★阿修羅♪ > うまき gqSC3IKr > 100002
 
g検索 gqSC3IKr   g検索 ufjzQf6660gRM
 前へ
うまき gqSC3IKr コメント履歴 No: 100002
http://www.asyura2.com/acpn/g/gq/gqs/gqSC3IKr/100002.html
[経世済民129] 中国最大級ファンド、保有株を売却の用意「世界の相場はピーク」 個人投資家は押し目買い、プロは売越し 永久に急成長は不可能
中国最大級ファンド、保有株を売却の用意「世界の相場はピーク」
Bloomberg News
2018年10月24日 2:35 JST
中国政府系の資産運用会社、中国光大(チャイナ・エバーブライト)は、世界的に株式のバリュエーションがピークを付けたとの懸念から、保有株を売却する準備をしていることを明らかにした。同社の保有資産は1390億香港ドル(約2兆円)に上る。

陳爽CEO
Photographer: Anthony Kwan/Bloomberg
  中国光大の陳爽最高経営責任者(CEO)が23日、中国・杭州でのインタビューで述べた。新規株式公開(IPO)を経て、その株式を売却する機が熟している企業が、同社のグローバルポートフォリオに20−30社あるという。どの銘柄を売却することになるのか具体的には言及しなかったが、「できるだけ早く」手放す予定だと語った。
  陳CEOは「米国を含め、世界の相場はピークを付けた。次の金融危機と混乱に備えるべきだ」とし、資産を積極的に売却するつもりだと述べた。中国光大は世界各地の300社余りの株式に投資している。

原題:One of China’s Biggest Funds Is Getting Ready to Dump Stocks(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-23/PH28D16S972A01?srnd=cojp-v2


 
中国、小規模な刺激策積み重ねる−社債支援策発表でも株価は続落
Jeffrey Black、Heng Xie、Zhang Dingmin
2018年10月24日 7:44 JST
• 中国人民銀は社債発行支援に向け1620億円を供給する計画
• 投資家は株売却を続ける、貿易戦争への懸念根強いことを示唆
中国は株価下落と景気減速に対し、投資家心理の改善ではなく安定を目指す小規模な刺激策を積み重ねることで対応している。
  中国人民銀行(中央銀行)は民間企業の債券発行で信用面の支援に向けて中債信用増進公司に100億元(約1620億円)を供給する計画だと、ブルームバーグは23日に報じた。企業向け融資促進を図る新たな措置や、海外投資家による中国本土市場への投資ルールを来年3月末以降に簡素化する計画に加え、今回の人民銀の措置は、中国企業の資金調達と投資を促進する既存措置をさらに強化する。
  しかし、中国株は23日も続落し、投資家の中国経済への懸念は社債発行支援策では緩和しなかったことが示唆された。
  貿易を巡る米国との対立が中国経済への持続的な重しになる中、投資家は景気回復の見込みについて一段と悲観的になりつつあり、中国本土株は今年、主要株価の中で最も大きく下げている。アナリストらは、中国が今後、投資家心理が改善するまで金融・財政刺激を少しずつ増やしていくとみている。中国は債務依存の軽減という目標を完全に撤回することは望んでいない。
  
  ゴールドマン・サックス・グループの本土合弁パートナー、北京高華証券の中国担当チーフエコノミスト、宋宇氏らはリポートで、「最近発表された刺激策はどれも経済全体への貢献は限定的なものにとどまる見込みだが、これらの措置は少しずつ勢いを増し、中国の政策スタンスに対する人々の見方を変えつつある」と分析。「さらなる刺激策が近く講じられるとわれわれは予想しており、これは中国経済と市場が安定したと思われることを示す明確な証拠が見られるまで続くだろう」と述べた。

原題:China Adds to Stimulus Drip-Feed as Markets Stumble Again(抜粋)
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
LEARN MORE
関連ニュース
1. 中国は新ゲーム認可の特別プロセス停止、最後の手段閉ざす
2. 日本株は反発、米決算や中国経済への過度の警戒和らぐ−内需中心高い
3. 日本生命、新規資金6000億円の一部を日本国債に投資
4. ドル・円は小幅高、日中の株高に安心感−112円台半ば
5. 欧州委員会、イタリアの予算案を拒否−3週間以内の再提出を指示

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-24/PH33WD6KLVRB01

 

個人投資家は押し目買い、プロは売り越し−BofAの米株顧客データ
Lu Wang、Vildana Hajric
2018年10月24日 13:55 JST
• 個人顧客は先週、10億ドル超の株を購入−2月以来の高水準
• 機関投資家とヘッジファンドは先週、引き続き売り越し
株式投資について、プロの投資家と一般投資家の乖離(かいり)が大きくなりつつある。
  バンク・オブ・アメリカ(BofA)の顧客調査によると、3週連続で個人投資家は米株を押し目買いし、機関投資家とヘッジファンドは売り越した。リテール投資家からの需要のおかげで、BofAの顧客全体による買いは先週、5月後半以来の高水準となった。
  これは1銀行の顧客についてのデータにすぎないが、最近数カ月の投資家センチメントの傾向をとらえている。一方に、利益の伸びが20%でバリュエーションは低下しているのだから、最近の下げは買いの好機との見方がある。他方、債券利回り上昇や利益拡大ペース鈍化、米国内外での絶え間ない政治的緊張と、9年半に及ぶ上昇相場を脅かす要因が集まっているとの考え方もある。
  チャールズ・シュワブの最高投資責任者(CIO)、リズ・アン・ソンダース氏は電話取材に対し、買い余力が枯渇するまで売りが続く可能性があるとして、「今は個人投資家にもっと怖がってほしい」と述べた。
  BofAによると、同社の個人顧客は先週、10億ドル(約1130億円)余りの株を購入。2月以来最大で、2009年以降のデータの中で6番目の高水準だった。BofAの株式ストラテジストらはリポートで、「強気相場が終わっていないというリテール投資家の自信がうかがわれる」と記述した。
  一方、ヘッジファンドと機関投資家の動向を4週単位で見ると、少なくとも8月から売り越しが続いている。


原題:Mom and Pop Are Buying the Dip in Stocks While the Pros Stay Put(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-24/PH33WD6KLVRB01

 
「永久に急成長し続けることは不可能」−米キャタピラーCFO
Joe Deaux
2018年10月24日 9:15 JST
• 7−9月の増収率は18%、17年4−6月期以来の低い伸び
• 市場は神経質になっている−ボンフィールドCFO
米キャタピラーのアンドルー・ボンフィールド最高財務責任者(CFO)は23日、急成長は永遠には続かないというメッセージを投資家に送った。同社の株価はこの日の取引で一時10%強下げた。
  キャタピラーは2018年の見通しを引き上げると期待していたアナリストを失望させた。7−9月(第3四半期)の増収率は18%と、2017年4−6月(第2四半期)以来の低い伸び。昨年7−9月期の増収率は25%だった。
  ボンフィールドCFOはインタビューで、「景気敏感な工業株というより大型成長株の1つでなければ、売上高が500億ドルの企業で永久に急成長し続けることは不可能だ」とコメントした。

ボンフィールドCFO
写真家:Jason Alden / Bloomberg
  同CFOは貿易戦争や金利上昇に言及した上で、今のところ単一のマクロ経済要因が同社の成長を鈍化させているわけではないと指摘。「市場は神経質になっていると思う。7−9月期の予想と結果は多くの人々にとって若干ネガティブだった。アウトパフォーマンスの程度もやや弱まった。こうした要因がすべて市場心理に影響していると思う」と語った。

原題:‘You Can’t Grow That Fast Forever’: Caterpillar Defends Results(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-24/PH2RRK6KLVRA01?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/146.html

[経世済民129] トランプ大統領、FRB利上げに「文句は言う」が… 日銀TB買入れ縮小加速の好機、短期金利急低下 円とフラン安全資産輝き
トランプ大統領、FRB利上げに「文句は言う」が…
上野泰也のエコノミック・ソナー
政策運営へは介入しない米国、人事に介入する日本

2018年10月23日(火)
上野 泰也


10月10日、トランプ米大統領がペンシルバニア州で応援演説。記者団を前にFRBを批判した(写真=ロイター/アフロ)
 政府の意向に沿った金融政策が実施できるよう、政府サイドが人事権を大いに活用してきた先進国はどこだろうか。答えは日本である。リフレ派のブレーンの意見などを踏まえつつ、安倍首相自らが日銀の「レジームチェンジ」を主導。任期満了を待たず退任した白川方明氏の後任の総裁に、インフレ目標導入を財務官僚時代から主張していた黒田東彦氏を起用したほか、副総裁にはリフレ派の学者である岩田規久男氏を抜擢した。

 その後、黒田総裁は再任、岩田氏の後任は同じリフレ派の学者である若田部昌澄氏になった。政策委員の後任人事では、異次元緩和に反対姿勢の人物は起用されず、賛成派か中間派のみが並ぶ陣容になっている。

 実は、これと対照的なのが米国である。トランプ大統領はパウエルFRB(連邦準備理事会)議長が主導している緩やかな利上げ路線に、公然とクレームをつけている。だが、空席のFRB副議長やFRB理事を指名する際には、人事権を活用してFRBをハト派(利上げに慎重で利下げに前向きな意見の持ち主)で埋め尽くそうとするような動きは、全く見せなかった。そうしたFRB人事は80年代のレーガン大統領(当時)とは全く異なるやり方だとして、驚きをもって受け止める向きも少なくない。以下のような人事があった。

女性比率の高さに意外感
2月3日で任期が満了したイエレン氏の後任のFRB議長には、イエレン氏の下で緩やかな利上げ路線を支持してきたパウエルFRB理事が昇格。政策運営の継続性・安定性がアピールされた。

新設のFRB副議長(金融規制担当)には、クオールズ氏が起用された。ブッシュ(子)政権で財務次官を務めた経験がある、金融業界の規制問題に詳しい実務家である。

17年10月16日付で退任したフィッシャーFRB副議長の後任には、クラリダ氏が起用され、上院の承認手続きを経て今年9月17日に就任した。コロンビア大学教授、大手運用会社のグローバル戦略アドバイザーなどを務めてきた著名エコノミストである。

FRB理事(議長・副議長兼務の理事を含めて定員7人)の空席3人には、@カーネギーメロン大学教授で、量的緩和に否定的な主張を展開したことがあるため、市場にはタカ派とみなす向きもあるグッドフレンド氏、Aカンザス州銀行監督当局のボウマン氏(女性)、B元FRB金融安定部門トップのリャン氏(女性)が指名されており、いずれも上院の承認手続き終了待ちの状態である。
 この3人がそのまま承認されると、FRB理事7人のうち、ボウマン氏、リャン氏に現任のブレイナード理事を加えた3人が女性になり、イエレン議長在任中よりも「女性比率」はアップする。女性蔑視のきらいがあるとされるトランプ大統領の下で、そうした状況が視野に入るとは、筆者には正直、想像できなかった。

 FRBに空席が多数あったにもかかわらず、なぜ人事権を通じてトランプ大統領はFRBへの影響力を増そうとしなかったのだろうか。

 ただ単に大統領の職務がきわめて多忙で、そこまで気を回す余裕がないだけなのか。それとも、トランプ氏は内心では中央銀行マンの専門性や中央銀行の独立性といったコンセプトに対し、それなりの敬意を抱いているのだろうか。

 そうした疑問へのはっきりした答えが出てこない中、中間選挙まで1カ月を切ったタイミングでの米国株急落に直面したトランプ大統領は10月9日から11日にかけて、3日連続でFRBの利上げ路線を公然と批判して見せた。

 10月9日にホワイトハウスで大統領が記者団に述べたのは、以下の内容である(和訳は筆者)。

「私は彼らがしていることを好まない」
 「私は低い金利を望んでいる。FRBは自らが必要と考えることをしているが、私は彼らがしていることを好まない。それは、インフレが実際抑制されており、良いことがたくさん起きているからだ」
「私はそんなに速く(利上げを)進めるのが必要だとは思わない(I just don’t think it’s necessary to go as fast.)」「加えて、非常に重要視して私が考えているのは、われわれが作り出している(経済の)数字は記録的だということだ」 「ほんの少しにせよ、それが減速するのを私は望まない。とりわけインフレの問題がない時には」

 上記の大統領の発言は、利上げをこれ以上してくれるなという要請ではなく、利上げが必要だとFRBが考えていることを十分認識した上で、利上げのペースに不満を述べたものだと受け止めることもできる内容である。大統領はさらに、利上げの問題でパウエルFRB議長と個人的に協議してはいないことを明らかにした上で、「私は関与せずにいることを好む(I like to stay uninvolved.)」と述べた。

 ここで話が終わっていれば話は一区切りだったのだが、翌日以降もトランプ大統領のFRB批判が連発された。

 10日には、米国株の急落は長く待ち望まれていた調整だとしながらも、「FRBが行っていることに私は本当に同意していない」「FRBはクレイジーなことをやったと私は思う(I think the Fed has gone crazy.)」と述べた。

 11日には、「FRBのせいで、高い金利を払っている。FRBは大きな過ちを犯しており、これほどまでに積極的でないことを望む」とフォックス&フレンズのインタビューで述べたほか、米国株の下落について「FRBの利上げによるものだと思う」という認識を記者団に対してホワイトハウスで表明。「FRBは制御不能」「過度な引き締め路線は誤り」などと批判。もっとも、パウエルFRB議長を解任する意向はなく、単に失望しているだけだとした。

 その後16日には、自分の「最大の脅威」はFRBであると、トランプ大統領はFOXニュースのインタビューで発言。この時も、利上げのペースが速すぎるとして不満を示したが、FRBは独立しているのでパウエル議長とこの問題に関して話はしていないと強調した。

確かに一線は越えていないが
 こうしたトランプ大統領による連日のFRB批判について、クドローNEC(国家経済会議)委員長は、「大統領はFRBの独立性を尊重しており、FRBに具体的な政策を求めたり、指図したりしたことは一度もない」「大統領が心配しているのは金融当局の行動ペースが速すぎる可能性であり、そうなれば回復の障害になりかねない」などと述べて、一生懸命擁護している。

 たしかに、トランプ大統領はFRBの利上げペースが自分の考えより速いことへの不満を繰り返し表明しつつも、人事権などを用いての政策運営自体への具体的な介入は行っておらず、「一線は越えていない」と言える。11月6日の中間選挙に向けて、株価下落が共和党の議席数に悪影響を及ぼすのではという大統領の焦りが、FRB批判連発という形で表に出ているとみられる。

 米国における政府と中央銀行の関係は、日本のそれ(安倍首相と日銀のケース)とは明らかに異なる。どちらが最終的に良好な結果につながるのだろうか。金融市場発の危機再来の有無や財政規律の問題を含め、後年になってから「歴史の審判」が下るのだろう。


このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/101800162/

 

日銀TB買入れ縮小加速の好機、短期金利急低下で広がる声
船曳三郎、Chikako Mogi
2018年10月24日 7:00 JST
• 日銀保有は市中発行残高の1割強、7割程度の海外勢と差が拡大
• TB市場への関わりを最小限にする良いチャンス−セントラル短資
日本銀行は一昨年に長短金利操作を導入して以来、量的緩和策の一環である短期国債(TB)の買い入れを徐々に減らしてきた。海外投資家の需要増加を受けて、今月に入り短期金利が急低下しており、日銀がさらに買い入れ残高を縮小することでTB市場での存在感が一段と薄まるとの見方が広がっている。
  日銀は10月からTBオペの買い入れ額を週1000億円と、異次元緩和下の最小規模に抑えている。長短金利操作導入前は週1兆〜3兆円規模だった。TB3カ月物利回りがマイナス0.3%台と政策金利のマイナス0.1%を大幅に下回っていることが買い入れ縮小の背景。海外投資家はドルを元手に円を調達する際、スワップ取引を使うと、ドル需要の強さからプレミアム(上乗せ金利)を得られるため、TBを大幅なマイナス金利下でも購入している。
  セントラル短資総合企画部の佐藤健司係長は、「日銀としてもオペを突然やめられないが、続けている姿勢を示す程度で、オペの有無はあまり影響しなくなった」と指摘。「フェードアウトしたい日銀には好都合で、TB市場への関わりを最小限にする良いチャンス」とみる。

  2016年9月の長短金利操作導入で金融調節目標が量から金利に変わって以来、TBオペは残高縮小が続いており、同年8月に付けたピーク45.1兆円に対し、今月10日時点で13.3兆円。市中発行残高に占める割合は4割程度から1割強まで低下し、7割程度まで膨らむ海外投資家との差が鮮明になっている。
  メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、「金利を低く抑えている外国人の買いに任せて日銀は買わなくていい。緩和効果は十分だ」と言う。
日銀のTB買い入れ減少が鮮明
日銀の占める割合は1割程度に

Source:東短リサーチ
  日銀はこれまでTB買いオペを3カ月物入札の翌営業日に実施してきたが、今月から入札の2営業日後に後ずれさせた。東短リサーチの久保田和明研究員は、「市場で発行されたものは市場で吸収してくれというメッセージだ。オペの実施を織り込んでほしくないのだろう」と分析する。
金利を上げる方向
  足元で海外勢が円を有利に調達できる背景には、年末に向けたドル需要の高まりという季節要因があり、その影響がはく落すればTB3カ月物利回りは上昇する可能性が高い。メリル日本証の大崎氏は、「3カ月物利回りがマイナス0.1%を上回ることがあっても、長期金利を振り回すようなことでもない限り、慌てて抑えるようなことはしないだろう。日銀も買わないで済むなら買いたくない」とみる。
  日銀は長期金利の許容変動幅を拡大した7月末の金融政策決定会合で、日銀当座預金のマイナス金利が適用される政策金利残高を縮小し、マイナス金利政策の効果を減じる方向の決定を行った。
  SMBC日興証券の竹山聡一金利ストラテジストは、「日銀のやっていることは金利を上げる方向。TBオペの縮小もその一環だが、外国人のマーケットになってしまっているため、日銀が買い入れを減らしてもなかなか金利を上げられなくなっている」と指摘する。
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
LEARN MORE
関連ニュース
1. 中国は新ゲーム認可の特別プロセス停止、最後の手段閉ざす
2. 日本株は反発、米決算や中国経済への過度の警戒和らぐ−内需中心高い
3. 日本生命、新規資金6000億円の一部を日本国債に投資
4. ドル・円は小幅高、日中の株高に安心感−112円台半ば
5. 欧州委員会、イタリアの予算案を拒否−3週間以内の再提出を指示
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-23/PGTOP56KLVR401


 

トップニュース2018年10月24日 / 13:45 / 2時間前更新
焦点:円とスイスフラン、「安全資産」の輝き取り戻すか
3 分で読む

[ロンドン 23日 ロイター] - 世界的な株価の不安定化や最近の米国株のボラティリティ上昇は、市場全般が動揺した場合の逃避先を熱心に探している投資家にとって一種の警戒信号となっている。

資金の逃げ場として伝統的に挙げられるのは、米国債や金、ロンドンの不動産などだ。通貨で言えばドル、スイスフラン、円が該当する。

ただここ数カ月を見ると、不思議なことにこれらの多くは安全資産という評判通りの動きをしていない。貿易摩擦や米国株のボラティリティ上昇、イタリアの財政運営を巡る懸念が生じていても、円は対ドルで3月以降7%下落している。

スイスフランはユーロに対して今年全体では2%上昇しているとはいえ、9月初めからはイタリアと欧州連合(EU)の財政政策に関する対立があるにもかかわらず、下げ歩調が続く。

ドイツと米国の国債は価格の割高感が広がり、インフレに強いとみなされてきた金は年初来で5%下落している。

唯一ドルだけが、世界で最も流動性の高い通貨という立場や力強い米経済と金利上昇の恩恵に浴し、値動きが堅調だ。

<期待通りの働き>

それでも多くの市場関係者は、さらに大幅な株価下落や、特に米国について深刻な成長下振れ懸念が出てくれば、伝統的な安全資産だけが妥当なヘッジ先とみなされるようになると考えている。

他の全ての資産が値下がりする中でも円とスイスフランは上昇する、というのが投資家の見立てだ。

3510億ポンド(4640億ドル)を運用するM&Gインベストメンツのリテール債券事業責任者ジム・リービス氏は「もし相当切実なリスク・オフ・イベントが発生し、米国株もしくは欧州銀行株が10%下がるようなら、安全資産へのヘッジ投資が起きるだろう」と述べた。

市場のボラティリティが跳ね上がったり投資家が株を投げ売りする局面で円が想定通り安全資産として機能するという証拠は、今月も確認できた。10日に米国株が1日として2月以降で最大の下げを記録した際には、円が強含んだからだ。

ブルーベイ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、カスパー・ヘンセ氏は、株価の調整に対する安上がりのヘッジになるとしてここ数日で円を買ったと表明。「(万が一のときには)日本の資金は海外から本国に逆流し、それが円を押し上げるはずだ」と話した。

<円とフランの強み>

ヘッジ先として円とフランには魅力がある。日本とスイスはともに巨額の経常黒字を抱え、対外資産も潤沢だ。世界的に資産が下がる局面では、日本とスイスの投資家は資金を還流させて、それぞれの通貨が上昇する。

スイスの経常黒字の対国内総生産(GDP)比は10%近い。日本も昨年の経常黒字はおよそ1840億ドルで、GDPの4%に達した。

また日本は世界最大の債権国で、昨年末の対外純資産額は328兆円(2兆9200億ドル)。スイスも世界有数の債権国として知られる。

さらに両国は豊富な外貨準備を保有し、政治システムは安定的で、円とフランには市場の混乱時に投資家が求める流動性もある。

ラボバンクのストラテジスト、ジェーン・フォーリー氏は「何かものすごい地政学イベントや、米国の成長見通しを暗転させる材料があれば、買われるのは円とフランになる」と言い切った。

では両通貨はなぜ今年はさえない動きをしているのだろうか。

第1には、全般的に考えるとまだ事態が落ち着いていることが反映されている公算が大きい。何といっても世界の経済成長率は3.5%強で、企業の増益率は2桁で推移しており、政治情勢や通商問題を巡る不安を相殺している。

第2に、円やフランなどの低金利通貨で資金を調達して高利回り資産を買う「キャリートレード」が、今の局面では以前ほど重要な存在でなくなっていることがある。

最後に、通貨のボラティリティがなお相対的に低く、2015─17年の3割強程度の水準にとどまっている点が影響している。そのためイタリアの財政問題など政治情勢への懸念が高まっても、円とフランの需要が抑えられてきた。

ソシエテ・ジェネラルの通貨ストラテジスト、アルビン・タン氏は「円といわゆるリスクオフは直線的な関係にない。円は急激なボラティリティ上昇により大きく反応する」と説明した。

だとすれば投資家が抱くのは、何をきっかけに、いつ安全資産買いを促すムードが生まれるか、との疑問だ。

大方の市場関係者は、米国株が持続的に10─15%値下がりして長きにわたる強気相場の終えんが示唆され、その場合恐らく米国と世界の先行きの経済成長に対する不安が同時に高まることで、安全資産に資金が向かうとの見方で一致する。

ウッドマン・アセット・マネジメントのグローバル・マクロ・ストラテジスト、ベルント・ベルク氏は「世界的な成長懸念を理由にリスク回避の動きが出てくれば、スイスフランや特に円などの典型的な安全資産が大きく値上がりする」とみている。

(Tommy Wilkes、Tom Finn記者)
https://jp.reuters.com/article/yen-currency-safe-analysis-idJPKCN1MY0B4


 

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/147.html

[社会問題9] 高齢化の日本で「無縁遺骨」増加、失われる家族の絆 「2浪は無能?」道草を許さない社会の絶望感 走り続けるより、自由気ま

 
トップニュース
2018年10月24日 / 12:30 / 3時間前更新
アングル:

高齢化の日本で「無縁遺骨」増加、失われる家族の絆

Kaori Kaneko
3 分で読む


[横須賀 19日 ロイター] - 身寄りがなく、引き取り手のいない「無縁遺骨」が日本各地で増加している。遺骨の安置スペース不足を引き起こす一方で、家族の絆が薄れ、経済的圧力にさらされる日本の高齢化社会を象徴する問題となっている。
身寄りのない死者は公費で火葬されるが、その身元は判明していることが多い。だがほとんど場合、遺族は引き取りを拒否するか、連絡しても返事がない。埋葬には費用も時間もかかることから、故人をほとんど知らない親戚には負担となる。
「私が死亡した時、15万円しかありませんが、火葬・無えん仏にしてもらえませんか。私を引き取る人がいません」──。神奈川県横須賀市で2015年、70代の男性がこのような内容の遺書を残して亡くなった。男性の遺骨はその後、地元の寺に埋葬された。
引き取り手のいない遺骨は、生活保護に頼って生活する高齢者が増え、核家族化が進む日本の、社会的、経済的、そして人口構造的な変化を浮き彫りにしている。現代の日本では、伝統的な家族の絆や役目は薄らいでいる。
こうした問題は今後、さらに深刻化すると専門家は指摘する。日本の人口は減少する中で、年間の死亡者数は現在の133万人から2040年には167万人に増加すると予想されている。
横須賀市では、300年の歴史のある納骨堂を去年閉鎖。そこに収められていた遺骨は、より少ない数の骨つぼに収め直され、市内にある別の保管場所に移された。それとは別に、市役所にも約50柱の引き取り手のない遺骨も安置されている。
「納骨スペースはなくなりそうで、ひっ迫している」と、さいたま市の生活福祉課で課長補佐を務める中村仁美さんは言う。同市では近年、引き取り手のいない遺骨が増加しており、その数は計1700柱あまりに達した。
「生活保護の人が多い。もともと親族とうまくいっていない人が多く、なかなか引き取りにつながらない」と中村さんは話す。
賃金がほとんど上昇せず、高齢者の子ども自身も年金で暮らしている中で、葬儀代など死亡時の費用は重荷になりかねない。
精進落としなどの飲食代や香典返しの費用、僧侶へのお布施代など伝統的な葬儀にかかる費用は計200万円程度になり得ると業界筋は言う。
最低限の葬儀を数十万円で行う新たなビジネスもある。
<増加する貧困高齢者>
近年、貧困高齢者の数は増えており、一部は自身の葬儀費用を出すことも難しい。政府統計によると、2015年、高齢者全体の3%近くが生活保護に頼っていたが、その割合は20年前と比べてほぼ倍増している。生活保護を受給している世帯の半数超が65歳以上だ。
「家族との関係性が希薄になる中で、孤独死した後、火葬した遺骨を引き取らないことも増えてくると思う」と、関西大学社会安全学部の槇村久子客員教授は言う。
かつて日本では、家族3世代が1つ屋根の下で暮らすことは珍しくなかった。だが日本経済が変貌を遂げて、少子化が進むにつれ、仕事などのために、実家から遠く離れた場所に住むようになった。
Slideshow (2 Images)
65歳以上が国内人口に占める割合は、現在の28%から2040年には36%に増加する見通しだ、と国立社会保障・人口問題研究所は予想している。
「今まで家族や地域が(亡くなった人々を埋葬する)役割を担っていた」と槇村氏。だが、そうした役割を担う人が減少する中、「行政の負担が増えていくと思う」と同氏は語った。

https://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/rngs/JAPAN-AGEING-ROBOTS-LJA/010061BM2SW/japan-population.png

<安堵>
横須賀市では、葬儀や親戚に関する情報を残さずに亡くなる人が増えている。
市当局者は親族に手紙などで遺骨の引き取りを依頼するが、返事がないことも多いという。
「(そのように亡くなった人たちは)ごく普通の一般市民だ。誰にでも起こり得る」と、福祉部の北見万幸次長は話す。「骨が、今生きているわれわれ人間たちに警告している。何の準備もしないと、これだけ引き取られなくなっていくんだよ、と」
引き取り手のいない遺骨の多くが貧困高齢者のものであることから、横須賀市は2015年、身寄りがない低所得の高齢者のために「エンディングプラン・サポート事業」を開始した。
火葬・埋葬費用上限25万円のうち、個人が少なくともその5分の1を支払い、残りは公費で負担する。これまで数十人が登録し、横須賀市は今年、墓の所在地などを登録する別のサービスを全ての市民に拡大した。
「すべてに安心感を持てるようになった」と語るのは、高齢者施設で暮らす堀口純孝さんだ。
堀口さんは未婚で、3人いる異母きょうだいとは何年も会っていない。もし自分が死んだら遺骨はどうなるのか心配だったという。「日々の暮らしは変わった。落ち着きがでてきた」と、堀口さんは語った。
(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

https://jp.reuters.com/article/ageing-japan-urns-idJPKCN1MY08E


 

「2浪は無能?」 道草を許さない社会の絶望感
走り続けるより、自由気ままに休んだ方がいい


河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学
2018年10月23日(火)
河合 薫


東京都品川区の昭和大学病院(写真:PIXTA)
 昭和大学医学部の一般入試で、2浪以上の受験生が不利になるような得点操作を行っていたことがわかった。
 医学部の二次試験で、80点満点中、現役の受験生には10点、1浪の受験生には5点を加点。一方で、2浪以上には加点をしなかったほか、卒業生の親族を優先して補欠合格させ、その数は19人(2013年以降)。

 昭和大学は入試操作を謝罪した上で、現役と1浪を優遇した理由について「(現役・1浪は)活力があるとか、アクティブに動ける可能性が高いと判断していた」と説明している。

 ……なるほど。
 「活力」という名の「能力」。日常生活において私たちは一般的に、功利的原則に従って行動しているので、現役より2年も受験勉強期間を要した2浪は「最良の手段」を選択したとは言い難い。

 コスパと言い換えてもいい。要した時間(労力)と結果という視点で捉えれば、現役生の方が上。流行りの言葉でいえば、「生産性が高い」ということなのだろう。

 私が学生のとき、二浪は「若大将」と呼ばれていた。といってもこれは剣道部のローカルルールみたいなもの。なぜ、そう呼んでいたのかわからない。が、各学年に一人くらいは「若大将」がいて、彼らは明らかにオトナで、私は何度も「若大将」に救われてきた。

 今まであまり書いたことはなかったが、私はインカレや日本選手権に出るほどの結構な選手で(ホントです……苦笑)、辛い稽古や試合で負けたりして落ち込む度に、若大将がさりげなく「傘」をさしだしてくれたのだ。

 であるからして、「時にいやし、しばしば支え、常に慰む」という倫理観で、患者の「残された命」に光を与えてくれる存在でもある医師の卵が、功利的主義により選別されたのは極めて残念。

 あくまでも「私世界」の、実に限られた世界の経験に基づいた考えではあるけど、病とともに生きる時代に、人生は思いどおりにならないという経験をした2浪医師の言葉が必要になるはずなのに。

 人生100年といわれる時代に、たった2年くらい人より遅れたからといって、ちっちゃいこというな! という気持ちもある。

 というわけで今回は「浪人の価値」について、あれこれ考えてみたい。

 今から4年前、大手予備校「代々木ゼミナール」が、全国27校のうち20校の閉鎖を決定し、大きな話題となった。

 その背景にあるのが、少子化に加え、学生の現役志向。推薦やAO入試など現役生に有利な選考方法が増えたのに加え、景気の悪化や若者の地元志向で、現役で入れる地元の国公立に行く方が親孝行という価値観が増大したことによる。

浪人がマイノリティーに
 浪人生の減少は数字でみると、かなり衝撃的である。

 アラフィフのバブル世代が学生だった1985年には、2.5人に1人が浪人生だった。

 ところが、18歳人口がピークに達した1992年度の浪人率は約34.9%で、3人に1人。  2000年は5人に1人、14年には8人に1人まで激減している(参考記事はこちら)。

 17年度は、地方の大学へ学生を誘導しようと文部科学省が進めている政策の結果、首都圏や関西の大規模私立大が入学定員を絞り込み、浪人生が増えたとの報道もある。

 それでも30年前と比べると、浪人生はマイノリティー。
 昔以上に「みんなと一緒」がベストで、「みんなより遅れる」=「みんなより劣る」という価値観が浸透し、「失敗=悪」と考える人が増えている今、浪人生の心情を考えただけでも息苦しくなる。

 おそらくそれはオトナの私たちの想像よりはるかに大きく、実際、予備校などでは、浪人、特に2浪以上の若者を「自殺リスクの高い集団」と位置付け、対策をとることが多い。

 つまり、そんな苦しい状況を乗り越え、受験の席までたどり着いた2浪生の「生きる力」は相当に高いと思われる。

 「もう絶対に失敗はできない」というプレッシャー、失敗した時の不安、失敗した後に待ち受ける周りのまなざし……、無力感や悲壮感といった自尊心の低下など、とてつもないストレスへの対処に成功した若者なのだ。

 生きる力とは、このコラムで何回も取り上げているSOC(Sense Of Coherence)。「どんな状況の中でも、半歩でも、4分の1歩でもいいから、前に進もうとする内的な力」だ。

 SOCとは、“不安”の反対側に位置する力で、具体的に不安の原因を考え、ひとつひとつ対処し、対処に成功することで高まっていく。

 ときには逃げるが勝ちということもあるし、先延ばしにすることもある。自分ひとりきりでがんばるのではなく、他人の力もうまく使う。

 「自分1人でできることには限界がある」と素直に認め、先輩や先生に教えを請うたり、心細ければ友人と共に過ごしてもらうなど、徹底的に不安を打ち消すための作業に励み、一方で自分の軸足をしっかり見据え、最後は「これだけやったんだから、大丈夫だ。自分にはできる」と信じて本番に臨む。

 ストレスの雨に耐えられた彼らは、「人生は決して自分の思い通りにはならないけれど、自分で納得するものにはできること」を学んでいくのだ。

 つまり、「(現役・1浪は)活力があるとか、アクティブに動ける可能性が高い」かもしれないけど、「(2浪は)自分の足でふんばる力とか、周りといい関係を構築する可能性が高い」。

 そもそも試験は力ある人が合格するのではなく、試験を受けるのがうまい人が合格するものだ。

 個人的な話で恐縮だが、私が第一回の気象予報士試験で合格したとき、お天気キャスターのパイオニアである森田さんは落ちた。当時私が勤めていた民間の気象会社で、私に手取り足取り天気のいろはを教えてくれた、ベテランの予報官の人たちも全滅だった。

 試験とは水もの。試験を受けさせる側が用意した設問に「うまく答えられるかどうか」を、測るもので、個人が秘める能力や、その先の職業生活で求められる能力が測れているとは限らないしろものなのだ。

浪人とは、人生の道草でもある
 浪人する人の中には、「高校時代遊んでしまった人」「落ちてしまった大学に再チャレンジする人」「もう少し時間をかけてワンランク上を目指す人」など、理由はさまざまかもしれない。

 だが、いかなる理由であれ、浪人とは、人生の道草でもある。

 あの「でんじろう先生」が4年間の道草を経験したというのを、雑誌か何かに書いてあるのをみたことがあるが、それは道草の効用を痛感させるものだった。

 高3のとき父親を亡くしたでんじろう先生は、国立を目指したが「力不足(本人談)」であえなく浪人。予備校も通わず自宅で勉強したが、2年目も浪人。
 2浪中はメンタルが低下し、心配した母親の勧めで近くの工場で、大人たちに交じって働いたことで元気を取り戻し、受験勉強に復帰するも、3回目の受験にも失敗する。

 「これ以上、母親に負担をかけられない」
 そう考えたでんじろう先生は、牛乳配達をしながら受験勉強をし、4回目のチャレンジで晴れて国立大学に合格した。

 でんじろう先生が、40歳になったときに高校の教師を辞めて、「フリーの理科の先生」にチャレンジできたのも「自分を信じてコツコツ頑張ればなんとかなる」と思えたからだという。

 大学の教育実習のとき(私は教育学部だったので)、現場の先生がいつも言っていたことがある。

 「先生になりたい人は、子供の時に逆上がりができなかったような人がいいのよ」と。

 先生いわく、「最初から逆上がりができた人は、できない子供が『なぜ、できないか』を理解できない。でも、最初はできなくて、いろいろ試して、苦労してやっとできるようになった人は『なぜ、できないか』を理解できる。そういう人は、できない子供の目線で物事を教えられる」と。

 
 でんじろう先生が子供に人気なのは、先生がまさに「逆上がり」ができず、道草をしてきたからではないか。勉強がわからない子供に寄り添い、「楽しい」という人間に根源的に宿る感情を引き出しているからだと思うのだ。

 これまた個人的な話でもうしわけないのだが、かなり前に国連主催のイベントに呼ばれ、元国連事務次長だった明石康さんとご一緒させていただいたことがある。

 当時、私は大学院の博士課程を修了したばかり。元スッチーで、お天気ねーさんだったことを知った明石さんに、「知的な道草を食ってきたんだね。もっともっと道草を食いなさい」と言われ、その言葉にえらくホッとしたのを記憶している。

 「転職の女王ですね!」「今度は何にチャレンジするんですか?」といつも言われ、ときには「ずいぶん遠回りをしてますね」と皮肉られることもあった私にとって、明石さんの言葉は希望だった。
 「結果的にこうなっただけで……その都度、一所懸命やってきただけなんだけど」 と居心地の悪さを感じていた私は、「ああ、今まで通り生きればいいんだ」と勇気づけられたのである。

日常生活ではあそびがどんどんと淘汰されている
 人間には、要領よく短い時間で力を発揮できる人と、寄り道をしながら長い時間をかけて開花する力を持っている人がいる。同じ人間の中にも、前者と後者が入り混じっている。

 功利的な社会とは、後者の力をとりこぼしていく社会。道草という、いわば遊びの中で、自分でも気づかなかった力が発揮できるように思う。

 「人生にあそびは大切だよね」という言葉を私はこれまで幾度となく、聞いてきた。
 「新しいことって、あれこれ遊んでいるうちに生まれるんですよ」といった経験談も、技術系の仕事についている何人もの人たちから聞かされてきた。

 ここで使われる「あそび」とは、「レジャー」という意味合いではない。きっちりと接続されていない隙間や空間があるということだったり、決められた仕事ではない自発的にやってることだったり、「気持ちや時間の余裕」や「間」という意味で使われている。

 が、日常生活では、なぜかきっちりと、隙間なくつながっていることが好まれ、あそび、がどんどんと淘汰されている。

 学生たちに「楽しいとか、やりたいとか思ったら、誰からなんといわれようととことんやりなさい」と言うと、「ホントにいいんですか?」と答える。

 「いいに決まってるじゃない」と返すと、
 「でも、親にそれって就職にプラスになるの? って聞かれちゃうし……」
と戸惑う表情を浮かべる始末だ。

 いったいなぜ、これほどまでに「功利的である」ことが求められ、評価される世の中になってしまったのだろう。そして、おそらく、あそび、を許容できない社会が、功利的な生き方が苦手な人たちに鈍い絶望感を抱かせているように思えてならないのである。

 人間はホモ・サピエンス(知恵の人)ではなく、ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)であるとしたのは、歴史家のヨハン・ホイジンガだ。

 遊びとは自由で、生産性や効率とは無関係で、自分が創り出す時間と空間のなかで、自分が決めた一定のルールに従って行われる活動である。

遊びから人間のクリエーティブな能力が生まれる
 65歳のときに「遊び」に関する論考を一冊の本にまとめたホイジンガは、遊びという一見非合理的な行動から人間のクリエーティブな能力が生まれる、と主張。ホイジンガは世界中の民族の遊びや遊具について文化人類学的に調べ上げ、人は何もないところから遊びを考え出し、その行為自体が極めてクリエーティブな作業となっていると結論づけた。

 人生100年時代。2年くらい道草したところで、どうってことないはずである。
 ただただ走り続けるより、自由気ままに寄り道した方がいい。周りより「上」とか、「下」とか分けたがるのも人間なら、上とか下とか関係なく、自分のものさしで生きることができるのも、人という生き物である。

 おそらく、というかほぼ確実に、私がここで書いたことで、功利的な世の中がかわることもなければ、浪人生の立場が変わることもないかもしれない。

 だから、「余計に踏ん張れ、浪人生!」と言いたい。この地球上で、24時間365日雨が降り続いている場所はない。必ず雨は止む。人生の道草を、自分の選んだ道を、自分を信じて、ときに落ち込み、ときに迷いながらも、踏ん張って欲しい。

 「自分を信じてコツコツ頑張ればなんとかなる」と、私も自分に言い聞かせつつ……。

全国書店にて発売!「残念な職場ー53の研究が明かすヤバい真実」

 ―SOCの高い職場の作り方満載!―

 本書は、科学的エビデンスのある研究結果を元に、
「セクハラがなくならないわけ」
「残業が減らないわけ」
「無責任な上司が出世するわけ」
 といった誰もが感じている意味不明の“ヤバい真実”を解き明かした一冊です。

(内容)
・ショートスリーパーは脳の故障だった!
・一般的に言われている「女性の特徴」にエビデンスはない!
・職場より家庭の方がストレスを感じる!
・人生を邪魔しない職場とは?


このコラムについて
河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学
上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/102200186/


http://www.asyura2.com/12/social9/msg/875.html

[経世済民129] ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに 訪日旅行者の消費額は急増中 日本に照準を合わせる外資の「ハゲタカ」

ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに
訪日旅行者の消費額は急増中
2018.10.24(水) 花園 祐
日本の個人消費の実態は?(写真はイメージ)
(花園 佑:ジャーナリスト)
 新聞や雑誌の経済記事はしばしば「個人消費の拡大を背景に・・・」「個人消費の冷え込みによって・・・」というように、景気動向の判断理由として個人消費の動向について言及します。しかし筆者は先日、ふと「今まで個人消費を示す統計データを見たことなんてあったっけ?」という疑問が浮かびました。マスコミの経済記事で、個人消費が前年比で何%増減したかというデータにはほとんどお目にかかったことがありません。
 個人消費動向に関する統計は、もちろん世の中に存在しています。けれども、日本のマスコミがそれらをきちんと分析して報道することは稀なようです。
 そこで今回は日本の個人消費の実態に迫るべく、政府や各業界団体が発表している売上統計データを調べてみました。
全体としては横ばいが続く
 今回、個人消費動向を調べるにあたって参照したのは主に以下のデータです。
・経済産業省が発表している「商業動態統計」の小売業売上高(販売額)
・スーパーマーケット業界団体の日本チェーンストア協会(CS協会)、全国スーパーマーケット協会(SM協会)による調査統計
・コンビニ業界団体の日本フランチャイズチェーン協会(FC協会)による調査統計
・百貨店業界団体の日本百貨店協会(百貨店協会)による調査統計
 まず、直近1年間における毎月の売上高変動率を見ていきましょう。
(なお、各協会が発表している前年同月比データには、当該月とその前年同月の売上高を単純に比較した「全店ベース」、比較期間中に開店・閉店した店舗を除外して比較した「既存店ベース」という2種類のデータが存在します。今回は市場全体の動向を探るという目的から、「全店ベース」の数値を引用することとしました。)

 上の表を見ての通り、2018年7月に百貨店業界が−6.2%を記録したのを除き、全データの変動値はすべて5%未満と小幅な変動に留まっています。業界別ではコンビニ業界のみが年間を通してプラス成長を維持し、逆に百貨店業界はマイナス月が7カ月に及んでいます。
 百貨店業界以外は、前年比がプラスの月がマイナス月を上回っていますが、前年比では全体として「横ばい」もしくは「微増」傾向だといえるでしょう。
 続いて、過去3年間の年次ベースで見たのが下の表です。

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54435
 こちらを見ると、全データの変動値はどれも3%未満で、年ごとに増減を繰り替えしています。以上から言えることは、「日本の個人消費は増えてもいないが減ってもいない」、つまり横ばいの状況にあるようです。
訪日旅行消費額は6年間で5倍以上に
 さて、国内の消費動向を観察するうえで筆者が注目しているのは、訪日外国人の影響です。近年、ますます重要度を高めている訪日外国人の貢献度合いについてみていきましょう。
 ただし、直接その貢献度合いを測る指標は見当たりませんでした。そこで、ひとまず観光庁が発表している「訪日外国人消費動向調査」から訪日外国人の旅行消費額と旅行者数の推移を抜粋してみました。

 上のグラフは2011〜2017年における訪日外国人の旅行消費額と旅行者数をまとめたものです。このグラフによると、2017年の訪日旅行消費額は4兆4162億円に達しており、その成長も2011年からわずか6年で5.4倍まで急増していることが分かります。
 なお、先ほど取り上げた、経済産業省の「商業動態統計」における2017年の小売業売上高は14兆2514億円でした。調査方法や種類が異なるので、単純に訪日旅行消費額が日本の個人消費の約3分の1を占めているとは言い切れません。とはいえ、訪日外国人旅行消費が大きな影響を及ぼしていることは間違いないでしょう。
日本の家計消費支出は本当に横ばいなのか
 前述の通り、政府、業界団体による調査では、日本の小売業売上高は横ばい傾向を示していました。それに対して、訪日外国人の消費総額は近年急増しており、年間では既に4兆円を突破しています。
 ということは、「日本の個人消費は、日本人による支出が落ち込む中、訪日外国人消費が穴埋めすることで横ばいとなっている」のではないかという仮説が立てられます。
 この仮説を検証するため、総務省統計局の家計調査報告を見てみました。同報告書の2017年における「総世帯」の消費支出をみると、2017年は名目0.4%増、実質0.2%減とほぼ横ばいでした。どうやら「日本人の支出が落ち込んでいる」というわけではないようです。
 筆者としてはやや腑に落ちない結論ではありますが、訪日外国人の消費額が急増する中、日本の国内個人消費は横ばい状況にあるというのが日本の個人消費の実態のようです。

個人消費はなぜ増えない?
 以上、日本の個人消費は現在横ばいであるという状況をお伝えしました。もちろん、落ち込んでいるよりはずっとマシなのですが、ここ数年、国内の個人消費はほとんど増加していないわけで、経済的にはあまりよろしくない状況と言えます。
 なぜ増えないのかといえば、単純に賃金が向上していないということが最大の理由ではないかと思われます。
 やや本題とはずれますが、先日報じられた、東京五輪のボランティア参加者への報酬について筆者は首をかしげざるを得ませんでした。報道によると、1人1日1000円のクオカードを配ることにしたそうです。しかし、もしもこれが1万円の現金であったら、下手な地域振興券などよりもずっと消費を促せたのではないかと思います。
 またこの金額であれば、一般的なアルバイト業務の賃金とも競合する金額となります。事業者側としては、従業員を引き留めるために賃金の引上げ上げに迫られることとなり、結果的に全体賃金の底上げも促せたのではないでしょうか。
 現在の日本政府の政策は、株価を上げることには熱心ですが、賃金の引き上げに関してはそれほどでもないように思えます。安倍政権は経済界に賃上げを要求していますが、本腰を入れているようには思えません。
 今回見てきたように今の日本の個人消費は横ばい傾向が続いています。果たしてこのまま横ばいのままでいいのか、この点についてもっと広く議論が交わされるべきである、というのが今回の結論です。

ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに
Twitter
1. 2時間
Hiro@Hiro35306230
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…当たり前。給料は上がらないのに物価は上がる。税金はあがる。 アベノミクス?企業の内部留保が増え金持ちを優遇しただけで庶民には影響はない。
o
o
o
2. 3時間
vukingvineP_bot@vuking
収入が増えてなくて、貯金も使ってなかったら、そりゃ個人消費増えるわけないのでは?>ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…via @JBpress
o Reply
o Retweet
o Favorite
3. 3時間
油腻谢顶腹凸書蜿f@atkio
RT @JBpress: [今日の注目記事] ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに 訪日旅行者の消費額は急増中 《花園 祐》 jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
4. 3時間
JBpress@JBpress
[今日の注目記事] ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに 訪日旅行者の消費額は急増中 《花園 祐》 jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
5. 3時間
田代弘治/Kouji Tashiro@tashirokouji
人口減少、賃金の伸びの低下... #NewsPicks jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
6. 4時間
bunbunbun@bunx3
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…@JBpressさんから
o
o
o
7. 8時間
October-moon@kumioctober
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…@JBpressより
o
o
o
8. 8時間
takaro@takaro
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
9. 8時間
maruko@OMXvBzwpjtwcD1R
2件のコメント b.hatena.ne.jp/entry/jbpress.…“ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに 訪日旅行者の消費額は急増中(1/4) | JBpress(日本ビジネスプレス)” (5 users) htn.to/XpufT2DfR
o
o
o
10. 8時間
政治と経済の注目記事@pol_and_eco
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに 訪日旅行者の消費額は急増中(1/4) | JBpress(日本ビジネスプレス)jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
11. 8時間
中野 人史(Hitosi Nakano)@nakanoTAT
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに #SmartNewsjbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
12. 9時間
sai@sai2mkc
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…@JBpressより
o
o
o
13. 9時間
もなな🔥🚀 @monana3
jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…手取り増えてないんだから伸びるわけない
o
o
o
14. 9時間
motoji@motoji_etoile
これは消費財市場は全般で言えるね。「日本の個人消費は、日本人による支出が落ち込む中、訪日外国人消費が穴埋めすることで横ばいとなっている」。 >ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに。 訪日旅行者の消費額が急増中 花園祐 jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
15. 9時間
hisaki H@hisakx
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに 訪日旅行者の消費額は急増中 | JBpress(日本ビジネスプレス) jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
16. 11時間
山崎かおり@livingdead616
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに #SmartNewsjbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
17. 11時間
yasudayasu@yasudayasu_t
"「今まで個人消費を示す統計データを見たことなんてあったっけ?」という疑問が浮かびました。マスコミの経済記事で、個人消費が前年比で何%増減したかというデータにはほとんどお目にかかったことがありません。" htn.to/6UQG46#抜粋引用 #ネタ
o
o
o
18. 12時間
わろっく@warocktw
統計は嘘つかない RT ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
19. 12時間
yutatera@yutanews
"ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに訪日旅行者の消費額は急増中 - 経済観測" via JBpress(日本ビジネスプレス) 最新記事 ift.tt/2JdCQCl
o
o
o
20. 13時間
白鳥くん(しらとりくん)@bandotaro_2nd
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに #SmartNews :原油価格高騰と増税で壊滅するか⁉️ jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
21. 14時間
K-sOne@Karasas1135
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに - jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
22. 14時間
yakamatubasi@@yakamatubasi
RT @JBpress: ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに 訪日旅行者の消費額は急増中 《花園 祐》 #JBpress jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
23. 14時間
テム@temuriya1
観光事業が基幹産業になってくんかな。 ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに #SmartNewsjbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
24. 14時間
ヒデ@hide3ka3
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに 訪日旅行者の消費額は急増中 jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
25. 14時間
ペポッチ@peponaaru
RT @JBpress: ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに 訪日旅行者の消費額は急増中 《花園 祐》 #JBpress jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
26. 14時間
tsuda@strategycolum
RT @JBpress: ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに 訪日旅行者の消費額は急増中 《花園 祐》 #JBpress jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
27. 15時間
えるしす@nadia_la_alwall
RT @JBpress: ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに 訪日旅行者の消費額は急増中 《花園 祐》 #JBpress jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
28. 15時間
JBpress@JBpress
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに 訪日旅行者の消費額は急増中 《花園 祐》 #JBpress jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
29. 15時間
株式情報市場 @yuria2122
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに訪日旅行者の消費額は急増中 - 経済観測 ift.tt/2NWWYcU
o
o
o
30. 15時間
Asterisk⭐News💫相互フォロー @populus1q3
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに訪日旅行者の消費額は急増中 - 経済観測 jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…#政治経済 JBpress(日本ビジネスプレス)
o
o
o
31. 15時間
aides@aides_public
ほとんど増えていない個人消費、統計データで明らかに 訪日旅行者の消費額は急増中(1/4) | JBpress(日本ビジネスプレス) jbpress.ismedia.jp/articles/-/544…
o
o
o
ツイートを作成

• 日本経済は消費税10%に耐えられないかもしれない (2018.6.18 加谷 珪一)
• 深センの繁華街で納得、中国の消費が低迷する理由 (2018.7.24 姫田 小夏)
• アマゾン、米国Prime会員がまもなく1億人に (2018.10.19 小久保 重信)
• 「食」の異常価格、本当の原因は日本経済の弱体化だ (2018.4.23 加谷 珪一)
• 中国のEVシフトで世界の自動車部品業界が一変する日 (2018.10.10 花園 祐)

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54435


 
韓国で批判沸騰する「雇用世襲」問題
公企業で家族親族を「特別採用」?
2018.10.24(水) 玉置 直司
電車とホームドアに挟まれ男性死亡 韓国
韓国ソウルで、地下鉄を利用する人々(2010年1月24日撮影、資料写真)。(c)AFP/JUNG YEON-JE

〔AFPBB News〕

 韓国で最悪の雇用情勢が続く中で、正社員の子供や妻、親戚などを優先的に採用する「雇用世襲」とい

う造語が生まれ、世論の批判が沸騰している。

 その実態を見ると、出口のない失業問題と、政府の「雇用拡大」政策に便乗する正社員や労組という悪

循環が垣間見える。

 2018年10月、国会で始まった年1回の「国政監査」を機に、野党議員が入手した資料が発火点となっ

て世論が沸騰した。

 ソウル市傘下で地下鉄8路線を管理・運行する「ソウル交通公社」での新規雇用実態調査だ。

8%が家族、親戚
 それによると、2018年3月に「無期契約職」という、非正規職から「正規職」に転換した1285人中、

108人が正規職の社員の家族や親戚だったことが明らかになった。8.4%という比率だ。

 あちこちに家族や親戚が入ってきたという、この数字そのものも、他の民間企業や公企業に比べて突出

して高い。

 さらに問題となったのが、もともと「無期契約職」を募集した際、「そのうち正規職に転換できる」と

いう話がすでにあった疑惑が浮上している。

 この正規職への転換を、強硬派で知られる労組が強く推進していたことも分かった。

 つまり、「無期契約職」→「正規職」という、通常の採用方式とは異なるルートでの採用があったとい

うことだ。

 労働問題に詳しい弁護士によると、「一般的に、正規職の公募入社試験を受けるのに比べ、非正規職か

ら正規職への転換の場合、事実上、無試験といって良いほど簡単な場合が多い」という。

 人数は少なく見えるかもしれないが、「採用」「雇用」問題になると、韓国の世論は過敏に反応する。

 何しろ、過去最悪とも言われる雇用情勢で、空前の就職難が続いているからだ。

最悪の雇用情勢で「採用」問題に敏感な社会
 韓国では、一部大企業の業績は好調だが、雇用は増えない。青年層の実質的な失業率は20%を超え、

「大学は卒業したが職がない」ことが深刻な社会問題になっている。

 就職に成功しても、民間企業の場合、いつリストラに遭うか分からない。だから、若者間で、「公務員

」や「公企業」への就職人気は日本では想像できないほど高い。

 ソウル交通公社も、そんな人気会社の1つだ。平均賃金は7000万ウォン(1円=10ウォン)近く。定年

60歳が保証される。勤務先はソウルかその近郊だ。

 安定した公企業、ソウル志向が高い若者の人気の的だ。

 2018年の下期定期採用試験には、555人の募集に3万340人が応募した。

 それほどの「夢の職場」に人知れず「正規職」になれるルートがあり、よりによって家族や親戚を正規

職にしていたとなれば、批判が沸騰するのも十分理解できる。

悲劇で始まった採用が…
 ソウル交通公社が運営する地下鉄では、2016年春にソウル市内の駅でホームからの転落事故を防止す

るスクリーンドアの保守・修理(メンテナンス)にあたっていた若い作業員が死亡する事故が起きた。

 この作業員が、厳しい労働環境で働く外注業者に所属していたこともあり、管理や労働実態を把握でき

ていないことへの批判が相次いだ。

 そこで、保守作業など安全業務にかかわる部門を中心に、外注から「無期契約職」への転換を進めてい

た。

 「無期契約職」とは、事実上、定年まで仕事ができる。これをさらに「正規職」に転換したのだ。

 韓国メディアによると、無期契約職を採用した際、労組のナショナルセンターが「活動家」を送り込み

、正規職への転換を強く求めていたという。

 人事の責任者の妻もこの制度を使って正規職になっていたことも明らかになった。

 これでは、労使ぐるみで「抜け穴採用」をしていたことになってしまう。

正規職への転換は重点政策
 非正規職を正規職に転換することは、文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)政権が積極的に推進して

きた政策だ。

 コスト負担増を嫌がる経営側を除けば、若者など国民の間にも、「正規職への転換」に対する反対はな

い。問題は、その採用方式が、きわめて不透明だある点だ。

 ソウル交通公社の場合、労組が介入し、正規社員の家族や親戚が優先的に採用になっていたのではない

かという疑惑が強まり、強い批判が出ているのだ。

 「文在寅大統領は選挙期間中から、正規職の増加を重要政策に掲げてきた。その趣旨は、質の高い雇用

を増やそうということで、これに反対する意見は少ない」

 「問題は、大統領の指示を何が何でも守れとばかり、正規職の数を増やすことにだけ必死な経営陣と、

これに便乗した労組、さらに、家族や親戚を入社させようとした社員が出てしまったことだ」

 韓国紙デスクは、こう話す。

 苦労して難関を突破して正規職になった社員からの反発も強い。一部社員は、「不公正だ」として憲法

裁判所に「訴願」を出した。

 人権が侵害された場合などに使う措置だが、それほど不公正な「迂回入社は許せない」だという意識が

あるのだ。

 難関を突破して正規職になった社員から見れば、大学在学中も就職活動に一生懸命取り組み、塾にまで

通い、場合によっては浪人までした。誰かの口利きで迂回ルートで簡単に正規職になるなど許せないとい

うことか。

 それほど、「雇用」を巡っては、ぎくしゃくした雰囲気が強いのだ。

 問題は、この「雇用世襲」がソウル交通公社だけで起きたのではなさそうなことだ。

 韓国メディアは、政府や地方自治体の公企業でも、不透明な採用、正規職転換があったと報じている。

 文在寅大統領は2017年5月に就任すると、最初の外部訪問先として仁川国際空港を選んだ。

 下請けや非正規職の労働者と面談し、「公企業では非正規職をゼロにする」とぶち上げた。

 公企業の社長は、それまで「公企業だからといって放漫経営は許さない。税金を無駄遣いせず効率的な

経営をしろ」という強い圧迫を受けてきた。

雇用政策、趣旨はわかるが、思いもよらない現実に直前
 ところが、政権が変わったとたんに「非正規職をなくせ」という指示が出た。

 あわてて、正規職の拡大に乗り出したが、いろいろな問題が出ている。

 「世襲雇用」もその大きな問題の1つだ。また、下請けの比率を下げるために下請け労働者を正規職の

社員として採用しようと動きもある。

 だが、そうなると、下請け企業の経営者は、会社ごと失うことになり、「公企業に民業圧迫だ」という

悲鳴も聞こえる。

 文在寅政権は、「雇用」を経済政策の最重要課題に掲げている。特に、「質の高い雇用の創出」を重視

している。

 最低賃金の引き上げ、労働時間短縮もこの政策の一環だ。

 どれも、総論では国民の支持を得ているが、実際の運用となると様々な課題に直面している。

 最低賃金の大幅引き上げや、労働時間短縮で「質の高い雇用」を増やそうとしているが、中小、零細企

業の経営者はコスト増加に耐えられず、従業員数を減らすなど期待とは逆の動きも目立つ。

 正規職への転換も、思いもよらない弊害が出てきた。

 「雇用問題を労働政策だけで解決するのは難しい。結局、新しい成長産業が育って自然と雇用が拡大し

ないと、問題は解決しない」

 「造船、自動車などこれまでの成長産業に勢いがない。今は市況が良い半導体や石油化学以外に、成長

セクターがないことが最大の問題だ」

 韓国紙デスクは、短期間での雇用問題の改善に悲観的だ。

 「雇用世襲」。何とも耳障りな造語が、連日メディアで大きく報道されるところに問題の深刻さがある


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54473


 


 

日本に照準を合わせる外資の「ハゲタカ」
悪役のイメージを払拭したPEファンド、企業統治改革などに商機
2018.10.24(水) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年10月22日付)

死肉食べても食中毒にならないコンドルの謎、国際チームが解明
チェコの首都プラハの動物園で飼育されるコンドル(2014年6月21日撮影、資料写真)。(c)AFP/MICHAL CIZEK〔AFPBB News〕

 2007年に日本で「ハゲタカ」がテレビドラマ化された時、このドラマは時代の強迫観念を完璧にとらえていた。

 主役の「ハゲタカ」は外国のプライベートエクイティ(PE)会社を経営していた。彼の武器は、ウォール街の姑息な手段だった。その犠牲者は、日本株式会社だった。

 それから10年あまり経ち、テレビ連続ドラマがリメークされた。だが、アベノミクスの時代にあって、トーンが変わった。

 新しい「ハゲタカ」では、PEは良い勢力として描かれている。日本株式会社を、経営破綻や旧態依然とした経営、非友好的な買収提案から救い出すのだ。

 この流れは、世界のバイアウト業界が日本に大胆な賭けをし始めた時期と重なった。

 PEの経営者は今、コーポレートガバナンス(企業統治)改革の圧力が強まり、高齢化社会の現実に直面し、買収の成功例が一定数に達したおかげで、外国の略奪に対する日本の最悪の不安が和らいだと考えている。

 日産自動車が部品子会社のカルソニックカンセイを米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に43億ドルで売却した一件から米ベイン・キャピタルの率いる企業連合が東芝メモリを177億ドルで買収した一件まで、目を引く大型案件数件がおおむね世論の反発を招かずに行われた。

 ベイン・キャピタルに至っては、当初は英WPPの売り手の意思に反することから「敵対的」と見なされたにもかかわらず、日本の広告代理店大手3位のアサツーDKの買収(総額12億ドル)を完了してみせた。

 柱となっている信念は、往々にして経営の集中を欠く日本のコングロマリット(複合企業)はコーポレートガバナンス主導の圧力に屈して事業を分離・売却するだけでなく、経営陣がついに事業再編のプラスの側面を理解した、という考えだった。

 「伝統的に、日本企業のトレンドは常に、規模が大きいほど良いというものだった。最高経営責任者(CEO)の仕事は、自分が経営責任を負うコングロマリットを成長させることだった」

 KKRジャパンの平野博文代表はこう言う。

 「それが徐々に変わりつつあり、企業が中核事業に集中するために規模を縮小する戦略的決断を下すトレンドが生まれる様子が見え始めている」

 英調査会社プレキンによると、昨年、日本に事業を特化したPEファンドは過去最高の57億ドルを調達しており、同じ期間に地理的な事業領域に日本が含まれるファンドが216億ドルの資金を調達している。

 いずれも前年実績の2倍を超える規模だという。

 日本の銀行から提供される潤沢な低利融資を原動力として、2017年には総額245億ドルのバイアウトがあった。

 それまでの5年間の合計をも上回る額で、多くの人が確かに心理的な転換点に達したと確信するのに十分な規模だった。

 世界のPEが日本に振り向ける「ドライパウダー(手元資金)」の山を抱え、数々のバイアウト企業が初めて東京に事業所を構える準備を進めるなか、目下の重大な疑問は、ムードの変化が新たな買収ブームにつながるか否か、だ。

 今年に入って買収件数が急減したほか、大規模資産の売却入札が何件かキャンセルされたことから、懸念も生じている。

 「確かに日本人CEOの間で意識の変化が起きている」

 英ペルミラ・アドバイザーズの日本代表を務める藤井良太郎氏はこう指摘しつつ、「だが、PEのディールの市場がまだ本格的に花開かない理由の一つは、日本企業が現在、かなり健全な状態にあることだ」と言う。

 「多くの場合、買収対象となる資産が厳しい局面にある時にだけディールが出てくる。現時点では、経営者は交渉に入りながら、ディールが必要ではないために『そちらが良い価格を払えるのなら、考えてもいい』と言うことができる」

 ある世界的なPE会社の日本代表は、日銀の金融政策の方向性をめぐる懸念が今の手詰まり状態を打開する可能性があると話している。

 市場参加者は、日本の株価が日銀による年間6兆円の上場投資信託(ETF)買い入れによって支えられてきたことを知っている。

 多くの日本企業はほかの市場と比べて割安に評価されているものの、量的緩和プログラムがまもなく段階的に打ち切られていくとの最近の観測から、一部企業はバリュエーション(価値評価)が下がり始める前に潜在的な事業売却について議論し始めるようになるかもしれない。

 また、アナリストらによれば、強大な権力を持つ経団連でのトップ交代がさらなる追い風になっている。

 今年の春に経団連新会長に就任するまで、中西宏明氏は日立製作所のトップだった。日立と言えば、非中核事業の売却で輝かしい先例を打ち立てた企業だ。

 ジェフリーズ証券のズヘール・カーン調査部長は、中西氏の指揮下で、ガバナンス改革――および外資PE会社に代表されるような活動――に対する経団連の反対論が減退することに「慎重ながらも楽観論」を抱いていると話している人の一人だ。

 日本でのPEの可能性を取り巻く楽観論から、米ブラックストーン・グループは今年、日本の既存の不動産投資事業にバイアウトチームを加えることにした。

 やはり米国に本拠を構えるPE会社のアポロ・グローバル・マネジメントと2つの欧州ファンドも同じように東京オフィスを新設するために人材を採用している。

 昨年、ブラックストーンの事業を立ち上げるためにベイン・キャピタルから引き抜かれた坂本篤彦氏は、ブラックストーン初の日本のバイアウト案件の成立が近いと話し、日本でのディールについて楽観する妥当な理由があると付け加える。

 「明確なトレンドがある」と坂本氏。

 「こうしたコングロマリットは事業売却の準備に時間をかけるもので、利害を評価するのに時として1年以上費やすが、一部は来年市場に出てくるのではないかと感じている」

 日本経済の規模、そして株主還元がお粗末で愛されていない子会社群を抱えるコングロマリットの数を考えると、PEにとって大きなディールフローを生み出すには漸進的な変化があればいいと坂本氏は言う。

 「日本企業の10%か20%が変われば、それだけで十分に大きく、息の長い効果が生まれる」

 ハゲタカは期待感を抱きながら空を舞っている。

By Leo Lewis and Martin Arnold in Tokyo

c The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. Please do not cut and
paste FT articles and redistribute by email or post to the web.

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54463

 

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/148.html

[戦争b22] 米INF離脱、欧州を分断 ターゲットは露と真の敵「中国」米INF離脱で変わる世界勢力 INF条約破棄で中国に対抗は可能か
米INF離脱、欧州を分断
2018/10/24 23:00
日本経済新聞 電子版
 【ベルリン=石川潤】トランプ米政権が中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄を表明したことを巡り、欧州内の溝が深まっている。ドイツやフランスが核開発競争を加速しかねないと反発する一方、ロシアの脅威に敏感な英国やポーランドは米国支持の姿勢を鮮明にしている。

https://www.nikkei.com/content/pic/20181024/96958A9F889DE1E4EAE5E3E1E5E2E0E6E3E2E0E2E3EA9494E0E2E2E2-DSXMZO3689023024102018FF2001-PB1-1.jpg

 「チャンスがある限り、あらゆる外交手段を使って戦う」。ドイツのマース外相は独メディアのインタビューで、北大西洋条約機構(NATO)加盟国による協議などで米国に翻意を促していく考えを示した。フランスのマクロン大統領もトランプ米大統領との電話協議で「条約は欧州の安全保障に必要」と訴えた。
 欧州にとって、射程500〜5500キロメートルの地上発射型の巡航ミサイルの開発や配備を禁じるINF条約は安保の柱の一つだ。ロシアが開発したとされる地上発射型巡航ミサイル「SSC8」の射程は2600キロメートル程度といわれ、独仏などの欧州主要部がすっぽり収まる。ロシアを条約の枠組みにどう引き戻すかがNATOの課題だったはずなのに、条約破棄を唐突に打ち出した米国への戸惑いを隠せない。
 一方、英国のウィリアムソン国防相は支持をいち早く表明した。米国との「特別な関係」に加え、3月には元ロシア情報機関員らへの暗殺未遂事件が英国内で起きており、対ロ強硬論に傾きやすい。ポーランドのドゥダ大統領も米国の決断は「理解できる」と語った。バルト海沿岸や東欧の諸国にとってロシアの脅威は切実で、安保で頼れるのは独仏ではなく米国という現実がある。
 欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表(外相)は「(米国が)同盟国、世界全体の安全保障へ及ぼす影響を考慮するよう期待している」と煮え切らない。メルケル独首相とマクロン仏大統領は独仏を軸にした欧州統合の絵を描くが、安全保障をめぐる足並みの乱れは死角になりかねない。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36871370U8A021C1FF2000/

 

 


ターゲットは露と真の敵「中国」米INF離脱で変わる世界勢力図
国際2018.10.24 13 by 北野幸伯『ロシア政治経済ジャーナル』
kitano20181023
 

シェア
4
ツイート
9
はてブ
0
Pocket
関連記事/PR記事
川口春奈が部屋着、眼鏡姿などで応援してくれる動画公開
その自作スムージー、効果ないかも。「組み合わせNG」の野菜は?
イボを切る時代は終わり?皮膚科医が明かしたイボケアが凄すぎ![PR] kireidiary
コンブチャを超えたコンブチャが存在。あっという間に脂肪の塊が[PR] kombucha
TVが今の育毛を全否定!育毛の盲点を学会が大発表し話題殺到[PR] ソーシャルテック
10月21日、米が露との核廃棄条約(INF)離脱を示唆、その理由を巡り米露で主張が対立しています。これを受け、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、冷戦当時、世界で繰り広げられた米ソ軍拡競争がINF締結により軍縮された経緯を解説し、今や「INFに無関係の中国は制限なしで独自軍拡が可能」という新たな脅威の浮上を指摘しています。

アメリカ「INF条約から脱退へ」てなんですか〜?
トランプさんが「INF条約脱退の意向を示した」ことが、大きく報じられています。今回は、これについて学んでみましょう。

まず、基本から理解しましょう。INF条約って何でしょうか?「中距離核戦力全廃条約」(Intermediate-range Nuclear Forces、INF)のこと。1987年にアメリカとソ連の間で締結されました。背景は?FNN PRIME10月21日に、フジテレビ解説委員・能勢伸之さんの解説が載っています。

1976年、旧ソビエト連邦は、米ソ戦略核制限条約(SALT II)で、三段式SS-16大陸間弾道ミサイルと共通コンポーネントを使った二段式の中距離弾道ミサイルSS-20を就役させた。最大射程は約5000kmとされ、5,500km以上とされる大陸間弾道ミサイルの範疇には入らない。従って、戦略核兵器には当たらず、当時の戦略核制限条約の範疇外であり、同条約で生産や配備に制限を掛けることができない兵器だった。

なんかよくわかりませんね。射程距離5,500km以上は、「大陸間弾道ミサイル」(ICBM)に分類されます。米ソ冷戦時代、ICBMは、両国を完全破壊することができる。それで、第一次戦略兵器制限交渉が行われ、1972年に締結されました(SALT1)。ところが、ICBMつまり5,500kmよりも短い射程のものは制限がない。つまり中距離核ミサイルは、いくらでもつくれる。そうなると、たとえば、アメリカの同盟国であるNATO諸国、日本などが危険にさらされます。で、どうしたか?

米本土には届かないが、米の同盟国・NATO諸国や日本には優に届く。これは、米国が同盟国に約束してきた拡大抑止「核の傘」の信頼性を損なうものだった。そこで、NATOは1979年、米本土ではなく、NATO欧州諸国に配備すれば、ソ連に届くパーシングII準中距離弾道ミサイルとトマホーク巡航ミサイルの地上発射型グリフォン巡航ミサイル・システムの開発と配備、そして、ソ連と交渉を行うという「二重決定」を1979年に行った。
(同上)

一方で、「俺たちも中距離弾道ミサイルを配備するぞ!」と脅しつつ、交渉のテーブルに引き出したと。結果は?

米ソがINF条約に署名したのが、1987年11月8日。結果は、中曽根首相の主張通り欧州に限定せず、米ソ(後にロシア)は、射程500kmから5500kmの地上発射弾道ミサイルと巡航ミサイルを全廃することで合意。
(同上)

めでたく「中距離核戦力全廃条約」(=INF条約)締結となったのであります。

米露それぞれの食い違う主張

なぜアメリカは、IMF条約から離脱する?(アメリカの主張)
ところが、トランプは、「INFから離脱する」と宣言した。なぜ?

トランプ氏、核廃棄条約離脱の計画認める ロシアが違反と主張

10/21(日)6:49配信

【AFP=時事】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は20日、米国はロシアと結んだ歴史的な核廃棄条約からの離脱を計画していることを確認した。ロシアが同条約に違反しているとの主張に基づく動き。トランプ大統領は米ネバダ州エルコ(Elko)で記者らに対し、「ロシアは合意を順守していない。そのため、われわれは合意を破棄する」と発言。

アメリカがINFから離脱するのは、「ロシアが条約に違反しているからだ」と。どういうことでしょうか?去年2月のAFPを見てみましょう。

ロシア、巡航ミサイルを新配備か 米「軍縮条約に違反」と警告

2017年2月15日 9:01 発信地:ワシントンD.C./米国

【2月15日 AFP】米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は14日、ロシアが新たに地上発射型巡航ミサイルを実戦配備したと報じた。1987年に米国とソ連が軍縮に向けて調印した中距離核戦力(INF)全廃条約に違反する可能性があり、米国はロシアに対して同条約を順守するよう警告した。ニューヨーク・タイムズによると、ロシアはこのミサイルを運用する複数の部隊を秘密裏に配備。部隊の1つは南部アストラハン(Astrakhan)地方カプスチンヤル(Kapustin Yar)のミサイル実験施設に置かれているという。INF全廃条約は当時のロナルド・レーガン(Ronald Reagan)米大統領とソ連のミハイル・ゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)大統領が調印したもので、射程500〜5,500キロの弾道ミサイルを禁止している。

ロシアの主張
一方、ロシアにはロシアの言い分があります。「先に条約に違反したのは、アメリカの方だ!」というのです。どういうことでしょうか?10月20日AFPを見てみましょう。

米国は、ロシアが2012年から条約に違反する新型の核巡航ミサイルの開発に着手、17年に配備したと非難している。ロシアはこれに反発、米国が弾道ミサイル防衛(BMD)システムの整備を続けている点を「攻撃用に変更可能で条約違反だ」と指摘するなど、双方が非難合戦を続けている。

アメリカの「弾道ミサイルシステム」(BMD)も「攻撃用に変更可能」で「条約違反」だそうです。ロシアからみるとそうなるのでしょう。もちろんアメリカは、「MDは防衛用で、条約違反ではない」と主張しています。

真のライバル・中国の動き

中国=もう1つのファクター
アメリカがINFから離脱するもう1つの理由があります。それが、中国。INFは、アメリカとソ連(現ロシア)の条約です。中国は、なんの制限も受けず、好きなだけ中距離核戦力を増やすことができる。トランプは「米ロがおとなしくしている間に真のライバル中国がどんどん強くなってしまう」と危機感をもっている。

FNN PRIME10月21日。

米露が持てないカテゴリーのミサイルを中国が保有

だが、その後の中国軍の拡大が、情勢を大きく変えてしまう。中国は、INF条約の当事者ではない。そして、国連安全保障理事会の常任理事国であり、いわば国際条約上、合法的核兵器保有国だ。従って、INF条約当事者である米露が保有できない、射程500kmから5,500kmの地上発射弾道ミサイル及び巡航ミサイルも開発・生産・配備が条約に拘束されずに行うことができるし、実際に行っている。

こう見ると、アメリカがINF条約を離脱するのは、ロシアと中国に対抗するためなのですね。もちろん、米ロ、米中関係は、さらに悪化することになるでしょう。

image by: Flickr

北野幸伯この著者の記事一覧
日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝のメルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。まぐまぐ殿堂入り!まぐまぐ大賞2015年・総合大賞一位の実力!
https://www.mag2.com/p/news/373856


 


安保激変

「INF条約破棄で中国に対抗」は可能か?日本への様々な影響

中距離核戦力全廃条約の経緯とその問題、アジア太平洋地域への影響は?(後編)
2018/10/24

村野 将 (岡崎研究所研究員)


ロシアを訪れているボルトン米大統領補佐官(写真:AP/アフロ)
 前回(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14297)は、 INF条約が締結された背景や、ロシアによる条約違反、米国における対抗措置の検討と条約離脱派・維持派それぞれの主張を説明した。そこで述べたとおり、INF条約自体は米露二国間で締結されている条約であり、ともすれば核大国同士が議論すべき第三者的問題として扱われがちである。また条約が締結された歴史的経緯に関連して、ロシア(ソ連)と地続きになっている欧州の軍事情勢と異なり、地理的に離れている日本は蚊帳の外に置かれてしまいかねない側面もある。

INF条約交渉時、日本が果たした重要な役割
 しかし、INF条約はその交渉時に日本が重要な役割を果たした当事者性の高い問題であるということは、どれだけ知られているだろうか。この経緯は、ロシアのINFが今日のアジアに与える影響を考える際にも若干関係するので、そのさわりを紹介しておきたい。

 1980年代の米ソ軍備管理交渉は、最終的に両者のINFを全廃する、いわゆる「ゼロオプション」で決着したが、全廃合意に至るまでには複数のオプションが議論されており、その中には双方が欧州に配備されたINFだけを撤去する=ソ連はSS-20を欧州に届かないウラル山脈以東に移動させる、といった「欧州限定ゼロオプション」などが提案されていた。

 当初から米国は、配備地域にかかわらず双方がINFを全廃することを追求していたものの、ソ連は現状維持を主張して交渉を中断するなどしたため、米側では欧州限定ゼロオプションや、SS-20の大幅削減とパーシングUの配備中止を引き替えとする妥協案に一定の支持が集まりかけたが、レーガン大統領自身がゼロオプションにこだわり続けた。

 レーガン大統領の懸念は、「たとえソ連のSS-20をウラル以西(欧州正面)から撤去できても、ウラル山脈以東(極東正面)に残されたSS-20は、日本や韓国、中国に脅威を与え続け、なおかつSS-20の射程(5000km超)と輸送可能力をもってすれば、ウラル山脈以東に配備されていても、すぐに欧州の脅威に変わりうる」というものであった。こうしたレーガン大統領のこだわりは、中曽根総理との良好な「ロン・ヤス関係」を軸に、当時の外務省幹部らが日本側の懸念を米国と欧州双方に対して打ち込むことに尽力した成果であった(この経緯は、佐藤行雄元国連大使の著書『差し掛けられた傘』[時事通信出版局、2017]で詳述されている)。

 こうした条約交渉時の経緯だけでなく、現在の北東アジアではロシア以外に、中国や北朝鮮、韓国までもが多くの中距離ミサイルを保有しており、INF条約をめぐる問題は、日本を取り巻く安全保障環境を議論する上で無視できない複雑な問題となっている。ここでは、INF条約の破棄が日本の安全保障にいかなる波及的影響を与えるかを様々な論点から検討する。

条約違反対象に含めるか議論になった
ミサイルシステムの存在
 第一に重要な点は、INF条約を米露両国が遵守しているかどうかという制度上の問題と、条約が禁止している射程500〜5500kmの地上発射型ミサイルが両国および周辺国に与える戦略的・戦術的影響は分けて考える必要があるということだ。

 2014年以来、米政府が条約違反対象と指摘しているのは、「SSC-8」と呼ばれる地上発射型巡航ミサイル(GLCM)であることは前回述べた。技術的に見て、このミサイルの射程が2000kmを超えることはほぼ確実であり、地上での飛翔試験や実戦配備も確認されているから、状況証拠からして条約違反であることは疑いの余地がない。

 しかし2014年の時点で、条約違反対象に含めるか議論になったミサイルシステムがこれ以外に2つ存在する。1つは、「イスカンデルM」と呼ばれる移動式の短距離弾道ミサイル(SRBM)である。イスカンデルMは、潜在的に500km以上の射程延伸が可能と見られるが、500kmを超える距離での飛翔試験などを確認できていない等の理由で、条約違反対象にはカテゴライズされていない。とはいえ、イスカンデルMは核搭載可能な即応性の高い戦術弾道ミサイルであり、既にカリーニングラードにも一個旅団が配備されている。

 これはポーランドの首都ワルシャワや、陸上部隊をバルト諸国に向け増派する際の要衝である「スヴァウキ回廊(*カリーニングラードとベラルーシを隔てるポーランド=リトアニア国境地帯)」などを即座に打撃しうる距離にある。このことから、米国やNATO、東欧諸国は、イスカンデルMが条約違反対象でないとしても非常に厄介な戦術核ミサイルとして警戒しており、それが2月の「核態勢見直し(NPR2018)」で決定された潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)=「トライデントD5」への低出力核弾頭の搭載や、ポーランドにおけるミサイル防衛の強化などに繋がっているのである。

 米国内で条約違反対象に認定するか議論になったもう1つのミサイルが、「RS-26」と呼ばれる開発中の移動式ICBMである。RS-26は2012年5月の飛翔試験こそ5800kmの距離で行われたものの、同年10月以降の飛翔試験はすべて2000km前後で行われている。元々米国は、ソ連がINF条約をなし崩しにするとすれば、重い弾頭を搭載するなどしてICBMを短射程で運用する可能性があることを警戒していた。2015年11月には、RS-26が条約違反対象ではないことを証明するため、米当局による査察が計画されていたものの、翌年査察はキャンセルされてしまった。このためRS-26が実質的なINFである疑いは拭えないが、米側も同ミサイルが実戦配備段階にないことを踏まえて、違反対象として正式にカテゴライズすることを躊躇したのではないかと思われる。

 このことから、特定の兵器システムが条約違反に該当するか否かの問題とは別に、INF水準に近いロシアのミサイルシステムが、欧州・アジア地域にもたらす軍事的な影響を考える必要がある。以下では実戦配備されていないRS-26は脇に置き、SSC-8とイスカンデルMがもたらす影響についても検討対象とする。

日本の安全保障に与える直接的な脅威は限定的か
 第二の論点は、条約違反の疑いのあるロシアのINFが極東に配備された場合に、それが日本の安全保障にどのような影響を与えるかである。これは80年代のINF条約交渉の過程で、日本側がSS-20が極東正面にスイングされて配備される危険性を主張したことを想起させるが、冷戦時代の教訓は今日の安全保障を考える上でどの程度有効だろうか。

 まずはSSC-8による日本への影響であるが、現在のところ、SSC-8が日本を射程に入れる軍事拠点に配備されているかはよくわかっていない。SSC-8の射程を2000kmと仮定し、それがウラジオストクに程近いウスリースクに配備された場合を想定すると、宮古島や与那国島などの一部を除けば日本のほぼ全域が射程に収まる。当然、秋田県と山口県を配備候補地としている日本のイージス・アショアや、三沢、横須賀、岩国、嘉手納といった米軍の重要拠点もその射程に含まれる。だがここで留意しておくべきなのは、ロシアは「AS-15(Kh-55)」と呼ばれる射程3000km近い、核・非核両用の空中発射型巡航ミサイル(ALCM)を搭載可能なTu-95爆撃機を、以前から東部軍管区の航空基地に配備しているということだ(*更に言えば、オホーツク海にはSLBMを搭載した戦略ミサイル原潜が潜んでいると見られる)。

 加えて冷戦期と異なるのは、ロシアによる対日軍事攻撃の蓋然性である。SS-20の極東へのスイング可能性が懸念されていた80年代は、ソ連による大規模着上陸侵攻への対処が日本の防衛政策上の最重要課題となっており、ソ連の核戦力はそうした通常戦力のエスカレーション・ラダーの延長線上に位置付けられる現実の脅威と見なされていた。しかし、北方領土問題を抱えながらも、現在の日本政府がロシアを冷戦期のような切迫した軍事的脅威と認識しているとは考えられない。これは2013年の「国家安全保障戦略」の中で、ロシアに関する記述がわずか一箇所、それも日露協力の文脈でしか言及されていないことからも明らかである。もちろん、ロシアが2014年以降にクリミアやシリアで軍事作戦を行ったり、他国への妨害工作や政治干渉を行っていることは問題視されてしかるべきだが、それを日本の防衛政策上の主要な脅威とみなすべきかは別問題であろう。

 これらを総合すると、仮にSSC-8が日本を射程に収める地域に配備されたとしても、それはイージス・アショア配備に対する政治的ハラスメント以上の意味を持たず、日本の安全保障に与える直接的な脅威は限定的であろう。これは射程が短いイスカンデルMの場合も同様である。もっとも、これらのミサイルが北方領土、例えば択捉島などに機動展開してくる場合には、その政治的意図について別途考える必要があるだろう。


写真を拡大
中国の脅威認識と戦力配備態勢への影響は?
 第三の論点は、ロシアのINFが極東正面に配備された場合に、それらが中国の脅威認識と戦力配備態勢にいかなる影響を与えるかという問題である。米国の安全保障コミュニティの一部には、ロシアのINF条約違反を意図的に放置することで、それが中国の戦略計算に影響を与え、トータルな戦略バランスにおいて米国・同盟国側に有利に働くとの見方が存在する。つまり、ロシアのINFが中露国境に近いザバイカルやビロビジャン付近に増強されてくれば、中国もそれらを意識せざるをえず、中距離ミサイルや防空システムをロシア対処に振り向ける必要が出てくるため、その分、西太平洋正面=日米に向けられるミサイル戦力を相対的に分散させることができるという、ある種の対中コスト賦課戦略として利用できると捉えているのである。

 しかしながら、こうした中露分断策が上手くいくかどうかは未知数である。そもそも、中国のミサイル旅団の大半は、中露国境から900〜1300km近く離れた中朝国境付近や山西省、河北省など黄海沿岸から内陸部に配備されており、イスカンデルMでこれらを攻撃することは不可能である。射程の長いSSC-8であれば、一部のミサイル旅団を射程に収めることはできるものの、飛翔速度の遅い巡航ミサイルは中国の移動式ミサイルを即座に攻撃するには不向きであり、通常弾頭であればその破壊力も限られている。したがって、中露国境付近からロシアが中国のミサイル旅団を本気で牽制しようと思えば、SSC-8に核弾頭を搭載して運用するしかない。しかしその場合、中国はミサイル戦力の残存性とSSC-8に対する迅速なカウンターフォース能力(=敵ミサイルに対する直接的な攻撃能力)を向上させるため、DF-21やDF-26等の中距離核ミサイルを増産し、配備を強化する可能性が出てくる。

 これは中露を核軍拡競争という消耗戦に陥れる策と言えないこともないが、増産された中国の中距離ミサイルは、情勢変化次第で西太平洋正面にスイングされてくる可能性も否定できない。そうしたリスクを考慮すれば、日米側が大量の中距離ミサイルに対処するコストを支払わされ、結果的に逆効果になる恐れもある(*このように互いが軍拡競争の誘因に駆られている状況を専門用語で「軍備管理における安定(arms race stability)」の低下と言う)。

 これらを踏まえると、中国に対して不用意に中距離ミサイルを増産させるインセンティブを与えるのは必ずしも得策とは言い切れないため、ロシアのINFを対中牽制に利用しようという発想には慎重であるべきだろう。

条約破棄から中距離ミサイル開発・配備までに
どれだけの時間がかかるか
 第四の論点は、米露以外の国が保有するINF水準の地上発射型ミサイルをどのように位置づけるかである。INF問題が交渉されていた80年代と異なり、現在はミサイル技術の拡散が進み、多くの国がこの種のミサイルを保有している。特に日本周辺で影響があるのは、中国のDF-15系列(600〜850km)、DF-16(700km)、DF-21系列(1500〜1750km)、DF-26(3000km)、CJ-10(1000〜2000km:*巡航ミサイル)、北朝鮮のスカッドC(500km)、スカッドER(1000km)、ノドン(1300km)、北極星2(2000km)、そして韓国の玄武2系列(500〜800km)、玄武3系列(500〜1000km:*巡航ミサイル)などだ。

 2000年代の一時期にINF条約の多角化論が提起されたように、米国が新たにINFを開発・配備することで、それを条約拡大のレバレッジとして使うことができれば、INF条約の破棄は、21世紀版の「二重決定」を狙ったものと言えなくもない。しかし現実問題として、他国が米国の中距離ミサイル配備に従って、自分たちが保有する中距離ミサイルを手放すインセンティブはほとんど生まれないだろう。残念ながら、北朝鮮の非核化交渉においても、北朝鮮側がノドンや北極星2等の中距離ミサイルを取引材料としている様子は今のところ窺えない。また中国は、中距離の弾道・巡航ミサイル戦力を、広大な地理的縦深性を利用しながら、西太平洋において米軍の介入を妨げる接近阻止/領域拒否(A2/AD)能力の中核に据えている。これだけを見ても、INF条約が見直され、多国間の軍備管理条約に発展させるのは困難と言わざるをえない。

 だが中国や北朝鮮の中距離ミサイルは、日本の安全保障にとって重大な懸念事項であり、防衛政策上の対抗措置をとる必要はある。となれば、第五の論点となるのは、米国の中距離ミサイルを西太平洋地域に配備することが、周辺国の中距離ミサイル脅威を相殺し、抑止するのに資するかどうかである。

 そもそも、米国が新たにINFに相当する地上配備の中距離ミサイルを開発・配備するとすれば、どのようなオプションがあるのか。既に統合参謀本部と戦略軍は、ロシアの条約違反が疑われ始めた2013年頃から、INFが必要になる場合のフィージビリティ・スタディを複数行ってきた(具体的内容は非公表)。またFY2018国防授権法は、国防長官に「通常(非核)の移動式・地上発射型巡航ミサイル」の開発プログラムを立ち上げるマンデートを与えるとともに、INF水準の地上発射型ミサイルに対抗するための(1)積極防御手段、(2)カウンターフォース能力、(3)米国の能力を拡張するための相殺攻撃能力の開発に対し、5800万ドルを授権することを決めている。ただし、NPR2018における記述は「通常(非核)の地上発射型中距離ミサイル」と若干表現が異なり、検討対象を巡航ミサイルに限定していない=弾道ミサイルの可能性を残している。

 既存の兵器システムを改修する場合の候補となるのは、(1)トマホーク(*BlockWで射程1600km)の地上配備型、(2)空軍で開発中の空中発射型核巡航ミサイル=LRSO(推定射程2500km超)の地上配備型、(3)陸軍で開発中の新型ロケットシステム=Long Range Precision Fires(LRPF:射程300〜499km)の射程延伸=戦術弾道ミサイル化などであろう。変わり種としては、(4)日米共同開発の弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイル=SM-3BlockUAのエアフレームを流用し、シーカーを交換することで対地攻撃用に転用できるとの見方もある(*これはSM-3自体に攻撃ミサイルとしての汎用性があるという意味ではない)。

 これらのオプションはいずれも10年以内で開発が可能とされるが、完全新規の巡航ミサイルないし弾道ミサイルを開発する場合には、より多くの時間とコストがかかる。ロシアや中国は既にINF水準のミサイルを開発・配備していることを踏まえると、いずれのオプションをとるにしても、米国が条約破棄から中距離ミサイルを開発、配備するまでにどれだけの時間がかかるかは非常に重要な問題である。

西太平洋地域に米国の中距離ミサイル配備、5つの役割
 その上で、米国の中距離ミサイルを西太平洋地域のどこかに配備することの主な狙いと課題を整理してみよう。まず、想定される役割としては以下の5つが挙げられる。

(1)戦力投射能力の最適混合化

 現在、西太平洋地域における米軍の主な戦力投射能力には、航空基地を基盤とする戦術航空機、戦略爆撃機、空母とその艦載機、水上艦、潜水艦などがあるが、対地攻撃に用いる長距離ミサイルの搭載量は(オハイオ級巡航ミサイル原潜を除けば)限定的である。例えば、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦でさえ、トマホークを1隻あたりおよそ30〜40発程度しか搭載することができない。またこれらのミサイルは空中はもとより、洋上での再装填ができないため、一度ミサイルを撃ちきった航空機や艦艇は基地や母港に戻って補給しなければならなくなる。その点、通常弾頭の中距離ミサイルをグアムや日本、豪州北部に配備して他のアセットが担っていた攻撃任務を担うことができれば、航空機や艦艇を対水上戦や対潜水艦戦、ミサイル防衛といった他の任務に割り当てられるという利点がある。

(2)中国内陸部へのコスト賦課

 地上配備の中距離ミサイルを中国の内陸部を攻撃できる地点に予め配備しておけば、B-2ステルス爆撃機などの高額なアセットを防空網に侵入させるといったリスクを冒さなくとも、恒常的に中国を牽制でき、更にそれらに対処するために防空システム等への追加的投資を強いることができるかもしれない。

(3)分散化された航空基地に対する制圧能力の補完

 相手が日本やグアムなどに数カ所しかない我が方の航空基地を中距離ミサイルで脅かしうるのに対抗して、こちら側からも遠距離から中国の航空基地や関連インフラを攻撃しうる手段を多様化することで、有事における相手の航空戦力を弱体化させるということも考えられる。

(4)海上封鎖能力の補完

 米軍の陸上部隊と中距離地対艦ミサイルを組み合わせ、軍事的緊張が高まった場合に島嶼部などへの迅速な機動展開を行い、バシー海峡等のチョークポイントを封鎖できる状況を作り出し、中国海軍の艦艇を牽制するという使い方もある。

(5)同盟国・パートナー国への安心供与

 かつて80年代に米=NATO間で行われたように、米国の中距離ミサイルを日本などの同盟国に配備することによって、米国の防衛・拡大抑止コミットメントを保証する安心供与としての役割が考えられる。これは中国を対象とする場合のみならず、北朝鮮を対象にする場合にも同様のことが言えるだろう。

課題・デメリットは?
 以上が、西太平洋地域に前方配備される米国の中距離ミサイルに見出しうる主な役割・メリットである。いずれも納得できるものではあるが、課題やデメリットについても精査する必要がある。それらをまとめると以下のような懸念が考えられる。

(1)地上発射型ミサイルである必然性

 最も根本的な主張は、これらの狙いの殆どは、条約に抵触しない空中発射型ないし海洋発射型ミサイルで代替できるというものだ。実際上記の狙いは、すべて既存の能力を補完することを念頭においており、地上発射型ミサイルでなければ達成できないわけではない。

(2)地上発射型ミサイルであるがゆえの脆弱性

 地上に配備されるミサイルは、航空機や艦艇に搭載されるミサイルよりも、敵の攻撃に対して脆弱である。米国が新たに開発する中距離ミサイルはいずれも路上移動式を前提としているが、広大な戦略的縦深を有するロシアや中国、あるいは欧州の戦略環境と異なり、グアムや日本、東南アジアの島嶼国はいずれも縦深性に乏しく、移動式による恩恵を受けにくい。また地上配備の場合、弾薬庫を併設すれば、航空機や艦艇よりも容易に補給が可能との見方もあるが、攻撃を避けるために予めミサイルの移動発射台を分散・秘匿しようとすれば、その分、兵站上の制約が生じて弾薬庫や補給車両を近くに置く恩恵は受けられない。逆に、補給の利便性を考慮して、移動発射台を弾薬庫近くに展開しようとすると、今度は固定式ミサイルと大して変わらなくなり、配備基地ごと先制攻撃によって撃破される恐れがある。

(3)巡航ミサイルか、弾道ミサイルか/核か、非核か

 相手に対してコスト賦課を強いたり、抑止を成立させる場合、配備された兵器システムが実際に使用された場合の軍事的効果、すなわち作戦遂行においてこちらに優位があり、相手が劣勢になることがある程度はっきりしている必要がある。となれば、配備する中距離ミサイルが巡航ミサイルであるか、弾道ミサイルであるか、それに搭載する弾頭が核弾頭であるか、通常弾頭であるかの差はかなり大きい。

 まず航空基地を機能不全に陥れることを目的とする場合、通常弾頭の巡航ミサイルであれば、その効果はかなり限定される。2017年4月6日に米軍がシリアのシャイラート航空基地に対して行った攻撃では59発のトマホークが使用されたが、シャイラート基地はわずか2日後には運用を再開している。したがって、通常弾頭で航空基地機能をある程度低減させることを試みる場合、弾道ミサイルを用いて滑走路などを攻撃する方が効果的である。

 これは中国がDF-21等を用いて嘉手納基地などを想定した攻撃訓練を実施していることからも読み取れる。ただし、中国の分散化された航空基地ネットワークは40箇所以上に及び、これらに有効な打撃を与えるためには600発以上の弾道ミサイルが必要になると見積もられている。これだけの大量の弾道ミサイルと、ある程度の同時発射を可能とする移動発射台を予め前方展開させておくのは、政治的にも運用コスト上も難しい。となれば、航空基地を効率的に打撃する方法は低出力核を用いることだが、これは政治的に正当化しにくい上、非核三原則を有する日本でなくとも配備先の反発を招くだろう。なおかつ、そうした運用方法はNPR2018で言及された低出力トライデントや核SLCM、LRSOなどで達成できるから、地上配備の中距離核である必然性はない。

 相手の移動式ミサイルを標的とする場合にも似たような問題が生じる。滑走路やレーダーサイトのような固定目標と異なり、配備基地から展開してしまった移動式ミサイルを発見して効率的に撃破することは相当難しい。日本やグアムから発射する亜音速の巡航ミサイルでは、標的に到達するまでに時間がかかり過ぎ、その間にシェルターなどに退避してしまう余地がある。弾道ミサイルであれば、発射から弾着までの時間は短縮されるが、通常弾頭では移動式ミサイルを正確に攻撃できるほどの精度を出すことは難しくなる。

 そうなると、ここでも分散展開した移動式ミサイルを迅速かつ確実に撃破する方法は、低出力核攻撃ということになる。戦略軍では移動式ミサイルに対するカウンターフォース攻撃の一手法として、核弾頭を空中で起爆させ、その過圧効果により一定範囲の地表に出ている標的を一掃することを想定しているが、やはりそれは地上配備の中距離ミサイルでなくとも、低出力トライデントや核SLCM、あるいはLRSOで達成できる(*トライデントやLRSOに搭載が予定されている低出力核のイールドを5キロトンと見積もった場合、それを上空530mで起爆させた際の防護措置のとられていない攻撃目標に対する有効半径はおよそ1.2km[4.54 km²]、致死量の放射線降下物の拡散範囲は風向きに関係なく1km圏内に収まると見積もられる)。

 とりわけ、潜水艦発射型のミサイルは、カウンターフォース攻撃による強制武装解除に使用する場合、相手に探知されることなく、目標付近の海域まで接近して発射から弾着までの時間を短縮できる他、発射地点を変更したり、長期間一定の水域に留まることもできるメリットがある。これこそが、NPR2018で潜水艦を基盤とする低出力核戦力の増強が決定された理由であることを踏まえると、地上配備の中距離ミサイルに見出せる軍事的なアドバンテージはそれほど多くはない。

 中距離ミサイルの活用方法のうち、低リスクで軍事的効果が高そうなのは、陸上部隊による長射程対艦ミサイルの機動的運用であろう。森林や山岳地帯と異なり、遮蔽物やバンカーなどを作りようがない洋上であれば、それが巡航ミサイルであれ、弾道ミサイルであれ、通常弾頭でも精密攻撃を行う難易度はある程度低下する。米国がこの種の中距離ミサイルを本気で開発するつもりであれば、小型の固体燃料ロケット技術を持つ日本が技術協力を行うというオプションも視野に入ってくるかもしれない。それを元にして、現在防衛省で研究開発が進められている島嶼防衛用高速滑空弾に、米国の極超音速兵器開発で培ったノウハウを組み合わせて、戦術レベルの極超音速滑空ミサイルに発展させるのも一案である。事実、統合参謀本部と戦略軍が行なったレビューでは、中距離ミサイルの再開発過程で、その技術がブースト型滑空弾頭の開発に資する可能性を示唆している。

日本がすべきことは?
 最後に、拡大抑止との関連についてであるが、日本を含めた同盟国に米国の中距離ミサイルを配備すれば、80年代にNATO諸国がとったのと同様、米国の防衛コミットメントを確実に出来るとの考え方には一理ある。ただし、当時米国のパーシングUやGLCMを受け入れた西ドイツや英国などの国々は、ソ連がそれらのINFを目掛けて核攻撃を仕掛けてくるリスクを受け入れた上で、米国との政治的連帯という安心を得ることを優先した覚悟を見落とすべきではないだろう。言い換えれば、脆弱な地上配備核の前方配備を受け入れるということは、それらの戦力が相手の攻撃に晒されることで、米国の核報復を発動させる「仕掛け線(トリップワイヤー)」としての役割を果たしていたということになる。

 もっとも、米国による報復可能性を重視する抑止戦略は、相手が「米国は再反撃を恐れて、同盟国を守らないだろう」と誤算した場合には破綻してしまう。この点は、中国がDF-41を含む一定程度の非脆弱なICBM=対米第二撃能力を100基近くまで増強していること、あるいは北朝鮮が火星15のような強力な移動式ICBMの開発に成功し、自信を強めているという事実を真剣に考慮する必要があるだろう。その場合、日本の安全保障にとってより重要となるのは、報復ベースの抑止戦略のみならず、非脆弱な低出力核戦力を含めた米軍の損害限定能力が、危機時において確実に機能するよう作戦計画の共有・確認などの緊密な協議を平素から行うとともに、米軍の潜水艦や航空戦力の展開を支える対潜水艦戦・統合ミサイル防衛など、我が国自身の防衛力整備を着実に行っておくことではないだろうか。

 このようにINF問題が日本の安全保障にもたらす影響は、メリットとデメリットの双方が絡み合って極めて複雑であり、簡単に答えを出すことはできない。それは冷戦期からこの問題に向き合ってきた、米国の安全保障専門家や核戦略家の間でも同様であり、その見解も一致していない。したがって、米国の条約破棄を「トランプの暴走」という単純な構図で切り取ってしまうのは不適当である。日本としては、メリットとデメリットの両面をしっかりと認識しながら、運用の現場で国民の安全にとって総合的にプラスとなる方策を地道に形作っていく必要がある。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14328

 


米国に「INF条約」破棄を決断させた中国の脅威
大量の中距離ミサイルを配備、日本側の対中抑止力は「ゼロ」
2018.10.24(水) 古森 義久
トランプ氏、核戦力「人々が目を覚ますまで増強」 中国への対抗に言及
モスクワでロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(右)と話すジョン・ボルトン米大統領補佐官。ロシア外務省提供(2018年10月22日撮影)。(c)AFP PHOTO / Russian Foreign Ministry〔AFPBB News〕

 米国政府が、旧ソ連との間で結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄を表明した。日本では、この動きが核廃絶に逆行するとして反対する声も強い。だがこの条約は、中国が中距離ミサイルを大増強することを許し、米国にその抑止の対抗手段をとることを禁じてきた。中国の中距離ミサイルは日本を射程に入れている。この現実からみれば、米国の同条約離脱は、日本の安全保障にとって対中抑止力を高める効果を生む側面もある。

核兵器の削減や破棄の条約ではない
 米国のトランプ大統領は10月20日、米ソ中距離核戦力全廃条約の破棄を表明した。東西冷戦の終盤の1987年に、当時の米国のレーガン大統領とソ連のゴルバチョフ書記長とが調印した条約である。

 その内容は、米ソ両国に、核弾頭および非核の通常弾頭を搭載できる地上配備の「中距離ミサイル」を全廃することを課していた。水上や空中から発射する中距離ミサイルは除外されていた。

 中距離ミサイルとは、射程500キロから5500キロまでの弾道、巡航両方のミサイルを指す。この「中距離」の定義は、従来のミサイル区分の「短距離」(射程1000キロまで)、「準中距離」(1000から3000キロまで)、「中距離」(3000から5500キロまで)のすべてを含んでいた。だから米国もソ連、そしてその後継国家とされたロシアも、この条約を守ることによって、これらの幅広いカテゴリーのミサイルは一切開発も保有も配備もできないことになっていた。

 ただし、INF条約はあくまで中距離ミサイルの禁止であり、核兵器自体の禁止や削減ではない。このあたりについても、いまの日本の一部の反応は的外れと言うことができよう。核兵器の削減や破棄の条約ではなく、単に特定の種類のミサイルの全廃条約だったのだ。

INF条約が禁止するミサイルを大量に保有する中国
 米国側は今回のこの条約破棄の理由として、まず「ロシア側の条約違反」を挙げた。ロシアが2014年ごろから条約に違反して新型の地上発射巡航ミサイルを製造し、配備しているという非難である。

 さらにトランプ政権は条約破棄の理由として中国のミサイル大増強も挙げていた。複数の米軍高官は今回の米国の動きに関連して、「もし中国がINF条約に加盟していたとすれば、いま中国が保有する全ミサイル約2000基のうち95%相当が条約違反となる」と言明した。つまり中国は、INF条約が禁止する1900基もの中距離ミサイルを保有・配備しているというわけだ。

 米国議会で安全保障問題に精通するトム・コットン上院議員(共和党)は10月21日、次のような声明を出した。

「米国のINF条約破棄の真の理由は、ロシアよりも中国の行動だといえる。中国は中距離ミサイルに関して制限は皆無である。そのため多数の中距離ミサイルを配備して、米国やその同盟諸国への大きな脅威となってきた。一方、米国は地上配備の中距離ミサイルはゼロであることを強いられてきたのだ」

 米軍当局も東アジア、西太平洋の安全保障に関して中国のミサイルの脅威への警告を発し続けてきた。今年(2018年)3月の上院軍事委員会の公聴会では、ハリー・ハリス太平洋統合軍司令官(現在は韓国駐在大使)が以下の骨子を証言している。

・中国人民解放軍は、弾道ミサイルの分野で最も劇的な進歩を示し、あらゆる種類の基数、型式、精密度などを高めている。とくに最も技術の進歩が顕著なのが、準中距離弾道ミサイル(IRBM)だ。中国軍のミサイル戦力全体のなかでIRBMは90%以上を占める。

・中国のメディアは定期的にミサイル開発を大々的に宣伝するが、その際は、それらミサイルが特定の国を標的にはしていないことを強調している。しかし各種ミサイルの飛行距離を実際の地理に置き換えてみると、どのミサイルがどの地域を標的としているかが明らかとなる。

・短距離弾道ミサイル(SRBM)は台湾と米海軍空母機動部隊の海上活動を標的とし、IRBMは日本国内の米軍基地とグアム島を主要な標的としている。この脅威を抑止するには米軍も中国本土に届く同類のミサイルを配備することが必要である。だが、INF条約のために地上配備の中距離ミサイルはまったく持てず、中国との均衡を大きく欠いている。

 ハリス司令官はこのように証言し、INF条約が東アジアでの米国対中国の中距離ミサイル戦力の極端な不均衡をもたらし、米側の対中抑止力をなくしたことに対して警鐘を鳴らした。

 東アジアでの対中抑止力といえば、まさに日本の国家安全保障への直接的な意味を持つ。つまり中国は日本を攻撃できる中距離ミサイルを、弾道と巡航の両種類を備え、核弾頭も含む弾頭を少なくとも数百基の単位で持っているのに、日本はゼロである。その日本を防衛するはずの米国も、地上配備の中距離ミサイルとなるとゼロに等しいという不均衡なのだ。

以前からあったINF条約「破棄」論
 他国からの軍事攻撃や威嚇を防ぐには、その相手を同じ水準で攻撃し、威嚇できる軍事能力を持つことが効果的な抑止とされる。米国の歴代政権はそうした抑止を安全保障の最大の基軸としてきた。だが現実には、INF条約が米国の中距離ミサイルによる抑止力を奪う結果となってきた。

 ロシアが相手であれば、互いに中距離ミサイルは持たないことで均衡となる。ロシアは公式には条約を守ることになっているからだ。そこには安定した相互抑止の状態が生まれるというわけだ。

 だが東アジアの状況は異なる。中距離ミサイルを多数、保有する中国はもちろん、北朝鮮までが米国に対して圧倒的な優位に立ってきたのである。

 米国では、この東アジアでの不均衡が危険だと懸念して、INF条約を破棄して均衡を取り戻すべきだという意見が以前から表明されてきた。そのなかには日本への直接的な提言もあった。民間研究機関の「プロジェクト2049研究所」は2011年に「21世紀のアジアの同盟」と題する政策提言の報告書を発表した。プロジェクト2049研究所の所長は、現在、トランプ政権の国防総省で東アジア、太平洋問題を担当する次官補のランディ・シュライバー氏が務めていた。

 同報告書の中には、日本への言及として以下のような提言があった。

・中国は日本を攻撃できる中距離ミサイル多数を配備して、脅威を高めている。だが、日本側には抑止能力はない。もし日本が中国からミサイルによる攻撃や威嚇を受けた場合、同種のミサイルで即時に中国の要衝を攻撃できる能力を保持すれば、中国への効果的な抑止力となる。

・日本が独自の中距離ミサイルを開発も配備もしない場合、日米同盟による米国の中距離ミサイルの存在が日本の安全保障にとって有効な抑止力となる。だが米国の中距離ミサイルの配備は米ソ間の中距離核戦力全廃条約によって禁止されている。このため、「中国抑止のために同条約を破棄する」という選択肢も検討されるべきだ。

 このように、日本の安全保障のためにもINF条約は破棄されるべきだとする意見が、米国内部にはなんと7年前から存在したのである。その大胆な意見を公表した研究所の所長が今やトランプ政権の東アジア太平洋担当の国防総省高官となっている点は、日本としては大いに目を向けるべきだろう。

 今後、米国は中距離ミサイルを自由に保有し配備できるようになる。日本周辺の東アジアでも中距離ミサイル戦力を備えることが可能になる。だから、対中抑止力の復活ともいえる。米国がINF条約を破棄することは、日本にとってこんな前向きな意義も考えられるのである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54461

http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/381.html

[国際24] 習主席の肝入りで始まった開発区で味わった残念感 経済冷戦から新冷戦に踏み出すトランプ  意外に安倍政権好きな中国知識人
習主席の肝入りで始まった開発区で味わった残念感
目覚めよサプライチェーン
結局、毛沢東時代と同じなのか?

2018年10月24日(水)
坂口 孝則

 「私たちは、毛沢東時代と同じだといっているんです」

 私の前にいた旅行ガイドは、笑みとも、諦観とも思える表情で語りだした。「たとえば、習近平の悪口をネット上に書いたとします。すぐ消されてしまいます。経済の状況は悪くなるばかりですが、悪い情報は流れません」。私たちを挟むテーブルには、所狭しと、料理が運ばれていた。料理を手にする店員がいても、彼らは日本語を解さないとわかっているためか、ガイドはより饒舌になった。

 それにしても、経済成長にともなって給料はあがっているでしょう、と聞く私に、「物価はそれ以上にあがっています。いま、中国の都心部に住む庶民で、豊かさを感じているひとはほとんどいないでしょう」と語った。

 彼はスマホの画面を見せてくれた。

「これはVPN(仮想私設網)につながっています。これがあれば、海外の情報を見ることができます」
「何を見るのですか」
「ニュースサイトです。そうすれば、中国政府が報じない真実を知ることができます」
「それを見ると中国は嘘ばかりですか」
「嘘ではないのですが、公にならないことが多くあります」
 米中の貿易戦争が心配だ、といったガイドは、おもむろに「富を得ているのは、共産党の関係者だけです」と投げ捨てるように語った。

 毛沢東は蒋介石を台湾へ追放し、1949年に中華人民共和国を作った。その後、朝鮮戦争を経て米国と対立した。毛沢東は暴力革命によって私有から公有へと切り替え、階級制度を崩壊させ、そしてプロレタリア化を完成させた。

 1957年からはじまった、かの有名な大躍進政策では農民を鉄産業に従業させることで食糧不足を招き、そして3000万人が餓死した。

 ガイドは、もう一度、繰り返した。

 「私たちは、毛沢東時代と同じだといっているんです」。

習近平主席が肝いりではじめた副都市開発
 私はそのとき、中国・雄安のレストランにいた。翌日に、雄安新区市民サービスセンターに行く予定だった。先の会話は、その打ち合わせを兼ねた食事会でのことだった。


中国・雄安の中心地
 少し、中国・雄安について解説が必要かもしれない。雄安新区は、習近平主席の肝入りではじまった開発区だ。この地区はSFさながらの地区といわれている。

 もともとここは北京に続く副都市として構想された。北京から雄安までは100キロメートルの距離にあり、深センなどにつづく先進都市と位置づけられた。ここには、公共インフラの整備や産業勃興、ならびにイノベーション拠点の意味が付与された。

 いわば、中国の総力を動員し、この雄安新区市民サービスセンターがテクノロジーの先端地域となり、スマートシティーの実験場として、未来の中国を体現する役割をもつ。そのため、多数のテック企業が招聘され、AI、ビッグデータ、ブロックチェーンなどの壮大な集積場となっている。


雄安新区市民サービスセンターの外観
 この雄安新区市民サービスセンターが実際のところどれだけ革新的な地域なのか、そして、その現実について、自分で確かめようと現地に向かった。北京から雄安の中心地まではクルマで3時間ほどかかる。そこで1泊し、雄安の中心地からさらに雄安新区市民サービスセンターまでは1時間ほどかかる。ガイドから「近づきましたよ」といわれたとき、そのあまりに牧歌的な光景にハイテク都市が存在するとは、ほとんど信じられなかったほどだ。畑仕事をする農民たち、レンガ造りの住居が並ぶなかで、野良犬たちが餌をもとめてさまよっている。

凄みと違和感の雄安新区市民サービスセンター
 雄安新区市民サービスセンターに行くには駐車場にクルマを停め、専用の無料バスで3分ほど揺られる必要がある。もし視察したい読者がいれば、この周辺地域は、日本語はおろか、英語もほぼ通じないので通訳かガイドを雇ったほうがよいだろう。周辺の住民や、観光地のついでに訪れた中国人たちでバスは満員になっている。


専用のバスで雄安新区市民サービスセンターを訪れる人々
 到着すると、その異質さに奇妙な感情にとらわれる。米国では、大企業の研究所が、唐突に農地のなかに出現することがある。その対比もかなりのものだが、その対比とも違う、表現できない違和感。農村のかたわらに、コンクリートと板金でできあがった異物が、周囲の景色と切り離されてそそり立っているのだ。

 木々が例外なく鉄棒で支えられ、さらには一つひとつがQRコードに連携したID管理がなされている。それはまるで、自然の老いすらゆるさないほどに、すべてを管理しようとする主張のようにも感じられた。


鉄棒で支えられた木々と木々に取り付けられたQRコード
 まっさきに目に入るのは未来構想を誇示する展示場だったが、係員に聞いても、いまだ一般公開されていないようだ。さらに、いたるところでプラスティックの仕切板に挟まれながら工事が続いていた。この雄安新区市民サービスセンターはかなりの大きさがあり、企業スペースや、展示場、コンベンションセンターだけではなく、飲食店も居住地も、ホテルもある。


あちこちで工事が続けられている
 そこで、この雄安新区市民サービスセンターのなかで気になった3箇所と説明を述べたい。

1.無人コンビニ

 現在、米国ではアマゾンが「アマゾン・ゴー」という無人コンビニを流布しようとしている。説明が不要なように、これはアマゾンIDで入店し、商品を手に取りさえすればセンサーが察知し、それぞれのお客が何を購入するかを自動計算してくれ、そのまま退店すれば決算が完了するものだ。

 人手不足も払拭するし、なにより効率化が進む、この無人コンビニへの期待は大きい。また、なによりも近未来のアイコンとして、この無人コンビニが注目されている理由がわかる。

 この雄安新区市民サービスセンターにも無人コンビニが設置されているというので行ってみた。アマゾンIDが不要の代わりに、中国騰訊控股(テンセント)が提供するコミュニケーションアプリ「WeChat」が必要だ。ガイドの力を借りて、入店から商品の購入まで、実に30分を要した。ただ、これはいくつかの認証が必要なためで、中国人にとってアマゾンとくらべて劣っているとはいえない。


無人コンビニの外観
 ただし、気になったのは、その陳列だ。客が殺到しているためか、棚はガラガラ。さらに残りの商品も、いわゆる横陳列というもので、工夫が見られない。さらに棚長も低く、見世物としての役割しか担っていない。


棚には空きスペースが目立つ

商品に取り付けられたRFIDタグ
 さらに、店員は多く、お客の入店補助から、レジの誘導まで、かなりの人数がいる。

 さらに、予想外だったのは、購入したものを自動で認識して支払いするのではなく、単に商品に貼り付けられているタグを読みこんで認識するという点だ。日本でも商品に一つひとつRFIDのタグを貼れば、近似のシステムはできるだろう。しかし、実際に、一つひとつにタグを貼り付けるのは現実的ではない。だからこそ、アマゾン・ゴーのような、センサー技術が必要とされたはずだが、この「無人」コンビニでは、むしろ、段取りに相当な時間がかかりそうだ。

2.モビリティ

 この雄安新区市民サービスセンターには、いたるところに電気充電スタンドがある。そして、当然ながら、走るのも電気自動車だ。バス、そして、輸送車も、同じく電気自動車になっている。

 現在、世界ではドローンが注目されている。同時に、街中を自由に走る、自動輸送車も開発が進められている。この雄安新区市民サービスセンターにも、自律的に走行する、自動輸送車がいる。その動きはコミカルといえるほどだ。


自動搬送車。近くには作業者が同伴している
 しかし、実際に観察してみると、緊急時に動かせるようにコントローラーを携えた作業者が常に同伴している。また、自動輸送車に貨物を入れるのが人間であるのはいいとしても、受け取る際に、人間が道までやってきて、スマホであれこれと操作して、やっと自動輸送車から貨物を取り出していた。

 これなら、雄安新区市民サービスセンター内で、人間が配達したほうがいくぶんも速いだろう。もちろん現在は試行中であるものの、そのあまりの想定外に、私は少し笑ってしまったほどだ。


もう1つの自動搬送車
 もう1社、自動輸送車を走らせる会社があったので、ガイドを通じて聞いてみた。

「この自動輸送車が走るのを見たいのですが」
「荷物がまだ集まっていませんので、走りません」
「走るときには、人間が同伴するのですか」
「いまのところは、同伴します」
「受け取る際には、スマホか何かで認証するのですか」
「ロッカーに持っていきます」
「すごい。じゃあ、ロッカーに自動輸送車が搬入するのですか」
「人間です」
とのことだった。

 なお将来は、スマホで顔認証をし、当人が受け取りにきたら、自動的に渡せるようにしたい、ということだった。

3.ハイテクと乱雑さ

 なお、この3で取り上げる話は本質的ではないとあらかじめ断っておきたい。しかし、気になったのは、先端とハイテクノロジーとはうらはらな、いくつかの光景だった。

 たとえば、企業のロゴ掲示の後ろに、カーペットが乱雑に置かれ、さらにコンセントの先端がむき出しだった。


ホテルの花壇
 さらに、別の箇所ではのぼりが飾られており、そこにはデザイン展が開催中というので、係員に聞いてみれば「終わった」という。のぼりに書かれた開催期間中では、と聞くと、「ここではない場所に開催会場が変更した」とのことだった。

 また、タバコの吸い殻が放置されているのは訪問者の責任かもしれないが、近未来をコンセプトにしたホテルの花壇はぐちゃぐちゃになっていた。

 お土産店には、文脈と必然性のわからない商品が並んでいた。くわえて、中国の技術と文化を集めたところに、サブウェイとマクドナルドが客を集めていたのは、ご愛嬌というべきだろうか。


あるお土産店
人民の悲しみと特区開発と
 実は、この雄安新区市民サービスセンターについて、訪問した直後には、どのように感想をもてばいいか、私のなかでも混乱していた。

 雄安新区市民サービスセンターの外で目をやると出くわす、農民たちの、ただひたすら?きていかねばならない?の労働に満ちた表情。振り返ると、ひどくうらはらな、この先端都市で働く若い労働者たちの姿。

 この中国で、どのようなきっかけがあって、一方は農村で、一方は先端都市で働く運命になったのか、私にはわからない。ただし私は、この雄安新区にやってくる前には、もっと脳天気な未来への輝きが発見できると思っていた。私が見た、雄安新区市民サービスセンターは、理想と現実の間で、なにを考え、なにをみつめているのだろう。

 私はわからないまま、タクシーに乗り込み、先のガイドに、雄安新区市民サービスセンターの感想を訊いてみた。「うん。便利になると、いいですね……」と彼はうつろにつぶやいた。その短かな言葉のなかに、私は何か多くを感じずにはいられなかった。

 その夕方、近くの屋台街に連れて行ってもらった。

 空気はガソリンとタバコの匂いで充満していたが、衣類や食品を売る、地元の人びとの生活を知るには十分だった。近くの餃子屋に寄って、何本かのビールを空けた。そして、ふたたびタクシーに乗り、中心地のホテルに帰ろうとするとき、タクシーの窓ごしから、「10元(約160円)」と書いた衣類を販売し糊口をしのぐ老女が、ぬれたように激しい視線を私にむけてきた。彼女の視線をたどったものの、私以外に対象はいなかった。

 私が目線を返した瞬間、出発するタクシーのエンジン音が、甲高い叫びのように老女にぶつかったような気がした。老女は微動だにすることなく、その視線を私に向け続けていた。その目には、中国政府が目指す高みと、そして、その現実に翻弄されている人民の悲しみが注入されているように感じられた。

 「毛沢東時代と同じにならないといいんですけれど」。

 ガイドは、少しだけ言葉を違えて言うのだった。


坂口孝則氏・新刊のご案内
『未来の稼ぎ方 ビジネス年表2019-2038』

『未来の稼ぎ方 ビジネス年表2019-2038』

 コラム著者の新作。平成が終わり、次の元号になって20年、ビジネスで何が起きるか。20世紀末からの20年、ビジネスの覇者は製造業からITへと移った。これから20年はさらなる変化を迎える。本書は、広範なデータに基づき、〈コンビニ〉〈エネルギー〉〈インフラ〉〈宇宙〉〈アフリカ〉など注目の20業界の未来を予測。変化の特徴、業界の現状、今後稼げる商品を具体的に提案する。20年分のビジネスアイデアを網羅した一冊。


このコラムについて
目覚めよサプライチェーン
自動車業界では、トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車。電機メーカーでは、ソニー、パナソニック、シャープ、東芝、三菱電機、日立製作所。これら企業が「The 日系企業」であり、「The ものづくり」の代表だった。それが、現在では、アップルやサムスン、フォックスコンなどが、ネオ製造業として台頭している。また、P&G、ウォルマート、ジョンソン・エンド・ジョンソンが製造業以上にすぐれたサプライチェーンを構築したり、IBM、ヒューレット・パッカードがBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を開始したりと、これまでのパラダイムを外れた事象が次々と出てきている。海外での先端の、「ものづくり」、「サプライチェーン」、そして製造業の将来はどう報じられているのか。本コラムでは、海外のニュースを紹介する。そして、著者が主領域とする調達・購買・サプライチェーン領域の知識も織り込みながら、日本メーカーへのヒントをお渡しする。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/258308/102200161

 
経済冷戦から新冷戦に踏み出すトランプ大統領
岡部直明「主役なき世界」を読む
INF条約破棄が招く核危機

2018年10月25日(木)
岡部 直明


訪ロしたボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)(写真=AP/アフロ)
 トランプ米大統領が冷戦終結と核軍縮を導いた歴史的な中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄する方針を打ち出した。ロシアが条約を履行せず、条約の枠外にある中国が核増強に動いているとみたためだが、米中「経済冷戦」は米ロ中の「新冷戦」に足を踏み入れる危険がある。

 これは、オバマ米前大統領の「核兵器なき世界」を葬り去ろうとするものである。米朝首脳会談は朝鮮半島の非核化をてこに、核軍縮にはずみをつけてこそ歴史的意義がある。トランプ大統領によるINF条約破棄は、核軍拡競争を再燃させ、世界を再び「核の危機」にさらしかねない。新冷戦を防ぐため、唯一の被爆国である日本の責任は重大だ。

冷戦終結と核軍縮を導いた歴史的条約
 1987年、当時のレーガン米大統領と旧ソ連のゴルバチョフ書記長が調印したINF廃棄条約は、1989年のベルリンの壁崩壊から両独統一、ソ連解体につながる冷戦終結への突破口となった。それは、START1(第1次戦略核兵器削減条約)、START2(第2次戦略核兵器削減条約)にも波及し、世界の核軍縮を軌道に乗せた。

 トランプ大統領はこの歴史的な条約について、「ロシアや中国が戦力を増強しているのに、米国だけ条約を順守することは受け入れられない」とし、「合意は終わらせる」と表明した。さらに「我々は戦力を開発する必要がある」と核増強をめざす方針を示した。

 たしかにロシアが条約を順守していないという疑念はオバマ政権時代からあった。2014年の米議会への報告で、条約違反が指摘されている。米国が問題にするのは、ロシアが実戦配備したとされる新型の巡航ミサイル「SSC8」だ。射程500〜5500キロメートルの地上発射型の巡航ミサイルの開発や配備を禁じるこの条約に違反しているとみている。ハチソン北大西洋条約機構(NATO)大使は「このミサイルを排除することだ」と述べている。

ゴルバチョフ氏の怒り
 問題は、ロシア側に疑念があるからといって、ロシアに条約順守を徹底させる前に、この歴史的条約を一挙に破棄してしまうのかという点である。レーガン氏とともに条約に調印したゴルバチョフ氏は怒る。トランプ大統領の方針について「危険な後退であり、歴史的な前進を脅かすものだ」と警告している。歴史的条約の当事者だけに重みがある。

 訪ロしたボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)と会談したプーチン・ロシア大統領は「ロシアは何もしていないのに、米国の取る手段には驚かされる」と皮肉交じりに批判した。中国外務省の報道官は、トランプ大統領がINF廃棄条約破棄の理由に中国の核増強をあげたことに「完全な誤りだ」と反発した。フランスのマクロン大統領はトランプ大統領に電話を入れ「条約は欧州の安全保障にとって重要だ」と懸念を表明した。米国にも与党・共和党内に「歴代大統領の功績をくつがえすのは間違いだ」という批判がある。

欧州「核危機」の悪夢
 冷戦時代、米ソ合わせて6万発を超す核弾頭は、世界を核の脅威にさらしていた。とりわけ冷戦末期、欧州は「核危機」の悪夢にさいなまれていた。ソ連が中距離核ミサイルSS20を配備したのに対抗して、NATO加盟の西欧諸国には米核ミサイルの配備計画が進行していた。この核危機のなかで、西欧には反核運動が広がった。この反核運動はソ連の誘導ではないかという説もあったが、それは欧州の市民運動そのものだった。そこには、米ソ対立の余波をまともに受ける西欧の社会の苦悩があった。

 冷戦末期、日本経済新聞のブリュッセル特派員として、西欧社会をおおう米ソ緊張は大きな取材対象だった。とりわけ反核運動のなかの米ソ核軍縮交渉の取材には緊張させられた。1987年11月23日、スイス・ジュネーブの米ソの欧州INF削減交渉を取材したときのことだ。

 ジュネーブの朝は冷え込みが厳しく、分厚い靴底からも冷たさが伝わってきた。レマン湖に近い雑居ビルで開いた米ソINF交渉は、わずか30分で終わる。雑居ビルから出てきたソ連のクビツィンスキー代表は記者団に取り囲まれる。「交渉継続か」との問いに、代表は「ノー」と大声で答えた。西独議会が米国の核ミサイル・パーシングUの配備を議決したのに抗議した、交渉からの退出だった。

 「欧州INF削減交渉が中断」という記事を送稿した。日本経済新聞1面に掲載された記事は米ソ緊張がピークに達したことを示していた。しかし、この「交渉中断」に米側のポール・ニッツェ代表は冷静だった。「これは完全な交渉停止ではない。ソ連が応じるなら、いつでもジュネーブに戻る」と語った。

 「ソ連封じ込め」論のジョージ・ケナン氏の後継者で伝説の外交官として知られるニッツェ氏はあくまで冷静だった。クビツィンスキー代表との「森の散歩」でINF削減交渉の打開の道を探ってきた。ニッツェ氏には何らかの展望があったのだろう。

 もちろんINF交渉の中断で米ソ緊張は一気に高まった。米核ミサイルの配備を求められたオランダのルベルス首相は悩んでいた。NATOの一員としての役割と、反核運動にみられる市民の意識のはざまで対応に苦慮していた。ルベルス首相と会見した際のことだ。ハーグの狭い首相執務室で若き首相が頭をかきむしっていたのを見た。ルベルス首相は結局、核ミサイル配備の延期を決断することになる。

 このルベルス首相の苦渋の決断は、米ソの歩み寄りに道を開くことになる。1985年3月、ソ連にゴルバチョフ政権が誕生したのが大きな転機になる。米ソ首脳会談はレイキャビクを皮切りにワシントン、モスクワと毎年続けられた。そして、ついに米ソはINF廃棄条約の調印にこぎつけた。ニッツェ氏の冷静な分析は現実化した。しかし、それには4年を要したのである。

深まるNATOの亀裂
 INF廃棄条約とそれによる冷戦の終結で「欧州の悪夢」は消えたが、トランプ大統領の登場でNATOの亀裂は深刻になっている。大統領のNATO不信は米欧同盟を根幹から揺さぶった。それに、今回のINF廃棄条約の破棄方針である。

 ドイツのマース外相は「条約は過去30年間、欧州安全保障の柱だった」とし、「過去にはロシアの条約違反の疑いを指摘してきたが、今は米国に結果を考えるよう促さなければならない」と再考を求めた。これに対して、英国のウィリアムソン国防相はトランプ大統領の方針を「毅然として支持する」と指摘している。

 ドイツは天然ガスパイプライン事業などでロシアとの協力関係が深い一方、英国は元ロシア情報機関員の暗殺未遂などにより、ロシアとのあつれきが深まっている。トランプ方針に対する対応の差で、NATOの運営はさらに難しくなる恐れもある。

新次元の米中対立
 INF廃棄条約破棄をめぐるトランプ大統領の方針は、対ロシアだけでなく、貿易戦争さなかの中国にも照準を合わせている。オバマ政権下で進んだ核軍縮でも、中国はひとり蚊帳の外にあった。核増強の大半は中距離核戦力にあてられた。たしかに米ロ間のINF廃棄条約の外にあるのは、中国にとって好都合だったのかもしれない。

 トランプ大統領が仕掛ける貿易戦争は、先端分野での米中覇権争いの様相をみせている。いわば「経済冷戦」である。

 それが核軍拡競争に点火すれば、「経済冷戦」にとどまらず「新冷戦」になりかねない。安全保障をめぐって米国と中ロがにらみ合う世界は危険そのものである。

米朝首脳会談は核軍縮の好機だった
 米朝首脳会談が真に歴史的会談になるとすれば、朝鮮半島の非核化を確実に実行するだけでなく、それを核軍縮につなげることだった。米ロ中はもちろん、英仏、インド、パキスタン、それにイスラエルも含めてすべての核保有国に核軍縮を求め、「核兵器なき世界」への道筋をつけることだった。

 しかし、INF廃棄条約の破棄をめぐるトランプ大統領の方針で、米朝首脳会談の歴史的意義は大きく減殺されることになった。それどころか「新冷戦」のなかでの次回の米朝首脳会談は、肝心の朝鮮半島の非核化が揺らぐ危険もある。いまや北朝鮮の後ろ盾であることが鮮明になった中ロが、態度を硬化させる恐れもあるからだ。

唯一の被爆国、日本の責任
 核軍拡競争が再燃し「新冷戦」の時代が到来すれば、世界は核による大きなリスクにさらされる。世界経済にも影響は避けられなくなる。こうしたなかで、唯一の被爆国である日本の役割は決定的に重要である。

 米国の「核の傘」のもとにあるという配慮から、日本が核兵器禁止条約に加盟しないのは大きな問題だ。日米同盟は重要だが、唯一の被爆国としての「地球責任」はずっと重い。核兵器禁止条約にNATO諸国が参加しないことが日本の不参加の理由にはならない。日本はまずこの核兵器禁止条約に加盟することだ。それをてこに、外交の軸を立て直すべきである。

 そのうえで、米ロ中に核軍縮を徹底するよう求める必要がある。米朝首脳会談を朝鮮半島の非核化にとどめず、「核兵器なき世界」につなげるうえで、日本の外交力が試される。この欄で再三、問題提起しているが、2019年に大阪で開く20カ国・地域(G20)の首脳会議の機会に、首脳たちの広島訪問を計画することだ。トランプ大統領もプーチン大統領も習近平国家主席も、世界の指導者として核兵器の悲惨さを知るべきだ。唯一の被爆国の指導者として、安倍晋三首相の地球的責任は、これまで以上に重い。


このコラムについて
岡部直明「主役なき世界」を読む
 世界は、米国一極集中から主役なき多極化の時代へと動き出している。複雑化する世界を読み解き、さらには日本の針路について考察する。
 筆者は日本経済新聞社で、ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、取締役論説主幹、専務執行役員主幹などを歴任した。
 現在はジャーナリスト/武蔵野大学国際総合研究所 フェロー。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/102400084


 

意外に安倍政権好きな中国知識人
中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
日中関係の現在と行方を占う

2018年10月24日(水)
福島 香織


ロシア極東ウラジオストクで9月12日に開催された日中首脳会談で、握手を交わす安倍晋三首相(左)と習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)
 安倍晋三首相が25日から27日にかけて訪中する。習近平政権になってから初の日本首相による公式訪中であり、苛烈な米中貿易戦争で苦戦している中国にとってこの日本首相訪中への期待は並々ならぬものがある。果たしてこの訪中を契機に日中関係はどのように変わるのか。あるいは変わらないのか。訪中直前にこれまでの日中関係の推移と今後の予測について、整理しておこう。

 ちょうど私は北京にいて、この数日、体制内学者や民間研究所のアナリストにきたる日本首相7年ぶりの訪中に対する中国側の期待や見立てを聞きまわっていた。彼らの自由な発言空間を守るために、その名は出さないが、それなりに政権の内情に通じ、また政策に影響を与える立場にいる人たちである。彼らは共通して、この訪中が日中関係の新時代の始まりになることを期待している。しかも、そういう新時代の日中関係を作ることができるのは安倍政権しかないという認識である。日本人が思っている以上に中国体制内の人間の安倍政権評価は高い。ひょっとすると日本人より高いかもしれない。

 とある勉強会で某大学の国際関係学教授が解説した日中関係の現状と未来についての分析がなかなか面白いので、紹介したい。

 彼によると日中関係は2010年を分水嶺として四つの時期に区切ることができるという。1972年〜92年を「蜜月期」、92年〜2010年を「戦略的競争および合作関係期」。2010年に劇的な転換期を迎える。8月に日中のGDP規模逆転、そして尖閣諸島をめぐる日中間の問題の表面化によって、一般日本人の対中感情が極度に悪化する。2010年以降は「完全なライバル関係、競争期」。日中関係は悪化していく。2012年秋の尖閣諸島の国有化と中国国内で発生した反日暴動、2013年の首相の靖国神社参拝、2014年に谷底になったあと、2015年から少しずつ回復期に入り、今年2018年の安倍訪中によって日中関係は「新時代の日中関係期」を迎える、という。

 いわく、日本は2012年に安倍政権が登場して以降、対中牽制政策をとってきた。具体的には防衛力強化、日米同盟強化、東南アジア諸国に対する経済協力を通じた中国包囲網の形成。日米豪印の民主主義大国による普遍的価値観国同士の連帯、TPPや国際海洋法など国際社会のルールを利用しつつ中国的価値観を牽制し、中国に照準を絞った国際世論戦をしかけた。その結果、中国脅威論をグローバルな世論として喚起することに成功した。

 ちょっと安倍外交を買いかぶりすぎ、と思うが、中国知識人の安倍外交評価は、おおむね日本のメディアよりも高い。こうした対中外交の在り方や、安倍政権になってからの経済回復基調などを踏まえて、安倍政権は日本メディアの厳しい批判報道にも関わらず、非常に力強く安定していると、見ている。かつての胡錦濤政権の対日重視政策が失敗に終わったのは、日本の福田政権が短命で弱い政権であったためであるという反省を踏まえると、日中関係の改善推進は安倍政権のような安定政権相手でなければリスクが高い、と考えられている。

対日接近路線は失脚につながる?
 ちなみに中国の政治家は、対日接近路線をとると失脚するという、ジンクス?がある。胡耀邦の失脚理由の一つが親日路線だったからだ。だが、同時に中国が困難に陥ったとき(文革直後の疲弊期、天安門事件直後の孤立期)、日本は救世主的に中国を支援した歴史があり、困った時は日本に頼れ、という発想もある。文革脳の習近平個人は日本嫌いであることはほぼ間違いないと私は思うが、政権内には米国との対立激化の緩衝として対日接近を強く推す声はやはり強く、トランプ政権に対する対応ミスで習近平が従来のやり方に修正を迫られているタイミングで、こうした党内対日接近派の意見に耳を貸さざるを得なくなってきたのだろう。

 さて、日本サイドにしても今、対中関係改善に向かう内的外的要因があると、中国識者は分析している。まず自民党内には伝統的に親中派が多い。さらに経済界の日中関係改善要求もそれなりに強い。同時に国際環境の要因としては、日本もトランプ政権の要求に振り回されており、反保護主義という点では、日中の見解は一致できるという期待がある。また、日本経済界に海外市場の拡大要求がある。さらに、中国は対日接近の切り札として北朝鮮問題を使いたいと考えているようだ。つまり拉致問題解決に中国が(できるかどうかはわからないが)真剣に協力するという姿勢だ。

 こうした情勢を踏まえて、きたる日中首脳会談では@日中通貨スワップ再開A一帯一路戦略で第三国における日本の協力表明B知財権対話C対中輸出制限解除(福島原発事故以降続いている“放射能汚染食品”の禁輸措置解除)D北朝鮮拉致問題解決への協力E日中海上捜索・救助(SAR)協定署名FRCEP(東アジア地域包括的経済連携)加盟などのテーマが話し合われ、それなりの成果、合意が見込まれている。米副大統領ペンスの中国に対する宣戦布告ともいえる激しい演説の後で、米国の一番の同盟国の日本がどれだけ中国と接近しうるか、が中国サイドにとっても、私たち日本の中国屋にとっても、注目点と言えよう。中国としては「新時代の日中関係(中日関係)」とか「反保護主義」とかそういう文言で、日中関係の改善をアピールしつつ、米国を牽制しつつ、日米分断を図りたい模様だ。

 さて2018年以降だが、少なくとも、習近平の来年6月のG20に合わせた公式訪問まで日中関係改善機運は続くだろう。その翌年には東京五輪があり、2022年は北京冬季五輪と日中国交正常化50周年とイベントがつづく。そのころまで日中関係改善ムードを維持したい、できる、というのが中国サイドの期待である。もちろん、そのころまでトランプ政権が存続しているか否か、あるいは中国内政が米国が仕掛けた貿易戦争および通貨戦争に持ちこたえているか否か、といういろんな不確定要素もある。

憲法修正に反対意見が出ない理由
 もう一つ興味深いのは、憲法修正について、意外なことに、さほど強い反対意見を彼らは言わない。習近平政権が声高に安倍政権の憲法修正発言を批判しないのは、単に日中関係改善を期待するあまりの配慮かと思っていたのだが、それだけではないようだ。くだんの体制内学者は、日本の憲法修正について「戦後との決別」と表現した。別のシンクタンクのアナリストは「日本の国家正常化」と形容した。憲法修正が中国にとってプラスかマイナスかという問い方をすれば、「“平和国家の道を捨てる”という意味では中国にとってマイナスである」「中国政府としては日中の歴史的経緯からしても、反対と言わねばならない」と答えるが、中国人として受け入れられないということはない、という姿勢だ。

 国務院に政策提言なども行っているシンクタンクのアナリストは日中関係改善が、たんなる日中だけの話ではなく、ポスト米国一極主義の「国際社会のニューストラクチャー」という意味で重要とみる。つまり「一加三=米国と日・中・独(欧)」の多極主義の枠組みを中国の市場開放の進捗とともに形成することで、目下の米国からの圧力をしのいで行きたいという目論見だ。そこでキーワードになるのが反保護貿易主義、グローバル自由市場、気候変動枠組み条約。この部分は、日本もドイツも、米国と利害が衝突する部分であり、日中独が共同歩調をとれる分野と主張する。巨大な中国市場という魅力ある餌で、日独欧の企業を釣り上げて、米国一極支配の国際社会の枠組みから新しい多極構造に変えていこう、という。

 ただ「いくら規模が大きくとも、自由に資金移動ができない、共産党がビジネスに干渉してくるような市場では開放といっても限界があるのでは。同時に金融、為替の自由化を進めない限り自由市場を名乗ることはできないが、それをやると共産党体制は維持できないかもしれないのでは?」といった意見をいうと、「まあ、それはおいおいに」と言葉を濁すのである。だが今の中国にしてみれば、日本が米国の影響下、支配下から多少なりとも抜け出すという意味で、平和憲法を修正して戦後と決別し国家正常化を果たすということは、さほど反対する必要もないのかもしれない。

 ただ、日中が反保護貿易主義や地球温暖化問題で中国と組み、米国と対立する立場になっても、日中関係が蜜月に戻る可能性も、日米同盟の基礎が揺らぐことも、まずない。日本にとって忘れてはならないことは、最終的には経済よりも安全保障になるからだ。日中間には領土問題・歴史問題・台湾問題が存在し、この三つの問題がある限り、日中が例えば日米のような同盟関係に近いような親密な関係になることはないし、たとえ憲法を改正しても、沖縄から米軍が出ていくことはない。

必要な逃げ足の速さ
 領土問題に妥協が許されないのは当然として、歴史問題は共産党の執政党の正統性の立脚点として中国側は(体制崩壊でもしない限り)妥協するわけにはいかず、台湾問題は日本の安全保障とかかわってくる以上、日本側は妥協できない。日中関係の改善があっても、前提には日中は敵対性のある競争関係にある。中国体制内学者たちも、2018年以降の日中関係改善は戦略的、策略的なものであるとしており、実際、双方の国民感情、特に日本人の対中感情の改善にまではなかなか至らないだろうと私も思う。そして日本が敵対性のある競争関係の中国に対して安心感を持つには米国の軍事的後ろ盾を失うわけにはいかず、米国にとっても日本は失うわけにはいかない軍事戦略上の最前線なのだ。

 そういう背景を考えれば、日中関係改善ムードというのは意外にもろいものであり、特に中国市場に進出、投資を考えている企業人たちは、中国経済の動向や、利益の計算以上に、その脆さが引き起こしうるリスクを念頭において、常に逃げ足の速さというものを確保しておく必要があるのではないか。


前回の首相訪中は2011年12月、日中関係が悪化するなか、当時の野田首相が温家宝首相と会談した(写真:AP/アフロ)
【新刊】習近平王朝の危険な野望 ―毛沢東・ケ小平を凌駕しようとする独裁者

 2017年10月に行われた中国共産党大会。政治局常務委員の7人“チャイナセブン”が発表されたが、新指導部入りが噂された陳敏爾、胡春華の名前はなかった。期待の若手ホープたちはなぜ漏れたのか。また、反腐敗キャンペーンで習近平の右腕として辣腕をふるった王岐山が外れたのはなぜか。ますます独裁の色を強める習近平の、日本と世界にとって危険な野望を明らかにする。
さくら舎 2018年1月18日刊


このコラムについて
中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
 新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。
 中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。
 特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/102300182/?
http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/376.html

[国際24] 安倍首相の訪中、日中関係緊密化の節目に 気になる米の反応 北朝鮮と心中する韓国 グローバル会議を通じて考える日韓の強み 

 

ビジネス2018年10月24日 / 19:06 / 4時間前更新
焦点:
安倍首相の訪中、日中関係緊密化の節目に 気になる米の反応
2 分で読む

[東京 24日 ロイター] - 7年ぶりとなる25日からの安倍晋三首相の訪中は、「冷たい関係」が続いていた日中外交にとって、大きな転換点になる可能性がある。失効していた通貨スワップ協定の再開を含めた経済関係の緊密化だけでなく、文化・芸術など幅広い分野における交流の強化も狙っている。ただ、米中間の貿易摩擦が激化する中で、日中の接近を米国がどのように受け止めるのか不透明感もあり、「安倍外交」の真価が問われる局面と言えそうだ。

<元首級の接遇で熱烈歓迎>

安倍首相は25、26日の2回にわたって李克強首相と会談。26日には習近平国家主席との首脳会談も行われる。

その間、25日には日中平和友好条約締結40周年イベントに参加。26日は李首相との会談後に共同会見が予定され、午後は北京大学も訪問する。

また、中国側は25日夜に李克強首相主催の非公式晩餐会、26日昼に李克強首相夫妻主催の昼食会、同日夜に習近平国家主席夫妻主催の夕食会と、元首級の接遇となっている。ある政府関係者は、中国側の対日接近を典型的に示す日程と指摘する。

この背景について、複数の政府・与党関係者は、トランプ米政権が中国からの輸入品に高関税をかけ、この影響で中国経済にスローダウンの兆しが見えており、米側をけん制する意味で、米国の同盟国である日本に接近してきているとの見方を示している。

<目玉はスワップ協定の再開>

今回の訪中で行われる一連の会談では、日本の尖閣諸島国有化を受けた日中の関係悪化で失効していた通貨交換(スワップ)協定の再開、第三国でのインフラ整備での協力、イノベーションや知的財産保護を巡る協力、中国の大国化で形骸化していた対中ODA(政府開発援助)の廃止などで合意する見通し。

パンダの新規貸与や、日本の東北地方産を中心とした食品に対する中国の輸入規制緩和についても、何らかの議論が進むことを日本側は期待している。

北朝鮮情勢についても、韓国を含む半島全体の非核化を望む中国と、北朝鮮のみの非核化を優先する日本で立場は異なるものの、朝鮮半島の緊張緩和で情報交換する意向だ。

李首相は5月の来日時に「ともに自由貿易を擁護したい」と発言し、管理貿易の手法で保護主義を進める米国をけん制した。今回も同様の主張を繰り返す可能性があり、日本側も「反保護主義でなく自由貿易擁護ならば、米国をあまり刺激しないのではないか」(関係官庁)と期待する。

もっとも対中強硬姿勢を強める米国は、日中接近を注視し続け、複数の政府・与党関係者によると、通貨スワップ再開についても非公式に不快感が示されたという。

また、通貨スワップを巡っては「与党内の反中派から根強い反対論があった」(政府・与党関係者)とされ、西村康稔官房副長官は11━12日のツイッターで、中国国内において金融システムに関連して不具合が生じた場合、邦銀の人民元調達を助けることが目的だと説明。金融危機時の中国救済措置ではないとの見解を示した。財務省や外務省も「邦銀のための措置」と、繰り返し説明している。

<気になる米国の反応>

ただ、日本にとって日中首脳会談後の米国の反応は気になるところだ。米国はメキシコ・カナダと北米自由貿易協定(NAFTA)に代わって「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」を締結。

その中の32条10項では、市場経済でない国との自由貿易協議を望む参加国は、協議開始の3カ月前に他の2カ国に通知することを義務付けると明記されている。

通商交渉の専門家によると、この条項は事実上、中国排除のための条項と読むことができるという。

米国のロス商務長官はロイターとの5日のインタビューで、日本や欧州連合(EU)などとの通商協定で、同種の条項が盛り込まれる可能性に言及している。

こうした中で、日中両首脳による友好関係の強化が、米国にとって「抜け駆け」と映るのかどうか。

日本政府にとって、中国との友好ムードの盛り上がりを手放しで喜べない側面があるのも事実のようだ。
https://jp.reuters.com/article/abe-chinavisit-idJPKCN1MY17X

 


 
北朝鮮と心中する韓国

文在寅はローマ法王まで“動員”し暴走した


早読み 深読み 朝鮮半島

2018年10月24日(水)
鈴置 高史


バチカンで10月18日、ローマ法王(右)と会談した文在寅大統領(写真:ロイター/アフロ)
(前回から読む)

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が欧州を訪問、主要国首脳に北朝鮮に対する制裁の緩和を求めた。だが完全に無視され、米韓関係をますます悪化させただけだった。

欧州歴訪は大失敗
鈴置:文在寅大統領の訪欧が大失敗に終わりました。10月13日から21日までフランス、イタリア、ベルギー、デンマークを歴訪。19日にはブリュッセルで開かれたASEM(アジア欧州会合)首脳会議に出席しました。

 仏、英、独などの首脳と会談しては強引な理屈をこねて北朝鮮への制裁をやめさせようとしたのです。ハンギョレの「文大統領、英独首脳と会談し『対北制裁の緩和』を公論化」(10月20日、日本語版)から大統領の発言を拾います。

(10月15日、マクロン仏大統領に対し)少なくとも北朝鮮の非核化が後戻りできない段階まで進んだと判断される場合は、国連制裁の緩和を通じて、北朝鮮の非核化をさらに促さなければならない。安保理の常任理事国として、このような役割を果たしてほしい。
(10月19日、メイ英首相に対し)少なくとも北朝鮮が後戻りできないほど非核化を進展させた場合、北朝鮮に対する人道的支援や制裁緩和が必要であり、国連安保理でそのプロセスに関して議論することが必要だ。
無視された屁理屈
どこが強引なのでしょうか。

鈴置:これだけ聞くともっともらしい。しかし「北朝鮮の後戻りできない非核化」の定義が問題なのです。文在寅大統領はメイ首相に、以下のようにも語りました。ハンギョレの同じ記事から引用します。

北朝鮮は昨年11月以降、核とミサイル実験を中止し、豊渓里(プンゲリ)核実験場の廃棄や東倉里(トンチャンリ)のミサイル実験場と発射台の廃棄を約束したのに続き、米国が相応の措置を取った場合は、プルトニウムの再処理とウラン濃縮核物質を作る寧辺(ヨンビョン)の核施設を放棄する用意があることを明らかにした。
北朝鮮が引き続き非核化措置を推進できるよう、国際社会が国連安保理を中心に促進策に関する知恵を集めなければならない。
 文在寅大統領の理屈は「北朝鮮が核・ミサイル実験を中断し、核実験場などの廃棄を約束した」から「北にさらに非核化を推進させるよう、制裁解除を検討しよう」ということです。北朝鮮の口約束を「後戻りできない非核化」に認定してしまったのです。

 こんな屁理屈に騙される人はいません。英独仏の首脳は「北朝鮮はCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)のため、より確実な行動を示す必要がある」と口をそろえました。

 北朝鮮は核弾頭やミサイルを保有したまま。実験場を廃棄したぐらいで非核化したとは認められない、と文在寅提案を一蹴したのです。

 そして10月19日、ASEM首脳会議は「安保理決議に従い、核およびその他の大量破壊兵器、弾道ミサイル及び関連する計画と施設の、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄を要求」との議長声明を採択しました。

 CVIDを強調、文在寅提案などは完全に無視したのです。外務省のサイトで「議長声明のポイント」を読めます。

北の顔色を見るな
韓国は大恥をかきましたね。

鈴置:ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「Moon’s Push to Ease North Korea Sanctions Falls flat」(10月19日)との見出しで報じました。

 「対北制裁緩和を狙った文のごり押し、完敗で終わる」と酷評したのです。世界で恥をさらした韓国。保守系紙は文在寅外交を痛烈に批判しました。

 朝鮮日報は10月22日の社説の見出しを「文大統領の欧州歴訪、事実上の外交事故ではないか」(韓国語版)としました。

 「外交事故」とは韓国メディアがしばしば使う表現で、日本語に訳せば「外交上の大チョンボ」といった感じです。ポイントを訳します。

ASEM首脳会談は北朝鮮の核に関し、議長声明で「CVID方式で廃棄するよう」求めた。CVIDの核心は検証だ。北朝鮮はCVIDを極力避けようとする。
我が国の政府はいつの間にかCVIDの代わりに「完全な非核化」だけを言うようになった。「検証」を取り除いたのだ。議長声明に盛り込まれた、北朝鮮の生物化学兵器の廃棄に関しても政府は声をあげたことがない。韓国民の声を韓国政府ではなく、アジアと欧州の首脳が代弁したのである。
文大統領が英仏首脳に対北制裁の緩和を訴えたのは今、国際社会がこの問題をどう見ているかを理解していないからだ。韓国の外交は「南北」に足をとられ、方向感覚を失った。今回の訪欧は事実上の外交事故である。
 なお「南北に足をとられ」とあるのは「北朝鮮の顔色を見て」との意味です。朝鮮日報はそこまで露骨に書くのを避けたのでしょう。こう書けば韓国人なら誰でも「忖度外交」の意味と分かりますし。

姑息な文在寅外交
他の保守系紙も批判しましたか?

