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[不安と不健康18] 楽しいことをイメージするだけで「免疫力」まで高まる不思議 人生うまくいく人の感情リセット術
【第1回】 2018年12月28日 樺沢紫苑 :精神科医・作家
楽しいことをイメージするだけで「免疫力」まで高まる不思議
人生うまくいく人の感情リセット術
Photo:PIXTA
仕事がうまくいかず焦る。人間関係にイライラする。将来のことがなんとなく不安……。そんな「苦しい」感情を放置すると心も体も不健康になり、ますます苦しくなります。本連載では、精神科医の樺沢紫苑氏の新著『人生うまくいく人の感情リセット術』から、脳科学と心理学に基づく科学的メソッドで、一瞬で気持ちをプラスに変える法を紹介していきます。

楽しいことを話し出すと
一瞬で笑顔に変わるのは…
 以前、“「苦しい」が「楽しい」に変わる方法”という講習会を開催したとき、簡単なワークをしました。

 最初に、名刺サイズのカードを参加者に配ります。そして、仕事や生活で「苦しい」「つらい」「嫌だ」と思うことを、たくさん書いてもらいます。みなさん、次々とカードに書き出していました。

 書き終わったあとに、隣の参加者とペアになってもらい、カードのなかから最も「苦しい」と思うことをそれぞれ発表してもらいました。初対面のせいか、みなさん緊張した面持ちで、笑顔もほとんど見られません。

 次に、仕事や生活で「楽しい」「幸せ」と思うことを、書いてもらいます。そのあとに、カードのなかで最も「楽しい」と思うことを、それぞれ発表してもらいました。すると、驚くべきことが起こったのです。

「よーい、スタート!」

 私のかけ声と同時に、自分の「楽しい」を話し出した参加者の表情が、一瞬でやわらぎ明るくなったのです。ほとんどの人が笑顔を見せ、実に楽しい雰囲気が、会場全体に広がりました。何分か前までは、緊張し、固くなっていた参加者の表情が、ここまで短時間でガラッと変わるとは……。

「楽しい」ことをイメージするだけで、「苦しい」気持ちはリセットされ、楽しい気持ちに変わる。さらには、笑顔まで出てくることが、実験で明らかにされました。

感情をリセットさせると
免疫力まで高まる
人生うまくいく人の感情リセット術 樺沢紫苑
本コラム著者・樺沢紫苑先生の新著が発売中
 人間は「楽しい」ことをイメージするだけで「楽しい」気持ちになります。

 一方で、「苦しい」ことをイメージするだけで気分が落ち込み、ストレスを感じるようにもなります。

 UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の演劇学科で行なわれた実験があります。被験者は、これまでの人生で起こった最も気がめいることについて1日中考え、それを科学者の前で演技しながら表現する、というものです。

 実験の間、被験者は2つのグループに分かれて、スタニスラフスキー方式の練習をしました。これは、おびえる場面であれば、おびえたものの記憶を詳細にたどり、実際におびえた感情を引き出しながら演じるというものです。片方のグループには気がめいる記憶を、もう一方のグループには、楽しい記憶だけを思い出して演じてもらいました。

 その後、2つのグループから数回採血し、免疫機能を継続的に調べたところ、楽しい記憶を思い出したグループの免疫細胞は数も多く活発でした。それに対して、気がめいる記憶を思い出したグループは、免疫細胞の数が著しく低下し、その活動性も低くなり、感染症にかかりやすい状態になっていたのです。

「悲しい」「苦しい」「つらい」ことをイメージするだけで、わずか1日で免疫力が低下するという、驚くべき身体の変化が観察されたのです。

 これはつまり、ストレスを受けるか受けないかは、あなたが実際にストレスを受けているかどうかが問題ではないということ。実際は、あなたの頭のなかが「苦しい」と感じているか、「苦しい」で埋め尽くされているかによって決まるのです。

 ですから、「苦しい」からといって、「苦しい」ことばかりを考えると、余計にストレスホルモンを増加させ、ストレスの悪影響を受けてしまうのです。

乗り越えた自分をイメージすると
モチベーションがわく
「苦しい」ときこそ、「楽しい」ことをイメージしなさい!

 そう言われても、なかなか簡単にはできません。

 でも、安心してください。誰でも簡単にできるイメージ・トレーニングがあります。

 それは、「苦しいを乗り越えた自分」をイメージすること。

「今の困難を乗り越え成長した自分」をイメージするのです。

 加圧トレーニングをしていると、「猛烈に苦しい」「もう頑張れない」と思うときがあります。そんなとき、心のなかで「10キロ減量!」と叫びながら、自分が10キロやせた姿をイメージします。脂肪でふくらんだメタボ腹ではない、筋肉で引き締まったお腹を想像するのです。

 そうすると、不思議なことに「苦しい」は消えてなくなり、「まだまだ頑張るぞ!」とモチベーションがわいてきます。

 これはもちろん、ビジネスシーンでも応用できます。

 たとえば、「見積書」提出の締め切りが迫って猛烈に忙しいビジネスマン。

 時間に追われながらも、数字を間違うことは絶対にできない、緊迫した状態です。そんなときこそ「楽しい」ことをイメージしてみます。

「これが終わったら、ビールと餃子だ!」

 と心のなかで叫び、仕事のあとに祝杯をあげている自分をイメージするのです。

「そんなことで」と思われるかもしれませんが、自分にとって「楽しい」瞬間をイメージすると、間違いなく「苦しい」気持ちは薄まります。

 逆に、「苦しい」「つらい」「どうしよう」「間に合わない!」と、悪いことばかり考えると、どんどんパニック状態に陥ります。余計に仕事がはかどらなくなるのです。

 肉体は自由でなくとも、精神は自由――。

 考えるだけなら何でもできます。どうせなら「楽しい」ことをイメージして、ストレスを吹き飛ばしましょう。

幸福物質ドーパミンを
脳内に大量に分泌させるには
「3億円のドリームジャンボ宝くじ。もし当選したら、どう使う?」

 考えただけで、ワクワクしますよね。

「夏休み。1週間の海外旅行。どこに行って、何をしようか?」

 まだ、出かけてもいないのに、ガイドブックを片手に、旅行の計画を立てている瞬間、とってもワクワクします。

 なぜ、「楽しい」ことを考えただけで、ワクワクするのでしょうか?

 それは、「楽しい」をイメージすると、幸福物質のドーパミンが分泌されるからです。

 ドーパミンは不思議な物質です。

 目標を達成して「やったー!」と大喜びする瞬間にドーパミンが出ている、というのは感覚的にも理解しやすいと思います。実は、ドーパミンは目標を立てるだけでも分泌されるのです。

 宝くじでいえば、「買ったとき(当選をイメージしたとき)」と「当選したとき(結果が出たとき)」の2回分泌するイメージです。

 目標を明確にイメージし、実現したときの自分を想像すればするほど、ドーパミンはたくさん分泌されます。

 ビジネスの成功法則の本によく「成功した自分を明確にイメージしよう」と書かれています。その理由は、明確にイメージするほど、ドーパミンが分泌されるからです。

 ドーパミンはモチベーションを高める物質です。「やるぞ!」「頑張るぞ!」という気持ちを引き出してくれます。

 ドーパミンは、脳の機能をアップさせて、目標の実現を後押しする――。

 そんな究極のスーパー脳内物質が、「楽しい」をイメージするだけで分泌されるのです。「楽しい」をイメージしないほうが損というものです。
https://diamond.jp/articles/-/189071?
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/679.html

[経世済民130] 逆イールドと景気後退、米国以外では強い相関なし 米株高支えたETF、今年は押し目買い姿勢を大転換 ダウ小幅安、不安定な値
トップニュース2018年12月29日 / 08:17 / 9時間前更新
アングル:
逆イールドと景気後退、米国以外では強い相関なし
1 分で読む

[ロンドン 21日 ロイター] - 国債の利回り曲線で長短金利差が逆転する「逆イールド」は、米国では景気後退の予兆として極めて高い信頼性を誇る。しかしドイツや日本など米国以外の主要経済国ではそれほどでもない。

米国債は先に2年物と10年物の利回り差がわずか9ベーシスポイント(bp)と、2007年以来の水準に縮小した。経済指標が弱いにもかかわらず、米連邦準備理事会(FRB)が利上げに傾いているとの懸念が広がったためだ。

米市場の影響力の強さもあり、米国以外の国でも利回り曲線はフラット化が進み、ドイツでは2年ぶりの水準近くまでフラット化した。

米国では景気後退前にはほぼ必ず逆イールドが発生しており、この例から外れたのは過去50年間で1回しかない。

一方、米国以外の状況は異なる。例えばオーストラリアは1990年以降、逆イールドが4回起きたが、その後景気後退に陥ったのは1回だけ。他の3回は成長鈍化にとどまった。

日本は1991年以降、一度も逆イールドが起きていないが、その間に何度も景気後退に見舞われ、2014年には消費税率引き上げを受けて景気が大幅に悪化した。実際のところ、日本では利回り曲線と景気後退の間に相関を見出すのは難しい。

英国では利回り曲線と景気後退に相関はあるが、米国ほど強くはない。1985年と1997年に逆イールドが発生したが、その後1年以内に景気後退は起きなかった。

ドイツDE2DE10=RRでは2000年代半ばと2009年に逆イールドが起きた際、景気後退に陥った。一方、2012年の欧州債務危機の際には、景気後退には陥ったが逆イールドは発生しなかった。

欧州最大の債券市場を持つイタリアは今年、政治危機などを受けイールドIT2IT10=RR が2011年以降で最もフラット化した。ただ2000年以降をみると逆イールド後に景気後退となったのは5回のうち1回だけだった。
https://jp.reuters.com/article/graphic-yield-recession-idJPKCN1OP0AN


 

トップニュース2018年12月29日 / 08:17 / 10時間前更新
アングル:
米株高支えたETF、今年は押し目買い姿勢を大転換
1 分で読む

[ニューヨーク 20日 ロイター] - 上場投資信託(ETF)は、昨年まで続いた米国株の上昇局面を通じて「押し目買い」によって相場を支えてきた。しかし今年は「下がれば売り」の姿勢に転じている。

2017年は、株価が下がるとETFに資金が流入することが多かった。ゴールドマン・サックスの調査によると、株式ETFは年金基金、ミューチュアルファンド、外国人投資家のいずれに比べても大きな買いの担い手だった。

しかも強気相場期間を通じ、ETFは他の投資家が資金を引き揚げても、一貫して買いに回ってきた。

しかし今年の市場は米利上げ、企業の借り入れ増加、米中貿易摩擦、景気減速などの悪材料に見舞われた。

ファンドの運用担当者は、最高値更新と急落の間で目まぐるしく揺れる市場に対応できず、今年は株式、債券ファンドともに平均リターンがマイナスとなる見通しだ。

リッパーによると、米国を拠点とする株式ファンドは年初から11日までのリターンがマイナス6.3%、同債券ファンドはマイナス0.9%。市場はその後も下落を続けている。

これまでの米国株にとって、最後の頼みの綱だったETFもその役割を果たせなかった。

リッパーの調査サービス責任者、トム・ロシーン氏は、投資家は2008年の世界金融危機のような事態に至るまで待つつもりはない。「過去のように押し目買いはせず、売っている」という。
https://jp.reuters.com/article/etf-buying-switch-graphic-idJPKCN1OP0AX


 

ビジネス2018年12月29日 / 07:57 / 11時間前更新
ダウ小幅安、不安定な値動き継続 テスラ高い
3 分で読む

[ニューヨーク 28日 ロイター] - 米国株式市場は前日と同様、不安定な値動きとなる中、ダウ平均株

価.DJIが小幅安、ハイテク株の多いナスダック総合指数.IXICがほぼ変わらずで取引を終えた。週間では各主要株

価指数とも今月に入り初の値上がりとなった。

全般的に神経質な取引に終始。「上下に振れる材料は山ほどある」(BB&Tウエルスマネジメント)中で、相

場はプラス圏とマイナス圏を行き来するなど方向感に欠けた。ただ「この日を含め過去数日間、安値拾いの買い

は入ってきており、取引可能な底値が形成されつつある」(ステートストリート・グローバルアドバイザーズ)

という。

週間ではダウ平均が2.75%高。ナスダックが3.97%高。S&P総合500種指数.SPXは2.86%高。

一方、月間ではS&Pが9%超安と、2009年2月以来の大幅な落ち込みを記録する勢い。

米中貿易摩擦を巡る懸念や政府機関の一部閉鎖といった政治的不透明さ、米企業業績への不安がマイナス要因と

して根強い。ただ最近の株安に伴いバリュエーションは一段と落ち着いてきているほか、米連邦準備理事会(F

RB)の利上げ動向について市場は以前より信頼感を取り戻している点はプラス要因として捉えられるという。

個別銘柄では、電気自動車(EV)のテスラ(TSLA.O)が5.6%高。オラクル(ORCL.N)創業者のラリー・エリ

ソン氏と、ドラッグストアチェーン大手、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(WBA.O)の国際人事部門責任

者、キャサリーン・ウィルソン・トンプソン氏を独立取締役に任命した。

パソコン大手のデル・テクノロジーズDELL.Nはこの日ニューヨーク証券取引所に再上場した。創業者のマイケル

・デル最高経営責任者(CEO)が非公開化してから約6年ぶりとなる。クラスC株は46ドルで寄り付き、リ

フィニティブのデータによると時価総額は160億ドルとなった。終値は45.43ドル。

ニューヨーク証券取引所では値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を1.97対1の比率で上回った。ナスダックで

も2.23対1で値上がり銘柄数が多かった。

米取引所の合算出来高は約80億株。直近20営業日の平均は92億株。

終値 前日比 % 始値 高値 安値 コード

ダウ工業株30種 23062.40 -76.42 -0.33 23213.6 23381. 22981. .DJI

1 88 33

前営業日終値 23138.82

ナスダック総合 6584.52 +5.03 +0.08 6616.79 6684.1 6529.2 .IXIC

8 2

前営業日終値 6579.49

S&P総合500種 2485.74 -3.09 -0.12 2498.77 2520.2 2472.8 .SPX

7 9

前営業日終値 2488.83

ダウ輸送株20種 9109.13 -45.11 -0.49 .DJT

ダウ公共株15種 711.94 +1.05 +0.15 .DJU

フィラデルフィア半導体 1147.37 +7.88 +0.69 .SOX

VIX指数 28.34 -1.62 -5.41 .VIX

NYSE出来高 9.57億株 .AD.N

シカゴ日経先物3月限 ドル建て 19960 + 120 大阪比 <0#NK:>

シカゴ日経先物3月限 円建て 19915 + 75 大阪比 <0#NIY:>

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
ビジネス2018年12月29日 / 07:27 / 11時間前更新
円上昇、投資家は身構え姿勢を堅持=NY市場
2 分で読む

[ニューヨーク 28日 ロイター] - 終盤のニューヨーク外為市場では円が上昇。投資家は株式市場の荒い値

動きに対し身構える姿勢を強めている。ドルは下落した。

今週は序盤にS&P総合500種.SPXが20カ月ぶりの安値水準を試し、弱気相場入り寸前となったが、その後

、米主要3株価指数は26日に約10年ぶりとなる大幅な上昇を見せ、翌27日にも続伸するなど荒い値動きと

なった。

円は国内の軟調な鉱工業生産や国債利回りの低下にもかかわらず上昇。日本の指標10年債利回りは2017年

9月以来、初めてマイナスとなった。

スコシア銀(トロント)の主任FXストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は「休暇期間中のボラティリティ

ー拡大に対する保険としての需要が根強く、円を一段と支えている」との見方を示した。

円は対ドルJPY=で0.56%高の1ドル=110.37円。他の安全資産通貨として、スイスフランCHF=が0

.26%高の1ドル=0.9849スイスフラン。

MUFG(ロンドン)のFXストラテジスト、リー・ハードマン氏は「市場のリスク選好度はやや慎重に傾いて

おり、円とスイスフランが上昇している」と述べた。

ドル指数.DXYは0.09%安の96.396。

ドルは米利上げの打ち止め時期が従来想定より早まるとの見方や利上げによる米経済鈍化への懸念を背景にここ

数週間にわたって下落。米政府機関の一部閉鎖や米中貿易摩擦、複雑な英国の欧州連合(EU)離脱なども投資

家の警戒姿勢につながっている。

オズボーン氏は「依然として多くのリスクと不透明要因がくすぶっている」と述べた。

ドル/円 NY終値 110.26/110.29

始値 110.27

高値 110.52

安値 110.15

ユーロ/ドル NY終値 1.1436/1.1440

始値 1.1464

高値 1.1474

安値 1.1430

表はリフィニティブデータに基づいています

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
外国為替2018年12月29日 / 08:02 / 11時間前更新
NY市場サマリー(28日)
5 分で読む

[28日 ロイター] - <為替> 円が上昇。投資家は株式市場の荒い値動き
に対し身構える姿勢を強めている。ドルは下落した。
今週は序盤にS&P総合500種が20カ月ぶりの安値水準を試し、弱気相場
入り寸前となったが、その後、米主要3株価指数は26日に約10年ぶりとなる大幅な上
昇を見せ、翌27日にも続伸するなど荒い値動きとなった。
円は国内の軟調な鉱工業生産や国債利回りの低下にもかかわらず上昇。日本の指標1
0年債利回りは2017年9月以来、初めてマイナスとなった。 [nL3N1YX1
SO]
円は対ドルで0.56%高の1ドル=110.37円。他の安全資産通貨とし
て、スイスフランが0.26%高の1ドル=0.9849スイスフラン。
ドル指数は0.09%安の96.396。
ドルは米利上げの打ち止め時期が従来想定より早まるとの見方や利上げによる米経済
鈍化への懸念を背景にここ数週間にわたって下落。米政府機関の一部閉鎖や米中貿易摩擦
、複雑な英国の欧州連合(EU)離脱なども投資家の警戒姿勢につながっている。

NY外為市場:

<債券> 10年債利回りが10カ月超ぶりの低水準を記録した。経済や一部政府機
関閉鎖など政局の混乱に投資家が不安を募らせ、株式相場の変動が引き続き大きかった。
10年債利回りは2.7ベーシスポイント(bp)下がって2.716
%。終盤の取引で一時、2.713%と2月6日以来の低水準を付けた。
2年債利回りは2.518%と、7月2日以来の低水準となった。
調査サービス会社のリッパーが公表した米国拠点ファンドの資金動向調査によると、
26日までの週に米国債投資ファンドに42億ドルが流入し、2015年2月以降で最大
となった。
ブルームバーグとバークレイズがまとめた指数によると、安全資産とされる米国債に
需要が殺到し、月間のトータルリターンは前日時点で1.88%と16年6月以来2年半
ぶりの大幅高、年間でプラス圏となる勢いだ。

米金融・債券市場:

<株式> 前日と同様、不安定な値動きとなる中、ダウ平均株価が小幅安、ハ
イテク株の多いナスダック総合指数がほぼ変わらずで取引を終えた。週間では各
主要株価指数とも今月に入り初の値上がりとなった。
米中貿易摩擦を巡る懸念や政府機関の一部閉鎖といった政治的不透明さ、米企業業績
への不安がマイナス要因として根強い。ただ最近の株安に伴いバリュエーションは一段と
落ち着いてきているほか、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ動向について市場は以前
より信頼感を取り戻している点はプラス要因として捉えられるという。
個別銘柄では、電気自動車(EV)のテスラが5.6%高。オラクル<ORCL.
N>創業者のラリー・エリソン氏と、ドラッグストアチェーン大手、ウォルグリーン・ブー
ツ・アライアンスの国際人事部門責任者、キャサリーン・ウィルソン・トンプソ
ン氏を独立取締役に任命した。 パソコン大手のデル・テクノロジーズ<DEL
L.N>はこの日ニューヨーク証券取引所に再上場した。創業者のマイケル・デル最高経営責
任者(CEO)が非公開化してから約6年ぶりとなる。

米国株式市場:

<金先物> 現物相場は上昇。ドル安に加え、世界的な株価持ち直しの動きが失速し
たことで、安全資産を選好する動きが強まった。
金先物2月きりの清算値は、0.6%高の1281.10ドル。
投資家らの金への信頼感は、世界最大の金上場投資信託(ETF)、SPDRゴール
ド・ トラストの保有高にも反映された。SPDRの金保有高は26日、2.1%増加し
、増加率は2016年7月以来の大きさとなった。

NY貴金属:

<米原油先物> 米エネルギー情報局(EIA)の在庫発表後ももみ合い。米国産標
準油種WTI中心限月の2月物は午前11時10分現在、前日清算値比0.11ドル高の
1バレル=44.72ドル。
EIAの在庫週報によると、最新週の原油在庫は前週比横ばいだった。市場予想(ロ
イ ター通信拡大版調査)は290万バレル減となっていたが、米石油協会(API)が
前日夕に発表した週報では690万バレルの積み増しだったため、市場の反応は限られて
おり、前日清算値付近でもみ合いとなっている。

NYMEXエネルギー:

ドル/円 NY終値 110.26/110.29
始値 110.27
高値 110.52
安値 110.15
ユーロ/ドル NY 1.1436/1.1440
終値
始値 1.1464
高値 1.1474
安値 1.143

米東部時間
30年債(指標銘柄 17時05分 106*30.50 3.0199%

前営業日終値 106*24.50 3.0290%
10年債(指標銘柄) 17時05分 103*16.50 2.7164%
前営業日終値 103*09.00 2.7430%
5年債(指標銘柄) 17時05分 100*10.50 2.5547%
前営業日終値 100*05.00 2.5910%
2年債(指標銘柄) 17時05分 99*30.88 2.5182%
前営業日終値 99*29.00 2.5480%

 終値 前日比 %
ダウ工業株30種 23062.40 -76.42 -0.33
 前営業日終値 23138.82
ナスダック総合 6584.52 +5.03 +0.08
 前営業日終値 6579.49
S&P総合500種 2485.74 -3.09 -0.12
 前営業日終値 2488.83

COMEX金 2月限 1283.0 +1.9
前営業日終値 1281.1
COMEX銀 3月限 1543.6 +12.6
前営業日終値 1531.0
北海ブレント 2月限 52.20 +0.04
前営業日終値 52.16
米WTI先物 2月限 45.33 +0.72
前営業日終値 44.61
CRB商品指数 170.9661 +0.4801
前営業日終値 170.4860
https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPL3N1YX34U
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/366.html

[経世済民130] 米中貿易戦争、双方に大きな痛手 農業・自動車など顕著 波乱に満ちた2018年、鍵となった「5つの出来事」
ワールド2018年12月29日 / 08:07 / 10時間前更新
米中貿易戦争、双方に大きな痛手 農業・自動車など顕著
1 分で読む

[シカゴ 28日 ロイター] - 米中貿易戦争が両国に大きな損失をもたらしていることがエコノミストの調査などで明らかとなった。自動車やハイテク製品のほか、とりわけ農業分野への影響が大きかったという。

パデュー大学の農業経済学者ウォーリー・タイナー氏は、中国政府による大豆、トウモロコシ、小麦、ソルガム(サトウモロコシ)への関税だけで米中双方に年間約29億ドルの損失が生じると指摘。「米中両国にとって不利な状況だ」と述べた。

米農務省によれば、農産物の対中輸出総額は今年1─10月で約83億ドルと、前年同期比42%減少した。

ノースダコタ・ファーマーズ・ユニオンの幹部は、中国政府の関税により、ノースダコタ州の大豆生産者が少なくとも2億8000万ドルの損失を被っていると言及。「あらゆる商品価格が下落し、ノースダコタ州の農家に間接的に影響が及んでいるため、(損失額は)さらに約1億ドル追加されるだろう」と述べた。

同州は太平洋岸北西部の港を通じて中国に穀物を輸出している。

一方、中国も携帯電話のバッテリーなどの製品に米国の関税が課されたことにより損失を被った。

全米家電協会から委託された調査によると、中国製品に課された米国の関税はハイテク業界に月間10億ドルの追加コストを生じさせたという。

貿易摩擦は材料価格の上昇などを通じて米国の小売業や製造業、建設業などにも影響。ダラス連邦準備銀行は「特に製造業や建設業において、関税を一因として投入価格への圧力が引き続き高まった。企業は消費者への価格転嫁に苦しんでいる」との見方を示した。

米ゼネラル・モーターズ(GM.N)、フォード・モーター(F.N)、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)(FCHA.MI)の米自動車大手3社(ビッグスリー)は関税コストの上昇により、今年の利益が約10億ドル減少するとの見通しを発表した。

この影響は続いており、エコノミストによると、フォードとFCAは2019年も同等の影響が出ると予想されている。
https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-idJPKCN1OR1NI


 

コラム2018年12月28日 / 12:46 / 8時間前更新
コラム:波乱に満ちた2018年、鍵となった「5つの出来事」
Peter Apps
4 分で読む

[17日 ロイター] - 2月の冬季五輪における韓国と北朝鮮の和解から、12月のすさまじい勢いのニュースラッシュに至るまで、2018年は意外な展開に事欠かなかった。

筆者が選んだ今年を特徴づける出来事を以下に紹介しよう。

●波乱の大富豪たち

2月6日、イーロン・マスク氏が率いる米宇宙開発ベンチャー企業スペースXの新大型ロケット「ファルコンヘビー」が、フロリダ州のケネディ宇宙センターから試験発射された。

ファルコンヘビーには、マスク氏が経営する電気自動車大手テスラ(TSLA.O)のスポーツカー「ロードスター」が積まれ、火星を目指す軌道に向かった。それは、テクノロジー業界から生まれた新世代の大富豪の影響力と野心を示す力強いメッセージだった。

だが全体としては、2018年はこうした大富豪たちにとって厳しい年となり、マスク氏もその例外ではなかった。

7月には、タイの地下洞窟に閉じ込められた12人の少年らを救出するため提供を申し出た小型潜水艇を巡り、救出にあたった英国人ダイバーと対立して世界の注目を集めた。これはマスク氏に関して厳しさを増す一連の報道の1つにすぎない。

フェイスブック(FB.O)創業者のマーク・ザッカーバーグ氏にとっても、良い年だったとはとうてい言えない。彼の会社は自ら招いた一連の不祥事に揺れ、政治的にも逆風に悩まされた。

また、グーグル(GOOGL.O)のサンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は、米連邦議会で証言を求められたテクノロジー企業トップの1人だ。米中両政府へのピチャイCEOの対応など数々の問題に関して、同社は一部の従業員から反発を受けている。

一方、アマゾン(AMZN.O)創業者のジェフ・ベゾス氏に対しては、同社の労働条件や「税金逃れ」を巡る批判が高まっている。

だが、こうした状況のどれ1つとして、テクノロジー企業が続ける世界の根本的な「破壊」を終わらせる様子はない。実際、テクノロジー企業の創業者の多くは、世界の「破壊」を自らの使命だと考えているように見える。

特に人工知能(AI)や自動運転車などの新テクノロジーが変化を加速させるとすれば、2019年にはこうした争いがますます拡大すると予想される。

●統制強めるトランプ氏

2018年、1人の大富豪が米国の政治システムを迂回(うかい)する道を学んだ。それが、トランプ大統領だ。

一部の政権最高幹部らとの対立激化が報じられた後、トランプ氏は3月、ティラーソン国務長官、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)をクビにした。両者ともトランプ氏に対するブレーキ役とみられていたが、それぞれの後継となったポンペオ、ボルトン両氏は、大統領に疑問を投げかける傾向は弱いと考えられている。

12月にはケリー大統領首席補佐官が政権を離れ、マティス国防長官も退任を表明した。

全般的にトランプ氏は、政界主流派を基盤とするお目付役や共和党内部関係者の判断よりも、自分自身の判断を信じようとする志向を強めているように思われる。

●北朝鮮とロシアに秋波

6月のシンガポールでは北朝鮮指導者の金正恩氏、7月のヘルシンキではロシアのプーチン大統領となごやかに会談し、トランプ氏は自らの政権関係者の多くを驚かせた。

この2つの首脳会談における親密さは、やはり6月にカナダで西側同盟国を集めて行われたG7首脳会議とは好対照を見せた。G7でのトランプ大統領は、気候変動対策、保護主義、対ロ関係などのテーマにおいて、これまで以上に孤立しているように見えた。G7首脳は共同声明の採択に合意できず、米国以外の6カ国は、米国政府とは別に独自の声明を行う結果となった。

G7での出来事は、外交の舞台に広がる不安感を示している。11月、パプアニューギニアで行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に集まった世界各国の指導者は、またしても共同声明の採択に失敗した。今度は、中国と米国およびその同盟国とが貿易を巡って対立したためだ。

軍事的な示威行動も目立ってきている。この夏、ロシア、中国、北大西洋条約機構(NATO)はそれぞれ近年としては最大規模の軍事演習を実施した。南シナ海や欧州では軍用機、軍艦のにらみ合いも顕著に増加している。

●サウジ記者殺害

世界各地の専制国家は、反体制派と敵国の抑圧に少なくとも同じくらい力を入れているように見える。そのことが何よりも明白に露呈したのが、サウジアラビアのジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の事件である。

カショギ氏は、イスタンブールの自国領事館で殺害され、遺体は切断されたと報じられている。この殺害は国際社会の激しい怒りを呼び、サウジアラビア政府にある程度の外交的孤立をもたらした。だが、殺害の責任者とみられる人々からの誠実な謝罪は無きに等しい。

専制主義的な政府は、ますます人権を軽視し、批判者に対しても敵国に対しても露骨に過酷な行動をとるようになっている。

ロシアはシリアに残る反体制派の拠点に対して容赦ない軍事作戦を続けているし、サウジアラビア主導の連合国もイエメンでの戦争を継続中だ。民間人にも破滅的な犠牲を強いており、いまや数百万人が飢餓にひんしている。

中国はイスラム教徒の少数民族ウイグル族への弾圧を行っており、中国政府が最大100万人のウイグル族を「再教育キャンプ」に抑留していると、国連報告書は試算している。

 12月17日、2月の冬季五輪における韓国と北朝鮮の和解から、12月のすさまじい勢いのニュースラッシュに至るまで、2018年は意外な展開に事欠かなかった。写真は、メディアに囲まれるフェイスブックのザッカーバーグCEO。ワシントンで4月撮影(2018年 ロイター/Leah Millis)
こうした措置は、中国の習近平氏やロシアのプーチン氏といった独裁的な支配者が、見た目ほど自らの地位を安泰だと感じていない可能性を示唆している。さもなければ、彼らは権力を維持するためにそうした残酷な戦術が単に必要だと感じていることになる。

●パリ騒乱とG20

11月にアルゼンチンで行われたG20首脳会議は、今年行われた多国間会議の中で最も成功したものだろう。世界各国の首脳は、国際貿易の改革に関して、おおよそ無難な共同声明になんとか合意した。

ウクライナを巡る緊張とモラー特別検察官によるロシア疑惑捜査によってトランプ・プーチン会談が不可能になったとはいえ、トランプ氏と中国の習近平氏との会談によって米中貿易紛争は小康状態に入った。

それでも、不和の種には事欠かない。さらに、首脳会談が行われる一方で、パリでの騒乱が世界のメディアをにぎわせている。

アルゼンチンから帰国の途に就く西側諸国の首脳は、ほぼ全員が、政権の存亡に関わる政治的危機を抱えている。フランスのマクロン大統領は帰国後、「黄色いベスト」デモ参加者の要求の一部、特に燃料税問題について譲歩したが、騒ぎを鎮めるには十分ではなかった。

ドイツのメルケル首相は遠からず政界を引退することを示唆したが、次期党首に自らの後継者を指名する動きはある程度の成功を収めている。

ワシントンに戻ったトランプ大統領は、同氏の弁護士を務めていたマイケル・コーエン氏がモスクワでの「トランプタワー」建設プロジェクトについて議会への偽証を認めたことの余波に直面している。

英国のメイ首相はこれまでのところ、EU(欧州連合)離脱を巡る合意案に対する議会承認を得られないでいる。

こうした行き詰まりの多くは、西側諸国に見られる、もっとはるかに広範囲の危機、つまり貧富の格差拡大、そして多くの場合は最貧層の不満増大と困窮の深刻化に原因がある。こうした問題を解決するのは困難だろう。2019年、そしてそれ以降も、さらなる混乱は避けがたいように思われる。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/picture-2018-sexual-harassment-father-idJPKCN1OQ0M0
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/367.html

[経世済民130] 18年に失われた255兆円−数字が物語る中国株投資家の苦境 パウエル議長、トランプ大統領と懇談なら失うもの多く得るもの小
18年に失われた255兆円−数字が物語る中国株投資家の苦境
Bloomberg News
2018年12月28日 13:01 JST
• 上海総合指数は年初来の下落率が25%近い
• 売買代金は15年ピークの1割程度−信用取引残高も急減

Photographer: Qilai Shen/Bloomberg
中国株の投資家にとって2018年がいかにひどい年だったかを雄弁に物語っているのが、喜べないさまざまな数字だ。
時価総額
  上海総合指数は年初来の下落率が25%近く、世界の主要株価指数としては最悪。12月26日時点で中国株式市場の時価総額は18年に入り2兆3000億ドル(約255兆円)失われた。ブルームバーグが02年にデータ集計を開始してから年間ベースで最大の消失で、株式市場の規模として世界2位の座を日本に譲った。
Bleeding out
China's stock market saw the biggest value wipeout since at least 2002
Source: Bloomberg
売買代金
  上海、深圳両証券取引所での1営業日当たりの平均売買代金は約3690億元(約5兆9600億円)に減少し、14年以来の低水準となったことをブルームバーグのデータは示している。27日の売買代金はわずか2638億元で、15年のピークの1割程度。

信用取引
  当局による金融レバレッジ取り締まりは一定の効果を挙げた。少なくとも株式市場における投機は減少。信用取引残高は26日時点で7560億元と、15年ピーク時の約3分の1だ。

投資信託
  やけどを負った投資家が市場から退出した。ブルームバーグの集計データによると、株式に焦点を絞った中国のミューチュアルファンドが今年、合わせて75本清算された。07年からの入手可能なデータでの年間最多で、過去11年間の株式ミューチュアルファンド清算本数は総計88本にすぎない。

IPO銘柄の株価
  中国本土で18年に新規株式公開(IPO)を実施した企業の上場後1カ月間の株価は平均で193%上昇と悪くないリターンであることをブルームバーグのデータは示す。だが16年の半分であり、4年ぶりの低水準だ。
Losing Momentum
New Chinese listings' first-month rally waned this year
Source: Bloomberg
原題:China Has the World’s Worst Stock Market With $2.3 Trillion Loss(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-28/PKFCF16K50XS01?srnd=cojp-v2

 
パウエル議長、トランプ大統領と懇談なら失うもの多く得るもの小さい
Christopher Condon、Jeanna Smialek
2018年12月28日 14:00 JST
政権スタッフは懇談を設定しようと取り組んでいるとされる
大統領の圧力に屈しているとの印象を与えるリスクも

パウエル議長 Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
このホリデーシーズンに、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が招待状を受け取ると思われる集まりの中で、議長が最も参加したくないものの1つはホワイトハウスの大統領執務室で催されるものかもしれない。

  今月に入ってからの株価急落を巡り、トランプ大統領はパウエル議長をあらためて非難するとともに、議長を解任したい意向について側近と話し合ったとされる。一方で、ホワイトハウスのスタッフは大統領と議長の懇談を設定しようと取り組んでいると報じられた。

  FRBウオッチャーの中には、こうした懇談が行われれば緊張が和らぐ可能性があるとする意見もある。だが、大統領の圧力に米金融当局が屈しているとの印象を与えたり、何が話し合われたのかについての混乱を生んだりと、パウエル議長にとって潜在的危機が多いとする見方が大勢だ。


  ポトマック・リバー・キャピタルの創業者兼最高投資責任者(CIO)、マーク・スピンデル氏は「とても危険な会合」になるだろうと話す。大規模な株売りの中で、またトランプ大統領が一連のパウエル議長批判を繰り広げたすぐ後だけに、金融当局は一段と厳しい状況に置かれるだけになりかねないと同氏は言う。

  スピンデル氏は「ホワイトハウスのローズガーデンで親密さを取り繕う光景を想像できるか問うなら答えはイエスだ」としつつも、他の会合の場合と同じように、大統領が「何があったのか自分勝手な説明を行う」恐れがあると指摘した。

  元FRB副議長で、現在はブルッキングズ研究所の上級研究員であるドナルド・コーン氏も、「会合そのものではなく、その後に起こることに不都合が予想される」と語り、パウエル議長にとってリスクが多いとの見方に同意する。「大統領が自分で聴いたことを自己流に解釈し、議長が伝えようとしたのと必ずしも合致しない内容を公に繰り返し発言する危険がある」と、コーン氏は話した。

  ジョージ・ワシントン大学のサラ・バインダー教授はトランプ大統領について、「金融政策がどうあるべきかに関する議論を変えてしまっている。金融当局をこの種の圧力からどの程度、遮断できているかについて疑問を生じさせる」と論じた。

  ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は、仮に懇談が実現し、トランプ大統領がそこで話し合われた内容を正しく説明しない場合でも、パウエル議長は大統領に異論を唱えるべきではないとアドバイスする。「米金融当局は事実に基づく対応を取るだけでよい。他の人々の誤りを正すのではなく、何が自分たちのメッセージであるかを繰り返すのが当局の仕事だ」と述べた。

原題:Powell Has Lot to Lose and Little to Gain in Sit-Down With Trump(抜粋)
 
【米国株・国債・商品】株が3日ぶり下落、変動の大きい相場続く
Jeremy Herron、Vildana Hajric
2018年12月29日 6:37 JST 更新日時 2018年12月29日 7:17 JST
28日の米株式相場は3日ぶりに下落。薄商いの中、日中は上げ下げを繰り返す変動の大きな展開となった。米国債は上昇。

米国株は3日ぶり下落、日中は上げ下げ繰り返す
米国債は上昇−10年債利回り2.72%
NY原油は上昇、政府統計が在庫の減少示す
NY金は上昇、景気懸念などで安全資産としての需要続く
  S&P500種株価指数はこの日下げたものの、週間では1カ月ぶりの上昇となった。同指数は前日、2010年以来最大の急反騰を演じたが、この日も変動の大きい相場展開が続いた。今週は24日にクリスマスイブとしては過去最悪の下げを記録した一方、26日には歴史的な急伸。1日の上げとしては10年近くで最大となった。S&P500種はこのままいけば、年間ベースでは今回の強気相場で最悪の下げとなる。

  グラディエント・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、ジェレミー・ブライアン氏は「不透明感の強い時期だ」とし、「市場は底を見つけようと、その手掛かりを探している。これだけ大きな変動が見られるのはそのためだ。今はとにかく驚くようなことが増えているため、どちらの方向にも市場は激しく反応する」と分析した。

  S&P500種株価指数は0.1%安の2485.74。ダウ工業株30種平均は76.42ドル(0.3%)下げて23062.40ドル。ナスダック総合指数は0.1%未満の上昇。米国債市場では、ニューヨーク時間午後4時53分現在、10年債利回りが5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の2.72%。

  ニューヨーク原油相場は反発。政府の統計で原油在庫の減少が示されたことが手掛かり。減少幅は小幅だったものの、相場押し上げには十分だったようだ。米エネルギー情報局の週間在庫統計によれば、原油在庫は先週4万6000バレル減少。この減少幅は2011年以降で最小。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物2月限は72セント(1.6%)高の1バレル=45.33ドル。ロンドンICEの北海ブレント2月限は4セント上げて52.20ドル。

  ニューヨーク金先物相場は上昇。来年の景気見通しに対する懸念や株式相場のボラティリティー、米政府機関の一部閉鎖などを背景に、安全資産としての金の需要が続いている。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は0.15%高の1オンス=1283ドル。

  スタンダードチャータードの債券・為替・商品戦略責任者、マンプリート・ギル氏は「ボラティリティーが高まる時期に入りつつある」とし、「そうした環境をうまく利用するため、流動性の高い資産をある程度手元に置いておく必要がある。そういう時こそ現金が役に立つと考えられる」と述べた。

原題:U.S. Stocks Fall as Volatility Rules in Wild Week: Markets Wrap(抜粋)
Oil Climbs Following Report of Tiny U.S. Crude Stockpile Draw
With Turmoil Rampant, Gold Targets $1,300 as Gloomy 2019 Beckons

(第3段落と最終段落にコメントを追加し、更新します.)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-28/PKGU3J6JTSE801
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/368.html

[経世済民130] 劇的な米株反転、年金基金が四半期末の大規模調整で6.6兆円投下か ドル指数2週連続下げ、政府機関閉鎖 米中古住宅予想外下
劇的な米株反転、年金基金が四半期末の大規模調整で6.6兆円投下か
Elena Popina
2018年12月29日 5:34 JST
27日の米株式相場は取引終盤プラスに転じ、日中安値からの回復の大きさが2010年以来最大となった。投資家らはこの急反転の解明に努めているが、少なくとも1人のアナリストは、12月に入ってからの急落を受けて年金基金が株式を大量に買い入れたためだと分析している。
  S&P500種株価指数は一時2.8%安まで下げた後、終盤にかけて大きく戻し、反転は8年ぶりの大きさとなった。この急激な方向転換は、今月600億ドル(約6兆6200億円)の株式購入資金を抱える年金基金が、四半期末を控えて持ち高を調整したことを反映した可能性があると、ウェルズ・ファーゴのプラビット・チンタウォンバニッチ氏は分析した。600億ドルというのは過去にあまり例を見ない規模だという。

  株式や債券を大量に保有する機関投資家は、四半期末に持ち高をリバランス調整する。チンタウォンバニッチ氏によれば、2009年以降で最悪の成績になりそうだった米国の大型株と小型株が今回は大きく買われ、350億ドルと210億ドルがそれぞれのインデックスに投下された。一方で株式を上回るパフォーマンスを見せた債券からは、資金が引き揚げられた。
  チンタウォンバニッチ氏は顧客リポートで、「600億ドルのリバランスは歴史的に見て大規模だが、その影響は流動性の低い市場環境によって増幅された可能性が高い」と分析。「売買の額が同じだとしても、通常より大きく相場を動かしている」と説明した。
  ただ、今回のような反発が繰り返される保証はないとチンタウォンバニッチ氏は指摘。他のトレーダーが素早くこれに便乗するからだと説明した。今では一日の終わりに行われるリバランス調整は広く知られてしまい、トレーダーは取引終盤の上昇時に高値で売り抜く狙いで、年金基金より先回りして買いを入れる可能性がある。大量の株式を放出しようとタイミングをうかがっていた投資家が、取引終了前の1時間に売却する可能性もある。
原題:One Theory Is $60 Billion Pension Frenzy Fed Giant Stock Rebound(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-28/PKGP316S972901


 


ドル指数が2週連続の下げ、米政府機関閉鎖が重し
Sydney Maki
2018年12月29日 3:55 JST 更新日時 2018年12月29日 7:14 JST
• ドル指数続落、日中は11月7日以来の水準に
• 国境の全面閉鎖も辞さず、壁建設資金の拠出なければ−トランプ氏
28日のニューヨーク外国為替市場ではドルが主要10通貨のほぼ全てに対し下落。トランプ米大統領は国境の壁建設資金が必要だとする姿勢を頑として譲らず、米政府機関の一部閉鎖が7日目に突入したことが意識された。
  ブルームバーグのドル指数は続落。一時は11月7日以来の水準を付けた。週間ベースでも0.7%低下と2週連続のマイナスとなった。トランプ大統領はこの日、国境の壁建設資金の拠出がないならメキシコ国境の全面閉鎖も辞さないとツイート。米政府機関の閉鎖が年明けまで続く見通しとなった。
  ニューヨーク時間午後4時25分現在、主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は前日比0.2%低下。ドルは対円で0.7%下げて1ドル=110円21銭。ユーロはドルに対して0.2%高の1ユーロ=1.1449ドル。

  国際通貨基金(IMF)のデータによると、7−9月(第3四半期)には世界の外貨準備に占めるドルの比率が61.9%と、約5年ぶりの水準に低下した。
  ドルは対円で下げたが、1ドル=110円を割り込むことはなかった。
欧州時間の取引
  ドルが主要通貨の大半に対して下げ、ドル指数が続落。共和党の下院議員が前日、週内に採決の予定はないと述べ、政府閉鎖が年明けまで続く見通しとなったのが嫌気されたほか、トレーダーの間で米追加利上げを見込む動きが後退しているのが背景にある。
原題:Dollar Declines for Second Week Amid U.S. Shutdown: Inside G-10(抜粋)
Dollar Extends Losing Streak Amid U.S. Shutdown: Inside G-10
(第1−2段落を書き換え、4段落以降を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-28/PKGMI26TTDS001


 
米中古住宅販売成約指数:予想外の低下−2カ月連続マイナス
Jeff Kearns
2018年12月29日 0:05 JST 更新日時 2018年12月29日 1:12 JST
11月の米中古住宅販売成約指数は予想外に低下し、これで2カ月連続のマイナスとなった。住宅市場低迷の兆候がまた増えた格好だ。

  全米不動産業者協会(NAR)が発表した11月の米中古住宅販売成約指数(季節調整済み)は、前月から0.7%低下。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は1%の上昇だった。前月は2.6%低下していた。

  季節調整前の前年比では11月は7.7%低下。10月は4.7%低下(速報値4.6%低下)に下方修正された。

主な注目点
高い物件価格と住宅ローン金利の上昇で、多くの買い手が様子見を続けていることが浮き彫りとなった。住宅購入の正式契約には成約から1、2カ月かかることから、販売成約は先行指標とみなされている
販売成約指数は中西部と南部で低下。両地域とも2%超の下げとなった。一方で北東部と西部では上昇した。
  統計の詳細は表をご覧ください。

原題:U.S. Pending Home Sales Fall for a Second Month in November(抜粋)

(情報を追加し、更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-28/PKGCJ56S972B01
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/369.html

[経世済民130] 日銀、長期金利一時的なマイナスも許容すべきだとの声 緩和相場終幕 世界市場、さらに混迷 GAPが北米で大量閉店 数百店

日銀、長期金利一時的なマイナスも許容すべきだとの声
日高正裕
2018年12月28日 9:49 JST 更新日時 2018年12月28日 10:27 JST
国債買い入れオペの運営には相応の見直し余地がある−1委員
原油価格下落の物価への影響は今後の懸念材料−1委員

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
日本銀行が28日公表した今月19、20日開催の金融政策決定会合の主な意見によると、長期金利が一時的にマイナスになることも許容すべきだとの意見が出ていたことが分かった。経済の下振れリスクへの言及や、原油価格下落などの影響で物価の先行き不透明感を指摘する声も多かった。

  一人の委員は、7月の枠組み強化に沿って「長期金利が一時的にマイナスになることも許容すべきである」と指摘。長期金利は0%程度を 中心に上下におおむね「対称的に変動するのが自然」であり、長期国債保有残高の年間増加額約80兆円のめどの下で、「柔軟に買い入れ額を増減させることが望ましい」との見方を示した。

  一方で、日銀の大量の国債保有による金利押し下げ効果や、新発国債市場の流動性の低さを踏まえると、「現状の国債買い入れオペの運営には相応の見直し余地がある」との意見があった。社債市場で「足元の低金利により募残の比率が高まっているとの報道がある」とした上で、「長めの金利がより高い方が投資家の需要は増す可能性があり、金利変動幅や金利操作目標年限等を柔軟に検討していくことが将来の選択肢」との指摘も出た。

  日銀は20日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的緩和の枠組みによる政策運営方針の維持を決めた。長期金利の誘導目標は「0%程度」としてある程度の変動を認めるとし、短期金利の「マイナス0.1%」と共に据え置いた。「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」とのフォワードガイダンス(政策金利の指針)も維持した。

  主な意見によると、世界経済の先行きについて、「不透明感が高まりつつあり、かつそうした状況が長期化するとの見方が広がる中、リスクは総じて下方に厚くなってきている」「経済に対するリスクは下方に強まっている。中国の直近の貿易データをみると輸出入とも前月比でマイナスとなっており、中国経済の減退を示している可能性がある」などと懸念を示す声が出た。

  物価の先行きについては、「原油価格下落の物価への影響は今後の懸念材料」「今後、需給ギャップが一本調子で拡大する可能性は低く、原油価格の下落も物価目標達成をさらに遅らせる形で作用する」といった意見があった。

  岡三証券の愛宕伸康チーフエコノミストは電話取材で、決定会合で景気の下振れリスクや物価の先行き懸念が多く出たことについて、株価が世界的に大きく調整していることの影響が出ており、日銀政策委員は「全体に弱気になっている」と指摘。今後、政策委員会で追加緩和についての議論が増えていくとみるが、「選択肢は非常に少なく、日銀は厳しい状況に置かれている」との見方を示した。

(最終段落にコメントを追加して更新しました.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-28/PKF7RQ6TTDS001?srnd=cojp-v2


 


緩和相場が終幕 世界の市場、19年はさらに混迷か リスク資産軒並み下落
2018/12/29 2:00
2018年の金融市場はほとんどのリスク資産がリターンを生まない「勝者なき1年」となった。意味するのは積極的にリスクを取ってきた投資資金の逆流だ。金融危機から10年、緩和マネーが支えた適温相場は終わった。米中貿易摩擦や欧米の政治混乱の下で始まる19年、不透明感は一段と深まる。
世界の46カ国・地域のうち43市場の株価指数が下落し、上昇はブラジルやインドなど3市場のみ。日本は7年ぶりに下げ、数日を残…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39563860Y8A221C1MM8000/?n_cid=NMAIL007

 
GAPが北米で大量閉店 数百店、ネットシフトで重荷
小売り・外食 北米
2018/12/29 2:00日本経済新聞 電子版 
【ニューヨーク=平野麻理子】米衣料品チェーン大手のギャップが不採算店舗の大整理に乗り出す。基幹ブランド「GAP」の店舗を北米を中心に数百店閉鎖する。同社は大量出店で効率を高め急成長したが、消費のネットシフトで店舗網が逆に重荷となる構造変化に直面している。「時代遅れの店舗を清算し前進する」。アート・ペック最高経営責任者(CEO)は顧客データの活用など新技術への投資を通じ、時代の変化に適応する姿勢を…

 
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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39552260Y8A221C1EA6000/
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/370.html

[国際24] 写真が語る2018年:米国の親子引き離し政策を撤回させた上空写真 性的虐待の元医師に突進する被害者の父親
2018年12月29日 / 11:47 / 6時間前更新
写真が語る2018年:米国の親子引き離し政策を撤回させた上空写真
1 分で読む

[13日 ロイター] - メキシコ国境沿いにある米テキサス州の小さな町トーニローでは、親と引き離された不法移民の子どもたちが収容所テント脇に一列に並ばされていた。2018年を象徴する写真について、ロイター・カメラマンが撮影当時の様子を語る。

撮影したカメラマン:Mike Blake

6月18日、上空から撮影されたこの写真は、ロケーション選びから、撮影するための航空機の手配まで、チームワークの賜物だ。私は民間機でテキサス州まで飛んだ。

移民の子どもたちを親から引き離すトランプ政権の新たな政策が実行に移されたが、こうした写真が世界に配信され、その規模と実際に何が起きているのかという現実を伝えるまで、本当に状況を理解している人は誰もいなかった。

収容所までのフライト時間を考慮し、私はパイロットに1時間地上待機するよう伝えた。夕食の時間になれば何か動きがあり、また、明るさ具合もそのころの方が良いという算段だった。

この写真は600ミリレンズを使い、トーニロー近くの上空を旋回しながら、小型機の窓から撮影したものだ。機内は暑く、揺れもひどく、フレームに被写体を収めることさえ、とても難しかった。

このような収容所の航空写真を撮影したのはロイターが初めてだった。私が撮影した写真を、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストが翌朝の一面トップに掲載すると、トランプ米大統領は親子引き離し政策を終了させる大統領令に署名した。
https://jp.reuters.com/article/picture-2018-us-immigrant-idJPKCN1OQ0EL
https://jp.reuters.com/article/graphic-yield-recession-idJPKCN1OP0AN


2018年12月29日 / 16:18 / 1時間前更新
写真が語る2018年:性的虐待の元医師に突進する被害者の父親
1 分で読む

[13日 ロイター] - 米ミシガン州シャーロットの法廷で性的虐待容疑で告発された元スポーツ医師に、被害を受けたとされる姉妹の証言を聞いた怒れる父親が飛びかかった。2018年を象徴する写真について、ロイター・カメラマンが撮影当時の様子を語る。

撮影したカメラマン:Rebecca Cook

2月2日、米体操連盟の元チームドクター、ラリー・ナサー被告は弁護士の隣で、同被告から性的虐待を受けたとする痛ましい証言を48人の女性が1人ずつ証言するのを聞いていた。

3日間に及ぶ証言の2日目、姉妹2人に証言の順番が回ってきた。

ローレンさんとマジソンさんのマーグレイブス姉妹が証言を行う中、法廷の陪審員席近くに座って取材していた私は、被害者家族の顔に浮かぶ苦痛の表情に注目した。

姉妹が証言を行うにつれ、父親の表情に動揺の色が濃くなっていった。証言が終わると、判事が父親のランドールさんに話をする許可を与えた。「裁判官、鍵を閉めた部屋にこの悪魔とこもることを5分だけ許してもらえないでしょうか」と、彼は言った。

判事から許可されるはずもないが、ナサー被告から性的虐待を受けた被害者の家族や友人たちの痛みに包まれた法廷内に、緊張が高まっているのを私は感じた。

すると突然、父親がナサー被告に向かって突進してきた。父親がオレンジ色の囚人服を着た同被告に近づく中、私は考える間もなくシャッターを切った。

この写真は、父親を捕らえようと警官がタックルしようとする瞬間を捉えた1枚だ。弁護士がナサー被告をかばおうとしているが、その奥に座ったナサー被告は微動だにしなかった。
https://jp.reuters.com/article/picture-2018-sexual-harassment-father-idJPKCN1OQ0M0

 
http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/889.html

[経世済民130] ETF 6・5兆円過去最高 日銀の株式買い、歯止めなく 日銀も政府のGDP賃金統計に疑義 基幹統計改ざん安倍フェイク政権
ETF 6・5兆円過去最高 日銀の株式買い、歯止めなく

2018年12月29日 07時03分


 日銀が金融緩和の一環で行っている上場投資信託(ETF)の二〇一八年の買い入れ額は計六兆五千四十億円と過去最高となった。最近の世界的な株安を受け、買い入れ額のメドとする六兆円を大きく超えた。日銀による株の買い支え姿勢が鮮明となる中、株式市場の機能の低下や将来の損失リスクも高まっている。 (岸本拓也)

 取引最終日の大納会の二十八日も日銀はETFを七百十五億円買い入れ、日経平均株価はぎりぎり二万円を保った。年間では、これまで最高だった昨年の五兆九千三十三億円を約10%上回った。夏場以降に株価下落が進み、買い入れが増加。日経平均が二二〇〇円近く下がった十月は、月間買い入れ額が過去最大の八千七百億円となった。今月も七千九百六十一億円と過去四番目だった。

 日銀は白川方明(まさあき)前総裁時代の一〇年十二月からETF買い入れを開始。当時はリーマン・ショック後で日経平均が一万円を下回り、投資家不安を和らげる狙いだった。一三年三月に就任した黒田東彦(はるひこ)総裁は買い入れ枠を拡大。株価が上昇基調になっても枠を順次増やし、現在は「年間約六兆円」を目安に掲げる。

 今年七月には「市場状況に応じて上下に変動しうる」と政策を修正。六兆円超えを容認したことで買い入れ拡大につながった。

 中央銀行による株買いは、主要国はどこも採用していない異例の策。いまや日銀のETFの保有残高は二十三兆円を超え、時価では日本市場の約4%に上る。日銀が実質的大株主となる企業も増えることで、企業価値が株価へ適切に反映されず、市場にゆがみを生じさせる懸念がある。

 ETFは、売却しない限り日銀が持ち続ける。将来、株価が急落した場合、日銀は含み損で債務超過のリスクを抱える。前日銀審議委員で野村総研の木内登英(たかひで)氏は「簿価(取得額)から三割余り株価が下がれば、日銀の自己資本はほぼ無くなる。常に爆弾を抱えているようなもの。買い入れを減らす方向に正常化すべきだ」と指摘する。

<ETF(上場投資信託)> 証券取引所に上場する投資信託で、個別企業の株と同じように売買ができる。複数の大企業の株式を組み合わせ、東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価に連動する商品が代表的。日銀は、信託銀行を通じてTOPIX連動型を中心に買い入れている。買い入れ基準は非公表だが、市場では、午前中に株価が0・5%前後下がると、午後に日銀が買うと言われている。

(東京新聞)

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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018122990070321.html


 


国家公務員一般労働組合2018年12月29日 15:46

日銀も政府のGDP・賃金統計に疑義、国の進路決める基となる基幹統計も改ざんする安倍フェイク政権

 「労働総研ニュースNo.345 2018年12月(2018年12月10日発行)」に書いたものですが、昨日からマスコミ報道で、厚生労働省「毎月勤労統計調査」が従業員500人以上の事業所について、本来はすべてを調べなければいけないのに東京都分は約3分の1しか調査せず統計データにずれが生じている可能性が指摘されています。この「毎月勤労統計」は雇用や賃金を調べる国の重要な基幹統計でGDP算出にも用いられているということで、昨日からのこのマスコミ報道の前に書いたものですが紹介しておきます。


モリカケ、公文書改ざんから基幹経済統計の改ざんへ
 昨年から今年にかけて、一連の森友・加計学園問題、自衛隊日報問題、「働き方改革」関連法案でのデータ問題など、本来分立しているべき政治と行政が一体化し、首相官邸によって行政が私物化されていることを示す問題が次々と発生しています。その過程で、公文書のねつ造・改ざん・隠蔽、公的調査・統計データの恣意的な操作が数多く行われたことは、社会全体に大きな衝撃を与えています。

日銀も政府統計に不信感を示す
 こうした中で、日本経済新聞(2018年11月13日付)による以下の報道はさらなる衝撃を与えています。
政府統計、信頼に揺らぎ GDPなど日銀が不信感(日本経済新聞2018年11月13日付)
 日本の現状を映す統計を巡り、内閣府と日銀が綱引きしている。国内総生産(GDP)など基幹統計の信頼性に日銀が不信を募らせ、独自に算出しようと元データの提供を迫っているのだ。内閣府は業務負担などを理由に一部拒否しているが、統計の精度をどう高めるかは、日本経済の行く末にも響きかねない大きな問題をはらんでいる。
 この日本経済新聞の記事では、「GDP」と「賃金」についての政府統計に日銀が不信感を募らせていることが報じられています。まず、「GDP」の問題のついて見てみましょう。

 この「GDP」の問題を最初に指摘した『アベノミクスによろしく』(集英社インターナショナル)の著者である明石順平弁護士に私、インタビューしましたので、その一部を以下紹介します。

▼国公労連の雑誌『KOKKO』2018年11月発行第33号所収「若き弁護士が可視化したアベノミクスの失敗と粉飾:明石順平弁護士インタビュー」より
 不透明な操作でGDPを「かさ上げ」
 ――本書では、政府がGDPの計算方法を変えた結果、アベノミクス以降のGDP値が異常なほど「かさ上げ」された問題も指摘されています。簡単に説明するとどういった問題ですか?

 明石 2016年12月公表分から、「2008SNA」(2008年版国民勘定体系)という新しい国際基準への対応を口実にGDPが大幅に改定されましたが、実はその国際基準と全然関係ない「その他」という項目が入っており、その影響が一番大きいという問題です。注目されるべきは、「その他」によって、アベノミクス以降だけがギューンと「かさ上げ」され、反対に90年代は軒並み「かさ下げ」調整されるという、誰が見てもおかしな現象が起きていることです(図1)。この改定前は2015年度と1997年度で20兆円くらい差があったのに、改定されてほとんど差がゼロになってしまいました(図2)。この2016年改定によって、「GDP史上最高更新」という「成果」が打ち出されています。


 科学技術の論文において、内容不詳のデータを算入したりすれば論文不正にあたることは明白ですが、安倍政権の下で日本経済の舵取りの基幹統計であるGDPも改ざんするという不正が行われていることを強く疑わせる事態と言えるでしょう。

なぜGDPを「かさ上げ」する必要があるのか?
 安倍政権はなぜGDPを「かさ上げ」する必要があったのでしょうか?

 安倍晋三首相は2015年9月24日の記者会見で「アベノミクスは第2ステージに移る」と宣言し、経済成長の推進力として「アベノミクスの新3本の矢」を発表しました。その「新・第1の矢」が「希望を生み出す強い経済」で、その具体的な中身が「名目GDP500兆円を戦後最大の600兆円に」するだったのです。

 「GDP600兆円」を掲げた2015年9月以降、安倍政権はGDPが増えることこそ「アベノミクスの成果」の証とし事あるごとに強調してきました。例えば、毎年6月に閣議決定する「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)には必ず「GDP600兆円」を達成することを明記しています。この安倍政権に呼応するように、経団連も2018年5月31日に「GDP600兆円経済に向けて−Society 5.0を推進する−《2018年度事業方針》」を発表しています。こうして「GDP600兆円」は政・財あげて「アベノミクスの成果」を示すために必ず成し遂げる必要がある課題になったわけです。この「政・財」に加えて「官」は2014年5月30日に設置された内閣人事局によって安倍政権に幹部人事を握られ、国家公務員が私物化されています。森友学園問題における佐川宣寿元国税庁長官の姿を見れば、安倍政権のためなら公文書改ざんも実行する「官」に成り下がっていることがわかります。

記事
国家公務員一般労働組合2018年12月29日 15:46日銀も政府のGDP・賃金統計に疑義、国の進路決める基となる基幹統計も改ざんする安倍フェイク政権 2/2


GDPの「かさ上げ」で影響すること
 GDPは一国の経済規模を示し、景気判断の際に基幹となる経済統計です。アベノミクスの期間だけGDPを「かさ上げ」すれば、アベノミクスによって日本の経済規模は大きくなり景気も良くなったということになります。安倍政権が掲げる「戦後最大のGDP600兆円」が実現すれば、安倍政権は「戦後いちばん経済政策で成果をあげた政権」になるというわけです。モリカケ問題などの不祥事が連発しても安倍政権の支持率が大きく下がらないのは日銀やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の「官製相場」による「株高」演出が背景にあるのではと言われていますが、かさ上げによる「戦後最大のGDP600兆円」も安倍政権を支える一つの要因になることは明らかでしょう。

 また、GDPは各国のさまざまな政策への歳出・歳入を対GDP比として国際比較する際に活用されますから、安倍政権にとってGDPかさ上げのメリットは歳出・歳入を小さく見せたい政策課題について効果を発揮します。例えば、軍事費は1976年に三木武夫内閣が軍事大国化の歯止めとして「GDP1%枠」を閣議決定しました。その後、1987年に中曽根康弘内閣が1%枠を撤廃したものの「軍事費GDP1%枠」が現在でも基本になっています。GDPをかさ上げしてしまえば、1%枠そのままでも軍事費を増やすことが可能になるのです。

 財政面では日本は巨額の財政赤字が膨らみ続けていますが、財政赤字も国際比較する際は対GDP比になりますから、GDPをかさ上げすれば財政赤字を国際的に小さく見せることも可能になります。

 一方で、安倍政権が大きく見せたいのに小さくなってしまうものもあります。例えば、安倍首相は「人づくり革命」で「教育の無償化」が必要だと盛んに言っていますが、OECDの直近の国際比較データで日本政府の教育への公的支出は2015年に対GDP比で2.9%と34カ国中最低の上に、この10年間の中で最も低い数字になってしまっています。「教育の無償化」を力説しながら実際にやっていることはOECD加盟国で最も教育にお金を出さないのが日本政府であることが、GDPのかさ上げでいっそう鮮明になってしまっているのです。また、社会保障費なども同様のことが起こります。

 この他にも国際比較する際にGDPのかさ上げは影響してきますので注意することが必要になります。

賃金も「かさ上げ」
 代表的な賃金統計である厚生労働省の「毎月勤労統計調査」も「かさ上げ」されて、アベノミクスで「賃上げ」が実現したかのように一部で報道されています。これは賃金を算出する際に使用するベンチマーク(別表の厚生労働省資料参照)の変更が大きく影響しています。2018年以降について、事業所規模の小さな労働者数を減らして事業者規模の大きな労働者数を増やし、賃金がより高く出る新しいベンチマークを採用するなどしたのです。以前はベンチマークを変更した場合、過去データまで遡及していたのですが、それもしなくなりました。

 これに対して、政府の有識者会議である統計委員会でも9月28日に批判が出され、冒頭で紹介した日銀も批判する事態になっているわけです。

 この問題を追及している「西日本新聞」は直近で次のように報道しています。
内閣府統計を修正へ 雇用者報酬 厚労省調査の上振れ受け

西日本新聞2018年10月24日付
 厚生労働省の毎月勤労統計調査で今年に入って賃金上昇率が高めに出ている問題で、内閣府は同統計を基に算出している統計「雇用者報酬」の実績値を修正する方針を固めた。雇用者報酬の前年同期比上昇率も過大になっていると判断、名目ベースで今年1〜3月期は3・1%から2・7%程度、4〜6月期は4・1%から3・4%程度にそれぞれ引き下げる。基となる統計の異常による実績値の修正は極めて異例。内閣府は景気判断への影響は限定的とみているが、統計の作成経緯があらためて問われそうだ。

 内閣府によると、毎月勤労統計では算出に用いる労働者数データが1月に変更されるなどした影響で、実績値が上振れしていることを確認。雇用者報酬も連動する形で上振れしていると考えられるため、2009年7〜9月期から18年4〜6月期までの実績値を変更の影響を独自に加味し再計算する。
 もはや安倍政権はフェイクニュースの発信源となっています。現在開かれている臨時国会においては、外国人労働者の受け入れ拡大を目的とする出入国管理法改定案をめぐり、安倍政権の調査結果改ざんや虚偽答弁が横行しています。国の政策を左右する基本的な経済統計が安倍政権によって改ざんされるなか、私たちはこうした事実を広く告発すると同時に、常に政府統計を監視しチェックする必要があります。(井上伸)

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MONEY VOICE2018年11月16日 14:48日銀の資産がついにGDPを超過!利益が出ていれば大丈夫というのは本当か=今市太郎


日銀の保有資産が日本のGDPの規模をとうとう超えてしまいました。現在の状況は、はたして問題がないといえるのでしょうか?日銀の出口戦略について考察します。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)

※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2018年11月15日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。

緩和措置をもう5年も継続し、日銀の買い支えはいつまで続く?
米欧と比べても馬鹿デカい資産規模
日銀が11月13日に公表した報告書によれば11月10日時点の資産は553兆5923億円で、年換算した今年4〜6月期の名目GDP442兆8270億円を上回る勢いとなっています。

この日銀の保有資産、別に利益が出ていれば何の問題もないと公然と言い抜けるエコノミストや評論家が本邦には結構多いわけですが、米国FRBの場合資産保有率はGDP比で23%、ECBが38%で両中銀ともにこれから保有資産を減らしていこうとしているわけですから、日銀の553.6兆円という数字がいかに大きなものかということは一目瞭然の状況で、まったく問題ないなどと言いきれること自体相当不思議な状況と言わざるを得ません。

まあ紙幣をどんどん刷りまくって国債を買い入れ、ETFで株価を一定以上の上昇に常に制御するという緩和措置をすでに5年もやらかしているわけですから、資産総額が大きくなるのは当たり前です。しかし、この先日銀がマイナス金利から出口に向かうことになれば保有資産がマイナスになり、日銀が赤字に陥る可能性は十分にある状況で、先行き国庫納付金の支払い不能、日本政府の収入が減少するのは間違いなく、またその補填資金のために国債を発行するという典型的な自転車操業に陥るリスクを抱えていることがわかります。

国債買い入れの減少は国債価格下落につながる
この先、日銀が明確な出口戦略にでて国債の買い入れを減らしたり、日本株ETFの買い付けを終了したりすることも十分にありえます。その場合は国債価格の下落や下駄を履かせた株式相場の下落などから、保有資産が大きく赤字になるリスクはますます高くなるわけで、ここからはいいことは何も起きない状況になりそうです。

赤字転落なら国はどの資金で資本金を増強するのかな?
今のところほとんど財政ファイナンス、事実上きわめてヘリマネに近いようなことを行っている日銀ですが、この日銀が赤字転落になった場合、今度は国が資本の増強のために資金提供することを余儀なくされます。そのためにさらに国債を発行して日銀が買い受けたりすると、もはやでっち上げの資金のねつ造のたらい回しになりかねないわけで、日銀の今後が非常に危惧されるところです。

人工相場は必ずどこかでそのつけが来る
2008年リーマンショックが起きたときに、米国議会に呼ばれて証言をした元FRB議長のグリーンスパンは、この危機が民間の金融機関に端を発する金融危機にすぎなかったのに100年に一度の経済危機であると説明したことから、主要国各国の中央銀行が乗り出して人類史上かつてないほどの量的質的金融緩和を行いました。その結果が足元の中央銀行バブルであり、史上最少の参加者によりあらゆる資本市場にバブルを引き起こしているのが大きな特徴となっています。

今のところ米国は緩和から引き締めへ、ECBも出口に向かおうとしています。しかし、これだけの全方位バブルを終焉させた経験をもつ人物は世界で誰もいないのが実情。、最後に残った日本が緩和から出口に向かって本当に世界経済が安全に方向転換できるのかどうかはまだだれにもわからないというのが実際の状況です。とくに株も債券も中央銀行自ら値付けを行っている今の状況を終焉させた場合、本当にどうなるのかはやってみないとわかりません。ここ数年で退任が決まっている安倍首相も黒田日銀総裁も、結末を見ることなく退場することが決まっているという、実に心もとない前人未到の領域に差し掛かっているわけです。

とりわけ他の資本主義国では例を見ないほど日銀が踏み込んだ人工相場のつけは想像以上に大きなもので、一旦やり方を間違えれば簡単に破綻するリスクがあることを忘れてはなりません。このような新聞報道がでても国内ではほとんど大騒ぎにはなりませんが、実は非常に危ないところにさしかかりつつある点だけはしっかり認識しておく必要がありそうです。

image by:TK Kurikawaslyellow / Shutterstock.com

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[政治・選挙・NHK255] 国会議員の「依頼」で看護学科に補欠合格  東京医大、入試不正で109人が不合格に 問題漏洩も 
国会議員の「依頼」で看護学科に補欠合格
社会
2018/12/29 23:10
保存 共有 印刷 その他
第三者委員会の報告書は、臼井正彦前理事長が国会議員の「依頼」を受け2013年の看護学科の一般入試で特定の受験生を補欠合格させていたと明らかにした。

記者会見で謝罪する東京医科大の林由起子学長(右)(11月7日、東京都新宿区)
画像の拡大
記者会見で謝罪する東京医科大の林由起子学長(右)(11月7日、東京都新宿区)

臼井氏は特定の受験生の受験番号を看護学科の職員に伝え、合否判定で「どうにかしてもらいたい」と指示。その際、国会議員(匿名)から依頼されたと伝えたという。受験生は上位29人を飛び越えて補欠合格した。

また、ある人物が別の国会議員(同)に受験生の名前と受験番号を書いたファクスを送信したが、臼井氏の保管資料にそのファクスがあったという。調査にその人物は「何らかの有利なことがあるのではないかと期待した」と回答した。

東京医大の教授や監事らも臼井氏に特定の受験生の受験番号などを伝達。臼井氏作成のメモには名前と受験番号が列記され、名前の横には「1000」「2000」「2500」との数字があり「もし入学を許されたら大学のために寄付は3千万円を用意するつもり」と書かれた手紙も見つかったという。こうした状況を踏まえ、第三者委は「個別の(得点)調整と寄付金の間に何らかの関連性があった可能性がある」と指摘している。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39581110Z21C18A2CC1000/


 

東京医大、入試不正で109人が不合格に 問題漏洩も
社会
2018/12/29 21:39 (2018/12/29 23:18更新)
保存 共有 印刷 その他
東京医科大は29日、女子や多浪生らを不利に扱った同大の入試不正を調べていた第三者委員会(委員長・那須弘平弁護士)の最終報告書を公表した。2013〜16年度の医学科入試では男子43人、女子66人の計109人が合格ラインを上回りながら不合格になったと認定した。国会議員らから依頼があったり、小論文の問題が漏洩した疑いも指摘した。

17、18年度の入試でも計69人が合格ラインを上回りながら不合格になったことが既に判明しており、計6年間で不利な扱いを受けた受験生は計178人に上った。

17、18年度入試では44人を追加合格にしている。第三者委は東京医大に対し、13〜16年度入試についても入試委員会を開いて合否を再判定するよう要請。元受験生から補償の請求があれば誠実に対応すべきだとした。

13〜16年度の入試では女子や多浪生を属性に応じて不利にする得点調整が行われた。一般入試とセンター利用入試の2次試験では小論文の得点を一律に操作。推薦入試では特定の受験生に問題を漏洩した疑いがある。その受験生は試験直前に予備校講師らに「試験問題が手に入った」と話したとされ、小論文の点数は1位だったという。

一連の得点操作は06年度入試から始まったとされる。調査に対し、職員は「学長(当時)から男子を増やす案をいくつか考えろと言われた」と証言。第三者委は学長の指示を認定したが、学長は否定しているという。

前理事長の臼井正彦被告(77)=贈賄罪で在宅起訴=と前学長の鈴木衛被告(69)=同=は職員に指示し、特定の受験生の得点を書き換えて成績順位を上げていた。

医学部の不正入試は文部科学省の私大支援事業を巡り、同省前局長=受託収賄罪で起訴=が東京医大に便宜を図る見返りに息子を合格させてもらったとする贈収賄事件をきっかけに発覚。文科省は全国81大学の緊急調査で、東京医大など9校の不適切入試を認定する調査結果を公表し、聖マリアンナ医科大も男子や現役生を優遇した疑いがあるとしている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39579650Z21C18A2CC1000/
http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/573.html

[政治・選挙・NHK255] 韓国軍レーダー照射 映像公開  韓国による自衛隊機に対する火器管制レーダーの照射 騒ぐほどでもない 安倍外交の危うさ 

城内実
2018年12月30日 13:05
韓国軍レーダー照射 映像公開


 防衛省は28日、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制用レーダーを照射した関連動画をホームページで公開し、韓国大使館にも提供しました。
(こちらのURLからご覧頂けます。 https://youtu.be/T9Sy0w3nWeY

 照射の事実は歴然、具体的な証拠が世界に示され、韓国が「火器管制レーダーの照射をしていない」などと嘘をついていたことが世界中に示された形となりました。稚拙なウソを繰り返す姿勢は恥の上塗りでしかありません。

今年は韓国主催観艦式の問題や韓国大法院判決、いわゆる慰安婦財団解散、竹島不法上陸と、とても理解できない韓国の異常な行動が相次ぎました。
約束を守らない。嘘をつく。捏造する。事実を歪曲する。今回のレーダー照射問題により、その異常性が世界中に示されることとなりました。
歴史認識など、我が国では未だに韓国を擁護する方々がいらっしゃいますが、ようやくこの期に考えを改めることができるのではないでしょうか。
https://blogos.com/article/348359/

 

 

猪野 亨
2018年12月29日 13:41

韓国による自衛隊機に対する火器管制レーダーの照射 騒ぐほどのものでもない 安倍外交の危うさ


 先般、韓国海軍駆逐艦が自衛隊の哨戒機にめがけて火器管制レーダーを照射したとされる問題ですが、一部、右翼議員が騒ぎすぎです。その意味では日本政府も同じです。

 もともと火器管制レーダーを照射するということは攻撃の前提としての意味合いがあるようですが(位置の特定)、実際に韓国軍が自衛隊機に向けて攻撃するはずもありませんし、仮に韓国政府の説明がトンチンカンなものであったとしても、だから大騒ぎするほどのものなのかということです。
 逆の意味でも自衛隊機が韓国側を攻撃するはずもないというのも自明のことでもあり、いずれにせよ大騒ぎするほどのものことではありません。

 言ってみれば、「足踏んだろ」、「踏んでない」というレベルのものです。

 韓国政府からしてみると、これで謝罪などしたら自国民に日本政府への弱腰と批判を浴びかねないという事情もあるのかもしれません。ナショナリズムの怖さです。韓国軍兵士の中にも「日帝」への不満もあって不思議はありません。これには日本の右翼層にも原因の1つがあるのですから。

 とはいえです、ここで日本政府が騒ぐのは間違いで、結局、問題解決を複雑にしてしまっているだけです。

「レーダー照射 防衛当局の協議で韓国かたくな「証拠を突き付けるしか」」(毎日新聞2018年12月28日)
「探知したレーダー波のデータなどは示しておらず、証拠としては不十分との声も上がる。韓国側は動画公表後も照射を否定する態度を変えておらず、今後の協議の行方は見通せない。」
この程度のことで騒ぐのは、むしろ逆に日本国内のナショナリズムを敢えてかき立てたいんじゃないかという不純な動機すら見え隠れします。

 右翼議員が騒ぐのもそうした動機にしか見えなくなってしまいます。

「もっと厳しく対応を…レーダー照射で自民が緊急会合」(テレ朝2018年12月25日)
「自民党議員からは「韓国側に艦長の処分を求めるべき」といった厳しい意見が相次ぎました。自民党は「自衛隊が持っている証拠を韓国側に示して抗議すべき」として、謝罪の要求も含めて日本政府に対応を求める方針で一致しました。」
戦闘なんてしないもんね!


双方に戦闘行為に至る意思など全くない中で、このようなやり取りを長引かせるのは幼稚というよりも危険この上ない外交のやり方です。

 ニアミスで戦闘が起こる?

 なんて本気で考えたらダメですよ。一部の右翼層はそうやって煽るかもしれませんが、ニアミスはニアミス、戦闘行為とは違います。盧溝橋事件だって、偶発のニアミスが日中戦争に突入したのも、日本側が中国侵略戦争の機会をうかがっていたからにすぎません。決してニアミスの結果ではありません。

 そんなに戦争がしたいですか。
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[政治・選挙・NHK255] 射撃レーダー照射は韓国軍兵士による“反乱” くるりと言い訳を翻した韓国 「現場の嫌がらせ」では済まないレーダー事件
射撃レーダー照射は韓国軍兵士による“反乱”
混迷する朝鮮半島
2018年12月27日(木)
重村 智計


海上自衛隊の哨戒機P-1。今回、火器管制レーダーを照射されたものの同型機(写真=Shutterstock/アフロ)
 韓国海軍の艦艇が、自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した事件は、韓国軍兵士による「指揮命令」違反、事実上の反乱である。正常な軍隊ならば絶対に起こり得ない事態だ。韓国政府内は大揺れで、軍最高司令官でもある文在寅(ムン・ジェイン)大統領の権威と正統性はズタズタとなった。日本政府は、日米韓3国による調査を求めるべきだ。

 韓国の大統領は、韓国軍の指揮命令系統を厳重に監視してきた。筆者がソウル特派員時代に取材した軍首脳によると、理由の第1は北朝鮮との戦争を防止するため。軍が勝手に北朝鮮に攻め込んでは困る。

 第2に、クーデターを警戒してきた。韓国軍の部隊は、クーデター防止のためソウル方面への後退移動は禁止されている。また、師団以上の部隊が移動する際には前後左右の隣接師団へ通告することが義務づけられている。

 国防省や陸海空の軍参謀総長の要職に、有能で人望ある軍人を決して任命しない。大統領への忠誠心を持つことが、選抜における最大の条件だ。さらに、各部隊には「保安担当」の政治将校を配置し、司令官と部隊将校らの動向に目を光らせてきた。

 ところが今回、韓国軍の統制力のなさが世界に知られるところとなった。平時に、海軍艦艇の兵士か、将校、艦長、あるいは海軍首脳が「照射命令」を出したのだから、「指揮命令」違反であり事実上の反乱だ。文在寅大統領の最高司令官としての責任が問われる。軍を統治する政権の能力が問われる極めて衝撃的な事件である。 韓国政府が、「レーダー照射でない」と嘘をつく理由が、ここにある。

北朝鮮の漁船を救難するため、という嘘
 日本の世論は、レーダーを照射したことを韓国が正直に認めて謝れば済む話、と思うかもしれない。けれども、韓国を覆う政治文化の下では、認めるわけにはいかないのだ。軍最高司令官としての文大統領の権威とメンツは、丸潰れになる。だから、「遭難した北朝鮮漁船の捜索」 と、まったく辻褄の合わない説明をした。

 韓国国防省は、レーダーを照射した事実について「気象条件が良くなく、遭難した北朝鮮漁船を探すため、すべてのレーダーを稼働させた」と説明した。この説明は、納得できない。火器管制レーダーは指向性が高く捜索には適さない。

 そもそも、海軍の艦艇に北朝鮮の漁船を救助する任務が与えられているのか。それも、何十人乗りの大型船ならともかく、数人しか乗れない小型漁船だという。漁船の救助は、日本でも韓国でも海上保安庁の任務だ。海軍艦艇は、あくまでも防衛――北朝鮮の艦船の侵入を防ぎ、工作船を摘発する――が任務だ。

 仮に、救助が任務であったとしても、遭難漁船の救助と探索を支援するよう北朝鮮から要請があったわけではない。 北朝鮮政府が要請してもいないのに、韓国海軍は、北朝鮮漁船の救助を自主的に任務にしたのだろうか。

 百歩譲って、漁船を装った北朝鮮の工作船対策や、北朝鮮タンカーによる石油「瀬取り」の取り締まりなら、まだ納得できる。でも当時は「気象条件が良くなかった」(韓国国防省)というから、海上での瀬取りは難しかっただろう。

支持率の回復が狙いか
 レーダー照射が、韓国艦艇の勤務する兵士の反乱でないとすれば、誰が命令したのか。考えられるのは、大統領側近が命じた可能性だ。文在寅政権は、支持率が50%を切り48%に落ちた。歴代政権で、支持率が40%台に落ちてから回復した例はない。ソウルの政界では、1年後の2019年の年末には30%台に落ち政権が崩壊するとの観測も出ている。

 ということは、文在寅政権が進める南北首脳会談や徴用工判決は、支持率上昇にまったく効果がなかったわけだ。韓国の国民は文在寅大統領と革新・左翼勢力による「反日・親北朝鮮政策」に、ソッポを向き始めたのだ。

 この危機的な状況を回避するために、権力周辺が日韓関係を悪化させる「作戦」に出たのではないか。日本との軍事的な衝突を演出し、「不当な言いがかり」と反論し「日本の悪意」を宣伝すれば、世論が一致団結し、文在寅政権への支持が回復すると考えたのだろうか。

「遺憾の表明」ですませれば、日本はまた甘く見られる
 文在寅政権を巡る韓国の政治状況を理解した上で、日本はいかに対応すべきか。事実を確認し、原因と責任を厳しく問い、再発防止を徹底すべきだ。ただし、その一方で、韓国民を刺激しないよう「政権と国民の分離戦略」を取る。

 この時、日米韓3国の共同調査を考えてもいい。日韓による調査は韓国が嫌がる可能性がある。米国も入れば、公平性を保つことができるだろう。

 韓国政府は、国民の「反日感情」を煽ろうとしている。報道機関を動員し「P1哨戒機が韓国海軍艦艇に低空で異常接近した」と報道させ、「日本の対応は騒ぎすぎ」と説明した。

  日本としては、韓国側の主張が事実でないことを証拠で示し、反論すべきだ。「あまり追いつめない」「うやむやにしよう」との考えを抱かないことだ。「遺憾の表明」は単に「残念だった」の意味にしかならない。日本はまた甘く見られる。

 今回の事件が、韓国政府にとって政権の威信を揺るがす大事件である事実を、我々は十分に理解すべきだ。

主敵のいない軍隊の行き着く先は
 韓国軍は、保守と左翼の間で政権が変わるたびに軍首脳や幹部を大幅に入れ替えてきた。報復人事が横行した。このため、軍の士気は低下していると言われる。今回の事件の背景に、韓国軍のこうした崩壊現象があるのかもしれない。

 金大中・盧武鉉の親北朝鮮政権は「北朝鮮は韓国軍の主敵ではない」との理解を進め、文在寅政権はこの方針を明確にした。韓国軍はいま、「敵のいない軍隊」になっている。この現実が、米韓同盟を崩壊に向かわせている。共通の敵が存在しない米韓同盟は、維持できなくなる。韓国軍と政権が抱える闇は深い。


このコラムについて
混迷する朝鮮半島
朝鮮半島の動向から目が離せない。

金正恩政権が、核とミサイルの開発を続けている。
日本に対する核の脅威が刻一刻と高まる。

金正恩委員長の動向は、北朝鮮と周辺国との関係だけでなく、日米・日韓関係にも影響する。

韓国では文在寅氏が大統領に就任。
米韓と南北の距離感が大きく変わる可能性がある。

この変化をウォッチし、専門家の解説をお送りする。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/230558/122600036/


 

くるりと言い訳を翻した韓国

「現場の嫌がらせ」では済まないレーダー事件

早読み 深読み 朝鮮半島


2018年12月27日(木)
鈴置 高史


単従陣で旗艦を務める韓国の駆逐艦「広開土大王」、2008年7月撮影(写真:SOUTH KOREA NAVY/AFP/アフロ)
(前回から読む)

 自衛隊機へのレーダー照射事件で、韓国が説明を変える。「遭難漁船を救助中だった」との説明にも疑問符が付く。

攻撃直前の行為
韓国の駆逐艦が日本の哨戒機に対し「攻撃寸前の態勢」をとりました。

鈴置:防衛省の発表によると12月20日、海上自衛隊の哨戒機P1が日本海の日本のEEZ(経済的排他水域)を飛行中に、韓国海軍の駆逐艦、広開土大王(クァンゲト・デワン)から火器管制レーダーの照射を受けました。

 弾の入った銃を他人に向けたのも同然で、平時にはあり得ない行動です。岩屋毅防衛相は12月21日「攻撃直前の行為だ。不測の事態を招きかねない。韓国は説明すべきだ」と語りました。

 共同通信の「レーダー照射『攻撃直前の行為』と防衛相」(12月21日)などが報じました。

否認に転じた韓国
韓国政府は事件を否認しています。

鈴置:初めは堂々と認めたうえ「大した話ではない」と言っていました。それが日本政府に追い詰められると説明を変え「レーダーを照射したことはない」と言い出したのです。

 「日誌・レーダー事件で言い訳を翻した韓国」をご覧下さい。12月22日までは韓国メディアに対し火器管制レーダーを使ったが、日本の哨戒機を狙ったものではなかったと説明していました。

 ところが12月22日に防衛省が「火器管制レーダーは捜索には使わない」と指摘。さらには日本のメディアが「レーダー照射は複数回で一定時間続いた」「火器管制レーダーは哨戒機を向いていた」などと意図的なレーダー使用の可能性が高いと報じた。

 そこで12月24日、国防部は「照射」自体がなかったと言い出したのです。「追跡レーダーの光学カメラで日本機を追跡したが、電波は一切出さなかった」との説明に変えたのです。

●日誌・レーダー事件で言い訳を翻した韓国
12月21日 防衛省、12月20日に日本海の日本のEEZ内で、韓国駆逐艦が日本の哨戒機に火器管制レーダーを照射と発表。岩屋毅防衛相「攻撃直前の行為だ。不測の事態を招きかねない。韓国は説明すべきだ」(共同通信など報道)
12月22日 東亜日報、独自ダネとして「12月20日に漂流中の北朝鮮の漁船を海軍が救助」と報道
12月22日 統一部、救助した北朝鮮の漁民を板門店を通じ送り返したと発表
12月22日 国防部「遭難した北朝鮮の船舶を捜索するため火器管制レーダーを使ったが、日本機を狙ってはいない。正常な作戦任務だった」(韓国MBC報道)
12月22日 NHK「レーダー照射は複数回で一定時間続く」「偶然とは考えにくい」「哨戒機はレーダー受けて回避」
12月22日 防衛省「火器管制レーダーは捜索には使わない。その照射は危険な行為」と発表
12月23日 FNNなど「火器管制レーダーは哨戒機を向いていた」と報道
12月24日 国防部「人道主義的な救助のための正常な作戦活動であり、日本機の脅威となる措置は取らなかった」「追跡レーダーの光学カメラで日本機を追跡したが電波は一切出さなかった」「日本機からの通信はノイズが多く『韓国海洋警察』だけが聞きとれた」(聯合ニュース報道)
12月24日 韓国外交部「事実を確認せず発表した」として日本に遺憾を表明(聯合ニュース報道)
12月25日 防衛省「火器管制レーダー特有の電波を一定時間、複数回受けたことを確認した」「海自機は韓国の駆逐艦から一定の高度と距離をとって飛行」「緊急周波数で韓国海軍艦艇に向け英語で3回呼び掛けた」と発表
12月25日 菅義偉官房長官、会見で韓国に再発防止を強く求めたうえ「当局間の協議を進める」
12月25日 岩屋防衛相、会見で「照射があったことは事実。(把握しているデータに関し)我が方の能力に関することは公表できないが、先方となら専門的な話もできる」
日本に逆ねじを食らわす
なぜ、言い訳を180度変えたのでしょうか。

鈴置:初めは「日本の哨戒機に照準を合わせたものではなかった」と言い張れば、見逃してもらえると考えたのでしょう。しかし日本は強硬で、土曜日の12月22日にも防衛省が「韓国の嘘」と発表して追い打ちをかけるなど、追及の手を緩めなかった。

 出るところに出れば、韓国は国際的な非難を浴びます。なぜなら火器管制レーダーの照準を当てることは、軍事衝突を避けるための海洋衝突回避規範(CUES=Code for Unplanned Encounters at Sea)に明確に違反するからです。

 そこで国防部は「照射せず」と言ったと思われます。12月24日に「日本の哨戒機こそが我が方の駆逐艦の上を低空で飛ぶなど、危険な行為に及んだ」と言ったのも「CUES違反は日本側だ」と逆襲するつもりだったのでしょう。

 外交部も助太刀に出ました。日韓の外務省は12月24日にはソウルで局長級会議を開いたのですが、韓国側は「事実関係の明確な確認なしに自分たちの立場を主張した」と日本を非難しました。ここでも逆ねじを食わせたのです。

 聯合ニュースは「外交部、『レーダー騒ぎ』で日本に遺憾を表明…事実確認なしに発表」(12月24日、韓国語版)の見出しで報じました。

 そこで12月25日、日本の防衛省が「火器管制レーダー特有の電波を一定時間、複数受けたことを確認した」と発表したのです。要は「証拠はある。日本が公開したら恥をかくぞ」と警告したのです。 韓国が言い出した「日本の危険な飛行」に関しても防衛省は否定しました。

人命救助に文句を言うな
韓国紙はどう報じているのですか?

鈴置:左派系紙も保守系紙も韓国政府の言い分が正しいとの前提で書いています。そのうえで「難癖をつけてきた」日本を非難したのです。

 左派系紙、ハンギョレの社説「日本、“レーダー事件”外交争点化を意図…韓日外交会議時も抗議」(12月23日、日本語版)の結論は以下です。

韓国軍が故意に狙ったものではないと説明し、実際に北朝鮮船舶を救助したのに日本側がこれを争点化するのは、最近の韓日関係のためと見られる。
韓国最高裁(大法院)の強制徴用賠償判決に反発する日本が“レーダー事件”をカードとして活用しようとする意図が窺える。
 保守系紙の朝鮮日報も同様でした。「最悪の韓日関係が見せた『レーダー騒ぎ』」(12月24日、韓国語版)のポイントを翻訳します。

当時漂流していた北朝鮮の漁船が我が軍に救助されたことなどを見るに、海軍が日本の哨戒機を意図的に狙った可能性はまずない。
友好国の間であれば問題になるようなことではない。というのに日本は「あり得ないこと」と抗議した。
 保守系紙の東亜日報の社説も「騒ぎ過ぎ」と日本を批判しました。「韓日のレーダー騒ぎ、事を大きくせず外交的に解決するべきだ」(12月24日、日本語版)からその部分を引用します。

故意性なく船舶救助の作戦中に起こったという説明にもかかわらず、日本政府とメディアが韓国海軍にまるで「他意」があったように追及することは度を越した反応だ。
青瓦台より日本メディアを信頼
「言い訳」を180度変えたことに関し、韓国メディアはどう書いたのですか?

鈴置:無視することにしたようです。そのおかしさに触れた大手メディアの記事は見当たりません。

 もちろん韓国の記者もバカではありませんから「あれっ」と思ったでしょう。読者の書き込み欄を見ると、政府の説明を信じ「日本機を撃墜すべきだった」という反応がある半面、「政府は見苦しい言い訳はもうやめろ」といったものがあります。

 例えば12月24日の国防部の「火器管制レーダーの照射は一切なかった」との発表を報じた朝鮮日報の記事「軍『日本の哨戒機を追跡すべくレーダーを運用したことはない』」(12月24日、韓国語版)の書き込みには以下があります。

言い訳丸出しの言い訳は国の威信を貶める。左派の乗組員が戦争ゲームをしたのだ。青瓦台(大統領府)のゴミどもより日本のメディアの方が信用できるなんて。
一日ごとに新しい説明を作り出す国防部の言葉通りなら結局、火器管制レーダーは北朝鮮の漁船救助作業とは関係なく、日本の哨戒機を照射したことを認めたのだ。カメラの電源を入れれば火器管制レーダーも一緒に回ることを知っていながら稼働したということは、日本の哨戒機がレーダーに照射されようと関係ないという未必の故意があったということだ。
 いずれも、韓国政府が信じられなくなったが故の書き込みです。そりゃそうです。「照射した」が突然「照射しなかった」との説明に変わったのですから。

突っぱねれば日本は引っ込む
だったらなぜ、韓国紙はその変節を指摘しないのでしょうか。

鈴置:初めの段階で「韓国政府の説明が正しい」との前提で社説を書いてしまったからでしょう。もちろん政府の言い訳が180度変わったことを基に、社説を軌道修正する手はあります。

 ただ、「我が海軍は北の漁船を救け、それを日本機が邪魔しようとしたのだ。火器管制レーダーを使ったとしても、正当防衛だ」と信じている人も多い。

 今になって記事を修正して政府批判すれば「国家反逆新聞」の烙印を押されかねない。メディアとすれば、この問題が収束するのを待つ方がいいのです。

 根っこには「突っ張っておけば日本はあきらめて引っ込む」との判断があります。これまで日本は韓国の滅茶苦茶な行動に怒って見せても、さしたる報復はしなかった。だから今度も、適当なことを言ってうっちゃっておけばいい、というわけです。

ところで北朝鮮の漁船を助けたというのは本当ですか?

鈴置:レーダー照射した韓国の駆逐艦が救助したのではありません。海洋警察の警備艦が助けたのです。海軍の駆逐艦も一緒になってレーダーで捜索し実際には、警備艦が救ったと発表されています。

 もっとも、北朝鮮の漁船を助けるためにわざわざ駆逐艦が出動したというには不自然です。遭難海域に海洋警察の警備艦がいたのですから。

漁船救助に駆逐艦が出動したって?
 趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムを舞台に、ファンド・ビルダーのペンネームで外交・安保を縦横に論じる識者もこの点に首を傾げました。

 「海軍『火器管制レーダー照射』に関する疑問点」(12月24日、韓国語)です。その部分を抄訳します。

韓国政府とメディアは「広開土大王」が北朝鮮の漁船救助活動に出動したことを既成事実化しているが、本当だろうか。北朝鮮の警備艇がエンジン故障で漂流していたのなら、重大性を考慮して駆逐艦が出動するのは理解できる。しかし小さな漁船が漂流して駆逐艦が動員されたとの説明は理解し難い。
海洋警察がそばにいなかったというならまだ分かるのだが。あえて海軍が出なければならない状況だとしても、機動力の良い高速艇が出るのが正常である。
 ファンド・ビルダー氏はもう1つ「位置」に関しても疑問を呈しました。これも要約しつつ訳します。

各紙の報道によると、漂流した北朝鮮の漁船の位置は大和碓の北西だった。一方、日本の哨戒機はかなり離れた日本のEEZ上空を飛んでいた。「広開土大王」はその中間にいた。
漁船とは真反対の位置にいた日本の哨戒機に火器管制レーダーを照射したことになる。だとすると照射時間はどんなに長くても数秒のはずだが、なぜ数分間に至ったのか。この事件は「漁船の救助」を名分に言い逃れできる事案ではない。
文在寅なら怒らない
結局、レーダー照射の意図は何だったのでしょうか?

鈴置:安全保障の専門家も韓国の専門家も、現場による嫌がらせと見る向きが多い。「広開土大王」の艦長かレーダー担当兵が、上部の指令なしに跳ね上がって犯行に及んだとの見方です。

 韓国では「日本には何をやってもいい」という風潮があります。ことに21世紀に入り韓国が日本を見下すようになってからはそれが強まった(『米韓同盟消滅』第3章「中二病にかかった韓国人」参照)。

 韓国海軍にしても「旭日旗を掲げるなら国際観艦式に来るな」と言ってみたら、日本はろくな抗議もせずに引き下がった。竹島で演習しても抗議するだけ。これなら「射撃管制レーダーで脅して追い払ってやれ」と考える艦長や兵が出てくるのは当然です。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領の指示はなかった?

鈴置:それは分かりません。ただ、上からの直接の支持はなかったとしても、犯行は大統領に大いに関係します。現場がレーダー照射により日本との関係を悪化させても、日本との対決姿勢を明確にする文在寅政権なら処罰しないと誰もが考えるからです。

日本を日本海から追い出す
文在寅政権下ならではの事件というわけですね。

鈴置:そうです。しかし今後は大統領が誰であろうと、こういう事件が起きる可能性が高い。なぜなら韓国は日本海を自らの海としたくなったからです。

 日本海にはメタンハイドレートが大量に眠っていて、日本が自らのEEZ内で採取し始めたのが悔しくて仕方ない。

 また、韓国海軍は2020年からミサイル発射型の潜水艦を配備しますが、その「巣」としても日本海は重要です。黄海は浅くて潜水艦の運用は難しいし、そもそも中国が海上優勢――昔の言葉で言えば制海権を維持している。

 韓国とすれば明治以来、日本海で羽振りをきかせてきた日本を追い出したい。11月20日にも、韓国の海洋警察の警備艦が日本のEEZ内で日本の漁船に操業中止を命令した事件が発生しています。

 だからレーダー事件を「現場の跳ね上がり」と見過ごすわけにはいかないのです。火器管制レーダーを照射された日本の自衛隊機は退避せざるを得ない。それを繰り返していけば、日本のEEZもその空域も韓国が支配できるのです。

●韓国の「対日挑発」日誌(2018年10月以降)
10月1日 李洛淵首相、韓国主催の国際観艦式に参加する自衛艦に旭日旗掲揚の自粛を要求
10月5日 日本、観艦式への自衛艦の派遣見送りを決定
10月11日 観艦式で韓国艦は伝統的な「将旗」も掲揚。参加国には国旗のみの掲揚を求めていた
10月30日 韓国・最高裁、新日鉄住金に対し戦時中の朝鮮人労働者に賠償金を支払えと判決
11月20日 韓国海洋警察の警備艦、日本のEEZ内で日本漁船に操業中止を命令
11月21日 韓国・女性家族部、「和解・癒し財団」の解散手続きに入ると発表
11月29日 韓国・最高裁、三菱重工業に対し戦時中の朝鮮人労働者に賠償金を支払えと判決
11月29日 韓国・ソウル中央地裁、新日鉄住金に対し戦時中の朝鮮人労働者に賠償金を支払えと判決
12月5日 韓国・光州高裁、三菱重工業に対し戦時中の朝鮮人労働者に賠償金を支払えと判決
12月13-14日 韓国軍、竹島周辺で防衛演習
12月14日 韓国・光州地裁、三菱重工業に対し戦時中の朝鮮人労働者に賠償金を支払えと判決
12月20日 日本海で韓国駆逐艦が日本の哨戒機に火器管制レーダーを照射(12月21日に防衛省が発表)
12月24日 元・朝鮮人労働者、新日鉄住金の資産差し押さえに関し「執行日は外交状況を考慮する」
相次ぐ「愛国事業」
そんなに簡単にいくでしょうか。

鈴置:放っておけば、これが「初めの一歩」になります。「韓国の『対日挑発日誌』」をご覧下さい。2018年10月以降だけでも、これだけ日本を挑発しています。ただ、それらは韓国から見れば、日本との関係を見直し、権利を拡大する「愛国事業」なのです。

 日本企業に対し、戦時中の朝鮮人労働者に慰謝料を支払えと韓国の裁判所が相次ぎ判決を出したのもそうです。日韓国交正常化の際に結んだ基本条約を否認するものです(「『言うだけ番長』文在寅の仮面を剥がせ」参照)。

 「和解・癒し財団」解散も、日本との慰安婦合意を反故にする狙いです。文在寅政権のこうした動きに対し、保守派からもさほど批判はあがらない。

 日本との関係が悪化しさらには米国との同盟が揺れると懸念する向きは一部にある。しかし敢えて約束を破り、日本を従わせる「愛国事業」である以上、保守も文句はつけにくいのです。

核武装に必須の日本海
韓国の保守系紙がレーダー事件で自らの政府を批判しないのも……。

鈴置:「愛国」の部分もあると思います。日本のEEZを韓国がコントロールできるようになれば、国益が大きく増進します。

 そもそも2020年以降、毎年1隻ずつ配備するミサイル潜水艦だって「韓国の核」の一環として保守政権が始めた事業なのです(『米韓同盟消滅』第1章第4節「『民族の核』に心躍らせる韓国人」参照)。

 文在寅政権の「南北共同の核」のための配備とは主体が異なりますが、核武装に必須の第2撃能力を持つという点では同じです。その「巣」作りには、保守だろうが左派だろうが、韓国人なら賛成しておかしくないのです。

(次回に続く)

【著者最新刊】『米韓同盟消滅』

米朝首脳会談だけでなく、南北朝鮮の首脳が会談を重ねるなど、東アジア情勢は現在、大きく動きつつある。著者はこうした動きの本質を、「米韓同盟が破棄され、朝鮮半島全体が中立化することによって実質的に中国の属国へと『回帰』していく過程」と読み解く。韓国が中国の属国へと回帰すれば、日本は日清戦争以前の「大陸と直接対峙する」国際環境に身を置くことになる。朝鮮半島情勢「先読みのプロ」が描き出す冷徹な現実。

第1章 離婚する米韓
第2章 「外交自爆」は朴槿恵政権から始まった
第3章 中二病にかかった韓国人
第4章 「妄想外交」は止まらない

2018年10月17日発売 新潮社刊


このコラムについて
早読み 深読み 朝鮮半島
朝鮮半島情勢を軸に、アジアのこれからを読み解いていくコラム。著者は、朝鮮半島の将来を予測したシナリオ的小説『朝鮮半島201Z年』を刊行している。その中で登場人物に「しかし今、韓国研究は面白いでしょう。中国が軸となってモノゴトが動くようになったので、皆、中国をカバーしたがる。だけど、日本の風上にある韓国を観察することで“中国台風”の進路や強さ、被害をいち早く予想できる」と語らせている。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/122600210/

http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/590.html

[経世済民130] 「なぜビットコインは自由にとって大事か」米タイム誌が力説 閑散相場も価格乱高下 1年で8割下落ビットコインバブル崩壊現場
2018年12月30日
Adrian Zmudzinski
「なぜビットコインは自由にとって大事か」米タイム誌が力説
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「なぜビットコインは自由にとって大事か」米タイム誌が力説ニュース
米国の有力誌であるTIME(タイム)が28日、ビットコイン(BTC)について本質的な自由をもたらす可能性があると太鼓判を押す記事を掲載した。「検閲不可能な交換手段として価値ある金融ツールになる可能性がある」にもかかわらず、「仮想通貨とブロックチェーン業界における投機、詐欺、グリード(強欲)が本来の解放的なサトシ・ナカモトの発明に影を落としている」と現状を憂いている。

記事は、政府がビットコインのウォレットを凍結させたり、取引を監視したりすることが困難であると指摘。実際、ウィキリークスが仮想通貨取引所コインベースに開設した口座が4月に凍結されたが、ウィキリークスが秘密鍵を保有するウォレットでは誰もウィキリークスの取引を邪魔できていない。

またタイム誌は、ビットコインは法定通貨のインフレーションから身を守るには便利だと解説。例えば、米国からベネズエラへ送金する場合、手数料が最大56%かかる。そうした状況を避けるために、ベネズエラ人は仮想通貨を使い始めており、海外の親戚などからビットコインを受け取っているという。一方、既存の送金システムでできることと言えば、まずコロンビアに送金し、そこから預金を下ろして現金をベネズエラに運ぶことだそうだが、同氏は「ビットコインより時間とコストがかかりすぎて危険」だ。

200000%のインフレに悩まされるベネズエラでは、今月、ニコラス・マドゥロ大統領国営仮想通貨ペトロ(Petro)の基準価格を150%引き上げた。またアフリカのジンバブエでは、ムガベ元大統領がインフレ対策として「キャッシュを永遠に印刷し続けた」という批判の声があるが、タイム誌は、「彼の後継者はビットコインを印刷することはできない」と指摘した。

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19:06 - 2018年10月31日
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ビットコイン閑散相場も価格は乱高下 中国最新調査では40%が仮想通貨に投資意欲
各務貴仁2018/12/30 マーケット


年末相場レポート
年末のビットコイン市場は出来高も低い閑散相場が続いているものの、突発的な乱高下が繰り返し確認されている。中国最新調査では、禁止されて1年経った今、仮想通貨へ投資したい投資家が40%にものぼる事が明らかになった。
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マーケット情報
12月30日の仮想通貨マーケット情報

ビットコイン
ビットコインは30日、日本時間午前8時から9時にかけて2万円幅の下落が見られたものの、その後は復調傾向を維持している。


TradingViewのBTCJPYチャート

30日20時時点のデータは以下の通り。

BTC価格(28日19時)
価格 前日比
現在値 423,346円 -0.49%
日中高値 433,680円
日中安値 412,518円
出来高 5406億円 +8.77%

TradingViewのBTCUSDチャート

28日のCME先物日の影響を受けてか、3590ドル付近から一時、3971ドルまで上昇を見せた相場も、その後乱高下し、24日から段階的に下落。

フィボナッチを見てみると、0.618(3547ドル付近)から0.236(3971ドル付近)の価格帯で乱高下している状態だ。

年末が関係してか、出来高も少なく、閑散としているビットコイン相場になっている。直近では株式市場との相関性も指摘されていたが、年末にかけて市場が止まっている点や、機関投資家を含めた大口の取引からより個人投資家を中心とした市場になっていると思われる。


TradingViewのBTCUSDチャート

次に上記のチャート画像から確認すると、日足ベースでの逆三尊を形成しているように読み取れるが、出来高も少なく、肯定か否定かも不明な状態だ。

4233ドル付近のレジスタンスラインで跳ね返されているのを見ると、依然として上値は重たい印象となる。

どちらに進むか不安定な相場となっているため、方向性が決まるまで静観するべき状況と言えるだろう。

本日のマーケットも関連する複数の動きがあった。

中国メディア調査:40%投資意欲
中国の仮想通貨PANewsの調査報道 によると、4000名以上の回答者の中で約40%は「仮想通貨へ投資したい」との選択肢を選んだという。

中国政府は2017年後半から仮想通貨取引所・ICO関連などに対して、全面禁止の政策を取ってきたものの、国民からの投資意欲は減少していないものようだ。

以下がアンケート調査結果の重要点。

調査の実行期間:11月26日〜12月10日(ビットコインが40万円を下回った時)
98.22%:ビットコインや仮想通貨に認識を持っている
82.81%:仮想通貨の投資は流行の投資行為
14.24%:仮想通貨の投資経験あり
39.64%:今後仮想通貨の投資に興味がある
        
63.43%:仮想通貨を決済手段と見做さない
同調査は、「39.64%という結果は、不動産と株に続く投資の人気度3位となっており、FXなどよりもはるかに超えているため、中国人投資家には、仮想通貨に対する投資意欲は高いと言えるだろう」と結論をつけている。

なお、注目すべきなのは、中国人が「仮想通貨を入手する方法について」の項目であり、取引所やエアドロップが違法とされている今でも、取引所が68.56%に及び、次がエアドロップとなっている。


出典:PANews

金融庁の「仮想通貨交換業者」新規登録待ち企業が190社超えと増加傾向
仮想通貨市場は年初から右肩下がりの相場が続き、直近2ヶ月では更に下落相場に拍車がかかった事で、通貨価格が収益に直結するマイニング企業はもちろん、ユーザー減少から業界から撤退する企業が像解している。

本日もGMOに続く形で日本企業のマイニング事業に動きがあり、DMM.com2018年2月から金沢で大規模マイニングファームの運用を始めたマイニング事業から撤退する事が、東洋経済の報道で明らかになった。

通貨価格が予想以上に下落した事で、高い水準を維持したハッシュレートも背景に収益悪化の煽りを一番に受けているマイニングファームだが、その影響は日本企業にも波及している形だ。

一方で、bitcoin.comが報じた事で明らかになった「仮想通貨交換業者」新規申請待ち企業が190社超えは、金融庁が9月初旬に言及した160からさらに増加傾向にあり、厳しい市況にある中で将来性を見込んで参入を目論む企業数が増加している。

2018年は相場の状況に左右される形で参入撤退が相次いだ年になったが、GMOやDMMも含め、今後取引所事業を主力とし仮想通貨展開を進める企業は増えていく事は見込まれるだろう。

詳しくは以下の記事より

GMOに続きDMMも 金沢の仮想通貨マイニング事業から撤退へ|東洋経済が報道
GMOに続きDMMも 金沢の仮想通貨マイニング事業から撤退へ|東洋経済が報道
DMM Bitcoinなど仮想通貨取引所展開も行うDMM.comが、2018年2月から金沢で大規模マイニングファームの運用を始めたマイニング事業から撤退する事になるようだ。東洋経済が取材内容を報じた事で明らかになった。
coinpost.jp2018-12-30 12:08
Huobiが世界初となるEOS基軸の取引所をローンチへ
仮想通貨取引所大手のHuobiグループのマイニングプールHuobi Poolは、EOSを基軸とする仮想通貨取引所をローンチする。同社プレスリリースより明らかになった。

中国コミュニティでは高くサポートされるEOSとHuobiは、これまで密接な協力関係を築いてきたとしており、EOS関連のサービス展開を進めてきた。

今回発表された取引所は数ヶ月以内にローンチする予定で、誕生すれば世界初のEOS基軸となる仮想通貨取引所が誕生する。

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1年で8割下落 ビットコインバブル崩壊の現場を歩く
2018/12/1

ビットコインの価格はピーク時から約8割下落し、個人投資家から「売るに売れない」との声が聞かれた

仮想通貨ビットコインの価格がピークをつけてから、ちょうど1年。ピーク時に2万ドルに迫った価格は、2018年11月に一時4000ドルを割り込んだ。下落率は8割に及び、個人の投機マネーを呼び込んだ熱気はすっかり失われた。ビットコインバブル崩壊の現場をヴェリタス記者が取材した。

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■値下がりで売るに売れず、塩漬けに

マネーフォワード(3994)が11月中旬に開いた「お金のEXPO2018」。仮想通貨を保有する個人投資家からは、「値下がりで売るに売れず、塩漬けにしている」との声が相次いだ。

ビットコインとリップルに投資する男性は、含み損が出ているが「ブロックチェーンの技術に興味があるので、勉強と思い持ち続けている」と話す。

リップルに投資する別の男性は、特定の発行主体がなく国家などに縛られないとの仮想通貨の特性から、「金のような資産になる可能性はあると思う」と語る。ビットコインを値下がり局面で少額買った男性は「当たればラッキー。かつてのように値上がりしてくれれば」と期待していた。

■ビットコインでの決済、ピークの半分以下

決済手段としての仮想通貨はどうか。ビックカメラ(3048)は17年7月に全店でビットコイン決済を導入した。現在の利用状況を聞いたところ「ピークだった17年末と比べて半分以下」(有楽町店の橋本和樹主任)という。一定の需要はあるようだがブームは去り、電子マネーやクレジットカードの利用状況とはほど遠い。

17年10月、ビットコインが使える歯科医院として取材した東京銀座シンタニ歯科口腔(こうくう)外科クリニック(東京・中央)ではどうか。

当時は100件に1件ほどビットコインでの支払いがあったというが、最近は「ここ数カ月で1件あったか、なかったか」(同院)。仮想通貨が決済手段として定着したとは、とても言えないのが現実だ。

400台のマシンが「採掘」

一方で、仮想通貨のマイニング(採掘)事業の今はどうなっているのだろうか。マイニング用マシンを設計・販売するゼロフィールド(東京・港)が今夏、東京都足立区に開いたマイニング工場を訪れた。扉を開けて薄暗い室内に足を踏み入れると、400台のマシンがうなりを上げて稼働していた。機械が発する熱で室内の温度は30度を超え、汗ばむほどだ。


都内のマイニング工場では400台のマシンが24時間稼働する(東京都足立区のゼロフィールド足立工場)
マイニングでは、電力料金が安い中国の事業者が先行した経緯がある。GMOインターネット(9449)なども海外に拠点を置くが、ゼロフィールドは「優秀な技術者を確保するため」(村田敦社長)に、国内に拠点を置いた。イーサリアムなど約30種類の仮想通貨を効率良く採掘するマシンを開発したという。

仮想通貨の取引では、ネット上の「ブロックチェーン(分散型台帳)」に取引データを承認・記録する必要がある。いち早くこの作業を手がけたマイニング事業者が、報酬として仮想通貨を受け取ることができる。

仮想通貨の価値が下がると、報酬の魅力も薄れるため、マイニング事業者にとっては逆風となる。このため今まで以上に消費電力を節約したり、作業効率を高める必要がある。

■マイニング事業から撤退する中国勢も

国内ではGMOの18年7〜9月期の仮想通貨マイニング事業の売上高は約12億円となり、1〜3月期の2倍以上に増えた。ただマシンの償却負担に加え、収益環境が悪化したことで営業損益は1億9000万円の黒字(1〜3月期)から、6億4000万円の赤字(7〜9月期)へと悪化している。

今年9月には、マイニング世界最大手の中国ビットメインが香港取引所に上場を申請。その時点の企業価値は約1兆5000億円との見方もあった。ただ中国で仮想通貨の取り締まりが強化されていることに加えて、相場も低迷し、収益環境は厳しさを増している。中国勢のなかには、マイニング事業から撤退するケースも出始めている。

調査会社アルトデザインの藤瀬秀平氏は「さらに淘汰が進むと、採算が上がるマイニング事業者も出てくる。現状はまさに我慢比べの状態だ」と話す。

これまで投機対象として関心を集めてきた仮想通貨だが、バブル崩壊によりその魅力は薄れつつある。今後は送金のしやすさなど、仮想通貨がもともと持っている特徴を生かして、決済手段としての魅力をどこまで高めることができるかがポイントになる。

(斎藤正弘、逸見純也)

「+(タス)ヴェリ」は週刊投資金融情報紙「日経ヴェリタス」編集部による連載コーナーです。タスヴェリはNIKKEI STYLEでだけ読めるスペシャル企画で、ミレニアル世代と呼ばれる20〜30代の価値観やライフスタイルを、同年代の記者が取材し幅広くご紹介します。更新は不定期です。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO38246010X21C18A1000000?
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/390.html

[経世済民130] 人口減少の下で供給過剰の恐れはないか?「住民合意」の新しい枠組み作りの必要性 
WEDGE REPORT

人口減少の下で供給過剰の恐れはないか?「住民合意」の新しい枠組み作りの必要性

『どうなる首都圏のマンション』 その10 
2018/12/31

中西 享 (経済ジャーナリスト)

 首都圏のマンションはどうなるかについて、専門家にインタビューしてきた。今回は中長期的な視点も加えながら東京の将来を考えてみたい。予想されている中で確実なのが、東京都の総人口が2025年の1398万人をピークに減少に向かうことだ。地方から人口を吸収して発展してきた巨大都市・東京が、日本の人口が減っていく中で果たして輝き続けられるのかどうか。現状は、湾岸部でタワーマンションの建設が続くなどマンションの建設の勢いは衰えてないが、首都圏の経済成長が鈍化してくれば、供給過剰になり空き家だらけオフィスやマンションが林立する「虚大都市」化のリスクが高まる。


(Shin/Gettyimages)
「国際金融都市」
 都心の開発計画を見ると、2025年以降に完成するプロジェクトが目白押しで、オフィスビルがどんどん建つ予定になっている。みずほ証券の予測によると、東京オリンピックの終わった2021年以降も23区内では大規模開発が完成する見込みで、2022年〜24年のオフィスビルの供給量は2017年の95万平方メートルを上回るとみている。

 これだけ増えるオフィスの需要を賄うために小池百合子東京都知事が推進しようとしているのが「国際金融都市 東京」だ。昨年11月にシンガポールで「東京版ビッグバン」を宣言し、「もう一度東京を活気ある国際金融都市にしたい」として、英国の金融街であるロンドンのシティとの間で覚書を締結した。かつてはアジアでナンバーワンの取引量を誇った東京の金融市場は、いまではその機能の一部をシンガポールや上海などに奪われつつある。この構想の実現が国際金融都市としての東京復活につながるかどうか注目される。

 人口が減少しても日本全体の経済活動を示す国内総生産(GDP)が増えれば、国力の勢いは維持できる。政府が5月に出した名目GDP予測によると、2040年度には18年度経済見通しの564兆円より4割増しの790兆円になるとはじいている。これが現実のものになれば、人口が減っても日本経済のエネルギーはそれほど落ちないだろうが、エコノミストによるとこの試算はかなり甘めの成長率を織り込んでいるという。

カギ握る外国人
 厚生労働省の発表によると、外国人労働者は128万人で、この5年間に60万人も増えた。雇用労働者数の約2%を占めており、農業、建設、外食産業ではなくてはならない労働力となっている。安倍政権は近く外国人労働者受け入れについての新しい方向性を打ち出すとしており、新しい在留資格の付与や、現在の資格の延長などが検討されそうだ。そうなると、これまでよりも長期滞在が可能になり、日本の生産人口の減少を下支えしてくれることになる。

 またインバウンド(訪日外国人)は今後も伸びると予測、2020年の4000万人は「射程距離」になり、8兆〜10兆円の経済効果を期待している。2030年には6000万人という目標を掲げており、波及効果の大きい「第二の輸出産業」と位置付ける観光産業。インバウンドが果たしてどれだけお金を落としてくれるかも日本のGDPの行方を左右する。

東京一極集中減らす働き方
 働き方改革に関連して、インターネット環境があれば職場に行かなくても別の場所や自宅でも仕事ができるようになってきている。テレビ電話を使った会議などができる「テレワーク」や、空いた時間を使って自由に好きなだけ働く「クラウドソーシング」が全国的に普及している。

 日本経済新聞社の集計によると、ネット上で仕事を受注してネットで仕事の成果物を送信する「クラウドワーカー」と呼ばれる人は2018年末に500万人を超え、国内の労働力人口の7%以上を占める見通しだという。「クラウドワーカー」は離島にいても、地方の山奥にいてもネットがつながれば仕事をすることができる。こうした仕事のやり方がさらに増えれば、これまでのような東京一極集中にも変化が生まれるはずで、これは東京の人口増にはマイナスに働く。毎日「痛勤電車」に乗って都心に通わなくてもよくなり、都心指向にも変化が生まれるかもしれない。

 かつてのように就職すると、定年を迎えるまで同じ会社に勤務し続けるというよりも、自分のキャリアアップを目指して会社や仕事を変える人も増えるとみられる。そうすると、ライフスタイルも変化し、その時のライフステージに応じて住まいも替える可能性が多くなる。となると、一人当たりの一生における住み替えの回数も増え、今まで以上に中古市場が活性化する。中古市場は新築以上に注目されるマーケットになることが予想される。

 東京都の人口減少の将来予想の話をゼネコンにしても、担当者は目先の1、2年の販売を増やすことしかみていないようで、議論がかみ合わなかった。だが、一部の大手ゼネコンは通常のマンションに隣接して高齢者住宅を建設するなど、住民の高齢化を見据えたマンション作りも始まろうとしている。

対応遅れる行政
 国土交通省はマンションの老朽化について予測数字を発表はしているが、人口減少により首都圏で必要となる住宅戸数がどのくらいになるのかといったシミュレーションは出していない。その象徴が、1971年に入居が開始され、人口が約20万人ある日本最大のニュータウンといわれた東京都郊外の稲城市、多摩市、八王子市、町田市に広がる多摩ニュータウンだ。ニュータウンの中の「諏訪2丁目住宅」は建て替えに成功したが、人口減少により一部「ゴーストタウン」化しているところもある。

 国交省住宅局も老朽化対策にやっと取り組み始め、本年度にマンションの老朽化についての「総合調査」を実施、「住宅団地の再生のあり方に関する検討会」を開いて、団地の再生方法、マンションの建て替えなどについて議論を開始、対策の必要性は認識している。

 現在の法律では、マンションの大規模修繕は住んでいる住民の過半数、改修は4分の3以上、建て替えは5分の4以上、取り壊して住み替えは全員の同意が必要なことになっている。住んでいる人の考え方がそれぞれ異なる中で、これだけ多数の住民の意見を一つに統一するのは至難の技と言える。国交省内では、この合意条件を緩和することについてはまだ議題になってないようだ。これを変更するとなると、マンションという財産権についての議論になり、民法改正、さらには憲法29条で定める財産権をどうみるかにまで及び、法務省もかかわってくる。簡単に結論の出る問題ではなくなる。

 東京都内のマンションストック数は2017年には約181万戸(総世帯数の約4分の1の相当)になり、都民の主要な居住形態になっている。このうち着工から40年以上経過したのが2018年に24万5000戸あり、2023年には42万8000戸に増える。

 東京都都市整備局はこうしたマンション老朽化の予測を踏まえて、この7月に「東京都における分譲マンションの適性な管理促進に向けた制度の基本的な枠組み」を作成、条例化を視野に入れた施策を推進する。具体的には、管理組合が少なくとも年に1回は総会を開催して議事録を作成しているか、修繕積立金を設定して必要に応じて額の見直しをしているかなどについて、まず実態把握に努める。合意形成の見直しは、必要だとの認識はあるが、まだしばらく先の問題としかみていない。

 富士通総研の米山秀隆・主席研究員が警告したように、マンションの老朽化問題は深刻化してくる。急に表面化はしないが長期修繕、建て替えをどうやって円滑に進めていくのか、そろそろ準備、検討を始める必要がある。その際に最大の課題になるのが、当該マンションに住んでいる住民のコンセンサスをどうやって取り付けるかだろう。

壮大な実験
 しかし、マンションの建て替え、大規模修繕に関しては、それほどのんびりとは待っておられない。住宅ジャーナリストの榊淳司氏は「この問題はいまからやっておかないと、大変なことになる」と指摘する。「合意形成」に関して例外規定を設けるなど、何らかの対応措置をそろそろ考えるべき時期に来ているのではないだろうか。

 先進国の中で、日本ほど急ピッチで少子高齢化が進んだ事例はない。東京という大都市は大企業の本社が集中し、首都行政機能と経済機能が1か所にまとまり、働くにも住むにも便利な街として君臨してきた。その巨大都市も成熟化の時期を迎え、人口減少化の下で中枢機能を維持しながら世界をリードできる大都市に変われるかどうかが問われる。人口1000万人を超える東京で、過去に例のない世界で初めての壮大な実験が始まろうとしている。首都圏のマンションが将来にわたって資産価値を維持できるかどうかは、この実験結果にかかっている。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/14922
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/393.html

[経世済民130] 前向きに読み解く経済の裏側 株価が暴落しても2019年の日本経済が好調を持続するワケ 
前向きに読み解く経済の裏側

株価が暴落しても2019年の日本経済が好調を持続するワケ

2018/12/31

塚崎公義 (久留米大学商学部教授)

 今回は景気楽観派を自認する久留米大学商学部教授の塚崎公義が、2019年の日本経済もメインシナリオは好調持続だ、と説きます。


(Nerthuz/Gettyimages)
景気は自分では方向を変えない
 2018年の日本経済は、特に大きな波乱もなく、概ね順調な景気拡大を続けました。株式市場は終盤にかけて混乱しましたが、実体経済は順調です。

 景気の先行きを考える時に、最も重要なことは、景気は自分では方向を変えない、ということです。

 「景気が拡大すると、物が売れるので、企業は増産のために労働者を雇う。雇われた元失業者は給料を受け取って買い物をするので、物が一層売れるようになる」「企業が増産のために工場を新設すると、鉄やセメントや設備機械が売れる」といったことが起きるわけです。

 今回は、景気拡大に伴う労働力不足が深刻化しているため、企業が省力化投資を積極化しはじめています。安い時給で雇ったアルバイトに皿を洗わせていた飲食店が、アルバイトが集まらないので自動食器洗い機を購入しはじめた、というわけですね。

 したがって、何事もなければ今後も景気の拡大が続くと考えてよいことになります。あとは外部から景気の方向を変える力が働くか否かを考えればよいのです。外部から働く力としては、財政金融政策、海外の景気後退が主なところでしょう。

 じつはバブルの崩壊も、場合によっては景気の方向を変えることがあります。もっとも、今回はバブルがそもそも発生していないので、これについては本稿では触れる必要はないでしょう。財政金融政策と海外の景気後退の可能性について、以下では検討しましょう。

財政金融政策による景気腰折れは見込まれず
 景気が拡大を続けると、インフレになる場合があります。そうなると政府と日銀が「景気をわざと悪化させてインフレを防ごう」と考えるようになります。そこで、財政金融政策で景気を抑制するのです。具体的には金融引き締めで金利を引き上げたり、急がない公共投資を先送りしたりします。

 もっとも、今次局面ではインフレを抑制するための財政金融政策は考えられないので、こうした可能性については検討不要でしょう。

 今次局面で検討を要するのは、消費税の増税です。もっとも、前回(5%→8%)よりも増税幅が小さく、しかも様々な景気対策も講じられるようなので、景気の腰を折るようなことにはならないと思っています。

中国の景気後退はメインシナリオだが過度な懸念は不要
 米国が中国からの多くの輸入品に高率の関税を課しているわけですから、中国の景気は、後退するでしょう。日本は中国に大量の輸出をしていますから、中国の景気後退が日本の景気に悪影響を及ぼすとの懸念は当然です。

 しかし、米国が中国から輸入しているものが、他の途上国から輸入されることになるとすると、その途上国の景気が良くなるので、その途上国に日本からの輸出が増えることになるはずです。したがって、過度な懸念は不要です。

 もしかすると、米国が中国から輸入している物の一部が、日本からの輸入に振り替わるかもしれません。そうなれば、日本にとっては漁夫の利です。

 それから、資源を大量に輸入している中国の景気が減速すると、世界的な資源価格が下落して、資源輸入国である日本にはメリットがあるかもしれません。

 そもそも中国の輸出が減った分は中国政府が景気対策を採って景気の下支えをするから大丈夫だ、という考え方もあります。

 いずれにしても、過度な懸念は不要だ、と考えてよさそうです。

米国の景気は拡大持続がメインシナリオ
 米国の景気後退を予想する市場関係者は多いようです。しかし、これも過度な懸念は不要だと思います。最大の根拠は米国の中央銀行であるFRBが利上げを続けていることです。

 FRBが景気の先行きを懸念しているのであれば、利上げを止めるか、少なくとも半年程度は利上げを先送りして様子を見るはずなのに、そうしていないわけですから、FRBは景気をそれほど懸念していないということになるわけです。

 そうであれば、FRBと市場関係者のどちらを信じるか、ということになります。どちらも筆者よりは米国経済に詳しそうですが、筆者はFRBを信じます。

 仮に筆者の予想が外れた場合には、読者各位におかれましては、筆者ではなく、FRBを批判して下さいね(笑)。

 冗談はさておき、米国の景気が後退すると市場関係者が考えている根拠が、いまひとつ定かではありません。多くの株式市場参加者から聞こえてくるのは「長短金利(実際には2年物と10年物)が逆転しそうだから」というものです。過去に逆転した時は遠からず景気が後退した、というのが根拠のようです。

 しかし、それでは「債券市場の参加者は景気後退を予想しているようだ。それなら景気は後退するのだろう」と言っているに等しいわけで、株式市場参加者の自尊心が疑われます(笑)。

 ふたたび冗談はさておき、石油ショックなどでインフレが懸念され、FRBが引き締めを行なっている時には長短金利は逆転しやすく、また景気も後退しやすいのですが、今回はそうではないので、過去の長短金利逆転時との比較は危険でしょう。

リスクを考えればキリがないが゙……
 その他、欧州の景気を心配している人もいます。英国のEU離脱が何の協定も結ばれずに実行されてしまったら欧州経済が大混乱するかもしれない、フランスのデモが拡大して全土の経済が混乱するかもしれない、等々ですが、筆者が見聞きしている範囲内では、そうした可能性は大きくないようです。

 中国と米国については、万が一の場合には経済が大きく落ち込んで日本の景気を腰折れさせる 可能性もありそうですが、それほど可能性が高くないことを過度に懸念しても仕方ありません。

 リスクシナリオについては、次回検討するとして、とりあえずは明るいメインシナリオを信じていただき、落ち着いた気持ちで正月を楽しんでいただければ幸いです。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/14907
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/394.html

[経世済民130] 先端技術研究、中国が8割で首位 ハイテク覇権に米警戒  中国「製造2025」後押し 中国、最高裁に知財の専門部門アピール
先端技術研究、中国が8割で首位 ハイテク覇権に米警戒
中国・台湾 科学&新技術 ビジネス
2018/12/31 2:25日本経済新聞 電子版
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日本経済新聞はオランダ学術情報大手エルゼビアと共同で、各国の研究開発力を探るため、世界の研究者が最も注目する先端技術の研究テーマ別ランキングをまとめた。次世代の電気自動車(EV)やロボットなど新産業の要となる電池や新材料などが目立ち、論文数を国別でみると上位30テーマのうち中国が23でトップ。米国の首位は7つにとどまり、ハイテク摩擦の様相を呈する米中の新たな火種になりそうだ。

