても根底にある考え方は共通している。サプライチェーンに、国内のリソースを従来とは違う方法で組み込み、あるいは活用する点だ。生産方法を見直して、サプライチェーンに直接組み込める拠点か、サプライチェーンの高度化をサポートするノウハウを生み出す拠点の違いだ。国内の拠点をサプライチェーンに積極的に組み込むには、明確なビジョンに裏打ちされた取り組みが不可欠だ。新たな取り組みには、様々な障害やリスクがある。しかし、自ら違いを打ち出した行動こそ、競合他社と比較した優位性の源泉になるはずだ。

 キヤノンやTDKが実践している無人工場や高度な生産方法の適用範囲が広がれば、現在の新興国の経済が発展し人件費が高騰しても、相応のアウトプットが可能になる可能性が出てくる。自転車操業的なグローバル展開を終演させるためにも、人件費が高騰し生産リソースを海外へ移転させる場合、日本をコピーするだけではダメなのだ。日本が経済的に発展し人件費アップによって労働者の生活が豊かになるプロセスは、新興国でも同じように発生する。であるならば、今日本で起こっている問題は、将来的に現在の新興国で同じように発生する。また別の新興国を探すのか、それとも新たな生産方法で乗り切るのか。現在の場所にとどまって、難局を乗り切る方法論があってもよいはずだ。

働き方改革が労働者におよぼす影響の本質

 変化する経営環境に適応するために、企業で働く労働者にも変化が必要だ。働き方改革の本質は、単位時間当たりに創出する付加価値アップだ。今の同じ業務内容で、残業時間が減って、給料がアップするはずがない。同じ仕事だったら、給料は減少するだろう。今まで1時間かかった仕事を30分でやるための方法論の発見や、仕組みの構築が不可欠である。1時間かかっていた仕事を10分でできれば、1/6の人件費の国と競争できる。そういった競争力を維持できる新たな労働の姿を生みださなければ、真の働き方改革は実現しないのだ。

 経営環境の変化によって、これまで企業はより人件費の安い立地を求めて海外進出を繰り返してきた。海外進出して収益をあげ日本企業として生き残る手段もあるだろう。しかし、進出先は有限だ。日本は人口が減少するといっても、最新の推計では2060年に8674万人もの人々が暮らす国だ。安い人件費で雇い入れられる労働力を求め続ける自転車操業のグローバル展開に終止符を打つためにも、国内のリソースを活用する道を探ることこそ今、日本企業に求められ、サプライチェーンの日本レス化を防止する手段となり得るのだ。


このコラムについて

目覚めよサプライチェーン
自動車業界では、トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車。電機メーカーでは、ソニー、パナソニック、シャープ、東芝、三菱電機、日立製作所。これら企業が「The 日系企業」であり、「The ものづくり」の代表だった。それが、現在では、アップルやサムスン、フォックスコンなどが、ネオ製造業として台頭している。また、P&G、ウォルマート、ジョンソン・アンド・ジョンソンが製造業以上にすぐれたサプライチェーンを構築したり、IBM、ヒューレット・パッカードがBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を開始したりと、これまでのパラダイムを外れた事象が次々と出てきている。海外での先端の、「ものづくり」、「サプライチェーン」、そして製造業の将来はどう報じられているのか。本コラムでは、海外のニュースを紹介する。そして、著者が主領域とする調達・購買・サプライチェーン領域の知識も織り込みながら、日本メーカーへのヒントをお渡しする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/258308/032100072/?ST=print


 

 


佐川だけじゃない。運送会社の「駐禁地獄」

物流パニック

94人の運転手を抱える運送会社が年49回の駐車違反も
2017年3月22日(水)
大西 孝弘
 佐川急便では、2016年度、駐車違反の身代わり出頭事件で106人の従業員が立件された。94人の運送会社で年49回の駐車違反の取り締まりを受けたケースもある。法令順守と現実の配送業務の狭間で、運送会社は苦しんでいる。
 佐川急便が駐車違反で揺れている。

 2016年度、駐車違反の身代わり出頭事件で、106人の従業員が立件された。100人を超える従業員が立件されるのは異常事態だ。


駐車違反問題は配送会社の経営課題となっている(写真と本文は関係ありません)
 同社は東京都23区内に配送関連の営業所が32カ所ある。そのうち、9カ所で身代わり出頭が発覚しており、問題が会社全体に広がっている。

 駐車違反の取り締まりを受けると運転手が出頭して納付するか、所有者が反則金を納付しなければならない。佐川急便ではペナルティーとして内勤に異動となるケースがあるため、それを避けるために、知人などに身代わり出頭を依頼していたようだ。同社の従業員は、犯人隠避や同教唆の疑いで逮捕されている。

 佐川急便は昨年12月、以下のコメントを出した。「今後、同様の事案が発生しないよう全社一丸となって再発防止に取り組むとともに、従業員教育の再徹底を図ってまいります」。

 身代わり出頭は許されない行為ではあるが、佐川急便は自転車や台車ではなくトラックで宅配するケースが多いため、駐車違反の対象になりやすい事情がある。

 そして、営業用トラックの駐車違反は、佐川急便だけでなく多くの運送会社が悩んでいる問題でもある。

駐車違反の罰金が年100万円以上に

 酒類の集配を担うワタコー(東京・葛飾)も、駐車違反に苦しんでいる運送会社だ。同社は2006年度以降、駐車違反の件数が増え、多い年では49件の駐車違反を受けている。

 同社は94人の運転手と100台ほどのトラックを抱える。大型車の駐車違反の罰金は2万1000円であり、年49回の違反では100万円以上の負担となる。

 渡邊直人社長は「1度の違反で1日の運賃がほぼ飛んでしまう。経営の大きな負担になっている」と話す。また、後述のように“狙い撃ち”される恐れがあるため、駐車違反になったトラックについては稼働を減らすケースがあり、まさに「駐禁地獄」のような状況だという。


ワタコーの従業員は、こうしたトラックに乗って東京の繁華街に酒類を届けている
 
 同社は東京の銀座、赤坂、六本木の酒屋や飲食店に酒類を配送している。いずれも繁華街のど真ん中に立地しており、駐車スペースがほとんどない。

 飲食店に酒類を運んでいる間に、駐車監視員によって、配送トラックに駐車違反のステッカーを貼られることが多い。同じルートを回っているため、狙い撃ちされるケースもあるという。

 例えば銀座でのこと。トラックから降りて、ビルの中の飲食店に酒類を届けるためにエレベーターに乗り、外を見た時にトラックに近づく駐車監視員の姿を確認。慌てて戻ったものの、駐車違反を回避することはできなかった。

 道路交通法では運転手がそのクルマを離れていて、直ちに運転できない状態にあるものを放置車両とし、駐車違反の対象としている。

 同乗者が運転できる体制でいれば違反にはならないが、2人の配送体制にすれば人件費が2倍になってしまう。また、1日40〜50件を回るため、1件ずつ配送先から離れた駐車場に停めるのは業務効率や採算性を考えると現実的ではないという。

 当初はダッシュボードの上に、配送先とすぐに戻る旨を書いた紙を置いていたが、“抑止効果”はほとんどなかったという。

 「大前提として駐車違反による交通事故を減らすことには協力したい。しかし、繁華街に酒類を届けるという業務内容からして、現実的には抜本的な対策を取るのが難しい」と渡邊社長は語る。

東京都トラック協会が緩和を要望

 駐車違反は運送会社にとって共通の悩みとも言える。

 東京都トラック協会が会員各社を対象に実施したアンケートでは、2014年に駐車違反の取り締まりを受けた企業は825社で、回答のあった企業の約半数だった。

 東京都トラック協会は「日常の集配業務に大きな支障を来す状態が続いている」として、東京都議会や警視庁などに営業用トラックに対する駐車規制の見直し、緩和を訴えてきた。しかし、状況はほとんど変わっていない。

 東京都の荒川区、世田谷区、杉並区、足立区の4地域の商店街連合会と、「駐車規制緩和区間」の設置などに関する協議会を開催したこともある。

 実際に、警視庁は荷さばき車両に配慮した駐車規制緩和区間などを設けている。しかし、運送会社からすると区間が限られており、根本的な解決には至っていない。

駐車場がないコンビニの納品も問題あり

 実は、コンビニエンスストアへの納品も駐車違反のリスクが高い。郊外や地方のように駐車場があるコンビニは問題がないが、都心部のコンビニには駐車場がない。

 店の前にトラックを停めて納品するケースが多いが、厳密にとらえれば、駐車違反の可能性がある。

 これまでは業務用の配送トラックや個人宅向けの宅配トラックが駐車違反で問題となってきた。今後はコンビニ向けがクローズアップされるかもしれない。

 駐車違反は重大事故の原因となるため、取り締まりは不可欠だ。駐車違反と物流の効率化をどのように両立すべきか。まだ、解は見出せていない。

情報をお寄せください。

 物流現場の労働負荷が高まっています。
 ネット通販が急増する一方、働き手が増えず、物流インフラを支えることが限界に近づいています。賃金や労働環境はなかなか改善しません。こうした物流現場の実態が分からなければ、社会的な理解は進まないのではないでしょうか。

 そこで「日経ビジネス」では、読者の皆様からの情報をお待ちしています。宅配や倉庫など物流現場の実態や、物流パニックへのご意見など幅広い情報をお寄せ下さい。

アクセス先 https://aida.nikkeibp.co.jp/Q/R028400d5.html

 取材源の秘匿は報道の鉄則です。そのため所属機関のパソコンおよび支給された携帯電話などからアクセスするのはおやめください。

 郵送でも情報をお受けします。

〒108-8646
東京都港区白金1-17-3
日経BP社「日経ビジネス」編集部「物流パニック取材班」

※送られた資料は返却しません。あらかじめご了承ください。

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物流パニック
 物流の現場が悲鳴を上げている。ネット通販の急増で宅配便の取り扱い個数が急増するなか、人手不足が深刻で宅配現場の労働負荷が急速に高まっている。長距離のトラック運転手が不足しているため、荷物の幹線輸送も維持が難しい状況だ。
 一方、物流需要の急増はビジネスチャンスでもある。ネット通販の拡大に対応して、物流倉庫の建設ラッシュに沸く。人工知能やロボットの活用で、効率的な物流システムを構築する動きも進んでいる。
 経済の大動脈である物流の現場は今、どうなっているのか。課題の検証と共に各社の取り組みを追う。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030300119/032100006/
 

 

 

営業に効く「妄想力」は小説の悪役に学ぶといい

お悩み相談〜上田準二の“元気”のレシピ

2017年3月22日(水)
上田 準二
コンビニ大手ファミリーマートで発揮した優れた経営手腕のみならず、料理、読書、麻雀、釣り、ゴルフと、多彩な趣味を持つ上田準二さん。ユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長を退任し、取締役相談役となった今だから語れる秘蔵の経験や体験を基に、上田さんが若者からシニアまで、どんな悩みにも答えます。上田さんの波乱万丈の人生を聞けば、誰もがきっと“元気”になる。連載4回目の相談は、営業がうまくできないという、25歳、男性会社員の悩み。
悩み:営業に配属されて3年ですが、未だに取引先の懐に飛び込めません
私は理系で、研究職や開発職を志望していたのですが、なぜか営業に配属されてしまい、既に3年が過ぎました。しかし、未だに取引先と親しくなれず、接待の飲み会でも話を盛り上げることができません。当然、営業成績も伸びません。自分なりに業界のことを勉強したり、足繁く取引先を訪問したりしているのですが。ここで逃げたら負け犬になるので、もうすこし頑張りたいのですが、どうしたら取引先の懐に入り込めるのでしょうか。

25歳 男性(会社員)

1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。趣味は麻雀、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。(写真:的野弘路)
大竹剛(日経ビジネス):研究職を志望していたのに営業に配属となり、さぞかし、戸惑ったことでしょうね。営業成績が上がらなければ、なおさらでしょう。それでも、「ここで逃げたら負け犬になる。もう少し頑張りたい」と、前向きです。上田さん、こんな部下がいたら、どうやって励ましますか。

上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス取締役相談役):ぜひ、頑張ってほしいですね。前回も少し話しましたが、僕は伊藤忠商事に入社して2年目に、大阪に配属になりました。初めての営業です。当時、まだマーケットが小さかった輸入牛肉の販売で、ほとんどが新規のお客さん。ホテル、レストラン、スーパーでも輸入牛肉はなかなか置いてない時代でしたから、もうほぼ全部が新規の取引先ですよね。だけど相手があっての取引だから、とにかく手当たり次第、営業に行きませんでした。でも、それはうまくいきませんでしたよ。

大竹:手当たり次第、行ったんですか。

上田:ええ、手当たり次第。ただし、ちゃんと企業情報だとかで、どれだけの取扱高があるかとかは、もちろん調べましたよ。食肉市場に行って、東京なら芝浦の食肉市場のような場所ですよね、そこには大手の食肉問屋がみんな競りに来ているわけです。だいたい、そこでたくさん競り落としているのは大きな会社の社長さんだろうと見当を付けて、勝手に名刺を出して、手当たり次第に「社長!」と声を掛けていまいた。

大竹:相手が誰だろうと「社長」だなんて、ずいぶんと適当ですが、なんだか上田さんらしい。

上田:そうそう、もう口癖になっちゃった。しまいには、お客さんなら誰にでも、「社長さん、元気ですか」と聞くようになっちゃた。

 それでも、相手はものすごく怖い人も多いわけです。強面で、何を言っても、うんともすんとも言ってくれない人も多かった。話を聞いてくれても、そんなものはうちは取り扱わんと、けんもほろろで、うまくいかない。今回、悩みを寄せてくれたこの方は、今、ちょうどそんな段階だと思うんですね。

 まずは、もう少し頑張って、毎日、取引先のところに行ってみてください。セールストークができなくても、とにかく行ってみてください。

大竹:とにかく行くんですか。ネットもスマホも普及しているのに、あまり合理的な営業には思えません、と若者には支持されなそうです。

上田:いいから、とにかく会いに行くんですよ。しまいには、お客さんの方から、「お前、何を言いたいんだよ」と言ってくる。こうなったらもう、そこから話が進みますから。

 それともう1つ、営業はとにかく自分がいろいろな売り込みの資料を作って持っていくでしょう。それを一方的にしゃべって、こうだ、こうだと。それで分かってくれる人もいるかもしれませんが、だいたいはそれだけでは、長い付き合いに発展しない。まず聞き上手にならないと。

大竹:売りたいものを売り込むより、まずは聞くことが大事だということですか。

上田:その点で、僕みたいな東北出身者は聞き上手なのよ。田舎人は聞き上手だから。

 ずっと無視されていたのに、「何しに来た」と言われたのなら、相手が自分に関心を持ってくれた証拠。何の話で来たのかというポイントを伝えたら、きっと、相手はいろいろと話してくる。そうなったら、チャンスですよ。相手が話し始めたら、それを途中で遮って、「私の方の条件はこうです」みたいなことは言ってはいけない。営業とは、そういうことではないの。「俺のところはこんなにこんなに困っているんだ」とか、何だかんだ従業員の問題とか奥さんとの関係とかまで話してくれるまで、とにかく聞く。

 そこまで話してくれるようになると、今度は向こうから電話がかかって来ますよ。今日、来てくれと。しまいには奥さんからも電話がかかってくるようになる。「うちの主人はこの1週間、ずっとヒステリー状態です」とか。「従業員もピリピリしていますから、上田さん、来てくれませんか」とか。特に商談がなくても、そう言われれば、まあ、行きますよね。そうすると向こうはいろいろ話しかけてくるわけですよ。ときには夫婦関係の悩みまで。

大竹:でも、そこまでプライベートなことを話してもらうように聞き上手になるのも、なかなか難しいですよね。記者の私も、常に苦労してます。

上田:四の五の言わずに、とにかく聞く、聞くんですよ。でも、聞き方ってものもある。例えば僕だったら、「社長さん、それはこうじゃないですか?僕だったらこう思いますけどね」とか、自分だったらこう判断するということを、さりげなくポンポンと打ち返すんです。そうすると、相手はすっきりするんですよ。僕の言ったことを参考にするかは別にして、とにかく合いの手を入れて全部吐き出してもらう。社長にとって社員や家族は常に身の回りにいる存在だから、判断基準の幅は狭いんです。全く違う立ち位置からの意見を聞くと、「なるほど」と思ってくれることもあるんですよ。

大竹:私だったらこうします、と言うときに、何か気の利いたことを言わなきゃと悩んでしまいそうです。

上田:そんな必要は、まったくない。見当はずれでも、とんちんかんのことを言ってもいいんです。仕事上の自分の判断や思い込み、それから家庭の問題にしたって、全く別の意見が出てくると、自分だけで凝り固まっている価値判断でやっていたのが、必ずしもよくはないというようなことを感じるはずなんですよ。

大竹:病院でいうと、セカンドオピニオンみたいな感じですかね。

上田:ただし、何でもいいと言っても、何も考えていない奴は何にも言えないですよね。そこで大切なのが、読書ですよ。僕は本が好きだったから、本を読んで心に響いたことが頭の中の引き出しにたくさん入っている。本といっても、ビジネス書や学習書ではないですよ。主には小説です。小説のタイトルとか作者とかをしっかり記憶しているわけではないけれど、そこで心に残っていたものがぱっと会話の中に出てくると、相手に響くこともあるわけです。「上田、それは違うぞ」と言われても、またそれに対する意見も引き出しの中から浮かんでくる。なんぼでも出てくるんです。

 読書の蓄積は大きいですよ。100冊の本は100人の人生、1000冊の本は1000人の人生を経験すると言いますよね。生きている間に経験できる人生には限りがあるけれども、本だったら100冊は100回の人生、1000冊の本を読んだら1000人の人生を体験できる。主役だけじゃなくて脇役まで入れたら、1000人じゃきかないですよ。

 だいたい読書をするときは、主役に自己投影することが多いですよね。歴史上の偉大な人物だとか、芸術家、科学者、哲学者、いろいろありますね。でも僕は、成功していく主人公の話より、どちらかというと脇役、特に挫折していく敗残者とか悪党とかに自己投影するんです。

 悪党だったら、こいつは悪党やな、だけど、こんな考えでやったら、いずれにこういう結末が来るぞとか。

大竹:だんだんと、上田さんが悪人顔に見えてきました。。。

上田:僕はやっぱりそういうのが好きなんだよ。脇役もこういう考え方をしたら、これよりも成功する、上に行けたはずだとか、ここの部分がターニングポイントだったなとか。脇役に自己投影しながら、やっぱりこういうふうになってはいけない、何で相手が勝利者なんだろうかとか、そういうのを常に考えながら本を読む。脇役における喜怒哀楽、哀愁、失恋とかが好きなんです。

大竹:本を読んだ時の妄想が、取引先の悩みを聞いた時に生きてくるんですね。

上田:妄想しておくと、会話の中に何か出るんですよね。ただ、そんなことはなかなか難しいよと、相談してきた彼は言うかもしれないですよね。だから、大切なのは、まずは気の利いたことを言えなくてもいいと、開き直ることです。とにかく、相づちを打つ。「それは困ったものですね〜」とか、「そこまでご苦労されたんですか!」とか、「それは本当にうまくいったんですね」とか。これだけでも、相手は営業マンに対して親近感、信頼感を持ちます。

 「いや、社長さん、すごいですね。そんな大変だったんですね。今も大変なんですよね。だけど、それほど大変なものを抱えながら、これだけの経営実績、事業を拡大していったのは、社長さん、すごいですね」

 こんなこと言われた方は、自分はダメだな、ダメだなと思っていたけど、俺にはそういうことを抱えても、これだけやっているんだ、という元気が湧いてきますよ。もっと頑張ろうと思って、前向きに、気が大きくなってくる。そういう時を見計らって、「ところで、来月の牛肉は何トンにしましょう」と聞けば、「おお、50トン。どーんと買ってやるで」となるわけです。

大竹:乗せといて、気持ち良くなったところで、初めて、営業マンとしての本題を切り出す(笑)。

上田:人聞きが悪い!乗せるんじゃなくて、寄り添うの。必死に営業をしに行って、取引条件をだーっと、とにかくしゃべって取引が成立すると思ってはダメ。競争相手だっていっぱい来ているわけだから。だいたい条件というのは、競争相手とそんな大きな差はないものなんです。例えば、保険の勧誘は自宅まで来て、何かとわーっといろいろしゃべるでしょう。でも、しゃべった内容を聞いて、そこに加入するかという判断するというのはまずあり得ないよね。結局、そこで加入するかは、この人がどれだけ自分の質問に答えてくれたかどうか、自分が気にしていることに答えてくれたかどうかでしょう。

 だから、質問者の彼には、まず一生懸命、相手に会いに行くこと。そして、だーっと説明して商売を取ろうと思うのではなく、相手に寄り添う。ビジネスの話だけではなくて、相手が穏やかな気持ちになって、自分に心を開いてくれるような関係を築く。それには、とにかく話を聞いてあげる。相槌を打つ。これから始めたら、商売はうまくいくと思いますよ。じわじわと、焦ってはいけない。営業は、ただしゃべればいいというものじゃないよ。

読者の皆様から、上田さんに聞いてほしいお悩みを募集しています。仕事、家庭、恋愛、趣味など、相談の内容は問いません。ご自由にお寄せください。
>>お悩みの投稿<<

*この連載は毎週水曜日掲載です。

このコラムについて

お悩み相談〜上田準二の“元気”のレシピ
コンビニ大手ファミリーマートで発揮した優れた経営手腕のみならず、料理、読書、麻雀、釣り、ゴルフと、多彩な趣味を持つ上田準二氏。ユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長を退任し、取締役相談役となった今だから語れる秘蔵の経験や体験を基に、上田氏が若者からシニアまで、どんな悩みにも答えます。上田氏の波乱万丈の人生を聞けば、誰もがきっと“元気”になる。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/16/022100017/030300006/

 

 

 

「男女平等の流れに反する」 原告男性が会見
2017/3/21 23:40
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 原告の堺市の男性(70)は21日、記者会見し、「男女平等の流れに水を差す判決。非常に残念だ」と肩を落とした。

 堺市立中学の教員だった妻(当時51)はストレスでうつ病を発症し自殺した。男性は年齢要件で遺族補償年金を受け取れず、「妻の働きが評価されていない」と感じて訴訟を起こしたが、敗訴が確定。「明らかに法の下の平等に反する規定を最高裁が合憲とした」と司法判断を批判した。

 21日の判決は、現在の社会情勢を踏まえても、夫に先立たれた妻をより手厚く支える規定が合理的だと判断した。男性の代理人弁護士は「法律ができた当時は夫が家計を支えていたが、今は夫婦のあり方が様変わりしている」と指摘。立法による対応を求めた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14328370R20C17A3CR8000/
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/360.html

[経世済民120] トランプ政権と市場のハネムーンに暗雲 ドル下落111円台後半 米国株昨年10月以来の大幅安 日経先19千割れ
トランプ政権と市場のハネムーンに暗雲
米州総局 平野麻理子
2017/3/22 7:33日本経済新聞 電子版
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 21日の米株式市場で、ダウ工業株30種平均は4日続落した。終値は前日比237ドル安の2万0668ドル。下げ幅は2016年9月以来、約半年ぶりの大きさとなった。米長期金利の低下を受け、これまで「トランプ相場」をけん引してきた金融株が売られた。

 21日朝、トランプ大統領の姿は連邦議会、通称「キャピトルヒル」にあった。大統領自ら議会に乗り込んだのは、下院共和党に対して医療保険制度改革法(オバマケア)の
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGN22H0D_S7A320C1000000/


 

◎NY外為:ドルが下落、テクニカルの支持線に接近−111円台後半
  21日のニューヨーク外国為替市場では、ユーロとドルがそれぞれ異なるテーマを手掛かりに反対の動きを見せた。ユーロに対しては楽観が強まる一方、ドルに関しては明るい見方が後退し、ユーロは対ドルで年初来高値に向けて上昇した。
  ユーロは主要10通貨の大半に対して値上がりした一方、ドルは過半数に対して下落。米国での財政面の刺激策が行き詰まる可能性があるとの見方が背景にある。ユーロは、フランス大統領選の討論会に関する世論調査を手掛かりに大きく上昇。20日実施された仏大統領選討論会では、マクロン前経済相が勝利を収めたとの世論調査の結果が示された。
  ニューヨーク時間午後5時現在、主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は前日比0.3%低下。一時0.4%低下し、200日移動平均に接近した。
  ユーロは対ドルで0.7%高の1ユーロ=1.0811ドル。年初来高値は1.0829ドル。
  ドルは対円で0.8%安の1ドル=111円71銭。
  ドルの短期リスクは23日に訪れる可能性がある。同日は米下院でオバマケアの代替法案の審議が見込まれるほか、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演が予定されている。  
  トレーダーらによれば、ドル・円相場は、ユーロ圏の政治リスクを回避しつつ、ドルの弱気なセンチメントをより明快に表す通貨ペアと市場では捉えられている。ただし、対円でのユーロ需要が高まれば、それを通じて、ドルが対円でやや上昇するとトレーダーらは指摘する。この日は米10年債利回りが2.42%を下回る水準に下げたこともドルを軟化させた。
  イエレンFRB議長が年内あと2回の利上げ予想に慎重な姿勢を示したり、議会が共和党のオバマケア代替法案を阻止した場合は、ドルの見通しは一段と暗くなる可能性がある。
原題:Dollar Threatens Key Technical Support as Election Gain Fizzles(抜粋)

◎米国株:昨年10月以来の大幅安、銀行株に売り−北朝鮮報道も嫌気
  21日の米株式相場は大幅安。トランプ氏が大統領選で勝利する前の昨年10月以降で最大の下げとなった。成長重視政策が議会を通過しないとの懸念が広がり、売りが膨らんだ。
  S&P500種株価指数は取引終了にかけて下げ足を速めた。北朝鮮は核とミサイルのプログラムを「加速」させる方針だとのロイター通信の報道が嫌気された。銀行株は終日、下げの中心となり、昨年6月以来の大幅安。米国債利回りの低下に加え、モルガン・スタンレーが債券トレーディング収入は加速しないと警告したことが売りを誘った。
  S&P500種株価指数は前日比1.2%下げて2344.02で終了。ダウ工業株30種平均は237.85ドル(1.1%)安の20668.01ドルで終えた。
  下院共和党はヘルスケア関連法案が議会を通過しなければ、税制・歳出改革が危うくなると警告。これを背景に工業株や素材株も下げた。米国の原油在庫が増加すると予想されていることから原油相場も下落。
  トランプ大統領は21日朝、医療保険制度改革法(オバマケア)撤廃・代替法案への支持を求めるため、下院共和党議員と会談した。法人税減税と歳出拡大を巡る大統領の計画が進展する兆候に市場は注目している。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁はインフレ兆候が依然として弱い時に引き締めを急ぐ必要はないと主張し、利上げに反対した姿勢をあらためて示した。
  ティンバー・ヒルの株式リスクマネジャー、スティーブ・ソスニック氏は「ヘルスケアを巡る局面が難しい状態に陥り、トランプ効果はやや弱まっている。市場には別の買い材料が必要なようだ。材料は米金融当局とトランプ効果から主に出てきていた。市場を驚かせるような何かが必要だ」と語った。
  金融株は2.9%安。欧州連合(EU)からの離脱を決定した英国民投票の翌日である昨年6月24日以降で最もきつい下げとなった。
原題:U.S. Stocks Drop Most in 2017, Treasuries Advance: Markets Wrap(抜粋)
U.S. Stocks Drop Most Since October as Bank-Stock Rally Falters (抜粋)  

◎米国債:続伸、株安で逃避買い−ドイツ国債との利回り差が縮小
  21日の米国債は続伸。米国株の大幅安を背景に、米国債には質への逃避買いが入った。ドイツ国債に対する米国債の上乗せ利回りは約4カ月ぶりの低水準となった。
  ニューヨーク時間午後5時現在、10年債利回りは約4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%) 下げて2.42%。利回りは2月以降で初の3営業日連続低下。一方、独10年債利回りは約2bp上げて0.46%だった。米10年債との利回り差は約1.97ポイントに縮小し、昨年11月以来の最小となった。
  主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.3%低下。この日の米主要株価指数はいずれも下落し、S&P500種株価指数は昨年10月以降で最大の1.2%安。
  JPモルガンの米国債顧客調査によると、ロングポジションは昨年10月以降で最高だった。
  この後、クリーブランド連銀のメスター総裁が講演する。今週はこのほか、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長やシカゴ連銀のエバンス総裁、ニューヨーク連銀のダドリー総裁など複数の金融政策当局者が講演を予定している。
原題:Treasuries Rally Drives U.S.-Germany Yield Spread to 4-Month Low(抜粋)
◎NY金:続伸、ドル下落で買い−パラジウムは5営業日連続高
  21日のニューヨーク金先物相場は続伸。ドルが下落したことで貴金属が値上がりし、金はほぼ3週間ぶりの高値をつけた。パラジウムは昨年11月以降で最長の5営業日続伸。自動車業界の堅調な見通しを背景に、公害防止装置に使われるパラジウムの需要が拡大するとの見方が広がった。
  メタルス・フォーカスのアナリスト、ジョージ・コールズ氏は「ファンダメンタルズの基調は力強い」と指摘。「当社ではパラジウムに非常に強気だ。自動車の2大市場である中国と米国の動向は過去数年非常に順調だ。それがパラジウム市場を動かしている」と述べた。
  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のパラジウム先物6月限は前日比0.8%高の1オンス=787.65ドルで終了。一時は793.80ドルと、中心限月としては2月17日以来の高値をつけた。
  ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は1%上昇の1246.50ドルで終了。終値では1日以来の高値。
原題:Palladium Posts Longest Rally in Four Months as ETFs Jump(抜粋)
◎NY原油:続落、米在庫増加の見通しや米株下落で
  21日のニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が続落。22日に米エネルギー情報局(EIA)が発表する週間統計を控え、米原油在庫の増加観測が広がったほか、米国株の軟調な推移が背景となった。
  コンフルエンス・インベストメント・マネジメント(セントルイス)のチーフ・マーケット・ストラテジスト、ビル・オグレイディ氏は電話取材に対し、「どこも売り一色だ」とした上で「原油はS&P500種株価指数によく沿った動きをしており、もちろん独自の問題も抱えている。トランプ米大統領の成長政策に対する一般的な期待が原油と株の両方を支えてきたが、それが急速に失速している」と述べた。
  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物4月限は前日比88セント(1.82%)安い1バレル=47.34ドルで最終取引日を終了。中心限月の5月限は67セント安の48.24ドルで終えた。ロンドンICEの北海ブレント5月限は66セント安い50.96ドルで引けた。
原題:Oil Closes at Lowest Since November as U.S. Supply Seen Rising(抜粋)
◎欧州株:続落、1カ月ぶり下げ幅−銅など金属値下がりで鉱業株に売り
  21日の欧州株式相場は続落し、1カ月ぶりの下落幅を記録した。銅など金属価格の値下がりを受けて、鉱業株が売られた。
  指標のストックス欧州600指数は前日比0.5%安の375.67で終了。一時は0.4%上げていた。業種別19指数のうち16業種が値下がり。鉱業株指数が最もきつい下げで、下げ幅は約2週間ぶりの大きさだった。製薬株指数は1月以来の大幅安、自動車株指数も3週間ぶりの安値に沈んだ。
  一方、イタリアの銀行株は上昇。同国債の10年物とドイツ国債の利回り格差(スプレッド)が縮小したことが手掛かり。ドイツ銀行は4.3%高と、4営業日ぶりに反発した。
  個別銘柄では、オランダの塗料メーカー、アクゾ・ノーベルが2%上昇。同業の米PPGインダストリーズが新たな買収案を準備しているとの報道が材料視された。PPGは先に提案を行ったが拒否されている。
原題:European Stocks Post Biggest Drop in a Month as Miners Retreat(抜粋)
◎欧州債:ドイツ国債が下落−仏世論調査でマクロン氏の支持率が上昇
  21日の欧州債市場ではドイツ国債が下落。フランス大統領選挙に向けた世論調査でマクロン前経済相の支持率が上昇し、リスクオンの動きが強まった。
  米株急落で米国債が買われ、これを手掛かりにドイツ国債は下げ幅を縮めた。トランプ大統領はオバマケア廃止に向けて下院共和党議員と会談、税制改革などの景気刺激策とともに遅れが生じるとの観測が広がっている。仏大統領選のリスク緩和でECBが利上げに動くとの観測も強まった。
  フランス国債は一時上げたものの、続かず。周辺国の短期債は引き続き、ECBの長期リファイナンスオペ(LTRO)に関連したキャリー取引に支えられている。
原題:Bunds Fall on Macron, Bounce on Stocks; End-of-Day EGB Curves(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-21/ON61YJ6VDKHV01