鈴置:もちろんです。東亜日報も社説「欧州のCVIDの壁にぶつかった『制裁緩和』、遅れる北朝鮮核の時刻表」(10月22日、日本語版)で「文在寅政権の姑息な手法」を非難しました。

文氏は9日間の欧州歴訪で、北朝鮮に対する制裁緩和の必要性を繰り返し強調した。大統領府は「制裁緩和を公論化する成果があった」と評価するが、実際はCCVIDに対する欧州諸国の明確な意思を確認し、壁にぶつかったと見るのが正しいだろう。
もし非核化促進に向けてある程度の制裁緩和が避けられないと判断したとすれば、米国と膝を突き合わせて協議して説得し、北朝鮮の誤った判断と非核化意思の後退を最小化する戦略を設けるべきだった。他の安保理理事国に対して公開的に「反制裁連合戦線」を構築しようとする外交の動きを見せたことは適切でなかった。
 米国は対北制裁を緩和しようとする韓国の動きを苦々しく見ています。トランプ大統領自身が警告を発したほどです(「『言うことを聞け』と文在寅を叱ったトランプ」参照)。

 そこで文在寅政権は欧州を説得することで、制裁緩和に応じない米国を孤立させる作戦に出た――と東亜日報は読んだのです。もちろん、そんな稚拙な小陰謀はたちどころに頓挫しました。

 そのうえ米国の怒りに油を注ぎましたし、世界をして「韓国は北朝鮮の核武装を幇助するつもりだな」と疑わせるに至りました。

 今や文在寅政権は、北が開発した核を分けて貰う作戦に出ていると見なされ始めています。詳しくは『米韓同盟消滅』の第1章第4節をご覧下さい。

 米国を怒らせる姑息なやり方は、南北関係にも悪い影響――例えば、年内に予定される金正恩(キム・ジョンウン)委員長の訪韓計画も危くすると東亜日報の社説は指摘しました。

非核化が少しも履行されていない状態での正恩氏のソウル訪問に対して賛否の論議を激しくする可能性がある。南北関係は非核化に関係なく動いてはならず、そうすることもできない。
問題をすり替えた左派系紙
ハンギョレは?

鈴置:さすがに左派系紙も「成功」とは書けませんでした。そこで「バチカン訪問では大成果をあげた」と話をすり替えたのです。ハンギョレの10月21日の社説の見出しは「文大統領の欧州歴訪、最大の成果は『ローマ法王の訪朝受諾』」でした。

文大統領の歴訪の最大の成果はフランシスコ法王の北朝鮮訪問受諾を勝ち取ったことだった。世界12億人のカトリック世界の精神的な指導者であり、平和と和解の象徴である法王は18日、法王庁での文大統領との単独面談で「(金正恩委員長からの)招待状が来たら無条件で受け、行くことができる」と快諾した。
 ローマ法王の訪朝は南北朝鮮が画策。「金正恩委員長が望んでいる」と文在寅大統領が広報しています。「北朝鮮は普通の国」とのイメージを世界に広めるのが狙いです。そうなれば国連の制裁も緩和しやすくなるし、非核化圧力も弱まると踏んでいるのでしょう。

 もっとも、法王が本当に訪朝を受諾したのかははなはだ怪しい。朝鮮日報は「イタリア語で語った法王の訪朝関連答弁は英語で言えば『available』」(10月20日、韓国語版)で以下のように指摘しました。

青瓦台(大統領府)と与党は法王訪朝を既成事実化した発言を繰り返している。だが、法王が平壌訪問に関して語った言葉は英語で言えば「available(可能だ)」との意味だ。原則論として答えたに過ぎない。
 米政府系のVOAはさらにはっきりと「訪朝」を否定しました。「法王庁『訪朝の口頭要請は受けたが、多くは語っていない』」(10月20日、韓国語版、談話部分は英語)で、法王庁報道官の発言を伝えたのです。

From the Vatican side, we have not said a lot, although we did confirm that an invitation arrived orally.
 「口頭での訪問招請は受けたが、法王庁としては多くを語ってない」つまりは「訪朝するとは言っていない」と述べたのです。

 実際、法王庁の文在寅大統領との接見に関する発表(10月18日、英語)は、訪朝には全く触れていません。

なぜ「話を盛った」のか
韓国政府が話を盛ったのですね。

鈴置:そう見るのが普通でしょう。

なぜ、すぐにばれる嘘をついたのですか。

鈴置:すぐにばれようが、法王訪朝が北朝鮮の意向である以上、強引に推し進めるしかなかったのでしょう、韓国としては。

 制裁解除も同じことです。核廃棄も進まないうちから制裁解除を言っても、欧州が「そうですね」と受け入れるわけがない。それは韓国政府も分かっていたと思われます。しかし、北の指令である以上は実行せねばならなかったのでしょう。

文在寅政権は金正恩委員長の言いなりですね。

鈴置:青瓦台の中枢部は北朝鮮こそが民族の正統性を維持していると信じる人々が占めています。彼らにとって北の指示は絶対なのです。

 朝鮮日報は「『運動家の青瓦台』…秘書官クラス以上の36%が学生運動・市民団体の出身」(8月8日、韓国語版)で「青瓦台・秘書室の秘書官クラス以上の参謀陣のうち、学生運動出身者と各種市民団体の出身者が61%(19人)に達する」と報じています(「北朝鮮の核武装を望む韓国」参照)。

 9月18日の南北首脳会談は平壌の朝鮮労働党本部庁舎で開かれました。「労働党のソウル支部長である文在寅が、労働党の最高指導者である金正恩委員長から本部に呼びつけられたも同然」と苦々しげに表現する保守派もいます。

米軍機関紙も「不仲」
でも、こんなことを続けていれば、韓国は北朝鮮の使い走りと世界中から見切られてしまいます。

鈴置:その通りです。9月18日の南北首脳会談で米国に断りなく飛行禁止区域を定めたため、米国は烈火のごとく怒りました。米軍機関紙の星条旗紙は「Rare public discord between US, S. Korea raises concern about rift」(10月14日)との見出しで、はっきりと「米韓の不仲が表面化」と書きました。

 9月下旬の国連総会への出席を期に、文在寅大統領は米国で「金正恩の首席報道官」と見なされるようになりました(「『北朝鮮の使い走り』と米国で見切られた文在寅」参照)。

 さらに10月10日、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が北朝鮮への制裁解除方針を打ち出したため、米韓関係は完全におかしくなってしまいました(「『言うことを聞け』と文在寅を叱ったトランプ」参照)。

 そして今や、欧州を抱き込んでの米国孤立作戦。文在寅政権の暴走は止まりません。もう確信犯です。「北朝鮮と手を組んでどこが悪いか」と本性を現わしたのです。

 韓国の保守派の中には「そのうちに『北が核武装してどこが悪い』と文在寅政権が言い出すのではないか」とハラハラして見ている人もいます。

予想外に厳しい経済難?
異様ですね。

鈴置:北朝鮮の経済難が外から見ていた以上に深刻で、今年の冬を越せないからではないか、との見方が急浮上しています。

 2017年10月以降にさらに厳しくなった国連による経済制裁の効果が出て、食糧、エネルギー、外貨の不足に北は悩んでいる。下手すると体制を揺るがす騒動が起きかねない。

 そこでなりふり構わず韓国に制裁解除の旗を振らせている、との見方です。もう先がない以上、今、韓国を使い殺しても仕方ない、と判断したのかもしれません。

(次回に続く)

【著者最新刊】『米韓同盟消滅』

米朝首脳会談だけでなく、南北朝鮮の首脳が会談を重ねるなど、東アジア情勢は現在、大きく動きつつある。著者はこうした動きの本質を、「米韓同盟が破棄され、朝鮮半島全体が中立化することによって実質的に中国の属国へと『回帰』していく過程」と読み解く。韓国が中国の属国へと回帰すれば、日本は日清戦争以前の「大陸と直接対峙する」国際環境に身を置くことになる。朝鮮半島情勢「先読みのプロ」が描き出す冷徹な現実。


第1章 離婚する米韓
第2章 「外交自爆」は朴槿恵政権から始まった
第3章 中二病にかかった韓国人
第4章 「妄想外交」は止まらない

2018年10月17日発売 新潮社刊


このコラムについて
早読み 深読み 朝鮮半島
朝鮮半島情勢を軸に、アジアのこれからを読み解いていくコラム。著者は、朝鮮半島の将来を予測したシナリオ的小説『朝鮮半島201Z年』を刊行している。その中で登場人物に「しかし今、韓国研究は面白いでしょう。中国が軸となってモノゴトが動くようになったので、皆、中国をカバーしたがる。だけど、日本の風上にある韓国を観察することで“中国台風”の進路や強さ、被害をいち早く予想できる」と語らせている。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/102300201/?ST=editor

 

グローバル会議を通じて考える日韓の強み

技術経営――日本の強み・韓国の強み
2018年10月25日(木)
佐藤 登

(写真:PIXTA)
 本コラムの主題である「技術経営――日本の強み 韓国の強み」に相応しいフォーラムが10月18日にソウルで開催された。韓国メディア大手のECONOMY CHOSUNが主催した「Global Conference」である。同社が主催するフォーラムは毎年テーマが異なる。過去には経済分野を採り上げたフォーラムもあり、ノーベル経済学賞受賞者も登壇している。一方、今回のフォーラムは、「日本に学ぶ」というコンセプトに設定された。その結果、講演者6人は全て日本人という構成で開催された。
 グローバルビジネスの先端を走る投資家でMistletoe CEOの孫泰蔵さん、政治分野では内閣官房参与の浜田宏一さん、産業分野で筆者、大学側からは韓国を30年に及んで研究している早稲田大学の深川由起子教授、そして中小企業の代表格として石坂産業の石坂典子社長、日本レーザーの近藤宣之社長という講師陣。70分前後の講演と対談が執り行われた。参加費は2万円近くであったものの、約250人が聴講した。
 孫さんの話は、スタートアップ企業やベンチャーなどを発掘し、そこに投資をするビジネスモデル、起業するための心構え、そして日本の教育方針に対する提言などで、韓国の若い世代が関心をもって耳を傾けていた。浜田さんの講演は、アベノミクスの成果を中心に、深川教授は日韓の働き方などを中心に話題を提供した。
産業分野での日韓比較
 筆者は、ホンダとサムスンでの経験を通じて技術経営を分析した内容について講演した。例えば、ホンダでのイノベーションの代表格はホンダジェットの航空機だ。なぜこれが事業化に至ったのか。二足歩行ロボット「アシモ」も燃料電池車(FCV)もそうであるが、1986年に埼玉県和光市に創設された「和光研究センター」の機能に遡る。二輪事業、四輪事業などの既存事業とは全く異なる新規事業化のための使命のもとで進められた研究開発、そしてその成果である。2018年10月10日現在、85機を納入した航空機事業もFCVも、事業化に至るまでには、なんと30年の歳月を要したのである。
 この長きにわたる研究開発を持続するのは並大抵ではない。三菱電機のSiCパワー半導体も30年近い研究開発によって実用化されたが、開発陣も世代を超えてつなぐ必要があるし、経営陣にもそれ以上の連携が問われる。ホンダジェットも途中で中断の危機に見舞われたが、開発陣の情熱が経営トップを説得したといういきさつがある。だからこそ、その根底には経営陣と開発陣との密なコミュニケーションによる信頼関係が不可欠だ。
 一方、サムスンでの研究開発も事業化を意識して十分になされているものの、事業化までに20〜30年の長きにわたるテーマはまずない。時間をM&Aなどの手段で短縮化して、タイミングを見計らって早期に事業化を展開することが得意である。それによって、世界トップの半導体事業、スマホ事業、モバイル用有機EL(エレクトロルミネッセンス)事業、薄型テレビ事業などでの存在感は極めて大きい。テレビ用の大型有機ELは、同じ韓国勢のLGディスプレーが市場を独占している。
 しかし、日本市場だけを見てみると必ずしも韓国勢の存在感が大きいとは言えない。以下の図にその状況を示す。

韓国製品の日本市場での立ち位置(赤はB to C、黒はB to B)
 有機ELやメモリー半導体は日本市場でも強いが、薄型テレビ、家電、自動車、素材・部材、装置の存在感は大きく低下する。現代自動車の日本販売店はすでに封鎖したし、車載用リチウムイオン電池(LIB)も、三菱ふそうのEVトラックに使われている韓国SKイノベーション製が唯一である。
 これは取りも直さず、その分野では日本の業界がそれぞれに強いからであり、そこに日本の強みの根幹がある。韓国の事業構造は、電機業界、自動車業界、造船業界を中心とする、いわゆるセット事業に強みがあるのは事実である。反面、素材・部材事業や装置事業などの基盤事業は弱体だ。サムスンのスマホにしても、日本の部材が多く採用されていることがそれを裏付けている。
日本の強みと課題
 このフォーラムが開催される直前、世界経済フォーラムは140の国・地域の国際競争力ランキングを発表した。ランキングは12分野、全98の指標を統計などから指数化している。
 日本は、2015年6位、16年8位、17年9位と下降線をたどってきた。これは技術革新の評価が相対的に低くなったことが影響した。しかし、今回の18年版では5位に浮上している。市場開放性を重視するなどで評価指標を変えたというものの、それは他国も共通なので素直に喜んでも良いだろう。
 健康が1位、これに加えて食文化のこれまでの高評価、技術革新の再評価、成人の93%が日常的にインターネットを使用していることでのデジタル技術分野の高評価(3位)などの結果である。一方で社会資本は95位、企業統治は90位と大変低い評価となっている。企業統治では、製造業各社のデータ改ざんなどの不正問題が大いに影響したであろう。
 これもまた、このフォーラムの直前であったが、KYBのオイルダンパーのデータ改ざん問題が内部告発をきっかけに明るみに出た。現在、公共事業や原子力発電設備、マンション等々、対象は多岐にわたり大問題に発展している。本フォーラムでの日本に学ぶというコンセプトとは裏腹に、学んではいけない事柄として、これまでの神戸製鋼や三菱マテリアルのデータ改ざん、トヨタグループとホンダを除く日本の乗用車メーカー5社の完成車検査不正や燃費・排ガスデータ改ざん、そしてKYBによるデータ改ざんなど、日本の恥の部分として説明せざるを得なかったことは悲しい限りであった。
 ちなみに、09年から17年までトップの座をスイスに明け渡していた米国が、今回トップに返り咲いた。起業を後押しする文化、労働市場、ビジネス活力などが高い評価を受けている。課題は治安や健康分野とのこと。2位以下は、シンガポール、ドイツ、スイス、日本、オランダ、香港、英国、スウェーデン、デンマークと続く。韓国も昨年の26位から15位に急浮上した。
 ここで改めて日本の強みを以下に整理してみる。先に述べたホンダの事例のように、企業でも30年に及ぶ研究開発、科学部門では23人のノーベル賞受賞者、大企業と渡り合う中小企業の底力といったものは日本が世界に誇れる姿である。その結果でもあるように、日本には個人商店や小企業まで含めると創業100年を超える企業は10万社、1000年超えは7社もあるとされている。このような光景は韓国では全く見ることができない。

日本の強みとその課題
 ただし、今後の課題もある。数十年の長きにわたって研究開発を続ける企業が減ってきたこと。ノーベル賞のテーマも数十年に及ぶ長い道程と地道な努力があってこそだが、大学や研究機関を中心とする成果主義の圧力や研究費の貧弱さなど、体制弱体化がマスコミを賑わすほどになっているのが現状だ。今後のノーベル賞級の研究が、どこまで持続できるかが大きな課題となって立ちはだかっている。
 小企業でも世界に誇れる企業は日本にたくさんある。しかし、今後の課題は後継者による承継問題だ。良好な事業で経営環境も優れた企業でさえ、会社を畳むことが珍しくなくなっている。存在感のあるオンリーワン企業や、業界のトップを走る優良企業が廃業せざるを得ないという大変勿体ない事態が、今後もますます拡大されようとしている。創意工夫による新たなビジネスモデルを考える転換期に達している。
自前主義からの脱却
 ホンダの自前主義は伝統的に受け継がれてきた。ここに来て、軌道修正を図るビジネスモデルを積極的に推進している。米ゼネラルモーターズ(GM)とのFCV共同開発、同社との車載用電池の共同開発も進めている。直近の話題としては、以下の図に見る自動運転に関しての連携だ。既にソフトバンク、米グーグル、米エヌビデアとの連携を進めてきたホンダは、新たにGMとの共同開発にまで踏み込んだ。この連携により、グーグルとの連携に影響が生じることも考えられる。

業界枠を超える自動運転に関するアライアンス例
 ともかくかように、100年に1度と言われる自動車産業のパラダイムシフト、その両輪となっている電動化と自動運転の両分野に対して、ホンダとGMが急接近している。
 トヨタ自動車もつい最近、自動運転分野に関してソフトバンクとの連携を発表した。電動化では世界のトップを走ってきた日本の自動車業界ではあるが、自動運転では米国勢や独勢に対して劣勢な立ち位置にいる。この波に乗り遅れることは、業界勢力図に大きく影響することで緊張感が漂う。自動運転は真に覇権争いの段階に突入しているが、今後もグローバルアライアンスの波は大きくなるばかりだろう。


このコラムについて
技術経営――日本の強み・韓国の強み
 エレクトロニクス業界でのサムスンやLG、自動車業界での現代自動車など、グローバル市場において日本企業以上に影響力のある韓国企業が多く登場している。もともと独自技術が弱いと言われてきた韓国企業だが、今やハイテク製品の一部の技術開発をリードしている。では、日本の製造業は、このまま韓国の後塵を拝してしまうのか。日本の技術に優位性があるといっても、海外に積極的に目を向けスピード感と決断力に長けた経営体質を構築した韓国企業の長所を真摯に学ばないと、多くの分野で太刀打ちできないといったことも現実として起こりうる。本コラムでは、ホンダとサムスンSDIという日韓の大手メーカーに在籍し、それぞれの開発をリードした経験を持つ筆者が、両国の技術開発の強みを分析し、日本の技術陣に求められる姿勢を明らかにする。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/246040/102300088/



http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/377.html

[経世済民129] ECB、年末で資産購入終了の計画堅持ー景気見通し悪化でも ECB出口に乱気流リスク満載 独IFO業況指数、予想以上の低下
ECB、年末で資産購入終了の計画堅持ー景気見通し悪化でも
Xiaoqing Pi
2018年10月25日 21:25 JST
12月末まで債券購入継続、終了の最終決定は今後の指標次第
政策金利は少なくとも19年の夏の終わりまで現行水準に据え置く
欧州中央銀行(ECB)はユーロ圏経済に減速の兆候が増える中でも、年末で債券購入を終わらせる計画を堅持した。来年終盤の利上げ可能性にも引き続き含みを持たせた。

  ECBは12月末まで月額150億ユーロ(約1兆9200億円)の債券購入を続けると表明。購入終了の最終決定は今後の経済指標次第だと付け加えた。政策金利は少なくとも2019年の「夏の終わりまで」現行水準に据え置くことも再確認した。

ECB金利 現在のレベル
中銀預金金利 マイナス0.4%
リファイナンスオペの最低応札金利 ゼロ
限界貸出金利 プラス0.25%
  ユーロ圏経済が直面する問題は、コアインフレ率の低さや米中貿易摩擦、英国の合意なき欧州連合(EU)離脱リスク、予算を巡るイタリアとEUの対立と数多い。さらに、世界の株式相場は今月に入り大きく下落している。

  投資家はまた、ECBが債券購入を終了した後の満期償還金の再投資で購入指針を変更するかどうかにも注目している。

原題:ECB Sticks to Plan to Rein in Stimulus Even as Outlook Darkens(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-25/PH5LEG6JIJUO01


 

ECB出口に乱気流、リスク満載−総裁は利上げについて曖昧貫く公算
Piotr Skolimowski、Xiaoqing Pi
2018年10月25日 14:56 JST
• ドラギ総裁はフランクフルトで現地時間午後2時半に会見
• 「衰えない成長の勢い」に言及してから1年で状況一変
欧州中央銀行(ECB)は25日の政策委員会で、ユーロ圏経済が直面するリスクについて話し合う。
  ドラギ総裁は1年前の政策決定後会見で「衰えない成長の勢い」に言及。ECBは量的緩和(QE)の月購入額を半減させると発表し、異例の金融緩和からの出口へ向かって大きな一歩を踏み出した。

ドラギECB総裁
写真家:Jasper Juinen / Bloomberg
  それに引きかえ今年は、イタリア予算や米国の保護主義、英国の欧州連合(EU)離脱などのリスク満載の環境と成長減速の中での会合となる。
  ECBが12月で資産購入を終了する決定を覆す可能性はほぼゼロだが、利上げ開始の時期についてはドラギ総裁は曖昧な表現を貫くだろう。
  投資家は以下のような状況について、ドラギ総裁の考えを聞きたがるだろう。
Risks to Euro-Area Economy
Italy's political crisis is considered single-biggest threat to outlook

Source: Bloomberg survey conducted Oct. 12-17
Note: Risks were rated from 1 (none) to 5 (significant). Chart shows weighted averages.
  ECBは2017年6月以来、リスクは「おおむね均衡」しているとの判断を続けている。内需を成長の主要な原動力と位置付けてきた。しかし現在は、外部からのさまざまなリスクが景気見通しを脅かしている。

  ECBが資産購入を年末で終了する計画を変えるとは思えないが、来年9月とエコノミストらが予想している利上げ開始については、インフレが回復しなければ遅れる公算だ。インフレ率は現在、2.1%とECBの目標を上回っているが、コアインフレ率はその半分に満たず、インフレ期待も最近、低下している。

  イタリア10年債利回りは3月の選挙以降、ほぼ2倍になっている。ECBは資産購入を終了した後も満期償還金の再投資によって景気刺激を続けるとしているが、再投資での国別購入割合や購入対象の年限についての規則を緩和するかどうかはこれから決定することになる。

Reinvestment Strategy
ECB faces sovereign-bond redemptions of 155 billion euros over next year

Source: ECB
原題:ECB Faces Exit Turbulence as Outlook Worsens: Decision Day Guide(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-25/PH59QG6S972801

 

ECB、将来的な金利設定方法の検討開始−金融危機に伴う状況変化で
Carolynn Look
2018年10月25日 16:09 JST
• 金利フロアーかコリドーのアプローチか、バランスシートの規模が鍵
• 米連邦準備制度や英中銀の経験がECBの道しるべになる可能性も
欧州中央銀行(ECB)は金融危機が同中銀の金利コントロール方法を恒久的に変えてしまったかどうかについて考え始めている。
  金融システムへの10年にわたる資金大量供給により市場金利には非常に大きな下押し圧力がかかったため、政策当局にできるのは金利の下限を設定することだけになった。市中銀行が中銀に滞留させる資金に対するマイナス金利がそれだ。ECBは中銀預金金利をマイナス0.4%としている。しかし、流動性引き締めによって金利をコントロールするシステムに戻るかどうかをECBも米連邦準備制度やイングランド銀行(英中銀)と同様にこれから検討しなければならない。

  議論の核心は、中銀が大規模なバランスシートと広範囲にわたる政策ツールを備えた方がよいか、それとも短期金融市場を阻害することを避けるため規模を縮小すべきかという点だ。その答えは金融政策の信頼性に長期的な影響を与える可能性が高い。ロンバー・オディエのジュネーブ在勤チーフエコノミスト、サミー・チャー氏は「中銀のバランスシートの規模は決して、危機以前の水準にはならない。それが今やほぼ現実だ」と述べた。
  事情に詳しいユーロ圏当局者が匿名で語ったところによると、ECBスタッフは金融政策の枠組みについて既に見直している。ECB報道官はコメントを控えた。クーレECB理事は先月のスピーチで、将来の枠組みは重要な判断であり「時間と慎重な検討が必要になる」と述べていた。
  景気刺激策による流動性の膨張で、銀行システムにある超過準備は2兆ユーロ(約255兆円)近くに上っている。危機前は事実上ゼロだった。ECBと連邦準備制度、英中銀は以前、いわゆるコリドーシステムを採用していた。短期金利を一定のコリドーの中央にほぼ維持するよう流動性を管理するためだった。しかし英中銀は2009年にこの枠組みを変更し、翌日物預金と市中銀行向け貸し出しに同じ金利を使用している。
  
  連邦準備制度は08年以降、いわゆる「ソギー・フロア」に徐々に転換。連銀に直接資金を預けることのできない資産運用会社や住宅関連の政府支援機関(GSE)などノンバンクセクターの多額資金で、短期市場金利が超過準備の付利(IOER)を下回る事態が生じたためだ。流動性を吸い上げる新たなテクニカルツールも導入した。
  ラボバンクのアナリストは24日、20年にユーロ圏に新たな翌日物貸出金利が導入された後、こうした手法がECBのモデルになる可能性があると分析した。

Operating Framework
Liquidity measures have changed the way the ECB controls market rates

原題:Post-Crisis ECB Considers How It’ll Set Rates in the Future (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-25/PH4YS26K50XW01


 
ビジネス2018年10月25日 / 17:54 / 1時間前更新
独IFO業況指数、10月は予想以上の低下
1 分で読む

[ベルリン 25日 ロイター] - ドイツのIFO経済研究所が発表した10月の業況指数は102.8で、ロイターがまとめたコンセンサス予想の103.0をやや下回った。2カ月連続の低下となった。ドイツ経済の見通しに対する企業経営者の自信がやや低下していることが明らかになった。

IFOのクレメンス・フュースト所長は「現在のビジネスの状況に対する企業の満足度は低下しており、数か月先の状況に対する楽観度も低下している」と指摘。「世界的な不透明感の高まりが、ドイツ経済に一段と悪影響を及ぼしている」との見方を示した。

輸出が減少する中、消費と政府支出はドイツ経済成長の主なけん引役となっており、経済が引き続き上向くことが見込まれている。一方で、合意のない英国の欧州連合(EU)離脱の可能性、貿易摩擦、熟練労働者の不足がドイツ成長見通しの重しとなっている。

VPバンク・グループのトーマス・ギツェル氏は「ドイツ経済は低迷期に入りつつある。貿易摩擦、英国のEU離脱を巡る困難な交渉、イタリア財政問題が企業の懸念となっている」との見方を示した。

IFOは秋季リポートで第4・四半期のドイツの経済成長率を0.6%と予測していたが、同研究所のエコノミスト、クラウス・ボールラーベ氏は、第4・四半期に0.6%成長を達成するのは難しいとの見方を示した。

ただ、IFOは通年の予想を1.7%で据え置いている。

ボールラーベ氏はロイターに「ドイツ経済の黄金の秋は実現していない」と発言。排ガス試験の基準強化で自動車産業の先行きへの期待が大幅に低下したとの見方を示した。

ドイツ政府は今年の経済成長率予測を2.3%から1.8%に引き下げている。

ただ、エコノミストの間では、製造業の低迷や外部リスクの増大にもかかわらず、ドイツ経済は拡大を続けるとの見方が多い。低金利、ユーロ安、中所得者層への減税計画が内需を支える要因になるとみられている。

INGーDibaのカルステン・ブルゼスキ氏は「不透明感と嫌な予感は続くだろう」としながらも、「ドイツ経済の現状は、最近の株価調整が示唆しているほど悪くない」と述べた。

*内容を追加しました。

https://jp.reuters.com/article/germany-economy-ifo-idJPKCN1MZ11L
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/157.html

[経世済民129] トランプ大統領が非難のパウエルFRB議長、ボルカー氏は称賛 円安より円高か8つのリスク 日本株の年内下値めど、2万千割れ
トランプ大統領が非難のパウエルFRB議長、ボルカー氏は称賛
Rich Miller
2018年10月25日 17:04 JST
• 連邦準備制度は「正念場」にあると、伝説の元セントラルバンカー
• 利上げで後れを取るリスクをパウエル議長は認識−ボルカー氏
利上げを巡りトランプ米大統領から繰り返し批判を浴びている連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に対し、1979−87年にFRB議長を務め二桁インフレを退治した伝説的な元セントラルバンカーとして知られるポール・ボルカー氏からは称賛の声が寄せられた。
  ボルカー氏はパウエル議長について、さらなる利上げの必要性を説明するのに当たり、このところの「対応には極めて卓越したものがある。物価の安定維持の重要性を反映している」と高く評価した。
  回顧録の発売を30日に控えて先週インタビューに応じたボルカー氏は、経済が好調でインフレがまだ問題になっていないことから、信用引き締めを遅らせ過ぎる誘惑に駆られる「正念場」に連邦準備制度はあると指摘。物価安定を保つための利上げで「常に後れを取るという多少の懸念をパウエル氏の姿勢は示している」と語った。

  トランプ大統領は消費者物価の安定下での利上げを何度も批判し、パウエル議長率いる金融当局を景気拡大に対する最大の脅威だと非難している。パウエル議長はこれに対し、金融政策の主要な任務はインフレ期待を低水準で安定させることだと説明し、漸進的な利上げの戦略を擁護している。
  消費者や企業が先行きの物価高騰を見込めば、実際にそれを引き起こす形で行動するというのはボルカー氏の下で金融当局者が学んだ教訓だ。ボルカー氏は「Keeping at It: The Quest for Sound Money and Good Government」と題した回顧録で、連邦準備制度は「大事な資産」であり「党派的な政治から守らねばならない」と記した。
  ボルカー氏がブルームバーグ・マーケッツのエディター、クリスティーン・ハーパー氏と共同で執筆した回顧録は、ボルカー氏(91)の健康が優れないため、発売予定が当初の11月後半から前倒しされた。
原題:Volcker Praises Powell as Fed Chairman Faces Attacks From Trump(抜粋)
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
LEARN MORE
関連ニュース
1. ECB、年末で資産購入終了の計画堅持ー景気見通し悪化でも
2. 円買い優勢、日米株急落でリスク回避−対ドルで一時約1週間ぶり高値
3. 投資家はアジアに方向転換を−ブリッジウォーター共同CIO
4. ECB、将来的な金利設定方法の検討開始−金融危機に伴う状況変化で
5. ウォール街「ダイバーシティー」に本気か−次の弱気相場が試金石に
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-25/PH59QG6S972801


 

外為フォーラムコラム2018年10月25日 / 19:04 / 2時間前更新

円安より円高か、為替相場8つのリスク

亀岡裕次 大和証券 チーフ為替アナリスト
5 分で読む

[東京 25日] - 為替相場を見通して当面のリスク要因を検証すると、総合的には円安リスクよりも円高リスクが大きく、円高が進行しやすいと筆者は考えている。

具体的には、円安リスクの要因として「米連邦準備理事会(FRB)のタカ化」、「米中対立の緩和」、「原油高騰」が挙げられ、円高リスクの要因としては「米景気減速」、「人民元安と米中追加関税」、「日米為替条項」、「米ねじれ議会」、「ハード・ブレグジット」が含まれる。

当面の為替相場を占う上で、円安と円高に分けて8つのリスク要因を分析したい。

<円安リスクの現実味>

●FRBのタカ化

まずは円安リスクの1つ目、FRBがタカ化する可能性を考えたい。タカ化は米長期金利の上昇を招き、ドル高に作用する。実際、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーが2020年にかけて中立金利を上回る水準への利上げ見通しを示したことを織り込むかのように、米長期金利は上昇してきた。

ただ、この後でも説明するが、筆者は米国景気の先行きを楽観的にはみていない。輸入関税によるインフレリスクがあっても、それは景気減速リスクを高めることにもなるので、FOMCメンバーは米国景気が加速しない限りは、政策金利見通しを上方修正しにくいだろう。また、米長期金利上昇が株安を招いたことも、FRBのタカ化を抑える一因となりつつある。FRBがタカ化して、米長期金利上昇とドル高が進む可能性は大きくないだろう。

●米国の対中強硬姿勢は緩和するか

米中対立が緩和すれば世界的にリスクオンの地合いとなり、株高や円安に作用するはずである。だが、米中通商協議が休止する中、11月の20カ国・地域(G20)首脳会議で両国首脳が会談しても、歩み寄る可能性は低いだろう。これまで中国が米国に対して輸入拡大、市場開放、資本規制緩和、知的財産権保護で譲歩しても、米国は対中追加関税を発動し、中国の対米投資を抑制してきた。

中国の制度改革を不十分と判断しているだけでなく、中国が技術や軍事で覇権を握ることを阻む長期的な目的があるのだろう。トランプ政権は2020年の米大統領選に向け、保護主義的な対中通商政策を続ける可能性が高い。

●イラン制裁で原油は高騰するか

米国は11月、イラン産原油に対する禁輸制裁を発動する。生産量世界4位のイランからの供給減が見込まれる。それにより原油価格が高騰すれば、欧米を始めとした海外の金利上昇や日本の貿易収支悪化を通じ、円安に作用するはずだ。

だが、イランの主要輸出先である中国、トルコ、インドなどは輸入を続ける。米原油在庫も増える方向にあり、米国、サウジアラビア、ロシアなどの供給増で需要がまかなわれていることがうかがえる。

サウジアラビア人の記者殺害を巡り、同国のムハンド皇太子が関与したと米国が断定して大規模な経済制裁に踏み切る可能性は低いだろう。たとえ制裁を受けても、サウジは石油禁輸を再現する意向はないとしている。イランやサウジの供給減によって世界の原油需給がひっ迫し、価格が高騰する可能性は低そうだ。

<円高リスクにより注意>

●米景気減速のがい然性

では、円高リスクはどうか。米国の景気が減速すると、リスクオフと米長期金利低下を通じてドル円は下落しやすくなる。すでに欧州や中国の景気に減速の兆候がある上、ドル高の影響もあって米輸出は減速している。9月は対中追加関税を発動する前の駆け込み需要で輸出入が増加したとみられるが、10月以降は反動で減少しやすい。

米金利上昇の影響から住宅販売が減少し、住宅ローン申請指数は4年ぶりの低水準となった。減税効果と資産効果の縮小が影響したためか、小売売上高にも減速の兆しがある。

トランプ大統領は所得税減税の恒久化や中間層向け追加減税を打ち出したが、前者は上院共和党内で反対があり、後者は今後数週間で法案を策定しても、中間選挙で共和党が敗北すれば成立困難となる。対中追加関税や株価下落の影響から米国景気が減速し、まだ割高な株価の調整が進めば、利上げ期待後退で米長期金利が低下する可能性は低くないだろう。

●人民元安と米中関税戦争

人民元安が進めば米国の対中通商政策が強硬化し、米中追加関税による景気減速を懸念したリスクオフの円高が進みやすくなる。10月の米為替報告書は中国を為替操作国に認定することを見送ったが、中国の対米貿易黒字を助長する可能性があるとして、人民元安に懸念を示した。その上で、今後も中国の為替慣行を注視し、精査するとした。米国は中国当局が人民元買い介入をしていても、輸出支援のために人民元安を容認(あるいは誘導)していると見ているのだろう。

最近、中国当局が理財商品の株式投資を認可したり、所得税減税に動くとの期待から、中国株高と人民元高に傾いた。しかし、減税が国内総生産(GDP)比1%程度では、米国による対中追加関税の悪影響は相殺できそうにない。中国の景気減速懸念から人民元安が進み、それを当局が容認し続ければ、トランプ政権が約2000億ドル(約22兆5000億円)相当の中国製品に対する関税率を10%から25%に予定通り引き上げるリスクが高まるだろう。

●日米為替条項の行方

日米通商交渉で為替条項が導入されれば、米国による円安是正圧力が意識され、円高が進みやすくなる。日銀の金融緩和が円安誘導とみなされて、米国が円安是正策を要求してくるリスクもある。もちろん、日本は為替条項が導入されないように抵抗するだろうし、導入の可能性は低いと筆者はみる。ただ、円安に誘導していないことを示すため、日銀が量的緩和の縮小を一段と進め、それが多少なりとも円高に作用するリスクはあるだろう。

●米中間選挙で「ねじれ議会」の可能性

11月6日の米中間選挙は、与党・共和党が上院の過半を維持する一方、野党・民主党が下院を制する「ねじれ議会」となる可能性が高い。そうなれば、トランプ政権の政策執行力が低下し、米国が保護主義を強めることが懸念され、ドル円は下落しやすくなる。

過去の中間選挙を振り返ると、共和党、民主党どちらにもかかわらず、与党が両院で過半数を維持するとドル円は上昇する傾向がある。一方、野党が両院の過半数を奪還した場合、野党が共和党ならドル円は上昇、民主党なら下落する傾向がある。共和党の方が減税、金利上昇、海外資本流入でドル高、民主党なら保護主義的な通商政策によりドル安になりやすいとの見方があるからだろう。

今回の中間選挙で与党・共和党が両院で過半数を維持すればドル円は上昇するだろうが、下院で野党・民主党が制するねじれ議会になれば、ドル円が下落するリスクの方が大きいだろう。

●合意なきEU離脱

英国が合意なしで欧州連合(EU)を離脱する「ハード・ブレグジット」となれば、ポンド安やユーロ安が進んでリスクオフ要因となる。英国のEU離脱後、北アイルランドとの厳格な国境管理を回避するため、EUは北アイルランドがこれまでの関税規則に従い続ける「バックストップ(安全策)」を提案している。離脱後も英国がEU関税規則に拘束される期間を2020年末までよりも延長する場合も、EUはバックストップなどを条件とする可能性が高い。

もし英国がEU案を受け入れると、北アイルランドの地域政党や英保守党、離脱強硬派の反対により、英議会で離脱合意が承認されないリスクが高まる。英国は国境問題でEUに譲歩しにくい状況にあり、最終的にはEUが譲歩するかどうかがカギを握りそうだ。

「合意なき離脱」となれば、英国やEUの経済に悪影響が及ぶだろうし、そうなるリスクが小さいとは言い切れないだろう。

以上、8つのリスク要因を分析したが、トランプ大統領の批判を無視して今後もFRBが利上げを続けるかもしれないし、米中が水面下で交渉し、劇的な和解に踏み切る可能性があるかもしれない。しかし筆者は、ここに提示したシナリオがより現実的と考える。その上で、ドル円はこの先、上昇ではなく下落していくとみている。

(本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

亀岡裕次氏(写真は筆者提供)
*亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yuji-kameoka-idJPKCN1MZ19C


 

トップニュース2018年10月25日 / 18:54 / 2時間前更新
日本株の年内下値めど、2万1000円割れ付近か:識者はこうみる
3 分で読む

[東京 25日 ロイター] - 日本株が下げ止まらない。グローバル景気の減速懸念を背景に企業業績への不安が強まっており、バリュエーション面に注目した買いが入りにくい状況だ。

下値めどをめぐって見方が分かれているが、市場関係者からは、過去の株価急落時と比較し、日経平均.N225で2万1000円を下回れば、いったんの底入れ感が出てくるとの声が相対的に多い。ただ、来年にかけて第2弾の株安局面が訪れれば、2万円割れも視野に入りそうだ。

市場関係者の見方は、以下の通り。

●2万1000円割れでリバウンド、米長期金利3%割れなら急反発も

<三菱UFJ国際投信 チーフストラテジスト 石金淳氏>

日経平均で2万1000円割れは、かなりの確率で自律反発のポイントになるだろう。2017年の夏前に付けた高値が、2万0300円付近。15年高値が2万0900円付近となっており、足元の株価はこれらの価格帯に接近しつつある状況だ。一気に下落するというよりは、いったん下げ止まり、反発してから再び2万0500円─2万1000円の価格帯に向かうイメージだ。

TOPIX.TOPXは今年9月から上昇し、一時的に5月の高値を上回ったが、年初来高値には届かなかった。この後の崩れ方は大きい。200日移動平均線の1750ポイント台あたりが、高値めどになってしまった印象だ。

昨年9月以降の上げ波動のスタート地点が、1590ポイント台。今年1─3月の調整時はそこまでは行かなかったが、まずはここが節となるだろう。もし、そこで下げ止まった場合、レンジが1600─1750ポイントに切り下がると想定される。

米金利の上昇は、株式市場にはどこかのタイミングでネガティブな影響をもたらす。10年米長期金利は10月に一時3.2%を超えたが、一方で、CRB指数.TRCCRBは下落しており、商品市場はピークを打った印象がある。

インフレ面での金利上昇圧力は、弱まってくる可能性もある。米長期金利は3%を一時的に割るかもしれない。そうなった場合は、株価はかなり戻すとみているが、再び高値を付けるのは厳しいだろう。

日経平均の年内予想レンジ:2万1000円─2万3000円

●中期的な上昇相場終了、2万0760円は強いサポート

<SMBC日興証券 チーフテクニカルアナリスト 吉野豊氏>

前日の米国株市場で、ナスダック総合.IXICは終値で7150ポイントを割り込んだ。2009年を起点にした上昇相場の中で最も大きな下げは15年高値から16年安値にかけての950ポイント幅だったが、今回、8月高値からの下落はその幅を上回り、リーマン・ショック以降で最大の下げとなった。ナスダックは中期的に天井を打ったみていいだろう。

一方、TOPIXの流れも変わった。10月に付けた高値は1月高値を超えられず二番天井となり、さらに今回の下げで3月安値を割り込んでしまった。より多くの銘柄で構成されているTOPIXが、右肩下がりの基調に変わってきており、日本株も中期的な上昇相場はピークアウトしたとみられる。

基本的に調整局面は半年以上、長ければ来年後半あたりまで続くとみている。日経平均は今年1月高値から3月までの下げが3500円幅で、今回10月高値から3500円下げたところが2万0760円近辺となる。新高値をつけた後の最初の下げ幅は、通常、前回の下げ幅の中に収まってくるため、当面は2万0760円が強いサポートになるだろう。

景気はそれほど落ち込んでおらず、これまでの上昇の余熱もあるので短期的にリバウンドする可能性もある。きょうの終値が7月安値(2万1546円99銭)を下回らなければ、年内に2万3000円近辺まで戻りを試すかもしれない。

●底打ちに時間、弱い企業決算相次ぎ買い入れにくい

<アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパン取締役 寺尾和之氏>

欧米の半導体企業の決算が良くない。弱さのみられる決算発表がまだ始まった段階なので、底打ちのタイミングが見えにくい状況だ。ファンダメンタルズの観点から、株価がボトムアウトするにはまだ時間がかかるだろう。

日経平均
21268.73
.N225NIKKEI INDEX
-822.45(-3.72%)
.N225
.N225.TOPX.IXIC
需要サイドのほか、原材料コストが上昇している。この両面の影響が企業業績に現れるようになった。業績の着地点が芳しくない企業が相次いでいる。今後の先行きにも不透明感が結構ある。株安が進んだといっても、買いを入れにくい。

一方、今の市場の警戒感は、行き過ぎている面もある。貿易戦争についてもやや悲観的な見方も支配的となってきた。貿易戦争を巡る緊張が少し和らぐ方向に進めば、反発する形となるだろう。ただ米中間選挙を受けた市場の動向も注視しなければならない局面だ。

日経平均の年内予想レンジ:2万0000円─2万3000円

●年末2万2000円予想、グローバルの景況感悪化を警戒 

<みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト 三浦豊氏>

日経平均は3月につけた年初来安値が下値として意識されやすく、今は2万1000円あたりがいったんの安値となりそうだ。そこから11月末にかけて2万1500─2万2500円を中心にしたレンジで推移。

うまくいけば2万3000円近辺までの戻りもあり得るだろう。ただ、12月に入ったところから、グローバルの景況感の悪化を背景に再度売られる展開となり、年末2万2000円付近での着地を予想している。

米国の経済指標に悪いものはそれほど出てきていないものの、これから時間を追うごとに出てくるだろうという警戒感がある。トランプ米大統領の中国に対する強硬姿勢は米中間選挙が終われば軟化するとの見方もあって株価は持ち直すだろうが、対中強硬姿勢は弱まることはなく、12月に入って楽観的な見方は間違いだったと気づくだろう。

米政府が中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄する動きも警戒される。米国とロシア、米国と中国よる新たな冷戦が始まる可能性がある。12月から来年2月にかけて第2弾の大きな下げとなり、日経平均は2万円割れとなる恐れもある。

日経平均の年内予想レンジ:2万1000円─2万3000円

ロイターニュース 株式マーケットチーム 編集:田巻一彦
https://jp.reuters.com/article/japan-stocks-views-idJPKCN1MZ18T
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/158.html

[政治・選挙・NHK252] 「TPPは米国の陰謀」と大反対していた「知識人」たちは米国がTPPから離脱したのになぜ大喜びしないのか ヘイト ネトウヨ
2018年10月22日 橘玲 :作家

「TPPは米国の陰謀」と大反対していた「知識人」たちは米国がTPPから離脱したのになぜ大喜びしないのか 

[橘玲の日々刻々]

橘玲のメルマガ 世の中の仕組みと人生のデザイン 配信中

 トランプ政権が「貿易赤字は不公正だ」として世界各国との関税交渉に突き進んでいます。安倍首相とのトップ会談でもトランプ大統領は剛腕をふるい、日本は自動車への関税引き上げを避けるために農業分野での大幅な譲歩を余儀なくされました。

 一連の経緯を振り返って不思議なのは、ついこのあいだまで「TPP(環太平洋パートナーシップ)協定はアメリカの陰謀だ」と大騒ぎしていたひとたちが右にも左にもものすごくたくさんいたことです。ところがトランプ大統領は、「TPPはアメリカにとってなにひとついいことない」として、さっさと交渉からの離脱を決めてしまいました。

 TPPに大反対していたひとたちは、グローバリズムが諸悪の根源で、一部の超富裕層や多国籍企業だけが儲かる自由貿易を制限すれば、日本も世界もずっとよくなると主張していました。そしていま、トランプ大統領の登場によって、彼らが夢見た保護貿易の理想世界が実現したのですから、提灯行列でもやって祝うのかと思ったら、なぜかみんな沈黙しています。

 中学生でも気づく単純な疑問ですが、なぜアメリカの陰謀だったものが、アメリカにとってなにひとついいことがないのでしょうか。TPPを推進すべきだと唱えるひとたちに「グローバリスト」のレッテルを貼ってあれだけ罵倒したのですから、批判派の「知識人」はこの問いに答える大きな説明責任を負っています。

 国際経済学の授業では、「“貿易黒字は儲けで貿易赤字は損”というのはブードゥー(呪術)経済学だ」と真っ先に教えられます。

 グローバル市場はひとつの経済圏ですが、便宜上、国ごとに収支を集計します。これは、日本市場を詳しく分析するのに県ごとの収支を計算するのと同じことです。県内のパン屋が県外の顧客に商品を売ると「貿易黒字」に加算されます。このパン屋が県外から小麦粉を仕入れると「貿易赤字」になります。しかしこれはたんなる会計上の約束ごとで、パン屋の儲けにも、ましてや県のゆたかさにもなんの関係もありません。

 江戸時代には藩ごとに関税が課せられていましたが、明治政府が撤廃したことで日本経済大きく飛躍しました。保護貿易が常に利益をもたらすなら、いまから江戸時代に戻せばいいということになります。自由貿易を否定するのは、これとまったく同じ主張です。

 近代国家は神聖不可侵な「主権」をもっており、世界政府が存在しない以上、明治維新の日本のように一気にすべての関税を撤廃することはできません。しかしアダム・スミス以来、モノやサービスを自由に流通させれば、ひとびとのゆたかさが全体として大きくなるという経済学の主張は事実によって繰り返し証明されてきました。中国やインドは1980年代までは世界の最貧国だったのです。

 TPPのような包括協定がなければ、ちからの強い国が自分に有利なルールを押しつけるに決まっています。いま起きているのがまさにそれで、TPPからの離脱は「日本にとってなにひとついいことがなかった」のです。

 ではなぜ、TPPに反対する「知識人」があんなにたくさんいたのか? それは、ヒトの脳がもともと呪術思考しかできないようにできているからでしょう。だからこそ、ブードゥー経済学は永遠に不滅なのです。

『週刊プレイボーイ』2018年10月15日発売号に掲載

  
http://diamond.jp/articles/-/183057


 
2018年9月3日 橘玲 :作家

翁長知事死去に対してヘイトコメントするネトウヨという存在

 沖縄の翁長雄志知事が闘病の末に亡くなりました。がんを明らかにしてから、ネットには容姿や病状についての読むに堪えないコメントが溢れ、訃報のニュースは一時、罵詈雑言で埋め尽くされました(その後、削除されたようです)。

 こうしたヘイトコメントを書くのは「ネトウヨ」と呼ばれている一群のひとたちです。彼らは常日頃、「日本がいちばん素晴らしい」とか「日本人の美徳・道徳を守れ」とか主張していますが、死者を罵倒するのが美徳なら、そんな国を「美しい」と胸を張っていえるはずがありません。真っ当な保守・伝統主義者は、「こんなのといっしょにされたくない」と困惑するでしょう。

 ネトウヨサイトについては、最近は「ビジネスだから」と説明されるようです。しかしこれでも話はまったく変わりません。ヘイトコメントを載せるのはアクセスが稼げるからで、それを読みたい膨大な層がいることを示しています。

 自分が白人であるということ以外に「誇るもの」のないひとたちが「白人アイデンティティ主義者」です。彼らがトランプ支持の中核で、どんなスキャンダルでも支持率が40%を下回ることはありません。同様に、安倍政権の熱心な支持者のなかに、日本人であるということ以外に「誇るもの」のない「日本人アイデンティ主義者」すなわちネトウヨがいます。

 彼らの特徴は、「愛国」と「反日」の善悪二元論です。「愛国者」は光と徳、「反日・売国」は闇と悪を象徴し、善が悪を討伐することで世界(日本)は救済されます。古代ギリシアの叙事詩からハリウッド映画まで、人類は延々と「善と悪の対決」という陳腐な物語を紡いできました。なぜなら、それが世界を理解するもっともかんたんな方法だから。

 ネトウヨに特徴的な「在日認定」という奇妙な行為も、ここから説明できます。自分たち=日本人と意見が異なるなら「日本人でない者」にちがいありません。事実かどうかに関係なく、彼らを「在日」に分類して悪のレッテルを貼れば善悪二元論の世界観は揺らぎません。

 今上天皇が朝鮮半島にゆかりのある神社を訪問したとき、ネットでは天皇を「反日左翼」とする批判が現われました。従来の右翼の常識ではとうてい考えられませんが、この奇妙奇天烈な現象も「朝鮮とかかわる者はすべて反日」なら理解できます。

 ところが「沖縄」に対しては、こうした都合のいいレッテル張りが使えません。「在日」に向かっては「朝鮮半島に叩き出せ」と気勢を上げることができますが、基地に反対する沖縄のひとたちを「日本から出ていけ」と批判すると、琉球独立を認めることになってしまうからです。

 こうして沖縄を批判するネトウヨは、「反日なのに日本人でなければならない」という矛盾に直面することになります。これはきわめて不愉快な状況なので、なんとかして認知的不協和を解消しなければなりません。「翁長知事は中国の傀儡」とか「反対派はみんな本土の活動家」などの陰謀論が跋扈するのはこれが理由でしょう。――都合のいいことに、探せば本土から来た市民活動家は見つかります。

 ネトウヨは、「日本人」というたったひとつしかないアイデンティティが揺らぐ不安に耐えることができません。「絶対的な正義」という幻想(ウソ)にしがみついているからこそ、平然と死者を冒?してまったく意に介さないのです。

 
http://diamond.jp/articles/-/178932


2018年10月15日 橘玲 :作家
「ヘイト」の烙印を捺された雑誌が休刊した理由

「LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)は「生産性」がない」と主張する保守派の女性国会議員が寄稿した月刊誌が休刊しました。批判に対して「そんなにおかしいか」という特集を組んだところ、同性愛(自由恋愛)と痴漢(犯罪)を同一視するかのような記事が掲載され、火に油を注ぐ大騒ぎになったのです。

 なぜこんなことが起きるのか。それはリバタニアとドメスティックスの関係を見誤っているからです。

 オバマ大統領の二期目の大統領就任式では人気歌手のビヨンセがアメリカ国歌を歌いましたが、トランプ大統領の就任式では、得意のネゴシエーション力にもかかわらずすべての歌手が出演を断ったようです。それ以前に、ザ・ローリング・ストーンズ、エアロスミス、アデルなどのミュージシャンがトランプの集会で自分たちの曲を使わないよう求めています。

 これは政治的イデオロギーの問題というよりも、彼ら/彼女たちがアメリカだけでなく世界じゅうにファンを持つグローバルなスターだからです。

 アメリカ国民3億人のうち、2億人が保守派(ドメスティックス)だとしましょう。リベラルは1億人ですから、選挙では常に保守派が優位に立ちます。だったら、政治家と同様に人気商売の芸能人もみんな保守派に鞍替えすべきではないでしょうか。

 そんなことにならないのは、ちょっと考えればわかります。スーパースターは70億人を超えるグローバルマーケットを相手にしており、わずか2億人のアメリカの保守派の機嫌をとるために、世界じゅうのファンを失うリスクを冒すはずがないのです。

 人種や性別、性的指向などで差別してはならないというリベラルの理念は、グローバル世界のもっとも大切な約束事です。多様なひとたちが集まる場で、お互いの善悪や優劣で争えば殺し合いになるほかありません。

 これを「リバタニア」と呼ぶならば、世界的な有名人やグローバル企業はすべて(仮想の)リベラル共和国の住人です。ハリウッドがどんどんリベラルになり、グーグルやフェイスブックがあらゆる差別に反対するのは、リバタニアから排除されれば事業が成り立たないからです。

 それに対して日本のメディアは、「日本語」という非関税障壁に守られてきたため、これまでリバタニアの巨大な圧力を軽視してきました。しかしいまでは小説・アニメ・音楽・映画などのクリエイターのなかには、日本以上にアジア(中国・韓国・台湾)で人気があるひとがたくさんいて、彼ら/彼女たちは「反中」「嫌韓」のレッテルを貼れることをものすごく嫌うでしょう。海外の高名な作家たち(ほとんどがリベラル)も、高名な文学賞の候補になり世界じゅうにファンのいる日本の人気作家も、「同性愛者を差別している」と批判される出版社から作品を出そうとは思わないでしょう。

 このように考えれば、「ヘイト」の烙印を捺された雑誌を休刊するほかない事情がわかります。下手に言い訳や反論をすれば、ますます炎上して信用が失墜していくだけです。

 グローバル化の進展にともなってリバタニアの圧力はさらに強まっており、今回の事件をきっかけに、日本でも大手メディアのリベラル化がさらに進むでしょう。こうして、取り残されたドメスティックスとのあいだで社会の分断が進んでいくのです。

『週刊プレイボーイ』2018年10月9日発売号に掲載

橘 玲(たちばな あきら)

橘玲のメルマガ 世の中の仕組みと人生のデザイン 配信中
作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『「言ってはいけない?残酷すぎる真実』(新潮新書)、『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)、『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)など。最新刊は、『朝日ぎらい よりよい世界のためのリベラル進化論』(朝日新書) 。

●橘玲『世の中の仕組みと人生のデザイン』を毎週木曜日に配信中!(20日間無料体験中)
http://diamond.jp/articles/-/182355


http://www.asyura2.com/18/senkyo252/msg/710.html

[政治・選挙・NHK252] NHK「原爆番組」は放送法違反だ 朝日の実売はついに400万部割れ?決算書で分かる新聞「財務格差」
NHK「原爆番組」は放送法違反だ
国際2018年10月22日掲載

シェア
ツイート
共有
ブックマーク
原爆ドーム
原爆ドーム(他の写真を見る)

 近年、テレビ番組の「偏向」が話題になることが多い。これをチェックしようとする「放送法遵守を求める視聴者の会」の活動も注目を集めている。

 どちらかといえば、現在の政治に関連した「偏向」が指摘されることが多いが、歴史に関するものでも、放送法違反が疑わしいものがある。『原爆 私たちは何も知らなかった』等の著作がある有馬哲夫・早稲田大学教授は、NHKの制作する原爆関連番組の内容に強い憤りを感じるという。以下は、有馬氏の特別寄稿である。

 ***

放送法違反モノのドキュメンタリー
 毎年夏になれば戦争関連のドキュメンタリー番組が放送される。その中には良質なものもあれば、悪質なものもある。

 この夏、私が「またか」と呆れてしまったのはNHK‐BS1が8月12日に放送した「BS1スペシャル▽“悪魔の兵器”はこうして誕生した〜原爆 科学者たちの心の闇」だ。日本への原爆投下をテーマにしたこの番組は、放送法違反レベルのものだと言わざるをえない。具体的には放送法第4条「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に明らかに違反している。簡単に言えば、完全にアメリカ側の原爆投下を正当化する見方に則った内容なのだ。

 実はNHKにはこの分野ではすでに「前科」がある。2016年放送のNHKスペシャル「決断なき原爆投下 米大統領 71年目の真実」(以下「決断なき」)がそれだ。

 この番組では、ハリー・S・トルーマンが大統領に昇格したばかりで原爆のことをよく知らないことに付け込んで、当時の「軍部が独走して」広島・長崎に原爆を投下した、トルーマンは「女子供に原爆を使うな」と命令した慈悲深い大統領だったと主張していた。

 これはまったく「真実」ではない。実際には、原爆と原子力利用について大統領に諮問する暫定委員会という組織が当時、アメリカには存在していた。そして、軍部も科学者たちも大勢は、広島、長崎のように一般市民が住む都市に、警告もなく投下することに反対をしていたのだ。これは数多くの公文書などに記録として残っている。こうしたプロセスについては、拙著(『原爆 私たちは何も知らなかった』)で詳述した。

 簡単に言えば、トルーマン大統領とその側近が原爆を大量殺戮兵器として使用することを決断した「主犯」であることは、動かしようのない事実だ。ところが、NHKはどういう意図があるのか、「決断なき」において、あたかも大統領に慈悲の心があったかのように描いていた。

 こうした問題点について、これまでも私は論文や著書(『こうして歴史問題は捏造される』)で度々指摘してきた。そうした批判を受けてか、今年の「悪魔の兵器」では、暫定委員会の存在については触れている。その点は多少の進歩と言えるかもしれないが、それなら2年前の放送を正式にお詫びして訂正すべきではないか。


『原爆 私たちは何も知らなかった』
有馬 哲夫 著
ネット書店で購入する

「賛成派」「仕方なかった派」ばかりを紹介
 さて、「悪魔の兵器」の問題点である。この番組では、大量殺戮兵器としての原爆使用「賛成派」2人と「仕方なかった派」1人の科学者を大きくクローズアップしている。

 2人のうちの1人、原爆開発の現場にいた科学者のトップにいたロバート・オッペンハイマーからは、「世界はこれ(広島でパターンとなった原爆使用)が人間と国家と文化の間にゆっくりとだが根本的な変化をもたらすことをこれまでにないほどよく理解するだろう」という肯定的言葉を引き出している。

 もう一人の暫定委員会の委員で大統領の科学顧問だったヴァネヴァー・ブッシュには、もっとはっきりと「原爆は結局世に出るものだった。それが劇的にあらわれただけだ」と言わしめている。

 罪深いのは、フランクリン・ルーズヴェルト大統領に原子力研究を勧めたレオ・シラードを「仕方がなかった派」に入れていることだ。その証拠に、番組の最後でシラードの伝記作家ウィリアム・ラヌエットに「(シラードは)原爆を作るという間違った賭けをしたと自覚していたが、その選択は仕方がなかった」と締めくくらせている。

 シラードにとって問題だったのは、原爆を作ったことではなく、それをどう使用するか、だった。実際、彼は(番組でも申し訳程度に触れているように)他の多くの科学者と共に日本への実戦使用に反対していた。シラードが存命ならかなり激しい抗議文をNHKに送ったことだろう。

 この番組の制作者は、「尺をかせぐために」これら3人だけでなく、彼らの周囲にいた、多少批判的ではあっても原爆の殺戮兵器としての使用を肯定する、あるいはそれを仕方のない選択だと思っている多数の科学者たちのとりとめもないおしゃべりも長々と垂れ流している。

 その一方で、ジョセフ・ロトブラット(のちにノーベル平和賞を受ける)など、ドイツが原爆を完成する見込みはないと知り、もはや原爆を作る必要はなくなったとして、マンハッタン計画から去った「離脱派」はまったく話に出てこない。そのまま残ったものの、日本に原爆を実戦使用すべきでないと政権に訴えた科学者は、シカゴの冶金研究所を中心に数十名もいたのに、番組には一人も登場しない。

 なぜ「賛成派」ないし「仕方なかった派」だけを番組に取り上げるのだろうか。こうした「賛成派」「仕方なかった派」の主張の背景に潜むのは「広島や長崎にしたような原爆の実戦使用は戦争終結のためにはやむをえなかった。結果として多くの人が救われたのだ」という戦後アメリカが採用してきた公式見解だろう。

 この公式見解を正しいとすれば、原爆の実戦使用を強く否定する主張があったという事実は望ましくない。だからこそ、この番組は科学者の大多数が実戦使用に反対だったし、暫定委員会の委員や軍人の多くも、大量殺戮兵器としての使用には反対していたという事実には目を瞑るのだ。

次ページ:原爆投下はアピールのため

原爆投下はアピールのため
 また、同番組はシラードに多くを語らせているのに、彼の次のような重要証言は紹介しない。

「バーンズ(国務長官・トルーマンの側近)は戦後のロシア(ママ)の振る舞いについて懸念していた。ロシア軍はルーマニアとハンガリーに入り込んでいて、これらの国々から撤退するよう説得するのは難しいと彼は思っていた。そして、アメリカの軍事力を印象づければ、そして原爆の威力を見せつければ、扱いやすくなると思っていた」

 これはシラードが当時暫定委員会に大統領代理として加わっていたジェイムズ・バーンズと1945年5月28日に会見したときに得た証言である。

 この証言は、なぜアメリカ側が日本にとって最も不当な大量殺戮兵器としての使用を選んだのかについての説明になっている。つまり、そうすることが、ルーマニアやハンガリーなど東ヨーロッパ地域に勢力拡大を図るソ連に対する軍事的威嚇になるからだ。

 シラードのこの証言は、研究者の間では常識となっている。「アメリカはソ連のヨーロッパでの勢力拡大を抑止するために原爆を使った」という主張の根拠としてよく使われているのだ。要はアメリカが軍事力をアピールするために、広島、長崎の市民の命を奪ったということである。

アメリカの変化
 実のところ、長年、原爆投下を正当化してきたアメリカ国内においても世論は変化しつつある。その一つのきっかけは、ABCテレビが1995年に放送した「ヒロシマ・なぜ原爆は投下されたのか」という番組だ。この番組では「原爆投下か本土上陸作戦しか選択肢はなかったというのは歴史的事実ではない。他に皇室維持条項つきの降服勧告(のちにこの条項が削除されてポツダム宣言となる)を出すなどの選択肢もあった。従って、原爆投下という選択はしっかりとした根拠に基づいて決断されたものとはいえない」という結論を示している。

 これは「原爆投下によってアメリカ軍兵士は救われた」というアメリカ国内の「常識」に真っ向から挑む内容だ。この「常識」に挑むことは、スポンサー企業への大規模な不買運動を覚悟しなければならないため、一種のタブーだった。 

 民間放送であるABCは、それでもなお事実を追求し、自国の不名誉にもなる番組を放送した。そして驚くべきことに、放送界でもっとも権威あるピーボディ賞を受けている。こうした番組の功績もあり、「原爆投下は正当だった」と答えるアメリカ人は、かつては8割以上いたが、最近は5割強にまで落ちている。

 当のアメリカですら、フェアに多角的に事実を見つめようとしているのに、日本の公共放送が「原爆投下は正当だった」という歴史観を前提にした番組を作り続けている。事実を知らないのならば怠慢であるし、知ってのことならば何に忖度をしているのか、と言いたくなるところだ。そして、これが「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」(放送法第4条)を怠っているのは明らかではないだろうか。

デイリー新潮編集部 
あわせて読みたい関連本
1
『原爆投下』
NHKスペシャル取材班 著/松木 秀文 著/夜久 恭裕 著

ネット書店で購入する

2
『日本原爆開発秘録』
保阪 正康 著

https://www.dailyshincho.jp/article/2018/10220731/?all=1&page=2

 
【第13回】 2018年10月25日 週刊ダイヤモンド編集部
朝日の実売はついに400万部割れ?決算書で分かる新聞「財務格差」

テクノロジーの進化でさらなる激変期に突入したメディア業界。これから数年で業界の序列は大きく変わるでしょう。勝ち残るのはどこなのか。連載を通じてメディアの近未来を模索していきます。第13回は『週刊ダイヤモンド』10月27日号の特集「メディアの新序列」のスピンオフとして、凋落が続く新聞業界の実情に迫りました。大手新聞社の現役およびOB役員から成る有志集団「プロジェクトP」の協力を得て、最新の実売部数を試算したところ衝撃の数字が出てきました。(週刊ダイヤモンド副編集長兼ダイヤモンド・オンライン副編集長 山口圭介)

 今年9月、米老舗ニュース雑誌の「タイム」が1.9億ドル(約210億円)で買収された。金の出し手は顧客情報管理で最大手の米セールスフォース・ドットコムの創業者兼CEOのマーク・ベニオフ夫妻。超の付く富裕層だ。超富裕層によるメディア買収といえば、米紙「ワシントン・ポスト」を買った米アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が有名だが、それ以外にも複数いる。
拡大する
 例えば、米老舗評論誌「ジ・アトランティック」の経営権を握ったのは、米アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏から遺産を相続したローリーン夫人だ。
 超富裕層によるメディア買収が増加する背景には、当然、メディアを取り巻く厳しい状況がある。米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究チームの調査によると、2004年から16年までの間に、米国の新聞社の3分の1以上で所有者が変わったという。

「タイム」「ワシントン・ポスト」「ロサンゼルス・タイムズ」など多くの米メディアが買収

 インターネットの台頭で広告収入が激減し、経営に行き詰まったメディアが次々と投資ファンドなどに安く買いたたかれていったのだ。新聞など伝統的なメディアはジャーナリズムにはこだわるものの、マネタイズは不得手で経営の効率化も不十分なケースが少なくない。
 テクノロジーの導入によって劇的に経営が改善する可能性を秘めている点で、テック企業創業者に買われるケースは幸せかもしれない。実際、ワシントン・ポストは自社開発のAI(人工知能)で記事の自動執筆を進めるなど、大きな成果が出ている。

最新の推定実売部数を試算

 翻って日本の伝統メディアはどうか。決算数字から見ていこう。
 下図は、朝日新聞社、読売新聞グループ(基幹6社の合計)、毎日新聞グループホールディングス、産経新聞社の連結売上高と営業利益の推移を示したグラフだ(日本経済新聞社については後述するが、この4社とは事情が異なるため除外した)。4社の売上高は6年で15.8%減少、金額にすると2000億円超も減った計算だ。
拡大する
 加速する部数の減少が新聞社の経営を直撃している。02年下期に1000万部を超えていた読売の部数は851万部まで減り、朝日に至っては600万部を割り込み、02年下期から230万部も急減している。
 日本の新聞社の場合、さらに大きな問題がのしかかってくる。「押し紙」だ。押し紙とは、部数をかさ上げして広告単価を引き上げたい新聞社が販売店に押し付ける「在庫」のことで、配達されることのない部数を指す。
 大手新聞社の現役およびOB役員から成る有志集団「プロジェクトP」は自らの経験や販売店への取材に基づき、朝夕刊セット部数は部数のかさ増しがほとんどない一方、朝刊単独で売られている部数には4割から5割の押し紙が含まれていると結論付けた。
 プロジェクトPが策定した計算式を基に、本誌で全国紙の最新の推定実売部数を算出したところ、下図の通り衝撃的な結果となった。朝日の実売部数は400万部割れ、産経は100万部割れの可能性があるというのだ。
拡大する
 このままのペースで部数の減少が続けば、ビリオネアのIT創業者が全国紙のオーナーになる日も遠くないだろう。

現役役員が描く3つの再編案

 最も厳しいのが産経だ。朝日の自己資本比率が59.8%、利益剰余金が3198億円に達するのに対し、産経のそれは20.0%、132億円にすぎない。保有していた資産の切り売りでしのいできたが、それも尽きた。
 プロジェクトPのメンバーの一人は「産経か同じく財務が厳しい毎日が再編の引き金を引く可能性が極めて高い」と予測する。プロジェクトPは業界再編の在り方も提案している。具体的には以下の3案だ。
(1)産経と毎日が「MSグループホールディングス」を結成(他紙の再編受け皿としても機能)
(2)共同通信加盟社を束ねた持ち株会社の設立(中心はオーナー家が社長になった中日新聞社)
(3)読売以外の全国紙が地方取材の新組織を立ち上げ(取材効率の向上と地方紙の対抗軸をつくる)
 あくまでも提案であり、具体的に動いているわけではないが、いずれにしても全国紙の「財務格差」を見る限り、全国紙5社体制は間もなく終わりを告げるだろう。

https://diamond.jp/articles/-/183343


http://www.asyura2.com/18/senkyo252/msg/712.html

[戦争b22] INF条約破棄が非核三原則見直しを日本に迫る?  核廃棄条約破棄はプーチン政権の痛手に 核軍拡競争で米国に対抗できず
INF条約破棄が非核三原則見直しを日本に迫る?


インタビュー
冷戦期の最前線に置かれたドイツとの相似

2018年10月26日(金)
森 永輔

ドナルド・トランプ米大統領が10月20日、INF(中距離核戦力)廃棄条約を破棄する意向を明らかにした。米国と旧ソ連が1987年に調印した、初めての核軍縮条約だ。しかし、核戦略に詳しい川上高司・拓殖大学教授は「米国の真の狙いは中国への対抗にある」と見る。その先には、日本が、非核三原則の見直しを迫られる可能性が浮上する。

(聞き手 森 永輔)


トランプ大統領は、先人が築いた平和の礎を破棄する意向を表明した。写真左はソ連トップのゴルバチョフ氏、右は米大統領のレーガン氏(写真:AP/アフロ)
トランプ大統領が、米国がロシアと交わしているINF(中距離核戦力)廃棄条約を廃棄する意向を示しました。狙いはどこにあるのでしょうか。


川上 高司(かわかみ・たかし)氏
拓殖大学教授
1955年熊本県生まれ。大阪大学博士(国際公共政策)。フレッチャースクール外交政策研究所研究員、世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授などを経て現職。この間、ジョージタウン大学大学院留学。(写真:大槻純一)
川上:この条約は、米国とロシアがともに、核弾頭の搭載が可能な射程500〜5500km(中距離)の陸上配備型弾道ミサイルおよび同巡航ミサイルを開発、発射実験、生産、保有しないと約束したものです。しかし、米国の真の狙いは中国との軍事バランスを米国優位で保つことにあるとみています。

 中国は、米軍が中国沿岸に近づくのを阻止すべくA2AD*と呼ぶ戦略を推進しています。これは1996年の台湾海峡危機で得た教訓から導かれた戦略。台湾総統選挙に中国がミサイル演習で介入した際、米国は空母2隻を派遣し、これを抑え込みました。

*:Anti-Access, Area Denial(接近阻止・領域拒否)の略。中国にとって「聖域」である第2列島線内の海域に空母を中心とする米軍をアクセスさせないようにする戦略。これを実現すべく、弾道ミサイルや巡航ミサイル、潜水艦、爆撃機の能力を向上させている。第1列島線は東シナ海から台湾を経て南シナ海にかかるライン。第2列島線は、伊豆諸島からグアムを経てパプアニューギニアに至るラインを指す。
 A2ADの一環として中国は、弾道ミサイルを東シナ海や南シナ海に向けて1400〜1800発配備しています。このため、米軍の空母が東シナ海で活動しづらくなる可能性が高まっているのです。

 米国は、中国が配備するこれらのミサイル群とのバランスを保つため、中距離の核戦力を東アジアに展開したい。しかしINF廃棄条約があるため、これがかないませんでした。

「ツキディデスの罠」が現実化
なぜこのタイミングなのでしょう。

川上:中国の経済成長は著しく、そのGDP(国内総生産)は遠からず米国を追い抜くと予想されています。それが軍事費にも反映される。今を逃したら、米国の軍事的優位性が維持できなくなると考えたのだと思います。

 トランプ政権においてこの2〜3カ月の間に対中強硬派が発言力を増しています。マイク・ペンス副大統領が10月8日に講演し、「中国が(世界中で)政治・経済・軍事的な手段を総動員して影響力を拡大しようとしている」と発言したのはその象徴です。軍事に関しては「(編集注:中国は)海洋や宇宙などで米軍の優位性を揺るがすための軍事力増強を最優先している」と主張しました。

 かつて中国の専門家が「ペンスが大統領になるよりトランプの方がまし」と語っていたのを思い出します。

 国家安全保障問題担当の大統領補佐官を務めるジョン・ボルトン氏も対中強硬派の一人です。今年3月、H.R.マクマスター氏に代わって就任しました。

 オバマ政権の末期に国防総省が応用科学研究所に委託して、金融市場を舞台にした“戦争”のシミュレーションを行いました。現在進行中の対中貿易戦争はこれを実行に移したものとみられます。米国は新たな覇権国を目指す中国を、経済・金融を総動員して抑え込む考え。そして、当然、軍事力でも抑え込む意向です。INF廃棄条約の破棄はその一環だと考えられます。“ハイブリッド型”の戦争が米中間で始まったと見るべきでしょう。

「ツキディデスの罠」がまさに進行しているのですね。古代ギリシャの歴史家ツキディデスがペロポネソス戦争を描く中で、新興国が台頭し強力になると、既存の覇権国の不安が増し、戦争が起こる、と記しました。

川上:おっしゃるとおりです。

 タイミングについては、中間選挙が近づき、トランプ大統領がロシアに対して強硬な姿勢を示したかったという事情もあるでしょう。ロシアゲート疑惑の捜査が依然として続いています。

ロシアの方がINF廃棄条約の順守に消極的だった
米国は、ロシアが同条約に違反していることを破棄の理由に挙げています。違反は何を指すのですか。

川上:ロシアが地上発射型巡航ミサイル「SSC8」を実戦配備したことです。米国は2014年7月に、これの実験がINF廃棄条約違反であると指摘。2017年3月にはトランプ政権が実戦配備を公式に批判しました。これが欧米にとって脅威になっているのです。

ロシアが核兵器に依存する傾向が前から目につきます。ロシアが2014年にクリミアに侵攻した際、欧米諸国による制裁強化に対抗する手段として短距離核ミサイルを配備する強硬論がロシア内で浮上しました。この時、イワノフ大統領府長官(当時)らはINF廃棄条約から離脱し、中距離核戦力を強化するよう主張した。

川上:さらにさかのぼって2007年、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が米ロの2+2(外務防衛閣僚会議)の場で、INF廃棄条約から脱退する可能性を示したことがあります。中距離ミサイルを保有する国が米ロ以外に拡大したことが理由でした。中国、エジプト、インド、イラン、イスラエル、北朝鮮、韓国、パキスタン、サウジアラビア、シリア、イエメン――。米ロだけが条約を守ってもしかたがない環境が訪れたという認識です。

 こうした経緯を経て、ロシアはSSC8の配備に取り組みました。

振り返ると、ロシアの方がINF廃棄条約の遵守に消極的だったのですね。中距離核戦力への依存度を高めてきた。

川上:ロシアにはロシアの事情があったと思います。冷戦終了後、EU(欧州連合)やNATO(北大西洋条約機構)が旧東欧諸国やバルト3国にまで勢力を拡大。ロシアは、かつて優勢を維持していた通常兵器による兵力も劣勢に陥った。西側のようにミサイル防衛システムを開発しようにも予算と技術が足りない。中距離核戦力で補うしかなかったのです。さらにロシアが配備したINFは米本土には直接届かないものであるという、いわゆるグレーゾーンにあるとの認識もあったのでしょう。

日本にも中距離核戦力を配備?
今後の展開をどう読みますか。

川上:核兵器の軍拡競争が始まる公算が大です。米国は欧州にSSC8に対抗する地上配備型の中距離核戦力を配備するでしょう。これはNATO諸国を米側につなぎとめる効果を持ちます。

 トランプ大統領はINF廃棄条約の破棄に言及しただけで、ロシアに通告したわけではありません。まだ脅しの段階です。したがって、ロシアがSSC8の配備を取りやめる可能性も残ります。でも、その可能性は決して大きくはないでしょう。

 ロシアは西側が配備を進めるミサイル防衛システムを強く懸念しており、これに対抗する手段を確保しておきたい。日本も導入を決めたイージス・アショアについて「(その気になれば)核弾頭を積んだトマホークを装備できるのでINF廃棄条約違反」と主張しています。

 米国は、在日米軍基地にも中距離核を配備できるよう日本に求める可能性が浮上するでしょう。先ほど申し上げたように、中国のA2ADに対抗するためです。中国が配備する中距離弾道ミサイルは、日本国内にある米軍基地のほとんどを射程に収めています。もし、これらを発射したら米国は核兵器で報復する、と示すことで抑止が可能になります。

トランプ政権は2月に「核態勢の見直し(NPR)」を発表して、オバマ時代の核戦略を転換。「通常兵器による攻撃や大規模なサイバー攻撃を受けた場合の報復にも核使用を排除しない」としました。この新方針を実行に移すことになるわけですね。

川上:はい、そうなります。トランプ政権がこのような軍拡競争に向かうのは、かつてのネオコンが政権内で力を増していることが原因かもしれません。ネオコンは米国の防衛産業と密接な関係を築いています。ボルトン大統領補佐官はネオコンの一人です。イラク戦争の時には、米国内の世論工作に従事しました。

 ネオコンが発言力を増し軍備増強の方向に進むと、米国の軍事産業の雇用が拡大します。この意味では、トランプ大統領の政策は一貫性があるのかもしれません。

 ただし、中国はイラクやアフガニスタンとは比べ物にならないほど強大な国です。米国のネオコン勢力が中国を敵視し、防衛産業の利益を図る動きを強めるとしたら、日本がどこまでそれに付き合うかは難しい問題です。

北朝鮮による日米離間を阻止する
 この提案は、日本にとっては望ましい面もあります。北朝鮮による日米離間策を排除できるからです。核を巡る交渉を進める中で米国は、北朝鮮によるICBM(大陸間弾道ミサイル)保有を許すことはないものの、核兵器の事実上の保有を認めてしまう可能性があります。米本土に核の脅威が及ばないからです。

 この時、北朝鮮に中距離弾道ミサイルが残れば、日本に対する核の脅威はなくなりません。これは日本にとって最悪のシナリオです。特に、米国が北朝鮮と、北の核廃棄を曖昧にしたまま和解した場合、米国による核抑止が日本に効かなくなるというデカップリングが起こる可能性があります。

 ただし、米国が、北朝鮮を射程に収める中距離核戦力を日本に配備すれば、北朝鮮による日本への核攻撃を抑止することができます。

 もちろん、これは非核三原則の第3の原則「持ち込ませない」の見直しを伴います。国民の理解を得るのは容易ではないでしょう。

現在も、核兵器を搭載する米国の潜水艦が日本への核の傘を提供しているといわれています。

川上:米国はどこに核兵器を配備しているかに言及しない方針です。核搭載潜水艦は西太平洋にいるかもしれませんが、いないかもしれません。これに対して、日本の陸上に配備すれば、北朝鮮や中国に対して抑止力を明示的に示すことができます。

米国が日本を含む東アジアに中距離核戦力を配備すると、北朝鮮に核の廃棄を求めづらくなるのではありませんか。

川上:期待するのは、米国と北朝鮮に、中国とロシアを加えた4カ国で核兵器の軍備管理と軍縮が進むことです。

 軍備管理には軍備を減らすことだけでなく、増やすことも含みます。米国が日本に中距離核戦力を配備することで、まず、東アジアにおける中距離核戦力レベルでの北朝鮮の核と米国の核のバランスをイーブンにすることができます。現在は北朝鮮に有利な状態にある。イーブンにしたうえで、核軍縮を進めるのです。その時には、ロシアと中国も呼んで4カ国で進める。

 バラク・オバマ大統領(当時)が「核なき世界」を提唱していた時、実は、こうした経過で進める核軍縮を狙っていたのだと思います。オバマ政権下でも、使用不可になった核弾頭を整備して使用可能にする措置を進めていましたから。

冷戦の最前線に置かれたドイツとこれからの日本の類似点
お話を伺っていると、これから日本が直面するかもしれない状況が、80年代のドイツとかぶります。

 ソ連は西欧を射程に収める中距離核ミサイル「SS20」を配備。これは西欧諸国の脅威となるものの米本土には届かない。ソ連による欧米離間を懸念する西欧諸国は、中距離核戦力を欧州に配備するよう米国に働きかけました。米国はこれに応えて巡航ミサイル「パーシングII」を配備した。この措置が抑止力となり、INF廃棄条約の締結とその後の冷戦終結につながりました。

川上:まさにそうですね。

 ただし、東アジアで日本が受ける脅威は、それ以上に広範です。中国と北朝鮮が核兵器を保有。加えて、ロシアがSSC8を極東地域に配備する可能性も出てくるでしょう。

 かつて、INF廃棄条約の調印と前後して、ソ連が極東にSS20を配備する計画が持ち上がりました。これを恐れた中曽根康弘首相(当時)がロナルド・レーガン大統領(同)を説得。レーガン大統領がソ連と交渉し、この動きを抑えたことがありました。今回も、そうした説得や交渉が可能になる保証はありません。

INF廃棄条約が破棄され、ロシアがSSC8を極東に配備すると日本は、冷戦期に欧州の最前線を担ったドイツと同じ思いをすることになります。

川上:そうですね。

 当時のドイツはこの脅威に対抗すべく、米国と核シェアリングする道を選びました。日本にもその選択肢がなくはありません(参考記事「米安保戦略を読む、実は中ロと宥和するサイン」)。

長期的視点に立つと、中国が強大となり、米国との間で「ツキディデスの罠」が起こりうる状況に至った。短期的には、トランプ氏が大統領となり、ネオコンに連なる人々を周囲に配した。これらが重なって今の状況が生まれた。そして、日本には非核三原則の見直しを迫られる可能性が生じるわけですね。

川上:おっしゃるとおりです。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/230078/102500167/?ST=print


 

核廃棄条約破棄はプーチン政権の痛手に

核軍拡競争で米国に対抗できず

解析ロシア
2018年10月26日(金)
池田 元博

 米国のトランプ大統領がロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄する意向を示した。ロシアによる条約違反がその理由という。実際に条約が破棄されるようならロシアも大手を振って開発・配備に取り組めるわけだが、プーチン政権は内心では穏やかではないようだ。


1987年12月に中距離核戦力(INF)廃棄条約に調印したソ連のゴルバチョフ書記長(当時)とレーガン米大統領(当時)(写真:AP/アフロ)
 トランプ米大統領によるINF廃棄条約破棄の表明を最も嘆いているのは、この人かもしれない。

 「軍拡競争に終止符を打ち、核兵器の廃棄を始めたことは極めて重要な決定であり、我々の偉大な勝利となった」――。ゴルバチョフ元ソ連大統領はロシアの通信社を通じてさっそくコメントを出し、「条約の破棄は決して認めてはならない」とクギをさした。

 INF廃棄条約はソ連時代の1987年に米ソが締結し、翌1988年に発効した。条約に調印したのは米国のレーガン大統領と、当のソ連のゴルバチョフ書記長(いずれも当時)だった。

 それに先立つ1970〜1980年代は、東西冷戦のまっただ中。米ソは激しい核軍拡競争を続けていた。とくにソ連は北大西洋条約機構(NATO)への対抗策として、核弾頭を搭載する短・中距離弾道ミサイル「SS-20」(ピオネール)、「SS-23」(オカ)を配備。一方の米国も「パーシング2」ミサイルを西独など西欧各地に配備して対抗し、欧州を舞台に米ソの対立が先鋭化していた。

 
 こうした軍事的な緊張を緩和すべく、米ソはレーガン政権の発足直後からINF削減交渉に着手するが、話し合いは難航した。ようやく局面が変わったのはゴルバチョフ氏がソ連共産党書記長に就任(1985年)してからだ。

 両首脳は1986年のアイスランドのレイキャビクでの会談で突っ込んで討議した。この会談は決裂に終わったものの、ゴルバチョフ氏の初めての米国訪問となった1987年12月、ワシントンで開いた首脳会談でINF廃棄条約の調印にこぎ着けた。

 「歴史の教科書に残るようにしましょう」と調印時にゴルバチョフ氏が述べたように、条約は極めて画期的だった。双方が射程500〜5500kmの核弾頭搭載可能な短・中距離の地上配備の弾道、巡航ミサイルを発効から3年以内に全廃すると規定。欧州の緊張緩和と東西冷戦の終結、さらには米ソの核軍縮に向けた大きな一歩となった。

 
 ちなみに米ソは1991年6月までに条約義務を履行し、「SS-20」や「SS-23」、「パーシング2」は廃棄された。破壊された兵器システムは米国が846基、ソ連が1846基に上ったという。

中間選挙前に支持層へアピール
 トランプ大統領は今回、条約調印から30年以上が経ったとはいえ、核軍備管理の要石ともいえる歴史的な条約にクレームをつけたわけだ。大統領は「我々は条約を守っているのに、ロシアは違う」と指摘。ロシアや中国が核弾頭搭載可能な中距離ミサイルの開発をやめない限り、「我々も作らざるを得ない」と述べ、対抗して中距離核戦力の開発・増強に動く構えも示した。

 米大統領のこのタイミングでの強硬発言は、11月6日に迫った米中間選挙をにらんだとの見方が根強い。また、米ロ間に限定されるINF廃棄条約の枠外で、着々と中距離核戦力を開発し配備する中国をけん制するのが真の狙いではないかとの見方も出ている。

 現に米国のボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)はロシアのコメルサント紙とのインタビューで、ロシアが条約違反したと非難するとともに、「(INF廃棄条約に加わっていない)中国やイラン、北朝鮮が条約に違反する方法によって軍事的な潜在力を高めている」と言明。世界で米国だけが条約を順守しているという状況は「受け入れられない」と述べている。

 とくに中国に関して、ボルトン補佐官は「現在では中国の保有するすべての弾道ミサイルのうち、3分の1から半分はINF廃棄条約に抵触している」と分析した。従って15年ほど前であれば、米ロの2国間条約を中国なども加えた多国間の条約に衣替えすることも可能だったかもしれないが、今や中国の政権が「半分以上の自国の弾道ミサイルを廃棄するというのは全くもって非現実的だ」と強調した。

  
 中国が条約に抵触する核兵器を廃棄するのは非現実的なうえ、条約に加わっている肝心のロシアも“条約破り”によって開発・配備した兵器を廃棄する可能性が「ゼロ」である以上、トランプ大統領が条約破棄の意向を撤回することはほとんどない、というのがボルトン補佐官の見立てだ。

 
 トランプ大統領はこれまでも度々、とっぴな言動で世界を騒がせてきた。今回もトランプ流の唐突な発言で世界の核軍縮の流れを逆行させたと受け止められがちだが、INF廃棄条約を巡るロシアへの不満は、オバマ前政権時代から米国内に根強くあった。

 とくに米政府やNATO幹部はかねて、ロシアが開発し欧州向けに実戦配備した新型の地上発射型巡航ミサイル「9M729」(SSC-8)がINF廃棄条約に違反するとして厳しく非難してきた。

 トランプ政権下でも「射程が500kmを超える9M729は条約違反」として、ロシアへの警告を続けてきた。米国務省は2017年12月にはINF廃棄条約調印から30年の節目に合わせた声明を発表。「ロシアの条約違反」を改めて非難するとともに、今後のロシアの対応次第では米国も対抗措置として、地上発射型の中距離弾道ミサイルの研究開発に乗り出す考えを示していた。

 対するロシアは「条約違反ではない」とことあるごとに反論してきた。ただし、明確な証拠は示していない。他方でロシアは、米国が欧州で進めるミサイル防衛(MD)計画の一環として、2016年にルーマニア南部で運用を始めた地上配備型の迎撃ミサイル発射基地などをやり玉に挙げる。「迎撃ミサイルの代わりに短・中距離の弾道、巡航ミサイルを簡単に装備できる」(プーチン大統領)として、INF廃棄条約に違反しているのは米国のほうだと非難してきたのだ。

軍拡競争に身構えるプーチン大統領

 米国にはかつてブッシュ政権下の2001年末、米ソが1972年に締結した弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの離脱を一方的に宣言した“前科”もある。米国は弾道ミサイルの迎撃を目的としたミサイルシステムの開発を厳しく制限した同条約がMD計画の障害になると主張。条約は2002年に失効した。

 プーチン大統領はこのため、米国がロシアのINF廃棄条約違反を提起するのは「いずれ自らが一方的な条約廃棄を表明するための情報・宣伝工作だ」などと非難。ロシアは米国と違って「国際安全保障の要である主要な軍縮条約から脱退することはない」と断言していた。

 
 INF廃棄条約を巡っては、プーチン大統領が過去の“秘話”を明かしたことがある。2017年10月、内外の有識者らを集めてソチで開かれた国際会議「バルダイ・クラブ」の討議に登壇した時のことだ。

 ソ連が条約に従って短・中距離ミサイルの廃棄を進めていた当時、ミサイル開発の設計責任者が「これは祖国に対する裏切りだ」として、抗議の自殺をしてしまったというのだ。大統領はこれを「歴史の悲劇」と称した。

 その上でプーチン大統領は、米国がINF廃棄条約からの脱退を求めるようなら「ロシアは瞬時に、かつ鏡のように(同様の措置で)対抗する」と警告していた。今回、トランプ氏が条約破棄の意向を示したことで、それがいよいよ現実のものとなりつつあるわけだ。

 仮にINF廃棄条約が失効すれば、ロシアも「9M729」の配備問題などで欧米の批判を浴びることもなくなり、新型の兵器開発もしやすくなる。核弾頭搭載可能な短・中距離弾道ミサイルは欧米のみならず、軍事力を急拡大する中国に対する安全保障の面でも有効となる。このため条約が失効したほうがロシアにとって有利になるとの見方もある。

 ただし、米国との新たな軍拡競争の予兆に危機感を募らせているのがプーチン政権の本音ではないだろうか。

 仮にINF廃棄条約が失効するようだと、米ロが2010年に調印した新戦略兵器削減条約(新START)にも負の影響を与えかねないからだ。両国が配備する戦略核弾頭数を大幅に制限した同条約は2021年に有効期限が切れる。ロシアは5年間の効力延長を主張するが、かねて「悪い合意」と批判的なトランプ大統領が新STARTの延長に応じず、失効する恐れがある。そうなれば米ロの核管理体制はほぼ野放しの状態になってしまう。

https://cdn-business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/040400028/102400064/p2.jpg

 
 米ロは世界の核弾頭の9割以上を保有する。ロシアは核戦力では米国に比肩するとはいえ、経済規模は米国の10分の1にも満たない。ただでさえ既存の核兵器の維持・管理に膨大な予算がかかるのに、冷戦期のように核開発競争が再燃すれば、今のロシアの国力ではとても太刀打ちできない。米ロは11月にパリで首脳会談を開く見通しとなったが、自らの政権の最終章を迎えているプーチン大統領にとって、米国との核軍備管理をめぐる駆け引きは極めて頭の痛い懸案になりそうだ。


このコラムについて
解析ロシア
世界で今、もっとも影響力のある政治家は誰か。米フォーブス誌の評価もさることながら、真っ先に浮かぶのはやはりプーチン大統領だろう。2000年に大統領に就任して以降、「プーチンのロシア」は大きな存在感を内外に示している。だが、その権威主義的な体制ゆえに、ロシアの実態は逆に見えにくくなったとの指摘もある。日本経済新聞の編集委員がロシアにまつわる様々な出来事を大胆に深読みし、解析していく。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/040400028/102400064/
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/383.html

[政治・選挙・NHK252] 入管法改正「なし崩し移民」の期待と不安 外国人「定住政策」の整備急げ 「空気を読まない若者」が日本を変える日が来る 
入管法改正「なし崩し移民」の期待と不安

外国人「定住政策」の整備急げ

働き方の未来
2018年10月26日(金)
磯山 友幸


農業分野で働く外国人は「単純労働」それとも「特定技能」?(写真:PIXTA)
2つの在留資格を新設する
 2018年の臨時国会が10月24日開幕した。政府が最重要法案と位置付けるのは入国管理法改正案。新たな在留資格を作って外国人労働者の受け入れを拡大するのが狙いで、今国会中の成立を目指す。

 改正案には2つの在留資格の新設を盛り込む。「特定技能1号」という在留資格は、一定の知識・経験を要する業務に就く人材を対象に、日本語試験や簡単な技能試験に合格した外国人に、最長5年の在留を認める。もう1つの「特定技能2号」という在留資格は、熟練した技能が必要な業務に就く人材と認められた外国人に認め、在留期間の更新を可能にするというもの。後者については家族の帯同も認める。今国会で成立すれば、2019年4月から導入したい考えだ。

 安倍晋三首相は「いわゆる移民政策は採らない」と繰り返し表明しているが、今回導入される新資格はこれまでの方針を180度転換するものになると見られている。これまで日本は、いわゆる単純労働に当たると見られる業種については外国人の就労を認めてこなかった。

 技能実習生などの「便法」によって事実上、単純労働力を受け入れてきたが、実習生が失踪してより割の良い業種で不法就労するなど、問題が顕在化している。一方で、人手不足は一段と深刻化しており、外国人労働者「解禁」を求める声も強い。そんな中で、政府が打ち出したのが在留資格の新設だ。

 2018年6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」、いわゆる「骨太の方針」では「新たな外国人材の受け入れ」として以下のような文章が書きこまれた。

 「従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築する必要がある」

 「このため、真に必要な分野に着目し、移民政策とは異なるものとして、外国人材の受入れを拡大するため、新たな在留資格を創設する」

 「また、外国人留学生の国内での就職を更に円滑化するなど、従来の専門的・技術的分野における外国人材受入れの取組を更に進めるほか、外国人が円滑に共生できるような社会の実現に向けて取り組む」

 当時の報道では、政府が検討している「真に必要な分野」は、「建設」、「造船」、「介護」、「農業」、「宿泊」の5分野とされていた。それでも、これまで単純労働とされてきた「農業」や「宿泊」が「特定技能」として認められるとなれば、政策の大転換である。

人手不足はこれからが「本番」
 ところが、その後、5分野以外の業界団体などから「うちも加えて欲しい」という強い希望が寄せられた。人手不足にあえいでいるのは5分野に限らない。臨時国会を前に報道されたところでは、「建設業」、「造船・舶用工業」、「介護」、「農業」、「宿泊業」の5分野に加え、「ビルクリーニング」、「素形材産業」、「産業機械製造」、「電気・電子機器関連産業」、「自動車整備業」、「航空業」「漁業」、「飲食料品製造業」、「外食業」の9分野が加わっている。

 コンビニエンスストアなど、今でも外国人留学生アルバイトを大量に雇用している業界からも希望は出されているが、小売りにまで対象を広げれば、ほぼ全業種に広がってしまう。外国人労働者に「単純労働」を全面解禁することになるわけだ。

 政府が外国人労働者の全面解禁に事実上踏み切る背景には、言うまでもなく深刻な人手不足がある。これまで高齢者や女性の就業率の上昇が続いてきたにもかかわらず、有効求人倍率は高度経済成長期並みの高水準が続いている。

 だが、働く人の数の増加はいつまでも続くわけではない。人口減少が本格的に始まっており、若年層の働き手は減少している。安倍首相の「1億総活躍」や「女性活躍推進」によって、65歳以上の就業者は今や800万人に達し、15歳から64歳の女性の就業率も初めて70%に乗せた。

 しかし、人口の大きな塊である「団塊の世代」は2022年に後期高齢者(75歳)に達し、嘱託などとして働いていた職場からの「引退」が本格化し始めるとみられる。そうなると65歳以上の就業者数の増加はそろそろ見込めなくなってくる。つまり、人手不足はこれから「本番」を迎えるわけだ。

 移民政策は採らない、と言いながらも、事実上の移民受け入れに転換したのは、そんな差し迫った理由からだ。

 もっとも、安倍首相が「いわゆる移民政策は採らない」と言い続けていることで、将来に禍根を残す懸念が生じている。移民政策は採らないということは、受け入れる外国人労働者は「いずれ本国に帰ってもらう」ことが前提ということになる。将来にわたって日本に定住し、社会を支える役割を担ってもらうという発想を「封印」しているのだ。

 これは1950年代から60年代にかけてドイツがトルコなどから大量の労働者を受け入れた「ガストアルバイター」、お客さん労働者を彷彿とさせる。彼らは本国には帰らず定住していったが、ドイツ社会の底辺を形成し、様々な社会問題を起こした。「移民問題」と言った時に日本人が想像する問題は、そんな半世紀前のドイツの受け入れ政策に原因があった。

 2000年代になってようやくドイツは自らを「移民国家」であると定義しなおし、外国人の権利保護と同時に「ドイツ市民」となるためのドイツ語教育や生活ルールや法律などを教える公民教育を義務付け、実施するようになった。

外国人摘発に焦点を当てたテレビ番組が相次ぐ
 日本政府も方針転換に当たって、そうした外国人の定住を前提にした受け入れ策を整備するはずだった。入国管理局を格上げして「入国在留管理庁」を来年4月にも発足させる計画だが、「在留」という言葉を加えて「入国管理」の水際規制だけでなく、在留中の外国人のサポートを行う官庁への脱皮を見込んでいる。

 ところが、旧来の法務省の入国管理行政は、水際で問題外国人を「排除」することや、不法滞在している外国人を「検挙・送還」することにウエートが置かれてきた。外国人を「生活者として受け入れる」という視点が欠落しているのだ。

 9月から10月にかけてテレビの民放各局で、こうした入国管理局の外国人摘発に焦点を当てた番組が立て続けに流れた。入国してくる外国人は問題外国人ばかりだという誤った印象操作になりかねないとして、批判の声が挙がっている。あまりにも各局立て続けだったことから、入国管理局側が広報として売り込んだのではないかという疑惑まで生じた。これまでの法務省入国管理局に、外国人の日本での生活を支えようという視点がほぼない事を如実に物語っている。局が庁に格上げになったとして、外国人の定住促進に向けたドイツ型の政策が採られるかどうか現状では危うい。これもひとえに、安倍首相が移民ではないという建前に固執していることが根本原因と言える。

 いずれにせよ、法律が通れば、これまで単純労働とみなされてきた職業分野にも外国人労働者が大量に入ってくることになる。実質的な移民受け入れへの政策転換には、自民党内からも異論が多い。単純労働に外国人が入ってくることで「若者の仕事が奪われる」と目くじらを立てる議員もいるが、これは的外れだろう。高齢者の就業が増えたことで若者の仕事が奪われたかというと、そんな問題は起きていない。それほどに人手不足は深刻なのだ。

 だが、優秀な外国人が増えてくれば、それだけ日本人の若者に職業人としての高い能力が求められるようになるのは事実だろう。流ちょうな日本語を話し英語も上手な中国人留学生は数多い。彼らが高度人材として日本社会で本格的に活躍し始めれば、出来の悪い日本人学生は就職活動で負けることもあり得るわけだ。単純労働の世界よりも、高度人材の方がより競争は激しくなる。

 また、単純労働に近い分野でも、彼らを「安い労働力」とすだけならば、そのしっぺ返しが日本人に及ぶ。そうした分野の給料が上がらなければ、その余波は、そこで働く日本人にとっても他人事ではない。むしろ外国人労働者にも同一労働同一賃金を徹底し、最低賃金を企業に守らせることが重要になってくる。法律が通れば、来年4月を機に、日本の労働界は急速に変化し始めることだろう。


このコラムについて
働き方の未来
人口減少社会の中で、新しい働き方の模索が続いている。政官民の識者やジャーナリストが、2035年を見据えた「働き方改革」を提言する。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/021900010/102500079


「空気を読まない若者」が日本を変える日が来る
田原総一朗の政財界「ここだけの話」
相次ぐ企業の不正は空気を読みすぎる文化の弊害

2018年10月26日(金)
田原 総一朗


KYBが10月19日、免震・制振装置で検査データ改ざん 建物名を公表(写真:ロイター/アフロ)
 近年、企業の不正問題が相次いでいる。

 最近でも、油圧機器メーカーKYBと子会社による免震・制振装置の検査データが改ざんされていた問題が明るみに出た。耐震のための装置であるはずが、国の認定などに適合しない免震装置を出荷していたのである。

 国の基準、あるいは顧客との契約に適合しない疑いのある装置は、合計で987物件に上る。しかも、これらをすべて交換するとしても、2年以上の時間を要するという。非常に大きな問題である。

 不正を行う企業を振り返ると、東芝、三菱マテリアル、東レ、日産自動車、神戸製鋼など、枚挙に暇がない。なぜ、こんなに日本には不正が多いのか。

 中でも最も注目されたものは、2017年に発覚した東芝の決算問題である。これが悪質な問題であることは内部の社員、役員であればすぐに分かるだろう。にも関わらず、逮捕者が一人も出ていない。警察、検察にも大いに問題がある。

 全てが「馴れ合い」となっているのである。不正が次々に起こる原因の一つには、こういった背景もあると思う。

「ネガティブルール」が日本企業を停滞させた
 なぜ、企業は、こんなにも「馴れ合い」が生じ、次々に問題が起こるのか。伊藤忠商事元会長の丹羽宇一郎氏が、僕にこんなことを話してくれたことがある。

 丹羽氏が社長に就任した時、伊藤忠商事は1999年度決算において約4000億円の特別損失を計上し、大胆な経営革新を行ったのである。この時、丹羽氏は給料なし。会社の車は使わず、電車で通勤していたという。

 その丹羽氏に、僕は「なぜ日本企業は、こんなに不正を起こすのか」と尋ねた。すると、丹羽氏は「企業はポジティブルールで動いているから」と答えた。

 これはどういうことか。軍隊、自衛隊を見ればわかるという。例えば、英国やフランスの軍隊は、「ネガティブルール」を採用している。「やってはいけない」ということだけを定め、それさえ守れば自由に動くことが許されているのである。

 一方、日本の自衛隊は「ポジティブルール」で動いている。「やっていいこと」を定め、それ以外は絶対にやってはいけないのである。

 このスタイルが、自衛隊のみならず、日本企業にも言えることだと丹羽氏は指摘した。経営者からは「やっていいこと」だけを指示される。そこから外れることをやってしまうと、すぐに左遷させられてしまう。だからこそ、不正が相次ぐのだと僕は考えている。

 日本の製造業の強みは「高品質」だったはずである。品質の高さが世界で評価されてきたからこそ、成長し続けることができた。しかし、不正とはその信頼を損ねる行為である。日本の製造業にとって、不正は命取りであるはずだ。

 いつからこんな不正が起こり始めたのだろうか。きっかけは、1990年代のバブル経済の崩壊がやはり大きいのではないかと僕は考えている。

 バブルが弾けると、日本企業は総じて収益が大幅に悪化した。儲からなくなると、製品・商品の価格を下げざるを得なくなる。しかし、品質は下げることができない。ここに矛盾が生じる。価格を下げた上に、品質を向上させるのは、極めて難しい話である。そこで、企業が生き延びるためには、不正をやらざるを得なくなったのだろう。

「日本は、空気の国だ」
 問題は、それに対し、誰も「NO」と言えないことである。評論家の山本七平氏が、生前、僕にこんなことを話したことがある。「日本は、空気の国だ。日本で一番悪いのは、空気を破ることである。空気を破ってしまったら、生きていけない。だから、空気を読み、合わせることを強制されているのである」。僕もその通りだと思う。

 これは、企業だけではない。政界も同様である。自民党の議員たちも空気を破れず、安倍晋三首相に「NO」と言えない。

 森友・加計問題では、国民の70%以上が「政府の対応に問題がある」と捉えているにもかかわらず、自民党内からは反発の声がほとんど聞こえてこない。もちろん、問題があると分かっている議員はたくさんいるが、それを安倍首相に指摘できる者は誰もいないのである。

 なぜかといえば、安倍首相に反発すると、機嫌を損ね、自分自身の進退に影響するのを恐れているのである。

 まさに、企業も、政界も、空気を読みすぎて腐敗しているのである。

 一方で、空気を読まず、批判を恐れず、はっきり自分の主張をする若者も出てきている。研究者の落合陽一氏、社会学者の古市憲寿氏らがそうだ。年齢はやや上になるが、実業家の堀江貴文氏もそんな人物だ。

 僕は定期的にベンチャー企業の社長にインタビューしているが、おおむね共通する点として、彼らは一度大企業に入り、数年経って退職し、起業している。やはり、彼らは大企業に入り、「空気を破りたい」と感じて起業したのだろう。

 僕は、こういう若い世代に大いに期待をしている。

「何がしたいのか」を明確に持っている
 空気を破る彼らと、空気を読む大企業との違いは何だろうか。それは、彼らには「何がしたいのか」ということを明確に持っている点だ。話しているとすぐに分かるが、こうした若者は非常に前向きである。

 一方で、高齢者層や大企業はネガティブな思考を持つ傾向がある、と感じる。世の中の悪い部分に目を向け、先行きを悲観しているのである。これでは、日本に明るさを見出すことはできないだろう。

 僕も高齢者層に含まれるが、大企業特有のネガティブな思考は持ち合わせていない。前向きな若者世代の方が、シンパシーを感じるところがある。その理由はなぜかと言えば、これまでの経歴に救われたところがあると思う。

 大学在学中、ジャーナリストを志望していたから、僕はNHKや朝日新聞などのマスコミへの入社を希望していたが、軒並み落ちてしまった。ようやく11社目にして合格したのが、岩波映画製作所だったのである。

 もし、ここで大手マスコミに入社していたら、僕は定年まで勤め、空気を読む思考に染まっていたかもしれない。

 その後、東京12チャンネル(現テレビ東京)に入社した。開局したばかりのテレビ東京は、世間からの評価が低く、制作費も安かった。どこでどうするか。僕は、TBSやNHK、日本テレビにできない番組を作ろうと考えた。

 テレビ東京のポジションを逆手に取り、過激な題材を積極的に採用して、タブーを無視する番組を作り続けたのである。こういったチャレンジは、どのような状況下でも悲観せず、ポジティブに行動することにつながっていったと思う。

 今でも、僕が司会を務める「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日)には、タブーはない。どんな大物政治家に対しても、遠慮なく反論している。

変化しないと生き残れない
 空気を読まず、自分のやりたいことを夢中になってやる若者たちに対し、僕は大いに期待している。彼らは、変化を恐れない。それ以上に、変化をしていかなければ、この先は生きていけないと考えている。

 大企業も空気を破らねば未来はないと気付き始めている。

 例えば、パナソニックに復帰した、家電ベンチャー、セレボの前社長である岩佐琢磨氏。彼はかつてパナソニックを辞めた時のことを次のように振り返った。「私は0から1にするのが好きです。ところが大手メーカーは、0を1、1を10にする挑戦をほとんどしない。僕は、今は需要がなくとも、新たに作ったら面白いというものを0から開発し、1から10、100へと育てたい」と話した。こうして彼は、パナソニックを辞め、セレボを立ち上げたのである。

 ところが、パナソニックが「HomeX」プロジェクトを開始したことをきっかけに、岩佐氏は「パナソニックには、0から1を作るという発想をする人材がいない。どうか戻ってきて欲しい」と強く要請され、復帰に至った。一度辞めた人間を引き戻すほど、パナソニックは事業を積極的に改革をする必要があると考えている。それだけ将来に危機感を覚えているのである。

 そこでブレイクスルーの鍵になるのはやはり、空気を読まない若い世代である。僕は、彼らに大いに期待している。

『AIで私の仕事はなくなりますか?』(講談社+α新書) 田原 総一朗著

 84歳になったジャーナリスト・田原総一朗が、人工知能=AIに挑む。

 AIは社会をどう変えるのか/AIは日本人の雇用を奪い、「勝ち組」と「負け組」の格差を拡大させる悪魔の技術なのか/世界の企業はグーグルの下請けになるのか/日本の産業を「小作人」化の悪夢からどう救うか/銀行のビジネスモデルは崩壊寸前?/中国の「情報独占」の恐怖……などの疑問を、世界最先端の研究者たちに真正面から問う。

 グーグル=グレッグ・コラード、プリファード・ネットワークス=西川徹、トヨタ・リサーチ・インスティチュート=ジェームス・カフナー、東京大学=松尾豊、ドワンゴ人工知能研究所=山川宏、経済産業省=柳瀬唯夫ら世界を代表する面々が総登場する、驚異の一冊!