調査は2013〜1…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39587340Q8A231C1MM8000/


中国「製造2025」後押し 先端研究番付、分野重なる
ネット・IT 中国・台湾 科学&新技術
2018/12/31 2:25日本経済新聞 電子版
保存 共有 その他
電池やバイオなど先端技術の研究テーマ別ランキングで8割の分野でトップに立った中国は、研究開発への投資を加速している。先端研究が5〜20年先の産業競争力につながると見込んでおり、力を入れる研究テーマはハイテク産業育成策「中国製造2025」にも重なる。中国が様々な研究分野で市場を独占する可能性もあり、米国の警戒はさらに高まりそうだ。

文部科学省の科学技術・学術政策研究所によると、中国の研究開発への投…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39587040Q8A231C1TJC000/



中国、最高裁に知財の専門部門 保護強化をアピール
2018/12/29 22:01
記者会見する北斗衛星導航システム管理室の冉承其主任(北京市、27日)
中国版GPS「北斗」稼働 全世界カバー、米は警戒も
2018/12/27 18:32
チャートを使って中国の不公正な貿易慣行を指摘するナバロ大統領補佐官(20日、米ホワイトハウス)
「中国、産業支配もくろむ」 ナバロ補佐官インタビ...[有料会員限定]
2018/12/22 8:19
中国人民銀行は8月に元安抑制策を打ち出した=ロイター ロイター
人民元、貿易戦争で下げ圧力 18年、節目の7元に...[有料会員限定]
2018/12/29 17:00
米中両国の対立は複雑化している(12月1日、ブエノスアイレス)=ロイター ロイター
米中「冷戦」の足音 覇権争い先鋭化[有料会員限定]
2018/12/24 2:00
アリババは越境EC向けの輸入商品を紹介する店舗を展開する(中国の杭州市)
中国、越境ECの税優遇拡大 市場開放アピール[有料会員限定]
2018/12/29 1:31

中国、米国産コメ輸入許可 貿易摩擦緩和の一環か
2018/12/28 19:39
習近平主席(左)とトランプ大統領=AP AP
トランプ氏「米中取引は順調」 習近平氏と電話協議
2018/12/30 10:10更新
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39584540Q8A231C1FF8000/?
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/395.html

[経世済民130] 対中関税、米政府が初の適用除外 日本企業にも恩恵 米中首脳が電話協議 中国12月景況感、2年10カ月ぶり低水準 節目割る

対中関税、米政府が初の適用除外 日本企業にも恩恵
貿易摩擦 経済 エレクトロニクス 自動車・機械
2018/12/31 2:26日本経済新聞 電子版
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米国政府が中国からの輸入製品に課している制裁関税について、特例で関税の上乗せ対象から外す「適用除外」が1千件弱で認められたことが30日、わかった。現地時間29日までに米通商代表部(USTR)がリストを公表した。日本企業では住友理工や日本精工など数社の申請が含まれた。

米国は中国から輸入する年間2500億ドル(約27兆5000億円)の品目に対し、知的財産侵害への制裁措置として3度の追加関税を発動し…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39584400Q8A231C1MM8000/?n_cid=SPTMG053


米中首脳が電話協議 貿易交渉「進展」強調
米中衝突 中国・台湾 北米
2018/12/30 17:25
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【ワシントン=永沢毅、北京=高橋哲史】トランプ米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が29日、電話で協議した。両氏が直接話すのは1日に訪問先のブエノスアイレスで会って以来。異例の年末協議は、双方が貿易戦争の打開に向けた交渉の「進展」を強調する場となった。米中のそれぞれが国内の経済に不安を抱えるなか、動揺する市場を落ち着かせるねらいが透ける。

習近平主席(左)とトランプ大統領=AP
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習近平主席(左)とトランプ大統領=AP

「長く、とてもよい協議だった」。トランプ氏は習氏との電話協議が終わると、すぐにツイッターで中国との貿易交渉に言及した。「もし合意が成立すれば、包括的であらゆる分野や争点を網羅したものになる。大きく進展しつつあるぞ!」

米中貿易戦争の激化を警戒して乱高下する金融市場を意識したのは間違いない。

中国共産党機関紙の人民日報によると、習氏は電話協議で「両国の関係は重要な段階にある」との認識を示した。そのうえで「ともに歩み寄ってウィンウィンかつ、世界の利益になる合意をできるだけ早くまとめたい」と述べた。人民日報(電子版)は30日、「中国と米国の共通認識は増え、差は縮まっている」との記事を配信した。

習氏は2019年が米中の国交樹立40周年であることにも触れた。呼応するように中国外務省の陸慷報道局長は30日、談話を発表した。「米中関係40年の進展は得がたいものであり、互いに戦略的な判断の誤りを防ぐべきである」と指摘し、米側に歩み寄りを求めた。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)は29日、米中が19年1月7日に北京で貿易協議の次官級会合を開くと報じた。この会合で一定の進展があれば、ワシントンで閣僚級の協議に格上げする可能性があるという。

米側が設定した貿易交渉の期限は19年3月1日だ。それまでに中国の知的財産保護やハイテク政策の修正などで合意できなければ、米国は中国からの輸入品2千億ドル(約22兆円)分にかける追加関税を10%から25%に引き上げる。

中国は1年で最も重要な政治イベントである全国人民代表大会(全人代、国会に相当)を3月5日から開く。この直前に米国との協議が決裂し、中国製品にさらなる追加関税がかかる事態を招けば、習氏への批判が高まるのは必至だ。

こうした事態を避けるため、中国は矢継ぎ早に米国の要求に配慮した措置を打ち出している。

全人代の常務委員会は23日、外資の技術を行政手段で強制的に移転することを禁じる外商投資法案の審議を始めた。29日には、最高人民法院(最高裁)が19年1月から知的財産権をめぐる紛争を専門に扱う法廷の設置を発表した。

中国経済は減速懸念が強まっている。21日に閉幕した19年の経済運営方針を決める中央経済工作会議は「外部環境は複雑で厳しく、経済は下押し圧力に直面している」と率直に認めた。米国との貿易戦争をこれ以上、先鋭化させたくないのは習指導部の本音だ。

しかし、それに向けた米国への譲歩が国内で「弱腰」と受け止められれば、習氏の求心力に響きかねない。

中国共産党の指導部である政治局は25〜26日に、党内のさまざまな問題を話し合う「民主生活会」を開いた。「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想を先頭に立って学び、貫徹する」。こう総括した会議のねらいは、米国との交渉本格化をにらみ、習氏の下での結束を確認することだったとみられる。

経済の先行きに不安を抱えるのはトランプ氏も同じだ。減税効果がはげ落ちる19年は、米国の経済も楽観できない。互いに弱みをみせずに、どこまで譲歩を引き出せるか。両首脳の駆け引きは始まったばかりだ。

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米中を横目に巨大貿易圏 TPP11発効、企業に商機[有料会員限定]
2018/12/30 0:00

 


中国12月景況感、2年10カ月ぶり低水準 節目の50割る
中国・台湾
2018/12/31 11:11

【北京=高橋哲史】中国国家統計局が31日発表した2018年12月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は前月に比べ0.6ポイント低い49.4だった。4カ月連続の低下で16年2月(49.0)以来、2年10カ月ぶりの低い水準となった。米国との貿易戦争で輸出を中心に新規の受注が振るわず、製造業の景況感が悪化している。

PMIは製造業3000社のアンケート調査から算出し、生産や新規受注が50を上回れば拡大、下回れば縮小を示す。好不況を判断する基準である50を下回ったのは16年7月以来、2年5カ月ぶり。

低下が目立ったのは輸出入に関連する指数だ。輸出に限った新規受注は前月比0.4ポイント低下の46.6と、7カ月連続で節目の50を下回った。一方、輸入に限った新規受注も同1.2ポイント低い45.9となり、6カ月連続の50割れとなった。

7月以降、トランプ米政権が中国からの輸入品に追加関税をかけ、中国も米国からの輸入に制裁関税を適用し、貿易戦争が激しくなっている。中国の輸出入にかかわる産業が幅広く打撃を受けており、景況感の悪化が続いている。

国家統計局の趙慶河・高級統計師は「国際的な貿易摩擦の激化や、グローバルな経済成長の減速といったさまざまな要因の影響を受け、中国の製造業の発展環境は安定しつつも変化が起きている」との分析を示した。

積極的な経済対策でも中国経済の減速は避けられそうにない(習近平国家主席)=ロイター ロイター
中国経済、19年6.2%成長に減速 エコノミスト...[有料会員限定]
2018/12/26 16:00
中国はインフラ投資など財政出動を拡大する(江蘇省蘇州市の工事現場)
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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39590270R31C18A2I00000/?nf=1


http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/396.html

[政治・選挙・NHK255] 「低空飛行は日本の威嚇」防衛省の公開映像に韓国メディア レーダー照射問題 渋る防衛省、安倍首相が押し切る=日韓対立泥沼化
「低空飛行は日本の威嚇」防衛省の公開映像に韓国メディア レーダー照射問題 


韓国“暴挙”海自機にレーダー照射
2019.1.1
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防衛省が公開した韓国海軍駆逐艦による火器管制レーダー照射の映像。能登半島沖(日本EEZ内)で海上自衛隊P−1哨戒機により撮影された=20日、能登半島沖(防衛省提供) 防衛省が公開した韓国海軍駆逐艦による火器管制レーダー照射の映像。能登半島沖(日本EEZ内)で海上自衛隊P−1哨戒機により撮影された=20日、能登半島沖(防衛省提供)
 【ソウル=名村隆寛】韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊哨戒機へのレーダー照射当時の映像を防衛省が公開したことに対し、韓国メディアでは「低空飛行した自衛隊機の威嚇」や「安倍晋三首相があおっている」との批判が出ている。

 31日付の東亜日報は社説で「哨戒機が接近した距離だけ見ても、韓国駆逐艦の乗組員に脅威を与えるのに十分だった」と強調。「支持率が落ちている安倍首相が国内世論のためにあおっているとの観測も出ている」とも批判した。

 ソウル新聞(同日付)に至っては「哨戒機の低空飛行は米軍艦に自殺攻撃を敢行した『神風』を連想させるという指摘もある」と自衛隊機を強引に神風特攻隊に結びつけている。

 また、韓国日報(同)は「一方的な動画公開は深刻な外交的欠礼」と断じ、「政治指導者が国内政治に利用しようとむしろ葛藤をあおったのは嘆くしかない」と安倍首相を批判した。ただし、同紙は映像公開前に「防衛省に自信があるなら『レーダー襲撃』資料から公開せねばならない」と日本側に「誠意ある回答」を求めていた。その要求への回答を、今さら「欠礼」とつじつまが合わない結論付けをしている。

 ハンギョレ紙(同)も「いったい安倍首相は韓日関係をどこまで悪化させる考えなのかを問いたい」とし、「国内の政治的利益のために隣接国との外交葛藤を活用する態度を直ちにやめるべきだ」と安倍首相の“悪意”を強調。日韓関係悪化の責任を安倍首相に転嫁した。

 ただ、これら“安倍陰謀論”ともいえる主張は、映像公開の前から韓国のメディアや政治家からは何度も出ていた。韓国側に責任があろうが、問題発覚当初から韓国国内ではそのように決め付けた見方が主流だ。(産経新聞)

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https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190101/soc1901010002-n1.html

 

 
渋る防衛省、安倍首相が押し切る=日韓対立泥沼化も−映像公開
2018年12月28日18時38分

 韓国駆逐艦による海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題をめぐり日韓の主張がぶつかる中、防衛省が「証拠」として当時の映像の公開に踏み切った。同省は防衛当局間の関係を一層冷え込ませると慎重だったが、韓国にいら立ちを募らせる安倍晋三首相がトップダウンで押し切った。日本の正当性を世論に訴える狙いだが、泥沼化する恐れもある。

【動画】レーダー照射、映像公開

 防衛省は当初、映像公開について「韓国がさらに反発するだけだ」(幹部)との見方が強く、岩屋毅防衛相も否定的だった。複数の政府関係者によると、方針転換は27日、首相の「鶴の一声」で急きょ決まった。
 韓国政府は11月、日韓合意に基づく元慰安婦支援財団の解散を決定。元徴用工訴訟をめぐり日本企業への賠償判決も相次ぎ、首相は「韓国に対し相当頭にきていた」(自民党関係者)という。
 そこに加わったのが危険な火器管制レーダーの照射。海自機への照射を否定する韓国の姿勢に、首相の不満が爆発したもようだ。
 首相の強硬姿勢は、2010年9月に沖縄県・尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件で対応のまずさを露呈した旧民主党政権の教訓も背景にある。
 当時、海上保安庁が撮影した映像を菅内閣は公開せず、海上保安官がインターネット動画サイトに投稿して騒ぎが拡大。首相は13年12月の党首討論で「出すべきビデオを出さなかった」と批判した。政府関係者は今回の首相の胸の内を「後で映像が流出するのも嫌だから『出せ』と言っているのだろう」と解説した。(2018/12/28-18:38)

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2018122800890&g=pol


http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/655.html

[政治・選挙・NHK255] 「レーダー照射」韓国がそれでも非を認めない理由はこれではないか 真相解明は翌年に持ち越されたが…  

 

「レーダー照射」韓国がそれでも非を認めない理由はこれではないか


真相解明は翌年に持ち越されたが… 橋 洋一 経済学者 嘉悦大学教授

デタラメなのは明白

年末の忙しいときに、とんでもないニュースが入ってきた。20日(木)午後、能登半島沖で、海上自衛隊機P−1が韓国海軍駆逐艦から火器管制レーダー照射されたという(http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/21g.html)。
大問題となっているのはご承知の通り。その後、韓国側は「レーダー照射はしたけど発表しないでほしい」「悪天候、視界不良で、遭難船を捜索していた」「捜索中に日本の哨戒機が威嚇して低空で上空に入ってきた」「やはりレーダー照射してない」と、二転三転するグダグダの反論を繰り返していた。
これに対して、防衛省は冷静に反論してきた。その様子は、岩屋防衛大臣の記者会見(25日 http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2018/12/25a.html など)や、防衛省の反論(22日 http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/22a.html、25日 http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/25b.html)などをみればわかる。
しかし、韓国側がこれらに真摯に向き合わないため、一向に埒があかない。その中で、日本のマスコミの中でも、韓国側の意見をそのまま伝えるような「悪質な印象操作」ともいえるようなものも出てきた。
28日昼のNHKニュースがそれだ。岩屋防衛大臣が、レーダー照射をされた証拠となる映像を「午後にも出す」というニュースの中で、次の映像が一定時間の間、放映されたのだ。あたかも、韓国の発表どおりに「韓国海軍の上空を海上自衛隊P1が飛行している」かのようだ。
これは、明らかな合成写真である。そもそも哨戒中のP1が車輪を出しているはずない。こんな合成写真を使用したNHKの放送意図が筆者にはさっぱりわからない。
さすがにこの放送は酷かったので、今ではNHKのウェブサイト上では、このように下の画像に差し替わっている。

こうした事態の中、28日午後、防衛省は動画を公開した(http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/28z.html)。YouTube上でも、13分以上の映像が公開されている(youtu.be/T9Sy0w3nWeY)。コメント欄にも17000件以上のコメントが寄せられている。その多くは映像を公開したことに好意的だ。
この動画をみると、これまでの日本防衛省の説明とはまったく矛盾がないが、韓国の反論・説明がまったくデタラメだったことは明白だ。
公開を批判するのはなぜ?
それでも、韓国は「レーダー照射はなかった」「この映像は客観的な証拠ではない」としらを切っている。「英語が聞き取れなかった」「電波が微弱」という見苦しい言い訳もしている。
映像を見ればわかるが、確かに英語は流暢ではないが、コミュニケーションにはまったく支障がないレベルだし、もし聞き取れなかったとしても、日本側が三つの周波数を用いているにもかかわらず、韓国側が無応答のはずないだろう。
軍事機密があるので、完全に客観的な証拠が開示されているとはいえないとしても、これを見ればよほどの韓国びいきの人以外は、韓国側が悪いと思うだろう。
それにしても、前述のNHKをはじめとする一部のマスコミの報道はふがいない。何に気を使っているのか知らないが、合成写真を使うほどではないにせよ、正しいことを伝えているものが極めて少ない。
こういう時に、防衛省がマスコミを通さずにYouTubeで直接映像を公開するのはいい方法だ。従来は役所の情報を独占することでマスコミは優位性を保っていたが、このように役所が直接情報を発信するようになれば、そのようなメディアはまったく用なしになる。
情報を官庁が自分たちで出すようになれば、マスコミ側も自分たちで独自の報道をしなければならなくなるが、情報源が断たれたためなのかなんなのか、首をかしげたくなるような報道が目立つ。
その一例が、28日の時事通信「渋る防衛省、安倍首相が押し切る=日韓対立泥沼化も−映像公開」(https://www.jiji.com/jc/article?k=2018122800890&g=pol)だ。
これを一部のマスコミが取り上げているが、記事中にもあるように、菅直人・民主党政権時に起こった、尖閣諸島での中国漁船と海上保安庁の船の衝突事件の時に、菅政権は動画を公開しなかった。
この不手際が問題となり、国民から批判を浴びたことはそう簡単に忘れられることではない。このときの教訓からすれば、公開するのが当たり前である。それなのに、安倍総理がゴリ押しして公開を進めたような印象を与える記事だ。
過去に似たような事例はあったが…
今回のレーダー照射事件に限らず、何が何でも「安倍総理が悪い」に持っていこうとする一部マスコミや一部識者の意見は、ちょっと度をして酷いと言わざるを得ない。
そういえば、今回の動画公開を批判する人たちのなかには、特定秘密保護法や自衛隊の日報問題では「情報公開せよ」と叫んでいた人たちとかなり重なってみえる。これは、彼らが二枚舌であることを示している。
今回公表された動画などをみれば、悪いのは韓国側であるが、それにしても、これまでの対応の稚拙さを見ていると、韓国の危機管理体制にかなりの不安を抱いてしまう。実は、その方がある意味では心配している。
事件発覚後の26日朝、筆者はラジオ番組でこの問題を解説した。そのときには「韓国側の説明が二転三転して一貫性がない」と説明したが、筆者は事件直後に、防衛関係者から詳細な情報を得ていた。
そのため筆者は番組内で「いずれ韓国側に非があることが判明するので、韓国側は現場のミスと謝罪し、関係者を処分すべきだ」といった。筆者に詳細を教えてくれた防衛関係者も、韓国がそうすれば大きな問題には至らないという認識だった。
ところが、韓国側は現場のミスを認めるどころか、映像が公開されても認めようとしない。
実は、韓国以外にも似た事例は過去にあった。1987年の「対ソ連軍領空侵犯機警告射撃事件」だ。日本の領空を侵犯したソビエト軍偵察機に対して、自衛隊が実弾警告射撃を行った。日本はソ連に抗議し、「ソ連は計器故障による事故」として関係者を処分した。その後もろもろのやり取りはあったが、基本的にはソ連側の処分をもって終わった話だ。
ここからもわかる通り、おそらく韓国が「偶発事故」として関係者を処分していれば、それで終わった案件だろう。もしも韓国側が、「日本が映像記録を残していないだろう」と考えていたなら、現状認識不足は致命的である。
そうではなく「日本政府はまさか映像を公開しないだろう」というような、日本に対する甘えが、現場にも政府上層部にもあるのだろう。これは、決して友好国として望ましいものではない。
なぜ韓国はごまかし続けるのか
筆者はこのように推測しているが、もしもこのほかに、韓国側に「正直に言えない理由」があるのだとすれば、それは日韓関係においてかなり重症である。
そのことについて、28日の読売新聞で、興味深い記事があった。それは、韓国が日本海周辺で密漁していたと思われる北朝鮮の漁船を日常的に救助していたからというものだ(https://www.yomiuri.co.jp/politics/20181228-OYT1T50096.html?from=tw)。これは、確定的証拠はない仮説にすぎないが、確かに防衛省が公表した動画とも整合的である。
現場の能登半島沖は、好漁場の「大和堆」の周辺で、北朝鮮漁船によるイカの密漁で問題になっているところだ。「大和堆」は、平均1750メートルと深い水深の日本海にあって、浅いところで、好漁場になっているが、ここは日本の許可なしでは漁ができない排他的経済水域内である。
しかし、この数年、大和堆の海域には中国や北朝鮮の漁船が大量に押し寄せ、密漁をしているのは周知の事実だ。水産庁の取締船や海上保安庁がそれらの漁船を追い出しているが、手が回らない状態だ。
北朝鮮は、現在国連の経済制裁を受けているので、石油は手に入りにくいが、大和堆にやって来る漁船は、北朝鮮軍からの石油割当を受けているはずなので、軍の指揮下にあるとみていいだろう。
その北朝鮮の密漁漁船を韓国軍が(日常的に)救助していたとすれば、国連の制裁決議を北朝鮮に課している国際社会は「韓国が北朝鮮の国連制裁決議の尻抜けを手助けしていた」というように見えるだろう。
ひょっとしたら、韓国がひた隠しにしたいのはこのことなのかもしれない。日本の海上自衛隊に見られたくないものを見られたから、そのシラを切り続けるために、日本に強硬な態度をとり続けているのではないかと疑ってしまう。
真相の解明は翌年に持ち越されたが、日本は毅然とした態度を取り続けることが重要だ。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59258?page=4


http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/656.html

[環境・自然・天文板6] 米探査機、史上最も遠い天体に到達 太陽から65億km ニューホライズンズ、宇宙飛行13年で「ウルティマトゥーレ」に

米探査機、史上最も遠い天体に到達 太陽から65億km
ニューホライズンズ、宇宙飛行13年で「ウルティマトゥーレ」に
北米 科学&新技術
2019/1/2 6:48
https://www.nikkei.com/content/pic/20190102/96958A9F889DE1EBE7EBEAEAE6E2E2E0E2E3E0E2E3EBE2E2E2E2E2E2-DSXMZO3942676027122018CR0002-PB1-3.jpg

【ワシントン=鳳山太成】米航空宇宙局(NASA)は1日、無人探査機「ニューホライズンズ」が人類の探査史上、最も遠い天体に到達することに成功したと発表した。宇宙を13年かけて飛行し、太陽から約65億キロメートル離れた天体「ウルティマトゥーレ」に接近した。太陽系の初期の姿をとどめているとみられ、太陽系の歴史解明につながる成果を期待している。

小惑星「ウルティマトゥーレ」(右)と無人探査機「ニューホライズンズ」の想像図=NASA提供・共同

米東部時間1日未明(日本時間同日午後)に接近し、約10時間かけて探査機から地球に届けられた信号を確認した。高速で飛行する探査機が天体を通り過ぎるときに、約3500キロメートルまで近づいて高解像度カメラなどで観測した。詳細な撮影画像は数日後から地球に順次届いて公開される予定だ。

ウルティマトゥーレは長さ32キロメートルのピーナツ状の岩石天体とみられる。太陽系の最も外側を回る惑星の海王星よりもさらに遠い「カイパーベルト」と呼ばれる天体の密集地帯で14年に見つかった。

ニューホライズンズは地球を06年1月に出発した後、木星に接近するなどして太陽系の外側を目指した。15年には冥王星にも到達して地表を観測した。

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2018/6/26 6:30
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39598840S9A100C1000000/
http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/685.html

[国際25] そろそろ現実を直視せよ、米中の海軍戦力は逆転する 練度もメンテナンス力も低下している米海軍  
そろそろ現実を直視せよ、米中の海軍戦力は逆転する
練度もメンテナンス力も低下している米海軍
2019.1.3(木) 北村 淳
南シナ海で強襲揚陸艦「LHD-1」から離陸するMV-22Bオスプレイ(出所:米海軍、資料写真)
 2018年は、中国の海洋権益拡大とりわけ南シナ海での軍事的優確保が着実に進展した年であった
(本コラム参照)
・「FONOPに意味なし? 南シナ海で中国の勝利が濃厚」(2018年3月29日)
・「南シナ海の教訓、中国に取られたらもう取り返せない」(8月9日)
・「中国海軍が新研究所の建設で『最大の弱点』克服へ」(9月6日)
・「牙を剥いた中国艦、アメリカ駆逐艦に突進」(10月4日)
 トランプ政権は、アメリカの国防戦略を「テロとの戦い」から「中国やロシアとの対決」に大きく変針したが、中国の拡張主義的な海洋戦略を抑え込むことはできていない。
(本コラム参照)
・「中国との対決に舵を切ったアメリカ」(2018年3月1日)
・「米国が国防費を対中戦にシフト、海洋戦力強化へ」(9月20日)
 南シナ海をはじめとする東アジアの海洋での軍事バランスの大変革の要因は、中国海洋戦力(海軍力・航空戦力・長射程ミサイル戦力)の持続的な増強にあることは言うまでもない。しかしながら、要因はそれだけではない。東アジア方面に展開させることができる「アメリカ海軍力の弱体化」こそが、今や東アジア軍事バランス大変動の大きな要因になっている。
数量的には米海軍を凌駕している中国海軍
 東アジア方面におけるアメリカの海軍力の低下は、しばしば中国海軍との戦力の比較によって論じられている。

 ごく単純な方法は、米中両海軍が保有している艦艇数の比較である。2018年12月現在で、アメリカ海軍自身が「戦闘部隊艦艇」としてリストアップしている軍艦保有数は「戦闘艦艇」が227隻、「補助艦艇」が60隻、合計287隻である(このほかにも海軍が運用している補助艦船は多数あるが、「戦闘部隊艦艇」に計上されている補助艦艇は60隻となっている)。
 そして、インド太平洋を重視するという米海軍の方針では、6割を太平洋側、4割を大西洋側に割り当てることを目標にしている。この目標が達成された場合には、単純には、東アジア方面に展開して中国海軍と対峙することができる戦闘艦艇は137隻、補助艦艇が36隻、合計173隻ということになる。
 一方、中国海軍は、艦艇保有数などが明確に公表されているわけではないが、上記の米海軍「戦闘部隊艦艇」に準拠して数字を割り出すと、「戦闘艦艇」が356隻、「補助艦艇」が55隻、合計411隻となる。したがって、東アジア海域(南シナ海、東シナ海、西太平洋など)での米中海軍の戦闘艦艇だけを単純に比較した場合、137対356と中国側が2.6倍ということになる。

 ただし、新興海軍といえる中国海軍が近代的海軍へと成長したのは過去10年程度であり、依然として旧式艦艇を多数運用している。何をもって“旧式”そして“近代的”とみなすかに関して明確な基準はないものの、NATO海軍関係者の間での慣例に従うと、中国海軍の「戦闘艦艇」356隻のうち98隻が旧式艦艇、258隻が近代的艦艇ということになる。この数字を比較しても、中国側が1.9倍ということになるのだ。
米海軍が危惧する深刻な練度低下
 もちろん、艦艇保有数の単純比較だけで戦力を論ずることはできない。それぞれの艦艇自体の性能、搭載されている兵器類、レーダーやソナーなどのセンサー類、通信・情報システムなどの種類や性能、艦艇に乗り組む将兵の練度や士気、などをはじめとする「質」を比較しなければならない。
 しかしながら、人的資源や、訓練内容、士気の状態はもとより、兵器やセンサーに関してすら「質」の比較は主観的要素が入り込むため困難である(もっとも、2000年当時に米海軍と中国海軍、あるいは海上自衛隊と中国海軍を比較した場合、米海軍や海上自衛隊の質が完全に中国海軍を上回っていたことに異論を挟む余地はない)。
 だが、米海軍の練度がかつてより低下していることは事実だ。2017年に、米海軍太平洋艦隊所属艦艇が、東アジアの海域で大きな死亡事故3件を含む数々の衝突事故を引き起こした。海軍内部で厳重に行われたその調査報告によれば、アメリカ海軍の訓練は予算削減のあおりを受けて大きくレベルダウンしており、艦長はじめ指揮官たちの資格要件も甘くなり、海軍将兵の練度が大いに低下していることが問題視されている。
 それに加えて、南シナ海や東シナ海での中国海洋戦力の急激な増強に対処するため、太平洋艦隊艦艇の出動サイクルが短縮され、作戦行動中の艦内での任務量も増加しているため、いわゆる過労状態となってしまい、艦艇乗り組み将兵たちの士気も低下してしまっている。
兵器類でも猛追する中国海洋戦力
 兵器類に関しても、米中の差が逆転するまでには至っていないものの、トータルで考えると拮抗状態に近づいている。
 過去数十年にわたって、アメリカ海軍は航空母艦を主戦力として位置づけており、米海軍空母打撃群は米海軍そしてアメリカの力の象徴と考えられてきた。そのため米海軍は、航空母艦と空母艦隊を敵の航空機や潜水艦から守り抜くための防御システムの充実に心血を注いできた。その傑作がイージスシステムと呼ばれる超高性能防空戦闘兵器である。イージスシステムに組み込まれている防空ミサイル(SM-2、SM-3、SM-6など)も極めて性能が高い。
 対空防御だけでなく、恐ろしい存在である潜水艦に対しても、艦載ソナー、対潜水艦ヘリコプター、対潜哨戒機をはじめ対潜攻撃兵器も充実させた。
 しかし、水上戦闘艦艇対水上戦闘艦艇という戦闘形態は過去のものとなったと判断した米海軍は、敵水上艦艇攻撃能力にはそれほど力を入れてこなかった。
 一方、中国海軍にとっての主たる任務は、西太平洋から東シナ海や南シナ海に接近してくる米海軍艦艇や海上自衛隊艦艇を攻撃して、中国沿岸海域への接近を阻止することにある。そのため、水上戦闘艦艇からも、潜水艦からも、航空機からも、そして地上からも敵艦艇を攻撃する戦力の強化に努めた。
 その結果、様々な種類の対艦ミサイルが誕生し、DF-21CやDF-26といった対艦弾道ミサイルまで手にするに至っている。さらには、弾道ミサイル以上の高速で敵艦に突っ込む極超音速兵器の開発では、ロシアとともに中国がアメリカに先んじているとも言われている。
 このように、防空力ではアメリカ海軍がリードしているかもしれないが、対艦攻撃力では中国海洋戦力(海軍、航空戦力、長射程ミサイル戦力)が、東アジア方面に展開してくるアメリカ海軍を凌駕していることは確実である。
低下する米海軍の造艦メンテナンス力
 このような状況に危機感を強くした米海軍当局そしてトランプ政権は、海軍強化策を打ち出し、「355隻艦隊の建設」すなわち上記の「戦闘部隊艦艇」の数を少なくとも355隻に増強させる方針を決定し、実行に移し始めた。
 単純に言うと、戦闘艦艇の建造を加速させて295隻にすることにより355隻艦隊を生み出そうという施策である。今後退役する艦艇も少なくないので、少なくとも80隻以上の戦闘艦艇を建造する必要があると見なされている。ただし、増強著しい中国海軍や今後再興が見込まれるロシア海軍などと対峙するには、355隻という目標では低すぎ、400隻艦隊あるいは500隻艦隊が必要であるといった分析も少なくない。
 いずれにしても、80隻ないしは100隻あるいはそれ以上の多数の軍艦を建造しなければ、アメリカ海軍が中国海軍を牽制して、東アジアでの中国の軍事的台頭を押さえ込み、同盟諸国の盟主として役割を維持することはできない。
 しかしながら、現在のアメリカ自身の軍艦建造能力ならびに軍艦メンテナンス能力では、355隻艦隊の誕生には少なくとも30年を要すると言われている。
 たとえば、米海軍の軍艦は、米国内の民間造船会社(インガルス造船所、バス鉄工所、ニューポート・ニューズ造船所、ジェネラル・ダイナミックス・エレクトリック・ボート、オースタルUSAなど)が建造しているが、有能な技術者や熟練工の不足傾向に苦しんでいる。現在においてすらそうした状態の造船会社が、建艦能力を飛躍的に高めることは至難の技である。
 それに、大艦隊を維持するためには軍艦のメンテナンスや修理が欠かせないが、そのメンテナンス能力も、頭打ちというよりは欠陥状態に直面しているのが現状である。
 米海軍艦艇のメンテナンスや小規模な修理は、かつては海軍工廠と呼ばれていた米海軍造船施設(ノーフォーク、ポーツマス、ピュージェット・サウンド、パールハーバー)で実施される。ところがそれらの海軍メンテナンス施設での作業実績は極めて悪い。過去5年間で作業がオンタイムに完了した率は、各施設で45%、34%、29%、14%であり、逆に70日以上遅延した率は27%、30%、25%、40%となっている。その結果、海軍の作戦が阻害された述べ日数は、2945日、2066日、4720日、4128日という惨憺たる状況に陥っている。
 これらの海軍施設の設備の老朽化は進んでおり、作業員の安全対策も遅れているため、作業員の質の低下が加速している。海軍当局や議会調査局それに会計検査院などは、メンテナンス状況はますます劣化していくものと警鐘を鳴らしている。
日本は現状を直視せよ
 以上のように、トランプ政権は「中国との対決」「大海軍の再建」といった威勢の良い目標を掲げているものの、実際に東アジア海域に展開するアメリカ海軍戦力が中国海軍を抑止できるだけ強力になりうるのか? という問いには大きな疑問符を付けざるを得ない。
 日本政府・国防当局は、上記のようにアメリカ海軍力は弱体化しているという現状を認識するとともに、その再強化には多大の困難が伴うという事実を直視する必要がある。
 そのうえで、これまで通りアメリカにベッタリ頼り切って、アメリカの軍事戦略に組み込まれ中国との対決姿勢を貫いていくという方針を維持し続けるのか、あるいは日本独自の防衛戦略を打ち立てそのための戦力を再構築するのか、2019年こそは真剣な議論が望まれる。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55100

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[国際25] 本当にできるの? 中国で始まったゴミの分別 高まる環境意識、日本のプラントメーカーに追い風も 
本当にできるの? 中国で始まったゴミの分別
高まる環境意識、日本のプラントメーカーに追い風も
2019.1.2(水) 花園 祐
中国・上海の街並み
(花園 祐:中国在住ジャーナリスト)

 筆者の住む上海市内の住宅団地(中国語で「小区」といいます)では、数カ月前よりゴミの分別収集が行われるようになりました。

 中国では経済成長に伴って深刻になってきたゴミ問題に対応するため、2017年3月に国務院が「生活ごみ分別制度実施計画」を発表し、2018年から全国主要46都市でゴミの分別収集を試験的に実施しています。中国のその試みは、ゴミ処理施設の建設で高い競争力を持つ日系重機メーカーの受注増加にもつながっています。

 そこで今回は、上海市で行われているゴミの分別収集状況と、最近の中国のゴミ事情について紹介したいと思います。

ゴミを4種類に分別
 これまでの中国のゴミ収集は、住宅前のポリバケツの中に捨てられたゴミを廃品収集業者が勝手に収集するというシステムでした。ゴミの分別は行われません。また、住民はゴミを何時に捨てても大丈夫でした。

 しかし、2018年から中国の全国46都市でゴミの分別収集が始まります。住民はゴミを「生ゴミ」、包装紙をはじめとする「一般ゴミ」、金属やプラスチックなどの「資源ゴミ」、電池や一部家電などの「有害ゴミ」の4種類に分けて捨てなければならなくなりました(下の写真)。

上海市内の住宅団地のゴミ収集場所。ゴミを捨てるときは4種類に分けなければならない
 ゴミが出たらまず家庭で分別し、ゴミ収集所に持っていき、4つの色に色分けされたポリバケツの中へ捨てます。生ゴミと一般ゴミは基本的に毎日1回収集されます。資源ゴミと有害ゴミは、一定量が集まったところで業者へ連絡すると収集してくれるという仕組みです。

指導員が見張ってルールを徹底
 ゴミを捨てる時間も指定されるようになりました。筆者の住む小区では、ゴミを捨てていい時間は7〜10時と17〜20時の2回です。それぞれの時間帯には常にボランティアの指導員がゴミ収集所に立って、分別内容の確認、指導を行っています。もっともこの指導員は本当は「ボランティア」ではなく、共産党員である住人が党組織の指令を受けてやっているのではないかと推察されます。

 活動自体は比較的しっかり行われています。指導員がゴミ袋の中身を確認して、どのゴミがどの種類に当てはまるのかなどを教えている姿が毎朝見られます。

 またゴミ捨ての際、きちんと分別ルールに従っていると、指導員からエコポイント(「緑色積分」といいます)をもらうことができます。貯めると日用品などと交換できるポイントで、自治体ごとに管理運営されています。なお、筆者の住む地区では交換品の中にゴミ袋も入っていました。

分別開始によって何が変わったか?
 ゴミの分別が始まって何が変わったのでしょうか。

 筆者が第1に感じた点としては、ゴミの散乱が減りました。以前はゴミ収集場所にあるポリバケツに住人たちが勝手気ままにゴミを投げ捨て、それを廃品収集業者たちが漁り、結果的にゴミが周囲に散乱するという光景がよく見られました。それが分別収集が始まって以降、ゴミを漁りに来る業者が減りました。やはり、指導員が立つようになった効果が大きいのでしょう。ポリバケツも、満杯になる前に指導員がすぐ新しいポリバケツを用意するので、ゴミの散乱はあまり見なくなりました。

 第2に、ゴミ収集車の作業時間が短くなりました。筆者の住んでいる部屋はゴミ収集場所に近いため、ゴミ収集車が来るとエンジン音ですぐに分かります。以前と比べると、エンジン音を聞く時間が確実に短くなっています。ゴミ収集車が、来てもすぐに作業を終えていなくなるからだと思われます。

 また、収集時に窓を開けていると漂ってくるゴミの臭いも、以前より弱くなった気がします。おそらく分別によってゴミの量が減った、もしくは収集がはかどるようになったからではないかと見ています。

 このほか、分別収集が始まった当初は、ゴミ捨て場の前で指導員と住人がルールを巡って朝早くからよく言い争いをしていました。その大きな声でよく起こされたものですが、開始から数カ月経った今は言い争いの声は聞こえなくなりました。おそらく住人の間でもルールが浸透してきたのでしょう。

市内スーパーには分別に対応したゴミ箱も出現
政府の評価はアモイ市が全国トップ
 実は筆者は心の中で、中国人にゴミの分別をやらせるなんて人類の有人火星着陸よりも難しいミッションではないかと思っていました。ところが、前述の通り徐々にですが住民の間にゴミ分別は浸透し、成果を上げてきています。

 ただし、これはあくまで住民が裕福な上海市での出来事です。ほかの中国の都市でも同じ状況かは不明です。そこでネットで調べたところ、役人に競争意識を持たせる目的か、中国政府が試行対象の46都市のゴミ分別状況を採点して順位付けし、公表していました。


 この順位表によると、2018年第2四半期においてはアモイ(厦门)市が全国トップで、上海市は5位につけています。上位は、やはり中国国内でも裕福な都市が名前を連ねています。とはいえ、上海よりゴミ分別で評価の高い都市が他に4市存在する模様です。

中国のゴミ排出量は日本の10倍以上
 では、そもそもなぜ中国はゴミの分別収集に乗り出したのでしょうか。理由はいたってシンプルで、近年になってゴミの量が膨大になったため、収集効率を向上させることが必要になったのです。

 現在の中国のゴミ排出量はどの程度なのか。今のところきちんとした政府統計は出されていませんが、精華大学の環境学教授の調べでは年間4憶トン超という推計値が出ています。

 また、環境関連の情報発信を行っている「大話新能源」というネットユーザーが各ゴミ関連公開データから総量を詳細に分析しています。この人物の試算によると、中国人1人当たりの平均ゴミ排出量は1.16kg/日、中国全土の合計ゴミ排出量は年間5.8億トンという数字が出ています。

 日本の環境省の発表によると、2016年における日本の1人当たり平均ゴミ排出量は0.925kg/日、日本全国の合計ゴミ排出量は年間4317万トンです。つまり、現時点で中国の1人当たり排出量はすでに日本を上回っています。合計排出量に至っては人口差も加わって10倍超の数値に達していることとなります。

日系重機メーカーに吹く追い風
 中国では、増え続けるゴミの収集だけでなく、その後の焼却施設の整備も急務となっています。その影響を受けてか、近年、発電機能を備えたゴミ焼却施設を建設する際に、日系重機メーカーの受注が相次いでいます。中国におけるゴミ分別の普及が日系メーカーにとって追い風となっているのです。


 上の表の通り、2018年だけでも日立造船が2件、川崎重工業に至っては6件も連続受注に成功しました。またJFEエンジニアリングも、2015年に中国自動車メーカービッグ3の一角である、東風汽車のグループ会社とゴミ焼却施設事業で合弁会社を設立するなど、中国での営業を強化しています。

 中国メディアの反応を見ていても、焼却施設の建設技術や実績があることは言うまでもなく、日本はゴミの分別において世界で最も進んだ国であり、ゴミ問題においては見習うべき点が多いとよく紹介されています。

 日本がよく誇る環境技術は「実際には言うほど大したものでない」というケースが多いのですが、ゴミ焼却関連プラントに関しては、文句なしに技術力が高いと太鼓判を押すことができます。筆者は、もっと世界にアピールすべきだとかねてより評価していました。それだけに同じ発電施設なら日本は原発の輸出よりも、環境改善を旗印にもっとゴミ焼却施設を官民挙げて売り込むべきではないでしょうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55016
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/112.html

[国際25] 米国議会で広まる中国国営メディア規制の動き  超党派の14議員が米AP通信と新華社の業務提携拡大に懸念を表明  
米国議会で広まる中国国営メディア規制の動き
超党派の14議員が米AP通信と新華社の業務提携拡大に懸念を表明
2019.1.2(水) 古森 義久
米国ニューヨークにあるAP通信本社ビル(出所:Wikipedia)
(古森 義久:ジャーナリスト、産経新聞ワシントン駐在客員特派員)

 米国の民間通信社、AP通信が、中国の国営通信社である新華社との業務提携を強化した。しかし米国では、この提携強化は中国政府のプロパガンダ工作に利用される恐れがあるとの懸念が出ている。

 米国連邦議会上下両院の超党派14議員は、AP通信と新華社の業務提携に対する懸念を連名で表明し、AP通信に提携の内容を公表するよう求める書簡を送った。この異例の動きは、米国政府の新華社への警戒の強まりを反映している。最近、米国政府は新華社を中国共産党政権の対外宣伝工作機関であると断じ、米国での活動内容を司法省に届け出させる新たな措置をとった。

米国政府は「新華社は報道機関ではない」
中国・北京にある新華社の本社(出所:Wikipedia)
 2018年12月19日、米国議会の下院のマイク・ギャラガー(共和党)、ブラッド・シャーマン(民主党)、上院のマルコ・ルビオ(共和党)、マーク・ウォーナー(民主党)ら超党派の合計14人の議員は、AP通信のゲイリー・プルイット社長あてに書簡を送り、同社が11月に発表した新華社との業務提携・協力の拡大合意の内容を明らかにすることを求めた。

 ギャラガー議員らの発表によると、同書簡の趣旨は以下の通りだという。

・AP通信は独立した民間のジャーナリズム機関である。だが、それとはまったく対照的に、新華社の使命の核心は、中国内外で中国共産党の正当性と行動への理解を広めることにある。

・新華社は米国内でも中国共産党のプロパガンダ機関として機能している。さらには、米側の情報を集める諜報機関としての機能も果たしている。その任務には、外国の報道機関への宣伝の浸透と影響力の行使も含まれる。

・米国政府は新華社のそうした機能や任務を重く見て、最近、米国における「外国代理人」に認定した。その結果、新華社は報道機関ではなく中国政府の政治活動団体とみなされるようになった。

・AP通信は、中国政府機関である新華社との提携を強化することによって、中国側からの宣伝が浸透し、影響を受ける可能性が高くなる。この可能性は米国の国家安全保障にも関わるため、AP通信は新華社との提携内容を公表すべきである。

 以上の趣旨の書簡の意義について、共和党のギャラガー議員は「中国政府の政治宣伝機関である新華社は、事実に基づく報道をする他の諸国の一般ニュースメディアとは根本から異なる。新華社と米国の報道機関との提携は、米国の国益や、共産党の弾圧に苦しむ中国国民の利益に反するおそれがあるため、その内容の透明性が欠かせない」と述べた。

 民主党リベラル派として知られるシャーマン議員は、「新華社が米国内の支局や通信員を使って、米側の秘密情報を集める諜報活動に関与してきたことは立証されている。新華社がAP通信からどれほどの協力を得るかについて公表は必要だ」と語った。

中国政府の言論統制は既知の事実
 新華社側の見解としては、AP通信との提携強化を発表した11月に、蔡名照社長が「新メディア、AI(人口知能)、経済情報などの領域に新たに重点を置いて、提携を拡大していく」と語っている。

 AP通信側は「今回の合意は、長年の提携内容からとくに変わったことはなく、APの報道の独立性が侵されることはない」と述べており、提携強化の内容を公表するかどうかは言明していない。

 だが、米国では民間からも懸念の声があがっている。人権擁護団体の「全米民主主義財団」のクリス・ウォーカー代表は、「中国政府が言論の自由を制限していることは周知の事実であり、その中国政府のプロパガンダ組織と提携する民主主義国のメディアは自己検閲や中国の政治宣伝の拡散に陥る危険を冒すことになる」と述べた。

 今回の米国議会の動きは、最近の米国の中国に対する新たな対決姿勢の一環とも言える。特に、トランプ政権に反対する民主党議員たちまでが共和党議員と歩調を完全に合わせて、中国の国営通信社への不信や警戒を示している点が注目に値する。なお日本では、共同通信社が新華社通信と長年、提携・協力の関係を保っている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55105
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/113.html

[国際25] 焦点:苦境の韓国企業に光明か、車載用電池で中国規制に変化
トップニュース2019年1月3日 / 11:56 / 4時間前更新
焦点:苦境の韓国企業に光明か、車載用電池で中国規制に変化
Heekyong Yang and Yilei Sun
4 分で読む

[ソウル/北京 20日 ロイター] - 自動車用バッテリーを製造する韓国のLG化学(051910.KS)やサムスンSDI(006400.KS)といった企業は、手痛い損失を重ねた投資の末、ようやく中国市場に一筋の明るい光明を見出しつつある。

彼らが苦労した原因は何か──。それは3年前に発表された中国政府が推奨するバッテリー製造企業のホワイトリストだ。これに従うことで自動車メーカーは潤沢な補助金の取得が可能となったが、このリストには外国企業が含まれていなかった。

それ以来、中国という世界最大の電気自動車(EV)用バッテリー市場において、同国の寧徳時代新能源科技(CATL)(300750.SZ)や比亜迪股分有限公司(BYD)(002594.SZ)(1211.HK)を筆頭とする競合企業が事実上シェアを独占してきたのである。

だが、中国が国内の自動車用バッテリー市場を開放する兆候が出てきたことで、これまで既存の中国生産拠点を輸出向けに切り替えざるを得なかった韓国企業も、投資拡大に意欲を見せつつある。

LG化学は7月、中国で第2の自動車用バッテリー生産工場に約2兆ウォン(約2000億円)を投資し、2019年10月に生産開始すると発表。一方、SKイノベーション(096770.KS)は中国工場に4000億ウォンを投資し、EVバッテリーの主要部品を製造する予定だ。

サムスンSDIは中国におけるバッテリー生産能力の拡大を検討していると述べており、同社のマイケル・ソン上級副社長は、同社が中国の「保護主義的政策」の漸進的変化に対応しつつある、と述べた。

「複数の中国自動車メーカーと積極的に協議している」と、ソン上級副社長は10月、決算発表の電話会議で語った。

大気汚染対策を進める中国は本格的なEVへの移行を目指しており、同国の自動車用バッテリー市場の世界全体の61%に相当。その規模は年間130億ドル(約1.4兆円)と推定されている。

つまり、自動車用バッテリー製造企業としてそれぞれ世界第4位、6位にランクされるLG化学、サムスンSDIにとって、中国市場は成長のために不可欠な市場となっている。

「中国のバッテリーメーカーは、恐ろしい勢いで成長している。われわれが生き残って、彼らをリードできるかどうかは、今後2─3年が正念場だ」とサムスンSDIの関係者は語った。

<新たな推奨リスト>

韓国企業が投資計画を急ぐきっかけとなったのは、中国がEVやプラグインハイブリッド車に対する補助金を2020年までに段階的に廃止すると約束したことに加え、2つの自動車業界団体が認証済みのバッテリー製造企業について新たな「推奨リスト」を5月に発表したことがある。

新しいリストにはLG化学やサムスンSDI、それにSKイノベーションと中国の北京汽車集団(BAIC)グループによる合弁企業が含まれていた。これは、2015年11に発表された推奨リストに外国企業が含まれていなかった反動という含みもあると考えられている。

「新たな推奨リストを作る際の基本原則として、国産製品に自信を持てるようになったのだから、市場を開放すべき時期だと考えた」。今回のリスト取りまとめを支援した専門家の1人は、匿名を条件にそう語った。

今後のリスト改訂においては、米EV大手テスラ (TSLA.O)の新車種に独占的にバッテリーを供給するパナソニック(6752.T)も加えられる可能性があるとこの専門家は語る。パナソニック側も、テスラが上海工場の建設を準備していることを背景に、リスト入りの許可を求める予定だと語った。

とはいえ、この推奨リストは補助金との関連はなく、これだけでは、中国での販売拡大を急ぐ十分な契機とは言えないだろう。

北京を拠点とするLG化学関係者によれば、中国の自動車メーカーは、まだ態度を決めかねているという。前回発表されたリストの発信元であり新車の承認権限を有する中国工業情報化省(MIIT)に対して、今回のリストがどの程度の影響力を持つかが読み切れないからだ。

こうした理由から、LG化学はまだ中国自動車メーカーに対するバッテリーの販売を開始していない、とこの関係者は語った。

<失敗の痛手>

韓国メーカーは、これまでの経験に基づく慎重姿勢が過度な希望を抑えているものの、中国EV市場の急速な拡大によって、自社製品に対する十分な需要が生まれることを期待している。

LG化学、サムスンSDIとも、中国に同社最初のEV用バッテリー製造工場を開設したのは2015年10月だ。どちらも、数億ドル規模の投資は回収できるものだと当て込んでいた。

たとえば、サッカー場3面分の広さを持つLG化学の南京工場は、中韓両国政府の当局者が参列する中で、華々しいオープニングを飾った。バッテリー製造企業として世界首位を狙うと同社は豪語していた。

だがその翌月、MIITによる推奨リストが発表され、主に韓国企業が生産していた種類のバス向けバッテリーに対する補助金が2016年1月に中止された。

韓国企業を事実上、中国市場から締め出すこのような動きがあっただけに、中国政府の貿易・産業政策を巡る幅広い懸念が、米中政府が繰り広げる貿易紛争の軸になるのも無理はない。

「中国は韓国ライバル企業による参入を防ぐために補助金を用いて、中国企業が技術面で追いつく時間を稼いできた」と韓国電池産業協会でディレクターを務めるKoo Hoe-jin氏は語る。

EV用バッテリーに関する戦略についてMIITにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

また、韓国企業に手痛い打撃を与えたのは、2016年以来140%近く急騰したコバルト価格だ。LG化学とサムスンSDIによれば、この価格急騰によって、バッテリー価格を原材料価格に連動させるための契約見直しを余儀なくされたという。

対照的に、中国の競合企業が受けた打撃は、はるかに小さかった。世界のコバルト精錬能力の半分を中国が占めており、世界のコバルトサプライチェーンに対する影響力を強めてきたからである。

中国のCATLはこうした要因にも助けられて、業界首位として長年君臨するパナソニックと肩を並べる水準にまで成長した。同社は最近、サプライヤーの多角化を図る自動車メーカーとの契約も獲得している。サムスンSDIの主要顧客であるBMWとの契約もその一例だ。

SNEリサーチによれば、CATLと、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の出資を受けるBYDとを合わせた世界市場のシェアは、10月までの1年間で3分の1にまで拡大した。2015年は18.2%だった。一方、同時期のLG化学とサムスンSDIを合わせたシェアは9.6%で、その伸びは1ポイントにも満たなかった。

パナソニックとは異なり、韓国企業は専属顧客を頼りにできない。韓国の主力自動車メーカーである現代自動車(005380.KS)は、バッテリー駆動のEVよりも燃料電池車に力を注いでいる。

「韓国企業は、日中のライバル企業に挟まれてサンドイッチになっている。韓国企業のポジショニングが曖昧だ」。韓国の瑞靖大学校で教授を務めるPark Chul Wan氏はそう指摘した。

(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/autos-batteries-southkorea-idJPKCN1OQ0AT

http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/114.html

[政治・選挙・NHK255] 韓国動画に反発広がる=防衛省が反論文書発表へ−レーダー照射  レーダー照射問題で韓国が動画を公開 日本は新たな証拠公表
韓国動画に反発広がる=防衛省が反論文書発表へ−レーダー照射
2019年01月04日19時09分


韓国外相と電話会談後、報道陣の取材に応じる河野太郎外相=4日午後、外務省

 韓国国防省が、韓国駆逐艦による海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射をめぐり日本の主張に反論する動画を公開したことを受け、日本政府は4日、「話し合える状況にない」(政府関係者)として、反発を強めている。防衛省はさらなる証拠の公開を検討しているほか、近く韓国側に反論する文書を出す方向だ。

河野外相、韓国外相に善処要求=徴用工判決、差し押さえの動きに

 防衛省幹部は4日、韓国側の発表について「ひどい。こっちも反論し続けないとだめだ」と強調。動画は駆逐艦に対する哨戒機の交信音声が削られているとして「絶対に細工をしている」と断じた。
 照射問題では、日本側が昨年12月に哨戒機が撮影した動画を公表。日韓両国による反論の応酬になっており、同じ幹部は「最後は罵詈(ばり)雑言の言い合いになるかもしれない」と懸念を示した。防衛省は今後の韓国側の対応次第では、証拠として軍事機密であるレーダーの波長データ公開も検討している。(2019/01/04-19:09)

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2019010400913&g=pol


 



レーダー照射問題で韓国が動画を公開 日本は新たな証拠公表へ
200
75
2019年1月4日 16時59分
ざっくり言うと
自衛隊機へのレーダー照射問題で、韓国側が4日に反論の動画を公開した
防衛省は再反論するため、新たな証拠の公表に向けて準備を進めている
証拠として記録したレーダーの波形を示すことも検討している
「目新しい根拠なし」 日本政府は“再反論”検討
2019年1月4日 16時59分 テレ朝news
「目新しい根拠なし」 日本政府は“再反論”検討
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 防衛省は韓国側の主張に反論するため、新たな証拠の公表に向け、準備を進めています。

 韓国側が公開した動画について、自衛隊幹部は「目新しい根拠のようなものはなかった」として、韓国側が主張する反論にはあたらないとの認識を示しました。防衛省は今後、韓国側がレーダー照射の事実を認めない場合、証拠として記録したレーダーの波形を示すことも検討しています。また、河野外務大臣は4日午後、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相と電話会談を行いました。

 河野外務大臣:「防衛当局間でしっかりと事実関係を踏まえ、協議をし、なるべく早期にこの問題を解決するのが大事だということで、康京和長官も私も認識は一緒です」
テレ朝news

「韓国軍が自衛隊機にレーダー照射」をもっと詳しく

BGMや効果音満載… レーダー問題で韓国が反論動画を公開した理由
レーダー照射問題 韓国側「哨戒機は常識外の行動を見せた」
自衛隊機へのレーダー照射問題 韓国が「反論動画」を公開
http://news.livedoor.com/article/detail/15828618/
http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/733.html

[政治・選挙・NHK255] 韓国「日本は歪曲止めるべき」レーダー照射で謝罪要求 レーダー照射「反論動画」を公開 韓国国防省 

韓国「日本は歪曲止めるべき」レーダー照射で謝罪要求
政治 朝鮮半島
2019/1/2 19:40 
【ソウル=恩地洋介】韓国国防省は2日、海上自衛隊の哨戒機が韓国海軍の駆逐艦から火器管制レーダーを照射された問題を巡り、哨戒機が「人道的な救助活動をしていた韓国艦艇に威嚇的な低空飛行をした」として日本側に謝罪を求める声明を発表した。

海上自衛隊のP1哨戒機(共同)
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海上自衛隊のP1哨戒機(共同)

駆逐艦の行動について「哨戒機にレーダーは照射していなかった。日本はこれ以上、事実の歪曲(わいきょく)をやめるべきだ」などと主張し、実務者級の協議を進めるよう求めた。

安倍晋三首相が1日のテレビ朝日番組のインタビューで、レーダー照射を「危険な行為だ」などと述べたことにも反発した。「事実確認のために実務協議を続けていこうと合意したにもかかわらず、日本が動画を公開し、1日にはテレビのインタビューに高位当局者までが出て一方的な主張を繰り返していることに深い遺憾の意を表明する」とした。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39600410S9A100C1PE8000/

 


レーダー照射「反論動画」を公開 韓国国防省

朝鮮半島
2019/1/4 15:02
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【ソウル=恩地洋介】韓国国防省は4日、海上自衛隊の哨戒機が韓国海軍の駆逐艦から火器管制レーダーを照射された問題を巡り、レーダー照射を否定する韓国側の主張を訴える動画を公開した。韓国側は哨戒機による「低空飛行」を問題視し、日本に強硬姿勢を取る立場を明確にし始めた。

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動画のタイトルは「日本は人道主義的救助作戦への妨害行為を謝罪し、事実歪曲(わいきょく)を即刻中断せよ」で、約4分半。主に海上自衛隊が2018年12月28日に公開した映像を使い「哨戒機はなぜ軍艦の上空を低空飛行したのか答えなければならない」「日本は国際法を恣意的に歪曲している」などと、字幕をつけて日本側の主張に反論を試みている。

レーダー照射を巡っては、船舶救助のため探索レーダーのみを運用したと繰り返した。「もし火器管制レーダーが作動していたら、哨戒機はすぐに回避行動を取らなければならなかったが、軍艦に再接近する常識外の行動を見せた」などと強調し、かねて主張する「日本側の特異な行動」の印象付けを狙った。

動画では韓国側の主張を裏付ける意図とみられる映像や音声の一部も公開した。韓国海洋警察が撮影した映像には、北朝鮮の漁船とみられる船の背後に海自の哨戒機らしき姿が映っている。さらに軍艦が受信したという通信音声を流し「雑音がひどくはっきり聞こえなかった」と説明した。

韓国大統領府によると、国家安全保障会議(NSC)は3日の常任委員会で、哨戒機の「低高度接近事件」について「問題の深刻性を議論し、正確な事実関係に基づき必要な措置を取る」と決めた。韓国国防省報道官は4日の記者会見で「日本はこれ以上、事実歪曲をやめ、低空飛行について謝罪すべきだ」と重ねて主張した。

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韓国国防省「事実関係ごまかし」 映像公開に反発[映像あり]
2018/12/28 19:15更新

レーダー照射「韓国は事実誤認」 防衛省、主張再否定
2018/12/25 18:19
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39628750U9A100C1000000
http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/734.html

[政治・選挙・NHK255] 世界に逆行、移民拡大で「美しい日本」が問われる日 移民大国マレーシアが示唆する厳しい現実 移民を必要とする日本、しかし
世界に逆行、移民拡大で「美しい日本」が問われる日

移民大国マレーシアが示唆する厳しい現実
2019.1.4(金) 末永 恵
高級スーパーにも、外国人労働者は欠かせない。バングラデシュ人が店内を清掃する(クアラルンプール、筆者撮影)
 「『クールな日本』が大好きという東南アジアの若者たちに会った。彼らが日本で職に就き、日本の魅力を母国の人たちに直接伝えられるようになることは、両国にとって大きな価値となる」

 安倍晋三首相はそう力説し、日本の少子高齢化に伴う深刻な人手不足を背景に、これまで否定していた「単純労働分野」での外国人雇用受入れの解禁に舵を切った。

 2019年は、日本の出入国管理政策の大転換となり、政府は移民を否定しているが事実上、「大移民元年」の歴史的な年になるだろう。

 この“移民受け入れ法案”(出入国管理法改正案)は、在留資格として新たに「特定技能1号」「特定技能2号」を新設するというもので、今後5年間に最大34万5150人の受け入れを計画している。

 在留期間は1号が「最長5年」「家族の帯同はなし」。一方、熟練技能が必要となる2号は、「家族帯同」で、「永住」への道も開かれることになる。

 しかし、資格の要件に加え、どの業種でどう具体的に適用するかなどの詳細が盛り込まれなかったうえに、2万人以上の失踪者を数える「技能実習制度」を残したままでのスタートとなる。

 議論を十分に重ねないまま、外国人労働者の新たな受入れ制度導入が急がれたことに野党が批判を展開した。

 新制度を利用して雇用されるのは、アジアの9カ国(2018年末現在)。アジアの移民大国というと、多民族国家のマレーシアが挙げられる。実は、同国は移民政策では日本の大先輩格だ。

 しかし、昨年5月に61年ぶりに政権交代となった新生マレーシアを率いるマハティール首相は「誰がマレーシア人か分からなくなっている。外国人労働者が多すぎる」と問題視しており、 新政権は2023年までに現行の外国人労働者数をほぼ半減させる方針を明らかにしている。

 この移民大国で一体、何が起きているのか。現地からルポする。

 「外国人労働者がいなくてびっくりした。日本ではレストランやお店の店員さんは皆、日本人。規律正しく、丁寧なサービスで感動した。日本に行ったから味わえる日本流サービスだった」

 クリスマスを日本で迎え、クアラルンプールに戻ってきたばかりの友人が感心しながら日本の従業員の「質の高さ」を褒め称える。

 というのも、マレーシアでは日本で言う3K(マレーシアでは3D「Dirty」「Demanding」「Dangerous」の「汚い」「きつい」「危険」)の仕事は、外国人(移民)が欠かせない労働力になっているからだ。

 レストランや建設業、店舗販売、警備員、メイドなどのサービス業やプランテーションなどの農業、さらには今や日系企業の製造業などでも外国人労働者抜きには考えられないのだ。

 もともとマレーシアは移民国家で、首都・クアラルンプールは、今でこそ高層ビルが散在する大都市だが、19世紀後半に英国の植民地下で、スズを採掘するために開発された鉱山町だった。中国から労働力として大量に移住してきた。

 また、20世紀初頭には英国が南米アマゾンから持ち込んだゴム苗木で、マレーシアを世界一の天然ゴム産出国に変貌させた。このときゴム農園には、英国の植民地だったインドから出稼ぎ移住労働者を連れてきた。

 こうした結果、マレーシアは、約67%のマレー系と、約21%の華人系、約7%のインド系の3大民族から構成される多民族国家となった。

マレーシア人は3K職種には就かない。警備員は(マレーシア人より勇敢といわれる)ネパール人(クアラルンプール、筆者撮影)
 移住労働者が急増したのは、1980年代以降の急速な経済成長に伴い、日本と同様、労働力不足に直面したため。

 政府は、マレーシア人を優先する政策を展開してきたが、豊かになったマレーシア人はもはや、3K職業には就かなくなった。

 ASEAN(東南アジア諸国連合)の優等生で1人当たりGDP(国内総生産)でシンガポールに次ぐマレーシア(ブルネイを除く)。

 母国の4倍から5倍もの高額な給与が得られることから、違法ブローカーなどを通じ、インドネシア、タイ、フィリピン、バングラデシュ、ネパールなど周辺国からの移住労働者が後を絶たない。

 マレーシアの人口は約3300万人。総就業人口は約1500万人で、外国人の正規労働者は約200万人。

 非正規の不法外国人労働者はその2倍の400万人とも言われ、総外国人労働者は600万人とも700万人とも言われる。実に、「労働人口のほぼ半数が外国人で占められる」という世界でも最も外国人労働者の比率が高い国になった。

 しかし、マレーシアでは、外国人の単純労働者は「18歳から45歳までに限り、家族同伴なし」が条件だ。

 つまり、外国人労働者を主に単純労働の担い手として割り切っていて、「大量移民を受け入れる意向は全くない」ということだ。

 背景には、外国人労働者の増加に伴い、自国労働者の所得へのマイナス影響、医療、教育、社会保障など公的支出への負担増、犯罪率の増加、さらには社会的、文化的価値観の違いによる対立などが挙げられる。

 とはいえ、高級ホテルの厨房まで外国人料理人の波が押し寄せているのが現実。そこで昨年6月、マレーシア政府は「食文化保護のため、国内のすべてのローカルフードレストランの料理人を、マレーシア人に限定する規制を導入する」と発表。

 人気観光地のペナン州では、屋台やローカルフードレストランの料理人をマレーシア人に限るとする規制を導入し始めた。同州では、マレーシアの代表的料理13種類に関して規制が適用されている。

 これに対し、飲食業者は「外国人なしでは営業ができない」と規制導入に猛反発している。マレーシアでは2013年以降、最低賃金が適用されているが、外国人不法労働者は低コストで雇えるため、雇用主にとってはメリットだからだ。

 こうした外国人不法労働者の存在は警官や行政の賄賂や不正の温床にもなっている。そこで汚職や腐敗政冶の撲滅を図りたいマハティール政権は、その引き金になる違法労働者の削減を図る方針だ。

 外国人労働者の数は約700万人の華人系マレーシア人の数に匹敵する勢いで、インド系をはるかに抜いて、人口構成でマレー系に次いで2位に躍り出た。

 街には外国人労働者、特に違法労働者が溢れており、入国管理局は昨年7月以降、「オプス・メガ」(巨大作戦)を銘打って、不法外国人労働者の取締りを全国規模で強化しており、3000人以上の不法労働者を逮捕している。

 アジアを代表する移民大国、マレーシアでも最終的には、マハティール政権下で2023年までに、「外国人労働者を現行の700万人からほぼ半減の400万人に削減する方針」(マハティール首相)だ。

 移民大国だからこそ、この「功罪」を痛いほど味わっているマレーシアでは、外国投資や経済に貢献する起業ビザなどは容易だが、「永住権」「帰化」「市民権」となると別だ。

 マレーシア人と結婚しても「永住権取得は容易ではない」国なのだ。

 リタイア移住だけでなく、30代、40代の教育移住などで日本人にも最近人気のマレーシアセカンドホームビザ(MM2H)でさえも同じ。

 同ビザでマレーシアに死ぬまで「長期滞在」できると言っても、それは「10年期間のビザ」が永遠に更新できると仮定した場合だが、当然、永住権や市民権を得られるものではない。

 マレーシアの例のように、いったん外国人に「労働力依存」すると、もはやそれなしでは現場が機能しなくなってしまう。また、日本と比較し東南アジアの多くは「大家族制」だ。

 こうしたことは日本政府も承知のはずだ。そうなれば今後、在留期限もなし崩し的に、大幅緩和されるだろう。

 すでに日本には違法ブローカーが存在し、違法労働者が急速に増加している。

 4月から入管管理局は「入管管理庁」に格上げとなるが、大量の外国人労働者受け入れの準備で、「違法労働者への対処までは覚束ない」(人材企業関係者)のが現状だ。

 人手不足解消という大命題の下、外国人労働者拡大がその救世主になる、という考え方は危険である。むしろ、議論半ばで突っ走る危険性を感じざる得ない。

 巷間では、「優秀なアジア人は欧米諸国に行って、日本にはやって来ない」「“来ていただくように”環境整備しないといけない」などと危機感を煽る風潮にも、日本人の弱い心理を動かそうとする意図が見えて、疑問を感じる。

 人手不足に関しても、まだまだやれることはあるのではないか。

 宅配業のヤマトは、宅配車両(無人)が指定された場所へ荷物を届ける「ロボネコヤマト」の実証実験を始めたほか、佐川急便はタクシー会社「山城ヤサカ交通」(京都府)と共同で、タクシードライバーが荷物を客に配送する事業を展開している。

 東京近郊では昨春、「ラストワンマイル協同組合」が設立された。

 東京、神奈川、千葉、埼玉の大手配送会社の下請け業を行ってた運送会社20数社が参加し、大手企業と比較し、廉価な宅配サービスで業績を挙げている。

 かつて宅配大手の下請けだったので、市場の運賃より低価格で仕事を請け負ってきた。組合関係者は、「廉価でも、利益は十分捻出できる。実は、運転手の給与も確保可能だ」という。

 人手不足というピンチが、上述のような新規参入組を生み、生産性や労働者の賃金向上にもつながる。

 人手不足が深刻化すれば、労働力の切り捨てはできなくなり、人材を大事に「保全」するようになる。イノベーションを模索し、賃金向上も図れる。

 結果、雇用のミスマッチがささやかれる業種にも、自然と労働力が吸収されていくのではないか。

 外国人労働者の拡大で得をするのは、現行の賃金やそれ以下で労働力を確保したい経営者だけで、労働者にはプラスの「見返り」はないと見ていいだろう。少なくとも移民大国マレーシアの現状からは断言できる。

 マレーシアやタイなどのアジア諸国の例を見てもそうだが、外国人労働者受入れは、自国の労働者の賃金アップのチャンスを阻害する要因にもなる。

 欧州や豪州が、そしてマレーシアなどの移民大国が移民制限、削減に舵を切る中、日本は大きく移民拡大という新たな船出を決めた。

 「規律ある、質の高いサービスや労働力」なくして、「クールな日本」と海外から尊敬、称賛されるのだろうか。安倍首相に、問うてみたい。

(取材・文・撮影 末永 恵
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55125


 

移民を必要とする日本、しかし移民は日本を必要としているのか
2019.01.01 Tue posted at 18:54 JST

日本ではこのほど、外国人労働者に対して新たな在留資格を認める法律が成立した/Emiko Jozuka/CNN
 
東京(CNN) リン・グエンさん(25)が日本語を学んだときに最初に学んだ概念の一つが「ウチ」と「ソト」だった。

これは人々を内部と外部の2つのグループに分ける慣行を指すもので、家族や友人、近しい知人は内部、周辺に追いやられている人は外部の者となる。

日本に夢中なベトナム人留学生にとって、それは警鐘のように感じられた。自分を常に外部の者と捉える、非常に閉ざされた社会に入ろうとしているのかもしれないという感覚だ。

だが、結局、グエンさんはそんな経験をしなかった。グエンさんは日本がゆっくりと変わりつつあることに気づいた。

高齢化と人口減少に直面する中、日本政府は移民に対する非常に保守的な考え方と新たな若い労働力への必要性との間でバランスをとろうと模索している。世論は変化を求める側にある。外国人嫌いの印象もあるが、2018年の世論調査会社ピュー・リサーチ・センターの調査によれば、日本人の59%は移民が国を強くすると考えている。

日本の国会は先月、安倍政権が提出した新たな在留資格を新設する法案を可決した。外国人が高度な技能を必要とする仕事と低賃金の仕事の両方に就労することを認め、今後5年間で34万人の外国人の受け入れを想定する。

これは日本の移民政策の大きな方針転換を意味するが、多くの専門家が十分ではないと主張している。

ベトナム人留学生のリン・グエンさんはより高度な教育を受けるために来日した/Emiko Jozuka/CNN
ベトナム人留学生のリン・グエンさんはより高度な教育を受けるために来日した/Emiko Jozuka/CNN
人口が減少する国
日本は既に「超高齢化」国だ。総人口に占める65歳以上の割合が20%を超えている。2017年の出生数は94万6060人で、1899年の統計開始以来最低となった。一方、死亡数は増加して人口減少が加速している。

人口減少は福祉や年金を必要とする高齢者を支える労働力人口も減少することを意味している。

日本の人口予測。縦の棒は赤色の濃い順に65歳以上、15〜64歳、0〜14歳の人口、黒線は65歳以上が総人口に占める割合を示す/CNN
日本の人口予測。縦の棒は赤色の濃い順に65歳以上、15〜64歳、0〜14歳の人口、黒線は65歳以上が総人口に占める割合を示す/CNN
この問題に悩んでいるのは日本だけではない。

ドイツも既に超高齢化社会に突入しており、2030年までには米国、英国、シンガポール、フランスも同様になると予想されている。欧州連合(EU)や米国は今、ポピュリズムに傾き反移民のスタンスを取っているが、アジアの国々は新たな人材の獲得を競っていて、移民と受け入れ国のパワーバランスが逆転する可能性もある。

明治大学の経済学部教授は、安倍政権が2060年までに日本の総人口が1億人を割る事態を避けたければ、政府は移民が日本を選ぶのに十分な理由を用意しておく必要があると指摘する。

2015年にピューが実施したアジア・太平洋地域の人々を対象とした調査では、この地域の71%の人々が日本に好意的な印象を抱いており、否定的な人々の数を5倍以上上回った。

グエンさんは日本のしっかりとした環境対策や安全面がアピールポイントになっていると語る。

だが、日本の過去の外国人労働力受け入れの失敗を見ると、移民が日本に来ようと思えるかどうかに疑問も生じてくる。

1990年代に労働力不足に悩んだ日本は、第2次大戦後に南米に移住した日系人の子孫に長期で更新可能な在留資格を認める入管法の改正を行った。

だが、2008年に不況に陥ると、政府はそうした移民にブラジルなど自国に戻るように促した。

テンプル大学で日本研究を行うジェフ・キングストン教授は「日本には外国人労働者をティッシュペーパーのように扱い、使い捨てをする考え方がある」と述べる。

近隣国がたどった他の道
シンガポールは日本と非常に異なる道を歩んできた。1965年の独立以降、この東南アジアの小さな都市国家は、近隣のアジア諸国から大量の移民を受け入れることで多様な社会を築いてきた。

現在、シンガポールの労働力の3分の1以上は外国人が担っている。ただ、技能の低い労働者にとって条件は過酷であり、多くの虐待も存在している。

シンガポール政府はウェブサイトで、非居住者の外国人はシンガポール人が好まない仕事に就き、地元民との間で高い給料の専門職や管理職を争うことはないと説明している。「彼らは我々の家を作り、道路を清掃し、生活を少し快適にするのを手伝うためにここにいる」

新たな在留資格は現場労働者が日本にさらに5年間滞在することを認める/Emiko Jozuka/CNN
新たな在留資格は現場労働者が日本に最長で10年間滞在することを認める/Emiko Jozuka/CNN
専門家は、移民を受け入れる利益を自国民に説明する点で、日本は他の先進国に遅れを取っていると主張する。キングストン氏は「移民が年金や経済成長にどのように貢献するかを政府は売り込んでいく必要がある」と語る。

移民政策が需要に追いつかない状況で、暫定的な措置がギャップを埋める形となっている。例えば、学生ビザで来日する外国人であれば、週28時間まで働くことができる。ただ、学生を労働力の穴埋めに利用しているとの批判の声も日本に対して上がっている。

修士課程で学ぶグエンさんも、日本で学びながら何とか働いて暮らしていこうとする数千人の留学生の一人だ。2018年に日本に住む外国人は過去最高の250万人となったが、日本の総人口に占める割合は2%に過ぎない。

東京のせわしない通りに事務所を構えるのは、日本での暮らしや就職に悩む外国人留学生にコンシェルジュサービスや文化的なサポートを提供する「インバウンドジャパン」だ。

インバウンド・ジャパンでベトナム人同僚のエンジェル・ファンさんと働くフルミ・ユウスケさん/Emiko Jozuka/CNN
インバウンドジャパンでベトナム人同僚のエンジェル・ファンさんと働くフルミ・ユウスケさん/Emiko Jozuka/CNN
5年前に留学生に安い学生寮を提供する事業を開始。その後、電話の契約や銀行口座の開設、病院への通院やパートの仕事探しなどサービスを拡大してきた。

ここで働くフルミ・ユウスケさんは、日本が徐々に外国人と一緒に働くという考え方を受け入れて、外国人が滞在し経済や社会に貢献しやすくなることを望むと語った。

奥地に入る
高知県室戸市では、技能実習制度(TITP)を利用する外国人が住民の助けになっている。

かつて漁港として栄えた室戸は高齢化が進んでいる。バーが軒を連ねたエリアには空き家が目立ち、病院や小学校など多くの公共施設も閉鎖した。

2017年、自動車販売店を営むキノシタ・ミエさんは自身の店で働く整備工を見つけられなかった。キノシタさんは人材のアウトソーシングをしようと決め、フィリピンからの実習生の受け入れを申請した。

ジョン・リッグズ・アンチノさんはマエダ・マサヒロさんについて訓練中/Emiko Jozuka/CNN
ジョン・リッグズ・アンチノさんはマエダ・マサヒロさんについて訓練中/Emiko Jozuka/CNN
この制度は1993年に作られて以来、度々批判にさらされてきた。理念としては、技能の低い労働者が技術習得のために来日し、自国へ技術を持ち帰ることを掲げている。だが、この制度に反対する者は、国内労働市場のギャップを埋めるための抜け穴として利用されていると批判する。実習生からも、職場での過酷な扱いやいじめの報告が度々上がっている。

キノシタさんはそうした恐い話があることを知っていた。より快適な環境を作ろうと、スタッフのための家を買った。時給762円の最低賃金での雇用となるが、技能が向上したら賃金を上げてあげたいと考えている。

キノシタさんの従業員、ジョン・リッグズ・アンチノさんとマーヴィン・カリランさんは2カ月ほど前にフィリピンから室戸にやってきた。日本到着後、日本語と日本文化の講習を数週間受けた。

フィリピンでタイヤの修理店で働いていたリッグズ・アンチノさんは「ここにいたいと思う」「日本で家族を作れたらうれしい」と語る。

彼らの日本人の同僚も新入り2人を歓迎している。

50代後半の整備士、マエダ・マサヒロさんは「互いの理解にまだ難しい部分もあるが、英語を上達しようとがんばっている」「ここにいてほしいと思う」と言う。

30代後半の整備士、ヤスダ・マサトさんも「フィリピンに行ってみたくなった。彼らに会う前はそんなことは思いもしなかった」と続けた。

現行制度では、実習生は日本で5年間しか働けない。

この自動車販売店で働く日本人も外国人も移民が日本に滞在できるようになればと語る/Emiko Jozuka/CNN
この自動車販売店で働く日本人も外国人も移民が日本に滞在できるようになればと語る/Emiko Jozuka/CNN
安倍政権の提案はさらに5年間働けるようにするものだが、一つ問題点がある。そうするためには自国に戻って申請する必要があるのだ。これにより10年間の継続滞在を求める永住権の獲得は否定されることになる。

専門家はこうした条件が政府の提案に多く含まれている可能性があると懸念を示す。現場労働者の来日を促す一方で、長期の定住を防ぐ仕組みのためだ。

日本の職場文化
日本が外国人労働者の魅力にようやく気付いたかもしれない一方で、そうした労働者の全員が日本の職場文化になじんでいるわけではない。

サミル・レビさん(26)は4年前にネパールから来日した。来日前には兄が東京で6週間の文化交流を経験していた。レビさんはラーメン店の皿洗いのバイト、コンビニエンスストアでの深夜勤務を経験した後、東京の日本語学校で採用担当者になった。

同意を示すためにうなずいたり、別れの際にタイミングよくおじきしたりする習慣も身につけ、「だいぶなじんできた。少し日本人になってきた」と語る。

レビさんは普段、新大久保で友達と会う/Emiko Jozuka/CNN
レビさんは普段、新大久保で友達と会う/Emiko Jozuka/CNN
だが日本での滞在が長くなるにつれ、ここにいたいと思う気持ちは薄れていっている。今は会社員として、日本人と同じように長時間労働している。残業を月100時間までに制限するなど、働き方の改革を促す法案が成立したが、レビさんはもっといい選択肢に目が行っている。

米国やオーストラリアへの移住だ。

グエンさんも日本に溶け込み、日本人や外国人の友達もできてきた。だが、長時間労働や「ノミカイ」として知られる同僚との勤務外の重い飲みの付き合いに嫌気がさしている。

グエンさんは、もし両親を日本に呼んで一緒に暮らせるなら日本で暮らしたいと語る。一方、それができないならオーストラリアやカナダに移るか、ベトナムに戻るかもしれないと言う。

「日本に魅力を感じなくなってしまったわけではない。でも、日本はたぶん、逆に日本の方が外国人を必要としているということに気づく必要があるかもしれない」

本プロジェクトはピューリッツァー危機報道センターの支援を受けています。


日本
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https://www.cnn.co.jp/business/35130815.html
http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/741.html

[政治・選挙・NHK255] クリスマスにクリスマス市を閉める欧州 ドイツで「大嘗祭」も少し考えてみた 秋篠宮さま、大嘗祭で既存施設利用を提案 
クリスマスにクリスマス市を閉める欧州ドイツで「大嘗祭」も少し考えてみた
2019.1.4(金) 伊東 乾
クリスマス・イブの午後4時過ぎ、営業をやめてしまうクリスマス屋台、ベルリン・ヨーロッパ広場
 お正月に初詣に行ったら、神社の境内に並ぶ小屋掛けが軒並み閉店していたら、皆さんはどんなふうに思われますか?

 と書き出したこの原稿をベルリンで校正している新年早々、欧州では困った事件の報道が続いています。

 1つは大晦日の夜9時(欧州時間ですので日本はすでに新年が明けています)、英国のマンチェスターで発生した、3人が刃物で襲撃されるというテロ事件。

 こちらはまだ詳細の報道がなされていませんが、イスラム原理主義との関係が取り沙汰され捜査が進んでいるようです。

 もう1つは、欧州で新年が明けた1月1日未明、ドイツのヴェストファーレン州で発生した、中東系の移民を狙った欧州人による自動車を用いたヘイト・テロです。

 シリア難民など5人が重軽傷を負い、こちらについては明らかに「外国人に対する殺意」があった可能性が報じられています。

 少し欧州事情を補足しますと、大晦日から元旦にかけては、11月末から街々の広場に建てられた「クリスマス市」が最後の賑わいを見せます。

 1月2日以降は撤去されてしまうカレンダーの中で、特に年の変わり目の深夜には、花火や爆竹が焚かれるところも少なくありません。

 本稿を記しているベルリンでも、大晦日は夕方から町の随所で皆が花火を上げ、0時の時報前後には、派手な打ち上げで町中を硝煙の匂いが覆いました。

 こうした行事は以前からあるものですが、ドイツではとりわけ普段は生活の苦しい移民の人々が、せめてもの気晴らしにと、花火に興じる姿を目にするように思います。

 ドイツで発生した、中東難民への自動車突入ヘイト・テロも、時間帯からして花火などに興じるべく路上に出ていた移民の人々を狙ったと察せられます。

 実際、元旦の日中に撮影された現場写真には、路面に散らばる花火の円筒が写っていました。

 元来の地元住民の中には、夜中に花火をしている中東難民を、うるさいと思う人がいたかもしれません。しかし、このようなテロがあってはならないのは、言うまでもありません。

 そんなドイツの「お正月」と、日本の新年をちょっと別の角度から対照して考えてみたいと思います。

 ということで、改めてもしお正月に初詣に行って、神社の境内に並ぶ露店が軒並み閉店していたら、皆さんはどんなふうに思われますか?

 各地のお祭りでは、この頃は減ってしまった感がありますが、タコ焼きやらお好み焼きやら、あるいはセルロイドのお面から着色したヒヨコなどまで、かつては怪しげながらも魅力に富んだ的屋の屋台が立ち並んでいました。アセチレンランプの光とともに私などの世代には幼時の記憶として沁みついているのですが・・・。

 そんな神社の境内に並ぶ「夜店」、お祭りの期間中でも、夜中は雨戸のようなものを閉めたりして、営業はしていません。

 でも、まさに掻き入れ時というべき、夕方から宵の口にかけてお参りに行って、屋台が軒並み閉まっているなどということは、日本では考えられませんよね?

 その、日本ではあり得ないことが、21世紀の今日でも欧州では普通に見られます。

 クリスマス当日やイブには、クリスマス用の屋台、小屋掛けが並ぶ「市場」が、軒並み営業をやめてしまうんですね。なぜなのでしょう?

 理由は、実は簡単です。「クリスマスだから」。

 「そんな!」と 多くの日本の読者は思われるかもしれません。でもそれが現実で、クリスマスは、屋台を営業している人たちも家族で休みを取りたいわけですから、実際に休んでいる。正味、それだけの理由で営業していません。

 むろん、例外はあります。一部の屋台は明かりをつけて営業しており、観光客がソーセージなどを買って食べたりしてもいる。別段「営業が禁止」されているわけではない。

 でも、クリスマスイブの午後ともなると、市場で遊ぶ子供もいなければ、町は軒並みシャッターを閉じてしまい、クリスマスのために建てられたはずの市場の屋台も閉まってしまう。

 屋台を営業している人たちも、家族揃って教会に行く。安息の日として、伝統的に義務づけられていたことが、今日にも色濃く残る、欧州らしい欧州の一断面が見えているのです。

異教徒と個人主義
 その証拠、というわけでもありませんが、一部営業している屋台や、常設の小売店などでこの時期開いているのは「ケバブ屋」「アジアマーケット」などの類が大半です。

 クリスチャンの店舗は例外なく閉まっています。歴史的には基本、欧州都市の在住者はすべて、教会に属するキリスト教徒ですから・・・。

 ユニクロ・ベルリンのような店舗も、勤めているのは欧州人ですから、当然のごとく電気が消えている。

 開いているのはトルコ系の人が営業するレストランとか、チャイナとか、要するに「異教徒」の店だけなんですね。イスラム教徒やその他もろもろが、クリスマスと無関係に店を開いている。

 一応念のために記しますが、「クリスマス」という言葉の語義は「キリストのミサ」と考えれば分かるように、イエス・キリストの誕生日を祝うべく、教会に集まる日にほかなりません。

 イスラム教でもイエス・キリストは「預言者イーサー」として崇められていますが、「父なる天の神様と、世界に遍在する聖霊と一体なる、神の子であり人の子でもあるイエス・キリスト」の誕生日などという位置づけは一切なされていません。

(上に記したような考え方を「三位一体」トリニティと呼びます。日本では政治改革の標語に使われるくらいで、キリスト教の言う「三位一体」が何であるか、社会的な受容はないと思います)

 クリスマスはキリスト教最大の祝祭で、その一番大事なタイミングには、人々は教会に行かねばなりません。

 こんな時間帯に外をふらふらしているのは、観光客でなければシリア難民やトルコ移民などが大半でしょう。もっとも、若い世代のキリスト教離れが著しい欧州では、それなりに出歩いている人も少なくありません。

 しかし、メリーゴーラウンドや観覧車など、遊園地よろしく町の中央広場にしつらえられた遊具は、電気を落としてひっそりとしています。これが欧州の本来の「クリスマス」にほかなりません。

 だから「サイレントナイト。ホーリーナイト」、静かな夜、聖なる夜となります。

 一方、日本では本来の聖歌よりも山下達郎あたりの歌声でにぎやかな「silent night」が響き、およそ静かではないお祭り騒ぎの商法が展開されているようです。

 その証拠(?)でもありませんが、「清し この夜 星は光り 救いの御子は御母の胸に・・・」という歌詞のどこを取っても、原曲で冒頭から歌われる「静か」であるという内容は出てきません。

 中国でクリスマスを禁じる政令が相次いで出されていると報道がありました。日本のハロウィンと同様、夜を徹して乱痴気騒ぎなどを続け、犯罪や暴動まがいもあるからだそうで、およそこちらも「静かな夜」とは似ても似つかないらしい。

 でも、それと大差ないはしゃぎぶりが、過不足ない今の日本のクリスマス受容、クリスマス商戦の実体と言っていいでしょう。

待降節から「大嘗祭」もちょっと考えてみた
 欧州における「クリスマス」の時期とは、12月25日を指すのではなく、それに至る1か月、4週間ほどの期間を指し、これを待降節「アドベント」と呼びます。

 11月末あたりから始まる「アドベント」の時期、町の中心にしつらえられた市場では観覧車が回り夜店が出、人々は十分に楽しみ、屋台も1年の半分程度の収入を十分そこで稼いでいるわけです。

 むしろクリスマス当日にはしゃいでいるというのは、不謹慎な態度であって、こういう日は教会に行くとか、おうちで家族揃っておとなしく過ごすとか、そういうめぐり合わせになっている。

 日本でこれを考えると、お正月が近いでしょう。

 除夜の鐘などが突かれるタイミングで、へらへら外で遊んでいると・・・。昨今は「カウントダウン」イベントなども増えてしまいましたが・・・。

 少し前の日本であれば「年が改まるんだから、静かに新年の抱負でも考えてなさい!」なんて怒られたりしながら、静かに除夜の鐘の響きを聴く「行く年来る年」の過ごし方が、少なくとも典型的な日本人については、ごく一般的だったはずです。

 でも、どうして「年が改まる」とき「静か」にしていなければならないのか?

 極めて日本らしいこのメンタリティを如実に示すのが「大嘗祭」だと思うのです。秋篠宮の発言で、にわかに注目を集めた「宗教行事としての大嘗祭」。

 もし、現在の皇太子、浩宮が天皇に即位して最初の年、一生に1回だけ行う「新嘗祭」である、わざわざ神宮まで造営して作る「大嘗祭」を挙行している真横で、爆竹を鳴らして乱痴気騒ぎや、自動車をひっくり返す暴動など起こしたりしたら・・・。

 当局はそれこそ「威信にかけて」静粛を要請し自粛を迫るに違いありません。

 「新年」というのは「初詣」として神社にお参りに行くことから分かるように、日本ではいまだ「宗教行事」としての性格が残っています。

 だから、一番大切なお祭りの最中、乱痴気騒ぎなどしていれば、チンピラとしてつまみ出されるのがオチでしょう。

 欧州におけるクリスマスも同様で、「宗教行事」として生きて存在している。ただし、ムスリムや中国人などが屋台を営業しつづけることを禁止はしない。

 それは異教徒の生活なのだから勝手にすればよい、という「個人主義」が、これまた徹底している。無理やり休業を強いる「忖度」の風などは吹きません。

 日本人はとても宗教的な国民性と思います。迷信が大好きですし。水子地蔵なども大いに繁盛している。

 ただし、ことクリスマスに関しては、およそ宗教として導入も定着もすることがなかった。それが12月24〜25日の派手なお祭り騒ぎ商戦として観察されているわけです。

 お正月にお参りする「お宮」は、もとをただせば律令制度での国府ないし国衙と重なり、中大兄皇子、後の天智天皇らが引き起こした「大化の改新」以来の日本国家の骨格に関わる宗教行事としての根を持つと言えるでしょう。

 また、今日に伝わる大嘗祭の伝統も、天智天皇の弟で自身もクーデターに参加した天武天皇以来と言われ、要するに律令制の国家信仰に由来する宗教行事にほかなりません。

 日本のクリスマスは聖夜というより商夜で、お正月も昨今は商機の一つとしてしか見なされず、「平成のことは平成のうちに」とか「平成最後の何ちゃら」といったコマーシャル・キャッチフレーズばかり目に着きます。

 日本が日本である、という事実を考えるうえで、天皇の退位・即位とそれにまつわる太古からの儀式、つまり原始宗教に基づく信仰儀礼という本質については、もっと深く考えてみた方がよいように思うのです。

 ドイツのクリスマス市が12月24〜25日に扉を閉めるのは、個人主義に基づく店主一人ひとりの判断であって、決して自粛とか忖度ではないというのも、重要なポイントだと思っています。

(つづく)

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55126


 


秋篠宮さま、大嘗祭で既存施設利用を提案
毎日新聞2018年12月25日 22時15分(最終更新 12月26日 00時59分)

社会
速報

秋篠宮さま=2018年11月22日、代表撮影
 宮内庁の西村泰彦次長は25日の定例記者会見で、皇位継承に伴う来年11月の重要儀式「大嘗祭(だいじょうさい)」について、秋篠宮さまが祭場を新設せず、例年の宮中祭祀(さいし)を行う「神嘉殿(しんかでん)」の利用を提案されていたことを明らかにした。

 大嘗祭は、即位した天皇が新穀を供えて五穀豊穣(ほうじょう)などを祈る宗教的儀式で、祭場として「大嘗宮」が建設されてきた。

 秋篠宮さまは大嘗祭に皇室の公的活動費「宮廷費」から支出されることに疑問を呈し、天皇家の私的生活費「内廷費」を充てるべきだとの考えを宮内庁に伝えていた。その際、毎年の新嘗祭(にいなめさい)を行っている「神嘉殿」を利用し、経費を抑制するよう提案したという。

 西村氏によると、大嘗祭を既存施設で行った先例はなく、「今般のお代替わりにおいても大嘗宮を建設することとした」と説明した。同庁は2018〜20年度予算で、大嘗宮の建設費として宮廷費から19億700万円(前回比31%増)の支出を見込んでいる。【高島博之】

 
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https://mainichi.jp/articles/20181225/k00/00m/040/242000c
http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/742.html

[経世済民130] 日米で長期金利低下 日本は一時マイナス0.050% 中国人民銀、預金準備率を1ポイント引き下げへ−景気てこ入れ
日米で長期金利低下 日本は一時マイナス0.050%
経済 北米
2019/1/4 8:06 (2019/1/4 10:47更新)
日米の債券市場で長期金利が低下している。3日の米債券市場では、長期金利の指標となる米10年物国債利回りが一時2.54%まで低下(債券価格は上昇)し、2018年1月中旬以来、約11カ月半ぶりの低水準をつけた。前日のアップルの業績下方修正や3日の米指標の悪化を受け、運用リスクを避けようとする投資家が安全資産とされる米国債の買いに動いた。

米連邦準備理事会(FRB)による利上げ観測が後退し、目先の金融政策の動きを反映しやすい米2年物国債利回りの低下も目立つ。一時2.37%と昨年5月末以来の低水準をつけた。10年債と2年債の利回り差は0.17%と前日より約0.02%拡大。米短期金利の先物市場では利下げが5割以上の確率で織り込まれる状況になっている。

4日の国内債券市場でも、長期金利の指標である新発10年物国債の利回りが一時、前営業日の18年12月28日から0.040%低い(価格は高い)マイナス0.050%に低下した。16年11月以来、約2年2カ月ぶりの低水準だ。先物相場も大幅に続伸し、中心限月の3月物は一時152円台後半と16年7月以来の高値を付けた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39618120U9A100C1000000/


 

中国人民銀、預金準備率を1ポイント引き下げへ−景気てこ入れ
Bloomberg News
2019年1月4日 19:02 JST 更新日時 2019年1月4日 23:05 JST
15日に0.5ポイント、25日にさらに0.5ポイント引き下げる
正味で約12.6兆円の流動性を供給、ハンセンと日経平均先物は上昇
中国人民銀行(中央銀行)は4日、市中銀行の預金準備率を1ポイント引き下げると発表した。経済成長を支えるため、流通する貨幣の量を増やす。

  人民銀はウェブサイトで、預金準備率を15日に0.5ポイント、25日にさらに0.5ポイント引き下げると明らかにした。1−3月に返済期限を迎える中期貸出制度(MLF)の融資はロールオーバーせず、今回の措置で増加する流動性が春節(旧正月)を前にした資金需要ひっ迫を相殺するだろうと説明した。

  人民銀の別の発表によると、この預金準備率引き下げにより正味で8000億元(約12兆5900億円)の流動性が供給される。

中国の預金準備率引き下げについて、ブルームバーグのジョン・リウ記者がリポート

Source: Bloomberg)
  人民銀が全銀行を対象に預金準備率を引き下げるのは2016年3月以来。一部の銀行に対しては、昨年1年間で預金準備率を4回引き下げていた。最近では銀行に対して低利資金を供給するための「対象を絞った」中期貸出制度も導入していた。

  預金準備率引き下げの発表を受けて、オフショア人民元は上げを小幅に縮小。ハンセン指数と日経平均の先物は上昇した。

  北ドイツ州立銀行のエコノミスト、シュテファン・グローセ氏は「人民銀は最近の経済環境悪化に対応している」と述べ、「中国の低調なPMIと米国のISM製造業景況指数は世界経済の減速を示唆している。政府による刺激策が今後も続くと見込む」と語った。

原題:PBOC Cuts Banks’ Reserve Ratio to Ratchet Up Support for 2019(抜粋)
PBOC Tweaks Liquidity Tap Again as China Growth Jitters Persist

(情報を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-04/PKSWLQ6K50XX01?srnd=cojp-v2

ビジネス2019年1月4日 / 19:07 / 1時間前更新
中国人民銀、預金準備率引き下げ 全銀行対象に1%ポイント
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[北京 4日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)は4日、銀行の預金準備率を2段階で合計1%ポイント引き下げると発表した。景気減速が加速するリスクを抑えるため、新規融資向けに1160億ドルの資金を金融システムに供給する。

預金準備率の引き下げは今年初めてで、過去1年で5回目。

現在、預金準備率は大規模銀行が14.5%、中小銀行は12.5%。引き下げは全銀行が対象で2段階で実施。資金需給が逼迫する春節(旧正月)連休前の1月15日と25日にそれぞれ0.5%ポイント引き下げる。

今回の措置は、正味8000億元(1165億1000万ドル)の資金供給に相当する。引き下げ幅は市場予想の上限で、資金供給規模は昨年1月以降の5回の引き下げのなかで最大だった。

人民銀の発表の数時間前、李克強首相が、預金準備率の引き下げや減税など、一段の景気支援措置を講じる方針を示していた。

南京証券のアナリスト、Yang Hao氏は「スピーディーで大規模な預金準備率引き下げは、成長を安定させようとする政策担当者らの決意を示す」とし「現在、中国経済は国内、対外的に問題を抱え非常に強い下押し圧力を受けている」と述べた。

キャピタル・エコノミクスはリポートで「今後数カ月間に政策緩和がさらに進む」との見方を示し、「与信の伸びがなお鈍っており、与信回復の効果が経済に表れるには普通6カ月かかることから、見通しへの懸念はあと数カ月はくすぶり続ける」と指摘した。

<さらなる政策支援>

ここ数カ月の経済指標は景気減速が続いていることを示し、市場では、今年に入り預金準備率がさらに下がると予想されていた。

しかし、人民銀行は、経済成長は依然、妥当なレンジ内にあるとし、大規模な刺激措置はとらず穏健な金融政策を継続すると表明した。

「妥当で十分な流動性を維持し、マネーや与信、社会融資の規模の妥当な伸びを維持し、マクロ・レバレッジを安定化し、財政や対外収支の均衡を目指す」とした。

アナリストらは、持続可能な景気回復に向けて政府は景気支援措置を打ち出し続ける必要があるとみているが、経済成長や雇用創出に不可欠な民間の中小企業向け融資の拡大を狙った人民銀行の施策が思ったような効果をあげていないと指摘する。

基準金利の引き下げは、人民元相場を押し下げ、債務リスクを高める恐れがあるため、最後の手段とみられている。

人民銀行は4日の会議後、流動性を適度に潤沢な状態に保ち、市場金利の安定を維持すると表明した。

*内容を追加して再送します。https://jp.reuters.com/article/pboc-rrrcut-idJPKCN1OY0SQ

http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/429.html

[経世済民130] 政府・日銀、円高・株安に警戒感 カギ握る米当局の政策判断 FRB利上げ停止も 米雇用31.2万人増 アップルショック
ビジネス2019年1月4日 / 18:52 / 7時間前更新
焦点:
政府・日銀、円高・株安に警戒感 カギ握る米当局の政策判断
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[東京 4日 ロイター] - 2019年の仕事始めとなった4日、政府・日銀は年末・年始に急速に進行した円高・株安の対応に追われた。財務省・日銀・金融庁による臨時の3者会合を開き、為替市場介入も辞さない姿勢を示したものの、市場へのけん制効果は限られた。米中貿易交渉や米利上げの行方などが、円高・株安の行方を大きく左右するとみられ、日本を巡る市場変動の動向は、米政策当局の政策判断に大きな影響を受ける構図となっている。

昨年10月以降の急激な株安で、日経平均株価.N225は5000円近くも下落した。株価に比べて落ち着いて推移していた為替市場も、年末以降に変貌。3日の海外市場でドル/円JPY=は一時、104円台まで急激な円高が進行した。

市場の動揺が増幅する中、財務省・金融庁・日銀は臨時の「国際金融資本市場に係る情報交換会」(3者会合)を開催。同会合は株価急落を受けて昨年末の12月20日、25日に続く3週連続での開催になり、異例の頻度が政府・日銀の危機感を表している。

終了後に会見した浅川雅嗣財務官は、為替市場の急激な動きに「強い懸念を持っている」とし、「必要なことがあれば、適切に対応するというスタンスに変わりはない」と市場をけん制した。

しかし、金融市場では「日銀に追加緩和手段が乏しいことなどが、狙い撃ちされている」(メガバンク)とされ、効果は限られた。

年末以降の株安は、米中貿易摩擦の激化と米国の利上げ打ち止め観測が背景。米利上げペースの緩和は米株にとって好材料といえるが、円高を誘発する可能性がある。浅川財務官は4日の会見で「日米金利差の縮小も(円高の)1つの要因」と認めた。

日本側の政策対応余地の限界も指摘される中、安倍晋三政権が掲げるデフレからの脱却が一段と遠のきつつある。

安倍政権としては、2019年に参院選や消費増税を控えており、金融市場の変調が実体経済だけでなく、支持率の低下につながることは何としても避けたいところ。

安倍首相はリーマン・ショック級の出来事が起きない限り、消費増税を予定通り実行する方針。

だが、米中間の貿易交渉が不調に終わる場合、世界的にリスクオフ心理がさらに強まる可能性がある。グローバルな株価下落が続くことになれば、景気敏感株の様相を強めている日本株にとって、大きな下げ要因として働く公算が大きくなる。

その場合、消費増税の延期の可能性が高まることも予想され、財政健全化を重視する与党内の勢力から、批判を浴びるリスクもすでに指摘されている。

内閣支持率は、昨年末の報道各社の世論調査で低下傾向となっており「経済で持ってきた政権なので、株価下落がかなり影響している」(与党幹部)との分析もある。

もっとも、国際金融市場には、リスクオフ要因ばかりでなく、米中貿易交渉の合意成立など、リスクオンに傾く材料もあり、政権運営への影響は「変数が多すぎてみえない」(政府・与党関係者)との見方が多い。

4日に開かれた全国銀行協会の賀詞交換会における年頭のあいさつで、黒田東彦日銀総裁は、今年の日本経済について「何としてもデフレ脱却に向けて前進させる必要がある」と強調した。

だが、足元で進行する円高・株安が、物価2%目標の実現時期をさらに遠のかせることになりそうだとの見方が、金融市場関係者の中で急速に高まっている。

一段と円高が進行した場合、政府・日銀が何らかの「対応策」を打ち出すのではないかとの思惑も、市場の一部でくすぶり出した。

黒田東彦総裁は、デフレ脱却へ「辛抱強く、粘り強く、一貫した政策をとっていくことが極めて重要だ」と指摘。政府・日銀一体となった取り組み継続の重要性も訴えた。

政府・日銀が対応を迫られるのかどうか、その鍵は、トランプ米大統領やパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長ら、米国の政策を決めるトップが握っているとも言えそうだ。

竹本能文 伊藤純夫 編集:田巻一彦


ビジネス2019年1月5日 / 00:53 / 29分前更新
米雇用、12月は31.2万人増 景気の底堅さ浮き彫りに
1 分で読む

[ワシントン 4日 ロイター] - 米労働省が発表した2018年12月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が31万2000人増加し、2月以来10カ月ぶりの大幅増となった。市場予想の17万7000人増も大きく上回った。

時間当たり賃金は前月比0.4%増と、前月の0.2%増から伸びが加速し、予想の0.3%増を上回った。前年同月比では3.2%増。

景気の底堅さを示し、成長急減速への懸念が和らぐ可能性もある。

失業率は3.9%に小幅上昇した。11月の失業率は約49年ぶりの低水準となる3.7%だった。

労働参加率は63.1%と、17年9月以来の高水準に達した。

10・11月分の雇用者数は計5万8000人上方修正された。

キャピタル・エコノミクスの首席エコノミストは「12月の雇用急増は、景気後退が近いとの市場不安をあざ笑う内容にもみえる」「今回の統計は、米国経済がかなりの勢いを保っていることをうかがわせた」と話す。

12月は幅広い分野で雇用が伸びた。

建設業は3万8000人増、11月は季節はずれの寒さの影響を受けてゼロとなっていた。

小売りは2万3800人増、製造業は3万2000人増、専門職・企業サービスは4万3000人増、政府部門は1万1000人増、レジャー・接客は5万5000人増だった。

平均週間労働時間は34.5時間と、11月の34.4時間から伸びた。

2018年は260万人分の雇用が創出された。17年は220万人だった。12月の雇用増に伴い、国内の雇用者総数が初めて1億5000万人を突破した。

ソシエテ・ジェネラルのシニアエコノミストは「FRBが今年出る幕はないとの観測が、今回の統計を受け少なくとも本日のところは後退するだろう」と分析した。


ビジネス2019年1月5日 / 00:38 / 44分前更新
年内の米利上げ見込まず、雇用統計受け=短期金利先物
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[4日 ロイター] - 米雇用統計公表を受け、4日の短期先物相場は引き続き年内の利上げはなく、来年初めの利下げを見込んでいる。

昨年12月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が31万2000人増加し、10カ月ぶりの大幅増となった。だが、利上げ回数予想を変えるほどの材料とは受け止められなかった。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-futures-idJPKCN1OY1GM


ビジネス2019年1月5日 / 00:43 / 39分前更新
FRB、利上げ停止も インフレ上昇しなければ=クリーブランド連銀総裁
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[4日 ロイター] - 米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は4日、インフレが上昇しなければ連邦準備理事会(FRB)は利上げを停止する可能性があるとの認識を示した。

メスター総裁はCNBCに対し、現在の経済情勢を踏まえると1回もしくは2回の利上げが妥当との考えを示しつつも、インフレが加速している兆候は確認されていないと語った。

FRBのバランスシート政策については支持しているとした上で、経済状況が悪化すれば変更することは可能と語った。

また、市場は下方リスクにかなり重点を置いているとの認識を示した。
https://jp.reuters.com/article/fed-rate-hike-stop-idJPKCN1OY1GS


ビジネス2019年1月4日 / 16:27 / 9時間前更新
アップルショック、象徴銘柄の急落が怖い理由
3 分で読む

[東京 4日 ロイター] - アップルショックが、また金融市場を襲った。業績下方修正の理由が中国での販売不振であったため、企業業績全体への懸念に広がり、世界的な株安が進んでいる。ただ、マーケットが不安視しているのは、業績悪化だけではない。同社株を組み込んでいたファンドへの影響や、自社株買いの減少など需給面への警戒感も株安の背景だ。象徴的銘柄の急落は、上昇相場を支えてきたマネーの逆回転を引き起こしつつある。

<自社株買いの減少>

アップル(AAPL.O)の自社株買いはすさまじい。2018年は9月までに752.7億ドル(約8兆円、出所:S&P Dow Jones Indices)の自社株買いを行っている。1社でS&P500社全体の10.4%を占める規模だ。過去10年間では2503億ドル(約27兆円)に達する。

そのアップルが業績下方修正を行った。中国でのiPhone販売減速を主因として、年末商戦を含む第1・四半期(12月29日まで)の売上高見通しを引き下げた。同社が四半期決算発表前に売上高見通しを下方修正するのは、2007年のiPhone発売後で初めてで、先行きへの不安が強まっている。

関連企業への受注減少だけでなく、いずれ同社の自社株買いにも影響が出るのではないか──。そうした警戒感も3日から4日にかけての世界的な株安の一因になった。

米株市場では、ここ数年、企業の自社株買いが買い手の筆頭となってきた。トリムタブスによると、米企業が2018年に入ってから発表した自社株買いは、過去最高の1兆ドル(約108兆円)を突破。発表ベースではない実際の購入額も、過去最高水準の見込みだ。

投資機会の減少により、企業は余裕資金を使って自社株買いを拡大するとの見方もある。しかし、リーマン・ショック時には、米企業の自社株買いは大きく落ち込んでおり、あくまで業績悪化の程度次第だ。

企業の業績悪化は、1株利益のスローダウンという株価のファンダメンタルズ的な要因だけではなく、需給的にもマーケットに大きな影響を与える可能性があるのが株式市場の現状である。

<ファンドのロスカット>

アップル株の急落で、もう1つ懸念されている波及経路はファンドにある。上昇相場の象徴的存在だったアップルが大幅下落したことで、ファンドのポートフォリオに大きな影響を与える可能性があるためだ。

昨年8月、アップルは時価総額1兆ドルを米上場企業で初めて達成。1980年の上場からの株価上昇率は、約5万%に達するなど上昇相場の象徴的存在だった。当時は「最も過小評価されている銘柄のひとつ」との声さえ出ており、昨年10─12月期に同社株を買い増したヘッジファンドも少なくない 。

しかし、昨年10月3日に上場来高値233.47ドルを付けた後に急反落、ちょうど5カ月後の今年1月3日までに高値から39.1%の大幅下落となっている。

米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイ(BRKa.N)の株価は、3日の終値で、前日比5.49%の急落となった。同社はアップルの発行済み株式総数の5.32%を保有する世界第2位の株主だ(1位はバンガードで7.14%)。

同水準に基づくと、バークシャーが保有するアップル株の価値は、9月末時点の576億ドルから360億ドル以下に減少した計算となる。

「アップルは単なる1つの株ではない。波及効果が大きく、アップルが下げれば、他の複数の株が下がる。ファンドはロスカットによる売りに回り、株価が下落。株が下がれば、また売らなければならないという悪循環に陥ろうとしている」とスプリングキャピタル社長の井上哲男氏は指摘する。

<政策対応は歯止めとなるか>

今の相場は、当局の政策対応を待つ「催促相場」とも言われる。実際、市場では「FRB(米連邦準備理事会)が利上げ停止、もしくは利下げに転じれば、マーケットは好感し、下げ相場の転換点になる」(外資系証券ストラテジスト)との見方は少なくない。

実際、米国の長短金利が逆転(逆イールドカーブ)したケースをみてみると、金融政策の転換などで、いったん株価は上昇する場合が多い。

しかし、今回のiPhoneなどの需要減退が、米中貿易戦争を起因としたものならば、金融緩和などの政策対応がどの程度の効果を持つかは不透明だ。

市場では「米中貿易戦争の本質は、覇権争い。これは金融政策が転換しようと、トランプ大統領が交替しようと変わらない。決着がつくまで企業は投資を控えるだろうし、マーケットも上値が重くなるだろう」(外資系証券の営業担当幹部)と、悲観的な見方も増えている。

日本は年間約6兆円とアップルの自社株買いに迫る規模のETF買いを続ける日銀の存在がある。しかし、世界的な景気減速、日本以外の金融緩和転換の可能性と、世界の景気敏感株と位置付けられ、円高に弱い日本株には不利な状況だ。日本時間4日午後3時時点のアジア市場で、一番下げているのは日本株となっている。

ニッセイ基礎研究所・チーフエコノミストの矢嶋康次氏は「世界の耐久財需要が落ちている。政策転換でいったん米株は戻ったとしても、企業業績を回復させるのは難しい。日本株は米長期金利低下による円高で苦しくなるだろう。政策対応の余地は乏しいが、まずは、日銀が強気な景気認識を変える必要があるのではないか」と指摘している。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)
https://jp.reuters.com/article/abe-new-era-name-idJPKCN1OY0FN

 
コラム2019年1月4日 / 15:07 / 10時間前更新
iPhone、中国の購買意欲の指標として信頼できず
Christopher Beddor
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[香港 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - iPhoneは中国の購買意欲を計る指標としては信頼できない。米アップル(AAPL.O)は2日、中国販売が予想を下回ると警告、市場を動揺させた。しかし、1000ドルのスマホなど海外の高級品はより幅広いトレンドをとらえ切れない。中国の需要は確かに冷え込みつつあるが、品目によりむらがある。投資家はまだパニックを起こす必要はない。

クック最高経営責任者(CEO)は第1・四半期(10─12月)の売上高見通しを840億ドルとし、従来の予想レンジの中間点を70億ドル下回る水準に設定した。中国の需要の弱さを主な理由に挙げた。

市場は大きく動揺した。アップルの株価は3日に10%下落、S&P総合500種指数は2%超下落した。安全資産とされる円相場は急伸した。中国の需要動向を知らせる「炭鉱のカナリア」として、投資家がアップルに注目するのは理解できる。しかしアップルの下方修正は、中国経済の問題とともに、アップルという会社についても語っている。

カウンターポイント・リサーチによると、中国のスマホ市場におけるiPhoneのシェアは第3・四半期は9%であり、iPhoneは中国ではニッチな高級品だ。アップルは最新機種が高額過ぎると批判を浴びている。例えば、ベーシックな「iPhoneXS」は中国では8699元(1270ドル)だ。ファーウェイなど地元ライバルは順調に業績を伸ばしている。通商摩擦は(アップルの)助けになっていない。

スマホは中国のセンチメントに関し、信頼性に欠ける指針だ。カウンターポイントによると、市場は第3・四半期は飽和状態に陥り、前年比で8%縮小した。マクロ経済の要因に加えて、業界特有の問題が背景にある。

鈍化は確かに起きている。ただ今のところは高額な裁量的品目に集中しているようだ。ティファニー(TIF.N)やLVMH(LVMH.PA)などは需要減退を指摘しているが、ナイキ(NKE.N)などのミドルマーケットの小売企業は業績が好調だ。オンライン旅行会社シートリップ(CTRP.O)は第3・四半期は良好な業績を上げ、「マクロ的な不透明感」にもかかわらず15─20%の増収を見込んだ。公式統計では小売売上高は減速しているが、減税がなくなった自動車の販売が減少したところが大きい。

クックCEOの警告は無視すべきではなく、さらに深刻な低迷期がこれから訪れるのかもしれない。しかし、1社の売上高でもって全体のトレンドを判断しようとするのは、賢明なことではないだろう。

●背景となるニュース

*アップルは第1・四半期の売上高見通しを840億ドルとし、従来の890億─930億ドルから引き下げた。クック氏は投資家への書簡で「主要新興国で一定の逆風を想定していたが、特にグレーターチャイナで景気がこれほど減速するとは予想していなかった」とし、「売上高の下振れ分の大半をグレーターチャイナが占めた」と明らかにした。

*中国人民銀行(中央銀行)が発行する雑誌「中国金融」は2日、2018年第4・四半期の成長率が6.5%を下回った可能性があると伝えた。「閉鎖や解雇といった現象が多くみられ、勤労者所得の伸びはかなり抑制されている」とした。18年第3・四半期の成長率は、世界金融危機以降で最低の6.5%に減速した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/breakingviews-china-iphone-idJPKCN1OY0CK
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/430.html

[経世済民130] ウィーン氏の19年びっくり予想:米国株15%上昇、米利上げ見送り FT執筆陣が占う世界:ブレグジット転換、トランプ弾劾
ウィーン氏の19年びっくり予想:米国株15%上昇、米利上げ見送り
Lu Wang、Vonnie Quinn、Guy Johnson
2019年1月4日 4:14 JST 更新日時 2019年1月4日 14:32 JST
米10年債利回りは3.5%未満で推移も、依然として順イールド維持へ
中国株は新興国市場の上昇を主導、上海総合指数は25%高へ
米国株は2019年に上昇し、この10年間で最大の下げとなった昨年の相場から持ち直す。景気は拡大を続け、米金融当局は利上げを見送る。ブラックストーンのバイロン・ウィーン氏が毎年恒例の「びっくり予想」を明らかにした。

  ブラックストーンのプライベートウェルス・ソリューションズ・グループ副会長を務めるウィーン氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、S&P500種株価指数が今年15%上昇すると予想。リセッション(景気後退)は21年より前には起きないとの見方を示した。同氏は1年前に示した18年予想の中で、S&P500種がいったん2300に下げ、年末には3000を上回っていると述べていた。同指数は実際には年間で6%安の2500近辺で終了。18年の最安値は約2350だった。

  ウィーン氏(85)は「現在の良好な経済と好ましい株式市場は、まだ数年続く」と述べた。モルガン・スタンレーのストラテジストを務めた経歴を持つ同氏は1986年以来毎年、投資家の予想では発生確率3分の1だが自身は5割以上とみる事象を集めた「びっくり予想」を公表している。


バイロン・ウィーン氏写真:Christopher Goodney / Bloomberg
  18年の予想のうち同氏が的中させたのは、米国の4度の利上げやドル高など。原油価格については1バレル=80ドルを上回るとの見通しを示していた。実際には77ドル近辺でピークを付け、その後50ドルを割り込んだ。

  米10年債利回りは4%に向かって上昇するとみていたが楽観的過ぎた。米共和党が上院で過半数を失うとの予想も外れた。

  19年については、米国の経済成長率が2.25%または2.5%になると予想。米中の通商合意は1−3月(第1四半期)にまとまるとみている。ドルは「安定」し、金は1オンス=1000ドルに下落、新興国市場の企業の利益見通しは改善するという。

  トランプ大統領が20年に再選される可能性は「かなり高い」とし、その理由として減税や規制緩和を実施したこと、北朝鮮との戦争を防いだことを挙げた。

  ウィーン氏のその他の予想は以下の通り:

米10年債利回りは3.5%未満で推移する一方、利回り曲線は引き続き順イールド
中国株は新興国市場の上昇を主導し、上海総合指数は25%高へ
英国の欧州連合(EU)離脱問題で期限の3月29日にまでに英議会がEUとの離脱協定を承認しないが、メイ英首相は続投。2回目の国民投票が実施され、英国はEU残留を決める
モラー米特別検察官による捜査は、トランプ・オーガニゼーションの関係者で大統領の側近に対する起訴につながるが、証拠は大統領自身に対する直接行動を後押しするものではない
上下両院で多数派が異なるねじれ議会が予想以上の効果を発揮し、医療保険制度改革法(オバマケア)や移民政策の重要部分を維持することで前進。20年に実施される連邦インフラ整備プログラムが公表される
テクノロジー株やバイオテクノロジー株など成長株が好業績に支えられ米株式市場を引き続きけん引へ
原題:Byron Wien Lists 15% S&P 500 Rally, No Fed Hike in Surprises (2)(抜粋)

(その他の予想を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-03/PKRNYB6S972A01?srnd=cojp-v2


 

新春恒例の大予測:FT執筆陣が占う2019年の世界
ブレグジットの方針転換から市場混乱、トランプ大統領の弾劾まで
2019.1.4(金) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年12月29/30日付)

【写真特集】世界中でハッピーニューイヤー!AFPがとらえた新年の幕開け
オーストラリア・シドニーのオペラハウスのそばで、新年の到来を祝い打ち上げられた花火(2019年1月1日撮影)。(c)AFP/PETER PARKS〔AFPBB News〕

 ドナルド・トランプ大統領とブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)、そして保護貿易主義とポピュリズムの時代に入り、この世界は予測しにくくなっているのではないか。

 本紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の執筆陣にとっては、そう思える。

 我々は1年前の設問で20件の予測のうち8件を外し、数年ぶりのひどい成績を残してしまった(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52019)。

 ドナルド・トランプ大統領の弾劾手続きが始まるとの予想は当たらなかった(もっとも、担当者のエドワード・ルースは今年も同じ予想を掲げている)。

 メキシコの大統領選挙では推した候補が落選し、ユーロ圏の予算やサッカー・ワールドカップの優勝国についても読みを誤った。

 原油価格、新興国の経済成長、米国の株価(S&P500株価指数)については楽観的すぎた。

 しかし、インドの中央銀行総裁が先日辞任したことを考えると、ナレンドラ・モディ首相が2018年に経済政策で新たな実験を試みるという予測は、タイミングが少し早かっただけかもしれない。

 従ってFT執筆陣は、本紙読者による予測コンテストの優勝者に2年連続で完敗を喫したことになる。

 優勝したモハメド・シャハケ・ミアさん(イングランド、ロッチデール市)は3つしか外さないという見事な成績だった。心よりお祝いを申し上げる。

 本年も、FT読者による予測コンテストを実施する。

 参加をご希望の方は、本名と電子メールアドレスを明記のうえ、以下の20件と同点決勝のテーマについて予測をお送りいただきたい(https://survey.ft.com/jfe/form/SV_5cEQDt9RcRdPh5P)。2019年がよい年になりますように!