「核兵器なき世界」見直し=非現実的と指摘―米政府高官【3/22 07:34】
【ワシントン時事】米国家安全保障会議(NSC)で大量破壊兵器や不拡散を担当するフォード上級部長は21日、ワシントン市内で講演し、オバマ前大統領が掲げた「核兵器なき世界」を追求する政策について「中長期的に現実的なのかどうかを含め、全ての政策を見直している」と述べ、非現実的だと指摘した。


米国市場サマリー(21日)☆3【3/22 07:12】
【金】4日続伸

ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金塊先物相場は、対ユーロでのドル安進行を背景に割安感などから買われ、中心限月4月物の清算値は、前日比12.50ドル(1.01%)高の1オンス=1246.50ドルとなった。これで4営業日続伸。

金塊現物相場は午後1時52分現在、12.80ドル高の1246.795ドル。

【株価指数先物】日経225先物、大阪引値比340ポイント安

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の日経225先物6月きりは21日、300ポイント安の18970(高値19350、安値18950)だった。21日の大阪引値(19310)比340ポイント安。6月きりのドル建て清算値は19030だった。

外国為替市場での円高進行や、米政権の政策運営に対する懸念の高まりを背景に米株が売られたのを嫌気し、大幅に続落した。

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米国市場サマリー(21日)☆2【3/22 07:12】
【債券】長期金利、低下

ニューヨーク金融・債券市場では、米株相場が大幅下落する中、安全資産とされる債券が買われ、長期金利は低下した。長期金利の指標である10年物米国債利回りは前日引け水準比0.04%ポイント低下の2.42%で終了。30年債利回りは0.04%ポイン低下の3.04%だった。

2年債利回りは0.03%ポイント低下の1.26%、3カ月物TB(財務省証券)利回りは0.0484%ポイント上昇の0.7746%。

【石油先物】WTI続落、47ドル台前半=3カ月半ぶり安値

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、米国内での増産懸念などに圧迫され、続落した。米国産標準油種WTIの4月物の清算値は前日比0.88ドル(1.82%)安の1バレル=47.34ドルと、中心限月ベースで昨年11月29日(45.23ドル)以来約3カ月半ぶりの安値を付けた。取引量が最も多い5月物の清算値は0.67ドル安の48.24ドル。

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米国市場サマリー(21日)☆1【3/22 07:11】
【株式】ダウ大幅続落、237ドル安=トランプ氏の政策運営懸念

ニューヨーク株式相場は、トランプ米大統領の政策運営への懸念からリスク回避の流れが強まり、大幅続落した。優良株で構成するダウ工業株30種平均は前日終値比237.85ドル安の2万0668.01ドルで終了。1日の下げ幅としては昨年9月13日以来約半年ぶりの大きさとなった。

ハイテク株中心のナスダック総合指数も大幅反落し、107.70ポイント安の5793.83で引けた。

ニューヨーク証券取引所の出来高は前日比2億5238万株増の10億0451万株。

【為替】円上伸、一時111円台半ば=4カ月ぶり高値

ニューヨーク外国為替市場では、トランプ米大統領の政策運営をめぐる不透明感を背景にドルが売られ、円相場は一時1ドル=111円55銭と、2016年11月28日以来約4カ月ぶりの高値を付けた。午後5時現在は111円68〜78銭と、前日同時刻(112円50〜60銭)比82銭の円高・ドル安。

ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0803〜0813ドル(前日午後5時は1.0735〜0745ドル)、対円では同120円72〜82銭(同120円80〜90銭)。

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〔NY銀〕4日続伸(21日)【3/22 07:10】
4営業日続伸。先物5月きりの清算値は14.5セント高の1758.3セント。

現物は米東部時間午後2時50分(1850GMT)時点で0.7%高の1753セント。(ロイターES時事)

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NYダウ大幅続落、237ドル安=大統領選後最大の下げ【3/22 07:00】
【ニューヨーク時事】21日のニューヨーク株式相場は、トランプ米大統領の政策運営への懸念からリスク回避の流れが強まり、大幅続落した。優良株で構成するダウ工業株30種平均の終値は前日比237.85ドル安の2万0668.01ドル。

米医療保険制度改革(オバマケア)見直し法案をめぐり共和党内が分裂していることを受け、税制改革などトランプ氏が掲げる他の政策も停滞するとの懸念が拡大。これまで相場を押し上げていた期待がしぼみ、大統領当選後最大の下げ幅となった。

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〔中南米外為〕大半が軟調=利食い売りで(21日)【3/22 06:57】
21日の中南米通貨市場では、大半が利食い売りで軟調となった。ブラジル・レアルとメキシコ・ペソは約0.5%安。前日の取引では堅調となり、数カ月ぶり高値を付けていた。

米連邦準備制度理事会(FRB)が今後、緩やかな利上げを進めると示唆したことで、高利回り資産への需要が高まった。(ロイターES時事)

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〔シドニー外為〕米ドル、111円台後半=豪ドルは85円台後半(22日午前8時半)【3/22 06:42】
【シドニー時事】22日のシドニー外国為替市場の円相場は現地時間午前8時半現在、1米ドル=111円70〜80銭(前日同時刻は112円50〜60銭)で取引された。米国の長期金利低下や株価下落を眺めて米ドルが売られ、円は約3週間ぶりに111円台に上伸した。トランプ米政権の政策の行方をめぐる不透明感も意識され、米ドル売りにつながった。

豪ドルやニュージーランド(NZ)ドルなど資源国通貨は対円を中心に軟調。豪ドルは、1豪ドル=0.7680〜7690米ドル(前日同時刻は0.7725〜7735米ドル)、対円は85円80〜90銭(同86円95銭〜87円05銭)となった。豪中銀は21日公表の議事要旨で、住宅市場リスクを指摘。追加緩和が困難であることが再確認された。

NZドルは、1NZドル=0.7035〜7045米ドル(同0.7050〜7060米ドル)、対円は78円60〜70銭(同79円35〜45銭)で取引された。

21日に実施された乳製品国際入札で、乳価は予想外に上昇した。23日には、NZ中銀の政策金利発表が控えている。市場予想は据え置き。

ユーロは、1ユーロ=1.0800〜0810米ドル(同1.0735〜0745米ドル)、対円は120円70〜80銭(同120円85〜95銭)だった。仏大統領選に向けた討論会後の世論調査で、極右・国民戦線のルペン党首が劣勢だったため、ユーロが買われた。

中国の李克強首相が22日から豪州を訪問する。首脳会談では、貿易問題が中心議題になる見通しだ。

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〔シカゴ小麦〕続落=米プレーンズの降雨予想(21日)【3/22 06:37】
続落し、2月6日以来の安値を付けた。米プレーンズの主要生産地帯で、降雨により収穫が増加するとの予想が重しになった。

5月きりの清算値は3.75セント安の426.50セント。

日本の農林水産省は、定例入札により食用小麦11万7689トンを米国、カナダ、オーストラリアから購入する方針。応札の締め切りは23日。(ロイターES時事)

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〔シカゴ大豆製品〕ミール、続落=油は4日続伸(21日)【3/22 06:36】
大豆ミールは続落。5月きりの清算値は0.8ドル安の325.8ドル。

大豆油は4営業日続伸。5月きりの清算値は0.40セント高の33.14セント。(ロイターES時事)

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〔シカゴ・トウモロコシ〕続落=ブラジルでの降雨予報(21日)【3/22 06:34】
続落し、2月1日以来の安値を付けた。ブラジルでの降雨予報を受けた、収穫増見通しが重しになった。米中西部で土壌が湿った良好な状態になっていることも相場を圧迫した。

5月きりの清算値は2.25セント安の361.25セント。同限月の上値抵抗線は10日移動平均付近にある。(ロイターES時事)

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〔シカゴ大豆〕小反発=安値拾いの買い(21日)【3/22 06:33】
〔NY外為〕円上伸、一時111円台半ば=4カ月ぶり高値(21日)【3/22 06:30】
米英、機内パソコン禁止=テロ対策でイスラム諸国便【3/22 06:14】
〔米株式〕ダウ大幅続落、237ドル安=トランプ氏の政策運営懸念(21日)☆差替【3/22 06:12】
〔NY石油〕WTI続落、47ドル台前半=3カ月半ぶり安値(21日)【3/22 06:11】
【ニューヨーク時事】21日のニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、米国内での増産懸念などに圧迫され、続落した。米国産標準油種WTIの4月物の清算値は前日比0.88ドル(1.82%)安の1バレル=47.34ドルと、中心限月ベースで昨年11月29日(45.23ドル)以来約3カ月半ぶりの安値を付けた。取引量が最も多い5月物の清算値は0.67ドル安の48.24ドル。

この日の原油相場は対ユーロでのドル安進行に伴う割安感を背景に、朝方までは堅調に推移していた。しかし、午前中ごろから利益確定の売りなどが出て、一気にマイナス圏に沈み、その後も米国内での供給過剰に対する懸念などを背景に下げ幅を拡大した。市場は米石油協会(API)と米エネルギー情報局(EIA)がそれぞれこの日夕方と翌日午前に発表する在庫週報に注目しているが、ロイター通信の暫定版調査によると、最新週の原油在庫は前週比260万バレルの積み増しが見込まれている。

OPEC加盟国は減産合意期限が切れる6月以降も減産を延長する方向で検討しつつあるとみられるが、ロシアなどのOPEC非加盟国が協調減産の延長に協力するかどうか依然不透明であるため、市場の反応は限定的だった。

▽ガソリン=4営業日ぶりに反落し、4月物の清算値は0.61セント安の1ガロン=160.52セントとなった。

▽ヒーティングオイル=3日ぶりに反落。4月物の清算値は1.08セント安の1ガロン=150.33セント。

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ルルー内相が辞任=架空雇用疑惑、検察も捜査―仏【3/22 05:36】
仏当局、フィアット捜査へ=排ガス不正の疑い【3/22 05:32】
〔米株式〕NYダウ、大幅続落(21日)【3/22 05:12】
〔NY金〕4日続伸(21日)【3/22 04:06】
〔米株式〕NYダウ、大幅続落(21日午前)【3/22 02:32】
〔ロンドン株式〕反落(21日)【3/22 02:28】
〔ロンドン外為〕円、111円台後半(21日)【3/22 01:49】
NY円、111円台に上昇=3週間ぶり【3/22 01:13】
北朝鮮、ウラン濃縮規模を倍増=「新局面」と懸念―IAEA事務局長【3/22 00:52】
【ワシントン時事】国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は20日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)のインタビューで、核兵器開発を進める北朝鮮がここ数年間で寧辺にあるウラン濃縮施設の規模を「倍増させた」との見解を示した。

衛星画像から北朝鮮の動きを把握しているという。天野氏は、北朝鮮の核兵器開発の進展について「新たな局面に入った。全ての兆候は、北朝鮮が自ら宣言しているように(核開発を)進めている事実を示している」と懸念を表明した。

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〔NY外為〕円上伸、3週間ぶり111円台(21日午前11時半)【3/22 00:46】
NYダウ、大幅続落【3/22 00:44】
iPhone7に赤色登場=日本で25日発売―米アップル【3/22 00:35】
英推理作家のコリン・デクスター氏死去【3/22 00:27】
朴氏、容疑全面否認=逮捕状請求を本格検討―聴取14時間・韓国検察【3/22 00:25】
〔米株式〕NYダウ、続落(21日午前)【3/22 00:09】
トルコ、米機内パソコン禁止に反発=エジプトは受け入れ【3/21 23:59】
NY円、112円台半ば【3/21 22:53】
3月第1〜3週の米小売売上高、前月比0.6%減少=レッドブック☆差替【3/21 22:53】
【ニューヨーク時事】米レッドブック・リサーチが21日発表したレッドブック指標によると、18日までの3月第1〜3週の同国小売売上高(既存店舗ベース)は、季節調整済みで前月同期比0.6%減少した。前年同期比では1.2%の増加。

3月の第3週の初めは北東部で暴風雪となり、数日間は店舗から客足を遠ざけた。他の地域では、人々が春休みに向けて準備を始める中、水着などの春物が買われた。一方、イースター(復活祭)関連商品への移行は来週本格的に始まるもよう。大半の小売業者は、気温がより春らしくなり、春物商品へのシフトがしやすいため遅いイースターを好む傾向にある。

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NYダウ、反発【3/21 22:52】
〔米株式〕NYダウ、反発=ナスダックは続伸(21日朝)【3/21 22:42】
〔NY外為〕円、112円台半ば(21日朝)【3/21 22:29】
米経常赤字、8年ぶり高水準=対日圧力強化も―16年【3/21 22:10】
【ワシントン時事】米商務省が21日発表した2016年の経常収支は4812億600万ドルの赤字となり、赤字幅は前年比3.9%拡大した。貿易赤字などを背景に3年連続で膨らみ、8年ぶりの高水準となった。トランプ政権は赤字是正を掲げており、対日圧力が強まる可能性がある。

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英離脱交渉指針、来月29日採択へ=首脳会議開催―EU大統領【3/21 22:00】
3月第1〜3週の米小売売上高、前月比0.6%減少=レッドブック【3/21 21:55】
16年の米経常赤字、3.9%増=3年連続拡大―商務省【3/21 21:30】
【ワシントン時事】米商務省が21日発表した2016年の経常収支は4812億600万ドルの赤字となり、赤字幅は前年比3.9%拡大した。貿易赤字などを背景に3年連続で膨らみ、2008年(6907億8900万ドルの赤字)以来の高水準となった。トランプ米政権は貿易赤字の是正を掲げており、日本を含めた赤字相手国に圧力を強める構えだ。経常赤字の対国内総生産(GDP)比は2.6%と、前年(改定)と同じだった。

貿易赤字は横ばいの5005億6000万ドル。モノとサービスの輸出は2.2%減、輸入は1.8%減った。モノに限った貿易赤字は7499億2600万ドルと1.7%縮小した。

米企業・個人の外国投資による収益から、外国企業・個人の収益を差し引いた1次所得収支は1805億9100万ドルの黒字で、黒字幅は1.0%縮小。移民による送金など2次所得収支は1612億3700万ドルの赤字と、赤字幅は11.2%拡大した。

16年10〜12月期の経常赤字は前期比3.1%減の1123億8200万ドル。市場予想(ロイター通信調べ)は1282億ドルだった。7〜9月期は1129億5800万ドルから1160億0700万ドルに改定された。

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〔NY外為〕円、112円台後半(21日午前8時)【3/21 21:30】
円、112円台後半=ロンドン外為【3/21 21:25】
年内の枠組み策定目指す=南シナ海「行動規範」―フィリピン大統領【3/21 21:21】
〔ロンドン外為〕円、112円台後半(21日正午)【3/21 21:13】
TV討論でマクロン氏首位=極右ルペン氏に反論―仏大統領選【3/21 20:59】
【パリ時事】4〜5月のフランス大統領選の主要5候補による討論会が20日行われ、調査会社エラブが21日に発表した世論調査では、「最も説得力があった候補」として中道系独立候補のマクロン前経済相が29%でトップだった。

討論会では、極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首が相次ぐテロを念頭に「国境管理を復活させ、過激派予備軍は強制退去させる」と主張。これに対し、マクロン氏は「400万人もいるイスラム教徒をすべて敵視するような姿勢は不当だ」と反論した。

討論会には右派最大野党・共和党のフィヨン元首相、左派与党・社会党のアモン前教育相、急進左派・左翼党のメランション元共同党首が参加した。調査ではメランション氏が20%の支持を得て2位。ルペン、フィヨン両氏はいずれも19%だった。

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英領北アイルランド自治政府のマーティン・マクギネス前副首相死去【3/21 20:51】
2月の英物価、2.3%上昇=EU離脱交渉に影【3/21 20:48】
【ロンドン時事】英国民統計局が21日発表した2月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、欧州連合(EU)離脱決定に伴う英通貨ポンド安などを背景に、前年同月比2.3%に加速した。1月の1.8%を大きく上回り、2013年9月以来約3年半ぶりの高水準となった。

食料品価格の上昇などが主因。物価高で消費が落ち込めば、英景気の足かせとなる可能性があり、今春始まる英国とEUの離脱交渉にも影を落としそうだ。

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2月の英消費者物価、2.3%上昇=3年半ぶり高水準―国民統計局☆差替【3/21 20:09】
【ロンドン時事】英国民統計局が21日発表した2月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、欧州連合(EU)離脱決定に伴う英通貨ポンド安を背景に、前年同月比2.3%に加速した。1月に記録した1.8%を大きく上回り、2013年9月以来3年半ぶりの高水準となった。

ロイター通信が事前にまとめた市場予想の2.1%も上回った。このまま物価上昇が加速し、個人消費が落ち込めば、景気の足かせとなる可能性もあり、今春始まる英国とEUの離脱交渉にも影を落としそうだ。

統計局によると、これまで下落基調が続いていた食料品物価が0.2%の上昇に転じたほか、家具や医療、輸送、娯楽・文化など、大半の項目で物価上昇が加速した。

英イングランド銀行(中央銀行)は2月、2017年第1四半期の消費者物価上昇率見通しを2.0%(従来予想は1.8%)に上方修正。今月の金融政策決定会合では政策金利を過去最低の0.25%に据え置いたものの、利上げを求める少数意見も出た。英中銀の物価目標は2%。

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仏像引き渡しで控訴審=「高麗の記録」に疑問―韓国政府【3/21 19:50】
預金保険料、2年ぶり下げ=金融機関の負担減―17年度【3/21 19:41】
日銀、一時的に赤字転落も=大規模緩和「出口」で―岩田副総裁【3/21 19:39】
岩田規久男日銀副総裁は21日の参院財政金融委員会で、日銀が現在の大規模金融緩和から脱する「出口」を模索する局面では「赤字になる可能性が絶対ないとは言えない」と述べ、決算での一時的な赤字転落はあり得るとの見通しを示した。藤巻健史氏(日本維新の会)への答弁。

1998年の新日銀法施行後、日銀の通期決算が赤字となったことはない。

日銀が金利正常化を進める場合、現在一部にマイナスを適用している日銀当座預金の金利(付利)を引き上げる公算が大きい。当座預金残高は長引く大規模緩和で増大し続けており、利上げ時には日銀が金融機関に支払う利子負担が大きく膨らむ可能性がある。
http://fx.dmm.com/market/news/

 

今日の株式見通し=大幅続落、米株安と円高進行を嫌気
[東京 22日 ロイター] - きょうの東京株式市場で日経平均株価は、大幅続落となりそうだ。前日の米国市場では主要3指数がそろって下落。為替も1ドル111円台後半と円高が進んでおり、外部環境の悪化を嫌気した売りが先行しそうだ。

だが、売り一巡後は3月期決算企業の配当権利取りの買いなどに支えられ、下げ渋る場面も見られると予想される。

日経平均の予想レンジは1万9000円─1万9300円。

前営業日終値 昨年来高値 昨年来安値

日経平均.N225      19455.88 19668.01 14864.01

-65.71 2017年3月2日 2016年6月24日

シカゴ日経平均先物6月限 18970(円建て)

(辻茉莉花)
http://jp.reuters.com/article/nikkei-today-idJPKBN16S2XA
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/368.html

[経世済民120] 物価高で窮地の英中銀、市場が助け舟も 英銀巨額損失も 東京が生活費の高い都市トップ10返咲 最も魅力的な新興市場メキシコ
Column | 2017年 03月 22日 11:12 JST 関連トピックス: トップニュース

コラム:物価高で窮地の英中銀、市場が助け舟も

Swaha Pattanaik

[ロンドン 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 願いというものは、そうあってほしくない形で実現してしまう場合がある。イングランド銀行(英中央銀行、BOE)のカーニー総裁はずっと望んでいた物価上昇をついに手に入れたが、時期が悪い上に上昇率も大き過ぎる。ただし市場がBOEの窮地をある程度救ってくれるかもしれない。

英国立統計局が21日発表した2月消費者物価指数(CPI)前年比上昇率は2.3%に加速し、2013年以降初めてBOEが目標とする2%を上回った。1年前のほぼゼロから様相が一変したとはいえ、BOEとして喜べる要素はほとんど見当たらない。物価上昇は、昨年6月の英国民投票における欧州連合(EU)離脱派勝利を受けたポンド急落が原因であり、これが英国が輸入する食品や燃料、その他製品の価格を押し上げた。賃金の上昇が続かなければ、所得は圧迫されてしまう。

一方でBOEは政策金利の早期引き上げには消極的。英国のEU離脱(ブレグジット)が経済活動を鈍らせ、物価上昇を抑えると考えているからだ。問題は、BOEが国民投票後の英経済がひどく悪化すると悲観し過ぎていた点にある。現時点でもまた、英経済の底力を見くびっているのではないだろうか。21日に公表された民間調査では、輸出回復によって3月の英製造業の景気に対する楽観度は22年ぶりの高水準に達した。

英経済成長がBOEの想定より高いままなら、利上げ局面に達するまでに物価高が定着しかねない。家計の予想物価は国民投票以降、既に著しく跳ね上がっている。今月のBOE/TNS調査によると、一般の人々が見込む向こう1年の物価上昇率は2.9%で、国民投票前は2%だった。

16日のBOE金融政策委員会議事要旨は、当局がいかに板挟みに苦しんでいるかを示している。この会合では6月末で退任するフォーブス委員が即時利上げを提案し、複数の委員が近いうちに追随する意向を示唆した。

しかし市場の動きのおかげで、BOEは時間稼ぎできる可能性がある。ポンドは議事要旨公表後に上昇し、21日のCPI統計でまた値上がりした。長短金利も上がった。こうしたポンド高や金利上昇は、金融環境を緩やかに引き締める効果がある。投資家が金利先高観を維持するなら、BOEとしては早期利上げの切迫感が薄れるだろう。

●背景となるニュース

*英国立統計局が発表した2月CPI前年比上昇率は2.3%で、2013年以降初めてBOEが目標とする2%を上回った。

*CPIを受け、ポンド/ドルは一時3週間ぶり高値を付けたほか、ポンド高/ユーロ安となった。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。


月曜●コラム:留守でもおやつ、最新機器がペットの安全や健康管理 2017年 03月 17日
コラム:世界市場を覆うトランプ発の「モヤモヤ」、こう着長期化も 2017年 03月 22日
コラム:ルペン氏公約の国民投票、実現には高い壁 2017年 02月 22日
http://jp.reuters.com/article/britain-inflation-breakingviews-idJPKBN16T06Z?sp=true

 

 
スコットランド独立なら英銀に巨額損失も、可能性無視できず-チャート
Richard Partington
2017年3月22日 06:33 JST

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i5Z.56Jqo3pc/v2/-1x-1.png

  英国の銀行はスコットランドが独立し景気が低迷すれば最大で30億ポンド(約4200億円)の信用損失を被る可能性があると、ラウル・シンハ氏らJPモルガン・チェースのアナリストが試算した。2014年の前回の住民投票時とは状況が変わっているため、独立は「無視できない可能性」になっているとアナリストらがリポートに記述した。
原題:U.K. Banks Seen Facing Losses From Scottish Independence: Chart(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-21/ON5VT76S972M01

 

東京が生活費の高い都市トップ10に返り咲き、アジアが上位占める
Enda Curran
2017年3月21日 17:56 JST


Singapore.

Photographer: Nicky Loh/Bloomberg
• 東京4位、大阪も5位に躍進
• パリで値段に見合う価値があるのは酒とたばこだけとEIU

東京が世界で生活費の高い上位10都市に返り咲いた。トップ10の多くはアジアの都市が占めた。
  21日公表されたエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の2017年世界生活費調査によると、東京は7つ順位を上げ4位。12年までは1位だった。円高再燃で大阪も5位と順位を9つ上げた。シンガポールと香港はそれぞれ1位、2位を維持。ソウルは6位だった。5位までで唯一のアジア以外の都市は3位のチューリヒ。
  アジア経済の原動力となっている中国だが、消費の弱含みと人民元の下落で中国の都市は後退した。欧州からはジュネーブ、パリ、コペンハーゲンがチューリヒと共に10位以内に入った。唯一のユーロ圏都市パリは「構造的に生活費が高く、値段に見合う価値があるのは酒とたばこだけ」とEIUはコメントしている。
  北米から唯一トップ10に入ったニューヨークは7位から9位に後退した。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iVAvaLpT3_YA/v2/-1x-1.png


https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iPVZqqhRdNgE/v1/-1x-1.png
原題:Tokyo Returns to World’s 10 Priciest Cities in Asian Domination(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-21/ON5OLV6KLVR501 


 

Oddly Enough | 2017年 03月 22日 12:20 JST 関連トピックス: トップニュース

世界生活費ランキング1位はシンガポール、東京4位・大阪5位に

[ロンドン 21日 ロイター] - 英経済誌エコノミストの調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が21日に発表した「世界の生活費」ランキングで、シンガポールが引き続きトップとなった。円高の影響で東京と大阪がそれぞれ4位と5位になり、10位以内に復活した。

2位は香港、ソウルが6位で、上位10位の半分がアジアの都市となった。今回の調査では、アジア都市の再上昇が目立った。

一方、最も生活費が安かったのは、カザフスタンのアルマトイ、次いで景気後退(リセッション)に見舞われているナイジェリアのラゴスとなった。インドのベンガルールとパキスタンのカラチ、アルジェリアのアルジェも下位となった。

米国の都市では、9位のニューヨークのみが10位以内となった。ニューヨークは若干のドル安で前回から順位が2つ下がったが、5年前に46位だったのと比較して格段にランクが上がっている。ロサンゼルスは11位。

欧州の都市では、チューリヒが3位、ジュネーブとパリがともに7位、コペンハーゲンがニューヨークと同じ9位と、4都市が10位以内に入った。

人民元の継続的な相場下落で、中国の主要都市は5─16ランクの低下となった。

調査は、食品、飲料、衣料、家庭用品、日常品など160の製品やサービスの価格をドル建てで算出し、ランク付けしている。これに基づくと、パン1キロの値段は、シンガポールでは3.55米ドル、パリでは6.81ドル、アルマトイでは0.9ドル。テーブルワインのボトルは、シンガポールでは23.68ドル、パリでは10.35ドル、アルマトイでは5.15ドルとなった。

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http://jp.reuters.com/article/costofliving-idJPKBN16T0A6


 


 
最も魅力的な新興市場にメキシコが浮上−最下位はインド
近藤雅岐、Yumi Teso
2017年3月22日 15:01 JST
• メキシコは債券利回りが高水準、PERも魅力的
• GDP成長率や株価評価、格付け、ボラティリティーを分析

投資家にとって最も魅力的な新興市場はメキシコ、最悪はインドだ。ブルームバーグが国内総生産(GDP)成長率や債券利回り、株式のバリュエーションといったさまざまなメトリクスを分析した。
  昨年11月の米大統領選でのドナルド・トランプ氏当選後、メキシコの通貨ペソは下落し、債券利回りは上昇。米国の雇用を盗んでいるとトランプ氏がメキシコを激しく非難したことを織り込んだ。
  当初の売り一巡後も、メキシコ10年国債利回りは米大統領選前の水準を引き続き1ポイント余り上回っている。ペソの実質実効為替レートは21年ぶりの低水準に近く、輸出企業の利益見通しを押し上げている。
  アセットマネジメントOneの竹井章ファンドマネジャーは、メキシコの通貨と債券は売られ過ぎだと指摘。ペソは昨年11月に始まった下落の幅を縮小。アナリストらによる今年10−12月(第4四半期)のペソ相場見通しは1ドル=20.50ペソと、2月以降で約5%上方修正された。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i_X4a4Hw2Ccg/v2/-1x-1.png
 