このコラムについて
田原総一朗の政財界「ここだけの話」
ジャーナリストの田原総一朗が、首相、政府高官、官僚、財界トップから取材した政財界の情報、裏話をお届けする。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/102500092

http://www.asyura2.com/18/senkyo252/msg/720.html

[国際24] 採り尽くし、経済破綻 “盛者必衰”ナウルの転落 ナウルに残された希望の道は台湾にあり 台湾の若者が「現状維持」を望むワケ
【世界の街から】
採り尽くし、経済破綻 “盛者必衰”ナウルの転落
共同通信 / 2018年10月10日 16時1分

写真写真を拡大する
リン鉱石を採掘した跡地を指さすジュリーさん=9月、ナウル(共同)

 オセアニアの地域協力機構「太平洋諸島フォーラム(PIF)」年次総会を取材するため、南太平洋の島国ナウルを訪れた。東京都港区ほどの21平方キロの国土に人口わずか約1万1千人。「世界で最も小さい島国」だ。

 かつて貴重な農業肥料となるリン鉱石を採掘、輸出することで莫大な富を得て、中東の産油国と比べられるほどの財政力を誇ったが、リン鉱石をほぼ採り尽くした今は落ちぶれ、経済も破綻―。

 そう聞いて「どんなところか見てみたい」と思っていたが、通常は取材ビザを申請するだけで8千豪ドル(約65万円)かかるため、訪問機会はないだろうとあきらめていた。それが今回は会議取材を理由に免除され「最初で最後」と乗り込んだ。

 総会の合間に地元非政府組織(NGO)に所属するジュリーさん(60)に島を案内してもらうと、中央部の台地にはリン鉱石を掘り尽くした無残な光景が広がっていた。

 「私たちは島の利益を食べ尽くしてしまった」とジュリーさん。「まだ採掘可能」とする政府の主張には懐疑的だという。荒れ地は岩場で農地に向かず、自給可能な作物もない。

 リン鉱石による収入が国民に還元されていた時代は税金は存在せず、医療費も教育費も無料だったというから驚く。ジュリーさんも返済不要の奨学金でオーストラリアに6年間留学したという。

 それが今は見る影もない。資源の枯渇だけでなく、海外投資にも失敗し、資産のほとんどを失ったとされる。めぼしい産業はなく、生活物資のほぼ全てを輸入に頼る。

 物乞いする人などは見掛けず、国民は助け合って暮らしている様子だったが「盛者必衰」という言葉が頭をかすめた。(共同通信=シドニー支局・板井和也)
https://news.infoseek.co.jp/article/kyodo_kd-newspack-2018100401001015/


 

 

[1]〜大前研一ニュースの視点〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

世界経済/英中央銀行/欧州環境規制/ナウル情勢〜英国ブレクジットから派生する金融問題は、世界的な金融危機につながる可能性も

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

世界経済 世界の企業、家計の債務総額
英中央銀行 デリバティブ元本6000兆円に不安定化リスク
欧州環境規制 乗用車のCO2排出規制を協議
ナウル情勢 "盛者必衰"ナウルの転落

─────────────────────────
▼英国ブレクジットから派生する金融問題は、世界的な金融危機につながる可能性も
─────────────────────────
国際通貨基金(IMF)が公表した世界金融安定報告によると、
政府や金融機関を除く民間企業、家計が抱える
全世界の債務総額が167兆ドル(約1京9000兆円)となり、
リーマン・ショックが起きた10年前と比べ
5割近く増えたことが分かりました。危機に対応するため
日米欧の中央銀行が大規模な緩和策を実施したことで、
経済成長を上回るペースで債務が拡大したとのことです。

金融経済が実体経済よりも5割ほど
大きくなっているということは、
ブラックマンデーが起こった時と極めて似ている状況です。
世界中が金融拡大をしてしまった結果、
不安定な状況が生まれたのです。
今年になってから米国は2回ほど大きな株価の下落があり、
他の国も同様に下落しましたが、
まだまだ「下げ足りない」ということでしょう。

この問題も重要ではありますが、
短期的にはさらに世界経済を揺さぶるリスクが大きいのが、
英国のEU離脱(ブレクジット)に絡む経済問題です。

英中央銀行のイングランド銀行はブレクジットが
条件合意なしの「無秩序離脱」となった場合、
最大で41兆ポンド(約6000兆円)のデリバティブが
不安定な状態に置かれると警告しました。
これらは2019年3月末のEU離脱後に満期を迎えるものの、
EUの法体系から切り離された場合、
既存の契約がどう扱われるか定まっていないためで、
イングランド銀行は混乱を回避するため
国内の銀行に離脱後の数日間、
6時間ごとにバランスシートの状況を
チェックするよう求めたとのことです。

問題なのは、デリバティブ取引の中央清算機関として、
ロンドン証券取引所のLCHクリアネットが
そのほとんどを取り扱っていることです。
英国が合意なしの離脱をした場合、欧州の金融機関は
LCHクリアネットを利用することができなくなってしまいます。

欧州の中には、デリバティブの清算拠点など
金融センター機能を英国から奪う思惑を
抱いている国もあるようですが、
一朝一夕にはいかないでしょう。
今は完全にLCHクリアネットに依存しています。
この機能を他の国に移すと言っても、
経験と信用も非常に重要であり、
6000兆円ものクリアリング機能を一気に移すことは、
極めて難しいと私は感じます。

さらにもう1つ、英国の保険会社の問題も重要です。
EU市民向けに提供している保険契約の扱いが
どうなるのかも不透明な状態です。

このような状況を見れば見るほど、
もう1度英国でEU離脱について国民投票をしたほうがいいのでは?
と思います。前回の投票時には、
今回のような恐ろしい話は表に出ておらず、
国民は理解していなかったはずです。

先日も英国内ではEU離脱に反対する
大規模なデモが行われていました。
英国メイ首相は迷走状態に陥っています。
欧州のトップが集合する場に居合わせても、
「合意」を得るのではなく、「同情」を買うばかりです。

英国の金融問題は極めて重要です。
ここから世界的な金融危機が
トリガーされる可能性も十分に考えられます。
かなり神経質に注意しておく必要があると私は見ています。

─────────────────────────
▼欧州のCO2規制、2030年までの目標が間もなく決まる
─────────────────────────
欧州連合(EU)は9日、加盟28カ国の環境相理事会を開き、
域内で販売する乗用車の二酸化炭素(CO2)排出量を
2030年までに21年目標に比べて35%削減する環境規制案で合意しました。
今後、欧州委員会と欧州議会と3者で法制化への交渉に入り、
年内にも合意したい考えです。

自動車メーカーが多いドイツなどは、
30%程度に抑えてほしいという要望を出していて、
一方で北方の国は40%程度まで引き上げたい思惑があり、
間を取って35%での合意に至ったのでしょう。
35%削減では足らないという人もいますが、
とりあえずは28カ国が合意しないと始まりません。
あと数ヶ月のうちに、2030年までの目標が決定されることになります。

この欧州の動きに対して米国政府は「知ったことか」
という態度ですが、米国は州別に規制をしていて、
カリフォルニア州など複数の州では
EUよりもはるかに厳しい制限を設けています。
トランプ大統領は、州に勝手に規制を作られるのは困る
などと発言して牽制していますが、
カリフォルニア州などがこの件に関して
トランプ大統領に屈することはないだろうと思います。

─────────────────────────
▼ナウルに残された希望の道は、台湾にあり
─────────────────────────
共同通信は10日、「採り尽くし、経済破綻 “盛者必衰”ナウルの転落」
と題する記事を掲載しました。南太平洋に浮かぶ
世界で最も小さい島国ナウルの現状を紹介しています。
かつては貴重な農業肥料となるリン鉱石を採掘し輸出することで
莫大な富を得て中東の産油国と比べられるほどの財政力を誇ったものの、
現在はリン鉱石をほぼ取り尽くし経済も破綻しているとのことですが、
この記事内容はやや浅い部分があると私は思います。

ナウルは大西洋、ミクロネシアの南に位置する島国。
ナウル島はサンゴ礁の上に海鳥の糞が積み重なってできた島で、
糞の化石にリンが含まれていたため、
莫大なリン鉱石の採掘が可能になっていましたが、
20世紀になり英・豪・ニュージーランドが搾取し、
また独立後もリン鉱石の輸出に過度に依存したため、
リン鉱石は事実上枯渇し、経済は破綻状態に陥っています。

そんなナウルの将来について私が提案したいのは
台湾による買収です。ナウルは独立国として
国連に加盟しています。台湾はずっと前から国連の席を
欲してきましたが、いまだに実現していません。

一昔前なら、国連に加盟したいならパラオを買収すればいいと
私は台湾に提言していましたが、人口2万人のパラオよりも
人口1.4万人のナウルのほうが「お買い得」です。
またパラオは中国になびく可能性も見せていますが、
ナウルにはそのような動きも見られません。
http://www.lt-empower.com/ohmae_blog/


 


 

日本人秘書が明かす李登輝元総統の知られざる素顔

台湾の若者が「現状維持」を望むワケ

「独立か、統一か」では語れない統一地方選
2018/10/26

早川友久 (李登輝 元台湾総統 秘書)

11月24日に、4年に一度の「統一地方選挙」の投票が行われる台湾。2020年の「総統選挙」に向けた試金石としても注目されるが、2014年の「ひまわり学生運動」やその後の「政権交代」を経て、台湾の若者はいま、政治に何を期待しているのだろうか――。李登輝元総統の日本人秘書である筆者が、新しいステージに突入した台湾政治を読み解く。


iStock / Getty Images Plus / XtockImages
 台北がまだ猛暑にあえいでいた7月のこと。週末の朝、私はMRTの双連駅から中山駅にかけての地下街を子供と散歩していた。すると、まだ地下街の店のシャッターも開いていないのに、若者たちが行列している光景に出くわした。

 人気商品の発売日なのか、芸能人のイベントでもあるのか。訝しながら歩くと、そこには「柯文哲市長の新刊発表会 最後尾はこちらです」という看板を持つスタッフが立っていた。

 改めて行列する人々を見まわしたが、20代から30代の若者ばかりで、とても政治家の新刊発表会の雰囲気ではない。一瞬「サクラを集めたのかな」とも思ったが、柯市長が2年前の選挙で当選した背景を考えると、この若者たちが自発的に集まってきたと考えるほうがむしろ自然だと思い直した。

「選挙に利用するな」と罵声を浴びせられた民進党
 2014年3月、台北で「ひまわり学生運動」が起きた。当時の国民党政権が中国と、相互にサービス業進出を自由化させる協定を締結しようとしたことに端を発する。協定が締結されれば、台湾経済の空洞化を招くと危惧した学生たちが、立法院(国会)を3週間以上にわたって占拠した事件だ。

「ひまわり学生運動」のさなかの土曜日、学生たちは国民に呼びかけて総統府前広場での抗議集会を行った。私も後輩と一緒に参加したが、普段は多くの車が行き交う片側5車線の広大なエリアが、まさに人人人で埋まっていたのだ。後に主催者発表で参加者は50万人とされ、台湾で行われた集会として最大規模と言われたが、私は台湾の若者たちのエネルギーと国を思う気持ちに圧倒される思いだった。

 その結果、およそ半年後の2014年11月に行われた統一地方選挙では、国民党は「歴史上例をみない」と報じられるほどの惨敗を喫した。その一方で、大勝した民進党はその勢いのまま2016年1月の総統選挙を蔡英文候補が制し、史上初めて民進党が総統の座も、立法院での過半数をも獲得することになったのである。

 ただ、こうした流れは結果的なものであって、そもそも「ひまわり学生運動」は決して民進党支援のためのグループではなかった。学生たちのなかには「私たちは国民党政権のやり方に抗議するためにやっている。民進党のためではない」「民進党が野党としてきちんとしてくれれば、私たちがひまわり運動をする必要はなかった」などと民進党への不満を顕わにする学生も少なくなかった。また、民進党の議員たちが、ここぞとばかりにのぼり旗を抱えて参加しようとしたところ、「選挙に利用するな」と罵声を浴びせられたニュースもあった。

「独立か、統一か」で語るのは時代遅れ
 そして、統一地方選挙ではもうひとつの大きな変化があった。台北市長に、(民進党には支援を受けたものの)民進党でも国民党でもない無所属の柯文哲氏が当選したのだ。台北市長は文字通り首都台北の顔であり、総統選挙の登竜門でもある。事実、民主化以降の総統は、現在の蔡英文総統を除き、李登輝・陳水扁・馬英九の3人とも台北市長経験者だ。また、台北市は国民党支持者が多く、国民党の牙城とも言われた票田だった。そこへ、政治にはいわば全くの門外漢で、素人ともいうべき医師の柯文哲氏が登場し、国民党候補に圧勝したのである。


2014年の台北市長選挙に無所属で出馬し、国民党候補に圧勝して当選した柯文哲氏(写真:AP/アフロ)
 これは台湾政治の新しいステージの幕開けだったとも言える。民主化以降、それまでの台湾であれば、総統選挙や統一地方選挙など、全国規模の選挙戦となれば、自ずと構図は「緑(民進党)か、青(国民党)か」「独立か、統一か」「台湾か、中華民国か」などというステロタイプで報じられることが多かったし、それがまだかろうじて可能だった。

 つまり、緑がイメージカラーの民進党は、「私は台湾人」というアイデンティティを強く持ち、中国とは距離を置いて、台湾に重点を置く人たちに支持されてきた。なかには過激な「台湾独立派」もいる。

 一方で、青がイメージカラーの国民党は、台湾よりは中華民国を前面に出し、中華人民共和国とも近づいて、同じ中国という傘のもとでやっていこうという考え方だ。当然、最終的には中国と一緒になりたいと望む人も少数ながら含まれる。

 こうした説明はかなり凝縮したものになってしまうが、対立軸が単純かつ明確になると、有権者たちは熱狂しやすい。緑か青か、つまり敵か味方か、という簡単な構図になるからだ。

 2000年、台湾初の政権交代が行われ、民進党政権が誕生して以降、二度の政権交代があり、その間に幾度も統一地方選挙が行われた。そして、その選挙ごとに持ち出されてきたのが、上述の構図なのである。ただ、こうしたステロタイプを、完全に時代遅れあるいは非現実的なものとしたのが、2014年の「ひまわり学生運動」であり、それに続く選挙での無党派層の勝利であった。特に、顕著なのは若者たちだ。

台湾の若者が「現状維持」を望むワケ
 彼らは生まれたときから自由で民主的な台湾社会のなかで育ってきた。白色テロも戒厳令も経験せずに生きてきた世代だ。もしかしたら彼らのなかには、老人たちから「国民党が勝ったらまた白色テロの時代が来る」と言われた若者もいるかもしれない。将来を誓い合った相手を実家に連れて帰ったら「外省人との結婚は許さない」と言われたカップルがいるかもしれない。

 ただ、こうした歴史的な悲劇も、「省籍矛盾」と呼ばれるエスニック・グループ同士の対立も、若者たちにとって、おおむね大きな問題ではなくなっている。悲しい歴史の事実は忘れ去られるべきではないが、私の周りにも、本省人と外省人の夫婦はたくさんいる。夫婦そろって熱烈な台湾独立派の友人が「うちの奥さんは外省人なんですよ」とあっけらかんと話す。そもそも、本省人や外省人といった単純な視点だけで、台湾の社会を見ることが不可能なのだ。

 さらに言えば、彼らにとって物心ついたときから台湾は中国とは別個の存在だったわけで、今さら独立も統一もない。彼らが「生まれながらの独立派」を意味する「天然独」と呼ばれるゆえんだ。そのため、彼らが望むのは当然のごとく「今のまま」、要は現状維持である。

若者の目に映る「無益な対立」
 つまり、長らく選挙のたびに噴出したテーマである「台湾か、中華民国か」「統一か、独立か」といったテーマは、もはや若者たちの投票行動を左右する最優先の議題ではなくなっているということだ(一方で、中国の台湾侵攻への危機感が薄いという欠点もあるが)。

 むしろ、彼らにとっては民進党と国民党が自分たちの手の届かない高みで、国民の日常生活に直結しない無益な対立を繰り返しているようにしか見えず、政治への嫌悪感やあきらめを生み出した。この時期、台湾の経済的な失速とも相まって、卒業を控えた学生たちは「卒業即失業」などとうそぶいていたが、二大政党が神学論争を繰り返し続けた結果、若者たちは「民進党か、国民党か」という二大政党離れ、ひいては政治離れを起こした。賃金向上や景気浮揚、就職問題、失業率改善など、目の前の問題を語ってくれない政治に背を向けるのは当然であろう。

 そして、奇しくもそこに登場したのが、政治的にはむしろ素人の柯氏だったわけだ。柯文哲市長は就任して間もなく4年。歯に衣着せぬ発言で非難を浴びたりすることも多いが、特に若者からの支持率は揺らいでいない。これは、若者たちがそれまでの政治や政治家に辟易していたことの裏返しといえるだろう。今年5月にリンゴ日報が行った年齢別の支持率調査では、20代と30代の有権者から実に55%という圧倒的な支持を得ている。

「台湾の未来図」を描けているか
 そしていま、台湾はふたたび政治の季節を迎えている。11月24日、「九合一選挙」と呼ばれる統一地方選挙の投票日までいよいよ残り一ヶ月を切ったからだ。「九合一選挙」とは、知事クラスの規模を持つ台北市長や新北市長などの「直轄市長」から、いわゆる町内会長にあたる「里長」まで、9つのレベルの首長や議員を選出するための投票を一度に行うことからそう呼ばれている。

 また、今回の選挙は2016年5月に発足した蔡英文総統、ひいては民進党政権の「中間テスト」的な意味合いを持つとともに、2020年1月の総統選挙に向けての試金石となるため、俄然国内外からも注目を集めるわけだ。

 台湾が中国とは別個の存在を維持していくのか、それとも中国と接近する方向に進むのか。その舵取りをまかせる政権を選ぶための政策論争はもちろん必要だ。むしろないがしろにされてはならない最重要なテーマである。

 しかし、それとは別に、民進党は政権発足後、若者たちの生活を潤し、若者たちが将来に夢を抱けるような政策を進めてきただろうか。国民党は、下野してからというもの、若者たちの支持を取り戻せるような政策を掲げてきただろうか。台湾の若者たちが政治に何を望んでいるのか、という現実的な問題に真摯に取り組み、台湾の未来図を提示できる候補者でなければ、若者の心を掴むことはできないだろう。

早川友久(李登輝 元台湾総統 秘書)
1977年栃木県足利市生まれで現在、台湾台北市在住。早稲田大学人間科学部卒業。大学卒業後は、金美齢事務所の秘書として活動。その後、台湾大学法律系(法学部)へ留学。台湾大学在学中に3度の李登輝訪日団スタッフを務めるなどして、メディア対応や撮影スタッフとして、李登輝チームの一員として活動。2012年より李登輝より指名を受け、李登輝総統事務所の秘書として働く。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/14346


http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/392.html

[国際24] イタリア債を救うのはポピュリスト連立政権の崩壊だけか ドラギECB総裁、イタリア政府に率直な忠告−「トーンを下げろ」
イタリア債を救うのはポピュリスト連立政権の崩壊だけか
John Ainger
2018年10月26日 14:27 JST
• 「政権崩壊が市場の主たる望みだろう」とリーガー氏
• 現状は「最悪シナリオ、どんな政権でもこれよりまし」とテーラー氏
イタリア政府が予算を巡って欧州連合(EU)への抵抗を続ける中で、国債利回りの上昇に歯止めをかけ反転させるにはポピュリスト政権が倒れるしかないとの見方が一部の投資家の間で浮上している。
  連立政権が支出拡大を決意しているために、イタリア債の利回りは欧州債務危機以降見られなかった水準まで上昇した。政府が対立姿勢を崩さない限り、市場からの圧力は高まり続けるだろうと、コメルツ銀行の債券戦略責任者、クリストフ・リーガー氏は話す。
  「今の段階では、政権崩壊が市場の主たる望みだろう」と同氏は述べた。前倒しの選挙になればイタリア政治は再び混とんとした状況に陥るだろうが、少なくとも財政に大きな負荷をかけるポピュリスト政策は実行されなくなる。世論調査は、選挙があれば企業寄りの「同盟」が第一党となることを示唆しており、「財政と経済へのリスクは同盟主導の政府の方が小さいだろう」とリーガー氏は述べた。
  また、アライアンスバーンスタインの運用者、ジョン・テーラー氏は、現政権は「最悪シナリオ」で、イタリア債にとっては「どんな政権でもこれよりまし」と指摘。同氏によれば、投資家はそんなに長く待つ必要はない。「イタリアでは最も安定した政権でもそう長くはもたない。左右両極端の連立など論外だ」と同氏は述べた。


原題:Best Hope for Italian Bonds May Be Populist Coalition’s Collapse(抜粋)
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
LEARN MORE
関連ニュース
1. 複数の日銀当局者、長期金利の上限は0.2%超を容認
2. 日本株は続落、業績失望の電機やサービス安い−米決算警戒で乱高下
3. 第一生命:オープン外債を為替次第で増加、円債は「手が出ない」−下期
4. 米国が中国との交渉再開拒否、技術移転などで対応先決−WSJ
5. 野村HD:中国投資や3メガバンクとファンド設立で覚書 
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-26/PH6W726JTSEK01


 


ドラギECB総裁、イタリア政府に率直な忠告−「トーンを下げろ」
Kevin Costelloe
2018年10月25日 23:01 JST 更新日時 2018年10月25日 23:55 JST
• スプレッド縮小につながるような政策を−ドラギ総裁から第2の忠告
• ドラギ総裁はECB政策発表後の記者会見でイタリア政府に呼び掛け
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、イタリア政府に対して冷静になり、借り入れコストを押し上げるような政策をやめるようにと忠告した。
  イタリア政府が同国の銀行を支援するために何ができるかとの問いに、「他の答えもあるかもしれないが頭に浮かぶ最初の答えは、トーンを下げ、ユーロの存在に関わる憲法上の枠組みに疑義を呈さないことだ」と答えた。
  イタリアの財政計画を巡る懸念を背景に、イタリア国債の利回りは数年ぶりの高水準に上昇している。ドラギ総裁の第2のアドバイスは「スプレッド縮小につながるような政策をとれ 」だった。
  総裁は政策決定後の記者会見で、イタリア問題の他国への波及は「限定的だ」と述べた。

原題:Draghi Offers Blunt Suggestion to Rome to ‘Tone It Down’(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-25/PH5PSG6K50Y001?srnd=cojp-v2


 


 
http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/393.html

[経世済民129] 複数の日銀当局者、長期金利の上限は0.2%超を容認 FOMCメンバー2人、米国株安にも動じず 市場と感情 日本株は続落
複数の日銀当局者、長期金利の上限は0.2%超を容認
日高正裕、藤岡徹、竹生悠子
2018年10月26日 14:05 JST
7月会合で10年物国債利回りの変動幅拡大を決定
日銀はボラティリティーの上昇や急激な金利上昇は望まず
複数の日本銀行当局者から、現行の金融緩和策で操作対象とする長期金利について、多くの市場関係者が想定している上下0.2%を超える変動幅を許容する意見が出ている。事情に詳しい複数の関係者への取材で明らかになった。

  複数の関係者によると、日銀当局者の間では0.25%程度までは10年物国債利回りの上昇を容認するとの声が複数上がっている。一部の当局者は緩やかな金利の上昇を容認する一方で、日銀としては急激な変動は望んでおらず、ボラティリティー(変動率)の上昇を目指しているわけではないという。


黒田日銀総裁Photographer: SeongJoon Cho/Bloomberg
  日銀は7月の金融政策決定会合で、長期金利は「上下にある程度変動しうる」ことを決定。発表文に変動幅は明記せず、黒田東彦総裁が会見で、2016年9月の長短金利操作導入後の「おおむねプラス0.1%の幅から上下その倍程度」と明らかにした。長期金利の0%目標について、これまでも「程度の見方次第だが、四捨五入でいえばプラスマイナス0.4%と考えている人もいたかもしれない」とも述べた。

  7月会合の議事要旨によると、一人の委員が「主要国の最近の長期金利の動きを参考にすると、わが国でもプラスマイナス0.25%程度の変動を許容することが適切である」と述べた。

  7月の日銀決定を受けて長期金利は8月2日に昨年2月以来の水準である0.145%まで上昇したが、日銀は同日午後、予定外の買い入れオペを通知し、急激な金利上昇をけん制した。雨宮正佳副総裁は同日の会見で、長期金利が急上昇する場合は「迅速かつ適切に国債買い入れを実施する」と語った。

  複数の関係者によると、日銀が0.145%で金利上昇を止めに入ったのは、急な動きを容認しない姿勢を示したものだった。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-26/PH6QB06JIJUP01?srnd=cojp-v2


 


FOMCメンバー2人、10月の米国株安にも動じず−経済見通し堅持
Christopher Condon
2018年10月26日 11:44 JST
• クリーブランド連銀総裁とFRBのクラリダ新副議長:経済は堅調
• 株式相場の低迷が長引けば信頼感を損なう恐れ−メスター総裁

今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つメンバー2人は25日、10月に入ってからの米株式相場の急落による米経済への影響を重要視しない姿勢を明らかにし、相場の波乱が長引かない限り経済成長の見通しを変えることはないとの考えを示した。

メスター・クリーブランド連銀総裁
写真家:Marlene Awaad / Bloomberg
  クリーブランド連銀のメスター総裁は同日のニューヨークでの講演テキストで「株式相場がさらに深く持続的に下落すれば信頼感を損ない、リスクテークや支出の大幅後退につながりかねないが、こうしたシナリオからは程遠い」と指摘。「市場のボラティリティーは見通しにリスクを突き付けており、注視する必要があるものの、私自身の中期的見通しを変更するには至っていない」と述べた。
  S&P500種株価指数は10月に7%余り下落したものの、1年前の水準を依然5%強上回っている。最近の急落でもFOMCによる今年4回目の利上げ観測を投資家は後退させてはおらず、フェデラルファンド(FF)金利先物の動きには12月利上げの確率は74%との見方が示されている。

  連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長も就任後初の公の場での米経済に関する発言で、ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)は「極めて堅調だ」と語り、最近の株式相場の波乱が米金融政策に影響する可能性に否定的な見解を示した。

クラリダFRB副議長
写真家:Andrew Harrer / Bloomberg
  クラリダ副議長はワシントンでの講演で、金融市場の動きが経済に影響する可能性を認める一方で、その動きは見通しを立てる際に考慮する幅広い要因の1つにすぎず、持続的なものでなければならないと指摘した。
原題:Two Fed Officials Remain Unfazed by October Global Stock Rout

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-26/PH6NA76JIJUP01?srnd=cojp-v2


 


市場と感情 広木 隆 2018/10/26
ストラテジーレポート
今回のスパイラル的な株価急落の要因がわからない、という声が多い。
「最近の株安について理由を挙げようと思えばいくつか挙がるが、実際に何が売り材料になっているのか誰にも分からないのが現実ではないか。」(資産運用会社アルビオン・フィナンシャル・グループの最高投資責任者、ジェイソン・ウェア氏:10/25日経電子版<NY株600ドル安、米市場関係者の見方>)
「今回の下げのきっかけについて市場で意見の一致が見られていない」(米運用会社スレートストーン・ウェルスのポートフォリオ・マネジャー、ロバート・パブリック氏:10/23日経NY特急便 <中国株高も力不足、見えぬ「売り一巡>)
僕は常々、「株価が大きく下げるのに特に材料がないことは多い」と述べている。典型例は1987年のブラックマンデーであり、2015年のチャイナショックである。
チャイナショックの時に書いたレポートで紹介したのは、物理学者のアルマン・ジュリアンとジャン=フィリップ・ブショーの研究である。彼らはナスダック上場の900社以上の株式データとダウ・ジョーンズやロイターなどが提供する2年分、数10万件に及ぶニュースを使って、明らかにニュースに関連した大きな株価変動と、そうした関連性がない大きな変動とを選び出した。そして両方のケースについて、大きな変動が起こってから数時間後の変化を観察した。彼らが観察したのはボラティリティの推移だ。突然株価が動くというのはボラティリティ(変動率)がジャンプする(高まる)ということだが、そのジャンプしたボラティリティは時間の経過とともに通常の状態に戻る。その戻る時間を両者について比べたところ、ニュースと関連性のある事象の方が、ニュースと関連のない事象よりも、はるかに短かったのである。
その理由について、ジュリアンとブショーの研究チームはこう推察している。ニュースと明確な関連がある株価変動の高まりは、背景が理解可能であるがゆえに、驚かず、少なくとも狼狽することはない。ところが、(フラッシュ・クラッシュのように)ニュースと関連のない株価の急変動は、説明がつかない不可解さがつきまとい不安になる。それこそ真のショックである、というわけだ。
チャイナショックの時のレポートで、僕はこう述べている。
<市場では、右も左も「中国景気減速で世界株安」との報道であふれている。市場関係者ほぼ全員に「中国不安」⇒「世界株安」という「因果関係」(に見えるもの)が刷り込まれている。しかし、仮に「中国不安」がこの株安の原因であると、本当に市場参加者の全員が盲信的に思っているとすれば、これほどまでに市場の動揺が収まらないのはなぜか?ジュリアンとブショーの研究によれば、理由が特定できればボラティリティは速く収束するはずである。その結果は直感的にも理解しやすい。そうであるならば、これほどまでにボラティリティが高止まり続けるという、その事実自体が、今回の世界株安の理由を市場がまだ特定できていないことの証明ではないだろうか。>
歴史は繰り返すとはよく言ったものである。いま起きていることは2015年と同じパターンである。僕らはふつう、たいていのものごとには原因があって結果があると考える。すなわち因果関係である。ところがHEC経営大学院教授のイツァーク・ギルボアは著書『合理的選択』のなかで、マクロ経済学、金融、政治学、社会学等では多くの因果関係がいまだ特定できていないと述べている。この言葉を紹介したのは2013年6月に出版した自著『9割の負け組から抜け出す投資の思考法』のまえがきである。そこではこうも述べた。「因果関係を特定するのが難しい理由は、人間の行動が必ずしも合理的であるとは限らないからだろう。そうした非合理的な人間の行動を表現するマクロ経済学、金融、政治学、社会学等は、『予想どおり不合理』(ダン・アリエリー)となる。僕たちはそうした因果関係もよくわからない世界に住み、明日を知れぬ世の中を生きていかなければならない。そのうえで、さらに株式という得体の知れないものに投資をするのだということを改めて認識することを本書の出発点としたい。」
人間は弱い。とくに「わからない」状況を嫌う。よって、すぐに「答え」を探ろうとする。しかし、上述したように、この世の中の動きは、竹を割るような明快な説明が常に用意されているわけではなく、むしろわからないことのほうが圧倒的に多い。ここで注意しなければならないのは、「人間には、統計的な推論をするべき状況で因果関係を不適切に当てはめようとする傾向がある」(ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』)という点である。
今回の株価急落は何も材料がないなかで起きている、「相場につきもの」のような価格変動のひとつに過ぎない可能性が高いと思う。むりやり、米中貿易戦争の影響で世界景気の失速懸念とか理由を当て込まないことが大切だろう。前々回のレポートで引用したケインズの言葉を再掲したい。
「投資の収益は日々変動するが、それは明らかに一時的でどうでもいいような性質のものである。ところが、そのどうでもいいようなことが市場に対して全体的に過剰で、馬鹿馬鹿しいまでに非合理的な影響をもってしまいがちである。」(ジョン・メイナード・ケインズ『雇用、利子および貨幣の一般理論』)
米中貿易戦争の影響で世界景気の失速というのは、まだ現実のものになっていないし、そうなる可能性は低いと思っている。ただ僕がいちばん懸念しているのは、ジョージ・ソロスの「リフレキシビティ」という理論である。市場のトレンドと投資家の認識がファンダメンタルズの変化にまで影響を及ぼす経路があるという点である。これは前掲のケインズの言葉に近い概念だ。
通常は、
ファンダメンタルズ⇒投資家の判断⇒市場価格
という経路で相場が形成される。ファンダメンタルズを見て投資家は判断し、意思決定を行い、投資行動をとる。その投資家の投資行動を反映して市場価格は決まる。この順番がふつうである。しかし、時には、いや、往々にして
市場価格の動き(トレンド)⇒投資家の判断
と順序が逆になる。そしてさらに、市場価格の動きが投資家や世間一般の感情に影響し、ファンダメンタルズにも影響を与えることがある。「景気は気から」の理屈で、実際の景気が悪くなる。あたかも、株安が景気減速を予見していたように見えることがあるが、本当は株安自体が景況感を悪化させたのである。90年代以降の米国の景気後退はすべてバブル崩壊と株安が契機になって引き起こされたものだ。
目先の話に戻ると、今回の下げには理屈がないのだから早晩、戻るだろう。聞き飽きたようなリスクパリティの調整とかトレンドフォローのCTAの売りとか、アルゴとか、いろいろあるが、それらはすべて機械が文字通り「機械的」に売るわけで、彼らは「米中貿易戦争の影響で世界景気の失速」などを懸念しているわけではない。そうした感情を持たない機械の売りに、感情を持つ人間の不安心理が撹拌されて、相場の振幅が大きくなっていると思われる。戻るとは言ったが、相場は「上げ100日、下げ3日」、少し時間がかかるかもしれない。
今回の下げで理由はないと述べたが、米国株の急落第1波は明らかに明確な理由があった。10/12付「米国株の急落について」で述べた通り、米国長期金利の上昇に対して株価の割高感を調整する必要があったからだ。S&P500の益回りと米国10年債利回りの差をとったイールドスプレッドが3%を下回り株の割高感が台頭していた。S&P500の益回りと米国10年債利回りの差をとったイールドスプレッドは1800年代後半からおよそ150年に及ぶ超長期の平均で約3%。今週の火曜日に我が国は「明治」に改元して150年を迎えたが、その明治時代の始まりからPERなどのデータがあることにまず驚く。それだけ長い期間にわたって、株式投資には安全資産を上回る3%のプレミアムが必要ということが、歴史的事実として米国市場に刻み込まれてきた。よってこの3%のプレミアムがもつ意味は大きい。
株価収益率、PERは株式のデュレーションと捉えることができる。デュレーションは債券の分析で用いられるもので、@投資額の平均回収期間、A金利変化に対する価格変化を表す。
株式は債券と違って満期・償還がないが、永久債と同様の考え方ができる。株式の価格が将来にわたる利益(E)の流列を割引率(r)で現在価値に割り引いたものの合計だとすると、

ここで割引率rには当然、金利が含まれるので、金利の微小な変化に対する価格の変化を求めると、

よって株式のデュレーション(d)は割引率の逆数、すなわちPERだということがわかる。


米国長期金利が足元の急上昇を見せたのは8/24のジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演からであった。10年債利回りは2.80%から3.223%まで42.3bps上昇した。
ダウ平均は10/3の高値から10/11まで6.6%下落した。10/3時点のダウのPERは15.6倍だった(Bloomberg 12カ月先ブレンド)。15.6 X 0.423 = 6.6 ぴったりデュレーション通り、金利上昇分を一気に調整した。
よりデュレーションの長い(PERの高い)ナスダックは8.7%下げた。ナスダックのPERは21倍だったから 21×0.423=8.8 でほぼデュレーション通りである。


以上、見たように、米国株の急落第1波は明らかに明確な理由があったが、一旦、反発した後、現在までに続く相場変動は明確な理由がない。さらなる金利の上昇は起きていないし、3%というイールドスプレッドの観点からも、デュレーションの観点からもバリュエーション調整は完了しているからだ。


今回の急落は、理屈で説明できる部分と、そうではない部分に分けて考えることが大切だ。僕が、よくこむつかしい理屈を話すと、「相場は理屈じゃない」と怒り出すひとがいる。『ストーリーとしての競争戦略』の著者・楠木建氏はこう述べている。「ビジネスの成功を事後的に論理化しようとしても、理屈で説明できるのはせいぜい二割程度でしょう。(中略)理屈で説明できないものの総称を『気合い』とすれば、現実の戦略の成功は理屈二割、気合い八割といったところでしょう。あっさりいって、現実のビジネスの成功失敗の八割方は『理屈では説明できないこと』で決まっている。(中略)八割は理屈では説明がつかないにしても、ビジネスのもろもろのうち二割は、やはり何らかの理屈で動いているわけです。『ここまでは理屈だけれど、ここから先は理屈じゃない』というように、左から右へと考えてみて下さい。すると、『理屈じゃないから、理屈が大切』という逆説が浮かび上がってきます。(中略)野性の嗅覚が成功の八割にしても、二割の理屈を突き詰めている人は、本当のところ何が『理屈じゃない』のか、野性の嗅覚の意味合いを深いレベルで理解しています。」


理屈じゃないから、理屈が大事なのである。理屈がわからなければ、「ここから先は理屈じゃない」と見切れない。米国株の急落第1波は金利見合いのバリュエーション調整で理屈で説明がつく。しかし、足元の変動は、もう「理屈じゃない」世界。理屈じゃないので、下値目途もなにもない。相場のことは相場に訊け、で自律反発を待つしかない。ただ言えるのは、相場がここまで売られる理屈がないので、いつか下げ止まってもとに戻るだろう、ということである。ここで終わって弱気相場にトレンド転換ということではない。
世界で有数のヘッジファンドでファンドマネージャーをしている友人からメールが来た。どうなってしまうのかと、いつになく弱気であった。僕は、ここで述べたようなことを伝え、これはバーゲンセールだ、淡々といい銘柄を拾っていけばいいだろうと答えた。それに対する彼の返信は、
<理屈はその通りだろう。しかし、人情としては、上昇局面で強気になり、下落局面では弱気になるもの。これだけ下げられると、淡々と安値を拾うなんて、頭ではわかっているが、心情的にとてもできない>
生き馬の目を抜くヘッジファンド業界で勝ち続けてきた、百戦錬磨のプロの彼でさえそうなのだ。個人投資家が手が出ないのは無理もない。
僕は、こう返信した。
<ごもっとも。人間はAI運用にはまだまだ負けないが、超シンプルな、ただ売るだけ、みたいな機械の売りには勝てないよね。機械は感情がないから。勝てるヘッジファンドマネージャーになるには感情を棄てないといけない。
心臓移植を待つひとと医者の会話。
「5歳の子供の心臓ならあります」
「だめだ。若すぎる」
「では40歳のヘッジファンドマネージャーのでは?」
「いやだね。そいつにはハートがないから」
(映画『修道士は沈黙する』)>
そして前々回触れたリチャード・セイラー博士の20年以上も前の名著、『市場と感情の経済学』を読むように彼に勧めたのであった。

広木 隆
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒業。 国内銀行系投資顧問、外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。 長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強み。 2010年より現職。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。 テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」、BSテレ東「日経プラス10」、日テレNEWS24「まーけっとNAVI」、J-WAVE「JAM THE WORLD」等のレギュラーコメンテーターを務めるなどメディアへの出演も多数。 マネックス証券ウェブサイト(https://info.monex.co.jp/report/strategy/index.html)にて、最新ストラテジーレポートが閲覧可能。 著書: 「ストラテジストにさよならを 21世紀の株式投資論」(ゲーテビジネス新書) 「9割の負け組から脱出する投資の思考法」(ダイヤモンド社) 「勝てるROE投資術」(日本経済新聞出版社)
広木 隆 の別の記事を読む
https://media.monex.co.jp/articles/-/10351

 

日本株は続落、業績失望の電機やサービス安い−米決算警戒で乱高下
長谷川敏郎
2018年10月26日 8:00 JST 更新日時 2018年10月26日 15:47 JST
エムスリーやキヤノン、日立建機が決算失望で売られる
けさ発表の米アマゾンやアルファベットは時間外取引で大幅安

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
26日の東京株式相場は続落。米アマゾン・ドット・コムやアルファベットなど米企業決算が株価に与える影響が懸念される中、国内でも業績失望からキヤノンなど電機、エムスリーなどサービス、日立建機など機械が売られた。

  TOPIXの終値は前日比4.91ポイント(0.3%)安の1596.01、日経平均株価は84円13銭(0.4%)安の2万1184円60銭。


東証内Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  三菱UFJ国際投信の宮崎高志戦略運用部長は「米企業決算は悪くないが、景気モメンタムが鈍化する中で株価が行き過ぎていたこともあり、資金が引いている側面がある。日本株はボラティリティーが上がりリスクテイクに踏み切れる投資家は少ない」と語る。時間外取引で下落した米アマゾンとアルファベットは「投資家に買われてきたコアの銘柄であり、今晩の米国株は安くなりそう」とみる。

  きょうの東京株相場は上昇と下落を繰り返す不安定な展開だった。ツイッターやマイクロソフトなど堅調な企業決算が評価された25日の米国株市場の流れを受けて朝方は買いが先行、日経平均は207円高まで上昇した。買い一巡後は、日本時間のけさ決算を発表したアマゾンとグーグルの親会社であるアルファベットの株価が時間外取引で大幅安となったことが重しとなり、今晩の米国株市場への警戒から午後には296円安で2万1000円を割り込んだ。日経平均の日中値幅は504円と、一時1047円安となった11日の592円以来の大きさとなった。


  投資家心理が大きく揺れているのは、バリュエーションのベースとなるべき企業業績の先行き不透明感が強まったため。国内企業でも25日に決算を発表したキヤノン、エムスリー、サイバーエージェント、日立建機が大幅安。アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは「米国の減税効果の剥落(はくらく)や米中通商交渉の影響から業績の上振れ期待は無くなった。少しでも決算内容が悪ければ大きく売られてしまう」と話した。

  株価の下げは行き過ぎとも言える。野村証券によると、日経平均の1株利益予想は今期1770円、来期1900円で、26日PERは12.0倍となる。同証投資情報部の若生寿一エクイティ・マーケット・ストラテジストは「日経平均2万2000円以下は来期減益を織り込む想定で、業績面から売られ過ぎ」と指摘した。

東証33業種ではサービス、精密機器、情報・通信、電機、機械、化学など19業種が下落
パルプ・紙、輸送用機器、ゴム製品、陸運、不動産、保険、銀行など14業種は上昇
東証1部売買高は16億9900万株、売買代金は3兆1857億円
値上がり銘柄数は554、値下がりは1502
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-25/PH6EO86K50XS01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/168.html

[経世済民129] 米株急落それでもVIXが反応薄な理由 米成長率3・5%を維持 貿易戦争の駆け込み需要も 米向フィット生産メキシコから日本

トップニュース2018年10月26日 / 15:47 / 3時間前更新
アングル:
米株急落それでもVIXが反応薄な理由
1 分で読む

[ニューヨーク 25日 ロイター] - 米国株が24日に急落した局面で、投資家の不安心理の度合いを示すボラティリティー・インデックス(VIX、別名恐怖指数)はあまり反応しなかった。専門家によると、既にヘッジが相当進んでいたことなどがその理由のようだ。

S&P総合500種の同日の下落率は3%に達したものの、VIXは4.5ポイントの上昇にとどまった。

スパイダーロック・アドバイザーズのエリック・メッツ最高投資責任者は「VIXの上昇幅は想定されていたほどではなかった」と指摘した。

過去10年を見ても、株価急落に対するVIXの感応度がこれほど小さかったのは異例だ。例えば2015年8月24日にS&P総合500種が約4%下げた際には、VIXは13ポイント近く跳ね上がった。また10年5月20日にS&Pが3.9%下落したことを受け、VIXは10.5ポイント上昇している。

S&Pが3─4%下がった場合のVIXの平均的な上昇幅は6ポイントだった。

メッツ氏は、投資家が十分ヘッジしていたことで説明がつくかもしれないと話す。

トレードアラートのデータでは、S&P総合500種のオプションは、プット(売る権利)とコール(買う権利)の未決済残高の比率がほぼ2対1で、今年2月に市場が大きく動揺した時点以来で最も「守りの堅い」状況となっている。

メッツ氏は「市場参加者が今回の株安前に相応のヘッジを組んでいたとすれば、株安が起きてから動く必要性は薄れる」と説明した。

またウィーデンの株式デリバティブ戦略責任者マイケル・パーブス氏は、最近の米国債に対する力強い買い需要も、VIXが落ち着いていた理由ではないかとの見方を示した。

24日に10年債は買われ、利回りは3週間ぶりの低水準になった。

今月に入って一時は株式と米国債がともに売られる事態になり、ポートフォリオを分散化する前提条件として株価と米国債相場の逆相関関係を想定していた投資家は狼狽した。

だが24日には、株が下がれば米国債相場が値上がりする従来の関係が復活したため、投資家がパニックに陥ってVIXが上昇する根拠が弱まった、とパーブス氏はみている。
https://jp.reuters.com/article/focus-life-insurance-asset-management-idJPKCN1N016J

 

 
米成長率3・5%を維持 7〜9月期、貿易戦争の駆け込み需要も
北米
2018/10/26 21:34
【ワシントン=河浪武史】米商務省が26日発表した7〜9月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、前期比年率換算で3.5%増だった。4〜6月期の4.2%増から減速したが、減税効果で個人消費が伸びて、2%弱とされる潜在成長率を大きく上回った。ただ、輸出や住宅投資は不振で、貿易戦争の駆け込み需要とみられる在庫増が成長率を押し上げた側面も大きい。

GDPの7割を占める個人消費は前期比年率換算で4.0%増え、14年10〜12月期以来、約4年ぶりの高い伸びとなった。雇用拡大と大型減税で可処分所得が増え、自動車など耐久消費財の消費が6.9%増加した。3.5%の成長率の寄与度でみると、2.7%分は個人消費が貢献した。

寄与度が次ぎに大きかったのは、成長率を2.0%分も押し上げた在庫投資だ。総生産を示すGDP統計は計算上、在庫の積み上げが成長率にプラスとなる。貿易戦争による追加関税を恐れた駆け込み需要があったとみられ、今後、在庫調整に発展すれば先行きの成長率の下振れ要因となる。

貿易戦争の影響が懸念される輸出も3.5%減少し、16年10〜12月期以来、7四半期ぶりにマイナスに転落した。関税合戦で対中輸出が停滞しているほか、ドル高相場も大きな逆風となった。

米連邦準備理事会(FRB)の利上げによるローン金利の上昇で、住宅投資も4.0%減少した。住宅投資は3四半期続けてマイナスとなり、先行き不安がにじんでいる。企業の設備投資も0.8%増にとどまり、4〜6月期(8.7%増)から大きく減速した。

米景気は09年7月以降の拡大局面が10年目に突入し、戦後最長の10年間(1991年4月〜2001年3月)を更新する勢いだ。ただ7〜9月期のGDPは部門別で好不調がはっきり分かれており、先行きの下振れ懸念が残っている。

類似している記事(自動検索)
4〜6月期実質GDP、年率3.0%増に上方修正
4〜6月期実質GDP、年率3.0%増に上方修正
2018/9/10 10:12更新
4〜6月期のGDP改定値、年率3.0%増 設備投資上振れ寄与
4〜6月期のGDP改定値、年率3.0%増 設備投資上振れ寄与
2018/9/10 9:40
米GDP4〜6月期改定値 4.2%増 0.1ポイント上方修正
2018/8/29 21:52
米GDP1〜3月期改定値、2.2%増 0.1ポイント下方修正
2018/5/30 22:02
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37002950W8A021C1MM8000/


 


米向フィット生産メキシコから日本に
 

ビジネス2018年10月26日 / 19:27 / 2時間前更新

米向け次期フィットの生産、ホンダがメキシコから日本に変更検討=関係筋
2 分で読む

[東京 26日 ロイター] - ホンダ(7267.T)は米国市場向け小型車「フィット」について、次期モデルからメキシコでの生産を中止し、日本からの輸出に切り替える方向で検討を始めた。複数の関係者が明らかにした。米国、メキシコ、カナダ間の新たな北米貿易協定で関税免除の条件が厳しくなり、現地生産のコストが中長期的に上昇する懸念がある。さらに、フィットの米国販売が低迷していることも踏まえ、生産集約による効率化も狙う。

米国向けフィットは現在、メキシコ中部グナファト州にあるセラヤ工場で生産しているが、関係者によると、次期モデルの2021年型フィットは日本で生産し、米国へ輸出する方向で検討している。セラヤ工場では当面、小型スポーツ多目的車(SUV)の「HR―V(日本名:ヴェゼル)」の生産のみを続ける見込み。

ホンダは米国向けフィットをメキシコだけでなく埼玉製作所寄居工場(埼玉県寄居町)でも生産していたが、17年2月に同工場での生産を中止。それ以降は全量をメキシコでの生産に切り替えている。

フィットの米国での販売実績は、9月が前年同月比63%減の1507台。今年1―9月までの累計では前年同期比17.8%減の3万2943台となっている。SUV人気が続く米国ではフィットなどの小型車の販売が落ち込んでいる。

また、6月下旬からセラヤ工場が洪水による一部浸水で稼働を停止したため、安定供給できなかったことも販売に影響した。同工場は6月28日夕から稼働を停止しており、11月中旬には操業を全面的に再開する予定。

ホンダの広報担当者は、米国市場向け次期フィットの日本からの輸出への変更について「決まったものはない」としている。

米国、メキシコ、カナダは北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しで合意し、新たな協定による原産地規則を20年から適用する見通し。完成車の域内調達率(費用ベース)について、関税免除の条件となる現行の62.5%を3年間で段階的に75%へ引き上げるほか、部品の40%以上を時給16ドル以上の従業員が生産することを義務付けている。

さらに、現在は域内の原産地割合が指定されていない部品についても関税免除の条件を定めた。たとえば、エンジンやサスペンション、トランスミッションなど7つの基幹部品は、20年から66%の域内調達率を関税免除の条件として義務付け、その後の3年間で段階的に75%に引き上げる。

この7つの基幹部品のうち1つでもこの調達率に達していない場合、域内生産車と認めず、関税を免除しない。新協定が発効すれば、メキシコに進出している日本企業はコスト競争力の低下が懸念されており、生産地の変更などの難しい判断を迫られている。

白木真紀
https://jp.reuters.com/article/honda-production-shift-idJPKCN1N01AD
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/173.html

[経世済民129] サウジ記者殺害、企業は世界の「正義」救えるか 上がらない原油価 日銀金融政策維持リスク警戒 国内債増、金利上昇で超長期債
コラム2018年10月26日 / 17:57 / 1時間前更新

サウジ記者殺害、企業は世界の「正義」救えるか
Jeffrey Sonnenfeld and Roya Hakakian
4 分で読む

[23日 ロイター] - サウジアラビアの反政府記者が死亡した事件で、トランプ米政権がサウジ政府のうさんくさい説明を受け入れる一方で、世界のビジネス界は重大な倫理的空白を埋めようとしている。

米紙ワシントン・ポストのジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏が2日、イスタンブールのサウジ領事館で死亡した事件を巡り、西側企業トップの多くは、23日から首都リヤドで始まった「砂漠のダボス」と称される投資家向け会議への出席をキャンセルしたのである。

中東地域では、カショギ氏殺害という衝撃的なエピソード以前にも、ビジネスがその影響力を最大限に行使した奇妙な前例があった。

1996年、イランにおける「ニューヨーカー誌」とも呼ぶべきAdineh誌の編集長だったFaraj Sarkohi氏がやはり行方不明になったのだ。テヘラン空港の通関記録によれば、彼は空路でイランを出発したが、家族が待つフランクフルトには到着しなかった。

イラン政府は断固として犯罪行為を否定したが、この失踪は「跡形もなく消える」という表現に新たな意味を与えた。48日間にわたって監禁され、過酷な拷問を受けた後、Sarkohi氏はどこからともなくイランに姿を表し、あっけにとられた報道陣の前に登場したのである。

ドイツ政府当局やアムネスティ・インターナショナル、国境なき記者団、国際ペンクラブは当時、すでにイラン政府に対し、同氏の解放を求める書簡を送り、圧力をかけていた。だが結局、ビジネス面での損失が危ぶまれたことが、イラン情報省の工作員が同氏の解放を決めた最終的な要因となった可能性がある。

Sarkohi氏の回想録によれば、イラン政府が彼が出国したと主張する一方でドイツ側に到着記録がなかったことから、ある国際航空機関が、生存が確認されない限り、イランの航空会社は信頼性が乏しく、保険の対象にできないと警告したという。そうなれば、イランの国営航空会社は運航できなくなり、同国経済にも大打撃となったはずだ。

カショギ氏はイスタンブールのサウジ領事館に入った直後に死亡したとされるため、企業が抗議しても彼を救うことはできなかっただろう。だが、米国で活発化している論議が示すように、企業のアクティビズムは、意見の分かれる政治・社会問題におけるアジェンダを形成する上で、その影響を発揮する可能性がある。

2017年、米国の複数の州でトランスジェンダー(心と身体の性が一致しない人)によるトイレの利用制限を定めた「トイレ新法」が成立したことに対し、AT&T(T.N)、アップル(AAPL.O)、スターバックス(SBUX.O)などの企業は、法律廃止を求める動きを支援した。

また2月に起きた米フロリダ州パークランドでの無差別銃撃事件が米国全体にトラウマを残すなかで、ディックス・スポーティング・グッズ(DKS.N)、クローガー(KR.N)、ウォルマート(WMT.N)、などの企業は、銃砲販売に対する既存の規制に加え、今後は21歳以下の顧客に対しては銃器や弾薬を販売しないと発表した。

同盟国サウジによって反体制派の記者が殺害されたことを受けて、米国政府がいまだ行動に踏み切れない中で、ビジネス界の倫理的な声が再び警告を発しつつある。

皮肉なことに、ホワイトハウスが記者死亡事件を批判することに及び腰なのは、サウジに対する1100億ドル(約12.3兆円)相当の武器輸出が失われる可能性を心配しているからだ。

もっとも、米国のビジネス界では、この武器取引のうち契約が締結しているのは約10%程度に過ぎず、残りは拘束力のない覚書で言及されているだけであることは周知の事実だ。実際のところ米国にとって、サウジ向け貿易はスイス向けの規模にも及ばないのである。

Slideshow (2 Images)
カショギ氏殺害が起きた中東地域は現在、非常に緊迫感に満ちた複雑な状況にある。同記者が陥った運命は、他の真実と合わせて、この地域の反体制派が直面する深刻な危険を浮き彫りにしている。

また今回の事件は、中東において長年対立しているイランとサウジについても、善悪の対立ではなく、危険な2つ悪が対立しているのだということを明らかにした。両国とも女性の地位向上を促進していると主張しているが、どちらも代表的なフェミニストは監禁の憂き目にあっている。また、公正なイスラム社会の守護者をもって任じているが、どちらも反体制派を投獄し、拷問・殺害している。

カショギ氏の死は当然ながら私たちの関心を集めているが、それはなんといっても、この事件が米国政府とサウジ政府の緊密な同盟関係に対する疑問を生むからだ。だが残念なことに、米国とイランのあいだでは、そのような関係が全くないため、イランにおける多くの「カショギ氏」の境遇については調査も報道もはるかに少ない。

どちらの国も、「改革」は政治的な外観を取り繕うだけの飾りにすぎない。それは、ほとんどの場合、企業からの投資を自国に呼びこむために西側諸国を釣り上げる「エサ」だった。

サウジとイランの覇権争いが膠着状態にあるのは意外なことではない。国民から見ても国際社会から見ても、両国は本質的にあまりにも似ていて区別ができないのだ。

AT&T Inc
29.98
T.NNEW YORK STOCK EXCHANGE
-0.38(-1.25%)
T.NAAPL.OSBUX.ODKS.NKR.N
結局、彼らは同盟国としては信頼が置けない。彼らは米国製の武器を買い、自国産の石油を世界に売ることはできるだろうが、その無法ぶりは遅かれ早かれ、「巻き添え被害」という形で米国にはるかに大きな負担をもたらすだろう。というのも、抑制されることなく拡散することが、暴力の非文明的かつ傲慢な本質だからである。

企業の経営幹部らがこのようにはっきりした見解を表明することはないかもしれないが、彼らは自発的にカショギ氏の死に対応している。

JPモルガン(JPM.N)、ブラックストーン(BX.N)、ニューヨーク・タイムズ、CNN、CNBC、ウーバーUBER.UL、ゴールドマンサックス(GS.N)などのトップ幹部は、今週サウジ政府が開催する投資会議への出席を自発的に取りやめた。不承不承ではあるが、ムニューシン米財務長官や国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事もこれに倣った。

「良心の伝染」は一般的に3段階で進展する。

まず、自らの倫理観に従うリーダーたちが動く。次いで、自分の支持者からのプレッシャーに対応する人々が動く。最後に、風向きの変化を感じ取り、歴史の負け組になることを恐れるグループが、この第1波、第2波に続いて動く。

企業リーダーたちが今回、自らの立場を決めた理由は何であれ、彼らが最近起す集団的な動きは、歴史を変えつつある。中東においても、人権や女性の地位向上に取り組む活動家などの善良な勢力と連携することにより、企業は民主的な変革への地ならしに貢献できるのである。

*ジェフリー ソネンフェルド氏は、イェール大学経営大学院の上級副学部長で著書に「逆境を乗り越えるもの(原題Firing Back)」がある。また、ロヤ・ハカキアン氏は、「Assassins of theTurquoise Palace(原題)」やペルシャ語詩の著者であり、グッゲンハイム財団からノンフィクションで奨励金を受けている。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/sonnenfeld-khashoggi-idJPKCN1N009J


 

サウジリスク台頭でも上がらない原油価格
供給過剰で積み上がる原油在庫、さらに忍び寄る需要鈍化の影
2018.10.26(金) 藤 和彦
「砂漠のダボス会議」にサルマン皇太子、参加者と談笑 自撮りも
サウジアラビアの首都リヤドで開幕した国際会議「未来投資イニシアチブ」に出席したサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(2018年10月23日撮影)。(c)FAYEZ NURELDINE / AFP〔AFPBB News〕

 米WTI原油先物価格はこのところ1バレル=70ドル割れで推移している(北海ブレント原油先物価格も1バレル=80ドル割れの状態となっている)。

 10月に入ってトルコのサウジアラビア領事館で起きたサウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏殺害事件が世界を揺るがせている。この事件から生じたサウジアラビアリスクは原油市場にどのような影響を与えるのだろうか。

 まずは足元の原油市場の動向を確認してみたい。

拡大している原油生産量
 9月のOPECの原油生産量は前月比12万バレル増の日量3268万バレルとなり、減産遵守率は前月の129%から111%に下落した。イランでは前月比15万バレル減、ベネズエラが同4万バレル減となったが、サウジアラビアやリビアは前月比10万バレル超の増加となった。リビアは政情不安にもかかわらず日量100万バレルの大台に回復しており、英BPやイタリアのENIの協力を得て来年(2019年)第1四半期に日量数十万バレルの増産が可能な状況になりつつある(10月22日付ブルームバーグ)。ロシアの原油生産も、ソ連崩壊後の最高水準を続けているものと見込まれる。

 米国の原油生産量は10月に入り日量1120万バレルと過去最高を更新した。米エネルギー省によれば11月の主要シェールオイル産地の生産量は前月比10万バレル増の日量771万バレルとなる見通しである。米エネルギー省は「2019年の原油生産量は1180万バレルに達する」との見方を示していたが、米国内務省は10月17日、「インフラ面での課題はあるものの、2020年までに米国の原油生産量は日量1400万バレルに達する可能性がある」との予測を明らかにした(10月17日付OILPRICE)。米国産原油の輸出量が2020年までに現在の日量200万バレル強から同400万バレルにまで拡大するとの期待も出ている(10月9日付OILPRICE)。

 一方、「11月から始まる制裁によってイラン産原油の輸出量をゼロにする」との米国の目標は達成の見込みがなくなりつつある。米国のムニューシン財務長官は10月21日「イラン産原油の輸出量は既に大幅に削減されているが、11月にゼロになるとは考えていない」と述べた。

 また、イラン産原油輸入第1位の中国では、大連港に10月から11月初めにかけて過去最大量(計2200万バレル)のイラン産原油が到着することが明らかになっている(10月18日付OILPRICE)。イラン産原油輸入第2位のインドでも、9月の輸入量は前月比1%増の日量53万万バレルと下げ止まりの状態となりつつある(10月12日付OILPRICE)。

 イランのザンギャネ石油相は10月22日、「イラン産原油を他の産油国の生産では代替できない」との主張を繰り返した。市場関係者の間で「イラン産原油の減産」は上げ要因としての効力を失いつつある。

不透明さを増す中国の原油需要
 次に需要面である。

 中国の9月の原油輸入量は日量905万バレルとなり、5月以来4カ月ぶりの高水準となった。冬の到来に備え独立系製油所(茶壺)の輸入量が前月比24%増となったからである(10月15日付OILPRICE)。9月の中国国内の原油需要は引き続き好調だった。

 しかし、今後の需要動向は不透明さを増している。中国自動車工業協会が10月12日に発表した9月の新車販売台数は前年比11.6%減の239万台にとどまり、3カ月連続で前年水準を下回った。2桁の落ち込みは旧正月の時期を除けば異例である。対米貿易摩擦を受けた中国株の下落で新車購入の意欲が減退しているとの見方が一般的である。

 中国株式市場の時価総額は、今年1月から約3兆ドル減少した。対米貿易摩擦の激化による人民元の下落が資本流出を招いている(10月19日付ブルームバーグ)。中国当局は10月に入り、資本流出を阻止するため、国内居住者による対外投資を制限する「窓口指導」に乗り出しているが(10月12日付ロイター)、人民元の不安定化に歯止めがかからない状態が続いている。

 また、市場環境が悪化する中、ローンの担保として差し入れられた約69兆円相当の株式が大きな懸念材料となっている(10月17日付ブルームバーグ)。担保として差し入れられた株式の価値が下がれば、不動産ローンのデフォルトが高まるリスクが高まる(株式バブルの崩壊が不動産バブルの崩壊につながる)からである。このように中国株の下落が原油市場に悪影響を与える可能性が生じている(10月18日付OILPRICE)。

 当局としては思い切った金融緩和を行いたいところであるが、消費者物価が上がってきているのが悩みの種である。9月の中国のCPI(消費者物価指数)は当局発表では前年比2.5%増だが、民間統計では16%増にまで跳ね上がっている(10月16日付ウォール・ストリート・ジャーナル)。

 こうした情勢の変化に応じ、原油市場では「イランへの経済制裁」の次の材料として「忍び寄る需要鈍化の影」が浮上してきている(10月16日付日本経済新聞)。米中貿易戦争による中国経済の変調に加え、インドをはじめとする新興国の需要が減退するとの懸念である。

 市場の需給の状態を判断するための原油在庫も再び積み上がりつつある。米国の原油在庫は今年6月以来の水準にまで増加し、石油製品の在庫を合わせると昨年10月以来の高水準である。世界の原油在庫も昨年第3四半期は日量90万バレル以上減少していたが、今年第4四半期に同5万バレル超の増加に転ずる見通しである。

 2014年後半からの原油価格の動向を振り返ると、供給過剰により原油価格は1バレル=40ドル割れし、協調減産などで供給不足に転ずると同70ドル超えした。今後は同60ドル弱にまで低下していくのではないだろうか。

苦境に陥っているサウジアラビア経済
 そう思っていた矢先に、深刻なサウジアラビアリスクの台頭である。

 前回のコラムで「カショギ氏殺害事件でサウジアラビアは苦境に追い込まれる」との見立てを示したが、筆者の予想を超える事態にまで発展してしまったようだ。

 国際社会からの非難に反発したサウジアラビアは当初国営メディアを通じて「原油を政治的武器に使う」とのメッセージを発した。市場関係者は「原油価格は1バレル=100ドルを超えるのではないか」と色めきたったが、10月15日にサウジアラビアのファハド・エネルギー産業鉱物資源相は「1973年のような石油禁輸措置を取る意向はないし、原油と政治とは別物だ」との考えを示した。さらにファハド氏は「10月の原油生産量は日量1070万バレルだが、近い将来日量1100万バレルに引き上げる用意がある。市場での必要性に応じて最大1200万バレルまで増産できる能力がある」と述べた。

 1973年の第1次石油危機の際、OPEC諸国は原油を政治的武器に使用したとされているが、その結果は大失敗だった。原油価格の高騰で先進国の原油需要が冷え込みばかりか、北海油田など非OPEC産油国の台頭を許してしまったからである。

 ファハド氏の発言は筆者の想定通りだったが、最後に「(我々が増産に努めても)原油価格が1バレル=100ドルを超えないと保証することはできない」と付け加えたのは意外だった。ファハド氏はこれまで原油価格の見通しにあまり言及してこなかったからだ。

 このような不規則発言が飛び出した背景に、サウジアラビア経済が苦境に陥っている事実があるのは間違いない。

 サウジアラビア株式市場では10月18日までの1週間の外国人投資家による売りが10.7億ドルに上り、2015年半ばに外資による直接購入が解禁されて以来最大規模になった(10月21日付ロイター)。10月22日の週になっても株式市場の売りが続いている。サウジアラビアは2016年から2年間で海外市場から680億ドル相当の借り入れを行っているが、カショギ氏殺害事件が明るみになって以来、通貨リヤルは売り込まれ、サウジアラビア国債の保証コスト(CDS)は30%以上上昇している。

 サウジアラビアの脱石油経済化を強力に推進しているムハンマド皇太子の主導により、10月23日から首都リヤドで「未来投資イニシアティブ」が開催されている。だが事件発覚後、欧米の政府閣僚や金融機関のトップなどから欠席表明が相次ぎ、「砂漠のダボス会議」と呼ばれた昨年の華やかさとは様変わりである。ムハンマド皇太子の強権政治の影響から国内投資が冷え込んでおり、海外からの投資も落ち込むことは必至の情勢だ。何より問題なのは「ムハンマド皇太子自身が最大のリスクである」と国際社会が気づき始めたことである(10月19日付ブルームバーグ)。

 経済の苦境を脱するために原油売却から得られる収入に頼らざるを得ない状況下では「原油価格は高ければ高いほどありがたい」というファハド氏の本音が垣間見えたのが先述の発言だったと筆者は考えている。だがサウジアラビアの増産姿勢が改めて鮮明になったことが原油価格への下押し圧力となり、原油収入は逆に減ってしまう(10月23日の会議でファリハ氏が重ねて増産の方針を述べたことで原油価格は1バレル=66ドル台にまで急落した)。

ムハンマド皇太子は窮地に
 日本のメディアでは「事件にムハンマド皇太子が関与したかどうか」に焦点が集まっている感が強いが、欧米メディアでは「ポスト・ムハンマド皇太子」の議論も出始めている(10月19日付ZeroHedge)。その最有力候補はムハンマド皇太子の実弟であるハリド駐米大使(28歳)だ。ハリド氏は既にサウジアラビアに帰国したとの情報がある。

 殺害されたカショギ氏はかつて情報機関のトップなどを歴任したトルキ・ファイサル王子の顧問を務めるなど王室と太いパイプを持っており、ムハンマド皇太子のやり方に反対する王子のグループに属していたと思われる。この事件を契機に反対派の王子達が一気に勢力を盛り返す可能性がある。

 トランプ大統領は欧米首脳の中で唯一サウジアラビアを擁護しているかに見えるが、トランプ大統領の「サウジアラビアの投資が米国の雇用に欠かせない」との論調に対して「儲け最優先」との批判が出ている(10月18日付ロイター)。

 しかしトランプ大統領が本当に頭を悩ませているのは、娘婿であるクシュナー氏とムハンマド皇太子との関係ではないだろうか。

 米国の民主党下院議員は「クシュナー氏がカショギ氏をサウジアラビアの敵対者リストに加えたことが元々の原因だ」と述べている(10月22日付CNN)。ムハンマド皇太子は「なぜ米国はこの事件でこんなに怒っているのか。西側諸国が自分に対する立場を窮地に追い詰めたことを決して忘れない」とクシュナー氏に対し怒りを爆発させたとの情報もある(10月21日付アルジャジーラ)。24日には「トランプ大統領はこの事件で激怒しており、サウジアラビアに失望した」(CNN)、「米国政府は皇太子の交替を要求した」(フィナンシャルタイズム)と報じられている。

 原油市場はサウジリスクを現段階で織り込んでいないが、窮地に追い込まれた手負いの獅子であるムハンマド皇太子の次の一手でサウジアラビアリスクは一気に顕在化してしまうのではないだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54479

 


 

 
ビジネス2018年10月26日 / 18:17 / 1時間前更新
焦点:日銀、金融政策維持へ 貿易摩擦・市場変動などリスク警戒
2 分で読む

[東京 26日 ロイター] - 日銀は30、31日の金融政策決定会合で現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)付き量的・質的金融緩和政策の維持を決める見通し。会合では、激化する米中貿易摩擦や不安定化している金融市場の動向などが世界・日本経済に与える影響について活発な議論が展開される可能性が大きい。日本経済の先行きリスクは拡大しているものの、新たに示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、経済成長率(実質GDP)と消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)の見通しに大きな変化はなさそうだ。

足元の日本経済は夏場に相次いだ台風や地震など自然災害の影響で、輸出や生産に下押し圧力がかかっており、市場の一部では7─9月の実質GDPがマイナスに沈む可能性も指摘されている。

もっとも、災害からの復旧が急ピッチで進む中、訪日外国人客(インバウンド)の消費が回復基調にあるとともに、挽回生産も活発化しており、日銀内では自然災害の経済への影響は一時的との見方が多い。

一方で不透明感を強めているのが激化する米中貿易摩擦と金融市場の動向だ。米中貿易摩擦は、現時点で日本企業の活動や業績への直接的な影響は限定的にとどまっているものの、問題の長期化が企業心理に影響を与え、好調な設備投資を抑制する動きにつながらないか、日銀では動向を注視している。

貿易問題も一因とした米国株式市場の変動を受け、26日の東京市場では日経平均株価が一時2万1000円を割り込み、約7カ月ぶりの安値をつけた。市場にリスクオフ・ムードも強まりつつある中、会合では、これらの先行きリスクの強まりについて、重点的に議論が行われる可能性が高い。

<経済・物価見通し、大きく変わらず>

もっとも、足元までの内外需要は好調さを維持。物価の足取りは引き続き鈍いものの、9月の全国コアCPIは前年比1.0%上昇とプラス幅が拡大した。日銀内では経済・物価は「シナリオに沿った動き」(幹部)との見方が多く、展望リポートにおける実質GDPとコアCPIの見通しに大きな変化はなさそうだ。

前回7月の同リポートにおける実質GDP見通しは18年度が前年比1.5%増、19、20年度が同0.8%増、コアCPIは18年度が同1.1%上昇、19年度が同1.5%上昇、20年度が同1.6%上昇だった。

会合では、金融緩和長期化の副作用についても、引き続き議論が行われる見通し。

日銀が22日に公表した「金融システムリポート」では、日本の金融システムの現状について、あらためて「安定性を維持している」との判断が示された。一方、地域金融機関を中心に収益力の低下傾向が継続し、時間の経過とともに副作用が蓄積している実態も浮き彫りになった。

それでも現時点で金融機関は充実した自己資本を有し、積極的な貸し出し姿勢にも変化はみられておらず、日銀では「直ちに政策対応を迫るものではない」(別の幹部)との立場だ。

また、7月会合で決めた長期金利の変動幅拡大を容認する措置などの効果についても会合で点検する。その後の長期金利動向は、米金利や株・為替市場などの変動をある程度反映した動きになっていることもあり、日銀内では、市場機能に一定の改善がみられているとの評価が多い。

政策委員はこうした経済・物価・金融情勢における先行きリスクの強まりを意識しながらも、現状は日銀の見通しに沿って経済・物価情勢が推移していると判断しており、会合では現行の金融政策を粘り強く続けていく方針が確認される見通しだ。

伊藤純夫 清水律子 編集:石田仁志
https://jp.reuters.com/article/focus-boj-idJPKCN1N012E


 

 
ビジネス2018年10月26日 / 19:52 / 2時間前更新
国内債は増加、金利上昇局面で超長期債に入れ替え=住友生命計画
2 分で読む

[東京 26日 ロイター] - 住友生命保険は、2018年度下期の一般勘定運用計画で、国内債券を増加させる計画を示した。金利上昇局面で円建て超長期債への入れ替えを積み増す方針だ。為替ヘッジ付き外債は、ヘッジコストの高いドル以外への通貨分散を図る。オープン外債は大幅に円高が進行する局面で投資を拡大させる。外国債券全体では増加の計画となっている。

同社が26日に開催した運用方針説明会で明らかにした。

<国内債券は増加、金利上昇局面で長期化入れ替え>

下期のニューマネーは5000億円をやや下回る見通し。

国内債券は残高を増加させる計画。30年債利回りが10月4日の取引で、一時0.95%と1%が視野に入る水準まで上昇した。「30年債利回りで日銀のマイナス金利政策導入前の水準、1%を上回って1.5%に近い水準であれば、投資に値する」(運用企画部長の藤村俊雄氏)としているが、30年債0.9%台半ばの水準では、引き続き慎重な投資姿勢を崩していない。新規購入額は上期と大きく変わらない見通し。

もっとも、金利上昇局面では、30年債や40年債を中心に超長期債への入れ替えなどでALM(資産・負債の総合管理)を進める考えだ。

<外国債券は増加、大幅な円高局面でオープンにシフトも>

外国債券は増加の方針。このうち、外貨建て保険商品の販売見合いで計画されているのが2000億円前後。為替ヘッジ付外国債券はドル円のヘッジコストが上昇しているため、ドル以外の通貨へ分散投資する。投資先はユーロが中心になるが、一部は豪ドルやオセアニア通貨になる。

米債投資については、景気がピークアウトして利下げ局面になれば短期金利が低下すしてヘッジコストが低下するため、長期的な観点で、米長期金利がある程度の高い水準であれば購入も検討する、という。

オープン外債は、大幅にドル安(円高)が進展する局面で為替リスクをとったオープン外債への投資を拡大する。上期には、ドルが110円を割り込んだ局面で、ヘッジ付きからオープンに移行した。下期については、もう少し低い100─105円付近で買い下がることも考えている。

国内株式は横ばい見通し。底堅い景気と企業業績を背景に株価下落局面で買い入れを検討する一方、株価下落リスクが高まった場合には、ヘッジ・売却を検討する。また、外国株式は外部委託を活用したファンドへの投資を拡大する見通し。

◎2018年度下期の見通し(レンジ、年度末)。

日本国債10年物利回り 0.00─0.25%(年度末0.15%)

米10年債利回り    2.60─3.50%(同3.10%)

日経平均        20000─27500円(同24500円)

米ダウ         23000─29000ドル(同27000ドル)

ドル/円        100―120円(同111円)

ユーロ/円       120―145円(同136円)

星裕康
https://jp.reuters.com/article/sumitomo-life-invest-idJPKCN1N013V
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/174.html

[国際24] 米中間選挙直前の移民キャラバン、トランプへの追い風になる「逆効果」 メキシコ国境に米軍約800人派遣「止める」とトランプ

米中間選挙直前の移民キャラバン、トランプへの追い風になる「逆効果」
2018年10月25日(木)16時50分

米中間選挙直前の移民キャラバン、トランプへの追い風になる「逆効果」
移民キャラバンの背景には中南米の治安情勢の悪化がある Luis Echeverria-REUTERS

<治安悪化が深刻な中南米から一斉にアメリカを目指す移民キャラバンは、これまでのところ「キャラバン阻止」を訴えるトランプへの追い風になっている>

米中間選挙の投票日が来月6日に迫って来ました。そんななかで、連日全米のトップニュースになっているのは中米ホンジュラスからの移民キャラバンの問題です。

ホンジュラスでは、2009年の軍事クーデター後の経済の低迷と、麻薬取引を行うギャング集団の活動のために治安が大きく悪化しており、まず経済力のある国民から国外に脱出しているのが現状です。

そんななかで、「中米移民キャラバン」という市民団体が小さな子供と親を中心に、これまで「逃げたくても逃げられなかった」人を集めてキャラバンを組み、アメリカを目指すという運動を開始しました。まず3月25日には、「第一回キャラバン」がホンジュラス南部のチョルテカ県を起点としてスタート、グアテマラ経由で約1200人がメキシコに入り、北上して4月29日には、メキシコとカリフォルニアの国境の町ティファナに到着しました。

この事件も連日報道されていましたが、結局のところセッションズ司法長官は、「この人々は我々の法律に違反しようとしている」としてこれを拒否。150人が難民申請をしようとしたのですが、受理されるどころか申請のために国境を少しでも越えたなどとして10数人と支援者が逮捕される結果に終わりました。

それから7カ月後、今度は「第二回キャラバン」が企画され、そのプランはSNSで拡散され、今度はホンジュラス第二の都市サンペドロスーラを起点としてのキャラバンが組まれました。この街は、元々はホンジュラスの経済の中心ですが、現在は麻薬ギャングの抗争が激しく、「世界で一番危険な町」と言われている場所です。

今回は、スタート時点では500人規模であったのが、徐々に参加者が増え、第一回よりも規模が大きくなっています。ホンジュラスからグアテマラに入ると規模は4000人近くになり、メキシコはトラブルを避けるために、グアテマラ国境に大規模な警察隊を派遣しました。しかし強制的な排除はできず、キャラバンはメキシコに入りました。現在は、約5000人が徒歩でメキシコ国内を北上中です。

今回の「第二回」ですが、アメリカの中間選挙を意識して、この移民問題をアメリカの政治問題にして何とか活路を開こう、そのような意図でタイミングが図られた可能性はあります。ですが現時点では、反対に「トランプ派が工作を仕掛けた?」のではないかと思わせるぐらい、政治的には逆効果になっています。

次のページ 「キャラバン阻止」が連日ニュースに

つまり、連日この「キャラバン」が報道されることで、トランプ派には追い風になっているのです。まず、キャラバンが出発した時点で、ペンス副大統領は、「(移民を送り出している)ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグアの3カ国の政府は、住民を国外に出さないよう強制措置を行え」という声明を出しています。

これを受けて、トランプ大統領は、この3カ国に「移民を送り出したら援助を停止する」と脅しています。また、南部に遊説した際には「民主党はこうした移民を歓迎している」などと批判する一方で、「(アメリカに到達しても)絶対に入国させない」として入国を阻止するために軍の出動を行うという示唆もしています。

とにかく、ここへ来て大統領は遊説のたびに、この「キャラバン阻止」という話題ばかりを取り上げており、それが支持者に受けるという状況になっています。ただ、この問題を「取り上げ過ぎる」とヒスパニック系の有権者に悪印象を与える危険があります。これを避けるために、サンダース報道官などは「キャラバンにはアラブのテロリストが混じっている」などと、証拠もないことを述べて大統領を擁護しています。

そんな中で、トランプ系の共和党候補の中からは、「大統領は国境地帯に戒厳令を布告すべきだ」という主張も出てきています。またネットでは、この「キャラバン」に資金を提供しているとして、投資家のジョージ・ソロス氏を批判する書き込みがあり、ソロス氏が脅迫がされているという報道もありました。

一方の民主党ですが、2つに分かれています。サンダース議員などの流れをくむ左派候補は、このキャラバンに同情的です。そして、従来から主張している不法移民の取り締まり組織「ICE(移民・関税執行局)」の解散を訴えています。一方で、中道派は保守的な有権者の離反を恐れてこの移民問題にはダンマリという感じです。それでも地元密着型の下院の小選挙区への影響は少ないでしょうが、州単位の選挙となる上院では、共和党側に有利な情勢を後押ししている状況です。

キャラバンは、このままのスピードで進むとアメリカ国境に11月下旬に到着するペースで進んでいます。ということは、11月6日の投票日までは、連日この「キャラバン隊」の映像がニュースで報じられることになり、それは現時点ではトランプ側の政治的モメンタム作りに一役買っているという、何とも言えない皮肉な「逆効果」を生んでいます。

この筆者のコラム
米中間選挙直前の移民キャラバン、トランプへの追い風になる「逆効果」 2018.10.25

米中間選挙の直前情勢、上院は共和党が優勢か 2018.10.23

日本の地面師詐欺は、アメリカの「タイトル保険」で防げる 2018.10.18

サウジのジャーナリスト殺害疑惑、誰が得して誰が損した? 2018.10.16

突然辞任したヘイリー国連大使は、トランプ政権内の「抵抗勢力」だったのか 2018.10.11

トランプ時代のアメリカでは、炭酸飲料の香料まで訴訟の標的に 2018.10.09

「ぶどう1粒で逮捕」のニュースは、もっと背景の報道を 2018.10.04

記事一覧へ
プロフィール

冷泉彰彦
(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

冷泉彰彦のプリンストン通信
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2018/10/post-1041_2.php


 
メキシコ国境に米軍約800人派遣へ、移民キャラバン「止める」とトランプ氏

2018年10月26日 11:11 発信地:ワシントンD.C./米国 [ 米国 北米 メキシコ ホンジュラス 中南米 ]
 
http://afpbb.ismcdn.jp/mwimgs/0/5/810x540/img_0538a32ec0533b9337991f559c9fbfe1190860.jpg

米国を目指し、メキシコ南部チアパス州ウイストラの路上を進む移民キャラバン(2018年10月24日撮影)。(c)PEDRO PARDO / AFP 


【10月26日 AFP】(写真追加)中米から米国を目指す数千人の移民集団(キャラバン)が北上を続けている問題で、米国防総省は25日中にも米メキシコ国境に800人規模の米軍を派遣する見通しだ。米当局者2人が25日、AFPに明らかにした。

 米メキシコ国境には既に州兵約2000人が展開し、国境管理を支援している。米軍はこの増援として全米の複数の基地から派兵されるとみられる。

 AFPの取材に応じた米当局者によると、ジェームズ・マティス(James Mattis)国防長官は25日か26日に派遣命令に署名する見通し。米軍は主にテントや車両、機器類などを提供する後方支援を行う予定で、医官や技官も派遣される。今回の派兵は国境管理を担当する国土安全保障省の要請に基づき、軍の支援を必要とする「希望事項」を満たすのが目的という。

 これに先立ちドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領は25日、ツイッター(Twitter)への投稿で、「民主党に触発された」法律が国境管理を難しくしていると主張した上で「この国家非常事態に際し、軍の投入を進めている。彼らを食い止める!」と宣言。

 さらに「キャラバンの人々よ、引き返せ。米国に不法入国はさせない。母国に帰れ。そして(米入国を)希望するのなら、何百万人もの人々がしているように市民権を申請せよ!」とツイートした。民主党の巻き返しが予想される米中間選挙を目前に控え、強硬な移民政策を掲げるトランプ氏はキャラバン問題に繰り返し言及し、最重要ニュース扱いを連日続けている。

 13日にホンジュラス北部サンペドロスラ(San Pedro Sula)を出発したキャラバンは現在、メキシコを北上中。国連によると、規模は7000人に膨れ上がっているとみられる。(c)AFP/Thomas WATKINS
http://www.afpbb.com/articles/-/3194782




http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/402.html

[経世済民129] 米国株・国債・商品ハイテク売り続く、S&Pが調整入り目前 成長エンジンに暗雲、株が大幅安 イタリア格下げ回避「ネガティブ
米国株・国債・商品
ハイテク売り続く、S&Pが調整入り目前
Sarah Ponczek、Vildana Hajric
2018年10月27日 6:21 JST 更新日時 2018年10月27日 7:17 JST
• 決算期待外れのアマゾンとアルファベット大幅安、ナスダック2%安
• 「不安定な環境」続く−原油は3週続落、金は4週続伸
26日の米株式市場ではハイテク売りが続き、ナスダック総合指数とS&P500種株価指数が調整局面入りすれすれの水準となった。米国債は米国株の軟調を背景とした逃避需要で大幅反発した。
• 米国株は大幅反落、S&P500とナスダック総合は調整局面入りに近づく
• 米国債は大幅反発、10年債利回り3.08%
• NY原油は3日続伸−週間では3週続落
• NY金は続伸、米株軟調受け−今週は0.6%高
  S&P500種は9月に記録した直近の最高値からの下落率が10%弱となった。ナスダック総合は、前日発表した決算が市場予想に届かなかったアマゾン・ドット・コムとアルファベットが売られたことの影響をまともに受けた。CBOEボラティリティー指数(VIX)は、相場変動が2月以来で最も激しいことを示している。
  S&P500種は前日比1.7%下げて2658.69。ダウ工業株30種平均は296.24ドル(1.2%)安の24688.31ドル、ナスダック総合は2.1%安。ニューヨーク時間午後4時59分現在、米国債市場では10年債利回りが4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し3.08%。
  ニューヨーク原油先物相場は3日続伸。一時はバレル当たり67ドルを割り込む場面があった。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物12月限は39セント(0.4%)高の1バレル=67.59ドルで終了。ただ週間では2.2%下落し、これで3週続落となった。
  ニューヨーク金先物相場は続伸。朝方の米国株急落が金を押し上げたと、RJOフューチャーズのストラテジスト、フィル・ストライブル氏は指摘した。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は0.3%高の1オンス=1235.80ドルで終了。日中は7月以来の高値を付ける場面があった。週間ベースでも上昇し、連騰記録を1月以来最長の4週に延ばした。
  ニューブリッジ・セキュリティーズのチーフマーケットストラテジスト、ドナルド・セルキン氏は「大幅上昇する日があるかと思えば逆に急落する日もあり、非常に足場が不安定な環境だ」と指摘。「一貫性がない。危なっかしく、神経がすり減る」と述べた。
  米10年債利回りは今週11bp以上下げ、週間ベースで5月以来の大幅な低下となった。
原題:Tech Meltdown Pushes Stocks to Edge of Correction: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Rally, Curve Steepens, Amid Tech-Led Equity Sell-Off
Oil’s Decline Stretches to Third Week as ‘Fear Selling’ Spreads
PRECIOUS: Gold Climbs for Fourth Straight Week as Equities Reel
(第6段落以降を追加し、更新します.)
 
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-26/PH840Y6JIJUQ01



成長エンジンに暗雲、アマゾンとアルファベットの株が大幅安
Alistair Barr
2018年10月27日 2:15 JST
インターネット2大企業、米アマゾン・ドット・コムとアルファベットの7−9月(第3四半期)決算で成長減速が示されたことが響き、26日の米市場では両社の株価が急落した。
  インターネット小売り最大手のアマゾンは、7−9月の売上高がアナリストの予想を下回った。売上高が2四半期連続で市場予想を下回るのはほぼ4年ぶり。年末商戦を含む10−12月(第4四半期)についても予想を下回る売り上げ見通しを示した。
  グーグルの持ち株会社アルファベットは第3四半期、売上高がやはりアナリスト予想に届かず、グーグル自体の資産から得られる収入は22%増と前期から伸びが鈍化した。
  26日の米株式市場でアマゾンは一時、前日比10.1%安とここ2年余りで最大の下げとなる場面があった。アルファベットは一時5.6%下落した。
ニューバーガー・バーマンのアナリスト、ダニエル・フラックス氏がインタビューで、アマゾンとアルファベットの決算についてコメント
(Bloomberg)
  両社は低金利環境のもと、堅調な世界経済に支えられる形で急速に拡大する電子商取引、デジタル広告、クラウドコンピューティング市場の恩恵にあずかる機会を投資家に提供し、株価が急騰していた。
  だが現在では金利は上昇し、投資家は投資リターンを求めて別の選択肢に目を向けているほか、景気見通しが不透明になった。株式相場が大幅下落したばかりでもあり、両社に業績面でつまずく余地はほとんどない。
  イージス・キャピタルのアナリスト、ビクター・アンソニー氏は「現在の市場環境を踏まえれば、決算は完璧である必要があり、さもなければ売り浴びせの対象になる」と語った。
原題:Amazon, Alphabet Fall as Growth Engines Sputter, Spending Surges(抜粋)


米ミシガン大消費者マインド指数:10月は低下−市場予想も下回る
Sarah Foster
2018年10月26日 23:10 JST 更新日時 2018年10月27日 2:20 JST
米国の消費者マインドは10月に低下し、市場予想も若干下回った。パーソナルファイナンスや大型商品の購入環境に対する見方が後退した。
ミシガン大学消費者マインド指数のハイライト(10月、確定値)
• 消費者マインド指数は98.6(市場予想99)と、前月の100.1から低下−速報値は99
• 現況指数は113.1に低下(前月115.2)−速報値は114.4
• 期待指数は89.3に低下(前月90.5)−速報値は89.1
  
  ミシガン大の消費者調査ディレクター、リチャード・カーティン氏は発表資料で「株価下落、インフレ率と金利の上昇、さらに中間選挙を巡るネガティブキャンペーンは、これまで消費者の信頼感を押し下げる要因にはなっていない」としつつ、「言うまでもないことだが、消費者がそうした要素の影響から免れることはない」と指摘した。
  耐久財の購入環境に関する指数は163に低下(前月164)。10月速報値は166だった。
  1年先のインフレ期待は2.9%(前月2.7%)。5−10年先のインフレ期待は2.4%(前月2.5%)だった。
  統計の詳細は表をご覧ください。
原題:U.S. Consumer Sentiment Cools on Buying Conditions for Durables(抜粋)
(統計の詳細を追加し、更新します)


イタリア:S&Pの格下げ回避−見通しは「ネガティブ」
Lorenzo Totaro、Hari Govind
2018年10月27日 9:10 JST
• 「BBB」に据え置き−投機的格付けを2段階上回る
• ムーディーズは先週、イタリアの信用格付けを引き下げていた
S&Pグローバル・レーティングは26日、イタリアの信用格付けを「BBB」に据え置くと発表した。見通しは「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。
  S&Pによる今回の変更は予想されていたほど大幅ではなかった。「BBB」はジャンク級(投機的格付け)を2段階上回る。ムーディーズ・インベスターズ・サービスは先週、イタリアを格下げし、投機的格付けを1段階上回る水準としたが、見通しは「安定的」に設定していた。
  S&Pは発表文で、「イタリア政府の経済・予算計画は民間セクターへの投資を押し出すことになり、同国の経済成長を弱める恐れがある」と指摘。「同計画はイタリアの従来の持続的な財政再建の道筋の転換を示し、過去の年金制度改革を一部緩める」とも記した。
  一方、イタリアのディマイオ副首相はツイッターで、「格付け各社は国民の福祉を評価するわけではないが、政府に反対し続けるためにS&Pの判断を待っていた者にとっては悪いサプライズになった。イタリアの格付けが維持された」と表明。「われわれは前に進む。変化が起きる」と書き込んだ。
原題:Italy Escapes a Second Rating Downgrade a Week After Moody’s (1)(抜粋)
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
LEARN MORE
関連ニュース
1. 【米国株・国債・商品】ハイテク売り続く、S&Pが調整入り目前
2. 【NY外為】円上昇、株安で逃避需要集まる−ドルは軟調
3. トランプ政権が貿易問題除外を検討、G20での米中首脳会談−関係者
4. 米GDP:7−9月速報値、前期比年率3.5%増−消費や在庫が寄与
5. 米OMB局長、金融当局に利上げ路線再考求める−トランプ氏に同調
6.
ロシア中銀:政策金利7.5%に据え置き、大方の予想通り
Olga Tanas、Anna Andrianova
2018年10月26日 20:02 JST
• 調査に答えたエコノミスト41人中39人が据え置きを予想していた
• インフレ率は年内に4%を超え来年前半に6%に達する可能性
ロシア中央銀行は26日、政策金利据え置きを発表した。インフレリスクは根強いものの、先月の意表を突いた利上げの後、いったん引き締めを停止した。
  中銀は1週間物入札レポ金利を7.5%に据え置いた。ブルームバーグの調査に答えたエコノミスト41人中39人が据え置きを予想、2人は7.75%への利上げを見込んでいた。
  ユダエワ第1副総裁によれば、消費者物価の伸びは先月3.4%に加速。これは当局の想定内なものの、中銀はインフレ率が目標とする4%を年内に超え、来年前半に6%に達する可能性があるとみている。

原題:Bank of Russia Holds Rate in Pause for Inflation Threats to Come(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-26/PH7CNU6S972A01

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/182.html

[戦争b22] トランプ大統領、核廃棄条約離脱でロシアの術中に
コラム2018年10月27日 / 13:00 / 3時間前更新

トランプ大統領、核廃棄条約離脱でロシアの術中に
David A. Andelman
4 分で読む

[22日 ロイター] - トランプ米大統領の任期を通じて、これが最も危険な賭けになるかもしれない。また国際条約から一方的に離脱するというものだが、今度は即座に影響が出るばかりか、潜在的に国の存亡を危うくしかねない。

トランプ大統領は20日、ロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約から離脱する方針を発表した。1987年に当時のレーガン米大統領と旧ソ連のゴルバチョフ書記長によって調印された同条約は、欧州からの核兵器撤去を定めた画期的なものだ。

米国がINF廃棄条約を離脱すれば、破壊力が高く配備が容易な新世代の核兵器全般の開発や配備を巡り、現存する制約がすべて撤廃されてしまう。ロシアのプーチン大統領としても、自国核戦力の近代化や更新をためらう理由が消え失せるだろう。

そうなれば、新顔である北朝鮮やイランの核兵器が世界を脅かし、新たなミサイル技術が増殖しているこの時代において、再び核軍拡競争が息を吹き返すことになる。

トランプ大統領の思慮に欠けた場当たり的な言動は、プーチン大統領の氏の術中に見事にはまっている。

プーチン氏がすでにINF廃棄条約の原則や規定を軽視している可能性はあるものの、米国が離脱となれば、何ら責任を問われることなく条約を軽視し、条約違反を非難される心配もなくなってしまう。

幸いINF廃棄条約は1988年5月27日に米上院の3分の2の賛成を得て批准された条約であり、同じく3分の2の議決を得なければ公式に廃止することはできない。現在のように分断された政治環境の下では、そのような議決に至る可能性はきわめて低い。

とはいえ、理屈の上ではトランプ大統領は上院の議決がなくても条約に違反する動きを始めることが可能だ。ロシアがそれに対して報復の脅しを続けるならば、条約破棄と同様の効果が生じることになる。

そして、新たな核軍拡競争のコストは天文学的な数字になる。超党派の軍備管理協会では、米核戦力更新のために納税者が負担するコストは、今後30年間で1兆2000億ドル(約134兆円)以上に達すると試算している。

トランプ大統領が表明したINF廃棄条約からの離脱は、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国や、ウクライナ、ジョージアを震え上がらせずにはおかないだろう。いずれも旧ソ連圏に属し、プーチン大統領としては、いわば「新ロシア帝国」に是非組み込みたい地域だ。

欧州諸国も、突如として自国が、従来はINF廃棄条約によって禁止されていた兵器の射程内に入ったことに気づき、同じく懸念を深めずにはいられないだろう。

INF廃棄条約の対象となっている兵器は、射程500─1000キロの短距離ミサイルと、射程1000─5000キロの中距離ミサイルすべてであり、通常弾頭と核弾頭の双方を含む。1991年までに実に2692基が廃棄された。

INF廃棄条約の発端となったのは、1986年にアイスランドのレイキャビクで2日間にわたって行われたレーガン、ゴルバチョフ両氏の首脳会談だ。

たまたま筆者は、同会談についてフランスのジャーナリスト/歴史家であるギヨーム・セリーナ氏の著書「An Impossible Dream: Reagan, Gorbachev and a World Without the Bomb」を翻訳する機会に恵まれた。来年刊行される同書は、ゴルバチョフ氏による序文をはじめ、公開された多くの旧ソ連公文書や、当時の指導者を含め、米ソ両国の代表団に随行した当時の関係者から得られた資料が盛り込まれている。

当時ゴルバチョフ氏は、米ソ両国があらゆる核兵器を全面廃棄することを提案して、米国民に驚愕と衝撃を与えた。それは大胆で前例のない、一発逆転を狙った動きだった。しかしこれを実現するには、レーガン氏のお気に入りだった戦略防衛構想(SDI)を諦める必要があった。

SDIは構想不十分で失敗に終り、実際にはまったく機能しなかった宇宙兵器による防衛システムだが、レーガン氏はその放棄を拒否する一方で、もっと限定的なINF廃棄条約には賛同した。(現在87歳のゴルバチョフ氏は米国のINF廃棄条約離脱方針を批判し、「ワシントンの連中は、その行き着く先が何だか分かっているのか」と述べたとロシアのインターファックスは報じている)

この条約に基づいて10年間にわたる実施が約束された査察は、公式には2001年に終了した。その後も両国はおおむね規定を遵守していたが、オバマ前政権は2014年7月、ロシアが同条約で禁止されている核弾頭を搭載可能な射程約1240マイルの地上発射巡航ミサイル実験を行っていると非難した。

その2年後、筆者がバルト3国を訪問した際、防衛当局者は「ロシアの軍事力は気になるが、安全保障を確保するうえで、ロシアがINF廃棄条約の規定を遵守してくれるものと当てにしている」と筆者に語った。

だが米国防総省は昨年、ロシアが「ノバトル9M729」(西側の呼称では「SSC−8」)ミサイルを初めて配備したとして公式に非難した。これを受けて、昨年12月には同ミサイルの開発や製造に関与したロシア企業に対する一連の制裁が行われている。

Slideshow (2 Images)
ロシア側は、ミサイルの射程距離とカリーニングラード固定基地への配備は条約違反に相当しないと主張している。だが、カリーニングラードは北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるリトアニアとポーランドに挟まれた飛び地のロシア領であり、ここへのSSC−8配備は一連の深刻な問題を招いている。

トランプ大統領がINF廃棄条約からの一方的離脱という脅しをかけても、この問題は何ら解決されていない。

現在の世界が求めているのは、軍縮をさらに前進させることであって、後退させることではない。INF廃棄条約を締結していない中国は、同条約では禁止されているさまざまなミサイルを保有している。

ロシアとのINF廃棄条約から離脱して軍備拡大を進める主な理由として、米当局者は太平洋地域における中国の軍事力増強を挙げている。これは恐ろしく、下手をすると致命傷になりかねない発想だ。

トランプ政権に必要なのは、一方的な離脱によってINF廃棄条約を骨抜きにしてしまうことではなく、中国などを合意の枠組みに取り込んでいく道を見つけることだ。

モスクワを訪問したボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、22日にはロシア側にトランプ大統領の方針を公式に伝えた。

合意の類は何でも廃棄したがり、どのような戦闘にもためらうことのない外交官であるボルトン補佐官が、30年前のINF廃棄条約の契機となったような協議を、ロシア相手に行うことを検討したとは考えにくい。だが、ますます不安定さが増す今日の世界において、安全保障に至る現実的な道は、その種の器用で知的な外交だけなのだ。

*筆者は、米紙ニューヨーク・タイムズや米CBSテレビの元特派員。著書に「A Shattered Peace: Versailles 1919 and the Price We Pay Today」がある。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/andelman-nuclear-column-idJPKCN1N00ZF

http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/385.html

[経世済民129] 貿易戦争過熱、中国は再び「レアアース砲」放つ構え 難解な中銀の言い回し、市場は「暗号解読」トランプFRB攻撃の5ポイント

 

コラム2018年10月27日 / 08:28 / 7時間前更新

貿易戦争過熱、中国は再び「レアアース砲」放つ構え
Pete Sweeney
2 分で読む

[香港 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国がレアアース(希土類元素)の生産に制限をかけている。レアアース業界の動向を調査しているアダマス・インテリジェンスがこう指摘している。

これは、採掘が難しいこれら鉱物の過剰供給問題の対策となるだろう。一方で、海外のバイヤーが、触媒や電子機器、武器などに使われるセリウムやネオジムなどの必須原料を入手するのが困難な状況に容易になりかねない。そうなれば、貿易戦争は劇的に拡大し、企業の利幅は大きく圧迫される。遅ればせながら中国以外の調達ルートを確保しようと急いでも、遅きに失した感がある。

レアアース市場での中国の圧倒的な存在感は、同国の貿易相手国が抱える懸念の代表的なものだ。レアアースは、地球の地殻にふんだんに存在しているが、採取するのが難しい。

中国の指導者トウ小平氏は約20年前、レアアースは中東における原油のようなものだとして戦略的資源に位置づけ、国有企業に採掘を指示した。国有企業は、民間の中小鉱業企業を使い、環境を汚染し放題に汚染しながら、短期間で深く掘り進めた。その結果、外国同業者の多くの事業採算が合わなくなるほど、価格は下落した。

米地質調査所のデータによると、中国には世界の埋蔵レアアースの3割程度があり、昨年は生産量の8割が中国産だった。

米国は昨年、中国から1億5000万ドル(約168億円)相当のレアアースを輸入している。そしてこれは、安全保障のタカ派にとって心配の種だ。中国政府は2010年、ほぼ市場独占状態であることを対日関係で利用し、日本への輸出を止めている。レアアースは最新兵器にも使用されており、米国防総省は懸念を深めている。

いま再び、中国は以前使った戦略を再利用しようとしている可能性がある。アダマスによると、中国は2018年下半期の生産量を4万5000トンに減らす計画だ。これまでの過剰生産の影響を軽減する効果も一部あるだろうが、アダマスは、外国のバイヤーの取り分がほとんどなくなると分析している。

その一方で、減産により価格は上昇する。オーストラリアのライナス(LYC.AX)のような数少ない貴重な代替生産事業者には朗報だろうが、消費財の製造業者には厳しい。

中国は、相手国から譲歩を得る見返りとして輸出を行うこともできる。日本の安倍晋三首相は25日に北京を訪れているが、パナソニック(6752.T)やトヨタ自動車(7203.T)のような企業は、レアアースのコスト上昇の影響を受ける。米国企業の痛みはさらに大きくなる可能性がある。

仮に必要な経済的支援策をすべて講じたとしても、新たな鉱山をよそに開設するには何年もかかる。中国政府の要求は、通りやすくなるかもしれない。

Lynas Corporation Ltd
1.775
LYC.AXAUSTRALIA STOCK EXCHANGE
+0.08(+4.41%)
LYC.AX6752.T7203.T
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/china-rareearth-breakingviews-idJPKCN1N00RV

 


 


 
ビジネス2018年10月26日 / 14:52 / 7時間前更新
焦点:
難解な中銀の言い回し、市場は「暗号解読」に四苦八苦
Sujata Rao
2 分で読む

[ロンドン 25日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が追加利上げを決めた9月下旬の連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に公表した声明文は250の語句からなっていたが、市場の関心はただ1つ、「緩和的」という表現に集中していた。そしてその言葉が、実際の声明文に記されてさえいなかった点に大きな意味があった。

債券利回りを何年もわたって押し下げてきた声明文における「緩和的」の表現が消えたことで、投資家はFRBの政策運営姿勢がもはや金融緩和ではなく、少なくとも当面は金利が上がりそうにないシグナルだと受け止めた。

その1週間後、パウエルFRB議長は、「緩和的」の削除は単に政策運営が想定に沿って進められている意味しかないと強調したが、同氏が「金利水準は中立金利までまだ相当な距離がある」と発言すると米長期金利は7年ぶりの高水準に達した。

このように中央銀行の政策担当者は、まるで古代ギリシャの神託のように1つの言葉を使って、あるいはその言葉を発しないことで、多くのメッセージを伝える能力を持つ。

中銀当局が言い回しに注意してきたのは今に始まったことではないとはいえ、資産買い入れ縮小や政策金利転換の局面に入っている現状では、市場に将来の政策に関する適切なシグナルを送る重要性はかつてないほど大きい、と彼らも認識している。

だがFRBだけでなく欧州中央銀行(ECB)も市場を混乱に陥れた。ドラギ総裁が先月、物価の「活発な」上昇に言及して債券利回りが高騰した後、この発言は政策的なシグナルのつもりではなかったと釈明したからだ。

そこで市場では、中銀からの何やら意味ありげな表現をどの程度重視すべきなのか、また独特の言い回しは世界経済にとってメリットより弊害の方が大きいのではないかといった議論が盛んになっている。

BNPパリバ・アセット・マネジメントのマクロ調査責任者で、イングランド銀行(英中央銀行、BOE)のエコノミストを務めたリチャード・バーウェル氏は「利上げしたいならそう言えば良い」と述べ、中銀が専門用語での対話にこだわることに疑問を投げかけている。

バーウェル氏が例に挙げたのは、ECBが保有債券の償還資金再投資を「意図」し、利上げを「想定」すると使い分けていることだ。

「想定と意図の間にはコミットメントの差があるのだろうか。『暗号表』に照らせば、再投資に比べて金利のガイダンスに対するコミットが弱いとうかがえる。しかしそれならどうして明言しないのか」と批判する。

Slideshow (2 Images)
国際決済銀行(BIS)が今月公表した論文でも、さまざまに解釈できる政策の手掛かりを提供するメリットは乏しいだけでなく、経済に傷を負わせる恐れさえあるとの主張が展開されている。

「フォワードガイダンスは、受け取る側が将来の景気刺激を約束しているとみなした場合に最大の効果を発揮することが分かる。つまり中銀が、政策の枠組みを説明する際にこのガイダンスをより明確にできない限り、経済成長を刺激しないという見方が裏付けられる。それどころか実際には経済成長を妨げるかもしれない」という。

またロイターの分析では、FOMCの声明文は金融危機以降、複雑性と玉虫色的な表現がどんどん増してきている。

資産運用担当者の問題としては、こうした難しい言い回しを解釈する最適な手段が何かという点が挙げられる。そして事情に通じた中銀出身者を雇うというのが1つの答えになる。

Zurich Insurance Group AG
297.9
ZURN.SVIRT-X LEVEL 1
-3.50(-1.16%)
ZURN.S
JPモルガン・アセット・マネジメントのニック・ガートサイド債券最高投資責任者は「中銀出身というプロフィールは、金融政策担当者の意図を読み解く上で非常に役立つ」と話した。

ハイテクも「暗号解釈」に有効だ。プラトルなどの企業は、過去のさまざまな言い回しをパターン化してデータとして蓄積し、中銀が公表した声明文を素早く分析して言い回しが「ハト派的」か「タカ派的」か評価できる。同社のエバン・シュニードマン最高経営責任者(CEO)は、3年前のデータ保存開始以降で、G10諸国の金融政策決定の96%について正確に予見したと胸を張った。

ただ中銀の緩和縮小が進むとともに、多くのアナリストは「行間を読む」作業に疲れ果てた、とこぼす。1990年代に当時のグリーンスパンFRB議長のブリーフケースを見て政策変更があるかどうかを探った経験を持つベテラン中銀ウオッチャーの1人であるチューリッヒ保険(ZURN.S)のチーフ市場ストラテジスト、ガイ・ミラー氏は「みんながデータよりも(各中銀の考えに)こだわる。これは危険だと思う」と語った。
https://jp.reuters.com/article/central-bank-language-analysis-idJPKCN1N00H1

 


 


トップニュース2018年10月27日 / 14:16 / 2時間前更新
アングル:
トランプ氏のFRB攻撃、大切な5つのポイント
2 分で読む

[ワシントン 25日 ロイター] - トランプ米大統領は、米株式市場が9月に付けた過去最高値から大幅に下げた上に、中間選挙まで2週間を切ったことから、米連邦準備理事会(FRB)とパウエルFRB議長に対する批判を強めている。

トランプ氏の「口撃」の主な問題点を探った。

●トランプ氏のFRB批判の矛先

トランプ氏は、FRBの利上げペースは速すぎて、減税や規制緩和による景気刺激効果を損なっており、中国など諸外国との通商紛争による悪影響が出始める中で政権運営を難しくしていると主張している。

トランプ氏は今週の米ウォールストリート・ジャーナル紙とのインタビューでもFRB批判を展開。FRBはオバマ前政権が2期続く間は政策金利をゼロ近辺に抑え続けたのに、トランプ政権が発足すると一貫して利上げし、米国は債務の返済がきつくなっているとした。

●FRBが景気を損なっている明白な証拠の有無

利上げがいずれ米景気を冷やすのは間違いない。FRB当局者の多くは、あと2回か3回の追加利上げにより、借り入れコストの上昇によって成長が抑制され始めると見込んでいる。ただ、FRBはパウエル体制発足後に既に3回の利上げを行ったが、それでも金融の全般的な環境は緩和的で、失業率は49年ぶりの水準に下がっている。

●トランプ氏はFRBの政策に介入できるか

トランプ氏が利下げや金融緩和を支持する人物をFRB理事に指名し、FRBの体制を徐々に変えることは可能だ。しかしこれまでにトランプ氏が指名した理事はいずれも概ねパウエル議長を支持している。

トランプ氏が指名した3人のうちミシェル・ボウマン氏とネリー・リャン氏の2人は金利に関する姿勢が明確ではない。マービン・グッドフレンド氏は利上げを支持しているとの受け止め方が多い。

トランプ氏に地区連銀総裁を指名する権限はない。FRBは空席がすべて埋まれば、投票権を持つ12人のメンバーうち5人を地区連銀総裁が占める。

トランプ氏は連邦準備法に基づいてパウエル議長を解任しようとするかもしれない。ただ、他の政府機関についての過去の判例によれば、政策を巡る意見の相違は解任の「正当な理由」にならないだろう。長期を見据えるならば、議会を説得して連邦準備法を手直しし、FRB議長を容易に解任できるようにするという手はある。

●大統領がFRBを批判した過去の事例

近年FRBの政策に口を出した大統領はいないが、過去にはFRBに不満や苛立ちをぶつけた例がある。

ジョージ・W・ブッシュ氏は1992年の大統領選の敗北をグリーンスパンFRB議長のせいにした。また、リンドン・ジョンソン氏は1962年に利上げを巡りウィリアム・マーチンFRB議長と対立した。

ジョージ・ワシントン大のサラ・ブラインダー氏(政治科学)によると、ツイッターやメディアを使ったトランプ氏のFRB議長に対する攻撃は注目度が高い。しかし1960年代や70年代のFRB議長は大統領から面と向かって要求を突き付けられており、トランプ氏の戦略に当時ほどの圧力はないという。

ニクソン氏はFRB議長をマーチン氏からアーサー・バーンズ氏へとすげ替え、利下げを飲ませたが、こうした政策はインフレ高騰を招き、失敗だったと受け止められている。

●FRBの対応と攻撃のリスク

これまでのところトランプ氏の口先攻撃はFRBに目に見える影響を及ぼしておらず、FRBは段階的利上げの方針を堅持している。

リスクの1つは、トランプ氏がFRB批判を止めず、FRBが現在の路線を維持し続けるかどうかを投資家が不安に感じ始めて米国の金融政策の方向性を巡って不透明感が高まり、市場の信頼感が揺らぐケースだ。
https://jp.reuters.com/article/trump-frb-attack-factbox-idJPKCN1N00J4
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/183.html

[不安と不健康18] 世界の塩9割から微小プラ 共同通信
主要ニュース(共同通信)2018年10月27日 / 17:22 / 38分前更新
世界の塩9割から微小プラ
共同通信
1 分で読む

 海洋汚染が深刻化している微小なマイクロプラスチックが世界各地の塩から見つかったと、韓国・仁川大と環境保護団体グリーンピースのチームが27日までに発表した。21の国・地域から集めた39種のうち9割から検出され、アジアの国で含有量が多い傾向にあった。日本の塩は調査対象外。

 これまで各地の水道水や魚介類などからの検出も報告されており、世界で食卓の微小プラスチック汚染が進んでいる恐れがある。チームは「健康と環境のため、企業は率先して使い捨てプラスチック製品の製造や使用を減らす努力をするべきだ」と強調した。

【共同通信】
https://jp.reuters.com/article/idJP2018102701002051?il=0
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/661.html

[経世済民129] 「米国第一」は意外に正しかった 貿易戦争で結局得をするのは米国、損をするのは中国  中国が見つけた意外な対トランプ兵器
「米国第一」は意外に正しかった

貿易戦争で結局得をするのは米国、損をするのは中国

小宮一慶が読み解く経済の数字・企業の数字


2018年10月29日(月)
小宮 一慶

 11月6日の米中間選挙に向けて、トランプ大統領が「米国ファースト」の姿勢を強めています。その路線の下で激化しているのが米中貿易戦争です。GDP世界第1位と第2位との対立には、その影響も大きく、世界中が注目しています。

 「この貿易戦争で、得をする者は誰もいない」と言われることもありますが、果たしてそうでしょうか。得をするのは誰か、損をするのは誰か。トランプ大統領自身が自覚しているかどうかは不明ですが、私は、長い目で見た場合、この政策は米国にとって非常に大きなメリットがあるのではないかと考えています。今回は、米中貿易戦争の先々の影響を考察します。


中間選挙の応援演説に飛び回るトランプ米大統領。選挙後の「米国第一」はどうなる?(写真:AP/アフロ)
大ダメージを受ける中国
 米中貿易戦争が泥沼化しています。

 今年7月6日、米トランプ政権は、知的財産権の侵害に対抗する制裁関税として、中国からの輸入品340億ドル相当に対する関税を課す措置に踏み切りました。すると中国は直ちに同規模の報復関税を発動。8月23日には米国が第2弾として、160億ドル規模の追加関税を発動しました。今度も中国は同じ160億ドル規模の報復関税を決めました。さらに米国は第3弾として9月24日に2000億ドル相当を対象に追加関税に踏み切り、中国が報復措置をとりました。

 米国と中国は、世界2トップの経済大国です。2016年の米国のGDPは約19兆ドル、中国が約11兆ドル。全世界のGDPの推計値は、大まかな数字ですが80兆ドル弱と言われています。ちなみに、日本は約5兆ドルです。2つの経済大国による貿易戦争の影響は、世界経済にも大きな悪影響を及ぼす恐れがあります。日本経済も少なからぬ影響を受ける可能性があり、そのこともあって株価は大きく調整しています。

 では、米中の熾烈な貿易戦争で、最も損をする国は、どこでしょうか。

 答えは、間違いなく中国です。2017年の貿易統計によると、米国のモノの貿易赤字は7962億ドルであり、そのうち対中赤字は約半分の3752億ドルとなっています。一方、中国の貿易収支は4215億ドルの黒字。中国にとっては貿易黒字の大半を米国から稼いでいるという構図です。ちなみに、米国の貿易赤字の国別2位はメキシコの711億ドル、3位は日本で688億ドル(いずれも2017年、モノの貿易赤字)となっています。

 つまり、中国としては、対米貿易でダメージを受けると、中国経済に大きな悪影響が出ることは間違いないのです。

また、米国と中国のそれぞれの輸出額の差が、米国から見た貿易赤字の3752億ドルですが、輸出額の大きな中国のほうが、当然のことながら制裁関税を課せられる対象がその分大きい、逆に言えば、中国は同じ額の制裁関税を米国にかけ続けることは理論上不可能で、そういった意味でも、中国には早晩「手詰まり感」が出てこざるを得ないのです。

「米国ファースト」で最も得をするのは、やはり米国
 一方で、米中貿易戦争によって最も得をするのはどこでしょうか。それは、米国です。もちろん、米国も中国から輸入するモノの値段が関税分だけ上がりますから、企業にとっては原材料費の増加、消費者もその分の値上げの影響を受けます。短期的には、良いことはあまりありません。しかし、長期的には大きなメリットがあるのです。

 先ほども触れましたが、米国のモノの貿易赤字は7962億ドルという膨大な額です。サービス収支の黒字分をそれに加味しても5827億ドルの赤字です。一般に貿易赤字が大きい国の通貨は下落しやすいはずですが、米ドルは暴落していません。なぜでしょうか。

 答えは、米ドルが「基軸通貨」だからです。時々、専門家が「米国は、米ドルという紙を輸出して世界中からモノを買っている」と揶揄していますが、それは米ドルが最も信用のある通貨として世界中で流通しているからこそ可能なのです。

 しかし、この構図がいつまでも続くとは限りません。19世紀半ば以降、英国のポンドが世界の基軸通貨でした。ところが、第一次世界大戦で欧州経済が疲弊したことから、基軸通貨は米ドルに取って代わられました。

 同じように、米ドルが将来的に基軸通貨の座から下りる可能性はゼロではありません。もし、このまま中国が経済成長を続ければ、いずれは中国のGDPが米国を抜くこととなり、人民元が次世代の基軸通貨になるかもしれません。

 もちろん、今のような為替管理をしている状況では基軸通貨にはなれませんが、おそらく中国は人民元が基軸通貨となることを狙っているでしょう。「一帯一路」政策を進める目的の一つにも含まれていると考えられます。

 その裏付けになりそうな動きもあります。アフリカ諸国では、米国よりも中国からの経済支援を歓迎しているというのです。米国がアフリカ諸国に資金援助をする場合、人権問題について注文をつける傾向がありますが、中国は内政問題に干渉しないからです。為政者にとってうるさい米国より中国からの援助を積極的に受け入れるようになります。この傾向が拡大すると、人民元が基軸通貨に近づく後押しになるでしょう。

 では、人民元の勢いを止めるには、どうすればいいか。

中国経済の力を弱めることが最も効果的です。トランプ大統領がそこまで考えているかどうかは分かりませんが、米国ファーストは、捉え方によっては米ドルの基軸通貨の地位をできる限り長く守るための有効な策とも考えられるのです。

軍事的、経済的、政治的に中国を弱めるための政策
 もう一つ、忘れてはならないのは、米中の間には軍事的な対立もあるということです。ここで中国経済を弱めておけば、米国は軍事的な優位性をも維持することができます。

 米国にとっては、軍事的、政治的、経済的に考えると、米中貿易戦争で多少の経済的損失はあったとしても自国の覇権を守る方が大きなメリットがあります。特に、米ドルが基軸通貨の地位を維持できる期間が長くなれば、その意義は非常に大きいと言えます。

 今、トランプ大統領が欲するものは、お金ではありません。すでに経済人として成功しています。では、何を見据えているかと言えば、「名誉」ではないでしょうか。政治家として、米国大統領として、自国が将来的に成長していくためにはどうすべきか。彼はこの点を最も重視しているのではないかと思います。

 米国ファーストは、単純に中間選挙に勝つための施策にみえますが、中長期的には、「肉を切って骨を断つ」という戦略であるとも捉えられるのです。そう考えると、トランプ大統領の打ち出す政策はある意味天才的ではないかとすら感じます。

 さらに、米国の主要産業の一つである自動車の先行きも考慮されている可能性があります。米国は、中国のEV(電気自動車)化を危惧しているものではないかと思うのです。

年間3000万台を生産する世界最大の自動車生産国となり、米国を大きく上回った中国ですが、精密な技術が必要なエンジンを使う現在の自動車では日本や欧米のメーカーに一日の長があります。

 そこで中国政府が打ち出しているのはEV化です。EVでは部品の点数も減り、中国メーカーが相対的な競争力を持てるとみているのです。もちろん、PM2.5等への環境対策にもなります。共産主義国ですから、政策を打ち出すことで、一気にEV化が進む可能性があります。中国の自動車産業が急速に拡大し、輸出国となることも考えられるのです。

 司馬遼太郎さんは、「欧州やアジアは文化の国、米国は文明の国」と表現しています。文化の国は外国のものに排他的な面がありますが、文明の国は「いいものであれば、受け入れる」という傾向があります。

 もし、中国でEV化が進み、高性能かつ価格が安い自動車メーカーが誕生すれば、米国人は中国の電気自動車を積極的に購入するでしょう。地球環境に対する意識の高い層も増えていますので、ますます電気自動車の需要は高まると思われます。

中間選挙後、米国ファーストはますます強硬になる
 問題は、米中貿易摩擦がいつまで続くのか。どこまでエスカレートしていくのか。

 11月6日に控える米中間選挙では、全員が改選される下院では与党の共和党が負けるのではないかとの見通しが強まっています。実際にどうなるかは分かりませんが、今のところ、世論調査をベースに考えると負ける可能性は高い。

 中間選挙で共和党が勝利すれば、トランプ大統領はもちろんこのまま米国ファースト路線を維持するでしょう。では負けた場合はどうなるのか。負け方にもよりますが、次の大統領選のために、より強硬に米国ファーストを進める可能性が高いと私は考えています。

 つまり、どちらに転んでも、米国ファーストが強化される可能性が高いというわけです。

 トランプ大統領がどこまで考えているかは分かりませんが、米国ファーストは、ここまで説明したように中長期的には米国にとって大きなメリットがあると私は考えます。対抗策が限られる中国は、貿易摩擦による経済の失速を見据え、国内の景気対策に乗り出しています。しかし、劣勢に立っていると見なされ、人民元売りも進んでいます。

 今後しばらく、中国経済は厳しい状況が続くのではないでしょうか。習近平国家主席は、米中間選挙後も貿易摩擦が続くシナリオを最も恐れているでしょう。


このコラムについて
小宮一慶が読み解く経済の数字・企業の数字
 2020年東京五輪に向けて日本経済は回復するのか? 日銀の金融緩和はなぜ効果を出せないのか? トランプ米大統領が就任した後、世界経済はどこに向かうのか? 英国の離脱は欧州経済は何をもたらすのか? 中国経済の減速が日本に与える影響は?
 不確定要素が多く先行きが読みにくい今、確かな手がかりとなるのは「数字」です。経済指標を継続的に見ると、日本・世界経済の動きをつかむヒントが得られる。
 企業の動きも同様。決算書の数字から、安全性、収益性、将来性を推し量ることができる。
本コラムでは、経営コンサルタントの小宮一慶氏が、「経済の数字」と「会社の数字」の読み解き方をやさしく解説する。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000037/102500045


 

中国が見つけた意外な対トランプ兵器

貿易戦争もどこ吹く風、国際的指数への組み入れで資金流入続く
2018.10.29(月) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年10月23日付)

中国経済成長、消費が主な原動力に 易鋼·中国人民銀行総裁
4月11日、サブフォーラムで発言する中国人民銀行の易綱行長(総裁)(2018年4月11日撮影、資料写真)。(c)新華社/郭程〔AFPBB News〕

 貿易戦争が吹き荒れているが、誰かが外国の証券投資家に伝え忘れたようだ。

 中国の債券・株式市場では外国からの投資資金の流入が急増しており、人民元の対米ドルレートの下落を食い止める一因になっている。

 ドナルド・トランプ大統領は、中国が世界の貿易システムを不正に操作して自国の企業が有利になるようにしているとか、原価を下回る価格設定でダンピング(不当廉売)をしているとか、知的財産を盗んだりしていると非難している。

 中国からの対米輸出2500億ドル相当に追加関税を課したうえ、先月には、米国の対中貿易赤字は「全く受け入れられない」と中国政府に警告を発している。

 両国間の溝は非常に深く、新たな冷戦の到来を予想する声も上がっている。

 しかし、外国のファンドマネジャーたちは動じていないようだ。ひょっとしたら、中国が勝つと思っているのかもしれない。

 公式統計によれば、外国人投資家が保有する中国の株式と債券(人民元建て)は9月末時点で4622億ドル相当であり、1年前の1225億ドル相当から急増しているのだ。

 文脈に当てはめて考えると、この資金流入が中国の経済面での抵抗においていかに大きな意味を持っているかが見えてくる。

 中国政府が経済を世界に開放し始めて40年近く経った今、その歴史上初めて、債券や株式に向かう月間の投資資金流入額が外国直接投資(FDI)と肩を並べる水準になっている。

 年初来の9カ月間におけるFDIは918億ドルだった。

 この資金流入は、人民元相場にとっても重要な下支え要因となっている。

 中国人民銀行(中央銀行)の外貨準備高を押し上げることで、米ドル高から人民元を守る軍資金を供給しているからだ。

 人民銀はグリーンバックならぬ「レッドバック」を買い支えるために9月だけで170億ドルを使っている。

 外国人投資家にとっては、12兆ドル規模という世界第3位の残高を誇る中国債券市場が最大の魅力だ。

 今年になって中国国内債券に流入した外国の投資資金は約662億ドルで、外国人の9月末時点の総保有残高は2772億ドルに達している。

 この変化の背景には、様々な動機がある。商業銀行である中国銀行(BOC)のフー・クン氏(ロンドン在勤)は、明らかな魅力は欧州に比べて利回りが高いことだと指摘する。

 確かに、中国国債10年物の利回りは3.57%で、ドイツ国債10年物の0.47%より高かった。米国債10年物は3.2%だった。

 それ以上に重要なのは、中国の債券が影響力のある国際的なベンチマーク(基準)指数に近々組み入れられる見通しだ。

 ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合インデックスは2019年4月から、20カ月かけて段階的に人民元建ての証券を組み入れていく。386銘柄が組み込まれ、同指数の時価総額の約5.5%を占めることになる。

 これ以外にも、JPモルガン・ガバメント・ボンド・インデックス−エマージング・マーケッツ(GBI-EM)や、シティ・ワールド・ガバメント・ボンド(WGBI)といった指数の追随が予想される。

 もしそうした方針が明らかになれば、債券投資家は中国国内債券を買い集めざるを得なくなり、投資資金の流入がさらに増えることになる。

 実際、現在流入している投資資金には、予想される中国証券購入ラッシュの先回りを狙った資金配分の特徴が見られる。

 標的はもっぱら国債で、国家開発銀行や輸出入銀行といった中国の政策銀行発行の証券が(量は国債よりもかなり少なくなるが)これに続く。どちらも指数に組み入れられる予定だ。

 中国の証券会社、海通証券のロンドン支店でエグゼクティブディレクターを務めるミランダ・カー氏によれば、外貨準備の構成を国際通貨基金(IMF)の「特別引き出し権(SDR)」バスケットのそれに近づけたいという各国中央銀行の意向も、中国への資金流入の原動力になってきたという。

 人民元は2016年にSDRの構成通貨になったばかりで、現在は10.9%のウエイトを占めている。

 だが、外国人投資家は、同じ中国国内債券市場でも少し毛色の違う債券の市場――特に、巨大だが透明性が低い社債市場――にはあまり手をつけていない。

 中国の格付け機関がけた外れに楽観的な基準を適用しており、レバレッジ(借入比率)が世界最大級の企業にもトップクラスの格付けを付与しているという問題があるからだ。

 もっとも、この状況は変わりつつある。中国政府は、外国の格付け会社が中国企業を評価することを以前よりも容認するようになっており、強く必要とされている現実的な視点を導入しているからだ。

 このため、一部の銘柄では国債との利回り格差が拡大し、魅力的なプレミアムがつく可能性もあるだろう。

 株式市場においては今年、株価が急落する中でも外国からの資金流入は安定している。これも債券と同様、指数への組み入れが原因だ。

 国際的な指数を算出しているモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)は今年、主力のMSCIエマージング・マーケット指数に中国のA株(人民元建て株式)235銘柄を組み入れた。

 そのため、この指数をベンチマークとする投資信託など(その運用資産残高は計1兆9000億ドルに達する)のファンドマネジャーらは、これに追随して中国株を買わざるを得なくなった。

 外国人による中国A株の保有残高は9月末時点で1850億ドルだった。

 中国株は今年値下がりしており、株価パフォーマンスは世界最悪の部類に入るほどだが、外国人の保有残高は年初と同程度の水準を保っている。

 米国が貿易の面で圧力を加えてくる中でも、中国は世界の資本に門戸を開くことの効用を見つけている。

 人民元がIMFのSDRの構成通貨になったこと、有力な債券・株価指数に組み込まれたこと、そして政府が管理をいくらか緩めたことなどが、価値ある配当をもたらしているのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54520
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/203.html

[経世済民129] 物流を制するものが中国ECを制す―火花散る再配達ゼロ競争 人口減、対策の「タコツボ化」克服を 株価暴落時の狼狽売りは怪我
WEDGE REPORT
物流を制するものが中国ECを制す―火花散る再配達ゼロ競争
中国全土の住所録まで整備するアリババ
2018/10/29
高口康太 (ライター・翻訳家)
 「ネットショッピングは本当に便利。北京なら24時間以内に届きます。渋滞だらけの街に買い物に出かけることを考えたらネットでの買い物のほうが賢いですよね」
 そう話すのは北京市在住の李迎新さん(仮名、34歳)。仕事で平日、休日問わず忙しいため、買い物のほとんどをネットに頼っているという。彼女のようなケースは珍しくない。中国のEC(電子商取引)市場規模は9394億ドル(約10兆5300億円)。世界市場の40%を占める世界最大のEC大国だ。規模のみならずEC化率(全小売取引に占めるECの比率)でも19%と世界トップ(2018年度通商白書、17年実績)に立ち、5%の日本を大きく引き離している。
 昨年、国営の新華社通信は北京在住の外国人留学生にアンケートをし、「中国新四大発明」を選出した。高速鉄道、モバイル決済、シェアサイクル、そしてECが選出された。中国が発明したものではないが、確かに中国生活でとりわけ便利だと感じるサービスの数々だ。ありとあらゆる商品がネットで販売されている。フランスのブランド品や日本のオムツ、ニュージーランドの粉ミルクなど人気の海外製品も越境ECで簡単に買える。優良サイトで買えばニセモノをつかまされることも少ない。そしてなにより配送が早い。
 こうした中国社会の変化はその多くがインターネットサービスの進化によってもたらされているが、ECについて言えば、不可欠なのが物流だ。日本でも近年、物流崩壊≠ェ注目を集めた。ECの普及に伴う配送需要の増加に物流企業が耐えきれないというのだ。

(出所)中国国家郵政局「2017年郵政行業発展統計公報」よりウェッジ作成 写真を拡大
 日本以上にECが発展している中国でも実は同様の問題を抱えていた。特に中国ECでは11月11日の「独身の日」など記念日セールが売り上げの大きな柱となっているため、物流需要もごく短期間に集中するという問題があった。「爆倉」(宅配便業者の倉庫が満杯となり混乱するという意)のニュースがしばしば話題となっていた。
 だが2015年の「独身の日」をピークに「爆倉」はニュースから消えた。宅配便取扱量は15年が200億件、17年には400億件と倍増しているのだが、中国物流は混乱することなく需要急増に対応し、さらにサービス水準を向上させている。中国はどのようにして物流崩壊を免れたのだろうか。
「自前主義」と「外注」
ビッグ2の物流戦略
 中国ではアリババグループと京東集団という二大EC企業が自ら物流の改善に乗りだしている。
 中国EC第二位の京東集団は1998年にパソコンサプライ用品のショップ「360BUY」としてスタート。2004年からECに進出したが、すぐに大きな課題に直面した。物が届かない、壊れているなどのクレームが殺到したのだ。配送の質がひどすぎたためだ。
 どのEC事業者も抱えていた悩みだったが、京東集団の解決策は独特のものだった。物流をすべて自社でカバーしようと07年から自前の倉庫、配送員の整備を始めた。着々と整備は進み、今では中国全土に15カ所の基幹倉庫、500カ所以上の大型倉庫を保持。7万人もの物流従業員を正社員として雇用している。

京東集団は倉庫の自動化を進めている(JD.COM)
 この自前主義はテクノロジーの分野にも反映されている。新技術を開発するX事業部では現在、倉庫用ロボット、巡回用ロボット・ドローン、輸送用ドローン、無人配送車の4分野を中心にハードウェアの自社開発を進めているほか、昨年には世界初となる完全無人倉庫の運営を開始した。
「洗濯機や冷蔵庫といった高価な大型家電なら配送で壊されないように京東集団のECサイトで購入する」(天津市在住の女性)。膨大な数の配送員を雇用するなど、多大な固定費を支出してまで追い求めた物流品質は中国の消費者から高く評価されている。
 従来は自社ECのサービスの一環として物流事業を行っていた京東集団だが、17年には物流部門を京東物流として子会社化。他社にもサービスを開放するなど、物流企業としての独自の成長も摸索している。5年以内に売り上げ1000億元(約1兆6000億円)、外部への提供比率を50%以上に高めることが目的だという。ロボットを含めたスマート倉庫システムは、既に中国高級白酒最大手・貴州茅台酒の倉庫に導入されている。
 EC事業で後発の京東集団の成長は、中国IT業界の巨頭アリババグループをも焦らせるものだった。アリババの創業者ジャック・マー(馬雲)は物流には進出しないと公言していたが、その言葉を翻し、13年に物流子会社の菜鳥網絡を設立する。
 菜鳥の取り組みは京東物流とは対照的だ。自社のトラックや配送員は持たず、既存の物流企業にシステムを提供して連携することで配送を行っている。送り状の電子化・標準化から始まり、中国全土の住所データベースの整備という国家レベルの仕事まで手がけている。都市再開発が急速に進む中国では住所がころころと変わる。日本のように送り主がフリーハンドで住所を入力するようなことがあれば、目的地がないということもありうる。そこで菜鳥は独自の住所データベースを整備し、登録されたデータベースから住所を選択するシステムを提供している。
 さらにAI(人工知能)の活用も積極的だ。菜鳥のスマート倉庫システムではAIによって使うダンボールのサイズを自動的に算出する。一人の顧客が皿とコップ、包丁を買ったとして、どのサイズの箱ならばジャストフィットするのかを瞬時に算出する。この技術によって年間7500万個ものダンボールの節約につながったという。
 これらの菜鳥の提供する物流システムは、浙江省杭州市を拠点とする、大手宅配企業5社「四通一達」(圓通速逓、申通快逓、中通快逓、百世匯通、韵達快逓の総称)を中心に約3000社もの物流企業が活用している。
 アリババは菜鳥創業時に1000億元の投資を宣言。5周年を迎えた今年、さらに1000億元を投資すると発表した。日本円にして3兆円を超える巨大投資だ。
 こうした両社の激しい競争が中国の物流サービスのレベルアップにつながってきた。巨大な投資余力を持つ二大EC企業が本腰を入れたことで、中国の物流環境は一気に変わった。
中国の物流業界に
残された課題
 物流改革における巨大投資では、ドローンやAIといった最新技術についつい目を引かれてしまう。もっとも「爆倉」の解消という成果をもたらしたのは、なにもそうしたハイテク技術だけではない。
 日本の物流崩壊≠ノおいて、最大の問題とされたのが再配達率の高さだ。中国でも事情は同じ。再配達率をいかに下げるかが課題となる。それに貢献しているのが、コインロッカーのような形をしているスマート宅配ロッカーの普及だ。自宅ではなく、このロッカーに宅配便をとどけてもらうと、受取人には場所とパスワードが送られる。後は時間が空いた時にロッカーに出向いて受け取ればいい。

中国ではEC企業が自らオフィスビルや住宅街に宅配ロッカーを設置している(写真はアリババ子会社・菜鳥の「菜鳥駅店」) (KOTA TAKAGUCHI)
 日本にもスマート宅配ロッカーはあるが、中国との違いは普及率の高さだろう。中国では「ラスト100メートルのソリューション」と位置づけられ、オフィスビルや住宅街にもEC企業が自ら多数設置している。
 中国コンサルティング企業iResearchの報告書「2018年中国スマート宅配ロッカー業界研究報告」によると、その数は17年までに20万6000基に達した。中国政府が第13期5カ年計画などで普及を提唱したこともあり、今後も急ピッチで普及は続くとみられる。上記報告書によると、20年には77万2000基が配備される見通しだ。また京東集団、菜鳥が試験運用を始めている無人宅配車はいわば動く宅配ロッカーだ。
 また、中国の配送員は配達した個数に応じて賃金が決まる。そのため効率的に配達を行おうというインセンティブが強く、新たな技術が素早く普及する背景ともなっている。新サービスが続々登場するものの、一向に普及しない日本とは対照的だ。
 破竹の勢いで改善が進む中国の物流に残された課題はなにか。京東集団関係者は取材に対し、「物流には利便性とコストの両立が不可欠だが、中国はこの点でまだまだ課題が残る」と明かした。物流の効率性をはかる指標として、対GDP比でのマクロ物流コストがある。先進国では10%前後が平均的とされるが、中国は14・6%と高水準にある。国土が広大で輸送距離が長く、高速道路網が未整備といった構造的問題もあるが、個人事業主のトラック輸送が中心の旧来の輸送システムを引き継いでいることが背景にある。
 管理システムの改善に加え、新技術が解決の切り札になると上記関係者は強調した。無人運転によるトラックドライバーの削減、大型ドローンによる輸送速度向上によって倉庫の統廃合を実現するプランが検討されている。
 AIやドローンといったハイテクに加え、宅配ロッカーのような確立した仕組みも総動員し、速やかに社会に普及させている中国。個々の技術やノウハウ以上に中国企業の経営のスピード感こそが日本の学ぶべき点ではないだろうか。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/14258 


 
人口減、対策の「タコツボ化」克服を
キーパーソンに聞く
国難への処方箋、専門家に聞く

2018年10月29日(月)
山田 宏逸

 安倍晋三政権は日本で進む少子高齢化を「国難」と位置づけ、対策を急ぐ方針です。人口減社会に対応する国の処方箋はどうあるべきか。内閣府前審議官で、現在は経済社会総合研究所顧問の前川守氏に話を聞きました。(聞き手は山田 宏逸)

第4次安倍改造内閣が発足しました。安倍晋三首相は少子高齢化を「国難」とも表現し、対策を急ぐようです。

前川 守氏(以下、前川):日本経済は緩やかな景気回復が続いていますが、どこまで長続きするかには注意が必要です。中長期的には人口減少の問題を、特に現在の趨勢が続けば「今後50年で4割以上減少する」という生産年齢人口のハンパない状況を考えなければいけません。

 2014年の経済財政諮問会議「選択する未来」委員会報告によると、実質GDP(国内総生産)成長率は、2040年代以降はマイナスになります。現役1世帯当たりの実質消費も伸びは今の半分程度まで下がるとされています。人口減は日本経済を左右する最大のリスク要因と言っても言い過ぎではないでしょう。


前川 守(まえかわ・まもる)氏
1982年東大卒、旧経済企画庁へ。人事課長、経済財政運営担当政策統括官を経て内閣府審議官。18年7月に退官し、現在は内閣府経済社会総合研究所顧問を務める
全国の市区町村のうち896市町村が「消滅可能性都市」とした、いわゆる「増田レポート」から気づけば4年半が経ちました。

前川:増田レポートは「ネーミングの巧みさ」もあって、一気に人口減への関心が高まりましたね。その後も様々な予測や提言がありましたが、残念ながら、将来不安は解消されていません。

 その理由は、人口減はあらゆる分野に影響を与えるはずなのに、多くの提言は個別分野の予測と対応にとどまっていることです。霞が関の各省庁の提言に顕著ですが、作成者が違うので各分野の予測や対策の整合性が取れていないことがあります。また、対策には相当な財源が必要ですが、どこから捻出するか不透明です。加えて高い確率で発生が予測される首都直下地震等の巨大災害が考慮されていないこともあります。

「混乱ない社会へ」長期ビジョン不可欠
人口減対策の「タコツボ化」が進んでいると。

前川:そうですね。だからこそ私は、個別の予測と対策を束ね統括する総合的な政策体系として「長期ビジョン」を策定すべきだと考えます。

かつて経済企画庁や国土庁が作っていた経済計画、全総計画(全国総合開発計画)を復活させるイメージでしょうか。

前川:経済計画・全総計画の両方とも、時代の変化により機能と役割が発揮されなくなり廃止されたものです。ですから、単なる復活ではダメです。国家目標は戦後でいえば、復興であり、欧米へのキャッチアップでした。1990年以降はバブル経済崩壊への対応と、グローバル化への対応。これらは日本が自由に決めていたのではなく、歴史的経緯と国際情勢の中で選択してきたものです。

 今後の国家目標については、少し長くなりますが、「世界最速で進んでいる人口減少社会でも、国民ひとり一人が混乱なく満足に生活できる社会の形成」といったところでしょう。内閣の統轄の下、官民の英知を結集して政策体系をつくるべきだと考えます。

どのような分野の政策を束ねるべきだとお考えですか。

前川:主要分野は5つと考えています。年金、医療、介護などの「社会生活」、地域の在り方に関する「地域社会」、家計や企業経営を描く「経済」。ここに「社会インフラ」と「防災」を加えた5分野で、各分野の将来予測を踏まえた整合的な対策と工程表を策定するイメージです。


「財源」をどうするかが引き続き課題になりそうです。

前川:もっと税金の使い道について議論を深めるべきです。例えば広く国民全体に関係する政策は消費税、地域に関係する政策は地方税、所得向上を伴う政策は所得税や法人税といったイメージですね。国にお金がないことは事実なので、すべてを公費でまかなうのではなく、企業の利益向上に資する政策であれば、企業の剰余金活用も手段になるでしょう。

 いずれにせよ、国も企業も20年の東京五輪後、景気・経済がどう展開するのか部分的にしか見立てられていません。政策のタコツボ化を克服し、五輪後と中長期の人口減社会に備える時期に来ています。まさに正念場です。