By Neil Buckley

ブレグジットは阻止されるか?
 阻止される。英国はギリギリのタイミングでこの自傷行為を止めることになるだろう。

 テリーザ・メイ首相は2016年に「ブレグジットはブレグジット」だと述べたが、実際のところブレグジットとは何を意味するのか、2年に及ぶつらい議論を経ても、首相自身の党においてさえ見解の一致をみていない。

 議会は結局、どのバージョンのブレグジットについても合意できず、この問題を有権者に差し戻すことになるだろう。

 2度目の国民投票では、有権者は、イデオロギー的執着のために繁栄と安全保障を犠牲にすることを好まない国家という英国の評価を回復させるために1票を投じるだろう。

 なお、この予測には予想と同じくらい願望も(!)込められている。

By Philip Stephens

ジェレミー・コービン氏は英国の首相になるか?
 ならない。野党・労働党を率いるコービン氏は世間的なイメージアップを果たしたものの、同党の支持基盤に属さない有権者から支持を得るには至っていない。

 英国では2019年に総選挙が行われそうだが、コービン氏の勝利は確実にはほど遠い。

 複数の世論調査によれば、コービン氏の支持率はテリーザ・メイ首相や労働党のそれを下回っている。これまでの実績ではコービン氏が国のリーダーにふさわしいとは言えない、というのが有権者の判断なのだ。

 ただ、保守党が欧州をめぐる消耗戦を続ければ、瓦礫の山から労働党が台頭してくる可能性もあるだろう。コービン氏が党首の座を降りる場合は特にそうだ。

By Sebastian Payne

フランスのジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)の抗議行動の後、エマニュエル・マクロン大統領は改革を再開するか?
 再開する。大統領には選択肢がそれしかない。改革をあきらめれば、政治家として存在するのを止めることになるだろう。

 反政府デモに参加した人々の怒りが収まるように、そして住宅減税と最低賃金引き上げの効果が効き始めるようにするためには、戦術的な小休止もやむを得ないように思われるが、その後は年金、失業保険、企業の規制などで改革を進めていくだろう。

 国家のスリム化にはこれまで以上に慎重な取り組みが求められるだろうが、実行していけば、重税に対する反政府運動参加者の不満に応える一助になるかもしれない。

 ただ、これ以上の混乱を回避するには、マクロン氏は国民を引っ張っていくという仕事をもっと上手にやらねばならない。

By Ben Hall

欧州議会選挙でポピュリストは躍進するか?
 躍進する。今度の欧州議会選挙では、ポピュリストやナショナリストが躍進するお膳立てが完璧にできている。

 複数の世論調査によれば、選挙の最大の争点はほとんどの国で「移民」となっている。

 また、欧州議会選挙は抗議票を投じる機会として使われることが多いうえに、比例代表制で行われることもポピュリストに有利に作用する。

 マッテオ・サルビーニ氏が率いるイタリアの「同盟」、「ドイツのための選択肢(AfD)」、「スウェーデン民主党」といったナショナリストの政党は、議席をかなり増やす公算が大きい。

 全体的には親EUの中道勢力が過半数を維持するだろうが、次の議会はこれまでよりもはるかに分断され、かつ混乱したものになりそうだ。

By Gideon Rachman

米国の民主党はドナルド・トランプ大統領の弾劾を試みるか?
 答えはイエスだ。2019年の初めにはロバート・モラー特別検察官の捜査が強烈な結論に達し、数多くの起訴と、有罪を証明する報告がなされるだろう。

 トランプ氏はその報告の内容――民主党の通信を傍受してその公表を手配するべくロシアと共謀した――を退け、民主党の支持基盤を激怒させる。

 ナンシー・ペロシ下院議長は公聴会の開催に同意し、民主党が過半数を握る下院でトランプ氏は弾劾される。

 しかし、上院での弾劾には3分の2の議員の賛成が必要なため、トランプ氏は難を逃れるだろう。こうして、2020年の「法の支配」をめぐる大統領選挙がお膳立てされることになる。

By Edward Luce

ドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席の間で貿易戦争の休戦が続くか?
 ノー。

 米国と欧州連合(EU)の間では2018年7月以降、関税戦争の休戦が続いているが、ドナルド・トランプ大統領と政権幹部らは、貿易を歪める中国の常習的行為と呼ぶものに対してもっと根深い批判を抱いている。

 米国側は事実上、中国製品に対する追加関税を避けるためには、トランプ氏と習近平国家主席の間で12月にまとめられた合意は、中国が今後3カ月で国家介入主義的な発展モデル全体を解体し始めなければならないことを意味すると主張している。

 そんなことは起きない。米国は2019年半ばまでに、中国からの輸入品にかける関税の引き上げを再開するだろう。

By Alan Beattie

ロシアはウクライナに対する軍事行動をエスカレートさせるか?
 答えはノーだ。

 ロシアが11月に黒海でウクライナ軍艦船を3隻拿捕した一件は不穏な出来事だった。ウクライナのロシア正教会離脱は緊張関係に火をつけた。

 不人気な年金改革によってウラジーミル・プーチン大統領の支持率が低下している中で、ウクライナに対する軍事行動は注意をそらす材料となり、愛国心をかき立てるきっかけになるだろう。

 しかし、プーチン大統領は慎重にリスクを検討する。ウクライナ軍は5年前よりも、よく訓練されており、装備も整っている。

 ロシア国民は、「兄弟」国家との戦いで多くの犠牲者が出ることは受け入れない。クレムリンでは、慎重な姿勢が優勢になるだろう。

By Neil Buckley

新たな金融危機が起きるか?
 もし金融危機のことを「政策立案者が世界的に重要な金融機関を同時に2社以上救済ないし清算する必要がある局面」と定義するのであれば、答えはノーだ。

 だが、金融市場と数々の経済国で混乱が生じる時期があるだろう。

 楽観論を抱く理由は、2008年の金融危機以降、グローバルな金融機関のバランスシートが大幅に強化されたことだ。

 一方、悲観論を抱く理由は、依然金利が低く、債務水準が例外的に高く、多くの資産価格が高止まりしていることだ。

 弱点となるのは、複数の新興国、中国、ブレグジットに襲われる英国、イタリア国債、米国株などだろう。

By Martin Wolf

インドの議会選挙の後、ナレンドラ・モディ氏は首相の座にとどまっているか?
 とどまっている。

 ナレンドラ・モディ首相の率いる与党・インド人民党(BJP)は最近、ヒンディー語を話す北部の重要な牙城で劇的な挫折に見舞われ、一見瀕死だった野党・国民会議派がBJPの支配下にあった3州で権力を奪還した。

 この敗北は、モディ氏が今、2014年に有権者に抱かせた高い期待を満たすのに苦労していることを示唆している。

 しかし、首相は今も個人的に人気が高く、選挙運動にかけては、カリスマ性のある決意の固い政治家だ。

 モディ氏は選挙での勝利を確実にするために、様々なポピュリスト的な支出も含め、ありとあらゆる対策を講じるだろう。

By Amy Kazmin

南シナ海をめぐる論争は爆発的に激化するか?
 しない。

 中国政府は米国との貿易戦争で頭がいっぱいで、ドナルド・トランプ大統領に中国を批判する口実をこれ以上与えたくない。

 圧倒的な武力の非対称性が存在するため、南シナ海で領有権を主張しているほかの国々が中国と敵対する見込みは薄い。

 中国は引き続き南シナ海の人工島の増設・軍事化を静かに進めるが、少なくとも2019年には、それ以上大胆な動きには出ないだろう。

By Jamil Anderlini

ジャイル・ボルソナロ大統領はブラジル経済の成長を加速させるか?
 加速させる。

 南米最大の経済大国であるブラジルは、いずれにせよ、史上最悪の景気後退後の循環的な回復局面に入ろうとしている。

 ジャイル・ボルソナロ新大統領の提案した経済改革は、投資家の間にすでに存在していた期待感を高めている。

 米シカゴ大学で教育を受けた経済相が舵取りにあたるこれらの自由化対策は、忌むべき内容が多い新政府の政策要綱の中で分別のある部分を構成している。

 もしボルソナロ氏がこうした対策の一部、特にブラジルが切に必要としている年金改革を議会で可決させることができれば、経済にさらなるカンフル剤を与えることになるだろう。

By John Paul Rathbone

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子はジャマル・カショギ氏殺害後の余波を無事に乗り切れるか?
 乗り切れる。

 若き王子は3年かけて自身の権力基盤を固め、ライバルを排除してきた。

 年老いた父親のサルマン国王はお気に入りの息子の肩を持っており、皇太子を降格させたりしたら屈辱になる。

 国際的に見れば、ドナルド・トランプ米大統領は、著名記者ジャマル・カショギ氏の残忍な殺害事件よりも世界一の産油国との関係――およびムハンマド・ビン・サルマン皇太子が約束してくれた何十億ドルもの投資と武器売買契約――の方がはるかに重要だと考えていることを明確にした。

 ただし、一つ注意事項がある。今回の一件で皇太子が予測不能で頑固なことがはっきりした。もし皇太子の指揮下で再度、性急な行動が国際危機を引き起こしたりすれば、潮の流れが変わる可能性がある。

By Andrew England

S&P500株価指数は3000ポイントを上回って2019年末を迎えるか?
 答えはノーだ。

 最近の乱高下にもかかわらず、2019年末の終値のアナリスト予想中央値は3000ポイントを上回っている。

 だが、ウォール街で史上最長級の強気相場を支えてきたプラス要因は徐々に消えつつある。この先、企業の利益成長が鈍り、利益率が圧迫されていく。

 米連邦準備理事会(FRB)が利上げを中断してドル高が食い止められたり、中国が景気刺激策を講じたりすれば、市場心理の助けになるだろう。

 しかし、上昇サイクルはもう終盤を迎えており、企業の信用力にかかるストレスが高まっている。

 低金利時代にクレジット(信用)市場ほど激しくパーティーに沸いたセクターは存在しない。音楽が止まると、株式市場はバランスシートが重要なことを思い知らされるだろう。

By Michael MacKenzie

エチオピア首相は、アフリカ大陸でも特に目覚ましい国家変貌の勢いを維持できるか?
 イエス。

 2018年4月に権力を握ったアビー・アハメド新首相は、アフリカで同年断トツの一大サプライズだった。

 就任以来、数千人もの政治犯を釈放し、活動を禁止されていた野党グループの復活を許し、エリトリアとの和平を実現し、女性が半分を占める内閣を発足させている。

 エチオピアでの変化はアフリカ大陸の大部分をあっと驚かせた。

 アビー氏が示した勇気と決意を考えれば、同氏の失敗に賭けるのは軽率だ。たとえ同氏の暗殺をすでに1度試みた既得権集団を敵に回し、行く手の道のりが危険に満ちているとしても、だ。

By William Wallis

ブレント原油は2019年末に1バレル60ドルを割り込んでいるか?
 割り込んでいる。

 米国での原油生産急増と経済の先行きに垂れ込める暗雲のおかげで、原油価格は過去3カ月間で急落した。どちらの要因も2019年も続く。

 原油安は米国シェール業界にブレーキをかけるが、すでに掘られて生産開始を待つ油井といったモメンタムが十分あり、生産量は増え続けるだろう。

 石油輸出国機構(OPEC)と友好国は12月、減産に合意することで価格の安定を図ろうとしたが、減産体制の遂行がほころぶ可能性がある。

By Ed Crooks

ウーバーは史上最大のIPOを達成できるか?
 できない。

 中国のアリババ集団が記録的なIPO(新規株式公開)で調達した250億ドルという金額には、ほぼ確実に手が届かない(アリババの上場時には企業価値がほぼ1700億ドルと評価された)。

 最近のハイテク株の下落とウーバーテクノロジーズの巨額営業赤字を考えると、一部のバンカーが喧伝している1200億ドルというバリュエーションには無理があるように思える。

 しかし、株式市場は新しい高成長企業に飢えており、ウーバーは新経営陣の下で、巨大なオンデマンド輸送・物流市場を開拓するチャンスがある。

 このため同社のバリュエーションは、フェイスブックが米国最大のハイテク株IPOで与えられた1000億ドルの価値評価と肩を並べる可能性はある。

 ウーバーが見事にデビューできれば、エアビーアンドビー、ピンタレスト、パランティア・テクノロジーズなど、後に続くことを望むハイテク企業のためのお膳立てが整うことにもなるだろう。

By Richard Waters

マーク・ザッカーバーグ氏はフェイスブック会長の座を降りるか?
 降りない。

 フェイスブックのコーポレートガバナンス(企業統治)問題を考えれば、本来は降りるべきだ。だが、少なくとも自らの意思では退任しないだろう。

 米証券取引委員会(SEC)のルールを破ったことで米テスラの会長職辞任を強いられたイーロン・マスク氏とは異なり、ザッカーバーグ氏はまだ処罰対象となるようなことはしていない。

(米連邦取引委員会=FTC=がプライバシー問題に関する2011年の合意内容にフェイスブックが違反したと判断すれば、この状況も変わる可能性がある)

 フェイスブック取締役会が会長退任を迫るかもしれないが、ザッカーバーグ氏はまだ議決権のある株式のほぼ60%を握っている。好きなだけ経営トップの座にとどまれるだけの持ち株だ。

By Rana Foroohar

米国のイールドカーブは反転するか?
 反転する。

 これまで大半の景気後退に先駆けて、償還期間が様々な米国債利回りが描く曲線(イールドカーブ)が反転し、短期金利が長期金利よりも高い状態になった。

 現在も危険なほど転換点に近くなっている。

 10年債利回りは、3%を大きく超えて上昇する可能性は低い。

 インフレ率低減につながる人口動態や安全資産に対する需要といった作用から利回りが抑え込まれるからだ。

 一方、FRBはまだ2019年に利上げを数回実施する公算が強い。その結果、イールドカーブがぎりぎりで反転し、先々のトラブルの兆候になるはずだ。

By Robin Wigglesworth

ファーウェイは中国国外で足がかりを失うか?
 ノー。

 中国の巨大通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)は、西側の主要市場で様々な制限を受けるだろう。

 米国とオーストラリアはすでに、同社製品を禁止している。

 英国、カナダ、ドイツ、フランスといった国は、自国の「中核」的な第5世代(5G)ネットワークにファーウェイが通信機器を提供するのを阻止しながら、周辺的な作業への関与を認める部分的制約を課す公算が強い。

 だが、この措置は決して、ファーウェイの進歩を止めることを意味しない。

 新興国市場での存在感、携帯端末における世界的な覇権、拡大するエンタープライズ事業のおかげで、モノのインターネット(IoT)誕生が新たな起爆剤を与えてくれるまで同社は乗り切ることができるはずだ。

By James Kynge

日産・ルノー連合はカルロス・ゴーン氏抜きで生き延びられるか?
 イエス。

 連合にとって、事態は確かにひどい様相を呈している。

 カルロス・ゴーン氏の逮捕と失脚についてはっきりしている数少ないことの一つは、それが日本側とフランス側の間の緊張の症状だった、ということだ。

 こうした緊張関係は、和らぐ前にまだ激化するだろう。

 それでも、この大失態が続く間、数々の前提の真偽が試されることになる。その一つが、日産・ルノー連合にとってゴーン氏がかけがえのない接着剤だったという信条だ。

 連合の参加企業は互いに密に絡み合っており、将来必要になるマスマーケット技術を進化させる最善のチャンスを互いに与えている。

 何らかの合意が見つかり、連合というバンドは解散せずに済むだろう。

By Leo Lewis

同点になった場合のタイブレーカー設問:ラグビー・ワールドカップに優勝するのはどの国か?
c The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. Please do not cut and
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55127


 



http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/431.html

[マスコミ・電通批評15] 哲学界のロックスターが語る「世界が存在しない」意味『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』
2019年1月4日 堀内 勉 :HONZ
哲学界のロックスターが語る「世界が存在しない」意味『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』

Photo:PIXTA
ドイツの若き天才哲学者マルクス・ガブリエルの
ドキュメンタリー番組まとめる
『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』書影
『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』 丸山 俊一著 NHK出版 886円
 本書『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』は、「欲望の資本主義」「英語でしゃべらナイト」「爆問学問」「ニッポンのジレンマ」「人間ってナンだ?超AI入門」「ネコメンタリー」など、異色の番組を次々と世に送り出してきた敏腕プロデューサー丸山俊一の手による、ドイツの若き天才哲学者マルクス・ガブリエルのドキュメンタリー番組「欲望の時代の哲学〜マルクス・ガブリエル 日本を行く〜」を、一冊の本にまとめたものである。

 本書の主役であるガブリエルは、2009年に29歳の若さでボン大学の哲学科教授に就任した、ポスト構造主義(ポストモダニズム)以降の「新実在論(new realism)」の旗手として、今、世界で最も注目されている「哲学界のロックスター」である。

 ドイツ語、英語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語、フランス語、中国語のみならず、古代ギリシャ語、ラテン語、聖書ヘブライ語などの古典語にも精通しており、2013年に刊行した『なぜ世界は存在しないのか』(原題:Why the World Does Not Exist)は、哲学書としては異例の世界的ベストセラーとなった。

若きガブリエルはなぜ
これほどまでに世界中で注目されているのか
 一体、若きガブリエルの何がそれほどすごいのか、なぜこれほどまでに世界中で注目されているのだろうか。それを理解するために、ガブリエル自身の言葉を借りながら、現代哲学の歴史を振り返るところから始めてみたい。

 ドイツのマルティン・ハイデガー(1889-1976年)に始まる「実在論(realism)」は、第二次世界大戦後に、フランスのジャン・ポール・サルトル(1905-1980年)らの「実存主義(existentialism)」に受け継がれ、様々な国の運動として広がった。これは、人間の実存(事物一般が現実に存在することそれ自体)を哲学の中心に置く思想的立場であり、これを一言で表現すれば、「実存(existentia)は本質(essentia)に先立つ」ということである。

 この考えは、キリスト教などにおける、人間には本質(魂)があり生まれてきた意味を持つという宗教的な考えを真っ向から否定するものである。第二次世界大戦ですべての意味が破壊される悲惨な状況を見て、人々は神が人生に意味を与えてくれなかったことを悟り、「自分の人生以外に、自分の人生に意味を与えるものは何ひとつない」、つまり、「まずあなたが存在する。そして、人生に意味を与える」と考えるようになった。

 その後、1960年代に入ると、実存主義は、クロード・レヴィ=ストロース(1908-2009年)、ジャック・ラカン(1901-1981年)、ミシェル・フーコー(1926-1984年)などの「構造主義(structuralism)」による厳しい批判にさらされ、それに取って代わられるようになる。

 構造主義によれば、自分の主観は、自分を取り巻く文化的な価値観、家族、育った場所など、様々な要素からできあがった構造に依拠しており、それが人生に意味を与えるのだとされる。構造主義の祖・社会人類学者のレヴィ=ストロースが、世界各地の神話に共通で普遍的な構造が存在することを発見したことを契機としており、構造主義はそれを研究対象とし、そうした構造が何であるかを見つけ出そうと努めた。

 更に、これへの反動として、1960年代後半から 70年代後半のフランスにおいて、静止的な構造を前提とする構造主義に対して、近代的な物語を解体して、「脱構築(deconstruction)」しようとしたジャック・デリダ(1930-2004年)に始まる「ポスト構造主義(post-structuralism)」(ポストモダニズム)が興る。

 それ自体で完結した、時間の流れや歴史的な変化を考慮しない構造を分析しようとする構造主義は、生成や変化といったリアルタイムで進行しつつある出来事を扱い得ないものとして批判されるようになり、ポスト構造主義は20世紀の哲学全体に及ぶ大きな潮流となった。

 しかしながら、その後、世界の歴史は、1989年のベルリンの壁崩壊とそれに続く東西ドイツの再統一、ソヴィエト連邦の崩壊という大きな転換点を迎えることになる。こうした大転換期を経て、当時は自由民主主義こそが人類の平和と繁栄を実現するための唯一の選択肢であり、希望でもあるように思われた。

 ところが、2001年の同時多発テロ、2008年の国際金融危機(リーマンショック)へとつながっていくことで、人類がよって立つ、資本主義と自由民主主義という世界を支える二つの概念が大きく揺さぶられる中で生まれたのが、ガブリエルが主導する新実在論である。

 実存主義にせよ、構造主義にせよ、ポスト構造主義(ポストモダニズム)にせよ、その根底にあるのは、社会構造というのは人々が共同行為によって作り上げている夢のようなものであり、そこには当初から意味を持った現実など何もないという理解である。

 こうした前提に基づいて、人々は1960年代から1980年代にかけて、第二次世界大戦やベトナム戦争のような社会を抑圧する大惨事から逃れ、皆が自由になるために社会をどのように変えられるだろうかと構想したのである。

 そして、こうしたポスト構造主義(ポストモダニズム)の思想が経済体制として結実したのが、今のネオリベラリズム(新自由主義)であり、更に、この社会的現実など何もないのだというポストモダニズム的な思考を、政治の世界に持ち込んで大成功したのが、第45代アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプなのである。

ガブリエルの
新実在論のポイント
 ガブリエルの新実在論のポイントは、「本質主義(essentialism)」(個別の事物は必ずその本質を有し、それによりその内実を規定されているという考え方)対「相対主義(relativism)」(認識や価値はその他の見方と相対的関係にあるという考え方)という対立の図式から抜け出す第三の道を開くことである。

 この点について、立命館大学大学院准教授の千葉雅也による『半世紀もくすぶっていた難問に挑んだ「天才哲学者」驚きの論考』の解説が分かりやすいので、その一部を紹介してみたい。

 千葉雅也は、一例として、富士山を、同時にAとBが見ている場面を挙げる。本質主義によれば、富士山が唯一の実在であり、AとBは異なる見方で富士山を見ているが、AとBそれぞれの視点における富士山は単に視点の相違にすぎず、実在的ではない。これを自然科学の立場から言えば、富士山の実在は物質的・数理的に説明され、それだけが真である。これに対して、相対主義によれば、我々は常に何らかの視点から見た、主観的な構築としての富士山しか知ることができず、実在的な富士山にはアクセスできない。

半世紀にもわたってくすぶり続けてきた
哲学上の難問に挑んだのがガブリエル
 ポストモダニズム以後、こうした対立が解決できないまま残され、特に人文学においては、科学的世界像も含め、「あらゆるものは幻想である」という相対主義的傾向が強まり、それへの批判が繰り返し行われてきた。

 こうした半世紀にもわたってくすぶり続けてきた哲学上の難問に挑んだのがガブリエルであり、それが故に彼の発言が今最も注目されているのである。

 ガブリエルによれば、AとBそれぞれの視点における富士山があるのは確かだが、物事の実在はそもそも特定の「意味の場」と切り離すことはできず、それは単なる主観的な構築ではなく、それぞれが実在的である。そして、富士山とは、諸々の実在的な見方の交差のことであり、「意味の場」から独立した富士山「自体」は考えようもない。

 ここで、ガブリエルの『なぜ世界は存在しないのか』で言うところの「世界は存在しない」の意味が明らかになる。「世界」とは、実在のすべてを包括する最大の集合を意味するのだとすれば、実在的視点は際限なく増加するから、そのような包括はできないということである。

 ガブリエルの新実在論は、「存在する」ということを「意味の場に現象する」ことととらえているという意味で、新しい実在論ということができる。他方で、こうした無限の意味の場をすべて包摂する意味の場(世界)は存在しないという意味で、無世界観を唱えているのである。

 見方は様々だという相対主義だけならまだ「認識論(epistemology)」の内側にとどまるが、ガブリエルはこのように、「存在論(ontology)」にまで相対化を徹底しているのである。こうしてガブリエルは、特定の意味の場を特権化し、自然科学こそが唯一実在にアクセス可能だとする、世の中で広く支持されている科学主義の立場にNOを突きつける。非科学的な実在性も、ファンタジー的な実在性もあるというのである。

 ここまでが、千葉雅也の言及している、『なぜ世界は存在しないのか』のポイントなのだが、本書『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』では、逆に自然科学の重要性が繰り返し強調されている。

 ガブリエルが否定しているのは、科学が唯一の意味の場となって、そこから人間が取り残されてしまうことであり、逆に、事実を認識して知識を獲得する手段としての科学については、人々が道徳観を形成する上で絶対的に重要であるとしている。

 相対主義というのは、「ものごとの事実などないと論じる」ものである。これを道徳に当てはめてみると、現代の人々の多くは、世界には様々な道徳観があるという「道徳的相対主義」が正しいと考えている。

 道徳的相対主義者は、西欧には西欧の、ロシアにはロシアの、日本には日本の道徳観があり、「これらの道徳観の善悪を決する基準などない」と思っている。しかしながら、もしそれが真実なら、「正義などなく、あるのは征服だけである」ということになる。実は、それがトランプの世界観であり、ビジネスモデルなのである。

トランプに代表されるような
権威主義的な人間が科学を攻撃する理由
 ガブリエルの新実在論は、こうした考え方を真っ向から否定する。相対主義が一般的に常に正しいのであれば、例えば、「子どもを拷問していいか」という質問も相対化されてしまう。ところが、実際にこうした質問をすれば、国や宗教のいかんを問わず、絶対多数の人間がNOと答えるだろう。それはつまり、世の中には「道徳的事実(moral facts)」が存在するということを意味している。こうした道徳的事実は、「他人の立場になって考えてみた時にわかる類のもの」である。

 但し、それは、自分が全ての事実を承知していて、状況を正確に理解していることが前提条件となる。もし知識と科学を攻撃する者がいて、そのねつ造に成功すれば、我々は道徳的になることが不可能になってしまう。例えば、気候変動を否定する人々は、科学の専門家を攻撃し、知識を葬り去ろうとしているのであり、これがトランプに代表されるような権威主義的な人間が科学を攻撃する理由なのである。

 そして、本書の一番重要なポイントとして、ガブリエルは最後に次のように語っている。

“僕らは、今こそ、本当の事実を見つけ出すため、人類全体として力を合わせはじめなければならない。経済的事実、宇宙に関する事実、そして道徳的事実。もし僕らが、何が事実か、何が明らかな事実かを知りさえもしなければ、民主主義の出番など絶対にないだろう。なぜなら、民主主義とは、乱暴に要約すれば、僕が「明白な事実の政治」と呼ぶものに基づくべきものだからだ。それこそが守るべき価値だ。民主主義は人々が実際に知っていることを集め、僕らが実際に知っている点と点を結び、現実の系統的解釈を考え出す。そして現実の系統的解釈の上にのみ、つまり特に「現実がどのようなものかを知ることなどできない」という幻想を乗り越える解釈、この基礎の上にのみ、僕らの時代における大いなる疑問に答えはじめることができる。…僕と君は、根本的には同じだ。現実と道徳的事実がどのようなものか知る能力を持つ人間であり、動物だ。人間であり動物であることの合理性に関するこの洞察を、僕らの教育システムに組み込みことがとても重要だ。そしてようやく、僕らが絶えず直面する嘘やフェイクニュースを疑いはじめることができる。そして哲学はこれを手助けできる。なぜなら哲学の義務はイマヌエル・カントがすでに18世紀に古代ローマの詩人、ホラティウスの言葉を引用して、言った通りだからだ。Sapere Audeすなわち、知恵を持つことに勇気を持て!”

西田幾多郎の哲学と
ガブリエルの思想の興味深い符合
 本書の終章で、著者の丸山俊一は、以下のような西田幾多郎(1870-1945年)の『日本文化の問題』言葉を引用し、西田哲学とガブリエルの思想の興味深い符合について語っている。

“動物から人間に進化したと云つても、人間は動物でなくなったのではない。動物の生命と云つても、既に自己矛盾的である。私は人間は動物を反極として有(も)ち、動物は人間を反極として有(も)つと云ふ所以である。人間も動物も創造物である。衆生である。…但人間は作られたものから作るものとういふ歴史的生命の極致に立つものである。神其像の如くに人を創造したまへりと云ふ如く、矛盾的自己同一の頂点に立つのである。そこに人間は絶対矛盾的自己同一に面する。神に対して立つと云ひ得るのである。”

 およそ80年の時を経て共鳴する東洋の叡智とヨーロッパの知性の不思議な一致に、我々は何を読み取るべきなのか。


(HONZ 堀内 勉)
https://diamond.jp/articles/-/189822

https://diamond.jp/articles/-/189456
http://www.asyura2.com/16/hihyo15/msg/469.html

[経世済民130] 景気拡大局面終わり、年前半の下値1万8000円 小沢氏 人手不足倒産、18年最多に 求人難・人件費高騰で 
景気拡大局面終わり、年前半の下値1万8000円 小沢氏
2019/1/4 22:00日本経済新聞 電子版
インベスコ・アセット・マネジメント 小沢大二取締役運用本部長

 ――2019年の株式市場は大幅安で始まりました。

インベスコ・アセット・マネジメント 小沢大二取締役運用本部長 
 「世界景気の拡大局面が終わりに近づいているのは明らかで、市場はそのシグナルを発している。中国景気のピークアウトは18年に始まっている。その一方で米連邦準備理事会(FRB)をはじめ中央銀行は金融緩和政策を縮小している。中銀は緩和策で世界市場を支えてきたが、本格的に出口に向かいだした。そのため株は上がりにくくなるだろう」

 「世界中の経営者が株価の下落をみている。経営マインドは冷え、慎重になる。18年10〜12月期決算が発表される19年1〜2月は業績の下方修正が増えるだろう。ただ日銀短観などをみるとそこまで悪くない。どちらが正しいのか悩ましい」

 ――株価反発の条件は何ですか。

 「政策対応だ。すでに中国は金融緩和に踏み込んでおり、19年には一定の効果が出てきそうだ。FRBも3月の利上げ見送りなど金融引き締めの手綱を緩める可能性がある。日本政府も消費増税に対応して財政対策を相当打っている。日経平均は年前半に下落しやすく1万8000円程度が下値のメドだ。後半にかけて政策対応などに反応し2万3000円程度まで戻す場面もあるだろう」

 ――有望な業種は。

 「景気敏感の機械や素材などは18年にかなり売り込まれており、反発する場面もあるだろう。ただ世界経済の減速は続くので保有し続けられるかは分からない。業種を問わず、高い市場シェアと強い現金創出力、経営のリーダーシップと株主還元に積極的な姿勢を併せ持つ銘柄が選好される」

 ――確率は低くても起きたら影響の大きいテールリスクは何ですか。

 「近年はグローバリゼーションが逆回転している。輸出主導型の東アジア諸国は厳しい局面を迎えるかもしれない。米国が世界に対して対中技術輸出を制限する、かつての対共産圏輸出統制委員会(COCOM)規制と同様の構図が起こらないか懸念している」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39629120U9A100C1EN2000/


 

人手不足倒産、18年最多に 求人難・人件費高騰で
経済
2019/1/6 2:00日本経済新聞 電子版
保存 共有 その他
人手不足が理由となった倒産が増えている。東京商工リサーチの調べによると、2018年は11月までで362件と前年同期から2割強増加した。13年の調査開始以降、通年ベースで最多だった15年(340件)を既に上回っており、年間で過去最多となるのが確実だ。

人手不足のタイプ別では、業務を担う人材が確保できずに事業が続けられなくなる「求人難型」が66%増の53件と大きく増えた。人材つなぎ留めのための待遇改…
 
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http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/449.html

[経世済民130] 人手不足倒産は決して悪い話ではない。むしろ今年は不況型倒産増の可能性 2019世界経済・市場に波乱 FRB市場の鎮火優先

人手不足倒産は決して悪い話ではない。むしろ今年は不況型倒産増の可能性

7

永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)

2019/01/06 09:29
基本的に人手不足による倒産増は、企業の新陳代謝が進むという意味で、マクロ的には必ずしも悪い話ではないでしょう。

不況型倒産が増えていたらまずいですが、人手不足倒産が増えているということは、マクロ的にみれば倒産の質が良くなっているといえます。

ただ、民間の需給だけで賃金が決まるわけではない介護スタッフ不足による倒産は、公的なてこ入れの必要性を示しているでしょう。

問題は、人手不足と言われている割に賃金が上がらないことです。

背景には、解雇規制が厳しくて労働市場が流動化していないことに加えて、デフレの中で出世してきた経営者の多くがデフレ脳から脱却できていないことも一理あると思います。

なお、記事中には「人手不足による倒産が押し上げる形で「19年は全体の倒産件数が増加に転じてもおかしくない」」となってますが、個人的には消費増税と五輪特需ピークアウトと世界経済減速で日本経済が景気後退に入ることから、今年はむしろ不況型倒産が増えると思います。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39682530V00C19A1EA1000/

#経済
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第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。あしぎん総合研究所客員研究員、跡見学園女子大学マネジメント学部非常勤講師を兼務。内閣府経済財政諮問会議政策コメンテーター、総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事。専門は経済統計、マクロ経済分析。

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2019年総点検 世界の経済・市場に波乱の足音
(1/5ページ)2019/1/6 5:30日本経済新聞 電子版
保存 共有 その他
荒天相場が続いた2018年。19年も市場の波乱要素は数多い。貿易戦争や消費増税などの影響で日米では景気減速の懸念が高まる。英国の欧州連合(EU)離脱やアジアで相次ぐ総選挙も政治リスクをはらむ。市場を左右する、今年の注目イベントを総点検した。

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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39677970V00C19A1000000/


 


 

FRB、市場の鎮火優先 債務リスク解消遅れも
2019/1/6 2:00
日本経済新聞 電子版
 【アトランタ=河浪武史、ニューヨーク=大塚節雄】米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は4日の講演で、世界的な株安を受けて「金融政策を柔軟に見直す」と述べ、利上げを一時停止する考えをにじませた。2019年に2回の利上げを想定していたが、引き締めに動揺する市場の火消しを優先した。利上げ路線が棚上げになれば金融危機後の緩和策による債務膨張も解消が遅れ、FRBのジレンマは深まる。

https://www.nikkei.com/content/pic/20190106/96958A9F889DE1EBE4EAE4E0E4E2E2E4E2E3E0E2E3EB9F9FEAE2E2E2-DSXMZO3968128005012019MM8003-PB1-2.jpg

 「市場は中国経済を中心に世界景気の下振れを不安視している。金融政策はリスク管理だ。迅速かつ柔軟に政策を見直す用意がある」。パウエル氏は4日、全米の経済学者が集まった会合の冒頭で用意した政策方針を慎重に読み上げた。
 FRBは昨年12月19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で年4回目の利上げを決断し、パウエル氏は「年2回の利上げを継続する」と宣言。中国経済の減速懸念で調整局面に入っていた市場との対話を誤ってズレが生じ、米株急落が世界的な株安の起点になった。
 FRBは17年秋から量的緩和で買い入れた保有資産の圧縮も始めているが、パウエル氏は「問題が発生すればバランスシートの正常化も含めて修正をためらうことはない」と「量的引き締め」を見直す可能性にまで言及した。12月には「変更するつもりはない」と述べていたが「別の結論に至れば、ためらわず変更する」と主張を転換した。
 市場は年明けから利上げ停止を強く催促していた。3日の金利先物市場は4割強の確率で年内の利下げを織り込むほどだった。追い込まれたパウエル氏は「必要なら政策を大幅に転換する準備がある」とまで踏み込んで市場の火消しを優先した。ホワイトハウスの圧力もある。利上げを毛嫌いして口先介入を繰り返すトランプ大統領は、パウエル氏の解任を一時検討したとされる。

https://www.nikkei.com/content/pic/20190106/96958A9F889DE1EBE4EAE4E0E4E2E2E4E2E3E0E2E3EB9F9FEAE2E2E2-DSXMZO3968191005012019EA2002-PB1-2.jpg

 4日のパウエル氏の発言によって市場は「19年は利上げなし」に傾いた。金融政策への過度な不安がひとまず後退し、4日のダウ工業株30種平均は前日比の上げ幅が一時830ドルに達した。
 パウエル氏は4日に「米経済は底堅く、勢いを保ったまま19年に入った」と強調して景気不安も抑えにかかった。12月の雇用統計は就業者の増加幅が30万人超と極めて強い数字で、賃金上昇率も3%台と約9年半ぶりの水準を保つ。
 だが先行きの根強い景気不安が解消されたわけではないことは、債券市場に色濃く出ている。国債利回りを期間ごとに並べたイールドカーブは、期間が長い債券ほど利回りが高くなるため右肩上がりの曲線を描くのが通常の姿だ。足元では3〜5年前後が目立って低く、いびつな形になっている。4日は株高に伴って金利が期間を問わず上昇したものの、イールドカーブのゆがみは変わらなかった。
 5年前後の金利は「先行きの不透明感を最も反映しやすい」(米運用会社ストラテジスト)とされる。期間5年と2年でみた金利差は昨年12月に逆転し、いったん解消したあと年明けに再逆転している。「過去には5年の低下が起点となって10年と2年の逆転が生じた」(野村証券)といい、景気後退の予兆とされる長短金利逆転の「逆イールド」懸念が残る。
 米製造業の12月の景況感指数は約10年ぶりの悪化幅。中国経済の減速が原油価格を一段と押し下げれば、資源国の景気を下押しして世界経済も「負の循環」に突入する。もはやFRBが足元の米景気を楽観視して利上げを進められる環境ではなくなりつつある。
 FRBは15年末のゼロ金利解除から3年が過ぎ、政策金利は2.25〜2.50%となった。3年前は景気を過熱させず冷やしもしない「中立金利」を3.5%と想定し、同水準を目指して「政策金利の正常化」を進めてきた。
 利上げ路線が停止すれば、緩和下で蓄積された市場のひずみというリスクの解消を先送りしてしまいかねない。FRBは金融危機後に4兆ドル超の緩和マネーを放出。米国を中心に財務的に弱い企業の債務が膨張しているほか、新興国などではドル建て債務(米国以外の非銀行部門)が直近10年で1.9倍に拡大している。
 世界景気はかつてに比べFRBの利上げに耐えられなくなっている。FRBは戦後、景気悪化時に平均5%超も利下げして経済の底割れを防いできた。「景気悪化時には我々はあらゆる手段を用いて対応する」。パウエル氏の勇ましい言葉通りの緩和余地をFRBは取り戻せておらず、機動的な政策対応に影を落とすおそれがある。
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http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/450.html

[政治・選挙・NHK255] レーダー照射問題 韓国の保守系最大野党が安倍晋三首相に謝罪要求  レーダー問題、韓国の海軍艦艇は警告せず 回避行動なし 
レーダー照射問題 韓国の保守系最大野党が安倍晋三首相に謝罪要求

2019年1月6日 19時25分
ざっくり言うと
6日、レーダー照射をめぐる問題で、自由韓国党の報道官が論評を発表した
防衛省が反対しているにも関わらず映像を公開したとして安倍首相を批判
支持率の回復のために日韓の摩擦を利用していると主張し、謝罪を要求した
安倍首相に謝罪要求=「摩擦利用」と主張−韓国野党
2019年1月6日 19時25分 時事通信社
 【ソウル時事】韓国駆逐艦による海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題で、保守系最大野党「自由韓国党」報道官は6日、論評を発表し、「安倍(晋三)首相は防衛省の反対にもかかわらず、映像公開を指示するなど、急落する支持率の回復のため、韓日間の摩擦を利用しているとみられる」と主張、安倍氏の謝罪を要求した。

 韓国国防省は4日、日本の主張に反論する動画の中で、「この事案を政治的に利用せず、実務協議を通じた事実確認手続きに入るべきだ」と呼び掛けたが、自由韓国党はさらに踏み込み、安倍氏に矛先を向けた。 

時事通信社

「韓国軍が自衛隊機にレーダー照射」をもっと詳しく

徴用工問題やレーダー照射問題…国際社会へ向けた世論戦本格化へ
レーダー問題、韓国の海軍艦艇は警告せず 回避行動なし
韓国の文在寅大統領が日韓関係めぐる見解を表明へ 10日に記者会見
http://news.livedoor.com/article/detail/15835250/

レーダー問題、韓国の海軍艦艇は警告せず 回避行動なし
1/6(日) 17:59配信 朝日新聞デジタル
 海上自衛隊のP1哨戒機が韓国海軍艦艇に脅威を与える低空飛行をしたとして韓国政府が日本の謝罪を求めている問題で、韓国海軍艦艇はP1哨戒機に対し、警告や回避行動を取っていなかったことが韓国の軍事関係筋の話で明らかになった。

 P1哨戒機は昨年12月20日、日本海で韓国の海軍艦艇や海洋警察庁の警備救難艦を発見した際、韓国軍艦艇から射撃用の火器管制レーダーを受けたとされる。韓国は21日、「レーダー照射の事実はない」とだけ説明していたが、24日になってP1哨戒機の低空飛行の問題を取り上げた。

 ただ、海自のP1哨戒機が飛行した当時、韓国軍艦艇は「低空飛行」の中止を求める通信や信号の発信などを行っていなかった。

朝日新聞社

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最終更新:1/6(日) 18:40
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190106-00000020-asahi-int

http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/802.html

[政治・選挙・NHK255] 混迷する朝鮮半島 文在寅大統領の“陰謀”に乗せられるな 金正恩委員長は軍との緊張が激化か 
混迷する朝鮮半島 

文在寅大統領の“陰謀”に乗せられるな 金正恩委員長は軍との緊張が激化か

重村 智計

2019年1月7日(月)


日本が哨戒機の動画を公開したことに遺憾の意を表明する韓国国防部の崔賢洙(チェ・ヒョンス)報道官( 写真:YONHAP NEWS/アフロ)
 韓国と北朝鮮の両首脳は、2019年年頭から危機に直面している。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、支持率が昨年末に43%に落ち込み回復しない。今年は30%台に落ち込む公算が大きい。日本との関係は、自衛隊機へのレーダー照射事件で悪化したまま越年した。

 北朝鮮の駐イタリア代理大使(大使は退去処分)の亡命が、年明けに報じられた。北朝鮮経済はマイナス成長で、外交も行き詰っている。習近平(シー・ジンピン)国家主席の訪朝は見通しが立たず、金正恩(キム・ジョンウン)委員長は訪韓できなかった。米朝関係も停滞し、軍部の不満に直面している。

反日世論を喚起し、支持率を高める
 韓国国防省報道官は1月2日、声明で「自衛隊機が威嚇的な低空飛行をした」と述べ、日本に謝罪を求めた。「威嚇的」の表現は、友好国には使わない。この言葉には「悪意」と「挑発の陰謀」が込められている。「高位級の人物」との表現で、安倍晋三首相を批判したのも失礼で、安倍首相を怒らせようとの意図がアリアリだ。日本が怒れば、反日世論が盛り上がり、大統領の支持率アップにつながるとの“陰謀”を考えている。

 ところが、朝鮮日報によると韓国のネット世論は冷静で、70%以上が「韓国政府の主張は信用できない」と書き込んだ。日本政府は、文大統領の“陰謀”に乗せられてはいけない。

 報道官声明は、「争点をすり替える意図」が明白だ。「自衛隊機へのレーダー照射問題」を「日本の謝罪問題」に、すり替える“陰謀”だ。いつもの手口である。「レーダー照射は、自衛隊機を狙ったものではない」というが、それなら誰を狙ったのか説明がない

 何かを隠そうとしている。

責任問題を隠そうとしている
 事件が起きたのは、昨年12月20日の午後3時過ぎだった。昼日中の明るい時間帯で、海上も穏やかで相手を認識できる状態にあったのに、自衛隊機に攻撃を意味するレーダーを照射した。考えうる可能性は(1)自衛隊機に見られると困る行動をしていた(2)韓国軍はすでに自衛隊を敵軍と考えている(3)兵士が勝手に行なった――である。

 韓国大統領はクーデターを警戒し、各師団や部隊の司令官の指揮と行動を厳しく規制し監視している。大統領が許可してもいないのに勝手にレーダーを照射することは、絶対に許されない。だが、誰かがレーダー照射を命じたから、事件は起きたのだ。その責任問題を懸命に隠そうとしている。

 韓国海軍艦艇の作戦活動に、北朝鮮の漁船を救助する「任務」はない。偶然に発見した場合は救助するが、救助のために「作戦活動」をすることはない。自衛隊機が撮影した映像では、海洋警察の救助艇が作業を終える状態にある。海軍艦艇の救助行動は見られない。

次ページ「金正恩委員長のジレンマ」

 韓国国防省は、当初は「北朝鮮漁船救助」と公式に述べ、「海が荒れていた」と嘘の説明をしたが、2日の声明では「作戦活動」「遭難漁船」と言葉を変え、「北朝鮮」の表現を消した。まずいのだろう。

 百歩譲って韓国の主張通りなら、韓国艦艇は自衛隊機の位置と距離を測るためにレーダーを作動させた。このとき、間違えて「火器管制レーダー」を使ったのかもしれない。それなら「誤作動」と、なぜ言わないのか。

 日本政府には、韓国国防省の発表に韓国民の多くが疑問を抱いている事実を、よく理解してほしい。「日本は正直だ」との韓国民の意識を、裏切ってはならない。文在寅政権と韓国民を「離間」する戦略を取るべきだ。事実確認と再発防止の要求に徹し、批判や非難は避けるべきだ。ただし、曖昧な合意をしてはいけない。喧嘩する必要はないが、言うべきことははっきり言うべきだ。

金正恩委員長のジレンマ
 金委員長は、1月1日に恒例の「新年の辞」演説を行なった。昨年実現した南北首脳会談と米朝首脳会談を偉大な業績として高く評価し、戦争の危機を解消する必要性を強調した。国民に初めて「核兵器の製造中止」と「核の不使用」、「核不拡散」を語った。この衝撃は、大きいはずだ。

 一方、「主体思想」の言葉が消え、軍を評価する言葉がなかったのは、奇妙だった。思想教育の重要性を述べたが、「主体思想」に言及せず、「政治思想」と「社会主義文明」を強調した。

 金委員長は執務室でソファーに座り、テレビカメラに向かった。これは、金正日(キム・ジョンイル)総書記と金日成(キム・イルソン)主席のスタイルとは、まったく異なる。父親や祖父の権威から離れ、自らの権威が確立したことを印象付けた。老幹部や軍幹部に、世代交代を宣言する演説スタイルであった。

 演説は、反発や熾烈な勢力争いが存在する事実も、浮き彫りにした。軍を国防の柱として讃える言葉が消えた。奇妙だ。中国と韓国の情報関係者によると、軍エリート層には、核実験と核兵器製造を中止したことへの反発がなお根強い。指導者と軍との間には、微妙な緊張関係があるという。

 経済が問題だ。新年の演説は旧来の「計画経済」を強調し、「市場経済」と「改革開放政策」の言葉はなかった。開城工業団地と金剛山観光事業の再開を強く求めており、経済制裁解除が北朝鮮経済を左右する現実を強く示唆した。

 韓国の経済学者は、北朝鮮の昨年の経済成長はおよそマイナス3%と推計した。国連や米国が主導する経済制裁が効果を上げ、深刻な影響を与えているという。特に石油の不足は深刻で、昨年の石油輸入は70万トン程度しか許されなかった。これでは軍は維持できないので、海上での「石油瀬取り」(密輸)を展開せざるを得ないのだ。

 このため、韓国海軍艦艇による自衛隊機への「火器管制レーダー照射」も、北朝鮮の「瀬取りに協力する行動」ではなかったか、との疑惑を生んでいる。北朝鮮の密輸行為に協力しているのを自衛隊機にみつけられたと思い、レーダー照射をしたとの観測だ。

 国連制裁の解除や緩和が2019年中に実現しないと、北朝鮮経済は一層苦しくなる。経済を好転させるには、米朝首脳会談と日朝首脳会談が必要だ。日本への言及はなかったが、批判的表現もなく、水面下で接触が継続していることを示唆した。中国政府高官によると、習近平国家主席は日朝首脳会談の実現を、金委員長に強く求めている。米中貿易戦争を戦うには、日本の経済協力が必要で、日本を取り込もうとしている。拉致問題解決で、安倍首相に恩義を売る戦略だ。

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[経世済民130] 体験と記憶、人はどちらの幸福を重視するのか 1日や1時間で考える場合、清教徒の労働倫理観 一生のような長い時間では哲学的
体験と記憶、人はどちらの幸福を重視するのか
キャシー・モギルナー・ホームズ:カリフォルニア大学ロサンゼルス校アンダーソン・スクール・オブ・マネジメントのジャスティス・エルウッド・ルイ記念マーケティング・行動意思決定論講座准教授
2019年1月7日
誰もが幸せになりたいと思っているはずだ。にもかかわらず、自分がどのような幸せを望んでいるのかは、意外なほどあいまいである。筆者らの調査により、「ひとときに体験する幸福感」と「後から思い出して感じる幸福感」、そのどちらを重視するかは、人生における幸せの形を左右しうることが判明した。

 当然のことながら、誰もが幸せになりたい。だが、人はどのような幸せを望んでいるのだろうか。ひとときに体験する幸せだろうか。それとも、振り返って幸せな時間だったと思い出せることだろうか。
 ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンは、この区別を「人生で幸せを体験すること」か「人生を振り返って幸せを感じること」と言い表している。少し時間をとって、自分がどちらの幸せを求めているか、自問してみよう。
 このような区別は、意味がないようにも思えるかもしれない。結局のところ、幸せに過ごした時間は、幸せだったと思い出すことも多い。美味しい食事とワインを前によき友と過ごす晩は、幸せな体験であるとともに、幸せな記憶となろう。同様に、プロジェクトのメンバーにお気に入りの同僚がいて、内容も興味深いものであれば、取り組むのも振り返るのも楽しいだろう。
 とはいえ、この2つは必ずしも同時に連動して生じるわけではない。
 テレビの前でくつろいで過ごした週末は、そのときは幸せな体験だが、記憶には残らず、後から考えると罪悪感すら招くこともある。幼い子どもと動物園で過ごす1日は、苛立たしい時間が多いかもしれないが、ひとときの喜びがあればその日は幸せな思い出になる。夜遅くまで残業した週は、けっして楽しい体験ではないが、その結果が大きな成功につながれば、振り返ってみると満足感を味わうだろう。
 幸福について研究する学者たちは、どの形の幸せを測定し追求すべきかについては長きにわたり取り組んできたが、これら2種類の幸せのどちらを求めているかという単純な問いを人々に尋ねたことはなかった。だが幸せになる方法を見出したいのなら、人はどのタイプの幸せを真に望むかを、理解することが役に立つと思われる。
 我々は『ジャーナル・オブ・ポジティブ・サイコロジー』誌に最近発表した一連の研究の中で、何千もの人々(18〜81歳)に、「体験による幸福」と「記憶による幸福」のどちらを好むかを直接尋ねた。その結果、どの時間の幅で考えるか、および文化によって、嗜好は異なることがわかった。
 欧米ではほとんどの人が、1日という期間で考える場合と、生涯の場合で答えが異なっていた。結局は日々の積み重ねがその人の人生になるにもかかわらず、である。これは興味深い発見であった。人は、時間単位で判断を下すと、生涯で望むと答えたのとは最終的に異なる形の幸せに行きつく可能性があるのだ。
 我々は試験の1つで、1145人の米国人に次の質問をした。長い時間枠(生涯または今後1年間)か、短い時間枠(これから1日間または1時間)のいずれかにおいて、体験による幸福(「ひとときに体験する幸せ」)と、記憶による幸福(「後から振り返って感じる幸せ」)のどちらかを選ぶか、である。
 被験者の過半数は、生涯または今後1年間では、記憶による幸福よりも体験による幸福を選んだ(生涯・体験は79%、1年間・体験は65%)。一方、今後1時間や1日間にどちらを望むかを選んだ際には、体験と記憶はほぼ均等に分かれた(1時間・体験は49%、1日・体験は48%)。このパターンは、個々人の全体的な幸福度、衝動性、年齢、世帯収入、配偶者の有無、あるいは子どもの有無による影響を受けていない。
 被験者が決定を下した後には、理由を説明する短い文章を書いてもらった。その結果、体験による幸福を望んだ人は、たいていが「カルペ・ディエム」――未来は不確かで人生は短いのだから、この瞬間を大切にすべき、という哲学への信奉を表明した。一方、記憶による幸福を選んだ被験者の説明は幅広く、長続きする幸福を望む気持ちや、思い出を大事に胸にしまっておきたいという懐旧の情、より生産的だと感じられ誇りに思えるため、などがあった。
 このように、人は一生のような長い時間について考えるよう求められると、より哲学的(カルペ・ディエム)になり、ひとときに体験する幸せを求めるという答えが多かった。だが、1日や1時間で考える場合には、まるで清教徒の労働倫理観が出現したかのようだった。つまり、後で振り返って幸せを感じることができるよう、いまこの瞬間の幸せを手放して働こう、という人が多かったわけだ。
 もちろん、このような精神は、人生のある時期には必要だ。しかし、それを当たり前にすることがあまりに多いと、幸せを経験する機会を逃すことにつながりかねない。つかめなかった幸福の瞬間が積み重なり、(一般的に信じられている)幸せな人生の要素に逆行してしまう場合もあるのだ。
 我々は研究結果の頑健性を検証するために、さらなる試験をいくつか実施した。1つの試験では、記憶による幸福の定義を被験者にいくつかの異なる言葉遣いで示し、特定の説明により結果が左右されるかを調べた。別の試験では、考慮対象の1時間がいつ訪れるかを変化させてみた(「今日の1時間」か「人生の終盤の1時間」)。切迫感と、もしかしたら焦燥感が、被験者の選択に対して影響を及ぼすかどうかを調べるためだ。
 どちらのケースでも、これらの設定によるパターンの変化は認められなかった。生涯については、ほとんどの人が記憶よりも体験による幸福を選んだ。しかし1時間については、半数が記憶による幸福を選んだ。
 最後に、我々が米国人の被験者全員に見出したパターンが、他の文化にも当てはまるかどうかを検証した。米国以外の西欧の国々(英国とオランダ)の約400人と、アジアの国々(中国と日本)の400人に対して、同様の質問――今後の1時間か生涯のいずれかにおいて、体験による幸福と記憶による幸福のどちらを選ぶかを尋ねた。
 米国人と同様に、欧州人の過半数は、生涯においては記憶よりも体験による幸福を選んだ(65%)。しかし1時間に関しては、清教徒の労働倫理観がより強く現れ、過半数(62%)が体験よりも記憶による幸福を選んだ。
 対照的に、アジア人が望む幸せは、時間枠を超えて同じであった。大多数が、生涯(81%)か1時間(84%)かを問わず、記憶よりも体験による幸福を選んだ。なぜこのような一貫性があるのだろうか。アジア文化の宗教では歴史的に、いま、この瞬間を大切にする、マインドフルネスの重要性が長らく説かれてきた。これが理由で中国と日本の被験者は、体験による幸福への嗜好がより明白なのではないかと我々は考えている。
 我々の研究では、数千人に対し、体験と記憶による幸せのどちらを望むかを尋ねた。その答えは、人生の短い断片で考えるか生涯について考えるか、および出身はどこかによって異なることがわかった。幸せを追求することは、「不可譲の権利」と呼ばれるほど非常に基本的なものであるが、個人が追い求める個々の幸せの形は、条件によって驚くほど影響されやすいのだ。
 重要な点として、今回の研究は、どの幸せが望ましいかに関する人々の考えを理解するのに役立つが、どの形の幸せを追い求めたほうがよいかを規定するものではない。とはいえ、これらの結果から明らかになったことがある。欧米で人生を1日あるいは1時間単位で考える人が達成する幸福は、自身が考える幸せな人生とは異なる形になる可能性が高いのだ。
 誰もがあまりに忙しく、頻繁に幸せを感じるチャンスに背を向けることを余儀なくされている。だが、ひとときに体験する幸せで満たされた人生を望むのなら、その実現を妨げている自分について、もう1度考えてみることだ。

HBR.ORG原文:What Kind of Happiness Do People Value Most? November 19, 2018.
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キャシー・モギルナー・ホームズ(Cassie Mogilner Holmes)
カリフォルニア大学ロサンゼルス校アンダーソン・スクール・オブ・マネジメントのジャスティス・エルウッド・ルイ記念マーケティング・行動意思決定論講座准教授。幸福について研究し、時間の役割を強調している。
http://www.dhbr.net/articles/-/5671 


http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/451.html

[経世済民130] 親切を企業文化の中心に据え、社内中に伝染させよ 仕事は人の幸せにどんな影響を与えるか「世界幸福度リポート」失業は不幸の源
親切を企業文化の中心に据え、社内中に伝染させよ
ウィリアム・テイラー:『ファストカンパニー』誌の共同創刊者。
2018年12月28日
企業の不祥事に関するニュースはあとを絶たない。好ましくない振る舞いが伝染しやすいことはその原因の1つだが、心理学の研究によると、良い振る舞いもまた周囲に伝わりやすいことが明らかになっている。たとえば、顧客に対する親切心を企業文化の中心に据え、それを社内で伝染させることで、価値あるサービスを生み出すことにつながる。メルセデス・ベンツの事例をもとに、思いやりや寛大な振る舞いがもたらす成果を示す。

 毎日、新聞に目を通し、ニュース報道を見ていると、厳しくて底意地が悪く、分断された時代を我々は生きているという結論に達するかもしれない。しかし、最近『ワシントン・ポスト』紙に掲載されたコラムは、見逃しがちなある真実を思い出させてくれた。好ましくない振る舞いは拡散する傾向があるが、好ましい振る舞いもまた同様に、拡散する。親切は、伝染するのである。
 スタンフォード大学の心理学者ジャミール・ザキは、彼が呼ぶところの「ポジティブな適合」という現象を証明しており、上のコラムはザキの研究に着目したものだ。彼の研究によると、「周囲の人たちが寛大であると感じた参加者は、自分自身もより寛大な態度を示した」という。これは「親切は伝染し、その過程の中で新しい形をとりながら、人々の間に波及していく」ことを示唆している。
 ザキの知見は、よりよい社会を実現するうえで重要だが、個々の会社にも当てはまる。筆者が知るリーダーのほとんどは、社員に対して、本来のサービスの枠を超えて、顧客の胸を打つような親切を示してほしいと望んでいる。また、そうしたリーダーの多くが、その目標は主に社の方針や手順を設けることで達成できると信じている。つまり、上からの指示によって親切を促すというわけである。実際には、組織内で親切を促進するのに有効な方策は、親切を伝染する菌のように扱い、皆が感染する環境を整えることなのだ。
 この点で、参考になる事例がある。筆者は最近、メルセデス・ベンツの米国販売・サービス部門である、メルセデス・ベンツUSAにおけるカスタマーサービス変革の研究に没頭した。スティーブン・キャノンはメルセデス・ベンツUSAのCEOに就任したとき、その成功の決め手が商品である自動車だけにはとどまらないと認識していた。販売・点検・修理に携わる従業員すべてが、顧客を思いやり、寛大に振る舞うことも重要なのである。
「顧客がメルセデスのブランドに接するたび、車に劣らぬ素晴らしい体験を提供しなければならない」と、キャノンは宣言した。そして、顧客にとってブランドとの接触とはすなわち、ディーラーで働く従業員との個人的な触れ合いに他ならない。そのとき従業員が、顧客の心に残るような快い振る舞いができるか、それとも大半のディーラーで働く従業員と同様に定型通りの振る舞いをするかで、大きな差が生じる。キャノンは、そう理解していた。
 また、メルセデスのディーラーで働く2万3000人にも及ぶ従業員の行動を変え、つながりと思いやりの文化を生み出すうえで、従うべき一定の法則はないということも、キャノンはわかっていた。代わりに必要だったのは、親切を伝染する菌と捉える草の根の「運動」に加わるよう、ディーラーやそこで働く従業員を説得することだった。
「販売員や修理スタッフに何か素晴らしいことをしてもらいたいとき、その動機づけとなるような科学的なプロセスもアルゴリズムもありません」と、キャノンは語った。「唯一の方法は、教育し、刺激し、『駆り立てる』ことです。何かをする機会に出くわしたとき、自発的な行動をとる許可を与えるのです。ただ指示に従うのではない。重要なのは、善意から来る強い信念です」
 そして数年が経ち、この信念は、従業員の職場での日常において、心温まる多種多様な親切を生んだ。
 成約した直後に契約書類に目を通していた販売員は、その日がちょうど顧客の誕生日だと気づいた。すぐにケーキを注文し、顧客が新車を引き取りに来た際に販売店一同でお祝いをした。
 息子の卒業式に向かう途中でタイヤがパンクしてしまった顧客もいた。慌てて近くのメルセデスのディーラーに駆け込んで事情を説明したものの、不運なことに、彼女の車のモデルに合うスペアタイヤの在庫はなかった。そこで、サービス・マネジャーはショールームに駆け込み、展示してある車をジャッキで押し上げ、タイヤを取り外し、その母親を息子の卒業式へと送り出した。「似たようなストーリーは山ほどあります」と、キャノンは言う。「販売店の従業員たちは誰もが率先して尽力します。それほど、お客さまを気にかけているのです」
 メルセデス・ベンツの職場における親切の伝染には、もう1つの要因がある。最前線で働く従業員にとって、仕事に対する純粋な誇りという動機づけがあれば、顧客に対してより親切な対応をしやすい、ということだ。
 メルセデス・ベンツUSAで15年働くベテラン販売員のハリー・ハイネキャンプは、新設されたカスタマー・エクスペリエンス部門の初代マネジャーに抜擢された。ハイネキャンプと彼のチームは、全米のメルセデスのディーラーを視察して回るなかで、あることを発見した。「現場の従業員のブランドへの誇りは、我々が思っていたほど高くはなく、仕事に対するエンゲージメントも、期待していたほど強くなかった」というのだ。
 特に衝撃的だったのは、販売店で働く従業員の7割近くが、販売店の敷地の外でメルセデス・ベンツの車を運転したことがないという事実だった。修理やパーツの注文はするが、実際その車を公道で運転した経験がなかったのだ。
 ハイネキャンプは考えた。実際にメルセデス・ベンツを運転する興奮を味わったことがないのに、メルセデスのブランドに純粋な誇りが持てるものだろうか。そこで彼は、あるプログラムを発案し、実施した。ディーラーで働く2万3000人の全従業員に48時間、メルセデス・ベンツを貸し出し、運転を体験する機会を与えたのだ。会社は、この取り組みに、800台近い車と、数百万ドルの資金を投じた。
 従業員の多くは、自分が運転する順番を、重要な出来事と合致するように調整した。90歳になる祖母を誕生日会に招く際に迎えに行く、娘とその友達を16歳の記念パーティに送迎する、生まれたばかりの赤ちゃんを家に連れて帰る、等々。参加した人は割り当てられた48時間を写真や動画に記録し、ラップソングまでつくったケースもある。
「反応は予想以上のものでした」とハイネキャンプは言う。彼は、社内にウェブサイトを設けてそれぞれの体験を共有した。「当然のことながら、誰もが自分の扱う車をよく知ることができました。でも一番の収穫は、仕事への誇りをより強く持てるようになったことです」
 メルセデス・ベンツUSAにおいて、ボトムアップの従業員同士による顧客へのコミットメント強化の取り組みは、カスタマーサービス革新の有力な事例である。また、あらゆる分野のリーダーたちへのメッセージでもある。いくら命じたところで従業員が親切になるとは限らないが、リーダーは親切を伝染させる火付け役にはなれるのだ。

HBR.ORG原文:Making Kindness a Core Tenet of Your Company, November 22, 2018.
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ウィリアム・テイラー(William C. Taylor)
『ファストカンパニー』誌の共同創刊者。最新刊は『オンリーワン差別化戦略』(ダイヤモンド社)。既刊邦訳に常識の壁を打ち破った超優良企業』 『マーベリック・カンパニー(日本経済新聞出版社)がある。ホームページはこちら。

http://www.dhbr.net/articles/-/5670

 
仕事は人の幸せにどんな影響を与えるのか
――「世界幸福度リポート」から読む
ヤン・エマニュエル・デ・ネーブ,ジョージ・ウォード:オックスフォード大学サイード・ビジネススクールの准教授
2017年6月1日
仕事と幸福度の関係を、職種や地域ごとに多面的に分析した「世界幸福度リポート」の概要を紹介。個々人の仕事における幸福は、企業業績や国家経済とも相関すると本記事は結論づける。

 ほとんどの人は生活の多くの部分を働いて過ごしている。したがって当然ながら、仕事は人の幸福度に大きな影響を及ぼす。
 我々は「世界幸福度リポート」の最新版において、仕事と幸福の関係をより詳しく考察している。これは国連が定めた国際幸福デーに合わせて毎年発行されるものだ。
 ここで大いに参考としたのは、ギャラップが2006年以降行っている、世界150ヵ国の人々を対象としたアンケート調査である。同社の取り組みによって我々は、世界中の数十万人から得られたデータを分析し、労働生活の諸要素が心身の健康(wellbeing)にどう影響しているかを探ることができている。
 主観的に判断される心身の健康(しばしば大まかに「幸福」と呼ばれる)は、複数の側面から測定できる。我々がまず着目したのは、生活の質を総合的に自己診断する「キャントリルの階梯」の結果だ。これは(生活における7つの要素を)最高から最低までの11段階で測るギャラップの尺度で、回答者に自分が現在どの段階にいるかを尋ねる。
 この他にも我々は、人が日々の生活で経験する正負さまざまな感情状態(楽しみ、ストレス、心配など)に着目。さらに、より職場固有の尺度として、仕事の満足度や従業員エンゲージメントなどへの回答も分析した。
●最も幸福度が高い職種はどれか
 ギャラップの世界調査では大きく11の職種が設定されている。自営業、オフィスワーカー、マネジャー、農業、建設、鉱業、運輸などから成るこの分類はさまざまな職をカバーしている。どのグループの労働者が、一般的に幸福度が高いのだろうか。
 我々が最初に気づいたこととして、ブルーカラーの仕事に従事する人々は、世界のどの地域でも全体的な幸福度が低めであった。これは、建設、鉱業、製造、運輸、農業、漁業、林業といった労働集約的な産業に広く当てはまる。マネジャー、幹部、公務員、または専門職の人々は、生活の質を10段階評価で6強と自己評価したのに対し、農業、漁業、林業の従事者は平均で4.5程度であった。
 この構図は、総合的な生活満足度についてのみならず、日常における個々の感情経験についても見られる。ホワイトカラーの労働者は概して、微笑む、笑い声をあげる、楽しみを感じるなどのポジティブな感情状態の報告が(ブルーカラー労働者に比べ)より多く、心配、ストレス、悲しみ、怒りといったネガティブなものはより少ない。
 こうした記述統計は、職種間の幸福度の差異をそのまま表している。もちろん、これらの多様な分野で働く人々の間では、異なる要素が数多くあるはずで、それが幸福度の差異につながっている可能性はある。だが意外かもしれないが、所得や学歴、年齢、性別、婚姻関係といった多くの人口属性上の差異を考慮に入れて推定を調整しても、この構図はほぼ変わらないのだ。

●自営業は複雑
 自営業と心身の健康との関係は多面的である。世界の平均値を見ると、自営業者はフルタイム従業員と比較して、全般的に低めの幸福度であることがわかる。だがフォローアップ分析からは、この結果が地域によって、そして主観的幸福度の項目によって大きく左右されることが示されている。
 ほとんどの先進国では、自営業は総合的な生活満足度の高さに相関し、同時に日々のストレスや心配などのネガティブな感情もより多い。きっと事業主ならば誰であれ、自営業が見返りもストレスも大きいことなどよくご存じだろう。
●失業は不幸の源
 幸福の経済学に関する最も確固たる知見の1つは、失業が心身の健康を損ねることだ。これは世界中で当てはまる。就業者は失業者と比較して、生活の質を概ねはるかに高く評価している。また、失業者は日々の生活におけるネガティブな感情経験を約30%多く報告している。
 職に就いているという事実は、給与よりもはるかに重要だ。働くことの非金銭的な側面は心身の健康を大きく左右することが、大量の研究により示されている。社会的地位、社会関係、1日の過ごし方、目標などの諸々が、人々の幸福に強く影響するのだ。
 失業者は通常、就業者よりも不幸せであるだけではない。人は一般的に、「時が経っても失業状態には順応しない」ことが我々の分析からわかった。さらに、失業期間を経ることは、職をふたたび得たのちにも心身の健全に「傷」を残すようだ。
 失業経験は当事者に大きな打撃を与えうるが、周囲にも影響を及ぼす。家族や友人がもちろんその典型であるが、影響はもっと広範に波及する。失業率の高さは人々の雇用不安を煽ることが多いため、まだ職がある人の幸福度にまでマイナスの影響を及ぼすのだ。
●世界における仕事の満足度
 ここまでは、人がみずからの生活を総合的にどう評価・経験しているかを論じてきた。だがもっと具体的な、職場における心身の健康に関する尺度、たとえば仕事への満足度などに関してはどうだろうか。
 ギャラップの世界調査では回答者に、自分の仕事に満足しているか否かを尋ねている。「満足している」と答えた回答者の割合のほうが「満足していない」よりも高かったのは、南北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランド。なかでも、第1位のオーストリアでは95%の回答者が仕事に満足していると答え、ノルウェーとアイスランドが僅差で続く。このギャラップ調査では、個人の仕事の満足度と生活満足度との間に、ある程度の相関性(0.28。完全相関は1.0)が見られる。
 一部の社会ではなぜ他の地域よりも仕事の満足度が高いのか。我々はその理由を見出すために、欧州社会調査によるもっと詳細なデータに目を向けた。ここでは従業員の幸福に関連する特定の職場要因が明らかにされており、仕事の質に関するさらなる情報がわかる。予想通り、報酬の多い仕事を持つ人は幸福度が高く、生活と仕事への満足度も高い。だが、仕事におけるその他多くの側面も、幸福のさまざまな尺度と強く関連している。
 ワークライフバランスは、幸福に関する特に強力な予測因子であった。その他の要因には、仕事の多様さ、新しいことを学ぶ必要性、個々の従業員が享受できる自由裁量のレベルなどがある。さらに、仕事の安定性と社会関係資本(個人が同僚から受けるサポートにより測定)も、幸福と正の相関性を示している。一方、健康や安全のリスクをともなう仕事は、心身の健全にマイナスとなっていることが多い。
 仕事の満足度でランクが高い国々は、このような非金銭的な職場要因に配慮することで質の高い仕事を提供している、というのが我々の推測だ。
●職務満足度の高さとは裏腹に、エンゲージメント(意欲)は低い
 ギャラップの世界調査では、個人が自分の仕事に「強い意欲を持っている」「意欲を持っていない」、あるいは「仕事が嫌い」と感じているかを質問している。これらのデータは、比較的高い職務満足度とは対照的に、はるかに殺伐とした状況を示している。「強い意欲を持っている」と答えた人の割合は概して20%未満で、西ヨーロッパでは10%程度、東アジアではもっと低い。

 世界的に見られる職務満足度と従業員エンゲージメントの開きは、1つには測定上の問題もあるかもしれない。だが他にも、これら2つの概念は仕事における幸福の異なる側面を測定しているという事実にもよる。
 職務満足度は、仕事への「自己満足」にすぎない場合もあるだろう。しかし(強い)従業員エンゲージメントとなると、個人は仕事に前向きに没頭し、組織の関心事を前進させるべく全面的にコミットしている必要がある。したがって、従業員エンゲージメントを高めるほうが、より困難なハードルなわけだ。
 本稿では、仕事と職が人々の幸福にどう影響するかに焦点を当てている。ただし、幸福と職の関係は双方向に作用する複雑でダイナミックなものであることも留意すべきである。
 実際に多数の研究によれば、仕事と職は人の幸福を左右するだけではない。幸福そのものが、労働市場での所得増加、仕事の生産性、そして企業の業績にまで寄与しうることが示されている。つまり、仕事での幸福は単なる個人的な問題ではなく、経済にも関わるのだ。

HBR.ORG原文:Does Work Make You Happy? Evidence from the World Happiness Report March 20, 2017
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ヤン・エマニュエル・デ・ネーブ(Jan-Emmanuel De Neve)
オックスフォード大学サイード・ビジネススクールの准教授。経済学と戦略を担当。世界幸福度リポートの共同編集者も務める。
ジョージ・ウォード(George Ward)
マサチューセッツ工科大学スローン・スクール・オブ・マネジメントにあるワーク・アンド・エンプロイメント研究所の博士課程学生。

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http://www.dhbr.net/articles/-/4861

http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/452.html

[国際25] 中東を読み解く 「世界最悪の人道危機」の正体、魑魅魍魎のイエメン戦争 
中東を読み解く

「世界最悪の人道危機」の正体、魑魅魍魎のイエメン戦争

2019/01/07

佐々木伸 (星槎大学大学院教授)

 これまでに6万人が死亡し、840万人が飢餓の危機にさらされているイエメン戦争。「世界最悪の人道危機」(国連)と言われながら、サウジアラビアと同国を支配する武装組織フーシ派の戦いは今年も終結する見通しは小さい。戦争の裏側では傭兵や、過激派と手を組む部族長ら魑魅魍魎が跋扈し、希望のない新年に市民には絶望の色が濃い。


1月3日、イエメンの港湾都市アデン。食料を求めてゴミの山を漁る人々( REUTERS/AFLO)
スーダンの“少年兵輸出”
 シーア派の一派であるフーシは元々、イエメン北部のサウジ国境近くが根城だったが、2011年のアラブの春の混乱を利用して台頭。2015年、ハディ政権を首都サヌアから追放し、同国を掌握した。サウジはこれに危機感募らせた。フーシの背後で宿敵のイランが糸を引いているとの疑念を深めたためで、アラブ首長国連邦(UAE)と図り、南部アデンに逃れた傀儡のハディ政権を支援して軍事介入、フーシへの空爆を開始した。

 サウジは米国の支援を受け、フーシへの攻撃を激化させる一方で、イエメンの国境や海上を封鎖した。これにより、ただでさえ最貧国のイエメンは物資不足に陥り飢餓が蔓延。上下水道などのインフラが破壊されたため、衛生状態が極度に悪化し、コレラが大発生した。

 サウジなどの空爆は無差別状態と化し、結婚式や葬式、市場、病院、学校なども爆撃を受け、これまでに民間人約5000人が犠牲になった。米紙によると、誤爆が多発するのは、サウジ機のパイロットが撃墜されることを恐れて高高度を飛行するため、爆撃の精度が下がっているからだという。

 サウジの爆撃に対し、フーシはミサイル攻撃で反撃、リヤドの空港などに撃ち込んだ。地上戦も紅海沿いの港湾都市ホデイダで激戦が続いた。サウジはこうした地上戦に、紅海を挟んだ対岸のアフリカ・スーダンで徴募した傭兵を送り込んだ。ニューヨーク・タイムズの報道によると、その数は4年間で1万4000人にも上り、多数の少年兵が含まれている。

 傭兵はかつての「ダルフール紛争」で家や畑を失った貧困層出身の少年が多いが、レイプや殺人などの蛮行で知られるならず者組織の構成員もいる。しかし、サウジは傭兵を送り込む一方で、自国の軍部隊は派遣していない。サウジ軍の指揮官も前線には来ず、離れたところから命令を下している、という。これはサウジ人の損害を回避するためだ。

 傭兵の少年たちは14歳から17歳程度。徴募に応じると、支度金が支給される上、月500ドル弱の給料が支払われる。加えて半年に1回のボーナスや戦闘手当も支払われる。戦闘経験のある戦闘員には月給も上積みされる、という。サウジは給料などを直接スーダンの銀行に振り込んでおり、スーダンにとっては貴重な外貨稼ぎの手段となっているが、戦闘によるスーダン人の死者もかなりの数に上っている。

 スーダン人の1人は同紙に対し「商品のように少年兵らが輸出されている」と批判、専門家の1人も「貧困に付け入って札束で戦闘員を買っている」とサウジのやり方に批判的だ。だが、サウジ軍スポークスマンは「少年兵がいるというのは作り話」と否定している。

腐敗し切ったフーシ
 サウジやUAEはこうした傭兵軍団に加え、イエメンの部族指導者に資金援助し、米国製の武器を供与、フーシと戦わせている。この指導者は南西部タイズを拠点とするアブ・アッバス。配下には3000人の戦闘員がいる。だが、アッバスは米国がすでにテロリストとして制裁対象に指定した人物だ。

 アッバスは過激派の思想には賛同しないとしながらも、国際テロ組織アルカイダや過激派組織「イスラム国」(IS)と連携していたことを認めており、米国がテロ指定したのは当然の措置だ。これは「フーシと戦うのであれば、過激派と手を組んでいようが関係ない」というサウジ側のなりふり構わぬ姿勢を象徴するものだろう。

 だが、フーシの実態もまた、腐敗にまみれたものだ。最近のワシントン・ポストはこれまで伝えられなかったフーシの実像を明らかにしているが、フーシは反対派を片っ端から拘束しては拷問するなどの弾圧を加える一方、幹部がサヌアの豪華な邸宅に暮らし、高級車のポルシェなどを乗り回す贅沢ぶりだ。人々が飢餓にあえぎ、公務員にさえ給料も支払われていないのとは対照的な生活だ。

 フーシはホテルや病院などにもスパイ網を敷き、ささいな理由で反対派を拘束、ムチ打ちや体に電流を流したり、また手足を縛り付けてローストチキンのように火あぶりにする拷問を加えたりしている。拘束者に対し、トイレも1日1回程度しか行かせなかったり、蛇を独房に投げ入れたり、また家族も殺すと脅したりするのは日常茶飯事だという。

 フーシのモハメド・アリ最高革命委員会議長はこうした批判に対して、調査するとしているものの、国連や人道支援機関の監視を強化し、自由な活動を制限するなどその独裁ぶりが改善される見通しは皆無だ。

米国の責任
 イエメン戦争がこうまで残虐に長引いた責任の一端は米国にある。トランプ政権はサウジへの1200億ドル強の武器売却で合意しているが、オバマ前政権も600億ドル、ブッシュ元政権も200億ドルに上る武器を売却した。サウジがイエメン戦争につぎ込んでいる戦闘機や爆弾はほとんどが米国製だ。

 F15戦闘機の保有機数はサウジが米国、イスラエルに次いで世界3番目。いかに米国製兵器がサウジに渡っているのかの良い例だ。地上では、イエメン爆撃から帰還したサウジ戦闘機のメインテナンスのため、ボーイング社などから数百人の技術者が働いている。

 こうしてサウジの戦闘継続を米国が支えてきたわけだが、とりわけ、イエメンへの軍事介入に踏み切ったムハンマド・サウジ皇太子をしゃにむに支援しているトランプ政権の責任は大きい。戦争が泥沼化する前にムハンマド皇太子を押しとどめるべきだった。

 トランプ政権は昨年11月、サウジの反体制記者カショギ氏殺害事件に批判が高まったこともあり、イエメン戦争のサウジ機に対する空中給油支援を停止した。遅きに失したというべきだろう。上院もムハンマド皇太子非難の決議とともに、イエメン戦争の軍事支援を中止するようトランプ大統領に求める決議案を採択したが、議会のチェックも後手に回ったという印象が強い。

 ハディ政権とフーシは昨年末、国連主導の和平協議で激戦地ホデイダでの部分停戦と捕虜1万6000人の交換に合意した。やっと見え始めた和平への一筋の光明だが、これが続くと見る向きは少ない。停戦が破られないことを祈るばかりだ。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14984

http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/139.html

[国際25] フランスの燃料増税はなぜ暴動を招いた?EU・日本との比較で見える原因
2019年1月7日 CAR and DRIVER :総合自動車情報誌
フランスの燃料増税はなぜ暴動を招いた?EU・日本との比較で見える原因

高速道路で燃料価格高騰に抗議をするフランスの市民 Photo:iStock/gettyimages
暴動の直接の引き金は燃料税
身近な税金負担が増える政策に怒り
 フランスの首都・パリで、燃料税の増税に反対するデモが暴動になった。商店からの略奪やクルマに火を放つなどのシーンが世界中に流れ、マクロン政権はやむなく増税の凍結を発表した。

 フランスでは年金受給年齢の引き上げや雇用規制の緩和などがここ数年で実施されたが、暴動が起きるまでには至らなかった。

 ところが、燃料税という身近な税金の負担が増えるという政策は、国民の怒りを買った。暴動の直接の引き金が燃料税であるという点は非常に興味深い。

 過去、フランスは日本同様にガソリン課税を厳しく、軽油課税を緩くする、という燃料税制度をとっていた。フランスでディーゼル乗用車が増えた(新車販売の過半数をディーゼル車が占めていた)理由はここにある。2000年時点での燃料税はガソリンが3.9フラン/リットル、軽油が2.27フラン/リットル(通貨ユーロは02年から)。ガソリン税を1とすると、軽油は0.58という低い税率で優遇されていた。フランスでは、国内で流通するすべての石油製品の税率が基本的に毎年議会決定される。前年踏襲という場合もあるが、近年は少額の値上げが目立つ。今回、マクロン大統領が発表した燃料税引き上げは“臨時”のものではなく、毎年恒例の見直し行事なのである。

 現在、フランスでのRON(リサーチ法オクタン価)95のガソリン価格は1リットル=約1.62ユーロだ。1ユーロ=128.5円で計算して約208円になる。軽油は1リットル=約1.51ユーロで、同194円。日本よりずいぶん高い。日本はRON91のレギュラーガソリンとRON98以上のハイオクタンガソリンの2種類が販売されているが、欧州にはこの中間のRON95がある。日本に輸入される欧州車の多くはRON95指定になっている関係で、日本での使用燃料が“ハイオク指定”になる。

フランスの燃料税制は複雑
増税は改めて議論される展開に
 フランスの燃料税制は複雑だ。少々古いデータになるが、13年末時点の税制を紹介しよう。RON95ガソリンの税別価格は1リットル=0.589ユーロで、これに石油製品国内税が0.6069ユーロ乗せられる。そのうえで19.6%のVAT(付加価値税=日本の消費税に相当)が課せられ、小売価格は1.43ユーロだった。日本同様、“製品価格+税金”に、最終的な売り上げ税が課税されるというタックス・オン・タックス(2重課税)である。小売価格は税別価格の約2.43倍になっている。

 この後、原油価格の高騰を受け、石油製品そのものの税別価格が上昇。17年5月にマクロン政権が誕生した時点では、この原油価格アップ分が小売価格上昇の3分の2を占めていた。残り3分の1は17年1月の増税分である。そして、ガソリンの国内税は18年1月に1リットル=0.038ユーロ、軽油は同0.076ユーロ値上げされた。毎年、議会が決める増税分である。

 軽油の増税幅が大きい理由は16年の議会決定の結果であり、軽油の小売価格をガソリン並みにするための増税が17年から実施されている。ただし事業用ディーゼル車は減税される。

 19年1月にマクロン政権が予定していた増税は、ガソリンが1リットル=0.029ユーロ、軽油は同0.065ユーロだった。これが実施されると、ガソリン小売価格はRON95が1リットル=1.65ユーロ(約212円)、軽油は1.58ユーロ(約203円)となり、ガソリンと軽油の価格差はますます小さくなる予定だった。しかし、この増税は1年間凍結される結果になった。国民の反発が、あまりにも大きかったからだ。増税に関しては、あらためて議論される展開になるだろう。

 ただ、フランスでは11年からガソリンと軽油に1リットル=2.5ユーロ未満の地方税を上乗せする施策が認められている。とくに軽油については地方税の加算額が増えており、1リットル当たり1.5ユーロの加算を行う自治体もある。さらにフランスの場合、車両購入時にモード試験でのCO2(二酸化炭素)排出に応じて、2段階のCO2税が徴収される。

 EU内で比較すると、燃料に占める税金の比率が最も高いのは、RON91ガソリンがオランダ0.772ユーロ(約99円)、イタリア0.728ユーロ(約94円)。軽油税はイギリス0.68ユーロ(約87円)、イタリア0.617ユーロ(約79円)。ガソリン税と軽油が同額なのはイギリスだけである。

 また、自動車燃料に課せられるVATはハンガリーが最も高く27%、デンマーク、スウェーデン、クロアチアは25%台、フィンランドとギリシャが24%台、最も低いルクセンブルクでも17%である。フランスの19.6%はEU内で見れば平均以下だ。

日本の場合は?
“税額が低い”とも
 念のため紹介しておくと、日本の場合、ガソリン1リットルにつき53.8円のガソリン課税(本則税額28.7円+暫定税額25.1円)があり、軽油の場合は1リットルにつき32.1円の軽油引取税(漁船が使う軽油はこの税金の対象外)がかかる。この税金を含んだ燃料代に8%の消費税がかかる。欧州諸国の例と比べると、日本は“税額が低い”ともいえる。

 こうして数値を比べてみると、フランスの燃料税は“毎年じわじわと上がり続けた”結果、国民の反感を買ったようにも思える。支持率が低下しているマクロン大統領は増税をひとまず凍結せざるを得なくなった。最低賃金を引き上げるという新しい労働対策を実施する方針などについては、18年12月10日の大統領演説で触れている。

 しかし、燃料税の見直しを毎年行うことや、マクロン政権が掲げるCO2削減目標のために自動車燃料税を環境税的な位置づけにするという現在の路線はどうなるだろうか。この議論は19年以降に持ち越された。

(報告/牧野茂雄、まとめ/CAR and DRIVER編集部)
https://diamond.jp/articles/-/189735
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/140.html

[国際25] 北朝鮮の非核化、トランプ氏に起死回生の一手はあるか
コラム2019年1月7日 / 13:03 / 5時間前更新

北朝鮮の非核化、トランプ氏に起死回生の一手はあるか
Katharine H.S. Moon
4 分で読む

[3日 ロイター] - 新年を迎える伝統は、太平洋の東西で異なっている。シャンパンのボトルを空にし、頭痛と混濁した記憶を抱えて目覚めるのが米国の流儀だ。朝鮮半島では酒を慎み、元旦に家族のなかの年長者に頭を下げ、一族全体の平和と繁栄、健康を祈る祝福を受けるのが習わしである。

こうした文化的な差異はうわべだけのものに見えるだろうが、そこには外交政策における教訓が潜んでいるかもしれない。

1月1日、北朝鮮の指導者である金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、政治的な意味での非常に大人数の「家族」に向けて演説し、2019年は「希望に満ちた」年になり、あらゆる朝鮮人が「南北交流の推進、平和と繁栄、祖国の再統一に向けた取組みをいっそう加速すべきである」と述べた。

史上初めて北朝鮮国民と同時に金正恩委員長による新年の演説をテレビ中継で視聴した韓国国民は、自国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領からも同じように楽観的なメッセージを受け取った。文大統領は国民向けの挨拶で「しっかりと平和を不可逆なものにする」と約束した。

確かにこれからの1年、南北の関係改善が続き、平和的共存に向けて両国が独自の道を切り開こうとする努力が行われるのは確実だ。一方で、トランプ米大統領は自己流で北朝鮮の非核化に挑んでいる。

この南北プラス米国という図式は、米韓の同盟関係にとっては幸先が悪い。米韓同盟には現在、在韓米軍駐留経費の負担に関する協定の期限切れと、対北朝鮮政策を巡る溝の拡大という暗雲が垂れ込めている。トランプ政権が新たな交渉材料を提示しない限り、状況は解消しないだろう。米国政府は、非核化への努力と並行して、和解と信頼構築措置についても韓国政府と手を携えていく必要がある。

昨年、外交上のドラマで主役を担ったのは文大統領と金委員長だった。4月から9月にかけての3度の首脳会談、非武装地帯(DMZ)付近の武装解除、両国軍の間のコミュニケーション確保、開城(北朝鮮)での共同連絡事務所の設立、鉄道・道路網接続への着手のような人目を引く直接行動は今後も続くだろう。さらに、金委員長が2018年12月30日付けで文大統領に送った親書で約束した、2019年中のソウル訪問という、新たな歴史的事件への準備もある。

対照的に、米朝両国の間の非核化交渉については、昨年6月の米朝首脳会談以来、これといった進展が見られない。

トランプ氏は会談の後、もはや北朝鮮の核兵器は脅威ではないと宣言したが、北朝鮮による核分裂物質の生産は続いており、11月には新たな「超近代的な戦術兵器」の実験を行っている。金委員長は新年の演説で米韓合同軍事演習の終了を求めたが、これについてはトランプ氏も南北首脳会談の円滑化のために一部同意している。さらに金委員長は米国政府に対し、「外部からの戦略的資産」の配備についても「中止」するよう求めた。同委員長がこの2つの要求を公言したのは初めてだが、米韓同盟の観点からすれば交渉の余地はない。

北朝鮮政府が核兵器に関する資産・情報の一部放棄に向けた準備として要求を積み増している可能性はある。他方、こうした要求は、金委員長には核開発計画を放棄する意図などまったくなく、米韓軍事同盟を弱体化する試みだという解釈もありうる。

米国政府は、2016年に北朝鮮、中国、さらには韓国政府内からの反対すら押し切って韓国内に配備したTHAAD(高高度防衛ミサイル)部隊の撤収を提案することで、非核化に向けた措置の順序をめぐる北朝鮮との意見対立を解消することができるかもしれない。こうした措置には、 核兵器・実験場の機能停止と検証、その見返りとしての制裁解除及び「平和体制」構築が含まれる。

在韓米軍とその装備は、非常に有能な韓国軍と合わせて、北朝鮮政府による通常兵器や核兵器を用いた軍事的冒険主義を抑止する基盤となっている。THAADを交渉材料にすることは、建設的な関与に向けた米国の思い切った意思表示になる。それこそ、南北を含め、世界の大部分が求めているものだ。

仮に、韓国、北朝鮮と米国がいずれも外交的な働きかけの継続と核をめぐる対立の解消を望んでいるとしても(ただし、金委員長が元旦の演説で「完全な非核化」が北朝鮮の国家方針であると初めて公言したとはいえ、依然としてかなり怪しい「仮に」だが)、建設的な戦略を折り合わせていく交渉担当者や明確な外交ビジョンがトランプ政権にそろっているかは不透明だ。

信頼構築に向けた動きがもう1つあるとすれば、米国(及び国連安全保障理事会)が、厳しい制裁の一部、特に軍事転用可能な技術や設備を対象とするものを維持しつつ、北朝鮮国内での人道支援のための資金供与と活動の再開を促すことだろう。

2018年以降、米国による北朝鮮渡航禁止措置により、多くの支援従事者が医薬や食糧などの支援提供を阻まれている。北朝鮮との取引に従事するあらゆる金融機関・商業組織に対して米国が一方的に科している制裁は、人道支援団体に言わせれば「一部の国連制裁に関する、不当に制限的な解釈」につながっており、「セーブ・ザ・チルドレン」や「グローバル・ファンド」などの団体は北朝鮮での活動を停止せざるをえなくなっている。

米国のビーガン北朝鮮担当特別代表は昨年9月、「適切な支援」の提供について協議するために人道支援団体の代表者らと2019年早々に会う予定だと述べ、何らかの措置を探り始めた。北朝鮮では、5歳以下の子どもの20%が栄養不良による発育障害に陥るなど、国民2500万人のうち約40%は栄養不良の状態にあるだけに、人道支援再開が急務であることは明らかだ。

また米国としては、停滞している人道支援資金の調達を活性化させるという選択肢もある。

北朝鮮向けの国際的な人道支援資金プランは、制裁を背景として、2012年の1億390万ドルから2018年には2640万ドル(約28億円)へと激減した。飢餓や病気に苦しむ人々には、自らの、あるいは国民全体の苦境を改善する力はない。「米国の人々からの贈り物」として食糧・医薬品パッケージを提供し、北朝鮮の診療所や学校、農場に米国民を派遣することは、米朝両国の政策に長期的な効果をもたらすだろう。そうした物資や資金が結局は軍その他の政府関係者の懐に入るという懐疑的な見方もあるが、北朝鮮での経験を有する専門家らは、そうした懸念はごくわずかであるという結論に達している。

唯一の共通体験が戦争である場合、国家指導者が互いに不信感を抱くのは当然である。韓国は、いまだ正式に終結していない朝鮮戦争(1950─53年)がもたらした悲嘆と憎悪を越え、基礎的な足場を築こうと努めている。米国と北朝鮮の間には、お互いに基本的な知識と理解が欠けている。

実質的な非核化を進める前に、米国は北朝鮮政府・国民との和解に向けた措置を講じる必要がある。非現実的な「一足飛びの信頼関係」を狙うよりも、小さな取組みを重ねた方が平和につながる確実な道を開けるのではなかろうか。

*筆者は、米ウェルズリー大学の政治学教授で、ブルッキングス研究所の上級研究員。(翻訳:エァクレーレン)

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/moon-korea-idJPKCN1P108A
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/141.html

[経世済民130] 日本株は大幅反発、米雇用改善や柔軟な金融政策期待−全業種上げ 消費増税へ十二分な対策打つ、デフレ脱却確かなものに=安倍首
日本株は大幅反発、米雇用改善や柔軟な金融政策期待−全業種上げ
長谷川敏郎
2019年1月7日 7:47 JST 更新日時 2019年1月7日 15:18 JST
非農業部門雇用者数など伸び加速、米FRB議長は柔軟姿勢を示す
主要株価指数は大発会の下げ分帳消し、東証1部の92%が高い

Photographer: Takaaki Iwabu/Bloomberg
7日の東京株式相場は3営業日ぶり大幅反発。米国の雇用改善や柔軟な金融政策への期待、中国景気刺激策から業績懸念が後退し、電機や機械など輸出関連、非鉄金属や化学など素材、サービス株中心に東証全33業種が上げた。TOPIXは3営業日ぶりに1500ポイント、日経平均株価は2営業日ぶりに2万円を回復、ともに昨年終値を上回った。

TOPIXの終値は前営業日比41.37ポイント(2.8%)高の1512.53
日経平均株価は477円01銭(2.4%)高の2万0038円97銭
東証1部33業種で上昇率上位は電機、不動産、機械、海運、非鉄金属など
市場関係者の見方
プリンシパル・グローバル・インベスターズの板垣均社長

米景気には悲観するところが全くない、市場の半分程度は弱気に傾いていたとあってことしは良い経済データが出るたびに反発する相場が続くだろう
現在の米国株安は過去5年程度上がり過ぎたことによる調整の意味合いが大きい、景気・株価が下落局面に入ったとの見方にはくみしない
バリュエーションから判断してことしの日本株は米国株をアウトパフォームする可能性、昨年高値こそ超えないだろうが下がったら買いとのスタンスで良い
水戸証券投資顧問部の酒井一チーフファンドマネージャー

景気減速懸念に加えて現在のグローバル株安の根底には米FRBのバランスシート縮小が影響していた、FRBが資産縮小ペースを遅めるならリスク資産にとってポジティブ
株価の下値リスクは低下した、日経平均では1万9000円台前半が当面の下限ラインとなる可能性
きょうの東京株市場は買い戻しが主体、大きく下がった銘柄を中心にリターンリバーサル効果が出ている
ただ、株式市場のボラティリティーがなお大きいことやFRBのスタンスをじっくり見極める必要性から相場のトレンドが転換したかを判断するのは難しい
東海東京調査センターの平川昇二チーフグローバルストラテジスト

雇用統計での予想外のファンダメンタルズ好転は驚き、米景気が減速しているのは事実だが2000年や07年などのリセッション前とは景色が違う
リセッションを見込んでいた向きは買い戻しを強いられる、株式市場は2月中旬まで戻りを試す可能性
ダボスでの米中会談に関するSCMP報道は、交渉が進展しているから会談するということだろう、株式市場にとってかなりプラス
中国の預金準備率の引き下げは半年後に融資額に影響する傾向、同融資額は中国株に連動していることから株式市場に好感されやすい

背景
米雇用統計:12月は31.2万人増、過去10カ月で最大−平均時給加速
FRB議長:必要に応じて政策調整の用意−当局は辛抱強くなれる
トランプ氏、中国の王岐山国家副主席とダボスで会談か−SCMP紙
中国人民銀、預金準備率を1ポイント引き下げへ−景気てこ入れ
東証1部銘柄のうち92%が高かった
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-06/PKXL936S972Q01


 

ビジネス2019年1月7日 / 16:23 / 3時間前更新
消費増税へ十二分な対策打つ、デフレ脱却確かなものに=安倍首相
1 分で読む

[東京 7日 ロイター] - 安倍晋三首相は7日午後、経済3団体の新年祝賀パーティーであいさつし、10月に予定されている10%への消費税率引き上げを踏まえ、十二分な対策によって増税を乗り越え、デフレ脱却を確かなものにしていくと表明した。

首相は今年の経済政策運営について「消費税の引き上げ」を挙げ、「経済の足腰を強化していくことが求められている。成長力をつけていくことだ」と、引き続き経済最優先で取り組む意向を示した。

その上で、消費増税に向けて「前回の3%引き上げによって消費が落ち込んだ反省を踏まえながら、十二分な対策を打っていく」とし、「消費税の引き上げを乗り越えて、デフレ脱却を確かなものにしていきたい」と強調。国際情勢は「困難な状況」としながら、「それを乗り越えていきたい」と語った。

また「今年はしなやかに、寛容で謙虚な姿勢で政権運営を行っていきたい」と述べ、「平成最後の年、新しい時代の幕開けにあたって、政権運営を確かなものとしながら経済を成長させていく」と語った。

伊藤純夫
https://jp.reuters.com/article/abe-ctax-idJPKCN1P10HH
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/464.html

[経世済民130] 「フラッシュクラッシュ」的な円急騰、取引所データが謎を解く鍵か ドル・円下落、米利上げ停止観測や米中通商協議の不透明感重
「フラッシュクラッシュ」的な円急騰、取引所データが謎を解く鍵か
masaki kondo
2019年1月7日 13:24 JST
個人投資家、3日にトルコ・リラのロングポジションを大幅縮小
オーストラリア・ドルのロングは減らしていない
日本の個人投資家が3日、トルコ・リラのロング(買い持ち)ポジションを大幅に減らした。東京金融取引所のデータで分かったもので、円を他の通貨に対して同日急騰させた「フラッシュクラッシュ」の謎を解く鍵があるかもしれない。

  同データによると、個人投資家はリラのネットロングを4万2743枚(4億2700万リラ相当=約87億円)減らした。昨年8月以来の大幅減少だった。リラは円に対し一時9.2%下落した。

  トレーダーや投資家はアジア時間3日朝の円急騰の理由を見つけようとしている。日本市場は休場だったが、円に対するオーストラリア・ドルとトルコ・リラの売り注文が殺到し、マーケットメーカーは圧倒された。米アップルの売上高見通し下方修正を受けたリスク回避との見方や、日本の個人投資家が損失の出るポジションを解消したとの見方がある。

  リラと豪ドルは昨年11月末から1月2日までにそれぞれ7%と8%余り下げていたが、東京金融取引所のデータによると、個人投資家は豪ドルのロングポジションは減らしていない。


Lira Sell-Off
Japan retail investors dumped Turkish lira on the day of yen flash crash


Sources: Tokyo Financial Exchange, Bloomberg

原題:Clue to Solve ‘Flash Crash’ Mystery in Yen Seen in Exchange Data(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-07/PKXZ6D6TTDS401?srnd=cojp-v2


 

ドル・円下落、米利上げ停止観測や米中通商協議の不透明感が重し
池田 祐美
2019年1月7日 11:53 JST 更新日時 2019年1月7日 15:21 JST
年内米利下げを織り込みつつある状況で上値重いーソシエテ
米中通商協議、目立った内容は出ないと思うーSBI証
東京外国為替市場のドル・円相場は下落。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長発言を受けた米利上げ停止観測や米中通商協議への不透明感などが重しとなった。ドルは主要10通貨に対して全面安。

7日午後3時14分現在のドル・円は前週末比0.3%安の1ドル=108円19銭。朝方に付けた108円78銭から徐々に水準を切り下げ、午後は一時108円02銭まで下落
ユーロ・ドル相場は同時刻現在、0.2%高の1ユーロ=1.1418ドル。一時1.1430ドルまでユーロ高・ドル安に振れた
市場関係者の見方
ソシエテ・ジェネラル銀行の鈴木恭輔為替資金営業部長

ドル・円、109円の大台を回復するのは難しい。輸出企業は焦らず戻りを見極める感じのようだが、輸入企業はドル・円の下落リスクから慎重になっている。ドルそのものも市場がまだ年内の利下げを織り込みつつあるような状況で上値が重い
SBI証券投信・債券部の相馬勉部長

パウエルFRB議長発言を受けた市場の反応は、当面は米利上げないとの見方。米金利先高観からのドル先高観は薄れるものの、米雇用統計は悪くなく急落もなくなった印象
米中通商協議、すぐに答えが出る訳ではなく、目立った内容は出ないと思う。米政府機関の一部閉鎖が長引きそうで不透明感強く、ドルを思い切って買っていく話にもならない
三井住友銀行の宇野大介チーフストラテジスト

パウエル議長発言を受けて、ユーロ・ドルは堅調。物価統計などユーロ圏の売り材料には飽きており鈍感な反応。一方、米金融政策を巡り米利上げ頓挫観測でドルが売られる状況
米中通商協議はいつもやっている話で、進展するなどと言っているが、前週から分かっていた同じ材料
背景
主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時0.3%低下の1188.25と昨年10月18日以来の低水準
FRB議長:必要に応じて政策調整の用意−当局は辛抱強くなれる
トランプ大統領:国家緊急事態を宣言する可能性、改めて主張−壁建設で
知的財産や華為などが鍵:米中貿易協議の成否を左右する7つの問題
米長期金利は時間外取引で前週末比1ベーシスポイント(bp)低下の2.66%程度。前週末終値は11bp上昇

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-07/PKXT5Z6JTSFU01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/465.html

[経世済民130] 漂う国際協調のにおい、2016年相場との類似点 ボラティリティーが目覚めた 中国人民元が対ドルで上昇、1カ月ぶり大幅高の
外為フォーラムコラム2019年1月7日 / 18:08 / 42分前更新

漂う国際協調のにおい、2016年相場との類似点

木野内栄治 大和証券 チーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト
4 分で読む

[東京 7日] - 株式市場を取り巻く現在の環境は、2016年初めと似ている。あの年は20カ国・地域(G20)の政策総動員によって絶好の買い場となった。今回のコラムでは、当時と今の類似点を比較し、足元が投資の好機である可能性を説明したい。

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は4日のアメリカ経済学会の年次総会で、将来の利上げや資産圧縮に柔軟に対応する姿勢を示した。イエレン前議長、バーナンキ元議長と共に登壇していたことから、株安に歯止めをかける「パウエル・プット」発動という印象を市場に与えたかもしれない。

パウエル議長は、2015年12月のドットチャートが翌年4回の利上げを予想していたにもかかわらず、当時の議長だったイエレン氏が金融情勢の変化に機敏かつ柔軟に対応し、同年12月まで利上げしなかったと指摘。「今年が2016年のようになるかは誰にもわからない。しかし、私が知っているのは、素早く、かつ柔軟に政策を調整する用意があるということだ」と語った。

<反応したのは中国関連株>

しかし、パウエル氏の言動はこれまでも「柔軟」に変わってきた。中でも、中立金利を巡るスタンスには一貫性が見られなかった。主要政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)レートがすでに中立金利に近づいたのだから、利上げは中断するのが正しいと言えよう。今回の発言が、パウエル・プットと呼べるほどの安心感を市場にもたらしたとは筆者には思えない。

1月4日のダウ平均上昇に寄与した上位銘柄を見ると、順にボーイング(BA.N)、スリーエム(MMM.N)、キャタピラー(CAT.N)、アップル(AAPL.O)と中国関連株が占めている。当日のダウ全体の上げ幅746ドルのうち、この4銘柄で247ドル持ち上げている。

一方、4日のアジア時間は中国の李克強首相が金融緩和を示唆し、実際に中国人民銀行が預金準備率の引き下げを発表した。アップルが売上見通しを下方修正し、日経平均が2%以上も下落するのを尻目に、上海総合株価指数や香港ハンセン指数は2%以上の逆行高となった。中国経済との関係が深い欧州でも、米国の取引時間前にすでに株高となっていた。つまり、4日は中国株と中国関連株が大幅に上昇した日だったと言える。

<2016年初めと酷似>

パウエル議長が指摘した2016年初めと現在の状況は、非常に似ている。中国の景気に不安が高まり、原油相場は下落している。さらに、不確実性が懸念された英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を決める国民投票や米大統領選挙は、ここに来て現実の不安要因となっている。

金融情勢も酷似している。パウエル氏が指摘するように、2016年初めは主に原油安によるクレジット不安が台頭した。石油インフラ事業に共同投資するファンド「マスター・リミテッド・パートナーシップ(MLP)」の代表指数アレリアンMLPは、同年2月までに3分の1程度へ下落した。2019年の足元も、ほぼ安値面合わせまで軟化している。

東京株式市場では2016年2月9日、日経平均が900円以上も下げ、PBR(株価純資産倍率)は1倍の水準に低下した。昨年12月25日に日経平均が1020円下落し、PBRが1倍の水準に到達した状況とそっくりだ。為替市場も2016年初めは円高が進み、前年末から2月末までにドル/円は7円も下落した。

「今年が2016年のようになるかは誰にもわからない」とパウエル氏は言うが、誰もが2016年とそっくりだと思うだろう。

<2016年に世界を救ったのは>

では、2016年はどのようにして成長軌道へ復帰できたのだろうか。まずは2月27日に上海でG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれ、「個別および集団的に、金融、財政、構造上のあらゆる政策手段を活用する」との声明を採択した。いわゆる政策総動員の方針が掲げられた。

その後、米国は利上げを停止し、中国は2月末に預金準備率を追加で引き下げた。1月末にマイナス金利を導入していた日銀は、7月に上場投資信託(ETF)の購入額を倍増、9月には長短金利を操作する「イールドカーブ・コントロール」を導入し、新たな金融緩和策を模索した。安倍晋三政権は6月1日に消費増税の延期を表明し、7月の参議院選挙を戦った。まさに政策総動員だった。

こうした各国の協力によって、世界経済はリセッション(景気後退)の淵から救われた。国際協調行動は単独行動に比べ、強い力を持ち得る。

<注目は1月17─18日>

2019年、G20議長国は日本だ。世界的な貿易不均衡の是正など、取り組むべき優先課題はすでに昨年末のG20で麻生太郎財務相が表明しており、注目は国際協調による政策総動員を打ち出すかどうかだ。

そこには消費増税の最終判断が影響する。来年度予算案を可決する3月末までは、増税延期の表明は国会運営上難しいだろう。一方、増税半年前の4月に入ると、企業のシステム変更など技術的なタイムリミットを迎える。増税延期を決断するには、4月初めのワンチャンスしかない。安倍首相は新元号の発表を4月1日と定めたが、増税延期を決断するならこの日とも見定めているのではないだろうか。

2016年の増税延期は、5月末の7カ国(G7)首脳会合(伊勢志摩サミット)直後に安倍首相が表明した。構造改革の加速や財政出動を挙げた上で、「内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきである、そう判断した」と述べ、政策総動員の一環であることを強調した。

一方、消費増税を悲願とする財務省は、何とか景気失速懸念を払しょくしておきたい。今回のG20首脳会合(大阪サミット)は6月28─29日、財務相・中央銀行総裁会議は4月11─12日に開催する。この時期より前の4月初めに、リーマン・ショック級の気配を一掃したいはずだ。

そこで、1月17─18日に東京で開催されるG20財務相・中央銀行総裁代理会議が注目される。ここで政策総動員的な方針を取りまとめ、閣僚級会合などを待たずに公表し、不安払しょくに努めようとするかもしれない。

いずれにせよ、財務省は代理会議に向け、日本が優先課題に掲げた項目を各国と積極的に議論しているはずだ。李克強首相やパウエル議長の発言は、各国が日本の提案に乗ってきた証かもしれない。

筆者は、市場が国際協調による政策総動員のにおいを嗅ぎ取っているように感じる。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

(編集:久保信博)

木野内栄治氏(写真は筆者提供)
*木野内栄治氏は、大和証券投資戦略部のチーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト。1988年に大和証券に入社。大和総研などを経て現職。各種アナリストランキングにおいて、2004年から11年連続となる直近まで、市場分析部門などで第1位を獲得。平成24年度高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。現在、景気循環学会の理事も務める。
https://jp.reuters.com/article/column-g20-eiji-kinouchi-idJPKCN1P10NJ


 


中国人民元が対ドルで上昇、1カ月ぶり大幅高の方向
Tian Chen
2019年1月7日 15:42 JST
先月4日以来の大きな上げ−元相場は12月半ば以降で約1%上昇
預金準備率引き下げで景気持ち直し期待広がる−スコシア銀

Photographer: Bloomberg/Bloomberg
7日の中国人民元は対ドルで上昇。このままいけば1カ月ぶりの大幅高となる。景気減速の兆しが広がる中で、中国人民銀行(中央銀行)が預金準備率の引き下げを先週末に発表したが、元相場は堅調に推移している。

  人民元は現地時間午後1時39分(日本時間同2時39分)現在、1ドル=6.8452元と0.38%高。昨年12月4日以来の大きな上げになっている。水準的にも約5週間ぶりの高値。

  元相場は先月半ば以降で約1%上昇。一方、ドルは大半の主要通貨に対して下げており、7日は米連邦準備制度による利上げペース鈍化観測で約2カ月ぶりの安値を付けた。

  スコシア銀行の高奇ストラテジストは「市場の地合いは改善している。預金準備率引き下げで中国経済の持ち直し期待が広がった。米中が北京で貿易協議を開く中で、投資家は人民元が安定推移すると見込んでいる」と指摘。今後2カ月で1ドル=6.7元、または6.8元まで値上がりする可能性があるとコメントした。


原題:Yuan Shrugs Off Policy Easing to Head for Biggest Gain in Month(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-07/PKY7HW6S972B01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/466.html

[経世済民130] 米中協議の再開目前、中国の金融緩和が示唆するもの パウエルFRB議長:市場の動揺静めるも当局のメッセージは不鮮明に 
コラム2019年1月7日 / 15:43 / 3時間前更新

米中協議の再開目前、中国の金融緩和が示唆するもの
Christopher Beddor
2 分で読む

[香港 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国人民銀行(中央銀行)は4日、銀行の預金準備率の引き下げを発表、正味1170億ドルの資金が市中に出回ることとなった。米中通商協議の再開を目前に実施した同金融緩和措置は、中国経済の減速が政府の交渉上の立場を弱くするとのトランプ米大統領の見解が正しい可能性を示している。

過去1年で5回目となる預金準備率の引き下げはサプライズではなかったが、1%ポイントの引き下げ幅は予想よりも大きかった。無論、年初は春節(旧正月)や納税期に絡んで現金需要が急拡大する傾向にある。それを考慮に入れても、中国経済が不快なほど急速に冷え込んでいるという背景があることは明白だ。スタンダード・チャータードによると、第4・四半期の経済成長率は6.3%に鈍化した可能性がある。

人民銀は12月にも、中小・民間企業に的を絞った支援策「標的型中期貸出制度(TMLF)」を発表している。中小企業向けの融資を増やしている銀行を対象に、貸出金利を引き下げるという措置だ。

ただ、公式の政策金利でよりインパクトの強い基準金利は据え置かれており、全面的な金融緩和とはまだ言えない。また、通常型の中期貸出制度(MLF)についても、市場は金利の引き下げを待ち望んできた。

それでもなお、方向性は明確だ。最近講じた2つの措置はともに、悲観論者の論拠となっている構造的問題を浮かび上がらせている。つまり、市場に追加供給された流動性は中小企業への融資拡大にはつながっていないもようで、資本配分における根深い問題を示唆している。また、民間部門が2019年の政治の先行きに神経質になっている点も見過ごせない。

これら全ては、対米通商協議を再開する中国政府にとって悪いニュースだ。経済の困難が増せば、政府は痛みが軽減されるよう、交渉で一段と譲歩するかもしれない。例えば、米国が批判する産業政策「中国製造2025」の撤回に正式に合意するか、知的財産権保護を徹底するための具体策を発表する可能性がある。

トランプ大統領は6日、中国の軟調な経済状況が同国に合意に向けて取り組む動機を与えているとの見解を示している。これは正しいのかもしれない。

●背景となるニュース

*人民銀は4日、銀行の預金準備率を2段階で合計1%ポイント引き下げると発表した。[nL3N1Z60AV]

*人民銀は12月、中小・民間企業に的を絞った支援策「標的型中期貸出制度(TMLF)」を発表。金利は3.15%と中期貸出制度(MLF)より0.15%ポイント低く設定した。[nL3N1YO40P]

*中国商務省は4日、米中次官級の通商協議を7─8日に北京で行うと発表。トランプ米大統領は6日、中国との通商協議は非常に順調に進んでいると述べ、中国の軟調な経済状況が同国に合意に向けて取り組む動機を与えているとの見解を示した。[nL3N1Z41BS][nL3N1Z608Y]

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/china-monetary-policy-idJPKCN1P10ES

 

パウエルFRB議長:市場の動揺静めるも当局のメッセージは不鮮明に
Rich Miller
2019年1月7日 14:01 JST
利上げ停止、バランスシート縮小プログラムの変更の可能性も示唆
景気判断やバランスシート縮小巡り投資家との認識のずれ浮き彫り
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は4日、利上げを一時停止する可能性を示唆し、荒れ模様の金融市場を何とか落ち着かせることができた。だがその結果、金融政策を巡るメッセージはこれまでより不鮮明になり、このような沈静化策がいつまで通用するのか問われることになりそうだ。

  米経済学会(AEA)年次総会で発言したパウエル議長は、投資家が懸念する米経済への下振れリスクに対応するため、金融当局のバランスシート縮小プログラムに変更を加える可能性にも言及した。しかし一連の発言は、当局として今年2回の利上げを予想し、同プログラムの変更は見込まれないとした昨年12月19日の記者会見に比べ、ずっと分かりにくいものとなった。

  アリアンツの主任経済顧問で、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストでもあるモハメド・エラリアン氏は電子メールで、「パウエル議長は政策の柔軟性についてトレーダーが聴きたがっていた趣旨の発言を行うことで、経済のファンダメンタルズを阻害しかねない相場急落の連鎖に歯止めを掛けることができた」と指摘した。


  ただ問題なのは、当局のバランスシート縮小が市場にもたらしかねない悪影響や経済見通しを巡って、投資家が抱く最悪の懸念をパウエル議長が受け入れていないように見受けられる点だ。世界経済が逆流に見舞われている現状にあって、米国をはじめとする各国・地域の金融当局が政策の正常化を目指す中で、こうした認識のずれは新たな混乱につながる恐れがある。

  パウエル議長は「米国のデータを見ると、新年にかけて好調な勢いが続く軌道にあると考えられる」と述べ、金融市場でこのところ台頭しているリセッション(景気後退)懸念とは対照的に、米経済見通しに楽観的な判断を示した。

  また、流動性の過度の低下を招いていると投資家が心配するバランスシート縮小に関しても、米金融当局が毎月進めている保有債券削減の額は大きなものではなく、昨年10−12月(第4四半期)の金融市場の動揺の主因ではないとパウエル議長は語り、認識の違いが最も浮き彫りとなった。

  エラリアン氏は「各国・地域の中央銀行は、自分たちにはおおよそ制御できない逆風に加え、ボラティリティーを抑制する側から、逆に拍車を掛ける側への立場の転換という新たな現実に引き続き直面することになるだろう」との見方を示した。

  このほか、ライトソンICAPのチーフエコノミスト、ルー・クランドール氏は、バランスシート縮小プログラムに関して「米金融当局は意思伝達上の問題がある。対象とする聴衆の多くとは異なる経済モデルに基づいて政策運営に当たっている形だ」と分析した。 

原題:Powell Muddies Fed’s Monetary Message to Pacify Markets for Now(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-07/PKXXVM6JIJUO01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/467.html

[経世済民130] 債券反落、リスク選好の流れで売り優勢−日銀買いオペ結果も重し トレーダーが米国債ロング大幅縮小−雇用統計受けた利回り急騰
債券反落、リスク選好の流れで売り優勢−日銀買いオペ結果も重し
野沢茂樹
2019年1月7日 8:08 JST 更新日時 2019年1月7日 16:26 JST
好調な米雇用情勢確認して各市場に落ち着き、調整売り−岡三証
日銀国債買いオペ、1ー3年の応札倍率が昨年10月以来の高水準
債券相場は反落。米国雇用統計が予想を上回ったことや米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の発言を受けてリスク選好が強まった海外市場の流れを引き継ぎ、売りが先行した。日本銀行がこの日実施した国債買い入れオペで売り圧力の強さが示されたことも重しとなった。

新発10年物352回債利回りは一時、日本相互証券の前週末午後3時の参照値より2ベーシスポイント(bp)高いマイナス0.02%
長期国債先物3月物の終値は前営業日比14銭安の152円70銭。この日の安値152円52銭で始まり、一時152円73銭まで戻したが、午後はオペ結果を受けて頭打ち
市場関係者の見方
岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジスト

年初の米利下げ織り込みや株安・円高はやや行き過ぎていたが、好調な米雇用情勢を確認して各市場が落ち着いた
債券はきょうは調整売りが優勢だが、世界経済の先行き不透明感が払拭されるには至らないので、需給面の良さもあって金利が上がっていく環境ではない
先行きの米経済が市場の懸念通り減速するのか、思ったほど減速しないのがFRBの金融政策にも影響するので注目していく
背景
7日の日経平均株価は477円01銭(2.4%)高の2万0038円97銭
4日の米10年物国債利回りは11bp高い2.67%程度
4日のダウ工業株30種平均は3.3%高の23433.16ドル−米利上げ休止の観測などで
日銀オペ
残存1年超3年以下と3年超5年以下、10年超25年以下、25年超が対象。オファー額は全ゾーンとも据え置き
応札倍率は1年超3年以下が3.46倍と昨年10月以来、10年超25年以下と25年超は昨年11月以来の高水準−市場での売り圧力の強まりを示唆
岡三証の鈴木氏
高値警戒感もある相場水準で10年債と30年債の入札を控え、利益確定狙いの応札が多かったようだ
国債買い切りオペ結果の一覧表
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
-0.170% -0.170% -0.020% 0.470% 0.680% 0.810%
前週末比 +1.0bp +2.0bp +2.0bp +2.5bp +2.5bp +3.0bp

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-06/PKE0M36S972801?srnd=cojp-v2


 


トレーダーが米国債ロング大幅縮小−雇用統計受けた利回り急騰の中で
Stephen Spratt
2019年1月7日 15:46 JST
2年債先物の未決済建玉は13万5000枚余り減少
米2年国債利回りは4日に12ベーシスポイント上昇
予想より強い米雇用統計データを受け債券が売られる中で、トレーダーらは2年物米国債先物のロングポジションを大幅に減らした。

  米2年国債利回りは4日に12ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、4年ぶりの大幅上昇を演じた。取引所の暫定データによると、2年債先物の未決済建玉は13万5000枚余り減少した。

  これは11月の前限月のロールオーバー以降で最も大きく、昨年12月半ばから積み上がったロングポジションが解消されたことを示唆する。2年国債利回りは12月14日から今月3日までに35bp余り低下していた。


原題:Traders Cut Longs in Treasury Futures After Blowout Payrolls(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-07/PKY6SJ6TTDS601?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/468.html

[経世済民130] 平成に積み残した3つの宿題、技術革新が新時代のカギ 日本人の思考は3つのパターンで乗っ取られる 日本経済のリスクシナリオ
コラム2019年1月4日 / 15:02 / 2日前 オピニオン:

平成に積み残した3つの宿題、技術革新が新時代のカギ

武田洋子 三菱総合研究所 チーフエコノミスト
5 分で読む

[東京 4日] - 日本は平成30年間の大部分をバブル崩壊後の負の遺産への対応に追われ、低賃金の若者を生み出し、それが少子化という現在の社会的な構造問題を作り出したと、三菱総合研究所・チーフエコノミストの武田洋子氏は指摘する。

負の遺産の処理は進み、デフレではない状況まで経済は回復したものの、次の時代には持続可能な財政と社会保障制度の構築、国際競争力の回復という、未来に対して責任ある政策に取り組む必要があると話す。日本社会が人口減少に直面する中で、こうした問題を解決するには技術革新が欠かせず、労働市場の改革がカギになると分析する

同氏の見解は以下の通り。

<「就職氷河期」という人的資源の損失>

平成の30年間は日本にとって試練の時代で、大きく2つの特徴がある。

1つは1991年のバブル経済崩壊がもたらした負の遺産の処理に、多大な年月を費やしたことだ。1997年の山一証券、1998年の日本長期信用銀行と日本債券信用銀行の破たんは、不良債権問題がいかに深刻であったかを示している。りそな銀行が実質的に国有化された2003年辺りから株式市場はいったん回復に向かったが、デフレという失われた20年が続いたのも、結局はバブル崩壊の後処理に膨大な時間がかかったことに起因する。

重要なのは、これが単に金融システムの問題にとどまらなかったことだ。日本企業は「雇用を守った」と言われるが、それはあくまで既存の雇用についてであり、新卒採用は相当抑制された。若者が希望の仕事に就けない「就職氷河期」を生み、非正規雇用も拡大した。

彼らが今、40歳代になっている。人的資源の大きな損失だ。バブル崩壊のしわ寄せは、好景気の恩恵を受けた世代を通り越して次の世代に行った。当時の経営者は、目の前にある雇用は守ったものの、その下の世代を犠牲にしたことをはっきりと認めなければならない。

このことが社会にもたらした悲劇は大きい。日本の人口ピラミッドは団塊の世代と、その子供たちである団塊ジュニアが2つのこぶになった「ひょうたん型」をしている。団塊ジュニアの子供世代がもう1つこぶを作っているべきだが、そうなってはいない。雇用が不安定化し、賃金も抑制された結果、団塊ジュニアの世代で出産が増えなかったためだ。日本の人口構造のゆがみはバブル崩壊と無関係に見えるかもしれないが、実はそれぞれ底流でつながっている。

2つ目は自然災害だ。1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災、ほかにも多数の大地震や水害が発生し、もはや自然災害は異常事態ではなくなりつつある。多くの人命を奪った災害が相次いだにもかかわらず、その教訓はあまり生かされていない。

日本は高度成長期に住宅地を無制限に拡大させてきたが、人口減少社会を迎える中、今後も続くであろう災害を想定した国土利用を検討すべき時期に来ているのではないだろうか。

<積み残した宿題>

平成の終盤で安倍晋三首相が打ち出した経済政策によって、バブル崩壊後の負の遺産の処理は進み、デフレではない状況まで経済は回復したが、次の時代に積み残した課題も多い。1つは財政健全化だ。政府債務残高の対国内総生産(GDP)比は、2018年に236.0%と、第2次世界大戦末期の水準を上回っている。持続可能でないことは明らかだ。

高齢化社会への対応も求められる。現在の医療・社会保障制度は、平均寿命が72歳だった50年以上前に作られたものだ。現在は寿命が84歳に延びる一方、団塊ジュニアに子供が少ないため、確実に支え手が減っていく。

団塊の世代が75歳以上になる2022年以降、医療費の自己負担が原則1割という後期高齢者の仕組みを続けられるのか、早急な見直しが必要だろう。同時に、生涯を通じて現役でいられる社会が実現できるよう地域レベルでシニアが活躍する場を作るほか、自立生活支援ロボットや、予防医療・介護のためのバイタル・データの有効利用など新技術の活用促進を組み合わせることが肝要だ。

さらに国際競争力の回復も焦眉の課題だ。スイスのビジネススクール、国際経営開発研究所(IMD)の世界競争力調査によると、日本のランキングは平成元年(1989年)の1位から2018年には25位まで低下した。

最近では、次世代通信規格「5G」などを巡る米中の激しいつばぜりあいが注目を集めている。究極的には世界の覇権争いだ。日本は技術面で脅威を与える存在ではなくなってきているため覇権争いに巻き込まれていない、という側面があることを深刻に受け止めるべきだ。

中国は2017年に国際特許出願件数で日本を抜き、米国に迫ろうとしている。量子コンピュータと人工知能(AI)では米中がしのぎを削り、次世代のスーパーコンピュータは中国が優位と言われている。

人口が減少していく日本は今後、経済規模でのプレゼンス後退は避けられない。世界への投資という点でも中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗できるような影響力の行使には限界がある。その中で日本が国際的なプレゼンスを維持するには、自由貿易の旗振り役としての姿勢を世界に示し続けること、そして、技術力・国際競争力の回復が重要になる。政府は次の世代に向け、ここに徹底的に力を入れるべきだ。

<避けて通れない労働市場改革>

日本経済は人口減少という厳しい逆風にさらされてはいるが、労働や資本の量の伸び以外の全要素生産性(TFP)の伸びが、先進国のなかでも低いのは説明がつかない。社会的な課題を解決するために技術革新(イノベーション)を起こすことが、企業が追い求める成長の意義であり、そうしたイノベーションの結果として、大きな新市場を生み出すという考え方が大事だろう。

次々とイノベーションを生むために日本がもっとも構造を転換しなければならないのは、労働市場の在り方だ。職種間・企業間で円滑な労働移動が進まない限り、これからの環境変化に対応できない。

まず、少子高齢化や長寿化から労働供給の構造が変化する。また、需要面では、AIやロボティックスなどの新技術が人間のタスクを代替していく動きが広がる一方で、技術を活用し新たなビジネスを生み出す人材の需要が高まる。

これらの労働需給の両面を考慮した三菱総合研究所の分析では、労働需給の不足超過幅は2020年代前半まで広がるが、後半は不足幅が縮小し、2030年には解消に向かうとの試算結果が得られる。

しかし、問題は職種別のギャップだ。事務職や生産職における雇用の余剰感が増す一方、専門人材が170万人不足するとの結果が得られる。つまり、日本の労働市場の本質的な課題は、「人材の大ミスマッチ時代」を迎えることにある。

三菱総研では、今後必要となる人材像を明確化するため、「タスクの特性」に着目して人材を二軸上にマッピングし、日本の人材ポートフォリオの姿を描き出すことを試みた。日本では「定型的・手仕事的なタスク」の占める割合が44%と高い一方、「創造的・分析的なタスク」は16%と低い。モノのインターネット(IoT)やAI、ロボットよる業務自動化が進むことを考えれば、より創造性が求められる仕事にシフトしていかなければならない。

その対策として、まず、仕事の内容を細かく規定した「ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)」の明確化が必須となる。そのうえで、質の高い学び直しを奨励し、新たに習得したスキルや知識を企業が評価する処遇制度へと、雇用慣行を見直し、より柔軟な労働市場を実現していく必要があろう。

平成の時代は負の遺産の処理に追われてきた分、これから迎える次の時代では、より持続可能な社会を求め、前向きな挑戦をしていく流れを作る必要がある。

安倍政権の「アベノミクス」で、負の遺産の処理は進み、現在の経済情勢は大幅に改善した。ここからは未来に対して責任ある政策がより重要となる。包括的で持続可能な社会を作るために長期的なビジョンを描き、企業も個人も、意志を持って、次の時代を切り拓いていく。そのような新時代の幕開けとなることを願っている。

武田洋子 三菱総合研究所 チーフエコノミスト (写真は筆者提供)
*武田洋子氏は、三菱総合研究所 政策・経済研究センター長、チーフエコノミスト。1994年日本銀行入行。2009年三菱総合研究所入社。米ジョージタウン大学公共政策大学院修士課程修了。

*本稿は、ロイター特集「平成を振り返る」に掲載されたものです。武田洋子氏の個人的見解に基づいています。

(聞き手:山口香子)
https://jp.reuters.com/article/opinion-yoko-takeda-idJPKCN1OY08E

 

【第11回】 2019年1月7日 鈴木博毅 :ビジネス戦略コンサルタント・MPS Consulting代表

日本人の思考は3つのパターンで乗っ取られる

日本人は相対的に問題に対処することが苦手だ。公害が起きれば、「公害=絶対悪」で、絶滅すべき、工場は全部止めろという破壊的な結論になりがち。これでは現実的な対処はできず、どちらかを叩き潰すまで続き、問題は一向に解決できない。こうした思考は、日本人が「空気」に操作されやすい特徴と大きく関係している。15万部のベストセラー『「超」入門 失敗の本質』の著者・鈴木博毅氏が、40年読み継がれる日本人論の決定版、山本七平氏の『「空気」の研究』をわかりやすく読み解く新刊『「超」入門 空気の研究』から、内容の一部を特別公開する。


「空気による支配」の3つの基本構造
 「私たち日本人は「空気という妖怪」に、どう支配されてしまうのか。山本七平氏は、「空気支配」の3つのパターンを挙げています」

[1]「文化的感情」の臨在感的把握による支配
[2]命題を絶対化する「言語」による支配
[3]「新しい偶像」による支配

 空気支配は基本的に、「臨在感」「感情移入」「絶対化」などの心理的効果を背景にして生まれています。

 空気支配の力は、いずれも人の心から生み出されているのです。心に芽生える恐怖・救済への希望・依存したい心理などを、人間を拘束して操る物理的な力に変えているのが、空気の支配手法(技術)だと言ってもいいでしょう。

 では、空気による支配の3つの基本構造とは何か、順に見ていきましょう。

日本人が人骨に感じる特別な感情とは?
支配構造[1]「文化的感情」の臨在感的把握による支配
 一つ目は、人骨などへの感情移入・臨在感によって起こる原始的な空気支配です。

 日本人とユダヤ人が共同で、毎日のように人骨を運ぶことになった。それが約一週間ほどつづくと、ユダヤ人の方は何でもないが、従事していた日本人二名の方は少しおかしくなり、本当に病人同様の状態になってしまった(*1)。

 遺跡の発掘現場で人骨が大量に出土しました。人骨を運搬する作業を続けると日本人だけが病人のようになり、人骨投棄の作業が終わると、二人ともケロリと治ったのです。

 この二人に必要だったことは、どうやら「おはらい」だったらしい(*2)。

 日本人の二人は、人骨に特別な文化的感情を持っていました。いわゆる穢れという意識、忌避すべき対象、あるいは人骨に魂が宿っているなどの感覚です。

 その上で、「感情移入の絶対化」すなわち、自分たちの心や感情が現実であるという思考が強くなっていけば、「穢れや恐れを人骨に感じる」→「感情が現実であり、自らが穢れや呪いなどにかかる」という状態を招いてしまうのです。

 一方、人骨に日本人のような文化的感情を持たないユダヤ人は何ともありませんでした。この場合は、日本人の伝統と感情の結び付けが、空気の支配を生み出したのです。

(注)
*1 山本七平『「空気」の研究』(文春文庫) P.32
*2 『「空気」の研究』P.32
敵が滅ぶか自分が滅ぶかという破滅的な思考
支配構造[2]命題を絶対化する「言語」による支配
 2番目の、命題を絶対化する言語による支配とは、一体どんなものでしょうか。まず、命題を絶対化することで生まれる空気支配について見ていきましょう。

 対象の相対性を排してこれを絶対化すると、人間は逆にその対象に支配されてしまうので、その対象を解決する自由を失ってしまう、簡単にいえば、公害を絶対化すると公害という問題は解決できなくなるのである(*3)。

「公害=絶対悪」と捉えると、どの辺りで折り合いをつけていいかわからなくなります。公害が絶対悪ならば絶滅すべき、工場は全部止めろ! となってしまうのです。

 命題の絶対化は、敵が滅ぶか自分が滅ぶかという破滅的な思考につながります。

 相対化できると、住民の健康を絶対に害しない状態まで汚染レベルを下げることが一旦の解決策、つまり公害=悪とならない条件として現実的な思考が可能になります。

【命題の絶対化】
AはBである、という前提を絶対化して他の可能性を考えさせない

 現実の世界では、Aは条件次第でBになる場合もあれば、Cになる場合もある。成立の条件を明確化して、「実は検討していない」別の可能性を広く探るのです。

 逆に、人を誘導し拘束したい場合は、命題を絶対化して他の可能性を検討させません。そのために、AはCである場合や、他の可能性を考える者を弾圧して、徹底的に「AはBである」という、誘導のためにつくった勝手な前提だけを絶対視させるのです。

真っ赤なウソのラベルで大衆を騙す
 では、言葉の絶対化で空気をつくり上げるとは、どんな状態でしょうか。

 例えば、法案成立の目的が自動車への「増税」にある場合。中身を反映するなら、法案の名称は「新たな自動車増税法案」でしょう。

 しかし、1970年代に、実際に議論された法案には、大気汚染と関連する「日本版マスキー法」の呼称が付けられました。マスキー法とは、自動車の排出ガスを現状から90%削減するというアメリカの大気浄化法改正法です。当時は大気汚染の科学的な検証が確立しないままに、増税ではなく環境問題に関連した法案として成立したのです(ただし、法案の成立は日本の自動車技術の革新を促すことに大きく寄与しました。山本氏は議論の過程における空気の存在を指摘)。

 ラベルに書いてあるのは文字、単なる名称です。ところが名称を絶対化する、名称を感情的に理解させると、成立条件を考えずに、貼り付けたラベルが「そのまま中身を示している」と考えてしまうのです。

 単なる空き瓶に「劇薬」と大きく書かれた紙を貼り、どくろのマークをイラストとして描けばどうなるか。歩道にそのビンがあれば、人はそれを避けて通るでしょう。場合によっては警察や役所に通報するかもしれません。

 名称(ラベル)やイラストなどの図像は、人間の思考を強力に拘束します。命題や名称による空気の支配を発揮させるのは簡単です。最初に、真っ赤な「ウソのラベル」を貼るのです。AはBである、という命題をつくり、本当はCやDである中身を隠すのです。

 大衆をだますために、中身とまったく違う名称のラベルを最初にビンに貼っておく。これで、大衆は中身がラベルとまったく違うとは、疑わなくなるのです。命題や名称をある種の前提として機能させて空気を生み出す典型的なウソ、詐術です。

(注)
*3 『「空気」の研究』 P.63
日本人は「言葉に隠された前提」に気づけない
 ところで、言葉の絶対化は、なぜ空気に結び付くのでしょうか。最大の理由は、多くの言葉の中に実はすでに「前提」が隠されているからです。

 例えば、「日本版マスキー法」というラベル=言葉には、アメリカの環境改善法をモデルにした法案という前提があります。逆にいえば、この法案が環境問題を意識してつくられたという“意図された前提”が潜んでいるのです。

 先の劇薬というラベルなら、危険であるという一般的な前提があり、さらにはラベルと中身が一致しているという前提も隠されています。

意図的に設計された言葉には、「隠された前提」があり、言葉の成立条件を疑わないことは、相手の醸成したい空気(前提)に誘導され、操られることを意味するのです。言葉による空気の詐術は、言葉に隠された前提を利用して人を騙しているのです。

狂気の「大本営発表」で破綻した旧日本軍
 事実と異なる発表を、現在でも「大本営発表」と表現することがあります。本来は、1937年11月から1945年8月まで行われた、戦況に関する発表を指しています。

 大本営発表のデタラメぶりは、実に想像を絶する。大本営発表によれば、日本軍は太平洋戦争で連合軍の戦艦を四十三隻沈め、空母を八十四隻沈めたという。だが実際のところ連合軍の喪失は、戦艦四隻、空母十一隻にすぎなかった。つまり、戦艦の戦果は十・七五倍に、空母の戦果は約七・六倍に、水増しされたのである(*4)。

 書籍『大本営発表』(辻田真佐憲・著)では、実際にサイパン島での戦闘に参加して重傷を負い、米軍の捕虜になった平櫛少佐の戦後回想の言葉も紹介しています。

『必勝の信念』『大御心を奉じ』『一億一心』『八紘一宇』『聖戦完遂』『断乎撃滅』『向うところ敵なく』『勝利はあと一歩』……何というむなしい言葉の羅列であろう。官僚の作文だけでは戦争はできない。こういう無内容・無感動の言葉を適当に操作していれば、知らぬまに勝利がころげこんでくる、とでも思ったのであろうか(*5)

 発表された言葉や数字は、現実と一致していなければすべて虚構(真っ赤なウソ)ですが、日本人は、「言葉=現実として絶対化する」、言霊信仰のような思考をしがちです。しかし一部の大衆は、戦局の悪化に気付いており、噂は全国に広がっていました。

「今日本は負戦さばかりだそうですね。発表ばかり勝つた様にしてゐるが、本統[ママ]は負けて居るとの事だ」(1942年12月28日、熊本県内の投書)(*6)

「サイパンに出撃した連合艦隊は全滅した」「『ラヂオ』を聞いてどうするか。軍報道部の『ニュース』は嘘ばかりだ」(*7)

 言葉=現実という感覚を持つ日本人は、言葉と現実を突き合わせる習慣が希薄です。

 しかし、言葉と食い違う現実は常にあり、思いや思考と現実も、本来まったく別の存在です。言葉の絶対化、感情移入の絶対化は、大本営発表を異常な魔法に仕立て上げ、現代でも日本人を口先だけで何度も騙すことができる状況をつくり上げているのです。

[1]「文化的感情」の臨在感的把握による支配
[2]命題を絶対化する「言語」による支配

 二つの空気は、人の心の中で結び付けられた、何らかの意味や感情を、拘束力に変換することで、空気として大衆を誘導し、視野を狭める効果を発揮します。

 日本人は、命題や言葉、心の中で結び付けられた意味と現実を同一視する、原始的な感覚を保持したまま、技術革新を成し遂げて近代化に成功した稀有な国です。

 このような国で、言葉と行動がまったく違っても、恬として恥じないウソつきがいれば、社会に大混乱を引き起こし、国家を未曽有の破滅に誘導できてしまうのです。

 山本七平氏が挙げた空気支配の3つ目のパターン、[3]の「新しい偶像」による支配については、次回、解説するようにします。

(注)
*4 辻田真佐憲『大本営発表』(幻冬舎新書) P.4
*5 『大本営発表』P.196〜197
*6 『大本営発表』P.145
*7 『大本営発表』P.194〜195
(この原稿は書籍『「超」入門 空気の研究』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)
https://diamond.jp/articles/-/189044


 

前向きに読み解く経済の裏側

日本経済のリスクシナリオを考える

2019/01/07

塚崎公義 (久留米大学商学部教授)

 今回は景気楽観派を自認する久留米大学商学部教授の塚崎公義が、今年の日本経済を考える上でのリスクシナリオについて考えます。

 今年の日本経済も、メインシナリオとしては順調な拡大を続けると考えて良いでしょう。しかし、昨年1年間で複数のリスクの芽が現れて来ましたので、今年の経済を考えるに際しては、リスクシナリオにも目配りしておく必要がありそうです。そこで今回は、リスクシナリオについて考えてみましょう。


(Delpixart/Gettyimages)
メインシナリオは好調持続
 日本経済は、緩やかながら拡大を続けています。労働力不足が深刻化してきたことに加えて、「この労働力不足はしばらく続く」との認識が広まって来たことなどにより、企業が省力化投資を活発化させ始めました。これは景気を更に拡大させる要因として注目されます。

 消費税増税は、前回(5%→8%)より小幅ですし、様々な対策も講じられるようですから、景気の腰を折ることはないでしょう。欧米の景気を心配する市場関係者は多いようですが、米国も欧州も中央銀行が金融を引き締め方向に動かしていることを考えると、欧米の中央銀行はそれほど景気を心配していない模様です。

 中国の景気は対米輸出の減少などで減速するでしょうが、過度な懸念は不要です。米国が中国からの輸入を他の途上国に振り替えると、その途上国の景気が拡大するので、世界経済全体としての景気悪化は限定的なものとなるからです。

 しかし、リスクシナリオとして、可能性は低いけれども留意しておくべきリスクの芽は複数見られます。代表的なものを挙げておきましょう。

中国経済の極端な悪化が急激に進む可能性
 米国は、中国との覇権を懸けて「冷戦」に突入しています。中国を痛めつけるためなら自分が痛みを負っても構わない、という本格的な対中強硬論が支配的となりつつあります。

 そんな中、中国の大手企業の幹部がカナダで逮捕され、直後に中国で複数のカナダ人が逮捕されました。これが仮に中国政府の報復だとすると、中国在住の他のカナダ人が身の危険を感じて帰国するかもしれません。カナダ企業も撤退するかもしれません。そして、それがカナダ以外の西側諸国全体に広がったとしたら、中国経済は一気に落ち込むことになるでしょう。

 西側企業が中国から撤退した分を他の途上国に移すのであれば、世界経済全体としての落ち込みは限定的でしょうが、動きが急すぎると、代替工場が立ち上がる前に中国の工場が大量に閉鎖されることとなり、世界経済が混乱に陥る可能性もあるわけです。

 また、中国からの資本逃避の動きが一気に加速して人民元相場が暴落し、それを予想した投機筋の人民元売りも重なって中国経済は深刻な事態に陥るかもしれません。

 そうなると、中国国内の政局も一気に混乱しかねません。筆者は中国の政治はわかりませんが、政治家と国営企業の密接な関係があるとすると、政争に敗れた政治家と関係の深い企業は「粛清」されるのかもしれませんね。

 まあ、最悪のシナリオは考えればキリがありませんが、起きる可能性は小さいので、過度な懸念は不要でしょう。

米国の景気が急激に後退する
 米国の景気は、メインシナリオとしては拡大を続けると思いますが、リスクを指摘する市場関係者も多いので、それ自体が景気を後退させてしまうリスクには要注意でしょう。

 債券市場の投資家は、何らかの理由で景気悪化を予想しているようで、長短金利が逆転しそうです。ちなみに、10年物金利と2年物金利の逆転を長短金利の逆転と呼ぶ人が多いので、正確ではありませんが、本稿もそれに従っておきます。

 それを見た株式市場の参加者が景気悪化を予想して株を売り、企業経営者が景気悪化を予想して設備投資を手控えることで、本当に景気が悪化する可能性があるとすれば、それはリスクでしょう。

 さらに深刻な問題となり得るのは、金融機関が景気後退を予想して与信に慎重になる可能性です。最悪の場合は「美人投票的な信用収縮」が発生するかもしれません。

 株の世界での美人投票は「皆が売るだろうから、値下がりするだろう。その前に自分も売ろう」というものですが、こちらは「皆が融資を絞るだろう。倒産が増えるかもしれないから、融資には慎重になろう」と皆が思う、というものです。

 その結果、皆が本当に融資に慎重になり、本当に倒産が増え、皆が一層融資に慎重になる、といったことが起きる可能性があります。

 まあ、最悪のシナリオは考えればキリがありませんが、起きる可能性は小さいので、過度な懸念は不要でしょう。

過度な懸念は不要だが、目配りを
 それ以外にも、英国のEU離脱が何の合意もなく実行されたら、英国とEUの経済に大きな打撃が生じるかもしれません。フランスのデモが拡大して収拾がつかなくなれば、フランス経済が麻痺してしまうかもしれません。欧州と日本の貿易はそれほど活発ではありませんから、影響は限定的だと思いますが。

 中国や欧州では、金融機関の経営が傾いたりして金融危機が発生する可能性もあるでしょう。そうなると、中国や欧州で資金の取引が困難となり、信用の収縮が発生するかもしれません。

 もっとも、基軸通貨である米ドルで信用の収縮が発生したリーマン・ショックとは異なり、仮に信用が収縮しても影響は地域内に限定されるでしょうから、世界経済が大きく落ち込んだリーマン・ショックのようなことにはならないでしょう。

 本当に怖いのは米国での信用収縮で世界中の資金取引が凍りつくことですが、2019年についてはそうした可能性は非常に小さいと筆者は考えています。

 以上のほかにも、リスクシナリオは、いくらでも思いつきます。そうしたリスクシナリオは、想像力を掻き立てますし、話し手が「さまざまな可能性を検討している賢い人」に見えることもあって、好んで口にする経済評論家も多いのですが、あくまでもリスクシナリオですから、そのつもりで接しましょう。

人間はとても小さな可能性は実際よりも大きく感じるもの
 それから、行動経済学によれば、人間はとても小さな可能性は実際よりも大きく感じるものだそうです。飛行機に乗るのが怖い、というのも、その一環ですね。

 それと同じように、リスクシナリオは実現する可能性が非常に小さいにもかかわらず、なんだか実際に起きそうな気がして、シナリオを聞いた途端に不安になって持っている株を狼狽売りしてしまう投資初心者もいるようですが、狼狽売りをする前に、リスクシナリオが実現する可能性がどれくらいあるのか、冷静に考えてみるべきでしょうね。

 ちなみに筆者は、それほど可能性が大きくないと考えていますから、狼狽売りはしないつもりですが、読者におかれましては、投資は自己責任でお願いします。

 なお、今年のメインシナリオが順調な拡大であることについて、詳しくは拙稿「2019年の日本経済が間違いなく好調を持続するワケ」をご参照下さい。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14908


 


http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/469.html

[経世済民130] ウォール街は「まだ勝ち組」、今年も来年も最高益更新へ−メイヨー氏 華為ショック日本企業に大打撃 米国、経済より安全保障 
ウォール街は「まだ勝ち組」、今年も来年も最高益更新へ−メイヨー氏
Lananh Nguyen
2019年1月7日 17:24 JST

税引き前利益率も50年ぶりの高水準となるだろう
リスク圧縮と資本コスト低下が50年強で最も安定した利益もたらす

米KBW銀行株指数は昨年10−12月(第4四半期)に18%下落したが、ウォール街の見通しはまだ明るいと、ウェルズ・ファーゴのアナリスト、マイク・メイヨー氏は考えている。


  大手米銀がコスト削減と質の高いクレジットの効果で、今年も過去最高益を更新すると同氏は予想している。税引き前利益率も50年ぶりの高水準となり、資本コストに対するリターンは10年ぶりの高水準になると見込む。

  メイヨー氏はリポートで、「融資の伸びと資本市場の活動拡大が予想に届かない可能性が利益見通しへのリスクだが、銀行はそれでも2018、19両年共に過去最高益となるだろう」と説明し、大銀行は「まだ勝ち組」だと記した。リスク圧縮と資本コスト低下が「50年余りで最も安定した利益をもたらすだろう」ともコメントした。


マイク・メイヨー氏写真家:Phelan M. Ebenhack /ブルームバーグ
原題:Wall Street Is ‘Still Winning’ as Mayo Keeps Bullish Bank Call(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-07/PKY9TR6TTDS101?srnd=cojp-v2

 

 
ファーウェイ“ショック”、日本企業に大打撃が鮮明…米国、経済より安全保障を優先
文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
【この記事のキーワード】アップル, サムスン電子, ファーウェイ


ファーウェイCFOが保釈、カナダの自宅で滞在へ(写真:Press Association/アフロ)
 昨年12月以降、世界のスマートフォン販売台数が想定以上に減少するとの懸念が高まっている。これは、“スマホショック”あるいは“ITショック”といってもよいかもしれない。米アップルなどのスマートフォン企業だけでなく、半導体、半導体製造関連企業の株価も総崩れだ。市場参加者の懸念はかなり強い。

 その背景にあるのが、米中の貿易戦争が一段と激化するとの懸念だ。特に、カナダが世界第2位のスマートフォン企業である中国ファーウェイの副会長兼CFOを逮捕したことは、市場参加者に大きなショックを与えた。今後の展開によっては、世界のIT企業の業績に無視できない影響が波及する恐れがある。

 それは、わが国の企業業績にとっても無視できないリスク要因と考えるべきだ。この問題を考えるために、半導体製造装置を手がける東京エレクトロンを取り上げてみたい。一昨年末まで、同社の株価はスマートフォン向けのメモリ需要などを取り込んで堅調に推移してきた。一昨年後半、“半導体スーパーサイクル論(長期的に半導体需要が増加するという強気な見方)”への期待から、同社株が2万3000円台まで上昇する局面もあった。一転して足許では、先行きを警戒する投資家が増えている。

世界のIT業界を直撃するスマホショック
 
 昨年12月以降、米国と中国の貿易戦争への懸念が高まっている。特に、中国最大のスマートフォンメーカーであるファーウェイの副社長がカナダ当局に逮捕されたことは大きい。これを受けて、同社のスマホ販売が落ち込むとの懸念が急上昇している。それは世界経済に無視できない影響を与えるだろう。

 副社長逮捕の背景には米国からの要請があったとの見方が多い。米司法省がファーウェイの取引などを調査してきたことを見ても、米国からファーウェイへの監視が強化されてきたことは確かだ。

 これを受けて、世界のIT関連銘柄は総崩れの状況にある。これを“ファーウェイショック”と呼ぶこともできるが、世界経済に与えるマグニチュードを考えると“スマホショック”と呼ぶのがよいだろう。

 そう考える理由は、スマートフォンがリーマンショック後の世界経済の成長を支えたからだ。そのなか、ファーウェイはシェアを伸ばし、世界第2位のスマートフォン企業にまで成長してきた。特許件数などを見ても、同社は世界有数のIT先端企業だ。


次のページ 今後、米国政府はファーウェイに制裁をかける可能性


 今後、米国政府はファーウェイに制裁をかける可能性がある。そうなると、ファーウェイのスマートフォン売上は減少するだろう。さらに、米国が安全保障を理由に中国製品に追加的な制裁関税をかける展開も考えられる。そうなると、世界的にシェアが高まってきた中国製のスマートフォンの販売は大きく落ち込むだろう。
 また、関税が引き上げられた分、中国で製造が行われているアップルのiPhoneなどの販売価格が上昇する可能性がある。その結果、世界的にiPhone需要が一段と低下する展開は避けられないだろう。

 つまり、米中の貿易戦争が激化するに伴い、世界的にスマートフォンの販売は減少する可能性がある。それは、スマートフォンの部品、生産設備などの需要を取り込んで業績を拡大させてきたわが国企業にとって無視できないリスクだ。

スマートフォン需要と東京エレクトロン
 
 その代表例が、東京エレクトロンだ。同社は世界第3位の半導体製造装置企業である。売上の90%超を半導体製造装置が占め、売上の87%が海外向けだ(2018年3月期)。スマートフォンの存在を抜きにして同社の経営を考えることはできない。

 2016年ごろから、世界のスマートフォン市場では中国企業のシェアが高まった。ファーウェイ、シャオミ、オッポ、ヴィーヴォなどの中国企業が低価格帯のスマホを投入し、サムスンやアップルからシェアを奪ったのである。当たり前だが、スマートフォンには画像処理やデータ保存など、数多くの半導体が搭載されている。

 それに加え、中国政府はIT先端技術振興策である「中国製造2025(2025年に中国製造業を世界トップにする政策)」を進めてきた。その目的は、ビッグデータ分析を基にした需要創造や工場の自動化、治安管理などである。産業高度化のために中国は自国内での半導体製造能力の増強を目指して東京エレクトロンの半導体製造装置を買い求めた。

 それに加え、韓国のサムスン電子も半導体需要の増加を見込んで生産能力を引き上げた。2017年、サムスン電子は260億ドル程度の設備投資を行った。これは前年実績の2.3倍だ。この結果、昨年度末の時点で東京エレクトロンの半導体製造装置事業の売上高の38%程度を韓国が占めた。


次のページ ファーウェイの副会長逮捕を受けてスマートフォン販売の減少を警戒し、設備投資を先送りする企業が増える?