  投資家にとって最も魅力が薄いインドは、国内の株式と債券、通貨が比較的割高だ。インド株の指標S&P・BSEセンセックスが先週、2年ぶりの高値を付けたほか、ナショナル証券取引所(NSE)のニフティー50指数は過去最高値を更新。地方選での与党勝利で、モディ首相が物品サービス税(GST)導入を含めた改革措置を加速するとの楽観的な見方が広がった。
  ナットウェスト・マーケッツのシンガポール在勤エコノミスト、バニンダー・シン氏は「新税は中期的には素晴らしいが、導入後数カ月は消費をある程度損なうことだろう」と述べ、株式市場の「調整」とその結果としてインド・ルピーの調整も避けられないとの見方を示した。
  ブルームバーグはJPモルガン・チェースの新興市場通貨指数を構成する10カ国中9カ国を分析。シンガポールは先進国と見なされるため、対象から外した。
Mexico Turkey Chile Hungary S.Africa Brazil Russia China India
GDP -0.72 -0.40 -0.70 0.47 -0.93 0.45 0.35 -1.82 0.08
Current Account -0.76 -0.30 0.11 0.09 0.94 0.76 -0.49 -1.09 0.66
Stock P/E 1.84 1.08 0.36 -0.36 -0.14 0.80 0.11 -0.64 -2.98
Yield 2.81 2.11 -0.34 -0.60 1.03 -0.94 -0.40 0.04 -1.27
REER 1.89 2.32 -0.26 0.69 -0.35 -0.42 0.05 -0.35 -1.44
FX Vol -1.43 -1.88 0.33 0.71 0.07 0.08 0.35 -1.47 0.83
Ratings 0.56 -0.78 1.56 -0.44 -0.11 -1.11 -0.78 1.56 -0.44
Total 4.18 2.15 1.04 0.57 0.52 -0.38 -0.80 -3.78 -4.56
各国の魅力度は以下の基準に基づき算出。見通しはブルームバーグが実施したアナリスト・エコノミスト調査から集計した。
• 2017年のGDP予想
• GDPに対する17年の経常収支見通し
• 主要株価指数の株価収益率(PER)
• 10年債利回り
• 国際決済銀行(BIS)のデータに基づく実質実効為替レート
• 外国為替のインプライドボラティリティー
• ソブリン格付け
原題:Mexico Emerges as Most Alluring Emerging Market, India Worst (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-22/ON77QS6JTSEL01 


http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/382.html

[政治・選挙・NHK222] アメリカの貧しい若者の犠牲の上に平和を享受している日本 巨万の富「アホウドリ」で拡大した日本領土 
アメリカの貧しい若者の犠牲の上に平和を享受している日本
米国ルート66 爆走11000キロ 第2回

2017/03/20
高野凌 (定年バックパッカー)
(2016.4.6.〜5.21 45日間 総費用47万円〈航空券含む〉)

小さな町の郷土資料館的ミュージアム

Jolietのミュージアムに展示された化学消防車。その後ろに出征兵士の写真が並んでいる

 シカゴの市街地から南下して30分も走ると周囲は地平線までトウモロコシ畑一色となる。高校地理の時間に習ったコーンベルト、グレートプレーン(大平原)などという言葉を思い出す。
 昼前にJolietという中西部の典型的な田舎町に到着。『ルート66ミュージアム』を見学。1920年築の立派な石造りの二階建ての元雑貨屋(grocery store)を改装したものである。一階のメインの展示物は1930年代の化学消防車だ。手押しポンプで消化液を放射したと説明がある。
 一階の四面の白壁には一面に男性の顔写真が飾ってあることに気づいた。すべてJolietから戦場に出征した地元の男たちであった。職業は農業・学生が多いが運転手、修理工、大工、コックなど様々である。戦死した兵士も多い。第二次世界大戦、朝鮮争、ベトナム戦争、アフガン戦争、湾岸戦争、砂漠の砂嵐作戦と順番に並んでいる。第二次大戦以降もイリノイ州の片田舎の町から戦争のたびに若者が出征して何人も戦死しているという厳粛な事実に圧倒された。
 日本が日米安保条約のお陰で平和を享受していた70年のあいだ米国では何度も普通の若者が出征して戦死していたのだ。しかも現在進行形だ。米軍というと原子力空母や大陸間弾道ミサイルなど圧倒的軍事力や巨大組織をイメージするが実際には“ふつう”の生身の若者が米軍を支えている。
 米国の“ふつうの若者”の犠牲の上に平和を享受してきたことを日本人はどう考えるべきなのだろうか。

静謐のなかに翻る7本の旗
 4月16日。オクラホマ州のWhetherfordという町は中西部の静かな町である。ルート66旧道に沿って州立大学を過ぎて町の西はずれに至ると美しい芝生に覆われた小高い丘が現れた。
中心の丘の頂上は公園のように整備されて七本の旗が風に翻っていた。フラッグポールの礎石にはそれぞれ星条旗、オクラホマ州旗、陸軍、海軍、海兵隊、空軍、州兵と記されていた。公園のような空間は戦没者慰霊碑だった。献花におおわれ真新しい。戦役、氏名、階級、享年、生年月日などが御影石に刻まれている。21世紀になっても何人もの戦死者が刻まれている。

オクラホマ州のWhwtherfordの戦没者慰霊碑

日本の戦没者慰霊碑
 日本でも各市町村には戦没者慰霊碑があり慰霊碑の後ろには出身部落・氏名・階級などが記載されている。私の住んでいる町は戦前には人口2000人程度の村であったが神社の慰霊碑によると日露戦争で十数名、太平洋戦争では30人以上が戦死している。
 しかし戦後日本では日米安保条約のお陰で70年間も戦死者はゼロであり国民意識から“戦死”という概念は死語となっているように思われる。そのせいか戦没者慰霊碑は全国どこでもひっそりと木陰に佇んでおり目立つことはない。“お国のために戦い亡くなった幾多の英霊”に対する畏敬の念そのものが風化しているように思われる。

日本は米国の貧困層の若者が払っている血税の実態を認識しているのか
 ベトナム戦争後ドラフト制度(徴兵制度)は廃止された。職業軍人である士官以外の一般兵士は志願兵である。湾岸戦争で捕虜となった女性兵士が奨学金を得て大学進学するために志願したという話は当時有名になった。現在の志願兵制度下では下層階級出身の若者が奨学金目的で兵役を志願するという傾向がより顕著になっていると聞く。
 米国は世界で最も貧富の差が大きい格差社会だ。有名大学の学費は高く、しかも有名大学においては有力者の子弟は推薦制度により選抜試験でも有利である。このような社会では一発逆転を狙う下層階級の若者は兵役を志願せざるを得ない。
 米軍に安全保障を“お任せ”しているのに“集団的自衛権に関する法律”に反対して“戦争法廃止”と叫んでいる日本のリベラルと称する人たちは米国の貧しい若者の犠牲をどのように考えているのであろうか。

日本陸軍、軍医の軍用行李

カンザス州のBaxtar Springsの郷土資料館に展示されている南北戦争時代の大砲

 4月12日(火)カンサス州のBaxtar Springsという田舎町の郷土資料館(Heritage & Museum)に立ち寄った。ボランティアのお年寄りが何か聞くと丁寧に説明してくれる。
 そして展示品で最も多いのが例により南北戦争からベトナム戦争まで従軍した郷土出身将兵の遺品・記念品の類である。出征、従軍はいつの時代でも田舎町の青年にとっては一世一代の出来事である。軍服、軍帽、勲章、徽章、階級章、感状など大事に保管されてきた遺品が並ぶ。
 第二次大戦の太平洋戦争のコーナーでは毛筆で多数の人間が署名した“日の丸”があった。出征兵士の武運長久を祈ったものだ。当人の氏名、出身地や百名近い人々の名前が明瞭に読み取れる。そして“千人針”と思しき布も。説明によると制圧した塹壕や洞窟から見つかった日本軍の遺品だ。
 飯盒、手帳、腕時計、軍刀、拳銃などおびただしい数である。医薬品や手術道具の入った軍用行李があった。所属階級氏名も読み取れた。持ち主は戦死した陸軍軍医大尉だった。静かなカンザスの田舎町の歴史の記録として日本の無名戦士の遺品が大切に展示されていた。

アリゾナ州のスーパーハイウェイ

アリゾナ州のバターン・メモリアル・ハイウェイ。ホワイトサンド国立公園へ向かう途上にて

 4月22日 アリゾナ州のホワイト・サンド国立公園に向かっていた。このあたりは砂漠地帯であり軍事基地が多い。White Sands Missile Range(ホワイト・サンド ミサイル演習場)という看板が見えてきた。
 砂漠地帯であり交通量は少ないが片道二車線の快適なハイウェイが地平線まで続いている。整備も行き届いているところを見ると軍用道路なのであろう。ふとハイウェイ脇の標識を見ると『Bataan Memorial Highway』とある。“バターン(Battan)死の行進”を忘れないという意味でこのハイウェイの名称としたのであろう。
 太平洋戦争中の1942年にフィリピンのコレヒドール要塞を攻略した際にバターンで降伏した米軍・比軍捕虜を炎天下徒歩移動させる途中で米兵捕虜1000人以上、並びに相当数のフィリピン人が死亡したという事件である。日本人は忘れても米国ではハイウェイの名前として残されている。

小さな博物館のヒロシマ・ナガサキ

エノラ・ゲイ号と機長のポール・ティベッツ。原爆投下当時30歳で2007年に92才で死去。

 5月6日(金)。アリゾナのルート66旧道沿いの田舎町Kingmanの町営博物館で大恐慌から第二次大戦のコーナーの展示物でエノラ・ゲイ号の写真が目を引いた。広島へ原爆投下した“空の要塞”と言われたB29爆撃機だ。原爆投下命令書のコピーも展示されていた。当時Kingmanの郊外にエノラ・ゲイ号を含む米国陸軍戦略空軍の爆撃機が駐機していたのだ。

原爆投下命令書。1945年7月25日に発令。8月3日以降に天候次第で投下目標を広島、小倉、新潟、長崎 から選択して目視爆撃を命じている。そして原爆の効果を観察・記録するために軍・民間の科学者を搭乗させることも指示

 戦勝国アメリカでは今日でも原爆投下を正当化する世論が支配的だ。戦勝国は戦争に関しては永遠に彼らに都合の良い解釈をするのは古今東西変わらない。Kingmanの人々は町の郊外から太平洋に移送された爆撃機が太平洋戦争終結の決定的使命を果たしたことを素朴に誇りに思っているのであろう。

Kingmanの町の郊外に並ぶ陸軍戦略空軍の爆撃機。すざましい工業力、物量に圧倒される

フォート・リーの退役将兵のパレード
 35年前のニューヨーク駐在時代に住んでいたフォート・リーという町では毎年ベテランズ・デー(退役軍人の日)になると百人くらいの従軍経験の或る中高年の男性が勲章を付けて正装して高校生のブラスバンドに先導されて町の目抜き通りをパレードしていた。現在でもベテランズ・デーには各地で同様のパレードや記念行事が開催されている。

サンディエゴ軍港で修理中の空母。浮きドックを使用して作業。残念ながら一帯は立ち入り禁止地区であり遠景しか撮影できず

 2016年12月に安倍首相は当時のオバマ大統領と真珠湾を訪問して両国の和解と同盟関係を世界中に宣言したが、米国市民が太平洋戦争を忘れるということはないだろう。現在でも普通の若者が世界中で命を懸けて戦っている米国では過去の戦争の記憶や戦没者の功績は風化することはないだろう。

⇒第3回に続く
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9096

 

巨万の富「アホウドリ」で拡大した日本領土
2016/10/17
平岡昭利 (下関市立大学名誉教授)
iStock
 地図を広げて、わが国の領域を眺めると、最東端の南鳥島から西へ、小笠原諸島、大東諸島、尖閣諸島などが点在しているが、これらの島々のおかげで、経済的主権のおよぶ排他的経済水域は大きく広がっている。領海と排他的経済水域を併せた面積は世界第6位である。

 一体、これらの島々は、いつから、どのような背景で、わが国に編入されたのだろうか。

 実は、筆者は今から40年以上前、沖縄本島の東に位置する大東諸島に滞在し、地理学のフィールドワークを行ったことがある。台風情報でおなじみの南大東島を主な研究対象とした。3カ月間、聞き取り調査を行ったが、訪ねた農家の方々の名字が「菊池さん」や「細田さん」など、沖縄姓とは異なる本土姓の方がおられるのに気づいた。沖縄県の離島になぜ本土姓が存在するのか。これらの人々は、明治後期に八丈島から2000キロメートル余りの航海を経て、南大東島に上陸した人々の子孫であった。

 伊豆諸島の八丈島から、はるか遠い沖縄の島になぜ上陸したのか。私の質問に、彼らは口を揃えて「農業をやるため」と答えた。農業のために長い航海をして、絶海の無人島の断崖絶壁を登り、上陸する必要があったのだろうか。何か釈然としないものが残った。

 その後、調査を進めると、鎖国から解放された明治以降、小さな船を操り、数々の危険を冒して、日本周辺の無人島に漕ぎ出した人々がいたということがわかってきた。彼らは大海原を越えて、大東諸島のみならず、広く太平洋の島々にまで進出していた。

 彼らを大海原に駆り立てた原動力は何だったのか。この謎を解くため、八丈島や沖縄の島々でフィールドワークを行う一方、公文書館などで長年にわたり資料収集を続けた。

 その結果、意外な結論に辿り着いた。太平洋に漕ぎ出した日本人の原動力となったのは、巨額の富をもたらす「アホウドリ」だったのである。


明治以降、多くの日本人が追い求めたアホウドリ
(写真・TOKYO METROPOLITAN GOVERNMENT/JIJI)
富豪への近道「無人島探検」の広がり

 明治初期まで、秋になると日本周辺の無人島には、数多くのアホウドリが飛来していた。この鳥は両翼の長さがおよそ2・4メートルという太平洋で最大級の海鳥で、人間を恐れないことや、飛び立つ際に助走が必要なこともあり、簡単に捕獲された。

 1876年(明治9年)に、わが国の領土になった小笠原諸島でも、多くのアホウドリが生息していた。しかし、移住者の急増とともにその多くは捕獲され、羽毛は横浜の商人に売られ、卵は本土に移出された。

 当時、小笠原開拓に従事していた八丈島の大工、玉置半右衛門は、いち早く、このアホウドリの価値に注目した。1887年(明治20年)、島が真っ白になるほどアホウドリが飛来する伊豆諸島南端の鳥島に進出し、組織的なアホウドリの捕獲事業を開始している。

 その捕獲方法は、棒を使った撲殺で、1日に一人当たり100羽、200羽は容易に捕獲でき、1902年(明治35年)の鳥島大噴火までの15年間で、およそ600万羽を捕獲した。その羽毛量は1200トン、売上金額は約100万円で、年平均にすると約6・7万円であった。当時の総理大臣の年俸が1万円の時代にである。玉置の年収は4万円程度であったと推測されるが、これを現在価値に換算すると10億円である。アホウドリを撲殺して羽毛をむしり取るだけの玉置の事業は、莫大な利益をもたらしたのである。

 大富豪になった玉置は、『実業家百傑伝』(1892〜93年)などの立志伝に名前が挙げられるなど、実業家として、一躍、時の人になった。さらに、著名なジャーナリストの横山源之助は、1910年(明治43年)刊行の『明治富豪史』の中で、富豪になる方法として、御用商人、土地成金などとともに「無人島探検」を挙げている。当時、アホウドリの捕獲は、富豪になる方法の一つであった。

危険を顧みず我先にと進出
東はハワイへ、西は南シナ海へ

 1891年(明治24年)5月30日付の読売新聞は、「南洋に豊土ありとは、近頃の流行語にて……」と南洋探検ブームを報じた。豊土とは、小笠原諸島の南東に存在するというグランパス島のことである。当時の地図には、このグランパス島のように存在が疑わしい島(疑存島)が多数描かれていた。玉置の成功に刺激された人々は、鳥島にあれだけのアホウドリがいるならば、地図に記載されている太平洋上の島々には、さらに無数のアホウドリがいるのでは、と考えたのである。

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 その結果、富豪になる千載一遇のチャンスを逃すまいと、アホウドリなどの鳥類を求めて、東は北西ハワイ諸島へ、西は南シナ海の島々へ我先にと危険を顧みずに進出した。「バード・ラッシュ」とも呼ぶべき「無人島獲得競争」が繰り広げられることになる。

 1899年(明治32年)には、ある民間人からミッドウェー島の借地願いが出され、2年後の1901年(明治34年)には、後に軽井沢の別荘地開発を手がける野澤源次郎も、日本政府にこの島の借地願いを提出している。日本から、はるか東、およそ4500キロメートルも離れている太平洋のど真ん中のミッドウェー島で、この時、彼らは既にアホウドリの捕獲事業を行っており、さらに捕獲の独占を狙って借地願いを出していたとは、驚くような話である。

尖閣諸島も「アホウドリ」
止まらない帝国「日本」の拡大

 この「バード・ラッシュ」の結果、日本周辺の無人島は次々に帝国「日本」に編入され、わが国の領土は拡大した。

 日本最東端となる南鳥島は、グランパス島を探し回っていた水谷新六によって、1896年(明治29年)に発見された。彼はその後すぐにアホウドリの捕獲を開始し、南鳥島は1898年にわが国の領土となった。

 また、尖閣諸島は、1885年(明治18年)に沖縄県が調査し、その回航報告書にアホウドリの大群の様子が詳しく記されているが、明治20年代には、多くの日本人がアホウドリの捕獲のために進出した。1895年(明治28年)になって、寄留商人の古賀辰四郎が島の借地権を申請し、翌96年、政府は古賀に尖閣四島を貸与した。

 このように、鳥類がもたらす富を認識した日本人の海洋進出は早く、中国政府の主張する「尖閣諸島は、日清戦争時に日本にかすめ取られた」という時期以前に、多くの日本人が、既に同諸島に進出していたのである。

 なお、「バード・ラッシュ」によって、アホウドリばかりか、国内外の鳥類も捕獲され、わが国から輸出される鳥類は、明治後期には、年間数百万羽にのぼった。大蔵省も250万〜950万羽としている。並外れた数量である。

 その多くがヨーロッパ、とりわけフランスに輸出された。高級婦人帽や頭飾りの原料として使用され、その製品はパリの品のファッションとして大流行した。1880年(明治13年)〜1920年(大正9年)頃、わが国は世界屈指の鳥類輸出大国であった。

 だが、こうした大規模な捕獲によって、アホウドリなどの多くの鳥類が枯渇へと向かう。このため「無人島獲得競争」は、ますます激化した。玉置半右衛門の鳥島も例外ではなく、アホウドリは激減し、玉置は新たな無人島を探していたが、そのなかで大東諸島の情報を得た。1899年(明治32年)、八丈島から南大東島に開拓船を派遣し、翌1900年、八丈島の人々は、絶壁を登り上陸に成功したのである。


アホウドリを追い求め、八丈島の人々は南大東島の絶壁を登り上陸した
(写真・JYO ISHIKAWA/AFLO)
 こうした状況のもと、1905年(明治38年)前後から、無人島への進出目的に鳥類のほか、鳥糞やリン鉱が加わる。羽毛は軽量のため運搬に小さな船が使用されたが、重い鳥糞やリン鉱は多くの労働者や重機、汽船を必要とした。結果、進出の主体が山師的な商人から独占資本に移行し、その活動は太平洋へと一層活発化していった。

 以上のように、日本の広大な排他的経済水域の形成を主導したのは、アホウドリであった。この鳥は一攫千金になるという認識と、その捕獲という欲求が「バード・ラッシュ」とも言うべき「無人島獲得競争」を引き起こし、はからずも、わが国の領土拡大という副産物をもたらしたのである。

現在発売中のWedge10月号では、以下の特集を組んでいます。こちらの書店や駅売店にてお買い求めいただけます。
■特集「国境騒然」
 ・南シナ海問題が発端の尖閣騒動 余波を受ける沖ノ鳥島、南鳥島
 ・尖閣周辺海域に現れた中国漁民の正体
 ・ガス田に東シナ海の目≠設置した中国
 ・海上保安庁だけでは尖閣を守れない 待たれる「離島警備のプロ」創設
 ・図解 海に囲まれた日本 国境付近で絶えぬ争い
 ・現地ルポ 自衛隊基地配備に揺れた与那国島 次なる「震源地」石垣島の騒乱
 ・「アホウドリ」が広げた日本の領土 巨万の富を巡る無人島獲得合戦

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7780


http://www.asyura2.com/17/senkyo222/msg/715.html

[国際18] オバマケア撤廃失敗なら税制改革危うくなる−一部の共和党議員が警告 低所得者向け医療〜百兆円減額の深刻 米株急落、政権不安
オバマケア撤廃失敗なら税制改革危うくなる−一部の共和党議員が警告
Sahil Kapur
2017年3月22日 07:12 JST
代替案が可決されるまで大型減税できない−トランプ大統領
「現時点では法案可決に十分な票が集まっていない」−メドウズ議員

米共和党の指導部は、オバマケア(医療保険制度改革法)の撤廃に失敗すれば、大型減税などトランプ政権が掲げるアジェンダを危うくしかねないと同党議員に警告している。
  ライアン下院議長が支持するオバマケア代替案が、下院の保守派や上院共和党の支持取り付けに苦戦する中、一部の共和党議員は、法人・個人を対象とした大胆な税率引き下げを盛り込む税制改革の実現がオバマケア撤廃の成否にかかっていると指摘する。トランプ氏当選以降の米株価上昇でS&P500種株価指数は今月最高値を付けたが、背景には法人減税への期待感もあった。
  フローレス下院議員(共和、テキサス州)は17日のインタビューで、「ヘルスケア改革で前進できない場合、税制改革が危うくなる」と語った。
  ヘルスケア法案には、10年間で約8830億ドル(約98兆7000億円)の減税が盛り込まれている。メディケイド(低所得者向け医療保険)向け連邦予算をほぼ同額削減することで賄う内容。同法案の成否は、トランプ政権の大胆な提案の議会通過を果たすことができるかどうかを占う最初の試金石となる。トランプ大統領は20日夜、できれば「大規模な税制改革」を最初にやりたかったとする最近のスピーチでの発言を繰り返した。
  トランプ氏はケンタッキー州ルイビルでの集会で、「われわれは非常に大きい減税を望んでいるが、オバマケアとして知られる大失敗を撤廃して置き換える公約を果たすまでそれができない」と語った。
  下院共和党指導部は20日夜、法案への支持を集めるため土壇場での修正を幾つか行ったが、それでもハードルが残っている。共和党保守派の下院議員から成る「下院自由議員連盟」を率いるメドウズ議員(ノースカロライナ州)は同日、ブルームバーグに対し、「現時点では法案可決に十分な票が集まっていない」と語った。
原題:Obamacare Failure Could Endanger Tax Goals, Some in GOP Warn (1)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-21/ON6P9K6S972801

 

共和オバマケア代替案に反発、メディケイド巡り−23日下院採決か
Zachary Tracer
2017年3月22日 15:00 JST

メディケイドの98兆円減額で患者や州予算に影響との見方
22日には議会予算局が法案のもたらす影響の新たな試算を発表

米医療保険制度改革法(オバマケア)を撤廃・代替する共和党の法案は、23日に見込まれる下院本会議採決を前に強い反発を招いている。メディケイド(低所得者向け医療保険制度)の縮小に非難が集まった。
  大手メディケイド保険業者の団体は21日、メディケイドを推計8800億ドル(約98兆2000億円)減額する共和党の法案について、「深刻な懸念」を抱いていると表明。州知事からも一部の共和党勢を含め、同法案が成立すれば州予算が削られる可能性があり、有権者に打撃となり得ると警戒の声が上がっている。
  22日には議会予算局(CBO)がオバマケア代替法案がもたらす影響の新たな試算を公表する予定であり、同法案への支持拡大の取り組みが極めて重要となる。一部の穏健派は患者や州への影響を理由に反対しており、保守派はコスト抑制やオバマケアの解消で踏み込み不足だと指摘する。トランプ大統領は同法案に反対票を投じる共和党下院議員は2018年の中間選挙で議席を失うだろうと警告しており、下院共和党の幹部は法案通過に楽観的だ。
原題:GOP Bill’s Medicaid Cuts Draw Fire as House Floor Vote Looms(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-22/ON7A5V6S972901


トランプ政権、業績に「プラス」は3% 中小企業の影響調査
2017/3/21 23:34日本経済新聞 電子版
保存その他
 日本商工会議所は米トランプ政権の発足を受けた中小企業の業績への影響を調査した。調査対象になった2982社のうち「プラスの影響が大きい」との回答は3.5%にとどまり、「マイナスの影響が大きい」との回答(20.9%)を大幅に下回った。円安によるコスト増への懸念のほか、トランプ政権の保護主義的な政策で対米輸出が減るとの声もあった。

 マイナス影響を具体的に聞いたところ「円安によ…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS21H5T_R20C17A3EE8000/

 

News | 2017年 03月 22日 07:47 JST 関連トピックス: トップニュース

米株が急落、トランプ政権の政策実行に不安:識者はこうみる

 ロイター/Lucas Jackson)
[21日 ロイター] - 21日の米国株式市場は、銀行株を中心に急落。医療保険制度改革(オバマケア)の見直しに時間がかかっていることから、市場が期待する規制緩和や減税をトランプ大統領が公約通り実現できないのではないかとの懸念が広がっている。

●米政権の政策実行に対する不安の表れ

<アリアンツの首席経済アドバイザー、モハメド・エルエリアン氏>

金融株と製造業株主導での株価の見切り売りは、トランプ政権の成長支援策の発表がすぐに政策実行に結びつくことに投資家が自信を失ってきていることを示唆している。

金利やドル相場もこうした懸念を共有しているようだ。

●税制改革や規制緩和の後退織り込む

<スチュワート・フランケルの社長、アンドリュー・フランケル氏>

政治が主役で、市場を動かしている。トランプ政権の成長支援策を期待して上昇していたなら、疑問が生じたときにある程度返上するのはやむ得ない。

あちらこちらで小規模な見切り売りが見られ、見切り売りのモメンタムが強まっている。

48時間後には医療保険制度改革(オバマケア)改廃法案の行方が定まる。賭けをするには頃合いではないか。

きょうはライアン下院議長の発言があった。皆、議長の言葉の裏を読み取ろうとしたと思うが、私には、医療保険制度改革についてやや後退したように聞こえた。

市場は、税制改革や規制緩和にどのような後退が見られるかを織り込もうとしている。

●材料出尽くし、議会が要因に

<テミス・トレーディングのマネジングディレクター、マーク・ケプナー氏>

市場はちょうど材料探しの期間にある。株価が高値にあるとき、ささいな要因で相場は動きやすい。原油安も材料になりつつある。

先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、連邦準備理事会(FRB)が一部で期待されていたほどタカ派に傾かなかったことも銀行株の重しとなった。

企業決算やFOMC、雇用統計など材料が出尽くしたところで、市場は議会の動きに注目しだした格好だ。医療保険制度改革(オバマケア)代替案が成立しない場合、政府は税制改革に着手できず、市場が期待していた改革が棚上げされるとの見方が広がっている。手掛かりなしに、株価がさらに上昇するのは難しい。

●株売り債券買いの資産配分

<ジョーンズトレーディングの首席市場ストラテジスト、マイケル・オルーク氏>

金融株は債券市場の上昇を受けて売られている。債券市場は米連邦公開市場委員会(FOMC)以降、上昇基調にある。

けさから、株式を売って米国債を買うという、ある種の資産配分モデルが始まったようだ。

これが下げのきっかけになった。昨年10月以来、(S&P総合500種指数が)1%下落した日がないということもある。

それに加え、23日には医療保険制度改革(オバマケア)改廃法案(の採決)があり、うまく行かなければ大統領の税制計画がとん挫するのは明らかだ。

そのため市場参加者は、少しディフェンシブになって利益確定を出すにはちょうどいいタイミングだと言っているにすぎない。

*コメントを追加します。

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http://jp.reuters.com/article/instant-view-us-stocks-idJPKBN16S2WK
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/685.html

[不安と不健康18] 健康に暮らす人類史からひもとく糖質制限食コレステロール 悪者扱いの偏見 糖質制限食で上がっても大丈夫 危険な小粒子LDL
健康に暮らす人類史からひもとく

糖質制限食コレステロール 悪者扱いの“偏見”

2017年3月18日江部康二 / 高雄病院理事長 コレステロールと糖質制限食【1】

 人体は、たんぱく質、脂質、ミネラル、水分などの成分により構成されています。男女で比べると、一般に女性の方がやや脂肪の割合が多くなりますが、おおよその体組成は、水分=55〜65%、たんぱく質=14〜18%、脂肪=15〜30%、ミネラル=5〜6%、そして糖質は1%以下となります。

脳の4分の1はコレステロールでできている
 つまり糖質は人体の構成成分としては極微量なのです。例えば脳は脂質に富んでおり、ヒト脳の乾燥重量の65%が脂質です。その脳脂質の半分がリン脂質、コレステロールが4分の1、糖脂質が4分の1という組成です。
 “悪者”扱いされることの多いコレステロールですが、生体のあらゆる細胞膜の構築に必須の物質であり、肝臓で合成し腸肝循環(肝臓で作られ胆汁に含まれて十二指腸に分泌された物質が、腸管から再吸収されて肝臓に戻り再び胆汁に含まれるというサイクル)によって制御・調節されています。コレステロールはまた男性ホルモン、女性ホルモンなどの原料でもあり、悪者どころか人体に必要不可欠な大切な物質なのです。もちろんヒトだけではなくさまざまな動物において、生命現象の根幹をなす細胞膜などの原料として一貫して利用されてきたのです。

コレステロール摂取値の上限撤廃
 このように重要な物質ですから、摂取した食物に含まれるコレステロールが少ない場合は肝臓で合成される量が増え、摂取コレステロールが多い場合は肝臓での合成が徐々に減少するという仕組みが生体にはあります。これによって血液中のコレステロールの量(血清コレステロール値)を一定に保つよう、調整しています。
 2015年2月、米国農務省は「コレステロールは過剰摂取を懸念すべき栄養素ではない」として、摂取量を1日300mg未満に抑えていた従来の食事指針を撤回しました。同様に日本の厚生労働省も、5年おきに改定する「日本人の食事摂取基準」2015年版で、科学的根拠が得られないとしてコレステロールの摂取の目標量算定をやめました。
 これらの動きは見方を変えれば、日米共に、コレステロールの摂取基準を設定して摂取制限を推奨してきたことが、無意味だったと認めたということでしょう。米国ではずっと「1日あたりのコレスレテロール摂取量上限は300mg。棒状のバター1本、または小さい卵2個、ステーキ300gに含まれる量」を推奨し続けていましたが、すべて撤廃です。日本の厚労省も以前は「18歳以上の男性は1日当たり750mg未満、女性は600mg未満」を目標量としていましたが、これも撤廃です。厚労省は「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書の中で、「体内でコレステロール量を調整する仕組み」について解説し、「コレステロール摂取量が直接血中総コレステロール値に反映されるわけではない」と明言しています。
 こんなことは、医学的にはとっくに分かっていたことで、「いまさら」ではあるのですが、厚労省がお墨付きを出してくれたのはよいことです。卵や肉類、炒めもの、揚げものなど、コレステロールの多い食材を日々食べても大丈夫ということで、糖質制限食には大きな追い風となりました。