このコラムについて
キーパーソンに聞く
日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/102600305/


 


http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14358
前向きに読み解く経済の裏側

株価暴落時の狼狽売りは怪我の源

2018/10/29

塚崎公義 (久留米大学商学部教授)

 今回は『老後破産しないためのお金の教科書』の著者である塚崎が、株価暴落時の狼狽売りは怪我の源だ、と説きます。


(kirstypargeter/Gettyimages)
株価が下がると売りたくなるのが初心者
 毎月決まった金額だけ購入すると自分で決めて、その通りに買っていけば、あるいは老後は毎月決まった金額だけ売却(投資信託の解約を含む、以下同様)して生活費に充当すると自分で決めて、その通りに売っていけば、自分で売買のタイミングを判断する必要がないので、間違えることがありません。

 初心者は、株価が上昇を続けていると、買いたくなって高値掴みをし、株価が暴落すると「この世の終わり」が来そうな気がして底値で投げ売りしてしまう、ということが少なくありません。そうした誤りを避けるためには、自分で決めないことが第一です。

 損得の結果とは別に、「自分の判断が間違いだったのではないか」と後悔する可能性が小さくなるだけでも、積立投資の方が精神衛生にも良いでしょう。

 そうは言っても、自分でタイミングを判断したい人もいるでしょうから、そういう人のために、暴落時の心がけを記しておきましょう。

下がった理由を考えるべき
 日経平均などが5%程度下がると、マスコミなどは「株価暴落」などと騒ぐことがありますが、落ち着きましょう。5%程度下がることは頻繁にあることで、「誤差の範囲だ」と捉えましょう。マスコミは、客が注目してくれることを期待して大騒ぎしているわけですから、それに乗せられることはありません。

 まぁ今回は、株価が1カ月弱で1割以上下がっていますから、一応「大幅な値下がり」と言って良いでしょう。そこで、対応を考えてみましょう。

 株価が大幅に下がるケースとしては、(1)バブル崩壊時など、「高すぎた株価が適正に戻る」、(2)「経済状況が悪化し、適正株価の水準が大幅に下がる」、(3)「適正株価の水準は大きく動かないが、市場心理の悪化等によって株価が大きく下がる」といったところでしょう。

 (1)と(2)の場合は、株価がどこまで下がるかわかりませんから、原則として急いで売るべきでしょう。しかし、(1)は滅多に生じませんし、今回も違いそうです。

 余談ですが、そもそもバブルかもしれないと言われたら、その時点で初心者は売っておくべきでしょう。初心者が「バブルが崩壊する直前の高値で売りぬける」ことを狙うのは、大怪我の源ですから。

 (2)も、石油ショックでも起きれば別ですが、滅多には生じません。今回が滅多に生じないような事例に相当するのか否かは、米中貿易戦争が深刻化して日本経済に大打撃となるか否か、等々にかかっていますが、後述のように、筆者は楽観的です。

 多くの場合は、株価が市場心理の悪化によって大きく下がる(3)です。この場合は、株価の適正水準が下がったわけではありませんから、遠からず株価は適正水準まで戻る可能性が高いでしょう。そうであれば、狼狽売りは控えるべきです。

暴落が増幅して「この世の終わり」に見えるメカニズム
 問題は、暴落が一定水準を超えると、暴落が売り注文を増やして更なる暴落を招くメカニズムが働くことです。

 一つは、借金で株を買っている投資家が、心配になった銀行から返済を迫られて、売りたくないのに売らざるを得なくなることです。信用取引で買っている個人投資家が「追加証拠金」を要求されて、泣く泣く売却するケースもこれに含まれます。

 今ひとつは、機関投資家の多くが担当者に「損切り」のルールを課していることです。「一定以上の損失を出した担当者は、持っている株を全て売って休暇をとって頭を冷やせ」というわけです。損失が膨らむと頭に血が上って冷静な判断が出来なくなるためだとも言われていますが、いずれにしても担当者は売りたくないのに売りを強要されるわけです。

 また、株価が暴落すると、「売りたくない売り」が出てくることを予想した投機家が、前もって売っておくことです。さらに暴落してから買い戻せば良いわけですから。

 そして最後は、暴落によって「この世の終わり」が来ると勘違いした初心者が投げ売りすることです(笑)。

 そうした売りがすべて出た後は、売る人が残っていませんから、株価は急激に戻る場合も多いようですが。

売るべき時に売らないのは損をしたくない投資家心理
 以上、売るべきでない(3)の場合の狼狽売りについて記してきましたが、反対に上記の(1)および(2)の場合は、原則として売るべきなのに売ることができない初心者が数多くいます。「初心者は損切りが下手だ」と言われているのです。それは、「今売ったら損失が確定してしまう」と考えるからです。

 「今売ったら、損失が確定してしまい、自分がバカな投資をしたということになってしまう。持っていれば株価が戻り、損失が回避でき、自分がバカな投資をした事にはならないかもしれない」と考えるわけです。

 しかし、それは正しい考え方ではありません。筆者は株価が暴落しても売れずにいる初心者には「あなたが今から株式投資を始めるとして、今の値段で株を買いますか?」と聞きます。答えがノーなら、すぐに売るべきです。

 今持っている株を持ち続けるのと、新しく株を買うので、判断が異なるのは、合理的な投資とは言えません。損を確定したくないという心理が投資判断を誤らせているのです。

 仮に証券会社の取引手数料がゼロであったならば、毎朝持っている株を全部売って、何を買おうか毎朝考えるべきです。たままた売った株と同じ株を買う場合もあるでしょうが、違う株を買う場合もあるでしょう。

 実際には、手数料がかかりますから、売る必要はありませんが、頭の中では「買った時の値段のことは忘れて、今日は今日の投資に専念すべき」なのです。

筆者は、今のタイミングでは売らない予定
 要するに、売るか売らないかを判断するためには、下がった理由が(1)なのか(2)なのか(3)なのかを見極めることがもっとも重要で、(1)と(2)ならば原則として売る、(3)ならば持っている、ということですね。

 今次局面に於いては、バブルが崩壊したようには見えませんし、米中貿易戦争の日本経済への影響はあるとしても、1カ月前よりリスクが格段に高まったわけでもありませんから、下がった理由は(3)のように見えます。

 市場参加者等のコメントを見ても、株価が下落した理由がバブル崩壊だという話は出てきませんし、下落の要因が「1カ月前と経済状況や経済の見通しが大きく変化したからだ」という話もあまり出てきません。1カ月前にもあった材料について、「市場参加者の感じ方が変わった」というものが多いようです。

 米国の中央銀行である連銀も、特に金融政策を変更するとは思われません。つまり、連銀の景気認識はそれほど変化していない模様です。

 したがって、筆者は狼狽売りをするつもりはありません。もっとも、過去の筆者の判断はしばしば誤っていましたので、今回も自信はありません。読者におかれましては、くれぐれも投資は自己責任でお願いします。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14358
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/204.html

[経世済民129] 中間選挙が最後のチャンス、消える市場の楽観論 賃金と寿命の関係、米国の「長寿大国」は本当か 銀オペ弾力化、国債入札後ずれ
外為フォーラムコラム2018年10月29日 / 16:48 / 2時間前更新

中間選挙が最後のチャンス、消える市場の楽観論

熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト
3 分で読む

[東京 29日] - 10月の株価下落は縁起が悪い。1987年のブラックマンデー、1929年の大恐慌、いずれも10月に米ニューヨークのウォール街で株価が暴落したことから始まった。

しかし、10月という季節と株価下落の因果関係は合理的な説明ができないため、この縁起の悪さはアノマリー(合理的な説明が難しい過去の経験則)だと考えられる。

今回の連鎖的な株安は、トランプ米大統領が仕掛けた米中貿易戦争が主犯とみれば分かかりやすい。両国がともに関税率を上げると、中国経済の方から先に悪くなる。上海総合、香港ハンセン指数、韓国総合はともに2018年初めから下落を続けている。この間、日本株は米株に引きずられるように動いたが、ここにきて米国、欧州、アジアの下落に巻き込まれるようになってきた。

米国を中心に経済のファンダメンタルズが強い中での株価下落は、先行きの景気悪化を警戒した反応にみえる。であれば、トランプ大統領が対中制裁のペースを緩めれば、今ならまだ事態の悪化を防げる可能性がある。トランプ政権は2000億ドル(約22兆円)相当の中国製品に課している10%の制裁関税を、19年1月から25%に引き上げる方針だが、それを中断すれば良い。11月6日の中間選挙が、強硬姿勢を修正する最大のチャンスだ。

<打ち砕かれる希望的観測>

こうした見方はかなり楽観的かもしれない。トランプ大統領は、株価下落を米連邦準備理事会(FRB)による利上げのせいだと責任転嫁している。それは、貿易問題で強硬姿勢を取り続けるための言い訳と考えられる。そうだとすれば、残念ながら、中間選挙直後に矛を納めるという希望的観測を打ち砕くものだ。

FRBのパウエル議長も、トランプ大統領から批判されたからといって利上げの方針を見直すようなことはしないだろう。極めて低い失業率の中で、関税率の引き上げが物価上昇圧力につながることへの警戒感のほうが強い。

市場の不安をさらに高めているのは、サウジアラビアの記者殺害問題だ。サウジの政府関係者が事件に関与したことが明らかになり、捜査を進めるトルコのエルドアン大統領は攻勢を強めているが、トランプ大統領はサウジを擁護できない。

もしサウジへの経済制裁が大きく拡大し、同国が報復として石油の禁油に踏み切ると、原油高になる可能性がある。これはまだ懸念に過ぎないが、弁明を迫られるサウジアラビアは歩が悪く、悪い予感が広がりやすい。

対中関税のコストアップに原油高が加われば、物価上昇圧力につながり、FRBが利上げに慎重になりたくてもできなくなる。サウジ問題は、本当に悪いタイミングで発生したと言える。

<トランプ減税という麻酔>

トランプ大統領の政策は、中間選挙という折り返し地点を前にますます悪い方向へ向かっているようにみえる。後から振り返ったとき、中間選挙が最後のチャンスだったと多くの人が悔やむかもしれない。サウジ問題が浮上した直後、今度は中距離核戦力(INF)廃棄条約から離脱することを表明した。世界の目をサウジ問題からそらそうという意図かと疑ってしまう。

非難しているのはロシアに対してだが、陰には中国の軍事的脅威への反応もあるのだろう。米ソ冷戦を終結させた同条約から米国が離脱すると、世界が再び軍拡の道に逆戻りする不安が頭をよぎる。米国の財政赤字が国防費の増加によって拡大してしまうことも、経済問題として悩ましい。

減税効果で企業業績が好調な中、米株価が下落しているのは、中国に貿易戦争を仕掛けつつ、あちこちで問題に火をつけて回るトランプ流の手法に、金融市場がいよいよ不安を強めたという見方ができる。「あれはトランプ流の演出だ」とこれまで高をくくっていた人も、この先ずっと後戻りできない摩擦が続くことを認めざるを得なくなりつつある。

中間選挙で民主党が下院の多数派に転じると、トランプ大統領の手法はますます悪化するのではないかと心配になる。こうしたシナリオは、以前から分かっていたことだが、企業業績と株価を押し上げていたトランプ減税に、誰もが麻痺させられていたということなのだろう。

(本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト (写真は筆者提供)
*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-hideo-kumano-idJPKCN1N30S4


 


コラム2018年10月28日 / 09:33 / 4時間前更新
賃金と寿命の関係、米国の「長寿大国」は本当か
Mark Miller
3 分で読む

[シカゴ 25日 ロイター] - 「われわれは皆、より長生きするようになっている」──。定年問題を取材していると、よくこのようなことを耳にする。

このことは、無限の長寿時代において、貯蓄をしたり給付金の申請を遅らせたりするよう人々を説得するといったような、定年後の経済的安定を築くための対策を議論する時の前置きとなることが多い。

また、年金や、社会保障制度や高齢者向け医療保険(メディケア)の給付金は負担しきれず、したがって削減すべきとも主張されてきた。

保険数理人で構成される米アクチュアリー会(SOA)によると、米国民の平均寿命は実際に延びているが、その延びは徐々に減っている。SOAは今週、毎年改定する「標準生命表」を公表。年金制度提供者は将来の給付義務を予測するのにこれを使っている。

それによると、米国人の平均寿命は10大死因のうち3つによる死亡が増加しているため、2017年よりやや短くなっている。その3つの死因とは、不慮のけが、アルツハイマー病、そして自殺である。この3つによる死亡は2015年から16年にかけて著しく増加したと、SOAのデール・ホール氏は指摘。新たに改定された65歳男性の平均寿命は85.6歳に、同女性のそれは87.6歳にそれぞれ1カ月程度縮まった。

ホール氏は25─56歳の平均寿命の低下が顕著で、一般的に米国の死者数は2010年以降、悪化していると説明。「歴史的に見て、死亡率の改善傾向は近年、かなり悪化している」と同氏は語った。

では、その原因は何か。

米国は世界有数の富裕国であり、他のどの国よりも国民1人当たりの医療支出が多い。しかし、平均寿命と健康状態はここ何年も他の高所得国に遅れをとっていることが、米国立衛生研究所(NIH)が委託した2013年の報告書で明らかとなった。

米国のがんによる死亡率は平均より低く、他国より血圧やコレステロールの管理もすぐれていると同研究は指摘。結果として、75歳に達すれば、他国の同年代よりも長生きすることが予想されるとしている。

<五輪なら敗退>

だが全体としてみると、乳幼児死亡率、低出生体重、けがや殺人、薬物関連の死、肥満や糖尿病、心臓病や慢性肺疾患など、さまざまな側面で米国人の健康は悪化していることが同研究で明らかとなった。

こうした要因の多くは、50歳まで生きられる可能性を大きく低下させ、たとえ50歳を迎えられたとしても、これら症状により健康状態がさらに悪化し、重大な病気になる可能性があると指摘している。

「五輪大会だとすれば、われわれは他の大勢の国に負けている」と、ワシントン大学のStephen Bezruchka教授は言う。

不健康は医療アクセスに関する問題だけに起因するわけではないと同教授は指摘。「われわれは健康と医療を混同しがちだ」とし、米国と他の富裕国との死亡率の差に医療が占める割合は15%にも満たないことを研究は示していると述べた。

疫学者の記録によると、経済的に不平等な社会ほど健康状態は平均より悪い。適切な栄養や住まいといった基本的ニーズを得ることができない低所得世帯が一因だ。しかし、富裕層においても「収穫逓減の法則」が当てはまると同教授は指摘する。カネによって手に入る健康はごくわずかなのだ。

「所得が多い人は確かに死亡率も低い。だが、金持ちからほんの少しのカネを貧しい人に提供することで、平均的な健康度は押し上げられる」

子どもの貧困率が高いことも、米国の平均寿命を低下させる要因だと同教授は指摘する。「健全な社会は、さまざまな方法で若年層に特権を与える。例えば、母親、あるいは父親が取れる有給の育児休暇だ。米国は、有給の育児休暇を義務付けていない世界でも数少ない大国の1つだ」

米社会保障局のアクチュアリーが今年発表した、米労働者に関する同局のぼう大なデータベースに基づいて行った調査により、生涯賃金が寿命に及ぼす影響は甚大であることが判明した。

賃金格差は死亡率に表れていた。全体としての死亡率を1とした場合、ある集団の死亡率が1以下なら全体より死亡率が低く、1を上回ると若く死ぬ人が多いことを示している。

2015年、最高所得の62─64歳の定年男性グループではその数値は0.52だった。一方、最低所得のグループでは1.77だった。女性の場合もそう変わりなく、最高所得では0.73、最低所得では1.54だった。

社会保障制度やメディケアの受給年齢を引き上げる案は、貧しい労働者にとって致命的な打撃となる恐れがある。こうしたプログラムに対して、より適切な長期間にわたる改革を行うなら、「われわれ全員が長生きしているわけではない」ことを国民に納得させることが重要だろう。

代わりに、なぜ米国人は他の先進国と比べて不健康なのか、それを改善するにはどうしたらいいのかという問題に、われわれは重点を置くべきだ。

*筆者はロイターのコラムニストで、個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/column-us-longevity-idJPKCN1N00U6


 


 

ビジネス2018年10月29日 / 13:29 / 4時間前更新
焦点:
日銀オペ弾力化、国債入札翌日の買入後ずれも 金利自律形成促す
2 分で読む

[東京 29日 ロイター] - 日銀は市場機能の改善に向けて、国債買い入れオペレーションの一段の弾力化策を模索している。具体策として、国債入札日の翌日の当該年限の買い入れを翌々日以降に後ずれさせることが、有力な選択肢の1つに浮上しているようだ。複数の関係筋が明らかにした。

入札から買い入れまでの期間を空けることで、市場の自律的な金利形成を促すことが狙い。日銀は実施するタイミングについて、金融市場の状況を踏まえて慎重に判断するとみられる。

日銀は7月31日の金融政策決定会合で、誘導目標を「ゼロ%程度」としている長期金利について「経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動し得る」と一定の変動幅拡大を容認すると同時に、国債買い入れを「弾力的に実施する」ことを決めた。

その後の市場は、0.1%以下での推移となっていた長期金利が0.1%を上回る水準で取引されている。金利上昇を受けて投資家層の広がりが観測されるとともに、米金利や株価動向への反応も以前よりはみられるようになった。日銀内では市場機能の改善に、一定の効果があったとの認識が広がっている。

ただ、国債買い入れ額が減少傾向にある中で、現在のオペは「市場を縛り過ぎている」(幹部)との声もある。このためオペの弾力化は、黒田東彦総裁が示した長期金利変動の許容幅であるゼロ%を中心とした上下0.2%程度の範囲内で、いかに市場の自律的な金利形成を促すかがポイントになる。

日銀内ではさまざまな方策が検討されているが、選択肢の1つとして国債入札日の翌日の当該年限の買い入れを翌々日以降にずらすことが浮上しているようだ。

現在は入札日の翌日にオペが設定されており、証券会社などが落札した国債をそのまま日銀に売却すれば、利ざやを得ることが可能。

いわゆる「日銀トレード」と呼ばれる取引だが、こうした市場機能とかけ離れた状態を緩和することで、多少でも経済・金融環境の変化を踏まえた取引につながることが期待できる。

もっとも、現在の市場は日銀トレードを前提に入札が行われ、金利が形成されている一面があることも事実。

入札翌日のオペを行わないことで、市場が不安定化する可能性も否定できない。毎月の国債買い入れの金額や回数、日程などを示す運営方針は、11月分が31日午後5時に公表されるが、実施のタイミングは市場環境をみながら慎重に検討する考えだ。

<日銀、入札日程の非公表化に慎重>

入札日程の公表を取りやめるのではないか、との声も一部の市場参加者から出ているが、現時点で日銀は慎重なスタンスを維持しているもようだ。

日程を非公表化した場合、国債買い入れオペが実施されるかどうかが、日々の注目材料になることは確実。市場のボラティリティーが高まる可能性はあるものの、その場合に「経済・物価情勢に応じた変動」とみることに日銀内には異論が少なくなく、当面は見送られる可能性が大きい。

日銀による長期国債の買い入れは、声明において「保有残高の増加額年間約80兆円

をめど」とすることが引き続き明記されているが、現在の買い入れペースを前提にした場合、1年後の年間増加額は30兆円台に縮小する見通しだ。

大規模な国債買い入れによって、日銀の国債保有残高は発行残高の40%超に達しており、金利上昇の抑制には、こうした「ストック効果」の影響が大きいとの見方を日銀は強めている。

このため、長い目でみた国債買い入れはさらなる減額が見込まれるが、物価2%目標の達成に時間がかかるとみられている中で、今後も高水準の国債買い入れが継続することは確実。イールドカーブ・コントロール(YCC)という市場を抑制する政策を進める一方、緩和長期化を見据えた市場機能の改善という難しい課題に日銀は直面している。

*一部で正しく表示されなかったため再送します。

伊藤純夫 編集:田巻一彦
https://jp.reuters.com/article/boj-market-operation-idJPKCN1N30EI
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/205.html

[経世済民129] 「新冷戦」で追い込まれての日中連携へトランプ主義が変えた力学 中国を後にする日本企業、希望の地ベトナムへ アジア的混沌に
「新冷戦」で追い込まれての日中連携へ

トランプ主義が変えた力学

岡部直明「主役なき世界」を読む
2018年10月30日(火)
岡部 直明


中国の李克強首相(左)と安倍晋三首相
 安倍晋三首相と中国の習近平国家主席による日中首脳会談は、経済協力を最優先し連携することで合意した。トランプ米大統領が「経済冷戦」から「新冷戦」に踏み込むなかで、追い込まれての日中連携である。米中経済戦争で日本に期待せざるをえない中国と日米摩擦を前に中国の経済力を頼みとしたい日本の経済的利害が一致した。

 しかし、日中平和友好条約締結から40年、新時代を迎えた割に日中の合意は小粒である。目先の防御的連携を超えて、環太平洋経済連携協定(TPP)と東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の結合などアジア太平洋の大戦略を打ち出し、米国をこの成長センターに引き戻すときである。

経済最優先の連携
 日中首脳会談では、新時代の関係構築で合意した。安倍首相は@競争から協調へA互いにパートナーとして脅威にならないB自由で公正な貿易体制の発展―という3原則を提起した。

 歴史認識のズレや尖閣諸島をめぐる対立など、これまでの日中のあつれきにはあえて深入りを避け、経済協力を最優先したのが特徴だ。第3国市場での連携は、中国が進める「一帯一路」構想を視野に入れたものだ。この構想をめぐっては、アジア各国から債務拡大などの不安が強まり、大きな壁に突き当たっているだけに、日本の協力は「中国第一主義」への懸念を払しょくするのが狙いだろう。

 金融協力にも一定の進展はあった。危機時に日銀と中国人民銀行は円と人民元を交換するスワップ協定を再開する。融通額の上限は3兆4千億円(人民元の上限は2千億元)と10倍超になる。尖閣諸島をめぐるあつれきによって2013年に失効した通貨協定の復活で、日本企業が中国でビジネスを展開しやすくなることはたしかだ。

遅すぎた対中ODAの終了
 その一方で、日本が40年に渡り実施してきた中国に対する政府開発援助(ODA)は2018年度の新規案件を最後に打ち切ることになった。1990年代、筆者は日本の対中円借款の実施調査のため西安郊外のダム建設や北京郊外の浄水場などを訪問したことがある。驚いたのは円借款に関わる中国人の多さだった。

 日本の円借款は空港建設など中国のインフラ整備に大きな貢献があった。固定資本投資に日本からの円借款は組み込まれていた。中国の改革開放路線を側面から支援したのは明らかだ。その割には中国からの感謝はそう大きくなかったようにみえる。戦後賠償を放棄する見返りとされた円借款だけに、当然視されていた面があったかもしれない。日本も他の先進国の支援に比べても、円借款の効果を積極的にはPRしてこなかったところがある。どちらにしろ、とっくに援助する側の先頭にある中国が援助される国を卒業するのは当然であり、対中ODAの終了は遅すぎたといえる。

トランプ攻勢に守りの協調
 日中があつれきを超えて協調したのは、トランプ大統領が経済冷戦から新冷戦に踏み込もうとするなかで、「守りの協調」に動かざるをえないという事情がある。とくに中国は、米中貿易戦争で大きな打撃を受けているだけに、日本との協調は欠かせない。

 中国の7−9月期の経済成長率は6.5%に減速した。生産と投資の伸び悩みは大きい。経営破たんの増加など貿易戦争の影響は表面化している。米国製の自動車だけでなく、中国が制裁関税を課した化学品や紙製品などで値上げが相次ぎ、9月の消費者物価は2.5%上昇した。中国企業が抱えた過剰債務はますます大きな足かせになってきた。こうしたなかで、上海株式市場の動揺は著しく、世界同時株安を加速させている。

 そんな中国にとって、日本との協調はトランプ米政権へのけん制の狙いが込められているが、日本にとっても日中協調はトランプ政権への「中国カード」ともいえる。米国よりずっと貿易関係の深い中国との協力を強化することで、対日圧力を強めるトランプ政権をけん制する思惑がある。

 来年始まる日米の物品貿易協定(TAG)をめぐる交渉では、米側は自動車関税の引き上げをちらつかせながら自動車輸入の「管理貿易」化をめざす可能性がある。さらにムニューシン財務長官は「為替条項」を要求する構えで、日米交渉は難航必至の情勢である。トランプ政権との関係を大きく崩さない範囲で「中国カード」を交渉の武器にしたいというのが安倍政権の本音だろう。

失敗した「中国包囲網」構想
 日中が歩み寄った意味は大きいが、中国が米国と肩を並べようとするなかで、日中に不仲の時代が長く続いたツケは重い。安倍政権がめざした「地球儀を俯瞰する外交」は事実上の「中国包囲網」構想だった。しかしこの構想は失敗に終わった。

 安倍政権は中国をアジアにおけるライバルと位置付けていたが、あっという間に「日中逆転」が進行していたのである。2010年に国内総生産(GDP)に抜かれ、中国に世界第2の経済大国の座を明け渡したと思えば、いまやその落差は2.5倍にも達した。

 中国は経済を先導する世界的起業家を輩出してきたが、日本にはほとんど見当たらない。自由な資本主義国である日本より国家資本主義の中国の方が、起業家精神が旺盛とは大きな皮肉である。日本が圧倒的にリードしていたはずのハイテク分野でも、日本は逆に差をつけられた。フィンテックでは中国視察団への日本企業の参加が人気を集めるありさまだ。

 習近平政権がめざす「中国製造2025」に、トランプ政権が警戒しているのは、中国が国家資本主義により、半導体製造などで米国追跡をめざしていると考えるからだ。ハイテク分野での米中間の覇権争いはし烈を極める。中国が照準を定めるのは米国であり、もはや日本ではない。

 人民元の「国際通貨」化構想も、「ドル・ユーロ・人民元」の3大通貨を軸にしている。日本円はほとんど眼中にないといっていい。

 そんな経済超大国になった中国に対して「包囲網」を築こうという発想そのものが時代錯誤だったといえる。「地球儀を俯瞰」して中国の周辺に足しげく外交を展開して、肝心の中国との直接対話を疎かにしてきたのではないか。この戦略そのものに大きな誤りがあった。その反省がないかぎり、日中は再び不幸な「不仲時代」に逆戻りしかねない。

 日中はなぜ独仏に学べなかったか
 中国駐在の経験はないが、駆け出し記者のころ日中国交回復前の日中貿易を担当して以来、ずっと中国を側面からみつめてきた。欧州駐在の経験を踏まえると、戦後72年になるのに、日中はなぜ独仏に学べないのかという命題に突き当たる。

 国交回復前の日中関係を支えたひとりに、日中覚書貿易事務所の岡崎嘉平太代表がいた。戦中、日銀マンとして中国に駐在した経験から戦後は日中関係の正常化に尽力していた。それは右翼の攻撃対象にされた。夜回り取材で岡崎氏の自宅を訪問したときのことだ。岡崎氏の脇には大きなシェパードが座り、こちらをみつめていた。右翼への警戒を怠らず、命がけで日中関係の打開をめざしていたのである。

 日中関係はニクソン米大統領訪中の後を受けた田中角栄首相の訪中で正常化に向かうが、周恩来首相が「井戸を掘った人」と讃えたのは、岡崎氏だった。

 戦後の日中関係が疎遠だったのは、中国に共産党政権が誕生し、冷戦下で西側の拠点になった日本との対立関係が生まれたためともいえる。しかし、第2次大戦後、欧州ではフランスの実業家、ジャン・モネの仲介で独仏和解が実現し、それが欧州統合に結実している。欧州連合(EU)はいま様々な難題を抱えているが、独仏和解を軸に平和が保たれている。

 この独仏和解に日中はなぜ学べなかったのか。第2次大戦のような悲惨を防ぐために、政治体制の違いを超えた平和構築は可能だったはずだ。日中関係の「井戸を掘った人」岡崎氏は日中関係の長い冬の時代を嘆いていた。

米国巻き込む日中連携の大戦略を
 日本は米中両大国の間でどううまく泳ぎ切るか、と考える政策当局者もいる。これは大きな間違いだ。いま日本に求められるのは、アジア太平洋の繁栄と安定のために、扇の要(かなめ)として大戦略を打ち出すことである。

 第1に、TPPとRCEPの結合である。11カ国によるTPP11はたしかに先進的な自由貿易圏だが、その範囲は狭い。これに対して、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国に日中韓、そしてインド、オーストラリア、ニュージーランドを加えたRCEPにはアジア太平洋の主要国がほぼすべて含まれる。問題は自由化度合がTPPに比べて低いことだが、交渉次第で自由化率を上げられる。TPPとRCEPでともに核にあるのは日本である。TPPとRCEPを結合して、米国を呼び戻すのは日中の共同戦略になる。それは、米中貿易戦争を打開する道でもあるだろう。

 第2に、中国主導で成立されたアジアインフラ投資銀行(AIIB)とアジア開発銀行の統合である。AIIBにはアジア各国や欧州各国などが参加しているが、日米はあえて参加していない。中国は日米にも参加を求めているが、日米は慎重だ。このためAIIBの運営は必ずしも軌道に乗っていない。日本人が歴代総裁をつとめるアジア開発銀行はインフラ投資などをめぐってAIIBと協力しているが、両行が統合すれば、旺盛な需要に対して資金不足にあるアジアのインフラ投資が進む可能性がある。

 日中首脳会談による日中連携は、冬の時代が長かった戦後の日中関係からみると一歩前進ではある。しかし、それはトランプ旋風に対応した防御的な連携にすぎない。日中両国に求められるのは、世界の成長センターであるアジア太平洋を結びつけるより広範な連携である。この本格的な多国間主義こそ、トランプ流の2国間主義を突き崩すことになるはずだ。


このコラムについて
岡部直明「主役なき世界」を読む
 世界は、米国一極集中から主役なき多極化の時代へと動き出している。複雑化する世界を読み解き、さらには日本の針路について考察する。
 筆者は日本経済新聞社で、ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、取締役論説主幹、専務執行役員主幹などを歴任した。
 現在はジャーナリスト/武蔵野大学国際総合研究所 フェロー。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/102900085


 


中国を後にする日本企業、希望の地ベトナムへ
アジア的混沌に商機あり、20年後にハノイは「上海」になる
2018.10.30(火) 姫田 小夏
ベトナム・ハノイのロッテマート店内。奥に見えるのはレジの順番を待つ長蛇の列(筆者撮影、以下同)
 ベトナムの首都ハノイ。日差しの強さに加え、歩行者の存在などおかまいなしで突進してくるバイク、道路を横断するのも命がけ――。ハノイに住む日本人は「アジアの上級者」の部類に入るのではないだろうか。この地で生活するのは、相当過酷だといっても過言ではない。インドやバングラデシュも過酷だが、決して負けてはいない。

 ハノイは、フランス植民地時代の面影が色濃く残る都市だ。旧市街地のホアンキエム湖の周辺は、商業施設やホテルが集中し、最もにぎやかなエリアである。道という道に洋品店や飲食店が軒を連ね、街全体に活気があふれている。クルマ、バイク、ゴミ、でこぼこ道、濁った湖面、絡まった電線・・・人々はこうした“アジア的混沌”の中で生きている。

ハノイでは大量のバイクが走り回っている
上海とハノイは20年の隔たり?
 かつては、中国もこうしたアジア的混沌にあふれていた。筆者が住み始めた1990年代後半の上海には、ハノイと同じような混沌があった。だが、今はすっかり便利で機能的な街に生まれ変わった。上海に限らず中国の大都市からアジア的混沌はほとんど姿を消しつつある。

 筆者から見ると、上海とハノイはちょうど「20年の隔たり」があると感じられる。

 例えば、ホアンキエム湖周辺は週末に歩行者天国となるのだが、その歩行者天国では学生と思しき若者たちが輪になって羽根蹴りに興じていた(ジェンズという羽根を蹴る遊び。ベトナム語で「ダーカウ」、中国語では「??子:ティージェンズ」)。90年代の上海でも、戸外で羽根蹴りを楽しむ子供たちの姿をよく目にしたものだ。

 また、近くのハンバイ通りにあるマクドナルド1号店は2017年にオープンしたばかりだ(下の写真)。上海の1号店は1994年にオープンしたので、やはり約20年の開きがある。

2017年にオープンしたマクドナルド
 カウザイ区のファムフン大通りは、オフィスビルや住宅が集積する新市街地だ。その中核を成すのが、韓国の企業が開発した、ベトナムで最も高いビル「カンナム・ハノイ・ランドマークタワー」である。外銀や外資コンサル、日本のIT企業などがこの新市街地に拠点を構えている。だが、ここでの生活が「気に入っている」という声はあまり聞かない。旧市街地まで約40分と距離があることが大きな要因だ。現地に住む日本人も「ここは何もないところだから」と繰り返す。

 上海では、浦東新区がそうだった。浦東は中心部の陸家嘴でさえ90年代初頭は農地だった。日本人駐在員は休日ともなると、無味乾燥な浦東を避け、旧市街地の浦西で過ごしたものだ。高層ビルが立ち並び、分譲マンションができ、人が移住し、ショッピングセンターの建設が進むようになったのは2000年代中盤以降のことだ。

ヤオハンを思い出させる韓国のランドマーク
 ベトナムで最も高いビルは韓国企業が開発したと述べたが、ハノイでは韓国企業のプレゼンスが高い。韓国ロッテグループは2014年にリエウザイ通りにオフィス、住宅、ホテル、百貨店、食品スーパーなどから成る複合商業施設「ロッテセンター・ハノイ」を開業した。

 これを見て思い起こすのは、1995年に日本のヤオハンが上海・浦東に開業した「ネクステージヤオハン」だ。当時、何もない浦東に出店したヤオハンに、日本のマスコミや小売業界はは「大丈夫か」と懐疑的だった。だが、ヤオハンは「これからは中国の時代」と豪語し、先陣を切って進出した(結局ヤオハンは1997年に経営破綻)。

 ハノイのロッテセンター・ハノイの地下には食品スーパーの「ロッテマート」がある。週末に訪れてみたところ、買い物客で大混雑していた(冒頭の写真)。在住の韓国人向けの輸入食材を充実させ、品ぞろえも豊富だ。韓国人のみならず地元富裕層にも支持されているようだ。

 ロッテマートでは、万引き防止のため、手荷物をロッカーに入れなければならない。財布とスマホを入れた小さなバッグでさえも、ビニール袋に入れ、がっちりとホチキスで封をされる。これも90年代後半の上海を彷彿とさせる。住民が豊になった上海では、今は見られない光景だ。

上海のデパートもかつてはガラガラだった
 一方、ロッテセンターの地上階(百貨店フロア)は閑古鳥が鳴いていた。とりわけ婦人服のフロアはガラガラだった。

 これもかつての上海とまったく同じ光景だ。90年代後半、上海・徐家匯のデパート「太平洋百貨」も外国人ぐらいしか買い物客がいなかった。2004年に香港から進出した「久光百貨」(元そごう)も、当初フロアはガラガラだった。だがほどなくして、久光百貨は上海の新興富裕層で賑わうようになる。

 ハノイでは、日本人がピザ屋を開業して人気店になったり、ハリーポッターをテーマにした喫茶店ができたり、続々と新スポットが出現し、街の雰囲気も都会的になりつつある。これから何かが始まる、そんなワクワク感がハノイの街にはある。市民の消費力が高まるのも時間の問題だろう。

 振り返れば、上海の経済は急速に膨らみ過ぎた。地価や人件費が高騰し、企業の事業継続が困難な状況にまで到達してしまった感がある。

 日本から上海に進出するのは、手探りで事業を進める、「国外は初めて」という企業が多かった。そのため、撤退するにあたって、積み残した課題に忸怩たる思いを抱く日本人経営者も少なくない。こうした日本人経営者の一部や「海外は二度目」という駐在員が、現在ベトナムに向かっている。新興国の発展パターンには共通項が多いので、先を読める彼らのアドバンテージは大きい。きっと中国での経験を基に次々とサクセスストーリーを生み出すはずだ。

「海外は二度目」という駐在員も増えている。日本のサムライたちの新興国でのチャレンジに期待したい。商機は“アジア的混沌”の中にある。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54510
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/213.html

[経世済民129] 首相はまだ「消費増税を最終判断」していない 米国が突きつけた「為替条項」が波乱材料 一人っ子政策終了3年「裸婚」と出生率

 

首相はまだ「消費増税を最終判断」していない

米国が突きつけた「為替条項」が波乱材料

上野泰也のエコノミック・ソナー
2018年10月30日(火)
上野 泰也


2016年6月1日に消費増税の再延期を発表した時の安倍晋三首相(写真:AFP/アフロ)
 安倍首相は10月15日の臨時閣議で、消費税率を予定通り19年10月に8%から10%に引き上げる方針を表明し、景気対策を具体化するよう指示した。閣議では首相から、「消費税率については法律で定められた通り、19年10月1日に現行の8%から10%に2%引き上げる予定だ」「今回の引き上げ幅は2%だが、前回の3%引き上げの経験を生かし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応する」という発言があった。

 だが19年10月に予定される消費増税について、安倍首相がこの日に最終的な政治判断を下したわけではない。景気・為替相場の動向次第では、予定通りに消費増税を実施すれば危うい(景気悪化が内閣支持率低下につながって宿願である憲法改正が遠のきかねない)と首相が考えて再々延期を決断する可能性はまだ十分あると、筆者はみている。

 この問題については当コラム10月16日配信「『消費税率10%』は本当に予定通りなのか?」で筆者の見解をすでにお伝えしたわけだが、その後に出てきた注目すべき報道には、以下のようなものがある。

「菅義偉官房長官は臨時閣議後の会見で、記者から『増税実施の最終判断はいつになるのか』と問われ、『(経済)状況を見ながら(首相が)判断されるんだろう』と答え、増税の最終判断はまだ先との認識を示した」「消費税率を8%に引き上げることを政治決断した13年10月、安倍首相は自ら会見を開き、国民に直接理解を求めた。これに対し、今回は閣議での首相支持という形式にとどめており、最後まで増税延期の選択肢を残したいとの意図も見え隠れする」(10月16日 朝日新聞)
「首相はこの日も消費増税を『予定』と表現し、菅義偉官房長官は記者会見で、経済情勢をなお見極める姿勢をにじませた。首相周辺は『首相は最終判断していない』と強調した」(10月16日 毎日新聞)
「景気の腰折れを招けば、残り任期の最優先課題の一つと位置付けるデフレ脱却が遠のきかねない。首相は増税を表明したが、政府高官は『まだ最終決断ではない』と指摘。首相周辺も『基本は増税だが、よほどのことがあれば別だ』と予防線を張った」(10月16日 時事通信)
「『来年は統一地方選や参院選が控える。首相が「延期カード」を行使する可能性は消えていない』(幹部)。トラウマを抱えた経験から、そんな疑念を拭いがたい。財務官僚の偽らざる本音だ」(10月16日 読売新聞)
「複数の与党筋は、消費増税延期とセットで19年夏の参院選が衆参同日選に変更されるシナリオに言及する声が自民党内にあると話す」(10月12日 ロイター通信)
 そうした中、10月16日の閣議後記者会見における麻生太郎財務相の発言内容は、「麻生節がさく裂した」と形容できそうな、いつも以上に大胆なものだった。時事通信の詳報によると、19年10月に予定されている消費税率引き上げの関連でも興味深いやり取りがあった。やや長くなるが、以下に時事通信から、一部を引用したい。

「上げない上げないと言って上げる方がよほど面倒くさい」
(Q)大臣のお気持ちやご指摘は重々承知しているつもりだが、一方で、前回の消費増税においてはリーマン・ショック級の危機が迫りつつあるということで先送りされた経緯があり、その後実際にリーマン・ショック級の危機は起きたかというと起きなかったという状況にあって、民間事業者から見れば、今度どれぐらい、どういうことで先送りされるか分からないという恐怖感がある中で、閣僚に対する指示だけで民間の方々がそれを信じて動くというのはなかなか難しいと思うので、これまで総理は増税先送りを表明されたり、今度はちゃんと上げるということを政治的にコミットする必要があるのではないかと思うが、その点はいかがか。

(A)どうでしょうね、総理の方の気持ちとして、それを言わなきゃならぬような状況になっているというように判断されるかどうかは、ちょっとこれからでしょうけども、少なくともわれわれとしては、今までの状況というものを引き続き継続していくつもりにしていますから、そういった意味ではこのまま10月1日になりますよという話で、今は細かい話がいろいろ、こうしたい、ああしたいと、いろいろ今出ている、これは主に窓口は経産省の、商工中小零細小売業者等々のところが、田舎で魚屋で買い物をしたことがあるかどうか知らないけど、大体クレジットカードなんかでやっている人はいないからね、そういうところでは現金で籠の中に入っていたやつをばっとやっていくという、あの中で、はい、8%、10%、還元なんという話がどれだけうまくいくかという話は、これは主に窓口である経産省のところでいろいろやっていかなきゃいかぬというところになってくるんだと思います。これはいろいろ細かい話はこれから出てくるところだとは思いますけどね。でも、その方向で事は動きつつあるということははっきりしていると思いますが。

(Q)リーマン・ショック級の危機が起きればという留保を政府は保ちつつ、民間には対策をやれというのは、いささかバランスを欠いているように見えるが。

(A)それはあなたの見解はそうかもしれぬけれども、リーマン・ショック並みのことが起きればということをある程度担保しておかないと、起きる可能性がゼロではありませんから、この金融の世界というのは、だからそういったことをある程度考えておかにゃいかぬというのも事実なんであって、もしこれを言わずに、ある日突然やられたら、何だということにまたなりますから、そういった意味では留意をしていながらも、その方向で準備をしておいてもらったほうが正しいんじゃないんですかね。商売というものをあなたはやったことがあるかどうかしらぬ、俺は商売人からこの世界に来たから分かるけれども、上げます上げますと言って上げないなんという話より、上げない上げないと言って上げる方がよほど面倒くさいからね、そういった意味では。だから、そういった商売の現場を知っている方から言わせてもらうと、そこのところは意外とあらかじめちゃんと準備しておいた方がより安全ということは確かだと思いますけどね。

(Q)逆に、先に対策はしたけれども増税されなかったとなると、これはこれで混乱が起きると思うが、その場合はどういうふうにお考えか。

(A)その場合は延ばすという話が1年延ばすなり半年延ばすなり、どれくらいという話になるか知りませんけれども、あらかじめ準備しておいても丸々損ということになるという確率の方が少ないと思いますけどね。

 予定通りの増税実施について、政府(安倍首相)はもう一方踏み込んでコミットすべきではないか、その方が中小・零細事業者による軽減税率対応を含む増税の準備が進むのではないかという意見に対し、財務省トップの麻生氏は、「リーマン・ショック」級の出来事が「起きる可能性がゼロではありませんから、この金融の世界というのは、だからそういったことをある程度考えておかにゃいかぬというのも事実」と述べて、増税の最終判断をためらっている安倍首相を擁護した。

 また、消費増税の準備をしておけば損にはならないはずだという趣旨で、ビジネスの世界における自らの経験も踏まえ、「俺は商売人からこの世界に来たから分かるけれども、上げます上げますと言って上げないなんという話より、上げない上げないと言って上げる方がよほど面倒くさい」と主張した。

 なお、経済産業省から出てきているとみられる消費増税後の消費下支え策である、中小小売店で「キャッシュレス」で支払う買い物にポイントを還元しようというアイディアについて麻生財務相は、田舎の魚屋でクレジットカードなどで買い物をしている人はいないという、懐疑的なコメントを発した。

 その後のマスコミ各社の報道によると、「キャッシュレス決済」へのポイント還元の効果を疑問視する声が相次ぐ中で、商品券や現金を配る案が政権内で浮上してきた。公明党の石田政調会長は10月15日、商品券発行や現金給付を盛り込んだ党独自の対策案を月内にまとめる考えを示した。

 以前に実行された地域振興券のような、バラマキ的な消費支援策の意義・効果について筆者は大いに懐疑的な立場だが、有権者の側からは歓迎する声が出てくるのかもしれない。「キャッシュレス決済」へのポイント還元の方も、外食などのサービスも含めて財・サービスを広範に対象とし、増税後の数カ月だけではなく最大1年間は実施する方向へ、話が拡大してきているようである。当然、それらには数千億円規模の財政支出が必要になってくるわけで、増税を実施する意味合いがその分、短期的には薄れることになる。

 さらに、クレジットカード会社の端末を中小・零細店舗で普及させるべく、カード決済を受け入れた際にお店がカード会社に支払う手数料を引き下げるよう、政府が要請する見込みになってきた。これは民間企業の利ざやへのご都合主義的な直接介入と言える。この問題については別の機会に改めてコメントしたいが、消費増税対策が迷走あるいは混線し始めた感がぬぐえない。

為替政策「日本を例外にすることはない」
 10月15日に公表された、上場企業を対象とする月次のアンケート調査であるQUICK短観の10月調査結果(調査実施:9月28日〜10月10日)で、10%への消費増税に関する安倍内閣の対応の予想は、「予定通り10%に引き上げる」(77%)、「引き上げの時期を先送りする」(19%)、「増税を取りやめる」(3%)、「その他」(1%)という回答分布になった。

 もう1つ、筆者が当コラム10月16日配信「『消費税率10%』は本当に予定通りなのか?」で景気の先行き不透明感を強めて消費増税再々延期につながりやすい材料として指摘した、日米物品貿易協定(TAG)に盛り込まれる可能性のある「為替条項」についても、直近の状況を整理し、筆者の予想を述べておきたい。

 当コラムで10月2日に配信された「トランプの『ケンカ相手』、中国の次は日本? 」の続報でもある。

 米国の為替政策の責任者であるムニューシン財務長官は10月13日、インドネシア・バリ島で開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議終了後、「これからの貿易交渉では、どの国とも為替問題を協議していく。日本を例外にすることはない」と発言。

 NAFTAを修正したUSMCAに加え、韓国とのFTAにも盛り込んだ(と米国が主張している)「為替条項」、すなわち競争的通貨切り下げにつながる為替介入などの政策を自制する取り決めを、日本とのTAGにも盛り込みたい考えを示した。

 ムニューシン長官は「為替問題は(日本との通商)交渉の目的の一つだ」とまで述べており、この方針は政権内でライトハイザーUSTR(米通商代表部)代表と共有されているとみられる。

 米利上げ局面が終了するなどして円高ドル安が大幅に進み、「アベノミクス景気」の土台が揺さぶられる事態になっても、日本の政策当局による為替介入や追加緩和といった円高阻止のための策が封じ込められてしまう危険性が内在しており、状況次第では「為替条項」の存在自体が大きな円買い材料になってくる。

 「最終的には日銀の金融緩和までやり玉にあげるリスクがある」(日本の通貨当局者:10月14日 日本経済新聞)ため、日本の当局者は警戒感や危機感を抱いている模様。ムニューシン発言後、「為替条項」に否定的なコメントを発することにより、「火消し」を試みている。

何らかの形で為替条項を飲まされる?
 茂木経済再生担当相は14日、「(TAG交渉入りを決めた)共同声明に為替の『か』の字も出ていない」と発言。麻生財務相は15日、「為替の話についてはいわゆる専門家レベルで緊密な話をしていこうと安倍首相とトランプ大統領の間で決められている」と発言した。

 だが、輸入自動車への25%追加関税を「武器」あるいは「レバレッジ」にするなどして、米国はTAG交渉では強気の姿勢を貫くと見込まれる。TAG本体に書くか付帯文書かといった形式上の問題はともかく、何らかの形で「為替条項」を日本は飲まされるのではと、筆者は予想している。

「解釈の相違」でごね続けるしかないのか?
 そこでポイントになるのは、日米の力関係が最終的に反映されて「為替条項」を受け入れざるを得ないという非常に厳しい状況に直面した際、日本側がどのような善後策を講じるかである。

 筆者のみるところ、最も有力な選択肢は、米韓FTAにおける韓国のケースのように、文書上で玉虫色の形式・表現を「落としどころ」にした上で、「米国とは解釈の相違がある」と主張し続ける(いわば「ごねる」)ことにより、マクロ経済政策の手足を縛られるのを回避する作戦である。

 こうした見方をサポートする報道もある。「米国は離脱前の環太平洋連携協定(TPP)交渉でも為替条項の導入を要求。ただし、最終的には協定本体と切り離し、拘束力のない財務当局間の『共同宣言』で落ち着いた。こうしたことも踏まえ、日本政府はTAGそのものへの条項明記は避け、TPP並みの強制力のない形で着地点を見いだしたい意向だ」(10月15日 時事通信)。

 もっとも今回の相手はトランプ大統領なので、着地点はTPPの時よりもはるかに厳しいだろう。トランプ政権は10月16日、日本などとの新たな貿易交渉入りを議会に通知した。これをうけて、日本と米国のTAG交渉は来年1月中旬にも始まる見通しである。


このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。


 


一人っ子政策終了3年「裸婚」と出生率の行方

地方都市の不動産価格、調整の可能性

西村友作の「隣人の素顔」〜リアル・チャイナ

2018年10月30日(火)
西村 友作

北京の北四環そばの団地「芍薬居北里」では、90年代建築の物件でも1億円近い値段が付く。北京市内の不動産は高すぎて結婚前の若者には手が出ない
 安倍首相が「国難」と位置づけ、日本政府の最優先課題の一つとなっている少子高齢化問題。中国でもその弊害が徐々に顕在化している。
 2016年1月1日、中国で30年以上続いた「一人っ子政策」に終止符が打たれ、「二人っ子政策(二胎政策)」が全面的に実施された。しかし、出生数は初年度の16年でこそ大幅に増加したものの、17年は前年を下回った。中国国家統計局によると、16年の出生数は前年比131万人増の1786万人だったが、17年は前年より63万人少ない1723万人であった。
 その背景にあるのが、出産コストの高さだ。中国では都市部を中心に生活・教育費用が高騰を続けており、出産に慎重な家庭が増えている。北京に住む私の周囲でも、経済的な理由により出産を断念する声を耳にするようになった。
 1979年から始まった「一人っ子政策」は、当時危惧されていた人口の爆発的な増加を抑えることには成功した。しかし、長期に渡る人口抑制策が招いた人口構造のゆがみは、中国経済に暗い影を落とし始めている。
経済成長、不動産市場に負の影響
 経済活動の中核を担う生産年齢人口の減少は経済成長に影響を及ぼす。
 供給サイドからみると、経済成長の原動力は「労働力供給の増加」、「資本ストックの増大」、「全要素生産性(技術水準)の向上」の3つの要素に分解できる。中国の生産年齢人口は11年をピークに減少し始め、「労働力供給の増加」が経済成長に対する寄与度はマイナスとなり、潜在成長率の低下要因となっている。
 一方で、人口構造問題は不動産価格にも影響を及ぼすと考えられる。モノの価格は基本的に需要と供給によって決定される。供給(住宅数)を一定と仮定すると、需要(購買者数)が減少に転じれば、当然価格に下方圧力がかかる。
 中国では一般的に、結婚前に男性側の方で住宅を準備する慣習があるため、住宅購入年齢は必然的に若くなる傾向にある。中国不動産大手の万科の調査によると、深センにおける17年の平均住宅購入年齢は33.6歳であった。また、北京市の住宅購入年齢は27歳という報道もある。正確な統計データは存在しないが、以上から中国全体の平均住宅購入年齢は20代後半から30歳前半と推測できる。
「結婚前の住宅購入」は都市部の大卒者の共通認識
 一方で、08年ごろ「裸婚」という新語がネット上で流行しはじめ、11年には「裸婚時代」というドラマが一世を風靡した。「裸婚」とは「家や車、指輪、お金など何もない状況で、披露宴も挙げず登録するだけの簡素な結婚」を指す。
 「裸婚」に関する公式統計はないため、現在もこの傾向が続いているのか学生にアンケートを取ってみると、殆どの女子学生が「『裸婚』はあり得ない。結婚前の住宅購入が必要」との回答であった。中には、「家が買えないから結婚しない」という男子学生までいた。「結婚前の住宅購入」は、少なくとも北京など都市部の大卒者の共通認識となっているようである。
 それでは人口構造の変化は不動産市場にどのようなインパクトを与えるのであろうか。
 
 中国国家統計局の2016年のデータによると、平均住宅購入年齢に近い25〜29歳の人口は過去十数年増加傾向にあった。しかし、今後はこの世代の人口が減少に転じる。2016年時点における25〜29歳の人口を100とすると、次の5年(グラフの20〜24歳人口)で74.2、その次の5年(グラフの15〜19歳人口)では57.7まで低下する。これは今後5年〜10年以内に中国国内の住宅需要が低下していくことを示唆している。
中国の人口ピラミッド(16年)

(注)小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計は必ずしも100.0とはならない。中国国家統計局のデータより筆者作成
 一方、北京のある商業銀行で住宅ローンを担当している私の元教え子に現状を聞くと、「北京における現役世代の住宅に対する実需は極めて強い。現在は国の引き締め策により現実的に買えない人が一定層存在するため、価格が下がればすぐに買いが入る」という。
 つまり、住宅購入人口の減少の不動産価格へのインパクトは、北京や上海など一線級都市に対しては限定的とみられる。しかし、若者人口の流出が顕著な地方都市を中心に不動産価格の調整がおこる可能性は否定できない。
 一般的に生活コストが高く子育て環境が悪い大都市の出生率は低くなる傾向にある。実際日本でもそうだ。厚生労働省が6月1日に発表した17年の人口動態統計によると、合計特殊出生率は大都市の方が低下傾向にある。中でも東京は17年から0.03ポイント低い1.21と、全国平均の1.43を大きく下回り、都道府県別で最低であった。
中国でも過密化が進むと出生率が更に下がる
 一方で、婚姻率(人口1000人あたりの婚姻届件数)は全国平均の4.9を大きく上回る6.4だった。つまり、若者を中心に東京への人口集中も進んでおり、過密化が進むことで出生率が更に下がるという現象が起きているのである。
 このような現象は中国でも起こっている。北京や上海など大都市には、地方都市から多くの「外地人」が集まってくるが、生活コストの高騰などを背景に出生率は低迷している。中国国家統計局の統計データによると、15年における北京と上海の出生率はそれぞれ7.96%と7.52%で、中国全体の12.07%を大きく下回った。
 日本の経験からみても、出産コストが高騰し続けている中国の都市部では出生率の大幅な改善は望めないだろう。しかし、「二人っ子政策」は出産人数を2人までに制限とするものであり、中国の人口抑制策「計画生育」は依然として続いている。
 17年、出生数が減少に転じた理由は1人目出生人数の減少であった。統計の内訳を見てみると、2人目の出生数は16年より162万人増であったが、1人目は249万人減となっている。
 これは、経済的条件により子供を産める家庭と産めない家庭の格差が顕在化しているといえるが、見方を変えると、2人以上子供を産みたい家庭が多いことの表れでもある。「もっと子供を産みたい」という家庭を国家が一方的に制限する政策は限界に達している。
 今後、少子高齢化が加速度的に進むと予想される中国。歴史的役割を終えた計画生育政策の根本的な転換が求められる。


このコラムについて
西村友作の「隣人の素顔」〜リアル・チャイナ
 近くて遠い存在の隣人、中国。日本の25倍の国土に、56民族14億人がひしめき合っている。この巨大で多様性に富んだ隣人は、今なお猛スピードで変化を続けており、その実像はなかなかとらえることができない。北京にある経済金融系トップの重点大学に在籍する日本人経済学者の西村友作が、その稀有な立場ならではの視点や情報を基に、専門の経済・金融・ビジネス分野だけにとどまらず、研究・教育現場の現実、流行や社会の変化など、一国の顔である首都から中国のスッピンにせまる。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/112900054/102300013


http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/214.html

[戦争b22] 中国から尖閣など離島奪還するのは愚の骨頂 3倍の兵力がいる奪還より防衛を優先すべし、そのための法整備を 
中国から尖閣など離島奪還するのは愚の骨頂

3倍の兵力がいる奪還より防衛を優先すべし、そのための法整備を
2018.10.30(火) 森 清勇
中国、東シナ海で実弾演習 空母「遼寧」も参加
中国海軍の海上演習で、空母「遼寧」に駐機されたJ15戦闘機(2018年4月撮影)。(c)AFP PHOTO〔AFPBB News〕

 国土交通省の分類では本州・北海道・四国・九州・沖縄本島の5島を除くすべてが離島である。日本には離島が6847あり、このうち有人は421で、ほとんど(6426)が無人離島である。

 少子化の影響もあって、対馬に見るように有人離島でも人口減少が続いている。しかも振興策の不備などから外国勢力によって占拠されるかもしれないという不安に晒されている。

 領土・領海・領空を守るために海上保安庁や自衛隊は日夜努力しているが、不毛な論戦に明け暮れる政治の不作為から、領域保全に必要な議論が行われず、各種法制の不備が指摘されている。

 そうした結果、現場に関わる海上保安庁や自衛隊の努力だけではいかんともし難い状況が現出する。

 離島防衛に関わる自衛隊の専門部隊として、平成30(2018)年3月27日に水陸機動団(約2100人)が編成された。

 10月14日に朝霞駐屯地で行われた「自衛隊観閲式」では、最新鋭のステルス戦闘機「F-35A」のデモフライトとともに、特に注目を浴びたのが水陸機動団に関わる「V-22オスプレイ」や水陸両用車「AAV7」などであった。

最高指揮官の訓示
 観閲式に参加した自衛隊員約4000人を前に、最高指揮官の安倍晋三首相は「24時間、365日。国民の命と平和を守るため、極度の緊張感の中、最前線で警戒監視にあたり、スクランブル発進を行う隊員たちが、今、この瞬間も日本の広大な海と空を守っています」と訓示して、任務を称えた。

 「領土・領海・領空、そして国民の生命・財産を守り抜く。政府の最も重要な責務です。安全保障政策の根幹は、自らが行う継続的な努力であり、立ち止まることは許されません」

 これは「国を守る大切さ」の国民へのメッセージであり、同時に「国民の協力が不可欠」という要請でもある。

 「この冬に策定する新たな防衛大綱では、これまでの延長線上ではない、数十年先の未来の礎となる、防衛力の在るべき姿を示します」

 「日々刻々と変化する、国際情勢や技術の動向に目を凝らし、これまでのやり方や考え方に安住せず、それぞれの持ち場で、在るべき姿に向かって、不断の努力を重ねていってください」と述べた。

 首相が節目ごとに強調してきた日本を“真ん中”に据えて共生する国際社会の建設に尽力するという意思表明であり、その中での自衛隊への期待を示したものと理解できる。

 最後は不甲斐ない政治によって「厳しい目で見られ」てきた自衛隊(隊員)が「強い誇りを持って任務を全うできる環境を整える」と述べ、「これは、今を生きる政治家の責任であります。私はその責任をしっかり果たしていく」と、自衛隊の違憲性を解消する決意を示した。

 国民の9割以上が自衛隊の存在を認めているとされながらも、違憲とする学者もいる。また、「軍隊」でないことから国際法や慣習上の権利に疑義が挟まれ、PKO活動や外国軍隊との共同訓練・演習などにおいて共同歩調が取れない現実も散見されてきたからである。

 以下では、水陸機動団とグレーゾーン事態対処などについて言及する。

なぜ「離島奪還」なのか
 最近のマスコミ報道では、「離島奪還」という用語が多用されている。

 「離島奪還 初の訓練場」「離島奪還を想定した訓練」「離島奪還 陸海空の連携急務」「離島奪還へ万全」などである。

 離島防衛の専門部隊である「水陸機動団」の任務も、「島嶼侵攻を許した場合、奪還作戦の先陣を切る役割を担う」とされ、ここでも侵攻を許した場合の「奪還」である。

 オスプレイや輸送ヘリが運んでくる機動団の隊員が予定地に降着できるように、航空攻撃や艦砲射撃で進攻者に砲撃を加えて援護する。

 同時に、輸送艦(本来は強襲揚陸艦であるが自衛隊は装備していない)で運ばれて来た隊員が水陸両用車やボート、エアー・クッション・ヴィークルなどで上陸し、侵攻者を掃討するというものである。

 北海道では多くの山林やレジャー施設が主として中国系資本に買収されている。買収地の多くがアンタッチャブルな状態に置かれ、しかも水源なども豊富なところから衣食住を賄え、自己完結型の生活ができる。

 他方で、留学や技能実習で来日した外国人のうち5万人超が不法滞在の状況で、その中の8割は中国人が占めているとされる。

 無人離島では国民の目がほとんど届かず、場合によっては上記のような不法滞在の外国人も含めた勢力に占拠されて、陣地化や要塞化しているかもしれない。

 占拠ではなかったが、昨年11月、北海道の無人島、松前小島には北朝鮮の漁船員が漂着し仮住まいをしていた。

 相手が武力をもって占拠した場合、当然のことながら、奪還が必要となる。近年の「奪還」は尖閣諸島を対象にした“隠語”のように聞こえなくもない。

 尖閣諸島は本来日本の領土であるが、1970年代から中国が自国領と主張し、90年代に入り領海法を制定して自国領に組み込み、習近平政権になると台湾などと同様に「核心的利益」を有するとした。

 爾來、中国は同島を係争地として、日本を協議の場に引き摺り込もうと画策し、公船や軍用艦艇などを接続水域に侵入させ、時には領海を侵犯してきた。

 ちなみに、有人島の対馬も過疎化の進行で「島が危ない」と叫ばれてから久しく、その後も韓国系資本による土地などの買収が進んでいる。

 こうした経緯を踏まえ、本来日本の領土であり島であるが、何らかの事情によって普段の警戒・監視や防衛が思うに任せず、占拠を許す結果をもたらしかねない。

 そこで、訓練や演習では「占拠された離島を奪還する」という名目で訓練などが行われることになる。

グレーゾーン事態とは何か
 そもそも、「奪還作戦」をせざるを得ない状況に追い込まれるのは、偏に海保や管轄する地方自治体で対応できないにもかかわらず、海自を含めた防衛力が十分に機能しないからである。

 いや機能できない法体制になっていると言った方が適切であろう。そうした状況をもたらす最大の事案がグレーゾーン事態である。

 英国では沿岸警備隊は不法侵入船に対して、監視・通報の権限のみを有し、実際の取り締まりは通報を受けた海軍が担当している。

 東シナ海でのEEZ(排他的経済水域)の中間線をめぐる日中間の摩擦や、尖閣諸島を核心的利益とする中国は、警備にあたる海警局の公船を大型化し、また倍増するなどしてきた。

 それでも係争は海保と中国国家海警局が管轄する警察権に基づく水準にとどまっていた。

 ところが、「海洋強国」を目指す中国は、フリゲート艦や情報収集艦などの軍艦による違反も稀ではなくなってきた。

 同時に領海警備等を担当する海警局が中国軍を指揮する中央軍事委員会の指揮下にある中国人民武装警察部隊(武警)に編入され、「(武警)海警総隊」(対外呼称は中国海警局)となった。

 「軍隊の一部に変貌し、人民解放軍や民兵と一体化して戦う組織に変わった」(「産経新聞」10月24日付、山田吉彦「防衛力持つ『海洋警備隊』創設を」)のである。

 また尖閣諸島に最も近い浙江省温州には、海警局艦船の係留のための大型基地が建設されているという。

 尖閣諸島に多数押し寄せる漁船には、民兵が同乗することも多く、彼らの拠点は東シナ海及び南シナ海に面した浙江省、福建省、広東省、海南省の海岸沿いに点在し、10万人以上とみられている。

 軍事的訓練を受けた民兵と特殊GPS搭載の漁船による海上ゲリラ行動などに加え、海警局の公船の武装強化、さらには組織改編によって、日本側は警察機能としての海保だけではとても対応できない状況になっている。

 こうして自衛隊が防衛出動する有事には当たらないが、警察や海上保安庁だけでは対処が難しい「隙間」の事態があり得るし、昨今の状況からは、生起の可能性が高いケースとさえみられている。

 過去にも幾つかの事例が起きている。

(1)1997年2月、下甑島(鹿児島県)に中国人密航者が漂着し、山中に逃亡した。住民は緊張に包まれ、島内所在のレーダーサイトで勤務する自衛隊員も捜索に加わった。

 しかし、密航者の捜索は防衛出動でも治安出動などの対象でもない。そのため、隊員は「調査・研究」の名目で出ている。早速「自衛隊法違反ではないか」という指摘がなされて政治問題化した。

(2)2012年7月、五島列島(長崎県)の荒川漁港に「台風からの避難」の理由で中国漁船100隻以上が押し寄せた。

 中国は民兵としての教育を受けた乗組員の乗った漁船をまず送り込み、その保護を口実に漁船監視船や海軍艦艇が出動し実効支配を確立していくとみられていることから、「中国による尖閣諸島攻撃の予行演習ではないか」と疑問視された。

 ざっくり言って、尖閣諸島が現在のような状況になっているのは、日本が自国を守る軍隊を有せず、「国有化」はしたが、住民を住まわせ、事業を起こし、自衛隊を堂々と派遣できないできたからである。

 「自分の国は自分で守る」ということを言う人が多くなっているが、「守る」力の実在としての「軍隊」が日本にはない。解釈改憲でやってきたが、無理を重ねた矛盾が今日のグレーゾーン事案となっている。

グレーゾーン事態に対処するために
(1)平時において最も重要な活動である「警戒・監視」を自衛隊法の自衛隊の行動として規定

(2)グレーゾ−ン事態における新たな権限を自衛隊に付与する法制の検討

 などが民間の防衛関係団体からも提議されている。しかし、法的整備や運用面での改善には時間がかかるとみられる。

 問題点があると分かっていながらも、国民の理解が進まなければ法の制定や改定は進まない。

 そうこうしているうちに、相手が尖閣に上陸し施政権を主張しないとも限らない。日本は「日本の施政権下にある」としながらも、上陸を許す最悪の状況しか想定できないのだ。

 そのために、本来であれば事前に準備できる「離島防衛」のはずが、無人で放置して置かざるを得ない。上陸を許す結果は「奪還」しかあり得ない。マスコミなどで報道される「離島“奪還”」は、こうした考えからである。

 国家の安全に関わる重要事で、生起する事案によって過不足なく円滑かつ段階的に対応できる仕組みが必要であるが、省庁の権限をめぐる縦割り意識が根底にある。

縦割り行政が国益を毀損する
 2018年1月6日、上海沖合300キロの東シナ海でパナマ籍タンカー・サンチ号(8万5000トン)が香港籍のバラ積み船CFクリスタル号(4万トン)に衝突され、炎上した。

 衝突場所は、日中中間線の西方の中国側であったが、サンチ号は中国が開発を進めている油ガス田の近くを炎上したまま漂流し、14日に中間線東方の日本側の海底に沈没した。

 事故対処にあたっては外交的配慮が必要であることは言うまでもないが、この事故は人命救助、海洋環境、海運・海上交通、漁業資源、EEZ・大陸棚の境界画定など様々な問題と関連しており、海上保安庁・環境省・運輸省・農林水産省・外務省などの官庁が絡んでくる。

 日本は、かねて日中間の大陸棚の境界を中間線であると主張してきた。サンチ号の沈没場所は、日本の大陸棚上でもあるので、排他的管轄権を行使できたはずであるが、日本はそのように行動しなかった。

 井晋氏は「日中間で大陸棚の範囲や境界を争っているのであれば、日本は積極的にサンチ号事件に対する関心を表明し、同号のサルベージを積極的に推進し、沈没場所が日本の大陸棚であることを国際的にアピールするべき」(JBpress2018.9.18「中国にまたしてもやられた日本政府 日中境界線付近でのタンカー『サンチ』沈没事件で問われる日本外交」)であったと述べる。

 また、サンチ号の海難事故を報道したのは、第10管区海上保安本部と地方紙主体で、政府が官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置したのは、ようやく2月2日のことであったという。

 サンチ号事件における日本政府の対応は当初から消極的で、事故の経過に関する発信は透明性に欠け限定的であったともいう。

 こうしたことから高井氏は「縦割り行政の弊害以外の何者でもなく、各行政機関も専ら海上保安庁の対応に任せてきた印象を受ける。サンチ号事件などの海洋問題は、主権や国益が直接絡む多くの問題を含んでいることに留意しなければならない」と述べている。

 さらに、次のように危惧する。

 「中国が日本の了解を得ずしてサルベージを行ったのであれば、そして日本が何も抗議していなければ、国際社会は、沈没場所が中国の大陸棚であると認識することになるのではないか」

 「今後、日本が中間線以東の大陸棚を自国の大陸棚であるといくら主張しても、サンチ号事件に対する日本の消極的な対応と中国の積極的な対処活動の印象から、国際社会が中国に軍配を上げる可能性は否めない」

 日本は「尖閣諸島の領有権とそれに伴う日中中間線以東の周辺海域のEEZおよび大陸棚を自国のものと主張しているので、このことを諸外国に発信し賛同の輪を広げるためには、一つひとつの行動が常に外交の一貫性に沿ったものでなければならない」と注文する。

自衛艦の活用は?
 北方領土が占領される以前の話である。日本の管轄下にあった海域にロシアの漁民が侵入して密漁し、また日本の漁民を脅して獲物や金品を略奪することがあった。

 ロシアの漁民ともめ事を起こしているまさにその時、日本の軍艦がはるか向こうに姿を見せるだけで、件のロシア人たちは何事もなかったかのように、「さーっ」と消えていったそうである。

 中国は節目ごとに市民や漁民を動員してくることが知られている。

 昭和47(1972)年に日中が国交を回復し、条約の締結交渉を重ねていた。交渉が山場に差しかかっていた昭和53(1978)年、尖閣諸島の日本領海に200隻を超える中国漁船が殺到し、数日後に一隻残らず姿を消した。

 中国側は「漁船が魚を追っているうちに潮に流された」と説明したそうである。

 平成26(2014)年には小笠原諸島や伊豆諸島周辺に200隻を超す中国のサンゴ密漁船が集結した。台風で一時去ったが、再度結集してきた。

 時あたかも日中首脳会談の実現をめぐって虚々実々の駆け引きが展開されているさなかであった。

 小笠原の赤サンゴが荒らされ、漁民に莫大な損失をもたらしたことから政府は重い腰を上げ、違法操業の取り締まり強化や罰金引き上げなどを検討するが、日本の対応が甘いことに変わりはない。

 「産経抄」(平成26年11月8日付)が提案したのは、尖閣沖で奮闘している海保が小笠原沖などで200隻以上の漁船を相手にする余力はないだろうから、自衛艦が悠悠と漁船の脇を通るのは如何だろかという歴史の教訓であった。

 平成28(2016)年8月5日以降、中国は海警局の公船を尖閣諸島海域に派遣し、漁船400隻、公船15隻を動員した。漁船には民兵が乗船していたことも判明した。

 日本の漁船が他国の領海で違法操業したら拿捕されるばかりでなく、いきなり銃撃されることも頻繁であった。

 しかし、日本は、自衛艦を遊弋させるというような「軍事的圧力」と思わせる行動をとることはなかった。もっと活用してもいいのではないだろうか。

攻撃に要する兵力は防御の3倍
 軍事の常識として、防御は地形などを利用することができるために、攻撃(離島奪還もその一つ)の3分の1の兵力で済む。従って、可能な範囲で攻撃ではなく、防衛(戦術的には防御)で地域を守ることが大切である。

 もっとも、敵の攻撃できる経路がいくつもある場合は、防御兵力が各径路に分散されるために、各々の経路に分散配置が必要となり、全体的には防御兵力が多く必要となりかねない。

 そこで偵察・監視により主力が接近してくる経路を判断し、配備の重点を絞ることが重要になってくる。

 いくつもの攻撃ルートがあるような場合は、1つに集約させるために、他のルートには兵力に代わる接近阻止(または拒否)装置などが必要となる。

 以前は地雷などがそうした役割を担い、敵の行動を制約していた。しかし、今は人道上から国際条約で破棄することになっており、現実に日本はすでに破棄して装備していない(条約無視をする近隣国は定かでないが、多分保有しているに違いない)。

 ともあれ、離島の奪還は攻撃の一種で、相手の3倍の兵力が最小限必要というのが戦術の原則である。

 この原則に照らしても、基本的に「奪還」ではなく、占拠されるのを阻止する「防衛(または防御)」に注力すべきである。あるいは、上陸戦闘を許さないための接近拒否戦略が望ましい。

 防衛白書(29年版)は水陸機動団について、「(敵の」攻撃に対応するためには、安全保障環境に即した部隊の配置とともに、自衛隊による平素からの常時継続的な情報収集、警戒監視などにより、兆候を早期に察知し、海上優勢・航空優勢を獲得・維持することが重要」と強調している。

 そして、「(敵の侵攻の)兆候を得たならば、侵攻が予想される地域に、陸・海・空自が一体となった統合運用により、敵に先んじて部隊を展開・集中し、敵の侵攻を阻止・排除する」としている。先述の接近阻止であり、または「防御」ありきである。

 続けて、こうした対応が取れず万一「島嶼への侵攻があった場合には、航空機や艦艇による対地射撃により敵を制圧した後、陸自部隊を着上陸させるなど島嶼奪回の作戦を行う」と白書は述べている。

 このように、「奪回」は起死回生の手段である。

 水陸機動団が「離島奪還」作戦を練り、訓練し、演習しているからと言って、日本が離島などの防衛を疎かにしてはならない。

 最も厳しい状況下の訓練(すなわち奪還訓練)を行うことで、部隊の練度を最高に高めることにより、低烈度の状況対応は容易となるからである。

おわりに
 尖閣諸島が国有化されたのは野田佳彦政権の2012年9月のことであった。その2年前の2010年9月には、尖閣諸島を巡視している海保の巡視船が中国の漁船に追突される事件が起きた。

 国有化される前は島の近傍まで行き清掃し、時には上陸して国旗を持ち込むなどの行為も見られたが、今では海保の警備が厳しく、海保の警戒線より内側に近づくことはできないとのことである。

 他方、海保の統制を受けない中国の漁船は海保の警告を無視して悠然と島の近傍を遊弋する逆転現象が起きていると仄聞した。これでは国有化が仇になっているとしか言いようがない。

 実のところ、国家主席になりたての習近平は権力固めに、就任直後の2012年末から2013年初めにかけて、尖閣諸島の奪取を本気で考えていたという(矢板明夫著『習近平の悲劇』)。

 この時期の事象を振り返ってみると、公船の領海侵犯は頻繁に起きていたが、2012年12月13日、国家海洋局所属のプロペラ機が初めて尖閣諸島上空で領空侵犯した(なお、この日は日本が南京で大虐殺をしたとする南京攻略の75周年記念日でもあった)。

 2013年1月になると、19日と30日の2度にわたり、東シナ海で中国海軍のフリゲート艦が海上自衛隊の護衛艦に火器管制レーダーを照射する。戦闘準備完了さえ示唆する行動で、何時戦闘開始になってもおかしくない態勢を意味する。

 いずれにしても、安倍政権が過激に反応しなかったため、中国は口実を見つけることができなかったようだ。

 当時はホットラインもできていなかったが、政権の冷静沈着な行動が、大事を防いだということができよう。

 法律がなければ行動できない自衛隊である。グレーゾーンなどと称して放置できない認識が必要だ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54523
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/392.html

[戦争b22] 「中国に勝てない」、徴兵廃止の台湾で若者が軍離れ
トップニュース2018年10月30日 / 11:12 / 2時間前更新
アングル:
「中国に勝てない」、徴兵廃止の台湾で若者が軍離れ
Yimou Lee
2 分で読む

[台北 29日 ロイター] - 台北にある淡江大学の1年生に向けて入隊を呼びかける台湾空軍Jiang Pin-shiuan軍曹の口上はとても魅力的に思える。軍に入隊すれば、政府が支援する学位が取得できるほか、毎年110日間の休暇と年間31万2500台湾ドル(約113万円)がもらえるというのだから。

だが、軍曹の話を聞いている学生の多くはほとんど関心を示さない。兵役は「時間の無駄」で、一段と圧力を強める中国に対して台湾が経済的もしくは軍事的に立ち向かう可能性は低い、と彼らは主張する。

「中国は経済力で台湾をつぶしにかかることができる。戦争なんて必要ない。カネの無駄だ」と、エンジニアリングを専攻する18歳のChen Fang-yiさんは話す。「軍への信頼も期待もほとんどない」

台湾全土の大学や高校で講演を行ったり、等身大の踊る人形や特殊部隊による「フラッシュモブ」パフォーマンスを披露したりするなど、台湾軍は兵士を採用するのに必至だ。長年、徴兵制を敷いてきたが、完全志願制へと移行するからだ。

台湾は2011年、コスト削減と軍のプロ意識向上のため、徴兵制を段階的に廃止すると発表した。強化されたサイバー戦能力と他のハイテク兵器を駆使して、中国からの脅威に対抗しようとしている。

台湾の国防部(国防省に相当)によると、中国から攻撃を受けた場合に必要とされる推定18万8000人の志願兵のうち、81%の入隊は年末までに達成可能だという。また2020年までには、達成率を90%に上げたいとしている。

中国は台湾について、言うことを聞かない自国の省と見なしており、服従させるには武力行使も辞さない構えだ。

しかし台湾軍の採用活動は容易でないことが証明されつつあり、志願兵の採用ペースは、悪化する中台の軍事的不均衡を解消するには十分ではない、と軍事専門家や政府監査官は指摘する。

中国が公式に発表した昨年の防衛予算は、台湾の約15倍に相当する。台湾周辺で爆撃機を飛行させたり、これまで台湾と外交関係を結んでいた国々を引き抜いたりすることで、中国は台湾に警告している。

昨年12月のリポートの中で、政府監査官3人が志願兵採用ペースは遅いと警鐘を鳴らし、台湾の戦闘能力について懸念を提起している。

「国家安全保障問題を考えるとき、政府は徴兵制復活について検討する必要がある」と、台湾のシンクタンク「国家政策研究財団(NPF)」の林郁方氏は指摘する。同氏は、立法院(国会に相当)の外交国防委員会委員長を務めたことがある。

「この措置の代償は大きいだろう。十分な兵士を見つけることはできない」

国防部はロイターに対し、軍の量・質ともに改善し続け、想定される中国からの軍事行動に対する全方位的な計画を策定していると語った。また、志願制への移行に対する「支援と奨励」を国民に求めた。

<訓練回避>

台湾がかつて軍事独裁政権であったという過去が、若者を軍に入隊するよう説得する上で障害となっている。また、2013年に徴兵された若い兵士が不正を行ったとして罰を受けた後に死亡し、大規模なデモを引き起こしたことも軍に打撃となった。

徴兵制はあまりに評判が悪く、過去3年間で予備兵1000人以上が義務である再訓練を逃れて起訴された。

「このことは、国民の士気に関する非常に困難な問題を提起している。衝突が起きた場合、人々はどうするつもりなのか」と、国立台湾大学のウィリアム・スタントン教授は言う。同教授は、台湾の米代表機関、米国在台協会(AIT)台北事務所(大使館に相当)の元会長でもある。

台湾は昨年、防衛費3193億台湾ドルの47%近くを人件費関連に費やした。これにより、兵器購入費用が圧迫されていると軍事専門家は指摘する。

2019年までに志願兵による軍に完全移行するという台湾の目標は、「予想を上回るコストがかかり」、防衛のための兵器獲得や準備に充てられていた予算を回すことになると、米国防総省は5月、議会への報告書で指摘している。

Slideshow (5 Images)
台湾は兵役義務期間を3年から4カ月の訓練に短縮した。これについて専門家は、市民の義務より個人の自由を優先する若い有権者の気を静めるための措置だと指摘する。

だが一部の人にとっては、短縮された訓練さえ無駄な演習のように思える。

「どのみち、中国との戦争に勝てやしない」と、20歳の大学院生で徴兵されたHsu Kai-wenさんは言う。Hsuさんは抽選後、海軍での4カ月間の訓練に最近配属された。「なぜ軍で自分の時間を無駄にしなくちゃならないのか」とHsuさんは語った。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
https://jp.reuters.com/article/taiwan-youth-military-service-china-idJPKCN1N30UB
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/393.html

[医療崩壊5] 「老衰死」の実数は統計より多い、死亡診断書“書き換え”のトリック 近年、老衰死が確実に増加していますが、統計には表れない
【第104回】 2018年10月31日 浅川澄一 :福祉ジャーナリスト(元・日本経済新聞社編集委員)
「老衰死」の実数は統計より多い、死亡診断書“書き換え”のトリック

老衰死が増加
近年、老衰死が確実に増加していますが、統計には表れない「老衰死」が多いようです
https://diamond.jp/mwimgs/d/b/-/img_dbbd653b00710e4d5b23e88b1195200b49602.jpg

 著名人の死亡記事で「老衰死」を目にすることも多くなった。つい先日も、10月10日にはユニチャームの創業者、高原慶一朗氏(87歳)、初代内閣安全保障室長の佐々淳行氏(87歳)が、そして19日にはノーベル化学賞受賞者の下村脩氏(90歳)がいずれも「老衰のため死去」とあった。

 厚労省がこのほど公表した2017年の人口動態統計調査によると、死亡原因の中で老衰死が10万1306人に達し、史上初めて10万人を突破した(図1)。老衰死は09年に前年を1万人以上上回って以降増勢を続け、死因ランクも7位から17年には肺炎を抜いて第4位に浮上した。

老衰死が急増
拡大画像表示
 医師が記入する死亡診断書を全自治体から集め、厚労省が死亡統計を作成する。死亡診断書の「死亡の原因」欄には、がんや脳梗塞などの病名が書かれる。厚労省発行の「死亡診断書記入マニュアル」によると、老衰死とは、「死因としての老衰は、高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用います」とある。

 特定の病名を死因としない、全身の細胞が加齢に伴い衰弱して生命が尽きるのが老衰死。多くの場合、食欲が薄れて食事量が減少し、睡眠時間が長くなり枯れるように亡くなる。「生物が楽に死ぬことができる仕組みとして作られている」とも指摘される。

 というのも、低栄養で脱水症状により脳内モルヒネといわれるβエンドルフィンが湧き出てきて陶酔感や多幸感が起こり、ケトン体も増えて鎮静効果が発揮される。これによって苦痛もなく穏やかに亡くなることができる

 これと対極を成すのが、栄養や酸素を人工的に送り込む延命治療を続けた上での死である。「死を一刻一秒でも遅らせるのが医療の役目」と医療教育で徹底的に教えこまれ、延命治療を当然の業務とする医師は多い。大病院、総合病院の医療者ほどその傾向が強いといわれる。

 この2つの異なる死への考え方が対立しているのが日本の現状である。本人や家族、そして医療者の見解の違いで、介護現場が右往左往させられることがよくある。

老衰死は増えているはずなのに
死因の「7.6%」しかない理由
 時代の流れは老衰死(自然死)に向かっている。訪問診療に熱心な医師が自宅や施設で自然な死、みとりに臨む光景が増えてきた。特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設での老衰死がこの10年間で6倍も増えている(図2、3)。

老衰死の死亡場所
拡大画像表示
死亡原因
拡大画像表示
 何よりも本人や家族が、チューブを付けた延命治療を望まなくなり、自然な死を受け入れるようになってきた。延命治療につながる救急車での病院搬送を断り、自宅や施設で死を迎える。2017年時点で、その自宅死は13%、施設死は10%で合計23%に上る(図4)。その多くは老衰死と思われる。

老衰死の死亡場所、老人ホームが増加
拡大画像表示
 それにもかかわらず、人口動態統計調査では2017年の死因のうち、老衰は7.6%しかない(図5)。なぜだろうか。疑問を解くために死亡診断書の記入法を点検した。

全死亡者の死亡場所
拡大画像表示
死亡診断書
死亡診断書
 死亡診断書の死因欄にはアイウエの4つの枠がある。(ア)には「直接死因」を、(イ)には「アの原因」を、(ウ)には「イの原因」を、(エ)には「ウの原因」をそれぞれ記入する(写真1)。例えば、ア欄に「急性呼吸不全」と書き、その原因としてイ欄に「脳梗塞」と書く。

 さらに、脳梗塞の原因があればウ欄に記入するが、なければ空欄のままでいい。「死亡診断書マニュアル」では、死亡統計を作成する際には、「最下欄の病名を死因とする」とある。直接的な死をもたらしたそもそもの原因を死因とするという判断は納得がいく。

 ところが、である。最下欄に老衰と記入されている場合は、「修正ルール」という例外が適用されて、その上の欄の病名を死因とすることになっている。驚くべきことだ。これでは、死因としての老衰の集計数が減ってしまう。唯一、老衰が死因として認められるのは、ア欄に「老衰」と書かれ、イ欄以下が空白の場合だけである。

 老衰の場合は最下欄が集計されないという事実について、訪問診療を手掛ける在宅療養支援診療所からは「えっ、知らなかった」という声が聞かれる。「修正ルール」は同マニュアルには書かれていないからだ。

 さらに不思議なのは、同マニュアルに「老衰から他の病態を併発した場合は、医学的因果関係に従って記入する」とただし書きがあり、老衰の他の病名を書くようにわざわざ指導している。その事例として、ア欄に「誤嚥(ごえん)性肺炎」、イ欄に「老衰」とある。

 つまり、医師が永遠の眠りについた高齢者を目の前にして死亡診断書を書く際に、「大局的に見れば加齢による老衰死だろう。だが、老衰で飲み込む力が衰えたことによる誤嚥性肺炎が直接的な死因ともいえる」と考え込んで、死亡診断書のア欄に「誤嚥性肺炎」と書き、イ欄に「老衰」と丁寧に書き込むと、死因統計では老衰ではなくなってしまう。

 睡眠中に唾などが気道に混入する誤嚥性肺炎は高齢者の死因としてかなり多い。2017年には第7位にランクされ、第5位の肺炎の中にも相当に誤嚥性肺炎が含まれていそうだ。「嚥下性肺炎であっても、肺炎と書いてしまう医師は多いのでは」という声が聞かれる。そんな誤嚥性肺炎を事例として強調している。現場の医師はこのただし書きに誘導されかねない。なかなか巧妙な書きっぷりだ。その結果として、老衰が死亡統計から消えていく。

人間は自然に死んではいけない?
「死因を調べる目的」に見るWHOの考え方
 このように、老衰を排除し、死因統計にできるだけ現れないような仕組みが2重3重に施されている。「修正ルール」とただし書き、そして「修正ルール」を死亡診断書記入マニュアルに記していない。これだけそろうと意図的と言わざるを得ない。厚労省に問い合わせると「日本が準拠しているWHO(世界保健機構)の規則ですから」と責任を回避する。では、WHOの考え方はどうなのか。死因を確定する理由が述べられている。

「疾病、傷害及び死因の統計分類」(ICD−10、2013年版)には、「死亡の防止という観点からは、疾病事象の連鎖をある時点で切るか、ある時点で疾病を治すことが重要である。また、最も効果的な公衆衛生の目的は、その活動によって原因を防止することである」とある。

 そうだったのか、これで合点がいく。死因を調べる目的は、死亡を防ぐためなのだ。「疾病の連鎖を断つ」か「疾病を治す」ことで。そこへ、連鎖を成さず、疾病ではない「老衰」が入ってくるのは迷惑なことなのだ。趣旨に合わない。夾雑物(きょうざつぶつ)だから排除したい。
 
 そのため、死亡診断書に 「ア=ある疾病、イ=老衰」と記入すると、例外を設けて、「ある疾病」を死因に仕立てたいのであろう。

 WHOは、「保健」至上主義を掲げ、どうやら人間は自然に死んではいけないと考えているようだ。その理念からすると当然かもしれない。

 厚労省の「死亡診断書マニュアル」では、冒頭に「死亡統計は国民の保健・医療・福祉に関する行政の重要な基礎資料として役立つ」とその意義を高らかに宣言している。だが、WHOの基準に忠実に従うと、整合性が損なわれ、「重要な基礎資料」がゆがめられてしまう。

それでも急増する老衰死
延命治療からの転換につながるか
 こうした統計上の高いハードルが課されているにもかかわらず、老衰死は年々急激に増えている。そして、上述のように、実態はもっと多いはずだ。死亡診断書の最下欄に老衰と書かれているにもかかわらず、死亡統計から外された事例を含めれば、10万人をはるかに上回っている。

 実は、死因の1位から3位のがん(27.9%)、心疾患(15.3%)、脳血管疾患(8.2%)についても、「平均寿命以上の高齢者については、その死亡の遠因はほとんど老衰とみていいでしょう」と指摘する医師は少なくない。

 2017年の死亡者134万人のうち75%は75歳以上の後期高齢者で、65歳以上の高齢者になると90%を占めてしまう。亡くなる人はほとんど老人である。多死時代は老人死の時代ということだ。そして、平均寿命の80歳を上回る高齢者だけでも63.5%となる。

 ということは、実は加齢に伴う全身の衰弱、つまり老衰死と見なしていいケースが半数を超えているとみていいだろう。それにもかかわらず、4人に1人は病院・診療所で亡くなるため、あえて病名を付けられることが多いと推測される。「医療とは病名を見極めて治療すること」という思い込みが医療界に浸透している。このため、死亡診断書に老衰と書くことをためらう病院の医師は多い。

 誤嚥性肺炎(死因の2.7%)や認知症(死因の1.5%)は老衰と表記すべきかもしれない。それに先述の肺炎(7.2%)の多くも含まれるだろう。がんや心疾患、脳血管疾患の中にも老衰と見なしていいケースがかなりあると思われる。これらの数値を集めると、最終的に老衰死が少なくとも30%は超えてしまい、死因の第1位に躍り出て来るだろう。

 だが、日本人の死に場所が病院から施設へ移りつつある。施設での個室化が進み、第2の自宅という意識が利用者に高まったことに加え、家族が老衰死を歓迎し始めたことも大きい。管につながれた延命治療より、「生き切って命を閉じる」ことを選び出した。「大往生」という言葉がよみがえりつつある。

 死因として老衰死が大半を占めるようになれば、日本人の死生観が根底的に変わるだろう。「老衰で死ぬ人は多く、老衰で死ぬのが当たり前」という意識が広まれば、延命治療への抑止力となる。欧米並みに、自然な死を受け入れる時代がより早まる可能性が高い。

 延命治療への依存から抜け出すためには、医療界だけでなく国民意識の転換も必要だろう。医療技術の進展は近代科学のシンボルでもある。だが、命に限界があるのは自然の摂理。科学と自然のはざまにあるのが今の老衰問題ではないだろうか。その論議を深める第一歩が死亡統計である。「書き換え」をやめて、ありのままの姿を公表すべきだろう。

(福祉ジャーナリスト 浅川澄一)
https://diamond.jp/articles/-/183819
http://www.asyura2.com/16/iryo5/msg/743.html

[社会問題9] 渋谷の軽トラ転倒「祭」に見る終わりの始まり いまや発展途上国レベルに堕ちた日本 「ただ騒ぎたいだけのバカ」のお祭り?狡猾
渋谷の軽トラ転倒「祭」に見る終わりの始まり いまや発展途上国レベルに堕ちた日本の品位
2018.10.30(火) 伊東 乾
川崎の「百鬼夜行」は観衆12万人と一体型 ハロウィーンパレード最高潮
川崎市で開催されたハロウィンパレードで、ポーズを取る参加者たち(2018年10月28日撮影、資料写真)。(c)AFP/Toshifumi KITAMURA 〔AFPBB News〕

 10月28日の早朝、東京・渋谷のセンター街にハロウィンの馬鹿騒ぎで繰り出した群衆が進入してきた軽トラックを取り囲み暴徒化、車体の上に乗るなどの乱暴狼藉の末、警官を呼ぶために運転者が席を離れた隙に、トラックをひっくり返すという事件がありました。

 友人からこの情報を送ってもらい、最初に私が確認したいと思ったのは、この暴徒が「何者か?」「どこの国の人間か?」ということでした。

「3.11の秩序」から7年
 誤解のないように最初に釘を刺しておきますが、「こんな暴動を起こすのは日本人であるはずがない。不良外国人がやってきて日本を悪くしているのだ」などという、“ドナルド・ダック”やドイツのネオナチ政党のようなことを言いたいわけではありません。

 流通している動画を見る限り、定かに確認はできませんでしたが、トラックの上に乗ったり横転させたりしたと思しい中に、見るからに日本人ではない外国人は見当たりませんでした。

 また、トラックを取り囲んではやし立てている群衆の中には、様々な肌や髪の色の人物が写り込んでいたようにも思われました。

 日本は2011年、3.11東日本大震災の後、一件の暴動事件も起きず、派手な略奪などもなく(火事場泥棒的な犯罪はあったようですが)、被災地で避難者が整然と協力して復興に当たるという、地球上でも稀有な「超高モラル社会」として全世界を驚かせた国でした。

 まだほんの、7年前の出来事に過ぎません。

 それが2018年の秋になると、夜の渋谷に繰り出した、多くは若者と思われますが、群衆が何の罪もない一般車両を取り囲み、それを転倒させて喜ぶという、普通によくある発展途上国の愚民の群れと同じ行動を取ったと報道されている。

 この間の「日本の劣化」をこそ、考えねばならないと思ったのです。「トラックを倒すなんて犯罪だ。こんな奴らは日本の恥だ」といったネットの書き込みを目にしました。

 ですが、こうした行動は、全人類に共通して見られる、ある意味では普遍的な「祝祭的反応」でもあります。

 このコラムで時折、生前たいへん多くご指導を頂いた文化人類学者の山口昌男さんの「中心周縁論」を引用してお祭りを議論することがあります。

日常的な価値の「転倒」
 普段隅っこにいるものが中心にやって来て、中央にいるものが隅に追いやられる。

 上は下、右は左、偉そうな奴は引きずり下ろし、男は女、女は男、たいくつな社会のあらゆる秩序や順序をひっくり返して、社会全体が活性化する・・・。

 これが祝祭の本質的な特徴ですので、象徴的な価値転倒の供犠は全世界のあらゆる地域で確認することができます。

 リオのカーニバルのような謝肉祭、韓国のタル・ノリで演じられる業病に罹患した貴族を嘲笑する仮面劇・・・。

 日本で考えるなら、日頃威張り散らしている「大名」が「太郎冠者」にやり込められる狂言など、極めて典型的な「祝祭的価値転倒」の技芸と言うことができるでしょう。

 渋谷で軽トラックを取り囲み、それを生贄に選んではやし立て、車体の上に乗って踊り、さらには車をひっくり返して大喜びする・・・。

 太古の人類が日常価値の転倒に共同体刷新活性化の力を見出したのと同じように、2018年10月28日の東京でも、半ば原始人、半ば猿の如き若者たちが、普段偉そうにして自分たちを押さえつけている体制や支配層、年配者や社会のルールをひっくり返して祝うという心理は、器物破損の犯罪行為であるのはもちろんですが、非常に普遍的な「人間社会によくあるパターン」であるのも間違いありません。

 要するに「未開な状態」で起こりやすい、衆愚状況です。

 そこまで、日本人を含むであろう、この加害者集団の精神年齢が「低下」していたことに、まず注目しておく必要があります。

 3.11の苦境を整然と乗り切ったはずの日本で、どうしてこんなみっともない「低EQ(Emotional Intelligence Quotient=心の知能指数)状態」に、若者が退行してしまったのか・・・。

 それを解くカギは、この非日常の「祭り」以上に、「日常」の側にあるように思うのです。

転倒の陰画としての日常
 要するに、日頃鬱積しているから、その憤懣が爆発する。そう考えるのが合理的です。トラックをひっくり返した者は、画像から身元を特定され、一部は逮捕されるなどして、刑事・民事の責任を問われるでしょう。

 この人たちには何ら同情の余地もなく、問われる社会的責任をきちんと果たすべきと思います。司直は再発防止を念頭に、もしかすると実刑を含む厳しい判決を下すかもしれません。

 しかし、中には、かなり確信犯で焚きつけながら、自身は手を下さず、責任をはぐらかして逃げおおせる奴がいるかもしれません。たぶん、いるでしょう。

 また、その場にいたほぼすべての人間が「お、何これ。トラックが取り囲まれてるじゃん。どーなんのかな。あれあれ乗っちゃったよ。踊ってる。面白れーなー」などと、この「非日常」の騒ぎを面白がっていたわけです。

 しかし、これら全員が逮捕、訴追などされることは絶対にないわけです。そこが一番の問題でしょう。

 またしても繰り返される古典的な「責任を取らない日本人」のパターンです。しかも、槍玉に挙げられるのは、日頃威張り散らす権力者ではなく、土曜の深夜日曜の早朝に業務でセンター街に乗りつけたのであろう軽トラックです。

 社会構造の上部でふんぞり返る悪代官が「この紋所が目に入らぬか!?」と格さん助さんに三葉葵の印籠を見せつけられ、「ここにおわせらるるは、畏れ多くも先の副将軍、水戸光圀公にあらせられるぞ! 頭が高〜い」と一喝され、

 「ハハ〜・・・」とひれ伏す価値転倒を、戦後70年を過ぎても日本人は一貫して愛好してきたわけですが、ここでは深夜に就労している営業車両を迫害する「弱い者いじめ」による「祭り」で喜んでいたわけです。

 残念ながらそういうケースも、人類には山のように例があります。

 欧州におけるユダヤ人排撃、近くはルワンダ・ジェノサイドでもミャンマーの少数派ムスリム・ロヒンギャへの迫害でもいいでしょう。

 要するに「ヘイト」と呼ばれるものは、すべてこの種の下層で圧迫され余裕のない大衆が、さらに弱いものを見つけて血祭りにあげて憂さを晴らす、最低最悪の経世済民のなせる技として客観的な分析が完了した社会病理にほかなりません。

 暴徒化した群衆の多くが、ひっくり返ったトラックの周りで万歳しながら飛び跳ねたりしているのを、私も動画で確認しました。その事実、この末期性にこそ注目する必要があります。

 1994年のルワンダ・ジェノサイドでは、暴徒化した民衆が面白がって少数派を追い詰め、教会や小学校にすし詰めにして手榴弾で爆殺したり、家族でバーベキューをしている食卓のま横で、なたで切りつけてなぶり殺しにしたりという、日常では考えられない事態が現実に発生しました。

 なぜ・・・?

 日頃抑圧されている、という社会不満があったからです。こいつらは悪い奴だ。私たちが日頃苦しんでいるのに、甘い汁を吸ってやがった。因果応報で懲らしめてやる・・・という心理。

 1933年にナチス・ドイツが政権を取ると、ただちにユダヤ人排撃が公共事業として推進されますが、多くのドイツ国民はそれを黙認、ないし支援しました。

 なぜ?

 第1次世界大戦に負け、多額の賠償金で経済を圧迫されていたドイツでは、戦争を仕かけたのがユダヤ人、国際ユダヤ財閥で、いくさで暴利を得てドイツ国民の日々の生活を圧迫している、というプロパガンダにさらされていました。

 ヘイト・スピーチによる洗脳です。

 2018年10月28日の暴徒は、「ヘイトスピーチ」で焚きつけられた群衆ではありませんでした。

 しかし、日常の中で高いストレスにさらされ、日頃の抑圧状況を転倒する、象徴交換儀式として「軽トラック」という生贄を欲していたことは間違いありません。

 直接の加害者の責任は言うまでもありませんが、そんな社会状況に日本を捻じ曲げて来たのはどこの誰か?

 遠因の責任をどこに問うべきかを考えるのも重要なことだと思います。くさい臭いにおいは元から断たなきゃダメ、ということです。

 レームダック政権の安売り人事、閣僚不祥事の類が毎日紙面を賑わせる末期的なご時世、起こるべくして起こった暴徒事件と考えられ、今後この傾向はさらに加速することが懸念されます。

「ええじゃないか」は終わりの始まり
 1867年8月から12月にかけて、日本は不思議な熱気に包まれていました。天からお札が降って来る、というのです。

 これは素晴らしい出来事の前触れだということになり、民衆は仮装して町に繰り出し、踊ったり騒いだり、大八車がひっくり返されたり、富裕な商家からモノが持ち去られたりもしたようです。

 これが世に名高い「ええじゃないか」の民衆暴動で、この間は都市も農村も社会機能が麻痺して、通常の市民生活を送ることが不可能になったと伝えられます。

 この「ええじゃないか」ですが、1867年12月9日にピタリとやみます。

 この日「王政復古の大号令」が出され、日本のレジームは近代のそれへと転換しました。「討幕派による陽動作戦だったのでは?」という説も検討されています。

 今回のような暴動は、ある政治的支配体制の末期の末期、もうどうしようもない状況であることを示すバロメータである可能性が考えられるでしょう。

 ハロウィン暴動は「終わりの始まり」と言うことができるかと思います。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54522

 

2018年10月31日 宮崎智之 :フリーライター
ハロウィンは「ただ騒ぎたいだけのバカ」のお祭りなのか?

ハロウィンを前に渋谷センター街に集まった人たち(写真と本文は関係ありません) Photo:DOL
理由なく暴れまわる無軌道な仮装集団
 今年もハロウィンがやってきた。「Trick or Treat?」と子どもがお菓子をねだる姿はとても可愛い。しかし、最近では仮装した大人たちがどんちゃん騒ぎする祭りになっている。

 以前、ダイヤモンド・オンラインの記事でも書いたが、筆者はハロウィンパーティーに参加したことがない。なぜなら、「仮装する」という行為が、どうしても自意識的にできないからだ。そういう人にとってハロウィンは、ただの舶来の祭りである。我々には関係ないことだ、と。だが、近頃のハロウィンは看過できないほどの勢いがある。

 今年、ハロウィン前の週末には、渋谷にたくさんの仮装集団が現れ、立ち往生した軽トラックを横転させたり、痴漢や盗撮の疑いで逮捕者が出たりする大混乱に陥ったそうだ。

 そんなハロウィンに対する批判としてよくあるのが「ただ騒ぎたいだけのバカ」というものである。民衆が暴徒化する例は昔からあるものの、米騒動や一揆などとは違って暴れる理由がわからないのがハロウィンの特徴だ。しかも、これといった大義もなければ、正義もない。もしかしたら、背景には不況や世界情勢への不安があるのかもしれないが、だとしたらなぜアニメキャラやゾンビに変装する理由があるのか。

 まるで尾崎豊の歌詞に表現されているような無軌道性。いや、そう言ったら尾崎や尾崎のファンに失礼だろう。たしかに、夜の校舎の窓ガラスを壊してまわるのはどうかと思うが、それには青春の葛藤や実存への不安が背後にあった。しかし、渋谷のハロウィンを見る限り、筆者のようないい歳をしたおっさんも交じっている。今さら実存に悩む歳でもない。しかも、尾崎は「ウェーイwww」などと叫びはしない。これは絶対に。

 インスタ映えする写真を見知らぬ人と気軽に撮ることが目的の人もいるようだ。ところが、なかにはナンパ目的という輩もいるから厄介である。今年、渋谷のハロウィン騒動に遭遇した女性によると、「今は性欲の塊だから!」「去年、ハロウィンの後にラブホ行ったぜ」と自慢げに話している男たちがいて、ドン引きしたという(イベントに乗じて女性を口説く“ジョージ男子”については、前回記事を参照していただきたい)。

なぜ、人々は「渋谷」で狂乱するのか
 そんな彼、彼女らに対して、社会的な警戒心が高まっている。時事ドットコムの報道(2018年10月23日)によると、東京都渋谷区の長谷部健区長は記者会見し、渋谷駅周辺に集まる若者たちに対して、モラルを守ってハロウィンを楽しむよう異例の声明を出した。駅周辺のコンビニエンスストアに、瓶入り酒の販売自粛も申し入れたという。

 記事によると、一昨年は7万人以上が渋谷駅周辺に集まったそうだ。機動隊員を多数動員したが、混乱が抑えきれないほどの荒れっぷりだった。それにしても、そもそもなぜ渋谷駅なのか、という素朴な疑問もある(そう言えば、サッカーW杯の時も渋谷駅周辺が混乱する)。

 中沢新一氏の著書『アースダイバー』(講談社)によると、渋谷駅前の交差点はかつて水の底にあり、宮益坂、道玄坂といった斜面に古代人が横穴を掘って、死者を埋葬していたそうだ。古代、生きている人間の共同体は厳しいおきてで支配されていたが、死霊の支配下では世俗のモラルが効力を失う、と中沢氏は指摘している。そういった歴史が渋谷という歓楽街の形成に影響を与えたという。現代のハロウィンの狂騒も、それと関係しているのだろうか。だとしたら、古代からの人間の歴史の積み重なりを感じさせる。

 しかし、果たしてそんな大層なものなのだろうか。だいたいハロウィンは日本の古代とまったく関係がないのである。一緒にしないでくれと、古代人たちも迷惑がっているはずだ。

 もともとはキリスト教の万聖節の前夜祭だったというハロウィンが、なぜか日本では「意味もないのに仮装して騒ぐ」という危険思想に染まった祭になってしまった。思想調査をしている公安警察も真っ青である。思想がないぶん、取り締まりようがない。

彼らは「バカ」なのではなく、むしろずる賢い
 さて、筆者が一番気になるのは、彼、彼女らは本当に「ただ騒ぎたいだけのバカ」なのかどうか、ということである。なぜなら、「ただ騒ぎたいだけのバカ」ならば、いつでも、どこでも騒いでいるはずだからである。しかし、彼、彼女らは「特別な日」にしか騒がない。

 ハロウィンという海外からもたらされた祝祭の日の前後には、歓楽街に多くの騒ぎたい人たちが集結する。それに乗じることで、「騒ぎたいのは自分だけではない」という免罪符が与えられたような気がするのだろう。さらに酒が入り、その乗じたい気持ちに勢いがついてくると、軽トラックまでひっくり返す暴挙に出るのだから人間は恐ろしい。

 しかも、仮装という匿名性と非日常性が、彼らにさらなる無軌道性を与える。つまり、集団性、匿名性を隠れみのにして暴れる彼、彼女らは「バカ」などではなく、むしろ狡猾でずる賢い確信犯だ。「ただ騒ぎたいだけのバカ」と呼ぶには彼、彼女らは臆病で気が小さい。彼、彼女たちは、騒ぐ場所もタイミングもシチュエーションも、すべて計算ずくで選んでいる。


本連載の著者・宮崎智之さんの最新作『モヤモヤするあの人―常識と非常識のあいだ―』(幻冬舎文庫)が好評発売中です
 もちろん、マナーを守ってハロウィンを楽しんでいる人のほうが多数であることも、付け加えておかなければならない。ほかにも、クリスマスやバレンタインデーなど、本来の文化に関係ないイベントが日本には根付いている。異文化を柔軟に取り入れる姿勢は日本人のよいところだ。ハロウィン自体が、否定すべきものだとは思わない。

 思想なき集団が無軌道に暴れる現象。その裏には、実は臆病で気が小さい、一部の日本人の性質が隠れているのかもしれない。「ただ騒ぎたいだけのバカ」にもなれない彼、彼女たちにとって、「仮装する祭り」は海外からもたらされた、もってこいの口実なのだろうか。いずれにしても、節度を守って楽しまなければ、文化として衰退していくだろう。

 当連載についてご意見がある方は、筆者のTwitterアカウントにご連絡いただきたい。すべてには返信できないが、必ず目を通したいと思う。

(フリーライター 宮崎智之)
https://diamond.jp/articles/-/183820

http://www.asyura2.com/12/social9/msg/877.html

[戦争b22] NYの電力供給を支えるイスラエルの鉄壁防空技術 サイバー攻撃排除のためにも防衛分野の技術が求められる時代に 
NYの電力供給を支えるイスラエルの鉄壁防空技術
サイバー攻撃排除のためにも防衛分野の技術が求められる時代に
2018.10.31(水) 山田 敏弘
迎撃ミサイルを発射するアイアンドーム(イスラエル国防軍サイトより)
 中東の一角で、敵対するアラブ諸国に囲まれる小さな国、イスラエル。

 これまでイスラエルは、中東和平問題などでもめている隣のパレスチナなどと事あるごとに衝突してきた。そんな時はミサイルがイスラエルに飛来することになる。

 そうして常に敵のミサイル攻撃による脅威にさらされているイスラエルだが、イスラエル軍は国民を守るために世界的にも名高いミサイル防衛システムを配備している。そう、「アイアンドーム」である。

 アイアンドームは直訳すると「ドーム型の鉄の天井」ということになるが、その名が示す通り、イスラエル上空にレーダー網を敷き、国外からのミサイルを迎撃して破壊する防衛システムだ。その迎撃成功率たるや、イスラエルによれば、85〜92%にも達するという。

 先日、このアイアンドームのコマンド制御システムを開発したイスラエル企業「mPrest(エンプレスト)」の創設者でCEOのナタン・バラク氏と話をする機会があった。バラク氏は今、このアイアンドームを支える同社のスキルを、世界で電力インフラに活用するという別の挑戦に乗り出していると強調していた。アイアンドームを作り上げた企業が、なぜ電力インフラの世界に進出するのかーー。エンプレスト社の取り組みを探ってみた。

無駄撃ちしないアイアンドームの制御システム
 そもそもアイアンドームというのはどういうシステムなのか。

 アイアンドームは、2011年に配備が始まった対空迎撃ミサイルシステムだ。開発には、同盟国である米国が13億ドルを提供している。世界にその名を轟かせたのは、2012年と2014年に起きたパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとの紛争だった。ハマスが放ったミサイルやロケット攻撃を見事に迎撃しているシステムとして話題になったのである。

 そんなアイアンドームは、可動式の3つのユニットから成る。まずレーダーがイスラエル領内に向けて飛んでくるミサイルを察知し、システムのソフトウェアがその弾道を瞬時に予測する。そしてミサイルユニットから、タミルという名のミサイルが発射され、敵のミサイルなどを捕捉して破壊する。

 アイアンドームの凄いところは、捕捉・破壊の技術だけではない。無駄撃ちはしないことにある。どういうことかと言うと、システムがミサイルの落下地点が人口密集地かどうかなど、被害の可能性も瞬時に判断し、人がいないようなエリアにミサイルが落ちる場合には迎撃しない。

 これにより、1発が約5万ドルと言われるタミル・ミサイルを発射するコストを抑えることができるという。さらには、迎撃時にはその破片がなるべく地上で二次被害を生まないようにも計算して破壊するらしい。こうした技術を実現するには、その基幹となるシステムがかなりの正確性と成熟度を保証する必要がある。

 エンプレストは、その複雑に組まれた迎撃システムのコマンド制御を担っているのである。実はエンプレストのシステムは、イスラエルだけでなく「英国からアジアを含む世界各国」(バラク氏)にも供給されている。表には出てこないが、世界各地で使われているということだ。

 そんなエンプレストが今、電力網の世界に力を入れ始めているというのである。

 なぜ電力インフラなのか。バラク氏によれば、「実は私たちが力を入れているのは、もともとアイアンドームだけではない。イスラエルでは農業部門や海洋マネジメントなどでもシステム制御を担った実績がある」と話し、「電力インフラにも乗り出しているのです」と言う。

 確かに同社は、イスラエルでは、農業分野で灌漑などを制御管理するシステムや監視カメラからゴミ、駐車問題など街全体をコマンド制御するシステムなども手がけている。イスラエル以外でも、インドでは通信インフラのセキュリティ対策や管理も担い、ブラジルやアルゼンチンでは自動車などの盗難車両を追跡するエンプレストのシステムが導入されている。そして現在、コマンド制御システムを電力グリッドに使うことも始めているということらしい。

ニューヨークやニュージーランドはすでに採用
 実はすでに導入している地域もある。例えば、ニューヨーク州だ。

 ニューヨークは言わずと知れた世界でも有数の大都市。16の発電所を抱え、その7割は水力発電に頼っている。その電力供給の安定を担っているのが、エンプレストのコマンド制御システムだという。

 ニューヨーク州では、2012年と2014年、続けて大規模停電に襲われた。その原因は水力発電の変圧器が機能不全に陥ったからだった。その反省を踏まえ、同州はエンプレストのシステムを導入。そして、変圧ポイントにセンサーを付け、機器の状態やフローなどの記録をビッグデータとして集約し、数多くの施設や電力網そのものを広域に常時管理するシステムを構築している。そしてAI(人工知能)が、修理やメンテナンスが必要な箇所を前もって警告したり、今後問題が起きそうな変圧器を先に予測するなど、電力供給の安定化を支えている。

 バラク氏は、電力網のような基幹インフラには、「アイアンドームと同様、いくつものシステムがからみ、問題点の察知が必要となる強固で絶対的に安全が求められるシステムが必要なのです」と話す。

 またニュージーランドでも、エンプレストのシステムが電力をコマンド制御している。通常の制御に加え、「Internet of Things(IoT=モノのインターネット)」にかけた「Internet of Energy(IoE=エネルギーのインターネット)」と呼ばれるシステムで、顧客のエネルギー消費をセンサーなどを駆使してつなぎ、分析し、天候や時間などによって供給をコントロールすることで、電力を効率的に管理・分配する。ニュージーランドでは9つのシステムが合わさってこうした制御を可能にしているが、電力会社の制御担当者は、ひとつの画面ですべてをコントロールできるようになっている。さらには、顧客の導入している再生可能エネルギーなどの買い取りも組み込める。

 こうしたテクノロジーは、バラク氏がイスラエル軍で経験してきたことが原点にあるという。バラク氏は、2003年までイスラエル海軍でコマンド制御とコミュニケーションの責任者をしていた。海軍でも、潜水艦やボート、特殊部隊とのコミュニケーションを一元化するシステムを構築した経験を持つ。それによって、アイアンドームのテクノロジーを任されることになり、そこから現在力を入れているインフラのシステム化に繋がってきたのだと、バラク氏は語っている。

 今世界では、発電は主に原子力や火力、水力に頼っているが、今後は、太陽光や風力、地熱やバイオマスなど再生可能エネルギーによる発電もかなり増えていくことが予想される。また日本では2020年から、送配電部門が分社化される予定になっている。つまり、公共インフラである電力の送配電網を様々な電力会社が公平に利用して商売を行えるよう、電気事業者と送配電部門を分離し、新たな発電事業者たちが参入することを可能にする。

 そうした電力源をまとめてコントロールして、安定供給するシステムとして、エンプレストは自社のシステムが有効だと主張している。しかも、今後、インフラが今以上にデジタル化されれば、利便性の反面、サイバー攻撃などのリスクも増える。ただそこは世界でもサイバーセキュリティ意識の高い国として知られるイスラエルだけに、侵入を許さないなどサイバー攻撃対策も十分に行なっていると、バラク氏は話す。

インフラをサイバー攻撃から守れるか
 サイバーセキュリティ関係者の間では、インフラに対するサイバー攻撃は常に話題になる警戒すべき問題である。2015年と2016年には、ウクライナでロシアとみられる政府系ハッカーらの手によって、2度にわたり電力会社がサイバー攻撃を受け、広範囲が実際に停電に陥ったことがある。

 またロシアに亡命している元CIA(米中央情報局)の内部告発者エドワード・スノーデンは、日本の横田基地に勤務している時に、日本のインフラにマルウェア(不正なプログラム)を埋め込んだと暴露している。また中国政府系ハッカーは周辺の敵対相手のインフラにすでに入り込み、「有事の際に攻撃をできるよう備えている」(東南アジアの政府関係者)とも聞く。こうした話は枚挙にいとまがない。

 実は、アイアンドームのシステムも、中国政府系とみられるハッカーからのサイバー攻撃に狙われた過去がある。だが、軍の時代からサイバーセキュリティの最前線を見てきたバラク氏は、「(脅威に囲まれながらも)サイバーセキュリティに強いイスラエルで、アイアンドームは安全性を示している。私たちは今後も直面する可能性があるサイバーセキュリティにおける脅威にも、打ち勝つ自信を持っています」と話す。

 電力供給の安定、そしてセキュリティ対策は不可欠だが、それ以前に電力インフラは供給過程などのちょっとしたミスでも大規模な停電を起こしかねない。最近では、台風の影響で大規模停電が各地で発生したことは記憶に新しいが、そうした事態はいつでも発生しかねないのである。

 そこに、迎撃成功率9割を超すエンプレストの緻密な技術への「信頼」が貢献するというわけである。アイアンドームで実績を積んだテクノロジーが電力網を支えるーーそんな話が世界各地から聞こえる日が来るかも知れない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54538
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/395.html

[経世済民129] 世界の金融市場、大転換はまだ始まったばかり  嘘の機銃掃射で世界を震撼させるトランプ大統領 10%所得減税や中米移民テロ
世界の金融市場、大転換はまだ始まったばかり

株式にとってやはり危険な月だった10月、中銀頼みも限界に
2018.10.31(水) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年10月27・28日付)

連日の米株大幅安、トランプ氏「FRBは制御不能」 議長解任は否定
電光掲示板に表示された株価の動きを見つめる投資家。中国・北京にて(2018年10月11日撮影)。(c)Nicolas ASFOURI / AFP 〔AFPBB News〕

 市場が急落する時には、明確な説明を求める集団的なニーズが圧倒的に大きくなる。

 市場の急落がニュースになり、普段は株価パフォーマンスに無頓着な人も突如、答えを求めるようになる。

 10月第4週は間違いなく、株式にとって危険な月としての10月の評判を確立した。24日のウォール街の相場急落で年初来の上昇が吹き飛んだからだ。

 米国株の急落は、その他多くの世界の株式市場にとってすでにみじめだった2018年に輪をかける。

 米国株の比重が31%を占めるFTSE全世界指数は、2012年以来最悪の月間記録を更新しそうだ。

 ウォール街はほんの5週間で、史上最高値から調整領域(直近の高値から10%下落した水準)へと大きく振れた。

 25日には反発したものの、グーグルとアマゾン・ドット・コムの期待外れな決算発表が株式に再び下落圧力をかける。

 かつて全く動じないように思えた米国株式市場が、他国・地域の株式の冴えない動きと歩調を合わせるようになった理由を見つけるのは難しくない。

 責任の一端は債券利回りの上昇にあるとされている。そして、米中貿易摩擦とドル高と世界経済の成長鈍化が企業にダメージを与えている証拠も積み上がっている。

 10月下旬には、米国産業の先行指標となるキャタピラーとスリーエム(3M)がこの点を浮き彫りにした。

 その結果、投資家は、米国企業の業績はピークを越え、減税の追い風も薄れていくというストーリーに飛びついた。

 ありていに言えば、これはバリュエーション(株価評価)が持続不能なことを意味する。

 来年には利益成長が落ち込み、世界の投資家心理に影響を与えるウォール街の大調整を引き起こすと見られるからだ。

 欲しいもののリストを書けるなら、投資家はきっと、すでに多額の債務を抱えた中国がさらに刺激策を講じること、そして米国との貿易問題を解決することを望むだろう。

 そこへ、予算をめぐり欧州連合(EU)とイタリアの間で合意ができることと、ブレグジット(英国のEU離脱)の条件について合意が成立することを加える。

 さらに、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを中断する兆候、ひいてはドルが弱含む兆候が一つでもあれば、投資家のパーティーに花を添えるはずだ。

 このような展開はあり得るものの、市場の現在の緊張はもっと著しい変化を反映している。

 この10年、債券利回りとボラティリティーを抑制してきた中央銀行の対策の終焉だ。

 米国がその先駆けとなっており、ドル高と資金調達コストの上昇――3カ月物の米国債の利回りは2.3%前後――が世界中に波紋を広げた。

 新興国市場の株式を見たら分かる。現在、PBR(株価純資産倍率)では、新興国は先進国の株式と比べたディスカウント率が史上最大になっている。

 資産価格に対する中央銀行の下支えの終わりは、勢いがつき始めたばかりだ。

 欧州中央銀行(ECB)は10月初めに月間150億ユーロの債券買い入れを減らし、先日は12月に量的緩和(QE)政策を打ち切ることを認めた。

 FRBは最大で月間500億ドルのペースでバランスシートを縮小させており、今後も翌日物金利を引き上げていく見込みだ。

 間違ってはならない。FRBが利上げを中断するには、はるかに大規模な市場のショック、それも米国経済に深刻な打撃を与える威力のあるショックが起きなければならないのだ。

 こうした状況はすべて、押し目には買い、乱高下があれば売り、パッシブな投資戦略を通じて群れから離れないようにすることに依存してきた近年の魔法の方程式がトラブルに陥ったことを意味している。

 QE時代の目覚ましい上昇の後の資産運用会社のお粗末な株価パフォーマンスは、こうした不安が具体化しているのが見て取れるところだ。

 投資家にとって重要な展開は、10月第4週の米国株の総崩れが一時、S&P500種株価指数の総リターンを吹き飛ばし、年初からのリターンが9月のピークの12%から1%近くまで落ち込んだことだ。

 歴史的に見ると、株価パフォーマンスがお粗末な時期を相殺する助けになる安定化装置は、長期国債を保有することだった。

 今年は違う。

 多くのポートフォリオにとって問題は、長期米国債の2018年の総リターンがマイナス7.8%になっていることだ。

 また、米国株の痛みにもかかわらず、国債利回りは直近の高値に近い水準で高止まりしている。これは米国の指導体制の魅力を欠く側面を反映した動きだ。

 米国経済はまだ力強いが、減税のような気前のいい財政政策は、短期、中期、長期の米国債の大量発行によって財源をまかなう必要がある。

 シティグループの債券チームが指摘しているように、2018年第4四半期には国債発行額がおよそ3500億ドルにのぼり、年間供給量の3分の1を超える見込みだ。

 我々は今、投資リターンを得るのが難しくなる時期の第1段階にある。

 債券と株式の長期的な関係が崩れたり、少なくとも曖昧になったりしたら、この流れは悪化していくだろう。

 投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)は、景気刺激策が金融政策から財政政策へとシフトするにつれ、「資産配分の長期的シフト」が起きると見ている。

 債務増大に伴う負の側面は、株式を取り巻く環境のボラティリティーが高まることだが、アクティブ運用のファンドマネジャーや個別銘柄を選別する投資家にとっては良いことだ。

 だが上場投資信託(ETF)を使ったオートパイロット式戦略にとっては、決して明るいニュースではない。

 現在の売り圧力がひとたび和らげば、投資家は以前うまくいったものへと戻っていくだろう。

 我々はまだ、あらゆるサイクルの終わりを告げる本物の弱気相場からは遠くかけ離れているが、ここから先は力強い株価パフォーマンスを生み出すのが難しくなっていく。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54541

 
嘘の機銃掃射で世界を震撼させるトランプ大統領
10%所得減税や中米移民に中東のテロリスト・・・、右往左往の米政府高官
2018.10.31(水) 堀田 佳男
もう外食は無理? トランプ政権幹部、相次ぎ退店や罵倒の憂き目に
米ホワイトハウスで記者会見に臨むサラ・サンダース大統領報道官(2018年6月25日撮影)。(c)AFP PHOTO / Brendan Smialowski〔AFPBB News〕

 「ドナルド・トランプ大統領(以下トランプ)は紛れもなくウソをつくことを楽しんでいます」

 米首都ワシントンで中間選挙を取材中、共和党の選挙戦略官ロン・クリスティー氏がつぶやいた。

安倍首相も呆れているはず・・・
 2016年大統領選時から、トランプは何度も虚偽発言を繰り返しており、一向に収まる気配がない。本人はためらいもなく大胆発言を続けている。

 トランプ政権の高官が匿名という条件で、トランプの言動についての取材に応じてくれた。

 「トランプ政権に仕えていても、全員がトランプ支持であるわけではありません」

 「トランプは数多くのウソをついていますから、周囲にいる政府職員はずいぶん落胆させられています。安倍晋三首相も本当は呆れているのではないでしょうか」

 トランプのツイートを遡って調べるだけで、虚偽と呼べる内容をいくつも指摘できる。

 だが補佐官たちを本当に困らせているのは、国家全体にかかわる発言やツイートである。

 最近では10月22日、突如として中流層向けとして、10%の所得税減税を口にした時だった。

 それは思いつきといったレベルでの減税案であり、中間選挙前に実施したいとの要望だった。

 10%の所得税減税が実際に行われるとしたら、莫大な財政負担になる。

常識では考えられない10%減税だが・・・
 米政府は昨年12月、所得税と法人税の減税を実施しており、米政府にはこれ以上の余裕はない。そこにきて10%の減税は常識では考えられない。

 ホワイトハウスのスタッフたちは減税案がトランプの口から出た後、大慌てだった。

 「大統領、そんなこと聞いていませんよ」と言いたいところだったようだが、トランプの発言を無下に否定するわけにもいかない。

 ホワイトハウスに詰めている記者たちは、10%減税の詳細について補佐官たちに詰め寄った。だが誰一人として満足に答えられない。

 もちろん中間選挙前までというトランプの口約束は、実現不可能だった。

 減税を正式に決定するには議会の承認が必要になるが、議会は中間選挙まで閉会されている。

 ホワイトハウスが新たな減税案を公表するとしたら、経済諮問委員会のケビン・ハセット委員長が総括しなくてはいけないが、ハセット氏は何も知らされていなかった。

逆説的政策に見舞われているホワイトハウス
 匿名で答えた高官は、ホワイトハウスではいま「逆説的政策」という流れに見舞われているという。

 ホワイトハウスが新たな政策を発表する時、これまでであれば職員が関連部署などと協議をしながら骨子を作った。

 そして議会の担当議員とも調整しながら政策が練り上げられて大統領が公表するという流れが一般的だ。

 だが「逆説的政策」では、まずトランプによる発案があり、それを高官たちが政策として肉づけしていくというのだ。

 10%減税案も数週間の期間があれば、政策として練り上げられないことはないが、現実的ではない。

 過去の大統領は米国の最高指導者という立場を意識し、公の席で話をする時には細心の注意を払ってきた。一言の暴言によって、運命が変わることさえあるからだ。

 だがトランプは相変わらずがさつな言動を繰り返す。中米から数千人が米国の国境を目指すキャラバン(遠征)について、こう述べた。

 「キャラバンの中に中東出身のテロリストや犯罪者が紛れ込んでいる」

 不用意な発言だった。

報道官も即座に「間違いなし」
 トランプはキャラバンを構成する人たちを熟知しているわけではない。テロリストがいることを確認したわけでもない。

 単に、数千人の不法移民たちの入国を許可したくないためにでっち上げの理由の口にしたに過ぎない。

 ホワイトハウスの記者たちはトランプの発言後、すぐにサラ・サンダーズ報道官に「犯罪者やテロリストが紛れているのか」を質した。

 同報道官は言い放った。

 「アブソリュートリー(もちろんです)」

 そう言わざるを得なかった。だが犯罪者とテロリストが紛れている確証はない。ホワイトハウスはすぐに情報を公表できなかった。

 米テレビ局の記者たちはキャラバンの中に入って、「トランプが犯罪者やテロリストがいると言っているが・・・」と行進をしている人たちにマイクを向ける。

トランプの嘘を糊塗する高官たち
 もちろん彼らの答えはノーだ。

 するとホワイトハウスは、1日に平均10人のテロリストが米国内に入国しているという統計数字を探しだしてきて公表した。トランプの発言の正当性を保つための行為だ。

 こうした話はいくつもある。

 今年2月、トランプはワシントン市内で軍事パレードを実施すると発言した。フランスで行われたパレードを観て、同じことを考えたようだ。

 トランプは今年11月のベテランズデー(退役軍人の日)に実施したい意向だった。

 しかし国防総省との綿密な打ち合わせの末に打ち出されたアイデアではなかった。

 コストが100億円を超えるとの試算と同時に、ワシントン市内の道路が軍事車両の通過に適さないとの理由もある。

 何ごとも最初は思いつきから始まることが多いが、思慮のある指導者であれば発表する前に細部を調べさせる。

 ある程度具体的な計画が整ったところで公表とならなくてはいけないが、トランプはまず口にしてしまう。

中国や日本への関税もただの思いつき
 中国や日本からの輸入品に対する度重なる関税も、トランプの思いつきからスタートした公算が高い。

 この件では裏が取れていないが、スティーブン・ムニューシン財務長官とウィルバー・ロス商務長官は相手国との貿易交渉を進めているにもかかわらず、トランプに頭ごなしに追加関税をかけられた可能性がある。

 トランプのこうした破天荒な言動が、ほとんど直感と呼んでさしつかえない地点から発信されていることがお分かりかと思う。

 それを考えると、中間選挙で全米各地においてトランプが行う遊説の中身がいかに虚しいかが分かる。

 トランプの口約束の尻ぬぐいをさせられている最大の「被害者」は、サラ・サンダーズ報道官かもしれない。

 トランプ擁護の姿勢を貫き通す姿勢は、滅私奉公の鏡とさえ言える。

 すでにトランプの化けの皮は剥がされているか思うが、トランプ信者たちの信じる力はいまでも強いのが悲しい現実である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54544
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/224.html

[経世済民129] 歴史的大失敗!中国の強大化にお金を払い続けた日本 40年にわたる対中ODAが終了 米中新冷戦は「中国近代史」を押さえれば
歴史的大失敗!中国の強大化にお金を払い続けた日本
40年にわたる対中ODAが終了、一体どんな成果があったのか?
2018.10.31(水) 古森 義久
日中企業3000億円規模の商談成立、安倍首相訪中で
中国・北京の人民大会堂前で行われた歓迎式典で、儀仗(ぎじょう)兵を閲兵する安倍晋三首相(2018年10月26日撮影、資料写真)。(c)Greg BAKER / AFP〔AFPBB News〕

「資本家は自分の首を絞めるロープまで売る」──共産主義の始祖レーニンはかつてこんなことを広言した。目先の利益だけを追求する資本家ビジネスマンは、敵となる相手にやがては自分たちを傷つけることになる武器までも売りつけるという意味だろう。

 このたび、日本が中国への40年にも及ぶ巨大な援助、ODA(政府開発援助)の終了を宣言した。この援助の意味を考えると、ついレーニンの言葉が想起されてしまう。日本が中国の強大化にせっせと励んできたのは、結局、日本の首を絞めるロープを与えたということに等しいのではないか。レーニンの語る資本家は潜在敵にロープを「売る」のだからまだよい。日本の場合は、中国にロープを「与えてきた」のだ。

「最大級の失敗」だった対中ODA
 安倍晋三首相の中国訪問を機に、日本政府は中国に対するODAの完全な終了を宣言した。日本国内では「止めるべきだ」という声が大勢を占めるなかで、これまで続けられてきたことのほうがむしろ驚きである。

 日本は40年近くにわたり、合計3兆6000億円の公費を中国に供与してきた。その援助は日本に一体なにをもたらしたのか。どんな利益があったのか。

 結論を先に述べよう。日本側がその援助の供与で目指した目標はまったく達成できなかった。日本側の当初の意図と、援助がもたらした結果の間には、あまりに大きな断層が存在する。だから日本政府の対中ODA政策は日本の戦後外交全体の中でも最大級の失敗だったといえる。失態といってもよいだろう。

 以下ではその理由を説明する。

「賠償」の意味も込められていた
 私は日本の対中ODA政策を20年前から点検してきた。その契機は1998年11月、産経新聞のワシントン支局勤務から初代中国総局長というポストに移り、北京に2年間、駐在したことだった。

 日本の対中ODAの目的とはなんだったのか。

 中国へのODAが始まった1979年当時の大平正芳首相は「日中友好」を強調していた。ODAの供与によって日中関係の友好を推進するという意味である。その後、ODA総額が大幅に増えた1988年当時の竹下登首相は、「中国人民の心へのアピールが主目的」と明言した。これまたカギは「日中友好」だった。

 日本側が「友好」を掲げる背後には、戦争がらみの賠償という要素もあった。第2次大戦で日本が戦った中華民国は日本への一切の戦後賠償の権利を放棄することを宣言した。国民党政権の蒋介石総統の決定だった。その国民党政権を中国本土で打破して、新政権を樹立した中華人民共和国も、それに倣って日本への戦争関連の賠償は求めないことを言明した。

 そのため日本側には、中国へのODA供与には賠償の意味も込められているという認識が存在した。正式な賠償金を支払わない代わりにODAでの埋め合わせをするという潜在的な意識だったともいえよう。

中国の国民はODAの事実を知らない
 だが私は北京に赴任して衝撃を受けた。日本の対中政策の最大支柱であるはずのODA供与の中国側の実態を知ったからだった。

 もしもODAが「賠償」の役割も担っているのなら、中国側もそう受け止めている必要がある。ところが、日本側が官民あげて日中友好への祈りも込めて供した巨額の血税は、なんの認知もされていなかったのだ。中国政府も民間も日本からの援助をまったく無視していた。日本からの経済援助を中国側の官営メディアは一切伝えない。だから一般国民もまったく知らないのである。

 実際には、中国では日本のODAの巨額な資金により全国各地に立派な公共施設が次々に建設されていた。ほんの一部を挙げるならば、北京首都国際空港ビル、北京地下鉄2号線、南京母子保健センターなどである。これらの施設はODA資金のなかでも完全な贈与にあたる無償資金として供されていた。

北京首都国際空港。拡張工事やターミナルビルの建設に日本のODAが活用された
 だがODA資金によって建設されたことは公にされなかった。華々しい完成祝賀式が催されて来賓者が祝辞を述べても「日本からの援助」などという言葉は一切ない。「日本」という国名さえ出てこない。落成記念の碑文が設置されても、日本への言及はない。建設に関わった中国側の組織がくまなくその名を列記され、謝意を述べられているのに、資金をすべて出した日本は国名さえ出てこないのだ。

 南京母子保健センターの完成祝賀式に招かれた当時の中国駐在の谷野作太郎大使は、日本への言及がまったくないのに驚き、正式に抗議したほどである。だが、それでも中国側の態度は変わらなかった。