 しかし、2018年後半以降、スマートフォンの販売鈍化や米中貿易戦争の激化懸念を受けて、設備投資を先送りする中国企業が増えた。それに伴い、米ウエスタンデジタルは東芝メモリと共同運営する四日市工場への半導体製造装置の導入を一部延期すると発表した。サムスンが設備投資計画の実行を延期する可能性も高まっている。これは、東京エレクトロンが手がける半導体製造装置の需要が低下し始めたことにほかならない。
IoTへの懸念を映す東京エレクトロン株価

 このように考えると、ファーウェイの副会長逮捕を受けてスマートフォン販売の減少を警戒し、設備投資を先送りする企業が増えることは想像に難くない。この展開が鮮明化するにつれ、中国などでのIoT(モノのインターネット化)投資にもブレーキがかかる恐れがある。東京エレクトロンの株価動向は、そうした市場参加者の考えを見定める重要なメルクマールと考えられる。

 スマートフォンには、IoTのインターフェイスとしての機能がある。リコモンでテレビを操作するように、スマートフォンは工場の自動化を制御したり、必要なデータの分析を行うデバイスとして使われていくだろう。そう考えると、さらに高機能の半導体を搭載したスマートフォンが必要とされてもよいはずだ。

 情報セキュリティーへの懸念はあるものの、ファーウェイやシャオミなどがスマートフォン市場でのシェアを獲得してきたことには、はっきりとした理由がある。価格帯の高いiPhoneなどのモデルを使わずとも、価格帯の低いファーウェイなどのデバイスを用いることで十分な性能を享受することができるからだ。中国スマートフォン企業の経営先行きへの不安が高まることは、中国をはじめ世界各国におけるIoTへの取り組みの先行き見通しを悪化させると考えてよい。

 米国がIT分野での中国の台頭を食い止めるには、競争原理を発揮して企業がより良い製品を生み出すことを目指す環境を整備すべきだ。そうした動きがあれば、東京エレクトロンの経営を考える上でも新しい展開が見込めるだろう。

 しかし、米国は、経済の安定や成長ではなく、安全保障を理由に中国の覇権封じ込めに力を入れ始めた。ファーウェイ副会長の逮捕にもその考えが影響した可能性がある。この展開を受けて、多くの市場参加者が先行きを見通しづらくなり、混乱に陥っていると考えられる。秋口以降、東京エレクトロンの株価には、安値圏での物色の気配もうかがわれた。しかし、12月以降、同社株は大きく下落している。スマートフォン販売などに関する先行き懸念は上昇していると考えられる。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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[政治・選挙・NHK255] 首相、賃上げ要請「やんわり」のワケ 増税と選挙控え にじむ深謀遠慮 下振れに傾斜する日米欧 日銀は現状維持で耐えきれるか
nikkeibp ニュースを斬る

首相、賃上げ要請「やんわり」のワケ

増税と選挙控え にじむ深謀遠慮

2019年1月7日(月)
山田 宏逸

 経済3団体主催の新年祝賀会が7日、都内のホテルで開かれた。安倍晋三首相は経団連の中西宏明会長らを前に、春季労使交渉での賃上げを要請した。ただ例年になく柔らかな印象を受けるのは、亥年の2019年に重大な政治日程を控えていることと無関係ではないだろう。


経済3団体の新年祝賀会であいさつする安倍晋三首相(写真:時事通信)
 政界では今年、統一地方選と参院選が重なる。12年前、24年前はともに自民党は苦戦を強いられ、結果として総裁はその座を追われている。また10月には消費税10%への引き上げを控えるが、安倍首相はこれまでに2度延期した。

 
 首相は7日のあいさつで、消費増税が控えていることを念頭に「経済の足腰を強化していくことが求められる」と指摘。経済界に対しては「これまで5年連続で賃上げが続いた。今年も恐らく上がっていくのだろう」と述べた。今後本格化する春季交渉での賃上げを求めたが、これまでのように具体的な数字の例示をはじめ、踏み込んだり、強い口調で求めたりする姿は最後までなかった。

 
 こうした姿勢は政治日程と深く絡んでいる。無論、中西経団連との関係は良好で「さほど言わなくても賃上げしてくれるだろう」という思いはある。むしろ見据えるのはその先の政治日程で、統一選や参院選での経済界の協力は欠かせず、官製春闘の色を出しすぎて無用な反発を招きたくない事情が透ける。

 また地方の中小企業には、人手確保につなげようと「無理に賃上げをしている所も少なくない」(日本商工会議所)とされ、こちらも介入しすぎて反発や自民離反を招く事態を避ける狙いがあると言える。

 もっとも、賃上げ動向自体にも黄信号がちらつく。18年末からの不安定な株価や為替相場、不透明な世界情勢が経営者心理に水を差す懸念は増す。経団連は交渉の指針となる経労委報告を1月下旬にまとめるが、従業員の給与を一律に底上げするベースアップ(ベア)はあくまで経営側の「選択肢の1つ」と位置付ける方向だ。


このコラムについて
ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/010700922


 

「下振れ」に傾斜する日米欧のリスクバランス
上野泰也のエコノミック・ソナー
日銀はこのまま現状維持で耐えきれるのか?

2019年1月8日(火)
上野 泰也


市場の「緩和策修正願望」は実現するのか?(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
 昨年12月13日に開催されたECB(欧州中央銀行)理事会は、市場のコンセンサス通り、年内で量的緩和を終え、年明けから再投資政策によりバランスシート規模を維持していくことを決定。政策金利のフォワードガイダンス(将来の金融政策運営に関するコミットメント)は「少なくとも19年夏まで据え置き」が維持された。

 そうした中で1つ注目されたのは、ユーロ圏の景気減速がかなり明確になっており、物価の上昇力も弱い中で、ECBがリスクバランスをどうするかという点だった。結果は、景気・物価見通しの数字は一部下方修正しつつも、リスクバランスは「おおむね均衡している」のまま据え置き。ただし、ドラギ総裁が声明文でいくつかの要因を挙げつつ「リスクバランスはダウンサイドに向かって動いている」と表明するという、妥協色の強いものだった。

 理事会終了後、そこで行われた議論の内容をロイター通信が報じた。経済見通しに対するリスクが「下振れ方向に傾いている」といった一段踏み込んだ見方を示すよう、一部の理事会メンバーが求めたという。だが、緩和策実施の用意があることを示すためにECBがこの表現を過去に使ったことがあるため、市場で緩和期待が浮上してしまうという反対意見が出された。一方で、成長鈍化は認める必要があり、メッセージを変えなければECBの信頼性に疑念を生じさせることになると指摘する向きもあったという。

 ユーロ圏の景気減速が今後さらにきつくなる、あるいは物価上昇の鈍さが一段と明確になる場合、ECBはリスクバランスの表現の下方修正に追い込まれるだろう。そうした場合、利上げ開始時期の織り込みが大きく後ずれすることは避けられないだろう。

 ここで、FRB(米連邦準備理事会)、ECBおよび日銀が、景気・物価見通しに対するリスクのバランスをそれぞれどのようにみているかを比べてみたい。

FRB
「経済見通しに対するリスクはおおむねバランスしている(roughly balanced)とFOMCは判断している。しかし、グローバルな経済・金融の展開を引き続き注視し、経済見通しに対する意味合いを評価するつもりだ」(12月19日 FOMC(連邦公開市場委員会)終了後の声明文)
ECB
「ユーロ圏の成長見通しを取り巻くリスクは依然、おおむねバランスしていると評価できる。だが、地政学的要因・保護主義の脅威・新興市場の脆弱性・金融市場のボラティリティーに関連している根強い不透明感によって、リスクバランスはダウンサイドに向かって動いている」(12月13日 理事会終了後のドラギ総裁声明文)
日銀
「次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に下振れリスクの方が大きい」(10月31日 「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」)
先行きの利下げを織り込みに行くか
 昨年12月18、19日に開催されたFOMCでは、大方の予想通り0.25%ポイント幅の追加利上げが決まった(表決は全員一致)。FF(フェデラルファンド)レートの新たな誘導水準は2.25〜2.5%。なお、準備預金への付利金利の引き上げ幅は、FFレートを誘導レンジ内に収めようとするテクニカルな観点から0.20%ポイントにとどめられ、2.40%になった。

 声明文の第1段落にある経済状況認識は11月時点からほとんど変わらなかった。

 一方、FRB理事・地区連銀総裁による最新の経済見通しでは、実質GDPが18・19年について下方修正となり、PCE(個人消費支出)デフレーターは全般に小幅下方修正された。

 声明文の第2段落では、@前回11月の声明文に含まれていたFFレート誘導レンジの「さらなる緩やかな引き上げ(further gradual increases)」がどう変わるか、A11月に「おおむねバランスしているようだ(appear roughly balanced)」となっていた経済見通しに対するリスクバランスがどうなるか、の2点に筆者は注目した。

 結果は、@がFFレート誘導レンジの「いくらかのさらなる緩やかな引き上げ(some further gradual increases)」に変わり、利上げが終盤であることを示唆。

カギを握るのは円高・ドル安進行の有無
 Aは、FOMCは経済見通しに対するリスクが「おおむねバランスしている(roughly balanced)と判断している」と書き換えつつ、「FOMCはグローバルな経済・金融の展開を引き続き注視し、経済見通しに対する意味合いを評価するつもりだ」と記述。下振れ方向への警戒をにおわせた。

 このように、米国の場合「おおむねバランスしている」というリスクに関する表現の基本線は一応維持されたわけだ。だが、金利上昇や株価大幅安による心理面も含めた悪影響、トランプ減税の効果はく落などから、リスクバランスが「下方に傾いている」へと変更される場合には、利上げの休止ではなく利上げ局面の明確な終了、さらには先行きの利下げの開始を、市場が織り込みにいく可能性が高い。

 大きな流れはそちらの方に向かっていると筆者はみている。「マネー」と「実体経済」の両面で、米国を中心とする世界経済は、大きな転換点を越えつつある。

 では、日銀の場合はどうだろうか。

 物価はともかく、経済(景気)についても「下振れリスクの方が大きい」と早々と警戒感を表明してしまっており、これはなかなか巧妙な立ち回り方である。ECBやFRBのように、リスクバランスの変更が政策変更の前触れではないかと、市場から詮索されることがない。

 日銀は、物価目標である2%が遠いために金融緩和が長期化せざるを得ないことを18年7月の金融政策決定会合で認めた上で、そのことによる弊害・副作用の大きさを前面に出すことによって追加緩和を求める声をかわし、効果と副作用を慎重に見極めながら現在の緩和を粘り強く続けていくのが一番望ましい、という論理構成をとっている。

 だが、この手法でいつまで持ちこたえられるだろうか。カギを握るのは円高・ドル安進行の有無である。

 市場ではほとんど話題にならなかったが、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が12月17日に掲載した社説は興味深い内容だった。「物価上昇率は頑固なまでに低いままだが、実体経済は健全な」日本の状況に関し、この海外有力紙はどのような政策対応をすべきだと提言したのか。答えは日銀による金融緩和継続さらには緩和強化である。

金融緩和強化と消費増税放棄を提言したFT
 この社説は、異次元緩和に乗り出した日銀は成功したのか失敗したのかという問いへの答えは「両方」だと整理。失業率が低下したことは成功を示しているが、物価が目標である2%を大幅に下回ったままである点は失敗であり、「金融引き締めはまだ正当化されない」「追加の政策の選択肢が考慮される必要がある」と主張。物価の上がり方が弱い原因として、@金融緩和が景気過熱につながっていないこと、Aドル/円相場が15年以降は円高・ドル安に動いたこと、Bインフレ期待が0%に近い水準に貼りついていること、以上3点を指摘した。

 この社説によると、たとえさまざまな障害があっても日銀は資産買い入れと金利コントロールの組み合わせを続けていなければならず、短期金利をマイナス領域でさらに引き下げなければならないかもしれないという(マイナス金利深掘りの提唱)。

 政府の財政政策の協力も必要であり、今年10月実施予定の消費税率引き上げは物価目標が達成されるまで放棄される必要があると、この社説は主張した。増税の対象としては、個人消費よりも企業の余剰資金の方がはるかに望ましいという。その上で、デフレではないがインフレが起こっていない状況を打破する手段として、「ヘリコプターマネー」を明示的に行うことが要求されることもあり得るとした。

 上記の主張は日本のリフレ派のそれと非常に似通っており、海外投資家の間で共有されている考え方かどうかは疑問である。だが、金融政策の正常化を一度決めたスケジュール通りに急ぎがちなECBに対し柔軟な政策運営を促すなど、FTの社説は市場の動き方(最初の利上げのタイミングの織り込み先送り)と連動することもある。

「正常化願望」実現の可能性は大幅低下
 筆者以外の日銀ウオッチャーの多くは、7月末に決めた緩和策修正のいわば続きとして、日銀が金融政策のさらなる正常化に動くのではないか、あるいは動くはずだという一種の固定観念に沿って予想を提示してきたのではないかという印象がある。

 そうした「正常化願望」、なんとか金利を引き上げておいて今のうちに「のりしろ」をつくっておきたいという考えは日銀内にもあるのだろうし、市場参加者の側では金利水準が上がってくれないと困る向きが少なからずいる。

 だが、そうした願望が現実に結び付く可能性は、海外経済・マーケット状況の悪い方向への大きな変化によって、明らかに大幅低下した。

 日銀の追加緩和観測(あるいは政治サイドからの追加緩和要請)が出てこないで済んでいるのは、ドル/円相場が足元でなお居心地の良いレンジ内にあり、一種の「つっかい棒」の役割を果たしているからである。

 したがって、この「つっかい棒」が今後、米国の利上げ局面終了説の広がり、さらにはその先にある米国の利下げ観測の浮上によって外れてしまう場合、日銀の「次の一手」を金利引き上げなど政策正常化の方向で予想することは、きわめて難しくなるだろう。

 日銀はETF(株価指数連動型上場投資信託)買い入れの柔軟化(暦の区切りを気にせずに集中的な日本株の買い入れが可能になった)というカードを7月末に手にしており、すでにこれをフル活用している。だが、これは株価対策にはなっても、為替の円高対策にはならない。ほかの手を考えていく必要がある。今年はこの問題が市場の関心を集めるだろう。


このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/122700173/
http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/836.html

[国際25] 「反日」だけが頼みの綱に、韓国・文在寅政権 トランプだけではない:ポピュリズムのもたらす独裁政治が世界に蔓延  
「反日」だけが頼みの綱に、韓国・文在寅政権
トランプだけではない:ポピュリズムのもたらす独裁政治が世界に蔓延
2019.1.7(月) 高濱 賛
金正恩氏の年内訪韓、文大統領が可能性に言及
ニュージーランド・オークランドで同国のジャシンダ・アーダーン首相(フレーム外)と共同記者会見する韓国の文在寅大統領(2018年12月4日撮影)。(c)Diego Opatowsk / AFP〔AFPBB News〕

「民主主義は大衆が選んだ指導者によって死ぬ」
 米国のバラク・オバマ前大統領が2018年の1年間に読んだ本として挙げている29冊の中に『How Democracies Die』(民主主義はいかにして死すか)がある。

 ハーバード大学のスティーブン・レビツキーとダニエル・ジブラット両教授が著した本で、2019年1月にはペーパーバック版も出た。

 著者たちはズバリこう言い切っている。

 「民主主義は将軍たちの手によって死ぬのではなく、大衆が選んだ指導者たちの手によって死ぬ」

How Democracies Die by Steven Levitsky and Daniel Ziblatt Crown. 2018
 大衆によって選ばれた指導者は権威的な独裁者になり得る。その要因は4つある。

 1つ目は、独裁者は民主的な制度・法令・慣例を拒絶し、却下する。

 2つ目は、独裁者は政敵、反対者の合法性を否定する。

 3つ目は、独裁者は特定の暴力を大目に見たり、けしかけたりする。

 4つ目は、市民的自由(思想・言論・集会の自由)を削ごうとする。

 著者たちは現代社会の政治にこの4つのカテゴリーを当てはめてこう指摘する。

権威主義的指導者4カテゴリーをすべて備える大統領
 「リチャード・ニクソン(第37代大統領)を除けば、この4つの要因のうち1つとして実行した米歴代大統領はいない。ところがドナルド・トランプ(第45代大統領)はこの4つのすべてに当てはまる」

 つまりトランプ大統領についてはこういうことが言えるというのだ。

 トランプ大統領は、オバマ第44代大統領が決定し、議会が承認したオバマケア(医療保険制度改革)をはじめ移民政策、地球温暖化防止のためのパリ協定、環太平洋連携協定などの外交的約束を次々と一方的に破棄。

 いまだに「政敵」ヒラリー・クリントン元国務長官を訴追しようと必死になっている。

 さらにはネオナチスの反社会的行動を黙認するだけでなく、その支持者を周辺に起用してきた。

 市民的自由が脅かされているのを見てないふりをしている。

 著者たちは、こうした「トランプ政治」の兆候は、実はオバマ第2期政権後半にすでに表れていたと見ている。

 「保守派のアントニン・スカリア最高裁判事が急逝した2016年、オバマ大統領はその後継に中道リベラル派のメリック・ガーランド・コロンビア特別区連邦控訴裁判事を指名した」

 「これに対して上院共和党は米政治史上これまでになかったような行動に出た。ガーランド氏の指名承認するための審議どころか聴聞会すら拒否したのだ」

 「米民主主義を守るのは立法、司法、行政だ。その1つ、立法が行政が指名した司法に仕える最高裁判事候補を承認するか否かの重要な役割を放棄したのだ」

 「この時、民主主義の根幹がすでに腐り始めていたのだ。これは当今の民主主義に対する恐るべき脅威だった」

民主主義の基盤は「相互的寛容」と「制度上の自制」
 本書の著者たちはさらに続ける。

 「民主主義の基盤を補強するのは、2つのノーム(規範)、つまり暗黙のルール、しきたりだ」

 「1つは、自分の意見に反対する者に対する配慮だ。『相互的寛容さ』(Mutual toleration)だ。もう一つは『制度上の自制』(Institutional forbearance)だ」

 つまりこういうことだ。

 「短期的にはあなたにとっては不都合かもしれないが、長期的には良いかもしれない。逆の私にとって短期的には好都合だが、長い目でみれば良くないかもしれない」

 「なぜなら私は未来永劫政権の座にあるわけではない。あなたが取って代わる時が来る。それが民主主義だ。我々の政策論議に必要なのは寛容さと自制だ」

 著者たちによると、こうした共和党の「規範破り」はトランプ政権誕生で一気に加速したという」

 「トランプ氏の選挙公約に盛り込まれた箇所の多くは自らの個人的な恨みを晴らす言葉で散らばられていた」

 「トランプ氏は衝動的な感情を自らコントロールできない。自らの言動をコントロールできなければ、民主主義を継続的に遂行する当事者にはなり得ない」

 「トランプ氏が米民主主義の死を招いているとまで言わない。だが、トランプ氏は米民主主義を死に至らしめる過程を加速させていることだけは間違いない」

 「彼は『3軍最高司令官』(Commander-in-chief)であると同時に『政治規範ぶち壊し屋』(Norm-shredderd-in-chief)でもある。今、米国の政治は、『ガードレールなき民主主義』なのだ」

プーチン、エルドアン、アドゥロ、モディも同列
 著者たちは、世界にも目を向ける。

 民主主義国家を自負する国の中にトランプ氏と同じような権威主義的な指導者はいないだろうか。民主主義の危機を迎えているのは国はあるのか。

 著者たちによれば、「民主主義国家」という旗を掲げながら、自らの政治に反対する野党や反対勢力を「不穏分子」として投獄したり、自らの政策を批判するメディアや言論人を弾圧したり、共同謀議、国家転覆だとレッテルを張り、沈黙させている指導者は世界にうじゃうじゃいるというのだ。

(むろん、共産主義独裁の中国や北朝鮮などは論外である)

 著者たちが指摘する「民主主義国家と称する国家」を牛耳っている権威主義的指導者は以下の通りだ。

 ロシアのウラジミール・プーチン大統領。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、ハンガリーのオルバン・ビクトル首相、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領、インドのナレンドラ・モディ首相・・・・。

 これら指導者を選んだのは有権者である大衆だ。

 その多くは自分たちに苦しい生活を強いている張本人は「保守反動」だと確信していた。そして選挙では「革新」に票を投じた。

 ところが政権を取った「革新」こそが今、大衆を苦しめている。「言論の自由」を奪い、弾圧している。政府批判をする反対勢力を投獄している。

 中には反政府分子を殺害するよう「指示」したとされる指導者すらいる。共産党一党独裁の中国や北朝鮮ならいざ知らず、一応「民主主義国家」を標榜している国々だ。

勉強会で「権威主義的指導者」と名指しされた文在寅
 筆者が定期的に参加している学者・ジャーナリストの少人数の勉強会がある。その席上、本書が取り上げられた。

 出席者の1人は、民主主義国家と自称し、米国の重要な同盟国であるサウジアラビアを取り上げた。

 昨年10月、サウジアラビア政府を批判していたジャマル・カショギ記者が殺害された背景には、サウジアラビアの最高権力者、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子がいるのではないか、との情報がもっぱらだ。

 「サルマン皇太子もプーチン氏やエルドアン氏と同じ穴のムジナだ」というわけだ。

 もう1人、東アジア問題に精通する米主要シンクタンクの研究員は「韓国の文在寅大統領はどうだろう」と言い出した。

 「『民主主義の敵』は必ずしも保守反動ばかりではない。左翼、極左反動も独裁化すれば『民主主義の敵』になり得る。プーチンはその典型だ」

 「韓国の文在寅(大統領)も左翼集団を基盤にのし上がった政治家だ」

 「確かに前任者の朴槿恵(前大統領)は個人的な不正や不正腐敗などで追放され、投獄された。だがそれによって朴槿恵の成し遂げた政治をすべて否定する権限などないはずだ」

 「それは、トランプ大統領がオバマ前大統領のやってきたことをすべて破棄すると似ているではないのか」

 「その錦の御旗は『民族』『自主』『正義』そして『反日』。韓国人は何人でも『反日』を無条件に受け入れなければ生きていけないような土壌が出来上がってしまった」

 「そのあおりを受けて、日本との慰安婦問題では『最終的かつ不可逆的に解決した』日韓合意といった外交上の約束事まで破棄した」

 「それを司法は支持するかような判決を次々と出している。韓国の司法は、今や文在寅と同じ思想を持つ同じ世代の『革新』分子に牛耳られている」

 「本書の著者たちが挙げている権威主義的指導者の条件を満たす4つのカテゴリーうち、1と2は適用されるんじゃないか」

「自分たちだけが世界のすべてと考える」
韓国のネオ『衛正斥邪派』
 筆者はたまたま読んでいた著名な韓国人ジャーナリストの記事を紹介した。韓国有力紙「朝鮮日報」の元主筆、柳根一氏のコラムだ。

 「今(韓国は)混沌の局面だ。庶民生活が無茶苦茶になっている。『進歩』を掲げる政府でありながら、その政策は貧富の格差を一層ひどくした」

 「混沌をまざまざと示すのは20代男性の最近の動向だ」

 「当初は文在寅大統領を支える大きな支持層だった。その後わずか半年で年齢層の中で文大統領を最も支持しない層に変わった」

 「実は20代だけでなく、多くの国民が自分たちの生活を以前よりも苦しくした張本人は『保守』だと確信し、『進歩』に投票した。ところがどっこい、実際にその『進歩』が彼らを苦しめているのだ」

 「彼らが『進歩』と考えていた当事者たちは実は『進歩』でなく、歴史の反動であり、守旧の愚か者だったのだ」

 「(今、文在寅政権で要職に就いている)かっての学生運動家たちは近代文明における左派ではなく、前近代の朝鮮王朝時代における『衛正斥邪派』*1のようなものだったのだ」

*1=元来は正学(朱子学)を守り、邪学(仏教や天主教など)を排斥する学派だったが、欧米列強の侵略に直面し、欧米諸国を夷狄視して排斥する学派に転じた。朝鮮王朝末期の政治思想及びその学派。

 「左派は自由民主主義を否定し、産業化に反対し、ビジネス文明に無知。彼らはかっての中華帝国とその子分として自分だけが世界のすべてのように考えた朝鮮王朝時代の発想に基づいて行動している」

 「今(韓国で行われている)戦いは大韓民国と朝鮮(北朝鮮+南朝鮮)王朝との間で起こっている」

渡邉恒雄氏の「反ポピュリズム論」
とも相通ずる「民主主義の死」
 勉強会に出席した米主要紙のコラムニストはこうコメントした。

 「『保守反動独裁に対する抵抗』を掲げる自称『民主闘士』たちが政権を握ると、今度は自分たちに反対する者たちを査察し、裁判にかける。投獄する」

 「どこの中堅民主主義国家にも見られる現象だ。文在寅(大統領)が南北朝鮮和解だ、統一だ、と大騒ぎするのは、国内的に政権持続が怪しくなってきたからだろう。『反日』は文在寅政権にとっては命綱のようなものなんだろう」

 かって読売新聞主筆の渡邉恒雄氏は著書『反ポピュリズム論』の中で「大衆迎合は国を滅ぼす」と指摘している。

 まさに本書の著者たちが指摘した「民主主義は大衆が選んだ指導者の手で死ぬ」という論点にも相通ずるものがある。

 著者たちが指摘した「民主主義の死」。それはただトランプ政治にだけに当てはまるものではない。

 また右とか左、保守とか革新とは別次元のものだろう。

(ややもすれば、「進歩」だとか「革新」と言うと、何となく反民主主義独裁とは無関係と思いがちだが、反民主主義と政治哲学は無関係だ)

 「民主主義は大衆に選ばれた指導者によって死ぬ」――。

 噛みしめたい主張だ。韓国の知識人の意見も聞きたいところだ。

 本当に今、韓国では「大韓民国と朝鮮王朝の戦い」が起こっているのか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55130
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/145.html

[国際25] 韓国はレミングの群れだ もう、止められない「北朝鮮との心中」 早読み 深読み 朝鮮半島
早読み 深読み 朝鮮半島


韓国はレミングの群れだ

もう、止められない「北朝鮮との心中」


2019年1月8日(火)
鈴置 高史


1961年の「5・16軍事革命」は朴槿恵前大統領の父・朴正煕少将(前列中央)らが主導した(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
(前回から読む)

 韓国が奈落の底に堕ちて行く。

「クーデター前夜」を思い出す
鈴置:ソウルでこの記事を読んでくれている韓国の識者Aさんから、2018年末にメールを貰いました。文章を整えて引用します。

この国は激動の真っただ中です。朴槿恵(パク・クネ)女史は1年9カ月間牢屋に繋がれていますが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領も遠からずして、その後を追うかもしれません。
ソウル都心は連日、文大統領退陣を叫ぶデモで交通はマヒ寸前です。保守団体は文在寅を金正恩(キム・ジョンウン)の手先と糾弾し、朴槿恵の弾劾無効と復権を叫んでいます。
文在寅支持だった民主労組など左派団体まで経済失政をとりあげ反政府の示威行動に走っています。
金正恩のソウル訪問を歓迎する集会を開く親北団体があり、これに負けじと保守団体も親米パフォーマンスをくり広げる。ソウルはデモ満開です。
というのに警察は違法なデモを規制せず傍観しています。デモ鎮圧の責任を追及されるのが怖いのです。
今の状況は約60年前の1960年、李承晩(イ・スンマン)政権が学生デモで倒れ、民主党政権が出現した時に酷似しています。
デモで政権が転がり込んだ民主党政権は、失政の連続と南北和解を唱える左派の蠢動で混乱に陥りました。結局は朴正熙(パク・チョンヒ)少将が軍事クーデターを起こし、韓国は開発独裁政権に移行しました。
現在の状況は当時にそっくりに思えてなりません。しかしクーデターを起せるほどの主体はいまのところ見当たらないのです。
保守は分裂、左派も利権争いで内輪揉め、軍は骨抜きにされ、マスコミも国民から信用されていません。
いろいろ書きたいことがありますが、物言えば唇寒し――。これ以上はやめます。新年の韓国は韓流ドラマよりもっと劇的に展開するでしょう。
●韓国歴代大統領の末路
@李承晩(1948年7月―1960年4月) 不正選挙を批判され下野、ハワイに亡命。退陣要求のデモには警察が発砲、全国で183人死亡
A尹潽善(1960年8月―1962年3月) 軍部のクーデターによる政権掌握に抗議して下野。議院内閣制の大統領で実権はなかった
B朴正煕(1963年12月―1979年10月) 腹心のKCIA部長により暗殺。1974年には在日韓国人に短銃で撃たれ、夫人の陸英修氏が殺される
C崔圭夏(1979年12月―1980年8月) 朴大統領暗殺に伴い、首相から大統領権限代行を経て大統領に。軍の実権掌握で辞任
D全斗煥(1980年9月―1988年2月) 退任後に親戚の不正を追及され隠遁生活。遡及立法で光州事件の責任など問われ死刑判決(後に恩赦)
E盧泰愚(1988年2月―1993年2月) 退任後、全斗煥氏とともに遡及立法により光州事件の責任など問われ、懲役刑判決(後に恩赦)
F金泳三(1993年2月―1998年2月) 1997年に次男が逮捕、懲役2年判決。罪状は通貨危機を呼んだ韓宝グループへの不正融資関与
G金大中(1998年2月―2003年2月) 任期末期に3人の子息全員が斡旋収賄で逮捕
H盧武鉉(2003年2月―2008年2月) 退任後、実兄が収賄罪で逮捕。自身も2009年4月に収賄容疑で検察から聴取。同年5月に自殺
I李明博(2008年2月―2013年2月) 2018年3月に収賄、背任、職権乱用で逮捕。1審で懲役15年、罰金130億ウォンの判決。韓日議員連盟会長も務めた実兄も斡旋収賄などで逮捕、懲役2年
J朴槿恵(2013年2月―2017年3月) 2017年3月10日、弾劾裁判で罷免宣告。収賄、職権乱用などで逮捕、1審で懲役24年、罰金180億ウォンの判決
外交官・裁判官が受難
ソウルは騒然としているのですね。

鈴置: 韓国は革命状態にあります。2016年11月に始まった「ろうそく集会」が功を奏し翌2017年3月、朴槿恵大統領は弾劾・罷免されました。左派は「ろうそく革命」ムードに乗って、同年5月の大統領選挙で勝利。

 政権を握った左派は「積幣清算」の呼号の下、米国や日本を専門とする外交官を左遷、退職させました。気にいらない裁判官らも起訴しました。

 一方、公社のトップには学生運動のリーダーを務めた仲間を続々と任命。左派はわが世の春を謳歌するかと思われました。

 しかし左派の中で、文在寅政権の中枢を占める親北派と、労働運動に根を張る非北朝鮮派の戦いが勃発したのです。

 後者は「ろうそく革命」の功は街頭に繰り出した自分たちにあると主張、労働者のさらなる権利拡大を要求しています。

 しかし、最低賃金の大幅な引き上げにより解雇が多発するなど、左派的な経済政策は大失敗。政権は労働側の要求をおいそれとはのめません。

四分五裂の南をかき回す北
保守にとってはチャンスですね。

鈴置:そう見えます。が、保守は保守で朴槿恵派と反・朴槿恵派に分かれて抗争中です。韓国では「左派政権が朴槿恵を釈放するかもしれない。朴槿恵を担ぐ人々に勢いが付き、保守の内部抗争がますます激化するからだ」と語る人もいます。

 国が四分五裂する中で違法デモが日常化し、秩序が急速に破壊された。そこに北朝鮮が手を突っ込み、親北派を使って米国大使館前での反米デモや、金正恩委員長歓迎集会を開かせる。韓国は自らを制御できなくなっています。

メディアは警告を発しないのですか?

鈴置:保守メディアは時々、秩序の崩壊を嘆く記事を載せます。しかし左派の人々にとって今は「世直し中」なのです。彼らにとって保守メディアの警告など、守旧派の「反革命行為」に過ぎません。

 一部の保守も保守メディアには冷ややかです。現在の混乱の原点たる朴槿恵弾劾には保守メディアも加わったからです。

 保守系紙の代表的な存在である朝鮮日報が文在寅政権を批判すると、読者のコメント欄はたちどころに「朝鮮日報は『ろうそく集会に行こう』と書いたではないか。まず、この政権を作ったお前から反省せよ」との非難で埋まります。

 一方、左派系紙のハンギョレの書き込み欄は「北朝鮮の使い走りの文在寅を称賛する売国奴新聞」といった罵倒で満ち溢れます。韓国ではメディアは合意を作るのではなく、対立に火を注ぐ装置なのです。

 左派系紙は左派政権の、保守系紙は保守政権の失政を批判しない。すると左派と保守の人々が持つ現実認識には極めて大きな隔たりができる。両者の間では「事実」に基づいた議論もできないわけです。

韓国軍を疑う韓国記者
「対立に火を注ぐ装置」ですか……。

鈴置:自衛隊哨戒機へのレーダー照射事件でも、それが露わになりました。韓国国防部に詰める記者たちは、自分の国の発表に疑問を持っています。

 「日誌・レーダー照射事件」をご覧下さい。12月21日、国防部は記者の携帯に文字メッセージを送り事件に関し説明したのですが、そこには「レーダーを使った」とちゃんと書いてあったのです。

 そこで21日から22日にかけ、韓国メディアは一斉に「火器管制レーダーも使ったが、北朝鮮の漁船を救助するためだった」との国防部と関係者の説明をそのまま報じました。

 ところが韓国での報道を見た日本の防衛省が22日「火器管制レーダーは捜索には使わないものだ」と国防部の嘘を暴いた。NHKも「レーダー照射は一定時間続いた」と報じ、意図的に哨戒機を狙ったと指摘しました。

 すると24日に国防部は一転、主張を変えました。「追跡(火器管制)レーダーからは一切電波を出さなかった」と言い出したのです。誤報させられた韓国記者は当然、自国の発表を疑うようになりました。

 27日の国防部の会見で「低空飛行したという日本の哨戒機になぜ無線交信を試みなかったのか」との質問が出ました。

 24日の会見から国防部は「日本機が異例の低空飛行をした。我々が被害者だ」と言い始めていた。普通の記者なら「ではなぜ、直ちに無線で抗議しなかったのか」との疑問を持つものです。

 この質問に対し国防部の副報道官は「今、答えるのは適切ではない」とはぐらかしたのです。韓国記者は国防部への疑いを深めたでしょう。


●日誌・レーダー照射事件
▼2018年▼
12月21日 「12月20日に日本海の日本のEEZ内で、韓国駆逐艦が日本の哨戒機に火器管制レーダーを照射」と防衛省が発表。BSフジの番組で岩屋毅防衛相が「攻撃直前の行為だ。不測の事態を招きかねない。韓国は説明すべきだ」と発言(共同通信などが報道)
12月21日 国防部、記者の携帯に向け「正常な作戦活動。当時、レーダーは使用したが、日本機を追跡する目的では使った事実はない」と発表(聯合ニュース報道)
12月22日 「12月20日に漂流中の北朝鮮の漁船を海軍が救助したが、その際に捜索のためレーダーを使用した」との関係者の話を独自ダネとして東亜日報が報道
12月22日 国防部の発表を踏まえ「遭難した北朝鮮の船舶を捜索するため火器管制レーダーを使ったが、日本機を狙ってはいない。正常な作戦任務だった」と韓国MBCが報道
12月22日 「国防部関係者が『海軍は漁船救助の過程で火器管制レーダーを使い、これが日本機に当たった』と説明した」と聯合ニュースが報道
12月22日 国防部が日本に対し「正常な作戦中だった。北朝鮮の漁船を救助中に一時的に全てのレーダーを稼働した際、電波が日本機に届いた」と説明したと聯合ニュースTVが報道
12月22日 統一部、救助した北朝鮮漁民を板門店を通じ送り返したと発表 (中央日報など報道)
12月22日 「レーダー照射は複数回で一定時間続く」「偶然とは考えにくい」「哨戒機はレーダー受けて回避」とNHKが報道
12月22日 「火器管制レーダーは捜索には使わない。その照射は危険な行為」と防衛省が発表
12月23日 「火器管制レーダーは哨戒機を向いていた」とFNNなどが報道
12月24日 「人道主義的な救助のための正常な作戦活動であり、日本機の脅威となる措置は取らなかった」「日本機が低空飛行したので、この異例の行動を監視するため追跡(火器管制)レーダーの光学カメラで監視した。だが、電波は一切出さなかった」「日本機からの通信はノイズが多く『韓国海洋警察』だけが聞きとれた」と国防部が会見で答弁
12月24日 韓国外交部が「事実を確認せず発表した」と日本に遺憾を表明したと聯合ニュースが報道
12月25日 「火器管制レーダー特有の電波を一定時間、複数回受けたことを確認した」「海自機は韓国の駆逐艦から一定の高度と距離をとって飛行」「緊急周波数で韓国海軍艦艇に向け英語で3回呼び掛けた」と防衛省が発表
12月25日 菅義偉官房長官、会見で韓国に再発防止を強く求めたうえ「当局間の協議を進める」
12月25日 岩屋防衛相、会見で「照射があったことは事実。(把握しているデータに関し)我が方の能力に関することは公表できないが、先方となら専門的な話もできる」
12月27日 「低空飛行したという日本機に無線交信を試みなかったのか」との質問に対し「今、答えるのは適切でない」と国防部副報道官が答弁
12月27日 日韓防衛当局の実務者協議をテレビ会議で実施したが平行線で終わる(日経など報道)
12月28日 防衛省、「レーダー照射映像」を公開、韓国にも伝達
12月28日 「映像発表に深い憂慮と遺憾を表明。事実関係を誤魔化すものだ」と国防部が声明
▼2019年▼
1月1日 テレビ朝日の番組で韓国海軍のレーダー照射に関し「危険な行為だ」と安倍晋三首相が発言
1月2日 国防部、「日本はレーダー歪曲を直ちに中断し、低空飛行を謝罪せよ」と声明(聯合ニュース報道)
1月3日 「なぜ、半月後の昨日になって初めて低空飛行に関し日本に抗議したのか」との質問に「対応を変えてはいない」と国防部が会見で答弁
1月3日 「常任委員会で日本機の低空飛行の深刻さを論議」と韓国NSCが発表
1月4日 「協議中に日本が映像を公開したことに憂慮」と 国防部が発表したうえ映像(韓国語)を公開
1月4日 「日韓両国の外相が電話で協議し、レーダー照射問題に関しては国防当局同士が対話して解決することで合意した」と韓国外交部が発表
1月4日 「韓国国防部が動画を公表したが、我々の立場とは異なる主張」と防衛省が声明(日本語、英語、韓国語)
韓国の「大本営発表」
 12月28日の防衛省の動画公開で、韓国メディアはますます国防部の発表を疑うようになりました。当初、韓国軍が主張していた「漁船の捜索のためのレーダー使用」が真っ赤な嘘だったことが判明したからです。

 自衛隊機が撮影した映像では、駆逐艦から目視できるところに漁船がいた。ほぼ同時に自衛隊の哨戒機の機内で「照準された」ことを示す警報音が鳴り響いた。「漁船を探すためにレーダーを照射していた」という説明は全くの絵空事だったのです。

 しかし韓国メディアにはこうした自国政府に対する疑惑――@なぜ、レーダー使用の目的を漁船捜索と偽ったのかAなぜ、火器管制レーダーを含め全てのレーダーを使っていたとの説明を翻したのかBなぜ、低空飛行した自衛隊機に無線を使わなかったのか――を一切報じていません。

 韓国メディアが大書するのは「低空飛行で威嚇された韓国こそが被害者である」「一方的に画像を発表した日本が悪い」といった国防部の発表――"大本営発表"ばかりなのです。

 これでは国民が「傲慢な日本」と「弱腰の国防部」に怒り出すのも無理はありません。青瓦台(大統領府)のサイトには「レーダー映像公開…! 日本は同盟か…!主敵か…!」(1月3日)という見出しの投稿が載りました。骨子は以下です。

誇らしい大韓のイージス艦は今後、日本の哨戒機が接近したら直ちに撃墜すべきだ。なぜなら(日本は)同盟国になることがない最悪の主敵だからだ。
今、日本は軍事力を膨張させている。韓国が非核化を叫んでいる時か。必ず、核武器と水爆を自ら開発、配備せねばならない時だ!
 こんな国民の声が青瓦台に届き、それへの反応も「いいね!」ばかりですから国防部も日本に強腰に出ざるを得ない。1月2日に日本に謝罪を要求したうえ、4日には「反論映像」も公開しました。

 こうした国防部に対し、韓国メディアは会見で「なぜ半月後の今になって謝罪を要求したのか」と対応の鈍さを追及するに至った(1月3日)。事実の追求は放っておいて世論を煽り続けています。

 こんなメディアのいい加減な姿勢がレーダー照射問題をはじめ、内政、外交のありとあらゆる面で韓国を苦境に落とし込んでいるのです。

扇動に踊る韓国人
なぜ、韓国メディアは国防部発表の不審な点を突かないのでしょうか。

鈴置:韓国では「事実」よりも「主張」が大事なのです。このケースで言えば「日本の言い分が正しそうだな」と記者が思っても、そう書けば「売国新聞」と非難されてしまう。

 それなら徹底的に韓国の立場に立って報じ「不都合な真実」はネグってしまおうということになります。

 「無明」というペンネームを使う韓国人ブロガーがいます。日本の自民党の内幕や日韓関係に極めて詳しいことから、日本を長らく担当した外交官OBと見られています(『米韓同盟消滅』)第4章第2節「韓国人をやめ始めた韓国人」参照)。

 無明氏は「日本の防衛省、韓国のレーダー照射問題に対する証拠動画公開2」(12月29日、韓国語)で、韓国の世論形成のあり方に警鐘を鳴らしました。

火器管制レーダーの使用に関しても、最初はすべてのレーダーを使っていたと言い、後になって火器管制レーダーは使用しなかったと言葉を変え、さらに翌日には使ったが照準は当てなかったと嘘をつく。これが今の国防部の言い訳だ。
言葉を変え続けるのを信じるのなら、それはあなたが詐欺師に簡単にだまされる脳の構造を持っているとの証拠にほかならない。
韓国人なら詐欺や嘘と知っていても無条件に韓国をかばう必要がある、などととんでもないことを言うのなら、あなたはナチ(Nazi)などと変わりのない人間のゴミだ。
 無明氏の韓国批判は常に激烈です。でも、この記事の激しさは格別です。身びいきのあまり真実から目をそらしたい国民。それに応じ、いい加減な情報しか流さないメディア。こんな韓国社会に対する絶望感がこの記事を書かせたのでしょう。

 無明氏が1月4日に載せた「韓国、レーザー照射問題に関する反駁動画公開」(韓国語)という記事は以下の文章で結ばれています(編集部注:原文のまま掲載)。

朝鮮王朝が滅びた時がそうだったように、韓国の支配層が嘘を言い張ると、被支配層の韓国の豚どもは常に騙されてきた。扇動しておけば365日、騙される韓国の豚どもに人間の知性はないのだ。
人権蹂躙国家とスクラム
「亡国の危機」ですか!

鈴置:「世の中がよく見えている」韓国人は今、絶望に陥っています。米国からは同盟を打ち切られそうになっている。韓国が米国を裏切って北朝鮮の核武装に協力しているからです(「『米韓同盟消滅』にようやく気づいた韓国人」参照)。

 そこに起きたレーダー照射事件。日韓関係は悪化する一方で修復のメドがたちません。左派政権の「反日」は「反米」の伏線です(「『現場の嫌がらせ』では済まないレーダー事件」参照)。米国との同盟はさらに危くなるでしょう。

 問題は米国との関係に留まりません。人権蹂躙国家の北朝鮮とスクラムを組んで、その核武装を幇助する文在寅政権の異様さが世界に知れ渡りました。北朝鮮だけではなく韓国も「危ない国家」と認定され始めたのです(「北朝鮮と心中する韓国」参照)。

 周辺国家と世界はテロ国家たる北朝鮮の核武装を全力で阻止するでしょうから、文在寅政権の狙う「民族の核」の実現は容易ではない(「半島がまた、きな臭くなってきた」参照)。

 仮に成功してもそれはあくまで北朝鮮の核。韓国が核を持つ北の支配下に入るのは確実です。それに普通の韓国人が耐えられるとは思えません(『米韓同盟消滅』第1章第4節「『民族の核』に心躍らせる韓国」参照)。

 国が危機にあるというのに指導層は権力闘争に没頭する。国民は政府やメディアに扇動され、「積幣清算」や「反日」に浮かれる。国が奈落の底に堕ちて行くのに、見動きがとれないのです。

今回は「出口」なし
韓国の混乱は収拾できない?

鈴置:1960年に李承晩政権がデモで倒れた後の混乱は翌1961年、反共を掲げる軍人のクーデターにより収拾されました。

 私は1987年から5年間ソウルに住みましたが、当時を知る韓国人の中には「クーデターが起きなかったら韓国は北朝鮮に吸収されていた」と説明する人がかなりいました。

 クーデター自体には賛成しないが、北朝鮮の一部となるよりはましだった、というのです。もちろん「あのクーデターによって成立した軍事政権が韓国の民主主義を破壊した」と言う人もいましたが。

今回はもう起きない……。

鈴置:……と、多くの韓国人が言います。軍人もサラリーマン化して、もはやクーデターを起こす根性はない、との理由です。今回は良かれ悪しかれ「出口」はないのです。

 自分たちを、集団自殺するとされるレミングに例える韓国人が出てきました。その1人が趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムの金泌材(キム・ピルジェ)記者です。

 「『レミング効果』に見る『韓国人の群衆心理』」(2016年11月16日、韓国語)は「ろうそく集会」が始まった頃に書かれた記事です。

 書かれた時点では朴槿恵大統領が弾劾されることまで想像した人はあまりいませんでした。それによる左派政権登場と、米韓同盟の危機を予想した人も少なかった。

 しかし金泌材記者は韓国人の扇動に弱い体質を指摘し、国が危くなると当時から警鐘を鳴らしていたのです。

韓国はどうなる?

鈴置:この段階に至っては手遅れと思います。北朝鮮との共闘路線を修正するのは難しい。それが左派政権の存在理由なのですから(『米韓同盟消滅』第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」参照)。

 それに米国や日本は「北朝鮮の使い走り」と見なして韓国に向き合うようになりました。米国は今、韓国との「思いやり予算」交渉でいつになく強硬です。

 米国の専門家は在韓米軍の削減・撤収まで公言し始めました。いざとなれば韓国との同盟をやめてもいいのだ、との合意が米政界に広がっているのです。

 「レーダー照射事件」で日本が韓国を徹底的に追い詰めているのも「韓国が仮想敵になりつつある」との認識があずかっています。

 韓国はもう、奈落の底に堕ちて行くだけと思います。

■トランプ大統領の韓国国会演説(2017年11月8日)のポイント(1)

北朝鮮の人権侵害を具体的に訴え

10万人の北朝鮮人が強制収容所で強制労働させられており、そこでは拷問、飢餓、強姦、殺人が日常だ
反逆罪とされた人の孫は9歳の時から10年間、刑務所に入れられている
金正恩の過去の事績のたった1つを思い出せなかった学生は学校で殴られた
外国人を誘拐し、北朝鮮のスパイに外国語を教えさせた
神に祈ったり、宗教書を持つクリスチャンら宗教者は拘束、拷問され、しばしば処刑されている
外国人との間の子供を妊娠した北朝鮮女性は堕胎を強要されるか、あるいは生んだ赤ん坊は殺されている。中国人男性が父親の赤ん坊を取り上げられたある女性は「民族的に不純だから生かす価値がない」と言われた
北朝鮮の国際的な無法ぶりを例示

米艦「プエブロ」の乗員を拿捕し、拷問(1968年1月)
米軍のヘリコプターを繰り返し撃墜(場所は軍事境界線付近)
米偵察機(EC121)を撃墜、31人の軍人を殺害(1969年4月)
韓国を何度も襲撃し指導者の暗殺を図った(朴正煕大統領の暗殺を狙った青瓦台襲撃未遂事件は1968年1月)
韓国の艦船を攻撃した(哨戒艦「天安」撃沈事件は2010年3月)
米国人青年、ワームビア氏を拷問(同氏は2016年1月2日、北朝鮮出国の際に逮捕。2017年6月に昏睡状態で解放されたが、オハイオに帰郷して6日後に死亡)
「金正恩カルト体制」への批判

北朝鮮は狂信的なカルト集団に支配された国である。この軍事的なカルト集団の中核には、朝鮮半島を支配し韓国人を奴隷として扱う家父長的な保護者として指導者が統治することが宿命、との狂った信念がある
これまで読んで下さった皆さまへ
  今回で「早読み 深読み 朝鮮半島」の連載を終えます。2012年1月以降、7年間も続けることができたのは、ひとえに熱心に読んで下さった皆さまのおかげです。本当にありがとうございました。
 2018年12月14日に参議院議員会館で開かれた国際セミナー「激動する朝鮮半島情勢の下で拉致被害者救出を考える」を取材しました。「半島がまた、きな臭くなってきた」で紹介した集まりです。

 受付でお目にかかった拉致被害者の家族の方々から「毎回、読んでますよ」「記事を読むために日経ビジネスオンラインに登録しました」と声をかけられました。

 この連載で拉致問題に触れたことはほとんどありません。しかし家族の皆さんは朝鮮半島情勢を勉強しようと、藁にもすがる思いで読んで下さっていたのです。それを知り、身の引き締まる思いでした。

 記事を書くにあたって、匿名の方々にも支えられました。日本語で「シンシアリーのブログ」をお書きになる韓国の歯科医師さん。冷静な韓国人が「動乱の韓国」をどう見ているかを紹介するために、ブログを何度か引用させていただきました。

 「新宿会計士の政治経済評論」というサイトを主宰される公認会計士さん。日本の危機を防ごうと、専門知識をフルに発揮した評論を書いておられます。「通貨スワップと為替スワップについて、改めて確認してみる」など、大いに参考にさせていただきました。

 私の英文和訳の誤りを掲載日の早朝に指摘下さった方がおられます。慌てて直したものです。匿名の恩人の方々にもこの場を借りて深くお礼を申し上げます。

 今回の記事で紹介したAさんの指摘通り、2019年の朝鮮半島は劇的な展開が予想されます。その際、日本も何らかの形で巻き込まれるのは確実です。覚悟を固める時が来ました。

【著者最新刊】『米韓同盟消滅』

米朝首脳会談だけでなく、南北朝鮮の首脳が会談を重ねるなど、東アジア情勢は現在、大きく動きつつある。著者はこうした動きの本質を、「米韓同盟が破棄され、朝鮮半島全体が中立化することによって実質的に中国の属国へと『回帰』していく過程」と読み解く。韓国が中国の属国へと回帰すれば、日本は日清戦争以前の「大陸と直接対峙する」国際環境に身を置くことになる。朝鮮半島情勢「先読みのプロ」が描き出す冷徹な現実。

第1章 離婚する米韓
第2章 「外交自爆」は朴槿恵政権から始まった
第3章 中二病にかかった韓国人
第4章 「妄想外交」は止まらない

2018年10月17日発売 新潮社刊


このコラムについて
早読み 深読み 朝鮮半島
朝鮮半島情勢を軸に、アジアのこれからを読み解いていくコラム。著者は、朝鮮半島の将来を予測したシナリオ的小説『朝鮮半島201Z年』を刊行している。その中で登場人物に「しかし今、韓国研究は面白いでしょう。中国が軸となってモノゴトが動くようになったので、皆、中国をカバーしたがる。だけど、日本の風上にある韓国を観察することで“中国台風”の進路や強さ、被害をいち早く予想できる」と語らせている。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/010700211/
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/146.html

[国際25] 未来は中国のものだとは限らない 高所得国の仲間入りは至難の業 
未来は中国のものだとは限らない
高所得国の仲間入りは至難の業――マーティン・ウルフ
2019.1.7(月) Financial Times
(FT.com 2019年1月1日付)

中国、70年ぶりに人口減少 「人口動態上の危機」 専門家
中国、70年ぶりに人口減少 「人口動態上の危機」 専門家。写真は中国・重慶の乳幼児看護施設でマッサージを受ける赤ん坊(2016年12月15日撮影、資料写真)。(c)AFP〔AFPBB News〕

 近い過去をもとに将来を類推することは、やめなければならない。

 中国はこの40年間で、文字通り目を見張る発展を遂げてきた。その一方で、冷戦に勝利した後の西側陣営と自由民主主義は、ともによろめいてしまっている。

 我々はこれを踏まえ、今後数十年間は専制的な中国が世界を支配する大国になるのは確実だと結論づけるべきなのだろうか。

 筆者の答えは「ノー」だ。未来が中国のものになる可能性はあるものの、確実だとは言い切れない。

 1980年代に広まった、日本が「ナンバーワン」になるとの見方は大間違いだった。

 1956年には、旧ソビエト連邦の共産党第一書記ニキータ・フルシチョフが西側諸国に「おまえたちを埋めてやる!」と言い放った。これも全くの間違いだった。

 日本と旧ソ連の事例は、しばしば繰り返される3つの過ちを浮き彫りにする。

 まず、近い過去をもとに将来を類推すること、次に高度経済成長の時代はいつまでも続くと思い込むこと、そして政治経済の競争がもたらす利益よりも中央集権体制での指示がもたらす利益の方を誇張することだ。

 長期的には、中央集権体制が硬直的で非常にもろいものになってしまいがちであるのに対し、競争が行われる体制は柔軟性を発揮して自己再生を遂げることが多いのだ。

 現在、政治経済においてかつてないほど激しい競争が繰り広げられているのは中国と米国の間でだ。

 これを受け、例えば2040年までには中国の経済規模が米国のそれをはるかに上回り、インド経済ははるかに小さな規模にとどまるとの見方が広まっている。

 しかし、この見方が間違いである可能性はないのだろうか。

 独立系の調査会社キャピタル・エコノミクスは、間違っている可能性が「ある」と見ており、中国が傑出した発展を遂げる時代は意外に早く終わりを迎えるかもしれないと論じている。

 この見方が間違っており、中国がさらに発展する可能性については、説得力のある主張が2つある。

 1つは、中国には生産性のレベルについて先進国との差をさらに詰めていく潜在力が大いにあるというもの。もう1つは、高度経済成長の時代を持続させる能力は実証済みだというものだ。

 潜在力も能力もないと断言するには勇気がいるが、キャピタル・エコノミクスは「グローバル経済長期見通し」という報告書の中で、その勇気を持つべきだと論じている。

 1980年代の日本がそうだったように、超高水準の投資と急速な債務の積み上げを併存させると、経済は急激な減速に対してもろくなる。

 そして、これらを併存させる政策は、中国が2008年の世界金融危機以降に高度成長を継続してきた要因にほかならない。

 重要なことに、2017年に国内総生産(GDP)の44%を占めた中国の投資率は、持続不能なほど高い。中国は2008年の危機の後、この並外れた投資率によって需要と供給の成長を維持した。

 ところが、現在の中国の人口1人当たりの公的資本ストックは、人口1人当たりの所得が今の中国と同程度だった頃の日本の水準をすでに大きく上回っている。

 都市部での世帯形成の伸び悩みは、新たに建設しなければならない住宅の数が減ることを意味している。意外なことではないが、投資のリターンは急落している。

 要するに、投資主導の経済成長は近々終わるに違いないのだ。

 中国はその巨大さゆえに、輸出主導の経済成長においても比較的早く壁に突き当たっている。高成長を遂げた他の東アジア諸国のケースに比べると、人口1人当たりの所得が低いレベルで停滞を余儀なくされている。

 米国との貿易戦争はこの現実を際立たせている。

 中国は、生産年齢人口も減少している。債務が急増していることも考え合わせれば、高度経済成長を維持することは至難の業だろう。

 将来の需要は、大衆消費者市場の台頭次第となる。

 一方、供給力を伸ばすには、イノベーション(技術革新)の指標の1つである「全要素生産性(TFP)」の伸び率を大幅に高めることが必要になる。

 ところが2017年のデータによれば、個人消費はGDPの39%を占めるにすぎない。需要主導の経済を目指すのであれば、貯蓄率を急低下させる一方でGDPに占める家計所得の割合を大幅に高めなければならない。

 どちらの達成も容易ではない。

 しかし最も高い(特に、必要とされる生産性の伸びの急上昇にとっての)ハードルは、政治システムが専制主義的な方向に進んでいることだ。

 中国はこの15年間、1998年から2003年にかけて首相を務めた朱鎔基氏が導入した改革の恩恵を享受してきた。

 それ以降、これに匹敵する改革は行われていない。今日においても、融資は依然、国有企業に優先的に割り当てられているうえに、民間の大企業に対する国家の影響力は増大している。

 これでは、仮に明らかな金融危機が回避されても、資源配分に歪みが生じてイノベーションや経済発展のペースも鈍ってしまうだろう。

 要するに中国は、高度成長を成し遂げた他の東アジア諸国の成功を再現し、短期間で高所得国になることに失敗する公算が大きい。

 実際、中国が高所得国になることは、他の東アジア諸国よりもはるかに難しいとみて間違いない。

 経済における歪みが非常に大きいうえに、グローバル経済の環境も今後はかなり不利なものになっていくからだ。

 一方、ロボット工学と人工知能(AI)の台頭は西側諸国、とりわけ米国の生産性向上に再び火をつけるかもしれない、とキャピタル・エコノミクスは論じている。

 楽観的になりたい向きは、ドナルド・トランプ氏の不適格さと悪意を経験したことがよい薬になることも願うだろう。

 トランプ氏の筋金入りの支持者は少数派だ。多数派の、うんざりしている人々が勝つ公算は大きく、米国が必要としている経済競争力と社会的関心への見直しが行われることになるはずだ。

 米国に次いで興味深いのは、相対的な地位が緩やかに低下する運命にあると思われる欧州ではなく、近い将来に世界最大の人口を擁することになるインドである。

 インドは現在、中国よりもはるかに貧しいが、それゆえに急速な経済成長を実現する潜在力は大いにある。

 キャピタル・エコノミクスでは、2040年まで年率5〜7%の成長を遂げると予想している。

 この水準の成長は少なくとも考えられないことではない。事業を営む能力は高く、貯蓄率も十分に高いからだ。

 政策面ではかなりの改革が必要になるだろうが、インドの政界はこのところ、経済のパフォーマンスにますます目を向けるようになっている。

 それで成功が保証されるわけではないが、可能性は高まるはずだ。

 自由民主主義を支持する人々は、失望はしても自暴自棄になってはいけない。1990年代から2000年代初めにかけての「一極構造の時代」の多幸感とおごりは大きな間違いだった。

 しかし、専制政治の勝利は、避けられないものでは決してない。

 民主主義国家が栄えうるのと同様に、専制主義国家も失敗しうる。

 中国は巨大な経済的困難に直面している。民主主義国は自らの過ちに学び、政治と政策の建て直しに注力しなければならない。

By Martin Wolf
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55136
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/147.html

[政治・選挙・NHK255] 北方領土:歯舞・色丹「引き渡し」で起きる大問題 領土の主権は、日米安保条約は、ロシア軍の駐留は、残る2島は・・・  
北方領土:歯舞・色丹「引き渡し」で起きる大問題
領土の主権は、日米安保条約は、ロシア軍の駐留は、残る2島は・・・
2019.1.7(月) 横山 恭三
ロシア、平和条約協議は「北方領土の自動的引き渡し意味せず」
択捉島(2016年12月12日撮影、資料写真)。(c)ANDREY KOVALENKO / AFP 〔AFPBB News〕

 我が国は、1955年以来、北方4島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの方針の下、ソ連・ロシアとの間の平和条約締結交渉を継続してきた。

 日本は長年、4島一括返還を求めてきたが、安倍晋三首相とウラジーミル・プーチン大統領は、2018年11月14日、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議に出席したシンガポールで会談し、平和条約締結後に北方4島のうち歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すことを明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎に、日ロ平和条約交渉を加速させることで合意した。

 一部では2島先行返還への期待が高まっている。政府関係者は日本の4島返還の原則は変わらないと説明するが、2島先行返還を選択肢に交渉を進めるべきだとの議論もある。

 これまでの北方領土をめぐる交渉に関する国民の関心は、4島一括返還か、あるいは2島先行返還かであったが、今は北方領土をめぐる交渉においては、次の2つのことが注目されている。

 1つは「引き渡し」の意味、すなわち返還後の主権の問題、もう1つは「引き渡された」または「返還された」後の北方領土への米軍駐留の問題である。

 この2つの問題は、本平和条約締結交渉において最も重要かつ困難な議題である。つまりこれらの問題が解決されなければ本交渉は頓挫するかもしれない。

 これらの2つの問題はプーチン大統領の発言によって広く知られるようになった。

 それまで、多くの国民は、返還された領土は日本の主権下に置かれるものであり、かつ返還された領土への米軍駐留は、主権国家日本が独自に判断すべきことであるのと考えていた。

 しかし、そう簡単なことではなさそうである。

 以下、初めに「引き渡し」の意味について、次に北方領土への米軍駐留の問題(米軍の配置変更に関する事前協議を含む)について論じる。

1.「引き渡し」の意味
 筆者に限らず、多くの読者は、北方領土をめぐる交渉は、ロシアに不法に占拠された我が国固有の領土の返還交渉であるので、当然、「引き渡し」でなく「返還」と明記されているものと思っていたであろう。

 しかし、日ソ共同宣言第9項には、確かに平和条約が締結された後に引き渡される、と明記されている。

(1)日ソ共同宣言第9項

 第9項の条文は次の通りである(外務省資料)。

 「日本及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する」

 「ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する」

 「ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする」

(2)プーチン大統領の発言

 プーチン大統領は、2018年11月15日、シンガポールでの東アジアサミット後の記者会見で、日ソ共同宣言でソ連が引き渡すとした色丹、歯舞両島について、「(両島の引き渡し後の)主権のことは記されていない」と述べ、2島の引き渡し後の主権については、今後の交渉対象となるとの認識を示した。(産経新聞11月15日)

(3)「引き渡し」をめぐる国会での議論

 共同宣言は、1956年10月19日にモスクワで署名され、同年12月5日に国会承認されている。

 この間の11月12日の衆議院・日ソ共同宣言等特別委員会で「引き渡し」をめぐる議論がなされている。

 長くなるが、当時のソ連の主張や国会・国会議員の当該領土に対する領有権に関する認識が分かるので、次に議事録 をそのまま紹介する。

大橋(武)委員:

 「共同宣言案第九項に、歯舞、色丹は平和条約締結の際、引き渡すと書いてあります。この引き渡しという言葉に相当する露語、ベレダーチという言葉は、譲渡、引き渡しなどと訳し、すこぶる意味の広い言葉なのであります」

 「元来歯舞、色丹、国後、択捉の返還という日本側の主張に対し、ソ連は、樺太、千島はもとより国後、択捉、歯舞、色丹は、いずれも現在すでにソ連領の一部となっておるものであって、平和に際し当然に日本に返還するという筋合いのものではない、もし日本に渡すという場合があるとすれば、それはすでにソ連領となっておる旧日本領の一部をあらためて日本に割譲することになるという主張を続けておるのであります」

 「そこで、ソ連にとっては、このペレダーチという広い意味の言葉を使うことは、特別の意味を持つことになるのであります」

 「すなわち、歯舞、色丹を日本に渡すのは、日本の領土を日本に返すのではなく、ソ連領の一部を新しく日本に譲渡するのだという意味を表わしておこうというのであります」

 「さればこそ、第九項に『本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、』という特別の文句がわざわざつけてあるのであって、日本のものを日本に返すのならば、何もかようなもったいをつける必要はないはずであります」

 「日本のものでないソ連のものを特別に日本に渡すというのであるから、かような文句をつけ加えているのであります」

 「その結果は、将来ソ連は、共同宣言は歯舞、色丹さえソ連領であるという前提を認めているではないか、いわんや国後、択捉は、樺太、千島とともにソ連領であることは当然であるという立論を必ず打ち出してくるのであります」

 「かように考えますと、第九項は、歯舞、色丹をも含めて現にソ連の占領している地方はすべてソ連領になっておるという、ソ連のかねてからの主張を巧妙に織り込んであるものといわなければなりません」

 「従って、将来平和条約締結交渉の際、ソ連はこの条項を援用して、歯舞、色丹以外の領土は共同宣言の際ソ連領として決定済みであるという主張を展開して参るでございましょうし、また、さような主張をいたした場合には、当方としても文理上その主張を打ち破ることは相当に困難になるであろうということを覚悟しなければなりません」

 「従って、将来国後、択捉の領土権を討議する機会があったといたしましても、それは、領土の返還を求めるということではなく、ソ連領の一部となっておるものをあらためて割譲せしむるという、全く新たな問題とみなされるおそれがあるのでございまして、択捉、国後の返還はこの点において事実上すこぶる困難となると思われるのでございまするが、政府の御見解を承わりたいと存じます」

松本全権委員:

 「大橋さんの質問に対して、私が交渉の衝に当りましたので、はっきりお答え申し上げます」

 「この日本語の引き渡しに当を(筆者注;「当たる」の誤字?)露語につきましては、十分研究をいたしました」

 「先方の日本語をよく知っておる専門家とこちら側の専門家が十分協議した上に、この案文は引き渡しという案文になっておるのであります」

 「この引き渡しの意味は、日本語の引き渡しの意味するごとく、単なる物理的な占有の移転を表わす言葉であります」

 「従いまして、日本側といたしましては、歯舞、色丹は日本の固有の領土であって、北海道の一部であるということは、私が当初から最後まで主張いたしておるところであります」

 「従いまして、引き渡しという意味は、そういう日本側の歯舞、色丹に対する建前を通して、こういう字句で十分だと考えましたので、私もこれを受諾いたしまして、この点を鳩山全権に報告いたしました上で、署名になったのでございます。かように御了承願います」

(4)筆者の所見

 大橋委員の質問内容を見れば、当時、日本は「引き渡す」を主張するソ連の意図・思惑を十分に理解していたこと、およびこの「引き渡す」という言葉が将来に禍根を残すことになることを懸念していたことがうかがわれる。

 一方、松本全権委員の回答は、なぜ、「返還」でなく「引き渡し」になったかを説明していない。

 ちなみに、辞書を引くと返還に相当するロシア語(Возвращение)が存在する。

 厳しい交渉の末に、ソ連側に押し切られたという印象である。

 この背景には「もともと4島は戦前から日本固有の領土であり、ソ連が不当に占拠したものである」という日ロ間の共通認識がないところに問題があるように思える。

 難しい外交交渉の場合、双方のメンツを立てるあるいは交渉の決裂を回避するために「玉虫色」の表現などで決着を図るというのが常套手段である。

 件の交渉においても、両者が国内向けに説明ができる玉虫色の合意をしたものと思われる。

 上記国会議論における大橋委員の「ソ連にとっては、このペレダーチという広い意味の言葉を使うことは、特別の意味を持つことになる。すなわち、歯舞、色丹を日本に渡すのは、日本の領土を日本に返すのではなく、ソ連領の一部を新しく日本に譲渡するのだという意味を表わしておこうというのである」という発言は、まさに今回のプーチン大統領の発言を予見したものである。

 さらに、うがった見方をすれば、当時の政府は、4島一括返還要求が難しいことを承知しており、歯舞、色丹2島の「引き渡し」で折り合いをつけるつもりであったとも考えられる。

2.北方領土への米軍の駐留の問題
 プーチン大統領は、歯舞、色丹2島を日本に引き渡した後に、当該領土へ米軍が配置されることを懸念し、米軍の当該領土への非配置を、交渉を進めるための前提条件として提示した。

(1)プーチン大統領の発言

 2018年12月20日、モスクワ市内で年末恒例の記者会見で次のように述べた。

 「プーチン大統領は、北方領土を日本に引き渡した場合に米軍が駐留する可能性を改めて懸念し、沖縄の基地問題を例に「日本にどのくらい主権があるのか分からない」と発言した。平和条約を心から締結したいとしながら、「(安全保障上の)問題への回答なしに我々は重要な決定を下せない」と語った」(日経新聞12月21日)。

(2)米軍の配置変更に関する事前協議

 米軍の日本国への配置における重要な変更は、1960年の日米安全保障条約改定の際の「条約第6条の実施に関する交換公文」に基づき事前協議の対象となっている。

 しかし、小規模の陸上部隊の配置の変更は事前協議の対象とはなっていない。

 以下、事前協議の法的根拠について、外務省の資料「日米安全保障条約(主要規定の解説)」 に基づき順を追って説明する。

●日米安全保障条約第6条

 米軍が日本に駐留する法的根拠は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」(以下、日米安保条約)第6条である。

 第6条には次のように規定されている。

 「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」

 「前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、1952年2月28日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される」

 第6条前段は、我が国の米国に対する施設・区域の提供義務を規定するとともに、提供された施設・区域の米軍による使用目的を定めたものである。

 第6条後段は、施設・区域の使用に関連する具体的事項及び我が国における駐留米軍の法的地位に関しては、日米間の別個の協定によるべき旨を定めている。

 なお、施設・区域の使用および駐留米軍の地位を規律する別個の協定は、いわゆる日米地位協定である。

 米軍による施設・区域の使用に関しては、「条約第6条の実施に関する交換公文」(いわゆる「岸・ハーター交換公文」)が存在する。

●「条約第6条の実施に関する交換公文」

 米軍の日本国への配置における重要な変更は、1960年の日米安全保障条約改定の際の条約第6条の実施に関する交換公文に基づいて設けられたものが事前協議の対象となっている。交換文書には次のように規定されている。

 「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動(前記の条約第五条の規定に基づいて行なわれるものを除く)のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする」

 この交換公文は、以下の3つの事項に関しては、我が国の領域内にある米軍が、我が国の意思に反して一方的な行動をとることがないよう、米国政府が日本政府に事前に協議することを義務づけたものである。

・米軍の我が国への配置における重要な変更(陸上部隊の場合は一個師団程度、空軍の場合はこれに相当するもの、海軍の場合は、一機動部隊程度の配置をいう)。

・我が国の領域内にある米軍の装備における重要な変更(核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設をいう)。

・我が国から行なわれる戦闘作戦行動(第5条に基づいて行なわれるものを除く)のための基地としての日本国内の施設・区域の使用。

 なお、核兵器の持込みに関しては、従来から我が国政府は、非核三原則を堅持し、いかなる場合にもこれを拒否するとの方針を明確にしてきている。

(3)筆者の所見

 わが国では、本平和条約締結交渉の経済的側面のみが注目されているが、本当は安全保障上の問題である。

 ロシアの安全保障上の懸念をいかに払拭できるかが本交渉の成功のカギと言える。

 オホーツク海は軍事戦略的な要衝である。

 「クリル」諸島(北方4島・千島列島)は、ウラジオストク配備の主要水上艦を中心とする艦艇の太平洋への自由なアクセスを維持していくうえで重要である。

 さらに、ペトロパヴロフスクには、最大射程8300キロの最新型SLBMブラヴァを搭載した新型の戦略原潜(ボレイ級)が配備されているように、オホーツク海は戦略原潜を防護する聖域「bastion(バスチオン)」となっている。

 このようにロシアから見た北方領土・千島列島の軍事的意義は極めて大きい。

 プーチン大統領は、オホーツク海の防衛を念頭に、両島を日米安全保障条約の適用外にするよう要求しているとも伝えられている。

 従って、冷戦の終結後「最悪」と言われ米ロ関係を考慮すると、オホーツク海に面した北方領土への米軍駐留は不可能であると言わざるを得ない。

 ところが、米国が色丹・歯舞2島への米軍の駐留を要求してきた場合、日本政府には、それを拒否する権限を有していない。

 日米安保条約は、米国が日米安保条約の目的のために必要だと判断したら、日本の領土のどこにでも部隊を配置することができる「権利」を米国に付与している。

 そして、唯一事前協議という制約を設けている。

 従って、この問題の解決策の一つは、北方領土への米軍の配置を規模にかかわらず事前協議の対象とすることである。

 上記の外務省の資料によると、事前協議の対象となる陸上部隊の配置における重要な変更とは一個師団程度である。すなわちこれより小規模の陸上部隊の駐留は事前協議の対象とはなっていない。

 歯舞群島(95平方キロメートル)、色丹島(252平方キロメートル)は、小さな島であり、一個師団の受け入れ能力はなく、多くても数個大隊程度であることから、現状では米国は事前協議なしに北方領土に小さな部隊を配備することができることになっている。

 ゆえに、事前協議において米国の要求を拒否できるかどうかは別にして、北方領土への米軍の駐留を規模にかかわらず事前協議の対象とすべきである。

 これには、「条約第6条の実施に関する交換公文」の見直しが必要となる。

 この見直しは米国の同意が必要となる。なし崩しになることを恐れる米国は、「条約第6条の実施に関する交換公文」の例外規定の設定は受け入れられないと強く拒否するかもしれない。

 そのうえ、たとえ見直しに成功したとしても、ロシアがそれを受け入れるとは限らない。その場合は、米ロ間の何らかの協議・合意が必要となるであろう。

 このように、北方領土への米軍駐留の問題は、日米安保条約や米ロ関係が絡む極めて難しい問題である。従って、この問題の解決には、外交当局者の並々ならぬ努力が必須となる。

 さらに厄介なことは返還後の領土にロシア軍の駐留をロシアが要求してきた場合の対処である。

 プーチン大統領は上記の発言以外にもたびたび沖縄の米軍駐留に言及している。一般的には返還後の歯舞、色丹2島への米軍駐留を懸念しての発言とみられている。

 しかし、うがちすぎかもしれないが、沖縄返還後に米軍の駐留を合法的に認めるのであれば、同様に返還後の北方領土にロシア軍の駐留を求めてくる可能性がないとは言い切れない。

 その時、我が国はロシアの要求に如何に対処するのだろうか。経済活動に対する支援強化のみでロシアが引き下がるとは思えない。

おわりに
 既述したが、返還後の主権の問題と北方領土への米軍駐留の問題は、極めて困難な議題である。しかし、これはロシア側が投げたボールである。

 日本側がそれ以上の難しいボールを投げ返さないと交渉はロシア側のペースとなってしまう。

 「北方領土返還を求める日本の立場は法と正義に基づくものである」といくら唱えてみてもロシアの姿勢は変わらないであろう。

 その場合、色丹・歯舞2島の「主権なき返還」により北方領土問題の「最終決着」となる恐れがある。あるいは、北方領土を切り離した日ロ平和条約締結になってしまうかもしれない。

 元外交官の宮家邦彦氏は「交渉とは言論による格闘技ですから、物理的腕力の強い奴がつねに勝つ訳ではありません。論理的腕力さえあれば、勝つチャンスは大いに高まるといえるでしょう」『ハイブリッド外交官の仕事術』(PHP文庫)と述べている。

 外交当局者の論理的腕力に期待したい。

 最後に、筆者の個人的な意見を述べれば、日本政府は、領土問題をまず解決するという「入口論」から、友好関係を発展させ、その結果として将来領土問題の妥協的解決を実現するという「出口論」に交渉方針を転換すべきである。

 本領土問題の解決には日米安保条約や米ロ関係が絡む複雑な要素が存在しているため、真に対等な日米関係への転換や米ロ対立の緩和などの国内外情勢の大きな変化を待たざるを得ないであろう。

参考文献:
1:衆議院会議録情報 第025回国会 日ソ共同宣言等特別委員会 第7号
kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/025/0704/02511250704007a.html

2:外務省「日米安全保障条約(主要規定の解説)」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku_k.html
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55129
http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/837.html

[政治・選挙・NHK255] 追い詰められた韓国・文政権に対し日本がとるべき態度 韓国の文政権は厳しい状況に追い込まれている
2019年1月8日 真壁昭夫 :法政大学大学院教授
追い詰められた韓国・文政権に対し日本がとるべき態度
韓国の文政権は厳しい状況に追い込まれている


厳しい状況に追い込まれる
韓国の文在寅大統領

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、経済改革の失敗などからかなり厳しい状況に追い込まれている。昨年12月下旬に実施された世論調査では、2017年5月に政権が誕生して以降初めて、政権への不支持率が支持率を上回った。

 文氏は、「一部の財閥企業と政治家に牛耳られてきた韓国の経済や社会を変革する」と大胆な改革をうたって、特に若い世代からの不支持を集めたものの、実際の改革は遅々として進んでいない。国民の間に失望感が出るのは当然だろう。また、雇用環境が悪化する中で大卒者の就職率は低下しており、若年層からの不満は一段と高まりやすい状況だ。

 一方、海外に目を向けると、支持率回復の頼みの綱である北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の訪韓が実現できていない。文大統領は国内の不満を海外に向けて支持率を回復するために、わが国に対する態度を一段と硬化させている。日本には何をしても許されるという一方的な認識はかなり強いようだ。

 一方的に難癖をつけ、駄々をこねる子どものような振る舞いを続ける韓国に対し、わが国は相手にしないのが一番だ。ただ、朝鮮半島における地政学リスクなどを考えると、そうもできないのが実情だ。政府は、日本の主張の正当性を国際世論に分かりやすく伝える必要がある。その中で政府は、アジア新興国などとの関係を強化して、日本は発言力の向上などを目指すことを考えるべきだ。

韓国国内で
高まる文政権批判
 韓国の政治と世論を見ていると、目の前の不満や問題を近視眼的に避けようとする人々の心理がかなり強いことに気が付く。韓国では、政治家が公約を達成できなかった場合、そのリーダーに対する批判が一挙に噴出することが多い。

 そのため、韓国のこれまでの政権は、有権者からの批判を避け支持を得るために、過去の政治批判や経済的なメリットの“ばらまき”を行ってきた。それでも政治・経済の運営が思うように進まない場合、韓国は国内の不満を海外に向けさせるため対日批判を強めることが多かった。

 文政権の政策運営はまさにそうした流れを踏襲している。2017年5月の政権発足時、文政権への支持率は80%を超えた。その背景には2つの要因があった。1つは、政治と一部有力財閥との癒着を断ち切る“改革”を宣言したことだ。そしてもう1つは、韓国の景気が緩やかな持ち直し基調だったことだ。

“革新派”を自認する文氏に対して、「この人なら韓国を変えてくれる」と期待を高める人々が増えた。文氏もこの期待に応えるべく、国内においては財閥依存型の経済構造の改革、最低賃金引き上げを主張した。その一方、外交面では前政権と対照的に北朝鮮との融和策を前面に打ち出した。

 しかし、一朝一夕に経済の改革は実現できない。

 特に、韓国経済では財閥企業の業績動向がGDP成長率を大きく左右する。過去の政権が財閥優遇策を進めてきたことを理由に財閥企業の解体などを念頭に置いた文政権の政策は、韓国の潜在成長率を低下させる可能性が高いとすら考えられた。成長基盤の強化策が定まらない中で、文大統領は最低賃金の引き上げなどを重視した。それは、改革ではなく、目先の支持対策に過ぎない。

 企業に過度な負担を強いる文政権の経済運営に、企業経営者がついていけなくなったのは当然である。それが最低賃金引き上げ目標の撤回につながった。目玉政策が取り下げられたことに韓国の有権者、労働組合は批判を強め、文政権への不支持が増えている。

外交面でも手詰まり感
不満解消のための対日軽視
 外交面でも文政権の手詰まり感が高まっている。特に、文氏が重視してきた北朝鮮との融和政策は思ったようには進まなかった。2018年6月の米朝首脳会談において北朝鮮の金正恩委員長は、直接、トランプ大統領との会談を実現し、非核化と一種の“成果”をぶら下げることで時間稼ぎに成功した。

 金委員長は非核化に向けた具体的な条件、コミットメントを示すことなく、米国から体制維持の保証を取り付けることができた。同委員長にとって今後の課題は、米国と交渉を行いやすい状況を作ることだ。米国との貿易戦争が激化する中で、中国も北朝鮮への庇護(ひご)を強めるだろう。北朝鮮は中国と連携し、米国との交渉に臨めばよい。金委員長にとって、韓国との関係強化に動く必要は大きく低下したと考えられる。

 文大統領は経済政策の失敗や北朝鮮政策の行き詰まりへの批判をかわすために、わが国に対してさまざまな要求を突きつけ始めた。その姿勢を見ていると、対日批判を飛び越して、日本軽視の考えがかなり強くなっている。「日本には何を言っても構わない」との立場をとることで、文政権は自らの優位性を誇示し、有権者の不満を解消できると考えているのだろう。

 その1つが、韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金に対して、元徴用工への賠償を命じたことだ。韓国の裁判所が、韓国内で新日鉄住金の保有する資産差し押さえの強制執行に踏み切る可能性も浮上している。1965年の日韓請求権協定など政府間の合意に基づいて冷静に議論を進めようとする姿勢が韓国には感じられない。

 韓国の駆逐艦が日本の哨戒機に火器管制レーダーを照射した問題に関して、専門家の間では、日本の哨戒機の飛行に問題があったとは考えられないとの指摘が多い。一方、韓国政府は自国の行動を省みることはせず、日本に謝罪を要求している。

 この対応を見ると、「日本には何をしてもよい」という韓国の一方的な発想はかなり強いと言わざるを得ない。韓国の対日軽視姿勢と一方的な批判は今後も強まる可能性がある。その中で、わが国が文政権に事実関係の確認を求め、対話による問題解決を目指すことは難しいだろう。

高まる韓国の
政治停滞リスク
 今後、文大統領の政権運営は一段と厳しい局面を迎える可能性が高い。特に、韓国経済の減速・失速リスクが高まっていることは軽視できない問題だ。

 すでに韓国の景況感は弱含んでいる。その理由は、スマートフォンの販売不振などを受けて半導体の価格が下落しているからだ。半導体市況の悪化は韓国の景気回復を支えてきたサムスン電子をはじめとするエレクトロニクス企業などの業績を悪化させるだろう。それは、失業率の上昇など韓国経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の悪化につながる問題だ。目先、文大統領の経済運営への不満や批判は一段と高まりやすい。文氏が支持率を回復させることはかなり難しいと思われる。

 先述したように、批判をかわすために文大統領は日本軽視の姿勢を強め、従来に増してさまざまな批判や要求を行うことが想定される。日本としては、韓国からの要求に対して感情的になることは避けなければならない。本来なら、一方的な要求ばかりを行う韓国を日本が相手にする必要もないはずだ。

 ただ、極東情勢の安定を考えるとそうもいってはいられない。韓国からの理不尽な要請に対しては、過去の政府間合意などを基に、日本の認識を冷静に伝えればよい。同時に、国際社会が日本の主張の正当性を理解し、賛同することができるように取り組むことが求められる。何が問題であり、日本がどのようにその問題の解決を目指しているかを分かりやすく各国に訴え、国際世論の賛同を得ることが欠かせないだろう。

 それは、わが国の主張に賛同する“親日国”を増やすことに他ならない。特に、アジア新興国との関係強化は、最優先に進められるべきだ。日本が世界経済のダイナミズムとして期待を集めるアジア新興国との関係を強化できれば、国際政治における日本の発言力は高まるだろう。そのために、経済支援や多国間の経済連携を強化し、国同士の信頼関係を深めていくべきだ。それが、わが国が自力で国力の引き上げを目指すということだ。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
https://diamond.jp/articles/-/190211


「反日」だけが頼みの綱に、韓国・文在寅政権 トランプだけではない:ポピュリズムのもたらす独裁政治が世界に蔓延   - うまき 2019/1/08 05:44:03

韓国はレミングの群れだ もう、止められない「北朝鮮との心中」 早読み 深読み 朝鮮半島 - うまき 2019/1/08 05:45:56 (コメント数:1)
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/145.html

http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/843.html

[政治・選挙・NHK255] 官民ファンド騒動で分かった 政治家やお役人の選民意識と「身分制社会」 [橘玲の日々刻々]

019年1月7日
  
官民ファンド騒動で分かった
政治家やお役人の選民意識と「身分制社会」
[橘玲の日々刻々]


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 鳴り物入りで始まった国内最大の官民ファンド、産業革新投資機構(JIC)が経済産業省と対立し、社長や民間出身取締役全員が辞任するという異常事態になりました。報酬や運用方針について経産省官房長と文書を交わしたにもかかわらず、高額報酬への批判が高まると一転して報酬案を白紙撤回し、運営に国の関与を強めようとしたことが混乱の原因とされています。

 世耕経産相は「事務的な不手際」があったとして事務次官を厳重注意処分にしましたが、社外取締役の弁護士は「すでに有効に成立した契約の効力について、このような主張をするのは、法治国家の政府機関として法律的に納得を得られるものではない」と述べており、JICの取締役会が官房長の文書を「契約」と見なしていたことは明らかです。そのことに触れられたくないからことさらに「事務的」を強調し、事務次官と大臣の給与を自主返納することにしたのでしょう。

 安倍政権の成長戦略の一環として、官民ファンドは各省庁の主導で、「民間が手を出しにくい事業にリスクマネーを提供し新産業を育てる」という目標を掲げて2012年以降に乱立しました。しかし会計検査院の調査では、310億円の投資で44億円もの損失を出したクールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)をはじめとして、14ある官民ファンドのうち6つが損失を抱えていることが明らかになって強い批判を浴びました。JICはこの反省から、政府からの独立性を高め、金融のプロが迅速に投資活動できるようにすることで、日本に「エクイティ文化」を根づかせるという高邁な理想でスタートしたとされています。

 しかし、官民ファンドはもともと、各省庁が自分たちの権益を強化し天下り先を確保することを目論んでつくったものです。その最たるものが経産省所管のクールジャパン機構なのですから、その官庁に失敗の後始末を任せるのは「盗人に追い銭」というか「焼け太り」そのものです。最初はきれいごとをいってそれなりの人材を集め、あとから自分たちの好き勝手にやろうと画策していたのに、思わぬところで批判の火の手があがったため慌ててちゃぶ台をひっくり返したというのが真相でしょう。

 そもそもお役人のいちばんの仕事は国民の税金を私物化することで、政治家の仕事はそのおこぼれに預かることです。「政府から独立した官民ファンド」などというのは定義矛盾で、お役人になんの役得もない組織など最初から成立するはずはなかったのです。

 日本は「先進国のふりをした身分制社会」なので、お上は下賤な者との契約などいつでも勝手に反故にしていいと考えています。相手に辞任を迫りながら自分たちは「注意」と「自主返納」でけじめをつけたと言い張るところにも、政治家やお役人の選民意識がよく表われています。そんな国を「法治国家」と勘違いしたことが、ひどい目にあったJICの社長や民間取締役の蹉跌なのでしょう。

 個人的には、日本がどのような社会なのかを広く国民に示すためにもうちょっと頑張ってほしかったのですが、バカとつきあって貴重な人生の時間をムダにすることを誰にも強いることはできません。その意味では、こうした終わり方になるのも仕方なかったのでしょう。

『週刊プレイボーイ』2018年12月21日発売号に掲載

橘 玲(たちばな あきら)

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作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『「言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)、『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)、『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)など。最新刊は、『朝日ぎらい よりよい世界のためのリベラル進化論』(朝日新書) 。

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官民ファンド騒動で分かった 政治家やお役人の選民意識と「身分制社会」 [橘玲の日々刻々][2019.01.07]
外国人労働者問題で日本が勘違いしている 大きな問題とは? [橘玲の日々刻々][2018.12.25]
麻薬の合法化で中米の移民キャラバンを救済できる [橘玲の日々刻々][2018.12.17]
カルロス・ゴーン元日産自動車会長の逮捕は 20年後にどう伝えられるのだろうか? [橘玲の日々刻々][2018.12.10]
靖国神社は「御霊」を独占できるのか? 保守論壇は天皇の慰霊の旅の矛盾を説明すべき [橘玲の日々刻々]
http://diamond.jp/articles/-/190271

http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/844.html

[国際25] チャイナ・ウォッチャーの視点 年表でわかる米中の貿易摩擦の本質 改革開放の「魔」に取り憑かれた男の破滅『迫り来る嵐』 
チャイナ・ウォッチャーの視点

年表でわかる米中の貿易摩擦の本質

2019/01/08

高田勝巳 (株式会社アクアビジネスコンサルティング代表)

 昨年12月に上海で日本の地方銀行数行が主催するセミナーで中国経済の現状と日本企業のあるべきポジショニングについて話しをしてきた。その際に、米中貿易戦争について論点を整理したいと思い、日米中の経済関係年表を作成してみた。コンサルタントの癖として、顧客の問題を解決する際に、まずは、これまでの経緯をねちっこくヒアリングして十二分に現状認識をしないと気が済まないということもあるが、何事もファクトファインディングは問題解決のベースであろうということでまずこの作業を行った。

 そうすると、これまで自分なりに漠然と認識してきた日米中に総合関係並びに米中貿易戦争の本質がより明確に見えてきたようなので、みなさんと共有したいと思い、整理してみた。米中貿易摩擦の先行きは、誰も予想しにくい問題とはいえ、本質をしっかり認識しておけば、今後何らかのシグナルが見えてきた時に、次の展開を予想することができるので、ビジネスマンにとってもしっかり認識しておきたいところではないかと思う次第。

 まず、自分なりに戦後において日米中の経済関係に大きな影響を及ぼしたと思われる事象を書き下ろしてみた。


(NicoElNino/Gettyimages)
米日中の経済関係年表
1945年 日本敗戦。東西冷戦の開始。
1946年—51年 米国の対日占領地救済政府基金。「GARIOA:Government Appropriation for Relief in Occupied Area Fund。13億ドルの無償援助(贈与)。現在の価値で約12兆円(無償は9.5兆円)」
1949年 中国建国。
1950年ー53年 朝鮮戦争。
1951年 サンフランシスコ講和条約。
1955年—61年 米国の生産生向上対日援助。
1955年—73年 日本の高度経済成長期。
1968年 日本GNP世界第2位に。
1969年 中ソ国境紛争。
1972年2月 ニクソン訪中。
1972年9月 日中国交回復。
1973年 第一次石油ショック。
1978年 三中全会。改革開放が始まる。
1979年1月 米中国交樹立。
1979年2月—3月 中越戦争。
1979-2018年 対中ODA「有償資金協力(円借款)約3兆3165億円。無償資金協力を1576億円、技術協力を1845億円。総額約3兆円」
1985年 プラザ合意。それ以降日本企業の対中進出加速。
1986年—1990年 バブル経済。
1989年 冷戦終結。
1992年 南巡講話。
1997年— 平成不況。
2001年 アメリカ同時多発テロ。
2003年 イラク戦争。
2005年—人民元切り上げ「米国の要請を受け1997年から8.277で実質固定」
2008年 リーマンショックと中国への期待感。
2010年 中国GDP世界2位に。
2012年 アベノミクス「第二次安倍政権」
2014年 南沙諸島問題顕在化。
2015年 中国製造2025。
2018年 米中貿易戦争。

年表から見て取れるこれまでの経緯
 次に、年表を見て率直に感じた感想は以下の通り。

日本と中国の経済成長のきっかけは、共に冷戦構造下における対ソ牽制のための米国支援にあるのではないか。それは主に、資金提供、技術ノウハウ提供と米国市場の開放にあることが見てとれる。
そして、その支援の結果、日本と中国の経済が順調に発展し、米国の覇権を脅かすようになると、米国は牽制を入れはじめるようだ。
日本に対しては、プラザ合意であり、中国にとっては、2005年からの人民元切り上げ要請もしくは、今回の米中貿易戦争と言える。
日本は、米国の核の傘に守られた同盟国ということもあり、プラザ合理後の展開は、おそらく米国の許容範囲内と思われる範囲内で推移し、それまでの勢はバブル崩壊とともに失われ、失われた20年と言われる状況が続いている。
この間、日本企業は、円高対応のために、生産拠点を中国など発展途上国に移転することにより国際的なサプライチェインを構築して、生き残りを果してきたが、同時に日本の産業の空洞化と技術の流出ももたらした。
2012年からのアベノミクスによる円安傾向にも助けられ、日本経済は一息をついている状態で、海外市場に寛容できる大手企業がそのメリットを享受しているが、そもそも、アベノミクスが米国に許容される背景には中国の台頭もあるのではないかと思えてくる。
一方、中国は、米国からの支援を受け入れるきっかけとなったニクソン訪中の前段階では、中ソ国境紛争があり、ここから米国が中国を取り込み、対ソ牽制を行う戦略であったと言われている。
その結果、1972年に日中国交回復が先行する形で1979年に米中国交が樹立され、日本の対中ODAが実施されたもの、1979年以降となっている。日本のODAは、日本にとっては戦時賠償の一部の意味合いがあったにせよ、実施できたのは、1979年以降というのは、米国との兼ね合いもあったのではないか。いずれにせよ、米国の中国取り込み戦略があっての日中国交回復があると見ていいのではないか。
中国にとって幸いだったのは、1985年のプラザ合意後の円高により日本企業が海外の生産拠点を求めたいたことにあり、日本企業は、その頃まだまだ良好であった国民感情にも後押しされ、中国の安い労働力と外資導入熱にほだされて中国への進出を加速したことにある。
1989年は、冷戦が終結。同じくこの年の6月に天安門事件が起こり、西側諸国が経済制裁に走ったが、米国は同年から緩和の動きを見せ、西側諸国も徐々緩和を行った。
中国は、一旦改革開放の雰囲気が減速し保守化の傾向を見せたが、1992年ケ小平の南巡講話が行われ、改革開放の推進を再確認し、経済成長へのアクセルを吹かした。この後、日本企業の対中進出は円高の再加速も相まって再加速し、中国は、世界の輸出基地としての基礎を築き始めた。※米国の対中貿易赤字の推移
2005年対中貿易赤字の増加に対し、米国は1997年から8.277で実質固定されていた人民元切り上げを求めたが、プラザ合意後の円相場のような急激な切り上げは実現せず、直近のレートでも6.8782と17%程度の切り上げにとどまっている。※米ドル/人民元推移。この時点から、米国の中国経済の台頭に対する警戒感が表面化してきているものと思われるが、米国は2001年の同時多発テロ以降に対イスラムテロ対策に没頭されており、これがその後の中国の経済並びに安全保証面での台頭を許したと中国でも多くの識者が指摘しているところ。
2008年リーマンショックで国債の大量増発を迫られた米国は、中国に一部の引き受けを頼んだとされ、それと同時に、世界経済の牽引エンジンとしての、中国経済に対する期待感が高まった。中国は4兆元に及ぶ大型の経済対策を行うなどを行ったが、地方政府の債務の増加や不動産バブルの膨張など後遺症はまだ続いているとされる。
2010年、中国は日本を抜き世界第2位の経済大国になったが、その後安全保障面などでの攻勢から、米国の警戒感が高まり、今日に至っている。
米中貿易戦争をどう見るか
 上記経緯から見ると米中貿易戦争の背景は自ずと明らかであると思われるが、自分なりに整理すると以下の通り。

中国のここまでの経済的な成功の要因

 冷戦の構造的メリット(主に米日の経済的支援と市場開放)を1978年より40年享受し、自国の産業基盤の構築と資本の蓄積を果たし、世界第2位のGDPを獲得した。
経済的な実力をつけるまでは韜光養晦として、米国の警戒感を過度に刺激しなかった。
2005年からの米国の人民元切り上げの要求に対して今日まで17%の切り上げにとどめていること。 
米国の誤算

想定外の中国の持続的成長と技術力の増長。
WTO加盟後も中国市場の開放は限定的に止まっており、対中貿易赤字が増える一方であること。人民元切り上げ要求をしているものの、糠に釘で長期安定を許している。
同時多発テロ後、中東、アフガニスタンなどに気をとられているうちに安全保障面で中国の拡張を許し、自国の覇権の脅威となってしまった。
豊かになれば共産党一党独裁は維持できないと見ていたが、そうはならなかった。
中国の誤算

リーマンショック後の中国の国際的な影響力向上により、韜光養晦の戦略を変化させることができるかもしれないと考えてしまった。
その後の安保面での攻勢に対して、ここまで米国の警戒感を刺激するとは思わなかった。
輸出振興よりもより内需拡大に注力することによっても中国の収益モデルを維持拡大できると考えてしまった。
中国製造2025は、安価な労働力だけに頼れなくなった中国が、自国の産業構造を高度化するためのある意味自然な成り行きであったが、それが米国の覇権に挑戦するものと警戒されるものとは想像もしなかった。
トランプはビジネスマンなので、米国に経済的なメリットすればディールしやすいと思っていた。まさか、反トランプ陣営とも対中政策について足踏みを揃えるとは思わなかった。
米中貿易摩擦は、米国に文句を言われたら、その都度爆買いをすればなんとかなると思っていた。中国の制度にも及ぶ構造的な問題まで踏み込まれるとは思わなかった。
中国は、プラザ合意後の日本対応をよく研究しているようであるが、日本のそれと本質的に違うところは、経済面だけではなく、中国の場合は、安保面でも米国との対立構造を示していまい、問題をより複雑にしてしまったこと。
米中貿易摩擦の本質と解決の条件

両国の誤算が生んだ複雑な絡み合いと言えるのでは。
貿易摩擦の交渉は、圧倒的に買い手である米国が有利なポジションにある。
中国は、米国の市場を失いたくないのであれば、爆買いするだけでなく、米国の警戒感を解く政治的な努力が必要。輸出産業の牽引なしに中国経済の成長を維持できるとは考えにくい。
ただ、中国が米国の警戒感を解くには、中国の経済権益の再調整と安保面における妥協が必要で、外交よりも国内問題の様相が強い。中国製造2025、一帯一路、そして安保面で攻勢を強める背景は、中国国内の人民の現政権に対する支持獲得の一環であり中国共産党の正統性を補完するためという見方もある。
米国にとっては、中国を追い詰めることのメリットとデメリットを比較しながら今後の落とし所を探ることになるはず。一部メディアでは米国は中国を崩壊まで追い詰めるであろうという極端な分析も見られるが、そこまでやって米国が得るメリットは何なのであろうか。
ケ小平が1978年に始め40年間続いた改革開放政策は、ケ小平をはじめとした先人たちの遺産ともいえ、ここにきて大きなポジショニング調整の時期を迎えている。それは、中国にとって新しい収益モデル、ゲームのルールを構築することに他ならない。ここをうまく乗り越えて、新しいルールを構築することに成功したら、習近平は真にケ小平に比肩する中国のリーダと言えるのでは。今回の米中貿易戦争は、中国にとってそのくらいエポックメイキングな出来事であるといえよう。
日本企業はどうするべきか
 中国が経済的に自信を深めてからは、どちらかというと中国から、つれなくされていた日本企業であるが、久々に日本企業に対する期待感が高まっており、日本企業にとってチャンスであるのは確か。しかしながら、現状以下の問題点が存在する。

中国が欲しいのは日本の最先端技術であるが、日本が出したいのは二番手三番手のより成熟した技術。
今後、外資に対して新たな市場が解放されることが期待されるが、それにしても、日本企業の中国市場、中国企業に対する警戒感はまだまだ根強い。
企業文化、ビジネスマナーにおいても、日中両国企業間のギャップが存在する。
日本企業にとっては中国経済そのものの先行きも不安。
国際政治的にも日本が対立する米中とのそれぞれのバランスをどのように取れるのか不安が残る。
 ということで、日本企業にとっても、新たな収益モデル、ゲームのルールを構築するべき時代に我々は立っているようだ。今年は、上記諸問題をどう考え日本企業がビジネスチャンスを捉えて行くか情報発信して行きたいと考えている。 

 現時点でできることは、日中間における知的財産権の保護を前提とした技術交流、共同R&Dの成功事例を1つ1つ積み上げて行くことではないかと考えている。もし中国企業がまだまだ活用したい日本の技術があると思うのであれば、日本企業にとっての成功事例を積み上げさせる事が一番の早道と思うので、今後中国企業にもアピールして行きたい。日本企業も中国企業に騙されると言って心配ばかりしていないで、せっかくのチャンスを是非活用してもらいたい。  
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14982

 
改革開放の「魔」に取り憑かれた男の破滅を描く中国映画『迫り来る嵐』

2019/01/08

野嶋 剛 (ジャーナリスト)


『迫り来る嵐』© 2017 Century Fortune Pictures Corporation Limited
 中国人にとって、香港返還があった1997年は、日本人が想像する以上に、特別な意味を持っている。大きな時代のカーブ、ということなのだろう。1997年、そして香港を一つのキーワードにした映画は中国で多い。そうした映画のどれもが、改革開放による急成長から取り残された人々の喪失感をテーマにしている。

「中国人の喪失感」を描き出した物語
 1月5日から全国上映が始まった中国映画『迫り来る嵐』もまた、「失われた90年代と香港」を背景に用いながら、中国人の喪失感を描き出し、同時に、スリリングな社会派クライムサスペンス映画でもあるという特別な一作だ。

 中国は、経済成長で豊かさを手に入れた。しかし、成長に追いつけない人々には、満たされない欲望の空洞が生まれた。映画人たちは、その空洞を、あの手この手で描きだす。本作でも、欲望の空洞に侵された男の破滅が描かれる。時代の変化に乗り遅れる者とそうでない者の違いはどこにあるのか。結末は限りなく切ないもので、鑑賞後はやるせなさに包まれる。


 本作は、一人の男が「魔」に取り憑かれてしまう物語である。その「魔」とは功名心だ。だが、主人公のユイ・グオウェイは鉄工所で働く素人探偵だ。鉄工所では保安担当であり、不正を見つけ出して模範労働者として表彰もされ、警察からも一目置かれる存在だった。そんななか、猟奇的な女性の連続殺人事件が起きる。警察から捜査情報を聞き出し、聞き込みまで行って、怪しい人物の存在に近づきつつあった。だが、ユイはそこから暴走し、仲間や恋人を巻き込みながら、悲劇へと進んでいく。

取り残された人々はどこに行ったのか
 本作のタイトル『迫り来る嵐』は、『暴雪將至』というオリジナルタイトルをかなり直訳的に用いている。全編、雨のシーンがやたらに多い。だが、本当の嵐はこれからだ。その嵐の隠喩は、改革開放による中国の大変化である。改革開放が中国社会の「人間」にいかなる変化を起こしたかの検証はまだ十分に行われていない。中国では社会学的調査は非常に難しいからだ。


© 2017 Century Fortune Pictures Corporation Limited
 考えてみてほしい。1970年代を界に、中国は文化大革命のイデオロギー万歳の社会から、金儲け至上主義の社会へと、一気に方向転換を遂げた。その変革を主導したケ小平の果断な舵取りは見事であり、その新しい社会に適応した人々は今日の成功者となったが、取り残された人々はどこに行ったのだろうか?総中流社会に親しみ、わずかの格差で「下流」だと慌てる日本人には想像もつかない「暴雪」が、中国の1990年代には吹き荒れたのである。

 ユイの恋人がつぶやく。「(1997年がきたら)香港には簡単に行けるようになるのかしら」。それは、改革開放の流れに乗れない者のつぶやきだ。それまでの香港は中国人にとって憧れの地だった。今の香港は反中感情が吹き荒れ、中国人も「香港には何もない」と吐き捨てる時代。すでに90年代の香港と中国の関係は完全に失われたことも思い起こさせる。


© 2017 Century Fortune Pictures Corporation Limited
新しい中国映画の流れ
 本作をみて思い起こすのが数年前に日本でも公開された『薄氷の殺人』という中国映画だ。共通点は多い。事件もののサスペンスであること。そして、1990年代の喪失感をテーマにしていること。そして、中国の地方都市の不気味さを底流に物語を描き出していること。脚本も手がけた董越監督も、本作は自分が大学生であった時代に見過ごしてしまった「あの90年代」の意味を問いかける作品であることをインタビューで認めている。

 中国では格差というのは、何層もの重なる意味を持っている。貧富の格差はいうまでもない。さらに、都市間の差、都市と農村の差、勝ち組と負け組は天と地ほどかけ離れている。地方都市は勝ち組にも負け組にもどちらにもなれる場所だ。だからこそ、むき出しの欲望がなおのことさらけ出される。

『薄氷の殺人』はベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した。本作も東京国際映画祭で最優秀男優賞と最優秀芸術貢献賞を同時受賞するなど、海外でも高い評価を受けている。その内容は上質のクライムサスペンスでありながら、実は、現代中国の深い矛盾を透かし絵のように浮かび上がらせる仕掛け。そして、ノワールの暗さ。新人とは思えない手腕を発揮した若手の董越監督は過去の中国の映画監督のように個性的なタイプではなく、あくまでも冷静なプロとしてエンターテイメントの一線を守りながら、隙のない秀作に仕上げた。


『迫り来る嵐』の董越監督(筆者撮影)
 中国では、あまりにも直接的な社会批評の作品は上映が難しい。だが、社会矛盾を突くものでなければエッジの効いた内容にはならない。その間隙を縫うような難しい作業になるが、本作のようなクライムサスペンス型の社会派映画は、新しい中国映画の流れとして、今後も新作の登場を期待していきたい。

*『迫り来る嵐』は現在、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町で上映中。公式HPはこちら。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/14986
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/149.html

[経世済民130] 史上最安値圏の邦銀株「PBR 0.4倍」は買いか 日本株続伸、米中交渉期待や円高一服−輸出や資源関連株中心に上げ 
史上最安値圏の邦銀株「PBR 0.4倍」は買いか
金融テーマ解説
大槻 奈那 2019/01/07
・昨年の邦銀株は‐28%と、TOPIXを大きく超えて下落。年始時点でも、業界平均PBRは0.4倍と、過去最低を記録した2016年半ばと同程度。PBRランキングでも地銀株等がPBR0.2倍で下位を独占。
・邦銀株が「清算価値」であるPBR 1倍を超えられないのには固有の事情もある。現在も低金利が続き、海外クレジットリスクの増加、運用難、個人業務への他業界からの参入等もあり事業環境は厳しい。しかし、足元では、利鞘低下幅の縮小や経費圧縮等で、これ以上の大幅な悪化も考えにくい。
・昭和末期の邦銀株は殆ど変動せず「株ではない」とも揶揄された。平成の30年間も内外金融危機と低金利の厳しい環境に置かれた。依然高成長は見込めないが、他業界と違い、倒産リスクが極めて低く、PBR的にほぼ底値。高配当は維持されるとみられる為、邦銀株は配当重視の長期保有を推奨。
昨年の邦銀株の下落幅は、リーマンショック後最悪
昨年、邦銀株は、TOPIXを大きく超える28%の下落を記録した(図表1)。リーマンショックのあった2008年に記録した43%の下落以来、10年ぶりの暴落である。平成期の30年間をみても、他業界の株価純資産倍率(PBR)が概ね1.0倍の清算価値で下げ止まるのに対し、邦銀株はこの10年間1.0倍を超えられずに推移している(図表2)。


特に昨年末にかけての下げはきつかった。年が明けてからやや持ち直したものの、1月7日の前場終値ベースのPBRは0.4倍と、マイナス金利導入直後の2016年半ばにつけた過去最低圏をなかなか抜けられない。東証のPBRランキングでは全銘柄中の最低位をほぼ独占している(図表3)。

昭和末期までの銀行株は殆ど変動せず(図表4)、かつ、銀行の格や利益水準によって株価の序列も決まっているなど、「株ではない」とも揶揄されてきた。ようやく「株」らしく変動するようになってからは、土地バブルの崩壊とリーマンショックという日米のショックに相次いで見舞われ、正常化に時間がかかった。この間、銀行株のPBRが東証の平均を上回ることはごく稀だった。


邦銀がPBR 1倍を割れ続ける理由
邦銀株がPBRが1.0倍を超えられない理由はいくつかある。
第一に、清算時点の資産価値がアテにならないということがある。他の業界なら、清算時に資産を売却すれば、現預金や土地建物など、少なくとも簿価程度のものは回収できると考えるのが自然だ。一方、銀行の場合、清算時点では、たいてい取引先の経営も悪化しており、貸出や有価証券等の保有資産価値が大きく毀損している。預金も減少し、それに合わせて流動性の高い優良資産から先に売却してしまうため、資産の劣化に拍車がかかる。このため、今の資産価値は清算時には維持できない可能性が高い。
第二に、邦銀はROEが極めて低い。資本の必要水準が定められているため、他業界のように、大規模な自社株買いで資本を圧縮してROEを改善するという手は打ちにくい。扱っている商品にイノベーションが少ないため、急に利益が切り上がることもない。
第三に規制業種であることが挙げられる。銀行の場合、経営が苦しくなれば増資や公的資金注入などで資本が増強され、PBRが更に低下する可能性がある。また、買収を企てるファンド等も少ない。安定株主が多い上、業務の制約が厳しく、収益が計画通り上がらなかった場合でも解散して資金を回収するなどということは難しいためだ。これらの結果、「PBR 1倍」は他の業界のようなバックストップにはならない。
今後の見通し:さすがに底入れ感
今後については、ある程度の規模の銀行で、現在のPBR0.2~0.4倍という今の水準を大きく割り込むリスクはさすがに低いと思われる。
短期的には、金利の更なる低下、海外を中心としたクレジットリスク増加や、運用難が重石となる。中長期的には、地方の顧客減少や、他業界から個人向け業務への参入などもあり、銀行の事業環境は引き続き厳しい。
しかし、足元では、利鞘低下幅の縮小や、ゆっくりとではあるが経費の圧縮などもあり、減益傾向にも歯止めがかかりつつある。
銀行業界は、たとえ低PBRでも、倒産リスクは極めて低い。減配リスクも、赤字に転落しない限りまず考えにくい。赤字リスクは、スルガ銀行ほど極端なコンプライアンス問題が生じない限り、当面なさそうだ。このため、現在の高い配当利回りが維持されることが期待できるだろう。
高配当維持の可能性は極めて高く、更なる還元強化も。配当重視の長期保有を推奨
特に、近年は、コーポレート・ガバナンスに対する見方が厳しくなっており、ISSなどの議決権行使助言会社もPBR 1倍割れ企業への対応を厳格化する可能性を示唆している(ISS「18/8/2議決権行使助言方針改定に向けたサーベイ」参照)。とはいえ、PBRの分母である資本を削ることが難しい中では、株価引き上げのため、あるいは、地銀の場合は地元の株主に報いるため、安定的増配を志向する可能性が高い。
預金金利と銀行株の配当利回りを比較するのは、株価変動リスクを無視する見方ではあるものの、これだけ下値が限定される中ではある程度可能だろう。配当利回りの預金金利からの乖離幅は、今や過去最高水準である(図表5)。難しい環境が続く邦銀株に大きなキャピタルゲインは見込みにくいものの、配当利回り重視の長期保有を推奨したい。(配当利回り上位銘柄を図表6に例示)

大槻 奈那
マネックス証券株式会社 チーフ・アナリスト 兼 マネックス・ユニバーシティ長 マネックスクリプトバンク株式会社 マネックス仮想通貨研究所所長
東京大学文学部卒、ロンドン・ビジネス・スクールでMBA取得。スタンダード&プアーズ、UBS、メリルリンチ等の金融機関でリサーチ業務に従事、各種メディアのアナリスト・ランキングで高い評価を得てきた。2016年1月より、マネックス証券のチーフ・アナリストとして国内外の金融市場や海外の株式市場等を分析する。現在、名古屋商科大学 経済学部教授を兼務。東京都公金管理運用アドバイザリーボード委員、貯金保険機構運営委員、財政制度審議会分科会委員。ロンドン証券取引所アドバイザリーグループのメンバー。 テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」等、メディアへの出演も多数。 著書: 『本当にわかる債券と金利』(日本実業出版社)、 『1000円からできるお金のふやし方』 (ワニブックス)
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• 2018/12/14仮想通貨市場に復活はあるのか?
• 2018/12/06米「逆イールド」で市場動揺も、持ち直しの可能性
https://media.monex.co.jp/articles/-/10754

 
日本株続伸、米中交渉期待や円高一服−輸出や資源関連株中心に上げ
長谷川敏郎
2019年1月8日 7:56 JST 更新日時 2019年1月8日 15:42 JST
中国の劉鶴副首相が交渉に予想外の出席、為替一時1ドル=109円
原油や金属など商品市況上昇、株式需給改善の見方も

Photographer: Takaaki Iwabu/Bloomberg
8日の東京株式相場は続伸。米国と中国の貿易交渉進展期待や為替円高の勢い一服、商品市況高から過度の業績懸念が和らいだ。輸送用機器や機械など輸出関連をはじめ、石油・石炭製品や非鉄金属、海運といった資源関連業種中心に高くなった。

TOPIXの終値は前日比5.90ポイント(0.4%)高の1518.43
日経平均株価は165円07銭(0.8%)高の2万0204円04銭
  7日から始まった米中両国の通商協議に中国の劉鶴副首相が出席し、中国側が交渉を重要視していることが示唆された。7日のニューヨーク原油先物は1.2%高の1バレル=48.52ドルと6営業日続伸、ロンドン金属取引所(LME)の金属市況も高くなるなど、景気先行き懸念が和らぐとともに商品市況は上昇。きょうのドル・円相場は1時1ドル=109円と、前営業日の日本株終値時点108円20銭に比べて円高の勢いは一服した。

  大和住銀投信投資顧問の門司総一郎シニア・エコノミストは「昨年11月以降の株価乱高下は、ヘッジファンド閉鎖に伴う換金売りと米中交渉の不透明感という2つの理由があった」と語る。そうした売り物が途切れる中で米金融政策期待など後押し材料が重なって相場が反転したことから、「一部のヘッジファンドは買い戻しを迫られている。米中交渉もお互いに決着させようという意志がみえる」と分析。足元の株価上昇は「日本株を含めたグローバル株式の底入れを示すものだ」との見方を示した。

  TOPIXは昨年12月19日以来、日経平均は同12月20日以来の高値となり、年末年始にかけて乱高下を繰り返した株価は戻り歩調を強めつつある。丸三証券の服部誠執行役員は「需給面が落ち着いてきている。PBRなどから判断して日本株はファンダメンタルズの悪化を過度に織り込んだ部分がある」とし、「3月までは日経平均で1万9000−2万1000円のレンジ相場に移行するだろう。今回の米中協議で悪い話が出なければ、当面はレンジの上限を目指す動きになりやすい」と予想した。

  もっとも、TOPIXと日経平均の上昇寄与度首位はソフトバンクグループで、株価指数先物主導の色彩も強かった。「相場の先行き不透明感は晴れていない。足元では国内投資家は積極的に動いておらず、ショートカバー主体の動き」とも、丸三証の服部氏。バイオ関連株の活況も、先行き不透明感が残っている表れとみていた。

バイオ関連株活況の記事はこちらをご覧ください

東証33業種では石油・石炭製品や精密機器、海運、情報・通信、機械、輸送用機器、証券・商品先物取引が上昇
陸運、空運、食料品、パルプ・紙、化学、建設は下落

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-08/PKYJ246TTDS401
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/477.html

[経世済民130] ゴーン容疑者無罪主張、「合法的に日産支えた」−東京地裁に出廷 サウジ実業家:日産からの16億円の支払いは正当−特別背任事
ゴーン容疑者無罪主張、「合法的に日産支えた」−東京地裁に出廷
鈴木偉知郎、牧綾香、井上加恵
2019年1月8日 10:57 JST 更新日時 2019年1月8日 18:46 JST
日産に損害なし、協力者への振り込みは正当な謝礼−勾留理由開示で
スーツにノーネクタイ姿で登場、痩せた印象も−勾留長期化の可能性も
日産自動車の前会長で、会社法違反(特別背任)の疑いで再逮捕されたカルロス・ゴーン容疑者は8日、勾留理由の開示を求めて東京地裁に出廷し、合法的に日産を支えたと話して無罪を主張した。一方、ゴーン容疑者の担当弁護士は裁判が開かれるまで半年はかかるとの見通しを示し、既に2カ月近い勾留生活がさらに長期化する可能性を指摘した。

  ゴーン容疑者は同日の公判で10分間の意見陳述の機会を与えられ、日産からの報酬で開示されていないものはないと述べた。容疑事実に含まれる為替のデリバティブ取引契約については日産が一時的に引き受けただけで損失はないとした。その上で「誠実に行動し、合法的に日産を支えた」として、特別背任容疑は成立しないと事前に用意した文書を読み上げる形で述べた。


出廷したゴーン容疑者(8日、東京地裁)Source: Asahi Shimbun via Getty Images
  自身の資産管理会社と銀行との間のデリバティブ取引の契約で評価損が生じたため、契約者を日産に移転させて評価損を負担する義務を負わせたとする容疑について、円でもらう報酬への為替レート変動の影響を軽減するためスワップ取引を結んだと説明。リーマンショック後の円高で銀行から追加担保の支払いを求められて一時的に契約者を日産に移したが、その後自身に戻して日産に損害は与えなかったとした。

  さらに、この契約を資産管理会社に再移転する際、日産の子会社の預金口座から協力者が経営する会社の口座に金を振り込ませるなどして日産に損害を与えたとされる疑いについては、協力者がサウジアラビア人で日産の現地代理店を経営するハリド・ジュファリ氏と明らかにした上で、中東地域での複雑な問題を解決するなど同氏の日産の貢献に対する正当な謝礼であるとした。


ゴーン容疑者の勾留理由開示手続き前の法廷内(8日、東京地裁)Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  報酬額を実際の額よりも少なく有価証券報告書に記載していた金融商品取引法違反については、検察の主張と異なり、開示されていない報酬を日産から受け取ったことはないなどとした。

スワップ契約移転は取締役会決議
  ゴーン容疑者の弁護人を務める大鶴基成弁護士は公判後に日本外国特派員協会で開いた会見で、為替スワップ契約の変更はゴーン容疑者と日産、銀行の3者間で日産が損失を負うことのない内容で合意し、同社取締役会で議決した上で行われたものであり、犯罪には該当しないと指摘。弁護側では特にこの点について不満を持っており、今後の手続きにおいて検察には特に「考えてもらいたい」とした。   

  日産広報担当のニコラス・マックスフィールド氏は当局の決定や手続きに関してはコメントできないと述べた。

  サウジ有数の複合企業の会長を務めるジュファリ氏が経営する会社はニューヨークの広報担当者を通じ、「日産から4年間で受け取った1470万ドルはサウジにおける日産自の事業戦略の支援・促進に向けた正当な事業目的のためのもので、事業経費の立て替え払いも含まれていた」と説明した。

  ゴーン容疑者はこの日午前10時半ごろ、スーツにノーネクタイ姿で入廷。腰縄に手錠をかけられ、髪には白いものが混じり、最近撮影された写真よりも痩せているように見えた。


東京地裁に入る被告側の大鶴弁護士Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  ゴーン容疑者は昨年11月19日に有価証券報告書に役員報酬を過少記載したとして金融商品取引法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕され、12月10日に起訴されていた。12月21日に特別背任容疑で再逮捕。31日には再逮捕後の勾留期限が今年1月11日まで延長されていた。

  検事時代に東京地検特捜部長も務めた大鶴弁護士によると、非常に難しい事件で証拠も英語と日本語が混在しており、これまでの案件だけでも裁判が開かれるまで少なくとも半年はかかるだろうとの見通しを示した。

  8日中に勾留取消請求し、11日に起訴された場合は保釈請求を行う予定としながらも今回のように特別背任事件で被告が全面否認している場合、保釈は初公判までは認められないケースが多いと述べた。