善玉、悪玉という間違ったレッテル
 一般にLDLコレステロールは「悪玉」で、HDLコレステロールは「善玉」という言い方をしますね。しかし、これは正確ではありません。コレステロールは脂質のため水に溶けず、そのままではうまく血液中を流れません。そのため、周りを水と親和性のあるたんぱく質で覆って血液中に溶け込みやすい構造になっています。この脂質をたんぱく質で覆った構造をリポたんぱく質といい、いわばコレステロールを乗せて血液中を移動する乗り物のようなものです。
 そしてたんぱく質の密度の違いで、LDL(低密度<Low Density>リポたんぱく質)とHDL(高密度<High Density>リポたんぱく質)に区別されます。通常のLDLコレステロールは、全体の約40%をコレステロールが占め、コレステロールを肝臓から末梢(まっしょう)組織に運ぶ真っ当な役割を果たしています。逆にHDLコレステロールは、末梢組織の細胞で細胞膜の原料として使用されたあと、余ったコレステロールを回収して肝臓に運ぶのが仕事です。両方とも人体に必要なものであり、日々よい仕事をしており、少なすぎると困るのです。

危険な「小粒子LDL」とは
 一方、真の悪玉が存在します。それが「酸化LDLコレステロール」です。LDLコレステロールが活性酸素と結びついたもので、もはやコレステロールとはまったく別の「異物」と言っていいでしょう。これが血管を詰まらせる「プラーク」の原因となります。そしてもう一つ、危険な悪玉があります。「小粒子LDLコレステロール」と言い、その名の通り、粒が小さく密度の高いLDLコレステロールのことです。これは酸化LDLコレステロールに変化しやすいという点で、危険な存在です。
 日本人の場合、心筋梗塞(こうそく)などの冠動脈疾患を発症した人でも、LDLコレステロール値が正常範囲という人が結構な数います。そういう人のLDLコレステロールを調べてみると小粒子LDLコレステロールが多いことが分かりました。通常のLDLコレステロール粒子は平均直径25.5nm以上なのに対し、小粒子LDLコレステロールは平均直径25.5nm未満で、より密度が高くなります。
 また通常のLDLコレステロールは作られてから約2日間で肝臓に再取り込みされますが、小粒子LDLコレステロールの場合は約5日間血液中に滞留します。長時間、血管内にとどまるため血管内皮に影響を与える頻度が高い▽サイズが小さいため血管内皮の傷に侵入しやすい▽元々、抗酸化物質をあまり含んでいない特徴を持つ−−などの理由で、酸化LDLコレステロールに変化しやすいと言われています。一方、酸化していない普通のLDLコレステロールは、生体にとって異物ではないので血管内皮にほとんど障害を起こしません。

糖質制限食でコレステロール値が上がっても大丈夫
 小粒子LDLコレステロールは、血液検査で「中性脂肪が多く、HDLコレステロールが少ない」という人に多く見られると言われています。逆に「中性脂肪が少なく、HDLコレステロールが多い」人は、小粒子LDLコレステロールも、酸化LDLコレステロールも少ないのです。糖質制限食実践者は血液検査では後者のパターンになります。つまり糖質制限食実践中であれば、少々LDLコレステロールが高値でも問題ありません。
 でも糖質制限食を実践中にLDLコレステロール値が上昇すると、驚きますね。でもそれは、「食事由来のコレステロールが増加したが、並行して起こる肝臓でのコレステロール合成量の低下が追いついていない」状態だと考えられます。また「糖質制限食により小粒子LDLコレステロールが減り、通常の大きさのLDLコレステロールが増えたために、LDLコレステロール全体の量が増えた」状態でもあります。いずれも、最悪の酸化LDL、小粒子LDLコレステロールが減少して、よいLDLコレステロールが増えたことで起きる現象なので心配無用です。
 次回はコレステロールが関連する「病気」やコレステロールを下げる薬(スタチン系薬剤)の是非について、私の考えを紹介したいと思います。
   ×   ×   ×

新著「外食でやせる!」3月27日発売
 江部康二先生の新著「外食でやせる!『糖質オフ』で食べても飲んでも太らない体を手に入れる」が、2017年3月27日、毎日新聞出版から発売されます。日々の食事はほぼ外食、というビジネスパーソン向けに、コンビニ弁当やファミリーレストラン、ファストフード店、居酒屋、デパートの持ち帰り惣菜などのメニューを活用して、糖質制限食を実践する方法を解説しています。具体的な商品名も多数記載し、意外なほど手軽に健康的でスリムな体を手に入れられるノウハウが満載です。書店等でご一読ください。
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江部康二
高雄病院理事長

えべ・こうじ 1950年生まれ。京都大学医学部卒業。京都大学胸部疾患研究所(現京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学)などを経て、78年より医局長として一般財団法人高雄病院(京都市)に勤務。2000年理事長に就任。内科医、漢方医。糖尿病治療の研究に取り組み、「糖質制限食」の体系を確立したパイオニア。自身も02年に糖尿病であることが発覚し、実践して糖尿病と肥満を克服する。これまで高雄病院などで3000人を超える症例を通じて、糖尿病や肥満、生活習慣病、アレルギーなどに対する糖質制限食の画期的な治療効果を証明し、数々のベストセラーを上梓している。
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[戦争b19] 護衛艦「かが」就役、海自のヘリ空母4隻体制に 主任務は潜水艦の捜索 F35戦闘機オスプレイも搭載可
護衛艦「かが」就役、海自のヘリ空母4隻体制に
主任務は潜水艦の捜索
ロイター 2017年3月22日

http://tk.ismcdn.jp/mwimgs/d/b/-/img_dbb25af14888094f0788c0dd72d0622595463.jpg

 3月22日、空母のような外観の海上自衛隊の護衛艦「かが」が就役した。多数のヘリコプターを搭載できる日本の艦艇は4隻体制となり、海自のすべての護衛隊群に1隻ずつ配備されることになる。写真は横須賀港での海上自衛隊による就役式で撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)
[横浜市 22日 ロイター] - 空母のような外観の海上自衛隊の護衛艦「かが」が22日、就役した。多数のヘリコプターを搭載できる日本の艦艇は4隻体制となり、海自のすべての護衛隊群に1隻ずつ配備されることになる。中国軍の海洋進出が活発になる中、自衛隊は対潜水艦戦や島しょ防衛の能力を引き上げる。

「かが」は、全長248メートルの海自最大の護衛艦「いずも」の2番艦。「いずも」と同様、9機のヘリコプターを作戦に投入できる。主任務は潜水艦の捜索で、水中に垂らして音を拾うソナーを備えたヘリコプターを7機、多目的のヘリコプター2機を搭載する。

空母のような広い甲板を持つ海自の護衛艦は、「おおすみ」、「ひゅうが」、「いずも」に続いて4隻目。広島県の呉基地が母港の「かが」が就役したことで、全国に4つある海自の護衛隊群に1隻ずつ配備する体制が整う。

就役の式典に出席した小林鷹之防衛政務官は、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発と中国の海洋進出に触れ、「わが国自身の防衛力を強化し、自らの果たし得る役割の拡大を図らなければらない。そのためにも、『かが』の存在はきわめて重要だ」と語った。

「かが」は対潜のほかにも、艦隊の司令塔、水陸両用部隊の輸送、災害時救援などの役割が想定されている。海自を代表する護衛艦として、東南アジア諸国を中心に他国への寄港も見込まれる。海自は同型艦の「いずも」を今年5月から3カ月間、南シナ海とインド洋に派遣する。

(久保信博)
http://toyokeizai.net/articles/-/164266


 

海自最大の護衛艦「かが」就役 © Wikipedia/ Yamada Taro
日本
2017年03月22日 16:44

https://jp.sputniknews.com/images/346/15/3461573.jpg
110211
海上自衛隊最大の「空母型」のヘリコプター搭載護衛艦「かが」が22日、就役した。指揮通信機能に優れ、潜水艦を探す哨戒ヘリを中心に14機のヘリを搭載でき、中國潜水艦への対処など、離島防衛の役割が期待される。毎日新聞が報じた。

「かが」は、「いずも」と同型の2隻目で、全長248メートル。垂直離着陸輸送機オスプレイも搭載可。

米軍の原子力空母に比べ、乗員は10分の1にも満たない。日本政府は専守防衛たのめ「攻撃型空母の保有は許されない」としており、空母は戦闘機を運用しない。だが、米国の垂直離着陸型のF35戦闘機を運用する能力を有している。
https://jp.sputniknews.com/japan/201703223461744/
http://www.asyura2.com/16/warb19/msg/811.html

[経世済民120] 世界市場を覆うトランプ発の「モヤモヤ」こう着長期化も EU分裂危機、蘭仏より伊が心配 PIMCO米利上あと2回 貿易黒字
Column | 2017年 03月 22日 09:02 JST
コラム:世界市場を覆うトランプ発の「モヤモヤ」こう着長期化も

田巻 一彦

[東京 21日 ロイター] - 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明から、「反保護主義」の文言が削除された。貿易不均衡の是正を掲げるトランプ米政権の強い意向を反映した結果とみられるが、同大統領が米議会に示した予算案の概要は、「公正な貿易」を実現する「国境税」などに全く言及せず、インフラ投資の具体策も明示されていない。世界の市場にはトランプ政権発の「モヤモヤ」が覆い、こう着相場が長期化する兆しが見える。

<G20声明から反保護主義脱落、米の意図反映>

今回のG20声明について、ムニューシン米財務長官は「過去の声明は、私の立場からみて必ずしも適切ではない。大統領の望みや政策を理解しており、私はここでそれを協議した」と述べ、反保護主義の表現削除に米国の意向が反映していることを認めた。

自由貿易の原則は、第2次世界大戦の引き金の1つになったブロック経済の形成による大国のパワー激突を回避するため、世界貿易機関(WTO)の前身の関税貿易一般協定(GATT)の設立とともに打ち出した「金看板」だ。

それを推進した米国が、G20の場で取り下げを主張したのは、象徴的な出来事と言える。  

しかし、世界の市場は過剰反応しなかった。短期的に大きな反作用をもたらすリスクのあったG20声明の中の為替の文言を維持したことが大きかった。為替は現状維持を認め、中長期的課題の反保護主義は削除を要求したムニューシン戦術が、とりあえず奏功したとも言えるだろう。

私は、市場の背後にあるトランプ政策への期待が、クラッシュを防いでいると指摘したい。巨額のインフラ投資、企業や家計への大幅な減税などは、どれも米経済にとって「プラス」と市場は織り込んでいる。

その部分の期待が継続している以上、米株売り、ドル売りを加速させる理由はない。

<米政策の切り札、予算案概要に盛り込まれず>

だが、トランプ大統領が16日に公表した2018会計年度(17年10月─18年9月)の予算案概要は、多くの市場関係者を失望させた。国防費を540億ドル増やし、国境対策を含む国土安全保障省の予算を前年比6.8%増やすものの、1兆ドルとトランプ大統領が打ち出したインフラ整備関連費用には全く言及せず、貿易不均衡解消の切り札的存在として大統領選の期間中から訴えてきた国境税に関連する言及も全くなかった。

G20で「反保護主義」の文言削除を強く主張しながら、現実の政策展開では、具体策の提示が遅れている。

ある国内金融機関の関係者は「米利上げ、G20と大きなイベントを通過したが、相場の方向性はますます見えなくなってしまった」と嘆く。

この現象は、トランプ大統領発の「モヤモヤ」が世界経済を覆っているためではないかと考える。民放テレビ番組のネーミングをもじって表現すれば、「モヤモヤトランプ(略称:モヤトラ)」状況は、かなり長期化するのではないか。

<「モヤトラ」現象、長期化の構図>

なぜなら、経済協力開発機構(OECD)の景気先行指数などをみれば、世界経済の基調は緩やかな拡大傾向を示している。グローバルな市場が大きなショックを受けるリスクは小さい。

しかし、これまで指摘したように、リスクマネーが流入してきた米株市場などは、すでにトランプ政策への期待を「目一杯」織り込んできた。ここから先は、減税や国境税、インフラ投資などで具体策が必要になるが、先に示された予算案概要には、与党共和党からも異論が出ている。

ホワイトハウスと米議会の調整結果を見極めるとなると、かなりの時間がかかるのは必至だ。実際、ムニューシン財務長官は就任直後、税制改革に関する結論が見えるのは、議会が夏休みに入る直前の今年8月ごろではないかとの見通しを示した時がある。

価格変動が発生することで市場の流動性が増し、市場の活性化で収益を上げる金融・資本市場関係者にとって、もし、「モヤトラ」現象が長期化し、こう着相場が継続するようなら、想定外の減収・減益要因になりかねないのではないか。

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http://jp.reuters.com/article/column-trump-idJPKBN16S30H

 

 

News | 2017年 03月 22日 17:12 JST 関連トピックス: トップニュース

日米株価が大幅安、米政権の政策実現性を懸念:識者はこうみる


 3月22日、前日の米国株式市場は、市場が期待する規制緩和や減税をトランプ大統領が公約通り実現できないのではないかとの懸念が広がり、金融株を中心に急落した。これを受け、22日の東京株式市場でも、1ドル111円台まで円高が進行するなか、日経平均の終値は2月9日以来、約1カ月半ぶりの安値水準となった。21日にNYSEで撮影(2017年 ロイター/Lucas Jackson)

[22日 ロイター] - 世界的な株安と円高が進んでいる。トランプ米大統領が掲げる政策の実現に時間がかかりそうだとの見方が広がっているのが一因だ。大型減税などの政策期待がはく落したわけではなく、調整の範囲内とみられているが、世界協調体制の「ほころび」を警戒する声も出ている。

米経済など景気自体は悪くないものの、株価が高値圏にあっただけに、調整幅が大きくなる可能性もある。市場関係者の見方は以下の通り。

●短期的な需給調整、先行きはトランプ政策次第

<東海東京証券 機関投資家営業部部長 静間康禎氏>

主力株はすでに1月ごろから上値が重く、買い上がりにくい状態だった。ポートフォリオの中で株式のウエートが大きくなり過ぎたためだ。きょうは前日の米株安をきっかけに海外投資家を中心にウエート調整の売りが出たとみられる。期待先行で上昇したトランプ相場の反動とも言えるが、今のところ需給調整の範囲内だ。ここから本格的なリスクオフに入るかどうかはトランプ政策次第であり、今後の動向を見極めるまで積極的な買いは入れにくい。日経平均は当面1万8500円が下値めどになると見ている。

●米政策期待は継続、日本株の高値更新には時間

<三菱UFJ国際投信 チーフストラテジスト 石金淳氏>

トランプ氏が米大統領に当選して11月以降、米国株は12月から1月にかけて横ばいとなった局面もあるが、3カ月以上にわたり上昇を続けてきた。調整局面に入るのはある意味当然だ。高値警戒感が出ており、バリュエーション的に見ても割高な水準にあった。

問題は今回の急落が米国株の上昇トレンドの終焉(しゅうえん)なのかどうかだが、そこはまだ判断できない。数日前まで米国に出張していたが、すでに現地では景気刺激策の具体化が遅れるのは当たり前との見方が広がっていた。

米国への政策期待についてはこの先、盛り上がったり、萎んだりを繰り返すこととなるだろう。ただ減税やインフラ投資関連は、基本的には「やらざるを得ない」政策の部類に入る。米国民の多数から支持も受けやすく、時間がかかっても実行されていくとみている。

一方、国境税については、非現実との空気がワシントンでも広がっている。国境税が撤回された場合、その分減税幅が抑えられる可能性もあるが、撤回自体はマイナスの話ではなく、大きな失望を生み出すことは考えにくい。

(米上院銀行委員会幹部が大幅修正への不支持を表明した)ドッド・フランク法も、基本的には緩和の方向に向かうだろう。ただし作業量が膨大となるとされており、相当な時間が必要とみられている。

米国の政策は中長期的には期待が維持されるものとみている。だが円安基調と、しっかりとした米国株の両方が揃わない限り、日本株のさらなる上昇は厳しい。

もっとも国内企業業績自体は着実に改善しており、国内外の実体経済もそれなりに良好だ。日本株が高値を取るには時間がかかるだろう。反対に、下値も限定されるとみており、日経平均が1万9000円を割れたところは押し目買いが入りやすい。

●赤字削減に拘泥する米国、行き過ぎれば株安をトリガー

<マーケット・ストラテジィ・インスティチュート 代表 亀井幸一郎氏>

前週末の20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、予想通りでサプライズなし、との受け止めが金融市場では多かったようだ。

しかし、個人的には、トランプ政権の貿易赤字削減に向けた強い意志を最終確認したという点で大いに意味があると捉えている。

米政権は、貿易相手国との関係で、赤字が大きいケースを「不均衡」と捉え、その背景には「不公正」な取引慣行があり、その是正に2国間交渉で臨むというスタンスだ。

赤字の偏りとなっている理由を深く検証せずに、赤字=害悪と直線的なトランプ大統領の解釈を元にした行動を修正せずに国家を挙げて取り組み始めたのは驚きに値する。

こうした米国の取り組みは、世界経済にも金融市場にも良い話ではなく、米貿易赤字を基盤にしたドルの自動還流システムを阻害する試みであり、行き過ぎれば、高値圏にあるニューヨーク株は持たないのではないかとみている。

S&P総合500種とダウ工業株30種は21日、いずれも1%超下落し、昨年11月の米大統領選以降で最大の値下がりとなった。

大幅安の後には、押し目買いという考え方をする人も出てくる。

だが、米政策の実施が遅れることへの懸念が強まり、コアの支持層もトランプ離れするようになれば、本格的に期待先行相場のほころびが出てきて、債券は買い戻し、株は売り戻しとなるだろう。

為替市場では、欧州大陸でポピュリズムの広がりがあったとしても、ユーロ圏経済に深刻なダメージを与えないとの見方や、欧州中央銀行の出口戦略など、ユーロ買い材料に新鮮味がある。このため1.1ドル以下のユーロは売られ過ぎであるとみている。ドル/円は米政治リスクから4―5月に110円を割り込む可能性があると予想する。

●トランプラリーの調整、米経済は順調

<日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト 神山 直樹氏>

トランプラリーの調整局面が到来したようだ。これまで株式市場は、トランプノミクスのポジティブな面ばかり織り込み、ネガティブな面を織り込んでこなかった。政策期待がはく落したわけではないが、政策の実現までには時間がかかりそうだという認識が広がってきたことが株安の背景となっている。

ただ、米経済はそうした政策を抜きにしても順調だ。政策の具体化が見込める今秋ぐらいまでは、相場はモタモタするかもしれないが、それ以降は景気拡大とともに、株高基調が戻ってくるとみている。

日本株はアベノミクスの追加策への期待が後退していることもあり、アンダーパフォームしているが、日本企業の業績に最も影響するのは世界景気だ。米国を中心として世界景気が拡大していけば、日本株も上向くだろう。日経平均.N225がいずれ2万円を超えていくというシナリオは維持している。

●トランプ相場の半値戻しドル109円台目指す可能性

<FXプライムbyGMO 常務取締役 上田眞理人氏>

ドル高が失速した背景にはいくつかの要因がある。第1に、トランプ政策について、その具体策も期日も見えず、市場参加者が政策の実現可能性に「危うさ」を感じ始めたことだ。オバマケアを廃止するのはいいが、その後どのような仕組みを考えているのか、大型減税の財源をどうするのかなど、米上下院で共和党が多数を占めている現状で、施行に向けて鋭意協議を進めていくかと思いきや、肩透かしをくらっている。

第2に、欧州の政治リスクが若干後退していることで、ユーロに買い戻しが入っていることだ。万が一、欧州で政治リスクが高まったとしても、弱いドルの地合いに鑑みて、リスクオフのドル買いとはならず、円買いが際立つことになるだろう。

第3に、原油価格の下落により、これまでは資源国・新興国通貨が売られ、その代わりにドルが買われていたが、現状ではドルへの資金還流はみられない。

第4に、米連邦準備理事会(FRB)は先の利上げを通過した後、ハト派的になってきていると感じられ、利上げ期待からドル買いという連想が働かないことだ。

以上から、ドルの上値が相当重くなっていることは確かで、大崩れはしないと思うが、テクニカルにはトランプラリーのピークから38.2%戻しを通過してしまった。ドルにポジティブな大きな材料がない限り、次に目指すのは50%戻しの109.92円になる。ドルに不安も期待もない状況で、期待で先行した部分が剥落していると言えるだろう。

●米政権の政策実行に対する不安の表れ

<アリアンツの首席経済アドバイザー、モハメド・エルエリアン氏>

金融株と製造業株主導での株価の見切り売りは、トランプ政権の成長支援策の発表がすぐに政策実行に結びつくことに投資家が自信を失ってきていることを示唆している。

金利やドル相場もこうした懸念を共有しているようだ。

●税制改革や規制緩和の後退織り込む

<スチュワート・フランケルの社長、アンドリュー・フランケル氏>

政治が主役で、市場を動かしている。トランプ政権の成長支援策を期待して上昇していたなら、疑問が生じたときにある程度返上するのはやむ得ない。

あちらこちらで小規模な見切り売りが見られ、見切り売りのモメンタムが強まっている。

48時間後には医療保険制度改革(オバマケア)改廃法案の行方が定まる。賭けをするには頃合いではないか。

きょうはライアン下院議長の発言があった。皆、議長の言葉の裏を読み取ろうとしたと思うが、私には、医療保険制度改革についてやや後退したように聞こえた。

市場は、税制改革や規制緩和にどのような後退が見られるかを織り込もうとしている。

●材料出尽くし、議会が要因に

<テミス・トレーディングのマネジングディレクター、マーク・ケプナー氏>

市場はちょうど材料探しの期間にある。株価が高値にあるとき、ささいな要因で相場は動きやすい。原油安も材料になりつつある。

先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、連邦準備理事会(FRB)が一部で期待されていたほどタカ派に傾かなかったことも銀行株の重しとなった。

企業決算やFOMC、雇用統計など材料が出尽くしたところで、市場は議会の動きに注目しだした格好だ。医療保険制度改革(オバマケア)代替案が成立しない場合、政府は税制改革に着手できず、市場が期待していた改革が棚上げされるとの見方が広がっている。手掛かりなしに、株価がさらに上昇するのは難しい。

●株売り債券買いの資産配分

<ジョーンズトレーディングの首席市場ストラテジスト、マイケル・オルーク氏>

金融株は債券市場の上昇を受けて売られている。債券市場は米連邦公開市場委員会(FOMC)以降、上昇基調にある。

けさから、株式を売って米国債を買うという、ある種の資産配分モデルが始まったようだ。

これが下げのきっかけになった。昨年10月以来、(S&P総合500種指数が)1%下落した日がないということもある。

それに加え、23日には医療保険制度改革(オバマケア)改廃法案(の採決)があり、うまく行かなければ大統領の税制計画がとん挫するのは明らかだ。

そのため市場参加者は、少しディフェンシブになって利益確定を出すにはちょうどいいタイミングだと言っているにすぎない。

*情報を更新しました。

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FX Forum | 2017年 03月 22日 12:01 JST 関連トピックス: トップニュース

コラム:EU分裂危機、蘭仏よりイタリアが心配な訳=田中理氏

田中理第一生命経済研究所 主席エコノミスト
[東京 22日] - 筆者は先週、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、オーストリアを訪問する機会を得た。いずれも政治リスクを抱える国で、今年もしくは来年中に重要な選挙を控えている。

出張中の15日に投開票が行われたオランダ下院選挙は、反イスラム、反エリート、反グローバルを掲げる急進右派政党である自由党(PVV)が第1党の座を逃し、世界中に広がるポピュリズムの波を押しとどめることに成功した。

選挙直後に意見交換したオランダの投資家や元議員らはPVVの勢力拡大が限定的だったことに安堵の表情を浮かべたが、オランダの選挙結果が、4月下旬から5月初旬にかけて実施されるフランス大統領選でのポピュリズム政党の勢力減退を意味するわけではないとの見方で一致した。

ウィルダース党首が率いるPVVが選挙戦終盤で失速した背景には、主に次の3つの要因が指摘できよう。

1)移民の社会統合促進や学校での国歌斉唱の義務付けなど、主要政党がそろって政策を右傾化し、PVVとの政策距離が縮まったこと

2)トランプ米大統領による移民入国制限などが世界的な波紋を呼び、オランダ国民の間で極端な政策メニューを掲げるPVVへの警戒が広がったこと

3)オランダ在住のトルコ系住民に対し、大統領権限を強化する国民投票への参加を呼び掛けようとしたトルコ閣僚のオランダ入国を毅然とした態度で拒否した与党・自由民主党(VVD)の姿勢が有権者に好意的に受け止められたこと

このうち、特に投開票直前に3番目の要因が浮上しなければ、VVDがここまで議席を伸ばすことはなかったとの論調が、現地有識者の間では多かった。

事前観測では、多党乱立で連立協議が暗礁に乗り上げ、PVVを連立相手から除外することが難しくなることも不安視されたが、33議席を獲得したVVDと各19議席を獲得し第3党となった中道右派・キリスト教民主勢力と中道・民主66の合計獲得議席は71議席。定数150の下院の過半数(76議席)確保まで5議席に迫った。中小政党の支持を得て政権を発足することは十分に可能で、PVVの政権入りの芽はなくなったと見てよい。

<「ルペン大統領」でもフレグジットは杞憂か>

筆者が面会した欧州の識者は一様に、欧州連合(EU)の将来を左右する重要イベントとして、フランス大統領選に注目していた。欧州統合の推進役であるフランスで欧州懐疑派の大統領が誕生すれば、EUは崩壊を余儀なくされる。他方、改革志向で親欧州派の大統領が誕生すれば、EUは新たな求心力と推進力を得るとの期待がさまざまな場面で聞かれた。

興味深かったのは、面会者の誰1人として、国民戦線・ルペン候補の勝利やフランスのEU離脱(フレグジット)を現実的なリスクとして見ていないにもかかわらず、その不安を拭い去れずにいることだ。

やはり、英国がEU離脱を選択した国民投票、米大統領選でのトランプ氏の勝利など、世論調査の結果を覆す「まさか」の結果が相次いだことが心理的な重しとなっているのだろう。

ただ、隠れ極右支持の存在については、識者の間で見解が分かれた。かつてはフランス国民の間で国民戦線への支持を表明することに臆する人が多かったが、最近では支持表明に抵抗がなくなってきており、以前に比べて世論調査に沿った結果になる可能性があるとのことだ。

また、多くの世論調査は対象サンプルの階層的な偏りを統計的に調整しており、国民戦線の実際の獲得票と世論調査の差は過去に比べて縮まっているはずとの指摘もあった。

今回のフランス大統領選では、共和党・社会党の二大政党が予備選を通じて候補者を一本化したが、いずれも事前の世論調査で本命候補が破れ、ダークホースが予備選を制した。形勢逆転のきっかけとなったのはテレビ討論会だったため、大統領選本選に向けてもテレビ討論会の成否が浮動票の行方を左右しそうだ。

今後、毎週のように討論会が予定されているが、20日に行われた初回のテレビ討論会では、中道系の独立候補マクロン氏に説得力があったとの見方が多い。マクロン氏は社会党のオランド政権下で経済・産業・デジタル相を務めた以外に政治経験がなく、39歳の若さから指導力不足を不安視する声もあるが、今回筆者が面会した識者の多くは、年齢がマイナス要素として受け止められることはなく、むしろ変革を期待する有権者への大きなアピールになっていると評価していた。

万が一、ルペン大統領が誕生した場合も、フレグジットが難しいとの見方は共通認識となっている。フランスのEU参加は憲法で規定されているため、フレグジットには憲法改正が必要となる。憲法改正の国民投票は、上下両院の賛成多数で可決される必要があるが、大統領選後に行われる議会選で国民戦線が両院の過半数を確保することは事実上不可能だ。

過去には議会投票を必要としない別の国民投票制度を用いて、憲法改正を強行した例(大統領の直接公選制の導入是非を問う1962年の国民投票)もあるが、その後の法改正でこうした抜け道を利用するのは難しくなったと言われている。

<イタリア政局不安「第2波」の現実味>

これは筆者も同感だが、フランス以上にリスクが高い国として多くの識者が言及したのがイタリアだ。昨年12月の憲法改正の国民投票が大差で否決された同国では、野党勢を中心に早期の解散・総選挙を求める声も浮上していたが、最大与党・民主党の分裂と選挙制度改正議論の難航から、年内の前倒し選挙の可能性は遠のいた。

来年春の議会任期満了を待って総選挙が行われるとの見方が支配的だ。欧州の選挙イヤーに新たな不安要素が加わる事態はどうやら回避されそうだが、次期総選挙後の安定政権の樹立は困難な状態だ。

レンツィ体制に反旗を翻して党内の最左派が民主党を離脱したことで、反体制派のポピュリズム政党・五つ星運動が次期総選挙で最大勢力となる可能性が高まっている。憲法裁判所が現在の下院選挙制度に違憲判決を下したことで、次期総選挙がどのような選挙制度の下で行われるのかは定かでない。

五つ星運動は他党との連立に否定的で、政権入りは難しいとの見方が一般的だが、同党はこれまでも公約の修正・撤回を繰り返してきた。政権奪取に向けて他のEU懐疑主義政党との連立に傾いたとしても不思議でない。

各種の世論調査によれば、五つ星運動以外にも、北部同盟やイタリアの同胞といった右派ポピュリズム政党の支持票を集めれば、次期総選挙後の議会の45%程度を反EU政党が占めることになる。五つ星運動の政権入りが回避されたとしても、次期政権の議会基盤は極めて脆弱なものとなり、改革を推進する政治的な資源に乏しい。

イタリアは単一通貨ユーロ導入後の平均成長率がユーロ圏諸国で最低圏のゼロ近傍にとどまり、長期の経済停滞や高失業、長年の高債務が経済の足を引っ張っている。次期政権に改革の遂行能力がなければ、国民の不満が一段と高まり、いずれはEU懐疑主義政党が議会の多数派を占める恐れがある。

EU分裂の危機は、オランダでもフランスでもギリシャでもなく、イタリアにある。フランス大統領選での極右大統領の誕生回避に浮かれていると、イタリア政局不安の第2波に巻き込まれかねない。

*田中理氏は第一生命経済研究所の主席エコノミスト。1997年慶應義塾大学卒。日本総合研究所、モルガン・スタンレー証券(現在はモルガン・スタンレーMUFG証券)などで日米欧のマクロ経済調査業務に従事。2009年11月より現職。欧米経済担当。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。


コラム:円高派と円安派、年末に笑うのはどちらか=尾河眞樹氏 2017年 02月 23日
コラム:ドル120円予想を支える2つの根拠=鈴木健吾氏 2017年 02月 20日
コラム:トランプ帝国主義が招くドル高と中国衰退=武者陵司氏 2017年 03月 14日
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-osamu-tanaka-idJPKBN16T067


 


PIMCO:17年の世界成長率予想を上方修正−米利上げ年内あと2回
Charles Stein
2017年16:48 2017/03/223月22日 10:38 JST
成長率2.75−3.25%と想定、昨年12月時点では2.5−3%
疲弊している各中銀、超緩和的金融政策からの出口に近づくだろう