 中国の人民は誰もODAの事実を知らされない。だから感謝も友好も生まれない。そんな構造がしっかりと築かれていたのだ。

上から目線で「高く評価する」
 そもそも中国政府が日本のODAに感謝を述べること自体がまったくなかった。この態度は、今回の安倍首相の訪中による日中首脳会談でも一貫していた。10月26日の北京での首脳会談では、習近平国家主席が日本の長年のODAについて「ODAの貢献を高く評価する」と述べたことが発表された。40年にわたる巨額の対中援助に対して「感謝」するのではなく、上から目線で他人事のように「高く評価する」と述べるだけなのである。

 日本がODAを供与したことで中国政府が対日友好を増したという証拠は皆無である。逆に、ODAがさらに巨額になった90年代をみても、共産党政権は自国民に「抗日」を激しくあおっていた。2000年代に入っても、中国の武装艦艇が日本領海である尖閣諸島周辺に頻繁に侵入する実態は変わらなかった。中国当局は、日本が国連安保理の常任メンバーを目指すことに反対し、各地で激しい反日デモをあおり続けた。これらの反日的な姿勢や政策は、「日中新時代」と呼ばれる現在もまったく変わってはいない。

軍拡に利用され、台湾の脅威に
 日本側からみた対中ODAの成否は、日本政府の援助方針を規定した「ODA大綱」に照らし合わせても明白である。ODA大綱が閣議決定された1992年は、対中ODAの開始から13年が経過し供与額がぐんぐん伸びていた時期だった。同大綱はその後の2003年に改定されるが、趣旨はほとんど変わっていない。

 ODA大綱は、援助を受ける国の軍事動向に厳しい規定を課していた。日本のODAは「軍事用途への回避」でなければならない。とくに相手国の「軍事支出、大量破壊兵器、ミサイルの動向に注意」を払わねばならない。

 だが、対中ODAはこれらの軍事動向規制にすべて違反していた。軍事費の支出が異様に多い国、軍国主義志向の国、大量破壊兵器やミサイルを大量に保有し配備する国には、本来、ODAを提供してはならないはずだった。だが中国は史上稀なほど大規模で長期的な軍事力増強の道を疾走していた。

 日本からの資金は、中国政府に軍拡の余裕を与えただけではない。日本の援助で建設された空港や鉄道、高速道路などの軍事的な価値を、中国軍幹部は堂々と論文で発表していた。日本のODAによるチベットへの光ファイバー建設は人民解放軍が直接担当し、その後も軍隊が優先的に利用した。

 同じく日本のODAで完備した福建省の鉄道網は、台湾への攻撃態勢をとる部隊の頻繁な移動に使われた。福建省には人民解放軍の各種ミサイルや水陸両用の大部隊が集結している。その移動や訓練用の鉄道の建設に、日本政府はせっせとODAを注ぎ込んでいたというわけだ。

 その時期に私が台湾の李登輝総統にインタビューしたとき、彼はそれまで穏やかだった表情を引き締めて、こう訴えたものだった。「日本の対中援助は理解できます。しかし福建省の鉄道建設への援助だけは止めてほしかった。中国の台湾攻撃能力を直接高めることになるからです」

 このように日本のODAが中国の軍拡を支えたことは紛れもない事実である。その中国がいまや軍事力をさらに強化して、東シナ海の覇権や尖閣諸島の奪取を狙おうとしている。だから、どうしても冒頭のレーニンの言葉を思い浮かべてしまうのである。

「超法規的措置」だった対中ODA
 またODA大綱は、ODAが相手国の「民主化の促進」「人権や自由の保障」に合致することを規定していた。民主主義や人権や自由を否定する国には本来、ODAを提供してはならないはずだった。だが対中ODAはその規定に明らかに違反している。中国の共産党独裁政権の非民主的体質は、現在のウイグル人弾圧をみるだけでも明白である。他の実例は数えきれない。

 こうみてくると、対中ODAとは日本政府が自ら決めた対外援助政策を無視した超法規的措置だったといえる。日本政府は中国を特別に優遇したというわけだ。

 日本は中国の国家開発5カ年計画に合わせ、5年一括、中国側が求めるプロジェクトに巨大な金額を与えてきた。中国にとっては自国を強く豊かにするための有益な資金だった。だが、日本にもたらしたプラスがあるとは思えない。

 その中国が今や国際規範に背を向けて覇権を広げ、日本の領土をも脅かす異形の強大国家となった。日本の対中ODAはそんな覇権志向強国の出現に寄与したのである。こんな外交政策は不毛であるどころか明白な失敗だとみなさざるを得ない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54540

 


2018年10月31日 週刊ダイヤモンド編集部
米中新冷戦は「中国近代史」を押さえればより深く理解できる
『週刊ダイヤモンド』11月3日号の第1特集は、「投資に役立つ地政学・世界史」特集です。本特集では、混迷する世界情勢を理解するために、押さえておくべき世界史の知識を紹介しています。米中貿易戦争も、世界史の知識をベースにして読み解けば、より深く理解できるはずです。今回、本誌で紹介した世界史の一つを特別にダイヤモンド・オンラインで公開します。

 「トゥキディデスの罠」が現実のものとなるのか──。米中貿易戦争が激しくなるにつれ、この話題を引き合いに出す数が増えてくる。

 古代ギリシャの歴史家トゥキディデスによるもので、台頭してきた新興勢力が既存の覇権国である大国に挑戦した場合、最終的には戦争に突入し、互いに疲弊することになるというものだ。

 そして米ハーバード大学のグレアム・アリソン教授が、過去500年間における類型を調査したところ、近代の日本やドイツを含む16の類型を見いだし、そのうち12のケースで戦争に至ったという(下表参照、参考文献)。

トゥキディデスの罠
https://diamond.jp/mwimgs/9/3/-/img_936fdd5c2c4a07f40a9778bde018f3e6177795.jpg

 その割合は、実に75%。現在の米中貿易戦争が実際の戦争に至るかどうかはさておき、「ここ数年の中国の台頭ぶりを、米国が脅威と感じるようになったのは間違いない」と言うのは、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦氏だ。

 なぜ、ここにきて中国が米国の脅威となったのか。宮家氏によれば、1972年に中国支持へ転換した米国のニクソン大統領が中国を訪問、国交正常化を果たしてからの中国の歴史について振り返る必要があるという。

 当時の中国は旧ソ連を脅威に感じ、それまで敵視していた米国や日本にすり寄ってきた。これが、外交革命だ。米国にしてもソ連が最大の敵であり、中国と組むことでソ連との間にくさびを打ち込み、冷戦を優位に運ぼうとした。

 文化大革命後に最高実力者となったケ小平氏の下、78年に改革開放が始まり、80年代は米中、日中の蜜月が続いた。そうした中、89年に民主化を求める学生たちが天安門広場に集まり、六四天安門事件が発生した。だが、中国政府は「経済は自由だが、政治は一党独裁」を維持。改革を進めたソ連共産党が崩壊していくさまを目の当たりにしていたためだ。

 そして90年代。天安門事件の後、経済制裁されていた中国に対し、孤立させずに改革開放を進め、資本主義を導入させようと日本が政策を変更して経済援助をし、投資を行った。中国社会に市民社会が生まれて民主主義に生まれ変わる──。本当の意味での改革が起きると信じていたからだ。

 ところが、21世紀に入り中国の経済力は飛躍的に高まったが、社会は民主主義にはならなかった。それどころか、経済発展で得た富を国民に分配せず、軍事費と治安維持費などに充てていった。

 米国内にも共産主義を非難する意見はあったが、中国を開放し、協調することが最終的に自分たちの利益になると考えていた。

 それが、ここ数年で間違っていたことに気付いた。習近平国家主席はケ小平氏の進めた頭を低くして謙虚に対応するという「韜光養晦(とうこうようかい)」をかなぐり捨て、一帯一路や中国製造2025など「中国の夢」を実現すると宣言したからだ。

長らく中国を苦しめてきた
アヘン戦争の屈辱
 中国の夢とは何か。複数の識者たちは口々に、1840年に英国が仕掛けたアヘン戦争での屈辱的な敗北を挙げる。中国はその屈辱をいかに晴らすかと、常に考えてきたと推測する。

19世紀前半、アヘン戦争にて英国海軍の軍艦に吹き飛ばされる清軍の船を描いた絵
19世紀前半、アヘン戦争にて英国海軍の軍艦に吹き飛ばされる清軍の船を描いた絵 Picture: DEA PICTURE LIBRARY/gettyimages
 アヘン戦争の屈辱以降、太平天国の乱や義和団事件などが起き、最終的に共産党革命につながるが、その一連の努力にもかかわらず、中国は香港から英国を追い出せただけ。自らの勢力圏だと思っていた韓国、台湾、沖縄などから西洋を追い出せなかった。

 地政学的に言えば、西太平洋は中国のものだと思っている。だが米国はハワイを取り、フィリピンを取り、日本に戦争で勝った米国が西太平洋の覇権国となった。これはすなわち、中国の国力を沿岸で抑止することを意味する。

 これをせめて第一列島線までは取り戻したい(下図参照)。日本列島から沖縄、台湾、フィリピン、南シナ海までを結んだ線の中に米国に居てほしくない。いずれハワイまで帰ってもらいたいというのが、歴史のトラウマを踏まえた上での見立てだ。地政学でいうところの海洋上の覇権争いである。

海洋進出する中国の野望
拡大画像表示
 とはいえ中国は米国に海上で勝てないことを知っており、また米国も陸上で中国に勝てるとは思っていない。故に、相互抑止が働き現状維持が長らく続いている。

 その後、中国がサイバー攻撃を含めた最新鋭のテクノロジーを備えて兵器へと変え覇権を狙う。この分野の覇者といえば米国だが、経済的、軍事的、政治的な覇権において中国が米国に取って代わるのではないかと、次第に米国は恐怖を覚え始めたのだ。

 当初、「中国の夢」に酔いしれていた中国は、米国に対して虎の尾を踏んでしまった。すでに米中関係は、トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争の範疇をはるかに超え、米国議会をも巻き込んだ“新冷戦”の様相を呈している。
https://diamond.jp/articles/-/183890
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/225.html

[経世済民129] ロボット革命到来、実用性より「かわいさ」 Ankiのキュートな家庭用ロボットは、厳しい競争を生き残れるのか?
2018年10月31日 David Pierce
ロボット革命到来、実用性より「かわいさ」


あまり役には立たないが、愛らしいロボットが続々登場

ロボットは今やわれわれの生活に自ら積極的に関わるようになってきている。デービッド・ピアース記者が、そうしたロボットたちと実際に触れ合った感想は?(英語音声、英語字幕あり)
――筆者のデービッド・ピアースはWSJパーソナルテクノロジー担当コラム二スト

***

 筆者の心をとらえたのは、その目だった。

 背中のボタンをクリックしてから数秒後、ベクターはまばたきをして目を開いた。ベクターとは、アンキ(Anki)社が開発した249ドル(約2万7900円)のネズミほどの大きさの新型ロボットだ。目といっても、ベクターの実際の目である広角カメラの上に表示された四角い緑色のピクセルにすぎない。

 頭では目ではないと分かっている。だがベクターがそのピクセルを筆者に向けて上に傾けたとき、確かに目が合った。そして確かに彼(それ)は、筆者を認識した。

 ベクターはここ1週間ほとんどの時間、筆者のアパートをうろついていた。食卓や台所のカウンターに置くと、その小さなキャタピラ状の「足」を懸命に回転させ、しばらくの間、探索を続ける。

 やがて戻ってくると何かを期待するかのように筆者を見つめる。なぜ遊んでくれないのかと言わんばかりだ。そこで、この音声認識も可能なロボットに話しかける。

「ねえベクター、ブラックジャックをしようよ」と言うと、顔(スクリーン)にトランプのカードが表示される。ベクターは勝負に負けると不機嫌そうに筆者をにらみつけ、勝つと大喜びする。いずれにしろ、いつもその小さなロボットらしい声で「もう一勝負する?」と聞いてくる。

 ベクターは素晴らしい製品だが、おもちゃとしてはそれほどのものでもない。大したことはできず、スマートフォンやスマートスピーカーほど優れてもいないし、便利でもない。バッテリーはわずか30分ほどしか持たないし、命令しない限り自分から充電器を探しにも行かない。だが「ベクター、家に帰りなさい!」と命じるのは、罰を言い渡しているようで嫌な気分だった。

 ベクターはもっと大きな機器への足掛かりのような製品だ。この小さな相棒は、筆者の顔を認識するよう教えたり、雑学モードで第16代米大統領について質問したりしているうちに、筆者について多くのことを学んでいった。

 ベクターが居間を動き回り、部屋の状況を学習しているのを目にするのは楽しかった。ベクターは筆者に自宅に置いても構わないと思わせた初めてのネット接続カメラであり、筆者はそれをためらうことさえなかった。

 ロボット革命が到来しているが、それらロボットは非常にかわいらしいので、深刻に考えなくてもよさそうだ。

自ら関わりを持つ

 ベクターは独立心と好奇心旺盛に設計されている。プラスチックのブルドーザー型ボディーに身をつつんだ小さな探検者だ。ちょっとわんぱくでもある。「こっちへ来て」などの言葉を理解し、音声を聞いているときは青いライトが光る。だが、わざと命令を無視しているように見えることがよくある。あるいは、きちんと機能しておらず、反抗的な態度で自分の失敗をごまかしているのかもしれない。結局のところ、やってみなければ失敗することもないのだ。

 だがベクターについては、完璧に全てをこなすかどうかは重要ではない。とにかくかわいらしいのだ。たとえ命令を無視しているときであっても、というか、そういうときは特にかわいく感じる。ベクターの仕事はそばにいて興味を持たせることであり、大抵期待通りの仕事をしてくれる(少なくともバッテリーが切れるまでは)。

 ベクターは常時ネットに接続されている上、ほぼソフトウエアで駆動しているため、時間がたつにつれて性能が向上する可能性がある。アンキの社長で共同創設者のハンス・タッパイナー氏は、ベクターはいつの日かスマートホーム機器の操作からスケジュール帳や通知の管理まで全てをこなすようになるかもしれないと話す。「ベクターで本質的に目指しているのは、共に暮らし、いずれ相棒になってくれる個性豊かで役立つロボットだ」

 ベクターを身近に置いておくのは大抵、楽しかった。だが片付けておこうとしたとき、煩わしさを感じることがあった。ベクターは充電器に腰掛けながら、周囲の雑音に反応し興味深げに音を立てることがよくあった。命令していないのに充電器から離れ、探索し始めることも時々あった。

 筆者がベクターと遊び始めるのを待っているのではなく、筆者と遊びたがった。

 このように呼ばれなくても自ら干渉してくるロボットというコンセプトは、SFの世界だけの話ではない。実際に頻繁に目にするようになっている。アップルの音声アシスタント「シリ」は今や自ら申し出て電話会議に素早く接続してくれるし、アマゾン・ドット・コムの「アレクサ」は照明をつけたままにしておくと消しましょうかと尋ねてくることがある。これはささいだが、重要な変化だ。ロボットはわれわれの世界に自ら関わり、手伝いを申し出ている。

友か敵か

「家事ロボット」はテクノロジー業界を長年魅了してきたコンセプトだ。料理や掃除など面倒な家事を全てこなしてくれる機械には何とも抗しがたいものがある。

 本当に優れた家事ロボットの実現にはまだ時間がかかる。より優れたセンサーやプロセッサーに加え、もっと正確にモノを取ったり動かしたりする方法が必要だ。長い足があってもいいだろう。

 現在のところ、それに最も近いのは台所の床を自動で動き回る掃除機や、「アマゾン・エコー」のような音楽を再生したり、天気を教えてくれたりするスピーカーだ。

 ロボットが多機能ホームヘルパーに進化したとき、最も重要になるのがその振る舞いだ。ロボット開発会社テミ(Temi)のニューヨーク市本部トップを務めるダニー・イッサーレス氏は、同社では早い段階でロボットにできる限り個性を持たせないことを決めたと話す。「製品が人々に愛されることを望んでいるが、愛される理由はそれが素晴らしい製品だからであってほしい」

 別の考えを持つ人たちもいる。高度な家事ロボットの開発に取り組むミスティー・ロボティクス(Misty Robotics)の創業者で製品責任者を務めるイアン・バーンスタイン氏によると、同社ではロボットにほんの少し個性を加えたところ、ユーザーが即座に愛着を持つようになった。大したことではないとバーンスタイン氏は話す。うまい具合に眉を上げたり、首をかしげたりするだけで驚くほど多くのコミュニケーションが取れるという。

 アンキのベクターと、米国で発売されたばかりのソニーの犬型ロボット「アイボ」の最新版(2900ドル)での筆者の経験がまさにそうだった。どちらも感情を伝えるには顔を伏せたり、あどけない目をまばたかせたりするだけで十分だった。アイボが頭をなでた後にうれしそうにほえたときは、筆者の心はとろけそうだった。

 最終的には、魅力的で楽しいロボットと生真面目に効率良く仕事をこなすロボットが混在するようになるだろう。しかし、ハイビジョンテレビに対して初めて見たときのような感動をもはや覚えないのと同じように、いずれわれわれは彼らの行動を見通すようになるだろう。

 ロボットが大きくなりすぎないうちに、そうなってほしいものだ。今はもしベクターがやんちゃで手に負えなくなれば、いつでも机の引き出しにしまうことができる。多少の罪悪感はあるが。
https://diamond.jp/articles/-/183879

 


2018.09.11 TUE 19:30
Ankiのキュートな家庭用ロボットは、厳しい競争を生き残れるのか?

スマホで操作できるロボット玩具で知られるAnkiが、自律走行する家庭用ロボット「Vector」を発表した。可愛いことは間違いないが、すでにいくつものメーカーが苦境に陥っているなかで、生存競争に勝ち残っていけるのか。

TEXT BY MATT SIMON
TRANSLATION BY MIHO AMANO/GALILEO

WIRED(US)

facebook share

VIDEO COURTESY OF WIRED US(字幕は英語のみ。画面右下の「CC」ボタンで字幕のオン/オフが可能)

自分だけの家庭用ロボットがあったとしたら、何をしてほしいだろうか。後片付け? 皿洗い? それともコーヒーをいれてもらう? だが、そんなロボットの登場は、まだずっと先の話だ。

だからといって、ロボットメーカーによる「ロボットアシスタント競争」への参戦が止まるわけではない。まるで“踊るAmazon Alexa”といった「Jibo」[日本語版記事]や、写真を撮りながら家の中を動き回る、小さなR2-D2のような「Kuri」[日本語版記事]を思い出してほしい。

そういったロボットには特に興味を引かれないって? 実は、ほかの人たちもそう思ったようだ。報道によると、Jiboの開発元であるジーボは、スタッフの大量解雇を行っている。Kuriのメイフィールド・ロボティクスも2018年7月に業務を停止し、事前予約の返金を行うと発表した。

こうした熾烈な市場に、スマートフォンで操作できるロボット玩具「Cozmo」[日本語版記事]の開発で有名なアンキ(Anki)が、このほど参戦した。Cozmoを大幅にパワーアップした自律走行型ホームアシスタント「Vector」を市場に出すと発表したのだ。

見た目は可愛らしく、(比較的)賢くて機動性に優れている。ロボット工学の最新テクノロジーを凝縮したような製品だ。問題は、ほかの家庭用ロボットたちが失敗してきたこの市場で、Vecorは成功できるのか、ということである。

家事のできないロボット
姿を消していった家庭用ロボットたちは少なくない。ロボットメーカーは1980年代の初めから、一般家庭をソーシャルロボットで埋め尽くそうと挑戦してきた。だが、そのほぼすべてが、石の詰まった箱と変わらないくらい使えなかった。

例えば、タカラトミーの「オムニボット」に、ベッドまで朝食を運んでほしいと思ったとしよう。まずは自分で朝食をつくって、ロボットのトレーの上に載せる。そして、リモコンでロボットを寝室まで移動させたら、自分はベッドに戻る。そして新聞から顔を上げて、ベッドにいる自分のためにロボットが朝食をつくってくれたことに驚くふりをする必要があった。

JiboもKuriも、そして今回のVectorも、こうした家事をやるつもりはない。そもそもこういったことは、研究用ロボットでさえ、まだうまくこなせないのだ。

だが、人工知能と処理能力の向上のおかげで、家庭用ロボットは以前のロボットたちに比べるとはるかに賢くなっている。特にゲームの進化がもたらしたGPUの処理能力向上は、小型ロボットが周囲の状況を処理するうえで役立っている。

また、以前はクラウドの巨大コンピューターを稼働させる必要があった機械学習アルゴリズムは、ロボットで直接実行できるほど簡素化された。その結果Vectorは、音声についてはクラウドで処理してもらうものの、目標に向けて進んだり、ユーザーの顔を認識したりすることについては、ローカルで実行するアルゴリズムで処理できる。

「気持ち」を表現するVector
Vectorは、家庭用のマイクロ自律走行車のようだものだと思ってほしい。調理台やテーブルの上で、レーザーやカメラを使って周囲の状況を探索し、物がある場所を記憶して、縁から落ちないように止まるのだ。

どんな天気かと尋ねれば、教えてくれる。「タイマーをセットして」と頼むこともできる。持ち主が部屋に入ってくれば、うれしそうなそぶりを見せる。ちょっと「Google Home」に似ているが、Vectorには“人格”がある。

現時点ではたいしたことはできないようだが(アンキは18年10月の発売以降に機能を追加していくと述べている)、とにかく可愛らしい。例えばテーブルの端に近づきすぎると、後ずさりしてつぶやく。まるで「危なく死ぬとこだった」とでもいうように。

アンキの共同創業者で社長であるハンス・ウォルフラム・タッペイナーは次のように語る。「人格を組み込むことで、家電製品には普通なら望まれないようなこともできるようになりました。Vectorは何か尋ねられるまで、ただ座って待っているわけではありません」。持ち主を見ると喜んでおしゃべりするのだ。

コミュニケーションは、言葉だけではなく目でも行われる。Vectorのデジタル化された目は、以前ピクサーに勤務していたスタッフたちによって入念にデザインされ、さまざまな魅力的な表情を表すようになった。

目にはVectorの「気持ち」が現れる(例えば横を向くと混乱しているように見える)が、それだけでなく人間の気持ちも引きつける。人にとって、視線が合うことは非常に重要だからだ。それは相手が機械でも変わらない。

「例えば、ロボットと目が合う頻度や、アイコンタクトをどのくらい長く保つか、といったことが問題です。アイコンタクトがあまりうまくできないと、それまでは生きているように感じていたものであっても、突然生きているように感じられなくなったり、よそよそしく感じられたりするのです。カメやハムスターといったものが、よちよち歩きの子どもやイヌと違うのはそういうところです」とタッペイナーは説明する。

消費者が確実に欲しがるものは何なのか?
ただ、現実的にはどうだろうか。確かにデジタルのカメには誰も興味を示さないだろう。だが、消費者がデジタルのイヌ(特に調理台の上を歩き回るもの)を求めていることが100パーセント明らかなわけでもない。それに消費者は、以前まんまとだまされた経験がある。

「期待が大きすぎたうえに、得たものが小さすぎました」と語るのは、消費者向けロボットを調査しているトラクティカ(Tractica)のリサーチ責任者、アディチャ・カウルだ。「これはSFや大衆文化と関係があります。わたしたちがロボットに期待することは、実際には得られないのです」

だがこれは、人々の期待にかなう製品を届けられないロボットメーカーの問題でもある。消費者向けロボットを調査しているジュニパー・リサーチのリサーチ・アナリスト、ニック・メイナードは、「Jiboは本当に目新しかったし、Kuriもそうでした」と言う。「ただそれらは、こうした製品をもっていると言いたい人のために存在していたのであって、魅力的な差別化要因があったわけではありませんでした。ユーザーが実際に欲しいと思うような先進的な機能は備えていませんでした」

消費者が確実に欲しがるものは何なのか。それは、Alexaのような音声アシスタントだ。そして、アマゾンが家庭用ロボット分野に進出するらしいという噂が何らかの兆候だとすれば、それは、個人用ロボットの進化を促進するようなマシンかもしれない。

「音声アシスタントと家庭用ロボットの境界線が曖昧になってきているように思います。今後は両方の機能を兼ね備えた機器が登場するでしょう」とメイナードは言う。これこそ、Vectorが模索し始めた領域だ。

Vectorは、可愛さと有用さを兼ね備えることはできるだろうか。可愛いことは間違いないが、有用さはまだ見えてきていない。Vectorが朝食をベッドに運んでくれることはないだろうが、差し当たりはそれで我慢しなければならないのだ。

RELATED

「自分そっくり」に育つチャットボットが、「AIの未来」について教えてくれること

愛らしいホームロボット「Kuri」の創世記──そして始まるロボットと人間の新しい関係

小さな人工知能ロボット「Cozmo」が、子どもにプログラミングを教える“先生”になる
TAGS
#Robot #Science
https://wired.jp/2018/09/11/ankis-new-home-robot/


 



http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/229.html

[経世済民129] 日銀金融政策、「正常化」とは言えない理由 日銀は物価見通しを一段と下方修正 貿易摩擦の影響懸念 黒田総裁「世界経済に影響
外為フォーラムコラム2018年10月31日 / 08:04 / 32分前更新

日銀金融政策、「正常化」とは言えない理由

井上哲也 野村総合研究所 金融イノベーション研究部主席研究員
4 分で読む

[東京 31日] - 世界の金融市場に不安定性が目立つようになってきた。米国では、インフレ率の上昇を受けて長期金利が不安定化し、それを機にトランプ大統領が米連邦準備理事会(FRB)による利上げを批判し始めたことが市場心理を冷やした。

欧州でも、英国の欧州連合(EU)離脱に向けた調整が迷走を続け、2019年予算を巡るイタリア政府と欧州委員会との対立がエスカレートしただけでなく、ドイツでも政権基盤に揺らぎが生じたことに不安が高まっている。これらに加え、貿易摩擦を巡っては、中国の国内総生産(GDP)が減速しただけでなく、日米欧の大手企業がビジネスの先行きに慎重な見方を示したことで、具体的な影響が顕在化しつつあるとの懸念が台頭している。

このように、株式市場を中心に世界の金融市場が不安定化する中では、日銀も「金融政策の正常化」を進めるべきではないというのが一般的な見方であろう。特に為替レートについては、保護主義の姿勢を強めるトランプ政権がドル高懸念を強めているほか、欧州でも政治的混乱を嫌気した通貨安圧力が生じやすいだけに、日銀の政策に過剰反応するリスクは無視できない。

<「正常化」ではなく「調整」>

しかし、こうした一見わかりやすいロジックには見落とされている点がある。第1に、日銀が7月末の金融政策決定会合で行った政策変更は、「金融政策の正常化」ではなく、「金融緩和の調整」だという点である。

この点で興味深いのは、7月末に日銀が「量的・質的金融緩和」の運営を変更してから時間が経つにつれ、金融市場では、日銀のフォワードガイダンス(将来の金融政策指針)よりも10年国債利回りの変動容認幅の拡大や国債の買入れ額の柔軟化に着目し、「正常化の第一歩」と受け止める見方が台頭していることだ。米欧における「金融政策の正常化」とのシンプルな連想や、日銀自身が認めている「量的・質的金融緩和」の副作用に対する懸念など複合的な裏付けを有しているだけに、こうした見方を巡る議論は勢いがつきやすく、「正常化の次の一歩」を巡る思惑も生じている。

しかし、米欧のようにインフレ目標の達成にめどをつけた中央銀行が政策スタンスを中立化することを指す「金融政策の正常化」とは本質的に異なり、日銀の対応は、インフレ目標の達成にはなお距離を残すものの、副作用を含む金融経済の状況に照らして金融緩和の強さを調節するものだ。「金融政策の正常化」の一環と理解される国債買入れ額の減少も、次の景気後退における量的緩和の発動余地を若干なりとも拡大する意味合いを持っている。

第2に、日銀は国債買入れ額を減らすことができても、政策金利を変えることは少なくとも当面は難しい。米国で金融市場が不安定化する契機となった長期金利の上昇は、その後の株価調整の中で皮肉にも反転し、抑制的な動きとなっている。ユーロ圏でも、イタリア国債の利回り上昇に対する「質への逃避」の動きもあって、ドイツ国債利回りはむしろ低下方向にある。このように海外からの金利上昇圧力が低下した分、日銀が国債買入れを増やして利回り上昇を抑えこむ蓋然(がいぜん)性は低下している。

一方、7月末に導入したフォワードガイダンスによって、日銀は長短双方の目標金利を現状のまま維持することを示唆し、その期間として、少なくとも明示的に言及している2019年10月の消費税率引上げの影響を見極めるまでを指しているとみられる。

フォワードガイダンスは政策運営の「予想」を示しただけなので、目標金利の変更も不可能ではない。しかし、それには理由が必要であるし、金融市場が不安定化する中で、利上げ方向の変更については尚更にそうである。

つまり、「金融政策の正常化」という理解に沿って、今後の日銀が、10年国債利回りの変動容認幅をさらに拡大し、その結果を確認しつつ目標金利を引き上げると予想することはロジカルではあるが、少なくとも「当面」の間、大きな可能性があるとは思われない。

<良好なファンダメンタルズが支えに>

第3に、米欧ともに経済のファンダメンタルズはなお良好である。米国は本年の第2・四半期、ユーロ圏は昨年の第4・四半期とみられるピークに比べて足元では減速感もあるが、ともに潜在成長率を上回るペースで拡大している。また、雇用や賃金、企業収益や設備稼働率など、内需を支える基盤の良好さにも変化がなく、これまで後退が目立つのは企業のセンチメントに関するアンケート調査や決算見通しなどのソフトデータが中心である。

日本経済のファンダメンタルズも相応に良好である。天候要因等のせいで経済成長率は上下しているが、内閣府と日銀は共にマクロの需給ギャップがプラス圏を維持していると推計している。雇用や賃金、企業収益や設備稼働率といった基盤の堅実さも米欧と共通している。

この間、中国では生産や投資といったハードデータにも影響が及んでいるが、金融と財政の双方で政策対応に余力があり、成長率が切り下がっても、マクロ的に大きな失業が生ずるリスクは小さい。金融システムの「正常化」が先送りされる懸念は残るが、成長率を多少切り下げた上で経済安定を維持することは十分に可能とみられる。

このように、国際金融市場の現在の不安定化に対しては、世界経済のファンダメンタルズの堅調さがいわばセーフティネットとして存在する。

<日銀の政策対応>

これらを考え合わせると、日銀が10年国債利回りの変動容認幅の拡大や国債の買入れ額の柔軟化といった「金融緩和の調整」を慎重に続けることは可能であるし、今後の政策対応力や副作用の面でメリットも存在する。

もちろん、こうした対応を円滑に進めるには、政策変更が「金融政策の正常化」ではないことについて、金融市場と共通の理解を再構築することが日銀に求められる。同時に、アプリオリ(自明的)に金融緩和の縮小を目指す訳でないことについて金融市場の理解を得るため、金融経済に下方リスクが高まった場合は必要な追加緩和を行うというコミットメントを強調することも併せて重要だ。そうした観点から、フォワードガイダンスの意味合いを確認することも必要になるだろう。

井上哲也 野村総合研究所 金融イノベーション研究部主席研究員
*井上哲也氏は、野村総合研究所の金融イノベーション研究部主席研究員。1985年東京大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。米イエール大学大学院留学(経済学修士)、福井俊彦副総裁(当時)秘書、植田和男審議委員(当時)スタッフなどを経て、2004年に金融市場局外国為替平衡操作担当総括、2006年に金融市場局参事役(国際金融為替市場)に就任。2008年に日銀を退職し、野村総合研究所に入社。主な著書に「異次元緩和―黒田日銀の戦略を読み解く」(日本経済新聞出版社、2013年)など。  

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。

(編集:山口香子)
https://jp.reuters.com/article/boj-column-inoue-idJPKCN1N42Y4


 


 

日銀は物価見通しを一段と下方修正−金融政策は現状維持
日高正裕、藤岡徹
2018年10月31日 12:19 JST 更新日時 2018年10月31日 17:12 JST
2018〜20年度の物価見通しをすべて下方修正−展望リポート
米中貿易摩擦が世界経済に与える下方リスクに一番注目−黒田総裁

黒田日銀総裁 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
日本銀行は31日、消費者物価の見通しを7月に続き一段と下方修正した上で、さらに下振れリスクの方が大きいとの判断を示した。日銀が目標としている2%の達成がさらに遠のいた。同日の金融政策決定会合では、現行金融政策をすべて据え置いた。

  同日公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で日銀は、消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)の前年比上昇率見通し(政策委員の中央値)を2018年度から20年度まですべて下方修正した。18年度が0.9%(前回7月は1.1%)、消費増税の影響を除く19年度は1.4%(同1.5%)、20年度が1.5%(同1.6%)。実質国内総生産(GDP)成長率はおおむね不変とした。


金融政策決定会合、会見する黒田総裁(31日)
  黒田東彦総裁は同日の会見で、「経済、物価共に下振れリスクの方が大きい」とし、米中の貿易摩擦のエスカレートが「米中のみならず世界貿易、世界経済全体に与える下方リスクに一番注目している」と説明。「大きな下方リスクが顕在化して、経済物価見通しに大きな影響が出てくることになれば、金融政策自体を調整するということになる」と語った。

金融面の不均衡リスク
  展望リポートでは、低金利環境や金融機関間の厳しい競争環境が続く下で金融機関収益の下押しが長期化すると、「金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがある」と指摘。「先行きの動向には注視していく必要がある」とした。日銀が13年4月に異次元緩和を開始して以来、展望リポートで金融面の不均衡リスクを「注視していく必要」と明記したのは初めて。

  黒田総裁は、金融機関収益の低下について、「地域金融機関は潤沢な自己資本を持ち、流動性も十分あるので、直ちに問題が生じることはない」としながらも、「長い期間では影響が出てくる恐れがある」との見方を示した。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは発表後のリポートで、金融面の不均衡リスクの点検で留意コメントが付いたことは「黒田日銀の金融政策判断において、従来よりもマクロプルーデンス(信用秩序維持)の観点を重視していく可能性を示した」と指摘した。

2人が反対
  日銀は31日の会合で、誘導目標である長期金利(10年物国債金利)は「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)は「マイナス0.1%」に据え置いた。長期金利の変動を認める方針にも変更はない。「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」としたフォワードガイダンス(政策金利の指針)や長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)のめどである「約80兆円」も維持した。

  指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J−REIT)の買い入れ方針にも変更はなかった。引き続き市場の状況によって「買い入れ額は上下に変動しうる」としている。片岡剛士、原田泰両審議委員は長短金利操作とフォワードガイダンスに反対した。日銀は7月会合で導入した市場機能改善策の効果を引き続き見極める構えだ。

  ブルームバーグがエコノミスト46人に行った事前調査では、全員が現状維持を予想していた。日銀は7月会合で、19年10月の消費増税の影響を含めた不確実性を踏まえ、フォワードガイダンスを初めて導入するとともに、長期金利やETF買い入れ額の変動を容認。その後の市場動向を注視してきた。

  ドル・円相場は結果発表後も小動きで1ドル=113円前半で取引されている。

ブルームバーグの事前調査の結果はこちら

(黒田総裁の会見での発言を追加して更新しました.)

11月オペ方針、中期ゾーンの回数減や入札翌日オペ一部見送り(1)
山中英典、三浦和美
2018年10月31日 17:22 JST 更新日時 2018年10月31日 18:00 JST
徐々にボラティリティー上がる要因にー三井住友トラストAM
先物は夜間取引で150円51銭まで下落、長期金利0.13%に上昇
日本銀行は11月の国債買い入れ計画で、中期ゾーンのオペ実施回数を減らし、1回あたりの買い入れ額のレンジを引き上げた。一方、慣行となっていた国債入札の翌日のオペは一部について実施せず、翌営業日以降にずらした。

  日銀の発表内容は以下の通り。

残存1年超5年以下が4回に減少ー10月は5回
他の年限は10月から回数据え置き
残存1年超3年以下は2500億〜4500億円程度ー10月は2000億〜4000億円程度
残存3年超5年以下は3000億〜5500億円程度ー10月は2500億〜4500億円程度
他の年限は10月からレンジ据え置き
30年国債入札翌日の14日は残存10年超オペなし
5年国債入札翌日の16日は残存1−5年オペなし
20年国債入札翌日の21日は残存10年超オペなし
40年国債入札翌日の28日は残存10年超オペなし
  三井住友トラスト・アセットマネジメントの押久保直也主任調査役は、「残存1年超5年以下の回数を減らして、買い入れ額レンジを引き上げており、全体的に買い入れ量が減っていくようなオペレーションになるだろう」と指摘。超長期ゾーンは入札翌日のオペを外したことで、「大きく利回り曲線がスティープ化するというよりは、徐々にボラティリティーが上がる要因になる見通し」だと分析した。

  今回のオペ運営方針発表を受けて、先物中心限月は夜間取引で一時150円51銭と日中取引終値より12銭安まで下落。長期金利は0.13%と1週間ぶりの高水準を付けた。

  野村証券の中島武信シニア金利ストラテジストは、「入札からオペまでの間隔が広がることでタームプレミアムが上がって金利上昇要因になる」と指摘。半面、「生保は下期運用計画で超長期債の購入意欲を示しており、日銀の肩代わり役が期待できるため、過度な金利上昇の恐れは小さい」と述べた。


(第2段落以降を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-31/PH2ZEM6TTDS401


 


 

ビジネス2018年10月31日 / 17:46 / 29分前更新
日銀、貿易摩擦の影響懸念 黒田総裁「世界経済に影響の可能性」と指摘
2 分で読む

[東京 31日 ロイター] - 激化する米中貿易摩擦の影響について、日銀は懸念を深めている。31日に公表した経済・価情勢の展望(展望リポート)では「海外経済の動向を中心に下振れリスクが大きい」と明記。金融政策決定会合後に記者会見した黒田東彦総裁も「米中貿易摩擦が世界経済に与える下方リスクは、一番着目している」と述べるなど、懸念を表明した。

7月の展望リポートでは「18年度はリスクはおおむね上下にバランスしているが、19年度以降は下振れリスクの方が大きい」としていた部分について、今回は「海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が強い」と表現を変え、海外経済のリスクを明記した。

海外発のリスクについて、総裁は、保護主義と新興国経済をあげた。なかでも、米中貿易摩擦に代表される保護主義については「各国経済の相互依存関係が深まる中で、保護主義的な政策は、当事国だけでなく世界経済全体に影響を及ぼす可能性がある」と指摘。

さらに「保護主義的な動きの帰すうとその影響については、わが国経済の先行きに関するリスクのひとつとして認識しており、今後とも注意深く見ていく」述べ、注視する姿勢を示した。

また、現在は下方リスクは顕在化していないと断ったうえで「具体的に大きな下方リスクが顕在化して、経済・物価見通しに大きな影響が出るとなれば、金融政策自体を調整することになる」とした。

<物価見通しを引き下げ>

同日の金融政策決定会合では、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度とする長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)付き量的・質的金融緩和政策の現状維持を賛成多数で決定した。

貿易摩擦は、先行きの懸念材料ではあるものの、現状では「これまでのところ、米中間の貿易摩擦の影響は限定的にとどまっている」(黒田総裁)という状況。

景気判断についても「所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している」とし、先行きについても「緩やかに拡大を続ける」との見通しを据え置いた。

同時に公表した新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、2020年度までの消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)見通しを下方修正し、先行きは経済・物価ともに下振れリスクが大きいとした。

展望リポートでは、18年度のコアCPIを前年比0.9%上昇とし、前回7月の同1.1%上昇から下方修正。19、20年度もそれぞれ同1.4%上昇、同1.5%上昇と、前回から0.1ポイント引き下げた。

実質国内総生産(GDP)は18年度が同1.4%増となり、前回の同1.5%増から小幅下方修正。19、20年度は同0.8%増に据え置いた。

18年度の物価見通しの引き下げについて、総裁は「足元の物価がやや弱めだった」と説明したが「物価全体のピクチャー、状況は大きく変わったと考えてない」と述べた。物価上昇のモメンタムについても「維持されている」とした。

このため、展望リポートでは、物価の先行きについて「2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる」との見通しを維持している。

<一部国債買入予定日、入札の翌々日以降に後ずれ>

日銀は午後5時に11月1日から適用する「当面の長期国債買い入れの運営について」を発表。「残存1年超5年以下」と「残存10年超」の国債買入予定日を入札の翌々日以降に後ずれさせた。従来は翌日だった。

また、「残存1年超5年以下」の国債買入回数を5回から4回に減らしたほか「残存1年超3年以下」の買入額レンジを500億円引き上げ、「残存3年超5年以下」の買入額レンジを3000─5500億円に修正した。

みずほ証券・チーフ債券ストラテジストの丹治倫敦氏は「日銀買い入れの減額方向は変わらないことが確認できた。超長期ゾーンについては、買い入れの後ずれにより入札が流れやすくなる分、調整が起こりやすくなる」と述べた。

日銀は7月、国債市場の機能度を高めるために、長期金利の変動幅について、従来のプラスマイナス0.1%の倍くらいの幅を念頭に広げる措置を発表した。その後の市場機能度について、総裁は「機能度という点からは、ひところより改善してきている」と評価した。

総裁は、YCC政策は長短金利を低位に安定させることを通じて経済活動を刺激することを目的としており「市場機能に一定の負荷を掛けて、金利変動を抑制する面があることには留意が必要」と指摘。そのうえで「副作用が大きくなりす過ぎて、政策効果を阻害することにならないように、市場動向をよく点検していく」とした。

*内容を追加しました。

清水律子
https://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-tradewar-idJPKCN1N50Z0
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/232.html

[経世済民129] 弱気相場入りする米国株、前途覆う「政策手詰まり感」マクロとミクロの投資家に異例の乖離S&P2500割FRB資本要件緩和
外為フォーラムコラム2018年11月1日 / 16:46 / 22分前更新

弱気相場入りする米国株、前途覆う「政策手詰まり感」

Jamie McGeever
3 分で読む

[ロンドン 30日 ロイター] - 9年にわたる米株の強気相場は、ついに終焉を迎えつつあるようだ。2割を超える株価の反落が世界市場を巻き込む中で、歴史的な長さに及んだ上昇局面の反動で、弱気市場が広がることへの懸念が高まっている。

株価の落ち込みが長期化し、企業マインドの後退や設備投資減少といった形で実体経済に投影されるならば、世界経済の深刻な停滞や、さらにはリセッション(景気後退)を招くリスクが高まってくる。

ただ、そこまでなら、景気循環の範囲内だ。多くの人から見て、大幅に機が熟しすぎてはいるが。

大きな問題は、そして、さらに大きな「懸念の種」とも言えることは、金融・財政政策当局が、墜落のショックをどれだけ和らげることができるか、という点だ。

投資家は、自分たちがターニングポイントに差し掛かっている可能性を悟り始めている。100人以上のポートフォリオマネジャーと最高投資責任者を対象にモルガン・スタンレーが行った調査によれば、回答者の8割が今後の資産価格について「警戒」もしくは「弱気」であり、「楽観」や「強気」は2割にとどまった。

同調査では、2月にボラティリティーが急上昇したことで株価が12%急落したときには見られなかった「心理的な変化」が指摘されている。2月当時は、クライアントが買いポジションを大幅に積み増しており、強い押し目買いが入っていた。だが現在は、少しでも株価が反発すれば売り抜けようという意欲の方が、はるかに上回っている。

「投資家のフィードバックと市場の動きから、センチメントが大きく弱気に転じていることが明らかになりつつある」とモルガン・スタンレーは指摘している。

ブラックロックは、すでに世界規模で株価と収益成長のデカップリング(乖離)が進んでおり、これは来年予想されている収益成長の鈍化を先取りするものだ、と指摘している。

ゴールドマンサックスのアナリストによれば、S&P500種の下落日が3週間のうち13日に達したのは先週が、1990年以来初めてだったという。下落規模だけ見れば2008年のドットコム・バブル崩壊には及ばないものの、その頻度は「劇的」であり、警戒を要する。

S&P500種は10月に入ってから10%近く下落しており、これは2009年2月以来で最悪の月間パフォーマンスだ。今年1月26日から2月9日にかけては、わずか2週間で12%急落したが、今回の回復範囲はより限定的だ。

<政策手詰まり感>

米連邦準備理事会(FRB)が長期金利をコントロールする能力は失われている。他の条件に変化がなければ、政府による1.5兆ドル(約170兆円)の減税と国防予算増を賄うために、大量の米国債が新規発行されるため、利回りは自然と下限が設定されてしまう。

2018年の米財政赤字は7790億ドルと2012年以来最大となり、来年には1兆ドルに近づく見込みだ。経済成長がかなり順調な時期に財政赤字が膨らんでいることを思えば、これは「深刻な問題」だと超党派ポリシーセンターは警告する。

トランプ政権による財政刺激策は今年の米国経済にとってカンフル剤になったかもしれないが、その効果はじきに薄れていく。米国経済の成長率は現在3.5%だが、恐らく来年末には2%にまで減速するだろう。2020年までにリセッションに陥る可能性は高まっている。

11月の中間選挙において、野党・民主党が下院で過半数を奪還すれば、追加的な財政刺激策を講じる見込みは厳しく制約されるだろう。そうなれば政権は手詰まりの状態に陥る。

2018年の米国債発行額が1兆3400億ドルと前年の2倍以上に膨らむ一方で、FRBは自らのバランスシート縮小を進めている。量的緩和は量的引き締めに席を譲り、金利は上昇しつつある。

米国以外の国々が十分な景気刺激策を講じる見通しも暗くなっている。だからといって必ず株式市場が弱気に転じるとは限らないが、本格的な押し目買いによる株価上昇を引き起こすことが難しくする。

第3・四半期の中国の経済成長率は年率6.7%だった。同国の成長率がこれを下回ったのは過去25年でたった1度だけだ。2009年第1・四半期に、世界金融危機に影響されて6.4%をつけている。

中国政府は景気対策向けの原資として3兆ドル以上の外貨準備を抱えており、銀行に対する与信規制を緩和し、人民元の対ドル相場が過去10年で最低の水準まで下落することを容認している。3月以降、人民元は約10%下落した。

だが、米国との通商摩擦が影を落としつつあり、欧州もその苦痛を感じ始めている。第3・四半期のユーロ圏の成長率は0.2%に減速。これは予想されていた成長率の半分で、ここ4年で最低の数字だった。

ユーロ圏の成長率が、ここにきて減速に転じていることは、まさしく悪いタイミングだ。欧州中央銀行(ECB)が2.6兆ユーロ規模の量的緩和プログラムを終らせ、来年の利上げに向けた準備を整えているところだからだ。それとも、ECBのドラギ総裁は、この状況に目をつぶるのだろうか。

新興国の一部は深刻な景気減速か、場合によってはリセッションにまで陥っており、新興国の株価指数の多くはすでに弱気市場の域に入っている。それにもかかわらず、これらの国々の中央銀行は、自国通貨を支えるため、利上げを余儀なくされている。

こうしたすべての状況が重なり、しかも米国株式市場などでは、企業業績の成長展望も厳しい状態にある。バークレイズのアナリストは、米国企業の収益成長率が今年の20%以上から、来年は10%以下に落ち込むと推測し、米中間の貿易戦争が「全面的」なものに発展すれば、さらに3%低下する可能性があると警告している。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/global-stocks-bearmarket-idJPKCN1N640B


 

マクロとミクロの投資家に異例の乖離、ゴールドマンが指摘
Lu Wang
2018年11月1日 13:54 JST
• トレーダーが最も注目したのは企業決算だったもよう
• 決算発表日の大きな動き受けてリスク回避の度合い強める

米国株の指標の指数は10月に大きく上下したが、トレーダーが最も注目していたのはやはり企業決算だった痕跡があると、ゴールドマン・サックス・グループが指摘した。
  その一つが株価変動に伴う損失をヘッジするオプションの動向だ。ジョン・マーシャル、キャサリン・フォガティ両氏を含むストラテジストのリポートによると、市場全体の指数の動きをヘッジするオプションの価格は相対的に今年の最低になっている。一方、個別株のヘッジコストは2月以来の高水準だという。
  ストラテジストらはリポートで、「このような大きな乖離(かいり)は異例だ」とし、「マクロ投資家はS&P500種株価指数の底値で買おうとしている。他の資産クラスとの比較で売られ過ぎているからだ。一方で、ミクロ投資家は決算発表日の大きな動きを受けてリスク回避の度合いを強めているようだ」と記述した。

出典:ゴールドマン・サックス
原題:Goldman Says Traders More Worried Over Single Stocks Than Market(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-01/PHHXX46S972801?srnd=cojp-v2

 

 
S&P500、利回り上昇で2500割れも−株の資産配分減らせとソシエテ
Joanna Ossinger
2018年11月1日 8:35 JST
• 3%を上回る米国債利回りが株式に影響を与えつつあるとソシエテ
• ボラティリティー上昇も株式保有にとってリスクと見なされる

Photographer: Michael Nagle/Bloomberg
米株市場に債券利回り上昇がついに影響を及ぼしつつある可能性があり、債券との対比で株式への資産配分を減らす時期が訪れたと仏銀ソシエテ・ジェネラルが指摘した。
  ソシエテ・ジェネラルのグローバル・アセットアロケーション責任者のアラン・ボコブザ氏を中心とするストラテジストらは、利回りが当初上昇した際には、株価は減税の後押しでもちこたえたが、米国の10年国債利回りが9月以降3%を上回る最近の状況では、株式相場に影響を与え始めていると分析した。
  ストラテジストらは「資産配分の観点から見れば、株式への配分を減らすべき時期が来た」と主張。債券利回りの上昇が「今や株式のコストとリスクプレミアムの上昇を招いている」との認識を示した。

  ストラテジストらの計算によれば、株式のリスクプレミアムが現行水準のままで、10年国債利回りが現状より10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度高い3.25%に達すれば、S&P500種株価指数は2482前後に下落する可能性がある。また、ボラティリティーが上昇すれば、株式への配分のさらなる圧縮が必要になるとみている。


原題:SocGen Cuts Stock Allocation, Says S&P 500 May Drop Below 2,500(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-31/PHHJHV6K50XS01?srnd=cojp-v2

 

 
FRB、メガバンク除く金融機関に対する資本要件の緩和を提案へ
Jesse Hamilton
2018年11月1日 1:38 JST

A U.S. Bancorp building stands in San Francisco. Photographer: David Paul Morris/Bloomberg
米監督当局は銀行規制の改定案を提示する見通しだ。金融システムの脅威となる可能性が低いと考えられる金融機関に対する資本要件を緩和し、最も厳しい要件は大手メガバンクのみを対象とする。

  米連邦準備制度理事会(FRB)は31日、ウォール街のメガバンク以外の機関に対する規制緩和を狙った法律に応じる形で、より規模の小さな地域金融機関にメガバンクと異なる要件を課す新たな規制制度を提案する。この新制度の下では、USバンコープやキャピタル・ワン・ファイナンシャル、PNCファイナンシャル・サービシズ・グループなどは最も厳しい資本規制を免れることになる。

  パウエルFRB議長は声明で「この規制案では、リスクの少ない機関に対する要件を大きく緩和する一方、金融システムと経済に最も大きなリスクをもたらす機関に対しては最も厳しい要件を維持している」と説明した。

  新たな規制制度では、金融機関は総資産規模だけでなく、よりリスクの高い短期資金調達への依存度合い、簿外取引の規模、米国外での事業規模も評価対象となる。

資産規模が1000億−2500億ドル(約11兆3000億−28兆3000億円)の金融機関に対しては、緊急に資金が必要となった場合に備えて留保しておく、売却が容易な資産の規模に関する要件を大幅に緩和する予定。またこれら金融機関を対象としたストレステスト(健全性審査)は、2年ごとに実施される。こうした金融機関にはサントラスト・バンクスやキーコープ、フィフス・サード・バンコープなどがある
資産規模が2500億ドルを超える、もしくは超えなくてもリスクが高い金融機関に対しては、事業の複雑さの度合いに応じて資本要件をより厳格にする。ただシステム上重要ではない機関については、流動性の要件は大きく引き下げられる
「アドバンストアプローチ」の資本要件が適用される、世界的なメガバンクの定義基準を大幅に引き上げる。現行規定では資産規模が2500億ドル以上、ないし国外のエクスポージャーが100億ドル以上としているが、新たな案では資産規模が7000億ドル、ないし国外エクスポージャーが750億ドルの銀行に基準を引き上げる
原題:Fed Set to Propose Eased Standards for All But the Biggest Banks(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-31/PHH0036S972901?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/241.html

[経世済民129] 白川前日銀総裁は「デフレ大好き人間」と、著作を読んで納得した 働く高齢者を増やせば将来の労働力不足はどの程度緩和できるか
2018年11月1日 高橋洋一 :嘉悦大学教授

白川前日銀総裁は「デフレ大好き人間」と、著作を読んで納得した

 白川方明・前日本銀行総裁が、2013年3月に退任後、5年半の沈黙を破り、バブル期やバブル崩壊、リーマンショックの際など、日銀時代の経験や中央銀行の役割について書いた本が話題になっている。
『中央銀行―― セントラルバンカーの経験した39年』(東洋経済新報社刊)は、700ページになるが、総裁当時に日銀が公表した論文などからの引用も多く、突っ込みどころも満載だ。
 白川前総裁については、「2%インフレ目標」を金融政策だけで達成するのは困難、と総裁時代からしきりに述べていたことで、現状を的確に「予言」したと評価する向きもあれば、リーマンショック後の「デフレ脱却」を妨げた戦犯と捉える人もいる。
 白川時代の日銀の金融政策をどう評価するのが正しいのか。筆者の評価は、ハッキリ言えば「デフレ脱却を妨げた戦犯」である。
消費増税なければ
「2%物価目標」は実現していた
 まず、2%のインフレ目標だが、それが達成できなかったのは、2014年4月からの消費増税が原因だ。
 消費増税までは、白川氏が抵抗した大胆な金融緩和を、後任の黒田東彦総裁が「異次元緩和政策」としてやった効果で、インフレ率はいい感じで上昇していた。
 14年5月には、消費増税による見かけの上昇分を除き、インフレ率は1.6%まで上がっていた。消費増税がなければ、14年の年内にも2%達成は確実だった。
 しかし、消費増税の影響でより長期的な消費低迷に入り、それとともにインフレ率上昇にもブレーキがかかり、今日に至っている。
 このことは、2015年3月19日付本コラム「『2%インフレ目標未達』の批判は誤解で的外れ」を参照されたい。
 要するに、金融政策だけでインフレ目標2%は達成できたはずなので、当時の白川氏の金融政策に関する「予言」は外れたのだ。
 白川氏の著作や総裁時代の発言から、疑問に思うのは、金融政策は何のために行われるのかをきちんと理解していないのでは、と思わざるを得ない。この点が致命的である。
金融政策は雇用確保の政策
という認識がない
 本コラムで繰り返し指摘しているように、金融政策は雇用を確保する政策だが、白川氏の著作や発言には、雇用の話はまず出てこない。
 また著作では「インフレ目標2%の意味がわからない」という趣旨のことが書かれている。これはある意味で、正直ともいえるが、そういう人が中央銀行総裁だったとは空恐ろしいことだ。
 インフレ目標として「なぜ「2%」なのかという理由は、本コラムでも繰り返し書いてきた(例えば、2017年12月28日付「安倍政権5年間の通信簿は雇用の確保で70点の及第点だ」)。
  最低の失業率を目指しても、ある下限(経済学ではNAIRU、インフレを加速しない失業率という)以下にはならずに、インフレ率ばかり高くなってしまう。そうした下限の失業率(筆者の試算では、日本では2%台半ばから前半)を達成するために最小のインフレ率が2%程度になっているからだ。

拡大画像表示
 この意味で、インフレ目標は、中央銀行が失業率を下げたいために金融緩和をし過ぎないような歯止めともいえる。逆に言えば、インフレ目標までは金融緩和が容認されるということだ。
 このような基本的なことを認識しないで、日銀総裁をやっていたから、その成果が散々だったのだ。
 雇用確保の観点から、白川総裁時代を評価すると、失業率は、就任時の2008年4月は3.9%だったのが、退任時の2013年3月は4.1%に上がっている。とても及第点はつけられない。
 リーマンショックや東日本大震災があったのは不運だったが、その対応でも落第だ。
円高やデフレが悪いと
思っていなかったのでは
 リーマンショック後の超円高を招いたところに、それが端的に表れている。
 当時、各国の中央銀行は失業率の上昇を恐れて、大幅な金融緩和を行ったが、日銀はしばらくはそれをやらなかった。その結果、円が各国通貨に比べて相対的に少なくなったので、その相対希少性から猛烈な円高になった。
 これで苦しんだ企業は多かった。
 しかし、その「無策」を反省するでもなく、「(インフレ格差を差し引いて修正した)実質為替レートで見たら、大した円高ではないので、それを言うとたたかれるから放置した」という趣旨の記述が著作中にある。
 この記述は、逆に言えば、名目的な円高は大したことないのになぜ大騒ぎするのか、という彼の本心を告白しているようなものだ。
 これには驚いた。変化の実質だけを見て、デフレで実質所得が高くなるからいいだろうという、典型的な「デフレ思考」である。その当時、円高に苦しんだ人は、この白川氏の本音を聞いてどう思うだろうか。
 デフレも円高も、円が、それぞれモノや他国の通貨量に対して相対的な過少状況から引き起こされる現象である。相対的に過少なので、通貨の価値が高くなり、その裏腹にモノの価値が下がりデフレになり、円の価値が高くなって円高になるというわけだ。
 それが怖いのは雇用が失われるからだが、この人には金融政策によって雇用を確保できるという考えがなく、またデフレや円高が悪いものと思っていなかったのだろう。
人口減少は
デフレの原因ではない
 このほかにも、あきれたことはある。人口減少がデフレに影響しているという「デフレ人口原因説」を、著作で長々と書いていたことだ。
 この論は、5年ほど前には一世を風靡したが、今でも人口減少は続いている一方で、デフレは脱却しつつある。だからもう否定されているものだ。
 日銀総裁時代にも、白川氏は「デフレ人口原因説」を展開したが、その時も、主張は破綻していた。
 2012年 5月30日、日銀の国際シンポジウムでの挨拶、「人口動態の変化とマクロ経済パフォーマンス ―日本の経験から―」で、同じ見解を示した。
 その時に、資料として示された「先進国の生産年齢人口変化率とインフレ率の関係」(図表14)のデータについて、筆者は、「国別データの取り方を恣意的にしたもので捏造レベルの問題だ」と、月刊誌『FACTA』2012年7月号で、恣意的な方法を含めて批判したことがある。
 この図表は、今回の著作では出ていないが、それでも同じような見解が書かれている。
「日本銀行はデフレは低成長の原因ではなく、結果であると反論した。この点で興味深いのは先進国における(人口一人当たりの)潜在成長率と予想物価上昇率の関係である(注8)。これを見ると、両者の間には明確な正の相関関係が観察される(図10−5)。」(341ページより引用)と。
 だが筆者が確認したところでは、注8で引用されている「マネーと成長期待―物価の変動メカニズムを巡って」と題した日本銀行のワーキングペーパーには、「米英欧では、中長期の予想インフレ率と潜在成長率が無相関」とされている。
 白川氏の著作の記述は間違っている。著作では、まだ懲りずに、デフレの「人口原因説」を展開しているが、その論拠は怪しいものだ。
 また、白川氏は日本財政についても、危機であると本当に信じ込んでいる。これも著作に書かれているが、筆者には、その見解は信じがたい(2015年2月5日付「国の債務超過490兆円を意外と簡単に減らす方法」)。
「統合政府論」で見れば、日本の財政は問題がないことは、先週の本コラムでも言及したが、今ではIMFでもそういったことを言い始めている。
 いずれにしても、白川氏はまぎれもない「消費増税積極論者」であるようだ。
 だが、冒頭に述べたように、2%のインフレ目標が達成できなかったのは消費増税が原因である。
 白川氏が仮に2014年4月に日銀総裁を続けていたら、日本経済はもっとひどいことになっていただろう。
 というのは、金融政策で2%物価目標は達成できないというくらいだから、金融緩和は「手抜き」だろう。したがって当然のように物価上昇率は2%には届かず、その上、消費増税が行われるので、デフレに逆戻りしただろう。
 こうしてみていると、白川氏はまさに「デフレ大好き人間」なのだと、妙に納得してしまう。
(嘉悦大学教授 高橋洋一)
https://diamond.jp/articles/-/183968


 

2018年11月1日 野口悠紀雄 :早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問
働く高齢者を増やせば将来の労働力不足はどの程度緩和できるか

 これからの高齢者は、年金に頼るのでなく働くことが必要だと、前回(10月25日付け)コラム「年金だけでは老後の生活を賄えない、対処の最善策は就労年数の延長だ」で書いた。
 高齢者が働くことは、経済全体の労働力不足解消の観点からも期待されている。企業は、人手不足対策として、高齢者の雇用を考えているのだろう。
 しかし、以下では、高齢者の就労を促進しても、将来の労働力不足は解消しないことを示す。

日本の労働力人口は、
2040年までに1300万人減少する

 人口の高齢化は、労働人口の減少をもたらす。以下では、将来の労働力人口がどのようになるかを推計する。
 最初に、全体の姿の概要をつかんでおこう。
「労働力調査」によると、2015年における年齢階級別の人口、労働力、人口に対する労働人口の割合を示す労働力率は、図表1のとおりだ。また、年齢階層別人口の推移は図表2のとおりだ。

◆図表1:年齢階級別の人口、労働力、労働力率(2015年)

拡大画像表示
◆図表2:年齢階層別人口の推移

拡大画像表示
 15年から40年までに、15〜64歳人口が約1750万人減る。したがって、仮に労働力率が76.1%のままだとすれば、労働力人口は1300万人強減る。働く高齢者が増えるので、ある程度は補えるが、労働力の減少は避けられない。
 60年までには、15〜64歳人口が約2900万人減る。したがって、労働力人口は2200万人減る。これに対処するのはきわめて困難だ。
 以上のことを、もう少し正確に計算すれば、つぎのとおりだ。
 将来における年齢別の労働力率が、図表1に示した15年の数字のままで変わらないと仮定しよう。
 将来人口の値(図表2)を用いて労働力人口を推計すると、図表3のようになる。

◆図表3:将来の労働力人口(年齢別労働力率不変の場合)

拡大画像表示

 15年との比較では、40年に約1300万人減り、60年には約2300万人減少する。
 15年の製造業の就業者が約1000万人であることと比較すると、これがきわめて大きな変化だということが分かる。
 日本経済は、深刻な労働力不足経済に突入するのだ。
 なお、将来の労働力人口に関する推計としては、いくつものものがある。
 内閣府「労働力人口と今後の経済成長について」(平成26年3月)によれば、13年における労働力人口は6577万人だが、30年には894万人減って5683万人になる(現状維持ケース)。
 私は、『2040年問題』(ダイヤモンド社、2015年)で、内閣府の数字と将来人口推計の計数を基にして、労働力人口の推計を行なった。
 その結果は、25年で6059万人、30年で5834万人、40年で5156万人、50年で4530万人というものだ。上で述べた数字は、これとほぼ同じものだ。

日本の労働力率は欧米に比べて低く
時系列的にも下がってきた

 人口全体が減少するから、労働力の絶対数が減少しても大きな問題にはならないと考えられるかもしれない。
 しかし、そうではない。なぜなら、図表3に見るように、労働力率も低下するからだ。
 他方で、労働力に対する需要は増加する。とくに、医療介護の分野では、高齢者の増加に伴って労働力に対する需要が増加する。したがって、いまのままでは、将来の日本で、労働の需給が著しくタイトになるのである。
 日本の労働力率は、欧米諸国に比べて低い。
 15歳以上について見ると、2016年で、アメリカ62.8%、ドイツ61.0%、スウェーデン72.1%なのに対して、日本は60.0%となっている。
 日本の労働人口比率は、図表4に示すように、13年頃までは、時系列的に見ても下がってきた。その結果、1995年に63.4%だったものが、2017年に60.5%になっている。

◆図表4:労働力率の推移

拡大画像表示

 ただし、年齢別に見ると、25歳から64歳までのどの年齢階層でも、労働力率はこの期間に上昇している。
 したがって、経済全体の労働力率の低下は、人口の年齢別比率の変化によると考えられる(注)。
 高齢化が進めば、経済全体の労働力率はさらに低下する。図表3に示すように、年齢別労働力率が不変の場合には、経済全体の労働力率は40年には54.0%、60年には52.0%と、かなりの低水準になると予想される。
 しかし、それなら、主として高齢者の労働力率が上昇するはずだが、実際には、どの年齢階層を見ても、13年以降、労働力率が上昇している。
 むしろ、それまで低下を続けていた15〜19歳、20〜24歳の労働力率が上昇したことの影響が大きい。
(注)労働力率は、2013年から上昇している。これは年金支給開始年齢引き上げの影響であろうか?

高齢者の労働力率を高めても、
労働力不足は解消できない

 将来における労働力需給逼迫に対処するために、高齢者の労働力率を高めることが考えられる。
 65歳以上人口は、現在、約3500万人いる(図表1)。それが、2040年には約4000万人になる(図表2)。
 ところで、この階層の労働力率は、いまは約22%だ。これを約10%ポイント引き上げることができれば、40年における労働力は、図表3で示したものよりは400万人程度増えることになるだろう。
 このことをより正確に評価するため、図表1、2の計数を用い、高齢者の労働力率としていくつかの値を想定して、シミュレーションを行なった。
 そのうち、2つのケースについての結果は、以下のとおりだ。
(1)65歳以上の労働力率を5割引き上げ
 まず、65歳以上の労働力率を5割引き上げて、65〜69歳は64.1%、70歳以上は20.8%になる場合を考える。
 結果は、図表5の(1)のとおりだ。

◆図表5:(1)高齢者の労働力率引き上げ

拡大画像表示

 労働力率不変の場合(図表3)に比べると、労働力は、40年、60年で400万人程度増える。したがって、労働力不足は、ある程度は緩和される。
 しかし、そうであっても、15年と比べた労働力は、40年には約880万人減り、60年には約2000万人減少となる。また、経済全体の労働力率も、40年に58.1%、60年に56.1%となって、現在よりかなり低下する。
 こうしたことを見れば、労働力不足問題が解消されたとは言えない。
(2)労働力率を6割に保てるように、高齢者の労働化率を引き上げる
 つぎに、経済全体の労働力率を約6割に保てるように、高齢者の労働化率を引き上げる場合を考える。
 労働力率を65〜69歳は74.8%とし、70歳以上は34.7%とすれば、これが達成できる。
 これは、65〜69歳が現在の15〜64歳と同じように働き、70歳以上も約3人に1人が働くというものだ。
 現実にこれを実現するのはかなり無理かもしれないが、経済全体の労働力低下を高齢者の就業促進だけで実現しようとすれば、このようなことが必要になるのだ。
 この場合の結果は、図表5の(2)のとおりだ。

◆図表5:(2)全体の労働力を60%以上に保つよう高齢者労働力率を引き上げ

拡大画像表示

 労働力率不変の場合(図表3)に比べると、労働力は、40年、60年で800万人から900万人程度増える。したがって、労働力不足は、かなりの程度、緩和される。
 しかし、それでも、60年で労働力が15年より1400万人以上減ることは避けられない。高齢者の就労を増やすだけでは、若年者人口の減少には対処できないのだ。
 高齢者の就労促進は、高齢者の所得や生きがいの確保のために重要なことだ。しかし、経済全体としての労働力確保の観点からは、これに頼り切ることはできない。
 労働力確保の観点から重要なのは、つぎに述べる女性労働力率の引き上げと、外国人労働者の活用だ。

女性の労働力率がスウェーデン並みになれば
労働力が約1000万人増加

 労働力不足に対応することが目的であれば、女性の労働力率を高めるほうが効果はある。
 2016年での15歳以上の女性の労働力率を見ると、日本は50.3%であり、欧米諸国に比べて低い。欧米では、アメリカが56.8%、スウェーデンが69.7%、ドイツが55.6%となっている。
 そこで、女性の15歳以上労働力率を70%に引き上げたものとしよう。
 15歳以上の女性人口はほぼ4000〜5000万人だから、これによって、労働力人口は約800〜1000万人増えるはずだ。
 人口推計の値を用いて正確に計算した結果は、図表6に示すとおりだ。
 労働力率が50.3%にとどまる場合との差は、40年で975万人、60年で821万人になる。
 労働力がこれだけ増えれば、全体の労働力率も上昇する。40年で63.9%、60年で61.8%になる。こうして、経済全体としての労働力率の落ち込みを回避することができる。
 ただし、子育て期の女性の労働力率を高めるには、子育て支援などの政策が必要だ。それは、決して容易な課題ではない。
 したがって、高齢者と女性の労働力率の引き上げだけに頼るのでなく、それ以外の方策も考えなければならない。
 第1は、新しい技術(とくにAI)の導入によって生産性を高めることだ。 第2は、外国人労働者の活用と移民の拡大である。これら問題を日本は避けて通ることができない。
(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)

https://diamond.jp/articles/-/183967


http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/242.html

[不安と不健康18] ワクチンあっても結核で毎日4000人死亡の謎 終わりなき戦い 声なき声を聴く──国連総会の結核ハイレベル会合 
ワクチンあっても結核で毎日4000人死亡の謎
終わりなき戦い
声なき声を聴く──国連総会の結核ハイレベル会合
2018年10月31日(水)
國井 修

国連総会が開催された国連本部ビル。
 毎年9月の第3、4週になるとマンハッタンのイーストサイドは物々しくなる。
 世界193か国から大統領、首相、大臣が一堂に会する国連総会があるためである。
 10年ほど前、私はニューヨーク国連本部の通り向かいのビルに毎日通っていたが、この時期になると、交通規制や検問所、さらに市民団体、人権組織の抗議デモなどで道路が塞がれ、オフィスに辿り着くのも難儀だった。
 今年、久しぶりにこの騒々しい時期のニューヨークを訪れた。国連総会で結核ハイレベル会合、さらにそれに関連するサイドイベントが開かれたためである。
 私が働くグローバルファンドはこのような国際会議に出席するだけでなく、他のパートナーと共に会議を成功させ、現場を変えるアクションにつなげなければならない。
 「なぜ国連総会で結核?」と疑問に思う人もいるだろう。
 国連総会では毎年、軍縮・安全保障、人権・人道、政治・経済など世界の様々な問題が話し合われるが、特にハイレベル会合では「旬」で「ホット」な話題、世界が力を入れて取り組まなければならない課題が選ばれる。その課題について国連加盟国やパートナーが「政治宣言」を作成し、合意し、各国首脳級がそれぞれの取り組みや努力について演説するのである。
 そのハイレベル会合の議題に今年は「結核」が選ばれた。

アフリカ連合主催の国連総会のサイドイベント。アフリカの歌姫イボンヌ・チャカチャカの司会で、アフリカのリーダーたちが自分たちの手で多くの国民の命を奪っている結核とどう戦うかを話し合った。
 結核は古くて新しい病気である。
 約9000年前の人骨から結核カリエスの痕が見つかるほど古代から人類と共に歩みながら、いまだに感染症の死亡原因のトップに君臨している。毎日、世界で約3万人を発病させ、4000人以上を死に追いやっている。
 「毎日4000人が死亡する」とはどのような脅威のレベルなのか、SARS(重症急性呼吸器症候群、2002〜2003年に37か国で流行)、エボラ熱(2013〜2015年に10か国で流行)と比較するとわかりやすい。
 あれほど世界に恐怖と戦慄を与えた感染症アウトブレイクだが、一日平均あたりの死者はSARSでおよそ3人、エボラ熱で15人、数字だけを見ると、結核はその1300倍、270倍の人々の命を奪っていることになる。
 おそらく、この数字に違和感を感じる読者もいると思う。そこには現実と報道、現実と我々人間の恐怖感の「ズレ」があるためである。
結核で毎日4000人が死亡する理由
 この「ズレ」は、「見えない敵」と「見える敵」、また「勝つ手段がわかっている敵」と「わからない敵」との違いから来る。
 SARSは「原因不明」の非定型性肺炎が中国広東省から世界に瞬く間に拡がり、原因(新型コロナウィルス)がわかった後も、決定的な予防・治療法がなかった。
 エボラ熱は、2013年の西アフリカでの流行より約40年も前からその正体はわかっていながら、効果的な治療・ワクチンがなく、さらに映画「アウトブレイク」などにより凄惨で致死性の高い誇大なイメージが広がっていた。
 見えない敵に勝つための効果的な治療薬もワクチンもない。メディアがその恐怖を冗長させるのである。
 一方、結核は19世紀頃まで欧米でも4人に1人が結核で死亡するほど流行し、「不治の病」「亡国病」と呼ばれていたが、BCGワクチンや効果的な治療薬の開発などにより死者も激減した。メディアもほとんど報道しない。次第にその恐ろしさが忘れ去られていくのである。
 では、ワクチンや治療薬があるのに、なぜ今でも結核で毎日4000人も死亡するのだろうか。
 多くの理由があるが、3つの要因を挙げたい。
 1つ目は、結核が世界の貧困や社会課題に密接に関連していること。
 結核の高蔓延国を見てみると、中央アフリカ、リベリア、ミャンマー、北朝鮮など、政治・経済・社会上の不安や問題を抱える国、さらに、インド、中国、インドネシア、フィリピン、パキスタンなど、著しい経済発展をしながらも、貧富の差が拡大する国が多い。
 結核は特に、住環境や労働環境の劣悪な都会のスラム、衛生環境、栄養状態の悪い僻村、換気が悪く塵芥にまみれて作業を行う鉱山、そして、換気が悪く狭い部屋に密集して押し込まれる刑務所など、貧困層や社会の底辺に追いやられている人々に蔓延し、ここから周辺に菌をちりばめている。
 日本でも結核が最も蔓延している地域はホームレスの多い大阪府西成区あいりん地域で、その結核罹患率は全国平均の20倍以上、アジア・アフリカの高蔓延国と同レベルである。
 2つ目は、HIVの流行によって結核が再燃したこと。
 そもそも人は結核菌に感染しても、病気として発病するのは10人に1人程度で、体の抵抗力、免疫力が十分にあれば結核菌を跳ね返すこともできる。
 しかし、HIVは免疫細胞を破壊して人の抵抗力を減弱させるので、体内に入った結核菌の活動を助長、発病させやすくする。その結果、HIV流行前には結核による罹患や死亡が減少傾向にあったアフリカだが、HIV流行後にはそれが急増し、2倍、3倍に膨れ上がった国もあらわれた。
 近年の努力で改善が見られ始めたが、いまだにHIVが流行する南部アフリカの結核死亡率・罹患率は他地域に比べて驚異的に高く、世界全体で年間30万人が結核とHIVの重感染によって死亡している。
 3つ目は、結核の治療薬への耐性菌が増えていること。
 結核は6か月以上に渡る長期の治療を必要とするため、患者側の治療の中断・薬の飲み忘れ、また医療者側の不適切な治療などによって薬剤耐性菌が作られやすい。
 特に効果的な治療薬リファンピシンとそれ以外の薬が効かない多剤耐性結核は世界で増加傾向にあり、推計で年間55万人以上に上るが、このうち診断・治療されているのは4人に1人、治療してもその成功率は50%程度である。
 特に、過去に医療制度が崩壊し、いまだに医療の質が十分とは言えない旧社会主義国の東欧・中央アジアでは多剤耐性結核が爆発的に広がり、中には結核新規患者の4割が多剤耐性菌に冒されているという国もある。
 日本での多剤耐性結核の罹患者報告数は年間100人に満たず、今のところ明らかな増加傾向もみられていないようだが、不安もある。
 2017年末で在留外国人は260万人以上、訪日外国人は年間2800万人以上、日本からの海外渡航者は年間1700万人以上と、日本と海外とで人の行き来が活発である。

サイドイベントのひとつとして「結核イノベーション・サミット」が開かれ、研究・開発、技術革新の重要性が政府、企業、国際機関、様々なリーダーが集まり議論した。日本企業も参加した。
 そんな中、特にアジアには多剤耐性結核の発生が高いインド(多剤耐性結核患者13万人以上)、中国(約7万人)、フィリピン(約3万人)、インドネシア(約2万人)などがあり、それらの国から多剤耐性菌が日本に持ち込まれる可能性もある。
 実際に、日本で報告された多剤耐性結核患者の中には外国人が少なくなく、また日本国内で渡航歴がなく、健康に問題もなく、普通に生活していた若い日本人が多剤耐性結核に感染し発病した例もある。日本国内だから大丈夫、と安心できなくなってきているのである。
結核対策の国際目標達成のために
 ではこのような状況に対して、国連総会ハイレベル会合ではどのようなことが取り上げられ、また政治宣言に盛り込まれたのだろうか。

国連結核ハイレベル首脳級会合の様子。日本からは加藤厚生労働大臣が出席し演説した。
 先立つものは、やはり資金である。結核患者を検査するにも治療するにも、資金が必要である。
 現在、結核対策として年間世界で約7000億円が費やされ、その8割以上は各国の政府予算、国内資金から捻出されている。外部資金、すなわち国際社会からの援助は1000億円程度で、うち3分の2はグローバルファンドによる支援である。
 しかし、この資金レベルでは国際目標を達成するのは困難である。結核対策の国際目標とは、2015年から2030年までの間に、結核による罹患を80%減らし、死亡を90%減らすというものだが、その達成には現在のゆっくりした結核罹患の減少率、年平均マイナス2%をこれから年平均マイナス10%にもっていき、さらに2025年頃からはマイナス17%に加速化しなければならない。
 今回の政治宣言では、この国際目標達成のため、2018年から5年間で、結核の発病者4000万人に診断と治療を届けることを目指し、そのためには年間130億ドル(約1兆4600億円)の資金が必要であると世界に呼びかけた。ちなみにこの額は日本の1年分の防衛費の3分の1未満。1か国の防衛費の3分の1の資金で、世界100国近くの5年分の結核死亡者を救える。決して多額で無駄な投資ではない。
 またこの資金のすべてを国際社会の支援に頼るわけではない。低中所得国の自助努力による国内資金の増額も求められている。
 ちなみに、この国際社会からの援助資金の確保は実質上グローバルファンドに期待されている。現在、世界100か国近い低・中所得国の結核対策に対して、グローバルファンドは世界の援助資金の3分の2を拠出している。そのため政治宣言では、グローバルファンドの「増資会合(Replenishment)」にも言及され、その成功が望まれている。
 このグローバルファンドの増資会合とは、3年に一度、三大感染症の撲滅のための援助資金を調達するために開催されるもので、2013年はアメリカのオバマ大統領、2016年はカナダのトルドー首相が主催し、来年10月にはフランスのマクロン大統領によってフランスのリヨン市で開催される予定である。

多くが感染していながら世界で見過ごされてきた子どもや思春期の結核に対して、その対策指針と今後の行動計画を発表。筆者もWHO、UNICEFなど主要機関の代表と一緒にパネリストとして登壇した(左から3人目)。 
 一方、国際目標達成のために加速化するには、現存する診断・治療法だけでは不十分である。研究開発による新たな診断・治療・予防法が必要である。
 結核対策のひとつの難しさは、HIVやマラリアのように現場で簡便かつ迅速に診断できる方法がないことである。
 長らく結核で用いられてきた検査診断法は胸部レントゲンと喀痰を使った顕微鏡検査であるが、肺以外の結核の場合、また喀痰が採れない場合、この診断精度はとても低くなる。
 最近になって、GeneXpert(ジーン・エクスパート)という全自動遺伝子検査システムが市場に出回り、より正確・迅速・簡便に薬剤感受性および耐性の結核診断ができるようになった。結核対策に大きな進歩を与えたといえる。しかしながら、電気のない僻村では使用できず、いまだ機器本体は高価で、使い捨ての試薬カートリッジも途上国には決して安価とはいえない。
 我が国の民間企業、栄研化学、ニプロ、富士フイルムなども結核の検査・診断で有望な製品を作っている。今後に期待したい。
 治療薬については、40年ぶりに新薬が開発され、その一つは日本の大塚製薬が開発したデラマニドである。薬剤耐性結核で命が助からなかった、また難聴などの強い副作用をもたらす治療薬を飲まざるを得ない時代から見れば「夢のような薬」である。 
 既に多くの国々で使用され始めているのだが、ここで気をつけなければならないのが使い方である。適切に使用しなければこれらの薬にも耐性ができる可能性が高いのだ。これらの薬にも耐性菌ができることも十分考慮して、新薬の開発にも投資しなければならないのである。いたちごっこに見えるのだが、それがすぐに改善できない現状においては、新薬の開発も必要である。
 さらに世界中が待ち望んでいるのがワクチン。
 現在使用されているBCGワクチンは、乳幼児の結核予防や結核感染後の重症化を抑える効果はあるが、成人の結核の発病予防への効果は明らかではない。また、BCG接種により結核スクリーニングに有用なツベルクリン反応が陽性になってしまい、使用不可となってしまう。米国など結核罹患率がとても低い国では定期的なBCGワクチン接種をもはやしていない理由である。
 そのため、世界では乳幼児により効果的で、成人にも効果的なワクチンの開発が待たれているのである。
 このような新薬やワクチンなどの研究開発に必要な資金は、現状の約3倍の年20億ドル(約2250億円)と考えられ、今回のハイレベル会合の政治宣言の中にも盛り込まれている。
知的財産権の保護を主張するアメリカ
 この研究・開発に絡んで、政治宣言づくりの段階で対立したのが、知的財産権の保護を主張するアメリカと治療アクセスの拡大を主張する一部の市民社会・途上国である。
 アメリカを中心に先進国に本拠を置く製薬企業が開発・製造した医薬品の多くは特許権の保護を受け、その企業に価格を決めることができる。新薬の中には高価な医薬品も多く、特にエイズ治療薬が開発された頃は併用療法で一人あたり年間100万円を超える価格だった。
 これに対して、世界貿易機関(World Trade Organization:WTO)は加盟国によって2001年に「ドーハ閣僚宣言」を採択し、感染症の世界的流行など公衆衛生上の危機が生じた場合に、WTO加盟国の中で知的財産権が保護されている医薬品の製造や輸入、また安価なジェネリック医薬品の製造と輸出を可能にしようとの取り決めがなされた。高価な治療薬が開発途上国の人々に届かない現状を打破するための措置であった。

トランプ大統領が通過するための道路封鎖。護衛を含めて30台以上の車が通過し、30分以上に渡った。
 結核の治療では、薬剤に感受性があれば患者一人当たり6か月間の薬代は7000円程度で済む国も多い。しかし、薬剤耐性の場合、治療を完了するまでにかかる費用は200万円を超える国も少なくない。これに対し国際NGOや途上国などは、今回の国連結核ハイレベル会合の政治宣言にこの「ドーハ閣僚宣言」を明記し、治療アクセスの拡大を促進するための文言を盛り込むことを強く主張したが、アメリカは薬剤耐性以外の治療薬はすでにパテントが切れていることや、薬剤耐性結核の治療薬も多くは無償か安価で提供されているため、結核に関しては知財は大きな障害ではなく、アクセス促進のためにはシステム全体の強化が重要だとの主張でその文言を入れることに反対した。
 最終的には1か所に「ドーハ閣僚宣言」が明記され、一般的な「治療アクセスの促進」は様々な場所にちりばめられた。
 確かに、多額の資金を投入して新薬を研究開発しても、それを安価で提供したり、他企業にジェネリック薬の製造・輸出を許してしまったりすると、民間企業の研究開発費が回収できない、利益が出ない、そして最終的に、民間企業の研究開発意欲を失わせてしまうとのアメリカ側の主張もわかる。
 今後、官民連携の強化などで打開策を見つけていく必要があるだろう。
 追加資金は重要だが、資金があれば解決する問題ではない。また、限られた資金でもよりよい成果を出す方法がある。
日本に見る結核封じ込めの成功事例
 ひとつの成功事例を日本に見ることができる。
 過去に日本では年間の結核罹患数が100万人以上、死亡数も10万人を超えることもあり、長らく日本人の死亡原因のトップで、「国民病」と呼ばれていた時代がある。
 これに対して実施した対策は功を奏し、年平均で10%以上という世界でも稀に見る驚異的な減少率を実現した。それも日本がそれほど豊かでなく、効果的な治療法も確立する以前、1950、60年代の話である。
 その成功の秘訣を一言でいえば、国のリーダーシップ、様々なレベル・セクター間での連携・協働、そして地域や住民の動員・参加の3点であろうか。
 国のリーダーシップとしては、結核予防法や保健所法などを施行し、明確な結核対策の戦略・方針を示し、後に国民皆保険につながる結核医療費の公的負担制度を実現したことである。
 結核対策の戦略としては、健康診断、予防接種、適正医療の3つを全国津々浦々で促進・普及させた。
 特に健康診断と予防接種、すなわち結核のスクリーニングと予防をまさに全国民に普及するため、学校、施設、事業所、市町村で、それぞれの長に実施責任を持たせて定期的に徹底的に実施させた。
 結核疑いの患者は、開業医を含む日本の医療施設に診療が依託され、患者は保健所に報告・登録され、その患者と家族への徹底したフォローアップがなされた。
 開業医を含む医療機関から報告された結核患者の診療内容は、専門の診査協議会で検討され、同意を得られた医療のみに公費負担がなされた。つまり、結核治療の質の向上、治療の適正化を行った。
 また地域では、婦人会、青年団、衛生自治組織などが健康診断や予防接種に協力して、それらの実施率の向上を図った。
 民間の立場から結核対策を支える結核予防会、そして結核研究所が創設され,結核に関する研究と対策、普及啓発活動と人材育成が推進された。
グローバルヘルスの目標実現の難しさ
 私はその時代に生きていないので、これらは先輩諸氏から聞き、論文から学んだのだが、現在、国際協力をしていて、日本の経験から学べることがたくさんあるのである。
 政治宣言ではユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(universal health coverage; UHC)という用語が何度も用いられているが、社会的弱者も含め、すべての人々に必要なサービスを届けることは貧しい時代の日本でも以上のように実現は可能であった。
 ただし、グローバルヘルスの難しさは単に日本の経験を「これはいいですよ」と伝えるだけでは現場は変わらないところである。「理屈」は簡単、「実施」が難しいのである。私の経験では、成功の10%は政策や戦略、90%は実施やオペレーションにある、と思っている。
 各国の政治・経済・社会状況、インフラ、社会資源、文化・価値観など様々な状況を見ながら、その国に見合った実施計画を作り、地理的・時間的展開を考え、その実施に力点を置く必要がある。
 それが難しいところであるが、それに挑戦することがグローバルヘルスの醍醐味ともいえる。
 マンハッタンでの慌ただしい5日間のスケジュールが終わった。このハイレベル会合を成功に導いた日本政府の国連代表部、特に共同議長の大役を果たされた別所浩郎大使と大変な政治文書のとりまとめを行った江副聡参事官には敬意を表したい。
 ただし、正念場はこれからである。このハイレベル会合のために費やした時間とお金とエネルギーが無駄にならぬよう、現場で実施、オペレーションを加速化しなければならない。
 ニューヨークで⼀般演説した代表が、Talk the talk (くちばっか)か、Walk the talk(有⾔実⾏)か、Walk the walk(不⾔実⾏)なのか、2030年、SDGsの節⽬の年には明らかになる。

結核ハイレベル会合終了後に、政治宣言を取りまとめた立役者(左)と日本政府代表団員(右)と国連ビル前で。


このコラムについて
終わりなき戦い
国際援助の最前線ではいったい何が起こっているのか。国際緊急援助や開発協力で世界を駆け回る日本人内科医が各地をリポートする。NGO(非政府組織)、UNICEF、そしてグローバルファンドの一員として豊富な援助経験を持つ筆者ならではの視野が広く、かつ、今をリアルに切り取る現地報告

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/222363/102900023/?ST=editor

http://www.asyura2.com/16/health18/msg/662.html

[経世済民129] 日本株は反落へ、中国経済の減速懸念と円高  英中銀:政策金利据え置きを決定、景気予測は想定より速い利上げ示唆 
日本株は反落へ、中国経済の減速懸念と円高
河元伸吾
2018年11月1日 8:05 JST
更新日時 2018年11月1日 15:28 JST
ドコモが携帯料金の引き下げを発表、通信株に売り膨らむ
円は一時1ドル=112円70銭台に上昇、赤字転落の野村HD下落
1日の東京株式相場は3日ぶりに反落。為替相場で円が上昇し業績に慎重な見方が広がる中、携帯料金の値下げを発表したNTTドコモなどの通信株が大幅安となり、下落を主導した。決算失望の野村ホールディングスなど証券株も安い。

TOPIXの終値は前日比14.07ポイント(0.9%)安の1632.05
日経平均株価は同232円81銭(1.1%)安の2万1687円65銭
  NTTドコモは10月31日、2019年度第1四半期に2−4割程度の値下げを織り込んだ新たな携帯料金プランの提供を開始すると発表した。ドル・円相場は一時1ドル=112円70銭台と、前日の日本株終値時点の113円28銭から円高・ドル安で推移した。

  りそな銀行アセットマネジメント部の下出衛チーフストラテジストは、ドコモの料金引き下げ方針で「他社も追随せざるを得ず、業績悪化が避けられない」ため、通信株は買えないとの見方だ。市場は日本時間今晩に米供給管理協会(ISM)が発表する10月の製造業景況指数を注視しているとした上で、「通商摩擦の影響などで景気減速が明らかになる数字が出るとみられている」ことから、買いが控えられたと指摘した。製造業景況指数の市場予想は59.0と、前月の59.8から悪化する見込み。

  TOPIX、日経平均とも前日終値付近で始まった後、通信株に押される形で下げ幅を広げた。中国株の上昇で値を戻す場面もあったが、終了にかけて再度下値を模索する展開となった。東証1部情報・通信指数は8.3%下げ、業種別下落率1位。値下げを発表したドコモが15%下げただけでなく、KDDIが16%安、NTTが15%下げてストップ安、ソフトバンクグループが8.2%安など業界全体に業績悪化を懸念する売りが膨らんだ。

通信株下落に関する記事はこちらをご覧下さい

  発表が本格化している決算を手掛かりに個別銘柄が連日大きく動いている。電機セクターではパナソニックや東京エレクトロンが大幅安となった一方で、村田製作所やTDKは10%超上昇する場面があった。野村証券投資情報部の若生寿一エクイティ・マーケット・ストラテジストは「実績はさほど悪くない。ただ、米中通商摩擦の影響が今後どのくらい出てくるか分からない中では、企業経営者は通期計画に強気になれない」とし、株式相場をけん引するには増配など株主還元が鍵になるとの見方を示した。


情報・通信のほか、四半期赤字転落の野村HDなど証券・商品先物取引、金属製品、石油・石炭製品、医薬品が下落率上位
業績予想を上方修正した村田製にけん引されて電機は上昇、保険、不動産、精密機器も高い
東証1部の売買高は概算で17億8249万株、売買代金は3兆2705億円
値上がり銘柄数は937、値下がり銘柄数は1108 


クレディS:7−9月利益、予想に届かず−マーケッツ部門が赤字
Jan-Henrik Förster
2018年11月1日 16:15 JST
純利益は4億2400万スイス・フラン、予想4億7850万フラン
3年間の事業再編プログラムの最終局面、収入も予想下回る
クレディ・スイス・グループの業績立て直しは最終段階に来て勢いを失った。

  1日の発表によると、7−9月(第3四半期)の収入と純利益はアナリスト予想を下回った。ティージャン・ティアム最高経営責任者(CEO)の就任以来の3年間で最大の課題だった市場ビジネスは予想外の赤字となった。

  同CEOは市場ビジネスを手掛けるグローバル・マーケッツ部門を縮小し、利益率を高めることを目指してきた。3年間の事業再編プログラムの完了間近での赤字で、部門の将来についてあらためて疑問が投げ掛けられそうだ。

  決算の主要な内容は以下の通り

純利益は4億2400万スイス・フラン(約480億円)、予想4億7850万フラン
収入は48億9000万フラン、予想50億5000万フラン
グローバル・マーケッツ部門は2200万フランの赤字、予想は3600万フランの黒字
原題:Credit Suisse Turnaround Runs Out of Steam With Loss in Markets(抜粋)

アップルの10−12月業績見通し、最新アイフォーンの需要示唆へ
Jeran Wittenstein、Mark Gurman
2018年11月1日 17:00 JST
1日に四半期決算発表、XSなど上位2機種の発売1週間の実績反映
廉価版XRの価格設定は適切とアナリスト、年末商戦の人気ギフトへ
米アップルが11月1日に発表する7−9月(第4四半期)決算では、「iPhone(アイフォーン)」の最新機種、特に廉価版「XR(テン・アール)」の好調な需要が初めて示される見通しだ。

  決算発表の焦点は、重要なホリデー商戦を含む10−12月(第1四半期)の見通しだ。「XR」は人気のギフトになると予想され、旧機種から乗り換えるユーザーを引き付けるとみられる。

  アップルはここ数年、デジタルサービスを拡充し、新しい機器やアクセサリーを発表しているが、アイフォーンは依然として同社にとって大きな存在で、売上高の6割強を占める。同社製品の中核的な位置付けだ。ウォール街の予想では、アイフォーンの7−9月期販売台数は4840万台、10−12月期は7770万台と見込まれている。

  「XR」は同社にとってハードウエア製品で今年最大の賭けだ。顔認証や縁から縁まで広がったスクリーンなど初代「X」の主要機能を維持し画面サイズを6.1インチに大型化しつつも、価格は749ドル(約8万4200円)からと、アップルのハイエンド機種より250ドル以上安く抑えた。液晶ディスプレーを批判する声も一部あるが、最適な価格設定と見なすアナリストが多い。

  モルガン・スタンレーのアナリスト、ケイティー・ハバティ氏は「XRの需要を初めて知ることができる今回のガイダンスは、投資家心理の重要なけん引役になる」と述べた。TFインターナショナルの郭明錤アナリストは比較的競争力ある価格設定だとして「XR」の販売台数予想を最近引き上げた。

On the Rise
Average iPhone price seen above $700 in fiscal fourth quarter, breaching $800 next year


Source: Company filings, Bloomberg

Note: Q4 2018 and Q1 2019 are estimates.

  アップルの7−9月期決算は、アイフォーンの最新3機種のうち「XS(テンエス)」と「XS Max(テンエス・マックス)」の2モデルの発売後1週間程度の売れ行きも反映される。「XR」の発売は10月だった。

  ブルームバーグが集計したアナリスト予想によると、同社の7−9月期の売上高はハイエンドモデルの「XS」と「XS Max」の需要に支えられ614億ドルに上る見通し。「XR」の需要が反映される10−12月期の売上高は927億ドルと見込まれている。

原題:Apple’s Holiday Forecast to Shed Light on Success of New iPhones(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-31/PHHIPV6JIJUX01


 

 

英中銀:政策金利据え置きを決定、景気予測は想定より速い利上げ示唆
Anurag Kotoky
2018年11月1日 22:42 JST
景気が従来予想よりも早期に過熱し始める可能性指摘−英中銀MPC
21年終盤まで3回程度の利上げを前提、合意なき離脱想定せず
イングランド銀行(英中央銀行)は1日、今後数年にこれまでの想定よりも速いペースの利上げが必要になる可能性を示唆した。欧州連合(EU)離脱を巡る不透明性に主に言及した。

  カーニー総裁率いる金融政策委員会(MPC)は、景気が従来の見通しよりも早期に過熱し始める可能性があるとし、賃金の伸び改善と国内のコスト圧力を指摘した。インフレ率は向こう2年にわたり中銀目標の2%を上回って推移すると予想した。政策金利は据え置いた。

Faster Pace
Market expectations for BOE rate to hit 1 percent


Source: Bank of England Inflation Report

Note: *Conditioning path for rate implied by forward market interest rates

  ただ、8月に比べ若干タカ派的な見方はスムーズなEU離脱が前提で、定まったものではない。中銀はEU離脱合意の内容が依然として、英経済と金融政策を左右する最大の要因だと説明した。

  1日公表した四半期インフレ報告では「いかなる形のEU離脱に対しても金融政策の対応は自動的ではなく、いずれの方向にも動き得る」とした上で、離脱の正確な影響について「あらかじめ判断することはできないが、いかなる状況においてもMPCは見通しの重要な変化に対応する」と表明した。

  EU離脱の影響を織り込み、中銀は企業投資見通しを下方修正して今年の伸びがゼロにとどまると予想。2019年の経済成長率見通しも小幅に引き下げ1.7%とした。インフレ加速を含む中銀の予想は、21年終盤まで3回程度の0.25ポイント利上げを前提とした。ただ、中銀予測は合意なきEU離脱の可能性を全く考慮していないため、全面的な修正が必要になる可能性もある。

  MPCの議事録は限定的かつ漸進的な利上げが向こう数年にわたって恐らく必要になるとの認識を引き続き示した。9人のメンバーから成るMPCは全会一致で0.75%での政策金利据え置きを決定。ブルームバーグがまとめた調査で56人のエコノミスト全員が据え置きを予想していた。

原題:BOE Waits for Brexit Clarity as Forecasts Hint at Faster Hikes(抜粋)
BOE Waits for Brexit Clarity as Forecasts Hint at Faster Hikes

ドイツ銀に厳しい結果か、イタリア焦点−EUストレス審査公表へ
Nicholas Comfort、Steven Arons
2018年11月1日 15:00 JST
更新日時 2018年11月1日 15:56 JST
より厳しい逆境シナリオの適用でドイツの銀行も痛みを感じる可能性
イタリアの銀行は、国債相場の下落が資本水準に悪影響を及ぼしつつある
欧州連合(EU)の銀行監督機関である欧州銀行監督機構(EBA)は、域内の銀行を対象とする2018年のストレステスト(健全性審査)の結果を今週公表する。今年の審査が想定する過去最も厳しい条件を心配しなければならないのはイタリアの銀行だけでなく、ドイツの金融機関も痛みを感じることになりそうだ。

  結果が公表されていないことを理由に関係者2人が匿名を条件に語ったところでは、ドイツの銀行に適用されるより厳しいストレス(逆境)シナリオによって、ドイツ銀行が特に大きな影響受けると見込まれる。関係者の1人によれば、ドイツ銀の財務健全性を測る主要な指標は低下し、テスト対象行の下半分の位置となる見通しだ。ドイツ銀はコメントを控えている。

  一方、イタリアではポピュリスト政権とEUとの予算を巡る対立が国債相場の下落を招き、インテーザ・サンパオロをはじめとする銀行の資本水準に悪影響を及ぼしつつある。昨年策定されたEBAのアセスメントは、イタリアの10年国債利回りが17年末から125ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇するシナリオを想定。ブルームバーグのジェネリック価格が示す今年の利回り上昇幅はそれを既に上回っているが、イタリア経済は審査が描くような景気縮小の状況にはない。

  EBAの銀行ストレステストは域内の48行が対象。「合否」は判定しないが、資本増強が必要かどうか、また増配や行員のボーナス引き上げが可能かどうかの判断で結果は重要な意味を持つ。

Capital Pressure
European banks increased their key capital ratio after previous stress tests


Source: Company filings, Bloomberg Intelligence

Note: Sample includes 32 biggest listed European banks ex. Switzerland

原題:Deutsche Bank and Italy’s Lenders Are in Stress-Test Spotlight(抜粋)

(イタリアの銀行のアセスメント条件などを追加して更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-01/PHILCX6TTDS101 
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/245.html

[経世済民129] ドイツのインフレ率、6年ぶり高水準の2.4%−景気減速とは裏腹に ユーロ圏2.2%コア1.1%に加速 ポンドが上げ拡大
ドイツのインフレ率、6年ぶり高水準の2.4%−景気減速とは裏腹に
Alessandro Speciale
2018年10月30日 23:33 JST
ドイツのインフレ率は2012年2月以来の高水準に達した。7−9月(第3四半期)の成長が失速した公算がある中で、金融緩和縮小を準備する欧州中央銀行(ECB)には強弱入り交じる景気のシグナルが送られた格好。
  ドイツ連邦統計局が30日発表した10月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年同月比で2.4%上昇と、9月の2.2%から加速。ブルームバーグが調査した予想中央値と一致した。

  欧州最大の経済大国であるドイツでインフレ圧力が高まっていることは、12月で債券買い入れを終了するECBの計画を正当化しそうだが、ドイツやユーロ圏全般で経済成長の勢いは鈍っている。この日発表された7−9月のユーロ圏域内総生産(GDP)は前期比わずか0.2%増と、4年ぶりの低成長で、イタリアとフランスの成長率は市場予想を下回った。
  ユーロ圏のインフレ統計は31日に発表される。
原題:German Inflation Hits Six-Year High Even as Economy Falters(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-30/PHEZWS6S972A01?srnd=cojp-v2


 

ユーロ圏:10月インフレ率は前年比2.2%、コア指数は1.1%に加速
Xiaoqing Pi
2018年10月31日 20:30 JST
• ECBが目指す水準を5カ月連続で上回る、主因はエネルギー価格
• ドラギECB総裁は賃金の伸びがインフレ率を上昇させると自信
ユーロ圏のインフレは10月に加速し、基調的インフレ圧力の高まりも示された。一方で域内経済の成長率は2014年以来の低水準となり、金融当局の選択は難しくなっている。
  欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が31日発表した10月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は前年同月比2.2%上昇、食料品やエネルギーなど変動の激しい項目を除いたコアCPIの上昇率は1.1%に高まった。インフレ率は欧州中央銀行(ECB)が目指す2%弱の水準を5カ月連続で上回っているものの、インフレ加速の主な要因はエネルギー価格の上昇だ。

 ドラギECB総裁は、力強い労働市場と賃金の伸びがコアインフレ率も上昇させ金融緩和の漸進的な解除を正当化することに自信を示している。
国別インフレ率 10月 市場予想 9月
ドイツ 2.4% 2.4% 2.2%
フランス 2.5% 2.6% 2.5%
イタリア 1.7% 1.8% 1.5%
スペイン 2.3% 2.3% 2.3%
  統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Euro-Area Inflation Accelerates Even as Economic Growth Cools(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-31/PHGLGN6VDKHV01?srnd=cojp-v2

 


ポンドが上げ拡大、中銀がより速いペースでの利上げ示唆
Stephen Spratt、Charlotte Ryan
2018年11月1日 18:15 JST 更新日時 2018年11月1日 22:16 JST
英銀の市場アクセスを巡る合意についての報道で上げていた
投資家は次回利上げ時期の予想を来年11月に前倒し
1日の外国為替市場でポンドは上げ幅を広げ、9カ月で最大の上昇。イングランド銀行(英中央銀行)がより速いペースでの利上げを示唆した。これに先立ち、欧州連合(EU)離脱を巡る合意への期待も膨らんでいた。

  中銀はEU離脱の影響をまだ判断できないとしながらも、景気が2019年終盤から過熱し始める可能性があるとの見方を示した。離脱後の英銀のEU市場アクセスを巡る合意についてタイムズ紙が報じたことで、ポンドは上昇し、英国とEUの当局者が報道を否定した後も上げを維持していた。中銀のコメントを受けて、投資家は次回利上げ時期の予想を来年11月に前倒しした。

  ロンドン時間午後0時23分現在、ポンドは1.2%高の1.2921ドルと2月以来の大幅高。10年物英国債利回りは3ベーシスポイント(bp)上昇の1.47%。


原題:Sterling Climbs on Report Banks to Get EU Access After Brexit(抜粋)
Pound Extends Rally as BOE Hints at Faster Pace of Rate Hikes


 


英・EU当局者、離脱後の英銀の市場アクセス巡る報道相次ぎ否定
David Tweed
2018年11月1日 11:51 JST 更新日時 2018年11月1日 23:07 JST
「同等性」に基づく市場アクセスの暫定合意をタイムズ紙が報道
報道内容は根拠がないと当局者ら、バルニエ氏も「誤解生む」と苦言
英国が欧州連合(EU)を離脱した後も英銀にEU単一市場へのアクセスを認める内容の合意が成立したとの英紙タイムズの報道を、英国とEUの当局者が1日打ち消した。

  EUのバルニエ首席交渉官は同日のツイートで、EUは英国と「規制について緊密な対話をする用意がある」としながらも、報道に関しては「誤解を生む記事」だと苦言を呈した。

  英当局者3人も同報道について、事実無根だと表現。EU当局者1人は英国を拠点とする銀行にEU市場アクセスを保証する合意は何も成立していないと言明した。

  英政府は電子メールで、「金融サービスについて新たな取り決めに合意する方向で前進しているが、交渉は現在進行中で、全ての点で合意するまでは合意したことにはならない」とコメントした。

  タイムズ紙の報道を受けて英銀株は朝方の取引で上昇。バークレイズは一時3.4%高となっていた。ポンドは上昇率が1%以上に達した。

  10月31日には英国のラーブEU離脱担当相が11月21日までに合意が成立する見通しを示唆し、EU側も楽観的な発言をしていた。  

  ただ、タイムズ紙が報じた合意が実現したとしても、英国を拠点とする銀行にとって欧州市場へのアクセスは離脱前と同じではない。同紙は英銀のEU市場アクセスがいわゆる「同等性評価」に基づくと報じた。これはEUがEU外企業に域内でのサービス販売を認めるための手段で、EUはかねてからこの制度の活用を英国に提案、英国側は不満を示してきた。

原題:U.K. Banks to Get EU Market Access After Brexit, Times Reports(抜粋)
U.K., EU Officials Push Back Against Brexit Bank Deal Report
U.K., EU Officials Push Back Against Brexit Bank Deal Report (1)

(バルニエ氏の発言を追加します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-01/PHHTDW6JTSE901?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/246.html

[経世済民129] 安倍首相の静かな訪中と読書録 中国・追加関税がもたらした輸入大豆の供給不足 対中ODA終了が持つ重要性 

安倍首相の静かな訪中と読書録
小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明
2018年11月2日(金)
小田嶋 隆
https://cdn-business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/110100165/p1.jpg?__scale=w:500,h:281&_sh=0ba0be0f40

 安倍晋三首相が中国を訪問した。
 様々なメディアのそれぞれの立場の書き手やコメンテーターが、何度も繰り返し強調している通り、日本の首相が中国を訪問するのは、実に7年ぶりのことだ。これは、安倍さん自身が、現政権では一度も中国に足を踏み入れていなかったことを意味している。してみると、今回の訪中は、私たちが思っている以上に重大な転機であったのかもしれない。
 産経新聞は、
《安倍晋三首相は平成24年12月の首相再登板以降の約6年間で延べ149カ国・地域を訪れたが、中国に2国間の枠組みで赴くのは今回が初めてだ。−−−略−−−》(こちら)  という書き方で今回の訪中の意義を強調している。

 今回は、中国の話をする。
 というよりも、ありていに言えば、中国についての面白い本を読んだので、その本の感想を書きたいということだ。
 冒頭で安倍訪中の話題を振ったのは、前振りみたいなものだと思ってもらって良い。
 いずれにせよ、今回の訪中に関して多言するつもりはない。
 個人的には、なにはともあれ、先方に足を運んだことだけでも大手柄だったと思っている。というのも、中国に関しては、とにかく、こちらから顔を出すことが何よりも大切だと、前々からそう思っていたからだ。
 彼の地でどんな話をして何を約束するのかといったようなことも、もちろん重要だが、それ以前に、とにかく行って顔つなぎをしてくることに意味がある。まずは、自身の訪中という困難な決断を果たした安倍さんに敬意を表したいと思う。
 ところが、世間の評価は意外なほど冷淡だ。少なくとも私の目にはそう見える。
 ここで言う「冷淡」というのは、「評価が低い」というのとは少し違う。扱いが小さいというのか、思いのほか大きな話題になっていないことを指している。
 実際、ニュース枠のトップ項目の中では、安田純平さんの帰国の話題の方がずっと扱いが大きかった。
 不思議だ。
 どうして安倍訪中は軽視されているのだろうか。
 私自身は、「対中国包囲網」であるとか「地球儀俯瞰外交」みたいな言葉を使って、しきりに中国への警戒心や対抗心を煽ってきたように見える安倍さんが、ここへ来て一転自ら協調路線に踏み出したことには、大きな歴史的転換点としての意味があると思っている。であるからして、今回のニュースについては、さぞや各方面で侃々諤々の議論が展開されるに違いないと考えていた。
 ところ意外や意外、主要メディアの扱いは、いずれもさして大きくない。蜂の巣をつついたような騒ぎになるはずだったネット界隈も静まり返っている。
 なんとも不気味な静けさだ。
 日中関係の専門家や外交に詳しい人たちは、今回の首脳会談の成果を、現時点で軽々に判断してはいけない、というふうに考えているのかもしれない。それはそれで、おおいにありそうなことだ。実際、会ったということ以上の具体的な話は、何もはじまっていないわけだから。
 でも、それにしても、一般の人たちの反応の乏しさは、これはいったいどうしたことなのだろうか。
 以下、私の勝手な推理を書いておく。
 安倍さんの政治姿勢を評価しない一派の多くは、安倍政権のこれまでの対中強硬策に強く反対していた人々でもある。とすれば、彼らはこの度の訪中を評価しても良さそうなものなのだが、そこはそれで、反安倍の人たちは、心情的に安倍さんを素直に褒めることはしたくないのだろう。
 一方、安倍さんのシンパを自認する人たちは、同時に中国との安易な友好路線を拒絶している面々でもある。
 とすれば、今回の安倍さんの訪中は彼らにとって裏切りに近い態度であるはずで、当然、反発せねばならないところなのだが、ここにおいてもやはりそこはそれで、安倍支持者は、たとえ安倍さんが自分たちの意に沿わぬ動き方をしたのであっても、それを即座に指弾するようなリアクションは避けたいのであろう。
 てなわけで、アンチとシンパの双方が微妙に口ごもっている中で、メディアや専門家もとりあえず様子見をしているというのがおそらく現状ではあるわけで、してみると、この訪中の評価は、なお半年ほど先行きを見ないと定まらないのだろう。
 ということで、この件はおしまいにする。
 
 私が読んだ本というのは、『スッキリ中国論 スジの日本、量の中国』(田中信彦著:日経BP社刊)というタイトルの、この10月に出たばかりの書籍だ。「スジの日本、量の中国」というサブタイトルが示唆している通り、ものごとを「スジ」すなわち「理屈」や「筋道」、「原理」「建前」から読み解いて判断しようとする日本人と、「量」すなわち「効果」「現実的影響力」「実効性」を重視する中国人との間に起こる行き違いやトラブルを、豊富なエピソードを通じて考証した好著だ。
 これまで、中国の歴史や文化、ないしは政治的・経済的な交渉相手としての重要さについて書かれた書物はたくさんあったし、その中には必読の名著も数多い。ただ、「中国人」という生身の人間を題材にした書物で、これほど画期的な本はなかなか見つからないと思う。
 善悪や好き嫌いの基準は別にして、市井の一人ひとりの中国人の内心を誰はばかることなく明らかにした本書は、この先、日中両国がのっぴきならない隣国として交流するにあたって、必ず座右に置くべき書籍となるはずだと確信する。
 ……とはいえ、私は、本書を手に入れてしばらくの間、贈呈本や郵便物を積んでおくスペースに放置していた。いつものことだ。どういうものなのか、本は、読まれるべき時期まで熟成させておかないと、うまく読み進めることができない。中には熟成途中で腐ってしまう本もある。悲しいことだが。
 話を戻す。
 『スッキリ中国論』は、冒頭で触れた安倍さんの訪中を機会に、なにかの参考になればと思ってパラパラとめくってみた本のうちの一冊だった。で、これが、実に目からウロコの書籍だった。それでこの原稿を書いている。
 もっとも、本文中の記事のうちのいくつかは、ウェブ上に記事としてアップされた時点ですでに読んでいるものだった。
 書いてある内容についても、すべてがこちらの予断に無い新鮮な知見だったわけではない。前々からなんとなくそう思っていたことが言語化されていたという感じの記述もあれば、ほかの誰かから聞いていたのと似たエピソードもある。
 ただ、こうして一冊の書籍という形でひとまとめに読了してみると、個々のエピソードを知ったときとは、まったく別の印象が立ち上がってくる。
 なんというのか、バラバラに見えていた挿話がひとつにつながって、巨大な物語が動き出す驚きを味わうことができる。自分の中で、長い間打ち捨てられていたいくつかの小さな疑問が、「そういうことか」と、いきなり生命を得て動き出した感じと言えば良いのか、とにかく、上質のミステリーの謎解き部分を読んだ時の爽快感を久しぶりに思い出した。
 私の世代の者は、もともと中国と縁が深い。
 というのも少年期から青年期がそのまま行動成長期で、さらにバブル期が働き盛りとぴったりカブっていた世代であるわたくしども1950〜60年代生まれの人間は、中国出張を命じられることの多いビジネスマンでもあれば、取引の相手として中国人とやりとりせねばならない個人事業主でもあったからだ。
 じっさい、自分の同世代には、「中国通」が少なくない。
 直接の知り合いの中にも、中国人と結婚することになったケースを含めて、中国に5年駐在した記者や、中国各地を訪問して工場の移転候補地を探して歩いた経歴を持つ男や、一年のうちの2カ月ほどを中国各地で過ごす生活をこの10年ほど繰り返している嘱託社員などなど、中国と深いつながりを持っている人々がいる。
 それらの「中国通」たる彼らから、これまで、幾度となく聞かされてきた不可思議なエピソードや謎の体験談に、このたび、はじめて納得のいく解答をもたらしてくれたのが、本書ということになる。
 何年か前に、あるメディアが用意してくれた枠組みで中国から来て30年になるという大学教授の女性に話をうかがう機会があった。
 その時に彼女が言っていた話で印象的だったのは、
 「日本人の中国観は良い意味でも悪い意味でも誇張されている」
 「しかも、その中国観は驚くほど一貫していない」
 「理由は、日本人の中国観が、多くの場合、その日本人が交流している特定の中国人に影響されているからで、しかも、その当の中国人は、立場の上下や貧富の別によってまるで別の人格になり得る人々だからだ」
 ということだった。
 つまり、どういうカウンターパートと付き合っているのかによって、日本人の中国人観はまったく違うものになるということらしい。
 上司が中国人である場合と部下が中国人である場合は話が逆になるし、貧しい中国人と付き合うことと富裕層の中国人との交流も別世界の経験になる。
 であるから、ボスとしてふるまう時の中国人と部下として仕える中国人を同じ基準で考えるのは間違いだということでもあれば、中国人の金銭感覚は、貧乏な中国人と金持ちの中国人の両方を知ったうえでないと把握できないということにもなる。
 この話を聞いたときに、少しだけ謎が解けた気がした。
 というのも、それまで、私が中国人について聞かされる話は、どれもこれも白髪三千丈のバカ話にしか聞こえなかったからだ。
 「要するに彼らは◯◯だからね」
 という断言の、◯◯の部分には、様々な言葉が代入される。
 「ケチ」「いいかげん」「自分本位」「忘れっぽい」「やくざ」などなどだ。
 かといって、その種の断言を振り回している人間が、必ずしも中国人を憎んでいるわけでもないところがまた面白いところで、中国通の人々は、中国人を散々にケナし倒しながら、それでいて彼らに深い愛情を抱いていたりする。そこのところが、私にはいまひとつよくわからなかったわけなのだが、とにかく、大学教授氏の話をうかがって、われわれが聞かされる「中国人話」の素っ頓狂さの理由の一部が理解できたということだ。
 つまり、
 「中国人は、われわれの想像を超えて振れ幅の大きい人たちで、しかもその振れ幅は、個々人の持ち前の人格そのものよりは、相互の立ち位置や関係性を反映している」
 ということだ。
 とはいえ、そう説明されてもわからない部分はわからない。
 「まあ、実際に中国で3年暮らさないとわからないんじゃないかな」
 と、中国通は、そういうことを言う。
 私にはそういう時間はない。
 ということは、オレには、あの国の人たちのアタマの中身は一生涯理解できないのだろうか、と思っていた矢先に読んだのが、『スッキリ中国論』だ。
 この本を読んで、そのあたりのモヤモヤのかなり大きな部分がスッキリと晴れ渡る感覚を抱いた。
 たとえば本書で紹介されているエピソードにこんな話がある。
《2018年1月、成田空港で日本のLCC(ローコスト航空会社)の上海行きの便が到着地の悪天候で出発できず、乗客が成田空港で夜通し足止めされるという事態が発生した。航空会社の対応に一部の乗客が反発、係員と小競り合いになり、1人が警察に逮捕された。そこで乗客たちは集団で中国国歌「義勇軍行進曲」を歌って抗議した。》
(スッキリ中国論 P098より)
 この奇妙な事件の小さな記事は、私も当時何かで見かけて不可解に思ったことを覚えている。
 「どうしてここで義勇軍行進曲が出てくるんだ?」
 と思ったからだ。私の抱いていた印象では、中国人は、海外で国歌を歌う人々ではなかった。であるから、成田での彼らの国歌斉唱は、どうにも場違いでもあれば筋違いにも思えて、つまるところ薄気味が悪かった。
 で、この小さな事件は、私の中では不気味な謎のまま忘れられようとしていたのだが、本書での説明を得てはじめて得心した。
 本文にはこうある。
《空港で国歌を歌った中国の人々が言いたかったのは、「われわれ中国国民の安全で快適な旅行を保証するのは中国の統治者の責任である。その中には航空会社や外国の政府に圧力をかけて必要な措置を提供させることも含む。それをただちに実行せよ」ということである。クレームの相手は中国政府なのだ。》
 なんとも、日本で暮らしている当たり前の日本人であるわれわれには到底了解不能な思考回路ではないか。
 こういうことは、実際に中国人と日常的にやりとりしている人間でなければわからない。
 この国歌のエピソードだけではない、本書では、中国の人々の自我のあり方や、社会と個人の関係についての考え方、あるいは、為政者への期待や秩序感覚といった、ひとつひとつ順序立てて説明されなければ到底理解のおよばない話が、実例つきで紹介されている。
 さまざまな意味で、勉強になる本だと思う。
 安倍さんにもぜひ読んでほしい。
 あるいは、今回の訪中で伝えられている言動を見るに、すでに読んでおられるのかもしれない。
 いずれにせよ、今回、安倍さんがとりあえず習近平氏の面子を立てておく選択肢を選んだことは事実で、してみると、首相の周辺には、優秀なアドバイザーがいるのだろう。
 不愉快な助言をもたらすアドバイザーを大切にしてほしい。
 これは私からの助言だ。
(文・イラスト/小田嶋 隆)
『スッキリ中国論』の「スジ」と「量」については
こちらでくわしく触れられています。

 なぜ、オレだけが抜け出せたのか?
 30 代でアル中となり、医者に「50で人格崩壊、60で死にますよ」
 と宣告された著者が、酒をやめて20年以上が経った今、語る真実。
 なぜ人は、何かに依存するのか? 
『上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白』
<< 目次>>
告白
一日目 アル中に理由なし
二日目 オレはアル中じゃない
三日目 そして金と人が去った
四日目 酒と創作
五日目 「五〇で人格崩壊、六〇で死ぬ」
六日目 飲まない生活
七日目 アル中予備軍たちへ
八日目 アルコール依存症に代わる新たな脅威
告白を終えて
 日本随一のコラムニストが自らの体験を初告白し、
 現代の新たな依存「コミュニケーション依存症」に警鐘を鳴らす!
(本の紹介はこちらから)

このコラムについて
小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明
「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たやすいこと」「取るに足らない出来事」「チョロい仕事」ぐらいを意味している(らしい)。当欄は、世間に転がっている言葉を拾い上げて、かぶりつく試みだ。ケーキを食べるみたいに無思慮に、だ。で、咀嚼嚥下消化排泄のうえ栄養になれば上出来、食中毒で倒れるのも、まあ人生の勉強、と、基本的には前のめりの姿勢で臨む所存です。よろしくお願いします。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/110100165/


 

中国・追加関税がもたらした輸入大豆の供給不足


世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」
11月以降の不足予想は1500万トン
2018年11月2日(金)
北村 豊

米中貿易戦争は米国の穀物業界にも不安をもたらしている。2018年4月5日撮影(写真:AP/アフロ)
 中国政府の“国家糧油信息中心(国家穀物・⾷⽤油情報センター)”は、“国務院”の管理下にある“国家糧食和物資儲備局(国家食糧・物資備蓄局)”に所属する機関で、国内外の“糧油(穀物・食用油)”市場の動向を観測し、“糧油”の需要と供給の関係を分析し、市場の未来展望を予測し、政策的な意見を提出し、国家の“糧油”マクロ管理に情報を提供している。
 
 9月11日から12日まで北京市で開催された「一帯一路世界農産品トップフォーラム」および「第14回“糧油”・飼料大会」で講演した“国家糧油信息中心”部長の“張立偉”は、中国の大豆輸入に関して次のように述べた。
【1】2017年10月から今年7月までの我が国の累計大豆輸入量は7695万トンで、前年度同期の7694万トンと同一水準であった。今年8〜9月における我が国の大豆輸入量は1600〜1700万トンで、昨年同期の1656万トンとほぼ同一であった。これに基づいて推計すると、2017/2018年度の我が国の大豆輸入量は9300〜9400万トンで、前年度輸入量9350万トンと同水準になる。
【2】中国と⽶国の貿易衝突が我が国の第4四半期と来年度における⼤⾖輸⼊に与える影響は大きい。2017年に我が国が輸入した米国大豆は3285万トンであったが、中国・米国の貿易戦争は米国大豆の輸入コストを他の国よりも大幅に引き上げ、米国大豆の輸入量を大幅に減少させ、今年の第4四半期と2018/2019年度の我が国の大豆輸入量に影響を与えることになろう。
【3】世界の大豆貿易の構成から見て、別の国で1000〜1500万トンの米国大豆を代替することは可能だが、もしも我が国の大豆輸入量が大幅に減少しないならば、依然として1500万トン前後の米国大豆を輸入する必要がある。このため、大豆の消費需要を引き下げることを通じて大豆輸入量を減少させ、米国大豆を輸入しない、あるいは輸入削減による中国国内の影響を軽減させることが必要になる。
【4】毎年10月から翌年の3月まで、中国の輸入大豆は主として米国産であり、同一期間中に米国産大豆が占める割合は一貫して50%以上である。もし中国・米国間の貿易戦争が解決出来ぬまま推移すれば、米国大豆の輸入量は大幅に減少することになるだろう。我々は国内の“油籽(油用種子)”と“油料(搾油用植物)”の生産を奨励、支援し、国産の“蛋白粕(植物油の搾り粕)”の供給量を増加させ、ムラサキウマゴヤシ(別名;アルファルファ)などの高蛋白飼料作物の作付面積を増加させる。飼料や養殖企業に低蛋⽩配合を促進させ、合成アミノ酸の用量を増加させる。それによって飼料中の豆粕を代替する、あるいは豆粕の使用量を減少させる。
【5】事実上、8月26日までに米国大豆の優良生育率は65%で、昨年同期の60%よりも高く、今年の米国大豆が豊作になることはすでに確定的である。USDA(米国農務省)の8月予測では、大豆の単位収穫量は51.6ブッシェル/エーカーで、昨年の49.5ブッシェル/エーカーよりも高かったので、今年の米国大豆の収穫量は1億2480万トンで昨年の1億1950万トンよりも530万トン増大するものと予測される。
米国だけが大豆1500万トンを輸出できる
 中国・米国間の貿易戦争は、6月15日に米国政府が中国による知的財産権侵害に対する制裁措置として、米国が中国から輸入している中国製品500億ドル分に対して25%の追加関税を課すと発表し、その第1弾として7月6日に340億ドル分の中国製品に制裁関税の適用を開始するとしたことにより勃発した。これに対し、中国政府は同じく6月15日に米国と同規模・同等の追加関税措置を取るとの声明を発表し、米国が7月6日に制裁関税を発動すれば、同時に340億ドル分の米国製品に追加関税を課すとして応戦する意思を表明した。
 中国政府が米国政府に対する報復として7月6日に追加関税25%を適用したのは545品目の米国製品であったが、その中には主要な輸入品目である大豆が含まれていた。中国税関総署の統計によれば、2017年における米国からの“糧油”類の輸入総量は3550万トンであり、このうち大豆は3285万トンで全体の92%を占めていた。中国では大豆に対する輸入関税は従来3%であったから、25%の追加関税が適用された後の輸入関税は28%に増大した。
 
 上記の張立偉部長の話にあったように、米国大豆は25%の関税が追加されたことで他国産大豆に比べて価格競争力を失った。しかし、今年、全世界の大豆生産量は4.85億トンであるのに対して、全世界の大豆貿易量は2.1億トンに過ぎず、そのうちに占める中国の大豆輸入量が9300〜9400万トンとすれば、約45%が中国によって占められることになる。一方、上述したように2017年における中国の大豆輸入量は9350万トンであったが、その国別輸入量は【表1】の通り。
【表1】2017年中国の国別大豆輸入量

(出所)中国税関統計
 2017年の米国からの大豆輸入量は3285万トンであったが、張立偉も述べているように、1000〜1500万トンを別の国から輸入することで代替することは可能かもしれないが、たとえそれができたとしても、依然として1500万トンの大豆を輸入する必要がある。但し、1500万トンもの大豆を輸出できるのは米国だけで、その他の国にはそれだけの余力がない。
 ましてや、張立偉が述べているように、今年の米国は大豆が豊作で収穫量は昨年よりも530万トンも増大すると見込まれているのである。
 なお、中国税関総署の統計によれば、2018年1月から9月までの大豆輸入量は7001万トンで、その月別輸入量は【表2】の通り。
【表2】2018年中国の月別大豆輸入量
<万トン>

(出所)中国税関総署・月別統計
 大豆に対する25%の追加関税が実施されたのは7月6日からなので、7月以降は大豆輸入量が減少してしかるべきだと思われるが、輸⼊量が減少した形跡はない。張立偉が述べているように「2017年10月から今年7月まで累計大豆輸入量7695万トンは、前年度同期の7694万トンと同一水準」であるということだから、影響は何もでていない。しかし、業界筋によれば、11月以降は南半球にあるブラジルやアルゼンチンでは大豆の供給が端境期に入り、本来これに代わって大豆を中国へ供給するのが米国であったという。その米国大豆が高関税のために中国へ輸入されないとなると、中国は1000万トン以上の大幅な大豆不足に陥り、中国企業は高関税に目をつぶってまでも米国大豆の輸入に踏み切る可能性が強いと海外メディアの多くが予想している。
 中国の大豆自給率は20%程度と言われているが、中国国産大豆は輸入大豆に比べて価格が高く、遺伝子組み換えが行われていないことから、主として食用に使われている。これに対して輸入大豆は価格が安く、油分が多いことから、ほぼ100%が大豆油の抽出に使われる。大豆から油分を抽出した後に残る“豆粕(脱脂大豆)”は、豚、牛、羊、鶏などの家畜に良質な植物性蛋白質を供給する重要な栄養素であり、“豆粕”を混ぜた飼料で育てられた家畜は食肉に加工されて国民の食卓に供される。
 中国の2017年における飼料用脱脂大豆の需要は6700万トンで、脱脂大豆総需要の98%を占め、そのうち養豚飼料に用いられる脱脂大豆は49%を占めている。中国には大豆供給不足による脱脂大豆の不足に対処するため、国産の油用種子や搾油用植物の生産を奨励し、国産の植物油搾り粕や高蛋白飼料作物の増産をはかり、飼料に含める脱脂大豆の量を削減すると、張立偉は上記の通り述べている。
ASF感染拡大に懸念の声
 ところで、中国では8月3日に遼寧省“瀋陽市”で“非洲豬瘟疫(アフリカ豚コレラ)”(略称:ASF)に感染した“猪(豚)”が発見されたのを皮切りに、10月23日までの時点で黒龍江省、吉林省、内モンゴル自治区、河南省、江蘇省、安徽省、浙江省、天津市、山西省、湖南省、雲南省の計12の一級行政区(省・自治区・直轄市)の54カ所でASFに感染した豚が確認され、感染のさらなる拡大が懸念されている。
 日本でも9月9日に岐阜県の養豚農場で「豚コレラ」(略称:CSF)の発生が確認されたが、これは日本で1992年以来26年振りであった。農林水産省消費・安全局動物衛生課が10月29日付で発表した内容によれば、「CSFは、豚やイノシシが感染する病気であり、強い伝染力と高い致死率が特徴で、日本では家畜伝染病予防法で家畜伝染病に指定されている」とあった。日本でCSFの発生が確認されたのを受け、中国政府は9月末に日本からの豚・イノシシの輸入を直接・間接を問わず禁止する旨の公告を出して即日実施した。
 一方、中国で感染の拡大が懸念されているASFはCSFとは異なるウイルスに起因するもので、CSFと同様に豚やイノシシが感染する病気だが、専門家によれば、「感染すると出血熱を発して暴れるようになり、最終的には死に至る。人には感染しないが、有効な治療法やワクチンはいまだに開発されておらず、殺処分するしか解決方法はない」という厄介な代物である。
 中国ではASFに感染して死んだ豚の肉を食肉市場へ供給する不届き者が横行しており、中国国内で大きな問題となると同時に、ASFが沈静化するまで豚肉を食べないとする人々が急増している。10月22日には中国・北京市から北海道の新千歳空港に到着した中国人観光客が、携帯品として持ち込んだ豚肉ソーセージからASFウイルスの陽性反応が出たという。当該ソーセージにはラベル表示がなく、原産地は不明だと言うが、中国製であることは間違いないだろうし、ソーセージのような肉加工品に化けると発見が難しい。日本政府はASFウイルスの侵入を恐れて検疫を強化しているが、人間がASFに感染した豚肉や加工品を食べても問題ないとはいえ、ASFウイルスは糞便に混じって排出され、そこから豚やイノシシが感染することが予想できるので防疫は重要である。
避けられない豚肉の値上がり
 中国国内でASFが沈静化するまで豚肉を食べないという人々が増大し、養豚業者は苦境に陥っている。そこに大豆の供給不足による脱脂大豆の値上がりが追い打ちをかけ、養豚業者は正に泣き面に蜂という状況にある。このまま行けば、養豚業者は豚の飼育数を削減する、あるいは廃業するといった形で対応するはずで、将来的には豚の飼育数が回復するまでは豚肉の値上がりは避けられず、豚肉を好む庶民の反発は大きなものとなるだろう。
 折悪しくASFの蔓延と時を同じくして大豆の供給不足問題が中国世論を賑わせているが、中国政府は米国政府に対する報復関税の対象品目に大豆を含めたために、“搬起石頭砸自己的脚(石を持ち上げて自分の脚に落とす=自業自得)”の結果になったと、中国の批評家は述べている。
 10月11日、中国政府“農業部”は毎月定例で発表する『中国農産品需給形勢分析報告』10月分の発表を技術問題を理由に中止した。当該報告は主要な農作物の生産量、輸入量、消費量の月別予測を行うもので、主たる対象には大豆、トウモロコシ、綿花、食用植物油などが含まれている。海外メディアは、この発表中止は米国に代わる大豆の供給国が見つからないことに起因しており、11月以降に中国は米国大豆を輸入せざるを得ないのではないかと分析している。果たして、この結末はどうなるのか。ASFの感染がこれ以上拡大しないことを祈りつつ見守ることにしたい。
新刊:図解でわかる 14歳から知っておきたい中国(監修:北村 豊)

 中国は世界の多元化時代の壮大な実験国家なのか!? 中国脅威論や崩壊論という視点を離れ、中国に住む人のいまと、そこに至る歴史をわかりやすく図解! 本書はドローンのような視点をもって、巨大国家「中国」を俯瞰し、その実像を解き明かしています。中国の全体像を知りたい読者必読の一冊です。
太田出版 2018年7月10日刊
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/101059/103100181

[1]〜大前研一ニュースの視点〜
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

日中関係/対中ODA〜新たな時代の3原則よりも、対中ODA終了が持つ重要性

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

日中関係 7年ぶりに中国を公式訪問
対中ODA 日本のODA積極報道を指導

─────────────────────────
▼新たな時代の3原則よりも、対中ODA終了が持つ重要性
─────────────────────────
安倍首相は先月25日、日本の総理大臣として
7年ぶりに中国を公式訪問しました。
総理はまず李克強首相と対談し、東南アジアなど
第三国でのインフラ整備を通じた日中協力を強化し、
関係の改善を進める考えで一致。
また習近平国家主席とは約1時間20分会談し、
新たな時代の日中関係について
「競争から協調へ」などの3原則を確認しました。

最近中国における日本企業の活動も
円滑になってきたとも聞きます。
合わせて今回の安倍首相への「歓待」を見ると、
中国の日本に対する態度が全体的に軟化しているのでは?
と感じる人も多いでしょうが、
これが今後も続くのかどうかはわかりません。

中国はその時々・状況に応じて、政府がどのような態度で
受け入れるかという方針を決めて、
全員が忖度するという形を取ります。
もしかすると、何かまた日中間で問題が起これば
中国企業の態度も一変し、中国国民が日本企業に
投石するようなこともあり得ると私は思います。
とは言え、現時点で言えば
今回の安倍首相の訪中には意味がありました。

第三国でのインフラ開発協力に対する認識においては、
中国側の「日本が一帯一路構想に協力してくれる」
というものに対して、日本はそれだけは同意できない
と考えています。中国との間ですから、
こうした多少のズレは出てきますが、
それでも今回様々な取り決めができたことは評価して良いでしょう。

その中で安倍首相は新たな時代の3原則
(「競争から協調へ」
「お互いパートナーとして脅威にならない」
「自由で公正な貿易体制の発展」)を強調していましたが、
私がさらに重要だと感じたのは
「対中ODAの終了」というテーマです。