  地裁によると、この日の開示手続きには、14席の傍聴席を求めて1122人が集まった。大鶴弁護士らは午後3時から都内で記者会見する。

ゴーン前会長、ケリー前代表取締役逮捕からの経緯
<2018年>
11月19日 11年3月期から5年間の役員報酬を有価証券報告書に過少記載したとして金融商品取引法違反の疑いで東京地検がゴーン、ケリー両容疑者を逮捕
11月22日 日産が臨時取締役会を開きゴーン容疑者の代表権と会長職、ケリー容疑者の代表権を解くことを決定
11月30日 両容疑者の勾留期間の12月10日までの延長を東京地裁が認める
12月10日 東京地検が両容疑者を金商法違反の罪で起訴、18年3月期までの3年間についても同法違反の疑いで再逮捕
12月20日 東京地検による両容疑者の再逮捕による勾留期間の延長請求を東京地裁が却下
12月21日 東京地検がゴーン容疑者を会社法違反(特別背任)の疑いで3度目の逮捕
12月25日 東京地裁がケリー被告の保釈を許可、東京拘置所から出る
12月31日 東京地検によるゴーン容疑者の3度目の逮捕に関する勾留延長請求を東京地裁が認める
<2019年>
1月4日 ゴーン容疑者が勾留理由の開示を東京地裁に請求
1月11日 延長後のゴーン容疑者の勾留期限
(ゴーン容疑者の弁護士による会見内容を追加し、更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-08/PKYJ246TTDS401

 

サウジ実業家:日産からの16億円の支払いは正当−特別背任事件
Brian Bremner、井上加恵
2019年1月8日 12:29 JST 更新日時 2019年1月8日 13:26 JST
ジュファリ氏がゴーン容疑者再逮捕後初めて公に説明
地検はゴーン容疑者が投資損失を日産に付け替えたとみている
日産自動車のサウジアラビアのビジネスパートナーは、自身の会社は日産自が販売代理店の問題を解決し合弁会社設立に道を開くのを助けたと指摘し、日産自の前会長で特別背任容疑で先月再逮捕されたカルロス・ゴーン容疑者の下、同社から受け取ったとされる1470万ドル(約16億円)は正当な報酬だと主張した。

  サウジ有数の複合企業、EAジュファリ・アンド・ブラザーズの会長を務めるハリド・ジュファリ氏が経営する会社は、東京地検特捜部による昨年12月21日のゴーン容疑者再逮捕以来初めて公に見解を示した。

  ハリド・ジュファリ社はニューヨークで広報を担当するテリー・ルーニー氏を通じ、「日産自から4年間で受け取った1470万ドルはサウジにおける日産自の事業戦略の支援・促進に向けた正当な事業目的のためのもので、事業経費の立て替え払いも含まれていた」と説明した。

  地検捜査の焦点は、ゴーン容疑者の資産管理会社が新生銀行と契約したデリバティブ(金融派生商品)取引。2008年金融危機の際の円急騰時に同取引で1670万ドルの評価損が生じた。

  東京地検はゴーン容疑者がこの損失を日産自に付け替え、その後、自分の資産管理会社に戻したが、この際にジュファリ氏が新生銀への信用保証で協力したとみている。

  ジュファリ社は発表資料で、日産ミドルイーストの売り上げに響いた現地ディーラーの問題解決と合弁会社設立でサウジ政府の承認を得た以外にも、「サウジ国内の日産自の新たな生産工場の認可と資金調達の確保に何年にもわたり取り組んだ」とし、「ハリド・ジュファリ社が日産自動車と日産ミドルイーストの多大な利益に貢献し続ける多くの具体的なサービスを提供してきたのは明らかだ」とコメントした。

原題:Nissan Saudi Partner Details Lobbying Work in Ghosn’s Defense(抜粋)

(6段落目にジュファリ氏の会社のコメントを追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-08/PKZROQ6S972901
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/478.html

[経世済民130] 米国債の利回り上昇は終わり、逃避先の地位回復 債券続落・ドル円上昇リスク回避一服 米国株あきらめるのは早い

米国債の利回り上昇は終わり、逃避先の地位回復
ブラックロック
masaki kondo
2019年1月8日 16:07 JST
• 10年債利回り、昨年10月には7年ぶり高水準に達した
• 今年に入り2.54−2.70%のレンジで推移している
米国債はリスク回避のための逃避先資産としての地位を回復し、一時は7年ぶり高水準に達した利回り上昇は終わったと、ブラックロックが指摘した。
  10年物米国債利回りは昨年10月に一時3.25%を超えたが、今は株価が下落すると投資家が米国債を買うため、利回りが同水準に戻ることはないだろうと、債券担当グローバル最高投資責任者(CIO)のリック・リーダー氏が述べた。
  同氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「中国から良いニュースが出たり、成長が安定し改善したりすれば、10年債利回りが3%を回復することはもちろんあるだろう。しかし、大きな動きはもう見られない」と語った。年限が短めの2年債や3年債を引き続き選好しているが、最近は年限を伸ばして10年債にも投資しているという。
  米10年債利回りは8日、2.69%。今年に入り2.54−2.70%のレンジで推移している。
  リーダー氏は10年債について、「利回りはそこそこ高く、実質金利は魅力的だ。ここ2カ月は株が下落するたびに10年債が良いパフォーマンスを見せた。これは今後も続くだろう」と語った。
リック・リーダー氏
(出典:ブルームバーグ)

原題:BlackRock Says Treasuries Back as Havens, Yield Surge Over (1)(抜粋)


 

債券続落、リスク回避一服で売り優勢−10年入札通過も株高・円安重し
三浦和美
2019年1月8日 8:03 JST 更新日時 2019年1月8日 15:39 JST
• 長期金利はマイナス0.005%、一時ゼロ%と3営業日ぶり水準に上昇
• 10年以下のゾーンは株高・円安に対して極めて脆弱−パインブリッジ
債券相場は続落。前日の海外市場でリスク回避の巻き戻しが継続した流れを引き継ぎ、売りが先行した。この日に実施された10年利付国債入札は順調に通過したものの、国内市場での株高・円安が相場の重しとなった。
• 長期国債先物3月物の終値は前日比21銭安の152円49銭。一時は152円43銭まで下落
• 10年物352回債利回りは一時、日本相互証券の前日午後3時の参照値より2ベーシスポイント(bp)高いゼロ%に上昇
市場関係者の見方
• パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長
o ドル・円相場の上昇などを受けて債券は売り優勢
o 国庫短期証券3カ月物の入札が弱い結果となったことで海外勢の需要減退が確認され、中短期ゾーンが軟調
o 5年債が弱いと先物が売られやすくなるため、10年以下のゾーンは株高・円安に対して極めて脆弱(ぜいじゃく)な状況にある
10年債入札
• 最低落札価格100円83銭、市場予想は100円82銭
• 応札倍率4.04倍、前回は3.82倍
• テール1銭、前回は3銭
• 野村証券の中島武信シニア金利ストラテジスト
o 10年債入札は順調な結果に終わった
o 10年債利回りが再びマイナスで推移してしまうリスクを考えると、ゼロ%近辺でも買っておきたい
o フェデラルファンド(FF)金利先物はき続き2020年の米利下げを織り込んでおり、円債に関しても金利が上昇する絵が描きにくい
• 過去の入札結果
背景
• 東京株式相場は続伸。日経平均株価の終値は前日比0.8%高の2万204円04銭
• 外国為替市場ではドル・円相場が一時1ドル=109円00銭と、4営業日ぶりの水準までドル高・円安が進行
• 7日の米国市場では、米中通商協議への期待感などを背景にダウ工業株30種平均が前日比0.4%高の23531.35ドルで終了。米10年物国債利回りは3bp上昇の2.70%程度
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
-0.150% -0.150% -0.005% 0.480% 0.685% 0.810%
前日比 +2.0bp +2.5bp +1.5bp +1.0bp +0.5bp +0.5bp
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6.
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-08/PL031V6JIJUR01


 

ドル・円上昇、リスク回避の巻き戻しで一時109円ちょうど
小宮弘子
2019年1月8日 12:03 JST 更新日時 2019年1月8日 15:08 JST
日本株の上げ幅拡大に伴い、午後に約1週間ぶり高値まで上値伸ばす
フロー主導で行き過ぎた相場の修正が進んでいる−みずほ証
東京外国為替市場のドル・円相場は続伸。日本株の上昇を背景にリスク回避の巻き戻しが進み、一時約1週間ぶりとなる1ドル=109円台を付けた。

ドル・円は8日午後3時現在、前日比0.1%高の108円79銭。仲値公示後に一時108円51銭まで弱含むも、午後に109円ちょうどまで上昇
ドルはカナダドル以外の主要通貨に対して反発。対ユーロでは1ユーロ=1.1485ドルから1.1432ドルまで上昇する場面も

市場関係者の見方
みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジスト

ドル・円は週初の高値108円78銭を抜けたことでストップを付けたのではないか。フロー主導で行き過ぎた相場の修正が進んでいる
米経済に対する悲観論もリセッション入りまで見るのは気が早い。ドル・円は年末に位置していた109円台くらいまでは戻しそう
三井住友銀行市場営業部NYトレーディンググループの下村剛グループ長

米中双方が前向きな形で通商協議が進展していることはサポート材料
米中協議が現状のポジティブなスタンスを確認したまま次回に引き継がれ、米政府閉鎖で解決に向けた動きが見られれば、センチメント改善にもう一段の後押しとなり、ドル・円もまずは3日の急落前の戻り高値、109円半ばぐらいまでは行けるだろう
あおぞら銀行の諸我晃総合資金部部長

先週のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言で、株はかなり安心感が出て反発しているが、米金利は戻したとはいえ10年で2.6%台。金利差を見ながらのドル買いは入りづらくなっており、リスクオンになったとしてもドル・円の上昇は限定的になる
背景

8日の東京株式相場は前日の米株高を受けて続伸。午前に伸び悩む場面も見られたが、午後に騰勢を強め、日経平均株価は一時300円超の上げ
7日から中国・北京で始まった米中通商協議には、中国側から習近平国家主席の経済ブレーンである劉鶴副首相が出席
トランプ米大統領は8日夜(日本時間9日朝)にテレビ演説を行う計画で、10日にはメキシコ国境を訪問する予定
トランプ大統領は3週目に入った政府機関の一部閉鎖を終わらせる協議の成り行き次第で、議会の承認なしでメキシコ国境に壁を建設するため国家緊急事態を宣言する可能性を示している
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-08/PKZR216JTSE901?srnd=cojp-v2


 

米国株、あきらめるのはまだ早いーJPモルガン
Ksenia Galouchko
2019年1月8日 7:03 JST
自社株買いと利益拡大、景気堅調が相場を支えると見込む
先進国市場の中で米国株をオーバーウエートとしている
米国株についてあきらめるのはまだ早いー。JPモルガン・チェースのストラテジストらはこうアドバイスする。

  ミスラブ・マテイカ氏をはじめとするストラテジストらはリポートで、米国の景気循環は盛りを過ぎたと多くの投資家が考えているようだが、記録的な自社株買い戻しや世界の他の国・地域を上回る企業利益拡大、増収加速は米国株を優位にすると考えられると記述した。

  2018年の米株相場は金融危機の08年以降で最悪だったが、JPモルガンのアナリストらは楽観を維持。先進国市場の中でオーバーウエートとしている。堅調な経済が相場を支えると見込んでいる。


原題:Too Early to Throw in the Towel on U.S. Stocks, JPMorgan Says(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-07/PKYLON6JIJUT01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/479.html

[経世済民130] 日銀推計の需給ギャップ、インフレ圧力の軟化を示唆 日本のファンド、フランス国債がメニューに 電気が消えるとお化けが出る 
日銀推計の需給ギャップ、インフレ圧力の軟化を示唆
藤岡徹、Paul Jackson
2019年1月8日 16:38 JST
日本銀行が公表した需給ギャップの最新データは、アベノミクスが7年目に入る中、需要超過に伴うインフレ圧力がピークに達した可能性を示している。

  日銀の推計によると、需要と潜在的な供給力の差を示す需給ギャップは2018年7−9月期に1.2%と、4−6月期の改定値1.6%から低下した。需給ギャップは物価の先行指標とみられている。
              
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i.JXmHOpgpNQ/v2/576x-1.png

             

  日銀はこれまで、2%の物価目標の達成を促す一つの要素として、需給ギャップのプラス推移に繰り返し言及してきた。需給ギャップのプラスは8四半期連続となり、世界的な金融危機以後では最も長い。

  もっとも、エコノミストらは、原油価格の下落や携帯電話料金の引き下げが消費者物価指数の重しとなる中、インフレ率は今年ゼロ%に向かって軟化していると既に警鐘を鳴らしている。
   
  内閣府が昨年12月に公表した7−9月期の需給ギャップがマイナスだったことも、不安心理を助長する。黒田東彦氏が日銀総裁に就任して以後、日銀が算出する需給ギャップは内閣府の数値よりも平均0.4ポイント上回る水準で推移している。 
    
原題:BOJ’s Supply-Demand Gauge Suggests Softer Inflationary Pressure(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-08/PL032L6K50XS01?srnd=cojp-v2


 
日本のファンド、フランス国債がメニューに復帰−ヘッジコスト低下
Stephen Spratt、程近文
2019年1月8日 17:10 JST
ヘッジ付き仏10年債利回り、30年物日本国債を10bp上回る
昨年10月には約6486億円相当の仏国債を売却していた
日本の投資家にとって再び、フランス国債に投資する妙味が出てきた。円上昇のおかげだ。

  ユーロ・円のヘッジコストと日本国債利回りが低下した結果、ヘッジ付きで10年物仏国債に投資した場合の利回りは30年物日本国債を10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上回るようになった。昨年11月にはマイナスだった。

  世界経済減速への懸念から円や債券が買われる中、日本のファンドは昨年10月に示していた戦略を考え直すかもしれない。同月には約6486億円相当の仏国債を売却。大手生命保険会社は資金を日本国内に回帰させることを検討していた。

  しかし、損保ジャパン日本興亜アセット・マネジメントの平松伸仁債券運用部長は今、ヘッジ付きで米債を買うことはできないが、仏国債など欧州債を買うことでポートフォリオの利回りを上げることはできるかもしれないと話している。

原題:French Bonds Back on Menu for Japan Funds as Hedging Costs Fall(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-08/PL04S06K50XV01?srnd=cojp-v2


 

バイオ関連株が活況、「電気が消えるとお化けが出る」との兜町格言
長谷川敏郎
2019年1月8日 14:18 JST
サンバイオやオンコリス、そーせいGなどマザーズで急伸銘柄相次ぐ
サンバイオ売買代金はファナック上回る、マザーズ指数けん引
8日の日本株市場でバイオ関連株が活況を呈している。昨年末までの小型株に対する需給悪化が一巡する中、大型新薬への期待などから見直し買いが強まっている。バイオ関連の人気は景気や企業業績の先行き不透明感など、日本株全体に強気になりづらい心理も裏付けている。

  この日のマザーズ市場では再生細胞薬の開発を手がけるサンバイオが一時12%高の9580円まで買われたほか、がん治療薬開発のオンコリスバイオファーマが同8.4%高の1292円、アンジェスは6.4%高とそれぞれ急伸。次世代がん免疫治療法でマイルストンを受領したと発表したそーせいグループは16%高の1078円とストップ高まで買われた。特にサンバイオは、午後1時53分時点、日本株全体でも売買代金がソニーやファナックを上回る第9位と目を見張る活況ぶり。

  丸三証券の服部誠執行役員は「昔から株式市場では『電気(電機)が消えるとお化け(医薬品)が出る』との格言がある」と話す。景気・企業業績の先行きが見通しづらい中、バイオ関連は景気に左右されない典型で、米中摩擦や為替動向などにも影響されにくい。「2020年からは大型新薬も多数上市が見込まれるなど今後大きなテーマになる」と同氏はみる。また、昨年末にかけての個人の追証に伴う売りや信用取引の担保の売りが一巡したことによる需給面の改善も、小型株の下げ一服につながっている一面もあるという。

  きょうの日本株は続伸しているものの、午後2時時点の東証1部売買代金は1兆6578億円と前日同様に終日ペースでは2兆4000億円台と売買エネルギーは盛り上がっていない。SMBC日興証券投資情報部の松野利彦氏は「米ISM非製造業がさえなかったように、世界景気は減速の方向にある。どこまで減速するかが読みづらく、相場の先行きは不透明感が残っている」と話していた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-08/PKZX6R6JTSE801?srnd=cojp-v2



http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/480.html

[経世済民130] 厚労省、勤労統計で問題隠し公表 総裁辞任の世界銀行、米国の対中圧力の新たな手段に 
主要ニュース(共同通信)2019年1月8日 / 17:23 / 30分前更新
厚労省、勤労統計で問題隠し公表
共同通信
1 分で読む

 賃金や労働時間の動向を把握する「毎月勤労統計調査」で、厚生労働省が、全数調査が必要な対象事業所の一部が調べられていないミスを認識しながら問題を説明せず、正しい手法で実施したかのように装って発表していたことが8日、分かった。問題の隠蔽とも言われかねず、批判を招くのは必至だ。

 勤労統計は月例経済報告といった政府の経済分析や、失業給付の算定基準など幅広い分野で用いられる国の「基幹統計」。根本となる重要なデータに不備があったことで、影響が広がる恐れがある。

 従業員500人以上の事業所は全数調査するルールだが、東京では該当事業所の3分の1程度しか調べていなかった。

【共同通信】
https://jp.reuters.com/article/idJP2019010801001954?il=0

 


コラム2019年1月8日 / 14:25 / 5時間前更新

総裁辞任の世界銀行、米国の対中圧力の新たな手段に
Gina Chon
2 分で読む

[ワシントン 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 世界銀行は、トランプ米政権が中国を締め付けるための新たな手段になる可能性が出てきた。キム総裁が退任を発表し、米政府は次期総裁選びに関して大きな発言力を有しているからだ。既に世銀に対中融資削減を迫り、中国の影響力増大に警鐘を鳴らしている米国にとっては、対中強硬派の新たな総裁を選出し、貿易戦争でさらなる攻勢を仕掛けるチャンスが巡ってきた。

トランプ政権はこれまで、中国に対して経済的な圧力を加えるためにさまざまな手段を行使してきた。およそ2500億ドル相当の中国製品には制裁関税を課し、米企業への中国勢の投資には規制を設けているほか、中国側が米国の知的財産や企業秘密を盗もうとする試みには刑事的な取り締まりを強化している。

そしてキム総裁が7日、突然の退任を明らかにしたことで、世銀が米中の新たなつばぜり合いの舞台になるだろう。米国は世銀に対する最大の出資国で持ち分は16%。最近では130億ドルの増資を支持したばかりだし、米国の政権に選ばれた人物が世銀のトップに就任する伝統がある。キム氏の場合、2012年にナイジェリアとコロンビアの候補と総裁の座を争ったとはいえ、途上国が本格的な対抗馬を擁立するのは難しい。

世銀はキム氏の在任中から、米中対立の渦中に置かれていた。先月にはマルパス米財務次官(国際問題担当)が議会で、米国の働きかけを受けて世銀が中国向け融資の縮小に同意したと説明している。昨年の世銀による対中融資額は約30%減って18億ドルとなった。

中国の途上国向け開発計画に世銀がよりあからさまに張り合う存在となれば、摩擦はエスカレートしかねない。中国が進める新シルクロード構想「一帯一路」は、基本的には従来の開発融資に中国第一主義の味付けをしたものだ。これに対して米財務省は各国政府に、自国の借り入れ先に関するデータをもっと開示するよう求めている。根底にあるのは、中国などの支援国による資金提供があったインフラ整備計画には、見えない形のいくつもの「縛り」があるという考え方だ。

キム氏が去った後の世銀は、早々に中国に対してより口やかましくなるかもしれない。

●背景となるニュース

*世界銀行は7日、キム総裁が2月1日付で退任すると発表した。2016年に2期目の任命を受けており、本来の任期は2022年までだった。

*クリスタリナ・ゲオルギエバ最高経営責任者(CEO)が暫定的に総裁職を担う。世銀の最大の出資国は米国で、従来は米政府が選んだ米国人が総裁に就任してきた。

*キム氏は声明で「世銀の任務はかつてないほど重要になっている。貧困層の豊かになりたい気持ちは世界中で高まっており、気候変動やパンデミック(感染症の大流行)、飢餓、難民といった諸問題は規模が拡大し、複雑性も増し続けているからだ」と述べた。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/gabon-coup-idJPKCN1P20Q7

 


 

http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/481.html

[経世済民130] ドイツ経済、成長続く見通し=経済相 スペイン首相予算案提出 ユーロ圏景況感指数予想下回る 英EU離脱延期は検討していない

ビジネス2019年1月8日 / 18:10 / 2時間前更新
ドイツ経済、成長続く見通し=経済相
Reuters Staff
1 分で読む

[ベルリン 8日 ロイター] - ドイツのアルトマイヤー経済相は、同国経済は良好に推移し受注は堅調だとの見解を示した。また同国経済の上向きの動きは続くと予想した。

アルトマイヤー氏は公共放送ARDに対し、「経済相としてのわたしの役割は、現在の好調な経済状況を批判することではなく、ドイツへの投資と雇用創出が増加するよう貢献することだ」と述べた。
https://jp.reuters.com/article/germany-economy-idJPKCN1P20OZ


 

 

ワールド2019年1月8日 / 19:50 / 4分前更新
スペイン首相、11日に予算案提出=通信社
Reuters Staff
1 分で読む

[マドリード 8日 ロイター] - スペインのサンチェス首相は8日、2019年予算案を11日に提出する方針を示した。

同国の通信社EFEとのインタビューで明らかにした。

議会で可決できない場合は、解散総選挙を迫られる可能性もある。

スペインの社会労働党政権は少数与党で、下院議席の4分の1程度しか保有していない。

予算案の議会可決には中小政党の協力が必要だが、社会労働党は中小の地域政党への譲歩はほとんどしていない。

予算案を可決できない場合は、国民党(PP)が了承した2018年予算を繰り返す可能性もある。

次回総選挙は2020年に予定されている。
https://jp.reuters.com/article/spain-economy-budget-idJPKCN1P20XT?il=0


 


ビジネス2019年1月8日 / 19:30 / 24分前更新
ユーロ圏景況感指数、12月は107.3に低下 予想下回る
Reuters Staff
1 分で読む

[ブリュッセル 8日 ロイター] - 欧州連合(EU)の欧州委員会が発表した12月のユーロ圏景況感指数は107.3と、予想以上に悪化した。

ユーロ圏経済の低迷が浮き彫りとなった。

前月は109.5。12カ月連続の低下で、2017年1月以来の低水準となった。

ロイターがまとめた市場予想は108.2だった。

製造業の景況感指数は1.1で、前月の3.4から低下。市場予想は2.9だった。

消費者信頼感指数はマイナス6.2で、前月のマイナス3.9から悪化。

サービス業景況感指数は1.4ポイント低下した。

ユーロ圏の域内総生産(GDP)は、第2・四半期が0.4%増、第3・四半期が0.2%増。市場では、第4・四半期のGDPも減速するとの見方が多い。

業況指数は0.82で、前月の1.04から低下。市場予想は0.99だった。

 
EU、イラン情報機関への制裁で合意 欧州での暗殺計画受け
Reuters Staff
1 分で読む

[コペンハーゲン 8日 ロイター] - 欧州連合(EU)は、欧州で暗殺を企てたとして、イランの情報機関に対する制裁実施で合意した。デンマークのサムエルセン外相が8日、ツイッターに投稿し明らかにした。同外相はツイッターで「欧州ではこうした行動は容認できない、ということを示すEUの強いシグナルだ」と述べた。
https://jp.reuters.com/article/euro-area-idJPKCN1P20WM?il=0

 


ワールド2019年1月8日 / 18:10 / 2時間前更新
英国、EU離脱延期は検討していない=離脱担当相
Reuters Staff
1 分で読む

[ロンドン 8日 ロイター] - 英国のバークレイ欧州連合(EU)離脱担当相は8日、EU離脱の延期はないとし、英国が3月29日にEUを離脱すると表明した。

これに先立ち、英紙デーリー・テレグラフは、EU基本条約(リスボン条約)50条に基づく英国のEU離脱手続きについて、3月29日の離脱期日までに合意案が承認されない恐れがあることから、英国と欧州連合(EU)の当局者が延期の可能性を協議していると報じていた。[nL3N1Z75GG]

同相はスカイ・ニュースに対し「この点について政府の政策は明らかだ。首相は何度も述べている。我々は3月29日にEUを離脱する。延期は検討していない」と述べた。

与党・保守党内で、メイ首相の離脱協定案への反対姿勢を変更した議員はいるかとの質問には「一部の議員は受け入れにかなり前向きになってきたと述べているが、状況が厳しいことは明らかだ」と答えた。

 
アフリカのガボンでクーデター未遂、軍兵士がラジオ局を一時占拠
Reuters Staff
1 分で読む

[リーブルビル 7日 ロイター] - アフリカ中部ガボンで7日、軍兵士が国営ラジオ局を一時占拠してクーデターを宣言したが、政府報道官によると、政権側が数時間後に2人を殺害、7人を逮捕し、クーデターは未遂に終わった。

ラジオ局を占拠した軍兵士は、50年に及ぶアリ・ボンゴ大統領一族による長期政権を批判。ボンゴ氏は大統領にふさわしくないとのメッセージを放送していた。

アナリストは、クーデターが直ちに阻止され、国民の幅広い支持も得られていないことから、政権打倒の動きが再び起きる可能性は低いと指摘。ただ、病気療養のためモロッコに滞在しているボンゴ大統領に対して国内で不満が強まっていることも浮き彫りとなった。

ラジオ局の外には、クーデターを支持する約300人が集結したが、政権側の兵士が催涙弾を発射。上空をヘリコプターが飛んでおり、路上には軍兵士や警官が多数配備されている。

ただ首都の大半の地域は平穏で、政府報道官は状況を掌握していると表明した。

ガボンは産油国。ボンゴ大統領一族が1967年から政権を握っている。アリ・ボンゴ大統領は、2009年に死去した父のオマル・ボンゴ前大統領の後を継いで大統領に就任。2016年に再選されたが、選挙に不正があったとの指摘があり、抗議活動が起きていた。
https://jp.reuters.com/article/gabon-coup-idJPKCN1P20Q7
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/482.html

[国際25] 台湾との軍事衝突にじませる中国、海峡危機の再来あるか 北朝鮮の金委員長が中国を訪問中、7─10日の日程で
コラム2019年1月8日 / 15:50 / 4時間前更新
台湾との軍事衝突にじませる中国、海峡危機の再来あるか
Peter Apps
3 分で読む

[7日 ロイター] - 中国の無人探査機が月の裏側に着陸したというニュースが世界を駆け巡った新年、中国人民解放軍の機関紙「解放軍報」は1日の社説で、「戦争準備」が2019年の最優先課題であるべきだと表明した。翌2日、今度は習近平・国家主席が演説で、軍事衝突の対象としてどこが中国の念頭にあるかを強力な形で示した。台湾である、と。

中国指導部は長年、台湾をならず者の省とみなし、支配下に置くことを共産党と軍の名誉に関わる問題と位置付けてきた。

習主席は2日の演説で、この「問題」を次世代に持ち越すことはできないと表明。「平和的統一」を強調する一方で、中国政府には必要とあれば武力を行使する権利があると述べた。香港のような「一国二制度」の形ですら、中国に取り込まれることに強く反対する人々が多い台湾は、この演説に反発した

<中国の戦争はベトナム以来>

習氏の演説には、衝突が近いと中国側が考えていることを示唆するものは何もなかった。だが、平和的「再統一」を支持する習氏の発言には、「武力使用の放棄は約束しないし、全ての必要な措置を取る選択肢を維持する」という文言も含まれていた。

これは、短期間のうちに中国側が撤退して終わった1979年のベトナムとの戦争以降、外国と戦ったことがない国にとってはリスクの大きい一手となるだろう。台湾独立を支持しないまでも、台北と「強力な非公式の関係」(米国務省)を維持する米政府との衝突も避けられなくなる。

中国が台湾侵攻を成功させるには、米国が介入してくることを抑止するか、アジア太平洋地域の駐留米軍を打ち負かすと同時に、他国軍が台湾周辺の海空域に入ることを阻止しなくてはならないと、多くの軍事アナリストは指摘する。

今の中国にその力はないかもしれないが、軍事力を増強し続けており、将来にわたってその状態が続くかどうかは分からない。少なくとも人民解放軍は、米軍の介入を阻止しつつ、領土を奪い取る戦略を中心とした戦争の可能性を考えるようになっている。

中国軍は、台湾制圧を念頭に置いた装備体系を中心に増強している。強襲部隊を運ぶ揚陸艦のほか、米軍が空母などの戦力を戦闘領域に投入できないようにするミサイルの整備に重点を置いている。

こうした兵器がどの程度有効かという議論はさておき、台湾、さらに中国が領有権を主張する南シナ海の島々を巡る武力衝突では中心的な役割を果たすだろう。

一連の動きは、地政学的な示威行動の色合いが濃い。中国政府はこの半世紀、台湾が事実上の独立国として振る舞うことを阻止できていないが、台湾が独立を宣言することは何としても防ごうとしている。

台湾周辺に軍艦や戦闘機を展開するなど、強硬な行動を拡大させているのは、独立を問う住民投票の実施は戦争になるというメッセージを台湾指導部に送るためと言える。また、大国への地歩を固める中で、中国は世界に対し、台湾を制圧しようと思えばいつでもできる力があるということを示したがっている。

<台湾も国防予算を増加>

台湾の内政状況も要素の1つだ。台湾の当局者は昨年11月の統一地方選前、中国がロシアのような選挙介入を行い、蔡英文総統率いる独立派の民進党(DPP)への支持を切り崩そうとしたと主張した。この選挙で民進党の勢力は大きく後退し、中国寄りの野党・国民党が躍進した。

だが、習主席の2日の発言は、中国が依然として軍事力の誇示が台湾に圧力をかける最善の方法と考えていることを示している。

台湾を軍事的に制圧する作戦は単純ではない。中国軍が約180キロにわたる台湾海峡を越えようとすれば、台湾軍の近代化されたミサイル、機雷、そして潜水艦や航空戦力の攻撃にさらされることになる。人口密度が高い台湾の市街地や、密林に覆われた山々は、ゲリラ戦にはうってつけだ。多数の死者を出しながら台湾侵攻に失敗すれば、国際的に大恥をかくだけでなく、習主席は政治的に危機に陥るだろう。

台湾側は明らかに、簡単にやられる相手ではないことを中国に理解させたがっている。台湾は2019年の国防費を、前年比6%増の110憶ドル(約1兆2000億円)とした。大部分を米国製や国産の最新鋭装備の調達に充てる。台湾は2日、侵攻してくる中国軍に大きなダメージを与える国産の最新型対艦ミサイルを公開した。

米中いずれも、軍事力を誇示するのは当面台湾海峡に限られるだろう。米海軍は昨年、軍艦数隻に台湾海峡を通過させ、「自由で開かれたインド太平洋」に対する米国の関与を示したものだと説明した。クリントン政権は1996年の台湾海峡危機の際、空母2隻を派遣した。今も同様の行動を取るべきと主張する向きがあるが、そうなれば中国側を激怒させるだろう。

中国は月に手を伸ばしているが、習氏の演説をみれば、同国の領土的な野心がもっと身近にあることが分かる。中国政府が台湾攻撃に乗り出すつもりがなかったとしても、習主席の発言は、いずれ戦争が起きる可能性を高めるものだ。

大国間の紛争リスクが年々高まる今、台湾を支配しようとする中国の欲望は発火点になるかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニスト。
https://jp.reuters.com/article/apps-taiwan-idJPKCN1P20F3


 


ワールド2019年1月8日 / 08:34 / 1時間前更新
北朝鮮の金委員長が中国を訪問中、7─10日の日程で
Reuters Staff
1 分で読む

[上海/ソウル 8日 ロイター] - 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、中国の習近平国家主席の招請で同国を訪問している。両国の国営メディアが8日にそれぞれ伝えた。金委員長を巡っては、トランプ米大統領との2回目の首脳会談に向けた準備作業が進められている。

金委員長は習主席と会談するとみられ、実現すれば過去1年で4回目の会談となる。

金委員長は昨年、トランプ大統領および韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との首脳会談の前後に習主席と3回会談している。

北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)によると、金委員長は7日午後、夫人や複数の高官を伴い、列車で中国に向け出発した。

中国国営の新華社も金委員長の訪中を確認し、同委員長が7─10日の日程で訪中していると報じた。訪問の目的については触れていない。

金委員長の訪中は、2回目の米朝首脳会談に向けた交渉が進んでいるとの報道が相次ぐ中、韓国メディアが最初に報じた。

米国のポンペオ国務長官は7日、CNBCとのインタビューで、北朝鮮問題の解決に向けた中国の協力を高く評価するとともに、米中貿易摩擦は影響しないとの見方を示した。

「北朝鮮の核能力による世界的リスクを抑制する米国の取り組みにおいて、中国は事実、良きパートナーであり続けている。今後もそうであることを期待する」と述べた。

中国外務省の報道官は定例会見で、貿易協議と2回目の米朝首脳会談の可能性に関連はあるかとの質問に、中国は米朝間のコンタクトは重要と考えていると発言。

「中国はつねに、両国が協議を継続し前向きな結果につながることを支援してきた」と述べた。

また、金委員長の訪問団が北京を訪れている米国の通商協議団と接触するのか尋ねられると、彼らは同等のレベルではないと答えた。

韓国外務省は、金委員長の訪中を承知しているとし、今回の訪問や習主席との会談が朝鮮半島の完全な非核化と恒久的平和の達成という共通の「戦略的目標」に寄与することを期待すると表明した。

金委員長が訪問中に取り上げる議題は明らかになっていないが、委員長はこれまで、国際的な制裁の緩和や朝鮮戦争の終戦宣言を要求してきた。

*内容を追加しました。
https://jp.reuters.com/article/nk-china-summit-idJPKCN1P12AW
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/155.html

[国際25] アングル:トランプ氏対議会、政府閉鎖打開に向けたシナリオ 
トップニュース2019年1月8日 / 14:35 / 5時間前更新
アングル:トランプ氏対議会、政府閉鎖打開に向けたシナリオ
Reuters Staff
2 分で読む

[ワシントン 7日 ロイター] - 米政府機関の一部閉鎖が17日目に入ったが、メキシコ国境沿いの壁建設費を巡るトランプ大統領と議会民主党の対立は打開の道筋が見えないままだ。

議員や政府関係者への取材に基づき、今後考え得る事態打開のシナリオをまとめた。

◎歩み寄り

*ドリーマー

トランプ大統領は、議会が壁建設費を認めるなら、幼少期に親と米国に不法入国した若者「ドリーマー」を強制送還させないという取引を提案する可能性がある。この種の取引は合意寸前までいって崩れた経緯がある。

*壁ではなくフェンス

トランプ氏は、建設するのを壁ではなく鋼鉄製のフェンスとする可能性に言及している。フェンスは既に国境の一部に設置されており、さらに建設中。建設拡大の予算を取り付けられれば、トランプ氏は勝利を宣言でき、民主党側は壁を阻止したと主張できる。

*その他の措置

メキシコ国境の警備強化には、全地形対応車や国境警備隊の配備を増やすなど、壁以外にも多くの手段がある。

*金額で妥協

トランプ氏が要求する壁建設費50億ドルと、民主党が提案する国境警備費16億ドルとの間で、歩み寄りが成立する可能性がある。

◎非常事態宣言

トランプ氏は、不法移民が米国の治安を脅かしているとして、国家非常事態を宣言し、国防総省などの既存の連邦予算を壁建設費に転用する可能性をちらつかせている。憲法では、税金の使途を決める権限は議会にあり、トランプ氏がこうした行動に出れば、大統領の権限を巡る論争へと対立が激化しそうだ。長い法廷闘争に発展してもおかしくない。

◎民主党が折れ、トランプ氏が勝利

政府機関の閉鎖長期化を案じ、民主党が折れるかもしれないが、政治環境を考えるとその確率は低い。

民主党は昨年11月の議会中間選挙で下院の過半数を制した。世論調査によると、トランプ氏の支持率は40%前後をさまよっており、有権者の間では壁の必要性について懐疑的な見方が多い。

また、12月末にロイター/イプソスが行った調査によると、政府機関閉鎖は議会民主党よりトランプ氏の責任が大きいと考える有権者の方が多い。

◎トランプ氏が折れ、民主党が勝利

トランプ氏は、政府機関の閉鎖によって一般市民の生活に支障が及ぶのを見て、閉鎖は政治的に危険過ぎると判断する可能性がある。トランプ氏は、閉鎖を終わらせる民主党の予算案を承認する一方で、勝利を宣言する道を探す。

民主党が先週可決した予算により、2月8日まで国土安全保障省の支出が手当てされる見通しなので、ホワイトハウスと議会は国境警備について交渉する時間的余裕がある。他の一部政府機関も、個別の予算案が可決されることにより、財源を取り戻すことができる見通し。

(Richard Cowan記者)
https://jp.reuters.com/article/us-shutdown-idJPKCN1P2090


 

http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/156.html

[国際25] トルコ大統領、ボルトン米大統領補佐官との会談を拒否 米軍のシリア撤退、トルコによるクルド人安全確約が条件−ボルトン
トルコ大統領、ボルトン米大統領補佐官との会談を拒否
Onur Ant
2019年1月8日 19:47 JST
トルコのエルドアン大統領は、ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)との会談を拒否した。その上で、米軍撤退後のシリアでクルド人勢力が重要な役割を果たすという米国の提案に対し、前倒しして行った議会演説で全く受け入れない姿勢を打ち出した。

  エルドアン大統領は8日、トルコ議会で与党・公正発展党(AKP)の議員らに対し、米軍撤退後のシリアで過激派組織「イスラム国(IS)」の残党と戦う準備をトルコはほぼ完了したと言明。あらゆるテロの脅威を「無力化する」ため、近く行動を起こすだろうと述べた。

原題:Turkey’s Erdogan Refuses to Meet With Trump Adviser Bolton(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-08/PL0D0G6S972A01?srnd=cojp-v2


 

米軍のシリア撤退、トルコによるクルド人安全確約が条件−ボルトン氏
Margaret Talev
2019年1月7日 2:28 JST
ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は6日、トルコがクルド人勢力を攻撃しないと約束するまで、米軍はシリア北東部での駐留を続けると述べた。クルド人勢力の保護というトランプ大統領の方針を明確に示した格好だ。


ボルトン米大統領補佐官写真家:Joshua Roberts / Bloomberg
  ボルトン氏はイスラエルで記者団に対し、「トルコは、米国と十分調整せず、同意も得ていない軍事行動を起こすべきではない」とし、「米軍を危険にさらさないという点だけでなく、われわれと共に戦ってきたシリアの反体制派勢力を危険にさらさないというトランプ大統領が要求する条件を満たすという意味でもそうだ」と述べた。

  同氏は、シリアからの米軍撤退に関して目標時期は設定しないと説明。「重要な点は、米軍がシリア北東部から将来的に撤退するということだ」と述べた。

原題:U.S. to Protect Kurds From Turks in Syria Exit, Bolton Says (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-06/PKX03V6K50XS01


 
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/157.html

[国際25] 米軍のシリア撤退、慎重に計画されるべき─トルコ大統領 米国人男性2人、シリアで拘束 ISIS戦闘員か 


ロイター2019年01月08日 07:49

米軍のシリア撤退、慎重に計画されるべき─トルコ大統領=NYT


[アンカラ 7日 ロイター] - トルコのエルドアン大統領は7日、米軍のシリア撤退は慎重に、かつ適切なパートナーとともに計画されるべきだと警告した上で、トルコが「その任務を遂行する力とコミットメントを有する」唯一の国であるとの認識を示した。

同大統領はボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)との会談予定日の前日、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)のオプエドで、トルコはシリアにおいて「イスラム国」や「その他テロリスト集団」の打倒に尽力しているとした。

エルドアン大統領は「トランプ米大統領はシリア撤退という正しい決断をした。しかし、米国の撤退は米国、国際社会、シリア国民の利益を守るため慎重に計画され、適切なパートナーとの協力の下で遂行されなければならない」と指摘。その上で「北大西洋条約機構(NATO)で2番目に大規模な常備軍を持つトルコは、その任務を遂行する力とコミットメントを有する唯一の国だ」との見解を示した。

ボルトン大統領補佐官は6日、トルコが米国の同盟相手であるクルド人勢力を保護することに同意しなければならないと述べ、米軍のシリア撤退に新たな条件を追加した。トルコは同勢力を敵対視している。

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米国人男性2人、シリアで拘束 ISIS戦闘員か
2019.01.07 Mon posted at 15:05 JST

戦闘員としてISISに加わった疑いで、米国人男性2人がシリアで拘束されたという/Syrian Democratic Forces
戦闘員としてISISに加わった疑いで、米国人男性2人がシリアで拘束されたという/Syrian Democratic Forces

(CNN) 米国が支援するシリア反体制派の「シリア民主軍(SDF)」は6日、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の戦闘員と思われる米国人の男2人を拘束したと発表した。

SDFによると、拘束した米国人のうち1人はテキサス州ヒューストンの出身。もう1人の出身地には言及していない。

この2人と一緒にいた集団には、アイルランドやパキスタン出身の戦闘員が含まれるという。

米国防総省のロバートソン報道官は、ISISの戦闘員だったと思われる米国人が拘束されたという情報については認識しているとしながらも、現時点で確認はできていないと話している。

米軍は昨年10月、やはりISISのメンバーだった疑いがあるとしてシリアで拘束された別の米国人男性を釈放していた。

この男性は米国とサウジアラビアの二重国籍を持ち、2017年9月以来、裁判も行われないまま拘束され続けていた。

この男性が釈放された時点でSDFは、約40カ国から来たテロ組織の外国人戦闘員700人以上を拘束していた。


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記事
野口雅昭2018年12月22日 16:12米軍のシリア撤退(トランプの決定に関するイスラエル紙の報道)


トランプの米軍のシリアからの撤退決定は、米政府の大方の者にとっても驚きで衝撃であった模様ですが、イスラエルのhaaretz net は、この決定はトルコのエルドアンとの電話会談で、トランプがだれにも相談せずに、また安全保障チームの一致した反対にもかかわらずとったものだと報じています。

記事の要点は次の通りですが(米大統領府はその内容を否定し、米政府はコメントしていない由)が、なかなか尤もらしく、トランプ劇場の真骨頂か!と言う感じすらします。

しかし、こんな調子で、超大国の大統領が、トルコ辺りに簡単に一本取られているとしたら、世界はどうなるのでしょうか?

このhaaretz 紙は、中道左派のメディアではあるが、イスラエルと米国の特殊関係に鑑みれば、情報関係者辺りから正確な話を聞いている可能性もあるかと思います。もちろん真偽のほどは不明

・シリアからの米軍撤退については、米政府関係者は一致して反対していた。
トルコのエルドアンは、シリア民主軍を叩くと一致して脅していたが、これに対しては国境地帯の一部占領にとどめるとか、その他なにがしかの小さな見返りを与えることで抑えようとの考えで一致していた。

・両大統領の電話会談については、安全保障チームがアレンジを勧めたが、大統領へのトークポイント(発言要点)では、トルコのシリア侵攻には強く反対することが、明確に盛り込まれていた。
これまでトランプはこのようなアドバイスに従ったが、今回はこれを無視して、エルドアンに屈服してしまった

・会談でエルドアンはトランプを追い詰め、米国がシリアのISはほぼ完全に敗れたとしていることと、米軍の駐留はISとの戦いだけのためであるとしている矛盾をついて、それならば、なぜ米軍はシリアに居るのか?と追い詰めた。

・トランプはエルドアンを電話に待たせ、ボールトン補佐官に、エルドアンの主張していることは事実かと確認した。両大統領の会話を聞いていたボールトンは、事実だと返答する以外になかったが、安全保障チームは一致して、ISに対する勝利を確実にするには更なる米軍駐留が必要だとしているとアドバイスした。

・しかし、トランプは聞く耳を持たず、エルドアンに屈服したが、これはボールトンのみならず、エルドアンをも驚かした。
エルドアンは、トランプにむしろ性急な撤兵に懸念を示し、慎重にするように求めたが、これはトルコ軍はシリア民主軍全部を相手にするほどの戦力集結していない所為だと思われた。

・しかし、トランプは、時期は明示しなかったものの米軍は撤退すると約して会談は終わった

・その週末、米安全保障チームは、決定を覆したり、修正したり、何等か別の見返りを与えること等の代案造りに奔走した・

・月曜日、マチス長官、ポンペイオ長官、ボールトン等は大統領府で協議したが、新旧首席補佐官から、大統領が翻意する可能性はないと告げられた。
彼等は火曜日にももう一度会議したが、同じことであった

・大統領府は当初火曜日に、撤退を発表する予定であったが、国防総省は撤退計画ができていないこと、同盟国や議会に対しての説明もされていないことから遅らせることを説得した。同盟国で最初に通告されるのはイスラエルのはずであった・

・ところが中東軍司令官が配下の軍の司令官たちに連絡をしているうちに、内容が徐々に漏れ出し、発表は水曜日とされたものである

https://www.haaretz.com/us-news/trump-decided-to-withdraw-from-syria-without-consulting-national-security-team-1.6766881

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アラブ諸国に精通する元外交官。アルピニスト野口健氏の実父。
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[政治・選挙・NHK255] 公務員、60歳から賃金7割 定年延長で法案 公務員の定年延長 給与7割水準 公務員の賃金カーブ、民間との格差に配慮
公務員、60歳から賃金7割 定年延長で法案
【イブニングスクープ】
働き方改革 経済 政治 法務・ガバナンス
2019/1/8 18:00日本経済新聞 電子版
保存 共有 その他
国家公務員の定年を60歳から65歳に延長するための関連法案の概要が判明した。60歳以上の給与水準を60歳前の7割程度とする。60歳未満の公務員の賃金カーブも抑制する方針を盛り込む。希望すれば65歳まで働ける再任用制度は原則廃止する。総人件費を抑えながら人手不足を和らげる。政府は民間企業の定年延長の促進や給与水準の底上げにつなげる考えだ。

政府は国家公務員法や給与法の改正案などの関連法案を年内にも…


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公務員の賃金カーブ、民間との格差に配慮[有料会員限定]
2019/1/8 19:14

霞が関、迫られる人事改革 
2018/8/10 20:00

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39759660Y9A100C1SHA000/


公務員の定年延長 給与7割水準
人事院、国会と内閣に申し入れへ
2018/8/3 2:00
人事院は現在60歳の国家公務員の定年延長に向け、60歳以上の給与を50歳代後半の水準から3割程度減らす方針だ。8日に国会と内閣に申し入れる。政府は定年を2021年度から3年ごとに1歳ずつ上げ、33年度に65歳とする方向で検討する。段階的な引き上げに備え、人件費を抑える。60歳の定年が多い民間企業でも公務員の基準を参考に見直しが広がる可能性がある。

人事院が厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を基に60歳以上を正社員として雇用する民間企業で働く正社員の年間給与水準を比較したところ、60歳代前半の社員は50歳代後半と比べて平均で3割程度低いことがわかった。民間の水準と合わせ、60歳以上の国家公務員の給与も3割減に設定する。政府は19年の通常国会にも関連法の改正案を提出する。

現在は次官など一部の役職を除いて、国家公務員は60歳で定年を迎える。希望すれば退職後、1年ごとの更新で65歳まで働ける再任用制度があるが、給与は現役時代から半減することもある。

定年延長後もそれ以前と同程度のポストで働く場合、定年退職後に低いポストで再任用されるより厚待遇が望める。定年延長で一定の給与水準を確保しながら長く働く受け皿が整えば、国家公務員の天下りの抑止力にもなり得る。

人事が滞らないよう、一定の年齢に達すると管理職から外す「役職定年制」も導入する。例外として、専門性が高く後任を見つけにくい職種などに限り、1年ごとに最大3年まで留任を認める「特例任用」の制度もつくる。その間は3割の減給の対象から外す。

個人の事情や体力などに合わせた多様な働き方を可能にするため、60歳以上の職員が短時間勤務を選択できる仕組みも盛り込む。短時間勤務の場合の給与は勤務日数に応じて変動する。

定年の延長は、公務員の年金の支給開始年齢が25年度にかけて段階的に65歳に引き上がることに合わせた措置だ。人件費の膨張を抑えながら、高齢化や年金制度の見直しに対応する。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33746930S8A800C1EA1000/



公務員の賃金カーブ、民間との格差に配慮
政治
2019/1/8 19:14日本経済新聞 電子版
▽…人事院は毎年、民間企業の給与水準を調べ、国家公務員の給与を是正する人事院勧告(人勧)を内閣と国会に対して行っている。景気回復などを反映し、官民の給与格差が生じないようにする。争議権などの制約を受ける国家公務員の労働基本権の代償措置としての機能も持つ。地方公務員の給与も通例、人勧に沿って改定される。2018年8月には、18年度の国家公務員一般職の月給を平均655円(0.16%)、ボーナス(期末・…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39768950Y9A100C1EA2000

定年延長は官民が一体で
2018/8/11 1:06
人事院が国家公務員の定年を原則65歳に延ばすよう求める意見を国会と内閣に伝えた。一億総活躍社会に向け、長く働ける環境づくりは重要だが、官があまり先走ると不公平感を生みかねない。民間企業の実態を丁寧に調査し、官民が足並みをそろえて進んでいける方策を考えるべきだ。

国家公務員の定年は現在、原則60歳である。年金支給開始年齢の65歳への引き上げを踏まえ、民間企業における定年後の再雇用とほぼ同じ再任用という仕組みが導入されている。

人事院によると、再任用の希望者は年々増え、2018年度は1万3000人を超えた。その7割が主任・係長級での採用のため、給与減や地位の低下への不満が増しているそうだ。

公務員がやる気を失い、行政サービスが低下しては困る。とはいえ、民間の再雇用では給与水準が下がる事例が大多数だ。最高裁は6月、そうした給与減は不合理ではないとの判決を出した。

再雇用ではなく、定年延長や定年廃止を選択している民間企業はまだ2割に満たない。官だけが急いで定年を延ばさなくてはならない理由があるだろうか。

定年を延ばすと移行期間中、退職者が大幅に減るため、国の総人件費は当然、増えることになる。財政難のおり、歳出増はできるだけ抑えたいところだ。

そのための対策として、人事院は(1)賃金カーブの見直し(2)一定の年齢になると管理職から退く役職定年制の導入――を挙げる。いずれも民間ではすでに当たり前になっている。定年延長と引き換えでなく、取り組むべきだ。

少子化時代を乗り切るには、豊富な経験を持つベテラン世代に頑張ってもらうことが不可欠だ。だからといって年功序列的な体質を引きずったままやっていけるほど日本経済に余裕はない。

官民が協議会などを設け、一体となって同じ悩みに取り組む。それこそが日本の活力を引き出す道ではないか。
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO34077190R10C18A8EA1000/


霞が関、迫られる人事改革 国家公務員、65歳に定年延長
2018/8/10 20:00
人事院は10日、国家公務員の働き方改革を進めるための具体的な方針を公表した。65歳までの定年延長や長時間労働の是正に向けた残業時間の上限規制の導入が柱だ。多様な働き方に対応できるようにして人材を確保する狙いだが、改革を機能させるには、国家公務員の人事・給与の仕組みを広範囲に見直す必要がありそうだ。

政府は2月に定年延長の方針を決め、人事院に意見を求めていた。同日に人事院が政府と国会に提出した意見書では、現在60歳を65歳にするべきだとしている。民間企業の水準に合わせて60歳以上の職員の給与は60歳前の7割が妥当とした。政府は来年の通常国会への関連法改正案の提出を目指す。定年は段階的に引き上げ、2033年度に完了させる方向だ。

定年延長の背景にあるのが霞が関の人材不足だ。現在も65歳まで働ける再任用制度があり、再任用された職員数は18年度で約1万3千人とこの5年で2倍に増えている。

しかし再任用職員の7割は主任・係長級で政策立案の中核ポストには就いておらず、また8割が短時間勤務だ。政府は現役時代の経験が十分に生かされておらず、人材不足を解消する切り札になっていないとみている。

定年延長を機能させるには国家公務員の人事・給与システム全般を見直す必要が出てきそうだ。その一つは定員管理。再任用職員の多くが短時間勤務なのは、各省庁のフルタイム職員数に実質的な上限があるためだ。定年を延長しても定員が変わらなければ、新規採用の削減を迫られる本末転倒な事態も想定される。

人事院は申し入れの中で定員管理を見直し、必要な規模の新規採用を計画的に継続できるように対応を求めた。ただ公務員の人数を増やすことには国会審議などで反対意見も予想される。

意見書では、60歳以上の職員の給与引き下げは当分の間の措置とし、60歳前の給与カーブのあり方などを検討することも求めた。65歳定年を前提に賃金カーブのピークを後ろ倒しさせるような制度のあり方を探ることになるとみられるが、その場合、公務員の総人件費を増やすのか、総人件費は据え置き、その範囲内で賃金カーブを調整するのかも論点になる。

人事が滞らないように原則60歳に達すると管理職から外す「役職定年制」も導入する。専門性が高く後任を見つけにくい職種などに限って留任を認める「特例任用」の制度も設けるように求めた。

働き方改革のもう一つの柱が、長時間労働の是正にむけた人事院規則の見直しだ。国家公務員には労働基準法が適用されないので、人事院規則で労働条件などを定める。来年4月から原則として月45時間かつ年360時間の残業上限を設ける。国会対応や外交などで繁忙が左右される部署は月100時間かつ年720時間を超過勤務の上限とする仕組みに改める。

ただ「抜け穴」もできる。来年4月に民間企業に設定される残業時間の上限規制では、年720時間を超えて働かせた企業には罰則があるが、国家公務員には罰則はない。さらに、重要法案の立案や大規模災害の対応などやむを得ない場合は上限を超えられるとしたので、国会対応を理由とした長時間労働が残る可能性が大きい。

上限時間を超えた場合は事後的に検証する仕組みをつくるとしており、長時間労働の野放しを避ける配慮はされているが実効性は不透明だ。

中央省庁の長時間労働を是正するには、国会議員の各省庁への質問通告をもっと前倒しするなど国会改革を進めることも必要になる。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34052890Q8A810C1EA3000
http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/860.html

[政治・選挙・NHK255] 生産性の視点欠く「脱時間給」の制度設計 働き方改革法が成立 脱時間給や同一賃金導入 
生産性の視点欠く「脱時間給」の制度設計
2019/1/8付日本経済新聞 朝刊
 働き方改革が後退しないか心配だ。労働時間規制に縛られずに働け、職務や成果をもとに報酬が決まる「高度プロフェッショナル制度(脱時間給制度)」の対象者が、より限定的になるからだ。

 生産性向上を後押しする制度ができるのは前進だが、働き手や企業の使い勝手が悪ければ意味は薄れる。日本の労働生産性は主要7カ国で最も低く、引き上げは急務だ。制度設計にあたる厚生労働省は危機感を持ってもらいたい。

 厚労相の諮問機関である労働政策審議会が、4月から始まる脱時間給制度の具体的なルールを盛った省令案と指針案を了承した。一部の専門職を労働時間規制から外すこの制度は働き方改革関連法で創設が決まり、適用対象の業務や年収基準などは詳細を省令や指針で定めることになっていた。

 対象業務は想定されてきた金融商品の開発やコンサルタント、研究開発など5つのままだが、年収条件は一段と厳しくなった。これまで示されてきた「1075万円以上」には、成果や業績に連動する賞与など、支給額が未確定のものを含まないことになった。

 年収1000万円超の人でも民間企業で働く人の4.5%にすぎない。柔軟に働ける新制度を活用できる人が当初の想定よりもさらに少なくなるのは問題だ。

 企業による働き手への成果の要求や期限の設定も制限し、日時の決まった会議への出席の義務づけもできないとした。働き手の裁量を重視するのはわかるが、組織の生産性を下げる恐れがある。

 対象業務についても、たとえばコンサルタントの場合、「時間配分を顧客の都合に合わせざるを得ない相談業務」などは除外される。現実的か、疑問だ。

 厚労省が制度の対象者を絞り込んだのは、長時間労働を助長するといった反発が労働組合などに根強いことを踏まえたためだ。

 だが労働者保護の点では、年104日以上の休日取得の義務づけや、いったん制度の適用に同意した人も撤回できるなど一定の措置がある。制度の対象者を絞り、働く人の選択肢を狭めるのは、労働者保護に反しないか。

 脱時間給制度は専門性のある人などが広く使えるようにする必要がある。厚労省は機会をとらえて制度設計を見直すべきだ。仕事の時間配分を自分で決められる裁量労働制の対象拡大は昨年見送られたが、早期の実現を求めたい。
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO39734490X00C19A1EA1000/


 

働き方改革法が成立 脱時間給や同一賃金導入
2018/6/29 11:48 (2018/6/29 12:53更新)日本経済新聞 電子版
 政府が今国会の最重要法案とした働き方改革関連法は29日午前の参院本会議で可決、成立した。残業時間の上限規制や、正社員と非正規の不合理な待遇差を解消する「同一労働同一賃金」、高収入の一部専門職を労働時間の規制から外す「脱時間給制度(高度プロフェッショナル制度)」の導入を柱とする。日本の労働慣行は大きな転換点を迎える。


 働き方改革法には与党に加えて、日本維新の会、希望の党、無所属クラブの5会派が賛成した。立憲民主党、国民民主党、共産党などが反対した。加藤勝信厚生労働相は法成立を受けて「改革を通じて生産性向上につなげる。法の趣旨をさらに説明し、一人ひとりが実情に応じて働くことができる社会の実現に努力したい」と述べた。

 28日の参院厚生労働委員会では付帯決議を可決した。働き方改革法に関する要望や監督指導の徹底を促す内容で47項目からなる。脱時間給制度を導入した事業所全てに労働基準監督署が立ち入り調査するなど、野党が反対してきた脱時間給制度に関する13項目も盛り込まれた。国民民主党、立憲民主党も付帯決議には賛成した。

 働き方改革法は労使の代表が参加した「働き方改革実現会議」の実行計画に沿ってつくった。労働基準法など計8本の法律を一括で改正する。長時間労働を是正するため、残業時間の規制は「原則月45時間、年360時間」と定める。繁忙期に配慮し、上限は年間で計720時間、単月では100時間未満に規定する。違反した企業には罰則を科す。大企業は2019年4月、中小企業は20年4月から適用する。

与党などの賛成多数で働き方改革関連法が可決、成立した参院本会議(29日午前)
与党などの賛成多数で働き方改革関連法が可決、成立した参院本会議(29日午前)

 同一労働同一賃金は、正社員や非正規などの雇用形態に関係なく、業務内容に応じて賃金を決める制度だ。基本給は勤続年数や成果、能力が同じなら同額とする。休暇や研修も同様の待遇を受けられるように改め、通勤・出張手当も支給する。大企業は20年4月、中小企業は21年4月から導入する。

 脱時間給制度は、年収1075万円以上の金融ディーラーやコンサルタントなどの専門職に対象を限る。残業代は支給せず、成果で賃金を決める。無駄な残業を減らし、労働生産性の向上につなげる狙いがある。

 制度を利用するには、企業の労使で導入に合意し、対象者本人の同意も得る必要がある。健康確保措置として「4週間で4日以上、年104日以上」の休日確保を義務付ける。労使で「労働時間の上限設定」「2週間連続の休日」などから1つ以上の対策を選択する必要もある。対象者が自らの意思で制度から離れることもできる。19年4月から始める。

 安倍晋三首相は今国会を「働き方改革国会」と位置づけ、法成立に強い意欲を示してきた。しかし、厚労省の労働時間調査に不備が見つかり、同法案の柱だった「裁量労働制」の切り離しを2月末に決めた。衆院では5月31日に本会議で法案を可決し、参院に送付していた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32398980Z20C18A6MM0000/
http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/861.html

[経世済民130] 1人当たりGDPランキングの推移(1990年・2000年・2010年・直近)  日本の地位は低下 先進国の仲間入り韓国
1人当たりGDPランキングの推移(1990年・2000年・2010年・直近) / 日本の地位は低下傾向

投稿日:2018年1月21日 更新日:2018年10月20日
目次
• 1人当たりGDPランキング(1990年・2000年・2010年・直近)
1. 1人当たりGDPの基準(先進国・新興国)
2. 1人当たりGDPの注意点
• 各国の1人当たりGDPについての考察
0. 米国の1人当たりGDPは順調に増加
1. 日本の地位は相対的に低下
2. 新興国から先進国の仲間入りをした韓国
3. 人口は多いが1人当たりGDPが小さい国は将来の経済成長のドライバーとなりうる
1人当たりGDPランキング(1990年・2000年・2010年・直近)
国別1人当たりGDPのランキングです。
1990年、2000年、2010年、直近のデータを掲載しています。
それぞれ50位までのランキングに加えて主要新興国のデータも掲載しています。
1人当たりGDPは各国の成長レベルを表すことから、投資を行う上で非常に参考になります。


1人当たりGDPの基準(先進国・新興国)
1人当たりGDPがいくら以上だと先進国といった明確な基準はありません。
1万ドル以上で先進国としているケースもありますが、一般的な考え方としては、直近の水準で約3万ドル以上が先進国と言えます。(これはあくまで目安ですので韓国やスペインも経済的には先進国と考えられています)
1万ドル未満が新興国で1万ドル〜3万ドルはその中間です。
また3000ドルを超えると自動車や家電などの普及率が急速に高まると言われています。
実際、1970年代の日本や2000年代の中国でこの現象が発生しました。
逆に考えると1人当たりGDPが3000ドル未満の時は、成長のポテンシャルは高いが経済の仕組みとしてはまだぜい弱な段階と言えます。
1人当たりGDPの注意点
まず1つめの注意点として、上位に人口が少ない小国が並んでいますがこの辺は参考程度に見ておく必要があります。
例えば、ルクセンブルグなどはタックスヘイブンであり、多くのファンドが籍を置きます。
その為、ファンド関連の業務を行う会計士や弁護士、金融機関の従業員の人数が多くなります。
人口が少ない中でこのような所得の高い人が多いことが1人当たりGDPを押し上げることになります。
2つめの注意点として1人当たりGDPは米ドル建てで表示されるので為替レートの影響で上下する場合があるということです。
例えば2010年と2017年のブラジルを見ると1人当たりGDPが減少しています。
これはGDPがマイナス成長になったわけではなく、ブラジルレアルが米ドルに対して下落したことが原因です。
このように各国の経済成長とは関係なく為替レートの影響を受ける場合もあるので注意が必要です。
日本の場合は円高は1人当たりGDPの上昇要因で円安は低下要因となります。
各国の1人当たりGDPについての考察
米国の1人当たりGDPは順調に増加
米国は現在でも人口が増加しながら、1人当たりGDPも順調に増加しています。
1人当たりGDPは57,608ドルで国別ランキングは8位となっていますが、小国を除くと実質的には1位となります。
日本の地位は相対的に低下
2000年までは日本は1人当たりGDPで米国を上回る水準で小国を除くと実質的には世界第1位でした。
しかし現在では米国はもちろん、ドイツやイギリスにも抜かれてしまいました。
経済成長率が低いことに加え、1人当たりGDPは名目GDPによる表示であることから低いインフレ率も日本の地位が相対的に低下した要因となっています。
日本の1人当たりGDPの長期チャートやドル円レート・TOPIXとの比較チャートはこちらを参照してください:日本の1人当たりGDP推移と世界の1人当たりGDP
新興国から先進国の仲間入りをした韓国
韓国の1人当たりGDPは順調に増加しています。
よくあるケースとして1人当たりGDPが1万ドル前後までは順調に増加するが、そこから急に伸び悩むという「中所得国の罠」と言われる現象があります。
韓国はこの1万ドルの壁をスムーズに超えて先進国の仲間入りを果たしており、よく成功例として取り上げられることがあります。
現在ではブラジルやメキシコがこの壁をしっかりと超えられるかが注目されています。
人口は多いが1人当たりGDPが小さい国は将来の経済成長のドライバーとなりうる
上記表の下の方に掲載されているインドネシア、ナイジェリア、インド、パキスタン、バングラディッシュは現在でも総人口のランキングでは世界のトップ10に入っている国々です。
今後もこれらの国々は当面、人口が増加する見通しとなっています。
世界各国の人口推計はこちら:世界の人口推計(人口予測)
1人当たりGDPは最も高いインドネシアでも3000ドルをようやく超えたところです。
先進国になるまでには1人当たりGDPが10倍以上となり、元々多い人口がさらに増えることになりますので、これらの国々の成長が世界経済をけん引していくことになります。

https://finance-gfp.com/?p=4592
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/486.html

[国際25] レーダー照射:国際法違反を知られたくなかった韓国 韓国軍が海自哨戒機にレーダー照射、日本に難癖つける本当の理由 
レーダー照射:国際法違反を知られたくなかった韓国
韓国軍が海自哨戒機にレーダー照射、日本に難癖つける本当の理由
2019.1.8(火) 西村 金一
韓国、竹島で「防衛訓練」開始 19日まで
日韓が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)で韓国海軍が行った上陸訓練の様子(2013年10月25日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / South Korean Navy 〔AFPBB News〕

 2018年12月20日、韓国海軍軍艦が海上自衛隊の「P1」対潜哨戒機に射撃管制レーダー(射撃レーダー)を照射した。

 この事実は、海自哨戒機の飛行員の緊迫した会話や撮影映像から、明白である。

 にもかかわらず、韓国国防省は認めようとはせず、そればかりか、日本の海上自衛隊機が異常な接近飛行を行ったと難癖をつけ、「陳謝せよ」と抗議している。

韓国はなぜすぐばれる嘘をつくのか
 これまでの韓国の主張には、一貫性がなく、論理矛盾がある。

 韓国が、海自哨戒機が韓国軍艦に異常接近したとする映像を公開した。その映像には哨戒機が遠方に写っており、どう見ても異常接近しているようには見えない。

 航空機を真上に見上げれば、その腹底が見えるはずだが、そうではない。戦闘機であれば、急降下や急上昇できるが、哨戒機は、そのようなことはできない。

 韓国海軍軍人には当然分かっていることだし、軍事常識でもある。

 韓国は、それを認めようとはせず、発表していることが論理矛盾を起こしていながらも、頑なに日本を非難している。

 軍事知識がない人は騙すことができても、軍事知識がある人を騙すことはできない。

 韓国軍人も国防省の幼稚な発表に恥ずかしい思いをしているに違いない。

 支離滅裂で論理矛盾を起こしてまでも、なぜそのようなことを発表するのか――。

日本の経済水域内で北朝鮮と何をしていたか
 そこには、多くの謎があると考えるべきだろう。

 韓国軍艦がレーダーを照射したことは重大な事態であり、日本としては非難しなければならない。

 だが、もっと重要なことは、レーダーを照射すれば、日韓関係に重大な影響を及ぼすことが分かっていながら、行ったということだ。

 当然、そこには、重大な意図が隠されていると見るべきだ。

 そして、韓国はその意図を読まれないように、「日本は馬鹿げたことを言って」と、論点をすり替えている。

 この事案で、私が最も注目しているのは、防衛省公表の映像だ。

 韓国軍艦が射撃レーダーを照射した時、韓国の海軍軍艦と海洋警察警備艇がほぼ同じ海域で海上警備活動(救助?)を行い、その近くに、北朝鮮の漁船(軍や工作機関が漁業に使用している船か)が存在したことだ。


防衛省が発表した動画「韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について」より
 その海域は、韓国の近海ではなく、日本の経済水域に深く入り込んだ海域だ。その海域で、偶然にしても、これら3つの船が1か所に集まることは、全く考えられないのだ。

 韓国は救助活動だと発表しているのに、戦闘艦艇である駆逐艦までもが、そこにいたことは不自然極まりない。

南北朝鮮の密接な行動は国際法違反の可能性
 この3つが集まっている理由を考察すると、上記の漁船が、燃料不足になり漂流、その船から北朝鮮の本国に救助依頼を行った(漁民が乗る漁船は、連絡できる通信機を積載していない)。

 その連絡を受けた北朝鮮の機関が金正恩政権に報告し、北朝鮮と韓国のパイプを使って、韓国の文政権に連絡、そこから国防省や海洋警察に連絡、それにより、2隻の艦艇が出動したものと考えられる。

 北朝鮮漁船、北朝鮮工作機関、北朝鮮政府、韓国政府、韓国国防省、韓国海軍、韓国海洋警察の連携がないと、3隻が海上の同一ポイントに集合することはできない。

 つまり、南北がかなり密接に行動していることがうかがえる。

 さらに、映像から判断すると北朝鮮の漁船は沈没しそうな状況ではなく、エンジン故障か、燃料不足で浮遊していたように見える。

 おそらく、燃料切れになっていた北朝鮮の漁船に、燃料を提供していた可能性がある。

 このことを海自哨戒機に接近して見られたくなかったために、射撃レーダーを照射して、嫌がらせを行い、海自哨戒機を追い払ったのではないだろうか。

 韓国がレーダー照射を否定し、海上自衛隊の哨戒機の行動を非難しているのは、これらの南北の動きを知られないために、韓国による問題のすり替えにほかならないと、私は考えている。

韓国と北朝鮮の間にある密約
 私は、北朝鮮と韓国の間に、密約がいくつか存在していると考えている。

 文大統領が北朝鮮への制裁解除を求めるために、世界中を使い走りしていることからもうなずける。

 密約の一つとして、日本海の中央付近で漁業活動する北朝鮮の漁船を、遭難した場合に韓国が守る。

 さらに、北朝鮮の漁船に燃料を補給する。つまり、南北が、国連制裁決議破りを日本海の海上で行っていると見てもおかしくはない。

 この事案を契機に、日本国がこれから行動すべきことは、日本の国益を守ることだ。

 具体的には日本の経済水域を守ること、海上自衛隊は、北朝鮮の漁船を不法に入れないことだ。

 また、韓国艦艇が救助と称して、北朝鮮の漁船に燃料を提供するという国連制裁決議違反をしていないかどうかを監視すべきだ。

 韓国が何を言おうが、日本海の警戒監視を、引き続き実施することが必要である。

 文在寅政権の韓国は、南北融和と軍事的合意事項の履行、反日活動の活発化、今回の事案などにより、日本や米国との友好国の立場から離脱し始めていると見てよい。

 日本人や日本のメディアは、目の前の事象だけにとらわれずに、朝鮮半島で起きていることが、日本に脅威になりつつあることを改めて認識すべきだ。

 日本と南北朝鮮との安全保障関係は、重大な変換点に来ていると言っても過言ではない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55139
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/161.html

[国際25] 大都市になった上海から「お払い箱」になった人たち 経済成長を足元で支えるも、政策一転で立ち退きに 
大都市になった上海から「お払い箱」になった人たち
経済成長を足元で支えるも、政策一転で立ち退きに
2019.1.8(火) 姫田 小夏
強制的に立ち退かされ、壁でふさがれた路面の店舗。上海市内にて(筆者撮影、以下同)
 上海の地下鉄車内での飲食を見なくなった。以前は、お菓子やドリンクは当たり前、ファストフードのチキンの臭いが車内に充満することも珍しくなかった。しかし、最近は地下鉄の中で飲み食いする人を、めっきり見かけなくなった。

 それにはいくつかの理由が考えられる。1つ目はスマホの普及だ。飲み食いする以上に乗客はスマホに夢中になっているということだ。

 2つ目は、中国政府によるマナー教育の効果である。

 上海の街の目まぐるしい変化には慣れてはいるものの、最近「上海ってこんな街だったっけ?」と首をかしげることが増えた。街のいたるところで共産党のスローガンを目にするようになったのだ。

 工事現場を囲う臨時の壁には必ずと言っていいほど「富強」「民主」「自由」「平等」「公正」「法治」といった、社会主義の核心的価値観といわれる漢字が並ぶ。地下鉄駅の通路の壁面に貼られているのも共産党のスローガンだ。以前なら商業広告で埋め尽くされていたが、今は違う。

 こうした大量のスローガンは、少しずつ中国人の意識や行動を変えているようだ。例えば「文明」(道徳的で礼節がある)という教育的スローガンがある。筆者が地下鉄に乗ったときの話だ。駅に到着して降りようとすると、筆者の前に立つ熟年の男性が「さあ、お先にどうぞ」と降りる順番を譲ってくれた。以前の中国では考えられない出来事だが、これも「文明」教育のおかげなのかもしれない。地下鉄の中で飲み食いする市民の姿が減ったのも、大量の教育スローガンの効果と無縁ではなさそうだ。

「ゴミはゴミ箱に」を指導する文明教育
「焼き芋売り」がいなくなった
 上海の地下鉄車内で飲み食いする人が減ったのには、3つ目の理由も考えられる。それは、上海に居住する「外地人」が減少したことだ。

 上海では、もともとの居住者を「本地人」(上海人)、外省出身者を「外地人」と呼んで区別する習慣がある。もちろん高学歴、高所得の外地人も少なくない。だが、外地人の中には、上海人がやりたがらない仕事を低賃金で引き受けてきた「低段人口」(ローエンド人口)と呼ばれる存在がある(注:農民の戸籍を持ちつつ、都会の企業で働く「農民工」とは微妙に定義が異なる)。

 上海人たちは、廉価な居住地に群れを成して住み小商いを営むローエンド人口が上海の秩序を乱し、マナーを劣化させていると眉をひそめていた。その考え方に則れば、地下鉄内の飲み食いを見なくなったのは、ローエンド人口が減ったからなのかもしれない。実際、統計(上海市国民経済和社会発展統計公報)をみると、2016年末の上海総人口は2419万人で、そのうち外地から来た常住人口は980万人。それが2017年末には972万人に減っている。2015年末と比べるとさらにその数は減っていることがわかる。

 2018年の冬、筆者は地下鉄10号線の西の終点駅で、ローエンド人口の減少を実感した。「小区」といわれる居住区を歩いたところ、実に小奇麗な地区に変貌していたのである。

 以前との明らかな違いは、冬の風物詩だった「焼き芋売り」の姿がなくなっていたことだ。焼き芋売りだけでなく、数多くあった屋台もなくなっていた。地元の居住者によれば、「外地から来た人が路上で物を売る行為が規制の対象になった」のだという。以前は、小区と小区を挟む歩道に朝夕屋台が繰り出し、通勤者や通学者の小腹を満たしてきた。しかし、そうした屋台はきれいさっぱりなくなっていた。

「今、上海の中心街には焼き芋売りなんていませんよ。小区の管理者が外地人の物売りを入れないように指導しているからです。でも、そのおかげで街はすっかりきれいになりました」(地元居住者)

 確かに、歩道には食べ散らかしたゴミもなければ、以前はいたるところに見られた食用油の染みもない。筆者が訪れた時期の上海は、ちょうど中国国際輸入博覧会の開催を目前に控えていた。“卓越した都市環境”を世界の客人に披露すべく、2万5000人の清掃員を動員して街を徹底的に清掃した効果も大きいのだろう。

2018年秋、上海市では2万5000人を動員して街をきれいにした
まるで40年前に逆戻り?
 中国政府は北京や上海などの大都市をきれいにしようと躍起になっている。外からの人口流入は「生活コストを上昇させ、街の汚染を生んでいる」と解釈されており、上海では「街を整理整頓してきれいにする」という名目でローエンド人口の排除を始めた。生活が不安定なローエンド人口は、景気の悪化に耐えられず犯罪に走る懸念があるからだ、とも言われている。

「昨年からこうした人々の生活空間が奪われる事態が起こっています」と、現在は年金生活を送る元企業経営者が教えてくれた。

 上海では、庶民に愛された食堂や果物屋がなくなった。金物屋や雑貨商も消えてなくなった。マンションの1階にあったコンビニもなくなってしまった。いずれも経営していたのは外地人だった。

「手のひら返し」は中国共産党の得意技である。元企業経営者は、政府の政策の変化を次のように語る。「改革開放政策で自由経済の機運が高まった当時、中国では店舗を増やす『破墙開店』という政策が進められ、多くの人が住居の壁を壊して店舗を開きました。学校や病院、軍隊なども積極的に店舗誘致を行ったものです。ところが昨年、そうした店が一斉に取締りの対象になりました。店舗は壁でふさがれ、そこに共産党のスローガンが張り出される――まるで私の若かりし頃に戻ってしまったかのようです」。

 外地人は、共産党の政策に沿って上海で店を開いた。だが、ある日突然規制の対象となり、店を閉じなければならなくなった。そして、あっという間に上海から叩き出されてしまった。彼らは上海郊外の松江区、青浦区などで身を寄せ合って暮らしているとも聞く。上海がアジアを代表する経済都市になった今、お払い箱になってしまったというわけだ。

 中国政府は、改革開放政策の開始以来、直接投資によって中国の経済成長を牽引してくれた外資系企業も、中国が技術を吸収した今、お払い箱にしようとしている。次に何が起こるのか。ローエンド人口の排除から、私たちは何を読み取るべきだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55135
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55141
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/162.html

[国際25] 「スジ」にこだわる日本人、「量」で考える中国人  中国人の精神の深いところを掘り起こす『スッキリ中国論』 
「スジ」にこだわる日本人、「量」で考える中国人
中国人の精神の深いところを掘り起こす『スッキリ中国論』
2019.1.8(火) 新潮社フォーサイト
新潮社の会員制国際情報サイト「新潮社フォーサイト」から選りすぐりの記事をお届けします。
職場でも宴席でも、中国人に無礼講はない。それは、メンツの大きい人に小さい方が従う、という見えない原則があるからだ
(文:野嶋剛)

 日本において、「中国人とは何か」というテーマは永遠のものだ。しかし、日本の出版界で、それなりに読み応えのある中国人論を探し出すのは実は難しい。

 日本には中国問題の専門家は山ほどいるが、中国人論に切り込んでいった研究者やジャーナリストは少ない。「中国人」とはあまりにも広大かつ多様な人々で、おいそれと1冊で書き切れるものではないという思いが、日本人にはあるからかもしれない。

中国人理解の必要性は高まるが
 また、戦後の日本人は真正面から中国人論を語ることをどこか避けていたようにも思える。戦前の日本の中国研究において政治から文化まで幅広く論じる「シノロジー」(中国学)に携わっていた人々が、中国に関する知識を戦時体制のなかで利用されることで、結果的に日本の中国侵略に言論面で加担した、という罪悪感が共有されていたからだ。

 そのためか、戦後日本の中国人論で思い浮かぶのは、陳舜臣の『日本人と中国人』か、邱永漢の『中国人と日本人』くらいである。

 陳舜臣と邱永漢。どちらも台湾出身者で、戦前には「日本人」教育を受け、一方で漢人としての教養もあり、中国古籍の原典も読むことができた人たちである。

 彼らの本は、いわば日本と中国の両方を「台湾」という客観的な立場から書いたものであり、両国の間に立たされてきた台湾人の中間的な立場をうまく活用したものだ。

 その後、中国脅威論が台頭する2000年頃までに、在日の中国人ジャーナリストや研究者による中国人論も複数出版されたが、読み継がれるものにはなっていない。

◎新潮社フォーサイトの関連記事
・習近平「強気と弱気」演説から読み解く「米中協議」の行方
・「米中貿易戦争」を加熱させる中国の「無知」と「無恥」
・「ファーウェイ」CFO逮捕で再燃する「米中貿易戦争」第2幕の「対象企業」

 しかし、外国事情をその国の人だけに語ってもらっている状況は、必ずしもいいこととは言えない。日本人に必要な情報は日本人から語ってもらう方がいい部分もある。とりわけ昨今は中国との経済・人的交流が深まる一方なので、中国人理解の必要性はさらに高まっていることは言うまでもない。

「目から鱗」の中国人論
『スッキリ中国論 スジの日本、量の中国』(田中信彦著、日経BP社)
 その意味で、待望とも言える1冊が、田中信彦著の『スッキリ中国論 スジの日本、量の中国』(日経BP社)である。

 著者の田中氏は上海に長く暮らし、ビジネスコンサルタントをしながら、日本のメディアにも中国の時事評論を書いてきた人で、その鋭い中国人論にはいつも感心させられてきた。

 本書はその集大成とあって迷いなく手にとると、手垢のついた表現かもしれないが、「目から鱗」と思えるような記述にあふれ、陳舜臣や邱永漢の著作以来、長く出現しなかった読み応えのある中国人論となっている。

 本書は「スジ」を通すことにこだわる日本人と、何事も「量」を基準に考える中国人というところに、比較の軸を定めている。「スジ」とは「べき」論とも言い換えていいが、日本人は「こうあるべき」というところからものごとを考えるのに対して、中国人はまずは量的影響の大小でものごとを決めていく。それは、「現実に影響があるかないか」をすべての判断基準とする中国人と、理想や規則を前提に考える日本人との違いである、と田中氏は言い当てている。

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 例えば、列に並ぶときに割り込みをする問題についても、「田中理論」ではすっきり説明される。つまり、中国人は自分の並んでいる列に1人や2人が割り込んできても、最終的な待ち時間にほとんど影響がでないので無視するが、日本人は割り込みの人数の多寡にかかわらず、列を作るというルールがあるのだから守らないのはおかしいと考える。

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 個人的な経験で言えば、日本で出版した本を中国で翻訳する際に、政治的に敏感な内容について、どこを削除し、どこを残すのか、という問題に必ず直面する。そのとき、中国の出版社から「その部分は原則問題で、絶対に残すことはできない」とビシッと拒絶されることがしばしばある。

 ここで「原則」という言葉は別に何がダメだというルールがあるわけではなく、彼らなりに当局から問題視される影響の大きさ=「量」を測った結果、「それをやってしまうと我々が大変なことになるからできない」と訴えているのだ。あくまでも基準は「量」のリミッターを超えているかどうかであり、杓子定規に「だめなものはだめ」と言っているのではないのである。

メンツは「良し悪し」ではなく「大小」
 本書で田中氏は、「量の中国人」という考え方を敷衍し、中国人論で欠かせない「メンツ」問題にも説得力ある解釈を加えている。

 中国では「メンツが大きい(面子大)」という表現を使う。これは、まさにその人の能力や影響力の及ぼす範囲が大きいことを言っていて、つまりは量を示しているのだと田中氏は指摘する。

 日本人の理解するメンツは「体面」という意味が強く、「良し悪し」で論じられる。それで中国人は体面を重んじる人々だと思いがちだが、それは少しずれた理解で、実際は体面ではなく、実力重視であることをちゃんと認識すべきなのだ。

 中国では、その人の実力に誰もが敏感に反応する。それはその人のメンツ(=実力)を意味しており、自分の利益や出世、生活を左右するクリティカルな問題であるからだ。逆に、メンツが小さいと見なされるのは、小物だと思われることであるから、誰も相手をしなくなる。そうならないよう中国人はメンツを重視するということだ。

 私も、中国人を見ていて思うのだが、実力者に対してとても慎重かつ従順な言動を見せることが多い。職場でも宴席でも、彼らに無礼講はない。それは、メンツの大きい人に小さい方が従う、という見えない原則があるからだ。

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 ちなみに、中国語では暑い日のことを「太陽が大きい」とも表現する。太陽が大きいなんて変だな、暑い日は太陽が大きく見えるのかなと、単純に思ってきたが、田中氏の指摘を読んで、これも太陽の輝き(=実力)が強いことを意味しており、形状的に大きいということを言っているわけではないのだと気付かされた。

 日本と中国は似ているように見えるが故に、かえってお互いに誤解を生みやすい。日中の間には根本的に異なる発想や物の見方がかなり多く存在しているからだ。

 一方で、東京五輪やインバウンドの拡充によって、ますます多くの中国人に生身で触れる機会が、日本人にも増えていくだろう。中国人の精神の深いところを掘り起こしているこの本を読んでおけば、彼らの行動に悩まされることも減るはずである。


野嶋剛
1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55143
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/163.html

[経世済民130] 人の心はお金で買えた、ZOZO前澤社長の1億円プレゼント ZOZO離れセレクト各社の危機感 本社を幕張に置く理由
ネット炎上のかけらを拾いに

人の心はお金で買えた、ZOZO前澤社長の1億円プレゼント

2019/01/09

網尾歩 (コラムニスト)

 同じアホならもらわにゃソンソン?


ZOZOTOWNの前澤友作社長(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
当選発表後はフォロワー数減
 ZOZOTOWNの前澤友作社長が年始から、100万円を100人にプレゼントするお年玉企画を発表。申し込み方法は、前澤社長のツイッターをフォローし、対象ツイートをリツイートするというもので、締切りとされた1月7日までに500万回以上リツイートされ、リツイート数で世界新記録に。

 前澤社長は8日午前中に当選者を発表し、「お金は使い方次第でこんなにもドキドキできるんだなと。これからももっともっと皆さんに楽しんでもらえるようなお金の使い方していきます」とツイート。いずれ第2弾を行うことも示唆している。

 一方で、この手法への批判や、問題点の指摘も上がった。

 BuzzFeedの記事(ZOZO前澤社長の「1億円お年玉」は規約違反? Twitter社に聞いてみた/2019年1月7日)では、フォロワー数を購入することや、キャンペーン応募のため複数アカウント作成について注意喚起を行わないことは規約違反にあたると指摘。ただ、前澤社長の行為は規約違反にあたらないとツイッター社から回答があったという。

 アジャイルメディア・ネットワーク取締役CMOでブロガーの徳力基彦氏は、ヤフーニュース個人の記事(前澤氏1億円バラマキ企画が示す、「広告」から考える時代の終わり/2019年1月7日)で、2018年中にフォロワー数を100万まで増やしたいと公言していたもののその約半数だった前澤社長が、広告費ではないかたちで金を使ってフォロワー数を増やしたことを指摘。「今回の企画は、前澤さんやZOZO側の読みが凄かった、と言うべき企画でしょう」としつつも、「(合計)1億円の当選者が発表された後に、前澤さんのフォロワーがどれぐらい減るのか、意外に減らないのか、に注目したいと思います」と含みを持たせた。

 この原稿を書いている8日17時現在、前澤社長のフォロワー数は約583万。13時には約610万のフォロワー数だっただめ、30万近く減っている。当選しなかったことを面白くないと感じる人は当然いるだろうから、ある程度減るのは想定内だろう。まさしく「人の心はお金で買える」が、「金の切れ目が縁の切れ目」を見ているような気持ちになる。

 また、騒動の一端として、前澤社長を騙る偽のアカウントが出現し、前澤社長本人が注意喚起を促したほか、「◯万円プレゼントするのでリツイートとフォローを」と類似ツイートをするアカウントも現れた。前澤社長本人は本当に1人につき100万円を送金しただろうが、匿名アカウントなど「どこの誰だかわからない」アカウントの場合、「当選した本人にだけ連絡した」とウソを言ってフォロワーを増やすこともたやすいので気をつけよう(騙されたところで金を取られるわけではないが)。

庶民の遊び場から、夢を与えられる場へ
 当選者が発表されてすぐ、BuzzFeedは当選者への取材記事を掲載(ZOZO前澤社長からの100万円の使い道。ある当選者の思い/1月8日)。この当選者の男性は車椅子利用者で、100万円の使い道について「100万円分の服を購入して、僕を含めオシャレがしたい障害のある方々100人に服をプレゼントして、一緒に堂々と100人で表参道を歩きたいです」と動画で語っていたという。

 このほかに当選したことをツイッターで公表している人たちも、「100万円の使い道を具体的にツイートしていた」などの共通点が見られる。前澤社長は当選者の選定方法を明らかにしていなかったため、抽選と思い込んでいた人は失望を感じたようだ。

 ツイッター社は規約違反ではないと見解を出しているし、ただ金を配るのではなく「夢を応援したい」意図があることも垣間見える。ツッコミどころがないこの企画にそれでもモヤモヤするのは、有名ではなくお金持ちでもない人でも面白いツイートをすることでフォロワー数を伸ばせるジャイアントキリングな一面があったツイッター上で、金の力をあからさまに使ったことだろう。

 日本人のツイッターフォロワー数1位(有吉弘行/約703万)、2位(松本人志/約605万)に次ぐのは、福沢諭吉。諭吉に人気があるのは誰でも知っていることで、特に驚きはない。庶民の遊び場に自分のルールを持ち込んだ貴族が100万円で庶民に「夢」を与えている。庶民は夢をもらったのか。遊び場を奪われたのか。

 前澤社長と言えば、2012年10月。送料手数料についての不満をつぶやいた女子高生に対して「詐欺??ただで商品が届くと思うんじゃねぇよ。お前ん家まで汗水たらしてヤマトの宅配会社の人がわざわざ運んでくれてんだよ。お前みたいな感謝のない奴は二度と注文してなくていいわ」とブチギレた。これに批判が殺到し、一転して謝罪。さらに送料を無料にすると発表した(現在は改定)。

 当時と比べると、ツイッターの使い方がこなれてきたのかもしれない。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15014


 

2019年1月9日 週刊ダイヤモンド編集部 ,岡田 悟
「ZOZO離れ」オンワードだけではない!?セレクト各社の危機感
新春セールの取扱高が史上最速で100億円を突破したというアパレルECサイトのZOZOTOWN。ZOZOの前澤友作社長は私財で総額1億円の現金プレゼントをぶち上げ意気軒高だが、一部の出店者は、やや異なる気持ちで新年を迎えたようだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)

ゾゾタウン前澤社長のツイッターより
前澤社長のツイッターより
「オンワード(ホールディングス、HD)の保元(道宣)社長とは何度もご飯に行く仲」「メディア先行で『撤退』という情報が流れ困惑しているのは私たちだけでなくオンワードさんも同じかと思います」「『ゾゾ離れ』いうタイトル設定に非常に違和感と悪意を感じます」――。

 昨年末に日経コンピュータが報じたオンワードHDの、アパレルECサイト「ZOZOTOWN」からの撤退方針。サイトを運営するZOZOの前澤友作社長は、年明けから私財1億円のお年玉でツイッターのフォロワーを多数獲得し絶好調の感があるが、このニュースを後追いした東洋経済オンラインの1月5日の記事に対しては、NewsPicksのコメント欄で、冒頭のように苛立ちをあらわにした。

 ZOZOは昨年12月25日、「ZOZOARIGATOメンバーシップ」と呼ばれるキャンペーンをスタート。ZOZOTOWNの利用客が年間3000円、または月500円を支払えば、購入額の10%が月最大で5万円割引になる。割引の原資はZOZOが負担する。

 利用客が割引額を日本赤十字社などに寄付したり、出店者に還元することも選べる「社会貢献型の有料会員サービス」をうたう。

 オンワードHDの野澤岳徳広報課長は1月7日、本誌の取材に「当社はキャンペーンに参加しない状態での出店継続を望んだが、ZOZOからは、参加するか退店の二択という話があったので、12月25日に販売を停止し、現在退店の準備を進めている」と答えた。退店、すなわち撤退はすでに社の方針として決定しているとした上で、理由について「恒常的な値下げにより、当社のブランド価値が毀損される危険性が高い」と説明した。

セレクトショップは
自社ECサイトとの競合を懸念
 一方でZOZOの主要な出店者であり、客の年齢層がオンワードよりも若いセレクトショップ各社の反応は、少々異なる。ある大手セレクト幹部は「われわれがリアルで出店している商業ビルもセールの機会が多く、値下げがブランド価値の毀損になるとは、必ずしも考えない」と話す。それよりも、「むしろ、セレクト各社が近年強化している自社ECサイトが大きな影響を受けそうだ」と指摘する。

 十数年前、EC運営のノウハウを持たなかったセレクト各社がECに参入するには、手数料を払ってZOZOTOWNなどのアパレルECサイトに出店するしか術がなかった。やがて他のECサイトが淘汰され、次第に強まったZOZO一人勝ちの様相は彼らにとって、EC戦略でZOZOに依存せざるを得ない状況を意味した。自社で独自のECサイトを作ろうにも、物流やサイト運営など“裏側”でZOZOの施設やノウハウに頼るしかなかった。

 そこで一部の大手セレクトショップは最近、物流からサイト運営まで一気通貫でZOZOに依存しない、いわば“完全自社ECサイト”を実現し、リアル店舗とのポイント共通化などで顧客を囲い込む動きを見せている。

 かといって、すぐにZOZOTOWNから撤退するわけではないものの、別のセレクト大手幹部は「ZOZOTOWNは新規顧客の流入ルートの一つとして出店は継続する」と述べ、位置づけが従来から大きく変わっているとの認識を示す。そうした意味で、やはり出店者の“ZOZO離れ”が着実に進んでいると表現するのが妥当である。

 加えて、さらに別の大手セレクト幹部は「ZOZOTOWNでは、格安の無名ブランドの出店が目に見えて増えて来ている」と話す。ユナイテッドアローズを筆頭に、これまでZOZOTOWNの成長やブランドイメージ向上の原動力となってきた大手セレクト各社だが、最近は自社商品を無名ブランドの格安商品と同列に並べられることへの抵抗感が生じている。彼らの心もまた、ZOZOから離れつつあるといえよう。

ゾゾスーツ配布中止で
成長戦略の先行きは見えず
 そこに来て、今回の値下げキャンペーンだ。「社会貢献を強調した実に巧みな打ち出し方だが、真の狙いは、セレクト側が強化しつつある自社ECサイトへの対抗策ではないか」(初出の大手セレクト幹部)との懸念が生まれている。確かにZOZOが恒常的に値下げをすれば、ZOZOTOWNに出店しているセレクト各社の自社ECサイトと、消費者を取り合う構図となる。血で血を洗う消耗戦となりかねない。

 そんなZOZOTOWNに代わる新たな成長の柱として、サイズを計測できる水玉模様の「ZOZOSUIT」を無料配布して話題となったプライベートブランド戦略に期待が集まり、株価も一時高騰したわけだが、昨年10月にZOZOSUITの配布中止を発表し、株価も下落して先行きが見えなくなった。

 過去、ZOZOの成長の限界が指摘される局面が幾度かあったが、中古品の買い取り販売サービス「ZOZO USED」の開始といったアイデアで乗り切って来た。今回のキャンペーンが果たして、吉と出るか、凶と出るか。
https://diamond.jp/articles/-/190347

 
【第7回】 2018年9月6日 南 和気 :SAPジャパン 人事・人材ソリューションアドバイザリー本部長
ZOZOが本社を幕張に置く理由、強さを支える「人事戦略」の秘密
ZOZOTOWN
スタートトゥデイの強さの秘訣は、前澤社長の知名度だけではありません 写真:つのだよしお/アフロ
海外では、UberやAirbnbなど、新たなビジネスモデルと共に急成長を遂げた企業が数多く誕生しています。一方、日本企業でもイノベーションは起こり始めています。世界に影響を与えるイノベーションは、必ずしも大企業から生まれるばかりではありません。圧倒的に成長する企業は、前例や常識にとらわれることなく、人材の力を引き出す工夫を凝らしています。『人事こそ最強の経営戦略』の著者であり人事戦略コンサルティングの第一人者・南和気氏が、人事が事業を支える企業を紹介していきます。今回はスタートトゥデイ(2018年10月からは「ZOZO」に社名変更)を取り上げます。

時価総額1兆円を突破
気づけば誰もが知る存在の「ZOZOTOWN」
 ここ最近、メディアで取り上げられることの多いファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイ。社長である前澤友作氏の名前をご存じの方も多いと思います。どうしてもメディアからは前澤氏の資産や私生活の面が取り沙汰されることが多いですが、今回は、スタートトゥデイの人事に関わる取り組みに着目していきましょう。

 スタートトゥデイに対しては、「インターネットで衣類を販売しているベンチャー企業」という印象を持たれる方が多いかと思います。しかし、同社はただのベンチャー企業ではありません。社員数はおよそ900人の会社で、いわゆる大企業という規模ではないかもしれませんが、売上規模は1000億円に迫り、時価総額は1兆円を超えています。

 日本企業で時価総額が1兆円を超えているのは、全体の3パーセントに過ぎません。これは特筆すべき企業価値の高さであり、さらには、メディアが前澤氏の話題を連日取り上げることで、広告宣伝費用を全く支払うことなく、ZOZOTOWNはその名前を日本全国に知らしめています。

 今の時代は、テレビやネットで気になる報道を見かけると、即座にネット検索されます。ZOZOTOWNはまさにネットを介したサービスなので、一目でユーザーの興味を引くことができれば、即座に顧客の増加につながります。

 ベンチャー企業や中堅企業にとって最も高いハードルは、「知ってもらうこと」です。スタートトゥデイは、ほとんどコストをかけることなく、このハードルをクリアし、大きな宣伝効果を得ているのです。

 そしてこれは、人事における課題の解決にも多大なメリットをもたらしています。

成長企業であればあるほど、
「優秀な社員の獲得」と「人材流出」が悩みの種
 実は、成長過程にある中堅企業にとって最大の悩みは「人」です。もちろん事業自体が苦しいときには、まずは資金繰りということになりますが、一定の成長軌道に乗ってきた企業が何より頭を悩ませるのは、「優秀な社員の獲得」と「人材流出」です。

 起業をすると、その規模の拡大過程で「100人の壁がある」とよくいわれます。社員数100人までは、ヒット商品やサービスが生み出されると、その勢いで社員が一丸となって頑張れます。また、創業時のメンバーとそのネットワークの中で人を集め、同じ志を持つ人材で何とか会社を構成することができる規模です。

 しかし100人の壁を越えてくると、いくら頑張って社員を採用しても、同じだけ辞めていき、なかなか規模を継続的に拡大することが難しくなります。さらに、急激に社員を増やすことで、さまざまな社員が加わることになり、必ずしも創業者の考えをよく知っている人材ばかりではなくなり、能力にもバラつきが出てきます。

 よって、体系的な人材育成の仕組みや、一定の合理性のある人事制度が必要となってくるのも、この規模の特徴なのです。

 特にベンチャー企業や、歴史の浅い中堅企業では、退職率の高さに悩まされます。人数が少ないだけに、優秀なエンジニアやリーダーが退職してしまうと、他の社員も芋づる式に退職してしまい、製品やサービスの急激な品質低下につながることも珍しくありません。

 では、設立から20年が経過し、社員数900人のスタートトゥデイは、「優秀な社員の獲得」と「人材流出の阻止」を実現するために、どのような工夫を行っているのでしょうか。

「ここで働く理由」を生み出すために
スタートトゥデイが実践していることとは?
 採用や人材の定着で重要なことは、「ブランディング」(知ってもらうこと)と「インセンティブ」(この企業で働く理由をつくる)の強化に尽きます。

 自社の「ブランド」を強めるためには、多くの競合の中で、リピート顧客を獲得していくことが有効です。スタートトゥデイの場合、前澤氏の個人的な名声もさることながら、ZOZOTOWN自体が、個人顧客が利用するサービスであり、「ファッションとネット」いう分かりやすい事業特性を持つため、そのキーワード中心とした興味や知識を持つ人材が集まりやすく、「ブランディング」においても非常に有利になります。

 しかし、あらゆる人に自社を知ってもらうことは、応募者を増やすこと自体には役立ちますが、自社にとって必要な人材に入社してもらい、定着してもらうこととは別問題です。企業が行うべき努力は、「ここで働く理由」を徹底的につくることです。

 例えば、以前本連載でご紹介したヤマシンフィルタは、社員数500人の規模で、誰もが知っている商品があるわけではないBtoB事業の企業ですが、有名大学の落語研究会と独自のルートを構築することで、他社にはない「ここで働く理由」をつくる工夫を行っています。

 スタートトゥデイの本社は、前澤氏の出身でもある千葉県の、駅で言えばJR京葉線の海浜幕張駅に位置し、関東全域から就職するには、決して有利なロケーションとは言えません。しかし、逆に千葉県に住む学生や社会人で、ファッションやネットに興味、強みがある人材からすると、東京へ向かう通勤ラッシュとは無縁のルートで通勤することができます。

 また、幕張地域に住む社員には「幕張手当」という手当があり、全社員の約7割に支給されているといいます。平均年齢31歳という若い社員にとって、同じ地域に住みながら働くことは一体感を生み出すことにもつながりますし、何より、一見不利に見える地域的な条件を見事に「ここで働く理由」に変えています。

 日本全国から人を集める毎年大規模な採用をするには、東京の中心地にオフィスを構えることも1つの戦略ですが、一定数の社員を確実に採用するためには、まず独自の「ここで働く理由」をしっかりと形成することが近道なのです。

スタートトゥデイが
「ボーナスの全員同額支給」を行う理由
 多くの日本企業では、「成果主義」や「個人目標評価制度」といった評価制度が導入され、「個人の成果を適切に評価することこそが、公正な評価制度である」という考え方が主流となっています。

 さらに最近では、「1 on 1ミーティング」や「No Rating」などで個人のパフォーマンスをより詳細に見て、差を付けていくという、「評価の個別化」が時流になっています。

 これは、事業が複雑化し、個人の仕事が細分化されている大企業にとっては非常に合理的な手法でしょう。しかし、比較的単一事業に近く、全員がほぼ同じ事業に関わっている場合は、非効率な手法にもなりえます。

 例えば、こういう研究比較があります。かつて、Apple社は、iOS10という現在のiPhoneの基盤ともいえるOSを、600人の開発者が2年かけて開発しました。一方、Microsoft社は、Windows VistaというOSを、10万人の開発者が5年かけて開発したといいます。もちろん異なる製品ですので単純な比較はできませんが、このApple社の開発効率の高さには、人事的な工夫がありました。

 それは、開発者全員が「個人の目標」ではなく、iOS10を開発するという「チーム目標」だけを持つようにしたのです。

 そうすることで、全員が協力し合って非常に効率的に作業が進められました。Microsoft社では、通常どおり個人目標が設定されていたため、開発者は自分の仕事が終われば帰ってしまいます(Fast Company “Why Employees At Apple And Google Are More Productive” 2017/03/13 )。

 これは、「単一の目標がある集団においては、個人の目標を追いかけて差を付けることが必ずしも事業の成長につながらない」ということを示唆する好例でしょう。

 実はスタートトゥデイでも、「ボーナスの全員同額支給」という取り組みがあります。ZOZOTOWNの事業を中心に全員で協力して事業を発展させていかなければ、個人がそれぞれの役割の中だけでいくら頑張っても、企業としては成長できない。全員が同じ方向を向いて、同じ成果に向かって走っているのであれば、あえて個人の業績を重視してボーナス支給の制度を複雑化させるよりも、全員で勝ち取った成果を全員で分け合うというシンプルな制度のほうが組織としての成果を目指す意識を高めるやすくなる、という原則に沿った取り組みだといえます。

「就業時間を短くし、社員が自ら学ぶことを支援」
これで企業にイノベーションが生まれる
 また、スタートトゥデイには、「ろくじろう」という制度があります。これは1日の就業時間を6時間で終了してもいいという制度です。基本的な就業時間は午前9時から午後3時となっており、昼休みがありません。もちろん、全員が毎日6時間の就業で帰宅できるというわけではないと思いますが、可能な限り仕事を短時間で終わらせるようという共通の価値観が生まれやすくなります。

「ろくじろう」のポイントは、「終了してもいい」としているところです。そもそも、工場や店舗などシフトによる稼働や、開店時間が決まっている職種を除けば、働き方や仕事のあり方は、今後より多様化していきます。特にグローバルに事業を展開している企業では、時差を考慮して仕事をすることになり、定時という概念が事実上通用しません。

『人事こそ最強の経営戦略』
南和気さんの新刊『人事こそ最強の経営戦略』
 キャリアや働く価値観も、個人によって異なってくる時代です。そういう意味では、顧客の就業時間に合わせる必要があったり、社内で顔を合わせることで仕事が効率化できたりする時間以外は、時間の使い方を個人の裁量で決められるようにしたほうが、一人ひとりの生産性はより向上します。

 そして、仕事を終えた社員が、自分の能力を伸ばすことに時間を使うためのサポートを企業が行っていくことも重要です。このとき、「社員が学ぶ時間が、就業時間なのか、そうではないか」という議論に時間を割くことよりも、「就業時間を短くして、社員が自ら学ぶことを支援する」ほうが合理的です。

 スタートトゥデイもこの支援を積極的に行っています。「自学手当」と呼ばれる自己成長のために支給される手当は、毎月2500円から、最大2万5000円となります。社員の能力の伸ばし方はさまざまです。

 ZOZOTOWNは、支払いを最大2ヵ月後まで延長できる「ツケ払い」や、着るだけで体形サイズを計測できる「ZOZOSUIT」など、斬新なアイデアと、挑戦によって成長してきました。

 こういった発想が将来的に社員から生まれ続けるようにするためには、人事ですべて研修をカリキュラム化し、同期全員が同じタイミングで受けるというスタイルだけではなく、個人が学びたいことを学びたいときに学ばせて、企業はそのためのサポートを行うというスタイルを積極的に採り入れるべきです。これは、中堅企業に限らず、大企業においても同じことがいえるでしょう。

 スタートトゥデイのさまざまな人事の取り組みは、一見個性的にも見えますが、実は事業の個性に合わせて合理性のある人事戦略を着実に行い、試行錯誤の結果、現在の姿になったと考えられます。

 今後事業が成長し、規模が拡大することで、組合や法制度といった枠組みの制約や、トップが担う役割の変化など、新たな課題への対応が必要になるかもしれませんが、「どんな局面でも、人事戦略が事業を支えるために最も優先されるべき」だと教えてくれている企業であるのは間違いありません。
https://diamond.jp/articles/-/179099
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/491.html

[経世済民130] 世界成長2.9%に減速 世銀が19年予測、貿易下振れ 実質賃金1.1%、名目2.0%増16カ月連続 手法誤り調査中の注釈
世界成長2.9%に減速 世銀が19年予測、貿易下振れ

貿易摩擦 経済 北米
2019/1/9 6:21
【ワシントン=河浪武史】世界銀行は8日改定した世界経済見通し(GEP)で、2019年の世界全体の成長率を2.9%と予測し、18年6月時点から0.1ポイント下方修正した。米国と中国の貿易戦争などの影響で、世界の輸出入が急減速すると警鐘を鳴らした。日本の成長率は0.1ポイント上方修正し、「潜在成長率を上回る0.9%を維持する」と予測した。

中国は輸出の減速が見込まれる=ロイター
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中国は輸出の減速が見込まれる=ロイター

世銀の分析では、世界の成長率は17年の3.1%成長をピークに18年は3.0%、20年も2.8%と緩やかに減速する。貿易戦争で企業の投資意欲が減退。世界の貿易量も大きく下振れして、18年は0.5ポイント、19年も0.6ポイントそれぞれ前回予測から下方修正した。

日本は19年こそ潜在成長率を上回る伸びになるが、20年は0.7%、21年も0.6%と先行きは減速すると予測する。19年秋に予定する消費税増税が景気を下押しするが、安倍政権が検討する需要喚起策で増税の悪影響を一時的に緩和できると見込んだ。

米国は19年こそ2.5%と高い伸びを維持するものの、20年は1.7%に急減速すると分析した。トランプ政権が仕掛ける貿易戦争で輸出と投資が下振れし、米連邦準備理事会(FRB)の利上げも重荷になるとした。

中国も輸出の減速で19年、20年とも成長率は6.2%にとどまると予測した。貿易戦争の影響を和らげるため、中国当局は緩和的な金融政策や減税拡大で内需の底上げを図っている。世銀は「財政と金融政策が関税政策の悪影響を中和する」と認めたが、過大債務などの問題解決が遅れるリスクを指摘した。

資源価格の下落も目立っており、世銀は産油国など「1次産品輸出途上国」の19年の成長率を0.7ポイントも下方修正した。中国などの景気減速は、原油安を通じてロシアやブラジルなどの成長率を下押しし、世界景気全体に負の連鎖をもたらし始めている。

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19年の世界成長率3.5% OECD予測、日中欧...
2018/11/21 19:00
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2018/7/16 23:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39794020Z00C19A1000000/


 


実質賃金1.1%増 11月毎勤統計、手法誤り「調査中」の注釈
経済
2019/1/9 9:29
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厚生労働省が9日発表した2018年11月の毎月勤労統計(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月から1.1%増えた。プラスは4カ月ぶり。ただ同統計は東京都分の調査手法に誤りが判明しており、今回の公表資料では影響などについて「調査中」との注釈をつけた。

名目賃金にあたる1人当たり現金給与総額は前年同月比2.0%増の28万3607円。人手不足を背景に、人材のつなぎ留めに給与を引き上げるケースが増えている。

同統計の調査対象は全国3万超の事業所で、従業員5〜499人の事業所は抽出調査だが、同500人以上は全数調べることになっている。だが都内の500人以上の事業所約1400カ所について、500カ所程度を抽出して調べていた。11月分は抽出データを全数調査に近づける加工をした上で公表した。誤った手法による調査は2004年から実施されていた。統計をもとに給付水準が決まる雇用保険や労災保険で本来より少なく給付されていた人もいたとみられる。

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18年11月の名目賃金、前年比2.0%増 増加は16カ月連続、毎月勤労統計
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毎勤統計、都内分を全数調べず 厚労省が調査ミス
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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39794450Z00C19A1EAF000/

 


18年11月の名目賃金、前年比2.0%増 増加は16カ月連続、毎月勤労統計
経済・政治
2019/1/9 9:00
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厚生労働省が9日発表した2018年11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、11月の名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は前年同月比2.0%増の28万3607円だった。増加は16カ月連続。基本給の増加が続いた。

内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が1.6%増の24万4981円だった。残業代など所定外給与は1.1%増。ボーナスなど特別に支払われた給与は9.7%増だった。物価変動の影響を除いた実質賃金は1.1%増だった。

パートタイム労働者の時間あたり給与は1.7%増の1134円。パートタイム労働者比率は0.31ポイント低下の30.71%だった。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との判断を据え置いた。

毎月勤労統計は、一部の対象について調査手法が規定と異なっていたことが明らかになっている。厚労省は原因について「調査中」とするとともに、11月分については「調査手法は変えていない」としている。

〔日経QUICKニュース(NQN)〕
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL08HPJ_Y9A100C1000000

http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/493.html

[経世済民130] 数カ月で100円の円高も、景気後退でも日銀に打つ手なし−門間前理事 パウエル議長が示唆した利上停止、16年に比べ効果薄か

#Bloombergもタイトルで不安を煽ることもあるようだが
#現実には 100円程度であれば問題ない 政府が財政政策で対応すべきと書いてある

数カ月で100円の円高も、景気後退でも日銀に打つ手なし−門間前理事
日高正裕、藤岡徹
2019年1月9日 5:00 JST
為替だけで日本経済がぐらつくことは100円程度であれば全くない
1月会合では景気・物価見通しを下方修正へ、政策は全く変わらず


日本銀行前理事の門間一夫氏は、今年は世界経済が同時減速する局面に入るため、リスク回避の傾向が強まり、今後数カ月で1ドル=100円程度まで円高が進む可能性が十分あるとみている。仮に景気後退に陥っても日銀に打つ手はなく、政府が必要と判断すれば財政政策で対応すべきだと主張する。

  門間氏は8日のインタビューで、世界経済の減速で「安全通貨として円が買われやすくなる局面は出てくる」とし、「向こう数カ月で100円くらいまで円高が起こっても全く驚かない」と語った。ただ、「世界同時減速といっても調整色が少し強まる程度で済めば大したことはないし、日米とも景気後退まで行かない」と予想。「為替だけで日本経済がぐらつくことは100円程度であれば全くない」との見方を示した。

  米中貿易戦争の深刻化など世界経済の下振れリスクが顕在化すれば当然日本も影響を受けるが、その場合も、日銀は「副作用より効果の方が確実に大きいと判断できるような有効な手段を持っておらず、基本的に追加緩和はできない」と指摘。何らかの景気対策が必要だと判断される場合は「財政政策でやればよい」と述べた。

  日銀は22、23日に今年最初の金融政策決定会合を開き、四半期に1度の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、2020年度までの実質成長率と消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)前年比の見通しを示す。昨年10月時点の政策委員の中央値は、実質成長率が18年度1.4%、19年度と20年度が0.8%、コアCPIが18年度0.9%、消費増税の影響を除き19年度が1.4%、20年度が1.5%。

  門間氏は今月の会合について、「景気も物価も下方修正だろうが、だからといって追加緩和ができるわけではないし、正常化方向で見直しをする環境でもない」と指摘。経済、物価の見通しは変わるが、「政策は全く変わらない」と予想した。

  今年の金融政策運営に関しては、「前半はもう少し減速感が強まっていく可能性が高く、それを超えて悪くなるリスクもあるので、正常化方向の議論はする必要はないし、すべきでもない」としつつ、指数連動型上場投資信託(ETF)購入やマイナス金利、長期金利0%は「相当極端な政策なので、もう少し正常な方向に近づけられるような考え方をすべきだ」と語った。

  その上で、「首尾よく行けば、今年後半にもう少し景気の底が固まり、先行きの展開が見えてくる可能性は十分あるので、環境が良くなった時機を捉え、極端な政策をやめていく議論を遅滞なく行っていくことが課題になる」との見方を示した。

  門間氏は東大経済学部を卒業後、1981年に日銀に入行し、調査統計局長や企画局長、企画担当理事を歴任した。2016年5月にみずほ総合研究所に入社、エグゼグティブエコノミストを務める。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-08/PL02336TTDS001?srnd=cojp-v2


 


パウエル議長が示唆した利上げ停止の選択肢、16年に比べ効果薄か
Matthew Boesler
2019年1月9日 7:20 JST
• ほぼ1年にわたり金利を据え置いた16年のエピソードに議長は言及
• イエレン氏が「自動安定化装置」と呼んだ効果、今回頼りにできず
米金融当局にとって、2019年の幕開けは世界経済の成長を巡る懸念が金融市場を何カ月も揺さぶった16年の情景と極めて類似したものに映っているだろう。
  実際、4日に発言したパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は、金融当局がほぼ1年にわたって金利を据え置いた16年のエピソードに触れ、当局として必要と判断すれば柔軟に対応することができる点を強調した。

パウエルFRB議長
Photographer: Elijah Nouvelage/Bloomberg
  16年のケースと同じように、漸進的な利上げキャンペーンを停止する選択肢が金融当局にあるのは確かだ。だが、動揺を落ち着かせる効果は前回ほど大きくはないかもしれない。
  当局者は16年初めの段階で同年中に0.25ポイントずつ計4回の金利引き上げを予想していた。しかし、株価の下落によって軌道修正を余儀なくされ、結局、利上げしたのは12月の1回だけに終わった。
  16年の混乱時を振り返ると、金融当局者の間に様子見姿勢が広がると投資家が想定し、その結果、長期金利が押し下げられて、金融情勢の引き締まりが多少和らげられた。イエレンFRB議長(当時)が同年3月に米経済にとっての「自動安定化装置」と呼んだこうした効果のおかげで、米経済は混迷期を脱し、現在も続く同国の景気拡大局面は7月を乗り切れば最長となる。

  ただし、今の金融当局者にこうした自動安定化装置を頼りにする余裕はない。当局者は昨年12月に公表した最新の経済予測で19年中の2回の利上げを予想したのに対し、投資家は年内の利上げよりも利下げの公算の方が大きいと見込んでいるためだ。
  バンク・オブ・アメリカ(BofA)メリルリンチの世界経済調査共同責任者、イーサン・ハリス氏は、金融当局者が利下げに傾斜していない状況の下、議会は手詰まり状態にあり、トランプ政権が中国との間で繰り広げている貿易戦争は不確実性を増しており、金融当局は困難な立場に置かれていると話した。
  TDセキュリティーズの米国担当チーフマクロストラテジスト、マイケル・ハンソン氏は金融当局者について、「労働市場の逼迫(ひっぱく)に対し、過剰反応よりも過小反応の方がリスクが大きいと引き続き考えている。金融当局は利下げするとは言っていないし、利上げを停止するとも言明していない」と指摘した。
原題:Fed May Get Less Bang for the Buck If It Repeats 2016 Rate Pause(抜粋)

 


FOMC議事要旨:当局者間の温度差が注目点か−利上げ決定で
Christopher Condon
2019年1月9日 16:18 JST
• 昨年12月の会合ではFOMCメンバー全員一致で利上げを決めた
• 声明の文言微調整巡りどのような議論があったかにも関心
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は4日、「政策を迅速に調整する用意」があると述べ、それまでよりも金融市場に安心感を与える発言を行った。このため投資家の関心は、その2週間余り前の昨年12月18、19両日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)から移っているかもしれない。
  それでも、米東部時間9日午後2時(日本時間10日午前4時)に公表されるFOMC議事要旨の情報的価値が下がるわけではない。昨年12月のFOMCでは、金利据え置きを求めるトランプ大統領からの圧力や株価下落にもかかわらず、同年4回目となる利上げをメンバー全員一致で決めるとともに、2019年の利上げ回数を2回とする見通しが示された。
  最新の議事要旨からは、こうした決定や見通しを巡り、金融当局者の認識がどの程度一致していたのか、重要な手掛かりが得られる可能性がある。
  バンク・オブ・アメリカ(BofA)メリルリンチの米経済担当責任者、ミシェル・マイヤー氏は「FOMC内の議論について感触をつかむことができると考えられ、議事要旨の内容には引き続き価値がある」と述べるとともに、金利政策は「なおもFOMCで決まるものであり、内部の見解の相違を理解するのは重要だ」と指摘した。
  12月の利上げは広く予想されていた一方、FRBウオッチャーの多くは19日公表の声明で、政策金利の「さらなる漸進的引き上げ」を見込む文言が削除されてハト派姿勢にもっと傾斜すると予想していた。しかし、実際の声明の表現は「幾分かのさらなる漸進的引き上げ」に微調整されるのにとどまった。
  ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズのシニアエコノミスト、サラ・ハウス氏は「『幾分かのさらなる漸進的』の部分についてもっと踏み込んだ議論があったのは確かだろう」とし、議事要旨では「この部分を残した理由や、その判断にどの程度の賛否があったかが分かる可能性がある」と話した。 

原題:Fed Minutes to Reveal Debates Behind Unanimous Decision to
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-09/PL1XTK6S972801

http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/502.html

[経世済民130] 2019年の「不況」は設備投資のストック調整がカギを握る 日本株続伸、米中楽観 米債務急増に警鐘、利回り曲線スティープ化
2019年1月9日 河野龍太郎 :BNPパリバ証券経済調査本部長
2019年の「不況」は設備投資のストック調整がカギを握る

 世界的な株安傾向が2018年10月以降、続いており、2019年年初の株価急落もその流れだ。

 米国経済が好調だったこともあって、世界経済は順調に拡大を続けていると考える人も少なくなかったはずだ。しかし、実際のところは、景気が堅調なのは、トランプ減税の効果がでている米国だけで、昨年の年明け以降、欧州も中国も成長ペースは鈍化していた。

 そうした海外の成長減速もあって、日本の実質輸出と生産は、2018年前半から横ばい傾向が続いている。それでも日本の景気がなお緩やかな拡大局面できたのは、好調な企業収益を背景に設備投資が拡大を続けていたためだ。

 だが今年も景気拡大は持続するのかどうか。カギは製造業の設備投資だ。

世界経済の減速は続く
「封じ込め」で中国には逆風
 昨年から米国を除く多くの国で景気拡大がペースダウンしていた理由は幾つかある。

 まず、景気拡大局面が長く続いたことで資源価格が上昇するなど、多くの資源輸入国で交易条件が悪化した影響が現れていたことだ(米国は資源国なので、交易条件は悪化していない)。

 また、米国を中心に市場金利が上昇していたことも、総需要を抑制している。ドル金利の上昇は、資金流出に直面する新興国経済の下押し圧力ともなっていた。

 これらのことは、2009年6月に始まった世界経済の拡大が10年目を迎え、かなり成熟してきたことの現れとも言える。

 また、多少の金利上昇で総需要の拡大ペースが落ちているのは、自然利子率が依然、低いままであることを示唆しているのかもしれない。

 世界経済のもう一つの大きな減速の理由は、2017年秋以降、中国がその宿痾である過剰ストックや過剰債務、バブル問題の解決を図るべく、構造改革(緊縮政策)を強化したことだ。

 米中貿易戦争が始まった直後の2018年3月頃から中国経済の減速が目立ったのは、貿易戦争の影響ではなく構造改革の影響だった。経済規模の大きくなった中国が緊縮策を進めたため、多くの国にその影響が波及したのだ。

 米中貿易戦争が始まって以降、中国では緊縮政策が緩められているが、その一方で貿易戦争の悪影響が中国経済に広がり始めている。

 関税引き上げ前の駆け込みで、昨年中の中国の対米輸出は堅調だったが、足元では鈍化し始めており、また貿易戦争を巡る不確実性の高まりから、内外の企業が中国での設備投資に慎重になっている。

 米中貿易戦争には、2020年の再選を目指すトランプ大統領がアンチ・グローバリゼーションで保護主義の旗を振っていること以外にも理由がある。

 それは、国家資本主義のまま急膨張を続ける中国を封じ込めるというワシントン・コンセンサスの存在である。

 ついに米中で「新冷戦」が始まったのであり、仮に2020年の大統領選挙で自由貿易を重んじる新大統領が誕生したとしても、米中貿易戦争は継続すると見られる。

 1990年代に始まった第二次グローバリゼーションで最も恩恵を受けた中国経済に、今度は強い逆風が吹きつける。当面、中国経済は減速が続くと予想される。

 加えて、世界経済の調整局面入りが濃厚な理由として、景気拡大を続けている米国経済がこれまで通りにいくのかも見通せなくなっていることもある。

 米国経済が2018年に入って成長ペースを加速させていたのは、トランプ減税の効果だ。

 景気過熱で市場金利が上昇し、住宅販売や自動車販売が減少し始めているが、昨秋までは、減税効果に加えて株高や不動産高による資産効果も総需要をかさ上げしていた。

 低金利局面で、国外に流出していた資金が米国内に還流していることも、新興国の犠牲はあるが、米国の市場金利の急騰を抑え、景気拡大の長期化に役立っていた。

 しかし、それがいつまでも続くわけではない。まず、昨年10月をピークに資産市場のブームが終焉を迎えた可能性がある。

 90年代以降、米国はバブルの醸成なくしては完全雇用を達成することは難しくなっていた。

 また、2019年の年明け以降は、減税の効果が徐々に剥落し、年後半には、効果は完全に剥落する。各国と同様、米国経済も成熟局面にあり、減税の効果や資産効果が剥落すれば、景気減速は避けられない。

日本の輸出、生産は
2018年の年明け以降、横這い
 さて日本はどうなるのか。

 日本経済は海外経済の拡大ペースが鈍化していることもあって、輸出と生産は2018年の年明け以降、横這い傾向にあった。

 経済が好調な米国向け輸出も、米国自動車販売が金利上昇の影響で減少していることもあって、横這い傾向だ。

 欧州向け輸出は、船舶輸出が大きく落ち込んだこともあるが、欧州経済の成長ペースが滞っているため、減少している。

 欧州景気の減速は、イタリアの政治問題もさることながら、中国経済減速の影響も小さくないと思われるが、今後、政情不安に見舞われたフランスの景気減速も懸念される。

 中国向け輸出もついに減少が始まった。中国国内で工場建設などの固定資産投資は落ち込んでいるが、昨秋までは、米国からの経済制裁を受け、中国国内でサプライチェーンを完結しようともくろんでいるのか、日本からの資本財の購入は増えていた。

 しかし、固定資産投資そのものが大きく減速しているため、日本からの一般機械の輸出はいよいよ減少し始めている。

 一般に、輸出の回復が滞ってくれば、景気拡大にブレーキがかかった感覚が広がるのだが、近年、日本ではそうした空気にまではなっていない。理由の1つは、実質輸出が横ばいでも、円安傾向が続いていたことがある。

 円安が企業業績を下支えしているわけだが、米経済の先行きの見通しが悪くなれば、FRBの金融政策の方向性が変わり、円高が進む可能性が高い。

 景況感が変わらないもう一つの理由は、近年、国内の設備投資が好調を続けていたことがある。

 問題は世界経済に陰りが出てきた中で、企業経営者に先行きの業績懸念が広がれば、設備投資を先送りする可能性があることだろう。

 一方で今回の景気拡大局面で大きく増えているのは建設投資であり、こうした投資は必ずしも世界経済にリンクしている訳ではないという楽観的な見方もある。

 だが、どうだろうか。

2019年を左右するのは設備投資
牽引役の製造業の動向がカギ
 景気循環のメカニズムをシンプルなケインジアン・クロス(総需要と生産量の均衡点を示す45度分析)で考えてみよう。

 日本では長い間、個人消費の堅調な回復は見られていないが、民間の貯蓄を、(1)公的需要(財政赤字)、(2)外需(純輸出)、(3)設備投資のいずれかの手段でスムーズに吸収できた時、景気回復が可能となる。

 不況からの立ち上がりは、拡張財政で財政赤字が拡大することによって、民間貯蓄が吸収される。また、世界経済が回復すると、外需(純輸出)で民間貯蓄が吸収される。

 外需主導の回復が続くと、業績の回復した企業が設備投資を増やすため、民間貯蓄が吸収され、景気拡大が加速する。

 逆に、景気後退に陥るのは、急激な財政健全化によって公的需要が落ち込み、民間貯蓄が吸収できなくなるケースだ。

 あるいは、世界経済が悪化し、外需によって民間貯蓄が吸収できなくなるケースであり、それらは設備投資の悪化を招くため、民間貯蓄をますます吸収できなくなり、景気はさらに悪化する。

 ケインジアン・クロスを使って、2019年の日本経済を展望しよう。

 10月に消費増税が実施されるため、ポイント還元など、さまざまな対策が打たれても、個人消費が堅調に拡大するというのは、まず期待できない。

 ただ、ネット増税が2兆円であること、それに対して2兆円規模の消費増税対策が打たれることから、公的需要(財政赤字)は増税にも拘わらず、おおむねニュートラルとなる。

 外需は、前述した通り、現段階ですでに拡大が止まっており、2019年以降は、むしろ一段の減少が予想される。

 公的需要(財政赤字)が横這い、外需(純輸出)が減少だとすると、もし設備投資が増えなければ、民間貯蓄を十分吸収できなくなり、貯蓄投資バランスが崩れ、日本は景気後退局面に陥る。

 楽観的な見方をする人は、オリンピック関連だけでなく、インバウンド関連、不動産関連などの建設投資の増加が続くため、民間貯蓄の吸収が可能で、2019年も景気後退局面は避けられると考えるかもしれない。

 実際、ここ数年、設備投資が堅調に推移してきたのは、非製造業部門の建設投資が拡大を続けたためだ。しかし、急増が続いた結果、非製造業の建築着工は、既に2017年末にピークアウトしている。

 一方、逆に増えてきたのが、業績好調を受けた製造業の設備投資だ。

 景気拡大が長期化したことで、企業の間で楽観が広がっているのか、日銀短観などでも示される通り、大企業・製造業の2018年度の設備投資計画は高い伸びを示していた。

 建築着工でも製造業が増えており、工場建設の増加がうかがわれる。

 ただ、昨秋以降、株価は世界的に大幅な調整局面を迎えており、製造業は計画通り、設備投資を進めるのだろうか。

 2018年度については、軌道修正できず、設備投資を計画通り、実行するのかもしれない。しかし、海外経済の悪化が明確になれば、過剰ストックの積み上がりが懸念されるようになり、設備投資に急ブレーキがかかる可能性がある。

 もちろん、一部には、ロボティクスなどデジタル革命を受けた国内の無人工場の増設もあるだろう。第三次グローバリゼーションでは、新興国から先進国への生産拠点の再シフトという新しい動きが加速する。

 ただ、2018年度の設備投資計画は、昨年春先までの世界経済が絶好調な下で作られたバラ色の計画であったはずだ。

 こうしたことから、2019年は、設備投資で民間貯蓄を吸収することが難しくなり、日本経済は景気後退を避けられないと考える。

高い期待成長率もとに過大な投資
避けられないストック調整

 実は、経済全体で見ると、すでに現段階で、過大な設備投資が行われているとも言える。

 まず、設備投資比率(名目設備投資÷名目GDP)を見ると、過去4度の景気循環のピークとすでに並んでいる。

 だが、生み出した付加価値のうち、投資に回す比率が過去の景気循環のピーク水準まで上昇している。これは、バランスを欠いた、過大な投資が行われ始めた証拠ではないのか。

 資本ストック循環を見ても、仮に資本係数が横這いのままだとしても、現在の設備投資や資本ストックの伸びは、1.5%の期待成長率に対応したものとなっている。

 これは、筆者の推計する潜在成長率0.9%の2倍弱であり、持続可能とは言えない。

 資本係数の変化率が過去10年のトレンドで推移すると仮定すれば、現在の設備投資は2%もの高い期待成長率に対応しており、これは過剰ストックの大幅な積み上がりを意味する。

 つまり、景気拡大の最終局面で、楽観的な予想を企業が持ち始め、過大な資本蓄積をすでに始めた可能性があるのだ。

 慣性が働き、しばらくは設備投資の好調が続く可能性はあるにしても、いずれ設備ストック調整が訪れる可能性が高い。

 2012年の景気後退が軽微だったことを考えると、2009年から始まった長期の設備投資の拡大サイクルの調整が訪れるということなのだろう。

 そして単なるITサイクルの調整や製造業サイクルの調整だけでなく、過剰な設備ストックの調整ということになれば、軽微なものでは終わらないのかもしれない。

 この間に増えた設備投資の中には、日本銀行の極端な金融緩和でファイナンスされた収益性の低いものも少なからず含まれている。不良債権化する融資も増えてくるのだろう。

 もちろん、大幅な人手不足に対応して、日本の企業部門が資本集約化を進めているから、投資比率や資本ストックの伸びが高まっている、という解釈も可能かもしれない。

 人手不足を補うためのロボティクスやAIの装備がそれを後押ししているという見方も説得力があるだろう。第3次グローバリゼーションのフェーズに入りつつあることも、そうした動きを後押しする。

 とはいえ、これまでも「構造変化もあって、今回はこれまでとは違う」といった主張がしばしばされてきたが、実際、今回だけは違ったということがあっただろうか。

 仮に幸運が続いて、2019年は設備投資の拡大が続くとしても、それはより大きな調整が2020年に訪れることを意味するのではないか。

次の不況では日銀は脇役
金利政策は役に立たない

 景気の落ち込み具合は、政府による追加的な財政需要の規模に依存する。

 ケインジアン・クロスでの分析で不満なところは、経済対策の規模が大きければ大きいほど、景気の落ち込みが避けられるという論理展開になるところである。

 確かに短期的にはそうなのだが、追加財政の効果の本質は、赤字国債の発行を通じた将来所得の先食いであって、将来、返済を逃れることができないことを肝に銘じておかなければならない。付加価値が新たに生み出されるわけではない。