世界経済が3カ月前に比べ力強くなっているように見えることから、米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は成長率予想を引き上げ、超低金利時代が終わりに近づいているとの認識を示した。
  PIMCOは21日公表した最新見通しで、2017年の世界成長率が2.75−3.25%になると想定。昨年12月時点での2.5ー3%から予想レンジを上方修正した。ユーロ圏と英国、新興市場は12月の見込みより成長ペースが加速するとしている。
  「成長・インフレ見通し改善で、疲弊している各中央銀行は超緩和的金融政策からの出口に近づく可能性が高い」とPIMCOは指摘。「音楽が鳴りやんだときに、高水準のレバレッジを効かせている世界中の官民の借り手が踊り続けることができるかどうかは定かではない」と記した。
  PIMCOによれば、米連邦公開市場委員会(FOMC)は今年、恐らくあと2回の政策金利引き上げを行う見込み。欧州中央銀行(ECB)が年央ごろにフォワードガイダンスを変更し、18年の早い時期に資産購入のさらなる縮小を開始する可能性があるとの見方も示した。
原題:Pimco Boosts Outlook for Global Growth as Europe Picks Up Speed(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-22/ON6Z236S972801

 

 

Business | 2017年 03月 22日 09:45 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

貿易収支、2月は黒字8134億円 春節明けで2カ月ぶり黒字

[東京 22日 ロイター] - 財務省が22日発表した2月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は8134億円の黒字だった。黒字は2カ月ぶり。中華圏の春節明けの反動で中国向け自動車部品の輸出などが伸びた。貿易収支のうち、対中国は1118億円の黒字と2012年2月以来、60カ月ぶりの黒字だった。

輸出額は前年同月比11.3%増の6兆3465億円と、3カ月連続で増えた。春節期間が前年から前倒しとなった影響で、中国向けに自動車部品のギアボックスなどの輸出が増えた。一方、輸入額は同1.2%増の5兆5331億円と、2カ月連続の増加だった。

地域別の収支差は、対米国が前年同月比1.5%増の6113億円の黒字、アジアが同468.2%増の9958億円の黒字だった。対欧州は411億円と5カ月ぶりの黒字に転じた。

為替レートは113.40円で、前年同月比3.4%の円高。

*内容を追加します。

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貿易収支、7月は5135億円の黒字 円高で輸出09年以来の減少幅
7月実質輸出は前月比-3.2%、実質輸入は-1.1%=日銀
http://jp.reuters.com/article/feb-trade-blance-idJPKBN16T003

 
Business | 2017年 03月 22日 10:11 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

第4四半期の米経常赤字3.1%減、1年半ぶりの低水準

[ワシントン 21日 ロイター] - 米商務省が21日発表した昨年第4・四半期の経常収支の赤字額(季節調整済み)は、前期比3.1%減の1123億8200万ドルで、2015年の第2・四半期以来の1年半ぶりの低い水準となった。市場予想は1282億ドルだった。大豆を中心に輸出が減少したものの、海外投資から発生する配当や従業員報酬などを示す第1次所得が増えて、全体の赤字額の圧縮につながった。

経常収支は外国とのモノとサービス、投資の流れを示す。

昨年第3・四半期の赤字額は当初発表の1129億5800万ドルから1160億0700万ドルに改定された。

第4・四半期の経常赤字の実質国内総生産(GDP)に占める比率は2.4%と、第3・四半期の2.5%から低下した。

16年通年の経常赤字は前年比3・9%増の4812億600万ドルだった。GDPに占める比率は前年比横ばいの2.6%だった。

第4・四半期の経常収支の内訳は、モノの輸出が34億2100万ドル減の3717億2500万ドルだった。大豆を中心に食品の輸出が84億1200万ドル減り、全体水準を押し下げた。ドルが第4・四半期に米国の主要な貿易相手国の通貨に対して5%以上値上がりしたことも輸出の重しとなった。

第1次所得は44億3600万ドル増の2079億1400万ドルだった。第1次所得の受け取りから支払いを差し引いた収支の黒字幅は前期と比べて198億7200万ドル増えた。

政府補助金や年金、罰金・違約金、海外就業者からの送金を示す第2次所得収支の赤字額は415億1900万ドルと、前期の413億6100万ドルから増えた。

経常赤字は05年第4・四半期に過去最高に達し、GDPの6.3%を占めた。それ以降、国内の石油生産の増加や世界的な石油価格の下落を背景に経常赤字は減少傾向にある。

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http://jp.reuters.com/article/q4us-currentbalance-idJPKBN16T04F


 

 

Business | 2017年 03月 22日 07:48 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

年内のバランスシート政策変更に不安ない=米クリーブランド連銀総裁

[リッチモンド(米バージニア州) 21日 ロイター] - メスター米クリーブランド地区連銀総裁は21日、経済指標が底堅ければ、米連邦準備理事会(FRB)が年内にバランスシートの縮小に着手することを支持するとの考えを示した。

総裁は講演の準備原稿で「経済状況が想定通りの展開となれば、FRBの(債券)再投資の政策を年内に変更することに不安はない」と表明した。

その上で、そうした措置は、金利正常化が軌道に乗った段階でバランスシートの縮小を検討するとしているFRBの方針に合致していると指摘した。

金利政策については、毎回の連邦公開市場委員会(FOMC)で引き上げられるとは想定していないが、経済が引き続き堅調に推移した場合、過去2年のような年に1度の利上げよりも速いペースで行う必要があると言明。

「フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標引き上げを通じた一段の緩和解除が必要であり、そうした上向きの政策の道筋は景気拡大を抑制するのではなく、一段と持続可能にする一助となる」と述べた。

さらに、経済の状況を踏まえると、インフレ率は今後1年で持続的にFRBの対称的目標である2%に回帰するとの見通しを示した。

メスター総裁は昨年、2度のFOMCで金利据え置きに反対票を投じ、利上げを主張した。今年は投票権を持たない。

*内容を追加します。

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http://jp.reuters.com/article/fed-mester-idJPKBN16S2WI

 


布野日銀委員:企業の賃金設定行動は慎重なものにとどまるリスク
日高正裕
2017年3月22日 11:33 JST 更新日時 2017年3月22日 15:25 JST

モメンタムは力強さに欠け物価目標の実現への道筋は道半ば
強力な金融緩和をしっかりと推進していくことが重要

日本銀行の布野幸利審議委員は22日午前、静岡市内で講演し、物価上昇の鍵となる企業の賃金設定スタンスについて「慎重なものにとどまるリスク」があり、特に今春の賃金改定交渉に向けた動きに注目していると述べた。同委員はトヨタ自動車出身。
  布野委員は講演で、足元の物価動向は2%の目標に向けたモメンタムは維持されていると説明。消費者物価の前年比は今後2%に向けて上昇率を高めていくとしながらも、「モメンタムはなお力強さに欠け、物価目標の実現への道筋はいまだ道半ばにある」と語った。
  また海外金利が上昇していることを受け、日銀が近い将来、長期金利操作目標の引き上げを検討するとの見方も市場の一部にあるようだとした上で、現在の経済・物価・金融情勢を踏まえると長短金利操作付き量的・質的金融緩和の下で、「強力な金融緩和をしっかりと推進していくことが重要である」と述べた。
  講演後に行った記者会見では、今年の春闘で、基本給の水準を底上げするベースアップが前年を下回りそうな情勢にあることについて見解を問われ、4年連続のベアが実現したことは「非常に前向きにとらえてよいのではないか」と述べた。金融政策については「金融政策を転換する、例えば長期金利を調整する状況にはない」と述べた。
  日銀は16日に開いた金融政策決定会合で、長短金利操作の下で長期金利、短期金利の誘導目標をいずれも据え置いた。同日会見した黒田東彦総裁は、経済や物価の先行きについて「上振れリスクよりも下振れリスクが依然として大きいという状況にあるという認識であり、あまり大きく下振れリスクが減少したとも、必ずしも言えないのではないか」と述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-22/ON71E96JIJV401

Business | 2017年 03月 22日 12:25 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

布野日銀委員、長期金利目標の引き上げに否定的 構造改革の加速を

[静岡市 22日 ロイター] - 日銀の布野幸利審議委員は22日、静岡市内で講演し、物価2%目標に向けたモメンタムは維持されているが、力強さに欠けるとし、強力な金融緩和を推進していくことが重要と指摘。現在「ゼロ%程度」としている長期金利操作目標の早期引き上げに否定的な考えを示した。潜在成長率の引き上げに向け、構造改革の加速が必要と訴えた。

布野委員は金融政策運営について、目標とする物価2%が安定的に持続するまで現行の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続すると表明した。

物価2%目標に向けたモメンタムは「維持されている」としながらも、「なお力強さに欠ける」と指摘。物価目標実現への道筋は「なお道半ば」と語った。

そのうえで「市場の一部には、海外金利が上昇していることを受けて日本銀行が近い将来、長期金利操作目標の引き上げを検討するとの見方もある」とし、「現在の経済・物価・金融情勢を踏まえると、強力な金融緩和をしっかりと推進していくことが重要」と市場の観測をけん制した。

日本経済は緩やかな回復基調を続けているが、米国の経済動向や金融政策運営が市場に及ぼす影響や、中国など新興国・資源国の動向など「先行きリスクは多岐にわたっており、幅広い視点から注視していく必要がある」と指摘。

物価については、基調的な動きを構成する需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率が先行き改善していくとの認識を示し、「下振れリスクにも注視が必要なものの、2018年度頃にはプラス2%程度に達する可能性が高い」との見通しを示した。

布野委員は長期的な日本の課題として、潜在成長率引き上げの重要性を主張。そのためには「金融と財政に構造改革を加えた総合的アプローチが必要」とし、構造改革の「一層の加速が求められる」と語った。

「この際、日本経済は必要な需要の確保を国内外の双方にバランスよく求めるべき」とも述べ、内外経済や為替動向に左右されにくい差別化された商品を開発・提供する体制の構築と「これを促すイノベーションの一層の加速が求められる」と指摘した。

(伊藤純夫)

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アングル:日銀検証、利回り曲線平坦化の功罪議論か 
インタビュー:日銀は量の効果を検証すべき=富士通総研・早川氏
http://jp.reuters.com/article/boj-funo-idJPKBN16T0AC

 


Business | 2017年 03月 22日 09:53 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

日銀1月会合、委員から慎重な買い入れ減額提案=議事要旨

[東京 22日 ロイター] - 日銀が22日に公表した議事要旨によると、1月30━31日に開かれた金融政策決定会合では、ある委員が慎重な国債買い入れの減額を提唱していたことがわかった。

ある委員は「理論的には、国債買い入れの進捗とともにストック(累積)効果から金利低下圧力がかかる」とし、「市場の反応を慎重に探りつつ、減額を模索していけばよい」との認識を示した。また「短期国債買い入れは一段の減額を模索すべき」とも指摘した。

対外講演の内容と照らし合わせると、これらは佐藤健裕委員からの発言である可能性がある。佐藤委員は2014年10月の追加緩和以来、一貫して執行部の政策運営に反対してきたが、同委員が提唱してきた量的緩和から金利政策への転換が、結果的に昨年9月の政策転換を先取りした内容であったため、同氏の発言は一部市場関係者から注目されている。

また、1月の会合では何人かの委員が「欧州主要国における国政選挙や英国の欧州連合(EU)離脱交渉、欧州系銀行の不良債権問題の展開には引き続き注意が必要」との認識を示した。

物価については「消費者物価指数が一進一退の動きとなっており、これまでの個人消費のもたつきや為替円高の影響がラグを伴って現れている」、「エネルギー価格が物価に対して押し上げ寄与に転じていくことや円安の影響もあって、物価上昇率は高まっていく」との声が出た。

<長期金利目標引き上げ憶測をけん制>

米長期金利の上昇を受けて日銀が長期金利目標を現在のゼロ%から引き上げるとの憶測については、何人かの委員が「金融政策はあくまで2%の物価目標実現の観点から決定されるべき」と述べ、慎重な見解を示した。

ある委員は「グローバルな市場の不透明性が高いもとで金利のボラティリティーが高まる可能性を踏まえると、執行部に一定の裁量を持たせ、きめ細かな調節運営を行なうことが重要」と指摘した。

(竹本能文 編集:田中志保)

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http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/387.html

[国際18] 米株大幅安で調整入り不安も、トランプ政策の綻び表面化 米NATO100%コミット トランプとロシアが愛を育んだ高層コンド

Business | 2017年 03月 22日 17:08 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース

焦点:
米株大幅安、調整入り不安も

トランプ政策の綻び表面化

[ニューヨーク 21日 ロイター] - 米国株が21日、昨年の米大統領選以来で最大の下げ幅を記録した。トランプ大統領の政策遂行能力に対する投資家の不安が表面化し、市場は調整局面に入りやすくなっている。

経済成長を重視するトランプ氏の政策への期待から、S&P総合500種.SPXは11月8日の大統領選以来10%近く上昇していたが、21日は10月11日以来で初めて1%以上も下げた。

株価は過去10年間で最も割高な水準に達しているため、投資家はたとえ明確なきっかけがなくても調整局面は訪れると予想していた。

トランプ大統領は医療保険制度改革(オバマケア)の改廃を最初の手柄にしたい意向で、21日には法案が通過しなければ「政治的な問題」が起こると述べて共和党議員らに支持を訴えた。これに反応して米国株とドルは下落し、米国債と金の価格は上昇した。

チェース・インベストメント・カウンセルのピーター・タズ社長は「トランプ氏の政策課題が平手打ちを見舞われたような感じだ」と言う。

23日にも予定されるオバマケア改廃法案の採決について、投資家は減税や規制緩和、インフラ投資など、成長促進策の審議の行方を占う試金石と位置付けている。

この法案の行方が不透明なことが、一連の政策の見通しにも暗雲を広げているとタズ氏は指摘した。

不安に追い打ちをかけるように、米連邦捜査局(FBI)のコミー長官は、昨年の大統領選を巡りトランプ陣営とロシアが共謀していなかったか捜査していることを確認した。捜査には数カ月を要するという。

リバティビュー・キャピタル・マネジメントのリック・メクラー社長はコミー長官の発言について「政界で多くの抗争が延々と繰り広げられ、企業が喜ぶ政策の可決が遅れる可能性を示している」と述べた。

S&P500種は3月1日の過去最高値から約2%下落しており、メクラー氏は今後数日中にさらに1.5─2%下げた場合には調整局面入りするとみている。

S&P500種の予想株価収益率(PER)は大統領選当日の16.6倍から18倍に上昇し、2004年以来で最も割高になった。配当利回りは2%強で、10年物米国債利回りに比べて見劣りする。

<おじけづく投資家>

21日の米株下落に先立ち、他の市場は既にトランプ政権の政策実行の遅れを織り込む展開となっていた。

1月に過去最安値に沈んだメキシコペソは先週、米大統領選以来の最高値を付けた。

円は6営業日連続でドルに対して上昇。米ジャンク債(高利回り債)の投資家も今月に入っておじけづき、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの米高利回り債指数と米10年物国債利回りのスプレッドは3月1日に底を打って以来、約40ベーシスポイント(bp)拡大している。

米10年物国債利回りは21日に2.43%を割り込み、約3週間ぶりの低水準となった。年内は財政刺激策が見込めないとの見方から、トレーダーが米経済に対する楽観論を後退させていることが一因だ。

ウェルズ・ファーゴ・ファンズ・マネジメントの首席ポートフォリオ・ストラテジスト、ブライアン・ジェイコブセン氏は「共和党は医療制度改革よりも税制改革を優先させるべきだった。彼らは物事を実行に移せる党というよりも、有象無象の寄せ集めと化している」と語った。

(Rodrigo Campos記者)

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http://jp.reuters.com/article/markets-fret-trump-idJPKBN16T03R

 

トランプ大統領が批判始めた? ウィキリークスとの蜜月に暗雲

2017年3月21日
Texts by サンデー毎日

サンデー毎日
「ウィキリークス、トランプ政権入りか」。こんな驚きの見出しを掲げたのは、米のウェブニュースサイト『ビジネス・インサイダー』(3月11日付)だった。

 昨年の大統領選を巡っては、内部告発サイト「ウィキリークス」が民主党本部の内部文書を公表してヒラリー・クリントン氏に不利な流れを作ったとされる。その際、ドナルド・トランプ候補(当時)が「私はウィキリークスが大好きだ」と発言したことで「トランプ寄り」、ひいては「ロシアの情報操作の片棒担ぎ」とも言われてきた。

 さらにウィキリークスは今年3月7日、不正侵入(ハッキング)の実態などを記した、米中央情報局(CIA)の内部資料とされる文書を暴露した。国家の安全保障の観点から「エドワード・スノーデンが漏らした情報よりも重大」とされるが、これについてトランプ大統領がウィキリークス批判を口にしなかったことも、疑念を増幅させた。

 奇妙なことに、トランプ大統領はこれに先立つ同4日、「オバマ政権が昨年の選挙中にトランプタワーに盗聴器を仕掛けていた」と突如ツイートしている。米連邦捜査局(FBI)やCIA長官は否定しているが、その後にウィキリークスが文書を公表するなど、タイミングが絶妙だった。

 もっとも、この蜜月関係も早晩、破綻するかもしれない。ウィキリークスの創設者であるジュリアン・アサンジ容疑者が、トランプ氏が開示を拒否している自身の納税申告書について「手に入ればリークする」と発言した点が注目されているからだ。

 先述の“CIA文書”については国家安全保障の脅威となると批判され、トランプ大統領もさすがに「非常に憂慮している」とウィキリークス批判とも取れる発言をしたことも影響しそうだ。

 だが、両者の応酬が「出来レース」にすぎない、との疑惑が消えたわけではない。次に暴露される情報により、事の真偽がはっきりするかもしれない。

(土方細秩子)

(サンデー毎日4月2日号から)
http://mainichi.jp/sunday/articles/20170319/org/00m/030/001000d
 

 


World | 2017年 03月 22日 12:52 JST 関連トピックス: トップニュース

米、NATOに「100%コミット」 外相理事会の新日程提案 

[ワシントン 21日 ロイター] - 米国務省は、ティラーソン長官が4月5―6日の北大西洋条約機構(NATO)外相理事会に出席できないため、新たな日程を提案したことを明らかにした。

ロイターは20日、複数の米政府関係者の話として、ティラーソン長官が、4月6―7日とみられる米中首脳会談に同席するため、NATO外相理事会への出席を見合わせると報道した。政府筋の話では、NATOが日程の変更を提案したが、米国務省は申し出を断った、という。

国務省の報道官は21日の会見で、「長官が参加できるように配慮してもらえることに感謝する」と述べ、ティラーソン長官が出席できる日程をNATOに提案したことを明らかにした。

また、「米国はNATOに100%コミットしている」と述べ、欧州側の懸念払拭に努めた。

NATOがティラーソン長官の都合に合わせて外相理事会の日程を変更するかどうかは現段階で不明。

ストルテンベルグNATO事務総長は21日にワシントンでマティス国防長官に面会したが、ティラーソン長官欠席に関する記者団の質問には答えなかった。

NATOの事実上の主導役である米国の立場を考えると、米のトップ外交官である国務長官がNATO会合に出席しないのは異例。直近では、イラク戦争が勃発した2003年に、パウエル長官(当時)が直前になって出席を取り止めた。

トランプ大統領は、5月とみられるNATO首脳会合に出席する予定。会合の日程はまだ調整中だが、NATO筋によると5月25日開催の案がでているという。

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http://jp.reuters.com/article/usa-trump-tillerson-nato-idJPKBN16T0BZ

 

トランプ氏とロシアが愛を育んだ高層コンド、富裕層マネーの逃避場所
Caleb Melby、Keri Geiger
2017年3月22日 06:05 JST

購入したウクライナの政治家、トランプ陣営のマナフォート氏と接点
着工の2カ月前にロシア国債デフォルト、ルーブル急落の財政危機

78階にはかつてマフィアとの関係や恐喝が疑われたロシア人。79階にはマネーロンダリング(資金洗浄)で調べを受け、その後マンハッタンの路上で射殺されたウズベキスタンの宝石商。その4階上を購入したウクライナの政治家は、後にトランプ大統領の選挙対策本部長となる人物を雇う親ロシア政党に所属。
  国連本部のすぐ横に立つトランプ・ワールド・タワーは、20年前に着工された。居住用ビルとしては当時の米国で最高層で、最も価格の高い階はロシアから資金を移そうとしていた富裕層を引き付けた。ドイツの複数の銀行から巨額の資金を借り入れて90階のタワーを建設し、18億ドルのジャンク債再交渉に入っていたトランプ氏にとっては、気前のいい買い手が必要だった。
Trump World Tower
Trump World Tower Photographer: Ludovic/REA/Redux
  トランプ氏がなぜロシアに愛着を示すのかは、いまだに謎だ。だが、自身のコンドミニアム販売で旧ソ連に関連のある多数の個人が購入したという事実は、そのヒントになるかもしれない。タワー完売に導いたエージェントのデブラ・ストッツ氏は、「ロシア、ウクライナ、カザフスタンから大口の買いがあった」と明かす。
  ブルームバーグの調べによると、高層階のマンションは完工から数年にわたり売れ残っていたが、2004年までに76階から83階までの3分の1がロシアや近隣諸国に関連のある個人または有限会社によって購入された。ブルームバーグはこの調査に当たり20数人余りをインタビューし、数百に上るニューヨークの公文書に当たった。
  このタワー着工の2カ月前、1998年8月にロシアは400億ドル相当のルーブル建て国債がデフォルト(債務不履行)になり、ルーブルが急落する財政危機にあった。国内有力行も次々と破綻し始め、富裕者は資金の国外脱出を急いだ。混乱の中でロシア・マネーの格好の受け皿となったのがトランプ・ワールド・タワーだった。タワーのコンド購入者には、ウクライナ系移民のサム・キスリン氏が住宅ローンを提供した。
  キスリン氏はトランプ氏とその20年ほど前からビジネスで取引があり、後にジュリアーニ元ニューヨーク市長の選挙資金調達で協力した。1990年代にはマフィアとの接点やロシア発の資金洗浄疑惑などで連邦捜査局(FBI)の捜査を受けたが、起訴されたことはなく、一貫して無実を主張している。
  キスリン氏が住宅ローンを提供した中には、ワシリー・サリギン氏がいる。サリギン氏は後にウクライナの親ロシア派政党、地域党の議員となる人物で、タワー83階の部屋を購入した。昨年の米大統領選でトランプ氏の選挙対策本部長だったポール・マナフォート氏も、同党でアドバイザーとして起用された経緯があり、両氏が党にいた時期は重なる。マナフォート氏はロシアとのつながりを批判され、選挙戦のさなかに選対本部長を辞任した。
原題:Behind Trump’s Russia Romance, There’s a Tower Full of Oligarchs(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-21/ON688J6JTSE801
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/686.html

[経世済民120] これから重視すべきは成長よりも幸福度 中国闇銀大きな痛み、資金逼迫、投資家損失 UBSユーロ建口座課金0.6% ロ利下か
【コラム】
これから重視すべきは成長よりも幸福度

ベルシドスキーLeonid Bershidski
2017年3月22日 15:01 JST

フランス大統領選挙の社会党候補ブノワ・アモン氏は、成長という名の「神話」や「疑似宗教」を信じていないと表明。成長が「大量消費主義、生産主義、物質主義」の経済発展モデルの一部に過ぎないと主張している。
  これは経済の主流から外れた考え方で、こうした見解を世界的な左派崩壊の兆候の一つとみる人も多い。しかし、20日に公表された国連の2017年版の世界幸福度報告書は、アモン氏が時代を先取りしていた可能性があることを示している。

世界の幸福度ランキング
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ieGaBBD6bmV8/v1/-1x-1.png

  世界幸福度報告書プロジェクトが5年前に発足してから、小さい西欧の先進国が幸福度ランキングで上位に付けてきた。2014−16年のデータを集計した17年版のランキングでは、上位3位はノルウェー、デンマーク、アイスランドだ。ただ、これらの国の成長率は、長期にわたり世界全体の水準を下回っている。
  一方、世界で持続的成長率が最も高い国の一つである中国は、幸福度では改善していない。報告書はこの問題にまるまる1章割いており、過去の調査に基づくと、中国の幸福度は10段階評価で1段階上昇してもおかしくないと指摘している。だが実際には、中国の幸福度は1990年からほぼ横ばいだ。
  ジェフリー・サックス、リチャード・レイヤード、ジョン・ヘリウェルのエコノミスト3氏のチームは、主観的な幸福度を測る6つの変数があると示唆している。それらは、1人当たり国民総生産(GDP)で示される富の大きさ、社会的支援の度合い、健康寿命、人生の選択の自由、寛大さ(寄付の広がり度合い)、汚職に対する認識だ。
  富は数値化しやすいため、多くの政府がこの変数を改善することに集中しており、トランプ米大統領の狙いもこれのように思える。しかし、小さい欧州諸国が幸福度ランキング上位を占めてきたということは、国が一定の富を達成したら、成長は幸福度にとってそれほど重要ではないということを示している。
  エコノミストやテクノクラートの間では、格差を減らし、経済成長をより多くの人に波及させることを課題にすることが、正統的な考え方として浮上している。確かに幸福度ランキング上位の国は比較的平等であるほか、経済的格差と主観的な幸福度を関連付ける経済学の研究も多い。
  しかし、それは成長に対する執着の延長線上にあるに過ぎないのではないか。ヘリウェル氏は、重要なのは単なる所得の格差ではなく、幸福度の格差だと主張している。幸福度の格差を減らすためには、富の分配をより公平にするよりも、社会的な信頼と支援のネットワークを確立することが必要だ。
  (ベルシドスキー氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:Happy Nations Don’t Focus on Growth: Leonid Bershidsky(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-22/ON79NI6K50XS01

 


 
中国:社債投資家が損失も、短期融資の担保要件厳格化で−国泰君安
Bloomberg News
2017年3月22日 18:01 JST

中国は短期融資の担保に社債を使う要件を厳しくする方針で、これにより利回り追求型の投資家は損失を被る可能性がある。
  事情に詳しい複数の関係者が21日語ったところによれば、中国証券登記結算(CSDC)は金融機関が短期融資の担保に使える社債を「AAA」格付け債に限定する計画。国泰君安証券のアナリストらは、この計画で同水準を下回る格付けの債券の流動性が低下し、そうした低格付け債の利回り上乗せ幅(スプレッド)が大きくなる可能性が高いとみている。
  国泰君安のチン・ハン、リウ・イ両氏は22日のリポートで、「さまざまな期間と格付けの債券のスプレッドが中長期的に、最近の低水準から再び大きくなるだろう。投資家は格付けが低めの債券に高めの流動性プレミアムを求め、それに伴ってスプレッドが拡大する公算が大きい」と指摘した。
  CSDCにファクスでコメントを求めたが、返答はなかった。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i676nRD9wyFk/v2/-1x-1.png

原題:China’s New Bond Rules Seen Threatening Losses for Yield Hunters(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-22/ON7HV46S972A01

 


シャドーバンキングに大きな痛み−中国短期金融市場の資金逼迫
Bloomberg News
2017年3月22日 17:14 JST
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証券・投資会社などノンバンク向けの金利が特に上昇
7日物レポ金利のフィクシングと加重平均との開きが拡大

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iJJ9W8eDjgK8/v2/-1x-1.png

今週の中国短期金融市場での資金逼迫(ひっぱく)は、本土のシャドーバンキング(影の銀行)にとって特に大きな痛みとなっている。
  銀行間取引金利が全般的に上昇する中で、銀行を除いた証券・投資会社など金融会社向けの金利が極めて急激な上昇となっている。ブルームバーグが集計したデータによれば、中国の大手銀行との比較で、こうした金融会社が支払う金利の上乗せ幅(プレミアム)は過去最大となっている。
  中小金融機関の一部が銀行間市場で借り入れの返済ができなかったもようで、7日物レポ金利のフィクシングと加重平均との開きは22日、2.47ポイントに拡大した。ノンバンクの借り手がフィクシングに大きな影響を及ぼす傾向がある一方で、加重平均金利は大手行の影響を大きく受ける。
  スタンダードチャータードの中国マクロ戦略責任者、劉潔氏(香港在勤)は「銀行以外の金融機関が市場で資金を確保するのが一段と割高かつ難しくなっている。当局の資金供給にアクセスできる大手の銀行は、そうした資金の多くを貸し出そうとしていない」と述べた。

原題:China Shadow Banks Squeezed by Record Premium for One-Week Cash(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-22/ON7GL56S972801


 


UBS、100万ユーロ超のユーロ建て口座に課金−0.6%
Jan-Henrik Förster
2017年3月22日 17:04 JST

ウェルスマネジメント世界最大手、スイスのUBSグループはユーロ建て口座について課金を開始した。
  ブルームバーグが閲覧した顧客宛て書簡によると、対象は100万ユーロ(約1億2000万円)を超える預金で料率は0.6%。UBSは書簡の内容を認めた。
  UBSは書簡で「この料金はユーロ圏の異例の低金利継続と流動性を巡る規制の強化によって発生するコストを反映したものだ」と説明。同意できない顧客には4月末までに口座を閉じることを求めている。
  欧州中央銀行(ECB)は市中銀行に融資を促すため中銀預金金利をマイナスにしている。一部銀行は2014年から巨額のユーロ建て残高を持つ預金者に料金を課し、ECBのマイナス金利を転嫁し始めた。UBSは中銀預金金利がマイナス0.75%のスイスの顧客には既に料金を課している。
原題:UBS Introduces Charges on Euro Accounts Exceeding 1 Million(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-22/ON7H7H6K50XX01

 


 
ロシア中銀:半年ぶり利下げか、大手銀の見方分かれる−24日決定
Vladimir Kuznetsov
2017年3月22日 19:13 JST

ロシア銀行(中央銀行)が24日下す政策判断は、年内で最も議論が分かれるものになる可能性がある。
  同行金融政策局長のイーゴリ・ドミトリエフ氏は現在10%の政策金利について、据え置きと0.25−0.5ポイントの利下げが検討されるだろうと述べた。中銀が金融政策会合を前に見方を明らかにするのは異例。同行は先月、上期中の緩和可能性は「後退した」と言明したばかりだった。
  ロシア中銀が半年ぶりの利下げに踏み切るかどうかについて、世界の大手銀行の予想も割れている。JPモルガンが0.25ポイントの利下げを見込む一方、ゴールドマン・サックス・グループは金利がもう1カ月据え置かれるとみる。クレディ・スイス・グループの予想は0.5ポイントの大幅な利下げだ。ブルームバーグが実施したアナリスト40人に対する調査で、0.5ポイントの利下げを予想したのは他に2社。

原題:JPMorgan Caves, Goldman Digs In as Russia Sows Rate Discord (1)(抜粋)
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ihf9gHI4fXdg/v2/-1x-1.png
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-22/ON7N8B6KLVR601