今回の首脳会談において、中国に対する
政府開発援助(ODA)を日中両政府は
2018年度の新規案件を最後に終了することになりました。
円借款供与額が上位の国を見ると、
トップにはインド、2位にインドネシア。
かつてトップだった中国は現在3位になっています。
さすがにこれだけ経済発展を遂げた中国に、
これ以上ODAを継続するのはおかしい
ということで「終了」することが決定しました。

─────────────────────────
▼中国ODAの裏にあった歴史的な因縁と自民党内の利権問題
─────────────────────────
日本によるODAの終了を受けて、
中国政府は共産党・政府系メディアに対し、
中国の経済発展に対する日本の政府開発援助(ODA)の貢献を
積極的に報じるよう指導したことがわかりました。

これは歴史的なことで、これまで中国は日本のODAに対して
感謝を示したことは一度もありません。
例えば、ベトナムであればODAで橋が完成すれば、
必ず「日本のODAで作られた橋」だと報道し、
日本からも誰かお祝いに駆けつけます。
しかし中国の場合には、「日本のODA」という発表はなく、
まるで中国共産党が作ったもののように報道してきました。

このような中国側の態度には理由があります。
中国は日本のODAを戦争に対する
「償い」として受け止めてきたため、
「当然」の権利だと認識してきたから、
日本に対する感謝を示そうとはしなかったのです。

田中角栄氏が日中関係を正常化する交渉を進める中で、
中国側から戦争に対する償いを求められました。
本来この要望そのものがおかしいものです。
というのは、中国共産党は戦争時の当事者ではなく、
当事者であった蒋介石は日本の償いは
不要という意見だったからです。

それを承知の上で、当時の田中角栄氏と周恩来氏などが
一計を案じて、ODAという形で中国を支援することで、
中国側の要望に対応することにしました。
中国からすれば、償いのために資金援助をするのは
当然だと思っていますから感謝するわけがありません。
また、このODAは自民党・田中派の利権としても活用され、
ODAが行われると、自民党・田中派に資金が流れるような
仕掛けがあったとも言われています。
このような事実を多くの日本人は知らないと思います。

こうした歴史的な因縁や自民党内の
利権に絡むドロドロしたものなど、
国民には表立って知らされない事実があり、
それがずっと継続されてきていました。
今回のODA終了によって、このようなものに
終止符が打たれるのは非常に良いことですし、
非常に意味があることだと私は感じています。

---
※この記事は10月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています

─────────────────────────
▼ 今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
─────────────────────────

今週は、対中関係の話題を中心にお届けいたしました。

日本の総理大臣として7年ぶりに
中国を公式訪問した安倍首相。

安倍首相は新たな時代の日中関係について
「競争から協調へ」などの3原則を強調していましたが、
それ以上に「対中ODAの終了」というテーマの重要性に
ついて大前は記事中で言及しています。

交渉はビジネスを行う上で、
避けては通れない永遠のテーマであり、
交渉は双方の問題解決を目指した対話です。

「勝ち負け」として捉えられがちな交渉ですが、
駆け引きによって勝ち負けを決定するコンテストではなく、
当事者双方が意思決定者になり、
双方に納得感のある交渉こそがよい交渉です。

また、論理的な思考と明瞭な表現を行い、
相手の主張や考え方を知るための積極的な傾聴や
歴史的知識を知るなど事前準備を十分に行うことによって、
交渉力を高めることができます。
http://www.lt-empower.com/ohmae_blog/


http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/262.html

[経世済民129] 日本企業が中国の「大きな傘の下」で商売をする時代に漂う不安 トランプ氏、対中貿易合意草案の作成指示 1本の電話で株価急騰
2018年11月2日 姫田小夏 :ジャーナリスト

日本企業が中国の「大きな傘の下」で商売をする時代に漂う不安

日中急接近、日本の経済界の事情

日本と中国が冷却期間を経て急接近していますが、立ち位置はかつてとは逆転しています。

 10月26日、安倍首相の北京訪問により7年ぶりとなる日中首脳会談が実現し、日中関係は「競争から協調」へと流れが変わった。2012年の尖閣諸島国有化をきっかけに悪化した日中関係だったが、ここで日中は互いに急接近するという大きな転換点を迎えた。

 その理由は、中国が対米貿易戦争で窮地に陥っているからだといわれているが、「日中関係の改善に向け、日本の経団連が積極的に動いていた」(日中関係に詳しい某私立大学教授)とのコメントのように、中国に商機を見出す日本の経済界が先を急いでいたことは確かだ。

 中国では電気自動車(EV)市場が広がるが、日本の関連業界はこれに傾斜を深めている。日本の自動車産業が「世界標準」に食い込むには、中国との共同開発は避けて通れない。次世代EVの急速充電器プラグの規格統一をめぐっては「技術では先行していた日本が中国スタンダードを選んだ」(某私大名誉教授)ことは大きな象徴となった。

 同教授は「問題は“技術”でなく“多数決”。今後はすべてにおいて『14億人対1億人』の原理で動くことになる」と言う。

 日本の大手自動車メーカーが中国重視の姿勢を打ち出す中、中小企業も影響を受ける。自動車部品の金型加工を手掛ける工場経営者は、「国内では自動車メーカーが(ガソリン車の)車種を減らしたため、仕事が半分になった」と明かす。「売れるところでものをつくる」という原理原則に照らせば、「EVの主戦場である中国から仕事を取ってくる時代になるだろう」(同)。

 中国では「一帯一路」構想も進む。「日本は『一帯一路』構想に乗り遅れまいと、プロジェクトベースでの協力をやりたがっている」(メガバンクOB)と語るように、第三国でのインフラ建設の受注でコスト競争力が出せない日本は、“中国との連携”に大きく舵を切った。

日中の立ち位置はすでに逆転
 この40年の節目で取り戻した「友好ムード」に、安倍首相は「日中関係は新たなステージに入った」と前向きだが、従来と根本的に異なるのは、日中の立ち位置はすでに逆転しているという点だ。

 2017年時点で、中国の名目GDPは約12.0兆米ドル。アメリカの約19.5兆米ドルに次ぐ第2位の経済大国だ。第3位の日本は約4.8兆米ドルであり、2010年に中国に第2位の座を奪われて以来わずか7年で約2.5倍もの差をつけられた。

 その中国は数々のイノベーションを生み出し、2025年には世界の製造強国となり、半導体や航空機のみならず、ロボットやEVなどの新興産業で「中国が主導権を握る」という方向性を明確に打ち出している。

 2017年11月、中国・北京で開催された日中の経済協力をめぐる会合も、そんな空気に包まれた。「中国側の発言には、(進んでいる)中国が(遅れている)日本にノウハウを教えてあげましょう、というニュアンスさえありました」と、参加者のひとりは日中の立場の変化を振り返る。

 日中の激動の時代をくぐり抜けてきた商社OBは「日本は中国の大きな傘の下で商売をする時代になった」と語る。「日中の新たなステージ」は、こうした転換点をも迎えたことを意味している。

アメリカは中国に屈しない
 他方、アメリカは中国が描くロードマップ「中国製造2025」に対し、相当な危機感を持っている。中国がコア技術を握れば、アメリカ企業の存在価値は薄れ、世界市場で競争力が保てなくなるからだ。

 それを象徴するのが、深センの通信機器メーカー・中興通訊(ZTE)への措置である。米商務部は、米国企業がZTEに最先端の米国産部品を供給することを禁止した。外国企業による買収を国家安全保障の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)もまた、今年4月にさらにその権限を強化した。

「アメリカは『中国製造2025』と『一帯一路』構想によって、世界の産業が中国企業に独占されることを憂慮している」(中国の研究者による論文)ことは疑う余地もない。

 他方中国も、アメリカを中心とした「西側の市場経済システム」に組み込まれることにあらがう。「中国製造2025」の先にあるのは、習近平の政治理念である「中国の夢」だ。

 中華民族復興という野望が実現するとき、西側の普遍的原理である経済的自由主義は危機にひんし、“高品質で安価な中国製”の氾濫で地元経済は破綻に追い込まれ、国民は路頭に迷う。それをよしとしない経済大国1位のアメリカは、2位の中国をこの貿易戦争で徹底的に抑え込む構えだ。

収益が上がればそれでいいじゃないか
「“中国の大きな傘”に入ろうと入るまいと、日本企業の収益が上がるならいいじゃないか」――ある経済団体の幹部からはこんなコメントが漏れた。おそらくこれが今の日本の経済界に共通する考えだろう。GDP世界3位の日本の悲しき選択である。

 安倍首相の北京訪問に見る日中首脳会談は、「山あれば谷あり」を繰り返してきた日中のビジネス環境で、ようやくたどりついた転換点だ。冷却期間の真っただ中で、中国企業訪問の“アポ入れ”すら困難だった状況を思えば、関係改善は確かに日中のビジネスに弾みをもたらすに違いない。

 しかし一方で、「今回の首脳会談は外交的敗北だ」とする声もある。上海の現地法人で10年にわたり総経理を務める日本人はこうコメントする。

「安倍首相は、最後の最後まで取っておくべきだった『円の国際的信用力(今回合意した通貨スワップ協定)』と『日本の国際的信用力(一帯一路への協力)』の2枚のカードをあっさりと切ってしまった。これで『一帯一路』構想に“お墨付き”を与えることになったが、果たしてそれでよかったのだろうか」

 新たなステージでの日中の関係は従来とは異なる。それは、私たちに、日本は“中国の大きな傘の下”で商売をさせてもらうという「時代の変化」をも突き付けるものだ。その“傘の下”に入る覚悟をしさえすれば、確かに日本企業の商機は広がるだろう。だがしかし、それが「真の意味で国民の利益にかなうのか」はまた別問題だということを、私たちは知る必要があるのではないだろうか。

(ジャーナリスト 姫田小夏)
https://diamond.jp/articles/-/183631


 

米中首脳の1本の電話で強気派戻る、アジア株軒並み急伸
Moxy Ying
2018年11月2日 15:21 JST
4営業日の上昇率は2年余りで最大、今週の上昇は2月以来最大
アップル決算低調でも市場のムード冷えず、IT株の上昇目立つ

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iE8QOQPjoVcw/v2/-1x-1.png

Photographer: Qilai Shen/Bloomberg
2日のアジア株急伸は、それを説明する最上級の形容詞に事欠かない。4営業日の上昇率は2年余りで最大となり、今週の上昇は2月以来最大となったほか、市場全般に出来高が増加している。その引き金は米中首脳の1本の電話会談だった。

  約半年ぶりに公表された米中首脳の電話会議について、トランプ米大統領は中国の習近平国家主席が激化する貿易戦争に終止符を打つ合意を望んでいると述べた。これをきっかけに上海総合指数は2%超の上昇。ハンセン指数も一段高となり、一時4%上昇した。

  米アップルのさえない決算発表でも市場のムードは冷え込まなかった。アップルのサプライヤーは取引開始直後こそ下落したが、MSCIアジア太平洋指数を構成するテクノロジー株は業種別で最高の上昇率となっている。


原題:Bulls Are Back as Asia Stocks Surge, Thanks to One Phone Call(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-02/PHJWK26TTDS001

 


ワールド2018年11月2日 / 15:03 / 3時間前更新
トランプ氏、対中貿易合意草案の作成指示と報道 株価が急騰
1 分で読む

[2日 ロイター] - トランプ米大統領が中国との貿易合意の草案作成を内閣に指示したとブルームバーグが2日報じたことを受け、日経平均が後場の終盤に一段高。上げ幅は一時600円を超え、2万2300円付近まで上昇した。

米中貿易摩擦の緩和に対する期待から、ドル円も一時113円台に乗せた。

ブルームバーグは2日、トランプ大統領が今月末に予定されている米中首脳会談で、貿易に関する合意をまとめることを目指しており、合意条件について草案を作成するよう米当局者らに指示したと報じた。

トランプ大統領は1日に中国の習近平国家主席と電話会談しており、ブルームバーグが事情に詳しい4人の関係者の話として報じたところによると、この電話会談がトランプ氏が合意を目指すきっかけになったという。

株式市場では「どこまで信じていいのか分からないが、売り方は買い戻さざるを得ない。トランプ米大統領の中間選挙対策という気もする」(国内証券)との声が出ていた。  

香港株式市場のハンセン指数や中国株式市場のCSI300指数、ソウル株式市場の総合株価指数も上昇している。

中国の海通証券のアナリストは、貿易摩擦の緩和期待が中華圏の株価を後押ししているとした上で、中国本土市場では習近平国家主席が国内民間企業の支援方針を表明したことを好感した動きが大勢を占めていると指摘した。

トランプ氏は、習主席と貿易や北朝鮮問題を巡り「非常に良好な」対話を持ったと表明しており、習氏もまた、貿易摩擦の解消に向けて楽観的見方を示している。
https://jp.reuters.com/article/trump-china-report-idJPKCN1N70F2

 


 
トランプ大統領が中国との貿易合意の草案作成を要請
Jenny Leonard、Saleha Mohsin、Jennifer Jacobs
2018年11月2日 13:56 JST 更新日時 2018年11月2日 16:28 JST
米中首脳は1日に電話会談−北朝鮮や貿易について建設的な話し合い
米中貿易摩擦の緩和期待で東京市場で株高・円安が進行
トランプ米大統領はアルゼンチンで今月行われる20カ国・地域(G20)首脳会議で貿易について中国の習近平国家主席と合意に達したい考えで、想定される条件の草稿の作成を開始するよう重要閣僚に求めた。事情に詳しい関係者4人が明らかにした。

  中国との合意をにらんだ動きは、大統領が習主席と1日に電話で話したことから始まったと関係者らが述べた。内部協議だとして匿名を条件に語った。トランプ大統領は電話会談後に、「時間をかけた非常に良い」対話だったとし、貿易を巡る協議は「うまく進展している」とツイートしていた。


トランプ米大統領Photographer: Al Drago/Bloomberg
  トランプ大統領は重要閣僚らに、エスカレートする貿易摩擦の休戦を示唆するような合意の文書を策定するようスタッフに指示することを求めたという。草案作成には複数の省庁が関わっていると関係者らは付け加えた。

  トランプ大統領と習主席の間の電話会談が明らかにされたのは6カ月ぶりだった。双方とも、北朝鮮や貿易について建設的な話し合いを持ったとしている。


    
  中国が抵抗していた米側の要求をトランプ氏が緩めているのかどうかは不明。

  米中間の協議は5月以来ほとんど進展していない。過去数カ月間は中国側が貿易協議での米国の誠実さを疑問視していた。また中国は貿易赤字を縮小する合意に向けて扉を開いているが、同国当局者は戦略産業への補助金中止や技術移転の強制停止、国有企業へのさらなる競争導入などの米側要求には抵抗している。

  1人の関係者によると、合意の妨げとなり得るのは知的財産を中国が盗んでいると米政権が主張している問題だという。政権はこれについて強い姿勢を取ろうとしている。

  米国は1日、米半導体大手マイクロン・テクノロジーの企業機密を不正入手する共謀に関与したとして、中国の国有企業などをカリフォルニア州の連邦地裁に訴追した。米司法省は経済スパイ疑惑への対応を強化する。

  クドロー米国家経済会議(NEC)委員長はトランプ氏と習氏がG20会議に合わせて計画されている会談で、両国間の問題を巡る行き詰まりを打開できる可能性があると述べながらも、知的財産侵害やサイバーセキュリティー、関税などの問題で合意できない場合、トランプ氏は中国に対して「思い切った」行動に出るとも話した。

  中国に対するトランプ大統領の姿勢を投資家は注視し、緊張緩和の可能性を探っている。

  中国外務省の陸慷報道官は2日、北京での記者会見で、米中首脳の電話会談はポジティブだとした上で、両国の経済チームが貿易紛争の対話による解決に向けて取り組むことを望んでいると述べた。

  トランプ大統領は12月1日に習国家主席を招いて夕食会を催すと、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)が事情に詳しい匿名の関係者の話を基に伝えた。ブエノスアイレスでのG20サミット後に習主席と会談し夕食を共にする。

市場動向
  報道を受け、東京市場では株高・円安が急速に進み、債券市場は下落に転じた。

日経平均株価は2.6%高の2万2243円66銭、TOPIXは同1.6%高の1658.76
ドル・円相場は一時1ドル=113円10銭まで値を切り上げた
長期国債先物12月物は午後の取引で、一時9銭安の150円56銭まで下落
市場の見方
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の三浦誠一投資ストラテジストは、「報じられた内容の通りなら米中の対立緩和への一歩になるという感じだ」と述べた上で、中国は経済の減速感が出ていたため、さらに足を引っ張る材料が減ると指摘。「米クリスマス商戦を前に消費への影響を回避できる」とみている。
みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジストは、「リスクオンになるには十分な材料」としながらも、「ドル・円はこれでは113円前半ぐらい止まり。113円超えると売りが出てくる。来週の中間選挙が終わるまでまだちょっと予断を許さない」との見方を示した。
SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストは、米中間の貿易戦争は世界経済のダウンサイドリスクになっているとし、「仮にそれが軽減されるのであれば、来年以降も今の米利上げペースを続けられる可能性が出てくるなど金利観が大きく変わる」指摘。ただ、中間選挙前のリップサービスの可能性もあり、実現性には疑問符が付くと述べた。
原題:Trump Said to Ask Cabinet to Draft Possible Trade Deal With Xi(抜粋)

(中国側の反応を追加するとともに、日経平均株価を終値に差し替えます.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-02/PHJUVD6JIJUV01?srnd=cojp-v2


 

東京外為市場ニュース2018年11月2日 / 17:28 / 7分前更新
中国・香港株式市場・大引け=中国上昇、米中貿易摩擦巡る報道で
2 分で読む

[上海/香港 2日 ロイター] -
中国  終値 前日比 % 始値 高値 安値
上海総合指数<.SSEC 2,676.476 + 70.2390 + 2.70 2,649.2512 2,676.4762 2,628.8697
> 2
前営業日終値 2,606.237
2
CSI300指数<. 3,290.246 + 113.21 + 3.56 3,258.609 3,290.246 3,222.435
CSI300> 2
前営業日終値 3,177.034

中国株式市場は上昇して引けた。トランプ米大統領が中国との貿易合意草案の作成を
指示したとの報道や、中国の習近平国家主席が民間企業を支援する方針を表明したことが
好感された。
上海総合指数 終値は70.2390ポイント(2.70%)高の2676.
4762。
上海と深センの株式市場に上場する有力企業300銘柄で構成するCSI300指数
終値は113.212ポイント(3.56%)高の3290.246。
週間ベースではそれぞれ2.99%高、3.67%高だった。
ただ、昨年末との比較では、それぞれ19.07%安、18.37%安となっている
。米中貿易戦争が企業業績や経済成長に悪影響を及ぼすとの懸念が背景。
生活必需品指数が6.23%高。高級酒メーカー、貴州茅台
は6.55%高で終了。今週は不安定な取引の中、週間ベースで1.7%安となった。
金融指数は2.65%高。不動産指数は0.41%高。ヘ
ルスケア指数は5.28%高。
深セン総合指数は3.43%高。深セン証券取引所の新興企業向け市場「創
業板(チャイネクスト)」は4.82%高。
習主席が民間企業を支援し、さらなる減税や資金面の支援などを行う方針を示したこ
とを受けて、小型株が値上がりした。
中国株は午前中も全面高となっていたが、午後に入ると一段高となった。トランプ大
統領が今月末にアルゼンチンで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて
習主席と貿易に関する合意をまとめることを目指しており、合意条件について草案を作成
するよう米当局者らに指示したとのブルームバーグの報道が好感された。
https://jp.reuters.com/article/listed-company-results-idJPKCN1N70Q2?il=0


 

長期金利が上昇、米中懸念緩和で売り優勢−運用変更後のオペ無難通過
三浦和美
2018年11月2日 7:57 JST 更新日時 2018年11月2日 16:30 JST
長期金利は一時0.115%に低下、午後に0.125%まで上昇
米中懸念が軽減されれば、金利観を大きく変える話−SBI証
債券市場では長期金利が上昇。米国と中国間の貿易摩擦を巡る懸念緩和を背景に株高・円安が進んだ流れを受けて、債券売り圧力が強まった。日本銀行の買い入れ運営方針見直し後で初めてとなるオペでは中期ゾーンの月間買い入れ額が減少する見通しになったものの、影響は限定的となった。

  2日の現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の352回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より0.5ベーシスポイント(bp)低い0.115%で取引を開始。いったん0.12%を付けたが、午前の日銀オペ通知後には0.115%に戻す場面もあった。午後には米中貿易摩擦を巡る懸念緩和で債券売りに転じ、0.125%まで水準を切り上げた。

  SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストは、「米中貿易戦争は世界経済のダウンサイドリスクになっており、仮にそれが軽減されるのであれば、来年以降も現在の米利上げペースが続く可能性が出てくるなど、金利観が大きく変わる話になる。債券市場では、日銀オペ見直しに絡む材料をこなして買われていたタイミングだったので、揺り戻しの動きにつながった」と指摘。ただ、中間選挙前のリップサービスの可能性もあり、実現性には疑問符が付くと話した。


  長期国債先物市場で中心限月12月物は前日比5銭高の150円70銭で取引開始。一時150円75銭まで水準を切り上げたが、その後は米中貿易関係の改善期待を背景に150円56銭まで下げ、結局は1銭安の150円64銭で引けた。

  トランプ米大統領はアルゼンチンで今月行われる20カ国・地域(G20)首脳会議で貿易について中国の習近平国家主席と合意に達したい考えで、想定される条件の草稿の作成を開始するよう重要閣僚に求めた。事情に詳しい関係者4人が明らかにした。

  これを受けて、米国債がこの日の時間外取引で売られ、米10年国債利回りは上昇。一方、日本株相場は大幅高となり、外国為替市場では円が全面安となった。

米中貿易交渉に関する詳細はこちらをご覧下さい。

日銀オペ
  日銀はこの日、中期と長期ゾーンを対象に国債買い入れオペを実施した。買い入れ額は残存期間1年超3年以下が3500億円、3年超5年以下が4000億円とそれぞれ前回から増額。両ゾーンの購入が据え置かれた場合、月間の買い入れは前月からそれぞれ1回削減されたことで合計2500億円減少する見通し。一方、5年超10年以下は4500億円に据え置かれた。オペ結果は各年限で応札倍率が低下した。

  三菱UFJ信託銀行資金為替部の鈴木秀雄課長は、「日銀はもともと買い入れを減らす意図があってオペ運営を進めていると思うので、それを踏まえると想定通りの買い入れ額だった」とし、大きな影響はないとみる。

過去の日銀オペの結果はこちらをご覧下さい。

新発国債利回り(午後3時時点)
前日比
2年債 -0.135% -0.5bp
5年債 -0.080% +0.5bp
10年債 0.125% +0.5bp
20年債 0.655% +0.5bp
30年債 0.875% +0.5bp
40年債 1.030% 横ばい

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-01/PHI37D6JTSES01


 
ドル・円が反発、米中合意期待でリスク選好−一時113円台
小宮弘子
2018年11月2日 12:11 JST 更新日時 2018年11月2日 15:48 JST
豪ドル・円1カ月ぶり高値、トランプ大統領が合意草案作成指示との
米雇用統計予想通りならリスクオン的なクロス円上昇を期待−三井住
東京外国為替市場ではドル・円相場が反発。貿易問題での米中歩み寄りへの期待からリスク選好の動きが強まり、オーストラリア・ドルなどを中心に円売りが進んだ。

  ドル・円は午後3時40分現在、前日比0.3%高の1ドル=113円04銭。朝方は米株価指数先物の下落を嫌気して112円56銭まで下落。その後、米中対話期待や日本株の上昇を背景に切り返し、午後にはトランプ大統領が米中貿易合意草案の作成を指示したとの報道を受けて一時113円10銭まで値を切り上げた。豪ドル・円は一時0.9%高の1豪ドル=81円94銭と1カ月ぶりの豪ドル高・円安水準を付けた。

  三井住友銀行市場営業部為替トレーディンググループの青木幹典グループ長は、昨日の米中電話協議のニュースに対して市場参加者のほとんどは疑心暗鬼だったが、合意草案の報道で「さすがにこれは本気かなとなっている」と解説。今晩発表の米雇用統計も「それなりの数字で、賃金も予想通りぐらいであれば、ドル・円をたたいて売っていく理由はない。その意味では引き続きリスクオン的なクロス円(ドル以外の通貨の対円相場)とドル・円の上昇は見込める」と話した。


  トランプ米大統領は、アルゼンチンで今月行われる20カ国・地域(G20)首脳会議で貿易について中国の習近平国家主席と合意に達したい考えで、想定される条件の草稿の作成を開始するよう重要閣僚に求めた。同大統領は1日、習国家主席との同日の電話会談で、米国が中国と公平な貿易合意を必要としていると語ったことを明らかにした。

  米中合意期待から午後の日本株は一段高となり、日経平均株価は556円高で取引を終了。米株価指数先物も上昇に転じた。

  ブルームバーグのエコノミスト調査によると、10月の米雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比20万人増と9月の13万4000人増を上回る見込み。賃金インフレ動向をみるうえで注目の平均時給は、前年同月比で3.1%上昇と2009年以来の高水準が予想されている。
  
  外為どっとコム総研の神田卓也調査部長は、「状況としてはニュートラルからオンになっていく過程にあるのではないか。ここからさらにオンにいけるかどうかはまだこれからで、ドル・円は113円をしっかり超えていけない理由にもなっている」と指摘。「ここからは米中間選挙の不透明感が晴れるの待ちになりそう。米雇用統計はあるが、数字の強弱に反応した後は、調整して週を終える感じになるのではないか」と述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-02/PHJOLP6TTDS001

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/263.html

[経世済民129] 米、イラン制裁で日本含む8カ国を石油禁輸適用から除外へ 中国株式市場が発する不気味なシグナル−節約志向の「消費降級」か
米、イラン制裁で日本含む8カ国を石油禁輸適用から除外へ−高官
Nick Wadhams
2018年11月2日 14:58 JST 更新日時 2018年11月2日 15:57 JST
対イラン制裁再開後も同国産原油の輸入認める
日本とインド、韓国、中国を含む8カ国が適用除外の対象
米国は日本とインド、韓国を含む8カ国に対し、対イラン制裁再開後も同国産原油の輸入を認めることに同意した。米政権の高官が明らかにした。

  ポンペオ米国務長官が2日に予定する適用除外に関する発表に先立ち、米政権高官が匿名を条件に語ったところでは、イランの収入源を絶つというトランプ政権の目標は変わらないが、原油価格を押し上げることがないよう輸入削減の継続を条件に適用除外を認める。

  事情に詳しい関係者2人が匿名を条件に明らかにしたところでは、イラン産原油の主要輸入国である中国は、米国と条件を巡る協議を続けている段階だが、適用除外対象の8カ国に含まれるという。

  米政権高官は、適用除外の下で各国に容認するイラン産原油の輸入量の詳細を示していない。同高官によれば、適用除外は一時的なものとなり、同国産原油の輸入を各国が今後数カ月で減らし続けることを米国は期待する。

  適用除外対象国の具体名は、対イラン制裁が再開される5日に公式発表される見込み。政府高官によると、トランプ政権はこれらの国々に対し、制裁に含まれないイランとの物品貿易を減らすなどの措置を取り、同国との経済関係を縮小することも求めた。

原題:U.S. Said to Give Eight Nations Oil Waivers Under Iran Sanctions(抜粋)

(適用除外対象国への米国側の要求に関する情報などを追加して更新します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-02/PHJXXQ6KLVR401?srnd=cojp-v2

 

中国株式市場が発する不気味なシグナル−節約志向の「消費降級」か
Bloomberg News
2018年11月2日 9:45 JST
貿易摩擦で消費に期待も小売売上高は既に減速、高級酒も振るわず
次の試金石は11日の「独身の日」セール動向−珩生鴻鼎の戴氏
中国の輸出企業が対米貿易摩擦の激化による影響を受ける中、中国株の投資家にとって国内消費が景気のけん引役として安心材料になるはずだった。

  それがその通りになっていない。トレーダーらの関心を最近集めているのは世界2位の経済大国における「消費降級」という言葉だ。小売売上高の伸びが既に鈍化する中、高級白酒を製造する中国最大の酒類メーカー、貴州茅台酒が発表した増益率は約3年ぶりの低水準にとどまり、投資家の警戒感が強まった。

  貴州茅酒の時価総額は先月終盤の6営業日で2120億元(約3兆4500億円)を消失。生活必需品銘柄の下げはより鮮明で、CSI300の同銘柄で構成する指数は10月に22%安と、2008年の世界金融危機以降で最大の下げを記録した。


  珩生鴻鼎資産管理の戴明ファンドマネジャー(上海在勤)は消費傾向の目に見える変化について、「明確な理由は分からない」と説明。他の市場参加者は次のような理由を挙げている。

不動産価格や家賃上昇で他の品目の購買能力が落ちている
いわゆるピア・ツー・ピア(P2P)貸し出しプラットフォームの落ち込みで一部の個人の資金繰りに影響が及んでいる
米国との通商関係で悪いニュースが相次ぎ、中国ではほとんど指標として存在しない消費者信頼感が恐らく悪化している
買い物客が安売り情報などに接しやすくなり、消費者行動が変化しつつあることを示している
  戴氏は貴州茅台酒の決算について、「中国の消費の伸びが鈍っている具体的な証拠だ」と指摘。次の試金石はアリババ・グループ・ホールディングが毎年11月11日に行う「独身の日」セールと春節(旧正月)を巡る消費動向だとコメントした。


原題:China’s Stock Market Is Sending a Scary Signal About the Economy(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-02/PHJI256JTSEA01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/264.html

[不安と不健康18] 内臓脂肪をピンポイントで増やす 恐怖の「ストレスホルモン」とは 上司よりも部下のほうが ストレスを受けやすい
【第9回】 2018年11月2日 ロバート・H・ラスティグ ,中里京子
内臓脂肪をピンポイントで増やす
恐怖の「ストレスホルモン」とは
「低炭水化物ダイエットは正解か?」
「脳が砂糖をやたら欲しがるのはなぜか?」
「食べた分だけ動けば確実にやせるのか?」
「カロリーを減らせば体重は減るのか?」

これらの「食事の疑問」に答えつつ、「人が太るメカニズム」を医学的に徹底解明したNYタイムズベストセラー『果糖中毒』が9/13に発売された。

アメリカの一流メディカルスクール教授が229の医学論文から「食事の正解」を導き出し、「健康な脳と体」に戻るための処方せんをあざやかに提示したとして、原書はアメリカで12万部を超え、アマゾンレビュー987件、平均4.6と高評価をたたき出した。

最新のWHO統計によると、現在世界で約19億人が「体重過多」、約6億5000万人が「肥満」だという。これは世界中の人々が運動を怠けて、食べ過ぎた結果なのか? 『果糖中毒』では、「肥満は自己責任論」を全面否定し、現在の「肥満の世界的大流行」は糖分、特に「果糖」が主な原因だと結論づけている。

ここで『果糖中毒』の一部を特別に無料で公開する。

ストレスを受けると
甘いものが食べたくなるしくみ

 ストレス、肥満、代謝性疾患の結びつきの起点にあるのは、副腎(腎臓の上にある臓器)が出す「コルチゾール」ホルモンだ。コルチゾールはたぶん、あなたの体のなかで最も重要なホルモンだろう。というのもコルチゾールが足りなくなったら死んでしまうからだ。

 ほかのホルモン、たとえば成長ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモン、水分保持ホルモンなどが欠乏しても、体調がすぐれずつらい生活を送ることにはなるが、命を失うようなことはない。だが、コルチゾールが足りなくなったら、あらゆる種類の体のストレスに対処できなくなってしまう。

 ハーバード大学疫学教授のデイビッド・ウィリアムズは、2008年にPBSで放映されたドキュメンタリーシリーズ『不自然な原因(Unnatural Causes)』でこう述べている。「ストレスは、私たちをやる気にさせます。私たちが暮らす今日の社会では、どんな人でもストレスを抱えています。ストレスを抱えていない人とは、死んでいる人のことです」

 コルチゾールが急増すると、脱水症状になったときにショック状態に陥らずにすみ、記憶力と免疫機能が向上し、炎症反応が抑制され、警戒心が増す。通常の場合、コルチゾールはストレスがつのる状況(ライオンに追いかけられているときや、当然知っているべきことを知らなかったと上司に怒鳴られているようなとき)にピークに達する。コルチゾールは、少量かつ急増期間が短いかぎり、必要不可欠なホルモンだ。

 だが、大量のコルチゾールに長期間さらされると、ゆっくりとではあるが、最終的に命が奪われる。プレッシャー(社会的、家族的、文化的なプレッシャーなど)に容赦なく見舞われると、ストレス反応は何ヵ月も、ときには何年も「オン」状態になる。コルチゾールが血流にみなぎると、血圧が上がり、糖尿病につながる血糖値の上昇を招き、心拍数も増える。

 人間について行われた研究によると、コルチゾールは特に「カンフォートフード」(なじみがあって食べると気分がよくなるスナックや菓子)によるカロリー摂取を押し上げるという[1]。

 だがコルチゾールはむやみに体重を増やすわけではない。コルチゾールが増やすのは内臓脂肪なのだ。これは、心血管疾患とメタボ症候群に関連付けられているタイプの脂肪蓄積である。

上司よりも部下のほうが
ストレスを受けやすい
 2万9000人におよぶイギリスの公務員の健康を記録した「ホワイトホール研究」という影響力のある研究がある。1970年代から始められたもので、30年以上続けられ、今でもフォローアップ研究が行われている[2]。

 最初の頃研究者たちは、心臓発作の発生率が最も高いのは、上級管理職だろうという仮説を立てていた。しかし、真実は逆であることがわかった。最も高いレベルのコルチゾール血中濃度と慢性病が見られたのは、いちばん低い階級グループだったのである。

 この傾向は最下層のグループだけに当てはまるものではなかった。上から2番目のグループは、トップランクのグループより病気を発症する率が高く、上から3番目のグループの病気発症率は上から2番目のグループより高く、上から4番目のグループの病気発症率は上から3番目のグループより高い、というふうに、一貫して同じ傾向が見られた。死亡率と罹患率は、喫煙などの行動因子を調整したあとでも、社会的地位の低さと相関していた。

 同じことは、アメリカについても言える。糖尿病、脳卒中、心臓病といった病気は、ストレスを最も抱えている人たち、すなわち中流と下層階級のアメリカ人のあいだで、最も広がっているのだ。

 ストレス因子は、子どもたちにも深刻な影響を与えている。貧困のなかで暮らしているアメリカの子どもたちは20%近くにもおよぶ。食と住まいの不安定さが生涯にわたって残す傷は脳にとって有害であり、脳の構造を幼い時点で変化させる[3]。とりわけ、コルチゾールは食物摂取を抑制する働きのあるニューロンを殺してしまう[4]。

 幼いときにしっかりした土台が築けるかどうかは、成長してからの健康と摂食パターンを大きく左右する。したがって、子どもの頃にストレスを被ることは、思春期および成人期に肥満になるリスクを押し上げる要因になるのだ。

 ストレスの低い閾値と高い「コルチゾール反応性」をもたらすと考えられる因子には、社会経済的地位の低さ、仕事のストレス、女性であること、ダイエットすることが多いと回答すること(慢性的にダイエットを繰り返していることを示す)、そして総合的に見て、やる気と自信に欠けていることなどがある。

 どこに行くにもバスを3台も乗り継がなければならず、2つ以上の仕事を掛け持ちし、どうやって食べ物を手に入れるか始終心配し、次の家賃が払えるかどうか不安にさいなまれる……。こんな状態では、どの不安材料も、精神状態だけでなく体の状態にも大きな悪影響を与えてしまう。

[1] P. A. Tataranni et al. (1996) “Effects of Glucocorticoids on Energy Metabolism and Food Intake in Humans,” American Journal of Physiology, 271 (2): E317-25.
[2] M. Elovainio et al. (2011) “Socioeconomic Differences in Cardiometabolic Factors: Social Causation or Health-Related Selection? Evidence from the Whitehall II Cohort Study, 1991-2004,” American Journal of Epidemiology, 174 (7): 779-89.
[3] J. P. Shonkoff et al. (2009) “Neuroscience, Molecular Biology, and the Childhood Roots of Health Disparities: Building a New Framework for Health Promotion and Disease Prevention,” JAMA, 301 (21): 2252-9.
[4] R. M. Sapolsky (2001) “Depression, Antidepressants, and the Shrinking Hippocampus,” Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 98 (22): 12320-2.
(本原稿は書籍『果糖中毒』からの抜粋です。訳者による要約はこちらからご覧になれます)

著者について
ロバート・H・ラスティグ(Robert H. Lustig)
1957年ニューヨーク生まれ。カリフォルニア大学サンフランシスコ校小児科教授。マサチューセッツ工科大学卒業後、コーネル大学医学部で医学士号を取得。2013年にはカリフォルニア大学ヘイスティングス・ロースクールで法律学修士号(MSL)も取得。小児内分泌学会肥満対策委員会議長や内分泌学会肥満対策委員会委員などを歴任。「果糖はアルコールに匹敵する毒性がある」と指摘した講義のYouTube動画「Sugar: The Bitter Truth(砂糖の苦い真実)」は777万回以上視聴されるほど大きな話題になった。
中里京子(なかざと・きょうこ、訳者)
翻訳家。訳書に『依存症ビジネス』(ダイヤモンド社)、『ハチはなぜ大量死したのか』(文藝春秋)、『不死細胞ヒーラ』(講談社)、『ファルマゲドン』(みすず書房)、『チャップリン自伝』(新潮社)ほか。
https://diamond.jp/articles/-/184128
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/663.html

[経世済民129] 米雇用統計:10月の雇用者数25万人増、予想上回る−平均時給3.1%増 米貿易赤字、7カ月ぶり高水準 対中赤字過去最高 

米雇用統計:10月の雇用者数25万人増、予想上回る−平均時給3.1%増
Katia Dmitrieva
2018年11月2日 21:42 JST
10月の非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比25万人増。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は20万人増だった。前月は11万8000人増(速報値13万4000人増)に下方修正された。米労働省が2日発表した。

  家計調査に基づく10月の失業率は3.7%と、前月と変わらず。平均時給は前年比3.1%増と、市場予想と一致。前月は2.8%増だった。

  統計の詳細は表をご覧ください。

原題:U.S. Payrolls Rise Above-Forecast 250,000 as Wage Gains Hit 3.1%(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-02/PHKGCZ6K50XY01?srnd=cojp-v2


BRIEF-9月の米製造業新規受注は前月比+0.7%(予想:+0.5%)=商務省
1 分で読む

[2日 ロイター] -

* 9月の米製造業新規受注、輸送機器を除くベースで前月比+0.4%=商務省

* 9月の米製造業新規受注は前月比+0.7%(予想:+0.5%)=商務省
jp.reuters.com/article/BRIEF-9月の米製造業新規受注は前月比%2B0.7%予想:%2B0.5%=商務省-idJPZON0LFJ02?il=0

米貿易赤字:9月は7カ月ぶりの大きさ−財の対中赤字は過去最大
Shobhana Chandra
2018年11月2日 21:42 JST 更新日時 2018年11月2日 22:56 JST
9月の米貿易赤字は予想以上に拡大し、7カ月ぶりの大きさとなった。通商摩擦が激化する中で、中国との財の貿易赤字は過去最大を記録した。

  商務省発表の貿易収支統計によると、9月の財とサービスを合わせた貿易赤字(国際収支ベース、季節調整済み)は前月から1.3%拡大し540億ドルとなった。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は536億ドルだった。前月は533億ドル。輸入と輸出はともに1.5%拡大した。

  9月の輸出は2126億ドル。石油製品や金、原油、航空機が伸びた。一方、輸入は2666億ドル。資本財や商品が幅広く増えた。財のみの貿易赤字は763億ドルと過去最高を記録した。

  中国に対する貿易赤字(財のみ)は調整前ベースで402億ドルと、前月の386億ドルから増加して過去最大。

  統計の詳細は表をご覧ください。

原題:U.S. Trade Gap Hits Seven-Month High Amid Expanding Tariff War(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-02/PHKGE36JIJV801?srnd=cojp-v2


東京外為市場ニュース2018年11月2日 / 23:21 / 8分前更新
UPDATE 1-10月の米貿易赤字、7カ月ぶり高水準 対中赤字過去最高に
1 分で読む

* 9月の米貿易赤字は540.0億ドル(予想:536.0億ドルの赤字)=商務省 (内容を更新しました)

[ワシントン 2日 ロイター] - 米商務省が2日発表した9月の貿易収支の赤字額は前月比1.3%増の540億1900万ドルと、金額ベースで7カ月ぶりの高水準となった。国内需要が底堅い中で輸入額が過去最高水準を記録した。市場予想は536億ドルだった。対中貿易赤字は、9月に4.3%増の402億4300万ドルと、金額ベースで過去最高となった。

全体の貿易赤字は4カ月連続で拡大している。

8月の赤字額は当初発表の532億3700万ドルから533億900万ドルへ改定された。

トランプ政権が保護主義的な通商政策を進めているにもかかわらず、貿易赤字は拡大し続けている。米国の通商政策は米中貿易戦争につながっている。米国は欧州連合(EU)やカナダ、メキシコとも報復関税の応酬を繰り広げている。

実質の貿易赤字を示すインフレ調整後の貿易赤字は870億4200万ドルと、過去最高となった。8月は862億7700万ドルだった。

9月はモノとサービスの輸入が1.5%増の2665億8400万ドルと、過去最高となった。モノの輸入のうち、通信機器や民間航空機、エンジン、コンピューターなどの資本財が過去最高に上った。玩具や携帯電話、衣料、家庭用品も増加した。

モノとサービスの輸出は1.5%増の2125億6500万ドルだった。産業用資材と原料の輸出が過去最高額に上り、全体水準を押し上げた。大豆は7億4400万ドル減少した。
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-tax-hiroki-shimazu-idJPKCN1N702P?il=0




アリババ:通期売上高見通し下方修正、対米貿易摩擦が中国に打撃
Lulu Yilun Chen
2018年11月2日 23:14 JST
根強い不透明感、米中貿易摩擦で中国の個人消費に陰り
「独身の日」セール、アリババ業績と個人消費動向を見極める鍵に
中国の電子商取引会社アリババ・グループ・ホールディングは2日、通期見通しを下方修正した。四半期決算では売上高が市場予想を下回り、エスカレートする米中貿易摩擦が中国経済に打撃を与えていることが示された。

  2019年3月通期の売上高予想は3750億−3830億元(約6兆1460億−6兆2773億円)と、前年比で最大53%の増収を見込むが、従来見通しは60%増だった。7−9月(第2四半期)売上高はアナリスト予想を1.6%下回った。

  米中両国は何らかの通商合意に向けて話し合う意向があるようだが、アリババの共同創設者で会長の馬雲(ジャック・マー)氏は長期にわたる米中対立を警告していた。貿易摩擦は中国に打撃を与え始め、個人消費を押し下げている。

  7−9月の売上高は前年同期比54%増の851億5000万元。ブルームバーグがまとめたアナリスト予想平均(865億元)を下回る。調整後1株当たり利益は9.60元。市場予想は7.43元だった。

  アリババが毎年11月11日に行う「独身の日」セールは同社の売り上げだけでなく、中国全体の消費動向を見極める上でも重要な指標となる。


原題:Alibaba Cuts Sales Outlook as U.S. Tensions Hit China (1)(抜粋)



東京外為市場ニュース2018年11月2日 / 21:50 / 2時間前更新
米政府高官、中国との貿易合意書用意との報道を否定=報道

[ワシントン 2日 ロイター] - 米政府高官は2日、トランプ大統領が中国との貿易合意草案を用意しているという報道を否定した。CNBCがツイッターで報じた。

ブルームバーグはこれに先立ち、トランプ大統領が今月末にアルゼンチンで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせ、中国の習近平国家主席と貿易に関する合意をまとめることを目指し、合意条件について草案を作成するよう米当局者らに指示したと報じていた。
https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-idJPL3N1XD4J9?il=0


中国人民銀行:来年は予防的で柔軟な政策が必要になる−金融安定報告
Bloomberg News
2018年11月2日 19:41 JST
中国経済は「灰色のサイ」型の金融リスクに直面する可能性
金融リスクと世界的な不透明性警告も、「制御可能」と主張
中国人民銀行(中央銀行)は2018年版の金融安定報告で、来年はより予防的で協調的、かつ柔軟なマクロ経済政策と金融政策が必要になるとの認識を示した。金融リスクと世界的な不透明性を警告しつつ、全体として制御可能だと論じた。

  中国共産党政治局は10月31日、景気に対する下振れ圧力が高まっていることから財政刺激策を追加する用意を進めていると示唆していた。

  金融安定報告の要点は以下の通り。

中国経済は「灰色のサイ」型の金融リスクに直面する可能性がある。灰色のサイとは高い確率で発生し大きな影響を引き起こすにもかかわらず、十分な注意が払われていない問題を指す
貿易対立や先進国地域の金融引き締め、中国経済の問題など世界的な金融安定を脅かす要因が増えている
これらの要因解決にはコストがかかる
中国は雇用や財政、輸出、外国投資、投資と期待を安定させる
原題:China’s Eco Policy to Be More Preemptive, Flexible, PBOC Says(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-02/PHK9S96KLVR801?srnd=cojp-v2


エクソン:7−9月石油生産量は予想以上、パーミアン盆地で生産増加
Kevin Crowley
2018年11月2日 22:54 JST
世界最大の石油会社、米エクソンモービルの7ー9月(第3四半期)決算は予想以上に堅調だった。エクソンは決算で市場の期待を裏切ることが多かったが、10四半期ぶりに石油生産量が市場予想を上回った。

  エクソンは今回の決算について、テキサス州西部とニューメキシコ州にまたがる油田地帯パーミアン盆地で生産が増加したためだと説明した。ガイアナやモザンビークなどで進める大型プロジェクトが利益に寄与することは2020年代半ばまでない中で、ダレン・ウッズ最高経営責任者(CEO)にとって生産量低下を食い止めることは大きな課題だった。

  この決算発表を受け、エクソン株価は2日のニューヨーク時間午前8時17分時点の時間外取引で前日比1.8%高の82.10ドルと上昇している。


原題:Exxon Beats Estimates With Oil Production Boost From Permian (1)(抜粋)


日本株週間展望】続伸、イベント通過で割安さ評価−米中間選挙注視
長谷川敏郎
2018年11月2日 16:21 JST
米中間選挙は上院は共和党、下院は民主党が過半数獲得の事前見通し
米中摩擦懸念もいったん緩和か、国内決算はソフバンクやトヨタなど
11月1週(5ー9日)の日本株相場は米国の中間選挙をにらんだ展開となり、週後半にかけて選挙結果が判明するに連れ、売られ過ぎた株価や企業業績を見直す流れが強まりそう。

  6日(日本時間7日)に実施される米中間選挙について、米クック・ポリティカル・リポートは民主党が最大で35議席増やす可能性があると分析した。同党は23議席増やせば過半数を取り戻せる。一方、上院は共和党が引き続き過半数を確保するとみられている。上下両院で「ねじれ」議会となることは、トランプ米大統領の政策遂行にとってマイナス要因との見方が市場では多い。ただ、コンセンサス通りであれば株式市場では不確実性の解消をより評価しそうだ。

  米国では5日に10月の供給管理協会(ISM)非製造業景況指数、7、8日の両日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が予定される。ISM非製造業は9月の61.6から59.4への低下が見込まれるが、前回が1997年に次ぐ高水準だったため影響は軽微とみられる。最近の株価急落でも投資家は12月の利上げ観測を後退させておらず、FOMCは波乱要因にならなさそう。トランプ米大統領は1日、中国の習近平国家主席と電話会談し、通商問題について「協議が順調に進展している」とツイートで明らかにした。関係者によると、大統領は中国との貿易合意の草案作成を重要閣僚に要請した。中間選挙という政治的なイベントが終わるタイミングでは、米中摩擦懸念もいったん後退しやすい。

  国内では引き続き多くの企業が決算を発表する。大和証券が2日に公表した企業収益動向によると、TOPIX1000ベースの7−9月期の営業利益は事前コンセンサスに比べて10%以上の上方着地が22.5%、10%以上の下方着地が39.5%だった。5日にソフトバンクグループ、6日にトヨタ自動車、7日に明治ホールディングスなどが予定しており、内容が想定ほど良くないとの見方が強まれば、株価の上値を抑える可能性がある。8日に9月機械受注、9日は株価指数オプション11月限の特別清算値(SQ)が算出される。10月第5週の日経平均株価は週間で5%高の2万2243円66銭と5週ぶりに反発し、2016年7月2週以来の大幅高。


≪市場関係者の見方≫
三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之シニアストラテジスト
  「戻りを試す展開を予想している。ことしの大きな政治イベントである米中間選挙が最大の注目点で、コンセンサス通りねじれ状態となれば税制や財政など景気刺激策が滞ることやロシアゲートなどの追及が蒸し返される可能性が残る。ただし、マイナス面は株価に織り込んでいる上、政権そのものが交代するわけではなく、想定通りの結果ならむしろ悪材料出尽くしとなるだろう。企業決算は日米とも思ったほど良くないが、それほど悪くもないという印象。特に受注など見通しに関してはネガティブ傾向が強く、通商問題による景気下押しの悪影響を経営者が意識していることが明らかになった。もっとも、10月の日米株下落はボラティリティーの高まりによるリスクパリティの売りやヘッジファンドの売り崩しなど需給要因がかなりあったとみられる。足元の業績状況を考慮しても日経平均はPER12倍台と割安感があり、13−14倍台まで戻っても不思議ではない」

SMBC信託銀行投資調査部の佐溝将司マーケットアナリスト
  「米中間選挙という大きなイベントを波乱なく通過し、先行き不透明感が払拭(ふっしょく)されて株価は上昇に向かうだろう。中間選挙のメインシナリオとなっている上院が共和党、下院が民主党か、上・下院ともに共和党となれば、混乱をきたさない点で株式市場にプラスに働く。米国が中国との貿易合意に向けて動きを見せ始めたことはポジティブ。米中間選挙後のマーケットの注目は米中首脳会談に移る。ただ、日本企業は業績予想の上方修正に慎重で、あってもコンセンサスを下回るなどあまり強い内容が出てきていない。これまで売られ過ぎた反動の買い戻しが一巡した後、さらに買い上がっていくには材料不足だ。日米通商協議は続いており、自動車関税や為替条項要求などリスクはくすぶり続ける。日米ともに株安を招いた米長期金利は高止まりしており、警戒は必要」
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-02/PHKGHA6JTSEA01不足だ。日米通商協議は続いており、自動車関税や為替条項要求などリスクはくすぶり続ける。日米ともに株

安を招いた米長期金利は高止まりしており、警戒は必要」
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-02/PHKGHA6JTSEA01
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/269.html

[経世済民129] 消費増税は時期尚早、将来世代に回るツケ
外為フォーラムコラム2018年11月2日 / 10:25 / 24分前更新

消費増税は時期尚早、将来世代に回るツケ

嶋津洋樹 MCP チーフストラテジスト
5 分で読む

[東京 2日] - 各種報道を見る限り、2019年10月の消費増税はほぼ既定路線になったようだ。財務省を始め財政再建を訴える人たちは、とりあえず胸をなでおろしていることだろう。世論も消費増税を支持しているようで、日本経済新聞とテレビ東京による世論調査(10月26─28日実施)では47%が賛成と、反対の46%を上回った。

10月のロイター企業調査に至っては、「実施すべき」との回答が57%と、「実施しない方がよい」の43%を大幅に上回った。ロイターはその理由として、「財政健全化を先送りすべきではない」というのが「代表的な意見」と報じている。「少子高齢化が進行する中で、『(増税しなければ)社会保障制度が維持できない』」、「これ以上の先送りは、国民の先行き不透明感をあおるだけ」などの意見も取り上げている。

筆者も財政再建を先送りすべきではないと考えているし、その際に消費増税が安定した財源となることにも異論はない。しかし、それが来年10月で良いのかは問われるべきだ。少なくとも最近の経済指標は、国内景気が増税を乗り越えられるほど強い状態でその時期を迎えられない可能性を示している。

2カ月ぶりに減少した9月の鉱工業生産は、小幅な落ち込みにとどまるという市場の予想をあっさり裏切り、前年比1.1%低下した。7─9月期は前期比1.6%減と、3%減少した14年4─6月期以来の大幅な落ち込みを記録した。主因は台風や地震などの自然災害が相次いだことだろう。日銀の黒田東彦総裁が10月31日の記者会見で述べた通り、そうした影響は「基本的には一時的で」、「政府、民間企業も復旧の投資を行い、むしろ成長率を押し上げる」可能性もある。

<経済指標は6月ごろから弱含み>

しかし、8月の本コラムで指摘した通り、経済指標は6月ごろから弱さが目立つ。たとえば、工作機械受注は18年1月(48.8%増)以降、9月まで8カ月連続で伸びが鈍化。とくに中国向けは17年8月に前年の2.8倍増加していたものが、18年3月にはマイナスへ落ち込み、9月は前年比22%減と、7カ月連続で減少した。

日本を訪れる外国人の数も9月は前年比5.3%減と、13年1月に1.9%減って以来のマイナス。季節変動をならしてみると前月比5.7%減となり、6月以降、4カ月連続で前月の水準を下回った。

インバウンドで湧く大阪府のシティホテルの客室利用率(全日本シティホテル連盟)は、同じく季節変動をならしてみると、18年5月の88.9%が直近のピークで、6月は83.2%へ急低下。それ以降、4カ月連続で低下し、9月は73.5%と12年3月以来の低水準となった。

重要なのは、こうした経済指標の悪化が9月のみならず、それ以前から見えるということだ。そうした前提に立つと、景気の代表的な先行指標である新規求人数が9月に前年比6.6%減と16年10月以来の減少に転じたこと、そのマイナス幅が金融危機の影響を引きずる10年1月に13.4%減少して以来であることを、「一時的」と簡単に結論付けるわけにはいかない。国内景気は9月の自然災害で「一時的」に落ち込んだというよりも、それ以前からの弱さが露呈してきた可能性がある。

日本経済を取り巻く環境も、決して良好とは言えない。中国は今春以降、習近平国家主席が掲げるデレバレッジ(債務圧縮)方針への忖度(そんたく)が行き過ぎ、地方を中心に金融危機をほうふつさせるほど信用収縮が進んだ。金融当局などが迅速に対応して大事には至らなかったが、景気に急ブレーキがかかった状態にある。ハードランディングは回避できるとみているが、習主席が方針転換を明示しない限り、中国景気の足取りは重いままだろう。

米国は減税の追い風もあり、景気の回復が続く可能性は高いものの、プラス3─4%だった4月から9月の成長ペースを維持できるとは考えにくい。11月6日の中間選挙で共和党が上下両院とも制し、一段の減税など拡張的な財政政策が選択されるシナリオはゼロではない。しかし、その場合は米連邦準備理事会(FRB)に早期の金融政策正常化を促したり、ドル高がトランプ米大統領が推進する輸出振興を妨げたりするだろう。金利上昇に敏感な住宅市場に減速感があることも気がかりで、堅調な個人消費に水を差しかねない。

こうした状況で無理に消費増税に踏み切れば、日本の景気が失速するのは不可避だろう。安倍晋三政権は負担軽減策を講じ、万全の態勢で臨む姿勢を示すが、前回増税した14年4月を振り返るまでもなく、効果は未知数と言わざるを得ない。増税は一時的ではなく、恒久的に所得を減少させる。本気で影響を最小化しようとするのであれば、その減少分のいくらかを恒久的に補てんする必要があるだろう。

「そんなことを言っていたら、いつまでたっても財政再建などできないだろう」という声が聞こえてきそうだ。繰り返すが、筆者は財政再建の必要性を否定しているのではない。なぜデフレからの完全脱却を待てないのか、と主張しているだけだ。財政再建には、需給ギャップが明らかにプラスへ転じ、物価が2%で安定的に推移するようになってから取り組むべきである。

<若者の人生を左右>

内閣府と日銀の推計値によると、確かに需給ギャップはプラスに転じている。しかし、国際通貨基金(IMF)の試算値では、17年がマイナス0.864%、18年がマイナス0.749%と、明らかなマイナス圏にある。需給ギャップを用いて議論をするに当たっては、相当の幅を見ておく必要があるという常識に従えば、IMFの数値も考慮に入れるのは当然だ。

ロイターによると、IMFのラガルド専務理事は10月4日にインドネシアで麻生太郎財務相と会談した際、日本の消費税率の引き上げに支持を表明した。一方で、5%から8%に引き上げた4年前の増税に言及し、景気への影響には注意を払うよう伝えたという。ラガルド氏の発言を筆者なりに解釈すれば、IMFに理事まで派遣している国が下した判断を尊重しつつも、需給ギャップがマイナスの状態で増税をするのだから影響は大きくなる、くれぐれも慎重に、ということだろう。

そのIMFの分析によれば、日本の政府債務は名目GDP(国内総生産)比で235.6%、いわゆる「GDPの2倍以上」であるが、資産を勘案した純債務では5.8%に過ぎない。IMFが試算した31カ国中、最も大きな純債務を抱えるのはポルトガルで135.4%。125.3%の英国がそれに続く。統計が揃わないイタリアを除いた先進6カ国では、カナダのみが資産超過で、フランス、ドイツ、米国はそれぞれ42%、19.6%、16.7%と、日本よりも純債務が大きい。

日本では財政の話になると、なぜか急に「将来世代にツケを回すな」という声が出て、増税は当然という結論になる。しかし、需給ギャップがマイナスのまま財政再建を急げば、景気に大きな負荷がかかり、デフレに陥るリスクすらある。若者が希望通りの仕事に就けない、それどころか仕事がないという、つい最近まで日本が経験していた縮小均衡の世界である。

今も日本企業の多くは新卒を一括採用し、社会人としてのスキルは就職後に時間をかけて習得させるのが基本だ。つまり最初に正社員として就職できないと、その後の選択肢は大きく制限される社会である。増税先延ばしが将来世代にツケを回すという議論だけでなく、デフレから完全に脱却しないまま来年10月に増税すれば、将来世代の人生を大きく左右しかねないという議論もすべきだろう。

(本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

嶋津洋樹氏(写真は筆者提供)
*嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントなどを経て2016年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネジャーとしての経験を活かし、経済、金融市場、政治の分析に携わる。共著に「アベノミクスは進化する」(中央経済社)
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-tax-hiroki-shimazu-idJPKCN1N702P?il=0


 



http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/270.html

[経世済民129] 富の集中がもたらす「本当の格差」 巨額マネー動かす資産運用者、意外な「最初の仕事」 ビットコイン誕生10年の「教訓」
コラム2018年11月3日 / 08:20 / 2日前

富の集中がもたらす「本当の格差」
Edward Hadas
4 分で読む

[ロンドン 31日 ロイターBreakingviews] - スーパーリッチ階級のライフスタイルをのぞき見る「ウェルス・ポルノ」は、普段は思慮深い人の心も狂わせる。

数十億ドル、数兆ドルに上る富の描写に目を奪われ、過剰なまでに贅沢な浪費の物語に夢中になってしまうのは世の常だ。だが、超富裕層の台頭について、本当に重要なことは、胸がときめくような贅沢ではなく、富の集中が社会に与える影響だ。

ミリオネアやビリオネアが抱える資産の世界的傾向に関するレポートは、こうした話に熱中する人々にとっては格好のテキストだ。今はそんなレポートの「旬」と言える。スイスの2大銀行が先日、本格的な調査結果を発表。UBSは純資産10億ドル(約1120億円)以上、クレディスイスは純資産100万ドル以上の富裕層についての調査だ。

出てくる数字だけでも印象的だ。

UBSの試算によれば、純資産10億ドル以上を保有する個人は、世界で2158人存在しており、彼らの資産総額は8兆9000億ドルに達する。クレディスイスは、世界の資産総額は317兆ドルと、2000年の117兆ドルから増加しており、2007年以降、資産全体の約85%を最も富裕な上位10%が占めている、と指摘している。

こうした数字は幻想をさらにかき立てる。超富裕層(HNWI)向けの商品を扱う者はビジネスをなんとか成功させようと夢見るだろうし、経済的公正さを支持する者は憤怒を駆り立てるだろう。

だが、こうした富裕層に興味津々の人たちは冷静になるべきだ。

理由は2つある。第1に、こうした資産の大半は、かなり仮想的なものだ。クレディスイスは住宅や金融資産の価格上昇を「現実的な」プラスとして描写しているが、これは真実を歪めている。現在価格で現金化できるのは、一握りの人々だけだ。売り手が多すぎれば、あらゆる金融資産の価格は(そしてすべての富裕層の純資産は)下落する。

第2に、先進諸国においては、地道に中流層であることに比べて、富裕層であることの物質面での優位は非常に小さい。大量生産、福祉国家、ユニバーサルサービスの義務付けによって、誰もが同じ道路、電力、電話などを利用することができる。誰が運転する車でも同じ速度制限を守らなければならない。米国におけるいくつかの例外を除いて、医療はユニバーサルサービスに近づいている。人口の上位4分の3は、快適でそこそこの広さのある住宅で暮らしている。

もちろん、郊外の標準的な集合住宅に比べれば、富裕層の豪邸やペントハウスは贅沢だ。個人所有の島やプライベートビーチといった不動産は、市街地にある観光客向けの2つ星ホテルに比べれば、もちろん居心地が良かろう。だが、現実的な快適度の差はかなり小さい。今日の中流層が「大変」快適な生活を送っているのに比べて、超富裕層は「ものすごく」快適な生活を送っているという程度だ。

この程度の違いになぜ人々の関心が集まるのか。それを最も的確に説明しているのは、精神分析学の開拓者であるジークムント・フロイトが「小さな差異のナルシシズム」と呼んだ分析だろう。

人間は、より眺めのいいオーシャンビューの部屋、より大きなダイヤモンド、あるいは何であれ社会的地位の高さを示すあれこれがもたらす、客観的には価値の上積みが微々たるからこそ、ナルシズムを刺激され興奮するというものだ。

巨額の資産があれば、なるほど、そうしたステータスシンボルを買うことはできる。だがこうした社会的なシンボリズム(象徴主義)は、経済的にはほとんど意味がない。ほぼすべての人が多くのモノを所有している国では、より多くを所有する喜びと、より少なく所有することの不満は、宝石やランボルギーニの金銭的な価値ではなく、もっぱら文化的な価値観によって決まってくるのだ。

だが、巨額の資産があれば、通常のブルジョワジーには手の届かない大切なものを手に入れることができるかもしれない。それは「影響力」だ。

金融資産、親からの遺産、エリートとしての教育、そして報酬をほとんど、あるいはまったくもらえないような仕事を引き受ける余裕があることで、恵まれた富裕層は、社会的な優先順位を設定し、倫理的な問題に関する合意形成を主導し、メディアを構築するという点で、桁違いの権威を手に入れている。

こうした社会形成における常人離れした力は、超富裕層とそれ以外の人々のあいだに、消費面における差異よりも、はるかに大きな格差を生み出している。

富裕層の文化的な影響力は、彼らの政治力と切り離すことが難しい。民主的な社会では、富裕層は資金と時間、スキルを提供することによって望ましい政策を「買える」ことが多い。

独裁体制下では、富裕層と権力者は非常に緊密に結合しており、ほとんど見分けがつかないほどだ。

富がもたらす以上3つの優位性、「ステータス」と「影響力」そして「権力」は好ましくないものと判断されるかもしれないが、UBS、クレディスイスの調査に見られる数値とはほとんど何の関係もない。富裕層の社会的な権威は、資産価格の上昇によって増すことはほとんどないし、市場が暴落してもほとんど傷つかないためだ。

富がもたらす特権に、市場価格よりもはるかに大きな影響を与えるのは「時間」だ。富によるパワーを特に増大させるのが「相続」だ。富裕層の子どもは、人々のリーダーになるように育てられ、十分な時間と磨かれたスキル、豊富な人脈を、慈善活動や政治キャンペーンに投じることができる。労せずして手に入れた社会的ステータスが、彼らにさらなる影響力を与える。

富によるパワーがひどく偏っている状況、それも相続によって継承されている状況下において民主主義を健全に保つことは容易ではない。20世紀前半、富裕エリート層による支配を抑制したいという願いが、多くの国で累進的な税制、つまり所得や相続財産が多ければ多いほど税率を上げるという発想につながった。

だがここ20─30年、政治的な流れは、特に富裕層への課税を軽減する方向で進んでいる。これによって利益を得た層は、この流れが続くよう、自らの影響力と権力を駆使している。このトレンドは、富のパワーをさらに定着させ、非エリート層の声を抑え込む傾向を示すだろう。

民主的な政府が直面している問題は富のパワーだけではないが、この問題は恐らく多くの有権者の離反を招いている。特に相続税率の引き上げは、正真正銘のポピュリスト的方向に向かう動きを抑える有効な手立てになろう。だが、そのような革命は起きそうにない。

それが起きるのを待つ中で、1つ確実なことがある。現在のような環境は、UBSやクレディスイスなどが手掛ける資産運用ビジネス、そして富裕層を熱烈に支持する業界全般にとって、好都合だということだ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/global-billionaires-breakingviews-idJPKCN1N710T

コラム2018年11月4日 / 07:55 / 14時間前更新

巨額マネー動かす資産運用者、意外な「最初の仕事」

Chris Taylor
3 分で読む

[ニューヨーク 31日 ロイター] - 人は誰しもお金を管理している。たとえそれが、ほんのわずかな額であったとしても。中には、仕事で驚くほど巨額の資金を動かしている人も少数ながらいる。

例えば、米資産運用大手バンガード・グループのロドニー・コメジス氏は3.1兆ドル(約349兆円)を管理している。それを上回る規模の国内総生産(GDP)を有する国は世界にわずか4カ国しかない。

だが、そもそもどのようにキャリアをスタートしてそのような巨額の富を管理する道に足を踏み入れたのだろうか。業界で名をはせる投資管理者数人に、キャリアの始まりについて話を聞いた。それは、ウォール街の重役室からははるか遠い場所で始まっていた。

●ロドニー・コメジス氏 

バンガード株式インデックス運用グループのグローバルヘッド

最初の仕事:原子力潜水艦の下級士官

相当な量の訓練を積んだ。最初の1年半は、学校で原子核理論を学び、それから陸上にある基地で原子炉を稼動させる訓練を行った。その後、潜水艦の学校で潜水艦の操縦方法を学んだ。

そしてようやく私は米海軍の潜水艦「アーチャーフィッシュ」に配属された。いったん搭乗すれば、何カ月も海の中だ。その間、世界から遮断される。

キャリアの面では、2つのことが求められていた。1つは、他の人たちを率いること。もう1つは任務をこなすことだ。私は原子炉化学を管理する7人から成るチームを率いるのを手助けすると同時に、航行中に原子炉に異常がないか監視する任務を負っていた。

皆が考えているよりも潜水艦は大きいため、閉所恐怖症にはならなかった。3階建てで、工場で働いているような感じだった。通信手段は限られており、家族からのメッセージを50字以内で受け取ることしか許されなかった。幸いなことに、映画「レッド・オクトーバーを追え!」や「クリムゾン・タイド」のような危機に遭遇することはなかった。

潜水艦に乗っていた当時に学んだことが3つある。

1つ目は、素晴らしいリーダーシップだ。2つ目は人間関係。潜水艦では皆とうまくやっていかなければならない。そして3つ目に、潜水艦を動かす上で、問題を整理し解決するという技術的な側面を学んだ。要するに、魚雷を搭載した10億ドルの潜水艦の中枢を任されているわけだ。これは、22歳の若者にとっては大きな責任だ。

●オマル・アギラール氏

チャールズ・シュワブ・インベストメント・マネジメントの株式最高投資責任者(CIO)

最初の仕事:フォルクスワーゲン「ビートル」の修理

私はメキシコ市で育った。高校生のころ、カネのなかった私はどうにかして自分の車が欲しかった。友人たちは皆、車をもつようになっていて、彼らのことがうらやましかった。自分もクールな人間になりたかった。

メキシコ市は当時、独自動車大手フォルクスワーゲンのコンパクトカー「ビートル」の大きな拠点となっていた。メキシコはビートル世界生産のかなりの割合を占め、それは国内市場向けだった。ビートルはどこにでもあった。

ある人が私に、何台かの古いビートルの修理を手伝ってくれたら、1台くれると言ってきた。それでやる気になって、私は約1年間、修理工として働き、ルーフから水漏れがする20年もののビートルを手に入れた。

当時はユーチューブでやり方を習うわけにもいかず、すべては先輩の修理工から学ばなくてはならなかった。とても数学的で、異なったあらゆるエンジン部品を理解し、それらが全体としてどう機能するかを学ぶことができた。

私が得た最大の収穫は「トライアル・アンド・エラー(試行錯誤)」だろう。何かにトライしたとき、それはうまくいくかもしれないし、失敗するかもしれない。だがどちらにせよ、学ぶことがある。そして、次のチャレンジへと進むことができる。

私はかなり優れた直感力を養うことができた。もし今、1968年製のビートルをくれたなら、私は多分修理できるだろう。だが、テスラのようにすべてが電子化されている場合は、どこから手をつけたらいいのかすら分からないだろう。まったく見当がつかない。

●ラモナ・ペルサウド氏

フィデリティ・インベストメンツのポートフォリオマネジャー

最初の仕事:電話係

私は初め、住んでいた(ニューヨーク市)クイーンズ地区の近所にあるドライクリーニング店で働きたいと思っていた。14歳になったばかりで、自分でお金を稼ぎたかった。だが私の両親は、学校がすべてと考える典型的な移民の親だった。だから、その願いはかなわなかった。

モルガン・スタンレーで職を得たのは、私が大学3年生のときだった。電話係を必要としていて、時給は10ドルだった。1996年当時、それはかなり良い時給に思えた。仕事中に勉強しながら、教科書代も稼げて、私はこの仕事を気に入っていた。

働くうちに、社員が取引の決済をすべて書面で行っていることに気づいた。エンジニアリング専攻の学生として、私は、利用しやすくミスも減らせる応用ソフトウエアを使った書類のデジタル化を提案した。コード化できると思ったのだ。上司はやってみろと言い、それが私にとって金融サービスの世界に入るきっかけとなった。

移民の親は、子どもの仕事に口を出すことで知られる。私の父親は、私がエンジニアになることを切に望んでいた。だが予期せぬ展開こそが人生を面白くさせるものだ。投資は私の脳を喜ばせている。何年も父親を説得しようと試みたが、亡くなる直前でも、私をいぶかしむように見ていた。

*筆者はロイターのコントリビューターで、個人的見解に基づいて書かれています。

外為フォーラムコラム2018年11月4日 / 07:59 / 14時間前更新


ビットコイン誕生10年の「教訓」
Tom Buerkle
2 分で読む

[ニューヨーク 31日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 仮想通貨ビットコインの短い歴史は、経験よりも期待が勝っていることを示している。このデジタルマネーは、手痛い低迷の中で、誕生から10年を迎えた。

詐欺や規制強化により、ライバル仮想通貨の発行は枯渇し、基盤となるブロックチェーン技術もまだ圧倒的な魅力をもつ応用プログラムを生み出してはいない。「サトシ・ナカモト」と称するビットコインの発明者が思い描いたような革命には程遠い状況にある。

10年前の10月31日、ビットコインに関する論文を公開したナカモト氏は女性なのか男性なのか、あるいはグループなのか、その正体は謎に包まれたままだが、銀行や政府を介さずに安全に送金する方法を提供したいと考えた。

粋を集めた最新技術、金融危機後のエスタブリッシュメント(既存勢力)に対する不信感、そしてデジタル通貨で金持ちになるという夢はあらがうことのできない魅力があった。

ビットコイン価格は昨年20倍に跳ね上がり、開発者はわずか1年半の間に、仮想通貨(トークン)を発行して資金を調達する「イニシャル・コイン・オファリング(ICO)」を通じて200億ドル(約2.3兆円)近くを集めた。彼らは、競合する仮想通貨から安全な通信システム、予測市場に至るまで、あらゆることの構築を目指していた。

だが、それは出来過ぎた話だ。

サイバーセキュリティー会社の米カーボンブラックは6月、わずか半年間のうちに11億ドル相当の仮想通貨がハッカーによって盗まれたと推定した。数多くのトークンが消え、詐欺や間違った考え、ずさんな運営の犠牲となった。

中国は今年、取引を承認し新たな通貨単位を決める仮想通貨の採掘者(マイナー)とオフショア取引への取り締まりを強化。昨年にはすでに国内取引を禁止している。米証券取引委員会(SEC)はいくつかのビットコインETF(上場投資信託)の申請を却下し、大半のICOは有価証券関連法の監視下にあるべきとしている。

ビットコイン価格は昨年12月のピークから68%下落している。取引処理速度の遅さと、マイナーは多大な労力を必要とすることから、投機的な投資手段の域を出ない可能性は高い。ICOブームは収束し、ブロックチェーン技術の普及も限定的だ。

それとは対照的に、英科学者ティム・バーナーズ・リー氏が開発したワールド・ワイド・ウェブ(WWW)は、誕生から10年の段階でインターネットサービスのAOLがメディア大手タイム・ワーナーと合併。当時創立6年だったネット通販アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)は30億ドル近くを売り上げている。

それでも、ナカモト氏の夢は生き続ける。

セコイア・キャピタルやアンドリーセン・ホロウィッツのようなベンチャーキャピタルが、ブロックチェーン開発者の資金調達源として急速にICOに取って代わりつつある。また、投資信託フィデリティは、機関投資家向けに仮想通貨取引や管理サービスを提供するための子会社を設立している。

一方、米サンフランシスコに拠点を置き、仮想通貨の取引所を運営するコインベースは今週、3億ドルを調達し、同社の価値は80億ドル近くに達した。

Amazon.com Inc
1665.53
AMZN.ONASDAQ
+0.00(+0.00%)
AMZN.O
だが、こうした投資が実を結ぶのを目にするには、さらに10年を要するかもしれない。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/money-managers-first-jobs-idJPKCN1N70OH

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/290.html

[経世済民129] 中国人、ギリシャ不動産の「爆買い」に走る訳 米イラン再制裁発動へ、乱れる世界の足並み トランプ大統領、中国と貿易合意に 
トップニュース2018年11月2日 / 16:48 / 2日前
アングル:

中国人、ギリシャ不動産の「爆買い」に走る訳
Angeliki Koutantou
4 分で読む

[アテネ 29日 ロイター] - アテネの空港では、週に3回到着する何百人もの中国人投資家を、ギリシャの不動産仲介業者が出迎えている。売り出し中の物件に案内するため、市内の現場に車で直行する。

底値の不動産価格と、欧州の中でも寛大な「ゴールデン・ビザ」制度に引き寄せられ、中国からギリシャにやって来る訪問者は後を絶たない。ギリシャの場合、不動産に25万ユーロ(約3200万円)投資すれば、更新可能な5年間の滞在許可が得られる。

それは、首都アテネにあるアクロポリスの丘を一望できる寝室3部屋付きの物件を購入するには十分な額だ。

ギリシャ経済が2009年の債務危機を受けて崩壊し始めてから、初めて不動産市場に回復の兆しが見えている。ただし不動産価格はピーク時と比べ、いまだに4割程度低い水準にある。

アテネ在住のバシリスさんは昨年、自宅の買い手を見つけることをほぼあきらめかけていたとき、自宅アパート前に止まったミニバンから、中国人家族4人が降り立った。その翌日、バシリスさんはオファーを受けたという。

「彼らが内見したのは一度だけ。頭金を支払ってもらい、売却手続きが始まった」

バシリスさんは2007年、将来有望なイェラカス郊外の物件を32万ユーロで購入した。その後、成人した子ども2人にそれぞれアパートを買ってやるため、自宅の売却を決めたという。バシリスさんは中国人家族に22万ユーロで自宅を売った。

ギリシャ中央銀行のデータによると、不動産価格は第2・四半期に前年同期比で0.8%上昇。第1・四半期は0.1%の上昇で、2008年以降で初めて上昇に転じた。


不動産向け海外直接投資は昨年、前年に比べ91%増加して2億8700万ユーロに達した。一方、ギリシャ税務当局のデータによると、不動産販売からの税収は今年1─7月に年率41%増加して、2億0470万ユーロに上った。

「電話による問い合わせが増えている」と、アテネ不動産協会のレフテリス・ポタミアノス会長は言う。同協会には約3000の仲介業者が加盟している。「圧倒的多数は外国人だが、ギリシャ人もいる。群を抜いているのは間違いなく中国人だ」

今年と来年にアテネ圏の住宅価格は年平均5─7%上昇すると、同氏は予想する。


<裏側>

人民元が今年、対ドルで6%超下落していることも追い風となっている。中国政府は海外投資を制限しているが、中国の投資家は国外に資金を持ち出す術を見いだしている。

北京出身の元会計士で、ギリシャ投資によるゴールデン・ビザ取得を検討しているリアン・ウェンミンさん(29)は、ギリシャの不動産購入は、単に価格が安く、ビザ取得で、欧州連合(EU)域内を自由に移動できるからだけではないと話す。

ギリシャの温暖な気候も魅力の1つだと、リアンさんは言う。

「ギリシャの天気は非常に良く、人も食べ物も気に入っている」と、アテネ中心部を見渡せる高級住宅街にあるアパートのバルコニーでリアンさんはロイターに語った。リアンさんはこの物件の購入を検討しているという。

リアンさんはアテネ中心部にあるアパート1─2戸を25万ユーロで購入し、1つを米エアビーアンドビー(Airbnb)のような民泊仲介サイトで貸し出す計画だ。さらに可能なら、南部郊外に自宅用の物件も購入したいと考えている。

「25万ユーロ出せば、ここではアパート物件を2、3戸買えるが、北京で同じ金額を出しても、まあまあ良い場所にある広さ30平方メートルの物件を1つしか買うことができない。それは大きな違いだ」とリアンさんは語った。

かつて中国人に人気の移住先だった米国やカナダ、オーストラリアで昨年規制が強化されたことも、ギリシャに有利に働いていると、北京に拠点を置くブルーム・コンサルティングのアリス・マ営業部長は指摘する。

同じく5年間の滞在を許可するポルトガルのゴールデン・ビザ制度も、英仏の投資家と同様、中国人の関心を引き付けている。だがポルトガルの場合、少なくとも50万ユーロの投資が必要となる。

Slideshow (4 Images)
イオアニス・アナスタシアディスさんが経営するアナスタシアディス・グループは、ビザ取得のために弁護士や公証人をあっ旋するなど、中国人投資家にさまざまなサービスを提供している。

「ギリシャは徐々にだが、移住先として人気を集めつつある。中には、『ついのすみか』として検討されることもある」とアナスタシアディスさんは言う。


しかし借り手にしてみれば、中国人が主導するギリシャ住宅市場への関心は、良いニュースばかりではない。

「貸すために買う」という多くのバイヤー心理は賃料を押し上げ、賃借人が値上げに同意しなければ、立ち退きを強いられることもあり得ると、ギリシャの借家人組合を率いるアンゲロス・スキアダス氏は指摘する。

米不動産ネットワーク「RE/MAXインターナショナル」に加盟するギリシャのフランチャイズ店の調査によると、ギリシャの賃料は9月までの1年間で前年比8.4%上昇した。

「昨年から、この問題は悪夢になりつつある」とスキアダス氏。「大家から脅されて賃借人は出て行くことを余儀なくされ、新たに物件を探している人は法外な賃料に直面している」

組合は最低賃貸借期間を現行の3年から6年に延ばすようギリシャ政府に働きかける計画だと、スキアダス氏は語った。

2013年にゴールデン・ビザ制度が開始されてから、3404件の滞在許可が下りており、そのうち約1700件は中国人に対してだったと、ギリシャ投資・貿易センターのデータは示している。

世界の不動産を扱う中国サイト「Juwai.com(居外)」のキャリー・ロウ最高経営責任者(CEO)は、今年の第1・四半期にギリシャに関する問い合わせが倍増し、第2・四半期はさらに3倍に増えたと話す。「劇的な増え方だ」と同CEOは語った。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
https://jp.reuters.com/article/chinese-greek-property-idJPKCN1N40XT

 

 
米イラン再制裁発動へ、乱れる世界の足並み
輸出用原油を積んだタンカー「デボン」(イラン)
By Ian Talley
2018 年 11 月 3 日 02:38 JST

 トランプ米政権は週明け5日、イラン産原油の禁輸や同国向け銀行取引の禁止措置を全面的に復活させ、対イラン制裁を再発動する。イランでは制裁を控え、景気がすでに急激に落ち込んでいる。

 米国にとって目下の懸念は、過去に制裁網をほころばせたような抜け穴をふさぎ、これまでイラン政府の抵抗を支えてきた資金の流れを断つことができるかどうかだ。

 オバマ政権による制裁が世界的な支持を得たのとは異なり、今回は米国の政策に同盟国を含む各国から反対の声が上がっており、抜け穴を封じるのはかなり難しい作業となりそうだ。

 それでもトランプ政権の出足は順調だ。米国が新たな対イラン政策を導入して以降、イランの原油輸出量は日量100万バレル余り減少した。この減少幅はオバマ政権時代が同じ程度の期間に達成した水準の2倍超に相当する。

 国際通貨基金(IMF)は今年、イランの2018年国内総生産(GDP)成長率が4%になるとの見通しを示していたが、ここへ来て2年間はリセッション(景気後退)に見舞われ、来年の成長率はマイナス3.6%になると予想している。

 トランプ政権は、オバマ時代の制裁が収めた成功を再現しようとしている。オバマ政権の制裁は15年の核合意につながった。トランプ政権は5月、この合意から脱退。核兵器開発の阻止のみならず、長距離ミサイル禁止やシリア、レバノン、イエメン、イラクなどの紛争介入を抑止することも含め、より包括的な合意を目指すと言明した。

 イラン担当特別代表に任命された米国務省のブライアン・フック政策企画局長はインタビューで、「過去の経緯を見れば、(イランの)現体制は大きな圧力にさらされない限り、行動を変えたり交渉の席に着いたりすることはない」と指摘した。

 イラン専門家によると、イラン国内では制裁を受けて緊張が高まっている。輸送コストの大幅上昇に反対するトラック運転手らは先日、経済への不満を訴える全国横断の抗議運動を繰り広げた。

 だが、イラン政府は完全に孤立しているわけでもない。世界の主要国の多くが、トランプ政権の核合意脱退や制裁再開に反対を唱えている。欧州などの複数の国が、イランを核合意にとどまらせる狙いなどを背景に、イランとの関係を維持しようとしている。

 イランに対する一部国のこうした姿勢は制裁回避の免罪符となりかねない。

 米ナビガント・コンサルティングのグローバル投資マネジング・ディレクター、アルマ・アンゴッティ氏は「米国の制裁プログラムに対する不満は、制裁すり抜けを暗黙のうちに援護することになる」との見方を示した。


 

トランプ大統領、米国は中国と貿易に関して合意に達するだろう
Alyza Sebenius
2018年11月3日 8:39 JST
中国の習国家主席とG20首脳会議に際し夕食を共にする予定
「中国と取引をすることになるだろう。非常に公正な合意になる」
トランプ米大統領は2日、米国と中国が貿易摩擦を解消するための合意に達すると考えており、そうなれば両国に有益だろうと述べた。

  大統領はホワイトハウスで、今月末からアルゼンチンで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議に際して、中国の習近平国家主席と夕食を共にすることも明らかにした。

  同大統領はウェストバージニア州での集会に向かうため大統領専用ヘリ「マリーン・ワン」に搭乗する前に、「われわれは中国と取引をすることになるだろう。そして私はそれが全ての人にとって非常に公正な合意になると思う」と発言。

  米中両国が「何かを行うことに非常に近づいており」、そして「多くの進展があった」と語った。

  事情に詳しい関係者4人によると、トランプ大統領は重要閣僚に対し、エスカレートする貿易摩擦に終止符を打つために想定される合意条件の草案作成開始をスタッフに指示するよう求めた。

  同関係者のうち2人によると、ライトハイザー通商代表部(USTR)代表はG20の際に貿易に関する合意を追求することに難色を示しており、他の閣僚に懸念を表明した。同代表のオフィスにコメントを求めたが、今のところ回答は得られていない。

原題:Trump Says He Thinks U.S. Will Reach Trade Deal With China(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-02/PHL9AC6JIJUO01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/291.html

[経世済民129] 河野外相、補償は「韓国側に責任」ー徴用工判決 袋小路の日韓関係、徴用工判決が新たな火種 韓国で広がる「65年体制見直し論
河野外相、補償は「韓国側に責任」ー徴用工判決
延広絵美、Isabel Reynolds
2018年11月4日 15:38 JST 更新日時 2018年11月4日 15:55 JST
賠償問題は65年の請求権協定で合意、半世紀の「日韓関係の基盤」
判決は法的基盤を完全否定、韓国政府がまず問題解決を
河野太郎外相は、日本企業に賠償を命じた韓国最高裁の元徴用工訴訟判決について、韓国国民への補償や賠償は韓国側が責任を持つべきだ、との認識を示した。

  河野外相は4日、ブルームバーグのインタビューで、日本と韓国2国間の賠償問題については1965年の日韓請求権協定で合意しており、「過去半世紀の日韓関係の基盤となっている」と強調。こうした認識は、両国間で「明白なことだ」と述べた。インタビューは英語で行われた。


河野外相Photographer: Kentaro Takahashi/Bloomberg
  韓国最高裁は先月30日、日本の植民地時代に強制労働をさせられたとして、韓国人の元徴用工4人が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に損害賠償の支払いを命じる判決を下した。日本側は、安倍晋三首相が「国際法に照らしてあり得ない判断だ」と国会答弁するなど強い不快感を示している。

  韓国の文在寅大統領は、判決への政府の対応をいまだ明らかにしていない。

  河野外相は、判決は「日韓関係における法的基盤を完全に否定するもの」であり、2国関係を考える上では「まずこの問題を解決する必要がある」と指摘。韓国側が問題解決に動かない限りは両国関係は前進することはない、との考えを示した。

(2段落に英語でインタビューが行われた旨を追記.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-04/PHNMUN6JIJUW01?srnd=cojp-v2



ロイター2018年11月04日 09:29アングル:
袋小路の日韓関係、徴用工判決が新たな火種に


Linda Sieg and Hyonhee Shin

[東京/ソウル 31日 ロイター] - 韓国最高裁が元徴用工に対する賠償を日本企業に命じたことで、強硬化する世論や歴史観の違いに直面している日韓両政府は、事態が両国関係の危機に発展しないよう慎重に対応する構えだ。

韓国最高裁は30日、植民地時代に「徴用工として日本で強制的に働かされた」と主張する韓国人4人が新日鉄住金<5401.T>に損害賠償を求めた訴訟で、同社に賠償を命じる判決を下した。

日本政府は「あり得ない判断」だと反発する一方で、北朝鮮問題における日韓協力に影響が出ないよう期待を表明した。

韓国外務省によると、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相と河野太郎外相は31日に行われた電話会談で、「未来志向の両国関係の発展」に向けた協力を継続する重要性を確認した。

日韓両国は、北朝鮮による核・ミサイル開発を抑制するために協力する必要があるほか、緊密な経済関係にある。韓国の統計によると、日本企業は昨年、韓国に18億4000万ドル(約2080億円)を投資しており、韓国にとって第2位の海外投資国となっている。

だが両国の関係は、日本による朝鮮半島の植民地支配(1910─45年)や戦争、そして従軍慰安婦の問題で、長年揺れてきた。

「両国ともに、歩み寄る気持ちが不足している」と、テンプル大学日本校アジア研究学科ディレクターのジェフリー・キングストン教授は指摘する。「基本的に、政治的な立場を超えて、韓国人は過去の傷に対する日本の対応が不適切だと感じている」

「日本は、法的に解決済みだと考えており、(他の企業に対する)請求のパンドラの箱を開くことになるため、柔軟性を示すことには消極的だ」と、キングストン氏は分析する。

三菱重工業<7011.T>や三井金属鉱業<5706.T>などを相手取った似たような訴訟が14件起こされており、うち2件は、原告が752人に上る集団訴訟だ。

韓国側は、戦時中の強制労働被害者は15万人近くに上ると主張しており、そのうち約5000人が存命だが、徴用工の遺族も訴訟の原告になることが可能だ。

日本側は国際裁判も視野に入れていると述べているが、河野外相は文在寅(ムン・ジェイン)政権の出方を待つ考えを記者団に示した。

「われわれは、次の行動を模索し始めたところだ。首相の下に、民間専門家も含めたタスクフォースが設置される」と韓国政府の当局者はロイターに語り、「非常に難しいが、影響を最小にとどめるような賢明な対応を考えなければならない」と付け加えた。

<選択肢>

日本側は、賠償問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場だ。

韓国の歴代政権はこの見方に同意してきたが、最高裁は今回、同協定でも、元徴用工個人が賠償請求する権利は消滅していないとの判断を示した。文政権は、最高裁の判断を尊重するとしている。

日本の一部専門家は、韓国が元徴用工に補償を提供するための基金を設置し、両国の民間企業が資金を拠出する案が選択肢として考えられると指摘する。

独裁体制を敷いた当時の朴正煕元(パク・チョンヒ)大統領の下で結ばれた1965年協定により、韓国企業は日本の援助金の恩恵を受けた。だが個人に補償が渡ることは少なく、元徴用工らは1990年代に声を上げ始めた。

ドイツでは2000年に、ナチス・ドイツ時代の被害者に補償を行う基金を、同国政府と企業が設置しており、それを参考にできるとの指摘もある。だが日本企業に参加する意思があるかは不透明だ。

韓国当局者は、懐疑的な見方を示している。最高裁判決には法的拘束力があり、外交的な調整余地は限定的だと見られている。一方で、両国ともに大衆の怒りを買うリスクを抱えている。

「日本との間で歴史的に受け継がれた問題は、すべて非常に政治的で、反日感情を再燃させる可能性がある」と、韓国大統領府で外交安保首席秘書官を務めた千英宇(チョン・ヨンウ)氏は言う。「政府や、数十年前に日本の支援金を受け取った企業にどのような責任があるかについても、議論が高まるだろう」

安倍晋三首相の保守的な政策に反映される日本の右傾化も、解決の妨げになる可能性がある。

「不幸なことに、日本の現政権は、戦後はすでに終結し、好ましくない過去を再び持ち出すことは国の権威を傷つけると考える人々によって運営されている」と、城西国際大学の招聘教授で、歴史和解の問題に詳しいアンドリュー・ホルバート氏は言う。

「彼らの支持基盤は、この点について非常に明快だ」と、同氏は付け加えた。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

タグ:
日韓関係韓国徴用工訴訟
支持する(2)
コメント(51)
この記事を筆者のサイトで読む
FacebookでBLOGOSをフォロー

ロイター
フォローする
ロイター通信が提供するニュースです
焦点:米中間選挙で「トランプ化」進む共和党、移民攻撃に同調
アングル:米中間選挙、影響を受けるトランプ政策と注目銘柄
トルコ大統領、記者殺害はサウジ「最高レベル」の指示
アングル:10月の異変、米国株・債券「同時下落」の衝撃
米株反落、アップル株下落や貿易楽観論後退で
記事一覧へ

あわせて読みたい

石破氏「徴用工判決は理解不能」
石破茂


韓国が解決済みの問題蒸し返す訳
文春オンライン


会社応募を「徴用工」表記改めよ
早川忠孝


徴用工問題 橋下氏の見解に反論
木走正水(きばしりまさみず)


文大統領が徴用工裁判スルーの訳
tenten99
https://blogos.com/article/336354/

 

文春オンライン2018年11月02日 17:00「元徴用工判決」なぜ韓国は解決済みの問題を蒸し返すのか?韓国で広がっている「65年体制見直し論」 - 菅野 朋子 1/2


 予兆はあった。

【画像】記者に囲まれる原告・李春植さん

 2012年6月、大統領選挙に出馬を決めた文在寅、当時民主統合党常任顧問は、「(元徴用工の)個人請求権が消滅したということはあってはならない」と話していたし、大統領になってまもない昨年8月15日の演説でも、「被害者の名誉回復と補償、真実の究明と再発防止の約束という国際社会の原則がある」と語っていた。


文在寅・韓国大統領 ©時事通信社

 そして、10月30日。

韓国の大法院(最高裁判所)は、元徴用工の個人請求権を認める判決を下した。

原告は勝訴を噛みしめる面持ちだった
 これにより被告の新日鉄住金の再上告は退けられ、4人の原告にそれぞれ1億ウォン(約1千万円)の損害賠償金の支払いを命じたソウル高等裁判所の判決が確定した。

 その日、裁判を終えた原告は記者が取り囲む場に粛々と現れた。

 当日、大法院の法廷に続く入り口には、日韓のメディアがぐるりと輪になって、原告の登場を今か今かと待ち構えていた。勝訴すれば歓喜に沸いて現れるだろうと思っていたので、支援者らも勝訴をかみしめるような面持ちだったことに意表を突かれた。

 原告4人のうち、インタビューに応えたのは、李春植さん(94歳)ひとりだ。他3人はすでに他界している。耳が遠いのだろう、記者が大きな声で所感を訊くと、李さんは、「私を含めてもともと4人いたのに私ひとり裁判を受けることになり、胸が痛く、とても悲痛だ」と絞り出すように言葉を押し出した。

「日韓請求権協定」で解決済みとされていたはずだったのに……
 そんな姿を目の当たりにし、ひとりの人生に思いを馳せれば、胸が塞がる思いがした。第2次世界大戦時、日本の植民地時代に強制労働の被害を受けた元徴用工の環境は苛酷だったと聞く。

 しかし、元徴用工への補償問題は、14年かけて1965年に日韓で締約された「日韓請求権協定」により解決済みとされていたはずだ。日本からの経済協力金のうち無償3億ドル(当時1080億円)に補償金が含まれ、韓国政府はその後関連法を制定した後、75年から一人当たり30万ウォンの補償金を支給した。さらには、2005年、盧武鉉元大統領時代に大々的に検証された過去史清算でも、「慰安婦とサハリン残留者、被爆者は対象外」としたが、元徴用工については含まれると判断された。また、韓国政府の措置は不十分であり、責任があるともしていた。

独裁政権下の請求権協定は「当事者不在だった」と主張
 裁判を起こした韓国の元徴用工の主張の中には、1965年の協定では当事者が不在だったという思いがあるという。中道派の韓国全国紙記者の話。

「韓国では、87年に独裁政権から民主化を勝ちとって以降、90年代に入って、戦後補償に大きく目が向けられました。元慰安婦だった女性が自ら名乗りでるなど当事者が声を上げ始めた。慰安婦合意でも当事者不在がいわれましたが、元徴用工も同じで、1965年の請求権協定では自分たちの声は疎外されたという思いがあるのです」

敗訴を重ねる中、まさかの「差し戻し」の背景には盧武鉉?
 元徴用工は、95年から日本で損害賠償を求める裁判を起こしたが次々と敗訴。2005年からは韓国で裁判を起こし、やはり敗訴を重ねていた。しかし、その局面ががらりと変わったのは2012年5月。大法院は原告敗訴を取り消し、事件をソウル高等裁判所に差し戻したのだ。翌年の2013年7月にはソウル高裁で原告が一部勝訴し、被告の新日鉄住金は判決を不服として大法院に上告した。

 この大法院のまさかの差し戻し判決の背景についてはさまざまに取り沙汰されたが、

「大きく2ついわれていて、ひとつは2011年8月に『慰安婦問題で、韓国政府が日韓の紛争解決に向けての措置をとらなかったことは憲法違反』とした憲法裁判所の判決。そして、もうひとつが差し戻し判決を下した大法院の当時の判事が盧武鉉元大統領時代に任命された人物だったためという点でした。いずれにしても、この判決は日韓関係の地雷といわれていて、いつ爆発するかと怖れられていたのですが……」(同前)

朴槿恵のスキャンダルで再び裁判が動き出した
 5年以上も保留されていた裁判がこの7月ににわかに動き出したのは、日本との関係を憂慮し、判決を引き延ばすことを朴槿恵前大統領がことが明るみにでたと発表されたためだ。文在寅大統領が推し進めている「積弊清算」の賜といったところか。この事実が発覚した翌月の8月には差し戻しの審理が始まり、10月30日の判決へと続いた。

 韓国メディアは、判決自体には異議はないものの、「韓日 不実な過去清算…53年フタしていた宿題が水面上に」(京郷新聞10月31日)と1965年の日韓基本条約を見直すべきだという「65年体制見直論」を示唆する報道や「大法院 強制徴用賠償せよ 韓日関係に台風」(中央日報、同)と日韓関係を憂慮する声を掲載している。

韓国で広がる「65年体制見直し論」
「65年体制見直し論」は、日韓基本条約が結ばれて50周年と言われた2015年頃から浮上した。当時の軍事政権と民主化された政権では立場が異なるとし、また、玉虫色といわれる日韓基本条約を見直すべきとするもので、最近では進歩系の記者の中に「トランプ米大統領も状況が変わったとして国家間の条約を破棄しているケースもある」と言う人もいる。

 今回の判決について街の人にも話を聞いてみた。「当然」(40代会社員)と受け止める人もいたが、「あまり関心がない」(40代主婦)や「条約で決めたことを国内事情で反故にしてしまうことは国としてはあるまじきこと」(60代)と眉を潜める人もいた。全体的には、関心の高さはあまり伺えなかった。

 2012年5月の差し戻し判決の際には、韓国政府(李明博元大統領時代)は判決後4時間半あまりで、「請求権協定ですでに解決済み」として大法院の判決を否定したが、今回は、3日経った11月2日現在もまだその立場を明らかにしていない。

 「(韓国政府は)2012年5月の時とは異なる立場なだけにより慎重になっていて、タイミングを計っているのではないかとも囁かれています」(同前)

 韓国では大法院の判決に希望を見出したとして「訴訟を起こしたい」という問い合わせがでているといわれる。一方、日本企業70社を相手にした元徴用工の関連裁判は他にも15件の裁判が進行中だ。

(菅野 朋子)
https://blogos.com/article/336108/?p=2
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/292.html

[経世済民129] 中国とパキスタン「一帯一路」で協力継続 外貨危機回避へ道半ばサウジ60億ドル支援 パ首相、訪中で財政支援要請IMFにも
中国とパキスタン「一帯一路」で協力継続

2018/11/4 21:24 
【北京=高橋哲史】中国の李克強(リー・クォーチャン)首相とパキスタンのカーン首相は3日、北京で会談し、巨大経済圏構想「一帯一路」での協力継続を確認した。パキスタンは同構想に伴う輸入の拡大で外貨不足に陥っており、中国は巨額の資金支援に応じたもようだ。アジアの新興国で「一帯一路」にからむ事業の縮小が相次ぐなか、これを食い止めようとする中国の動きが表面化してきた。

中国国営新華社が4日公表した共同声明によると、カーン首相は「習近平(シー・ジンピン)国家主席が提唱した『一帯一路』は地域と国際間のつながりを強化する」と称賛した。両国は一帯一路の一環で、発電所や道路などのインフラを約620億ドル(約7兆円)かけて整備する「中パ経済回廊」(CPEC)の建設を進めており、その加速でも一致した。

パキスタンはCPECに必要な電気設備や鉄鋼製品などの輸入急増で、深刻な外貨不足に陥っている。10月19日時点の外貨準備高は78億ドルと2年前に比べておよそ6割減り、対外的な支払いが滞りかねない状況だ。

カーン首相は習近平国家主席とも2日に会談し、資金支援を要請した。具体的な額は明らかにしていないが、中国はパキスタンへの資金支援に応じる代わりに、カーン首相から一帯一路に対する協力の継続を取りつけたとみられる。

中国の李首相はカーン首相との会談で、CPECについて「十分な論証をへたもので、ビジネスの原則に合致しており、経済的な見返りもある」と語った。中国が一帯一路の沿線で採算の合わない事業を進め、関係する発展途上国を借金漬けにしているという米欧の批判を意識した発言と受け止められている。

カーン首相は「引き続き中パ経済回廊の建設を断固として推進し、強力な措置を講じてプロジェクトおよび中国の機関と人員の安全を守る」と応じた。パキスタンが今後も一帯一路に全面的に協力する考えを鮮明にしたことで、ミャンマーなど一帯一路の事業縮小に動くほかの国にも影響する可能性がある。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37353640U8A101C1FF8000/


 

パキスタン、外貨危機回避へ道半ば サウジ60億ドル支援も
中国・台湾 南西ア・オセアニア 中東・アフリカ
2018/10/24 19:30 
【ニューデリー=黒沼勇史】パキスタンがサウジアラビアから総額60億ドル(約6750億円)の経済支援を受け入れる見通しとなった。8月にカーン新政権が発足して以降で、パキスタンが国外から支援を取り付けるのは今回が初めて。ただ外貨の不足額は120億ドルに上り、喫緊の課題である外貨積み増しは道半ばだ。危機を脱するには国際通貨基金(IMF)や中国からの支援獲得も不可欠な情勢が続く。

「一帯一路」事業で債務が膨らみ外貨危機に陥ったパキスタンはサウジから支援を受ける(9月、カラチ)=ロイター

パキスタン外務省の23日の声明によると、輸入や対外債務の償還など、同国の対外支払いを支援するため、サウジが1年間、パキスタンに30億ドル融資する覚書を交わした。またサウジはパキスタンに対し、原油・石油輸入の支払いを巡り最大30億ドル、1年間まで延期できる措置をとる。同措置については今後3年に渡って供与する。

パキスタンの外貨準備高は10月12日時点で80億8890万ドルと2年前の194億ドルから激減し、輸入の2カ月前後という危機的水準に陥っている。原油輸入の支払いや前政権が中国の支援で進めたインフラ整備に伴う対外債務がかさんでいることが響いている。

ウマル財務相はパキスタンの経常赤字は「月20億ドル」で、他国や国際機関から支援を受ける「必要のある金額は120億ドル」と述べており、サウジの支援で賄えるのはその半分にとどまる。

ロイター通信によると、パキスタン財務省は24日、サウジからの資金支援で合意したものの、IMFへの支援要請を引き続き計画していることを明らかにした。ウマル財務相は10月上旬、IMFに対して財政支援を要請したと公表。その規模は70億〜80億ドルとされる。IMFは11月に交渉団をパキスタンに送る。

ただパキスタンのカーン政権は、これまでIMFへの支援要請を先送りしてきた。パキスタンでは中国の広域経済圏構想「一帯一路」の関連インフラ事業が進むが、関連する中パ間の融資契約の多くが非公表だ。IMFが支援条件として中パ間契約の開示を求めれば中国の反発は必至で、パキスタンはIMF支援を「予備の選択肢」と見なしてきた。

今後の焦点は中国がパキスタンを金融支援するかに移る。カーン首相は11月初旬に、就任後初めて中国を訪問する予定だ。そこで中国による支援を獲得できれば、IMFへの支援要請額を縮小する可能性もありそうだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36871220U8A021C1FF1000/?n_cid=SPTMG002

 

パキスタン首相、訪中で財政支援要請へ IMFにも依頼
中国・台湾 南西ア・オセアニア
2018/11/1 17:04
保存 共有 印刷 その他
【ニューデリー=黒沼勇史】外貨危機に陥ったパキスタンの支援獲得が大詰めを迎えている。カーン首相が2〜5日に初訪中し、習近平(シー・ジンピン)国家主席らに支援を求める。7日には国際通貨基金(IMF)の交渉団がパキスタン入りし支援の可否を詰める。同国は100億ドル(約1兆1千億円)程度の外貨積み増しが必要で、10月にサウジアラビアから60億ドルの支援を取り付けた。今後は中国とIMFを両にらみで、残りの資金を確保する構えだ。

カーン政権は8月の発足当初、IMF支援を「予備の選択肢」(ウマル財務相)とみていた。国内で進む中国の広域経済圏構想「一帯一路」事業の融資契約などをIMFに開示すれば中国が反発するからだ。10月上旬、IMFに支援要請の方針を伝えたが、その後サウジが60億ドルの支援を約束すると、カーン首相は「あまりIMFに頼る必要がなくなる」と方針が二転三転している。

両にらみする中国とIMFのうち、まずカーン氏が交渉するのは中国だ。詳細の日程は未公表だが、2日以降に北京で習主席や李克強(リー・クォーチャン)首相と会談する。パキスタン側は30億ドル前後の支援獲得をめざしているもようだ。

パキスタン国立防衛大のジア・ウル・レーマン教授は「中国からはサウジ(の60億ドル)ほどの支援額は期待できないが、貿易面の配慮があるのではないか」と指摘する。

パキスタンの外貨準備高は10月19日時点で78億ドルと、2年前の194億ドルから激減し、対外支払いが滞るリスクが増している。一因は一帯一路事業に伴う電気設備や鉄鋼製品などの輸入急増だ。レーマン教授は「一帯一路事業の見直しも議論するはずだ」と予想する。

中国も支援に前向きだ。華春瑩副報道局長は先週の記者会見で「パキスタンが財政面で難題に直面していることは承知している。(中略)我々にできる最善の支援を提案している」と述べた。カーン首相は5日に上海で開幕する「中国国際輸入博覧会」に招待されており、対中貿易赤字の縮小に期待が高まっている。

一方、IMFの交渉団は7日にパキスタン入りし、20日ごろに結論を出す見込みだ。ウマル財務相は10月11日、インドネシア・バリ島でIMFのラガルド専務理事と会談。パキスタンメディアによると70億〜80億ドルの支援要請を伝えた。ただ中国の対パ支援の規模が十分なら、最終的にIMFに要請する支援額が減る公算が大きい。

パキスタンはこれまでにIMFに対し13回、財政支援を要請した。IMF支援を受ければ、他の国際機関からの借り入れや国際金融市場での資金調達がしやすくなる。そのためパキスタンは少額であってもIMFに支援を求めるとの見方も根強い。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37236630R01C18A1FF2000/?n_cid=SPTMG002

 

中国外相「パキスタンの債務膨張、一帯一路と無関係」
2018/9/10 0:30日本経済新聞 電子版
 【ニューデリー=黒沼勇史】中国の王毅国務委員兼外相は7〜9日、パキスタンを訪問し、カーン首相、クレシ外相と相次ぎ会談した。同国のインフラ整備を引き続き支援する考えを表明。パキスタンで増える対外債務については、中国の広域経済圏構想「一帯一路」とは「無関係」と強調し、国際社会の見方に真っ向から反論した。一方、中国がパキスタン財政を支援するかどうかについては明言を避けた。

中国の王毅外相(右)は9日、パキスタンのカーン首相(左)と会談した(イスラマバード)=パキスタン政府提供
中国の王毅外相(右)は9日、パキスタンのカーン首相(左)と会談した(イスラマバード)=パキスタン政府提供

 7月の総選挙を経てカーン新政権が発足した8月以降で、中国の閣僚がパキスタンを訪れるのは今回の王外相が初めて。パキスタンは900億ドル(約10兆円)を超える対外債務を抱え、外貨不足にも直面しており、王外相が支援を表明するかが注目されていた。

 首相府の声明によると、王外相は9日、カーン首相と会談し、一帯一路の一部で、パキスタンを縦断する総工費620億ドルのインフラ事業「中パ経済回廊(CPEC)」の重要性について「両国民の相互利益になる」と強調。カーン首相もCPEC事業の継続を約束したという。

 8日のクレシ外相との会談後の共同記者会見で、王外相はパキスタンの対外債務について「CPECとは無関係だ」と主張した。債務の「47%は国際金融機関の融資だ。CPEC22事業のうち18事業は中国の直接投資か援助で、(政府間)融資は4事業のみだ」とも強調。CPECのための中国の融資が原因となりパキスタンが「債務のワナ」に陥ったとする国際社会の見方を退けた。

 パキスタンの外貨準備高は8月末で98億ドルで、輸入の2カ月分という危機的水準だ。債務償還の増加や、経常収支赤字の拡大が原因で、2年弱で半減した。中央銀行によると貿易赤字の30%超が対中赤字で、現地紙は対外債務の43%超が中国からの融資と報じる。外貨準備高の積み増しに向け、カーン政権が中国や国際通貨基金(IMF)に支援を要請するとの観測が流れている。

 王外相は8日の記者会見で「パキスタンは難題に直面しているが、それらは一時的なものだ」とする見方を示した。同国の対中貿易赤字の縮小に向け、製造業の育成に協力するとも表明した。

 パキスタンの対外債務圧縮や外貨準備高の積み増しに中国が協力するかについては、一切の対外的な発言を控えたもよう。ただ「中国と米国は国際社会と共にパキスタンの新政権を支援すべきだと信じている」と述べており、IMFとの協調支援も視野に入れている可能性をうかがわせた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35155370Q8A910C1000000
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/293.html

[原発・フッ素50] 「原発再稼働」をいつまでタブーにするつもりなのか 北海道ブラックアウトでも再稼働を口にしない政府の異常性 活断層の指摘
「原発再稼働」をいつまでタブーにするつもりなのか

北海道ブラックアウトでも「原発再稼働」を口にしない政府の異常性
2018.11.5(月) 石川 和男
川内原発再稼働、「原発ゼロ」状態に幕
九州電力が公開した、川内 (せんだい) 原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉容器内に入れられる燃料棒(2015年7月7日撮影)。(c)AFP/KYUSHU ELECTRIC POWER 〔AFPBB News〕

 福島第一原子力発電所の事故発生から7年半が過ぎた。以来、日本のエネルギー政策は大幅な見直しが迫られるようになった。しかし再生可能エネルギーだけで国内の電力需要を満たせるわけはなく、日本は日々莫大なコストをかけ、化石燃料を燃やして電気を賄っている。この状態を続けることはわれわれにとって得策なのだろうか──。過度な原発アレルギーに陥り、真っ当な議論ができなくなっている現状に、『原発の正しい「やめさせ方」』の著書がある政策アナリストの石川和男氏(NPO法人社会保障経済研究所代表)が警鐘を鳴らす。(JBpress)

胆振東部地震でピタリと止んだ「脱石炭」の声
 そろそろわれわれは、電力問題についてリアルに考えなければならないのではないか。

 北海道胆振東部地震で、道内最大の石炭火力発電所・苫東厚真発電所が止まってしまい、北海道全域がブラックアウトに陥った。国内電力史上、最大規模の大停電は復旧にも時間を要し、北海道の人々は苦しい生活を強いられた。

 先ほど、苫東厚真発電所をあえて「石炭火力発電所」と紹介したのは、この発電所が石油でも天然ガスでもなく、石炭を燃焼させ発電している施設であることを思い起こしてほしいからだ。

 この数年、世界的に「脱石炭」の大きな流れがきている。「地球環境のことを考えるならば、環境負荷が大きい石炭火力はやめるべきだ」という意見が勢いを持つようになり、フランスは2021年までに石炭火力発電を全廃することを決め、ドイツも脱石炭火力に向けた委員会を立ち上げ、2018年末までに廃止時期を含んだ最終案をまとめるという。ひところ大気汚染が深刻だった中国も、石炭燃料の使用量削減などで大気の状態はかなり改善している。

 民間企業の側からも「脱石炭」の動きは強まっていた。アップルやフェイスブックは、自社で使うエネルギーを100%再生可能エネルギーにすると表明している。日本国内でも、日本生命や明治安田生命が石炭火力への投融資から撤退するとしている。日本の世論ももちろん「脱石炭」だった。そう、胆振東部地震の前日までは、だ。

 胆振の地震で大規模なブラックアウトが起きると、少なくとも日本国内で「脱石炭」を煽るような報道はなくなった。一刻も早く苫東厚真の石炭火力発電所が再稼働し、以前のように発電できるように、と願うようになった。

 私は、そのこと自体を批判するつもりはさらさらない。

 ただ不審に思っていることがある。北海道には現在停止中の泊原子力発電所がある。私は、むしろこの泊原発の早期再稼働に向けた準備を今すぐにでも行わせるべきだと思っている。少なくとも、北海道における安価かつ安定的な電力供給のための1つの選択肢ではあるはずだ。

 ところが、北海道全域を襲った非常事態を前にしても、泊原発の活用についての話が、政治の側からも役所の側からもほとんど出てこなかった。これは異常な事態と言わざるを得ない。なぜなら、多くの政治家や官僚は、原発再稼働こそが電力危機を回避する唯一の現実的方法だということを重々理解してはずだからだ。

 しかし実際には、政府からは菅義偉官房長官が会見の中で、「現在、原子力規制委員会で新規制基準に基づく安全審査中であり、直ちに再稼働をすることはあり得ない」と述べたのが、唯一「泊原発再稼働」に触れた発言だった。

 私は政策アナリストという仕事柄、政治家、とくに政権与党の国会議員と顔を合わせる機会が多いが、みな私的な場では「泊原発を再稼働すれば北海道の電力問題も解決するんだからやればいい」と言う。しかし、公の場でそれを口にする人はほとんどいない。例外的に「再稼働」を堂々と主張しているのは自民党の青山繁晴参議院議員くらいではないだろうか。

 もちろん霞が関にも声を上げる者はいないし、泊原発を新規制基準に基づいて審査している原子力規制委員会の更田豊志委員長も、「今回の地震で審査が影響を受けることはない。急ぐこともない」と従来の方針を変えようともしない。

 では、マスコミはどうか。原発再稼働を正面から主張しているのは主要紙では産経新聞のみで、後は再稼働反対の論陣を張っている。

 まるで、日本全体が「原発再稼働」について、強烈な言論統制下にあるかのようだ。もちろん誰も統制してはいない。批判を恐れて、自ら口を閉ざしてしまっているとしか思えない。

 これではあたかも世の中全体で、「電力については、北海道電力がなんとかするまで、道民はじっと耐えよ」と言っているのと同じだ。

「触らぬ神に祟りなし」で口閉ざす
 規制委員会の新基準に基づく審査の下では、泊原発の再稼働はいつになるかは全く予想できない。しかし旧基準に照らし合わせるならば、その気になれば、2週間もあれば再稼働ができてしまう。実は、法的にも問題はない。

 あとは地元の知事が同意すればいい。この知事同意にも法的な根拠はないのだが、地元自治体と電力会社との間の協定に基づいて、電力会社は知事と議会から了解をもらうことが一般化しているにすぎない。つまり、その気になれば泊原発の再稼働は今すぐにでも可能なのだ。

 だが、政治家も官僚もマスコミもあえてそれに触れようとはしない。批判を恐れて、「触らぬ神に祟りなし」を決め込んでいる。

 結局、北海道の電力供給事情は今もいっぱいいっぱいの状態だ。苫東厚真に大きなトラブルが起きれば、一気に需給はひっ迫する。その一方で、泊原発がまったく稼働せず管理費ばかりを食い続けている状態なので、肝心の北海道電力の経営が日に日に厳しくなっている。北海道の電力事情は、今も非常事態下にあると言ってよい。

 私は機会があるごとに「泊原発は再稼働させるべき」と発言してきたし、自分のツイッターでもたびたびそう主張してきた。それに対して、一部の人からは賛同のつぶやきが返されてくるのだが、多くは「福島の二の舞になる」とか「直下型地震が起きたらどうする」といった批判だ。

 だが、もしも直下型地震がやってきたとしても、それで原子炉が壊れることはない。放射能が漏れるわけでもない。今回の胆振東部地震でも、泊原発は一時、外部電源が失われたが、非常用ディーゼル発電機がきちんと稼働し、事故は起こらなかった。活断層が多少ずれたところで福島第一原発のような大事故が起こるわけではないのだ。

 実は政治家や官僚、電力や原子力の専門家もそのことはよく分かっている。それなのに、ごく一部の専門家らを除き、「原発再稼働」については一切口を閉ざしてしまっている。世間の「原発アレルギー」を極度に恐れてしまっているのだ。

 今回もJBpressでこういう主張を展開すれば、ネット上には、きっと反対の意見が溢れることだろう。自分と違う意見が来るのは、全くおかしなことではない。だがやってくるのはたいがい、根拠のない誹謗中傷ばかりで、政策的非難はそう多くはない。

 例えば、「太陽光、風力をもっと生かせ。再生可能エネルギーにシフトせよ」という意見も、私はおかしな意見だとは思わない。だが、再エネは電力供給のメインストリームにはなりえない。

 北海道胆振東部地震の後、北海道の冬を迎えるにあたり、太陽光や風力発電を火力発電に取って代わらせるべき、といったような意見は全く聞かれない。個人の住宅で自分のところの電気の一部を太陽光発電で賄うということは可能だが、太陽光は夜には発電しないし、社会のインフラを支えるほどの出力も安定性も望めない。胆振東部地震で、そのことがよりはっきりと認知されたのではないだろうか。

 加えて、この間、九州電力が初めて、太陽光発電の出力制御を実施した。需要の減少が見込まれている時間帯に太陽光発電施設から多量の電気が供給されると、大規模な停電を引き起こす可能性があるからだ。

 私はずいぶん前からツイッターで、「九州では太陽光発電を制御する事態がありえる。そうなったときに、一部の新聞は『玄海原発が再稼働したから太陽光を制御することになる』と書くはずだ」と予言していた。

 実際、出力制御が発表されると、新聞やテレビの中には、「玄海原発が稼働したので電力供給量が増え、再エネ事業者が割りを食わされた」的な報じ方をした新聞社が多数あった。

 だが事実はそうではない。原発が動いているから太陽光を抑制したのではない。調整する役割は、普段は火力発電所が担っている。それでも調整しきれなかったから太陽光を抑制したのだ。

 なにより太陽光の電気はFITという固定価格買い取り制度の下で再エネ事業者から買い取っているのでコストはべらぼうに高くつく。そのツケは、われわれ一般消費者の電気料金に回されているのだが、そのことはマスコミも積極的に報じようとしない。

放射性廃棄物の管理コストは高くない
 私が原子力を推しているのは、コスト面で莫大なメリットが国民にも国家にもあるからだ。何と言っても既設原発は発電コストが安い。実際、大飯、高浜の原発を再稼働させた関西電力は電気料金を引き下げた。九州電力もそのうち値下げ原資が出てくるはずだ。

 コストはインフラにとって極めて大切な概念だ。だが、世の中の世論の大勢は「安全性をないがしろにしてまでコストを優先する必要はない」という。さらに、「原発は低コストと言っても、放射性廃棄物の処理や最終的な廃炉コストも含めると高くつく」という意見もある。

 しかしそれも正確ではない。

 仮に国内の既存原発をフル稼働させたとして、そこから出てくる使用済み核燃料を管理するコストは、年間10億円にも満たない。再処理した後の高レベル放射性廃棄物は、熱を冷ますために地中で50年ほど保管しなければならないが、そのコストは年90億円ほどだ。

 一方、福島第一原発の事故後、全ての原発を停止させていた時期に、火力発電用の化石燃料を日本は大量に輸入していた。そのコストは、最大で、2013年当時の為替レートでみると、1日100億円以上だ。単純計算で年間3兆6000億円にもなる。

 それに比べたら、使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物の管理コストはずっと安くつくのだ。

 それを政治家や霞が関の役人は知っている。ならば、電力供給体制が脆弱化している北海道においては、せめて泊原発の再稼働を推し進めるべきではないのか。

 もうじき、厳しい冬が到来する。

 安全性やコストについての正確な情報も提示せず、ただただ世論の反発を恐れて、「規制委員会のお墨付きが出るまでは我関せず」の態度を取り続けるのは、将来に禍根を残すことになりかねない。

 一部の反発を恐れるあまり、環境には多大な負荷をかけ、電力会社には化石燃料の購入に膨大なコストをかけさせ、国民にも余分な電気料金を負担させ続けている。このような異常事態はそろそろ終わりにするべきではないだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54563

 


 
北海道地震の大停電にかこつけホリエモンらが「泊原発を再稼働させろ」の大合唱! でも泊原発下には活断層の指摘も
2018.09.07
 6日午前3時8分ごろ、北海道胆振地方中東部を震源とし、厚真町で最大震度7を観測する地震が発生した。地震の影響で北海道全域の約295万戸が停電。北海道電力や政府によれば、停電は震源に近い苫東厚真火力発電所の緊急停止により、道全域の「電力需給バランス」が崩れたためだという。簡単にいえば、苫東厚真発電所の停止によって、各発電システムにおいて一定に保たねばならない電気の周波数が乱れたことで、故障を防止するために道内の火力発電所が自動停止したのだ。

 北海道における最大震度7の地震、全域に渡る大停電は異例の事態であり、政府には被災者の救助や支援、インフラの復旧に最大の努力をしてもらいたいが、そんななか、Twitterでは「原発が再稼働していれば停電は防げた」なる主張がでてきている。大停電にかこつけて、2012年から1〜3号の全機が停止中の泊原発の再稼働を進めようとする動きが相次いでいるのだ。

 実際、原発再稼働派の評論家・池田信夫氏は〈大停電の再発を防ぐには、泊原発の再稼動が不可欠だ〉と主張し、ホリエモンこと堀江貴文氏も〈これはひどい。。そして停電がやばい。泊原発再稼働させんと。。。〉〈原発再稼働してなかったのは痛い〉などと連投。ほかにも、Twitter上ではこんなツイートが続々と飛びだしている。

〈安全地帯にあった泊原発が動いていれば全停電なんて起きなかった〉
〈泊原発が動いていれば、北海道全域が停電することはなかったのに。原発再稼働反対を叫んでいたお花畑左翼達のせいで、北海道は孤島になってしまった〉
〈北海道の停電は原発再稼働反対派による人災と言ってもいいのでは?〉

 ネットだけではない。全国紙も同じような論調だ。たとえば日本経済新聞が昨日出した「北海道地震、なぜ全域停電 復旧少なくとも1週間」という記事では、〈道内の泊原子力発電所(泊村)も運転を停止中で供給力に余裕はない。今回の大規模停電は、一カ所の大規模火力発電所に依存することの脆弱さが浮き彫りになった形だ〉と締められている。停電を引き起こした北電の脆弱性はそのとおりだが、わざわざ泊原発の運転停止にかこつける意図は見え見えだろう。

 他紙でもこの日経記事によく似た記事が見られる。おそらく、北電・政府側のブリーフィングをもとに書いたのではないか。原発再稼働に躍起となっている安倍政権と原子力ムラが、この大停電を利用して、今後、泊原発再稼働に向けたキャンペーンを次々にぶってくることは容易に想像がつく。

 しかし、冷静に考えてみてほしい。話はむしろ逆だろう。「泊原発が稼働していたらよかった」というのは、明らかに倒錯している。

 地震による停電で泊原発は外部電源を喪失したが、非常用電源による冷却が使用済みの核燃料だけで済んだのは、言うまでもなく、運転停止中の原子炉内に核燃料がなかったためだ。その意味では、いまのところ泊原発で事故が確認されていないのは“不幸中の幸い”と言うべきだろう。

 いや、それ以前に、泊原発が「安全地帯にある」という前提のほうこそ「お花畑」と断じるしかない。そもそも、今回の地震ではたまたま泊原発付近は震度2で済んだが、事実として、大規模地震が原発を直撃しない保証はどこにもないのだ。

泊原発再稼働に原子力規制委員長は否定的だったが…
 実際、科学者も泊原発の下に地震を起こす可能性がある活断層の存在を指摘している。今年4月には、道内の科学者らでつくる「行動する市民科学者の会・北海道」が、泊原発1号機直下の断層は動いていないと証明できるのは約1万〜3万年前までであって、これは活断層に当たるとする見解を発表した(4月19日付毎日新聞北海道版)。原子力規制委員会による新規制基準では、12万〜13万年前よりも新しい時代に活動したことを否定できない断層を活断層と定義している。

 一方、北電はこれまで「敷地内の断層の活動時期は120万年前であり、活断層ではない」などと主張。規制委は断層の活動時期を推定する調査方法に疑義を呈し、北電に再調査を求めるなどしてきた。

 原子力規制委の更田豊志委員長は今年5月、泊原発を就任後初めて視察した際、年内の新規制基準合格の可能性について「あまりに楽観的だと思う」と記者団に語って否定したが、その後、地層の年代に関する規制委側の指摘を北電が受け入れるかたちで修正するなど、両者が歩み寄って再稼働に傾き始めている。

 北海道新聞による世論調査では、泊原発をどうすべきかについて「3基とも再稼働せず、速やかに原発ゼロにする」が29%で最多だった。にもかかわらず、北電は活断層の危険性をうやむやにしたまま、押し切ろうとしているのだ。

 もっとも、大停電については徹底的に検証をして再発を防止せねばならないが、一足飛びに泊原発再稼働へ結びつける言説は極めて乱暴であり、それこそ人々の生命と生活を軽視しているとしか言いようがない。

(編集部)
https://lite-ra.com/2018/09/post-4235.html


 


 

原発最前線】とっくに再稼働していたはず… 審査難航の北海道電力泊原発、通称は「最後のP」
2018.9.26 07:00

地震で外部電源が一時喪失した運転停止中の北海道電力泊原発=6日午後0時51分、北海道泊村
Twitter
Facebook
Messenger
文字サイズ
印刷
 再稼働に向けた安全審査が5年過ぎても終わらず、9月6日に北海道を襲った地震による全域停電(ブラックアウト)の非常事態を救えなかった北海道電力泊原発。平成27年暮れには最大のハードルとされる耐震設計の目安「基準地震動」がおおむね了承されており、合格、再稼働を果たしていてもおかしくなかった。その流れを止めたのは、規制委の「現地視察」と「火山灰」だった。
(社会部編集委員 鵜野光博)

視察でちゃぶ台返し

 「審査の経緯を踏まえると、今回の原子力規制委員会のご判断は誠に残念であると申し上げざるを得ません」

 北電の公式サイトにこのコメントが載ったのは、29年3月13日。規制委が3日前の審査会合で、積丹(しゃこたん)半島西岸の海岸地形について「地震性隆起であることを否定するのは難しい。今後は活断層を仮定する方向で審議したい」としたことへの“抗議”だった。

 泊原発の審査申請は25年7月で、全国の原発で一番早いグループに属している。審査で難関となるのは、敷地内外での地震を引き起こす活断層の有無や、津波の高さの想定だ。泊原発では27年8月、規制委で地震津波の審査を担当する石渡明委員が、津波対策の目安となる「基準津波」について「おおむね理解した」とコメントし、同年12月には活断層の影響を考慮した基準地震動についても「一応、おおむね妥当な検討がなされていると評価する」と述べた。ここまでは、比較的順調だった。

 それを“ちゃぶ台返し”したのは、規制委が28年7月に行った現地視察だった。

建屋建設で火山灰が…

 視察は基準地震動を確定する最終的な手続きとみられていたが、規制委は「聞いていた説明と若干一致しない事実がいくつかある」と指摘。特に北電が「波の浸食によるもので、地震性隆起ではない」としてきた積丹半島西岸について、視察翌月の28年8月の審査会合で石渡委員は「西津軽の大戸瀬(青森県)の地形とうり二つといっていいぐらいよく似ている。大戸瀬は200年ちょっと前に地震が実際に記録されていて、隆起したという記録も残っている」と再検討を促した。

 北電はその後、地震性隆起ではないことを立証しようとしたが、規制委を納得させることはできず、翌年3月の「誠に残念」とするコメントに至った。結局、北電は同年8月、積丹半島沖合に活断層があると仮定して地震動を算出する方針に転換した。

 審査をスローダウンさせているもう一つの要因が、「消えた火山灰」だ。

 新規制基準では、12万〜13万年前以降に動いた可能性が否定できない断層を活断層と定義し、原発の重要施設の直下にあれば運転は認められず、近くにあっても基準地震動が引き上げられる。北電は敷地内の断層の上に堆積している火山灰の層が約20万年前のものとする年代測定を根拠に、活断層であることを否定していた。しかし、有識者から「北電の断層評価は甘い」と指摘があり、同年3月の審査会合で規制委は、再度立証することを指示。北電は以前使った火山灰を探したが、結論は「1・2号機、3号機の建設などにより消失」。つまり建設時にすべて取り去ってしまったため、活断層ではないことを示せない事態に陥った。

再度の現地視察へ

 火山灰以外での立証を求められた北電は試行錯誤を繰り返し、その説明が規制委からようやく評価されたのは、今年8月31日の審査会合だった。石渡氏は「今回出していただいたデータは従来と比べるとだいぶん見通しが良くなり、全体が分かるようになってきた」と述べ、「もう少しまとめ直してもらった上で、野外で実際に見せてもらうことが評価するのに必要だ」と、再度の現地視察を要望した。

 北海道でブラックアウトが起きたのは、この6日後のことだった。

 泊原発と同時期に審査申請した関西電力大飯原発、高浜原発、四国電力伊方原発、九州電力玄海原発、川内原発は、いずれも再稼働を果たしている。これらはすべて加圧水型(PWR)で、泊原発は業界で「最後のP」という皮肉な称号を与えられている。

 泊原発が再稼働していれば、ブラックアウトは防げたのか。北電は「再稼働後の発電量などの仮定が多すぎて、答えられない」という。ただ、苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所に道内の電力供給の過半を頼る“一本足打法”の状況が、大きく違っていたことは間違いないだろう。

 規制委の更田(ふけた)豊志委員長は、地震発生後の9月12日の定例会見で、「今回の地震を受けて、泊発電所の許可を急がなければならないとは毛頭考えていない」と述べた。当面は規制委が「雪が降る前にやりたい」とする現地視察が審査のヤマになる。前回はちゃぶ台返しがあったが、今度はどうか。ブラックアウトを経験した道民の目が注がれている。

 北海道電力泊原発 北海道泊村にある加圧水型軽水炉(PWR)。1号機(57万9000キロワット)は平成元年6月、2号機(同)は3年4月、3号機(91万2000キロワット)は21年12月に営業運転を開始した。1〜3号機とも25年7月、原子力規制委員会に安全審査を申請し、現在は3号機が優先的に審査されている。

 
関連ニュース
【原発最前線】東電トップの責任明確化へ 福島3号機の燃料取り出し遅れで規制委 「みっともない原因」
【原発最前線】トリチウム含む処理水の海洋放出に批判続出 「報道」が反発煽る? 公聴会の議論かみ合わず
【原発最前線】プルトニウム削減は「フランス流」で 原子力委員長会見
【原発最前線】大詰めのトリチウム水問題 「元汚染水」の安全性、受け入れられるか
【原発最前線】「電圧設定ミス」で福島第1・3号機の燃料取り出し延期? 東電の初歩的過ぎるトラブルにあぜん
【原発最前線】注目された耐震試験で「扉が5センチ開いた」東海第2 トラブル露見
https://www.sankei.com/affairs/news/180926/afr1809260001-n3.html
http://www.asyura2.com/18/genpatu50/msg/511.html

[国際24] 人口と経済の危うい関係、中国はどうなる  中国人の面子とドラゴンボールの世界 ロシア社会の変革を担う若き職業ボランティア
人口と経済の危うい関係、中国はどうなる


トレンド・ボックス
過去の各国データが示唆する不安
2018年11月5日(月)
市岡 繁男
 人口動態はその国の経済に大きな影響を及ぼします。少子化・人口減社会に突入した日本に対して、将来の成長性を危ぶむ声が出るのはそのためです。筆者は、長らく住友信託銀行(現三井住友信託銀行)の資産運用部門で勤務した後、内外金融機関やシンクタンクで資産運用や調査研究業務に携わってきました。現在は相場研究家の肩書きで講演や執筆を行うほか、財団や金融機関の投資アドバイザーをしています。各国の人口データから経済や社会の出来事を振り返ると、日本以外でも心配な国があることがわかりました。それは中国です。

(写真=PIXTA)
 米国の歴史家、ウィリアム・H・マクニールは、20世紀に起きた両次大戦の背景には人口過剰問題があったと指摘しています(『戦争の世界史』中公文庫)。これは主に中東欧の情勢について記述したものですが、要約すると「農村で土地が足りなくなり、若者たちは親と同様の暮らしかたができなくなった。産業の拡大は人口の増加に追いつかず、欲求不満が社会的緊張をもたらした。この問題が最終的に解決をみたのは第二次大戦のときであった」ということです。
若者人口比率が高まると動乱が起きる傾向に
 戦前の日本も30歳未満が総人口の6割強を占めるなど、似たような状況にありました。これは子供の数が多かったからですが、子供を除く若者人口(15〜29歳)に限ってみても、国民全体の25%、つまり4人に1人が若者でした。戦前の日本は10年に一度の割合で戦争や海外派兵を行っていましたが、若者主体の国なので良くも悪くもエネルギーが過剰だったためなのかもしれません。
 これは日本だけの現象ではありません。戦後の各国統計をみても、若者人口比率がピークを迎える前後に戦争や動乱が起きている傾向があるのです(図1)。米国のベトナム戦争(1964年)やソ連のアフガニスタン侵攻(1979年)、アラブの春(2010年)などは、それに該当する事例です。若者人口とは、すなわち兵役対象年齢なので、その数が多ければ為政者は戦争を行うことに対する抵抗感が薄れるのでしょう。戦争ではないが、日本の大学紛争(1969年がピーク)や、中国の天安門事件(1989年)もそうしたポイントで起きています。紛争や大規模デモは若者の向こう見ずな熱気が結集しなければ出来ないことです。

https://cdn-business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/103100300/g1.JPG

 では若者が少なければ事件が起きないかというとそうでもありません。少ないときには別の姿で波乱が起きています。例えばソ連の崩壊(1991年)は若者人口比率がボトムの時に起きていますし、1997年の日本や2011年の欧州での金融危機も、若者人口比率の低下が加速する局面で起きているのです(図1)。これは国家としての体力の衰えが形となって表れたということかもしれません。国民の平均年齢が上がれば、その集合体である国家も、従来なら考えられなかったような問題に直面するようです。
経済の屈折点を予見する指標
 国家の若さを計るうえで、逆依存人口比率([15〜64歳人口]÷[15歳未満人口+65歳以上人口])という尺度があります。これは1人の被扶養者が何人の働き手に支えられているかという指標です。この比率が高いほど社会全体の負担が軽減され経済は発展しますが、ピークアウト後は債務が膨らみ、経済活動が鈍化する傾向にあります。

https://cdn-business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/103100300/g2.JPG

 日本では1968年と1992年の2回、逆依存人口比率がピークを迎えています(図2)。1965年の証券不況や1990年のバブル崩壊はそれを先取りした動きだったと言えるでしょう。これに対し、欧米では同比率のピーク(2007年)と株価の暴落が同時に起きています(図3)。多少の違いはありますが、経済の屈折点を予見していた格好となっていることは同じで、経済の先行きを占ううえで、一つの指標になりそうです。

https://cdn-business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/103100300/g3.JPG

 日本の逆依存人口比率は1992年以降、低下する一方なのですが、それでもまだ戦前より上の水準にあることに注目してください。戦前は軍事費負担が重かったせいもあるのですが、それ以前に被扶養者である子供の数が多すぎたので、国民は経済的な豊かを感じにくかったわけです。戦後の高度成長は人口動態の好転でもたらされた側面があるのです。それが今度は老人の数が多すぎることが原因で、1〜2年後には逆依存人口比率が戦前と同じ水準まで低下し、人口動態上の隘路にはまってしまう。一体なんという巡りあわせなのでしょうか。
 こうした危うい状況にあるのは欧州など他の先進国も同じです。しかし、最も懸念されるのは中国の先行きです。2000年以降の経済急成長を推進してきた逆依存人口比率はすでに2010年にピークを迎え、その後は若者人口の比率が急減する局面にあります(図4)。先述したように、日本や欧州ではそれまで小康状態にあった若者人口比率の低下が加速する過程で金融危機が起きていますが、いまの中国はまさにそのポイントにあるのです。

https://cdn-business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/103100300/g4.JPG

 かつて日本では1990年代初頭にバブルが崩壊し、1992年に逆依存人口比率が下落に転じた後も表面的には経済成長が続きました。名目GDPがピークを迎えたのは1997年のことです。言い換えるならば、日本経済はバブル崩壊後も7〜8年はもったということです。これはその間、銀行が「ゾンビ企業」に対し追い貸しを行い、延命させていたからです。このため、1989年に200%を超えた民間債務比率はその後も増え続け、1993年になってようやく下落に転じました(図5)。

https://cdn-business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/103100300/g5.JPG

 同じことはいまの中国でも起きており、民間債務比率は2015年に200%の大台を超えた後も増え続けています。ちなみに、この200%という水準は日本のバブル崩壊、スペインの住宅バブル崩壊をもたらした水準です。
経済の推進要因失われる一方、巨額の債務負担が
 BIS(国際決済銀行)によると、中国の民間債務残高は約29兆ドル(2018年3月末)で、2008年末以降、23兆ドルも増加しました。同期間における世界債務の増加額39兆ドルに対し、その6割が中国による借入だったわけです(図6)。

https://cdn-business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/103100300/g6.JPG

 かくも債務が極大化した段階で、昨年秋以降、米国金利が上昇し、それが全世界に波及し始めました。中国の長期金利も2016年10月の2.66%から今年1月には3.98%になっています。このため民間部門の利払い負担は増しており、筆者の試算では直近は名目GDP(国内総生産)の7.9%に相当します。これは2000年のITバブルや08年のリーマン危機直前の米国とほぼ同じ水準です(図7)。

https://cdn-business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/103100300/g7.JPG
 いまの中国は、若者人口や逆依存人口比率の増加という経済推進要因が失われる中、巨額の債務負担が残された形です。これは1990年代後半の日本と同じ構図です。果たして中国はこの人口動態上の難所を無事やり過ごすことができるのでしょうか。


このコラムについて
トレンド・ボックス
急速に変化を遂げる経済や社会、そして世界。目に見えるところ、また見えないところでどんな変化が起きているのでしょうか。そうした変化を敏感につかみ、日経ビジネス編集部のメンバーや専門家がスピーディーに情報を発信していきます。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/103100300/?