 無理に規模を追求すれば、借金返済で首が回らなくなり、必要な時に必要な政策が打てなくなる。

 実際、景気拡張期にも積極的な緩和を続けた金融政策は弾薬が尽きかかり、次回の不況期で、ほとんど出番はないと見られる。

 銀行業への副作用が大きいため、マイナス金利の深掘りや10年金利の誘導目標の引下げは難しく、主力の金利政策は殆んど役には立たない。

 イールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)を通じて、追加財政がもたらす金利上昇圧力を吸収するのが、主な役割となるのだろう。

 もちろん、マクロ安定化政策を担う中央銀行が何も行わない訳にはいかないだろうから、弊害を承知で、ETFなどリスク資産の購入拡大が実施される可能性がある。

 しかし、大幅な円高が訪れた場合、それを回避する手立ては全く残っていないのだろうか。

 世界経済が減速する中で、大幅な円高は輸出セクターに大きなダメージをもたらす。一方で、円高を避けるためのマイナス金利の深掘りは、金融機関の経営に大きなダメージをもたらす。

 一つ考えられるのは、日銀がマイナス金利での資金供給を行って金融機関に一種の補助金を供与した上で、マイナス金利を深掘りすることだ。

 これが現段階で考えられる日銀に残された手段である。

(BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎)
https://diamond.jp/articles/-/190348


 

日本株続伸、米中交渉への楽観強く全業種上げ−医薬品上げ顕著
長谷川敏郎
2019年1月9日 7:48 JST 更新日時 2019年1月9日 11:25 JST
• 米中協議は9日も継続、トランプ米大統領は中国との早期合意望む
• 米国株先物や中国上海総合指数高い、医薬品は武田薬が上昇けん引
9日の東京株式相場は3日続伸。米国と中国の貿易交渉への楽観が強まっているうえ、原油高を追い風に機械や電機、機械などの輸出関連が高いことで、東証33業種はすべて上げている。一部アナリストの強気判断から武田薬品工業が高くなるなど、特に医薬品株は上げが顕著となっている。
• TOPIXは前日比18.57ポイント(1.2%)高の1537.00−午前11時8分現在
• 日経平均株価は233円98銭(1.2%)高の2万0438円02銭
  北京で行われた米中の通商協議は進展しており、9日も継続されると米国の交渉担当者が明らかにした。トランプ米大統領は8日、「中国との交渉は非常にうまく進んでいる!」とツイートし、交渉の進展に楽観を示した。関係者によると、トランプ大統領は市場押し上げのため中国との早期合意を望んでいる。アジア時間の米S&P500種Eミニ先物が堅調に推移、中国上海総合指数が大幅高となっていることも投資家心理の改善につながっている。
  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の荒井誠治投資ストラテジストは米中通商交渉について、「昨年来のマーケットの最大の関心事」とした上で、「米中協議の延長で交渉が前向きに進んでいるとの観測がある。米国株市場で直近売られていた中国関連企業に買い戻しが入った流れが国内へも波及している」と述べた。
  業種別では午前11時8分時点で、医薬品がTOPIXの上昇寄与度、業種別値上がり率でともに首位と上げが目立つ。モルガン・スタンレーMUFG証券が投資判断を「オーバーウエート」で再開した武田薬をはじめ、国内骨粗鬆症治療でイベニティの製造販売承認を取得したと発表したアステラス薬品、野村証券がことしの医薬品セクターの注目銘柄の一つとしたエーザイも高い。
• 東証33業種では医薬品、精密機器、食料品、サービス、小売などが上昇率上位

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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-08/PL1AEB6S972801

 


米債務急増に警鐘、利回り曲線は今年スティープ化へ−ガンドラック氏
John Gittelsohn、Annie Massa、Katherine Greifeld
2019年1月9日 10:44 JST
• ダブルラインのガンドラック氏が年次ウェブキャストで発言
• 「プラグマティック・パウエル」から「パウエル・プット」に
米国の債務急増は「恐ろしい状況」だと米ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏が警鐘を鳴らした。
  同氏は8日の年次ウェブキャストで、米2018会計年度に国の債務が急速に増えたと警告。米国の全世帯が5000ドル(約54万円)まで利用できるクレジットカード3枚を限度いっぱいまで使っているようなものだと述べた。こうした膨れ上がった債務は人々が認識しているより経済に対してずっと大きな脅威となる恐れがあるとし、「われわれは本当に成長しているのだろうか。それとも、ただ借金に頼っているだけなのか」と問い掛けた。
• リセッション(景気後退)の指標を検証したガンドラック氏は、投資不適格級(ジャンク)債のスプレッドや消費者信頼感・住宅建設会社景況感など一部は黄信号を発していると指摘
• 「相対論的」に新興国市場に投資する時だとも発言。ドルが下落すれば、新興国株のパフォーマンスは米S&P500種株価指数を上回るだろうとしている
• ガンドラック氏はまた、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による4日の発言を同議長の降伏だと呼び、「『プラグマティック・パウエル』から『パウエル・プット』に変わった。市場はそれからパーティー状態だ」と述べた
• 米国債のイールドカーブ(利回り曲線)は今年、スティープ化する可能性があるとガンドラック氏は指摘
• 最近の相場上昇にもかかわらず、長期債利回りの上昇トレンドは恐らく続いていると同氏
• 投資家はジャンク債の最近の強さを「ギフト」と見なすべきで、そこから「抜け出す」必要があり、今年はその代わりに力強いバランスシートの企業に焦点を絞るべきだと促した
o 「それが19年のジグザク相場を生き残る道になるだろう」
原題:Gundlach Likens Rising Debt to Shoppers Maxing Out Credit (1)(抜粋)Gundlach Says Treasury Yield Curve Could Steepen in 2019(抜粋)

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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-09/PL1G616KLVR701?srnd=cojp-v2


パナソニック、「一蓮托生」のテスラに社運賭けるかー101年目の試練
堀江政嗣、古川有希、Pavel Alpeyev
2019年1月9日 9:24 JST
• 津賀社長はテスラ向け追加投資に苦悩−プラズマ失敗で経営危機も
• 長期低迷経て松下幸之助の精神に回帰、「お客様大事」で事業再構築
創業100年を迎えたパナソニックの津賀一宏社長の目下の大きな悩みは米電気自動車(EV)メーカー、テスラとの今後の関係だ。両社が進める車載向け電池の生産は軌道に乗り始め、「一蓮托生」になりつつあるが、追加投資には慎重な姿勢を崩さない。
  両社は、米ネバダ州の砂漠に巨大なリチウムイオン電池工場「ギガファクトリー」を共同運営する。テスラは大衆への普及を狙った「モデル3」の生産ペースが当初は上がらず、テスラに電池を独占供給するパナソニックも「生産地獄」に振り回された。現在は軌道に乗り、津賀氏もギガファクトリー事業の早期黒字化を期待できるまでになった。

津賀社長
Photographer: Akio Kon/Bloomberg
  テスラのイーロン・マスク最高経営責任者は既に先を見据え、上海でモデル3の生産を年末までに始めることを明らかにしたほか、巨大電池工場を中国や欧州などで建設する意向も示している。しかし、津賀社長はインタビューで追加投資についてはテスラと協議中として明言を避けた。その背景にはプラズマテレビへの大型投資失敗などで経営危機に陥った過去の経験がある。
  パナソニックは2000年代以降プラズマに注力し、兵庫県に工場を次々と建設。6000億円をつぎ込んだ投資競争の果てに韓国勢の液晶に敗れ、13年にプラズマTVの生産を終了した。そのつけは2期連続の巨額赤字やリストラとしてあらわれた。1990年にも米映画会社を61億ドル(当時のレートで約7900億円)で買収したもののシナジーを出せず、結局全株を手放した。

ネバダ州の「ギガファクトリー」
Photographer: Troy Harvey/Bloomberg
  テレビ事業では画質や音響などで他社との競争にのめり込む中で「われわれの感覚とお客さまの意識がずれていた」と反省し、12年の社長就任以来、顧客がより明確な企業向け事業の強化へかじを切ったという。

  戦後の家電ブームで急成長したパナソニックはこうした投資の失敗もあり、間もなく終わる平成の30年間にほとんど成長できなかった。前期(2018年3月期)の営業利益は3805億円と1990年3月期の8割ほどの水準だ。
  同じ日本を代表する企業でもいち早く海外展開を本格化させてパナソニックに売上高で3倍以上、時価総額で8倍以上の差をつけたトヨタ自動車や、ゲームや金融事業など次の収益の柱を育てて前期に7349億円の過去最高益を出したソニーとは対照的だ。
  一橋大大学院経営管理研究科の楠木建教授は、「家電の王様」だった過去の成功体験が技術や品質に対する過信を生み、顧客にとって意味のある価値を提供できなかったと指摘する。
  「われわれは先のみえない領域に入っていった」。津賀社長は過去20年間ほどで急激に普及したコンピューターと従来の家電を「同じようなものとして競争した」ことも低迷の背景にあったと振り返る。パナソニックはこの分野に弱く、一時はテレビでデジタル領域に挑戦したものの「しょせんコンピューターとは比べものにならないような世界」だったと総括した。
幸之助側近が語る
  パナソニック創業者の松下幸之助は大阪・船場の丁稚奉公から身を起こし、1918年に妻らと3人で電気器具の製造を始めた。世界恐慌や戦争など激動の時代を乗り越え、現在でグループ社員27万人を擁する日本を代表する大企業の礎を築いた。

インタビューに答える松下幸之助氏(1972年)
Source: Panasonic Corp.
  幸之助の秘書などを23年務めた江口克彦氏は、幸之助について人間にとって役に立つかどうかという価値観を「究極のものさし」として持つ一方、時代の変化や地域の事情に応じて臨機応変に事業方針を変える人物だったと語る。
  津賀社長は創業100年の節目を迎え、その幸之助が説いた「お客様大事」という言葉に立ち返り、会社を「創業者の考えておられた姿にもう一度戻そう」との思いを強くしているという。次の100年に向けたイメージを「くらしアップデート」という言葉で表現。家電やテレビなどの枠にとらわれず生活のさまざまな場で人々に快適さや利便性を提供できるような事業展開を目指すという。
  早稲田大学大学院経営管理研究科の入山章栄准教授は、グローバル企業にとっては会社が何のために生まれたのかということが重要で「創業者の原点に戻るというのは大賛成」だという。津賀社長は今後もその考えをわかりやすい言葉で社員に伝え続ける責務があると述べた。
EV普及なるか
  自動車業界ではEVや自動運転のブームなどで先の見えない競争が始まっている。次の100年に向けて歩み始めたパナソニックの成功のカギを握るのも、テスラなど車載向け電池の需要動向だ。
  津賀社長はパナソニックにとってEVの普及は「過去投資してきた電池の事業をやっと大きな規模に拡大するチャンス」と意気込む。一方、自身も車好きでガソリン車を否定するつもりはなく、電池の充電時間や高コストなどEVの本質的な問題もいまだ解決されていないとも指摘。将来のEV需要を見定めきれないでいる。

上海の施設に展示された「Model 3」
Photographer: Qilai Shen/Bloomberg
  テスラとの関係も既に単なるサプライヤーではなく「ア・パート・オブ・テスラ(テスラの一部)」という認識でいる。だからこそ、「相当大きな商売になりつつあり、われわれの事業リスクはどんどん大きくなってくる」のも事実だ。テスラの広報担当者からはコメントを得られていない。
  津賀社長は、テスラ向けの電池供給のボリュームは巨大であり、テスラに問題があった場合には「簡単に他の売り先を見つけることはできない」という。
  テスラにとって唯一の電池供給メーカーという現在の状況がベストかどうかも含め、パナソニックにとって「どういう形でお役立ちするのがいいかを考える」ことが今後の課題だとした。


リスク資産に戻るべき時−BNPパリバ・ウェルスやゴールドマン
Cecile Gutscher
2019年1月9日 14:19 JST
• あらゆるリスク資産への安心感が世界的に生じるだろうーBNP
• 上昇に乗り遅れると今年のリターンの大きな部分失うリスクーGS
株やクレジット商品、新興国市場の資産などでリスク回避を決め込んでいた投資家やストラテジストが姿勢を変え始めた。
  BNPパリバ・ウェルス・マネジメントやゴールドマン・サックス・グループは、先進国経済がリセッション(景気後退)の瀬戸際にあるとの市場の見方を否定する。
  逆に、割安になった資産価格や貿易問題での歩み寄りの兆し、中国の景気刺激策など、潜在的な好材料は多い。
  BNPパリバ・ウェルス・マネジメントのフローラン・ブロネス最高投資責任者(CIO)はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「市場は政治を巡る強い不確実性を昨年消化したので、その終わりとともにあらゆるリスク資産への安心感が世界的に生じるだろう」と話した。
  投資家が恐る恐るリスク資産に戻り、売り込まれていたバリュー株や新興市場資産が持ち直すとブロネス氏は予想している。
  ゴールドマンは、前向きな政策進展や予想を上回る指標などをきっかけに資産価格が反発した場合、投資家は急いで飛び乗らなければならないと考えている。
  ピーター・オッペンハイマー氏らストラテジストはリポートで、「世界経済が2019年に減速するがリセッションには至らず、米金利は今年にピークを付けると当社は考えている。これが正しければ、リスク資産が値上がりする余地はある」と記述。「上昇に乗り遅れると今年の投資リターンの大きな部分を失うリスクがある」と論じた。

フローラン・ブロネス氏
(出典:ブルームバーグ)
原題:Risk Is Back as Morgan Stanley, Goldman Signal Bullish Way Out(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-09/PL1QQT6JIJUO01?srnd=cojp-v2


シタデルの旗艦ヘッジファンド、18年のリターンはプラス9%−関係者
Hema Parmar、Melissa Karsh
2019年1月9日 14:25 JST
• 昨年はマルチ戦略ファンドがヘッジファンド業界で群抜く成績
• ミレニアム・マネジメントは5%のリターン、ハドソン・ベイ6.5%
大規模なマルチ戦略型ヘッジファンドは、他のファンドが苦戦した波乱の1年に、利益を上げる方法を見つけた。
  事情に詳しい複数の関係者によると、300億ドル(約3兆2700億円)余りを運用するケン・グリフィン氏のシタデルは、旗艦ファンドの「ウェリントン」で昨年の成績がプラス9.1%だった。イジー・イングランダー氏率いるミレニアム・マネジメント(運用資産350億ドル)は5%近いリターンを記録した。ハドソン・ベイ・キャピタル・マネジメント(同30億ドル)はプラス6.5%のリターンだったと別の関係者は明らかにした。
  これらのヘッジファンドは株・債券や通貨、金利など幅広い商品で運用しており、株式戦略に打撃を与えた高ボラティリティーの環境を生かした。ブルームバーグ・ヘッジファンド・データベースからの暫定値によれば、ヘッジファンド全体の2018年のリターンは平均で6%近いマイナスだった。
  ヘッジファンドに投資するクリアブルック・グローバル・アドバイザーズのティム・ウン最高投資責任者(CIO)は、「マルチ戦略型ファンドというのはどれも同じというわけではなく、そこが鍵になる」と説明。「だが、昨年好調だったファンドはどれも、特に好調だった市場セグメントの少なくとも1つに資産配分していた」と指摘し、ボラティリティーやコンバーティブル・アービトラージ、イベントドリブンなどの分野を挙げた。
原題:Citadel Hedge Fund Said to Gain 9% in Strong Multi-Strategy Year(抜粋)

ソシエテG:日本でDCM事業を開始、安保氏を責任者に任命
伊藤小巻
2019年1月9日 11:23 JST
• 資本市場部を新設、すでに香港、シンガポール、ソウルとともに展開
• 環境債や社会貢献債を含む債券、負債管理ソリューションなど提供
仏銀行のソシエテ・ジェネラルは、成長戦略の一環として債券を取り扱うデット・キャピタル・マーケット(DCM)事業を日本で開始する。
  9日付の資料によるとソシエテGは、資本市場部を新設して安保洋平氏を日本のDCM事業の責任者に任命した。安保氏は東京を拠点にソシエテ・ジェネラル証券の島本幸治社長、事業上はソシエテ・ジェネラルのアジア太平洋地域DCM部門ディレクターのデ−ビッド・ソー氏の下で事業を統括する。
  すでに香港、シンガポール、ソウルにDCM事業の拠点を築いており、主要市場の日本で事業を始めてアジア太平洋で基盤を拡大する。具体的には環境債や社会貢献債を含む各種債券、負債管理ソリューションなどを包括的に発行体に提供する。


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6.
仮想通貨イーサリアム・クラシックに51%攻撃か、2重支払い発生
Olga Kharif
2019年1月9日 11:05 JST
• ブロックチェーンに「大規模な再編」が見られたとコインベース
• コインベースはETCの取引停止、他の交換業者も追随の公算大
仮想通貨2位のイーサリアム(イーサ)から派生した「イーサリアム・クラシック」(ETC)が、一部マイナー(採掘者)による攻撃を受け続けている。同仮想通貨の開発資金を提供するグループが明らかにした。
  仮想通貨交換事業者コインベースは7日、ETCのブロックチェーンに「大規模な再編」が見られ、その結果、同仮想通貨約110万ドル(1億2000万円)相当が2回利用されたと説明。これは、ネットワークを支える一部のコンピューターが取引を改ざんするいわゆる51%攻撃を示唆している可能性がある。
  イーサリアム・クラシック・コーペラティブの米国担当ディレクター、アンソニー・ルサーディ氏は8日の電話取材に対し「実際に起きたことで、コインベースの発表はどれも正確だ」と語った。

  コインベースはETCの取引を停止しており、他の交換業者も同様の措置を講じる可能性が高い。データ提供のコインマーケットキャップ・ドット・コムによると、同仮想通貨は時価総額で18位だが、先週以降で約7.3%値下がりしている。
原題:Cryptocurrency Ethereum Classic Software Remains Under Siege (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-09/PL1G2K6S972F01


http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/503.html

[経世済民130] 米大統領は市場押し上げのため中国との早期貿易合意望む 「国境危機」で予算通過、関税権限拡大を訴え 非常事態宣言せず


米大統領は市場押し上げのため中国との早期貿易合意望む 
Jenny Leonard、Jennifer Jacobs、Saleha Mohsin、Shawn Donnan
2019年1月9日 7:45 JST 更新日時 2019年1月9日 9:22 JST
• トランプ大統領は相場上昇を強く望んでいると関係者
• 「中国との協議は非常に順調だ!」と大統領はツイート

Donald Trump at the White House in Washington, D.C.
Photographer: Saul Loeb/AFP
トランプ米大統領は貿易戦争への懸念で悪化した金融市場を押し上げるため、中国と早期に合意することを一段と強く望んでいる。ホワイトハウス内の議論に詳しい複数の関係者が明らかにした。
  北京で開かれている米中次官級通商協議は8日までの予定だったが1日延長された。米中双方が合意に向け前進しているとトランプ大統領がツイートし、楽観ムードが広がっていたが、日程延長でそれがさらに強まった。
  ホワイトハウス内では、一部の主要経済顧問が市場回復に向け貿易摩擦の早急な解消を主張している。米株の指標、S&P500種株価指数は昨年12月1日の米中首脳会談以降、約8%下落した。
  トランプ大統領は8日のツイートで、「中国との協議は非常に順調だ!」とあらためて楽観的なメッセージを発した。
  事情に詳しい関係者によれば、トランプ大統領が相場上昇を強く望んでいることが中国との合意に積極的な主な理由だという。トランプ大統領は米中双方に利益をもたらす合意を結びたいと公言する一方で、中国は経済減速と株価下落からみて、迅速な結果を米国より強く望んでいると指摘している。
  しかし昨年5月に始まった米中通商協議は事態打開の期待を繰り返し裏切ってきており、中国政府は米国の要求に屈しないと何度も表明している。
  米通商代表部(USTR)の報道担当部署はコメントを控えた。
  関係者らによると、トランプ大統領はこの1カ月間下落している米株式市場を成功したか失敗したかの目安にしており、株価の変動に不満を表してきた。
  チャイナ・ベージュ・ブックのリランド・ミラー最高経営責任者(CEO)は8日のブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「われわれは合意に向かっている。中国が合意を望み、必要としてることは疑いない。中国経済は公式データが示しているよりはるかに大幅に減速していると私はみている」と発言。「ホワイトハウス内にはより長期の戦いを望む者も多いが、トランプ大統領が方針を打ち出し、合意を望むと述べている。従ってわれわれはそれに向かっている」と説明した。
原題:Trump Said to Want Trade Deal With China to Boost Stock Market(抜粋)
(識者のコメントなどを追加して更新します.)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-08/PL1B776JTSG401
 

トランプ大統領:「国境危機」で予算通過訴え−非常事態宣言せず
Jennifer Epstein
2019年1月9日 11:54 JST 更新日時 2019年1月9日 14:05 JST
• 演説では政府機関の一部閉鎖招いた対立解消への新たな道筋示されず
• 大統領が呼ぶようなメキシコ国境の危機存在しない−議会民主党首脳
トランプ米大統領は8日夜(日本時間9日午前)の国民向け演説で国境警備の追加予算を議会に認めるよう求めたが、非常事態の宣言には至らなかった。メキシコ国境の壁建設を巡って続く対立解消への新たな道筋は示されなかった。
  トランプ大統領はホワイトハウスの大統領執務室から約10分間のテレビ演説を行い、「唯一の解決策は、米国の国境を守り政府機関を再開させる予算案を民主党が通過させることだ」と訴えた。過去の大統領は、大規模な軍事行動の説明や危機時に冷静を呼び掛ける際にプライムタイムの国民演説を用いてきた。

大統領執務室で国民向けに演説するトランプ大統領(1月8日)
Photographer: Kevin Dietsch/Pool via Bloomberg
  全ての米主要テレビネットワークで中継された今回の演説は、メキシコ国境の危機とトランプ大統領が呼ぶ問題への対応の一環。大統領は選挙公約の実行に努めていると支持者らに示すと共に、国民に直接話しかけることによって民主党に国境警備の追加予算を認めるよう求める圧力が高まることを期待している。
  トランプ大統領は、「これは人道的危機だ」とした上で、「心の危機、魂の危機でもある」と述べた。
  演説終了後間もなく民主党のペロシ下院議長とシューマー上院院内総務は反論。トランプ大統領のメキシコ国境の危機という表現について否定的な考えを示した。
  ペロシ下院議長は、「米国民を人質に取ることや、危機をでっち上げることをトランプ大統領はやめなければならない。そして政府機関を再開するべきだ」と語った。シューマー院内総務は、政府閉鎖で責任を問われるべきなのは大統領だけだと主張した。

反論の演説をした民主党のペロシ下院議長(右)とシューマー上院院内総務(1月8日)
Photographer: Chip Somodevilla/Getty Images
  シューマー院内総務は「米国の民主主義はこのようなものではない」と発言。「われわれはかんしゃくに支配されない。テーブルをたたいて、自分の要求が通らなければ政府閉鎖を行うなどと要求し、多くの国民を利用して害をもたらすのは大統領としてあるまじき行為だ」と話した。
  トランプ大統領は演説で、国境の壁計画を「不道徳」だとした反対派に反論。「唯一不道徳なのは、何もせず、罪もない人たちがひどい犠牲を強いられる状態を引き続き許す政治家だ」と語り、不法移民によるものとする残虐な犯罪に言及した。
  トランプ大統領とペンス副大統領は9日、上院共和党と議会で昼食を共にする予定。また大統領はホワイトハウスで共和、民主両党の議会指導者と会談する。大統領は10日、メキシコ国境を訪れる計画だ。
  トランプ大統領は一部政府機関の閉鎖をもたらしている対立の解消に向けた新たな方策を一切示さなかった。大統領は国境警備の追加予算に加え、約234マイル(約377キロメートル)もの新たな物理的防壁の建設費用と不法入国した移民の収容費用で57億ドル(約6200億円)を求めている。
  トランプ大統領の保守派支持者の一部は、演説で非常事態を宣言するよう大統領に強く働き掛けていた。民主党が下院の過半数議席を握る中、演説での非常宣言が唯一の公約実行への道筋だと保守派の支持者らはみており、宣言を行えば仮に裁判所によって阻止されたとしてもトランプ大統領は面目を施し、政府機関を再開することができるというわけだ。
  世論は政府機関閉鎖の責任はトランプ大統領にあるとの見解に傾いており、閉鎖が長引くについてその傾向は強まっている。1月1−7日に成人を対象に行われたロイター・イプソス世論調査によると、51%が政府閉鎖の責任の大半は大統領にあると回答。昨年12月21−25日に行われた同種の調査から4ポイント増加した。
原題:Trump Declares Border ‘Crisis’ Without New Plan to End Impasse(抜粋)
(演説内容や背景などを追加して更新します.)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-09/PL1LUF6JIJUP01

 
トランプ大統領、外国の非関税障壁巡り関税権限拡大を訴えへ−関係者
Jenny Leonard、Jennifer Jacobs
2019年1月9日 13:18 JST
• トランプ大統領は一般教書演説で法案成立を強く求める見通し
• 民主党がトランプ大統領の権限拡大を認める可能性は低いと関係者
トランプ米大統領は議会で今月行う一般教書演説で、米国の輸出品に対する外国の非関税障壁を打破するために大統領権限を拡大する新たな法案の成立を強く求める見通しだ。計画に詳しい複数の関係者が明らかにした。
  ホワイトハウスのナバロ国家通商会議(NTC)委員長のオフィスが通商代表部(USTR)および商務省と共にまとめた案は、他国の非関税障壁が過度に制限的と見なされる場合、米国の関税を強化できる広範な権限を大統領に与えることを目指す。同案について説明を受けた関係者の1人が明らかにした。

ナバロNTC委員長
写真家:Andrew Harrer / Bloomberg
  この関係者によると、トランプ政権の他の当局者らは、いわゆる「米互恵通商協定法」をこれまで入念に検討し、ホワイトハウスが少数の共和党下院議員らと協力して作業を進めてきたという。
  議会の承認なしに関税を引き上げる大統領権限の強化を目指すホワイトハウスの案について、実現するかどうかは不透明だと関係者の1人は述べた。一部の民主党議員らは不公正な貿易慣行への厳しい対応をイデオロギーとして支持しているものの、トランプ大統領の権限拡大を認める可能性は低いという。民主党は昨年11月の中間選挙の結果、下院で過半数の議席を得た。
原題:White House Is Said to Roll Out Bill to Expand Tariff Powers(抜粋)

 
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-09/PL1G2K6S972F01


http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/504.html

[経世済民130] 大荒れマーケットとどう付き合うべきか、投資初心者に答えるQ&A 10問 インカム投資対象ランキング2019 
2019年1月9日 山崎 元 :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員


大荒れマーケットとどう付き合うべきか、投資初心者に答えるQ&A 10問

株価は大発会から大きく値下がりした
2019年東証大発会は、大きな値下がりでスタートした Photo:松尾/アフロ

大荒れのマーケット
投資家はどう行動すればいいのか

 昨年末にかけて、さらに年明けにも株価は大きく下落し、1日に日経平均が数百円も動くような荒っぽい値動きになっている。

 一方、iDeCo(個人型確定拠出年金)や、昨年スタートしたつみたてNISAのような積立投資を税制的に支援する制度の普及が拡大しており、旧年中に両制度共に口座数が100万を超えたという。新たに投資を始めた投資初心者が、少なくないということだ。

 今回は、投資の初心者を念頭に置きながら、大荒れのマーケットをどう考えて、投資家はどのように行動したらいいのかについて、Q&A形式で書いてみた。優しい気持ちで易しい答えが書けるように、いつもとは異なる「です・ます調」で書いてみる。

Q1 なぜ株価が大幅に下がったのですか?

 株価変動の最大の要因は、米国の金融政策です。米国経済の好調を背景に、米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は昨年4回の政策金利の引き上げを実施しました。

 株価は、金利が上昇するといずれは大幅な調整(株式市場関係者は株価下落のことを「調整」と呼びます。上昇が当たり前だという願いがこもった表現ですね)は避けられないので、いくぶん早い印象はあるものの、米国の株価が大きく下落することに不思議はありません。

 米国の株価が下がったことと、円高が進んだことの影響を受けて日本の株価も、大幅に下落しました。

 現在、最も注目を集めている要因は、FRBが今年の金融政策をどのように進めるかです。現在のパウエル議長はトランプ大統領が任命した人ですが、昨年、金融政策を決める会合(FOMC:連邦市場委員会)で、市場が期待していたよりも今後の金利引き上げに積極的な姿勢を見せたために、株価は大きく下落しました。一方、今年になって、1月4日の講演でパウエル議長が「環境によっては金融政策に転換があり得る」と柔軟な姿勢を示したことを受けて、1月5日には内外の株価が大幅に上昇しました。

 今後も、FRBの金融政策に株式市場が振り回される展開がしばらく続きそうです。

 株価は、大まかにはFRB次第で、予想が簡単ではありませんが、もともと大きな「バブル」(高過ぎて維持できない資産価格が広範に形成される現象)が発生していたわけではないので、リーマンショックの時のように大幅に下落することはないだろうと筆者は考えています。

Q2 なぜ、日本の株価が海外の株価と同じ動きをするのですか?

 株価が金利に影響されるなら、金融緩和が続いて低金利の日本で、日本株の株価がどうして大きく下がるのかというのは当然の疑問でしょう。

 近年の日本の株価変動は、米国の株価と為替レートの動きでほぼ説明でき、海外の株価と日本の株価の連動性はますます強まる傾向にあります。

 海外の株価が下がると、世界の株式に分散投資している海外の投資家が、日本の株式も売ってきます。海外投資家の日本株売却には、投資全体の中の日本株のバランスを取る目的と、海外株価の下落自体が日本株の下落材料だと知っているからという2つの理由があると考えられますが、彼らの株式の売買は一方向に集中する傾向があり、株価形成に対して主導的な影響力を持っています。

 市場では売り買い双方があって株価が成立しているわけですが、日銀をはじめとする日本の投資家は価格を大きく動かすような形で売買参加をしないので、海外投資家の売買動向が日本の株価を決める状況が長年続いています。

 日本の株価を見るに当たって、日本国内の要因よりもむしろ米国の要因を見るべきだという状況は納得しにくいかもしれませんが、投資家はこれを現実として受け入れて、市場の動向を理解する方がいいでしょう。

Q3 「損切り」は必要でしょうか?

「損切り」とは、これ以上損失が発生しないよう、自分が持っているリスク資産を売却するような行為を指す相場用語です。為替相場や、商品相場など、株式以外の相場物にあっても、損切りの重要性がしばしば指摘されます。

 株式投資は、FX(外国為替証拠金取引)による為替相場への参加や、商品先物取引などの「ゼロサムゲーム」(参加者の損益の合計がゼロになるような性質のゲーム)的なリスクを取るのではなく、企業に資本を提供するというリスクを取るゲームなので、リスク負担に対する追加的な収益が見込めるように株価が形成される性質があります。

 こうした株価形成は「理屈上の期待」です。もちろん、市場参加者の見通しよりも悪い事態が起こった場合、株式投資で損をする可能性は常にありますが、長期的には機能すると考えられています(筆者もそう考えています)。

 ゼロサムゲーム的なリスクを取っている状態にあっては、「リスクを取っていない状態」が当たり前なので、自分の想定外の事態が起こった時に「損切り」をするのはいわば基本動作であり、大切なことです。

 一方、株式投資にあっては、「自分にとって適切な大きさのリスクを持っている状態」が当たり前の状態になるので、原則として、現在持っているリスクが過大でなければ、損切りをする必要はありません。

 むやみに損切りをすると、次の株価上昇を取り逃がすケースが少なくありませんし、「売って」「買って」を繰り返すと余計な手数料が掛かります。

 株価の変動は気持ちが悪いかもしれませんが、この「気持ちの悪さ」こそが、株式の長期的に高いリターンの源泉になるものなので我慢してください。

Q4 「ナンピン買い」をしてもいいでしょうか?

「ナンピン買い」とは、株価などが下がったところで同じ株式を買い増しして、平均的な買い単価を引き下げようとする売買行動を指す相場用語です。

 株式が長期的に上昇するというなら、株価が下落したところで買い増ししておくと、将来の儲けが大きくなるのではないかと考えることには一理あるので、一概に「ナンピン買いは悪い」とは申し上げません。

 しかし、目先の損益的な勝ち負けにこだわって「買い単価を下げて、株価が戻ったら利益を出して売ろう」と考えてナンピン買いをするとすれば、不当に大きなリスクを取ってしまう原因になり得るので、個人投資家にはお勧めしません。

 特に、個別株投資をしている投資家は、個々の銘柄での勝ち負けにこだわって値下がりした保有銘柄をナンピン買いすると、その銘柄への投資ウエートが過大になってポートフォリオのバランスが狂うことが多いので、ナンピン買いはやめておいた方がいいでしょう。個人投資家の場合、分散投資が不足気味の場合が多いので、株式を追加的に買う場合は自分が持っていない銘柄を買う方が好ましい状態になりやすい理屈です。

 個別銘柄単位での勝ち負けにこだわる投資は、やめておくのが賢明です。

「損切り」についても「ナンピン買い」についても、株式投資における大きな判断原則は、現在の自分にとって最適と思われるリスクポジションを「持ち続ける」のが正しい行動だと考えてください。多くの場合、「現状を維持して様子を見る」が正解になるでしょう。

Q5 積立投資は続けていてもいいのでしょうか?

 続けていいでしょう。結果的に株価が下がった時点でうまく買えると、将来利益が出て気分がいいのですが、タイミングを見て買うことは判断としても精神的にも難しいので、機械的な積立投資で株式投資を増やすのは実行しやすい方法です。現在の相場状況は「積立投資向き」だと言っていいでしょう。

 一方、今回の下げ相場で、「既に投資していた株式」については、買い方が積立投資であってもなくても同じように株価が下落したことを体験された投資家が多くいらっしゃるでしょう。「積立投資にはリスクを低減する効果があるのだ」と過信しない方がいいと注意を申し上げておきます。

 積立投資は、精神的に実行しやすい方法ですが、ゆっくりとリスク資産を積み上げているというだけのことであり、「毎回毎回の積立にあって投資後の状態が自分にとってベストなのだ」という状況であれば好ましい方法です。まだ大きな資産を形成していない、若いサラリーマンなどは概ねそのような状況でしょうから、積立投資を続けることが合理的でしょう。

Q6 上下の値動きを利用する上手い方法はないのでしょうか?

 ありません。

 株価が下げたときに売って、株価が上げたときに買うようになった場合にどれくらいバカバカしい心境になるかを想像し、余計な売買を我慢するのがいいでしょう。

Q7 乱高下相場にはアクティブファンドの方が向いていますか?

 インデックスファンドと比較した場合に、アクティブファンドは傾向として現金ポジションを多く保有しているので、下落相場で相対的に有利になりやすいということはあります。しかし、現金保有が多いファンドは上昇相場に弱いので、アクティブファンドに投資している方が有利だと判断できる根拠はありません。

 また、個別の名前は挙げませんが、昨秋来の下げ相場で市場平均に大きく負けている人気のアクティブファンドもあります。「守りに強い運用」などという言葉は、ファンドマネージャーの単なる願望だと思って聞いておくのがいいでしょう。

 いつが下落相場で、いつが上昇相場だという判断はできないのですから、株価の乱高下はアクティブファンドに投資する理由にはなりません。

 そもそも、(1)長期的、平均的にはインデックスファンドに運用成績が負けていて、(2)相対的に優れたアクティブファンドを投資する時点で選ぶ方法はなく、(3)運用管理手数料が高いことは確実な不利。以上3点だけ見ても、投資家個人の趣味や信仰以外にアクティブファンドに投資すべき理由を見つけることはできません。

Q8 政府・日銀に打つ手はないのでしょうか?

 経済政策を適切に行うこと「だけ」が重要であり、株価対策は必要ありませんし、むしろ有害です。

 日銀のETF(上場型投資信託)を通じた株式買いは、短期的に株価の下落を抑制する効果があるのかもしれませんが、個人投資家がより安値で株式に投資する機会を奪っているとも考えられます。

 政府や日銀に期待するのはやめておきましょう。

Q9 消費税率を予定通り引き上げたらどうなりますか?

 日本の経済にとっても、株価にとっても、大きな悪材料でしょう。

 現在発表されている「対策」は内容が“筋悪”であることに加えて、期間が1年で切れるものであり、長期的な消費に与える悪影響を抑えられるものではありません。その影響は誰もが分かっているので、株価にも消費それ自体にも悪影響は前倒しで出る可能性が大きいと考えられます。

 消費増税の延期が、なるべく早い時点で決定されることを望みたいところですが、現実に消費増税が実行されてしまった場合、投資家としては恐らく下落する株価で「しばらく我慢する」以外に手がありません。残念ですね。

Q10 個別株に投資している人はどうしたらいいでしょうか?

 現在、日本固有の材料や個別企業の材料にあまり関係なく、海外市場の動向に連れて日本の株価が大きく変動する状況になっています。

 こうした構造は短期間で変わるものではなさそうですが、特に海外市場で株価が下落した場合に、日本株がまとめて売られる状況の中で、事業内容に対して割安な株価が個別に発生しやすい状況になっていると考えられます。

 趣味として、あるいは仕事として、個別の株式に投資している人にとっては、現状はチャンスを見つけやすい状況ではないでしょうか。

 もちろん、個別株投資にあっても分散投資は重要であり、投資家は「多くの割安銘柄をバランスよく持つ」状態を目指すべきでしょう。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
https://diamond.jp/articles/-/190355

 

2019年1月9日 The Wall Street Journal
【バロンズ】
インカム投資対象ランキング2019 高利回りを期待できる資産クラスは
マーケット
Photo:Reuters
変動の激しい相場では安定したインカムが魅力的
 変動の激しい相場が数週間続いたことで、利回り重視の投資対象による安定したインカムが非常に魅力的に見える。また、最近の急落により、今後数年のパフォーマンスが極めて有望な株式と債券の両方に豊富な投資機会が生じた。

 現在、特に魅力的なインカム投資対象は、米国と海外の高配当株式、マスター・リミテッド・パートナーシップ(MLP)、ジャンク債、優先株式などである。こうしたセクターでは、個別銘柄、ミューチュアルファンド、上場投資信託(ETF)や、大きな打撃を受けたクローズドエンド・ファンドを通じて3〜10%の利回りを獲得することができる。

 本誌は毎年、インカム投資対象の評価を行っている。7回目となる今年は11の異なるセクターについて検討した。以下、本誌の選好順に紹介する。

1位:MLP

 ベンチマークのアレリアン指数が2014年のピークから55%下落したことや、キンダー・モーガン(KMI)およびプレーンズ・オール・アメリカン・パイプライン(PAA)などが減配したことによって、多くの個人投資家はMLPを見限った。

 現在は、平均利回りが9%あるMLPセクターを見直す好機かもしれない。キャッシュフローの成長、国内のエネルギー生産の増加、コーポレートガバナンスの改善によって、エネルギーパイプライン業界は恐らく過去最高の状態にある。

 投資会社サリエントでMLP部門のプレジデントを務めるグレッグ・リード氏は、「MLPはエネルギー価格に対して過剰に反応している」と語る。同氏は、2019年に米国の石油・ガス生産の伸びが減速する可能性には警戒する一方、配当カバレッジ比率に対する安心感の高まり、財務レバレッジの低下に加え、設備投資において自社で創出したキャッシュフローの利用が増えていることを好感している。

 MLPに投資するクローズドエンド・ファンドは、昨年30%下落しており、投資妙味がある。運用資産額20億ドルとセクター最大のケイン・アンダーソンMLP/ミッドストリーム・インベストメント(KYN)は、昨年28%下落し、直近の価格は14ドル、利回りは10%となっている。サリエント・ミッドストリーム・アンドMLP(SMM)の昨年の下落率は33%で、直近の価格は約7.5ドル、利回りは9%である。

2位:ジャンク債

 株式市場の混乱、世界経済に関する懸念や、ジャンク債のファンドおよびETFからの資金流出により、平均利回りは第4四半期初めの約6%から8%程度まで上昇した。運用資産額80億ドルのメインステイ・マッケイ・ハイイールド社債ファンド(MKHCX)のマネジャー、アンドリュー・サッサー氏は、利回りの上昇が年金基金を引き付けると考えており、2019年中のリターンが10%強に達する可能性があるとみる。

 サッサー氏は推定資産価値が負債価値を十分に上回る企業に重点を置く。同氏は、バービー人形などの有名ブランドを有することから、玩具メーカーのマテル(MAT)が発行する2025年満期の6年9カ月物社債を選好している。現在の利回りは約9%である。また、自動車部品メーカーのテネコ(TEN)が発行する利率5%の2026年満期債も好んでいる。こちらの債券利回りも9%だ。

 代表的なジャンク債ETFであるiシェアーズiBoxxハイ・イールド社債(HYG)の価格は約80ドル、利回りは5.6%である。低迷しているクローズドエンド・ファンドでは一段と高い利回りが得られる。ブラックロック・コーポレート・ハイイールド(HYT)の価格は約9ドル、利回りは9.1%だ。財務レバレッジ比率が高い企業のローンに投資するヌビーン・クレジット・ストラテジーズ・インカム(JQC)は、価格が約7ドル、利回りが6.5%となっている。

3位:欧州の高配当株と高配当ファンド

 欧州への投資は過去10年以上にわたって難しい状況にあり、バンガードFTSE欧州ETF(VGK)は2006年の水準を下回っている。一方、S&P500指数は同期間で2倍に上昇した。

 しかし、高利回りを求める投資家にとって欧州は魅力的である。バリュエーションの低下に加え、伝統的に自社株買いよりも配当が好まれるためだ。2019年予想株価収益率(PER)は、S&P500指数の14倍に対して欧州株は平均12倍である。

 平均配当利回りは欧州が4%、英国ではさらに高い5%に上る。英国に対するエクスポージャーは、ETFのiシェアーズMSCI英国(EWU)を通じて獲得することができる。同ETFの構成企業は、石油大手BP(BP)、金融大手HSBC(HSBC)、製薬大手グラクソスミスクライン(GSK)、石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル(RDS.B)といった高配当銘柄で占められている。

 食品大手ダノン(DANOY)、食品・日用品大手ユニリーバ(UN)といった欧州を代表する消費財銘柄や、カルティエおよびヴァンクリーフ&アーペルなどのブランドを有する高級時計・宝飾品大手リシュモン(CFRUY)の配当利回りは3%を超える。

4位:米国の高配当株と高配当ファンド

 昨年、バンガード高配当株式ETF(VYM)は9%下落し、SPDR S&P500 ETF(SPY)を約3%ポイント、アンダーパフォームした。投資家はさまざまな銘柄において、S&P500指数の2.2%を超える3%強の配当利回りを得ることができる。

 大きな打撃を受けた金融セクターでは、JPモルガン(JPM)、ウェルズ・ファーゴ(WFC)、シティグループ(C)、モルガン・スタンレー(MS)の配当利回りが3%を上回る。シティグループとモルガン・スタンレーの2018年PERはわずか8倍で、純資産価額を下回る水準で取引されている。業界のリーダーであるJPモルガンのPERは10倍だ。

 低迷しているエネルギーセクターでは、石油大手のエクソンモービル(XOM)とシェブロン(CVX)の配当利回りがそれぞれ4.8%と4.1%である。しかし、原油価格の国際的な指標であるブレント原油先物価格が1バレル50ドルを下回る場合、両社が配当を支払う能力は低下するとみられる。資本財セクターの建機大手キャタピラー(CAT)や複合企業のユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)も3%近い配当利回りを有する。

 バンガード以外の高配当株ETFには、利回り3.6%のiシェアーズ好配当株式(DVY)、同2.8%のプロシェアーズS&P500配当貴族(NOBL)などがある。

5位:優先株式

 優先株式セクターは、過去数カ月間、堅調な米国債市場とパフォーマンスが乖離(かいり)しており、52週安値付近で推移している。ジーグラー・キャピタル・マーケッツのアレン・ハッサン氏は、企業利益をめぐる懸念と節税目的の売りによって価格が下落したとみる。

 昨年、iシェアーズ米国優先株式ETF(PFF)は5%下落し、直近の価格は約34ドル、利回りは6.3%となっている。ウェルズ・ファーゴやJPモルガンなどの大手銀行が発行する優先株式の利回りは約6%で、長期米国債との利回り格差は3%ポイントだ。銀行のバランスシートの改善や過去最高水準の利益を考慮すると、この差は大きい。

 ほとんどの優先株式には満期が存在しないため、長期金利の変動によって非常に強い影響を受けかねないというリスクがある。しかし、発行者は通常、発行から5年後に額面価格で優先株式を償還することができる。一部の優先株式の株価は、金利上昇によって過去18カ月で20%下落している。

6位:不動産投資信託(REIT)

 REITは債券と同様の金利に敏感な性質と、株式と同様の景気に対するエクスポージャーを併せ持つが、最近は株式に似た推移となっている。代表的なETFであるバンガード・リアル・エステート(VNQ)は、8月の高値から約10%下落し、利回りは5%程度である。

 2019年に向けたウォール街の見方はやや楽観的だ。JPモルガンのアナリストは昨年12月、ファンズ・フロム・オペレーション(REITのキャッシュフロー指標)の3%の成長にけん引され、今年のREITのトータルリターンが10%になると予想した。なお、予想の時点では、バンガード・リアル・エステートの価格は現在の水準を上回っていた。

 業界リーダーのボストン・プロパティーズ(BXP)とアバロンベイ・コミュニティーズ(AVB)は、投資口価格がそれぞれ109ドルと172ドル、利回りはともに約3.5%である。アメリカン・タワー(AMT)は投資口価格が155ドル、利回りが2%だ。一部のクローズドエンド・ファンドの利回りは上記の銘柄を上回っており、例えばコーヘン・アンド・スティアーズ・クオリティ・インカム・リアルティ(RQI)とヌビーン・リアル・エステート・インカム(JRS)は両方とも利回りが約10%である。

7位:通信セクター

 昨年は、ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)とAT&T(T)のパフォーマンスの乖離が過去最大となった。ベライゾンが6%上昇した一方、AT&Tは27%下落しており、後者はクリスマスの頃に8年ぶりの安値を付けた。直近の株価と利回りは、ベライゾンが56ドルと4.3%、AT&Tが29ドルと6.9%で、後者の利回りはS&P500指数の構成銘柄の中でも特に高い。

 両社は共に米国の携帯電話市場の改善による恩恵を受けているが、AT&Tは巨額の債務をめぐる懸念が重しとなっている。同社は配当の維持と債務の削減に取り組んでおり、フリーキャッシュフローで配当を十分にカバーできると主張している。同社は12月に四半期配当を1セント引き上げて51セントとした。

 それでも、ベライゾンの方が安全であると言える。この見方を反映して、同社の2019年予想PERは12倍となっている。AT&Tは8倍とバリュエーションの底に近い。

8位:地方債

 地方債の昨年のトータルリターンは辛うじて1%に達し、最高のパフォーマンスを上げた米国の資産クラスの一つとなった。新規発行が約20%減少し、新規則によって既存債の早期償還が抑制されるなど、好ましい需給バランスが寄与した。さらに重要な点として、満期を迎える債券や償還される債券と、新規発行債券の金額がおおむね一致し、発行残高が約3兆8000億ドルに維持された。

 問題は長期債以外の絶対的な利回りが低いことである。トリプルA格の3年物債券利回りは1.75%、10年物債券利回りは2.3%だ。30年物債券は信用力に応じて3〜5%の利回りを有し、最も魅力的となっている。最大の地方債ファンドはバンガード中期非課税ファンド(VWITX)で、利回りは2.8%である。ピムコ・ハイイールド地方債ファンド(PYMAX)は利回りが4%超で、近年はほとんどの競合ファンドをアウトパフォームしている。

 多くのクローズドエンド・ファンドは純資産価額(NAV)に対して大幅なディスカウントとなっており、平均ディスカウント幅は約13%で、その結果として利回りは5%以上に達している。最大のファンドはヌビーンAMTフリー・クオリティ・ミュニシパル・インカム(NEA)で、直近の価格が12.5ドル、NAVに対するディスカウントが14%、利回りが5.1%である。

9位:公益セクター

 昨年の電力銘柄は投資家の損失を抑える役割を果たした。S&P500指数が配当込みベースで4.4%下落した一方、ETFの公益事業セレクト・セクターSPDR(XLU)のリターンは3.9%に達した。しかし、公益銘柄は割安ではなく、2019年予想PERは平均17倍とS&P500指数の約14倍を上回る。市場が崩壊しない限り、今年の公益セクターがS&P500指数をアウトパフォームするとは考えにくい。

 公益事業セレクト・セクターSPDRの利回りは3.4%である。代表的な企業の直近の株価と利回りは、ネクステラ・エナジー(NEE)が170ドルと2.6%、デューク・エナジー(DUK)が85ドルと4.4%、エクセル(XEL)が48ドルと3.2%、コンソリデーテッド・エジソン(ED)が75ドルと3.8%だ。

10位:投資適格債

 2018年の信用不安は、ジャンク債だけではなく投資適格債にも及んだ。昨年のリターンは、米国債がマイナス1%だったのに対して、iシェアーズiBoxx米ドル建て投資適格社債ETF(LQD)はマイナス3.8%だった。相場の下落により、投資適格債は以前よりも良く見えるようになってきた。現在の利回りは、iシェアーズETFが3.7%、バンガード中期社債ETF(VCIT)が3.6%である。

11位:米国債

 米国債は究極の逃避先であり、市場の混乱や下落に対するヘッジを提供する。しかし、利回りはそれほど高くなく、短期債の約2.3%から30年物国債の2.9%の間にとどまっている。短期債と長期債の利回り格差が小さいため、利回りが約2.4%の2年物国債を保有していれば十分かもしれない。

(The Wall Street Journal/Andrew Bary)
https://diamond.jp/articles/-/190382
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/505.html

[国際25] 国境の壁建設と、トランプの本当の壁 From LA 「最安値2ドル」米国に上陸した欧州発格安長距離バスの実力 
海野素央の Love Trumps Hate

国境の壁建設と、トランプの本当の壁

2019/01/09

海野素央 (明治大学教授、心理学博士)


トランプ大統領ツィッターより
 今回のテーマは「トランプの『国境の壁』建設と政府閉鎖」です。2016年米大統領選挙でドナルド・トランプ大統領が掲げた「公約の中の公約」であるメキシコとの「国境の壁」建設実現に赤信号がともっています。トランプ大統領は、昨年の米中間選挙で下院において多数派を奪還した議会民主党の激しい抵抗に遭い、予算に壁建設費用を盛り込むことができません。その結果、政府機関の一部閉鎖が17日間(現地時間19年1月7日)続いています。

 1995年クリントン政権下で、27日間政府が閉鎖されました。トランプ大統領は今回の政府閉鎖が「1カ月ないし1年間続く可能性がある」と語り、民主党との対決姿勢を崩していません。その結果、今回の閉鎖期間が新たな記録を作るのか、注目が集まっています。

 本稿では国境の壁建設を巡る問題を、トランプ大統領とナンシー・ペロシ下院議長に焦点を当てながら分析します。

「国家非常事態宣言」検討の意味
 クリスマス休暇をホワイトハウスで過ごしたトランプ大統領は、年が明けると早速、国境の壁建設実現に向けて動きました。まず、ホワイトハウスの報道室に1月3日、全国国境パトロール会議の幹部とともに姿を現し、「昨年、1万7000人の犯罪者が国境を越えようとした」と説明し、壁建設の緊急性と必要性を訴えました。

 トランプ大統領は翌4日、記者団の質問に対して、壁建設を早めるために「自分には国家非常事態を宣言する権限がある」と述べました。同大統領は非常事態宣言の可能性を6日、改めて示唆しています。

 この一連の言動はトランプ大統領の「ディールパターン」です。自ら危機的状況を意図的に作り、緊張を高めます。そこには交渉相手を脅し、自分が優位に立って譲歩を引き出す狙いがあります。一言で言ってしまえば、非常事態宣言は「交渉カード」です。

 実はトランプ大統領は、中間選挙直前の18年10月22日、自身のツイッターの中で国家非常事態宣言を行い、中米から米国とメキシコの国境を目指して北上している移民キャラバンの流入を阻止するために、5000人以上の米軍を国境に派遣しました。トランプ支持者に影響力がある保守系コメンテーターは、同大統領のこの決断を高く評価しています。

 米FOXニュースの人気番組「ハニティー」の司会者ショーン・ハニティー氏は1月2日に放送された番組の中で、2018年のトランプ大統領の成果の一つに、「キャラバンをしっかり国境に踏みとどまらせたこと」を挙げました。トランプ大統領には再度、国家非常事態を宣言しても、支持者から支持を獲得できるという計算が働いています。

保守派コメンテーターの圧力
 トランプ大統領は国境の壁建設に、異常なまでのこだわりを見せています。その背景には、支持者に影響力を持つ保守派コメンテーターからの圧力があります。例えば、保守系政治解説者のアン・コールター氏は、「壁の建設が実現しなければ、トランプにはレガシー(政治的功績)はない」「壁の建設が進まないなら2020年、トランプには投票しない」とまで言い切っています。

 そこで、トランプ大統領は是が非でも壁を建設しようと必死になっています。壁の効果に関して、「イスラエルでは壁は99.9%機能している」と主張しています。

 壁建設費については、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を通じて、メキシコが費用を支払うというのです。しかし、どのようにしてメキシコが支払うのか、具体的な説明を行っていません。

 さらに、「コンクリートではなく、(米国製の)鋼鉄の壁建設を目指す」「製造業の雇用を創出する」とも語り、国内の鉄鋼業界で働く労働者に向けてアピールをしています。

 トランプ大統領の壁建設に対するこだわりはポスターにも現れています。「THE WALL IS COMING(壁が建設されつつある)」というメッセージが印刷されたポスターを作成しました。ポスターのレイアウトを壁にして、「COMING」の「O」の文字の中にも壁を描き、不法移民の流入を防ぐという意味を含めています。

 要するに、トランプ大統領はジェームズ・マティス前国防長官、ジョン・ケリー前首席補佐官及びH・R・マクマスター前大統領補佐官といった退役軍人の助言には聞く耳を持たず、支持者に影響力のある保守派コメンテーターの意見には耳を傾けるわけです。

本当の「壁」
 第116連邦議会が1月3日に始まり、下院で多数派になった野党民主党のナンシー・ペロシ議員が下院議長になりました。ペロシ氏は2007年から11年まで下院議長を務め、08年米大統領選挙でバラク・オバマ上院議員(当時)を大統領にした立役者の一人でもあります。このとき、ペロシ氏はヒラリー・クリントン上院議員(当時)と対峙し、オバマ支持に回りました。

 ペロシ下院議長は嗅覚に優れた政治家です。前回の16年米大統領選挙においてトランプ大統領は、「国境の壁」を主要な争点にして勝利を収めました。ペロシ氏は、次の20年米大統領選挙では同じ「壁」を争点にすれば、今度は民主党候補が勝利できると読んでいるフシがあります。「壁を建設させない」「メキシコが壁建設費用を支払わない」の2つが、民主党が来年の大統領選挙を有利に戦う絶対条件になるといってもよいでしょう。

 ペロシ氏はまず政府機関の一部閉鎖を終了し、全面再開させ、次に壁建設の予算について協議を行うという提案をトランプ大統領にしています。一方、トランプ大統領は政府機関の再開と壁建設予算を同時進行させる姿勢を崩していません。

 余談になりますがトランプ・ペロシ両氏の対立構図は、北朝鮮に対して非核化実現を要求し、その後で経済制裁の解除に踏み切る米国と、双方を同時進行させようとする北朝鮮の衝突と類似しています。ただし、国境の壁建設の交渉では、前述したように、ペロシ氏は段階的解決を望み、トランプ大統領が同時進行の立場をとっています。

 話を戻しましょう。仮にトランプ大統領が国家非常事態宣言を行えば、米議会の承認を得ずに国防総省の予算を使って、米軍が国境の壁を建設することができます。ところが、同大統領は移民キャラバンの中にテロリストがいると主張していますが、確固たる証拠を示していません。従って、ペロシ下院議長は、非常事態宣言を「権力の乱用」とみなし、トランプ大統領を非難する可能性が高いです。

 下院議長に選出されたペロシ氏は、再び議長の木槌を手にしました。その瞬間から、同氏のレガシー作りの戦いが始まりました。20年米大統領選挙においてトランプ大統領の再選を阻止し、民主党候補を勝たすことができれば、それは間違いなく同氏のレガシーになります。

 トランプ大統領に立ちはだかる本当の「壁」は、ペロシ下院議長になりつつあります。

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From LA
「最安値2ドル」米国に上陸した欧州発格安長距離バスの実力
2019/01/08
土方細秩子 (ジャーナリスト)

LA発、ラスベガス行きのフリックスバス(筆者撮影)
 欧州で格安のバスサービスを提供するフリックスバスが、昨年5月からカリフォルニアを中心にサービスを開始した。ウーバーが中長距離をカバーするワンストップ交通アプリの一環としてフリックスと提携するなどと話題になった。現在はロサンゼルスーサンフランシスコ間のほかラスベガス、アリゾナ州フェニックス、ツーソンなどを結ぶサービスを提供している。
 ちょうどCESのためロサンゼルスからラスベガスに行く必要があったため、このフリックスバスを試してみることにした。まず予約はオンラインから。フリックスのアプリをスマホにダウンロードしてそこから予約することもできる。ホームページでは「ロサンゼルスーラスベガス間が最安値で2ドル」ととんでもない広告がされていたが、1月6日の予約では料金は9ドル99セントだった。それでも格安だ。
 ちなみに同じような格安バスを提供しているメガバスの同日の料金は26ドル、少しラグジュアリーなサービスであるラックスバスは73ドルだった。およそ300キロの距離を走るのだから、9ドル99では商売が成り立つのか? と疑問に思うほどの価格だ。
 ただし9ドル99というのは最低料金で、実際には席を指定するのに2ドルほど、またサービス料として3ドルが加算されるので、合計の支払いは往復で27ドルほど。キャンセルや時間変更を行うには3ドルの手数料がかかる。またオンライン上で「環境オフセットに賛同するか」という項目があり、バスによる排気ガスをオフセットするための乗客の負担として2ドルほどを加算することもできるが、これは任意だ。
 いよいよ当日、集合場所はロサンゼルスダウンタウンの鉄道駅であるユニオンステーションのすぐ横手。日本のバスターミナルのような施設を予想していたが、実際には何もない駐車場で係員もいなければ看板もない。大勢の人々が寒い中「ここでいいんだよね?」とお互い確認し合いながら集まっていた。とにかくトイレもなければ近くにコンビニもないような場所である。夜の出発なら危険だと感じたかもしれない。
 隣に立っていた女の子と話すと、彼女はサンフランシスコ行きのバスを待っていたが、30分遅れになる、と当日になって携帯メールで連絡が来たという。ラスベガス行きが朝の7時半、サンフランシスコは7時の予定が同時刻出発になっていた。ちなみにサンフランシスコ行きの料金は16ドルだったという。
 しかし7時15分になってもバスが来る気配はない。出発15分前には必ず集合、とチケット(といってもオンラインのQRコードだが)には書かれていたのだが。するとサンフランシスコ行きの彼女が「オーノー! また30分遅れて8時出発だって」と言う。私の携帯には連絡は来ていない。不安に思いながら待っていると、7時半を少し過ぎた頃バスが登場。しかし係員のような人はおらず、ドライバーが降りてきて「ラスベガス!」と呼びかけ、1人1人のチケットをチェックし始めた。荷物はバスの横の扉を開けてくれたものの、各自で積み込む。
ドライバーのワンオペ
 ようやくバスに乗り込んだが、ドライバーが1人で全員のチェックをしているため出発できたのは8時過ぎ。座席は前から6列目までが予約席で、後ろは自由席。後ろがかなり混み合っていたので数ドル余分に支払っても予約しておいて良かった、と思った。
 バスはきれいではあるが、座席は狭くシートポケットやテーブルなどもなし。つまり手荷物を置く場所は確保されていない。足元に置くか膝に乗せるしかない。一般的な観光バスと比べても座席の間隔は狭く、飛行機のエコノミークラス並み。窓にはシェードも何もなく、朝日がまともに顔に当たる。
 ようやく出発するときも、アナウンスなどは一切なく、バスの設備についての説明もない。無料WiFiあり、という説明だったので確認すると本当にWiFiは利用可能だったが、電源は座席に用意されていない。
 最初のうちは隣が空席でそれなりに快適だったが、アナハイムで数人が乗り込み、さらにビクタービルでついに隣に人が来たのだが、これが巨大な人でぐいぐいと押されてかなり窮屈に。これだけ安いのだから1人分の座席に収まらない人は2席買うとかなんとかならないのか、と思うがどうしようもない。このビクタービルからラスベガスまではノンストップ、とドライバーが説明すると後方から「食べ物を買いたい、トイレに行きたい」と不満の声が上がり、ドライバーがしばし考えたあとで「ではここで10分間の休憩」と言い出すなど、スケジュールが遅れている割にはのんびりとしている。ドライバーには交代要員もおらず、すべて1人で采配しているのだ。
 その後は特に問題もなく、予定時刻より30分遅れでラスベガスに到着。荷物はやはり各自で下ろすのだが、自分の荷物がかなり奥になっていて取りにくかった。
 結論から言えば、サービスは最低限で快適なバスの旅、とはとても言えない。しかし自分で運転してもガソリン代だけで40~50ドルはかかるのだから、窮屈でもうたた寝しながらたったの10ドルと少しでラスベガスまで移動できたわけで、文句を言う内容ではない。時間にルーズなようなのでどうしてもこの時間に到着したい、という人には勧められないが、時間に余裕があり節約旅行をしたい人には悪くない選択だ。

http://wedge.ismedia.jp/articles/print/14997

http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/169.html

[国際25] 米政府閉鎖巡る対立、より怖い「本丸」の問題に波及も 自由貿易破壊「政治の真空状態」でどこまで進むか?企業に傍観の余裕なし
コラム2019年1月9日 / 11:41 / 16時間前更新

米政府閉鎖巡る対立、より怖い「本丸」の問題に波及も
Gina Chon
2 分で読む

[ワシントン 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米連邦政府機関の一部閉鎖は、財政運営を巡るより大きな政治的なぶつかり合いが待ち受けていることを示す不吉な兆しと言える。

政府機関閉鎖は、トランプ大統領がメキシコとの国境に壁を建設する予算を議会に要求したことがきっかけだが、経済的な影響は恐らく非常に小さい。真の危険は、トランプ氏と議会の対立が連邦債務上限を巡る議論に波及した場合にやってくる。

18日間にわたって政府機関閉鎖が続き、事態は極めて不穏になっている。トランプ氏と議会民主党指導者らは、ホワイトハウスにおける会合で公然と言い争いを始めた。さらにトランプ氏は、何カ月でも何年でも政府機関を閉鎖するのを辞さない構えで、8日夜に国民に向かって自らの正当性を訴える意向だ。

政府の経常的経費のうち議会が承認していない25%にかかわる業務が停止し、およそ80万人の職員は自宅待機か、無給での勤務を強いられている。もちろん政府機関が再開されれば給料は支払われるだろうが、職員が痛みを受けるのは確かだ。

全政府機関が16日間閉鎖された2013年の経済的な損失は240億ドルだった。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によると、同年第4・四半期の国内総生産(GDP)成長率を年率で少なくとも0.6%引き下げたという。

しかしもしも与野党が対立する足元の構図が、債務上限の審議にまで持ち越されてしまうと、経済への悪影響はずっと大きくなりかねない。債務上限は近年、政争の具となっている側面が非常に強いのが特徴。通常は政府が既に借り入れたのとほぼ同額に設定されるので、3月初めに到来する今度の上限は、約22兆ドルとなる見通しだ。そこで議会は上限を引き上げるか、上限の執行を停止しなければならないが、今の政治情勢で与野党がそんなに協力的になるのは難しいのではないか。

米政府が期日通りに支払いを行うかどうかについての不透明感は、過去においてさまざまなマイナスの要素をもたらしてきた。2011年には、債務上限に関する政治対立によって、S&Pが米国債の格付けを「AAA」から「AAマイナス」に引き下げ、史上初の米国債の格下げとなった。

米財務省は現在、債務上限が引き上げられないとデフォルト(債務不履行)を引き起こすと警告しており、こうした前代未聞の出来事が現実化すれば、新たな金融危機を誘発するのはほぼ間違いない。オバマ前政権の当局者らも同じ見解を有していたが、当時よりも米国の財政状況は悪化している。

今後は、米政府がカナダ、メキシコと結んだ新たな自由貿易協定を議会が承認するかどうかなどの問題が、債務上限に対する政治的駆け引きの材料に使われてもおかしくない。そうなると、今の政府機関閉鎖と比べものにならないほど恐ろしい打撃を経済に与えるだろう。

●背景となるニュース

*トランプ米大統領は8日夜に行う国民向けのテレビ演説で、米・メキシコ国境の「危機」解決に向け、57億ドルを投じて国境の壁を建設することが緊急に必要であると主張する見通しだ。

*この問題を巡るトランプ氏と議会の対立で、一部政府機関の閉鎖が8日まで18日続いている。

*閉鎖対象となっているのは政府の経常的経費のうち議会の承認が得られていない25%に関わる業務。昨年12月22日以降、約80万人の職員が自宅待機、もしくは無給で働かざるを得ない状態にある。

1月8日、米連邦政府機関の一部閉鎖は、財政運営を巡るより大きな政治的なぶつかり合いが待ち受けていることを示す不吉な兆しと言える。ワシントンの米議会前で撮影(2019年 ロイター/Kevin Lamarque)
*一方で連邦政府は3月2日、議会が債務上限引き上げか停止に合意しない限り、新規借り入れができなくなる。米財務省によると、1月4日時点で上限枠の対象となる債務は21兆9000億ドル。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/us-shutdown-debt-idJPKCN1P305W


 


2019年1月10日 マイケル・フロマン前米通商代表部(USTR)代表
自由貿易破壊は「政治の真空状態」でどこまで進むか?企業に傍観の余裕なし
ナショナリズム(国粋主義)やポピュリズム(大衆迎合主義)は、脱落した人々の疎外感に付け入る。政治的リーダーシップの真空状態が続く中、民間企業が「われ関せず」を決め込むならば、脱グローバリゼーションの加速や不確実性、不安定性の高まりを招きかねないと、前米通商代表部(USTR)代表のマイケル・フロマン氏は警鐘を鳴らす。

 2018年、さまざまな政策分野の中でも、とりわけ貿易が「破壊」された。

 かつては古くさく、専門的で、正直なところいささか退屈だった貿易絡みの事案が、今では新聞の1面や雑誌の表紙の見出しに躍る。米ケーブルテレビ局HBOの(人気風刺番組)「ラスト・ウィーク・トゥナイト」で、(コメディアンの)ジョン・オリバー氏がコメディー調のドキュメンタリーに取り上げるまでになった。

 伝統的に自由貿易協定(FTA)に反対だった層が今や一転してその価値を褒めそやし、自由貿易を尊重しているとは言い難かった中国、ロシア、フランスを含めた国々が、グローバルな貿易体制の擁護者に名乗りを上げている。

 とはいえ実際、どの程度の「破壊」だったのかを検証してみることは重要だ。

 ドナルド・トランプ米大統領は、確かに12カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱したが、残る11の署名国はその骨子を温存した協議を独自に重ね、米国にも将来の復帰に向けての門戸を開いている。

 そして、より多くの国々が参加への関心を示していることは、TPPがやがて当初に見込んでいた規模を優に超えて発展する可能性を示唆するものだ。

 加えて、北米自由貿易協定(NAFTA)――いまや米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)と改名したが――は、もともとカナダとメキシコを含んでいるTPPをひな型にして、幾つか重要な条項を加えたものである。

 一方で欧州連合(EU)は、カナダやシンガポール、ベトナム、日本とFTAを結んでおり、オーストラリアやメキシコ、ニュージーランド、東南アジア諸国連合(ASEAN)、南米南部共同市場(メルコスール)他とも交渉中である。


マイケル・フロマン(Michael Froman)
環太平洋経済連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との自由貿易協定を手掛けるなど通商政策に精通。2013年、バラク・オバマ政権の米通商代表部(USTR)代表に就任し、TPPの交渉で米国代表を務めた。現在は、マスターカード副会長。Photo by AP Photo/Suzan Walsh/via AFLO
 また、太平洋同盟(中南米4カ国による貿易自由化の枠組み)は中南米域内で貿易他の協定を拡大中だ。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)はアジア太平洋地域で急速に進行している。さらに、アフリカ連合(AU)も大陸自由貿易圏(CFTA)の発効に向けて着実に進んでいる。

 要するに、結び付きを深め、貿易ルールを改善する世界的傾向は続いているのだ。

 確かにトランプ政権は意表を突く貿易改善策で大いに物議を醸し、関税合戦に明け暮れ、輸入割当枠を引っ張り出し、世界貿易機関(WTO)の紛争処理制度を弱体化させた。

 しかし結局、トランプ大統領によるNAFTA再交渉は、むしろ米国内で貿易への支持を高める一助となったかもしれない。なぜなら、最も忠誠心が強い彼の支持層の大多数は、そもそも貿易協定自体に懐疑的だったからだ。

 とはいえ、これは「酒はまだグラスに半分も残っている」とする解釈だ。他方には、巨大な歴史的断裂が進行しているという解釈がある。

 米国は、世界的なリーダー役としての役割を投げ出して最も親密な同盟国やパートナーたちからの信頼を失い、利敵行為をした…。

 このシナリオによれば、EUか中国が世界的なルールメーカーとして米国に取って代わるか、あるいはルールメーカーがいなくなってしまい、国際的な秩序は成り行き任せになる。

 後者の場合、他国が米国に倣って勝手気ままに行動し、国際的な義務は都合のいいときだけ果たすようになる可能性は十分にある。

 どちらのシナリオが実現するかを断じるのは時期尚早だ。しかし、一つはっきりしていることがある。ナショナリズム(国粋主義)やポピュリズム(大衆迎合主義)、移民排斥主義、保護主義の台頭である。

 経済的不安と高まる主権喪失の感覚は、かつてないほど政治的分極化を促している。それは米国に限ったことではない。

 欧州が泡沫政党への支持の高まりに悩まされていることから、新興国で腐敗がまん延していることまで、どこの国の政府もより内向きになり、ますます大胆なリーダーシップを示せなくなっているようだ。いまこそまさに、技術や経済の急変がもたらす破壊的な影響に対処しなければならないときだというのに。

民間企業は「われ関せず」ではダメ
成長の果実を全階層で分かち合え
 国際的にはリーダーシップの真空状態が生じ、内務的にはまひ状態に陥る中、民間分野が乗り出す必要は以前よりも増している。善意のためではなく、わが身の利害を守るためにだ。

 (米資産運用会社)ブラックロックのラリー・フィンク会長兼最高経営責任者(CEO)をはじめとする人々が指摘しているように、企業にとって、株主に短期的なリターンをもたらすことに専念していれば事足りるという時代ではもはやない。長期的なリターンや自社を取り巻く経済的、政治的な環境にも目配りしなければならないのだ。

 企業の社会的責任や慈善事業も重要だが、それだけにとどまらない「社会的目的に奉仕」しつつ、商業的に持続可能なビジネスモデルを開発しなければならない。

 善行をなして栄えることは、単なるキャッチフレーズにとどまらない事業哲学の指針でなければならない。それを支えるのは、民間分野が栄えるには健全な政治的、経済的環境が必要で、それは行動を通じて守らなければならないという認識だ。

 この数十年の間、政府や報道機関、企業その他の主導的な組織に対する公衆の信頼は急落した。もしも実業界のリーダーらが事業環境の健全性から目を背け続けるのだとしたら、あるいは、その是正などよその誰かの仕事だと「われ関せず」を決め込むのだとしたら、今後のさらなる脱グローバリゼーションや不確実性、そして不安定性の危険を冒すことになる。

 経済成長は、過去75年間の歴史的かつ世界的な成功を特徴付けてきた。グローバリゼーションは限界こそあるものの、10億人以上もの人々を貧困から救い、人間開発(人類の発展)のほぼ全側面に未曽有の向上をもたらした。

 だが、それもまだ道半ばだ。後戻りしてしまうことを防ぐためには、より一層の成長の積み上げから、より包摂的(inclusive)な成長へと目標をシフトしなければならない。それはつまり、成長の果実はトップにいる者たちのみならず、全ての所得階層で分かち合わなければならないということだ。世界的大企業だけではなく、中小企業にも恩恵が行き届かなければならない。

 ナショナリズムやポピュリズム、移民排斥主義、保護主義は、世間のシステムから取り残され、脱落した人々の疎外感に付け入る。それゆえに、われわれは、個人や家族が安定した暮らしを立てられ、その改善の機会を追求できるような、万人のための包摂性を経済ネットワークにおいて確保しなければならない。

 この原則は、ケニアの農民にも、エジプトの繊維業労働者にも、ギグエコノミー(インターネットを介して単発の仕事を依頼したり請け負ったりする働き方)で食いつなぐ米国人にも等しく当てはまる。

 現在の貿易政策の破壊が根深く長期的なものか、それとも表層的で一時的なものかを断じるにはまだ早い。やがて中庸の状態に戻るのか、それともパンドラの箱を開けてしまったのかどうかは、まだ分からない。

 しかし、国際的にも国家レベルでもリーダーシップが不在となる状況において、民間企業はその帰趨に様子見を決め込むことはできない。

(翻訳/酒井泰介)

*本稿は、『週刊ダイヤモンド』12月29日・1月5日新年合併特大号に掲載された寄稿のオンライン・バージョンです。
*The future of Free Trade by Michael Froman Copyright: Project Syndicate, 2018.

https://diamond.jp/articles/-/190390
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/181.html

[国際25] トランプ氏「壁」巡る非常事態宣言はパンドラの箱 米株投資家が警戒する「プロフィット・リセッション」
コラム2019年1月10日 / 13:18 / 8時間前更新

トランプ氏「壁」巡る非常事態宣言はパンドラの箱
Gina Chon
2 分で読む

[ワシントン 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領はメキシコ国境の壁建設問題で、国家非常事態の宣言により議会を通さないで費用を捻出することも視野に入れている。

理屈の上では、トランプ氏は非常事態宣言によってCNNを閉鎖したり、フェイスブックへのアクセスを止めることもできる。ただ、トランプ氏がこうした措置に踏み切れば、表現の自由などを巡って訴訟が起きるなど大きな混乱が予想され、宣言の発動は「パンドラの箱」を開けることになりかねない。

トランプ氏は9日夜、「米国民がどれだけ血を流せば議会は仕事をするのだろうか」と述べ、「戦争」という言い回しで壁建設の必要性を訴えた。

米国の大統領は非常事態の判断で幅広い裁量を持ち、非常事態時に大きな権限を与えられる。ブレナン司法センターによると、大統領が非常事態を宣言した場合、通常の手続きを踏まずに政策を進められる分野は136に及ぶ。トランプ氏は議会の賛同が得られていない壁建設についても、57億ドルの費用を出させることができるだろう。

トランプ氏は他の政策課題にも非常事態を当てはめることが可能だ。トランプ氏は常々、自身や共和党に対して偏った攻撃を行っているとCNNや一部のオンラインサービス会社などのメディアを批判しているが、非常事態になればメディア関連の規制を一時停止もしくは修正したり、メディアの閉鎖や統制に踏み切ることも認められる。

オバマ政権下で安全保障政策などの顧問を務めた法律専門家ティモシー・エドガー氏によると、中国とのサイバー戦争や、米選挙への介入、さらには内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者、ジュリアン・アサンジ氏のような人物へのインタビューの放送ですら、CNNやMSNBCを標的にする口実に使われる可能性がある。また、ソーシャルネットワークがメディアの一部だとみなされれば、フェイスブックへのアクセスが禁止されるかもしれない。

こうした措置が取られれば、表現の自由を保証する合衆国憲法修正第1項などに基づいて訴訟が起こされるだろう。議会も非常事態宣言の打ち切り動議を可決するかもしれないが、大統領の拒否権を覆すには上下両院で3分の2以上の賛成が必要だ。

より根本的な対応は、議会が非常事態の定義を狭めて、大統領が本当に危機的な場合に限って宣言を発動できるようにすることだろう。最高司令官には極限状態におけるある程度の裁量が不可欠だが、それに制約を課すのは議会の務めだ。

●背景となるニュース

*トランプ米大統領は9日、メキシコ国境の壁建設費用を含む予算案を巡り議会が合意できなければ、大統領には国家非常事態を宣言する権限があるとの考えを改めて表明した。

1月9日、トランプ米大統領(写真)はメキシコ国境の壁建設問題で、国家非常事態の宣言により議会を通さないで費用を捻出することも視野に入れている。ワシントンの米議会で撮影(2019年 ロイター/Jim Young)
*民主党議員と共和党の一部議員が壁建設に反対し、一部の政府機関が昨年12月22日から閉鎖している。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/trump-crisis-idJPKCN1P40BA

 


2019年1月10日 ロイター
米株投資家が警戒する「プロフィット・リセッション」
ニューヨーク証券取引所
1月8日、米国株の投資家は、今年の企業利益が悪化するのではないかとの懸念を強めている。ニューヨーク証券取引所で2018年12月撮影(2019年 ロイター/Eduardo Munoz)
[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米国株の投資家は、今年の企業利益が悪化するのではないかとの懸念を強めている。アップルが中国の需要鈍化を警告したことに加え、輸入関税が足かせとなっている証拠が増えており、世界経済は減速、減税による追い風もなくなりつつあるからだ。

 アップルが先週、過去15年余りで初めて売上高見通しを引き下げたが、それよりずっと前から今年の企業利益予想は下振れしてきた。

 もとより今年の企業利益に、減税効果を享受できた2018年ほどの急速な伸びは期待できない。リフィニティブのIBESによると、今年のS&P総合500種企業の予想増益率は足元で6.8%。昨年10月1日時点は10.2%だった。

 さらに悪いことに、今年前半の企業利益はもっと振るわなくなるだろう。S&P総合500種企業の利益の約2割を占めるハイテク部門の利益が急角度で落ち込むと見込まれるためだ。

 そこで一部の投資家は、企業利益の前年比が2四半期続けてマイナスとなる「プロフィット・リセッション」の局面に株式市場が突入する気配がないか見極めようとしている。

 直近でプロフィット・リセッションが起きたのは15年7月から16年6月まで。同期間の株価はおおむね低迷した。

 ヒュー・ジョンソン・アドバイザーズのヒュー・ジョンソン最高投資責任者は「まさにプロフィット・リセッションが視野に入ってきた。アップルのコメントとそれらの行き着く先は、予想利益を一段と押し下げる原因になる」と述べた。

ハイテク株の憂うつ
 プロフィット・リセッションに対する警戒感が浮上してきたのは、折悪しく株価が不安定化している時期だ。

 S&P総合500種は昨年12月の値動きが先の景気後退期以降で最悪となり、20ヵ月来の安値を付けたクリスマスイブから足元までの上昇率は9%強にとどまっている。

 1年前は18倍だったS&P総合500種企業の予想利益に基づく株価収益率(PER)は14倍まで低下する中で、相場強気派の主なよりどころは、最近の値下がりで株価が過小評価されるようになったという主張しかない。

 アップルの警告は、米中貿易摩擦の影響の大きさも浮き彫りにしている。

 ホライズン・インベストメント・サービシズのチャック・カールソン最高経営責任者(CEO)は、アップルの業績見通し引き下げがプロフィット・リセッション到来を見込む人々に確認材料を与えたと指摘。そのインパクトはサプライヤーだけでなく、多くの投資家の心理を直撃したと説明した。

 ハイテク部門の利益見通しは、原油安の打撃を受けたエネルギー部門以外のどのセクターよりも下振れしている。

 S&P情報技術株指数を構成する銘柄の今年1─3月期の予想利益は、リフィニティブのデータに基づくと前年比で減少し、通年でも2.6%増と全セクターで最も低い。ハイテク部門は、長年にわたって増益の流れを主導してきただけに、情勢が一変したことを物語る。

景気後退の足音
 リフィニティブのデータでさかのぼれる1968年以降、S&P総合500種銘柄がプロフィット・リセッションに見舞われたのは計10回あった。最長期間は07年第3・四半期から09年第3・四半期までで、世界金融危機および大恐慌以来の深刻な景気後退の時期と重なる。

 直近のプロフィット・リセッションこそ、景気後退を伴わずに済んだとはいえ、これは例外だった。過去10回のプロフィット・リセッションのうち7回は、景気後退を招いている。

 ストラテジストの話では、今年の多くの米多国籍企業にとってより大きな悪影響を及ぼしかねないのはドル高だ。

 主要6通貨に対するドル指数は昨年第4・四半期中に1%上がり、第4・四半期末の前年比は4.4%高だった。

 フィデューシャリー・トラスト・カンパニーのハンス・オルセン最高投資責任者は「市場関係者は(ドル高を)話題にし始めている」と述べ、18年の裏返しで原油価格下落も企業の足を引っ張ると心配している。

 一部大手投資銀行の有力ストラテジストは、最近になって企業利益により悲観的になってきた。

 モルガン・スタンレーは昨年末に公表した見通しで、今年緩やかなプロフィット・リセッションに入る確率は50%強あると予想。ゴールドマン・サックスは、今年は全地域、とりわけ米国で利益の伸びが急激に鈍り、コンセンサス予想が相当下振れするとの見方を示した。

(Caroline Valetkevitch記者)
https://diamond.jp/articles/-/190589
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/182.html

[国際25] FOMC議事要旨と12月のパウエル議長会見、際立つトーンの違い 米経済の成長持続力懸念 米国債デスクロス 仮想通貨が急落
FOMC議事要旨と12月のパウエル議長会見、際立つトーンの違い
Christopher Condon
2019年1月10日 17:02 JST
議長会見、「もっと別のやり方があったのではないか」とペルリ氏
市場の否定的な反応を目にしてメッセージ変えたか−ラインハート氏
9日公表の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が市場に安心感をもたらす内容だったことで、投資家の間に新たな疑問が浮上した。それは、昨年12月19日の会合後の声明やパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見とはトーンの違いが大きかったためだ。

  米金融当局は12月19日のFOMC声明で、政策金利の「幾分かのさらなる漸進的な引き上げ」が見込まれるとし、パウエル議長の会見も株価の大幅下落やボラティリティーの高まりを重視していないと受け止められたことで、9月終わり以降既に約13%下げていた株価は同日1.5%下落した。

  元FRBエコノミストで、現在はコーナーストーン・マクロのパートナーであるロベルト・ペルリ氏はパウエル議長の会見について、「もっと別のやり方があったのではないか」と振り返る。

  ペルリ氏は、パウエル議長が記者会見の最初に、低インフレの下で「FOMCは先行き辛抱強くいられる」と述べていた点に言及。「彼はこの部分を何回も繰り返すべきだったが、そうしなかった。市場が緊張状態にある場合、繰り返すことが役に立つ」と語った。

  連邦準備制度のバランスシート縮小の進め方について、パウエル議長が「自動操縦」と述べたことも、ペルリ氏の目には市場が耳にしたくなかった頑固な姿勢を印象付けるもので、もう一つのしくじりだったと映る。

  だが、パウエル議長だけを責めるわけにはいかないだろう。金融当局としては、市場のボラティリティーにすぐさま政策変更で対応するかのようなそぶりは避ける配慮が必要だ。利上げを休止するようトランプ大統領から圧力を受けていた議長にとって、「あまりにも速く、過度にハト派的なメッセージを発したくないとの意識も働いたのではないか」とペルリ氏は推測する。

  一方、FRBで金融政策局長を務めた経歴を持ち、今はスタンディッシュ・メロン・アセット・マネジメントのチーフエコノミストであるビンセント・ラインハート氏は、先月のパウエル議長の会見とFOMC議事要旨とのトーンの相違について別の説明ができるのではないかと考える。

  ラインハート氏は、12月19日の声明や議長会見に対する市場の否定的な反応に対応するような形で金融当局者が議事要旨を取りまとめた可能性があると推理。「パウエル議長は会見の冒頭発言と質疑応答でFOMCの認識を正確に伝えたが、あまり歓迎されなかった。その後、議長がもっと強調しておくべきだったと残念に思った部分をもっと気配りして強調することにしたのではないか」と論じた。

  FOMC議事要旨は「事実に基づくものでなければならない」が、FOMC開催の5年後に公表され、完全な発言録である議事録とは違うとラインハート氏は説明し、何を盛り込んで何を強調するかの判断を経て、議事要旨のメッセージを大幅に変更することもあり得ると語った。

原題:Fed Minutes Make Powell’s Press Conference Look Like a Flub(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-10/PL3ULX6KLVRA01

 

東京外為市場ニュース2019年1月10日 / 23:14 / 44分前更新
米経済の成長持続力を懸念する声多い=リッチモンド連銀総裁
Reuters Staff
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[ローリー(米ノースカロライナ州) 10日 ロイター] - 米リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は10日、米経済の力強い成長がいつまで続くかと懸念する声が周辺で聞かれると述べた。

講演原稿によると、バーキン総裁は、今年も成長は持続するものの、幾分低いペースになると予想し、「トレンド」成長率は1.9%程度との見方を示した。

「しかし2019年になって、多くの懸念の声を聞いている」とも述べ、貿易摩擦に関連した国際経済や政治に関する懸念や不安定な市場動向への懸念を挙げた上で、「この成長がいつまで続くか」という疑問を最も多く聞くと述べた。

バーキン総裁は、今年の連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持たない。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-barkin-idJPL3N1ZA418?il=0


 


米国債利回りに「デスクロス」出現−債券強気派に朗報
Cormac Mullen
2019年1月10日 12:08 JST
• 「米国債利回りに関する限り、これらのクロスは説得力のある指標」
• ミラー・タバク+の株式ストラテジスト、マレー氏がコメント
債券強気派にとってポジティブなテクニカル指標が現れた。10年物米国債利回りがいわゆる「デスクロス」のパターンに向かっている。
  10年債利回りの50日移動平均が、200日移動平均を下回った。この指標の重要性に懐疑的なトレーダーは多いが、10年物利回りの低下が進む前触れだとみる向きもある。

  ミラー・タバク+の株式ストラテジスト、マット・マレー氏はリポートで、「米国債利回りに関する限り、これらのクロスは説得力のある指標だ」とし、「第1四半期中に長期金利がさらに下がることを示唆している」と記した。過去10年にこのパターンが現れた時はいつも10年債利回りが下がったという。
  50日移動平均は10日の取引時間中に200日移動平均を下回った。このまま終了するとデスクロスが確認される。
  10年債利回りはアジア時間10日の取引で3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の2.68%。
原題:Treasury Yield Brush With a ‘Death Cross’ Cheers Bond Bulls (1)(抜粋)

 


仮想通貨が急落、ビットコインは4000ドル大きく割り込む
Eric Lam
2019年1月10日 21:13 JST
• ブルームバーグ・ギャラクシー・クリプト指数は一時8%安
• 急落直前に大量のイーサが交換業者に移されていた−タム氏
10日の取引で仮想通貨が下落。ビットコインは新年明けに保っていた4000ドル近辺の水準を大幅に割り込んだ。
  欧州時間午前にビットコインは前日比で一時6.2%安、3750ドル台に下落した。ブルームバーグ・ギャラクシー・クリプト指数は一時8%安。ビットコインに次ぐ規模の仮想通貨であるイーサ、ライトコイン、XRPもそれぞれ売られている。

  仮想通貨データ分析会社コインフィの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のティモシー・タム氏は、急落の直接的な理由はないとしつつ、下げが始まる1時間前に約4万単位のイーサが交換業者に移されたと指摘した。交換業者への移管は通常、売りの意向を示唆するという。
原題:Bitcoin Declines as Cryptocurrencies Take a Sudden Lurch Lower(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-10/PL45L76S972C01?srnd=cojp-v2


http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/183.html

[国際25] 台湾との軍事衝突にじませる中国、海峡危機の再来あるか  最終回 中国・国家にも「古希」の寄る年波 世界鑑測 
コラム2019年1月8日 / 15:50 / 16時間前更新

台湾との軍事衝突にじませる中国、海峡危機の再来あるか
Peter Apps
3 分で読む

[7日 ロイター] - 中国の無人探査機が月の裏側に着陸したというニュースが世界を駆け巡った新年、中国人民解放軍の機関紙「解放軍報」は1日の社説で、「戦争準備」が2019年の最優先課題であるべきだと表明した。翌2日、今度は習近平・国家主席が演説で、軍事衝突の対象としてどこが中国の念頭にあるかを強力な形で示した。台湾である、と。

中国指導部は長年、台湾をならず者の省とみなし、支配下に置くことを共産党と軍の名誉に関わる問題と位置付けてきた。

習主席は2日の演説で、この「問題」を次世代に持ち越すことはできないと表明。「平和的統一」を強調する一方で、中国政府には必要とあれば武力を行使する権利があると述べた。香港のような「一国二制度」の形ですら、中国に取り込まれることに強く反対する人々が多い台湾は、この演説に反発した

<中国の戦争はベトナム以来>

習氏の演説には、衝突が近いと中国側が考えていることを示唆するものは何もなかった。だが、平和的「再統一」を支持する習氏の発言には、「武力使用の放棄は約束しないし、全ての必要な措置を取る選択肢を維持する」という文言も含まれていた。

これは、短期間のうちに中国側が撤退して終わった1979年のベトナムとの戦争以降、外国と戦ったことがない国にとってはリスクの大きい一手となるだろう。台湾独立を支持しないまでも、台北と「強力な非公式の関係」(米国務省)を維持する米政府との衝突も避けられなくなる。

中国が台湾侵攻を成功させるには、米国が介入してくることを抑止するか、アジア太平洋地域の駐留米軍を打ち負かすと同時に、他国軍が台湾周辺の海空域に入ることを阻止しなくてはならないと、多くの軍事アナリストは指摘する。

今の中国にその力はないかもしれないが、軍事力を増強し続けており、将来にわたってその状態が続くかどうかは分からない。少なくとも人民解放軍は、米軍の介入を阻止しつつ、領土を奪い取る戦略を中心とした戦争の可能性を考えるようになっている。

中国軍は、台湾制圧を念頭に置いた装備体系を中心に増強している。強襲部隊を運ぶ揚陸艦のほか、米軍が空母などの戦力を戦闘領域に投入できないようにするミサイルの整備に重点を置いている。

こうした兵器がどの程度有効かという議論はさておき、台湾、さらに中国が領有権を主張する南シナ海の島々を巡る武力衝突では中心的な役割を果たすだろう。

一連の動きは、地政学的な示威行動の色合いが濃い。中国政府はこの半世紀、台湾が事実上の独立国として振る舞うことを阻止できていないが、台湾が独立を宣言することは何としても防ごうとしている。

台湾周辺に軍艦や戦闘機を展開するなど、強硬な行動を拡大させているのは、独立を問う住民投票の実施は戦争になるというメッセージを台湾指導部に送るためと言える。また、大国への地歩を固める中で、中国は世界に対し、台湾を制圧しようと思えばいつでもできる力があるということを示したがっている。

<台湾も国防予算を増加>

台湾の内政状況も要素の1つだ。台湾の当局者は昨年11月の統一地方選前、中国がロシアのような選挙介入を行い、蔡英文総統率いる独立派の民進党(DPP)への支持を切り崩そうとしたと主張した。この選挙で民進党の勢力は大きく後退し、中国寄りの野党・国民党が躍進した。

だが、習主席の2日の発言は、中国が依然として軍事力の誇示が台湾に圧力をかける最善の方法と考えていることを示している。

台湾を軍事的に制圧する作戦は単純ではない。中国軍が約180キロにわたる台湾海峡を越えようとすれば、台湾軍の近代化されたミサイル、機雷、そして潜水艦や航空戦力の攻撃にさらされることになる。人口密度が高い台湾の市街地や、密林に覆われた山々は、ゲリラ戦にはうってつけだ。多数の死者を出しながら台湾侵攻に失敗すれば、国際的に大恥をかくだけでなく、習主席は政治的に危機に陥るだろう。

台湾側は明らかに、簡単にやられる相手ではないことを中国に理解させたがっている。台湾は2019年の国防費を、前年比6%増の110憶ドル(約1兆2000億円)とした。大部分を米国製や国産の最新鋭装備の調達に充てる。台湾は2日、侵攻してくる中国軍に大きなダメージを与える国産の最新型対艦ミサイルを公開した。

米中いずれも、軍事力を誇示するのは当面台湾海峡に限られるだろう。米海軍は昨年、軍艦数隻に台湾海峡を通過させ、「自由で開かれたインド太平洋」に対する米国の関与を示したものだと説明した。クリントン政権は1996年の台湾海峡危機の際、空母2隻を派遣した。今も同様の行動を取るべきと主張する向きがあるが、そうなれば中国側を激怒させるだろう。

中国は月に手を伸ばしているが、習氏の演説をみれば、同国の領土的な野心がもっと身近にあることが分かる。中国政府が台湾攻撃に乗り出すつもりがなかったとしても、習主席の発言は、いずれ戦争が起きる可能性を高めるものだ。

大国間の紛争リスクが年々高まる今、台湾を支配しようとする中国の欲望は発火点になるかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニスト。
https://jp.reuters.com/article/apps-taiwan-idJPKCN1P20F3

 

最終回 中国・国家にも「古希」の寄る年波
世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」
12年9カ月、通算569回の連載を振り返って

2019年1月11日(金)
北村 豊


日本のメディアが報じない中国の実態を伝えることを目標に連載を続けてきた(写真:PIXTA)
 2006年4月から開始された「日経ビジネスオンライン」のサービスは、2019年1月14日を期限として廃止される。このため、筆者が毎週金曜日に連載を続けて来た『世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」』は今回を最後に終了となります。2006年4月6日に連載を始めた「中国・キタムラリポート」は、本日の2019年1月11日までに12年と9カ月継続し、この間に掲載した記事は通算で569回に達しました。「中国・キタムラリポート」は「日経ビジネスオンライン」のサービス開始と同時に始まり、「日経ビジネスオンライン」のサービス終了と同時に終了します。筆者の願望は連載を通算1000回まで続けることでしたが、残念ながら、それは叶わぬ夢となりました。連載を延々と569回も続けて来れたのは、ひとえに読者各位のご支援の賜物であり、それと同時に日経ビジネス編集部の寛容さによるものと、衷心より感謝する次第です。

 思えば長い12年9カ月でした。2006年の1月末だったと記憶しますが、日経BP社から同年4月から「日経ビジネスオンライン」のサービスを開始するので、中国関連の記事を連載して欲しいと打診を受けました。当時、大手商社の情報調査部門で中国専任担当であった筆者は、会社の許可を取得した上で、日経BP社に連載依頼を受諾する旨を回答し、第1回目の記事が連載されたのが2006年4月6日でした。

 記事を連載するに当たって、筆者は「中国・キタムラリポート」の執筆意図を下記のように設定しました。

 
 日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。

 その後の社会変化によって、日本のメディアは中国の「陰」も報道するようになりましたが、2006年当時は中国の「陰」を報じることがタブーであるかのような風潮が日本のメディア全体に漂っていたことは間違いのない事実でした。そうした環境下では、日中両国民の相互理解を深めることはできないと考え、日本のメディアが報じない中国の実態をリポートすることを目標に掲げて、筆者は「中国・キタムラリポート」の執筆を始めたのでした。

 
 筆者は大手商社で産業機械の輸出ビジネスや日本政府の政府開発援助(ODA)ビジネスに従事し、中南米、中東、アフリカおよび中国との商売を担当し、アラブ首長国連邦(U.A.E)のアブダビとドバイ、中国の北京と広州に駐在した経験を持っています。筆者は30年以上にわたって貿易実務に携わった商社マンであり、中国とは公私にわたり40年以上の関係を持つ身ですが、中国の政治や経済を専門とする研究者でもなければ、ジャーナリストでもありません。そこで、「中国・キタムラリポート」のテーマは、中国の政治や経済の専門領域に立ち入らないことを原則として、中国社会全般の情勢分析に限定することにしたのです。そこには憶測や推測がなく、嘘偽りのない中国社会の実情があり、中国の現実を正しく理解する要素が多分に含まれていると考えたからでした。

大きく変化した中国人の精神面
 そうして連載を開始してから12年9カ月、この間に執筆した569回の連載を通じて、「毛髪醤油(毛髪を原料とする醤油)」、「“地溝油(下水溝に溜まった油から作られる食用油)”」を日本で最初に報じましたし、中国の環境問題や一人っ子問題を何度も取り上げました。12年9カ月の間に中国の環境問題は改善されたのでしょうか。中国人の特質の一つに「面従腹背(表面では服従するように見せかけて、内心では反抗すること)」があります。中国政府が必死に環境改善を訴えてキャンペーンを実施しても、それが企業や個人・団体にとって自らの利益にならないなら、表向きは環境改善に協力する姿勢を見せても、真剣には取り組まないのが常で、中国全土で環境改善は一向に進んでいないように思われます。

 
 一人っ子問題については、中国政府が1980年代初頭から実施して来た“独生子女政策(一人っ子政策)”を廃止し、2016年1月1日から“全面二孩政策(全面二人っ子政策)”に転換しており、出産の完全自由化も間近と言われています。「全面二人っ子政策が実施されることによって子供の出生数は増大する」と中国当局は確信していたようですが、出生数の増大は2016年だけに止まり、2017年からは減少に転じました。これは若い夫婦が経済的な理由で子供の出生を抑制していることが最大要因ですが、過剰な農薬散布で蓄積された深刻な残留農薬の影響によって男性の精液中に含まれる精子数が受精限界に近付いていることも大きな要因となっています。精液中の精子数の減少によって、不妊治療を受けている人口が5000万人を超えていることは、中国の将来を考えると致命的と言わざるを得ません。

 
 12年9カ月の間に大きな変化を来したのは中国人の精神面でした。筆者にとって最も印象深かったのは、2006年に発生した「彭宇事件」でした。彭宇事件の詳細については2010年1月15日付の本リポート『傷つき、困っている人を助けてはいけない』を参照願いたいのですが、概要は以下の通り。

 2006年11月20日、江蘇省“南京市”のバス停で、バスを待っていた“徐寿蘭”という名の老婦人が到着したバスに乗ろうとして転び、大腿骨を骨折した。丁度到着したバスから最初に下りた“彭宇”という名の気の良い青年が倒れている老婦人を見つけ、彼女を助けて医院まで付き添い、親切にも治療費まで立て替えてくれた。しかし、大腿骨骨折で治療には大金が必要であると知った徐寿蘭は、態度を一変させて、「自分が負傷したのはバスから降りて来た彭宇に突き倒されたからだ」と主張し、治療費および経済的損失を彭宇に請求する訴訟を提起したのだった。

 彭宇は徐寿蘭が自分で転んだと確信していたが、徐寿蘭は実の息子が警察官であることを頼りに根回しを行い、裁判官を買収することに成功した。その結果、2007年9月4日に下された一審判決は、彭宇に対し徐寿蘭が提起した損害額の40%に相当する4.6万元(約74万円)を徐寿蘭へ支払うことを命じるという不公平この上ない内容だった。

 この彭宇事件の裁判で、徐寿蘭を助けたはずの彭宇が不当な判決を受けたことが引き金となり、対象を老人に限定して「傷つき、困っている人を見ても助けてはいけない」という風潮が中国社会に蔓延するようになりました。路上で倒れたまま誰にも救助されずに死亡する老人が各地で散見されるようになったのです。路上で倒れた老人を助ける際には、事前に現場写真を撮り、周囲の人にいざとなった時には証人になってもらう約束を取り付けた上で救助に当たるといった方法論が真剣に討議されたのでした。

善人を自殺に追い込んだ事件
 それから6年が経過した2013年の大晦日にお人よしの“呉偉青”を自殺に追い込む事件が発生したのです。当該事件の詳細は2014年1月17日付の本リポート『「倒れた老人は助けるな」は庶民の合言葉』を参照願いたいのですが、その概要は以下の通り。

【1】2013年12月31日,広東省“河源市”の“東源県?溪郷”で交通事故が発生した。農道を歩いていた80歳の“周火仟”(以下「周老人」)が転んだところへ、バイクに乗った46歳の“呉偉青”が通りかかった。人が良い呉偉清はバイクを止めると、周老人の所へ走り寄り、負傷して倒れたままの周老人を助け起こすと、周老人を付近にある診療所規模の“?溪医院”へ連れて行った。しかし、?溪医院では負傷の詳細が分からないことから、呉偉青は周老人を少し大きな“船塘医院”へ連れて行った。翌日、周老人の家族から検査を受けさせるため、周老人を河源市内にある“中医院(漢方医院)”へ連れて行って欲しいと要求され、呉偉青は唯々諾々とこれに従い、周老人を中医院へ連れて行った。

【2】中医院で検査を受けた結果、周老人は脛骨(向こうずねの骨)を骨折していることが判明した。お人よしの呉偉青は周老人の治療費を全て立て替えた。その金額は、?溪医院では100元(約1600円)、船塘医院では400元(約6400円)、中医院では前期の治療費として3000元(約4万8000円)であり、その合計は3500元(約5万6000円)であった。ところが、中医院での検査で脛骨骨折であることが判明すると、周老人とその家族は態度を一変させ、何と周老人が負傷した原因は呉偉青が乗ったバイクにぶつけられたからだと断言したのだった。周老人が路上に倒れていたから人間として当然の行為として助け起こし、医院にまで付き添ったのに、周老人は呉偉青が加害者だと言うのだ。これは呉偉青にとって正に青天の霹靂であり、「そんな馬鹿な、冤罪も甚だしい」と怒りに震えたのだった。

【3】事故が発生したのは地元の小学校、“?溪中心学校”の校長である“周育琴”の家の門前だった。当時、周育琴は家で門に背を向けた形で茶を飲んでいたが、突然に唸り声が聞こえて来たので慌てて外へ出て見ると、路上に人が倒れていた。それは同じ村に住む80歳の周老人であり、そこから6〜7m離れた所に呉偉青が乗る1台のバイクが止まっていた。周育琴は呉偉青に周老人を助け起こすようにと声を掛けたが、この時呉偉青は周育琴に向かって周老人にぶつかったのは自分ではないと表明したという。その後、2人は力を合わせて周老人を?溪医院へ運んだ。?溪医院に着くと、周育琴は呉偉青に周老人の家族へ連絡を取るように依頼して、自分は学校へ出勤したので、その後に何が起こったかは分からないと述べた。

【4】それから2日後の2014年1月2日、周老人にバイクでぶつけた加害者だと決めつけられた呉偉青は池に飛び込んで自殺を遂げた。後に、警察が呉偉青のバイクを調べた限りでは、バイクには周老人にぶつかった痕跡は何も見つからず、呉偉青が周老人を倒した加害者である可能性は限りなくゼロに近かった。しかし、当時、周老人の家族は呉偉青が加害者であると決めつけ治療費を含む数十万元(約500〜800万円)の賠償金の支払いを要求してきたのだった。貧しい呉偉青の一家にとって数十万元は天文学的な金額であり、支払うことなど到底できるはずがない。そこで、思い詰めた呉偉青は「死んで身の潔白を証明しよう」と決意して、衝動的に池に身を投げた可能性が高い。

【5】その後、周老人は自分で転んで脛骨を骨折したが、治療費が高額になるのを恐れて、倒れた自分を救助してくれた呉偉青を加害者にしたと真実を白状したが、それは善人の呉偉青が冤罪を苦にして自殺してから1週間後のことだった。

 この事件が契機となったのか、2015年10月には中国で“扶老人険(老人扶助保険)”という年間3元(約50円)で2万元(約32万円)を上限として訴訟費用や賠償金を保証する保険まで販売されるようになりました。

社会道徳を失わせた文革
 上述した呉偉青は「老人扶助」に関連する事件で最初の自殺者となったのですが、困った人がいれば助けるという中国人が本来持っていた美徳は、いつの間にか失われつつあります。これを老人の側から見ると次のようになります。すなわち、庶民の老人たちは極めて少ない年金で節約しつつ日々の生活を暮らしています。ある日、歩行中に路上で転び、手足や身体を骨折したら、高額な医療費を覚悟しなければなりません。そうなったら生活は破綻したも同然ですが、家族や親戚にカネを無心するのは心苦しいですから、転倒した際には傍にいる人を加害者にして、医療費を負担させれば、家族や親戚に迷惑をかけずに済むのです。加害者にする人は赤の他人だから別に気にする必要もないし、上手く行けば儲けものですから、嘘をつくことに罪悪感は皆無なのです。

 本来ならば、人生の先輩であるはずの老人たちが若者に対して社会道徳を教えるべきですが、“毛沢東”が主導した“文化大革命”(1966〜1976年)の時代にまともな教育を受けることなく青春を送った世代は、社会道徳を欠いたまま成人となり、いまでは老人となっています。そうした彼らを手本とする次の世代も社会道徳を欠いたまま成人となり、その連鎖が中国社会から本来中国人が持っていたはずの美徳を喪失させているのです。

 2018年12月14日付の本リポート『中国・高速列車で頻発する指定席の座席占領』で報じた、高速列車内で平然と他人の指定席を占領する人々は、社会道徳の欠如が明白ですが、12月22日には“北京喜劇院”で、当日に上演されるイスラエルの劇をどうしても前方で見たいという若い女性が、自分の指定席が後方であるにもかかわらず、前方の指定席を勝手に占拠するという事件が発生しました。彼女は劇場の職員から占拠した座席から移動するよう要求されても応じようとせず押し問答を続けました。最後には警官によって強制排除されましたが、このために劇の開演は大幅に遅れたのでした。中国では高速列車内の“覇座(座席占領)”は依然として頻発していますが、“覇座”は遂に劇場にまで領域を拡大したのです。

国家にも軋みや歪み
 中国国内に蔓延する自分勝手で独(ひと)りよがりな風潮は一体何を意味しているのでしょうか。1949年10月1日に成立した中華人民共和国は、その2カ月後にこの世に生を受けた筆者と同じ69歳で、今年中には70歳の「古希」を迎えます。筆者は運動不足によるメタボによる諸症状はあるものの身体は至って元気ですが、寄る年波でいつ肉体のどこかに異常が起こっても不思議ではありません。

 これは中国という国家も同じことです。寄る年波の軋(きし)みを修正し、歪(ゆが)みを矯正し、骨格を調整する必要があるのです。上述した“覇座”や老人を扶助しない風潮も、修正や矯正を必要とする軋みや歪みの現れだと思われます。骨格調整を行うには、国家を挙げての「徳育(道徳心のある、情操豊かな人間性を養うための教育)」が必要だと思います。

 徳育を行うことによって身勝手で独りよがりな風潮は是正できると期待するものです。

 我々日本人は、隣国である中国の実態を正しく認識し、そこに住む中国人を正しく理解することによって、日中両国が共に発展するウインウインの関係を築いて行かなければなりません。そのためには、常に中国の政治・経済だけでなく、社会情勢を観察し続けることが必要だと思います。「中国・キタムラリポート」は今回で終了となりますが、読者各位には引き続き中国社会の動向に興味を持ち続けていただくことを切望する次第です。長期間にわたり「中国・キタムラリポート」を支持いただきましたことを厚く御礼申し上げます。

 ありがとうございました。

新刊:図解でわかる 14歳から知っておきたい中国(監修:北村 豊)

 中国は世界の多元化時代の壮大な実験国家なのか!? 中国脅威論や崩壊論という視点を離れ、中国に住む人のいまと、そこに至る歴史をわかりやすく図解! 本書はドローンのような視点をもって、巨大国家「中国」を俯瞰し、その実像を解き明かしています。中国の全体像を知りたい読者必読の一冊です。

太田出版 2018年7月10日刊


このコラムについて
世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」
日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/101059/010800189
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/184.html

[国際25] 陰るプーチン神話、募る国民の不満 解析ロシア 超長期政権の軌跡、世論調査会社所長に聞く 
陰るプーチン神話、募る国民の不満
解析ロシア
超長期政権の軌跡、世論調査会社所長に聞く

2019年1月11日(金)
池田 元博


レフ・グトコフ氏
ロシアの社会学者で、2006年から民間世論調査会社レバダ・センター所長。モスクワ大学卒。1946年12月生まれ、72歳。
プーチン大統領はなぜ、強力な政治指導者になり得たのか。

レフ・グトコフ氏(レバダ・センター所長):1990年代はロシアにとって厳しい時代だった。実質国民所得は半減し、エリツィン政権が進めた急進経済改革と改革派政治家への失望が増した。(1999年末の)エリツィン大統領の突然の辞任とプーチン氏の登場に、国民は期待と希望を膨らませた。国内のほぼすべての政党もプーチン氏を支持した。改革派は改革路線の継承を望み、共産主義者や国家主義者は彼が改革に歯止めをかけると期待した。

 プーチン氏が政治の表舞台に登場した時期はたまたま、急進改革に伴う市場経済、市場原理が軌道に乗り始めた時だった。また、原油価格がたまたま上昇して国家財政が潤い、相当な額の社会政策費用を捻出できるようになった。

 プーチン大統領の支持率は2002年から2008年にかけて上昇した。国民の実質所得が年率6〜8%、年によっては10%も増えたからだ。国家が社会保障費の負担を大幅に増やしたのが大きな要因だ。つまりプーチン政権は、国家資金を使って国民の忠実性を買い取っていたとも言える。

 国家資金の配分は不公正で、官僚、治安機関や国営企業の幹部などが大きな恩恵を受けた。とはいえ、低所得者層にも相応の資金が渡った。ロシアで金融危機が発生した1998年は経済的に最も厳しい時期だ。その翌年の1999年当時、ロシアの貧困層の比率は38〜39%に上っていたが、2008年は9%にまで低下した。これが、プーチン大統領が国民に根強く支持されている一番の要因だ。

半面、プーチン政権は社会の締め付けも進めた。

グトコフ氏:忘れてならないのが制度面の変革だ。まず、国内のマスメディアを国家権力の支配下に置いて独占した。これによって、マスコミを国家のプロパガンダの道具にする政策が行われた。マスメディアはほぼ大統領府などの直接支配下に置かれ、国家から完全に独立したメディアはロシアに存在しなくなった。あえて独立系といえるメディアの比率はいまや6〜7%に過ぎない。

 次に地方自治もなくなった。地方レベルでは知事選など首長選が一時的に廃止され、大統領が首長を指名するようになった。地方政党も排除された。権力の中央集権化が進み、憲法ではまったく規定されていない「連邦管区」が各地方の上のレベルに設置され、大統領による直接支配を進めるべく「大統領特別代表」が任命された。(プーチン大統領の出身母体である)連邦保安庁(FSB)など治安機関、政治警察の影響力も増した。治安機関出身者は人事面でも優遇された。

https://cdn-business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/040400028/010900069/p2.jpg

プーチン大統領の人気のピークは2008年夏
対外政策もプーチン政権の基盤固めに寄与したのか。

グトコフ氏:プーチン大統領の支持率がピークに達したのは2008年夏。同年8月に起きたグルジア(現在のジョージア)との戦争の時期とも重なる。国内では愛国主義的なキャンペーンが展開され、大国の復活を掲げる一方で、欧米に敵対するレトリックが高まった。ロシアは改革や変革よりも安定性を重視すべきで、かつてエリツィン政権下で進められた急進経済改革は、欧米がロシアの崩壊を真の狙いにして仕掛けたものだという考え方も広がった。

プーチン大統領の支持率

出所=ロシアの独立系世論調査会社レバダ・センター
 こうした動きは2004年から出始めた。翌年に控えた第2次世界大戦(大祖国戦争)の戦勝60年を祝う準備を始動させたころだ。政権は大国のイメージを復活させるとともに、ロシアに民主主義はふさわしくない、帝国主義や大国主義といった伝統的な価値観に回帰すべきだと宣伝。反欧米の感情を徐々に国民の間に植え付けていった。その典型例が2007年2月、(米国による一極支配体制を鋭く批判した)プーチン大統領のミュンヘン安全保障会議での演説だ。

プーチン人気はなぜ、2008年夏を境にしぼんだのか。

グトコフ氏:2008年秋からの世界金融危機の影響だ。政権はそれまで蓄積した資金を使って何とか国民の不満を抑えようとしたが、完全には抑えられなかった。2009年からは国民所得が再び低下し、都市部の中産階級、教育水準の高い人々など所得が高い層を中心に、プーチン氏への反発が高まった。

 2011年末の下院選での大規模な不正投票、メドベージェフ大統領の後任としてプーチン氏が再び大統領に復帰したことは、国民の大きな不満を呼んだ。大衆の抗議行動も広がった。政権側は一定期間は戸惑っていたが、やがてより強硬な対応に出る。抗議行動への参加者を大量に逮捕、拘束したほか、40以上の法律を修正して言論や政治活動の自由を大きく制限した。インターネットも規制対象とした。欧米と協力するあらゆる分野の非政府組織(NGO)を「裏切り者」とするキャンペーンも展開した。

 
 それでも国民の反発や抗議行動の影響は長引いた。プーチン大統領の支持率は徐々に低下し、2013年12月に最低水準まで落ち込んだ。2013年から2014年初めにかけての世論調査では、回答者の47%がプーチン氏は次の大統領になってほしくないと答えていた。

そんなプーチン政権の苦境を救ったのが、2014年春のウクライナ領クリミア半島の併合だったのか。

グトコフ氏:実はロシア国民の大多数は当初、ウクライナが欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)に加盟するかどうかを決定する権利はウクライナ国民にあり、ロシアは介入すべきではないと考えていた。ところがウクライナで(親ロ派の)ヤヌコビッチ政権が倒されて以降、ロシアで前例のない激しい反ウクライナ、反欧米キャンペーンが展開されるようになった。ウクライナの政権転覆劇は米国が仕掛けたといった具合だ。それはいまだに続いている。

 ロシアでは反ウクライナ機運が一気に広がり、クリミア併合やウクライナ東部の紛争で、国粋主義や愛国主義的なムードが社会を支配した。国民の多くはプーチン政権が国際法に違反したことは認めつつも、ロシア系住民の生命を守るためなら容認されると判断。プーチン大統領の支持率は急上昇した。

 ただし、クリミア併合後の大衆の意識、ロシア社会のムードはどうか。政権への信頼感とともに、家庭状況や経済状況への期待など12種類の世論調査結果をまとめて指数化すると、興味深い傾向がみえてくる。国民の間に政権への信頼感、ロシアが大国になったという誇りの感情が増す一方で、2015年以降は将来への不安や不確実性が広がり、いずれ戦争になるのではないかとの恐怖感すら国民は強く抱くようになっている。

プーチン大統領の人気は今後も確実に低下していく
プーチン政権は2018年5月から実質4期目に入り、大統領の支持率に再び陰りがみえているようだが……。

グトコフ氏:愛国主義的なムードは2017年末まで続いていたが、このころから社会の不満、緊張が高まり始めた。プーチン再選に向けた大統領選キャンペーンで一時的に緩和されたものの、再選後に政権が打ち出した年金の受給開始年齢の引き上げに国民は猛反発した。政権は年金を働けなくなった人への補償とみなしているが、国民は老後に備えて蓄えてきた自分のカネと思っている。こうした認識の違いも政権批判を助長し、国民の9割近くが年金改革に反対した。プーチン大統領の支持率も低下し、2013年末の水準まで下がってしまった。

 国家にカネがないのに、なぜシリアで訳のわからない戦争を続けるのか。軍の近代化になぜ資金を振り向けるのか。クリミア半島と本土を結ぶ橋になぜ、多額の国家予算を投じるのか……。いまや大衆は、ロシアが大国として復活し、地政学的な問題を解決することに反対はしないが、自分のカネが使われるのは絶対に嫌だと考えるようになっている。

 
 ロシア社会の不安や緊張は続くだろう。とはいえ、政権による弾圧や野党勢力に対する活動制限はさらに強化されるだろうから、今後、政治的に大きな変化があるとは考えにくい。生活は苦しいが我慢はまだできる、というのが現在の国民世論の主流だ。

 
 ただし、プーチン大統領が築いた経済モデル、すなわち強権的な政治力をもとに原油輸出などによる収入を再配分するモデルは2012年までに限界に達していた。2012年は原油価格が1バレル100ドルを超えていたにもかかわらず、経済はすでに成長しなくなっていた。

 
 こうした経済モデルの非効率性や長引く欧米の経済制裁の影響で、直近の国民所得は2014年末時点と比べて11〜13%も下がったとの推計もある。国民所得の推移は政権の将来を占う重要なファクターだ。プーチン大統領は今後、NATOとの衝突など、外交面での冒険で一時的に人気を回復させる可能性はあるが、今の状況から単純に予測すれば、大統領の支持率は今後も徐々に低下していくしかない。


このコラムについて
解析ロシア
世界で今、もっとも影響力のある政治家は誰か。米フォーブス誌の評価もさることながら、真っ先に浮かぶのはやはりプーチン大統領だろう。2000年に大統領に就任して以降、「プーチンのロシア」は大きな存在感を内外に示している。だが、その権威主義的な体制ゆえに、ロシアの実態は逆に見えにくくなったとの指摘もある。日本経済新聞の編集委員がロシアにまつわる様々な出来事を大胆に深読みし、解析していく。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/040400028/010900069
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/185.html

[国際25] 聖なる大地に壁はいらない アメリカ国境のリアル セルズ、国境が分断するインディアン居留地  
聖なる大地に壁はいらないアメリカ国境のリアル
セルズ、国境が分断するインディアン居留地
2019年1月11日(金)
篠原 匡
 それは不思議な光景だった。
 アリゾナ州ツーソンから南西に100キロほど下った荒野の砂漠。周囲には地面に突き刺さった無数の柱と鉄条網が続いている。でっぷりと太った黒髪の男はタイヤのついた鉄柵の前に立つと、力一杯ゲートを押した。そのままゲートの向こう側に歩いて行く。
 「ここはもうメキシコだ。あなた方が来ても戻れないよ」
 男はそう言うと、再びこちら側に戻ってきた。遠巻きに国境警備隊が眺めているが、問題視している様子はない。
 この場所はトホノ・オーダム・ネーション・レザベーションにあるサンミゲル・ゲート。ネーションの“首都”セルズから30分ほど南に下ったところにある、グーグルマップにも載っていない小さな国境ゲートだ。普通のアメリカ人や旅行者がこのゲートを通った場合、20マイル(32キロ)ほど離れたササベの出入国ゲートまで行かなければ再入国できない。
 周囲の風景は米国もメキシコも変わらない。吸っている空気も同じ。ゲートに寄りかかって手を伸ばせば、向こう側の草木にだって触ることができる。だが、戻ってこられないと聞くと、ここには見えない壁があるということに改めて気づく。
 午前9時だが、気温は優に30度を超えている。試しにゲートを越えてみようと思ったが、ササベまで歩くのは正直キツい。

トホノ・オーダム・ネーションにあるサンミゲル・ゲート
 トホノ・オーダム・ネーションはアリゾナ州に21あるインディアン居留地の一つだ。トホノ・オーダムとはトホノ語で「砂漠の民」という意。数千年の昔から米国とメキシコにまたがるソノラ砂漠で遊牧生活を送ってきた。
 彼らの居留地は灌木ばかりの荒野だが、コネチカット州がすっぽりと入るほどの広さを誇る。その“領土”は、同じインディアン居留地の中でもアリゾナ州やニューメキシコ州、ユタ州にまたがるナバホ族、ユタ州のユト族(ユーインタ・アンド・オウレイ)に次ぐ3番目の広さだ。トホノ・オーダム族は全世界に2万4000人ほどいるが、この広大な地域に住む人はわずか1万人に過ぎない。
 ゲートを行き来した黒髪の男、バーロン・ホセはトホノ・オーダム評議会の副議長を務める。トホノ・オーダムを含むインディアン居留地は連邦政府や州政府と同様に行政府や立法府、司法府を持つ。議長と副議長を選ぶのは立法府である評議会議員なので厳密には異なるが、バーロンはネーションの副大統領のような存在だ。

トホノ・オーダム評議会の副議長を務めるバーロン・ホセ
 ネーションは11の行政区に分かれており、一つの行政区から2人が評議会議員に選ばれる。インディアン居留地をレザベーションと呼ぶのは、連邦政府が取っておいた(リザーブした)土地に彼らを移住させた経緯による。
 なぜバーロンだけがゲートを行き来できるのか。それは、トホノ・オーダム族に発効された特殊な部族ID(パスポート)を持っているためだ。それでは、なぜそのようなIDが存在するのか。そこには国家に翻弄された彼らの数奇な物語がある。
分断された砂漠の民
 トホノ・オーダムの歴史は古い。ツーソンやネーション内に残された遺跡を見ると、彼らの祖先は少なくとも4000年前からこのエリアで活動していた。トホノ・オーダムの伝承によれば、東はニューメキシコ州、西はコロラド川河口、北はフラグスタッフ、南はメキシコ・ソノラ州のエルモシージョまで、水場や狩猟、農耕の場所を求め広大なエリアを移動していたという。
 「(14〜16世紀にメキシコ中央部で栄えた)アステカ帝国の伝説上の故郷、アストランは北方にあったと伝えられている。われわれが暮らしているのはその“北”だ」
 湿潤な日本から来た人間には想像もつかないが、ソノラ砂漠には水や穀物、果物などが存在している。オジロジカやペッカリー(イノシシに似た偶蹄類)、ワタオウサギなど野生動物も豊富だ。こういった動植物を、彼らは部族が生き抜くために神が与えたものだと考えている。
 「神は光と闇、人間を創造し、神はトホノ・オーダムをここに定めた。神は所有させるためではなく、この大地を守るためにわれわれをここに遣わせた」
 そうバーロンが語るように、彼らが大地に属しているのであり、大地が彼らに属しているのではない。ゆえに、土地の所有という概念は彼らの辞書には存在しない。
 だが、数千年に渡って続いた遊牧生活は米国の膨張とともに変化を余儀なくされた。とりわけ1853年のガズデン購入はトホノ・オーダムを二つに分断した。
 1846〜48年の米墨戦争に勝利したことで、米国はメキシコからカリフォルニア州、ネバダ州、ユタ州、コロラド州など広大なエリアを手に入れた。それでも飽き足らない米国は、返す刀でアリゾナ州やニューメキシコ州の一部をメキシコ政府から1000万ドルで購入した。これがガズデン購入である。
 ネーションのある一帯はもともとメキシコの領土だったが、ガズデン購入で国境線が動いた結果、もともとの生活圏のど真ん中に国境線が引かれることになった。およそ60マイル(96キロ)に及ぶ国境線で生活圏が米国とメキシコに分かれたのだ。
 「カリフォルニアで金鉱が見つかって多くの白人が西を目指したが、彼らには冬のロッキー山脈を越えるのが厳しかった。もっと楽な南のルートがほしいと思ってメキシコとディールしたんだよ。われわれには何の相談もなく」
バーロンは語る。

国同士のディールでコミュニティが二つの国に分かれた
想像上の境界線
 想像上の境界線−−。そうバーロンが語るように、トホノ・オーダム族にとって国境線は後から人為的に引かれたものに過ぎない。いわば、国家間の力関係によって勝手にできたものだ。だが、架空の国境線は確実に彼らの生活や文化を分断している。
 メキシコ・ソノラ州に2000人の部族民が住んでいるように、トホノ・オーダム部族の大半は両方のエリアに親族がいる。先祖の墓は両サイドにあり、教育や医療サービスを受けるためにメキシコ在住の部族民がトホノ・オーダムに来ることも少なくない。
 彼らが大切にしているいくつかの儀式も両国にまたがっている。
 トホノ・オーダムの新年は7月初め。その時期は45度を超える日もある酷暑だが、毛布のような衣装を身にまとい、ビーズや貝殻、羽などで装飾されたマスクを身につけて昼夜問わず踊り続ける。その舞台はメキシコ側だ。
 10月の第一週には聖フランシスの巡礼がある。この時には4日かけてメキシコの教会を一軒ずつ歩いて回る。毎年数百人の部族民が国境を越えるという。また、思春期になった若者が150マイル離れたカリフォルニア湾のピナカーテまで塩を取りに行くという風習もある。彼らが取ってきた塩は儀式で用いられる。
 正直に言えば、1980年代までは国境の往来に大して支障がなかった。国境は存在したものの、実際の管理はルーズで自由に行き来しても問題はなかったからだ。だが、ドラッグの流入増や2001年9月11日の米同時多発テロの影響で米国の国境管理は次第に厳しくなった。そして、ドラッグや不法移民の輸送を防ぐため、2006年に国境線に車止めの鉄柵が敷設される。
 もっとも、ササベやルークビルなど正規の国境ゲートはネーションから離れており、国境管理を厳格に運用するとコミュニティを完全に分断することになってしまう。そこで、米政府はネーション内の国境ゲートを3カ所に縮小する一方、例外としてトホノ・オーダム族専用のIDを作ったのだ。
 そして今、「トランプの壁」がネーションを揺さぶっている。
 国境管理の厳格化を訴えるドナルド・トランプはその手段として国境の壁建設を強く訴えている。だが、実際に壁が建設されれば、想像上の境界が本物のバリアになってしまう。住民の往来はもちろんのこと、動植物を含め、彼らが神から負託されている大地も大きな影響を受ける。それゆえに、壁については明確に反対している。
 実際のところ、車止めについてもネーション内には異論があった。だが、車止めは鉄条網こそ巻かれているが、丈は低く、野生動物の行き来に支障はない。車止めの設置には同意したのは自然環境や野生動物には影響を与えないと判断したからだ。だが、壁となれば話は変わる。
 「あなたの家の真ん中に壁を作ったら家の中を歩けないだろう? それと同じことだ。かつてトホノ・オーダムの長老たちはこう言っていた。『連邦政府がこの大地を汚すようなことはもう許さない』と。私は長老たちの精神を引き継いでいる。私が壁を作らせない。たったひとりになったとしても作らせません」
 国境について話し合うため、バーロンは「(ネーション内の)100キロの国境線を一緒に歩こう」と大統領に招待状を出した。だが、トランプはまだ来ていない。

この先の山では車止めもなくなる
内側から崩壊する“国家”
 サンミゲル・ゲートをあとにした取材班はバーロンのクルマに乗って国境線を西に向かった。左には車止めの鉄柵が延々と続いている。だが、涸れ川のくぼみをいくつも乗り越えると、20分ほどで鉄柵もなくなった。目の前には小高い岩山。クルマでは乗り越えられない天然の要害である。
 米墨国境は3000キロを越える。その中にはティフアナやサンディエゴのような大都市もあるが、大半は人口密度の低い辺境である。仮に壁を築いたとしても、乗り越えるか穴を掘るかすればそれで済む。目に見える象徴として後世に刻む以外に壁を作る意味はない。
 周囲を見渡せば、テパリービーンが自生している。暑さや乾燥に強いテパリービーンは砂漠の民に欠かせないタンパク源だった。
 ネーションがあるエリアは7月から8月にかけて雷雨を伴ったスコールが降る。実際に雨が降ると道路が冠水して身動きが取れなくなるほどだ。彼らの祖先はこの時期の雨を用いてテパリービーンを栽培した。発芽の際には水分を豊富に含んだ土壌が必要だが、テパリービーンの生育は早く、芽さえ出てしまえば乾燥環境でも育つ。数千年にわたってソノラ砂漠で生き抜いたトホノ・オーダムの命の糧だ。
 彼らはまた、煮た草花に足を浸して体を癒やしたり、お茶にして飲んだり、砂漠に自生する植物を薬草として活用した。自然環境は異なるが、足下の環境を生かして効率的な農業を構築したという意味では日本の中山間地に似ている。豊かな自然環境をベースに、独自の言語や踊り、音楽なども花開いた。
 だが、部族の伝統的な生活は既に過去のものになりつつある。ネーションは内側から瓦解していると言っても過言ではない。
 端的に言えば、貧困と依存症だ。
 バーロンが誇るように、美しいソノラ砂漠は変わらず大地の恵みをトホノ・オーダムに提供している。だが、大都市から遠く離れた辺境に雇用はなく、米国の発展から完全に取り残されている。働く意欲を失った人々はフードスタンプ(貧困層向けの食料補助)とアルコールに依存しており、米国流の食生活に染まったことで糖尿病に罹患しているる住民も数多い。
 経済指標を見れば、その惨状は一目瞭然だ。
 2012〜16年のAmerican Community Surveyによれば、失業率は28.2%と同期間の全米の失業率(7.39%)の4倍近い。他のインディアン居留地の平均と比べても倍以上だ。そもそも仕事を探していない住民も多く、労働参加率は52.5%と全米のデータよりも10ポイント以上低い。世帯所得の中央値は2万5430ドルと全米平均の3分の2。貧困率も45%に達する。
 「それは、取り組まなければならない課題だ」 
 ハンドルを握るバーロンの顔が曇る。
アルコール依存症の祖母
 セルズから西に小一時間ほど行ったピシーニモ。この集落で暮らすノーマ・ドミンゴは長年、アルコール依存症に苦しんでいる。
 初めてビールを飲んだのは13歳の時。その後、14歳で一人目の子供を産み、18歳の時に二人目を妊娠した。そして24歳の時に事件が起きる。当時、付き合っていた恋人が自分の娘に性的いたずらをしているところを目撃したのだ。精神のバランスを崩したノーマは酒に溺れるようになった。
 一時は育児不能状態で、子供は他のきょうだいが面倒を見ていた。その後、しばらくアルコールを断ったが、35歳からは飲んだりやめたりの繰り返しだという。