 

ロンドンを去るバンカーにとって最良の都市はダブリン−調査
Gavin Finch
2017年3月22日 17:02 JST

• 英語が公用語、マンションの賃貸料も安い
• ミシュランの星付きレストランの数やカクテルの値段も考慮

英国の欧州連合(EU)離脱後にロンドンから配置転換になるバンカーにとって、最良の移転先はアイルランドのダブリンー。ロンドンに拠点を置く引っ越し業者のムービンガが15都市を比較した指数が示した。

  アイルランドの所得税率は最も高い国の一つで52%と高水準だが、英語が公用語であることとマンションの賃貸料が相対的に安いことが高評価の理由だと、ムービンガがウェブサイトで説明している。ダブリンに次ぐ2番目はアムステルダム。フランクフルトは6位、パリは9位で、マルタのバレッタやベルギーのブリュッセルの方が指数が高いという。

  銀行はメイ英首相が今月末に2年にわたる離脱交渉を開始させる直後から雇用を英国から移し始める見込みで、EU市場へのアクセスを維持したい銀行が選ぶ移転先の一つとしてダブリンが浮上している。ムービンガは税制や言語、賃貸料のほかミシュランの星付きレストランや英高級ブランド、バーバリーの店舗の数、仕事を終えた後に飲むカクテルの値段などの要素を検討して指数を算出した。

  「パリやフランクフルトが銀行業界の雇用移転の受け皿になると皆が話している」が、「ダブリンやバレッタ、ルクセンブルク、アムステルダムの方がこうした従業員にとって居心地がいいかもしれない」とムービンガのマネジングディレクター、フィン・ヘンゼル氏は話した。

  コンサルティング会社Z/Yenグループの世界金融センター指数でダブリンは昨年9月に31位と同年3月の39位から上昇していた。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i0mWJCYXMy6g/v2/-1x-1.png

原題:Dublin Is Best EU City for Bankers Fleeing Brexit, Study Says(抜粋
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-22/ON69XU6VDKHV01

http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/390.html

[国際18] 世論調査の信頼性が回復、ルペン氏の敗北予想実現するか 米国の「圧倒的」商機に社運賭ける7兆円FM
News | 2017年 03月 22日 13:15 JST 関連トピックス: トップニュース
焦点:
世論調査の信頼性が回復、ルペン氏の敗北予想実現するか


John Geddie and Philip Blenkinsop

[ロンドン/アムステルダム 16日 ロイター] - 世論調査は一貫してポピュリスト政党に対する支持を過小評価する傾向があるという投資家の懸念は、今月のオランダ下院選挙によって、いくらか和らいだようだ。実際の選挙結果が、世論調査の結果とほぼ整合していたからだ。

昨年、欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を決めた英国民投票や共和党のドナルド・トランプ氏が勝利した米大統領選において、事前の世論調査の結果からは反主流派感情の高まりが捕捉できなかったとの批判の声が起きていた。もっとも、どちらの結果も合理的な誤差の範囲内には収まっていたのだが。

15日に実施されたオランダ下院選挙で、ルッテ首相がライバルである極右ヘルト・ウィルダース自由党党首の挑戦を退けて勝利したことで、世論調査の精度に対する批判は、いくぶん沈静化したようだ。今後フランス、ドイツ、そして恐らくイタリアでの国政選挙を控えた金融市場の安定維持のために、そのことは重要な要因となりそうだ。

こうした政治的試練のなかでも最大と目されているのが、5月に行なわれるフランス大統領選挙の第2回投票だ。そこでは、ユーロ懐疑派の極右政党「国民戦線」のルペン党首と中道系独立候補のマクロン前経済相の対決となる可能性が高い。世論調査ではルペン氏が約20ポイントの差をつけられており、勝利の見込みは薄いとされている。

「世論調査が実際に役に立ったのは久しぶりだ」とジャナス・キャピタルのポートフォリオマネジャー、ライアン・マイヤーバーグ氏は語る。オランダ選挙でポピュリズムを抑えたことで、市場は「フランスの選挙についても、少し一息つくことができる」と付け加えた。

今回の投票日に先駆けて行なわれた世論調査は、選挙情勢と政党間の順位を正確に反映していたが、ルッテ首相率いる自由民主党がどの程度の差をつけるかについては、十分に予測できなかった。

「全体として、かなり良い調査ができた」。オランダ紙フォルクスクラントによって「最も正確な世論調査」と認定された調査会社、イプソスの従業員はそう語った。

オランダの調査機関は、ほぼ独自に使用する匿名のオンライン調査をベースに、各有権者が実際に投票する可能性に応じて回答の比重を変える手法を誇っている。これは人口の約95%がウェブを活発に利用している同国の社会をよりよく反映するものだ。こうした調査により、反主流派の投票を過小評価する可能性が限定されるという。

フランスではこれまで、ルペン党首率いる極右政党・国民戦線に投票する意思を認めることを一部の有権者は躊ちょするだろうと考え、世論調査において、同党の支持率を上乗せ補正することが常であった。しかしここ数年、そうした補正を行わなくなった。有権者はもはや投票先を口にすることを、ためらわなくなっているからだという。

バークレイズとJPモルガンは16日付の顧客宛て書簡において、オランダ下院選挙から得られる結論の1つとして、ポピュリスト政党が世論調査において一貫して過小評価されているとは限らず、世論調査は引き続き重要な手掛りだと述べている。

オランダの選挙結果を受けて欧州市場には安堵感が広がった。株価は一時、過去15カ月で最高の水準に上昇し、ユーロの対ドル相場は、1日としては過去9カ月間で最大の上昇幅を示した。欧州各国の首脳も選挙結果を歓迎している。

<読みにくい終盤の逆転要因>

ただ、たとえフランスの世論調査が断固たる結果を示したとしても、投資家は当面、それを鵜呑みにしようとは思わないかもしれない。

オランダでの世論調査は、最後の数週間でルッテ首相に有利な方向へ振れたが、それ以前はウィルダース氏が躍進するとの予想を示していた。

選挙前の数日間に話題の中心だったトルコとの対立においてルッテ首相が断固たる姿勢を示したことなど、終盤の逆転要因が、今後のフランスやドイツの選挙でも影響を及ぼす可能性がある。

オランダの有権者の多くは、選挙の数日前まで態度を決めかねていたという。「有権者の14%は当日になって投票先を決めた。投票ブースに入ってまで迷っていた人もいたほどだ」とイプソスの調査担当ディレクター、マリアンヌ・バンク氏は指摘する。

オランダの世論調査員モーリス・デホンド氏は、こうした状況を考慮して、直前週の調査にもっと力を入れる必要があると語る。「ギリギリで心を決める有権者がこれほど大きな影響を与えている」

フランス大統領選挙の決選投票まではまだ2カ月近くある。主要3候補全員がすでにスキャンダルに見舞われている選挙戦において、オランダと同様に、有権者の気持ちの変化があったとしても不思議はない。

「オランダ選挙で世論調査の予想がそれなりに当たったことで、ルペン氏勝利の可能性を一貫して低く見積もっているフランスの世論調査に対する信頼感も回復する可能性が高い」と語るのは、コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツでポートフォリオマネジャーを務めるエイドリアン・ヒルトン氏だ。

「とはいえ、警報解除を発するのは、おそらく時期尚早だろう」と同氏は付け加えた。

<行き過ぎた失望感>

今回のオランダ選挙によって、「世論調査よりも賭け市場のほうが有権者の感情を明確に示している」という一部の投資家が抱く見解はさらに信頼性を失う可能性がある。こうした理屈は、ブレグジットと米大統領選の前には優勢だった。

ただブレグジットと米大統領選双方のイベントにおいて、おおむねどちらとも解釈できる世論調査の予想に比べ、ブックメーカーの判断はさらに的外れなものだった。

「世論調査に対する信頼感はある程度高まるだろうが、そもそも昨年のブレグジットやトランプ氏当選を受けた(世論調査への)失望感が行き過ぎだったと思う」。ブルーベイ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、カスパー・ヘンス氏はそう語る。

モルガンスタンレーのアナリストによれば、ブレグジットと米国大統領選において、世論調査は大外れだったと思われているが、実際には2─4%の誤差でしかなかったという。

フランスにおける世論調査の誤差がさらに大きくなると想定したとしても、ルペン氏勝利の可能性は15%程度だとモルガンスタンレーでは見込んでいる。それに対して、一部のブックメーカーではルペン氏勝利の可能性を30%前後と予想している。

(翻訳:エァクレーレン)

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今日の株式見通し=大幅続落、米株安と円高進行を嫌気
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米国の「圧倒的」商機に社運賭ける7兆円運用のファンドマネジャー
Lukanyo Mnyanda
2017年3月22日 14:31 JST

ケイムズにとって米市場は英国と同じ規模になり得る−CEO
トランプ政権の政策で景気に弾みも、ケイムズの戦略後押しへ

600億ドル(約7兆円)を運用するスコットランドのファンドマネジャーは、トランプ政権下の保護主義台頭という話題を一笑に付し、米国での「圧倒的」チャンスに注目している。
  オランダの生命保険会社エイゴンの傘下にあるケイムズ・キャピタルのマーティン・デービス最高経営責任者(CEO)は、「当社にとって米国は英国と同じ規模になり得る。米国は巨大な市場だ」と語った。同社は現在、資産の約8割を英国で運用している。
  米国はケイムズにとって未開拓の市場。同国で運用資産をほとんど持たず、投資商品の提供を始めたばかりだ。デービス氏によると、トランプ氏が権勢を振るうことで景気に弾みが付く可能性が高く、ケイムズの戦略をタイミングよく後押しするという。
  デービス氏はケイムズの本社があるエディンバラでインタビューに応じ、トランプ米大統領について、「世界市場には良くないが米国には良いと大方の人は受け止めている。トランプ氏が税制や景気刺激でどんな措置をやり遂げるか注目する必要がある」と語った。
  ケイムズは1998年以降、エイゴンの完全子会社。スコットランドでは、近く合併するアバディーン・アセット・マネジメントとスタンダード・ライフに次ぐ規模の大手資産運用会社の一角だ。
  デービス氏はまた、ケイムズが米事業を企業の合併・買収(M&A)を通じてというよりも自前で拡大する方針だと説明。同社は比較的ディフェンシブな投資アプローチを取り「市場のボラティリティーをつかむスペシャリスト」であるため、トランプ政権の「米国第一」主義のレトリックが相場乱高下に拍車を掛ければ同社には追い風で成功をつかめると語った。
原題:‘Mind-Blowing’ U.S. the Future for One $60 Billion Money Manager(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-22/ON76E46KLVR401


http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/688.html

[政治・選挙・NHK222] 米英豪との弾薬融通協定、衆院委で可決 百貨店売上1.7%減 衣料不振 スーパー売上3.3%減、3カ月連続 幹部人材地方へ
米英豪との弾薬融通協定、衆院委で可決
2017/3/22 19:05
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 自衛隊と米軍による弾薬などの物資の融通を広げる日米物品役務相互提供協定(ACSA)改定案が22日、衆院外務委員会で与野党の賛成多数で可決された。日オーストラリアACSA改定の承認案、日英ACSAの承認案もそれぞれ同委員会で可決された。いずれも23日の衆院本会議で可決し、参院に送付される見通しだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS22H4G_S7A320C1PP8000/


 

 

日清オイリオ、食用油を値上げ
2017/3/22 19:38
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 日清オイリオグループは22日、4月1日納入分から食用油を値上げすると発表した。大豆油や菜種油などが対象。家庭用と加工用は1キログラム当たり20円以上、業務用は同20円以上か、1斗缶当たり300円以上値上げする。

 原料価格の高止まりや円安が原因。同社によると、取引先に対し1月から価格を改定するよう交渉してきたが、浸透しなかったことから、改めて値上げを表明した。

 日清オイリオは食用油最大手。2位のJ―オイルミルズと3位の昭和産業は既に2月以降の出荷分について値上げを表明していた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ22HY3_S7A320C1TI5000/

 

百貨店売上高2月1.7%減 衣料品不振続く
2017/3/22 19:51
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 日本百貨店協会が22日発表した2月の全国百貨店売上高は、既存店ベースで前年同月比1.7%減だった。前年割れは12カ月連続。うるう年だった昨年より営業日が1日少なく、春物衣料の立ち上がりが不調だった。ただ、バレンタインなどの催事が好調だった。

 総売上高は約4336億円。売り上げの3割弱を占める衣料品は同4.5%減で16カ月連続のマイナスとなった。特に婦人服・洋品が同5.9%減と落ち込みが激しい。

 国内外の需要を取り込んだ化粧品は同12.9%増と伸びた。食品は、バレンタイン関連が好調だったが、水産品の価格が高騰した生鮮食品は同6.1%減と苦戦した。

 訪日客向けの免税売上高は約201億7千万円で、過去最高だった1月に次ぐ水準だった。中国の旧正月にあたる春節の連休が1月にずれた影響が懸念されたが、購買客数が約30万人と17.2%増えたことが寄与した。

 2月末から始まったプレミアムフライデーについては、「東京や大阪など大都市圏の店舗は好調だったが、地方では大きな動きが確認できなかった」(同協会の近内哲也専務理事)という。3月は15日までの累計で1%増で推移している。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ22HV3_S7A320C1TI5000/

 
スーパー売上高3.3%減収 2月、3カ月連続マイナス
2017/3/22 19:19
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 日本チェーンストア協会(東京・港)が22日発表した2月の全国スーパー売上高は9616億円だった。既存店ベースでは前年同月比3.3%の減収で、マイナスは3カ月連続。前年がうるう年で営業日が1日多かった反動や、住関連品や衣料品の販売不振も続いた。

 日本チェーンストア協会には総合スーパー(GMS)や食品スーパーのほか、100円ショップや衣料品・家具の専門店など小売業57社が加盟する。

 売上高の7割弱を占める食料品は同2.4%減。農産品の販売は前年実績を上回ったが、水産品や総菜など他の部門は前年を下回った。衣料品は9.0%減となり、GMSなどでの衣料品不振を反映した結果となった。売上高の2割弱を占める日用雑貨などの住関連品も4.0%減だった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ22HS8_S7A320C1TI5000/


 


首都圏の幹部人材を地方企業に 人材機構など事業
2017/3/22 19:20
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 政府系人材紹介会社の日本人材機構(東京・中央)は22日、首都圏の企業で働く幹部人材を地方企業に送り込むプロジェクトを立ち上げた。人材サービスのビズリーチ(東京・渋谷)の枠組みを活用し、地方企業で経験を生かしたい人と、経営者の右腕をとなる人材を求めている地方企業をつなぐ。首都圏に偏在する人材を流動化させて、地方創生につなげる。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS22H58_S7A320C1EE8000/
http://www.asyura2.com/17/senkyo222/msg/725.html

[政治・選挙・NHK222] 総務省18年1月から消費新指標公表 単身世帯の調査充実 中国小売店日本食品を撤去〜政府原発デマに抗議 中国人訪韓22%減
総務省18年1月から消費新指標公表 単身世帯の調査充実
2017/3/22 20:27
 総務省は22日、個人消費の全体像を把握するために新たに「消費動向指数」を作成し、2018年1月から公表を始めると発表した。現在の家計調査は2人以上の世帯が中心のため単身世帯向けの調査を新たに実施して補う。小売店や飲食店の販売動向を加味した指数も作る。消費の実態をより正確につかみ、国内総生産(GDP)の精度向上につなげる。

 消費関連統計の見直しを議論してきた総務省の研究会が報告書をまとめた。単身世帯の調査は17年8月から2400世帯以上で始める。家計調査のほか、高額品などの動向を調べる家計消費状況調査の結果も統合して指数を算出する。

 商業動態統計など、モノやサービスを販売する側の統計を使った指数も算出する。POS(販売時点情報管理)データなど民間が保有するビッグデータも活用する。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS22H5F_S7A320C1EE8000/


 


日本食品の報道、中国国営テレビに調査要請 北京の日本大使館
2017/3/22 20:19
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 【北京=永井央紀】中国の国営中央テレビが「東京電力福島第1原発事故後に輸入禁止となった地域産の日本食品が中国で販売されている」と報道したことについて、北京の日本大使館は22日までに事実関係を調査するよう、同テレビに要請した。報道内容はメーカーの本社所在地と産地を誤解したものだったが、中国の小売店では混乱を避けるために日本食品を一時撤去する動きが広がっている。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE22H09_S7A320C1PP8000/

 

中国人の訪韓が22%減少 1〜19日、旅行販売中断の影響
2017/3/22 20:00日本経済新聞 電子版
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【NQN香港=森安圭一郎】3月1〜19日に韓国を訪れた中国人旅行者の数が前年同期に比べ21.9%少ない28万人にとどまったことがわかった。米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備への報復として、中国当局が韓国行き旅行の販売を中断するよう中国の旅行会社に指示した影響が出たとみられる。韓国の観光施設は大量のキャンセルと売り上げ急減に見舞われている。

 韓国の文化体育観光省の集計として…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL22HQW_S7A320C1000000/

 

2%物価達成、黒田総裁任期後に 日銀布野委員
2017/3/22 20:30
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 日銀の布野幸利審議委員は22日、静岡市で記者会見し、目標とする2%物価上昇の達成時期について「可能性としては黒田東彦総裁が任期を終えてから近づく」との見解を示した。足元の物価は若干のプラスに転じたものの、「2%目標を達成するには現状では発射台が低い」と述べた。

 黒田総裁の任期は来年4月まで。布野委員は物価目標の達成時期は2018年度ごろと語り、総裁の任期中は事実上難しいとの見方を示した。市場の一部では日銀が長期金利目標の引き上げに動くとの見方があるが、物価の足取りが弱いことから「金融政策を転換する状況にはない」と明言した。

 今年の春季労使交渉については「4年連続のベースアップ(ベア)は前向きにとらえてよい」と言及。ただ上げ幅は「中小企業の結果もあるが、前年と比べて下がる可能性がある」と指摘した。所得から消費への好循環を実現するためにも「消費者や企業家は、日本経済が大丈夫だと消費や投資に前向きに取り組んでほしい」と呼びかけた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGF22H0C_S7A320C1EE8000/

http://www.asyura2.com/17/senkyo222/msg/728.html

[原発・フッ素47] 福島の被曝調査で分かった安全基準の過剰、除染の意義揺らぐ 住民の外部被ばく線量の推定値が、実測値より大幅に過大だった  
2017年3月22日 週刊ダイヤモンド編集部
福島の被曝調査で分かった安全基準の過剰、除染の意義揺らぐ

いまだ7万9000人が避難生活を送る福島県。住民が全町・全村避難を強いられる多くの自治体で、この春一斉に避難指示が解除される。そんな中発表されたある英語論文が福島の放射線問題の関係者に静かな衝撃を与えている。原発事故後に、政府が避難や除染の目安としてきた、住民の外部被ばく線量の推定値が、実測値より大幅に過大だったことが明らかになったのだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

 JR福島駅から阿武隈山地の裾野に抱かれた桃の果樹園を眺めながら、ワンマン運転の阿武隈急行に揺られること30分で伊達市に到着する。福島市のベッドタウンであり、東京電力福島第1原子力発電所から約50キロメートル離れた農業が盛んな地域だ。伊達市では、約6万人の市民ほぼ全員が参加して、ガラスバッジ(個人線量計)を使った個人ごとの積算外部被ばく線量の測定が行われてきた。

 ガラスバッジはガムやミントタブレットの外箱ほどの大きさの機械で(下写真)、これを首から堤げるなどして身に着けて生活すると、一定期間に自分がどのくらい外部被ばくしたかが計測できる。放射性物質の拡散による住民の被ばくを心配した県内の自治体がガラスバッジを住民に配布する例は多かったが、伊達市ほどの数を配布したところはほかにない。


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 市は配布したガラスバッジを定期的に回収して、個々人が調査期間中どのくらい被ばくしたかを測定してきた。

 昨年12月6日。こうして集まったデータを、個人情報を消したビッグデータ化した上で分析した、宮崎真・福島県立医科大学助手と、早野龍五・東京大学教授の共著による英語論文が、英国の放射線関連の論文サイト、Journal of Radiological Protectionに掲載された。専門論文のサイトでありながら全世界で2万4000以上ものダウンロード数を記録したこの論文で分かったのは、「これまで政府が除染・住民避難の根拠としてきた外部被ばく線量は、実態よりかなり大きく見積もられていた」ということだ。

 論文では、上記の伊達市の実測値のデータを、同時期に政府が行った航空機による上空からの放射線モニタリング検査のデータと比較。その結果、住民の外部被ばく線量は空間線量(地上1メートルでの1時間当たりの放射線量)に「0.15」を掛けた数値となり、国が設定した「0.6」という係数の4分の1にとどまったのだ。

 ちなみに国の0.6という係数は、「1日のうち屋外に8時間、屋内に16時間滞在」と仮定して設定されている。その根拠となっているのは、「空間線量を毎時0.23マイクロシーベルト以下に下げれば、年間の外部被ばく線量を1ミリシーベルト以下に抑えることができる」という、机上の計算だ。県内の除染は、この0.23という数値を達成することを目標に行われてきた。

 加えて、同じサイトで近日公開される第2論文では、第1論文で得られた空間線量と個人の外部被ばく線量の関係係数、およびそれが年月を経てどのように減衰するかの傾向を基に、その地域で生活する住民の生涯積算被ばく線量を試算した。

 結果、伊達市内でも空間線量が高い地域の住民がそこに70年間住み続けたと仮定した中央値は18ミリシーベルトで、国が住民に避難指示を出す根拠としている年間20ミリシーベルトに達しないことが判明した。また、居住を継続した人の9割は、70年間の推定積算被ばく線量が35ミリシーベルト以内に収まることも分かった。

 人は大地や空中などからの自然放射線により生涯で約45ミリシーベルト被ばくするといわれている。つまり、原発事故で放射性物質が拡散した今回の調査地域に一生住み続けても、積算被ばく線量は自然に得るものとほぼ変わらないということになる。

論文が揺るがす除染活動の効果と避難指示の根拠

 第2論文ではさらに衝撃的な結果が明らかになった。ガラスバッジ調査を基に、伊達市で2012年10〜12月に環境省のガイドラインに基づいて行われた除染の結果、個人の外部被ばく線量がどの程度変化したのかを調べた。すると、除染後の空間線量は60%下がったが「対象となった家屋に住む住民の個人被ばく線量は、集団として見た場合、期待したほど大きく下がらなかった」(宮崎助手)のだ。

 そもそも外部被ばく線量は、個人の生活習慣によってかなり違ってくる。例えば、もともと屋内で過ごす時間が長い人にとっては、除染による屋外の空間線量の低減はあまり意味がない。

 また、空間線量が時間の経過で自然に減衰する度合いと、外部被ばく線量が減衰する度合いはほぼ同等であることも分かった。しかし、すでに線量が低い地域での減衰は鈍い。つまり除染は線量がある程度高い時期や高い地域については効果があるものの、個人の外部被ばく線量を全体として低減するという、除染本来の目的を達成するには至っていないのだ。

 個人の外部被ばく線量は空間線量だけでは明らかにならず、それのみを基準にした避難区域の設定の方法にも問題があった、ということが、実測値を基にした今回の論文であらためて証明された形だ。

「安全側に過剰な規制」だから問題がないかというと、決してそんなことはない。本来であれば不要だったかもしれない避難生活を送る中での精神的ストレスが原因と思われる福島県内の震災関連死者数は、現在までですでに2000人を超えている。この間、被ばくが原因での死者は一人もいなかったにもかかわらずだ。

 今回の論文では、空間線量だけではなく個人の被ばく線量と突き合わせることで、適切な避難や除染の計画を立てる手法が有効だと分かった。この3月末で避難指示が解除される多くの自治体や、さらにまだ解除される見通しの立たない地域で、こうした知見が応用できるのではないか、と関係者は期待する。

 福島県内で費やされた除染費用はこれまでに累計で4.4兆円に上り、各自治体は事故から6年後の今も、まだ独自の除染活動を続けている。本来であれば外部被ばくを低減するための除染活動が、目的を果たしていないということが実測データで明らかになった。国や環境省はこの事実を真摯に受け止め、自らが定めた過剰な基準に拘泥せず、あらためて今後の除染の在り方について問い直す必要がある。
http://diamond.jp/articles/-/121819
http://www.asyura2.com/16/genpatu47/msg/700.html

[不安と不健康18] 筋力低下は死に繋がる!老化防止に大事なのは筋肉だった
【第8回】 2017年3月22日 阿保義久 [北青山Dクリニック院長]
筋力低下は死に繋がる!老化防止に大事なのは筋肉だった

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骨と共に運動器として機能する筋肉は、骨と違って収縮・弛緩によって伸び縮みできるという特徴があります
高齢化社会では、姿勢の保持や移動がままならなくなる老化現象に悩む人が急増しています。ここで重要になる骨や筋肉の老化は、心臓・血管・脳などの老化と同じで、40代からゆっくりと進行していくことが分かっています。前回の「骨」に続き、今回は「筋肉」のアンチエイジングの重要性とその方法を解説します。(北青山Dクリニック院長 阿保義久)

筋肉の減少は30代から始まる
進行すると命に関わることもある

 筋肉量の減少は30代から始まりますが、特に40代以降は顕著になります。健康な人でも80歳前後には30%程度の筋肉が減少します。老化によって筋肉量が減少し、握力や歩行機能の低下などの身体機能の悪化が見られる状態は「サルコペニア」と呼ばれています。

 サルコペニアに陥ると、日常生活に支障をきたすだけではなく、転倒による骨折や、内臓機能の低下による生活習慣病から脳梗塞や心筋梗塞などの命に関わる疾患や認知症などが発症しやすくなると言われています。

 デスクワークなど座りっぱなしの生活をしていたり、歩かずに車ばかり利用する、日常的に運動量が少ない、運動せずにカロリーの調整だけでダイエットしている人はサルコペニアになりやすい傾向があります。

筋肉は脳に直結している
鍛えるには脳神経の興奮が必須

 筋肉の老化を防ぐためには、アンチエイジングの知識を身に着け、生活習慣を整えることが大切です。まずは筋肉の仕組みを詳しく見ていきましょう。

 筋肉は身体を動かす運動器という役割にとどまらず、生きた器官として全身の臓器と密接に関わっています。骨格筋として姿勢や動作を保つ役割は想像がつきますが、消化管や血管など内臓の動きにも関与していることは少し意外に思われるかもしれません。

 体の中には発汗の際に働く汗線周囲の筋肉や、視力を調節するレンズ周囲の筋肉など小さな筋肉も含めると650種類もの筋肉があり、その全てが連動して生命活動を支えています。これら全ての筋肉には共通点があります。それは、筋肉は神経を介して脳とつながっているということです。

 医学においても筋肉の理解は重要で、医学生は生理学(生命現象を機能の観点からアプローチする生物学の一つ)の授業の最初に筋肉の働きを学びます。筋肉は神経・脳と一連の構造体として内臓から体幹まで人の身体の大部分を覆っているため、生理学では極めて重視されるのです。

 運動ばかりしている人のことを揶揄して「頭まで筋肉のよう」と言うことがありますが、面白いことにこれは筋肉と脳の関係を言い得ているように感じます。というのも、脳の中で運動を司る運動野と感覚を司る感覚野は、神経を介して筋肉と密接に結びついており、筋肉を動かすためには対応する運動野の脳神経が興奮する仕組みとなっています。逆に、脳神経が興奮するとその刺激が神経を通って筋肉に届き、初めて筋肉が動きます。

 すなわち、脳がしたいことを表現しているのが筋肉ですので、脳と筋肉を切り離して捉えることはできません。

 最近では、筋肉を鍛えるために電気刺激で筋肉を刺激するトレーニング器具を見かけますが、これは実用的な筋肉の動きの改善や筋力アップにはほとんど意味をなしません。こうした機器は自分の意志とは無関係に筋肉を動かすため、筋肉を大きくする効果しかありません。使える筋肉を鍛えるには、対応する脳神経の興奮が必須なのです。

筋肉を強化する栄養素
タンパク質とビタミンDを意識しよう

 さて、筋肉と脳の関係をご理解いただいたところで、筋肉の強化方法の説明に移ります。筋肉を強くするには食事と運動が欠かせません。

 筋肉を作るために必要な栄養素としてまず挙げられるのは良質のタンパク質です。タンパク質は消化の際にアミノ酸に分解されて吸収されますが、このアミノ酸が筋肉を合成する原料になります。

 タンパク質を構成しているアミノ酸は20種類ですがそのうち9種類は体内で合成できません。ですので、食事から摂り入れる必要があるのです。これら9種類の必須アミノ酸をバランスよく含んでいるのが良質のタンパク質になります。

 タンパク質は動物性のものと植物性のものがあります。動物性タンパク質には9種類の必須アミノ酸が全てバランスよく含まれています。一方で植物性タンパク質は、含まれているアミノ酸にばらつきがあります。ただし、動物性タンパク質を摂り過ぎると悪玉の脂肪の摂取も過大になるリスクがあるので、動物性タンパクに偏らずに植物性タンパクも摂り入れてバランスを保つことが大切です。

 タンパク質を摂り入れるに当たり、目安量があります。計算式を載せておきます。

タンパク質の摂取目安量(g)=自分の体重(kg)×1〜1.5g

 体重60kgの人であれば1日70g程度のタンパクの摂取が必要です。これは、ロース肉だと360g、鳥のササミ肉だと約300g、マグロ赤身だと265g、イワシでは350gに相当します。

 また、骨の健康にも役立つビタミンDは筋肉の増強にも関わっていることが分かってきました。魚介、卵、きのこ類を食べるよう心掛けましょう。

「毎日20分、散歩しながら日光浴」
ストレスなく運動を続けることが大切

 筋肉や骨の健康を保つために運動が重要なのは言うまでもありません。適度な運動として最もお勧めなのは、毎日20分程度の散歩やウォーキングがてら日光浴することです。ポイントは、しっかり腕を振って少し速めに歩くことです。多少きつさを感じたら少し速度を落とし、回復したらまた歩行速度を上げるなど、無理のない程度に継続することが大切です。

 ランニングや水泳などの有酸素運動と、腕立て伏せ・腹筋・スクワットなどのレジスタンス運動を週1〜2回、1回当たり30〜60分程度行うことができれば、さらに理想的です。

 そのような時間がなかなか取れないという人は、

 ・室内で、踵の上げ下げ運動(下げる時はストンと地面に踵をぶつけた方が骨形成に役立ちます)を10回で1セット×1日2セット
 ・大きく腕を振ってその場足踏み運動(太ももを腹部にぶつけるくらい高く上げるが良いです)を3分間1セット×2セット
 ・深呼吸5回1セットを2セット
 ・ストレッチング10分程度