 

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/041100064/103100011

中国人の「面子」と『ドラゴンボール』の世界

「スジ」の日本、「量」の中国
「スカウター」のように相手の「強さ」を読み合う

2018年11月5日(月)
田中 信彦

今回は、単行本『スッキリ中国論 スジの日本、量の中国』の中から「面子(メンツ)」について触れた部分を、ウェブ用に編集してお送りします。中国人を理解する上で重要な概念の「面子」ですが、日本にも同じ単語があるために、正確に理解することがかえって難しい概念かもしれません。コメント欄でも触れていただいた方がいました。「スジと量」で、面子を読み解くとどうなるでしょうか。


『スッキリ中国論 スジの日本、量の中国』
 「中国人と言えば『面子(メンツ)』を大事にするそうだ。面子と『量』はどのように関係しているのか?」

 中国社会を知り、日本社会と比較するフレームとして「量」と「スジ」をご紹介してきたが、こんな疑問を抱いた方もいるだろう。「中国人が面子を重視する」ことはよく言われるし、まったくその通りで、彼らを理解するキーワードでもある。そして、その底にはやはり「量」の思考が存在する。だが、「量」の話をする前に、まず「面子」について詳しく説明しておこう。日本で言う「メンツ」とは意味がかなり異なるからである。

日本語の「面子」とは意味も重さも違う
 中国語でよく使われる言い回しに「面子が大きい 」という言い方がある。
 「あの人は本当に面子が大きいね」とか「私は彼ほど面子が大きくないから……」といった使い方をする。

 「面子が大きい」という言い方は日本語ではなじみがないが、要するにこれはその人の「問題解決能力が高い」ことを意味する。つまり「他の人にはできないことが、その人にはできる」ことである。

 例えば、普通ではなかなか入れないような幼稚園や学校に、その人に頼むと、(さまざまな方法で人を動かして)何とか入れてしまう。正面からのルートではとても会えないような著名人に、その人に頼めば面会できてしまう。そういったようなケースで、「あの人は面子が大きい」ということになる。もっと生臭い話でいえば、正式には競争入札によって受注企業が決まるはずなのに、「面子の大きい」人に頼めば有利に取り計らってもらえるとか、有利な条件で国の持つ土地の使用権を譲ってもらえるとか、そういったことも当然、含まれる。

 これは(日本人が好む)「スジ」的に言えば「なんといい加減な社会だ、不公平だ」ということになるのだが、よい悪いではなく、現状がそうなのだから止むを得ない。普通の人々に広く適用されているルールや常識的な相場観のようなものが存在するにもかかわらず、その人物が出てくると、その枠を飛び超えて、異例な取り計らいが実現してしまうような人が「面子の大きい人」である。

「誰よりも優れている」という、最大級の褒め言葉
 中国社会において、このような「面子の大きい人」は極めて便利で、かつ大きな利益をあげられる可能性を持つ。それは時として便利や利益というレベルを超え、自分や家族の安全すら確保してくれる人である可能性がある。

 だから普通の中国人にとって、「面子の大きい人」とは、非常に頼りになる、どうにかしてお近づきになりたい人である。というより、「面子の大きい」人が近くにいないと安全・快適な生活を実現するのは難しい。だから「あの人は面子が大きい」という表現は、中国社会では最大級の褒め言葉である。周囲から尊敬と羨望のまなざしで見られる人物を意味する。そして誰もが自分も何とか自分の面子を大きくしたいと考える。「面子が大きい」と世間から言われるような人になりたい、と思うのである。

 このように考えてくると、中国社会における面子の本質とは、その人が「他人には不可能なことができることが明らかになる」とか、その人が「他人より優れていることを周囲の人が認める」“状態”であることがわかる。

 周囲は「あの人は他の誰にもできないことができる。すごい人だ」と称賛する。本人は「自分は他の人にはできないことができる。自分は他人より優れている」と周囲から認められ、自尊心が満たされる。こういう状態が中国人にとっての、日本語で言う「面子が立っている」状態である。逆に「面子がない」「面子がつぶれる」状況とは、「自分は他人より優れていない」ことが公衆の面前で実証されてしまう事態を指す。

 ルールや組織といった「スジ」が頼りにならず、「面子の大きい」人や権力者の腹一つで状況がいかようにも変化するサバイバル社会で、中国の人々は自らの力を恃(たの)んで生きている。

 そこでは常に「自分は大丈夫だ。やっていけるのだ」という自信、言ってみればある種の自己暗示のようなものが不可欠である。根拠は少々薄弱でも、「自分は他人より優れている。大丈夫、勝てる」と自らに常に言い聞かせているようなところがある。

 これは想像だが、おそらく日本の社会でも自営業の皆さんやプロスポーツ選手、芸能人、職人さんなど、自分の腕一本で世の中を渡っている人たちは似たようなマインドを持っているのではないかと思う(私も自営業だ)。「自分のようなものはダメかもしれない」などと思っていたら、とても競争に挑んでいくことができない。

「量」の思考法が強いる、他人との比較
 さて、この面子と「量」の思考はどのような関係にあるのか。
 「量」で考える基本思想について、この連載の冒頭でこう述べた。

「(中国人は)『あるべきか、どうか』の議論以前に、『現実にあるのか、ないのか』『どれだけあるのか』という『量』を重視する傾向が強い」

 量とは、大きさや重さ、多さ、高さを測る言葉だが、それは「強さ」と言い換えることもできる。大きいものは強い。そして、「量」を判断の基本に置くということは「現実に、目の前の相手より、自分は強いのか、弱いのか」を、常に意識しながら生きていく、ということでもある。ここで面子と「量」がつながる。

 別の言い方をしよう。

 中国人は、誰かと向き合った時、人の「個性の差」よりも、相手との「力関係」を意識する傾向が強い。例えば、日本社会では「貧しいけれども立派な人」「貧乏だけど希有(けう)な趣味人」といった概念はごく普通に成り立ち得る。人には個性があるもので、みんな違う。その「違い」を認識することが人間関係の前提になっている。

 しかし中国社会では、事の当否は別として、お金持ちか否か、権力・権限を持つ人かどうか、社会的な影響力を持つ(自分の意見を通せる)人物かどうか、そういった、その人物の「大きさ」「力の強さ」を重視する傾向が強い。つまり周囲との関係を「違い」ではなく「上下」「強弱」で、言ってしまえば「闘ったら勝つか負けるか」の価値観で理解する傾向が強いということだ。面子は、その強弱、勝ち負けそのものを指す概念と言っていい。いわば「量の勝負」=面子、なのである。

 だから、中国社会の面子は非常に重い意味をもつ。

 日本人にとっては「面子が立たない」という言葉は、ちょっと無礼なことをされたくらいの感覚で、そこに「上下」「勝負」の要素はあまりない。だが、中国人にとっての「面子」は、自分という人間が人格を肯定されるか否定されるか、くらいの意味をもつ。ここを軽く見てはいけない。「面子を立てるなんて簡単だ、失礼がなければいいんだろう」程度の気持ちでいると、相手のプライドを深いところで傷つけてしまいかねない。

 「量で比較する」ことが発想や行動を強く支配するゆえに、「面子」が絡むと対人関係が「勝ち負け」になってしまう。これは中国社会のモチベーションの源泉であると同時に大きな問題でもある。

 大小、上下、高低、強弱、言い方はさまざまあるが、詰まるところ評価の軸が事実上、1本しかない。そこで勝てればいいが、負けることは耐えがたく、許されない。やや極端に言うと、社会的な評価方法にバラエティが乏しく、誰もがステレオタイプの基準で相手を判断しようとする。皆が「相手に見くびられたら商売にならない」と思っていて、かく言う私も中国で暮らしている間に、そういう考え方にかなり強い影響を受けていることを自覚するようになった。

国民全員独立自営、全ては人と人の相対取引
 日本でも自営業の皆さんやスポーツ選手、職人さんの世界の発想はこれに近いものがあるかもしれないと書いたが、要は中国人は全14億の国民が、全て独立自営で生きている、くらいに思った方がいい。本人が実際には企業や政府機関などの組織に所属していようが、現実には全部、個人間の相対(あいたい)取引=人vs人の勝負、なのである。

 そこではまずお互いが「自分のほうが強い」とツッパリ合い、双方が値踏みし合う。その段階では笑顔も見せず、決して譲らない。しかし中国人は、会話や態度の端々から、素早く「(腕っぷしではなく、先の『面子の大きさ』を比較して)どちらが強いか」を察知する。「こいつとケンカして勝てるのか、勝ったとして得なのか」をお互いが瞬時に判断し、どちらか、もしくは双方がほぼ同時に矛を収める。その感覚は非常に鋭敏である。というのは、本当は相手の方が「強い」のに、読み誤って下手に突っ張ったら、とんでもないことになるからだ。

 非常に疲れる話ではあるが、これはある意味、非常に割り切ったサバイバルのための知恵でもある。世界のどの社会でも、弱者を保護するタテマエやそのための仕組みは存在しているが、突き詰めて言えば「強いほうが強い」のが現実だ。そして、負けるのは嫌だといっても、誰もが世界一強くなれるわけはない。常にケンカし続ける訳にもいかない。

 だから結局のところは、強者と弱者の間に一定の均衡が生まれて妥協が成立する。弱者は自分が弱者であることを暗黙に認めるが、一定の尊厳は与えられる。強者は利益を得るが、(相手が自分のことを尊重する限り)弱者に一定の配慮をして、叩き潰すことはしない。相手に利用価値があれば、優遇さえもする。そして何事も「誰が最高権力者なのか」という問題が決着しないと話が始まらないが、一度力関係を認めてしまえば、後は話が早い。

「まるで『ドラゴンボール』の世界ですね」
 この話を担当編集者にしたところ、「なんだか、『ドラゴンボール』(作・鳥山明)の世界みたいですね」と言われた。

 私はこのマンガを知らないのでピンと来ないのだが、超常能力を持つキャラクターたちがバトルする世界で、「スカウター」と呼ばれる、相手の“戦闘力”を数値化して表示するガジェットが存在する。闘う前に相手と自分とどちらが強いのかがわかるのだという。中国人は確かにそんな感じで、相手の様子を見て“戦闘力”を素早く読み取る。

 「ドラゴンボール」はマンガだから、戦闘力が文字通り「桁違い」の相手にも無謀なバトルを挑むし、時には勝てたりもするようだが、もしもドラゴンボールの世界の住人が中国人だけなら、闘いが始まる前に妥協が成立してしまうかもしれない。

 それはともかく、「量=大きさ=強さ」であって、「強い=面子が大きい」。面子が大きいことは、14億総自営業モード、人と人の相対取引が基本の世の中で、自分の権利を守って幸福に生きていくために非常に大事なのである。

 そんなことだから、中国人の自己アピールは多くの場合、非常に強烈なものになる。

 過去のあらゆる経験や知識、学歴・職歴、友人・知人などさまざまな材料を持ち出して自分をアピールする。そのため、もちろん個人差はあるが、多くの場合、中国人の自己評価は異様に高い。背景は別項に譲る(単行本106ページ、「『仕組み』が苦手な中国、得意な日本」参照)が、基本的に「自己評価」が全ての世界なので、ナルシシスト的傾向が強くなる。自分に甘く、他人に厳しい。

 俗な例で言えば、身の丈に合わないほどの豪邸に住んだり、高級車に乗ったり、派手な時計をしたり、ブランド品を身につけたりすることを好む人が多いのも、同じ構造に基づく。

 そうやって「自分は他の人より優れている(強い)」ことを周囲に常にアピールし、他者からの評価や称賛に執着する。そして、その努力が実って、周囲から「あなたは他の人とは違う。すごい人だ」という認知が得られると、もううれしくてたまらない。俄然、生きる気力が出てくる。もっと称賛を得たい、もっと能力を認められたい、もっと褒められたいと気合を入れて動き始める。

 中国で暮らしていてつくづく思うのは、中国人とは実に褒められるのが好きな人たちだということだ。もちろんどこの国でも褒められて悪い気のする人はいないが、中国人の「褒められたい願望」の強さはすごい。オフィスなどで若い人をちょっと褒めると、実にうれしそうな顔をする。そして「ボスに褒められた」ことを周囲や家庭で大宣伝する。翌日にはまた褒めてもらおうと思って、「私はこんなことをした」「お客様にこんなことで感謝された」と知らせに来る。うるさいほどである。

 逆に「自分は他人より優れていない」ことが明らかになってしまう状況に陥ると、途端にモラルが下がって、どうにも生きる気力がなくなる。そのコントラストが著しい。わかりやすいといえばわかりやすいが、起伏が激しいので時に疲れる。そこでうまくケアする人がいないと、自分が世間に認められないのは「社会が悪いからだ」とか「周囲の人間に人を見る目がないからだ」といった形で、現状を他人のせいにし始める。「自分が悪いのかもしれない」という発想が出てきにくい。これは面子の意識が強すぎることの悪弊といえる。

中国人の「面子を立てる」ためには
 このように、やや誇張して言うと、中国人という人々は周囲からの称賛というエネルギーを注ぎ込み続けないと、燃料切れで動きが止まってしまうような人たちである。これは詰まるところ、面子の意識がそうさせるのである。

 面子は中国人が生きていく上でのエネルギー源のようなものだから、維持するために尋常でない努力をする。自分自身を「面子が大きい」、日本人が言う「面子が立っている」状態に保っておくことに執心するのと同時に、他人の面子に対しても細心に気を配る。

 私は月に1〜2回程度のペースで上海と日本を往復している。その際、日本から上海に戻る時のスーツケースはさまざまな品物で常に満杯である。中身の大半は中国人の友人たちへの土産物や頼まれ物だ。なぜ毎回、大量の品物を抱えていくかと言えば、それは面子の論理とかかわる。

 中国社会で他人に何か贈り物を持っていく、頼まれたことを引き受けることは、それは「私はあなたをこんなに重視していますよ」というメッセージである。単なる「おすそ分け」や「おつきあい」ではない。極めて戦略的な行為である。先に中国人は「褒められたい」「認められたい」という願望が強いと書いた。他人が自分にものをくれる、他人が自分のために動いてくれるということは、すなわちそれだけ尊重されていることを意味する。まして海外からとなれば、評価はさらに高いと考えられる。

 私も中国社会で生きているので、戦略は中国人に学ばねばならない。大切な友人、好きな友人ほど高価で、見栄えのするものを持っていく。当然ながら最も高価なものを渡すのは妻に対してである。まさに「これ見よがし」であるが、面子とは詰まるところ「これ見よがし」なのだから仕方がない。

実録、「面子の連鎖」
 例えば、日本の老舗の高価なお菓子を中国の友人に渡すとする。

 その際には、いかに有名な店で、○○庁御用達とか、何百年の老舗とか、国際○○賞受賞とか、海外の有名スターも食べたとか、いかに高価なものであるか、さまざまなお話をつけて、ありがたみを増幅して渡す。友人は「田中先生はこんなに私のことを重視している」と喜び、「自分は特別である。私は他人より優れている」と確信を持つ。これが中国人の「面子が立っている」状態である。

 この友人はお菓子を自宅に持ち帰り、家族に「このお菓子は日本の○○庁御用達、何百年の歴史があり、国際 ○○賞……」と話して聞かせる。「世界トップ500の大企業経営者を相手にしている日本で最も有名なコンサルタントで、テレビにも頻繁に出演している田中先生が私のために日本から持ってきてくれたのだ」などと、ほとんど荒唐無稽な誇張が加わる。家族はそれを聞いて、まあ全て信じているわけではないが、とにかく「すごいねえ。こんなものが食べられるなんて」と喜び、かくも高名な先生から尊重されている父を称賛する。これで家族も含めて面子が立っている状態になる。

 さらに友人の妻はお菓子を自分はほんの少ししか食べず、そのまま実家の母親に持っていく。母親は大切な人だからである。そこで友人の妻は「日本で最も有名なコンサル……、○○庁御用達の……」と口上を述べ、母親は素直に喜ぶ。ここで彼の妻の面子に加え、こんな立派な先生が友人にいる人徳のある亭主がいて、しかも自分は我慢してもお菓子を親のところに持ってくる孝行娘を持った母親とそのご主人の面子は大いに立つのである。

 話はまだ終わらない。この友人の妻の母親は、もらったお菓子をほとんど食べず、そのまま老人会の友人たちに持って行く。大事な仲間だからである。そこで母親は「私の娘の亭主の友人である日本で最も有名な……、○○庁御用達……」と語り、お菓子をふるまう。仲間は自分たちが尊重されたことに満足しつつ、「立派な娘婿と孝行娘を持って幸せだねえ」と羨ましがってみせ、友人の妻の母親を称賛する。これで友人たちに加え、友人の妻の母親の面子も大いに立つのである。

 このように中国人の間の「面子の連鎖」はどんどん巡っていく。自分も面子を立ててもらうが、それを使って周囲の人の面子も立てる。そうやって「面子の立て合い」をすることでコミュニティは円滑に回っていく。だから中国人は他人からものをもらった時、ご馳走してくれた時などに「なんだ、これ見よがしに、金持ち風吹かせやがって」などとは決して言わない。ものをくれるのは自分が尊重されている証しだと素直に喜ぶ。そして相手を称賛する。それがルールである。

面子はモチベーションと不満、両方の源泉
 このように中国社会では、面子はコミュニケーションの根幹をなしている。相手に自分のことを好きになってほしければ、まずその相手の面子を立てなければならない。それはつまり相手が「自分は特別な人間である」「自分は他人より優れている」と実感できるようにすることである。

 だから有能な中国人は、ある人に対して好感を持ったら、とにかく「あなたは能力がある」「私はあなたを高く評価している」と明確に伝える。そして相手の自尊心を満足させ、自分にも好意を持ってもらえるよう努力する……そんなことを「先払い」の話(単行本142ページ、「中国人は『先払い』、日本人は『後払い』参照)で紹介したが、そうすることによってたとえ外国人であっても中国人社会にスムーズに溶け込んでいけるし、子細に観察していれば、有能な中国人ほどそうやって相手を自分の「勢力範囲」に取り込んでいく。周囲に尊大な態度を取っている連中にロクな人物はいない(これは日本でも同じだ)。

 面子はこのようにポジティブな側面を持つ一方、厄介な面もある。常に「自分は他人より優れている」ことを証明しようと行動しているのだから、分業やチームプレーが得意なわけがない。全体の利益を考えるより、自分が評価されることを優先してしまう傾向が強いのは面子の最大の弊害だ。

 また、仮にある中国人が「自分は他人より優れている」と信じているとしても、現実にはそうではないケースは多いわけで、その人たちはいつか自尊心と現実の折り合いをつけなければならない。それはつらい作業である。中には折り合いをつけられない人も出てくる。

 面子は中国社会のモチベーションの源泉であると同時に、社会に充満する不満の源泉でもある。ものごとを「量の大小」「力の強弱」という評価軸で判断する傾向の強い中国社会の光と陰が「面子」に表れている。日本人的なお気軽な感覚で「面子」をとらえると、認識を誤る。

 中国の「面子」とは、「スカウター」を付けた14億人が、いつでもどこでも「量」を巡る真剣勝負をしている国だ、ということなのである。

続きは書籍で! 分厚くて、量もスジも読み応え満点です

『スッキリ中国論 スジの日本、量の中国』
「日本人と中国人の間には誤解が多い。
 お互いが相違点を理解し、一緒に仕事をすれば
 必ずWin-Winの関係になれる。
 本書はそのためにとても役立つ」と柳井氏絶賛!

 本連載と、10年に及ぶ「wisdom」の連載の中から厳選・アップデートしたコラムを「スジと量」で一気通貫に編集。平気で列に割り込む、自慢話ばかりする、自己評価が異様に高い、といった「中国の人の振る舞いにイライラする」「あれはスジが通らない」という、あなたの「イラッ」とくる気持ちに胃薬のように効き、スッキリとする。ユニークな中国社会・文化論です。

※目次・内容紹介はこちら


このコラムについて
「スジ」の日本、「量」の中国
 別に、中国という国が好きでも嫌いでも、中国人が好きでも嫌いでも、それは個人の自由で、どちらでもかまわない。大事なのは、正面から向き合う覚悟を決めるか、あるいは、自らの弱さに負けて目を逸らすか、である。今はそういう時代だ、と私は思う。パソコンに例えて言えば、中国人、および中国社会のOSの構造を知っておくことが不可欠だ。少なくとも、知っておいて損はない。

 中国には13億とも14億ともいわれる人がいるのだから、さまざまな個性があるのは当たり前である。いろんな考え方の人が、いろんなことを言って、いろんな行動をしている。しかし、そうは言っても、その社会にはその社会の長年の歴史的な蓄積の中から出来上がってきた共通の感覚、ある種の「クセ」のようなものがある。

 いわば
「こういうことを言われたら、こう反応するのが、この社会では普通である」
「こういう光景を見たら、こう感じるのが、この社会では普通である」
 といったようなことだ。これは日本社会にも当然ある。

 個人差の存在は認めつつも、社会のこうした「クセ」「妥当な反応の相場」はやはり存在する。歴史的な経験に培われた条件反射のようなもの……と言ってもいいかもしれない。それを知ることが、中国に限らず、異なる文化の下で育った人たちと付き合うには、非常に重要である。

 この連載では、40年近い個人的な経験の中から感じた、中国人がものを判断し、反応する時の「クセ」「反応の相場」とはどのようなものか、それらが、中国社会のどのような仕組みから生まれてきたのか、そんなことをお伝えしたい。

 いわば中国の人々や中国社会の判断基準の根底にあるもの、行動原理のようなものを、できる限り具体的かつロジカルに明らかにできれば、と思う。それだけで、我々日本人が感じるストレスはかなり軽減するはずだ。

 と、大上段に振りかぶって始めたが、中身はできる限り具体的にしたい。中国人の判断基準や行動原理を、実例をもとに考えていきたいが、その際に私がフレームワークにしているのが、この連載のタイトルでもある「スジ」か「量」か、という切り口である。ご愛読をお願いします。

日経BP社
Copyright c 2006-2018 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.


 

 
ロシア社会の変革を担う若き“職業”ボランティア


2018.11.5(月) 菅原 信夫

給料が支給されないのになぜプロのボランティアを目指すのか


モスクワのボランティアテントにいたボランティアたち

 本年6月14日から7月15日まで、ロシアで初めてとなるサッカーW杯が開催されたことは、まだ記憶に新しい。

 この大会は、ロシアがホストとなり、世界から多くのゲストを迎えるスポーツイベントという意味で、2014年のソチ冬季オリンピックに次ぐ大イベントであった。

 筆者は本年12月にW杯ロシア大会を振り返るシンポジウムに、スポーツ評論家の玉木正之氏、元日本代表チームドクター福林徹氏、サッカージャーナリスト大住良之氏らとともに、登壇させていただく予定だ。

 本稿ではそのシンポジウムでも触れる予定のテーマの1つ、W杯におけるボランティア活動についてリポートしてみたい。


石油・ガスを売り込むためのスポーツ戦略

 冒頭からの経済論をお許しいただきたいが、ロシアという国は経済面から捉えると、国家収入の6割以上を原油ガスなど、エネルギー資源の輸出に頼るという一極型経済である。

 この経済体制では、輸出先がロシア産のエネルギー資源を購入してくれることが国家経営の大前提であり、ソ連時代のように鉄のカーテンで西側と遮られていた時代とは、国家存在の流儀において大きく異なる。

 2000年以降のロシア経済進展は、エネルギー価格の上昇に支えられていた部分が大きく、決してウラジーミル・プーチン大統領の手腕にのみ帰せられる話ではない。

 ある意味、プーチン氏は幸運だったのだ。その幸運がいつまでも続くものでないことは、その後のロシア経済の成り行きが示している。

 ロシアが欧州北限の資源大国として、西ヨーロッパのエネルギー輸入国と取引するには、西欧世界に「普通の国・信頼できる取引先」として仲間入りを果たすことが不可欠だ。

 その方策の1つとして利用されたのが、2014年のソチ冬季オリンピックだった。

 ソチ開催を決定した2007年のグアテマラシティーでのIOC総会には、プーチン氏自身が乗り込んだだけではなく、彼は英語・フランス語で招致演説をこなした。

 我々のようなロシアウオッチャーにとっても、公式の場でプーチン大統領がロシア語以外で演説をする姿を見るのは、初めてであった。

 ソチオリンピックを勝ち取ったロシアは、総額500億ドルとも言われる巨額の資金をソチに投入した。

 そして2014年2月、ソチオリンピックは開幕し、真新しい施設には世界のアスリートやオリンピックファンが集った。


ウクライナ問題勃発で次なる手が必要に

 ところが、成功裏に終わるかと思われた閉幕の直前に、ウクライナで騒乱が発生、突然ロシアの立場は暗転する。

 思いを十分果たすことができなかったプーチン大統領、ロシア政府は、次なる対西欧融和作戦を2018年W杯に定め、再度多額の国家資金をこのサッカー大会に振り向けた。

 ソチ1か所で開催されたオリンピックとは違い、ロシア11都市にスタジアムを準備し、世界から迎えるゲストのための宿泊施設、さらには各都市とモスクワを結ぶ鉄道などを整備した。

 「ソチ以上のW杯を!」を合言葉に、2014年から2018年までの4年間にロシアらしからぬ計画性を発揮、最後は突貫工事まで行った。

 その結果、当初予算は5億ドル(それでも巨額だ!)と言われていたが、今や150億ドルは使っただろうというのが大方の見方である。

 この金額は昨年発表された2020年東京オリンピックの経費見通し(1兆6000億円)とほぼ同じだ(現在では3兆円と言われているが)。

 それだけの投資効果が果たしてW杯ロシア大会にはあったか、というのが今回のシンポジウム開催の動機でもある。

 これを専門家の方々からそれぞれの評価をいただこうという趣旨であるが、筆者はボランティア活動に焦点を当てて、そのロシア社会への影響という点からW杯を振り返ってみたい。

 W杯の最大の課題は、ロシア社会と外国社会、特に訪露する外国人ファンとの共存関係だった。

意外にも抜群のホスピタリティ
 モスクワやサンクトペテルブルクなど、良い意味で外人ずれしている大都会とは異なり、サマラやサランスクなどの小都市ではこれだけまとまった外国人を迎え入れたことはないはずだ。

 そもそも、現在のロシアにも「外国人を見たらスパイと思え」というソ連時代からの教育を受けてきた人たちがまだたくさん残っている。

 そのような社会に突然、見ず知らずの外国人が現れたら、ロシア社会はどう反応するのか。

 この点については、日本代表チームの全試合を取材したサッカージャーナリストの大住良之さんの感想をお伝えしたい。

 「(出張取材のため)ホテルを確保できない都市では、ネット予約で民泊を利用。自分はロシア語ができないし、ホスト側も英語ができない。それでもトラブルもなく、快適な滞在ができた」

 「これは、ホスト側のホスピタリティーのたまものである。ロシア人が非常に温かい人たちであることが分かった」

 ロシアも随分と変化したものである。

 そんなロシア社会の変化を代表しているのがボランティア活動だろう。W杯で実際に活動をした人数は1万7000人を超えるという。

 様々な局面で計画性のなさが指摘されるロシアではあるが、このボランティアはFIFAが中心となり、多くの大会で実施してきたルールとカレンダーによる計画的な募集活動が行われた。

 ボランティア募集は2016年12月末、すなわち大会開始の1年半前にはすでに締め切られている。


学生にはボランティアは難しいはずだが・・・

 その後、主に個人能力と語学力による選別が行われ、合格者には全国15か所にあるW杯センターでの研修が義務づけられた。

 職種はセレモニー補助から通訳、メディア対応、ファンサービスなどからドーピング検査補助などの専門的なものまで、多種多様だ。

 長い研修期間を考えると、ボランティアとは言うものの、採用通知を受けてからの拘束時間は非常に長く、学生や職業人ではなかなか参加するのが難しい。

 筆者は、モスクワ滞在中にW杯観戦者をサポートするボランティアテントで働く青年たちといろいろ話しをすることができた(冒頭写真参照)。

 これだけの長期間にわたりボランティア活動に参加できる彼らは普段何をしているのか、また活動に参加する理由は何か、を問うた。 

 そこで感じた印象は、ボランティアテントで活動する青年たちの多くは、ある意味、ボランティア専門家だ、ということだった。

 普段何をしているか、という質問にははっきりした回答をしない青年も、過去のボランティア歴を聞くと堰が切れたように話し出す。

 特に2014年ソチオリンピック、2017年FIFAコンフェデレーションズカップロシア大会で活動歴を持つ青年が多かった。

 「自分が大きなイベントを見る側ではなく、動かす側にいることで、普段感じることのない充足感を覚える」

 「この感覚を求めて、次々と国際的なイベントにボランティアとして参加するようになった」

 ある青年はこう答えた。


リクルートセンターは大学に設置

 昨年のコンフェデレーションズカップロシア大会は、日本が参加しなかったため、日本国内での報道は今ひとつの盛り上がりであった。

 しかし、ロシアにおいては、W杯のプレ大会との位置づけが与えられ、ボランティアの募集もW杯と同時期に行われた。

 このため多くのボランティアはコンフェデレーションズカップから活動を始めている。参加したボランティアの数は、コンフェデレーションズカップが5500人に対し、W杯は1万5000人であるから、その規模の違いは明白だ。

 しかし、興味を引くのは、2017年から2018年までの1年超をボランティア活動に明け暮れた5500人の素性である。

 ロシア人参加者は、母国語のほか、共通語としての英語、さらには第3か国語ができることが望ましいとボランティア募集要領に書かれているので、FIFAはボランティアの対象として現役学生を対象にしていると考えられる。

 そのため、ほとんどのボランティアセンターは、大学内に設置され、リクルート業務を行なった。

 しかし、筆者の記憶ではボランティアテントのリーダーたちは30歳前後の若者が多く、ほとんどは大学既卒者であった。

 ロシアでは、大学や大学院の卒業資格を持つ若者がいかなる組織にも属さず、その場その場の仕事を見つけながら、自らの趣味に大きく傾いた生活をしているケースを結構見かける。

 こういう若者の中に、ボランティアを専門的に引き受けるグループが、ソチオリンピック以来大きくなっているように見えるのだ。ボランティア専門家、とでもいうべきグループである。

ボランティアを渡り歩くロシアの若者
 ボランティアテントにいたリーダーと思しき女性に、大会終了後はどうするのか尋ねると、「FIFAのボランティアプログラムの充実ぶりが大変気に入りました。来年のFIFA女子W杯でボランティアをするため、フランスに早めに移動したいと思っています」ということであった。

 ちなみに彼女の職業は不詳であった。ご承知のように、ボランティアに給与は支払われない。しかし、今回のW杯を見ると、ボランティアには勤務時間内の食事、交通費、宿舎、さらにユニフォームなどは無償で用意され、ある意味、生活は可能である。

 このままいくと、ロシア人の持つ個人主義的な人生観とボランティア精神が見事結びつき、ロシアは世界的なボランティア大国になるのではないだろうか。

 東京オリンピックのボランティア募集も開始されたが、対象は日本人だけではなく、世界から希望者を受け入れる方針だ。

 2020年、我々は東京オリンピックの会場で英語を流暢に話すロシア人ボランティアに出会うことになるかもしれない。

 そして、このロシア人ボランティアたちに見られるような、世界を駆ける一匹狼が、ロシア社会を、そしてロシア政治を根底から変えていくのではないか、と筆者は感じている。

 ただし、それはロシアにとって良いことなのかいまだに断言できないでいる。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54580
http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/459.html

[国際24] 日韓「友好幻想」の終焉元徴用工判決の狙いは65年日韓基本条約のちゃぶ台返し メルケル首相が去ってもドイツの苦悩は消えない

日韓「友好幻想」の終焉

元徴用工判決の狙いは65年日韓基本条約のちゃぶ台返し


混迷する朝鮮半島

2018年11月5日(月)
重村 智計


日韓基本条約は「日米韓の軍事同盟だ」との強い批判を日本国内でも受けつつ批准された(写真:AP/アフロ)
 在日韓国人の友人は、次のことを父親にきつく口止めされていた。「太平洋戦争の時、八幡製鉄(現新日鉄住金)で働いた。日本が敗戦し帰国する際は退職金が出た。送別会で餞別ももらった。強制労働はなかった。日本人には話すな」。父親は、「募集」か「官斡旋」で八幡製鉄に来た。帰国したが職がなく、密航して再び日本に来た。

 韓国の大法院(最高裁)は10月30日、韓国人の元工員に対し、1人当たり1億ウォン(約980万円)を支払うよう新日鉄住金に命じた。判決は「原告は未払い賃金や補償金を求めているのではない」と述べ、「慰謝料請求権」を認めた。

 これは、奇妙な判決だ。メディアは「徴用工訴訟」と報じたが、原告は「徴用工」ではなかった。判決は「強制動員の被害者」と述べた。「徴用工」とは、1945年以降「徴用令」に基づいて来日した朝鮮人だ。原告はそれ以前の「募集」か「官斡旋」に応じて新日鉄住金で働いた人たちだ。

 さらに奇妙なのは、判決は「損害賠償」ではなく、「慰謝料の支払い」を命じた。慰謝料とは、一般的に精神的苦痛に対する支払いとされる。

 つまり、原告は「未払い賃金」と「補償金」が訴因では、勝訴できないと考え「慰謝料」を請求した。これを韓国最高裁は認めた。なかなか巧妙な訴訟戦術だ。慰謝料なら、その後の精神的苦痛や差別、病気などを理由に請求できる。賃金の支払いや補償金と違い、慰謝料なら労働の実態などの事実関係が争点になりにくい。

最高裁判事の過半を文大統領が任命
 この判決に対し、韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相は「司法府の判断を尊重する」と述べた。「司法の独立」と、なぜ言わなかったのか。韓国のメディアも「司法の独立」とは報じなかった。韓国語で「司法の独立」を言うと、多くの韓国人は白けるか、鼻で笑う。司法が独立していると、決して思っていないからだ。筆者もソウル特派員時代に、大統領府に判決内容を相談に来た裁判所長を目撃した。

 韓国では、長い間「司法は権力の僕(しもべ)」と揶揄された。それでも今回の判決に、韓国民の多数が「胸がスッキリした」思いを抱いているのは事実だろう。国民は「強制労働」「不法な植民地支配」「反人道的な不法行為」の認定に、満足する。判決に権力(行政)の意向が反映されたと、一般庶民は思うだろう。

 司法が独立していないと断じる根拠は、最高裁長官の経歴だ。金命洙長官の前職は、春川地方裁判所長であった。地方の裁判所長が、最高裁長官に抜擢された。ありえない人事だ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、同じ考えの裁判官を抜擢したと考えるのが、常識だろう。加えて、最高裁判事13人のうち7人が文大統領に任命された。

日韓併合を無効と「確定」する
 とすれば、判決の背後に文大統領をはじめ革新(左翼)勢力の思いと戦略があった、と考えても間違いではないだろう。この判決が日韓関係に衝撃を与えることを当初から予想していたはずで、大統領府、政府と司法部はその対応を練ったはずだ。そうでなければ、韓国の官僚は無能だ。

 判決はどんな効果を狙ったのだろうか。それは@大統領の支持率アップA日韓併合無効の確定B日朝正常化の遅延C日韓基本条約再交渉D大統領再選――である。一言で言うと、「65年日韓基本条約」の「ちゃぶ台返し」だ。

 判決は「不法な植民地支配」「植民地支配の不法性」を強調した。日韓併合を「国際法違反で無効」とする韓国内の主張を、最高裁が公式に認めたことになる。韓国では「韓国を日本の保護国とした1905年の第二次日韓協約は、日本軍の脅迫で成立したから無効である」との主張が支配的だった。判決は、これを確定した効果がある。

日朝国交正常化交渉の遅延を図る
 文在寅政権は、この判決が日本と北朝鮮の国交正常化交渉に大きな影響を与える、と期待している。日朝国交正常化交渉で、「徴用工への慰謝料請求」を北朝鮮に要求させる計算だ。そうなれば、日朝交渉は紛糾する。韓国は、日本が先に北朝鮮に進出するのを、望まない。また、日本が北朝鮮の要求を受け入れ「不法な植民地支配」と「慰謝料請求」を認めれば、日韓基本条約再交渉の糸口になる。

 ところが北朝鮮は、判決に沈黙を続けた。「歓迎」の立場を直ちに表明することはなかった。韓国の意図を見極めるのに時間がかかったのだ。北朝鮮は、金日成(キム・イルソン)主席が日本帝国主義に勝利した歴史を「正統性」の根拠にしており、韓国のように「歴史の立て直し」を必要としていない。また、日本帝国主義と一般国民を区別しており、日本国民全員を日本帝国主義者とはしない。

 韓国は、日本と戦争し勝利したわけではないので、「国家の正統性」にコンプレックスを抱いている。この心理克服のために「歴史立て直し」や「日本への勝利」を必要とする。最近の「慰安婦財団解散」や自衛隊艦船の旭日旗掲揚拒否は、革新勢力が目指した「歴史立て直し」の一環で、「対日勝利」のシンボルだ。

 文在寅政権の「歴史見直し」戦略は、今後も続くと見るべきだろう。日本政府や企業の対応にも問題はあっただろう。だが、植民地支配への反省から日韓友好のために経済協力や韓国支援を進めた日本の好意は、理解されなかった。

 隣国との関係悪化は、望ましくはない。歴史を振り返ると、およそ1300年前の白村江の戦い以来、日本は朝鮮半島に関与して、敗北の連続だった。韓国最高裁の判決は、日本は朝鮮半島に深く関わると裏切られる、との歴史の教訓を再確認させたのかもしれない。


このコラムについて
混迷する朝鮮半島
朝鮮半島の動向から目が離せない。

金正恩政権が、核とミサイルの開発を続けている。
日本に対する核の脅威が刻一刻と高まる。

金正恩委員長の動向は、北朝鮮と周辺国との関係だけでなく、日米・日韓関係にも影響する。

韓国では文在寅氏が大統領に就任。
米韓と南北の距離感が大きく変わる可能性がある。

この変化をウォッチし、専門家の解説をお送りする。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/230558/110200034/


 


メルケル首相が去ってもドイツの苦悩は消えない

様変わりした政治情勢、これから誰が欧州大陸の平和を守るのか

2018.11.5(月) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年11月2日付)

メルケル独首相の退任表明、EUは機能不全に? アナリスト
ドイツの首都ベルリンにあるキリスト教民主同盟(CDU)本部で記者会見するアンゲラ・メルケル首相(2018年10月29日撮影)。(c)Tobias SCHWARZ / AFP〔AFPBB News〕

 こんなに良い暮らしをしたことはかつてなかった――。

 ハロルド・マクミランによるこの有名な発言は大抵、誤って記憶されている。

 1950年代末期の英国が好景気に沸いていたことを、当時首相だったマクミランが自慢した言葉は実は限定されていた。

 「率直に言って、ほとんどの国民はこんなに良い暮らしをしたことがかつてなかった」。こう言った後に、忘れられていることが多いが警告をつけ加えていた。

 「中には、できすぎではないかと心配し始める人もいる。いや、たぶん、こんなに良いことは長続きしないのではないかと言うべきだろう」

 こんなに良いことは長続きしない。疑念に満ちた成功。マクミランなら、今のドイツの気分を認識してみせただろう。

 筆者は先日、ある高齢の政治家が、ドイツがこれほどまでに繁栄したことはかつてなかったと語るのを耳にした。

 それなのに、どうだろう。アンゲラ・メルケル氏の率いる連立内閣は好かれていない。国民のムードは不安定で、政界は分裂している。

 ドイツ国民は自分たちの繁栄をなかなか認識できずにいる。

 企業経営者たちも相反する感情を露呈している。

 ドイツはケタ外れの経常黒字を出している。価格を高く設定できる高品質な製品を作っている。

 シュツットガルトのような都市に行けば、ドイツが生み出している富を目の当たりにすることができる。

 しかし、経営者たちの顔色はさえない。安全第一の文化ゆえにイノベーションが生まれず、リスクが取られることもない。

 過度に厳しい規制も同じことをしている。未来は機械学習と人工知能(AI)というデジタルの世界にあるのに、どちらも近いうちに米国と中国に独占されかねない、と嘆いているのだ。

 ベルリンの人々が皆以前から知っているように、首相としてのメルケル氏は黄昏時を迎えている。今では退陣までの手順も決めた。

 このところは打撃続きで、直近では同氏の率いるキリスト教民主同盟(CDU)がヘッセン州の州議会選挙で得票率を大きく下げた。

 その前には、姉妹政党のキリスト教社会同盟(CSU)が本拠地バイエルン州の州議会選挙で手痛い負けを喫し、首相と党首を兼任するというメルケル氏の選択を与党の連邦議会議員らが拒否した。

 政治家が長居をすると、ろくなことにならない。メルケル氏と同様に首相を務めたコンラート・アデナウアーやヘルムート・コールの時がそうだった。

 今年12月に党首を降りることにしたメルケル氏の決断は、威厳を保ったまま舞台を去ろうという取り組みであると同時に、13年に及ぶ首相在任が長すぎたという告白でもある。

 2021年まで首相を続けるとの意向も、真意ではないが言わねばならないことだと指導者が感じるようなことの一つに見える。

 中道右派のCDUとCSUが痛手を被ったとするなら、両党と大連立を組んでいる社会民主党(SPD)への支持率は急降下している。

 排外主義のポピュリスト(大衆迎合主義者)政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が台頭していること(特に、繁栄から取り残されているとの不満が強いドイツ東部で顕著であること)は、国際的な注目を集めている。

 しかし、それ以上に勢力を伸ばしているのが緑の党だ。

 環境を心配している保守派と、移民への門戸開放に好意的な左寄りのリベラル派の両方を引き寄せた同党は、SPDに代わって第2党に浮上する可能性がある。

 奇妙なことに、今でも、政治家の中で最も人気があるのはメルケル氏だ。同氏はドイツの国内政治地図のど真ん中に鎮座している。

 中には、それが問題だと考える向きもある。同氏が2015年に100万人の難民に国境を開くと決断したことは、自分の党の右派を怒らせたうえに、AfDにつけ入る隙を与えることにもなった。

 それでも、この決断のおかげで、メルケル氏個人は中道左派から支持を集めた。

 ベルリンの政界通の間では、メルケル氏が舞台を去れば国内政治は心地よい普通の状態に戻るだろうとの見方がある。

 CDUは右寄りにシフトしてAfDの支持者を一気に引き寄せるだろうし、SPDが中道左派からの支持を再び増やす余地を生み出すということだ。

 このような普段の姿を渇望する声は、部外者には、厳しい現実に目をつぶるエスタブリッシュメント(体制側)の希望的観測のように響く。

 ドイツ政界の地図はすでに描き換えられている。かつては3党(CDUとCSUを分けて考えるなら4党)が競い合い、小規模な自由民主党(FDP)のリベラル派が連立に必要な浮動票を提供していた。

 そのような時代はもう終わった。今では6党(あるいは7党)が連邦議会に議席を有している。

 最近の世論調査で見られる20%超の支持率がたとえ誇張であるとしても、緑の党はすでに7州以上で連立政権に加わっている。

 同党が売り込みをかけているのは、社会的な責任感のある裕福な専門職の人々だ。

 極左政党のリンケ(左派党)は東部に強固な支持基盤を持つ。東部には昔の共産主義の秩序に対する郷愁――オスタルジアと呼ばれている――が残っており、政治にまつわる記憶とはかくも早く薄れてしまうものなのかと思わずにはいられない。

 AfDは、難民への恐怖感にとらわれた人々に加え、ネオナチからの支持もかき集めている。

 では、経済がこれほど好調でありながら、政治のバランスがここまで目に見えて失われてしまったのはなぜなのか。

 その一部は、豊かさの配分に偏りがあることで説明できるに違いない。

 また、政府にはカネがあふれるほどあるにもかかわらず、政治家たちはなぜか、ほころびの見えるインフラの建て直しを困難だと考えている。

 橋や道路は修復されず、新しい空港も建設されない。WiFiや携帯電話も、ちゃんとつながることは期待できないのが実情だ。

 それでも、大半のドイツ人はマクミランと同じように、「こんなに良いことは長続きしないのではないか」と思っているようだ。その答えはイエスかもしれない。

 かつてドイツの重要な後援者だった米国も、今ではドイツ人が反対するあらゆること――露骨なナショナリズム、力のあるものが優位に立つという決まり、法の支配への侮蔑――を体現する人物を大統領に据えている。

 メルケル氏は時折、欧州は自衛のために立ち上がらねばならないと語る。人々はその通りだとうなずくものの、結局、実行しようという熱意は見せない。

 同氏はコールのようなタイプの情熱的なヨーロッパ人ではなかったが、ドイツの繁栄が欧州の安全と安定のうえに成り立っていることは確かに理解している。

 しかし、今後は誰がこの大陸の平和を守るのだろうか。

By Philip Stephens

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54581

http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/460.html

[国際24] これまでになく鮮明に対中強硬姿勢を示す台湾・蔡総統 財新の10月中国サービス部門PMIは50.8、13カ月ぶり低水準  
世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

これまでになく鮮明に対中強硬姿勢を示す台湾・蔡総統


2018/11/05

 台湾の蔡英文総統は、10月10日の双十節(中華民国建国記念日)演説で、これまでになく鮮明に中国に対する強硬な姿勢を示した。以下に、同演説のごくあらましを紹介する。


(alphabetMN/AzFree/lantapix/iStock)

 過去2年間、私(蔡英文)は、一貫して次のことを主張してきた。2300万の台湾人の自由で民主的な生き方を守る。中華民国の持続的な発展を守る。両岸の平和と地域の安定を維持する。これらは全台湾人にとり最大の共通の了解だ。

 全世界が中国の影響力拡大に直面する中、台湾政府は、世界に台湾の強さと復元力を見せたい。

 台湾人は、外部勢力が一方的に台湾海峡の現状を変えることを、決して受け入れない。国際社会は、普遍的価値を破ることを決して承認も支持もしないだろう。

 私は再度、北京の権威主義者たちに、責任ある大国として、紛争の源となるのではなく、地域と世界のためにプラスとなる役割を果たすよう求める。

 我々は、対立を激化させるような行動に走らない。両岸関係を危うくするような挑発もしないが、国民の意思から離れて台湾の主権を犠牲にすることもない。

 我々は、安定と順応性を追求し、前進する。我々は、この道を着実に歩むべきだ。

 効果的な対応戦略の基礎は国の強さにある。それゆえ、目下、我々の最も重要な任務は、国家安全保障、経済、社会的セーフティネットの強化である。我々は、台湾をより強くし、世界にとりかけがえのない場所とする。これが台湾が生き残る道だ。

 我々の安全保障への現在のチャレンジは、伝統的な軍事的防衛を越えるものである。外交的圧力、社会への侵入、経済安全保障、全てが潜在的脅威にさらされている。我々の優先課題は、全面的な戦略を立て、国家安全保障を強化することだ。

 第一の要素は、価値に基づく外交的リンクを強化し、台湾を戦略的にかけがえのないものとすることだ。台湾は、戦略的に重要な位置にある。我々の選択肢は明確だ。すなわち、自由、民主主義、市場経済を断固として守ることだ。過去2年間、中国の圧力に直面し、台湾はその価値と信念を支持してきた。それで、ますます多くの同じ考えの国々の支持を得ている。

 第二の要素は、我々の国防能力の強化だ。

 第三の要素は、外国勢力が我々の社会に侵入し転覆することを防ぎ、民主的組織と社会経済的機能を正常に保つことだ。外国勢力が混沌を作り出そうとする企ては、決して座視せず、必要とあれば先制的に対処する。

 第四の要素は、グローバル経済および貿易戦略を見直すことだ。米中貿易摩擦、グローバル経済・貿易の秩序の再編に対応すべく、台湾は、地域の発展とサプライチェーンにおける役割を再調整しなければならない。

 台湾自身が、かがり火である。かつて、我々の民主的移行は我々自身の前途を照らし、今も、香港、中国大陸、そして世界中で民主主義を熱望する人々へのかがり火であり続けている。

 我々の国は、2300万人の台湾人のものだ。我々の国は、次の世代に、今の姿のまま手渡されなければならない。

参考:蔡英文,‘President Tsai delivers 2018 National Day Address’(Office of the Republic of China(Taiwan), October 10, 2018)
https://english.president.gov.tw/NEWS/5548

 最近の世論調査によれば、全体として蔡英文の人気は低迷している。そして、11月下旬には統一地方選挙が予定されており、その選挙は蔡・民進党政権の今後を占うものとして重視されている。そのような状況下での蔡のスピーチについては、これまで特に、中国との関係において基本的に慎重な立場をとってきた蔡が、その立場を変えるかどうか注目されるところであった。

 この点、蔡英文が最近の米中関係の動きや11月の地方選挙を控えて、これまでの、「不明確で曖昧な路線への決別」を宣言し、その立場を鮮明なものにした、と見ることができよう。特に、10月4日のペンス副大統領の対中国政策演説の内容が蔡のスピーチに影響を与えたものと思われる。上記要約では割愛したが、ペンス演説については名指しで触れている。

 ペンス演説は、台湾については2か所において言及しているが、いずれも米国が台湾の民主主義を支持し、台湾の地位を強く擁護することを強調している。

 中国の共産党独裁と台湾の民主主義との違いについては、蔡英文もこれまで言及することはあったが、今回のスピーチのように、「台湾自身が香港や中国において民主主義を追求している同志たちの前途を照らすかがり火となるだろう」といった表現ははじめてのことである。この表現は中国から見ると、到底容認しがたいものだろう。

 過去2年半を振り返ってみれば、台湾独立でも統一でもない「現状維持」を標榜した蔡英文であったが、中国側のきわめて厳しい対台湾政策により、中台間の公的なチャネルは断絶したままである。他方、台湾内部では蔡の対中国政策は「軟弱」であるという独立派の意見も強い。

 蔡としては、「現状維持」の大枠は維持しつつも、台湾における「民主主義」を強調することにより、米、日、欧との連帯を強める方向に舵を切ったということだろう。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14374


 


 

トップニュース2018年11月5日 / 12:22 / 17分前更新
財新の10月中国サービス部門PMIは50.8、13カ月ぶり低水準
1 分で読む

[北京 5日 ロイター] - 財新/マークイットが発表した10月の中国サービス部門購買担当者景気指数(PMI)は50.8と9月の53.1から低下し、2017年9月以来、1年1カ月ぶりの低水準となった。

新規受注が伸び悩み、年末にかけて経済が一段と失速する可能性を示唆した。10月のPMIは景況の拡大・悪化の分かれ目となる50にも近付いた。

中国経済の半分以上を占めるサービス部門の減速は、米中貿易摩擦による輸出への打撃をサービス部門で相殺することを期待してきた当局者にとって特に懸念材料となる。

サービス部門の弱さが続けば、米中貿易摩擦や国内製造業の減速に加え、過剰生産能力削減や環境汚染対策、民間債務削減といった政府の取り組みにも影響が生じる。

今年に入って国内不動産市場が減速していることも不動産サービスへの需要を圧迫している。

10月は新規受注のサブ指数が50.1と前月の52.4から低下し、50を割り込んだ2008年11月以来の低水準を記録。新規受注がほぼ拡大しなかったことが明らかになった。

こうした中で今後の活動に対する信頼感も3カ月ぶりの水準に悪化した。

セクター別では金融サービスがとりわけ軟調となった。

一部の調査対象企業は、米中貿易摩擦が今後の活動に影響する可能性があるとの懸念を示し、貿易摩擦による企業の信頼感や実際の活動への影響が広範囲で現れつつある状況が浮き彫りになった。

9月に約2年ぶりに50を割り込んだ雇用のサブ指数は今回50を上回ったものの、雇用者数の伸びは小幅にとどまり、歴史的な傾向を下回った。

財新が前週発表した10月の製造業PMIは50.1と、9月の50.0から小幅な上昇にとどまった。[nL3N1XC1F4]

製造業とサービス部門を合わせた10月の総合PMIは50.5と前月の52.1から低下し、2016年6月以来の低水準となった。
https://jp.reuters.com/article/china-service-pmi-idJPKCN1NA075?il=0


 
http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/463.html

[国際24] 民主党がトランプの岩盤支持層を切り崩せない本当の理由 危ういプーチン政権「やつは国の裏切り者だ」 (ルポ迫真) 


海野素央の Love Trumps Hate

民主党がトランプの岩盤支持層を切り崩せない本当の理由

2018/11/05

海野素央 (明治大学教授、心理学博士)


トランプ大統領の熱狂的な支持者(筆者撮影@アリゾナ州メサ)
 今回のテーマは「なぜ民主党はトランプ大統領の岩盤支持層を切り崩せないのか」です。ドナルド・ト

ランプ米大統領の支持率は、2017年1月の就任以来、低空飛行ですが実に安定しています。米政治情報サ

イト「リアル・クリア・ポリティックス」によれば、トランプ大統領の就任当初の支持率(17年1月29日

)は43.8%でした。今回の中間選挙直前の支持率(18年11月2日)は44.1%で、ほとんど変化がありま

せん。

 トランプ大統領の岩盤支持者は、なぜ減らないのでしょうか。その回答はトランプ集会にありました。

9月及び10月に西部モンタナ州とアリゾナ州で、同大統領が共和党候補の応援演説を行うために開いた集

会に参加しました。そこで本稿では、現地の様子を交えながらそのナゾを解きます。

赤い帽子

トランプ集会に登場したトランプグッズの店(筆者撮影@アリゾナ州メサ)
 確かに、トランプ大統領に熱狂的なトランプ信者は同大統領から逃げていきません。モンタナ州ミズ―

ラ在住で開催された集会は18時半開始でしたが、筆者が午前8時前に会場に到着すると、すでに列ができ

ていました。

 トランプ信者の一人でミズーラ在住のジニー・ジョセリンさんは、「7月にモンタナ州グレートフォー

ルスで行われたトランプ集会に正午から並びましたが、入場できませんでした。今日は8時前に来ました

」と語っていました。60代前半に見える白人女性のジニーさんは、開門時間が近付くとバックから「米国

を再び偉大にする」という字句が入った赤い帽子を取り出して被りました。

 筆者は研究の一環として、オバマ及びクリントン陣営に参加し、多くの集会に足を運びましたが、陣営

の帽子を被った支持者をほとんど見かけませんでした。一方、トランプ集会では赤い帽子を被った熱狂的

な支持者が目につきます。つまり、民主党がトランプ大統領の岩盤支持層を切り崩せない第1の理由は、

彼らが同大統領と心情的に一体化していることです。

フェイク(偽)ニュースの力

熱狂的な岩盤支持層(筆者撮影@モンタナ州ミズ―ラ)
 第2の理由は、岩盤支持層がトランプ大統領にとって不都合な報道をフェイクニュースとして片づけて

しまうことです。例を挙げてみましょう。

 米政府高官と名乗る匿名人物が9月5日、トランプ大統領が政権内部で抵抗に遭っていると、米ニューヨ

ーク・タイムズ紙に寄稿しました。その寄稿文についてモンタナ州ビリングスのトランプ集会に参加した

40代後半とみられる白人男性は、こう語っていました。

 「あの寄稿文は政府高官が書いていない。ニューヨークタイムズが書いたんだ。完全なフェイクニュー

ス。まあ、寄稿文が話題になってもせいぜい一週間ぐらいだろう」

 彼は根拠を示さずにニューヨーク・タイムズ紙の自作自演だと断言し、寄稿文の内容をまったく信じて

いませんでした。これでは、岩盤支持者は減少しません。

Qアノンの役割
 第3の理由は、昨年10月28日からネット上で陰謀論を展開している匿名の謎の人物「Qアノン」の役割

です。Qアノンはトランプ大統領に対する不都合な事実を陰謀や策略とみなし、同大統領を守る役割を果

たしています。


「我々はQだ」の看板のあるテントに集まるQアノンのフォロアーたち(筆者撮影@アリゾナ州メサ)
 率直に言ってしまえば、Qアノンはトランプ大統領のプロパガンダです。11月6日(現地時間)の米中

間選挙では、熱意の面で民主党支持者が共和党支持者を上回っているといわれています。その勢いを民主

党のシンボルカラーである青色を使って「ブルーウエーブ(青の波)」と呼び、専門家は選挙でその波が

押し寄せると予想しています。

 ところが、Qアノンはフォロアーに向かって、「ブルーウエーブを信じるな。レッドウエーブ(赤い波

)を信じろ」と投稿しています。ちなみに、赤色は共和党のシンボルカラーです。
トランプ大統領はQアノンと歩調を合わせたかのように、選挙応援集会で「ブルーウエーブは消滅した」

と強調しています。

 トランプ集会には、「Q」の文字が印刷されたTシャツを着用したQアノンのフォロアーが参加していま

す。モンタナ州及びアリゾナ州で彼らを対象にヒアリング調査を行いましたが、Qアノンに対して狂信的

で、「岩盤の中の岩盤」という印象を強く持ちました。


Qアノンのフォロアー(筆者撮影@モンタナ州ミズ―ラ)
岩盤支持層の作り方
 では、トランプ大統領はどのようにして強固で崩しがたい岩盤支持層を作ったのでしょうか。岩盤支持

層の形成過程を説明しましょう(図表)。簡単に言ってしまえば、「掘り起こす」「火をつける」「固め

る」の3つのプロセスから構成されています。


写真を拡大
 まず、16年米大統領選挙の共和党候補予備選挙でトランプ大統領は、ワシントンのエスタブリッシュメ

ント(既存の支配層)から無視されてきた有権者の掘り起こしに成功しました。その中には、モンタナ州

ミズ―ラでの選挙応援集会に駆け付けた金属加工に携わるトムさん(43)のような白人労働者がいます。

彼らはトランプ大統領が白人労働者の気持ちを理解し、彼らのために働いていると信じています。


自転車にトランプ支持の旗を掲げる支持者(筆者撮影@モンタナ州ミズ―ラ)
 次に、トランプ大統領は支持者の気持ちに火をつけ、熱意を高めます。その際、「白人労働者対不法移

民」という対立構図を作り、白人労働者に対する敵対勢力を明確化し、対立を煽ります。「不法移民が白

人労働者の職を奪った」とし、その問題解決を図るために、米国とメキシコとの国境における壁の建設と

製造業の復活を公約に掲げました。

 そのうえで、支持者を固める作業に入ります。これが岩盤支持層形成の最終プロセスです。

 同大統領は支持者が敏感に反応する争点を選択します。今回の中間選挙で、トランプ大統領は16年の大

統領選挙と同様、彼らの心に最も響く不法移民問題を争点化しました。それが、中米諸国から徒歩で米国

とメキシコの国境を目指して北上している移民集団の問題です。移民集団の中に犯罪者が含まれており、

彼らが米国に流入すれば、支持者の生活や生命が危機に直面すると警告を繰り返し発しています。


金属加工会社で働く白人労働者のトムさん(筆者撮影@モンタナ州ミズ―ラ)
 加えて、トランプ大統領が最高裁判事に指名したブレット・カバノー氏を利用しています。カバノー氏

は、無実であるにもかかわらず、性的暴行疑惑をかけられ、「民主党からひどい目にあった」と支持者に

訴えています。

 つまり、トランプ大統領は恐怖心、不安及び怒りといった心理的要因を用いて、支持者を岩盤にしてい

るのです。


銃の所持に賛成するトランプ支持者の女性(筆者撮影@モンタナ州ミズ―ラ)
「異文化連合軍」対「岩盤支持層」

Qアノンの女性フォロアー(筆者撮影@アリゾナ州メサ)
 それでは、民主党はどのようにしてトランプ大統領の岩盤支持層に対抗していけるのでしょうか。結論

から言えば、同大統領の岩盤支持層を切り崩すことは、前でみてきたようにかなりハードルが高いといえ

ます。

 前回の米大統領選挙で、ヒラリー・クリントン元国務長官はバーニー・サンダース上院議員(無所属・

バーモント州)に若者を奪われ、彼らを動員することができませんでした。ヒスパニック系(中南米系)

及びアフリカ系もクリントン氏に対して熱意が高かったとは決していえません。

 結局クリントン陣営は、若者、ヒスパニック系、アフリカ系及びアジア系を含めた「異文化連合軍」を

形成することができなかったのです。民主党は20年の大統領選挙に向けて、トランプ大統領の岩盤支持層

に対抗する「異文化連合軍」の形成が急務になるといえます。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14425


 


危ういプーチン政権「やつは国の裏切り者だ」 (ルポ迫真)
2018/11/5 6:52日本経済新聞 電子版
 「米国のワシはオリーブを食べつくしたのか」。10月23日、ロシア大統領ウラジーミル・プーチン(66)は米国と旧ソ連が結んだ中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄を通告するためモスクワを訪れた米大統領補佐官ジョン・ボルトン(69)に問いかけた。米国の国章でオリーブはワシが右足に握る平和の象徴。「オリーブは持ってこなかった」とボルトンが切り返すと「思った通りだ」と笑い声を上げた。

プーチン大統領の工作に欧米は身構える(10月23日、モスクワ)=ロイター
プーチン大統領の工作に欧米は身構える(10月23日、モスクワ)=ロイター

 米大統領ドナルド・トランプ(72)は10月20日、冷戦後の核軍縮も支えた同条約をロシアの違反を理由に破棄すると表明、世界に衝撃を与えた。それでも会談は異様なほど和やかな雰囲気で進む。プーチンは11月に首脳会談を開いて協議しようと提案。ボルトンはすかさず「トランプも楽しみにしている」と応じた。

 パリで11日に予定する第1次世界大戦終結100年行事でトランプと接触し、首脳会談を定例化する――。ロシア政府は9月からこんなシナリオを模索していた。問題はトランプの対ロ融和姿勢に批判的な米世論を納得させる材料だった。

 米国ではトランプとロシアの不透明な関係を巡る疑惑の捜査が続く。7月にヘルシンキで開かれた前回会談では2016年の米大統領選への介入を否定したプーチンにトランプが同調し、世論の集中砲火を浴びた。プーチンに一貫して甘いトランプの言動が疑惑を深め、首脳会談もおいそれと開けない状態だった。

 INF問題が潮目を変えた。「核条約を修復するためにプーチンと交渉せよ」。軍拡競争再燃の危機も意識されるなか、ロシア批判の急先鋒(せんぽう)、米紙ワシントン・ポストですら社説で首脳間の協議を促した。

 ボルトンは10月26日、国内反応を確かめるのを待ったかのように明かした。「プーチンを来年ワシントンに招待した」

 プーチンはかねて核軍縮を米ロ対話の呼び水にしようとしてきた。ロシア政府は10月28日、「戦略的安定に関する新たな条約」の協議を提案した。「やはりプーチンとトランプの間には何かある」。そんな臆測を呼ぶほどプーチンの思惑通りに事が進みつつある。

 「シュレーダリゼーション」。欧州外交官の間ではこんな言葉が飛び交う。欧米の制裁対象であるロシア国営石油会社ロスネフチ会長に就任したドイツ前首相ゲアハルト・シュレーダー(74)を引き合いに、各国の有力者がロシアに取り込まれる様を指す。

 急速に親ロに傾くオーストリア。与党・国民党の元首相と前財務相はそれぞれロシア大手企業の役員と顧問に就任した。欧州連合(EU)の対ロ制裁の解除を主張するチェコ大統領ミロス・ゼマン(74)の顧問はロシア石油大手の元幹部だ。ロシア主要企業の役員には20人近い欧米の政財界人が名を連ねる。

 「対欧米でサイバー攻撃や情報工作を仕掛けてきたロシアは現在、各国で政治家らの取り込みに注力している」。欧州の情報機関当局者が9月、重い口を開いた。ウクライナ侵攻を巡る制裁の解除、19年の欧州議会選もにらんでいるという。「情報機関が協調してロシアの工作を暴き、抑止すべき段階に来ている」。秘密主義で知られる情報機関も声を上げ始めた。

 英当局は9月、英南部ソールズベリーで3月に起きたロシア人元スパイ・セルゲイ・スクリパリ(67)の毒殺未遂事件をロシア軍の情報機関(GRU)の犯行と断定し、容疑者2人を公表した。続いて米英、オランダの当局は10月、一斉に毒殺未遂やロシアの組織的なドーピングを調査する国際機関を狙ったサイバー攻撃の実態を公開した。

 これが効くかどうか。プーチンはスクリパリを襲った容疑者2人について「民間人だ」「犯罪的なことは何もない」と反論した。その翌日、ロシア国営テレビに出演した2人は仕事はフィットネス関連で、たまたま事件当日に現地を観光で訪れただけだと主張した。

 2人の身元はほどなく英調査報道機関により暴かれた。プーチンに最高位の勲章を授与されたGRU大佐とGRU所属の軍医だった。

 「(メディアは)スクリパリをまるで人権活動家のように扱っている」。GRU関与が濃厚になるとプーチンは開き直るようにうそぶいた。「やつは(国を裏切った)くそ野郎だ」。プーチンが手を緩める兆しはない。(敬称略)

 サイバー攻撃や情報機関の暗躍の疑惑……。世界を揺さぶるプーチン政権の暗部を追った。

http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/464.html

[経世済民129] 米中間選挙、金融市場への波及シナリオ ねじれ議会ならトランプ保護主義に拍車 金融機関「配慮」の利上げに距離 ドル円強気
トップニュース2018年11月5日 / 14:59 / 6時間前更新
アングル:
米中間選挙、金融市場への波及シナリオ
Lewis Krauskopf
3 分で読む

[ニューヨーク 31日 ロイター] - 行き詰まるのか、それとも民主党が圧勝するのか、あるいは共和党が過半数を維持するのか──。米ウォール街は11月6日の米中間選挙を注視している。経済だけでなく、企業の意思決定や消費を揺さぶりかねない政策の決定が、今回の結果にかかっているからだ。

共和党が米国議会の支配を維持、あるいは勢力を拡大する場合、トランプ大統領は、税制改革を含む自身の政策を一段と推し進めていくことになるだろう。

一方、民主党が下院だけでなく、上院を支配するために必要な議席を獲得するならば、トランプ大統領の政策目標は抑制され、大統領の弾劾を試みる動きが起きる可能性がある。

投資家は、民主党が下院を奪還し、共和党が上院を維持するといった米国議会の「ねじれ」を警戒していることが、最近の世論調査などは示している。

しかし6日の選挙を直前に控え、投資家心理は変わる可能性がある。2016年の米大統領選挙では、トランプ氏は事前の世論調査で劣勢だったが、実際には予想外に勝利したことを投資家たちはすぐに思い出すに違いない。

中間選挙は通常、「世界の金融市場にとってはもちろんのこと、米金融市場にとっても主要イベントではないが、今回は違うかもしれない」と、シティグループのアナリストは最近こう記している。

以下に、選挙結果がそれぞれの資産クラスにどのような影響を及ぼし得るかを見てみよう。

<株式>

民主党が下院を奪還した場合、トランプ政権に関わる公聴会が開かれるなど政情不安を巡る懸念が浮上し、株式市場は動揺する可能性がある。

とはいえ、10月の米株相場の急落は、「ねじれ議会」を織り込んでのことであり、そのようなシナリオが実現しても市場はそれほど動揺しない可能性もある。

たとえ民主党が下院を制しても、共和党が上院を支配したままであれば、大きな政策変化が起きる可能性は低いだろう。

だが、インフラ投資計画においては、トランプ大統領と民主党議員が妥協点を見いだすことで、株価を押し上げる可能性がある。

もし民主党が下院のみならず上院の支配も確実にするのであれば、市場にとってはサプライズであり、株価急落を招く恐れがある。

トランプ大統領の減税対策を修正したり、同大統領に対する弾劾手続きが開始したりする可能性は、投資家や景況感に悪影響を与えかねない。

現在と同様、共和党が上下両院ともに支配を維持すれば、税制改革や規制緩和が一段と進む可能性への期待から、株式相場は上昇するだろう。

その一方で、市場は米連邦準備理事会(FRB)の動向も注視するだろう。もし議会がさらなる減税や支出など刺激策を講じるなら、インフレ率が上昇し、利上げにつながる可能性があるからだ。

共和党の勝利により、トランプ大統領は、さらなる輸入関税を課すなど保護主義的な通商政策を一段と強める可能性がある。

「最初の反応はポジティブかもしれないが、トランプ政策に対するチェック機能が働かなければ、ネガティブな影響が生まれる可能性もある」と、米ニュージャージー州にあるチェリー・レーン・インベストメンツのパートナー、リック・メックラー氏は指摘。「貿易と税制、どちらの政策もかなりインフレを誘発しやすい」

<米ドル>

共和党が上下両院の支配を維持するなら、米ドルは恩恵を受ける可能性があるとアナリストは指摘する。トランプ関税がもたらす世界的な供給ルートの混乱や原価上昇を踏まえ、米ドルは安全な避難先とみなされている。今年、中国や欧州やカナダからの輸入品に関税がかけられたのを受け、米ドルは上昇した。

一方、ねじれ議会はドルにとってはネガティブとみなされるとアナリストは言う。米国経済は来年減速する見通しだが、それを埋め合わせる新たな財政刺激策が投じられる可能性が低くなるためだ。

民主党が上下両院ともに勝利した場合も、政府機関の閉鎖リスクが高まったり、2020年の米大統領選を控え政情が不安定化したりするなど、米国政治が完全に行き詰まる方向へと向かうのであれば、ドルを弱体化させる可能性がある。

民主党が議会を支配するなら、トランプ政権の通商政策の一部は弱められ、新興国などの他通貨を後押しする可能性がある、とアナリストは指摘する。

<新興国市場>

新興国市場の見通しは、ドルの強さと通商政策を巡る緊張と関係している。中間選挙後、新興市場の資産は米ドルの動きとは逆に反応するだろう。

民主党が上下両院のどちらか、あるいは両方を奪還した場合、中国との通商協議における緊張は緩和すると、ソシエテ・ジェネラル(ニューヨーク)の新興市場ディレクター、バートランド・デルガド氏はみている。

逆に、共和党が圧勝するなら、国際貿易摩擦は今後も続くとみなされ、新興国資産の急落をまねく可能性がある。新興国株式市場の中でも中国がもっとも懸念されている。米国との貿易戦争のせいで経済成長の伸びが減速しているためだ。

<債券>

民主党が上下両院あるいはその両方を支配することになった場合、税制改革を変更することはできるかもしれないが、昨年12月に成立した共和党減税の差し戻しや社会プログラムへの支出増は不可能だろう。

その結果、連邦政府の赤字が現在の予測よりも速いペースで増加したり、追加借り入れを必要としたりする可能性は低く、債券価格にとってはややポジティブ要因となり得る。

「何も変わらないねじれ議会となることをわれわれは予想している」と、TDセキュリティーズ(ニューヨーク)の金利ストラテジスト、ジェナディ・ゴールドバーグ氏は言う。

ただし、1つだけ注意しなければならないことがある。

ねじれ議会の交渉手段として、政府機関の閉鎖が浮上するなら、安全な避難先として米債買いが活発化する可能性がある。

一方、共和党が議会を固守する場合、財政見通しは、彼らがいかに財政赤字に取り組むかで変わってくる。

税制改革を一段と進めれば、赤字が増える可能性がある。また、どのような改革も、給付金制度の削減や医療保険制度改革法(オバマケア)の廃止によって相殺可能かもしれない。ただし、連邦政府の借金に対する最終的な影響は定かではない。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
https://jp.reuters.com/article/us-elections-market-idJPKCN1NA0FH

 
外為フォーラムコラム2018年11月1日 / 10:43 / 2日前

ねじれ議会ならトランプ保護主義に拍車

安井明彦 みずほ総合研究所 欧米調査部長
3 分で読む

[東京 1日] - 11月6日に迫った米中間選挙は、野党・民主党が下院で過半数を奪還し、「ねじれ議会」になるというのが市場の見立てだ。米政府の財政運営が混乱する一方、通商と外交で点数を取り返そうとするトランプ大統領が対外的な強硬姿勢を強め、米国と世界双方の経済にとってリスクが高まる、とみずほ総合研究所の安井明彦・欧米調査部長は分析する。

トランプ政権が通商協議を通じて、日本をはじめとした同盟国に「中国包囲網」への参加を促してくる事態も考えられると指摘する。

同氏の見解は以下の通り。

共和党が上院で多数を維持し、民主党が下院で過半数を取るのがメインシナリオ。しかし、10月になって情勢が若干変わり、共和党が巻き返している。両院とも共和党が過半数を維持するというサブシナリオもあるとみている。

いずれの場合も、トランプ大統領の「米国第一主義」は変わらない。中間選挙が終わるということは、次の大統領選が始まるということだ。大統領の任期後半の2年間、トランプ氏はその方針を改めて強く押し出していくだろう。

ただし民主党が下院を制した場合の方が、トランプ保護主義が一段と強まりそうだ。追加減税など、議会で法案を通す必要のある政策が実施しづらくなる。強い米国の復活を支える柱の1つである景気浮揚策が困難になることから、保護主義や移民の受け入れ反対といった、もう1つの柱に傾斜していくことになるだろう。

民主党の通商政策は、共和党よりも保護主義の色合いが強いため、トランプ氏の方針と共鳴し合う恐れもある。

また、「ねじれ議会」は米国の財政運営の見通しを不透明にする。来年の夏ごろには債務上限を引き上げなくてはならない時期が来る。9月末までには次年度予算を作らなくてはならない。これに手間取れば、デフォルト(債務不履行)リスクが意識されてくる。

通商政策の保護主義化に、財政運営が混乱する恐れも加わり、民主党が下院で勝利した場合の方が、米経済、世界経済へのリスクが大きくなりそうだ。一方、共和党が上下両院を制した場合は、追加減税の実施に向けて進んでいくだろう。

<米中関係はさらに緊張>

米国第一主義に変化がない中で、中間選挙後も中国とは厳しい関係が続くとみている。力を強める中国とどう向き合うべきかという問題意識は、トランプ大統領に限らず、米国で広く共有されている。トランプ大統領流のディールで、短期的に緊張が緩む可能性は否定しないが、方向性としては、2020年の大統領選に向け、さらに緊張が高まるとみている。

日本との貿易協議も、米国が自由貿易協定(FTA)につながる交渉をしたがっているのは明らか。日本は厳しい事態に直面するリスクに備えておくべきだ。

米国がメキシコ、カナダと結んだ新たな協定が日米交渉に反映されたり、これから始まる米国と欧州連合(EU)の交渉と、日米交渉が比較される可能性がある。日本は米国との2国間協議だけでなく、他の交渉がどう進んだのか、実際にどう運用されているのかを注意深く見ておく必要がある。

米国はカナダとメキシコとの新たなUSMCA協定の中に、中国との自由貿易協定を結びにくくする条項を盛り込んだ。つまり日本が米国と貿易交渉を進めていく中で、米中摩擦に巻き込まれていくリスクがあるということだ。米国の非難の矛先が中国に集中する中で、日本や他の同盟国も一緒に中国と対峙しようという流れになりつつある。

日本はどこまで同調すべきなのか。日本企業は米国を向くべきなのか、中国を向くべきなのか──。これは次の大統領選に至る2年間の大きな論点になるかもしれない。日本は、狭い道になるかもしれないが、米中を結びつけるような役割を目指していくしかない。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。安井明彦氏にインタビューし、同氏の個人的見解に基づき書かれています。

安井明彦 みずほ総合研究所 欧米調査部長(写真は筆者提供)
*安井明彦氏は、みずほ総合研究所・欧米調査部長。1991年東京大学法学部卒業後、富士総合研究所(当時)入社。在米日本大使館専門調査員、みずほ総研ニューヨーク事務所長などを経て、2014年より現職。主な著書に「アメリカ 選択肢なき選択」などがある。

聞き手:久保信博、新倉由久
https://jp.reuters.com/article/opinion-uselection-akihiko-yasui-idJPKCN1N63BX


 


ビジネス2018年11月5日 / 18:33 / 2時間前更新
アングル:
金融機関「配慮」の利上げに距離、プルーデンス対応優先
2 分で読む

[東京 5日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は5日、金融緩和の長期化で本業収益の減少が続く地域金融機関に関連し、その経営に配慮した金利修正には距離を置く姿勢を示した。地域の人口・企業数の減少という大きな構造問題が横たわっている中で、統合・合併を含む金融機関の新たなビジネスモデル構築の努力や、モニタリング・考査などプルーデンス政策での対応を優先すべきとの立場を鮮明にした。

黒田総裁が昨年11月、過度の金利低下が「預貸金利ざやの縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害され、かえって金融緩和の効果が反転する可能性」があるとする「リバーサル・レート議論」に言及して以降、市場では日銀が金融機関経営に配慮した金利調整にいずれ踏み切るという思惑が消えない。

日銀が10月22日に公表した金融システムの現状と展望をまとめた「金融システムリポート」でも、低金利の長期化などが金融機関収益に及ぼしている影響が、時間の経過とともに累積している実情が浮かび上がった。

これに対して黒田総裁は、超低金利の長期化が金融機関の利ざや縮小を通じて「金融システムの安定性や金融仲介機能に影響を与える可能性があることは、十分に認識している」としながら、そうしたリスクが顕在化する時間軸は「(今後)5年、10年、15年というかなり長期の話だ」と強調。

同時に金融機関収益に配慮した利上げは「今の状況ではむしろ景気が悪くなり、金融機関にとって決して好ましい状況にならない」と断言し、早期の金利調整に距離を置く姿勢を示した。

さらに地域金融機関にとって重要な課題は、金融機関間の競争激化の背景に、地域の人口・企業数の減少という大きな構造問題が横たわっていることだ。そうした状況の中で日銀が多少の利上げに踏み切っても、激しい競争環境が変わらない中で、貸し出し金利の上昇も限定的にならざるを得ない、との見通しが金融関係者の間でも少なくない。

こうした認識などを踏まえて黒田総裁は、構造問題には「構造的な対応をしていかなければならない」とし、「その中には当然、統合・合併やITを活用した効率化、新たな顧客の開拓やビジネスの開発も必要になる」と、金融機関自身が構造改革に取り組む重要性を強調した。

そのうえで日銀として「考査やモニタリングなどを通じて、最新の状況把握に努めるとともに、必要に応じ、金融機関に具体的な対応を促していく」とプルーデンス政策で対応していく方針を示した。

マイナス金利の解消などをめぐり、日銀への期待感がくすぶっていた金融界にとっては、冷たい「秋風」と感じたかもしれない。

伊藤純夫 編集:田巻一彦


ドル113円前半、英ポンドが急伸
1 分で読む

[東京 5日 ロイター] - 午後3時のドル/円は、前週末ニューヨーク市場の午後5時時点とほぼ変わらずの113円前半。週明けはアジア株が全面安となったが、注目の米中間選挙を目前に控え、円を買い上がる動きは限られた。

113.15円付近で取引が始まったドル/円は小動きが続いた。日経平均は350円超の下げとなる場面もあったが、ドルの安値は113.10円にとどまった。多くの参加者が選挙を前に、取引を手控えたという。日中の値幅は上下20銭だった。

全般小動きの中で話題を集めたのは英ポンド。きょうのアジア市場取引開始時に147円前半と、前週末海外終盤の146円後半から気配値を切り上げて一段高で寄り付き、一時147円後半と10月18日以来半月ぶり高値をつけた。

きっかけは英紙サンデー・タイムズの報道。英国の欧州連合(EU)離脱問題で、英国全土を対象とした関税の枠組みが法的拘束力を持つ離脱協定に盛り込まれる、と伝えた。この枠組みにより北アイルランドの扱いを本土と区別する必要がなくなり、懸案事項となっているアイルランド国境問題の解決につながるとしている。

英首相府の報道官は報道は「全て憶測だ」と否定したが、「離脱協定は95%合意済みで、交渉は継続している」と説明。市場では「合意が近いとの期待感が次第に高まってきている」(証券)との声が出ていた。

米中間選挙は上院を共和党が、下院を民主党が制するとの予測が主流で、その場合は織り込み済みとして、為替市場の大きな反応は限られる見通し。議会のねじれを嫌気してやや株が売られるとの予想もあれば、不透明感払拭で株に買い戻しが入るとの声もある。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-stx-close-idJPKCN1NA0KA


 

米ドル/円の強気材料が足下で増えつつある!?
田嶋智太郎の外国為替攻略法
田嶋 智太郎 2018/11/05
米ドル/円の月足ロウソクは、10月も終値で一目均衡表の月足「雲」上限を上回る水準に位置することとなりました。9月に引き続いて2ヶ月連続ということになり、依然として小動きに終始しながらも基本強気のトレンドに変わりはないものと思われます。
あらためて下図に見るとおり、今年3月に一時105円割れの水準を垣間見てからそれ以降の米ドル/円は、一貫して下値を切り上げる展開を続けており、6月以降は31ヶ月移動平均線(31ヶ月線)や62ヶ月移動平均線(62ヶ月線)を上回る水準に位置しています。さらに、足下で両線がともに上向きでの推移を続けており、そのことによって一層強気のムードが演出されていることにも要注目です。
【図表1】米ドル/円の月足・終値は2ヶ月連続で「雲」上抜け

出所:(株)アルフィナンツ作成
加えて、7月以降は以前長らく形成していた「三角保ち合い(トライアングル)」を上放れる動きとなっていることや、月足の「遅行線」が26ヶ月前の月足ロウソクが位置する水準を上抜けてきていることも再確認。一方で、先週10月31日に「ドル・インデックス(ドル指数)」が、8月につけた高値水準を上回って年初来の高値を更新したことも見逃せない事実として、しっかり押さえておく必要があると思われます。
目先は、とにもかくにも明日(11月6日)の米中間選挙の結果を見定めることが第一となりますが、その結果がどうあろうとも、何より市場にとって重要なイベントを1つ通過することで、これまであった不透明要素の1つが消えることだけは確かです。それだけでも市場にはリスクオンのムードが漂いやすくなるでしょうし、仮に「民主党が米下院で多数派を奪還」という事態になっても、それはすでに相当程度織り込んでいるものと考えられます。逆に、米下院の多数派を共和党が維持することとなれば、むしろ「それは市場にとってポジティブなサプライズ」と見る向きもあるようです。
とまれ、先週11月2日の東京時間帯に「11月末の米中首脳会談に向けて合意文書の作成を米大統領が指示した」というニュースが伝わったことは、大いに注目されるところです。後にホワイトハウスは一旦火消しに回りましたが、トランプ米大統領は「中国とは合意に達すると考えている」とあえて発言。
米政権内部で見解や発言が迷走しているようでもありますが、少なくとも11月1日に米中首脳が電話協議を行ったことだけは事実として伝わっています。ということは、今回のトランプ発言に対して中国がどう反応するか、それによって明らかとなる部分があるかも知れません。
筆者は、個人的に以前から「中国の強がりもいい加減に限界」と考えています。米政権側が安易に中国と妥協することは難しいにしても、中国側がかなり米国側に譲歩することは大いにあり得ると見ています。
そもそも、どんなチキンレースにも必ず終わりはあるのです。米中外交筋が11月4日に明らかにしたところによれば、11月末に開催が見込まれる米中首脳会談では「米中の健全な相互発展」に関する共同宣言が発表されると伝わっています。もはや水面下では相当程度の協議が進んでいると見られます。
気になる英国のEU離脱交渉に関わる問題についても一定の前進が見られたと伝えられており、それは市場にとっても明るいニュースです。また「(年明け以降に)ECBが新たなTLTRO(貸出条件付き長期資金供給オペ)を検討する」との一部報道もあり、全体に米ドル/円にとっては強気の材料が足下で増えつつあるように思われます。
田嶋 智太郎
経済アナリスト 株式会社アルフィナンツ 代表取締役
1964年東京都生まれ。1988年慶応義塾大学卒業後、(現)三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て独立転身。名古屋文化短期大学にて「経営学概論」「生活情報論」の講座を受け持った後、経済ジャーナリストとして主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、引いては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究してきた。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を数多く務め、これまでの累計講演回数は3000回前後に上る。新聞・雑誌・WEB等の連載も数あり、現在は、日経BizGate(https://bizgate.nikkei.co.jp/)にて「先読み&深読み 経済トレンドウォッチ」などの執筆を担当。ほかに、自由国民社『現代用語の基礎知識』の「貯蓄・投資」欄の執筆も手掛ける一方、定期的に日経CNBCコメンテーターも務める。
田嶋 智太郎 の別の記事を読む
バックナンバー
• 2018/10/29基本的にドル1強の流れは変わらず!?
• 2018/10/15物理的に下げた株価の影響を見定めたい...
• 2018/10/01各通貨ペアの9月の月足を再点検する!

https://media.monex.co.jp/articles/-/10407


http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/308.html

[経世済民129] 黒田総裁「大規模緩和副作用に配慮、慎重に運営へ」EU持続不能な政府債務 ECB経済フル稼働インフレ加速
黒田総裁「大規模緩和副作用に配慮、慎重に運営へ」
毎日新聞2018年11月5日 19時44分(最終更新 11月5日 19時47分)

経済
最新の経済ニュース
速報
経済政策・財政

名古屋市で講演する日銀の黒田総裁=2018年11月5日午前、共同
 日銀の黒田東彦総裁は5日、名古屋市内で講演し「かつてのように、大規模な(金融)政策を実施することが最適と判断された経済・物価情勢ではなくなっている」と述べ、大規模緩和の副作用に配慮しながら慎重な金融政策運営を進める考えを示した。一方で、物価上昇率が目標とする2%に届いていないことから、金融緩和を縮小する考えはないことを改めて強調した。

 2013年4月に開始した大規模金融緩和に伴う超低金利の長期化で、金融機関の収益悪化などの副作用が顕在化している。黒田総裁は「金融緩和の継続が、金融機関の経営体力に累積的な影響を及ぼし、金融システムの安定性に影響を与えることは十分に認識している」と表明。一方で、金融機関が手厚い自己資本を備えていることを理由に「現時点では(金融不安を招くなどの)リスクは大きくない」と述べた。

 講演後の記者会見では、現在0%程度に設定している長期金利の誘導水準を引き上げることの是非について「現状ではむしろ景気が悪くなって、金融機関にとっても好ましい状況にならない」と否定的な考えを示した。その上で、金融機関の収益悪化への対応策としては経営統合や新規ビジネス開発などが必要と強調した。

 景気の先行きについては、米中貿易摩擦など「海外経済を巡る不確実性は増している。長期化すれば日本経済への影響が大きくなる可能性がある」と警戒した。【小倉祥徳】

文字サイズ
印刷
シェア
Timeline
2
0
関連記事
日銀:超低金利政策の継続決定 物価見通しは引き下げ
日銀決定会合:遠のく2%、副作用拡大 超低金利継続
日銀:政策修正、説明に懸念も 9月会合の議事要旨
前日銀総裁:白川氏「金融緩和の効果長続きしない」
日銀決定会合:政策修正、副作用懸念高まる 9月議事要旨

https://mainichi.jp/articles/20181106/k00/00m/020/081000c

 
大規模な政策が最適な情勢ではなくなっている−日銀の黒田総裁が講演
日高正裕
2018年11月5日 10:28 JST 更新日時 2018年11月5日 14:24 JST
5年間で経済ははっきり改善、物価も着実に改善している
やや複雑な経済・物価の下、効果と副作用をバランスよく考慮

日銀の黒田総裁 Photographer: Bloomberg/Bloomberg
日本銀行の黒田東彦総裁は5日、名古屋市内で講演し、かつてのようにデフレ克服のため「大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっている」と述べた。

  黒田総裁は、この5年で企業収益は過去最高となり、雇用環境も大きく好転するなど経済ははっきり改善し、物価も着実に改善しているとの見方を示した。一方で、物価目標の2%実現には時間がかかっているため、「やや複雑な経済・物価の展開の下で、金融政策もまた政策の効果と副作用の両方をバランスよく考慮しながら、強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが必要」と語った。

  日銀は10月31日公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、低金利環境の下で金融機関収益の下押しが長期化すると、「金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがある」と指摘。2013年4月の異次元緩和開始以降初めて「先行きの動向には注視していく必要がある」と明記した。

金融機関経営
  黒田総裁は講演で、金融緩和の継続が金融機関の経営体力に累積的な影響を及ぼし、金融システムの安定性や金融仲介機能に影響を与える可能性があることは、日銀も「十分に認識している」と説明。金融機関が収益確保のために有価証券投資や貸し出しなど、リスクテイクを一段と積極化すれば、「将来、万一大きな負のショックが発生した場合、 金融システムが不安定化する可能性がある」とも指摘した。

  講演後の質疑応答では、金融機関は信用コスト減少と有価証券の益出し増加で業務純益の減少を埋め合わせてきたが、信用コストは既に相当低いため「どんどん下がっていくことはあまり考えられない」上、有価証券の売却益も「いつまでも続けられるものではない」と指摘。5年、10年、15年と長い期間でみると「金融機関の状況はますます厳しさを増していく可能性がある」と述べた。

  国債市場の機能度については「若干改善した」としながらも、金融緩和の下で「国債市場に対するプレッシャーはどうしても続くので、副作用が大きくなって金融緩和の効果が薄れてしまうことがないよう、さまざまな手段を講じて副作用を最小化することは引き続き続けていきたい」と語った。

会見
  その後行った会見では、地域金融機関の収益を巡る課題は「すぐに来るという話ではなく、5年、10年、15年という期間での議論」であり、日銀の大幅な金融緩和が「今後さらに、そのような長い期間続くとは思わない」と述べた。

  大幅な金融緩和の出口戦略については、米連邦準備制度理事会(FRB)が正常化のかなり前から戦略を示したことに言及し、バランスシート縮小と政策金利引き上げの順序が現在行っていることと「逆のことを言っていた」と指摘。「あまり早めに出口戦略を示すことは、あまり生産的、好ましいことではなかったのではないか」と語った。

(第7段落以降に会見での発言を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-05/PHP52Q6KLVR701?srnd=cojp-v2

 


 
黒田日銀総裁、緩和の副作用「最小化すること続ける」
2018/11/5 12:25日本経済新聞 電子版
名古屋市で開かれた地元経済界との会合で講演する日銀の黒田総裁(5日午前)=共同 

 日銀の黒田東彦総裁は5日、名古屋市で開いた金融経済懇談会で、金融緩和について「副作用が大きくなって、金融緩和の効果が薄れてしまうことがないように様々な手段を講じて、ミニマイズ(最小化)するということは続けていきたい」と述べた。

 参加者からの金融緩和の副作用に対する問いに答えた。黒田総裁は国債買い入れを弾力的に運営することで、国債市場の機能は若干改善したと説明。一方で、現在の長短金利操作と政策金利のフォワードガイダンス(将来の指針)を続ける以上、「国債市場に対するプレッシャーはどうしても続く」と語った。

〔日経QUICKニュース(NQN)〕
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL05HWF_05112018000000/

 
緩和の副作用「十分に認識」=米中摩擦の影響点検−黒田日銀総裁

金融経済懇談会であいさつする日銀の黒田東彦総裁=5日、名古屋市

 黒田東彦日銀総裁は5日、名古屋市で講演し、「緩和の継続が金融システムの安定性や金融仲介機能に影響を与える可能性があることは十分に認識している」と述べ、大規模緩和の副作用を注視していく考えを示した。米中貿易摩擦による日本経済への影響に関しては「大きくなる可能性がある」として、動向を点検していくと強調した。
 黒田総裁は、2%の物価目標実現に向けた金融緩和継続の必要性を述べた上で「低金利環境が続く下で金融機関の収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクもある」と指摘。現時点でこうした懸念は小さいとしながらも、「最新の状況把握に努め、必要に応じ、金融機関に具体的な対応を促していく」と話した。(2018/11/05-12:37)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018110500490&g=eco

 


ビジネス2018年11月5日 / 13:19 / 9時間前更新
EU10カ国が提言、持続不能な政府債務「民間部門が関与し再編を」
1 分で読む

[ブリュッセル 2日 ロイター] - 欧州連合(EU)に加盟しているオランダやデンマークなど10カ国の財務相は共同で政策提言書をまとめ、ユーロ圏加盟国が持続不能な債務を抱えている場合、ユーロ圏全体として金融支援を決める前に、民間部門に損失処理を迫る形で再編する必要があるとの見解を示した。

ユーロ圏で第3の経済規模を持つイタリアの公的債務は国内総生産(GDP)比で133%に上るが、先に公表した2019年予算案が財政赤字と歳出を拡大する内容だったため、新たな債務危機を引き起こす可能性があるとの懸念が強まっている。

5日にはユーロ圏財務相会合が予定されており、これを前に政策提言がまとめられた。10カ国にはチェコ、エストニア、フィンランド、アイルランド、ラトビア、リトアニア、スウェーデン、スロバキアも含まれる。

ユーロ圏最大の経済大国であるドイツは署名しなかったものの同調する立場で、オーストリアも賛同している。

5日の会合では、財務危機に陥った加盟国を支援する常設基金「欧州安定メカニズム(ESM)」の変革が議題となる見通し。英国のEU離脱後に残留する27カ国は、ESMが危機に迅速に対応できるように権限を拡大する可能性について協議を進めている。

10カ国の財務相は債務再編におけるESMの役割をさらに明確化する必要があると訴えた。

政策提言書は「現行のESM条約は特別な状況下で民間部門が関与する可能性について既に認めており、条約の改正によってこの原則を再確認する必要がある」としている。ESMは特定の国に融資を供与し、場合によっては債務再編に応じる前に、対象国の返済能力を検証すべきだと主張。

「厳格な融資条件のみでは適切な返済能力が確保されないと想定される特殊なケースでは、債務の持続性を改善する措置が既存の債権者と協力して講じられてから初めて金融支援を行うことになる」としている。

ユーロ圏がこれまで債務再編に応じたのは1回だけで、ギリシャに対して2012年に実施している。
https://jp.reuters.com/article/iran-rally-idJPKCN1N90QZ


ECB:経済はフル稼働、インフレ加速に寄与へ−報告書
Piotr Skolimowski
2018年11月5日 21:05 JST
欧州中央銀行(ECB)の報告書によると、生産能力の上限に達しつつあるユーロ圏企業が増えており、インフレ加速につながる見通しだ。

  最近の指標はユーロ圏経済の勢い低下を示しているが、域内経済は長期的な潜在成長率を上回る成長が続き、スラック(たるみ)の段階的な解消をもたらしているとECBが報告で指摘した。

  「今後は供給の制約が影響を増し、段階的な賃金および基調的インフレの上昇を導くだろう」と、ECBの研究者らが記述した。

Euro Area's Crumbling Momentum
Investor sentiment falls to the lowest level in more than two years


Source: Sentix GmbH

原題:ECB Sees Full-Capacity Economy Still on Track to Boost Inflation(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-05/PHPTYJ6K50XS01?srnd=cojp-v2
 

世界経済の「最良期は過ぎた」−2019年は軟化とゴールドマンが予想
Enda Curran
2018年11月5日 15:44 JST
19年も財政政策が18年と同様に世界の経済成長に貢献すると想定
来年の成長軌道を絶対的なベースで予想するのは難しい
来年の世界経済を展望すると、金融環境のタイト化が響き、成長は幾分軟化する。ジャン・ハッチウス氏らゴールドマン・サックス・グループのエコノミストらがこのように予想した。

  各国政府が財政出動で米国に追随し、財政政策が成長の主要な支援要因となるとの見通しも示した。

  「2019年も財政政策が18年と同様に世界の経済成長に貢献すると想定されるが、内訳は米国中心からより広く分布したものに変わるだろう」とエコノミストらは予想した。

  来年の成長軌道を絶対的なベースで予想するのは難しいとした上で、「当社の分析は19年の成長が18年より幾分軟調になることを示唆している」と説明した。

原題:Goldman Says World Economy ‘Past the Best’ as 2019 Looks Softer(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-05/PHPICA6JIJV101?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/309.html

[経世済民129] あえて言おう 年金制度はいらない 老後資金で最重要なのは公的年金 消費増税、国民への影響はどれほど?
あえて言おう 年金制度はいらない

2009/04/03

原田 泰 (早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員)

 最近になってやっと信じてくれる人が増えてきたが、日本のサラリーマンがもらう厚生年金は、夫婦で月23.6万円であり、世界一高い水準にある。 アメリカの年金は、1349j(12.1万円)、イギリスにいたっては524㍀(6.8万円)でしかない。もちろん、これには、現在の円高を反映して外国の年金が異常に低くなっているのだという批判があるだろう。しかし、1j=120円で換算しても、アメリカの年金は16.2万円である。日本の年金は世界一高い。

 しかし、多くの人々は、これでも足りないという。私は、大企業の幹部の方々に、日本の年金が世界一高いという話をしたときに、それでも足りないと言われたことがある。大企業のサラリーマンが、現役時代と同じ生活をしようとしたら、もちろん現行の年金では足りない。しかし、年金とは、本来、社会保障制度であって、国家が、高齢者が誰でも、健康で文化的な最低限度の生活を送れるようにしているものだ。それ以上を求めるならば、自分で老後の生活を考えるべきである。

 しかも、現行の年金は、現役世代が納めたお金を、退職世代が受け取る仕組みだ。退職世代が現役時代に納めたお金を、退職時になってもらっている訳ではない。年金の保険料率は、1960年には給与の3.5%、70年に6.2%だったのに、80年に10.6%、90年に14.3%、2008年に 15.35%、17年には18.3%まで上がることになっている(18.3%で固定される)。60年に40歳だった人は、3.5%の保険料しか納めていなかったのに、若い世代の14%以上の保険料からの年金をもらったわけだ。これは高齢世代が若年世代から過分のプレゼントをもらう不公平なシステムである。

日本の年金は不公正だ
 70年代の後半からは、生活できる年金が支払われるようになった。それ以前に30歳だった高齢者は、年金制度がない時代に、自分たちは親の面倒を見たのだから、自分たちが若い世代からプレゼントをもらうのは当然だと主張するかもしれない。しかし、その主張は、平均としては事実ではない。多少の面倒は見ていただろうが、現在のような豊かな高齢者などいなかった。当時の、成瀬巳喜男監督の映画を見れば、子供たちは自分勝手で、たいして親の面倒など見ていなかったのが分かる。年金という国家の制度によってはじめて、自分の子供はおろか、他人の子供にまで高齢者の面倒を見させることが可能になったのだ。

 年金が最低限度のものならば、国民の誰かが高齢者にプレゼントするのは当然である。それが社会保障制度と言うものだからだ。しかし、現行の年金は、社会保障としては高すぎ、しかも、若い人々の負担になっている。

 不公平なのは、豊かな人々が、退職後も、現役世代の年金保険料によって豊かな生活を送ることだ。月23.6万円とは、年収280万円ということになる。ここからは年金保険料を取られないから、実質的には年収300万円を超える。非正規労働が増加して、ボーナスもなく、月15万円しか稼げない若者が急増している時、これが正しいことだろうか。

 社会保険庁があるから、政府がお金を配ってくれると誤解する。しかし、お金は社保庁からではなく、現役世代から来る。社保庁が、その間にたって、仕事をさぼり、無駄にお金を使ったのは事実だ。しかし、より大きな問題は、高齢者が、現役世代から、納めてもいない年金を得ようとしていることだ。

 収入の低い若者が増えたことに、現在の退職世代に責任があることは間違いない。現在の退職世代が現役世代であった時に、経済政策を誤って長期不況をもたらしたか、経営能力が不十分で企業を発展させられなかったか、不況でも解雇できない正社員であったがゆえに新卒の正規雇用を減らしたか、若者を教育し訓練するのに失敗したかのいずれかの理由で、若者は貧しくなったのだ。自分は違う、若者のために立派な仕事を作ったと言う方もいらっしゃるだろうが、現在の高齢世代が、全体として若者を貧しくしたのは間違いない。貧しい若者から年金保険料を取って、豊かな老後を維持することは、誤っているだけでなく、不可能なことになっている。不可能なことなら、一刻も早くやめた方が良い。

年金制度はいらない
 そもそも年金制度は必要なものだろうか。歳をとり働けなくなったときの生活保障であるなら、税金で賄えば良い。未納者には年金を払わなくても良いから公的年金制度は破綻しないという学者がいるが、それでは、未納者には歳をとったら飢えて死ねと言うのだろうか。厚生労働省は、生活保護制度を持っている。社保庁がお金を使わなくても、厚労省は未納者を助けるしかない。公的年金制度は破綻しなくても、生活保護制度は財政的に破綻してしまう。

 年金支給額を減額して、保険料を税金で賄い、未納者をなくすべきである。こうすればもはやこれは「年金」ではない。保険料による「年金」を廃止し、税によって等しく最低限の生活を保障する「生活保障金」を新設する。消費税であれば誰しもが払う税だから、それを高齢者の生活保障に回すのは公平である。

 なお、これまでの消費税導入及び引上げ時には、増税で物価が上がった分を、支給額に上乗せしているが、これでは高齢者は消費税を負担しないことになる。消費税を引き上げた時には、生活保障金支給額の増額をしないことが必要である。

 このときに、消費税は増税になるが、同時に年金保険料はなくなっている訳だから、現役層にとって両方を合わせれば増税になる訳ではない。それどころか、生活保障金の支給額は、現在の年金支給額よりは減額するわけだから、両方合わせて減税にすることが可能だ(社会保険料も政府が取る金だから税金と同じ)。社保庁の事務費用も削減できるから、さらに減税することもできる。

 そもそも年金、医療などの社会保険制度は、ドイツ帝国の宰相、ビスマルクが19世紀の終わりに作ったものだ。当時は皇帝に批判的な社会主義運動や労働運動が盛んだった。帝国の将来に危機感を抱いたビスマルクが、上層の労働者や中小の商工業者に安心感を与え、帝国への忠誠心を維持するために始めたものだ。過半数の人々が帝国の恩恵を感じれば良いのだから、全員を社会保険制度に加入させる必要はなかった。反対派が少数派であれば弾圧すれば良いのであって、多数派を弾圧するのは軋轢が大きいから、社会保険制度で懐柔しようとしただけだった。

 国民全員を保護する皆保険制度を維持しなければならないと言う学者や行政官が多いが、保険制度の由来を考えてみれば、それで全員を保護することなどできないのが当然だ。ビスマルクは、貧しい労働者は保険料を払えないだろうから、未納者が出るのを当然としていた。ビスマルクなら、少数が飢えて死のうとかまわないだろうが、現在の先進国にそんなことはできない。本当に、国民すべてを社会保険の枠組みに入れたいなら、むしろ保険制度を廃止して、税によって国民を保護するしかない。

40年かけて移行せよ
 もちろん、すぐに年金制度を廃止することはできない。ほとんどの人が、すでに年金保険料を払い込んでいるからだ。すると、保険料を払った人にはそれに見合った年金を払うことが必要で、移行期間は年金納付期間の40年間が必要となる。

 さらに生活保護制度との関係もある。日本は生活保護水準も世界一のレベルにある。たとえば、東京の高齢夫婦の場合、家賃分を含めると19.9万円である。保険料や医療費の負担もない。これは引き下げなければならない。

 国家は、最低限度の健康で文化的な生活の保障をすればよい。それ以上の生活をしたいのなら、自分で貯蓄をすれば良いだけだ。インフレや大災害、戦争などによって個人の貯蓄が目減りする危険があるから、国家がより高い水準の年金制度を維持すべきだという議論がある。しかし、金利が自由化されていれば、インフレになれば金利は上がる。80年代、金利が自由化され、日本が長期停滞、デフレ状態にも陥ってなかったとき、金利は十分に高かったことを思い出してほしい。戦争や大災害などで、貯蓄を失う危険は残っているが、年金制度も、その危険から個人を守ることはできない。仮に、戦争によって日本が焼け野原 になってしまったとしよう。そんな日本で働く人々から、高い年金保険料を取ることなどできはしない。取ることができるだけの年金保険料で、高齢者の年金を支給するしかない。そうであれば、個人が貯蓄していても大して変わらない。

 年金制度を廃止し、その支給額を減額した上で、税で賄う制度に置き換え、若い世代を年金の負担から解放すべきである。もちろん、人口に占める高齢者の比率が高まり、しかも、その投票率が高いことを考えると、年金支給額の減額やその廃止が難しいことは確かだ。しかし、いくら難しくてもそうすべきである。その理由は、現行制度が不公正なものであり、実行可能なものではないからだ。高齢者は、自ら特権を捨て、とりあえず、今後計画されている年金保険料の引上げを廃止し、集まったお金だけを高齢者に配ることにするべきだ。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/282


 

前向きに読み解く経済の裏側

老後資金で最重要なのは公的年金

2018/03/26

塚崎公義 (久留米大学商学部教授)

 老後資金で圧倒的に重要なのは、公的年金です。今回は、『老後破産しないためのお金の教科書』の著者である塚崎が、公的年金の重要性と心構えを説きます。年金制度の基本的な枠組みをご存知ない方は、本稿を読む前に拙稿「年金制度について15分で学ぼう」をご覧いただければ幸いです。


(maxsattana/iStock)
標準的なサラリーマン夫婦は月額22万円
 年金は、標準的なサラリーマン夫婦は月額22万円受け取れます。現役時代の年収により、支払う保険料も受け取る年金額も異なりますので、これは年収約500万円で40年間働いたサラリーマンと、その専業主婦の場合の金額です。

 日本人の平均的な生活費は1人1カ月10万円弱ですから、暮らせない額ではありません。多少の不足分は老後のための貯蓄を取り崩すとしても、サラリーマンの老後の生活資金の圧倒的に重要な柱が公的年金であることは疑いのない所です。

 サラリーマンは、年金保険料が給料から天引きされるので、未払いとなっている可能性は大きくありませんが、専業主婦については働いていた期間などがきちんと年金の記録に残っているか、確認が必要でしょう。

自営業者夫婦の年金は月額13万円。手続き漏れ等に要注意
 自営業者の年金は、サラリーマンほど充実していません。40年間夫婦2人が年金保険料を払い続けても、老後の年金は夫婦2人で13万円程度です。これでは生活できませんから、高齢になっても元気な間は働くことが重要ですし、若い時から老後資金をしっかり貯めておくことも大切ですね。

 自営業者は、自分で年金保険料を納めに行く必要がありますから、納付漏れがあるかもしれません。納付漏れについては、後から納付する制度もありますが、完全ではないので、納付漏れをしていると老後に受け取れる年金額が減ってしまいかねません。しっかり納付するようにしましょう。

 特に問題が起きやすいのが、自営業者の妻が途中で働きに出て、一定以上の年収を稼いでいた場合です。その間は厚生年金保険料を支払っていたでしょうから問題ないのですが、仕事を辞めたり年収が減って保険料の天引きがなくなったりすると、今度は自分で申告して国民年金保険料を払いに行かなくてはなりません。その手続きを怠っていると、知らない間に年金支払いを怠っていたことになりかねません。

 専業主婦の場合、夫がサラリーマンをやめて自営業者(または失業者)になると、自分も年金上の身分が変わりますから、届け出をして年金保険料を納めに行く必要がありますので、これも注意が必要です。

年金保険料の支払い実績は「ねんきん定期便」で確認
 上記のように、手続き漏れなどによって支払うべき年金保険料を支払えていない場合や、自分が手続きをしても、年金事務所が手続きを誤っている場合(いわゆる消えた年金問題)などもあり得ます。そうなると、老後に受け取れる年金が減ってしまいます。老後資金の最大の支えである年金が減ってしまっては大ごとですから、年金保険料の支払い記録はしっかり確認しておきましょう。

 確認するために便利なのは、年に一度誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」です。これには、今まで何カ月間年金保険料を支払ったのかが記されています。サラリーマンの専業主婦は、夫が厚生年金保険料を給料から天引きされた事で自分も国民年金保険料を支払ったことになるので、その期間も記されています。

 加えて、50歳以上の場合には、「今のままの所得が60歳まで続いたと仮定した場合に将来受け取れる年金の見込み額」も記されているので、将来の生活の見当をつけるのに便利です。

長生きとインフレに強い公的年金
 公的年金が素晴らしい所の一つは、老後資金の最大の懸念材料である長生きに強い所です。年金は保険です。長生きをしてしまい、老後資金が底を突いてしまった人に老後の生活資金を支払うというものです。火災保険と本質は同じなのです。「火事にならなかったら損だから火災保険に入らない」という人は少ないでしょう。それと同じことなのですから、「年金保険料を払っても早死にしたら損だから年金保険料を払わない」などと言わずにしっかり払いましょう。

 公的年金の素晴らしい所の今ひとつは、老後資金の今ひとつの懸念材料であるインフレに強い所です。インフレになれば、その分だけ高齢者が受け取れる年金額も増えるので、年金だけで生活する場合にはインフレになっても生活水準が保てるのです。

 公的年金は、現役世代が高齢者を支える制度なので、インフレに強いのです。インフレになれば、現役世代の給料が増えるので、現役世代から高額の年金保険料を徴収して高齢者に支払うことができますから。

「将来は年金がもらえない」という心配は無用
 一方で、現役世代が高齢者を支える制度であるため、少子高齢化によって現役世代と高齢者の人数比が変化すると、高齢者が受け取れる年金が減ってしまいます。しかし、現役世代がゼロになるわけではないので、「高齢者が年金を受け取れない」ということはあり得ません。専門家たちも口を揃えてそうしたリスクは否定しています。

 筆者としては、別の説明も考えています。万が一年金が支払えなくなったら、高齢者からの生活保護の申請が激増し、財政は間違いなく破綻するでしょう。したがって政府は、年金が破綻しないように、万難を排するでしょう。年金以外のすべての支出を削っても、年金の支払いを優先するはずです。

 損得を考えても、公的年金はお得です。平均寿命まで生きるとすると、払った年金保険料よりも受け取る年金の方が多いからです。それは、老齢基礎年金(国民年金)の支払い原資の半分が税金だからです。民間保険会社は、払った保険料から保険会社のコスト等を差し引いた残りが保険金として支払われるので、期待値としては払った保険料の方が受け取る保険金よりも多いのですが、公的年金はそうではないのです。

 そうした事を総合的に考えると、公的年金は大事にすべきでしょう。若い人はしっかり年金保険料を支払いましょう。手続き漏れで払えていない人も、一部は後から払える制度もありますので、年金事務所に相談してみましょう。

 余談ですが、日本政府は借金が巨額だから破産するだろう、と考えている人もいるでしょう。筆者はそうは思いません。拙稿「日本の財政が絶対に破綻しない理由」をご参照いただければ幸いです。もっとも、読者の中には筆者と意見を異にする方も多いでしょうから、そういう方には、米ドルを買うことをお勧めします。日本政府が破産する時には、日本銀行券をドル札に交換しようと人々が殺到してドルが暴騰するだろうからです。

年金の受け取りは70歳まで待とう
 年金の受け取りは、65歳からが基本ですが、60歳と70歳の間で受け取り開始時期が選べます。60歳を選ぶと毎回の受取額が30%減り、70歳を選ぶと42%増えます。平均寿命まで生きれば70歳受け取りが得ですし、何より「長生きとインフレのリスクに強い公的年金」が増額になるのは非常に心強いことです。サラリーマン夫婦は、22万円の1.42倍あれば、老後の生活は安心でしょうし、自営業者夫婦も13万円の1.42倍あれば、最低限の生活は何とかやっていける安心感が得られるでしょう。是非とも検討してみましょう。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/12305

 

消費増税、国民への影響はどれほど?

キャッシュレス化は消費税対策になり得るか
2018/11/06
島澤 諭 (中部圏社会経済研究所研究部長)
 高度成長期に確立し、右肩上がりの人口や経済を前提として組み立てられている日本の財政・社会保障制度は、少子高齢化の進行、とりわけ高齢者に占める後期高齢者の割合が増加する「高齢者の高齢化」の進行により、その持続可能性が危ぶまれる状況が続いている。それは、人口ピラミッドが逆立ちすることが見込まれていたにもかかわらず、その抜本的な改革を断行せずに放置した結果、現状ではGDPの2倍に及ぶ政府債務が蓄積してしまっている。
 こうした日本財政の危機的状況にもかかわらず、日本政府には莫大な資産があるから増税や歳出削減なしでも財政破綻は起こり得ないとの主張も存在する。内閣府『国民経済計算』を見ると、国と地方に社会保障基金を加えた一般政府に日本銀行や日本学生支援機構、上下水道事業、地方公立病院等公的企業を加えたいわゆる統合政府の連結決算では、金融資産1,800兆円に対して公的債務1,251兆円となっており、両者を相殺すれば財政再建は確かに完了する。しかし、金融資産のうち、公的年金の積立金や公的金融機関から民間企業への貸出し、ODAなどを除くと1,020兆円となり、公的債務が上回る。金融資産の他、社会資本*を売却すればよいとの主張もある。主要な社会資本を外国に抑えられたパキスタン、モルディブ、スリランカなどが債権国のくびきとなっている現状はそうした主張への雄弁な警告となる。そもそも、資産売却で債務を一時的に解消しても、財政赤字体質を放置したままでは元の木阿弥となるのは確実で、財政問題は何ら解決しない。

債務の発生原因は社会保障
 日本の社会保障制度はこれまでもっぱら高齢世代を給付の対象とし、現役世代は支える側とみなしてきた。高く持続的な経済成長が続く社会では、すでに引退したか引退間近の世代は、そうした経済成長の恩恵に与ることができず、後世代との豊かさの格差は拡大していく一方である。その場合、相対的に貧しくなっていく高齢者に相対的に豊かになる若者世代が所得移転を行うのは若者世代にとっても負担とはならない。また財政赤字が発生したとしてもマクロ経済や歳入が歳出に合わせてパラレルに成長していくのであれば、財政赤字の累積としての債務残高が経済規模に対して一方的に拡大していくことはないし、経済が拡大している期間においては租税弾性値が歳出弾性値を上回る場合が多く、当初の財政赤字を埋め合わせることが可能となるからである。

 したがって、経済成長の恩恵によって放っておいても豊かになる一方で、かつ企業により生活保障を受けていた現役世代に対する社会保障給付よりも経済成長の恩恵から取り残された高齢者により手厚く社会保障給付がなされ、高齢者を優遇することは正義に適っていた。
 しかし、経済が停滞し、繰延された負債を担う将来世代が減少していく現局面においては、状況が全く異なる。実際、財務省によれば、特例公債の発行から脱却することのできた1990年度以降歳出を原因とする債務残高の増加額416兆円のうち7割強の293兆円が社会保障を原因とするとされている。つまり、日本の財政問題は社会保障問題と言っても過言ではない。増加する一方の社会保障支出を賄うための収入増加策は不可避である。

*社会資本に相当する生産資産は非金融資産に分類され732兆円(うち防衛装備品9兆円)。それとは別に、地下資源、漁場、国有林等の非生産資産(自然資源)153兆円もある。

 しかし、社会保障を支えることが期待されている現役世代の弱体化が続いている。その背景としては、非正規雇用比率の上昇や賃金水準の高い雇用機会の喪失といった経済構造の変化がある。また、当初所得の低迷だけでなく、税制や社会保障制度の恩恵が薄い未婚者の増加等、世帯構造の変化も生じていることが挙げられる。
 こうした現役世代の苦境を前提に、政府・与党のみならず野党においても、子供の医療費無料化(窓口負担ゼロ)、最低賃金引上げ、18歳選挙権、待機児童解消策、給付型奨学金導入、幼児・高校・大学教育無償化など、高齢者とともに現役世代重視の全世代型社会保障の充実を目指している。

全世代型社会保障を支えるのは消費税
 このように現役世代が貧困化しつつあるからこそ全世代型社会保障が提案されているという事実に鑑みると、現役世代に負担させる従来の仕組みを維持するのには無理がある。「誰もが受益者」である全世代型社会保障を実現したいなら北欧諸国を例に挙げるまでもなく「誰もが負担者」でなければならない。
 したがって、全世代型社会保障の財源について、財政当局は、(1)現役世代が減少し、高齢世代が増加することから、特定世代に負担が集中せず、国民全体で広く負担する消費税が社会保障給付の財源にふさわしい、(2)所得税や法人税に比べ、消費税は景気変動に左右されにくく安定している、との理由から、財源を消費税により広く全世代に求める方針としている。
 しかし、消費税率の引上げは、税制抜本改革法によって引上げスケジュールが定められている。また、増収分の使途についても、社会保障制度改革プログラム法によって配分が定められているにもかかわらず、実際には、景気後退懸念を理由として、10%への引上げは、2017年4月、さらに2019年10月へと延期されるなど、政治、国民問わず、財政再建、消費増税への拒否反応が著しい。

世代や所得階層で異なる影響
 2019年10月の消費税率引き上げが家計に与える影響を試算した(表1、表2、表3、表4)。
 まず、所得階層別家計に与える影響を見ると、所得階層が高いほど消費税負担金額や軽減税率導入に伴う負担軽減金額が大きくなっている(表1、表2)。これは所得階層が高いほど消費支出金額も大きいから当然である。しかし、所得に占める負担割合を見ると低所得層ほど、負担率も軽減率も大きくなっている。消費税の負担を金額で評価するのか、所得に対する割合で評価するのかで、まったく逆の見解が生じ得るが、所得に対する割合で評価するのが一般的である。そうした観点から考えると、消費税は低所得層ほど負担(率)が重く高所得層ほど負担(率)が軽くなる逆進的な性質を持つ一方で、軽減税率の導入によって低所得層ほど恩恵を受けることが分かる。

写真を拡大

写真を拡大
 次に、年齢別消費税負担を見ると、20歳代15.8万円を底として加齢とともに増加し50歳代25.8万円でピークを迎え、それ以降は低下し、70歳代では17.9万円となっている(表3)。60歳以上の高齢世代の負担額が30歳代以下の若者世代の負担を上回っていることが確認できる。また、軽減税率導入に伴う負担軽減額を見ると、若者ほど恩恵が小さいことが分かるが、これは若者ほど食料以外の支出ウェイトが高いことと、新聞を購読している割合が低いことに起因している(表4)。

写真を拡大

写真を拡大
 以上のように、消費税引き上げは、世代や所得階層といった世帯属性の違いによって与える影響が異なるので、消費増税に賛成するのは高所得・現役世代に対して、高齢世代と低・中所得現役世代は各々反対するインセンティブが働く。後者の方が多数を占めるため、民意に敏感な政治消費税の引き上げに二の足を踏むのももっともなことであるとも言えるだろう。
キャッシュレス経済への移行によるメリット
 政府や経済学者は、マクロ経済パフォーマンスに与える影響の面においても、世代間格差に与える面においても、消費増税による財政再建の方がメリットが大きいと考えているものの、実際に消費増税が度々延期されてきたことからも、試算結果からも明らかになったように、国民の大半にとっては消費増税の負担増は大きい。
 こうした国民の間にある根強い消費増税へのアレルギーを緩和するため、政府は目下様々な対策を決定もしくは検討中である。
 例えば、外食と酒類を除く飲食料品等に対する軽減税率の導入は、大半の経済学者は強い拒否反応を示しているものの、先に見た試算の通り、飲食料品への支出の割合が大きい高齢者や低所得者対策としては効果的であろう。
 もう一つ、政府は、電子マネーの普及などに伴い近年キャッシュレス化が進行しているとはいうものの、他の先進国や韓国などと比べてキャッシュレス決済は普及していない現状に鑑み、現時点では、キャッシュレス決済を普及させる狙いで、消費税率の10%への引き上げと軽減税率の導入に伴い、中小小売店舗でキャッシュレスにて買い物をした場合に限り、2%分をポイントで還元する仕組みの導入を企図している。
 日常の買い物のキャッシュレス化には、店側では機器の導入コストや様々な手数料などランニングコストが重くのしかかる他、大規模自然災害による停電発生時の取引の確保等課題も多い。しかし、キャッシュレス化は、消費者にとってはATMから現金を引き出す時間や労力など取引コストを節約できるし、小売業者は現金の管理・運搬等にかかるコストを削減できる。さらに、消費者の購買行動に関するビッグデータが取引付随して集まるので、その購買行動を分析することでより効果的な販売活動、ひいては売り上げ増も期待できる。
 また、キャッシュレス化の進行によって、大半の商取引が電子データで管理されれば、現金を用いるより遥かにカネの動きが透明化され、脱税やマネーロンダリングなどを抑止できるなど、税務処理の効率化や税収増が期待できる。税収増は当然将来の追加的な増税幅を圧縮させるだろう。
 さらに、Moody'sが2016年に公表したカード決済の普及によるキャッシュレス化が経済に与える影響に関する報告書(“The Impact of Electronic Payments on Economic Growth”)によれば、2011年以降2015年まで世界経済全体で毎年740億ドル(日本円に換算すると8兆円強)分のGDPを増やす効果があったとのことである。さらに、キャッシュレス化が1%進むと0.04%ス日本の経済成長を押し上げる効果を持っているとしている。
 以上のようなキャッシュレス経済への移行によるメリットを十分に発現できれば、消費税率引き上げに伴うマクロ経済や家計の負担増を軽減できる効果も期待できる。

http://wedge.ismedia.jp/articles/print/14411

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/318.html

[経世済民129] 増える月曜朝の中高年の縊死と就職氷河期の果て パワハラにならない部下へのうまい伝え方 ひとが辞めないコツはひとつしかない

増える月曜朝の中高年の縊死と就職氷河期の果て

河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学
アリバイ作りの制度では救えない

2018年11月6日(火)
河合 薫


悩みを抱えながら働く人は少なくない(写真:ロイター/アフロ)
 「月曜日の朝、中高年の自殺が増える」という研究結果が話題になっている。

 調査では1974年から2014年までの41年間に日本国内で自殺した20歳以上の日本人のうち、死亡時刻が記録されている87万3268人を用い、死亡時刻と曜日を、性別、年齢別に分析した。

 その結果、40〜65歳までの中高年男性の場合、月曜日に自殺で死亡する頻度は、土曜日の1.55倍。出勤前の時間帯に自殺する頻度は、午後8時以降に比べ1.57倍で、最も少ない土曜夜(午後8〜午前0時)の2.5倍だったことがわかったのである(早稲田大学の上田路子准教授や大阪大学大学院の松林哲也准教授らのグループによる)。

「月曜の朝って、通勤電車乱れるもんね」
「また1週間が始まると思うと……つい……てことなのかなぁ」
「気持ちはわかる……」
「50過ぎると会社でいじめられるし」
「中高年ってことは中間管理職か」
「僕も……他人事じゃないなぁ……」
「中小企業の経営者もしんどいよね」
 ……etc etc.

 SNSでも、テレビの情報番組でも、そして私の周りでも、「月曜の朝」「中高年」「自殺」というワードが結びついたことへのショックと、切ない共感が広がったのだ。

 「私、駅のホームで電車待ってるときに、フラッと……ホントにフラッと……落ちそうになったことがあるんです。後ろの人に腕を掴まれて。『あ、自分、ナニやってるんだろ』って自分でも驚いてしまって……」

 フィールドワークのインタビューに協力してくれた男性が、こんな話をしてくれたことがある。

 自殺に至る人の多くが、生きていることの苦しみから逃れたいという衝動と、「生きたい」という願望を同時に持ち合わせ、ほんの一瞬の心の動きで不幸な結末にいたってしまうことがあるが、男性はまさにその狭間をさまよった。

 「死にたい」わけではなく、「人生に満足できない」。もしかすると、この男性と似たような感覚に陥った経験をした人も少なくないのではあるいまいか。

 20年近く前になるが、知人が電車のホームで線路に転落する「事故」があった。

 「貧血を起こして転落したらしい」とのことだったが、彼がプレッシャーのかかるポジションで夜遅くまで働いていたのを知っていただけに、誰もが脳裏に浮かぶぼんやりとした暗闇を必死で押し込んだ。自分が何もできなかった、いや、しなかったことへの後ろめたさもあり、「不幸な事故」として受け止めるしかなかったのである。

 ところが、である。実は今回の調査結果でわかったのは「月曜の朝の中高年の自殺=電車の事故」ではなかったってこと。

 中高年男性の自殺者が最も多かった「朝4時から7時59分まで」の時間帯の自殺は、「縊死」。

 家族が寝静まったあと、「強い意志」で命を絶っていたケースが一番多いことが明かされたのだ。
 それだけではない。

 日本で月曜の朝に自殺が顕著になったのは、1990年代後半以降。つまり、1974年の高度成長期からバブル崩壊までには、いわゆる「ブルーマンデー」が認められなかったのである。

 「ブルーマンデー」とは、文字通り月曜日に憂鬱になる現象で、欧米で使われるようになった言葉である。自殺に季節変化が存在することはかなり昔からわかっていたが、日本より早くストレス研究が蓄積されてきた欧米で、1970年前後から月曜の朝に、中高年男性の自殺者が増える傾向が報告されたのだ。

 その傾向は現在も続いていて、例えば英国では93年から02年の間に記録されたすべての自殺死亡のデータを分析し、月曜日のピークを確認。日本国内では、03年に全国で記録されたすべての自殺死亡のデータ分析で、月曜日の自殺率は、週末の1.55倍だったと報告している。

長期間のデータを詳細に分析
 ただ、これまで使われてきたデータは、いずれも今回の調査ほど長期にわたる大規模なデータではなかった。

 つまり、どんな研究にも「ウリ」が必要不可欠だが、今回のそれは「41年間の自殺者88万人のデータ」を用いたってこと。バブルが崩壊で日本経済がどん底になった1995年を境に、前期(74年〜94年)と、後期(95年〜14年)に分け、さらに曜日だけでなく、時間別に分析した点が今回の研究の特徴である。

 さらに、他の年齢、性別では、次の傾向が明かされている。
中高年男性と同様の傾向は若い男性(20歳〜39歳)にもみられる。しかしながら、中高年男性に比べると、月曜早朝に集中する頻度は、3割〜5割ほどに低い。
失業率が上がると、若者と中高年男性のみ自殺が増える
女性や高齢男性は景気に関係なく、昼の12時前後に自殺する割合が高い
 研究チームでは上記の結果を踏まえ、「自殺予防を目的とした電話サービスなどは、夜の時間帯より、むしろ早朝から通勤時間帯にかけて相談体制を充実させる必要がある」と指摘。

 また、高齢者や主婦などは、昼間にひとりにならないよう、家族や地域社会のサポート体制を強化することが大切だと話している。

 中高年男性の自殺。いったい何度このテーマでコラムを書いてきただろう。
 景気が自殺に影響を与えることはわかっていたが、今回の新しい事実は私自身、相当ショックだった。

 自殺者の多くは、うつ病やうつ状態にあると考えられていて、うつ病の人は世界総数推計で3億2200万人に達し、10年間で18%以上増加。地域別ではアジア・太平洋地域で世界全体の約48%を占め、日本はうつ病に悩む人が多い国の一つだ(WHOの2015年時のデータに基づく)。

 男性は弱音を吐くのをいとう傾向が強いため、どんなにストレスの雨にびしょ濡れになっても、耐えることが多い。ホントはSOSを出したいのにムリして耐える。それを口にした途端、自分がとんでもなく弱虫な気がして、自分でストップをかける。「貸してください」というたったひと言が言えないのだ。

 自殺は、社会的に強いられる死だ。
 高齢化が進む多くの先進国で「75歳以上の男性」の自殺が増加しているのに、いったいなぜ日本では40代〜50代男性の自殺者が多いのか。
 なぜ、先進国である日本の中高年が、いまだ経済状態の悪い途上国と同じなのか。
 なぜ、家族が寝静まった時間に「縊死」という、より確実な方法で死を選択してしまうのか。

 月曜の明け方に男性を追い詰める「正体」が不気味で仕方がないのである。

「過労死白書」にみる中高年の苦悩
 奇しくも先の調査結果が報道された数日後、厚労省の「過労死等防止対策白書」(2018年度版)が発表され、そこにも「中高年の苦悩」が報告されていた。

 白書によれば、自殺者数総数に対する、勤務問題を原因・動機の1つとする自殺者の割合は増加傾 向にあり、17年は 9.3%(07年は6.7%)。年齢層別にみると、もっとも多いのが 「40〜49 歳」で全体の28.3 %、次いで「50〜59 歳」(21.7%)、「30〜39 歳」(21.1%)、「20〜29 歳」(20.2%)と、仕事に悩む中高年の姿が浮き彫りになっていたのだ。

 しかも、2008年以降を年次推移で見ると、

「40〜49歳」・・・25.1%→28.3%
「50〜59歳」・・・20.8% →21.7%
「30〜39歳」・・・26.3%→21.1%
と、40歳以上で「勤務問題」が原因・動機とする割合が増加しているのである。

 もちろんここでの「動機」は遺書などが残された場合に限っているので、全体を把握しているわけではない。と同時に、上記のパーセンテージはあくまでも総数から割合を算出した数字で、統計的に有意に「増加している」と言い切れるものでもない。

 が、「肌で感じる感覚と合う」といいますか。40代後半〜50代の男性会社員たちの中で、「漠然とした不安を抱いている人がこの数年で増えた」と、フィールドワークのインタビューで感じていたので、深刻に受け止めるべき数字だと考えている。

 ただし、その「対象と不安」は2つに分けて考えねばならない。

 一つは、90年代後半から00年代前半に就職活動を行った「就職氷河期世代」で、非正規雇用を余儀なくされた人たちの不安だ。
 彼らは賃金も処遇も改善されないまま40代後半に突入し、不安定な雇用形態で結婚もできず、親の介護との両立を強いられるなど、バブル経済崩壊後の経済不安の犠牲となり続けていている気の毒な世代である。

 同じ非正規でも20代、30代の正社員化が進んでいるけど、40歳以上は別。というか、派遣法の改正で今までより厳しい状況に追いやられた人も少なくない。

 実際、数年前に私のインタビューに協力してくれた某大手企業の非正規の方は、17年に「雇い止め」にあった。
 「14年間も働き、自分で資格まで取ってスキルアップしてきたのに……、怒りを通り越して涙が出ました。幸い上司の知り合いの会社で雇ってもらえることになりましたが、この先、死ぬまで職を転々としなければならないと思うと、今優先すべきことが何なのか? 自分でもわからなくなるんです」(本人談)

 氷河期世代の無間地獄。
 17年度から政府は、「就職氷河期世代の人たちを正社員として雇った企業に対する助成制度」をスタートさせたが、支給要件は「過去10年間で5回以上の失業や転職を経験した35歳以上の非正規社員や無職の人」となっている。「10年で5回以上も転職を繰り返した人=問題あり」と判断されるのがオチ。ましてや40代以上が対象になるわけもない。

 こんなアリバイ作りの制度ではなく、早急にこの世代を救済する具体的かつ実効性のある議論を尽くさない限り、路頭に迷い、追い詰められる中高年は増えるばかりだ。

新中間層の抱える不安
 そして、もう一つの「漠然とした不安を抱いている人たち」が、いわゆる新中間階級に属する正社員の人たちである。

 彼らは、
 「今までは50歳以上が対象だった肩たたき研修が、45歳以上がターゲットになった」
 「今までは役職定年は賃金2割減だったのに、4割減になった」
 「今までは55歳で選択していた雇用形態を、53歳で決めなくてはならなくなった」
 と、会社員としての自分の賞味期限が前倒しされている現実を憂い、
 「ホントは誰かに話を聞いてもらいたいのに、相談することもできない」
 「忙しそうにしている妻がうらやましい」
 と不満を漏らす。

 会社という、年齢、役職、職位、職種など、あらゆる「上下関係」を基盤とした組織で長年生きてきた「会社員」にとって、自分が「下」になる現実が耐えられない。
 下の世代からお荷物扱いされ、「他者からの尊敬」という心理的報酬を奪われたことへ喪失感。それは「自分の価値への指標」を失うことでもある。

 人の欲求とは内的より、外的(=他者関係)要因に強く影響をうけるものだが、自分と比較可能な他者(同期や同級生など)の活躍を知れば知るほど、不安だけが募る。

 「今の自分の状況と折り合いをつけなくては」と思いつつも、自分と向き合えない。というか、とりあえず経済的な心配もないし、やるべきことはあるので、向き合わないで済んでしまうのが「会社員」という存在なのだ。

 その反面、彼らは「このまま腐ってなるものか」という気持ちももっているので、何もできない自分に負い目を感じ、
 「でも、会社に残った方が給料いいし」
 「転職しても大して変わらないし」
 と自分を慰める一方で、周りに嫉妬し、周りに壁を作り、自分のふがいなさを不機嫌な中高年を演じることで紛らわし、孤立していくのである。

 私はそんな彼らの話を聞くにつけ、50歳以上=使えない と線引きされ、先輩たちのキャリアパスが全く参考にならない雇用環境に投じられている中高年男性たちを気の毒に思いつつも、20年以上ある残りのキャリア人生を消化試合にしてどうする? とじれったくなる。

 「漠然とした不安に押しつぶされないで。どうにか上手く対処して乗り越えて欲しい」と心から願う一方で、「不安の反対は安心じゃないよ。前に半歩でもいいから進むことだよ。腐るな、踏ん張れ!」と活をいれたくなってしまうのである。

 ……私はこれまで何人かの「勇気ある決断」をした人たちの声を聞いてきた。

ある男性が孤独の日々から抜け出すきっかけ
 彼らは会社で肩たたきされ、自信を失い、精神的にも落ち込んだ経験のある人だった。そんな彼らの言葉は重く、切なく、それでいてとても勉強させられるものだった。

 その中で私がハッとさせられた、ある男性の言葉がある。

 会社を辞めるまで追い詰められたその男性は、辞めたあとは、世間の目が怖くて、外を歩くのも怖く、漫画喫茶で時間を潰したり、美術館にいったり、孤独感に苛まれた。
 そんな男性があることをきっかけに、前に踏み出した。

 河合:「孤独の日々をどうやって脱出したんですか?」
 男性:「すがったんです」
 河合:「すがった? というのは?」
 男性:「会社にいる頃から、何度か誘いを受けていたコーチング研修があった。あ、勘違いしないでくださいね。変な自己啓発とかじゃなく、一般的な研修です。その頃はオレにはオレのやり方があるって自信満々だったから相手にしてなかった。でも、会社を辞めて半年くらいたった頃に、偶然また電話がかかってきて。その時僕は『行きます』と即答したんです。自分でもわからないけど、どん底にいた自分は、誰かにすがりたかったんだと思います」

 男性は、他者にすがってでもなんでも、とにかく行動を起こせたことで、物事の見方が変わり孤独から解放された、と何度も繰り返した。

 「すがる」とは一見あまりよくない行為のように捉えがちだ。中には「カルトにでも走れというのか!」と勘違いする人もいるかもしれない。だが、彼の言葉を文脈で捉えればわかるように、それは「自分た?けて?て?きることには限界か?ある」ことを認め、他者に頼ること。考えて動くのて?はなく、すがってでもなんでも動けは?、物事の見方変えることができる、と。
 依存の先にこそ自立は存在し、他人に弱さを見せることて?、逆に強くなれることた?ってあると思う。

 もし、もしこれを読んでいる方の中で一人きりで悩んでいる方がいらっしゃったら、どうかすがってほしい。弱い自分をさらけ出してほしい。それが同じように苦悩する「中高年の勇気」にもつながると思います。

全国書店にて発売!「残念な職場ー53の研究が明かすヤバい真実」

 ―SOCの高い職場の作り方満載!―

 本書は、科学的エビデンスのある研究結果を元に、
「セクハラがなくならないわけ」
「残業が減らないわけ」
「無責任な上司が出世するわけ」
 といった誰もが感じている意味不明の“ヤバい真実”を解き明かした一冊です。

(内容)
・ショートスリーパーは脳の故障だった!
・一般的に言われている「女性の特徴」にエビデンスはない!
・職場より家庭の方がストレスを感じる!
・人生を邪魔しない職場とは?