アルコール依存症に苦しむノーマ・ドミンゴ(写真:Retsu Motoyoshi)
 「なぜ依存症に?」
 「当時のボーイフレンドが9歳の娘にいたずらしていたのを見てしまって。まだ9歳ですよ。その現実が耐えられなくて、飲むのをやめられなくなりました」
 「そもそも酒を飲み始めるのが早い」
 「この辺に何もないことが原因だと思います。退屈だったんです。だからみんな飲み始める」
 「ちなみに、何を飲む?」
 「最初はバドワイザー。それからモルト・リカー(度数の高いビール)に行き、今はスティール・リザーブ(度数の高い安ビール)」
 「家族は?」
 「母は私が1歳の時に亡くなりました。父は小さなガソリンスタンドを営んでいました。食料品を売ったり、ガソリンを入れたり、タイヤを直したり。父や兄もアルコール依存症でした」
 「今はどこに?」
 「父は施設に行き、兄はいなくなりました」
 「今は働いている?」
 「何もしていません。この子(孫)の面倒を見ないと行けないので。でも、職があればバスの運転手として働きたい。昔もやっていたので」
 ノーマを取材したのは、セルズのコミュニティカレッジに通う彼女のもうひとりの孫、ティエラと知り合いになったことがきっかけだ。アルコールやドラッグの依存症になった住民を探していると相談したところ、自分の祖母がそうだという。電話番号を聞き、あとで連絡を取ると、ノーマ自身も取材を快諾した。
 アルコール依存症と聞くと、日本では後ろ暗いイメージがあり、家族は隠す傾向にあるように思う。だが、あっけらかんとしたティエラの様子を見ると、それだけアルコール依存症がネーションの一部になっているということを実感する。実際、何人もの住民に話を聞いたが、誰もがひとりはアルコール依存症の親族を持っていた。
1回の密輸で1万ドル
 ネーションで蔓延している依存症はアルコールだけでなくドラッグもそうだ。2006年までは車止めの鉄柵がなかったため、ドラッグや不法移民を積んだクルマがネーションに流入した。
 税関・国境警備局(CBP)のデータを見ると、国境地帯(ツーソン付近)における不法入国者の逮捕件数は2000年の61万人を筆頭に、2000年代前半は軒並み毎年30万人を超えている。2017年が3万8000人だということを考えれば、当時の状況が分かるというものだ。
 こういったドラッグの多くはカリフォルニアやニューヨークなど他の地域の需要を満たすために持ち込まれたが、鬱屈とした気分を晴らすために手を出す住民は当然いる。結果的に、ネーション内にはドラッグ汚染も蔓延した。ノーマによれば、今もドラッグは普通に流通しているという。
 「アルコールだけでなくドラッグ依存症も多いと聞く」
 「最近はそこまでひどくないですが、今もたくさんの人がドラッグをやっているのを知っています」
 「みんなはどこで手に入れるの?」
 「頼むと家に持ってくる。お互いにみんな知っているから」
 「警察は?」
 「報告しても、警察内に仲間がいる連中もいて。(警察署のある)セルズからここまで遠いので、警察が来る前に逃げてしまう」
 ドラッグ汚染は大人だけでなく、子供にも広がっている。
 「大人だけでなく、僕と同じくらいの学生、あるいはもっと小さな子供がドラッグの依存症になっているのを見てきた」
 セルズのバボキバリ高校に通うダニエル・マルケスは言う。彼の両親は覚醒剤とアルコールの依存症だったため、ダニエルは2歳の時から祖父母の元で育てられた。
 定職のない住民はインディアンジュエリーの製作やタコスのケータリングなど様々な手段で日銭を稼いでいる。
 セルズで話を聞いた中年女性はインディアンジュエリーを作っている恋人の収入と、タコス屋台の手伝いで週300ドルを得ている。セルズにあるナザレン教会の牧師、リーランド・コンウェイは副業でピザ屋を始めた。
 彼の場合、ネーションでクリスチャンスクールを運営していたが、妻の死去に伴って学校を閉鎖、収入が半分になった。教会からの支給は何もなく収入は年金だけ。それで日銭を稼ぐために教会の横でピザ屋を始めたのだ。
 雇用と現金が不足しているため、ドラッグの運び屋になる住民も少なくない。
 「数キロのドラッグを運んで捕まった友人がいる。彼女にいくらになるのかと聞いたら1万ドルだと。それで運び屋になるのさ。1回や2回はうまくいくかもしれない。だが、いずれ捕まる」
 リーランドは言う。

牧師のリーランド・コンウェイは日銭を稼ぐためピザ屋を始めた
トラウマを抱える子供たち
 雇用不足はアリゾナ州の最南端という立地の問題がまず大きい。最寄りの大都市、ツーソンからはクルマで1時間以上かかる上に、岩山とサボテンばかりの道路は状態がいいとは言えず、途中でスマートフォンも圏外になる。インフラがプアなため企業の誘致は難しく、雇用はもっぱら警察や消防、医療福祉サービスなどの公的部門か4カ所あるカジノである。
 企業が進出してこないのは保守的な土地柄も災いしている。 
 「われわれは企業に対してオープンだよ」
 そうバーロンは言うが、実際に工場を建てるとなると、地元や評議会との協議、電気や水道、道路への投資など気の遠くなるようなプロセスがかかる。広大な土地や安価な人件費に目をつけて関心を示す企業もしばしば出るが、時間がかかりすぎるので背を向けてしまう。
 率直に言ってネーションの経済状況は厳しいが、かといって予算が枯渇しているわけではない。特に、カジノはネーションの主要な財源で、コミュニティカレッジの設立や医療機器の調達、糖尿病予防のためのスポーツジムもカジノ収入でまかなった。数百マイルあるネーション内の道路整備にもカジノ収入が充てられている。
 もっと言えば、雇用がないわけではない。
 評議会には雇用の機会があり、実際に欠員がある。だが、そういった仕事に就くのに必要な資格を持っている人間が現実にいない。仮に条件を満たしていたとしても、働く意欲があるかどうかは別の話だ。
 ネーションの西の端にあるカジノを覗くと、部族民の警備員の横で部族民がスロットに興じていた。日本にいた時にしばしば多摩川競艇や平和島競艇に足を運んだが、平日にいるのは小銭を賭けて遊ぶ年金受給者が大半だった。トホノ・オーダムの場合は若い人間が多い。
 ヒッチハイクで移動している住民は今も多いが、車を持っているのであれば、ツーソンに行ってウーバーの運転手になるという選択肢がある。部族の伝統的な文化があるのであれば、ソノラ砂漠の薬草を使ったセラピーを旅行者に提供するのも悪くないだろう。だが、外の世界の状況を知らなければ発想は出てこない。「知らない」ということは最大の障壁だ。

ネーションの外れにあるカジノ
 現在の惨状を招いた一つが人々の教育に対する意識なのは間違いない。教育は高校で十分という親が多く、子供を大学に行かせることにずっと無関心だった。現在も43.9%が高卒資格以下の卒業資格しか持っていない。
 長年、都市から隔離されたコミュニティで生活していれば、自分もその中で暮らし続けるのが当たり前だと思うようになる。アルコールやドラッグの依存症が蔓延するなど荒れた家庭環境で暮らしていれば、学業を続けることも難しい。実際、祖父母や親戚、シェルターで育てられる子供は数多い。
 バボキバリ学区では、ホームレスの子供向けに食料や衣類、シャワーなどを提供している。学校内の倉庫を覗くと、パスタやマカロニチーズなどの食料品に加えて、サイズの異なる靴や下着などが並んでいる。すべて寄付によるものだ。学校に来れば、夏休みの間も朝食や昼食を食べることができる。
 バボキバリ学区のスーパーインテンデント(教育長)を務めるエドナ・モリスはこう言ってため息をつく。
 「家庭に問題を抱える子供たちはみんなトラウマをもっています。数多くのトラウマを背負っていれば、学ぶことはできません」
 仮に大学に進学したとしても、ネーションの生活に慣れた子供たちは外の世界で別の試練に直面する。
 80年代に大学進学率が伸びた時期もあったが、都市での生活に適応できず、大学に進学した学生の大半が一学期を終える前に中退した。ネーションの大自然の中で暮らしてきた子供たちにとって、ツーソンやフェニックスは全く異なる別世界。同質的なコミュニティで暮らしてきた子供たちには刺激が強すぎたのだ。
 教育に対する意識の低さと荒れた家庭環境など様々なものが絡み合って、ネーションの貧困は再生産されていく。

バボキバリ学区の教育長を務めるエドナ・モリス
強制移住と同化政策
 ここまで彼らの問題にフォーカスしてきたが、米政府の罪ももちろん大きい。彼らにある種の負け犬根性が染みついた理由の大半は、この国の歴史にある。
 18世紀の米国戦争(1775〜1783年)以降、白人入植者は豊かな土地を求めて西に向かった。その過程で抵抗する部族は徹底的に排除、オクラホマ州など西部の居留地に押し込め、白人社会に同化させる政策を取った。第7代米国大統領、アンドリュー・ジャクソンが署名したインディアン移住法は一つの結末である。
 その後、ミシシッピ川以東のインディアン部族の西部移住は加速したが、白人による西部開拓の圧力が高まるにつれて、政府による土地の没収や農場主による借り上げなど居留地を蹂躙する動きも相次いだ。「不可侵の領土」として政府が保証したにもかかわらず、金鉱が見つかったために居留地の多くを没収されたスー族は典型だ。
 連邦政府の強制移住と同化政策によって、インディアン部族の多くは牙を抜かれ、自分たちのアイデンティティを失った。
 数千年にわたってソノラ砂漠で暮らしていたトホノ・オーダムは、強制移住とは無縁だったものの米国の居留地政策によって“領土”は大幅に縮小した。19世紀後半から20世紀初頭の3度の大統領令によって居留地を拡大したが、当初の居留地は現在の10分の1に過ぎなかった。
 わずかな年金と引き換えに、自分たちが生きてきた土地や尊厳、アイデンティティを奪われた敗者としての過去−−。それが貧困や教育、依存症などの根源にある。国家に翻弄される状況は今も昔も変わらない。

トホノ・オーダム族の墓地(写真:Retsu Motoyoshi)
回り始めた「弾み車」
 出口のない暗闇の中でもがく国境の居留地。だが、変化しつつある住民の意識のはかすかな希望だ。
 セルズの道路沿いに立つ「Mondos」。タコスやブリトー、ネーションの伝統料理などを提供している食堂だ。あり合わせの材料で組み立てたような掘っ立て小屋だが、8年前の開店以来、地元の人々に愛されている。
 店主のアルマンド・ゴンザレスは生活に問題を抱える人々を支援するケースマネジャーとして、長年、ネーションの外で活動してきた。そんな彼が戻ってきた理由は地元に対する強い思いだ。フードビジネスを始めたのは、彼の母や祖母、曾祖母が料理人だった影響が大きい。
 「ネーションに戻って何かしたいとずっと思っていた。自分のルーツを考えると、フードビジネスというのもふさわしいと思えた」
 当初は地元に戻ることが第一で、ビジネスがうまく回るかどうか半信半疑だった。拾ってきたような材料で建物を作ったのも過大な投資をしたくなかったからだ。だが、実際にビジネスを初めて見たところ、大繁盛というほどではないが、ビジネスは順調に推移している。
 「ここでも十分に成り立つ」
 そうアルマンドは語る。
 実際に店を開いたことで改めて気づいたこともある。それは、従業員を雇い、コミュニティの内部でお金を循環させる重要性だ。
 店が忙しくなるにつれて、アルマンドは部族の友人をヘルプで雇い始めた。手伝ってもらう時間は日に1〜2時間程度のため稼ぎとしてはそれほど大きくないが、キャッシュを得た彼らはコミュニティの他の店で消費し始めた。最初は1〜2人だったが、雇う人間が増えるとともに地元に落ちるカネも増えた。
 アルマンドに触発されて、自分も何かしようと思う住民も出始めている。
 セルズの町中は相変わらず閑散としているが、カフェやジャンピング・キャッスル(空気で膨らませた遊具)を用いた簡易遊園地などのスモールビジネスが現れつつある。まだ小さな循環で動きは遅い。アマゾン・ドット・コムが物流センターを作った方が経済効果は大きいのは間違いないが、コミュニティに資金を循環させる弾み車はゆっくりと回り始めた。

アルマンド・ゴンザレスが開いた食堂「Mondos」
暗闇に浮かび上がる希望
 教育の方も改善している。
 バボキバリ学区のエドナは前任のスーパーインテンデントの改革を引き継ぎ、ネーションの教育改善に取り組んでいる。その柱は教師の待遇改善だ。
 10年前、小学校の出席率は70%と低く、授業に参加しない子供たちも数多くいた。教師もその状況を放置しており、必要な水準の学習が全くといっていいほどできていなかった。教室は落書きだらけで、窓もところどころ割れていた。
 「教師は子供たちを気にかけておらず、子供たちも学校が自分たちのものだという意識がなかった」
 教育崩壊の原因を教師の質に見た前任者やエドナは教師募集の際の給与を段階的に引き上げた。トホノ・オーダムまでは最寄りのツーソンから1時間半ほどかかる。教師の拘束時間は行き帰りの通勤と学校での教育で12時間は優に超える。ただでさえ厳しい環境なのに、給与が低ければ優秀な人間は誰も来ないと考えたからだ。
 アリゾナ州の教師の平均給与は年3万4000ドルで、エドナが来た当初は平均を大きく下回っていた。だが、連邦政府の補助金を活用して、大学を卒業したばかりの教師の初任給を5万1600ドルまで引き上げた。初任給としてはアリゾナ州で最高だ。通勤に対処するため、Wi-Fi完備の通勤バスも走らせている。
 その効果は確実に出ている。
 10年前に70%だった小学校の出席率は92%に上昇した。高校卒業後、大学や職業訓練学校への進学を選択する生徒も卒業生の8割に達している。かつては都市の生活に適応できず多くの若者がネーションに戻ってきたが、都市の大学に進学した若者をケアするカウンセラーを雇ったことで、進学した若者の大半が学業を続けるようになった。
 「出席率が上がったのは、学校が楽しいと思うようになったから。子供たちは教師が自分たちのことを大切に考えてくれると感じ始めています」
 そうエドナは語る。
 子供の意識も変化している。
 バボキバリ高校に通う17歳のスージー・ガルシア。彼女は高校卒業後、ワシントンDCのカレッジで刑事司法を勉強するつもりだ。トホノ・オーダムで殺人担当の刑事になることが目標だ。行方不明になったインディアン女性は多くが未解決のまま。そうした事件を解決することで、コミュニティの発展に関わっていきたいという。
 「両親や祖父母の世代は過去の歴史のせいで学校に通うのをあきらめていました。私たちにはとても悲しい過去があり、ネイティブ・アメリカンは他の人種のような能力がないと感じたのではないかと思います。でも、今は違います。ほとんどの学生が高校を卒業して大学に行くという強い決意を持っています。中退せずに高校に通い、大学を卒業すれば、いい人生を送れるということを若い人たちに示したい」
 彼女と一緒にいた他の3人の高校生も全員が進学を希望していた。
 彼らが外の世界に押しつぶされず、外の世界で得たものをネーションに還元できるかは分からない。だが、国や社会が一夜にして変化することはない。砂漠の民がかつての輝きを取り戻すのは、子供たちが学び、コミュニティに戻り、その子供たちが進歩と伝統を調和させた新しいカルチャーを築くことができた時ではないか。時間はかかるが、それ以外に希望はない。
注:記事中、アメリカ先住民の総称として「インディアン」という言葉を使っています。基本的に先住民は自分たちのことを「ネイティブ・アメリカン」とは言わないというのがその理由です。「ネイティブ・アメリカン」という呼び名自体が民族浄化に加担しているという見方があるためです。


このコラムについて
アメリカ国境のリアル

取材・文
篠原 匡 長野 光
太平洋岸のサンディエゴからメキシコ湾岸のブラウンズビルまで、米国とメキシコを分かつ3000キロ超の国境線。1日に100万人以上が往来する北米の経済と社会の大動脈である。その「国境」が米国の政治や経済、社会の最重要課題に浮上したのは、あの男がホワイトハウスを奪取してからといっていい。第45代米国合衆国大統領、ドナルド・トランプである。
トランプ大統領が主張する壁の建設はまだ実現していないが、ビザ取得の厳格化や関税の導入によって既に仮想の壁を構築しつつある。現在、米国と世界を揺るがしているイシューの震源地は紛れもなく国境だ。
それでは、国境では何が起きているのか。それを知るべく取材班は国境沿いのコミュニティを訪ね歩いた。国境に生きる人々の悲喜劇と、国境を舞台に繰り広げられる人間模様。そこから透けて見えるのは、アイデンティティを求めるさまよう人々と今のアメリカそのものだった。

※記事の内容は変更する可能性があります。

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/100500246/100500007

http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/186.html

[経世済民130] 米中貿易戦争と英国のEU離脱、19年早々に正念場を迎える日銀 支店長会議、貿易摩擦の影響 債券上昇、米利上げ鈍化・円高 
2019年1月10日 加藤 出 :東短リサーチ代表取締役社長

米中貿易戦争と英国のEU離脱、19年早々に正念場を迎える日銀


日本銀行の黒田東彦総裁
2018年12月の金融政策決定会合後に行われた会見で、「金融緩和の手段はまだまだある」と語った日銀の黒田東彦総裁 Photo:EPA=時事

「必要になれば緩和の手段はまだまだあると思う」。日本銀行の黒田東彦総裁は、2018年12月の金融政策決定会合後の会見でそう述べた。

 しかし、副作用を効果が上回る強力な追加緩和策は実際のところもう存在しない。インフレ率は目標(2%)に届かない状況が続いているのに、日銀はこの2年以上、追加緩和策を発動できていないという事実がそれを物語っている。多くの日銀政策委員は世界経済の失速が早々にやって来ないことを年初に祈ったことだろう。

 19年の世界経済について、米国と中国を中心に概観してみよう。

 米国のホリデーシーズンの消費は全般に好調だった。雇用や賃金の状況が今のところは良いためである。しかし、米国の設備投資はシェールガス・オイル関連を除くと昨年から弱めだ。貿易戦争が経営者たちに不安を抱かせている面もあるようだ。しかも、19年後半から減税効果は剥落してくる。

 ただし、それを補うために、20年の選挙に向けて議会は大型インフラ投資を承認するだろう、という見方は米ワシントンで多い。米連邦準備制度理事会(FRB)は12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で19年の利上げ回数を2回程度と述べた。しかし、彼らは頑固にそれを実施しようとしているのではない。経済指標に暗雲が漂ってきたら利上げをやめる柔軟性を示している。18年12月の声明文には、経済や金融市場の状況次第であることがにおわされていた。

 一方、18年の中国経済は当局がシャドーバンキング(銀行以外の資金供給元)のデレバレッジ(債務圧縮)を進め過ぎて、民間企業の資金繰りが悪化。年後半から減速感が強く表れた。今年はそれに注意しつつ大型減税を行う模様だ。住宅市場が不調な場合は不動産規制の一部緩和もあるかもしれない。

 そして、中央銀行の中国人民銀行は今年、金融緩和方向により進むだろう。同行は人民元安が止まらなくなることを警戒しているが、FRBが利上げペースを落とせば緩和策を行いやすくなってくる。

 このように、米国も中国もマクロ経済政策による景気下支え効果を狙ってくるだろう。しかし、問題なのは米中貿易戦争の行方だ。これが両国の人々のマインドを冷やしてしまうと、せっかくの下支え効果は吹き飛んでしまう。

 かつての日米貿易摩擦を振り返ると、米国はレーガンからクリントンまでの3政権にわたって対日強硬姿勢を取り、日本が米国の覇権にとって脅威でなくなるまでたたき続けた。それを考慮すると、米中貿易戦争も長期戦を覚悟する方がよさそうだが、まずは2月末までの両国の交渉が注目となる。

 3月末がタイムリミットとなる英国の欧州連合(EU)離脱交渉も混沌としている。こうした第1四半期のイベントが穏便に収まるか、あるいは激しいショックとなるかは、この1年の世界経済にとって大きな岐路となりそうだ。

 後者となった場合、世界で最も追加緩和手段を持たない日銀にとって、今年はつらい1年になる。しかも、コアCPI(生鮮食品を除いた消費者物価指数)前年比は今年マイナス圏に落ちる可能性がある。原油相場が反転上昇しなければ、エネルギー価格は前年比で大きなマイナスになり、そこに携帯電話料金引き下げや幼児の授業料無償化が加わってくるからだ。

 もし黒田総裁が“逆切れ”気味にマイナス金利を深掘りしたら、地域金融機関の経営悪化問題はさらに深刻化してしまう。冷静な判断が求められるだろう。

(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
https://diamond.jp/articles/-/190448


 

ビジネス2019年1月10日 / 16:53 / 5時間前更新
日銀支店長会議、貿易摩擦の影響じわり 現時点では限定的
Reuters Staff
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[東京 10日 ロイター] - 日銀は10日、地域経済報告(さくらリポート)を公表し、全9地域のうち、北海道と中国の2地域で景気判断を引き上げ、他地域を据え置いた。出席した支店長からは、米中貿易摩擦が地域経済に与えている影響について、現時点では限定的ながらも、中国向け生産用機械や電子部品などで受注下振れを指摘する企業が増えていることなどが報告された。不安定化する金融市場の動向を含めて、リスクはじわりと拡大している。

北海道と中国は、地震や豪雨など自然災害の影響により、前回調査で判断を引き下げていたが、復旧・復興が順調に進んでいることを踏まえた。2地域の景気判断を同時に引き上げるのは、2018年4月以来。他の7地域の判断は据え置いた。

今回のさくらリポートでは「輸出が増加基調にあることや、労働需給が着実に引き締まりを続け、個人消費が緩やかに増加するなど、所得から支出への前向きな循環が続いている」との従来通りの景気判断に続いて、「米中貿易摩擦をはじめとする海外経済の不確実性の影響については、現時点では限定的なものにとどまっているが、受注の下振れなどを指摘する声は徐々に増えている」との「ただし書き」が加わった。

日銀幹部は「資本財関連や電子部品関連から受注下振れなどの声が多く聞かれた」と説明。昨年10月の前回調査では、先行き不透明感や警戒感を示す声が多かったが、今回の調査では、受注減として顕在化してきた格好だ。

具体的には、中国向け生産用機械の受注が「秋以降、急速に減少してきている」(金沢)、「工作機械はこのところ受注が弱含んでいる」(松本)、「中国向けの電子部品は、このところ強気の発注が影を潜めている」(秋田)などの声が聞かれた。

また、スマートフォンの出荷低迷を理由にした大手半導体メーカーの設備投資の先送りから「東アジア向け半導体製造装置の輸出の増勢鈍化」(横浜)の声もあった。

さらには、松江の電気機械メーカーから「予定していた能力増強投資を当面延期する」との声があったほか、秋田のメーカーからも「新工場への生産設備の導入は当面見送る」など、設備投資面への影響を指摘する声もでている。

こうした受注減の動きについて、日銀幹部は「直接的に米中貿易摩擦の影響と断定的に語っている先はほとんどない。米中貿易摩擦に起因するのではないかと推測するコメントが中心」としている。

株式市場の大幅な下落については、一部で富裕層の購買動向を懸念する声があったものの「個人消費全体への影響は大きなものになっていない」(日銀幹部)という。個人消費の判断は全9地域で据え置かれた。

会見した山田泰弘大阪支店長(理事)は、市場動向について「日米欧ともに株価のベースとなる企業収益の見通しは総じてしっかりしており、経済のファンダメンタルズに大きな変化はみられていない」としながら、「金融市場の動きが当地の経済に与える影響については、引き続き注意深くみていきたい」と語った。

また、清水季子名古屋支店長は、年末・年始の市場の動きについては、心配する声があったものの、「現状、円高で何か影響あるとの声までは聞いていない」という。そのうえで、「今後、米中貿易摩擦など海外経済の動向がどの程度の影響を及ぼすのか、年末・年始に進んだ円高の影響も含めて、雲行きを見極めていく必要がある」と述べた。

*内容を追加しました。

清水律子 伊藤純夫
https://jp.reuters.com/article/boj-sakura-report-idJPKCN1P40P4


 


債券上昇、米利上げ鈍化観測受けた米債高・円高で−30年債入札は順調
野沢茂樹
2019年1月10日 8:03 JST 更新日時 2019年1月10日 15:56 JST
? 先物は11銭高の152円51銭で終了、現物債は超長期中心に利回り低下
? 世界経済減速懸念強く、多少高くても買わざるを得ない−三井住友AM
債券相場は上昇。米国の利上げペースが緩やかになるとの観測から米長期金利が低下してドル安が進んだ前日の海外市場の流れを引き継ぎ、買いが優勢だった。この日に実施された30年債入札の順調な結果を受けて、現物債市場では超長期債を中心に利回りが低下した。
? 長期国債先物3月物の終値は前日比11銭高の152円51銭。一時152円57銭まで上昇
? 新発10年物353回債利回りは日本相互証券の前日午後3時の参照値と同じ0.025%。2週間ぶり高水準の0.03%で始まり、一時は0.02%に低下
市場関係者の見方
? 三井住友アセットマネジメントの深代潤執行役員
o 世界経済は一気に景気後退に陥る状況ではないが、景気減速の懸念が根強い中では多少高くても買わざるを得ない
o 米経済指標にやや天井感が出ているので、市場が抱く景気下振れ懸念が本当に裏付けられるかを確認していく展開になる
30年債入札
? 最低落札価格は99円60銭、市場予想の99円55銭を上回る
? 応札倍率は4.03倍、前回の3.78倍を上回る
? テール2銭に縮小、前回は5銭
? 三井住友AMの深代氏
o 入札はしっかりした結果−大手各社がまんべんなく落札
o 国内外とも運用難、利回りがあるところには買いが入ってくる
? 過去の30年債入札の結果一覧
背景
? 昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で当局者らが追加利上げについて声明に記されたよりも慎重な姿勢を示したことが明らかに
? 円相場は東京時間に1ドル=107円台後半と、4日以来の円高・ドル安水準に
? 東京株式相場は反落。日経平均株価の終値は前日比1.3%安の2万163円80銭
? 9日の米国市場では10年物国債利回りが2ベーシスポイント(bp)低い2.71%程度、10日の時間外取引では2.69%前後
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
-0.150% -0.150% 0.025% 0.485% 0.690% 0.810%
前日比 横ばい -0.5bp 横ばい -1.5bp -1.0bp -1.0bp
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-09/PL1HB86JTSEA01



http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/527.html

[政治・選挙・NHK256] 10年後に“人余り”の可能性、政府は説明すべき 田原総一朗の政財界「ここだけの話」 改正入管法の抱える問題は大きい 
10年後に“人余り”の可能性、政府は説明すべき
田原総一朗の政財界「ここだけの話」
改正入管法の抱える問題は大きい

2019年1月11日(金)
田原 総一朗


安倍首相の下、改正入管法が成立(写真:つのだよしお/アフロ)
 2018年12月に出入国管理法改正案(改正入管法)が国会を通過。19年4月から施行される。僕がこの問題について最も違和感を覚えたのは、どのマスメディアも問題の本質について報じていないことだ。

 国会審議の時間が衆議院で17時間、参議院で20時間と短かかった点は指摘している。しかし、なぜ短時間だったのか、なぜまともに審議もされなかったのかについては、追及していないのである。

 改正入管法について、山下貴司法相は制度の内容をほとんど理解しておらず、野党の質問に対して「検討中である」との答えを連発した。安倍晋三首相も、下から上がってくる文書を読み上げているだけで、全体像を把握しているとはとても思えなかった。

 つまり、担当大臣も、総理大臣も、外国人労働者の受け入れ問題、あるいは入管法改正について、十分な理解がないまま審議が進められたうえ、審議の時間も限りなく短縮されていたのである。

 法務省はそもそも入管法改正について消極的だった。外国人労働者の状況、人手不足に陥っている現場をほとんど把握していない。どの分野でどのような人材がどれだけ不足しているのか、分かっていないのである。

 ところが、官邸からの強い要請により、法務省は対応せざるを得なかった。

 なぜ、官邸は入管法改正を急いだのか。全国の中小企業が深刻な人手不足の状況を訴えたからだ。このままでは倒産する企業が増加するとみた官邸は、外国人労働者の受け入れ拡大を急務と捉えた。

 しかし、ここに難しい問題があった。安部首相をとりかこむ「安倍応援団」は、基本的に外国人労働者の受け入れ拡大に強く反対している。さらに言えば、移民には断固として反対である。

 本来ならば、こういった対策を講じるのにふさわしいのは、労働現場をよく分かっている厚生労働省だ。しかし、厚労省がこの問題を扱うと、外国人労働者を受け入れるときに、「労働者」ではなく「人」としてどう対応すべきか、例えば福祉、社会保障、教育等の問題を考えざるを得ない。となると、厚労省から見れば、まさにこの問題は「移民政策」なのである。

 移民の問題と指摘されることは、安倍首相にとっては絶対に避けたい事態だ。ここで厚労省は、外国人労働者問題の担当には選ばれなかった。

大学を卒業した世代は働き盛りにシンギュラリティに直面
 もう一つ、人手不足の現状をよく把握している省庁と言えば、経済産業省がある。なぜ、経産省に協力を仰がなかったのか。

 経産省を担当にすると、大変困る事態になる。現在、60万人の労働力が不足していると言われており、政府の発表では5年後までに145万人が不足するとの試算がある。

 重要なのは、5年後の予測しかされていないという点だ。なぜか。

 経産省の試算によると、10年後には相当数の労働者が余ってしまうという。しかも、人工知能(AI)の発達によって今ある仕事がAIに代替されていく。10年後に人余りが想定されるのであれば、外国人労働者の受け入れ拡大は難しくなってしまう。ここで、経産省が担当になるという選択肢がなくなった。

 こう考えてくると、この問題は、非常に奥が深い。今後5年までに不足する労働力を確保すればよいという問題ではないのである。

 現在のAIは「特化型人工知能」だ。例えば、昨年、AI囲碁ソフト「アルファ碁」が囲碁棋士である韓国のイ・セドル九段と5連戦し、4勝1敗で勝ち越したことが大いに話題になった。しかし、アルファ碁は、囲碁はできるが、将棋やチェスはできない「特化型」AIだ。

 ところが30年代に入ると、複数のことができる「汎用型」のAIは開発されるといわれている。

 これが普及すると、どういったことが起こるか。2015年、英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授と、カール・ベネディクト・フレイ博士が、野村総合研究所との共同研究で驚くべき試算を発表した。

 このままAIの開発が進むと、日本で働いている人の約49%の仕事は、10〜20年後にはAIに代替されるというのである。

 さらに18年には、「シンギュラリティ(技術的特異点)」という言葉が注目された。AIが発達して人間の知性を超え、人々の生活に大きな変化が起こるという概念である。早ければ45年、遅くとも55年には、今人間のやっているあらゆることがAIに代替され、人の仕事の90%がAIに奪われてしまうという。

 今年大学を卒業した世代にとっては、まさに彼らの働き盛りの時期にシンギュラリティが起こる可能性がある、というわけだ。

仕事の大部分がAIに代替されたとき、人は何をすべきか
 AI研究者の中で最も大きな問題は、その時に人間はどうすればいいのか、である。例えば、仕事がなくなり、やるべきことが全くなくなってしまうことも考えられる。あるいは、ビッグデータ中心主義となり、あらゆる仕事や判断がAIによって代替され、人間の存在理由がなくなってしまうのではないかとの意見まで出ているという。

 人間のみが持つ能力とは何か。創造力、意志決定の力である。しかし、これもAIが獲得するのではないかとの見方まである。創造力とは、体験から得た知識の重なりによって構築されてゆく。これもAIによって実現される可能性があるという。

 このままAIが発達していくと、ホワイトカラーの仕事はほとんどなくなるだろうといわれる。例えば、10年後の銀行は、現在の80%の人材が不要になるという。他の業種でも、必要な労働力が大幅に削減されるだろう。

 このような時代になったら、どうすればいいのか。筑波大学の落合陽一准教授は、「皆、仕事をつくることができるようにならなければダメだ」と主張する。これまでの仕事は、会社から与えられるものだった。しかし、これからは仕事を自らつくっていかなければならない。それはまさに創造力であり、芸術に近いものではないか、と言うのである。

 このような時代になると、教育のあり方も変えていかなければならない。従来の教育は、教師が正解のある問題を出し、生徒はそれに答える勉強をしてきた。ところが、正解のある問題はすべてAIが解答を導き出してしまう。

 従って、新しい時代に向けて、人間の創造力を拡大するような教育に変えていかなければならない。落合氏は、「大学入試の手法も変えるべきだ」と主張している。現在の大学入試は正解のある問題が出題されるが、これからの時代に必要な能力ではない。

 ただ、実現は簡単ではないだろう。創造力のある人間をどうやって選べばよいのか。例えば論文という形式も一つの策ではあるが、それを評価する人材がいないという問題もある。

 このように、シンギュラリティの時代に向けて、教育のあり方を含め、様々な問題が横たわっているのである。

「答えの出ない問題は言わない」では議論は何も進まない
 こういった大きな問題があるということを、文部科学省と経産省はすでに把握している。経産省によるデータでは、5年後に145万人の人手不足となるが、10年後には人手が余ると出ているのである。

 本当に「人余り」に陥った時、政府はどう対応するのだろうか。悪いシナリオを考えると、政府は「ごまかし」で処理していく可能性がある。

 本来であれば、政府はこういった問題を国民にきちんと説明すべきである。10年、20年後のことを予測することは難しいということも言うべきだ。

 ところが、政府は、こういった「答えの出ない問題」は言うべきではないと考えているようだ。人手不足の問題のみならず、米国との安全保障も問題を曖昧にしている。18年12月18日発表された防衛計画の大綱でも、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」型護衛艦の空母化の問題も曖昧にしたままだ。こういった問題は、たくさんある。

 曖昧にしたまま、問題だけが顕在化してゆく可能性がある。政府はこういった様々な問題について、国民に分かりやすく説明をしなければならない。問題を隠しているというよりも、説明ができないのだろうが、ならば、説明ができない理由を国民に伝えなければならない。その上で、議論の場をつくるべきだ。

 本連載は、今回をもって終了となる。こうした発言の場を与えていただき、やりがいを感じた。また何らかの形でお目にかかりたいと考えている。

『AIで私の仕事はなくなりますか?』(講談社+α新書) 田原 総一朗著

 84歳になったジャーナリスト・田原総一朗が、人工知能=AIに挑む。

 AIは社会をどう変えるのか/AIは日本人の雇用を奪い、「勝ち組」と「負け組」の格差を拡大させる悪魔の技術なのか/世界の企業はグーグルの下請けになるのか/日本の産業を「小作人」化の悪夢からどう救うか/銀行のビジネスモデルは崩壊寸前?/中国の「情報独占」の恐怖……などの疑問を、世界最先端の研究者たちに真正面から問う。

 グーグル=グレッグ・コラード、プリファード・ネットワークス=西川徹、トヨタ・リサーチ・インスティチュート=ジェームス・カフナー、東京大学=松尾豊、ドワンゴ人工知能研究所=山川宏、経済産業省=柳瀬唯夫ら世界を代表する面々が総登場する、驚異の一冊!


このコラムについて
田原総一朗の政財界「ここだけの話」
ジャーナリストの田原総一朗が、首相、政府高官、官僚、財界トップから取材した政財界の情報、裏話をお届けする。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/010900102/?
http://www.asyura2.com/19/senkyo256/msg/129.html

[政治・選挙・NHK256] 過少支給、数百億円へ拡大 総務省、昨年11月分の消費動向指数公表延期 年齢区分誤り 70歳まで働ける?50代甘くない現実
国内社会ニュース(共同通信)2019年1月10日 / 19:00 / 3時間前更新
過少支給、数百億円へ拡大
共同通信
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 厚生労働省が行う「毎月勤労統計」の不適切調査問題で、統計を基に算定された雇用保険の失業給付や労災保険などの過少支給額が計数百億円規模に上ることが10日、分かった。誤った手法が15年前から続いており、当初の見込みより影響が拡大した。対象者は延べ1千万人規模に上る見通し。根本匠厚労相が11日に記者会見して謝罪し、調査の実態や不足分の追加支給について説明する。

 財務省は追加支給に充てる財源を確保するため、昨年末に閣議決定された2019年度予算案の修正に着手した。政府は閣議決定をやり直す方向で調整に入った。一度決めた予算案の組み替えは異例の事態だ。

【共同通信】
https://jp.reuters.com/article/autoshow-detroit-electric-idJPKCN1P4138?il=0


ビジネス2019年1月10日 / 18:53 / 5時間前更新
総務省、昨年11月分の消費動向指数公表を延期 年齢区分に誤り
Reuters Staff
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[東京 10日 ロイター] - 総務省は10日、2018年11月分の消費動向指数の公表を当初予定の11日から延期すると発表した。指数作成に用いている「家計消費単身モニター調査」を受託しているインテージリサーチから9日、調査対象の年齢区分に関し、誤りがあったと報告があったためと説明している。

具体的には2018年4月以降のデータについて、調査対象の世帯主の年齢が更新されていなかった。同調査は、調査対象を10歳ごとの年代別に区分けし、消費動向を分析している。その中で30歳の世帯主の消費内容が、誤って20代に分類されていたなどの可能性があったという。

総務省は今後、インテージ側のデータ確認体制の整備など再発防止策を講じる。調査の委託先を変更する予定は、現時点ではないという。

総務省では、昨年4月分から11月分までの数値を見直し、1月21日の週をめどに昨年11月分と合わせて4月から10月分までの正誤情報を公表する。

竹本能文 石田仁志 編集:田巻一彦
https://jp.reuters.com/article/seven-i-results-idJPKCN1P40UB


 


70歳まで働ける? 50代記者が見た甘くない現実

70歳、雇用の条件
2019/1/10 2:00 日本経済新聞 電子版
 人生100年時代に生涯現役を――。聞こえは良いものの、シニアを取り巻く現実は決して甘くない。高齢期も働くシニアを増やして社会保障制度の担い手を厚くしたい国の思惑に反して、企業はやる気を失ったり能力や知識が時代にそぐわなくなったりしたシニア社員にはできれば引退してほしいと願っている。70歳まで気持ちよく働き続けられるものなのか。定年が視野に入った五十路(いそじ)記者が、シニア就労の現場を歩いた。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39696220X00C19A1000000/
http://www.asyura2.com/19/senkyo256/msg/130.html

[経世済民130] ドル・円下落、米利上げ慎重姿勢で米金利低下・株安重しーユーロ堅調 円ポジション変更 株反落 トルコリラ円の反発は本物か 

ドル・円下落、米利上げ慎重姿勢で米金利低下・株安重しーユーロ堅調
池田 祐美
2019年1月10日 11:10 JST 更新日時 2019年1月10日 15:43 JST
• ドルは午後に一時107円82銭と4日以来のドル安・円高水準
• 目先的には4日安値の107円台半ばがポイント−ドイツ証
東京外国為替市場のドル・円相場は下落。米連邦準備制度理事会(FRB)高官の発言や米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録などで追加利上げに慎重な姿勢が示されたことが背景。米金利が低下し、日本株は反落、ドル売り・円買いが優勢となった。円は主要通貨に対してほぼ全面高。
• 10日午後3時25分現在のドル・円は前日比0.2%安の1ドル=107円93銭。朝方に付けた日中高値108円26銭から午後には一時107円82銭まで下落
• ユーロ・ドル相場は0.1%高の1ユーロ=1.1555ドル。一時1.1570ドルと昨年10月17日以来のユーロ高・ドル安水準
市場関係者の見方
しんきんアセットマネジメントの加藤純チーフマーケットアナリスト
• 少なくとも3月の米利上げ見送り気運は高まっているので、やはりドル売りになるだろう。ハト派のFOMC議事録や実際の米金利動向を見ても、もう上はなさそう
• 円高が進むことで、日本株が崩れるところを見れば、東京時間のドル・円も今後は下がりやすい地合いになるだろう 
ドイツ証券外国為替営業部の小川和宏ディレクター
• ドル・円は根っこのドル安に加えて、株安なども押し下げ要因。目先的には4日安値の107円台半ばがポイント
• この影響が強く出そうなのが、ユーロ・ドル。ユーロ上昇で欧州中銀(ECB)がハト派化する可能性はあるが、欧州マイナス金利に対する米国正常化という図式で資金流出が大きかったのが、ユーロ。その分、巻き戻しは大きくなる
背景
• FOMC議事要旨:追加利上げに対する当局者の慎重姿勢示す
• 米シカゴ連銀総裁:当局には辛抱強くなる余地−インフレ高進見られず
• セントルイス連銀総裁:利上げを続ければ、米国はリセッションの恐れ
• 米長期金利は時間外取引で一時3ベーシスポイント(bp)低下の2.68%程度
• 日本株は4営業日ぶりに反落。日経平均株価は前日比263円26銭(1.3%)安の2万163円80銭で引けた。米株先物も下落


円ポジション、大手運用会社が変更ー「フラッシュクラッシュ」に対応 日本株は反落、為替円高や企業決算を警戒−輸出関連や小売株安い

Charlotte Ryan
2019年1月10日 0:53 JST
• アライアンスバーンスタインとマニュライフが円を売却
• リスク回避の円上昇、予想難しい−ラッセルのルー氏

Japanese 10,000 yen banknotes.
Photographer: Akio Kon/Bloomberg
2019年初めの円の上昇について、合わせて1兆ドル(約109兆円)を運用する資産運用会社2社は、行き過ぎ、早過ぎと感じている。
  アライアンスバーンスタイン(運用資産約5500億ドル)は先週のドル「フラッシュクラッシュ」で円が4%上げたことを受け、円を売った。マニュライフ・アセット・マネジメント(同約4000億ドル)もこの円急騰時に、オーストラリア・ドルに対する円の買い持ちを減らした。
  円は昨年、ドルに対して上昇したがさらに、今年最初の数日で一時的ながらブルームバーグ調査の2019年末予想中央値を上回ってしまった。投資家は、どこまで円高が進むのかと頭を悩ませている。
  だがアライアンスバーンスタインのポートフォリオマネジャー、ジョン・テーラー氏は、「円は短期間に上昇し過ぎた」と指摘。最近の上昇の際に円のポジションをロングからショートに変更したと述べた。「円はフェデラルファンド(FF)金利との相関性が大きかったので、米短期国債の上昇に伴って円が若干下落するとみている」と説明した。
  アジア時間9日の取引で円は1ドル=109円前後で、年初来の値上がり幅は約1%。
  
  マニュライフはリスクオフのポジションとしてオーストラリア・ドルに対する円のロングを組んでいたが、先週のボラティリティーが高まった時にエクスポージャーを減らした。3日の動きは「行き過ぎ」だと思われたと、ポートフォリオマネジャーのデービッド・ルール氏が述べた。市場センチメントの円強気も弱まったと指摘した。
  一方、ラッセル・インベストメンツの通貨・債券調査責任者、バン・ルー氏は、先週の動きはリスク回避に起因する円上昇に予想が付かないことを示したとし、次のリスク回避ムードに備え円へのエクスポージャーを維持するよう勧めている。

原題:These Investors Changed Course on the Yen During the Flash Move(抜粋)
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日本株は反落、為替円高や企業決算を警戒−輸出関連や小売株安い
長谷川敏郎
2019年1月10日 7:52 JST 更新日時 2019年1月10日 15:25 JST
• FOMC議事要旨などハト派的、トランプ米大統領は会合を退席
• ドル・円は一時1ドル=107円80銭台、良品計画など小売失望相次ぐ
10日の東京株式相場は4日ぶり大幅反落。為替の円高警戒や米国で予算を巡る混迷が長期化していることで業績先行き懸念が強まり、電機など輸出関連、素材株中心に幅広く売りが増加した。良品計画など失望決算が相次いだ小売のほか、化学や設備投資関連株も売られた。
• TOPIXの終値は前日比13.10ポイント(0.9%)安の1522.01
• 日経平均株価は263円26銭(1.3%)安の2万0163円80銭
  シカゴ連銀のエバンス総裁の発言や米連邦公開市場委員会(FOMC)会合の議事要旨(昨年12月開催)は、いずれも追加利上げについて慎重な姿勢を示した。トランプ大統領は一部政府機関閉鎖が19日目となった9日、ホワイトハウスで民主、共和両党の議会指導者と会談したが、大統領が途中退席して協議は物別れに終わった。
  三井住友アセットマネジメント株式運用グループの平川康彦シニアファンドマネージャーは「為替が1ドル=100円に向かえば来期のガイダンスが心配になってくる。数%の減益で済むのか、激しい減益か予想しづらい」と指摘する。企業業績への不透明感が強まる中、「小売の主要決算はかなり期待を裏切った。為替警戒から投資家は内需にウエートをシフトさせてきたが、内需関連も今後は選別されてくるだろう」とみていた。
  きょうのドル・円相場は一時1ドル=107円80銭台と、前日の日本株終値時点108円85銭から円高が進んだ。野村証券投資情報部の若生寿一エクイティ・マーケット・ストラテジストはFOMC議事録やエバンス総裁発言を受けて、「米金融政策はノーマルな状態になった。3月の利上げは見送られる可能性がある。金利上昇ペースが読みにくいと、為替ではドル高に働きやすい」と分析。金融政策の柔軟化は米国株にはプラスになる一方、「日本株にとっては米国株高のプラス面とドル安・円高のマイナス面との綱引きになりやすい」と語る。
  業種別で下げが目立ったのは小売や化学。小売決算では通期営業利益予想を下方修正した良品計画、決算が期待を下回ったウエルシアホールディングス、既存店売上高が不振だったドンキホーテホールディングスなどが下落。昨年12月の物価指標が予想を下回るなど中国経済への懸念が根強い中、SMBC日興証券がトイレタリー・化粧品セクターの業種格付けを「強気」から「中立」に引き下げたことも嫌気された化学株、FA(工場自動化)など設備投資関連株も下げた。
引け後の「安川」に身構えるFA関連株記事はこちらをご覧ください
• 東証33業種では石油・石炭製品、化学、精密機器、小売、電機、医薬品、非鉄金属などが下落
• 陸運や電気・ガス、倉庫・運輸、空運は上昇


 
外為フォーラムコラム2019年1月9日 / 13:01 / 1日前

トルコリラ/円の反発は本物か

植野大作 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト
4 分で読む

[東京 9日] - 日本の個人投資家に人気の通貨ペア、トルコリラ/円の一方的な下落に歯止めがかかりつつある。昨年8月の暴落局面では一時15円台前半まで売り込まれたが、その後は断続的に下値を切り上げ、11月末には一時22円00銭台と約3カ月半で4割以上も反発する場面があった。

その後はさすがに反落に転じ、1月3日の早朝に起きたドル/円、クロス円の瞬間的な暴落に巻き込まれると一時18円台前半まで急落する一幕もあった。しかし、すぐに買い戻されて心理的節目の20円前後に回復した。

昨年の夏場まで続いたリラの一方的かつ大幅な下落に苛まれていた日本のリラ/円ファンにとっては、ひとまず安堵感が漂う新春相場のスタートだ。ただ、これで本当にリラ安が止まったのか、疑心暗鬼は拭えない。リラは急落するたびに、高金利好きで逆張り志向の強い個人投資家の資金を引き寄せながら、何年間も下がり続けた経緯がある。

右肩下がりの長期トレンドを底入れに誘うには、短期的な自律反発では不十分だ。この先、リラ/円が節目の20円前後を維持し続けたとしても、前年割れの差し込み傷が癒えて代表的な長期トレンドラインである52週移動平均線が上向きに転じるまで、少なくともあと8カ月は下げ止まる実績を積む必要がある。

2015年から18年まで、リラ/円は4年連続で陰線を記録して下がり続けた。今年は5年ぶりの陽線引けで大晦日を迎えることができるのだろうか。以下、リラの安定回復に必要な短期、および中長期の課題を挙げておく。

<米軍シリア撤退の影響>

短期的には、昨年ごろから改善し始めた対米関係を持続させることが必要だ。過去のリラ安局面では、米国との関係悪化が下落の一因とみられていただけに、今後もその維持、改善を図ることが通貨安定の必要条件となる。

昨年10月、トルコ司法当局は2016年に起きたクーデター未遂に関与した疑いで軟禁していた米国人牧師を解放。11月には両国政府が互いに課していた政府高官への制裁を解除し合うなど、冷え切っていた関係に雪解けの兆しがみられる。

昨年末の20カ国・地域首脳会合(G20サミット)では、エルドアン大統領とトランプ大統領が50分間にわたり会談した。両国間に横たわる懸案事項である貿易関税やイラン産原油の輸入に関する協議のほか、サウジアラビア人記者殺害事件について情報交換などを行ったとみられている。

現在、米国はトルコに対し、シリアからの米軍撤退に際してクルド人勢力を攻撃しないことを求めている。この問題で再び両国関係が悪化しないことを願っているリラ/円ファンは多いだろう。

<カギを握るインフレ沈静化>

ただ、外交面の必要条件を満たしただけでは、リラ安定の十分条件は整わない。米国とトルコの関係は通貨価値を損なわない程度まで改善したとみられるため、今後中長期的には「中央銀行の信認確保」と「高インフレ体質の克服」が必須になるだろう。

トルコ中銀は昨年9月、政策金利を一気に6.25%ポイント、24%まで引き上げた。その後も同水準を維持することで、政府から独立した「通貨の番人」としての誇りを国内外にアピールしている。以来、それまで弱気一辺倒に傾いていたリラに対する市場心理は徐々に好転、現在に至る失地回復のもう一つの背景となっている。

リラの一方的な下落に歯止めがかかったことによる好影響は国内物価に波及、昨年12月の消費者物価上昇率は前年比プラス20.3%と、10月に記録したプラス25.2%を頂点にようやくピークアウトし始めた。

当面は、この状態をしばらく維持することが肝要だ。モノの値段の上昇率は通貨価値の下落率にほかならない。リーマン危機前に一時99円台で取引されていたリラが、派手に上下しつつも値下がりし続けた根本的な要因は、通常で年7%前後、悪化すると20%を超えることもある同国のインフレ体質にある。

トルコのインフレ率がある程度まで鎮静化しない限り、リラ/円相場の購買力平価は右肩下がりのきつい傾斜が緩んでこない。経済が発展途上で、先進国並みの所得水準を追う新興国の賃金や物価の伸びが高いのは自然ではあるが、近年のトルコは通貨安とインフレが相互に増幅し合う悪循環に陥り、国内外の市場関係者が許容できないほどの熱病に感染していた。通貨の番人であるトルコ中銀が、十分な解熱作業を進めて市場の信認を確保する必要がある。

トルコのインフレ率は最近ようやく低下し始めたとはいえ、前年比20%を超えており、先進国の投資家の目から見るとまだ高い。「トルコの平熱」として市場が許容する水準は不明だが、最低でも前年比10%未満に下げる必要があるだろう。現在、トルコの政策金利は24%と十分に高いため、今後は追加利上げをせずともインフレ率が1ケタに下がるだけで実質金利は上昇、極端なリラ安を防ぐ力は増してくる。

通貨安ショックに見舞われた新興国の先行事例を見ると、まずは通貨防衛に必要な大幅利上げに踏み切り、インフレ懸念が収束。その後、十分な実質金利を海外の投資家に提供しながら、利下げに転じることができるようになると、名目為替レートの減価率が購買力平価の傾きよりも穏やかになり、実質通貨高になるケースが多い。

<経済の外部環境は好転>

あくまで現時点での判断だが、トルコの実体経済が、8月に起きた通貨安パニックを正当化できるほど悪化していると思えない。昨年秋からの原油価格の大幅安は、原油の輸入国であるトルコにとって「対外収支の改善」、「実質所得の増加」、「インフレの抑制」という三重のメリットをもたらしており、トルコ経済を取り巻く環境は好転している。

約8000万人のトルコの人口構成は、日本と真逆の若々しいピラミッド型だ。地政学的にも数千年前から西洋と東洋を結ぶ交通の要衝に位置し、歴史や文化の魅力に満ちた観光業など競争力の高い産業もある。適時適切に経済政策を運営できれば、中長期的に高い成長力を秘めているのではないだろうか。

潜在的な成長力に海外投資家の目を再び向けさせるためにも、トルコはまず昨年夏の暴落ショックで激しく傷んだ通貨価値の信認回復に努めなければならない。今後、トルコのインフレ率が十分に下がり、実質金利に十分な引き下げ余地が生まれるまで、時期尚早な利下げを我慢することが必要だ。トルコ中銀には、政治的なノイズに左右されない毅然とした金融政策の運営が期待されている。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。

(編集:久保信博)

植野大作氏 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト(写真は筆者提供)
*植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。
https://jp.reuters.com/article/column-turkishlira-forexforum-daisaku-ue-idJPKCN1P3094
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/528.html

[経世済民130] コレクティブ・インパクト実践論 企業と社会の利益は一致する 企業は消費者のスローダウン欲求をどう満たすか 
コレクティブ・インパクト実践論
企業と社会の利益は一致する
井上 英之:慶應義塾大学 特別招聘准教授
2019年1月10日
特定の社会課題の解決や新しい社会のビジョン実現を、どのようにしたら意図的に起こせるのか。その方法論を示した「ソーシャルイノベーション」(社会変革)の分野がいま、NPOや公的セクターだけでなく、企業からも注目を集めている。社会課題の解決を目指すことで、企業の社会的責任を果たせるだけでなく、成熟した市場において新たなニーズを発見できたからで、経済的な価値の創造へとつながるのだ。本稿は、ソーシャルイノベーションの系譜をたどりながら、企業とNPO、行政などが共通のアジェンダを設定し連携して課題解決に当たる、新たなアプローチ「コレクティブ・インパクト」の実践方法を提示する。
『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2019年2月号より、1週間の期間限定で抜粋版をお届けする。
なぜいま、
ソーシャルイノベーションなのか
 街中や駅前で『ビッグイシュー日本版』という雑誌を販売する人の姿を見たことがあるだろうか。これは、ホームレスの自立を目的とした「ビジネス」である。
 この特徴は、雑誌の定価の50%以上が、販売者の収入になることにある。雑誌が1冊売れれば、手元にどの程度残るかがわかるため、彼らにとって家賃の支払い目標ができる。家賃が支払えれば、住所が手に入り、就職活動を行いやすくなる。「自立」への第一歩となるのだ。
 もう1つの特徴が、社会との関係性が生まれることだ。毎日、路上に立っていると、通行人から「元気?」や「昨日、休んでいたね」といった声がかかるようになる。家族や友人、職場などとのつながりを失ってホームレスになった彼らは、この仕事を通じて自尊心や世の中との関係性を取り戻し始めるのだ。
 筆者は、この事業を運営する「有限会社ビッグイシュー日本」を母体に設立された、「認定NPO法人ビッグイシュー基金」の理事として10年余りにわたり、ホームレスの人たちや生活困窮者の自立を応援する活動に関わってきた。彼らが目指すのは、誰にも居場所があり、ホームレスが生まれない世の中である。
 実際、販売者の中には、日々の路上での販売が会社社長の目にとまり「うちで働きませんか」と声をかけられて、その会社に就職した事例もある。
 しかし、社会はそう単純ではない。この販売者は、会社に居場所が見つからず、間もなく会社を辞めてしまった。路上に戻るほうが一人でいられて、気楽でいいと感じてしまったからだ。
 ビッグイシューの取り組みが成功したとしても、受け入れる社会が変わらない限り、元の状況に戻ってしまう。そもそもホームレスが生まれる一因は、職場や社会に多様な人たちを受容する余地が少ないことにある。加えて、状況の打開には、メンタル面のケアであったり、PCスキルの習得支援であったり、さまざまな専門家のサポートが欠かせない。
 つまり、NPOだけでなく、企業や政府、専門家など多数のプレーヤーが協力して初めて、大きな目標を達成できるということだ。
 この話はビジネスと無縁ではない。社会の「困り事」はすべて人々のニーズであり、そこには市場性がある。
 もともと、「ビジネスの手法を活用して、社会の課題を解決する」という分野は、世界的には1990年代から盛り上がり始め、日本でも2000年代前半から注目されるようになった。「社会起業家」や「ソーシャルビジネス」という言葉で表現されていたが、近年では主に「ソーシャルイノベーション」と称される。
 これは、一般的に、「社会における複雑な課題に、これまでになかった発想やアイデア、組み合わせによって変革を起こし、新しい社会状況を生み出すこと」だ。また、それらに関わる動きやプロジェクト、手法そのものを指して、この用語を使うこともある。
 この変化は、企業にとっても重要ないくつかの意味合いを含んでいる。ソーシャルイノベーションに関わることは、企業にとっての社会的責任(CSR)の範疇に収まる話ではなく、もはや戦略上不可欠になってきている、と言ってよい。
 なぜなら社会にどのようなニーズがあり、その解決に自身がどう関わるのかというテーマに取り組むことが、成熟した市場の中で身動きが取れなくなっている多くの企業にとって、新たな市場理解やブレークスルーにつながるからである。
 筆者は、2002年に日本初のソーシャルベンチャー・プランコンテストSTYLEを開催し、2003年に社会の課題解決に取り組む組織の経営基盤強化を行うSVP(ソーシャルベンチャー・パートナーズ)東京を発足。2005年には国内の大学で初めての社会起業に関する授業群を創設するなど、日本でのソーシャルイノベーションの仕組みや生態系づくりに深く関わりながら、世界の第一人者らと交流し、彼らから大きな学びを得てきた。
 いま、個別の努力の限界を超えて、企業を含めた多数のプレーヤー間の協働を通じて、ソーシャルイノベーションを起こそうという新しいアプローチが生まれている。これは「コレクティブ・インパクト」と名付けられ、大きな潮流となりつつある。
 本稿では、コレクティブ・インパクトに至るソーシャルイノベーションの歴史や現時点での気づきを踏まえ、ソーシャルイノベーションがいま、企業の経営戦略や組織開発、人材育成、ひいては企業の進化そのものに必須のアプローチであることを説く。
コレクティブ・インパクトとは何か
 2011年、スタンフォード大学が発行する専門誌 Stanford Social Innovation Re-viewで“Collective Impact”という論文が発表された。ジョン・カニアとマーク・クラマーによるこの論文では、これまでの、問題解決に向けて個々の組織がそれぞれ努力する手法とは一線を画す新しいアプローチを「コレクティブ・インパクト」(社会変化の共創)として説明している。
 具体的には、「異なるセクターから集まった重要なプレーヤーたちのグループが、特定の社会課題の解決のため、共通のアジェンダに対して行うコミットメント[注1]」と定義した。
 ある問題に対してさまざまなプレーヤーが連携、協力することは新しい話ではない。これまでも、途上国の病気に対応する薬やワクチン開発の官民連携パートナーシップなど、ある共通の目的に対して複数のセクターからプレーヤーが集まる例はあった。
 コレクティブ・インパクトのアプローチは、大きく5つの点でそれまでのものと異なる。(1)その課題に取り組むために関わりうるあらゆるプレーヤーが参画していること、(2)成果の測定手法をプレーヤー間で共有していること、(3)それぞれの活動が互いに補強し合うようになっていること、(4)プレーヤー同士が恒常的にコミュニケーションしていること、(5)そしてこれらすべてに目を配る専任のスタッフがいる組織があること、である。
 これにより、参画しているプレーヤーはもともと持っていた個別のアジェンダを捨て、共通の目的を達成するために、それぞれの強みを活かしながら動き出すのである。
 先の論文でコレクティブ・インパクトの事例として取り上げられているのが、ストライブ(Strive Together)だ。このネットワークは、米国オハイオ州シンシナティ市とその近郊の財団トップ、市役所幹部、学区の代表者、地域の大学学長、教育関係のNPOリーダーなど300人が参画。「ゆりかごから就職まで」を合い言葉に、乳幼児から20代前半までの、すべての子どもの教育における質の改善を共通のミッションと定め、それに向けた共通の測定手法を取り入れた。
 そして3年にわたり15のチームに分かれて2週に1度、外部のファシリテーターが入った場で話し合いを行い、共通のアジェンダへの理解を深め、互いに学びサポートし合う土壌をつくった。
 その結果、行政からの教育予算が大きく削減されたにもかかわらず、発足4年で、3つの大きな学区で、就学前教育を受けた児童の数、小学生の読解と算数の成績、そして高校卒業率などの数十の指標で大幅な改善を実現した。
 ある社会課題に関わるすべてのプレーヤーが共通の目的に向かって、それぞれの組織だからこそできることに注力しながら、互いに補強し合って進んでいく。これがコレクティブ・インパクトであり、この取り組みは大きな反響を呼んだ。以来、世界中で実践事例やそこから得られた学びが共有されるようになっている。
 さて、コレクティブ・インパクトには、ソーシャルイノベーションの2つの大きな系譜が合流している。1つが、ビジネスの手法を活用することで、ソーシャル分野のインパクトを上げていこうとする系譜だ。
 もう1つは、個人・組織・社会はつながっており、個々人の価値観やマインドセットの変容なくして、システム的な社会変容は起こらないと考える系譜である。
 これまで、あまり交わることがなかったこの2つの系譜が、近年、コレクティブ・インパクトに代表される形で合流し始めている。現在、世界では多くの慢性的な社会課題が待ったなしの状況となっている中、いまこそ、深いシステムレベルの変革が必要であり、それが市場や企業のイノベーションにも連鎖すると筆者は考えている。
系譜1
ビジネス成功者が社会変革に挑む時代の到来
 1980年代から、社会的な課題解決に、ビジネスのスキームや管理手法、考え方を入れていく動きが目立ち始めた。その成功例といえば、教育格差解消に取り組むティーチ・フォー・アメリカ(Teach For America)であろう。
 この団体は、1989年に当時大学生だったウェンディ・コップが立ち上げ、モチベーションの高い若者たちを、これまで延べ6万人を教師として派遣、現時点で7000人の教師を2500の学校に派遣し40万人の生徒にリーチするなど[注2]、目覚ましい拡大をしている。
 また、もともとは経済学者だったムハマド・ユヌスが、低所得者向けの無担保少額融資を提供するグラミン銀行を始めたのは1983年である。
 元マッキンゼー、米国環境庁勤務のビル・ドレイトンがアショカ財団を立ち上げ、こうした人々を「社会起業家」と名付けた。広範囲にインパクトを及ぼしうる社会起業家を世界中から探し出し、その事業拡大をサポートし始めたことで、次第にビジネス界にも社会起業家の概念が浸透していく。
 そして、1990年代後半から、IT起業ブームを追うように、「社会起業ブーム」が起きる[注3]。IT起業、経営コンサルティング、投資銀行等での成功者たちが、ビジネスでのキャリアを活かし、かつITを駆使すれば、社会に変化を起こすことができるのではないか、というある種の万能感を持ってソーシャルイノベーションの分野に合流してきたのである。
 有名ビジネススクールでも「社会起業」の授業が増え、卒業後のキャリアのオプションとして、みずから社会起業する、もしくは、社会にインパクトを与えうる営利・非営利の組織に就職するというMBA(経営学修士)ホルダーも増えていった。
 同時に、この分野における資金提供・ファイナンスにも、ビジネスの考え方が導入されていった。
 たとえば、NPO等の非営利組織に対して、財団が単年度に一定の助成金を出すという従来のモデルではなく、ベンチャーキャピタルのように、ハンズオンで事業をサポートする形で長期的に資金提供する仕組みだ。これを提唱したのが、“Virtuous Capital”というHBR論文[注4]であった。この論文をベースに、一時期、全米で数多くの「ベンチャーフィランソロピー団体」が設立された。
 その代表例がサンフランシスコのREDFである。彼らは、社会的インパクトを経済的に換算する評価手法、SROI(Social Return On Investment)を提唱し、世界的な話題となった[注5]。
 こうした流れを受け、財団や国際機関、政府なども、ビジネスのアプローチや考え方を反映させていくようになる。
 この流れにおいて、常に大きなテーマとなっていたのが、いかに「スケール」(他地域展開)するかであった。どうしたら局所的な個別の解決で終わらせずに、より広い範囲にインパクトを出していけるのか、だ。
 たとえば、ティーチ・フォー・アメリカは、単独で見れば大きな成功事例である。しかし、教育環境に問題を抱える生徒数は全米で数千万人ともいわれており[注6]、すべての子どもたちに適切な機会を提供したいという、彼らのビジョン実現に至るには、大変な距離がある。
 実際、ソーシャル分野におけるスケールの難しさについて、米大統領(当時)のビル・クリントンが1994年に次のように指摘している。
「ほぼすべての(教育の)問題は、誰かがどこかで個別に解決している。だが私たちはどうやら、解決策を別の場所で複製することがうまくできないようだ[注7]」
 意気揚々と社会分野に参入したビジネスパーソンやMBAホルダーたちも、実際にやってみる中で、この点にさまざまな課題があることを学んでいく。単に製品やサービスを届けるだけなく、どうしたら人々のマインドや実際の状況を変えていくという「変化」を広げられるのか(これを後述する「アウトカム」ともいう)。
 いくつもの現場からの経験や学びが共有され、喫緊の社会課題の一刻も早い解決のために、スケールすべきは、自社の事業の規模だけではなく、インパクトそのものだという認識の下、さまざまな論文も発表された。
 組織やプログラムに内在する、「何を」「どのように」スケールするのかについて整理した論文[注8]や、プログラムにおける変化のパターンを言語化した、「変化の理論」(後述)を新たな場所に実装していくことを強調した論文[注9]など、知見の共有が進んだ。
 2007年、ヘザー・マクラウド・グラントらが行った、米国で大規模に成長した12のNPO団体への調査で興味深いことが明らかになった。これらのNPOの多くがスケールできた要因は、一般的な思い込みと異なり、団体として「完璧な経営管理」をしていたからというより、外部で影響力のある他のプレーヤーとの連携であった、ということだ。
 この調査結果をもとにグラントらは、政府や企業、メディア、他のNPOなど、さまざまな関連するプレーヤーとともに協働し、より大きな力を共創的に生み出すこと、その結果として、より深い世の中のマインドや行動を変えることが、世の中のシステム変容につながる、と指摘した[注10]。
 また、生物の生態系になぞらえた「エコシステム」をデザインする重要性は、企業において指摘されているが(キーストーン戦略が代表的だ)、関わる関係者の多い社会課題の解決においてはなおさらである。自身が、さまざまなプレーヤーや環境条件から成る生態系の中で、どう影響力を生み出すか、という議論も発表された[注11]。
 つまり、ソーシャルイノベーションをスケールさせるためには、既存の考え方や方法だけでは通用しないことに皆、気づき始めた。ここで、もう1つの系譜と重なり始める。
系譜2
個々の価値観やマインドセットが変容する
 ソーシャルイノベーションのもう1つの流れは、世界は、一人ひとりの人間の意識・無意識の行動や習慣の集積であり、それぞれの価値観やマインドセットを反映したもので、現状のパターンがどのように生まれているのか、その構造を理解し、より深い変化を起こそうという、システム変化を探究する系譜である。
 主に、経営学の組織開発論や、システム工学からの応用としてのシステム思考、紛争解決、コミュニティ開発といった分野の専門家の対話などを通じて、どうしたら人や組織が変わるのか、地域や社会は変わるのかについて、探究と実践が重ねられてきた。そこで見られる人や組織・地域の変容に対しても、ソーシャルイノベーションという言葉が当てられてきた。
 たとえば『学習する組織』(1990年)の著者である経営学者ピーター・センゲは、社会をすべてがつながっている全体性を持った複雑なシステムであり、自分もその一部であるととらえる「システム思考」なくして、組織や社会の状況を変えることはできないと説いている。
 センゲとともに『出現する未来』(2005年)を書いたオットー・シャーマーは『U理論』(2009年)を発表。「自身の思い込みやバイアスを理解し、そこから離れ、ありのままを観て感じると、おのずと他者とともに創りたい新しい未来が出現していく」というプロセスを、多数の経営者やイノベーターたちへのインタビューで発見し、これを意図的に引き起こす方法を提唱した。
 また、ロイヤル・ダッチ・シェルにおける「シナリオ・プラニング」を通じたビジョンと戦略構築や、アパルトヘイト後の南アフリカでの平和構築プロセスなどに実績のある、アダム・カヘンなどの専門家たちは、異なる価値観や立場を持つ人たちがどうやったら対立を越えて新しい未来を創っていけるか、という対話や協働の方法を開発している(囲み:「システム思考とU理論」を参照)。
システム思考とU理論
 <システム思考>
 システム思考では、社会で起きることは互いに影響を及ぼし合いながらつながっている「システム」であるととらえる。この互いへの影響は目に見えず、影響が出るまで時間がかかることが多いため、個別のパターンだけを見ると、なぜその問題が起きているのかの深い理解ができず、解決すると思った打ち手も効果が出ない。システム思考で全体をとらえることで、システムのパターンの全容が明らかになり、変化を効果的に起こせるのだ。ピーター・センゲの『学習する組織』(1990年)がベストセラーとなり、システム思考がビジネスの分野に広まるきっかけとなった。
 <U理論>
 MITのオットー・シャーマー博士が提唱する、個人・グループ・組織・社会の変容のプロセスを表した理論。概念的な整理に留まらず、環境的分断・社会的分断・精神的/文化的分断として表れている現状のシステムを転換するための、実践を伴う社会テクノロジーとしての側面も併せ持つ。生まれ出ようとしている「出現する未来」から導くには、我々の行動の起点となる「内面の場」を転換する必要があると説き、そのプロセスはU字型をたどると説明した。
 これらに共通する考え方として、先述のセンゲと、EI(エモーショナル・インテリジェンス:感情的知性)の提唱者として知られるダニエル・ゴールマンは、Triple Focus(未訳)という共著で、「私」(Inner)と「チームや組織」(Other)と「世の中のシステム」(Outer)のつながりについて述べている。たとえば、みずからの「寂しい」という感情を否定すると、他者の寂しさは受け入れがたい。だが、自分の寂しさの背景を理解し、受容すると、他者のそれをより明確に理解ができるうえ、同じような世の中の孤独感の存在について、はるかに高い解像度で見えてくる。いかに、個人における変容が、組織や社会のシステム理解につながるかを説明している。
 ビジネスの手法を社会分野に適用する第1の系譜では、「問題は外にありそれを直す」という、これまでの問題解決思考を基盤としてきたのに対して、この第2の系譜では、「社会と個人は複雑系のフラクタル(相似形)構造になっているため、社会の問題は自分の中にもある」ととらえている。
 そして、対話や観察などを通じて、自分や他者を含めたシステムのダイナミズムに気づき、新たな選択肢を出現させていくアプローチを取る。一方、この系譜においては、効果が表れるまで一定の時間がかかる。また、対話や内省を重視するあまり、具体的な行動には至らないこともあった。
 第1の系譜においては、即効性を求めるあまり、根本的な解決を先送りにすることも見られ、深いシステム変化へのアクションは急務だった。加えて、上述のように、スケールのためには、人の価値観やマインドセットをも他地域展開する必要に迫られ、関係するプレーヤーの背景理解や関係性を重視するようになった。
 こうしたことを背景に、複雑化した社会の進化のためには、「コレクティブ・インパクト」のアプローチが必要で、異なる立場のプレーヤー同士の相互理解を進めながら、1社の事業努力だけでは実現しない未来の選択肢を生み出すことを志向し始めた。
 ソーシャルイノベーションのさまざまな場面で、両者が出会い始めたのである。
イノベーション実現のための
「私」と「仕事」と「世の中」
 ビジネスの手法を入れてインパクトを出す、という系譜と、個人の変容からのシステム変化を実践しようという系譜が合流してきたことで、これからのソーシャルイノベーションにおいて、「私」「仕事」「世の中」を1本の線でつなぐ重要性が増している。(図表「『私』と『仕事』と『世の中』の関係図」を参照)

(1)「仕事」と「世の中」:変化の理論
 ミッションやビジョンを掲げる企業やプロジェクトは多々あるが、本当に、「それ」をすることで、そのほしい未来は実現するのか。目の前の仕事と、その先の未来の関連付けは、何となくになってはいないか。一生懸命頑張れば、いずれは到達すると唱えながら、本当には信じていないことも多い。
 この「仕事」と、実現したい「世の中」をつなぐ具体的プロセスを明示化したものが、「変化の理論」(Theory of Change)である。
 たとえば、冒頭で紹介した『ビッグイシュー日本版』の例を見てみよう。ビッグイシューは、「街頭で雑誌を売る」という仕事を通じて、ホームレスの人たちが「自立」していけるという世の中を実現する。この時、アウトプットとしての「仕事」は、自分たちが欲する「世の中」の状態、つまり特定のビジョンを実現するための手段である。この「変化の理論」は、「〜することで」(仕事)→「…をかなえる」(世の中)という図式で表現される[注12]。
 一方、この「雑誌販売」と「自立」の関係は、実は単線でつながるものではない。そもそも、「自立」という状態を、直接的に販売する商品など存在しない。結果として、「何をすれば、自立という状態に至るのか」を模索し、プログラムにしていくことになる。そのため、直線的にはならないダイナミズムが存在する。
 我々の求める仕事の目的には、このように「自立」や「活力ある」といった曖昧で特定のマインドセットに関わるものが圧倒的に多い。そのため、リアリティにおいて、この「変化の理論」は、机上の思考だけでなく、そこにある感情や身体感覚も併せたシステム理解を必要とする。実際に、仮説的にやってみることや試行錯誤する中から、最もレバレッジの効いた「ツボ」を発見していくことである。
 路上にいた販売員が、心から自立を望んで行動するには、当然ロジックだけでは動かない。これは、お風呂に入る、好きな音楽を聴くといったことを通じて、時間をかけてリラックスという状態に至る、副交感神経の働きと似ている。体感を含めた進化を視野に入れることで、これまで支援の対象でしかなかった人たちの、本来持つ力を活かしながら自立を実現するという、新しい選択肢がここに生まれる。
 また、「世の中」のビジョンは、中期的に実現したいものはアウトカム、より長期に時間がかかるものはインパクト、と呼んでいる。
 ビッグイシューにとって、ホームレスの人たちの自立はアウトカムであり、その先に目指しているインパクトは「ホームレスが生まれない、誰にでも居場所のある社会」である。冒頭で述べた通り、これは、ビッグイシュー単独では実現できず、企業や行政など他者の協力が必要だ。「コレクティブ・インパクト」が必要となってくる背景である。
 なお、仕事という手段が目的化してしまうこともある。雑誌販売に集中するあまり、規模と収益だけを求め、ビッグイシューが、雑誌のオンライン販売をしたらどうなるだろうか。販売者たちは、社会との関係性を築く機会を失い、そもそもの目的だった「自立」から離れてしまう。次に述べる「私」自身のオーセンティックな(authentic:嘘のない)動機から離れることになるし、顧客や関係者たちにとっての求心力を失うことになる。
(2)「私」と「仕事」
「仕事」と「世の中」がつながっていることを、変化の理論として明示していくことと同様に大切なのが、「私」と「仕事」がつながっているということである。
 よい仕事をするためには、心がこもっているほうがよい、とは誰しも思うことだろう。なぜ、自分がこの仕事をしているのか、そこに嘘がなく、オーセンティックな状態だと、人は自信と勇気が湧き、立ち直る力(レジリエンス)も強まり、ストレス耐性もつく。失敗や挫折から学び、創意工夫を重ね、みずからがほしい未来へ向けて健全に努力を重ねることができる。
 一方、誰かのため、社会のため、と自分のことを横に置いて頑張り続けると、「私」と「仕事」が分断し、アイデアも枯渇する。何より、燃え尽きてしまう。そうした社会起業家をたくさん見てきたし、筆者自身も、日本の社会起業の市場づくりのために奔走してバーンアウトしかけたこともあった。
 ソーシャル分野において、仕事の先にある目的が見えやすいことは、個人としての深い動機につながりやすい。同時に、関わる人たちと、互いに「私」の物語や背景を共有し、なぜ「私」がここにいるのかについて理解を深め合うのも、この点で極めて重要だ。
 近年、ビジネスでもマインドフルネスが流行っている。これには2つの効果があるからだ。1つは、自分自身のセルフケアとして、心身ともに健康であることや、集中力を高める効果だ。もう1つには、この仕事をしている自分自身の状態や感情に「気づき」、自分自身をよりオーセンティックな状態に導いてくれることだ。また、周囲のこともよりよく見えてくる。これは、イノベーションを支える大事な要素だ。
 人は、オーセンティックな状態だと、より創造的になり、新しいアイデア、イノベーションを生み出しやすい[注13]。オーセンティックであることと創造性の関係を証明する研究は多く、一橋大学名誉教授の野中郁次郎が提唱した「知識創造理論」も、アイデアは人間の最も根底にある喜怒哀楽が源泉であると説いている[注14]。
(3)「私」と「仕事」と「世の中」
 ソーシャルイノベーションにおいて、上記に併せて大切なのが、「私」自身が、「私」「仕事」「世の中」のアライメント(=1本の線でつながっていること)に意識的である、ということだ。
 「私」という物語を持った一人の人間が、この「仕事」なりプロジェクトをすることで、特定の「世の中」の状況を実現しようとしている。そして、この「世の中」は「私」の日常にさまざまな形で返ってくる。
 センゲらは、これを「システムを感じ取る」(Systems Sensing)と表現しているが、大切になってくるのが「私」という存在の「代表性」に意識的になることだ。
 先ほどのビッグイシューで言えば、街頭での雑誌販売を通じて、通行人に知り合いができて、関係性が生まれ、自分にも価値があるように感じる。これは、私たちが日常の中で知っている感覚で、不慣れな場所や状況で、自分が声をかけてもらった喜びは、誰でもあるだろう。
 あらゆる「私」という存在は、社会というシステムの一部であり、その「私」が日常に感じていることは、何らかの社会の縮図である。満員電車にイライラする、という感情は、毎日、同じ場所に通勤するというワークスタイルや、都市への人口集中の問題などを反映した、システムの声でもある。
 そして、「私」自身も満員電車をつくる一部であり、同じことを感じている人はたくさんいる。「私」という存在には、必ず、他の誰かと共有する代表性が潜んでおり、「私」が感じる困り事や心のさざ波は、世の中のニーズの一端であり、そこには市場性がある。もし状況を打開するよい方法やアイデアを見つけたら、世界は変わるかもしれない。
 イノベーションとは、けっして遠くにあるものではない。筆者が出会ってきた、多くのソーシャルイノベーション分野のリーダーたちは、それぞれが見出した変化の理論を、粘り強く実験を繰り返しながら進化させ、社会にインパクトを生み出している。
 その際に、左脳的な従来のビジネス手法を使いながらも、自分自身に気づくという右脳的・身体的な手法も駆使する。それにより、他者にも通ずる代表性を見出し、また、粘り強く挑戦する原動力も生み出している。
「私」「仕事」「世の中」のつながりについては、著名な心理学者のロロ・メイの1975年の言葉に集約されている。
「もしあなたがあなた自身の考えを表現せず、あなたの核からの声に耳を傾けないとすると、それは自分自身を裏切っているということだ。さらに、全体に対して果たしうる貢献ができないという意味で、あなたのコミュニティも裏切っていることになる。自分自身に中心を置くという勇気が必要で、この勇気がないと私たちは心が空っぽのように感じる。自分の中にある空っぽの気持ちが、無関心へ、さらには臆病へとつながる。だから、私たちはいつも自分の中心に対してコミットメントを持たなければいけないのだ。それ以外のコミットメントは究極的にはどれも本物、オーセンティックではない[注15]」
【注】
(1)John Kania and Mark Kramer, “Collective Impact,” Stanford Social Innovation Review, Winter 2011, p.36 in pp.36-41.
(2)Teach For Americaホームページhttps://www.teachforamerica.org/what-we-do/impact
(3)日本でも2000年代に、日本でアショカのような役割を果たすNPO法人ETIC.などのサポートの下でさまざまな「社会起業」団体が生まれた。たとえば、「病児保育」という概念と新たな市場をつくり、事業展開を行うNPO法人フローレンスがその一つ。また、カンボジアの売春問題に立ち向かい、実際にコレクティブ・インパクト的なアプローチで解決に導いたNPO法人かものはし、など。
(4)Christine W. Letts, William P. RyanAllen, and S. Grossman, “Virtuous Capital: What Foundations Can Learn from Venture Capitalists,” HBR, March-April 1997.(未訳)
(5)REDFは、米The Roberts Enterprise Devel-opment Fundのことで、設立者はプライベート・エクイティ・ファンドKKRの共同創業者でもある、ジョージ R. ロバーツ氏だ。ただし、彼らの手法は普及せず、現在のSROIはロジックモデルをもとに英国で開発されたものである。
(6)(1)に同じ。
(7)Joseph L. Bradach, “Going to Scale,” Stanford Social Innovation Review, Spring 2003, p.19 in pp.19-25.
(8)Gregory Dees, Beth Battle Anderson and Jane Wei-skilllern, “Scaling Social Impact: Strategies for spreading social innovations,” Stanford Social Innovation Review, Spring 2004, pp.26-30 in pp.24-32.
(9)(7)に同じ。
(10)Leslie R. Crutchfield and Heather McLeod Grant, Forces for Good: The Six Practices of High-Impact Nonprofits, Jossey-Bass, May 2012.(邦訳『世界を変える偉大なNPOの条件』ダイヤモンド社、2012年)
(11)Paul N. Bloom and Gregory Dees, “Cultivate Your Ecosystem,” Stanford Social Innovation Review, Winter 2008, pp.47-53.
(12)システム思考でいう変化の理論はもう少し複雑だ。関心のある方は、デイヴィッド・ピーター・ストロー著『社会変革のためのシステム思考実践ガイド』(英治出版、2018年)、小田理一郎氏の「監訳者による解説」をご参照いただきたい。
(13)Juliet Barbara, “Authentic Connections and Growing Your Creative Confidence,” Forbes, September 3 2012, https://www.forbes.com/sites/julietbarbara/
2012/09/03/authentic-connections-and-growing-your-creative-confidence/#169411a13086
(14)野中郁次郎・竹内弘高『知識創造企業』東洋経済新報社、1996年。
(15)(13)に同じ。
企業が社会課題に取り組むべき2つの意義(戦略上の意義、組織上の意義)、日本が果たす役割などが示される本稿全文は、『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2019年2月号に掲載されています。
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ユニリーバ、ネスレ、トヨタ……世界の名立たる企業は、社会課題の解決を通じて経済的価値を創造している。ただしこれは、企業単体でできるものではなく、政府、NPO、各種機関、地域社会との協働が欠かせない。コレクティブ・インパクトは企業にとって、新たな事業機会の発見や、イノベーションの促進につながるという利点もある。めぐりめぐって、企業と社会の利益は一致する。

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◇コレクティブ・インパクト を実現する5つの要素(マーク R. クラマーほか)
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◇世界的金融グループが社会変革に果たした役割(ジョセフ・フーリー)
◇テクノロジーだけでは社会変革は起こせない(タルン・カナ)
◇トヨタは、生き残りを賭けて、協調し、競争する(寺師茂樹)
http://www.dhbr.net/articles/print/5677


 

企業は消費者のスローダウン欲求をどう満たすか
ジアナ M. エッカート,カタリーナ C. ヒューズマン:ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校のマーケティング学教授兼サステナビリティ・リサーチ・センターディレクター
2019年1月11日
私たちの生活の利便性は、技術進歩により飛躍的に高まっている。スマホを開けば、ボタン1つでどんな商品でも購入できる。デートの相手を探したい、手軽に運動したいという欲求も、専用アプリで瞬時に満たすことができる。ただ、それによって生活の速度が上がりすぎたがゆえに、現代の消費者はスローダウンする機会を求めていると筆者はいう。企業はこのようなニーズを、どうすれば満たせるのだろうか。

 私たちは「加速の時代」に生きている。ありとあらゆる商品がオンラインで注文でき、数時間で届く。次のデート相手を探して決めるには、(出会い系アプリで)1回スワイプするだけでよい。いまやエクササイズや瞑想ですら、アプリでアクセスして、数分で終わる。
 技術進歩と社会の変化のスピードが絶えず上がり続けることで、ビジネスと生活そのもののペースも加速し、大半の人が時間的な余裕のなさを感じている。
 これに対処するために、スローダウンする機会を求める人が増えている。これは、ヨガやウェルネス・リトリート(休暇を取って心身養生の活動をすること。観光業界で最も急成長中のセクターの1つ)の人気の高まり、スローフード運動、デジタルデトックス(ハイテク機器から一定期間離れること)の広がりなどから見て取れる。
 BBCニュースの元ディレクターは最近、「トータス(亀)・メディア」なるものを立ち上げた。みずからを「スローニュース」と位置付け、「スピードを落として、真実を知ろう」をスローガンに掲げている。また、明らかにハイペース、ハイテク社会の韓国では、こんな休暇が昨年から人気を集めている。疲れ切った働き手が、刑務所の独房(を模した宿泊施設)で時を過ごし、囚人のような待遇を受けることで外部との接続を断ち、ゆっくりできるのだ。このスローダウンへの欲求は大きな流れとなり、企業、組織、社会に影響を及ぼしている。
 なぜ人々はスローダウンしたいのか、どうすればそれを達成できるのかを探るため、我々は別の極端な例を調査した。スペインの古代から続く聖地巡礼の道、カミーノ・デ・サンティアゴを歩く人たちの中に身を置いたのである。
 この巡礼は、ここ20年でかつてなく多くの人々を惹きつけており、巡礼者の年齢や宗教的背景、出身国はさまざまに異なる。この調査を通じて、スローダウンするための3つのポイントが明らかになった。
 1. 身体のスローダウン
 体を物理的に落ち着かせる。我々の研究では、歩くよりも速い移動手段を使わず、毎日歩くことでこれを達成できた。
 2. テクノロジーのスローダウン
 テクノロジーを手放すのではなく、その使い方に注意し、対面でのコミュニケーションを重視する。これは自分でコントロールするより、常時の接続をできなくさせる環境に身を置くことで達成できることが多い。巡礼者へのインタビューでは、仕事用の電話は家に置いてきた、Wi-Fiには夜しか接続しない、といった回答が得られた。
 3. 出来事のスローダウン
 1日に行う活動を少なくする。我々のデータによれば、やるべきことは歩く、食べる、そして寝ること。加えて重要なのは、消費の選択肢を減らすことである。
 これら3つのポイントは基本的に、簡素さ、物質主義からの脱却、自分らしさといった考え方につながる。
 この発見をビジネスの知見に転換するには、どうしたらいいだろうか。企業は、消費者がこの3つすべてにおいてスローダウンできる場所を提供し始めている。
 たとえば小売業界では、心を落ち着かせ、リラックスでき、プライベートではあるが、双方向の体験を通して顧客に滞在(と消費)を促す「スロー・ショッピング」が、eコマースやハイテクなセルフ・レジへの対抗手段として大いに期待されている。また、スキンケアや化粧品のブランドであるオリジンズでは、店舗を改装して買い物客が腰を下ろせる場所を増やし、身体のスローダウンを促している。同様に英国の高級デパートであるセルフリッジズは、2013年に静寂の部屋をつくり、消費者がリラックスして身体とテクノロジーのスローダウンに取り組めるようにしている。
 観光業界では、身体や出来事のスローダウンは、高級ホテルによる健康重視の一環として長く推進されてきた。一方、たとえばドイツのバーデン・バーデンにあるヴィラ・ステファニーなどでは、Wi-Fiを設置していないことを特長として売りにし始めており、滞在客は体験をインスタグラムに投稿することよりも、休むことに集中している。
 ファッション業界では、パタゴニアなどのブランドが、顧客に投資としての購入を促している。環境に優しく長持ちする衣類やアクセサリーを、本当に使うもののみ少数に絞って購入し、より長く使うということだ。ここに反映されているのは、出来事のスローダウンを通して、自分らしさを保ち物質主義から脱却することを重視する姿勢である。
 このように我々は、スローダウン(特に身体、テクノロジー、出来事のすべてを織り込んだもの)が、個人の心身の健全、環境、企業に等しく恩恵をもたらすものとして促進される動きを目にしている。そして、こうした体験への関心は、今後数年で飛躍的に高まると予想している。
 時にはスローダウンしたいという実存的な欲求を認識することが、顧客を勝ち取る戦略の土台となりうるのだ。

HBR.ORG原文:The Growing Business of Helping Customers Slow Down, December 07, 2018.
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ジアナ M. エッカート(Giana M. Eckhardt)
ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校のマーケティング学教授兼サステナビリティ・リサーチ・センターディレクター。著書にMyth of the Ethical Consumer(未訳)がある。『ジャーナル・オブ・マーケティング』『ジャーナル・オブ・コンシューマー・リサーチ』の編集委員会にも名を連ねる。

カタリーナ C. ヒューズマン(Katharina C. Husemann)
ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校のマーケティング学上級講師。現代の消費者文化における精神性の高まりを研究対象とし、『ジャーナル・オブ・コンシューマー・リサーチ』などに発表している。
http://www.dhbr.net/articles/-/5678

http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/529.html

[国際25] 世界の自動車メーカー、EVに3000億ドル投資へ VW・中国がけん引 ECB、12月理事会で長期資金供給オペ再開論が台頭
ビジネス2019年1月10日 / 19:28 / 4時間前更新
世界の自動車メーカー、EVに3000億ドル投資へ VW・中国がけん引
Reuters Staff
2 分で読む

[10日 ロイター] - ロイターの調査によると、世界の自動車メーカーは、今後5─10年で電気自動車(EV)技術に総額3000億ドルを投じる見通し。

うち半分近くは中国に投じられる予定。メーカー別では、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)グループ(VOWG_p.DE)が最大の投資を計画している。

ロイターは、米国、中国、日本、韓国、インド、ドイツ、フランスなど世界の上位29社の自動車メーカーが過去2年間に公表した投資・調達計画を分析。未公表の計画は含まれていない。

部品メーカー、技術開発企業などの投資計画は集計されておらず、EVへの実際の投資額は今回の集計値を大きく上回る可能性が高い。

VWのハーバート・ディエス最高経営責任者(CEO)は北京で一部記者団に「VWの未来は中国で決まる」と発言。「(中国は)世界の自動車大国の1つとなる」と述べた。

同CEOは「(中国では)次世代乗用車を開発する環境が非常に整っている。欧州などで一部しか手に入らない適切なスキルがある」とし「中国では非常に明確な政策が導入されている。政策当局・規制当局が(EVへの移行を)義務づけている」と指摘した。

中国をはじめ、各国ではガソリン車やディーゼル車への規制が強化されており、自動車各社はEVへの移行を急いでいる。世界の自動車メーカーは1年前には、EVの開発に900億ドルを投じる計画を示していた。

今回の集計値である3000億ドルは、エジプトやチリの国内総生産(GDP)を上回る。

全体の3分の1近くに相当する910億ドルは、VWグループが投じる。同社は、排ガス不正問題の影響を和らげるため、積極的な投資を進めている。

VWは、2025年までに完全電気自動車50モデル、ハイブリッド車30モデルなど、3大陸で最大1500万台のEV生産能力を確保する計画だ。最終的には、アウディ、ポルシェなど12ブランドの全300モデルでEV版を導入する。

VWに次いで投資予定額が多いのは、独ダイムラー(DAIGn.DE)の420億ドル。米ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N)は、EVと自動運転車の合計で80億ドルを投じる計画だ。

国別では、全体の約45%に相当する1350億ドル以上が中国に投じられる見通し。

海外メーカーは中国に投入するEVのモデルを大幅に拡充。中国メーカーからのバッテリーの調達も拡大している。

この結果、上海汽車(SAIC)(600104.SS)、長城汽車(601633.SS)など中国の大手メーカーが計画しているEV投資は、VW、ダイムラー、GMなど海外の合弁相手の投資に見劣りする可能性がある。
https://jp.reuters.com/article/boj-sakura-report-idJPKCN1P40P4?il=0


国内社会ニュース(共同通信)2019年1月10日 / 21:50 / 2時間前更新
日産、ゴーン前会長に退去通告
共同通信
1 分で読む

 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が自宅としている東京都港区のマンションについて、部屋の権利を持つ日産が、ゴーン容疑者の居住を認める契約を今月8日付で破棄し、退去するよう通告していたことが10日、分かった。ゴーン容疑者の弁護人が明らかにした。

 弁護人によると、会社法違反(特別背任)容疑での逮捕などを理由にしているという。

【共同通信】
https://jp.reuters.com/article/idJP2019011001002135?il=0


 
外国為替2019年1月10日 / 23:34 / 24分前更新
ECB、12月理事会で長期資金供給オペ再開論が台頭=議事要旨
Reuters Staff
1 分で読む

(内容を追加しました)

[フランクフルト 10日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)が2018年12月12─13日に開催した理事会の議事要旨によると、長期資金供給オペの活用を数カ月かけて再検討すべきとの意見が出たほか、ユーロ圏経済の見通しについて意見が分かれた。

ECBは12月の理事会で主要政策金利を据え置くと同時に、景気の下支えを目的とした2兆6000億ユーロ(3兆ドル)規模の量的緩和(QE)の終了を正式決定した。ドラギ総裁は会見でリスクの拡大や経済指標の軟化などに言及し、「リスクのバランスは下向きに移行しつつある(moving to the downside)」との認識を示した。

議事要旨では、一部メンバーがドラギ総裁に一段と慎重な姿勢を示すよう促したほか、金融機関向けの新たな資金供給オペに関する議論を行うよう求めたことが判明。「今後について、貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)の金融政策スタンスへの貢献を再検討すべきとの意見が出た」とした。

経済成長へのリスク認識を巡っては、一部メンバーが「下向きに傾いている(tilted to the downside)」との表現にすべきと主張。これは過去に緩和拡大を示唆する際に使われた文言だ。ただ討議の末、最終的には「下向きに移行しつつある」との表現に落ち着いたという。

要旨では「リスクが急激に目立ったり、新たな不透明性が台頭する恐れもある中、引き続き脆弱かつ流動的な状況が浮き彫りとなった」と指摘した。
https://jp.reuters.com/article/autoshow-detroit-electric-idJPKCN1P4138?il=0
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/187.html

[国際25] 改憲議論で学ぶべき英国の歪められた民主主義 「これは戦争だ」心を操る大量破壊兵器「トランプという怪物」を作った会社
改憲議論で学ぶべき英国の歪められた民主主義
ロンドン発 世界の鼓動・胎動
内部告発者・クリストファー・ワイリー氏ロングインタビュー(下)

2019年1月11日(金)
伏見 香名子

 オンライン上にある膨大な個人情報を不正に流用し、選挙や国民投票などの民主プロセスを歪めたとされる英データ分析会社・ケンブリッジ・アナリティカ社(以下CA社・後に破産)。

 CA社に対し、ユーザーの同意も得ず情報を流したフェイスブック(以下FB)は12月に米政府から提訴されるなど、一連の騒動でまたも株価が急落した。CA社の元社員らによる内部告発が最初に報じられたのは18年3月だが(参考:フェイスブック騒動、驚愕の「デジタル情報戦」)、FBは未だ激震に見舞われ続けている。

 その時から、私はターゲット広告によって民主プロセスが歪められた事象を追い続けた。取材を通じ、最も危険だと感じるのは、ターゲット広告の有効性を高めるため、それらが意図的に人々の感情に訴えかけるよう作成されていることであり、多くの場合、それが人々の怒りや不安の感情であることだ。

 英国でEU離脱を問う国民投票が実施された2016年以来、英社会には間違いなく離脱派・残留派の間に、癒しがたい分断の爪痕が残っている。離脱の行方は全く見えず、政治も社会・経済も混迷し、さまよい続けている。しかし、私が更に深刻だと感じるのは、勝つために多額の資金を投じて行われた、デジタルを含む、なりふり構わぬ政治キャンペーンや、主流メディアの表層的な報道によって生じた、人々の互いに対する疑念や不信感である。

 本来、政治的な意見は民主主義国家において個々人が自由に持てるはずだ。それが故意に他者を傷つけるものでないならば、ある一つの見方を糾弾したり、異なる価値観を持つ人々を迫害してはならない。しかし、現在離脱派は「無知な人種差別主義者」、残留派は「無責任な夢想主義者」とレッテルを貼られ、双方に歩み寄りの姿勢は見られない。

 こうした怒りや不安の感情をあおり立てた先に何が待つのか。科学的な立証は困難だが、EU離脱を問う国民投票では、移民や難民へのヘイトを駆使した離脱派による苛烈なキャンペーンのさなか、投票の数日前、野党労働党の女性議員が白昼、白人至上主義の男に暴殺されている。(参考:「英国の女性議員殺害が問う“憎悪扇動”の大罪」)

 日本でも昨今、右派だ左派だと、不毛な対立の構図が拡大している。すでに亀裂の起きている社会において次なる分断の火種は、現政権が悲願とする、改憲に向けた国民投票ではないだろうか。

 こうした心情に、更に互いに対するヘイトを駆使したターゲット広告や偽情報が拡散した場合、人によっては癒しがたい傷が、怒りや不安として残ってしまう可能性は否定できない。それは、英国においてのEU離脱、米国でのトランプ大統領の選出プロセスを見れば明らかだ。

 CA社は人々にこうした感情を植え付け、民主プロセスを利益目的で操ることで、巨額の富を得た。社会に深刻な分断を招き、そのために排他的な暴言や、いわれのないヘイトによって人々が心に傷を負うだけでなく、命を落とした人が仮にいたとしても、彼らは血で染まった金を手にし、何ら責任を負うことはない。

 私がこの取材を続けるのは、日本の国民投票が念頭にあることを告げると、一線でこの問題に取り組み続ける英国の専門家らは口々に「今ならまだ間に合う」「日本に米英と同じ轍を踏んでほしくない」と取材に対し、惜しみない協力をしてくれた。

 ある感情を逆なでするような情報や広告が流れてきたならば、なぜその情報が自分の元に流されてきたのか、激情にのまれる前に立ち止まって考える自衛策が、まずは不可欠だろう。

 一方、元CA社の内部告発者、クリストファー・ワイリー氏は、個人の力だけでは防ぎきれない膨大な量の情報操作に対峙するため、規制や国際的な枠組みが急務だと言う。FBをはじめとするプラットフォームの責任や、改憲に関する国民投票などについて、引き続き、ワイリー氏の見解を聞いた。


ロシアは米英、日本の規制を遵守する必要がない
政治的なキャンペーンにおいて、現状デジタル広告を巡る環境は「無法地帯」とも言えます。だからこそ、規制が必要なのですね。

クリストファー・ワイリー氏(以下ワイリー氏):規制は不可欠です。交流サイト(SNS)のプラットフォームにはより透明性を持たせ、こうしたキャンペーンを止めることをより容易にする運営を行わせるべきでしょう。

 しかし、法律は基本的に、非合法組織を止めることはできません。あなたを攻撃するのが、敵対する外国の国家であろうが、法を尊重しない、国内の犯罪組織であろうが、新しい規制が必ずしも助けになるとは限りません。

 SNSのプラットフォームが、より責任を持ち、良い企業市民であるための規制には賛成です。彼らには、ビジネスを運営するためにも、民主主義を守り、果たすべき役割があるのですから。ビジネスを運営する基盤は社会であり、彼らは社会を尊重すべきです。そのための規制は必要です。しかし同時に、現在起きている情報攻撃を監督し、防止する機関や組織も必要だと思います。

 規制を設けることはできますが、ロシアには米英、それに、日本の規制を遵守する義務はありません。軍隊も、規制の存在など気にもとめず、敵とみなせば攻撃を仕掛けるでしょう。ですから、機関としてより効果的に反撃・防衛し、同時に、自衛に効果的な計画も作らねばなりません。

 これまで私が見てきた中で、一致団結してこの問題に取り組んでいるのは、最近選挙を実施したスウェーデンだけです。民間防衛機関が、自然災害やテロのみならず、敵対する外国勢力による広域の情報攻撃についても主導的役割を果たしました。多くの国が、こうしたことを検討すべきだと思います。

人々はこの戦争に、勝てるのでしょうか。

ワイリー氏:勝敗が決まり、その後何も起こらない、という事象ではないと感じます。これは高度に人々が繋がり、デジタル化された現代社会の新しい現実なのでしょう。

 インターネットが社会生活を営む上での基盤となった結果だと思います。他の技術革新と同じように、インターネットやSNSによる恩恵は多い反面、同時にリスクももたらしているということです。まずこのリスクから社会を守らないことには、恩恵を享受できません。

 「情報戦争」は終わらないでしょう。プロパガンダは数世紀に渡り存在し、新しいことではありません。今はそれが、「サイバー空間」という新しい戦場で展開されています。政府や人々は、実社会とサイバー空間に「現実」という意味で、差異はないことを理解しなければなりません。

 実社会だからといって「サイバー空間よりもリアルだ」ということではないのです。サイバー空間もリアルな空間です。実社会に影響を及ぼします。この事が人々の生活における、新しい次元であることを認識すべきです。人々にとっての安全性を確保し、攻撃から守る必要があります。

シリコンバレーや巨大広告企業は、こうした危険を気にもとめていないということでしょうか。

ワイリー氏:これまでのところ、気にしているとは思えません。彼らが最も気にかけているのは、利益でしょう。それと、自分たちに対する評価です。CA社についての報道がなされてから、FBの株価は2回急落しました。(注:インタビュー当時の10月時点で)1回目はFB史上最大、2回目は時価総額で米企業史上最大の下落額と言われています。

 人々が、社会や民主主義の公正性を大切にしていることは、明白です。人々は、他国の軍による偽の、または操作された情報の標的になりたいと思っていませんし、そんな事は常識です。

 問題は、シリコンバレー企業の多くが、自分たちがビジネスを行うために必要とする社会において、良い企業市民としての役割を果たしていない事です。FBは道徳的な責任を負っていますが、同時に、米国とその民主主義が機能不全に陥ってしまえば、自分たちもビジネスを行えなくなってしまいます。

 シリコンバレーはいくつかのことを学ぶ必要があります。まず、ジャーナリストや市民社会、内部告発者から批判を受けたのなら、安全面の欠陥を通報する「ホワイト・ハッカー」同様に扱うべきだと言うこと。その事に報酬を与え、感謝すべきです。

 また、誰かが問題を指摘した場合、その事を、より良い商品開発のための、良い機会だと捉える事です。問題を長引かせて告発を否定し、脅迫するなどという、FBがこの問題を通じて行ったことをすべきではありません。

フェイスブックは他の産業から学ぶべき
 FBは他の産業から学ぶべきです。例えば、自動車業界はシートベルト設置について、コストがかかるため、「人々には選択の自由がある」「自動車事故が起こることを想起させ、売り上げに影響する」などと言って、長く拒み続けました。現在では標準装備されていますし、シートベルトなしに車に乗る人は誰もいません。

 シートベルトは自動車産業を傷つけてはいませんし、人々は自動車購入をやめてはいません。自動車は、シートベルトやエアバッグの装備によって、以前に比べ多少価格が上がっているかもしれません。しかし、それによって事故死する人の数は減少しているはずですし、安全性に安心した購買者は、車を買い続けるでしょう。

 つまり、シリコンバレーはまず第一に、安全性の確保は絶対に譲れないものであること、そして、その事は、彼らにとっての「問題」ではないことを認識すべきです。より安全な商品を作ることがより安全な産業に繋がり、長期的には、人々はその商品を使い続けます。

 民主プロセスを破壊する、あるいは、人々を操作し、社会の団結を壊す目的の商品を作り続けるのならば、いつか人々は商品を見限り、利用を止めるでしょう。産業としての長期的な存続は、商品と、消費者の安全性の確保にかかっています。

 また、ユーザーはユーザーとして尊重されるべきで、「企業側が利用する者」として、軽視されるべきではありません。私は、現在のシリコンバレーの対応は問題だと思います。さらに、米国外で暮らしている人たちとってより問題だと思うのは、私たちがオンライン上の「社会のクローン」を作ったことです。

 そのクローン、つまり、デジタルのあなたやその友人が交流するサイバー空間に責任を負うべき企業が、あなたの国の司法権が及ばない国に存在していることです。私たちは「社会のクローン」を、私たちの法律を尊重しなくても良い、米国の企業に譲渡しているのです。

 サイバー空間が民主主義だけでなく、私たちの法律とどう関わるのか、真剣に考えるべき時です。各国の空港には、それを3つのアルファベットで示す、国際基準が定められています。なぜインターネット上の公開に適したものと、そうでないものや、それをどう規制して行くのかという、(空港表記と)同じような国際的な枠組みが存在しないのでしょうか。

 各国がインターネットを、何か真新しいものではなく、リアルなもの、経済や社会、民主主義を支え、人々の仕事の中心的・基本的なものとして認識し始めている昨今、最低でも空港表記と同様の国際条約が検討されるべきでしょう。

日本の現政権は、改憲に関する国民投票を検討していますが、国民投票法において、広告に関する資金投入の上限も、デジタル広告に関する規制もありません。このことは、危険だとお考えですか。

ワイリー氏:日本が学べる例は、いくつか存在すると思います。まず明確なのは、英国が行ったEU離脱に関する国民投票です。この国民投票に関する法的枠組みは、後に現実のものとなったあらゆる問題を全く想定していませんでした。
 偽情報に関するプログラム、データの利用、サイバー広告、SNSプラットフォーム上における透明性などです。その全てにおいて、あらゆる脆弱性が、食い物にされました。

 日本は特別な立場にあります。オンライン上の「インフルエンス・オペレーション」において、高度な能力を有する数多くの国々のすぐそばに位置しているからです。北にはロシアがあり(北方領土に関する)対立が起きています。中国、そして北朝鮮と韓国など、日本の政治に介入しようと試みる国々に囲まれてもいます。

 また、他国だけではなく、例えば9条改正に関連し、国民投票によって利益をあげようと目論む軍事請負企業、武器システムなどがあるとします。こうした既得権益は、(規制など)彼らを止めるものが何もなければ、人々を(広告で)標的にし、有権者をあざむくために使えるだけの資金を投じるでしょう。

 英国居住者としての見解ですが、少なくとも私は英国の民主主義が、今や立証された事実ですが「違法にだまし取られた」様を目の当たりにしました。違法行為を行ったキャンペーン団体が罰金を課されただけで、何の軌道修正もされず、国民投票の結果は有効で、英国のEU離脱は現実のものとなっています。

 日本にとって、積極的、または受動的に軍事紛争に関わるのか否か、日本人であることの根本を問うような決断を行う場合、ある意思を持って行動する既得権益が存在するのなら、彼らの目論見は実現するでしょう。それが敵対する外国勢力であろうと、非道な企業であろうとも。既存の大手企業であったとしても、逃げ切れると判断すれば、実行するでしょう。

選挙がハッキングに遭うとは誰も想像せず
 日本は、世界で最も「つながって」いる社会です。一人当たりのソーシャル・プロファイリング、インターネット、電子メール、テキストメッセージや携帯電話など、全ての「つながり」が、最も高い国です。つまり、日本人は他国の人々よりも多くサイバー空間に暮らし、米国や欧州よりもデジタル・テクノロジーに繋がっています。

 このことは、多くの「クールなテクノロジー」を生むという面で素晴らしいことですが、同時にリスクも生んでいます。テクノロジーによって最も繋がっているのに、全く無防備です。その上、国の根本を問うような課題があり、その答えから利益を得ようとしている人たちがいるのなら、ありとあらゆる危険な計画が実行される事でしょう。

 これほど重大な事項に関して、日本がどう監視・監督、また防衛し、いかにして英国のEU離脱のような問題を防止するかを考えることは、賢明でしょう。

 英国での経験から言えることはこうです。問題が起きたことは証明でき、英選挙管理委員会が私や、その他の人たちの申し立てを認めました。情報コミッショナーが、違法行為が起きたことを記す証拠を入手し、悪意を持った者らの存在を突き止めました。それにも関わらず、国の行方を恒久的に変えてしまった問題の核である「国民投票の結果」は変わらないのです。

 当局には、結果を覆すだけの権限が与えられていません。英国のEU離脱を問う国民投票における最大の法的な欠陥は、組織的な不正行為が起きた場合や、詐欺的行為、意図的な操作行為、敵対する外国勢力からの介入に対応する術がなかったことです。

 こんなことが起きるとは予想だにしていませんでしたし、可能だとも思われていませんでした。選挙や国民投票がハッキングに遭うことなど、誰も想像もしていませんでした。日本がその根本に関わる決断を行うのなら、国民投票の実施などより以前に、悪意を持った何者かが、結果に影響を及ぼすことのできない枠組みを作ることです。

英国では、与党議員でありながら、民主主義を守ろうと、この問題に尽力しているコリンズ・デジタル・文化・メディア・スポーツ特別委員会委員長(参考:「フェイスブックが『偽情報拡散』のツケを払う日」)のような政治家が存在します。一方で日本の現政権は改憲が目的であり、更にはそれを可能にできる巨大広告企業も存在します。

ワイリー氏:日本のメディアは大きな影響力を持つ、わずかなキー・プレイヤーによって独占されています。メディア市場に多様性が存在せず、その事だけでも危険です。この中の一つの組織だけでも堕落すれば、大きな問題が起きるでしょう。

世界は少数者に権力が集中する独裁状態に向かっているのでしょうか。

ワイリー氏:そうとも言い切れませんが、既得権益を持つ何者か、または、敵対する国によって、票が絶対に影響されないよう対策を講じなければ、長期的な視点から見れば、選挙を実施すること事態の有効性が問われるでしょう。

 民主主義が機能するためには、人々が自由に、そして、事実に基づいた情報を得た上で判断を下せることを尊重せねばなりません。敵対する外国が、あなたの国を助けるどころか、破壊する目的で歪めた現実を広めることがあってはなりません。このことを許してしまっては、選挙を実施する意味はなく、選挙は単に「意味のない、手の込んだパフォーマンス」に成り下がってしまいます。

内部告発者を英雄視する西側諸国
 世界が独裁状態に向かっているのではありませんが、選挙の公正性が保てなければ、政府の公正性も、ビジネスの公正性も保てません。社会は腐敗で充満し、機能不全に陥った国家が誕生する事でしょう。

 選挙の重要性は、そこにあります。一定期間に一度、投票用紙に判断を記入し、時には行列に何時間も並ばされて、うんざりすることもありますが、このことこそが、私たちの社会運営の根本です。

 選挙は、守るべき最も重要なものの一つであると私は考えています。投じられる限り全ての資源を投入するべきでしょう。民主プロセスを守るためには、一切の疑問も受け付けるべきではありません。民主主義が崩壊すれば、社会全体も崩壊します。

 私は取材者として「内部告発者」の取材ほど、細心の注意が必要なものはないと考えている。西側諸国でWhistle Blowerと呼ばれる内部告発者の証言は、その告発内容が衝撃的であればあるほど、一時的であれ、社会は彼らを「英雄」として祭り上げ、惜しみない賞賛を送る。

 しかし、幾人かの内部告発者が、その後不可解な行動に転じていることもまた、見過ごすことはできない。未だロンドンのエクアドル大使館に立て籠もり続けるウィキリークス創設者のジュリアン・アサンジ氏然り、ロシアに亡命した、エドワード・スノーデン氏然りである。

 事象の全容がわからない早い時点で、むやみに内部告発者をもてはやす事はできないし、すべきでもないと私は考えている。

 「内部告発者」への取材に二の足を踏む私が、ワイリー氏の取材を敢行したのは、彼がメディアに露出し始めた当初、画面を通して得た印象が大きい。

 数カ月に渡るコンタクトの後、実際に対面したワイリー氏は、その印象と寸分違(たが)わなかった。前述の内部告発者らから感じた、情報開示の際の「影」の様なものを、彼からは微塵も感じなかった。

 このことは、何ら根拠のない、単なる取材者としての勘のようなものでしかない。また実際は、ワイリー氏には彼なりの目論見があるのかもしれない。しかし、数度の取材を通じて話した彼から悲壮感は全く感じられず、常に、無法地帯と化したサイバー空間と、自分が作り出してしまった「怪物」と闘い続ける、前向きな意志がまっすぐに伝わってくる。隠し立てすること、やましさの無いことの証明でもあるかの様に、衝撃的な体験を屈託なく語り、明るい。

 ワイリー氏が対峙してきたのはロシアという大国や、米政権の元幹部らや富豪、そして英国の資産家らでもある。しかし、未だ30歳にも満たないワイリー氏はひるむことなく巨大な権力と対峙し続け、各国政府のアドバイザーを務めたり、欧州委員会をはじめとする国際機関などで講演するなど、絶えず世界を駆け巡り、この問題に取り組み続けている。氏の行動力、志と勇気に敬意を評したい。

 ワイリー氏は12月1日付で、アパレル大手ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)のリサーチ・ディレクターに就任した。データ・サイエンティストとしての手腕を買われ、今後は同社でAIを駆使した持続可能性を追求して行くのだという。内部告発者として政府機関などと敵対し、また、自らが働いていた企業に都合の悪い真実を暴露した過去のあるワイリー氏を、世界的な大手企業が堂々と迎え入れたことに、欧州の懐の深さを感じる。


11月に行われたBusiness of Fashionイベントで講演するワイリー氏。ファッション・ブランドの好みを知ることで、人々の政治的な傾向がデータ解析できる現状などを話した。
 ワイリー氏の取材を通じて幾度となく自問したことがある。一連のCA社事件に類似する事象が仮に日本で起きていたとしたら、ワイリー氏が行ったような内部告発は、可能だっただろうか。

 権力者にとって都合の悪い真実を暴くという意味では、最近の日本では、森友・加計問題がCA社事件に相当するのではないだろうか。これまでに日本では、「都合の悪い真実」を伝えようとした人々がその後どの様な仕打ちを受けてきたか。ワイリー氏の内部告発後の状況とは、真逆である。

 残念ながら日本は現在、政権にとって都合の悪い事実を伝えようとした告発者が、告発の数日前、大手新聞により人格をおとしめられるような記事を掲載され、その後も政治家から嫌がらせを受けることがまかり通る社会だ。

 また、生命の危険を顧みず、社会に貢献するためリスクを冒し、取材を続けるジャーナリストを「自己責任」などという、稚拙で卑怯な言葉で切り捨てることがまかり通る「見て見ぬ振りを是とする社会」でもある。

 この現状では、ワイリー氏のような内部告発や、米英のジャーナリストらが必死に行ってきた、権力者の横暴を食い止めるための攻防は、日本では期待できないだろう。

 ワイリー氏に「あなたが公の場で告発を行った18年3月、日本では自らの命を絶ち、権力者の不正を伝えた『告発者』の存在があった」と話すと、真剣な眼差しを向けていた。

 米英、そしてワイリー氏が生まれたカナダでは、民主主義を「自分たちの責任」として捉え、考え抜き、戦い続ける市民が多数存在し、それを支援する社会の声が時に大きなうねりとなることに、羨望の念を禁じ得ない。

 日本は、自分たちの未来に責任を持てるのか。


このコラムについて
ロンドン発 世界の鼓動・胎動
人種や宗教など、極めて多様性に富む都市、ロンドン。現地のフリーTVディレクター、伏見香名子氏が、ロンドンから世界の「鼓動」を聞き、これから生まれそうな「胎動」をキャッチする。

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/100500021/011000030/


「これは戦争だ」心を操る大量破壊兵器
ロンドン発 世界の鼓動・胎動
内部告発者クリストファー・ワイリー氏ロングインタビュー(中)

2018年12月4日(火)
伏見 香名子

 英国におけるデータと民主主義をめぐる攻防では、今年3月、ケンブリッジ・アナリティカ社(以下CA社、後に破産)について暴露された大スキャンダルに端を発して以来、現在も刻々と事態が動き続けている。

 個人情報大量流出問題などで揺れるフェイスブック(以下FB)のマーク・ザッカーバーグCEOに対し、フェイクニュースなどに取り組む英下院・特別委員会が行った度重なる招致・証言要請にもかかわらず、氏は結局11月27日のヒアリングを今回も拒否。自身の出席はおろか、委員会の求めたビデオ・リンクを通じた証言さえも拒んだ。


特別委は27日、この画像に「ザッカーバーグ氏はどこに?」とツイートし、痛烈に皮肉っている(写真:英下院提供Gabriel Sainhas撮影)
 11月24日には、この問題を当初から詳報してきた英オブザーバー紙が、ザッカーバーグ氏を含むFB幹部が交わした、データとプライバシーに関する社内極秘eメールなどの資料を、特別委が入手したと報道。ザッカーバーグ氏ら幹部がCA社事件が起こる何年も前から、FB上の個人情報の取り扱いについて、どのような方針でいたのかを示す重大な資料と見られている。

 この資料はFBとの法廷闘争に及んでいる第3者の米ソフトウェア会社のオーナーが所有しているものだ。オブザーバー紙によれば特別委は、この人物のロンドン出張の際、滞在先で資料の提出を迫った。しかし、裁判への影響を理由に拒否したため、議会権限で彼をホテルから議会へ「エスコート」の上、提出しなければ罰金または禁固刑の可能性があることを提示し、資料を入手したと報じている。

 米CNNなどは、訴えが起こされているカリフォルニアの裁判所が、FBの要請によりこの文書を非公開にすることを認め、今年10月、報道機関数社による開示要求を却下したと報じている。これに対し特別委側は、資料は英国内で入手されたものであり、米国の法は及ばないという立場でいる。本稿執筆現在(11月27日)、特別委は文書の内容を近日公開する姿勢を崩していない。

 特別委がここまでの強硬な手段を取ったのは、元CA社の内部告発者、クリストファー・ワイリー氏に対しても取られた、この問題に関するFB側の不誠実な対応が背景にあることは否めない。

 「銀河英雄伝説」と言う、同名のSF小説を原作として、1980年代に制作されたアニメがある。作品中、情報戦のエキスパートが、「情報」の何たるかを若い兵士に諭すシーンがある。

 いわく、世の中に流布する情報には必ずある種のベクトルがかかっている。世論を誘導するため、あるいは、願望を全うし、自らを利するために情報を流している「発信者」の存在がある、と言う趣旨の話だ。

 その情報発信者が誰かわからないときは?との問いにこの中佐は、「犯罪が行われた時、最も利益を得た者が真犯人」だと返す。

 トランプ米大統領の選出や英国のEU離脱、さらに、この事によって生じた米英社会の分断と混乱が、CA社の内部告発者、クリストファー・ワイリー氏の告発通り、苛烈な情報戦の産物であるならば、この結果により「利益を得た真犯人」は、誰か。

 ロシアによる情報戦関与の疑いや、CA社を徹底的に追い詰めるべく、1年以上も周到な準備を行った経緯。さらに、関係者が思いもよらなかった、FBによる過剰な反発や、SNSを主戦場として繰り広げられている「情報戦争」について、引き続きワイリー氏に聞く。


予想外だったFBからの反撃と嘘
内部告発を行う事は、並大抵の決断ではなかったと思います。一方で、事業内容を外部に漏洩しないと言う社内規定や守秘義務があったとしても、それを越える法の存在に守られたと、以前うかがいました。

クリストファー・ワイリー氏(以下ワイリー氏):その通りです。英米では、いかなる契約も、企業、あるいは政府の犯した犯罪行為を告発することから、守る事はできません。法的見解からすれば、違法行為が起きたのなら、守秘義務契約があったとしても、違法行為を告発する目的で、その契約を破ることは可能です。

 基本的には、民間契約が法律より優先される事はあり得ません。ただし、それでも社員が提訴されないと言うことではありません。公益にかなわない、または、真実ではない、などという理由をつけて、訴訟を起こすことも可能でしょう。この件に関して敗訴するという懸念はなく、むしろ、ずっと継続して訴訟を起こされるのではないかという心配がありました。

 覚えておいていただきたいのですが、この会社は富豪が資金源であり、彼らが「弁護士軍団」を送り込むことは容易です。このため、ガーディアン紙やニューヨーク・タイムズ紙、そして、英国のニュースチャンネル、チャンネル4と共同で動く事は必須でした。全ての事象を詳細に記し、事実を幾多の証拠で裏付けする事で、訴訟すら起こせず、訴えが即座に棄却される状況に追い込みました。

 このために、多くの報道機関が参戦し、チャンネル4ニュースのおとり取材(今年3月のチャンネル4ニュース)によって、CA社CEO(最高経営責任者、当時)のアレクサンダー・ニックス氏が、多くのことを認める証言をカメラに収めました。脅威はありましたが、それを現実にさせないよう、事実が全て記録されるよう、あらゆる手を尽くしました。

準備にはどの位時間をかけたのですか?

ワイリー氏:1年以上です。まず、米英の2大紙が、共同執筆にあたり合意しなければなりませんでした。その上、数多くの証人から証言を得る必要があり、私が多くの人たちを紹介しました。その全ての人たちが、カメラの前の証言や、自分に関連のある証言を拒みました。

 当然のことながら、全員がスティーブ・バノン氏を恐れていたからです。当時、バノン氏はホワイトハウスの米国家安全保障会議におり、大統領上級顧問でした。つまり、強大な権力者です。人々はバノン氏と富豪だけではなく、米政府の巨大な圧力による追求を恐れたのです。

 このため、匿名で証言を得ることさえ、非常にゆっくりとしたプロセスでした。しかし、徐々にそれは集まっていきました。同時に潜入オペレーションを開始し、CA社のCEOに、彼らのとてつもなく非道徳的、かつ、違法な運営を認めさせました。(目的達成のために)売春婦を使うことや、贈賄の現場をでっち上げ、密かに撮影すること。このような違法行為や、更なるデマの拡散を行なったことを、(隠し)カメラの前で認めさせました。

 彼らは偽情報を流し、政治的な議論に貢献することではなく、勝つ事だけを重視したことを認めました。ここにたどり着くには、膨大な証拠を集め、詳細を詰めるのに1年かかり、ガーディアンはファクトチェックを3回行うほどの徹底ぶりでした。その情報について、今度はニューヨーク・タイムズが同様のチェックを繰り返したのです。

 このことによって、少なくとも私の告発に関しては、揺るぎない立場を作ることができたと思います。世界有数の新聞2紙が、3度、4度と、互いのファクトを、全てが事実であると確認しあったのですから。その上で、公の場にあの様に大きく出たことで、バノン氏やCA社がどれほど報復しようと試みてもあまりに露出が大きく、関与を疑われずに彼らが行動を起こす事は、不可能でした。表に出ることで、安全を確保したのです。

 私にとって興味深かったのは、むしろFBの反応でした。CA社よりも遥かに多く、FBが攻撃を試みました。これは、私たちが予想もしなかったことでした。私たちは報道が出るかなり前から、FB側が建設的、かつ生産的な回答を用意できるよう、連絡していたのです。記者や報道機関の誰にも、FBを攻撃する意図は全くありませんでした。なぜなら、FBにはプラットフォームとしての責任があったとしても、不正行為自体には加担していなかったからです。

 しかし、彼らが背景の全て、そして、その全てが真実であると知っていたことで、彼ら自身も加担していたことになりました。FBはガーディアン紙に対し、名誉毀損で法的措置を取ると脅し、すべてを否定しました。同時に、彼らは私にも文書で「あなたは米国でハッカー行為など、連邦法違反行為を行なった」として、FBI(米連邦捜査局)に通報すると知らせてきました。

 その手紙には、指摘された事実が全て真実だと明記されていたのです。つまり、FBという会社はガーディアン紙に対し「この内容は誤りであり、報道するな、すれば訴える」と脅す一方で、内部告発者である私には「この事を公表するな、するなら警察に通報する。なぜなら、内容は真実だからだ」と言ってきたのです。しかも、この二つのことを連絡してきたのは、全く同じ弁護士です。

 このことで、問題の本質が明らかになったと思います。すなわち、(情報操作など)何が起きているかを完全に熟知しているプラットフォームが存在し、それが明るみに出そうになると、彼らはジャーナリストや内部告発者を脅し、情報を遮断しようと試みたのです。

 全く予期しなかったことは、CA社よりも、FBと戦う時間に費やした時間の方が、長かったということです。とても奇妙な状況でした。私たちは、常識の範囲以上の時間を彼らに与え、報道が出る前に回答する機会を与えていたのですから。

 私たちはFBから問題の解決策を提示されるものだと思っていました。それどころか、彼らは全てを否定し、脅しをかけまくりました。しかし、米英2大紙がこれを事実として報じ、FBの弁護士が、内部告発者に対して「これは事実だ」と認めてしまっては、報道された頃には否定はできませんでした。1週間後、FBは世界中の新聞に謝罪広告を掲載しました。ほんの1週間前には、ガーディアン紙を訴えると言っていたにもかかわらずです。

FBからの執拗な脅し
あなた自身のFBアカウントは、どうなりましたか?

ワイリー氏:私は(FBから)追放され、世界で数少ない、FB追放者の1人となりました。FBはインスタグラムを有していますから、インスタもダメですし、WhatsAppも使えなくなりました。携帯やオンラインで使っていた、FB認証を必要とするアプリも使えなくなりました。


ワイリー?のFBアカウント停?通知のスクリーンショット。「あなたのアカウントは無効となりました。質問や懸念などは、ヘルプ・センターへ」と記されている。クリストファー・ワイリー?ツイッターより
 FBがしようとしたことは、問題を認識し、解決策を提示することではなく、当初は内部告発者である私や、私の信頼性への攻撃を試み「彼は悪い人間で、私たちのシステムをハッキングした、システム上の問題はない」と主張していました。しかし、彼らが、報道の何年も前からこうした問題を知っていたという十分な証拠はありました。CA社に所属していた人たちを雇用し、心理プロファイリングについて、特許を取ろうともしていました。プラットフォームで何が行われていたか、当然知っていたのです。

 FBは私に責任を被せ、自分たちは被害者を装おうとしました。私を追放することで、報道の主語をFBとCA社ではなく「私」に転じようと試みたのです。しかし、誰もそんなたわ言は信じませんでした。私を追放した1週間後、(当時の)英デジタル・文化・メディア・スポーツ大臣が議会で「FBが内部告発者を追放することなど、言語道断だ」と発言しました。

 FB社には過ちを正し、社会に貢献する機会が与えられていたのに、彼らはあらゆる場面で、関わり合いのある全ての人たちを脅し、英議会や政府が「言語道断だ」という見解を発表した後も、私を追求し続けました。私は継続して悪者であり、彼らは被害者という立場です。

 FBは年間、数十億ドルを稼ぐ企業です。それなのに、何ら責任を取ろうとしていません。このことが、最も問題であると私は考えています。彼らには、過ちを止める力があります。幾多の社会的、政治的な交流が起こり、情報が飛び交う場を彼らは作り、私たちの文化や社会に対し、多大な影響力を持っています。

 内部告発者を犯罪者扱いし、同時に自分たちのプラットフォームを改善することを拒否するなど、とても器が小さいと感じます。私個人も、英政府と同様の見解です。言語道断だ、と感じています。

(大統領選などに関する)ロシアの介入には、どの時点で疑いを抱き始めましたか?

ワイリー氏:私がSCL、後のCA社で働いていた頃、特にバノン氏が責任者の1人になってから、数多くのロシア人が会議に出席し始め、プロジェクトに参加し始めました。私たちのデータ・セットが、ロシアの国家プロジェクトとして、オンライン上の心理プロファイリングを担当していたチームによって、アクセスされるようになりました。

 私たちの会社がトップ心理学者として雇用した人物は、同時にサンクトペテルブルクで、ロシア政府を資金源とする心理プロファイリング・プロジェクトにも携わっていました。この人物は(同時期)ロシアに渡航しています。(当時)プロファイリング用のアルゴリズムが、米国の有権者データを用いて作られていましたが、同じデータが、ロシアでもアクセスされていたのです。

プーチン大統領と旧知のCEOにもデータを送っていた
 ロシアの大手企業の一部の幹部が私たちを訪れ、こちらの幹部と面会を始めました。こうした企業に対し、SCLやCA社の偽情報拡散や、選挙で「人々の信頼を失わせるプロジェクト」についてのプレゼンを行なったりもしました。

 CA社が持っていた(有権者などの)データを、プーチン大統領と旧知のロシアの石油会社のCEOに送ってもいました。私たちの会社は、その後(ロシア疑惑を捜査している米国の)ムラー特別検察官によって、ロシアの諜報機関と関連する、あらゆる組織で情報収集を行ったことが判明し、起訴された人物も雇用していました。

 会社が行なっていたことに興味を持っていたロシア人は、他にも大勢いました。情報を集め、データにアクセスしていました。情報・偽情報キャンペーンとは何か、ロシアは何をしていたのかを検証すると、多くのことはFB、ツイッターなどSNSのプラットフォーム上で起きていました。

 CA社が作り、プロファイリングを行なったデータは、偽情報を使ったターゲティングに重大な役割を果たしていました。FBがこのことを問われた時、彼らはデータについて「その後どうなったのかわからない」としていましたが、ロシアの大規模なプロパガンダに流用されていたのかもしれません。このことは大きな問題で、私たちの選挙の安全性が、とてつもなく脆弱であることを浮き彫りにしています。

 FBは自分たちが何をしていたか知っていましたし、プロジェクトに関わっていた人たちを、後に雇用もしています。FBはこのことを問題視していませんでしたし、プロファイリングについて、メディアに話してもいました。でも誰も、何も対策を講じませんでした。違法行為はおろか、非常に繊細な個人情報を、敵意を持った国家に渡してしまうことなど、とんでもなく非道徳的なことを行うことが、いかに容易だったかを示していると思います。

選挙などのキャンペーンにおいて、人々を動かすために最も有効なメッセージはどんなものですか?