 などを行うだけでも意味があります。

 大切なのはストレスなく行える運動を毎日継続することです。楽しく日常生活に取り入れられる自分に合った運動を見つけて実践していきましょう。
http://diamond.jp/articles/-/121097
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/441.html

[経世済民120] 米国金利が上昇傾向にあるなか マイナス金利と銀行経営を考える 機関投資家の議決権行使開示 G20日本の金融政策懸念は皆無
【第9回】 2017年3月22日 翁邦雄 [おきな・くにお]
米国金利が上昇傾向にあるなか
マイナス金利と銀行経営を考える

2016年1月末に日銀がマイナス金利政策導入を発表した際、銀行株が急落した。マイナス金利政策は、地銀などの経営や金融システムにどのような影響を与えるのか。長期金利上昇の可能性がささやかれるなか、あらためて検討してみる。
<詳しくは新刊『金利と経済』でご覧いただけますが、同書で取り上げたトピックに一部手を加えてご紹介していきます>

地銀で顕在化しつつあるマイナス金利のインパクト

 地銀を中心とする地域金融機関が、統合による経営効率化を急いでいる。直近でも、3月16日に新潟県内最大手の第四銀行と同2位の北越銀行が経営統合の最終調整に入ったと報じられたほか、関西地銀3行(三井住友FG系の関西アーバン、みなとと、りそなHD系の近畿大阪)や、三重県内の三重銀行と第三銀行の統合方針が表面化している。

 経営効率化への動きの背景にあるのは、日銀のマイナス金利政策により特に主力の貸出事業で利鞘が稼げなくなったことによる収益力低下である。地域金融機関はこれを補おうと必死だ。そうした努力の一環として、投資対象を国債から外債などよりリスクの高い資産へシフトさせてきた。

 しかし、2016年11月の米大統領選前には1.8%台だった米国の長期金利は、トランプの当選後、2.6%台にまで急上昇してしまった。3月9日付の日本経済新聞朝刊は、米国の金利急上昇で、年間の利益の1.5倍の含み損を抱えている地銀もある、と報じている。こうした現状を金融庁も注視しており、遠藤俊英監督局長は3月9日、参院財政金融委員会で外債運用をテーマにした地域金融機関に対する検査を実施する方針を明らかにしている。


米国は想定どおり緩やかな上昇傾向にある
 外債投資の例にみられるように、これまでのところ、地域金融機関のリスク性資産に対する積極的な投資スタンスは、基礎的な収益力の低下を補うよりは、経営体力低下を加速する方向に作用している可能性がある。マイナス金利のこうした銀行経営への悪影響は、日銀より先行してマイナス金利に踏み込んだECBのクーレ専務理事が2016年7月の講演中に指摘していた懸念材料である。その懸念が日本にも当てはまりつつある、と言える。

マイナス金利を先行導入したECB幹部の懸念

 日銀が2016年9月に導入したイールドカーブ・コントロールは、長期金利を短期金利よりわずかに高くする、という関係を固定することを企図している。しかし、この政策の導入に先行する上記の講演で、クーレは、マイナス金利の導入について、短期金利と長期金利の関係を示すイールドカーブの傾きを維持した場合でさえ、マイナス金利の導入は、リテイルの預金に依存している銀行の利鞘を圧縮しうる、としていた。

 理由はリテイルの預金金利は低くかつ粘着的な傾向があるうえ、銀行はリテイルの預金金利をマイナスにすることには消極的(ないし困難)だからだ。市場金利が低下するにつれ、銀行の資産からのリターンは減少するのに調達コストは変わらず、結果として利鞘が押し下げられる。このため、クーレは、現在および将来の利鞘の縮小は、将来の利益予想から算出される銀行資本を減らし、銀行のリスク負担能力を低下させ、信用供与を減少させる、と主張した。

 このわかりやすい懸念は、日本の銀行にも当然に当てはまる。

 だからマイナス金利導入のニュースで銀行の株価が急落したのである。むろん、銀行の運用・調達構造は、国や業態(例えば、地域金融機関とメガバンク)ごとに大きく異なる。一般に、変動金利での貸出の比率が高く、資金調達をリテイルの預金に依存する度合いが高いほど、利鞘は押し下げられやすいだろう。そのことは各国の金融機関経営ひいては、金融システムの安定性の違いにも大きく影響を与える。後述のように、残念ながら、日本の金融構造は副作用を大きく受けるものとなっている。

 ところで、利鞘を圧縮された銀行はどう行動するだろうか。

 それが、先の講演におけるクーレ専務理事の次の懸念につながる。それは、銀行が収益を高めるために、よりリスクの高い資産へポートフォリオを振り向けること(ポートフォリオ・リバランシング)や、利回りは高いが貸し倒れになるリスク(デフォルト・リスク)も高い中小企業へ貸出を集中させることなどの副作用である。

 むろん、銀行の収益を悪化させ、より大きなリスクをとらざるを得なくすることこそ、金融政策の大きな狙いのひとつ、という考え方もある。この点について、クーレ専務理事は、それが金融緩和の目的のひとつであることを認めたうえで、これにより、銀行がプラスの価値を生み出さない投資にまで踏み込んでしまう「悪い」リスク・テイキングに追い込まれることに懸念を示していたのである。

貸出利鞘圧縮を受けたポートフォリオ・リバランスのその先は?

 以上のクーレの議論をもとに、2016年10月に公表された日銀の「金融システムレポート」から邦銀、とりわけ地域銀行への影響を考えてみよう。


図表1 マイナス金利導入国における銀行の資金利鞘
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 まず、レポート中の「マイナス金利政策実施国における銀行の収益構造」というコラムは、マイナス金利政策を先行導入した欧州諸国(ユーロエリア、スイス、スウェーデン)の銀行と邦銀の収益構造を比較し、マイナス金利政策の影響を検討している。欧州系銀行の資金利鞘(「資産運用利回り‐負債調達利回り」を使っている)をみると、マイナス金利政策の導入後に資産運用利回りは低下しているが、負債調達利回りも連動して低下し、資金利鞘は横ばい圏内の動きとなっている(図表1)。


図表2 銀行の調達構造
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 欧州系の銀行の利鞘が横ばいで推移した点について、「金融システムレポート」は、(1)マイナス金利導入時点における欧州諸国の預金金利水準が高く、預金金利に下げ余地があった、(2)欧州系銀行は、スイスを除き、ゼロ金利制約の少ない市場調達の割合が大きい(預金の負債に占める割合が小さい)、という点を指摘し(図表2)、最近では口座維持手数料等によって実質的に預金金利を引き下げる動きもみられる、とした。

 そのうえで日本では、低金利・ゼロ金利の継続期間が欧州に比べ長く、マイナス金利導入時点で銀行の預金金利はすでにきわめて低く、銀行の預金調達比率も高い。このため、マイナス金利が利鞘に及ぼす影響は、欧州系銀行よりも邦銀において、相対的に大きく表れやすい、と指摘した。

 こうした利鞘悪化に直面した金融機関はどう動くか。レポート中の「地域金融機関の有価証券投資」という項では、地域金融機関が、収益のコアとなる貸出利鞘が趨勢的に低下するもとで、投資信託や外債などのリスク性資産への投資スタンスを積極化させていることを指摘している。

 これはクーレが言及した、貸出利鞘圧縮を受けたポートフォリオ・リバランスへの動き、とみることができる。ただし、「金融システムレポート」の分析は、そのリバランスの程度が、各金融機関の基礎的収益力や経営体力によって異なることを指摘している。

 具体的には、貸出利鞘の縮小に対して、自己資本比率が高く経営体力のある金融機関は、リスク性資産を増やす傾向がある。これとは逆に、経営体力に乏しい金融機関は、貸出利鞘が低下しても、リスク性資産を増やす行動には出ていない、というのである。

 地域金融機関の多くは、現時点では自己資本比率が高い。しかし、基礎的な収益力は低下傾向が続いている。このことから、「金融システムレポート」は、地域金融機関が基礎的収益力低下を補うべく、リスク性資産に対する積極的な投資スタンスを維持していく可能性が当面高い、とした。しかし、長期的に基礎的な収益力の低下が長引き、経営体力が低下を続ければ、リスク性資産への投資を増やせなくなる先が増加する可能性がある、と予測していたのである。

 地銀の外債投資による損失は、マイナス金利で利鞘が圧縮された焦りを反映したポートフォリオ・リバランスの失敗にみえる。マイナス金利の銀行経営への悪影響についてのクーレの懸念は、いずれも日本にも当てはまっていた、と言えるだろう。

 問題は、この先、基礎収益力の低下が続いた時だろう。そのとき、地域金融機関は、金融システムレポートの分析が予測するように、リスク性資産への投資を増やすことをあきらめるのか、それとも起死回生を狙って経営スタンスを切り替えるのか。そもそも、それ以前に基礎的収益力を回復する道をさぐりあてられるか。こうした点は、銀行経営と金融システムの安定性、ひいては地域経済の動向を大きく左右しうるだろう。
http://diamond.jp/articles/-/121811


 


Business | 2017年 03月 22日 19:11 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
機関投資家の議決権行使、個別開示を 金融庁・有識者会議が指針

[東京 22日 ロイター] - スチュワードシップ・コード(機関投資家の行動指針)を議論してきた金融庁の有識者検討会(座長=神作裕之・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は22日、現行コードの改訂案を取りまとめた。

改訂案は、機関投資家の活動の透明性を高めるため、株主総会での議決権行使結果を個別のケースまで開示するよう求めた。運用会社に対し、ガバナンス向上に向けて第三者で構成する委員会を置くことも要請した。

2014年2月に策定したスチュワードシップ・コードには、おおむね3年ごとに見直しを行う規定が含まれており、有識者検討会は1月から議論を進めてきた。コードの受け入れを表明している機関投資家は、信託銀行や生損保、投信・投資顧問など2016年末時点で214社。

スチュワードシップ・コードの改訂案には、議決権行使の助言会社に対し、利益相反管理の枠組みなどの開示を求めることも盛り込まれることになった。金融庁が22日に示した当初案では、議決権行使助言会社について「本コードが自らに当てはまることに留意して、適切にサービスを提供すべき」との表現にとどまっていたが、助言会社の社会的影響力が高まっているため、取り組みの開示を求めるべきだとの意見が一部の委員から出された。

また、改定案では、年金基金に対し、従業員や年金受給者の利益のために投資先企業との建設的対話に臨むよう要請した。議決権行使などを運用会社に委託する場合は、運用会社に実効的な議決権行使を求めるべきだとした。

金融庁は、取りまとめた改訂案への意見を募集し、6月までに新たなコードを確定する。多くの機関投資家は検討会の議論と並行して新コードへの対応を検討しており、6月の株主総会シーズンから改訂版のコードを踏まえた取り組みが出てくる見通し。

(和田崇彦)

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http://jp.reuters.com/article/fsa-proxy-idJPKBN16T12K


 
World | 2017年 03月 22日 17:38 JST 関連トピックス: トップニュース
台湾中銀、カストディアン銀行に資金流入の抑制を要請=関係筋

[台北 22日 ロイター] - 関係筋によると、台湾中央銀行は一部のカストディアン銀行に対し、金融市場への投資資金の流入を抑制するよう要請した。この動きは、今年に入って対米ドルで約6%上昇している台湾ドルの上昇圧力緩和につながる。

関係筋の1人は「あぜんとした。顧客はすでに株式を購入しているのに送金を認めないでどうやって取引を決済するのか」と指摘した。

この件について質問を受けた中銀当局者は、台湾は資本勘定を自由化しており、資本の移動は台湾株に投資する海外資金を含め自由だとしている。

台湾株式市場の加権指数.TWIIは、海外からの大量の資金流入を背景に1万の水準に迫っている。同指数は過去17年間、終値で1万台をつけていない。

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http://jp.reuters.com/article/taiwan-centralbank-idJPKBN16T0U9

 


 

 
Business | 2017年 03月 22日 18:08 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
G20、日本の金融政策への懸念は米国含め皆無=黒田日銀総裁

[東京 22日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は22日、衆議院財務金融委員会に出席し、18日までドイツで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の声明から「保護主義に対抗する」との文言が消えたことについて、自由貿易主義から保護貿易主義に転換したとはみていないと述べた。さらに、日銀の金融政策については参加国から十分な理解を得られているとして、米国を含めてどこの国からも反論はなかったと言明した。

丸山穂高委員(日本維新の会)の質問に答えた。

同総裁はG20において「貿易については従来のコミュニケと書き方は変わっているが、それによりG20として自由貿易(主義)から保護主義に移ったものではない」との見解を示した。「個人的感想として保護主義に逸れていったという印象は持っていない」と述べた。

リーマン・ショック後に各国が保護主義に走りがちな傾向があった中で、G20声明において「保護主義に抵抗する」との文言を毎回盛り込んでいたことは、大規模な保護主義に走らなかったという効果があったとの見方を示した。

その上で「現時点では世界的に成長率が低くなっている中で、貿易を通じて成長していくことの重要性は皆が認識している」と語った。

また、日銀の金融政策について「G20では従来から中央銀行のマンデートと整合的な範囲で経済をサポートするという考え方が共有されており、日銀の金融政策についても、あくまでも2%の物価目標を実現するために実施していることに理解が得られている。参加者からそれに対するコメントはなかった」と述べた。「全ての国から日本への懸念を示す発言はなかった」と述べ、米国からも理解が得られたかとの問いには「その通りだ」と断言した。

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2017年3月22日 ロイター
G20、米政策洗練化への期待で「反保護主義」削除容認


3月20日、18日までドイツで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議では、ムニューシン米財務長官(写真)の物腰が柔らかく、ビジネスライクな姿勢に各国は一安心した。バーデンバーデンで18日撮影(2017年 ロイター/Kai Pfaffenbach)
[バーデンバーデン(ドイツ) 20日 ロイター] - 18日までドイツで開かれた20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、ムニューシン米財務長官の物腰が柔らかく、ビジネスライクな姿勢に各国は一安心した。米トランプ政権の強硬な通商政策の主張をどう取り扱おうかと戦々恐々だったからだ。

 ただ結局、共同声明からは反保護主義の文言が削除され、気候変動対策の推進も盛り込まれずに終わった。

 ムニューシン氏との協議に関わったG20当局者の話では、多くの国は保護主義を巡る言い回しでムニューシン氏に異議を唱えなかった。代わりに選んだのは、同氏とトランプ政権が6月のG20首脳会議までに通商政策の骨格をより穏やかな形にまとめ直してくれることを期待しようという方針だった。

 実際、米財務省幹部の中で上院の承認を得ているのはまだムニューシン氏しかいない。トランプ政権としても、選挙中に約束した米国の貿易赤字削減や製造業雇用拡大の具体的な方策を決めるのはこれからになる。

 欧州連合(EU)欧州委員会のピエール・モスコビシ委員(経済・財務・税制)は「ムニューシン氏は語り口が明確で、建設的かつ現実的な人物」と評価しつつ、合意点を見出すためにはさらなる取り組みが必要であり、今回はその準備が整っていなかったとの見方を示した。

 麻生太郎財務相はムニューシン氏について経済および金融市場をよく理解している印象を受けたとした上で「だから一緒に良い仕事ができると思う」と語った。

 G20の全体会合を通じてムニューシン氏が表に現れたのは1回きりで、声明を読み上げただけ。これに対して中国とフランスの財務相は反保護主義の表現を残すべきだと強く訴えた。

 その舞台裏では米国の交渉担当者が「あらゆる保護主義に対抗する」という従来の文言はもはや受け入れられないと主張していた。

 結果的に今回の声明は「経済への貿易の貢献度を高めるよう取り組む」という言い回しに改められ、一部の参加者は米国の通商政策における柔軟性が維持された、と受け止めた。

 コーネル大学のエスワル・プラサド教授(通商政策)は「米国は他のG20諸国に自らの意志を押し付けることができたかもしれない。しかしその結果は、自由貿易推進や温暖化対策といった問題で米国の国際的な指導力低下を招いている」と指摘。声明の根幹部分の修正が米国の長期的な影響力低下を招きかねないとの懸念を示した。

 一方、ムニューシン氏はトランプ政権が目指すより公平な貿易取引の実務的担い手としての地位を今回のG20で確立した、とカナダのシンクタンクCIGIのドメニコ・ロンバルディ氏はみている。

 ドイツのショイブレ財務相はムニューシン氏が通商分野の交渉で明確な権限を与えられているのかどうか疑問を投げ掛けた。それでもロンバルディ氏は「ドイツや欧州はムニューシン氏の権限を疑うよりも、同氏との間で確固とした二国間関係を築く方が利益にかなう」と提言した。

(David Lawder記者) 
http://diamond.jp/articles/-/122153
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/393.html

[戦争b19] トランプ大統領「核兵器のない世界」目標を見直しへ 核禁止条約で世界不安定、非現実的 北朝鮮、米国制裁強化恐れず核兵器開発
トランプ大統領「核兵器のない世界」目標を見直しへ
2017年3月22日(水)13時32分
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3月21日、米国家安全保障会議(NSC)のクリストファー・フォード上級部長(大量破壊兵器・拡散阻止担当)は、過去の共和党や民主党の大統領が掲げてきた「核兵器のない世界」という目標が「現実的」かどうか、トランプ政権が再検討する方針であることを明らかにした。写真はトランプ米大統領。アリゾナ州フェニックス で昨年10月撮影(2017年 ロイター/Carlo Allegri)
米国家安全保障会議(NSC)のクリストファー・フォード上級部長(大量破壊兵器・拡散阻止担当)は21日、過去の共和党や民主党の大統領が掲げてきた「核兵器のない世界」という目標が「現実的」かどうか、トランプ政権が再検討する方針であることを明らかにした。

ワシントンを拠点とするシンクタンクが主催した、毎年恒例の核政策に関する会議で語った。この再検討は、「核態勢の見直し(NPR)」と呼ばれる幅広い評価の一環として行われるという。

フォード氏によると、トランプ政権は、核兵器の搭載が可能な巡航ミサイルをロシアが配備したことへの対応についても再検討している。この配備を巡っては、中距離核戦力(INF)全廃条約に違反するとして米国はロシアを非難している。

また、核兵器を法的に禁止する「核兵器禁止条約」の制定交渉が来週国連本部で始まるが、この条約に関してはオバマ前政権同様、トランプ政権も反対する意向であることを明らかにした。


[ワシントン 21日 ロイター]
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/03/post-7227.php


World | 2017年 03月 22日 13:28 JST 関連トピックス: トップニュース

トランプ政権、「核兵器のない世界」目標を再検討へ=NSC部長

 3月21日、米国家安全保障会議(NSC)のクリストファー・フォード上級部長(大量破壊兵器・拡散阻止担当)は、過去の共和党や民主党の大統領が掲げてきた「核兵器のない世界」という目標が「現実的」かどうか、トランプ政権が再検討する方針であることを明らかにした。写真はトランプ米大統領。アリゾナ州フェニックス で昨年10月撮影(2017年 ロイター/Carlo Allegri)
[ワシントン 21日 ロイター] - 米国家安全保障会議(NSC)のクリストファー・フォード上級部長(大量破壊兵器・拡散阻止担当)は21日、過去の共和党や民主党の大統領が掲げてきた「核兵器のない世界」という目標が「現実的」かどうか、トランプ政権が再検討する方針であることを明らかにした。

ワシントンを拠点とするシンクタンクが主催した、毎年恒例の核政策に関する会議で語った。この再検討は、「核態勢の見直し(NPR)」と呼ばれる幅広い評価の一環として行われるという。

フォード氏によると、トランプ政権は、核兵器の搭載が可能な巡航ミサイルをロシアが配備したことへの対応についても再検討している。この配備を巡っては、中距離核戦力(INF)全廃条約に違反するとして米国はロシアを非難している。

また、核兵器を法的に禁止する「核兵器禁止条約」の制定交渉が来週国連本部で始まるが、この条約に関してはオバマ前政権同様、トランプ政権も反対する意向であることを明らかにした。

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http://jp.reuters.com/article/usa-trump-nuclear-idJPKBN16T0DA


 

核禁止条約「世界を不安定に」 トランプ政権高官が批判
ワシントン=金成隆一2017年3月22日18時12分
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 米国家安全保障会議(NSC)のクリストファー・フォード上級部長(大量破壊兵器・拡散防止担当)は21日、来週からニューヨークの国連本部で交渉が始まる「核兵器禁止条約」について、「世界を一層危険で不安定にする」と痛烈に批判した。核能力の強化をめざすトランプ米政権は交渉に不参加のまま、外部から徹底的に批判することになりそうだ。

「核なき世界」進むのか 米で核兵器禁止条約交渉へ
特集:核兵器禁止条約
 ワシントンで開かれた核専門家らの会合で基調講演したフォード氏は、条約ができても「一発の武器の減少にもならず、加盟しない核保有国には新しい法的義務を科すことにならない」と指摘。条約の交渉は「欧州やアジア太平洋地域の同盟国との拡大抑止を意図的に弱めようとしているようだ」と述べ、禁止条約は「国際平和を長く下支えしてきた戦略的な安定を損なう」と主張した。禁止論は「非現実的な期待」に根ざしている、とも述べた。

 また、フォード氏は「核兵器なき世界」という目標が「今の安全保障環境に照らして現実的なものかを再検討中」とも述べ、トランプ政権が核政策の全般的な見直しを始めていることも明らかにした。政権の核戦略が見えない中、フォード氏は現時点で任命された唯一の大量破壊兵器と不拡散担当の高官とされ、発言が注目されていた。

 国連では今月27日から核兵器…

http://www.asahi.com/articles/ASK3Q54RKK3QUHBI01F.html


 


「核兵器なき世界」見直し=非現実的と指摘−米政府高官
 【ワシントン時事】米国家安全保障会議(NSC)で大量破壊兵器や不拡散を担当するフォード上級部長は21日、ワシントン市内で講演し、オバマ前大統領が掲げた「核兵器なき世界」を追求する政策について「中長期的に現実的なのかどうかを含め、全ての政策を見直している」と述べ、非現実的だと指摘した。 
 オバマ氏は2009年のプラハ演説で「米国は(核兵器なき世界に向けて)行動する道義的な責任を持っている」と表明した。フォード氏はこれに関し「(世の中は)非現実的な期待を持ったが、核軍縮が進展を欠いている現状に苦痛が深まっている」との見方を示した。
 トランプ大統領は就任前、ツイッターで「米国は核能力を大幅に強化・拡大しなければならない」と主張していた。(2017/03/22-07:36)
【国際記事一覧へ】 【アクセスランキング】
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017032200261&g=int

 


北朝鮮、米国の制裁強化を恐れず 核兵器の開発目指す=外交官
2017年03月22日(水)09時56分

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 3月21日、北朝鮮の在ジュネーブ国連代表部のチェ・ミョンナム氏は、ロイターの取材に応じ、北朝鮮は米国による制裁強化を恐れておらず、核およびミサイルプログラムの「加速」を目指すと語った。写真は昨年10月、北朝鮮の在ジュネーブ政府代表部で撮影(2017年 ロイター/Denis Balibouse)
[ジュネーブ 21日 ロイター] - 北朝鮮の在ジュネーブ国連代表部のチェ・ミョンナム氏は21日、ロイターの取材に応じ、北朝鮮は米国による制裁強化を恐れておらず、核およびミサイルプログラムの「加速」を目指すと語った。

計画には「先制攻撃能力」の開発、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発が含まれるという。

ロイターは20日、ワシントンの米政府高官の話として、トランプ政権が、対北朝鮮対策を見直す中で、北朝鮮を国際金融システムから締め出す制裁を検討していると伝えた。

チェ氏は制裁強化について、「米国務長官の日本、韓国、中国への訪問の影響だと思う。われわれは当然ながら、そのような措置を恐れていない」とけん制。「国際的な取引システム、世界の金融システムから締め出されたとしても、われわれは恐れないし、影響を受けない」と語った。

一方で、現在の北朝鮮に対する制裁措置は「悪質で非人道的だ」とし、制裁措置の合法性と正当性を審査する場の設定を望む、と述べた。

また、現在行われている米韓合同軍事演習を批判。核弾頭の搭載が可能な戦略爆撃機や原子力潜水艦が演習に参加していることに触れ、「これほど大規模な軍隊が演習に参加している状況では、われわれは核開発プログラムの本格的な加速を継続するほかに道はない。それは米国と韓国側の敵対的な行動が原因だ」と語った。

<先制攻撃能力>

チェ氏は「われわれは国防能力とともに、核戦力を伴う先制攻撃能力を強化する」と発言。北朝鮮が週末に行った新型ロケットエンジン試験の技術的な詳細への言及は控えたが、実験は歴史的な偉業であり、「有益な結果」につながるとの見方を示した。

その上で、北朝鮮のICBMは、金正恩朝鮮労働党委員長が指定する任意の時刻に任意の場所から発射できるとする政府の見解を強調した。

チェ氏は「米国は北朝鮮に先制攻撃を仕掛けることに言及している。われわれはそのような米国側の攻撃を阻止し、反撃する準備を進めている」と発言。「その場合には利用できるあらゆる手段を活用する。大陸間弾道ロケットもその一つだ」と語った。

ロイター
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[経世済民120] 円上昇4カ月ぶりに110円台 2の米中古住宅3.7%減 NYダウ続落ナスダック小反発 日本株トラ相場最大の下げ
〔NY外為〕
円上昇4カ月ぶりに110円台(22日午前10時10分)【3/22 23:22】
【ニューヨーク時事】22日午前のニューヨーク外国為替市場では、世界的な株安を背景に投資家のリスク回避姿勢が強まる中、相対的に安全資産とされる円が買われ、円相場は昨年11月23日以来4カ月ぶりに1ドル=110円台を付けた。午前10時10分現在は110円90銭〜111円00銭と、前日午後5時(111円68〜78銭)比78銭の円高・ドル安。

トランプ米政権の政策運営に対する不透明感が広がる中、世界的に株安が進行。このため、投資家のリスク回避姿勢が強まり、相対的に安全資産とされる円が買われた。また、米長期金利の低下も円買い・ドル売りに拍車を掛けた。午前10時に発表された米中古住宅販売統計が悪かったこともドル売り材料。

ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.0800〜0810ドル(前日午後5時は1.0803〜0813ドル)、対円では同119円80〜90銭(同120円72〜82銭)。


2月の米中古住宅販売、3.7%減=年換算で548万戸―NAR【3/22 23:03】
【ワシントン時事】米不動産業者協会(NAR)は22日、2月の米中古住宅販売件数が季節調整済み年換算で548万戸と、前月比3.7%減少したと発表した。市場予想(ロイター通信調べ)は前月比2.0%減の557万戸。1月は当初発表の569万戸から改定はなかった。前年同月比は5.4%増だった。

2月の中古住宅販売の内訳は、一戸建て住宅が前月比3.0%減の489万戸、集合住宅が前月比9.2%減の59万戸。

販売価格の中央値は、前年同月比7.7%増の22万8400ドル。2月末の在庫は175万戸と前月比4.2%増加。2月の販売ペースで3.8カ月分だった。

〔米株式〕
NYダウ、続落=ナスダックは小反発(22日朝)【3/22 22:38】
【ニューヨーク時事】22日朝のニューヨーク株式相場は、トランプ米政権の政策運営に不透明感が広がる中、続落して始まった。優良株で構成するダウ工業株30種平均は午前9時35分現在、前日終値比23.38ドル安の2万0644.63ドルとなっている。ハイテク株中心のナスダック総合指数は4.91ポイント高の5798.74。

http://fx.dmm.com/market/news/


 

日本株はトランプ相場で最大の下げ、米株安や円高−金融中心に全面安
(記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい)
  東京株式相場はほぼ全面安で、米大統領選後の最大の下げとなった。トランプ米政権の政策期待後退による米国株の大幅安や米金利低下、1ドル=111円台への円高が重なり、銀行や保険など金融株をはじめ、自動車など輸出関連、鉄鋼など素材株中心に東証33業種中32業種が安い。
  TOPIXの終値は前日比33.22ポイント(2.1%)安の1530.20、日経平均株価は414円50銭(2.1%)安の1万9041円38銭。下落率はいずれも米大統領選時の昨年11月9日以来の大きさ。
  水戸証券投資顧問部の酒井一チーフファンドマネジャーは「トランプ米大統領が政策を行おうとしても議会が動かないリスクが急浮上している。米国株は割高を正当化しにくくなり、なお下げ余地がある」と述べた。米国株が本格調整すれば「日本株はグローバル投資家のリスクオフと円高というダブルパンチから、米国株以上に下げがきつくなる懸念がある」という。
  東証1部業種別下落率で保険が1位、証券・商品先物取引が2位、銀行が4位と、金融株の下げが目立った。昨日の米国株市場で金利低下から金融株が売られ、S&P500種業種別11指数で金融が2.9%安と下落率首位だったことが波及した。「金利上昇と規制緩和への期待からトランプラリーのシンボル的な位置にあった米金融株の大幅安は、大きな投資主体から見切られたという印象」と、水戸証の酒井氏はみていた。米国ではバンク・オブ・アメリカが5.8%安、ゴールドマン・サックス・グループは3.8%安だった。
  東証1部33業種では金融のほか、海運、輸送用機器、鉄鋼、非鉄金属、不動産も下落率上位。任天堂がけん引したその他製品のみ上昇。売買代金上位では三菱UFJフィナンシャル・グループ、富士重工業、第一生命ホールディングス、野村ホールディングスが安い。みずほ証券が目標株価を上げた任天堂のほか、全国保証は高い。東証1部売買高は概算20億5553万株、売買代金は同2兆6583億円で、株価指数オプションの特別清算値(SQ)算出日を除いて1月26日以来の高水準。値上がり銘柄数は107、値下がりは1854と全体の92%が下げた。

●債券は上昇、米政策の先行き不透明感で買い圧力−40年入札は無難通過
(記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい)
  債券相場は上昇。米トランプ政権の政策をめぐる先行き不透明感を背景にリスク回避ムードが広がったことに加えて、40年国債入札を無事に終えたことで買い圧力が強まった。
  長期国債先物市場で中心限月6月物は前日比5銭高の150円32銭で開始。午後に入って40年入札結果が判明すると150円47銭まで上昇。結局は15銭高の150円42銭で引けた。
  岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、40年入札について「ほぼ実勢どおりの無難な結果で警戒されていたほど悪くなかった」とし、「イベントを通過し、年度末を控えて参加者も少ない中でじり高になりやすい」と指摘。「トランプ相場でずっと走ってきた期待感がさらに剥げ落ちる可能性があるほか、フランスの大統領選挙など海外で先行き不透明要因が多い」と言い、「主要国全般に債券利回りには低下圧力がかかりやすい」としている。
  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の346回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値から横ばいの0.06%で寄り付いた後、0.5ベーシスポイント(bp)低い0.055%と、1日以来の水準に下げた。新発20年物160回債利回りは1bp低い0.635%と、7日以来の低水準を付けている。
  財務省が実施した40年利付国債入札の結果は、最高落札利回りが0.935%と、市場予想の中央値0.95%を下回った。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は2.95倍と、前回の2.99倍からやや低下した。