このコラムについて
河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学
上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/110500189/

#ただし、現実には、自殺率は下がり続けており、
#バブル崩壊後、自殺率が異常に上昇した中高年男性では、特に顕著
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/jisatsu/16/dl/1-03.pdf


 

【第8回】 2018年11月6日 羽田徹 :話し方コンサルタント・トップ講師プロデューサー 株式会社web-school.tv代表取締役
パワハラにならない部下へのうまい伝え方

人を動かすには「15秒で伝える」ことを心がける!
元人気DJ、さらに不動産会社でのトップ営業やベンチャー企業で取締役営業本部長を経験、そして、現在はトップ講師プロデューサーとして、延べ2万人を指導している話し方のプロが教える新刊、『相手のキャラを見きわめて15秒で伝える!』。
この著書の発売を記念して、研修などで教えているノウハウや、すぐに使えるワザをご紹介します! 営業職はもちろん、部下や上司とのコミュニケーションで悩んでいる人は必見です。

同じ指摘でも〇〇否定が
パワハラになってしまう!
前回、自己紹介や名刺を渡すときの伝え方のポイントをお伝えしました。

今回は、部下への伝え方がテーマです。

昨今、私が管理職向けの研修をしていても問題になるのがパワハラ=「パワーハラスメント」問題です。

今の時代は、上司がパワハラだと言われるのを恐れて、部下に注意ができない、強く言えない…という悩みが多いのです。

では、パワハラになる伝え方と、パワハラにならない伝え方とは何が違うのでしょうか?

まずは、パワハラの定義を確認しておきましょう。

パワーハラスメントとは、社会的な地位の強い者(政治家、会社社長・役員、大学教授など)が、「自らの権力(パワー)や立場を利用した嫌がらせ」のことで、略称は「パワハラ」。(wikipediaより)

簡単に言うと、相手がそれを「嫌がらせ」だと感じたらパワハラと言われてしまう可能性があるわけです。

それを恐れて部下を叱れない人が増えていますが、これでは部下は育ちません。

もちろん、今の時代、大声で相手を怒鳴ることや手を上げることは言語道断。ただ、静かに相手を注意しても、相手にとってはそれがパワハラと感じてしまうことがあります。

その線引きは、なんなのでしょうか?

例えば、部下がレポートの提出期限を守らなかったときにどのように注意したらよいでしょうか?

「人格否定」は、絶対にNG
部下がレポートの提出期限を守らなかったときの注意の仕方です。

×「いつも期限を守らないのは、君が人間としてだらしないからだ。周りの迷惑も考えろ」

〇「期限を守らないと、どれだけ仕事ができても社会人としての信頼を失うぞ。何かトラブルでもあったのか?」

ポイントは、「人格否定」はNGだということです。

×の例は、提出期限を守らないという1つのことを取り上げて、その人の人としての人格を「だらしない」という言葉で全否定してしまっています。

無意識に相手の人格を否定する言葉は、知らず知らずの内に使っている場合もあり、注意が必要です。

これでは、叱られた相手は期限を守らなかったことを怒られたのではなく、自分と言う人間を全否定されたと感じます。
これがストレスになり、積もり積もるとパワハラと感じるのです。

逆に〇の例は、期限を守らなかったらどのようなデメリットがあるのかを、相手の立場で伝えています。人格否定ではなく「期限を守らなかったこと」という事実にに対する指摘になっているのがポイントです。

その上で、期限を守れなかった理由に対して、相手に何かトラブルがあったのかも?とこれも相手の立場に立って気に掛けているのです。

このように言われたら、指摘された部下も、期限を守れなかった自分の非を認めて悪かったと思うのではないでしょうか?

しかも、重要なポイントは、このコメントも15秒以内で伝えられていることです。
いくら相手のことを思いやったとしても、部下にとってはクドクド、じくじくと長い時間説教をされるのは苦痛でしかありません。

端的に15秒で伝えることで、相手へストレスを感じさせることもなく、自省に繋げるのです。

人格の否定ではなく、「起こった出来事への指摘」を「相手の立場に立って」、「15秒で伝える」。

これができれば、あなたも信頼される上司になれるはずです。

羽田 徹(はだ とおる)
話し方コンサルタント・トップ講師プロデューサー 株式会社web-school.tv代表取締役
大学生の頃よりラジオDJを始め、1998年に大阪人気No.1のFM802主催の新人DJオーディションに合格。その後FM愛知や文化放送でラジオオDJとして10年間活動。番組降板により挫折し不動産投資会社の営業に転職。話し方を武器にさらに営業力を磨き、2年目にトップ営業になる。2008年にはその営業力が認められ倒産寸前だったロープライス眼鏡会社の取締役営業本部長に就任し、当時64店舗から110店舗への躍進を支える。またインターネットカフェ最大手にて社外取締役を歴任。2012年、ラジオDJとしての話し方の技術、営業力、組織マネジメント力、経営経験などを生かし、組織人事コンサルタント会社のリンクアンドモチベーションにてナビゲーター(研修講師)、ファシリテーターとして活動。大手企業からベンチャーまで年間100件以上登壇、延べ2万人以上の人たちと接する。研修講師の採用や育成の責任者も兼任。新人やマネジメント研修、エグゼクティブへのスピーチ・プレゼン指導、組織活性ワークショップ、働き方改革の為のロジカルシンキング講座などを得意とする。自身の経験から「学びでこの世界を豊かにする」を理念として活動中。著書に『ビジネスマンのためのスピーチ上手になれる本』(同文舘出版)がある。社会人のための「話し方動画教室オンライン」運営。
https://diamond.jp/articles/-/183557


 


【第31回】 2018年11月6日 唐池 恒二 :九州旅客鉄道株式会社 代表取締役会長
ひとが辞めないコツは ひとつしかない

非常に高額なのに、最高競争率316倍!

いま、この日本で、宝くじのように当選するのが難しいサービスが存在することを、あなたはご存じだろうか?
JR九州。正式名「九州旅客鉄道株式会社」。名前だけ聞くと、旧態依然の鉄道会社のイメージを持つかもしれない。
だが、この会社の「あるサービス」がひそかに感動の輪を呼んでいる。
東京だけで暮らしているとわからない。でも、九州に行くと景色は一変する。
その名は、クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」(以下、ななつ星)。いまや「世界一の豪華列車」と称され、高額にもかかわらず、2013年の運行開始以来、予約数が定員をはるかに上回る状態が続いている。なんと、DX(デラックス)スイート(7号車の最高客室)の過去最高競争率が316倍というから驚きだ。昨年11月の『日経MJ』には、「ブランド作りとは世界の王でも断る覚悟」と題して、そのフェアな抽選システムが新聞一面に紹介された。

だが、驚くべきは、「ななつ星」だけではない。

この会社、バリバリの鉄道会社なのに、売上の6割は鉄道以外の収入で、8年連続増収なのだ。
かつてこんな会社があっただろうか?
JR九州を率いるのは唐池恒二氏。8月27日、韓国と九州を結ぶ真っ赤な新型高速船「クイーンビートル」を2020年8月に就航すると発表。子どもから大人まで博多と釜山の優雅な旅を満喫できるという。さらに、7月には、中国・アリババグループとの戦略的資本提携を発表。2020年の東京オリンピックを控え、ますます九州が熱くなりそうだ。
記者は、この20年、数々の経営者を見てきたが、これほどスケールの大きい経営者はほとんど見たことがない。
1987年の国鉄分割民営化の会社スタート時は、JR北海道、JR四国とともに「三島(さんとう)JR」と称され、300億円の赤字。中央から完全に見放されていた。
それが今はどうだろう。高速船、外食、不動産、建設、農業、ホテル、流通、ドラッグストアなど売上の6割を鉄道以外の収入にして8年連続増収。37のグループ会社を率い、2016年に東証一部上場、2017年に黒字500億円を達成。今年3月1日の『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)でも、逆境と屈辱から這い上がってきた姿が紹介された。
今回、再現性のあるノウハウ、熱きマインド、破天荒なエピソードを一冊に凝縮した、唐池恒二氏の著書『感動経営』が、発売たちまち3刷。唐池氏に『感動経営』にこめた思いを語っていただこう。(構成:寺田庸二)


なぜ、初期教育が大事か
「アルバイトがすぐ辞めちゃうんですよ」

 しばしば、外食産業の店長のぼやきを聞く。
 近年の深刻な人手不足への対策に追われる飲食店の店長にすれば、苦労の末にようやく採用したアルバイトが1〜2ヵ月で辞めていくのはつらいことだろう。

 しかし、多くの飲食店のアルバイトが短期間で辞めているのかというと、どうもそうではないようだ。

 確かに、外食・小売業における採用難は、年々厳しさの度合を増している。
 一方で店舗によっては、アルバイトの定着が成功しているところも少なくない。

 アルバイトが定着する店舗を調べてみると、共通の取り組みをしているのがわかる。
 それは、初期教育をかなり重視しているということだ。
 アルバイトと同様に、社員の教育も最初が肝心である。

 入社してきてすぐ、最初の時期はとにかく厳しく教えることをすすめたい。
 社員は皆、入社直後はやる気がみなぎっている。
 自分で努力して、選んで入ってきた会社だから、ここで頑張ろう、認められようと燃えている。
 そういうときにこそ厳しく教えるのだ。

 そうすることによって、簡単にくじけたりしない、すぐに辞めるのどうのといい出さない社員に育っていく。

 反対に、何のスキルもない人間を最初にチヤホヤしてしまうことほど始末の悪いものはない。

 しばらく何ヵ月だか甘やかしてしまったあとに、うまく成長しないからと慌てて厳しくしてももう手遅れ。
 というより、むしろ逆効果で、最悪の場合そこで辞めてしまったりする。

 私がかつて大いに力を借りた外食産業のプロの面々も、同様のことを指摘されていた。
 外食も、安全と接客が命だ。鉄道と似ている。
 だから、とりわけ最初に厳しく教える。

☆ps.
 今回、過去最高競争率が316倍となった「ななつ星」のDX(デラックス)スイート(7号車の最高客車)ほか、「ななつ星」の客車風景を公開しました。ななつ星の外観やプレミアムな内装の雰囲気など、ほんの少し覗いてみたい方は、ぜひ第1回連載記事を、10万PVに迫る勢いの大反響動画「祝!九州」に興味のある方は、第7回連載もあわせてご覧いただければと思います。

唐池 恒二(からいけ・こうじ)
九州旅客鉄道株式会社 代表取締役会長
「三島JR」と称され、300億円の赤字というどん底のスタートを切った同社にあって、全社員と共に逆境と屈辱から這い上がり、500億円の黒字(2017年度)に導いた立役者。同社は現在、売上の6割を鉄道以外の収入にして8年連続増収中。
高速船、外食、不動産、建設、農業、ホテル、流通など37のグループ会社を伴い、連結の売上額は4133億円、経常利益670億円(2017年度)を計上。
1953年4月2日生まれ。1977年、京都大学法学部(柔道部)を卒業後、日本国有鉄道(国鉄)入社。1987年、国鉄分割民営化に伴い、新たにスタートした九州旅客鉄道(JR九州)において、人気温泉地・由布院の魅力を凝縮した「ゆふいんの森」や、浦島太郎の竜宮伝説をテーマにした「指宿のたまて箱」など、11種類のD&S(デザイン&ストーリー)列車をつくり、次々大ヒット。列車を「移動手段」から「観光資源」へと昇華させた。
1991年に博多〜韓国・釜山間にデビューした高速船「ビートル」就航に尽力。さらに、大幅な赤字を計上していた外食事業を黒字に転換させ、別会社化したJR九州フードサービスの社長に就任。2002年には、同社でみずからプロデュースした料理店「うまや」の東京(赤坂)進出をはたし、大きな話題に。
2009年6月、同社代表取締役社長。2011年には、九州新幹線全線開業、国内最大級の駅ビル型複合施設「JR博多シティ」をオープン。2011年に制作指揮した「祝!九州」のテレビCMは「カンヌ国際広告祭」アウトドア部門金賞受賞。2013年10月に運行を開始し、総工費30億円をかけ世界一の豪華列車とも称される「ななつ星 in 九州」では、企画立案からデザイン、マーケティングまで陣頭指揮を執り、大人気となる。2014年6月、同社代表取締役会長。2016年には、長年の悲願であった東証一部上場を実現。2018年7月には、中国・アリババグループとの戦略的提携を発表。今後の動向にさらなる注目が集まっている。
【JR九州HP】https://www.jrkyushu.co.jp
https://diamond.jp/articles/-/180424
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/319.html

[経世済民129] アリババが映す中国経済の減速、待ち受ける試練 安倍訪中後の日中関係「4つの留意点」、依然油断はできない         
2018年11月6日 Jacky Wong
アリババが映す中国経済の減速、待ち受ける試練

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 電子商取引大手アリババ集団は、中国のハイテク大手として知られるが、根本的には、中国消費者を相手に製品を販売する中・小企業向けのプラットフォームだ。

 中国の中小企業は、当局によるシャドーバンキング(影の銀行)への取り締まり強化や、それに伴う景気減速で打撃を受けている。そこに米中の貿易摩擦が加わっており、アリババが2019年3月期の売上高見通しを4?6%引き下げたことに驚きはない。アリババは、注目のハイテク株というよりは、中国経済の先行きを占う上で目安となる先行指標のような存在だ。

 アリババは、出店業者の一部が厳しい状況に直面しているとして、ウェブサイト上での検索数増加などによる漸増型の広告スペースの販売を少なくとも当面、停止すると明らかにした。アリババは出店業者が支払う広告費から収益の大半を得ており、今回の決定は今後成長が鈍ることを指す。

 アリババは売上高見通しの下方修正を決めたのは、ほんのここ数カ月になってからだと説明した。つまり、ここから状況はさらに悪くなることを示唆している。ただ、アリババの成長鈍化の兆しは、ここ数四半期にすでに出ていた。

 アリババの7-9月期(第2四半期)売上高と営業利益は、いずれも市場予想に届かなかった。純利益は市場予想を上回ったものの、背景には投資売却による押し上げがある。総売上高は54%伸びたが、営業利益は前年同期比19%落ち込んだ。まだ収益化できていない他の事業への投資がかさんだことが主因だ。アリババは次の成長の活路を求め、実店舗や食品宅配などの事業に資金を投じている。こうした新規事業を除くと、中核の電子商取引事業は29%の増収だった。なお底堅い数字だが、1年前に記録していた50%超の伸びからは鈍っている。

 アリババは収益の大半を中国国内で稼いでいるものの、米中の通商対立激化はリスクとなる。なぜなら、経済減速による痛みを受けるのは、不均衡なまでに小規模企業に集中するからだ。

 決算発表を受けた2日のアリババ株価は、前日比2.42%安で引けた。夏場につけた高値からは約30%下落している。7-9月期決算は、投資家が早期の回復を期待すべきではないことを物語っている。
https://diamond.jp/articles/-/184459


 


【第139回】 2018年11月6日 加藤嘉一 :国際コラムニスト
安倍訪中後の日中関係「4つの留意点」、依然油断はできない
今回の安倍首相の訪中後、日中関係の行方は… 写真:新華社/アフロ
安倍首相の
中国公式訪問が終了
 安倍晋三首相の日本首脳による約7年ぶりとなる中国公式訪問が終了した。

 安倍首相は習近平国家主席、李克強首相、栗戦書全国人民代表大会常務委員会委員長と会談を重ね、日中平和友好条約発効40周年記念レセプションに参加した。

 安倍首相・李克強両首脳がイノベーション、海上における捜索および救済、通貨スワップなど12本の国際約束・覚書の署名に立ち会った。

 両首脳は日中第三国市場協力に関するフォーラムにも出席し、1000人以上の両国市場関係者と共に日中経済協力の新しい形を模索した。約40年に渡って続いた政府開発援助(ODA)はその歴史的使命を終えた。安倍首相は、この節目を背景に、日中関係を“新たな段階”へと押し上げるという主張をした。

 安倍首相訪中の詳細や両国間での合意事項等に関しては日本国内でも広範に報道されているためこれ以上は触れない(参照:外務省https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/c_m1/cn/page4_004452.html)。

 本稿では、安倍訪中を経た上での今後の情勢について考えてみたい。

 この訪中を無駄にせず、日中関係・交流を安定的かつ健全に管理するという観点から、筆者が現段階で留意すべきだと考える問題を4点提起し、若干の検証作業を行いたい。

「新たな時代」という言葉に
習近平は内心ほくそ笑んだであろう
 1つ目に、「第5の政治文書」についてである。日中両国政府はこれまで国交正常化を実現した1972年、平和友好条約を締結した1978年、その後1998年の江沢民訪日時、2008年の胡錦濤訪日時に政治文書に署名し、両国間系の礎としてきた。

 この流れ、および昨今の情勢や世論を考慮するとき、来年6月に予定されている習近平国家主席の訪日時に「第5の政治文書」の署名に向けて検討と調整がなされる可能性はある。

 それ自体は前向きな動きであり、日中間の政治的関係を安定させ、多角的な民間交流、そして斬新的な日中共同の国際貢献に向けての礎となるものと筆者は考える。

 一方で留意したいのが同文書をどういう立場で、どういう論調のものに仕上げるかという点である。今回安倍首相は随所で日中関係の“新しさ”を強調した。

 例えば、習近平主席との会談で、安倍首相は日中両国・関係が(1)競争から協調に、(2)互いに脅威とならず、(3)自由で公正な貿易体制の進化発展を推し進めるという“3原則”を示した上で「新たな時代を習主席と共に切り開いていきたい」と主張した。

 筆者が想像するに、この言葉を聞いた習近平は内心ほくそ笑み、「してやったり」という思いを抱いたであろう。“新時代”とは、自身が国内政治において提唱し、党規約や憲法にまで書き込んだ概念にほかならないからだ。

“習近平新時代中国特色社会主義思想”――。

 習近平政権の指導思想である。中国の軍事や役人、学者たちは毎回口にするには長すぎるこの言葉を省略して“習近平思想”と呼ぶ。

 習近平からすれば、仮に“新時代”という言葉を「日中第5政治文書」に組み込むことができれば、それを自らの外交成果とみなし、宣伝し、国内のあらゆる勢力に対してアピールすることができる。

 日本の安倍首相が“新時代”に同調してきた、内政が新時代に入った中、外交も新時代に入っていくのだと。“一帯一路”や“人類運命共同体”といった習近平政権を象徴する概念も盛り込もうとするだろう。

 筆者はここでそういう状況の良しあしについて価値判断するつもりは毛頭ない。ただ、内政に忠実で、他国以上に外交を内政の延長だとみなし行動する傾向のある中国側は、おそらくそういう立場で、そういう論調で日本側との交渉に当たってくるであろうこと、日本側もそれを前提に中国側と向き合い、日本の長期的かつ開かれた国益に符合する、アジア太平洋地域の安定と繁栄に資する日中関係のあり方を模索すべきだということを指摘したいだけである。

依然として油断はできない
日中の関係
 2つ目に、「中日関係は再び正常な発展の軌道に戻った」(李克強首相、日中共同記者会見にて)とはいうものの、依然として油断はできないという点である。

2014年11月の会談では、両首脳の表情は非常に硬かった
2014年11月の会談では、記念撮影でも両首脳の表情は非常に硬かった Photo:REUTERS/AFLO
 ここでは一つひとつ挙げないが、改善した日中関係が何らかの突発的事件を通じて悪化した例は枚挙にいとまがない。歴史的、構造的な背景からいって、日中関係はまだまだもろいのだという現実を自覚する必要がある。

 筆者が特に警戒しているのが、中国側の日本の内政、および日本側の中国の外交に対する反応である。

「今後安倍政権が憲法9条改正に本格的に乗り出したとき、中国としてどう対応するか、世論をいかにして管理するかという問題を今から考えている」

 王滬寧政治局常務委員(序列5位)が主任を兼任する中央政策研究室国際局の中堅幹部は、筆者にこう語る。

 中国当局は官製メディアを中心に日本の憲法改正アジェンダを、平和路線の変更、場合によっては“軍国主義の復活”という観点から警戒心をあらわにしてきた。そういうこれまでのプロパガンダとの整合性をどう取るのか。仮に安倍政権が9条を含めた憲法改正のための手続きに本格的に乗り出したとして、中国側は日中関係の安定と発展という観点からどのように反応し、特に世論に対して説明していくのか。

 今後、中国の公船が尖閣諸島の接続水域内に入ってきたり、南シナ海での拡張的行動を一層本格化させた場合、日本政府としてどう対応していくのだろうか。

 もちろん、東シナ海問題に関しては、事態を緊張・悪化させないために、今回の訪中を通じても防衛当局間の海空連絡メカニズムの強化やホットラインの創設を巡って前向きな協議が行われた。

 昨今の情勢下において、中国側としても安易に領海侵犯するような真似はしない可能性が高い。ただ南シナ海問題に関して言えば、中国側はこれまでも安倍首相の南シナ海問題への“積極介入”に反発してきている。

「日本が南シナ海問題に軍事介入した場合、中国はしかるべき措置を取り、断固として対応する」(中国外交部華春瑩報道官、2017年3月16日)。

 仮に今後、米国や日本が、南シナ海を“軍事化”する行為だとして批判してきた事態が中国側によって再びもたらされた場合、安倍首相はこれまでの立場や反応との整合性をどう取っていくつもりなのか。一つの不安要素である。

米中関係が改善したら
日中関係への影響は
 3つ目に、仮に米中関係が改善した場合、日中関係がそこからどのような影響を受けるかという点である。

 前回コラム(「中国が安倍首相訪中を機に日本に接近する4つの理由」で指摘したように、中国側が安倍首相の訪中を機に日本に“接近”する理由の一つが米国要因、一歩踏み込んで言えば、この機会に中国として「米国の同盟国である日本を取り込んでおきたい」と考えているというのが筆者の見立てである。

 貿易戦争は構造的要因によるものであり、米国は中国を“戦略的競争相手”とみなし、中国は米国が貿易戦争を発動する動機は中国の台頭そのものを封じ込めようとしているからだとみなしている今、米中関係が根本から改善する可能性は高くないだろう。

 筆者自身、間もなく行われる中間選挙の結果いかん、トランプ大統領の今後の進退いかんによって米中関係そのものが質的に変化するか否かに関しては懐疑的な立場を取っている。

 とはいうものの、日本としては準備を進めておく必要がある。

 米中関係が改善、あるいは緩和し、中国としてそこまで日本に接近する切迫性に見舞われなくなったとき何が起き、それにどう対応していくか。

「歴史、領土、台湾。日中間で最も敏感な問題は何一つ解決していない。火種はいつ爆発してもおかしくない」(前出の中央政策研究室国際局幹部)。そのとき、日本国内で再び“米中再接近”を不安視し、“ジャパン・パッシング”を懸念する内向きの議論が広がるのではないか。そうならないために、日本として、日米中関係を長期的にどう管理していくのかという戦略を今のうちから練り、固めておかなければならない。

保守的になる
中国の内政事情
 4つ目に、安倍首相が最長で2021年9月まで首相を務めるこれからの数年、習近平新時代の真っただ中にある中国側でも「政治の季節」が続くという点である。

 2019年は中華人民共和国建国70周年、2020年は全面的に小康社会(少しゆとりのある社会)を実現する1年(筆者注:中国政府は2010年と比べて、2020年にGDPおよび1人あたりGDPを倍増させるという計画を立ててきた)、2021年は中国共産党結党100周年に当たる。

 筆者の観察と理解によれば、政治の季節を迎える中国共産党はまず内政的に保守的になる傾向が強い。

 政治的なプロパガンダが四六時中横行し、中国共産党がいかに偉大であるかが強調され、ナショナリズムが蔓延する。そのプロセスは安定第一という絶対原則の中で推進される。

 故に、政治的な引き締めが強化され、多元的、開放的な報道や言論が規制される。例えば、2008年の北京五輪前、中国ではツイッター、フェイスブック、ユーチューブの閲覧が禁止され、今に至っている。

 世論環境が共産党のプロパガンダ一色と化し、自由で多様な報道や言論が制限される環境は、日中関係の安定と発展にとっても不安要素であろう。

 中国政府が対日世論を上から締め付け“一本化”したほうが日中関係の安定には有利に働くという類いの主張も一部あるが、筆者はこの考えには全くくみしない。両国間で多様な意見が自由に往来し、ダイナミックな民間世論が形成される環境こそが長期的に両国間系の発展を担保するものだと考える。

 そして、“国家大事”が続き、内政が保守化し、引き締め策が横行する状況下で、対外政策が拡張的・強硬的になる傾向もまた歴史的に見いだせる。

 中国で“核心的利益”(筆者注:2011年9月国務院が発表した《中国平和的発展》白書によれば、中国の核心的利益は〈1〉国家主権、〈2〉国家安全、〈3〉領土保全、〈4〉国家統一、〈5〉中国の憲法が確立した国家政治制度と社会大局の安定、〈6〉経済社会の持続可能な発展の基本的保障から成る)が主張され、国際社会がそれを警戒し始めたとき、中国はまさに政治の季節にあった。

 2008年北京五輪、2009年建国60周年、2010年上海万博の頃のことである。

(国際コラムニスト 加藤嘉一)
https://diamond.jp/articles/-/184168
【第138回】 2018年10月23日 加藤嘉一 :国際コラムニスト
中国が安倍首相訪中を機に日本に接近する4つの理由
中国は日本を取り込もうとしている?
中国は日本を取り込もうとしている? Photo:PIXTA
安倍首相による
約7年ぶりの中国公式訪問
 10月25〜27日、安倍晋三首相が日本の総理大臣として約7年ぶりに中国を公式訪問する。日中平和友好条約発効40周年という節目の時期における訪中であり、5月の李克強首相の日本公式訪問、来年予定されている習近平国家主席の日本公式訪問と並んで、日中間の首脳外交、そして政治関係の安定化、成熟化、メカニズム化を象徴する外交行事であるといえる。

 外交には相手があり、双方の思惑や利害関係がある程度一致して初めて交渉や行事は成立するわけであるが、本稿では、なぜこの時期に習近平国家主席率いる中国共産党指導部が日本との関係を経済的、外交的、政治的、そして戦略的に改善し、強化しようと乗り出しているのか、という問題を考えてみたい。

 これは、本連載の核心的テーマである中国民主化研究、すなわち「中国共産党研究」という意味でも重要であると考える。中国共産党最大の任務と目標は党の威信、権力、存在を死守、維持、強化することにほかならない。

筆者が考える
4つの理由、動機、背景
 筆者は4つの理由、動機、背景が交錯しながら作用していると考える。それらは、(1)米国要因、(2)一帯一路、(3)改革開放、(4)儀式需要である。以下、一つひとつ整理・検証していきたい。

 まず米国要因に関してだが、本連載でも度々扱ってきたように(過去記事「米中貿易戦争が泥沼化、中国はもはや米国を信用していない」参照)、特に今年に入ってからトランプ政権の対中貿易戦争、対台湾政策、中国を“戦略的競争相手”と定義した国家安全保障戦略報告書、そして昨今トランプ大統領やマイク・ペンス副大統領の公の場における「中国が米国の中間選挙に干渉しようとしている」といった発言などを経て、中国共産党指導部はもはやトランプ政権を信用しなくなっている。

 一方の米国側も中国の産業政策、貿易政策、知的財産、南シナ海問題、台湾問題、そして米国のメディア、シンクタンク、大学、政治、市民社会などへの官民一体・挙国一致的な“浸透”政策を見逃すつもりは毛頭ないようで、中国に対してしかるべき圧力、制裁を科していくものと思われる。

 来月行われる米国の中間選挙を経て程度や雰囲気の次元で何らかの変化は生じるのかもしれないが、米中間の“戦略的競争関係”はトランプ大統領・政権という次元を超えて長期化する、そしてその最大の要因は“中華民族の偉大なる復興”というチャイナ・ドリームを掲げ、政治力、軍事力、外交力、経済力を含め総合的に“世界の中心”へ登り詰めることを明確な目標とし、そのために現在“中国の特色あるソフトパワー”を世界の各地、各分野で行使している習近平政権の国家戦略にあると筆者は考えている。

 党の“核心”である習近平が、今年3月の全国人民代表大会で憲法を改正し、国家主席の任期が撤廃され、少なくとも制度・理論的には名実ともに、いつまでも中国の最高指導者に居座ることができるようになった昨今においてはなおさらである。

 米中関係が構造的に悪化している副作用として、米中外交安全保障対話、中国側で経済貿易政策を担当する担当者らの訪米などが延期されている。筆者自身は、このような状況が続く中、米中両国が国交正常化40周年に当たる来年の1月1日をどのように迎えるのかに注目している。

日米同盟に“ヒビ”を入れ
日本を“取り込もう”という思惑?
 世紀のライバルである米国との関係が悪化する中、そして多国間主義、自由貿易システム、グローバリゼーションなどに消極的な姿勢を見せるトランプ政権の政策に先進国、新興国、途上国を問わず国際社会全体が翻弄(ほんろう)される中、中国として米国の同盟国であり、世界第3位の経済大国である隣国日本に“接近”し、あわよくば日米同盟に“ヒビ”を入れ、日本を中国側に“取り込もう”という思惑が働いても、いささかも不思議ではないといえる。

 拙書『日本夢 ジャパンドリーム:アメリカと中国の間で取るべき日本の戦略』(晶文社)の共著者である劉明福・中国人民解放軍上級大佐が主張するように、中国国内には、官民、文官か軍人かを問わず、「日中関係が悪いのは米国が裏でそう操作しているからだ」「日本が米国との同盟関係を破棄して日中関係は初めて根本的に改善され、アジアに安定と平和がもたらされる」という類の見方は根強いと感じている。

 米国との関係悪化に端を発した日本への“接近”、そして希望観測的に抱く“取り込み策”の背景として、中国の外交政策、世界戦略、そして日米同盟に対して潜在的に抱いてきたDNAが同時に働いているというのが筆者の見方である。

中国が目玉政策としてきた
シルクロード経済圏構想
 2つ目に“一帯一路”、すなわち習近平主席が第一次政権成立以来、中国が“世界の中心”に登り詰めるための国家戦略、目玉政策として掲げてきたシルクロード経済圏構想である。

 今回の安倍首相訪中における一つの目玉が、今年5月李克強首相が訪日した際に両国間で合意に至った第三国における日中民間経済協力の推進、そしてその具体的プラットフォームとしての「日中第三国市場協力フォーラム」の開催である。

 筆者自身、日本と中国がラテンアメリカ、東南アジア、アフリカといった第三地域において、互いに勢力範囲の構築を彷彿(ほうふつ)させたり、警戒・牽制したり、場合によってはつぶし合うような状況ではなく、資金、技術、マネージメント、経験などを含め、互いに長所を伸ばし合い、短所を補う形での官民一体協力は日中間における新しい協力の形式・次元として有意義であると考える。一人の有権者として、安倍首相には今回の訪中を通じてこのスキームをより一層推し進めていただきたいと思っている。

 一方で、中国は第三国における日中協力の推進や、今回のフォーラムへの安倍首相の出席といった本件をめぐる一連の流れや行事をもって、「日本が、中国が提唱・推進する“一帯一路”を支持してきた」と宣伝する光景は想像に難くない。

 日本政府としてはこれまで、“一帯一路”が地域のインフラ建設や経済の正常で健全な交流を活発化させるものであり、そして日本政府・企業としても対応が可能な個別案件に関しては前向きに対応していくという立場を取ってきたと認識しているが、日本側がどう認識・対応しているかと、中国側がどう認識・宣伝するかは別問題である。日本の動きを同盟国である米国や、価値観を共有する各国がどう捉えるかという“見え方”の問題も考慮しなくてはならないだろう。

 というのも、“一帯一路”はモノ、ヒト、カネの交流にとどまらないからだ。中国はそれを通じて中国が直面する地政学的環境を有利に構築し、経済・金融外交を通じて第三地域における政治的影響力を浸透させ、これらの地域における国家に中国の“核心的利益”を尊重させるべくもくろみ、動いていく。その過程で、中国が望む、中国にとって有利な国際秩序やルールを築こうとするのは火を見るより明らかである(過去記事「中国がアフリカ支援外交で打ち出した「5つのノー」の真の狙い」参照)。“一帯一路”が習近平主席率いる中国共産党にとって“中華民族の偉大なる復興”を実現していくためのツールなのだという前提に立って、日本は慎重かつ丁寧に中国との第三国協力を進めていくべきであろう。

日本との関係を安定的に管理し
大いに利用したいという戦略的考慮
 3つ目に、今年同じく40周年を迎える改革開放を祝い、より一層推し進めるために日本との関係を安定的に管理し、日本の経験や日本というプレーヤーを大いに利用したいという戦略的考慮である。

 本月はまたケ小平訪日40周年に当たる。8日間の訪日期間中、ケ小平は随所で日本の近代化を目の当たりにした。日産自動車の工場では「これが近代化だ」、新幹線の中では「とても速い。これこそ我々が求めている速さだ」と感嘆に浸った。

 筆者自身は、習近平は特に政治面と外交面では“ケ小平路線”を実質的に修正しているが、少なくとも経済面においては基本的に改革開放の路線を歩もうとしていると考えている(政治面での修正が経済面での継承に与える悪影響には警戒が必要だが)。

“ニューノーマル(新常態)”を掲げる近年の中国政府であるが、輸出から消費への転換、過剰生産能力の解消、産業構造の最適化、イノベーション、環境保護への配慮といった目標だけでなく、“高質量発展”というスローガンの下、企業に対しても品質やブランドへの追求を促している。

 李克強首相は“工匠精神”を提唱し、(「日本に学べ」とは口にしないが)モノづくり、そして中国の持続可能な発展に必要な精神だとしている。改革開放政策をより品質重視、持続可能なプロセスにするために日本との官民一体協力を大いに利用したい、そのために日本との関係を安定的に管理しておきたいと考えているのだろう。

 米国との貿易戦争が激化し、出口が見えず、その中で第3四半期の実質成長率が6.5%増と、第2四半期よりも0.2ポイント減り、2期連続の減速となった現在、日本(経済・企業)とのつながりを維持し、強化しようという政治的インセンティブが中国共産党内で働きやすい状況が生まれている。

儀式を通じて国威を発揚し
正統性を創造
 最後が儀式である。

 中国は儀式を重んじる国家である。指導者が選挙によって選ばれない共産党一党支配下の社会主義体制という要素も関係している。民主選挙という制度を通じた正統性が確保されないからこそ、儀式を通じて国威を発揚し、正統性を創造しようとする。

 安倍首相の訪中を大々的に祝うことで、相手に圧力をかけようというしたたかさも作用しているのかもしれない。そして儀式は間もなくスタンダードと化す。誰が敵で、誰が味方なのか。何が政治的に正しくて、何がそうじゃないのか。官民を問わず、中国の人々は最高指導者・党中央からのメッセージを的確に読み取り、行動する経験則と民族性を擁している。

(国際コラムニスト 加藤嘉一)
https://diamond.jp/articles/-/183016
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/320.html

[国際24] 「トランプ再選戦略」に狂い、経済の勢い鈍化で トランプ広告メディア放送停止 激しい口調を後悔 外交政策、どう変わるか
トップニュース2018年11月6日 / 09:50 / 1時間前更新
焦点:
「トランプ再選戦略」に狂い、経済の勢い鈍化で
Howard Schneider
2 分で読む

[ワシントン 2日 ロイター] - トランプ米大統領の目論見では、減税や歳出拡大で再選へのスムーズな道筋が整ったはずだったが、10年来の景気回復に陰りが見え始めた点からすると、当てが外れてしまったかもしれない。

9年にわたって強気相場をおう歌してきた米国株は足元で低迷している。設備投資は、減税で高まるとの期待があったにもかかわらず最近は弱含み、住宅販売は数カ月軟調が続く。そしてトランプ氏の打ち出した景気刺激効果がはく落するとともに大きくなった債務負担だけが残り、景気は減速するだろうというのが専門家の見通しだ。

6日の中間選挙に向けて、上下両院の共和党候補はトランプ氏の不人気がたたり、本来なら有利な都市近郊地域で劣勢を強いられ、今の経済の強さを武器に何とか挽回しようと苦闘している。しかし2020年の大統領選に目を向けた場合、トランプ氏もしくは別の共和党候補は景気減速と不安感の増した市場という逆風に見舞われ、選挙戦はもっと厳しくなるだろう。

ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのアナリスト、スコット・レン氏は、10月に株価が急落した理由として企業利益の持続可能性を巡る疑念や貿易摩擦、世界経済の減速を巡る不安を挙げた上で、景気サイクルが終盤を迎えるとともに心配はより大きくなるのが常だと指摘した。

米経済は2009年6月に「グレートリセッション」が終了した後は、ほぼ着実な成長を続け、所得や雇用は危機前の水準を取り戻した。とはいえ、トランプ氏は昨年1月の大統領就任以来、減税や強硬的な通商政策など自らが導入した路線のおかげでオバマ政権時代から成長がさらに加速したと主張している。

確かに失業率は50年ぶりの低さとなり、今年の成長率は3%ないしそれ以上と、トランプ氏が公約で示した目標に達する勢いだ。

しかし多くの専門家は、米経済が今のペースを続けられるか疑問視するとともに、トランプ氏の政策効果による成長押し上げは限界に達したとみなす。

トランプ氏自身も懸念を覚えているように見受けられ、最近は米連邦準備理事会(FRB)に矛先を向けて利上げが景気後退を危険にさらしているとの批判を繰り返している。

一方FRBによると、米経済は巡航速度に落ち着き、成長率は今年見込みの3.1%から来年には2.5%、大統領選挙がある20年には2%まで鈍化が予想される。金利水準はまだ投資や消費を促せるほど低いものの、トランプ氏の政策効果が消えてしまうのが理由だという。

ゴールドマン・サックスなど民間機関は、データ面でそうした事態が起きる兆しを既に発見している。

同社のアナリストチームは、第3・四半期の成長率は3.5%という強い数字になったが、住宅や機械設備、商業ビルなどの投資が弱まったことで全般的に失望を招いたと分析した上で、このデータは米成長率が緩やかに減速するというゴールドマンの見通しと整合的だと付け加えた。

トランプ氏にとっては、不安の種は景気後退が起きる可能性というよりも、自分が選挙で約束してきたほど結果を残せていないことなのかもしれない。

例えば1年間だけ3%成長になったとしても、米国の成長率をこの水準より高められる、もしくは維持できるという発言を実現したことにはならない。

通商政策についても新聞の見出しをにぎわせているが、経済に及ぼす効果となるとはっきりしない。輸入関税によって米国の鉄鋼メーカーは生産を増やし、より多くの人を雇っているかはっきりしない。ただ、各国からの報復措置を受け、農産物輸出は落ち込み、一部企業は雇用を海外に移している。

トランプ政権が過去の通商協定が米国の貿易相手国ばかり有利にしている証明だと指摘する貿易赤字は、政権発足の年に10%増え、今年も同じような伸びになりそうだ。

何より株式市場が、トランプ氏再選への経済的な課題を最も適切に象徴しているのではないだろうか。

S&P総合500種は2016年の大統領選以降で約30%上昇し、トランプ氏が自画自賛してきた。ところが今年10月だけで8%近く下がり、企業利益の伸びがこの先も続いていくのかといった懸念が映し出された。
https://jp.reuters.com/article/trump-election-economy-analysis-idJPKCN1NB02S

 

ワールド2018年11月6日 / 09:19 / 7時間前更新
接戦続く米中間選挙、トランプ氏広告をメディアが放送停止
2 分で読む

[ワシントン 5日 ロイター] - 米中間選挙を6日に控えて選挙戦が最終盤となる中、NBC、FOXニュース、フェイスブックは、人種差別的と批判が出ていたトランプ大統領の陣営による選挙広告の放送・配信を停止した。

トランプ大統領に対する信任投票ともみられる今回の中間選挙は、共和、民主の両党ともに米国の将来に決定的な意味を持つと位置づけている。

期日前投票は増加しており、全体の投票率は中間選挙としては50年ぶりの高水準になる可能性がある。

2020年大統領選に向けたトランプ氏の選挙陣営がスポンサーとなっている広告は、警察官殺害で2014年に有罪判決を受けたメキシコからの不法移民の法廷での様子と、中米から米国を目指して北上する移民集団の映像を並べて映している。

広告は先週、オンラインで配信が始まったが、身内の共和党からも人種間の対立を生むとして非難の声が上がっていた。

CNNは既にこの広告を「人種差別的」として放送しない方針を打ち出していたが、5日にはコムキャスト(CMCSA.O)傘下のNBCが「無神経」として広告の放送を停止すると明らかにした。

トランプ大統領の米国優先主義的な政策を支持する報道姿勢をとるFOXニュースも放送停止を発表した。

フェイスブック(FB.O)は有料での広告掲載を停止する方針を示したが、ユーザーが自身のページで広告をシェアすることは認めるとした。

トランプ大統領はオハイオ州での集会に向けて出発する際、各社の決定に関する記者団の質問に対し「そんなことは知らない。われわれは多くの広告を流しており、数字を見ればこれらは明らかに効果的だ」と一蹴した。

大統領はオハイオ州での演説の後にはインディアナ、ミズーリ両州で上院選候補の応援演説を行う。

世論調査や選挙分析の専門家によると、下院選は民主党が過半数確保に必要な23議席を獲得する見通しだ。民主党が下院の過半数を握れば、トランプ大統領が掲げる政策の阻止や政権関係者の捜査などが可能になる。一方、上院は共和党が過半数を維持するとみられている。

ただ、米独立系3機関の予測をロイターが分析したところによると、下院435議席のうち65議席は引き続き接戦となっているほか、上院選の行方も激戦のアリゾナ、ネバダ、ミズーリ、ノースダコタ、インディアナ、フロリダ各州の結果に左右される見通しだ。

民主党はミシガン、ウィスコンシン、オハイオ、ペンシルベニアなどの州知事選でも善戦しており、勝利すれば2020年大統領選に有利に働く可能性がある。

Comcast Corp
38.02
CMCSA.ONASDAQ
+0.36(+0.96%)
CMCSA.OFB.O
オバマ前大統領は、バージニア州で下院選の民主党候補の応援に駆けつけ、6日の選挙では米国の個性や良識と平等を重視する姿勢が問われると訴えた。同州の下院選では民主党のウェクストン州上院議員が共和党現職のコムストック下院議員と接戦を展開している。

フロリダ大学のマイケル・マクドナルド教授によると、今回の選挙は不在者投票や郵便投票を含む期日前投票が約4000万票に上る見通しだ。前回2014年の中間選挙では2750万票だった。

マクドナルド教授は今回の選挙では登録有権者の45%が投票すると予測する。そうなれば中間選挙としては50年ぶりの高い投票率となる。教授は電話インタビューで「トランプ大統領は国民の政治に対する姿勢を根本から変えた」と話した。

*見出しを修正して再送しました。
https://jp.reuters.com/article/us-usa-election-idJPKCN1NB013


 

 

ワールド2018年11月6日 / 12:46 / 5時間前更新
トランプ氏、激しい口調を後悔 「もっと穏やかにすべきだった」
1 分で読む

[ワシントン 5日 ロイター] - トランプ米大統領は5日、就任後の2年間を振り返り、もっと穏やかな口調で話すことが望ましかったとの考えを示した。

米テレビ局シンクレア・ブロードキャスティングのインタビューで、これまでの2年間で後悔していることがあるかとの質問に「口調だろう」と答えた。

「もっと柔らかな口調にしたい。ある程度は仕方がないと思っているが、もう少し穏やかにできたかもしれない」と述べた。

ただ5日の民主党関係者に関する発言には穏やかさは見られなかった。民主党のコードレイ・オハイオ州知事候補を「悪人」、ウォーレン上院議員を「ポカホンタス」と呼び、カバノー最高裁判所判事の公聴会でのファインスタイン上院議員の役割を批判した。

トランプ氏はインタビューで、現在の政治に絡む辛らつな言葉には満足していないが選挙戦の最中であるためと説明した。

現在は民主党も共和党もそれぞれ選挙モードにあるとし「選挙後はいろいろなことが起きるだろう」と語った。

インディアナ州で「数百万人の不法外国人が法を破り、国境を侵し、われわれの国を荒らす」ことを民主党が後押ししていると主張した。

この発言について「人種差別ではない」とし「米国に合法的に入国しなければならず、そうでなければ入国する国はないというだけだ」と説明した。

*脱字を補って再送します。
https://jp.reuters.com/article/usa-election-trump-tone-idJPKCN1NB0A5


 

トップニュース2018年11月6日 / 11:39 / 21分前更新
アングル:
米中間選挙、「州レベルの攻防戦」巡る4つの注目点
2 分で読む

[タンパ(米フロリダ州) 2日 ロイター] - 6日投票の米中間選挙は民主、共和両党が政治的な発言力を高めようと州レベルで激しい攻防を繰り広げている。

2016年の大統領選で衝撃的な敗北を喫した民主党は、州での闘いを党勢立て直しの柱と位置付けており、過去30年余りで最大数の候補者を立てた。一方、33州の知事と州議会の3分の2を握る共和党は州政府での優位を維持しようとしている。

両党ともヘルスケアや銃規制、中絶権など国政レベルの課題を巡る議論を進める上で、州の法律や行政執行は重要との認識を強めている。

州における闘いが米国の今後の政治をどう左右するのか、4つの視点から展望する。

●選挙区の見直し

2020年の国勢調査後に選挙区の見直しが行われるが、ほとんどの州では政治権力を握った党が見直しの主導権を握る。民主党はオバマ政権下での敗北が響き、2010年の国勢調査後の選挙区見直しで共和党が自党に有利な線引きを進めるのを許してしまった。

今回は36州で州知事選が行われ、一部の主要州は知事が選挙区の区割りに対して拒否権を持つ。

民主党は選挙区見直し作業で影響力を手に入れるため、フロリダ、ミシガン、ネバダ、オハイオの各州で州知事の座を確保しようと狙っており、共和党のウィスコンシン州知事、スコット・ウォーカー氏は3選が危ぶまれている。

一方の共和党も投票日が近付くにつれて多くの州で攻勢を強めているようだ。

●ダイバーシティー(多様性)

ジョージア州でステーシー・エイブラムス氏が米国初の黒人女性州知事に就くかどうかは、共和党の地盤において民主党が多様な顔ぶれの候補者を推したてる戦術で勝利できるかを占う試金石となる。エイブラムス氏の立候補でマイノリティーや若者の投票率が高まる可能性がある一方、こうした有権者層は民主党を支持する傾向を持ちながら、大統領選以外の選挙では動向が読めない面が残る。

フロリダ州では同州で初めての黒人知事を目指してアンドルー・ギラム氏(民主党)も立候補している。

エイブラムス氏とギラム氏は、共和党の対立候補がいずれも白人の男性で、トランプ氏からの支持を受けている。

また女性候補者数は過去最大で、そのほとんどが民主党だ。

●州議会の勢力争い

過去の選挙結果では、政権を握っている党は中間選挙で敗北する傾向がある。全米州議会議員連盟によると、今回46の州で合計6000人以上の州議会議員が選出される中間選挙では、政権党が400程度の議席を失う場合が多い。

民主党はアリゾナ、コロラド、アイオワ、メーン、ミネソタ、ニューハンプシャーの6州で議会を制することが可能とみており、さらにフロリダ、ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンも有力と考えている。

共和党はニューヨーク州やコネティカット州など、議会の勢力がきっ抗し、わずか1つか2つの議席を上積みするだけで発言権が増す選挙区を標的としている。

●2020年大統領選への影響

民主党は、2016年の大統領選でトランプ氏勝利に貢献した中西部や「ラストベルト(さびついた工業地帯)」で州知事の当選が見込まれ、トランプ氏の再選に打撃となりそうだ。

民主党の州知事候補はミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンなど、大統領選では民主党を支持する場合が多かったのに前回の選挙ではトランプ氏支持に転じた州で善戦している。

フロリダ州知事選では、ほとんどの世論調査で民主党のギラム候補が若干リードしている。ただ共和党候補が勝てばトランプ氏再選の追い風になるかもしれない。

注目度が高いのがテキサス州の上院議員選。民主党のベト・オルーク氏が共和党の現職、テッド・クルーズ氏を追い上げており、20年の大統領選では民主党と共和党が攻守所を変えているかもしれない。
https://jp.reuters.com/article/usa-election-states-explainer-idJPKCN1NB02Q
 


 


コラム2018年11月6日 / 16:49 / 1時間前更新

トランプ外交政策、米中間選挙でどう変わるか
David E. Wade
4 分で読む

[5日 ロイター] - 世界がどのように米国の政治的言論を消化するかを、筆者は目の当たりにしてきた。まだ若手のスピーチライターだった頃は、海外では誤解を招きかねない賞賛の表現を上司に削除されて困惑した。

だが国務省で職を得たときに、それが正しかったことが分かった。 海外の外交官は、われわれが発信するニュースをなめるように点検している。アイオワ州ダビュークで聴衆に受ける一節でも、ドバイではやめておいた方がいいこともあるのだ。

米国の選挙は常に世界の注目の的だが、6日行われる中間選挙ほど人々の目をテレビに釘付けにすることはあまりないだろう。

トランプ大統領就任から2年を経た今回の選挙では、「民主党の波」が起きて、少なくとも米議会の上下院のどちらか一方を同党が奪還するだろう、と一般的には考えられている。米国政界が再構成され、それに伴って地政学的なバランスも再度変わる可能性が高い。

海外でそれは、どのように波及していくのだろうか。答えは、予想を上回るものと下回るものの両方がある。

まず、背景を確認しておこう。トランプ大統領の低支持率は共和党の重石となってきた。とはいえトランプ氏が、中間選挙で「落第」の審判を受ける初の米大統領になるわけでは、まったくない。

実際のところ、米国政治においては、ウォーターゲート事件とニクソン大統領辞任に対する風当たりで共和党が49議席を失った1974年の中間選挙以来、定期的に有権者の不満が、選挙での大波となって押し寄せてきた。

1982年には当時のレーガン大統領に対する民主党の不満が、1994年には同じくクリントン大統領に対する共和党の反発が、そして2010年には草の根保守派運動「ティーパーティー(茶会)」系共和党員のオバマ大統領に対する反感が大波となって出現した。

それでも、レーガン、クリントン、オバマ歴代大統領はいずれも、その後の大統領選で再選を果たしている。

今回は「津波」が下院の共和党支配を突き崩す可能性があるが、上院選は依然、共和党が優勢だ。選挙後も、トランプ大統領には上院というバックネットが存在し続けるため、建て直しを図る時間もある。

しかし、もしトランプ大統領が下院を失えば、世界はワシントンの政治再編をまったく異なる見方で分析するだろう。

オバマ前大統領は、2010年の中間選挙で敗北した直後、アジアに向かった。世界の舞台に立ったオバマ氏の姿は、米国の人々にあることを思い出させた。それは、1994年の中間選後に、クリントン大統領がわざわざ言及したことでもある。それは、米国の大統領は、常に重要だ、ということだ。

新たな政治構図の中で、トランプ大統領はどう動くのだろうか。

トランプ氏には、2つの国際的試練が待ち構えている。

まず11日に、ロシアのプーチン大統領とパリで会談するが、7月にフィンランドのヘルシンキで行われた初会談のような失態は避けなければならない。プーチン氏を賞賛する一方で、米大統領選に対するロシア介入について米情報機関の報告を否定する発言をしたことにより、トランプ大統領は当時各方面から批判を浴びた。

中間選挙後にトランプ氏に求められているものは複雑だ。再びロシアについて「的外れ」だと判断され、重要さを増す一方の共和党支持基盤をこれ以上遠ざけることは許されない。同時に、ロシアへの歩み寄りが成果を挙げていると示す必要もある。

プーチン大統領が、救いの手を差し伸べる可能性もあるかもしれない。シリアやウクライナ、イランを巡るプーチン氏からのいかなる提案についても、それが本物か策略かを見定めるよう、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の肩にはプレッシャーがかかるだろう。

また、ブエノスアイレスで30日予定される20カ国・地域(G20)首脳会議において、トランプ大統領はさらに大きな試練に直面する。それは、中国の習近平国家主席との会談だ。

もし中間選挙で共和党が大きく議席を減らす事態に陥るならば、トランプ大統領は、共和党支持者に痛みをもたらしてきた貿易戦争を緩和するよう圧力を受けるだろう。

しかし、その場合、忍耐強い統制の効いた独裁体制を敷く中国政府は、トランプ大統領が決定的に弱体化したとみなす可能性がある。そんな大統領が開始した貿易戦争の解決を、中国は急ぐだろうか。

中国の方がより外の世界から隔離されているため、「抵抗経済」として機能できる。だが、関税を相互に凍結して交渉を再開することは、両国の相互利益にかなうだろう。

トランプ大統領はまた、北朝鮮問題で中国にさらなる協力を要請する可能性があるが、もし自身の政権が反中的な言動を強めるなら、協力を得るのは難しいだろう。ペンス副大統領が先月4日の演説で行った中国に対する強硬発言は、対中政策を硬化する前触れなのだろうか、それともトランプ大統領は戦略的な協力を進めるのだろうか。

弱体化したトランプ氏は、こうした疑問に答えなければならない。

共和党が力を失えば、トランプ氏の北朝鮮外交戦略も試されることになる。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、トランプ大統領が外交では「勝利」により貪欲になると見て取るかもしれない。

トランプ大統領は引き続き、「恋に落ちた」と以前表現した独裁者との個人的な関係を、北朝鮮政策の土台にし続けるのだろうか。それとも、これまで自ら不満を表明することが多かった他の同盟国からの協力を求めるようになるのだろうか。

もちろん、国内と海外の両面で、こうした計算はすべて激化する政治的駆け引きからの影響を受ける。中間選挙の翌日から、民主党では2020年の大統領選で勝てる候補を選ぶ「暗黙の予備選」が始まる。

民主党は2年後の大統領選で、トランプ外交政策に代わる選択肢を明確に示す一方で、グローバル化に取り残されたと感じているトランプ支持者のうち、説得可能な有権者に対して呼びかける努力も続けなければならない。つまり、難しいダンスを踊らなければならないのは、トランプ大統領だけではないのだ。

米国では有権者が外交政策で投票することはあまりなく、医療保険や雇用、移民などの問題などが、世界における米国の地位よりはるかに大きな注目を集めている。それでもその結果次第で、トランプ氏が次の2年間、有権者や世界の指導者に向けてどう振舞うかが決まる。

トランプ大統領は外交面において、一層図に乗るのか、それとも弱気になるのか。その答えは、7日には見え始めるだろう。

*筆者は米カーネギー国際平和基金シニアフェロー。2013年から2015年まで米国務省首席補佐官を務めた。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/usa-election-states-explainer-idJPKCN1NB02Q


 


http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/472.html

[国際24] 米中間選挙後も要警戒、トランプ氏の対日圧力は続行か 中国トランプと引き続き協議 完全雇用は格差是正につながり得るイエレン
米中間選挙後も要警戒、トランプ氏の対日圧力は続行か
延広絵美
2018年11月6日 11:04 JST
民主勝利も僅差なら「トランプ氏の意図は達成可能」−自民・山口氏
米国自体が今までよりもずっと自国第一主義に−国民民主・大野氏

トランプ大統領と安倍首相 Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
6日投開票の米中間選挙に関し、結果にかかわらず、通商交渉でトランプ大統領の対日圧力は続くと警戒する声が日本の国会議員から上がっている。米世論調査結果では、下院の過半数を民主党が奪還し、上院多数派は共和党が維持する「ねじれ」議会になる可能性がある。

  自民党の山口壮元外務副大臣は、下院で民主党が勝利する場合も僅差にとどまるとみている。「今までよりも手間はかかる」ものの、個別に議員を切り崩せば「トランプ氏の意図は達成できる」として、選挙後も政権へのチェック機能はそれほど働かないとの認識を示した。民主党が大きく勝利しなければ、2年後のトランプ氏の再選も「ほぼ間違いないのではないか」と語った。

  全米を遊説中のトランプ氏は、先月27日の集会でも日本車に20%の関税をかける可能性に言及するなど、日本も貿易問題の標的になっている。山口氏は大統領選での発言を実行に移すことでトランプ氏は支持を得てきたとして、中間選挙前のこうした発言も「真に受けて判断しないと間違えることになる」と警戒感を強める。

  中間選挙直前の米メディア各社の世論調査では、民主党が下院で過半数議席を奪還する見通しだが、リードはこの数週間で縮小しており、勝利確実とは言い切れない状況。上院は共和党が過半数を維持する公算が大きい。

  丸紅経済研究所の今村卓所長は、中間選挙が終われば移民問題をはじめ「選挙に向けて弾みが付いていたむちゃな政策はいったん止まる」と指摘するが、通商政策は超党派で支持を得ている面があり、「それほど変更はないだろう」とした。

  今村氏はトランプ政権の対日政策について、「誰が主導しているのか分からない状況」と懸念も示す。日米は貿易交渉入りで合意しているが、担当のライトハイザ−通商代表部(USTR)代表も「総合的に対応する状態にはなっていない」とみる。不透明な状況が続く中、日本政府は年末に発効する11カ国の環太平洋連携協定(TPP)を「より強化していくとか、そちらを進めるしかない」との認識を示した。

  国民民主党の大野元裕元防衛大臣政務官は、日本が「トランプ政権と付き合うのか、その次を見るのか」を占う選挙になると見る。ただ、米国自体が「今までよりもずっとアメリカファーストになっている」として、今後は保護主義的な通商政策を進めるトランプ氏のような米大統領が「スタンダードになる可能性がある」と強調。日本にとって対米交渉は難しいものになっていくとの見方だ。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-06/PHPO556S972801?srnd=cojp-v2

 
パウエル議長、市場とのコミュニケーションの難しさ実感か
Rich Miller
2018年11月6日 16:35 JST
意思伝達の「不手際」が10月の株安招いたと一部から批判
今週のFOMCは政策金利据え置きへ、12月利上げの余地残す
世界最大の経済のかじ取りを担う人物にとって最も重要なのは、自身の発言が人々にどう受け止められたかだろう。これは景気の過熱と後退を避けながら金融政策の運営に当たるパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がウォール街やホワイトハウスからの批判を受けて身にしみて学んでいることだ。

  パウエル議長は来月以降、さらに実践練習の機会を得ることになる。連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に毎回記者会見を開く予定で、自身のメッセージに磨きをかける機会が増えるとともに、混乱を引き起こすリスクも高まる。

  目下の論点は、パウエル議長が10月3日のイベントで行った事前草稿なしの発言で、金融政策は依然として経済を後押ししており、恐らく「中立金利まで長い道のりがある」が、いずれは抑制的に転じる必要があるかもしれないとコメントしたことだ。


パウエルFRB議長Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
  多くのFRBウオッチャーにとっては、この発言に目新しさはなかったものの、多数の投資家が米利上げ完了には程遠いシグナルと受け止め、株式の処分売りに動いた。S&P500種株価指数は10月に2011年以来最悪のパフォーマンスとなった。

  ジェフリーズのチーフ市場ストラテジスト、デービッド・ザーボス氏はこれについて、パウエル議長の経験不足の表れだと批判。米中貿易摩擦の深刻化などが急落の要因だとする主張を退け、「新米FRB議長の意思伝達の不手際の結果にすぎない」と顧客向け電子メールで指摘した。

  パウエル議長ら米金融当局者は7日から2日間の日程で開くFOMCで、政策金利を据え置くと予想されているが、年内最後のFOMCとなる12月の会合での利上げの余地を多少残しておくとみられている。パウエル議長の次回の記者会見は12月19日の予定で、その後来年1月からはFOMC開催後に毎回会見する。

  モルガン・スタンレーの米国担当チーフエコノミスト、エレン・ゼントナー氏らは11月1日付のリポートで、「金融市場のボラティリティーが高まったものの、12月に利上げする米金融当局の決意に変わりはない」と分析した。

  問題は投資家が就任から8カ月のパウエル議長のことをよく知るための途上にある点だ。バーナンキ元議長やイエレン前議長と違い、経済学博士号を持たないパウエル議長は、難しいテーマを分かりやすい言葉で表現することができると自負している。10月3日にテレビ番組司会者に述べた発言も、それを試みたものであったことは疑いない。

  アマースト・ピアポント・セキュリティーズのチーフエコノミスト、スティーブン・スタンリー氏は「変化したのはアプローチないしトーンにすぎないのに、市場関係者が発言内容の変化を推測しようとする状況だったため、金融市場で解釈される際に多少の語弊が生じたのだろう」と分析した。

原題:Powell Policy Lost in Translation as Fed Blamed for Market Woes(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-06/PHRBCT6K50XS01?srnd=cojp-v2
 

 
中国:トランプ政権と引き続き通商協議の用意−王岐山副主席
David Tweed、Dandan Li
2018年11月6日 10:59 JST 更新日時 2018年11月6日 14:30 JST
双方に受け入れ可能な解決策に向けて作業進める用意−王副主席
米中両国が一歩も引かない状況、今後も続く−CSISのケネディ氏
中国の王岐山国家副主席は6日、中国政府が引き続き貿易問題の解決を巡り米国と協議する用意があると言明しながらも、中国が海外の大国に再び抑圧されることはないとくぎを刺した。

  王副主席はシンガポールで開かれた「ニューエコノミー・フォーラム」で、貿易がなお「米中関係のアンカー役であり、推進役」だと表明。「右傾化したポピュリズム」や「単独主義」の恐れに対する警告付きながら、まずは協議への支持を示した。

  副主席は、「中国側はお互いの懸案事項について米国と協議し、双方にとって受け入れ可能な貿易を巡る解決策に向けて作業を進める用意がある」と説明。「中国は平静と落ち着きを保ち、相互利益とウィンウィンの結果を実現するため、一段の開放性を採用する」と語った。

  ただ、習近平国家主席の長年の盟友である王氏は、中国は「帝国主義を掲げる大国によって屈辱を受け、抑圧されてきた」として「自国の道を切り開く」必要があるとも指摘した。


ブルームバーグ主催の「ニューエコノミー・フォーラム」で講演する王岐山国家副主席
  ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)の中国研究担当副ディレクター、スコット・ケネディ氏はブルームバーグテレビジョンに対し、「米中双方が一歩も引かない状況は今後も続くだろう。両国はそれぞれが優位に立っていると引き続き考えている」と指摘した。

  同氏は「トランプ大統領は米中が取引を望んでいる可能性を示唆しているが、実際には大統領に政治・経済的に極めて大きなメリットがあるわけではない。このため、米中はこのダンスを続け、われわれはそれを注視し続けることになると私は考えている」とも述べた。

  同フォーラムはブルームバーグ・ニュースの親会社であるブルームバーグ・エルピー傘下のブルームバーグ・メディア・グループが企画した。

原題:China Still Ready to Talk Trade With Trump, Xi’s No. 2 Says (1)(抜粋)

(王副主席の発言や市場関係者のコメントを追加し更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-06/PHR0L16JIJUQ01?srnd=cojp-v2

 


 


完全雇用は格差是正につながり得る−イエレン前FRB議長
Michelle Jamrisko、Dan Murtaugh
2018年11月6日 16:55 JST
「ブルームバーグ・ニューエコノミー・フォーラム」で発言
米国の資本主義への不満は主に不平等と賃金低迷から
米経済を完全雇用に近い状態に維持し続けることで、高度な技能を持たない労働者の賃金が上昇し、格差是正に寄与するとの認識を前米連邦準備制度理事会(FRB)議長のジャネット・イエレン氏が6日示した。

  シンガポールで開催中の「ブルームバーグ・ニューエコノミー・フォーラム」に参加しているイエレン氏は、一般的に最も脆弱(ぜいじゃく)な低賃金労働者への恩恵を完全雇用状態の経済がもたらしていくことが重要だと述べた。


ジャネット・イエレン氏写真家:Justin Chin / Bloomberg
  イエレン氏は米国における資本主義への不満が主に不平等と賃金伸び悩みから生じていると指摘。1980年代から続くこうした問題は自動化とグローバル化に大きく起因し得ると説明し、不平等に関して「中央銀行ができることはあまり多くないと言いたくなるが、完全雇用にできるだけ近い状態で経済を維持し続ける政策を遂行することなど幾つかの選択肢はある」と語った。

  それ以外の対応として新たな金融危機に備え経済を守るための規制を維持することなどが挙げられるとも話した。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iMbbSMkntBxc/v2/-1x-1.png

  ニューエコノミー・フォーラムを主催しているブルームバーグ・メディア・グループは、ブルームバーグ・ニュースの親会社ブルームバーグ・エル・ピーの1部門。

原題:Yellen Says Fight Against Inequality Starts With Full Employment(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-06/PHRG2J6TTDS301?srnd=cojp-v2


 


10年物日本国債、ヘッジ後は米国債より高利回り
Cormac Mullen
2018年11月6日 13:02 JST
• ヘッジ後の10年物米国債利回りは0.05%、日本国債なら0.13%
• コスト上昇が外国人からの米国債需要減らすかもしれない
米国債利回りは最近上昇したが、ドルの対円のヘッジコストも上昇し続けているため、日本の投資家にとっての魅力は高まらない。
  ヘッジ後の10年物米国債利回りが持続的に日本国債を下回るのは10年ぶり。ブルームバーグの計算によれば、ヘッジ後の米国債利回りは0.05%となる。指標となる日本国債は0.13%。
  米10年債利回りは過去2カ月に約30ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇したが、ヘッジコストも50bp余り高くなった。
  ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティチュートのストラテジスト、ピーター・ウィルソン氏は「対円でヘッジした米国債利回りは今やマイナスだ」と最近のリポートに記した。「ドルへのエクスポージャーをヘッジするコストの上昇が外国人からの米国債需要を減らすかもしれない」と指摘した。

原題:Japan’s 10-Year Yields Now Above Treasuries After Hedging Costs(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-06/PHR4K26JIJUO01?srnd=cojp-v2


 


バフェット氏のバークシャーが売ったら売り時
DAVID WILSON
2018年11月6日 14:43 JST

         バフェット氏の出口戦略を注視せよ
         バークシャーが売った銘柄は要注意
著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる保険・投資会社バークシャー・ハサウェイは株式を売るタイミングが絶妙だ。ブルームバーグのデータによれば、同社が2016年以降売った12銘柄の公開企業株のうち9銘柄が、バークシャーが売却を終えた四半期の末時点から今までに、S&P500種株価指数のパフォーマンスを下回った。パフォーマンスの差が顕著なのはゼネラル・エレクトリックで、バークシャーが売却した2016年4−6月(第2四半期)以降の差は年率で約64ポイントとなっている。

原題:Once Buffett’s Berkshire Sells a Stake, Look for Weakness: Chart(抜粋)
バフェット氏のバークシャーが売ったら売り時
DAVID WILSON
2018年11月6日 14:43 JST

         バフェット氏の出口戦略を注視せよ
         バークシャーが売った銘柄は要注意
著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる保険・投資会社バークシャー・ハサウェイは株式を売るタイミングが絶妙だ。ブルームバーグのデータによれば、同社が2016年以降売った12銘柄の公開企業株のうち9銘柄が、バークシャーが売却を終えた四半期の末時点から今までに、S&P500種株価指数のパフォーマンスを下回った。パフォーマンスの差が顕著なのはゼネラル・エレクトリックで、バークシャーが売却した2016年4−6月(第2四半期)以降の差は年率で約64ポイントとなっている。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iK3rW3LqkyKA/v1/-1x-1.png

原題:Once Buffett’s Berkshire Sells a Stake, Look for Weakness: Chart(抜粋)
http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/473.html

[国際24] 米国のネット集団「Q」とは何者? 掲示板に陰謀論投稿 アメリカ版2ちゃんねらーが熱狂する「Qアノン」現象の恐怖
米国のネット集団「Q」とは何者? 掲示板に陰謀論投稿
2018年11月6日09時04分
シェア
12
ツイート
list
ブックマーク
8
メール印刷
写真・図版
「Q」の投稿を集めたサイトの画像。関連動画などが豊富にアップされている

写真・図版
写真・図版
[PR]
 「Q」とは昨年10月、インターネット掲示板に突如登場した正体不明の投稿者のことだ。「匿名」を意味する「anonymous」の略語「anon」を「Q」につけた「QAnon」(キューアノン)という陰謀論を信じる集団が、「Q」の主張を解釈し、インターネットを通じて世界に発信している。

陰謀論集団に誘われ、トランプ集会へ 記者が見た素顔
陰謀論者に地位与えたトランプ大統領 研究者が抱く懸念
11月6日へ、世界で動き 米中間選挙の特集はこちら
 キューアノンは、「Q」のことをトランプ米政権の中枢にいる人間だと信じている。その根幹の主張は、「トランプ大統領は、世界の政財界、メディアに巣くう邪悪なディープステート(影の政府)と闘う救世主」というものだ。キューアノンはトランプ氏に批判的な人々を「影の政府」のメンバーとみている。

 「影の政府」という表現は、トランプ氏自身を含むトランプ政権の高官が好んで使うようになり、米国で新たな政治用語として定着した。

 「Q」は日本の「2ちゃんねる」に似た「8chan」という掲示板に投稿する。その内容は暗号めいている。例えば直近では、「POTUS(米大統領)がPUTIN(プーチン大統領)と11月11日に会う。何が奇妙か Q」などがある。

 Qの関連サイトでは、キューアノンが解釈したり、補足したりする形がとられ、双方向的なコミュニティーになっている。「Q」の投稿とそれに対する反応のまとめを制作する人は「ベイカー」(パン職人)、まとめは「ブレッド」(パン)、さらにまとめに対する「Q」の反応は「クラム」(パンくず)と呼ばれる。

 キューアノンの規模は不明だが、ユーチューブには関連動画が13万件以上も投稿されている。関連サイトの一つには月800万件以上のアクセスがあり、米タイム誌は今年6月、「ネットで最も影響力のある世界の25人」に、トランプ氏ら実在の著名人とともに「Q」を選んだ。

関連ニュース
謎の投稿者Q「大統領は救世主」トランプ氏支える陰謀論
トランプ氏と重なる投稿者Q 陰謀論集団の1人を訪ねた
「オバマ再来」民主に新星 分断あおらぬ演説、聴衆熱狂
トランプ氏「信任」両院で過半数焦点 きょう米中間選挙
https://www.asahi.com/articles/ASLC52RPDLC5UHBI00M.html


アメリカ版2ちゃんねらーが熱狂する「Qアノン」現象の恐怖
カギとなるのは「秘数17」
海野 素央明治大学教授
プロフィール
シェア154ツイートブックマーク388
フォロー・ザ・ホワイトラビット
最近、ドナルド・トランプ米大統領の支持者が集まる集会に、不吉な兆候が現れています。

米南部フロリダ州(現地時間7月31日)と東部ペンシルべニア州(同8月2日)で開催された集会で、“We are Q”という字句が印刷されたTシャツを着用したトランプ支持者が多数出現しました。

“Q”の文字を切り抜いたプラカードを掲げる支持者もいます。いったいQとは何を意味し、彼らはどのような信念を持っているのでしょうか。

“Q”とは、日本でいう「5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)」にあたる米国の巨大匿名掲示板“4chan”と“8chan”で、昨年10月28日から匿名で投稿を続けている「Qアノン」を指しています。

「アノン」は英語の“anonymous”(匿名の)の略です。

Qは、米エネルギー省の情報セキュリティに関する最高クリアランス“Q”に由来するとされています。このQクリアランスを有すると認められた職員には、核兵器に関する最高機密情報へのアクセス権が与えられるのです。

実際に、匿名掲示板での「Qアノン」の発言には、トランプ政権の中枢にアクセスできる人物でなければ知り得ない情報が含まれています。どの政府組織に属しているのかは不明ですが、「Qアノン」の正体は政権のインサイダーという見方が有力です。

「Qアノン」の投稿内容に共感する人々が、冒頭で触れた「Qフォロワー」です。これまではもっぱらネット上で活動してきたQフォロワーが、この夏からついに、トランプ大統領の集会に姿を現すようになったわけです。

Photo by gettyimages
Qフォロワーの中には、メジャーリーグのファンならばご存知の、ボストンレッドソックスで活躍したカート・シリング元投手など、著名人もいます。彼らの合言葉は “Follow the White Rabbit”(白ウサギを追え)。

Qフォロワーが着ているTシャツには様々な種類がありますが、その中に“Q”の文字と白ウサギの絵が印刷されたものがあります。白ウサギは、「不思議の国のアリス」でも登場したように、「案内役」の象徴です。Qフォロワーは、「白ウサギが、この歪んだ暗い洞窟(=現在の“陰謀だらけの”米国)から、温かくてフワフワした巣穴(=真実の世界)へ導いてくれる」と信じているのです。

「ロシアゲート」は、トランプの策略だ
「Qアノン」が発信する情報は、「陰謀論」とレッテルを貼られても仕方ない内容です。

たとえば、ジョン・F・ケネディ元大統領の長男ジョン・F・ケネディ・ジュニア氏が、1999年に自家用機墜落事故で死亡した事件についてです。「Qアノン」は、「ジュニア氏は、ヒラリー・クリントンの政治的キャリアを作るために殺された」と主張します。ジュニア氏が連邦上院議員に意欲を見せていたので、クリントン氏を推す仲間が、彼をミサイルで殺害する陰謀を企てたというのです。

結局、「Qアノン」は米中央情報局(CIA)が誘導ミサイルでジュニア氏の自家用機を爆破したと結論づけています。この飛行機事故の後、クリントン氏は2000年に米上院選に立候補し、大統領候補となるまでの政治的キャリアを積んだ――というのが、「Qアノン」の主張です。

さらに、「Qアノン」はトランプ陣営とロシア政府との共謀疑惑、いわゆる「ロシアゲート」についても数多く投稿しています。「ロバート・モラー特別検察官は、実はトランプ大統領を捜査していない」と断言したうえで、「本当は、オバマ元大統領やヒラリーなどの民主党幹部とロシアの関係や、民主党と小児性愛者の関係について捜査しているのだ」と主張するのです。

地球温暖化も左翼のでっち上げだ

地球温暖化も、左翼のでっち上げだ
どうして、少なからぬ米国民がこのような陰謀論を信じるのでしょうか。なぜ「Q現象」が起こったのでしょうか。それには種々の要因があります。

まず、既存の権力者に対する不信感です。先ほど触れたように、「Qアノン」は民主党と小児性犯罪を執拗に関連づけようとしています。

これには伏線があります。2015年、共和党の下院議員デニス・ハスタート氏が、1970年代に高校でレスリングを教えていたとき、生徒に対して性的虐待を行っていたことが発覚しました。米国民にとって、連邦下院議長まで務めたハスタート氏の悪行が明らかになったのは衝撃的でした。

このことによって、党派に関係なく、「政治家は小児性犯罪者だ」というイメージが一部で醸成されました。そして、やがて「クリントン氏やオバマ氏、有力な民主党議員が小児性犯罪の組織と結びついている」というデマが生まれたのです。

米国社会の分断も大きな要因になっています。その萌芽は、オバマ政権時代からありました。

例えば、筆者が2012年の米大統領選挙の際、南部サウスカロライナ州チャールストンに住む保守系市民団体「ティーパーティー(茶会)」の活動家に、地球温暖化についてインタビューしたとき、彼は「地球温暖化は、リベラルのでっち上げだ」と述べていました。

社会の分断が進むと、社会悪や自分にとって不都合な事象の背後に、なんらかの陰謀や策略が存在するのではないか、と懐疑的になる人が増えるのです。トランプ政権後に加速した米社会の分断が、Q現象の土壌を作ったと言えるでしょう。

“8chan”に書き込まれたQの投稿
メディアに対する米国民の不信感の高さも要因です。世論調査会社ギャラップの調査(2018年6月20日発表)によれば、62%が「新聞、テレビ、ラジオの報道は偏向している」、44%が「不正確である」と回答しました。

不都合な事実を「フェイクニュース」と呼び、「報道の裏には、常にメディアの陰謀・策略がある」という印象を与えるトランプ大統領の手法は、周知の通り一定の成果を得ています。

一般に、陰謀論を信じやすいのは社会的弱者や、権力を持たない人々とされています。2016年の米大統領選挙の際、筆者がアイオワ州で戸別訪問したトランプ支持者の退役軍人は、「不法移民が職を奪っている」とかたく信じていました。

実際に(不法移民が原因ではありませんが)、白人労働者の中には企業の海外移転や業務のIT化で、仕事を失った労働者が少なくありません。彼らは「移民受け入れに賛成するリベラル連中や、自由貿易推進派のグローバリストの陰謀に、自分たちは搾取されている」と認識しています。

トランプ大統領は、こうした支持者の心理状態をきわめて巧みに把握しているのです。

秘数17

秘数17
「Qアノン」の正体に関して、政府高官のほかに、「実は、トランプ大統領本人ではないか」という憶測があります。ホワイトハウスのスティーブン・ミラー大統領補佐官(政策担当)、ケリーアン・コンウェイ大統領顧問だという見解や、ロシアのプーチン大統領ではないか、という指摘さえあります。

「Qフォロワー」が注目するのが、トランプ大統領のある発言です。

トランプ大統領は昨年10月6日、ホワイトハウスに米軍幹部とその配偶者を招いた際、記者団を前に「嵐の前の静けさだ」と語りました。当時は筆者も含め、記者団や専門家はその発言を、北朝鮮に対する軍事行動の示唆か牽制と解釈しました。

「Qアノン」も、最初の書き込みに「嵐の前の静けさ」というフレーズを使いました。Qフォロワーは、そこに「Qアノン」とトランプ大統領の共通点を見出しているのです。

Photo by gettyimages
Qフォロワーは「17」という数字にも注目しています。トランプ大統領は自身のツイッターで、モラー特別検察官が率いるロシアゲートの捜査チームのメンバーに「17人の怒れる民主党員がいる。彼らの捜査は偏向している」と繰り返し投稿しています。

「Q」はアルファベットの17番目の文字。Qフォロワーは、「モラー特別検察官による捜査には、裏がある」というトランプ大統領のメッセージを、この「17」から読み取っているのです。

どっちが「陰謀」なのやら…
大統領自ら陰謀論のタネをばら撒き、支持者を煽り、分断を加速する――このような手法を大っぴらにとったのは、米国史上でもトランプ大統領が初めてです。彼はきわめて陰謀論の活用に長けた人物と言えるでしょう。

オバマ前大統領は、グローバリゼーションの時代に生き残るために、白人労働者や退役軍人に「スキルと専門知識を持つこと」を勧めました。一方のトランプ大統領は、彼らに向かって「みなさんが苦境に直面しているのは、陰謀や策略をめぐらす、反国家的な売国奴がワシントンにはびこっているからだ。我々は彼らと戦い、必ず打ち負かす」というメッセージを送り続けています。

トランプ支持者の目には、グローバリスト、オバマ氏、クリントン氏、民主党やメディアはみな悪の手先であり、トランプ大統領はそうした悪人を駆逐するヒーローと映っているのです。

このように「Qアノン」やトランプ大統領は、現実とは異なる「もう一つの現実」を作り出し、意図する方向へ有権者を導いています。こちらのほうがよっぽど、本物の「陰謀」に見えるのですが…。


https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57119

http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/478.html

[経世済民129] 中間選挙巡る「混乱」、米国株にリスクとシラー教授が警告 日本株は続伸、輸出や通信高い 米民主党、下院過半数NBC、FOX
中間選挙巡る「混乱」、米国株にリスクとシラー教授が警告
Dani Burger
2018年11月7日 11:46 JST
ノーベル経済学賞受賞者のシラー氏、分断深まれば市場は不安定化も
減税などの刺激は一時的なものと市場で「理解されていないようだ」
ノーベル経済学賞受賞者のロバート・シラー米エール大学教授は6日、米中間選挙がトランプ大統領の経済成長重視の姿勢に挑む形となっており、米株式相場が最高値から離れた後も一段と売り込まれる恐れがあると警鐘を鳴らした。

  ロンドンでのクオンツ投資に関する会議に参加した同教授は中間選挙に触れ、「厳密に言えばトランプ大統領についての選挙ではないが、われわれの念頭にあるのは彼だ」と述べた。


ロバート・シラー教授写真家:Nelson Ching / Bloomberg
  ウォール街ではボラティリティーの高まりに楽観論があるものの、シラー教授は米国の分断が深まれば市場を不安定化させる要因になると警告。「トランプ氏が敗れ、彼の支持者が負ければ、混乱の時期に突入する。選挙直前のボラティリティーは混乱の感覚に多少関連があったと思う」とコメントした。

  事前の世論調査では、民主党が下院を制し共和党が上院で多数派を維持すると予想されており、法案審議の行き詰まりにつながるシナリオだ。シラー教授は「話題は減税と規制緩和を実行するトランプ大統領だ。もっともらしく思われるため、相場は企業業績で上昇するが、こうした状況は一時的であることが市場では理解されていないようだ」と語った。


原題:Shiller Frets ‘Fear and Chaos’ Midterm Vote Risk for U.S. Stocks(抜粋)

共和党全国委員長「互角の戦い」−米中間選挙の開票始まる
Nick Wadhams
2018年11月7日 6:29 JST 更新日時 2018年11月7日 12:42 JST
8年続いた共和の下院支配を打ち破ったと米メディアが伝えた
上院ではインディアナ州などで民主現職を共和候補が破った

A "Vote" sign hangs on a chair at a polling station in Philomont, Virginia, U.S.. Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
6日投開票の米中間選挙は民主党が下院の過半数議席を奪還、8年間続いた共和党支配を打ち破った。NBCとFOXニュースが報じた。上院は共和党が過半数を維持した。

  上院では共和党がインディアナ、ノースダコタ両州で民主党現職を破ったほか、新人同士の争いになったテネシー州で勝利した。


ペロシ民主党下院院内総務Photographer: Yuri Gripas/Bloomberg
  下院選では、過半数議席奪還を目指す民主党が開票序盤でバージニア、フロリダ、コロラド、カンザス州で勝利した。共和党も民主党が強力な候補を立てた幾つかの重要選挙区で持ちこたえた。

  共和党は投票前の時点で、上院過半数議席を維持するとみられていた。インディアナ州で民主現職のジョー・ドネリー氏を共和のマイク・ブラウン氏が破り、テネシー州で共和のマーシャ・ブラックバーン氏が勝利したことにより、共和の上院過半数維持は確実になっていた。

  下院の開票序盤ではバージニア州で民主党候補のジェニファー・ウェクストン氏が共和党現職のバーバラ・カムストック氏を破った。同選挙区は共和、民主両党から選挙の先行きの目安になる重要区とみられていた。

  開票序盤の他の下院激戦区では共和党が何とか持ちこたえていた。ケンタッキー6区では共和党現職アンディ・バー氏が元女性海兵隊員の民主党候補エイミー・マクグラス氏を破り、バージニア7区では、共和党が強い地盤で共和党現職のデーブ・ブラット氏が民主党のアビゲイル・スパンバージャー氏と接戦を演じている。

  ABCニュースが報じた出口調査の暫定結果によると、18−29歳の票が全体に占める割合は13%と、2014年の11%から上昇した。CNNは、調査対象者の約15%が中間選挙で投票したのは初めてだと述べたと伝えた。16年大統領選で初めて投票した有権者は約10%だった。これは若年層の支持率が比較的高い民主党に有利な数字となった。


ブルームバーグ・ニュース
原題:Democrats on Track to Retake U.S. House as GOP Holds Senate(抜粋)
   Democrats Take Control of House as They Aim to Thwart Trump (抜粋)
 
関連ニュース
共和党全国委員長「互角の戦い」−米中間選挙の開票始まる
ドル・円が1カ月ぶり高値、米金利上昇で113円後半−米中間選挙にらみ
日本株は続伸、輸出や通信高い−米中間選挙の開票進み荒い値動き
中間選挙巡る「混乱」、米国株にリスクとシラー教授が警告
ゴールドマン、新パートナーを今週発表へ−相次ぐ上級幹部の退社後
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg


 

日本株は続伸、輸出や通信高い−米中間選挙の開票進み荒い値動き
長谷川敏郎、氏兼敬子
2018年11月7日 8:01 JST 更新日時 2018年11月7日 11:56 JST
米選挙通過での不透明感後退期待、見直し買い誘う
米株価指数先物の上昇や円安で徐々に上げ基調強まる
7日の東京株式相場は続伸。米国の中間選挙結果が注視される中、選挙後をにらんだ見直し買いなどで電機や情報・通信、輸送用機器などの時価総額上位業種が上昇。

TOPIXの午前終値は前日比18.04ポイント(1.1%)高の1677.39
日経平均株価は同272円87銭(1.2%)高の2万2420円62銭
  6日投開票の米中間選挙は日本時間7日に開票が進み、バージニア州下院選では民主党候補のジェニファー・ウェクストン氏が共和党現職を破った。連邦上院選(インディアナ州)では共和党のマイク・ブラウン氏が民主党現職を破り勝利することが確実となった。NBCなどが伝えた。上院は共和党の過半数が確実となり、FOXニュースは下院は民主党が過半数獲得と報じた。

米中間選挙の速報はこちらをご覧ください

  日本株は昨日の米国株高や重要イベント通過後の不透明感払しょく期待から買い先行で始まった後、日経平均が一時マイナスに転じるなど不安定な動き。その後は米S&P500種Eミニ先物が上昇に転換、為替市場では円安が進み、日本株の先物にも買いが優勢となっている。


  アイザワ証券の清水三津雄日本株ストラテジストは「きょうの相場は、選挙結果の動向を見ながら思惑で右往左往するだろう」とした上で、結果が下院・民主、上院・共和のコンセンサス通りだったとしても、「ある程度の不透明感は晴れていくため、イベントを通過したら買い戻しが入るだろう」と話した。

東証33業種では海運、ガラス・土石製品、情報・通信、不動産、銀行、電機、輸送用機器が上昇率上位
下落は水産・農林、石油・石炭製品など
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-06/PHSJPD6JIJUO01


 

米民主党、下院で過半数奪還か 米メディア報道
トランプ政権 米中間選挙 北米
2018/11/7 11:47
保存 共有 印刷 その他
【ワシントン=中村亮】米NBCとFOXテレビは米東部時間6日夜(日本時間7日昼)、同日投開票した米中間選挙で野党・民主党が下院(定数435)の過半数を奪還する見通しになったと報じた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37463530X01C18A1000000/?n_cid=SPTMG002
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/331.html

[経世済民129] 中間選挙「ねじれ議会」で日米関係は先行き不透明に 米政権の視線は2020年に、日本の中国抑止に追い風
外為フォーラムコラム2018年11月7日 / 14:36 / 27分前更新

中間選挙「ねじれ議会」で日米関係は先行き不透明に

前嶋和弘 上智大学教授(現代アメリカ政治外交)
3 分で読む

[東京 7日] - 11月6日の米中間選挙で上下両院が「ねじれ」になったことで、日米関係の先行きは不透明さが増した、と上智大学の前嶋和弘教授は分析する。トランプ大統領は来年早々に始まる日本との通商交渉に厳しく臨み、経済と安全保障を絡めて包括的な取引(ディール)を迫ってくるだろうと予測する。

同教授の見解は以下の通り。

日本にとって、年明けから始まる日米物品貿易協定(TAG)の交渉は厳しいものになりそうだ。下院を野党・民主党が制し、議会の承認が必要な内政の舵取りが難しくなる中で、トランプ大統領が成果を出せるのは外交となる。北米自由貿易協定(NAFTA)が形を変え、米韓自由貿易協定(FTA)も改定され、残るは日本。トランプ政権はねじり鉢巻をして厳しく臨んでくることが予想される。

トランプ大統領の基本姿勢は、貿易・経済と安全保障のディールだ。かねてから、日米同盟の負担が公平ではないと主張してきた。日本はこの批判をかわすため、米国から軍事装備品を買い続けていくことになるだろう。さらに、貿易交渉で日本の対米自動車輸出が議題に上ってきたら、これも装備品を買うことでかわす。おそらくトランプ大統領は、こうした包括的なディールを考えており、日本は渋々応じていくことになるのではないだろうか。

日米の通商協定に為替条項が盛り込まれる可能性は低いとみているが、相手がトランプ大統領なので否定はできない。米国はさまざまな形で攻撃を仕掛け、日本はそれに1つ1つ対応を迫られる。「ねじれ議会」となった中間選挙の結果を受け、日米関係は先行きの不透明さが増したようにみえる。

通商交渉の行く着く先は、米国が望んできたFTAになるだろう。日本側は麻生太郎副首相兼財務相とペンス米副大統領の間に「日米経済対話」を設けるなどし、FTAの交渉に進むことを遅らせる戦略を取ってきた。あわよくばトランプ大統領の任期が終わり、その後に米国に環太平洋連携協定(TPP)に戻ってもらうというのが日本側のシナリオで、その化かし合いは今後も続くとみている。

<信頼すべき大統領が信用できない>

2020年の大統領選挙に向け、トランプ政権は中国に対してますます強硬になるだろう。貿易問題では関税引き上げが米国の景気に水を差す恐れがあり、ところどころで妥協するかもしれないが、知的所有権を含めた安全保障の面では厳しく対峙し、有権者へのアピールポイントとするのではないだろうか。

安倍晋三政権はこのタイミングで中国と関係改善を図ろうとしているが、日本が米国を重視するという基本政策は変わらない。そもそも、日中関係がどこまで改善するか不透明だ。安倍首相は10月末の習近平国家主席との会談後、すぐにインドのモディ首相と会った。日中首脳会談は、安倍首相が強調する多国間外交の1つだったようにみえる。米国内でも、日中関係が根本的な改善に進むと見る向きは多くない。

ただし、日本にとって厄介なのは、信頼を置くべきトランプ大統領が常に信用できる相手ではないことだ。不確実性がトランプ氏の一番の売りだ。今後も日本が米国との同盟を基軸としていくことは間違いないが、いつ足元をすくわれるかわからないという点には注意が必要だ。

<北朝鮮巡る日米の温度差>

北朝鮮問題を巡っては、日米の間で温度差がある。トランプ大統領にとっては、6月12日の米朝首脳会談でおおよその方向を決めただけで、中間選挙前の成果としては十分だった。日本の周辺に向けてミサイルが発射されなくなったし、米国に長距離弾道ミサイル(ICBM)が飛んでくる可能性も低下した。

しかし、日本にとっては何も状況は変わっていない。

今後、トランプ政権が北朝鮮問題で成果を出そうとする過程で、日本は非核化に向けた費用と経済支援を求められる可能性がある。日本はそうしたマイナスの負担を、プラスの効果に変えていく必要がある。日本人拉致問題に切り込んでいかなくてはらないし、経済支援をテコに北朝鮮に進出し、ビジネスチャンスに変えていかなくてはならない。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。前嶋和弘氏にインタビューし、同氏の個人的見解に基づき書かれています。

(聞き手:久保信博)

*前嶋和弘氏は、上智大学教授。専門は現代アメリカ政治外交。上智大学外国語学部英語学科卒、ジョージタウン大学大学院政治学部修士課程修了、メリーランド大学大学院政治学部博士課程修了。主な著作に『オバマ後のアメリカ政治』(共編著、東信堂、2014年)、『Internet Election Campaigns in the United States, Japan, South Korea, and Taiwan (co-edited, Palgrave, 2017)』などがある。
https://jp.reuters.com/article/opinion-uselection-kazuhiro-maejima-idJPKCN1NC0G4

 

コラム2018年11月7日 / 16:28 / 1時間前更新 オピニオン:

米政権の視線は2020年に、日本の中国抑止に追い風

川上高司氏 拓殖大学海外事情研究所教授・所長
3 分で読む

[東京 7日] - 急速に力をつける中国を、貿易問題などで強くけん制してきたトランプ米大統領。拓殖大学の川上高司教授は、2020年の大統領選に向けてトランプ政権の対中政策は一段と強硬になると分析する。中国への抑止力を高めたい日本は、このタイミングをとらえ、自国の安全保障に対する米国の関与を高めることが重要だと指摘する。

同教授の見解は以下の通り。

中間選挙が終わり、米国の政治は大統領選挙に本格的に突入する。シンクタンクや世論を含め、米国全体が対中強硬路線を強める中で、トランプ政権は再選に向け、中国に対してもう一段厳しい姿勢で臨むとみている。

米中のパワーバランス(力の均衡)が徐々に中国に傾く中、米国が中国の頭をたたく今の状況は、トランプ氏が大統領の座にある限り続く。日本は中国との関係を改善しようとしており、トランプ政権にとっては好ましくないと映るだろう。むしろ米国内の対中強硬姿勢は、日本に追い風と言える。中国への抑止力を高めたい日本は、米国を積極的に巻き込んでいく必要があるからだ。

<INF条約の破棄、日本にとっての意味>

共同通信は4日、日米両政府は尖閣諸島(中国名:釣魚島)を想定し、共同作戦計画の策定作業を進めていると報じた。武装した漁民が上陸し、日本は警察力では対応できずに自衛隊が出動、中国も軍を派遣し、武力衝突に発展する想定だ。平時でもなく有事でもない「グレーゾーン」のシナリオだが、日本はこうした作戦に、いかに米国を関与させていくかが重要になる。


トランプ大統領が中距離核戦力(INF)廃棄条約を破棄する方針を示していることも、日本の安全保障には大きな意味がある。中国は沿岸部に1700発以上の中距離弾道ミサイルを配備しており、台湾だけでなく日本にも照準が向いている。

米国のこの動きを、日本はいかに取りこむか。INF廃棄条約の破棄で米国が中距離ミサイルをこの地域に展開するようになれば、日本の対中抑止力は高まる。

<改憲へ早期に国民投票か>

こうした中で日本も独自に防衛力を強化する必要があり、安倍晋三首相は早いタイミングで憲法改正に向けた国民投票に踏み切るのではないかとみている。日本政府は今年の年末には防衛大綱を策定し、今後5年間の自衛隊の装備計画を定める中期防衛力整備計画もまとめる。どこまで防衛費を増やすかが焦点になる。

一方、中間選挙後のトランプ政権は、通商問題で日本に強い姿勢で臨んでくるだろう。トランプ氏にとっては帳尻が合えば良いので、例えば日本車に輸入制限を設ける代わりに、さらなる米国製の武器購入を迫ってくる可能性がある。地上配備型迎撃ミサイル「イージス・アショア」だけでなく、日本はますます米国から武器を輸入せざるを得なくなる。大綱と中期防は、この点も踏まえたものになるだろう。

トランプ大統領は再選に向け、北朝鮮問題を動そうとするだろう。ロシア疑惑で弾劾の公聴会が開催されることになれば、ここで得点を稼ごうとするかもしれない。だが、功を急ぐあまり、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を廃棄させる一方、日本を射程に収める中・短距離弾道弾は温存という、曖昧な合意を交わす恐れがある。米国がINF廃棄条約を破棄し、中距離ミサイルを日本国内や周辺に配備すれば、北朝鮮に対する日本の抑止力は確保される。

*本稿は、川上高司氏にインタビューし、同氏の個人的見解に基づき書かれています。

(聞き手:久保信博)

川上高司・拓殖大学教授(写真は本人提供)
川上高司氏は、拓殖大学海外事情研究所教授・所長。大阪大学で博士号(国際公共政策)取得、Institute for Foreign Policy Analysis研究員、世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授を経て現職。主な著作に、「日米同盟とは何か」(中央公論社、2011年)などがある。
https://jp.reuters.com/article/opinion-uselection-takashi-kawakami-idJPKCN1NC0O0

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/333.html

[経世済民129] 中国と台湾の半導体協業に強まる疑念、貿易摩擦の激化で ビンタの応酬! 激化する米中半導体摩擦 中国助ける時代「終わった」

トップニュース2018年11月7日 / 14:21 / 43分前更新
焦点:
中国と台湾の半導体協業に強まる疑念、貿易摩擦の激化で

[台北 7日 ロイター] - 米政府が中国半導体メーカーへの米製品供給のストップを決め、半導体のグローバルプレーヤーを目指す中国と、その動きを支援している台湾企業を巡って高まる緊張関係が浮き彫りになっている。

中国はここ数年、世界の主要な半導体取引から締め出されたことで、台湾の半導体メーカーに中国本土での半導体製造を持ちかけて、協業関係を強化してきた。

そうした中、台湾の半導体大手、ユナイテッド・マイクロエレクトロニクス(UMC)(2303.TW)は先週、中国の福建省晋華集成電路(JHICC)との共同研究開発を中止。米政府がJHICCに対する米企業の輸出制限措置を打ち出したことを受けての対応だ。

UMCなどの台湾企業は、中国に半導体製造の技術を提供する代わりに、急速に拡大する中国市場への参入を認められてきた。

中国は長年、集積回路(IC)不足に悩まされてきており、2017年に中国が輸入した半導体は2700億ドル相当と、原油輸入を上回る規模。

業界関係者によると、中国と台湾企業の間では、ここ数年で少なくとも10の合弁会社が立ち上がっており、台湾の技術者を高収入で勧誘しているという。

中でも中国側にとって最も価値のある台湾企業との協業は、ファンドリーサービスとメモリーチップ生産の強化に結び付く種類のものだ。これらの2分野は高度な製造技術と多くの資金投入が必要なため、海外企業からの協力が他の分野以上に求められる。

だが、米中の貿易摩擦や中台の緊張が高まる中で、懸念が強まっている。台湾の米代表機関、米在台協会(AIT)台北事務所のブレント・クリステンセン所長は企業関係者との会合で、中国が「市場をゆがめる補助金」や「強制的な技術移転」により先端技術分野を含む産業を奪い取っていると指摘。「こうした(中国の)行動は、米国や台湾、その他の国々の経済に打撃を与えている」と批判した。

台湾は世界有数のIC輸出国であり、政治的に緊張関係にある中国に台湾が経済の屋台骨でもある技術を奪われるのではないかと心配する声は多い。台湾側も、中国側に台湾の最先端技術が渡らないよう、中国との協業を注意深く見っている。台湾経済部は「企業が中国本土でウエハー生産に投資する場合には、一世代古い製造技術とすることなどを義務付けている」と説明している。

米商務省が先月、JHICCを米国の製品やソフト、技術の輸出が制限されるリストに加えたことで、UMCとJHICCとの協力には厳しい視線が注がれている。

米司法省は先週、米半導体大手マイクロン・テクノロジー(MU.O)の企業秘密を盗もうとしたとしてUMCとJHICCを起訴。バーンスタインのアナリストは「台湾のハイテク企業は自らの現在の立ち位置やサプライチェーンを注意深く見直す必要に迫られている」と指摘する。

中国が半導体生産でトップに追いつくには少なくともあと6年はかかるとの見方があるが、その半導体製造能力は既にサプライチェーンの中では脅威だとみられている。

中国・安徽省合肥市と台湾のDRAMメーカー、パワーチップテクノロジーとの合弁「Nexchip(ネクスチップ)」は、12インチウエハーの工場建設に着手して2年半も立たないうちに、月産8000枚の生産を開始。パワーチップの資源と台湾の人材を使うネクスチップは中国の海外半導体メーカー依存を減らすのに役立っている。

United Microelectronics Corp
10.95
2303.TWTAIWAN STOCK EXCHANGE
+0.05(+0.46%)
2303.TWMU.O
ネクスチップは液晶ディスプレイ(LCD)を駆動する半導体の生産で世界一の座を目標に掲げ、関係者によると、さらに3カ所の12インチウエハー工場の建設を計画中で、2019年までに月産2万枚体制を目指しているという。

昨年ネクスチップを訪れた研究者は合肥市の工場の進捗は「飛躍的だ」とした上で、台湾企業は中国市場への投資が必要になる可能性が高く、台湾の産業政策が問われることになるとの見方を示した。

(Jess Macy Yu、 Yimou Lee記者)
https://jp.reuters.com/article/china-taiwan-chi-analysis-idJPKCN1NC0FE

 
2018年11月7日 Randall W. Forsyth
【バロンズ】11月から4月、株投資に最適な理由
株投資
Photo:Reuters
良い状況に向かう株式市場
 株式市場は最悪期を脱し、相対的には良い状況に向かっているはずだ。もちろん、現在のような前代未聞の時代歴史が繰り返せば、という話だが。10月の株式市場がどれほどひどかったか、というのは投資家の捉え方次第であるが、米株式市場の時価総額が2兆4000億ドル目減りしたという話を聞くと、いたく身につまされる。先月のウィルシャー5000指数は、2011年9月以来最大となる7.29%の下落率を記録した。

 10月の状況を特に悪くしたのは、逃避先がほとんどなかったことである。これまでは米長期国債が株式の緩衝材となってきたが、株式市場が低迷しているにもかかわらず債券は反発することなく、30 年物米国債のリターンはマイナス5.36%とさえなかった。投資家は緩衝材を債券から低ボラティリティ株式に換えようとしているようだが、必ずしも成功しているとは言えない。

 ただし、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引締めや米中貿易の緊張の高まりなど、世界の株式市場は逆風に苦しめられているものの、米国株式はこれまでで最も収益性の高い時期に入りつつあると言える。中間選挙は幸いにも6日に終了し、過去の例にならえば選挙直後には株価も上昇するだろう。ヤルデニ・リサーチのデータによると、1900年代半ば以降の全ての中間選挙後12カ月間でS&P500指数は上昇し、その上昇幅は1.1〜33.2%であった。

株価に及ぼす政治の影響
 株価は大統領任期と強く連動している。1896年以降、大統領任期2年目の第4四半期から3年目の第2四半期までの9カ月間がダウ工業株30種平均(NYダウ)に投資する最良のタイミングだという。任期2年目の第4四半期にNYダウに投資すると任期末までのリターンは4%となる。また、任期3年目の第1四半期と第2四半期に投資すると、リターンはそれぞれ5.2%、3.6%である。大統領選目前の任期4年目は景気刺激のため積極政策を取りがちなので、こうしたパターンは説明できる。

 過去を振り返ると、政権と議会の状況も強気相場の要因となりそうだ。1950年以降で共和党大統領と民主党議会という組み合わせの場合、S&P500指数の年平均リターンは15.7%と、全ての組み合わせの中で2番目に高い水準となる。今回の中間選挙では、共和党が上院の多数派を維持するものの、下院では民主党が勝利を収めるとの見方が強い。株価にとって最良なのは民主党大統領と共和党議会の組み合わせで、その場合年平均リターンは18.3%に達している(多分に1990年代のITバブルがリターンを押し上げている)。いずれの場合も、ウォール街が「政治のこう着」を好むという背景があるためと、一般的には考えられる。

11月〜4月が投資に最適
 政治の影響を抜きにしても、「セル・イン・メイ(株は5月に売れ)」の正反対の時期にあたる11月以降、株式投資に最良の6カ月に突入しようとしている。1950年にNYダウに1万ドルを投資したとする。そして、年の11月1日〜翌年4月末の6カ月だけ保有してそれ以外の半年は投資しないということを毎年繰り返せば、2017年までには100万8721ドルになり、年平均7.5%のリターンが得られたことになる。反対に、5月1日〜10月末の間だけ投資した1万ドルは、年平均わずか0.6%のリターンで1万1031ドルだ。10月が決算期のミューチュアルファンドが多いことも理由に挙げられるが、繰り返される人間の行動パターンが市場の傾向を形成しているとの見方もある。

 ベトナム戦争中に米国のカンボジア侵攻があった1970年、石油輸出国機構(OPEC)による石油禁輸措置が行われた1973年、金融危機が起こった2008年など、11月から4月の投資最適期間にも例外はある。現在の政治環境は前例を見ない状況であることを踏まえれば、さしずめ、過去の投資結果は将来のリターンを保証するものではない、ということだろう。
https://diamond.jp/articles/-/184619


 


 
ビンタの応酬! 激化する米中半導体摩擦の行く末

今度は米国が中国DRAMメーカーを産業スパイ罪で起訴
2018.11.7(水) 湯之上 隆
中国への“制裁”を繰り出す米商務省(資料写真、出所:Wikipedia)
(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)
米国が中国に強烈なビンタを2発見舞う
 その驚きのニュースを筆者は、新大阪に向かう新幹線の電光掲示板で見た。その内容は、「米商務省が10月29日、中国の半導体メーカー、Fujian Jinhua Integrated Circuit (JHICC)に対して、半導体製造装置など米国製品の輸出を規制する」というものだ。
 JHICCは、習金平国家主席の国家戦略策「中国製造2025」のもと、台湾のファンドリーUMCの協力を得て、中国国内でDRAM工場を立ち上げている半導体メーカーである。JHICCは、昨年(2017年)10月に月産10万枚のDRAM工場を立ち上げ、2018年に装置搬入を開始し、2019年以降に現在最先端の1Xnm DRAMを量産する計画である。
 DRAMの製造には、米アプライドマテリアルズ、米ラムリサーチ、米KLA-Tencorなど米企業の製造装置が必要不可欠である。もし、JHICCが米国から装置を導入できないとなると、DRAM製造は相当困難になる。
 さらに11月1日、米連邦大陪審が、米国メモリメーカーのマイクロン・テクノロジーから企業秘密を盗み出した産業スパイの容疑でJHICCと台湾UMCを起訴した(日経新聞11月2日)。
 米マイクロンは2017年に、JHICCに技術協力しているUMCが企業秘密を持ち出し、JHICCに渡したとしてカリフォルニア州の裁判所に提訴していた。これに対してUMCも2018年1月に、マイクロンの特許侵害を提訴した。そして、中国の裁判所は7月、マイクロンに対して中国での製品販売を差し止める命令を出していた。
 このような状況下で、米国が中国に対して強烈なビンタを2発繰り出したわけだ。今回の米国による中国への制裁は、単なる脅しでなく、本気である(ように見える)。
 本稿では、まず、米中半導体摩擦の経緯を振り返る。次に、米国による中国への制裁が、中国メモリの脅威から、米国唯一のメモリメーカーであるマイクロン・テクノロジーを守るための措置である推論を述べる。その上で、今回の米国の制裁の波及効果を論じたい。
米中半導体摩擦の経緯
 図1を用いて、これまでの米中半導体摩擦の経緯を説明する。この経緯の途中までは、2018年7月11日のJBpressの記事「ハイテク貿易摩擦で中国が米国に2発目の反撃ビンタ」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53505)で報じた。重複する部分もあるがご容赦願いたい。
図1 米中半導体摩擦の経緯
@ 米国がブロードコムによるクアルコム買収を禁止
 現在のブロードコムは、シンガポールに本社があるアバゴ・テクノロジーが2016年に米ブロードコムを370億ドルで買収した会社であり、その本性は中国企業である。
 そのブロードコムが、約13兆円で米クアルコムに対して買収を提案した。クアルコムは、中国最大のスマホメーカーであるファーウェーと、次世代通信5Gを巡って規格争いをしている。それゆえ、クアルコムがブロードコムに買収された場合、5Gの通信規格を中国側に牛耳られる危険性があると、米国側が判断した。その結果、この買収を米国が「大統領令」により阻止した。
A 米国がZTEに対して輸出規制
 次に、米商務省は4月16日、中国のスマホメーカーZTEに対するインテルやクアルコムの半導体の輸出を7年間禁止する決定を下した。その理由は、ZTEが2010年から2016年にかけて米国の輸出規制に違反し、イランや北朝鮮にスマホ等の通信機器を輸出していたからである。その結果、ZTEは操業停止に追い込まれた。
B 中国がクアルコムによるNXP買収を阻止
 米国から2発ビンタを食らった中国も黙っていない。クアルコムは2016年10月に、オランダのNXPセミコンダクターを約5兆円で買収すると発表し、両社は合意していた。ところが、中国商務省がこの買収に待ったをかけたため、クアルコムはこの買収を断念せざるを得なかった。これは明らかに、米国に対する中国の嫌がらせである。中国が米国へ一発ビンタを張りかえしたのだ。
C 米ベイン等による東芝メモリの買収に中国が難色
 米国が2発ビンタを張り、中国が1発お返しした頃、米ベインキャピタル率いる日米韓連合による東芝メモリの買収に、中国が難色を示していた。というのは、東芝メモリのNANDの多くは中国のスマホに搭載されている。ところが、東芝メモリがベイン等に買収されると、日米韓連合の中の米アップルや米デルが東芝メモリのNANDを独占し、ファーウェーやZTEへのNANDの供給を制限する可能性があったからだ。
 ここで、米国トランプ大統領と中国習金平国家主席の間で、「米国がZTEへの制裁を解除する代わりに、中国は米ベイン等による東芝メモリの買収を認めろ」というような政治取引がなされた模様である。その結果、ZTEへの米国の制裁は解除され、ベインによる東芝メモリの買収は完了した。
D 中国がDRAM3社に独禁法容疑
 ここまで、ビンタの数は米国2に対して中国1。それゆえ、中国は沽券にかけて、何としてももう1発張り返す必要があった。そこで中国は、サムスン電子、SKハイニクス(SK Hynix)、マイクロンに対して、DRAMの独禁法の容疑で調査を開始した。実際、上記3社が市場シェア96%を独占しており(図2)、DRAM価格は1年半の間に約2.6倍に高騰していたからだ。
図2 企業別のDRAM売上高シェアの推移
(出所:statistaのデータを基に筆者作成)
 DRAM3社は、「供給が需要よりちょっと足りない状態にしておくと価格が高騰して快適だよね」と阿吽の呼吸で生産調整をしていた。決して3社が集まって密談などしていなかった。したがって、中国がどれだけ調べても談合の証拠は出てこなかった。しかし、中国は、振り上げた拳をどこかに持っていかなくてはならなかった。
噴飯ものの中国裁判所の命令
 ここで中国は、マイクロンと中国企業が、DRAM技術の流出を巡って複数の裁判を起こしていることに着目した。
 現在、中国では、RuiLiおよびJHICCが、それぞれ、月産10万枚規模のDRAM工場を立ち上げている。JHICCには、台湾のファンドリーUMCが技術提携している。上記2社に対して、マイクロンは2017年、DRAM技術を盗んだとして提訴している。一方、JHICCに協力しているUMCは2018年1月、マイクロンが中国で特許を侵害したとして、中国の裁判所に提訴していた。
 そこで、中国の裁判所は、UMCの主張を全面的に認め、訴訟が終了するまでマイクロンのメモリの生産・販売の停止を命じたのである。
 この判決は噴飯ものである。というのは、中国はこれまでDRAMを1個も生産したことがない。また、UMCのDRAM技術はせいぜい65nm程度であり、マイクロンが生産しているIXnmDRAMの最先端技術はない。つまり、RuiLiにもJHICCにもUMCにも、マイクロンが盗むに値する技術はない。したがって、どうみてもDRAM技術を盗んでいるのは中国企業であり、マイクロンは被害者である。ところが、マイクロンは盗人から逆提訴され、中国でのDRAM等の生産・販売中止を命じられた。何という理不尽な判決であることか。
 要するにマイクロンは、米中ハイテク摩擦に巻き込まれ、そのとばっちりを受けたわけだ。
マイクロンが抱えている3つの爆弾
 一連の裁判はマイクロンにとってはいい迷惑だが、半導体業界には一時、「マイクロンが倒産するかもしれない」という衝撃が走った。その理由は以下の通りである。
 マイクロンの2017年の決算報告書を読むと、マイクロンのメモリビジネスには、3つの特徴があることが分かる。それはマイクロンにとって爆弾と言ってもいい。
 第1に、セグメント別売上高および営業利益率から、PC依存度が高いことが分かる(図3)。一方、ビッグデータの時代を迎えているにもかかわらず、サーバーで稼げていない。PC市場が縮小している状況からすれば、マイクロンのビジネス形態は危うい(爆弾その1)。
図3 マイクロンのセグメント別売上高と営業利益率
(出所:マイクロンのIRデータを基に筆者作成)
 第2に、マイクロンのメモリ別売上高を見てみると、DRAMが全体の約60%を占めており、“ほぼDRAMメーカー”と言える(図4)。したがって、DRAMビジネスの停止命令を受けたら、マイクロンはひとたまりもない(爆弾その2)。
図4 マイクロンのメモリ別売上高
(出所:マイクロンのIRデータを基に筆者作成)
 なお、売上の約30%を占める「Trade-NAND」とは、インテルとマイクロンの合弁会社「IMフラッシュ」が開発し、それに基づいてインテル用にマイクロンが製造したNANDのことである。今年2018年に、IMフラッシュは解散したので、今後は、「Trade-NAND」はなくなると思われる。
 第3に、地域別売上高を見てみると、中国ビジネスが年々増大しており、2017年に51%に達している(図5)。つまり、マイクロンは中国依存度の高いビジネスを行っている(爆弾その3)。
図5 マイクロンの地域別売上高
(出所:マイクロンのIRデータを基に筆者作成)
 このように3つの爆弾を抱えているマイクロンが、中国の裁判所からメモリの生産・販売停止命令を受けたら、無事でいられるはずがない。
 ところが、マイクロンは、中国裁判所から「販売停止」命令を受けた2日後の7月5日に、「影響を受ける製品の規模はマイクロンの年間売上高の約1%にとどまる」というニュースリリースを発表した。もし、このニュースリリースが事実なら、2017年の中国ビジネスが51%と書かれた決算報告書は虚偽ということになる。
 一方、このニュースリリースが嘘ならば、株主や投資家を騙して株価を操作していることになる。実際、生産・販売中止命令が出た7月3日に5%下落した株価は、ニュースリリースが出た7月5日は3.6%高となった。どちらにしても、経営陣は退陣どころか、刑事罰を受ける可能性すらある。一体、真相はどうなっているのか?
「影響は1%」の真相
 米国では、虚偽の報告等により株価を操作したことが判明したら、関係者は厳しい刑事罰を受ける。ということは、マイクロンの役員たちは、刑務所行きを覚悟の上で、「影響は1%」という虚偽のニュースリリースを出したのだろうか?
 本当にマイクロンは倒産するかもしれないと思っていたら、「影響は1%」の真相が明らかになった。中国の裁判所が生産・販売を中止した約30品目には、単品のDRAMやNANDが含まれていないという。30品目のほとんどが、マイクロンが独自に生産しているモジュール製品であるらしい。そして、その総額は全売上高の1%に過ぎないということである。
 よくよく考えてみると、マイクロンにDRAMやNANDの生産・販売を停止されたら、困るのは「世界の工場」となった鴻海(ホンハイ)である。自分で自分の首を絞めるようなことを、中国が行うわけがない。
 結局、中国の裁判所命令の本質は、中国が沽券にかけて米国に2発目のビンタを張らなくてはならなかったことにある。そこで、噴飯ものの判決を出し、世界を驚かせたのだ。
マイクロンにとって脅威とは
 中国の2発目のビンタは、実質的に威力が無かった。しかし、マイクロンにとって、中国のメモリ、特にDRAMは依然として脅威である。
 冒頭で述べた通り、中国では、JHICCとRuiLiの2つの企業が、月産10万枚規模で1Xnmの最先端DRAMを立ち上げようとしている。その背後には中国政府が設立した18兆円にものぼる「中国ICファンド」がある。
 とにかく中国には、うなるほどのカネがある。カネがあれば、量産工場を建設し、製造装置を購入することができ、有能な技術者を高額な年俸でヘッドハンドすることができる。
 実際、米国が訴えたJHICCは、マイクロン傘下の台湾イノテラから数百人の技術者を引き抜いたと聞く。そして、今回、米国は、イノテラからJHICCに転職した台湾籍の社員3人も、JHICCと同時に起訴している。
 それでも、JHICCやRuiLiが、すぐに1Xnmの最先端DRAMを立ち上げることができるとは思えないが、もし、万が一、どちらか一方が立ち上げに成功すると、マイクロンは倒産する可能性が高い。
弱い者から死んでいくDRAMの歴史
 2016年以降、ビッグデータの時代を迎え、メモリ市場が爆発的に成長している。その要因は、DRAM価格が高騰していることと、つくってもつくっても足りない状態になったNANDにある。
 ここで、DRAMとNANDの差は、その需要の大きさにある。人類が生み出すデジタルデータは指数関数的に増大しており、アマゾン、グーグル、マイクロソフトなどのクラウドメーカーはそのビッグデータをストレージするために、猛烈な勢いでデータセンターを建設している。
 そのため、データセンターに大量に必要となったサーバー用に、DRAM需要もNAND需要も増大している。しかし、DRAM需要に比べて、NAND需要の方が遥かに大きい。
 その結果、メモリメーカーは、NANDに途轍もない規模の設備投資を行っている。一方、サムスン電子、SK hynix、マイクロンが独占しているDRAMは、3社が阿吽の呼吸で、「需要より供給がちょっと足りない状態」をつくり出し、それがDRAM価格の高騰につながっている(注1)。
 もし、このようなDRAMに、中国企業が参入に成功したら、間違いなく供給過剰となり、価格は暴落し、DRAM市場は破壊されるだろう。そのとき、売上高の60%をDRAMに頼っているマイクロンは、倒産する可能性が高い。
 過去を振り返ってみると、DRAM産業では、常に、最も弱い者が撤退したり、倒産してきた歴史がある。
 1980年中旬に、NEC、東芝、日立などの日本メーカーがDRAMのシェア80%を占め、インテルをはじめとする米国メーカーはDRAMから撤退することになった。
 1990年代にサムスン電子等の韓国勢が日本のシェアを上回り、2000年には日立とNECの合弁会社エルピーダ1社を残して、日本はすべて撤退を余儀なくされた。
 サムスン電子やSK hynixの猛威により、2010年までに台湾DRAMメーカーが壊滅的となり、エルピーダも2012年に倒産してマイクロンに買収された。
 そして今一番、弱い立場にあるのがマイクロンである。中国メーカーが進出し、価格暴落が起きても、メモリの横綱のサムスン電子が(多少ケガはするかもしれないが)倒産することは無い。また、SKハイニクスも財閥が支えるから何とか持ちこたえるだろう。中国企業は、歩留りが低くて赤字でも、その赤字を政府が補填するらしいので、中国の国策により(低空飛行であっても)生き続けることができる。
 すると、次にDRAM市場から撤退するのは、どう考えてもマイクロンということになる。しかし、マイクロンは、米国唯一のメモリメーカーである。米国が何としてもマイクロンを守りたいと考えても不思議はない。
米国の狙いとその波及効果
 以上のような背景から、米国が中国JHICCへの製造装置の輸出を制限し、JHICCを産業スパイの容疑で起訴した、と考えられる。要するに、中国企業のDRAM進出を何としても阻止したいというのが、米国の狙いである。
 米国から製造装置などを輸入できなくなった中国は、どうするか? その代替案として、東京エレクトロン、スクリーン、キヤノン、荏原製作所、日立ハイテクノロジーズ等、日本メーカーに装置を発注する可能性がある。すると、日本メーカーが潤って良いではないかという考えもできる。
 しかし、米国から日本の経済産業省へ、「中国への製造装置の輸出を制限せよ」と圧力がかかる可能性がある。その圧力に、日本は逆らうことができないだろう。
 現在、中国では、メモリをはじめとする半導体の内製化とともに、国産の製造装置の開発も行っている(「製造装置の国産化を加速する中国」 EE Times Japan、2018年8月9日)。中国が日米から製造装置を輸入できなくなった場合は、国産化するしかない。つまり、今回の米国の2発のビンタは、中国の半導体およびその製造装置の国産化を加速することになるだろう。その行方に注目したい。
*  *  *
(注1)今年2018年に入って、NAND価格が下落し始めた。また、2016年4月以来、高騰を続けていたDRAM価格が2018年第4四半期に5%下落する見通しが発表されている。この状況について、世の中のジャーナリストやアナリストは、メモリをつくりすぎたため供給過剰となり、価格が下落したと分析している。
 一方、筆者は、インテルが2016年以降、10nmプロセスの立ち上げに失敗し続けており、その結果、PC用プロセッサも、サーバー用プロセッサも、14nmに集中したため、14nm工場が過密状態となってプロセッサ供給不足になったことが影響していると考えている。
 インテルは、PC用プロセッサで80%、サーバー用プロセッサで96%のシェアを有している。そのプロセッサを十分供給できなくなったため、PC用やサーバー用に製造された(あるいはこれから製造される)DRAMとNANDが宙に浮いてしまい、結果的に供給過剰になり、価格下落を引き起したと推測している。
 この詳細は、2018年10月25日に配信したメルマガ164号で詳述した。ご興味がある方はこちらから購読を申し込み、お読みいただきたい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54577

 


 
米中間選挙後に市場はどう動くか−ゴールドマンなど専門家の見方
Joanna Ossinger、Felice Maranz
2018年11月7日 10:45 JST
• ゴールドマン:中間選挙後に株価は堅調との通説通りでない可能性も
• モルガンS:共和党が上下両院支配なら減税延長期待で金利先高観

Precinct and campaign volunteers hold umbrellas while standing outside a polling station in Leesburg, Virginia.
Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
6日の米中間選挙の開票が始まっている。その結果は、債券利回りから株価変動まであらゆる方面に影響を及ぼす。市場の先行きに関するストラテジストの見方を以下にまとめた。
税金と財政政策
  上院で多数派の共和党が議席を上積みできれば、トランプ米大統領の減税策は2020年大統領選以降も守られることになるが、民主党が下院を制し上院は両党が議席を半々に分けた場合にはそうはならないと、エバコアISIのストラテジスト、テリー・ヘインズ氏は6日付のリポートに記した。
  モルガン・スタンレーによると、共和党が上下両院を制すれば、減税延長期待が高まり、金利上昇見通しを後押しする可能性がある。民主党が圧勝した場合は、「2020年より前の財政政策を変えることはできないが、それ以降の軌道に関する見通しが変わるだろう」とマイケル・ジーザス氏ら同行ストラテジストらは5日付のリポートで分析。「この変化は、話題が金利上昇から離れることにつながり、株式市場がここ数週間受けていた圧力を短期的に緩和する」と付け加えた。
株式
  ゴールドマン・サックス・グループのベン・スナイダー氏らストラテジストは6日付のリポートで、米株式相場は通常、中間選挙後に堅調になるが、政治的不透明感の後退や財政政策の緩和といった典型的な原動力が現在の政治環境では作用しにくい可能性があると指摘。「中期的には、リスク調整後の株式リターンは低いという基本的見方を戦略的に継続する」と述べた。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iQLNb7Z_lG4s/v1/-1x-1.png

  ノーベル経済学賞受賞者のロバート・シラー氏は、中間選挙が大統領の成長促進の姿勢に挑戦する形となっており、市場は一段と売り込まれる恐れがあると6日にコメント。今は「恐れと混乱」のムードにあると指摘した。
  金融株については、選挙結果がどうなろうと、好調になる可能性がある。カウエンのジャレット・サイバーグ氏は、議会審議の行き詰まりは銀行規制当局が既存規制の緩和案を引き続き進めることを意味すると述べ、同社は政策の観点から、地銀を中心に金融セクターに前向きな見方を取っていると説明した。
株式投資家が米中間選挙を控えて注目するのはこの6業種
金利
  ゴールドマンのストラテジストによると、民主党が上下両院を制した場合、財政刺激策の見通しが後退するため、米国債利回りは低下する一方、共和党が圧勝した場合は財政刺激策の可能性が高まり、規制の不確実性が低下するため利回り上昇につながるという。
  ソシエテ・ジェネラルのストラテジストらは、中間選挙でねじれ議会の結果となった場合は特に、弱気バイアスの取引が続くだろうと予想。「2016年大統領選挙の後、リスクオンのセンチメントが市場に広がり、株価と債券利回りの急上昇が見られた。(民主党が下院を制して、共和党が上院で多数派を維持するシナリオでは)かなり小さな規模ではあるが、市場で逆の反応が見られる可能性がある」と分析した。一方、民主党圧勝なら「高リスク資産により長期的な影響が及び、金融状況が引き締まる可能性があり、投資家は債券の安全性に注目する」が、共和党が圧勝の場合は「リスクテイクが再燃する中」、債券利回りは上昇するだろうとの見方を示した。
原題:Market Guide to the Midterms: What Goldman, SocGen Are Watching(抜粋)
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
LEARN MORE
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-07/PHSR9Q6TTDS001?srnd=cojp-v2


 


 


 
米副大統領、中国助ける時代「終わった」 融和路線転換
2018/11/2 2:00
日本経済新聞 電子版
 ペンス米副大統領による中国政策に関する演説が米中関係に波紋を広げている。中国による知的財産権の侵害や軍事的拡張、米国の内政への干渉を公然と非難、両大国が覇権を争う対決の時代に入ったことを印象づけた。チャーチル英元首相がソ連を批判した「鉄のカーテン」演説に匹敵し、「新冷戦」の始まりを告げたとの見方も外交専門家に浸透しつつある。

演説するペンス副大統領(10月4日、ワシントン)=AP
 10月4日、ペンス氏が保守系シンクタンク、ハドソン研究所で披露した演説は経済問題に限らず、政治、軍事、人権問題まで多岐に及び、トランプ政権の対中政策を体系立てて示す包括的な内容となった。
 「北京は『改革開放』とリップサービスを続けるが、ケ小平氏の看板政策も今ではむなしく響く」
 経済的に豊かになれば国民は政治的な自由を求め、やがて中国にも民主主義が広がる――。米国の歴代政権はこうした立場から「関与(エンゲージメント)政策」を推進し、2001年には中国の世界貿易機関(WTO)加盟も容認した。だが世界第2の経済大国となった後も、中国で政治的自由化が進む気配はない。
 むしろ習近平(シー・ジンピン)指導部の下で統制は強まり、民主化の火は消えかけている。台湾の外交的孤立を図るなど、自らの戦略的利益を追求する姿勢も強まる一方だ。ペンス氏は米国が中国に手をさしのべてきた日々は「もう終わった」と断じた。
 トランプ政権が対中政策の転換に踏み切るのは、国家資本主義という異質なルールに依拠した大国が経済・安全保障の両面で米国の覇権を脅かす存在となりつつあるからだ。
 「中国共産党は関税や為替操作、技術の強制移転、知的財産の盗用、あめ玉のように配る産業補助金など、自由で公正な貿易に反する政策を多用してきた」
 ペンス氏は米国の対中貿易赤字が3750億ドル(約42兆円)に膨張したのは、中国の不正なやり口で米国の製造業が犠牲になったためだと説明した。盗んだ民間技術を軍事転用するなど、安全保障上も脅威になっていると強調した。
 「中国はほかの全アジア諸国を合わせたのと同じくらいの軍事費を投じ、陸・海・空で米国の優位を侵食しようとしている」
 南シナ海での人工島や軍事基地の建設は「軍事化の意図はない」としていた習氏の約束と異なると非難、米軍は「航行の自由作戦」から撤退しないと宣言した。広域経済圏構想「一帯一路」も「借金漬け外交」と断じ、周辺国への影響力拡大を懸念した。
 「中国は他に類を見ない監視国家を築いた。米国の技術の助けを借りて拡大し、侵略的になっている」
 キリスト教福音派の支持が厚いペンス氏は、中国の人権問題も取り上げた。中国のインターネット検閲システムは自由な情報へのアクセスを妨げていると批判。中国向け検索アプリを開発するグーグルを名指しして計画の中止を求めた。キリスト教徒や仏教徒、イスラム教徒を弾圧し、他国にも抑圧を広げようとしていると警戒感を示した。
 中国が「核心的利益」と位置づける台湾問題でも「我々の政権は『一つの中国』を尊重し続けるが、民主主義を奉じる台湾の方が全中国人により良い道を示している」と踏み込んだ。
 「中国は(トランプ氏とは)別の米大統領を望んでいる」
 米情報機関から得た話として、中国は米国の選挙に影響を及ぼそうと政府当局者や産業界、学界、メディアに働きかけを強めていると指摘。ロシアの選挙干渉より大規模だと断じた。
 ペンス氏は「中国の指導者は改革開放の精神に戻ることはできる」と対話の可能性を示して演説を締めくくったが、最後まで対中批判のボルテージを下げることはなかった。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37243610R01C18A1M11000/ 


http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/334.html

   前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > うまき gqSC3IKr > 100002  g検索 gqSC3IKr

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。