ワイリー氏:人々の世の中の見方は多様で、様々なメッセージに対する反応も人によって異なりますから、ある一つの「特効薬」は存在しません。人々についてデータを集めることの究極の目的は、あなたが作ったアルゴリズムによって、例えばA、B、Cという特定のメッセージに反応する人たちを選別する事です。

 どのメッセージが最も有効であるか、ということに関しては、ある一つのメッセージだけが様々なグループに有効である、ということではなく、答えは常に「状況による」のです。

 例えば、陰謀論やパラノイア的思考に弱く「国境に秘密の軍隊が存在する」「オバマは銃を取り上げに来る」「市民は監視されている」などという馬鹿げた偽のメッセージを、他の人々に比べ、より信じてしまうある特定の集団が、CA社のターゲットでした。

 一方で、極左思考の人たちを取り込むメッセージも存在します。こうしたメッセージは、極右の人たちには響きません。十分な情報さえあれば、人によって、様々なメッセージを送ることが可能となります。

こうしたことは「デジタル洗脳」と呼べるのでしょうか。

ワイリー氏:「洗脳」の定義によると思います。「洗脳」が、ある人の世界観を本人に気づかせないまま激変させ、行動までも変えさせてしまうことを意味するのなら、CA社が行なっていたのはまさしくそれです。

 陰謀論や偽情報を、それを最も信じてしまう脆弱性を持った人たちの間で拡散し、その上で、その人たちが、真実でない事柄に関するイベントやグループに参加し、集団で抗議活動を行うよう仕向けました。こうしたイベントに参加してしまった人たちは、もし最初からCAのような会社や、ロシアによって資金を投じられたオペレーションの存在を知っていたら、どうだったでしょう。

 その人が、こうした情報を信じやすいからと意図的に選ばれ、彼らが怒りを感じ、抗議活動を起こすため、ひいては、社会を分断する目的で情報を流されたと知っていたのなら、同じ行動を起こしたのか、疑問に思います。

 こうした前提で、同じメッセージを受け取っていたとしたら、彼らは行動を起こしていないでしょう。その人たちは、騙されているのですから。誰かを騙すには、騙しているという事実を隠さなければなりません。「洗脳」が人々を本質的に欺き、長期に渡って、その人たちの思考や行動を激変させることを意味するのであれば、答えはイエスです。

ワシントンに核爆弾を投下する必要はない
ジェイミー・バートレット氏(参考「狙われる有権者たち、デジタル洗脳の恐怖」)が指摘していたことですが、現在「デジタル戦争」が起きていると思いますか。

ワイリー氏:まさしくその通りです。米国の軍事ドクトリンには、「第5次元の戦場」(=サイバー)というものが存在します。陸・海・空・宇宙、そして情報です。軍事オペレーションにおいて、情報は第5次元の戦場と呼ばれています。

 オペレーションで、陸や空を制すること同様、情報の流れそのものを制することは、目的達成をより容易にする環境を作ります。銃弾や爆弾を使わないからと言って、武器が使用されていない、とは言えないのです。軍事において情報は、非動的武器と呼ばれ、この武器はターゲットを攻撃しますが、敵の目的を阻止するため、あるいは、自己の目的を達成するために、運動エネルギー弾などは使いません。

 情報の役割は、敵の思考や行動のパターンを変えることです。「敵」とは、反対勢力の司令官かもしれませんし、テロ組織の勧誘係かもしれません。ロシアの場合は、市民のことを指すかもしれません。敵の影響力を封じ込めたいのなら、この場合は米国ですが、人々の団結をまず破壊して社会を壊す。そして、理性のない行動を取り、気の触れた人たちをトップに選出させる。もしくは、あなたの政治的目的を支援する人物を選ばせる。成功すれば、勝者はあなたです。

 ワシントンに核爆弾を投下する必要はありません。人々を取り込み、あなたの目的に合致する人物を選出させれば良いのです。どちらにしても、あなたは勝つことができます。敵の土台を壊し、目的を達成できるのですから。これが情報戦の基本であり、問題の核心ですが、SNSのプラットフォームはもはや、友達とチャットしたり、猫の写真をシェアできる場ではありません。新しい「戦場」なのです。

 ハッキングなどそうした側面ではなく、今や戦闘はサイバー・スペースで起き、軍隊のみならず、一般市民を欺き、操るための情報が用いられることを理解しなければなりません。これは、戦争なのです。

 「大量破壊兵器」の定義が、「広範囲に渡り世代を超えて長期間続く、破壊行為を行うこと」だとします。トランプ大統領のような人物を選出させること。あるいは、違法行為や操作を通じ、英国のEU離脱を成功させるという、国の政体を恒久的に激変させることは、ほぼ間違いなく「広範囲が長期間、破壊的な損害を被る」ことでしょう。

 基本的な政体を変化させる。最も力のある国の大統領や、社会そのものを自滅させる。一国に、自らを攻撃させる。これらのことは、「大量破壊兵器」による被害であり、実際、起きている事です。爆発物や火ではなく「マインド」(思考・心)を利用する、認知的戦闘です。あなたのマインドが標的でもあり、同時に、他者に危険な情報を伝達する媒体ともなるのです。そして現状、そのことに、何の対策も講じられてはいません。

(「下」に続く)

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/100500021/112600029/


「トランプという怪物」を作った会社
ロンドン発 世界の鼓動・胎動
内部告発者クリストファー・ワイリー氏 ロングインタビュー(上)

2018年11月16日(金)
伏見 香名子

 国の行方を左右する選挙や国民投票で、カウンター・テロの技術が、投票を左右するために、有権者を標的に応用されていたーー。まるでスパイ映画のようなシナリオが、米英で「実演」されていた。「私はスティーブ・バノンの心理兵器を作った」。英国の大手紙・オブザーバーに、こんな衝撃的な見出しが躍ったのは、今年3月のことだ。

 トランプ米大統領の選出や、英国のEU(欧州連合)離脱を決めた国民投票において、有権者を標的にしたデジタル戦略が繰り広げられた。主戦場はSNS(交流サイト)で、背後にロシアの関与があるのではないか。このように囁かれてきた数々の疑惑を現実のものとして告発したのは、1人のデータ・サイエンティストだ。

 フェイスブック(以下FB)から8700万人分もの個人情報を不正に取得し、有権者の意識を誘導するデジタル戦略を繰り広げていたケンブリッジ・アナリティカ(以下CA社・後に破産)。告発者はこの会社のリサーチ・ディレクターだった、カナダ出身のクリストファー・ワイリー氏(29)だ。

 事件の概要は前稿(フェイスブック騒動、驚愕の「デジタル情報戦」)をご参照頂きたいが、ワイリー氏が英議会・下院特別委員会に提出した122ページに渡る証拠文書や、同委員会での実に3時間半に及んだ証言などによって初めて、問題の詳細や深刻さが浮き彫りになったと言われている。

 告発によれば、CA社の前身の会社は元々、過激派の弱体化を目的とした研究を行なっていた。しかし、超保守派でトランプ大統領最大の献金者とも言われた富豪、ロバート・マーサー氏からの資金提供を受けてCA社として生まれ変わり、かのスティーブ・バノン氏が責任者として指揮を取り始めてから、会社が激変したという。

 2016年の米大統領選において、人々が移民などに対する、耳を疑うような攻撃的なスローガンを掲げたのも、実はこの会社で行われた研究が発端だったと、ワイリー氏は告発した。

 同氏が告発したのは所属していた会社だけでなく、米大統領上級顧問だったバノン氏や、背景での関与を疑われた大国ロシアである。告発を準備していた段階から何度もCA社による法的措置を取られた上、FBからは追放された。この事だけでも、ワイリー氏の告発による影響力の大きさを物語っている。

 世界各地での講演などで多忙を極めるワイリー氏に、今回単独ロング・インタビューを敢行した。まず、CA社は何を目的とし、何をしたのか。告発に至るまでの経緯を聞いた。


CA社は偏執的なメッセージに弱い人を標的にした
2016年の米大統領選でのご自身の役割について、教えてください。

クリストファー・ワイリー氏(以下ワイリー氏):私は当初、防衛研究、サイバー戦・情報戦、また、国家安全保障研究プロジェクトを専?とする、CA社の前?の会社に就職しました。

 この会社はその後、米国の富豪、ロバート・マーサー氏によって資金提供を受けました。そして、スティーブ・バノン(元トランプ大統領首席戦略官・上級顧問)が、後にCA社として知られることになった、その会社の責任者(の1人)に任命されました。CA社は、トランプ陣営の主要アドバイザー、そしてオーガナイザーの一つとなったのです。

 彼らはFBから違法に取得したデータを基に、統計学的モデルを構築しました。これを用い、陰謀論や偏執(パラノイア)的なメッセージに弱い人々や、神経過敏な人々を標的に、ドナルド・トランプを支持するムーブメントを作り出すことが目的でした。

過激派組織の影響力を下げるのは、やり甲斐があった
最初に勤めたのは、どんな会社だったのでしょうか。

ワイリー氏:私は当初、SCLグループという会社のリサーチ・ディレクターに就任しました。SCLグループは英国の防衛請負業者で、米英の軍事部門の研究などを、心理・情報オペレーションを用いて行っていました。

 多くの場合、過激派に対峙し、テロ組織の活動に潜入したり、また、あるテロ組織が、なぜ世界の特定の地域で効果的なのか、どのように新兵の勧誘を行うのか。そうしたことを特定していました。

 私が雇用されたのは、例えばIS(自称イスラム国)などの組織の場合、オペレーションの多くがオンライン上で組織されているからです。皮肉なことに、米英軍は、フォーラムやチャットグループ、携帯アプリなどを用いた、とてもお粗末なテロ集団に遅れを取っていました。

 
 私がSCLで始めた研究は、国内外を問わず、ある特定の人口集団の中で、どんな人たちが最も過激派集団の勧誘に弱く、操作されやすいのかを知ることでした。そうすることで、介入も可能になり、参加を阻止することができます。

 更に、すでに過激派に所属している人たちを標的にし、組織を辞めさせるか、組織の団結力を弱め、運営を弱体化させることに効果的なメッセージを特定することもしていました。

SCL社に就職した当初は、どんな仕事をしたかったのですか?

ワイリー氏:CA社の前身だったSCLに雇用された際は、まず研究内容が興味深いと感じました。様々な文化について学ぶ機会があり、データ・サイエンティストとして日々関わることのない問題についても触れることができました。

 過激思想や、その前段として、過激派に最も取り込まれやすい人たちのプロファイルを、数学やデータを用いて作ることができるのか。データ・サイエンティストとして、とても興味深い問題だと思いました。軍の仕事というのは、外的、また、時には内的脅威からも、市民を守ることです。データ、インターネット、そしてSNSを使うことで、その脅威を即座に特定し、問題が起こる前に介入する事が可能です。

 参加してしまう前に、どんな人が最もテロ組織に加入してしまいやすいのか、また、もし既に参加してしまっている人なら、誰が最も早く爆弾を作るのか、ということなどを特定するのです。

 軍(の目的)は介入し、過激派組織の影響力を受動的に、必ずしも暴力を使わずに下げることです。軍の視点からは2つの選択肢が存在します。ISのような組織の場合、ドローンなどを使って爆撃し殺害すること。あるいは、勧誘やコミュニケーション、また、組織内の文化的・社会的団結力に介入し、効果を下げることです。

 後者のアプローチであれば、テロとの戦いにおいて、少なくとも私たちの考えではドローン攻撃に比べ、巻き添え被害を極力、起こさずに済むと思いました。しかし皮肉なことに、この研究に関する「巻き添え被害」は大きく、米英国民に使用され、トランプ大統領の選出、そして、英国のEU離脱という結果を招いてしまったと考えています。

バノンが仕掛けた「文化戦争」
働き始めた当初は、良い動機しかなかったということですね。

ワイリー氏:はい。当初CA社の前身に入社した多くの人たちが、尊敬に値する理由で、研究を行っていました。問題は、富豪であるマーサー氏が社に資金を投じ、バノン氏を責任者にしてから起きるようになりました。

 バノン氏にはこの会社をどの様に利用するか、明確な目的がありました。「文化戦争」を起こすことです。文化戦争、あるいはどんな戦争でも、戦うには武器庫が必要です。「戦争」が文化面で起きる場合、開発の必要があるのは、情報面の武器です。彼がこの社で働きたかった理由は、開発されたものがオンライン上で使用された武器だったからです。

 目的は人々を欺き、操り、抑圧・支配すること。そのため、ある事柄をより信じてしまう人々を特定して標的にし、操作された情報を「武器」として流す。これこそが、バノン氏が「文化戦争」のために使用を望んだ技術です。会社は元々、この技術や研究を用いて国を守ろうとしていたのであり、市民を攻撃することが目的だったのではありません。

バノン氏はなぜ「文化戦争」を起こしたかったのでしょうか。

ワイリー氏:バノン氏には、歪んだ「世界のあるべき姿」についての思想があるのです。彼は「人種」について、また「強い男性が支配すべき」という独自の見方、そして「権威主義」について、すなわち「国が統治されるべき姿」についても、見解を持っています。

 当時は「非主流派」だった彼の考えが主流となるには、このような思想を独創的にプレゼンし、社会に注入しなければなりません。彼には富豪の資金を有するという利点がありました。つまり、何百万ドルもの資金を投じてSCLの様な企業を発掘・買収し、キャンペーンを始めるために利用することができたのです。

オンライン上のナイフを作ってしまった
あなたが会社にいた2年間、どの時点で「何かがおかしい」と感じ、なぜその様に感じる様になったのですか?

ワイリー氏:バノン氏が入ってきて、研究の目的が変えられ始めた時です。社の指示や、優先事項が変化し始めました。研究は米国で始まり、研究チームが米国で何をし始めたのかを目の当たりにした時、その目的に疑問を抱きました。

 
 すなわち、なぜ米国民に「人種差別思考」を、しかも攻撃的に浸透する必然性があるのか、などということです。過激思想や人種差別思想から脱却させるのではなく、逆の方向、つまり、人々を過激化し、差別的に思考を誘導することです。

 米国で設立されていた研究プログラムを見て、私たちが当初しようとしていたことから逆行していることを知りました。ナイフを例にしますが、料理人はナイフを使って、ミシュランレベルの食事を作ることができる反面、殺人の武器として使用することもできます。私たちは、オンライン上のナイフ(=武器)を作ってしまったのです。

 バノン氏は、これを防御ではなく、攻撃目的の武器として使用しました。私はこのことが非常に問題だと感じました。特に、研究室で行われた実験用の動画を見ると、実験の初めには普通だった人たちが、終わる頃には人種差別的なスローガンを、あたかも普通のこととしてわめき散らしていました。

 この有様を見て私は社の新しい幹部に対し、この会社の目的が、当初の目的に即しているのなら、こんな実験には意味がないと問題提起しました。しかし、研究は継続されることになり、私は社を辞めました。私が辞めた直後、このことを問題視したチームの第一世代の社員の多くも、退社しました。自分たちが作り始めたものが、全く別のものに変容してしまったからです。

具体的な時期を教えてください。

ワイリー氏:「入社」の意味にもよりますが、社に所属していたのは2013年と2014年です。(米大統領選の)予備選が始まりかかっていた2014年の終わりごろから2015年、テッド・クルーズ候補やドナルド・トランプ氏が出現した頃、退社しました。

 社が悪い方向へ転げ落ちた例をお話ししますが、米国ではなくアフリカのある国のことです。市民に選挙で投票させない目的で、人々が生きたまま縛られ、焼かれる姿や、喉を切り裂かれる場面などを撮影した動画を流していました。投票に向かうなら、あなたがこうなる、というメッセージです。

 テロ組織の勧誘や、教会やショッピング・モールでの自爆テロを阻止する目的で、こうした動画を流すことはまかり通るかもしれませんが、先程の例では、人々の投票する権利を、脅迫することで奪っているのです。米国のみならず、他の国々で行なっていることに非常な嫌悪を感じ、私の良心に照らし、あの会社に留まることはできませんでした。私以外の多くの人たちも、同様に感じていました。

人々を人種差別主義者に変える研究
 米国で起きたことは、当然大統領選の結果もあり、地政学的にも大きく注目されています。しかし、私が酷いと感じた、人生で見た中でも最も吐き気を催したものは、あの会社が流した動画です。人々が溝で、血を流しながら死にゆく様を映していました。陰湿で、悪魔の様な語り口を使い、見ている人を脅したのです。こうした動画をオンラインで流し、有権者が投票に行かない様に仕向けました。

 もう一つ、侮辱的だと感じたのは「これはアフリカだ。自分たちは何をしても構わない」という、人を人とも思わない、社の態度です。米国で行なっていたこと、つまり、いかにして人々を人種差別主義者にするか、また、人々に偽の事象を信じさせるというという研究まで目の当たりにしては、そこで働き続けることを、正当化はできませんでした。

 私はこうしたプロセスを経ましたが、私だけではなく多くの人たちが、私が辞めた後、すぐに退社しました。皮肉にもこのことが会社にもたらしたのは、社が行なっていたことを容認できた、新しい社員を集めるチャンスでした。結局、奇妙な形で会社は存続し続けたのです。

CA社にいたら米社会を破壊していた
良心の呵責にもかかわらず、社に留まっていたとしたら、どんなことをしていたと思いますか?

ワイリー氏:SCLに入った当初そして、CA社に変わった時、私は研究部門のディレクターでした。私の仕事は、社で行われていた数々の研究プロジェクトの優先順位を定め、体系化することでした。スタッフを選び、どんな知識を得るか、目的を定めました。また、データ・サイエンスの側面から、集めたデータを用いて、クライアントのプロジェクト目的に即した、統計的な型を作る事にも携わりました。

 私が辞めた理由の一つは、米予備選が始まった頃、社が人々をいかに「人種差別化」するか、という研究を行う事のみならず、「受動的に学ぶ」段階から、人々を騙し、欺き、操作する目的のコミュニケーションを通じ、文明社会に適合しない考え方をまき散らすという「攻勢」に転じたからです。

 CA社に留まっていれば、私はバノン氏の「人種差別主義を基盤としたムーブメント」に、加担していたでしょう。(ロシア疑惑を捜査している)ムラー米特別検察官によって、ロシアのエージェントとして起訴された人たちにも、加担してしまったでしょう。攻撃的な外国組織と共に、米社会を破壊したでしょう。

 この全てのことに、私の良心は耐えきれませんでした。あのまま継続して勤務することは、米英やCA社が関わっていた国々における民主主義を攻撃することであり、良心に照らし、そんな事はできませんでした。

2016年米大統領選の結果を見て、どう感じましたか。

ワイリー氏:とても非現実的な光景でした。両者の関わりが公になる以前から、CA社はトランプ陣営と共に動いていたのです。当時、人々が「奇妙な語り口だ」としていた「壁を作れ!」や「(米政府の)どぶさらいをする!」また「闇の国家が人々から全てを取り上げており、みんなを監視している」などというスローガンは全て、CA社が初期の頃行なっていた研究から生まれたもので、鮮明に記憶しています。

 こうした報告はバノン氏に上げられ、彼からトランプ氏に渡されました。米国のニュースを見るのは、私には奇妙なことでした。なぜなら、世間はトランプ氏が言うことを笑ったり、「気が触れている」と評していました。こんな埒もないことを言って、勝つ道理がないと思われてもいました。

 私はそれを見ながら「いや、そうではない。もし、適切に標的とされれば、どれだけの人たちがトランプ支持に傾くかを、わかっていない」と思いました。(メディアなどが)トランプ氏や聴衆を馬鹿にすればするほど、(トランプ氏の発言を)好ましいと感じ、聴衆は(メディアから)自分も馬鹿にされていると感じ、トランプ攻撃が起こる度、彼の基盤がどんどん固まって行きました。攻撃は、トランプ氏を助けたのです。

 この事はとてももどかしく、私は民主党陣営に警告を試みました。しかし、ヒラリー陣営はあまりに自信に満ち、誰もトランプ氏の勝利を見抜く事は出来ませんでした。「違法で恐ろしく非道徳的なことをしているかもしれないが、どうせ勝たないのだから、問題はない」と言う態度でした。案の定、彼は当選しました。そこで初めて人々は驚愕したのです。

 私にとってあの事は「トラウマ」と言う言葉がふさわしいと思います。何も、なす術はありませんでした。ちょうどその頃、英国の大手紙がトランプ陣営とCA社がしていたことについて、情報を共有しないかと持ちかけてきました。トランプ氏選出の数ヶ月後、当初は匿名の内部告発者として、そして後に実名の情報提供者としての活動を始めました。

フランケンシュタインを作ってしまった
自分が「何を」作ってしまった、と感じましたか?

ワイリー氏:陳腐な言い草ですが、私は「フランケンシュタイン」を作ってしまったと感じました。興味のあることを研究しているうちに、想像もしていなかった方向に物事が進み、怪物を作ってしまった、と言う意味です。

 しかし、その時点で既に会社は乗っ取られ、バノン氏が責任者であり、社は米国で運営され、トランプ陣営に設置されていました。私には、どうすることもできませんでした。

 問題はトランプ氏が勝利する前に、人々があの会社が何をしていたか、真剣に捉えていなかったことにあります。なぜなら、トランプ氏が勝利するなど、誰も想像だにしていなかったからです。ブラック・スワン(注:マーケティング用語・事前に予測不可能な事態が起きてしまい、衝撃が大きい事象のこと)とも呼べるかもしれませんが、前例のないことが起きてしまいました。

 人々に警鐘を鳴らそうとしても、無駄でした。「それは奇妙なことだけど、どうと言うことはない。どうせ、彼は勝たない」という反応ばかりで、苛立ちを感じました。彼が勝っただけでなく、実際大統領になったことには「非現実的」という言葉しか思い浮かびませんでした。

 多くの人も同様に感じたでしょうが、私にとっては特にそうでした。自分の働いていた会社の研究報告書に出ていた言葉を(トランプ氏が)発していたのですから。この研究こそがトランプ氏を、彼の信条を象徴する「ドナルド・トランプ」に仕立て上げたのです。

 「ドナルド・トランプ」は粘土のごとく、バノン氏によって、理想の候補に形作られました。そしてそのことの多くは、CA社が収集した研究とデータを基に、可能になりました。見るのが辛いことでした。作られたものの一部は自分の責任であるのに、何もできないと感じました。

恐怖を感じましたか?

ワイリー氏:恐怖を感じたとは言いませんが、CA社からは既に何度も脅されました。複数回訴えられもしました。彼らが恐れていたのは、社が何をしようとしているか、私が口を開くことを最も懸念していました。

 トランプ氏が選出された後、そして英国のEU離脱が決定した後、CA社がただのロンドンの片隅で運営されている、何の影響力もない、非道徳的で奇妙なことをしている会社であるという認識から、世界にとてつもない影響を及ぼす会社であることがわかりました。

 私の倫理観の真逆の存在だと理解した時、彼らから脅され続けている中でも、誰かに告白しなければと感じました。トランプ氏が選出された際、CA社は自分たちの事業が注目されてしまうことを懸念していたと思います。しかし(告発の)全てが真実であり、証拠文書が存在した以上、彼らが防衛策を講じることは、不可能でした。私の立場はこうしたもので、ガーディアン紙やニューヨーク・タイムズ紙が、何が起きたかを伝えてくれました。

(「中」に続く)
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/100500021/111300028/

http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/188.html

[政治・選挙・NHK256] 「国家破綻処理法」を制定せよ 2019年度の予算案、一般会計総額が初の100兆円突破 磯山友幸の「政策ウラ読み」
「国家破綻処理法」を制定せよ

2019年度の予算案、一般会計総額が初の100兆円突破

磯山友幸の「政策ウラ読み」
2019年1月11日(金)
磯山 友幸


消費増税に伴う景気対策などで予算総額が膨らんだ(写真:PIXTA)
参議院選挙も予算膨張に影響
 ついに日本の一般会計予算が100兆円の大台を突破した。

 政府は12月21日に2019年度予算案を閣議決定した。一般会計の総額は101兆4564億円と7年連続で過去最大となり、当初予算として初めて100兆円を超えた。1月末から始まる通常国会で審議され、3月末までに可決成立する見通しだ。

 2018年度当初予算の一般会計総額は97兆7128億円だったので、1年前と比べて3兆7436億円も増加した。2019年10月からの消費増税に向けて、経済対策費として2兆円を積み増したことが大きいが、社会保障費だけでなく、防衛費も過去最大となった。

 当初予算で100兆円の大台を超える意味は大きい。財務省が予算編成する際の心理的なボーダーラインとしてここ10年ほど意識され続けてきた。100兆円を超えたことで、心理的な抵抗線が消え、今後ますます予算の膨張が進むことになりかねない。

 今年の予算編成が大盤振る舞いとなったのは、安倍晋三首相の姿勢が大きい、という。経済財政諮問会議の関係者によると、10月の消費増税によって経済が失速することを何としても避けるという安倍首相の強い意志が働き、経済対策の2兆円を含め、積極的な財政出動を許す予算編成になった。

 基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化目標を、昨年6月に、それまでの2020年度から2025年度に先送りしたこともあり、歳出削減や財政再建といった観点が安倍首相から消えた、という指摘もある。

 景気を腰折れさせないという強い姿勢の背景に、今年7月の参議院議員選挙があることは間違いない。参議院選挙は業界団体などの集票力がモノを言う選挙で、各種予算の増額はそうした業界団体の要望を受け入れたものになった。

 こうしたムードを受けて各省庁も目いっぱいの予算要求を繰り広げた。

 厚生労働省の一般会計予算は32兆351億円と過去最大になった。8月末の概算要求は31兆8956億円だったが、それを上回る着地になった。「働き方改革」や「人づくり革命」と言った安倍内閣が掲げる重点課題に関連付けた予算は、かなりすんなり通ったと関係者は言う。医療関係の予算でも、2018年度の当初予算を軒並み上回る額が確保された。

 防衛費も5兆2574億円と1.3%増え、7年連続で増加し、5年連続の過去最高となった。東アジアの安全保障情勢が引き続き緊迫していることもあり、防衛装備予算の積み増しなどが盛り込まれた。

税収はバブル期のピークを超える
 こうした大盤振る舞い予算を可能にしたのは景気の好転で税収見込み額が増えていること。税収は2018年度より3兆4160億円多い62兆4950億円と見込む。10月からの消費増税で半年分が増収になる効果も大きい。税収はバブル期ピークの1990年度に記録した60.1兆円を上回ることになる。

 そう、税収はバブル期のピークを超えるのである。

 それにもかかわらず、国債費などを除いた単年度の政策経費すら賄うことができない、というのだ。長引くデフレで物価も下がった上、国のサービスを受ける日本の人口自体も2008年をピークに減少に転じている。予算案でのPBは9.2兆円の赤字。前年度の10.4兆円の赤字からは減少するものの、単年度赤字を垂れ流し続ける。大盤振る舞いの予算に歯止めをかけない限り、国の財政は立ち直らない。PBが黒字になっても、国債の利払いや元本償還があるので、財政黒字になるわけではない。

 消費増税の必要性を訴える際に、決まって財務省が持ち出してきた「国の借金」も増え続けている。国債と借入金、政府短期証券の合計額は2018年9月末で1091兆円。初めて1000兆円を突破した2013年から5年で1割近く増えたことになる。

 税収が過去最高になるのに財政赤字が続き、借金が増え続けるのはなぜだろうか。政治も官僚も、赤字を減らし、借金を減らすことに「何のインセンティブ」も働かないからである。官僚の権力の源泉は予算を配分すること。その歳出規模が大きくなる方が、権限が増えるわけである。役所の中では予算を取ってこれる課長が尊敬される。予算が取れなければ、いずれ人も減らされ、その部署は消滅の危機に直面する。つまり、官僚は誰も不要な事業であってもそれを減らそうとは考えないのだ。

 政治家も同じである。与党の政治家にとっても予算規模が大きくなればなるほど、自らがその利益分配の恩恵にあずかれることが多くなる。地元への公共事業の誘致などが典型だ。緊縮予算になれば、地元に落ちる国のお金が減るわけで、下手をすれば選挙で負ける。つまり、政治家にとっても歳出削減は何のメリットもないのである。

 国家財政を健全化するのを使命だと考えている官僚もいる。主に財務省の官僚たちだ。官僚の中の官僚と言われてきたのは、各省庁への予算配分権を握っているからではない。国家のことを考えるのは官僚多しと言えど財務官僚しかいない、という一種の尊敬に裏打ちされてきた。そうした気概を持った財務官僚も昔は多くいたものだ。

 「安倍内閣になって官邸は財務省の言うことを聞かなくなった」と嘆く財務官僚もいる。確かに、今の安倍官邸は経産省出身者の首相秘書官や経産省からの出向官僚が牛耳っている。だが、安倍首相が財務省の言うことを聞かなくなったのは、2014年の消費増税が大きな端緒になった。

 当時、アベノミクスへの期待から、一気に景気が回復する気配を見せていた。2014年の4月から消費税率を5%から8%に引き上げたが、その経済へのインパクトを財務省は読み間違えた。消費への影響が出ても早晩、それは収束すると当時の財務省幹部は安倍首相に説明したのだ。だが結果は大外れ、消費の低迷はそれ以降、長く続いた。財務省は「増税」をしたいばかりに、その負の影響をあえて軽視したのである。

国の債務の支払い順位を決めるべきだ
 景気を良くすれば税収は増える、と言う安倍首相や安倍シンパの経済学者の「路線」に財務省は抵抗したのである。財務官僚は、財政再建がしたいのではなく、ただ増税がしたいのではないか、という疑念が安倍首相の周囲で高まった。以来、財務省が排除される結果になったわけだ。

 財務官僚の政権への影響力が小さくなる中で、財政再建を本気で安倍首相に進言する人たちがいなくなった、という副作用が生じている。歳出削減は政治のリーダーシップがなければできないのに、首相が関心を示さない、という事態に直面している。税収が増えて歳出を見直す好機なのに、税収増を再び歳出に振り向ける大盤振る舞いに陥ったのだ。PB黒字化の新目標とした2025年には別の人物が首相の座に就いているだろうから、PB黒字化も達成できるか分からなくなっている。

 では、どうするか。「国家破綻処理法」を作るべきだ。

 会社は倒産した場合、誰の債権が優先されるか順番が明らかになっている。国への税金支払いが最優先で、その次は労働債権、つまり未払いの給与などが優先される。その次が一般の債権で、金融機関などが引き受けている劣後債はそれよりも支払い順位が低い。もちろん破綻すれば株式価値は毀損し、最悪、紙切れになる。

 国が破綻した時、誰が最も損をするのかがはっきりしていないのだ。例えば、米国の場合、予算が確保できなければ真っ先に政府が閉鎖される。2019年の年頭にも続いているガバメント・シャットダウンである。つまり政府で働いている職員が収入の道を断たれることになる。日本の場合、国はどんどん国債を発行できるので、政府機関が閉鎖されるルールはない。しかも公務員には身分保障があるから、クビになることもない。仮に国が破綻したとしても、公務員の未払い給与や年金はカットするルールにはなっていない。

 国の債務で何が最も優先されるのかを支払い順位を決めておくことが重要だろう。外国人投資家も保有している国債をデフォルトさせることは難しいと考えて、最優先債権とするのもよい。次には国民への社会保障費が優先されるべきだろう。公務員の給与はその次だろうか。国が破綻した場合、当然、公務員はリストラされることになる。もちろん政策経費もゼロベースから見直すことが必要だろう。

 誰もそう簡単に国が破綻するとは思っていない。だが、国を破綻処理して再生軌道に乗せる作業をした場合、誰が最も損をし、誰が守られるのか、を明確にしておくことは意味がある。

 仮に、公務員は全員クビになり、公務員年金も支払われない、ということになれば、官僚たちは本気で国家財政を破綻させないようにするにはどうすべきか、を真剣に考えるに違いない。

 人事制度でも、財政再建に力を振るった官僚が多額のボーナスをもらえるようにするなど、財政再建のインセンティブを作ればよい。そんな頭の体操をするためにも破綻処理のやり方を考えておくことは重要ではないか。

磯山友幸の「政策ウラ読み」をお読みいただいていた方々へ
 2012年11月から6年にわたって隔週で書いてきたこのコラムも今回で最終回となりました。長年にわたってお読みいただいた方々に心より感謝申し上げます。その時々の政策テーマを取り上げてきましたが、新聞や雑誌ではなかなか1つの政策について報じられることが少なかったので、多くの皆さんに議論していただくきっかけを提供できればと考えて記事を書いて参りました。

 会社の主張とは異なる意見でも自由に発表する場を与えていただいた日経ビジネスオンライン編集部、そして歴代の担当編集者に心よりお礼を申し上げます。

 また、2016年4月からやはり隔週で執筆しておりました「働き方の未来」も2018年末をもって終了いたしました。こちらもご愛読いただきまして、ありがとうございました。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/238117/011000092
http://www.asyura2.com/19/senkyo256/msg/132.html

[経世済民130] 加害者に「親密」な人たち 「たったひとり」をあなどるなかれ 
加害者に「親密」な人たち 小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明
2019年1月11日(金)
小田嶋 隆


 扶桑社が発行する「週刊SPA!」編集部が、同誌に掲載した記事について、このほど、謝罪のコメントを発表した。

 以下、経緯を説明する。

 「週刊SPA!」は、昨年12月18日発売分(12月25日号)の同誌誌面上で、《ヤレる「ギャラ飲み」》というタイトルの特集記事を掲載した。「ギャラ飲み」とは、同誌によれば、「パパ活」に続いて頻繁にその名を聞くようになっている昨今流行のコミュニケーション作法のひとつらしい。もともとは、「タク飲み」という一緒に飲んだ女性にタクシー代として5000円から1万円を支払う飲み方から発展した習慣で、男性が女性に一定額の「ギャラ」を支払う飲み方なのだそうだ。

 その「ギャラ飲み」について、特集記事では、カネを払って女の子と飲みたい男たちと、他人の支払いで酒を飲みたい女性を結びつけるスマホ用のマッチングアプリ4例を紹介しつつ、「ギャラ飲み」の実際をレポートしているわけなのだが、問題となったのは、同誌が、インターネットマッチングサービス運営者の見解として、「ヤレる女子大学生ランキング」として実在する首都圏の5つの大学名を掲載した点だ。

 当然、批判が殺到した。

 朝日新聞の記事によれば、《ネット上の署名サイトでは4日に「女性を軽視した出版を取り下げて謝って下さい」と呼びかけがあり、7日までに2万5千人超の賛同が集まっていた。》のだそうだ。

 そんなこんなで、冒頭でお伝えした通り、「週刊SPA!」編集部が、この7日に謝罪のコメントを発表したというのが、これまでの流れだ。コメントは以下の通り。

《本特集は「ギャラ飲み」という社会現象について特集したものです。ギャラ飲みの現場で何がおき、どういったやりとりが行われているのかを一般大衆誌の視点で報じております。その取材の過程で、ギャラ飲みの参加者に女子大生が多いということから、ギャラ飲みのマッチングアプリを手掛けている方にも取材を行い、その結果をランキングという形で掲載したものです。そのなかで「より親密になれる」「親密になりやすい」と表記すべき点を読者に訴求したいがために扇情的な表現を行ってしまったこと、運営者の体感に基づくデータを実名でランキング化したこと、購読してくださった読者の皆様の気分を害する可能性のある特集になってしまったことはお詫(わ)びしたいと思います。また、セックスや性にまつわる議論については、多種多様なご意見を頂戴しながら、雑誌として我々にできることを行ってまいりたいと思っています。》

 「週刊SPA!」は、私自身、現在に至るまでなんだかんだで10年以上寄稿している週刊誌でもある。基本的なかかわりかたは、2週か3週に一度のタイミングで、短い書評のコーナーを担当しているだけなのだが、時々コメント取材に応じたり、インタビュー記事に付き合ったりすることもあって、編集部とはそこそこの付き合いがある。なので、今回の出来事については、まったくの他人事というふうには受け止めていない。責任を感じているというほどのことはないにしても、応分に心を痛めている。

 騒動の火元になった記事は、初出の段階では読んでいなかった。

 自宅に送られてきているバックナンバーを読だのは、ツイッター上での炎上がひとまわりして、編集部がお詫びのコメントを出した後のタイミングだった。

 率直な感想としては、「失望」という言葉が一番よく当てはまると思う。
 事実、読み終わってしばらく不機嫌になった。

 告白すれば、私は、自分が寄稿しているにもかかわらず、この雑誌をもう何年も開いていない。理由は、失望したくなかったからだと思う。読めば確実に失望することが内心わかっていたからこそ、私は毎号送られてくる最新号を、ビニール外装の封印を解くことなく、単に玄関先に積み上げていた。で、半年ほど積み上げて熟成させた後、ヒモで縛って廃棄する手続きを粛々と繰り返してきた次第だ。

 今回、あらためて読んでみて、やはり失望した。

 ネット上を漂っている自称業界人の「こんなことでいちいち謝っていたのでは雑誌なんか作れやしないぞ」
 という感じのコメントにも、別の意味でうんざりしている。

 雑誌は、もしかしたら業界ごと腐っているのかもしれない。
 そう思うと少しさびしい。

 ネット上で殺伐とした言葉をやりとりしている業界周辺の人々の言い分を要約すると
「フェミやらクレーマーやら人権屋やらの正義派ぶったツッコミにいちいち真正直に対応していたら、男性向け娯楽雑誌はじきに聖歌隊の歌集みたいなものになるぞ」
「お上品な雑誌が読みたいんなら自分でノートの裏にでも記事書いてろよ」
 てなお話になる。

 つまり「リアル」で「ぶっちゃけ」な「男の本音」を率直に反映した誌面を作るのであれば、無遠慮な下ネタを避けて通ることは不可能なのであって、むしろ問題なのは、本来男が読むべき雑誌を、想定読者ではないある種の女性たちがわざわざ眉をひそめるために読んでいるその異様な読書習慣のほうだ、と、彼らは言いたいようだ。

 もちろん、私とて、最新号の雑誌を陳列する書店の書棚が、上品で奥ゆかしい5月の花園みたいな場所であることを期待しているわけではないし、すべての雑誌が清らかなピューリタンの魂を体現すべきだと考えているのでもない。

 とはいえ、「週刊SPA!」の当該の特集に対して投げかけられた非難の声が不当に大きすぎるというふうには、まったく思っていない。また、今後あの種の企画が萎縮することでわが国の雑誌出版文化が危機に瀕するだろうとも考えない。当然だ。あれは、なんの取り柄もない、どうにもならない正真正銘のクズ記事だった。

 下品だからダメだと言っているのではない。
 不謹慎だからこの世界に生き残るべきではないと主張しているのでもない。

 個人的な見解を述べるなら、私は、書き方に多少下品な部分があっても、内容が面白いのであれば、その記事は掲載されるべきだと思っている。また、本文中に不謹慎な断言をいくらか含んでいるのだとしても、全体として洒脱なテキストであるのなら、その文章は必ずや印刷されて読者のもとに届けられなければならないと考えてもいる。

 雑誌は、多様であるべきものだ。

 その意味で、雑誌の記事は、不謹慎であっても面白ければOKだし、不真面目に書かれていても参考になればオールライトだ。ダサくても真面目なら十分に許容範囲だ。つまり、どこかに欠点があっても、ほかの部分になにがしかの魅力が宿っているのであれば、雑誌記事は、生き残る資格を持っているものなのだ。

 12月25日号に掲載された「ギャラ飲み」特集の特集記事は、そういう長短を併せ持ったテキストではなかった。

 バカがカッコつけたあげくにスベってみせただけの、ダサくて下品で、おまけに差別的で、だからこそ批判されている、どこをどう拾い上げてみても擁護できるポイントがひとつも見当たらないゲロ企画だった。

 ということは、あんなものはツブされて当然なのである。

 毎週毎月大量に発行され、印刷される雑誌の記事の中に、価値のないパラグラフや、焼き直しの凡庸なフレーズが含まれているケースは、実のところ珍しくない。というよりも、雑誌の主要な部分は無価値なフレーズと焼き直しのアイディアで出来上がっている。それはそれでたいした問題ではない。

 ただ、今回のあの記事は、単に無価値であるのみならず、確実に暴力的で差別的な言葉を随所に散りばめることで、明らかな被害者を生み出していた。その点が大きな問題だった。

 関係者にぜひ正しく認識してもらいたいのは、「週刊SPA!」のあの記事が「面白いんだけど言い過ぎてしまったテキスト」や、「トンガッている分だけ毒が強すぎた企画」ではなくて、「調子ぶっこいたバカがあからさまな性差別を振り回してみせただけの救いようのないゴミ記事」だったということだ。

 ところが、どうしたものなのか、21世紀のネット社会では、この種の不祥事→お詫び案件が発生すると、ほとんど反射的に「詫びさせた側」「クレームをつけた人々」を叩きにまわる人々が、どこからともなく湧いて出て一定の役割を果たすことになっている。

 今回の場合だと
「シャレのわからない赤縁メガネの学級委員長タイプがコメカミに青筋立ててキャホキャホ言い募ったおかげで、なんだか世にも凶悪な性差別記事だったみたいな話になっちゃってるけど、実際に読んでみれば、なんのことはないよくあるナンパ指南のテキストですよ」
 みたいな語り口で事態を説明したがる逆張りの人々が、加害記事の制作者を応援している。

 振り返れば、財務省を舞台としたセクハラ事件でも伊藤詩織さんが告発したレイプ疑惑でも、最後まで加害者の側に立って、被害者の態度に非を鳴らす人々がSNSに盤踞していた。

 彼らは、炎上の原因を、記事そのものの凶悪さにではなく、クレーマーの狂気やフェミの人権意識の病的亢進に求めるテの論陣を張りにかかる。

 でなくても、そういう人々は、今回の記事の欠点を
「『ヤレるギャラ飲み』というタイトルの付け方が行き過ぎだった」
「『お持ち帰りできる女子大生ランキング』にしとけばセーフだった」
 という程度にしか受け止めない。

 冒頭近くで引用した「週刊SPA!」編集部のコメントも、もっぱらに「言葉の使い方の不適切さ」を詫びることに終始していた。

《 ?略? そのなかで「より親密になれる」「親密になりやすい」と表記すべき点を読者に訴求したいがために扇情的な表現を行ってしまった ?略? 》
 と彼らは言っている。

 要するに、編集部は、今回の騒動の主たる原因を、「ヤレる」という書き方が下品で扇情的だった点にしか認めていない。逆にいえば、彼らはその部分を「親密になれる」と言い換えていればOKだったと考えている。ということは、企画意図自体の凶悪さを認めていないわけだ。

 9日になって5大学が抗議文を発表したことを受け、扶桑社は同日夜に公式サイトで「女性の尊厳に対する配慮を欠いた稚拙な記事を掲載し、多くの女性を傷つけてしまったことを深くお詫びいたします」などとする謝罪文を掲載した。

 しかしネット上のコメントの中には、編集部を擁護する声が多数ではないが蔓延している。

 代表的なのは、
「ホイチョイの『東京いい店やれる店』がヒットしたのは、1994年だったわけだけど、あれから四半世紀で、日本の空気はすっかり変わってしまったわけだな」
「思えば遠くへ来たものだな」
「もう、『ヤレる』なんていう言葉を含んだ企画は二度と編集会議を通らないんだろうな」
 的な述懐だ。

 彼らは、記事の劣悪さそのものよりも、むしろ凶悪な記事が許されなくなった世間の風潮の変化を嘆いている。

 「窮屈でかなわないぜ」
 というわけだ。

 念のために解説しておくと、彼らの分析は根本的に的を外している。

 今回の経緯をどうしても「お上品ぶった腐れリベラルだとか、何かにつけて噛み付いてくる狂犬フェミみたいな人たちのおかげで世界が窮屈になっている」というストーリーに落とし込みたい向きは、「1990年代には、『東京いい店やれる店』が大ヒットしていたのに、2019年には、同種の雑誌企画がいきなり謝罪に追い込まれている」という感じの話に逃げ込みたがる。

 でも、それは違う。

 第一に、「東京いい店やれる店」がピックアップし、紹介し、ランキング化していたのは、「店」であり「デートコース」だった。

 ということは、あのヒット企画は、タイトルに「ヤレる店」という下品な表現をフックとして用いてはいたものの、その内容はあくまでも「おすすめのデートコースと評判のレストラン」をガイドする、東京のレストランガイドだった。その意味で、今回の「週刊SPA!」の企画記事を同一線上に並べられるものではない。

 今回の「週刊SPA!」の記事がランキング化しているのは、ズバリ「女子大学生」という生身の人間だ。

 しかも、その都内の女子大学生たちは「ヤレるかヤレないか」という一点に沿って序列化され、評価され、名指しでまな板に上げられている。

 「ヤレる店」をランキング化する企画にしたところで、そりゃたしかに上品な話ではないだろう。

 でも、「ヤレる女子大生」を実在の大学名そのまんまでBEST5まで表にして掲出してしまう感覚とは比較にならない。いくらなんでも、「ヤレる店」の企画は、そこまで凶悪ではない。

 最後に「女衒」についても一言触れておきたい。

 「週刊SPA!」の当該のこの企画は、三部構成で、第一部が「アプリ」紹介、第二が「飲みコンサル」、第三部が「女衒」となっている。内容は、それぞれ、「ギャラ飲みアプリの紹介」「ギャラ飲みマッチングサービスを主宰する人々によるギャラ飲みイベントの紹介」「女衒飲みの紹介」だ。問題は第三部の「女衒飲み」なのだが、私は、当初、「女衒」からの被害をブロックするためのお話だろうと思って読んでいた。当然だ。

 なぜというに「女衒」というのは、女性が性的商品として人身売買されていた時代の職種で、現代にあっては反社会的組織の人間が担っていると考えられる犯罪的な役割であり、明らかな蔑称だからだ。女衒と呼ばれて喜ぶ人間はいないはずだし、女衒に近づきたいと考える人間も普通はいない。

 ところが、最後まで読んでみるとどうやら様子が違う。というのも、この記事の文脈の中では、「女衒」は、蔑称ではないからだ。蔑称ではないどころか、一定のリスペクトを持って「女衒の人との接触に成功」(週刊SPA!12月25日号p56)というふうに書かれていたりする。

 見出しでも
「実はコスパ○(マル)。女衒ギャラ飲みはかわいくて安い」(同p56)
 となっているし、本文でも
「アプリでは時間ごとにどんどん料金が加算されていくが、女衒に紹介してもらった場合は、明確な時間制限はないのがありがたい」
「女衒飲みの条件として、女衒が指定した店で飲む必要があるが、細かいルールは少なく、あくまで”大人のやり取り”になる」
 などと、記事中では「女衒」を肯定的な存在として持ち上げている。

 私は、「女衒」という言葉をこれほどまでにポジティブに運用している現代の文章をほかに知らない。

 彼らはいったいどうしてまた、女衒なんかを持ち上げているのだろうか。

 ともかく、これを読んで、ちょっと謎が解けた気がしている。

 この記事は、単なるナンパ指南であるようでいて、もう少し不吉な何かを示唆している。

 書き手は、同誌の想定読者に対して
「おまえら、しょせんヤリたいわけだろ?」
 という感じの思い切り上から侮った問いを投げかけている。

 さらに、「ギャラ飲み」に集う女性たちに向けては
「君らはアレだよな? どうせオンナを武器に世渡りするほかにどうしようもないわけだろ?」
 的なこれまた著しく侮った決めつけを適用している。

 その一方で、女衒にはあからさまな憧れの感情を表出している。

 「運営側」に対する無条件の憧憬。
 他人をコントロールすることへの強烈な欲望。

 まるっきりな権力志向じゃないか。

 これはいったい何だろう?
 いわゆる中二病だろうか?
 単に悪ぶってみせているということなのか?

 とりあえず、ここで結論を出すことはせずにおく。

 ただ、「週刊SPA!」の周辺に
「真面目なヤツらはカタにはまっててどうしようもない」
 という気分を共有している人たちが集まっている気配はずっと前から感じていた。
 あるいは、私はその空気がイヤであの雑誌を開かなかったのかもしれない。

 結論を述べる。

 カタにハマっているのは、実は不真面目な人たちだ。

 真面目な人たちは、自分の人生に真面目な態度で臨んだことの結果として、良い意味でも悪い意味でも厄介な個性を手に入れることになる。

 不真面目な人たちはその境地に到達することができない。だから、半端な見栄を張ったり他人をランク付けしたりする。なんと哀れな人間たちではないか。

 いっそスパっと(以下略)

(文・イラスト/小田嶋 隆)

日経ビジネスオンラインでのオダジマさん連載は本日がラストです。

 なぜ、オレだけが抜け出せたのか?
 30 代でアル中となり、医者に「50で人格崩壊、60で死にますよ」
 と宣告された著者が、酒をやめて20年以上が経った今、語る真実。
 なぜ人は、何かに依存するのか? 

『上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白』

<< 目次>>
告白
一日目 アル中に理由なし
二日目 オレはアル中じゃない
三日目 そして金と人が去った
四日目 酒と創作
五日目 「五〇で人格崩壊、六〇で死ぬ」
六日目 飲まない生活
七日目 アル中予備軍たちへ
八日目 アルコール依存症に代わる新たな脅威
告白を終えて

 日本随一のコラムニストが自らの体験を初告白し、
 現代の新たな依存「コミュニケーション依存症」に警鐘を鳴らす!

(本の紹介はこちらから)


このコラムについて
小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明
「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たやすいこと」「取るに足らない出来事」「チョロい仕事」ぐらいを意味している(らしい)。当欄は、世間に転がっている言葉を拾い上げて、かぶりつく試みだ。ケーキを食べるみたいに無思慮に、だ。で、咀嚼嚥下消化排泄のうえ栄養になれば上出来、食中毒で倒れるのも、まあ人生の勉強、と、基本的には前のめりの姿勢で臨む所存です。よろしくお願いします。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/011000175

「たったひとり」をあなどるなかれ
遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」
私が吼え続けた20年

2019年1月11日(金)
遙 洋子

 今回は20年の回顧録を書こうと思う。

 2000年を挟んでその前後に“改革者”として脚光を浴びた人たちがいる。
 カルロス・ゴーン氏は日産自動車を改革し、星野仙一氏は阪神タイガース悲願の優勝を果たし、丹羽宇一郎氏は伊藤忠商事を黒字回復させNHKでドキュメンタリーも放送された。

 20年前、そんな彼らと共に「日経ビジネス」誌でリレー連載という企画に若輩の私も加えられた。当時は今よりも女性活躍への待望感が強く、改革、のキーワードと共に「女性視点への期待」が、連載内の私の役割としてあった。名だたる時代の寵児たちと共に、約20年前から私は執筆を始めることになった。連載は約4年続いた。

 やがて、ウェブサイトの立ち上げにも加わることになり、それから今日に至る。
 女性視点はそのまま。女性読者も増え、著名な改革者とは別に、私だけは低空飛行で芸能界で働きながらの20年だった。寵児たちはどうなったか。

かつての寵児たちのいま
 カルロス・ゴーン氏は、日産から指弾され容疑者となった。星野仙一氏は「あー、しんどかった」と優勝の言葉を残し、後に逝去された。丹羽宇一郎氏は伊藤忠の会長を経た後に日本大使として中国に赴いたが、国の方針と違う、と、その立場を去られた。

 「日経ビジネス」誌上の同期生として、彼らが最も華やかなりし頃に共に仕事をし、社会にそれぞれのメッセージを届けてきた目線で見ると、なんと“寵児”でいられる歳月は短いのだろう、と思わされる。

 何が言いたいかというと、私のような凡人にはまばゆいばかりの経歴の持ち主でも、その栄光は永遠ではない、ということだ。

 成功と脚光が、慢心や強欲を生むこともあるだろう。グローバルな視野を持つ人物でも嫌韓、嫌中の感情が渦巻くこの国では理解されにくいこともあるだろう。あるいは、弱い球団を再生、優勝させるために命を削ることも。

 彼らの姿を見ていると、成功というものには、失敗とは別の、それ自体のリスクがつきまとうということが身に染みる。

 結局、働く、ということはそういうことなのだ。
 それぞれのリスクの責任を取った、あるいは取らされようとしているリーダーたちの姿を見て思う。

 彼らの20年の変遷を知ると、1億円のお年玉をばらまく社長を始め、今、時代の寵児とされるリーダーたちも、それが決して長続きしない類のものだ、と、俯瞰で見ることができる。

ひとりの社員も「うっかり」で会社を潰せる
 著名なリーダーではなく、普通の社員の凡ミスがとんでもない損害をもたらしたニュースも記憶から消えない。最近で言うと、大阪のホームセンターで、従業員が使用済みボタン電池をまとめて保管したため過充電が発生、火事になり、3000平方メートルの建屋が焼失した。

 あるいは、札幌の不動産店で社員がスプレー缶を爆発させ、建物を1つ吹き飛ばし、近隣にも被害を与えた。彼らは危険を知ってやったのではなく、「うっかり」しただけだ。

 損害の大きさを思うと、社長たちの嘆きが聞こえてきそうだが、1人のうっかりは、企業を潰すことだってできる。これをどうすれば回避できただろう、と、「もし私が社長だったら」と頭をひねってみたが、解決策は出てこない。

 “うっかり”など、日常にいくらでも転がり、想定して前もって注意喚起を促すことなどできない。うっかり鉛筆をデスクから落とした、というレベルで、うっかり電池をまとめて置いておいたら翌日職場ごと燃えてなくなるなど、誰が想像できようか。

 スプレー缶しかり。鍵を失うとか、財布を落としたとかいう深刻さではなく、そのもっと手前の、些細なうっかりで企業を揺るがす大事件になる。

 リーダーは、リーダーたるゆえんで将来的リスクを背負い、平凡な社員1人が組織を揺るがすリスクにもなる。是となるも非となるも、それを生みだすのは“たったひとり”なのだ。

 自ら働くということだけでなく、社員を雇うということも、それぞれにリスクがあることを思い知る。

 同時に、それを踏まえた上で、“ひとり”の持つ力の絶大さをも思う。会社を立て直す改革者だったり爆発で失う社員だったり。いずれにせよ、たった“ひとり”のなせるワザだ。

 “ひとり”が会社を救い、“ひとり”のせいで会社はつぶれる。1人であることは無力ではない。1人の威力たるや、あなどれない。

 かくいう私も、ずっと1人で仕事をしてきた。執筆業は1人の作業であることはもちろんだが、芸能界での仕事もまた、究極、よい仕事を突き詰めたら、“ひとり”になった。よくタレントが大勢の事務所スタッフを引き連れて局を闊歩する姿を見ることがあるが、私はそういうスタイルをストレスに感じ、いかにいい本番を迎えるか、のみに集中したら、やがて全スタッフを外し、1人で局入り、1人でメイク直し、1人で衣装を着替える、というスタイルになった。

低空飛行な人生でも悔いはない
 これを私はとても気に入っている。なぜなら、私以外のだれか1人の“うっかり”ミスからくる“爆発”レベルの被害に巻き込まれるリスクが小さいからだ。たったひとりの連絡ミスが自分の信用を無くし、たったひとりの口のきき方が私の大事な仕事相手を怒らせる。その火事の鎮火作業に追われ本番が始まる頃には電池切れ、という苦境から脱出できたのは、「自分ひとり」の力を信じてこれたこともある。

 1人だから、出世もなければ、組織的営業活動もない。結果、低空飛行のまんまの20年だったが、そこに後悔はなく、労働環境のリスクやストレス排除という意味では、1人であることくらい自由でのびやかな労働スタイルはないと自負している。

 私に最も似合う働き方は、つまりは限りなくフリーターに近い働き方だ。そして、出会い、だ。

 企業という枠にとらわれず、「この人、優秀だ」と思える人物たちとのみ繋がっていく。

 企業人でもできる繋がり方だと思うが、とにかく、うっかり爆発や火事にならないためには、鉛筆を落とすレベルのうっかりで会社を吹き飛ばす人間からは距離を取り、一方、慎重で注意深い人、つまりは優秀な人物と出会ったらとにかく離さない。

 人は他人に対して「うっかりをしないためにはね」などと教育できるものではない。その社員教育に費やすエネルギーは不毛だと私は断言できる。優秀な人物など1個の企業にそう数がいるものではない。だから、私は自分の組織ではなく、他所様の会社やフリーの人々のネットワークに助けてもらい、人の力を借りて、働いてきた。私は1人だが、常に誰かに助けてもらって働いてきた。

 執筆を始めた頃は、私は自分の原稿をどの編集者にも触らせなかった。自分1人を過信して、自らの感性のみに頼って発信してきた。が、紆余曲折あり、今や、書いた原稿は編集者に「あとはおまかせ」とばかりに好きに編集作業をしてもらっている。

 若輩のコラムニストがしゃかりきになって「一文字も触らないで」という働き方は、今振り返ると「若いな……」と思う。20年後の私は、「好きに触ってください」という“大人”になった。もちろん誰に対してでも、ではなく、まかせる担当者の優秀さを信頼してのことだ。

 年上と接することにストレスがあった若手時代から、今では自分が管理職世代となった。そうしたら、他人を頼ってみるのもいいことだ、ということに気づかされた。20年で私もまた変わったのだ。

世の中はどんどん「変わりにくく」なっている
 社会も変わった。政界が一強体制になり、すると忖度が普通になり、権力がその姿を隠す配慮も必要なくなって、むき出しになった。

 スポーツ界ではパワハラ事件が勃発し、長年の権力一強体制があったことが露呈した。もともとはその世界の功労者であったはずの人物が、長年その権力を握ると、慢心に傲慢、忖度、が定食セットのようにお盆に乗り、それをひっくり返す告発者にとっては命がけの時代になった。

 それらを放送のネタにしている芸能界はといえば、内部告発するタレントなどほとんどおらず、一強の事務所やら、タレントやらが、権力と化して放置されたまんまだ。芸能界は他の世界を批判告発できても、自らの世界はいっさい批判しない。できない。最も不健全な労働環境とも言える。覚せい剤事件でも起こさない限り、権力の権化となったタレントが排除されることはない。

 ならば、と、そこに媚びるタレントが権力構図を忖度で擁護する側に回る。私みたいに吼えれば、降ろされる。

だからわたしは、ひとりで吼える
 犯罪者になれば一般人よりも叩かれるが、権力の横暴、パワハラ、などが告発される世界ではない。

 だから昭和に権力を掴んだタレントは、平成を超え、新時代でも権力を握り続ける。
 今、一番不健康な職場こそ、芸能界だ。テレビ離れというが、それこそ“健全”だ。

 いびつな、不自然なキャスティングや露出の頻度の高さのウソ臭さを、視聴者が気づかないとでも思っているのか。視聴者は出演者たちが絶対語らない、背後の権力構図をとっくに嗅ぎ取っている。内部変革できなくても、視聴者から捨てられる、という形で、遠からず変化を余儀なくされるだろう。

 吼えては降ろされ、を繰り返した20年間。唯一、吼え続けることを許されたのはこの日経ビジネスオンラインの執筆だった。読者の皆様と歴代編集者、そして、このチャンスをくださった日経BP社さん、そして、読んでくださった皆様に、20年分の感謝でこのコラムを終えたいと思う。

 「たったひとり」で吼え続けさせていただいて、
 そしてそれを聞き続けてくださって、心から、有難うございました。


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このコラムについて
遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」
 働く女性の台頭で悩む男性管理職は少なくない。どう対応すればいいか――。働く男女の読者の皆様を対象に、職場での悩みやトラブルに答えていきたいと思う。
 上司であれ客であれ、そこにいるのが人間である以上、なんらかの普遍性のある解決法があるはずだ。それを共に探ることで、新たな“仕事がスムーズにいくルール”を発展させていきたい。たくさんの皆さんの悩みをこちらでお待ちしています。

 前シリーズは「男の勘違い、女のすれ違い」
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/213874/011000096/
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/530.html

[経世済民130] 統計言語 「R」の神はなぜ無償で貢献したのか 会社とは何か オープンコミュニティで活躍する“新人類”の誕生 
統計言語 「R」の神はなぜ無償で貢献したのか
会社とは何か
オープンコミュニティで活躍する“新人類”の誕生

2019年1月11日(金)
篠原 匡、長野 光

 統計データを分析する際に使う「R」というプログラミング言語がある。無料のオープンソース・ソフトウェアで、Rを使えば、データの加工や操作、線形回帰、ランダムフォレストのような機械学習の分析、解析したデータの可視化が可能になる。「Python(パイソン)」と並び、統計分析を手がける人々に人気の言語だ。

 Rはオープンソースのため世界中のエンジニアが修正や機能追加を進めている。その中で、データフレームの操作に特化した「dplyr(ディープライヤー)」やデータ可視化の「ggplot2(ジージープロット2)」など、人気のパッケージ開発で貢献した人物がいる。ソースコードの入力からコンパイルやデバッグまでが可能なRの総合開発環境を提供するRStudioのチーフ・サイエンティスト、ハドリー・ウィッカム氏だ。

 ウィッカム氏が独力で作り上げたパッケージは今では大学の研究者からジャーナリストまで、数多くの人間が使っている。Rに対する多大な貢献のため、ユーザーの間で「神」とあがめられている。

 日経ビジネスは2019年1月7日号で「会社とは何か」という特集を組んだ。特集では様々な角度から会社の役割の変化を論じているが、その中に社会課題を解決するために、自身のナレッジや経験を惜しみなく投入する“新人類”についても触れている。ウィッカム氏もそんな新人類の一人だ。なぜRの開発にボランティアでか変わったのか。ウィッカム氏に話を聞いた。

ウィッカムさんはいつからRの開発に関わり始めたのでしょうか。

ハドリー・ウィッカム氏(以下、ウィッカム):16〜17年前に始めたので2002年だと思います。当時、私はニュージーランドのオークランド大学医学部で勉強していたのですが、医者にはなりたくないと思い、統計学とコンピューターサイエンスに専攻を移したんです。その授業中にRの存在を知りました。


統計言語 「R」を基にした数々の人気パッケージ開発に貢献したハドリー・ウィッカム氏(写真:Misun photography)
10年間、数千時間をコード書きに費やした
Rは、カナダのウォータールー大学の教授だったロバート・ジェントルマン氏がオークランド大学で短期間、教えていた時に、統計学の教授だったロス・イハカ氏と出会い生まれたと聞いています。

ウィッカム:そうです。オークランド大学がRの発祥の地です。

ウィッカムさんはdplyrやggplot2など、現在のRに欠かせないパッケージを作りました。でも、Rはオープンソース・ソフトウェアなので無償です。なぜボランティアでRの開発に取り組んだのでしょうか。

ウィッカム:今はRstudioで給料をもらっているので状況は変わっていますが、学生だった当時は世界に対する影響力、さらに他の人々の手助けができるという点でオープンソースに夢中になりました。データ分析という面でRは素晴らしい技術です。それが無料で使えるというのも素晴らしいことです。ただ、少し専門的だったので、いろいろなことをもっと簡単に実行できるようにして、社会に恩返しをしたいと思ったんです。

開発の経緯は?

ウィッカム:そもそもは博士号を取るための研究の一部でした。完全な個人プロジェクトです。博士課程にいた時に、他の学生のデータ分析を手伝っていました。その時に、ほとんどの問題はデータを正しい形に整理して扱いやすくするところにあると気づいたんです。それで、そういうツールを作ろうと。投下した時間ははっきり分かりませんが、博士課程の時や米ライス大学の助教の時を含め、およそ10年間、ほとんどの時間をRのコードを書くことに費やしてきました。数千時間は使っていると思います。

 正直に言って、プログラミングの時にはフラストレーションを感じたり、イライラしたりすることもあります。でも、私のソフトウェアが役に立ったとか、生活を楽にしてくれたとか、わざわざ連絡してきてくれる人が大勢います。そういう声を聞くと、これからも頑張ろうという気になる。他の人に貢献できていることに、個人的な楽しみを感じています。

世界で数百万人が使うパッケージに
ウィッカムさんのコードは文章を読むかのように理解できると評判です。

ウィッカム:ggplot2は可視化を実行するために設計しました。グラフィックスの作成です。dplyrはデータ操作のためのパッケージ。データの集計やグループ分け、並べ替えなどの操作が可能になります。

 両者に共通しているのはデータを扱うために言語や文法を定義しているところです。目標はできるだけはっきり、簡単にコードで表現すること。どちらもプロブラマーでない人でもコードを書くことができます。それを理解するために専門家になる必要もない。文章のようにコードを読み、もっと改善できるところを指摘し、そのコードを考えてシェアしていくことができるように設計しました。他の人が何を理解しにくいと思うか、という心理的なことも考えて書いています。みんなに覚えてもらえるよう名前もこだわっています。

実際、かなりの人々がウィッカムさんのパッケージを使っています。

ウィッカム:ggplot2を作った時は、将来的に1000人ぐらいの人が使ってくれたらいいな、と思っていたのを覚えています。今では数百万人が使っています。

Rはコンピューター・サイエンティストや統計家だけでなく、生命科学や自然科学など幅広い専門家が使っています。それも、Rとウィッカムさんのパッケージが使いやすいからだと思います。

ウィッカム:確かに、Rは他のものより使いやすいかもしれません。ただ、使いやすさでいえば、IBMのSPSSやStataのような統計解析ソフトがあります。その中でRが伸びているのは、人々の集めているデータがより大きくなり、複雑化しているのが理由の一つだと思います。あらかじめ用意されているような分析ツールには頼り切れなくなったということです。その点、Rは誰も試したことのないようなことを試す柔軟性がありますので。

 ご指摘の通り、Rを使っている人は以前と比べて多様性が増しています。私より年上のエンジニアでRを使っている人はきっと統計学が得意な人でしょう。ただ、最近はより純粋なソフトウェアエンジニア、あるいは生命科学の研究者やジャーナリストが増えていると思います。ジャーナリストはデータの中で何が起きているのかを理解するためにRを学んでいます。統計的なものを学んでこなかった人々に対して、われわれがどのような手助けができるか。そこが重要なところだと思っています。


「他の人に貢献できていることに、個人的な楽しみを感じる」と語るウィッカム氏(写真:Misun photography)
無償でコードを書くのは今や当たり前
オープンソース・コミュニティの良さは?

ウィッカム:ある問題に取り組んでいるのが自分ひとりということはほとんどないでしょう。コードの問題で何か解決しようとしていることがあれば、同じ問題に取り組んでいる人が絶対に他にいます。最初は自分で取り組まなければならないかもしれませんが、後は他の人がコードを改善し、貢献してくれる。運がよければ、自分が書いたものよりもっとうまく解決してくれるかもしれません。こうした恩恵はオープンだからこそ得られるものです。

 もっとも、今でこそ無償でコードを書き、共有するのは今や当たり前ですが、20年前はあまり普及していませんでした。そんなことをするのはおかしいという感じだったと思います。時代はだいぶ変わりました。

 Rコミュニティでのやりとりの中で努力してきたことの一つは、できるだけ入ってきた人たちを歓迎し、心地よい場所にするということでした。Rを利用している人々はプログラマーではない人も多いですから、最初はとっつきにくい場合もあるでしょうし。

 そういうRコミュニティの特徴を体現した存在として、「R Ladies」があります。彼らは女性や性的マイノリティのための勉強会などを企画している団体で、Rの習得やスキルの共有ができるように手助けしています。これは本当に立派だと思います。

最後に、今のRの隆盛をどう思いますか?

ウィッカム:Rがここまで成功したことには今も驚いています。昔、Rの会議に参加した時は多くても200人程度でした。それが今では数千人が集まる会議もあります。日本のカンファレンスにも行きましたよ。世界中でフレンドリーなコミュニティが生まれてとてもうれしく思います。


このコラムについて
会社とは何か
会社とは何か──。日経ビジネスは創刊50周年の今年、「会社」を問い続ける。まずは、組織と働き方の未来を考える。「会社」はどこから来て、どこに向かうのか。一握りの企業は巨大化し、トップに君臨する者が富を吸い上げていく。その一方で、格差と貧困が世界を覆う。一体、「会社」の役割とは何なのか。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/122700258/010900004/
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/532.html

[政治・選挙・NHK256] 太陽光が「普通のエネルギー」になるとき バブルが終わって高い電気代が残った 再エネの特別扱いはもうやめよう
太陽光が「普通のエネルギー」になるとき
バブルが終わって高い電気代が残った
2019.1.11(金) 池田 信夫

 経済産業省は1月9日、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)にもとづく事業用太陽光発電の買い取り価格(500kW未満)を、2019年度は14円/kWhとする方針を決めた。FITが始まった2012年の40円から、7年で65%も下がる。

 日本は世界から周回遅れでFITに加わり、非常識な買い取り価格をつけたため、混乱が続いてきた。経産省も昨年(2018年)まではそれを座視してきたが、ようやく方向転換した。その背景には、エネルギーをめぐる状況の変化がある。

バブルで積み上がった「未稼働案件」
 日本で固定価格の全量買い取り制度が始まったのは、民主党政権のときだ。政権運営に失敗して「反原発」しか売り物のなくなった菅直人首相が「自然エネルギー」を売り物にしたのだ。このように政治的な動機で始まったことが、日本のFITの不幸だった。

 特に太陽光が注目を集め、買い取り価格が40円/kWh(事業用)に決まった。当時、世界的には太陽電池の価格は20円以下に下がっていたが、その2倍以上の買い取り価格をつけ、20年間その価格で電力会社に全量買い取りを義務づけたのだ。

 世界の2倍以上の価格で20年間、政府が利益を保証するのだから、リスクなしで儲かる。おかげで太陽光発電への参入は爆発的に増え、設備認定容量は、FIT開始前の2060万kWから、2018年度には8524万kWになった。

 しかしこの制度はドタバタで決められたため、多くの欠陥があった。特に問題なのは、電力の買い取り価格が設備認定の時点で決まることになっており、いつまでに操業開始するかについて明確な定めがなかったことだ。

 このため価格の高いとき駆け込み的に認定だけ取り、太陽光パネルの価格が下がってから建設しようとする業者が大量に出てきた。さらに用地買収して認定だけとって権利を転売するブローカーも出てきて、「太陽光バブル」が出現した。

 このような「未稼働案件」が、設備認定容量の51%を占める。特に2012〜14年度の買い取り価格は40〜32円と高かったので、これが今後、稼働すると高価格で買い取らなければならない。そこで経産省もバブルの後始末に乗り出したのだ。

問題は製造業の国際競争力
 今回の制度改正では、原則として2019年度中に運転開始できなければ、初期に認定を受けた案件でも、買い取り価格を21円以下に下げることになった。未稼働案件の買い取り価格はほぼ半分に下がるので、操業開始は絶望的だろう。

 経産省は2030年には事業用太陽光の買い取り価格を7円まで下げるという長期見通しを示しているが、これは市場価格とほぼ同じだ。もうFITの時代は終わったといえよう。

 この背景には、国民負担の上昇がある。次の図は経産省の資料だが、2016年度まで急速に伸びた再エネの国民負担を2030年度に向けて抑制する方針を示している。

http://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/038.html

国民負担の状況(経産省の資料)
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/6/0/447/img_60adf1fddd9b834e559dd280551caafb69315.jpg


 2018年の買い取り費用の総額は3.1兆円になり、賦課金の総額は2.4兆円になった。これは家庭用電気料金の11%、産業用の16%に達し、日本の電気代はOECD諸国でトップレベルになった。

 これは家計を圧迫するだけではなく、製造業の国際競争力を低下させ、生産拠点の海外流出を招いている。財界からも「これ以上、賦課金は負担できない」という声が高まり、経産省も方針転換したわけだ。

 図のように経産省は2030年度までに買い取り費用を4兆円、賦課金を3.1兆円に抑えようという計画だ。これによって再エネ比率は、エネルギー基本計画で想定している24%になる予定だ。

 再エネのコストは火力や原子力より高いので、今はFITで補助しないと市場で競争できない。今までのようなペースでFITの買い取りを増やすと、再エネ比率を30%以上に高めることもできるが、それでは賦課金が今の2倍以上になってしまう。

 今でも中国の2倍以上になっている産業用の電気料金がこれ以上あがると、日本で製造業はやっていけなくなるおそれが強い。つまり再エネの本質的な問題は、製造業の国際競争力なのだ。

再エネの特別扱いはもうやめよう

 世界的にもFITは終わり、再エネ補助金も市場で決める方向だ。民主党政権が手本としたドイツも、FITは廃止した。日本でも太陽光はすでに500kW以上は入札になっており、それ以外の再エネについても経産省は「FIT制度からの中長期的な自立化を目指す」としている。

 FITの財源としては原発を再稼働して浮く化石燃料のコストが見込まれていたが、再稼働が進まないため、賦課金を大幅に上げざるをえなくなった。東電の場合、賦課金は電気代の値上げ分のほぼ7割を占める。

 本来の電力自由化は、再エネも含めて市場で競争するものであり、原発を止めたまま再エネに巨額の補助金を注ぎ込む政策は長続きしない。FITに甘えてきた再エネ業界も、自立できる電源になるときだ。

 今まで太陽電池のコストが急速に下がったのは、世界的にFITで需要が嵩上げされてきたからだが、中国がFITから撤退する方向を打ち出し、世界的にも太陽光バブルが終わった2018年は、太陽電池の世界市場は史上初めて縮小する見通しだ。

 長期で考えると太陽光は有望なエネルギーだが、天候に左右されるので、蓄電技術に奇蹟的な技術進歩がない限り、100%電力をまかなうことはできない。負荷を調整するには、火力や原子力で補完する必要がある。

 これまで再エネはクリーンエネルギーとして特別扱いを受けてきたが、基幹的な電源となる時代には、火力や原子力と同じ条件で競争すべきだ。補助は炭素税のような技術中立的な制度で行うことが望ましい。もう再エネの特別扱いはやめ、「普通のエネルギー」になるときである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55192
http://www.asyura2.com/19/senkyo256/msg/134.html

[戦争b22] 米軍が今になって地対艦ミサイルを重視する理由 一変した中国近海のパワーバランス 
米軍が今になって地対艦ミサイルを重視する理由
一変した中国近海のパワーバランス
2019.1.10(木) 北村 淳
米陸軍の高機動ロケット砲システム「HIMARS」(出所:米陸軍、Photo Credit: Sgt. Benjamin Parsons)
 日本のメディアの報道(産経新聞、2019年1月3日)によると、アメリカ陸軍が地対艦ミサイルを沖縄に展開させる訓練を今年(2019年)中に実施する方針を自衛隊に伝達した、という。この情報はアメリカ陸軍やペンタゴンにより公式に発表されてはおらず、現在のところ日本での報道が唯一の発信源となっている。
リムパックで米陸軍が発射した地対艦ミサイル
 この報道によると、アメリカ陸軍第1軍団が地対艦ミサイル部隊を沖縄に展開させる、ということである。
 ワシントン州タコマ市郊外に広大な基地(ルイス・マッコード統合基地)を構えるアメリカ陸軍第1軍団の第17砲兵旅団は、地対艦ミサイルを発射することができる高機動ロケット砲システム(HIMARS、ハイマース)を運用している。
 第17砲兵旅団は、昨年ハワイで実施された多国籍海軍演習「リムパック(RIMPAC)-2018」に参加し、陸上自衛隊地対艦ミサイル部隊とともに、地対艦ミサイルにより軍艦を撃沈する訓練を実施した。
 この際、第17砲兵旅団はHIMARSから、ノルウェー海軍とノルウェーのコングスベルグ社が開発したネイヴァル・ストライク・ミサイル(NSM)を発射して、米陸軍としては初めて地対艦攻撃能力を公開デモンストレーションした。
 第17砲兵旅団とともに地対艦ミサイル実射訓練を実施した陸上自衛隊が使用したのは、純国産地対艦ミサイルシステムである12式地対艦誘導弾であった(対艦ミサイル本体のみならず発射装置や誘導装置などのシステム全体含めて「12式地対艦誘導弾」と呼称されており、全て日本製)。それに対してアメリカ陸軍は、発射システムは米国製のHIMARSを使用したが、発射した対艦ミサイル本体は米国製ではなくノルウェー製のNSMを使用せざるを得なかった。
 なぜならアメリカでは長年にわたって地対艦ミサイルが等閑視されてきたからである。
米国防戦略には不要だった地対艦ミサイル
 そもそもアメリカの国防戦略の基本は、「外敵はアメリカ本土沿海部には寄せつけず、できる限り遠くの海洋で、あるいは敵領域において撃破してしまう」というものである。そのため、アメリカの国益に対して軍事的危害を加える恐れがある勢力に対しては、敵地への侵攻も含めて先制攻撃によって事前に憂いを絶ってしまうのだ。
 その際の最大のツールが、多数の艦載機を積載した巨大空母を中心とした艦隊である空母打撃群だ。空母打撃群を根幹に据え、太平洋やインド洋や大西洋を越えて強大な戦力を敵地に送り込むという方針により、実際にアメリカは過去半世紀以上にわたり世界中を威圧し睨みをきかせてきた。したがって、アメリカ国防当局にとって、敵艦隊がアメリカ沿岸域に接近して来る事態など想定する必要はなかったのであった。
 そのため、アメリカ軍にとっては、迫り来る敵艦隊を沿岸地域で待ち受けて撃退するための地対艦ミサイルシステムの必要性はないというわけだ。
 実際にアメリカ軍は地対艦ミサイルシステムを保有していない。また、アメリカの兵器メーカーでは、地対艦ミサイルや地対艦ミサイルシステムを開発・製造していない。
中国が地対艦ミサイルを重視してきた理由
 一方、中国軍はアメリカ軍と異なり、地対艦ミサイルを重視してきた。
 ケ小平の近代化政策以降、人民解放軍は海軍提督劉華清が打ち出した積極防衛戦略を中心に据えて、海から押し寄せて来るアメリカ軍をできるだけ中国沿岸から遠くの海洋で撃破できる軍事力を構築する努力が続られてきた。そのため海軍と空軍、そしてミサイル戦力の徹底した強化が図られるとともに、陸軍の機械化・少数精鋭化も万難を排して推進されている。
 ただし、海軍や空軍を強大化すると言っても、軍艦や航空機の開発やそれらの要員育成には時間がかかる。中国に脅威を加えるアメリカ海軍にある程度は対抗できうる程度の近代化海軍へと中国海軍が成長するまでの期間は、中国沿海域に押し寄せて来る米海軍艦艇を沿岸地域から攻撃して撃退する方針で持ちこたえなければならない。
 そのため重視されたのが地対艦ミサイル戦力の構築と強化であった。
 もともと中国軍は毛沢東以来、一点豪華主義的抑止力として弾道ミサイルや長距離巡航ミサイルの開発に努力を傾注していたため、地対艦ミサイルの開発は比較的順調に進んだ。また、地対艦ミサイル戦力構築は、海軍艦艇や航空機の整備に比べると格段と安価で済むという利点もあった。
米海軍が警戒する中国の地対艦ミサイルバリア
 中国軍は現在、様々な地対艦ミサイルを極めて多数配備しており、通常の地対艦ミサイルである地上発射式対艦攻撃用巡航ミサイルとは一線を画した対艦攻撃用弾道ミサイルシステム(東風21D型弾道ミサイル、東風26型弾道ミサイル)まで手にするに至った。
米海軍が極めて警戒を強めている中国のDF-21D(東風21D)対艦弾道ミサイル
 また、地対艦ミサイルだけでなく、艦艇や航空機から発射する対艦ミサイル、そして防空用地対空ミサイルなど、アメリカ軍が接近阻止領域拒否戦力と呼ぶ兵器を中国沿岸地域(南シナ海に生み出した人工島も含む)や沿岸海域その上空にずらりと揃えている。その状況下で、中国海軍や中国空軍の戦力は目に見えて強化されてきた。
 そのため、アメリカ海軍としては、伝統的な空母打撃群を中国沿海域に展開させて中国を威圧する戦法には躊躇せざるを得なくなってしまった。なぜならば、対艦弾道ミサイルによって、アメリカ海軍の象徴である巨大空母が海の藻屑にされる恐れが高まっているからである。
地対艦ミサイルに価値を見出した米軍
 このような状況を打開するためにアメリカ軍が目をつけたのは、アメリカ軍も中国軍の戦略を逆手にとって、中国艦隊が太平洋に進出する際に通過しなければならない中国軍が「第一列島線」と呼ぶ九州〜南西諸島〜台湾〜フィリピン〜ボルネオ島の島嶼線上に地対艦ミサイルを配置して、接近して来る中国艦艇を撃破しようというアイデアである。
九州〜南西諸島に地対艦ミサイルバリアを築く(『トランプと自衛隊の対中軍事戦略』より)
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/a/1/500/img_a18509057b41779cdfc1be01e6d0eb19266581.jpg

 このような構想は、これまで存在しないわけではなかった(本コラムでもすでに5年近く以前から度々論じてきた)。しかし、空母打撃群中心主義に凝り固まってきたアメリカ海軍ではなかなか採用されることはなかった(本コラム2014年5月8日「効果は絶大、与那国島に配備される海洋防衛部隊」、2014年11月13日「国産地対艦ミサイルの輸出を解禁して中国海軍を封じ込めよ」、2015年7月16日「島嶼防衛の戦略は人民解放軍に学べ」、拙著『トランプと自衛隊の対中軍事戦略』講談社α新書、などを参照いただきたい)。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40621
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42188
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44290

 それが、ようやく中国近海での空母打撃群の運用が脅かされるに至って、地対艦ミサイルによって中国艦隊の接近を阻止しようというアイデアが、米陸軍のマルチ・ドメイン・バトル概念の一環として表舞台に登りつつある。
アメリカのシンクタンクCSBAの提案
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/6/6/600/img_66d68b8d29559fadf0a8923a2480d68e920046.png

日本の地対艦ミサイルの実力
 ただし、地対艦ミサイルの分野では日本がアメリカを数歩リードしている。日本はかねてより地対艦ミサイルシステムを独自に開発・生産しているだけでなく、地対艦ミサイルの運用に特化した陸上自衛隊地対艦ミサイル連隊を保有してきた。
 したがって、南西諸島での地対艦ミサイルバリア設置は日本が独自に実施するのが当然として、南シナ海沿岸諸国への地対艦ミサイルバリア網設置に関する装備の輸出や教育訓練などを日本が主導することができる。つまり、自由諸国における地対艦ミサイルのスタンダードを日本が手にするチャンスが大いにあるのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55151

http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/501.html

[戦争b22] 子供を戦場に送ると国の未来は衰退する韓国/台湾の徴兵制とイエメン少年兵「デバイド再生産」  台湾 徴兵制終了 若者に嫌気
子供を戦場に送ると国の未来は衰退する韓国/台湾の徴兵制とイエメン少年兵「デバイド再生産」
2019.1.11(金) 伊東 乾

イエメンの首都サヌア郊外で、サウジアラビア主導の有志連合による空爆で崩壊した家のがれきの上に座る子どもたち(2016年11月14日撮影)。(c)AFP/MOHAMMED HUWAIS〔AFPBB News〕
 韓国のレーダー照射が問題になっていますが、こうした出来事のもう一つの側面として、韓国の徴兵制を考える必要があると思います。
 かつて、大学の同僚だった韓国人研究者から、「子供は決して韓国で育てない。米国のワシントンDCで育てている」という話を聞きました。
 理由を尋ねると、「軍隊に行かせたくない、入営すると、疑問を持たない人間になりクリエイティビティが失われる恐れがあるから」と答えました。自分自身そうなったと言うので、これは深刻です。
 彼のケースは、もう20年以上前のことですので 現状は変わっているかもしれません。しかし、当時の韓国は日本軍方式で、兵隊は殴れば殴るほど良くなる、という考えが蔓延していたそうです。
 何かあると殴られる。上官の命令に異を唱えたりした日には、ボコボコにされてしまう。
 そんなDVな日常を過ごすうちに、自分でも気づかぬうちに、上の命令に疑問を持たず、イエスマンとしてロボットのように動いている自分自身にあるとき気がついて、慄然としたそうです。
・・・黒いカラスが白かろうが、国際法がどうであろうが、あるいは竹槍でB29に対抗できるかどうかの合理的判断などはほっておいて、ともかく目の前のことでイエスを言う・・・
 「そういう人間になりかねない。殴る軍隊に入れると子供の未来はなくなる」
 その同僚研究者は力説していました。
 先に台湾では昨年末、12月26日をもって徴兵制が「終了」しましたが、韓国でもその方向が議論されています。
 「若者に嫌気」といった読者受けする報道が目立ちますが、施政者側の観点としては、国の未来を拓くイノベーティブな青少年を育てることも念頭に置かれています。
 さて、こうした準先進国であればまだしも、そうでない場合、子供に就学の機会を与えず兵隊として利用することは、向こう50年、100年規模で、国の繁栄を阻害する「デバイド下層」への落ち込みが懸念されます。等身大の例をご紹介しましょう。
イエメン少年兵の21世紀
 混迷の続くイエメン内戦で少年兵の実践配備が全世界に報じられています。実に総兵力の3分の1にも及ぶという報道もありました。
 子供を軍事的に利用するというのは、大人が次世代を、すなわち国の未来を滅ぼす最短手筋の一つであることを、全世界の内戦や紛争後地域の現実が、雄弁に物語る通りです。
 国連諸団体、ユニセフやユネスコが発する「少年を戦地に送るな!」というメッセージは、日本国内では「人道的な配慮」と受け取られることが多いように思われますが、海外にはそれと異なる、様々な複数の視点が存在します。
 共通するのは「少年兵」を作り出すと、後々まで禍根を残す。ろくなものではないという一点です。それら、あまり日本国内で強調されない観点から、「少年兵」の問題を考えてみたいと思います。
 かつての日本軍もティーンエイジャーの少年を徴発して軍事に投入しました。
 予科練などはいまだに「赤き血潮」とか「でっかい希望」とか、おかしなセンチメントと共に歌われることがありますが、ろくでもない政策であることを、学徒出陣兵として青春を滅茶苦茶にされた父親の息子として、一言記しておきたいと思います。
武装する幼児:イエメンの「伝統」
 イエメンでは、部族社会の中で男子が幼少期から武器を手にすることが慣習〜伝統となっており、それがこのような事態を誘引した一大原因になっているとの指摘があります。
 これを「我が国の伝統であるからして、国際社会はほっておいてくれ」などと放置していいのか、と問われると、およそそんなことはないのが21世紀のグローバル社会と言わねばなりません。
 イエメン部族の男児が早くから自ら武器を手にする背景には8000年来、人類最長の文化と伝統が関わっていると考えても、大げさではないと思います。
 というのも、インダス文明が沿岸交易を通じてアラビア半島、さらにはシナイ半島を越えて地中海文明と交流したのは、イエメン隊商の貢献に負うところが多大と考えられるからにほかなりません。
 古代の遠隔交易で、正確に物品の数や内容を伝えるために数詞や割り印が工夫され、土製の印像(トークン)がやがて「文字」を生み出した過程を跡づけたデニス・シュマント=ベッセラの衝撃的な研究は既に定説として受け入れられています。
 こうした人類文明の大きなグローバルアーチを、8000年規模で支え続けてきた中に、誇り高いイエメンの隊商部族が位置づけられます。
 全世界で標準的な音素の表音文字(アルファベット)を日本は元来持たず、シラブルの表音文字と漢字という表意文字の混合文字体系です。
 しかし、これも元来はシナイ半島のセム部族が、異なる地域の言語を共通の音符で表現しようとして楔形文字を改良することで生まれたもので、イエメン人が古代インダス、メソポタミアとエジプトをつなぐ過程で発生したものです。
 現在私たちが用いているアルファベットは、シリア近在で活躍したフェニキア文字を源流とするもので、その普及にはやはりイエメン文化が役割を果たしていると考えて外れないように思います。
 「月の砂漠をはるばると」旅のラクダが行くかどうかは別として、古代の隊商は山賊、海賊の難を自ら防いで初めて成立します。
 いや、もっとハッキリ言うならば、弱っちい奴がいたら武力で財貨を奪い取ってしまう賊そのものの隊商も決して珍しいものではなかった。
 古代の聖典が同胞を大切にすると同時に、異教徒を人間扱いしないのは、こうした命がけの現実から考えるべきものと思います。
 男は自ら身を守り、家族や仲間、自分たちの財宝を腕力で防衛する必要がある・・・。
 イスラム以前のアラブの古代を「ジャヒーリーヤ」(無明時代)と呼ぶのは、イスラム以降の視点からの評価によるものです。
 乱暴、淫蕩、弱肉強食として描かれる「ジャヒーリーヤ」期のイエメン王国は、ユダヤ教やキリスト教が普及する文明圏で、砂漠のほかに耕地も存在し、さらには銀などの鉱物資源も産出したため、遠くペルシャからも早くから入植があったとされます。
 そこまで根深い男児たるもの、自ら武器を取って身を守れという「伝統」ですが、国際社会からは「やめろ」という意思表示がハッキリ示されます。理由があるからにほかなりません。 
 今日、少年期に就学の機会を逸すると、その後終生にわたって、その人もまた家族もその国全体も、長くダメージを負うことが解っているからです。
学ぶべきときに学ぶ大切さ
 私自身が直接、目で見たケースでお話しましょう。2008年、私はルワンダ共和国大統領府の招聘で同国に中期滞在して、ラジオメディアを濫用したメディア・マインドコントロールが同国で発生させた「ジェノサイド」の再発防止をサポートする仕事を手がけました。
 現地で様々な人と出会いましたが、その中で60歳前後でしょうか、ミシンを踏みながら花の刺繍を学んでいる男性の話が忘れられません。
 男性は1940年代末頃の生まれで、2008年当時は50代末か60前後と思われましたが、自分の年齢を正確には知らないのです。
 1950年代末、彼がまだ幼児だった時期にルワンダ=ブルンディでは内戦が勃発し、彼は少年兵として戦闘に参加します。
 銃を磨き、上の命令に従って無茶なこともたくさんし、因果なこともたくさんあったようです。
 ライフルを分解し油を差して手入れすることは、自分の命を守るうえでも必須不可欠だったそうです。
 でも、戦闘中心の生活では、指を折って可能な簡単な計算以上の知性を磨く機会はなかった。文字はまともに読めず、自分の名を一文字一文字追うことができる程度。
 家族もなく、ときに大金を手にすることもあったけれど、散財して手元には何も残っていません。そんな状態で40代、50代となると、戦力としては若い世代に太刀打ちできません。
 結局、用済みの老兵となった。文字が書けず計算もできない彼のような人が、同世代に何十万人もいるというのが「半世紀にわたって内戦が続いた国」の、偽らざる現実であることを教えられました。
 老人は円形の枠に張った布に、ミシンで花の模様を刺繍していました。この仕事を覚えれば、何とか自活できる可能性があるそうです。
 こうした授産事業に、ルワンダ大統領府は非常に意欲的でした。1次生産者の知性を上昇させることは、貧困撲滅の最も重要なカギになるのです。
 逆に言えば、文字が読めず、ろくに計算もできない人が末端労働に従事していれば、仲買やブローカーがいくらでもピンハネできてしまい、腐敗した経済社会の構造は、国の健全な復興と成長を著しい妨げになってしまいかねない。
 そうした観点からも、教育は決定的に重要だというのが、私をこの老人に合わせてくれた大統領府担当官のコメントでした。
 子供を戦争に投入するのは非人道的である・・・全くその通りです。
 しかし、それをただ「こんな年齢なら、本当は友達と遊んだり、家庭で可愛がられたりしていて当然だ。かわいそうに」といった哀れみの目で見るばかりではない、という復興の現実を、ルワンダの首都キガリの下町の授産所で私は知りました。
 ちなみに夕方で電気がついていましたが、途中から停電してしばらく真っ暗になった状況で、元少年兵の老人に「刺繍をしていて楽しい」という感想を聞かせてもらいました。
 内戦などで、ある世代全体が就学の機会を持てないということは、その国のその世代全体が「リテラシー」を失うことを直ちに意味します。
 子供が戦地で武器を取る姿は、いまかわいそう、というのみならず、明日の青年、2030年代の壮年、2040年代の国家リーダーの人材層喪失、ひいては復興の遅れや開発至難な状況、永続的な貧困発生などの原因となってしまいます。
 少年兵が1人いる、ということは、仮にその子が戦果を生き延びることができたとしても、その国の未来に長く影を落とすことを意味します。
 そういう現実をきちんと見据え、間違っても「赤き血潮」や「でっかい希望の虹」などを称揚すべきではありません。
 文字も読めず、数の計算も危うい21世紀生まれの世代が、どうやって今後、高度に情報化したグローバル社会で、先進各国に対抗していけるというのでしょうか?
 少年兵を量産するというのは、今後、必ず訪れる「AIデバイド」で、まず間違いなく「人工知能弱者」として割りを食う人々を、一つの国、一世代まるごと、現在進行形で作り出していることにほかなりません。
 さらに、それらが因果な搾取や、貧困、犯罪、麻薬貿易など2次的な広がりにも容易につながってしまいかねないのも、全世界のこの種の出来事から、いやというほど私たちは見てきたはずです。
 国連をはじめ、国際社会の良心層がおしなべて少年兵に反対する背景に、こうした実態を直視する必要があります。
 このグローバル環境のもと、子供を戦場に送ると、国は向こう100年にわたってデバイド下層に沈殿するリスクを負う、シビアな現実を認識すべきと思う次第です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55169


https://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/child-soldiers-yemen-war-sudan-saudi-arabia-darfur-poor-front-line-deaths-janjaweed-a8703186.html
台湾 徴兵制終了 若者に嫌気、戦力維持に課題
毎日新聞2018年12月18日 21時49分(最終更新 12月18日 21時50分)
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台湾軍は各地のイベントなどで、女性も含めて新兵の募集に力を入れている=台湾北部・桃園市で2017年9月、福岡静哉撮影
 【台北・福岡静哉】台湾軍が長年にわたり続けてきた徴兵制度が26日に正式に終了する。背景には、中台関係の緊張緩和や若者の徴兵制への反発がある。今後は志願制に移行するが、兵員数は目標に達していない。中台統一を悲願とする中国と対峙(たいじ)する台湾にとっては、戦力維持が大きな課題となっている。
 台湾は蒋介石総統時代に徴兵制を開始。18歳以上の男性に対し、陸軍が2年、海軍と空軍は3年の徴兵義務を課してきた。だが対中融和路線を取った国民党の馬英九政権(当時)が2008年、1年に短縮。馬政権は徴兵制の廃止も決めた。廃止時期は何度か延期されたが、昨年末を最後に徴兵制度による入隊が終了。この時に入隊した412人が26日までに除隊することで、徴兵制度が完全に幕を閉じる。今後は原則、4カ月間の軍事訓練だけが課せられる。ただ、有事の際は徴兵制を復活させる方針だ。
 台湾国防部(国防省)によると、戦力を維持するのに必要な兵士数は16万9000人。台湾軍は志願兵の募集を強化しているが、今年10月時点の兵士数は15万3000人にとどまる。大学4年の※国森さん(21)は「軍隊は自由が無くつまらない。周囲にも志願を考えている人はいない」と話す。今後、少子化が進むため、志願兵集めはさらに難しくなるとみられる。
 米国防総省は、8月に発表した中国の軍事動向に関する年次報告書で「中国は平和的な台湾統一を掲げるが、武力の行使を否定したことはない」と警鐘を鳴らしている。
※は「にすい」に「余」
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https://mainichi.jp/articles/20181218/k00/00m/030/206000c


http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/502.html

[国際25] 中東を読み解く マティス辞任は何だったのか?トランプ、迷走のシリア政策 
中東を読み解く

マティス辞任は何だったのか?トランプ、迷走のシリア政策

2019/01/10

佐々木伸 (星槎大学大学院教授)

 トランプ大統領が昨年末、強引に決断した「米軍のシリア撤退」が迷走している。大統領は当初、即時撤退を命じたが、議会や同盟国などの反対に遭って、「慎重に時間を掛けた撤退」へと前言を撤回した。撤退には数年かかる可能性も指摘されており、大統領の決定に抗議して政権を去ったマティス前国防長官の辞任は何だったのか、あらためて疑問の声が上がっている。


(AP/AFLO)
“酔っ払った水夫”のよう
 それにしてもトランプ政権のシリア政策はまさに「迷走」という言葉がぴったりだ。大統領は選挙期間中から、当時のオバマ政権のアサド・シリア大統領の追放という方針を批判、シリアへの関与をやめる考えを明らかにしていたものの、大統領就任後、イランの脅威を食い止めるために必要、との側近らの進言を入れ、長期駐留を追認していた。

 しかし、大統領は12月19日のツイッターで、過激派組織「イスラム国」(IS)に歴史的な勝利を収めたと宣言。「若者たちを国に返す時だ。全員が今戻りつつある」とシリア駐留部隊の即時撤退を唐突に発表し、「30日」以内に撤退するよう命じた。これにマティス国防長官が翻意を迫ったが失敗、抗議して辞任する騒ぎにまで発展した。

 大統領のこの突然の決定には、議会の与党共和党からも批判が相次ぎ、側近も懸念を深めた。こうした大統領の態度が急変したのは12月23日、トルコのエルドアン大統領と会談してからだ。トランプ大統領は「関係国と調整しながら慎重に撤退を進める」と修正を始め、年末にイラク・シリア米駐留軍司令官と会談した後、撤退期間を「4カ月」に変更した。

 こうした混乱ぶりをニューヨーク・タイムズなどメディアから批判された大統領は1月7日「適切なペースで慎重に撤退を進めている。最初に発表した計画と何ら変わりはない」と強弁し、まるで即時撤退など言ったことがないように主張。“落ち目の”ニューヨーク・タイムズなどが自分の発言をいい加減に報道している、と怒りの矛先をメディアにぶつけた。

 下院で多数派となった民主党のアダム・スミス新軍事委員長は大統領のシリア政策を「酔っ払った水夫のようにコロコロと進路を変える。彼は何をやっているか分かっていない」と痛烈に批判した。軍事アナリストは「4カ月でシリアから完全に撤収するのは不可能。数年かかる可能性もある」と指摘している。

米大統領補佐官を拒絶
 軍事アナリストの指摘のように、シリア政策の迷走がさらに深まる出来事が8日に起きた。米部隊が撤退した後に、その空白を埋める意向を表明していたトルコのエルドアン大統領がボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)の発言に激怒し、再び軍をシリアに侵攻させると恫喝する事態となったからだ。

 ボルトン補佐官はトランプ大統領が即時撤退を言い出した後、米国益に打撃を与えないような撤退を大統領に進言。米紙によると、昨年12月24日の閣議の席上、同補佐官が米国のシリアにおける達成目標を記した極秘メモを回した。目標としてはISの完全壊滅、イランの軍事勢力の駆逐、シリアの政治決着などが記されていた。

 補佐官は撤退をめぐる調整を行うためエルドアン大統領らと会談するべくトルコに向かい、その途中にイスラエルに立ち寄ったが、その際の発言に同大統領が反発した。補佐官は記者団に対し、米軍撤退の条件として、IS残党の完全掃討に加え、米国と連携してきた「シリアのクルド人勢力をトルコが攻撃しないと保証する」ことを挙げた。

 しかし、トルコにとってシリアのクルド人軍事組織「人民防衛隊」(YPG)はテロ組織として壊滅作戦を展開中の自国のクルド労働者党(PKK)の分派組織で、安全保障上の重大な脅威。一方、米国にとってはIS掃討作戦の主力を担わせてきた同盟組織だ。このYPGに対する姿勢の違いがトルコと米国との基本的な対立点である。

 エルドアン大統領は「(ボルトン補佐官の)メッセージを受け入れることはできない。彼は重大な過ちを犯した」となじり、いつでもシリアに侵攻してYPGを叩く用意のあることを表明し、8日に予定されていた補佐官との会談をキャンセルした。

 トルコのメディアによると、エルドアン大統領はその一方で、数日中にロシアのプーチン大統領と会談する見通しだ。米国との関係悪化に備えてロシアと接近して見せるという「エルドアン一流のしたたかさを示すもの」(ベイルートの消息筋)と捉えるべきだろう。

安全保障地帯の設置が目標
 同筋によると、エルドアン大統領の戦略的な目標は米部隊の撤退により、YPGへの米支援をやめさせ、トルコ軍がシリア北東部に進駐してYPGを排除、トルコ国境から幅20キロ、長さ数百キロの安全保障地帯を設置することだ。

 エルドアン大統領は最近のニューヨーク・タイムズへの寄稿で、米部隊に代ってISを壊滅させることができるのは北大西洋条約機構(NATO)の一員であるトルコしかいないことを強調。シリア北東部からYPGを排除した後、全土から集めた戦士による「シリア安定化部隊」を創設する考えを提唱した。

 しかし、こうしたエルドアン大統領の構想は「全くムシのいい思惑であり、非現実的だ」(同)。大統領にとってISの壊滅は二の次であり、トルコ軍をシリア領内深く侵攻させて、IS掃討作戦を展開するつもりはない、との見方がもっぱらだ。大統領は米部隊が撤退した後も、米国から空爆と補給支援を要求しており、トルコ単独でどこまでやる気があるのか、懐疑論が渦巻いている。

 さらに言えば、エルドアン大統領がシリア侵攻の先兵として考えているは、「自由シリア軍」など配下に置くシリアのアラブ人民兵軍団だ。先のシリア西部アフリン地域へのトルコ軍侵攻の際も、これら民兵軍団を先鋒として利用した。トルコ軍兵士の死傷者を最小限にとどめようとする狙いだ。

 大統領の新たなシリア侵攻の恫喝が本物か、ブラフなのかは不明だが、侵攻すれば、間違いなくクルド人勢力との衝突が起きるのは必至だろう。それだけ米軍の駐留が抑止力になっていたということだ。

 ボルトン補佐官の提案がエルドアン大統領に一蹴されたことで、米国は根本的にシリア撤退に伴う環境整備を再検討しなければならなくなった。つまりは「さらにシリア政策が混迷する恐れがある」(同)ことに他ならない。トランプ政権のシリア撤退をめぐる迷走はまだまだ続きそうだ。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15019
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/192.html

[社会問題10] 日本の「中国人コミュニティ」の“実態” 『日本の「中国人」社会』  李登輝が考える「日本」と「中国」の決定的な違い
オトナの教養 週末の一冊

日本の「中国人コミュニティ」の“実態”

『日本の「中国人」社会』中島恵氏インタビュー
2019/01/11

本多カツヒロ (ライター)

 先日、風邪で初めて訪れた病院で診察をしてくれたのは、中国系の名前の、日本育ちではない日本語の発音をする医師だった。それだけではなく、東京の街を歩き耳を澄ませば、観光客と思しき人から日本に住んでいそうなさまざまな中国人を目にする。実際に、日本3大中華街と言われる横浜、神戸、長崎以外にも、西川口や北池袋などには中国人が多く集まるようになったとニュース番組などで目にする。なかなかうかがい知ることのできない中国人コミュニティの実態はどうなっているのか。『日本の「中国人」社会』(日経プレミアシリーズ)を上梓したフリージャーナリストの中島恵氏に、中国人コミュニティの特色や在日中国人の教育事情などについて話を聞いた。


(7maru/iStock/Getty Images Plus)
――今回は日本の中国人コミュニティに注目されています。これには理由があるのでしょうか?

中島:爆買いに始まり、近年中国人観光客の増加は周知の通りです。一方、観光客以外、たとえば取引先の企業に、日本生まれではない中国人が働いているというように、日本在住の中国人が増えていることに薄々気がついている方も多いのではないでしょうか。調べてみると、在日中国人は約73万人と高知県の人口とほぼ同じです。また、2000年から3倍近くも増えているのです。

――高知県の人口とほぼ同数とは相当な数ですね。インド人が多く住む西葛西など他の外国人が多いコミュニティと比較し、今回取材した埼玉県の西川口や横浜市南区の中国人コミュニティの特色はありますか?

中島:他の外国人コミュニティと比較すると、人口が多いためさまざまな職業に就いていたり、西川口や横浜市以外にもいろいろな場所に住んでいます。また、外見上も日本人と似ていて、漢字という共通の文字があるため、日本語の習得が早く、他の外国人に比べると日本社会に比較的早く溶け込んでいる。日本企業で働いていたり、日本人と結婚している中国人も数多くいます。

 また、中国人はさまざまな勉強会を開いたり、中国のSNS(ウィーチャット)をさかんに使ったりと、中国人同士の活動が非常にアクティブなのが特徴的です。

――横浜市南区に中国人が多いというのは意外でした。

中島:横浜中華街からわずか数キロ離れたこの土地は、ごく普通の住宅街ですが、最近中国人の若い世代が流入しています。今回取材した横浜市立南吉田小学校の場合、全児童の約4割を中国人が占めます。同校では、授業についていけない外国人児童のために、別途国語の特別授業を行っています。

――子どもも親も日本語が理解できない場合はどうしているのでしょうか?

中島:南吉田小学校の場合は、通訳ボランティアがいますし、学校からの手紙にも絶対に読んでほしい箇所は、中国語に翻訳してあります。

 ただ、同校のように外国人に対し手厚いサービスができる学校ばかりとは限りません。そうなると日本語のできる子どもが日本語のできない自分の親に伝える、もしくは逆のパターンもあります。友だちが助けてくれる場合もありますが、親子ともに日本語ができないと厳しい状況かもしれません。もっと行政が支援に乗り出すべきだと思います。

――本書を読んでいると中国人の方々は非常に子どもの教育に熱心ですね。これには理由があるのでしょうか?


『日本の「中国人」社会』
(中島 恵、日本経済新聞出版社)
中島:まず、日本(海外)に住んでいるから教育熱心ということもありますが、本国の中国ではもっと競争が熾烈なため、自然と日本でも同じような感覚で教育に熱が入るようです。また、日本では中国人はマイノリティ(少数派)です。日本人も海外に出れば同じですが、マイノリティとして海外で生きていくためには、何事も、その国の人よりも努力しなければなりません。

――本書に出てくる例として、日本の教育はゆるく、理系の科目は日本の中学3年生は中国の小学校4年生相当だと。

中島:あれはあくまで極端な例です。日本にもさまざまなレベルの学校がありますから一概には言えません。

 そもそも日本と中国では学校の位置づけや存在のようなものが違います。日本の学校は勉強の他に掃除や給食当番、部活動と総合的に生活の指導を行っている印象を受けます。これに対し、中国の学校は丸暗記の勉強が主です。そうした中国の感覚からすると、日本の学校は宿題が少ない、部活動をするくらいなら、もっと勉強をさせたほうがよいなどと思い、日本の教育を「ゆるい」と感じる親もいるようです。ただし、日本の教育の方針を理解し、そのよさをきちんと認めている中国人もいます。

――大人に目を移すと、これだけ経済発展した中国で会社を起こしたらもっと大成功していたかもしれない、と考えてしまうネット企業の社長さんの話も出てきました。

中島:いつ来日したのか、その時期にもよりますし、これほどまでに中国が経済発展を遂げるとは誰も思ってもいなかったでしょう。それで故郷に帰り、同窓会などで同級生と顔を合わせると小富豪になっている場合がある。それを見るとつい「自分がもし中国に住んでいたら・・・」と思ってしまうこともあるようです。

 しかし、中国はそうしたビッグになるビジネスチャンスも多い一方で、誰かに足を引っ張られるケースもあり、リスクもとても多い。日本だと、そこでまで成功しないかもしれませんが、そこそこの成功を収めることができる。

――日本だとなかなか大当たりはしないけど、という感じですね。

中島:大成功する人は稀で、そういう人はきっとどの国でも成功すると思うんです。

 逆に、中国で大成功しているビジネスマンは、日本で大成功していなくてもほどほどの生活をしている彼らを羨ましく思っているかもしれません。大富豪になれなくても、日本のほうが生活にゆとりがありますので。いまでも中国社会には目に見えないさまざまな制限や制約があります。日本でビジネスを営み、生活すればもっといろいろな経験ができる。そこはお金には代えがたい面もあるのではないでしょうか。

――2000年から約3倍も増えた在日中国人ですが、今後さらに増えると予想されますか?

中島:現在、中国とアメリカの関係は悪化していますから、アメリカへ留学したり、アメリカでビジネスをしたいと思う中国人は少しずつ減っていくと思います。そうなると、その分が日本やヨーロッパの国々に向かうと予想されます。それに富裕層はますます子どもを留学させたいと考えますので、減ることは考えづらいですね。

――最後に、本書に興味を持った人たちへメッセージをお願いします。

中島:中国や中国人と一口に言っても、あまりにも広大で多様なため、日本人の物差しではなかなか理解しづらいことが多々あります。巨大な中国を理解するのは難しいことですが、まずは日本に住む在日中国人を糸口として理解するのはひとつの方法だと思います。

 また、日本人の中国人に対するイメージも10年以上前、20年以上前の、たとえば不法滞在の中国人といったネガティブなイメージのままで止まってしまっている。しかし、現在では料理人やマッサージ師さんだけでなく、大手企業のエリート会社員や大学教授まで、実に幅広い職に就き、日本で暮らしています。この現実にぜひ目を向けていただけたらと思います。

 特に、現在議論されている外国人労働者の受け入れ問題を考える際には、こうした幅広い意味での在日外国人の現状をまず理解し、情報を共有していくべきではないかと思っています。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15008


 
日本人秘書が明かす李登輝元総統の知られざる素顔

李登輝が考える「日本」と「中国」の決定的な違い

2019/01/11

早川友久 (李登輝 元台湾総統 秘書)

『武士道』に代表される日本人の精神性と最も対照的なのが、中国の『論語』だと李登輝さんは言います。唯一の日本人秘書である早川友久さんが、その意味を解説します。


2007年5月、日本を訪れ「奥の細道」を散策した李登輝元総統(写真:ロイター/アフロ)
 私が台湾を初めて訪れ、文字通り「ハマって」しまった頃に読んだ本に、漫画家の小林よしのりが描いた『台湾論』がある。2002年ごろのことだ。この漫画のなかに、もちろん李登輝も登場するのだが、そのなかで忘れられないセリフがある。

 李登輝はインタビューに訪れた小林にいう。

「あの当時の日本が、理想的な日本人を作ろうとして、作り上げたのがこの李登輝という人間なんだ」

 総統として台湾の民主化を成し遂げた人物が、臆面もなく断言することに衝撃を受けたのだ。

「公」と「私」の区別
 それから十年あまり、まさか自分がその人物のそばで働くことになるとは露ほども思わなかったが、近くで見る李登輝の精神はまさに日本人以上のものだと改めて感じるようになった。そばで見ていて、李登輝が最も厳しく考えているのは「公」と「私」の区別だ。象徴的なのが、李登輝が銀行に口座を持っていないことだ。

「自分はお金のやり取りに一切タッチしない」ということで、いつしか口座はすべて閉じてしまった。原稿料や講演料は、李登輝基金会の口座へ振り込まれる。退任総統としての恩給はすべてお孫さんに渡して、家の内外のやりくりに充ててもらう。台北市内にある自宅の名義もすべてお孫さんの名義だ。

 これほどまでに李登輝が神経を尖らせているのは、退任後に何度も根も葉もない噂やでっち上げ報道で名誉を汚されてきたからだ。たとえば、2000年の総統選挙では、李登輝は出馬せず、当時副総統だった連戦が国民党の総統候補となったが、この選挙で連戦は敗れ、民進党の陳水扁が当選した。台湾史上初の政権交代が実現したわけである。

 ただ、それは裏返せば、歴史的な経緯はさておき、とにかく戦後50年あまり台湾で政権を担ってきた国民党が初めて下野した瞬間だったともいえる。国民党の内部からみれば、独裁的なそれまでの既得権益を手放し、さらには政権まで手放すことになった最大の「戦犯」の汚名を李登輝に着せるのはむしろ当然の流れだったのかもしれない。

 国民党の主席も即座に辞任した李登輝と夫人を襲ったのはマスコミのデマ報道による攻撃だった。選挙が終わり、国民党の下野が決まって一週間もしないうちに、新聞に「李登輝夫人、8,000万米ドルを持って国外逃亡」と書かれたのである。54箱に詰めた米ドルを持って米国に逃亡した、などとまるで見てきたかのようなでっち上げ記事であった。

 もちろん、李登輝夫妻は選挙後もずっと台湾にいるわけで、たとえ現在のようにインターネットがない時代であっても容易にその嘘が判明する記事なのだが、「選挙に負けたから国外脱出」という思考経路が、未だ台湾に巣食う中国式思想を思わせる。

 中国では、古くから政権が交代すれば、前政権に携わっていた人間は容赦なく粛清されたり、財産を剥奪されるといった、前近代的な「易姓革命」という政治思想があった。つまり、完全なスクラップ・アンド・ビルドで、前政権は跡形もなく消去され、新しい政権を確立するという概念である。

 でっち上げニュースを作った人間の頭のなかに、こうした前近代的な「易姓革命」という中華的思想があるからこそ、「李登輝夫人が米ドルを抱えて国外逃亡」という記事になったのだろう。

夫婦であり、戦友であり
 こんなお粗末な記事であっても、名誉毀損の裁判では何年にもわたって闘わなければならなかった。李登輝もその頃のことを思い出し「私のことなら、根も葉もない噂だとほっとけばいい。だけど、家族が犠牲になるのは耐えられない。だから裁判で闘ったんだ」と話すことがある。 

 こうした一件もあり、李登輝は必要以上に金銭や財産といったものをなるべく自分の手で扱わないようにしてきたし、総統夫人も、滅多なことがない限り、三越やそごうといったデパートに出かけて買い物をすることはない。

「ちょっとデパートに買い物に行くだけで、あぁ李登輝夫人が買い物してるわ、と言われるのが嫌なのよ」と奥様がこぼすのを聞くと、私まで切ない気持ちになる。退任して20年近く経ってもなお、それほどまでに気を遣わなければならないほど辛い経験をされたのかと感じるのだ。

 でも、それに続く「だって、私が買い物することで、主人の名誉が傷ついたら困るもの」という言葉に、温かな気持ちを感じ、李登輝と奥様がともに夫婦であるとともに、戦友でもあったのではないかと思う一瞬である。

 こうした、公私を峻厳に区別し、名誉を重んじ、金銭に関わる汚名を雪ぐためなら闘うこともいとわない。これはまさに名を重んじ、金銭に執着することを下に見る日本精神なのではないだろうか。

 李登輝が、日本人的な精神を持ち、かつそれを重んじていることを窺わせる一端を挙げよう。李登輝には『武士道解題 ノーブレス・オブリージュとは』(小学館文庫)という著書がある。最初に日本で出版され、のちに中国語版がいわば逆輸入のかたちで、台湾で出版された。

 これは、李登輝自身が、新渡戸稲造の『武士道』を高く評価しているものの、現在の日本では「封建的な思想」として正しく理解されず、世界でも類を見ない素晴らしい日本精神を有しているというのに見向きもされない実情を憂いて書き上げたものだ。はっきり言って、日本人の私でも難解で、最後まで読み通すのさえ忍耐力を必要とするこの『武士道』 だ。ただ、それを平易な言葉に解釈し、特に若い日本人にその真意を伝えたい、という思いから、李登輝自ら執筆したものだ。

李登輝が考える「日本」と「中国」の違い
 そんな、武士道にも精通した李登輝がよく話してくれるエピソードがある。

 日本統治時代、李登輝の家庭は「国語家庭」であった。すなわち、日本語を家庭内でも常用する「模範家庭」というわけだ。

 とはいえ、台湾人である以上、日本語だけでなく台湾語も身に着けなければならないと両親は考えた。そこで、公学校(当時、台湾人の子弟が通った小学校のこと)中学年くらいになると、近所の廟で開かれていた寺子屋のようなところへ台湾語を習いに行かされた。その台湾語の教科書が『論語』だったというのだ。そして、日本人の精神性と最も対照的な例が中国の『論語』だと李登輝は言う。

 李登輝がいつも引用するのは「先進」第11之12だ。「未知生、焉知死(未だ生を知らず、焉んぞ死を知らん)」。解釈には複数の説があるが、李登輝はごくシンプルに「まだ生について十分に理解していないのに、どうして死を理解できるだろうか」と解釈する。ここに日本人と中国人の精神の決定的な差があるという。

 日本人は「死」を大前提として、限りある生のなかで如何にして自分はこの生を意義のあるものにしていくか、はたまたどれだけ公のために尽くすことが出来るか、という「死」を重んじた精神性を有している。

 一方で、中国人の精神性は「まだ生について理解できていないのになぜ死を理解できるか」と正反対だ。そのため生を理解するために生を謳歌しよう、という発想が出てくる。「死」という限られたゴールがあるのであれば、それまでにめいっぱい生を堪能しようという考え方だ。

 こうした論語的な発想があるからこそ、中国では「いまが良ければそれでよい」「自分あるいは家族が良ければそれでよい」という自己中心的な価値観や拝金主義がはびこる原因になったのではないかと李登輝は考えている。「死」を前提とし、「いかにして公のために」という日本人的な発想とは根本的に異なるというのだ。

 李登輝に言わせれば『武士道』に描かれた精神、つまり「武士道とは死ぬことと見つけたり(葉隠)」という言葉こそ、日本人の精神性を最も表したものだという。日本人とくに武士にとっては「死」が日常生活と隣り合わせであり、常に死を意識しながらの生活であった。その「死」が念頭にある生活のなかで、いかにして人間は生の意義を最大限に発揮していくのか、それが日本人の精神性に大きく影響していると喝破する。

 言い換えれば「公」と「私」という概念といっても良いだろう。私から見れば、李登輝はまもなく96歳になる今でも、いかにして台湾のために尽くすか、日台関係のために何が出来るか、という「公」のことを毎日考えている政治家だといえる。

日本人は、本当の中国人というものを知らなくちゃならない
 戦後、台湾は日本の統治を離れ、中華民国(国民党)の占領統治の時代を長く経験してきた。この間、日本語が禁止されることはもちろん、言論の自由さえ奪われた台湾の人々は、息をひそめながら生きてきた。それと同時に、台湾社会からは日本統治下の名残が徐々に失われ、中国的な価値観を持つ社会へと変貌していったともいえる。

 日本のメディアから多く問われる質問として「日本はこれから中国とどのように対峙していくべきか」というものがあるが、李登輝が苦笑しながら必ずいうセリフがある。

「日本人は中国人を理解できやしないよ。いつも騙されてばかりだ(笑)。でも私は戦後、何十年も中国人の社会で生きてきた。だから彼らがどうすれば引っ込むか、どうすれば踏み込んでくるか、よく分かる。日本人は、本当の中国人というものを知らなくちゃならない」と。

 戦後になり、中国人社会のなかに身を置いた李登輝は、日本人と中国人の精神性の大きな差を感じたに違いない。しかし、日本統治時代に徹底した日本教育を叩き込まれた李登輝は、自ら「日本が作り上げようとした理想が私」と断言しながらその日本的な精神を守り続けてきた。

 だからこそ、前回も「李登輝が『台湾民主化は日本のおかげ』と語るワケ」で書いたように、国民党のなかでポストの階段を上がっていきながらも、権力闘争に巻き込まれることもなく、強い信念によって台湾の民主化を成し遂げた。もはや日本でもなかなか見ることの出来ない、これほどまでに日本的な精神を持った人物の言葉を、私たち日本人はもう一度学び直すべきではなかろうか。

連載:日本人秘書が明かす李登輝元総統の知られざる素顔

早川友久(李登輝 元台湾総統 秘書)
1977年栃木県足利市生まれで現在、台湾台北市在住。早稲田大学人間科学部卒業。大学卒業後は、金美齢事務所の秘書として活動。その後、台湾大学法律系(法学部)へ留学。台湾大学在学中に3度の李登輝訪日団スタッフを務めるなどして、メディア対応や撮影スタッフとして、李登輝チームの一員として活動。2012年より李登輝より指名を受け、李登輝総統事務所の秘書として働く。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15035
http://www.asyura2.com/18/social10/msg/107.html

[経世済民130] 週刊SPA!炎上は出版業界に突きつけられた「お前らつまんねえよ」である 西武・そごうCM炎上「女に生まれたら罰ゲーム」を
ネット炎上のかけらを拾いに

週刊SPA!炎上は出版業界に突きつけられた「お前らつまんねえよ」である

2019/01/11

網尾歩 (コラムニスト)

 学生に怒られる大人たち。


*画像はイメージです(zoom-zoom/iStock/Getty Images Plus)
ランキング作成者自ら「主観だった」と謝罪
 ついに掲載された5大学すべてが抗議声明を出すに至った週刊SPA!の「ヤレる女子大学生ランキング」。署名が始まってから1週間も立たないうちにテレビにも取り上げられ、編集部が謝罪を出すまでの燃えっぷりとなった。

 まず騒動を振り返ってみたい。発端となったのは12月25日号「ヤレる『ギャラ飲み』」特集の中の囲み記事「ヤレる女子大学生RANKING」。5大学がランキング付けされているが、その根拠は編集部が「ギャラ飲み」マッチングサービスの運営者に聞いただけ、である。

 記事には、「ギャラ飲みには女子大生も多い。ヤレる可能性の高い大学を、ランクづけしてもらった」とある。これに応えるかたちで運営者が語っているのだが、ランクづけの根拠は、

「キャンパスが渋谷にあって遊んでいるコが多い」

「男ウケの良さを磨いている」

「横浜方面にすんでいて終電が早い」

「大企業を狙えるか狙えないかの中間に位置するMARCHのなかでも(略)就活相談で仲良くなれるチャンスが多い」

「キャンパスが遠いので、都内へ出て“遊んで帰る”マインドのコをよく見かけます」

 と、まったくの主観である。運営者はこの件を取り上げたTV番組のインタビューで自ら、「本当にこれは大学に申し訳ないんですけど自分の主観で大学を決めてしまいました」と語っている。

署名発信者の女子大生は編集部との対話を希望
 このランキングがツイッター上で「大学の名前だけでこんなランキング作られる世の中辛すぎる」というつぶやきとともに拡散され始めたのが1月2日。そして1月4日、現役の女子大生による署名「女性を軽視した出版を取り下げて謝ってください」がスタートした。

 キャンペーンの文章には「日本で初めてのG20が今年、2019年に開催される中新年早々こんなランキングを出版するのは、冗談にもほどがあると思います」とあり、なかなかパンチが効いている。G20サミット(金融・世界経済に関する首脳会合)が今年日本で開催されることや、ブエノスアイレスで行われた前回のG20では「女性の視点」が共同宣言にふんだんに盛り込まれ、続く日本にも期待がかかっていることを、情報として脳にインプットしている社会人はどれほどいるだろうか。

 署名はあっという間に賛同が集まり、すでに4万4000人以上が署名している。

 販売元の扶桑社は1月9日付けで公式ホームページに、編集長と発行人名による謝罪文を発表。また9日までに、ランキングに掲載された5大学すべてが抗議や遺憾の意を表明した。

 署名の発信者である女子大生は、9日に情報を更新。週刊SPA!の謝罪文は「『論点が全くズレている』と思っています」と書いている。さらに「私達は、お互いを批判し合うだけの非建設的な争いを望んではいません」「今回の件を発端として私達と御社で社会をこれからどう変えていけるかを一緒に考えていければと思います」と、編集部に対して対話を望んでいる。

編集者は心から「ヤレるランキング」を面白いと思っているのか
 学生からの「一緒に考えていければと思います」という提案はとても面白い。週刊SPA!編集部は、学生からこのような申し出を受けること自体、屈辱に感じるだろう。

 インターネット時代となり、マスコミは「唯一の発信者」の座から引きずり降ろされた。マスコミが一方的に発信し、受け手がそれを見るだけだった時代はもうとっくに終わった。今や、やり方次第で、一般人がツイッターやYouTubeやTiKToKで有名になり、影響力を持てる。子どもたちが芸能人よりもユーチューバーに憧れるように、今の若者にとってマスコミは絶対的な存在ではない。昔のように、雑誌の編集者やテレビ局のディレクターに気に入られなければ世に出ることができないわけではないのだ。編集者の目に止まる前にネット上でファンがつく作家もいる。就職先としてマスコミの人気は昔ほどではないのは周知のことだ。

 誰でも抗議の声をあげて賛同を集めることができ、また自分の意見や企画を発信して世の中に提示することができる現代において、今回の騒動は、「マスコミは一体何をしているのか」を考えさせられた。

 週刊SPA!の中にもいろいろな記事があり、多様な編集者・ライターが関わっているだろうが、「ヤレる女子大学生RANKING」については、どう見ても一部の読者ウケを狙った惰性記事である感が否めない。あの記事の編集担当者の意気込みと、署名を集めた女子大生、どちらの熱量が高いか。筆者は後者だと思う。

 あの記事は女性蔑視であり、署名は女性蔑視を温存している社会への抗議であるとも思う。一方で、出版業界関係者は、業界に年始早々振り落とされた鉄槌だと考えるべきではないか。

 長く出版不況と言われ、「とにかく売れればいい」と読者に媚びを売るのはSPA!だけではないはずだ。売るためにエロや貧困、副業、鬱といったネタを使い回す。表現の自由はあっても「売らんかな」の制約に出版業界は縛られている。貧すれば鈍する、負のスパイラルから抜けるきっかけが今回の騒動にあればいいのだが。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15044

 
ネット炎上のかけらを拾いに

西武・そごうCM新春初炎上「女に生まれたら罰ゲーム」をパイ投げで再現か

2019/01/04

網尾歩 (コラムニスト)


(wildpixel/Getty Images)
 笑って立ち上がらせるなら、せめてパイを投げ返させてくれ。

「女性差別もあったけど、『わたしは私』です」ってこと?
 西武・そごうといえば、2016年に放映された樹木希林出演のオリジナルムービーだ。「歳をとったら、歳相応の服を着なさいとか、妻や母親、祖母という役割に自分を合わせなさいとか、周りの人と同じように振る舞いなさいとか。そんな窮屈な常識は、もういらない」という力強いメッセージ。周囲との軋轢を避けようとすればするほど枠にはめられやすい日本社会の狭量さを鮮烈に描写してもいた。

 しかし同じ企業の広告が年始から炎上している。安藤サクラが出演する「わたしは、私」。

 少し長くなるが、コピー全文を引用する。

=====
女だから、強要される。
女だから、無視される。
女だから、減点される。
女であることの生きづらさが報道され、そのたびに、「女の時代」は遠ざかる。

今年はいよいよ、時代が変わる。
本当ですか。期待していいのでしょうか。
活躍だ、進出だともてはやされるだけの「女の時代」なら、永久に来なくていいと私たちは思う。

時代の中心に、男も女もない。
わたしは、私に生まれたことを讃えたい。
来るべきなのは、一人ひとりがつくる、「私の時代」だ。
そうやって想像するだけで、ワクワクしませんか。

わたしは、私。
=====

 「女だから減点される」は、明らかに東京医大などの不正入試を意識したものだろう。「強要される」は、#metoo以降に告発が相次いだ「性的強要」を意味しているはずだ。「無視される」は具体的事例に悩むが、あえていえば「土俵から降りてください」の件で、女性の働きがさっくり無視されたことかもしれない。

 企業の広告で、性暴力をイメージさせる「強要」の言葉を使うのは、思い切った試みだと思う。広告において明るいエロは歓迎されても、性的強要はタブー中のタブーだからだ。また、ローラが「辺野古の海を守ろう!」と言えば政治的発言ダーっ!の大号令がかかる昨今において、財務省のセクハラや議員の関与も指摘されている不正入試を容易に推測させる言葉を入れたり、政府が推進する「女性活躍」に疑問を呈していくのは、それなりに覚悟のある態度ではないか。

 しかし、この広告は批判されている。理由は主に、コピーの後半部分と映像にある。

都合よく「私たち」を使っていないか
 「強要、無視、減点」はそのとおりである。すでに述べたとおり、ここに言及するのは覚悟のある態度だと感じる。しかし「女であることの生きづらさが報道され、そのたびに、「女の時代」は遠ざかる。」から、急によくわからなくなる。

 女の生きづらさが報道されると、「女の時代」は遠ざかるのか。報道されず無視されていた時代よりは、まだマシではないのか。もしかして報道されなかった女性差別はないと思っている人がムービーを制作しているのか。そしてここから、さらに迷走する。意地悪くて申し訳ないが、一行ずつツッコミたい。

 「今年はいよいよ、時代が変わる。」

 根拠を希望する。

 「本当ですか。期待していいのでしょうか。」

 言い切ったことに保険をかけておくかのような問い返し作業。誰に期待するのか。もしかして男社会なのか。

 「活躍だ、進出だともてはやされるだけの「女の時代」なら、永久に来なくていいと私たちは思う。」

 「男社会」にもてはやされるだけの「女」ならいらないって意味であれば同意である。ただ、「女の権利を主張してもしょうがない」と言うために、都合よく「私たち」を使っていないか。

 「時代の中心に、男も女もない。」以降は急に、「個の時代(=わたし)讃歌」となる。映像では、安藤サクラに白いパイがぶつけられ、彼女は倒れる。ちなみに、このシーンで真っ先に思い出したのは、避妊クイズに間違えると粉をぶっかけられる女性の動画である(※参考:「粉をぶっかけられる女の横で、放っておかれる男の性」)。ちなみについでに言うが、通常、「わたしは、私」などとあえて主張する女は、それだけで古臭い価値観の方々から煙たがれるか小バカにされる。しかし、「女性差別はあるけれど、わたしは私」となると話は別である。一転して「わかってる女」になることができる。

パイなんていらねえよ、新春
 このムービーに欠如しているもの。あるいは徹底的に排除されたものは、怒りなのだと思う。怒りが排除され、「怒るな」の意が遠回しに込められている。

 「差別もあったけど、前向きに頑張ります」って態度がスマートかのように言わないでくれ。女ってだけで「強要、無視、減点」されたら、怒って当然じゃないか。「まあまあ、いったん座りましょう」ではなく、「いったん怒りましょう」でいいじゃない。

 でもやっぱり、世の中は女に怒らせない。「男とか女とか言うのやめましょ!」に持っていこうとする。自称中立派の定石である。「フェミニストって言葉もなくなればいいよね。ほら、個の時代だから! ワクワクするね!」と、足元の課題を解決せぬまま、百歩先の話をしようとする。

 散々「女だから」という理由で「男より劣る」社会で差別されてきた側に、「時代の中心に、男も女もない」と言わせる空恐ろしさ。大企業のトップに居座る男が土下座しながら「男も女もない」と言うなら、いや、「男とか女とかで差をつけてすみませんでした。男に下駄を脱がせます」と言うならわかる。実際は、パイをぶつけられながらも女が立ち上がり「男も女もない」と笑顔で言わされているのである。まじかよ2019年。

 せめて安藤サクラが既得権益を象徴するおっさんにパイを投げてほしかった。おっさんにパイをぶつけること、あるいは「強要、無視、減点」の責任の所在を明らかにしておっさんの機嫌を損ねることは、エッチな描写や#metooなんて目じゃない、日本社会最大のタブーなのかもしれない。ムービーの中には当たり前だが、財務省の福田前事務次官も「セクハラ罪はない」の人や「待機児童なんていない」の人も東京医大も土俵も、そのほか#metooされた方々も出てこない。パイを投げた彼らに対して、あなた「時代の中心に、男も女もないですよね」って言いますか? 「今なんでパイ投げたんですか」って聞かないか。まず。

 「男も女も関係ないってメッセージ、素敵やん。うちの妻もそう言ってる」などとまだ言っている人がいるのであれば言おう。パイを投げつけられた黒人が「時代の中心に黒人も白人もない」と笑う広告があったとしても、あなたは何も思わないか。今ある問題から目をそらせようとする圧力を感じない人は、とてもハッピーな頭をしている。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/14969
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/537.html

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