●ドル・円が4カ月ぶり安値、トランプ政策の先行き懸念で一時111円前半
(記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい)
  東京外国為替市場では、ドル・円相場が4カ月ぶりの水準となる1ドル=111円台前半まで下落。トランプ政権の経済政策運営の先行きが懸念される中、世界的な株安や米金利の低下を背景にドル売り・円買いが進んだ。
  午後4時半現在、前日比0.1%安の111円58銭。午前8時前には海外安値(111円55銭)を下抜け、111円43銭までドル売り・円買いが進行。その後111円台後半で一進一退の展開が続いたが、欧州勢が参入し始める午後4時前には一段安となり、一時111円33銭と同11月23日以来の安値を付けた。
  外為オンライン情報サービス室の佐藤正和顧問は、日本株の下げの割にドル・円はしっかりしている感じもあるとし、「やはり今日のニューヨーク株次第だろう」と指摘。ドル・円はテクニカル的にも週足の一目均衡表の雲の上限など「重要な水準に来ている」とし、111円台半ばから111円にかけてのサポートを「抜けるかどうか」と話した。
  ブルームバーグのデータによると、円は主要16通貨全てに対して上昇。対オーストラリア・ドルでは一時1豪ドル=85円33銭前後まで上昇し、2月7日以来の高値を付けた。
  ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.07ドル台後半へ弱含んだ後、午後には1.08ドル台を回復。一時1.0819ドルと前日の海外市場で付けた2月2日以来の高値に並んだ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-22/ON7HRX6JTSF001
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/398.html

[経世済民120] 資産1億円ぽっちでリタイアする人の末路 失速春闘、国内景気は維持できるか  個人消費「強めの数値になる」総務省指数CTI
資産1億円ぽっちでリタイアする人の末路

キーパーソンに聞く

コアプラス・アンド・アーキテクチャーズの玉川陽介社長に聞く
2017年3月23日(木)
鈴木 信行
 減らぬ残業、上がらぬ給料。日本企業の労働環境の悪化に歯止めがかからない中、自分と家族のため、相応の資産を早めに貯めアーリーリタイアを狙おうとするビジネスパーソンも少なからずいるはず。そうした人達が「引退する当面の目安」として、古今東西、漠然と掲げているゴールが「資産が1億円を超えること」だ。

 だが、「40〜50代で1億円程度の資産で引退すると、やがて苦境に立たされかねない」と警鐘を鳴らすマネーの専門家がいる。なぜ1億円もの資金がありながら、余裕を持ってアーリーリタイアできないのか。本当に安全に引退するには、いくらの資金が必要で、どのようなポートフォリオを組むべきなのか。資産運用のプロに話を聞いた。

聞き手は鈴木信行

 人間には様々な「末路」があります。書籍『宝くじで1億円当たった人の末路』では、「宝くじで1億円当たった人」「事故物件借りちゃった人」「キラキラネームの人」「自分を探し続けた人(バックパッカー)」といった、やらかした人々の末路や、「友達ゼロの人」「子供を作らなかった人」「電車で『中ほど』まで進まない人」「8時間以上寝る人」「体が硬い人」といった気になる人々の末路まで、23編の多様な「末路」を1冊にまとめました。右の書影をクリックいただければ購入できます。是非ご覧ください。


「末路本」の詳細が気になる人は…

玉川 陽介(たまがわ・ようすけ)
1978年7月神奈川県大和市に生まれ。1997年12月、学習院大学1年時にジイズスタッフを創業。2002年3月学習院大学経済学部経営学科卒業。米国留学を経て、2010年8月コアプラス・アンド・アーキテクチャーズを創業。『勝者1%の超富裕層に学ぶ「海外投資」7つの方法』(ぱる出版)『海外ETFとREITで始める インカムゲイン投資の教科書』(日本実業出版社)など、著書多数。
「1億円程度では、余裕のあるアーリーリタイアは難しい」とのことですが、にわかには信じられません。まず、「仮に今、手元に1億円があり、そのカネを元手に投資商品を購入し、その分配金や配当だけで暮らせ」と言われたら、資産運用のプロとしてどういうポートフォリオを組むか、提示してもらえますか。

玉川:現物不動産はなしですよね。

できれば投資商品のみ、それも、ETFか投資信託でお願いします。

玉川:海外でしか購入できないものや、かなり専門的な商品を組み入れてもいいですか。

大丈夫です。こう見えても経済誌のデスクを何年も勤めていますし、略歴にも「資産運用は得意」と明記しています。オフショアでもヘッジファンドでもあらゆる金融商品をご活用ください。

玉川:分かりました。まずは1億円のうち3000万円はVXXのショートに使います。

恐るべき最新金融工学の世界

玉川:残りの7000万円のうち6000万円はPFFもしくはPGXなどハイイールド債のETFに入れます。

???

玉川:VXXとは「iPath S&P500 VIX Short Term Future ETN」のティッカーで、VIX指数と連動するETNです。PFFは「iShares U.S. Preferred Stock ETF」で、PGXは「PowerShares Financial Preferred」のことです。余った1000万円は、BDC業界最大の銘柄「Ares Capital Corporation」(ARCC)でも加えましょう。

??????

玉川:PFFなどは大体年率6%くらい出ていますからね。ARCCも9%近い配当が得られます。でも一番の柱はあくまでVXXのショートで、これは「Time decay」、つまり「オプション取引の時間的価値減少」を有効活用した戦略で…。

先生、ストップ、ストップ! 参りました。まずVXX、VIX指数から教えてください。

注:ここから先、少し難しい話になりますが、「働かず、投資信託の分配金でのんびり暮らしたいなあ」と思っている人には避けて通れない議論です。なお当面働く気がある読者の方は3ページまで飛ばして頂いても、人生に大きな支障は生じません。

玉川:分かりました。ではまずVIX指数ですが、これはボラティリティ・インデックスのことで「恐怖指数」と呼ばれるものです。市場が恐怖を感じた時に上昇するものです。

あ、それは聞いたことがあります。

玉川:VIXは指数ですから売買することはできません。このため、例えば「VIX指数が上昇した時に売って下落した時に買い戻す」という取引がしたければ、VIX先物を活用することになります。VIX先物とは、VIX指数が将来の時点でいくらになっているかを予想するもので、日経平均先物と同じ概念です。

分かる。ここまでは分かる。

玉川:シミュレーションでは1億円のうち3000万円をこのVIX先物を活用する投資戦略に投じるわけですが、VIX先物を直接取引するのでなく、VIX先物を詰め合わせたETNであるVXXを活用します。これがこの戦略の最大のポイントです。

先物を直接取引するのも、先物を詰め合わせたETNを取引するのも同じことでは?

玉川:それが違うんです。VXXは、VIX先物の期近が約60%、期先が約40%で構成されています。期近を100%保有して中身の入れ替えをしないと、期日になると保有銘柄の全てが現金化されてしまい、運用が終わってしまいます。だから、常に中身を入れ替えることが必要です。具体的には常に、期先を買ってきて期近を売ります。

まだ分かる。まだ大丈夫。

玉川:そしてここからがポイントですが、難しい話を省くと、VIX先物の中身は、S&P500先物オプションと非常に似ています。

難しいですが、とりあえず「VIX先物≒S&P500先物オプション」だと。となるとVXXは、「S&P500先物期先のオプションを買ってきて、先物期近のオプションを売り続けているETN」となります。あっ、なんか分かってきた気が…。

理論的には確実に結果を出す「魔法の商品」

玉川:そう、オプション価格は将来の不安に対する保険料の意味合いがありますから、期日が近づくと価値が落ちます。これがオプションの時間減衰効果です。

遠い将来は何が起きるか分からないから、保険料は高くなる。明日のことは何が起きるか大体分かるから、不測の事態に備えた保険料は安くなる、と。つまり、VXXは、高く買ったものを、安く売り続けているわけですから…。

玉川:何もなければ、“理論的には確実”に価値は減衰し、価格は下落して行きます。

おお。だとすれば、VXXを売るのは、株や為替がどうあろうと、“理論的には確実”に儲かる投資となる!

玉川:統計上は毎月5%、年率65%下がるとされています。そこまで行かなくても、年間5割は下がる、つまり売っておけば毎年5割は儲かる、というイメージでしょうか。

それって「夢の金融商品」じゃないですか! このVXXに3000万円入れるんですよね。とすると年間1500万円の利益。余裕のアーリーリタイアです。加えて7000万円分のハイイールド債などへの投資もあるから…。

玉川:3つの投資商品がすべて毎年想定どおりに利益を生むわけではありません。時には想定を大きく下回る時もあるでしょう。それを踏まえても、毎年、手取りで900万円程度は見込めるのではないでしょうか。

【これが最新版 1億円でアーリーリタイアするためのポートフォリオだ】
■ 3000万円 「iPath S&P500 VIX Short Term Future ETN」(VXX)のショート
■ 6000万円 「iShares U.S. Preferred Stock ETF」(PFF)
■ 1000万円 「Ares Capital Corporation」(ARCC)

少なくとも毎年、900万円ゲット!!!(の計算)
いずれも日本国内にいては簡単に買えないけど、通勤ラッシュやパワハラ・セクハラ地獄を抜け出し配当金で暮らせるなら、海外の証券会社に口座を開くことくらい楽勝、と思う人もいるはず。マネーフォワードの瀧さん!  1億円あれば、全然アーリーリタイア行けるじゃないですか(聞き手が何の脈絡もなく、フィンテックの雄、マネーフォワードの瀧俊雄取締役の名を出し、テンションが上がった理由は「宝くじで1億円以上当たった人の末路」参照)。

玉川:もちろん、あくまでこれは机上の計算で、本当にこのプランで引退すると、場合によっては、やがて苦境に陥りかねません。

え。

玉川:このポートフォリオの生命線であるVXXは、VIX指数(VIX先物)に連動するとされるETNです。そのVIX指数は、リーマンショックやチャイナショックなどの大きな経済変動があった時、暴騰することがあります。VXXを売っていると、そんな時、大きな損を出してしまいます。

無念、一回でも大きく毀損するとさようなら

そりゃ恐怖指数ですからね。恐怖が来ればそうなるでしょうよ。でも、統計的には毎年5割ずつ下がっていくわけですから、一時的にハプニングでVXXが暴騰して損をしても、中長期的には得するんじゃないですか。

玉川:そう思いますか。急騰によってロスカットされたらどうなります。売りは損失青天井です。VXXが暴騰していけば、売り手の損失は限りなく膨らんでいきます。証券会社に入れている金額次第ではあっさり強制ロスカットされる場合もあります。急なショックで暴騰しても、事件が落ち着けば急騰したVXX価格は急落しますから、ロスカットさえされなければ含み損が出ても元に戻ります。でも、ロスカットされてしまうとそうはなりませんし、ポジションがない間にVXX価格が急落し元の水準に戻ってしまうと、元本を回復する機会も失われてしまいます。

下手をすれば、3000万円が消えかねない、と。

玉川:投資商品のインカムゲインで食べていく戦略は、一度でも元本が大きく毀損すると回復不能になるリスクがあるんです。それに仮に900万円首尾よく利益が出ても問題があります。今の時代に40〜50代で1億円の資産を貯めるには、2000万円以上の年収を何年にも渡って続けなければ難しいと思います。そういう人たちは貯金額も多いですが、消費額も多い。「気分は富裕層」なんです。おそらく900万円程度ではいずれフラストレーションが溜まるはずです。

そんなもんでしょうか…。

玉川:そしてここが大事ですが、私が見ている限り、一度、アーリーリタイアした元会社員の多くは、二度と働こうと思わなくなります。そんな状況で元本が減っていったら…。

そこから先は言わなくても、分かります…。うーん、だったらそんな難しい金融商品ではなく、もっと単純な作戦で行ったらどうでしょう。日本の証券会社でも馬鹿みたいな高配当を出している投資信託はたくさんあります。名前は出せませんが、「海外リートに高金利通貨、後よく分かんないんですけどデリバティブ的な戦略を組み合わせたやつ」に、もうめんどくさいから1億全部でどうでしょう。VXXまで行かなくても30%ぐらい利回りが出ていますから、1億円入れたら3000万円、5000万円でも1500万円を超える分配金になるかと…。

【これが聞き手の妄想 1億円でアーリーリタイアするためのポートフォリオだ】
1億円 「海外リートに高金利通貨、後よく分かんないけどデリバティブ的な戦略を組み合わせたやつ」

毎年3000万円ゲット!!!(の計算)
玉川:全くお勧めできません。確かに米国REITに投資する投資信託などの中には、分配金利回りがとても高いものも少なくありません。しかしこれはおかしな話で、一般的に米国のREITは3〜6%の分配金しか出ていません。このような過剰配当は「タコ配」と呼ばれています。

「宝くじで1億円当たっても引退するな」は本当

タコが自分の足を食べているようなものだ、と。難しいですね。贅沢しなければ1億円でも何とかなるんでしょうけど、贅沢しない人はそもそも1億円を貯めていない、という話ですもんね。なら分配金でのんびり暮らすのはあきらめて、デイトレーダーならどうですか。

玉川:インカムゲインよりは可能性があるかもしれません。実際、私の周辺でも、株をやっている人の中には1億円程度の資産で、株取引しながら暮らせないかと検討する人はいます。ただ、株で成功し、今現在、1億円の資産を持っている人の大半は、アベノミクスに伴う株高で儲けた人で、その人が本当に株の実力があるかは未知数です。それにデイトレーダーとして十分な利益を上げ続けるには、会社情報を丸ごと暗記するくらいの気合と集中力が必要です。高齢になった時、その気合と集中力が持続できるかも心配です。

どうやら宝くじで1億円当たっても引退するなという話は本当なんですね。瀧さん、やっぱり瀧さんの言う通りでした…。


「末路本」の詳細が気になる人は…

このコラムについて

キーパーソンに聞く
日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/032200245


 


 
失速の春闘、国内景気は維持できるか?

小宮一慶が読み解く経済の数字・企業の数字

2017年3月23日(木)
小宮 一慶
 トランプ政権の動向、北朝鮮問題、森友学園問題などへの関心が高まる一方で、日本経済についての報道が全体に大幅に減っていると感じます。

 経済指標を見渡すと、国内景気は比較的順調に回復しています。ただ、これが中長期的に続くかといえば、難しいのではないかと思います。短期的には、冒頭で話したように、賃金の上昇速度を物価の上昇速度が上回る可能性が高いこと。そして、もう少し中長期に見れば、成長を維持・拡大するためには金融政策でも財政出動でもなく「成長戦略」が必要です。しかし、最近は成長戦略の「せ」の字も聞かれなくなってしまいました。これは、国民にとっても日本経済にとっても大変危険なことです。

 日本経済は、いつまで景気を維持できるのでしょうか。まず短期的な視点で考えましょう。その最大のポイントは「春闘の行方」です。
日本経済は順調に拡大している

 まずは、日本経済の現状を見てみましょう。


出所:内閣府、経済産業省
 国内総生産(GDP)は、名目・実質ともに4四半期連続でプラスとなっています。日本経済全体は比較的堅調に推移していると言えます。

 続いてGDPを「生産面」から見てみます。GDPは付加価値の合計ですから、製造業の生産状況はGDPに大きく影響します。製造業の生産の動向を示す「鉱工業指数」の「生産指数」は、2010年度を100として、13年度、14年度、15年度とずっと100を切っていました。


経団連の榊原定征会長。連合との懇談会の席で(写真:毎日新聞社/アフロ)
 皆さんはこの基準年の2010年という年がどんな年だったか覚えていますか。2008年9月にリーマンショックがあり、その後、世界同時不況に陥り、そこからやっと抜け出そうかという時期が2010年でした。決して良い年ではなかったわけです。その2010年を長く超えられない状況でしたが、ここにきてじわじわと上昇して16年12月に100.6に。17年1月は少し下がりましたが、それでも100.2と100を超えている状況です。

 出荷に対する在庫の割合を示す「製品在庫率指数」にも良い傾向が見られます。16年3月のピーク118.3から徐々に減少していき、17年1月には111.1に低下。まだ満足できる水準ではありませんが、在庫が少しずつ捌けてきている様子も分かりますね。

 製造業の生産設備がどれだけ稼働しているかを示す「稼働率指数製造工業」も、これも2010年を100とした数字です。上の表を見ていただくと分かるように、昨年の5月には95を切る水準まで落ちていたものが、16年12月、17年1月は101.6、101.7と順調に伸びています。つまり、生産が拡大し、在庫が減るという好循環が生まれつつあると言えます。

消費者物価はようやく上昇に転じた

 ただ、今後の日本経済を見極める上で最も重要な「個人消費(家計の支出)」が伸びるかどうかは、非常に微妙なところなのです。個人消費は、消費面ではGDPの6割近くを支えていますからね。


出所:総務省、経済産業省
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000037/032200008/p2.png


 その意味において「消費支出2人以上世帯」の数値の動きはとても重要です。日本の景気がよくなるかどうかは、この値が浮き上がってくるかどうかにかかっています。

 残念ながら、今のところ「消費支出2人以上世帯」はずっと前年比マイナスが続いていますね。ただ、小売業の売れ行きを示す「小売業販売額」は昨年11月以降プラスが続いています。

 これはなぜでしょうか。小売業の中でも目立って伸びたのは、自動車や燃料、家電、医薬品、化粧品などです。自動車の販売が回復したのは、かつて実施されたエコカー減税や補助金などによる「需要先食い」の反動が和らいできたからではないか、と言われています 。また、化粧品や医薬品などはインバウンド消費による伸びが大きいと思われます。

 個人消費全体は依然として低迷が続いていますが、小売業については回復の兆しが見られるということですね。

 個人消費とあわせて見ていただきたいのが、物価の動向です。


出所:総務省、日銀
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000037/032200008/p3.png


 消費者物価指数は、昨年12月までは前年比マイナスが続いていましたが、17年1月に前年比プラス0.1%となりました。ようやく物価がプラスに転じ始めたのです。

 この理由は、二つあります。一つは、上の表にある「輸入物価指数」が大幅に上昇していることです。米大統領選挙以降、円安に振れたことと、原油価格が1バレル=50ドル程度に落ち着いたことで、輸入物価が上昇しつつあります。その影響で、企業間で取り引きされるものの物価を示す「国内企業物価指数」も上昇していますね。

 もう一つは、人手不足によって人件費が上昇し、「企業向けサービス価格指数」が上昇していることです。

 私は以前から、夏前には消費者物価指数がプラスに転じると考えていましたが、早くも1月に前年比プラス0.1%となりました。インフレ率の上昇傾向は今後も長く続くのではないでしょうか。

物価上昇をカバーできるほどの賃金上昇は見込めるのか?

 では、「個人消費は引き続き伸びていくのか?」という話に戻りましょう。

 先にも触れましたが、個人消費が伸びるかどうかは、はっきり言って微妙です。「現金給与総額」の推移を見てください。


出所:厚生労働省
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000037/032200008/p4.png

 現金給与総額は、一人あたりの給与の総額を平均したもの。16年6月以降は前年比プラスとなっていますね。給与は上昇しつつあると言えます。

 そして、先にも触れた「消費者物価指数」は、16年12月までは前年比マイナスが続き、17年1月は同比プラス0.1%でしたから、「実質賃金」は増えていると言えます。

 小売業販売額が若干ではあるもののプラスに転じているのは、先にも述べたように化粧品やドラッグなどのインバウンド消費が増加したとともに、実質賃金が上がっていることもあるのではないかと私は考えています。

 しかし、問題はここからです。消費者物価指数が上がり始める中で、それをカバーするだけの賃金上昇は期待できるのでしょうか。

 先にも少し触れましたが、今回の消費者物価指数の上昇は、需要が伸びて物価も上がる「ディマンドプル型」のインフレではありません。輸入物価の上昇による「コストプッシュ型」のインフレですから、良いインフレではありません。いずれは「化けの皮」が剥がれてしまいます。「デフレスパイラルに陥るよりはマシだ」というだけの話なのです。

 インフレ分をカバーできるだけの賃金上昇が起こらなければ、再び景気が失速する可能性があります。日銀が目指す「物価目標2%」に近づくことはできても、消費が落ち込んでしまっては元も子もありません。

 現金給与総額が増えていくかどうかのポイントは、今年の「春闘」でどこまでベースアップが見込めるかという点でしょう。

 今年の春闘が始まる前、政府は大企業に「少なくとも昨年並みの水準の賃上げと4年連続のベアの実施を期待している」と言っていました。景気を維持するためには、何としても消費を伸ばさなければならず、そのためには賃上げ、中でも全員の賃金を底上げするベースアップが必須だからです。

 大企業が賃金を上げること自体は難しいことではないと感じます。財務省が発表した16年10-12月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の経常利益は前年同期比16.9%増の20兆7579億円となり、過去最高だったとのことです 。余力はあるのです。

 ところが、今年の春闘は、大半の大企業でベースアップが前年割れとなりました 。政府が賃上げを促したにもかかわらず、大企業の経営者たちは慎重な姿勢を見せたのです。

 なぜ、このような結果になったのでしょうか。理由はいくつかあります。一つは、上場企業が、賃上げよりも配当に利益を回したかったこと。

 上場企業には、以前から「ROE8%以上を目指せ」というプレッシャーがかかっています。もちろん、配当や自社株買い入れなどの株主還元も強化しなければなりません。「物言う株主」にも気を配らなければならないのです。これらは「賃金を上げる」という戦略とは矛盾するものです。いくら政府に言われても、両方やれるものではないのです。

 そうした中で、業績に連動させて賃金を「賞与」の形で一時的に増やすことは可能でしょうが、ベースアップまではなかなか難しいのです。今後ずっと人件費がかかることになりますし、退職金などにも影響しますから。

 もう一つは、国際的に不確定要因が多すぎることです。米国のトランプ大統領がどのような政策をとっていくのか。今年4〜5月に控えるフランスの大統領選挙、秋に控えるドイツの連邦議会選挙、イタリア、ギリシャの情勢がどうなるのか。中国の長期的な景気減速ももちろん懸念材料です。円相場も気がかりです。

 このような時期に企業は、内部留保を厚めにしながらも、株主還元だけは維持しようと考えがちです。株主への配当は「過去の利益」から配るもの。一方のベースアップは「この先の利益」に大きく依存します。不確定要因の多い現状では昨年並みのベースアップの実現は難しいでしょう。実際、トヨタは一昨年3000円、昨年1500円だったベースアップを、今年は1300円と回答しています。

 では、企業が賃金を上げるためには何が必要なのか。もちろん、将来の業績が持続的に拡大することが必要。そして、そのベースとなるのは、政府が成長戦略にしっかり取り組み、将来的に日本経済が伸びていくことに確信をもてることです。もちろんグローバル企業の業績は日本の景気だけで決まるものではありませんが、日本で働く人の賃金は、日本での業績に大きく影響されます。

 今、多くの日本企業は国内ではなく海外で稼いでいます。海外で稼げれば、海外で支払う給与は上げられます。海外での収益は日本での配当増加につながります。しかし、それが輸出による収益増でない限りは、国内での業績は上がらず、日本国内の給与を上げる理由にはなりません。国内の給与を上げたければ、国内の産業を活性化させ、国内での業績を向上させるしかないのです。日本経済が安定的に伸びていくことが分かれば、企業も賃金を上げやすいのです。

 最近、「成長戦略」という言葉が全く耳に入らなくなりました。政府は、成長戦略なくして景気回復は続かないことを認識し、本物の成長戦略を策定すべきです。

(つづく)


このコラムについて

小宮一慶が読み解く経済の数字・企業の数字
 2020年東京五輪に向けて日本経済は回復するのか? 日銀の金融緩和はなぜ効果を出せないのか? トランプ米大統領が就任した後、世界経済はどこに向かうのか? 英国の離脱は欧州経済は何をもたらすのか? 中国経済の減速が日本に与える影響は?
 不確定要素が多く先行きが読みにくい今、確かな手がかりとなるのは「数字」です。経済指標を継続的に見ると、日本・世界経済の動きをつかむヒントが得られる。
 企業の動きも同様。決算書の数字から、安全性、収益性、将来性を推し量ることができる。
本コラムでは、経営コンサルタントの小宮一慶氏が、「経済の数字」と「会社の数字」の読み解き方をやさしく解説する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000037/032200008/


 


2月米中古住宅販売:前月比3.7%減、在庫は前年比で減少−価格上昇
Patricia Laya
2017年3月23日 00:29 JST

2月の米中古住宅販売件数は前月比で減少した。前月は10年ぶりの高水準に増加していた。
  全米不動産業界(NAR)が22日発表した2月の中古住宅販売件数は、季節調整済み年率で前月比3.7%減の548万戸。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は555万戸だった。
  中古住宅価格(中央値)は前年同月比7.7%上昇して22万8400ドル。
  在庫は前年同月比6.4%減の175万戸と、前年比では21カ月連続の減少。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ixVsQ3X8ZYzo/v2/-1x-1.png

  NARのチーフエコノミスト、ローレンス・ユン氏は統計発表に伴う記者会見で「販売取引のスピードは非常に速く、われわれは在庫不足を認識している」と指摘。「購入意欲は引き続き非常に堅調で力強いが、抑制要因がある。購入意欲を満たす在庫が十分にないことだ」と述べた。
  中古住宅販売は全米4地域のうち3地域で減少。南部では増加した。
  販売に対する在庫比率は3.8カ月。前年同月は4.3カ月だった。NARは同比率が5カ月を下回ると供給タイトと認識している。
  2月の一戸建て販売は3%減の年率489万戸。コンドミニアムなど集合住宅は9.2%減の59万戸だった。
  統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Sales of Previously Owned U.S. Homes Fell 3.7% in February (1)(抜粋)


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-22/ON81AO6TTDS301

 

総務省、18年1月から消費新指標公表 単身世帯の調査充実
2017/3/22 20:27
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 総務省は22日、個人消費の全体像を把握するために新たに「消費動向指数」を作成し、2018年1月から公表を始めると発表した。現在の家計調査は2人以上の世帯が中心のため単身世帯向けの調査を新たに実施して補う。小売店や飲食店の販売動向を加味した指数も作る。消費の実態をより正確につかみ、国内総生産(GDP)の精度向上につなげる。

 消費関連統計の見直しを議論してきた総務省の研究会が報告書をまとめた。単身世帯の調査は17年8月から2400世帯以上で始める。家計調査のほか、高額品などの動向を調べる家計消費状況調査の結果も統合して指数を算出する。

 商業動態統計など、モノやサービスを販売する側の統計を使った指数も算出する。POS(販売時点情報管理)データなど民間が保有するビッグデータも活用する。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS22H5F_S7A320C1EE8000/


総務省が消費の新指標に「消費動向指数」 2018年1月分から
産経新聞 3/22(水) 18:40配信

 総務省は22日、消費を包括的にとらえる新指標として「消費動向指数(CTI)」を開発し、2018年1月分から公表することを決めた。家計調査の刷新とともに提供を始め、民間のビッグデータを順次、活用して速報性を強化する。

 ミクロの消費動向を示す家計調査は2人以上の世帯が対象で、これを補完するために17年8月を目途に単身世帯を調べる「家計消費単身モニター調査」を始める。18年1月には家計調査もキャッシュレス化に対応するなど改善。これらを合わせて、世帯の消費動向を包括的に把握できる指標体系を構築するという。

 マクロについても、GDP(国内総生産)統計の四半期別公表値では観測できない月次の値を推計し、両面から消費をみる。産学官連携の研究協議会を立ち上げ、ビッグデータの実用化を進めることも決めた。

 消費関連指標のあり方について議論してきた有識者研究会の提言を受け、高市早苗総務相は「多くの人に利用いただける信頼性の高い指標になると確信している」と話した。

 18年1月という提供開始時期について、研究会の構成員を務める大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは、「19年10月予定の消費税増税の判断にも参考になるタイミングだ」と、新指標の重要性を指摘した。

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最終更新:3/22(水) 18:40
http://www.sankei.com/economy/news/170322/ecn1703220028-n1.html


個人消費、「強めの数値になる」新指標追加へ
上栗崇2017年3月22日19時55分
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写真・図版
高市早苗総務相(右)に報告書を手渡す有識者会議の国友直人座長=22日、東京都千代田区
 総務省は2018年1月分から、家計調査に基づく「家計支出」に代わって個人消費を示す統計として、新たに「消費動向指数(CTI)」を公表する。家計調査は麻生太郎財務相が「高齢者の消費動向が色濃く反映されている」と批判するなど、政権が見直しを求めていた。

麻生財務相が指摘も… 家計調査、補正後も「変化なし」
消費の新指標、19年度にも 単身世帯調査も取り入れへ
 高市早苗総務相が主宰する有識者会議が22日、CTI導入の報告書をまとめた。政府は今後、「CTIマクロ消費動向」を個人消費の主な指標にする。各種小売業のデータを集めた「商業動態統計」や業界団体の統計から消費を推計。現状では「家計調査より強めの数値になる」(総務省幹部)という。

 1953年に始まった家計調査のうち、毎月発表の速報値は2人以上世帯が対象。単身者が多い若者の消費が反映されにくく、時代に合わないとの指摘もあった。CTI開始後も家計調査は続けるが、単身世帯アンケートなどとともに、「CTIミクロ消費動向」の一材料になる。

 ログイン前の続き家計調査を元に公表される「家計支出」は16年まで3年連続の前年割れで、金融緩和や財政出動で消費を拡大したいアベノミクスの不調を示しているとされてきた。総務省は「家計支出は1世帯の平均人数が減って下がっており、消費全体の動きを捉えていない」と説明。「意図的に高い数字が出る統計を作るわけではない」としている。

 青山学院大経営学部の美添泰人プロジェクト教授(統計学)は「統計で最も重要なのは政治的中立性。政府推計に基づく新たな指数とともに、実際の調査結果である家計調査も引き続き注目する必要がある」という。(上栗崇)

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■消費動向指数(CTI)とは?

※CTIは“Consumption Trend Index”の頭文字

【CTIマクロ消費動向】

・個人消費を示す中心的統計

・商業動態統計、業界団体の統計、小売店の販売データなど主に供給側の数値から消費全体の動きを推計

・将来はビッグデータ活用で精度を向上

【CTIミクロ消費動向】

・補助的統計として世帯の消費動向を示す

・家計調査に単身世帯向けネットアンケートなどを加えて推計

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https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170322-00000561-san-bus_all


消費動向指数(CTI)の開発に向けて
http://www.soumu.go.jp/main_content/000473104.pdf


http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/407.html

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